相克の“アンティーカ” (在処サクラ)
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プロローグ “ファーストルック”

「なあ、アンティーカって知ってるか?」

 

 職場の先輩男性にそんな事を聞かれ、作業中だった私はあからさまに首を傾げてみせた。

 

「……もしかして私、バカにされてます?」

 

 ―――()()()()()()

 最近になって売れ始めたファッションブランドであり、私―――網島更紗(あみしまさらさ)が務めている、この会社の名称である。

 

 将来の夢はファッションデザイナー。

 そんな私は入社して一年足らず、まだまだ駆け出しのひよっこだ。この職場では未だに雑用係のような扱いを受けている。

 

「言っとくけど、ウチの事じゃねーぞ?」

 

「違うんですか?」

 

「ああ、ほらこれ見てみろ。『L'antica』……これでアンティーカって読むんだとさ」

 

 先輩が差し出してきたスマホの画面に映っているのは、ゴシックな衣装で歌って踊る五人のアイドル達。

 

「わあ、アイドルグループですか。先輩、こう言うの好きなんです?」

 

「違ぇーよ! さっき社長が話してんのが聞こえたんだよ。次のTGC、このアイドル達にゲスト出演させるらしい」

 

 TGC―――東京ガールズコレクション。

 その名の通り、日本にある東京で行われるファッションイベントであり、若い女性達を主なターゲットとした服飾の販売、それに伴ったファッションショーやライブなどを行う一大イベントだ。

 

「え……アイドルを? モデルさんじゃなくて?」

 

「まあ、アーティスト枠って考えれば無い訳じゃあない。それに、ユニット名がウチと同じって事で、話題性もあるだろうしな」

 

「なるほど」

 

 雑用係の私としては正直どうでもいい話ではあったが、スマホに映っているアイドル達の姿はとてもキラキラしていて、まるで別世界の存在のように見えた。

 

「おい、いつまで見てんだよ」

 

「あ……すみません。なんていうか、今時のアイドルって凄いんですね」

 

「そうだろ? 特にこの恋鐘ちゃん、すげースタイル良くてさ」

 

「先輩、やっぱり好きなんでしょ」

 

 ……と、まあ。

 そんな訳で、どうやら私の所属するブランド『アンティーカ』で、今話題のアイドルユニット『L'antica』を起用する事になったらしい。

 

 実際、この後の会議でその旨が伝えられたので間違いない。

 一部の社員達にもファンがいるらしく、概ね好意的な印象だった。

 

 私も資料を拝見したけれど、メンバーのひとりである長身の女性は過去に何かの雑誌で見た事があった。

 

 この『L'antica』というアイドルユニットは人気上昇中とのことで、名前が同じウチとのタイアップというのも、話題性―――いわゆる“トレンド”狙いとしては面白い施策だと思った。

 

 夢の舞台であるTGC。

 ただの雑用係でしかない私にとって、まさに天上とも呼ぶべき世界―――

 

 けれど、この時の私は知る由もなかった。

 彼女ら『L'antica』との出会いが、私の人生を一転させる事を。

 

  ◆◆◆

 

「―――と言う訳で、結華には来月末に行われる東京ガールズコレクションに出演して貰いたい」

 

 283プロ事務所。

 アンティーカのメンバーのひとりである三峰結華(みつみねゆいか)は、プロデューサーから新たな仕事内容について話を受けていた。

 

「ファッションショーのモデルとしてウォーキング、その後ステージでミニライブ。衣装はすべて新規……依頼主であるファッションブランド『アンティーカ』さんの用意するものを使わせて貰う」

 

「アンティーカって……―――へえ、三峰たちと同じ名前のブランドってこと?」

 

「そうだ。もちろん結華だけじゃなく、ユニットメンバー全員での出場になる」

 

「すごいじゃん。ついに三峰たちもファッションショーかぁ」

 

「東京ガールズコレクション、通称TGC。ファッション好きな若い女の子たちが集まる、お祭りみたいなものだ。結華なら知っているかも知れないが、概要の載った資料を用意したから渡しておくよ」

 

 プロデューサーから受け取った資料に目を通し、それが現実であると実感した結華は、この仕事がいかに大きなものであるかを理解した。

 

「それで、もうみんなには話してる感じ?」

 

「……いや、まだだよ。今回の件については、まず結華に話しておこうと思ってな」

 

「三峰に……って、なんで?」

 

「それなんだが、実は―――」

 

  ◆◆◆

 

 私―――網島更紗は自宅のPCを使い、インターネットで件の『L'antica』について検索をかけていた。

 

 するとすぐにサイトが見つかり、メンバー五人のプロフィールなどの詳細を確認できた。

 

(―――やっぱりいた、この子だ)

 

 白瀬咲耶(しらせさくや)

 かつて雑誌のモデルをしていたのをたまたま目にした事があったので覚えていた。

 その長身、抜群のプロポーションはまさにモデル体型―――モデルに憧れがなくても、この道の人間なら誰もが目を惹かれるのは間違いないだろう。

 

 自分の記憶が正しかったことに満足しつつ、他のメンバーにも目を向けてみる。

 

(プロフィールだけじゃパッとしないなあ。うーん、ライブ映像とかどこかに……―――)

 

 そうして色々調べていくうちに、ひとつの映像に辿り着く。

 その中ではまさしくゴシックな衣装を身に纏い、アップテンポな曲で踊るアイドルたちの姿があった。

 

「これ……この子……―――」

 

 初めて見るキラキラした少女たち。

 その中のひとりに、私の視線は釘付けになってしまっていた。

 

  ◆◆◆

 

 ―――静寂、無音。

 

 プロデューサーとの打ち合わせを終え、結華は誰もいない事務所のソファに座りながらぼんやりと天井を眺めていた。

 

 その表情はどこか空虚で、視線は宙に浮いていて―――

 

「私がファーストルック……かあ……」

 

 ぼそりと呟きながら、歪んだ笑みを浮かべる。

 

「ファッションショー、ってことは……モデルさんが一杯いて……色んな服でウォーキングして……―――」

 

 いつしかその瞼は閉ざされ、暗闇の中。

 

 少女の心に蠢くもの、それは―――

 

『ショーの終盤、アーティスト達が登場するステージがあるんだが、結華にはそのステージのファーストルックを頼みたい』

 

『ファーストルック……!?』

 

『一番最初に出ていって盛り上げる役、トップバッターみたいなものだな』

 

『いや、それは解るけど……三峰が? さくやんとかじゃなくて?』

 

『ああ、先方からの依頼なんだ。資料にも記載してあるから、後で確認しておいてくれ―――』

 

 プロデューサーとの会話を脳裏に思い返しながら、少女は深く息を吐いた。

 

「……あはは。三峰、責任重大じゃん」

 

 笑みは引きつり、やがてその表情は無へと変わる。

 

 そうして、その瞼がゆっくりと開かれて―――

 

「…………、どうして……―――」



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第一話 “困惑”

 ―――翌日。

 ファッションブランド『アンティーカ』、作業部屋にて。

 

「おい地味メガネ、休憩終わったら俺の作業手伝え」

 

 私が職場の隅でデザイン片手に昼食のパンをかじっていると、職場のリーダーである男性―――今回のTGCでアイドルたちの服をデザインすることになった人に声をかけられた。

 

 ちなみに『地味メガネ』とは私のあだ名である。

 目立たない黒髪ショートにメガネ姿、服装もデザイナー志望とは思えない質素なものなことから、いつの間にかそんなふうに呼ばれてしまっていた。

 

「ふぁい。ふぁはいまひた」

 

「物食ってる時にくちゃくちゃ返事すんじゃねえ。……ん、なんだそれ。また懲りずにデザインでも描いてんのか」

 

 リーダーが近くに寄ってきて、私の手元にあるデザインの落書きに目を向ける。

 

 これは、昨日の夜に見たアイドルの姿に感化されてアウトプットした殴り書き―――それを昼休み中にまともな形に仕上げようと頑張ったものだ。

 

「見た目はゴシック・アンド・ロリータ……に見せかけたパンク・ファッションとの混同か? まさかこれ、例のアイドルグループをモチーフにしてんのか」

 

「んぐ……は、はい。えっと、今度コラボする『L'antica』にいるアイドルのひとりなんですけど―――」

 

 私が解説しようとすると、リーダーはそのデザイン画をひょいと拾い上げ、

 

「……雑用係が一丁前にもデザイナーの真似事とはな。こんなもん描いてるヒマがあったら俺の仕事を少しでも減らせよ」

 

 くしゃくしゃ、と。

 なんの断りもなく、いきなりそれを丸めてはポイと投げ捨ててしまったのである。

 

「ちょっ、なにを……―――」

 

「オラ、飯食ったらさっさとこっちこい。ただでさえ追われてんだ、無駄なことに労力さいてんじゃねぇぞ」

 

 どうやら作業に追い込みが掛かっていてイライラしているらしい。

 普段から口の悪い人ではあったが、流石に今のような真似まではしなかったのに。

 

 私は自分の渾身の出来になりそうだったデザイン画に思いを馳せながらも、雑用係としての仕事を果たすべく、今日もまたせっせと働くのであった。

 

  ◆◆◆

 

 同時刻、283プロ事務所。

 結華以外のアンティーカメンバー全員にも今回の仕事についての話が伝えられ、これからのレッスンスケジュールなどの打ち合わせが進められた。

 

 センターである月岡恋鐘はもちろん、メンバー全員がこの案件に対して興味津々になり、アンティーカの参加は満場一致で決まりとなった。

 

「アンティーカって、うちらと同じ名前ばい! 知っとる? 霧子、摩美々〜?」

 

 そう恋鐘が問いかけると、幽谷霧子(ゆうこくきりこ)田中摩美々(たなかまみみ)の二人はほぼ同時に頷いた。

 

「うん……最近、人気出てきたみたい。先月に出てたアプリコットで特集されてたの見て……」

 

「まあ私はバズる前から知ってましたケドー」

 

「へえ、そうなんだね。恥ずかしながら、私は今日初めて知ったよ」

 

 霧子と摩美々は知っていたものの、咲耶は知らなかったと言う。

 そんなやり取りをよそに、結華はひとり上の空で黙り込んでしまっていた。

 

「……結華? ずっと喋っとらんけん、どげんしたと?」

 

「えっ、あ、ううん! 三峰も知らなかったよ。きりりんとまみみんは流石だなぁ〜!」

 

 そんな結華のぎこちない反応に、恋鐘はさほど気にしていない様子ではあったが、その他のメンバー達は違った。

 

「結華、もしかしてファッションショーは初めてかい?」

 

 と、咲耶がすかさず声を掛ける。

 

「それとも、ファーストルックの件かな?」

 

「―――……!」

 

 思わず図星を突かれた表情になってしまう結華。

 

「もし気負ってしまっているのなら心配はいらないよ。ファーストルックは確かに大事だけれど、結華ならきっと大丈夫さ」

 

「いやー、あはは。さくやんにはバレちゃうかぁ。んー、ちょっと緊張しちゃってるだけだから問題ないない! 本番まで一ヶ月もあるんだし、三峰なら心配ご無用です!」

 

「……そうかい? それなら一緒にウォーキングの練習でもどうかな。一言にウォーキングと言っても、ランウェイでの表現方法は様々で―――」

 

 気を遣って接してくれる咲耶に、結華は苦笑いしつつも心の底から感謝の念を抱いていた。

 

(ほんとにもう。私ってばダメダメだなあ……)

 

 自分の情けなさに心の中で活を入れつつ、結華は人知れず頭を振る。

 

 自分にどこまで出来るかはわからないけれど、やれるだけやってみよう―――と。

 

  ◆◆◆

 

 夕暮れ時。

 職場から退勤した私は、頭の中から離れてくれないひとつのデザインをずっと思い浮かべていた。

 

 職場では邪魔が入ってしまうし、自宅に帰ったら真っ先に書き起こそう、そう決めていた。

 

(アンティーカ……『L'antica』……。それに、あの子……―――)

 

 私の脳裏にはひとりのアイドルの姿。

 センターで一際目立つ月岡恋鐘でもなく、高身長でモデル体型な白瀬咲耶でもない。

 

(どうして……こんなに、気になるんだろう……?)

 

 これまでアイドルなんてものには興味なんて一切湧かなかった。

 

 アンティーカ―――私の勤める職場は、まさに私の理想とする服飾を作り続けているブランドだ。

 

 それと同じ名前のアイドルユニットだから?

 それとも、TGCでうちとコラボ起用するから?

 

 ……答えはわからない。

 全部かもしれないし、どれにも当て嵌まらないかもしれない。

 

 ただ、昨日―――調べながら行き着いた先、ひとつのライブ映像を観て……私は確かに惹かれていたのだ。

 

 そのアイドルのことを思い浮かべるだけで、次々にデザインのアイデアが沸いてきて―――

 

(こんなこと、はじめて……)

 

 デザイナーになりたい。

 そんな漠然とした夢を追いかけ続け、私は今ここにいる。

 

 ……けれど。

 やりたいことをやっている―――そのはずなのに、どこか毎日に満足が出来なくて。いつかデザイナーになる為に、その礎を築いている……そう自分に言い聞かせてきた。

 

 でも、あのアイドルを見て、頭に閃いたデザインを形にしている時―――

 

(なんだろう……この、気持ち……―――)

 

 なんて言えばいいのか、今はまだわからないけれど。

 きっとこれは、大切なことなんだと思うから。

 

 ―――描こう。

 私だけの、たったひとつのデザインを。



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第二話 “躍進”

 私が夜通しで書いたデザイン画。

 満足のいく出来になったのはたったの一枚だけだったけれど、それでも私にとっては自信作なことに間違いはなかった。

 

 いわゆる『ゴスロリ』と呼ばれる意匠、歌って踊るアイドルに合った動きやすい丈のスカートなど、あのアイドルの為だけに創り出したといっても過言ではないデザイン。

 

 そして、何よりも欠かせない、彼女らしさを象徴するワンポイント―――

 

「……って、ヤバ。そろそろ寝ないと、明日も早いんだった」

 

 私はプロのデザイナーではない。

 この私のデザインが世に出るなんてことは有り得ないし、これはただの自己満足だ。

 

 ただ描きたいから描いただけ。

 あの映像を観て―――彼女の姿に目を惹かれて、ずっと脳裏に浮かび続けていたもの。それをアウトプットして、満足して、それで終わり。

 

 ……そう。

 この時の私は、確かにそう思っていた。

 

  ◆◆◆

 

「おはようございます……」

 

 夜ふかしをして、案の定眠気マックスな私は、寝ぼけ眼を擦りながらも遅刻せず無事に出社した。

 

 仕事場では既にリーダーが衣装に取りかかっていて、私の姿を確認するなり、いつもの目付きの悪い視線をこちらへ送ってくる。

 

「オイコラ地味メガネ。お前な、今がどういう時期なのかちゃんと解ってんだろうな?」

 

「はあ……すみません。すぐに準備しますので。ええと、とりあえずパターン起こせば良いです?」

 

「いや、それは別の奴にやらせる。お前は掃除と溜まってるゴミ集めて捨ててこい」

 

 と、今日は珍しくリーダーが部屋掃除を指示してきた。あまりに酷い時は私が率先してやるものの、今の仕事場の状態的にはそこまで必要なさそうだけれど―――

 

「なにボサっと突っ立ってんだ、さっさとやれ。今日は社長が視察に来るんだよ」

 

 ……社長、視察。

 その言葉ですべてを察した。なるほど、社長が来るとなれば確かに掃除くらいはキッチリ済ませておくに越したことはない。

 

「わ、わかりました!」

 

 そんなこんなで、私の今日の仕事もまた雑用からスタートするのであった。

 

  ◆◆◆

 

 昼休み。

 どうやら社長は昼食後に訪れるとのことなので、私はキレイに整理整頓した自分の作業机の上で昨日のデザイン画の続きに没頭していた。

 リーダーは席を外しているし邪魔をされることもないだろう。

 

 何を隠そう、このデザインにはまだ足りていないものがあるのだ。

 いや、このままでも充分だとは思うのだけれど、私の頭の中に浮かんでいるアイドルの姿―――それを際立たせる、ワンポイントアイテム。

 

 しかしながら、どうにもそのデザインに難航してしまっていた。

 完璧主義というわけでもないのだけれど、ここまで熱の入ったデザインなのだから、ここで手を抜くわけにはいかないのである。

 

「んー……むむむ……」

 

「あら、デザイン描いてるの? へえ、なかなか面白いシルエットしてるじゃない?」

 

 ふと、耳元から声が聴こえた。

 低い男性の、しかし口調はまるで女言葉―――

 

「わわわぁ!?」

 

「きゃっ、いきなり叫ばないでよ。ビックリするじゃなぁい」

 

 私はこの男性を知っている。

 というか知らないはずがないのだ、だってこの人は―――

 

「しゃ、社長!? ななな、なんでここに!?」

 

 ファッションブランド『アンティーカ』の社長、その人なのだから。

 

「えー? アタシ、ちゃんと行くって言ってあるわよね?」

 

 見た目は厳ついオッサ……もとい、いい歳の男性なのだが、喋り方が完全に女言葉な上に仕草までもやたらくねくねしている。いわゆるオカマさんなのだ。

 

「ええと、昼食後にって……」

 

「もちろん食べ終わってから来たわよ?」

 

「ああ、そういう……」

 

 私が社長と出会ったのは面接時。

 この会社に入ることになったのも、この人のおかげだと言っても過言ではない。

 

「それにしても良かったわぁ。更紗ちゃん、ちゃんとデザイン描いてて」

 

「え?」

 

「入社した時に言ったでしょ? アタシ、アナタのデザイン好きなのよ。もちろんまだまだ拙さはあるけれど、これだって……―――」

 

 などと言いながら、社長が私の描いていたデザインを手に取る。

 

 その時、私は昨日の出来事を思い出して、

 

「あっ、あの、ごめんなさい! それはその、趣味で……」

 

「動きやすさに特化したフォルム……けれどゴスロリ特有の可愛さは損なわれていない……。良いわねコレ」

 

「え……あ、その。ありがとうございます……?」

 

「あー、解ったわ! そういえばアナタ達のチームは例のアイドル担当だったわね。このデザインもそれね?」

 

「いえ、私は全然……。デザインは全部リーダーがやってますし、私のやる事といったら雑用かたまにパターン起こすくらいで……」

 

「あら、そうなの? 勿体無いわね。このデザイン……もう少しアタシ好みにイジれば……」

 

 社長は呟きながらどこか思案顔になって、

 

「ねえ更紗ちゃん。ひとつ提案があるのだけれど―――」

 

  ◆◆◆

 

「―――ちょ、本気ですか社長!?」

 

 昼休みが終わり、午後。

 仕事場に戻ってきたリーダーに告げられたのは、社長の気紛れとも呼ぶべき無茶な提案。

 

「ええ、女に二言はないわ。今回のアーティスト枠のファーストルックの衣装、更紗ちゃんのデザインを採用しましょう」

 

 女じゃねえだろ、とは口にしないでおく。

 

「いやいや、いくらなんでも戯れが過ぎますよ! だいたい、こんな雑用係にまともなデザインなんて―――」

 

「もちろんアタシが手を加えるわ。アナタのデザインと違和感が生まれないよう調整も加えます。それにアナタ、ずっと言ってたじゃない? 『ファーストルックの衣装が決まらない!』って」

 

「それはそうなんですけど……ああもう、とにかく俺はこんな奴の……」

 

「ホラ、コレ見て。アナタ、最初にどう感じた?」

 

「……どうって。ああこれ、昨日も描いてたやつか。網島、また懲りずにこんなもん―――」

 

「今はアタシの質問に答えなさい」

 

 いつにない社長の真剣な表情、口調。

 流石にこのブランドを経営しているだけのことはある。いつもは無愛想で口の悪いリーダーもたじろいでいた。

 

「……アイドル用のデザインだな、とは」

 

「そう、一目見て解るのよ。これが『L'antica』の為の衣装だ、ってね」

 

「本気なんですか、社長。TGCですよ? アーティスト枠とはいえ、こんな素人の描いたデザインなんか―――」

 

「あら、良いじゃない。誰だって初めの一歩は素人からスタートするのよ?」

 

「……はあ。わかりましたよ。その代わり、このデザインに関してはコイツに全部やらせます。それでいいですね、社長」

 

「ええ、当然ね。アナタが見て完璧なものになるまで何度でも作り直させなさい」

 

 リーダーと社長がトントン拍子に話を進めていく中、私はただ流されるままになっていて―――

 

「ふふ。頑張りなさいな、更紗ちゃん」

 

 この瞬間から、私のデザイナー人生は本当の意味で始まる事となるのであった。



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第三話 “努力の行方”

 『L'antica』のTGC出演が決まってから三週間が過ぎた頃。

 

 メンバー達のレッスンは順調に進んでいき、当初は戸惑っていた結華も覚悟を決め、ファーストルックという大きな役目をこなすべく日々精進していた。

 

「おっ結華。今日も自主レッスンか?」

 

 283プロ事務所―――営業から帰ってきたプロデューサーは、偶然にもジャージ姿の結華と鉢合わせる。

 

「Pたんお疲れ〜。今日はみんな別々のお仕事だし、ちょっとだけね」

 

「やる気があるのは嬉しいけど、あんまり無茶するなよ? アイドルは身体が資本なんだから」

 

「解ってるって〜。Pたんに言われたこと、三峰はしっかり覚えてますよ?」

 

「ああ。結華なら大丈夫だって信じてるよ。俺は今から書類整理しなきゃいけないからレッスンには付き合えないけど、頑張ってな」

 

 そうして二人は事務所の入口で別れた。

 プロデューサーから見た結華の姿は、以前のように迷いのあるものではなく、日々を重ねてTGCへの意気込みが強くなっているように映っていて。

 

(今回ばっかりは、俺が出る幕もなさそうだな)

 

 改めて、思い知らされる。

 三峰結華というアイドルの芯の強さ、そして『L'antica』というユニットの結束力。

 

(ちょっと、余計なことを言ってしまったかもしれないな……)

 

 だからこそ、プロデューサーも自信を持って彼女たちのプロデュースを請け負える。

 

 ファッションブランド『アンティーカ』とのコラボ―――TGC出場と聞いて、真っ先にプロデューサーの脳裏に浮かび上がったのは咲耶の姿。

 

 しかし、オファーを受けたのはユニット全員。さらに、ファーストルックと呼ばれる重要なポジションに選ばれたのは咲耶でも恋鐘でもない、結華だったのだ。

 

『……三峰結華をファーストルックに? ええ……それはもちろん光栄な事なのですが……』

 

『はい。我社のブランドはゴシック・アンド・ロリータに特化した衣装がほとんどでして。その点で言えば、三峰結華さんのルックスが一番映えると―――』

 

 ファッションブランド側の事情を完全に把握しているわけではないが、あくまで『アンティーカ』側の指名により、結華がファーストルックに選ばれた。

 

 そんな経緯もあり、プロデューサーとしては多少の不安はあったのだが―――

 

(どうやら、俺の杞憂……だったみたいだな)

 

 事務所に入り、カバンを置いてコートを抜ぐ。

 胸ポケットに入れていたスマホを取り出して、電源を入れる。

 

「あれ、着信……しまった、マナーモードにしたままだったか」

 

 そして―――

 

「これ、『アンティーカ』の……―――」

 

  ◆◆◆

 

「身体のラインを綺麗に見せるように、つま先まで神経を研ぎ澄ませて……」

 

 283プロ、レッスン室。

 結華はひとりで熱心にウォーキングの練習を繰り返していた。

 

 鏡に映る、自分自身の姿。

 それを見つめ、その一挙一投足に細心の注意を払いながら―――

 

(……うん。我ながら良い感じ)

 

 ふう、と息を吐いて、壁際に置いてあるペットボトルの水を手に取る。

 

「あー、もうこんなに飲んじゃってたかぁ……」

 

 残りわずかになっていた水を一気に飲み干すと、結華は壁に背を向けて腰を下ろした。

 

(ちょっと休憩したら、水とお昼でも買いに行こうかな……)

 

 と、そう思考している時だった。

 

 コンコン、とレッスン室の扉を叩くノックの音。

 

「わ、えっと……は〜い! どうぞ〜!」

 

 結華は少し驚きながらも、声を張り上げて返事をする。

 

 すると、扉を開いて入ってくるのは―――

 

「結華、お疲れ様。トレーニングは順調かい?」

 

「お邪魔します……」

 

 咲耶と霧子、その二人であった。

 

「お〜っ、さくやん、きりりん〜! お疲れ〜」

 

「結華ちゃん、これ……差し入れだよ……」

 

「うわ、お弁当とお水じゃん! 丁度買いに行こうかなって思ってたんだよ〜! ありがと、きりりん〜!」

 

 予想外の二人の登場、その差し入れにすっかり大はしゃぎになった結華は、満面の笑みでそれを受け取る。

 

「その様子だと、心配はいらないみたいだね?」

 

「もちろん。ま、三峰に任せてよ〜!」

 

「ふふっ……わたしたち、さっきお仕事終わったの。だから、あのね……今から一緒に練習しても、いいかな……?」

 

「そんなの当たり前じゃん〜! ひとりで寂しかったんだよねぇ〜!」

 

 この三週間、結華はウォーキングの先生にレッスンを受けつつも、咲耶にもよく自主トレに付き合って貰っていた。

 

 ファッションショー、つまりモデル。

 結華からしてみれば、モデルといえば咲耶がまず選ばれるべき存在であると思っていたのだけれど―――

 

(私にしかないもの、か……)

 

 今は違う。

 この三週間を経て、結華は確かに手応えを感じていた。

 

 TGCまであと少し。

 今の自分なら、きっと自信を持ってファーストルックとしてランウェイを歩くことが出来るはずだ―――と。

 

  ◆◆◆

 

「はい、はい……ええ、申し訳ありません。少し立て込んでいて……。はい。もちろん順調ですよ。彼女たちもファッションショーに出られると言って、とても喜んでいますし……!」

 

 283プロ事務所。

 プロデューサーが自分以外に誰もいないその場所で、スマホを耳にあて通話をしている相手は―――

 

「―――ええ、もちろんです! 当日は必ず素晴らしいステージに……えっ?」

 

 プロデューサーの快活だった語り口調は、一転して疑惑の込められた表情へと変化する。

 

「ちょ……ちょっと待って下さい。本番まであと二週間もありませんよ……!?」

 

 そうして―――

 

「いえ、ですが……! こちらとしては、当初の方向性としてレッスンも進めていますし……今更そんなことは……―――」

 

 ブツッ、と。

 通話が一方的に途切れ、プロデューサーは戸惑いと共に愕然とした面向きで立ち竦む。

 

(まさか、こんな……)

 

 何もかも順調だと思っていた案件。

 それらは、一変して窮地へと追いやられることとなる。



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第四話 “すれ違い”

「で、できた……」

 

 私のデザインが起用され、製作に取り掛かってからおよそ三週間。

 ついに、私の分を含め『L'antica』用の衣装五つが無事に完成した。

 

「お疲れさん。初めてにしてはよくやったな」

 

「先輩……ありがとうございます!」

 

 流石にひとりきりで作るのは難しいと判断されたのか、途中から同僚の先輩男性も手を貸してくれていた。私に『L'antica』について教えてくれたあの人である。

 

「オイ地味メガネ、調子に乗ってんじゃねぇぞ。最終チェックは社長が直々に行う。俺達の仕事は終わったが、他のチームも追い込み入ってんだ。助っ人に呼ばれるだろうし、お前はまた雑用係に戻れ」

 

「は、はい。すみません……」

 

 リーダーは相変わらずキツい口調ではあったが、どうやらイライラしているわけではないらしい。彼の些細な仕草でその機嫌が理解できるようになった私も、すっかりこのチームの一員だなあ、と思う。

 

「……ま、なんだ。お前にしては、良くやったんじゃねぇか」

 

「えっ?」

 

「ただの雑用係だと思ってたが、今回だけは認めてやるよ。なんせ服だけは嘘をつかねぇ。その服は……ま、合格点だ」

 

「リーダー……」

 

「勘違いすんじゃねぇぞ。奇跡的に一枚良いデザインが描けたからって、お前が一人前のデザイナーになれたワケじゃねぇ。浮かれるのは勝手だが、調子には乗るなよ。デザイナーとして認められたいなら、まずはこの俺と同じ土台に立つことだな」

 

「は、はい!」

 

 口は悪いけど、これはこれで称賛して貰えているのだろう。

 確かに今回のは奇跡の一枚だと思う。偶然社長の目に留まり、それを『アンティーカ』の服として改良する為の意見を貰い、こうして見事なまでに昇華された―――

 

(全部……あの子のおかげだ……)

 

 もはやこれは運命と言っても良いかもしれない。

 私にとっては大きな転機となった今回のデザイン―――それを生み出すキッカケになった一人のアイドル。

 

 彼女の姿を見て、彼女の為の衣装を作ろうとして、頭の中に浮かんだデザインを描き起こして。

 

 最終的には社長の手が加えられて、私のイメージとは少し変わってしまったけれど―――それでも、この衣装を彼女が着ると想像しただけでワクワクが止まらない。

 

 惜しむらくは、ずっと付け加えたいと思っていたワンポイントアイテムが採用されなかったこと―――

 

(どうせなら……自分で、作ってみようかな)

 

 使われないと解っていても、どうしても形にはしたい。

 

 ……こういうのもデザイナー気質というものなのだろうか?

 そう考えたら、私はすごく嬉しくなって。

 

(TGC……楽しみだなあ……―――)

 

 私のデザイナー人生を変えてくれた、あのアイドルの為に作り上げた、正真正銘、私にとっての処女作。

 

 ―――イメージは白と黒。

 輝かしい舞台の上で舞う、()()()()使()()()()()()()

 

 きっと、彼女なら素晴らしいファーストルックを飾ってくれる―――私はそう信じていた。

 

  ◆◆◆

 

 283プロ、レッスン室。

 先に来ていた結華、そこに駆け付けた咲耶と霧子に加え、恋鐘と摩美々も仕事終わりに合流を果たしていた。

 

「ほら見て見て〜! この服、ばり可愛か〜!」

 

「わ……! ほんとだね……」

 

「昔はもうちょっと色々あったんだケドー、最近はゴスロリばっかりなんだよねぇ」

 

 恋鐘、霧子、摩美々はとあるファッション雑誌を囲みながらわいわいと話している。

 

 そんな中、結華と咲耶はウォーキングの反復練習に励んでいた。

 

「結華、もう少し肩の力を抜けるかい?」

 

「あーうん、ゴメンゴメン。やっぱ少しでも気が抜けると目立っちゃうんだねぇ」

 

「そうだね……私から見て、結華はもう完璧と言って良いんじゃないかな。ただ、これはあくまで基礎の話だ。最終的に大事になるのは着る服のコンセプトと、それを魅せる為の本人の表現力だからね」

 

「そういえば、Pたんがそろそろ衣装の出来上がる時期だろうって話してたけど……」

 

 二人が一息ついて語り合っていると、不意にレッスン室の扉が開いた。

 

「おーい結華、いるかー……ってなんだ、みんなも居たんだな」

 

 やってきたのはプロデューサー。

 その姿を見るや、全員がそちらへと駆け寄っていく。

 

「Pたん、どしたの?」

 

 先頭に立つのは結華。

 その屈託のない明るい表情を見て、プロデューサーの顔が険しく曇る。

 

「……いや、それがな。少し言いにくいんだが―――」

 

 そうして。

 プロデューサーの口から“それ”が伝えられる。

 

「―――TGC……ファッションショーの件についてだが、結華がファーストルックから降ろされた」

 

「……え?」

 

 その言葉を聞いた瞬間、結華の表情は一変する。

 

 結華だけではない。

 この場にいる誰もが、驚きと戸惑いで口を開くことすら出来ないでいた。

 

「あちら側の意向だそうだ。『L'antica』の為に用意された衣装……既にほぼ完成しているらしいんだが、そのひとつ……ファーストルック用のデザインを急遽、別のデザイナーが用意したみたいで……」

 

「ファーストルックの、デザイン……?」

 

「その服のモチーフやイメージから、結華ではなく……()()()()()()()()()()()()()()()()、と」

 

「わ、わたし……ですか……?」

 

 突然名前を呼ばれ、霧子は動揺する。

 

「ああ。俺も詳しい話は聞かされていないんだが、変更になった向こう側のデザイナーの指示なんだろう。そのデザイナーが結華ではなく、霧子をイメージして服を作ったのかもしれない」

 

「ちょ、ちょっと待つばい! 本番まであと二週間もなかとよ?」

 

「そうだよプロデューサー。私達はもちろん、結華はこれまでずっとファーストルックとして……」

 

「恋鐘、咲耶。俺も同じことを言ったよ。でも、今回の件については完全にあちら側の舞台だ。みんな……『L'antica』はあくまでモデルとして参加する立場。向こうの決定には逆らえない」

 

「それはそうですケド、それじゃあ三峰は―――」

 

 メンバー全員が異を唱える中、結華はひとり拳を握りしめていた。

 

 ファーストルックを降ろされた事への悔しさ、これまでの努力を裏切られたかのような憤り―――そんなものが心の中で渦巻いて、けれど、そんな自分が嫌になって。

 

「三峰なら大丈夫だよ、みんな。ほら、Pたんも困ってるしさ?」

 

「結華ちゃん……で、でも……」

 

「それに『L'antica』が降ろされたワケじゃないじゃん? 三峰じゃなくて、きりりんに代わっただけなんだし!」

 

「わ、わたし……ちゃんと、出来るかどうか……」

 

「きりりんだって一緒に練習してきたんだしさ、なんとかなるよ! 本音を言えばちょっと残念だなーとは思うけど、きりりんになら任せられるって思う」

 

 それが強がりであることを、この場にいる誰もが気付いていた。もちろん本心であることも。

 

「すまない、結華。でも、ファーストルックじゃなくたってランウェイを歩くことには変わらないんだ。みんな、これまで以上に気合いを入れてレッスン、頑張って欲しい」

 

 こうして、TGCでのファッションショー、そのファーストルックの座は結華から霧子へと受け継がれた。

 

 突然の申し出ではあったが、『L'antica』メンバー全員はそれ以上異議を唱えることもなく、再び練習に励むこととなり―――

 

 ……ついに。

 TGC、本番の日を迎えることとなる。



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第五話 “リハーサル”

 ―――東京ガールズコレクション、前日。

 

 明日の本番に向けてリハーサルが行われるとのことで、『L'antica』のメンバー五人とプロデューサーは揃って会場へと足を踏み入れていた。

 

「わ……すごい人……!」

 

「ほんとだ〜、女の子がいっぱいいる。ねえねえPたん、あの人だかりって何?」

 

 会場の中心、ランウェイ付近には多くの一般女性達が集まっていた。

 

「ああ、本当だ。なんなんだろうな?」

 

 かくいうプロデューサーも詳しくはないようで、首を傾げながらその集まりに視線を向けていると、

 

「あれは一般応募の女の子たちじゃないかな。TGCでは前日のリハーサルにランウェイを実際に歩くアルバイトなんかを募集したりするのさ」

 

 と、咲耶が解説する。

 

「そんなバイトあるん〜!? うちもやってみたか〜!」

 

「恋鐘はバイトじゃなくてもランウェイ歩けるでしょー」

 

 恋鐘と摩美々が漫才のようなやり取りをしつつ、一同は関係者専用の裏方へと向かっていった。

 

  ◆◆◆

 

「これはこれは283さん。どうぞ宜しくお願い致します」

 

 アイドルたちとプロデューサーを迎え入れたのは、ファッションブランド『アンティーカ』の社長、その人であった。

 

「こちらこそ、このような機会を頂けてとても光栄です。……ほらみんな、この方が『アンティーカ』の社長さんだ。挨拶を」

 

「「「宜しくお願いします!」」」

 

 元気に声を揃えて挨拶を済ませると、社長に連れられて控室へと案内された。

 

 様々な衣装、モデルの人々。

 そんな異質な空気に一同は緊張しつつも、ついに自分たちの着る衣装と初対面することとなる。

 

 控室には衣装だけではなくデザイナーの面々も待ち構えており、社長に紹介されたのはひとりの強面な男性のデザイナー。

 

「こちらが今回皆さんに着て頂く服になります。一番左からファーストルック用の衣装と―――」

 

 そのデザイナーによって披露されたのが、『アンティーカ』による『L'antica』の為の衣装。

 

 そうして、件のファーストルックの為のデザインである服もまた、そこにあった。

 

「これが、ファーストルックの……」

 

 結華は思わず触れてしまいそうになるものの、既の所で抑え込んだ。

 

「ほら、きりりん! コレ見て!」

 

 ファーストルックを降ろされた自分ではなく、それを引き継いだ霧子へと声を掛ける。

 

「う、うん……。わ……すごい……真っ白……」

 

 ―――その衣装は、一言で表すならば“純白”。

 ゴシックな意匠でありながら、丈の短いスカートなど、まさにアイドルの為に作られたかの如しデザイン。

 

 それを見て感動していたのは霧子だけではなく、結華や他のメンバーもそうだった。

 

「霧子、さっそく着てみんね!」

 

「そうだね。あ、ええと……宜しいでしょうか?」

 

 はしゃぐ恋鐘に同意しつつ、咲耶はデザイナーである男性に問いかける。

 

「ええ、構いませんよ。その服を作ったのは俺ではありませんが、奴もきっと喜びます」

 

「……失礼。その、デザイナーの方はどちらに?」

 

 プロデューサーが問うと、デザイナーの男性はどこかバツの悪そうな顔をして、

 

「いや、それが雑用を任せていまして。今はどこにいてるんだか……」

 

「雑用……? デザイナーの方が、ですか?」

 

「ま、まあ。こちらにも色々と事情がありまして」

 

 なんとも歯切れの悪い答えではあったが、プロデューサーもそれ以上は特に詮索しなかった。

 

「―――オイ! 着付け、誰かいるか!?」

 

 デザイナーの男性が声を上げると、すぐ近くにいた女性が数名こちらへと駆けつける。

 

 そうして、まずは霧子から衣装合わせが行われて―――

 

「すご……。めちゃくちゃ綺麗じゃん……!」

 

 着付けが終わり、それを見て第一声を放ったのは結華だった。

 

「背中のコレってー、天使の羽根だよねー?」

 

 摩美々がちょんちょんとつつくように触っている部分には、確かに天使の羽根のような意匠が施されていた。

 

「ま、摩美々ちゃん……くすぐったいよ……」

 

「霧子、お人形さんみたいばい〜〜〜!」

 

「素敵なデザインだね。純白の天使……真っ白な衣装なのにゴシックさがあって……腕や脚の露出も、アイドルらしさを強調している」

 

 それぞれが思うままに感想を述べつつ、そうして次々にあてがわれた衣装を着付けて貰って―――

 

「そろそろリハーサルの時間です。『L'antica』の皆さん、ランウェイへお越しください」

 

 係員に呼び出され、一同はついにリハーサルへと赴くこととなる。

 

  ◆◆◆

 

 私は、TGCの会場を目指して全力で走っていた。

 リーダーに言いつけられた雑務を終え、職場を出たまでは良いものの、どうしても『ある物』を持って会場へ向かいたかったのだ。

 

 少し遠回りにはなってしまうものの、まだリハーサルまでは充分な時間がある―――そう思い、私は自宅へと寄り道をして。

 

(ああもう、思ったよりギリギリだー……!)

 

 衣装が完成してから数日間。

 私はどうしても例の『ワンポイントアイテム』を完成させたくて、プライベートの時間をほとんど消費して取り掛かった。

 

 その結果、なんとか形にはできたものの、職場へ持っていく勇気は出ず、結局は自室の机の上に置いたまま―――

 

(こんなの持って行ったって、使って貰えないってことは解ってる。でも……)

 

 それでも、諦めきれなかった。

 私のデザイナーとしての魂が叫んでいるのだ。

 これ無くして、あのデザインが完成したとは言えない、と。

 

()()()に合う衣装の為……ううん、これはきっと私のワガママだ……)

 

 既に私だけのデザインとは言えないけれど……せめて、一度だけ。

 

 リハーサルの後でもいい。

 たった一度だけ、あの子にこれを着けて貰いたいと―――

 

  ◆◆◆

 

 リハーサルは順調に行われていた。

 一般女性達のスケジュールは終了し、アーティスト枠のステージが始まった。

 

 ファーストルックに挑むは、幽谷霧子。

 それに続くように『L'antica』の面々がランウェイを歩いていく手筈になっている。

 

「リハーサル三十秒前ー! みなさん、宜しくお願いしまーす!」

 

 進行の男性が声を張り上げる。

 霧子だけではなく、結華、恋鐘、咲耶、摩美々―――全員が緊張の面向きで、ステージ袖から伸びるランウェイへの道を眺めている。

 

「すみません! 通らせて下さーい!」

 

 そんな彼女たちへ勢いよく突っ込んでくる女性。

 大きなダンボールを両手で抱えていて、フラフラとしたおぼつかない足取りで近寄ってくる。

 

「わ、きりりん危なっ―――」

 

 ドンッ! と。

 結華が気付いた時には既に遅く、ダンボールが霧子の肩にぶつかってしまった。

 

「きゃ……!」

 

「うわわ……! す、すみません!」

 

 謝りながら、急ぎ足で去っていくダンボールの女性。

 霧子は衝撃で身体ごと地面に倒れ込んでしまったものの、咄嗟になんとか受け身を取った。

 

「霧子、大丈夫かい!?」

 

「わ、わたしは大丈夫……。それより、衣装は……?」

 

「んー……衣装は汚れてないみたいだケドー」

 

「リハーサル開始十秒前! スタンバイお願いしまーす!」

 

 そうこうしているうちに、リハーサル目前。

 プロデューサーが急いで霧子の身体チェックを済ませ、問題ないことを確認する。

 

「……うん。大丈夫、問題ないよ。霧子、いけるな?」

 

「は、はい……!」

 

「よし! みんな、気合い入れていこう!」

 

 ひやっとするハプニングがありつつも、一同は真剣な表情を浮かべながら、ステージへと歩いていく―――

 

  ◆◆◆

 

 TGCの会場に到着した私は、息を切らせながら関係者専用通路を進み、ステージの裏側へとまっすぐに向かっていた。

 

(ランウェイ、どうせならデザイナーの目線で見たいけど……もう始まってるかな……)

 

 表側からではなく、裏側から。

 そんなちょっとしたこだわりを抱きつつ、私は小走りになりながらその場所へ―――

 

「おい! 早くしろ!」

 

 ……と、その時。

 ステージ側から怒鳴りつけるような大声が聴こえてくる。

 

(なんだ……?)

 

 私は戸惑いつつも、忙しなく走り回っている人をかきわけて、

 

「あ、あの……何があったんです!?」

 

 明らかに焦っているウチのリーダーを見つけ、そう問い掛けた。

 

「お……お前、遅いぞ! どこ行ってたんだよ!?」

 

「すみませんっ、それで……あの、この騒ぎはいったい……?」

 

 どうやらランウェイの方で何かが起きたらしい。

 関係者たちは誰もがざわついていて、その中には―――

 

(あれって、もしかして……)

 

「ランウェイで事故が起きたんだよ。それもあの『L'antica』のアイドル、ファーストルックの子―――」

 

「……えっ?」

 

 この騒ぎの原因。

 それは、私も知っているアイドル達―――

 

「―――その子が転んで、脚を挫いたんだ」



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第六話 “雨天決行”

 TGC前日、アーティスト枠のリハーサル。

 順調に進んでいたそれは、とある事故によって一時中断となった。

 

 ランウェイを歩くアイドル達のファーストルック―――幽谷霧子が、運悪く足首を挫いてしまったのである。

 

 彼女が履いていた靴のヒールにヒビが入っていて、それがウォーキングの際に砕け、その勢いで体制を崩してしまい、転倒。

 ウォーキングに神経を集中させていた霧子も、そんな予想外の出来事には対応し切れず―――

 

『きりりんっ!?』

 

『う……結華、ちゃん……』

 

『すまない、みんな! 一旦離れてくれないか!』

 

 その後、応急手当が行われて大事には至らなかったものの、霧子がこの先ランウェイに立つことはプロデューサーが断固として反対した。

 

 その後、裏方では―――

 

「ごめんね……みんな……」

 

 ソファで横になっている霧子が、他のメンバー達に向けて申し訳無さそうな声を出している。

 

「ううん。きりりんは悪くないんだし、気にしないでいいからね?」

 

「結華の言う通りたい! 霧子が無事で良かったとよ〜!」

 

「て言うかー。多分、あの時のダンボールだよねー」

 

「そうか、あの時にヒールが……。すまない霧子、私がもっと気を付けていれば―――」

 

 各々が霧子に声を掛けている最中。

 プロデューサーは、デザイナーの男性と『アンティーカ』社長の二人と向き合い、これからについて話し合っていた。

 

「申し訳ありませんが……これ以上、霧子を歩かせるわけには―――」

 

「そうですよね……リハーサルは彼女抜きで行うとして、明日の本番はどうしましょうか?」

 

「念の為、霧子はこれから病院へ連れて行きますが……そうですね。あの感じでは明日の出演もお断りさせて頂くことになるかと」

 

「ファーストルックが脱落とはね……どうしたものかしら」

 

「……社長。その件なのですが―――」

 

 デザイナー、社長ともに腕を組んで思案している最中―――『L'antica』の面々の元へ駆け寄っていく、ひとりの人間がいた。

 

「……あ、あのっ!」

 

 その声にメンバー全員が振り向く。

 そこにいたのは、黒髪ショートに眼鏡の女性―――

 

「『L'antica』の皆さん……ですよね?」

 

 ―――網島更紗。

 霧子が着ていたファーストルックの衣装をデザインした本人である。

 

「ええと……貴女は?」

 

 真っ先に聞き返したのは咲耶であった。

 しかし、更紗の視線は咲耶ではなく、たったひとりの少女に向けられていて。

 

「私、網島更紗と言います。今回のファッションショー、アーティスト枠のファーストルック……その衣装のデザイナーです」

 

 彼女が見つめているのは―――結華だった。

 

「あのっ……三峰結華ちゃん、ですよね……!」

 

「えっ!? はい、そうですけど―――」

 

 結華が困惑しながらもそう答えると、更紗はいたく興奮した様子で、

 

「―――お願いします! この後のリハーサル、ファーストルック……結華ちゃんがこの衣装を着て歩いてくれませんか……!?」

 

「え……えっ?」

 

「この衣装は私が描いたデザインを元にして製作しました。その、少し他の人に手伝って貰った部分もあるんですけど―――」

 

 更紗は意を決したように、それを告げる。

 

「このデザイン、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……っ!」

 

  ◆◆◆

 

 ―――数分前。

 ステージ裏へやってきた私が目にしたのは、慌てふためく人達と、負傷して運ばれるひとりのアイドルの姿。

 

(あれって……ええと、幽谷霧子ちゃん……?)

 

 彼女が着ているのは、まさしく私がデザインして作り上げたあの衣装。

 ファーストルックのアイドルが脚を挫いた―――そんな事故が起きて大変だというのは解るのだけれど、その光景を目の当たりにした私はどうしても気になる事があった。

 

「あ、あの……! リーダー、彼女がファーストルックなんですか!?」 

 

「あ? そうだよ、幽谷霧子。お前のデザインした衣装着てんだ、見れば解るだろ?」

 

「ちょ、ちょっと待って下さい。もしかして、ファーストルック……変えたんですか!?」

 

「変えたって―――ああ、元々は三峰結華……だったか? それがどうした」

 

 私はそれまで、ずっと三峰結華がファーストルックだと思っていた。

 けれど、社長が少し手を加えたデザインは、リーダーにとっては幽谷霧子にこそ合うと判断されていた―――そういうことなのだと、私は即座に理解した。

 

「真っ白で、天使みたいなイメージ。まさに彼女にピッタリだよな。お前にしては良い服だよ。……ま、こうして不運に見舞われちまったが」

 

「……それは」

 

 けれど、違うのだ。

 私が一目惚れしたアイドル、それは彼女ではなく―――

 

(私……どうしたら……)

 

 ずっと、自分は地味だと思っていた。

 リーダーに呼ばれる『地味メガネ』だなんてあだ名からも解るように、自分の容姿に自信はないし、眼鏡を掛けていることがデメリットなんだと思い込んでいた。

 

 けれど、そうじゃなかった。

 ステージで輝いている()()()はどこまでもキラキラしていて、自分の魅力を全面に押し出した強気のファッションで注目を集めていて―――

 

(……そっか。私のデザインは、やっぱり完璧なんかじゃなかったんだ)

 

 そんな彼女―――三峰結華の為に描いたデザインは、いつしか自分の手から離れていたのだ。

 

 あれはもう私だけのものじゃない。

 『アンティーカ』の社長やリーダー、手伝ってくれた先輩……色んな人達の手を加えられてこの世に生み出されている。

 

 だから、あの衣装が幽谷霧子に一番合うとリーダーが判断したなら、それは間違いなくそうなのだ。

 

 私の思惑とはすれ違っていたとしても、彼女がそれを着た以上、あの衣装はもう彼女のもの。

 

 ……でも、だけど。

 子供みたいな我儘で、それが通用するだなんて思っていないけれど。

 

「あの、リーダー」

 

「あ? なんだよ、網島」

 

 それでも―――もし、叶うのなら。

 

「ファーストルックの件、私に任せて貰えませんか」

 

 私の思い描いた夢の続きを、ここで作り上げたい―――そう思ったのだ。

 

  ◆◆◆

 

 リハーサルは霧子を除いて再開される手筈となった。

 霧子はプロデューサーと共に病院へと向かい、残った『L'antica』メンバー四人がリハーサルへと臨むことになり―――

 

「あの、結華ちゃん。これ、着けてくれませんか?」

 

 更紗が結華に手渡したのは、オシャレな意匠の黒縁眼鏡。

 

「メガネ……これ、三峰に?」

 

「はい。私が最初に思いついたデザインには、これがあったんですけど……どうしてもいいものが思いつかなくて、最後まで採用されず仕舞いだったんです」

 

「わかった。この服のデザイナーはさららんなんだし、ちゃんと着けますよ〜!」

 

「……さららん?」

 

 そうして、結華は手渡された眼鏡を着け―――純白の衣装に、“黒”が加わって。

 

「それじゃ、行ってくるね」

 

 結華は自信満々な表情でランウェイへと向かい歩いていく。

 その背中を見つめながら、更紗は思う。

 

(頑張って……)

 

 ―――イメージは白と黒。

 ずっと落ち込んでいた自分とは違う、ステージに立って輝く、キラキラした天使のような存在。

 

 それはきっと、相克する光と闇を表す色遣い。

 光がアイドルである三峰結華なら、闇はきっと更紗自身。

 

 だが、更紗は気付いていない。

 彼女にとって結華は誰よりも自分と近い、けれど遥か彼方にいる憧れの存在のように感じていて―――無自覚のうちに、自分自身の為にあのデザインを生み出していたと言う事を。

 

 そうして、結華は挑む。

 ファーストルックとしてランウェイに挑んだ霧子の為、そして―――

 

(私、頑張るよ……だから、見てて……!)

 

 この衣装を自分の為に描いたと言う、一人のデザイナーの為に。



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エピローグ “ラストルック”

 ―――TGC当日。

 『L'antica』は四人での出演となるはずだったが、霧子の強い希望によって当初の予定通り五人での出演を果たした。

 

 挫いた足首は適切な治療を受け、ランウェイを一度歩く程度なら問題ないだろう、という医師のお墨付きも貰ってのことだ。

 

 当日、霧子はファーストルックを結華に譲ると提案したものの、結華はそれを断った。

 

 そんな彼女の言い分は、

 

『昨日のリハで充分良い思いさせて貰ったしね。三峰的にファーストルックはきりりんだから!』

 

 と、そんなこんなで。

 結局、霧子が予定通りファーストルックとしてランウェイを歩くことになったのである。

 

 ……しかしながら、結華は“例のアイテム”だけは霧子に渡さなかった。

 それは、デザイナー網島更紗がアイドル三峰結華に渡した、たったひとつの想い―――

 

 そんな結華へ、『アンティーカ』のデザイナーである男性がひとつの提案を出した。

 

『……()()()()()()?』

 

『そうです。ファーストルックが最初に歩く事なら、ラストルックは最後に歩く人を指します。……実は、昨日のランウェイでの貴女のウォーキングを見て、社長がいたく気に入ってしまいまして―――』

 

 ―――ラストルック。

 アーティスト枠での重要なポジションを飾る予定だった他のユニットのアイドルも、『結華ちゃんになら是非!』―――と、その座を譲ることを快諾。

 

 『アンティーカ』社長の推薦ということもあり、結華はその任を喜んで受け入れた。

 

 そうして、当日―――本番。

 ファーストルックだった霧子は、足首の怪我など物ともせずに見事役目を果たし、ラストルックの結華もまた、これまでの練習の成果を遺憾なく発揮。

 

 その後のミニステージでは、ダンスを抑えた『L'antica』のライブが行われ、霧子も無事にそれを乗り越えた。

 

 東京ガールズコレクションは見事、大盛況で幕を閉じることとなったのである―――

 

  ◆◆◆

 

「オイ地味メガネ! ここのパターン、ズレてんぞ!」

 

「ええ、ほんとですか!? 今すぐ直します……!」

 

 TGC開催から一週間。

 私は相変わらず雑用係として『アンティーカ』で働いている。

 

 けれど、少しだけ変わったこともある。

 リーダーがたまに私のデザインを見てくれるようになったのだ。

 

「それと、さっき見たお前のデザイン。ハッキリ言ってクソだクソ。あん時のアレはやっぱ奇跡だったのかもな?」

 

「う……そ、それは……」

 

 その理由は薄々勘付いていたけれど、なかなか上手く出来ないのが現状だった。

 やっぱり、デザイナーというものは一筋縄ではいかないみたい。

 

 ―――誰かの為に描くこと。

 あの時の私はきっと、結華ちゃんの為に彼女に合う一番のデザインを思い描いていたと思う。

 

 けれど、当日になって思い知らされた。

 ファーストルックとして幽谷霧子が復活し、再び私の衣装を着て歩いている彼女の姿を見て感じたのだ。

 

 服は、誰かひとりだけのものじゃない。

 きっと誰もがそれぞれの個性を輝かせて、その服の魅力を自分のものにしていく。

 

 だから、あのデザインは結華ちゃんの為に描いたものだとしても、出来上がったあの服は、誰のものでもないのだ―――と。

 

「よお、網島。お疲れさん」

 

 声を掛けてきたのは先輩男性。

 あれからすっかり『L'antica』にハマってしまったようで、推しだという月岡恋鐘のTシャツを着て出社するという、なかなか勇気のある人だ。

 

「先輩、お疲れ様です」

 

「なあなあ、今日のツイスタ見たか? 結華ちゃん、自撮りアップしてんだけどよ―――」

 

「えっ! 結華ちゃんが!?」

 

「オイコラそこ! ぐちゃぐちゃ喋ってんじゃねぇぞ!」

 

 怒鳴り散らかすリーダーをよそに、私は先輩のスマホの画面に映っているツイスタの画面に目を向ける。

 

 そうして、そこには―――

 

「あ……、これって……」

 

「これお前の事じゃねーかって思ってさ。な、どうだ?」

 

 その写真には、結華ちゃんのいつも通りの奇抜なファッションと、私が彼女にプレゼントした『ワンポイントアイテム』―――

 

「はい……っ」

 

 あの黒縁眼鏡を掛け、笑顔を浮かべている姿が写っていたのだ。

 

 

 

 相克の“アンティーカ” 了




これにて初のシャニマス二次創作小説、完結です。
ここまで読んで下さった方々、本当にありがとうございます。
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