やはり俺がS級隊員なのは間違っている (静寂な堕天使クロノス)
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キャラ設定

最近ワールドトリガーにハマって書き始めることにしました!
なのでまだまだ知識不足なところもあって矛盾な点も多いかもしれませんがそのような間違いに気づいたら優しく指摘してくださると嬉しいです。
ではまずは俺ガイルキャラたちのキャラ設定をどうぞ!


比企谷八幡

 

S級隊員としてボーダーに所属している17歳。

第一次大規模侵攻によって旧ボーダー所属の父を目の前で失い父が残した黒トリガーの使い手となった。

この時に母親も亡くしており妹と2人暮らし。

父が旧ボーダーにいたことからかなりの初期からボーダーに関わっており小南との付き合いはかなり長い。

原作の俺ガイルと比べれば明るめの性格かつぼっちを本人は気取っているがボーダー内では有名人であるためなんだかんだ周りと絡んでいる。

妹の小町を溺愛しており小町がボーダーに入ろうとしているのを知って以来全力で引き止めている。

しかし最近では少しずつではあるが小町の入隊を考え始めている。

後述のサイドエフェクトのせいか極度の甘党であり愛飲料はとてつもなく甘いコーヒー。

父親を殺されてはいるもののネイバーのことを恨んではおらずむしろ玉狛派閥に近い思考を持っている(実際には忍田派閥に所属している)

黒トリガーであるがノーマルトリガーでもA級隊員と渡り合えるだけの実力がありたまにではあるがノーマルトリガーを使って個人戦を行うことがある(ポイントのやり取りなしでできるよう鬼怒田さんにかけあってある)

ポジションとしてはアタッカーとシューターをこなせるため相手や気分によって使用トリガーが変わる。

八幡が個人戦をやっているという噂が広まると大勢の人間が集まってきてしまうのが悩み。

またランク戦の解説を務めることもあり意外と好評の模様。

 

 

《パラメーター》 ()内の数字は黒トリガー時

 

トリオン 8 (34)

攻撃 7 (30)

防御・援護 6(15)

機動 7 (10)

技術 8 (17)

射程 5 (8)

指揮 5 (5)

特殊戦術 4 (8)

 

《サイドエフェクト》

 

超速演算

 

集中状態に入ると思考速度が常人の数十倍にまで跳ね上がる。

戦うほどに精度が上がり最後には未来予知と同じレベルで相手の動きを読めるようになるが迅と同じように読み流すこともあるため無敵というわけではない。

また戦闘序盤は情報が少ないため相手の動きを見てから対応するまでの時間が短くなる位の効力であるまた演算が早すぎるあまり様々なパターンを考えつくため決断が遅れるとむしろ大きな隙となってしまう。

また思考を高速化するほど負担が大きくなり発動し続けるとそのうち脳が疲れ動けなくなるなどリスクも多い。

しかし強力な能力に変わりはなくボーダー隊員を相手にする場合や同じネイバーを相手にする場合にはほぼ無敵といって過言でない。

初見の相手でも他人が戦ってるのを見てから戦うことで欠点を補ったりする。

残念なことにどれほど思考を高速化しても知能そのものは上がらないのでテストなどで使ってもたいした意味はない。

日常生活でも何かに集中すると発動してしまうため八幡は意図的にサイドエフェクトが発動しない程度の集中度に抑える術を身につけている。

かつて国近とのゲーム勝負中に発動させてしまったもののそれでも負けたことで他の隊員がこの能力が無敵でないことを実感し安心したなど様々なエピソードがある。

 

黒トリガー

 

草薙(くさなぎ)

 

形状は風神と同じくブレード方であるが風刃同じように通常のブレードより性能が数段上である。

能力は本体のブレードと同性能のブレードを作り出すことができそれらは手を使うことなく扱うことができる。

これらの分身ブレードは八幡のトリオンに限界が来るまで作り出し続けることができトリオン消費や隙が多くなることを考えなければ数えきれない大量の剣を相手に向けて射出しづけるなどの芸当も可能である。

八幡はサイドエフェクトをフル活用することで本体のブレードと分身ブレード7本までなら精密に操ることが可能で膨大な手数による攻防が可能となるがこの状態は脳の負担を考えておよそ10分程度しか保たない。

とにかく様々な用途で使え発想次第では数々の戦術が可能となる。

普段の戦闘では意図的に本気を出していないため迅以外に八幡の全力を知る者はいない。

 

 

比企谷小町

 

八幡の妹である15歳。

原作とほぼ同じ性格ながらブラコン度が上がっている。

両親を亡くし兄と2人暮らししていて家事全般を担当している。

兄と同じようにボーダーに入りたいと思っているが八幡は小町を危険な目に合わせたくないという思いから拒否したいる。

内心では相当に不満ではあるものの八幡に対して同じことを思っている以上それ以上強く言えないことを悩んでいる。

しかし最近は兄が折れかけているのをしっかりと察しており畳みかける気満々であり実際そのまま八幡は折れて入隊を許可することになる。

本人は覚えてないようだが昔トリオン量を測ったことがありかなりの量のトリオンを保有していることが判明している。

そのためサイドエフェクトもすでに出現している。

本人は兄と同じようにアタッカーを目指したいらしいが八幡自身はシューターが向いてるのではないかと思っている。

実際入隊後はアタッカーとシューター両方の技術を様々な人間から教わることとなるがほとんどのことは八幡に教わったことから八幡が師匠と周りに捉えられてるが本人は不服な模様。

余談だが小町も草薙を起動できるが八幡ほど使いこなすことはできない。

この後紹介する雪ノ下、由比ヶ浜、一色、戸塚と隊を組むこととなる。

戦闘スタイルはかなり独特なトリガー構成をしておりかなりトリッキーである。

近〜中距離まで満遍なく戦うことができるがそれは兄から教わった技術あってこそのことであり戦闘を成り立たせるのは至難の技と言える。

合成弾は練習中であり実戦ではほとんど使わない。

 

《パラメーター》

 

トリオン 15

攻撃 7

防御・援護 6

機動 9

技術 7

射程 5

指揮 3

特殊戦術 3

 

《サイドエフェクト》

 

感情色覚

 

相手の感情が色として視認できる。

小町曰くトリオンキューブのような立方体が見えているらしくそれらの色は相手の感情によって変わるらしい。

そのため嘘などが通じにくくこのサイドエフェクトを開花させて以来八幡は素直になりつつあるのだとか。

もちろん視認していない限り読み取れないがカメラなどを通していても発動してしまう。

また相手との関わりの深さが深いほど色は細やかになるらしく八幡に至ってはもはや感情という域を超えたところまで読み取られてしまう。

この能力に目覚めて以来快くない思いをしたことも少なくないがそれでも変わらず友人といられるあたりかなりのメンタルの持ち主である。

本人曰く慣れればあんま気にならない。

 

 

《トリガー構成》

 

メイン        サブ

スコーピオン     スコーピオン

アステロイド     ハウンド

シールド       シールド

バッグワーム     グラスホッパー

 

 

 

雪ノ下雪乃

 

八幡と同じ学校に通う17歳。

性格としては最初から原作アニメ3期くらい丸くなってる感じ。

(本作では特にアンチ・ヘイト的展開は予定しておりません)

第一次大規模侵攻の際に活躍したボーダーに興味を持っている。

八幡と出会ったことをきっかけにボーダー入隊を決意することとなり

才能はかなり高くその才能の高さは八幡さえ感心するほど。

トリオン量などは高いわけでないがそれを補ってあまりある技術を会得していく。

八幡の紹介もあり那須と師弟関係となりパイバーの扱いを磨きリアルタイムで弾道を引ける技術をも習得してしまう。

隊の全員が才能があることから大きな注目を浴びることとなる。

隊長として基本的に作戦を立案するのは雪ノ下であり戦場での判断も的確であるため各隊からの警戒度も高い。

目標の一つは八幡に自分を認めさせることというのがあるが八幡は早々にその才能や努力を認めているためほとんど敵は自分という感じになっている。

 

 

《パラメーター》

トリオン 7

攻撃 6

防御・援護 7

機動 7

技術 8

射程 5

指揮 7

特殊戦術 5

 

《トリガー構成》

 

メイン       サブ

バイパー      バイパー 

アステロイド    アステロイド

シールド      シールド

バッグワーム    メテオラ

 

 

由比ヶ浜結衣

 

八幡と同じ高校に通う17歳。

原作と性格は同じであり特に変わった点はない。

第一次大規模侵攻の際にボーダーから家族を救ってもらったことからボーダーに強い感謝がある。

あることから雪ノ下とともにネイバーに襲われてしまったところを八幡に助けられて自身も誰かを助けたいと思いボーダー入隊を決める。

自他共に認めるアホの子で早々に八幡からはアタッカー以外は無理という判定をされる。

しかしアタッカーとしての才能は光るものがあったため太刀川の目に留まりある意味伝説の師弟関係ができてしまう。

しかしNO.1アタッカーから教わった技は本物でありB級に上がる頃にはA級隊員ともいい勝負ができるだけの実力を有している。

戦闘スタイルは太刀川から教わった孤月二刀流を操り雪ノ下隊の前線を支える。

しかし戦術面はお察し。

 

《パラメーター》

 

トリオン 6

攻撃 10

防御・援護 6

機動 6

技術 6

射程 2

指揮 3

特殊戦術 2

 

 

《トリガー構成》

 

メイン      サブ

孤月       孤月

施空       施空

シールド     シールド

バッグワーム   グラスホッパー

 

 

 

一色いろは

 

八幡たちより一年後輩の16歳。

原作同様の性格をしており結衣と合わせて隊のムードメーカー。

ボーダーには友達に誘われてなんとなく一緒に入隊試験を受けたところかなり優秀な成績を残すことになり周りから持ち上げられた結果そのままB級まで上がってしまう。

そのため当初はそこまでのやる気を見せていなかったが八幡や雪ノ下たちと出会い本格的にスナイパーとしての腕を磨いていくこととなる。

入隊時期自体は雪ノ下たちより数ヶ月早いことになるが八幡のことを知らなかったことなどから本当に関心がなかったことがわかる。

スナイパーとしての師匠は奈良坂であるため日浦と仲がいい。

というか雪ノ下隊が総じて那須隊と仲がいい。

訓練に不真面目なところがあり奈良坂の悩みの種となっているところもあるがなんだかんだアドバイスはきちんと反映させている様子。

戦闘スタイルは奈良坂直伝の技術による精密なスナイプを武器とする正統派なスナイパーである。

技術的には壁打ちや天井抜きを成功させられるほどの腕前を誇る。

 

《パラメーター》

トリオン 7

攻撃 7

防御・援護 6

機動 5

技術 9

射程 8

指揮 4

特殊戦術 1

 

 

《トリガー構成》

 

メイン        サブ

イーグレッド     バッグワーム

ライトニング     FREE

シールド       シールド

アイビス       FREE

 

 

 

戸塚彩加

 

八幡たちと同じ学校に通う17歳。

性格は原作通りである。

ボーダー初の男性オペレーターなのだが周りからはいまだに女性と勘違いされ続けている。

なぜかオペレーターの制服が女性ものなことにこれまたなぜか本人が違和感を抱いていないことも原因の一因であるとかないとか言われているとか。

第一次大規模侵攻で多くの人を救うボーダーに憧れ自分も少しでも力になりたいとその2年後にボーダーに入隊しオペレーターとなり雪ノ下たちの専属オペレーターとなる。

雪ノ下たちが八幡がボーダー隊員であることを知るまでは学校内の生徒の中では八幡のことを知る唯一の存在だった。

そのため学校内では八幡と非常に仲が良い。

というかその性格の良さから人気が非常に高く隠れファンクラブが存在するとの噂も。

戦闘支援においてその腕は確かであり非常に頼りになる。

 

 

《パラメーター》

 

トリオン 3

機器操作 9

情報分析 8

並列処理 8

戦術 7

指揮 6

 

 

 

雪ノ下隊

 

雪ノ下雪乃、由比ヶ浜結衣、一色いろは、比企谷小町とオペレーターの戸塚彩加で構成されるガールズチーム。

それぞれの隊員がボーダー入隊後半年以内にその才能を開花させ名を轟かせた存在であるためその実力は折り紙付きである。

隊長雪ノ下を基盤としエースは小町が務めている。

全員が点を取れることから各個撃破を基本戦術としているがもちろん集団戦になるとさらに手強くなる。

集団戦においては由比ヶ浜を他3人でサポートしながら戦ったり小町もスコーピオンを操りそれを残り2人がサポートする戦術など状況に合わせ臨機応変な対応ができる。

原作開始時点でB級10位まで上り詰めている。

まだ他の隊に比べて実戦経験が少なかったため上位に入ることは叶わなかったため今季は上位入りを狙っている。

また本作ではB級が22チーム存在するため下位が8チームとなる。

 

 

世界線解説

 

この設定で書かれている情報は原作開始時点、つまり遊真がこちらの世界にきた時点のもの。

しかし物語自体はその1年前すなわち八幡たちが16歳の頃から始まる。

ややこしいがつまり最初からしばらくは遊真たちは出てこない1年前の話。

 




こんな感じがこの小説のキャラ設定となります。
次の話から本編が始まるので良ければ見ていってくださると嬉しいです!
あと設定におかしな点などがあればご指摘していただいたら幸いです。


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比企谷八幡①

それではついに本編スタートとなります。
物語は八幡たちが高校に入ってすぐの頃から始まります!



今から3年前のことだ。

今では誰でも知ってる大災害が起きた。

嘘みたいで誰もが空想で一度は思い描きながらも実際に起こるなんて想定をしていなかった、異次元からの侵略が起きたのだ。

現在では大規模侵攻と呼ばれるその事件は現在でも多くの人の記憶に刻まれている。

人口28万人のここ三門市に異世界の(ゲート)が開いた。

近界民(ネイバー)後にそう呼ばれる異世界からの侵略者が門付近の地域を蹂躙、街は恐怖に包まれた。

さらに近界民たちにはこちらの攻撃が効果がほとんどなく、誰しもが壊滅を覚悟した.....

しかしその時ある一団が現れ近界民を撃退しこう言った

 

『こいつらのことは任せてほしい、我々はこの日のためにずっと備えてきた』

 

これが後に界境防衛機関(ボーダー)と呼ばれることになる組織の誕生の経緯である。

 

「なんて言っても実際はブラックなところだよなぁ......」

 

思わずそうぼやいてしまう。

そりゃあ高校生となったばかりで疲れている子供がこうして休日返上で真っ昼間から防衛任務についてるんだから文句の一つも言いたいところだ。

 

「おいおい、今更そんなこと言っても仕方ないだろ?いい加減文句を言うのはよしたらどうだ?」

 

「俺はあんたみたいに図太くないんですよ、迅さん」

 

「そりゃまぁ俺は実力派エリートだからな」

 

「社畜の間違いじゃないですかね....」

 

「お前の捻くれ根性も筋金入りだなぁ」

 

笑いながらも本心では何考えてんのかわからない、それが恐ろしいところだよな....

 

「て言ったってネイバーほぼこないですし....」

 

「確かに俺たち2人を同じ時間に配置ってのは過剰戦力って言っても間違いじゃないかもな」

 

「その調子だと多分このまま何もないのも見えてるんでしょう?」

 

「どうだろうな?」

 

「まったく本当に捻くれてるのはだってなんですかね....」

 

「俺は捻くれてるわけじゃないぞ?ただ最善の未来に辿り着くようにしてるだけさ」

 

「そのやり方がほぼ暗躍だから迅さん変に疑われるんじゃないですか?」

 

「それでも頼りにはなってるだろ?」

 

一般的にかなりムカつく発言なのは確実なのだがこの人に関しては事実なので何も言い返すことはできない。

 

「はぁ、やっぱ相変わらずですね」

 

「そりゃそう簡単に人は変わらないからな。じゃあ八幡には一つだけ教えてやろう」

 

全力で嫌な予感がするんだがそれは俺が考えすぎだろうか?

 

「もうすぐお前に分岐点が訪れる、意外と重要なのがな」

 

「はぁ、その内容までは教えてくれないんですかね」

 

「教えたら意味がなくなるからな」

 

「で、俺が正解できるのはどれくらいなんです?」

 

「そうどな....今は8:2ってところだな」

 

「どっちが8なんです?」

 

「さぁな」

 

本当に食えない人だ。

おそらく俺もすでにこの人の手のひらの上なんだろうな。

覆そうとするだけ無駄なのはほぼ確実だしな....

 

「まぁ心の片隅くらいに留めておきます」

 

「そうしとけ」

 

この後も取り止めもなく雑談をして予想通りそのまま特に何もないまま防衛任務は終わりボーダー本部へと向かう。

 

「じゃあ俺は少しランク戦やってくるので」

 

「お、久々じゃないかお前が顔を出すのは」

 

「そうですね、でも久しぶりにやってこようかと」

 

「今回はどれくらいの人が集まるんだろうな?」

 

「変なこと言わないでくださいっていうか多分あんた見えてる上で言ってますよね?」

 

「さぁな、じゃあ実力派エリートは忙しいからなこの辺で」

 

「お疲れ様です」

 

そうして俺は迅さんと別れる。

そのままランク戦に向かおうと思ったのだが.....

 

「お!比企谷、お前まさかランク戦に行くのか?なら俺と久々に戦ろうぜ?」

 

1番見つかりたくない人に見つかってしまった.....

 

「....とりあえず10本1回でいいですか?」

 

「おう!いやーなんとなく来たら随分ラッキーな相手に会えたな」

 

よりによって太刀川さんに見つかってしまうとはな.....

太刀川さん基本的に戦闘狂だから何回でも勝負が続くんだよなぁ...'

しかもめちゃくちゃ強いし最初から相手するのは普通にしんどかったりする。

 

「今回は何本やるのかなぁ.....」

 

「ん?何か言ったか?」

 

「いえ、なんでも....」

 

半ばあきらめるような気持ちで俺は模擬戦を始めることとなるのだった......

 

 

*****

 

 

それから太刀川さんを始めとして大量に集まってきた隊員のほとんどと相手をしたところで俺は半ば無理やり切り上げてようやく家へと帰ってくることができたというわけだ。

 

「もーお兄ちゃん遅くなるなら連絡くらいしてよね」

 

「悪い、まさかあんな人が集まってくるとはな....」

 

ちなみにだが実際なぜか俺の模擬戦はボーダー内では遭遇できたらラッキーの一種の不定期開催のイベントみたいな扱いを受けてしまう。

俺は迅さんほど有名じゃないはずなんだがな....

 

「お兄ちゃん帰ってくるの遅かったから先に夕飯食べちゃったよ」

 

そう言いながら小町は取っておいてくれた夕飯を温めて俺の前に出してくれる。

 

「悪かった、次から連絡する」

 

うん、今日の夕飯もうまいな。

さすが俺の妹。

 

「前もそう言ってたよ」

 

「悪かったよ」

 

すると小町は俺の胸のあたりをじっと見つめる。

 

「まぁ嘘ではないみたいだけどそう毎回忘れらるとなぁ」

 

「勝手に人の感情を見るな」

 

「見えちゃうんだから仕方ないでしょ?」

 

「今は意図的に見ただろうが」

 

まったく感情が見えるなんてサイドエフェクトをなぜ俺の妹は身につけてしまったのだろうか.....

おかげで朝が本当に通用しなくて困る。

 

「で、お兄ちゃんまた後で話があるんだけど」

 

「ダメだ」

 

「早くないかな?」

 

「話の内容がわかってるからダメだ」

 

どうせまたボーダーに入隊したいと言ってくるんだろう。

小町は俺がこうしてなにか小町に申し訳ないことをするとその話を通そうとしてくる。

確かにそういう時に俺はほとんどのお願いを聞いてやるがそれだけは認めるわけにはいかない。

 

「小町は諦めないからね、小町もお兄ちゃんのこと守れるようになりたいんだもん」

 

「.....」

 

そう言われると本当に妙に断りにくいんだよなぁ....

実際もし市街地がネイバーに襲われた場合なんならベイルアウトできる隊員の方が安全なまであるからな.....

ただもし仮に戦ってる中で小町の身に何かあったらと思うと......

 

「じゃ、それがダメなら別のお願いにしとこうかな」

 

どうも俺の感情を見て話を逸らすことにしたらしい、小町はこうして周りの空気を取り持つことが多い。

嫌な感情だって散々見ただろうにな......

 

「とりあえず言ってみてくれ」

 

叶えられるなら叶えてやりたい、それは俺の唯一の家族に対する強い思いだ。

きっとそれは小町も似たようなことを思ってるんだろうけどな。

 

「それじゃ、明日1日はお兄ちゃん暇なんだよね?」

 

「確かそうだったはずだな」

 

「それならお兄ちゃん明日は小町とお出かけしよう、小町欲しい服とかいっぱいあるんだよね〜」

 

「....ほどほどにしてくれるならいいぞ」

 

その程度のお願いなら叶えてやろう。

俺は友達とかいないからボーダーからの給料はほとんど生活費以外は使わないしな。

 

「やった!」

 

「でも流石に疲れたから午後からにしてくれ....」

 

「最近お兄ちゃん任務いっぱいだったもんね〜」

 

「まぁ仕方ない、なんでがかわからないけど俺は.....S級隊員だからな」

 

「うっわーなんかムカつく」

 

「ひどいな、これでもそれなりに討伐してるんだぞ?」

 

「小町は誰かさんのせいで見れないからね〜」

 

「いや別にボーダー隊員でも見たことない奴は多いけどな?」

 

「それでも見れる可能性は高いでしょ?」

 

「さぁな」

 

そうして無理やりそこで会話を切る。

しかし小町のボーダー入隊について考えずにはいられない。

もうそろそろ俺のエゴに小町を巻き込むのは良くないのかもしれないな。

いつまでも小町が守られる存在な訳はないんだもんな.....

それに、もし隊員になったら俺があらゆる手を使って小町を鍛え上げるしか......

 

「お兄ちゃん、小町もう寝るからお皿とか洗っといてね」

 

「ああ、わざわざありがとな」

 

「もう慣れたからいいよ、それじゃおやすみ」

 

「ああ、おやすみ」

 

結局、結論は出ないまま俺はその日眠りにつくことになったのだった.....

 

 

*****

 

「....ちゃん....きて....にいちゃん.....きて!」

 

なんか声が聞こえるな.....

ただまだこのまどろみの中にいたい.....

 

「お兄ちゃん起きてってば!」

 

「うおっ!?」

 

唐突に腹部の上に重量を感じて目が覚める。

 

「実力行使とは....」

 

「小町だって好きでやってるんじゃないよ」

 

「ならやるなよ....てか重いからどいてくれ」

 

「女の子に重いなんて....小町ショック....」

 

わかりやすく嘘泣き(?)らしきことをし始める小町。

 

「ていうか人間が重くないわけないだろ.....ほら早くどけ」

 

「それを言ったらもうすぐ12時なのに起きないお兄ちゃんにも問題があると思うんだけど」

 

「え?もうそんな時間か?」

 

「うん、あんまり起きてこないから流石に起こしに来たんだよ」

 

マジか、疲れてるとはいえ一度も目が覚めずに眠り続けてるとは.....

本当に今日任務が入ってなくてよかったな.....

 

「お兄ちゃん、今任務なくてよかったって思ったでしょ」

 

「そ、そんなことないぞ....?」

 

「嘘だね、安心したもん」

 

うちの妹が最近俺の心を見透かしてきて怖いんだけどどうしたらいいと思う?

 

「わ、悪かった」

 

「まったく小町と任務どっちが大切なの?」

 

「またベタなことを....」

 

「ふふっ冗談だよきっとお兄ちゃんはどっちも大切なんだよね」

 

「....ああ」

 

「認めるんだ」

 

意外に思われるのが新型ではあるのだが.....

 

「どうせそれもわかっちまうんだろうからな」

 

「人を魔女みたいに言わないでよ〜」

 

ならもう少し人間らしく人の心を読まないでほしいもんだが.....

 

「さ、それじゃお兄ちゃん早く支度しちゃってよ。面倒だからお昼と夕飯は外で食べよ」

 

「わかった、着替えたりしたらいくから下で待っててくれ」

 

「はーい」

 

そう言って部屋から出ていく小町を見送った直後に俺は着替えや出かける準備を始めるのだった....

 

*****

 

 

その後家を出て昼食を済ませる。

小町の食べたいものを食べさせてやろうと思ったのだが結局サイゼになるという、小町曰く夜に楽しみを取っておくとのこと。

 

「さーてじゃあこの後はショッピングモールに行って〜その後は〜」

 

どうやら昼飯は多少遠慮しても本当に他のところは遠慮する気はないらしい。

 

「後で無駄になるようなもんは買うなよ?」

 

「全部必要だから買うに決まってるじゃん!」

 

「ならいいんだけどな」

 

たまに小町は俺には理解できないものを買ったりしている。

一応その金の出所は俺でもあるため気にならないということは流石にない。

 

「最近お兄ちゃんがお父さんに似てきた気がするよ」

 

「それは嬉しくはないな」

 

俺の父は旧ボーダーに関わっており仕事ぶりなどは尊敬できるものだったけど家ではただの小町を溺愛し小町のことをただただ心配し続けるような人だった。

今は俺のトリガーとなった父だがふとした瞬間に本当に喋り出して小町の心配をし始めるのではないかという疑いは晴れない。

 

「お父さん、私にすっごい甘かったからな〜。もっと似てくれていいんだよ?」

 

「これ以上なく甘やかしてるから安心しとけ」

 

「えーもっと甘くなってよー」

 

そんな感じでその後も休日を満喫していく俺たち。

それから何時間かして日が傾きかけて来た時のことだ。

 

「サブレ待っててば〜!」

 

前からなにやら犬と俺と歳は同じくらいであろう少女が走ってくる。

犬はあっという間に俺たちの横を走り抜けてしまいそれを追っていた少女は体力が限界を迎えたのか俺たちの横で膝に手をついて止まってしまう。

 

「はぁはぁ」

 

「あのー大丈夫ですか?」

 

小町が迷うことなく声をかける、俺個人としては面倒ごとは好むところではないのだが.....

 

「はぁはぁ、はい....あたしはなんとか....」

 

「一旦息を整えてください、お兄ちゃん、水かなんか買ってきて」

 

「わかった」

 

「あ、大丈夫...ですから」

 

「無理しないでください、その様子だと結構長く走ったみたいですし....」

 

そんな感じで小町が少女の相手をしている間に俺は近くの自販機でペットボトルを買う。

 

「買ってきたぞ」

 

そうしてそれを小町経由で渡すと

 

「ありがとうございます....」

 

そういうと一気に半分くらいを飲んでしまう。

口では大丈夫と言っていたがやはり体はかなり疲労してるようだ。

 

「なにがあむたんですか?」

 

「その、散歩をしていたら急に犬が走り出してしまって追いかけたんですけど追いつかなくて....」

 

「なるほど....」

 

「今までもなんどかそういうことがあったんですけど今回ほど強引に逃げ出したことはなくって....」

 

確かに何かあの犬はまるで本能に訴えかけられていたかのように走っていた。

 

「...一つ、質問いいですか?」

 

「はい、なんですか?」

 

「....あの犬はどのあたりからどんな経路でここまで走ってきましたか?」

 

あれは普通の犬の反応ではないように思えるんだよな....

もしかしたら何かあるかもしれない....

 

「えーと確かこの辺りから.....」

 

そうして少女は地図を携帯で開きながら説明してくれる。

そしてそれをもとに考えると.....

 

「....まさかな」

 

ある場所に向かっているのではないかと思い当たるが本当にそんなことあるのか?

確かに動物には第六感的なのがあるっていうけども.....

 

「小町、乗りかかった船だ。俺たちも探すのを手伝おう」

 

「うん、そうだね。流石に放って置けないしね」

 

「そんな!悪いですよ....」

 

「いや、行き先にある程度目星がついた」

 

「本当ですか?それならそこまであたし1人で....」

 

「残念ながらそうはいきません立ち入り禁止地域の近くですから」

 

「え?」

 

「その犬が通ってきた道は立ち入り禁止地域へ続いている、というかこの先に進んだら確実に辿り着く」

 

「そんな....どうして?」

 

「わかりません、ただだから俺たちも一緒に行きますよ」

 

「でも....そこって危ない場所だから近づかないようにって....」

 

「....少しくらいなら大丈夫でしょう」

 

「兄もこう言っていますしよければ一緒に行きましょう?」

 

「....それじゃあお願いします」

 

そうして俺たちは一緒に歩き出す。

そこで話を聞いていて判明した事実は何個かあるがその中でも驚くべきことだったのは.....

 

「え!?それじゃああたしと同じ学校で同じ学年?」

 

「まぁそうなるな」

 

少女の名前は由比ヶ浜結衣、俺と同じ学校に通っていてさらに同じ学年、クラスは流石に違ったが世界とはなんとも狭いものだなぁ.....

 

「.....」

 

そんな話をしている中で立ち入り禁止地域にだいぶ近づいて来たくらいで1人また新たな少女が立ち止まっているのが見える。

 

「そんなところでなにをしているんですか?」

 

本当は無視したいが一応俺とてボーダー隊員、この辺りで民間人を放っておくわけにはいかない。

 

「....あなたには関係ないことです」

 

「いや一応俺は....」

 

身分を明かしてなんとかこの場所から離れさせようとしたのだが.....

 

「あれ?もしかして雪ノ下さん?」

 

「....なんで私の名前を知っているのかしら?」

 

「いや〜だって雪ノ下さんうちの学年だと有名だし....」

 

えっ?てことはこのちょっと生意気そうなやつも俺と同い年?

てか有名なの?俺一切知らないんだけど?

 

「ということはあなたも総武高校の生徒なのね」

 

「うん、こっちの人もあたしと同じ学校学年の....」

 

「比企谷だ」

 

「そしてその妹の小町です!」

 

小町のコミュ力は高すぎて初対面の挨拶でこのテンションなのは素直にすごいと思うわ.....

 

「で、改めて聞くけどなんでこんなところに?」

 

「もう一度言っておくけどあなたには関係ないわ」

 

「そうか、この辺りは危険だからあんま長居すんなよ」

 

「今この場であなたに言われても説得力がないわね」

 

なにこいつ、全自動言い返しマシーンかなにかか?

ここまで生意気なやつなかなかボーダーにもいないぞ.....

 

「そうか、じゃあ勝手にすればいい」

 

最悪俺が対処できるしな。

 

「ほら、俺たちは行くぞ」

 

「待って、あなた正気なの?ここより先は立ち入り禁止地域よ?」

 

「まぁ、ネイバーもそう頻繁に来たりしないしな」

 

「あら、知ったような口ぶりね」

 

まぁそりゃ日頃から防衛任務で暇してるからな。

 

「まぁな」

 

「知り合いにボーダーの関係者でもいるの?」

 

むしろ俺が隊員だ。

 

「そんなところだ」

 

「....なら危険さは理解してるのでしょう?」

 

「まぁなんだ、用事があるからな」

 

「....もしかして犬を探してたりするのかしら?」

 

「ああ、そうだがなんでわかった?」

 

まぁ多分サブレを見かけたんだろうが。

 

「さっきものすごい速度でこの奥へと進んでいくのを見たからよ、悪いことは言わないわ諦めたほうがいい」

 

「ここまで来て諦めるのは性に合わなくてな、というわけで俺たちは先に行く。何かあってもボーダー隊員様が助けてくれるだろうしな」

 

というか俺が助けることになるのだが。

正体明かすと変に噂になって目立つ可能性があるから嫌なんだよな.....

俺くらいの年頃のやつは皆ボーダーに興味津々なのだ。

 

「.....それなら私も行くわ」

 

「どういう風の吹き回しだ?」

 

「私は....ボーダーについて知りたかったの。あなたは私よりは詳しそうだしついていく意味があると思っただけ」

 

「そうか、まぁ好きにしろ」

 

なるほどこいつも結局ボーダーのファンなのか。

ここにくれば少しくらい隊員の活動が見れたりしないか....などと期待でもしてたのかもしれない。

実際そんな噂が流れてしまっているからな.....

 

「じゃあ小町行くぞ」

 

「う、うん」

 

俺たちのやりとりを黙って聞いていた小町と由比ヶ浜も頷いて歩き出した俺の後についてくる。

これは気まずい雰囲気になってしまったか.....

 

「え?じゃあゆきのんもボーダーに興味がある感じなんだ!」

 

「ええ、大規模侵攻の時の話を聞いて以来ずっと」

 

「私も大規模侵攻の時にボーダーの人に助けてもらってさ....ずっと憧れてるんだ」

 

「小町もボーダーに興味津々なんですけど兄が入隊試験受けるのを許してくれなくて.....」

 

「私も家族の説得に時間がかかったのだけれどもうすぐどうにかなりそうね」

 

「え、じゃゆきのんは次の入隊試験受けちゃう感じ?」

 

「その予定よ」

 

「すっごーい!頑張ってくださいね!」

 

なんて思ってのがアホらしくなるくらい後ろの女子たちの会話がはずんでるんだけど

え?なに?女子ってみんなこんな感じなの?

八幡、とてもじゃないけどこんなの無理!

 

「そっかぁ....あたしも勇気出して受けてみようかなぁ....」

 

「思い立ったのなら実行に移すのは早いほうがいいわよ」

 

「そうなんだけどさぁ....やっぱり不安で」

 

「....その気持ちもわかるわ、でもやらなきゃきっともっと後悔してしまうだろうから....」

 

強いな、素直にそう思う。

普通人は不安になると後ろ向きな感情を抱くがそれでなお挑戦できるのは覚悟があるやつだけだ。

 

「そう....だよね。いつまでもじっとしてても仕方ないもんね.....」

 

そんな話をしている瞬間だった。

 

「あれ、あの犬は....」

 

小町が何か発見したらしい。

 

「あ!サブレ!」

 

目的の犬は見つかったらしい。

ひとまずこれで安心か?

 

「見つかって良かったわね」

 

「うん!みんな手伝ってくれてありがとう!」

 

そう言いつつ由比ヶ浜はサブレの方へと手を伸ばす。

その瞬間だった。

 

「ワンワン!」

 

サブレが急に空へと吠え始める。

嫌な予感ほどよく当たると人は言うがまさしくその通りだと俺は思い知らされる。

 

『ゲート発生、ゲート発生』

 

ゲートの発生を知らせる警報とともに.....

 

俺たちの目の前にゲートが開くのだから.....

そのゲートから現れたトリオン兵の姿はよくみるタイプのもので倒すのに苦労はしないだろう.....

 

「え?」

 

「由比ヶ浜さん、早く逃げましょう!」

 

呆然と固まってしまう由比ヶ浜に咄嗟の判断で逃げようとする雪ノ下。

 

「比企谷君もはやく!」

 

雪ノ下は俺にも逃げるように促す。

 

「トリガー起動(オン)

 

だけど俺には逃げる必要も逃げていい理由も.....あるはずがなかった。

 

 

 

 




はい、1話はこんな感じです!
戦闘描写なしですいません.....
まだワールドトリガーについて詳しくもなくキャラ崩壊等も起こしていくと思いますが良ければこの続きも読んでくださると嬉しいです!
おかしな点や誤字などあったら感想などでご指摘ください


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雪ノ下雪乃①

更新まで少し日が空きましたが第2話です。
今回は前回から数日経った後のお話です。


時に聞こう、君たちは高校生になったばかりのころどのような気持ちであっただろうか?

ワクワクしていた?それとま不安を抱えていたか?

しかしそんな気分も1ヶ月もすれば無くなってくる。

クラス内ではグループが生じ始めまたクラス内カーストの原型が完成する。

その瞬間にグループに入らなかった人間はどうなるか、その問いの答えは簡単......

 

「はぁ....」

 

あーもうやだ、クラス内ぼっち歴無事更新っと。

そう、ぼっちである。

この時期に人間関係が形成できなかった場合大抵そのまま一年を1人で過ごす羽目になる。

だが考えても欲しい、俺はこの時期の人間関係を形成する行事に参加する余裕がない、放課後カラオケに誘われようと任務があるから断ることになる。

もちろん休日もほとんど断る羽目になる。

 

「まぁどのみち誘われてさえないんだけどな.....」

 

「ねぇ八幡」

 

そしてぼっち界最強の防御技である机に突っ伏して寝たフリを発動していた俺にやすやすと話しかけてくる人間は1人しかこの学校にはいない。

 

「どうしたんだ、戸塚」

 

「ううん、特に用はないんだけどね。八幡と話したくなったから....」

 

「よし、話そう、もう軽く3時間くらい話し込もう」

 

「あはは....流石に授業中も話し続けるのはダメじゃないかな」

 

この少女....にしか見えないが自称男の戸塚は去年ボーダーに入り今ではボーダー史上初の男性オペレーターになった普通にすごいやつだ。

 

「俺とお前の間に授業なんて些細な問題だろ?」

 

「うーん僕は授業もしっかり受けたいんだけど.....」

 

あれ?俺もしかして今遠回しに振られちゃった?

 

「まぁそれはまた今度の楽しみにしておくか......」

 

「うん、また休暇の日にでもね」

 

あれ?俺と戸塚が同時に休暇な日ってなかなか希少じゃないだろうか?

 

「それで八幡、昨日この学校の人といる時にネイバーに襲われたっていうのは本当なの?」

 

「ああ、本当だな」

 

「大丈夫だった?」

 

「まぁ見ての通りピンピンしてるぞ、一緒にいた奴らも大丈夫だ」

 

「うん、八幡のことだからそうだとは思ったんだけど.....」

 

「まぁ、トリガー起動してから瞬きくらいでネイバーは倒したからな」

 

多分今の俺、佐鳥ばりにドヤ顔してるんだろうな。

うん、でもあいつよりは多分ムカつかない....はずだよな?

 

「あはは....それでもう上層部に報告はしたんだよね?」

 

「ん、ああ流石に民間人が巻き込まれるからな。じゃなきゃ戸塚もその話を基地で聞くことなんてなかっただろ?」

 

「あれ?僕どこで話を聞いたのかなんて言ったっけ?」

 

「そこ以外で聞くのはほぼ無理だろ」

 

巻き込まれた3人の誰かに聞いたのなら話は別だが。

 

「確かにそうだね、そういえば八幡今度僕ランク戦の実況をやるんだけど八幡も解説しない?」

 

ランク戦の解説か.....

 

「悪いけどあんまそういうのは向いてないからパスするわ」

 

「結構八幡の解説評判いいんだよ?」

 

「いや、東さんあたりに任せておいた方がいいだろ」

 

ああいうのやると一部から後で囃し立てられるからいやなんだよ.....

 

「そっか....でもいつか必ず一緒にやろうね!」

 

「そうだな」

 

ちなみに俺が解説を務めることはほぼない。

数回やったのもたまに陰謀を張り巡らされて逃げ場をなくされてなかなかやる羽目になったからであって俺の意思では断じてない。

 

「じゃあそろそろ席つかなきゃだから」

 

え?もう行っちゃうのか戸塚.....

 

「おう、またあとでな」

 

戸塚とはどうせ基地まで一緒に行くのでまた会うことは確実だ。

 

そして学校での時間は過ぎて行ってあっという間に放課後になった。

 

「さて.....じゃあそろそろ向かうかぁ」

 

「そうだね、僕もやらなきゃいけないことあるから早く行かないと」

 

「オペレーターも大変だよな」

 

「でも僕はまだどこかのチームの専属でもないし他の人たちに比べればマシだと思うよ」

 

「戸塚がオペレーターになったチームは幸せだな」

 

「そ、そんなことないってば」

 

と、言いつつ戸塚は顔を赤くしていながらも嬉しそうではある。

でも現状のボーダーの各チームの専属オペレーターはみんな美人揃いって評判だからなぁ.....

戸塚が入ったりしたら戦力が高過ぎる気がしなくもない。

 

「ちょっといいかしら」

 

しかしそんな俺と戸塚の会話を遮ってくるやつが現れる。

 

「どうしたんだ?雪ノ下?」

 

「どうしたもこうしたもこの間人を放っておきながらよく言えたわね」

 

「そりゃ悪かったけど俺にもいろいろあるから仕方ないだろ。それにしっかり助けただろ?」

 

「助けてもらったことには素直にお礼を言うわ、でもあなた私に隠し事をしていたってことよね?」

 

まぁ、それはその通りだ。

あの時まで確かに俺がボーダーの隊員だとは一言も言わなかった。

 

「いやだってそんなこと言ったらめんどくさそうだったし.....」

 

「えーと八幡、もしかしてだけど巻き込まれた民間人の1人って.....」

 

「お前が思ってる通りだな」

 

「えー!同じ学校の人だっていうから誰かと思ってたら雪ノ下さんだったの?」

 

え?戸塚もこいつのこと知ってんの?

そんなにこいつ有名なの?

そしてなんで俺の耳にはそんな噂が流れてきさえしないの?

 

「話してる途中に申し訳ないのだけれど私の話を聞いてもらってもいいかしら?」

 

「ん、ああ悪い。ちなみに言っておくとここにいる戸塚もボーダーのオペレーターだからそのまま気にしないで話してくれていい」

 

「ならそうさせてもらうわ」

 

「ただ俺たちもあんま暇じゃないから手短に頼む」

 

「ええ、なら2つ聞いてもいいかしら?」

 

「俺たちに答えられる内容ならな」

 

「じゃあまず一つ目よ、ボーダーの隊員はみんなあんな風に一瞬でネイバーを倒してしまうの?」

 

「....全員ができるわけではない。ただA級以上の隊員ならあの程度で倒せるやつはいくらでもいる」

 

「そう....なら2つ目の質問よ。あのレベルに行くまでにはどれほどの時間が必要なの?」

 

「さぁな人によるとしか言いようがない。才能やら努力しだいだ。そればっかりは今の段階では何にも言えん」

 

「そう.....」

 

少し考え込んでいるような雪ノ下、その顔には何故か少しの焦りを感じる気がする。

 

「.....なんでそんなことを聞くんだ」

 

「私は....強くなりたい、ただそれだけよ」

 

その顔に浮かぶ顔は真剣そのもので、それは戦える奴の顔だった。

 

「どうしてそう思うんだ?」

 

個人的な意見なのは分かってるし否定する気もないが俺には1つの考えがある。

それは憎しみでネイバーと戦うことに価値はあるのか?というものだ。

 

「.....私は大規模侵攻の時にあなたたちが頑張ってる中で何もしなかった.....いえ何もできなかった」

 

それは当たり前だ、生までネイバーに勝てる人間などいない。

そのためのトリガーだ。

 

「だから、私は守れる人間になりたいの」

 

何様だと思う人間も多いだろう、しかし俺はこう思ったんだ。

こいつは合格だって。

 

「....さっきの質問の答えを訂正しておく、お前は強くなるよ」

 

「.....その言葉は信じてもいいの?私もあなたみたいになれる?」

 

「俺みたいになるのは(制度上)多分無理だな」

 

俺がそう言った瞬間雪ノ下がなぜか一瞬目を見開くと.....

 

「それは私があなたより強くなれないと言ってるってことでいいのよね?」

 

え?そんなこと俺はちっとも.....いや、確かに今の答え方じゃそう言っているようにも聞こえるな?

 

「いや....それはちが....」

 

「そう、わかったわ。決めたわ、私は次の入隊試験を受けてボーダーに入る。そしてあなたより強くなって見返してみせるわ」

 

あーだめだこりゃプライドが高いかつ俺の話がもう聞こえてないわ。

 

「....まぁせいぜいがんばれ」

 

「見てなさい、私は必ず強くなるから」

 

「あーまぁ期待しておく」

 

もう今更訂正するのは不可能だと悟った俺はやけになってそう答える。

これで優秀な隊員に育ったらよしくらいに思おう、うん。

 

「八幡よかったの?」

 

「もうああなったら弁明は無理だと判断した」

 

「でもこれでまた1人隊員が増えたね!」

 

「まぁこれで強くなってくれたら俺たちからしたら儲け話にしかならないからな」

 

強いやつなら何人いたって困ることはあるまい、俺の任務も減るかもだし。

 

「でも八幡が.....」

 

「まぁいいだろそれくらい」

 

元より俺ぼっちだし。

 

「昔から八幡は誤解されやすいんだから気をつけてよ?」

 

「いやおかんか」

 

そんな感じで戸塚と話しながら本部へと辿り着く。

本部について戸塚と分かれた俺は用事を済ませたが思いの外早く用事が終わってしまった。

なんとなくまだ帰る気分にならずに基地の中で時間を過ごしていた時たった。

 

「久しぶりだな、八幡」

 

「東さん、お久ぶりです」

 

東さん、この人は何を考えてるかわからな過ぎてちょっと怖い時もあるけど基本的には聖人のような人だ。

 

「戸塚から聞いたぞ?解説の役目を断った挙句俺に押し付けようとしたらしいな?」

 

「いやまさかそんなわけないじゃないですか」

 

「そうか、しらをきるつもりか。なら仕方ない次からしばらく八幡が解説になり続けるように手を回すか....」

 

「まじでやめてくださいお願いします」

 

即土下座案件で困ることを真顔で言うからこの人怖すぎるんだけど!?

 

「冗談だ」

 

東さんはそう笑うが俺の反応次第では本当に実行してたんじゃないか?

 

「そんなことになったら俺は諦めて辞めますからね?」

 

「相変わらず大袈裟なこと言うなぁ、上層部が聞いたら全員すっ飛んで引き止めに来るぞ」

 

その光景はシュールすぎる.....

 

「でもそろそろ周期的にお前に解説をさせないといけないのは事実だからな.....」

 

「え?そんな周期決まってるんですか?」

 

「ところで、話は変わるが.....」

 

「いやちょっと詳細を教えてくださいよ」

 

流石に聞き逃さないぞ今のは。

 

「今度の入隊試験の話は聞いたか?」

 

「え?無視ですか?」

 

「上層部が新たな試みを試してみるつもりだそうだ」

 

もうこれは聞いてても無駄だな......

 

「へーどんなです?」

 

そう思った俺は諦めて話を素直に聞くことにする。

 

「入隊試験でネイバーとの模擬戦をやるだろ?」

 

「やりますね」

 

俺はやったことないが。

 

「そこで本隊員数人に模擬戦のデモンストレーションをやらせるそうだ」

 

「なんの目的があってまたそんな急に」

 

「そこで新規入隊者が憧れを持てばモチベーションが上がるんじゃないかって話らしい」

 

なるほど、実際に凄技を見せて自分もああなりたいって思わさせるわけか。

 

「それ人選によっては後々挫折するやつ増えまくりますよ.....」

 

出水あたりなんて選んだらそれを見てシューターになろうとしたやつ全員辞めるまであるぞ。

 

「もちろん本部もそこは気をつけるらしいが、人選候補の1人にお前がいるらしい」

 

「またなんで俺が」

 

そもそも俺が使うのは黒トリガー、普通な隊員はどうしようと俺と同じ戦いができるわけはない。

 

「理由としてはボーダー最高戦力のS級隊員の力を見せるのも将来自分もあんなふうになれるかもと思わせられる範疇にあると言う判断だ」

 

つまりボーダーで頑張ってればいつか俺の黒トリガーみたいなトリガーを使えるチャンスがあるかもと思わせたいわけか。

でも.....

 

「それ断っていいやつですかね?」

 

シンプルにダルいし俺は基本的に目立ちたくはない。

目立つのは嵐山隊みたいな奴らに任せるに限る。

 

「そう言えば次からのランク戦解説が全然決まってなかったな」

 

「やります、しっかり模擬戦やりますからそれだけは許してください」

 

くそっ最初の話題はこのために振ってきたのか.....

やはり東さん、恐るべし.....

 

「そうか、なら頼んだぞ」

 

きっと本当は俺は候補じゃなくて決定されていたのだろう。

そんなことを思っても仕方ないとはいえ......

 

「はぁ.....」

 

こうして俺は次の入隊試験に不本意ながら参加することになってしまった.......

 

「ただいま〜」

 

その後本部から帰宅する、東さんと話してたら思ってたよりも帰りが遅くなってしまった。

 

「おかえり〜。今日も遅かったね?」

 

「まぁなんだ、面倒ごとに巻き込まれてな」

 

「へーどんなこと?」

 

「次の入隊試験で新入隊員たちの前で模擬戦やることになった」

 

「へーそれじゃあ小町も楽しみにしてるね」

 

「おうせいぜい楽しみにしと....ってお前は見れないからな?」

 

「いや小町次の入隊試験受けるし」

 

「は?」

 

どうやら俺に関係する面倒ごとはまだ増えるようだ.......

迅さんみたいに確証はなくても、そんな未来が見えた気がした.....




今回はここまでになります。
書いていて思うように隊員と八幡を絡ませられないのが残念です......
またこれから先より多くのボーダー隊員と話す八幡をお届けできたらなと思っています。
次回はガハマさんの入隊関連がメインの会になると思われます()


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由比ヶ浜結衣①

というわけで今回は前回の続きからです。
今回はどの隊員が登場するのでしょうか.....?
それと間違いがあったのですが八幡がネイバーと模擬戦やるのは入隊試験ではなく入隊指導でした、間違えてしまって申し訳ないです.....


「で、さっきのはどういうことだ。言っとくが俺はまだお前の入隊を認めてないぞ」

 

「そう言われ続けてらうちにね、小町は考えついたんだよ。もうお兄ちゃんの意見を無視して勝手に入っちゃえばいいんじゃないかって。だからこっそりもう入隊試験を受ける手続きを済ませちゃったってわけ」

 

おいこら割と重要なことを唯一の家族の許可なくやるな。

いや、そうしたら入隊試験受けれないんだけど。

 

「....こないだ雪ノ下たちと話したからか?」

 

「そだねーそれはきっかけ、でも小町がボーダーに入りたいって思ってる理由は昔から変わってないんだよ?」

 

「俺を守るってやつか....」

 

俺はS級隊員だ、流石に傲慢だとは思うがA級が数人がかりできても互角以上に戦えるだろう。

そんな俺を守ると、そう言う小町を抑えてるのはその自負からだ、俺はお前を守れる、もう守られる事はあってはならないと。

 

「そう、お兄ちゃんはもう何もできずに人がいなくなっちゃうのが嫌なんでしょ?」

 

「そうだな.....」

 

「それは小町も一緒、お兄ちゃんはきっとすっごい強いんだろうけど.....そう思ってたお父さんも......だから何があるかわからない。もしお兄ちゃんより強い敵が来た時....また何もできないのは嫌だ」

 

でも.....そうだよな。

無力なままでいることの怖さは俺も知っている。

小町にその感情を感じさせてると言うのなら.....

 

「そうか、わかった。なら試験頑張れよ」

 

「え?そんなすぐ認められちゃうの?」

 

「認めてほしくないのならそうしてやるぞ?」

 

この言葉も照れ隠しなのだ、妹の思いを頑なに拒んでいた罪悪感もある。

 

「いやいやそれはやめて!」

 

「言っとくけど入隊試験でつまづくようなら次はないからな」

 

まぁ俺の妹だ、そんなことはないと思うけどな。

 

「....ありがとねお兄ちゃん」

 

「そういうのは入隊できた後に残しとけ、後入隊したら戦闘の基礎は叩き込んでやるから覚悟しろよ」

 

「えーお兄ちゃんから教わるなんてやだー」

 

「いや俺から教わるとか正直めちゃくちゃレアだからな.....?」

 

「でもなんかやだ」

 

そうやり取りするが入隊する以上小町には強くなってもらわねば困る。

戦場にお互い立ったのならばいつでも助けられるとは限らない。

ならば強くなってもらわねば困るのだ。

 

「譲歩には譲歩での対応が礼儀ってもんだ、諦めろ」

 

「えー」

 

そんなふうに思いもよらず軽い感じで今まで頑なに拒んでいた小町の入隊試験を認めた俺は思いの外スッキリした気分だった。

 

*****

 

そうしたことがあった翌日、それでも学校というものが存在してしまう。

本来なら学校などサボりたいところであるが太刀川さんを筆頭としたダメな年上を見てるとそん中と思えなくなるから不思議なものだ。

 

「あ、ようやく来た!」

 

そして、その朝もまた俺に平穏が訪れはしないことがこの時点で確定してしまった。

本当に神様がいるなら俺のこと嫌いすぎない?

なんで下駄箱周辺で張り込んでるわけ?

今は人があんまいないからそこまで目立ってないものを.....

 

「.....」

 

「え?無視!?」

 

「すいませんちょっと先を急いでいるので.....」

 

「しかもなんかよそよそしい!?」

 

朝から元気なやつだな、そしてツッコミのキレもなかなか.....

 

「はぁなんの用だよ」

 

「ヒッキーに聞きたいことがあって.....」

 

「お前もか.....」

 

「え?あたし以外にもなんか質問されたの?」

 

「ああ、雪ノ下からな」

 

「あ、そういえばゆきのんから昨日次の試験を受けるって聞いたな〜」

 

もうそんな仲良くなってんのお前ら?

もう隊組めよ、実力によっては小町放り込めるから。

 

「で、質問ってのは?」

 

俺としては人が来る前に話を切り上げたい。

 

「あ、そうそう質問なんだけどさ....」

 

雪ノ下といい小町といい真面目なやり取りを繰り返してきてるからなどんな質問でも今なら真面目に答えられる気がする。

多分気のせいだけど。

 

「ボーダーの入隊試験ってどうやれば受けれるの?」

 

.....

 

「.....じゃあな」

 

「え?ちょっと待ってなんでそんな冷たい目つきで見てくるの!?」

 

こいつに真面目な話を期待した俺がバカだった、本当に。

 

「その質問には俺よりも適任な奴がいる、ついてくるなら勝手についてこい、ただ5m以上離れてくれ」

 

「何その条件!?」

 

結局由比ヶ浜は着いてきたし5m後ろを歩くこともなかった。

 

「と、いうわけで戸塚そこら辺の説明任せていいか?」

 

別に俺もなんとなくなら説明できるが由比ヶ浜に関してはしっかりと説明しないとダメそうな気がするので最初から戸塚に任せるほうがいいだろ。

戸塚の方が話すの上手いしな。

 

「うん、僕でよければ説明させてもらうね。よろしく、由比ヶ浜さん」

 

「こっちこそよろしくお願いします」

 

緊張してるのか謎に同級生に向かって敬語を使うJK(コミュ力高め)

と見た目は完全にただの美少女(隠れファン多め)の2人が一緒にいると絵になるせいかチラチラとこちらを見てくる視線を感じる。

カゲさんがいたなら間違いなくキレてた。

てか俺も居心地悪いから離れたいけどなんか今更離れるのもアレだしな.....

 

「え!入隊試験って筆記試験や面接とかまであるの?」

 

そんなことも調べないで試験を受けようとしていたことに驚愕だわ。

 

「うん、でも基本的には余程の素行不良がなかったりしなければ入隊させてもらえると思うよ」

 

「そっかーよかった〜」

 

ちなみに筆記が重要視されてしまうとボーダー内でも有数の実力者たち数人がやばいことになってしまう。

 

「基本的にはほとんどの人が入隊は認められるけど入隊してc級隊員になってからがまた大変なんだ」

 

「そうなんだ、ねぇヒッキーそれってどれくらい大変なの?」

 

ナチュラルに俺を会話に巻き込むな、周囲の主に男子からの視線がこっちに向いちゃってるから。

 

「俺は特殊なケースだから入隊試験は受けてないしその後のことも実際に経験してない」

 

なにしろボーダーが今のような大きな組織になった時には俺はすでに黒トリガー使いだった。

つまり即S級になってしまったので真っ当な隊員とはだいぶ違う。

 

「え?それってヒッキーまさかの裏口....」

 

「そんなわけないだろ、てかお前は一応俺がそれなりに強いのわかっねるだろ」

 

何を思って俺はこんな恥ずかしい中二病拗らせた奴みたいなことを言わなきゃいけないんだよ。

 

「そうだけど....じゃあヒッキーは強いから特別ってことなの?」

 

まぁその解釈も間違いではないがボーダーにはノーマルトリガーで黒トリガーと渡り合えるような猛者たちが存在するためなんか肯定しにくい。

 

「というかお前も場合によっては俺と同じ待遇になる可能性はあるけどな」

 

これは一応嘘ではない、限りなく可能性は低いし可能なら新たな黒トリガーが生み出されることなどなければいいのだが。

 

「あたしもヒッキーくらい強くなれるかもってこと?」

 

「まぁ違うがそれはお前の努力次第だ」

 

俺は昔からあまり黒トリガーを語ることを好まない。

もちろん情報秘匿の意味もあるがそれ以上にこの黒トリガーのできた経緯を知られて同情されるのがイヤだからだ。

 

「じゃあ、あたしめっちゃ頑張ってヒッキーと同じくらい強くなる!」

 

いきなりその思考に辿り着けるのはさすがアホの子と思わんでもないがこういう時こういうバカは強くなれるのだ。

バカは目標まで突っ走れるのが強みだ。

 

その点で言うなら雪ノ下は頑固なバカだしだし由比ヶ浜はただのバカだし小町だって割とバカだ。

ただの予感だがこの3人はかなり強くはなる気がする。

 

「そうか、まぁまずはB級まで這い上がってくるんだな」

 

もちろんボーダーにも才能がありすぎるあまりほぼストレートでA級に昇格する奴もいるにはいるけど。

 

「うん!待っててね!」

 

そのまま嵐のように訪れた由比ヶ浜は去っていった。

 

「次の入隊式が楽しみだね」

 

「ああ、そうだな。ああそうだ実は小町が入隊することになったんだ」

 

「本当に?」

 

「ああ、流石に強硬手段に出られたらどうしようもない」

 

「それなら尚更楽しみだよ!八幡が入隊始動の時に模擬戦やるっていうのも聞いたし僕もこっそり見にいっちゃおうかな」

 

.....あ、そういえば俺模擬戦やることになってたじゃん。

てことはあの3人の前でやるってこと?

まぁそれくらいいいか.....

 

「そう言えば八幡、伝言なんだけど今日嵐山さんが入隊指導の時のことを打ち合わせしたいから八幡にも参加してほしいって」

 

確か今日は特に予定はなかったし出れるだろう。

 

「わかった、まだ気は進まないけど行ってくる」

 

「うん、頑張ってね」

 

その時HR前の予鈴が鳴る。

 

「じゃあ僕そろそろ先に戻るね」

 

「ああ、またな」

 

ちなみに今日は戸塚はオフをいただいたらしくまだあまり顔を出せていないテニス部に参加するつもりらしい。

俺もたまには好きなことして過ごしたいと思いつつその日の学校の時間も過ぎていった.....

 

 

*****

 

「失礼します」

 

「お、来てくれたか比企谷。来なかったらどうしようかと思ってたぞ」

 

「そうしたいのは山々でしたけどそうするとなんかひどい目に遭う気がしたので」

 

多分その場合東さんに報告されて例の罰が執行されたことだろう。

 

「今日は俺たちだけですか?」

 

「いや、今日は俺の隊を含めて新入隊員の前に立つ人全員に声をかけてある」

 

まぁ嵐山さん率いる嵐山隊といえば通称ボーダーの顔といわれメディア露出、新入隊員の指導など通常任務やランク戦に加えて相当なハードワークをしている隊だしそんな時間を取れないのか。

 

「こんにちは、比企谷さん」

 

「おう、それなりに久しぶりだな」

 

「そうですね」

 

なんで嵐山さんと話していたら嵐山隊の隊員の1人である時枝充こと通称とっきーが現れる。

いつも何を考えてるのかよくわからず感情の起伏は薄いがさりげなく気を遣える近くにいるとめちゃくちゃありがたい人間だ。

 

「比企谷さん、今回はちゃんと来たんですね」

 

そして続いて嵐山隊の新エース、木虎藍が入室してくる。

正直こいつは苦手だ、雪ノ下と同じよう基本生意気な性格をしているためだ。

ただし当然中学生ながらにA級まで上り詰めてるだけあって自分にも他人にも厳しいという典型的なタイプでもある。

 

「今回はって一応俺は殆どのことはちゃんとこなしてるんだが」

 

「少し前に上層部からの呼び出しをすっぽかしたとお聞きしましたが?」

 

ぐっ、ほんとに可愛げがないなこいつ.....

 

「それはまぁアレだ、致し方ない事情が」

 

国近さんとめっちゃゲームやってました、すいません。

 

「まぁ来てくださったならいいです」

 

ほんと顔はいいのになこいつ.....

 

「あ!八幡さんがもういる!めっずらし〜いつも会議は基本遅刻ギリギリなのに」

 

「うるせーぞ佐鳥」

 

「相変わらずの扱いだな〜」

 

そしてそのさらに後ろにいるのが嵐山隊の狙撃手、佐鳥賢。

唯一無二の凄技であふツインスナイプを編み出した紛れもない実力者だがそのうざい言動やドヤ顔のせいで評価がいまいち上がらないというやつでもある。

 

「そういえば嵐山さん、今回って俺含めて何人くらい呼ぶんです?」

 

「なるべく多くのトリガーを見せたいからな、それなりの人数に頼んである」

 

できればやりやすい奴らが多いならありがたいが.....

 

「それと俺の妹も今回入隊するんでよろしくお願いします」

 

「おっ、あの妹好きの比企谷がついに許可出したのか?」

 

正直妹好きとか嵐山さんにだけはあんま言われたくない。

 

「八幡先輩、妹さんがいらっしゃったんですね」

 

「めっちゃ可愛くて全然似てないけどな〜」

 

「黙れ佐鳥、それ以上なんか言ったら殴るぞ」

 

「相変わらず理不尽だな〜」

 

「でも本当に意外ですね、あの比企谷さんが妹さんの入隊を認めるなんて」

 

さっきから思ってたけど俺が小町の入隊に反対してる話そんなに有名だったの?

 

「おう、悪いな待たせたか?」

 

お、そんな話をしてたら模擬戦やるはずの1人が来たみたいだな。

そしてこの声は....

 

「今回は協力してもらって悪いな、弓場」

 

「そんなこと気にすんな嵐山、これくらいどうってことはねぇ」

 

弓場さんはガンナーの中でもトップクラスの早撃ちと威力を持つリーゼントが特徴的なインテリヤクザだ。

ただ圧倒的に面倒見がいいことから別に怖がられたりはしていない。

 

「比企谷も久しぶりだな、久しぶり今度ツラ貸せよ。また帯島に稽古つけてやってくれ」

 

「.....また時間がある時にでよければ」

 

「おう、頼むぞ」

 

基本的に俺もこの人にはお世話になる側の人間だったりするため頼みを断れないのが辛いところだ。

別に何本か10本勝負やるくらいだからいいんだけどな。

 

「うーす、おっもう結構揃ってる感じか?」

 

「太刀川さん、今回は協力ありがとうございます」

 

「気にすんな、それくらいならお安い御用だ」

 

いや模擬戦やるだけでNO.アタッカーは豪華すぎないか?

確かにこの人の戦闘スタイルかっこいいけどさ.....

 

「それに....もしかしたら新入隊員の中に面白い奴がいるらしいからな」

 

ん?いるらしい?なんでもうそんなこと知って....ってそんなの一つしか理由はないか....

 

「迅さんから聞いたんですか、それ」

 

「よくわかったなぁ、そうだ、あいつが言うなら間違いないだろ」

 

ほんとこの人の行動理念はどうやったら戦闘から離れるんだ?

 

「失礼します、遅れてしまいましたか?」

 

「いいえ、時間通りです」

 

「そう、ありがとう木虎ちゃん」

 

なるほど那須か、バイパーを自在に操って敵を倒す那須は確かに印象に残りやすい、ついでにボーダー内でも人気が高いほどのビジュアルも兼ね備えている、間違いなく適任だ。

 

「あら比企谷君、久しぶりね。と言ってもこの間ランク戦しているところを見たけれど」

 

「今更俺のランク戦なんて見たって仕方ないだろ」

 

実際俺よりも那須の方が弾を操る技術は上だ。

 

「そんなことないわ、また勉強になったわ」

 

そう言って微笑んでくる那須、可愛い系というよりは綺麗系と言われるその笑顔は淑やかながらとてつもない破壊力を誇る。

 

「よし、これで全員揃ったな」

 

「揃ったってことは模擬戦をやるのは俺たち4人なんですか?」

 

「あとは木虎にも模擬戦をしてもらう予定だ、これでかなりのトリガーを実際に使うところを見せられるはずだ」

 

なるほどな、ただ絶対に同じものを使わないだろう黒トリガー見せる必要あるか?

 

「それじゃあ、質問がこれ以上ないなら話し合いを始めるか」

 

そうして話し合いは始まった。

しかし俺はこの時まだ気づいていなかったんだ。

この新入隊員指導があの人の手のひらで転がされていることに.....




今回はここまでです。
そして今回すでにあの人の暗躍が進んでる可能性が?
というわけで次回の更新をお待ちください


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新入隊員指導

というわけでついに雪ノ下たち俺ガイルメンバーがボーダーに入隊します。
我ながらここまで長かったですね.....w


.....更新遅れて本当にすいませんでしたっ!


「じゃあ小町、気をつけて本部までこいよ」

 

「うん、わかってるってお兄ちゃんも気をつけてね」

 

「おう、じゃあ待ってるからな」

 

今日はついに新入隊員指導の日だ。

あれから小町は入隊試験に合格して(小町の話では雪ノ下や由比ヶ浜も受かったらしい)今日からボーダーの隊員として訓練に励むことになる。

俺は準備やら最後の打ち合わせやらがあるため小町よりも早めに家を出なければならない。

雪ノ下や由比ヶ浜と一緒に来ると言っていたし道に迷ったりすることはないからそこは安心だ。

 

「どうだ比企谷、小町ちゃんは緊張してなかったか?」

 

その後本部について最後の確認や準備をしている最中嵐山さんが話しかけてくる。

 

「俺がみた限りではいつも通りでしたよ、心配は何もしてません」

 

「へー妹思いの比企谷にしては珍しいな」

 

こんなことを言われるたびに俺は嵐山さんには言われたくない、正直そう思ってる。

いやだってこの人人前で平気で兄弟たちを抱きしめたりするんだよ?

俺より重症だろ絶対。

 

「だってあいつは俺の妹ですよ?」

 

「はっはっ比企谷もそういうこと言うんだなぁ」

 

流石に嵐山さんは冗談だと気づいてくれてるとは思うけど自分で言ってて割と恥ずかしい.....

やっぱ言わなきゃよかったな.....

 

「でもそれならボーダーも安泰だな」

 

普段シスコンだのなんだの言われてる俺だがそう言う贔屓目を抜きにしても小町はきっと強くなると思っている。

 

「当たり前です、いつかもし小町と戦うことがあったら油断しないでくださいよ?」

 

なので俺はそう返しておいた。

 

「そうだな、なんてったって比企谷の妹だもんな」

 

そうやって笑いかけてくれる嵐山さんを見て俺はやっぱりこの人はいい人すぎると思い直した。

マジ本物の陽キャすげぇ.....

 

「嵐山、確認したいことがあるからこっちに来てくれ」

 

「おう、今行く。じゃあ今日は頼むからな」

 

「はい」

 

 

*****

 

「さて、それでは最初の訓練は.....」

 

それから数時間後のこと指導が始まりスナイパー志望の隊員たちと別れて訓練室へと向かうC級隊員たちの後ろを俺たちは歩いている。

 

「対臨界民(ネイバー)戦闘訓練だ」

 

それを聞いた瞬間C級隊員たちはざわざわとしだす。

それはそうだ、いきなりそんな実戦訓練をさせられるなどと誰が考えていただろうか。

 

「ほんと性格悪いよなぁ.....」

 

思わずそうぼやく。

 

「でもこれで大体わかるからな、向いてるかが」

 

「まぁそうなんですけど.....」

 

太刀川さんのいうことが事実なんだよなぁ.....

結局この訓練で才能のあるかないかが明らかになるのだ。

 

「今回はどれくらいの子がいるのかしらね」

 

「とりあえず1分切れれば上出来ってところだろ」

 

「そうだな、それくらいだろうな」

 

 

 

「それでは各部屋、訓練を開始してくれ」

 

 

そんな会話をしていたら訓練が開始されたようだ。

 

「それじゃあ手筈通りにしばらくは訓練の様子を眺めるとするか」

 

「そうですね」

 

弓場さんの言葉を聞いて俺たちはそれぞれ訓練室を見て回ることにする。

それからしばらく回ってみるがやはり全員なかなかに苦戦しているようである。

 

「あら、比企谷君どうかしら?」

 

「そうだな、今のところはまぁまぁだ」

 

1分を切ったりする奴はいないが平均としてみればそれなりのやつが多めと言ったところか。

 

「こっちも同じ感じね、やっぱりなかなか木虎ちゃんみたいな子は現れないわね」

 

「そう簡単にあんな奴が出たら苦労はないんだけどな」

 

そんなふうに那須と話していると.....

 

「あら、比企谷君なぜあなたがここに?」

 

なんでこんな人が多くいるところでピンポイントで会っちゃうかね.....

 

「....上からの命令だ、好きでいるわけじゃない」

 

「そう、ところで今話していたのを聞くと木虎さんはこの訓練でかなりの記録を出したみたいだけど、どれくらいなのかしら?」

 

うっわーこれはあれだ、負けたくないというオーラが溢れ出てる。

 

「比企谷君、知り合いなの?」

 

「ああ、一応な」

 

「こんにちは、雪ノ下雪乃です」

 

「こんにちは、B級の那須玲です」

 

「一応言っとくと雪ノ下は俺と同級生だ」

 

「そう、なら敬語はなしでいいかしら?」

 

「ええ、かまわないわ。こっちもそうさせてもらうわね」

 

そんな感じで互いに挨拶をする2人、なんとなく雰囲気が多少似ていなくもない気がする。

 

「それで比企谷君、さっきの質問だけども.....」

 

「ああ、木虎の話か」

 

「ええ、そんなにすごい記録を出したのかしら?」

 

「まぁそうだな、あれはすごかったな」

 

「なにせ9秒だものね」

 

「その前に黒江も11秒だろ?」

 

「そうね、あの頃の新入隊員は凄かったわね」

 

「なるほど.....」

 

俺たちがそんな話をしていると雪ノ下が先ほどより明らかに燃えている。

やる気的に言えば相当高いが実際どうなることやら.....

 

「おい....マジかよ....」

 

「凄すぎないか?」

 

その時不意に周りがざわつきだす。

 

「なんだか周りが騒がしいな」

 

「そうね、何かあったのかしら?」

 

那須と顔を合わせるがまったく状況はわからない。

 

「4秒なんて本当にあいつ新人か?」

 

「あんなん見たらやりにくいよな〜」

 

と、思ったらご丁寧に周りのc級隊員が状況を解説してくれる。

 

 

「4秒だなんて.....本当だとしたらとてもいい人材ね」

 

「だな、4秒なら即戦力レベルだ」

 

「4秒....ね」

 

また雪ノ下は新たな対抗心を燃やしているようだ。

普通ならここらで対抗心を抑えようとするがこいつには間違いなく逆効果になるのでやめておく。

 

「....私も行ってくるわ」

 

「おう、頑張れよ」

 

「ええ、そこで見てなさい」

 

なぜずっと俺に対してはあんな上からなのかはわからないがなんかあいつには空気が違うのがわかる。

あいつの空気は周りを凍えさせるような、人を近づきにくくさせるような.....

 

「雪ノ下さん.....ね」

 

「気になってか?」

 

「ええ、多分だけどもあの子、強いわね」

 

「多分な、選んでたのはシューターのトリガーっぽいな」

 

「そうね、楽しみだわ」

 

そう話していると雪ノ下の戦闘が始まる。

 

戦闘開始直後雪ノ下が両手から弾を出現させる。

 

「あれはアステロイドかしら?」

 

「だろうな、さすがにバイパーを選ぶほどあいつはバカじゃないと思う」

 

雪ノ下は自信満々な態度をとっているが驕りはない、正しく自分の実力を理解しているはずだ。

 

そして雪ノ下は弾をネイバーへと打ち込む。

 

「おっ、いいダメージだな」

 

「でもまだ倒し切れてはないわね」

 

今回のネイバーは装甲が厚いため一撃で仕留めるには弱点をつくかトリオン能力が高くないと一撃で倒すのは難しいだろう。

しかも雪ノ下はアステロイドを分散気味に打ったためなおさら一撃は厳しかった。

 

しかし想定済みか雪ノ下はすぐさま次の弾を用意、放つ。

 

「5秒か.....」

 

それで決着、さっきの4秒を出したというやつには及ばないながらめちゃくちゃな記録だ。

 

「しかもだいぶえげつないもん見せてくれたな」

 

「やはり気づいているわね、あれはなかなかできる技ではないわね」

 

「ああ、本当にあいつが新人か怪しくなったよ」

 

雪ノ下が放った2回目の弾、それらは1回目に放った弾が当たった場所とほとんど変わらない場所に攻撃を当てている。

ネイバーも動いているので当然そんな芸当をやるのにはある程度の技術が必要になる。

 

「5秒.....あと1秒....」

 

しかし戻ってきた雪ノ下は不満が残るようだ。

 

「お疲れ様、すごかったわね」

 

「ありがとう、でもまだまだだわ」

 

新人がこんな意識高いとか上層部喜びそうだなぁ.....

 

「比企谷君から見て私はどこがダメだったかしら?」

 

「....それは俺より那須に聞け、那須はシューターの中でもトップクラスの技術がある」

 

実際同じシュータートリガーを使った場合那須の方が俺より遥かに柔軟な戦い方をする。

 

「それじゃあ那須さん、良ければ教えてくれないかしら?」

 

俺を見捨てるの早いなぁ.....

 

「そうね、私としてはもっとじっくりと話してみたいわ。よければ今度またゆっくりお話をしない?」

 

那須がここまで言うなら本当に雪ノ下は才能があると見ていいだろうな。

 

「....ええ、じゃあお願いするわ」

 

うずうずしてるものの高校生としての節度か引き下がる雪ノ下。

というか那須とパイプができるのはこいつにとってめちゃくちゃプラスだよなぁ.....

 

「んじゃ、俺は違う訓練した見てくるわ」

 

「ええ、また後でね」

 

那須と雪ノ下と別れた後俺はふと見知った顔を見かける。

 

「どうです太刀川さん、期待の新人は見つかりましたか?」

 

「そうだな....やっぱ4秒を出したやつと5秒を出したやつは筋がいい、B級に上がってランク戦に顔出してきたら戦ってみたいな」

 

そう言って笑っている姿はまさに修羅でしかないわけでそのやる気の1%でも勉強に向かないかと一部の隊員は思ってるとか思ってないとか。

 

「相変わらずですね.....」

 

「そりゃ俺の生きがいだからな」

 

本当にこの人はボーダーがあって良かったと思う、本当に。

 

「お、今訓練室に入ってきたやつ....いいな」

 

「なんで見ただけでわかるんですかね....」

 

と言いつつも俺も訓練室の様子を見る。

 

「.....」

 

するとそこには緊張した面持ちで立っている由比ヶ浜がいる。

 

「ん?どうした比企谷、なんか変な顔してるぞ」

 

「いえ、なんていうか世界って狭いなぁって」

 

太刀川さんが目をつけたのが知り合いなのだからそう思うのは普通だろ。

 

「今入ったやつ知り合いなのか?」

 

「ええ、まぁ」

 

同じ高校かつついこないだネイバーから助けたのだから流石に知り合いって言ってもいいよな?

 

「ほーそりゃ偶然にしてもよくできてんな、だけど見てろ多分だけどあいつ強いぞ」

 

太刀川さんがそんなこと言うのは珍しい気がするな。

戦闘狂にしかわからないこととかあるのだろうか?

 

「使ってるのは孤月みたいですね」

 

「まぁ大体のやつは孤月を最初に選ぶしな」

 

孤月はアタッカー内で人気No.1のトリガーであり太刀川さんも孤月愛用者である。

 

「おっ、始まるみたいだ」

 

訓練開始と同時に由比ヶ浜の目の前にネイバーが現れる。

 

孤月を構え斬りかかる体制へと入る。

なぜかはわからないが既にその構えはある程度戦い慣れしては奴のそれであり次の瞬間には孤月をネイバーへと振るう。

しかし雪ノ下同様に一撃で仕留めることは叶わないが、雪ノ下同様即座に2回目の斬撃を喰らわせる。

どうも手数で攻めると言うかはパワー型っぽい戦い方をしている。

勘違いしてほしくないのは別にスピードがないとかそういうわけではないし由比ヶ浜が重いなどと言っているわけでもないからな?

いや確かに一部分はボーダー内でも既にトップクラスかもしれないけど.....

乳トン先生に男は勝てない.....

 

「5秒か、やっぱ筋がいいな」

 

なんで俺が馬鹿すぎることを考えていた中で戦闘終了となっていた。

結果は雪ノ下と同じく5秒、いや今回既にスーパールーキーいすぎな?

 

「太刀川さん的にポイント高いってところですか?」

 

「そうだな、なんなら俺が教えてやってもいいくらいだ」

 

「太刀川さん、熱があるなら嵐山さんに伝えとくので....」

 

「いやまてまて、俺だってなにもランク戦にしか興味がないわけじゃない。ただ単に伸びそうなやつを見つけたなら俺だって興味くらい持つさ」

 

この人強い人とは戦いたがる癖に人に教えたりとかはあんましないのだ。

というかまともに教えられるのかが個人として疑問に思っている。

 

「それに.....」

 

「それに?」

 

「あいつを強くしてやればもっとランク戦が面白くなりそうだ」

 

結局理由はそこかよ.....

 

「てなわけで比企谷、今度あいつを連れて俺の作戦室まで来い」

 

「まじっすか?」

 

「大マジだ」

 

「自分で誘ってくださいよ」

 

「流石に俺だっていきなり年下の女子に話しかけて作戦室に来いなんて言えないさ。お前に連れてこいって言ったがそれも無理にってわけじゃない、あいつが嫌がったなら無理にとは言わないさ」

 

太刀川さん、ここに来てまさかの常識を持っていたことが判明。

 

「俺もそんなに仲良いわけじゃないんですけどね.....」

 

「はっはっ、お前女子相手だとまともに喋れないもんなぁ」

 

「そんなこと言ってるとさっきのやつもやりませんよ?」

 

「そしたらお前にランク戦にもっと来てもらうことになるな」

 

なんでどのみち俺は何かしら罰ゲーム的なことがあるの?

 

「まぁ善処はします」

 

「頼んだからな」

 

そう言うと太刀川さんは満足そうに別の模擬戦の様子を見に行くのだった.......

 

「ほんとなんでこんな面倒ごとは続くんだよ.....」

 

そうぼやきながらも俺はまた歩き出すのだった......

 

*****

 

「.....」

 

そして少し歩くと妙に機嫌が悪そうな木虎の姿を見かける。

 

「どうした、ずいぶん機嫌が悪そうだな」

 

普段なら絶対そんな状態の木虎に関わろうとしない俺だが今回は木虎が不機嫌な理由が分かりきっているのでルンルンで絡みにいくまである。

 

「....そんなことはないです、変なこと言ってないで仕事してください」

 

いつもよりさらに棘の鋭い声で返してくる木虎、しかし無視という手段をとらないマジメちゃんな性格が今回はなんとも都合がいい。

 

「そんな顔してると嵐山隊の雰囲気崩れるぞ?」

 

「....ご心配なく、その辺りは大丈夫です」

 

何が大丈夫なのかは俺にはよくわからないがそろそろ核心に触れるとするか。

 

「なんだ、今日だけで自分の記録塗り替えられまくったから機嫌悪いのか?」

 

「.....そ、そんなわけないでしょう、子供じゃないんですから」

 

まぁ世間一般的に言えばまだボーダー隊員でも相当な数の人間が子供と言われるのだが......

 

「そうか、そりゃそうだよな木虎が1日の間に、3人に、自分の記録を抜いたくらいで機嫌を崩したりなんかはしないか」

 

わさわざ強調して事実を伝えるあたり我ながら性格が悪いとも思わないでもないが木虎から普段受けてる生意気発言を考えればやりすぎということはないだろ、多分。

 

「....当たり前です。それに成長率で言ったら私の方が上です」

 

「ものは言いようだな.....」

 

全く本当によくそんなすぐに思いつくもんだ、いやこいつ頭いいから別に納得なんだが。

 

「そういえば妹さんはもう戦闘を行なったんですか?」

 

「いや、多分まだのはずだ」

 

小町に関しては俺が少しだけ基礎技術を教えてしまったため少なくともそれなりにざわめきが起こるくらいの記録は出してくるはずだ。

 

「おい嘘だろ.....」

 

「今回やばくない?」

 

「なんか俺自信無くなってきたわ.....」

 

おっと、あたりがざわつき始めたな.....

これはまた誰かいい記録を出したか?

 

「どれどれ記録は.....」

 

そうしてモニターを確認してみると....

 

「1.8秒....マジか」

 

そして俺が人だかりが少しできてきている方を見ると

 

「ぶいっ!」

 

とでもいいたげにピースサインをこちらに向ける可愛い可愛い妹様の姿があったのだった......

そして言うまでもなく隣の木虎はさらに不機嫌そうな顔になっていた.....

 

 

 




今回はここまでです、3人ともかなり鮮烈なデビューを飾っていただきました。
ここからまた3人は修行フェイズといったところです
なのでもしかしたらどこかでいきなり数ヶ月とか時間が飛ぶかもしれませんね(予定は未定)

それではよければ次回も見てください!


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