ドラえもん のび太のスーパーヒーロー大戦 (天津風)
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設定

ちなみに本作では各世界のヒーロー達(パワポケ14の場合は14主)は同い年という事で合わせています。


・登場人物

 

野比のび太

 

かつて大冒険を潜り抜けた少年。小学校卒業後に学園都市へとやって来る。その後、超能力者(レベル5)の第0位として登録される。ちなみに能力は空間支配とある事情から学園都市統括理事長補佐官までなったが、現在は統括理事長が代替わりしたことで追放された。

 

西住みほ

 

のび太が学園都市を追放された直後に九州で出会った少女。戦車道の名家の1つである西住本家の次女であり、奇抜な発想と戦術を得意としている。のび太と出会った当初は黒森峰での生活に疲れたのか、かなりやつれていたが、のび太の励ましによって奮起し、転校を決意する。

 

中須賀エマ

 

のび太より2つ年上の女性で、セミロングの黒髪をしており、外国人の血が半分混じっている事も合間ってかなり整った顔立ちをした美女。西暦20B6年の夏にのび太と出会った。

 

 

・本作の歴史

 

◇西暦20A0年

 

1月・・・パワポケ8の2年目が開始される。

 

5月4日・・・工藤新一誕生。

 

5月5日・・・野原しんのすけ誕生。

 

6月6日・・・碇シンジ誕生。

 

8月7日・・・野比のび太誕生。

 

8月8日・・・比企谷八幡誕生。

 

9月27日・・・織斑一夏誕生。

 

10月7日・・・桐ヶ谷和人誕生。

 

10月23日・・・西住みほ誕生。

 

時期不明・・・衛宮士郎、十四波(パワポケ14主)誕生。

 

◇西暦20A1年

 

1月・・・パワポケ8の3年目が開始される。

 

4月・・・パワポケ9が開始される。パワポケ10の1年目が開始される。

 

11月・・・パワポケ8が終了する(茜ルート)。

 

◇西暦20A2年

 

1月1日・・・パワポケ9が終了する(維織ルート)。

 

4月・・・パワポケ10の2年目が開始される。

 

10月・・・親切高校が星英高校を撃破し、春の選抜に選ばれる。

 

◇20A3年

 

3月・・・春の甲子園で親切高校が優勝する。

 

4月・・・パワポケ10の3年目が開始される。

 

7月・・・親切高校が星英高校に勝利し、夏の甲子園の切符を手に入れる。

 

8月・・・親切高校が夏の甲子園で優勝する。

 

10月・・・パワポケ10が終了する(さらルート。ただし、同時に五十鈴ルートも通っており、主人公との子供の妊娠発覚した直後に天月五十鈴が姿を消したという設定)

 

時期不明・・・天月紗矢香誕生(原作通り)。

 

◇西暦20A4年

 

1月・・・パワポケ11の1年目が開始される。

 

◇西暦20A5年

 

1月・・・パワポケ11の2年目が開始される。

 

5月(5日以降)・・・クレヨンしんちゃんの物語が開始される。

 

◇西暦20A6年

 

1月・・・パワポケ11の3年目が開始される。

 

3月・・・クレヨンしんちゃんの物語が終了する。

 

11月・・・パワポケ11が終了する(シズヤルート。ただし、紫杏ルートの物語も辿っている)。

 

時期不明・・・白騎士事件。

 

◇西暦20A7年

 

4月・・・パワポケ12の物語が開始される。

 

8月・・・パワポケ12の物語が終了する(漣ルート)。

 

◇西暦20A8年

 

4月・・・パワポケ13の1年目が開始される。

 

11月・・・第四次聖杯戦争。

 

◇西暦20A9年

 

4月・・・パワポケ13の2年目が開始される。

 

◇西暦20B0年

 

4月・・・パワポケ13の3年目が開始される。

 

11月・・・パワポケ13の物語が終了する(麻美、ゆらり二股ルート)

 

◇西暦20B1年

 

4月・・・ドラえもんの物語が開始される。

 

12月・・・第二次モント・グロッソ事件。

 

◇西暦20B2年

 

3月・・・ドラえもんの物語が終了する。

 

4月・・・パワポケ14の物語が開始される。

 

9月~10月・・・ガールズ&パンツァー リトルアーミー

 

◇西暦20B3年

 

3月・・・パワポケ14の物語が終了する(紗矢香ルート)。

 

4月・・・野比のび太が学園都市の中学へと入学する。 

 

◇西暦20B4年

 

6月・・・新世紀エヴァンゲリオンの物語が開始される。

 

11月・・・SAO事件発生。

 

◇西暦20B5年

 

8月・・・新世紀エヴァンゲリオンの物語が終了する。

 

◇西暦20B6年

 

4月・・・インフィニット・ストラトスの物語が開始される。

 

6月・・・第62回全国戦車道大会(ガールズ&パンツァー本編1年前)。

 

7月・・・とある魔術の禁書目録の物語が開始される。

 

8月・・・のび太が中須賀エマと出会う。

 

12月・・・のび太が西住みほと出会う。

 

◇西暦20B7年

 

4月・・・俺ガイルの物語が始まる。名探偵コナンの物語が始まる。ガールズ&パンツァーの物語が始まる。




ちなみにエヴァンゲリオンはクロスされていますが、使徒は襲来しているものの、セカンドインパクトは起きなかったという設定になっています。


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眼鏡の少年と戦車乙女の少女の出会い

◇西暦20B6年 12月24日 夜 日本 九州 熊本県 

 

 

「・・・」

 

 

 日本の九州の熊本県のとある公園。

 

 そこでは夜という時間帯にも関わらず、1人の少女が暗そうな表情でブランコに座っていた。

 

 彼女の名は西住みほ。

 

 黒森峰女学園という女子高に通う高校1年生の少女であり、熊本県に本拠地が存在する戦車道の名家である西住流(通称“西の西住”)本家の次女でもある。

 

 まあ、平たく言えば良いとこのお嬢様だ。

 

 容姿は少々地味めで童顔であることも合間って美少女とは言いがたいが、顔立ちは整っており、あと数年もすれば美人になることは約束されているも同然だった。

 

 しかし、そんな彼女がこんなにも顔を暗くしているのには当然の事ながら理由がある。

 

 それは半年前の6月にあった第62回全国戦車道大会が起因となっており、みほは当時黒森峰で副隊長を勤めていた。

 

 まあ、とは言っても、彼女が副隊長に就任したのは完全なる実力というわけではなく、西住まほを強引に隊長に持っていった反感から、出来そうな先輩がほとんど出ていってしまった上に、10連覇目というプレッシャーもあって誰も“西住まほの副官”という立場をやりたがらなかった為、隊長・副隊長を勤めさせて西住流の名を売ろうと考えた西住宗家がみほを副隊長に任命させたにすぎないのだが、その弱体化した時点では西住まほの次に実力があったというのも事実なので、彼女が副隊長に選ばれたのは実力ゆえだったという点も紛れもない事実だ。

 

 しかし、そんな肩身の狭い立場だった彼女を更に追い詰めたのがその決勝戦の事であり、あの時、みほは川に落ちた仲間を助けるために行動を起こしたのだが、それが黒森峰やその上に居る西住家には気に入らなかったらしく、彼女はそれによる物凄い重圧をその身に受けることになっていた。

 

 それこそ『自分は本当は間違っていたのではないか?』と思ってしまう程に。

 

 そして、それは彼女自身だけではなく、他の学校の同級生などにも飛び火したお陰で、クラスメートは誰も助けてくれず、家にも学校にも彼女の居場所は無くなっていた。

 

 当然、このクリスマスイブというイベントの日など、みほには楽しむ余裕すらない。

 

 クリスマスイブのイベントによる世間の活気とは裏腹に、彼女の心はただひたすら暗かった。

 

 

「──どうしたんですか?」

 

 

 そんな彼女に声を掛けてくる人物が居た。

 

 だが、みほは完全に自分の世界へと入ってしまっており、その声に気づかない。

 

 

「あの~」

 

 

「えっ?な、なんですか?」

 

 

 もう1度声を掛けるとようやく気づいたのか、みほはビクッとしながらその人物へと顔を向ける。

 

 そして、みほが顔を向けた先に居たのは1人の同年代くらいの眼鏡を掛けた少年だった。

 

 

「いや、暗そうな顔をしていたから。声を掛けた方が良いんじゃないかなって思って」

 

 

「そ、そうでしたか。すみません!」

 

 

「いや、謝る必要はないよ。僕から勝手に声を掛けたんだし。ところで、君はもしかして家族と喧嘩でもしたの?」

 

 

「い、いえ。そういう訳じゃ、無いんです」

 

 

「じゃあ、帰りたくないとかかな?」

 

 

「・・・」

 

 

 みほはその少年の問いに一瞬言葉に詰まる。

 

 それはある意味で的を射たものであったからだ。

 

 そして、少年はみほの反応にそれが正解だったと確信する。

 

 

「・・・そっか。まあ、それならそんな顔をするのも仕方ないね。しかも、今日はクリスマスイブと来てるから、なおさらだ」

 

 

 少年はみほの気持ちを察するようにそう言った。

 

 

「ねぇ、良かったら悩みを話してくれないかな?僕は赤の他人だけど、だからこそ話せることも有るかもしれないよ」

 

 

 少年はそう言ってみほに悩みを話すことを進めるが、これはなかなか勇気のある行為と言えた。

 

 何故なら、10年前の白騎士事件によって昨今の日本ではISという兵器の普及によって女性優遇制度というものが確立されており、女性にちょっと反抗しただけで逮捕される男性というのもたまに見受けられるような世の中になっているからだ。

 

 特に女性権利団体という組織がそういった“男性の粛清”と言うべき所業を積極的に行っていた。

 

 それは世の中で男性が生きていくことが難しくなったことを意味しているのだが、そういった世の中に必ずしも全ての国が染まっている訳ではなく、例外も存在している。

 

 1つは学園都市。

 

 日本国内に存在する準独立都市であり、この学園都市と“外”の科学力の差は20~30年とも言われている。

 

 この都市は2ヶ月前に起きた第三次世界大戦でロシアと真正面から戦って勝利して、ただでさえ強かった地位を益々強化しており、一部の勢力からはジャジメントの再来とも言われていて警戒する勢力も多い。

 

 2つ目はネルフ。

 

 2年前の6月から1年前の8月までにあった使徒という怪物を退治した組織だ。

 

 今は国連所属の一研究機関という扱いになっているが、ISでも敵わなかった使徒と互角に戦えるエヴァンゲリオンを保有していることもあって、学園都市の次に女性権利団体に目の敵にされている組織でもある。

 

 ちなみにネルフの今の代表は女性であるが、ISにあまり興味はなく、女尊男卑勢力をよく思っておらず、問題になるようだったら速やかにその職員を何らかの形で排除していた。

 

 3つ目はオオガミグループ。

 

 ジャジメント亡き今となっては世界最大の企業であり、社長のカリスマもあって女尊男卑の空気には染まっていない。

 

 4つ目はNOZAKIグローバルシステム。

 

 かつてジャジメントに敵対していた企業であり、現在ではオオガミグループのライバル会社となる程成長している企業でもある。

 

 こちらの社長は女性であるが、女尊男卑の空気を許してはおらず、それに染まった女性を容赦なく粛清?しているという噂すらあった。

 

 こんな感じに女尊男卑の影響を受けていないところも存在しており、その勢力はかなり大きいのだが、やはり全体的な数で見ると女尊男卑に染まっている人間の方が多いというのも事実だ。

 

 もっとも、2ヶ月前の第三次世界大戦でロシアのISが学園都市の兵器に敗北したことによって、最近ではISの能力に疑問が持たれており、女性優遇制度の見直しの動きなどが男性を中心に広まっていたが、10年もの時間を掛けて固まった体制を崩すのはたった2ヶ月では難しく、また女性権利団体などを初めとした女性至上主義勢力がこういった動きを抑制させていたこともあって、もうしばらくは女性優遇制度は続く見積もりだった。

 

 まあ、そんなわけで日本の大半の地域では女性優位な社会は未だに続いており、もしみほが女尊男卑主義者だった場合、少年の言葉はかなりの問題発言として受け取られる可能性が高かったのだ。

 

 が、幸いなことにみほはそういった人間ではない。

 

 

「ありがとうございます。でも、やっぱり、知らない人には分からない話だと思います」

 

 

 そう、みほの悩みの内容である戦車道は乙女の嗜みと言われていて、ISとは別な意味で男は基本的に関わらない。

 

 その為、みほは少年に話してもおそらく意味はないことだと感じていた。

 

 もっとも、少年は知り合いの女性から戦車道の事を何回か聞いたことがあり、その存在を知っていた(更にその女性というのはみほの小学生時代の友達の姉だったりする)のだが、みほにそれを知るよしはない。

 

 しかし──

 

 

「そうかな?まあ、確かに分からないかもしれない。でも、それは話してみなければ分からないことでもあるんだよ?」

 

 

 話してみなければ分からないというのもまた事実だった。

 

 黙っていても分かって貰えるなどというのは、ただの自惚れでしかないのだから。

 

 

「・・・」

 

 

「──おっと。流石にお節介がすぎたね。ごめん」

 

 

「・・・いえ」

 

 

「じゃあ、僕は行くよ。クリスマスイブとは言え、夜に女の子が出歩くのはあまり良いことじゃないから、気をつけて帰るんだよ」

 

 

「あっ、待ってください」

 

 

 忠告を残し、その場を去ろうとした少年をみほは呼び止める。

 

 

「やっぱり、聞いて貰えませんか?その・・・相談できる友達も居ないので」

 

 

「ああ、構わないよ」

 

 

 みほの言葉にそう返し、少年はみほが座っていなかった方のブランコへと座り、彼女の話を聞く姿勢を取った。

 

 

「ありがとうございます」

 

 

 話を聞いてくれるという少年に、みほは一言礼を言い、自らの事情を話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──なるほど。つまり、君はその決勝戦で仲間を助けたけど、周りはその行為を否定しているって訳だね」

 

 

「・・・はい」

 

 

「う~ん。僕はその場に居ないし、観戦もしていなかったから下手な事は言えないけど、君の行動は間違っていなかったと思うよ」

 

 

「でも、お母さんは・・・」

 

 

「会ったことはないけど、そのお母さんだって本心で言った訳じゃないと思う。ただ周りが君の行為を肯定するような雰囲気じゃなかったから体面を気にしてそう言っただけだよ」

 

 

 少年はみほの母親である西住しほをそう評する。

 

 勿論、実際に会ったことが無いので、これらの少年の評価はあくまで憶測にすぎない。

 

 しかし、少年の気質上、会ったこともない人間の悪口を言うことなど気が引けたし、色々と突っ込みどころがあるとはいえ、曲がりなりにもスポーツである戦車道で本気でそれを口にするのは常識的に考えればあり得ないので、それを言ったのはただの言葉の綾であると少年は判断していた。

 

 もっとも、もし本心から『勝利のためには犠牲はやむを得ない』と言っているのであれば、少年はしほを心底軽蔑していただろう。

 

 曲がりなりにも上の人間が言って良い台詞ではないのだから。

 

 

「そうかな?」

 

 

「きっとそうさ。でも、もし僕の考察が外れていて君の母親が本気でそう言ったのであれば、その母親には見切りを付けた方が良いね」

 

 

「・・・」

 

 

「・・・いや、これは言い過ぎた。忘れてくれ」

 

 

「いえ、間違ってないと思いますので」

 

 

「そ、そう?」

 

 

 少年はみほの反応に少々驚いた。

 

 しほの言葉に無関心という反応ではなく、ショックを受けていることから、苦手ではあっても未だにみほの心中にしほに対する親子の情が存在すると少年は思っている。

 

 その為、流石に先程の親を貶すような発言は失言だったと思っていたのだが、まさかみほ本人から肯定されるとは思っていなかった。

 

 

(これは想像以上に闇が深いな)

 

 

 少年はそう思いながらも、聞いてしまった以上、最後まで付き合うことを決意しつつ、ある問いを行った。

 

 

「まあ、僕の言いたいのは要するにあまり思い詰めちゃいけないよってことだよ。もっとも、学校生活の方は別だろうから、場合によっては転校する必要性も有るかもしれないけど」

 

 

「転校、ですか。でも、戦車道から逃げる私をお母さんが許してくれるかどうか」

 

 

「ダメ元でもやってみる価値はあるさ。それに自分の意思を伝えなければ何も始まらないよ」

 

 

「・・・そうですね」

 

 

 みほは不安そうな表情をしながらも少年の言葉に頷く。

 

 しかし、内心では本当にあの母親に自分の意思を言えるのか不安になった。

 

 小さい頃は子供ゆえの怖いもの知らずな態度によってなんとかしていたが、今同じことをしろと言われれば絶対に無理だと断言できるのだ。

 

 だが、そんな彼女の不安を感じ取った少年は更にこう述べる。

 

 

「頑張ってね。僕は応援することしか出来ないけど、君の心次第ではきっと成功すると思う」

 

 

「はい。相談に乗ってくれてありがとうございました!」

 

 

「うん、じゃあね」

 

 

 そう言って少年は公園から立ち去ろうとする。

 

 しかし、そこでみほが少年の名前を聞いていなかったことを思い出した。

 

 

「あっ、ちょっと待ってください。せめて名前だけでも教えてくれませんか?」

 

 

「名前、か」

 

 

 名前を聞かれた少年は少し悩む。

 

 実は少年にはとある事情があって学園都市を追放されており、外にはかつての友達も居るということもあり、しばらく他人に名前を知られることを隠したいという思惑があったからだ。

 

 

(まあ、ここは九州だし、知られてもそれほど問題はないか)

 

 

 しかし、その友達が居る位置は東京。

 

 加えて言えば、学園都市がわざわざ自分の存在をそれらの友達に言うわけがないし、ここは九州であり、一定の距離が離れているので、自分の名前を言っても問題ないだろうと少年は判断した。

 

 

「じゃあ、改めて自己紹介するね。僕の名前は野比のび太。君は?」

 

 

「黒森峰女学園高等部1年生の西住みほです」

 

 

 こうして、半年後に“大洗の奇蹟”を起こす少女──西住みほと大冒険を始めとした数々の地球の危機を救ってきた少年──野比のび太は邂逅を果たす。

 

 彼らの出会いがこの先の物語に何を及ぼすのか?

 

 それを知る者は現時点では誰も居ない。



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月の開発

◇西暦20B7年 6月5日 夜 月面

 

 月。

 

 それは地球の衛星であり、地球に最も近い星と言われる星であるが、その地球と月の距離はなんと38万キロ。

 

 とてもではないが、まともに行ける距離ではない。

 

 しかし、20世紀中期の西暦1960年代にはアメリカのアポロ計画によって月に人が降り立っている。

 

 また4年ほど前にも、かつて魔球少年と唄われた少年が宇宙飛行士として月よりも遠い火星に降り立っており、月は既にその地球人類がその気になれば何時でも行ける星へと変わっていた。

 

 とは言え、まともに宇宙に進出しようという輩はなかなか居ない。

 

 何故なら、地球は国家統一などがされておらず、宇宙に進出したら進出したで何処が領有するか必ず揉めると思われた為に、各国は進出を躊躇ってしまっているからだ。

 

 いや、11年前にインフィニット・ストラトスが公開された時にも人類は宇宙へと目を向けなかったことから(もっとも、あれは篠ノ乃束のデモンストレーションが悪かったということもあるが)、現在の地球人類はそもそも宇宙に興味がないのかもしれない。

 

 だが、そんな中、そんな流れに逆行するかのように宇宙進出を行っている者も存在した。

 

 

「ここに来てもう1ヶ月か」

 

 

 月面に建てられたとある建物。

 

 それは月に来た人間のための居住施設であり、そこには先月からこの月へとやって来た少年──野比のび太が滞在していた。

 

 この建物の中は学園都市性の重力調整装置によって地球の重力と同じように設定されており、月の重力に作用されることはない(まあ、のび太の場合はそんなことをしなくとも重力の調整が可能だが)。

 

 もっとも、それは建物の中だけであり、月の外に出れば当然、月の重力下で活動することになるのだが、それでも地球と同じ重力で活動できることは、のび太を始めとしたこの月で活動し始めた者達にとって一種の安心感を与えていた。

 

 

「ええ、そうなるわね。まさか、宇宙に来るなんて思いもよらなかったわ」

 

 

 のび太のその呟きに反応した黒髪の美女。

 

 彼女の名前は中須賀エマ。

 

 去年の夏にドイツで出会ったのび太より2つ年上の19歳の女性であり、現在はのび太の補佐を勤めている女性だ。

 

 彼女は本来なら今年から戦車道の名門であるドイツの大学へと進学する予定だったのだが、戦車道の能力に限界を感じていたことと、のび太に着いていってみたいという思いから、大学に進むのを辞めて学園都市を追放されたのび太と共に日本のIT会社であるNOZAKIグローバルシステムへと入社(ただし、のび太の方は建前上、学園都市からの出向という形になっている)していた。

 

 現在はのび太の部下という立場になっていたが、それまでの付き合いもあったので、こうして2人で話すときは自然と言葉遣いは砕けている。

 

 ちなみにこの月の開発事業に参加している勢力は学園都市、NOZAKI、オオガミの3つだ。

 

 ネルフは興味は示しているようだが、S2機関の実用化を優先しており、現在は態度を保留している。

 

 

「お気に召さなかった?」

 

 

「まさか。月に住めるなんてロマンチックなこと、そうそう経験できないわよ」

 

 

「それはありがとう。でも、あと数年もすれば、月は地球人類の新たな居住地となるだろうから、ロマンチックなのは今のうちだね」

 

 

 のび太は苦笑しながらそう言った。

 

 現在、この月の開発には約40人の人間が作業に従事しているが、来月には100人までに増員される予定であり、その後も安全が確認され次第、更に増員される予定だ。

 

 そして、最終的に開発によって居住地が広がれば宇宙移民を募る予定だった。

 

 そうなれば月に人間が住むなど当たり前となるので希少性は失われることとなり、ロマンチックではなくなるだろう。

 

 

「そういうことは言わないものよ?」

 

 

「すいません。気が利かなくて」

 

 

「もう。・・・そう言えば、作りたいって言ってたあれは出来たの?」

 

 

「ああ、あれですか。既に試作機は出来ています」

 

 

 エマの問いにのび太はそう答える。

 

 ちなみにエマの言うあれとはこの月開発の作業のために作られた有人型ロボット──モビルスーツ(通称MS)だ。

 

 実は月面開発に辺り、一番問題視されたのが作業用の機械だった。

 

 それは当然だろう。

 

 住む分には居住地を建てれば問題ないにしろ、本格的な開発を行うためには宇宙空間で作業する必要があるのだから。

 

 そして、この為に開発されたのがISだったのだが、これは女性にしか使えないので真っ先に却下された。

 

 しかし、普通のシャベルカーなどの工作機械ではでこぼこした場所を開発していくのは時間が掛かるので、人型の工作用ロボットが望ましい。

 

 その為、最初に提案されたのは人型で作業しやすいエヴァだったのだが、これはこれで大きすぎて(なにしろ、全長が80メートルもある)運用が大変(現在のバッテリー式の場合、5分しか持たない事も含めて)だし、運んでいくのも一苦労だ。

 

 ならば学園都市の駆動鎧を改造して持っていくかという話も出たが、人間サイズだと落盤などが起きてコクピットに穴が開けば宇宙空間では一環の終わりなので、人間サイズで作業しても問題ないくらいに開発されるまでは、もう少し大きい20メートル前後の人型ロボットが欲しいという事になり、それで考案されたのがこのモビルスーツだった。

 

 そして、動力炉だが、これには当初、N2リアクターや核分裂炉という案が挙げられる。

 

 核分裂炉はJAの時が失敗もあって少々問題となったのだが、宇宙空間で作業する分にはあまり問題にはならないという意見もあったので、候補として挙げられたのだ。

 

 ちなみにこの中にこの2つよりも出力が高い核融合炉という選択肢が無かったのは、参加勢力の中でも最先端の科学力を持つ学園都市(と言うより、学園都市は科学力が売りなので、これが追い抜かされたらかなりヤバい)には核融合炉を使った原子力発電所や戦闘艦艇は有るのだが、それがモビルスーツに搭載できる程小型化する研究は未だ基礎段階にすぎない領域でしか無かったからだ。

 

 その為、最初の段階ではN2リアクターか核分裂炉にして、学園都市が核融合炉の研究に成功次第、順次それを投入していくという方針になったのだが、このタイミングで学園都市の科学者であるトミノフ・Y・ミノフスキーによってある学説が唱えられる。

 

 ミノフスキー物理学。

 

 それは色々あったが、その一つが核融合炉を小型化して高出力化することが可能というものだった。

 

 正直、あまりにも革新的すぎるこの理論に学会はかなり懐疑的であったが、これを聞き付けた学園都市の宇宙開発部門はこれを宇宙で試してみようという事でミノフスキーに話を通し、ミノフスキーもこれを了承する。

 

 そして、このミノフスキー核融合炉を搭載したMSの開発に携わっており、今回の試作機完成にも貢献していた。

 

 

「そう。だったら、夢は叶ったというわけね」

 

 

「いや、まだまだですよ。あれはあくまで人が動かす工作機械で、僕の目指しているのは人間のような感情を持ったロボットとそれを受け入れる社会を作ることですから」

 

 

 のび太には夢があった。

 

 かつて世話になったドラえもんのようなロボットを作り、それが受け入れられる社会を作りたいという夢が。

 

 もっとも、のび太の腕は十分に汚れてしまっているので、それが許されるかは分からないが、せめてあの22世紀の未来のような社会にする為の手伝いだけはしようと心に決めていた。

 

 

「・・・そっか。私とは大違いよね」

 

 

 のび太の言葉を聞いて夢である戦車道のプロという立場を諦めたエマは自嘲するようにそう言う。

 

 

「・・・今ならまだ間に合うかもしれませんよ?」

 

 

「いえ、大丈夫。ここで引いて戦車道に戻ったとしても大した選手にはなれないでしょうから」

 

 

「そうですか・・・ああ、そう言えば半年くらい前に戦車道をやっている女の子に会いましたね。今どうしているかなぁ」

 

 

「へぇ、その子。可愛かったの?」

 

 

「ええ、確かあの時は高校1年生って言っていたから今は高校2年生。僕と同い年でしょうね。ただし、童顔でしたからそれ聞くまで優華ちゃんと同い年くらいかなと思っていたんですけどね」

 

 

 のび太はあの当時の事を思い出しながらそう語る。

 

 ちなみに優華というのはのび太より2つ年下の現在中学3年生の少女であり、九波という男と野崎維織前社長との間に生まれた娘だ。

 

 母親に似ず元気活発な少女であり、のび太とは小学6年生の時に会ってから色々と付き合いがあった。

 

 まあ、だからこそ学園都市からの追放先にNOZAKIが選ばれたとも言えるのだが。

 

 

「ふふっ、それ本人の前で言わない方が良いわよ。多分、怒るでしょうから」

 

 

「ええ、分かっています。流石にそんな馬鹿な事はしませんよ」

 

 

「なら良いけど。ところで、火星に行く話はどうなっているの?」

 

 

 エマは数ヶ月後に控えている火星の調査についてのび太に尋ねる。

 

 そう、実は月の開発と平行して火星の開発もまた検討されており、数ヶ月後にその前座の為の調査団の派遣が行われる予定だった。

 

 そして、その人員にはのび太とエマが指名されている。

 

 

「はい、8月。つまり、2ヶ月後に出発となります。ただ、宇宙共同開発委員会(今回の月や開発を主導している組織のこと)からの通達で2週間後に1度地球に戻るようにとのことです」

 

 

「そう。なら、火星出発前に妹の大会を見に行けるかもしれないわね」

 

 

 エマはそう言いながら、ドイツに居る自分の妹が隊長を勤める高校の戦車道大会を見に行くことを画策する。 

 

 おそらくエマが見に行った頃には大会は終盤だろうが、エマの妹が通っている高校は名門であり、強豪校といきなりぶち当たらない限りは序盤で消えることはまずない。

 

 そう、チームワークが取れずに車輌が隊長の命令を聞かずに各々勝手に動き出すなどという無様な事をしない限りは。

 

 

「そうですか。じゃあ、僕は久しぶりに日本でゆっくりしてきます」

 

 

「そう?一緒にドイツに行かないって誘おうと思っていたのだけれど・・・」

 

 

「すいません。実は出発前に帰ったら優華ちゃんと一緒に遊ぶって約束してまして」

 

 

「そっか。なら仕方ないわね」

 

 

「はい、本当にすいません」

 

 

「いえ、良いのよ。そっちにも事情があるんだし、それより休暇、楽しんできてね」

 

 

「ええ、ありがとうございます」

 

 

 後にフォン・ブラウンと呼ばれる都市が出来上がるその場所にある建物内で2人はそう言って笑い合っていた。

 

 ──だが、彼らは知らない。

 

 徐々に1つの大きな戦いが近づいているということを。



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