ドラえもん のび太のスーパーヒーロー大戦 (天津風)
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設定

ちなみに本作では各世界のヒーロー達(パワポケ14の場合は14主)は同い年という事で合わせています。


・登場人物

 

野比のび太

 

ドラえもんの副主人公。かつて大冒険を潜り抜けた少年。小学校卒業後に学園都市へとやって来る。その後、超能力者(レベル5)の第0位として登録される。ちなみに能力は空間支配とある事情から学園都市統括理事長補佐官までなったが、現在は統括理事長が代替わりしたことで追放された。

 

西住みほ

 

ガールズ&パンツァーの主人公。のび太が学園都市を追放された直後に九州で出会った少女。戦車道の名家の1つである西住本家の次女であり、奇抜な発想と戦術を得意としている。のび太と出会った当初は黒森峰での生活に疲れたのか、かなりやつれていたが、のび太の励ましによって奮起し、転校を決意する。

 

中須賀エマ

 

のび太より2つ年上の女性で、セミロングの黒髪をしており、外国人の血が半分混じっている事も合間ってかなり整った顔立ちをした美女。西暦20B6年の夏にのび太と出会った。

 

九波優華

 

オリジナルキャラ。九波(パワポケ9の主人公)と野崎維織の間に産まれた娘。のび太より2つ年下の少女。のび太とは小学4年生(この時、のび太が小学6年生だった)の時に出会った。出会った当初からのび太に興味を持っていたが、ある日、マゼンタに襲われた際にのび太が護ってくれた事でそれが好意へと変わる。生年月日は西暦20A2年8月21日。

 

川田由良里

 

パワポケ13ヒロイン。野崎維織の母違いの妹であり、現在はNOZAKIグローバルシステムの社長に就任している人物。現在、プロ野球で活躍中の十三波(パワポケ13の主人公)の愛人であり、彼との間に2人の子供が居る。

 

・本作の歴史

 

◇西暦20A0年

 

1月・・・パワポケ8の2年目が開始される。

 

5月4日・・・工藤新一誕生。

 

5月5日・・・野原しんのすけ誕生。

 

6月6日・・・碇シンジ誕生。

 

8月7日・・・野比のび太誕生。

 

8月8日・・・比企谷八幡誕生。

 

9月27日・・・織斑一夏誕生。

 

10月7日・・・桐ヶ谷和人誕生。

 

10月23日・・・西住みほ誕生。

 

時期不明・・・衛宮士郎、十四波(パワポケ14主)誕生。

 

◇西暦20A1年

 

1月・・・パワポケ8の3年目が開始される。

 

4月・・・パワポケ9が開始される。パワポケ10の1年目が開始される。

 

11月・・・パワポケ8が終了する(茜ルート)。

 

◇西暦20A2年

 

1月1日・・・パワポケ9が終了する(維織ルート)。

 

4月・・・パワポケ10の2年目が開始される。

 

8月21日・・・九波優華、誕生。

 

10月・・・親切高校が星英高校を撃破し、春の選抜に選ばれる。

 

◇20A3年

 

3月・・・春の甲子園で親切高校が優勝する。

 

4月・・・パワポケ10の3年目が開始される。

 

7月・・・親切高校が星英高校に勝利し、夏の甲子園の切符を手に入れる。

 

8月・・・親切高校が夏の甲子園で優勝する。

 

10月・・・パワポケ10が終了する(さらルート。ただし、同時に五十鈴ルートも通っており、主人公との子供の妊娠発覚した直後に天月五十鈴が姿を消したという設定)

 

時期不明・・・天月紗矢香誕生(原作通り)。

 

◇西暦20A4年

 

1月・・・パワポケ11の1年目が開始される。

 

◇西暦20A5年

 

1月・・・パワポケ11の2年目が開始される。

 

5月(5日以降)・・・クレヨンしんちゃんの物語が開始される。

 

◇西暦20A6年

 

1月・・・パワポケ11の3年目が開始される。

 

3月・・・クレヨンしんちゃんの物語が終了する。

 

11月・・・パワポケ11が終了する(シズヤルート。ただし、紫杏ルートの物語も辿っている)。

 

時期不明・・・白騎士事件。

 

◇西暦20A7年

 

4月・・・パワポケ12の物語が開始される。

 

8月・・・パワポケ12の物語が終了する(漣ルート)。

 

◇西暦20A8年

 

4月・・・パワポケ13の1年目が開始される。

 

11月・・・第四次聖杯戦争。

 

◇西暦20A9年

 

4月・・・パワポケ13の2年目が開始される。

 

◇西暦20B0年

 

4月・・・パワポケ13の3年目が開始される。

 

11月・・・パワポケ13の物語が終了する(麻美、ゆらり二股ルート)

 

◇西暦20B1年

 

4月・・・ドラえもんの物語が開始される。

 

12月・・・第二次モント・グロッソ事件。

 

◇西暦20B2年

 

3月・・・ドラえもんの物語が終了する。

 

4月・・・パワポケ14の物語が開始される。

 

9月~10月・・・ガールズ&パンツァー リトルアーミー

 

◇西暦20B3年

 

3月・・・パワポケ14の物語が終了する(紗矢香ルート)。

 

4月・・・野比のび太が学園都市の中学へと入学する。 

 

◇西暦20B4年

 

6月・・・新世紀エヴァンゲリオンの物語が開始される。

 

11月・・・SAO事件発生

 

◇西暦20B5年

 

3月・・・のび太がAI『アカリ』を完成させる。

 

8月・・・新世紀エヴァンゲリオンの物語が終了する。

 

◇西暦20B6年

 

4月・・・インフィニット・ストラトスの物語が開始される。

 

6月・・・第62回全国戦車道大会(ガールズ&パンツァー本編1年前)。

 

7月・・・とある魔術の禁書目録の物語が開始される。

 

8月・・・のび太が中須賀エマと出会う。

 

12月・・・のび太が西住みほと出会う。SAO事件解決(ホロウ・フラグメント)

 

◇西暦20B7年

 

1月・・・宇宙共同開発委員会発足。宇宙開発開始。

 

2月・・・宇宙特別軍事組織『エゥーゴ』発足。

 

3月・・・グリプス戦役が開始される。

 

4月・・・俺ガイルの物語が始まる。名探偵コナンの物語が始まる。ガールズ&パンツァーの物語が始まる。




ちなみにエヴァンゲリオンはクロスされていますが、使徒は襲来しているものの、セカンドインパクトは起きなかったという設定になっています。


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第0章 プロローグ
眼鏡の少年と戦車乙女の少女の出会い


◇西暦20B6年 12月24日 夜 日本 九州 熊本県 

 

 

「・・・」

 

 

 日本の九州の熊本県のとある公園。

 

 そこでは夜という時間帯にも関わらず、1人の少女が暗そうな表情でブランコに座っていた。

 

 彼女の名は西住みほ。

 

 黒森峰女学園という女子高に通う高校1年生の少女であり、熊本県に本拠地が存在する戦車道の名家である西住流(通称“西の西住”)本家の次女でもある。

 

 まあ、平たく言えば良いとこのお嬢様だ。

 

 容姿は少々地味めで童顔であることも合間って美少女とは言いがたいが、顔立ちは整っており、あと数年もすれば美人になることは約束されているも同然だった。

 

 しかし、そんな彼女がこんなにも顔を暗くしているのには当然の事ながら理由がある。

 

 それは半年前の6月にあった第62回全国戦車道大会が起因となっており、みほは当時黒森峰で副隊長を勤めていた。

 

 まあ、とは言っても、彼女が副隊長に就任したのは完全なる実力というわけではなく、西住まほを強引に隊長に持っていった反感から、出来そうな先輩がほとんど出ていってしまった上に、10連覇目というプレッシャーもあって誰も“西住まほの副官”という立場をやりたがらなかった為、隊長・副隊長を勤めさせて西住流の名を売ろうと考えた西住宗家がみほを副隊長に任命させたにすぎないのだが、その弱体化した時点では西住まほの次に実力があったというのも事実なので、彼女が副隊長に選ばれたのは実力ゆえだったという点も紛れもない事実だ。

 

 しかし、そんな肩身の狭い立場だった彼女を更に追い詰めたのがその決勝戦の事であり、あの時、みほは川に落ちた仲間を助けるために行動を起こしたのだが、それが黒森峰やその上に居る西住家には気に入らなかったらしく、彼女はそれによる物凄い重圧をその身に受けることになっていた。

 

 それこそ『自分は本当は間違っていたのではないか?』と思ってしまう程に。

 

 そして、それは彼女自身だけではなく、他の学校の同級生などにも飛び火したお陰で、クラスメートは誰も助けてくれず、家にも学校にも彼女の居場所は無くなっていた。

 

 当然、このクリスマスイブというイベントの日など、みほには楽しむ余裕すらない。

 

 クリスマスイブのイベントによる世間の活気とは裏腹に、彼女の心はただひたすら暗かった。

 

 

「──どうしたんですか?」

 

 

 そんな彼女に声を掛けてくる人物が居た。

 

 だが、みほは完全に自分の世界へと入ってしまっており、その声に気づかない。

 

 

「あの~」

 

 

「えっ?な、なんですか?」

 

 

 もう1度声を掛けるとようやく気づいたのか、みほはビクッとしながらその人物へと顔を向ける。

 

 そして、みほが顔を向けた先に居たのは1人の同年代くらいの眼鏡を掛けた少年だった。

 

 

「いや、暗そうな顔をしていたから。声を掛けた方が良いんじゃないかなって思って」

 

 

「そ、そうでしたか。すみません!」

 

 

「いや、謝る必要はないよ。僕から勝手に声を掛けたんだし。ところで、君はもしかして家族と喧嘩でもしたの?」

 

 

「い、いえ。そういう訳じゃ、無いんです」

 

 

「じゃあ、帰りたくないとかかな?」

 

 

「・・・」

 

 

 みほはその少年の問いに一瞬言葉に詰まる。

 

 それはある意味で的を射たものであったからだ。

 

 そして、少年はみほの反応にそれが正解だったと確信する。

 

 

「・・・そっか。まあ、それならそんな顔をするのも仕方ないね。しかも、今日はクリスマスイブと来てるから、なおさらだ」

 

 

 少年はみほの気持ちを察するようにそう言った。

 

 

「ねぇ、良かったら悩みを話してくれないかな?僕は赤の他人だけど、だからこそ話せることも有るかもしれないよ」

 

 

 少年はそう言ってみほに悩みを話すことを進めるが、これはなかなか勇気のある行為と言えた。

 

 何故なら、10年前の白騎士事件によって昨今の日本ではISという兵器の普及によって女性優遇制度というものが確立されており、女性にちょっと反抗しただけで逮捕される男性というのもたまに見受けられるような世の中になっているからだ。

 

 特に女性権利団体という組織がそういった“男性の粛清”と言うべき所業を積極的に行っていた。

 

 それは世の中で男性が生きていくことが難しくなったことを意味しているのだが、そういった世の中に必ずしも全ての国が染まっている訳ではなく、例外も存在している。

 

 1つは学園都市。

 

 日本国内に存在する準独立都市であり、この学園都市と“外”の科学力の差は20~30年とも言われている。

 

 この都市は2ヶ月前に起きた第三次世界大戦でロシアと真正面から戦って勝利して、ただでさえ強かった地位を益々強化しており、一部の勢力からはジャジメントの再来とも言われていて警戒する勢力も多い。

 

 2つ目はオオガミグループ。

 

 ジャジメント亡き今となっては世界最大の企業であり、社長のカリスマもあって女尊男卑の空気には染まっていない。

 

 3つ目はNOZAKIグローバルシステム。

 

 かつてジャジメントに敵対していた企業であり、現在ではオオガミグループのライバル会社となる程成長している企業でもある。

 

 こちらの社長は女性であるが、女尊男卑の空気を許してはおらず、それに染まった女性を容赦なく粛清?しているという噂すらあった。

 

 こんな感じに女尊男卑の影響を受けていないところも存在しており、その勢力はかなり大きいのだが、やはり全体的な数で見ると女尊男卑に染まっている人間の方が多いというのも事実だ。

 

 もっとも、2ヶ月前の第三次世界大戦でロシアのISが学園都市の兵器に敗北したことによって、最近ではISの能力に疑問が持たれており、女性優遇制度の見直しの動きなどが男性を中心に広まっていたが、10年もの時間を掛けて固まった体制を崩すのはたった2ヶ月では難しく、また女性権利団体などを初めとした女性至上主義勢力がこういった動きを抑制させていたこともあって、もうしばらくは女性優遇制度は続く見積もりだった。

 

 まあ、そんなわけで日本の大半の地域では女性優位な社会は未だに続いており、もしみほが女尊男卑主義者だった場合、少年の言葉はかなりの問題発言として受け取られる可能性が高かったのだ。

 

 が、幸いなことにみほはそういった人間ではない。

 

 

「ありがとうございます。でも、やっぱり、知らない人には分からない話だと思います」

 

 

 そう、みほの悩みの内容である戦車道は乙女の嗜みと言われていて、ISとは別な意味で男は基本的に関わらない。

 

 その為、みほは少年に話してもおそらく意味はないことだと感じていた。

 

 もっとも、少年は知り合いの女性から戦車道の事を何回か聞いたことがあり、その存在を知っていた(更にその女性というのはみほの小学生時代の友達の姉だったりする)のだが、みほにそれを知るよしはない。

 

 しかし──

 

 

「そうかな?まあ、確かに分からないかもしれない。でも、それは話してみなければ分からないことでもあるんだよ?」

 

 

 話してみなければ分からないというのもまた事実だった。

 

 黙っていても分かって貰えるなどというのは、ただの自惚れでしかないのだから。

 

 

「・・・」

 

 

「──おっと。流石にお節介がすぎたね。ごめん」

 

 

「・・・いえ」

 

 

「じゃあ、僕は行くよ。クリスマスイブとは言え、夜に女の子が出歩くのはあまり良いことじゃないから、気をつけて帰るんだよ」

 

 

「あっ、待ってください」

 

 

 忠告を残し、その場を去ろうとした少年をみほは呼び止める。

 

 

「やっぱり、聞いて貰えませんか?その・・・相談できる友達も居ないので」

 

 

「ああ、構わないよ」

 

 

 みほの言葉にそう返し、少年はみほが座っていなかった方のブランコへと座り、彼女の話を聞く姿勢を取った。

 

 

「ありがとうございます」

 

 

 話を聞いてくれるという少年に、みほは一言礼を言い、自らの事情を話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──なるほど。つまり、君はその決勝戦で仲間を助けたけど、周りはその行為を否定しているって訳だね」

 

 

「・・・はい」

 

 

「う~ん。僕はその場に居ないし、観戦もしていなかったから下手な事は言えないけど、君の行動は間違っていなかったと思うよ」

 

 

「でも、お母さんは・・・」

 

 

「会ったことはないけど、そのお母さんだって本心で言った訳じゃないと思う。ただ周りが君の行為を肯定するような雰囲気じゃなかったから体面を気にしてそう言っただけだよ」

 

 

 少年はみほの母親である西住しほをそう評する。

 

 勿論、実際に会ったことが無いので、これらの少年の評価はあくまで憶測にすぎない。

 

 しかし、少年の気質上、会ったこともない人間の悪口を言うことなど気が引けたし、色々と突っ込みどころがあるとはいえ、曲がりなりにもスポーツである戦車道で本気でそれを口にするのは常識的に考えればあり得ないので、それを言ったのはただの言葉の綾であると少年は判断していた。

 

 もっとも、もし本心から『勝利のためには犠牲はやむを得ない』と言っているのであれば、少年はしほを心底軽蔑していただろう。

 

 曲がりなりにも上の人間が言って良い台詞ではないのだから。

 

 

「そうかな?」

 

 

「きっとそうさ。でも、もし僕の考察が外れていて君の母親が本気でそう言ったのであれば、その母親には見切りを付けた方が良いね」

 

 

「・・・」

 

 

「・・・いや、これは言い過ぎた。忘れてくれ」

 

 

「いえ、間違ってないと思いますので」

 

 

「そ、そう?」

 

 

 少年はみほの反応に少々驚いた。

 

 しほの言葉に無関心という反応ではなく、ショックを受けていることから、苦手ではあっても未だにみほの心中にしほに対する親子の情が存在すると少年は思っている。

 

 その為、流石に先程の親を貶すような発言は失言だったと思っていたのだが、まさかみほ本人から肯定されるとは思っていなかった。

 

 

(これは想像以上に闇が深いな)

 

 

 少年はそう思いながらも、聞いてしまった以上、最後まで付き合うことを決意しつつ、ある問いを行った。

 

 

「まあ、僕の言いたいのは要するにあまり思い詰めちゃいけないよってことだよ。もっとも、学校生活の方は別だろうから、場合によっては転校する必要性も有るかもしれないけど」

 

 

「転校、ですか。でも、戦車道から逃げる私をお母さんが許してくれるかどうか」

 

 

「ダメ元でもやってみる価値はあるさ。それに自分の意思を伝えなければ何も始まらないよ」

 

 

「・・・そうですね」

 

 

 みほは不安そうな表情をしながらも少年の言葉に頷く。

 

 しかし、内心では本当にあの母親に自分の意思を言えるのか不安になった。

 

 小さい頃は子供ゆえの怖いもの知らずな態度によってなんとかしていたが、今同じことをしろと言われれば絶対に無理だと断言できるのだ。

 

 だが、そんな彼女の不安を感じ取った少年は更にこう述べる。

 

 

「頑張ってね。僕は応援することしか出来ないけど、君の心次第ではきっと成功すると思う」

 

 

「はい。相談に乗ってくれてありがとうございました!」

 

 

「うん、じゃあね」

 

 

 そう言って少年は公園から立ち去ろうとする。

 

 しかし、そこでみほが少年の名前を聞いていなかったことを思い出した。

 

 

「あっ、ちょっと待ってください。せめて名前だけでも教えてくれませんか?」

 

 

「名前、か」

 

 

 名前を聞かれた少年は少し悩む。

 

 実は少年にはとある事情があって一時的ではあるものの、学園都市を半ば追放されており、しばらく他人に名前を知られることを隠したいという思惑があった。

 

 

(まあ、ここは九州だし、知られてもそれほど問題はないか)

 

 

 しかし、その友達が居る位置は東京。

 

 加えて言えば、学園都市がわざわざ自分の存在をそれらの友達に言うわけがないし、ここは九州であり、一定の距離が離れているので、自分の名前を言っても問題ないだろうと少年は判断した。

 

 

「じゃあ、改めて自己紹介するね。僕の名前は野比のび太。君は?」

 

 

「黒森峰女学園高等部1年生の西住みほです」

 

 

 こうして、半年後に“大洗の奇蹟”を起こす少女──西住みほと大冒険を始めとした数々の地球の危機を救ってきた少年──野比のび太は邂逅を果たす。

 

 彼らの出会いがこの先の物語に何を及ぼすのか?

 

 それを知る者は現時点では誰も居ない。



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月の開発

◇西暦20B7年 1月21日 夜 月面

 

 月。

 

 それは地球の衛星であり、地球に最も近い星と言われる星であるが、その地球と月の距離はなんと38万キロ。

 

 とてもではないが、まともに行ける距離ではない。

 

 しかし、20世紀中期の西暦1960年代にはアメリカのアポロ計画によって月に人が降り立っている。

 

 また4年ほど前にも、かつて魔球少年と唄われた少年が宇宙飛行士として月よりも遠い火星に降り立っており、月は既にその地球人類がその気になれば何時でも行ける星へと変わっていた。

 

 とは言え、まともに宇宙に進出しようという輩はなかなか居ない。

 

 何故なら、地球は国家統一などがされておらず、宇宙に進出したら進出したで何処が領有するか必ず揉めると思われた為に、各国は進出を躊躇ってしまっているからだ。

 

 いや、11年前にインフィニット・ストラトスが公開された時にも人類は宇宙へと目を向けなかったことから(もっとも、あれは篠ノ乃束のデモンストレーションが悪かったということもあるが)、現在の地球人類はそもそも宇宙に興味がないのかもしれない。

 

 だが、そんな中、そんな流れに逆行するかのように宇宙進出を行っている者も存在した。

 

 

「ここに来てもう2週間か」

 

 

 月面に建てられたとある建物。

 

 それは月に来た人間のための居住施設であり、そこには先月からこの月へとやって来た少年──野比のび太が滞在していた。

 

 この建物の中は学園都市性の重力調整装置によって地球の重力と同じように設定されており、月の重力に作用されることはない(まあ、のび太の場合はそんなことをしなくとも重力の調整が可能だが)。

 

 もっとも、それは建物の中だけであり、月の外に出れば当然、月の重力下で活動することになるのだが、それでも地球と同じ重力で活動できることは、のび太を始めとしたこの月で活動し始めた者達にとって一種の安心感を与えていた。

 

 

「ええ、そうなるわね。まさか、宇宙に来るなんて思いもよらなかったわ」

 

 

 のび太のその呟きに反応した黒髪の美女。

 

 彼女の名前は中須賀エマ。

 

 去年の夏にドイツで出会ったのび太より2つ年上の19歳の女性であり、現在はのび太の補佐を勤めている女性だ。

 

 彼女は本来なら今年から戦車道の名門であるドイツの大学へと進学する予定だったのだが、戦車道の能力に限界を感じていたことと、のび太に着いていってみたいという思いから、大学に進むのを辞めて日本のIT会社であるNOZAKIグローバルシステムへと入社し、現在はのび太の同僚(ただし、のび太の場合は学園都市からの出向)として様々な行動を共にしていた。

 

 現在はのび太の部下という立場になっていたが、それまでの付き合いもあったので、こうして2人で話すときは自然と言葉遣いは砕けている。

 

 ちなみにこの月の開発事業に参加している勢力は学園都市、NOZAKI、オオガミの3つだ。

 

 それ以外の企業は興味を示しているところもあるが、今のところは態度を保留している。

 

 

「お気に召さなかった?」

 

 

「まさか。月に住めるなんてロマンチックなこと、そうそう経験できないわよ」

 

 

「それはありがとう。でも、あと数年もすれば、月は地球人類の新たな居住地となるだろうから、ロマンチックなのは今のうちだね」

 

 

 のび太は苦笑しながらそう言った。

 

 現在、この月の開発には約40人の人間が作業に従事しているが、来月には100人までに増員される予定であり、その後も安全が確認され次第、更に増員される予定だ。

 

 そして、最終的に開発によって居住地が広がれば宇宙移民を募る予定だった。

 

 そうなれば月に人間が住むなど当たり前となるので希少性は失われることとなり、ロマンチックではなくなるだろう。

 

 

「そういうことは言わないものよ?」

 

 

「すいません。気が利かなくて」

 

 

「もう。・・・そう言えば、作りたいって言ってたあれは出来たの?」

 

 

「ああ、あれですか。既に試作機は出来ています」

 

 

 エマの問いにのび太はそう答える。

 

 ちなみにエマの言うあれとはこの月開発の作業のために作られた有人型ロボット──モビルスーツ(通称MS)だ。

 

 実は月面開発に辺り、一番問題視されたのが作業用の機械だった。

 

 それは当然だろう。

 

 住む分には居住地を建てれば問題ないにしろ、本格的な開発を行うためには宇宙空間で作業する必要があるのだから。

 

 そして、この為に開発されたのがISだったのだが、これは女性にしか使えないので真っ先に却下された。

 

 しかし、普通のシャベルカーなどの工作機械ではでこぼこした場所を開発していくのは時間が掛かるので、人型の工作用ロボットが望ましい。

 

 ならば学園都市の駆動鎧を改造して持っていくかという話も出たが、人間サイズだと落盤などが起きてコクピットに穴が開けば宇宙空間では一環の終わりなので、人間サイズで作業しても問題ないくらいに開発されるまでは、もう少し大きい20メートル前後の人型ロボットが欲しいという事になり、それで考案されたのがこのモビルスーツだった。

 

 そして、動力炉だが、これには当初、N2リアクターや核分裂炉という案が挙げられる。

 

 核分裂炉はJAの時の失敗もあって少々問題となったのだが、宇宙空間で作業する分にはあまり問題にはならないという意見もあったので、候補として挙げられたのだ。

 

 ちなみにこの中にこの2つよりも出力が高い核融合炉という選択肢が無かったのは、参加勢力の中でも最先端の科学力を持つ学園都市(と言うより、学園都市は科学力が売りなので、これが追い抜かされたらかなりヤバい)には核融合炉を使った原子力発電所や戦闘艦艇は有るのだが、それがモビルスーツに搭載できる程小型化する研究は未だ基礎段階にすぎない領域でしか無かったからだった。

 

 その為、最初の段階ではN2リアクターか核分裂炉、あるいは大型バッテリーにして、学園都市が核融合炉の研究に成功次第、順次それを投入していくという方針になったのだが、このタイミングでのび太によってある学説が唱えられる。

 

 ミノフスキー物理学。

 

 それは色々あったが、その一つが核融合炉を小型化して高出力化することが可能というものだった。

 

 西暦1979年にトミノフ・Y・ミノフスキーという学者が唱えた理論をそのまま持ってきたのだが、正直、あまりにも革新的すぎるこの理論に学会はかなり懐疑的であったが、これを聞き付けた学園都市の宇宙開発部門はこれを宇宙で試してみようという事になったのだ。

 

 そして、言い出しっぺであるのび太もミノフスキー核融合炉を搭載したMSの開発に携わっており、今回の試作機完成にも貢献していた。

 

 ただ核融合炉に使用するヘリウム3がなかなか手に入らないので、そこら辺に苦慮している状況ではあるのだが。

 

 

「そう。だったら、夢は叶ったというわけね」

 

 

「いや、まだまだですよ。あれはあくまで人が動かす工作機械で、僕の目指しているのは人間のような感情を持ったロボットとそれを受け入れる社会を作ることですから」

 

 

 のび太には夢があった。

 

 かつて世話になったドラえもんのようなロボットを作り、それが受け入れられる社会を作りたいという夢が。

 

 もっとも、のび太の腕は十分に汚れてしまっているので、それが許されるかは分からないが、せめてあの22世紀の未来のような社会にする為の手伝いだけはしようと心に決めていた。

 

 

「・・・そっか。私とは大違いよね」

 

 

 のび太の言葉を聞いて夢である戦車道のプロという立場を諦めたエマは自嘲するようにそう言う。

 

 

「・・・今ならまだ間に合うかもしれませんよ?」

 

 

「いえ、大丈夫。ここで引いて戦車道に戻ったとしても大した選手にはなれないでしょうから」

 

 

「そうですか・・・ああ、そう言えば2ヶ月くらい前に戦車道をやっている女の子に会いましたね。今どうしているかなぁ」

 

 

「へぇ、その子。可愛かったの?」

 

 

「ええ、確かあの時は高校1年生って言っていたから、僕と同い年ですね。ただし、童顔でしたからそれ聞くまで風華ちゃんと同い年くらいかなと思っていたんですけどね」

 

 

 のび太はあの当時の事を思い出しながらそう語る。

 

 ちなみに風華というのはのび太より2つ年下の現在中学2年生の少女であり、九波という男と野崎維織前社長との間に生まれた娘だ。

 

 母親に似ず元気活発な少女であり、のび太とは小学6年生の時に会ってから色々と付き合いがあった。

 

 まあ、だからこそ学園都市からの追放先にNOZAKIが選ばれたとも言えるのだが。

 

 

「ふふっ、それ本人の前で言わない方が良いわよ。多分、怒るでしょうから」

 

 

「ええ、分かっています。流石にそんな馬鹿な事はしませんよ」

 

 

「なら良いけど。ところで、火星に行く話はどうなっているの?」

 

 

 エマは数日後に控えている火星の調査についてのび太に尋ねる。

 

 そう、実は月の開発と平行して火星の開発もまた検討されており、数日後にその前座の為の調査団の派遣が行われる予定だった。

 

 ちなみにそれに使用される宇宙船の動力炉には(船に搭載する動力炉としては)史上初となる核融合炉が搭載されている。

 

 そして、調査団の人員にはのび太とエマが指名されていた。

 

 

「はい、3日後に出発となります」

 

 

「そう。ずいぶん早まったのね」

 

 

「当初の予定よりかなり順調に作業が進んでいるから。急いではいないんでしょうが、上の連中は気が早っているんだよ」

 

 

「急ぎすぎて少し迷惑ね。まあ、その気持ちは分からないでもないけど」

 

 

 エマはそのような感想を抱く。

 

 確かに今の宇宙開発は順調であるし、月から採取した資源なども順次地球に送られ、学園都市では既にそれを基にした新たな科学技術が産まれようとしている。

 

 だが、現場に居る自分達からしてみれば、まだ宇宙に十分に慣れていない状態で更なる遠くの星を調査してこいというのは少々酷な注文でもあった。

 

 

「まあ、そう言わないでよ。一応、仕事ですから」

 

 

「分かっているわ。それより、火星から戻って地上に降りたら私と一度デートしてくれないかしら」

 

 

「それは・・・構いませんけど、僕で良いんですか?」

 

 

「ふふっ、当たり前よ。・・・風華に先を越されるわけにはいかないもの」

 

 

「えっ、今なんて?」

 

 

「なんでもないわ。じゃあ、そういうことでね」

 

 

 エマはそう言って、作業に戻るためにその場から立ち去っていった。

 

 

「なんだったんだ?・・・まあ、エマさんみたいな綺麗な人にデートに誘われるのは名誉なことだけど」

 

 

 のび太はエマが聞いたら顔を真っ赤にするような言葉を呟きつつ、自らも作業に戻るためにその場から立ち去った。



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フォン・ブラウン

◇西暦20B7年 2月22日 昼 フォン・ブラウン村 月面

 

 フォン・ブラウン。

 

 そこは宇宙進出を始めたばかりの1ヶ月前には資源採掘場でしかなかった場所だったが、現在では職員の家族などを受け入れた結果、500人程の人間が月に住む事となり、その集落にはかつて20世紀にロケット開発の名研究者として知られたフォン・ブラウンの名が付けられることとなった。

 

 ちなみにこの村を覆うドームはちょっとやそっとの打撃では壊れないようになっており、仮に戦車の砲弾が直撃しても傷1つ付かない構造になっている。

 

 また仮に穴が空いたとしても、すぐに自動修復機能が働いて修復されるようになっており、よっぽど不幸な人間を除けば真空の空間に晒されるなどという事は無い。

 

 さて、そんなフォン・ブラウンでは現在、ある組織の結成を祝して式典が行われていた。

 

 

「まさか、火星から戻ってすぐにこんなことになるとは思いませんでしたね。少尉殿」

 

 

 式典が終わった直後、エマはからかうように隣に居た上官となった(・・・・・・)のび太に向かってそう言った。

 

 そう、この式典は今後、彼らが所属することとなった組織──宇宙特別軍事組織『エゥーゴ』の結成式典であり、彼らは今日を以て正式にその組織の軍人となり、のび太は少尉、エマはその1つ下の准尉の階級をそれぞれ与えられることとなったのだ。

 

 

「茶化すのは止してくださいよ。今は軍務じゃないんですから」

 

 

「そうね。でも、これからは上司と部下の関係でしょう?気軽に呼び合うわけにはいかないから今のうちにって思って」

 

 

「それならエマさんも頑張って階級を上げれば良いじゃないですか。どうせ1階級しか差がないんですから」

 

 

 のび太はそう言う。

 

 ちなみに彼らの階級に差が着いているのは、エゥーゴの主力となる予定のMSの操縦技術がのび太の方が上であったことと、これまでの功績が称えられての事だった。

 

 

「・・・簡単に言ってくれるわね」

 

 

「すいません。軍隊の階級の事はよく分からなくて」

 

 

 のび太は素直に謝罪する。

 

 実を言うと、こうして軍組織に入隊したのび太も軍隊の階級の事はよく分かっていなかったのだ。

 

 まあ、当たり前だろう。

 

 のび太はそうした人間達とは行動を共にしたり、敵対したことこそ有れども、入隊するということは今まで無かったのだから。

 

 しかし、エマの方は少し違う。

 

 こちらは戦車道というある意味、軍隊じみた組織に居たことで多少なりとも軍隊の階級の事について理解していたのだ。

 

 だからこその愚痴だったのだが、だからと言って謝罪をしたのび太に不満をぶつけ続けるほど子供ではなかった。

 

 

「まあ、良いわ。確かに階級を上げるように努力すればすぐ追い付くからね。・・・それより今更ながら思うんだけど、こんな組織作って大丈夫だったの?確かこのエゥーゴって何処の国の指揮下にも無いんでしょう?」

 

 

 エマは小声でのび太に対して気になっていたことを尋ねる。

 

 そう、このエゥーゴという組織は何処の国の指揮下にもなく、かといって国連の指揮下にもない。

 

 オオガミ、学園都市などが共同で集めた私兵などで構成されているのだ。

 

 まあ、私兵と言っても、各国軍の女尊男卑化に伴って組織を追い出されたり、出ていったりした日本の元自衛隊員や各国の軍人が多く参加していたりするので、そんなに規律に乱れた組織ではないのだが、一歩間違えればテロリスト認定されかねない危険性を孕んでおり、またそうでなくともかなり危険視されることは明白だった。

 

 だが──

 

 

「別にそう問題視することはないと思いますよ?ここは宇宙で他の組織は居ませんし、地上ではティターンズなんて組織も台頭したりしていますから」

 

 

 ティターンズ。

 

 それはエゥーゴが結成される少し前に出来た女性至上主義者で構成された武装組織であり、どうやって資金や人材を調達したのかは知らないが、組織規模で言えばエゥーゴを完全に上回っている。

 

 更に亡国機業残党もこれに参加しているという噂まであり、どう見てもテロ組織に近い組織だったのだが、やはり何らかの枷が付いている訳ではない。

 

 まあ、女性優遇制度を敷いている関係上、着けづらいという事情も存在していたが、どう見ても危険組織であり、これに枷が付けられていない以上、エゥーゴをどうこう言える筋合いはないというのがのび太の感想だった。

 

 また活動拠点もティターンズは地球、エゥーゴは宇宙といった具合にまるで違うのだ。

 

 余程のことがない限り衝突はしないだろうし、今のところ宇宙に進出しているのは大手とはいえ、一部企業と組織、更にはその家族の人々だけな以上、国連が口出ししてくる可能性はあまり無い。

 

 まあ、いずれ宇宙移民が本格的にされれば、国連が介入してくるだろうが。

 

 そして、そうなった場合、当然、国連の統制下にないエゥーゴは危険な武装組織として目を付けられてしまうが、その時はその時で考えるしかない。

 

 

「それにこの組織は対ティターンズではないことはエマさんも知っているでしょう?」

 

 

 そう、この組織は対ティターンズで結成された組織ではない。

 

 対宇宙人の為の組織なのだ。

 

 切っ掛けは先月の火星調査だった。

 

 この場で偶々調査団は漂着した宇宙船を発見し、それが未知の物質で出来ていたことから調査団は宇宙人の存在を認めざるを得なくなってしまったのだ。

 

 そして、この宇宙船を詳しく調べたところ、どうやら戦闘艦であることが判明し、これを聞いた調査団は戦慄せざるを得なかった。

 

 まあ、そうだろう。

 

 それは小説やゲームにあるような宇宙戦争が現実に起こるかもしれない可能性を示唆していたのだから。

 

 そして、現在の地球人類は対宇宙戦を想定した軍備は行っていない。

 

 それに危機感を覚えた宇宙共同開発委員会は来るかもしれない宇宙戦争に備えて、宇宙防衛の為の武力組織を結成することを決定したのだ。

 

 そうして誕生したのが宇宙特別軍事組織『エゥーゴ』だった。

 

 

「・・・まあ、それは分かっているけど、宇宙人なんて本当に居るのかしら?」

 

 

「居ますよ、必ず」

 

 

 エマの疑問に対して、のび太はそう返した。

 

 宇宙人は存在する。

 

 それはのび太の中では確信ではなく、確定された事実でもあった。

 

 まあ、当たり前だ。

 

 実際、のび太はその宇宙人に何度か会ったことがあるし、もしかしたら今も地球の海底には5000年前に地球に移民してきた宇宙人である人魚族が住んでいるのかもしれないのだから。

 

 もっとも、それらの事実は流石にエマといえども言えなかったが。

 

 

「のび太くんは信じているんだ。宇宙人の存在を」

 

 

「ええ、まあ」

 

 

「じゃあ、1つ聞きたいんだけど・・・」

 

 

「なんでしょうか?」

 

 

「仮にその宇宙人達と対立することになったとして、エゥーゴは勝てると思う?」

 

 

「・・・」

 

 

 なかなか答えづらい質問をしてきたエマに、のび太は少々苦々しい顔をする。

 

 そう、実を言うと絶対に勝てるとは保証できないのだ。

 

 これが100年後の22世紀ならば絶対に勝てると断言できるが、残念ながら今の地球文明では宇宙戦闘艦を保有するような文明を持った宇宙人に対抗できるとはとても思えなかった。

 

 それは学園都市の科学力を以てしても変わらない理屈だ。

 

 いや、学園都市ならばもしかしたら宇宙で採掘された資源を基にすることで、宇宙人に対抗出来る程の科学技術を短期間の間に身に付けることは可能かもしれないが、それでも5~10年は掛かる。

 

 つまり、その間に宇宙人の侵略を受ければ地球は瞬く間に陥落してしまう。

 

 過去にのび太やしんのすけが宇宙人の侵略を受けた際にそれを退けられたのは、あくまで偶然が重なったに過ぎないのだ。

 

 

「こう言ってはなんですけど、勝てる・・・とは断言できませんね。まだ人類は宇宙に進出したばかりですから」

 

 

 のび太は曖昧な答えを言うが、実のところ、この見込みは物凄く怪しい。

 

 何故なら、地球に進出したばかりの地球人類が遙々太陽系の外からやって来るような宇宙人に勝てるとはとても思えなかったからだ。

 

 少なくとも、のび太がこれまでに遭遇してきた宇宙人とまともにやり合った場合、重力やサイズの関係でこちら(地球側)が優位に立てるコーヤコーヤやピリカ星などの例外を除けば、科学力の差か、数の暴力の差で負ける可能性が高い。

 

 

「それにこのエゥーゴにしても出来たばかりですし、あと数年はきっちり軍備を整えないと戦いにもならないでしょうね」

 

 

「そうね。たった100人前後の戦力で宇宙戦争を戦え抜けるなんて思えないもの。まあ、それはそれとして宇宙空間でMSなんて活用できるの?」

 

 

「ええ。コアブースターを着けた人型兵器は機動力が高いですから、下手な宇宙戦闘機なんか作って使うよりはよっぽど使い勝手が良いですよ。それに人型兵器には宇宙戦闘機には不可能な接近戦も行えますしね」

 

 

「でも、ミサイルやビット、更にはレーダーによる超長距離射撃などを使う今の時代に接近戦なんて出来るのかしら?」

 

 

「それはミノフスキー粒子を戦場に散布することで対処可能です。散布方法も既に研究されていますし」

 

 

「なら、少しは大丈夫そうね」

 

 

 エマはそう言うが、実際のところは相手にもよるのでなんとも言えない事はのび太はよく知っている。

 

 が、流石にこんなところで反論しても不安を煽るだけになってしまうので、のび太はここで敢えて別の話題を口にすることにした。

 

 

「ところで、エマさん。今度、コロニーが出来るって話は聞いていますか?」

 

 

「えっ?ああ、その事は聞いたことはあるんだけど、コロニーってなんなのかよく分からなかったのよね」

 

 

「簡単に言えば、宇宙空間に人工的に浮かばせた居住地みたいなものですよ。まあ、宇宙ステーションを拡大させて人が住めるような環境にした感じと言えば分かりやすいでしょう」

 

 

「それで、そのコロニーがどうしたの?」

 

 

「ええ、実は我々に対抗する形でEUが独自にコロニーを作って打ち上げるそうなんですが、その中に住まう人間をどうやって集めるのか興味が有りまして、エマさんの意見としてはどう思いますか?」

 

 

「・・・そうね。確かに宇宙移民者を募集と言っても、壁一枚隔てれば死が待っているという印象が強いでしょうからね。現に今、こうして月に住んでいる人達だって、説得するのに相当苦労したって聞くから、なかなかそういう人を募集するのは難しいでしょうね」

 

 

 コロニーは基本的に人間が住んでこそ、その真価を発揮するものだ。

 

 ということは宇宙移民者を集めなくてはいけないのだが、なかなか真空の空間である宇宙に来たいという物好きはなかなか居ない。

 

 海の底に家を建ててそこに住むようなものだからだ。

 

 まあ、もう少し時代が進んで宇宙についての理解が進めば大規模移民も現実的になるのだろうが、それを考慮すると今、コロニーを打ち上げたのは時期尚早だったという見方も出来る。

 

 

「ええ、その通りです。流石に強制移民などという事は無いんでしょうが、移民を計画していることは間違いないですから我々エゥーゴの活動上、コロニーの事についても気を配らなくてはいけませんね」

 

 

「でも、手が足りるかしら?あとEUは別組織だから、エゥーゴの存在も認めるとは限らないし」

 

 

「それについては事前の交渉が必要ですね。・・・まあ、それをするのは僕たちじゃないんですが」

 

 

 のび太はそう言ったものの、何か嫌な予感を感じた。

 

 何かコロニーに纏わるとんでもない事態が起きるのではないか、と。

 

 そして、その予感は後に的中することとなる。



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第1章 グリプス戦役
襲撃


◇西暦20B7年 3月2日 南米 グリプス市

 

 南米の某国に存在する都市グリプス。

 

 かつてはジャジメント、オオガミグループと多少ではあるがNOZAKIグローバルの資本が入っているその町は近年、発展が著しい都市となっている。

 

 それらの企業団体は女尊男卑者から見れば敵そのものだったのだが、南米は先進国と違いISそのものを保有している国と数が少ないことから、女尊男卑の風潮はあまり存在しない地域でもあった。

 

 その為、この都市を女尊男卑の観点から睨む者はほんの極一部の勢力を除けば、全く居ないと言っても過言ではない。

 

 しかし、そんな都市は現在、ある理由から女性至上主義者によって成り立つ武装勢力──ティターンズに目をつけられていた。

 

 

「ここが例の場所か」

 

 

 ティターンズ幹部の一人であり、今回の作戦の指揮を執っている元亡国機業所属の女性──オータムは1つの施設を見ながらそう呟く。

 

 彼女が見ている先の施設。

 

 そこは彼女たちの敵対組織である(と一方的に見なしている)エゥーゴの施設であり、ティターンズ情報部が手に入れた報告によれば、ここでは戦闘用のMSが造られているとの事だった。

 

 

「たくっ、幾ら兵器が足りねえからって、他からわざわざ奪ってそれを使うなんて面倒くせぇ事を指示してくれるな」

 

 

 そう、ティターンズに足りないもの。

 

 それは兵器と人材だ。

 

 一応、資金については各国のティターンズ支持者達からの出資(主に白騎士事件後に女性優遇制度によって高位の地位に着いた政財界の女性達。中には会社や国の税金を横領して出資している者も居る)によって十分すぎる額が揃っているものの、兵器についてはIS以外はあまり良いものは揃っていない。

 

 少なくとも、学園都市なんかと真正面からやり合えば、こちらがゴミのように一蹴されてしまうであろうことは確実なほどの戦力しかなかった。

 

 人材についてはもっと深刻であり、基本的にティターンズという組織は理念があれなので、女性はともかく男性からは例外を除けば徴収できないし、信頼もできない。

 

 それでも豊富な資金力を背景にどうにか頑張って人手を集めたことによって数だけは集められていたが、質についてはお寒い限りだ。

 

 その為、せめて兵器だけでも揃えようとしたのだが、ISこそ比較的揃ったものの、それ以外の兵器で学園都市に対抗できそうな兵器を作る組織は皆エゥーゴ側だった。

 

 ならば、敵対組織であるエゥーゴから兵器を奪えば良いじゃないか。

 

 そのような考えからこの作戦は立案されたのだ。

 

 だが、敵の兵器を奪うというのはある意味普通に襲撃するよりもリスクのある行為であるため、オータムはそのような面倒なことはあまりしたくなかった。

 

 しかし、スコールの命令となると無視するわけにもいかない。

 

 なんとしても成果を持ち帰る必要がある。

 

 

「仕方ねぇ。じゃあ、1つおっ始めるとするか」

 

 

 オータムはそう言いながら、自身が装着しているIS──アラクネⅡを起動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇少し前 

 

 

「うん。調子が良いね。流石ガンダムだ」

 

 

 今まさにティターンズが襲撃しようとしていたエゥーゴの施設では、一旦宇宙から地球へと降りてきたのび太が新型MS──ガンダムの試運転を行っていた。

 

 このガンダムはエゥーゴの量産型主力MSであるジムとは違い、最新技術をふんだんに投入することで装甲、機動性などを高性能化させた特別機だ。

 

 それ故にコストはかなり高く、量産機としての採用は見送られているのだが、のび太としては既存のジムの性能には不満を感じていたので、これくらいが丁度良かった。

 

 なにしろ、ジムではのび太が軽く(・・)動かしただけで間接部が簡単に壊れたりしたのだから。

 

 

「アカリ、そのOSの調子はどう?」

 

 

『結構良いよ。基本的なものはジムと変わらないけど、機体が頑丈だから多少の無理は聞くし』

 

 

 のび太の肩に乗る形でそう答える小さな妖精のような少女。

 

 彼女の名はアカリ。

 

 2年前にのび太が作り出した少女AIである。

 

 元々はロボット工学を学ぶ関係で必要なAI開発の過程で産まれたAIだった。

 

 電子空間は勿論動けるが、このように実体化(と言っても、電子的な存在であるので物理的には存在していないも同然だが)して活動することも可能であり、作られて以来、彼女はのび太を様々な面から支え続けている。

 

 ・・・ちなみに小学生からあったのび太の『人間以外の女の子』にもモテる体質は現在に至っても変わっておらず、アカリもまたのび太の事を好きになっていた。

 

 まあ、それはともかく、彼女は優秀であり、だからこそのび太の乗っていたジムのOSの調節などもやっていたのだが、天才気質な点が存在するのか、少々やりすぎるきらいがあり、現在ののび太に反射速度に合わせるようにOSを調節してしまった結果、操っているジムの間接部分が壊れてしまうなどという現象が続出しまっていた。

 

 普通ならこんなことを続けてしまえば、パイロットを下ろされたりするので、のび太はアカリを叱るべきだったのだが、アカリが自分を思ってやっているのは知っていたし、エゥーゴ代表の九波維織准将の計らいで、こうしてガンダムに乗ることも出来ていたので、彼女に対する不満は全くと言っても良いほど存在していない。

 

 が──

 

 

「あまりやりすぎないでね。この機体はジムとは違って高価なんだから」

 

 

 のび太はそう言いながら、冷や汗を流す。

 

 ジムも決して安い機体ではなく、1機8億円もするのだが、このガンダムは1機20億円であり、ジムの2、5倍の金が掛かった機体だ。

 

 まあ、それでも兆の単位で金が掛かったエヴァンゲリオンと比べれば遥かに安価なのだが、あれはそもそも比べるのが間違いであり、更に言えばエゥーゴにはネルフ程の予算も無ければ人員も無いので、ガンダムですら十分高価な機体だった。  

 

 そして、予算などの問題から今までのジムを壊し続けた時ですら厳しい目を向けられているので、壊した時に仲間から向けられる目は考えただけでも恐ろしい。

 

 

『うん、分かっているよ。流石にノビタがみんなから睨まれるところはもう見たくないから。でも──』

 

 

「でも?」

 

 

『もう少し駆動系を強化して貰えれば、のび太の反射速度に耐えられるんだけどなぁ』

 

 

「あはは・・・」

 

 

 のび太はアカリの言葉に苦笑いをする。

 

 それはそうだろう。

 

 超能力を使っていない状態にも関わらず、自分の反射神経にMSが耐えられないと判定されているのだから。

 

 

(僕の体は至って普通の人間の筈なんだけどなぁ)

 

 

 自分はサイボーグでもアンドロイドでもない。

 

 いや、それどころか小学生時代は身体能力が女の子にすら負けている情けない少年に過ぎなかった。

 

 にも関わらず、普通の人間ではあり得ないような反射神経を持っているなどと言われれば、色々と自分は本当に人間なのだろうかと疑いたくなる。

 

 そんなことを考えたのび太だったが、あまり考えても面白くない話なので、今は目の前の試験運転が重要と頭を切り替えることにした。

 

 

「・・・さて、お喋りはここまでにしよう。それでアカリ、ちゃんと実戦に投入できるくらいには動くんだね?」

 

 

『それは問題ないと思う。ただ、さっきも言った通り、ノビタが本気を出して操縦したら数分が耐久限界になると思う』

 

 

「なるほど。なら、その点は実戦で気を付けるとして、あとはビームサーベルとあっちにあるビームライフルの試験を行って──」

 

 

 

ドッゴオオオオオン

 

 

 

 のび太が何かを言い掛けた時、施設の何処かから轟音が鳴り響いた。

 

 

「なんだ?事故か、それとも襲撃か?」

 

 

 咄嗟に見ただけではどちらなのかは、流石の実戦経験豊富なのび太も分からない。

 

 だが、どちらにしてもこのままMSで向かう方が効率的だ。

 

 そう考えて機体を動かそうとするのび太だったが、そこでメインモニターに入ってきた存在によって、その動きは一旦止められることとなった。

 

 

「なっ!ISだと!?」

 

 

 ガンダムに備え付けられたメインモニターに捉えられた存在──それは何処からどう見てもISだった。

 

 同時にそれを見ただけで襲撃者の正体はだいたい検討がつく。

 

 

「ティターンズか。よりによってISを出してくるとはな。・・・これは少し不味い」

 

 

 MSは宇宙空間などではコアブースターなどを上手く使うことで戦闘機以上の機動性を発揮でき、事実上、無敵の機動兵器となるとのび太は確信していたが、地上となるとそうはいかない。

 

 重力という宇宙空間にはない制限が掛かるし、でかい分的になりやすいからだ。

 

 更に言えば、そもそもMSのコアブースターは飛行機と違って常に飛ぶように出来ておらず、無重力の宇宙空間でMSを縦横無尽に動かす補助装置のようなものになっており、地上戦では大して役に立たない。

 

 ・・・つまり、MSは宇宙空間では無敵を誇れても、地上戦ではそれほど優位に立てない代物だったのだ。

 

 更に装甲も戦車砲程度の威力のものならば防げるが、流石にレールガンや高出力レーザーのようなものが出てくると不味い。

 

 まあ、このガンダムタイプならばレールガンやレーザーを相手にしてもある程度の威力のものまでならば防げるのだが、目の前に居るISは速度こそ現代戦闘機並みでしか無いが、この地球の重力下でも縦横無尽に動けるような機動性を持っており、流石にガンダムタイプとは言え、不利な点は否めなかった。

 

 

(どうする?降りてそのまま戦うか?)

 

 

 いっそのこと、ここでガンダムを降りて従来の超能力でISを撃破するかどうか迷うのび太。

 

 確かにレベル5であるのび太の能力を使えば、ISはあっという間に殲滅出来るだろう。

 

 だが、それは一時的手とは言え、ガンダムをここに置き去りにするということでもある。

 

 無いとは思うが、万が一、奪われるような事態が起きたら不味い。

 

 

『どうするの?ノビタ』

 

 

「・・・取り敢えず、このまま行こう。地上におけるMSによる対IS戦。やりたくはないけど、いずれ誰かがデータを取らなきゃならないからね。万が一、ダメなようだったら超能力で何とかするよ」

 

 

『オッケー。じゃあ、私、しっかりサポートするね!』

 

 

「頼んだよ」

 

 

 のび太はそう言うと、ガンダムの背中のパックパックからビームサーベルを引き抜くと、我が物顔で暴れまわるISに向かって機体を動かしていった。



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開幕

◇西暦20B7年 3月2日 昼 グリプス市

 

 突然だが、ガンダムは18メートルもあり巨大。

 

 そうなると、当然ながらその重量は重く、一歩一歩進むごとに足踏みの音と少しばかりの地響きが起こる。

 

 もっとも、空中に居るオータムにはその地響きは感じられなかったが、モビルスーツが大地を踏みしめる際の轟音は聞こえてきた為に彼女は咄嗟にそちらを向いた。

 

 

「はっ。向かってこようってか?あんなデカブツじゃ幾ら早く動いても避けられるぜ!!」

 

 

 オータムはそう言って嘲笑う。

 

 それは漫画やアニメなどでよくあるテンプレ的な慢心の仕方であったが、それでも彼女の考察は間違ってはいない。

 

 何故ならば、このISという兵器は基本的に速度は現代戦闘機(約マッハ2)並みであり、機動力に関しては現代戦闘機とは比較にすらならないからだ。

 

 去年の第三次世界大戦では学園都市の戦闘機であるHsF─00に敗れてしまったが、あれは7000キロ(約マッハ5、7)オーバーという圧倒的速度と常識破りを通り越したもはやオカルトじみた運動性能によって封殺されたのであって、学園都市以外では依然として最強の兵器として君臨している。

 

 対して、モビルスーツは宇宙空間という無重力地帯ではかなり有用であり、ISにも勝てるかもしれないと見なされてはいるが、重力の存在する地上ではただの陸戦兵器。

 

 一応、バックパックにあるスラスターを使用することで短距離ならば飛べるが、それではとてもではないがISの機動にはついていけない。

 

 それはMSの中でも最高と言われる機動力を持つガンダムでも例外では無かった。

 

 

「さあ、掛かってこいや!出来るものならな!!ギャハハハハ!」

 

 

 オータムはそう言いながらも迎撃体制を整える。

 

 それは油断しているにしては見事な対応であったが、この油断が彼女の命取りとなった。

 

 そして、ガンダムはまだ届く距離でないにも関わらず、ビームサーベルを思いっきり横に振る。

 

 すると──

 

 

「─────は?」

 

 

 次の瞬間、オータムの両脚はビームサーベルの高熱によって焼かれ、完全に焼失する。

 

 ・・・前述したようにガンダムは所詮MS。

 

 加えて、ビームサーベルは振る前に最大までその刀身は伸ばされており、本来ならまだ刀身が届かない距離で剣を横に振れば、当然の事ながらこうはならなかった。

 

 そう、乗っているのが普通の人間であり(・・・・・・・・)、尚且つ空間を自由自在に操る(・・・・・・・・・・)能力者でもなければ(・・・・・・・・・)

 

 彼女がダメージを受けた原理は簡単だ。

 

 ビームサーベルの刀身をワープの原理、ドラえもんの道具で例えるならば“とりよせバッグ”や“どこでもドア”などのように空間と空間を繋げてそこに至るまでの道をショートカットさせたのだ。

 

 そして、彼女は通常の空間で間合いを見てしまい、このショートカットさせた空間を計算に入れていなかった。

 

 まあ、これについては彼女に責められる要素など無い。

 

 未熟、熟練を問わずに常識を弁えている戦闘員ならば空間をショートカットさせる術など計算に入れないのだから。

 

 いや、そもそも彼らの世界の中では超能力すら信じがたいものであり、それで戦うなど普通なら(・・・・)あり得ない。

 

 だが、彼女にとって不幸であったのは、のび太がその“普通”に当てはまらない人間だったことだ。

 

 だからこそ、彼女は何が起きたのか分からないまま、地面に向けて落下していく。

 

 

「・・・呆気なかったな」

 

 

 それを見たのび太は拍子抜けすると共にビームサーベルの威力に驚いていた。

 

 冷静に考えたらこのビームサーベルは対MS戦をも想定しており、全長20メートル前後の頑丈なMSを撃破することを前提に造られている兵器が精々2、3メートルにすぎないISを撃破することはその質量差から見て容易だったのだが、仮にもISは外の世界では世界最強と吟われた兵器。

 

 特に絶対防御と言われるエネルギーシールド?はその名前相応の防御力があると思っていたので、まさかビームサーベルの一振りで撃破出来るとはのび太も思っていなかったのだ。

 

 

「まあいいや。早く始末できる越したことはないし。それより、さっきは少しミスっちゃったな」

 

 

 先程の一撃はオータムの胴体部を狙ったのだが、結果は足の部分を少し掠めただけだった。

 

 その事を反省しつつ、のび太はビームサーベルを振り上げ、オータムに止めを差すために振り下ろそうとする。

 

 だが、その時──

 

 

『──少尉。野比少尉、応答してください!!」

 

 

「どうした?」

 

 

 管制塔からの通信に、のび太は一旦ガンダムの振り上げた手を停止させ、慌てた様子の管制官の話を聞く。

 

 

『緊急事態です!第三倉庫に保管されていたジムの数機が勝手に動き出しています!!しかも、こちらの通信に答える様子がありません!!』

 

 

「なに?」

 

 

 その連絡でのび太はだいたいの敵の狙いを理解する。

 

 

(そうか。この襲撃はあくまで陽動。本命はMSを手に入れることか)

 

 

 のび太はそう推測する。

 

 なにしろ、この基地にはMS以外にはこれといったものはない。

 

 そんなところに無駄に襲撃を掛けているというよりは、最初からMSを狙っていたと考える方が自然な考え方でもある。

 

 

(もしかしたら、ガンダムの情報も知っていて狙っていたのかもしれないな。やれやれ油断も隙もない)

 

 

 そんなことをのび太が思っていた時、今度はアカリがある連絡をしてきた。

 

 

『大変だよ!この施設のメインコンピューターがハッキングを受けてる!!』

 

 

「・・・これで確定だね。やっぱり向こうはMSを狙っているか。防ぐことは出来そう?」

 

 

『難しいよ。パソコンの性能が学園都市製の物より低い上に向こうのハッキングレベルもかなり凄くて・・・初動も遅れちゃったし』

 

 

「分かった。じゃあ、最重要な情報から順に消去して相手に見せないようにしてくれ。今後のMS開発に支障が出るかもしれないけど、見られるよりはましだ。その間に僕はジムを盗んだ人達を始末しにいく」

 

 

『分かったよ。気をつけてね』

 

 

 そう言ってアカリは通信を切り、機密情報を隠滅する為に電脳空間へと潜っていった。

 

 それを見届けた後、のび太は先程落とされたオータムを一瞥する。

 

 

「・・・命拾いしたね。でも、次はこうはいかないよ」

 

 

 のび太はそう言うと、盗まれたというジムに対処するためにガンダムを操って第三倉庫へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇西暦20B7年 3月2日 夜 某所

 

 

「派手にやられたねぇ」

 

 

 束はそう言いながら、パソコンのスクリーンに映された映像を見る。

 

 そして、その画面の先にはホルマリンの中で治療らしきものを受けているオータムの姿があったが、その両足は存在していない。

 

 昼に行ったエゥーゴ施設の制圧は結果的には一部を除いて失敗してしまったのだ。

 

 暴れている途中で突如現れたガンダムにオータムは陽動と何時もの遊びも兼ねて戦闘状態に入ったのだが、この時、ビームサーベルの影響範囲と火力を見誤ってしまい、ギリギリのところでかわしたのだが、そのビームサーベルはISのエネルギーシールドと絶対防御を通り抜ける(・・・・・)形でオータムの両足の部分を掠め、その2つの足を断ち切った。

 

 そして、そのままであれば通常なら止めを刺す筈なのだが、襲撃部隊の別動隊であるMS強奪部隊の存在に途中で気づいたのか、地面に這いつくばるオータムを無視してガンダムはそちらに向かい、更にはその別動隊が奪ったジムが撃破されてしまったことで、本命であるMS強奪も失敗してしまったのだ。

 

 これは明らかにティターンズの負け戦だった。

 

 それを自覚しているティターンズの幹部であるスコールは、組織の長である(・・・・・・・)束の言葉に少し顔をひきつらせたが、すぐにその表情を戻してこう言う。

 

 

「・・・確かにその通りだけど、何も成果が無かった訳じゃないわよ。MSのデータはちゃんと手に入れた」

 

 

 そう、別動隊は2つ存在し、1つがMSを奪う役目、もう1つがMSのデータを奪う役目を持っていた。

 

 MSを強奪する部隊の方は失敗した上に全滅してしまったが、彼らがやられている間にMSのデータを奪う役目を持った部隊はデータを回収した上に撤退にも成功していたのだ。

 

 だが──

 

 

「う~ん。でも、残念だけどガンダムのデータは完全に消えちゃってるね。ジムの方はプロテクトが間に合ったけど、それでも3割近くが消えちゃってる」

 

 

 入手したデータは盗まれたことに気づいたアカリが対応した為、既にのび太の持っていたガンダムのデータは名前と機体の表面だけしか残っていない有り様だったし、ジムの方も3割近くが消失していた。

 

 これでは完全に真似するのは不可能だろう。

 

 

「それじゃあ、この作戦は完全に失敗だったということ?」

 

 

「いや、そんなことないよ。これで限定的だけど、MSは製造できる。ただし、核融合炉の方は無理そうだね。そっちから優先的に消されちゃったから」

 

 

「あなたが出し抜かれるなんて、向こうにも優秀なハッカーが居るようね」

 

 

「それはどうかな。必ずしも相手の存在が人間だとは限らないからねぇ。まあいいや。それはそれとして、今後の予定を話そっか」

 

 

「・・・ええ、その方が良さそうね」

 

 

 束の言葉にスコールが頷き、彼女らはティターンズの方針について話し合った。

 

 

「次の目標としては各国──特にアメリカの掌握といきたいんだけど、今のティターンズの状態じゃあまり保証は出来ないわね」

 

 

 スコールはそう言って、計画の根幹であるティターンズの問題点を指摘する。

 

 既に世界最大の経済大国たるアメリカの政権奪取についての計画は立てているのだが、それがあまりにも強引なものであるために大規模な反政府勢力が出来上がる可能性は否定できず、下手をすれば州ごと反政府勢力となってしまう可能性すらあった。

 

 そうなってしまうとアメリカを取る旨味は半減してしまうし、逆に泥沼に嵌まってしまう可能性もあるので、スコールとしてはどうにか穏便にアメリカという国を獲りたかったのだが、その方法がなかなか思いつかないのだ。

 

 いや、思い付くには思いつくのだが、それは向こうがなにもしてこないこと前提になっており、現実的な案にはなっていないというのが本当のところだった。

 

 

「ふむ、なるほど。要するにアメリカを取れればだいぶこっちが有利になるという訳なんだよね?」

 

 

「まあ、そうね。でも、向こうだってバカじゃないからそんな簡単には・・・」

 

 

「大丈夫だよ。方法なら有るからね」

 

 

 そう言いながら笑う束の顔は酷く歪んでおり、これまで多くの修羅場を潜り抜けてきたスコールは彼女の浮かべた笑顔に身震いを感じざるを得なかった。

 

 

(これは・・・組む人間を間違えたかしら?)

 

 

 そう思うスコールであったが、今さら後には引けないということは彼女自身がよく知っており、こうなった以上、前に進むしか選択肢はなかった。

 

 ──そして、後に世界は思い知る。

 

 今回のグリプス市のエゥーゴ施設襲撃事件を以て、後にグリプス戦役と呼ばれることになる戦いが始まったということを。



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戦いへの序章

現在のそれぞれの登場人物の階級

野比のび太 16歳 中尉(先日のグリプス市の一件で一階級昇進した)

中須賀エマ 18歳 准尉


◇西暦20B7年 3月8日 月 フォン・ブラウン

 

 

「それは災難だったわね」

 

 

 フォン・ブラウンののび太の自室。

 

 そこではエマが先日の功績で中尉へと昇進したのび太に対してグリプス市での一件についての労いの言葉を掛けていた。

 

 ちなみに彼らの体は布団に包まれてはいたが、それを剥けば一糸纏わぬ姿となっており、ある程度の年齢の者ならば先程まで彼らが何をしていたのか察しがつくだろう。

 

 

「まあ、ね。でも、これでエゥーゴとティターンズは本格的な戦いが始まる」

 

 

「それは仕方ないんじゃないかしら。元々、何故かは知らないけど向こうはこちらを敵視してたし」

 

 

 そう、ティターンズがエゥーゴを敵視しているのは世間にはよく知られている。

 

 もっとも、エゥーゴは前述したように宇宙が活動拠点であるし、宇宙で活動している他の武力組織はないので恨まれるようなことをした覚えも、恨まれる要素も無い筈なのだが、何故ティターンズがエゥーゴを敵視しているのかはエゥーゴの人間は誰も知らなかったのだが。

 

 

「加えて、うちの上層部もやる気みたいだしね」

 

 

 エマの言う通り、エゥーゴの人員は既に結成当初の100人から僅か9日の間に倍の200人にまで増員されており、今のところは増員の予定はあっても縮小の予定はない。

 

 どう考えてもティターンズの売った喧嘩を全力で買おうとしているのは明らかだった。

 

 

「・・・でも、そうなるとこの戦いは長引きそうだね」

 

 

「どうして?」

 

 

「エゥーゴは地上に拠点を持ってないし、ティターンズも宇宙に拠点を持っていないからさ」

 

 

 そう、今回の戦いはエゥーゴは宇宙、ティターンズは地球といった感じに戦いの土俵が違う。

 

 加えて、エゥーゴはティターンズの拠点の正確な位置を知らないし、ティターンズはエゥーゴの位置こそ分かっているが、そこに至るまでの手段が確保できていない。

 

 いや、正確には無理をすれば作れるのかもしれないが、それが失敗したら完全に終わることになる可能性が高いだろう。

 

 つまり、お互いに決定打が無いのだ。

 

 幾ら現代戦は機動力対機動力の戦いで、短期間に広大な領土を占領できるようになったといっても、そういった決め手にかけるのであれば戦いが長引く可能性も高くなる。

 

 

「まっ、幾ら長引くと言っても所詮は非正規戦の小規模な戦いですよ。そんなド派手にやる訳じゃないでしょう」

 

 

 のび太は今回の戦いは非正規戦になると見込んでいた。

 

 何故なら、エゥーゴの人員は現時点ではたった200人であり、装備はともかく人員の規模としては“ちょっと大きいマフィア”程度の数しか居ないのだ。

 

 ティターンズにどれ程の兵力があるのかは知らないが、それでも一国の軍隊と真正面から殴り合える程の戦力が保有していないと見なしており、この戦いは第三次世界大戦のような特定の場所が戦場となる大きな戦いではなく、様々な場所が戦場となる小規模な戦いが主流になると考えるのは当然の帰結だった。

 

 

「・・・そうだと良いんだけどね」

 

 

「何か心配事でも?」

 

 

「のび太君はティターンズを支持者を知ってるわよね?」

 

 

「ええ。確か女性権利団体などを始めとした女性至上主義者の集団ですよね」

 

 

「そう。そして、その人達が現在の先進国の大半の政治を担っている」

 

 

 エマの言ったことは周知の事実だ。

 

 11年前の白騎士事件以降、各国は世界最強の兵器と見なしたISを取り入れたが、その過程で女性優遇制度という女性有利な制度がいつの間にか誕生しており、政治や経済などを始めとした世の中の制度は男性から女性へと変わった。

 

 もっとも、影響を受けなかったところもあり、その代表例がジャジメントやゼーレ、ネルフ、そして、学園都市だったが、それでも世の中の社会制度は女性に優位なものへと変わり、今は先進国の政治家の6、7割が女性と言われるほどだ。

 

 まあ、そんな男性にとって厳しい環境の中でもアメリカのロベルト・カッツェは大統領に就任したわけだが、あれが例外中の例外であるのは言うまでもない。

 

 

「ええ、そうでしたね。でも、今は落ち目でしょう?」

 

 

 だが、その女性権利団体の人間たちも現在は落ち目だというのがのび太の評価だ。

 

 当然だろう。

 

 彼女たちの象徴であるISは第三次世界大戦で学園都市の兵器相手にコテンパンにやられたのだから。

 

 白騎士事件で女性が優位に立つように世の中が急速に変わってしまったのと同様、女性至上主義は急速に鳴りを潜めるようになる。

 

 少なくとものび太はそう思っていたのだが、エマの考えは少し違った。

 

 

「確かに落ち目になっているでしょうね。でも、急速にという訳ではないのよ」

 

 

「何故ですか?」

 

 

「簡単よ。女性至上主義者の最大の敵である学園都市の体制が安定しているとは思われていないからよ」

 

 

 エマにそう言われてのび太は思い出す。

 

 確かに第三次世界大戦の翌月に学園都市は反学園都市サイエンスガーディアンという反対勢力を産み出してしまった(もっとも、僅か3日で鎮圧されたが)し、12月にはアレイスターの処置によって中核技術はほとんど奪われなかったとはいえ、学園都市も一度崩壊してしまっている。

 

 更にクリスマスに2代目の統括理事長である一方通行が主導して行ったオペレーション・ハンドガフの失敗によって、警備員・暗部が共に大打撃を受けてしまった為に学園都市の保安・警備体制に若干の綻びも生じてしまっており、とてもではないが学園都市の体制が安定しているとは言えない状態になっていた。

 

 

「・・・いや、それでも男性側はこの期を逃さず、自分達の地位を取り戻すことを選ぶでしょう。たった10年とはいえ虐げられていた訳なんですから」

 

 

 のび太も男だ。

 

 それ故に学園都市時代に学園都市の外で活動している時は窮屈だと感じる時もあったし、活動拠点を頻繁に移していたのび太でさえそれなのだから、常に外に住んでいる人間は更に窮屈な思いを抱いているだろう。

 

 そういった人間がISの敗北を機に立場を取り戻そうとするのは当然と言えば当然の流れだった。

 

 そして、それは政治家などでも変わらない理屈だろう。

 

 そう思っていたのび太だったが、次のエマの言葉にその考えは甘かったという事を思い知らされる事となる。

 

 

「確かにそうね。でも、可笑しいと思わない?第三次世界大戦の後、なぜ女性至上主義者達がすぐにでも排斥されなかったのか」

 

 

「・・・そう言えば、そうでしたね」

 

 

 のび太はエマに指摘されて思い出す。

 

 第三次世界大戦の後、敗戦国となったロシアでは女性至上主義者の排斥が行われており、のび太もそれを見ていたが故に忘れていたが、他の国ではそういった行動は無かったように思えた。

 

 

(・・・・・・待てよ。女性至上主義者が排斥されるということは学園都市が勝ったという事が証明されてしまう。それをすると、学園都市の影響は強まる)

 

 

 そこまで思い至ったところで、だいたいの概容がのび太にも見えてきた。

 

 

「・・・なるほど、魔術サイドの影響ですか」

 

 

 そう、実は第三次世界大戦後に女性至上主義者が排斥が進まなかったのは魔術サイドが大きく関わっていた。

 

 ロシア成教は結果的に学園都市に真正面から喧嘩を売ってしまった上に敗戦、更には学園都市とアメリカの支援無しでは国の復興が滞ってしまうという事でそれに敵対しようとする女性至上主義者達の排斥は積極的に行われたが、残る2つであるローマ正教とイギリス清教に関しては事情が違う。

 

 ローマ正教は確かに学園都市に敵対はしていた上に結果的に第三次世界大戦の敗者となってしまった訳だが、ロシア成教と違って直接的に負けたわけではないし、イギリス清教も第三次世界大戦では学園都市と共闘関係を結んでいたとはいえ、その後の関係は良好とはとても言えなかったので、この2つの勢力は学園都市の影響力が広まることをよしとしなかったのだ。

 

 その為、敢えて学園都市に敵対的な女性至上主義者の地位をそのままにすることで学園都市の影響力が広がるのを防いでいた。

 

 

「ええ、そうよ。だからこそ、ティターンズという組織の危険性はとても高まる」

 

 

 その言葉は道理だった。

 

 なにしろ、ティターンズは女性至上主義者を代表する武力団体のような立ち位置だ。

 

 そんな中にローマ正教やイギリス清教の黙認を得た女性至上主義者達が絡んでくるとなると、ティターンズ壊滅は困難となる可能性が高い。

 

 

「まったく。相変わらず忌々しい連中ですね」

 

 

 のび太は魔術サイドの人間達に向けて吐き捨てるようにそう言った。

 

 実はのび太は四年前のとある一件から魔術そのものを憎悪しており、それ故にアレイスターの同志となった経緯がある。

 

 そして、イギリス決戦後、のび太は旧体制派が一掃されるであろう事を見越して学園都市から去っており、今はこうしてエゥーゴに所属しているが、魔術サイドの撲滅を諦めた訳ではなかった。

 

 

「まあ、だとしても国家を盛大に巻き込む規模の争乱になることはないでしょう。それこそアメリカが正式にティターンズを支持でもしない限りは」

 

 

 現在の世界は技術こそ学園都市が主流だが、経済は依然としてアメリカが中心点だ。

 

 それにローマ正教やイギリス清教も以前よりは大分発言力を落としているため、そう大っぴらにティターンズ支持を表明したりすることは難しいだろう。

 

 だからこそ、幾らティターンズがよっぽど狂気的な行動を取ったり、アメリカがティターンズ支持を表明しない限りは戦いは大規模にはならないとのび太は見なしていた。

 

 

「・・・そうね」

 

 

「ええ。じゃあ、そろそろ着替えましょうか。今日も訓練が有りますし」

 

 

 そう言って今日の訓練に備えて身支度を整えようとする2人。

 

 ──だが、彼らは知らない。

 

 この時の会話が盛大なフラグであったことを。



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