トロピカル〜ジュ!プリキュア PICARO (シロX)
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さんごルート
IF I LOVE YOU


第36話でさんごとくっ付いたらのその後のIFルート

割と適当に話は書いて行きます。サブヒロインとはいえ優遇が凄いんよ

ではスタート



「さんご〜、帝君来てるわよ」

 

「うん、もう少しだけ!」

 

いつもと変わらない服装、髪型をしているがそれ以上に気を遣っているさんご

 

鏡と睨めっこして数十分

 

例の件が終わって告白してそれが上手く行った後日

 

帝とさんごは少し早いが親密な関係性を築きあげた

 

「よし!行ってきます!」

 

玄関を飛び出すと、スマホで時間を確認していた帝がそこには居た

 

「遅くなってごめんね!」

 

「ううん、さんごならいつまでも待つよ」

 

「次からは余裕を持ってします!」

 

「可愛いな」

 

ビシっと敬礼をするさんごを見てそう言葉を溢した

 

「じゃあ行こうか」

 

「うん!」

 

そう、今日は2人でお出掛け──デートなのだ

 

 

 

 

 

////////

 

デートとは言ったものの、変わり映えしない街中を歩いてく。ただそれだけだった

 

それでもさんごは嬉しかった

 

ただ、歩くだけ

 

ただ、一緒に居るだけ

 

ただ、隣に居てくれるだけで満足なのだ

 

「んふふ〜!」

 

「何変な笑い方してるんだ?」

 

「え、変な笑い方してた!?」

 

自分の頬を触って慌てて確認する

 

「変な笑い方でもさんごは可愛いけどな」

 

「それどういう意味?」

 

ジト目で見つめてくるが、そんな事も気にせず帝は指を絡めて手を繋ぐ

 

「早く行こう。今日という日は今しかないからな!」

 

「はぐらさかないでよ!」

 

 

 

「帝君どう?」

 

「さんごに似合ってるよ」

 

 

「最近女子の間で話題になってるらしいよ。一緒に食べてみよう!」

 

「うん!」

 

 

「可愛い…!」

 

「熊のキーホルダーね。ペアで買うか」

 

 

 

「ありがとう帝君。後でお金返すね」

 

「そんなの要らないよ。俺がお揃いで欲しかったから」

 

「お揃い…フフッ///」

 

そんなウキウキなさんごは少し調子に乗って誘ってみる

 

「ねぇ帝君、このまま家に来ない?」

 

「いいのか?」

 

「2人っきりがいいの。ダメ?」

 

「ん゛ん゛ッ!!」

 

ウルウルとした上目遣いで、そう頼まれて言われて帝は悶えるしかない

 

「変な声が出たけど大丈夫?」

 

「破壊力抜群だな…」

 

「?」

 

 

 

 

 

////////

 

「お邪魔します」

 

「お邪魔するなら帰ってね」

 

「あいよ〜…ってさんご」

 

「一度言ってみたかったんだ〜」

 

さんごらしからぬ冗談。上機嫌な証拠だ

 

「ところで何するんだ?」

 

「う〜ん…何もしないよ」

 

「ここに来た理由よ…」

 

「さっきも言ったけど、また理由聞きたい?」

 

さんごは帝に近付いて耳元で囁いた

 

「帝君と、2人っきり(・・・・・)が良かったの」

 

息がかかり、こそばゆい感じがしてくる。それに心地良い香りも

 

「…香水つけてたの?」

 

「もう、今更?」

 

朝からずっと言ってに居たのに、気付くのが遅過ぎると怒ってしまった

 

(それでも可愛い)

 

「それよりももっと、その……くっつかない?」

 

そう聞くも実際の距離は近い。ほぼ肌と肌が触れ合っている

 

それでも尚くっつきたいとなると

 

「んっ」

 

抱き付く以外ない

 

自分のものであるかの様に匂いをつける様にして頬擦りをする

 

ほのかに漂うさんごの香りが鼻をくすぶる

 

抱き付かれて少しすると、安心感があったのかさんごはウトウトし始めた

 

「眠たいのか?」

 

「うん、ちょっと…」

 

「なら寝ろよ」

 

「帝君が添い寝してくれたら寝る」

 

溜め息は出るものの、今更添い寝程度で動揺する程やわではない

 

「分かったよ。それにしても久し振りだな」

 

「ぅ、ん…そうだね……」

 

少しずつ声に力が無くなり最終的に、目を瞑っては体を預け、寝息をたてるのであった

 

引っ付いて寝てる為、帝も一緒に引っ付いてベッドに寝転がる

 

髪を優しく撫で、帝もそのままうたた寝をするのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絡ませて繋ぐ手は、起き上がるまで決して離しはしなかった




こんな感じで短いです

息抜き程度に書き続けますのでご理解の方宜しくお願いします

ここまでの拝読ありがとうございました


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IF YES or NO

こんな内容しか書けない私を許して下さい

ではスタート


「お母さんコレっている?」

 

「それは捨てちゃって構わないわ」

 

「は〜い」

 

さんごは今、みゆきと共に部屋の整理整頓をしていた

 

いる物と要らない物の仕分けはかれこれ30分は経とうとしていた

 

「ゴミ袋持って来るわ」

 

「うん」

 

さんごは戻って来るまで黙々と作業をしていたが、ある物を見つけて手が止まる

 

「何コレ?枕カバーかな?」

 

さんごが両手で広げるソレは、表と裏に「YES」「 NO」とプリントされていた

 

(意味は分からないけど可愛いから帝君に見せよ!)

 

 

 

 

 

////////

 

部屋の整理が終わると、早速帝の部屋へと向かう

 

「帝君」

 

「どうしたさんご?ソレ何だ?」

 

「じゃ〜ん!可愛いよね!」

 

先程の枕カバーを大きく広げて見せる

 

「何そのダサい枕カバー」

 

「え、ダサい…」

 

「だ、ダサ可愛いってやつだよ!」

 

一瞬潤んだ瞳をされたので慌てて訂正し直した

 

「それにしてもコレって『YES NO枕』ってやつじゃないか?」

 

「帝君知ってるの?」

 

「名前だけなら」

 

帝はこの機にその意味を調べようとスマホを使い始める

 

さんごはというと、勝手に帝の枕カバーを外して入れ替えようとしていた

 

「え〜と何々……うぇ!?」

 

「何か分かったの?」

 

「分かったは分かったが……ソレをこっちに見せるな」

 

意味をようやく理解した帝は、YESの文字を見せながら抱くさんごに文句を言う

 

「むぅ…この枕カバーの文字の意味は?」

 

「見たら絶対後悔するぞ」

 

「いいから!」

 

帝はさんごに手渡してまじまじと読み始める

 

「意味は………ッ!!?」

 

内容を見た時、さんごの頭から火が噴いた

 

「分かったか?だから枕をこっちに見せるな」

 

「え…ち、違うから!!わたしそんな意味で持ってきたんじゃないから〜〜!!」

 

YESの文字を見せ続けるさんごは慌てて、持って来た事すら全力で否定する

 

しかしその後、何故か何度もYESをチラつかせながらベッドに横になるさんごだった

 

「チラッ…///」

 

「何だよ…」

 

「な、何が?」

 

「さっきからチラつかせてよ。お前……誘ってんのか?」

 

「ブッ!!」

 

今度は吹き出してしまう

 

「帝君のエッチ!!」

 

「YESを何度もこっちに向けている人に言われたくないな…」

 

「帝君だって!」

 

さんごは帝の手を引いて引き寄せる

 

「いつもいつもわたしにエッチな事する癖に…帝君、自分の事を棚に上げてない?」

 

「さぁ、お茶菓子でも足そうかな〜」

 

「ねぇ帝君……もっと仲良くなりたいな///」

 

「……しょうがないなぁ〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後はさんごの部屋にしまう事になるが、またその枕を引き出す事になるのはもっと大人になった後の話




他にネタ無いかな?


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本編
第1話 人魚だ!プリキュアだ!キュアサマーだ!


この小説は、ちょっとした下ネタと作者のやりたい放題で成り立っております。
なので、主人公だけがプリキュアから異質しています。
細かい事を気にする方はお勧めしません。
本当に何でも許せる方のみだけどうぞ

前作の事もあり注意喚起をしました。

そんな訳で新しくスタートです




海底深くある場所、グランオーシャンという所が存在した

 

そこでは、人々がやる気を無くし、堕落して寝転んで居た

 

そんなグランオーシャンの一角では、2人の人物が何やら話し合っていた

 

「貴女だけでも無事で良かった。しかし、またいつ敵が来るのか分かりません」

 

「女王様、わたしに何か出来る事ある?」

 

「勿論ですローラ。コレを持って人間の世界に行って下さい」

 

差し出されたのはコンパクトだった。

ローラと呼ばれる少女は試しに開けてみるも

 

「開かないよ」

 

「それを開ける事の出来る人間を探すのです」

 

「人間が開ける鍵を持ってるの?」

 

「心の中に煌めく太陽を持った人間と、私達人魚の心が通じ合った時鍵は現れるでしょう」

 

「何で人間何かの助けを?」

 

ローラは人間の手を借りる事に不満を抱いていた

 

「あとまわしの魔女の手は、人間の世界まで伸びようとしています。早く鍵を見つけて伝説の戦士『プリキュア』を見つけ、世界を守るのです」

 

「ねぇ、そしたらわたし女王様になれる?」

 

「それは貴女次第です」

 

少しでも女王になれる可能性があると分かったローラは有頂天になる

 

「それとコレを」

 

今度は、コンパクトと違い上部にルーレットが付いたステッキとそのルーレットの盤と思われるディスク2枚を渡された

 

「コレもプリキュアのアイテムなの?」

 

「いいえ。それはプリキュアと同じ力を持ちながらも、とある素質を持った人間しか扱えない代物」

 

「素質?」

 

「王である素質よ」

 

それを聞いて、ローラはルーレットに手を掛けて回そうとするも

 

「ま、回らないわ…」

 

「ソレの扱いには気を付けて下さい。扱う者を見極めて渡さないと、あとまわしの魔女以上に危険な存在と化してしまいます」

 

「ふぅ〜ん…」

 

 

 

 

 

////////

 

お昼も過ぎた時間。釣り竿を持った少年が、とある岩場へと足を運んでいた

 

「のんびりと釣りと洒落込みますか」

 

丈夫そうな木に糸を括り付けて、先には針を付けた簡易的な釣り竿を垂らした

 

正直、こんなちゃちな釣り竿で魚が釣れる訳も無い。当然、少年もそんな事は知っていた

 

只々時間だけが流れる

 

「やっぱりさんごも誘うんだったな〜」

 

そんな事をぼやいてると、糸が何かに引っ張られていた

 

「嘘!?本当に魚が釣れるのか!?」

 

急いで竿を掴み上げる

 

「お、重!?」

 

竿を持ってその重さに驚く。こんな木の竿が折れてしまうのが目に見えてる

 

「欲は言わない!小魚でもいい!なんでもいいから釣られろ!あ〜でも美少女が釣れたら美味しいな…そうだ、俺は美少女を釣るんだ!釣るって言ったら釣る!」

 

何故か魚から美少女へと釣るものが変わっていた。そもそも海から人が釣れるなど有り得ない

 

しかし、少年の頭の中は美少女でいっぱいになっている。常識的な考えは全て捨て、目一杯竿を引き上げた

 

「美少女釣ったらぁぁぁ!!」

 

「わっ!?」

 

とうとう大物を釣ってみせた。それは少年が言う様に美少女だった

 

「これは!長い髪の毛、透き通る様な綺麗な瞳、もちっとした柔らかそうな潤いのある肌、そして魚の如く下半身は鱗と尾鰭が……鱗と尾鰭!?」

 

その時、竿が重さに耐え切れず折れてしまい釣り上げた美少女?は海へと

 

「え?え??今のは人間だよね?でもでも、完全に下が魚のアレだよ?人魚なの?え、さっきの美少女人魚なの!?人魚だよね!!絶対そうだ!間違い無い!俺の目に狂いは無い!あの美少女は人魚だ!!人魚なのだ!!!」

 

「うるさいわね!!」

 

パニックに陥っていた少年は頭の整理がつき始めた時、さっき引き上げた美少女に怒鳴られた

 

その美少女というのがローラだった

 

「ま、まぁわたしが美少女って言うのは当たり前よ。だってわたし人魚だし」

 

少年は物凄い勢いでローラに詰め寄り観察する

 

「な、何よ?」

 

「う〜ん……ほっ!」

 

「なっ///」

 

少年はローラの胸を鷲掴みして、その柔らかさをじっくりと堪能する

 

「ふむふむ、衣服の上からでも気持ちの良い柔らかさ……満てででででで!!!?」

 

ローラはゴミを見るような瞳で、無言で少年を尾鰭で締め上げる

 

そして岩場の方へと放り投げる

 

「ちょっと貴方いきなり何するのよ!!」

 

「え?挨拶だけど」

 

「非常識にも程があるわ!何を!もって!わたしの!胸を触るの!!?」

 

「いや挨拶」

 

(め、面倒な人間…)

 

胸を触って挨拶するのが至極当たり前といった表情をしてる少年に、ローラは怒りと呆れの感情が入り混じっていた

 

「別に減るものじゃないし」

 

「精神的に色々と減るのよ!」

 

「細かい人魚さんだなぁ」

 

もう相手にするのが疲れたのか、何も言い返さず肩で息をしていた

 

「取り敢えず隣に座ってお話でも」

 

「誰が貴方みたいな人間と!」

 

「人間…そうかまだ名前を言ってなかったな」

 

少年咳払いをして自己紹介をする

 

「俺の名前は凄いぞ。『(すめらぎ) (みかど)』。苗字と名前をくっ付けたら皇帝と読むんだぞ!正に王の中の王って感じ!」

 

「へぇ〜…」

 

「中々イカしてる(・・・・・)だろ!」

 

「えぇそうね、中々イカれている(・・・・・・)ようね」

 

ローラは帝の名前に興味など無く、それどころか軽く馬鹿にしている

 

「それで美少女な人魚さんの名前は?」

 

「…ローラ・アポロドーロス・ヒュギーヌス・ラメール」

 

そっぽ向きながらも、美少女と言われたら答えるしかない

 

「ローラ・アポロドーロス・ヒュギーヌス・ラメールって名前なんだ。宜しくね、ローラ・アポロドーロス・ヒュギーヌス・ラメール」

 

「勝手にしてなさい」

 

「ところで、ローラ・アポロドーロス・ヒュギーヌス・ラメールは──」

 

「いちいち全部言わなくて良いから!!」

 

いくら自分の名前とはいえ、こうもフルネームで毎回呼ばれてはイラついてしょうがない

 

「じゃあ略してローラで!」

 

「はいはい…はぁ、全く今日はついてない。変な人間に2人も会うのだから」

 

「2人?」

 

(やば!)

 

ローラは変に口走った事に気付いて両手で塞ぐ

 

「そ、それよりも!王の中の王って言うのならコレ持ってみなさい!」

 

はぐらかして、ローラは帝に女王から託されたステッキを渡した

 

「何コレ?」

 

「ちょっと回してみて」

 

「?」

 

帝は言われるがまま、上部のルーレットを回してみるが

 

「あれ…ふん!回んない…」

 

「そう…ならもう用は無いわ」

 

ローラはステッキを奪い返し海へと帰ろうとする

 

「えぇ〜もう少し一緒に──」

 

その時だった。岩場を挟んで隣の浜辺から騒ぎが聞こえた

 

岩陰に隠れて覗くと蟹の様な姿をした者が居た

 

「まさか、あとまわしの魔女の部下!?」

 

「おかしな蟹だ」

 

(貴方がそれを言うの?)

 

あとまわしの魔女の部下と呼ばれる人物は、ヤシの木を使って「ヤラネーダ」という怪物を生み出した

 

そしてヤラネーダは、近くに居た一般市民を襲い掛かった

 

「うわぁ、何か凄い事になってる。ていうかあれ何?」

 

「あとまわしの魔女。ああやってやる気パワーを吸い取ってるのよ」

 

「やる気ね……俺のやる気はローラの胸を揉む事で上がります」

 

馬鹿な事を言う帝を締め上げてると、遠くから1人の女の子がローラを呼んで走って来た

 

 

「ロ〜ラ〜!何処居るの〜?」

 

 

「さっきの人間!何でこんな時に」

 

「誰だ?」

 

「うわ見つかった!」

 

蟹の化け物はローラの声を聞いて振り向いた

 

「何だ?人魚が人間の世界で何してんだ?」

 

「人魚?ちょっと、人魚以外にも人間が此処に…っていない!?」

 

ローラは居なくなった帝をキョロキョロと探してると

 

(し〜っ!)

 

相手から見えない位置に隠れてやり過ごそうとしていた

 

「ちょっと貴方男でしょ!…うわっ!」

 

帝に怒っていると、ヤラネーダがローラを捕まえてしまった

 

「やる気パワーも集まった事だしもう帰りたいが…折角だ、人魚のやる気パワーも吸い取っちまえ」

 

「やめてぇぇぇ!」

 

さっきまでローラを呼んでいた少女が、無謀にも突撃して来た

 

「何やってんのよ人間は逃げなさい!」

 

「ローラを離して!嫌がってるでしょ!」

 

「かったりぃな」

 

腕でポカスカヤラネーダを叩くもビクともしない。逆に簡単にあしらわれてしまった

 

「しつこい奴だな。自分と人魚どっちが大切何だよ?自分だろ?」

 

「何が大事かは自分で決める!今一番大事な事は……大事な事はぁぁぁ!!」

 

その時、少女の左手の薬指とローラが持つコンパクトから光が放つ

 

そしてコンパクトは浮かび上がり少女の手の中へ

 

「人間それよ!そのリングが鍵なのよ!」

 

「鍵…ローラ今助ける!」

 

 

 

「プリキュア!トロピカルチェンジ!」

 

「レッツメイク!」

 

「キャッチ!」

 

「チーク!」

 

「アイズ!」

 

「ヘアー!」

 

「リップ!」

 

「ドレス!」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

 

 

「あれが…伝説の戦士『プリキュア』!?」

 

少女はプリキュアと呼ばれる戦士「キュアサマー」へと変身したのだ

 

「へぇ〜プリキュアねぇ…」

 

その様子を帝は陰から見守っていた

 

「ヤラネーダ!」

 

ヤラネーダの頭から木ノ実を飛ばしてサマーへ攻撃するが、驚異的な身体能力で軽やかに避けては壁走りで相手に近付き一撃を与える

 

「やぁぁ!!」

 

「ヤラネーダ!」

 

正面から突っ込むサマーに、ヤラネーダはカウンターで拳を放った

 

「おっ!」

 

「ヤラネーダのパンチを受け止めた!?」

 

だがヤラネーダの拳を両手で受け止め

 

「おりゃやぁぁぁ!!」

 

更にはそのまま帝の居る岩場まで投げ飛ばした

 

「うわぁぁ!?」

 

勿論、捕まっていたローラも巻き込まれる

 

「おっと!」

 

真上に飛んで来たローラを帝がキャッチした

 

「おかえり」

 

「貴方ねぇ!!…って光ってる?」

 

ローラの持つポットが淡く光っていた

 

「何それ?」

 

「『マーメイドアクアポット』よ。それよりも…」

 

ローラがポットの天井ボタンを押すと、カメラが捉えたヤラネーダの姿が画面に映し出された

 

「これ、あの怪物が人間から奪ったやる気パワーが見えてるんだわ」

 

更にもう一度ボタンを押すと、ヤラネーダが奪ったやる気パワーがポットへと吸い込まれた

 

「やる気パワーが戻って来た!?」

 

「面白そう。ちょっと貸して」

 

「駄目よ!触らないで!!」

 

「何もそんな強く言わなくても。バイ菌に触られるみたいな反応されたら、傷付いちゃうよ俺」

 

そうこうしてる間にもヤラネーダは立ち上がっていた

 

「こうなったらアイツのやる気パワーを奪い取れ!」

 

「ヤーラネーダー!」

 

標的をサマーへと変えてやる気パワーを吸い取ろうとするのだが

 

「ん?やる気が吸い取れてねぇ!?」

 

「わたしのやる気は無敵なの!」

 

吸い取ろうとするオーラを気合いで弾いた

 

そして腰に付けているキャリーから光っていた。中からリップが出て来て、光に包まれると新たな姿へと変えたのだ

 

「リップが変わった!」

 

「プリキュアのアイテムだわ!」

 

 

 

「ハートルージュロッド!」

 

「プリキュア!おてんとサマーストライク!」

 

 

「ビクトリー!」

 

 

 

ヤラネーダを浄化し終わると、取り返したやる気パワーが持ち主へと戻って行った

 

「これで終わりなの?」

 

サマーがようやく一息つこうとした時

 

 

 

「呼ばれて無いけど飛び出すじゃじゃじゃ〜〜ん!」

 

高らかに宣言しながら降って来たのは大人の女性だった

 

長髪の白い髪の毛

 

白のチェック柄のバスガイド服に、藍色のスカート

 

美しいと呼ぶのは烏滸がましい程の美貌の持ち主だった

 

「これはこれはどうもお日柄も良くて」

 

「え、誰?」

 

「御指名どうもありがとうございます。(わたくし)、旅の案内役兼記録係を承っております、エキセントリックマイスター、略してトリックスターの『アリス』で御座いま〜〜〜すっ!」

 

美貌の持ち主…なのだが、それに似合わない程のハイテンションの持ち主だった

 

それは世の言うところの残念美少女

 

サマーはアリスの雰囲気について行けずに唖然としていた

 

「あらあらまあまあ。そのポカーンとした表情、かなり驚いておりますね」

 

「は、はぁ…」

 

「その御姿はやはり…」

 

アリスはサマーに近付き、頭の天辺から足の指先までじっくりと観察する

 

「貴女様はプリキュア、みたいですね」

 

アリスは、かなり分厚い本に羽ペンを走らせてメモをしていた

 

「不思議なものですね〜……おや?」

 

アリスは帝とローラの存在に気付いた

 

「おやおやおや〜!!」

 

興味深く見つめる

 

「「?」」

 

「ふぅ…これは面白い!!」

 

突然の大声で叫ばれた。

そしてアリスは大きな音を立てて本を閉じた

 

チャンギレーヌ(・・・・・・・)様、今すぐにお帰りしましょう」

 

チョンギーレ(・・・・・・)だ!いい加減覚えたらどうだ」

 

「私、記憶力には超が付く程の自信が御座います。えっへん!」

 

「もう何も言わん。かったりぃ…」

 

「では皆様方、またの御来訪をお待ちして下さいね」

 

そうして、蟹の化け物のチョンギーレと超ハイテンション残念美少女のアリスは消え去った

 

 

 

 

 

////////

 

「あれがプリキュアか〜」

 

少女はアイテムをまじまじと見つめて言葉を溢していた

 

「中々…中々格好良かったよ──まなつ!」

 

「へへ!」

 

「と言う訳で、これからはわたしの元で戦って貰うから宜しくね!」

 

「宜しく!…戦う?待ってどういう事!?」

 

「成り行きで良いんじゃないのか?」

 

「成り行きって…てか誰!?」

 

ここでようやく帝の存在に気付いてくれた

 

「皇 帝」

 

「わたしは『夏海(なつうみ)まなつ』!宜しくね!」

 

「それよりもさっきのプリキュアってのに変身してよ!ちょっと色々と弄りたいから!!」

 

「え…」

 

「気を付けて。その人間頭がイカれてるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが、新たなプリキュアの物語の始まりだった




主人公の詳細は次の投稿でまとめます

因みに今回の主人公、作者の嫌いな要素をふんだんに詰め込んだ野郎です。
好き嫌いがハッキリ分かれるかもです。寧ろ嫌いな人が多いかも

ここまでの拝読ありがとうございました


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第2話 大事なのは学校?プリキュア?

前回の話、めっちゃ誤字のオンパレードみたいでした

ではスタート!


今日はあおぞら中学校の入学式。

少し前まで小学6年生だった帝とまなつは、今日から晴れてピッカピカの中学1年生

 

初登校なのだが

 

「帝〜!」

 

未だに夢の中の帝。母親である「たいこ」がリビングから呼ぶのだが、本人は一向に返事が返ってこない

 

「全くあの子ったら…チラッ」

 

たいこは、リビングで帝を待っている「涼村さんご」にわざとらしく目を向ける

 

「あはは…今日も呼んで来ますね」

 

「ありがと〜さんごちゃん!」

 

さんごは帝の幼馴染。昔からの馴染みで園児の時からずっと一緒

 

今日も一緒に登校する予定だったのだが、現状この通りなのである

 

いつも通りに部屋に入り優しく起こす

 

「帝君学校始まるよ〜」

 

「まだ眠い〜…」

 

「入学式で遅刻なんてダメだよ〜!」

 

「ならパンツ見せてよ〜」

 

「…もう知らない!」

 

帝の発言で見限ったさんごは、怒って部屋を出ようとする

 

「あ〜嘘だよ!ほら起きた!ね?」

 

ベッドから降りた帝は既に制服に着替えていた

 

「わたしだって遅刻は嫌なんだよ」

 

「はいはい…そんな訳で朝の目覚めとして!」

 

「ッ!!?」

 

帝は、堂々と正面からさんごのスカートをめくり上げた

 

「はい!今日のパンツ頂き〜!」

 

「〜〜〜ッ!!」

 

さんごは近くにあったクッションで何度も何度も帝を叩く

 

「あははのは〜!全くもって痛くないぞ〜」

 

ようやく2人して皇家を出て通学路を歩き出した

 

「今度は胸を揉ませてね!」

 

その後、怒ったさんごは1人で校門を潜る事になった

 

 

 

 

 

////////

 

教室へ着くと見覚えのある子が居た

 

「あ〜!帝も同じクラスなんだね!」

 

「おう!」

 

まなつもどうやら同じクラスメイトというのが判明した。思わぬ偶然

 

「これから宜しくね…ってその子は…あー!昨日コスメショップに居た!」

 

「覚えててくれたんだ。嬉しい!」

 

「え?2人共もう会ってたの?」

 

「お店の前でちょっとね。帝君こそ知り合ってたんだね」

 

偶然が偶然を呼んだ。まなつとさんごは既に知り合っていたのだった

 

「変な事はしてないよね?」

 

「うん、まだ(・・)!」

 

それを聞いてホッとしたが、「まだ」という単語に少し心配にもなった

 

「まなつ紹介するよ。幼馴染の『涼村さんご』」

 

「宜しくね!」

 

「さんごと言えば……まなつに家の事も紹介したら?」

 

「家?」

 

「フフ、実はあそこわたしのお母さんのお店なの」

 

 

 

 

 

放課後、さんごの母親が経営してるコスメショップ「Pretty Holic」へと足を運ぶ

 

そこでまなつは大興奮。口癖である「トロピカってる〜!」の連呼だった

 

「あら、おかえりさんご。もうお友達が出来たのね」

 

「これがわたしのお母さん」

 

「夏海まなつです!お母さんのお名前は?」

 

「私は『涼村みゆき』。面白い子ねまなつさん。お茶でも飲んで行って。帝君も」

 

その日はそれで終わった

 

 

 

 

 

////////

 

次の日も何事も無く授業をして放課後。今日は部活オリエンテーションがある。

帝は最初から部活に入部する気は無かったが、まなつとさんごも参加するそうなので観るだけならと思い一緒に参加する

 

だけどその前にまなつは人気の居ない所へ移動して、ベンチでマーメイドアクアポットの中に居るローラと話していた

 

「すっごい退屈なんだけど」

 

「仕方ないでしょう。外に出る訳にもいかないんだから、それでも学校に行きたいって言ったのはローラだよ」

 

「まなつ」

 

「うわぁぁ!?」

 

不意に背後から帝に呼ばれて驚いてしまった

 

「もうすぐ部活オリエンテーションだけど…あ、ローラ!」

 

「げっ、人間…」

 

帝はローラを目にした途端喜んだが、反対にローラは物凄く嫌そうな反応をした

 

「それより部活オリエンテーションって何よ?」

 

「新入生の前で、色んな部活動がパフォーマンスをしてくれるんだよ!中学に入ったら部活何にするか、すっごく楽しみにしてたんだからお願いねローラ!」

 

「早く行くぞ」

 

「うん!」

 

行く準備が出来てるさんごと合流して、体育館の方へ行くのだが、その途中でマーメイドアクアポットを校内の池に落としてしまった

 

 

 

 

 

オリエンテーションが始まって盛り上がりそうだった時、まなつはポケットの中にポットが無い事に気付いたのだ

 

「あ゛!」

 

「どうかしたの?」

 

「ローラがいない!!」

 

「え゛!?」

 

帝もそれに驚いてしまう

 

「探しに行くよ!」

 

「え、行っちゃうの?」

 

「う、う〜ん……ごめん!すぐ戻るから!」

 

まなつは悩んだ結果ローラを優先する事に。帝もまなつに付いて行く事にした

 

 

 

 

 

しかし、探しても探しても見つからない。そんな時、ある騒ぎを聞き付けた

 

 

「人魚だ!人魚が出たぁぁ!!」

 

 

「「…もしかしてローラ!?」」

 

2人は顔を見合わせた後、驚いてローラが居たと思われる場所まで走る

 

「ローラ!ローラ!」

 

「まなつアレ!」

 

帝は池の反対側に落ちてあるマーメイドアクアポットを見つけた

 

急いでマーメイドアクアポッドを回収して、中にローラが居る事確認する

 

「テヘ!見つかっちゃった!」

 

 

 

 

 

「勝手にポットから出て来ちゃ駄目って言ったのに〜!」

 

「だってポットの中じゃ周りが良く見えないし、わたしには他のプリキュアを探す使命があるから」

 

人気の無い場所で先程までの行為をまなつは注意していた

 

「それにしても良くあれだけ騒ぎを起こして見つからなかったな。危うくプリキュア探しどころの話じゃなくなるぞ?」

 

「それはまなつのせいよ。全然プリキュア探しに協力しないし、プリキュアとしての自覚が無さ過ぎる。世界が大変って時に部活なんてやってる暇なんて無いわよ」

 

「自覚とか知らないし。あんな騒ぎを起こしておいて何言ってるの!?私にだって大事な事があるの!!」

 

「おい2人共…はぁ」

 

ドンドン言い争いがヒートアップし、帝も手に負えない状態まで進んでしまい

 

「もうローラの事なんて知らない!!」

 

最悪な状況へと変化してしまった

 

「分かったもういい!人間と一緒に他のプリキュア探しに行くから!」

 

「え、俺!?でも荷物が…」

 

「いいから早く来なさい!!」

 

マーメイドアクアポットを投げ渡され、半ば強引にローラと街へプリキュア探しに行くのであった

 

 

 

 

 

////////

 

「まなつより話の分かるプリキュアなんていっぱい居るんだから」

 

「そう言うなよ」

 

街中の川沿いを歩きながらそう呟く。ローラも視界が見える様、街中でも外に出て居た

 

「何よ人間、まなつの肩を持つの?」

 

「別にそういう意味で言ったんじゃない。どっちも大事だって事だ」

 

「どっちも大事…」

 

その時、広い場所で悲鳴が上がった

 

そこではガーデンテーブルのヤラネーダと、それを生み出したチョンギーレが暴れていた

 

「アレはあとまわしの魔女の……誰だっけ?」

 

「あの方はですね──」

 

「「うわっ!?」」

 

帝とローラの背後からアリスが突然現れた

 

「いつでも貴方の側に居ますアリスで御座います」

 

「何でこっちに居るのよ!」

 

「あの方の名前はですね」

 

「無視するんじゃないわよ!!」

 

「えっとチョ、チョ、チ…何でしたっけ?チ、チ………チッ!」

 

((何で今舌打ちした…?))

 

アリスは嫌気が差して急に態度を変えた

 

「思い出すのも面倒なのであの方は『チ』と言う名前にしましょう」

 

「かったりぃ事言うな!チョンギーレだ!」

 

「ではここはお任せします。私は今回の物語の記録を紡がなければならないので」

 

「ヤラネーダ!」

 

アリスがチョンギーレの側へ移動し、入れ替わりでヤラネーダが2人に襲い掛かって来た

 

「チッ、来いローラ!」

 

帝はローラを抱っこしながらヤラネーダの攻撃を掻い潜る

 

ヤラネーダは街中だというのに、それすらお構い無く2人を追い掛ける

 

「少々面倒だな…」

 

「ちょっと人間!」

 

「何だ!?」

 

「屈辱よ。今すぐ降ろしなさい」

 

「ほふく前進で逃げるのか?」

 

「そんな訳無いでしょ!…きゃあ!?」

 

ガーデンテーブルの椅子を複数飛ばして、髪や手足を擦り帝の動きを鈍くさせる

 

「人間大丈夫なの!?」

 

「少し黙ってて!」

 

少しずつだが、帝は声を荒げ何やら集中していた

 

「どうした?この前みたいに助けてくれる奴は居ないのかな?」

 

「人間なんて幾らでも居るんだら!うぐぐ〜…!」

 

「イイねイイね、その無駄なやる気パワー。頂いちまうぜ」

 

「ヤラネーダ!」

 

またも椅子が飛んで来た

 

「うわぁぁ!!」

 

 

 

 

 

「調子に乗るなよ」

 

瞬間、飛んで来た椅子が何かに阻まれ弾け飛んだ

 

「えっ?」

 

「あ?」

 

「おや?」

 

2人の前に大きな青い盾が出現していた

 

「一体…これって」

 

ローラはポットからステッキを取り出すと、青く光ってる事に気付いた

 

「何がどうなってるのよ?ねぇにんげ…ッ!」

 

ふと帝へ視線を移すと、見た事の無い鋭い目付きをしていた

 

「少し調子に乗り過ぎたな。だが──ここまでだ」

 

ローラが持つステッキ上部のルーレットが、ギチギチと鈍い音を立てながら回ろうとする

 

そんな時

 

「ローラ!」

 

まなつがダッシュで到着した

 

「あの子…?」

 

アリスはまなつに気付き帝から目を離してしまう。もう一度帝へ目をやると、先程までの雰囲気は何処かへと消えていた

 

そしてステッキからの反応も消えていた

 

「まなつどうして!?」

 

「後悔はしたく無いから。ローラとずっと友達で居たいから、ローラの事大事だから、わたし学校も名一杯楽しんでプリキュアも名一杯頑張る!」

 

 

 

「プリキュア!トロピカルチェンジ!」

 

「レッツメイク!」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

 

 

「わたしの本気見せてやる!覚悟!!」

 

ヤラネーダの頭に一撃を加え、怯んだところに蹴りを放ち空中へ飛ばす

 

「どりゃぁぁ!!」

 

そして腕を掴み地面へと叩き付けた

 

「今だよローラ!奪われたやる気を!」

 

「オーライ!人間!」

 

帝からマーメイドアクアポットを受け取り、ヤラネーダへカメラを向けて天井ボタンを押す

 

 

「マーメイドアクアポット!サーチ!」

 

「青!」

 

 

「やる気パワーカムバック!」

 

奪われたやる気はマーメイドアクアポットへ、吸い込まれる様に取り返した

 

 

 

「ハートルージュロッド!」

 

「プリキュア!おてんとサマーストライク!」

 

 

「ビクトリー!」

 

 

 

ヤラネーダを浄化し、やる気パワーは持ち主の街の人達へと戻って行った

 

「かったりぃ、帰るか」

 

「これでまたひとつ、新たな記録という物語が紡がれました。次はどんな巡り合わせがあるか、首をテンションマックスで長くさせお待ちしております」

 

 

 

 

 

////////

 

「ありがとうまなつ…」

 

「えっ?」

 

「何でも無い。これからも宜しくね」

 

「うん!」

 

「人間も今日はありがとうね」

 

「お礼はそのお胸を…」

 

「前言撤回するわ」

 

3人は微笑みながら、部活オリエンテーションの続きを観るのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、ローラは疑問に思っていた。

帝の変わり様とステッキに




皇 帝 (すめらぎ みかど)

好きなこと 変態行為全般、思い通りになること

普段はフレンドリーな性格だが、物事に集中すると性格が激変し、絶対主義、周りを見下す、自己中心的といったなどに変わる

キャラの立ち絵もありましたけど、上手く保存出来なかったので次回に貼っておきます


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第3話 回して回しまくれ!オーシャンステッキ!

3話でやる内容じゃない!
下記に一応挿絵があります。見なくても大丈夫ですし、イメージを壊したく無い方はスルーで大丈夫です


【挿絵表示】


ではスタート!


「ちょっと人間いいかしら?」

 

放課後の帰り道で、ポットの中に居るローラに呼び止められた

 

「ローラから誘うなんて珍しいね」

 

「それで何か?」

 

「……2人だけで話したいんだけど」

 

「いいよ!!!」

 

かなり食い気味で帝は返事した。

そして、まなつはポットを帝に預けた

 

「また夕方に迎えに行くね」

 

 

 

 

 

////////

 

「へいただいま〜!」

 

帝は靴を脱ぎ捨てて自分の部屋へと駆け込んだ

 

「で、ローラは何で俺と話をしたいの?もしかして期待しても良かな感じ?」

 

「そんな話じゃないわよ」

 

「嗚呼、人間と人魚の結婚……嬉し過ぎる!!」

 

「だ〜か〜ら〜……」

 

わなわなと怒りが込み上げて噴火直前で、帝はふざけるのをやめた

 

「ごめんごめん!結局何の話?」

 

「……」

 

ローラは先日の事を思い出していた。一瞬だが、ステッキが帝に反応したのだ

 

「ローラ?」

 

「ん…」

 

ローラはステッキを持ってわざわざポットから出て来た

 

(やっぱり反応が無い。気のせい…だけどあの時確かに…)

 

「お〜いローラさ〜ん?」

 

「う〜ん…」

 

目の前で手を振っても気付かなくなった

 

「ロ〜…ラッ!」

 

「ぴゃあ!?」

 

正面から胸を掴まれて変な声が出てしまう

 

「何考え込んでんだ?」

 

「人間には関係無く…は無いけど……ていうかいつまで触ってんのよ!!」

 

「あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」

 

本気で尾鰭で締め上げられて、ミシミシと骨が悲鳴を上げる

 

「ふぅ…ふぅ…こ、殺すんですか?」

 

「そもそも何で胸を触るの?」

 

「日課だよ!生き甲斐だよ!使命だよ!俺が俺であるが為の行為だよ!!」

 

「呆れて何も言えないわ…」

 

「そんな事言うなって!」

 

「きゃ!」

 

帝はローラ事ベッドへダイブした

 

「乗っからないでよ!!」

 

「良いではないか〜」

 

頬擦りする帝を退かそうとするも、力で負けて動かせないでいる

 

「は〜な〜れ〜て〜よ〜!!」

 

「少しくらいいいだろ?それにな…」

 

帝は、ローラの腰に手を回して胸の中に蹲る

 

「なんだか落ち着くんだよ」

 

「そ、そうなの?そう、なんだ……」

 

いつもより大人しい帝に戸惑いながらも頭を撫でる

 

何故か優しくしてあげたくなった。自分でも何でこんな事をしているのか分からなかった

 

「ローラ…」

 

「人間……この手は何?」

 

つまみ上げる指には、衣服の中へと伸ばそうとする帝の手があった

 

「揉みたい」

 

「ちょっと人間の事良いかなぁ…と考えていたのに!」

 

「マジ!?なら子供作ろうよ!此処を俺とローラの愛の巣に!!」

 

「一回死なないとこの頭は治らないのかし…らっ!」

 

目潰しを仕掛けて来たが、寸止めで帝が防御した

 

「うぐぐ〜!!」

 

「め、目潰しなんて駄目だよ〜」

 

お互いにプルプルと震える手での攻防

 

「そういう所が嫌いなのよ!」

 

「俺は君が好きです!」

 

「そんなの聞いてないわよ!」

 

「ローラを嫁にしたい!!」

 

「ちょっと……もう///」

 

先にローラが折れて赤面する。もう何がなんだか良く分からなくなって来た

 

「そんなにアレなら行動で示してやる。これが俺の本気──」

 

そうして軽くだが、確かにローラと口付けをしたのだ

 

「〜っ!!??!」

 

「ドヤ!」

 

気がつくと、言うが早いかマーメイドアクアポットの角で帝の頭を殴っていた

 

「ま、まだ…まだまだ殴り足りないわ。覚悟しなさい!!」

 

「あーー!!ローラ後ろ後ろ!!」 

 

「その手には引っ掛からないわよ!」

 

「いやマジ後ろ!街が大変な事になってる!!」

 

怪訝な表情で振り返ると、遠目でやっと見える距離にヤラネーダが暴れていた

 

「またアイツらね!行くわよ人──」

 

「はい隙あり頂きます!」

 

今度は後ろから胸を触る。突き上げる様に触った為、手が衣服の下に潜り込んだ

 

感触は直に伝わった

 

「ローラの生おっ──」

 

 

 

 

 

////////

 

「まなつ〜!」

 

「あ、ローラ!」

 

街へ行くと、まなつも丁度到着したらしく合流する

 

「さあまなつ、プリキュアに変身してあとまわしの魔女なんてやっつけちゃって!」

 

「うん!…っとその前に帝は?」

 

「…」

 

ローラはまなつの目の前に投げ出した

 

「み、帝〜〜!?どぉしちゃっのぉ!?」

 

まなつが目にしたのは見るも無惨な姿の帝だった

 

頭から大量の血が流れて血だるま状態だった

 

「我が人生に悔いなし……ローラの生おっぱ──」

 

何か言い終わる前に、ローラがのしかかり頭を潰した

 

「まなつプリキュア」

 

「え、でも──」

 

「プリキュア!!」

 

「は、はい!!」

 

 

 

「プリキュア!トロピカルチェンジ!」

 

「レッツメイク!」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

 

 

「ま〜たかったりぃ奴が来たか…」

 

「開けてビックリアリスで〜す」

 

「うわぁ…」

 

「今日はどんな物語を紡いでくれのでしょうか?興奮昂ぶらせてイェイイェイのノリで記録致します」

 

サマーは相手にするのも面倒になったのか、一直線にヤラネーダへと向かって行く

 

「今度のヤラネーダは電柱……何で電柱?」

 

「人間は黙ってなさい」

 

「やあぁぁ!!」

 

サマーは一心不乱に飛び出して攻撃するのだが

 

「ヤラネーダ!」

 

「うわっ!」

 

ヤラネーダは体を大きく振り、頭上にある電線を振り回してサマーを鞭打つ

 

「サマー!」

 

「だ、大丈…っと!」

 

体勢を立て直してローラに心配掛けない様にするも、ヤラネーダは攻撃を止めない

 

嵐の様に続く電線を使っての鞭攻撃を、持ち前の運動神経で避け続ける

 

「危な!」

 

しかし、息つく暇も無く避けてる為そう長くは保たない。

少しずつだが、サマーを捉える様になって来てる

 

「ダメ、全然近付けない!…わっ!?」

 

着地した場所に足を絡め取られた

 

「ヤ〜ラネーダ!!」

 

そのままサマーを投げ飛ばして建物に激突させた

 

「あとは」

 

チョンギーレはローラと帝に目を付けた

 

「かったりぃがやる気パワーを奪えば、もう邪魔される事は無いだろう」

 

「ヤラネーダ、お願いしましょう」

 

「俺のヤラネーダだ。やれ!」

 

「ヤラネーダ!」

 

「ッ!」

 

ローラは目を瞑り覚悟を決めたが

 

「…?」

 

しかしいつまで経っても何も起きない。目を開けると

 

「え…人間!?」

 

「グッ…」

 

帝がローラを庇い、左腕を差し出して電線に絡めさせていた

 

「ならお前からやる気パワーを取ってやる!」

 

「ヤラ!」

 

ヤラネーダの目が赤く光り帝からやる気パワーを吸い取り始める

 

「何という事でしょう。これで、私達の負けは確定で御座います。チョンギーレ様、身の程を弁えろ、です」

 

「はぁ?」

 

「……確かにそうだな」

 

帝は力強く右手で電線を掴んだ

 

「立場を分かっていない」

 

「に、人間?」

 

「お前達は何ひとつ、自分達の立場を理解していない」

 

電線を引いてヤラネーダのバランスを崩した

 

「ヤラ!?」

 

(この人間のやる気パワーが吸われてない?)

 

「『この人間のやる気パワーが吸われてない?』。そう言いたいのか?」

 

図星を突かれた。しかも一字一句間違えず言い当てられた

 

「やる気パワーか…そんなもの俺には必要無い」

 

「何言ってんだ?」

 

「そのまんま、の意味ですよ?あの方にやる気など存在しません。これまでも、これからも」

 

帝はローラに手を差し出す

 

「寄越せ」

 

「え?」

 

「ステッキを寄越せ」

 

「で、でも──」

 

中々渡してくれないローラに、殺意とも勘違いする程の視線を向ける

 

「次は無い。寄越せ」

 

「は、はい…」 

 

震える手でステッキを渡した

 

「お願いや命令では無い。これは自然な事で当たり前の事だ。森羅万象、未来永劫何事も俺が正しい。俺の行動、言動何もかも全てにおいて間違いなど存在しない」

 

ギチギチと今にも壊れそうな音を立て、強引にルーレットを回そうとする

 

「ルーレット如きが指図するな。選ぶのはお前じゃない、俺だ」

 

「ルーレットが…!」

 

「──ルーレット……スタート」

 

ガチャリという音がしてロックが外れた

 

スピード良く回る盤は次第に速度を落とし始める

 

『ATTACK!』

 

ルーレットから音声が鳴り響くと、赤く光り帝の身体能力を向上させた

 

「ッ!」

 

腕に絡まる電線を引き千切った

 

「ヤラネーダ!」

 

ヤラネーダがパンチしてくるも、帝はそれを片手で受け止めた

 

「この程度の力で勝てると思っていたのか?」

 

「只の人間がここまで!?」

 

「人間…いや、俺は普通の人間では無い。この力で、全てを絶対的に従えさせる。これは何者にも変えられない」

 

受け止めた拳を地面に叩き付けて、その上をゆっくりと歩いて行く

 

「ヤラネー…」

 

「見上げるな」

 

頭の上まで辿り着いた帝は、ヤラネーダの頭部を踏み付け地面に減り込ませる

 

「この俺が絶対。この俺こそが、この世界に君臨するのに相応しい人間だ。這い蹲ってろ」

 

「ヤラネーダがやられーた!思わず自画自賛したくなる程の洒落乙なジョーク。感激の余りに私は泣きそうです」

 

「サマー起きろ。ローラはやる気パワーを」

 

「よっと!」

 

「わ、分かったわ!」

 

 

「マーメイドアクアポット!サーチ!」

 

 

「やる気パワーは取り戻した!」

 

「なら終わらせろ」

 

帝は一旦下がりサマーに浄化を任せた

 

 

 

「ハートルージュロッド!」

 

「プリキュア!おてんとサマーストライク!」

 

 

「ビクトリー!」

 

 

 

無事何とか浄化は完了したのだが、少々空気が重かった

 

帝はまだピリピリとしていたが、アリスは無防にもそんな帝に近付く

 

「お目覚めの時の様ですね。私、この時を心待ちにしておりました」

 

「貴女、前々から思っていたけど人間と知り合いなの?」

 

「知り合いですか?私は、皆様の旅の案内役兼記録係です。いわゆる放浪の旅人、何処かで知り合っているかも知れませんし、知り合って無いのかも知れません」

 

「結局どう言う意味よ?」

 

「それは……」

 

言葉を溜めて、サマーとローラは息を飲む

 

「私にも分っかりませ〜ん」

 

「「ズコッ!」」

 

サマーとローラは思わずズッコケてしまう

 

「紛らわしいわね!なら意味深な事言わないでよ!」

 

「旅とはそういうものなのです。では、そろそろお暇しますね」

 

アリスの足下から煙が漂い身を包み始める

 

「では、失礼します」

 

 

 

 

 

////////

 

「あの…人間」

 

「ローラ」

 

帝は突然ローラを抱っこした

 

「ちょ、人間!?」

 

「まなつ、お前に言いたい事がある」

 

「何?」

 

「ローラと結婚するから祝って下さい!!」

 

「何でよ!!?」

 

さっきまでの雰囲気の帝では無かった。いつも通りの帝がそこにいた

 

「おめでと〜!!」

 

「ありがと〜!」

 

「何勝手に祝ってるのよ!?わたしは人間なんか大っ嫌いよ!!」

 

ローラの怒号は街中に響き渡った

 

「それよりもこのステッキに名前付けてみないか?」

 

「それなら『オーシャンステッキ』ってのはどう?トロピカってない?」

 

「採用」

 

「ちょっと勝手に名前付けないでよ!!」

 

 

 

 

 

////////

 

「かなり面白い事になって参りました……おや?お帰りになりましたのね」

 

「…」

 

あとまわしの魔女が居る場所で、アリスは誰かの帰りを歓迎していた

 

「もう宜しいのですか?」

 

「いや…まだ様子見と言う感じだ」

 

「まだ気になる…と考えておられるのですか?彼女達がそれ程の力を持ち合わせている様には存じませんが」

 

「だからだ。プリキュアに、それにあの謎の力…決め付けるにはまだ早い」

 

そう言って男は闇の中へと消えて行った

 

アリスは本を開きページを一枚捲って読み上げる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「PICARO。始まりがあれば終わりもあります。今回の物語の行く末をとくと拝見致しましょう」




凄えだろ?ここまでやっておいてヒロイン未定なんだぜ!

ここまでの拝読ありがとうございました

下記に能力項目があります。参考程度にどうぞ

オーシャンステッキ ディスクを入れ替える事で使える能力の項目が変わる。
能力によってルーレットにオーラが纏う

ATTACK:攻撃力が増加する 赤

DEFENCE:防御力が増加する。盾も生み出せる 青

TECHNIC:分身を可能とする 緑

PERFECT:上記の3つの能力を全て同時に使える 黄


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第4話 可愛いを信じて進め!その名はキュアコーラル!

そろそろキャラ崩壊のタグ付けようかな?
でもまだ、そんなに崩壊してないし…

ではスタート!


「う〜ん!」

 

思いっきり机に頭をぶつけてまなつは悩んでいた

 

「どうしたのまなつちゃん?」

 

「2人共帰…何悩んでる?」

 

そろそろ帰ろうという時に、そんなまなつを見て心配していた

 

「決められない…島に居る時から部活楽しみにしてたのにぃ〜…決められな〜い!!」

 

「そんなに悩むか?」

 

「だって全部やりたいんだもん!!」

 

「欲張りか」

 

「さんごは何にする?」

 

少しでも参考意見が聞きたく、さんごにも求めるが、帝が割って入る

 

「因みに俺は帰宅部」

 

「帰宅部…ってそれ部活じゃ無いじゃん!」

 

 

 

 

 

放課後、結局最後まで部活は決まらず、まなつとさんごの2人はクラスメイトの友達と日曜にお出掛けの予定だけ立てた

 

そしてその通学路で、帝とさんごは話していた

 

「さんご、無理して決める必要は無いと思う」

 

「え、何の事?」

 

「俺は知っているからな。幼稚園の時の事」

 

「……」

 

「…何かあれば俺に言ったらいい。ちゃんと助けてあげるから」

 

「うん、いつもありがとう帝君…」

 

 

 

 

////////

 

「今日はクラスの友達とショッピングモールに行くの!」

 

「ふぅ〜ん…」

 

「大人しくしとけるなら、連れてってあげるけど?」

 

ちょっと感に触る言い方にローラは意地を張る

 

「いい、行かない」

 

「え、本当に?」

 

「偶には体を休めないと」

 

「そうなんだ。じゃあ念の為、帝にローラを預けようかな?」

 

それを聞いたローラは、椅子から転げ落ちた

 

「ななな何で人間にわたしを預けるのよ!!?」

 

「だっていつも2人仲良いじゃん」

 

「何処をどう見たらそう思うのよ!?とにかく嫌よ!」

 

「そう言われても…」

 

まなつはローラの後ろへと指を指す。

恐る恐るローラが振り返ると

 

「ローラ!!」

 

「ギャァァ!!」

 

いつの間にか背後に居た帝に捕まり、いつもの様に胸を触られる

 

「さっきリビングの窓から見えたから。今日はさんごも一緒に出掛けるから、帝は暇かなと思って預ける事にしたの」

 

「やっぱ行く!まなつわたしも──」

 

「もうこんな時間!遅れちゃうから行ってくるね!帝後は宜しく!」

 

「お願いまなつ!人間と2人っきりは絶対嫌!!一生のお願いだから〜〜!!」

 

しかし、そんなローラの声も儚くも届かなかった。

時間に追われるまなつは、ローラの事は全て帝に任せて出掛けて行った

 

「怖い怖い怖い!今この状況が物凄く怖い!!」

 

「そんな事無いって〜。ほら、のんびりと2人だけで過ごそう?」

 

「まなつカムバァァーーック!!」

 

 

 

 

 

「太陽の日差しが気持ち良いな」

 

「…そうね」

 

「え何?もしかして期待してたの?」

 

「うるさい!!」

 

帝が連れ出した場所は、まなつの母が働いてる水族館の屋上に来ていた

 

予め、まなつから此処の場所を聞かされて訪れたのだ。

この場所なら人に見つかる心配は無いと

 

「ところで人間、あのオーシャンステッキはどうしてるの?」

 

「それなら…ほら」

 

手の平にコロンと、リップサイズまで小さくなったオーシャンステッキがあった

 

「携帯用に小さく出来たから」

 

「なるほどね」

 

「安心しろ。ちゃんとローラ達に協力する」

 

「当たり前よ。そうしてくれないと意味無いもの」

 

いつになく、ちゃんとした会話をしてると誰かの視線を感じた

 

「「あっ…」」

 

「人魚?それに帝君?」

 

何故かまなつと一緒に出掛けてる筈の、さんごと出会してしまった

 

「可愛い…」

 

「あら何急に?」

 

「ご、ごめんなさい!あんまり可愛いかったからつい」

 

「良いのよ〜!可愛いのは当然なんだから!それに久し振りに純粋な可愛いを聞けて嬉しいわ!」

 

多少の自覚はあるのか、帝は苦笑いを浮かべる

 

「ところで作り物ですか?」

 

「失礼ね本物よ」

 

「本…物〜!?」

 

ちゃんとローラが本物の人魚って事を分かってもらう為、ローラは水面から一度上がる事にして尾鰭を触らせる

 

「凄い本物の人魚!」

 

「だから言ってるでしょう」

 

「こんなに可愛いって言ってくれるんだし、トロピカルパクト持たせてみたら?」

 

「ナイスね人間!貴女プリキュアやってみない?」

 

「プリキュア?」

 

物は試しにトロピカルパクトを持たせてみる

 

「変化ないね」

 

「やっぱ駄目か〜」

 

何も反応が無い事を確認したら、トロピカルパクトを返してもらった

 

 

「さんご〜!」

 

 

その時、遠くからまなつの声がした

 

「マズい…」

 

ローラは帝の襟元を掴んだ

 

「皆んな!ねぇ、貴女の事を……あれ?」

 

ローラの事を紹介しようと思ったが、少し目を離した隙にその姿を消していた

 

「帝君もいない」

 

さんごは諦めてまなつ達と合流した

 

そして行った事を確認して、帝とローラは水面から顔を上げる

 

「あっぶな…」

 

「ぷはっ!はぁ…はぁ…人間は水中じゃ息出来ないんだ!!」

 

「知ってるわよ。それに、わたしを見られた事をまなつが知ったら怒るわよ?」

 

「うわっ、まなつをダシにして脅迫して来る」

 

 

 

 

 

////////

 

次の日のお昼休み

 

屋上で1人、帝がお弁当を広げてると見覚えのある2人がやって来た

 

「帝も居たんだ!一緒に食〜べよ!」

 

「いいよ」

 

そんな訳で3人並んで食べる事に。ローラもポットの中で昼食を用意していた

 

「まなつちゃんが羨ましい…」

 

「え、何が?」

 

「いつも、自分が一番好きな事を迷わずに出来るでしょう?」

 

「さんごは違うの?」

 

「うん、実はね…」

 

「え、さんご話してもいいの?」

 

何か話そうとしていた事を帝が止めに入った

 

「大丈夫だよ」

 

和かに笑い掛けるも、それとは裏腹に沈んだ表情のまま話を続けた

 

「幼稚園の時にね、皆んなとチューリップの球根を植えた事あって好きな色を選べたの」

 

さんごが話してくれたのは、一番可愛いと思った紫を選んだのだが、花が咲いてみると実は自分意外の子達は皆んなピンクを選んだのをその時初めて知ったのだ

 

「皆んなは気にしてなかったけど、わたしもピンクにすれば良かったって凄く後悔した…」

 

「でも、俺も紫を選んだよな?」

 

「だってあの時帝君は!!」

 

不意に出した大声に、帝とまなつはビックリした

 

「ごめんね…」

 

空気が重たくなり始めた時、まなつのポケットからポットが勢い良く飛び出した

 

「く〜っだらない!」

 

「「ローラ!?」」

 

「ローラ?」

 

「自分の可愛いが信じられなくてどうするのよ?」

 

屋上とはいえ公の場。ローラの声に周りに居た人達が振り返る

 

「貴女は…!」

 

「まなつ!」

 

「ほい来た!」

 

まなつはポットを、帝はさんごを抱えて人気の無い場所へと移動した

 

そこで色々と込み入った話をした。勿論、さんごがローラと会った事についても話した

 

「まさか2人が会ってたとはね。てゆうか、帝と一緒に居たのに何でさんごと会うの?」

 

「ローラって言うんだ。小ちゃくても可愛い!」

 

「そうそう!自分の可愛いを信じなくちゃ!」

 

「自分の可愛いを信じる…」

 

「ねぇローラ、さんごってプリキュアに向いてると思わない?」

 

「あの…プリキュアって?」

 

まださんごにはプリキュアについて詳しくは説明してはいなかった

 

「プリキュアはね、あとまわしの魔女から世界を救う伝説の戦士なんだよ!ローラは、プリキュアを探しに人魚の国からやって来たんだよ」

 

「帝君も?」

 

「俺はプリキュアでは無いよ。でも、プリキュアと同じ力をこの前手に入れたからね。協力しようって事になってる」

 

(世界を救う伝説の戦士。わたしにそんな事が──)

 

さんごに心境の変化が訪れようとしたのだが

 

「でもこの前、トロピカルパクトを渡したけど無反応だった。だから正直無理だと思う」

 

「そうかなぁ〜?」

 

「わたしにはそんな勇気も自信も無いから」

 

「そんな時はコレ!」

 

まなつはリップを取り出した

 

「メイクで気合いを入れるの!そしたら──」

 

「『トロピカルぞ〜って気分が上がるから』って言いたいのか?」

 

「ちょ、それわたしの台詞!」

 

 

 

 

 

////////

 

放課後、下校中でヤラネーダが出現した事に気付いた

 

帝とまなつはお互いに目を合わせて行動に移す

 

「わたし急用思い出した!」

 

「俺はまなつのパンツを追い掛ける!」

 

「「「まなつ!」」」

 

「でも、何で帝はパンツ?」

 

「さぁ?」

 

 

 

 

 

「やはりヤラネーダだったか」

 

「まなつ!帝!」

 

「任せて!」

 

「よし」

 

 

 

「プリキュア!トロピカルチェンジ!」

 

「レッツメイク!」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

 

「ルーレットスタート!」

 

『DEFENCE!』

 

 

 

変身を終えて、速攻でサマーが飛び出した

 

「ちょっと待った!」

 

「え、何?」

 

「サマーのパンツをまだ堪能してない。スカート捲ってからどうぞ」

 

「そんな事言ってないで行くよ!」

 

今度こそ仕切り直してサマーが攻撃を仕掛ける

 

「てや!」

 

先ずは一発度キツイヤツをお見舞いして牽制する

 

「取られたやる気返して貰うわよ!」

 

「させねぇぜ!先ずは人魚をやっちまえ!」

 

「ヤラネーダ!」

 

ゴミ箱を媒体としたヤラネーダは、腕から空き缶の弾を連続発射する

 

「やらせるか!」

 

帝はローラの前に立ち、手を翳すと青い盾が現れて全て防御した

 

「可愛くてカッコいい。これがプリキュア」

 

2人の後を追って来たのか、さんごも近くてその勇士を見ていた

 

(そんな勇気も自信もわたしには…)

 

 

『──さんごってプリキュアに向いてると思わない?』

 

『── トロピカルぞ〜って気分が上がるから』

 

 

「わたしにも…あっ!」

 

攻撃を直撃したサマーは吹き飛ばされ、近くに居たローラまで下敷きになってしまった

 

「やばい!」

 

「まなつ!ローラ!」

 

「え、何でこんな所にさんごが?」

 

「何やってんの!早く逃げなさい!」

 

「待って!」

 

逃げろと促すローラだが、帝が待ったを掛ける

 

「わたしは逃げない!」

 

その時、さんごの左指から紫の光が放った。そしてトロピカルパクトも反応する

 

これはサマーの時と同じ現象

 

「見つけたわ!2人目のプリキュア!」

 

トロピカルパクトはさんごの手の中へと収まった

 

「わたしが…プリキュア!」

 

「さんご!そのリングをパクトの穴に挿れてクルッと!クルッとね!」

 

「リングをパクトの穴に挿れてクルッと…分かった!」

 

 

 

「プリキュア!トロピカルチェンジ!」

 

「レッツメイク!」

 

「キャッチ!」

 

「リップ!」

 

「アイズ!」

 

「ヘアー!」

 

「チーク!」

 

「ドレス!」

 

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

 

 

「やった!貴女はプリキュアになったのよ!」

 

「プリキュア?これがわたし?」

 

3人は新たなプリキュアのコーラルを歓迎するが、逆にチョンギーレは歓迎しなかった

 

「また邪魔者が増えたのかよ」

 

「「キュアコーラル可愛い!」」

 

「ありがとう…あっ!」

 

「ヤラネーダ!」

 

「危ない!」

 

『ぺけ!』

 

ヤラネーダに背中を見せてしまったサマーと帝は反応出来なかったが、コーラルが2人の前に立った

 

ヤラネーダを攻撃なのだが、コーラルが指先でペケ印を作り、そのペケ印のシールドで攻撃を完璧に防いだ

 

「これはまた凄い」

 

「帝援護して!」

 

『TECHNIC!』

 

「…面白い。少々遊んでやろう」

 

ルーレットをし直して新たな能力にチェンジする。そして軽く髪をかきあげて集中モードで性格を変えた

 

「「ハァァァ!!」」

 

「ヤラネーダ!」

 

またも連続発射するが、2人の前に分身した3人の帝が現れた

 

「『『滑稽な悪足掻きだ』』」

 

オーシャンステッキで全て受け流して、2人の道を切り開いた

 

「「ヤッ!」」

 

ヤラネーダの背中へと飛び回った2人は、足で軽く蹴り飛ばして倒した

 

「ローラ!」

 

「オーライ!」

 

 

「マーメイドアクアポット!サーチ!」

 

「黄色!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

やる気パワーを取り戻したが、すぐに取り返そうとヤラネーダが仕掛ける

 

『ぺけ!』

 

だがコーラルの完全な防御でこれも防いだ

 

「わたしはもう逃げない!」

 

更に、さんごの想いに応えて、サマーのハートルージュロッドが色違いの物に分裂した

 

「ヤラネーダ!」

 

負けじとヤラネーダが突撃して来た

 

だがそれを上から3人に帝が叩き付けるかの如く、抑え込んだ

 

『この俺が』

 

『絶対だ』

 

「這い蹲ってろ」

 

「今だよコーラル!」

 

「わたしはわたしを信じる。だって、これがわたしの可愛いだから!」

 

 

 

「ハートルージュロッド!」

 

「プリキュア!もこもこコーラルディフュージョン!」

 

 

「ビクトリー!」

 

 

 

「チッ!」

 

「これでプリキュアが2人目。予想通りの結果ですが、少々追加されるのが早過ぎでは?」

 

「アリス!お前今まで何処に!」

 

「陰ながら白旗降って全力で応援していました〜」

 

 

 

 

 

「やったねコーラル!」

 

「ありがとうサマー。帝君も」

 

「感謝の言葉は要らないよ。だってもう既に良いもの見せて貰ったから!」

 

「何を?」

 

その時、分身した帝2人がサマーとコーラルのスカートを背後から大きく捲り上げたのだ

 

「あっ!?」

 

「えっ!?」

 

一瞬理解出来なかったが、スカートが下がる頃になって自分達が何をされたかのを知り赤面する

 

「帝〜!!」

 

「帝君!!」

 

「さぁ、どれが本物か当ててぶべば!?」

 

サマーとコーラルのグーパンチが、見事本物の帝に命中した。

それと同時に分身も消えた

 

「?」

 

「どうしたのコーラル?」

 

「何か誰かに見られてた様な?」

 

コーラルは誰かの視線を感じたのだが、見渡しても人影など存在しない

 

「気のせいじゃない?」

 

「そう…かもね」

 

それ以上コーラルは気にはしなかったが、それは間違って無かった

 

 

「…」

 

 

確かに誰かが帝達を見ている

 

 

 

 

 

////////

 

夜の7時が回った頃、皇家のインターホンが鳴った

 

「は〜い」

 

出てみるとさんごが立っていた

 

「ごめんね帝君。今大丈夫かな?」

 

「いいよ、部屋に上がって」

 

差し出された手を取り、手を繋いで帝の部屋へと移動した

 

「どうした?プリキュアの事で訊きたい事でも?それとも何か不満があった?」

 

「ううん、違うの。あの、その……ごめんね!」

 

急に頭を下げて謝り出して帝は困惑した

 

「急にどうしたの?そんな謝る事された覚えが…」

 

「チューリップの事、謝りたくて」

 

「謝るも何も気にしてないって」

 

「でも帝君、本当は紫じゃなくて黄色を選んでいたんだよね?」

 

実は、帝はさんごだけが紫のチューリップを選んだ事を最初から知っていたのだ

 

それに気を遣ってわざと紫に変更したのだ

 

さんごもそれに気付いたのは、花が咲いて少し経った時だった

 

 

 

『──ひっぐ…ひっぐ……』

 

『──さんごどうしたの?』

 

『──みんなピンク選んでたの。わたしもやっぱりピンクがよかった。わたし変なのかな?』

 

『──そんな事ないよ。ほら、俺も紫だよ。おそろい』

 

持って来た植木鉢をさんごに見せてあげた

 

『──さんご泣かないで。さんごのかわいいは、俺もかわいいと思ってるから』

 

『──ほんとう?』

 

『──うん!』

 

 

 

「あの時すっごく嬉しかったの。帝君だけがわたしの事に気付いてくれたの」

 

「前に言ったろ?『ちゃんと助けてあげるから』って。いつだって、さんごの味方だから」

 

「いつもありがとう帝君」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人目のプリキュア、涼村さんごがキュアコーラルとして覚醒した

 

新たな日常が訪れる




何かローラとの絡みめっちゃ多いね!

ここまでの拝読ありがとうございます!


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第5話 引き出しの中の記憶

幼馴染設定だから割と書きやすい

ではスタート!


「帝〜!あ〜そ〜ぼ〜!」

 

ちょっとした日、窓の外から聞こえる声に頭を出してみると、まなつとさんごが手を振って誘っていた

 

「悪いが部屋が散らかってるから遊ぶ訳には…」

 

「さんごの家に行こ!」

 

「まなつちゃん、掃除してるみたいだし今日は…」

 

「何してる?さぁ行くぞ!」

 

いつの間にか部屋から降りて隣で準備していた

 

 

 

 

 

「わぁ〜!さんごの部屋トロピカってる!」

 

「そんな事ないよ」

 

「それにしても遊ぶって言っても何して遊ぶんだ?」

 

「あ〜それは…」

 

多分何も考えずに誘ったのだろう。別に気にはしていなし、予想通りの結果の事だ

 

「それにしてもさんごの部屋広いね〜!色々見てもいい?」

 

「うんいいよ」

 

そういって、まなつはさんごの部屋で面白いものを探す旅へと出掛けた

 

「おい大丈夫か?」

 

「あまり大事なモノは置いて無いから大丈夫」

 

「それならいいが…」

 

そうしてると、まなつは気になる物を発見した

 

「さんご、この紙って何?それに玩具の指輪も入ってるし」

 

「それは!!」

 

見つけてはいけない物をまなつは見つけてしまった

 

さんごは焦り始める

 

「えっと、『こんいんとどけ』?婚姻届!?」

 

さんごは素早くひったくり、急いで机の引き出しに入れて鍵を閉める

 

「アレまだ持ってたのか?」

 

「アレ?さっきの婚姻届の?」

 

「小さい頃、さんごが──」

 

「言っちゃダメェェェ!!」

 

「ぶばっ!?」

 

口を塞ぐつもりが、グーパンで帝を殴ってしまった

 

「あ、ごめんね。でも言っちゃダメなの!!」

 

(さんごがこんなに必死になるなんて。何なんだろう)

 

流石にここまで拒否されると、まなつも気持ちを尊重して何も言わなかった

 

 

 

 

 

////////

 

「またね〜!」

 

夕方になりまなつは帰って行った

 

「俺も帰るからな」

 

「帝君!」

 

帝も帰ろうとしたのだが呼び止められてしまった

 

「もう少しだけ」

 

結果、またさんごの部屋へと来てしまった

 

「あのね、これ覚えてる?」

 

そう言って、先程しまった自作の婚姻届と玩具の指輪見せた

 

「覚えてるも何も、さっき言おうとして殴られたんだけど?」

 

婚姻届は適当な紙用紙に、色んな色鉛筆で書かれた物。文字も今よりも、可愛く平仮名が多かった

 

「は、恥ずかしいよ!」

 

「恥ずかしいも何も、それ書いたのはお前だろ?」

 

「そうだけど…人に知られるのはその///」

 

「あの時は俺でも参った」

 

 

 

『──みかどくん、こんいんとどけっていうの書いたら、ずっといっしょにいられるんだって!』

 

『──書くの?』

 

『──うん!書いて!』

 

『──ずっとと言ってもなぁ…』

 

『──書いておねがいぃ〜!うぅ…』

 

『──わかった書くから』

 

 

 

「半べそかいてまで強引に書かすのはなぁ…」

 

「うぅ///」

 

記憶が鮮明に覚えてるせいもあり、赤面し呻くばかり

 

「その後、玩具だけど2人で指輪も買いに行ってなぁ」

 

「ん…」

 

さんごはゆっくり帝に引っ付いた

 

「大好き…」

 

「俺もだよ〜」

 

「フフ///」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少しずつだけど、自分の気持ちを表に出してきて帝は嬉しかった




ほぅ…

何気に奇行に走らなかった回

ここまでの拝読ありがとうございました


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第6話 涼村さんごの1日

感想を頂いて調子に乗ってる作者で御座います。
今回の話も本来ならもう少し先の予定でした

あ、今回もさんご絡み

ではスタート!



涼村さんご、彼女は中学一年生の何処にでもいる普通の女の子

 

彼女の1日の始めは、家から歩いてすぐ着く皇家に行く事だった

 

「帝君朝だよ〜」

 

「だ〜か〜ら〜、俺は朝一でさんごの胸を触るかパンツを見ないと起きないって」

 

いつもこんな感じである。小学生の時も、同じ事ばかり言って起きずにいる

 

それでも対処の方法は幾つかある。

今回はその内の一つを使う

 

「えい!」

 

「痛た!?」

 

ハリセンで叩き起こす

 

「えいえいえい!!」

 

「痛い!分かった起きるから!」

 

起き上がるまで永遠と叩くつもりだったが、数回叩いて起きた

 

「もう…いいだろう別に減るもんじゃないし」

 

更にもう一撃。大きく振り被り全力の打撃を加えた

 

そして学校

 

通学時の様子は想像通り

 

帝はさんごにベタ付くばかりだった。

本人曰く歩きにくいとの事。しかし嫌では無かったと

 

「さんご、帝おはよ!」

 

「まなつちゃんおはよう!」

 

「おはよう」

 

学校では別に何事も無く過ごす事が多い

 

帝も、流石に人の目がある場所では変な事はしない

 

人の目がある場所では

 

「きゃっ!帝君変な所触らないで!」

 

「えぇ!?駄目なの!?」

 

「ぺけだよ!」

 

「仕方ない。ローラに頼もうか」

 

「言い方に腹が立つわね。ま、言い方がどうであれ断るけど」

 

そして放課後

 

入る部活動は今日も決まらず、只々時間が過ぎてゆくだけ

 

「今日も授業難しかったね」

 

「そうか?見た目より簡単だったけどな」

 

帰る時…というより、いつも帝の隣はさんごが必ず居る

 

隣で歩く彼、笑顔を向ける彼。全部独り占めしたいからである

 

「……」

 

「どうした?俺の顔に何か付いてるか?」

 

「ううん、隣に帝君が居るな〜って」

 

「いつも隣に居るだろ?」

 

「うん、居てくれる」

 

お互いに家に帰宅すると部屋で勉強をする

 

それが終われば夕食なのだが、今回は帝を誘っての夕食

 

時折り、こうしてお互いの家にお邪魔しては夕食をご馳走する事がある。

さんごも何回も皇家でご馳走して貰っている

 

「「ご馳走様でした」」

 

食べ終われば次はお風呂だ

 

これも恒例行事の如く始まる

 

「わたし入るね」

 

「お〜」

 

1日の疲れを文字通り洗い流す為に湯船につかる

 

「ふぅ〜…」

 

ブクブクと湯に深く浸かってると、脚近くで泡が溢れていた

 

「?」

 

何かと思いよ〜く見ると

 

「ぶはっ!…よっ!」

 

「……きゃあぁぁぁあぁ!!!」

 

湯の中から帝が顔を出したのだ

 

細い腕で胸などを隠す。隠さないと見えてしまう

 

「帝君何で///」

 

「そりゃあお前…さんごとお風呂入りたいからに決まってるだろ?」

 

「ほ、本当は?」

 

「裸」

 

「もう!」

 

早いとこ上がりたい所だが、生憎たった今入ったばかり。出るにしても出られない状況下にある

 

「ねぇさんご!」

 

「ひゃあ!//」

 

壁際に追い込み、更には両手を手を取り指を絡ませて繋ぐ

 

「何恥ずかしがってるの?小さい頃はこんな事当たり前だっただろ?」

 

「そ、そんな事言われても〜!顔、息が…!」

 

とうとうさんごの上へと跨り、肌と肌が密着した

 

「さ〜んご」

 

「う〜〜!もう無理!!」

 

我慢に耐え切れず勢い良く突き飛ばした

 

目を回して赤面し、肩で息をする

 

「ビックリした〜」

 

「わたしがだよ!」

 

「そんなに恥ずかしいなら背中合わせならどうだ?」

 

「うぅ…それなら」

 

お互いに背中をくっ付ける

 

「いつから入ってたの?」

 

「さぁ?いつからだろう?」

 

ようやく風呂から上がり下着とパジャマを着る

 

「勝手に入らないでね!……ちょっと待って帝君。何を被ってるの?」

 

「え?さんごのパンツ」

 

頭にさんごのパンツを被る帝。その後どうなったのかは言うまでもない

 

帝も帰り、部屋で一息をつく

 

今日1日の事をベッドで思い返す

 

思い出す度に枕に顔を埋めて、足をバタつかせては勝手に嬉しさと恥ずかしさの感情を交わらせて昂らせる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが、涼村さんごの1日の生活だ




甘ったる!

ここまでの拝読ありがとうございました!


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第7話 わたしの為の物語!キュアパパイア物語!

主人公のルーレットはイベント発生が無い限り基本ランダムです。なので、連続して同じのが当たる事も

オリスト半々といった感じです

ではスタート


「今日も部活決まらなかったよ〜」

 

「わたしもだよ」

 

「俺は前にも言った通り帰宅部を貫き通す」

 

「帝、それでいいの?」

 

バンッと机を叩き帝に迫る

 

「部活は高校生になってもある。だけど中学での部活は今しかないんだよ!もっと青春を謳歌しようよ!」

 

「悪いけど動きたくないし、汗もかきたくない、それに青春なんてものに興味など無い」

 

「冷たい!もっと熱くなろうよ!熱くこの身を滾らせて熱く、激しく燃え上がろう!!」

 

(怠いなぁ…)

 

椅子に座って天井を見上げてると、ローラの声がした

 

「無ければ作れば?」

 

「え?」

 

「グランオーシャンじゃ、無ければ自分で作るのが基本よ」

 

「そうかその手があった!でも、何部にしようかなぁ…」

 

珍しくローラもいっしょに考えてると、とある事を思い付いた

 

「いっそ、プリキュア 部なんてどうよ!」

 

「いや、プリキュア は部活じゃないよ」

 

「良いじゃない、プリキュア と部活両方出来るわよ」

 

「だからプリキュア は……そもそもプリキュア って何?」

 

プリキュア プリキュア と考えるあまり、プリキュア について考える事になった

 

「確か伝説の戦士って」

 

「そうよ、グランオーシャンに伝わる伝説。人間の世界と人魚の世界を救った戦士。それこそがプリキュア 」

 

「聞いた事ないよ。知ってる?」

 

「いや…」

 

「う〜ん…それじゃあ明日調べてみよう!」

 

「それよ!プリキュア の事を調べれば、自然と新しいプリキュア も見つかる筈だわ!」

 

まなつとローラ。それぞれの思惑が上手く行く事に高笑いをするのだが、一番肝心な話題から大きく逸れてしまってる事に気付いていない

 

「え、あの…部活の話は?」

 

「…時間の無駄だったな。ご馳走様。俺は帰るよ」

 

「帝君帰るの?」

 

「何か今日帝冷たくない?」

 

「今日は用事で人と会う約束している。話の続きはまた明日な」

 

 

 

 

 

////////

 

そして次の日、3人は図書室でプリキュア に関する本を探すのだが、これといった収穫は無かった

 

「そもそもプリキュア 自体明かされてないのかもな。探すキーワードを変えてみたらどうだ?人魚に関する事だけならこの図書室に幾つかありそうだし」

 

「だね!」

 

「んじゃあ俺はこれで」

 

「えぇ〜!?帝帰っちゃうの?」

 

「悪いけど今日も用事があるんだ」

 

それだけ言うと本当に帝は帰って行ってしまった

 

 

 

 

 

////////

 

さんごは帝を探していた

 

「帝く〜ん!」

 

街中何処探しても帝の影すら見かけない

 

「もしかして岩場で釣りでもしてるのかなぁ?」

 

帝は偶に、気分転換で岩場で釣りをしてる時がある

 

きっとそこに居るだろうと思い走り出した

 

 

 

「帝く〜ん!」

 

しかし岩場へ来ても居なかった。叫んでも帰ってくるのは虚しい声だけ

 

日も暮れて来た。これ以上は親にも心配を掛ける事になる。帝が家に帰っている事を願ってその場を後にしようとすると、誰かの話し声が聞こえた

 

「誰?」

 

岩場のもう少し奥に行った場所。そこに帝が居た

 

「帝く──」

 

 

「最近どういうつもりだ?」

 

 

呼び掛けようとしたが、誰かと話してるを知って身を隠した

 

(誰と話してるんだろう?)

 

見つからない様に覗くが、岩が邪魔して相手の姿が見えない。

目に映るのは帝の背中だけ

 

 

「連絡が多い。こちらから出向く時は出向く。少しは大人しくしていろ」

 

「────」

 

「チョンギーレも大した事ない。拍子抜けも良いところだ。こっちも次の手を考えている。お前達は黙って従っていろ」

 

「────」

 

「言われなくても分かっている……そこ居るのは誰だ?」

 

 

「ッ!」

 

ちゃんと隠れているつもりが盗み聞きをしている事に気付かれた

 

(やっぱり帝君だね)

 

観念して岩場から頭を出そうとした時

 

「んッ!?」

 

いきなり背後から口を塞がれて連れ去れた

 

「んー!んーっ!」

(どうなってるの!?怖い、怖いよ!助けて帝君!!)

 

「さんご暴れるな。俺だ」

 

(えっ?その声って帝君?)

 

背後口を塞いでるが声から察するに帝だった

 

しかしおかしい。先程まで話していただろう後ろ姿は帝だったのだ。幼馴染だから見間違える筈が無い

 

「この場から離れるぞ。着いて来い」

 

とにかく言われるがまま帝に着いて行く事にした

 

そしてその入れ違いで岩場から話し合ってた人物2人が、先程までさんごが居た場所を覗く

 

「私の勘違い…でしょうか?」

 

「いや、確かに誰かは居たが……今は別に良いだろう。プリキュア を追い込ませる事が優先だ。やる気パワーは後回しにしても構わない」

 

「しかし、あとまわしの魔女の事も考えますと──」

 

帝?は話す相手の襟首を掴み取り、強引に引き寄せて圧を掛ける

 

「二度は言わない。分かったかアリス?」

 

「…随分と人使いが荒い事で。ですがこれも物語を紡ぐには必要な事。貴方に従いますよ『嬴政(えいせい)』様」

 

 

 

 

 

「ぷはっ!」

 

少し離れた場所に移動した帝は、さんごの口から手を離して解放する

 

「急にビックリしたよ!もう何処に行ってたの?」

 

「あ〜、釣り」

 

そう言って木の枝で作った釣竿を見せつける

 

「ねぇ帝君、さっき何であの場から離れたの?」

 

「そりゃあお前、あんな怪しい人物が岩陰で話していたら警戒はするだろう」

 

「怪しいって、後ろ姿が帝君だと思ったから!」

 

「だけど俺はお前の後ろに居た。只の勘違いだろ?」

 

どうしても腑に落ちない。声色だって同じだったのだ。

何をどうしたら間違えるのかが自分でも分からない

 

「日も暮れて来たし帰るぞ」

 

「うん」

 

「ところで調べ物はどうなった?」

 

「それだったら──」

 

さんごは放課後の事を全て話した。一之瀬みのりと言う2年生の先輩と多少なり仲良くなり、今はプリキュア に誘ってみようかと考えてる途中みたいだ

 

話して帰る途中、さんごは誰かの視線を感じて振り返る

 

かなり離れた距離、歩道の真ん中に黒い人影が立っているのが見えた

 

「?」

 

黒い人影はニタリと笑い、そして姿を消した

 

「ひっ!」

 

それを見て怖くなったのか震えて帝に抱き付く

 

「どうした?」

 

「う、ううん!何でも無い!」

 

その黒い人影は何だったのか。さんごがそれを知るのはまだ遠い話

 

 

 

 

 

////////

 

次の日、一之瀬みのりの事をもっと知る為に担任の桜川咲に詳しく聞く事にした

 

その結果、文芸部に所属していたが今は無所属。そして、所属していた時に部の雑誌、小説を書いていた事が分かった

 

それを知り、図書室へと3人は向かった

 

「凄い!人魚と人間の女の子の話めちゃトロピカってる!!」

 

「ふぅ〜ん、まあまあやるわね」

 

「まあまあなんかじゃないよローラ!凄いよみのりん先輩!!」

 

「ローラって?」

 

丁度そこへ、みのりと鉢合わせて話を少しだけ聞かれてた

 

「な、何でもないです!」

 

「…あ、それって」

 

「そうです!みのりん先輩の小説『マーメイド物語』。すっごくトロピカってる!」

 

「トロ、ピカ?」

 

まなつはみのりに近付き、小説の感想を次から次へと言いまくる

 

「人魚と人間の女の子が旅する大冒険!こんな凄い物語が書けるなんて本当に凄いです!」

 

しかし、まなつが絶賛しているのだがみのりはその逆の表情をしていた

 

「この伝説のパパイアは絶対貴方には渡さない!」

 

「やめて!!」

 

「え?」

 

まなつが話す途中で、みのりは声を荒げてその話を辞めさせた

 

「そ、それはわたしが勝手に空想した話だから!人魚なんて現実にはいないし、わたしの小説もつまらない只のお伽話だし…」

 

「みのりん先輩?」

 

「ご、ごめんなさい。その話昔書いたものだし、それに今は文芸部にはもう…その、辞めちゃったから…」

 

「でも、本当に面白かった!わたし、この続きを読みたいって思いました!それに、こんなに人魚の事が好きなら!」

 

「ごめんなさい。この話はもういいの…」

 

最後にもう一度謝り、逃げるように図書室から出て行った

 

「あれじゃあやっぱり駄目ね」

 

 

 

 

 

////////

 

あおぞら市立博物館。次の日、まなつに誘われて帝とさんごは人魚の展示物を見に行く事にした

 

「人魚だらけだ〜!」

 

「全く、早くプリキュア 探したいのに…」

 

「あー!これ何だろう?」

 

「もう…」

 

アクアポットがまなつのポケットに入ってる為、動きに合わせてローラも揺れてしまう為嫌になっていた

 

「世界の人魚伝説、船を座礁させたって…」

 

「ちょっと怖…」

 

「人魚ってそんな事出来るのか?」

 

「いやいやそんな事しないし出来ないし…ってわぁぁ!!」

 

振り回されて少し酔ってしまったのか、ローラの顔色が良くなかった

 

「人間、お願いだから代わりに人間がポット持ってくれない?」

 

半分泣きそうな声をしながら、ふよふよとポットが帝の手の中に収まる

 

「ローラ見て見て!人魚のミイラ!」

 

「はぁ!?これの何処が人魚なのよ!?」

 

流石に人魚のミイラには異議を申し出てて、ポットから出て来た

 

「こんなの人間の勝手なイメージだわ!」

 

その時足音が聴こえた

 

「誰か来た!隠れてローラ!」

 

「そんな事言ったってもう…!」

 

「造形物に紛れたら?」

 

「ナイスよ人間!」

 

急いで台の上へと登って紛れたいのだが、中々登れないでいた

 

「人間、下から押し上げて!」

 

「はいはい」

 

「ちょっと人間何処触って…ひゃん!?」

 

「おお、良い声」

 

「「2人共!!」」

 

何とかして登り、適当なポーズを付けて紛れ込む事に成功した

 

そしてやって来たのは

 

「みのりん先輩」

 

「貴方達も来ていたの」

 

「はい」

 

「昨日はその…ごめんなさい」

 

どうやら、まだ昨日の出来事を引っ張っていた様だ

 

「あれ?」

 

ふとみのりは人魚の像へ目をやる。そこで像に紛れてるローラを凝視する

 

「すごくリアル」

 

「と、ところでみのりん先輩はいつから人魚に興味を持ったのですか?」

 

「幼稚園の頃に読んだ人魚姫がきっかけ」

 

何とか帝が話題を逸らして気付かれる事はなくなった

 

「人魚姫って言いますと、あの有名な童話のですよね?」

 

「え〜と、確か内容は…」

 

「簡潔に言うと、好きな王子の幸せの為を思い、人魚の自分が泡となって消えるの」

 

「はぁ!?人間の為に消える?何それ!?」

 

「え?」

 

「「「ローラ…」」」

 

人魚姫の話を聞いて、信じられないという気持ちが抑え切れず、自分から正体をバラしてしまった

 

一度博物館の外へ出て、噴水前でプリキュア の事を含めてローラの事を説明した

 

「人魚が…本当に…!」

 

「何なら尾鰭触ってみる?」

 

「本当!?…やっぱりいい!」

 

触ろうとしたのだが、直前で遠慮してしまった

 

「しょうがないか。だってローラ魚だし、臭いがねぇ…」

 

「……」

 

「ぶぼっ!?」

 

ローラは帝の首を腕で締め上げて噴水の中へと引き摺り込む

 

「何か言ったかしら?二・ン・ゲ・ン♡」

 

水中で何かしら言っているのだが、当然聴こえる筈も無い

 

「帝君!?」

 

「とにかくそういう訳なので、みのりん先輩もプリキュア になっちゃいませんか?」

 

「試してみて」

 

ローラがトロピカルパクトを投げ渡す。

しかし、受け取ったもののパクトは反応しなかった

 

「プリキュア なんてわたしには…」

 

「きっと大丈夫だと思います」

 

「そうそう。人魚が大好きで、あんな物語を書けるなら!」

 

「…わたしには無理。空想と現実は違う」

 

パクトに反応は無くとも、何とかしてプリキュア に誘うとしても無理と言われる

 

「わたしは、ファンタジー小説の主人公じゃないもの」

 

「自信が無い時はコレ!メイクで気合いを入れるの。みのりん先輩もやってみませんか?」

 

まなつがリップをみのりの唇へと近付ける時、近くから悲鳴が聞こえた

 

「あれは!」

 

博物館の近くで、土偶のヤラネーダがやる気パワーを吸い取っていた

 

「まなつ!さんご!人間!」

 

 

 

「プリキュア!トロピカルチェンジ!」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

 

「ルーレットスタート!」

 

『TECHNIC!』

 

 

 

「「ハァァァ!」」

 

サマーとコーラルが息の合った同時攻撃でヤラネーダを後退させた

 

「あら、初めまして」

 

「誰?」

 

「私は『ヌメリー』」

 

「そして忘れてはいけません皆んな大好きなアリスです」

 

ヌメリーの後ろからアリスも出て来た

 

「ヤラネーダ!」

 

土偶の腕が鋭い槍となり、自ら回転してコマの様に突撃する

 

「危ない!」

 

『ぺけ!』

 

コーラルがギリギリで防ぐも、衝撃で3人は後方へと軽く飛ばされる

 

飛ばされるも体勢を立て直して次の攻撃に備え様とすると、上から大きな影が覆い尽くす

 

「上だ!」

 

瞬時に次の攻撃へと移っていたヤラネーダは、大きな巨体を利用してのしかかって来る

 

「「「『『ぐぅぅ…!』』」」」

 

何とかサマー達3人と分身した帝、合わせて5人で支える様にして耐えてるがそれも時間の問題だ

 

「このままじゃあ…」

 

「帝どうにかして!」

 

「そんな事言われても支えるので一苦労だ!」

 

『TECHNICは分身を作るくらいだから力が無い!』

 

『相性が悪い!』

 

遠くでそれの様子を見てる事しか出来ないみのり

 

「どうしよう…」

 

そんな時、ローラが声を掛ける

 

「助けたいんでしょ?だったら貴女が行きなさい」

 

「でも、わたしは…」

 

「また何も出来ない?そんなのばっか。『わたしには無理』『出来ない』『どうせわたしなんか』」

 

図星を突かれて黙ってる事しか出来ないみのりに、再度トロピカルパクトを差し出す

 

「まなつは信じてる。貴女ならプリキュア になれるって」

 

「…!」

 

「もっと自分を信じたらどうなの?最初から出来ないなんて決めつけないでやってみなさいよ!貴女がいないと決め付けていた人魚だって、ホラ!此処に居るし、自分でダメだって言ってた小説だってまなつは言ってたでしょ!面白いって!!」

 

「…ッ!」

 

「勇気を持って前に踏み出せばなんだって出来る!その足は何の為に付いてるの?」

 

ローラに言われ一歩、また一歩と踏み出してトロピカルパクトを掴み取る

 

「わたし…わたし助ける!彼女達を!

 

その想いに応え、トロピカルパクトが光り、指にはハートクルリングが現れた

 

 

 

「プリキュア!トロピカルチェンジ!」

 

「レッツメイク!」

 

「キャッチ!」

 

「チーク!」

 

「リップ!」

 

「ヘアー!」

 

「アイズ!」

 

「ドレス!」

 

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

 

 

「ハァァッ!」

 

キュアパパイアへと変身すると同時に飛び出して、ヤラネーダにキックで倒した

 

「凄い力…!」

 

「あらあら。ヤラネーダ」

 

「ヤラネーダ!」

 

またも腕を尖らして攻撃しようとする

 

「ここは任せて!」

 

パパイアは、自分のイアリングを両目に付けてビームを放った

 

放ったビームはヤラネーダの両目に直撃し視界を封じた

 

「今よ!」

 

帝が走り出して飛び上がり、オーシャンステッキを回す

 

『ATTACK!』

 

「当たり!これでどうだ!」

 

オーシャンステッキが赤く光り、帝の攻撃力を底上げした

 

撃ち抜く拳はヤラネーダを一発で地面へと叩き付けた

 

「これならどうだローラ!」

 

「オーライ!」

 

 

「マーメイドアクアポット!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

「凄い…まるで空想のお話みたい。でもこれが、わたしの現実(リアル)!」

 

更に、コーラルの時と同様にパパイア専用のリップが生まれた

 

「わたしも、皆んなを助けたい!」

 

 

 

「ハートルージュロッド!」

 

「プリキュア !ぱんぱかパパイアショット!」

 

 

「ビクトリー!」

 

 

 

「楽しかったわ。行きましょうアリス」

 

「最近私の出番が無くてシクシク悲しみです」

 

 

 

 

 

////////

 

「どう?一歩踏み出した気分は」

 

「どうかな。でも、何だか良い気分」

 

全部吹っ切れた表情をしていた

 

「で、もう一度訊くけど尾鰭触る?」

 

みのりはローラの尾鰭に触りハッとする

 

「どう?」

 

「凄く現実(リアル)!」

 

「はぁ〜!?何その感想!?」

 

 

 

 

 

/////////

 

「ヌメリーでも駄目だったか」

 

「はい、次のご予定はどう致しましょうか?」

 

「…あの人を呼べ」

 

「あの方ですか?正直言って、私はかなり結構バチクソ苦手な方です」

 

「だが信頼は出来る」

 

「承りました」

 

アリスは拡声器を取り出して大声で叫ぶ

 

「オッカマー様!!嬴政様がお呼びです!!聴こえましたら今すぐに来やがれで御座います!来なければぶっ飛ばしに行きます〜!」

 

言い終わると同時に屋敷の壁をぶち破って大柄な人物が現れた

 

「政ちゅわ〜ん!!」

 

抱き締めようとダイビングして来たが、嬴政は足裏で踏み潰した

 

「速かったな」

 

「それは勿論よ!政ちゃんの為ならこのオッカマー命捧げます!!」

 

オッカマーという人物。

ヌメリーと少し似ているが少し違う。筋肉隆々で拳を振り抜こうと思うなら、どんなものでも破壊すると思わせるぐらいの体付き

 

体の色は薄い紫で頭に2本の触覚らしきのが生えてる

 

オッカマーはウミウシなのだ。そして、あとまわしの魔女達特別に違い、人型なのも特徴的だった

 

「オッカマー様、壁を破壊するのは辞めて頂きたいと申します。壁を修復するのは私です」

 

「あら居たのアリス?ごめぇんなさい。私、貴女には微塵も興味無いの。早く消えてくんないかしら?」

 

「カッチーンと来ました。今の私、ウルトラMAXで怒髪天になっています。正直言って、ゴミ箱にクシャポイしたいのですが?」

 

突然始まったオッカマーとアリスの喧嘩。ピリピリとした空気が漂い始める

 

「人間って無駄な弛み肉が多いのね。その胸に言ってるのよ。牛さん?」

 

「男のくせして女性みたいな喋り方。前々から気になっていましたが、とても愉快に気色悪いと言いつけます」

 

「何よ文句あるって言うの?男にだって女の心を持ったっていいじゃないの!!」

 

「下ネタしか言わない女の心って?」

 

「まだ今日は言ってないわよ!!」

 

「…フッ」

 

「よ〜し、殺す!!」

 

鼻で笑われた事に激しい怒りに捉われ、オッカマーとアリスは戦闘体勢になる

 

「やめろ」

 

嬴政がそう言うと、ピシャリと2人は動きを止めた

 

「おや、何やら騒がしいですが何かあったのですか?」

 

そこへバトラーが、2人の喧騒を聞き付けて来た

 

「バトラー、次人間の世界に行く人を決めているのか?」

 

「いえ。ですが、それについてお話したくこうして参りました」

 

「丁度良い、次はオッカマーが行く」

 

「かしこまりました」

 

「フフ、政ちゃんありがとうね〜」

 

それだけ言うと、バトラーと一緒に何処かへと行こうとする。

そして歩く足を止めて最後にこう言った

 

「ひとつだけ言っておく。無様に敗北する事は許されない。しかしそれ以上に、この俺を失望させるな」

 

「任せなさい!」

 

嬴政が立ち去ると、オッカマーは仕方ないといった感じでアリスと共に人間の世界へ行く

 

「さっさとやる気パワーと邪魔者の排除をやりましょう」

 

「はい、では準備をしましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プリキュア に変身出来る可能性を持つ人間は後1人




ここまでの拝読ありがとうございました


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第8話 みのりん先輩笑わせ隊!

そういえば言ってなかった!先ず第一目標、お気に入り30件!

ではスタート


「これでプリキュア が3人になったわ!こんなに嬉しい事はないわ〜!」

 

かなり上機嫌でまなつの部屋の中で飛び回るローラ

 

(これで残りの駒は1人…わたしが女王になる日もそう遠くはないわ〜!オーホッホッホ〜!」

 

「帝君、ローラが凄い顔してるけど大丈夫かな?」

 

「大丈夫だろ」

 

「心の声がダダ漏れ」

 

さんご、帝、みのりがそう言葉を溢す

 

「ところでみのりん先輩!」

 

「な、何?」

 

突然目の前まで迫られてたじろぐ

 

「みのりん先輩って中々笑わないですよね?」

 

(まなつ…)

 

「みのりん先輩、笑顔はとても大切ですよ」

 

(帝君まで…)

 

能天気で悪気も無くどストレートに言う2人に、頭を抱えて呆れていた

 

「…それなら笑わせて」

 

「「はいそれ頂きました!!」」

 

帝とまなつはハイタッチで喜んで、準備に取り掛かる

 

「先ずわたしからね!」

 

そう言ってまなつは、指をワキワキしてみのりに迫る

 

「少々強引ですけど良いですよね〜?」

 

「う、うん…」

 

「コチョコチョコチョ〜!」

 

思いっきり脇をコチョばすのだが

 

「…」

 

「あり?」

 

「どうしたの?わたしを笑わせたいんじゃないの?本気でいいのよ」

 

「うりゃー!!」

 

お腹、足の裏と誰もがくすぐると笑ってしまう所を攻めるも

 

「ぜぇ…ぜぇ…」

 

「何かした?」

 

ピクリとも眉が動かなかった。寧ろ涼しい顔をしていた

 

「こうなったら…さんご!ローラ!」

 

「まなつ!?」

 

「何でわたし達に振るのよ!?」

 

「大丈夫だよ!なんとかなるなる!」

 

2人をみのりの前に立たせる

 

2人は顔を見合わせて仕方なくする

 

「さ、さんご。貴女ってコスメに詳しいのよね?」

 

「う、うん」

 

「コスメに関しては、さんごに訊けば参考(・・)になるわね〜」

 

「ありがとうローラ!」

 

「違う!そうじゃない!」

 

帝とまなつはみのりへと視線を移す

 

「さんごに参考…良く思いついたね」

 

((駄目だ。笑ってない))

 

「仕方ない。最後は俺が見せてやる」

 

そう言って部屋から一度出て行った

 

それから数分すると、勢い良く扉が開いた

 

「バーンバーン!ババババーン!」

 

出て来たのは、女の子の学校制服を来た帝だった

 

「ぷ…アハハハ!!」

 

「に、人間が女装って!!」

 

まなつとローラは大爆笑の嵐

 

そして笑わせたい本人は

 

「…ん」

 

ヒクヒクと口角が引き攣っていた

 

「クッ…もう一押しか」

 

「ひぃ…と、ところで帝。これ誰のなの?」

 

「さんごのだけど?」

 

「何でぇぇぇ!?」

 

確かによく見ると、スカートの裾にはフリルが付いてある。紛れもないさんごが着ている制服だ

 

「今すぐ脱いで!!」

 

「さんごお前……意外と大胆だな」

 

「え……あ、違うから///」

 

「はいはい。まぁ、リアクションがイマイチだったからすぐ脱ぐけど」

 

帝がスカートに手を取った時ボソリも呟いた

 

「わざわざ下着もさんごの物を使用したのに…」

 

「…帝君今なんて言ったの?」

 

「だから、下着もさんごの物を履いてるって言って──」

 

その瞬間、さんごはコンマ単位の速さでキュアコーラルに変身して、帝の脳天に踵落としする

 

「ちょ、何やってるのよ!?」

 

「い、いくら帝君でも下着は駄目だよ!!」

 

「落ち着いて〜!」

 

「ぷ、プリキュア !もこもこコーラル──」

 

「「スト〜〜ップ!!」」

 

まなつもキュアサマーに変身して、ローラと2人掛かりでコーラルを止める

 

「クス…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな様子を見て、みのりは小さくだが笑っていた




書くたびに主人公がヤバい方向へと進んで行く

ここまでの拝読ありがとうございました


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第9話 混ぜるな危険!変態とハイテンションとオカマ

疲れてんのかな…?

流石にキャラ崩壊のタグも後で追加しておきます

ではスタート!


「レディ〜〜ス!ア〜〜ンド、ジェントルメ〜〜ン!!皆様方、波に乗ってノリノリでしょうか?」

 

「「「「「……」」」」」

 

帝達は今、アリスとヤラネーダと対峙してるのだが、想像以上のテンションの高さに無言で見つめていた

 

「おや、聞こえなかったですか?では、今度は拡声器を使って──」

 

「聞こえてるわよ!!寧ろうるさい!!」

 

ジーンとする耳を塞いで一同ジト目でアリスを見る

 

「いつもいつも!うるさ過ぎるのよ!!」

 

「まぁまぁ、ローラ落ち着いて」

 

「びっくらこいたです。私、そんなに声を張っていましたか?」

 

「ええそうよ!!」

 

何故か知らないがローラは、アリスの事をかなり毛嫌いしてるようだ。その為、さっきから何かしら言葉に噛み付いてる

 

「まなつ!さんご!みのり!特に人間は徹底的にアイツを懲らしめてやりなさい!!」

 

「「「「う、うん…」」」」

 

 

 

「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」

 

「「「レッツメイク!」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

 

「ルーレットスタート!」

 

『PERFECT!』

 

 

 

「だあぁぁぁぁ!!当たり出たあぁぁぁ!!」

 

「だからうるさいって言ってんのよ!!何で人間も叫んでんのよォォォ!!」

 

「ローラも叫んでるよォォォ!!」

 

((うるさい…))

 

コーラルとパパイア以外が叫んで、カオスに成りつつあるこの状況

 

「気合い充分と言ったところですね。では、私とヤラネーダはこの先で待っていますので」

 

アリスとヤラネーダ消えると同時に、怪しさ満点の門が出現した

 

その門は、花やハートで彩られたモノ

 

恐らく、先で待つとはこの事だと思う

 

『可愛い仔猫ちゃん、怖がる事は無いわ。門を潜れば優しくしてあげるわ』

 

「「「「ひっ!」」」」

 

門に付けられているスピーカーから、男の声と如何わしい音楽が鳴り、サマー以外の4人は震えを上げる

 

「ちょ、ちょっと待て!何か絶対ヤバい!俺行きたくないんだけど!!」

 

「はぁ…人間行くわよ」

 

「マジで!?絶対この門潜ったら無事に帰れるかどうかも怪しいんだぜ?大事なモノを幾つか失いそう!!」

 

「つべこべ言わず!」

 

「嫌だ離して!俺はまだ綺麗な体でいたんだよ〜!!」

 

駄々をこねる帝を引っ張りながらローラは門を潜って行く

 

((任せよう…))

 

「コーラル、パパイア。わたし達も行こう」

 

「「だよね!」」

 

サマーだけがこの状況を理解しておらずの態度。

コーラル達もサマーに言われたら行く以外の選択肢も無く、結局全員が門を潜る事になった

 

 

 

 

 

「御来場ありがとうございました!」

 

「「「「…」」」」

 

門の先で待っていたのはオカッマーだった

 

「御指名御予約ありがとうございます。あとまわしの魔女のひとりのオッカマーよ。私がたっぷり可愛がって搾り取り優しくしてあ・げ・る・わ♡」

 

「『『ぶっ殺す!!』』」

 

見るのも不快になり、怒りに任せて分身し足並み揃って歩き出す

 

「帝君待って早いよ!!」

 

「少し落ち着いて」

 

「そんな事言ったってこっちはもう限界なんだよ!!精神的に!!」

 

「イイ顔!そんな風に見られると、私の上と下が興奮してビクンッビクンッて勃っちゃう!!」

 

「「ハートルージュロッド!!」」

 

「早い!!まだヤラネーダからやる気パワー奪い返して無いよ!!」

 

帝を宥めていた筈のコーラルとパパイアも、一瞬で不快な気持ちになり順序を飛ばして浄化しようとしていた

 

「あ、ごめんね」

 

「つい、ムカッとしちゃって」

 

「これ今日本当に大丈夫なの?」

 

今日の戦いに不安要素しか無い事にサマーは心配する

 

「先ずはお手並み拝見!!」

 

オッカマーは、両手から白い物体を散らばせ雨の様に降らす

 

『ぺけ!』

 

何か得体の知らない攻撃に、コーラルは全員を守るシールドを張る

 

「皆んな一気に…わっ!」

 

「コーラル!…きゃ!」

 

コーラルとパパイアが、先程の白い物体で足を滑らせ顔や体に濡らす

 

「何これ…?」

 

「なんて言うか…臭う…」

 

「スマホ!写真、いやビデオとして残す……畜生スマホを忘れたァァァ!!」

 

「それは私の愛の籠ったマーキング♡」

 

わざわざ気持ち悪くウインクで教えてくれた

 

「愛の籠った?」

 

「マーキング?」

 

2人は少し考えた

 

考えた末出て来た答えは

 

「「ッ!!?」」

 

2人は脳内にある2文字の漢字が過った

 

それは

 

「ねぇ帝、何の話してるの?…って帝何で鼻血!?」

 

「俺、生きてて良かった…」

 

神を見たかの様な表情で鼻血出す帝を、横からティッシュで拭き取るサマー

 

そして被害に遭った2人はというと

 

「もう帝君に近付けない……」

 

「これ以上は戦えない……」

 

2人してへたり込み変身が解けてしまった

 

「さんご、みのり!?早くもう一度プリキュア に変身しなさいよ!!」

 

「こうなったら俺達だけでやるぞ」

 

「でも足場がこんなにぬかるんで居たら…動きにくい!」

 

「それなら!」

 

帝はヤラネーダの周りに小さい盾を無数に配置した

 

「んまぁ!小細工なんてしちゃって!」

 

「うるせぇ!!」

 

「ハァッ!」

 

帝とサマーで盾で作った足場を利用としてヤラネーダへ近付く

 

「ヤラネーダ…あの坊やをお持ち帰りしなさいよ!!」

 

「や、ヤラ?」

 

「ヤラネーダまで返答に困ってるだろ!」

 

困り果てるヤラネーダに容赦無く殴り飛ばし、地面に叩き付ける

 

「やあぁぁ!!」

 

追撃にサマーが一撃加えて更に地面に減り込む

 

「ヤ、ヤラネーダ!!」

 

「サマー押さえ込むぞ!」

 

「うん!」

 

帝は2体分身を出し、サマーと一緒にヤラネーダの両手両脚を拘束する

 

「「『『ローラ!』』」」

 

「オーライ!」

 

 

「マーメイドアクアポット!サーチ!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

アクアポットでやる気パワーを取り戻し、すぐさまサマーはロッドを構える

 

 

 

「ハートルージュロッド!」

 

「プリキュア!おてんとサマーストライク!」

 

 

「ビクトリー!」

 

 

 

ヤラネーダを浄化し終わり、やる気パワーも持ち主へと戻って行った

 

「あ〜らやだ!政ちゃんに何て言われるかしら」

 

「ん…おととい来やがれで御座います!あ、このヨーグルト美味しいですね」

 

 

 

 

 

/////////

 

「さんご〜」

 

「むぅ…///」

 

「みのりん先輩も!」

 

「何も言わないで…///」

 

変な勘違いした2人は、顔を埋めて赤面していた

 

「さんご〜、早く帰ろうぜ?」

 

「や…」

 

「みのりん先輩も」

 

「恥ずかしい…」

 

まなつも頭を抱えて困り果てる

 

帝もどう動かそうかと考えてると、チラリとさんごが見ていた

 

「帝君も…」

 

「俺が何?」

 

「帝君もマーキングされたら帰る」

 

「ヨーグルト被るのは嫌だ」

 

「指出して…」

 

よくは分からないが、人差し指を出すとさんごは手に取りジッと見つめている

 

「んっ!」

 

そしてカプリと爪先に齧り付いた

 

「ちょ、さんご痛い」

 

ガジガジと噛み、吸い上げ、舌で帝の指を舐めて満足すると口から離した

 

「…これでいいよ」

 

「結局何がしたかったんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歯切れの悪い終わり方で、あとまわしの魔女の召使いとの戦いは終わった




文字だけでも相当うるさかった

まだみのりん先輩の口調が分かんなかった我です

ここまでの拝読ありがとうございます


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第10話 やっちゃえ姐御!ブチかますキュアフラミンゴ!

何か言いたい事あったが忘れた!平常運転なり

ではスタート!


「遅刻遅刻〜!」

 

猛然と街中を走るのは帝。彼は今、寝坊して途中までとはいえ走らないと遅刻確定までの時間帯まで寝ていたのだ

 

「さんごめぇ…ちゃんと起こしてくれよ。胸やパンツ見せて貰うだけじゃ割に合わないぞ!今の内にムフフな要求を考えてやる……っとあれは?」

 

走る前方に、まなつと女の子と不良組3人と揉め事を起こしていた

 

「はぁ全く……世話の掛かる」

 

帝の走るスピードが上がった

 

女の子に向けて2人襲い掛かって来た。帝はまなつと女の子の間を擦り抜けて、不良2人の頭を掴み掛かる

 

勢いに乗った帝はそのまま地面へと叩き付ける

 

「帝!」

 

「お前達何してる?這い蹲ってろ」

 

「おどりゃぁ!!許さねぇぇ!!」

 

降り掛かる拳だが、それを女の子が片手で受け止め投げ飛ばした

 

「女の子1人に寄ってたかって、そういうの許せないんだよ!」

 

不良達は女の子の気迫に怯えてか、情け無い姿を晒して立ち去って行った

 

「あ、あの!助けてくれてありがとうございます!帝も!」

 

「別に。じゃあこれで」

 

女の子も登校中で学校へ向かうとするのだが、足を止めて帝の方へと視線を移した

 

「何だ?」

 

「いや…」

 

「わたし夏海まなつです!貴女は?」

 

「…名乗る程じゃないけど『滝沢あすか』」

 

 

 

 

 

/////////

 

「『名乗る程じゃないけど、滝沢あすか』ってカッコいいんだよ!何と言いますか…惚れたってやつですよ!!」

 

「そうなの。ところで」

 

「はい?」

 

「何でわたしの教室に居るの?」

 

只今帝と話してるのはみのりで、2年生の居る教室で昨日の出来事を話していたのだ

 

「3人はその人をプリキュア に誘う為に探してるんでしょう?帝は行かなくて良かったの?」

 

「みのりん先輩…俺の事嫌いなの!?」

 

「そう意味じゃ…」

 

「酷い!折角×××××するまでの関係性になったのに!一緒に×××××しようって誓い合いましたよね?」

 

帝は何か言う度に、みのりのクラスメイトの視線が集中し始める

 

 

「え、一之瀬って…」

 

「一之瀬意外と大胆な奴だな」

 

「彼氏なのかしら?」

 

 

集まってるのは視線だけじゃ飽き足らず、変な誤解まで誕生しようとしている

 

「ちょっと一回こっちに来て!」

 

「あ〜みのりん先輩〜!?」

 

みのりに首根っこを掴まれて教室を後にした

 

 

 

 

 

「誤解を招く様な言い方は辞めて」

 

「でもプリキュア の事は伏せないと。折角DXぺけ音発生機を5000円掛けて買ったのに…」

 

「貴方は何を言ってるの?」

 

「俺の美徳舐めるなよ」

 

よく、こんな人と幼馴染やってるさんごは凄いと実感する

 

頭を抱えて思わず溜め息も溢れる

 

「お〜い、みのりん先輩〜!」

 

そこへ、まなつがこちらへ走って来るのが見えた

 

「あ、帝も居たんだ!なら丁度良いかも!」

 

「「?」」

 

「実は部室で使える場所を探してるの!2人共協力してくれる?」

 

まなつは今、さんごやあすかと協力して部室として使える場所を探してる最中。

何処探してもやはり見つからずと言った状況みたいだが

 

「いいよ…と言いたいけど多分大丈夫な場所を知ってる」

 

「本当!?」

 

「屋上に来て。そこで待ってるから」

 

運が良い事に、部室として使える場所をみのりが知っていた

 

「ところで部活はどんなもの何だ?」

 

「それならコレ!わたし皆んなを呼んで来るね!」

 

まなつは部活動の申請書を帝に手渡すと、すぐさまさんご達の元へと走って行った

 

申請書を見る限りでは、曖昧な事ばかり書かれていてちゃんと決まって無いらしい

 

「よくこれで通ると思った……俺疲れてんのか?」

 

「何が?」

 

「活動者の氏名を見て下さい」

 

氏名欄の方にはまなつ、さんご、帝、みのりと4人の名前が書かれてある

 

「何も問題は無い筈だけど?」

 

「問題大ありだ!まなつの奴、勝手に俺を人数に入れたな。俺帰宅部だって言ったのに…」

 

「これを機に入ったら?」

 

「悪いけど入る気はサラサラ無いし、放課後はいつも用事があるんだ」

 

話しながら歩いて屋上へと着いた。するとタイミング良くまなつ達も到着した

 

「みのりん先輩使える場所とは?」

 

「あの小屋。長い間使われて無いらしいの」

 

取り敢えずその小屋へと入ってみる。

中は薄暗く、明かりが無いと少々不便な場所

 

「明かり明かり…」

 

「きゃ!」

 

帝が手探りで電気を探してると、みのりから小さな悲鳴が聞こえた

 

「カーテン開ければ明るくなる」

 

あすかは手短にあるカーテンを開けると部屋は明るくなった

 

なったのだが

 

「…」

 

「おう、みのりん先輩の胸でしたか〜。通りで程よい柔らかさで…バッ!?」

 

手探りで明かりを探してた帝の手は、みのりの胸へと伸ばしていた。

みのりの悲鳴も胸を触られた事の声だった

 

当然ながら帝の脛に蹴りを入れて黙らせた

 

「捨てられてない不要品が沢山ですね」

 

「市のリサイクルセンターなら歩いて行けるな」

 

「此処、綺麗にしたら部室として使えるかも!よぉ〜し、何だかトロピカって来た〜!」

 

「ちょっと待った!」

 

まなつの気合いに水を差す様な真似を帝がする

 

「その前にコレ」

 

帝は申請書の氏名欄を突き付ける

 

「俺は帰宅部だって言った筈なのにこれはどういう事か?」

 

「え〜ダメ?」

 

「手伝いはする。だがそれとこれとは別。入部ノーサンキュー」

 

「自分は強引に変な事する癖に…」

 

「本当に外せない用事があるんだ」

 

そこまで言われてしまったら仕方ない。まなつは氏名欄の帝の名前を黒く塗り潰した

 

 

 

 

 

それから始まった部室の整理整頓からの掃除。

放課後、全員が集まり何日も掛けて使える様にした

 

途中不安要素もあった

 

ローラが指示を飛ばすだけで何もしない事に、不満があったあすか。

帝とさんごが持ち上げた不要品。さんごが手を滑らせて、帝の足が潰れたトラブルもあり何日か動けなかった日もあった

 

そうして全てを片付けて、残すところはリサイクルセンターへと運んで行くところ

 

「今日まで手伝って頂いてありがとうございました」

 

「「「ありがとうございました」」」

 

「では行って来ま〜す!」

 

「気を付けろよ」

 

あすかが手伝えるのはここまで。リサイクルセンターへは4人で行く事に

 

「あ、その前に御手洗い行って来る。少し待っててくれ」

 

「それなら先に行ってるよ。後で追い付いて!」

 

まなつ、さんご、みのりはリサイクルセンター。帝は御手洗いの後合流

 

そしてあすかは自分の荷物を取りに部室の方へと足を運んだ

 

「?」

 

鞄持った時、近くにあった置き手紙に気付いた

 

内容は「また一緒にメロンパンを食べよう」と言うまなつからの手紙だった

 

「フッ……誰だ!?」

 

背後から誰かの気配を感じたあすか。振り返ると1人の人物が立っていた

 

夕暮れもあり、丁度顔に影が掛かって誰かまで判別出来なかった

 

「滝沢あすかだな」

 

「何でわたしの名前を?まさか、夏海が言ってたあとまわしの魔女?」

 

「あぁそうだ。一応俺は、あとまわしの魔女の召し使いの嬴政。お前達の事はここ数日間見ていたからな」

 

「わたしはまだプリキュア っていうのじゃない。何が目的?」

 

相手の狙いが分からない以上下手に動けない

 

「別に大した事では無い。様子を見に来ただけだ。そして用は済んだ」

 

「待て!」

 

追い掛けて捕まえようとするも、嬴政は雲の様に淡く消えて捕まえる事が出来なかった

 

 

 

 

 

////////

 

同時刻

 

リサイクルセンターに着いた帝達だったが、そこではトーテムポールを媒体にしたヤラネーダが待ち構えていた

 

「そこまでよ!」

 

 

 

「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」

 

「「「レッツメイク!」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

 

「ルーレットスタート!」

 

『TECHNIC!』

 

 

 

「あら?また来たのね」

 

「あら?また来やがりました」

 

ヤラネーダの近くにはヌメリーとアリスも居た

 

「最近TECHNICが多くないか?こうも毎度当たるとルーレット自体を怪しむよ」

 

「そんな事言ってないで来るよ!」

 

『ぺけ!』

 

サマーの言う様にヤラネーダが仕掛ける。

コーラルがシールドで防御して、サマーとパパイアが飛び出す

 

「「ハァァ!!」」

 

2人の猛攻撃に手も足も出ないヤラネーダだったが、一番上のトーテムが分裂してコーラルに襲い掛かる

 

『ぺけ!』

 

「ぐぅ…!」

 

「大丈夫!?」

 

「うん、何とか!」

 

更にもう一つのトーテムが分裂して、今度はパパイアに向かう

 

「そっちは2人に任せた!サマーやるぞ!」

 

「分かってる!」

 

サマーが蹴りを入れたと思った時、またも分裂しようとする

 

サマーは手と足を使って分裂しない様に押え込む

 

「また分裂する…!」

 

『分裂なら俺が十八番!』

 

『いや俺達だろ?』

 

「どっちでもいい。上下からやる!」

 

「『『食らえ!』』」

 

1人がサマーと共に押さえ込み、もう2人で上下から攻撃してくっ付ける作戦だったが

 

「ヤラネーダ!」

 

「『『何!?』』」

 

一度は引っ付いたと思われたが、力の入れ過ぎで衝撃で分裂してしまった

 

「ちょっとぉぉぉ!!」

 

『コイツらのせいだ!』

 

『お前も俺だろ!?』

 

「お前ら何俺同士で喧嘩するな」

 

「人間一号、二号、三号ちゃんとやりなさいよ!!」

 

「大人しくしていれば怪我しなくて済んだのに。ヤラネーダトドメよ」

 

ヤラネーダが帝とサマーへと目を向ける。このままだと集中砲火を食らう

 

「待ちな!」

 

そんな時、あすかが滑り込みで現れた

 

「人魚!その力貸しな!」

 

「その気になったわね!」

 

「アンタの為じゃない。わたしがこうしたいってだけだ!」

 

ローラからトロピカルパクトを受け取り、指には赤のハートクルリングが現れる

 

 

 

「プリキュア!トロピカルチェンジ!」

 

「レッツメイク!」

 

「キャッチ!」

 

「チーク!」

 

「アイズ!」

 

「リップ!」

 

「ヘアー!」

 

「ドレス!」

 

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

 

 

「あら気の強そうな子。私苦手だわ…」

 

「キュアフラミンゴ。4人目のプリキュア の覚醒ですか」

 

「ヤラネーダ!」

 

「アンタの相手はわたしだ!!」

 

変身早々に分裂した二体の内一体を蹴り返し、もう一体を両足で封じ込めた

 

「そうだ!皆んなヤラネーダを一ヶ所に集めて!」

 

「良し、片付けの時みたいに呼吸を合わせるんだ!」

 

「了解!」

 

「分かった…って」

 

帝は後ろで、未だに言い争いをしてる分身を戻した

 

「お前らはもう出て来んな──ルーレット再スタート!」

 

『TECHNIC!』

 

しかしやり直したもの、先程と同じTECHNICに針が止まってしまった

 

「言い争いする人間二号、三号は出さないでよ!!」

 

「それ俺にもう戦うなと言ってるのか?」

 

「後は任せて帝」

 

ローラに言われて帝は下がり、サマー達4人に任せる事にした

 

「行くよ!1、2の3!」

 

サマーの合図でそれぞれ飛ばし、フラミンゴの方へと集める

 

「ローラお願い!」

 

「オーライ!」

 

 

「マーメイドアクアポット!サーチ!」

 

「水色!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

「やるね人魚」

 

「まあね」

 

「とにかく、わたしの後輩を傷付ける奴は許さない!」

 

フラミンゴに呼応して色違いのリップ、ハートルージュロッドがフラミンゴの手の中へ

 

「ケジメ付けさせてもらう!」

 

 

 

「ハートルージュロッド!」

 

「プリキュア!ぶっとびフラミンゴスマッシュ!」

 

 

「ビクトリー!」

 

 

 

「次はもっと優しくしてあげる。行くわよアリス」

 

「では、また会うその日に」

 

 

 

 

 

////////

 

「これでプリキュア が4人!」

 

「部室も見つかったしいよいよ部活が出来る〜!あすか先輩、プリキュア も部活もこれから宜しくです!」

 

「おい、わたしは部活に入るとは言ってないからな」

 

「そんな事言わずに〜!」

 

何か言いたげな表情をしたが、すぐに柔らか笑顔に戻った

 

「…もう一度信じてみるか、仲間ってやつを」

 

こうしてあすかもプリキュア に部室を、まなつ達と共にやる事を選んだのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…?」

 

「どうしたのローラ?」

 

リサイクルセンターの屋根の上。ローラが不意に振り返って事でさんごが気になった

 

「誰か居た様な気がして…」

 

「誰も居ないよ?」

 

「そう…それならいいのだけど」

 

「?」




フラミンゴ引き立てる為にネタになった主人公。ランダムで違うのが出ればもっと出番はあった

ここまでの拝読ありがとうございました!


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第11話 多々買わなければ生き残れない

購買がある事を知って思い付いた!
購買といえばこの鉄板ネタだよね!

ではスタート!


「さんご、帝。今日何の日か知ってる?」

 

登校中、真剣な表情で質問して来るまなつに困惑する

 

「今日何かあったっけ?」

 

「ううん。何も特別な事は無いと思うけど…」

 

2人は何の事が分からなかった。しかし、それを聞いてまなつは絶句していた

 

「ふ、2人共、本当に知らないの?」

 

「だから何なのよ。勿体つけないで早く教えなさいよ」

 

アクアポットの中から聞いていたローラも、痺れを切らす寸前

 

「実はね、今日のお昼の購買で特別な物が売り出されるんだ」

 

「「「特別な物?」」」

 

「そう。偶々仲良くなった先輩から仕入れた情報何だけど、何でも幻のトロピカルメロンパンが販売されるって!」

 

「「「幻のトロピカルメロンパン!?」」」

 

 

 

 

 

////////

 

その日のお昼休み。みのりとあすかも連れて購買へ行くと、何十人という生徒が密集していた

 

 

「おばさん、幻のトロピカルメロンパン1個!」

 

「おれは2個で!!」

 

「わたしは1個!!」

 

「ちょっと押さないでよ!!」

 

「痛で!?誰だおれの足踏んだ奴は!?」

 

 

「「「「うわぁ…カオスだ…」」」」

 

一年生組とローラはこの光景に引いていた

 

「今回も大渋滞ですね」

 

「怪我人出ないか心配だ」

 

みのりとあすかにとっては見慣れた光景らしい

 

ある特定期間に入ると、幻のトロピカルメロンパンという物が販売される為、その時に購買の前がこの様な状況になる事は普通らしい

 

「幻のトロピカルメロンパンって結局何?」

 

「一個350円という普通のパンなら少し高いけど、幻のトロピカルメロンパンは普通のパンじゃないの!外は高級な材料を使ってサクサクにして、中の具は世界三大珍味を余す事なく使い、その味を最大限に活かした極秘のクリームも使ったトロピカルメロンパンなの!!」

 

「世界の三代珍味使っといて350円って、それもう赤字だろ?」

 

「わたしも一回食べた事あるよ」

 

「本当ですかみのりん先輩!?」

 

まさかみのりが、その幻のトロピカルメロンパンを過去に食していた

 

「あの時偶々買えたけど、そう何度も買えるものじゃないの。限定40個なうえ、こんな状態だから」

 

「限定40個!?早く買わないと売り切れちゃいます!ついでにですから先輩達の分も買って来ます!」

 

「わたしお昼は持参してるんだけど…まぁ頼もうか」

 

「お願いね」

 

みのりとあすかはまなつにお金を渡して見守る事にした

 

「さんご、帝行くよ!」

 

「ちょっとまなつ!」

 

「やぁぁぁ!!」

 

さんごの静止も聞かず、密集する集団へと飛び込んだのだが

 

「ぎゃふん!」

 

秒殺だった

 

「まなつ無理があるよ。ほら見て」

 

「え?」

 

「相撲部に野球部。陸上部も居ればサッカー部と色んな運動部の人達が居るんだよ。それも先輩が多い」

 

さんごの言う通り周りを見渡せば運動部だらけ。

しかも購入してる殆どの人達がその運動部

 

何か特出した身体能力がある訳でも無く、ましてや女の子だ。到底正面突破の力技で敵う筈も無い

 

「何言ってるのさんご!わたし達あの伝説の戦士プリキュア だよ!わたしの『今、一番 大事なこと』!それは…!」

 

まなつはカッコ良く駆け出した

 

「さんご、貴女はどうなの?」

 

「ローラ…」

 

「まなつはあんなにも頑張ってるのよ。友達である貴女が支えないと誰が支えるのよ?」

 

「そうだよね、わたしも頑張る!まなつ!」

 

「うんうん頑張って買ってくるのよ〜!」

 

ローラにしてはまともな事を言った

 

つもりだった

 

「ローラ、何さんご焚き付けてるんだよ」

 

「人間黙ってなさい。わたしは何が何でも食べたいのよ」

 

それとは裏腹に私利私欲の為に利用しただけだった。折角の感動なドラマが台無しである

 

一方でまなつとさんごは突撃していた

 

「まなつ!」

 

「行くよさんご!」

 

「「やあぁぁぁ!!」」

 

しかし、やはりといった感じか2人揃って秒殺される

 

「ぎゃふ!」

 

「ぴゃう…!」

 

「まだだよさんご!」

 

「うん!」

 

再度ぶつかるも秒殺

 

それから幾度と突撃しては秒殺されるの繰り返し

 

そして

 

「「……」」

 

身も心もボロボロになって帰って来た

 

「「帝(君)〜!」」

 

2人して帝に泣き付いて来た

 

「「お願い!」」

 

上目遣いでお願いする。正直言えば面倒だけど、2人の頼みを蔑ろには出来ない。

ましてや、お金まで持って来ているのだ

 

「はぁ…分かったよ。みのりん先輩」

 

「っと」

 

「まなつお金」

 

「はい」

 

アクアポットをみのりに、まなつからお金を受け取る

 

「それじゃあ行ってくるね──絶対は俺だ」

 

「おぉ〜!帝の集中モード!」

 

「この状態になった人間は誰も勝てないのよ!」

 

(何でローラはあんなにも自信満々何だろう…)

 

帝は集団の前に立った。しかし先ず目の前には、相撲部の先輩の背中が立ち塞がった

 

「おい」

 

帝相撲部の先輩の肩を掴んだ

 

「誰だ!?」

 

皆んながパン欲しさにピリピリしている。

下手をすれば何されるか分からないのだが

 

「邪魔だ」

 

「邪魔なのはお前──」

 

次の瞬間、その先輩の視線が一気に下がった

 

「退け」

 

帝は自分より図体のデカい先輩を肩を持つ手だけで尻餅をつかせた

 

 

「群れるな」

 

「痛で!?」

 

 

「俺が絶対だ」

 

「わっ!」

 

 

「這い蹲ってろ」

 

「がふ!」

 

 

帝が通った道には沢山の人達が転がっていた

 

そしてとうとうレジの前までやって来た。

流石にこの集団を掻い潜るのに相当集中を使ったのか、いつの間にか性格が元に戻っていた

 

「ふぅ…おばさん幻のメロンパン6つ!」

 

「あ〜5つしかないわ」

 

「そうですか……ん?」

 

帝は隣で幻のトロピカルメロンパンを買い終わった生徒を目にした

 

「おいお前、良いもん持ってるじゃん」

 

 

 

 

 

////////

 

「「「「「いただきます!」」」」」

 

全員分買えた幻のトロピカルメロンパン。齧り付いた瞬間、皆んな頬が緩みまくる

 

「ん〜!美味しい!」

 

「本当美味しいわ」

 

「確かに美味しいな!」

 

「人間ご苦労〜!」

 

「帝ありがとね〜……ってあれ?帝の分は?」

 

ちゃんと全員にパンは行き届いてる筈が、帝だけ持参してるお弁当を食べていた

 

「俺?まぁ何と言うか、買えなかったって言うか奪えなかったて言うか……別に気にするな」

 

「…帝はい」

 

まなつはパンを半分に千切り帝に渡す

 

「良いのか?」

 

「だって、幻のトロピカルメロンパンを食べれてるのは帝のお陰だし、それに皆んなで食べた方がもっと美味しいよ!」

 

「それじゃあお言葉に甘えて」

 

パンを手に取りひと齧りする

 

「どう?」

 

「…うん、美味しい」

 

「皆んなでトロピカらないとね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

苦労して手に入れたパンは、一際美味しいものであった




マジ350円って大赤字じゃね?

ここまでの拝読ありがとうございました!


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第12話 遂に設立!トロピカる部の始動!

今回の話も頑張った!

ではスタート!


「人間達のやる気パワーはまだ集まらないの?」

 

「申し訳御座いません。邪魔者が中々に手強く」

 

此処はあとまわしの魔女が居る部屋

 

そこでは、報告のバトラーと嬴政が話し合っていた

 

「この器がやる気パワーで満ち溢れれば、世界は私の思い通りになるというのに」

 

「もう暫く猶予を」

 

「これ以上私を待たせるなら…!」

 

「ひぃ!」

 

中々やる気パワーが集まらない事に怒り、邪悪なオーラを放とうとする時嬴政が割って入る

 

「あとまわしの魔女のくせして、少しは待つ事も出来ないのか?」

 

「何?」

 

「嬴政様失礼ですよ!!」

 

「そんなにやる気パワーが欲しければ、自分で出向くという事はしないのか?」

 

「……」

 

「弱者は弱者らしくそのまま黙っていろ」

 

嬴政は屋敷の何処かへと行ってしまった

 

 

 

 

 

////////

 

同時刻、先日部室として綺麗にした部屋でまなつ達は集まっていた

 

「お待たせ!」

 

「人間遅いわよ」

 

「帝君日直お疲れ様」

 

「おう!ところで何処まで話したんだ?」

 

まなつ達はこれからの部活動についてこれから話し合うところだった

 

一応活動者はまなつ、さんご、みのり、あすか。学校の生徒じゃない上、人魚のローラも活動者のひとり。

流石に申請書に書く事は無理があるので、仮部員として居る。

そして部長はあすかに任せる

 

顧問は帝達の担任である桜川先生がする事になった

 

という具合に殆ど決まっている様なものだが、肝心なものが決まって無かったらしい

 

「帝も揃った事だし、これから皆んなで何の部活内容にするか決めたいと思いま〜す!

 

「やっぱりそこが決まって無かったんだな」

 

「部活を作ると言ったまなつは何か案はあるのか?」

 

「それは勿論!テニスもバスケもサッカーも、あれやこれやとぜ〜んぶやりたい!!」

 

まなつらしいと言えばそうなのだが、少々無理があると一同思った

 

「それなら、それ全部やる部にすれば良いじゃないの?」

 

「それだ!その方向で書類出して来る!ありがとうローラ!」

 

ローラの全部纏めれば解決という案を採用して、生徒会へと駆け足で行ってしまった

 

 

それから数分後

 

「駄目だった〜…」

 

「当たり前だ」

 

「それなら、きちんと計画を立てるのはどうかな?」

 

黒板にみのりが書き始める

 

計画内容は、色んな部活をシフト制で調整して活動すると言った内容だ

 

「それは構わないが、さんごとみのりん先輩は大丈夫なのか?体力的に」

 

「「あぁ…」」

 

「絶対ハードな内容だぞ」

 

「そこはあれだよ!帝がフォローしてくれれば万事解決!」

 

「まぁ、偶になら手伝う約束だし…」

 

 

それからまた数分後

 

「また駄目だった〜…」

 

「理由は?」

 

「ひとつに絞ってからと」

 

「仕方ない。皆んなで案をとにかく出そう。誰かない?」

 

帝の言葉にさんご、みのり、あすかは何か言いたげな感じを出していた

 

「帝、皆んな何か言いにくそうよ」

 

「じゃあ名前を書かないでアンケート取ろうよ!皆んながトロピカれるヤツを書いたら箱に入れて!」

 

 

 

 

 

「アンケート終了!では最初のトロピカル!」

 

取り出した紙には「読書」と書かれていた

 

「それって…」

 

「みのりん先輩?」

 

「名前を書かなかった意味よ…」

 

「取り敢えず、皆んなで読書をやってみよう!」

 

全員、各々読みたい本を図書室から借りて部室で読み始める

 

ローラも含めて好きな本を読んでいる途中、いびきが聞こえて来た

 

「むにゃむにゃ…」

 

いびきをしてるのはまなつだった

 

たった数分で寝落ちしてしまうまなつに呆れ、あすかが叩き起こした

 

「つ、次行ってみよう!トロピカル!」

 

次の紙には「女王様になるレッスン!」と書かれていた

 

「これは」

 

「ローラだね」

 

「名前を書かなかった意味が…」

 

 

 

「では、言った通り繰り返しなさい」

 

どうやるのか分からないが、ローラの指示通り繰り返す事にする

 

「頭が高い。女王様の前では常に跪きなさい。はい、まなつ」

 

「頭が高い!女王様は常に跪きなさい!」

 

「女王が跪いてどうするのよ…」

 

まなつに関しては予想通りだった

 

「喉が渇いたわ。海ブドウジュースを持って来て頂戴。はい」

 

今度はさんごに振ってみせる

 

「の、喉が渇いたなぁ〜。海ブドウジュースが飲みたいなぁ〜」

 

「何かムカつくわね」

 

「こういうのは帝君が向いてると思うの。やってみて!」

 

「あ〜分かった」

 

そして帝は机の上でローラを押し倒した

 

「に、人間!?」

 

「皇帝の命令は絶対だ。俺の女になれローラ」

 

「い、嫌にに決まってるでしょ!!」

 

「いいや拒否権など無い。お前は俺の女になる為に生まれて来たんだ。誰が何と言おうと揺るがない」

 

更にローラの両腕を掴み手の動きを封じ、顎を軽く上げさせる

 

「一生俺の…」

 

「に、人間…///」

 

お互いの唇が近付き、後少しで重なる時

 

「帝辞め──」

 

「ダメェェェ!!」

 

「タピオカァ〜!?」

 

あすかが蹴りで止めようとするよりも先に、さんごが帝を突き飛ばした

 

「さ、さんご!?」

 

「帝君絶対駄目だから!!」

 

「えぇ!?さんごがやれって言うからしただけなのに!?」

 

「とにかく帝君は駄目なの!!」

 

「理不尽だ…理不尽過ぎる!!」

 

この様子をローラはポカンとするしか無かった

 

しかし

 

(ど、ドキドキしてしまった…あ、でも少しだけよ!少しだけ)

 

さっきの一連の出来事、不覚にもローラはドキドキしてしまったのは秘密

 

 

 

「次行ってみよう!トロピカル!」

 

今度は「ウサコと友達になる」と書かれていた

 

「「ウサコって?」」

 

「『仲良しウサウサ村』というゲームに出て来るキャラクターの名前だと」

 

「知ってるって事はみのりん先輩が?」

 

「わたしはもう引かれてるよ。帝じゃない?」

 

「俺はアンケートしてない」

 

誰でもない。だとすると

 

一同はあすかの方へと目を向けた

 

「…名前を書かなかった意味が無いよ!」

 

という訳で別の日に集まって、そのゲームを実際してみる事に

 

「あすか先輩こんな可愛いゲーム好きだったんだ!」

 

「意外…」

 

「良いだろう別に。やってみると意外と楽しいんだから」

 

実際にゲームし続けるが、帝とみのりは険しい顔をし始める

 

「ねぇみのりん先輩、確か学校にゲームは…」

 

「えぇ、駄目だと思う」

 

「確かに部活とは言えないか…」

 

 

 

「次行ってみよう!最後のトロピカル!」

 

最後は「コスメ部」と書かれていた。ここまでアンケートで名前が上がってない人物は

 

「やっぱりコレしか無いと思って」

 

さんごの案だった

 

場所は移動してPretty Holicへ

 

「コッチは夏の新作なの!」

 

「凄いトロピカってる〜!」

 

「悪くは無いわね」

 

「みのりん先輩も似合ってる!」

 

「そ、そうかな?」

 

「あすか先輩も大人って感じ!」

 

「まぁ、皆んなよりかは大人だしな」

 

全員が五体満足だった。コスメ部というのを部活に取り込むアイディアに、全員反対も無かった

 

「女の子限定が強くなるけど案外大丈夫なんじゃないか?」

 

「良し!早速明日、これで申し込んでみるよ!!」

 

 

 

 

 

////////

 

「まなつどうだったコスメ部?」

 

「校則で禁止されてるって。しかも、期限も設けられて、明日の放課後まで決めないと駄目って言われた〜」

 

「最後まで付き合うから頑張って考えるぞ」

 

「あ、ありがとう帝〜!!」

 

 

 

そして次の日

 

「何もアイディアが思い付かないまま今日が締め切り…」

 

「参ったなぁ…」

 

「無難な部活を選んでも面白くないし…あれ?何だろうあの人達?」

 

考え込んでると、あすかは遠くで何かを探してる大人の女性達に目に入る

 

「あの〜どうしたのですか?」

 

「探し物なの。ペンギンのペンちゃん知らない?」

 

「確か、この辺りにペンギンの置き物があった筈何だけど」

 

「ペンギンの置き物…」

 

ローラは何か思い当たる節があるみたいで考えていた

 

「私達あおぞら中学の卒業生なの」

 

「卒業する時に、そのペンギンの中に宝物を隠したのよ」

 

「そう。それで、10年後も変わらず友達で居たら皆んなで一緒に取りに来ようって」

 

本当の探し物はその宝物の様だ

 

「凄い!熱い友情、先輩達もトロピカってたんですね〜!」

 

「トロ…ピカ?」

 

「わたしの名前は夏海まなつ。お姉さん達の名前は?」

 

女性達の名前はアキホ、ミフユ、ハルナ、ナツオと紹介してくれた

 

「わたし達も一緒に探します!先輩達の大切な友情の宝物!」

 

「あぁ!!思い出した!!」

 

急にローラが大声で叫んで全員が困惑する

 

まなつは何とか誤魔化そうとした

 

「あ、あすか先輩突然叫ぶの辞めて下さい!」

 

「は、え?あぁ、すまん……後で覚えていろよ」

 

「ちょっとローラどうしたの?」

 

「ペンギンの置き物ってこの前部室を掃除した時!」

 

思い返してみる。確かにペンギンの置き物はあった。そして更に思い出してみると

 

「あ〜!!リサイクルセンターに持って行っちゃった!!」

 

この事を伝えに、担任の桜川先生と相談して連絡してもらう事に

 

しかし、もう既にリサイクルショップの人が引き取った後だった

 

「街にリサイクルショップは何件もあるけどどの店か?」

 

「分からないそうよ」

 

それを聞いて、ますます卒業生達の先輩は諦める

 

「諦めちゃ駄目です。リサイクルショップ、一件ずつ回れば見つかります。売れちゃったか分からないし。わたし達も一緒に探しますので!」

 

「書類の締め切りはどうする?」

 

「今行かなきゃ、明日になれば誰かに買われちゃう知れない。わたしは、今一番大事な事をする!」

 

その諦めないまなつの姿を見て、全員諦めずに街中隈なく探し始める事した

 

 

 

 

 

「見つかったか?」

 

「まだです!」

 

「あと一件。この先にお店が」

 

だが、みのりが指差した方向で大きな結界の様なものが張られるのを目にした

 

「あれは!」

 

「もしかしてヤラネーダかもな」

 

出現した場所へ行くと見覚えのあるヤラネーダだった

 

「あのヤラネーダって探してた置き物じゃないか?」

 

「だよね!」

 

「皆んな行くわよ!」

 

 

 

「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」

 

「「「「レッツメイク!」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

 

「4人揃って!」

 

「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」」」

 

 

「ルーレットスタート!」

 

『TECHNIC!』

 

 

 

「ようやく4人揃っての変身ね」

 

「魔女の奴らはいないみたいだ。ローラ、今の内に」

 

「えぇそうね。てゆうか、何でいきなりそういう性格に変わってんのよ?」

 

冗談抜きで、帝は最近TECHNICに止まる確率が高くイライラして、いきなり性格が変わっているのだ

 

「それにしても魔女の部下達はいない様ね。奪われたやる気パワーは…」

 

アクアポットで確認すると、何も反応は無かった

 

「皆んな、今日は誰もやる気パワーを奪われていないみたい!」

 

「オーライ!」

 

「だったら遠慮は要らないな」

 

「早くやっつけて」

 

「宝物を先輩達に届けよう!」

 

「来るぞ」

 

ヤラネーダの口から大きな光球が吐き出された

 

『ぺけ!』

 

コーラルが防いだ後、他4人は大きく飛び上がる

 

「ヤラネーダ!」

 

「ハァ!」

 

空中でフラミンゴは攻撃を受け流し、ヤラネーダの背後からパパイアが仕掛ける

 

「ハァァ!」

 

イアリングを目に付けて、両目から放つビームでヤラネーダの視界を潰した

 

「終わりだ」

 

3人へと分身した帝が同時に攻撃し、ヤラネーダを倒した

 

 

 

「ハートルージュロッド!」

 

「プリキュア!おてんとサマーストライク!」

 

 

「ビクトリー!」

 

 

 

「何かつまんない。わたしの活躍は?」

 

 

 

 

 

////////

 

ペンギンのペンちゃんを回収した帝達は、学校へと戻った

 

「見つけました!」

 

「良かった!ありがとう!」

 

「宝物は?」

 

口から手を入れて探ると、少し大きめのロケットが入ってあった

 

「ロケット…中は写真?」

 

「そうよ。私達の友情の証」

 

見せてくれたのは、先輩達がまだ中学生の時に撮られた集合写真だった

 

「そっか、分かった!」

 

「何がだ?」

 

「わたし達の部活、何をやるかが!」

 

「と言うと?」

 

「今、一番大事な事をやる部だよ!」

 

 

 

 

 

書類を改めて作成し、生徒会長の百合子の元へ全員で行く

 

「今、一番大事な事をやるってまたそんなあやふやな…」

 

「あやふや何かじゃありません。一度にしか無い今を楽しむ部活です」

 

「一度にしか無い今を?」

 

「卒業生の先輩達が、ペンちゃんの中に宝物を入れたみたいに素敵な事をいっぱい考えて、学校の皆んなも一緒に楽しめれば良いかなって!何が楽しいか?その時何が大事かって、人それぞれだから書類には書けません。生徒会長にもきっとある筈です。今、一番大事って思う事が」

 

まなつの言う事に間違いなど無い。しかしそれを受け止めてくれるかが心配

 

「胸の奥からこう、バァーッて湧き上がって来る真夏の太陽の様なギラギラした気持ち、だから!部活の名前は『トロピカる部』です!」

 

「…トロピカる部」

 

どうしようかと悩んでいると、ナツオ達先輩達が入室した

 

「私達からもお願い。まなつちゃん達の部活認めてあげて」

 

「え?」

 

「「「「宜しくお願いします」」」」

 

頭まで下げて頼んでくれた先輩達

 

それを見た百合子は根負けしたのか

 

「…取り敢えず書類は受け取ります」

 

「やった!!」

 

「但し、これからの活動内容によっては取り消しもありますから」

 

「大丈夫です任せて下さい!」

 

何とかトロピカる部の存在を認めてくれた

 

 

 

 

 

トロピカる部の看板も立て、部の設立を祝う

 

「かんぱ〜い!」

 

「ひとまず、めでたしってところだな」

 

「今、一番大事な事か〜」

 

「ちょっと楽しみ」

 

「この先どうなるか結構面白そうかもな」

 

帝の溢す言葉にまなつがキラキラとした目で反応した

 

「じゃあ帝も入部──」

 

「しない」

 

「えぇ〜」

 

「プリキュア の事も忘れないでよ」

 

「分かってるって!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ようやくまなつ達の部活「トロピカる部」が誕生した

 

学校での生活がより一層楽しくなるのはこれからだった




今週はこれだけにします。

あのマジで、ルーレットがランダム設定って決めたのは自分ですけど、ここまで前回までの話まで能力が被るとイラつきますね

また来週からは週ニ投稿になるかも。溢れ出るネタを捌かないといけないので、ちょっとした休息

ここまでの拝読ありがとうございました


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第13話 やっとくるるんの出番!贈り物はな〜んだ?

早い事に定評のある作者です

ではスタート!


部活にとって必要なのはそれに合った活動体力。

トロピカる部は、浜辺で軽くランニングして体力強化に勤しんでいた

 

帝とローラは、部員でも無いし人魚の為走らず眺めていた

 

「さんごもみのりも運動不足じゃないか?」

 

「運動不足は否定しないけど、そもそもトロピカる部って」

 

「運動部だっけ…?」

 

「トロピカる部はトロピカる部だよ」

 

「水分補給もしっかりな」

 

帝から渡されるペットボトルで休憩中の所、あすかは岩場の方に生き物が打ち上げられてるのを発見した

 

「皆んな、ちょっと来てくれ」

 

その生き物はあまり見た事の無い不思議な生き物だった

 

「わ〜何コレ〜?」

 

「アザラシかな?可愛い!」

 

「ラッコ?」

 

「でも何でこんな所に?」

 

「貴方、『くるるん』じゃない!」

 

 

 

 

 

////////

 

場所は移動して水族館館の屋上の水槽

 

「えぇ!?女王様のペット!?」

 

「くるる〜ん!」

 

「さっすが人魚の女王様!ペットがアザラシだなんて!」

 

「ラッコじゃない?」

 

「アザラシでも無ければラッコでも無いわ。くるるんはこう見えて海の妖精なのよ」

 

「くるるん!」

 

まなつ達が保護したくるるんは海の妖精だった。

そのくるるんに、意外にも帝は興味を示していた

 

「海のラッコ妖精くるるんか!」

 

「だから違うって言ってるでしょうが!!」

 

「くるる〜ん」

 

くるるんがローラに何か訴えている様子

 

「ローラ、くるるんは何て言ってるの?」

 

「え?え〜と…」

 

ローラはくるるんをジッと見つめて言葉の意味を考えている

 

「わたしに会えて光栄だって!」

 

「くるる〜ん…」

 

「あれ?」

 

しかし首を横に振る。どうやら違ってたらしい

 

「分かった!『オイラはラッコに分類する海の妖精!』って言ってるに違いない!」

 

「くるるん…」

 

「いい加減ラッコから離れなさいよ!!」

 

「『オイラ』って、くるるんって男の子なの?」

 

「くるるん!くるるん!」

 

今度も何か必死になって訴えてる。

ローラも頷きもう一度読み取ろうとするが

 

「ローラちゃん可愛いって!」

 

「く〜る〜るん…」

 

「あれ?」

 

またも意思疎通が出来なかった

 

「やっぱり、ラッコに育てられた海の妖精だって」

 

「…ちょっと人間こっち来て」

 

手招きするローラに、帝は水槽に身を乗り出して近付くと

 

「あぶぶぶ!!?」

 

ローラは帝の頭を掴んで溺れさせた

 

ジタバタする帝だが、次第に力を無くしてしまった

 

「きゃあぁぁ!!帝君!!」

 

慌ててさんごが救出し、心臓辺りをポカポカ叩いて水を吐き出させた

 

「お腹が空いてるんじゃない?」

 

そう言ったのはみのりだった

 

「ねぇローラ、海の妖精って何食べるの?」

 

「くるるんの食事は貝殻クッキーよ。貝殻クッキーなら、わたしの冷蔵庫の中にいっぱいあるから用意するわ」

 

アクアポットに戻り、冷蔵庫の中からクッキーを取り出した

 

「くるる〜ん!」

 

「ほらくるるんお食べなさい」

 

貝殻クッキーを差し出したら、元気良く齧り付いた

 

「みのりん先輩、何でくるるんの言葉が分かったの?」

 

「言葉は分からない。でも、くるるんは遠い海の底から長い旅をして来たでしょう?」

 

「なるほど。でも、くるるんはどうして浜辺に打ち上げられていたんだろう?」

 

それにもおおよそだが、みのりは分かっていた

 

「この辺りの海流に巻き込まれてしまったんだと思う。ローラのお届け物の途中で」

 

「くるるん!」

 

それも大正解の様でくるるんは喜んだ

 

「それは何処にあるの?」

 

「くるるん?…くるるん!?」

 

慌てて右を見て左を見てと探す様に見渡す

 

「これ落としたかもな」

 

「くるるん…」

 

 

 

 

 

////////

 

くるるんの落とし物を探す為、もう一度打ち上げられた場所まで戻る事にした

 

「無いな」

 

「くるるんが居たのはこの辺だと思うけど…」

 

「ヤドカリだ!もしかして、コレがお届け物だったりして?」

 

まなつがふざけてると、ローラとくるるんがワカメを被りながら海中から出て来た

 

「まなつ、遊んでんじゃないわよ…」

 

「ひいぃぃぃ!!ごめんなさい!!」

 

「ローラ、そっちはどう?」

 

「海の中にも無かったわ」

 

「くるるんは女王様から何を預かったの?」

 

中身さえ分かれば、見つけようもあるのだが

 

「くるるん?」

 

どうやら、頼まれた本人ですら中身の詳細は知らない様だ

 

「女王様からのお届け物だろ?高価な物が入ってたり?」

 

「良い線いってるじゃないの人間」

 

「ローラには分かるのか?」

 

「女王様がくるるんに託した物。それは、ズバリ──パワーアップアイテムよ!!」

 

「「「「パワーアップアイテム!?」」」」

 

パワーアップアイテムに驚愕する4人

 

「ありがとう女王様!アイテムと共に貴方の期待に応えます!そして立派な女王にもなってみせます!」

 

「何か1人で盛り上がってるな」

 

「パワーアップアイテムなら俺も欲しいです!!」

 

「人間には既にそれらしい物があるでしょうが!」

 

「あだっ!?」

 

アクアポットからディスク2枚を取り出して、帝のおでこに投げ付ける

 

「何だコレ?」

 

「真っ黒だね」

 

あすかとまなつが手に取って見たが、何の変哲もない真っ黒のディスクだった

 

「文字が書かれてねぇ…」

 

「ねぇローラ、コレ本当に帝君のパワーアップアイテム?」

 

「はぁ?さぁ?女王様から一緒に受け取った物よ。多分そうじゃないの?」

 

「無責任な発言だな」

 

あすかが言う横では、帝達3人はオーシャンステッキに取り付けていた

 

「試しに回してみたら?」

 

「そうだな。ほっ!」

 

しかし何も起きなかった

 

「何も起きないね」

 

「う〜ん…取り敢えずローラに返すよ」

 

投げ返してローラはキャッチする

 

「そういえば、みのりは何処へ行ったの?」

 

「みのりん先輩なら、あっちを探してるよ」

 

みのりは、帝達とは違い草木が生えてる海辺より遠い場所を何故か探していた

 

「何で林の中なの?もういいわ、わたし達も探しましょう」

 

こうして、くるるんの落とし物を探し始める

 

しかしながら、全員がバラバラに探しても見つからなかった

 

 

 

「こんなに探しても見つからないなんて困ったわね」

 

「落とし物ってコレ?」

 

みのりが手に持って来たのは、小さいピンク色の風呂敷だった

 

「くるるんくるるん!」

 

「喜んでる!?て事は、それがくるるんの落とし物?何処にあったの?」

 

「木の枝に引っ掛けてあった」

 

「何でそんな所に?」

 

「くるるん?」

 

「恐らくはこういう事」

 

旅立ったくるるんは海流に呑まれて荷物を落とした。

くるるんとは別の場所に打ち上げられた荷物は、通りすがりの親切な人が安全な防風林の枝に掛けられた

 

「ていう感じに」

 

「貴女、それが始めから分かっていたの?どうして?」

 

「強いて言うなら想像力。本を読んでいれば自然と身に付く」

 

「そういうものなの?」

 

「本には、自分とは違う誰かの色々な考えや気持ちが書いてあるの。それで、他の人が何を求めてるのか想像出来る様になる」

 

「じゃあ、くるるんの時も?」

 

ローラは思い返してみる。くるるんがお腹を空かしていた時、何故みのりだけが理解したのかを

 

「同じ、想像してみたの」

 

「中々やるわね」

 

「じゃあ、これから起きる事も分かる?」

 

声のする上へと見上げると、メイド服を着て海老に似た人が居た

 

「貴方は?」

 

「探し物み〜つけた!その包み頂戴!」

 

「貴女は、あとまわしの魔女の使いね!」

 

「そう!『エルダ』ちゃんよ!そこにあるグランオーシャンの贈り物を貰いに来たの」

 

エルダの目的は、やる気パワーでは無くくるるんが持って来た包みだった

 

「はぁ?貴女何かにあげる訳ないでしょ?これは子供の玩具なんかじゃないのよ。シッシッ!」

 

「〜〜ッ!そんな事言われたら子供は余計に欲しくなるのよ!」

 

「でしたら実力行使と参りましょうではありませんか!!」

 

「「アリス!?」」

 

「イェーイ!ピース!」

 

いつの間にか、エルダの側にアリスまで居た。

そしてヤラネーダの素をエルダに手渡した

 

 

 

「遊ぼう!ヤラネーダ!」

 

 

 

「ヤラネーダ!」

 

エルダはアッキガイを媒体としてヤラネーダを生み出した

 

「さぁヤラネーダ、あの包みを奪っちゃって!」

 

「みのりん先輩!」

 

ヤラネーダの出現に察知して、帝達も合流出来た

 

「皆んな行くよ!」

 

「良しあすか先輩!」

 

「何?」

 

「ぎゅ〜!」

 

「うわっ!?」

 

帝は急にあすかに抱き付いた

 

「この…離れろ!」

 

強引に引き剥がされて尻餅を突いてしまう

 

「ありがとうございますあすか先輩!」

 

「何のつもり?」

 

「最近ステッキの出目が悪いから、あすか先輩成分を蓄えたら変わるかもって!」

 

「後でシメてやる」

 

 

 

「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」

 

「「「「レッツメイク!」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

 

「今日も元気だ!」

 

「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」」」

 

 

「ルーレットスタート!」

 

『TECHNIC!』

 

 

 

「待って待って待って!」

 

「ランダムなんだから仕方ないだろ?」

 

「来るよ!」

 

アッキガイの特徴を活かして、槍上に飛んで来る

 

「だったら正面から受け止めてやる!」

 

分身した帝2人が、堂々と正面から受け止めようとするも

 

『『うわぁぁ!!』』

 

パワー負けして弾かれた。更には分身が消えてしまう始末

 

「やっば!」

 

すぐさま帝達はジャンプして避ける

 

「ヤラ!」

 

だが着地と同時に突撃して来る

 

「あっ!」

 

5人は何とか避け切った

 

しかし、ヤラネーダは即座に次の攻撃モーションへと移る。

体を回転させて、棘のミサイルを辺り構わず乱射する

 

「ヤラネーダ!」

 

動けずにいる隙を狙いまたも突進する

 

「「くっ!」」

 

「「「わっ!」」」

 

サマーとフラミンゴ、帝とコーラルとパパイアの二手に分かれて左右に避ける

 

「ヤラネーダ!」

 

そして流れる様にしてまたも棘のミサイルの乱射が始まった

 

『ぺけ!』

 

直前でコーラルがシールドで防御する

 

「駄目!数が多くて防ぎ切れない!」

 

「帝どうにかして〜!!」

 

「分かってる!」

 

サマーに肩を揺さぶれながらルーレットを回す

 

『DEFENCE!』

 

「出た!今回の当たり!」

 

コーラルの隣に立ち、帝も一緒に青い盾を無数に展開させる

 

「ありがとう帝君!」

 

「それよりも、今の内に何か打開策を!」

 

「皆んな!わたしに考えがあるわ!」

 

「聞かせて!」

 

パパイアは近くにあったロープを掴んで作戦を伝える

 

「このロープを使ってヤラネーダを引っ掛けて転けさせる!」

 

「でも、あの攻撃を掻い潜るにはどうすれば良いんだ?」

 

「帝が全部防いでくれる」

 

「はぁ!?何それ!?」

 

「帝なら出来ると信じてる」

 

ただ無責任に言ってるのではない。信頼が出来るからこその言葉。

帝も仕方なくそれを了承した

 

「…あいよ」

 

サマー達の目の前に大きな盾が出現した

 

「皆んなの動きに合わせて盾も動く様にしといた。これなら思う存分動けるぞ」

 

「ありがとう帝」

 

「お礼はパンツで」

 

そうしてロープを帝以外全員持ち、横並びに立って位置に着く

 

「よ〜い…ドンッ!」

 

帝の合図と共にサマー達は一斉に駆け出した

 

「「「「やぁぁぁ!!」」」」

 

棘のミサイルを盾が全て防ぎ切り、足元まで潜り込めた

 

そして、サマーとコーラル、パパイアとフラミンゴの二手に分かれて左右からロープを回して引っ掛ける

 

「「「「やぁぁぁぁああ!!」」」」

 

一回転したロープはヤラネーダに絡まり、強引に引っ張り上げる事によって回転の勢いを殺して大きく吹っ飛んだ

 

ヤラネーダは、ローラとエルダの居る場所に落ちた

 

「ローラ大丈夫?」

 

「当たり前よ!これから大逆転する所だったのよ!」

 

「ふぅ〜ん。それでローラ、その手に持ってるのは何?」

 

ローラの手には包みではなく、大きなシャコガイを手にしていた。

それについて帝達は疑問に思った

 

「これは、その…」

 

「お菓子みたいだけど?」

 

「残念で〜した。それはパワーアップアイテムじゃなくて只のお菓子」

 

「可愛いですね。あんな小さな包みに大量のお菓子。正にビックリ仰天の助です」

 

「ビックリ仰天の助って何?それより、分かったらそれを早くエルダちゃんに明け渡しなさいよ!」

 

エルダとアリスは手を出して渡せと言う

 

「只のお菓子じゃない」

 

「え?」

 

そんな時、パパイアが前に出る

 

「これはきっと人魚の女王様が、ローラの為を想って用意した贈り物。パワーアップアイテムじゃないかも知れないけど、とても大事な物よ!」

 

「へぇ〜、だったら何なのよ?」

 

「だから、このお菓子は貴女に渡さない!」

 

 

 

「ハートルージュロッド!」

 

「プリキュア !ぱんぱかパパイアショット!」

 

 

「ビクトリー!」

 

 

 

「もう弱っちぃヤラネーダね!エルダちゃん帰る!プンプン!」

 

「プンプンで御座います!」

 

 

 

 

 

////////

 

「美味しそうなお菓子だね〜!」

 

「みんなグランオーシャン自慢の名菓なのよ」

 

「それにしても何でお菓子?」

 

「それわたしも思った」

 

「ローラを労う為だと思う。慣れ親しんだグランオーシャンのお菓子を、ローラに食べさせたかったんじゃないのかな?」

 

そうみのりは推測した

 

「……まぁ折角送ってくれたんだし、有り難く──」

 

「「「「「「いっただきま〜す!」」」」」」

 

一々考えるのもやめたのか、取り敢えず貰ったお菓子を皆んなで食べる事にした

 

食べてる途中、くるるんがアクアポットの天井ボタンを軽く押した

 

そうすると、画面からローラの顔が写ったシャボン玉が浮かんで来た

 

「シャボンピクチャーだわ。アクアポットにこんな使い方があったのね」

 

「写真みたい!」

 

「くるるん!」

 

もう一度押すと、今度はまなつの写ったシャボン玉が出て来た

 

「いいねトロピカってる!くるるん、わたしにも貸して?」

 

「くるるん!」

 

「撮るよ〜」

 

まなつは全員分の写真撮り、最後は集合写真を撮った

 

いつの間にか、周りはシャボン玉だらけになっていた

 

少しすると、シャボン玉はアクアポットの中へと吸い込まれて行った

 

「こうして保存が出来るのね」

 

 

 

 

 

そうして、くるるんとの別れの時

 

「さよならくるるん。女王様にお菓子美味しかったと伝えて」

 

「くるるん?」

 

「それとプリキュア4人とステッキの所有者が見つかったって。勿論、わたしがしっかりと纏めてる事も忘れずにね」

 

「くるるんくるるん!」

 

くるるんは、手をパタパタして何か伝えようとする

 

「アクアポットがどうかしたの?」

 

ローラは、アクアポットをくるるんに向けると中へ入って行った

 

「は?」

 

「くるる〜ん!」

 

「貴方、もしかしてこのまま此処に居る気!?」

 

「くるるん!」

 

返事もしている。どうやらアクアポットに住み着いて、皆んなと共に行動するみたいだ

 

「ローラもくるるんの気持ちが分かる様になったみたいね」

 

「えぇ!?」

 

「「宜しくくるるん!」」

 

「はぁ!?」

 

「良いんじゃない?」

 

「全く……ん?」

 

ローラは、アクアポットのシャボンピクチャーで撮った皆んなとの写真がひとつだけある事に気付いた

 

「ふぅ〜」

 

それを優しく、海の中へと吹き掛けた

 

(女王様、わたし元気にやってるから!)

 

「そんな訳で良い感じになって来てる今!ローラのお胸を最近触ってないから〜」

 

そろりと触ろうとする帝の腕を素早く掴み、雑巾絞りで締め上げる

 

「痛でででで!!?!」

 

(多分、元気にやってると思う…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのシャボン玉は、遠い海の底のグランオーシャンに行き着き、女王様の所まで届いていた




次回は主人公について語る

ここまでの拝読ありがとうございますた〜


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第14話 どうして皇帝とサンゴは出会った?

今回は主人公について話を掘り返してみました

ではスタートです!


「ねぇ皆んな、気になった事言っていいかな?」

 

部室で突然、あすかがそう呟く

 

「帝って何であんな性格なの?」

 

「エッチって事ですか?」

 

「そう…も知りたいけど違う。何で集中しただけで、あそこまで性格が変わるのかって話」

 

「「確かに」」

 

まなつとみのりも、帝についてもっと知りたいと思った

 

「人間って……何?」

 

「急に哲学的になるなよ…」

 

でも実際ローラの言う様に帝の事をあまり知らない。

ていうか知らなさ過ぎる

 

知ってる事と言えば異常を通り越した変態っていう事くらい

 

「そもそも帝って変態な事以外何かあるのか?」

 

「「「さぁ?」」」

 

まなつ、みのり、ローラの3人は帝の短所は探せても、長所など微塵も無いと思っている

 

「もしかして、ああいう性格をしてるから副作用で出来たのかも」

 

「何それ、溜まったもんじゃないな…」

 

みのりの変な憶測、間に受けては無いがあすかも変な返答する

 

まなつ達皆んな、帝に対して辛辣な言葉を投げる中で、それに異議を唱える者が一人だけ居た

 

「皆んな酷いよ!帝君はそんな人じゃ無いよ!」

 

さんごは、バンっと机を強く叩いて抗議する

 

「帝君はね、本当はすっごく頼りになって、強くて、カッコ良くて、いつも側に居てくれて、優しいんだよ!!」

 

「さ、さんご?」

 

「わたしのちょっとした我儘にも付き合ってくれたり、いつも登下校する時は歩幅を合わせてくれたり──」

 

「あの〜さんご?」

 

突然のさんごの熱い帝語り。まなつの声すら届いて無かった

 

「わたしのちょっとした変化にも気付いたり、まだ小さい頃は一緒に寝てくれたり、おんぶや抱っこだってしてくれた!!」

 

今にもぶつかりそうな程の距離までまなつに近付く顔

 

「さ、さんご、帝好きだね」

 

「うん大好きだよ!」

 

即答な上、恥じらいも無く言い切った

 

「そ、そんなさんごに聞くけど、帝っていつからあんな変な感じに性格がコロコロ変わるの?」

 

「う〜ん…」

 

腕を組み思い出の中を探ってみる

 

「よし」

 

さんごは何か決意したのか、紫の眼鏡を掛けて黒板の前に立つ

 

「では、帝君との思い出話を少しだけお話ししますね」

 

全員さんごへと注目する

 

「え〜と、9年前辺りからかな?」

 

「「「「9年前!?」」」」

 

「それまで帝君とはただの知り合いだったの」

 

 

 

 

////////

 

まだ3歳のさんごは、母親のみゆきの脚にしがみついてジッと男の子を見ていた

 

「……」

 

「どうしたのさんご?」

 

「あの子」

 

指を指して示すのは帝だった

 

「あの子は近くに住んでる皇さん家の帝君よ」

 

「みかど君?」

 

「声掛けてみよっか」

 

「え、まって!」

 

まだ心の準備が出来てないさんごを置いて行き、みゆきは帝に声を掛ける

 

「こんにちは帝君」

 

「こ、こんにちは」

 

「私、貴方のお母さんと友達なの。良かったら、家の子のさんごとも友達になってくれるかしら?」

 

帝は物影に隠れてるさんごを見つめる

 

「ごめんね、少し恥ずかしがり屋なの」

 

帝はさんごの目の前まで歩いて、手を差し出した

 

「おれ、すめらぎみかど」

 

「す、すずむらさんご…」

 

「あそぼ」

 

帝は強引にさんごの手を取り、何処かへと連れ出した

 

「気を付けね」

 

 

 

 

 

やって来たのは近くの公園

 

「わたしとあそんでも面白くないよ」

 

「そんなの気にしないよ。おれがさんごとあそびたいからあそぶ」

 

「あ、ありがとう…」

 

それか2人は夕方まで遊んで過ごした

 

そしてさんごの家の前

 

「かえるね」

 

「あの!」

 

「なに?」

 

さんごはもじもじしながら勇気を出して話した

 

「あしたも、あそんでいい?」

 

「いいよ!あそぼ!」

 

 

 

 

 

////////

 

「それが帝君との出会いだったの……て、あれ?どうしたの皆んな?」

 

「あのねさんご、わたし達が聞きたいのはそんな話じゃないの。分かってる?」

 

ローラは机の上で指でトントンしながら、退屈そうにしていた

 

「でも、皆んな帝君の事が知りたいって…」

 

「それはそうだけど、あの豹変する性格について知りたいの!!」

 

「え?だからその話をこれからするんだよ?」

 

「え、じゃあさっきのは?」

 

「本で言うところの冒頭部分です、みのりん先輩」

 

「なら早く話してくれ」

 

あすかの言葉に一同首を縦に振る

 

「でしたら…実は言うと帝君、一度海で行方不明になった事あるの」

 

「「「「行方不明!?」」」」

 

「仲良くなってから次の年、8年前の夏です。その日、帝君と海で遊んでいたんですけど、波に逆らえず流されてしまったんです」

 

「で、どうなったのよ?」

 

先程退屈そうにしていたローラだったが食い付いた

 

「1週間後に見つかったんです」

 

「え!?1週間も行方不明だったの!?」

 

「奇跡的に外傷も無く、健康そのものの状態で発見されたの。それから少しの間入院したの」

 

「何も無かったって、いくら人間でもそれは無いわよ。だって海で1週間行方不明よ?有り得ない有り得ない」

 

ローラの言う様に普通なら死んでもおかしくない

 

「様子がおかしくなったと言ったらそれからも。帝君、入院してる間いつも外を見て遠い目…わたしと全然違う世界を見てる様に見えたの」

 

「黄昏てただけじゃないの?」

 

「かも。その後は何事の無かったから」

 

「で、で?帝は何か覚えてた?」

 

「ううん。覚えてたのは溺れる前後しか覚えて無いって。空から紫の光りが降って来て、近くの船が大破した衝撃で呑み込まれたらしいの」

 

「人間は大変ねぇ〜」

 

自分には縁の無い事だと思い、ローラは他人事の様に喋っている

 

「てか、帝の性格の変わり様については?」

 

まなつが肝心な事に気付いた

 

「その事なんだけど、わたしもいつから変わったのかは詳しく知らないけど、それを知ったのは小学生の時」

 

 

 

 

 

////////

 

それは帝とさんごが小学2年生の時の頃

 

2人は開けた場所で花を摘んでいた

 

「見て帝君!」

 

不細工な形だけど、さんごは自力で作った花の首飾りを帝に見せていた

 

「帝君に掛けてあげる!」

 

優しく花の首飾りを掛けてあげた

 

「ありがとう可愛いね。なら俺はコレを」

 

帝は自分で作った花冠を頭に乗せてあげた

 

「帝君のも可愛い!ありがとう、大切にするね!」

 

そうやって2人が笑い合ってると、上級生と思われる男の子3人組が近付いて来た

 

「男が何女と遊んでんだよ?」

 

「ダッセェ〜!」

 

「気持ち悪〜!」

 

ゲラゲラと馬鹿にする様に笑う3人組を見て、当然帝とさんごは不快な気持ちになる

 

「…行こ、さんご」

 

「う、うん…」

 

手を引いてその場を離れようとしたのだが

 

「う゛ッ!?」

 

花の首飾りを引っ張り帝を背中から倒した

 

「帝君!?きゃ!」

 

今度はさんごの腕を掴み上げた

 

「い、痛いよ!離して!」

 

「さんご!」

 

嫌がるさんごを見た帝は、すぐに飛び付くが他の2人に捕まってしまう

 

「女子と遊んで何が楽しいんだ?」

 

「そんなの俺の勝手だろ!」

 

「うるせぇ!」

 

帝を地面に押し付けて、殴るや蹴るなど暴力を振るって傷み付ける

 

「やめてよ!!」

 

帝の心配をするが、腕を振り解けずどうする事も出来ない

 

その時、帝から貰った花冠を取られてしまった

 

「あ!返してよ!」

 

「こんな物は」

 

さんごを突き飛ばしたと思ったら

 

「こうして、こうだ!」

 

グチャグチャにして、バラバラにした後、止めと言わんばかりに地面に叩き付けて踏み躙った

 

「帝君から貰った大切なお花が…ひっぐ…」

 

「さんご……この!!」

 

2人を振り払い、さんごを泣かした男の子にタックルする

 

「何すんだよ!」

 

しかし、結局力負けしてしまい跳ね返された

 

「行こうぜ」

 

ぞろぞろと帰ろうとする3人組

 

「ひっぐ…ひっぐ…」

 

「ッ!!」

 

さんごの泣く姿を見て帝は立ち上がって呼び止める

 

「──謝れ」

 

「あ?」

 

「さんごに、謝れ」

 

「謝るかよバーカ!」

 

「そうか。なら──」

 

帝は一瞬で男の子の顔面を殴り、そのまま地面へと叩き付けた

 

「這い蹲ってろ」

 

殴った手の甲から血が流れていた。皮が擦り剥けたのだ

 

「この野郎!」

 

仕返しにと2人目が殴ろうとするが

 

「──!」

 

帝は小さいながら、上級生相手に後方へと1m程投げ飛ばした

 

「う、うわぁぁ!!」

 

最後の1人が逃げようとするも、帝がやすやすと見逃す筈も無く襟首を掴んだ

 

「ご、ごめん!謝るから!!」

 

「もう必要無い。俺に逆らう奴は容赦はしない」

 

男の子を掴み上げ、そして背中から思いっきり地面へと叩き付けた

 

「絶対は俺だ」

 

動かなくなったのを見て帝は、さんごの手を引いてその場を後にした

 

 

 

 

 

街まで歩き、さんごは近くの川で水で浸したハンカチで帝の傷を拭う

 

「ごめんね、ごめんね…わたしのせいで帝君が……」

 

「さんごのせいじゃないよ。悪いのはアイツらだよ」

 

それでも中々泣き止んではくれなかった

 

「俺、さんごの事絶対に守ってみせる!」

 

「え?」

 

「ずっと隣に居たあげる。だから、手を離さないでね!」

 

「…うん!ありがとう帝君!」

 

 

 

 

 

////////

 

「その時から帝君はわたしの隣に居るの。わたしが風邪を引いた時も、わざわざ学校を休んでずっと見守ってくれてたの」

 

「くるる〜ん!」

 

「だからね、皆んなが思う程帝君は悪くないよ」

 

それを聞いて皆んな押し黙ってしまう

 

「…その時期から帝は変わっていったのか」

 

「帝も大変なのね」

 

「そうだね〜」

 

あすか、みのり、まなつと感傷に浸ってると

 

「でも変態なのは同情出来ないわ」

 

ピシャリとローラが言った

 

「「「まぁ、それはねぇ…」」」

 

「帝君がエッチなのは仕方ないよ!」

 

「仕方ないので済まされるとこっちが大変なのよ!毎日毎日、わたしの胸を触って嫌になるわ!!」

 

「帝君と触れ合っていて嫌なの!?わたしは羨ましいよ!!」

 

「さんご貴女、少しおかしくなって来てない!?」

 

急にヒートアップして来たさんごとローラに、まなつ達3人は唖然としていた

 

「帝君はわたしだけの帝君なの!盗らないで!!」

 

((え、今何て言った?))

 

唖然としてはいるものの、みのりとあすかはそれを聞き逃さなかった

 

帝についての言い争いはまだまだ続くのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

////////

 

「へっくしょん!」

 

部活をしない帝は公園でブランコに乗って遊んでいた

 

「誰か噂でもしてるのか?」

 

ぶらぶらとブランコを漕いでいたら、ある人物を目にした

 

「…」

 

帝はブランコから降りて、その人物の前まで歩く

 

「アリス…」

 

「神出鬼没で現れるゲリラアリスです。帝様、こんばんはで御座います」

 

「俺に何か用か?」

 

「私が貴方の目の前に現れた。聞くまでも無い筈です」

 

そう言ってアリスは、懐からヤラネーダの素を取り出してた

 

「さぁ、スタートで御座いま〜す!」




実は幼少の頃から好きになっていたさんご。
どれくらい好きかと言いますと、例えば主人公が半径1m程の円とすれば、さんごはそれを覆い尽くす1000倍です。

胸やパンツ見られた時、嫌々言っていますが「嫌よ嫌よも好きのうち」みたいな感じで接していました

表には出して無いだけで、結構重たい。今回はその一部を見せたって感じです

それでは次回へと続きます


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第15話 その信頼関係、爆エモエモエモーショナル!!

毎話投稿する度感想を頂きありがとうございます。嬉しい限りで御座います。
メール通知が来る度に、感想!?みたいな反応して待ってたりしています

今までの内容で、「これでヒロイン未定なの?」って言われますけど、基本追加戦士も含めて全員が揃うまで未定扱いにしております

では続きスタートです


まなつ達はらあれから、さんごの話を嫌と言う程聞かされていた

 

その話も一旦区切りがついて下校する事にした

 

正門前で騒いでいた時、遠くの方でヤラネーダが出現した事を察知した

 

「ヤラネーダ!?」

 

「早く行こう!」

 

 

 

 

 

「え、この場所って…」

 

ヤラネーダが現れた場所に着いたのは公園。しかもそこは、帝とさんごが昔遊んでいた公園だった

 

「ヤラネーダ!」

 

「ん〜、選んだ場所がオ〜ノ〜ですね。人が1人も居ない」

 

公園ではブランコを媒体としたヤラネーダが暴れていた。

しかし幸いな事に、やる気パワーは誰も奪われては無かった

 

「アリスね!他の使いは何処に居るのよ?」

 

「あ〜その事でしたら、珍しくも私のソロプレイで御座います。あまり干渉はしたくありませんでしたがやむを得ないのでして」

 

「…皆んな、まだヤラネーダはやる気パワーを奪ってないわ。やるなら今よ!」

 

「分かったローラ!下がってて!」

 

 

 

「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」

 

「「「「レッツメイク!」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

 

「張り切って行くよ!」

 

「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」」」

 

 

 

「気張って行こや!ヤラネーダ!」

 

「ヤラネーダ!」

 

ブランコを振り子の様に揺らし、それを攻撃にして襲い掛かって来る

 

「そんなの当たんないよ!」

 

サマーはジャンプで避けて、ブランコの椅子に着地する

 

「呑気な事。戦いは甘くはないのです!」

 

椅子を繋いでいた鎖が外れて、椅子事サマーは空中へと投げ出された

 

「うわぁ!?」

 

外した鎖をヤラネーダは両手で持ち、そのままサマーへと叩き付けた

 

「「サマー!」」

 

「わたしに任せろ!」

 

「ヤラネーダ!」

 

鎖を鞭の様に操り、迫り来るフラミンゴを潰そうとするがそれを全て難なく避けて懐へ潜り込んだ

 

「下がガラ空きだよ!」

 

大きく跳び上がり、下から蹴り上げた様とした時

 

「がっ!?」

 

背中から激しい衝撃を受けた

 

それは先程、サマーと一緒に投げ飛ばしたブランコの椅子。ブーメランの様に戻って来た所を、フラミンゴの背後から攻撃をしたのだ

 

「ヤラネーダ!」

 

「させない!」

 

『ぺけ!』

 

鎖からパパイアと共に守る為張ったシールドだが、鎖はシールド事囲い込んだ

 

「え、何?」

 

「コーラル気を付けて!」

 

「ヤラ!」

 

ヤラネーダが鎖を引っ張ると、シールド事コーラルとパパイアを巻き付き拘束した

 

「ヤラネーダ!」

 

そのまま高くジャンプし、勢いを付けて地面へと叩き込んだ

 

「うぅ…」

 

「あぅ…」

 

「コーラル、パパイア!しっかりしなさいよ!」

 

「くるる〜ん!」

 

(マズいわ。ここまでヤラネーダが強いなんて想定外よ。こんな時に人間が居れば…)

 

「『こんな時に帝が居れば』とお考えですか?」

 

ローラの考えを読まれた

 

「彼は来ません」

 

「そんなの分かんないわよ!人間が来れば、アンタなんか簡単に倒すわよ!」

 

「…ではもっと分かりやすく言いましょう。彼は負けたのです。私のヤラネーダに」

 

「「「「!?」」」」

 

「そ、そんな……ううん、帝君は負けない!」

 

「涼村さんご。いえ、今はキュアコーラルと呼ぶのが相応しいですね」

 

アリスは倒れてるコーラルに近付き、目線を合わせる為に膝を着いて軽く顎を上げさせる

 

「キュアコーラル、帝様は負けたのです」

 

「負けない…!」

 

「なら何故、こうしてピンチに陥っている貴女方を助けに来ないのですか?」

 

「それ、でも…」

 

「現実を受け入れなさい」

 

手に取っていた顎を乱暴に投げ捨て、コーラルは顔を地面に打ち付ける

 

「帝君…」

 

 

『──俺、さんごの事絶対に守ってみせる!』

 

『──ずっと隣に居たあげる。だから、手を離さないでね!』

 

 

「くぅ…うっ…」

 

体に鞭を打って立ち上がった

 

「まだ、やる気なのですね」

 

「ハァ…ハァ…」

(絶対に、諦めない!!)

 

「ヤラネーダ」

 

「ッ!」

 

アリスが指示を出すと同時にコーラルも駆け出した

 

「待ちなさいコーラル!そんな体じゃあ返り討ちに遭うだけよ!」

 

「それでも!帝君なら!」

 

「貴女は人間じゃないのよ!やめなさいコーラル!!」

 

「くるるん!」

 

ローラとくるるんの声を無視する

 

「ヤラネーダ!」

 

打ち付ける鎖を掻い潜るも

 

『ぺけ!』

 

「うっ…!」

 

ヤラネーダの方が手数が多く思う様に近付けない

 

「ヤラ!」

 

「きゃあぁ!!」

 

更に追撃でブランコの椅子も、シールドの上から強引に重ねられ打ち破られた

 

「うぅ……あ──」

 

倒れた状態、自分を覆い尽くす影を不審に思ったコーラルは見上げると鎖2本が激しく打ち付け小さなクレーターが出来た

 

「ヤラネーダ!」

 

「これでどうでしょうか?」

 

土煙りが晴れるとクレーターの中心に、変身が解けたさんごが気絶していた

 

「プリキュアのやる気パワーを奪ってみるのも面白そうです」

 

「ヤラネーダ!」

 

ヤラネーダの目が赤く光り、さんごのやる気パワーを奪い始める

 

(みか、ど…くん……たすけて……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ッ!!」

 

その時、ヤラネーダの頭から何かに衝突した

大きな音が鳴った

 

「ヤラ……??」

 

「ヤラネーダ?」

 

尻餅をついたヤラネーダ自身、一体何が起きたのか理解していなかった

 

「少し遅くなった」

 

「帝君……!」

 

同時に帝もさんごの目の前に現れた

 

「助っ人登場!」

 

「『助っ人登場!』じゃないわよ!!貴方一体何処に居たのよ!?」

 

「あはは面目ない!」

 

帝はさんごを抱いて、安全なローラの居る所まで移動させる

 

「帝君、来てくれるって思ってたよ…」

 

「それはありがとう。ローラ、さんごを頼むよ」

 

「まさか人間、ひとりでやる気なの?」

 

「トドメは誰かに任す」

 

「ヤラネーダ!」

 

話してる最中にも関わらず、ヤラネーダは鎖で攻撃して来るも、さんご達を守る様に盾が出現して弾いた

 

「ッ!」

 

弾いたと同時に帝は飛び出していた

 

「ヤラネーダ!」

 

今度は2方向から鎖が襲い掛かる

 

『『フッ!』』

 

だがそれを、分身した2人の帝が受け止めた

 

「ヤラネーダ!」

 

今度はブランコの椅子が飛んで来るも

 

「ハッ!」

 

正面から叩き割った

 

「複数持ち…当たりを引いたみたいですね」

 

此処に来る途中で帝は、オーシャンステッキのPERFECTを引いていた。

その為、サマー達が苦戦していたこの連続攻撃に対応出来ていた

 

だが

 

「やり難い…」

 

今回のヤラネーダはいつになく強く、素早い。

接近しても避けられ、遠距離では相手の思う壺

 

「人間でも苦戦するなんて」

 

「くるるん!くるるん!」

 

「どうしたのよくるるん?」

 

くるるんはアクアポットから、黒いディスクの1枚をローラに渡した

 

「渡せって?でもこれ全く使い物にならないわよ」

 

「くるるん!」

 

眉をひそめるローラだが、くるるんが必死に訴え掛けるのだ。

ローラはそれを信じて帝に投げ渡す事にする

 

「人間!!」

 

呼ばれて振り向くと、帝の手の中に黒いディスクが手の中に収まる

 

「ローラ、コレ使えねぇの知ってるだろ?」

 

「……」

 

「ローラ…」

 

いつもなら何かしら返答をしてくるのだが、今回は真剣な眼差しで見つめてくるだけ。

それ程まで自分達が追い込まれているを表してる

 

今は一途の希望に縋るしかない

 

「やるしかない」

 

オーシャンステッキにセットされてある、オーシャンディスクと入れ替えてセットする

 

「ルーレットスタート!」

 

いつも通りに回そうとするのだが

 

「ッ!固い!」

 

どんなに力を入れても動かない

 

「人間前!」

 

ローラに言われ前を向くと、ヤラネーダが立っていた

 

「動け!動け!!」

 

「ヤラネーダ!!」

 

「人間!!」

 

 

 

 

 

「──動け」

 

『エモーショナルディスク!』

 

『FANTOME!』

 

 

 

 

 

振り下ろされる鎖。だがそれを分身した帝を受け止めた

 

「ヤラネーダの攻撃を受け止めた?今までと同じ…では無い様ですね」

 

「勘が良いな」

 

「お手並み拝見と致しましょう。ヤラネーダ!」

 

「ヤラネーダ!」

 

ヤラネーダは、分身の帝2人を振り解き襲い掛かる

 

「フッ」

 

しかしその直後、帝が目の前から忽然と姿を消した

 

「え、人間が消えた!?」

 

「一体何処へ?」

 

「ヤラ──」

 

ローラとアリスが帝を探してると、突然ヤラネーダが殴られたかの様に倒された

 

「…なるほど、貴方ですか。帝様」

 

いつの間にか、倒れたヤラネーダの後ろに立っていた

 

「ヤ、ヤラネーダ!!」

 

ヤラネーダは勢いを付けて立ち上がり、再度攻撃を仕掛けて来る

 

「──ッ」

 

帝が足を踏み込むと、またしても目の前から消えた

 

「こっちだ」

 

「ヤラネー!?」

 

今度はヤラネーダの真上に現れては、強烈な踵落としを繰り出した

 

そしてそのまま空中へ飛び上がり体勢を整える

 

「ちょっと人間!空に逃げてしまったら!」

 

「もう遅いです。空中では避ける事は不可能です」

 

ヤラネーダは鎖、アリスは叩き割られたブランコの椅子を掴んでは放り投げる

 

同時に3方向

 

「避けるまでも無い」

 

3方向からの攻撃は、何故か帝の体をすり抜けたのだ

 

「あらまあ」

 

「余興は終わりだ」

 

着地と同時にルーレットを回す

 

『GENIUS!』

 

帝は、ヤラネーダに近付き指で軽く弾くと、地面を抉りながら吹き飛ばされる

 

「ヤラネーダ……」

 

「……」

 

「サマー、もう良いだろう」

 

「うん!バッチし回復出来た!」

 

 

 

「ハートルージュロッド!」

 

「プリキュア!おてんとサマーストライク!」

 

 

「ビクトリー!」

 

 

 

「帝様、また一つ強くなりましたね。これでまた1ページ、物語が記されます」

 

 

 

 

 

////////

 

「う、うぅん……あれ?」

 

「起きたか?」

 

「帝君、わたしは…?」

 

「気絶して眠っていた。もうヤラネーダは倒した。今は帰り道だ」

 

帝は、さんごをおんぶして涼村家へと送り届けてる最中であった

 

「ローラから聞いた。無茶をする」

 

「ごめんなさい…」

 

「だが、俺が来る事を信じていたらしいな。ありがとう」

 

「約束してくれたから。小学生の時、『守ってみせる』『隣に居たあげる』って言ってくれたから、わたしはいつも頑張れるの」

 

「知らないな」

 

さんごは帝の頭に顔を埋めて、首に回してる腕に力を込める

 

「それでもいいよ。わたしは覚えてるから…」

 

そうして、さんごは意識を落として、寝息を立て始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして夢の中でも、さんごは帝と共に笑い合っていた




後半辺りから雑になってしまいました…

そしてこの小説では話数的に丁度良い段階での強化でしたが、アニメで言うと7話で強化が入っているのです。結構早い段階だと思いますが、最初から決めておりました〜

下記にまた能力一覧を載せて置きます

エモーショナルディスク

NATURAE:自然の力を扱える

AUTO:相手の動きに合わせて、攻撃・防御、全ての行動を自動で行う 灰

FANTOME:TECHNICの上位互換。従来の分身に加えて、幻覚を見せたり、物体をすり抜けたり、姿を消したり、透視など様々な変幻自在を可能とする 紫

GENIUS:ありとあらゆる法則を無視する 白


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第16話 ローラの悩み、それは胸の大きさである

む〜眠い

ではスタート!


「……」

 

ローラは何故か自分の胸を見ていた

 

「どうしたのローラ?」

 

「いや何か最近、胸が大きくなった様な気がして…」

 

どうやら、自分の胸に違和感を感じて気にしていた

 

「病気?」

 

「…ちょっとみのりに聞いてみる必要があるね」

 

まなつとローラは家を出て、みのりの家に行く事にした

 

みのりなら知識も豊富だから何かしら分かるだろう

 

 

 

 

 

街で探してた所、みのりは丁度図書館へと出掛ける途中だった。

街中だが、まなつは呼び止めて先程までの疑問を相談した

 

「それは多分胸を揉んでいるからだと思う」

 

「胸を揉んでいるから?」

 

「何で揉んだだけで大きくなるのよ?」

 

「『揉む』と言うより『リンパの流れを良くする』の方が合ってるわ。バストの周りにリンパが沢山詰まってるから、そのリンパを揉み解して流れを良くすれば胸を大きくする事が出来るの」

 

まなつとローラは感心していた

 

「でも何でそんな事を聞くの?何か揉まれる様な心当たりでもあるの?」

 

「はぁ?自分自身、そんな胸周りとか滅多に触らないわよ。かと言って、誰かに触られる様な事も──」

 

しかしその時、ローラは脳内で数々の記憶がフラッシュバックする

 

 

『──ローラ胸触らせて〜!』

 

『──貴方ねぇ、胸触る事以外に何か無いの!?』

 

『──え?う〜ん…』

 

『──本当に無いのね…』

 

『──そんな訳で触らせて貰いま〜す!』

 

『──ギャァァァァァアア!!』

 

 

「そういえば人間の事をすっかり忘れてたわ……」

 

「寧ろ思い出さない方がローラの身になったんじゃないの?」

 

「まなつ貴女ねぇ…」

 

「ローラも胸が大きくなるなら別に良いんじゃないの?」

 

「大きくなる事は嬉しいけど…」

 

でもそこで、まなつはふと思い付いた

 

「だったら、いっその事揉んで貰えば?そうすれば、わたし達に被害に遭わなくて済むし」

 

「確かに、ローラひとりで皆んなが救われる」

 

「ちょっとちょっとちょっと!?何で次期女王になるわたしだけが犠牲にならなきゃいけないのよ!?そういうのは、全部まなつ達が受けるべきよ!!」

 

「これしか無いんだよローラ!」

 

「そんな訳あるかいな!!」

 

まなつとローラが言い合ってると、遠くから土煙りを上げながら走って来る人物を目にした

 

 

「ロ〜〜ラ〜〜!!」

 

 

「あ、帝」

 

「ひっ!」

 

ローラは急いでまなつのポケットに隠れる

 

「どうしたの?」

 

「ローラ…はぁ…ろ、ローラ、ゲホッゲホッ!」

 

息を切らした帝がローラを探しに来ていた

 

「ローラに会いたいなぁって」

 

「「女王様〜」」

 

「こんな時だけ女王様扱いしないでよ!!」

 

「あ、ローラ発見!」

 

「…やられた。2人共謀ったわね」

 

観念したローラは素直に帝の前に出る

 

「望み通り出て来たわよ。用は何?」

 

「ん?用も何も会いに来ただけ」

 

「せめて何か用を作ってから来なさいよ!!」

 

「ローラは本当に良く喋るね。怒った顔も可愛いけど、シワが出来ちゃうよ」

 

「し、死にたいのかしら人間?」

 

アクアポットの中でピクピクと眉が動いて、怒り爆発寸前

 

「それにしても何で集まってるの?」

 

「いや〜、ローラが最近胸が大きくなっているから、みのりん先輩なら何か分かるかな〜って思って」

 

「分かったの?」

 

「うん。帝がローラの胸を毎日揉んでるからそれが原因だって」

 

「ま゛な゛つ゛!!!」

 

絶対調子に乗るとローラは思っていたのだが、意外な言葉が帰って来た

 

「あ〜ごめん。何か嫌だったか?」

 

「「「え?」」」

 

「何その反応…」

 

「いやだってあの帝がだよ!?」

 

「ありえない」

 

「2人共酷くない?いつも言ってるだろ、俺はローラの事が好きだって」

 

「「あれ本当だったの!?」」

 

いつも自分がしてる行為。自業自得の反応とはいえ少し傷は付く

 

「無理にとは言わないよ。じゃあね」

 

「本当に、わたしに会いに来ただけなの?」

 

回れ右して帰ろうとすると、ローラが呼び止めた

 

「いいわよ付き合ってあげる。だってわたし、女王になるもの。それくらいの計らいはしてあげる」

 

ふよふよと、アクアポットは帝の胸の内にすっぽりと入った

 

「で、何処に行くのよ?」

 

「実はな、あっちで美味しい店があるんだ」

 

そうして2人は出掛けて行った

 

「行っちゃいましたね」

 

「行ったね」

 

「みのりん先輩!わたしも図書館へ行っても良いですか?」

 

「…寝ないでね」

 

「は〜い!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、まなつとみのりはバストを測ってみた際、少しだけバストアップしていたのだった




ここまでの拝読ありがとうございまた〜


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第17話 初めての部活はお弁当作り!しかしそれは──

今回お弁当作りでの内容を少し改変しております

ではスタート!


「時間は丁度良い感じね」

 

土曜日の放課後、みのりは学校へと足を踏み入れていた

 

今日はまなつの提案により、トロピカる部最初の部活動はお弁当作り

 

理由としては、忙しいお母さんの代わりに自分がお弁当を作ると言った事だった

 

料理を出来るのはあすかのみ。なので、あすかを筆頭にお弁当作りをするのだ

 

そして今は家庭科室に向かってる途中

 

 

「お〜い!みのりん先輩〜!」

 

 

遠くだが後ろから帝の声がした

 

「帝?」

 

振り返ると帝が居たのだが

 

「ッ!?」

 

みのりは一心不乱に帝から逃げ出した

 

「何で逃げるんだ〜?」

 

逃げてしまうのも当たり前。何故なら今の帝は

 

「お〜い!」

 

パンツ一丁(・・・・・)で走って来てるのだから

 

みのりはとにかく校舎内を走った

 

しかしながら体力の関係上捕まるのは目に見えていた

 

 

 

 

 

////////

 

家庭科室では帝とみのり以外皆んな集まっていた

 

「2人共遅い〜!」

 

そう文句を言うのはローラ

 

「まあまあローラ」

 

まなつが宥めてると、丁度みのりが教室のドアを開けた

 

「お、遅くなってごめんなさい…」

 

「いえ、時間はまだ10分前です」

 

「これで帝君だけだけど…」

 

「それならもう来てるよ」

 

「何処だよ?」

 

既にみのりと一緒に教室に入った筈なのだが、帝が見当たらない

 

あすかがキョロキョロと探してると

 

「此処に居るよ!」

 

急にあすかの背後から力強く抱きしめた

 

「助けて!!」

 

だが誰も動こうとはしなかった

 

「あ、まなつじゃん!」

 

あすかから手を離すと、今度はまなつへと歩き出す

 

「うわっ!?」

 

勿論、帝の後ろ姿を見たあすかは驚いた

 

「アハハハ!」

 

笑いながらまなつに抱きついた

 

「ん゛ん゛!!」

 

「何で裸!?」

 

「此処に来る途中で池に落ちたらしいの」

 

「体操服はどうした…」

 

そして帝はローラの存在にも気付いた

 

「…おっと、ローラにも挨拶しないとね」

 

「嫌だ!」

 

「いいよなぁ〜?」

 

「わたしはいいよ!」

 

「遠慮しないでギュギュッとね!」

 

アクアポットに逃げ込もとうしたが、先回りされて正面から抱きしめられた

 

「羽交い締め攻撃か!?」

 

「違いますよ。あれは帝君のスキンシップですよ」

 

「わたしは嫌だ!」

 

「わたしだって嫌ですよ…」

 

あすかもまなつも、この羽交い締め攻撃ならぬスキンシップはお断りだった

 

「わたしも校舎内逃げ回ったけど…」

 

「あぁ…みのりん先輩も捕まってしまったんですね…」

 

「それよりも…この、素っ裸野郎。早く服を着ろ!」

 

「はいはい。確か教室に体操服があったから……職員室に行って鍵取って来る」

 

そして教室を出て行った

 

「……ちょっと待てい!全員帝を捕まえろ!!」

 

帝がまだ、パンツ一丁の事をすっかり忘れていた

 

 

 

 

 

////////

 

帝も体操服に着替えてようやく準備万端

 

「今日は何を作るんですか?」

 

「くるるん弁当だよ」

 

「はい!あすか先輩!」

 

「何帝?」

 

「俺はカレーが作りたいです!」

 

「カレーか…」

 

あすかは考えたが、帝の手には既にカレールーの箱が握られてあった

 

「しゃあない。それならタッパーにでも入れて作ろうか」

 

「それならわたしも帝と作る」

 

意外にもみのりも帝と同意見だった

 

「それなら二手に分かれて作ろうか。わたしとまなつとさんごで弁当。みのりと帝でカレー作り」

 

 

 

 

 

先ずはくるるん弁当作りの人達

 

「まなつ何してるの?」

 

「ご飯に桜でんぶを混ぜてくるるんをピンクにしてるんだよ」

 

「…その緑のモジャモジャ食べ物なの?」

 

「これはブロッコリーだよ。電子レンジで温めておひたしにするの」

 

「時間が無い時でも、電子レンジを使えばすぐだからね」

 

そう言った具合いに弁当班は、危なっかしい場面も多々あったが上手く機能していた

 

カレー班の2人はというと、トントンと軽快な音を立てて調理する帝とみのり

 

「2人共どんな感じだ?」

 

「バッチグーだ!」

 

「大丈夫。問題無いです」

 

「そうか。なら任せるよ」

 

 

 

 

 

「出来た!」

 

まなつ達がお弁当を作る途中で、帝のカレーが完成した

 

「先ずは試食。食ってみろ」

 

既によそってある器に目を向けたのだが

 

「「「カレー!!??!」」」

 

カレーなのだが中身が衝撃的だった

 

何しろ具材が丸ごと(・・・・・・)入っているのだ

 

ジャガイモ、人参、お肉、その他諸々

 

(何で丸ごと!?)

 

(さっきまでのトントンは何?トントンは!?)

 

「ちょっと帝!さっきまで一体何を切っていたんだ!?」

 

さんご、まなつ、あすかと信じられない反応する

 

「まなつ、カレーってこんな食べ物なの?」

 

「…」

 

まなつは無言で、ちゃんとした完成品の写真をローラに見せる

 

「はぁ!?何よコレ!?まるっきり違うじゃないの!?」

 

「まぁ見た目はアレかも知れないけど、美味しい筈だから食べてみなよ」

 

「「「「…い、頂きます」」」」

 

スプーンでカレーを一口食すと全員

 

((((ま、不味!!?))))

 

見た目通りの最低な味に驚く

 

(何このお米…ちゃんと炊いたのかな?少し固い…)

 

(野菜もシャリシャリしてて食感が……帝君、このお肉火通ってないよ…)

 

(この茶色のもベトベトネバネバ…さっきらから辛いのと甘いのが行ったり来たり…)

 

(噛めば噛む程味が変化し続ける…味の大戦争だ!!)

 

全員スプーンを片手に動かなくなり顔を真っ青にする

 

「やはりか…とても味見する勇気は無かった」

 

「しろよ!味見も調理する中で大事な工程だぞ!!」

 

そんなあすかから雷が落ちた

 

「そ、そうだ。みのりのカレーを食べよう…」

 

「どうぞ」

 

「さて、どんなモノか──」

 

あすかが寸胴の蓋を開けると

 

 

『ダズゲデ──』

 

 

パァンッ!と寸胴の蓋で閉じた

 

「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!!」

 

あまりの衝撃に耐え切れず、顔に手を当てて呻き声を出した

 

「よそいますね」

 

次々と帝も含めまなつ達のカレーをよそう

 

((マジですか…))

 

まなつとさんごも、みのりが作ったカレーを見て絶句する

 

お米はドロドロ、ルーは器に移してる筈なのに未だにブクブクと泡立ち、具材はカレーとは無縁の物ばかり

 

本来カレーとは茶色の筈。なのに全体的に紫色。しかも香り良い匂いで無く悪臭が漂う

 

そして止めと言わんばかりの

 

『ボエェェェ〜……』

 

謎の呻き声がカレーから聞こえて来る

 

「何よこの物体Xは!?」

 

ローラは今にも泣きそうな声で叫ぶ

 

「大丈夫食べてみて」

 

「い、嫌よ!」

 

「大丈夫」

 

みのりはスプーンで一口サイズ取り、ローラに近付ける

 

「愛情はたっぷりと入れたから」

 

そしてみのりは強引にローラの口へと突っ込んだ

 

その瞬間

 

「ローラ!?」

 

ローラは泡を吹きながら失神して倒れてしまった

 

「愛情はたっぷり入れた」

 

それを見ていたまなつとさんごは悟った。これは人が食べてはいけない物だと。

食べれば生命の危険だと

 

「た、多分人魚のローラには口に合わなかったんだよ。さ、食べよう」

 

帝も一口食すのだが

 

「ブゥゥゥ!!」

 

口にした瞬間吐き出した。体が防衛本能全開で反応して受け付けなかったのだ

 

横ではまなつとさんごも口を押さえていた。女の子もあり、流石に吐き出すのは堪えたらしい

 

「んじゃコリャァァァァ!!!」

 

帝もこれには激怒だった

 

「みのりん先輩一体どんな…ゲホッ、ゲホッ…せめて辛いか甘いかにしてくれよ!最悪不味いにしてくれ!コレ臭えんだよ!!」

 

「愛情はたっぷりと入れた」

 

「愛情って一体どんな愛情だよ!?ヤンデレか?ヤンデレな愛情をたっぷりと込めたのか!?」

 

(帝もあまり人の事言えない味だったけど…)

 

まなつもそうは言うが、確かに愛情とはかけ離れた味

 

要するに、この物体Xは見た目通りの最低最悪のカレーなのだ

 

「ごめんなさい…」

 

「うっ!」

 

みのりは俯いてしまった。完全に落ち込んでしまったのだ

 

帝も言い過ぎた自覚はあり、そんな姿を見て心が痛んでしまう

 

「〜〜ッ!」

 

罪の意識に囚われて、帝は無我夢中で口の中へと全て放り投げた

 

全て完食し切った

 

「ご馳走様。みのりん先輩、臭い以外は大丈夫なので次からは宜しく。飲み物買って来る」

 

帝が出て行くと、今度はあすかが口を開けて寸胴の中を見る

 

「味は個性的だがイケる。確かに愛情たっぷり入ってある。だけど、何処かで作り方間違ってるかもな。もう一回作り直さないか?」

 

どうやらあすかも完食していた

 

(流石あすか先輩!カッコいい!!)

「そうだ帝!」

 

まなつは帝の様子が気になり、教室のドアを開けると

 

「み、帝!?」

 

廊下で倒れてる帝を発見した

 

「だ、誰か、みのりに作り方教えてやってやれ」

 

「あ、あすか先輩、変な汗が!?」

 

あすかも我慢して食べたのだろう。顔中、大量の汗が吹き出していた

 

「だ、だったらさんごが……ってさんご!?」

 

「ふわぁ〜……」

 

「くるる〜ん……」

 

「さんごが召されちゃってるよ〜!?」

 

口にしたさんごは真っ白になって気絶していた。ちょっと口にしたくるるんも同様だった

 

 

 

 

 

「今度は出来ました」

 

今度はあすかの指導の元で作り上げた

 

因みに帝、さんご、ローラ、くるるんは復帰不可能な為寝かされている

 

「「おぉ〜!」」

 

まなつとあすかは歓喜の声を上げる

 

見た目はカレーそのもの。物体Xとまではならなかった

 

「「頂きます」」

 

香ばしい匂いと共に試食するのだが

 

「「不味!?」」

 

「え何で?」

 

(それはわたしも聞きたいですよ…)

 

(ちゃんと一緒に作って味見もしたのに…)

 

見た目は普通のカレー。なのに味は酷い。

みのりの料理下手は人知を域を超えてる。そう思うしかなかった

 

「よそうまでは良かったのに……まてよ」

 

そこであすかはある事に気付いた

 

「みのり、もう一度よそってくれ」

 

「ええ。先ずご飯、それからルーを掛ける前に…」

 

スリスリとご飯の上に何かを振り掛けている

 

「あぁ、隠し味にチーズを掛けているんだ。凝ってるな……て、いや何ソレ!?」

 

「何って、体に良いサプリメントに煮干し、プロテインのアレやコレやと…」

 

「「そ、それだ!!」」

 

今度は余計な隠し味など入れずに食べてみる

 

「「ふ、普通だ…!」」

 

普通のカレーに、こんなにまで感動して食べたのは初めてだった

 

お弁当作りもそろそろ終わりが見えた頃、ローラはイチゴを目にしてキラキラしていた

 

「赤くてキラキラ〜!コレは何?」

 

「それはデザートのイチゴ。お弁当の最後に食べるんだよ」

 

「えぇ〜!一番最初に食べたい!」

 

「ローラも好きな物は最初に食べる派なんだ!皆んなは?」

 

「最初に食べる。ブロッコリー」

 

「わたしも!タコさんウインナーが入ってたら真っ先に食べちゃう!」

 

「わたしはハンバーグ!あすか先輩と帝は?」

 

「わたしは最後に食べるかな」

 

「俺も最後に食べるな」

 

皆んなが先に食べるか、後に食べるかの話をしている隙に、ローラはイチゴを摘み食いしようとした時

 

 

「皆んな〜!調子はどう?」

 

 

桜川先生が様子を見に突然乱入した

 

「ば、バッチリで〜す!」

 

アクアポットに入れる暇が無かったので、まなつ達はローラを調理用の魚として隠した

 

桜川先生からは、粋の良い魚が飛び跳ねてる図にしか見えない

 

「なら良かった。頑張ってね」

 

ドアを閉めようとしたが突然また開けた

 

「何か手伝おうかしら?」

 

「だ、大丈夫です!」

 

「やる気全開です!」

 

「あ、ああそうだ!桜川先生、試作のカレーをどうぞ!」

 

「ありがとう。後で食べるね〜!」

 

桜川先生はカレーの器を持ってやっと出てってくれた

 

「帝、確かあのカレーってみのりの…」

 

「言うな。言うんじゃない」

 

帝が渡したのは、みのりが最初に作った物体X。咄嗟とはいえ渡した帝の罪は重い

 

その日夜、桜川先生は激しい腹痛に苛まれる事になった

 

 

 

 

 

////////

 

作り上げたお弁当は外で食べる事となった

 

「「「「「「頂きま〜す!」」」」」」

 

 

「ヤラネーダ!」

 

 

お弁当を広げて食べようとするタイミングで、ヤラネーダの声がした

 

急いで駆け付けた広場の方では、かき氷機型のヤラネーダが人々からやる気パワーを奪っていた

 

「う〜、よりによってこんなにお腹が空いてる時に〜」

 

「気合入れて行くぞ!」

 

 

 

「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」

 

「「「「レッツメイク!」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

 

「よく食べよく寝る!」

 

「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」」」

 

 

「エモーショナルスタート!」

 

『AUTO!』

 

 

 

「ヤラネーダ!」

 

ヤラネーダが吐き出す大量の氷をジャンプして避けたのだが、攻撃が当たった周辺は氷漬けにされてしまった

 

「ヤラネーダ!」

 

空中へ避けたサマーに狙いを定めて雪玉を乱射する

 

「お腹が…ぎゃふん!」

 

躱そうとするも、お弁当を食べずじまいなので力が入らず直撃した

 

「サマー!」

 

『ぺけ!』

 

サマーを助けようとシールドを張るも、コーラルもお腹が減って力が出ず、いつもより小さく脆いシールド

 

何発か受け切っただけでシールドにヒビが入る

 

「たぁぁ!!」

 

パパイアが背後から攻撃を仕掛けようとするも

 

「あれ…?」

 

「ヤラネーダ!」

 

「きゃあ!」

 

空腹で動きが鈍くなり、攻撃の体勢に入る前にヤラネーダのカウンターを食らった

 

「フラミンゴ俺達も……う゛ッ!?」

 

「帝……なっ!?待って…」

 

帝はお腹を抑え込み、フラミンゴはその場に蹲ってしまう

 

「何でこんなにも腹痛が…」

 

「もしかして、パパイアが作ったカレーが原因か?」

 

「ヤラネーダ!」

 

「ああ!!」

 

「フラミンゴ!うっぷ!」

 

帝とフラミンゴは、パパイアが作った物体Xのせいで腹痛を起こしていた。

しかもフラミンゴに至っては、帝が作った丸ごとカレーの反応も合わせての腹痛

 

フラミンゴは攻撃を受けてしまったが、帝はAUTOの能力もあって自動で回避したものの、自分の意思で動いていない為お腹に負担が掛かる

 

「このヤラネーダ強い!」

 

「違うよパパイア」

 

「わたし達が力を出せて無いんだ」

 

ここでようやく、自分達が空腹によるせいで力を出せてない事が分かった

 

ローラもその事に気付いた

 

「皆んな!わたしに作戦があるの!少しでいいからヤラネーダの動きを止めて!」

 

「でもどうやって?」

 

「それなら…」

 

フラミンゴが帝へと目を向ける

 

「待って俺?激しい腹痛で動きたくないんだが…」

 

しかし、サマーとフラミンゴに両腕を掴まれた

 

「素っ裸で抱きついて来たお返しだ!」

 

「ええぇぇ!?」

 

投げ飛ばされた帝に向かって、雪玉が乱射される

 

「待っ、うっぷ…オェェ……」

 

もはや自分の意思でどうにも出来ず、自動攻撃と防御でヤラネーダを惹きつける

 

その隙にサマー達は

 

「皆んな今よ!」

 

戦闘中にも関わらず、座ってお弁当を広げた

 

「作戦ってお弁当?」

 

「一口でも良いから食べるの!ほら早く!人間がゲロ人間になる前に!」

 

帝には申し訳なく思いながらも手を合わせる事にした

 

「「「「頂きま〜す」」」」

 

「それじゃあ、大好きなハンバーグ!」

 

「タコさんウインナー可愛い!」

 

「美味しくて身体に良いなんて野菜って凄い!」

 

「……わたしは好きなものは最後だ」

 

それぞれ好物を食して力を付けた。フラミンゴに至っては、好きなものを取って置き代わりのものを食べた

 

「またお腹が空かない内に倒しちゃおう!」

 

「「「オーライ!」」」

 

「お前らだけズルいぞ!!」

 

「はい人間はこっちよ」

 

帝はローラからビニール袋を貰い、とうとう吐いてしまった

 

「ヤラネーダ!」

 

『ぺけ!』

 

先程とは打って変わり、コーラルのシールドもいつもの調子に戻った

 

「「「はぁぁ!!」」」

 

サマー、パパイア、フラミンゴの同時攻撃でヤラネーダを倒した

 

 

「マーメイドアクアポット!サーチ!」

 

「オレンジ!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

「今よ!」

 

 

 

「ハートルージュロッド!」

 

「プリキュア!ぶっとびフラミンゴスマッシュ!」

 

 

「ビクトリー!」

 

 

 

こうしてやる気パワーも奪い返して終わった

 

 

 

 

 

////////

 

気を取り直して、お弁当を食べる事に

 

「美味しい!やっぱ我慢した甲斐があったよ」

 

「わたしも好きなもの、最後のお楽しみにしようかなぁ?」

 

「じゃあ、わたしは最初に食べるよ」

 

「でもきっと、最初でも最後でも作ってくれた人の優しい気持ちを感じた時が一番美味しいよね!」

 

みのりも食べようとしたが、箸を止めてしまう

 

何故なら

 

「くるるん弁当食べ難い…」

 

「何で?」

 

「だって、くるるんが…」

 

みのりが前へ指差すとそこには、つぶらな瞳でこっち見るくるるんが居た

 

「くるるんがそこで見てるのに、くるるんを食べるなんて…」

 

「確かに…」

 

「気不味い…」

 

本人の目の前で、本人のキャラ弁を食べるのに躊躇する

 

だがまなつだけは違った

 

「でも、くるるんのお目々美味しかったよ。ほら見て、モグモグ……ん〜美味しい!」

 

「サイコパス!」

 

「え何で?だって美味しいんだよ!くるるんのお目々〜!」

 

「俺、カレーから先に食べよ…」

 

「わたしも…」

 

「うん…」

 

「帝に賛成だな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、後味の悪い形で終わった最初のトロピカる部だった




今回の小説では、主人公は料理下手にさせました!

次回も料理ネタです。本当はカレーネタも考えていましたが、今回の話に混ぜてみました

ここまでの拝読ありがとうございました!


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トロピカる部の大喜利劇場!

調理ネタはボツにしようか迷ってるから無かった事にした

今回の話を話数にカウントしようかと悩んだけど、メタい事も言うから敢えてしなかった。
何気に一番楽しく書けた話

内容は、某番組を参考にしております。
メタ発言など解禁しております
座布団は全員1枚からのスタートです


素人が頑張った大喜利どうぞ


「さぁ突然始まりました大喜利のコーナー。司会の滝沢あすかだ。今回の大喜利、座布団を最も多く獲得した人に、それに相応しい景品を差し上げるそうだ。では、個性の強い面々の挨拶です」

 

座布団に座るメンバーに挨拶を促す

 

「最近、さんごにしか相手にされない。皇 帝です」

 

「そんな事無いよ帝君!皆んな恥ずかしがってるだけだから!あ、涼村さんごです」

 

「何だかよく分からないけど、今一番大事な事を頑張ります!夏海まなつです!」

 

「大喜利、このメンバーで大丈夫なの?一之瀬みのりです」

 

メインのメンバーは挨拶し終わったのだが、座布団運びの姿が見えない

 

「ローラ!」

 

あすかが大声で叫ぶと、不服そうにローラが袖から出て来た

 

「何でこのわたしが下々の為に座布団運ばなきゃ行けないのよ…。未来の女王のローラ・アポロドロース・ヒュギーヌス・ラメールよ」

 

「じゃあ皆んな頑張れよ」

 

 

 

 

 

「第1問目、わたし達は世界を救うプリキュア 。困ってる人がいれば助けるのだが、時にそのプリキュア にだって困ってしまう事もある。そこで困ってる皆んなに対して、わたしが『どうしたの?』と尋ねるからそれに返してくれ」

 

即座にさんごが挙手した

 

「じゃあさんご」

 

「はい。え〜ん、え〜ん」

 

「どうしたの?」

 

「最近帝君が××××××××」

 

「ローラ、さんごの座布団持って行って」

 

「えぇ何でですか!?」

 

まさかの記念すべき1回目で座布団を没収された

 

「今回の大喜利はメタ発言は許容範囲とするけど、今の様な発言は禁止とする。特にわたしが司会するなら尚更だ」

 

当たり前と言えば当たり前の理由

 

開始早々にさんごは地べたに座る事になった

 

今度はまなつが手を挙げた

 

「まなつ」

 

「う〜ん…」

 

「どうしたの?」

 

「お腹空いた!」

 

あすかは、大喜利の意味を理解していないまなつに頭を抱える

 

「まなつ、大喜利はそういう意味じゃない…」

 

「大喜利と言うものはこんな感じだ」

 

「なら帝言えるな?」

 

自身満々に言う帝を、司会者が帝を指名した

 

「どうしてこうなった…」

 

「どうしたの?」

 

「俺と言う主人公、実はまだちゃんと設定が完成してないんだ。だから、この先の物語で変な後付け設定が出来てしまう事に恐怖してるんだ」

 

「え、あ、そうなの!?」

 

「はい」

 

観客席が騒めき始めた。勿論その場に居るあすか達全員もだ

 

「はいこれ。作者のメモ書き」

 

裏から、ローラが一枚のメモ書きをあすかに渡した

 

「本当だ…所々白紙の部分がある」

 

「この小説が崩壊しない様に祈るか」

 

「作者に圧を掛ける意味も込めて2枚あげて」

 

「や、やった〜?」

 

帝自身もこれは喜んで良いのか分からないといったところ

 

「そういう事か!はいはい!」

 

元気良く手を挙げるまなつを当てる

 

「どうしたの?」

 

「この前のお弁当作りに習ってローラのキャラ弁を作ったの。それをローラに食べさせようとしたのだけど怒られちゃった」

 

「そんなの当たり前だ」

 

「そう?わたしは美味しければ食べるけど」

 

「狂気2人組はもうそっとしておこう」

 

まなつもそうだが、自分自身を食べると言ったローラにも狂気を感じた

 

「はい」

 

今まで黙っていたみのりが此処でようやく手を挙げた

 

「あの、早く警察に通報して下さい」

 

「どうしたの?」

 

「皇 帝という男が一線を越える前に」

 

「ぷっ…!」

 

みのりの返しにローラは陰ながら吹いていた

 

「一線なんて越えませんよ!今は(・・)!」

 

「良からぬ事を聞いたので1枚持っていって」

 

「ざまぁ!」

 

未だにニヤつくローラは帝の座布団をぶんどった

 

「さて…今度は頼むぞ」

 

物凄い視線を向けながら手を挙げるさんごを当てる

 

「辛いなぁ」

 

「どうしたの?」

 

「わたし、トロピカル〜ジュプリキュア の中で沢山の人達から可愛いって言われてるの。人気者って辛いなぁって思って」

 

あすかが何か言おうと口を開けた時

 

「フンッ!!」

 

ローラが座布団でさんごの頭をしばき倒した

 

「うぅ…」

 

「自業自得だ」

 

そう言って次の問題へと移る

 

 

 

 

 

「第2問、今年でプリキュア は18年目にして、トロプリは16代目。世の中には沢山のプリキュア が居ます。勿論今後も新しく出て来るプリキュア も居ます。なので、『こんなプリキュア が居たら嫌だ!』というのをどんなものか考えて下さい」

 

早速手を挙げたのはみのり

 

「みのり。1問目と打って変わって積極的だな」

 

そんな張り切りのみのりを指名する

 

「感動的な和解をしたと思ったら、次の話でまたすぐ喧嘩する」

 

「喧嘩するの早いな。一体何があったんだ…」

 

「相手の話も碌に聞かず、自分の意見を言い続けては挙句の果てに、剣で語れと言っても何も感じないと言い捨てる。これを1クール以上続けてる」

 

「おっと、お隣さんの悪口はそこまでだ」

 

これ以上は誰かに怒られかねない。しかし、何とか座布団は取られずに済んだ

 

「わたしもやりたいわ!」

 

そこへ、ローラが袖が手を挙げて出て来た

 

「いいけど座布団はあげれないぞ」

 

「いいのよ。わたしも言いたいだけだから」

 

「じゃあローラ」

 

ローラはさんごに向けて言い放った

 

「自分の事を一番可愛いって思ってる子ね」

 

「むぅ…はい!」

 

それに対抗してさんごが手を挙げる。結果は分かってはいるが指名する

 

「自分が女王様だからって皆んなを振り回す人!」

 

「それの何がいけないのよ!」

 

「それはわたしも同じだよ!」

 

「おいもう止めろ」

 

何とか2人を引き剥がして定位置に戻らす

 

「気を取り直して……まなつ」

 

「守るべき人々を苦しめる人!」

 

「うん、シンプル且つ良い答えだ。ローラ、まなつに1枚あげて」

 

ここで、まなつ以外の3人が同時に手を挙げる

 

「2問目に入って一度も当ててない帝」

 

「はい。戦闘中にも関わらずお弁当を広げる人達」

 

「まぁ…そうだな、うん。座布団1枚あげるからそろそろ勘弁を」

 

流石に何も言えなくなり、謝罪の意で座布団をあげた

 

続けて残りの2人も手を挙げるが、みのりが少し速かった為優先された

 

「仲間の心配を無視して無理する人」

 

「時には仲間を頼る事も大事だな。1枚あげて」

 

遅れてさんご

 

「ずっと地べたに座ってるプリキュア 」

 

「…しょうがないな」

 

やっと脚の痛さに解放されると期待したが

 

「早目に切り上げて次に行くか!」

 

座布団は貰えずだった

 

 

 

 

 

「では第3問。プリキュア には、毎シリーズマスコット的な存在として妖精が居る。選べれるとしたら、どんな妖精が良いか考えてくれ」

 

「「「「はい!」」」」

 

今度は全員一斉に手を挙げた。あすかもこれには悩んだ

 

「だったら、まなつ」

 

やり方を知って調子の良いまなつを指名した

 

「トロピカってる妖精!」

 

「トロピカってるね。まなつらしいと言えばだな」

 

次に指名したのはさんご

 

「自分の悩みを打ち明けれるくらい仲の良い妖精」

 

「前作のヒーリングっど♥プリキュア でも、敵に対して悩み、苦しんでいた時に大切なパートナーが導いてくれたものな。そうだな…」

 

この雰囲気。座布団を貰える一歩手前

 

「面白そうだから、このままもう少し置いておこう」

 

「そんな〜!今日のあすか先輩厳しい…」

 

次に答えるのはみのり

 

「元の姿が人間の妖精」

 

「中々面白い解答だ。確かにどの妖精も、何かしら動物から人間態になっているからな。ローラ1枚あげて」

 

みのりが終わって次へ

 

「「はい!」」

 

同時に帝とさんごが手を挙げた

 

「さんごからで」

 

「帝君からでいいよ!」

 

「いやさんご」

 

「帝君!」

 

急にお互いに譲り合いが始まった。あすかもどうしようかと悩んでると、横で手を挙げてるまなつを指名した

 

「妖精の姿でも一緒に戦ってくれる!」

 

「それが前作なんだよな」

 

まなつが終えると、譲り合いが終わったのか帝だけが手を挙げていた

 

「はい帝」

 

「自分と趣味趣向が合う妖精!」

 

「他の人ならともかく、帝と同じ妖精が居たら嫌だな。1枚持っていけ」

 

「理不尽過ぎない?」

 

今度こそリベンジでさんごが勢い良く手を挙げる

 

「さんご、良い解答なら座布団あげるよ」

 

「頑張ります。母性に溢れる妖精!」

 

「う〜ん…」

 

微妙な解答に座布団あげようか迷っていた。

普通ならあげては無いが

 

「まぁおまけって所だな。ローラ1枚あげて」

 

「やっと脚の痛みから解放された〜…」

 

次に答えるのはみのり

 

「結構喋るな」

 

「ギャップのある妖精」

 

「変わり映えするのは見ていて飽きないよな」

 

それから、綺麗に手を挙げるまなつを当てる

 

「結局どんな相手でも、一緒に居てトロピカってればそれで満足です!」

 

「だな。結局はそうなるんだよな。まなつに1枚」

 

まなつの綺麗な答えで3問目は終了した

 

 

 

 

 

////////

 

「じゃあ座布団の枚数を確認するか」

 

ローラは袖から1人ずつ枚数を数える

 

「え〜と、まなつとみのりが3枚で一番多いわ」

 

「まなつは最初から最後まで綺麗に答えてたからな。みのりも最後の追い上げは良かった。予定外に2人がトップをとってしまったが、ちゃんと商品は用意してあるぞ」

 

ローラが2人に商品を持って来る

 

「ま、それなりに楽しめたわ。有り難く頂くのよ」

 

2人が貰った物は、グランオーシャンの名菓の詰め合わせだった

 

「これ、美味しかったからまた食べたかったんだよね〜!」

 

「量も多いから皆んなで食べようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トロピカる部初めての大喜利は、まさかのトップ2人で幕を閉じる




前半、大喜利らしい答えを書けなかったのが残念。

最後までさんごには0枚で突き通すつもりだったけど、可哀想だから慈悲で与えてやったわ

主人公が未だに設定が練れて無いのは事実

予定分と気分次第ではそれなりに大喜利を書いてくつもりです。後は受けが良かったらそれ以上に書きたいなと思っております。
人数の都合上、座布団の上下も少なかった。次に活かしてみせます

ではここまでの拝読ありがとうございました


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第18話 エキストラが主役より目立つのはNG!

雑いな〜と感じる

リアルがマジで忙しく感想メールに返信出来ずにいる

ではスタート!


今度の休みの日、あおぞら中学校で映画の撮影があるとの事。

そして、エキストラとして学校の生徒が何名が出られる

 

それを聞いたまなつの行動は早かった

 

しかし

 

「えぇ〜出ましょうよ!みのりん先輩あすか先輩!」

 

先輩達2人は反対だった

 

「人前で演技とかわたしには無理だ」

 

「目立つのは嫌」

 

「プリキュア になったら『ビクトリー!』とか叫ぶ人が、今更目立つのが嫌って」

 

「皆んなで出られたら最っ高に楽しいけどな〜。ねっ?」

 

帝とさんごに同意を求めようとする

 

「エキストラって言っても疲れる時は疲れるしな…」

 

「帝は味方だと思ってたのに!?」

 

「わたしは良いかも。映画の現場に、スタッフさん達にちょっと興味があって……一度見てみたいなって」

 

話し合ってると、校門近くで誰かがいる事にまなつが気付いた

 

「こんにちは〜!あおぞら中学に何か用?」

 

見ず知らずの人の目の前まで近付き挨拶をした

 

怪しげな人物は慌てふためき立ち去ろうとしたが、電灯にぶつかって倒れてしまった

 

その拍子で顔を隠していた帽子などが取れた

 

「あれ?この人…」

 

 

 

 

 

////////

 

Pretty Holicに一度保護し、その人は女優の「山辺ゆな」という人物だった

 

更に付け加えると、今度学校で行う役者のひとりなのだ

 

「それにしても何で今何だ?ロケってまだ先だったよな?」

 

「あの、私いつもこんな感じで…癒し系とかって皆さん言って下さって。そういう感じのお仕事を貰っていたんですけど、今度の映画で演じるのは全然違う役で」

 

「どんな役なの?」

 

「例えば其方の、あすかさんなら似合いそうな。主演の子を苛める悪役のお嬢様なんです」

 

彼女の言う通り、雰囲気的にそんな役が出来る様には見えない

 

「ローラならピッタリな役だよね?」

 

「確かにな」

 

(2人共覚えてなさいよ〜!)

 

帝とあすかの小言がローラに聞こえており、怒りに満ち溢れていた

 

「あ、お母さん!」

 

そんな話をしていると、みゆきが着ぐるみの頭を抱えて2階へと上がって来た

 

「お母さんそれ何?」

 

全員着ぐるみの頭に注目する。

無理も無い、パンダにメイクがされてるのだから

 

「今度、シンデレラをテーマにした新しいコスメが出るの。そのキャンペーン用」

 

「そうなんだ!可愛い!」

 

「てゆうか、これがシンデレラ?」

 

「メイクは王子様の為じゃないってコンセプトで…あら?」

 

そんな時、みゆきはゆなに気付いた

 

「そっか、映画のロケ場所の下見に来たのね」

 

「え?」

 

「初めましてゆなさん。私、今度の映画でゆなさんのメイクを担当する涼村みゆきです」

 

なんと、みゆきはゆなの事を既に知っており、更にメイク担当との事

 

さんごやゆな本人もそれは知らなかった

 

「お母さんが時々、そういうお仕事をしてるのは知ってたけど…」

 

今回のお仕事は昔馴染みの監督な上、ロケ場所もこの街との事もあり担当を任されたのだ

 

「それにしても困ったわね。ゆなさんがそんなに悩んでたなんて」

 

「皆んなが応援してくれるイメージと違って……ガッカリされたら怖いし、もうどうしたら良いのか…」

 

「そういう時こそメイクだよ!」

 

まなつなお決まり台詞を言ったのだ

 

「あの、実は知り合いのメイクさんにお願いして」

 

スマホの写真を皆に見せる

 

「色々と試してるんですけど…」

 

既にメイクして役柄に馴染もうとしていたが、それも全て失敗に終わっていたらしい

 

「このままじゃ、スタッフや共演者の皆さんに迷惑掛けちゃうし、ならいっそ…」

 

「わたし達が手伝うよ!やる気があるならきっと出来る!トロピカる部でゆなちゃんの応援しよ?」

 

それに反対する事無かった

 

こうして、トロピカる部による特訓の日々が始まった

 

 

「先ずはあすか先生にガンの付け方を教わります!」

 

「厳しいので目付きの練習な。始め!」

 

 

 

「特徴的な悪役が出てる本を用意したわり映像もあるから後で観て」

 

 

 

「体力も必要だよ!」

 

 

 

「悪役の魅力は高笑いだと思うんです!」

 

「やってみます」

 

 

 

「こうなったら最後の手段。帝、いつもの様に王様になっちゃって!」

 

「そう思ってさっきから準備してるけど…」

 

「どうしたの?」

 

「今日は何か調子出ないや」

 

 

 

毎日、アレやこれやの手段を用いてやるも上手くいかない

 

「あら、今日も来てたの?熱心ね」

 

「すみません。あ、もしかして上使いますか?」

 

「ううん。今日は一日外で頑張らないとだから。この陽気で、ずっとコレ着てサンプルを配るのとか軽い悪夢だけど」

 

みゆきは、先日持っていた着ぐるみを着てサンプル配りをするそうだ

 

「それ、わたしがやっていい?」

 

そう名乗り出たのはさんごだった

 

みゆきはそれを了承して、皆んなで手伝ってサンプル配りに励むのであった

 

「シンデレラをテーマにした、新しいコスメが発売されます!この子は、イメージキャラクターのデレラちゃんです!」

 

「うっふっふ。貴女達を、エクセレントなシンデレラにしても良くってよ」

 

積極的に頑張るさんごを見てゆなは不思議に思っていた

 

「さんごさん、おっとりっていうか、私に似た雰囲気を感じていたので」

 

「確かに、ちょっと前までは少し受け身で、皆んなに嫌われない様に自分の好みを言うのに躊躇う子だったわ。でも最近変わったの。多分、部活のお友達と出会ったからね」

 

「そんな事無いよ。さんごは変わったんじゃ無くて、もっとトロピカれる様になっただけです」

 

サンプルを保持するまなつと入れ違いに、あすかやみのりも言葉を紡ぎながら入れ違う

 

「いつもまなつは、やりたい事やなりたいものに向かってまっしぐらで、それにわたし達も引っ張られいるんです」

 

「気付いたら、釣られて一歩踏み出してる。さんごもきっとそう」

 

「さんごは元々ちゃんとしてましたよ。只、きっかけとなるモノが無かっただけで、それがまなつだったっていうだけですよ」

 

「一歩…」

 

ゆなはそれを聞いて一歩を踏み出そうとしていた

 

その時

 

「あ、さんごさん!?」

 

この晴れ晴れとした日差し、そして着ぐるみを着ていた事の暑さでさんごが倒れてしまった

 

 

 

 

 

「ぷはっ!生き返った〜!」

 

「頑張り過ぎたぞ」

 

急いで水分補給と、熱冷ましシートで上がった体温を元に戻してゆく

 

「もう少し休憩したら続きを」

 

「目の前で倒れたんだ。さんごは暫く休憩にするんだ。分かった?」

 

少し凹んでしまったが、それと同時にある事を話し出した

 

「久し振りにシンデレラのお話読み返したの。そしたら、昔は気にならなかった事が気になって。あのお話で、魔法使いのお婆さんからシンデレラが受け取った一番の物って何だろって」

 

「綺麗なドレスでしょ?」

 

「ガラスの靴」

 

「カボチャの馬車か?」

 

「王子様とか?」

 

「小っちゃい頃はわたしもそう思ってた。でも今は、シンデレラが受け取った一番のモノって、舞踏会に出て自分の新しい運命を切り開く、その為の勇気だったんじゃないかってそう思ったんだ」

 

さんごの言葉で何か心に決めたのか、ゆなは着ぐるみを持って言ったのだ

 

「私にやらせて!」

 

着ぐるみを被り、店の外へ一歩踏み出した

 

(私がどう見えるかとか、似合うとか、似合わないとか、嫌われるかもとか、そんなのどうでも良い。一歩踏み出す)

 

 

 

 

 

////////

 

それからロケ当日

 

メイク室では、ゆなのメイクが終わる頃だった

 

「大丈夫。深呼吸して」

 

「やっぱり凄く緊張してるみたいだね」

 

「私に出来るのは、皆んながなりたい自分になる、ほんのちょっとのお手伝いだけ。ガラスの靴は私達があげる。でも、踊るのは貴女よシンデレラ」

 

 

 

 

 

いざ現場へと赴いたのだが、そこではヌメリーと撮影用のカメラを媒体にしたヤラネーダが暴れていた

 

「ヤラネーダ!こんな所に出て来るなんて!」

 

「皆んな、行くわよ!」

 

 

 

「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」

 

「「「「レッツメイク!」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

 

「エキストラだよ!」

 

「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」」」

 

 

「エモーショナルスタート!」

 

『GENIUS!』

 

 

 

「現れたわねプリキュア とオマケ」

 

「オマケ言うな!」

 

「でもお生憎、やる気パワーはみ〜んな貰ったから」

 

「ヤラネーダ!」

 

『ぺけ!』

 

カメラのレンズから、光りを放射して来たがコーラルが前に出てそれを防御する

 

「ハァ!」

 

「やぁ!」

 

攻撃が止むのと同時にフラミンゴとサマーが飛び出した

 

一撃、ニ撃と攻撃を加えるもガードされる

 

そしてガードした両手が開いた。

それは照明だった

 

「「あっ!」」

 

また同じ攻撃が来る。避け切れないと思った

 

「その攻撃捻じ曲げてやる!」

 

光が放射された時、帝がそれに合わせて腕を下へと振り下げると、ヤラネーダの攻撃も下方向へと攻撃の軌道が変わった

 

「皆んな集まって!」

 

『ぺけ!』

 

パパイアが皆んなを一箇所に集めて、コーラルが防御しやすい状態にした

 

「うっ!はっ!」

 

ヤラネーダの攻撃を全て防ぐコーラルだが、それだけじゃ意味が無い

 

「あの攻撃に勝つ方法は無いのかな?」

 

「俺のGENIUSで強引に突破するか?」

 

「それだとコーラルの負担が大きくなる」

 

「……」

 

パパイアは考える。そして、ある事を考えついた

 

「帝、確かGENIUSって法則を変えたり無視したり出来るんだよね?さっきの攻撃を曲げたのも何かしたの?」

 

「え、ああ、光の屈折を変えたんだよ。それがどうかしたのか?」

 

パパイアは帝達に作戦を伝えた

 

「これで行くよ」

 

「「「オーライ!」」」

 

「コーラル!少しの間でいい。1人で防げるか?」

 

「お願い!すぐに戻るから!」

 

「分かった!」

 

「任せたよ!」

 

その場をコーラルに任せて、帝達は何処かへと飛び去って行った

 

「あらあら、皆んな逃げ出しちゃったの?勝負合ったかしら?」

 

「違う!皆んな諦めたりなんかしない!この映画は、ゆなちゃんや皆んなが一生懸命準備して来たやる気の結晶!絶対に邪魔させないんだから!!」

 

しかし、連続する攻撃にシールドが耐え切れず破壊され、その衝撃で木に叩き付けられた

 

「今よ」

 

「コーラル!お待たせ!」

 

止めをさされる寸前、帝達がギリギリで戻って来た。

そして、4人の手には大きな鏡を持っていた

 

それを繋ぎ合わせてヤラネーダに向ける

 

普通なら鏡程度の強度など、一瞬で粉々にさらるが、ヤラネーダの光を反射して自分自身がダメージを受けていた

 

「帝のGENIUSの光の屈折を見て思い付いたの。ガラスは光を反射する」

 

「それを広範囲且つ効率的に相手に跳ね返すとなると、この方法が一番だとパパイアがね!」

 

「ローラ!」

 

「オーライ!」

 

 

「マーメイドアクアポット!サーチ!」

 

「白!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

「今だよコーラル!」

 

 

 

「ハートルージュロッド!」

 

「プリキュア!もこもこコーラルディフュージョン!」

 

 

「ビクトリー!」

 

 

 

 

 

////////

 

後日、撮影されたゆなの役柄は話題を呼んでいた

 

「凄かったねゆなちゃん!わたし達もちょっと映ってた!」

 

「ねえお母さん、メイクって素敵だね!」

 

「そうでしょう」

 

「俺もエキストラじゃなくて演技してみたいな。俺なら主演男優賞もの間違いなしだな」

 

「帝が?無理無理、普段わたしらにしてるアレを何とかしないとね。そもそも帝に騙されるわたしじゃないし」

 

「何を〜!」

 

あすかがそう挑発的にする

 

「確かに」

 

「一理ある」

 

「帝君、嘘つくの下手だし」

 

「だったら見ておけ!いつか、あっと驚く様な演技をしてやるからな!!」

 

 

 

 

 

////////

 

それと同時刻では、あとまわしの魔女の召使い達が一室で集まっていた

 

「また失敗しましたか」

 

「言い訳するつもりは無いけどね。プリキュア は前より確実に強くなって来てるわよね?

 

「これじゃやってらんな〜い!」

 

「確かにやってらんねぇよな」

 

「私としては、もっと強くなって激しく攻め立てて欲しいわ〜!じゃないと興奮しないもの♡」

 

バトラーに言われてぐぅの音も出ないが、それ以上に仕方ないといった感じだった

 

嬴政とアリスもその場に居るが、話には参加しようとはせず黙っている

 

「心配は無用です。魔女様もこの事態は見越して御いでて、新たにコレを授けて下さいました」

 

バトラーが懐から取り出したのは、今までのヤラネーダの元とは色が異なる緑色の物

 

「コレを使えば、今までのヤラネーダより強力なモンスターを生み出す事が出来ます。その名も──」

 

「あ、分かったわ!『ゼンゼンヤラネーダ』とかじゃないかしら?」

 

「オッカマーさん、正解ですけど見せ場を取らないで下さい」

 

「良いじゃないの。それよりも、これであのプリキュア の可愛い声が沢山聴けると思うと……う〜ん!想像しただけでゾクゾクしちゃうわ!!」

 

その様子に一同引いたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして嬴政は密かに次の作戦を考えていた




前作と前々作に書いたスタプリとヒープリコラボさせようかと思ってるけど、登場人物が多過ぎるから書き方に困ってる

次回はオリストです

ここまでの拝読ありがとうございました


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第19話 先ずはプリキュア のやる気を混ぜるところから始めます

オリストやると言いましたが、都合に次回に回す事にしました

GWで家の手伝いしてるから結構遅れました

ではスタート


「今日も太陽が眩しい!絶好の部活日和、今日は何しようか?」

 

気持ち良く背伸びして、太陽の光りを浴びて今日のトロピカる部の活動を皆んなに聞くとするまなつだが

 

「ごめん、今日は帰るね」

 

「もうすぐテストだから勉強しないと」

 

「えぇ〜!?」

 

テストの時期が迫りつつあると言い、帝達はそそくさ帰ろうとする

 

「まなつは勉強しないで大丈夫なの?」

 

「大丈夫……じゃないよ。コレ、今日返って来たテスト」

 

落胆して英語のテスト用紙を見せ付ける。

点数は9点

 

「これって10点満点?」

 

「ううん、100点満点だよ。勉強ちょっと苦手で…」

 

「ちょっとの域じゃないだろ」

 

「大丈夫なのか?落第点取ると部活禁止になるけど?」

 

「え、禁止!?」

 

部活禁止に反応してギクリと肩を震わす

 

それもしょうがない事。今のまなつに学校で一番楽しみにしてるのはトロピカる部での活動。

別に他に楽しい事、好きな事は沢山あるが部活禁止となってしまったらその気持ちも半減してしまう

 

「わたし、テスト勉強しなきゃいけないじゃん…」

 

ここでようやく、自分が追い込まれてる事に改めて気付いたのであった

 

 

 

 

 

「さんご、この部位は何て呼ぶ?」

 

「え〜と、接眼レンズ」

 

「正解。それなら、レボルバーは何処になるか?」

 

「ここ」

 

まなつが自宅で猛勉強する中、さんごは帝の部屋でテスト勉強をしていた

 

「顕微鏡はある程度覚えたな。しかし覚えるだけじゃ駄目だぞ。それの使い方も覚えてないと後々面倒になるからな」

 

「と言うと?」

 

「『この様に使うにはどれを使えば良いか?』とか、文章問題で虫食いもあるから油断しない様に」

 

「うん!」

 

さんごの勉強は帝が見ている様だ。

別にさんごは頼らなければならない程学力は低くは無い。寧ろ良く出来てる方だが、テスト勉強の時だけ帝を頼っているのだ

 

その理由は簡単、帝はそれなりに頭が良いのだ

 

単純な頭が良いなら付き合う事も無いが、丁寧に注意すべき点を教えてくれたりと無理に詰め込まない勉強方法で相手をしてくれる

 

「次は観察や実験のレポートの書き方について教える」

 

「それにしても帝君って凄いね。今のところ、みのりん先輩同じて学年トップなんだから」

 

「当たり前だ。俺は王だがら一番が当然で普通なんだ」

 

「帝君にとって普通でも、わたしにとっては凄いよ」

 

「…さんごも充分凄いと思うがな」

 

そんな雑談を交えつつも手を動かして勉強に励む2人であった

 

 

 

 

 

////////

 

次の日

 

「テスト勉強のやり方教えて〜!皆んなどうやってるの?」

 

家で上手く勉強出来なかったまなつが、泣く泣くで全員に勉強方法について知りたがっていた

 

「わたし、テスト勉強した事無い」

 

「本当?じゃ、わたしもやらなくていっか!」

 

「まなつ、みのりん先輩は優秀だから真似しちゃ駄目だよ」

 

みのりは頭が良過ぎる故、みのりのやり方に悪影響しか生まれない

 

「習った事はその日の内に覚えるの。そうすれば、わざわざテスト前に勉強しなくて大丈夫だよ」

 

「いや、中々出来ないからそれ」

 

「帝君なら良い勉強方法があるんじゃないのかな?」

 

「そういえばそうだったな。何で普段から馬鹿みたいな事しかしないのに、勉強はこんなにも出来るんだ?」

 

「あすか先輩傷付きましたよ…」

 

さんごにもバッチリ教えれる帝なら良い勉強方法があると思ったのだが、そうも上手くは行かない

 

「今からか…ちょっとキツイな。俺の場合、その日の内で復習した後、週末でまとめて勉強する方法だからな」

 

帝の場合、地道にコツコツとやるタイプだった。

しかしテストはもうすぐなのだ。そんな悠長に勉強はしてられない

 

「人間とまではいかないけど、毎日するのが一番だと思うわ」

 

「人魚はいいな〜テストが無くて」

 

「人魚にだってテストはあるわよ。女王様になるには沢山学ばないと!聞いてる?」

 

「はぁ、皆んなの話を聞いてひとつだけ分かった事がある。テスト勉強はトロピカらない」

 

最終的にテスト勉強そのものを否定してしまった。

本人にやる気はある様だが、勉強自体嫌いな様だ

 

「先ずはテスト範囲を確認しましょう」

 

「ここから〜……ここまで」

 

「こんなにあるの〜?」

 

「テスト範囲知らなかったんだ…」

 

「先が思いやれるな」

 

「総出て教えるのしかないか」

 

「でもやらなきゃ!やらないとトロピカる部が〜〜うわぁ!?」

 

やる気を出し始めたところで、水を差す様に大きな衝撃が襲った

 

外へ出て確認するとヤラネーダが暴れていたのだ

 

 

 

 

 

「チョンギーレ様、プリキュア が来ました」

 

「来たな。今日はいつもの様にはいかないぞ。紹介するぜ!『ゼンゼンヤラネーダ』だ!」

 

広場で待っていたのはチョンギーレとアリスだった

 

そして教科書を媒体とした、新たなヤラネーダと共に待ち受けていた

 

「うわぁ!?アレって教科書!?」

 

「ちょっと!教科書だからってビビってない?」

 

「全然!そんな事ないって!」

 

 

 

「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」

 

「「「「レッツメイク!」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

 

「笑顔は100点!」

 

「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」」」

 

 

「エモーショナルスタート!」

 

『GENIUS!』

 

 

 

「良いかサマー、この単語でジーニアスと読むんだ。大まかな意味は天才だ」

 

「分かった……じゃなくて今はヤラネーダだよ!テスト勉強しなきゃいけないんだからさっさと終わらせるよ!」

 

前に出たのはサマーとフラミンゴの2人。ガムシャラに連続攻撃を繰り出して、一気に終わらせるつもりだ

 

「行くぞコーラル!」

 

「うん!

 

「待って2人共、何か様子がおかしい」

 

パパイアの言う様に、2人の連続攻撃を受けて尚微動だにせず効いてない様子

 

「「うわっ!?」」

 

そんな2人に鬱陶しく思ったか、ゼンゼンヤラネーダが両腕で弾いただけで簡単に攻撃を止められた

 

「ヤラネーダ!」

 

「「「「キャアァァ!!」」」」

 

「皆んな!」

 

ゼンゼンヤラネーダの咆哮だけで、サマー達プリキュア を吹き飛ばしてしまった。

帝は何とかステッキの力で飛ばされずに済んだが、いつも以上に力を増してる事を実感した

 

「スゲェ!」

 

「予想より遥かに高い戦闘力のあるヤラネーダですね。正にスゲェェェェ!!ですね」

 

使役してるチョンギーレやアリスすらも、ゼンゼンヤラネーダに目を見張るものを感じた

 

「何のこれしき!」

 

「行け!」

 

「おい無闇に攻撃するもんじゃ──」

 

帝の話も聞かずにサマーは、ハートルージュロッドを構える

 

 

 

「ハートルージュロッド!」

 

「プリキュア!おてんとサマーストライク!」

 

 

 

いつもの様にビクトリーポーズを決めて浄化完了……と思いきや

 

「え?」

 

サマーの浄化技が弾かれて通用しなかった

 

「嘘何で!?」

 

圧倒的にゼンゼンヤラネーダの方が強いという訳だ。

この様子だと、他のプリキュア の浄化技も通用しない

 

「ヤラネーダ!」

 

「うわぁぁ!!」

 

ガードをしたとはいえ、ゼンゼンヤラネーダの攻撃をまともに食らってしまった

 

そして、攻撃を受けて地面を転がる弾みでキャリーからトロピカルパクトが転げ落ちて、更にはハートクルリングが外れて変身が解除されてしまった

 

「ヤラネーダ!」

 

倒れて動けない状態のまなつに、ゼンゼンヤラネーダはまなつのやる気パワーを奪い始めた

 

「う、うぅ…」

 

「「「まなつ!」」」

 

「まなつ大丈夫か?」

 

フラミンゴが急いで駆け付けたがもう遅かった

 

「ん〜?な〜んにもやりたくないで〜す…」

 

「え?」

 

「お休みなさ〜い…すぅ、すぅ」

 

完全にやる気パワーを奪われてしまった。ついでに言うとそのまま寝てしまった

 

「堕らけたプリキュア か!笑えるぜ」

 

「ったく油断するからよ。人間!」

 

ローラの呼ぶ声と同時に帝が飛び出して、ヤラネーダの掴み地面に抑え付ける

 

「奪って早速だが返して貰う」

 

 

「マーメイドアクアポット!サーチ!」

 

「レインボー!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

「よし。コーラル、パパイア、フラミンゴ!1人でダメなら3人で浄化しろ!」

 

「そうねその手があったわ!」

 

まなつのやる気パワーを奪い返す事に成功した。

帝の案でコーラル達3人で浄化技を放つ為にハートルージュロッドを構える

 

「ヤラネーダ…!」

 

「悪いがGENIUSの力の前では平伏す以外選択肢は無い」

 

「けれど第三者の介入には弱い」

 

「ッ!?」

 

横からアリスが飛び蹴りを放ち、ヤラネーダから帝を遠ざけた

 

「クソ!」

 

「人間!うわっ!」

 

自由となったヤラネーダが、ローラの持つアクアポットを弾いて川の中へと落とした

 

「アクアポットが!」

 

その後はヤラネーダ暴れ放題奪い放題

 

アクアポットを失ってしまえば、まなつのやる気パワーどころか街の人々のやる気パワーを取り戻せない

 

「やる気パワー奪いたい放題だぜ!」

 

「やめろ!」

 

フラミンゴを筆頭に反撃するも一瞬で返り討ちに合う

 

「ヤラネーダ!」

 

「させるか!」

 

踏み潰そうとするヤラネーダの足を、帝が両手で支えて守る

 

「そのまま一気に潰してしま──」

 

その時、チョンギーレの懐からタイマーの音が鳴った

 

「煮込み終了。かったりぃが戻るか。引っ込めヤラネーダ!」

 

ゼンゼンヤラネーダが、元のヤラネーダの素の姿に戻ってチョンギーレの手元に返った

 

そしてそのまま去って行った

 

「はぁ…仕方ありませんね」

 

やれやれと言った感じでアリスもその後に続いて去って行った

 

「行っちゃった」

 

「チッ!」

 

「よく分からないけど助かった」

 

命拾いしたと言ってもいい結果。しかし、問題は他にもあった

 

「まなつ、しっかりして!」

 

見るも悲惨な姿。やる気パワーを失って元気なまなつの姿はもう何処にも無かった

 

「わたしの事はほっといて下さい…な〜んにもやる気起きないんで…」

 

「ちょっとまなつ何言ってるの!貴女それでもプリキュア なの?」

 

「プリキュア って面倒くさいなぁ〜…辞めま〜す」

 

「「「「「えぇ〜!?」」」」」

 

とうとうプリキュア 辞める発言までしてしまった

 

「プリキュア 辞めるですってェェ〜!?」

 

「うんそだよ〜…お休みなさい」

 

「ふざけんな〜!」

 

「まぁまぁ!」

 

「ローラ落ち着けよ」

 

ローラは怒りのあまり、まなつの襟元を掴んで揺らしたが全くの無反応

 

「きっとやる気を奪われたせいだよ」

 

「〜〜ッ!行って来る!」

 

「何処へ?」

 

「アクアポット探しによ!!」

 

ローラは1人でアクアポットを探しに行ってしまった

 

残された帝達は、アレやコレやとまなつのやる気を出させる為に色んな手を考えた

 

「ねぇコレ、新作のネイルなの。塗ってみない?」

 

「面倒くさいからいい…」

 

「ビックリ人魚図鑑すっごく面白かったよ。見る?」

 

「眠いからパス…」

 

「無防備晒してると胸揉んじゃうぞ〜!」

 

「勝手にどうぞ…」

 

さんご、みのり、帝と続いて撃沈した

 

「マンゴー味のメロンパン一緒に食べよう!」

 

「口動かすの面倒くさ〜い…」

 

「なっ!?一発気合いを入れてやろうか〜?」

 

「落ち着いて!」

 

「冷静に」

 

やる気パワーを失ったせいとはいえ、あまりの態度にあすかの怒りのボルテージがMAXになる寸前

 

「…すまない、分かっているんだが…」

 

「あすか先輩の気合いの一撃は死人が出るからね〜。やらなくて正解だよ」

 

それを言った帝の頭は地面に埋もれていた

 

 

「ヤラネーダ!」

 

 

またしても、チョンギーレが率いるゼンゼンヤラネーダが現れた

 

「やめろ!」

 

「今度は仕留める!」

 

 

 

 

 

「「「うわぁぁ!!」」」

 

変身して立ち向かうも、コーラル達も攻撃は通じない。

それだけではなく、まなつも欠いた分も戦わないといけない為いつも以上に体力の消耗が激しくなっている

 

『DEFENCE!』

 

ヤラネーダの周囲に大量の盾を出現させ

 

「潰れろ」

 

手を握ると、盾が一斉にヤラネーダを潰しに掛かった

 

「や、ヤラネー…ダ!」

 

圧迫されて殆ど動けない筈が、ヤラネーダの力がそれを上回り盾を弾き返した

 

「まだまだ!」

 

「「「ハァァァ!!」」」

 

力の差を見せつけられても尚、コーラル達は諦めず何度でも立ち向かう

 

そしてその度に飛ばされては無様に倒れる

 

「ガッハハ!無駄な抵抗だぜ!他人のやる気パワーがどうなろうとどうでもいいだろ?」

 

「何が大事か、それを決めるのは自分だよ!」

 

「皆んなのやる気を奪われるの放って置けない。まなつだってきっとそう」

 

「皆んなのやる気を守る事、それが今一番大事な事だ!」

 

「それを教えてくれたのは、紛れもないまなつ自身だ」

 

懸命に鼓舞して立ち上がるも無駄な事の繰り返し

 

「「「ああ!!」」」

 

「フラミンゴ!」

 

吹き飛ばれるフラミンゴを帝は体全体で受け止め、コーラルとパパイアは盾で受け止めて少しでも攻撃のショックを弱める

 

けれどそれでも何か大きく変わる事は無い。帝はコーラル達の援護で精一杯、そのコーラル達も満身創痍

 

とてもじゃないが、逆転するなど不可能に近いものだ

 

「帝、わたし達の事は気にせずやるんだ…!」

 

「それだとフラミンゴ達が…」

 

「いいから!」

 

苦い表情をしながらオーシャンステッキに手を掛けた時、まなつが帝達の庇う様に前に出て来た

 

「……駄目」

 

「邪魔だ!」

 

ヤラネーダが口からエネルギーを放射しようとするが、まなつは一向に避けようとしない

 

「やめろ!」

 

帝が急いでステッキを回そうと手に掛けた時

 

「させません!」

 

「何!?」

 

突然背後に現れたアリスに、手刀でオーシャンステッキを弾かれて手から離れてしまった

 

「この…ッ!」

 

「先程仰りましたよね?させませんと」

 

ステッキを取りに行こう走り出したが、腕を掴まれてハンマーロックを決められた

 

「「「まなつ!!」」」

 

帝が動けなくなった以上、コーラル達は自分達が壁となって助ける以外の方法が無かった

 

コーラル達の決死の防御も容易く破られ深傷を負ってしまった

 

「やれやれ終わったな」

 

「その様ですね。後は帝様の腕を折ってしまえば」

 

「あぐ!?」

 

アリスの手に力が入り、帝の骨がギシギシと音を立てて悲鳴をあげる

 

「終わりじゃない…」

 

「何?」

 

倒れるコーラル達の前に、それでもまなつは前に出て行く

 

「いじめるな…」

 

「あ?」

 

「わたしの友達を…苛めるなァァァ!!」

 

 

 

「プリキュア!トロピカルチェンジ!」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

 

 

自力でやる気パワーを生み出してプリキュア へと変身を遂げてみせた

 

「いくらやる気を奪われたってヘッチャラだよ!わたしのやる気は、ジャンジャンドバドバ湧いて来るんだから!」

 

「わたし達も!」

 

「寝てられないね!」

 

「手加減無しで行くぞ!」

 

サマーの姿を見てコーラル達も立ち上がった

 

「何人居たって勝てるものか!」

 

「プリキュア は負けないわ!」

 

そこへ、泥だらけになりながらもアクアポットを見つけ出して帰って来たローラの姿もあった

 

「ローラ!」

 

「まなつのやる気は最強なんだから!!」

 

アクアポットをサマー達に翳すと、虹色の光が飛び出して包み込む。

その温かな温もりを感じ、傷も癒えて元気となった

 

「皆んなごめん…」

 

「ネイル塗る?」

 

「え?」

 

「新作のネイル、まなつにすっごく似合う色だと思って」

 

「塗ってみたい」

 

「『びっくり!人魚図鑑』って言う本見たくない?」

 

「見たい!何それ面白そう!」

 

「マンゴー味のメロンパン一緒に食べる?」

 

「勿論!食べない訳無いじゃん!」

 

迷惑掛けて気不味くなっていたサマーだが、友達からの言葉でそんな事など紛れるくらいに元気を取り戻した

 

「じゃあ、アイツらを早く倒さないとね」

 

「やる事やってトロピカろう!」

 

皆んなのやる気がひとつに重なり、新たなリング「ハートカルテットリング」が誕生した

 

 

 

「ハートカルテットリング!」

 

「とびだせ!元気なハート!」

 

「やさしいハート!」

 

「かしこいハート!」

 

「燃え立つハート!」

 

「ハートドキドキ」

 

「「「ドッキング!」」」

 

「「「「プリキュア !ミックストロピカル!」」」」

 

 

「「「「ビクトリー!」」」」

 

 

 

4人の浄化技で強敵だったゼンゼンヤラネーダを浄化してみせた

 

「そんな馬鹿な。全然駄目じゃねぇか〜!」

 

チョンギーレは捨て台詞を吐いて去って行った

 

「すっご〜い!」

 

「ええ確かに凄かったですね」

 

「うわっ!?」

 

いつの間にか、まなつの側にアリスが接近していた

 

「捕まえた!」

 

「ほっ!」

 

帝が隙を突いて捉えるつもりだったが、アクロバットに躱して捕まえられなかった

 

「ハートカルテットリング。良い感じにプリキュア も強くなって来てます。本当に物語というものは面白い。嬴政様の思う筋書き通りに進むのですから」

 

アリスは本を閉じて最後にこう言った

 

「イッツ・ビューティーフォォォォ!!」

 

謎の発言をしてアリスも消えた

 

「それにしても凄かったね!ローラも見た?何か出た!」

 

しかしローラはツンとした態度で見向きもしない

 

「あれ?あれあれあれ?何か怒ってる?」

 

「……怒ってるに決まってるでしょ!!何よプリキュア 辞めるって!まなつのバカバカバカ〜!!」

 

「ごめん!ごめんねローラ!」

 

まなつは精一杯の謝罪を込めて抱き付く

 

「何があっても辞めないよ。だって、プリキュア って最高にトロピカってるもん!」

 

 

 

 

 

////////

 

それから迎えたテストの日。

返却された点数を見てまなつは下を向いていた

 

「やっぱりダメだった…」

 

あすかは予想通りの結果だと受け止める

 

「あの、見て下さい」

 

まなつはテスト用紙を見せる。皆んなも、まなつがどれだけ頑張ったかだけでも目に焼き付けようと点数を見ると目を疑う内容だった

 

「「「「えぇ〜!!?」」」

 

5教科全てが高得点。

国語80点、数学88点、理科96点、社会100点、英語83点

 

との内容だった。特に社会に関しては満点を取っていた

 

「まなつ、カンニングでもしたか?」

 

「そ、そんな訳ないですよ!!」

 

「あの点数からどうやったの?」

 

「まなつどうやって勉強したの?教室で見ていたけど、皆んなと同じ様に勉強してた様にしか見えなかったよ」

 

「いや〜自分の才能が怖いな〜!」

 

上機嫌なまなつにローラが水を差す様な発言をする

 

「人間に教えて貰ったからでしょう?」

 

「帝君が?」

 

「流石にあの点数は絶望的だったからな。とにかく範囲を極限にまで絞って勉強させた」

 

「まさかそれが殆ど当たるなんて!」

 

「「「嘘!?」」」

 

さんごは驚くがすぐに納得する理由を見つけた

 

「でも社会が100点だったの見て何となく納得。わたしも社会は満点だったから」

 

ピラリとさんごも社会のテスト用紙を見せる

 

「帝君、社会は得意科目って言ってたもんね」

 

「当たり前だ!王として社会の仕組みを理解るのは当然だ!」

 

「ともかくこれで、部活もプリキュア もトロピカれるぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プリキュア 達4人のやる気と心が重なり、絆は更に固まり、より強固なものと変化した出来事だった




次回こそオリストです

ここまでの拝読ありがとうございました


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第20話 確率なんてものは上げてしまえばいい

途切れ途切れで書いてたから内容がおかしかったりするかも

ではスタート!


とある一室で、ヤラネーダの素を幾つも机の上で転がしてる嬴政が居た

 

「失礼します嬴政様……何をしておられるのですか?」

 

そんな嬴政の部屋にバトラーが入って来た

 

「新しく貰ったゼンゼンヤラネーダの素だったな。アレを試すのも悪くは無いが、どうせなら今あるヤラネーダの素を全て使おうと思う」

 

「皆さんの話を聞く限りでは、今のヤラネーダでは太刀打ち出来ないと。それでも宜しいのですか?」

 

「…駒は使い様だ」

 

嬴政は、チェス盤と駒を並べ始める

 

「例え最弱な駒だろうと、状況に応じて使いこなせば」

 

カーンっと音を立てて、キングの駒の前にポーンを打つ

 

「牙は届く」

 

「確かにそうですが…」

 

「しかし俺は違う」

 

嬴政はキングを持ち、先程打ったポーンの上から叩き壊した

 

「相手が最弱であろうと牙を向ける前に潰す」

 

「分かりました。ではアリスさんにも声を掛けます」

 

「バトラー」

 

バトラーが部屋を出ようとするのを呼び止めた

 

「俺にはやらなければならない事がある。それを果たすまでは、使える手段は全て使い選ばない」

 

「は、はぁ…」

 

「それはお前達あとまわしの魔女もだ」

 

そして嬴政は手を挙げて拳を作る

 

アイツ(・・・)の為に、俺がこの世界を牛耳る」

 

 

 

 

 

////////

 

「みのりん先輩!一緒に街のホテルで朝まで過ごしま──」

 

突然放課後の教室に入って来た帝。

何か言い終わる前に危険を感じたのか、みのりは教科書を投げて帝の顔面にクリーンヒットさせた

 

 

 

 

 

帝は頬を摩りながら、みのりと一緒に下駄箱へと向かっていた

 

「酷いな〜。いつものちょっとした、愛あるコミニケーションじゃないか?」

 

「貴方のコミニケーションは、一般のそれを超えてる。されて当然の事」

 

みのりと2人っきりで話す時はいつもこの通り。

大した話題も出さずに黙々としてるだけ

 

「そういえばまなつ達は?」

 

「皆んな用事があるとかで帰った。部活も今日は休み」

 

「そう」

 

 

 

 

 

////////

 

「早く帰らないと〜!」

 

さんごは慌てて家へと帰宅してる途中だった

 

今日はみゆきの手伝いをすると言っていたらしく、時間に遅れる訳にはいかない

 

そんな急ぐさんごの前に、フードで顔を隠した1人の人物が道を塞いだ

 

「あ、あの〜…」

 

「挨拶は抜きにしよう──従え、ヤラネーダ」

 

その人物はヤラネーダの元を適当に投げ付けて、怪物を生み出した

 

「ヤラネーダ!」

 

電灯を媒体にしたヤラネーダがさんごの目の前にら現れた

 

「ッ!」

 

 

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

 

 

『ぺけ!』

 

変身早々にシールドを張って防御。

嬴政は、予想通りといった感じで見ていた

 

「ハァ!」

 

シールドで攻撃を受け流した後、飛び込んで攻撃体勢に入ろうとしたが

 

「眩しい…!」

 

ヤラネーダが照らした明かりでコーラルの視界を封じた

 

「ヤラネーダ!」

 

「きゃあ!!」

 

空中で動きを止めたコーラルは格好の的。簡単に攻撃を食らい、地面にニ度三度打ち付けられる

 

「お前の事は良く知っている。仲間の支援を得意とするが、それ以外は丸っ切りだ。様はプリキュア の中でも一番弱く、倒しやすいという事」

 

「う、うぅ…!」

 

「ヤラネーダ!」

 

『ぺけ!』

 

腕を振り抜くヤラネーダをシールドで防御するも、圧倒的に力で負けている

 

シールドはヒビが入り、踏ん張る足は地面に減り込んで行く

 

(皆んなが来るまで頑張らないと!)

 

「一つ言っておこう。他のプリキュア には期待しない方が良い」

 

「そ、それはどういう意味なの?」

 

「お前と同じ状況になっているからだ」

 

 

 

 

 

同時刻

 

別の場所ではフラミンゴがアンテナを媒体としたヤラネーダの相手をしていた

 

「クソ!しつこいな!!」

 

そう文句を言いながらヤラネーダの顎を蹴り上げる

 

「流石と言ったところだ。キュアフラミンゴ」

 

「お前は!」

 

ヤラネーダのすぐ近く、嬴政がそう感心していた

 

「プリキュア の中で特に力の強いお前さえ封じれば、残りを潰すのに造作も無い」

 

「コイツ…」

(狙いはやる気パワーじゃなくてわたし達か!?)

 

 

 

 

 

同時刻

 

更に別の場所では、サマーとローラがピンチに陥っていた

 

「あわわわ!!?」

 

「ヤラネーダ!」

 

「ちょっとこっちに来ないでよ!!」

 

自転車を媒体にしたヤラネーダが、サマーを追い回してる最中だった

 

「このヤラネーダ速すぎる〜!!」

 

「意地を見せないよ!!」

 

「もう、この!」

 

サマーは急ブレーキから振り返り、回し蹴りで反撃した

 

「ヤラネーダ!」

 

だが、動きを読んでいたのか容易にそれを防いだ

 

「ヤラネーダ!」

 

反撃として腕を付いてる車輪をブーメランの様に投げ飛ばして来る

 

「クッ!…うう…わぁ!?」

 

一つは受け止めれたが、追撃に来る二つ目に吹き飛ばされてしまった

 

「警戒はしていたがその程度か?」

 

「貴方もあとまわしの奴らなの?」

 

「グランオーシャンのローラか」

 

「何でわたしの名前を…」

 

「俺はお前達の事を知っているだけだ。ずっと見ていたからな」

 

この場所にも嬴政が何故か居た

 

「ローラどうしよう!このヤラネーダ強いよ!」

 

「そんな事言われても!もう皆んなはまだ?」

 

「仲間を待っても時間の無駄だ」

 

「無駄って……そういう事ね。さっきから辺りで騒ぎが起きてるのって貴方のせいね!!」

 

嬴政は正解と言わんばかりに笑う

 

「ローラ、皆んなを集めて!ヤラネーダの数も増えると思うけど、皆んなで力を合わせたらいける気がする!」

 

「分かったわ。それまで踏ん張りなさいよ!」

 

ローラは一度アクアポットに入り、くるるんと共に他の所へと向かって行った

 

「お前1人で何処まで耐えられるか?」

 

「耐えてみせるよ!いつまででも!」

 

 

 

 

 

////////

 

「みのりん先輩、このまま2人で愛の逃避行でもしませんか?」

 

「遠慮しておく」

 

「うん、予想通りの返し」

 

そろそろ別れ道でお互いに、それぞれの帰路に行こうとした時、此処にも嬴政が目の前に現れた

 

「見つけた」

 

「あの、どちら様?」

 

「そうだな。コレを見れば見当はつくと思う」

 

嬴政が手に持っていたのは一個のヤラネーダの素だった

 

2人はそれを察して、ステッキとパクトを構えた

 

 

 

「プリキュア!トロピカルチェンジ!」

 

「レッツメイク!」

 

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

 

「エモーショナルスタート!」

 

『AUTO!』

 

 

 

変身と同じく、嬴政もスコップを媒体としたヤラネーダを生み出した

 

「ヤラネーダ!」

 

両手のスコップで切り裂く様に攻撃して来たが、左右に分かれて避けた

 

「今回のヤラネーダも大した事は無いな」

 

「目の前でヤラネーダを出したって事なら、ローラが居なくても大丈夫だね」

 

 

「パパイア〜!人間〜!」

 

 

そんな時、遠くからフヨフヨと飛んで来るアクアポットを発見した

 

「あ、ローラ!?」

 

「何でローラが?まなつと一緒じゃなかったの?」

 

「あー!何でアンタが此処に居るのよ!?」

 

「「??」」

 

さっきから会話が噛み合わない。ローラは嬴政がこの場に居る事に驚きを隠せないでいる

 

「サマーは一体何やってるのよ」

 

「キュアサマーならもう終わらした」

 

「な!?冗談もいい加減にしなさい!わたしがこの場所に来るのに時間は掛かってないわ!サマーがそんなあっさりと負ける筈ないわ!!」

 

ローラと嬴政は何か言い争ってるが、帝とパパイアは全く分からない

 

「なら、このヤラネーダには見覚えがある筈だ」

 

建物の影から、もう一体のヤラネーダが現れた

 

「あのヤラネーダ!」

 

「驚くのはまだ早い」

 

更にもう2体。コーラルとフラミンゴが相手をしていたヤラネーダまで合流した

 

合計で4体が帝達を取り囲んだ

 

「残ったプリキュア はお前だけの様だなパパイア」

 

「皆んなやられたのか…」

 

「帝…」

 

パパイアは急に帝の手を繋いだ

 

「おっと?良くある綱渡り効果で惚れたか?」

 

「違う。帝が不安そうにしてたから手を繋いだだけ」

 

「俺としては上目遣いで『帝助けて〜』、な〜んて言われたら日にはもう…」

 

ジト目で帝の後頭部をしばく

 

「あ〜いった!」

 

「ふざけるからよ」

 

「「「「ヤラネーダ!」」」」

 

ヤラネーダ4体の集中攻撃が容赦無く襲い掛かった

 

「あっぶな〜!」

 

「帝が話し掛けて来たせいよ」

 

「ちょっと!戦えないわたしが一番危なかったわよ!!」

 

けれど、帝のAUTOのお陰で自動で避けて3人は無傷で済んだ

 

「来るわよ!」

 

「悪いけどローラはどっか隠れてて!」

 

帝はローラを林の中へと放り投げた

 

「全く、何でこうも相性の悪い能力を引き当てるんだ?」

 

「ヤラネーダ!」

 

アンテナ型のヤラネーダが電撃を放って来たが全て避け切り、逆に動きを読んで懐まで侵入出来た

 

「これで…っ!」

 

攻撃を加えようと拳を作ったが、足元の地面が盛り上がった事に瞬時に察知した

 

「ヤラネーダ!!」

 

「チッ…!」

 

スコップ型のヤラネーダが地面から仕掛けて来た。いくら自動のAUTOでも、死角からの攻撃に反応するのに遅れが生じる

 

帝の頬に傷が入る

 

「面白い。エモーショナルディスクだと分が悪いか…ならこいつだ」

 

エモーショナルディスクとオーシャンディスクを入れ替えて、再度ルーレットを回す

 

『TECHNIC!』

 

「当たり?」

 

「当たり」

 

帝は分身する。これで数だけなら対等

 

『俺がアンテナを』

 

『なら俺が自転車の奴を』

 

分身達は独断で動き始めた。こちらの事などお構い無く

 

「「ヤラネーダ!」」

 

電灯の光で照らして目を潰し、鋭いスコップで切り裂こうとする連携

 

「「ハァ!!」」

 

 

 

「そうよやっちゃいなさい!右から来て…左から来てるわよ!もう!!」

 

「くるる〜ん!」

 

茂みに隠れてローラは騒いでいた

 

「随分と必死になって応援するのですね」

 

「当たり前よ!」

 

「くるる〜ん!」

 

「……」

 

「……えっ!?アリス!?」

 

いつの間にか、自分の隣で座って戦いの様子を見てるアリスに驚いて一歩引く

 

「いつから居たのよ!?」

 

「最初からです。一言も喋って無いので殆ど空気と同化しておりました。残念無念のオンパレードです」

 

「た、戦えないわたしを襲う気なの!?」

 

「く、くるるん〜!?」

 

ローラはくるるんを盾にして身を守ろうとする。

くるるんは勿論嫌がっている

 

「妖精を盾にするなんて結構外道ですね。襲うも何も基本、私は戦わないので何もしません。しなくてもこの勝負の結果は見えてます」

 

「そうよね!人間達が負ける筈がないもの!」

 

「いえ、このままですと帝様達は負けます」

 

「はぁ!?何でよ!?」

 

「貴女、本当に何も気付いてないのですね。オーシャンステッキの弱点について」

 

オーシャンステッキの弱点。今までの戦闘内容でそれらしいものは見つかってない

 

ローラ自身それは知っている。だからこそハッタリにしか聞こえない

 

「分かっていない様なのでお教えしますね。一つ、これは誰でも分かる事、能力のランダム性です。能力が多様な分それがデメリットですね。今回の様に相性によっては格下相手に遅れを取る事もしばしば」

 

アリスの言う様にランダムというのが一番響いてる

 

「二つ、ひとつの能力しか発動出来ない」

 

「そ、そんなの当たり前じゃない。針はひとつしか無いのだから」

 

「三つ、連携では不向き」

 

「連携ならちゃんと出来てるじゃない!」

 

「固執した力に連携ですか?皆様が合わしているの間違いでは?それは連携とは言えません」

 

アリスの言う様に、帝の能力は個人のみの恩恵。誰かに分け与えるといった能力は無い。

ましてやあのプリキュア とはかけ離れた力

 

帝が強くても他がそのレベルについて行けれてない

 

「お解り頂けましたか?まだまだこの程度という事です……そろそろ決着がつきそうですね」

 

 

 

『『うぐぁ!?』』

 

目を向ければ、分身した帝2人がヤラネーダの攻撃で消えてしまった

 

そして帝とパパイアは追い込まれてしまう

 

『ATTACK!』

 

「クソ!」

 

ここで一番最悪な出目に当たってしまった。流れを変えようとした結果がこれだ

 

「ゲームオーバーですね」

 

「ここで負ける訳にはいかない。王に負ける事など許されない」

 

「そうですか…」

 

ジリジリと寄り詰めて来るヤラネーダ

 

アリスは懐から時計の針の様な物を取り出して、帝の足元へ投げ捨てる

 

「ソレを使って下さい」

 

「帝、罠かも知れない」

 

「例え罠だとしても俺は使う。使える物は何だろうと全て使う」

 

『エモーショナルディスク』

 

もう一つ、アリスが投げ捨てた物を中央にセットする

 

『キングハンド』

 

「エモーショナルスタート」

 

いつもの様に盤を回すと、キングハンドと呼ばれる針も逆回転で同時に動き始めた

 

『GENIUS!』

 

先ずはひとつ

 

まだキングハンドの針は止まらない

 

『AUTO!』

 

「ッ!」

 

AUTOが出た瞬間、4体のヤラネーダが吹き飛んだ

 

「そういう事か。パパイア、俺が奴らを惹きつける。止めは任せた」

 

帝は駆け出した

 

「「ヤラネーダ!」」

 

スコップ型と電灯型のヤラネーダが連携し始めるも、それを嘲笑うか如くわざと攻撃を受けた

 

「そんなものか?ハァッ!」

 

受けた筈が全く通ってなかった。2体のヤラネーダを掴み、纏めて地面に叩き付けた

 

「次」

 

『GENIUS!』

 

『NATURAE!』

 

「これで、どうだ!」

 

拳を強く握ると激しい落雷が自転車型のヤラネーダへ落ちてゆく

 

だが雷の軌道はアンテナ型のヤラネーダへと引き寄せられて

 

「ヤラネーダ!」

 

吸収し帯電した

 

アンテナ型のヤラネーダのパラボラが避雷針となり、帝の攻撃を無力化したのだ

 

「それなら!」

 

帝は小さな種をアンテナ型のヤラネーダに投げ付ける。そして目の前で大きく成長して、木となりヤラネーダに絡み付いて締め付ける

 

「ヤラ──」

 

「次!」

 

地面を大きく踏み付けると、自転車型のヤラネーダの足元の地面が盛り上がり空へと打ち上げた

 

GENIUSで空中に放り出されたヤラネーダに駆け、腕を掴んで拘束されて動けないアンテナ型のヤラネーダに叩き潰した

 

『FANTOME!』

 

『NATURAE!』

 

分身して、自然の力を使いヤラネーダを一箇所に集める

 

「やったわ!流石人間!」

 

「パパイア今だ!」

 

 

 

「ハートルージュロッド!」

 

「プリキュア !ぱんぱかパパイアショット!」

 

 

「ビクトリー!」

 

 

 

ヤラネーダ4体同時に浄化した

 

「そうだそれで良い。その調子で…」

 

「お前の目的は何だ?俺にこんな物を寄越したり」

 

「目的がある、計画がある、やり遂げなければならない。アイツ(・・・)の為に」

 

「行きましょう嬴政様」

 

嬴政はアリスの肩を掴み共に消えた

 

「アイツって誰よ?」

 

「分からないわ」

 

「それよりも早くまなつ達の様子を」

 

「こっちよ付いて来なさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後傷付いたまなつ達を介抱した帝達だった




次回もオリスト。2話分くらい予定してますが、忙しかったら後回しです

因みにめっちゃ早い今回の強化。実は没案だったりする。本来使う予定の案は事情により廃止。
本当は使いたくなかった。主人公強くなるもん!

ここまでの拝読ありがとうございました


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第21話 新たなる出会いの下準備!始めましょう!

最近みのりん先輩と一緒に居る事が多い主人公君

ではスタート


「まなつ〜」

 

「何ローラ?」

 

「外で泳いで来るわ。後は頼んだわよ」

 

「ちょ、ローラ!?」

 

アクアポットに入り、そのまま外へと出て行ってしまった

 

「他の人に見つからないでよね?騒ぎになったら面倒だから!!」

 

「分かってるわよ」

 

 

 

 

 

ローラがやって来たのは岩場近くの海

 

くるるんと気晴らしに泳ぎに泳いでいた

 

「はぁ…まさか、あとまわしの魔女達もあんな怪物を隠し持ってた何て想像つかないわよ」

 

「くるるん〜」

 

「あ〜もうイラつく!!」

 

バシャンと水面で大きな波を立てながら、空を見て浮かぶ

 

そんな時、誰かの足音が聴こえた

 

「くるるん」

 

ローラはくるるんを呼び寄せて水中へと潜水した

 

「あら?誰かの声がしたのだけど気のせいかしら?」

 

足音の主は女性だった。見た目からして大学生、そして此処には釣りをしに来たみたいだ

 

「まいっか。そんな事より今日の晩御飯を釣らなきゃね」

 

女性は、ローラが潜って場所にピンポイントでルアーを落とした

 

女性は竿を置いてのんびりと本を読み始める

 

一方で水中のローラ達は

 

「キー!!糸が引っ掛かってる!!」

 

鱗に引っ掛かったルアーを必死に外そうと奮闘していた

 

「くるるん外して!」

 

「くるるん!」

 

くるるんも食い千切ろうと噛み付くが、逆に針に掛かってしまった

 

「くるるん!?」

 

「くるる〜ん!」

 

そしてくるるんは引っ張り上げれる

 

「待ちなさい!」

 

とっ捕まえると、ローラまで仲良く釣り上げられた

 

「うわっ!?」

 

「くるるん!?」

 

「やった釣れた…わ?」

 

ローラと女性と目が合った

 

「人魚…だよね?」

 

「何よ人間。見れば分かるでしょう?」

 

「うんまぁ、今更何が起きても驚かない自信あったけどやっぱり驚く時は驚くわね…」

 

過去に色々あったと思う女性は遠い目をしていた。

ローラやくるるんを見ても、帝やまなつ達みたいな反応は無かった

 

「取り敢えず降ろしてくれないかしら?」

 

「あぁ、ごめんなさい」

 

未だに竿から解放されて無かった為、優しく針を外して自由にさせた

 

「それにしても人魚は初めて見たわね。興味深い」

 

「当たり前よ。わたし達人魚は人間に見つからない様にしていたのだから」

 

「なら今後の研究の為に鱗一枚頂戴」

 

「…全くもって意味が分からないわ」

 

「そのまんまの意味よ。人魚なんて滅多にお目にかかれない。実験材料はあるに越した事ないわ」

 

女性はローラの事を実験台のモルモットとして見ている

 

「あ、もしかして鱗剥ぐのに痛かったりする?」

 

「当たり前よ!体の一部なんだから」

 

「それなら…髪の毛を頂こうかしら?」

 

「正直言って嫌と言いたいけど、貴女の場合断ったら他のを要求するんでしょう?」

 

「察しが良くて助かるわ!」

 

ローラは嫌な顔をして、髪の毛先を切って女性に渡した

 

「これが人魚の髪の毛…!おっと早く仕舞わないと」

 

小瓶に髪の毛を入れてまじまじと魅入っていた

 

「それにしても何で人魚が此処に居るの?何かの観光?」

 

「違うわ。わたしは女王になる為にこの人間の世界に来たのよ!」

 

「ああ、そうなの。王様ね…」

 

「何よ?」

 

「いえ、私はあまり王様に関しては良い思い出が無いだけ」

 

女性は急に身支度を整え始める

 

「帰るの?」

 

「ええ。晩御飯は魚にしようかと思ったけど、人魚が釣れちゃったからメニューを変更しないとね。だから街へ行くの」

 

「そう。なら、さよならね」

 

「人魚さんも気を付けてね」

 

お互いに立ち去ろうとした時、大きな衝撃と音が2人に届いた

 

「あれはヤラネーダ!」

 

「街の方で何かあったのかしら?ここ最近、化け物騒ぎが噂されてるけど」

 

「いい人間!貴女は事態が落ち着くまで街に行かない事!分かった?」

 

「えぇ〜、これから晩御飯買いに行くのに?」

 

「危険だから!くるるん行くわよ」

 

アクアポットに戻り、そのまま街の方へと飛んで行った。

女性はそれを眺めるだけだった

 

 

 

 

 

////////

 

「まなつ!」

 

「ローラ!」

 

街では、チョンギーレが生み出したゼンゼンヤラネーダがやる気パワーを奪っている

 

騒ぎを聞き付けてまなつ、みのり、あすかの3人が来ていた

 

「さんごと人間は?」

 

「今日2人で出掛けてるの。多分もう少ししたら来ると思うけど」

 

「流石に待ってられないな」

 

「ちゃちゃっと終わらせよう!」

 

 

 

「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」

 

「「「レッツメイク!」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

 

 

「「「やぁぁ!!」」」

 

3人同時の飛び蹴りでヤラネーダが倒れる

 

「負けるなヤラネーダ!」

 

「ヤラネーダ!」

 

「「「ああ!!?」」」

 

ヤラネーダの巻き起こした風で、サマー達は軽く飛ばされる

 

「こんの〜!」

 

「やっぱこの人数はキツいな…」

 

「ヤラネーダ!」

 

今度はヤラネーダから仕掛けて来た。恐れも知らずに突撃する

 

「そんな一辺倒の攻撃なんて避ければいい!」

 

「あ、待ってフラミンゴ!わたし達が避けてしまったら!」

 

パパイアで気付いた。後ろを振り返ればローラが居る事に。

もし避けてしまえばローラに被害に遭ってしまう

 

それを避ける為に、サマー達はヤラネーダの体当たりを受け止めるしか無かった

 

「「「くぅぅ…!!」」」

 

「力で負けてない!そのままぶっ飛ばせヤラネーダ!」

 

「ヤラネーダ!」

 

「「「キャァァァ!」」」

 

受け止めるサマー達を振り払い、一直線にローラへと向かって体当たりする

 

「ちょ待って!嫌ァァァァァ!!」

 

絶叫するローラ。もうダメかと思った矢先

 

「ヤラネ!?」

 

「えっ?」

 

一台のバイクがヤラネーダの足を轢いて現れた

 

「何だアイツ?」

 

「何あの人間?」

 

ローラとチョンギーレは謎に現れたライダーに首を傾げる

 

「…」

 

ライダーはエンジンを吹かしてヤラネーダを挑発する

 

「ッ!」

 

「ヤラネーダ!?」

 

勢い良く飛び出したライダーは、そのままヤラネーダの顔を轢き倒してローラの近くに着地する

 

ライダーはバイクから降りてローラへと手を差し伸べる

 

「大丈夫?」

 

「その声!」

 

ライダーはヘルメットを取ると、綺麗な薄紫の長髪を靡かせた。

それは先程、ローラとくるるんを釣り上げた女性だった

 

「買い物に来たのにとんでもない事になっているわね」

 

「貴女何で来てるのよ!わたし言ったわよね?」

 

「バーゲンセールは学生の命なのよ!!」

 

「何くっちゃべってるんだ!やれヤラネーダ!」

 

ヤラネーダが拳を振り下げたが、何かに弾かれた様に拳が飛んだ

 

「何!?」

 

「今何かしたかしら?」

 

「だったらやる気パワーを奪うまでだ!」

 

今度は狙いを変えて女性のやる気パワーを奪おうとするが

 

「?」

 

「な!?やる気パワーが奪えないだと!?」

 

やる気パワーを奪おうとするが、女性の体全体を不思議なオーラがそれを防いでいるのだ

 

「悪いけど時間が無いの」

 

突如として女性の姿が消えた

 

「ヤラ──」

 

そしてヤラネーダの顔に何か衝撃が走る

 

倒れそうになるが、すぐさま何かにぶつかった感覚がして強引に起き上がられせる

 

「や、ヤラネーダ…」

 

良く見ると、白い閃光がヤラネーダの身体中を駆け回りダメージを与えていた

 

「ヤラ、ネーダ…」

 

とうとうヤラネーダが倒された

 

その上空では、白い長髪の女性が剣を持って佇んでいた

 

「意外と呆気なくて残念。見た目通りって感じ」

 

「すっごい光ってる。全身トロピカってる!」

 

「あ、そこの子達コレの止め宜しくね」

 

「「「あ、はい!」」」

 

声を掛けられて思わず返事をする

 

「ローラ!」

 

「オーライ!」

 

 

「マーメイドアクアポット!サーチ!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

 

「ハートルージュロッド!」

 

「プリキュア!おてんとサマーストライク!」

 

 

「ビクトリー!」

 

 

 

「さて、残るは貴方だけ。続ける?」

 

「…かったりぃ奴だ」

 

これ以上、女性を相手にするのは少々面倒と思った。

ヤラネーダも浄化された今、もう手札がない為引くしか無い

 

「あ〜あ、帰っちゃった」

 

「あの!」

 

「ん?あ〜ありがとうね。それじゃあ──」

 

「ちょっと待ちなさい!!」

 

女性が立ち去ろうとしたが、それをローラに呼び止められた

 

「その姿にその剣、貴女一体何者なの?」

 

「世界を救ってるだけ」

 

「そういう意味じゃ──」

 

「お姉さん超トロピカってる!!」

 

まなつが女性に迫り大興奮してしいた

 

「どうやって変身したんですか?それにその剣は?」

 

「き、気にしないで!忘れて」

 

忘れてと言うが、目の前で剣がひとりでに動いて、女性の体の中へ入って行く

 

「今のを見て、忘れてなんて無茶苦茶だな…」

 

 

「お〜い!」

 

「帝君待って〜!」

 

 

話をしてる間に、帝とさんごが到着した

 

「2人共遅い!」

 

「ヤラネーダならこの人が倒してくれたの」

 

ひょこっと女性は帝達に顔を出す

 

「「あーーっ!!!」」

 

女性の顔を見た瞬間、帝とさんごは大声で叫んだ

 

「紫苑姉ちゃん!」

「紫苑お姉さん!」

 

「久し振りね。帝、さんごちゃん」

 

「え、2人共知り合いなの?」

 

「知り合いも何も!」

 

「紫苑姉ちゃんは俺の従姉妹だよ!」

 

目の前に居る女性は、どうやら帝の従姉妹という関係でいらした

 

「ど〜も。帝の従姉妹である『天道紫苑(てんどうしおん)』よ。ビックリさせちゃってごめんね」

 

「何でさんごも知り合い?」

 

「さんごちゃんは、帝と家が近かったから良く一緒に遊んでいたのよ」

 

「紫苑お姉ちゃんって確か今、すこやか市に住んでいたんじゃ?」

 

「今はこっちから通学してるの」

 

紫苑の実家はすこやか市。けれど今は、視野を広げると為という理由で、今年からあおぞら市に引っ越してる。

因みに大学はおおらか市との事

 

「そういえばみのりん先輩、紫苑姉ちゃんがヤラネーダ倒したった聞いたけど?」

 

「うん本当。紫苑さんは何であんな姿に?」

 

「そういう貴女達も凄い格好していたわよね?アレ何?さんごちゃんも出来るの?」

 

「出来ますけど詳しくは教えれま…あれ?」

 

こちらが質問してたのに、いつの間にか質問される側に誘導されていた

 

「そう。秘密は誰にでもあるのね。私そろそろ行くね」

 

ヘルメットを被ってバイクに跨る

 

「今度は友達も連れて来るから。それじゃあ頑張ってね、可愛いプリキュア (・・・・・)さん達」

 

颯爽と紫苑とは別れた

 

「あれ?わたし達がプリキュア だって話したっけ?」

 

まなつは一瞬気にしたがすぐに忘れる事にした

 

 

 

 

 

////////

 

紫苑は買い物途中で誰かに電話していた

 

「もしもし、ひなた今大丈夫?」

 

『紫姉おひさ〜!大丈夫だよ!』

 

電話相手は「ひなた」という少女だった

 

「実は今日面白い子達に会ったのよ」

 

『どんなどんな〜?』

 

「そ・れ・は、今度こっちに遊びに来るでしょ?その時に教えてあげる」

 

『えぇ〜!?』

 

『ちょっとひなた、早く勉強再開するわよ』

 

『あ、ちゆちー』

 

ひなたの他にも、ちゆちー基『ちゆ』が話に割り込んだ

 

『天道さん?あ、ごめんなさい。ひなたに用がありましたか?』

 

『ちょ!その急変する態度がアタシを傷付ける』

 

『ちゆちゃん、ここの問題が分からないのだけど』

 

『のどか、その問題はね…』

 

今度は「のどか」が話に入って来た。少々タイミングが悪い時に電話をしてしまったらしい

 

「何か邪魔しちゃったわね。そろそろ切るね」

 

『全然大丈夫!寧ろジャンジャン話そう──』

 

『後で折り返し電話します』

 

ひなたから電話を奪ってちゆがそう言ってくれた

 

『あ、ちゆち〜!』

 

『すみません失礼します』

 

「うん、勉強頑張ってね」

 

電話を切ると、不意に紫苑は和かに笑っていた

 

「本当元気な子達ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫苑は上機嫌で買い物を続けるのであった




最後にチラッと出て来たヒープリ組。アニメ本編であと数話したら出そうかと考えております。
今回出て来たキャラは、前作のオリキャラの一人です。割と読んでる人が少ないので「誰それ?」感が凄いです。流して「あ、こんなオリキャラ居たんだ」みたいなノリで見てくれたら幸いです

次回もオリストで何か書こうと思っていますが、時間が無ければ来週にあとまわしです

ここまでの拝読ありがとうございました


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第22話 ローラは体外受精?体内受精?

久し振りにこんな内容書いた!

ではスタート!


「ローラ!レッツラ子作り!!」

 

トロピカる部に入って来ての第一声がこの有り様。

ローラは無言の鉄拳で、入って来た扉ごと帝を外へと殴り飛ばした

 

「酷くないか?」

 

「それはこっちの台詞よ。ここまでデリカシーに欠ける事を言ったりする人間には呆れるわ……顔を見る度に殴らなきゃいけないわね」

 

「それは俺の顔が変形するから辞めて貰っていいか?」

 

「駄目に決まってるじゃない。もはや、存在そのものが変態なのだから」

 

さっきから、何か言葉を発する度に口が悪くなって来てるローラ。

まなつ達は、いつもの光景なので意外にも相手にしていない

 

「まぁ、ローラに一理あるな。お前はどうしていつもそうなんだ?」

 

「あすか先輩、いつもならともかく今回は理由があるんだ」

 

「部屋に入って来いきなりて女性に『子作りしよう』って言うくらいよ。相当重要な理由よね?」

 

何処から持って来たのか、ローラは片手に鈍器を持って笑顔で待機してる

 

「皆んな、体外受精って知って……嗚呼、知らないのはまなつだけか」

 

「ちょっと!」

 

「魚って体外受精じゃん?人魚のローラも体外受精かなって思ったから」

 

「確かに気になるね」

 

こういう話にはみのりは興味津々だった

 

「ねぇねぇ!体外受精って何?」

 

「簡単に言うと、雄と雌が精◯を同時放射する」

 

「ストレート過ぎるだろ…」

 

「そんな訳だから実験したい。ローラ、頼むよ」

 

「それでわたしが『はい良いよ』何て言うと思ってるの?」

 

「え、違うの!?」

 

「当たり前よ!!」

 

協力してくれると思っていた帝だったが見当違いだった

 

「未来の繁栄の為に頼むよ!」

 

「そんな繁栄は一生訪れないわ」

 

「この人でなし!今世界は少子化問題で大変なんだ!俺達が子供を作らなきゃ誰が作るって言うんだ!!」

 

「それは人間の世界の事情でしょ?人魚であるわたしには、これっぽっちも全く持って全然何も関係無いわ!!」

 

的を得ているけれどローラは嫌がってる。

それに帝はまだ中学生だ。幾ら少子化問題を盾にしても、そういう年齢にはまだ程遠い

 

「ていうか人間、貴方最初からそれが目的ね」

 

「何だと!俺はな、少子化問題をどうにかしようと悩んだ結果、ローラを孕ませるような感じになったんだ。別に嫌らしい意味は無い」

 

「もう隠す気無いわね。ここまで来ると清々しいわ…」

 

ローラが中々付き合ってくれない為、帝は床に寝転んで駄々を捏ね始める

 

「ローラお願い!!」

 

「嫌よ」

 

「犯したい、孕ませたい、産まれさせたい!!」

 

最低な言葉の三拍子を叫びながらローラにしがみ付くも、尾鰭でしばかれて終わる

 

「別にいいじゃん。お互いの精◯ぶっかけるだけの事…」

 

それがどれだけの重罪かをこの男は知らない

 

「これが若さ?」

 

「若さ故の欲求です」

 

「三大欲求なら仕方ないね」

 

「納得するな」

 

帝の言葉に納得しそうになったみのりの肩を掴んで、どうにか正気に戻そうとする

 

「でも帝、ローラが体外受精とは限らないよ」

 

「どして?」

 

「ローラは人魚、半分は人間みたいなもの。魚類のやり方で大丈夫なの?」

 

「何…だと…!?」

 

盲点を突く様なみのりの言葉に、帝に電流が走る

 

「確かに言われてみれば……」

 

ブツブツと独り言を言い始めたかと思いきや、目を光らせてローラの両肩を掴む

 

「それなら体内受精もしよう!!」

 

「人間の体内受精って…!」

 

「そうS◯X!!生物誕生の儀式をするんだ!!」

 

「あ、逸れたな」

 

あすかは最初の話から完全に逸れてしまった事に再確認した。

というより、とにかくローラを孕ませる事しか考えてない

 

「あそうだ、なんなら皆んなもS◯Xする?」

 

「「「「もしやそれが狙いか!?」」」」

 

「レッツ乱交パーティー!!!」

 

「わたしは嫌!!!!」

 

まなつ達は帝のしたい事が明確になった事を知り、帝は人として最低な事を発して、ローラは拒絶の叫びをあげる阿鼻叫喚な空間が出来上がった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日、さんご以外からは全く口を聞いてくれなくなったのは当然




ハッキリ言います。こんなのを主人公と思いたくない(泣)
私の中で、運営に引っ掛かるかどうかのチキンレースしてる

ここまでの拝読ありがとうございました


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第23話 「さんごアート大会開催!」「サンドアートだよ!もう!」

今回の話、かなりテンポ重視となっております。
色々忙しく、かなり割愛しました

ではスタートです


「な〜んかイベントみたいなのやりたいな!」

 

部室で何の脈絡も無く言い出したまなつ

 

「わたし達トロピカる部だけじゃなくて、もっと沢山の皆んなもトロピカれる様な!」

 

まなつは何か案があるか、帝達に目で訴える

 

「それって部活対抗イベントの事か?」

 

「そうそんな感じの!」

 

「それならビーチで出来る様な事は?もうすぐ海開きだし」

 

一同ビーチで出来る事を考え込む

 

「皆んなで出来る事……砂遊びとかは?」

 

「それは無いだろう…」

 

「砂遊び、無くは無いと思う。サンドアートっていうの」

 

まなつの砂遊びから、みのりのサンドアートと出た

 

「サンドアート、サンドアート……さんどアート、さん………さんごアート!!」

 

「プッ!」

 

「痛!?」

 

まなつは吹き出し、さんごアートと言った帝はさんごに頭を叩かれた

 

「コホン。チームごとに作品を作ってその出来を競う大会形式にすれば」

 

「確かにそれ良いな!」

 

「それじゃあ決まりって事で!今回の部活はサンドアート大会!皆んなでトロピカっちゃおう!!」

 

 

 

 

 

////////

 

「これより、あおぞら中学部活対抗サンドアート大会開催しま〜す!」

 

集まったのは5つの部。柔道部、野球部、美術部、料理部、園芸部

 

「この大会は、トロピカる部が主催する初めての校内イベントです。絶対に皆んなでトロピカるぞ!」

 

「大会のルールを説明します。明日の夕方までに部活ごとのチームでサンドアートを完成させる事」

 

「使って良いのは己の肉体とシャベル、後は霧吹きだけ」

 

「優勝は、最後の全員の投票で決めます」

 

「そして優勝賞品は──」

 

みのりが後ろで急いで風船を膨らませていた。

息を切らして膨らませたのは、「トロピカルメロンパン一年分」と書かれた物だった

 

「ちょっとみのりん先輩」

 

みのりの後ろで待機していた帝が、小さな声で呼び掛ける

 

「そんな予算一体何処から出てくるんだ?」

 

「……大丈夫、何とかなる」

 

「最初の間は何だったの?」

 

そんな先行き不安な状態で、部活対抗のイベントが始まった

 

 

 

「わぁ〜綺麗!」

 

ローラはポッドの中から見える、パラグライダーに魅了されていた

 

「人に見られたらマズい事になるから、くれぐれも外には出るなよ」

 

「はいはい、分かってるわよ!!」

 

今回ばかりは人前に出れないローラは、ポットで過ごす事となる

 

「ローラごめんね」

 

「別に、わたし砂遊びに興味なんか無いし。まぁ、優勝賞品のトロピカルメロンパンはちょっと良いかも知れないけど」

 

「じゃあ、優勝出来る様に頑張るね。帝、ローラをお願いね」

 

「だろうと思った」

 

アクアポットに紐を通して帝は首に掛ける。外には出れないが、ポットの中とはいえこれで堂々と正面から外の様子を伺える

 

帝はトロピカる部では無いので、全体のアシスタントとローラの子守として今日は来ている

 

「ところでトロピカる部は何を造るんだ?」

 

「絵に描いて来たよ!」

 

準備の良い事にまなつは、完成図であるスケッチを皆んなに見せる

 

「じゃ〜ん!」

 

「かわ…」

 

さんごが「可愛い」と言おうとしたのだが、あまりにもまなつの絵が個性的過ぎて、言葉が詰まってしまった

 

「どうかな?」

 

「あ、あ…え〜と…」

 

期待されている目に、さんごは皆んなの反応を伺いながら言葉を見つけようとする

 

「…分からない」

 

「画伯だな」

 

「ありがとう帝!」

 

「褒めてないぞ〜」

 

「ちょっと貸して」

 

あすかは、まなつのスケッチを貸して貰い、新しく丁寧な絵で修正してくれた

 

「こういう感じかな?」

 

「「「おぉ〜!」」」

 

「おぉ〜…って感心してる場合じゃないぞ。完成図が出来たなら早くしないと、時間はあっという間だ」

 

「ふん!」

 

帝に言われてそれぞれ取り掛かるが、ローラは何か不機嫌な様子で皆んなの様子を見守る事となる

 

まなつ達がサンドアートを制作中の中、アクアポットではこんな事が繰り広げていた

 

「はぁ…暇ね。それに出るなと言われたら逆に出たくなるのよね」

 

「くるる〜ん」

 

「貴方も飽きちゃったのね…」

 

「くるるん?」

 

「え?『退屈だから外の写真を撮って来て』だって?」

 

くるるんは別にそんな事言ってないが、ローラが外へ出る為の口実を作ろうとする

 

「もうしょうがないわね〜!ちょっと人間いいかしら?」

 

ローラはアクアポットを掛けてる帝に声を掛ける

 

『どうした?』

 

「くるるんが外の写真を撮って来て欲しいから〜……お願い」

 

ローラは目元を潤わせながら上目遣いでお願いする

 

まなつ達なら駄目の一言で片付けるが

 

「よし分かった」

 

ローラの魅力という罠に当然の如く引っ掛かり、外に出してあげる事にした

 

帝の背中に隠れながら、頭に少し膨らみのある胸を乗せてアクアポットの構える

 

「ヤバい、ローラの胸が俺の頭の上に!」

 

「はいはい揺らさないの」

 

2、3枚写真を撮って確認する。まなつ達の笑顔が綺麗に良く撮れていた

 

「…何よ。そんなに砂遊びが楽しい訳?」

 

まなつ達が楽しく作業するのを見て寂しさを感じたのか、ボソリと呟く

 

「ローラ寂しいのか?」

 

「な、何でそうなるのよ!」

 

「ご飯をおわずけにされた犬みたいだったから」

 

「そんなの知らないわよ!!」

 

話してると、まなつ達が何か悩んでるのが気になって近付く。

ローラも急いでポットの中へと戻る

 

「何悩んでんだ?」

 

「ジュゴンのヒレってどんな形だっけ?」

 

「答えたいが俺が知ってると思うか?」

 

「わたしのを見なさいよ!ほら、人魚の世界じゃ常識なんだから」

 

首に掛けてるアクアポットを激しく揺らしながら、ローラが自分の尾鰭をお手本として見る様に言う

 

「…こうかな?」

 

「そうじゃないってば!」

 

「えぇ…難しいよ」

 

「もういい、見てらんないわ」

 

急に拗ね始めて、帝の首を引き摺りながら何処かへ飛んで行ってしまった

 

「ローラ、首締まってる!死ぬ!」

 

「そのまま死になさい」

 

「酷!?」

 

そんなこんなで時間は過ぎて行く

 

夕方となり作業を一度止めにして、明日またやる事となった

 

現状、どの部活のサンドアートは上々といった仕上がり。

この調子なら明日には良い作品が完成出来ると皆んなが思っていた

 

 

 

 

 

////////

 

しかし次の日、作業の続きをしていた所で大雨に見舞われた

 

「すぐ止むといいんだけど…」

 

「天気予報では晴れだったのにな」

 

「このままじゃ、サンドアートが崩れちゃうよ」

 

雨が次第に強くなっていく。それを見て、他の人の表情から不安が溢れ出す

 

「ッ!」

 

「おいまなつ!」

 

一目散にまなつが駆け出した。まなつがやろうとしてる事はすぐに分かる。

しかし、雨を避けようと日傘で対処しようにも風で飛ばされて使い物にならない

 

傘で姿が見えなくなったまなつだが、少しすると何処へ飛び出して行った

 

「まなつどうしたんだろう?」

 

さんごが疑問に思ってると、美術部のサンドアートが崩れ始めた

 

「早く手を打たないと…」

 

頭を悩ませてると、大きな物を抱えてまなつが戻って来た

 

「あれって確か…」

 

帝はまなつが手にしてる物に心当たりがある

 

それは昨日、空でパラグライダーが使用していたパラシュートだった。

それを被せて雨を防ごうとする

 

「わたし達も手伝うぞ!」

 

あすかの言葉で全員が雨風防げる様に、まなつの手伝いをしてサンドアートを覆い隠す

 

 

 

少し離れた場所では、その様子をオッカマーが見ていた

 

「あらまぁ、やる気のある事をするわねぇ〜。そういうの見ると、壊したくなるのが性なのよ!」

 

 

「出番よ──ゼンゼンヤラネーダ!」

 

近くにあるテトラポッドを媒体として、ゼンゼンヤラネーダを生み出した

 

 

 

「「「「ゲッ!」」」」

 

帝、さんご、みのり、ローラの4人はオッカマーを見てそう言葉を溢した

 

「どうした皆んな?」

 

「あらぁ!随分見ない間に可愛い娘も一人増えたのね……じゅるり」

 

「ひっ!」

 

あすかもオッカマーの言動で悪寒が走る

 

「皆んな変身だよ!」

 

 

 

「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」

 

「「「「レッツメイク!」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

 

「雨にも負けない!」

 

「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」」」

 

 

「エモーショナルスタート!」

 

『GENIUS!』

 

 

 

「ヤラネーダ!」

 

ローリングしながら向かって来たが、それを全員でジャンプで避けた。

そしてすくさま立ち上がり、ポッドの一部を飛ばして間髪入れず攻撃する

 

『ぺけ!』

 

「ハァッ!」

 

コーラルは防御、帝は蹴り返して防いだ

 

「よし今だ!」

 

フラミンゴはチャンスと思い懐に一気に走る

 

「ヤラネーダ!」

 

空中へ跳び出した時、それに合わせてまたもポッドが射出される

 

「危な!?」

 

何とか体を捻ってギリギリで避ける

 

「サマー!」

 

「ぐぇ!?」

 

「コーラル!」

 

「キャッ!」

 

帝はサマーの首根っこを掴み、パパイアはコーラルの腕を引いて危機を救った

 

「ヤラネーダ」

 

全員が一息ついた時、ヤラネーダはポットを射出した状態からコマの様に回りだした

 

『ぺけ!』

 

「コーラル頑張って!」

 

「う、うぅ…きゃあ!」

 

回転攻撃に耐え切れず、コーラルとパパイアはなす術なく吹き飛ばされる

 

そのままサマーを抱える帝へと進む

 

「帝早く逃げて〜!!」

 

「無茶言うな!……サマーを捨てれば早く逃げれるぞ?」

 

「それだけは嫌だ!!」

 

「うぅ…そうだ!」

 

倒れていたパパイアからこの状況の打開策を思い付いた

 

「サンドアートみたいに固めればいいのよ!」

 

「「「オーライ!」」」

 

『キングハンド』

 

『GENIUS!』

 

『NATURAE!』

 

帝が手を付くと、地面から幾つもの水柱が立つ

 

「いっくよ!おりゃぁぁぁ!!」

 

「コーラルも!」

 

「うん!」

 

サマーが砂浜の砂を、帝とが程度良く水柱を使って砂を固める

 

「や、ヤラネーダ…」

 

「あらやだ、ヤラネーダが固まっちゃったじゃないの!?」

 

「後は任せて!」

 

仕上げにパパイアとフラミンゴが形を整え、ゼンゼンヤラネーダを使ってのくるるんのサンドアートが完成した

 

「今だよローラ!」

 

「オーライ!」

 

 

「マーメイドアクアポット!サーチ!」

 

「赤!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

 

「ハートカルテットリング!」

 

「とびだせ!元気なハート!」

 

「やさしいハート!」

 

「かしこいハート!」

 

「燃え立つハート!」

 

「ハートドキドキ」

 

「「「ドッキング!」」」

 

「「「「プリキュア !ミックストロピカル!」」」」

 

 

「「「「ビクトリー!」」」」

 

 

 

「私も硬くて、太くて、たくましいサンドアートを作ろうかしらねぇ?」

 

 

 

 

 

////////

 

あとまわしの魔女を追い返した帝達。

雨も止み、サンドアート大会は再開

 

皆順調に作り出し、投票の結果が発表された

 

「投票の結果、あおぞら中学部活対抗サンドアート大会優勝は『美術部』に決定です!」

 

 

 

 

 

「はぁ…」

 

「どうしたんだローラ?」

 

後片付けの最中、首に掛けてるアクアポットから溜め息を吐くのが聴こえた

 

「やっぱり寂しかったのか?」

 

「だ〜か〜ら〜…」

 

「さっきまなつが言ってたぞ。ローラも一緒に出来る部活をしようって」

 

「別にわたし部活なんて…」

 

「意地張んなくていいと思うぞ。俺も、ローラと一緒に部活やってみたいんだ」

 

「そう………ありがと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

素直な言葉を言ってくれて、帝は少し微笑むのであった




今週は後2話投稿予定です……予定ですよ!!期待はしないで下さい!!


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第24話 校則なんてものは破る為にある!

横になる度に寝落ちして中々書かれなかった!!

ではスタート!


「この前のサンドアート結構絶賛だったな」

 

「うん、学校新聞でも取り上げられていたからね!」

 

「この勢いで次の部活も頑張るぞ〜!」

 

先日のサンドアート大会が予想以上に反響があったらしく、学校新聞でも取り上げられて一気にトロピカる部の存在が公になってきた

 

「そんな訳で考えて来ました次の部活!」

 

まなつが取り出したのはスケートボードだった

 

「掃除してたら見つけたの!スケボー部良くない?」

 

「あおぞら市でスケボーが出来る場所なんてあったか?……っとあすか先輩か?」

 

トロピカる部の扉でノック音が聴こえた

 

しかし、入って来た人物はあすかでは無く、別の人物だった

 

「風紀委員長の『角田正美』です。部室を調べさせてもらいます」

 

「「はへ?」」

 

帝とまなつは突然の事で素っ頓狂な声を出す。

 

「ふぅ…危なかった」

 

ローラもあすかと違うと分かって、ギリギリでアクアポットに入る事になった

 

「校則その十八『校内による風紀委員の持ち物の検査は許可される』」

 

更に風紀委員の人達がゾロゾロと入室して来た。

どうやらトロピカる部に拒否権は無いようだ

 

「待って下さい。検査の理由を教えて下さい」

 

「そうだそうだ!職権濫用だ!」

 

「帝君、それちょっと違うかも」

 

急な事で動揺する後輩思って、先輩であるみのりが待ったを掛ける

 

「真相を突き止める為です。学校を騒がせてる人魚についてです!」

 

「に、人魚…!?」

 

その場に居る全員がビクつく

 

学校を騒がせてる人魚、というより人魚はローラしかいない。

そのローラを調べる為の調査だったのだ

 

帝達は見つからないか、ハラハラしながら風紀委員の持ち物検査を了承したのだった

 

 

 

 

 

////////

 

「ごめん遅くなった…これ一体どうしたんだ!?」

 

あすかがやっと部室に来たと思ったら、荒れた部室を見て驚いた

 

「風紀委員が人魚騒ぎについて調べに来て、部屋中検査しに来た…」

 

「当然見つかるなんてヘマはしなかったわ」

 

「でも、突然だったから驚いたよね」

 

「せめてアポを取って来てから来いよ。やっぱり職権濫用だ!」

 

「校則的には問題無いわ。校則その十八『校内による風紀委員の持ち物検査は許可されてる』。だから職権濫用じゃないよ」

 

事情を聞いたあすかは我慢の限界か、風紀委員会に乗り込むと言い出した。

帝達もちゃんと話を聞く為に付いて行く事にした

 

 

 

 

 

「いきなり何だ?どういうつもりだ?まさか、ウチの部室に人魚が居るとでも言うのか?」

 

「居るんだけど…」

 

まなつのポケットから、居ない事にされて不服なローラが小さな声で呟いた

 

「当然…居る訳無いでしょう」

 

それは全く別の答えが返って来た

 

「人魚が本当に居る筈なんて有り得ません」

 

「居るんだけど!」

 

「まぁまぁ。じゃあ何で検査なんて?」

 

帝はローラを宥めながら、全く信じて無いのに調べようとする理由を訊く

 

「近頃、人魚の目撃情報が数多く寄せられています。タチの悪いイタズラに過ぎません。我々風紀委員はそれを止めるべく調査をしたまで」

 

正美は、壁に掛けてあるカーテンを広げながら納得のいく話を続ける

 

「勿論、トロピカる部だけでは無くて全ての部活をね」

 

開かれたカーテンには棚があり、ぎっしりと物が入った収納場が保管されてあった

 

「うわ、何だこれ?」

 

「これらは、生徒が学校に持ち込んだ校則違反の品々です」

 

ゲームに漫画、パーティーグッズに衣装が などが並んであった

 

「校則その十九『校則違反の恐れがある物を風紀委員が見つけた場合、預かり、違反であるか学校側に確認して貰う』」

 

「皆さんにより良い学校生活を送って貰う為に、わたしは心を鬼にしてこの学校の風紀を取り締まっているのです」

 

「はいはい!質問です!」

 

「何でしょう?」

 

「コレは違反でしょか!?」

 

そう言って帝はさんごのスカート掴んで言う。正確にはスカートに付いてるフリルの事だ

 

「きゃっ!帝君!?」

 

「コレはもう違反ですよね?なら今すぐに脱がせないといけない。さぁさんご、今すぐスカートを脱いで、露になった下半身をとくと俺の目に焼き付けさせて貰おう──」

 

脱がそうとする帝に、あすかはゲンコツを食らわせて大人しくさせた

 

さんごも顔を赤くしてスカートを整える

 

「…まぁ、ギリギリ許容範囲って事にします」

 

「チッ、そこは許すなよ」

 

「帝、全部聞こえてるぞ」

 

またもあすかに叩かれて、風紀委員会室を後にした

 

 

 

 

 

////////

 

そして次の日も、何故かトロピカる部の人達だけ持ち物検査をされた

 

昨日に続き今日も検査。あすかの怒りは更に沸騰する

 

そして調査がしてるが為か、学校中人魚の噂で持ち切りだった

 

最終的に、正美も人魚を見たという目撃情報が学校新聞に載ってしまう

 

「ローラ、何処かで見つかったのか?」

 

「ま、まぁ寸前で逃げ切れたわよ!」

 

(((ダメだこりゃあ…)))

 

「あの、無闇に外に出ない方が!」

 

部室の扉にノック音がした

 

「風紀委員です」

 

外から聞こえるのは正美の声だ

 

大慌てでローラを隠そうと必死になってると

 

「うぎゃあぁぁぁ!?」

 

焦るまなつが、スケートボードに足を置いてひっくり返る。その時、アクアポットもその拍子で落としてしまった

 

「は、早くアクアポットに──」

 

「駄目だローラ時間が無い!ボードの裏側に引っ付いて隠れてろ!」

 

悠長に拾って隠れてる暇は無い。

帝はローラを蹴飛ばして、ボードの裏側に隠れる様に促した

 

ローラが隠れ終えると同時に入室した

 

「あ、やば!」

 

帝がアクアポットを急いで回収しようとしたが、先に正美に取られてしまう

 

「あ、あの〜返してくれは…」

 

「没収です」

 

「あ〜!!堪忍してや〜!!」

 

まなつが這いずって泣き叫ぶも、正美は気にせずアクアポットを持ち去ったのだ

 

 

 

「アクアポットを持って行かれた!?」

 

「風紀委員が校則違反だって」

 

「あ、これでローラの家が無くなった。てことは、俺の家で過ごすのか。激しく、忘れられない夜にしてやるよ」

 

「ねぇまなつ、この汚物捨ててもいいよね?」

 

「…風紀委員の所に行って来る!」

 

もう我慢の限界。ダッシュで風紀委員の所へ行こうと部室と出た時、街の方でヤラネーダが現れたのを目撃した

 

「またアイツら…!」

 

「行って!わたしなら大丈夫。このわたしが見つかるヘマなんてする訳無いでしょう」

 

「でも今はアクアポットが無いんだよ!」

 

「だからこそ、皆んなのやる気が奪われる前にアイツらをやっつけて」

 

「…うん!」

 

ローラを信じて、まなつ達はヤラネーダが現れた場所へと向かう

 

「人間、貴方はわたしと来るのよ」

 

「え、何で?」

 

「貴方がわたしを担がないと」

 

「人間以下の扱いになってるのはどうなんだ?」

 

「つべこべ言わず取り返しに行くわよ!くるるんも来なさい」

 

 

 

 

 

ローラとくるるんをおぶさりながら、風紀委員室に向かう

 

「ローラ、また少し胸が大きくなった?」

 

「くだらない事言ってないで早く!」

 

そしてようやく、目的地である風紀委員室に潜入する事が出来た

 

「これ…じゃないわ」

 

「一体何処に置いたんだ?」

 

探しても探しても見つからない。早くしないと、ヤラネーダを相手にしてるまなつ達もそう長くは保たない

 

「う〜……に、人間!?」

 

偶々手にした物のが、入り口の扉を反射で写していた。

その時、扉が微かに動いた事をローラは見逃さなかった

 

「ど、どうしよう!」

 

「そんな事言われても!」

 

2人してオロオロとしてると

 

「「あ」」

 

棚に掛けてある学校の制服を目にした。その制服は、ロングスカートで校則違反の為没収されてた物。

拝借して、これで誤魔化すしか無いと踏んだ

 

バタバタとしながらも帝はローラに着させて、着替えが終わると同時に誰かが入って来た

 

「…誰?」

 

「ど、どうも〜」

 

入って来たのはまたも正美

 

長袖の制服を着てるので腕のヒレは隠せれて、問題である下半身は校則違反のロングスカートで隠せれてる。

後は尾鰭に靴を上手く履かせて、根性で尾鰭で仁王立ちした

 

「人魚じゃない…」

 

「人魚?人魚なんて──いる訳ないでしょう」

 

自分が人魚であるが、心苦しが今はこの状況を何とかする為嘘をついた

 

「そ、そうよね。ところでどなた?何故此処に?」

 

「え、え〜っと…」

 

咄嗟には言い訳は出てこない。

しかし、帝はローラを着替えさせる時点でどう対処するかの解答を考えていた

 

「先日風紀委員室に来た時、落とし物をしたので一緒に探してくれてるんですよ」

 

「そうなの」

 

その時、校内放送で最終下校時間のお知らせがあった

 

「時間よ。早く帰りましょう」

 

「え、えぇ」

 

早くこの場所から立ち去りたいのは山々だが、まだ肝心なアクアポットを見つけれてないのだ

 

「…あ、あった!」

 

悪あがきの様に探してると棚の上に置いてある事に気付いた

 

「よし、くるるん!」

 

没収品に潜んでいたくるるんは、何とか気付かれずにアクアポットに戻る事が出来た

 

おぼつかない足取りで風紀委員室からやっと出れた

 

「じゃあわたしはこれで!」

 

「早く帰ろうぜマイハニー」

 

「誰がマイハニーよ」

 

「…待って」

 

適当な会話をしながら正美から逃げようとしたが、何故か呼び止められてしまった

 

「そのスカートの丈、校則違反です」

 

無理もない。何せ校則違反の没収品から拝借した物だ。

言われない筈もない

 

2人は冷や汗をかきながら目を合わせると

 

「逃げろ!」

 

帝はローラをお姫様抱っこして逃走を図った

 

「ま、待ちなさい!」

 

当然の如く正美は追い掛ける。しかし風紀委員という立ち場が仇となった彼女は、廊下を走らないという校則を守り、早歩きで追い掛ける

 

「あの人間まだ追い掛けて来るわよ!もっと早く走りなさい!」

 

「だってローラ重い!」

 

「失礼ね!!」

 

「ああもう仕方ない!」

 

帝はオーシャンステッキを取り出して能力を発動させる

 

『NATURAE!』

 

「あ、違う!」

 

『NATURAE!』

 

「またか!?」

 

「ちょっと何やってんのよ!」

 

ステッキを操作しながら走ってる為か、適当に移動した結果窓も何も無い場所へと追い込まれてしまう

 

『GENIUS!』

 

『GENIUS!』

 

『NATURAE!』

 

「いや確率!」

 

「まどろっこしいわね!キングハンドでも使えば済む話じゃない!!」

 

「あ」

 

『キングハンド』

 

言われて気付いたのか、今度はキングハンドを使ってルーレットを回す

 

『NATURAE!』

 

『GENIUS!』

 

「…チッ」

 

ローラの静かな怒りが溢れた

 

正美の足が見えた時

 

『FANTOME!』

 

『NATURAE!』

 

「よし来た!!」

 

帝は壁に手を当ててそのままローラと一緒にすり抜けた

 

「さ、流石に危なかった…」

 

「に、人間の運無さ過ぎ…」

 

 

 

 

 

////////

 

一方でサマー達は苦戦を強いられていた。アクアポットが無い以上、迂闊に浄化は出来ない。

ローラが言うに、もしやる気を奪い返さず浄化した場合は元に戻らないとの事

 

それまで防御一辺倒で戦闘するも時間の問題

 

「どうすれば…」

 

 

「待ちなさい!」

 

 

「ローラ!?」

 

「「ローラが立ってる!?」」

 

何とかローラが間に合った

 

「はぁ…はぁ…いくらGENIUSですっ飛ばして来たけど、やっぱキツイ!」

 

制服姿で仁王立ちするローラの側では、帝が息を切らしていた

 

「さぁ行くわよ!」

 

 

「マーメイドアクアポット!サーチ!」

 

「青!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

 

「ハートカルテットリング!」

 

「とびだせ!元気なハート!」

 

「やさしいハート!」

 

「かしこいハート!」

 

「燃え立つハート!」

 

「ハートドキドキ」

 

「「「ドッキング!」」」

 

「「「「プリキュア !ミックストロピカル!」」」」

 

 

「「「「ビクトリー!」」」」

 

 

 

「俺の出番少なくないか?」

 

ローラに振り回されたせいか、大した活躍も無く浄化が済んだ

 

「でもお疲れ様帝君」

 

「労ってくれるのはコーラルだけだよ」

 

「よしよし」

 

「甘えてんじゃないわよ」

 

そんなローラの辛口を無視してコーラルに癒される帝だった

 

 

 

 

 

////////

 

次の日

 

「ゲッ!風紀委員…」

 

トロピカる部の面々で登校している時、しつこくも正美率いる風紀委員達が待ち構えていた

 

「昨日人魚を目撃しました。そして校則違反の制服を着た女子生徒が突然消えました。貴方達が関係しているのでは?」

 

「突然?」

 

「帝君何したの?」

 

「あ〜、オーシャンステッキで逃げたんだよ…」

 

「それじゃあ余計に怪しまれるよ…」

 

みのり、さんご、帝が昨日の事についてヒソヒソと説明していた

 

「その人魚とか、女子生徒だとか、わたし達が関係してるって証拠はあるの?」

 

しかしここは、変に誤魔化すよりも逆にあすかは強気に出る

 

「ありません…しかし、昨日預かった水色の瓶が無くなっていました。貴方達の仕業ですね?」

 

「ああ、確かに返して貰った」

 

多少なりと誤魔化すのかと思いきや、あすかは堂々と取り返したと発言した

 

「堂々と言ってくれましたね。校則十九により風紀委員が没収します」

 

「冗談じゃない。アレはわたし達の大切な物なんだ」

 

「ですから校則違反だと言っているでしょう!」

 

「校則は問題無い筈。校則三十三『部活動で使用する物は、顧問の許可を得て校内に持ち込んでも良い』」

 

「残念だったな。あの後先生に頼んで許可を取ってくれたんだ。いや〜、みのりん先輩がこの事に気付いて助かった」

 

取り返したとしても、また没収されるのがオチ。しかしそうさせない為、みのりが生徒手帳を何度も読み直して見つけてくれた穴

 

記述通りアクアポットが問題無く学校へと持ち込める事に

 

「だ、だけど!」

 

「委員長、このところ委員会を頑張り過ぎてたから疲れていたかも知れませんね」

 

「「うんうん」」

 

「行きましょう。風紀委員が遅刻なんて許されませんし」

 

他の風紀委員の人達に疲れてるのだのと言われて、そのまま渋々校内へと戻って行った

 

「これで一件落着!わたしにはあの制服もあるから、いつでも外を歩き回れるわ!」

 

「あの制服なら返したぞ」

 

「は?」

 

例の制服で自由に外へ出れるかと思いきや、帝が既に返したと言う

 

「いや流石に持って行ったら不味いだろ」

 

「で、でも!人間だってわたしの制服姿を見たいんじゃ…」

 

「アクアポットの中とはいえ、学校に来るなら問題の芽は摘み取らないとな」

 

「「「「帝(君)がまともな事を言ってる…!」」」」

 

「おいコラ」

 

「そんな〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嘆かわしい声が朝から響くのであった




正気を疑うレベルの確率。どうしたものか…

ここまての拝読ありがとうございました


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第25話 わたしの幼馴染みが過保護な件について

今更ですが、目標にしていたお気に入り30件突破しました!
感想も含めてありがとうございます
次の目的は50件です

ではスタート!


「ま゛〜な゛〜つ゛〜!」

 

「ちょちょ!どうしたの帝!?」

 

朝の校門前でまなつは、鼻水垂らして泣く帝を目にして驚く

 

「さ゛ん゛こ゛か゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」

 

「さんごはどうしたの?てか、今日は一緒じゃないんだね?」

 

「そ、それが…」

 

 

 

 

 

////////

 

それは朝の出来事だった

 

『──み、みかど、くん…』

 

『──しっかりしろさんご!』

 

『──もう無理、みたい…』

 

『──何言ってるんだ諦めるな!』

 

『──後の事、よ、よろしく…ね…ぇ……ガクリ』

 

『──さ、さんご?おいさんご!さんごオォォォォォォォォ!!!!』

 

 

 

 

 

/////////

 

「うおぉぉぉぉ!!さんごぉぉぉぉ!!」

 

帝が校門で叫ぶので、登校してる周りの生徒がジロジロと注目し始める

 

「結局さんごがどうしたの?」

 

「……37.3℃の風邪……さんごオォォォッてえぇぇ??」

 

割と叫ぶ程でも無く、しかも熱にあるにしても微熱程度。

まなつは無視して校内へと進む

 

「ちょっと!さんごが熱を出したんだよ!!」

 

「いや、それくらいなら2、3日寝とけば大丈夫でしょ?」

 

「そんな事言って…さんごの表情は今にも死にそうだったんだぞ!!この薄情者め!!」

 

「はいはい分かったから!じゃあ今日の部活動はさんごお見舞いで良い?」

 

「良し、それなら放課後校門前で」

 

朝の内から放課後の部活動の内容が決まった

 

 

 

 

 

////////

 

「って事があったんですよ〜」

 

そして放課後、まなつは先輩2人に説明しながら校門前まで移動する

 

「それ絶対帝のせいで悪化しただろ…」

 

「でも心配だしお見舞いは良い」

 

「そろそろ校門前だ……何してんだアイツ?」

 

あすかが見たのは帝……の筈。

何故が紫色のハッピを羽織り背中には「涼村 さんご♡命」と刺繍されていた。同様に鉢巻きや、更には2振りの旗まで担いでいた

 

「思ったより遅かったじゃないか」

 

「あ、あぁ悪い。ちょっと先生に頼まれ事されてな──」

 

「黙りやがれクソガキがァ!!」

 

「…え?」

 

突然の暴言にあすかは固まってしまう

 

「いいか、これは遊びじゃねぇんだよ。さんごたん(・・・・・)の生命に関わる事なんだ。そんな浮かれた調子でお見舞いするくらいなら今すぐ帰れ!!」

 

「「「さんご、たん(・・)?」」」

 

たかがお見舞いごとで、ここまで本気になるとは思わなかった

 

「すみませんわたしの責任です」

 

そう言ってまなつが前に出る

 

しかも服装が早変わり

 

旗は持っていないものの、いつの間にか帝と同じ服装に着替えていた

 

「まなついつの間に…」

 

アクアポットの中とはいえ、まなつの鞄に入っていたローラでさえ気付かなかった

 

「さんご……いえ、さんごたんの事を思っていたら足が動かなくて」

 

「ならお前は帰るか?」

 

「いえ!わたしも…っ…さんごたんのお見舞いに行きたいです…!さんごたんの側に居たいのです!」

 

「分かってるじゃねぇか…だったら次からは気を付けろ。だが罰は受けて貰う!」

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

帝とまなつの瞳は涙を流していた。

あすか達は「一体何を見させられているんだ?」といった表情をしていた

 

「他の奴等もよく聞け。今回のお見舞いは死者が出る可能性もある。一番危険なのは、さんごたんの上気した顔を見て萌え死ぬ事」

 

校門前で大声で叫んでいる。勿論だが、下校する生徒、校門前を通る一般人達にも耳に届いている

 

 

「あの人達何やってるの?」

 

「あの人達って確か、この前新聞に載っていたトロピカる部だよね?」

 

「ママ〜、あの人何言ってるの?」

 

「しっ!見ちゃダメよ!」

 

 

という様な声も聞こえて来るが、あすか達は聞こえないフリをして紛らわそうとする

 

「だがそれでも!それは価値のある至高の死に様だ!さんごたんの顔を見て死ぬなら本望!さんごたんの為に命を燃やせ!さんごたんの笑顔を勝ち取るのだ!分かったかァ!!?」

 

「イエス、さんごたん!」

 

「声が小さい!」

 

「イエス!さんごたん!!」

 

「もっと腹から!!」

 

「イエス!!さんごたん!!!」

 

「目指すはさんごたんの家!行くぞォォ!!」

 

 

 

 

 

////////

 

「ゲホッ!ゲホッ!」

 

「大丈夫さんご?」

 

「うん、ちょっと咳が出ただけ」

 

場所は変わってさんご部屋。そこでは今もみゆきに看病して貰ってる

 

「何かあったら言ってね」

 

「ありがとうお母さん」

 

扉が閉まると、さんごはリラックスする

 

「そういえばもう学校が終わった時間だ。皆んなどうしてるのかなぁ…」

 

布団を被ると同時に部屋の扉が勢い良く開かれた

 

「「さんごたん!!」」

 

「キャアァァ!!?」

 

突然の事でさんごは悲鳴を上げる

 

「み、帝君、まなつどうしたの!?」

 

「さんご、気にしていたら身が保たないぞ」

 

「あすか先輩!?どうしたんですかそんな奴れた表情をして!?」

 

後から入って来てあすかとみのりの表情は死んでいた

 

「本当にどうしたんですか…?」

 

「それよりも!さんごたん大丈夫かい?」

 

「帝君顔が近い…」

 

帝に対して甘いさんごも、流石に引いており距離を置こうとする

 

「ゲホッ…」

 

咳き込んだせいで、少々唾が帝の顔に掛かる

 

「あ、ごめんね。今ティッシュで──」

 

汚くなった顔を拭こうとしたのだが、帝はその場で倒れた

 

「帝君!?」

 

「隊長!!」

 

「え、隊長!?」

 

さんごが隣で驚くのを無視しながら、まなつは帝を抱き上げる

 

「お、俺はもうダメだ…まなつ、さんごたんの事を頼んだ…ぞ……ガクリ」

 

「隊長ォォォォォ!!!」

 

「悪いさんご、コイツ追い出す。後、果物買って来たから剥いで来るよ」

 

あすかは帝の襟首を掴み、引き摺りながら退場していった

 

「さんご体調は大丈夫?」

 

「急に切り替えるのやめてほしいな…」

 

帝が居なくなった事でまなつもいつも通りに接する

 

「お水持って来ようか?」

 

「お気遣いありがとうございますみのりん先輩。大丈夫です」

 

「…わたしの体で冷やす?」

 

「ローラもありがとう。気持ちだけ受け取るね」

 

みのりだけではなく、ローラも今回ばかりはさんごに気を遣っている

 

「思ってたより元気そうね。人間がここまで心配する必要性無かったね」

 

「朝出て行く前にも結構心配してたけど、帝君はローラ達に何て言ってたの?」

 

ローラは朝に聞いた帝の説明をそのままさんごに伝えた

 

「うん、わたしそんな事一言も言ってないよ」

 

どうやらさんごを心配するあまり、朝の話はかなり盛り込んでいたらしい

 

「でも帝君らしい」

 

「少しオーバーな気もするけど」

 

「帝君はいつだって全力でわたしの事を思っているんです。ううん、わたしだけじゃない。皆んなに対していつも全力で心配してるだけ」

 

「まぁ確かに帝って、何やかんやわたし達の事よく見てるよね?」

 

「うん///」

 

丁度良いタイミングで、林檎を剥ぎ終わった帝とあすかが戻って来た

 

「さんご〜!」

 

「戻って来た」

 

「ありがとう。でも、これ以上迷惑はかけられないから…」

 

「帰れって言うんだろ?分かった」

 

帝は皿を置いて荷物を纏める。それに伴い、まなつ達も帰り支度する

 

「じゃあなさんご」

 

「待ってるわ」

 

「わたしが心配してるのよ。さっさと治しなさいよ」

 

「学校で待ってるね!」

 

「またな」

 

「うん!ありがとう皆んな!」

 

 

 

 

 

////////

 

それから2日が経つ

 

「行ってきます」

 

いつも通り帝が玄関の扉を開けると

 

「帝君おはよう!」

 

「おはようさんご」

 

「早く行こう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手を引いて、さんごが学校に連れて行くのだった




終始主人公とまなつがノリノリだった。てか風邪如きでうるさいわ

ここまでの拝読ありがとうございました


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第26話 事故しかないトロピカるな放送!

こんな感じでしょうか

ではスタート!


「へぇ、それでお昼の校内放送の見学をか」

 

「そうなの!」

 

お手洗いから帰る途中、廊下で出会したまなつが校内放送の見学をすると説明してくれた

 

「いつからだ?」

 

「今日から早速!」

 

「放送委員も中々だな…」

 

「帝もどう?」

 

「…いつも思うが俺はトロピカる部じゃないぞ。あくまで手伝い、ボランティア、派遣社員としてやってるだけだ」

 

「え〜!」

 

残念そうにまなつは言葉を漏らす

 

 

 

 

 

////////

 

そしてお昼休み

 

帝は珍しくも購買でパンを買ってお昼を済ますつもり。

そして放送する時間を確認する

 

(そろそろ時間だな)

 

『こんにちは、小森いずみです。皆さんは駅前にある「ジャンボカフェ」は知っていますか?』

 

帝が気にしてたタイミングで放送が流れ始めた

 

『今日は、わたしの…オススメの曲を……』

 

話が進んで音楽を掛けようとした時、司会者の様子がおかしくなっていた

 

最終的には

 

「あれ?何も言わなくなった」

 

バックの音楽は聴こえるものの、いずみの声が全く聴こえなくなった

 

「何かあったのか?」

 

帝が心配してると冒頭部分が終わり音楽も止まった。

本来ならここから、本コーナーへと進むのだが、一体どうするつもりか教室のスピーカーをジッと観ながらパンを食べてると

 

『み゛な゛さ゛〜゛ん゛!!こ゛〜゛ん゛に゛ち゛わ゛ぁ゛ぁ゛〜゛〜゛!!』

 

「ブッ!!?」

 

激しい音割れとハウリングが効いた声が学校中に鳴り響いた

 

当然、突然の不意打ちで驚かない人はいない。

帝も口にしていた飲み物を、前の人に向けて吹いてしまった

 

「ゲホッ!ゲホッ!わ、悪い!それよりも何でまなつ何だ!?」

 

『ああ、そうなんだ!これくらい?おっは〜〜!』

 

何やらマイクテストしてるらしいが、マイクは全て声を拾ってる為ダダ漏れもいいところだ

 

最早不安しか無い放送に帝が肩を震わせている

 

『OK!え〜っと、次の曲は……ねぇコレ何て読むの?』

 

『ひまわり』

 

『へぇ〜そうなんだ!』

 

『漢字ちゃんと勉強した方が良いぞ』

 

まなつ以外にも、さんごとあすかの声も聴こえる。

どうやら、マイクと向かって喋ってるのはこの3人だ

 

しかし頭から放送事故だ

 

『この今日は…入る…じゃなくて何とか雲……』

 

(入るに何とか雲……入道雲の事か?)

 

教室で聴く帝は台本など無いが、まなつが詰まってるであろう漢字を言い当てている

 

もう放送事故と言うには生易しい域を超えてる

 

漢字が読めなくて止まってると、唐突にまなつは話題を切り替えて喋り出す

 

『ごめん!台本が難しいので……喋りま〜す!』

 

『『えぇ!?』』

 

『わたし、一年五組の夏海まなつ!トロピカる部で、いつもトロピカってる事やってま〜す!』

 

台本を無視してのやりたい放題

 

まなつがそのまま話し出しても止まる事は無い。

どうやらそのまま続行するみたいだ

 

『じゃあメンバー紹介しま〜す!先ずは〜さんご!』

 

『は、はい!え〜と、涼村さんごです。コスメが大好きで…ん?』

 

「ん?」

 

急に会話が途切れた事に帝は首を傾げてると

 

『ひぃ!む、虫ぃ!!』

 

何か虫でも見つけたのか、裏返る声を出してさんごは怯えていた

 

「あ」

 

帝は、さんごが物凄い虫嫌いなのを知っている為、この後の展開も読めた

 

「はぁ…」

 

帝は食べ掛けのパンと未開封の分を持って、教室から出て行った

 

廊下で歩いてる間にも放送に耳を傾けていた

 

『そこ!黒いのぉ〜!』

 

『うわぁ、何でこんな所に?』

 

『何処どこ?』

 

『あっち!シャカシャカしてる!!』

 

内容から察するに、黒くてテカテカしてすばしっこい奴みたいだ

 

『まなつ後ろ!』

 

『見つけた!うりゃあーー!!』

 

『あ!さんごの顔に張り付いた!!』

 

『ピギャぁぁぁぁああ!!!』

 

『酷い…』

 

『おのれ〜よくもさんごを!ほりゃ!とりゃ!』

 

みのりも加わり放送室では大混乱

 

 

 

 

 

騒動が収まると今度はローラの声がした

 

『貴女達の放送を聴かせて貰ったわ。ハッキリ言って全然駄目。騒がしいだけじゃない』

 

ローラが喋り始めた辺りで、帝は放送室前に辿り着いた

 

「お邪魔します」

 

「あ、帝」

 

「どんな状況で、みのりん先輩?」

 

「もうすぐお悩み相談のコーナー。でも、少し時間があるの」

 

帝とみのりが話してると、スタジオ内のまなつが帝の存在に気付いた

 

『あ、帝!来てくれたんだ!こっちにおいで〜!』

 

「今のも流れてる」

 

「だろうな」

 

『ねぇ帝も手伝ってよ〜!』

 

手伝いたくは無いが、このまま騒がれても嫌な気分。

帝は素直に中に入る事にした

 

「お前ら、完全にバカ丸出しだぞ?」

 

「そんな事はないよ〜……多分」

 

「まだお悩み相談まで時間あるだろ?早く食い潰しておけよ」

 

「それが何話そうか相談してて」

 

「…仕方ない」

 

帝はローラの隣へ座りヘッドホンを付けてマイクを入れる

 

「俺が面白いトークするから」

 

「帝の面白ろトークか…興味ありだな」

 

あすかも帝に任せる事にした

 

「え〜っとそうだな……さんごが玩具の虫を見て漏らした事を話そうか」

 

「何でそうなるの!?」

 

「いや、さっき虫が出現したみたいだから」

 

「だからってわたしの変な話しないでよ!!」

 

髪の毛を逆立ちさせながら猛反対されたので、別の話題を探す事にする

 

「それならローラがこの前寝言で『帝好き』って言ってた事でも話そうか…」

 

「またそんな下らない事言って…ちょっと待って!わたしそんな事言っての!?嘘でしょ!?」

 

結局帝も参戦した結果、先程までよりも悪化しただけだった

 

 

 

 

 

少し休憩を挟んで最後のトークの準備をする

 

「トロピカる放送だったね!」

 

「凄いポジティブだな…」

 

「あんな感じて大丈夫?」

 

確認の為、もう1人の放送委員の「林田ゆきえ」に聞く

 

「台本とは違ったけど面白かったです!」

 

「当然よ」

 

「…皆んな」

 

みのりが窓の外を見てヤラネーダの存在に気付いた

 

「こんな時に」

 

「あの、どうかなされたんですか?」

 

全員が窓の外を見ている事に、ゆきえは不思議に思った

 

しかし答える訳にもいかない

 

「後はエンディングのフリートークだけです。どなたかお願い出来ますか?」

 

「それなら、エンディングトークはローラ!」

 

「良いわよ!任せなさい」

 

ローラは小さく頷き、まなつ達にヤラネーダの事を任せる様頼んだ

 

「林田さん、ローラを宜しく!」

 

まなつ達はバタバタしながら放送室を後にした

 

「俺も行くか」

 

「人間はわたしといるのよ」

 

「え、また!?」

 

「あの、何処に?」

 

ゆきえが心配するが、ローラはそれを引き止めてエンディングトークをしようと促した

 

スタジオには帝とローラは入り、ローラが最後の進行役を務める

 

「皆んな、破茶滅茶な放送だと思ってるでしょう?でも、終わり良ければ全て良しと言うじゃない。だから最後はわたしの歌を聴かせてあげるわ」

 

ローラはスタンドマイクの前に移動して歌い始める

 

その歌はとても綺麗で、聴いてる人を夢中にさせるそんな魅力に溢れていた歌だった

 

「なかよしのうた〜」

 

最後のフレーズを歌い切り放送は終了する

 

「では皆さんご機嫌様」

 

放送が終わり、帝とローラがスタジオから出て来た

 

「時間大丈夫だった?」

 

「はい、歌素晴らしいかったです!」

 

「良かった!それじゃあ人間行くわよ!」

 

ローラは帝の手を引いて、ぴょんぴょん飛び跳ねながら放送室を出て行った

 

「窓から飛び降りるぞ」

 

帝は窓を開けてローラを抱えてそのまま飛び降りた。

そして片手にはオーシャンステッキを持って能力を発動させて、まなつ達の元へと駆け付ける

 

 

 

 

 

////////

 

「しつこいぞ!良い加減失せろ!」

 

「嫌だもんね!ローラと帝は来る。それまで頑張る!」

 

サマーとチョンギーレが言い争いをしてる最中、それに割って入る様に帝とローラが降って来た

 

「悪い遅くなった」

 

「お待たせ!」

 

 

「マーメイドアクアポット!サーチ!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

「ったく片付けろヤラネーダ!」

 

「やらせるかよ」

 

『FANTOME!』

 

分身した帝2人が、拡声器型のヤラネーダが音を出す前に蹴り飛ばして阻止する

 

「奇声音しか出せないヤラネーダが調子に乗るな」

 

「おお〜、久し振りにその帝を見た気がする」

 

「今だ」

 

 

 

「ハートカルテットリング!」

 

「とびだせ!元気なハート!」

 

「やさしいハート!」

 

「かしこいハート!」

 

「燃え立つハート!」

 

「ハートドキドキ」

 

「「「ドッキング!」」」

 

「「「「プリキュア !ミックストロピカル!」」」」

 

 

「「「「ビクトリー!」」」」

 

 

 

 

 

////////

 

後日、放送委員の2人がトロピカる部に訪れた

 

「見て下さい。ローラさんの歌をもう一度聴きたいって投書いっぱい!」

 

「是非もう一度ローラさんに出演して欲しいの!」

 

「ローラさん何処に居るんですか?」

 

「えぇと…」

 

「それはだな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ローラの事を誤魔化すのに一苦労する、トロピカる部の面々だった




ヒープリ組みそろそろ出そうかなと考えております

ここまでの拝読ありがとうございました!


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第27話 ヒーリングっどにトロピカろう!!

唐突な前作コラボ!
8割程ヒーが占めてる

何故自分の作品とコラボしてるって?ぼっちだからね☆

ではスタート!


「あの、皆んなちょっといいかな?」

 

珍しくもさんごが皆んなを呼び掛けた

 

「急遽明日の休みの日に、紫苑お姉ちゃんがすこやか市の友達呼んだから遊ぼうって」

 

「その人って、この前わたし達を助けてくれた人だよな?」

 

「うん、歳も近いし共通の話題があるから絶対友達になれると言ってたの」

 

「「「共通の話題?」」」

 

まなつ、みのり、あすかは首を傾げる

 

「何だろな?」

 

「楽しみだな〜!ねぇ何処に行けばいいの?」

 

「一応わたしの家になってるの。2階なら皆んな入れると思うからって」

 

「分かったわ。じゃあ、わたし達はいつも通りさんごの所に行こうか」

 

「紫苑姉ちゃんの事だ。どうせ碌な友達じゃないんだろうな」

 

 

 

 

 

////////

 

次の日

 

とある駅で、4人の少女と1人の隻腕の男性に犬1匹が地図を見ていた

 

「紫苑のメモだと、Pretty Holicっていうコスメショップで待ち合わせだけど…ひなた場所分かる?」

 

「ちょい待ち蓮兄。今調べるから」

 

「コスメとはどんな物なのでしょうか?新しい体験に待ち遠しいです」

 

「ふわぁ〜!都会って感じ〜!」

 

「のどか、一応都会なんだけど…」

 

彼女達は「花寺のどか」「沢泉ちゆ」「平光ひなた」「風鈴アスミ」、そして「蒼咲蓮花」の5人はあおぞら市に来ていた

 

「あ…」

 

「どうしたののどか?」

 

「お手洗い行って来ても良いですか?」

 

「アタシも行きた〜い!」

 

のどかが小さく許可を取るのと、ひなたも手を挙げて自分もと主張する

 

「それじゃあ此処で待ってるから。迷子にならない様にね」

 

「大丈夫ですよ蓮花さん!」

 

「そうそう!アタシ達、そんな迷子になる年じゃないし〜!」

 

手を振ってのどかとひなたを見送る

 

「ねえちゆ」

 

「はい分かってます。絶対迷子になりますよ」

 

 

 

 

 

案の定なのか。蓮花とちゆの予感が的中した

 

「ひなたちゃん…」

 

「言うな。皆まで言うんじゃないのどかっち」

 

蓮花達と別れた場所へと戻ろうとしたのだが

 

「やっぱオレの言う通り、あそこを右に曲がるんだったんだよ」

 

「えぇ違うって!あの時の角を左に曲がれば正解だったんだよ!」

 

言い争うのは、ひなたとそのパートナーであるヒーリングアニマルの「ニャトラン」

 

「どっちも違うラビ…」

 

その様子に呆れてるのは、のどかのパートナーであるヒーリングアニマルの「ラビリン」だった

 

「ま、まぁまぁ2人共、もう一度お手洗いまで戻ってやり直そうよ」

 

のどかの提案で、お手洗いまで来た道に辿って帰ろうとするが

 

「「「「……」」」」

 

更に迷ってしまい、お手洗いの場所まで分からなくなってしまった

 

「どうしようのどかっち、アタシ達この迷宮を攻略して帰れるのかな?」

 

「わたし達帰れないの!?」

 

「何をどうしたらこんなに迷うラビ…?」

 

「そうだな…座して待つか?」

 

4人も居て迷子になるなんて誰が予想しただろうか。

いや、蓮花とちゆ達だけは予想していた

 

「蓮兄に連絡して何とかしもら──」

 

ひなたがスマホを操作して助けを呼ぼうとする時

 

「ツインテ少女の胸GET!」

 

「ピャぁぁぁぁああ!!」

 

ひなたの背後から、誰かに胸を鷲掴みされる

 

「なななななァァッッッ!!?!」

 

「フ…また柔らかな胸を揉んでしまった」

 

「ひなたちゃん……ひゃあ!?」

 

今度は、のどかのスカート正面から潜り込まれて中の匂いを嗅がれる

 

「フムフム……なぁ、さっきトイレしたばっかりぶべばッ!?」

 

のどかは条件反射で、その人物に膝蹴りを食らわす

 

「のどかっち逃げよ!!」

 

「うん!」

 

「待つラビィ!!あの生意気な奴をぶっ飛ばしてからじゃないとラビリンの気が済まないラビィィィィィ!!」

 

「ラビリン落ち着けって!」

 

ひなたはのどかの手を取り逃げ出す

 

「いけない!待て!」

 

失礼極まりない事をした人物は、のどか達が逃げ出した事が予想外だったのか、後を追い掛ける様に走り出す

 

「うわぁぁ!!追い掛けて来たよ!!」

 

「怖いよひなたちゃん!」

 

駅を飛び出して、鬼ごっこは街中へと移動する

 

しかしながらそう長く続く訳も無い

 

「捕まえた!」

 

のどかが捕まってしまった

 

「のどかっち!ちょっと警察呼ぶよ!!」

 

「警察だぁ?俺がそんな脅しでこの手を離すと思っているのか?」

 

「もしもし警察?今ちょー変な人に絡まれてるんだけど」

 

ひなたは本当に110番通報をしたのだ

 

「はいストップ止めろ!!」

 

のどかを捕まえた人物は止めろと言うも、右手でのどかを捕まえては、左手でスカートの中を弄っている

 

説得力皆無だ

 

「俺はただ、いつも通り過ごしてるだけだ。なのに何故警察を呼ぶ?」

 

いつも通りと主張する人物に、ひなたは物凄い嫌な顔をして一歩後ずさる

 

「全く、失礼な人達だ」

 

「そうだね。全く失礼だね」

 

のどかを捕まえた人物の方に手が置かれた。後ろを振り返ると、警察官が2人して立っていた

 

「ちょっと交番まで来てくれるかな?」

 

警察官2人は両脇から捕らえて引き摺って行く

 

「ではお嬢さんも。事情聴取の為来て貰えると有り難いのだけど」

 

「ありがとうございます。でもわたし達、友達と待ち合わせで夕方には帰らなければいけないのですが…」

 

「分かりました。では訴えたい場合には此方の電話番号へとお願いします」

 

これで一件落着。のどかとひなたは警察官と別れてた

 

「さて、君は来てもらうよ」

 

「俺だって約束があるんだ!助けて!みのりん先輩!あすか先輩!!」

 

叫び続ける彼──帝はそのままパトカーへと連行されて行った

 

 

 

 

 

////////

 

「あ!ひなた!のどか!」

 

「ちゆちー!」

 

帝から逃げ切れたのどか達は、途方も無く歩いてると蓮花達と合流出来た

 

「もう心配したわよ!」

 

「さっきパトカーが走って行ったけど、何も事件に巻き込まれて無いよね?」

 

「「う、うん…まぁ」」

 

のどかとひなたは、道中で先程の出来事を全て話した

 

「「うわぁ……」」

 

「まあ、それは大変でしたね」

 

蓮花とちゆは引いて、アスミは他人事の様に心配する

 

「そんな訳で蓮兄癒してちょうだい!!」

 

「あ、Pretty Holicのお店に着いたよ」

 

「いつもの様にタイミングが悪い!」

 

取り敢えずお店の中に入る。

紫苑が言うには、みゆきには話を通してるらしく、名前を言えば案内してくれるとの事

 

「うっわ〜!!ヤバい!可愛いコスメばっかじゃん!!」

 

「フフ、ありがとうございます」

 

「え〜と、貴女は?」

 

「私は涼村みゆき。紫苑ちゃんから聞いているわ。貴方が蒼咲蓮花君ね」

 

奥からひなたの声を聞き付けて、みゆきが歩み寄って来た

 

どうやら此方の事は全部知っている様だ

 

「紫苑ちゃんが言っていた通り元気な子達ね」

 

「す、すみません!ひなた貴女も謝りなさい!」

 

「ちょ、ちゆちー!?」

 

われ先にちゆが謝り、ひなたの頭を下げさせて強引に謝罪させる

 

「いいのよ。娘の友達も元気な子達ばかりだから。騒がしいのは歓迎よ」

 

2階へと続く階段を上がると、そこでは4人の少女達──まなつ達が座って待っていた

 

 

 

 

 

////////

 

ようやくご対面したまなつ達とのどか達

 

お互いに止まった様に動かずに様子を見ている。

そして最初に動いたのは勿論

 

「わたし夏海まなつ!宜しく!!」

 

素早い動きでのどかに詰め寄り、手を握って挨拶する

 

「わ、わたし花寺のどか。宜しくね」

 

それからお互いに挨拶を済ませて、仲良く交流を深める

 

 

「ねぇねぇ!このコスメ試しても良い?」

 

「あ、それならコレとの組み合わせはどうかな?」

 

 

「のどか先輩!のどか先輩!」

 

「ふわぁ〜!」

(わたしが先輩!なんか良い響き!)

 

 

「知識増やすなら本が一番」

 

「はい。では一冊読ませて頂きます」

 

 

「お前も苦労してんだな。涙目拭けよ」

 

「そうなんですよ〜っ…うぅ…さっきも迷子になっていて心配で心配でもう」

 

 

各々で仲を深めれていて、蓮花は笑顔で頷いていた

 

「あれ?そういえば紫苑さんは?」

 

「紫苑お姉ちゃんなら、従兄弟でわたし達の友達の帝君って男の子を迎えに行ったの。なんでも、警察に捕まったって…」

 

「え、そうなの…その子本当に大丈夫なの?」

 

「大丈夫だ、それが平常運転だからな。あでも、警察に捕まったって話は初めてかもな」

 

「本当に本当に大丈夫なんですか?」

 

誰かも分からない帝の事が心配過ぎるちゆ。それとは逆のあすか

 

信頼のつもりで何も言わないのか、それとも日頃の行いで自業自得と思ってるのか

 

そんな帝の話をしてると、迎えに行った紫苑が帰って来た

 

「皆んなただいま。全く、馬鹿だ馬鹿だと思っていたけどここまで馬鹿だと笑えるわ」

 

「欲望に忠実だと言って欲しいな」

 

紫苑ときて帝が頭を出すと、のどかとひなたは固まった

 

「あ」

 

「「あぁぁ〜〜ッッ!!」」

 

「あら、何処かで会ったの?」

 

「蓮兄この子だよ!さっき言ってた最っ底な事をして捕まった!」

 

「失敬な。そんな事より胸揉ませろ」

 

ひなたはささっと蓮花の背中に隠れ、猫の様に毛を逆立てて威嚇をし始める

 

「ちょっと君、失礼なのは君の方だよ」

 

ちゆが帝を注意して気を惹こうとする。帝もちゆの存在に気付いた

 

「…名前は?」

 

「ちゆ、だけどぉッ!?」

 

帝はちゆの手を握り、おでこがくっ付きそうな程顔を近付く

 

「俺と共に過ごさないか?」

 

「……」

 

「俺と共にぱぴゅん!?」

 

ちゆは、無言且つジト目で帝の頬を叩き倒す

 

「ちゆ、あまり乱暴はいけませんよ。大丈夫ですか?」

 

倒れた先にはアスミが居た。失礼とも言える帝に、優しく手を差し伸べるアスミ。

そんなアスミを手を両手でギュッと握って懲りずに口説く

 

「なんて綺麗な女性。その可憐なる姿を、俺だけに見せてくれ。そして愛ある交わりを今夜でも」

 

「……」

 

「一緒にSE…ごはんッ!?」

 

言い切る前にアスミは笑顔で、ちゆとは反対の頬を叩いた

 

「すみません。何か不穏な気配を察知しましたので」

 

「くそぉ…」

 

「帝君頑張れ!」

 

「いや励ますなよ……ん?」

 

あすかが頭を抱えてると、少し大きな揺れが起こり机の上のコスメが幾つか床に落ちる

 

「…ねぇまなつ」

 

みのりは窓を見てまなつを呼んだ

 

「どうやらあとまわしの魔女ね」

 

珍しくも今まで黙ってたローラが答える

 

「どうする?」

 

「適当に撒きましょう」

 

「雑ね」

 

まなつの適当さにローラは口を溢した

 

まなつは皆んなの方へ振り向き、目配せでヤラネーダの出現を知らせる

 

「ごめんなさいのどか先輩!少し此処で待ってて下さい!」

 

「あ、ちょ!」

 

 

 

 

 

////////

 

街ではヤラネーダがやる気パワーを奪って暴れていた

 

「あとまわしの魔女の使い達は居ない様ね。皆んな!」

 

「それよりもさぁ、のどか先輩とラブなホテルに行けるにはどうしたらいいか知恵を貸して──」

 

こんな時でもふざける帝にあすかは後頭部を殴り、みのりは両目を潰し、ローラは溝に一発拳を叩き込んだ

 

「ぐおぉぉ…痛みの情報量がハンパない…」

 

「あはは…皆んな変身するよ〜」

 

さんごが苦笑いしながらも、変身する様に促す

 

 

 

「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」

 

「「「「レッツメイク!」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

 

「友達たくさん!」

 

「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」」」

 

 

「ルーレットスタート!」

 

『DEFENCE!』

 

 

 

「「「ハァァァッ!!」」」

 

「ヤラネーダ!」

 

サマー、パパイア、フラミンゴと同時攻撃を仕掛けたのだが、上手く避けられカウンターを貰い逆にダメージを負ってしまう

 

「ヤラネーダ!」

 

「ッ!」

 

『ぺけ!』

 

追撃するヤラネーダを帝とコーラルが盾で防いではいるものの、なんとかギリギリを保っている

 

「「せ〜のっ!」」

 

強引に押し込んでヤラネーダを離れさせたがそれで精一杯だ

 

「案外手強いぞ」

 

「ルーレットやり直してもいいけど、最近運が無いからなぁ…」

 

「ヤラネーダ!」

 

「うわぁ!来るゥゥゥ!」

 

呑気に話してる間にも、ヤラネーダが襲い掛かって来る

 

ローラは身を屈めて目を瞑ると、ヤラネーダの攻撃が何かに阻まれて弾かれた

 

「またこの怪物?」

 

「紫苑お姉ちゃん!」

 

白い髪を靡かせ、翠色の剣を持って紫苑が現れた

 

「少し苦戦してる様だから私()も手伝うよ」

 

「私、()?」

 

「紫苑さん!」

 

紫苑に駆け付けるのはのどか達だった

 

「皆んな変身だよ!」

 

 

 

「「「「スタート!」」」」

 

「「「「プリキュア ・オペレーション!」」」」

 

 

「「重なる二つの花!」」

 

「キュアグレース!」

 

「ラビ!」

 

「「交わる二つの流れ!」」

 

「キュアフォンテーヌ!」

 

「ペエ!」

 

「「溶け合う二つの光!」」

 

「キュアスパークル!」

 

「ニャ!」

 

「「時を経て繋がる二つの風!」」

 

「キュアアース!」

 

「ワン!」

 

 

「「「地球をお手当!」」」

 

「「「「ヒーリングっど♥プリキュア!」」」」

 

 

 

「えぇぇ!?のどか先輩がプリキュア !?」

 

「あれ?もしかして貴女まなつちゃん?」

 

「サプラ〜〜イズ!!」

 

この反応を待ってたと言わんばかりに紫苑は大声を上げて歓喜する

 

「天道さん、こういうのは先に言って下さい。お互い知っていれば対処も早いです」

 

「紫姉っていつもそうだよね〜」

 

「サプライズは嬉しいですが、状況を考えてからお願いします」

 

「なんか皆んな辛辣だね」

 

フォンテーヌ達からすれば少し面倒なサプライズ。冷たい言葉に紫苑は少し拗ねてしまった

 

「ヤラネーダ!」

 

「グレース来るラビ!」

 

「実りのエレメント!」

 

放つ光弾がヤラネーダを簡単に弾け飛ばした

 

「背中は任せたよ!」

 

「ああ、背中は任せろ……どんなパンツしてるんだろう」

 

「グレース、背中がとても恐ろしいラビ!!」

 

帝達も前線で戦おうとするが、紫苑に肩を掴まれて引き戻される

 

「その前に傷を治してあげる。翠遠の息吹(ヴェルディグリオン)

 

翠の風が帝達の体を包み込み、先程まで受けたダメージを回復させてゆく

 

「スパークル行くわよ!」

 

「OK!」

 

「氷のエレメント!」

 

「雷のエレメント!」

 

肩を合わせながら放つエレメントの攻撃。

氷のつぶてに雷が纏われ、連続でヤラネーダにダメージを与える

 

「ヤラ…」

 

「空気のエレメント!」

 

アースウィンディハープを奏で、ヤラネーダを空気の泡に閉じ込めた

 

「蓮花お願いします!」

 

アースが上空に呼び掛けると、蓮花が急降下しながら剣を喚び出す

 

 

「来い!果てしなき蒼(ウィスタリアス)!」

 

 

紫苑と同じく白い髪の長髪となり、無かった筈の左腕が蒼いオーラで作り上げられていた

 

 

「覚醒剣!──蒼穹無限!」

 

 

地面に降り立つすれ違いざまでヤラネーダを斬り伏せた

 

「ローラちゃん今だよ」

 

「ええ、分かってるわ!」

 

 

「マーメイドアクアポット!サーチ!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

「サマー!皆んな!」

 

「よし!グレース達が頑張ってくれた分わたし達も!!」

 

回復を終えてサマー達は一斉に駆け出した

 

 

 

「ハートカルテットリング!」

 

「とびだせ!元気なハート!」

 

「やさしいハート!」

 

「かしこいハート!」

 

「燃え立つハート!」

 

「ハートドキドキ」

 

「「「ドッキング!」」」

 

「「「「プリキュア !ミックストロピカル!」」」」

 

 

「「「「ビクトリー!」」」」

 

 

 

 

 

////////

 

「共通の話題ってプリキュア の事だったんですね!!」

 

「サプライズどうだった?」

 

「トロピカってます!!!」

 

浄化を終えた一同はPretty Holicへ戻り、お互いの事情を隠さず全て話し合った

 

「ねぇのどか先輩、もう一度プリキュア になって下さいよ〜」

 

「ダメラビ。帝は何するか分からないラビ」

 

「そうよね〜、人間は危険極まりないわ。ラビリン、貴女とは良い友達になれそうね」

 

「ラビリンも同じ気持ちラビ」

 

ローラとラビリンはお互いに熱い握手をして、気持ちをひとつにしていた

 

「一緒に人間を叩きのめすわよ!」

 

「こちらこそ宜しくラビ!」

 

「俺何かしたか?」

 

「「したペエ(ニャ)」」

 

皆んなの様子を、まなつとのどかは見渡して話していた

 

「わたし、皆んなと会えて良かったよ」

 

「わたしもですよ。のどか先輩!」

 

「何?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また遊びましょう!」

 

「うん!」




予定よりかなりの量を書いちゃった!
前作とのコラボ回は恒例行事なので、来年はトロ組が先輩として出す予定ですわ



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第28話 どんなに歳をとっても子供に戻りたい時もある

最近、この小説について考える様になって来た。

ではスタート!


今回のトロピカる部の活動は、毎年あおぞら中学で行われる保育士体験を参加する事だった

 

しらくも保育園

 

ローラも前回の放送から、下半身を隠せば問題無いという確信という自信を手に入れて、

一緒に子供達の面倒を見ている

 

まなつは大人気無く園児相手にかけっこで本気、さんごは合わせて走ったり

 

みのりは本の読み聞かせをしたり

 

あすかはおままごと

 

全員が張り切って相手をしていた

 

そして、ローラよりもある意味で一番問題の帝は

 

「我を崇めよ」

 

「「「「はは〜!」」」」

 

王様気分で子供達を平伏せさせていた

 

「何やってんのよ人間!?」

 

「俺の栄えるカリスマ性に惹かれたのだろう。それよりも皆の者!ローラお姉ちゃんに突撃だ!!」

 

「え、え、ちょ!人間!!!?」

 

帝の悪ふざけの合図で、ローラは子供達の波に呑まれてしまった

 

「うんうん…?」

 

帝が元気に遊ぶ子供見て頷いてると、部屋の隅っこで男の子とさんごが話をしていた

 

「何してるんだ?」

 

「あ、帝君。実はね、ワタル君が昆虫学者になりたいから勉強してるんだって」

 

「他の子とは遊ばなくても良いのか?」

 

「あらいいじゃないの。子供の頃から将来の為に勉強する」

 

そこへ、子供達の波から脱出出来たローラが這いずって来た

 

「髪の毛ボサボサ。大丈夫か?」

 

「人間、貴方はもう一生黙ってなさい」

 

そのやり取りを見たワタルは、クスリと少し笑った

 

「わたしはローラ。貴方は?」

 

「ワタル。さなぎ見る?」

 

「さなぎ?何それ?」

 

「知らないの?見せてあげる。こっちだよ!」

 

「分かったわよもう…」

 

ワタルはローラの事が気に入ったのか、とっておきのさなぎを見せる為連れて行った

 

「ローラとあの子、意外と合う?」

 

「何か子供の成長を見守る親みたいだな」

 

「えぇ!?わ、わたしは帝君とはそういう関係じゃないよ!まぁ、そういう関係も良いけど//」

 

帝とさんごのやり取りを見て、1人の眼鏡を掛けた男の子が近付いてこう言った

 

「お父さんとお母さんが良くしています。イチャイチャしてますね」

 

「「イチャイチャなんてしてないよ」」

 

「え?」

 

「『え?』ってなんだよ?」

 

被った事に対してではなく、帝が「イチャイチャなんてしてないよ」という言葉にさんごは反応した

 

「いや、その……なんでもない!!」

 

さんごは何故か怒った顔をして離れて行った

 

「頑張って下さい」

 

更には男の子にも同情をされてしまった

 

 

 

 

 

それから程なくして、突然保育園にゼンゼンヤラネーダが現れた

 

「うわっ!何でこんな狭い場所にヤラネーダが!?」

 

「そんな事より助けに行くぞ!」

 

あすかに言われて、帝とまなつは素早く動き出す

 

さんご達も他の子供の避難を誘導する

 

「よし、避難完了!」

 

誰も残っていないかを確認し変身する

 

 

 

「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」

 

「「「「レッツメイク!」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

 

「良い子の友達!」

 

「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」」」

 

 

「エモーショナルスタート!」

 

『GENIUS!』

 

 

 

 

 

「いつも通りの先手必勝!」

 

帝はサマーもフラミンゴを掴んで、積み木を媒体としたヤラネーダへと投げ飛ばす

 

「「おりゃ!!」」

 

サマーとフラミンゴの同時攻撃に、ヤラネーダはバラバラに散った

 

「あれ?もう終わりなの?」

 

「やるじゃん!でもお楽しみはここからだよ!」

 

エルダの言葉の意味を考えてると、バラバラになったヤラネーダの体が積み上がり元に戻った

 

「元に戻っちゃった!」

 

「ヤラネーダ!」

 

「伏せろ!」

 

腕から発射されるブロックが襲うも、帝が手を振り翳すと別方向へと飛んで行く

 

「もう一度どうだ!」

 

反撃と言わんばかりに帝が拳を振り抜く。GENIUSの力で距離を無視しての遠距離攻撃でバラバラにさせる

 

「ヤラネーダ!」

 

やはりと言うべきか、またも積み上がり元に戻る

 

 

「うおりゃ!」

 

 

「「やぁ!」」

 

 

「ヤラネーダ!」

 

続けてサマー、コーラルとパパイアが仕掛けるも同じ事の繰り返しで埒があかない

 

「わっ!?」

 

ヤラネーダの攻撃を避けたサマーなのだが、弧を描くブロックはさなぎを心配していたワタル、もう1人のルリとローラへと落ち行く

 

『ぺけ!』

 

「コーラル!」

 

コーラルが間に合い、ローラ達は無傷で済んだ

 

「大丈夫?」

 

「大丈夫よ。コーラルは戦いに集中してこの子達は任せて」

 

「うん!」

 

子供達はローラに任せて、コーラルはシールドを張った状態で攻めて、一瞬の隙を突いて攻撃を加えた

 

倒せは出来なくても、バラバラにして時間を稼いで打開策を考える必要がある

 

そのつもりだったのだが

 

「えぇ!?そんなのアリなの!?」

 

「龍!?」

 

積み上がり元に戻るのだが、今までのパターンとは違い龍の姿に積み上がる

 

龍となったゼンゼンヤラネーダの攻撃方法が一変した

 

「うわぁ!!」

 

「サマー危ない!」

 

『ぺけ!』

 

「パパイア、フラミンゴ退け!」

 

コーラルはサマーを守り、攻めていた帝もパパイアとフラミンゴのカバーに入っていた

 

「ありがとう!」

 

「だが『退け』はどうかと思うぞ?」

 

「それ今気にする!?」

 

防戦一方のプリキュア 達

 

「頑張れプリキュア !!」

 

その時、ローラの声がする

 

「「頑張れプリキュア !!」」

 

それに続いてワタルとルリの応援する声も聞こえる

 

「オーライ!」

 

「これりゃあ絶対負けられないね」

 

「でもどうしよう…」

 

「俺に考えがある。NATURAEを引き当てたら動きを封じる事が出来る。その隙を突いて浄化するしかない」

 

帝が駆け出してサマー達も散開する

 

「キングハンドで──」

 

オーシャンステッキにキングハンドを装備させようとするが

 

「ヤラネーダ!」

 

「うわっ!……しまった!」

 

ヤラネーダの攻撃でキングハンドを手放してしまう

 

「ヤラネーダ!」

 

「やばっ!」

 

拾いに行こうする帝だったが、背後からヤラネーダが追撃して来る。

咄嗟にオーシャンステッキで防御するも、体勢が不充分な状態で受け切った為、ステッキまでも弾かれて手元から離れてしまう

 

オーシャンステッキが無ければ能力の変更どころか、発動すら出来ない

 

「今届ける!」

 

幸いパパイアの近くにステッキが落ちているので、拾って渡そうとするもヤラネーダが妨害する

 

「仕方ない!直接──」

 

帝が動こうとすると、目の前にブロックが積み上がる

 

「チッ!」

 

「帝君!!」

 

方向を変えようとするも、次々と周りを囲む様にブロックが積み上がり動け無くさせた

 

八方塞がり。そして上を向けばヤラネーダが覗き込んでいる

 

「ヤラネーダ!!」

 

「……調子に乗るのもいい加減にしろよ──【退け】!!!」

 

帝がそれを発した時、周りにあったブロックは一気に弾けた。一部ヤラネーダにもぶつかり退けぞらせる事も出来た

 

「そのまま【平伏せ】!」

 

帝の言葉通り、ヤラネーダは何かに押し付けられる感覚に襲われ地面を這い蹲る事になる

 

そしていつの間にか、帝の手には形が定まっていない赤黒いステッキの様な物を手にしていた

 

「決めろ」

 

「オーライ!」

 

 

 

「ハートカルテットリング!」

 

「とびだせ!元気なハート!」

 

「やさしいハート!」

 

「かしこいハート!」

 

「燃え立つハート!」

 

「ハートドキドキ」

 

「「「ドッキング!」」」

 

「「「「プリキュア !ミックストロピカル!」」」」

 

 

「「「「ビクトリー!」」」」

 

 

 

浄化を終えて安心したが

 

「……」

 

帝は手に持つモノを見つめてると、雲の様にフワリとして消えたのを確認した

 

(さっきのは…?)

 

 

 

 

 

////////

 

こうして保育士体験は終わる

 

プリキュア を見たワタルとルリには、秘密にする様にローラが伝えてくれた。

2人も、その約束を守る様にしてくれた

 

「それにしても案外こういうのも悪くないな」

 

「ローラって素敵な保育士さんになれそうだね」

 

「確かに意外と人気だったな。カリスマ性があるのか?」

 

「当然でしょ!わたしは何せ女王になるのだから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女王になるまでの貴重な体験を少しずつ積んで行くローラ。

彼女の成長はまだまだ続く様だ




あまり原作沿いにしない様に、戦闘描写だけは何とかしようとしてる。

ちゃんと物語も進めたいけど、追加戦士が来ないと予定してる話に進まないのでネタ回を書き進めてる。
こんな調子でやっても大丈夫なのか気になるところ…
ネタ回もマンネリ化してるし

色々考えさせられる事が多いで御座います

ここまでの拝読ありがとうございました



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第29話 アタックチャンス!クイズプリオネア!

追加戦士はローラでしたね。しかも今月に変身するって中々早い事

ではスタート!


「お待たせ!遅れちゃ……あれ、皆んなどうしたの?」

 

日直の仕事で遅れて部室に来たまなつだが、皆んな机にノートを広げて勉強していた

 

「テストあったっけ?」

 

「今みのりん先輩に分からない所を聞いてるの。まなつもどう?」

 

「あすか先輩は?」

 

「聞こえなかったのかな?」

 

「さんご無視しろ。あれ絶対勉強したくなくてわざとだ」

 

聞いたさんごの話を完全スルーして、あすかに質問をし始める

 

「わたしも自主勉だ。最近怪しくなって来たからな。まなつはやらないのか?」

 

「……わたしはほら、その時になったらまた帝に教えて貰えば…」

 

「え、嫌だけど」

 

「そんな事言わないで〜!」

 

わざわざ泣き付いてまで見捨てないでと懇願し始める

 

「なんでもするから〜!」

 

「…今『なんでも』って言ったな?」

 

「え、あ…」

 

帝に対しての「なんでも」は危険な言葉。変態の塊でしかない人にそれを言ったら何をされるか分かったもんじゃない

 

「今回の部活内容俺が決めても良い?」

 

「あ〜それならいいけど…」

 

「じゃあこれ!」

 

帝が取り出したのは、クイズ番組でよく見られる早押しボタンだった

 

「皆んなでクイズしないか?」

 

「あ〜!それいいかも!」

 

「帝にしてはいい案だな」

 

「わたしも賛成だよ!」

 

「勉強も出来て一石二鳥」

 

遊べて勉強も出来るクイズに皆喜んで参加してくれる事になった

 

「みのりん先輩一石二鳥って何ですか?」

 

「「「「「まなつ…」」」」」

 

 

 

 

 

////////

 

出題者はローラが担当し、答えるのは帝達となった

 

「それじゃあ始めるわよ。問題──」

 

ピンポンっと軽快な音がローラに被って鳴り響いた

 

「…ちょっとまなつ、まだ何も言ってないわよ」

 

「あははごめん!これ一度でも押してみたかったの!」

 

「全く、気を取り直して問題言うわよ」

 

 

あなたは日本出身ですか。いいえ,ちがいます。わたしは日本出身ではありません。

 

Are you from Japan?

( am / not / I / no / , / . ) (not / I / from / am / Japan / .)

 

 

「さぁ、正しい文章になる様に答えて頂戴」

 

いそいそと全員ボードに書き始める

 

そして早押しボタンが鳴る

 

「はいさんご!」

 

「No, I am not. I am not from Japan.」

 

「え〜と…えぇ正解よ」

 

人間の世界の問題はローラには少し難しく、答えと照らし合わせながら良し悪しを決めている

 

そして最初の問題はさんごが勝ち取った

 

「さて次の問題に移りましょう」

 

「待ってローラ、一応皆んなの分も答えを照らし合わせましょう」

 

「そうだな」

 

みのりの意見にあすかも賛成し、一応確認の為全員ボードをローラに見せる

 

「うんうん、あすか、みのり、人間は正解よ」

 

「ねぇねぇわたしは?」

 

 

Iam not,No.I am from not Japan.

 

 

「安心と信頼の不正解ね」

 

まなつは膝を落として落ち込んでしまう

 

「次の問題行くわよ」

 

 

私は料理をする

 

 

「これを英語…よね?それに訳して頂戴」

 

「ローラ、これはわたしでも出来るよ」

 

「なら出来たら言いなさい。当ててあげるわ」

 

それから少しして、まなつは書き上げたボードを皆んなに見せる

 

 

I roll the food

 

 

「「転がしてどうする!?」」

 

帝とあすかのドぎついツッコミが入る

 

「え、違った!?」

 

「『私は料理をする』じゃなくて、『私は料理を転がす』なるぞ」

 

「この前のテストの時に教えたばかりなのに、何をどうやったらこんな風になるんだ…」

 

「不思議」

 

「まなつってある意味凄いよね…」

 

帝は涙目になり、みのりとさんごもここまで来ると感心していた

 

「はぁ〜…まなつ、貴女本当に勉強してるのよね?」

 

「酷いよローラ!ローラの居る目の前でいつも勉強してるじゃん!」

 

「えぇ、それと同時に現実逃避の相手にもされてるわ」

 

「うっ!」

 

ローラの容赦無い言葉がまなつに突き刺さる。

今度は英語から別の教科へ問題を変えようとする時、ふと窓の外を見るといつもながらヤラネーダが出現してる事に気付いた

 

「よ、よ〜し!あとまわしの魔女が来たよ!」

 

 

 

 

 

////////

 

 

「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」

 

「「「「レッツメイク!」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

 

「勉強は大事!」

 

「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」」」

 

 

 

「何が『勉強は大事!』だよ。さっきまでボロボロだった癖に」

 

「それを言わないで〜!」

 

帝とサマーの茶番劇をしてる中、ゼンゼンヤラネーダが目の前に現れる

 

「う〜ん、マジ?」

 

サマーが言葉を漏らすのも仕方ない。今回のヤラネーダは、先程まで使っていた早押しボタンを媒体としたゼンゼンヤラネーダなのだから

 

「待っていたわよぉ〜プリキュア 」

 

「ゲッ…お前かよ…」

 

まだそんなに相対していないフラミンゴも引く相手

 

オッカマーである

 

「うぅ…」

 

「コーラル、毎回地味に俺を盾にするのはやめて貰ってもいい?」

 

コーラルは無意識か、帝の背中に隠れて様子を伺っていた

 

「とにかく変な事をされる前に倒しちゃいなさい!!」

 

「待ちなさい!そう慌てないの」

 

ローラの指示で飛び出そうとしたのだが、オッカマーがそれを静止した

 

「何よ、今更怖気付いたのかしら?フフン!」

 

「何でローラがドヤ顔するの?」

 

「今日のヤラネーダはこんな形だから────クイズで勝負しない?」

 

「クイズかぁ…」

 

帝はパパイアの方を見て考える

 

「よし、その勝負受けよう」

 

「ちょっと勝手に決めないでよ。相手はあとまわしの魔女よ。何をしでかすか…」

 

「ローラちゃんだったわよね?心配しないで。クイズに負けたら大人しくヤラネーダは浄化させてあげるわ」

 

「うぇ!?う〜ん…」

 

「いいんじゃない?クイズして終わるならさ」

 

ローラは悩んでいたが、サマーは賛成の様だ

 

「まぁ、そのサマーが一番不安だけどわたしもアリだと思う」

 

「皆んな頭良いから大丈夫だよ!」

 

フラミンゴもコーラルも賛成派みたいだ。

パパイアも無言で頷いてる

 

後はローラだけ

 

「……分かったわよ。でも必ず勝ちなさいよ!」

 

 

 

 

 

「さぁいよいよ始まって参りました。プリキュア 対あとまわしの魔女のクイズバトルです!。司会は私、アリスがお送りします」

 

いつの間にかアリスが司会進行役として、その場に居た

 

帝達はそれぞれ用意された台の上で準備していた

 

しかしローラだけは別個にされていた

 

「ルール説明をしましょう。出題者であるオッカマー様がランダムに問題を当てていきますので答えて下さい。誰か1人でも5問正解したらプリキュア 側の勝利。しかし、1問間違えたらその場で失格となります」

 

「ひとつ質問!」

 

「はい、サマー様」

 

「この電話は何?」

 

各自台の上に固定電話が設置されている

 

「テレフォンで御座います。一度のみ使用が可能です。受話器を取ればローラ様に繋がりますので、ローラ様からヒントなり答えなり貰って下さい」

 

「わたしが!?」

 

「ではスタートで御座います!」

 

「ちょっとわたしの話を──」

 

「貴方の人生を変えるかも知れない──クイズプリオネア!」

 

ローラの事など無視してオッカマーは1人で進める

 

「最初はキュアサマーに答えて貰うわ!」

 

 

48×12=?

 

 

(これならサマーでも解ける筈だ)

 

いくら頭が悪くても、これくらいの難易度なら解けると信じていた

 

しかし

 

「え〜と…16になって、1が繰り上がって、だから……」

 

((((暗算出来ないの!?))))

 

サマーは台に指をなぞって計算したり、両手を使って計算していた

 

「よし、376!」

 

「ファイナルアンサー?」

 

「アンサー!アンサー!」

 

「──ブッブ〜!不正解よ。普通に200以上計算間違いよ。出直して来てらっしゃい!」

 

「ヤラネーダ!」

 

ヤラネーダがバツ印を放ち、不正解のサマーに向けられた

 

「え、うわっ!?」

 

無防備にもそのバツ印の攻撃を食らったサマーは、そのまま拘束されて動けなくされた

 

「キュアサマー様リタイアですね。不正解の方はこうなりますのでご注意を」

 

「仕方ない。別にサマーが居てもいなくても変わらなかったし」

 

「酷い!?」

 

帝の鋭い言葉に傷付けられながも問題は進む

 

「それでは次に行くわよ〜!」

 

 

 

 

 

それから残りの者達で出題される問題を捌いてく

 

帝とフラミンゴは4問正解しリーチ状態、コーラルとパパイアは3問正解してる。

更に誰もテレフォンを使ってない

 

この調子なら楽々にヤラネーダを倒せる

 

「わたし暇なんだけど…」

 

全く出番の無いローラは欠伸をして黄昏ていた

 

「ここから本気を出すわよ〜!キュアコーラル!」

 

「は、はい!」

 

オッカマーは箱を一個取り出して、それをコーラルの目の前に置く

 

「中にあるモノを当ててみなさい」

 

ここで断ればサマーと同じ目に合う。それを避けるには箱の中に手を突っ込まないといけない。

その選択肢しかないのだ

 

コーラルは恐る恐る手を入れて確かめる

 

「何これ…ひゃ!?何かカサカサしてる!?生き物!?」

 

「アンサープリーズですよ!」

 

「アリス、アンタは黙ってなさい!」

 

(虫、嫌だよぉ…でも正解しないといけないし。ローラに確認して貰おう)

 

コーラルは見えない恐怖心を少しでも和らげようと、テレフォンでローラにヒント含めて確認しようと受話器を手に取る

 

「も、もしもしローラ?箱の中確認して貰える?」

 

『はぁ?確認も何も見えないんだけ…ど?』

 

そんなローラの目の前に、丁寧にもアリスがコーラルと同じ箱を置く

 

『あ〜これね。名前は分からないけど、この前の放送室で出て来た生物よ。分かる?』

 

それを聴いてしまったコーラルは一瞬で固まってしまった

 

「答えは?」

 

「う…」

 

「「「う?」」」

 

「うわあぁぁぁんん!!!」

 

コーラルは大泣きして帝に泣き付く

 

「カサカサするぅ〜!気持ち悪いよぉ〜!怖いよぉ〜!帝く〜〜ん!!」

 

「よしよし、怖くない怖くない」

 

両手両脚でガッチリホールドして、帝に慰められるコーラル。

可哀想だと思う反面、可愛いなと思う帝だった

 

「飴あるけど食べる?」

 

「ひっぐ…っ…うん…」

 

ブドウ味の飴を泣きながら口の中で転がす

 

「美味しい?」

 

「うん、美味しい…」

 

完全に幼児退行してしまったコーラルは、帝の膝の上で足をバタバタしながら収まった

 

「キュアコーラル様は帝様に甘えて失格と」

 

「流石に生存者の帝ちゃんに攻撃する訳にもいかないわ…仕方ないから続行するわよ!!」

 

意外な律儀な面を見せてくれたオッカマー。

クイズを再開させる

 

「次はキュアフラミンゴ貴女よ!3択のサービス問題よ!」

 

「リーチ相手に3択問題か。余裕だな。来い!」

 

「では問題!」

 

 

路面電車には他にも「〇〇電車」と名称があります。その〇〇に入る言葉は次の内どれでしょう?

 

一、ちんちん

 

二、チンチン

 

三、賃賃

 

 

「おいコラ選択肢に悪意しか無いだろ」

 

「何言ってるのか私には分っかりませ〜ん!」

 

「何やってるんだフラミンゴ!どれ答えても正解だろ?早く言うんだ!」

 

「ふざけるな言える訳ないだろ!?」

 

「折角のラッキー問題なのに答えないの?」

 

帝やオッカマーの言う通り、この問題は3択もあるがどれ答えても正解なのだ

 

しかし、選択肢含め問題に悪意しかない

 

答えれば正解してヤラネーダを浄化出来るが、答えてしまったらそれはそれで恥ずかしい目に遭うのは火を見るよりかも明らかだ

 

皆んなの為に羞恥心を捨ててプリキュア として答えるべきか?

 

それとも何も言わず事なきを得るか?

 

フラミンゴにとってそれは究極の選択だった

 

「わ、分かった。答えてやる」

 

「では!」

 

「ち、ち……ん…」

 

「聞こえないわもっと大きな声で!」

 

「ち…ち……ち、ちん……」

 

あともう少し言えば良かったのだが

 

「うわぁぁぁぁ!!やっぱ無理だ!!!」

 

「はい時間切れでアウト。ヤラネーダ!」

 

「ヤラネーダ!」

 

可哀想な事にフラミンゴはサマーと同じ目に遭ってしまい脱落した

 

「おぉっと!?フラミンゴ様が失格です!残るは帝様とパパイア様の2人です!」

 

「テンポ良く行くわよ!パパイアちゃん貴女にクイズよ!」

 

 

沖縄県那覇市と豊見城市にまたがる干潟。その湖は何というか?次の内どれでしょう?

 

一、まんこ

 

二、マンコ

 

三、漫湖

 

 

(フフ、貴女も赤面してその泣きっ面を私に見せなさい)

 

「答えは三番の漫湖。これもどれ答えても正解の筈よ」

 

「え、あ、正解よ…」

 

フラミンゴと違い、パパイアは何の躊躇もなく言い切った

 

「やるわね。しかし次の問題はそうは行かないわ!これで貴女も終わりよ!」

 

 

キュアパパイアが今日履いてるパンツの色は何色か?

 

 

「こ、この問題は…!」

 

「答えられないでしょ?もし答えれたとしても生き恥を晒すだけよ!さぁどうするパパイアちゃん?」

 

「……」

 

流石にこの問題には押し黙るしか無かった

 

当然だ。答えてしまったら完全に公開処刑なのだ

 

どうする事も出来ないとオッカマーは確信している

 

しかし

 

「黄色…」

 

「ん?」

 

「今日の下着の色は黄色よ!!」

 

赤面しながらも答えた。やはり自分よりも、パパイアが今一番大事な事は一刻も早くヤラネーダを浄化する事

 

「少々お待ち下さい。私の調べによりますと……どうやら間違いない様ですオッカマー様」

 

「え、下調べとかしてたの?キモ」

 

「酷いですねローラ様…」

 

「正解なら遠慮無く行くよ!アタックチャンス!」

 

パパイアは台を飛び越えてハートルージュロッドを構える

 

 

 

「ハートルージュロッド!」

 

「プリキュア !ぱんぱかパパイアショット!」

 

 

「ビクトリー!」

 

 

 

「今回こそはバッチグーだと思ったのですが」

 

「次こそは勝つわ!覚えてなさいよ〜!」

 

 

 

 

 

////////

 

「今回は助かりましたよみのりん先輩!」

 

「わたしは答えを言っただけだから」

 

「まなつは掛け算くらい何とかしろ」

 

「あすか、貴女もちゃんと答えなさいよ」

 

「さんご、流石に離れろよ。流石に歩き難い」

 

「嫌…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんとも卑怯な手で仕掛けたあとまわしの魔女達だが、みのりの活躍により今回も撃退に成功したのであった




暫くネタ回はお休みします。
追加戦士のあれこれが発表されたので、先行してローラ加入後のオリストを想定しながら下書き程度に書き始めます。
オリストは約6、7話分連続して書きますのでそちらに時間を割きたい訳です。
因みにこのオリストでヒロインが決まります。

アニメ本編の話はいつも通りのペースで書きますので宜しくお願いします。

ここまでの拝読ありがとうございました


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第30話 君の名は!

あっぶね!いつか入れ替わりネタやろうと思ってたから!

ではスタート


「んっふ〜♪人間の体も悪くないわね!」

 

「あ、みのりん先輩どうしたんですか?」

 

帝がトロピカる部に向かおうとしてる時、ルンルンな気分の足取りで歩くみのりと鉢合わせた

 

「あら人間じゃないの!」

 

「に、人間!?」

 

突然そう呼ばれて驚愕する。いつもなら名前呼びだったのに対して、急に人間呼ばわりされたのだ

 

「と、ところで横断幕を作ってるんじゃなかったのか?」

 

「横断幕、ね…」

 

「難航してるなら手伝うが。てか、その為に今向かってたんだけど」

 

トロピカる部は応援団の手伝いをする為に、各自準備していたのだ

 

まなつ、さんご、あすかは声を出して応援。みのりは裏方で準備をする予定。帝もみのりの手伝いだけの約束で参加しているのだ

 

なのだが、横断幕を作ってる筈のみのりが気分転換なのか校内を歩き回ってる。

その事に帝は少し疑問に思っていた

 

「人間の癖にうるさいわね。今からやるところよ」

 

「みのりん先輩口悪くないか?まるでローラみたい」

 

「はぁ!?誰が口が悪いって?」

 

「なんでそこでみのりん先輩が反応する?」

 

思わず反応してしまったみのり。言われてるのはローラなのだが、そこで反応するのはおかしい

 

「どうでもいい。早く手伝いなさいよ」

 

みのりに、部室まで強く引っ張られ横断幕作りに励むのであった

 

 

 

 

 

////////

 

その作業は夕方まで続いた

 

みのりに尻に敷かれながらも帝は手伝う

 

途中、罵倒の嵐に見舞われるも挫けぬ精神でやっと一枚完成させた

 

「こんなところね」

 

「あ、みのりん先輩出来たのですか?」

 

「『トロピカってGO!』すっごくトロピカってる〜!」

 

「カッコ良くかけてるな!」

 

「あれぇ〜?俺も頑張ったんだけど労いの言葉は?」

 

「さっすがみのりん先輩!」

 

「わたしみのりじゃあ──」

 

みのりが何か言いかけたが、そこへアクアポットが部室へ入って来た。

かなりおぼつかない浮遊で、フラフラしながら机に着地すると同時にローラが出て来た

 

「運転難しぃ…酔った…」

 

「ちょっとみのり。人間には難しかったみたいね」

 

「「「「どう言う事?」」」」

 

みのりがローラに向けて自分の名前を呼んだ

 

何がなんだか分からないまま、みのりとローラは事の顛末を話してくれた

 

 

 

 

 

事態は想像してたより大変でシンプルな事だった

 

横断幕を作ってる最中、アクアポットにみのりが吸い込まれたところをローラが助けようとして2人纏めて中に入ってしまったらしい。

その影響か、2人の中身が入れ替わってしまった

 

今はみのりがローラで、ローラがみのりという奇々怪々な状況

 

「戻り方は分からないのか?」

 

「いいえ、こんな話今まで聞いた事ないわ」

 

「2人共これからどうするの?」

 

「さぁ?その内勝手に戻るんじゃないの?」

 

「大丈夫。横断幕はちゃんと完成させるから」

 

イマイチ危機感が無い2人

 

今日のところは、みのりの家でローラがお世話になる事になった

 

 

 

 

 

////////

 

次の日の朝

 

「帝君おはよう!」

 

「おはようさんご。みのりん先輩達ちゃんと戻れたかな?」

 

「う〜んどうだろう」

 

「戻ってなかったらトロピカ会議だな」

 

「トロピカ会議って帝君」

 

帝の言葉に苦笑いをしてると、ゼンゼンヤラネーダが現れるのを遠くで視認できた

 

「こんな朝早くからか」

 

「あ、まなつ!」

 

「さんごに帝!」

 

「わたしもいるぞ」

 

「変身するぞ」

 

 

 

「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」

 

「「「レッツメイク!」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

 

「ルーレットスタート!」

 

『PERFECT!』

 

 

 

「ヤ〜ラネーダ!」

 

クロワッサンを媒体にしたゼンゼンヤラネーダ。

両手から小型のクロワッサン攻撃で連射する

 

「効くか!」

 

帝が盾で攻撃を防ぎ、背後からサマーとフラミンゴが飛び出して蹴り付ける

 

「ヤラネ!!」

 

しかしそんな連携も防がれる

 

「ヤラネーダ?」

 

防いだ直後、ヤラネーダが建物の影から出て来た子供に気付かれた

 

「危ない!」

 

『ぺけ!』

 

何の躊躇も無くヤラネーダが子供に攻撃を仕掛ける。

コーラルもそれに察知して、いち早く庇う

 

「早く逃げて!」

 

「コーラル前!」

 

子供を逃したのはいいが、それに気を取られて今度はコーラルが危険な目に遭おうとしてる

 

今度は発射するのでは無く、両腕を伸ばして来た

 

けれど帝の声を聞いてジャンプで避けた

 

だがその判断が命取りとなってしまった

 

「ヤラネーダ!」

 

「キャアァァ!!」

 

クロワッサンのロールが、コーラルを人質として捉えられてしまった

 

「「「コーラル!」」」

 

「ヤラネーダ!」

 

コーラルを助けに行きたいが、ヤラネーダの猛攻にそれすら叶わない

 

今はただ、帝が2人を庇って凌ぎつつ助け出す手段を考えねばならない

 

「皆んな大丈夫!?」

 

そこへ、みのり(ローラ)が駆け付けてくれた

 

「みの…じゃなくてローラ!」

 

そしてアクアポットからは、ローラ(みのり)が出て来た

 

「ロー…じゃなくてみのりん先輩!」

 

「一々ややこしいな。それよりもコーラルを助けるぞ」

 

帝と一緒にサマーとフラミンゴが救出に向かう

 

「みのりも変身を」

 

「でも、この姿じゃあ」

 

ローラと入れ替わった状態で変身出来るとは限らない

 

そこでみのり(ローラ)は思い付いた

 

「プリキュア !トロピカルチェンジ!」

 

中身はローラだが今はみのりの体。もしかしたら、自分が変身出来るのではないかと踏んだが

 

「……あれ?」

 

パクトにハートクルリングをセットしても何も起こらなかった

 

やはり、本当の意味でみのり自身が変身しないとアイテムは何も応えてはくれない

 

こうしてる間にもコーラルは苦しみ、帝達はコーラルを助けれない

 

「わたしが…わたしが変身しなきゃ!」

 

ローラ(みのり)の言葉に、リングとアクアポットが反応して光り始めた

 

その光により、何故か分からないがみのりとローラが入れ替わり、お互いに元に戻る事が出来た

 

「「戻った!?」」

 

 

 

「プリキュア!トロピカルチェンジ!」

 

「レッツメイク!」

 

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

 

 

「お待たせ!」

 

「「「パパイア!」」」

 

「寝坊で遅刻か?」

 

「寝坊はしてない」

 

チョンギーレの言葉にパパイアは反応して言い返す

 

「無駄な相手をしてる暇はないぞ。コーラルを助けないと」

 

「わたしに考えが──」

 

 

「その必要は無い」

 

 

その声と共に、ヤラネーダは何者かに横から蹴りを入れられて建物に叩き込まれた

 

そしてコーラルの拘束を引き千切り助け出した

 

「なっ!?何かったりぃ事してくれてんだ嬴政!!」

 

コーラルを助け出したのはフード姿の嬴政だった

 

「お前が余計な事をするからだ。それよりも」

 

嬴政はコーラルをジッと見つめる

 

「怪我は無いらしいな」

 

「どういう事なの?」

 

嬴政の真意が分からない。顔もフードを深く被って表情も読み取れない

 

「何してる、早くやる気パワーを奪え」

 

「よく分からないけど」

 

 

「マーメイドアクアポット!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

「いくよ皆んな!」

 

 

 

「ハートカルテットリング!」

 

「とびだせ!元気なハート!」

 

「やさしいハート!」

 

「かしこいハート!」

 

「燃え立つハート!」

 

「ハートドキドキ」

 

「「「ドッキング!」」」

 

「「「「プリキュア !ミックストロピカル!」」」」

 

 

「「「「ビクトリー!」」」」

 

 

 

「かったりぃ邪魔が入らなければ…」

 

チョンギーレはそう言って退散したが、嬴政だけはまだ残っていた

 

「…」

 

「あの、ありがとう」

 

わざわざ近付いてまでコーラルはお礼をした

 

「ねぇ、貴方って誰なの?」

 

「俺は俺だ」

 

「顔、見てもいいかな?」

 

コーラルの質問に返事は返って来ない。コーラルはそれを了承したと思い、そっとフードに手を掛けようとした時、2人の間に青い盾が割り込み、帝がコーラルを抱えて距離を取った

 

「帝君!?」

 

「コーラル、不用意に近付くな。相手はあとまわしの魔女のひとりだ」

 

「その反応が正解だ。それとも、敵にお礼を言う程余裕がある、とか?」

 

嬴政は鼻で笑い立ち去ろうとしたが、足を止めて最後にコーラルに話し掛けた

 

「今回助けたのはそうしなければならないからだ。キュアコーラル…いや、涼村さんご。もう少しだけ待ってろ」

 

今度こそ嬴政は立ち去った

 

「コーラルの知り合い?」

 

「ううん。知らない」

 

「サマー、余計な事を言うな。あとまわしの魔女達に知り合いなんている訳無いだろ」

 

「そうだよね!」

 

「相手が誰であろうとコーラルは俺が守る」

 

「ありがとう帝君」

 

 

 

 

 

全てにひと段落ついて、みのりとローラが戻った事を改めて実感する

 

「良かった〜」

 

「ねえねぇみのりん先輩、人魚になれてどうだった?」

 

「楽しかったけど、やっぱりわたしはわたしが良いかな。ローラは?」

 

「ま、まぁ人間の体も多少は楽しかったけど、わたしもわたし自身が良いわ…」

 

みのりは満足していたが、ローラは少し歯切れが悪い言い方だった。

ローラの心境に何か感じる事があったのだろう

 

しかし、それなら気付く人は誰もいなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして応援の日

 

みのりも声までは出さなくとも、銅鑼を鳴らす役として大胆に表へ出る事となった

 

気付かない内に、いつの間にか前へ出る事を覚えたのだ




ぼちぼち進めて行きます

ここまでの拝読ありがとうございました


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第31話 連れ去られたローラ、人魚姫の結末は

デデデデデンダンダダダダだ!!

スタト!


「ねぇ、夏休みの部活どうする?」

 

「夏休みの部活といえば合宿だな。でも問題は何処でやるかだな」

 

「作り立ての部だから予算も無い」

 

とある日常の中で、トロピカる部は夏休みの計画を立てていた

 

「それなら南乃島はどう?」

 

「まなつが生まれた島?」

 

「そう!それなら家に泊まればタダ!人が誰も来ない海岸とかあるし!ローラも思いっきり海で泳げるよ!」

 

アクアポットの中を除くが、中に居たのはくるるんだけだった

 

「居ないのか?」

 

「何処行ったんだろう?」

 

放課後、それとなく聞いてみたところ用がありひとりで出て行ったらしい

 

 

 

 

 

「午前の授業終わった〜!」

 

「お腹空いたね〜」

 

「今日はローラも一緒に食べるよね?」

 

別の日

 

授業が終わり、今日は一緒にお昼を食べるかローラに聞こうとして鞄の中を確認したが、アクアポットが何処にも見当たらなかった

 

「あれ、居ない…」

 

「ローラなら授業中こっそり窓から出て行くのを見たぞ」

 

「いつの間に!てか、それならそうと教えてよ〜!」

 

「授業中、寝ている事を桜川先生に報告していいのなら」

 

「それならいい」

 

「そこはちゃんと起きて授業受けようよ…」

 

取り敢えず3人はローラを探す事にした

 

 

 

 

 

「ローラ何処に居るんだ?」

 

「帝」

 

「あ、みのりん先輩」

 

ローラを探しに廊下を歩いてると、みのりと出くわした

 

「どうしたの?」

 

「ローラが抜け出して捜査してる。みのりん先輩は?」

 

「図書室に用があるの」

 

みのりが真横の扉に指を指す

 

「図書室か…一応探してみるか」

 

図書室に入ってみた事が幸いしてか、ローラは人魚姫の本を手に取って立ち読みしていたのを発見した

 

「人魚姫の本」

 

「何やってんだこんな所で?」

 

「わっ!?」

 

突然声を掛けられて驚きの声を出してしまった

 

「何だ2人ね…ちょっと興味があったから。人間の世界で、わたし達がどんな風に語られているのか気になって」

 

「だが人魚姫の話って不満があるんじゃなかったのか?あ、もしかして人間になりたいとか思ってる?」

 

「…何言ってるの。そんな訳ないでしょう」

 

「でも、この前わたしと入れ替わった時ローラ凄く楽しそうだった」

 

「あの時はあの時よ!」

 

何か誤魔化した言い方にはなったが、少し引っ掛かる

 

「物語の人魚はね、魔女の力で人間になったの。でも、それと引き換えに美しい声を失った」

 

「馬鹿みたい。人間になる為に人魚の美しい声を失うなんて」

 

「いわゆる等価交換だな」

 

「等価交換?」

 

聞き慣れない単語にローラは首を傾げる

 

帝は両手で数字を作って簡単な説明をする

 

「1から2にする事は出来るけど、0から1にふるのは無理って事」

 

「??」

 

「要は、何かを得るには何かを犠牲にしないと無理って事だ」

 

「何を得るには、何かを犠牲に……」

 

 

 

 

 

その日の夕方

 

あとまわしの魔女の屋敷で、それぞれが集まってプリキュアについて話し合っていた

 

「いつもいつも、プリキュアに邪魔されてかったりぃ」

 

「私、本職はドクターなのに」

 

「俺だって本職はシェフだぜ」

 

「エルダなんて子供なんだよ!」

 

「やる気パワーに関しての本職はお前達だろ?」

 

チョンギーレは嬴政やオッカマーに向けて言う

 

「私?私はほら…政ちゃんのお世話が」

 

「私は最初から『旅の案内役兼記録係を承っています、エキセントリックマイスター、略してトリックスター』と言いました。非戦闘員は明らかになっております」

 

「安心しろ。あと少しで俺が直々に前線へ出る」

 

まともに答えたのは嬴政だけという

 

「どれだけやる気パワー奪ってもダメ。特にあの人魚の持ってる変な瓶に、全部吸い込んで戻しちゃうし」

 

「変な瓶……そうそれだわ!マーメイドアクアポットって言ったかしら?あのやる気パワーを回収する瓶。アレを奪っちゃうってのはどう?」

 

「そう言えば」と言いたげな感じで、全員が感心の声を漏らす

 

 

 

 

 

////////

 

次の日

 

まなつが全員をさんごの家に呼び集めて、ネイルをしようと言い出した

 

それに何の反対も無く、寧ろ他の皆もやってみたいと言う事で実際にやってみる

 

「皆んなそれぞれ個性に合った色塗ってるな。綺麗だ」

 

「帝が褒めるなんて珍しいな。明日は雪が降るかもな」

 

「俺は何も言わないぞ」

 

「帝君もネイルやってみない?」

 

「待て、そんな趣味は無い」

 

「そう、だよね…帝君男の子だもんね…」

 

即答で断られて凹むさんごを見た帝の反応が早かった。

即座に緑のネイルオイルを持って来る

 

「さんご、ほらやってくれよ」

 

「帝、さんごにだけ甘いね」

 

「みのりん先輩、俺からしたらこんなのは当たり前」

 

ドヤ顔でみのりを見るのと同時に、さんごにネイルを塗ってもらう

 

全員塗り終わった後、くるるんにアクアポットで撮ってくれた

 

そんな時地響きが鳴った

 

その場所は海の方からだった

 

 

 

 

 

////////

 

そこでは、チョンギーレが使役するボートのゼンゼンヤラネーダがやる気パワーを奪っていた

 

「プリキュアの出番よ!行きなさい!」

 

 

 

「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」

 

「「「「レッツメイク!」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

 

「今日も元気だ!」

 

「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」」」

 

 

「エモーショナルスタート!」

 

『FANTOME!』

 

 

 

「待ってたぜプリキュアさん達。かったりぃがとっとと決着つけようぜ」

 

「ヤラネーダ!」

 

『ぺけ!』

 

発射される錨をコーラルが正面から防ぎ、サマーとフラミンゴが一撃を加える

 

「や、ヤラネーダ!」

 

負けじと、錨を二つ振り回しながら攻撃を仕掛けて来た

 

「うわっ!?」

 

サマー達は避けるが、帝とパパイアは逆に向かって行く

 

「フフ!」

 

「当たらない!」

 

パパイアは華麗なステップで翻弄し、帝はFANTOMEで擦り抜けたりで避けつつ、ヤラネーダの錨を利用して自分を巻き付ける様に仕向けた

 

「これで動きは封じた」

 

「今よローラ!」

 

「オーライ!」

 

ローラがアクアポットを取り出すと、チョンギーレの目が光った

 

「今だゼンゼンヤラネーダ!」

 

「ヤラ!ネーダ!!」

 

錨の鎖を引き千切り、口から何百という数の瓶をローラへと吐き出した

 

「おっと!効かないわよ!マーメイドアクアポット!サーチ!」

 

呑み込まれはしたが、何とか耐え抜いてアクアポットの天井ボタンを押すのだが

 

「あれ?え?」

 

しかし何度押しても反応が無い。アクアポットをよく見ると、それは先程吐き出された瓶の内のひとつだった

 

「これじゃない!ちょっとどう言う事よ!?」

 

どうやら先程瓶の波に呑み込まれた時にすり替わったみたいだ。

急いで瓶の山から漁って探すも、似た様な形ばかりで見つからない

 

更に今度は

 

「えっ!?うわああっ!?」

 

ヤラネーダから網を出して、無数の瓶ごとローラを捕えたのだ

 

「大漁大漁!」

 

「ローラ!!」

 

「じゃあな」

 

去り際にチョンギーレは煙幕を焚き、サマー達の視界を遮られる

 

「待て!」

 

煙幕の中から分身した帝2人が飛び出して、ローラを救出しようとする

 

網まで後数センチ、だが無常にも届かず分身した帝はそのまま海へ落ちて消えていく

 

「どうしよう!ローラが攫われちゃった!」

 

 

 

 

 

一度変身を解いて、その場でどうするか考える

 

「どうしようローラが…」

 

「先ず此処を離れましょう。ゆっくり話せる場所に」

 

みのりの提案に一同その場を後にしようとするが

 

「帝君?」

 

「悪い、俺は俺で何とかして見せる。ここからは別行動だ」

 

「え、待って帝君!」

 

さんごの静止も無視して、帝は何処かへと走り去った

 

 

 

 

 

////////

 

その頃連れ去れてたローラは、あとまわしの魔女と対面していた

 

「お前は、人間に手を貸す人魚か。何故人間の味方をするの?」

 

「……」

 

「嗚呼そういう事か。お前は人間に憧れているんだな」

 

「…!」

 

「お前は人間になりたいのか。だったら、私に力を貸すがいい。お前のその願い叶えてやろう」

 

悪魔……ではなく魔女の取り引き。それに応じればローラは人間にしてもらえる

 

しかしその取り引きの内容について不満がある人物が一人。

その人物は近くで話を聞いていた嬴政だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この取り引きをローラは応じるか、否か




来週はラメールだ!!
それに向けてオリスト頑張って書いてます。一応1話は書けましたが、その次の2話目で半年分の伏線?の種を回収&解説でかなり手こずっております。
誰か助けて!!

ここまでの拝読ありがとうございました


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第32話 皆んなと一緒に!奇跡のキュアラメール!

だぁぁぁぁああ!!!キュアラメール!!

ではスタート!


「人魚よ、人間になりたいのだろう?私に協力すればその願いは叶う」

 

「──!」

 

「難しい事は何も無い。やる気パワーを奪う邪魔さえしなければ」

 

「──!──ッ!!」

 

ローラは必死に喋ろうとするが、今は口を塞がれて何も喋れない

 

「口枷を外しておやり」

 

「御意」

 

バトラーが口枷を外すと同時に、喋ろうとする言葉を勢い良く口に出す

 

「誰が貴女に協力なんか!」

 

「どうして、願いが叶うというのに」

 

当然ながらローラはその誘いを断る。

だが魔女からすれば理解出来なかった。自分の欲しいモノが、すぐ手の届く所にあるのにそれを拒否する事に

 

「人間からやる気パワーを奪って何をしようっていうの?」

 

「やる気の無い人間達でいっぱいの、あとまわしの世界を創るのだ」

 

「何それ…そんな世界誰も望んで無いわ!!」

 

「大丈夫、今決めなくても良い。決めるのは後回しでも大丈夫。ゆっくり考えるが良い」

 

その瞬間ローラの真下に穴が開き、籠事一緒に地下の牢屋に落とされた

 

「何!?」

 

このやり方に、近くで話を聞いていた嬴政も思わず驚いてしまう。

急いで落とされた穴の中を覗き込んだが、ローラの叫び声が聴こえるだけで何も見えず

 

「何か不都合でもありましたか嬴政様?」

 

「……いや、もう少し丁重に扱えなかったのか?万が一、怪我でもすればこの取り引きを受け入れるのに渋る筈だ」

 

「それには心配は及びません。何故あの人魚に肩入れを?もしや貴方は──」

 

「それ以上の話はオススメはしない……落ちた人魚の様子を見に行く」

 

嬴政はフードを翻して歩き出した

 

 

 

 

 

「良かった〜貴方も無事だったのね!」

 

「くるるん!」

 

牢屋に落とされたローラは、隅っこに居たくるるんを見つけて声を上げていた。

魔女との対面の時はその場に居ず、くるるんは何処かと探していた

 

不幸中の幸いか、くるるんと一緒の牢屋に放り込まれていたのだ

 

(後はアクアポットを取り返して脱出を!)

 

どの様に脱出するか全体を見ながら考える

 

出入り口の扉は正面のみ、天井から落ちた時の穴は当然塞がっている。残るは、くるるんがギリギリ通れる程の小さな通路

 

(あの通路なら!でも…)

 

その通路も鉄格子で塞がれている。強引にくるるんを押し込めば入るが

 

「でも一か八か!」

 

『何が一か八かだよ?』

 

正面の扉の向こうから声がした。それはとても聞き覚えのある声だ

 

「もしかして人間!?」

 

「くるるん〜!」

 

『くるるんもいるのか。それなら好都合だな。探す手間が省ける』

 

「人間──」

 

ローラは正面扉の小さな鉄格子から、帝の姿を見ようと覗くが思いも寄らない姿を目にする

 

「嬴政…」

 

「…」

 

「人間は?何処へやったの!?」

 

「察しの悪い人魚だ。声を変えれば済む話だ」

 

帝の声だと思われはソレは、嬴政が仕組んだものだった。

恐らくだが、此処から脱出する事も聞いていた筈

 

だとするなら、この事を魔女に報告するに違いない

 

ローラはその場にへたり込み撃ちしがれてしまう

 

希望は絶望へと変わってしまった

 

「人魚、此処から出たいのだろう?なら出してやる」

 

「え…?」

 

しかし相手から予想外の言葉が出て来た。あとまわしの魔女の一人として理解出来ない事だ

 

そしてこのパターンは先程の魔女と似ている

 

「…何が狙いなの?」

 

「今度は察しが良くて助かる。人魚、お前の脱出に手助けをする対価は────アクアポットの中にあるもう一つのディスクを渡せ」

 

「ディスクって…」

 

恐らくだが、それは帝が使うと思われるアイテムだ。

今は何の力も無く、ただの黒い円盤でしか無い

 

「断ったら?」

 

「この話は終わりだ。そこを抜け出せれたとしても、城内に居る奴らに捕まって振り出しに戻る。最悪、今より厳重に監視される筈だ」

 

「そんな…」

 

もしディスクを渡してしまえば、帝はこれ以上強くはなれない。下手をすれば嬴政がディスクを使って強くなるに違いない

 

だがディスクを使うにはオーシャンステッキが必須条件。

オーシャンステッキを持たない嬴政を渡しても意味は無い

 

だがもし、もしもの話だ

 

オーシャンステッキ無しでも力を使えたとしたら

 

「…分かったわ。あのディスクを渡すわ」

 

これは賭けだ

 

その賭けは今後の戦いにも影響を及ぼす

 

そんな博打を打たなきゃいけない状況下なのだ

 

 

『──何かを得るには何かを犠牲にしないと無理って事だ』

 

 

図書室で言われた帝の言葉を思い出す

 

「賢い判断だ」

 

「但し!但し、この屋敷から抜け出せれたらの話よ。牢屋を抜け出せれたとしても、あとまわしの魔女が居るこの屋敷から逃げ切れないなら無しよ」

 

「それで良いだろう。なら少し扉から離れろ」

 

ローラはくるるんを抱いて扉から離れた直後、扉が嬴政によって蹴り壊された

 

「う、うわぁぁ…」

 

もう少し離れるのが遅かったら自分も巻き込まれていた

 

「ちょっと危ないじゃないの!わたしまで巻き込むつもり!?」

 

「行くぞ」

 

「無視しないでよ!!」

 

「静かにしろ」

 

「全く…くるるんは先に逃げて。わたしはアクアポットを取り返してから追い掛ける」

 

ローラに従いくるるんとは此処で別れた

 

歩く事少しすると、魔女が居る部屋まで辿り着いた。

魔女は昼寝をしていて気付いていない

 

「部屋の外で待っている。取り返して来い」

 

「分かってるわよ」

 

ローラはひとり静かに部屋に侵入し、アクアポットを取ろうとしたがドジを踏んでしまう

 

ポットを落としてしまい魔女が目を覚ましてしまった

 

「何をしている?」

 

「ぐっ…離して!」

 

ポットは取れず、魔女の大きな手によって捕まってしまった

 

「何故私に逆らう?人間にしてやろうと言うのに。お前は人間になりたくないのか?」

 

「人間にはなりたい。でも、貴女の力は借りない!わたしの願いはわたしが叶える!!」

 

その時、魔女の手が蹴り飛ばされる。その拍子にローラも解放された

 

「嬴政!」

 

「何やってる来い!」

 

「此処に居たか!」

 

ローラが居ない事にバトラーが気付いてやって来た。

邪魔されるより早く、ローラはアクアポットを持って嬴政とその場を去って行く

 

 

 

「良し、ここら辺なら問題無い筈だ。さぁ」

 

何とか屋敷から逃げ出せれたローラと嬴政。

嬴政は、交渉材料としてのディスクを寄越せと言わんばかりに手を出す

 

「はいコレ!」

 

ローラは乱暴にポットから取り出しては嬴政に手渡した

 

「確かに。なら俺も、プリキュアの元に帰るまで役目を果たそう」

 

「逃しませんよ」

 

律儀にそう言うと、先回りしていたバトラーに追い付かれていた

 

杖を取り出し攻撃して来る

 

「お前は先に行け!」

 

バトラーの杖を受け止めた後、ローラの背中を押して必死に逃がそうとする

 

「いくら貴方でも水中では動き難い筈です」

 

杖を持っていない手で嬴政の手を弾く

 

そして、杖をローラへ向けると水鉄砲が吹き出した

 

「チッ!」

 

弾かれた嬴政も足掻いて結果、杖に足が当たりその軌道をズラした

 

「あ────」

 

軌道がズレたとはいえ、ローラは間一髪の所で避けた。

しかし水鉄砲の先には岩がありあまりの威力に砕け散る。

その衝撃でローラは気絶して、更に深海へと溺れていった

 

嬴政はローラの姿を視認出来たが、バトラーは見失っていた

 

「これは裏切り行為ですよ」

 

「裏切り?違うな、俺は取り引きした。あの人魚の脱出の手助けを材料に。魔女も同じ様に取り引きを持ち出した、それと同じだ」

 

「しかし内容が内容です。これ以上好きには──」

 

バトラーの喉元に手が構えられた

 

「御指名どうも誠にありがとう御座います。私、サポートレンタルのアリスで御座います」

 

嬴政の指示でアリスが助太刀をして、バトラーの背後から差し迫っていたのだ

 

「『これ以上好きには』どうした言ってみろ。但し」

 

「但し、その頃にはバトラー様の頭と胴体が織姫と彦星の様に離れ離れになるかもですよ?あ、それですと一年に一回はくっ付きますね」

 

バトラーは渋々杖を下ろすしか無かった

 

(さて、後はどうするかだ…)

 

ローラが溺れていった先を見据えながら嬴政は何か考えていた

 

 

 

 

 

////////

 

「ぅ…ん…ぁ…」

 

「くるるん!」

 

「くるるん…?」

 

「くるるん!く〜るるん!」

 

「気付いた様ですね」

 

「貴女は!」

 

ローラが気が付いて目にしたのは、くるるんとグランオーシャンの女王だった

 

「女王様!」

 

「くるるんと貴女のお友達が助けてくれたのです」

 

「お友達?」

 

女王の視線の先、ローラは振り返るとオーシャンステッキを持った帝が立っていた

 

「人間!貴方本当に人間なのよね!?」

 

「それどう言う意味だよ…。まなつ達とは別行動で探していてな、そんな時ローラを運ぶくるるんを見つけたから」

 

そして、くるるんの案内で帝もグランオーシャンへと足を踏み入れたのだ

 

「ローラご苦労様。今まで良く頑張りましたね」

 

「女王様…ねぇ、女王様はわたしに何をさせたかったの?わたし、女王様の言う通りプリキュアを王の素質を持った人間を見つけた。次はどうすれば良い…?」

 

ローラの役目はとうに終えた。しかしその後、ローラは縋り付く様に女王にその答えを聞こうとする

 

「貴女はどうしたいのです?」

 

「わたしは…」

 

「貴女はわたしの言い付け通り、人間の世界に行ってプリキュアと王である素質を持った人間を見つけました。だから、だからもう人間の世界に戻らなくても構いませんよ。女王候補として立派に役目を果たしたのですから」

 

「良かった…ありがとう女王様」

 

ようやく自分の頑張りが女王に届き褒められた

 

それに涙するが

 

「だけどね、わたし────あの子達、わたしが居ないとダメだから。わたしは戻る」

 

「だったらコレを持って行きなさい」

 

女王はローラが戻る事に何も言わず、石で出来た物を差し出す

 

「これは?」

 

「その時が来れば分かります」

 

「…まなつともっと一緒に遊びたい。さんごとコスメの話もしたい。みのりと人魚の物語の事も話したい。あすかと一緒にゲームもしたい。勿論」

 

ローラは後ろに居る帝へと振り返り笑顔で言う

 

「貴方と…人間とももっと仲良くなりたい」

 

「俺もだ」

 

「皆んなと一緒に部活もしたい!もっとずっとまなつ達と…皆んなと一緒に居たい!それがわたしの────今一番したいこと!」

 

「その想いがあれば大丈夫。お友達が待っていますよ」

 

「はい、女王様!行くわよ人間!」

 

ローラは帝の手を引いて泳ぎ、くるるんはアクアポットの中へと潜る

 

 

 

 

 

////////

 

「もうすぐ海面よ!」

 

「ローラ待て!」

 

グランオーシャンを後にした帝達は、先ず海面に出ようと浮上していたが、その途中で水中でサマーとチョンギーレが戦っていた

 

水中で生活してるが為か、地上よりチョンギーレの動きにキレがある。

それに引き換えサマーはぎこちない動き。一方的になぶられトドメを刺されてしまった

 

「「サマー!!」」

 

「なんて酷い事を…しっかりしなさいサマー!」

 

ローラが抱き寄せて声を掛けると、サマーがローラの存在に気付いた

 

「ローラ、無事だったんだね…良かっ、た…ぁ…」

 

意識を失い変身が解除されてしまう

 

「おっと、人魚が何で此処に?魔女様の屋敷を抜け出して来たのか?」

 

「クッ!」

 

「──ローラ下がっていろ」

 

帝もこの状況は危険だと察し、まなつとローラを庇う様に佇む。

しかし、まなつ同様に帝も水中戦での経験が殆ど無い為不利な状態

 

「ほっときゃ良いのに無駄に頑張るからそうなるんだよ。他の奴らも無駄にやる気を出していたみたいだが結局全滅だ。ったく、かったりぃぜ」

 

「人間退いて───許さない」

 

帝を強引に退かすと、ローラの指が光りハートクルリングが現れた

 

「ローラお前…」

 

ハートクルリングから膨大な青い光量が、暗闇の水中を照らし出す

 

「まなつを、皆んなをこんな目に合わせて……絶対に許さない!!」

 

更に光りはハートクルリング以外にも

 

それは、女王から貰った石の塊からだった。ヒビが入り、隙間から光りが溢れ出し砕け散りその真の姿を現した

 

 

 

「プリキュア!トロピカルチェンジ!」

 

「レッツメイク!キャッチ!」

 

「フェイス!」

 

「ネイル!」

 

「ドレス!」

 

 

「ゆらめく大海原(オーシャン)!キュアラメール!」

 

 

 

ハートクルリングと新たに手にしたローラだけのパクト「マーメイドアクアパクト」を使って「キュアラメール」へとプリキュアに変身を遂げた

 

更に驚くべきは、プリキュアに変身した事で尾鰭だった下半身が無くなり、人間の足へと変わっていた

 

「ッ!」

 

人間の足を手に入れたからといってそれだけでは無い。

人魚の時と同じ速さで泳ぎ、チョンギーレを蹴り上げた

 

強引に外へ引き摺り出すと同時に、帝とまなつを抱いて真上にある豪華客船へと舞い降りる

 

「まなつ、しっかりしてまなつ!」

 

「…あ、ローラがプリキュアに?」

 

「あら、新しいプリキュアは?」

 

船の上にはヌメリーと他ゼンゼンヤラネーダが二体居た

 

「ローラ」

 

 

「マーメイドアクアポット!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

帝からアクアポットを受け取り即座に奪い取り、やる気を元に戻した

 

「「「ローラ!」」」

 

「よ〜し、ローラがプリキュアになってくれれば百人力だ!」

 

「キュアラメールよ」

 

「キュアラメール一緒に戦おう!」

 

 

 

「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

 

『キングハンド」

 

「エモーショナルスタート!」

 

『NATURAE!』

 

『GENIUS!』

 

 

 

「こっちは任せて」

 

「オーライ。それじゃあこっちはわたし達が!」

 

ラメールは一人で一体のゼンゼンヤラネーダを、帝達5人全員でもう一体のゼンゼンヤラネーダを相手に分かれた

 

「ハッ!」

 

帝が両手を広げると、海水が渦を巻きながら柱を立ててそのまま攻撃へと転換させる

 

「ヤラ──」

 

渦に巻き込まれたヤラネーダは溺れ、空中への放り出される

 

「「「「ハァァァ!!」」」」

 

そこにタイミングを合わせてサマー達が一斉攻撃を仕掛けダウンさせる

 

ラメールはというと、ヤラネーダの攻撃を巧みに避けて華麗な脚技で叩き潰していた

 

「潮時だな」

 

「だね!そろそろ決めちゃう?」

 

「そうね、覚悟しなさい!」

 

 

 

「ハートカルテットリング!」

 

「「「「プリキュア !ミックストロピカル!」」」」

 

 

「「「「ビクトリー!」」」」

 

 

 

「プリキュア!くるくるラメールストリーム!」

 

 

「ビクトリー!」

 

 

 

「どんなもんよ!」

 

「ラメール、ビクトリーポーズ決めるのは良いが脚上げるなんて俺に股を見せてくれるのか?」

 

「あはは!人間はもう少し海で泳いでらっしゃい!!」

 

ラメールは帝の腕を掴んで海へと放り投げた

 

 

 

 

 

////////

 

 

船は無事港に着き、サマー達も岩場で変身を解く

 

「「「「あ…!」」」」

 

「ローラ、足!」

 

ローラは下を向くと、変身を解いた後でもちゃんと足が有ったのだ

 

「わたし、人間になれた!?」

 

「「「「「うん!」」」」」

 

「やったあぁぁぁ!!」

 

晴れて念願の人間になれたローラ。

その後は夏海家でお世話になる

 

ローラの新しい日々が今始まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

////////

 

とある浜辺で嬴政とアリスが黄昏ていた

 

「ローラ様がプリキュアになりましたね。確か…キュアラメール、と」

 

「分かっている」

 

嬴政は足に波打つ海水を見て不敵に笑う

 

「キュアサマー、キュアコーラル、キュアパパイア、キュアフラミンゴ、そしてキュアラメール。予想は超えたが想像は超えては無い」

 

嬴政は、ここまでプリキュアの人数が増える事は何となく分かっていた

 

「では遂に」

 

「ああ、今が好機。これ以上無い舞台が揃った」

 

夜空に光る月夜を見上げフードを外す

 

「皇帝……いや、"始皇帝"になる時、俺と彼女だけの世界が待っている。その時彼女は────さんごは幸せを感じるだろう」

 

「…そうですね」

 

アリスは初めて見た。嬴政がこれ以上無い程の笑みを

 

そしてアリスは綴る

 

「PICARO」

 

悪漢、悪者

 

その意味即ち──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

反主人公(アンチ・ヒーロー)




うわぁ…とうとう敵のオリキャラの一人の頭がイカれました

そんな訳で次回からオリスト開始です。

約6話分でお送りします。トロプリ始まる前から次からのオリストの構成考えてウキウキしていました!
そして前も言っていました通り、この6話の中でヒロインが決まります。
次の話、来週までには6話投稿が目標です。因みにその内の4話分は余裕で出せると思います

では、ここまでの拝読ありがとうございました!


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第33話 さんごさんごさんごさんごさんごさんごさんごさんごさんごさんごさんごさんごさんごさんごさんごさんごさんごさんごさんごさんごさんごさんごさんごさんごさんごさんごさんごさんごさんごさんごさんご

オリスト開始!!!

ではスタート!


「さんご〜!学校遅れるぞ〜!」

 

珍しくも帝が早く支度を終わらせて、一緒に登校しようも誘っていた

 

ドタバタと大きな音を立てながら玄関のドアが開いた

 

「はぁ…はぁ…み、帝君!先に行ってて!」

 

未だにパジャマ姿で、髪が整っておらず焦るさんご

 

「え、あぁ分かった。先行って待ってるよ」

 

 

 

それから数十分後

 

「いってきま〜す!」

 

「さんご朝ご飯は?」

 

「食べてたら遅刻しちゃうよ〜!」

 

みゆきに丁寧に返事をしながらも、さんごは朝ご飯を食べずに慌てて家を出て行った

 

正直もう遅刻は確定はしている。家を出た時点で10分前なのだ。

どんなに早く走っても遅刻なのだが、それでも大幅に遅れて門を潜るより、少しでも早目に門を潜る方が良いに決まってる

 

その為全力疾走で街中を駆け抜ける

 

「はぁ…はぁ…あっ!」

 

しかし、焦る余り足が追い付かず躓いで転んでしまった

 

「うぅ…痛っ!」

 

転んだ拍子に右膝を擦りむいてしまった。

血も出ていて絆創膏でも有れば良かったが、生憎持ち合わせてはいなかった

 

「どうしよう…」

 

「大丈夫かさんご?」

 

「え、何で!?」

 

顔を上げると、先に学校に行っていた筈の帝が手を差し伸べていた

 

「何でって言ったろ?『先行って待ってるよ』って」

 

別にマウント取る為に言ったのではない。只単純に、珍しくさんごが遅れていたので心配でずっと待っていたのだ

 

「学校遅れちゃうよ!」

 

「そんな事今更言われても遅刻は免れないぞ」

 

「帝君は……っ!」

 

話をしていて忘れていたが、さんご今怪我をしている。擦りむいた傷口が忘れるなよと言わんばかりに痛みを与える

 

「転けたのか?」

 

「うん…」

 

「え〜と…あ、あそこに公園があるから休憩しよう」

 

「で、でも学校が…ひゃあ!?」

 

有無を言わさずにさんごを抱っこしてそのまま公園のベンチまで移動したのだ

 

「絆創膏は持ってないからな。水で濡らしたハンカチ巻いて、後は学校の保健室でちゃんと手当てする。分かったか?」

 

帝はハンカチをさんごの膝に巻きながらそう説明した

 

「さて、後はおぶって行くか」

 

「い、いいよそこまでしなくても!それにわたし重いし…」

 

「そんなんで歩ける訳ないだろ。それに重いのは前々から知ってる」

 

「ちょっと今複雑な気持ちがする…」

 

帝はさんごの前に屈んでおんぶする準備をする

 

去年まで小学生だったとはいえ今は中学生だ。この年になっておんぶされるというのは少々小恥ずかしいもの

 

しかし、いつまでもこうしてると遅刻というレベルの問題では無くなる。

学校に来るのが遅いと家に電話をするのは必然。家を出た筈が着いてないとすれば大騒ぎだ

 

恥ずかしい気持ちを抑えながら、その身を帝に預けて登校したのだった

 

 

 

 

 

着いたのは8時も過ぎて20分

 

帝のお陰で予定よりは早く着けた。

向かうは教室では無く、先ずは保健室だ

 

「後は保険の先生に任せて、桜川先生に事情を話せば終わりだな。またあとでな」

 

「ねぇ帝君、ひとつだけ聞いてもいいかな?」

 

「何?」

 

「いつも思うんだけど、どうしてこんなにもわたしに優しくしてくれるの?さっきだって、わたしなんか置いて先に学校に行けば遅刻なんてしなかったのに」

 

いつも当たり前の様に振る舞ってくれる彼の優しさに、ふと気になったのだ。

何か裏があるという考えがではない

 

昔からいつも、何故一緒に居てくれるのか気になった。

特にコレといった事はした事無い。

寧ろいつも迷惑ばかり掛けている

 

それなのに

 

「何変な事言ってるんだ?さんごが幸せ(・・)じゃないと意味無いだろ」

 

「え、え?意味がよく分からないのだけど…」

 

「そのまんまだよ。さんごひとりで遅刻させるなんて出来ない。それは、さんごが幸せじゃない」

 

「??」

 

「時期に分かる」

 

軽く頭をクシャ撫でると帝は保健室から出て行った

 

分からなくて聞いた事なのに、余計にこんがらがって悩む羽目になってしまった。

けれどそれでも納得したのは、帝は相も変わらずさんごにはいつでも優しく、過保護な幼馴染と言うだけ

 

それだけは変わらない

 

決して変わる事などないのだ

 

 

 

 

 

////////

 

今日の授業が終わり、揃いも揃ってトロピカる部に集まっていた。

次は何をやろうかと会議してる途中なのだ

 

「今度の部活何かやりたい人!」

 

まなつが皆んなに呼び掛けたが、誰も手を挙げるどころか言葉ひとつも漏らさない

 

「偶にはのんびりと過ごすのもいいんじゃないか?もうすぐ夏休みだし」

 

「夏だからこそ部活により一層励む!」

 

「流石『まなつ』だな。俺、夏は絶対お前に近付かないわ」

 

「なにを〜!こっちから近付いてくれるわ!」

 

初めて、帝が誰かに追いかけ回されるのを目にした。

しかし、あまりにも狭い部室内で走り回るのであすかが2人を止める

 

「そういえばさ〜、最近部室の窓で外の様子を見るとヤラネーダが高確率で出現するだよ」

 

「帝、それはフラグだよ」

 

「そんな訳で外の様子をチラ見とします」

 

「あ、わたしも〜!」

 

「もう2人共……あっ」

 

みのりに言われるも、帝とまなつは興味本意で外を見ると本当にヤラネーダが現れていた

 

みのりは何か言いたげな目で2人を見つめ、さんごは何とも言えない表情をしていた

 

「まっかせないさよ!わたしプリキュアになったのよ。百人力間違いなしよ!!」

 

「うわビックリ!?ローラ何処から侵入したんだ?」

 

「失礼ね人間。ちゃんと隠れ……正面から入って来たわよ」

 

「さっきの間は何?」

 

「早いとこ片付けるぞ」

 

あすかを先頭に街まで走って行くのであった

 

ただそこで、様々な思惑が明かされるのを誰も知らなかった

 

 

 

 

 

////////

 

「ヤラネーダ!!」

 

「お決まり展開だな」

 

「プリキュアに変身するわよ!」

 

 

 

「「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」」

 

「「「「「レッツメイク!キャッチ!」」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

 

「フェイス!」

 

「ネイル!」

 

「ドレス!」

 

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

「ルーレットスタート!」

 

『TECHNIC!』

 

 

 

「フフッ…お待ちしておりおりました。プリキュアの皆様方」

 

「今度はマジで行くわよぉ〜!」

 

「高みの見物と行こうか」

 

嬴政、オッカマー、アリスの3人が揃って遂に現れた

 

「高みの見物?良い度胸してるじゃないの!」

 

「アリス、余興の時間だ」

 

「エイエイオーで頑張ります!ゼンゼンヤラネーダ!」

 

虫網を媒体としたゼンゼンヤラネーダが、頭である虫網を振り回しながら突撃して来る

 

「私も──」

 

「待てオッカマー。余興と言ったろ?一度様子を見るべきだ」

 

「焦らすわね政ちゃん!」

 

帝達はと言うと、ラメールを中心に有利に戦況を運ばせていた

 

「ふふん!大した事ないわね!」

 

ラメールは縦横無尽に立体でヤラネーダを撹乱しつつ、着実にダメージを与え続けてる。

それと同時に帝やサマーは、ラメールに合わせようと振り回されてばかり

 

「やっぱラメール凄い!わたしも負けてらんない!!」

 

ラメールに感化されてサマーまで自由とまではいかないが、単身で動き始める

 

「オイ2人共勝手に動き回るな!」

 

「諦めろフラミンゴ。駆け回る犬は止められない」

 

「「あはは…」」

 

仕方なしに、帝達も援護してゼンゼンヤラネーダを追い詰める

 

「さぁトドメよ!」

 

 

 

「プリキュア!くるくるラメールストリーム!」

 

 

「ビクトリー!」

 

 

 

ラメールの浄化技で勝負が決まった

 

「今日は簡単に倒せれたね」

 

「気を抜いたら駄目だよコーラル。あとまわしの魔女達はまだ残ってる」

 

パパイアの言う様に、ゼンゼンヤラネーダは浄化されたのにも関わらず不敵な笑みを浮かべて、未だに留まっている

 

「最後の仕上げだ。アリスは待機。オッカマー付いて来い」

 

「飛び出すわよ〜!!」

 

建物の上から地上に居る帝達へと、ひと踏みで飛び出て向かって来る

 

『『任せろ!』』

 

分身した帝2人も飛び出して空中でぶつかり合う。

だが一瞬のすれ違いで叩きのめされて、分身2体が消滅した

 

「突破された!?」

 

「全然味気ないわよ〜!」

 

「別れて向かい打つぞ!」

 

フラミンゴの指示で二手に分かれる

 

嬴政の相手はサマー、コーラル、ラメール。

オッカマーを帝、パパイア、フラミンゴ

 

「ウフフッ…乱交パーティーといきましょう!」

 

「オカマはすっこんでろ!」

 

「パパイア!」

 

「やぁ!」

 

帝が2人のフォローをしつつ、パパイアとフラミンゴがけしかける

 

パパイアの拳がオッカマーの腹に減り込んだ

 

「やった!」

 

「あら、それはどうかしら?」

 

「ッ!?」

 

減り込んだ拳をよく見ると、オッカマーの体の肉質が変化していた。

筋肉で固められていた肉体は、ゴムの様に柔らかく物理攻撃のダメージを吸収し外へ逃していた

 

「パパイア離れて!」

 

「クッ…!」

 

「無駄よ。一度飛び付いて来たら絶対離さないわ!!」

 

瞬時に肉質が変化し、硬く強靭な鋼の肉体へと変わり、パパイアの拳を挟み込んだ

 

「サンドバッグになって、可愛い悲鳴を聴かせて頂戴!」

 

『『やらせるか!』』

 

両側から分身の帝が仕向けるが、オッカマーの両の拳で弾かれた

 

「帝行くぞ!」

 

「分かってる!」

 

分身に気を取られてる一瞬を突いて、正面から帝とフラミンゴが突っ込んだが

 

「甘いわよ!」

 

オッカマーはパパイアを掴んで2人へと投げ飛ばした

 

「パパイア…うわっ!」

 

止まる事の出来無いフラミンゴはら投げ飛ばされたパパイアに巻き込まれる

 

「フラミンゴ…しま──」

 

心配した帝も油断し、オッカマーに脚を掴まれた

 

「そ〜れッ!」

 

数回振り回され投げ飛ばされたが、空中で体勢を整え上手く着地した

 

「コイツ思ったりより強い!」

 

「帝みたいに只の変態って訳じゃないか」

 

 

 

帝達が苦戦を強いられてる中で、サマー達も翻弄されていた

 

「攻撃が全部当たらない!」

 

サマーの攻撃を嬴政は寸前で避けていた

 

「当たっても受け流されちゃうよ!」

 

そして時に、拳や足での攻撃を受け止めては簡単にあしらう

 

「この〜!」

 

ラメールは休む間も与えさせない様に連続で仕掛ける

 

右、左のストレートからの軽くジャンプして右足の回し蹴り。

そのコンビネーションも通用しない

 

「はぁ…はぁ…」

 

「ラメールどうする?」

 

「このままじゃわたし達が…」

 

防御一辺倒で客観的に見たらサマー達が優先にも見えるが、防御に全て割り振っている嬴政が有利になっている

 

連続で攻撃するあまり、体力だけ奪われ既に3人は肩で息をしている。

対して嬴政は、最小限の動きしかしてない

 

「もう終わりか?」

 

「「何を〜!」」

 

「それならこっちから行くまでだ」

 

「させない!」

 

『ぺけ!』

 

とうとう仕掛けて来た嬴政にコーラルが前に出て防御するが、シールドの目の前でジャンプで避け、そのまま踵落としでサマーに攻撃する

 

「うっ…!?」

 

両腕でガードはしたが、その一撃は非常に重く踏ん張った両足は地面に減り込む

 

そしてそのまま体勢を変えて、防御の薄くなった脇に蹴りを一発放ち、建物へと吹き飛ばした

 

「サマー!」

 

コーラルも防御するだけでは勝てないと判断し、攻撃に参加するも

 

「えっ…?」

 

そんなコーラルを無視するかなの様に通り抜け、ラメールへと狙いを定める

 

「ッ!」

 

コーラルもすぐにターンで方向を変えて、背後から忍び寄るも

 

コーラルの接近を察知して嬴政は振り返り、コーラルの腰を掴んで適当に放り投げた

 

(やられる…!)

 

追撃されると思い、歯を食いしばり次の攻撃に耐えようとするのだが、コーラルには目もくれずラメールへと突き進む

 

(そんなどうして!?)

 

嬴政が何故コーラルを攻撃しないのかの真意が分からない

 

理屈では分からないが感じるものはある

 

嬴政はコーラルにだけ敵意が全く無い

 

「正面から来るなんてありがたいわ!」

 

ラメールは手を伸ばして掴み技に入ろうとしたが、片足を軸にターンで避けられ背後を取られる

 

「しま──」

 

気付いた時には既に手遅れ

 

後頭部を掴まれ、地面へと顔面が叩き込まれた

 

「ラメール!!」

 

ピクリとも動かないラメールに駆け寄り、揺するも反応が無い

 

「…」

 

嬴政はコーラルを目の前にするが、当然の如く無視して帝達へと足を進ませる

 

「ッ…駄目!」

 

コーラルにしてはあまりやらない、手の突きで攻撃した

 

「ッ!」

 

嬴政も余裕で寸前で避けるが、少し慢心したのか頭に被ってるフードに攻撃が擦り破けた

 

「貴方は一体誰なの、顔を見せて!」

 

嬴政はフードが破れて、顔を俯かせ手で見られまいと隠してるが、コーラルに言われゆっくりと手を退けて顔を上げた

 

そして嬴政の姿を見たコーラルの表情が、信じられないといった驚きに変わってゆく

 

「え、何で…その顔って……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人間と言う生き物は平穏を保つ為に嘘を吐く

 

 

 

 

 

何故なら、嘘の無い真実のみしか語れないとなると必ず争いが生まれる

 

 

 

 

 

嘘が世界の均衡を保っているのだ

 

 

 

 

 

嘘を暴けば良い時もある

 

 

 

 

 

しかし、それと同時に悪い事も起きる

 

 

 

 

 

彼は大切な人の為に嘘をつき続けていた

 

 

 

 

 

そして彼女は今日、その嘘を知る事になる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「帝君、なの?」




次回は主人公大活躍ですよ!
更に半年分の伏線?回収と解説全て曝け出します…多分

あの狂気じみたサブタイ、次回辺りでそれも分かりますはい

ここまでの拝読ありがとうございました


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第34話 我望む幸せの世界、始皇帝の歪んだ愛情

今回語彙力は低くなっております

ではスタートです


嬴政の顔を見て驚愕したのはコーラルだけじゃない

 

「嬴政の顔が帝と同じ?」

 

「ど言う事か説明しろ帝!」

 

フラミンゴが突っかかろうとする時、その間にオッカマーが割って入る

 

「おっと、それ以上のお触りが厳禁よ。政ちゃんいや────帝ちゃん、この子達は私が引き受けるわ」

 

帝は無言でコーラルの元へと歩き出した

 

「帝!!」

 

「待って!」

 

「貴女達の相手は私よ!」

 

 

 

 

 

「何で、帝君と同じ顔なの?」

 

「コーラル」

 

あまりの事に動けずにいると、帝が声を掛けた

 

「……はぁ」

 

帝は溜め息を吐くと、嬴政とハイタッチを交わした。

そして嬴政は、光りに変わって消えたのだ

 

「正直な話、最後までイケると思ったんだけどな。まさか、コーラルにしてやられるとは」

 

やられちゃった感を出してコーラルと向き合う

 

「嬴政という人物は存在しない。俺がステッキの力で分身したもう一人の俺。俺が皆んなと居る間の代わりと監視として置いていた」

 

帝が嬴政でもあり、嬴政が帝でもある。これまで、幾度となく目の前に現れたのは全て帝の分身。

そして時折り感じていた視線もまた

 

要は全て帝自身の

 

「自作自演。主演男優賞ものだったろ?」

 

「………してよ」

 

「ん?」

 

コーラルがボソリと呟き、帝はそれを耳を立てて聴く

 

「ちゃんと説明してよ!帝君はあとまわしの魔女なの?全然よく分からないよ!!」

 

目の前に起こる事について行けず、怒鳴り声に近い感じで帝に言い放った

 

「分かった。一個ずつ処理して行こうか────俺があとまわしの魔女達の仲間って言うのは本当だよ」

 

「ッ!?」

 

「そ、それって人間…わたし達の事を最初から騙していたの?一緒に戦ってくれる仲間じゃ──」

 

早々に目を覚ましたラメールが質問をする

 

「『仲間』?俺がいつお前達の仲間になったんだ?ラメール俺言ったよな。俺は一言も仲間になる(・・・・・)とは言っていない。協力する(・・・・)と言ったんだ」

 

「そんな屁理屈みたいな…」

 

「悍ましいウジ虫共と組むぐらいならゴミの海を泳いだ方がマシだ」

 

「あ……」

 

屋敷で助けてくれたのは全部帝。だがそれは全て、帝がより良い世界を創る為の行動

 

帝は最初から、まなつ達の事など駒としか見ていなかったのだ

 

そして思い出したかの様に更に付け加える

 

「そうだ、8年前の出来事をコーラル覚えているか?」

 

帝の言う8年前というのは、さんごがいつの日か皆んなに話した事のある内容。海で帝が行方不明になった事だ

 

「普通なら1週間も経てば死んでもおかしくない状況で、何故無傷で生きていたと思う?それはあの日、あとまわしの魔女達に拾われたからだ」

 

「拾、われた…?」

 

「細かく言えばオッカマーに拾われた。人間である俺を面倒を見てくれたのだ。その生活の中で実は誘われたんだよ。勿論その時の時点で、やる気パワーを奪うって事も知っている」

 

「じゃあそれで…」

 

「早まるな。そこはほら、保留って事で返事を後にしたんだよ。地上に戻って考えたさ。仲間になるべきか、そしてそれを決意する日が訪れた。それはいつだと思う?答えは小学2年生のあの時だ」

 

次に話に浮上したのが2年生の時の話。

この時は、さんごと遊んでいる時に一悶着あった時だ

 

「最初から、ローラと会う前からあとまわしの魔女達と一緒に居たの?」

 

「ああ」

 

「騙してたの?わたし達の事を…わたしの事をずっと騙しての!?」

 

「…お前がそう思うならそうなんじゃないのか?」

 

「…ふ、ふざけないでよ!!」

 

我慢の限界に達し、帝に歩み寄り頬を叩く

 

「──ふざける?馬鹿をいえ」

 

帝の雰囲気が一気に変わった

 

「目的は何なの?」

 

「…その前にひとつ、何故俺がお前に優しく、過保護になるか知っているか?」

 

「それが、どうしたの?」

 

「お前を幸せ(・・)にする為ださんご。お前がずっと幸せに笑ってる世界を創りたくてここまでやって来た」

 

コーラルにはその意味が分からない

 

「さっきの話の続きをしよう。小学生の時、お前は泣いてしまった。可愛いお前をこの世界が穢したのだ。それを阻止、起こらないようにする為だ」

 

「じゃああの日、わたしが泣いてしまったから帝君はあとまわしの魔女に?」

 

「そうだ」

 

「そんな事の為に…」

 

コーラルは呆れていた。まさか、自分が泣いたのが原因で敵になってしまったのを

 

「俺はお前の幸せを願ってる」

 

「わたしは幸せだよ!!」

 

「それはお前の主観だ」

 

「帝君には関係無い!」

 

「有る無いでは無い。俺が幸せでは無いと言ったら幸せではない。お前の主観で喋るな」

 

「わたしは!いつだって幸せだよ!!」

 

「じゃああの日何故泣いた?それだけじゃない。チューリップの時だってそうだ。お前は本当に幸せなのか?違うだろ。お前が生きるこの世界は狂ってる。それを俺が正す」

 

「ッ!!」

 

これ以上話しても平行線だとコーラルは察した。

帝を突き飛ばして覚悟を決める

 

「なるほどな…」

 

「帝!」

 

サマーが拳が帝へと降り掛かって来たが、それを片手で受け止める

 

「もうやめよ?帝を力強くで止めたく無い」

 

「やれよ、俺は一向に構わない」

 

帝は黒いディスクを一枚取り出してオーシャンステッキに嵌め込む

 

「何故俺が、わざわざお前達と一緒に行動してたと思う?それは、追い詰められれば力を増すと言う事だからだ!」

 

 

『フェスティバルディスク』

 

「ハッ!」

 

『PUPPET!』

 

 

それは新しい帝の力。嬴政が持っていた物だったが、それは帝の分身ということが明らかになり、所持してるのは必然的に帝という事になる

 

そして両手をサマーとラメールを向けて拳を握ると、自分の意思とは無関係に身体が勝手に動く

 

「な、何これ…?」

 

「どうする気よ」

 

「フフ!」

 

帝が手を合わせると、サマーとラメールはお互いに走り出して味方にも関わらず攻撃し始めた

 

「何…うっ!」

 

「体が勝手に…きゃっ!」

 

お互いにクリーンヒットし、変身が解けてしまった

 

「ルールその1、獲物を捕まえるにはまず囮が必要。ルールその2、獲物が罠に掛かったら囮は不要だ」

 

「まなつ!ローラ!」

 

「これで2人っきりになれた」

 

「ッ!」

 

『ぺけ!』

 

近付こうとする帝との間にシールドと壁を張る

 

 

『オーシャンディスク!』

 

『ATTACK!』

 

 

帝はシールドを掴み、そのまま握力だけで砕いた

 

『ぺけ!ぺけ!ぺけ!』

 

後退しながらもシールドを何度も張るが、虫でも払うかの様に簡単に打ち砕かれる

 

「俺が新しい世界を創ってやる。誰もお前に危害を加えない。喜と楽の世界を」

 

「そんなの要らない!!」

 

「黙れ!いいかさんご、お前は大人しく俺の側に居ればいいんだ。何故理解しない?」

 

「しないんじゃない、出来ないよ!帝君はわたしの事を全然分かってないよ!!」

 

「…お前は俺が邪魔なのか?」

 

帝はとうとうコーラルの胸ぐら掴んで、冷徹な目で言い放つ

 

「お前を蔑ろにした事あったか?子供の頃から思い返してみろ!!」

 

ここまでくるともはや狂気そのものだ。

話が通じてる通じてないの問題では無い

 

「俺の事が分からないなら、それを教えるまでだ」

 

帝は胸ぐらから手を離すと同時に、コーラルを殴り飛ばした

 

「この国…この世界の王共は碌な奴が居ない。この世に幸せの国など在りはしない」

 

容赦無く倒れるコーラルの腹を踏み潰す

 

「がはっ!」

 

「幸せな国を造るのが王だ。争いしか生まない国など全て滅んでしまえ!!」

 

足に更に力を入れ、更に地面に減り込み大きなクレーターが出来始める

 

足を退けたかと思えば、首を掴み上げ力強く締め付ける

 

「ぁ…ッ…!」

 

「そして創るんだ。さんごだけが幸せになる世界を。そしてその世界で俺は皇帝となる。あとまわしの魔女だろうが、プリキュアだろうが邪魔する者は容赦しない。俺が新世界の"始皇帝"となる!!」

 

コーラルの腹をサンドバックの様に殴り倒す。首を絞めていた手を離せば膝を突く。

突けば強引に立ち上がらせては、またも殴り倒す

 

その繰り返しが延々と続く

 

「ぐっ…ぅ…ゴホッ…!」

 

「さんご、俺はお前の事が本気で大切だと思ってる。これも全部お前の為なんだ。そろそろ理解しただろ?」

 

「がっ…!!」

 

「さんご…さんご、さんご!!」

 

言葉と行動が一致などしていない

 

そして、これがいつまで続くのか分からない

 

「いた…いよぉ……」

 

「さんご幸せだよな。お前は、昔から俺無しでは輪の中に中々溶け込めなかったもんな。俺がずっと側に居てやる」

 

「うぐ、ぁ……ぃゃ…た、助け…」

 

「このひとつひとつがお前を幸せにする。そんな哀しそうな顔をするな。ほら笑え」

 

ボロボロの顔を鷲掴みし、強引にコーラルに笑顔を作らせる

 

「いい笑顔だ。もっと笑え」

 

力を殆ど失ったコーラルも、力の限り抵抗し帝の手を振り払い這ってでも逃げようとする

 

「はぁ…あ…はぁ…」

(早く逃げないと…!)

 

「釣れないぞさんご」

 

逃げるコーラルの脚を掴んで、そのまま何度も何度も地面に叩き付け投げ捨てる

 

「がっ…ぅ゛…ッ!!」

 

「お前は俺が守ってやる、傷付けさせない。お前の事が大切で大事だから」

 

もう既にコーラルの意識がない状態までになってしまった。

それでも尚、帝は手を緩めない

 

これが帝がさんごに対する愛情

 

大切にするあまり、歪んでしまった醜い愛情

 

殴る帝はとても嬉しそうだった。

殴る度に帝は思っていた。これこそがコーラルの幸せに繋がると

 

だがどうだ

 

当の本人は虫の息

 

涙を流し、恐怖し、怯え、恐れ、助けを求めている

 

可愛く彩られていたプリキュアの衣服もズタボロだ

 

帝自身間違っていないと感じてる。何故なら、そう思う自分こそが正しいと思う性格だから

 

「さんご、さんご!俺の大切なさんご!お前なら今以上に幸せになれる!だから!!」

 

「ッ!……ッ!?────」」

 

「俺無しでは生きられない様にしてやる!いつでも側に居てやる!大切にしてやる!一生!一生!!」

 

コーラルを殴る腕が止まった。

というより止められたのだ。後方に居たアリスが帝の腕を掴んで辞めさせたのだ

 

「帝様、これ以上は無意味、かと」

 

アリスに言われ、一度冷静になってコーラルへ目を向けると

 

「ごめん、なさい……言う事聞くから…許して…ッください……お願いします……っ」

 

額を地面に擦り付け、両手を上げて土下座して、無様に許しを請いながら降参をしていた

 

「分かった。オッカマー、アリス行くぞ」

 

帝は拳を収めてその場を笑顔で立ち去った

 

「じゃあまた明日!」

 

その場に残ったのは、未だに土下座をするコーラル

 

「「「「コーラル!」」」」

 

まなつ達が駆け寄って声を掛けるも、コーラルは気付かない

 

真っ黒な感情に支配され、コーラル──さんごにとって拭い切れないトラウマに苦しむのだった

 

さんごにとって帝はもう────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぅ…ッ…ごめんなさい、ごめんなさい………ぃ」




ええ正直に言いますと……さんごボッコボコにして楽しかった!!
あ、別に嫌いとかそういう意味ではありません。逆に好きなキャラです

今回で主人公に対する好感度は全員ダダ下がりです。特にさんごは底辺超えてマイナスです

ちょっと言いますと、「嬴政」って名前、中国の偉人の始皇帝の本名なんですよね。色々あって本名を一部の人間以外に知られない様にする為に公では始皇帝と名乗ってたらしいです。
そこで主人公、フルネームで「皇帝」と読むじゃないですか。まぁそういうことですよ

今回の話まで隠し続けるの本当に大変でした。中には気付いた人もいるかな?

そんな訳で次回です。あ、下記に主人公の新しい能力置いてあります


フェスティバルディスク

PUPPET:操り人形の様に味方の体を動かせれる

COPY:能力発動時から相手の動き、技を模倣する

SPACE-TIME:時間と空間を操る

ACTIVITY:味方限定で身体能力を活性化させる


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第35話 恐怖の果てに、真の幸せとは何か?

卍こっからどう挽回するのでしょうか卍

ではスタート!


「さんご〜一緒に皆んなの所に行こう!」

 

朝早くから帝はさんごと一緒にまなつ達会いに行こうと家の前で叫んでいたが、代わりにみゆきが出て来た

 

「帝君ごめんなさい。さんご、今日は気分が悪いらしくて」

 

「そうですか、分かりました!」

 

体調が良くないと言われ、仕方なく涼村家を後にした

 

 

 

「……」

 

そしてその様子をさんごは窓から覗いていた

 

「良かったのさんご」

 

「うん……もう、帝君とは関わりたくないの…」

 

さんごは、怯える様にベッドに潜り込み布団を被って静かに時間が過ぎるのを待った

 

 

 

 

 

////////

 

水族館の屋上

 

そこでまなつ達は、昨日の出来事に付いて話し合っていた

 

「帝があとまわしの魔女と一緒だったなんて信じられない」

 

「信じられなくても事実だ。今度会ったらぶっ飛ばしてやる」

 

「そうね。今回ばかりは人間を許せない。こうなったら徹底的にやってやるわ!」

 

「うん…」

 

みのりは未だに嘘の出来事の様に思い、あすかとローラに至っては帝を倒す気満々だった

 

そしてまなつとはいうと、いつもの元気は無くカラ返事で返答する

 

「何よまなつ、貴女迷ってるの?」

 

「迷ってるし分かんないよ!だって、ついこの前までは一緒に遊んで、笑って、過ごして、部活をやっていたんだよ!」

 

「帝は最初から、わたし達の事なんてどうでも良かったんだ。迷う事なんてない」

 

「ですが、帝だってさんごの為に色々やっていた。少しやり方は間違っていますが…」

 

「やっている事が正しければ、そのやり方には目を瞑れって事か?」

 

帝に対する事で二つに分かれてしまった

 

帝の事を今でも信じてるまなつとみのり。

どんな理由であれ許せないあすかとローラ

 

「一番傷付いたのはさんごだ。帝と一番長く居て、近くに居て信頼していたんだ。アイツはそれを踏み躙ったんだ。それでもまだ許そうとするのか?」

 

「話し合えば分かり合えます」

 

睨み合いが続いてると、不意に声が聞こえた

 

「仲間割れですか?お友達同士、ウッキウッキのワックワクでいませんとダメですよ?」

 

「アリス!」

 

言い争いは中断されたが、代わりにアリスに何処にも向けれない怒りの目で見る

 

「人間は何処に居るのよ?」

 

「帝様を御指名ですか。彼も中々モテモテで罪に置けない人ですね」

 

「ふざけないで!!」

 

「……帝様なら街で待っています。そろそろゼンゼンヤラネーダを出す頃だと──」

 

それと同時に街の中心近くでヤラネーダが現れるのを目撃した

 

「噂をすれば何とやら」

 

「行くわよ…」

 

ローラとあすかは、飛び出してアリス横を通り抜け、まなつとみのりも遅れて続く

 

「まなつ様」

 

「え、何?」

 

「彼女──涼村さんご様の事は私に任せて下さい」

 

「…よく分からないけど分かった!」

 

 

 

 

 

「帝!」

 

「意外と早かったなまなつ」

 

「こんな事もうやめよう!」

 

「やめる?今更?それは無理だ」

 

話し合って済めば良かったが、この分だといくら言っても無駄

 

「まなつ、お前いつも言ってるな。『今一番大事なこと』俺にとってさんごを幸せにする事、その世界の始皇帝になる事が今一番大事なことだ。それをやめろと言うのか?」

 

「それ、は…」

 

「だが感謝する。そのお陰で、一体自分が何をすれば良いか改めて迷い無く出来る」

 

「ヤラネーダ!!」

 

ヤラネーダが今か今かと暴れ出したくてウズウズしている

 

「少し話し込んだな。やる気パワーは奪って無い。俺を止めたければヤラネーダを先に止める事だな」

 

「止める。絶対に止める!」

 

「"絶対"だと?それはお前達では無い、俺が決めるんだ。この俺が絶対なのだから」

 

 

 

 

 

////////

 

「……」

 

「いつまで引き篭もっているつもりですか?」

 

「ッ!?」

 

暗闇の部屋から突然声がした。さんごは慌てて布団を退けるとアリスがドア近くで立っていた

 

「…何?」

 

「失礼ながらお節介を焼きに来ました」

 

「帰って下さい…」

 

「敵を目の前にしながらこの体たらくですか。昨日の事といい、無様で醜く哀れなものですね」

 

さんごの姿は言う様に酷い有様だった。未だに着替えられてないパジャマ姿に、ボサボサで整えられてない髪。

瞳も光など微塵も無い

 

あるのは裏切れた絶対と痛め付けられたトラウマ

 

帝に対する気持ちも180度変わっていた

 

前の大好きだった気持ちはもう無い

 

「街にゼンゼンヤラネーダが出現しています。まなつ様達が頑張っていますよ」

 

「まなつ達が…」

 

「勿論、帝様もそこに居ますが」

 

「ッ!」

 

帝の名前を出した途端、さんごは過剰に反応して布団をまたも被る

 

「はぁ…貴女もプリキュアなら覚悟を決めたらどうですか?」

 

机に置かれてあるトロピカルパクトを手に取り、律儀にもさんごに差し出すのだが

 

「やだ…やだよぉ……」

 

それを拒否した

 

「いやだ…もう帝君に会いたくない、関わりたくないよぉ……」

 

「あらそうですか。それはそれは仕方ありません」

 

アリスはベッドに座り、くるまうさんごを優しく寄り添う

 

「でも良かったじゃないですか。貴女の為に帝様は奮闘していますよ」

 

「わたしの為じゃない…あんなの、ただ帝君がやりたいだけだよ…」

 

「そう、全部貴女の為に帝様がやっているだけ。帝様は純粋に、さんご様の事を第一に考えてらっしゃるお優しい方ですよ」

 

「優しくなんか…」

 

 

『──お前を蔑ろにした事あったか?子供の頃から思い返してみろ!!』

 

 

その言葉を思い出して考えてみる

 

 

『──いいよ!あそぼ!』

 

 

『──さんご泣かないで。さんごのかわいいは、俺もかわいいと思ってるから』

 

 

『──いつも隣に居るだろ?』

 

 

『──さんご?』

 

 

『──なぁさんご〜』

 

 

『──さんご!』

 

 

「……」

 

確かに今まで、さんごに対して変な事は沢山されたが、それでも嫌がる事などしていない。

寧ろこれ以上無い程に優しくしていた

 

でもだからって、昨日の事を許す訳にもいかない

 

「帝君なんか嫌い…嫌い嫌い嫌い嫌い!!大っ嫌い!!!」

 

「それ程嫌っているって事は、それと同じか或いはそれ以上に好きだったと考えます」

 

「お願いもう喋らないで!」

 

さんごにスイッチが入り、溜まっていたものを全て吐き出す

 

「帝君と喋りたくない!帝君なんて知らない!帝君なんて大嫌い!帝君に近付きたくない!帝君なんて…帝君なんかと────出逢わなければ良かった」

 

涙と嗚咽でまともに話せれてるか自分でも分からなかった

 

さんごの悲しみの叫びを聞きながら、アリスは一つの質問をする

 

「…さんご様、貴女とって"幸せ"とは何ですか?」

 

「わ、わたしの幸せ…?」

 

「はい。今帝様は幸せを掴もうとしていますが、私から言わせて貰えばあんなものは幸せとは言えません」

 

「知ってるよ…」

 

「いいえ貴女は知りません。本当の幸せ"真の幸せ"の意味を」

 

アリスは布団を強引に引っ張り剥がして、さんごを目を合わせる

 

「いいですか?幸せはどんなに頑張っても手に入らない(・・・・・・・・・・・・・・・)ものです。ですが」

 

アリスはさんごの喉に指を置き、そこからなぞる様にして唇に触れる

 

「コレの意味分かりましたか?」

 

「はい、アリスさんが言った意味が何となく分かりました…」

 

「では後は簡単です!」

 

「でもわたし、帝君とはもう…」

 

会いたくない──という気持ちが本音だ。

もう一度会えば何されるか分からない。それどころか自分は正気でいられるかも怪しい

 

「酷ですが、帝様を止められるのは貴女だけです。真の幸せを知った貴女なら大丈夫です」

 

さんごはトロピカルパクトに目を向ける。震える手でパクトを掴み取る

 

「帝、君…」

 

アリスは最後に背中を押す

 

「帝様の事が本当にお嫌いになられたのでしたら、あんなに泣き叫んだりしません。貴女は今でも彼の事を」

 

「……」

 

さんごはゆっくりと立ち上がり準備をする

 

いつもの私服に着替え、髪を整える。そしてその瞳には光りが戻っていた

 

「覚悟は出来ましたか?」

 

「分からない。でも……わたしが、今一番しないといけない事は分かったから…知ったから。初めてプリキュアになった時を思い出します」

 

初めてプリキュアになったあの日、それは自分の本音を素直に出す事から変身出来、前へと進む事が出来た

 

「だから今わたしの想いを伝えに行きます。この気持ちを全部吐き出して」

 

さんごはアリスを通り抜けドアノブに手を掛ける

 

「では行ってらっしゃいませ」

 

アリスは一礼をするとその場から姿を消した

 

そしてさんごは飛び出す

 

殻に籠ったこの場所から

 

自分にとっての幸せを伝えるために

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(もう逃げない。自分からも、帝君からも!!)




何とか立ち直ったさんご!真の幸せとは何か?

次回へ続く

割と強引な立ち直らせ方でしたが、あれ以上は何も思い付かなかったぜ!

あ、タグを追加しましたので目を通すのも良いかもです


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第36話 大切で、大好きなあなたに送るメッセージ

めっちゃ大事な事言うの忘れてました!
主人公が分身出来る数は3体までです!これ前回言うの忘れてました。何故今まで2体しか出さなかったと言うと、あとまわしの方に1対と分けていたからです。
その伏線は、前作のヒープリ小説のバトンタッチ回を見てくだされば分かります。別に見なくてもいいですけどね!

ではスタート!


「「キャアッ!!」」

 

「パパイア!フラミンゴ!」

 

「4人でこの程度か?」

 

帝を止める為にサマー達は今も尚必死になっていた。

ヤラネーダは浄化したものの、帝本人を誰も止められない

 

「拍子抜けもいいところだ」

 

「くっ……あ!」

 

「ほう…来るんだ───コーラル」

 

街中を悠然と歩く姿を帝とサマーが見つけた

 

「帝君…」

 

「やっと来た。遅かったなコーラル。丁度今終わったところ。まさかお前から来るなんて思っても──」

 

コーラルに近付き手を差し出したが、コーラルはそれを叩き払った

 

「本当は帝君とこうやって話すのも、会うのだって嫌だったよ」

 

「ならどうして此処へ?」

 

「帝君は間違ってるから」

 

「そう」

 

帝はコーラルの肩に片手を笑顔で置くと、瞬時に左頬を殴り飛ばした

 

「──ッ!」

 

「防いだか」

 

「はぁ…はぁ…」

 

帝が顔面へと攻撃して来るのは分かっていた。

だが分かっていても避けるまでは叶わず、左腕で防御するしかなかった。

そしてその上からでもダメージは通っており、腕は痺れ、左側頭部から血が流れていた

 

「何度言っても聞かない奴には仕方ないな。コーラル、俺はお前の為にお前を倒す。その前に最後の忠告だ、受け入れるか否か」

 

コーラルはそんな話を無視して走り出す

 

「それが答えか」

 

 

『NATURAE!』

 

 

『ぺけ!』

 

地面が浮き上がり石つぶてがコーラルへ容赦無く襲い掛かるが、臆する事無くシールドを張りながら正面突破する

 

「だったら!」

 

オーシャンステッキを地面に打ち付けると、コーラルを取り囲む様に地面が盛り上がり逃げ場を無くす

 

「潰れろ」

 

帝が拳を握る時、壁と化した地面がコーラルを押し潰した

 

「コーラル!!」

 

「騒ぐな。加減はして──」

 

押し潰された壁の中から、コーラルがシールドを使って強引に外へ這い出た

 

サマーの心配は無用となる

 

「あ…ぐ…」

 

「流石コーラルと言ったところか。でも」

 

「分かってるよ。守ってばかりじゃ帝君を止めれない。だから!!」

 

珍しくもコーラルが前に出た

 

「来るか。ならば!」

 

 

『オーシャンディスク!』

 

『ATTACK!』

 

 

「わたしは負けない!──ハートルージュロッド!」

 

オーシャンステッキとハートルージュロッドがぶつかり合う

 

コーラルは、最初から帝と真正面から戦う気でいた

 

鍔迫り合う隙にコーラルが手を出し、それを片手で帝が受け流す

 

受け流されれば、ロッドを逆手に持ち替え突き上げる。

ステッキを持っていた手は打ち上げられ、もう片手もコーラルの手を弾いた時に使ってしまいガードが出来ない

 

無防備となった腹に叩き込もうと手を構えるも、それを帝は足で蹴り上げてそれを防ぐ

 

お互いに隙が出来れば一旦距離を取り次の動作に

 

「帝君はいつも側に居てくれた。わたしが言わなくてもずっと」

 

移ろうとしたところ、コーラルが独り言の様に帝に話し掛ける

 

「そうだ。だから俺と一緒に幸せに──」

 

「だけど嘘をついた。まだ何も知らない小さい頃のわたしに。わたしの隣に居る、守ってあげるって」

 

コーラルはゆっくりと歩き始める

 

「酷過ぎるよね、あんな事されて辛かったよ。いっぱい傷付いて、泣いて、悩んで…もう会いたくないし顔も見たくもない……帝君なんて嫌い、大っ嫌いだよ…」

 

とうとうコーラルは帝の目の前まで歩き、涙目になりながらも優しく抱きついた

 

自分の素直な気持ちも乗せながら

 

「でも好きなの、大好きなの。心から愛してる。だから今までの事も全部許してあげる。だって愛してるから」

 

「俺は…お前の幸せを手に入れる為に──」

 

「帝君が欲しいものは手に入らないよ」

 

「お前は幸せが欲しくないのか?」

 

「違うよ、幸せは手に入れるものじゃない。感じるもの、言葉にすること(・・・・・・・)だよ」

 

コーラルは感謝と愛を込めてその言葉を告げる

 

「今日まで帝君と過ごした時間は長かったね。その時間の中でわたし達は色んな事を知ったよ。全部が全部良いって訳じゃないけど、楽しくて仕方なかった。帝君に出逢ってわたしは変われたよ。初めて会った頃のわたしは本当に輪に入れない恥ずかしがり屋。でも今はこうして、トロピカる部の皆んなとも出逢えて、素直な気持ちも出せれる様になったの。長い時間だと思うけど、わたしにとっては早い時間だった……そしてとても幸せな時間」

 

その言葉ひとつひとつ、真の幸せの意味を知ったコーラルが出した言葉

 

「これがわたしの今の幸せ。伝わった?」

 

「それが、お前の幸せか?」

 

「うん。だけどこれからも言葉にしたい。その幸せをいつまでも感じていたいから」

 

「俺は只、コーラル…さんごが幸せになってくれればそれだけで良かった。俺は間違っていたのか?」

 

「間違ってなんかないよ。只わたしは、他の人を傷付けてまで幸せは欲しく無い。だから帰ろう、ね?」

 

コーラルはゆっくりと帝から離れ、手を差し伸べる

 

「皆んなとの間に溝が出来ちゃったけど、きっと許してくれる」

 

和かに笑う彼女の顔は、今の帝からすれば眩し過ぎた

 

コーラルは自分から帝の手を繋ぎ、皆んなの待つ所まで連れて行く

 

今までは、隣に居ながらも手を繋いで連れて行ってたのは帝

 

しかし今回はその逆

 

いつの間にか道に迷っていた彼の手を引いて、光が射す方へと連れて行く

 

「帝君、おかえりなさい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

////////

 

「帝君居る?」

 

その日の夜、さんごは帝の部屋にお邪魔した

 

ベッドで座っていた帝はさんごへと向く

 

「こんな時間にどうしたんだ?」

 

「コレ」

 

さんごが渡したのは、昨日学校に行く途中怪我をした時に使ったハンカチ

 

「あ、ありがとう」

 

「それじゃあ」

 

用事だけ済ませると、さんごは部屋に出ようとする。

しかし、部屋と廊下の境目でその足を止める

 

「さんご?」

 

「帝君はわたしの事どう思ってるの?」

 

「え?」

 

突然の質問で眉を顰める。

けれどその質問に対する答えは変わらない

 

「大切な人だよ」

 

「そうじゃなくて!」

 

さんごは帝に飛び掛かりベッドに押し倒す

 

「わたしは伝えたよ。わたし、帝君が大好き!!愛してるの///」

 

胸の中で赤面しながらも上目遣いで聞く

 

そこで質問の意味をようやく理解する

 

「さんご───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ごめん」

 

誰よりもさんごの事を大切にしていた帝とは思えない返事だった

 

「さんごの事は俺も好きだよ。でも、そういう意味じゃない」

 

「…うん、何となく分かっていた。だって帝君、一度も『好き』だなんて言ってないもんね」

 

「ごめん…」

 

「帝君が謝る必要なんか無いよ」

 

さんごはフラれる事前提で告白したのだ。OKを出してくれればそれは良し。だけどやっぱり、予想してた通りの返事が返ってきた

 

「帝君のことだから他に好きな人がいたり?」

 

「ま、まぁ…」

 

「『あの子』だよね?帝君が好きな人は」

 

さんごは帝の気持ちを尊重して、それ以上の追求はしなかった

 

さんごはベッドから起き上がる

 

「帝君──」

 

「────」

 

起き上がると思わせて、不意を突いて唇を重ねた

 

「それでも、わたしは好きでいてもいいかな?」

 

「いいよ」

 

その会話を最後にさんごは笑顔で部屋を出て行った

 

そして家を出て星が煌めく空を見上げる

 

「ちょっと嫉妬しちゃうなぁ…」

 

さんごの頬に小さな雫が流れ落ちる

 

「何で泣いてるんだろう…ちゃんと…っ…帝君と仲直り出来て、素直になれたのに……ッ────」

 

垂れる雫が多くなり、嗚咽を漏らしながらも彼の幸せを願うのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(───ずっと大好きだよ)




いや、前回までの話との温度差よ

さんごがサブヒロインってのは最初から決まっていました。

IFストーリー書こうか迷ってます。書く方に傾いてはいますが

オリストは残り2話の予定です


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第37話 信頼の向こう側にあるもの

オリスト入ってから急激にお気に入りが増えました!

やったね!

ではスタート!


「そんな訳でお互いに色々あったけど、これから少しずつ仲良くして行こう!」

 

「ねぇまなつ」

 

「何さんご?」

 

「それ帝君が居る前で言った方が良かったんじゃない?」

 

Pretty Holicで皆んな集まる中、帝は不在だった

 

「あれから全然帝と会えてない気がするんだ〜」

 

「というより避けてる気もする」

 

「そうそう!」

 

みのりが正しく訂正して、まなつがそれに頷く

 

「そうだよね」

 

 

 

『──帝君!』

 

『──あ、さんご!おはよう…じゃあ!』

 

『──え、待って!』

 

 

 

「今朝も挨拶だけしたら何処かへ行っちゃった…うぅ…」

 

目に見えて落ち込むさんご

 

「てか待て。何『めでたしめでたし』で終わろとしてる。わたしはまだ帝を許してない」

 

「そうなんですか。てっきりもう水に流したかと。此処に来る途中、壁に向かって帝にどう話し掛けようかと練習していたので」

 

「待てみのり」

 

「しかも長時間──」

 

即座にみのりの口が塞がれる。そしてこれ以上は言うなと言わんばかりに圧を掛ける

 

「結局あすか先輩も帝と仲良くなりたかったじゃないですか〜!」

 

みのりから手を離すと、あすかはまなつとの追い掛けっこが始まった

 

さんごはそれを見て、クスクスと笑ってるとローラの様子が気になり声を掛けた

 

「どうしたのローラ。さっきから何も喋ってないけど?」

 

「皆んなお人好しね」

 

「え、ローラは怒ってるの?」

 

「当たり前よ。ていうか、もう人間の事は信用してないから」

 

どうやら、あすか以上に怒っていたのはローラだった。

それは只々怒りを露わにするのではなく、静かに冷酷にだった

 

「そんな大袈裟な──」

 

「大袈裟じゃないわよ!!」

 

まなつが短絡的な態度をとると、ローラは激怒して思わず立ち上がり机を大きく手で叩く

 

「冷静に考えてみなさい。最初から騙していたのよ。わたしは……わたしはそんな簡単に割り切れないわ!!」

 

ローラの言う通り、帝は最初から騙していたのは変わらない事実

 

あの騒動の後、帝は謝罪はしたがそれだけで気が収まる程ローラは優しくはなかった

 

一体何処からが本当で嘘なのか分からない

 

「今でも人間の考えてる事が分からなくて怖い…怖いの」

 

本当に反省しているのか、それとも未だに騙してるのか。その事は帝本人にしか分からない

 

そんな得体の知れない恐怖が煽って帝を拒絶しているのだ

 

「だけど、それだと前に進まないよ。時には受け入れる事も大事」

 

「受け入れてどうなの?人間の言葉を信じたその結果があのザマよ。もう無理なのよ…」

 

「「ローラ!」」

 

ローラはそのまま外へ出て行ってしまった

 

「え、あ、追い掛けます!」

 

「わたしも!」

 

「お前ら!?」

 

ローラを追い掛けに、まなつとさんごも出て行ってしまった。

残ったのはみのりとあすかだけ

 

「はぁ…仕方ないな」

 

「何処行くの?」

 

「帝の所だよ。みのりも来るか?」

 

「うん」

 

 

 

 

 

「ちょっと待ってよローラ!」

 

「はっ…はっ…はぁ…」

 

追い付いたまなつはローラの腕を掴み、息を切らしたさんごが遅れて来る

 

「ねぇローラ、帝とはもう一緒に戦わないの?」

 

「そうね、そうなるわね」

 

「ローラ、帝君がああなったのはわたしにも責任があるし、責められるならわたしにだって」

 

「それでもわたしは…」

 

 

『──悍ましいウジ虫共と組むぐらいならゴミの海を泳いだ方がマシだ』

 

 

「…」

 

思ってた以上にローラは傷付いていた。さんご程でも無いが、いつも振り回されていたローラにだって帝に信頼を置いていた

 

だがそれをあんな風に裏切ったのだ

 

許せる訳がない

 

「わたしはもう……人間を信用出来ない」

 

 

 

 

 

同時刻

 

パタンと部屋のドアが閉まる

 

「よ、帝。上がらせて貰ってるよ」

 

「お邪魔します」

 

帝は部屋に入ると、既に待機していたみのりのあすかと出会した

 

「ッ!」

 

「はいそこまでだ」

 

逃げようとする帝を、あすかは襟首を掴んで捕まえた

 

「帝、少しだけ話しようか?」

 

ベッドに腰掛ける帝、床で正座するみのり、椅子に座るあすかとそれぞれが座って話す

 

話す事は勿論、今現在皆んな帝をどう思ってるかについてだ

 

先程までの一連を全て帝に話した

 

すると帝はやっぱりと言った感じで言うのだ

 

「そうかローラがね。自業自得ってやつだ」

 

「帝はそれで良いの?」

 

それに対しての返しをみのりが質問をする

 

「…」

 

「…わたしは、お前とローラがくだらない事で言い争ったり、お前がちょっかい掛けてローラが怒る。そういうの好きだった」

 

「帝とローラは何処となく似てる気がするの。いつも一生懸命で、何かに目指して頑張ってる」

 

「そう…」

 

歯切れの悪い帝だが、あすかはそれでも一番聞きたい答えの質問をする

 

「帝、本当にこれで良いのか?」

 

「それは…」

 

「このままだと仲は悪くなる一方だ」

 

「帝、貴方はどこまで行っても帝なの。ありのままで話せばきっと分かってくれる筈」

 

「俺は……俺はちゃんとローラに謝りたい」

 

「ならやる事はひとつだ」

 

これで帝の話は着いた

 

帝はローラに謝りに行こうとした時、街中で大きな音と地響きがした

 

「ヤラネーダか!?」

 

「違う…それにしては何か少し」

 

ヤラネーダの出現にしては少し音の大きさが違った。

先程の音はこれまで以上なのだ

 

「取り敢えず外に出よう!」

 

 

 

 

 

////////

 

音と地響きの発生源の場所に着くと、まなつ達とも合流した

 

帝はふと横目でローラを見た。

ローラの表情はとても冷めた様子だった

 

「あらぁ〜待ってたわよ帝ちゃん!」

 

「オッカマー」

 

「私、貴方の事すっごくお気に入りだったの。でも裏切るなんてちょっと予想外。その意味がどういう事か分かるわよね?」

 

オッカマーが足を一歩出した瞬間、大きな地響きかが街中に響き渡る

 

恐らくさっきの音もこの足音が原因

 

「ついでに──出て来なさい!ゼンゼンヤラネーダ!」

 

ゼンゼンヤラネーダの素を投げると、ロッカーを媒体としたゼンゼンヤラネーダが現れた

 

予め、ヤラネーダを作って待機させていたのだろう

 

「皆んな行くよ!」

 

 

 

「「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」」

 

「「「「「レッツメイク!キャッチ!」」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

 

「フェイス!」

 

「ネイル!」

 

「ドレス!」

 

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

「ルーレットスタート!」

 

『ATTACK!』

 

 

 

「わたしがヤラネーダを相手にする!」

 

「ラメール待て!」

 

「帝!ラメール!」

 

ラメールが先行するのも帝は追い掛け、それを止めようとサマーが呼ぶも聞き入れなかった

 

「ラメールと帝を援護するぞ」

 

「「「はい!」」」

 

ならばと、2人が戦いやすい様に全員でフォローをする

 

「ヤラネーダ!」

 

ヤラネーダがロッカーの扉を開くと、中から鉄骨が飛んで来た

 

「やぁ!」

 

だがそれをもろともせず、飛び越え一心不乱にヤラネーダへ進み続ける

 

「うわっ!?」

 

『ぺけ!』

 

「危な!?」

 

後方のサマー達も流れ弾に当たらない様にして、互いに庇う様に避け、防御する

 

「ラメール待て!迂闊に近付くな!」

 

「…ッ!」

 

ヤラネーダの中から更に色んな物が飛び出す

 

何が出るか分からない為、帝が警戒を呼び掛けるも、ラメールは帝など微塵も信頼してない為無視し続ける

 

ヤラネーダの攻撃を掻い潜り懐に潜り込めた

 

「一気に浄化してやるわ!」

 

マーメイドアクアパクトとマーメイドアクアブラシを手に持った瞬間

 

「この時を待っていたわ!ゼンゼンヤラネーダ!」

 

ヤラネーダは攻撃を中断し、扉を大きく開いてラメールを呑み込もうと襲い掛かる

 

(しまった!)

 

「ラメール!!」

 

『DEFENCE!』

 

帝がラメールの前に立ち盾を召喚させるも、それすら構わず2人を呑み込んでしまった

 

「ラメール!!」

 

「帝君!!」

 

「厄介な2人が消えて清々したわ。さて、私も本気を出しましょうか」

 

オッカマーが体に力を入れると、筋肉が更に盛り上がりヤラネーダと同じ程の巨体と変化した

 

「さぁ、誰から犯してあげようか?」

 

 

 

 

 

////////

 

「一体何が…って変身が!?」

 

起きるとそこは何も無い暗闇の世界だった。そして自分の体を見ればプリキュアから元に戻っていた

 

「目を覚ましたか。どうやらヤラネーダの中みたいだ」

 

そこへ帝が歩み寄る。

座り込むローラに手を伸ばすが

 

「ローラ…」

 

その手を取らず自分で立ち上がり、適当に歩き始めた

 

「何の仕組みか分からないけど、この中ではオーシャンステッキの力も使えない。多分プリキュアにも変身は出来ないと思う」

 

「だから何?」

 

「一緒に行動しないと」

 

その時ローラが足を止めた

 

「……行き止まりね」

 

手を前に翳すと壁みたいな何かに触れた

 

「一緒に行動ね…どの口が言うのよ。皆んなを散々振り回しておいて」

 

「……」

 

「人間はどうしようもない人間だけど信じていたの。いざとなればわたし達を助けてくれた。魔女の屋敷の時だってそうよ。なのに!!」

 

ローラは大きく腕を振り帝の頬を力強く叩いた

 

「心の底から信じていた相手の気持ちを考えた事無いの!?」

 

今度は反対の頬を叩く

 

「裏切られて傷付いた気持ちは!?」

 

また叩く

 

「なんとか言いなさいよ!!」

 

乾いた音が何度も何度も暗闇の空間に響き渡る

 

「何でぇ…なんでぇ…」

 

叩く手がゆっくりとなり、力も少しずつ無くなっいく

 

完全に手が止まると、ローラは帝の胸に寄り掛かり顔を隠す

 

「何で言い返さないの…?もう、人間の考えが分からない。何が本当で何が嘘なのか……信じられないよぉ……っ」

 

「分かってる」

 

「何が!!?」

 

「分かってる。自分が一体何をしでかしたか充分理解してる。許して欲しいなんて言わない。それでローラが満足するなら受け止めるよ。でも、ローラはそんな事しないよね?」

 

「くっ…!!」

 

帝の襟首を掴み、持てる全ての力で叩こうと手を振り上げるが

 

「……」

 

当てる直前でその手を止めた

 

「最後…ズルいわよ。そんな事言われたら…っ…叩けないじゃない…」

 

「ローラ…」

 

「本当は自分が良く分かってた…。人間の事はもう許してる事なんて。だけど…心の何処かで信じられなくて、意地になって、それで…」

 

「別に間違ってない。ローラが正しい」

 

「信じたかった。わたしは人間を許す事が出来ない」

 

ローラは帝から離れて少し落ち着く

 

「だから、次からは何か迷ってたりしたら頼りなさい。わたしが力になるから約束よ」

 

「ああ」

 

帝はローラの手を取ると、ハートクルリングとマーメイドアクアパクトが光り輝く

 

 

 

「プリキュア!トロピカルチェンジ!」

 

「レッツメイク!キャッチ!」

 

「フェイス!」

 

「ネイル!」

 

「ドレス!」

 

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

 

「内側から浄化するわよ!」

 

 

 

「プリキュア!くるくるラメールストリーム!」

 

 

 

 

 

////////

 

「プリキュアの力はそんなものなの?帝ちゃんやローラちゃんがいないとここまでなんて…少しがっかりだわ」

 

地に伏せるサマー達へそう失望の声を掛ける

 

「ぅ…」

 

ヤラネーダの体内に帝とローラが居る以上浄化は出来ない。

残る選択肢はオッカマーを倒せば良いとなるが、想像以上に強く、サマー達だけでは太刀打ち出来ず敗北の味を噛み締める

 

「私はこれでも慈悲深いの。皆んな取り込んじゃえば仲良く暮らせる。さぁヤラネーダ!」

 

「ヤラネーダ!」

 

ヤラネーダが扉を開けようとした時

 

「ヤラ…ヤラネー…」

 

「どうしたのよ?」

 

プルプルと震え始めヤラネーダの動きが止まる

 

そして

 

「ヤラ──」

 

扉が内側から破壊されヤラネーダが浄化された

 

「「出て来た!!」」

 

破壊すると同時に帝とラメールが外へと出られた

 

「うわっ、ちょっと見ない間にすごい事になっている」

 

「馬鹿な事言ってる場合じゃないでしょう。皆んな大丈夫?」

 

「なんとかな…」

 

「でも少しキツイかも…」

 

「でも2人共出られて良かったよ」

 

「心配したよ!」

 

帝とラメールがいない間にサマー達が踏ん張っていたが、既に満身創痍だった

 

「馬鹿なプリキュア達。さっさとヤラネーダを浄化すればそこまで酷くならなくて済んだのに。どちらにしろ、私に負けるけど」

 

「皆んな下がってて。此処はわたしと人間に任せて」

 

「今更何をするつもり?しかもたった2人だけで私に勝とうなどと浅はかね」

 

「──少し図体がデカくなって調子に乗っているようだな。浅はかなのはどっちだ?」

 

サマー達を下がらせ、ラメールの隣へと立つ彼は自身に満ち溢れた表情をしていた

 

「見下すな。お前が相対してる相手は始皇帝と女王だ。身の程を弁えろ。絶対は──」

 

「『俺』でしょ?」

 

「…いや、絶対は俺達(・・)だ」

 

「ッ!」

 

ラメールが台詞を取って意地悪をしたつもりが、思わぬ返事が返って逆にラメールが驚く羽目になった

 

(何よ、ちょっとは変わろうとしてるのね。全く貴方って人は)

 

「行くぞ」

 

「それはこっちの台詞よ────()!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして始皇帝と女王は地面を踏みしめ掛け出した




内容がかなりトントン拍子になってしまいましたが、予定通り進んでおり満足です

ようやくローラが主人公を名前呼びしましたね。本来なら小説の第3話でしたが、こちらのミスで今の今までズルズル引き摺っていました。そこから名前呼びさせるタイミングが無かったので…

タグも整理しましたので確認した方が宜しいかと。ヒロインで揃いましたから

次回でオリストは終わります

ここまでの拝読ありがとうございました


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第38話 あなたと初めての共同戦線

頑張って戦闘シーン書いたので見て下さい(泣)

ではスタート!


紅と水色の閃光が街中で暴れている

 

高速で動き回る閃光は巨大な怪物を倒そうと必死にダメージを蓄積させる。

怪物が投げ捨てる岩石を避けながら、閃光は懐に潜り込み渾身の一撃、二撃と加える

 

「クッ!」

 

「ッ!」

 

しかし怪物──オッカマーも巨体任せに攻撃を弾き威力を打ち消す。ゴムの様に柔らかくした体が2人を攻撃の勢いを殺すと同時に、建物へと跳ね返す

 

帝とラメールは建物の側面に着地と同時にすぐさま駆け出す

 

「ハァァッ!!」

 

追撃で岩石を飛ばすも、避けてはそれを足場にして何とかして近づこうとする

 

『AUTO!』

 

「ッ!」

 

懐まで飛び込んだ帝はオッカマーの顔面に右拳を減り込ます

 

「ハァァァ!!!」

 

一瞬怯んだオッカマーの背後、ラメールが陣取り追撃しようと仕掛けるが

 

「残念知ってるわよ〜!!」

 

ラメールの動きを読み、振り返ると同時に裏拳で吹き飛ばす。

休む暇無く岩石も投げラメールにダメージを与え、建物に岩石ごとラメールがぶつかる

 

「う…ぁ…」

 

叩き付けられた建物から崩れ落ちるラメール

 

「トドメよ!!」

 

オッカマーが飛び出し剛腕の手が届く時、帝がラメールを抱いて離脱する

 

「ローラ──ッ!」

 

しかしオッカマーはそう簡単に逃す筈もない。

建物から一気に空中に離脱して距離を取った帝達と詰めて来た

 

このままでは2人共オッカマーの剛腕の餌食になる。

少々乱暴だがラメールを腕から解いて軽く蹴り飛ばし、更に蹴った反動を利用して自分もオッカマーから逃げる

 

左右に避けるのに、突っ込んで来たオッカマーは無情にもその間を通り過ぎる

 

帝は上手く地面に着地したが、ダメージが残ってるラメールは着地と同時に体勢が崩れる

 

「ウフフッ!!」

 

それを見逃さなかったオッカマーはラメールに狙いを定める

 

「ウッ…!」

 

拳をハンマーの様に叩き付けて来たが、飛び込む様にして横へ転がり避ける

 

だが逃す訳もなく、必要以上に腕を振り下ろし転がり避けるラメールの後を追い続ける

 

『GENIUS!』

 

帝は距離に関する法則を全て無視し、ラメールを窮地の危機から救い出す

 

だがオッカマーもそれだけではない。

腕を振り下げ岩のつぶてを殴り飛ばして利用する

 

銃弾の嵐の如くつぶては帝とラメールに襲い掛かるが、今度は助けて貰ったラメールが帝の首根っこを掴んで離れた場所へと放り投げた

 

ラメール自身は身軽な動きで岩のつぶてを避ける

 

(クソ!オッカマーを倒せるのはローラだけ。俺がローラのフォローをしなければならないのに。なのに俺が──)

 

(帝の動きについて行くのがやっと。このままジリ貧だと負けちゃう。やっぱりわたしが──)

 

((足を引っ張ってる!))

 

図らずも帝とラメールの考えは同じだった

 

お互いが自身の無力を痛感する

 

(この状況を打破するにはあの力(・・・)が不可欠。出せるか、あの力を?)

 

帝はいつかのゼンゼンヤラネーダとの戦いを思い出す

 

(いいや出す。何故ならば俺は始皇帝。圧倒的な力で敵を捩じ伏せ、平伏せさせる)

 

オーシャンステッキを左手に持ち替える。そして空いた右手に赤黒いオーラを纏った物を手に取る

 

その形は歪だがステッキだった

 

(これが今の俺の全力!!)

 

 

『A◼️◼️OL◼️T◼️!』

 

 

「──お前如きが邪魔するな!!【吹き飛べ】!!」

 

その言葉を発した時、オッカマーは突然吹き飛ばされる

 

「何よッッ!?」

 

「やるじゃないの帝」

 

「ああ、だが…」

(この力、まだ未完成…恐らく2回が限界か)

 

雑音混じりの音声に加えて手に取った時に直感で感じたのだ

 

しかしどんな力なのかはハッキリと理解している。

だがそれを使えるのは2回だけと感じ取る

 

「それでも今は充分だ。ついて来いローラ」

 

「帝こそへばってる暇は無いわよ!」

 

お互いに顔を見合わせ、今も尚吹き飛ぶオッカマーへ駆け出した

 

「調子に…乗るなァァァ!!」

 

体勢を整え、吹き飛ぶ体を両足で地面で踏み締める

 

そこへラメールが追撃をかます。

脚技を当てるも両腕でガードされたが、すぐさま後ろへ後退し帝と入れ替わる

 

帝は赤黒いステッキを振り、空気の斬撃で攻撃する。

だがオッカマーは防御を緩めない……が、それは分かっていた

 

ラメールとの入れ替わりで帝が攻撃したお陰で、オッカマーは自分が防御する両腕で視界が一部不安定。

そこにラメールは付け入り、帝の肩を台にして両足で飛び出す

 

飛び出すラメールは蹴り上げて、ガードを強引に上げさせた

 

追撃した攻撃と違い、帝を使って勢いが付いた攻撃。それが威力を上げてオッカマーの強固な防御を崩したのだ

 

「ッ!!」

 

けれどそれで終わるオッカマーではない。腕が使えないならば足を使うまで

 

左足を軸にして回転し、右の回し蹴りでラメールに反撃する

 

そして一瞬で姿を消して、巨体には似合わずの超高速の動きで帝を撹乱させる

 

「…」

 

帝は更に集中力を上げ、オッカマーが仕掛ける方向を直感で当てる気でいる

 

(そこ!)

 

やはりと云うべきか、一番の死角となる背後から仕掛けて来た

 

感知した帝はその場を高くジャンプして回避した

 

「【平伏せ】!!」

 

ジャンプした帝を捕まえようと手を伸ばしたが、帝の言葉で強制的に地面に這い蹲る形を取らされる

 

「フッ!」

 

それに合わせるのは、さっき蹴り飛ばされたラメール。

ダッシュで駆け戻るラメールは、這い蹲るオッカマーの腕へ滑り込み、体全体で抱き抱える様に捕まえた

 

そして全身に力を入れ、自分より何倍の大きさのオッカマーを持ち上げた

 

「い゛ッ!?」

 

最後に背負い投げでその巨体を地面に叩き付けたのだ

 

いくらプリキュアといえど、そこまでの力を発揮した事に帝さえも驚愕した

 

オッカマーは地面に叩き付けられても、すぐさま体を起こして距離を取る

 

「こうなったら本気を出してやるわ!!」

 

両手に密度の高いエネルギーを集約し、それを拡散して解き放った

 

それでも構わず帝が先行して、その後ろにラメールが突っ込んで行く

 

後ろに居るラメールに当たらぬ様にステッキでエネルギーを弾く

 

それでも帝が危なくなりそうなら、ラメールが帝の手を取り、攻撃が激しくない場所へと引っ張る

 

そしてそれを帝が守り

 

更にそれをラメールが守る

 

お互いがお互いを庇う様にして距離を縮ませる

 

 

 

「いっけぇぇ!!帝!ラメール!」

 

(口を開けば言い合いばかりする2人だったのに)

 

(お互いを信じて力を出し切っている。それに笑ってる)

 

離れて応援するサマー達。

パパイアとフラミンゴは、今までの2人の関係からは思えない程の連携が出来てる事に驚いていた

 

そしてこんな状況にも関わらず、笑う2人を見てコーラルは

 

「もう、本当に羨ましいなぁ…」

 

 

 

オッカマーに近付けば近付く程、攻撃は更に激しくなる

 

帝は最後の力を使う場面を見極める

 

「止ま──ッ!!」

 

動きを止めようと言葉を発しようとしたが、攻撃の波が激しく赤黒いステッキが弾かれて手から離れてしまった

 

「だったらこれで──ッ!?」

 

エモーショナルディスクとキングハンドを取り出したが、またも弾かれてしまった

 

「フェスティバルスタート──何ッ!?」

 

最後、左手に持つオーシャンステッキを回そうとした時、それすらも手から離れてしまった

 

全てのステッキを失ったが、足を止める訳にもいかない。止めればオッカマーの攻撃の餌食だ

 

しかしこのままだと無防備な状態で突っ込んでしまう

 

「これで、終わりよ!!」

 

オッカマーはエネルギーは再集約し、一点の力を帝にぶつける気でいた

 

ここまでかと諦める気持ちが出ようとする時

 

「帝!!!」

 

声がする後ろへ振り向くとラメールが呼んでいた

 

そして手には先程弾かれたオーシャンステッキを持っていた

 

帝の後ろに居た事で、ラメールがオーシャンステッキを走りながらキャッチしたのだ

 

「受け取って!!」

 

 

『SPACE-TIME!』

 

 

投げ渡して、受け取ると同時にルーレットの針も止まり能力が発動した

 

「散りなさい!!」

 

「ッ!」

 

エネルギーを放射したが、SPACE-TIMEの力で目の前の空間と別の場所に穴を開け、その穴に呑み込まれたエネルギーが別の場所へと移し出された

 

更に帝はラメールの目の前にも同じ穴を開け、オッカマーの懐に潜り込ませた

 

「これで終わりよ!!」

 

 

 

「プリキュア!くるくるラメールストリーム!」

 

ゼロ距離ともいえる距離での浄化技を放つ

 

オッカマーの絶叫さえも呑み込みラメールは華麗にポーズをとる

 

「ビクトリー!」

 

 

 

けれど、ラメールの浄化技をまともに食らっても浄化し切れなかった

 

完全に戦闘不能で動かないが、まだオッカマーは存在している

 

ダメ押しでもう一度技を放とうとしたが、そこへアリスが現れた

 

「今回はここまでの様ですね」

 

アリスはオッカマーに触れるとその場を立ち去った

 

「逃げられたね」

 

「だが勝ちは勝ちだ。早いところ俺達も引き、あ…げ……」

 

「帝!?」

 

倒れる帝をラメールがキャッチして抱き抱える

 

「帝大丈夫!?」

 

「悪い、だがもう大丈夫だ。手を退かせ」

 

「ダメよ」

 

「そうかよ…」

 

「全く」

 

ぶっきらぼうな言い方にラメールが呆れてると、サマー達が駆け寄って来る

 

「2人共すっごくトロピカってた!!」

 

「ま、わたしと帝が力を合わせれば楽勝よ!」

 

「あれ?ラメール、帝の事をいつから名前で呼ぶ様になったの?」

 

こういう時にパパイアは鋭い。いつの間にか、ラメールは帝の事を名前で呼んでいる事に気づいた

 

「べ、別にいいじゃない!」

 

「もっと素直になったらどうだ?」

 

「うるさいわよ」

 

「帝君本当に大丈夫?」

 

「それよりもコイツら黙らせろ。傷に響く…」

 

そんな冗談を言いながらも、ラメールは帝を運びながらその場を後にする

 

「ラメールちょっといいか?」

 

「何よ?」

 

 

 

 

 

////////

 

サマー達とは別にラメールは帝を運びながら行動した

 

ラメールが行き着いた場所は、初めて帝と出会った場所

 

そこで人の有無を確認して変身を解除した

 

「それで、今すぐ休まないといけないのにこんな所に連れて何するのよ?」

 

傷付いた帝をゆっくり下ろして問いかける

 

「ローラ、ごめん」

 

「…」

 

「ローラを、皆んなの事を騙しててごめん」

 

「…もういいわよ」

 

ローラは帝と同じ目線になる様に腰を下げて、笑顔を向ける

 

「あとローラ、ひとつだけお前に言いたい事がある」

 

「何?」

 

「お前の事が好きだ」

 

「あ〜はいはい、いつものね。触らせないわよ」

 

「そういう意味では無い。異性としてお前の事を好きと言ってる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────は?」

 

「『は?』って何だよ」

 

「いや、今の流れでどうなればそうなるのよ?」

 

突然の告白にローラは意味が分からない

 

「今が言うべきかと思ったからか?」

 

「わたしに振らないでよ…」

 

「初めて会って一目惚れだ。今まで言っていた『好き』の言葉は本物。で、返事は?」

 

「────悪いけど無理よ」

 

ローラは少し迷ったが、やはりと云うべきか

 

帝もそれ程驚く事は無かった。

あれ程をやっておいて今更なのだ。自分勝手にも程がある

 

と思っていたのだが

 

「あ、べべ別に帝が嫌いな訳じゃないから!」

 

手をあわあわさせながら言葉の意味を説明する

 

「帝の事はまぁ好き、よ。ほんのちょっとだけね勘違いしないでよ!ただ…」

 

「ただ?」

 

「まだ色々合って心の整理がついてないし、それにわたし人魚だから」

 

ローラが脚をさすると、見慣れた尾鰭のある下半身へと変化する

 

「人間と人魚が結ばれるなんて有り得ない…例えお互いが想いあっていても」

 

「なら、俺はフラれたって事か」

 

「ごめんなさい。でも」

 

ローラは少し頬を紅く染めながら髪を弄り言う

 

「あとまわしの魔女との戦いが終われば、多分色々変わってくると思う。その時になっても、まだわたしの事を好きでいてくれるなら、また告白でもなんでもしなさい」

 

「分かった。じゃあその時に」

 

「えぇ、貴方の事を待ってるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分が変われば周りも変わる

 

瞳に映る彼の姿はとても──────




告り告られ、フリフラれの展開。ローラにフラれた主人公。
まさかの誰ともくっつかずです

前作までのパターンですと、ヒロインが告り主人公が受けてカップル誕生だったのですが、今作は趣向を変えてみました

これにてオリストは終わりました!次回から本編へ戻り通常運転でお送りします

ここまでの拝読ありがとうございました


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第39話 泳げない人魚って…プッ!あ、待ってローラ止めろ!!

暑さでダレて全然書けませんでした

夏の間は投稿ペースが落ちるかもです

ではスタート!


夏の季節が近付く日々の変わり目

 

朝から集会があり、生徒会長の百合子が壇上で話をしている

 

「ふわぁ〜…」

 

「帝寝不足なの?」

 

退屈な話の途中、帝が眠たそうに欠伸をしたところをまなつに見られた

 

「昨日の夜、ず〜っとさんごとコスメについて話してたからな。流石に疲れた」

 

「え、さんご帝の家に泊まったの?」

 

「うん」

 

「中々寝させてくれなくてな。寝落ちするもんなら頬を引っ叩く始末」

 

「うわぁ…」

 

「余計な事は言わなくていいから!」

 

この様に、以前の出来事から少しずつ仲を整えている。

しかしその反動のせいか、さんごが今まで以上にパワフルに帝と接している事が多くなっている

 

それに伴い今後も、さんごに振り回される日々が続くとはこの時は誰も知らなかった

 

「話終わんないかな…」

 

「帝酷いな〜。今日はローラの初登校だよ」

 

この集会の内容のひとつ、転入生の紹介もあるのだがそれがローラだという

 

折角人間になったのだ。堂々と人前で身を出せるだけでは飽き足らず、このあおぞら中学にも生徒として通ってみたいとの事

 

くだらない話をしてると、転入生の紹介へと移りローラが壇上でマイクを持って自己紹介をする

 

「おはよう『ローラ・ラメール』です」

 

ローラの姿に男女問わず釘付けになる。

人間になっても、人魚の時と変わらず魅力はそのまま。

誰もが見惚れるローラとして挨拶をする

 

「留学生という事ですが、何処からいらしたのですか?」

 

「グランオーシャンからよ」

 

上手く誤魔化せればいいものを、ちゃんと答えてしまうあたりローラらしい

 

だがしかし、聞いたことの無い単語にトロピカる部意外の面々は困惑するばかり

 

その他にも軽くやってみたい事など質問される

 

答える内容としてはまなつと似たり寄ったりな内容。

人間になった好奇心もあり、兎に角なんでもやってみたいと答える

 

やりたい部活でも同じ様に答えるが、一応人魚なのだ

 

「一番得意な事は泳ぐ事かな?いずれは女王になるから泳ぎが上手くて当たり前だよね」

 

という感じに訊かれてもない事を喋り、余計な事まで口に出る始末

 

「皆んな宜しく!」

 

こうして集会は終わるのであった

 

 

 

 

 

ローラが転入するクラスは、帝やまなつが居る組み

 

席に関しては一番後ろだが隣はまなつ、正面は帝、そして左前がさんごと言った席順となる

 

HRが終わりひと息ついた所で、帝達が話し掛けるがその第一声が

 

「お前は自分が人魚という事を隠したいのか、晒したいのかどっちだよ」

 

「何よその言い方。もっと何か言葉があるんじゃないの?」

 

不満がありつつも、その場にくるりとスカートを翻しながら回り、帝に良い言葉を貰って優越感に浸ろうとするのだが

 

「水色のパンツか…」

 

いつもの調子で答えると、回るローラが姿勢を低くして足を引っ掛け倒す

 

「あらぁ〜?どうしちゃったのかしら?急に転んでわたしも気を付けないと〜!」

 

わざとらしい素振りと言い方で仕返しする

 

そんな騒がしい時間が終わり、ローラ初めての授業が開始する

 

 

 

一時間目は理科

 

光合成について勉強をしていた。

それについては、海の植物についても陸の植物と同じ働きをしているので難なく答える

 

「簡単ね、学校の勉強なんて!」

 

最初の掴みとしてはバッチリの出だしだが、息巻くのもそこまでとなった

 

地理や国語といった授業となると点でダメになる。

わざわざ、まなつが横から簡単な説明をしないとイマイチ解っていなかった

 

そして家庭科でもそれは同じ

 

特別授業として茶道をしていたのだが、始まって間も無いまま足が痺れて動けなくなっていた

 

ローラはカッコ良く決めたかったのだが、それは最初のうちだけとなった

 

 

 

そして時間だけが過ぎて行き、あっという間に放課後となった

 

クラスの皆んなが部活や帰宅準備を進める中、ローラは机に突っ伏して項垂れていた

 

「授業の科目に物申したわ。海で育ったわたしが、山の名前やこっちの昔の言葉とか文化が知る訳無いでしょ!!」

 

不平等だと机を叩いて言うが、実際のところそれを学ぶ為に学校に来て学んでいるのだ

 

「はいはい、続きは部室で聞くから。行くよさんご、帝」

 

「あ、俺はパス。先生に少し用事を頼まれてから」

 

「そうなんだ。じゃあ今日はここで!」

 

「バイバイ帝君。また部屋で喋ろうね」

 

「バイバイ…ってまた部屋で喋るのは何で?」

 

 

 

 

 

「ふぅ…何とか終わったな」

 

用事も済ませ、帰宅しようと廊下を歩いてると高笑いするローラと、それに続いて歩くまなつ達と出会した

 

「あ、帝」

 

「ローラが高笑いするなんて、何か良い事でもあったのか?」

 

「それがね帝君実は──」

 

「よくぞ聞いてくれました帝!なんととわたし、水泳部からスカウトされたのよ!」

 

説明しようとしたさんごを押し退けてローラが意気揚々説明した

 

「水泳部か。確かにローラにピッタリな部活だな」

 

「ちょっと帝!ローラはトロピカる部に入れるんだよ!」

 

「だが本人はどうだ?完全に水泳部に入る気満々だ。少しは良いんじゃないか?新しい発見を見つけるのも学校だ」

 

「そうだけどぉ〜…」

 

正論めいた事を言われて、これ以上まなつは何も言えなくなった

 

 

 

 

 

場所は変わって水泳部の部室

 

帝も用事が終わった事もあり、一緒に水泳部に見学する事にした

 

「やっぱり水泳部は泳ぎが速かったな」

 

「だよね〜!」

 

「そう?わたしから見れば止まって見えたわ。ワ〜ハッハッハ!!」

 

「完全に調子に乗ってるな」

 

そんな態度のローラにも優しく接してくれるのは、水泳部部長の水島泳子

 

「この水着を使って。水泳部の備品」

 

「ありがとう」

 

「わたし準備あるから先行ってるね」

 

泳子が出て行った後、ローラは初めて目にする水着を興味深く見ていた

 

「じゃあローラ、わたし達も先に行ってるから」

 

「うん、わたしもすぐ行く」

 

ローラが制服を脱ごうとするのだが、視線を感じてそちらの方へ振り向くと

 

「帝出て行きなさいよ」

 

「いや〜、ローラ水着着るの初めてだから俺が手取り足取り教えてあげようかと」

 

「そんなの要らないわ…よッ!?」

 

言うが早いが、帝はローラに急接近し左手で手を取り右腕で腰に手を回していた

 

「い、いきなり何すんのよ!?」

 

「何って水着を着させるんだよ」

 

「これ以上何かしたら引っ掻くわよ」

 

「どうぞ」

 

そう言われたのでローラは抵抗すべく爪を立てようとすると

 

「ひゃわ!?」

 

ズザザと壁際まで押された挙句、股の間に脚を入れてドンと壁を蹴る

 

股ドンというやつをローラはされたのだ

 

「あれ、抵抗は?」

 

「するに決まって…んっ」

 

更には脚をスリスリと擦り付ける始末

 

「あ…っ、お願い脚動かさない…ひゃ…んっ///」

 

ローラは変な声を押し殺して耐えてはみるが、それ以上に帝が攻めて来て我慢が出来ない

 

「……流石に意地悪が過ぎたか」

 

帝が離れると、ローラはその場にへたり込み肩で息をしていた

 

「俺も先にプールに行ってくる」

 

帝もやっと出て行き、望む様にローラは1人となったのだが

 

「一体…一体何がしたかったのよぉぉぉ!!」

 

結局、ローラが恥ずかしい思いだけしただけだった

 

 

 

 

 

何とか着替え終えたローラ

 

今度こそ授業での汚名返上する為、そして輝かしく目立ち学校生活をエンジョイする為気合いを入れてプールへ足を運んだのだ

 

「…えっ?」

 

ローラは目の前で起こる事にそんな声を漏らす

 

コースロープのヤラネーダが暴れ、それを帝やサマー達が抑えようとする姿。

そして見渡せば、やる気を奪われた水泳部の面々

 

「って、何なのよこの状況は!?これからわたしが、スーパースターになるところだったのに!!」

 

「だってそこにやる気があったから」

 

そう答えたのは、今回ヤラネーダを出したヌメリーだ

 

「いいわ、早いとこ終わらしてあげる!!」

 

 

 

「プリキュア!トロピカルチェンジ!」

 

「レッツメイク!キャッチ!」

 

「フェイス!」

 

「ネイル!」

 

「ドレス!」

 

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

 

「やぁ!」

 

向かって来るヤラネーダを、手の平だけで受け流してそのまま攻撃へと変える

 

攻撃を受けたヤラネーダはプールの中へと沈んでいく

 

「一気に畳み掛けるぞ!」

 

 

『フェスティバルディスク!』

 

『SPACE-TIME!』

 

 

 

「プールの水剥ぎ取るか」

 

「「「それは駄目」」」」

 

コーラル、パパイア、フラミンゴの見事なハモリで帝の手が止まる

 

「ヤラネーダ!」

 

水面からヤラネーダが飛び出したが

 

「お前は止まってろ」

 

帝が手を翳すとSPACE-TIMEの力で、一時的にヤラネーダの時間を止めて動きを封じる

 

「皆んなのやる気を早く取り戻さなきゃ。だってわたし、泳がなきゃいけないのだから」

 

「それなら任せて!」

 

 

 

「ハートルージュロッド!」

 

「プリキュア!おてんとサマーストライク!」

 

 

 

サマーの技を牽制として使い吹き飛ばす

 

 

「マーメイドアクアポット!サーチ!」

 

「オレンジ!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

「続けて行くわよ!」

 

 

 

「プリキュア!くるくるラメールストリーム!」

 

 

「ビクトリー!」

 

 

 

ヤラネーダも無事片付け、ヌメリーも退散して行った

 

「さて、わたしの華麗で優雅な泳ぎを皆んなに見せてあげるとしますか」

 

 

 

 

 

////////

 

「位置について、よ〜い──ッ!」

 

ローラの実力を図る為に、水泳部の面々と競争する事になったのだ

 

笛の音と共に一斉に飛び込む

 

ローラも綺麗なフォームで水の中へ飛び込んだのはいいが

 

「助けて〜!!!」

 

泳げる筈のローラが、バシャバシャと惨めに溺れたのだ

 

 

 

 

 

「なんかわたし、勘違いして悪かったね。本当に無理して誘ってごめんなさいね」

 

「何よ!そんな憐れみの様な目で見ないでよ!わたし泳げるんだから!この脚に慣れてなかっただけなの!!」

 

言い訳にも聞こえるそれだが、実際人魚のローラが泳げなかったのは脚に慣れてなかったのが原因でもある

 

「なんなら見せてあげるわよ!元の姿に戻りさえすればめちゃくちゃ速く泳げるんだから!!」

 

飛び込もうとするところを帝に抑えられてしまう

 

「これ以上は止めろ!別にいいじゃないか人魚が泳げないくらい」

 

「あ゛ぁ゛!?」

 

帝の思わぬ発言にローラはブチギレてしまった

 

「アンタが溺れてなさい!!」

 

「え、嘘待っ──」

 

帝の拘束を振り解くだけではなく、そこから背負い投げへと切り替えてプールの中へと投げ飛ばした

 

「「帝!?」」

 

流石にまなつとあすかは、慌ててプールへ飛び込み帝を助けに行った

 

ローラが未だに叫んでいるのを、さんごが宥めてはいるものの手に負えない状況

 

「お構い無く。後は何とかします」

 

みのりは気を利かせて泳子を帰らした

 

「ところで部活の方はどうするの?」

 

「ぷはっ!水泳部はもうお呼びでないと思う。もうトロピカる部に入れよ…」

 

まなつとあすかに救出された帝が、水面から顔を出す

 

「あら、こんな所に丸くて蹴りやすいボールがあるなんて!サッカー部もいいわ…ねっ!!!」

 

「どぅわ!?」

 

プールサイドに上がって来た帝の顔面を蹴り飛ばし、再度プールの中へと沈ませる

 

「超エキサイティング」

 

「そんな事言ってないでみのりも手伝えよ!」

 

「仕方ないからトロピカる部に入ってあげるわ」

 

「だったら俺蹴り飛ばす理由あったのか!?」

 

「ゴミ虫だ!あはは〜…潰す!!!」

 

「ローラ、これ以上帝君を虐めちゃダメ〜〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これにてローラもトロピカる部に入部する事となり、これで全員トロピカる部に入った………はず




水着に着替える時のやり取りを書いてて思う……18禁書きてぇって。しかし頭の中で想像して満足して終わる作者で御座います

次はオリ回となります

ここまでの拝読ありがとうございました!


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第40話 新生トロピカる部!活動開始!

作者は下ネタどちらかと言うと苦手な人です。なのに下ネタを良くも悪くも書いてる
欲求不満の様ですね、はい。

ではスタート!




「今日も部活やるぞ〜!」

 

さんごもローラも荷物を持って部室へ移動する準備をしていたが

 

「悪い、今日も先生に頼まれてる事があるから」

 

「待ちなさいよ」

 

職員室へ行こうとする帝の襟首をローラが掴んだ

 

「最近部室に来てないじゃない。何か隠してない?」

 

「隠す?そんなの無いに決まってるだろ?」

 

「なら一緒に来れるわよね?」

 

襟首を掴む手を軽く解き、正面に向かいジッと見つめる

 

「ローラ…」

 

「な、何よ。そんなにジロジロと見ないで照れるじゃないの…///」

 

そしてローラは何かを期待しながら瞳を閉じて、口先を帝へと伸ばす

 

「それとこれとは別だ」

 

ローラの肩を二度叩いてその場を立ち去った

 

「あ、帝〜!」

 

「あ〜ローラ…?」

 

まなつの声を無視し、さんごは恐る恐るローラへ振り向く

 

ローラはワナワナと怒りに満ち溢れ、震えていた

 

そして無言で掃除用具のロッカー前に立ち

 

「──ッ!!」

 

振り抜く拳はロッカーに減り込み煙が立つ

 

「あー!!ローラロッカー壊しちゃ駄目だよ!!」

 

(あんの馬鹿皇帝めぇ…ふざけんじゃないわよぉぉ!!」

 

「ローラ声に出てるよ!」

 

慌ててさんごその口を塞ぐ

 

心の中で喋っていたつもりが、いつの間にか感情的になって声となって漏れていた

 

「まぁ、気にしなくてイイじゃん!」

 

「まなつ?」

 

「心配しなくても帝は来るよ絶対。だって帝は、いつだってわたし達の事を考えてくれてるし!」

 

信頼に満ちた常夏の笑顔はそう直感していた

 

 

 

 

 

////////

 

「桜川先生、全部終わりました」

 

「皇さんありがとうね。もう部活に戻ってもいいよ」

 

そう言われたのだが、帝は一向に職員室から出ようとはしない

 

桜川先生の教師であり担任、そのちょっとした変化に気付いた

 

「…何かあったの?」

 

「いえ…何でも無いです!」

 

笑顔で立ち去ろうとしたのだが、桜川に手を掴まれた

 

「何かあったのね。少し場所を変えて話しましょうか?」

 

 

 

場所を変えてグランド近く、野球部の練習を見ながらそこで腰を掛けて話す事となった

 

「無理に聞き出す事はしないわ。だけど口に出すだけで楽になる事もある。話してくれる?」

 

帝は悩んだ末に

 

「部室に顔を出し難いんです」

 

「喧嘩でもしたの?」

 

「少し、前に…」

 

「仲直りは?」

 

「出来ました…けど、それでも皆んなの事を傷付けてしまって…」

 

帝は未だにあの時の事を引っ張っていた。だから、部室に行こうとしなかったのだ

 

罪悪感からの逃避行

 

「でもこれで良かったんです。そもそも俺はトロピカる部に入ってない」

 

「そんな事ないですよ」

 

桜川は一枚の用紙を帝に手渡した

 

「これって…!」

 

「それ、夏海さんが書き直したのよ」

 

手に取った用紙は、トロピカる部設立の時に提出した部活申請書だった

 

そして、その申請書にはトロピカる部の部名と部員の名前

 

上から

 

滝沢 あすか

夏海 まなつ

涼村 さんご

一之瀬 みのり

 

そして4人枠から外れてはいるが、手書きで書かれた枠の中にもう1人──5人目の名前が記されてあった

 

それが

 

「俺の名前…」

 

皇 帝

 

そうちゃんと、まなつの筆跡で書かれていた

 

「夏海さんこう言ってたわ」

 

 

 

 

 

『──夏海さん、皇さんは入らないって言ったけど勝手にいいのかしら?』

 

『──見つかったら怒られそう…だけど!きっと帝なら絶対入ってくれると思うから!!わたしはそれを待つだけです!!』

 

 

 

 

 

「全く、本当にまなつは…」

 

「皇さんも立派なトロピカる部の一員ですよ」

 

「俺が、トロピカる部の一員…いいのかな?」

 

「皆んな待ってますよ」

 

桜川は帝の背中を軽く押す

 

「桜川先生、相談ありがとうございます」

 

「私も教師の端くれ、それに貴方達の担任でありトロピカる部の顧問です。何かあれば相談にのりますよ」

 

帝は桜川に一礼して、トロピカる部の部室である屋上へと駆け出した

 

 

 

 

 

「…」

 

部室前に来たが棒立ちから動かない

 

ドアに手を掛けようかと伸ばした時、手に掛ける前に開かれた

 

「あ、帝!」

 

「よ、ようまなつ」

 

「桜川先生に頼まれていた事終わったの?」

 

「ああ」

 

「それじゃあ……帝?」

 

帝の手を取って部室内に入れようとしたが、帝は動かない

 

「俺、本当にトロピカる部に居てもいいのか?」

 

「居てイイに決まってるじゃん!もしかして、まだこの前の事気にしてる?」

 

まなつに図星を突かれた。一瞬だが視線を外してしまった

 

「帝は優しいね」

 

「っ!」

 

まなつは帝の頭を撫でながらそう言った

 

「さんごの事大切にしてる事はいつものことだけど、それと同時にわたし達の事も考えてくれてる。今だってどうしようかと考えてる。偉い偉い」

 

「やめろ恥ずかしい…」

 

「にひひ!いつも恥ずかしい思いをしてるのはこっち!」

 

笑うまなつの後ろ、笑顔で手を振るさんごやみのり、あすかにローラが待っていた

 

「まなつ、トロピカる部に入れてくれてありがとうな」

 

「あ、気づいたんだ」

 

「感謝してる」

 

「んふふ!それじゃあ今から!」

 

「部活動だな」

 

こうして帝も正式なトロピカる部のメンバーとなり、より一層部活動にやる気が満ち溢れるまなつだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だが名前を勝手に使ったんだ。それ相応の仕返しがあるのを知ってのことだよなぁ〜?」

 

「な、何で笑顔で寄って来るの?そしてその手は何?待って待って待って!ひゃわあぁぁぁぁ!!!」




トロピカる部に入って無いとか言っていたが、まなつの暗躍により勝手に入部させられていた主人公

今回の話で多分主人公に関する身の回り事は全部出したと思います。
後は今後の物語でどうなるかって話しですね〜。
未完成の力もありますから

多分ですけど、このトロプリ小説が物語の構成など一番上手く出来てる自信がある

ここまでの拝読ありがとうございました


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第41話 耳かきは他の人にやってもらった方が気持ち良い

サブタイ通りです

39話以降から伸び率が悪くなってる。
例年通りこの時期から伸び率に悩み始める

ではスタート


「あ゛〜痒い!!」

 

耳の中に指を突っ込んで掻き乱す帝

 

朝から放課後の今まで痒みに悩ませていたが、それももう限界の様子

 

「帝君、掃除する?」

 

「う゛〜、でも耳かきなんて何処にあるんだ?」

 

「それなら…ここに」

 

「何で持ってんだ?」

 

都合良く耳かきを持ってる事に疑問に思ってるが、さんごは喋ってはくれなかった

 

「じゃあ帝君」

 

さんごは椅子に座り、膝に寝転がる様に促す

 

「また耳掃除サボったの?」

 

「別にサボっては…」

 

「わたしがするからいいけど」

 

さんごが耳かきを耳に入れようとした時、勢い良く部室の扉が開かれた

 

「おっ待たせ〜!!」

 

「ッ!?」

 

「あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!?!?」

 

わざとでは無くともまなつが驚かしたせいで、さんごの持つ耳かきが帝の奥深くへと突っ込んでしまう

 

「どうしたの帝?」

 

「どうしたもこうしたもない!見ろこの耳を!」

 

怒り奮闘する帝は耳に指差す。

深く入ったせいで耳かきが突き刺さっているのだ

 

「そんなの引っこ抜けばいいじゃないの」

 

「あうち!!」

 

突然現れたローラが強引に抜き、耳から少量の血が流れ落ちていた

 

「殺す気か?」

 

「大丈夫大丈夫。ほら生きてるじゃん。やったね」

 

無神経にも程がある

 

「皆んな何やってるんだ?」

 

「声が外にも漏れていたよ」

 

騒ぎを聞いてみのりとあすかも部室へと入って来た

 

省略しながらも2人に事の顛末を話した

 

「それならわたしがしようか?」

 

名乗りを上げたのはみのりだった

 

「いいんですか!?」

 

「うん。自分がどれだけ器用かが分かるチャンスだから」

 

「え、何。俺実験台にされるのか?」

 

不安がありつつもみのりに頭を預ける

 

「じゃあ行くよ」

 

プルプル震える手で帝の耳に入れ込む

 

 

 

それから10分後

 

「ふぅ…終わった」

 

「いやまだ耳垢ひとつしか取れていないんだが…」

 

「みのりそんなんじゃ日が暮れるわ。わたしがお手本を見せてあげる」

 

今度はローラがする事になった

 

ローラは帝の頭を物を扱うが如く雑に扱う

 

「こういうのは勢いが大事なのよ」

 

そう言って、フォークで肉を突き刺す感じに耳かきを入れてしまったのだ

 

勿論そんな事をしたら

 

「──ッ!!!?」

 

「あ、帝君!?」

 

ローラの膝から崩れ落ち、耳を抑えて唸り声を上げる

 

「やっぱりか…」

 

「おいやっぱりってなんだ!!」

 

知ってわざとなのか、この結果を見てローラはあまり関心はしなかった

 

「もうローラダメだよ。帝、今度はわたしがやるね」

 

まなつは笑顔で膝の上をポンポンとして横になる様促す

 

「耳かきは優しくしないとね〜」

 

ようやくまともに耳掃除が出来ると安心していたのだが

 

「んふふ!」

 

ローラが何かを思い付いたらしく、悪魔の表情を浮かべる

 

「まなつ〜、耳かきを帝に突き刺したらトロピカルメロンパンあげるわよ〜」

 

「ローラ、流石のまなつもそんな──」

 

「クッ…どうしよう」

 

「悩むなよ!!」

 

トロピカルメロンパンを目の前でチラつかせられて、まなつは思い悩む

 

「トロピカルメロンパン欲しい…じゅるり」

 

「まなつ?おいまなつ!な、な!考え直せ。俺の耳とトロピカルメロンパン、そんなの天秤に掛けなくても大切なのは分かるよな?」

 

「人間時として犠牲は必要なんだよ」

 

「その犠牲はメロンパンだよな?そうだと言ってくれ!!」

 

「はいストップ」

 

これ以上は見ていられなくなり、あすかが耳かきを取り上げた

 

「全くお前らは…帝横になれ。わたしがやる」

 

そこからは、あすかが全部してくれた。耳かきで穿れば綿棒で綺麗にする

 

「意外と綺麗だな。確か痒い方は反対側だよな?」

 

帝は向き直り、顔はあすかの方へと向く形となる

 

「うんうん…よし出来たぞ」

 

「ま、待ってもう少し!」

 

「可愛い事言うな。だが終わり……」

 

視線を耳から外して帝の顔を見た時凍りつく

 

「あとちょっとでおへそがご開帳に…」

 

必死に制服をめくろうとする帝

 

それに対してあすかは

 

「ほ────!!!?」

 

ローラよりも酷く耳に差し込み謎の悲鳴が部室内に響き渡った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鼓膜!鼓膜破れたじゃねぇか!!」

 

「大丈夫帝。鼓膜なら2〜4週間で治癒されるから安心して」

 

「そう意味じゃないんだよみのりん先輩…」




うーん……ネガティブ思考は悪い癖

ここまでの拝読ありがとうございました


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第42話 本当にあった怖い世にも奇妙な物語

あと一件で目標の50件!後少しなんよ!!
今回は怪談の調査でしたが、かなり内容は激変しております。調査は変わらずですけど

ではスタート


「え〜、ローラが正式に入部し、帝とのわだかまりもようやく落ち着いた。それと同時に新生トロピカる部としてこれからやって行くにあたって、今日は改めて皆んなが今やりたい事を聞いてみたいと思う」

 

帝とローラが本格的にトロピカる部に参戦してやれる範囲が幅広くなった。新生トロピカる部で人数も多くなった為、もう一度やりたい事を聞こうとあすかが提案する

 

「何かあすか先輩部長みたい!」

 

「いや部長だから!」

 

そんな事を言うさんごだが、それを決めたのは自分達だ。どうやらその事さえも忘れていた本人達

 

「え、あすか先輩部長だったのですか!?」

 

「お前もその場に居ただろ…て、帝はまぁしょうがないとして。てか、お前らわたしの事を今まで何だと思ってたんだ?」

 

「「「……部長!」」」

 

「わたしが言ったから言えた事だよな?」

 

「下僕」

 

「喧嘩なら買うが?」

 

「セフレみたいな関係だと思ってた」

 

帝に対しては当たりが強く、回し蹴りで窓をぶち破って蹴り飛ばされた

 

「待って、後輩達がわたしに対する扱い方が雑過ぎて泣いてくるんだが…」

 

「まあそんな事より!」

 

「『そんな事』って…」

 

「言い出しっぺがわたしばかりだから少し気にしてたんだ。だから皆んなのやりたい事を聞くのに賛成です!皆んなやりたい事を聞かせて!」

 

涙を見せるあすかをまなつは捨て置き、提案通り皆に意見を求める

 

「わたしは、やりたい事沢山あるけどまだ絞れてないって感じね」

 

「「う〜ん…」」

 

ローラは決めかねていて、さんごとあすかはすぐには思い付かなく考えている

 

「み、みのりん先輩、"アレ"とかはどうですか?」

 

あすかによるダメージもあり、部室の扉から這いずりながらも帝はそう言った

 

「そうだね、いい機会かも」

 

そう言ってみのりはとある新聞記事を机に広げる

 

「学校新聞のキャンペーン」

 

あおぞら中での七不思議調査によるレポートキャンペーンとの事

 

つまりは怪談

 

それを聞いたまなつは表情を固くして大人しくなった

 

「でも何でまた怪談の調査なんか?そんな噂一度も耳にした事など…」

 

「帝」

 

みのりがローラに向けて視線を送る

 

「あ〜そんな事もあったな」

 

その発端を作ったのはローラが原因のを察した

 

「決まりだなまなつ………まなつ?」

 

あすかが返事をしても全く返ってこない

 

動かないまなつを見て、みのりの眼鏡が光る

 

「まなつ、貴女の後ろに!」

 

「────ギャアァァァ!!!!」

 

 

 

 

 

////////

 

「う〜〜…」

 

「まなつ離れろ。歩き難くてしょうがない」

 

お化けなどの類いが苦手と判明したまなつだが、自分一人の為だけに調査を中断する訳もいかず怯えながらも付いて行く事になった

 

「だって怖いんだもん!それに何で夜に…」

 

 

 

『──それなら今日の夕方にでも調べるか』

 

『──あすか先輩、調べるなら夜でしょう』

 

『──夜は流石に危険だろ』

 

『──だからこそだ。夜の方が調査はしやすいもんだ』

 

 

 

この様に帝に言いくるめられて、7時を過ぎた時間帯での調査をする事になったのだ

 

「俺が言い出した事だから引っ付いても文句は言わないが、こんなに引っ付いても困るだけなんだが?」

 

「意外ね。てっきり帝の事だから『もっと引っ付いても良いんだぜ』。みたいな事言うと思った」

 

「俺もそう思ったけどな、本人がここまで怖がってたらそうもいかないだろ?」

 

実際のところ、ローラも待ち合わせ場所に着くまではベッタリと引っ付いてやって来たのだ。そのせいもあり、10分近くの遅刻となってしまったのだ

 

「それよりもう少しだな」

 

帝達が向かってる場所は学校の裏山に潜む古い屋敷

 

そこで怪異現象が起きてる事についての調査、情報を基にレポートする事が今回の部活動

 

 

 

そして目的地である屋敷へと辿り着いた

 

想像以上に古ぼけていて、来週には取り壊しの予定も入ってるのだ。時間は限られている

 

「覚悟はいいか…の前に帝、お前家から色んな物持って来たって言ってたよな?」

 

集合場所に着いた時、帝は片手にトランクを持って現れていたのだ

 

「そうだな。屋敷に入る前に準備しようか」

 

地面でトランクを広げると様々な道具が揃えられていた

 

「何だコレ?ウォークマンか?」

 

あすかが手に取ったのは中央にメーター、上部には赤いランプ、コイルで巻かれて固定されてるアンテナが物

 

見たまんまに、お手製感があり配線が剥き出しとなっているウォークマン

 

「EMF探知機。コレで霊の痕跡を電磁場に変化して探知するんだ」

 

「帝君、このペンダントは?」

 

「魔除けのペンダントだ。丁度良いし、まなつに掛けてあげて」

 

さんごはペンダントをまなつの首にぶら下げる

 

「何この木の杭は?」

 

「ローラ目の付け所がいいな。それは子羊の血で洗ったやつだ」

 

「ひぃ!!」

 

ローラは思わず手に持った木の杭を落とすが、地面に落ちる前に帝がキャッチした

 

「塩は必須として、後は水銀と聖なるオイルに──」

 

「帝ひとつ聞いても良い?」

 

「何みのりん先輩?」

 

「何でそんな物持ってるの?」

 

さんご、あすか、ローラもそれに頷く

 

「俺と言うより両親の物なんだ。なんでも若い頃にある一家と出会って、仲良くなった証として貰ったらしいんだ」

 

「ある一家?」

 

「え〜と何だったけな…アメリカに住んでる…う、うぇん?うわん?」

 

「もしかしてこの家族?」

 

みのりがトランクの中央のプレートに指を指す。

そのプレートに彫られてるのを見て思い出した

 

「Winchester…そう"ウィンチェスター"!なんでもウィンチェスター一家は、悪霊退治などを生業としてるらしい。詳しくは知らないが……知ってるとしたら娘が一人いるって聞いたくらいかな?」

 

帝は必要な物だけ取り出して準備する

 

「取り敢えず入るか」

 

「そうだな。ではトロピカる部活動開始だ!」

 

効率も考え、それぞれ屋敷内を分かれて調査する事となった

 

しかし帝はまなつと行動を共にしていた

 

「EMFには反応無しか…」

 

「みかど〜…」

 

「分かってるって俺から離れるなよ」

 

屋敷を隅々まで調査するべく裏庭が見える廊下側まで歩く

 

そんな時だった

 

EMF探知機から物凄い音が発し、ランプは点滅し、メーターは振り切って反応した

 

「裏庭から反応が──」

 

「ギャアァァァァァ!!!」

 

「あ、おいまなつ!?」

 

EMFの突然の音で驚いて、まなつは一人で何処かへと走り去って行ってしまった

 

「仕方ない、まなつを先に追い掛けるか。それにしてもホント──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「壊れたウォークマンだ」」

 

「──え?」

 

聞き慣れない声が帝と被った

 

「誰だ?」

 

持っていた懐中電灯で周りを照らす。正直言っておかしなもんだ。

今この場に居るのは自分のみなのに、他の人の声がするのは不思議

 

一緒に居たまなつでさえ、先程走り去って行ってしまったのだ

 

そして懐中電灯は声のした人物を照らしたのだ

 

スラっとした体型、少し長い白髪の髪。顔も映したいところだが、相手を眩しくしてしまう為明かりを向けれない

 

手には帝と同じEMF探知機を持っている

 

「お前は?」

 

 

 

 

 

////////

 

「みかど〜!!」

 

完全に逸れてしまったまなつは、心寂しく帝を探していた

 

「ど〜〜〜こ〜〜〜!!?」

 

重たい足取りで歩いてると、廊下の少し先で手招きする帝の姿を発見した

 

「あ、帝!!」

 

まるで長年会えなかった主人との再会の如く、まなつは興奮しながら帝の元へと駆け出した

 

「も、もう帝ったら!」

 

震えながら帝の手を繋ごうと手を伸ばしたが、ヒラリと避けられた

 

帝は無言で廊下の奥へと移動し始めた

 

「ま、待ってよ帝!」

 

まなつを待たずにひとり先々進んで行く

 

そして帝に付いて行くと、いつの間にか屋敷の裏庭へと出ていた

 

「ねぇ帝、皆んなは?」

 

帝に付いて行けば皆んなと会えると思っていたのだが、帝以外誰一人としていなかった

 

それどころか帝は裏庭の奥、森へと足を踏み入れ手招きしている

 

流石にまなつは、これはおかしいと気付き始める

 

「み、帝。さっきから大丈夫?何か変だよ。それに────何でさっきから一言も喋らないの?」

 

帝の手招きする手が止まる

 

「み、かど?」

 

「呼んだ?」

 

「うわっ!?」

 

突然真後ろから帝の声がした

 

「み、帝!?え、何で?いつの間に!?」

 

「何言ってんだ?それにいつの間にって俺今来たばかりだ」

 

「え、じゃあ…」

 

まなつは自分を此処まで連れて来た帝?に視線を向ける。

それに連れられて帝も視線を向ける

 

「どういうことだ?」

 

帝ももう一人の存在に不審に感じた

 

「マジか…」

 

EMFを使ってみると、メーターを振り切り音が鳴り響く

 

「EMFがこんなに反応してるとなると…」

 

「EMFって確かお化けを捜す物だよね?それが反応してるとなると…」

 

帝とまなつはお互いに顔を見合わせる

 

「「まさか…」」

 

帝?はノイズが走ってるみたく、体がボケ始め、一瞬で姿が消えたかと思いきや2人の目の前に現れる

 

「「──ッ!?」」

 

そして2人の腕をがっりしと掴んだ

 

まなつは最後の確認をする

 

それは定番とも言える確認。幽霊には足がないという事

 

「あ、あ、足が…足が────無い!無いよおぉぉぉ!!」

 

「クッ!まなつ、変身するんだ!!」

 

「うわぁぁん!!こ゛わ゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛お!!」

 

「しばくぞ!!」

 

 

 

「ひっぐ…ひっぐ…とぉ、────トロピカルチェンジ!!!」

 

「ルーレットスタート!」

 

 

『ATTACK!』

 

 

「ときめく常夏!キュアサ…マァァァァアアア!!!?」

 

 

 

「もう何だよ!!」

 

「無理無理無理無理!やっぱ無理だよぉ〜!!」

 

「ああ、サマーの胸が俺の顔に、うへへぇ〜……ってじゃなくて!」

 

今はそんな浮かれてる状況ではない。謎の敵に掴まれては襲われてるのだ

 

「てかコイツ…なんて力だ!!」

 

プリキュア に変身したサマー、ATTACKで強化された帝ですから力負けしており引き摺られる

 

「こんな時の為のコレだ!」

 

帝は懐から紙切れ一枚を取り出して、その内容に書かれてる文字を読み始める

 

 

「Exorcizamus te, omnis immundus

spiritus…」

 

「hanc animam redintegra…」

 

「lustratus!」

 

「lustratus!」

 

 

「……あれ?」

 

「帝、何も起きないよ!」

 

「だけど、ここに書いてある通り読んだんだけど…」

 

紙切れと睨めっこしてる間にも森の中へと引き摺り込もうとする

 

「うわあぁぁんん!!もうお終いだぁぁ!!」

 

その直後

 

 

 

 

 

「──Hey!」

 

声がした

 

森の奥、ひとりの人物が掘り起こされた墓の前でマッチの火を付けて呼んでいた

 

「Good bye」

 

掘り起こした墓の中にマッチを投げ入れると、一気に燃え始める

 

それに連動してか、帝の姿をした幽霊も全身燃え始めて絶叫しながら消滅した

 

「一体何がどうなったんだ?」

 

「幽霊消えた…?」

 

帝は火を付けた人物へと歩み寄る。サマーも帝に引っ付きながら共に歩く

 

「アナタ、可笑しな呪文を言ったね」

 

声から察するに女の子。しかもその女の子は、さっき屋敷内で帝と会った人と同一人物

 

「さっきのは悪魔祓い。悪霊相手には意味無い。素人にしたって"ハンター"なら基本を学んでから"狩り"をするんだね」

 

「ハンター?狩り?わたし達はプリキュア だよ」

 

「Precure?」

 

(やけにこの女英語の発音がいいな。外国人か?しかも見た目だけなら俺達と歳は変わらない…)

 

「まあ何にしろ、悪霊相手ならせめて塩か錬鉄を使う事。牽制程度にはなるから。それと悪霊を浄化するには、墓を荒らして遺体に塩をまいて再び焼くか、悪霊の思念が乗り移った道具を焼く必要があるの」

 

「分かった!」

 

サマーは勢い良く手を挙げて理解したと主張する

 

「墓の処理はワタシ一人でやる。アナタ達は帰ったら?てか帰って」

 

「そんな〜、折角会ったんだし名前教えて〜!」

 

「No」

 

指先で軽くサマーのおでこに触れると、一瞬で眠り崩れ落ちた

 

「まなつ!?」

 

「アナタも」

 

「ちょ待て…おぅ…」

 

帝の言葉など無視して眠らせた

 

「困った人も居るのね。屋敷前に置いておけば誰か見つけてくれるよね?」

 

少女は指パッチンで音を鳴らすと、帝とまなつはその場から一瞬で消えた

 

「Precure、他にも居たんだ……さて、帰ろうか」

 

少女が瞬きをすると瞳が金色となり、風と共に何処かへと消えて行った

 

 

 

 

 

////////

 

「まなつ、帝君大丈夫?」

 

「「──え…?」」

 

屋敷前で2人は、さんごに揺さぶられて目を覚ました

 

「あれ?わたし達確か裏庭の…」

 

「そうそう幽霊と遭遇して…」

 

「「そうだ幽霊!!」」

 

2人は先程起きた事を皆んなに説明したが、苦笑いしたりとまともに信じてくれはしなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、一応二人で言った事をレポートとして提出したら学校新聞に載ることになった




はい、まさかの来年の○○○が登場しました。普通に考えて早過ぎです

そのせいもあって、割と世界感がガラリと変わっていました

だが私は謝らない

ここまでの拝読ありがとうございました


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第43話 一之瀬少女の事件簿

一応目標だった50件に到達しました〜!
次は最終目標である70件を目指します!
これで減ったらお笑いもんですよ…

ではスタート!


「悪い遅れた〜!いや〜友達と話し込んでしまって……何?」

 

全員揃ってるトロピカる部へ足を踏み入れると、何やら大事な会議でもしてるかの空気を醸し出していた

 

「それにみのりん先輩、何で変な眼鏡を掛けているんですか?」

 

一人立つみのりだけはいつもの眼鏡では無く、星型の眼鏡を掛けてボードの前に立っていた

 

「丁度良い、新しい容疑者が増えた」

 

「え、容疑者って何?」

 

「実はね──」

 

 

 

事はまなつのトロピカルメロンパンについてのこと。

放課後、購買で超レアな限定商品の「プレミアムトロピカルメロンパン」を買ったまなつだったが、少し席を外してた隙に無くなっていたらしいのだ

 

それで犯人を捜すべく探偵ごっこをしてるらしい

 

「それで見つかったのか?」

 

「いいえ、くるるんが白だと言うことがさっき明らかになっただけ」

 

「くるるんまで疑ってたのか…」

 

くるるんは今お昼寝している。勝手に容疑者扱いされたが白と断定された

 

「さて、次はローラ君。因みに君は何処に居たのかね?」

 

「アクアポットの中よ。今日は体育があってひと休みしていたの」

 

至って普通に答えたのだが、全員ローラを怪しんで見つめていた

 

「わ、わたしじゃないわよ!」

 

「ピカっときた!」

 

ローラの証言からみのりはある仮説の推理をする

 

「アクアポットに潜むローラが、まなつが居なくなった隙にパクり!犯人は君だローラ!」

 

「え〜!ローラの食いしん坊!」

 

「違うって言ってるでしょう!わたしは女王候補。女王の名にかけて宣言するわ。わたしはまなつのメロンパンを食べていない!!」

 

そう自分で無実を弁護して主張する

 

「そこまで言うなら…」

 

「待て、言い張るところが怪しいぞ」

 

「ピカっとした証拠も無い」

 

「こういうのって、本人の証言程信用出来ないものは無い」

 

「何よ酷いじゃない!」

 

このままでは自分が犯人として扱われてしまう。

そう思ったローラは帝に

 

「ねぇ帝〜」

 

「何ロー…ラッ!?」

 

ローラはスカートの裾を少し託し上げていた

 

「帝だけでも味方になってくれたら見せてあげるんだけど〜」

 

一人でも味方に付けようと帝を誘惑して誘いを掛ける

 

「ほらほら〜見たいでしょ〜?」

 

「ローラお前なぁ…」

 

「あら?見たくないなら──」

 

「皆んなローラを疑うなんて酷いぞ!!」

 

ローラに味方する様になり、全員から冷ややかな目で見られる

 

「それよりも貴女達はどうなのよ!?」

 

「え?えっとわたしはみのりと一緒に部室に来て、忘れ物があったから一度教室に戻ったな」

 

「本当に教室に行ったのかな?」

 

「え?」

 

あすかも特に怪しい様子は無い証言だったが、みのりは不信感を拭きれなかった

 

「あすか君、君は運動神経が抜群だ。教室へ行ったと見せ掛けて、3階のベランダから屋上へと上がり、吾輩が居なくなった隙にメロンパンをパクり!」

 

「あすか先輩凄い!」

 

「アハハハッ!みのりん先輩、それ猿じゃないですか!もしくはゴリラ…プフっ!」

 

「み、帝君あまり笑うと…ひぃ!!」

 

転げ笑う帝を止めようとさんごだったが、帝の背後にあすかが黒いオーラを放ちながら

 

「これで良し」

 

帝の頭を踏み潰し床に減り込んだ

 

「だから言ったのに…」

 

「ちょっと待てよ!みのりはどうなんだよ?わたしが居なくなった後、ひとりで此処に居たよな?」

 

「いや吾輩は図書室へ行った。何冊か本を借りたからね。図書委員に聞けば証明出来る。アリバイはピカっと完璧だよ」

 

「いや、みのりは頭が良いからな」

 

この完璧なアリバイに、今度は仕返しと言わんばかりにあすかが推理する

 

「一人になった隙にメロンパンを食べて、わざわざ図書室に行ってアリバイを作ったのかも」

 

「まさか、ピカリン探偵さんが犯人!?」

 

「一番犯人じゃ無さそうな人が犯人ってパターンね。この前帝の家にお邪魔した時読んだ漫画、『蝶々さんこんにちは!』の第三部でも正に同じ状況だったわ。まさか、主人公が犯人だったなんてね」

 

「吾輩は探偵!断じてそんな事は無い!」

 

「皆んな辞めようよ友達を疑うなんて!」

 

堪らずさんごは3人の仲裁に入ったがそれが間違いだった

 

「さんごは何してたのよ?」

 

「わたしは掃除当番でずっと階段の掃除を…」

 

「階段…部室に近いわね」

 

「今度こそピカっと閃いた!」

 

仲裁に入ったさんごまでも火の粉が飛んで来る

 

「皆んなが居なくなった隙を見計らってメロンパンをパクり!」

 

「わたしそんな事しないよ!!」

 

誰が何と言おうと疑い始める

 

全員が疑心暗鬼に陥ってしまった

 

「あ、あの〜、皆んなが食べてないって言うなら信じるよ…」

 

空気が重く、居た堪れなくなったまなつはこの話を打ち切ろうとしたが

 

「全然良くないぞまなつ君。メロンパン事件は迷宮入りとなってしまうではないか」

 

「誰が食べたかハッキリさせないと」

 

「気になってトロピカれないよ」

 

「そんな〜!」

 

「お前らいい加減にしろよ。まなつ困ってるだろ?」

 

先程まで床に減り込んでいた帝も仲裁に入る

 

「そういえば」

 

「まだ帝君が」

 

「残っていたわね」

 

「え、何?」

 

「ピカっと閃いた!」

 

「閃いてたまるか。言っただろう、友達と話し込んで遅れたって。しかも部室に来るまで何が起きてたか知らなかったんだぞ」

 

帝も証言をするが、この程度での証言で疑心暗鬼になる皆んなを納得出来る訳が無い

 

「帝君、君はステッキの力を悪用してメロンパンをパクり!」

 

「分身や擦り抜け、透明になったり」

 

「時間を止めたりワープも出来るしな」

 

「なんなら体を強化して飛び移る事も可能よ」

 

普段までとはいかないが、これまで日常の中でステッキを使った事を考え疑われる

 

「おいおい、俺がメロンパンを食べるだけにステッキの力を悪用すると思うか?そんなんするぐらいなら、今皆んなが履いてるパンツをこんな風に盗む方がよっぽど………あ」

 

無実である証明をと説明するのだが、その途中でさんご、みのり、あすか、ローラのパンツを目の前に出してしまったのが運の尽き

 

当然奪い返されると同時にリンチに合うオチだった

 

「通りでスカートの中が違和感を感じた」

 

「現行犯逮捕」

 

「帝君、この癖直した方がいいよ」

 

「一度死ななきゃ無理よ」

 

仕方ないと言えば仕方ない

 

「ところでまなつ、プレミアムトロピカルメロンパンってどんなのよ?」

 

「美味しそうな匂いをしてて、カラフルで、デカくて、あと袋に『めしあがれ』って書いてあったよ!」

 

その時地響きがなり、何事かと窓の外を見るとヤラネーダが街で暴れていた

 

「ナイスタイミング。推理は一時中断って事で」

 

 

 

 

 

////////

 

「パン…」

 

今回のゼンゼンヤラネーダは、パン屋の看板だった。

偶然にしても少々苦い相手だ

 

「み、皆んな、取り敢えず一旦メロンパンの事は置いといて今一番やらなきゃいけないことをやろう!」

 

 

 

「「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」」

 

「「「「「レッツメイク!キャッチ!」」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

「5人揃って!」

 

「「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」」」」

 

 

「フェスティバルスタート!」

 

『ACTIVITY!』

 

 

 

「やぁぁ!!」

 

「ヤラネーダ!」

 

「うわっ!」

 

「サマー!」

 

先に飛び出したのはサマーだが、簡単に跳ね返される。

帝は跳ね飛ばされて転がるサマーを受け止める

 

「だぁぁぁ!!」

 

「ヤラネダ!」

 

今度はフラミンゴが上から攻撃を仕掛けたが、攻撃途中捕まって投げ飛ばされた

 

「「ハァァ…きゃあ!!」」

 

コーラルとラメールでさえも何も出来ずダメージを食らってしまう

 

「これでどう!?」

 

パパイアがビームを放つもガードされてしまった

 

「えぇ!?」

 

「な〜んか今日やり難いな」

 

「皆んな!同時にアタックだよ!」

 

「「「「分かった!」」」」

 

「あ、待て!ACTIVITYの能力がまだ──」

 

言うが速いかサマー達は一斉に飛び出して攻撃するが、同時と言うにはバラバラな連携で逆に返り討ちにあってしまう

 

「何だ〜?今日はやけにバラバラじゃねぇか。喧嘩でもしたのか?」

 

「く…あっと……え?」

 

ラメールの袖からアクアポットが落ちそうになったがキャッチする。

しかし、偶々アクアポットの中が見えてラメールは驚きの物を目にした

 

「まさかコレって……!!」

 

 

『──あと袋に『めしあがれ』って書いてあったよ!』

 

 

 

アクアポットに中にあったのは、メロンパンが入ってあったと思われる袋が泳いでいた

 

「ああぁぁーーーッッ!!!」

 

突然の叫びに帝達は勿論、チョンギーレとヤラネーダも驚く

 

ラメールはあまりのショックに耐え切れず膝を突く

 

「どうしたのラメール!?」

 

「…わたしだった」

 

「え?」

 

「まなつのプレミアムトロピカルメロンパン食べたのわたしだったのー!!」

 

「「「「「えぇ!?」」」」」

 

「だってだって仕方なかったもん!お腹空いててアクアポットの冷蔵庫を漁って、わたしの知ってる形と違うからてっきり……」

 

ラメールは立ち上がって涙目になりながらも頭を深く下げて謝る

 

「サマー、皆んな……本当にごめんなさい!!」

 

あんな大口叩いて置いて結局は自分が食べていた。更に関係の無い皆んなまで疑ったのだ

 

知らなかったとはいえ到底許してもらえないと思った

 

「ラメールありがとう」

 

「え?」

 

「このままメロンパン事件が解決しなかったら、気不味いのがずっと続くかと思ってハラハラしちゃった。ピカっと解決だね!良かった〜!」

 

「怒らないの?メロンパン食べたかったんでしょう?」

 

「いいの。だってメロンパンより、ラメールや皆んなの方がもっと大事だから」

 

たったひとつのメロンパンで嫌な感じになるのが嫌だったサマー。

メロンパンよりも、友達である皆んなの方が大切と言った事に他の皆んなもそれぞれ反省する

 

「皆んな、疑ってごめんなさい!」

 

「謝るのはわたしの方だ。嫌な事言ってごめん!」

 

「わたしこそごめんなさい!」

 

「俺も悪かった。少し自分の為に皆んなの事疑ってた」

 

全員がちゃんと謝ったのを確認してサマーはひと安心した

 

「さあ仲直り!」

 

仲直りの印として全員が手を合わせて心を一つにするのであった

 

「俺は許せねぇな!おやつの方が大事だ!ヤラネーダ!」

 

「ヤラネーダ!」

 

『ぺけ!』

 

「ヤラ!?」

 

「あれ?」

 

ヤラネーダの拳をコーラルが弾いたのだが、少し違和感を感じた。

いつもよりシールドのパワーが上がっているのだ

 

「いつもより力が!」

 

「ACTIVITYの能力だ。皆んなを活性化させてパワーアップさせてる。いつも以上に力を発揮出来る筈だ」

 

「ありがとう帝!今だよ!」

 

サマーとフラミンゴがジャンプする

 

そしてパパイアは合わせて再度ビームを放つ。

対抗してヤラネーダもライトからビームを放つが、力負けして目を潰された

 

「「タァァァ!!」」

 

サマーとフラミンゴのダブルキックがヒットし、ヤラネーダは倒れピクリとも動かない

 

「ラメール!」

 

「オーライ!」

 

 

「マーメイドアクアポット!サーチ!」

 

「黄緑!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

 

「プリキュア!くるくるラメールストリーム!」

 

 

「ビクトリー!」

 

 

 

 

 

////////

 

何故メロンパンがアクアポットの冷蔵庫の中に入っていたのかは

 

「くるるん、くるるん。くるくる、くるるん、るんるん」

 

「『まなつのメロンパン、置きっ放し。心配、だからアクアポットの中の、冷蔵庫の中にしまった』」

 

「くるるん」

 

「よく分かるわね…」

 

ジェスチャーでくるるんが全て教えてくれた。みのりの通訳だとそう言っているそうだ

 

「くるるん…」

 

「『ごめんなさい』だって」

 

「くるるんのせいじゃないわ!わたしがちゃんと確認しないで食べちゃったから!」

 

「皆んな悪気があった訳じゃないし。寧ろ善意でやった事だから何も気にしないでいいんじゃないか?」

 

「そうそう!仲良くが一番だよ!」

 

こうして、プレミアムトロピカルメロンパン事件は幕を閉じるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、でも帝の件については許してないからな」

 

「掘り返すの辞めて貰えません?」




○○○の事件簿は初期放送である97年の放送、特に第104話の「殺意のレストラン」が一番好きな回です。

ここまでの拝読ありがとうございました


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第44話 夏だ!海だ!合宿だ!!

4連休が終わる…

ではスタート!


「明日から夏休みだ〜!!ヒヤッホォ!!」

 

「むむ…それの何が嬉しいのよ!?」

 

来る夏休みに浮かれるまなつに対し、ローラは沈んでいた

 

「折角人間の学校に通える様になったのに、いきなりお休みなんてどういう事よ…」

 

「大丈夫だよローラ。学校は無くても夏休みは楽しい事がいっぱいあるからさ!ねぇ帝!」

 

「そうだな。学校に行けなくても家での勉強、つまり夏休みの宿題があるからな」

 

「さんごは何が楽しみ?」

 

「お〜い無視するな〜」

 

夏休みの宿題というワードは、右から左へと流される

 

「夏はスイーツがより美味しく感じるよね」

 

「時間があるから本も沢山読める」

 

「部活なら夏休みに合宿したりも出来るしな」

 

それぞれ個性が出る楽しみを言う中で、まなつはあすかの言った言葉に反応した

 

「それだ合宿!したいしたい!」

 

「合宿って何?」

 

「合宿っていうのは、部活動の練習や特訓の為に皆んなでお泊りして生活すること」

 

「皆んなでお泊まり…ふぅ〜ん、悪くないわね」

 

「お泊まりと言う事は、合法的に朝から晩まで24時間たっぷりとローラ達と過ごせる。想像しただけで涎が出るぜ…はぁはぁ!」

 

「帝を置いて行くのに賛成な人」

 

まなつ以外全員がローラに賛成の手を挙げる

 

「でも、トロピカる部の合宿って何をすればいいのかな?」

 

さんごの言う様に、トロピカる部は他の部活動とは異質な故に何に対して練習し、特訓するのか分からなかった

 

「先ずは予定だけでも決めておこう。夏休みだから予定もあるからな。わたしは毎日筋トレだな」

 

「あすか先輩、筋トレも良いが他も鍛えたらどうだ?」

 

「例えば?」

 

「胸だ。おっぱいボイ〜ンボイ〜ン!」

 

「お前の頭を萎れたボールみたいにしたろか?」

 

あすかが帝をシメているが、それを無視して会話は続く

 

「わたしは毎日図書館」

 

「わたしは家族旅行があるけど、まだ先の話だから大丈夫」

 

「お、俺は夏休み中頃に観星町に行く予定くらいかな?後は皆んなのパンツを被ったりかな?」

 

「みのり、アイスピック無いか?」

 

「そんな物騒な物持ってる訳が──」

 

「アイスピックの持ち合わせは無い。代わりといってなんだけど、護身用のナイフ」

 

「すみませんごめんなさい夏休みは大人しく家で過ごします」

 

ナイフの刃をチラつかせるあすかを見て、即座に土下座で謝り出す

 

「あ、他にも予定があったんだ!」

 

突然さんごが予定を思い出した

 

「そうなのか?旅行以外何も聞いてないが…」

 

「帝君を調教するのに予定があったの!」

 

「じ、冗談だよな?」

 

「え、あ……もう冗談だよ帝君!」

 

そう言って笑うさんごだが、目に光など無く笑ってはなかった。

それどころか、鞄から何かを取り出そうとしていたのだ

 

「まなつは?」

 

「わたしはお母さんと南乃島に帰るんだ〜」

 

「そういえばそうだったな。まなつは南乃島から来たんだよな」

 

「あ、そうだ!皆んな南乃島で夏合宿しない?絶対皆んな歓迎してくれるよ!!」

 

「まなつが大丈夫って言うなら、甘えるか?」

 

帝がさんご達に問い掛けると全員頷く

 

こうして、トロピカる部の夏合宿は南乃島でする事に決まったのであった

 

 

 

 

 

////////

 

「今日の部活はしおり作り!頑張って行こう!」

 

「合宿って言っても何かテーマとかあるのか?」

 

次の日、まなつの家にお邪魔してしおり作りに意気込む

 

「トロピカル精神とトロピカル肉体を鍛えようだよ!」

 

「シンプルだな。てっきり南乃島で体験した事、自分が感じたインスピレーションを部活動に活かすのかと思った」

 

「あ、それ良いかも!」

 

帝の意見にすぐ傾くまなつに少々不安を感じる

 

「…まぁそれは置いといて、島なんだから宝とかあったりしてな」

 

「すっごい!何で分かったの?」

 

「え、マジで!?」

 

「海の近くに洞窟があるんだけど、その洞窟の一番奥に海賊がお宝を隠したっていう伝説があるの!」

 

冗談半分で言ったつもりが実際に存在するかもという伝説があった

 

勿論その他にも、まなつがオススメする祭りイベントに知り合いのあれこれ。

どれも興味深いものばかり

 

取り敢えずはまなつが口にした事を纏めつつ予定を立てる事にした

 

 

 

 

 

それから数時間

 

全員で話し合いながら、みのりはそれをノートに書き込んで行く

 

「皆んな調子はどう?」

 

扉からノック音がし、入って来たのは差し入れを持って来たまなつの母である「碧」だ

 

「合宿のしおりは作れた?」

 

「もうバッチリだよ!」

 

ノートに書かれてある予定表を見て驚く

 

「かなり詰め込んでるね!」

 

起きたらすぐランニングから、30分小刻みに予定が積まれており圧迫していた

 

「でも、こんなに詰め込んで決めなくてもいいんじゃないのかな?だって南乃島だよ?砂浜で座って風に当たるだけでも良いものよ。実際に行ってから決めても遅くはないと思うの」

 

「今一番大事な事をするのがトロピカる部だったもんね」

 

「ここまで予定を決め込むのはらしくないな」

 

「なるほど!ありがとうお母さん!」

 

碧が部屋を退出すると、まなつはある事をふと思い出した

 

「予定を決めないって言った後に言うのもあれだけど、わたし皆んなを招待したい場所があるの」

 

「と言いますと?」

 

「わたしだけが知ってるビーチ。皆んなで行こう!」

 

「海の何処が珍しいのよ」

 

「でもでも本当に綺麗なんだから!」

 

「……分かったわよ」

 

「やった!」

 

こうして、ひみつのビーチだけでも予定に入れてしおり作りは終わったのだ

 

 

 

 

 

////////

 

「帝君〜!」

 

「お、さん…ご?」

 

南乃島に出発の日の朝

 

家の前でさんごを待っていたのだが、大荷物を抱えてる

 

「何だその荷物は?」

 

「夏の新作コスメいっぱい持って来ちゃった!島に着いたら皆んなで試そうと思って!」

 

キラキラとした表情でそうは言うが

 

「置いていけ」

 

「え!?駄目だよ!!」

 

「そんなにいっぱい持って行ってどうする?そもそも持てるのか?」

 

それを訊かれてすぐさま顔を背ける

 

「2/3は?」

 

「置いていけ」

 

「1/3」

 

「俺は持たないぞ」

 

「帝君の意地悪!!」

 

泣きながら家へと戻り、それなりに持てる量まで減らして家から出て来た

 

 

 

 

 

集合場所にはいち早くまなつとローラが待っていた

 

「遅い!」

 

「そう急かすなよ」

 

そんな時、丁度みのりも現れた

 

「お待たせ」

 

「あ…みのりん先輩!?」

 

そんなみのりも両手に大荷物を抱えていたのだ

 

「今月は全100巻の小説を読むと決めていたから…それと皆んなにオススメの本を……」

 

「はぁ…持ちますよ」

 

「あぁズルいよ帝君!わたしの時は『置いていけ!』って言ったのに!」

 

「お前は鬼か!?此処まで持って来て追い返すのは怖過ぎるわ!それに時間もある」

 

「ぶー!」

 

口を尖らして抗議する

 

「……」

 

「何みのりん先輩?」

 

荷物を半分持つ帝をみのりは何故がジッと見つめていた

 

「…何でもない」

 

「は、はぁ…」

 

 

 

「悪い遅れた!」

 

今度はあすかがようやく到着した

 

「まさかとは思うがあすか先輩もか?」

 

そう思ったのだが、意外にも少なく首を傾げる物を持っていた

 

「何持ってるの?」

 

「こっちはお弁当。フェリー乗ってる時皆んなで食べようと思って。それで遅くなって」

 

お弁当は分かったのだが、帝は気になっているもう片方。

枕に焦点を当てる

 

「何で枕?……あ〜もしかして枕変わると寝付けないとか?」

 

「そんな感じだ」

 

「可愛いですね」

 

「かわっ!?うるさい!!!」

 

「なして!?」

 

可愛いと真顔で帝に言われたのが急に恥ずかしくなったのか、あすかは理不尽な蹴りを入れた

 

そんなこんなで皆んな集まり、フェリー乗り場へと歩いていくのだった

 

 

 

 

 

////////

 

「全く、こんなに暑いのに何で人間共は楽しそうにしてるだぁ?ま、それでも好都合だけどな」

 

街中の上空で、チョンギーレはゼンゼンヤラネーダを生み出すのに何を媒体とするか探していた

 

「アレがいいな────出てこい!ゼンゼンヤラネーダ!!」

 

チョンギーレがターゲットにしたのは、街中を歩く少女の旅行トランクだ

 

「ヤラネーダ!」

 

「ギャアァァァ!!」

 

「「「「「まなつ!?」」」」」

 

「何!?アイツら…」

 

チョンギーレが媒体としたトランクの持ち主は、偶々その場所を歩いていたまなつの物だった

 

「わたしのトランクがぁ〜!」

 

「とにかく変身だ」

 

「行くわよ皆んな!」

 

 

 

「「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」」

 

「「「「「レッツメイク!キャッチ!」」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

「年中無休だ!」

 

「「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」」」」

 

 

「フェスティバルスタート!」

 

『PUPPET!』

 

 

 

「しまった!!」

 

「今日は何だ?年中無休とか言って、本当は休みが欲しくなったのか?」

 

「今更だけど帝が名乗ってない!皆んな揃って名乗ってるのに!」

 

それを聞いて全員が肩を落とす

 

「別にいいだろ。それに俺プリキュア じゃない」

 

「そんなの全然トロピカってないよ!」

 

「それじゃあ次な」

 

「言ったね?絶対だよ!」

 

帝とサマー咳払いしチョンギーレに向き直る

 

「「良し!」」

 

「『良し!』じゃないんだよ!!行けゼンゼンヤラネーダ!!」

 

「ヤラネーダ!」

 

ヤラネーダがトランクの口を開けると、中には大量のトロピカルメロンパンが積まれてあった

 

「おい、トロピカルメロンパンばっかだぞ?」

 

「島の皆んなにも食べさせたいと思って!ちゃんと皆んなの分もあるよ!」

 

「そんな心配してないわよ…」

 

「ヤラネーダ!」

 

ヤラネーダから吐き出されたのは、幾つものの玩具。

その内のひとつであるビーチボールが飛んで来る

 

『ぺけ!』

 

「ビーチボール?」

 

「皆んなでビーチバレーしようと思って!」

 

「なら!」

 

フラミンゴがビーチボールの落下地点まで走りパスする

 

「オーライ!」

 

そして帝がボールをトスを上げる

 

「トロピカルファイアーアタック!!」

 

アタックを受けたヤラネーダは仰け反るも、なんとか耐えて口から幾つもの水鉄砲を構える

 

「水鉄砲?」

 

「皆んなでやると楽しいと思って!」

 

「サマーのトランクの中身って、メロンパンと玩具ばっかりじゃない」

 

「夏休みの宿題持って来てるだろうな?」

 

水鉄砲が発射される。

皆避けるが、直撃しても大したダメージは無いようにも見える

 

「サマー?」

 

「フッ…そんな物置いて来たわ!」

 

「わたしは手伝わないわよ」

 

「大丈夫!帝がいるから!」

 

帝は苦い表情を浮かべるが、すぐさま目つきを変える

 

「──俺はコーラルの相手で精一杯だ。それくらい自分でやれ」

 

「えぇ〜!宿題手伝ってくれたらコレあげたのに…」

 

サマーが懐から取り出したのは5枚の紙で、「ローラがなんでも言うこと聞いてあげる券♡」だった

 

帝は目つきは変えずサマーの手を取る

 

「いいだろう」

 

「やった!」

 

「よくないわよ!何、人が知らない間に変な物作っては渡してるのよ!?」

 

ラメールは帝からその券を奪い取り破り捨てる

 

「全くもう…」

 

「安心しろラメール。俺の能力を使えばこの通り」

 

能力を少し悪用しラメールを引き寄せる

 

「思いのままだ」

 

「ちょ近い!!」

 

「何照れてる?」

 

「て、照れてなんか…ッ!!?」

 

突然ラメールがキスされた

 

「んっ…ま、待ちなさいよ!!」

 

「待たない」

 

またキスをしようと迫る。ラメールは両手で離れさせようと抵抗する

 

「ちょっと!貴方達助けなさいよ!!」

 

「「「「ヤラネーダは任せて!」」」」

 

「裏切り者!!」

 

「さぁラメール」

 

ガッチリと両手で引き寄せる

 

「待って待ちなさいよ、よく話しましょう?ね?」

 

「俺が素直に聞くとでも?」

 

「イヤあぁぁぁぁ!!!」

 

ラメールの断末魔を背中で感じながら、サマー達はヤラネーダへと走り出す

 

「帝って本当ラメール好きだよね」

 

「だよね〜!!」

 

「全く、敵を前に何やってんだが…」

 

「皆んなヤラネーダに集中した方が…」

 

「こんな暑い時にイチャイチャしてんじゃねぇ!!」

 

(((え、何処が?)))

 

コーラル、パパイア、フラミンゴの3人は同時にそう思う

 

そんな事を思いながらも、サマー達4人の息の合った攻撃でヤラネーダを怯ませた

 

「ラメール!」

 

サマーがラメールに浄化する様に呼んだのだが

 

 

「待って帝…頭が真っ白にぃ……」

 

「俺に身を任せろよ」

 

「はひぃ…」

 

 

「なんか気持ち良さそうだから置いておこう!」

 

「それでいいのか…?」

 

呆れるフラミンゴだが、ハートルージュロッドを構える

 

 

 

「ハートカルテットリング!」

 

「とびだせ!元気なハート!」

 

「やさしいハート!」

 

「かしこいハート!」

 

「燃え立つハート!」

 

「ハートドキドキ」

 

「「「ドッキング!」」」

 

「「「「プリキュア !ミックストロピカル!」」」」

 

 

「「「「ビクトリー!」」」」

 

 

 

「終わったか」

 

「おいラメールは?」

 

帝が指を指す場所では、何されたか知らないが余韻にひたりながら痙攣していた

 

「…ってそうじゃないよ!時間時間!フェリーに乗り遅れちゃうよ!!」

 

帝はひとつ咳払いしていつもの調子に戻る

 

「それならオーシャンステッキで」

 

『COPY!』

 

「「「「おい」」」」

 

 

 

 

 

////////

 

「滑り込みセーフってやつだな」

 

帝達はギリギリの所でフェリーへと乗客出来た

 

「お疲れ様。お弁当広げるから待ってろ」

 

あすかが弁当を広げるのを待ってる時、隣に座るみのりから凄い視線を感じる

 

「な、何みのりん先輩?」

 

「帝ってローラが好きなんだよね?」

 

「え?そうですが」

 

「じゃあ──」

 

みのりは静かに、帝の頬に軽くキスをした

 

「え?どういう事ですか?」

 

「秘密」

 

帝が疑問に思ってると左右から声が響いた

 

「ちょっと帝!わたしにあんな事しておいて浮気する気!?」

 

「帝君、三股は酷いよ!!」

 

「うわっ来るな!!」

 

「おい三人共!」

 

あすかが注意をするも、3人は甲板を鬼ごっこし始める

 

「全く…すみません騒がしくて」

 

「いやいや。とても面白いのが見れたから!」

 

「そ、そうですか…」

 

碧が少し興奮気味に苦笑いしか出てこない

 

「皆んな見えて来たよ!わたしの故郷南乃島だよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして始まったトロピカる部の夏休み

 

果たしてどうなるか




今回も破茶滅茶ワールドだった

次回はオリ回です。そのオリ回で、最後何故みのりがあんな事をしたのか?のを掘り下げます

ここまでの拝読ありがとうございました!


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第45話 ドリームパラレルフューチャー inみのり

タイトル通りです

ではスタート!


時は遡り、南乃島に向けて出発の日の前日の夜

 

 

 

 

 

「着替えに水着、後歯ブラシに……そうだ。夏休み中に本を百冊読まないといけないから何冊か」

 

みのりは着々と明日の準備を進める。少々荷物が多い。

重くて持ち歩くのには最適とはいわない。それを後悔するのは明日の朝に気付く

 

「うん、全部揃ってる。ふわぁ〜…そろそろ寝ないと…」

 

みのりはベッドで横になって深い眠りにつくのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

////////

 

「ん…うぅ…」

 

目覚ましが鳴るのを止めて体を起こす

 

「ふわぁ〜…荷物…」

 

眼鏡を掛け、多少寝ぼけながらも昨日準備した荷物を取ろうとしたのだが

 

「あれ無い?リビングだったかな?」

 

少し寝ぼけながらも目を擦りながらリビングへと向かう

 

「おはようみのり」

 

「おはよう帝」

 

台所に居る帝に挨拶をして洗面台へと行く

 

バシャバシャと寝ぼけた顔へと水を掛ける

 

「……」

 

水を掛ける

 

「…」

 

水を

 

「………え?」

 

みのりの手が止まる。そして冷静に考えた後、急いでリビングへと戻る

 

「あ、どうしたそんなに慌てて?」

 

「な、ななな何で帝が家に居るの!?」

 

「何でって、俺()の家じゃないか?」

 

()!?」

 

今度は玄関へと走り出して外へと飛び出した

 

確認するのは表札

 

「『皇』…えぇ!?しかも…」

 

表札は帝の苗字である「皇」が。そして今みのりが出て来た家は、自分が住んでいた住居ではなく一軒家が建っていた

 

まるで悪夢を見てるかの様に、みのりはぐったりして頭を抱えてリビングへと戻る

 

「変な夢でも見たのか?」

 

「今が夢であって欲しいと思う」

 

「??」

 

みのりのおかしな言動に帝は首を傾げるも、朝食を食卓に用意する

 

「あ、ありがとう…」

 

朝食を口にしながらみのりは辺りを見回す

 

最近建てられたと思われる綺麗な家。立てられる写真立てには、自分と帝の姿がハッキリと写っていた。恐らく結婚式での写真だろう

 

そして現状一番気になっていたものを目を移す

 

(2030年…眠ってる間にも9年も過ぎ経ったって言うの?)

 

日付けは9年の時を刻んでいた

 

「ねえ帝、わたし達っていつ結婚したっけ?」

 

「半年経つか経たないかくらいだな。それがどうかしたのか?」

 

「ううん」

 

「それより準備は出来たか?」

 

「準備…トロピカる部の夏合宿?」

 

帝はキョトンとした表情から少し心配になる

 

「みのり、体調が悪いならやめた方がいいじゃないのか?結婚式以来だから、皆んなと集まるのは久し振りだけど」

 

(皆んなと会う…いや寧ろ)

「大丈夫。少し寝ぼけているだけだから」

 

きっとまなつ達も突然の事で困惑してるに違いない。

そう考えて平気を装う

 

 

 

 

 

////////

 

まなつ達と会えば何か分かる筈だと思っていた

 

のだったが

 

皆んなと集まる場所はあおぞら中。

校門前で待っているのを目にしたが

 

「嘘でしょ…」

 

話してみた結果、帝と同じく話が合わないでいた

 

「こうして集まるのはみのりと帝の結婚式以来だな」

 

「そうね」

 

「みのりん先輩!また一段と綺麗になったんじゃないですか?」

 

「まなつ、みのりん先輩困ってるよ」

 

もう何がなんだか訳が分からない。おかしいのは自分だけ

 

「ローラ!!」

 

「わっ!?急に大声出して何よ?」

 

「ローラ、あとまわしの魔女達との戦いっていつ終わったっけ?」

 

「う〜ん…9年?8年前だったかしら?」

 

どうやら、あとまわしの魔女達との戦いは終わっている

 

「ねえねえ!早く部室に入らない?先生から許可は貰ってあるんだ!」

 

まなつはポケットから鍵を取り出した

 

「そうだな。そもそもその為に集まったもんな」

 

元部長であるあすかを先頭に校内へと向かう

 

みのりも渋々入ろうとする時、後ろから激しい地響きが鳴る

 

「ヤラネーダ!!」

 

「何でヤラネーダが!?でも、変身すれば……あれ?」

 

みのりはトロピカルパクトを取り出そうと懐に手を入れるが、何処にも見当たらない。今まで気付かなかったが、ハートクルリングも身に付けていなかった

 

「ローラ、トロピカルパクトは!」

 

「そんな物置いて来たに決まってるじゃない!そもそもヤラネーダが来るなんて知らないわよ!」

 

(一体どういう…)

 

みのりだけでは無い。まなつ達も所持してないのだ

 

「ならオーシャンステッキ!」

 

「パクトを持って来てないのよ。此処にあると思ってるの?」

 

「ヤラネーダ!!」

 

「皆んな校内に!」

 

みのりが校内へと避難する様に促した

 

「ヤラネーダ!」

 

「うわっ!お構い無しだよ!」

 

「もう!ローラがトロピカルパクト忘れるから〜!」

 

「しょうがないじゃない!」

 

「いいから走れ!」

 

ヤラネーダは廊下を走るみのり達を追い掛けながら攻撃する。お陰で振り返れば校舎がぐちゃぐちゃになっている

 

「ヤラネーダ!!」

 

「きゃっ!」

 

「うわっ!」

 

「みのり!帝!」

 

攻撃された衝撃でみのりと帝は吹き飛び、まなつ達と離れてしまった

 

「俺達の事はいいから逃げろ!」

 

「でも帝君達を──」

 

「早く!!」

 

帝が怒鳴ると、まなつ達は振り返りながも走って逃げて行った

 

だが、ヤラネーダは逃げて行ったまなつ達を追い掛ける

 

「チッ!そっちかよ!」

 

帝も追い掛けようとしたが、みのりを置いて行く訳にも行かなかった

 

「帝行って」

 

「だがお前を…」

 

「大丈夫。ヤラネーダは皆んなを追ってるの」

 

「…行ってくる」

 

軽く抱きしめ、帝は走り出した

 

「どうしようか…」

 

帝を行かせたはいいものの、これから自分はどうすれば良いか

 

(待って、そもそも何でわたしは此処に居るの?何か意味が…)

 

みのりはその意味を探す

 

無情にも投げ入れられたこの世界。自分がこの場に存在する理由は

 

(あるとすればおそらく……だけどトロピカルパクトは無い)

 

しかしそれでも

 

「でも、大人しくしていい理由にはならない。わたしが今一番大事な事は!」

 

例えプリキュア に変身出来なくても、皆んなを助けることだ

 

しかし、たかが少女ひとりの力ではどうする事も出来ない

 

それでもみのりのやる気は無くならない。

その意思だけは強く、その想いに応えるかの様に

 

「っ!?」

 

ポケットの中、そして指から光りと熱を感じた

 

ポケットから取り出したソレはトロピカルパクト。指にはハートクルリングが現れた

 

 

 

「プリキュア!トロピカルチェンジ!」

 

「レッツメイク!」

 

「キャッチ!」

 

「チーク!」

 

「リップ!」

 

「ヘアー!」

 

「アイズ!」

 

「ドレス!」

 

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

 

 

 

 

////////

 

「追い込まれたか…」

 

逃げた帝達だが、とうとう追い詰められてしまった

 

「ヤラネーダ!」

 

「皆んな!!」

 

ヤラネーダが帝達へと拳を振り下ろす時、パパイアが邪魔をして当たらなかった

 

「え、何で変身出来てるのよ!?」

 

「説明は後!早く皆んな逃げて!」

 

「ヤラネーダ!」

 

またも襲い掛かって来るが、パパイアは蹴り返す

 

「よし!やあぁぁ!!」

 

上手く怯ませ反撃をしようとしたが

 

「ヤラネーダ!!」

 

「きゃあ!!」

 

逆に返り討ちにあい地面に叩き潰された

 

「ぁ…うぁ……」

 

一撃とはいえ、勢いを利用されてのカウンターなのだ。

大の字で倒れるパパイアに殆ど力は残ってない

 

(皆んなを守れるのはわたしだけ……これくらいの痛みで倒れるには……あ、れ?)

 

立ち上がろうとする時、パパイアは自分の体に異変がある事に気付いた

 

(ちょっと待っておかしい。だったら何であの時…)

 

そしてパパイアはひとつの答えに辿り着いた。

いや、その答えは最初から出ていたのだ

 

「ヤラネーダ!」

 

「みのり危ない!」

 

帝が叫ぶがパパイアは避ける素振りを見せない

 

「違う…これは全部────"夢"!!」

 

攻撃が当たる寸前で、ヤラネーダにノイズが走り消え去った

 

「ッ!」

 

パパイアは高くジャンプしてハートルージュロッドを構える

 

 

 

「ハートルージュロッド!」

 

「プリキュア !ぱんぱかパパイアショット!」

 

 

 

技が地面へと直撃すると、そこから地面から周りの空間に亀裂が生じてガラスの様に砕け散った

 

そんな偽りの世界が壊れると、パパイアは真っ黒な空間に佇んでいた

 

「ブラボーブラボー!」

 

真っ黒な空間に他の人の声が聴こえる

 

「やはり貴女だったのね。アリス」

 

その人物はアリスだった

 

「いつ気付きました?」

 

「ヤラネーダに攻撃を受けた時。体に痛みが無かったから」

 

「あら、私とした事が。少々詰めが甘過ぎた様ですね」

 

「でも幾つか気になる事があるの」

 

「ほうほうどうぞ」

 

「痛みが無い筈だったのに、朝食に出て来た食べ物には味があった。それに物に触れた時にも感覚も」

 

痛覚だけあるのは少し不思議に思った

 

しかし案外それは簡単なものだった

 

「それは先程申し上げました通り、詰めが甘かったとした言いようがありません。単なるミスで御座います」

 

「そう」

 

「そうなのです……おや、どうやらそろそろお目覚めの時間が来てしまいました」

 

真っ黒な空間で甲高い音が鳴り響く。それは目覚まし時計の音だ

 

「最後にもう一つ。パパイア様は確か、これは『夢』と仰いましたが半分不正解です」

 

「半分不正解?どういう事?」

 

「夢である事は間違いないのですが、見せた出来事は未来であり、可能性の一つ」

 

「…もしかしたら、帝と結婚してるかも知れない未来って事?」

 

「バッチリグッチリ正解です。未来は一つではありませんし、可能性も無限です。その事をお忘れずに」

 

 

 

 

 

////////

 

「……」

 

小鳥のさえずりが聴こえる

 

みのりは朝を迎え、ベッドから起き上がる

 

リビングではいつも通りの日常がそこにあった

 

 

 

そして集合場所へ着く。

あの夢を見た後のせいか、少し帝の事を意識してしまう

 

「……」

 

「何みのりん先輩?」

 

「…何でもない」

 

「は、はぁ…」

 

 

 

勿論それはフェリーに乗った後もだった

 

「な、何みのりん先輩?」

 

「帝ってローラが好きなんだよね?」

 

「え?そうですが」

 

それは至極当然の返事が返って来た

 

別に帝に特別な感情は無い

 

ただ何となく聞いてみただけのこと

 

「じゃあ──」

 

みのりは静かに、帝の頬に軽くキスをした

 

「え?どういう事ですか?」

 

「秘密」

 

これも何となくだ

 

帝、さんご、ローラの喧騒を聴きながらみのりは微笑む

 

お互い興味は無いだろうがそれでも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そういう未来の可能性が有っただけでも知って少し嬉しかった




ちょっとしたIFルートみたいなものです。
みのりん先輩と絡ます話が書きたいな〜と考えた結果が今回の話です

ここまでの拝読ありがとうございました!


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第46話 水着だ水着だ!水着といえばポロリだよな?期待しても良いんだよな?良いよね!ローラ!このマイクロビキニでも!え、布面積が少ない?大丈夫似合うって……待て待て待て!!取り敢えず落ち着け!落ち着k

ここ最近サブタイで遊ぶ様になってきた作者で御座います。

38話のラメールとの初共闘の時の話が最近伸びてるよ!結構頑張った回でしたから嬉しいで御座います!

そして久々の日曜投稿で御座います!


夏合宿初日の朝

 

夏海家で朝食を取り、庭で準備体操をするのであった

 

「トロピカル体操はっじめるよ〜!」

 

そうしてまなつは、上体を前へ倒して脚の間に両手を通す様に身体をほぐし始める

 

「待て、それは一体どういう体操だ?」

 

あすかが疑問に思ってると、そこへ3人の子供達がまなつを呼びながら駆け寄る

 

「ようすけ、さんた、ひな!」

 

「久しぶり〜!」

 

「ひなもトロピカル体操やる〜!」

 

「トロピカル体操第二〜!」

 

「さぁ!トロピカる部合宿初日!皆んなでトロピカっちゃおう!」

 

 

 

 

 

////////

 

「本当にこんな所に秘密のビーチがあるの?」

 

只今帝達は、まなつの案内のもとで秘密のビーチへと向かっている最中なのだが、何故か林の中を歩いていた

 

「もう少しだよ!此処を潜って…」

 

「わざわざ潜らなくても、そこを乗り越えればいいじゃないのか?」

 

あすかの言う様に、わざわざ茂みの中を潜るよりも木々を越えて行った方が速いのだ

 

「それは違うよ!こういう所を行くのが良いんだよ!」

 

「うん、良い」

 

「面倒だな。俺は乗り越える。善は急げだ!」

 

「ちょっと待って」

 

「うぎゃ!?」

 

みのりは、乗り越えようとする帝の足を掴んで引き摺り下ろした

 

「痛って…顔面擦れたじゃないか…」

 

「急いては事を仕損じる」

 

 

 

 

 

それからは枝のトンネル、岩を越えて、木の橋を越えた先に待っていたのは

 

「海だ〜!!」

 

全員海を見るな否や服を脱ぎ捨て、予め着ていた水着でダイブする

 

ローラも清々しく人魚の姿で飛び跳ねてる程気持ちの良いビーチなのだ

 

「都会の喧騒を忘れる一時」

 

「綺麗な海と青い空」

 

「ゆったりと流れる島の時間」

 

「なんか眠くなってきた…」

 

「家に帰ってお昼寝する〜?」

 

「賛成」

 

全員が水面でのんびりと過ごす時間。

何も考えずただ浮かんで安らぎの時間を堪能していた

 

「…いやそれは駄目だろ!これはトロピカる部の合宿。もっと合宿らしい事しないと!」

 

「合宿らしい事って?」

 

「え?それはだな…」

 

言い出したあすかだが、そこまでは考えはおらず考え始める。

それを見て帝は挙手する

 

「なら海でしか出来ない事するか?」

 

「「「「「それは?」」」」」

 

帝はローラへと近付き

 

「な、何よ?」

 

「ローラ、お前カナヅチだよな?」

 

「「「「あ…!」」」」

 

「カナヅチってわたし泳げ……あっ」

 

その時、ローラは思い出した。いつの日か水泳部で溺れたトラウマを。人魚としてあるまじき屈辱を

 

「でも帝、ローラ水着なんて持って来てないよ」

 

「そ、そうよ!わたしに裸で泳げって言うの?」

 

「あるぞ」

 

そう言って帝は浜に置いてある鞄から、青く上品なタンクトップ・ビキニを取り出した

 

「わぁ〜可愛い!けど…」

 

「帝ならもっと露出のある水着を着させるかと思ったぞ」

 

「フッフッフ、水着は露出だけじゃ無いんだよあすか先輩。水着とは奥深いものなのだ」

 

「確かに可愛いけど何かあるんじゃないの?」

 

帝は真顔で静止し、かと思えば同じデザインの水着を取り出した

 

「やっぱり何か仕掛けてたのね…」

 

断る事も出来たが、折角水着を用意してくれたのだ。それに人魚としてのプライドもある

 

ローラは岩陰に隠れて着替える事にした

 

因みに帝が最初に取り出した水着には、水に濡れると溶ける仕掛けになっていた

 

 

 

それから数分後

 

「よし、一人ずつ先生になってローラに人間での泳ぎ方を教えていこう!」

 

「「「「お〜!」」」」

 

そして先ずはまなつだった

 

「いいローラ、泳ぎなんてバシャッて潜って、ガーーッて手で水をかいて、すいすい〜の、アップアップすれば泳げるよ!!」

 

「みのり頼むわ」

 

「何で!?」

 

まなつの訳分からん感覚的指導の教え方は、到底理解出来ずみのりにお願いした

 

「ローラ、入水時には手の角度は水面に対して45度が理想。そして円を描く様に大きく腕を回すの。その時、水の抵抗も考えつつ浮力に──」

 

「ちょ待ちなさいよ!」

 

「息継ぎは真上を向く様に」

 

そう言ってみのりは、強引にローラの首を動かした

 

「ぎゃ!?」

 

その時、首の骨がおかしな方向へと曲がりローラはそのまま底へと沈んで行った

 

結局、みのりの理論的指導もダメとなった

 

「今度はわたしだな!」

 

「今度はあすかなのね…」

 

「いいかローラ、泳ぎはやる気と根性と気合いを入れさえすれば必ず泳げる!!」

 

「帝、さんご!貴方達が最後の希望よ!!」

 

あすかの根性論での指導は、身の危険を感じて逃げ出した

 

「わたし達は…」

 

「皆んなと比べてやり易いとは思うけど…」

 

「「怒らないでね」」

 

帝とさんごとの指導法は

 

「あんよが上手、あんよが上手!」

 

「手繋いでるから溺れたりしないからゆっくり」

 

真心を込めて、手を引いての指導だった

 

(確かにまなつ達と違ってやり易いけど…)

 

「あんよが上手!あんよが上手!その調子だよ!」

 

「ローラ手を離すよ……は〜い、3メートルも泳げたね!」

 

「「良く出来ました〜!」」

 

「恥ずかしいわ!!」

 

子供をあやすやり方では気に入らなかった

 

「だけどよぉローラ。人間の姿で溺れてしまったらどうする?」

 

「その前に人魚に戻れば良い話よ」

 

「…溺れたりする人って大抵水を飲んで意識失ってるからな。その時、お互いの唇をくっ付けて空気を送らなきゃ行けないんだぞ。それを人工呼吸と呼ぶ。お前絶対そんなの嫌だろ?」

 

「当たり前よ」

 

「なら頑張るんだな」

 

「でもいいもん!」

 

しかし、本人がやりたくないと言うので中止とした

 

「参ったな、他に何やるんだよ?」

 

「あすか何か無いかしら?」

 

「わたしに投げるな……そうだな、自由研究も兼ねてこの島の歴史を学ぶとか?」

 

 

 

 

 

////////

 

まなつの父親である「大洋」に「とみ婆」と呼ばれる島の長老に話を聞いたらと教えてくれて、そのお婆さんが居る家まで訪れるのであった

 

「どうもお邪魔します。今日はお話を聞きに来ました」

 

「そんな畏まらんでええ。さて、どんな話をしようか?」

 

「だったら、まなつが言っていた洞窟の奥地に宝物があるって話は?」

 

「おや、それって北の浜の洞窟の話かね?」

 

「そうそれ!海賊のお宝が!」

 

「海賊?アレは人魚の宝だとワシは思っておる」

 

まなつが言っていたのと少し違うが、確かにその洞窟には宝があるみたいだ

 

そしてとみ婆の聞かされた話では、森の人魚と言われる人魚が夜の満月を背に跳ねてるのを目撃したらしい

 

「その人魚が宝を隠したんですか?」

 

「ああ。何故かその時お婆婆様は、人魚が島に宝物を持って来たと強く思ったんじゃそうじゃ」

 

 

 

 

 

////////

 

「此処が噂の洞窟か…」

 

帝達は今、北の浜の洞窟の前に立っていた

 

「此処に人魚の宝と」

 

「危険が待ち受けてるって訳ね」

 

「よし行こう!」

 

「あ、ちょっと待ってね。此処にお金を入れてから」

 

全員が一歩踏み出そうとする時、水を差す様にまなつが設置してある木箱に入場料を入れる

 

「そういう場所なのか!?」

 

「あれ言わなかったっけ?此処、観光名所のひとつだって」

 

折角の気分も台無しである

 

全員入場料を払い中へ入ると、電球で中の洞窟を照らし出されていた。

持って来た懐中電灯も無駄となってしまった

 

「中に入るの久し振りかも〜…」

 

「………わっ!」

 

「ギャアァァァ!!!」

 

少し怯えるまなつの背後から、みのりは軽く驚かした。

まなつも思わずローラに抱き付く感じで引っ付く

 

「ごめん、好奇心には勝てなかった」

 

「み゛の゛り゛ん゛先゛輩゛!!!」

 

「ほら早く行くぞ!日が暮れる」

 

奥地へと進むに連れてまなつの恐怖は和らいでいくが

 

「ひぃ!今何か音しなかった?」

 

急にビクつき始めて懐中電灯を辺りに照らす

 

音の正体は案外近くでそこへ懐中電灯を向けた時

 

「ギャアァァァ!!」

 

「キャアァァァ!!」

 

突然の事もあり、確認するのと同時に失礼ながらまなつは絶叫をして逃げ出してしまった

 

勿論照らされた相手もビックリして奇声をあげたのだが、まなつ達には聞こえなかった

 

「…何であの子達が居るの?」

 

その驚いた相手はヌメリーだった

 

 

 

 

 

////////

 

「逸れたな」

 

「酷いにも程があるわ」

 

帝とローラは逃げる最中に、まなつ達とは逸れてしまい別行動となってしまった

 

「どの道へ進むか…」

 

帝が考えてると、ローラは何か匂いを嗅ぎ付けた

 

「何だろう?懐かしい匂いがするわ」

 

「ローラ、こっちなら…ってローラ足元!!」

 

「え──」

 

しかしもう遅かった。危険の文字が張ってあったロープにつまづく。

帝も手を伸ばして掴んだが、そのまま下層の方まで一緒に落ちてしまった

 

 

 

 

 

「随分と落ちたものだ…」

 

「ええそうね…って帝大丈夫!?」

 

ローラを庇う事にいっぱいだった帝は、下敷きになっていた

 

「何とか大丈夫だ。ローラは?」

 

「大丈夫。その…ありがと///」

 

「何照れてんだ?」

 

「照れてなんか……この匂い。さっきの香り」

 

噛み付くローラだったが、さっきの香りが漂っていた。

そしてマーメイドアクアパクトが、一人でに浮かんで香りがする方へと飛んで行った

 

導かれる様に奥へと行くと、そこには杯の上にポツンと置かれてるブレスレットを見つけた

 

「コレが人魚の宝…」

 

ブレスレットの蓋を開けると香水らしき物があった

 

そしてパクトとブレスレットは、共鳴し合う様に光り輝く

 

「…この香りだったのか」

 

それと同時に香り香りの元もブレスレットからだと判明もした

 

「ローラ、そろそろ行くぞ」

 

「えぇ…わっ!?」

 

突然洞窟内で地響きが起きる

 

「急ぐぞ!」

 

「あ、ちょ!」

 

帝はローラの腕を掴んで走り出した

 

「場所分かるの?」

 

「ああ!」

 

「そう」

 

「多分な!」

 

「ちょっと!!」

 

 

 

 

 

////////

 

「あ、着いた!」

 

「サマー!皆んな!」

 

皆んなと合流を果たしたが、その場所ではヌメリーとそのヤラネーダとサマー達が交戦していた

 

「帝行くわよ!」

 

「次いでだからサマーとの約束も果たす!」

 

「約束?」

 

 

 

「プリキュア!トロピカルチェンジ!」

 

「フェスティバルスタート!」

 

 

「レッツメイク!キャッチ!」

 

「フェイス!」

 

「ネイル!」

 

「ドレス!」

 

 

『PUPPET!』

 

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

「はなめく海の皇帝!キュアエンペラー!」

 

 

「「二人合わせて!」」

 

「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」

 

 

 

「とまぁ即興で考えたが…コレ恥ずかしいな。黒歴史超えて暗黒歴史だわ」

 

「約束って変な所で守るわね。ついわたしまで合わせてしまったけど、突然でビックリしたわよ。とうとう頭のネジが外れてしまったかと」

 

「ヤラネーダ!」

 

そんな事を話してる間にヤラネーダが襲って来た

 

サマーが持っていた懐中電灯を媒体としたのだろう。身体全体が懐中電灯そのもののヤラネーダ

 

帝はバックステップで避け、ラメールはジャンプしてヤラネーダの顎を蹴り上げる

 

「ラメール!」

 

攻撃を食らったヤラネーダだが、それでも尚反撃して下から拳を振り上げる

 

しかしコレを帝はPUPPETの力でラメールの身体を操り、空中で避けさせた

 

「そしてこれをこうして!」

 

「ハァァァァッ!!」

 

更にラメールの体制を整えさせて後、ラメールの拳がヤラネーダの頭部であるライトを叩き割った

 

 

 

「ハートカルテットリング!」

 

「「「「プリキュア !ミックストロピカル!」」」」

 

 

 

しかし

 

「え──」

 

「「「うわあぁぁ!!」」」

 

「ミックストロピカルが効かないなんて!?」

 

サマー達の浄化技を持ち堪えた

 

更に、砕けた頭部も自己再生して修復された

 

「フフ、流石『ゼッタイヤラネーダ』」

 

「オーシャンディスク!」

 

『DEFENCE!』

 

帝がそれぞれに盾を出現させて身を守ろうと奮闘するが

 

「「「「「うわぁぁぁ!!」」」」」

 

「ガッ!?」

 

DEFENCEの盾では歯が立たず砕け散り攻撃を浴びてしまう

 

サマー達は倒れ、帝は壁際へと叩き付けられた

 

「今よ!一気にやっちゃいなさい!」

 

最後にトドメをさそうとヤラネーダが構える

 

「こんな所で、やられてたまるものですか!」

 

その時、洞窟の奥で見つけたブレスレットが青く輝いた

 

「ラメールそれって!」

 

「見つけたのか!?」

 

「そう、コレが人魚の宝物!」

 

「ソレをこっちに寄こしなさい!」

 

どうやらヌメリーも人魚の宝物目当てで此処に来た様だ

 

そしてブレスレットは小さく形を変えて、新たなハートクルリング「パフュームシャイニーリング」となった

 

 

 

「パフュームシャイニーリング!」

 

「シャボンフォーム!」

 

「アクアチャージ!」

 

「プリキュア!オーシャンバブルシャワー!」

 

 

「ビクトリー!」

 

 

 

「そっちもパワーアップなんて聞いてないわよ」

 

ヌメリーが退散したのだが

 

「マズいぞ!」

 

ヤラネーダとの戦いで洞窟内が崩壊し始めて海水が流れる込んできた

 

全員が必死になって走るが、海水の方が速く呑み込まれるのも時間の問題だ

 

「…そうだ、もしかして!」

 

パパイアが何か思い出した。

そして気付いた

 

自分達が逃げ走る道中、上から光りが差し込むのを

 

「皆んなあそこよ!」

 

全員が光りの差し込む場所まで走る。そこまで行けば後は高くジャンプすれば逃げられる

 

「しまッ…!?」

 

筈だった

 

「帝!?」

 

走る途中帝がつまづいて転んでしまったのだ

 

サマー達はそれに気付いてはおらず跳んでしまった。

ラメールだけがその事だけに気付き、跳躍する為の脚を緩めて急いで帝の元へと駆け寄ろうとする

 

「あ──」

 

しかし間に合わず帝は波に呑まれてしまった

 

「帝!!!」

 

ラメールは変身を解いて、元の人魚の姿へと戻り帝の元へと急ぐ

 

一瞬でローラも呑み込まれてしまう

 

(くぅ…!あ!!)

 

力無く激流に流される帝をローラは受け止める

 

(早く!!)

 

流される勢いに乗ってローラは人魚の姿のまま、洞窟の外へと高く跳び上がった

 

夜の満月を背に、ローラは帝を抱えて脱出出来たのだ

 

その姿はまるで、とみ婆から聞かされた森の人魚そのものだった

 

 

 

 

 

「起きなさいよ帝!!」

 

脱出出来て帝を助け出したのも束の間、帝は意識を失ったままだった

 

「起きなさい!起きなさいって!!」

 

しかしいくら揺らしても目覚めない

 

「起きてよ…っ…みかどぉ……ぁ」

 

そこでローラは昼間の時の会話を思い出した

 

 

『──お互いの唇をくっ付けて空気を送らなきゃ行けないんだぞ』

 

 

「……」

 

 

 

 

 

「ローラ!帝!」

 

サマー達が駆け付けて2人を見つけた時だった

 

月夜に照らされながらも、二つの影が重なり合う場面に出会した

 

ローラは肺にある酸素を全て帝へと吹き込む

 

(お願い…起きて…!帝!!)

 

唇を離して目覚めるのを待つが、一向に目覚める気配が無い

 

ローラは唇を噛み締め、涙の雫が帝の頬に落ちた時だった

 

「────ゲホッ!ゲホッ!!」

 

飲み込んだ海水を外へ出しながら、帝が目覚めたのだった

 

「コホッ!な、何がどうなって──」

 

「帝!!」

 

「うわっ!?」

 

目覚めた帝に勢いよくローラが抱きついた

 

 

 

 

 

////////

 

「コレって練り香水だね」

 

「なんだか良い香り」

 

「プリキュアの新しい力になって事はもしかして」

 

「うん。昔この島に人魚の国の誰かが来たって事かも」

 

まなつ達は、ローラの腕に付けてる「パフュームシャイニーブレス」について話していた

 

ソレがどんな物かは謎だが、憶測を立てて納得する様にした

 

「ヤラネーダもどんどんパワーアップしてくる。気を引き締めないとな」

 

「大丈夫です!ローラがゲットしたこのブレスレットがあれば!」

 

「フフン!当然よ、ワ〜ハッハッハッハッ!」

 

「ローラ頼む静かにしてくれ…まだ少し気分が悪いから…」

 

部屋の隅で横になる帝がそう項垂れていた。

無理もない。つい先程まで溺れて生死を彷徨っていたのだから

 

「帝君気分はまだ優れない?」

 

「今はな…明日の朝になれば元気になると思う」

 

「ごめんなさい…」

 

「あ、悪い謝らせるつもりは!」

 

帝は起き上がりちゃんと感謝の意を込める

 

「助けてくれてありがとうな」

 

「当然よ……うん、無事なら良かった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏合宿初日から波乱万丈な冒険となってしまった

 

今日は皆、疲れを取る為に早目に就寝をしたのだった




主人公の名乗りは3分程で考えたやつです。今後名乗る事は無いだろう

そんな訳で次回はオリ回でもやろうかと考えております

そんな訳でここまでの拝読ありがとうございました!


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第47話 這い蹲れ、これが全てを支配する絶対の力

特に報告は無しの助

ではスタート!




「ふわぁ〜……あれ?」

 

朝の4時過ぎ

 

ローラは少し早く目覚めて、擦る目で周りを見渡すと一つの布団に空きがある事に気付いた

 

窓から外の様子を伺うと一人浜辺へと歩く人影を見かけた

 

「…」

 

 

 

 

 

「こんな時間にどうしたのよ帝?」

 

窓から見かけた人影は帝だった

 

ローラは、浜辺で座る帝の隣に相席する

 

「少し風に当たりに、な。そういうローラは?」

 

「わ、わたし!?わたしはその…貴方が心配だからよ。まだ昨日の出来事だから」

 

「そうか…さて、帰るか。あ、そうだ一つ言い忘れてた」

 

帝は手招きしてローラを近付けさせる

 

「俺、もう少しで幸せがどんなものか分かる気がしてきた」

 

「そうなんだ。でも変な事しないでよね。またさんごが泣いちゃうわよ?」

 

「分かってる」

 

話を切り上げて家へと帰るのだった

 

 

 

 

 

////////

 

「今日は何する〜?」

 

「そうだなぁ…」

 

まなつとあすかは今日の合宿内容に頭を抱えていた

 

「ねぇ2人共。偶にはゆっくりお休みするのも大切だと思うんだけど。どうかな?」

 

さんごがそう答えてくれた。昨日の帝の事もあって身体の事を心配しているのだ

 

とは言っても当の本人はもう元気なのだが

 

「そうだね!休む事も大事ってよく言うしね!」

 

「なら山道を散歩しない?暑くても山の中なら涼しいと思う」

 

「なら案内は任せて!とびっきり涼しい所連れてくよ!」

 

みのりの案で全員準備して山の中へと歩き始めるのだった

 

 

 

 

 

////////

 

「いい空気だ」

 

「もう少ししたら滝が見えてくる筈だから、そこが一番涼しいよ!」

 

 

 

まなつの言う様に数分歩くと巨大な滝と川が流れていた

 

「どうどう帝?」

 

「綺麗…!」

 

「良かった!にひっ!」

 

「さんごもありがとうな」

 

「わたしは別に。帝君の為になれたならそれで満足だから!」

 

帝達は川へと近付き、靴を脱いでから軽く足に浸からせる

 

「「「「「冷んやり〜」」」」」

 

そんな中ローラだけは滝の方を眺めていた

 

「それにしても大きいわね…」

 

「ローラも遊ぼうぜ」

 

いつの間にか後ろに歩いていた帝。

そして少し離れた場所ではまなつ達が、水の掛け合いをして遊んでいた

 

「ま、まぁ帝がそう言うなら遊んであげなくもないけど!」

 

「何で上から目線何だ?まあいいけど、こっち来いよ」

 

帝は優しくローラに手を差し出した

 

その手を取ろうとしたその時、滝の方から大きな水柱が立ち、大きな音が鳴り響いた

 

「この時が来たわ…」

 

水柱の中から出て来たのはオッカマーだ

 

「随分としつこいわね!」

 

「この前と同じ様になると思ったら大間違いわよ!!」

 

オッカマーはいつもとは違う色のヤラネーダの素を取り出して行使する

 

「さあ──ゼッタイヤラネーダ!!」

 

帝が何かあった時の為に持って来たロープを媒体とされて、ゼッタイヤラネーダが誕生した

 

「ヤラネーダ!!」

 

「帝!ローラ!」

 

「まなつ、皆んな行くわよ!!」

 

 

 

「「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」」

 

「「「「「レッツメイク!キャッチ!」」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

「山の空気最高!」

 

「「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」」」」

 

 

「フェスティバルスタート!」

 

『SPACE-TIME!』

 

 

 

「速攻で片付けるぞ!」

 

サマー達の目の前に空間の穴を開けて、その中へと全員飛び込みヤラネーダの目の前まで。

そして帝は、一時的に時間の流れを止めてオッカマーの背後へと移動した

 

「そう上手く行くかしら?」

 

背後からの攻撃をオッカマーは、振り返りもせず拳を受け止めた

 

そしてヤラネーダは、突如として現れたサマー達に対応して逆にカウンターを浴びせた

 

「くっ…もう対応して来たのか」

 

帝は一度オッカマーとの距離を取る

 

「ヤラネーダ!!」

 

『ぺけ!』

 

「くぅ……!!」

 

一方でサマー達は、ヤラネーダの猛攻にコーラルが踏ん張っているが防戦一方の状態だった

 

「早くしないと!」

 

帝もそれに気付いてサマー達のフォローをしようとするのだが

 

「余所見とは随分と余裕なのね!!」

 

「チッ!」

 

オッカマーに邪魔されてそれどころではない

 

「帝、こっちの事はいいからソイツを…きゃあ!?」

 

「ラメール…うっ!?」

 

「「「ああぁ!?」」」

 

帝に気を取られてたせいでラメールが捕まり、心配するサマー達も続々とヤラネーダに拘束され捕まってしまう

 

そして敵は空中で佇んでいる。手の出しようが無い

 

(くっ…だが、ACTIVITYで皆んなの力を底上げすれば──)

 

「落ちたものね…」

 

「…何だと?」

 

ディスクに手を掛けようとした時、そうオッカマーが挑発めいた事を言った

 

「だってそうじゃないの。プリキュア側に寝返ってからサポートばかり。前に出て行こうとしない」

 

「だからどうした?」

 

「んっふ〜。仲良しこよし、お手て繋いで戦えば罪滅ぼしになると思っているのかしら?」

 

オッカマーの言う様に、あの日を境に殆どサポート系のディスクであるフェスティバルディスクでしか使ってない

 

以前の様に前に出ていれば、この様な事態にもならなずに済む可能性もあった

 

「帝ちゃん取り引き、しない?」

 

「取り引き、だと?」

 

急にそう切り出された

 

「今の帝ちゃんがどれだけお仲間の事を大切にしてるか理解してるのよ。だからこれは慈悲。素直に倒されればちゃんとこの子達を解放してあげても、な〜んて?」

 

「なるほどな。つまりは──」

 

人質

 

サマー達の解放を条件に倒されろ、と持ち掛けられたのだ

 

「帝駄目だ!ヤラネーダの事はわたし達で何とかするから!お前はソイツを何とかしろ!」

 

「だそうだ。残念ながら取り引きは終了だ」

 

「……そうね残念だわ。ヤラネーダ」

 

オッカマーが指示を出すと、サマー達を更に締め上げて苦しめる

 

「あ…ぅ…」

 

「う…っ…」

 

「ぐぅ…っ…」

 

「あがぁ……」

 

「うぐぅ……」

 

「おい」

 

帝の言葉にヤラネーダは少し力を緩めるが、それでも拘束を解くにはまだまだ

 

「これで分かったわよね?最初から選択肢なんて無いのよ」

 

取り引きなんて言うが、実態は違う。そもそも人質を取られた時点で相手側が有利

 

最初から帝には拒否権など無いのだ

 

「…それで立っとけば良いのか?」

 

「帝君何言って…ふぐぅ…!」

 

「はいはい小娘は黙ってなさい。立つだけでもいいけど…ステッキとディスクを渡して貰おうかしら?」

 

「…」

 

帝は少し迷ったが

 

「ほらよ」

 

オッカマーの足元に投げ捨てられたステッキとディスク。

これで帝は只の中学一年

 

「さて、これで帝ちゃんはサンドバッグ同然ねっ!!」

 

脇腹に剛力の拳がめり込んだ

 

「がはっ…!!」

 

「まだ一発しか殴って無いわよ?」

 

「うぐぅ……まだまだ──」

 

容赦無く振るう拳は帝の頬を退け反らせる

 

「「「「「帝(君)!!」」」」」

 

「ほらほら、お姫様達が心配してるわよ!倒れた方が身の為だと思うけど」

 

「卑怯者!!」

 

「卑怯者呼ばわりされたくないわ。ちゃんと取り引きしたじゃない。帝ちゃんが倒れたら解放するって」

 

「帝!早く楽な方を選んで!!」

 

「ラメール…はぁ…それは無理だ…っ!」

 

倒れる事を拒否する。それにはとても馬鹿な理由だった

 

「帝ちゃんは絶対倒れないわ。だってプライドが許さないもの。皇だから」

 

「そうだ…俺は倒れる事は疎か、膝を突くのも許されない。例え如何なる理由があれどだ。それでもお前達を助ける」

 

「でもそれだと何も救えず死ぬだけ、よっ!!」

 

「ぐわっ!!」

 

「帝!!」

 

帝の言う様に、地面に手や膝が付きそうになるが踏ん張って耐えている

 

「更にもう一発!!」

 

強烈なアッパーが帝の顎を跳ね上げた。

それがクリーンヒットし、帝の意識を切り捨てようとする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────帝君!!」

 

(ッ!!)

 

薄れる意識の中で、コーラルの声が耳に届き目を覚ました

 

倒れそうな身体を何とか踏ん張って立て直す

 

(負ける、このままだと確実に負ける…!そんな事有り得ない…有ってはならない!)

 

帝は少しながら恐怖していた。己が負ける事に

 

それと同時に、身体の内側から這い出る様な感覚も

 

(皇…始皇帝である俺が敗北など許される訳がない。どんな存在であろうと。歯向かうものは屈服させる。俺が世界で、世界が俺。即ち俺という存在こそが────)

 

「これで終わりよ!!」

 

「帝君!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────世界の理そのものだからだ」

 

その瞬間、帝の周りに大きな風が巻き起こった

 

「な、何なのよ!?」

 

オッカマーは堪らず攻撃を中断すると同時に

 

「【失せろ】」

 

滝が流れる壁際まで吹き飛ばされていた

 

「ごはっ!?」

 

何かされた訳でもない。なのに何故この様な状態になっているのか理解が出来なかった

 

「分をわきまえろ下劣な生物が」

 

「この雰囲気、帝君…?」

 

空気が一気に変わった

 

「たかがその程度の力で…自惚れるな」

 

「ステッキを持っていないのにどういう事なのよ!?」

 

「何処に目を付けてる?」

 

帝は自分が手に持つソレを見せつける

 

ソレは、時折りだが帝に力を貸していた未完成のステッキ。

しかし今は完璧に具現化してその能力を最大限まで発揮させていた

 

「では始めようか──余興をな」

 

『ABSOLUTE!』

 

そう音声がステッキから鳴り響いた

 

「プリキュアの王杖(レガリア)」。それが帝の新しいステッキだ

 

「…いつまでそうしているつもりだ?」

 

未だ空に浮遊してサマー達を拘束してるヤラネーダへ向ける

 

「【離せ】」

 

「や、ヤラネー…ダ…!?」

 

キツく締められていた拘束が少しずつ緩まりサマー達を解放した

 

「何やってるのよヤラネーダ!!」

 

ヤラネーダも本意で拘束を解いたのではない。帝の言葉に何故が逆らえず身体が勝手に動いたのだ

 

「【落ちろ】」

 

「ヤラ──」

 

その言葉通りヤラネーダは勢いよく地面に叩き落とされた

 

「【潰れろ】【ひしゃげろ】【跪け】」

 

「ヤラネ、ダ…ァ……」

 

言葉の連続でヤラネーダが地面に押し潰されていき、身動きが取れなくなっていく

 

「お願いや命令では無い。これは自然な事で当たり前の事だ。森羅万象、未来永劫何事も俺が正しい。俺の言動、行動何もかも全てにおいて間違いなど存在しない」

 

帝はゆっくりとヤラネーダへと近付き、顔を足裏で踏み潰す

 

「誰もが不可能と言うのであれば、この俺が可能にさせる。そして逆らう者がいるなら、そいつの可能を不可能にするまでだ。例え神だろうが俺に服従しろ。絶対は俺だ。────【這い蹲れ】」

 

最後の言葉で、ヤラネーダを中心に大きなクレーターが出来る

 

とうとう耐え切れずヤラネーダは気絶して動かなくなった

 

「ラメール行けるか?」

 

「え、あうん」

 

 

 

「パフュームシャイニーリング!」

 

「シャボンフォーム!」

 

「アクアチャージ!」

 

「プリキュア!オーシャンバブルシャワー!」

 

 

「ビクトリー!」

 

 

 

ヤラネーダの浄化を終えると今度はオッカマーにターゲットにする

 

「ここまで歯向かったんだ。それ相応の対価を支払わなければならない。その命をもって償え」

 

「…調子に乗らないことね!!」

 

猛ダッシュで帝へと走り、拳を振り上げる

 

「ウォォォォ!!」

 

「無駄な事を…」

 

振り抜く拳は帝目掛けて来たが、打ち砕いたのは帝の足元の地面だった

 

「〜〜〜ッ!!!」

 

連続で繰り出すが全て当たらない

 

帝を避ける様に何故か攻撃しているのだ

 

「どうして!?」

 

「悪いが二度は言わん」

 

オッカマーの懐にいとも容易く潜り込み、先程のお返しと言わんばかりに空高く顎をかち上げた

 

そして距離があるにも関わらず帝は拳を構える

 

「お前が負ける事は確定事項だ。【消えろ】」

 

拳を振り抜く

 

目には見えない攻撃がオッカマーを襲った。

絶対に当たる事の無い攻撃が当たったのだ

 

オッカマーは海の方までふっ飛ばされ、言葉通り帝達の前から消えた

 

「最初はこんなものだろう」

 

「わぁ〜すっごい!」

 

呑気なサマーの声が後ろから聞こえた

 

「当たり前だ。俺は始皇帝──世界そのものなのだからな。それよりも──」

 

帝はコーラルへと駆け寄り強く抱きしめた

 

「帝君?」

 

「怪我はないか?痛くはないか?違和感はないか?」

 

「く、苦しいよ帝君!わたしは大丈夫だよ!」

 

「本当か?」

 

「うん、本当だよ」

 

コーラルの身を確認し安堵した

 

「そうだラメールコレなんだが…」

 

真剣な眼差しでプリキュアの王杖を見せる

 

「うおぉぉ!!何このステッキとディスク!?ねぇラメールこれは一体??」

 

急にいつもの調子に戻りラメールは嫌な顔をする

 

「…それはわたしが知りたいわ。いつの間に手に入れたのよ?」

 

「なんか知らんけど身体から力が漲って出て来た」

 

「はぁ?身体から出て来たって何それ?怖、キモ、帝ってホントに人間なの?嗚呼ごめんなさい。帝はどうしよもない変態で、存在してるだけで生き恥を晒してる訳が分からない人間だったわね」

 

久し振りの罵倒を聞いたサマーは頬を膨らませて可愛く怒った

 

「もうラメール、帝に助けてもらったんだからちゃんとありがとうって言わないと」

 

「感謝はしてるわよ……ありがと」

 

「「「フフフッ!」」」

 

「はいそこ3人!後で覚えてなさいよ」

 

「皆んな帰ろっか!」

 

「そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝とサマーを先頭に一同は、もう一度散歩を再開し始めた




主人公の頭がイカれ始めてる

そんな訳でデタラメ能力です!
その能力は大まかに下記で書いてあります

プリキュア の王杖(レガリア)
帝でしか扱えない特別なステッキ。
所有者の力をプリキュアと同等まで引き上げる。念じればどんな場所からでも手元に戻り、出現させる事が出来る

ABSOLUTE:プリキュアの王杖専用ディスク。
言霊の力で存在するもの全てを絶対的に支配する。
可能を不可能に、不可能を可能にするといった因果関係も常時操る事が出来る


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第48話 合宿最後のイベント!願い叶えるひとつの石!

お気に49と50を行き来しとる…

ではスタート


「いよいよこの合宿もラストスパートだ。合宿の目的、それは何だったか?」

 

南乃島での合宿もいよいよ大詰め。

トロピカふ部の面々は砂浜に集合し、改めてこの合宿の意味を振り返っていた

 

「えっと、トロピカル精神とトロピカル肉体を鍛えることです!」

 

「その通り!今日は悔いが残らない様に目一杯楽しむこと!」

 

「トロピカルこと!」

 

「だ、そうだ」

 

「別に言い直す必要あるか?」

 

今日もやる気充分なところで、まなつが下品に笑っていた

 

「お、どうしたまなつ。下品な笑いはローラの担当の筈だ」

 

「そうなの?ごめんねローラ」

 

「そこで謝らないでよ!!」

 

ローラは帝の後頭部を叩いてやり返した

 

「皆んな、実はまだとっておきのイベントが残っているよ!」

 

「とっておき?」

 

「それは南乃祭り!」

 

南乃祭りはこの島で行われる祭り。今日はその日だという

 

「南乃祭りはね、年に一度のお祭り。このビーチから小舟に乗って、あそこにある果ての島まで行くんだ!そこで願い事を石に書いて海に投げると願いが叶うの!」

 

「それは本当か!?」

 

帝は食いつき顔を近づける

 

「う、うん…!」

 

「なら俺の願いはただ一つ!ローラと子作り──」

 

帝が言い終わる前に、ローラの綺麗な右ストレートが帝の左頬を打ち抜いた

 

「埋めるわよ」

 

そしてローラは浜に穴を掘り、その中に気絶してる帝を放り込んで埋めた

 

 

 

 

 

////////

 

お祭りの時間まで、トロピカる部は予定通り最後までトロピカル事にした

 

子供とのビーチバレー、太極拳、自分達で摘んだ野菜を調理して食べたりと充実させていた

 

あらゆる事を島で体験、経験し終えた後は夜の祭りに備えて浴衣を取りに行くのだった

 

「え…コレを登るの?」

 

みのりは目の前に映る階段に後ずさる

 

その階段は急斜面な上、目視では頂上を確認出来ない程かなり距離があるのだ

 

正に心臓破りの階段だ

 

「一番乗りはわたしだ!!」

 

「ズルいぞ!!」

 

「ちょ、待ちなさいよ!」

 

まなつが駆け込むのに、あすかとローラが続いて階段を走り始めた

 

「俺達も登るか」

 

帝もゆっくりと進み、遅れてながらもさんごとみのりも歩き始めた

 

 

 

それから少しして

 

「ねぇ帝君ちょっと良いかな?」

 

「帝待って」

 

「何?」

 

まなつ、あすか、ローラは登り切った直後、帝はさんごとみのりに呼び止められた

 

「「疲れた…」」

 

「…後もう少しだから」

 

帝の言う様にゴールはもう目の前。ここまで登って来たのだから大丈夫だと思っていたのだが、2人は帝の袖を掴んで登らせない様にした

 

そこで帝は察した。この2人、帝におんぶでも抱っこでもしてもらうつもりだと

 

「いくらなんでも無理だ」

 

「帝なら大丈夫」

 

「その根拠は?」

 

「みのりん先輩は右肩に乗って下さい。わたしは左肩に乗ります」

 

「おい聞け!!」

 

結局、さんごとみのりを抱えて登る羽目になった帝だった

 

 

 

「肩が重い…もうトロピカル肉体は充分だろ…」

 

「あとはトロピカル精神だけど…」

 

浴衣を知り合いから全員分借りたその帰り道。

身体を沢山動かして、トロピカル肉体は達成出来た。

しかし残る問題はトロピカル精神。何をどうすれば鍛えれるかに悩んでいた

 

「大丈夫、きっとお祭りで鍛えられると思うよ」

 

お祭りで、どう精神が鍛えられるのか全員が疑問だった

 

 

 

「はい、出来た!」

 

「お母さんありがとう!」

 

「こっちも出来ました!」

 

「サンキューさんご」

 

「浴衣初めて着た」

 

「島の伝統柄。興味深い」

 

「うし。こっちもなんとか」

 

全員浴衣に着替え終えて準備は出来た

 

 

 

 

 

////////

 

果ての島までの道のりは、まなつが言ってた通り小舟での移動だった

 

島に着けばとみ婆から石を貰いそこに願いを書いてゆく

 

貰った石の中でも、ローラのだけ他の人とは違う真っ白な石を貰った

 

「真っ白な石。書くの少し勿体無いな」

 

「それは珊瑚礁の殻じゃ。波で砕かれること無く、そうやって元の形に残ってるって事は中々珍しいの〜」

 

「へぇ〜ラッキー!」

 

それぞれに石が行き渡りペンで願い事を書き始めるも、やはり何を書くか皆んな悩んでいた

 

そんな中で最初に書き終わったのはまなつだった

 

「じゃ〜んコレ!」

 

願い事の内容は「みんなでめいっぱいトロピカる!!!」となっていた

 

「それって願い事じゃない」

 

「うん!石にはお願いって言うよりも、自分がしたいこと、決意を書くんだ!願いは叶えて貰うんじゃなくて自分で叶える!」

 

「決意表明って感じか?」

 

「そんな感じ!」

 

「なるほど。それなら俺は決まっている」

 

帝が書いてる所をローラは傍から覗く

 

「『皆んなを絶対幸せにする』帝らしいわね」

 

「だね!」

 

「「うわっビックリした!!」」

 

突然会話に入り込んで来たまなつに2人は驚く

 

「ところでローラは何書いたの?見せて〜!」

 

「嫌よ秘密!」

 

「見せて〜!」

 

「嫌!」

 

「見せて見せて〜!」

 

「嫌って言ってるでしょ!!」

 

まなつがあまりにもしつこく聞いたせいで、ローラは一足先に海へと投げ飛ばした

 

「ローラ早いよ〜!」

 

「まなつのせいでしょう!」

 

まなつとローラが言い合ってると、浜の方でゼッタイヤラネーダが現れるのを発見した

 

「アレって!」

 

「またあの強い奴!」

 

「皆んな、気合い入れて行くよ!」

 

 

 

「「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」」

 

「「「「「レッツメイク!キャッチ!」」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

「お祭り大好き!」

 

「「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」」」」

 

 

「ルーレットスタート!」

 

『DEFENCE!』

 

 

 

「ちょっと待てぇい!!」

 

「ヤラネーダ!」

 

「…?このヤラネーダって…」

 

浜の方までひとっ飛びした帝達はヤラネーダの前に着地したのだが、そんなヤラネーダの姿に見覚えのある様な目付きでラメールが見ていた

 

(ハッ!もしかして、わたしがお願い書いた石ぃ!?)

 

見覚えのあるも当然。

今回のゼッタイヤラネーダは、先程ラメールが海へと投げた石が媒体とされていたのだ

 

(てことはてことは、あの裏にはわたしの書いた願い事が!?クッ…こうしてはいられない!人魚のプライドに賭けて知られる訳にはいかない!!)

 

(ラメールの奴凄い張り切り様だな…)

 

見られまいと頭の中で試行錯誤してるラメールの表情を見て思った帝だが、実際は全く違っていた

 

「よし行くぞ!」

 

「あ、待って!」

 

フラミンゴが飛び上がり、キックをかましてヤラネーダの腹へと直撃する

 

「ひぃ!!!」

 

攻撃を食らって前のめりになるヤラネーダを見て、ラメールは奇声に近い声を思わず上げる

 

「背中に何か書いてある!」

 

「カタカナの『バ』?何かな?」

 

「何かの暗号かも知れない」

 

ヤラネーダが前のめりになってしまった事で、書いた文字の一部が見えてしまう

 

パパイアは気になって背中の方へと回り込もうとする時

 

「駄目ぇぇぇ!!見ちゃ駄目!!」

 

ラメールがヤラネーダを庇う様に立ち、手を出させない様にした

 

「ヤラネーダ?」

 

これにはヤラネーダも困惑していた

 

「え、どうしたの?」

 

「…このヤラネーダ、わたしが願い事書いた石なの!!」

 

「あ、確かに言われてみれば…」

 

そこでようやく帝達も気付いた

 

「だから背中を見ちゃ駄目!!」

 

「それは無茶だよ…」

 

「別に良いだろ?減るもんじゃないし」

 

「…」

 

「痛で!!?!」

 

ラメールはアクアパクトをシャボンフォームに変形させて、そのまま帝の眉間を撃ち抜いた

 

「もうこうなったら──ッ!!」

 

ラメールは一人ヤラネーダへ猛攻撃を仕掛けた

 

「何としてでもわたしが倒して見せる!おりゃおりゃおりゃおりゃ!!!!」

 

とにかく見られるのが嫌なラメールは、早いとこ浄化する為に全力で倒しに行く

 

「これでどうだぁぁぁぁ!!!」

 

渾身の蹴りを叩き込んだが、ヤラネーダはそれを耐えた

 

「あぁ、もう!!!!」

 

ラメールは方向転換して帝へ勢いよくと掴み掛かる

 

「帝!今すぐ、あの新しいステッキを使ってヤラネーダの動きを封じなさい!!」

 

「いやだけど…」

 

「あ゛あ゛ぁ゛ん゛?だけどもへちまもない!!今すぐ使いなさい!使うのよ!!使えって言ってるでしょうが、こんの変態馬鹿人間めェェェェ!!!」

 

「は、はい…」

 

帝は若干涙目になりながらもプリキュアの王杖を構える

 

『ABSOLUTE!』

 

「チッ…最初から素直にやればいいのよ」

 

((((可哀想…))))

 

少しばかり帝に同情するサマー達だった

 

「──い、行くぞ。は、【這い蹲れ】」

 

集中状態へとなり性格もいつもの様に豹変はしたが、ラメールが怖いのか少し震え声になっていた

 

「や、ヤラネーダ…」

 

それでも能力は通用しており、ヤラネーダは両手両膝を着こうとしていた

 

「ギャアァァァ!!!」

 

しかしラメールは絶叫した

 

何故なら、両手両膝が着こうとしてるという事は前屈みになっているという事なのだ。

このままだとヤラネーダの背中が丸見えとなってしまう

 

「駄目ストップ!ヤラネーダを立ち上がらせなさい!!」

 

「お前さっきから──」

 

またも帝が言い終わる前に、ラメールは帝の腹を殴り黙らせ、シャボンフォームで眉間へと押し当てる

 

「やれ」

 

「や、ヤラネーダ【立て】」

 

今度は立ち上がってくれたヤラネーダ

 

「良く聞きなさい、このド畜生変態凡骨馬鹿野郎人間。次変な事をすれば……分かるわよね?」

 

和かに笑うラメールだが目が笑ってない

 

「わ・か・り・ま・し・た・か?」

 

「…ピンポイントで出来るが面倒──」

 

「返事!!!」

 

「あ、あぁ…」

 

常に後頭部にシャボンフォームのパクトが当てられている。

少しでもミスれば帝の頭が吹っ飛ぶのは間違い無いだろう

 

「【仰向けになれ】」

 

ヤラネーダはゆっくりと仰向けに寝転び始めた

 

「決めるわよ!」

 

 

「マーメイドアクアポット!サーチ!」

 

「黄色!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

「これで始末する!!」

 

(((((とうとう始末するって言っちゃったよ…)))))

 

 

 

「パフュームシャイニーリング!」

 

「シャボンフォーム!」

 

「アクアチャージ!」

 

「プリキュア!オーシャンバブルシャワー!」

 

 

「ビクトリー!」

 

 

 

「これで真相は闇の中に葬られた…ウフフ、アーハッハッハッ!!!!」

 

 

 

 

 

////////

 

そしていよいよ石を海へと投げ入れる時が来た

 

「南乃島の可愛いを持って帰る」

 

「太極拳を極める」

 

「食べ物野菜を見極められる様になる」

 

「皆んなを絶対幸せにする」

 

「皆んなで目一杯トロピカる!」

 

願いを込めて海へと投げ入れた

 

「ローラ、一緒に投げられなくて残念だけどローラの願いはきっと叶うよ」

 

そうして空を見上げると、幻想的な星空が埋め尽くしていた

 

「っ!今何か来た!この星空みたいに胸の中からグワーって湧き上がってくる感じ。これがトロピカル精神!」

 

「うん!」

 

「これで合宿の目的も果たせたな」

 

「…そういえばローラってまだ泳げなかったよな?」

 

「あーー!!」

 

「な、何よ急に大声出して!?」

 

「帝の言う通りまだローラ泳げてない!」

 

始めの合宿でローラの泳ぎの練習は一旦中止に終わっていたのだ

 

「あ、あんなのもう良いわよ。碌でもなかったし…」

 

「ううん駄目だよ!明日の朝出発前に泳ごう!ローラのお願い絶対叶えるんだから!目指せバタあし!」

 

「…ん?ちょっと何で知っているのよわたしの願い事!?」

 

「あ…」

 

「も、もしかして見た?」

 

「見たって言うより見えたって言うか…」

 

ヤラネーダが両手両膝で四つん這いになろうとした時、その時実は皆んなからちゃんと見えていたのだ

 

「ちょっと帝!!!」

 

 

 

 

 

////////

 

その翌日、皆んなは急いで海へと向かってローラの練習に付き合っていた

 

「出来てるよ!やったねローラ!」

 

「ま、こんなもんかしら」

 

「叶ったね!ローラのお願い」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ、わたしの教え方が上手かったからね!」

 

「少し違う。わたしの知識があってのバタあし」

 

「いいや違う。気合いと根性とやる気のバタあしだ!」

 

「「俺達(わたし達)の真心あってのバタあし!」」

 

「全部違うわよ…」




どうやら今回の話しで夏休み終了みたい。
夏休み中でしか書けないネタがあるので来週の放送までに2話分投稿出来たら良いなと思ったる

ここまでの拝読ありがとうございました


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第49話 キラやば〜☆わたし達の出会い!

アニメの方、恐らく次回から夏休み明けかなと思ったので

ではスタート!


ローラの泳ぎの練習の後、一同は早歩きで急ぎつつ帰ろうとする

 

「ローラが泳げて良かったね〜!」

 

「最終的にビート板無しで泳げればもっと良いがな」

 

「楽勝よ!」

 

「早いとこ戻って帰る準備しないとね〜」

 

まなつが後ろ向きで歩いてると、丁度曲がり角に差し掛かった時

 

「まなつ危ない!」

 

「え?」

 

まなつが正面に振り返った時にはもう遅かった

 

偶々歩いていた3人の人達とぶつかってしまった

 

「あぶっ!?」

 

「うわっ!?」

 

「きゃあ!?」

 

「オヨッ!?」

 

4人が尻餅を突いてしまう

 

まなつがぶつかったのは、自分達と年の近い男の子と女の子2人だった

 

「いたた…あ、ごめん!大丈夫!?」

 

「うん大丈夫だよ!」

 

マゼンタのツインテールしてる女の子をまなつが起こす

 

「ちゃんと前を見て歩くルン!」

 

「ごめんなさい!」

 

「そんなに怒るなよ。こっちも気を付ければ良かっただけの事」

 

「ルン…」

 

青緑の髪色をしてる女の子が怒るも、一緒に居た男の子に宥められて意気消沈する

 

「お互い謝って、何も無かった。それで良いか?」

 

「ああ、わたし達が悪いのにすまないな」

 

「気にしないで。僕達はこれで」

 

男の子は2人を連れて歩いて行った

 

「まなつ次は気を付けなさいよ」

 

「全くだ。今回は良かったものの」

 

 

 

 

 

////////

 

「それにしてもさっきの女の子、一人だけ頭から変な物付けてたね!」

 

「うん可愛いかった!」

 

道中、先程ぶつかった人達の話で盛り上がっているまなつとさんご

 

「また会えないかな〜」

 

「それは無理だと思う。わたし達、もうあおぞら市に帰らないと行けないから」

 

「それにしてもいっぱい思い出作ったな」

 

「そうだな。洞窟での探検に島の人達と交流」

 

「わたしが泳げた事も忘れないでよね。他には……」

 

「ヤラネーダ!!」

 

「そうそうヤラネーダも……」

 

全員足を止めて上を見上げるとヤラネーダが立っていた

 

「ヤラネーダ!!」

 

「「「「「「うわぁぁ!!」」」」」」

 

突然の事で帝達は一斉に逃げ出した

 

「何でこんな所にヤラネーダが居るのよ!?」

 

「俺に聞くな!」

 

「取り敢えず皆んな変身だよ!」

 

 

 

「「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」」

 

「「「「「レッツメイク!キャッチ!」」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

「前方注意だよ!」

 

「「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」」」」

 

 

「フェスティバルスタート!」

 

『PUPPET!』

 

 

 

「ヤラネーダ!」

 

扇風機を媒体としてるヤラネーダ。風を巻き起こして近付けさせない様にしてくる

 

「凄い風!」

 

『ぺけ!』

 

コーラルが壁を作って、風の影響を無くそうとしたのだがそれが甘かった

 

「え…うわぁぁ!!」

 

「あー!コーラルが飛んでっちゃったよ!」

 

シールドが捲り上がり、そのまま彼方へと吹き飛んで行った

 

「この!」

 

「やあ!」

 

フラミンゴが走り出し、パパイアがビームで目潰しを仕掛けるが

 

「うわっ!!」

 

「嘘…あうっ!?」

 

フラミンゴも風の壁に阻まれ、パパイアはビームを返されて自分に受けてしまった

 

「帝どうにかならない?」

 

「吹き飛ばされたらPUPPETでも踏ん張れない」

 

「じゃあどうすればいいのよ!?」

 

3人が策を考えてる間にもヤラネーダは次の攻撃へと移す

 

両手の扇風機をこちらに向けて、一気に竜巻きを放った

 

「早く逃げるぞ!」

 

しかし口では言うがもう間に合わない

 

もうダメかと思われたが

 

「「「うわっ!?」」」

 

3人は誰かに手を引かれて竜巻きによる攻撃から逃げ出せれた

 

「一体誰が…って貴女はさっきの!」

 

「オヨ、危機一髪だったルン」

 

「貴女大丈夫?」

 

「う、うん」

 

「男ならしっかりしたらどうだ?」

 

「なっ!?いきなり現れて何だよ!!」

 

帝達を助け出したのは、先程ぶつかった3人組みの男女達だった

 

「ならば名乗らせて貰おう!僕達3人はアンタ達と同じ」

 

「「プリキュア だよ(ルン)!!」」

 

「「「えぇ!?」」」

 

 

 

「「「スターカラーペンダント!カラーチャージ!」」」

 

 

宇宙(そら)に輝くキラキラ星!キュアスター!」

 

「天にあまねくミルキーウェイ!キュアミルキー!」

 

「全てを包み込む母なる惑星!キュアアース!」

 

 

 

「本当にプリキュア だ!トロピカってる〜!!」

 

「行くよ!スター!ミルキー!」

 

「「うん(ルン)!」」

 

アースが正面から仕掛けるがこの戦法だと、先程のパパイアとフラミンゴの二の舞い

 

「ヤラネーダ!」

 

「風で吹き飛ばすつもりか。吹き飛ばされる〜〜……な〜んちゃって!」

 

アースはその場で這い蹲り、両の指先だけで踏ん張る

 

「フフ、甘いよ甘い!まるでキャラメルの様に甘ちゃんだよ!」

 

 

「キュアアース……絶対馬鹿ね」

 

「男がプリキュア って…ハン!あんなチンピラほっとこうぜ」

 

「トロピカってる〜!」

 

「「「キュアアースだよ!誰も突っ込まないの!?」」」

 

 

「全部聞こえてるぞテメェら!!ぶち殺したろか!!」

 

後方で騒ぐ帝達の声が聴こえてた様で、アースは自分に対する事なので激しく怒っていた

 

「ミルキー行くよ!」

 

「ルン!」

 

スターはヤラネーダ側面から左頭部を、ミルキーは右足をスライディングで転倒させた

 

「プリキュア !スター・パンチ!」

 

「プリキュア !ミルキー・ショック!」

 

「プリキュア !アース・スラッシュ!」

 

追撃と言わんばかりに、三人一斉に技を放つ

 

大きな爆発音と共にヤラネーダは完全に地に伏せてしまっていた

 

「やったね!イエ〜イ!」

 

「ルン!」

 

「大した事無かったな」

 

三人はハイタッチして盛り上がっていた

 

「ヤラネーダ!!」

 

「わぁ〜元気〜!」

 

「WAO!」

 

「落ち着き過ぎルン!」

 

未だに健全なヤラネーダが立ち上がり、スター達に手を伸ばそうとする時

 

「【這い蹲れ】」

 

その言葉が聞いたヤラネーダが、地面深くに減り込み動きを封じられた

 

「──調子に乗るのもそこまでだ。油断するな。最後は任せたぞ」

 

「オーライ!」

 

 

 

「パフュームシャイニーリング!」

 

「シャボンフォーム!」

 

「アクアチャージ!」

 

「プリキュア!オーシャンバブルシャワー!」

 

 

「ビクトリー!」

 

 

 

 

 

////////

 

「助けたつもりが助けられちゃったね!」

 

そう呑気に言うのは、キュアスターこと「星奈ひかる」

 

「それでも、アレくらいなら何とかなったルン」

 

そしてキュアミルキーこと「羽衣ララ」

 

「それにしても、アンタやけに口悪いな。中学一年生なら、ちゃんと年上を敬まって敬語で話さないと」

 

最後に男の子だがプリキュア のひとり、キュアアースこと「星空流星」

 

この三人は、観光目的で南乃島に訪れていたのだ

 

「ちょっと待て、キュアアースって女じゃなかったか?」

 

「遂にパンドラの箱を開けちまった様だな。ぶっ飛ばしてやるこっち来い!!」

 

「わたし達はそろそろ行くルン。宿泊先の所に挨拶しないといけないルン」

 

「えぇ〜、プリキュア 同士もっとお話ししましょうよ〜」

 

「それじゃあルン」

 

ララがひかると流星を連れて去ろうとした時

 

「ララさんの触手って可愛いですね!」

 

「もう一時間だけ付き合ってあげるルン」

 

「切り替え早!?」

 

さんごが何とかララを引き止める事に成功した

 

「まあでも、そろそろわたし達行かないとね…」

 

「そうだな。こっちも引き止めて悪かったな」

 

「わたし達も帰りの準備があるから、言う程時間無い」

 

「それにプリキュア 同士なら、いつかまた会えるんじゃない?知らないけど」

 

「じゃあまた!行こうララ、流星君!」

 

こうして彼女達とは別れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これがスター☆トゥインクルプリキュア との、初めての出会いだった




前々作の主人公は、多分自分が書いた中で一番感情豊かだと思ってる。

まぁそんな訳で、ヒープリに続きスタプリとの唐突コラボでした

ここまでの拝読ありがとうございました!


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第50話 プッシュプッシュ!クイズ番組!

うわ…なんかデジャブを感じる

ではスタート!

てか夏休み終わってなかったんだね


「もうちょい右!あ、わたしから見て右ね!」

 

トロピカる部の面々は、夏休み中にも関わらず学校に来ていた。

それは、ある横断幕を広げる為である

 

その横断幕というのが

 

「『夏休みものこりわずか!宿題が××(チョメチョメ)な人!みんな集合!』」

 

と言った具合いに、残りの夏休みを他の生徒と一緒に宿題を終わらせようというのだった

 

「よし、後は固定するだけだな。俺達も屋上へ──」

 

位置の確認をする帝、まなつ、ローラの3人が移動しようとした時、強風が発生した 

 

「「「ああっ!」」」

 

その時、上で広げたあすか達は手を離してしまい横断幕が風に飛ばされてしまう

 

「あ〜!あっちにはさっき生徒会長が!」

 

「「えぇ〜!?」」

 

帝達は飛ばされた方へ行くと、噴水で横断幕と一緒に落ちた生徒会長の百合子とカメラマンの人達が居た

 

 

 

 

 

「全く、折角TVであおぞら中を取り上げてくれたのに、学校を紹介する良い機会だったのに台無しだわ!」

 

生徒会室に呼ばれたトロピカる部は説教されていた

 

「それに『宿題が××(チョメチョメ)な人』っていかがわしい書き方、学校のモットーである健やかとは駆け離れているわ!」

 

「宿題が終わってないって大きな文字で見せられたら、うんざりするでしょう?それに、帝の存在の方が健やかにから駆け離れてるわ」

 

「だから、直接的な表現は避けたんです。帝は除いて」

 

「お二人さん?」

 

みのりとローラの余計な一言を気にしていたら、百合子がとんでもない事を言い出した

 

「とにかく見過ごす訳にはいきません。次の生徒会の会議で、トロピカる部の部活停止について話し合います」

 

「えぇ!?」

 

「いくら何でもやり過ぎだろ!」

 

「お取り込み中のとこら失礼します」

 

話の途中、一人の男性が生徒会室に入って来た

 

「貴方、確かさっきインタビューをして下さった…」

 

「はい、お礼を言いたくて」

 

「お礼?」

 

「番組放送直後からメールが沢山届いていまして、SNSでも大盛り上がりなんです!」

 

内容とは別に、視聴していた人達からすれば放送事故も受けていたらしく絶賛だった

 

「それで、僕が司会をしてるクイズ番組に是非皆さんに出て貰いたくて」

 

「でもそんな、生徒会長が許す訳…」

 

「それで提案なんですが、クイズ番組で決着付けるのは?」

 

「お引き受けします!」

 

それに反応して即答したのは百合子だった

 

「はぁ!?受けるのかよ?」

 

「またTVに出演出来るとなれば、生徒会があおぞら中の良さをアピール出来るチャンスなのです。勝負に勝つのは生徒会が決まっていますが、万一トロピカる部が勝つ事があれば部活動の停止処分は取り止めとしましょう!」

 

「その約束忘れるなよ!」

 

「えぇ、生徒会長の名にかけて!」

 

あすかと百合子の間に謎の火花が散り、クイズ番組に出る事となったのだ

 

 

 

 

 

////////

 

『美しい海に面したあおぞら市!市民の知的好奇心をくすぐる博物館!現在は世界のボタン展が開催中!大人気の水族館には、ムツゴロウがお目見え』

 

 

遂に始まったクイズ番組「地元でモットー!」。

この司会を務めるのは、先日この話を持ち込んだ人気芸能人「パンサー・向井」が担当

 

 

『今回出場するのは中学生五組!優勝の栄冠を手にするのはどの組みか?』

 

 

「当然、わたし達トロピカる部よ!」

 

「無理ね、優勝するのは我々生徒会チームだから」

 

「ちょっと待って下さい。若干一名生徒会では無い人が紛れてる様な…」

 

帝の言う様に約一名生徒会所属で無い者が居た

 

「風紀委員長、この角田正美が助っ人で入ったからには絶対勝つわ!」

 

クイズは全部で四問出題。各問題で手に入れたポイントの合計で勝者を決めるルールだ

 

 

『一問目の問題は此処、ウミガメも産卵に来ると言う砂浜です!問題!』

 

 

亀は一万年生きると言い伝えがあり、亀は万年と言うが、鶴が生きるのは言い伝えでは何年?

 

という問題だ

 

問題が言い終わると、上空から幾つもの紙が降って来た

 

 

『カードに数字が記されているので持って来て下さい!』

 

 

「鶴は千年、亀は万年と言われてるから」

 

「答えは1000だね!」

 

既に答えはみのりが知っていた為、後はその数字が記されてるカードを探せば楽勝と思っていた

 

しかし

 

「とりゃ…『2』だ…」

 

「『1』だ」

 

「『7』です」

 

探しても探しても、1000という数字が見つからない。

それどころか、0〜10までの数字しか見当たらないのだ

 

「あ、分かった!」

 

「「「「分かったの!?」」」」

 

「帝も気付いた?」

 

どうやらこの問題が解けたのは、帝とみのりの2人だけだった

 

「一枚のカードとは誰も言ってない」

 

「だから…」

 

帝とみのりは、0のカードを二枚、10のカードを一枚持つ。

それを組み合わせる事で、1000という数字が出来上がった

 

 

『おおっと、トップで解答するのはあおぞら中学のトロピカる部です!』

 

 

みのりは組み上げた数字を解答して正解した

 

これでトロピカる部は、トップで解答出来たので5ポイント先取した

 

 

『次に解答するのは、あおぞら中学生徒会です!』

 

 

どうやら、生徒会もその問題の意味が分かり正解となり4ポイント獲得した

 

 

 

 

 

場所は変わり水族館

 

『さぁ此処、水族館で2問目のクイズは『どろんこ答えてよろこんで!』です!』

 

 

「どろんこって?」

 

「クイズの答えが」

 

「◯か×のどちらかのパネルに飛び込むの」

 

正解なら魚のクッション、不正解なら泥の中へダイブといったものだった

 

 

『では、トップのトロピカる部から問題です!』

 

 

世界で一番大きな生き物はシロナガスクジラ?

 

 

という問題だった

 

「世界で一番か…」

 

「こういう問題は…まなつ!」

 

「う〜ん、海の生物なら間違いなく◯なんだけど世界と言われたら…」

 

海の生き物をよく知るまなつも、比較基準が世界となったら答え難いみたいだ

 

「フン、グランオーシャン育ちのわたしにしたらラッキー問題ね」

 

「ローラ!」

 

「任せなさいって!」

 

 

『迷い無き走り!かなり自信がある様です!』

 

 

「正解はバツ……ん゛ッ!?」

 

バツのパネルに飛び込んだが、そこは泥だった為ローラは泥まみれになった

 

 

『不正解!世界で一番大きな生き物はシロナガスクジラでした!』

 

 

「嘘よ!三年前に亡くなったグランオーシャンのデッカイカン爺さんは、シロナガスクジラより三倍は大きかったし!!」

 

「グランオーシャン基準で答えられても誰も分からないぞ!」

 

海をよく知るローラだからやらかしてしまった問題

 

これによりトップ交代で、生徒会が4ポイントリードする

 

 

 

 

 

次はとあるファッション店

 

 

『三問目のクイズは『重ねてハウマッチ!』』

 

 

ルールはとても単純なものだった

 

一万円分の商品券を使って服を買い、お腹周りが大きいチームにポイントが与えられる

 

「何でも重ね着すれば良い訳じゃないのか…」

 

「はい!ここはわたしに任せて!」

 

さんごがやる気に満ちて手を挙げていた

 

「そうだね!さんごに任せよう!」

 

トロピカる部は、さんごが服の選定をし、計算はみのり、着させられるのはあすかとなった

 

「暑い…」

 

「あすか頑張りなさい。生徒会は手強いわよ」

 

一方で生徒会は、風紀委員の正美は服の目利きが出来て朝飯前だと言う。

更には会計係との連携で負ける事はまずないと断言する

 

勝負はトロピカる部と生徒会の一騎打ち。他の組は暑さに耐え切れずリタイア続出

 

「あすか先輩!可愛いイアリングを見つけたよ!」

 

まなつはそう言って、服とは全く関係無いイアリングを付けるのであった

 

と、丁度タイムアップの笛が鳴る

 

 

『生徒会チーム胴回りは200cm!』

 

 

「に、200cm!?」

 

 

『そして使った金額は、ピッタリ一万円!』

 

 

生徒会チームは驚異的な数値を叩き出した

 

 

『そしてトロピカる部は胴回り203cm!』

 

 

「やったー!勝ったー!」

 

「まだよ、商品券一万円分じゃないと」

 

みのりの言う様に、与えられた金額内ではないと失格となってしまう

 

そして気になる値段の方は

 

 

『使った金額は11,300円!残念、1300円分超えています!』

 

 

「あぅ…」

 

「元気出せよさんご。よくやったって」

 

帝がさんごを励ましてるが、まだ向井は言葉を足す

 

 

『情報によりますと、最後に買ったイアリングが1300円とのことです』

 

 

「え、じゃあさんごの計算は合ってたって事…」

 

「イアリングさえ着けなければ!!」

 

「ごめん!つい可愛くて」

 

これでポイントは生徒会チームが14ポイントに対し、トロピカる部は5ポイント。

完全に突き離れてしまった

 

 

『次が最後のクイズ!『早押し、早くおしよ!』です!始めに答えた1チームのみが10ポイント得られます!』

 

 

最終問題でボーナスポイント。もしこれでトロピカる部が答えれば逆転勝利

 

 

『それでは問題です。『皆さんが住んで居るのは何市?』』

 

 

「簡単じゃん!はいは〜い!」

 

 

『答えはボタンで』

 

 

「ボタン?何処にも早押しボタンなんて無いけど…」

 

「まさか、この街中で早押しボタンを探せって言ってるんじゃないだろうな…」

 

「…ありがとう帝。お陰でボタンの場所が分かったわ」

 

帝の何気ない会話でみのりは、早押しボタンの場所が特定出来た

 

「恐らく帝の言う様にボタンを探すのは確か。そしてそのボタンは、ボタン展がしてる場所」

 

「そっか、博物館で答えを答える!博物館に早押しボタンがあるんだよ〜!!」

 

「あ、馬鹿そんな大声を出したら!!」

 

まなつが大声であげるのを聞いて、他のチームがそれに反応した

 

即座にあすかと百合子が飛び出した。

遅れてトロピカる部と生徒会も走り出した

 

それだけならまだ良かったが、まなつが声を上げて他のチームも早押しボタンの場所が分かり一斉に走り出した

 

 

 

 

 

トップを走るのはトロピカる部の3人の帝、まなつ、あすかだった

 

「うおぉぉ!!」

 

しかし後ろから、百合子が凄まじい追い上げを見せる

 

あっという間に3人を追い抜かした

 

「速!?」

 

「相変わらずだな!でも!」

 

あすかも飛び出して、百合子を抜かし行った

 

残されたのは帝とまなつ

 

「油断した。ペースを上げるぞ!」

 

「ここで負けたらトロピカる部は活動出来なくなっちゃう!負けてたまるかぁぁ…うおっ!?」

 

帝の隣でペースを上げるまなつだったが、道端に落ちてるバナナの皮で滑って転倒してしまった

 

「まなつ!?」

 

帝は急ブレーキを掛けてまなつの側へと寄る

 

「大丈夫か?」

 

「そんなバナナ…」

 

「これはあすか先輩と生徒会長の一騎打ちだな」

 

 

 

 

 

////////

 

場所は博物館前

 

2人の走りは益々ヒートアップしていた

 

追い抜き、追い越し、2人の肩が並ぶ

 

勝負は互角で白熱していた

 

 

『先にボタンを押すのはどちらか?生徒会チームか、トロピカる部か?』

 

 

「「ハアァァァァッ!!」」

 

ボタン目前で2人はジャンプして飛び掛かった

 

そして

 

 

『なんと、ほぼ同時にボタンを押した!』

 

 

息絶え絶えの2人

 

空を見上げるあすかは、上空でこちらの様子を見ていたヌメリーを発見した

 

「やる気パワーが溢れてるから見てみれば、クイズだなんて随分楽しそうじゃない」

 

 

「出てらっしゃい!ゼッタイヤラネーダ!」

 

 

ヌメリーは、早押しボタンを媒体としてゼッタイヤラネーダを生み出した

 

「ヤラネーダ!」

 

一瞬で、あすか以外の人達のやる気パワーが奪われてしまった

 

「クッ!」

 

「「あすか先輩!」」

 

そこへ帝達が到着した

 

「行くぞ!」

 

 

 

「「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」」

 

「「「「「レッツメイク!キャッチ!」」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

「転んで泣かない!」

 

「「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」」」」

 

 

「エモーショナルスタート!」

 

『FANTOME!』

 

 

 

「やぁ!」

 

「とっ!」

 

サマー、ラメールが時間差攻撃を仕掛けたが、ヤラネーダの頭にあるボタンによって攻撃を跳ね返された

 

「ヤラネーダ!」

 

『ぺけ!』

 

反撃するヤラネーダがそれをコーラルが防御した

 

「ハッ!」

 

今度はパパイアがビームで視覚を奪おうとするも、ヤラネーダの頭部に直撃し跳ね返させる

 

「これなら!」

 

帝が正面から突っ込んで行く

 

「ヤラネーダ!」

 

ヤラネーダの攻撃が帝に直撃した

 

「ヤラネーダ?」

 

しかしそれは分身した帝

 

「こっちだ!」

 

本物は背後に回り込んで不意打ちを仕掛けたが、ヤラネーダが頭を向けてこれもボタンによって阻まれる

 

調子に乗ったヤラネーダは、押しても無いボタンを連続で鳴らしまくる

 

「あ〜、さっきからピンポンピンポンうるさ〜〜い!!」

 

 

「ハートルージュロッド!」

 

「プリキュア!ぶっとびフラミンゴスマッシュ!」

 

 

フラミンゴの怒りの技が、ヤラネーダの跳ね返す力を上回り吹っ飛ばした

 

「ラメール今だ!」

 

「オーライ!」

 

 

「マーメイドアクアポット!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

 

「パフュームシャイニーリング!」

 

「シャボンフォーム!」

 

「アクアチャージ!」

 

「プリキュア!オーシャンバブルシャワー!」

 

 

「ビクトリー!」

 

 

 

 

 

////////

 

浄化をし終えた後、あすかと百合子。どちらが先にボタンを押したかの審議に入る

 

もう一度集まってスロー映像で見直す事となった

 

その結果、僅かながらあすかが先にボタンに触れて押していた事が判明した

 

「トロピカる部が早かった…あれ?」

 

しかし押した直後、映像がそこから切れていた

 

「ヤラネーダ、映って無くて良かった」

 

「皆んなはともかく、俺は素顔のままだからな」

 

一応一安心

 

そして改めて解答権はあすかへと

 

「では改めて問題です。此処は何市でしょう?」

 

「せ〜の──」

 

「「「「「「あおぞら市!」」」」」」

 

「正解!これで合計15ポイント獲得で、トロピカる部の優勝です!」

 

最後の最後で逆転を果たして優勝した

 

「わたし達が優勝したから、部活動は続けさせてもらう」

 

「ええ、約束は守るわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、何とかトロピカる部は部活動停止を免れたのであった




ここまでの拝読ありがとうございました!


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第51話 先生の運命を賭けた授業参観!!

平日が忙しくてかなり遅れました

ではスタート!


「授業参観…ク、ローラの胸が触りにくくなる一日になりそうだ」

 

「最近胸ばかり触るわね…」

 

「そろそろ下が恋しくなって来た?それなら、ありのままの姿を曝け出して一緒にパコパコする?」

 

その後、部室の窓から投げ飛ばされるのはいつもと変わらない日常

 

お昼休み、トロピカる部と顧問の桜川と一緒にお弁当を食べながら夏休合宿でのの活動をレポート発表となっていた

 

「喋りながら食べるってどうなんだ?」

 

「え〜、こっちの方がトロピカルじゃん!」

 

「じゃあせめて口の中にあるものを食べてから……先生?」

 

ふと桜川へと視線を移すと、何か遠い目をして手を止めていた

 

そして箸で持つ玉子焼きを落とすも、それに気付かず口に入れて食べる動作をしていた

 

「落ちてるのに気付いてない…」

 

「先生?」

 

「え、あ続けて!」

 

とは言うものの、正直言って無視が出来ない。

そこで思い切ってさんごは聞いてみた

 

「もしかして、先生も授業参観で緊張してるんですか?」

 

「えっ!?」

 

「皆んなの家族が来るからドキドキしてるのかなぁって」

 

「そ、そんな事ないよ〜!」

 

「先生は授業参観なんて慣れたもんだよな。まさか先生の親が来る訳じゃないし…」

 

冗談半分で言ったあすかだったが、桜川の反応を見る限りそれは本当の様だった

 

「来るんですか!?」

 

「…実は父が見に来るって言うの」

 

「また何でそんな状況になったんですか?」

 

「話せば長い話よ…」

 

 

遠い昔の事を話すかの如く、黄昏た目でその日の出来事を語ってくれた

 

夏休みのとある日、桜川は実家に帰っていた時に起こった会話から始まった

 

なんでも、桜川の父親が大事な用事があるとの事でその時に学校を見学する事もなった。

更に付け加えると、校長先生もそれを授業参観という名目で許可したのだ

 

「大事な用って何なのかしら?」

 

「りんご畑、引退、大事な用……お父さんは、桜川先生にりんご畑を継いで貰いたいと思ってるのでは?」

 

「確かにわたし一人娘だから…」

 

「そんな〜、それじゃあ先生の脇がもう拝めないって……さんご、ローラ、俺を一体何処へ連れて行く?」

 

これ以上話がややこしくなる前に、さんごとローラは帝を部室から追い出した

 

「でも、跡を継いで欲しいだけならわざわざ授業参観に参観しなくてもいいよな?」

 

「もしかして……先生が先生と認められなかったら先生が先生辞めさせられちゃう!?」

 

 

「もし父がそういうつもりだとしても、私今は先生を続けたい。勿論りんご畑は大切だし、いつか継ぐ事になるかも知れないけど、先生になる事は子供の頃からの夢だったの」

 

その後まなつは、クラスの皆んなに呼び掛けては桜川のサポートをして引き立てようと提案した

 

勿論皆んな賛成して協力してくれる事になった

 

 

 

 

 

「後は当日、先生をどれだけサポート出来るかだね!」

 

「張り切ってミスはしないようにな」

 

「あ、あそこに桜川先生が居るよ!」

 

放課後、トロピカる部の面々で帰ろうしてる時、校門前で桜川の後ろ姿を発見した

 

「先生!何してるんですか?」

 

「あ、あのね実は──」

 

落ち着かないと声色で説明しようとした時、少し離れた場所から誰か来るのを見つけた

 

「お〜い!」

 

「お父さん!」

 

「「「「「「お父さん!?」」」」」」

 

「予定より早くあおぞら市に来る事になってね、これから学校の案内をするの」

 

やって来たのは桜川の父親だった

 

「急に済まないね。この子達は?」

 

「わ、わたくし達は桜川先生に顧問をして頂いておりますトロピカる部というもので御座る!」

 

「何で御座る何だよ…」

 

「だって緊張してるんだもん!」

 

「わたし達トロピカる部も、学校の案内をお手伝いしますわ」

 

「え、えぇ!?」

 

突然の申し出に桜川は声を上げる

 

「まさか抜き打ちで審査に来るとはね」

 

「でも、ここで良いところを見せてあげれば!」

 

「桜川先生は安泰だな」

 

「行動開始だよ!」

 

 

 

 

 

先ずは、桜川が顧問をしてるトロピカる部の部室から見学させようとするが

 

「此処がトロピカる部の部室よ……あれ?部室の鍵忘れちゃった〜!」

 

 

 

続いては教室へ案内の途中

 

「あ、桜川先生、また書類にミスがありましたよ。数字が全部バラバラで」

 

「あ〜!!ナイナイナイ!そんなの無いですよね先生!!」

 

「えぇ!?」

 

「先生は疲れてるんですよ!ゆっくり休んでからもう一度見直す事をお勧めしますよ!!」

 

 

 

最後は職員室で自分の仕事場を

 

「此処が私の机よ」

 

(良かった〜綺麗だ!桜川先生やった!)

 

「ん?」

 

桜川の父親は引き出しに違和感を感じて軽く突くと

 

「相変わらずだな咲は」

 

押し込まれていた仕事道具が溢れ出した

 

 

 

案内は全て終わり、桜川は父親を見送って行った

 

「はぁ…あまり上手くいかなかったね」

 

「当たり前だ。俺達が頑張ってフォローしても、先生はそれ以上をやらかすから…」

 

「だ、大丈夫だよ!本番は授業参観だよ!」

 

 

 

 

 

////////

 

そして授業参観当日

 

帝、まなつ、さんごの親は勿論の事、桜川の父親もその場に居た

 

「桜川先生を辞めさせない為にも頑張らなくちゃ!皆んなトロピカって行こう!!」

 

「そして先生の脇は俺達が守るんだぁぁピギャァァァ!!?」

 

思わずいつもの調子の帝に、母親のたいこが帝の肩の関節を外した

 

「まなつちゃん、ローラちゃん。さんごちゃんは甘いからやらないけど、2人は肩の関節を外すくらいやってもいいからね!」

 

((帝のお母さん恐るべし!))

 

そんなやり取りをしていると、桜川は入室した

 

その表情は勇ましくキリッとした目付き……なのだが

 

「わたっ!?」

 

教卓の段差に躓き顔から転んでしまった

 

「先生わたしの絆創膏あげる!」

 

「あ、ありがとう」

 

貰った絆創膏を鼻の頭に貼るも、その絆創膏はピンクにハートの柄が入ったものだった

 

「に、似合わないわね…」

 

何とか授業を再開しようとする

 

「では授業を始めます。『わたしは三毛猫です』」

 

パペット人形を使って黒板に字を書こうとするも、チョークはへし折れ、人形の鼻まで取れてしまった

 

「鼻が!?ミケちゃんしっかりして!」

 

「先生この接着剤使って!」

 

「先生新しいチョーク!」

 

「ありがとう!」

 

しかし、接着剤が人形とチョークの箱に引っ付き、無理矢理引き剥がそうとすると桜川はチョークの粉まみれとなってしまった

 

「帝君どうだと思う?」

 

「逆に聞くがアレで大丈夫だと思うか?」

 

「……」

 

「そこは素直だな…… 」

 

始まって数分で不安要素しか無いと思ってると、外でゼッタイヤラネーダが現れた事に4人は気付いた

 

「あれって!」

 

「マズいわよ!」

 

「先生お便所!」

 

「わ、わたしも!」

 

「わたしもお便所!」

 

「俺も御手洗い!」

 

まなつの起点のお陰で、教室から抜け出して校庭へと急いだ

 

 

 

 

 

「やめなさ〜い…って帝!!」

 

「何?」

 

「何じゃないわよ!何処に手を突っ込んでるのよ!?」

 

到着して早々に、帝はさんごのスカートの中に手を入れていた

 

「いいだろ別に。最近スカートの中弄ってないから」

 

「だからって、ヤラネーダが目の前にいるこの状況で!?」

 

「何ローラ?…もしかして──」

 

「そんな訳ないでしょ!!てか、さんごも少しは抵抗しなさいよ!!」

 

何故かさんごは殆ど抵抗していなかった

 

「み、帝君…終わった後でね?」

 

「何の解決にもなってない〜!!」

 

「何やってるんだ?」

 

「遅いわよ!色んな意味で終わりそうになるところだったのよ!!」

 

 

 

「「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」」

 

「「「「「レッツメイク!キャッチ!」」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

「良いとこ見せたい!」

 

「「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」」」」

 

 

「フェスティバルスタート!」

 

『PUPPET!』

 

 

 

「ヤラネーダ!」

 

『ぺけ!』

 

黒板を媒体としたヤラネーダから、連続で速射されるチョークの雨をコーラルが弾き返す……のだが

 

「えっ!?」

 

弾いたチョークが再度襲い掛かり、コーラルの防御の隙である側面へ回り込む

 

「ヤラネーダ!」

 

「とにかく皆んな避けるんだ!」

 

帝は指先を使って、サマー達の身体を自由自在に操り回避させる

 

「ちょっ!帝、痛い痛い!」

 

無理矢理動かしてる為、サマーの身体は攻撃を受けて無いにも関わらずボロボロな状態

 

「み、帝…もっとまともな事を…」

 

「じゃあ消すか?」

 

取り出したのは黒板消し

 

「ほら、ヤラネーダの顔がチョークで描かれてるから消したら視界不良になるかと」

 

「それで行こう」

 

帝は、皆んなにそれぞれ黒板消しを渡した

 

「突撃だ!」

 

フラミンゴの合図で全員両手に黒板消しを持って突撃した

 

「「「「やあぁぁ!!」」」」

 

黒板消しを上手く投げて、綺麗にチョークで描かれたヤラネーダの顔を消してみせた

 

「ラメール!」

 

 

「マーメイドアクアポット!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

 

「パフュームシャイニーリング!」

 

「シャボンフォーム!」

 

「アクアチャージ!」

 

「プリキュア!オーシャンバブルシャワー!」

 

 

「ビクトリー!」

 

 

 

 

 

////////

 

「私、今日全然良いところ見せれなかったけど…でも、先生を辞めたくないの」

 

「……何の話だい?」

 

「え?お父さん、私がちゃんと先生をしてるか見に来たんじゃないの?」

 

「ああ、大事な用事のついでにな」

 

「『ついで』?」

 

桜川の父親は突然サイリウムを取り出しては振り始めた

 

「恥ずかしくて言えなかったけど、実はあおぞら市で応援してるアイドルのライブがあるんだよ」

 

「じゃあ、りんご畑は?」

 

「それなら、アイドル応援仲間が手伝ってくれるから心配ないよ」

 

「そうなんだ…」

 

色々と考えてしまったが、それは全部誤解だった

 

「咲はいい先生になったね」

 

「でも私ドジばっかで…」

 

「父さんはそれでも良いと思う。皆んな咲を支えてくれた。それは、咲と皆んなの間に信頼があるから」

 

それを言い残して、桜川の父親は帰って行った

 

「先生ごめんなさい。わたし達早とちりしちゃって」

 

「ううん、私の方こそ心配させちゃってごめんなさい。これからも、クラスの担任として、トロピカる部の顧問としてもっとも〜っと頑張るからね!皆んなでトロピカっちゃおう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒と教師の間にも信頼が深くなったのだった




下ネタが割とストレートに書くようなってきた…

ここまでの拝読ありがとうございました


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第52話 来たれ天文部!流星群はすぐ目の前だ!

訳分からんサブタイで草ァ!!

ではスタート!


「という事で、トロピカる部プレゼンツ『学校の皆んなで流星群を見る会』をやりたいと思います!」

 

部室に呼び出されたと思ったら、まなつがそう言っていた

 

星について詳しい「仲川詩織」と共にこの話し合いは始まった

 

そもそも彼女は天文部を設立しようとしていたが、生憎誰にも相手にされずじまい。

偶然にも近々流星群が見れるとの事で、天文部の部員募集も兼ねて学校の皆んなを呼び集めようという作戦

 

「よし、皆んなに流星群を見る会に来てもらおう。じゃ、宣伝用のチラシを作るぞ!」

 

「わたし達は先生に相談しに行こう!」

 

 

 

 

 

////////

 

そんな訳で帝、みのり、あすか、ローラ、詩織で宣伝用のチラシを制作する事となった

 

「絵心、それは己の奥に秘めるイマジネーションを紙に描くこと」

 

「馬鹿言ってないで手を動かせ」

 

「はいはい…っと電話だ」

 

手を動かそうとした時、ポケットから着信のバイブが震える

 

「おい、風紀委員に見つかったら大変だぞ」

 

「案ずるなあすか先輩。偶々ポケットに入れていただけ。これに出たらすぐ片付けるよ」

 

そう言いながら電話に出る

 

「はいもしもし?」

 

『流星群って聞いて電話したんだよ〜!キラやば──』

 

何か言い掛けてた途中だったが、構わず通話を切った

 

「誰だった?」

 

(…あの先輩はエスパーか何かか?)

 

「?」

 

 

 

 

 

 

そうして出来上がったチラシを廊下の掲示板に貼り、それに合わせてまなつも放送での宣伝をした

 

「だけど…」

 

さんごは横目で辺りを見るが、通りすがる人達は、わざわざ学校に行く必要無いなどボヤいていた

 

「反応がイマイチだな」

 

「閃いた」

 

みのりの案を聞いて全員急いで準備に取り掛かり

 

 

 

 

 

次の日の朝

 

玄関前では大勢の人集りで賑わっていた

 

その中心となっているのがトロピカる部の面々だ

 

「皆んなこっち見てる。ちょっと恥ずかしい…」

 

「恥ずかしがってないでほら」

 

「中々目立って良い感じね!」

 

それぞれ頭に星の被り物を着て、校内を歩いて宣伝する事に切り替えたのだ

 

帝の背中に隠れるさんごに対して、ローラは逆に目立つ事にやる気を満ちていた

 

「確かに物凄く視線は感じる。おい、何でみのりは被らないんだ?」

 

しかし一人だけ、みのりだけは遠くから何か装置を持ってるだけで被り物はしていなかった

 

「わたしは星を光らせる係」

 

そう言って装置のボタンを押して、帝達が被る星を光らせた

 

「え、コレ光るの!?」

 

「いいわいいわ!もっと、もっと光らせて頂戴!」

 

(((何か一人だけズレてる…)))

 

ローラは目立ちたがりな事もあり、テンションは上がっていく

 

「お〜い皆んな〜!お待たせ!」

 

遅れてまなつも合流した

 

「まなつ遅かった──」

 

「「「「なっ!?」」」」

 

まなつの姿を見て4人は更に驚く

 

明らかにまなつのだけが大き過ぎるのだ

 

「ちょっと!一人だけ目立つつもりね!?ズルいわよ!!」

 

(((やっぱり何かズレてる…)))

 

「まなつちゃんのソレは土星?」

 

「そう!」

 

「ま、何でアレ目立つのはこのわたし!」

 

「「「だからズレてるって!!」」」

 

 

 

そうして呼び込みも何とか順調に事が運び、来るその日の為に他の準備にも余念を作る

 

ブルーシートを事前にグラウンドに運んで置くのだが、その当日の天気が気になり始める

 

「後心配なのは天気だけ。天気予報では明日の夜、曇りの可能性があるって」

 

「曇りだと星が見えないじゃない」

 

「てるてる坊主でも作るか?」

 

「それはちょっと違う気もする」

 

「……わたしに一つだけ心当たりがある」

 

 

 

 

 

////////

 

そして当日を迎えた夜

 

グランドへ行くと、中央で大きく火を起こしては太鼓を叩いてる集団に、空に祈ってる男の人達が居た

 

「何あれ…?」

 

「これから晴れを呼ぶ。あそこに居るのがわたしの父。父さんは炎の晴れ男なんだ」

 

「何ソレ…」

 

「父さんが晴天祈願すれば…晴れるんだ」

 

「断言するんだ」

 

「実際父さんは町内のイベントを晴れにした過去があるらしい…」

 

少し確証まではいかないが、娘であるあすかがそう言うのだ。

恐らく効果はあるのだろう

 

「まあ最悪、いざとなれば帝のステッキを使えば済む話よ」

 

「アレってそう易々と使って良い物じゃないんだけどなぁ…」

 

小声で帝とローラが話してると人が集まり始めた

 

しかも予測してたより多くの人達が集まる事となった

 

晴天祈願も人集めにも役に立って一石二鳥の具合いとなった

 

しかしながら嬉しい誤算。ブルーシートが足らなくなって来たのだ

 

「よし、追加で取りに行こう」

 

だが取りに行こうとした時、ゼッタイヤラネーダが突如出現したのだ

 

「ヤラネーダ!!」

 

そして現れて早々にその場に居た人達のやる気を奪って行く

 

「あっ!」

 

これ以上被害を出さない為にも今すぐ対処しなければならない

 

不幸中の幸い、ヤラネーダがやる気を奪って見てる人はいない

 

 

 

「「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」」

 

「「「「「レッツメイク!キャッチ!」」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

「光る六つ星!」

 

「「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」」」」

 

 

「フェスティバルスタート!」

 

『COPY!』

 

 

 

「ヤラネーダ!」

 

天体望遠鏡を媒体としてヤラネーダは、レンズからレーザー砲並みの攻撃を仕掛けて来る

 

『ぺけ!』

 

「くぅ…やぁ!!」

 

コーラルはシールドで防御して、そのまま上へと受け流した

 

「こんな感じか?…ハァッ!」

 

帝はステッキをヤラネーダへ向けると、先程のヤラネーダと同じレーザー砲を出した

 

直撃したヤラネーダは後退った

 

「晴天祈願もそろそろ終わる。一気に決めるぞ!」

 

「分かってるよ!パパイア!」

 

「うん!」

 

サマーとパパイアはヤラネーダの足元を同時に蹴り飛ばして、転げさせる

 

「大人しくしろ!」

 

更にダメ押しにフラミンゴが上から蹴りで、地面に叩き付けた

 

 

「マーメイドアクアポット!サーチ!」

 

「ピンク!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

 

「パフュームシャイニーリング!」

 

「シャボンフォーム!」

 

「アクアチャージ!」

 

「プリキュア!オーシャンバブルシャワー!」

 

 

「ビクトリー!」

 

 

 

 

 

////////

 

やる気パワーを戻して、皆んなが目が覚めると丁度晴天祈願も終わっていた

 

そして空には雲ひとつない晴れた状態へなっていた。

お陰で雲に隠れていた星が綺麗に見えていた

 

それに流星群もハッキリと見えていた

 

「上手くいったみたい」

 

「そうですね。これも、あすか先輩のお父さんのお陰ですね!」

 

「そ、そうか?」

 

「今回の部活も無事に成功したな」

 

「そうね」

 

「わたし達、最っ高にトロピカってる〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

流星群を見れて何とか成功した今回の部活。

更に、今回の事がきっかけで天文部への入部希望者も沢山居たなど、本当に色んな意味で大成功となった




次回はオリ回です

ここまでの拝読ありがとうございました


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第53話 見つけた答え、皆んなのやる気をひとつに!

うっす終わった!こんなもんかな?

ではスタート


「今日も部活終わったぞ〜!」

 

「ぞ〜!」

 

まなつとローラはやり切った様に、両手を広げていた

 

「今思えばトロピカる部って割とハードだよな」

 

「わたしも思う」

 

「わたしも〜」

 

「あ、ごめん皆んな。わたし部室に筆箱忘れちゃった!」

 

さんごは忘れ物を取りに行く為、まなつ達とはその場で分かれた

 

 

 

 

 

「あったあった」

 

さんごは筆箱を鞄に仕舞って部室に出ようとした時、扉の前で帝が立っていた事に驚きながらも気付いた

 

「ビックリしたよもう〜」

 

「悪い悪い、やっぱ心配だから」

 

「ありがとう!」

 

「……少し話しないか?」

 

風当たる屋上で帝とさんごは、夕焼けのあおぞら市を眺めていた

 

「帝君、話って何?」

 

「いやさぁ、あの日さんごに言われてからずっと考えてたんだよ。俺の幸せ、さんごの幸せ…」

 

「うん」

 

「俺、やっぱりさんごの幸せが大事なんだ。その気持ちは今後も変わる事無い。だから、その考えを少し変えた」

 

「どんな風に?」

 

「南乃島の時に願った俺の願い『皆んなを絶対幸せにする』その考えになった」

 

「そうなんだ。じゃあ、わたしは応援してるね!」

 

 

 

 

 

////////

 

校門前

 

2人は珍しくも手を繋いで帰る事となった

 

「久し振りに帝君と手を繋いで帰れる。嬉しいな〜!」

 

「俺も嬉しいよ〜!」

 

指まで絡めた手を大きく振って気分良く帰っていたその時だった

 

「ッ!?帝君危ない!」

 

「うわっ!?」

 

突然さんごが手を引っ張り自分の方へと引き寄せた

 

そして同時に帝が歩いて居た場所に大きな爆発音がした

 

「助かったさんご」

 

「う、うん」

 

「一体何が…ってうわぁぁ!!?」

 

「帝君どうした…キャアァァ!!?」

 

手を繋いでいた反対の手。帝の腕が綺麗さっぱり切断されて無くなっていた

 

「俺の腕が、あ、あ、お?」

 

制服の袖からニョキッと腕が出て来た

 

「ジャ〜ン!実は切れていませんでしブボッ!?」

 

「ふざけないでよ!本当に心配したんだから!!」

 

帝の悪ふざけに涙目になりながら、さんごは鞄で帝に殴ったのだ

 

そしてそんな二人の前に現れたのは

 

「久し振りね帝ちゃん」

 

「「オッカマー!?」」

 

「あ、私も居る事を忘れないで下さいね。よよよ〜」

 

「「アリス!?」」

 

先程の爆発はオッカマー達が仕掛けたものだった

 

二人は急いで戦闘体制へ整える

 

「あの日以来私はずっと帝ちゃんを倒す為だけ考えたのよ」

 

「そうかよ。だが、お前では俺達を倒せない」

 

そこへ、騒ぎを聞き付けたまなつ達がやって来た

 

「さんご!帝!」

 

「さんご、皆んな頼んだ!」

 

 

 

「「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」」

 

「「「「「レッツメイク!キャッチ!」」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

「忘れ物はダメだよ!」

 

「「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」」」」

 

 

「ルーレットスタート!」

 

『PERFECT!』

 

 

 

「「「「ハァァァ!!」」」」

 

「邪魔よ!!」

 

「「「「うわぁぁ!!」」」」

 

サマー達が先行したが、オッカマーの突進力に敵わず吹き飛ばされてしまった

 

「コーラル一緒に!」

 

「うん!」

 

『ぺけ!』

 

帝とコーラルの重ね合わせたシールドで、オッカマーの突進をなんとか受け止めた

 

「それがどうしたって言うの?所詮、プリキュア とあのステッキに頼らなければ倒せない帝ちゃんなんて元々私の相手ではないのよ!!」

 

「「ッ!?」」

 

二人のシールドが破れ、大きく後ずさる

 

「自分一人の為だけに戦ってた貴方には倒せないのよ!!」

 

「だからだよ!!」

 

コーラルが怒鳴り声を上げ、隣に居る帝の手を握る

 

「だから帝君は、今もこうして悩んで、苦しんで答えを出そうとしているの。そして見つけたの!わたしはそれを全力で応援する!!」

 

コーラルは帝へ向き直り、その瞳で見つめる

 

「今がその時だよ帝君!帝君の思いを全部!」

 

「……プリキュア の王杖(レガリア)

 

帝の中からステッキが出て手に収まる

 

「『自分一人で戦ってた』。確かにそうだけど今は違う。"自分だけ"じゃない、"皆んなの為"に戦うと決めた。皆んなの幸せの為に!それが俺が出した答えだ!!」

 

その時だった

 

サマー達のハートクルリングが光り、帝の目の前に集まる

 

そしてその光りは一枚のディスクへと形取る

 

「皆んなのやる気をひとつに!」

 

ディスクを手に取りプリキュア の王杖へとセットする

 

 

 

『トロピカルディスク!』

 

「トロピカルスタート!」

 

『SUMMER!』

 

 

 

「全力で這い蹲らせてやる!」

 

「それがどうしたって言うのよ!!」

 

帝とコーラルは左右に散らばり注意を逸らす

 

だがオッカマーの狙いは帝ただ一人

 

「私の狙いは貴方だけよ!!」

 

「知ってるさ!」

 

帝はプリキュア の王杖を掲げると、その杖先に太陽にも似たエネルギーを作り出した

 

そしてそれは何処か見覚えのあるものだった

 

「おてんとサマーストライク!」

 

「何!?うぐぁ!」

 

紛れもないサマーの技だった

 

「あれってわたしの!」

 

帝がサマーの技を使うなどと完全に予想外の出来事

 

『キングハンド』

 

「トロピカルスタート!」

 

『CORAL!』

 

『EMPEROR!』

 

帝とコーラルは同時に飛び上がる

 

「コーラル!」

 

「帝君!」

 

帝はプリキュア 王杖、コーラルはハートルージュロッドを構える

 

「プリキュア ──」

 

「「もこもこコーラルディフュージョン!」」

 

今度はコーラルの技を同時に放った

 

オッカマーはただ防御体制を取る事で精一杯

 

「まだまだぁ!!」

 

今度は反対の手でオーシャンステッキを構えて回す

 

「フェスティバルスタート!」

 

ルーレットで回る途中だったが、帝の言葉でそれは強制的に止まる

 

「【止まれ】!」

 

『SPACE-TIME!』

 

ルーレットが止まると同時に、オッカマーの周りに三つ空間に穴が開く

 

そして中からパパイア、フラミンゴ、ラメールが飛び出した

 

「「「やぁぁっ!!」」」

 

動けないオッカマーに追撃を仕掛けた

 

「ガフッ…!」

 

「【這い蹲れ】」

 

更にダメ押しでオッカマーを這い蹲らせた

 

「──これで終わらせろ!」

 

 

 

「ハートカルテットリング!」

 

「パフュームシャイニーリング!」

 

 

「「「「プリキュア !ミックストロピカル!」」」」

 

「プリキュア!オーシャンバブルシャワー!」

 

サマー達の同時浄化技に、オッカマーは成す術もなく呑み込まれて行った

 

「「「「「ビクトリー!」」」」」

 

 

 

「あららこれは大変で御座いますね」

 

オッカマーが倒された事で、アリスはいち早く撤退した

 

「帝君!」

 

「コーラル!」

 

二人は笑顔でハイタッチを交わした

 

「俺は皆んなの幸せを願って戦うよ。それが今の俺にとって"今一番大事なこと"だから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新たに決意して戦う事を決めた帝

 

しかしそれがのちに、あの日と同じ過ちを繰り返すなどと、この時は思いもよらなかった




そんな訳で主人公の最終強化でした。まぁ実は没案のを掘り起こしただけですが

そんな訳で以下にまた書き込みました

トロピカルディスク

SUMMER:キュアサマーの力が使える

CORAL:キュアコーラルの力が使える

PAPAYA:キュアパパイアの力が使える

FLAMINGO:キュアフラミンゴの力が使える

LA・MER:キュアラメールの力が使える

EMPEROR:ABSOLUTEの力が使える

プリキュア の技を使用する時は、技名の頭に「プリキュア 」と付けない。
理由は、技はオリジナルと同じだが浄化能力が備わってない為の差別化の配慮


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第54話 水族館でふれあいコーナー!イルカはいるか?

今宵もサブタイでふざけましたねはい!!

ではスタート


「日曜日キタァァァァ!!」

 

あおぞら水族館で招待された帝達は、日曜早くに足を運んで居た

 

「イルカイルカ!トロピカイルカ!!」

 

イルカとのふれあいが出来るという事で、お呼ばれしたが、呼んだ本人であるまなつが一番はしゃいでいた

 

「わたしはクラゲ。クラゲが見たい」

 

意外にもみのりも、顔にはあまり出ては無いが本まで持ってクラゲ見たさに気分上がっていた

 

「みのりん先輩先ずはイルカ!イルカのふれあいコーナーだよ!」

 

「クラゲは?」

 

「クラゲは後!最初にイルカだよ!」

 

皆んなの背中を強引に押して行く途中、まなつはふと空を見上げた

 

「まなつ?イルカ早く見たいんじゃないのか?」

 

「あ、うん!待ってよ〜!」

 

 

 

 

 

早速イルカとふれあえるコーナーへ行ったのだが

 

「只今〜180分の待ち時間となります!!」

 

多くの人達がイルカと触れ合う為に、入り口前で混雑していた

 

「ひゃ、180分!?……ってどれくらい?」

 

驚いた割に180分が分からないまなつ。思わず帝達は肩を下げる

 

「180分は三時間だ」

 

「へぇ〜180分は三時間………なっ!?」

 

三時間と聞いてまなつはその場で泣き喚き駄々を捏ね始めた

 

「嫌だ嫌だ嫌だ〜!イルカ見たいよ〜!」

 

「ちょ、まなつ恥ずかしいからやめなさい!!」

 

「皆んな見てる」

 

「さんご、あすか先輩一旦退却しましょう」

 

「ラジャー!」

 

「まなつ諦めろ」

 

「イ゛ル゛カ゛〜〜!!!」

 

場所を変えてまなつをとにかく宥めてる事にした

 

そこへ、まなつの母親の碧もやって来た

 

「ごめんなさいね。予想以上にお客さん来ちゃって」

 

「ふれあいコーナー大人気ですね!」

 

「仕方ないよまなつ。ここはプランbで」

 

「プランbって何よ?」

 

「時間を潰す次いでに、みのりん先輩の希望であるクラゲでも見に行こう」

 

「そうしよう!」

 

みのりは帝の手を引っ張り、ズルズルとクラゲが居る所まで歩いて行った

 

「みのりん先輩そんなにクラゲ見たかったんだ…」

 

「ま、まぁ好みは人それぞれだからな」

 

 

 

「チクチク、ミズクラゲには少し毒がある。ピリピリ、アカクラゲにももっと毒がある。ヒリヒリ、ハナガサクラゲにはもっともっと毒がある。み〜んな毒がある。とっても毒がある」

 

「わ、分かった。気を付ける…」

 

みのりの変わったクラゲ好きに少し後ずさってしまう

 

 

 

ところ変わってジュゴンの水槽前

 

「ジュゴンはね、昔は人魚に間違われてたんだよ!」

 

「へぇ〜」

 

「な、何見てるのよ。全然似てないじゃない」

 

「ジュゴンの泳ぎ方は、ゆったりとしていてとても綺麗だから」

 

「いや、意外と似てるかも知れない」

 

ジュゴンと睨めっこするローラの表情が、正にジュゴンそっくりだった

 

「さて、観れる場所はある程度回ったし戻ってみるか?」

 

「賛成……?」

 

「どうしたのまなつ?」

 

元気良く手を挙げたまなつだったが、周りの様子を見て首を傾げた

 

「何か元気の無い人が多い様な気がして…」

 

そんな心配をしつつふれあいコーナー前まで戻ってみる

 

 

 

「只今の待ち時間は120分となっております!」

 

「しょ、しょんな〜〜!!」

 

「もう日を改めた方が良いんじゃないのか?」

 

「うぅ……ん?やっぱりおかしいよ!!」

 

ふれあいコーナーから出て来る人達の様子を見て、やはり奇妙に感じてまなつは怪しむ

 

「イルカと触れ合ったら絶対楽しくて、嬉しくて、トロピカった気持ちになるのに!」

 

まなつの言う通り、出て来る客の様子は少し疲れ気味

 

いくら人混みが多い場所で疲れると言ってもあまりにも不審が多過ぎる

 

「もしかしてこれってヤラネーダ?」

 

「待ってよ。ヤラネーダにやる気パワーを奪われたなら、こんなもんじゃ済まないわよ。そうだ、ヤラネーダが居るならアクアポットが反応して──」

 

ローラはアクアポットを出してみると、微かだが確かに反応を示していた

 

「反応してるな」

 

「そういえばあの時──」

 

まなつは水族館に入る前に、怪しい光を見たと今更言った

 

「そういう事は早く言いなさいよ!」

 

「つまり、この水族館の中にヤラネーダが隠れてるかも知れないって訳か」

 

「だがどうやって見つける?ヤラネーダが居るなら目立つ筈だが、それらしき影は見えなかった」

 

「待って、此処が水族館だって事忘れてない?木を隠すなら森の中、海のものが隠れるなら」

 

それで全員察した

 

恐らくヤラネーダは水槽の中だと推測する

 

「どうやらわたしの出番の様ね。わたしが人魚になれば、水槽の中だろうが何処に居ても簡単に探し出せるわ」

 

「待て、人が沢山居るんだぞ。人前で人魚に戻る訳にもいかないだろう」

 

あすかの言う通り、そんな事をすれば余計大騒ぎになってしまう

 

「大丈夫、アレなら行けるはず!」

 

みのりが指差す方向には、ナイトツアーのポスターが貼ってあった

 

「人数限定で少人数」

 

「決まりだな」

 

 

 

 

 

////////

 

そして夜の水族館

 

なんとかナイトツアーに参加出来た帝達は、それぞれ分かれてヤラネーダを探す事となった

 

ローラは勿論水槽の中。残りの人達で、まなつとあすか、さんごとみのり、帝の四組に分かれて昼間探せなかった場所を行ってみる事にした

 

「…よし、ここなら見つからないだろう」

 

帝は、オーシャンステッキとエモーショナルディスクを取り出した

 

『FANTOME!』

 

ステッキの力を使って透明化し、更に壁をすり抜けて一気に効率化を図ることにした

 

だがそれでもヤラネーダが見つかる事は無かった

 

 

 

 

 

結果全員が最後に行き着いた場所は、イルカのふれあいコーナーの場所だった

 

「皆んなヤラネーダは居たか?」

 

「「「うわっ!?」」」

 

「ビックリした」

 

突然目の前に帝が現れた事でまなつ達は声を上げる

 

「お前もステッキの力を人前で使うな!」

 

「痛て!?」

 

あすかに後頭部を軽く叩かれて注意されてしまった

 

「なぁ皆んな見てみろ」

 

あすかは他のお客の様子が既におかしい事に気付いた

 

そしてイルカは何故かビーチボールを怖がり、そのトレーナーまでその場に座り込んでいた

 

「これって…!」

 

「ようやく気付いた様ね」

 

天井から、ヌメリーが降りて来た

 

「もう逃げられないわよ!」

 

「お、ローラ!」

 

どうやら、ヌメリーの後を追い掛けたローラとも合流が出来た

 

「ゼッタイヤラネーダ出番よ!!」

 

水面に浮かぶビーチボールに異変が訪れる

 

みるみる内にボールは大きくなり、とうとうゼッタイヤラネーダへと姿を現した

 

「本当なら笑顔が溢れる場所なのに!そんな事させない!」

 

 

 

 

 

「「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」」

 

「「「「「レッツメイク!キャッチ!」」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

「今日も元気だ!」

 

「「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」」」」

 

 

「トロピカルスタート!」

 

『PAPAYA!』

 

 

 

「ヤラネーダ!」

 

「フッ!」

 

ヤラネーダが突進して来たが、それを容易く避ける

 

しかしこれからが帝を苦しめる事になる

 

壁にぶつかったヤラネーダは、バウンドしてそのままふれあいコーナー内を縦横無尽に飛び跳ねる

 

「速い!」

 

そのせいで、ヤラネーダの動きがドンドン速度を上げて捉えなくなってくる

 

「あ、イルカさん!!」

 

壁をバウンドしたヤラネーダの先に、イルカ達の方へ向かう

 

「うぐっ!!」

 

サマーはそれを身を挺してイルカ達を守った

 

「くっ…とにかく動きを止めないと!」

 

「サマー!」

 

 

「プリキュア !おてんとサマーストライク!」

 

「ぱんぱかパパイアショット!」

 

 

二人が放った技はなんと、ヤラネーダが持っていた輪の中へと通り抜けた

 

「輪くぐりしちゃった!?」

 

「だが動きは止まった!」

 

「「「「ハァァ!」」」」

 

止まった隙を突いてコーラル達が仕掛ける

 

「ヤラネーダ!」

 

しかし、輪の中へと吸い込まれる様にコーラル達も輪くぐりしてしまう

 

落下したコーラル達はそのまま水槽の中へと落ちて行く

 

「どうしたら…あれ?」

 

水中に居た筈のサマーの背が急に伸びた

 

それは、イルカ達が上から押し上げていた

 

「貴方達も力を貸してくれるの?それならいい手がある!帝も来て!」

 

帝達はイルカの背に乗り、水面を走り抜ける

 

「皆んなの大切な場所を取り返してみせる!」

 

イルカ達は一度水中へと姿を消した

 

そして大きく旋回し、勢いをつけてヤラネーダの近くまで高くジャンプした

 

「ヤラネーダ!」

 

勿論イルカ達もヤラネーダの輪くぐりに乗せられてしまうが、サマーの狙いはそこだった

 

「「「「「「たぁ!」」」」」」

 

直前でイルカ達から離れて、油断したところに全員同時の蹴りをお見舞いした

 

直撃したヤラネーダに穴が開き、空気が抜けてそのまま落ちて行く

 

「今だよラメール!」

 

 

「マーメイドアクアポット!サーチ!」

 

「紫!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

 

「パフュームシャイニーリング!」

 

「シャボンフォーム!」

 

「アクアチャージ!」

 

「プリキュア!オーシャンバブルシャワー!」

 

 

「ビクトリー!」

 

 

 

 

 

////////

 

「イルカさん!イルカさん!」

 

翌日、改めて水族館へ行くとイルカを含め色々と懐かれていた

 

帝、まなつ、さんご、あすかはイルカ。みのりはクラゲ。ローラはジュゴン

 

動物達もちゃんとその事を認識していたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まなつもイルカと触れ合うことが出来て満足な一日となった




悔いはない

ここまでの拝読ありがとうございました


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第55話 文化祭到来!みのりん先輩と文芸部のお話

放送したその日に書かないと平日は忙しくて書けない!だから少し遅くても頑張る

ではスタート


「それでは、文化祭でのわたし達一年五組出し物は、クレープの屋台に決定します!」

 

夏が終わり、季節は秋に変わり始めて文化祭が近付く

 

「クレープ屋か、楽しみ!」

 

「くそぉ…俺が提案した『水着メイドカフェ』が誰一人として投票してくれなかった…!」

 

「寧ろ何でそれが通ると思ったのよ…」

 

「まぁいいでしょう。部での出し物の時にでも皆んなに着てさえくれれば…!」

 

「色々合わない気がするからそれはちょっと…」

 

ローラとさんごにダメ出しを食らって一瞬でテンションが下がった

 

「コスメの歴史の研究発表とあおぞらメイク教室だからね。帝残念!」

 

 

 

 

 

「じゃあ、研究発表の方はみのりがメインに進めるって事で良いんだな?」

 

「わたしは人前に出るのが苦手。裏方は任せて」

 

部室に戻ってこれからする事、役割り分担と決めていた

 

一応その場で決まった事といえば、手作りのドレッサーを作ろうとのこと

 

「わたしは留守番しておく。皆んなで必要な材料を買って来て」

 

「そうか。分かった行ってくる」

 

「ゴーゴー!」

 

皆んなが出て行く中、ふとローラはみのりへ視線を向ける

 

「…」

 

「ローラ早く行こうぜ?」

 

「え、えぇ…」

 

 

 

 

 

日付けは巡り巡って文化祭三日前

 

準備は終盤と差し掛かっていた

 

各クラス、各部の出し物が完成しつつあった

 

「この辺かな?どうだ?」

 

「うん、バッチリだよ帝君!」

 

クラスの出し物の完成はもう間近だった

 

「うんうん!あ、ローラこっちだよ〜」

 

「はいはい……あら?」

 

ローラは隣の屋台に居た放送委員の二人、いずみとゆきえが居た

 

「何かインタビューしてるな」

 

「声掛けてみよう!」

 

「あ、まなつ!」

 

まだインタビューの途中の二人に、まなつは手を振って呼び掛けていた

 

放送委員の二人も、まなつに気付いて切り上げてからまなつ達の所へ行く

 

「風の噂で聞いたけど、放送委員って確かネット配信するって」

 

「そうなの。当日、学校内で流すの。良かったら観てね」

 

「トロピカる部のあおぞらメイク教室は、当日生放送で取材したいと思ってるのだけど?」

 

他の部では事前に取材をするに対し、トロピカる部は生放送という重要な枠を設けさせてもらっていた

 

「誰かにメイクしてバッチリ宣伝して欲しいの。どうかな?」

 

「やるやるやる〜!」

 

まなつなら当然の反応

 

「じゃあ、滝沢さんと一之瀬さんにも伝えてくれる?」

 

「OK!今から行って伝えてくるね〜!」

 

まなつはその場を帝達に任せて、猛ダッシュで行った

 

「フフ、あら?あそこって…」

 

「あそこは文芸部ですね。自分達で作った雑誌を配布する予定だそうです」

 

「文芸部…」

 

ローラは何か思い出した様に二人に話し掛ける

 

「ねぇ、いずみって去年のみのりと同じクラスだったの?」

 

「そうだけど?」

 

「じゃあ知ってる?何でみのりが文化祭辞めたか?」

 

「ローラ、あまりプライベートな話は──」

 

「人の身体を弄ぶ様な帝でも、プライベートなんて単語が存在したのね」

 

「弄ぶ…何かエロい響き!」

 

「さんご」

 

これ以上喋るとややこしくなりそうと察し、帝はさんごと共に退場して行った

 

ローラは残っていずみの話を聞いたのだが、此方が既に聞いた前情報だった為、そこまで有力な情報は手に入らなかった

 

 

 

 

 

////////

 

文化祭当日

 

様々な出し物で盛り上がる中でも、トロピカる部のあおぞらメイクは絶賛されて長い行列を作っていた

 

「結構人来てますね」

 

「うん」

 

裏方担当である帝とみのりは、表の部室前を見ながらそう呟いていた

 

「あ、みのりん先輩はしなかったんですねコスメ」

 

表で頑張るまなつ達は、全員コスメして対応してるがみのりだけはしてなかった

 

「わたしは裏方だから。帝こそしてないね。さんごなら手伝ってくれたけど」

 

「男が化粧なんてしたら化け物誕生ですよ」

 

「でも、世界には男の人でもする人は居るの」

 

「おっとその手には乗りませんよ。さんごにも同じ事言われて全力で襲われましたから」

 

そう言われればとみのりは思い出す。

今朝の準備の時、さんごは興奮しながら帝と鬼ごっこしていたのを

 

そろそろさんご一人でも対応出来なそうな時、チラシ配りをして宣伝をしていたまなつとローラが帰って来た

 

「よし、ローラ頑張ろ!」

 

「えぇ!わたしの華麗なるテクをお披露目するわよ!」

 

気合い入れる二人だったが、それに水を差す様にクラスの人が慌ててトロピカる部を訪れた

 

「どうしたの?」

 

「まなつ、ローラごめん!当番何だけど早められない?」

 

「帝なら貸してあげれるけど、わたし達も出ないと無理なの?」

 

「うん」

 

まなつは困り果ててしまう。嬉しい事にあおぞらメイク教室は絶賛するが、此方も人手が足りない。

今はさんごが中心となって回ってはいるが、それでもやっとの状態

 

「まなつ、ローラ、こっちはわたし達で何とかするから行ってこい」

 

「さんごがクラスの方に出られない分も手伝ってあげて」

 

「あすか先輩、みのりん先輩」

 

二人にそう後押しされてまなつ達は決心した

 

「分かりました、では任せますね」

 

「しょうがないわね。ほら行くわよ帝」

 

「うし」

 

 

 

 

 

////////

 

「イチゴクレープ出来上がり!」

 

「チョコバナナよ、気を付けなさい」

 

「おい見ろよ、この綺麗に焼き上げた生地!」

 

クラスの方に手伝いに行った帝達は、驚異的な早さでクレープを完成させていた

 

そんな時、校舎に設けられていた巨大なモニターから放送委員の生放送が始まった

 

 

『次にご紹介するのは、屋上であおぞらメイク教室をしているトロピカる部です』

 

 

その放送をふと観て三人は驚いた

 

「えぇ!?」

 

「あれって!」

 

「あ、みのりん先輩」

 

取材を受けていたのは、メイクをしたみのりだった

 

 

『トロピカる部二年の一之瀬みのりさんにお話を伺います』

 

 

受け答えにもバッチリ答えれていた

 

 

『あおぞらメイク教室は、第一校舎屋上で開催中です。宜しければ是非お越し下さい』

 

『ありがとうございました。トロピカる部の一之瀬さんでした』

 

 

「トロピカってたね、みのりん先輩!」

 

「そうだな」

 

その時だった

 

イカ焼きを媒体としたゼッタイヤラネーダが現れて校内で暴れ始めたのだ

 

「イカ焼きだ!」

 

「呑気な事言ってないで変身するわよ!」

 

 

 

「「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」」

 

「「「「「レッツメイク!キャッチ!」」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

「メイクは気合いだ!」

 

「「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」」」」

 

 

「ルーレットスタート!」

 

『ATTACK!』

 

 

 

「ヤラネーダ!」

 

『ぺけ!』

 

イカの腕をコーラルが防ぎ、帝達が飛び出した

 

ヤラネーダも対抗すべく腕を伸ばして反撃するも、全て受け流される

 

「そんな簡単に!」

 

「捕まってたまるか!」

 

「大人しくしろ!」

 

帝とフラミンゴの同時攻撃にヤラネーダは吹っ飛んだが、街灯に腕を絡ませては逆に勢いを付けて飛んで来た

 

「ヤラネーダ!」

 

「そんなの当たんないよ!」

 

帝達はジャンプして、パパイアは別方向へと避ける。

二手に分かれたが、狙いをつけたのは空中へ避けた帝達だった

 

「ヤラネーダ!」

 

「イカ墨!?」

 

コーラルが防御しようと構えるも間に合わず、イカ墨の目隠しを食らってしまう

 

「ヤラネーダ!」

 

そして煙上がる中へヤラネーダが入り、帝達を拘束した

 

「皆んな…ッ!!」

 

ヤラネーダが着地した場所

 

文芸部の出し物の正面だった。そして騒ぎで散乱したと思われる本が地面に落ちており、その上にヤラネーダが踏み付けていた

 

「ヤラネーダ!」

 

「ッ!」

 

パパイアは、ヤラネーダの攻撃を弾いてハートルージュロッドを構える

 

 

「ハートルージュロッド!」

 

「プリキュア !ぱんぱかパパイアショット!」

 

 

「ハァ!」

 

 

ぱんぱかパパイアショットからの追撃で、ヤラネーダを倒して帝達を解放する

 

「ラメール!」

 

「サンキュー!パパイア!」

 

 

「マーメイドアクアポット!サーチ!」

 

「オレンジ!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

 

「パフュームシャイニーリング!」

 

「シャボンフォーム!」

 

「アクアチャージ!」

 

「プリキュア!オーシャンバブルシャワー!」

 

 

「ビクトリー!」

 

 

 

 

 

 

////////

 

「ねぇみのり、何で文芸部辞めたの?」

 

少し苦い表情をしたが、すぐに話してくれた

 

中学に入ってすぐに文芸部に入部。その後は文化祭に出す小説を書く為日々書き続けた

 

そして完成した作品は、素直に「やった」「傑作」と思った。

それは他の人にも見せても同じ反応だった

 

部の先輩にも見せて、きっと良い反応が返ってくるだろうと期待はしていた

 

していたのだが

 

「『描写もありがち、キャラも物語そのものもみんな何処かで読んだ事ある様な借り物で、わたし自身が経験した事が書いてない』頭でっかちなお話だって…」

 

そう言われて改めて自分でも読み返した

 

冷静に考えればその通りだと自分自身も納得し、いつしかそれは自信を無くす事となった

 

その日を境にみのりは小説を書かなくなってしまった

 

それが文芸部との間で起きたこと

 

「本を読むのは相変わらず好きだったけど、それでも何か満たされなくてそんな毎日を送ってた。でも──」

 

みのりは皆んなに振り返り、精一杯の笑顔で言ってくれた

 

「でもね、この気持ちは皆んなに会って変わったの。プリキュア になって、トロピカる部に入って、その時大事だと思える事をどんどんやって、これまで興味が無かった事でもやってみると楽しい事が沢山あるってよく分かったの。今日のメイクもインタビューも凄い楽しかった。緊張して心臓が爆発しそうになったけど!」

 

「本当に〜?全然そんな風に見えなかったけど?」

 

「フフ、だからわたし今本当に楽しいの。皆んなのお陰────ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みのりにとってトロピカる部という存在は、みのりの世界を変えてくれた大切な存在だった




そろそろ久し振りにネタ回も書きたいなぁ〜と思ってる

ここまでの拝読ありがとうございました


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第56話 みのりがプリキュア から戻れないって!?

久し振りのネタ回です

ではスタート!


「「「「プリキュア !ミックストロピカル!」」」」

 

 

「「「「ビクトリー!」」」」

 

 

 

「ふぅ!終わった終わった!」

 

羽を伸ばして身体を楽にするサマー。学校帰りでの戦闘だったので余計疲れが出てる

 

「早く戻って帰るぞ」

 

「うん!」

 

そう言ってサマー達は変身を解いたのだが

 

「あ、あれ?」

 

一人だけ、元に戻れない人物が居た

 

「パパイアは戻らないの?」

 

「戻りたいのだけど……戻れないの」

 

「「えぇ!?」」

 

「そんな訳ないでしょう。ちょっとパクト貸してみなさい」

 

ローラは勝手にパクトを取って弄り始めた

 

「こんなのはハートクルリングを取ってしまえば済む話よ。ほら、もう元に……」

 

しかし、リングを取り外しても変身は解けなかった

 

「なんか玩具の不良品を思い出すね〜」

 

さんごの何気ない一言が、帝とまなつの茶番劇開始の合図となった

 

「ピポパポピ、プルルル!ガチャ、もしもし、先輩がお宅のトロピカルパクトで変身したのですが元に戻らないのです」

 

「それは困りました!担当の人を呼びますね〜!」

 

そう言って帝とまなつはローラへ視線を移す

 

「はい!グランオーシャンカスタマーサービスのローラ・ラメール…って何やらせるのよ!!」

 

((最初ノリノリだった癖に…))

 

というのを声に出さずに何とか飲み込んだ、さんごとあすかだった

 

「それよりもどうするか、だ。不幸中の幸い、明日は日曜だから学校は休みだ。だけどパパイアを何とかしないといけないから、明日は一度部室に集合な」

 

「「「「はい!(えぇ!)」」」」

 

「あの〜一ついいですか?」

 

「何ださんご?用事でもあったか?」

 

「そうではないですけど……プリキュア の姿で家に帰すんですか?」

 

「「「「「…あ!」」」」」

 

盲点だった

 

さんごが言わなければ誰も気付かなかった。

このままパパイアが家に帰ってしまえば、親は何て反応するか

 

娘の変化に多少動揺はするものの受け入れるか?

 

それとも──

 

「はいはい!俺の家にご招待を──」

 

「「「「「却下」」」」」

 

「理由は?」

 

「「「「「身の危険を感じる」」」」」

 

全員一致してそう言われた

 

「うわぁぁん!!皆んなのバカァァァ!!」

 

「え、あ、じゃあまた明日!待ってよ帝君!」

 

涙を流す帝をさんごは追い掛け、そのまま帰宅して行った

 

「じゃあウチに来ますか?今日はお母さん、家に居ませんので」

 

「ならお言葉に甘えるわ」

 

パパイアはニコッと笑顔でまなつに向けた

 

「うっ!」

 

しかし、いつもとは違うギャップのある姿。まなつは一瞬身構えてしまった

 

(可愛いけどやっぱり違和感が…)

 

 

 

 

 

「今日はありがとうねまなつ」

 

「いえいえ!先輩が困ってるなら助けますよ!」

 

家に上がらせて貰ったパパイア

 

まなつは早速、今日の夕飯の支度を始めようとエプロンに身に包んだ時

 

「わたしも手伝うわ」

 

「「えっ!?」」

 

「家に置かして貰ってるからお礼も兼ねて──」

 

「べべべ別に構いませんよそんなこと!!」

 

「そ、そうよ!貴女はそこに座って待ってなさい!いえ、動かないで!!」

 

「そう?」

 

トロピカる部設立して間もない頃、お弁当作りでの記憶が蘇りそれを阻止する

 

 

 

「みのりん先輩はわたしのベッド使って。わたしは床で寝るから!」

 

「明日になれば戻ってるといいわね」

 

「わたしもそう思うけど、ローラと入れ替わった時の前例があるから…」

 

三人は項垂れていた

 

「くるるん!」

 

そこへくるるんが、かいがらクッキーをパパイアにあげようとする

 

「何やってるのよくるるん。歯磨きを済ましたのだからもう食べれないわよ」

 

「くるるん…」

 

「まぁ、明日また考えればいいし!もう寝よっか!」

 

明日の朝、起きたら戻ってる事を祈るがそれも望み薄だろう

 

 

 

 

 

////////

 

「さて、みのりをどうやって戻すか案はあるか?」

 

朝一で全員集まり、部室で頭を悩ませる

 

「はい!」

 

「よし帝」

 

「今はプリキュア に変身してるからパパイア呼びですよ!」

 

「え〜、ずっとパパイア呼びはしんどいよ。いつも通りみのりん先輩でいいじゃん!」

 

「それ今言う事か!?」

 

「「大事ですよ!!」」

 

帝のパパイア呼びか、まなつのみのりん呼びで唐突な議論が始まった

 

「みのりん先輩!」

 

「パパイア!」

 

「あ〜もう二人共鬱陶しいわね。合体させましょう」

 

ローラは少し考え

 

「『パパりん』なんて……プっ」

 

「ローラちょっと話があるの」

 

「え、あ、待ちなさいよ!わたし悪くないわよ!!」

 

身の危険を感じてローラは構えるが、それをあすかが止めに入る

 

「真面目にしろ!」

 

「くるるん!」

 

「悪いくるるん、少し黙っててくれ」

 

「くるるん…」

 

全員を落ち着かせたところで、あすかは一息つく

 

「おふざけは無しだ!いいか?」

 

「「「「ラジャー!」」」」

 

「そんな訳でトップバッターは俺!」

 

全員、特にパパイアがよく見える位置に皆んなの前に立つ

 

「しゃっくりのやり方で治す。即ちビックリさせる」

 

「いや、それ先に言ったら意味無いだろ」

 

「見せてやる!これが俺のビックリだ!!」

 

帝はズボンに手を掛けると、下着ごと下へと下ろして下半身を露わにした

 

「ソーセーーーーージ!!!」

 

その場でぴょこぴょこと小刻みにジャンプしながら回転する

 

「どうだ?ビックリした──」

 

その時、今まで味わったことのない平手打ちを食らい、部室の扉ををぶち破って外へと弾き出された

 

やったのはあすか

 

あすかはすかさず倒れ込む帝を、滑り込みで馬乗りになり逃げられない様に首元を掴む

 

「ブッ、ぼ、べ!」

 

そして容赦無いビンタが両頬を帝を襲う

 

「ま、待っで!ちょ──」

 

 

 

 

 

暫くして、あすかだけが戻って来た

 

「次」

 

「あの〜帝君は──」

 

「次!!」

 

あすかは、八つ当たりに近い口調で次の人へ促す

 

「わたしが行くわ!ハートクルリング取れば──」

 

「昨日試した事をするな!次!」

 

「えぇ!?横暴過ぎるわよ!!」

 

「次はわたしが!!」

 

手を挙げたのはまなつだった

 

「はいはい!トロピカルメロンパンを食べれば──」

 

「物食べて治るんなら、昨日の時点で戻ってるわ!」

 

「えぇ!?」

 

「次はさん…ちょっと待て、さんごお前分かってるよな?」

 

「分かってます!みのりん先輩を戻す案は10個程考えて来ました!」

 

「ボケろよ!そこはボケてわたしを困らせろよ!ボケて、ボケて、ボケて、真面目。三回もボケたんだからそこは最後までノれよ!さんごもダメだ!!」

 

「何かちょっと理不尽…」

 

真面目に案を考えたさんごは何故か怒られた

 

もうこれにはローラはカンカンだった

 

「さんごは真面目にしてたでしょう!?」

 

「帝のせいで頭がおかしくなった?」

 

「えぇ〜!?それは嫌ですよ〜!」

 

色々と凄い状況になってきたところで、パパイアの所へくるるんが寄って来た

 

「くるるん!」

 

「それはかいがらクッキー?」

 

「くるるん!」

 

かいがらクッキーを食べさそうと差し出したのだ

 

「ちょっとお腹空いたから食べようかしら。ありがとうね……ん、美味しい」

 

パパイアが一口齧ると急に体が光りだした

 

「え──」

 

光りが収まると元の姿に戻っていた

 

「戻った?」

 

「「「「「えぇぇぇぇ!?」」」」」

 

「く〜るるん〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故、かいがらクッキーで元に戻れたのかは一生の謎となってしまった




あすか先輩までキャラ崩壊がヤバみになりました

ここまでの拝読ありがとうございました!


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第57話 伝説現る!わたし達のトロピカルパワー!

原作、オリジナル半々と言った内容となっております

ではスタート


「先日の文化祭のアンケートですが、トロピカる部がなんと二位でした!」

 

その事もあり、学校新聞の取材が来ていて今はその取材を受けていた

 

「すっごくトロピカったもんね!」

 

「くるるん!」

 

「くるるん?今、そこのぬいぐるみ喋りませんでした?」

 

つい喋ってしまったくるるん。それを聴いていた新聞部二人が怪しんでいた

 

「これは…」

 

「喋るぬいぐるみなんだ!」

 

「そうそう!お腹を押したら声が鳴るんですよ!」

 

まなつがお腹のボタンを押す素振りを見せると同時に、くるるんに近付いて一言声を掛ける

 

「絶対動いちゃダメだよ」

 

しかしそれが、後に悲惨な出来事になるとはまだ知らない

 

「そんな事よりコレ見て!」

 

「皆んなで作ったドレッサーだよ!」

 

こうして新聞部との取材は、何とかくるるんを誤魔化しつつ終わった

 

 

 

 

 

////////

 

「帝君、おはよう!」

 

「うん、おはよう」

 

次の日の朝

 

いつも通り、さんごが皇家へお邪魔して帝を迎えに来ていた

 

「学校行くよ」

 

「あ〜…待って弁当忘れた」

 

「じゃあ外で待ってるから」

 

さんごは、玄関から出て外で帝の事をのんびりと待ってると近くで何か騒ぎを聞き付けた

 

「何だろう?」

 

さんごが様子を見るからに、水やりしてる人の手に持つホースからヤラネーダが現れたのだ

 

「……えっ?」

 

幻覚かと思い目を擦って確かめるも、目の前で水のヤラネーダが街の人々のやる気パワーを奪っていた

 

「やっぱり本物だ!?」

 

「何が本物…って!?」

 

帝も学校へ行こうと外へ出たら、ヤラネーダの存在に気付いた

 

「キモっ!?」

 

「わたしは可愛いと思うけど?」

 

「…一匹連れて帰る?」

 

「え、いいの!?」

 

「「よし、捕まえよう!」」

 

だが、目の前の惨劇を見て二人は一旦深呼吸する

 

「…こんな感じ?」

 

「悪いな茶番に付き合わせて」

 

「ううん。他の皆んなの事も心配だし早く変身しよう!」

 

「そうだな」

 

帝とさんごの場所以外でも各地でヤラネーダが暴れてる

 

急いで対処するべくプリキュア に変身するのであった

 

 

 

「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」

 

「レッツメイク!キャッチ!」

 

「リップ!」

 

「アイズ!」

 

「ヘアー!」

 

「チーク!」

 

「ドレス!」

 

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

 

「ルーレットスタート!」

 

『PERFECT!』

 

 

 

「一体だけならローラが来るまで足止めするぞ!」

 

「うん!」

 

帝とコーラルは同時に飛び出して攻撃した

 

殴った攻撃はヤラネーダの体を貫通した

 

「よし」

 

「やった!」

 

少し違ったが倒したと思い振り返ると

 

「ヤラネーダ!」

 

「「えっ?」」

 

「ヤラネーダ!」

 

『ぺけ!』

 

殆ど無傷で反撃して来た

 

「助かったコーラル」

 

「これくらい…!うんしょっ!」

 

シールドで持ち上げて弾き返す

 

帝を追い掛ける為高くジャンプする

 

「これは…!?」

 

ジャンプした事であおぞら市全体が見えた。しかしそれは地獄絵図となっていた

 

街全体にヤラネーダが暴れてはやる気パワーを奪っていた

 

「コーラル!街全体でヤラネーダが暴れてる!」

 

「街全体で!?」

 

帝はヤラネーダを適当に投げ飛ばして着地する

 

「どうすれば良い帝君?」

 

「とにかく一体ずつ倒すしかない」

 

帝は分身を三体出して散開させる

 

「分身が皆んなを見つけて合流させる様に誘導させる。俺達は俺達でやるしか……っコーラル!!」

 

油断してるコーラルにヤラネーダが襲い掛かった

 

コーラルを抱き寄せて庇った

 

しかし建物の中へ一緒に吹き飛ばされた

 

「大丈夫帝君!?」

 

「大丈夫大丈夫!」

 

攻撃を受ける直前に、盾を出現させて何とか凌いだのだ

 

「やっぱり数が多過ぎるな。出来るだけ固まって……コーラル聞いてる?」

 

「あ、うん!聞いてるよ!」

 

抱きしめられてる胸の中から、帝の表情を下から見上げて少しぼーっとしていた

 

少しコーラルの顔が赤かった

 

「顔も赤い。俺変な所触ってる?」

 

「ううん!やっぱり帝君はカッコいいなって」

 

「それは嬉しいけど、全部終わってから言ってほしいな。ほら来た!」

 

ヤラネーダの追撃を、コーラルを抱っこしたまま帝は避ける

 

盾を出してはそれを足場にして巧みに避けるも、次々と何処からともなく現れるヤラネーダに苦戦を強いられる

 

(早く分身に皆んなを見つけてもらわないと!)

 

 

 

 

 

『居たフラミンゴ!』

 

分身が先ず見つけたのはフラミンゴだった

 

『フラミンゴ!』

 

「帝!」

 

『不味い事になってる。街中ヤラネーダでいっぱいだ』

 

「何!?」

 

『俺が案内する。ついて来て!』

 

しかしそんな二人にヤラネーダが取り囲む

 

「囲まれたか。どうする?」

 

『フラミンゴ、一応俺は分身の一体だ。そして近くにパパイアが居る事は把握してる。道を開くから突っ込んで行って』

 

「え、お前それ分身だったのか!?」

 

『とにかく頼むよ。他の分身はパパイアとラメールの元へ向かってる。コーラルは元の俺が居るからいいが、サマーだけがまだなんだ。フラミンゴを逃した後サマーを探すから何とか合流してくれよ』

 

「オーライ」

 

フラミンゴは了解したのを確認すると、帝はとある方向のヤラネーダの集団へと突っ込んだ

 

『だりゃ!』

 

「道が開いた!」

 

フラミンゴが飛び出したが、他のヤラネーダはそれを追い掛ける

 

『やらすか!』

 

だが帝はフラミンゴへ向かうヤラネーダを捕まえて、投げ飛ばしては他のヤラネーダも含めて纏めて倒す

 

「すまない!」

 

『こっちは任せろ!』

 

一気に取り囲み、ヤラネーダは一斉に帝へと襲い掛かった

 

『うわ、マズい!!』

 

 

 

 

 

二人目の分身はパパイアを見つけては混戦状態となっていた

 

「帝離れないで!カバーし切れない!」

 

『クッ…もう一人人手が欲しい!』

 

「でも、フラミンゴがこっちに向かってるんでしょう?」

 

『ああ、さっきに他の分身から連絡が来た。数分もすれば来る筈だ。それまで耐えるしかない!』

 

避けては受け流し、カウンターでヤラネーダ達を相手をしてるが数で圧倒されてる

 

「きゃあ!」

 

『パパイア──』

 

遂に均衡が崩れて、倒れるパパイアを助けようとした帝だったがそれが仇となってしまった

 

背後から来るヤラネーダに潰されて、分身の帝は消えてしまった

 

「帝!」

 

続々と現れるヤラネーダの大群にパパイアは後退り、いつの間にか壁を背にしていた

 

それを見たヤラネーダは一気に襲い掛かった

 

「ッ!」

 

絶対絶命のピンチの時、一つの影がヤラネーダを吹っ飛ばした

 

「パパイア無事か?」

 

「フラミンゴ!」

 

ギリギリで間に合ったフラミンゴがパパイアを助けた

 

「帝の分身は?」

 

「さっきやられちゃった」

 

「マジか…どうやって皆んなと合流するんだ。頼りは帝だったんだけどな」

 

「それよりも今は目の前の事を何とかしないと」

 

パパイアとフラミンゴは向き直る

 

目の前に広がるヤラネーダの大群を、たった二人で相手にしなければならない

 

「気合い入れるぞ」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

「しつこいわね!サマーは大丈夫かしら?」

 

ヤラネーダの相手をしながらも、少し前まで一緒だったサマーの心配をし続けるラメール

 

「ハッ、ほっ!」

 

湧いて出てくるヤラネーダの攻撃を身軽に避けては、サマーの事も探し続ける

 

しかしそんなやり方がいつまでも続く筈もない

 

「あ!」

 

回避した先に、先回りしていたヤラネーダが待ち構えていた

 

「ヤラネー──」

 

『はいご苦労様です!!』

 

ヤラネーダの頭に分身の帝が着地して倒した

 

『危機一髪だったな』

 

「助かったわ。他の皆んなは?」

 

『その事で問題だ。パパイアとフラミンゴが危ない。俺と一緒に来てくれ!』

 

「サマーは?」

 

『今向かってる。悪いけど長話してる時間は無いんだ。急いで行くぞ』

 

分身の帝の案内の元で、ラメールはパパイア達と合流する事にした

 

 

 

 

 

フラミンゴを逃す事に成功した分身の帝は、あおぞら中学校へ向かっていた

 

『確かヤラネーダに引っ付いたサマーが学校に──』

 

何処に居るかと探してると、トロピカる部の方から大きな音がした

 

部室の中から、サマーとくるるんが大きく飛ばされてるのを目視した

 

『サマー!!』

 

急いで駆け寄るも、ヤラネーダは変身解除されたまなつのやる気パワーを奪いつつ、ヤラネーダ自身がまなつを囲む檻となった

 

『まなつ!』

 

「あ、帝…」

 

『待ってろすぐに出してやるからな』

 

ステッキを振り下ろして、まなつを捕らえるヤラネーダを倒そうとするが

 

「帝、うし、ろ…」

 

振り返ると三体のヤラネーダが襲う

 

『あと少しなのに!』

 

あと一歩の所で邪魔が入って助けられなかった

 

それどころか、校内に居るヤラネーダが集まり始めて分身の帝へ狙いを付ける

 

『これじゃあ助けられない!』

 

帝はもう一度考える。

まなつを助けたいがヤラネーダの相手で手一杯

 

『だったら先に数を減らす!』

 

逃げる体勢から攻撃への体勢へと変えて、ヤラネーダに立ち向かう

 

帝の動きが瞬時に切り替わり、群がるヤラネーダを蹴散らす

 

『この調子なら……むぐッ!?』

 

目の前のヤラネーダを倒したと思ったら、そのすぐ後ろにヤラネーダが構えていて帝を取り込んでしまう

 

ヤラネーダの体内は水。

オーシャンステッキのお陰で息は出来るものの動きは著しく鈍くなる

 

(早く出ないと)

 

脱出を試みる時、ヤラネーダの体内にある水が変化し始める。

ブクブクと泡と立たせ槍状へと変えた

 

(来た!)

 

水中で乱射される槍を踏ん張って避けようとするが、次の光景でそれは意味をなさなくなる

 

「ヤラネーダ!」

 

ヤラネーダの体内が殆ど槍へと変えて、四方八方から打ち出した

 

当然、それを避けるなんて不可能。分身の帝は呆気なく串刺しとなり消えてしまう

 

これで完全にまなつは孤立してしまった

 

 

 

 

 

「コーラル!急いで学校の方へ行くよ!」

 

「急にどうしたの?」

 

「話は走りながらで!」

 

「え、帝君!?」

 

手を引いて連れてくコーラルは、訳も分からず足を動かす

 

 

 

 

 

////////

 

走ること少しして、分身の帝が帰って来てラメール達と合流した

 

『連れて来た!』

 

「助かった!」

 

分身と一言会話をしてすぐに引っ込めた

 

「帝!分身の方から聞いたけど、まなつがピンチってどう言う事よ!?」

 

帝は分身を介して、まなつの身に何が起きたか全部話した

 

「分身でもそれなりに強いはずよ!手を抜いてたの!?」

 

「状況考えたら分かるだろ!数が多過ぎるんだ!」

 

「それでも助けるくらいは──」

 

「ラメール一旦落ち着け!」

 

まなつの危機に焦りを隠せないラメール。不安となりラメールをイラつかせる

 

「ヤラネーダ!!」

 

後ろからヤラネーダが迫って来た。恐らく数から察するに、街中のヤラネーダが追い掛けてるのだろう

 

「俺が食い止めるから皆んな──」

 

「待って帝!このまま学校へ連れて行く。そうすれば本体が見つかるかも知れない」

 

未だに本体が見つからない為この状況となっている。

一ヶ所に集めるのは少々不安だが、これ以上の案は思い付かない

 

丁度その時だった

 

ラメールが持つオーシャンプリズムミラーが光り、その鏡からはまなつの姿が映し出されていた

 

「まなつ!?」

 

『え、皆んな…?』

 

「まなつ!」

 

『大丈夫、だよ…わたしの、やる気は!』

 

意地でやる気を上げようとするが、ヤラネーダが阻止すべく余計やる気パワーを奪う

 

「これ以上はまなつは保たないぞ!」

 

「皆んな前!」

 

まなつのピンチだが、帝達もピンチに陥る

 

目の前には巨大なヤラネーダが立ちはだかった

 

「このまま行こう!学校はあの奥だよ!だから最後の望みに賭ける。帝君!」

 

 

『フェスティバルディスク!』

 

『キングハンド』

 

「フェスティバルスタート!」

 

『COPY!』

 

『SPACE-TIME!』

 

 

「最短距離で行くぞ!」

 

帝が前に手を翳すと空間に穴が開く

 

全員飛び込み、抜けた先には学校上空だった

 

「待ってて!」

 

「今行く!」

 

「負けるな!」

 

「踏ん張れ!」

 

「────まなつ!!!」

 

皆んながまなつを想う気持ちがやる気パワーを生み出し、そのパワーはオーシャンプリズムミラーの中へと入って行く

 

「何?」

 

そのやる気パワーは、オーシャンプリズムミラーを介してまなつへと送り届き注がれる

 

「ッ!」

 

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

 

 

皆んなのやる気パワーのお陰で、プリキュア に変身する事が出来て、閉じ込めていたヤラネーダを倒す事も出来て脱出出来た

 

「復活〜!」

 

「サマー!もう、本当心配したんだから!!」

 

「ごめんごめん。皆んなのやる気パワーで助かったよ!ありがとね皆んな!ラメールも」

 

「もう!!」

 

サマーが本調子に戻り改めて周りを見る

 

街に現れたヤラネーダは学校に集中し、帝達を取り囲んでいた。

普通なら絶対的絶望なのだが、何故か皆笑っていた

 

「さて、もうひと仕事だ!」

 

「いっぱい集まったね」

 

「ラメールは本体を探して」

 

「帝カバー頼んだ」

 

「やった!ラメールに頼られた!」

 

「よ〜し、それじゃあ!──」

 

「「「「「「GO!」」」」」」

 

全員の合図で一斉に散らばり飛び出した

 

「「ハァァァ!!」」

 

サマーとフラミンゴが敵の多く集中する場所に飛び込み、衝撃波だけで辺り一面のヤラネーダを全て倒した

 

「本体は何処?」

 

「ラメール伏せろ!」

 

ラメールはヤラネーダを踏み台にして、大きくジャンプし空中で本体を効率良く探そうとする。

帝もラメールの側から離れず、背後から来たヤラネーダを時間を止めては蹴り付けて援護していた

 

「やぁ!」

 

パパイアは踵落としで一体倒すが更にその上からヤラネーダが来る

 

「危ない!」

 

『ぺけ!』

 

それをコーラルが防御する。

ヤラネーダも負けじと数で押し潰そうとするも

 

 

「プリキュア !ぱんぱかパパイアショット!」

 

 

パパイアの技で一網打尽にした

 

パパイアが倒したヤラネーダで殆どいなくなった。

残るは空中に佇んでいたヤラネーダのみ

 

そしてそれが

 

「見つけた本体!」

 

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

これでようやく、街中の人々のやる気パワーを奪い返せた

 

後は浄化して倒すのみだが簡単にはいかない

 

「ヤラネーダ!!」

 

「あれってさっきのデカイ奴!」

 

此処に来る途中に阻んでいた超巨大なヤラネーダが現れて、そのの中へと避難して隠れた

 

更には形まで変えて、完全に戦闘体勢へとなった

 

「ヤラネーダ!!」

 

頭上のホースから大量の水を吐き出して波を作り上げた

 

普通なら避けようとするが、いち早く浄化しないと考えた為帝は自ら前に出た

 

オーシャンステッキを両手に持ち直して、薙ぎ払う様にして大きくステッキを振る

 

「ハァッ!」

 

SPACE-TIMEの力で、波ごと空間を削り取って消滅させた

 

「反撃開始だ」

 

指を鳴らすと、いつの間にかサマー達は空中に居るヤラネーダを取り囲む様にして突然現れた

 

これもステッキの力にによる空間移動

 

「ハァァァ!」

 

「ゼァ!」

 

サマー、フラミンゴと続いて攻撃し怯ませる

 

「やぁ……ってうわっ!?」

 

「ラメール!」

 

間髪入れず怯んだヤラネーダに追撃しようとするもラメールに、先程大量の水を出したホースが向けられる

 

けれどそれを、コーラルが下からシールドを作って足場にして避けさせる

 

「フッ!」

 

パパイアはビームを出して視覚を奪う

 

「「ハァァァ!」」

 

視覚を奪われ、サマーとフラミンゴから上から攻撃を仕掛けて二撃食らわす

 

これで完全にヤラネーダの動きが封じられた

 

そしてヤラネーダの目の前。帝とラメールが背中合わせで、プリキュア の王杖とマーメイドアクアパクトを構えていた

 

「行くわよ帝!」

 

 

『トロピカルディスク!』

 

『キングハンド』

 

『CORAL!』

 

『EMPEROR!』

 

 

「──これで終わらせる」

 

 

 

「プリキュア!オーシャンバブルシャワー!」

 

「もこもこコーラルディフュージョン!」

 

 

「ビクトリー!」

 

 

 

「やった!」

 

「いやまだだ」

 

帝とラメールが浄化したのは、本体を取り込んだ外側のヤラネーダ。

本体は未だに健全としていた

 

「そんな!」

 

「諦めないよ。絶対皆んなのやる気を取り戻すんだから!!」

 

その時だった

 

周りの時間が一瞬で止まったのだ

 

「何だ?」

 

「帝君?」

 

「いや違う」

 

この現象に驚いてると校舎の上、そこで一人の少女が立っていた

 

「あれって、夢で見た伝説の──プリキュア !」

 

伝説のプリキュア が和かに笑うと、サマーの手に新しいハートクルリングが出てきた

 

 

『この世界を救って。そして、あとまわしの魔女になってしまった魔女を…』

 

 

そして、皆んなで手作りしたドレッサーが目の前に現れて姿を変える

 

「わたし達のドレッサーが!」

 

そのドレッサーを「トロピカルハートドレッサー」。

新しいハートクルリングは「ランドハートクルリング」

 

「行くよ!」

 

 

 

「ランドハートクルリング!」

 

「「「「「おめかしアップ!」」」」」

 

「「「「「エクセレン・トロピカルスタイル!」」」」」

 

「「「「「5つの力!大地を照らせ!」」」」」

 

「「「「「プリキュア!ランドビート・ダイナミック!」」」」」

 

 

「「「「「ビクトリー!」」」」」

 

 

 

 

 

////////

 

「何とか守り切れたな」

 

「でも、ヤラネーダはどんどんパワーアップしてきてる」

 

「あとまわしの魔女の目的って何なんだろう?やる気パワーを集めて何をしようとしてるのかな?」

 

「分からない。帝は一時期あとまわしの魔女の所に居たのよね?何か知ってる?」

 

「いや。他に知ってるとすれば、魔女の前で『プリキュア 』って単語を話したら駄目とか言ってた」

 

あおぞら市を守れたはいいが、敵はどんどん強くなって来ている。

未だにあとまわしの魔女の目的も分からないまま

 

これからどうすべきか考えてると

 

「でも!わたし達にはトロピカったドレッサーと、伝説のプリキュア がくれたリングがある!絶対に負けない!!」

 

まなつがそう元気付けてくれた

 

「そうね、皆んなで力を合わせればきっと大丈夫よ」

 

「これからも、トロピカっていくぞ〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プリキュア 達も新しい力を手に入れた

 

しかしそれに比例して敵も強くなって、謎が増えていく

 

この先、どうなっていくのか誰も分からない




次回はネタ回を挟もうかと予定しております

ここまでの拝読ありがとうございました!


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第58話 科学の発明品?みんな幼女にな〜れ!

ネタ回なのに5000文字も書いてしまった!

ではスタート!


「帝殿、例の試作品が完成致しましたぞ。デュフフ!」

 

「試作品とはいえ遂に完成しましたか博士」

 

とある教室。カーテンも閉められて真っ暗な空間の中、二人の影が不適に笑っていた

 

一人は帝。そしてもう一人は二年生の先輩だ

 

「我が科学部の最高傑作…まだ試作品だけど、遂に完成した!この『幼児にな〜るくん』を!」

 

「博士!俺は貴方に一生ついて行きます!!」

 

「ではどうぞ」

 

博士と呼ばれる先輩から帝はソレを受け取る

 

小瓶の中にカラフルなキャンディーが入ってる。ソレが幼児にな〜るくんだ

 

「コレを皆んなに食べさせれば──」

 

「興味深い」

 

「あ、みのりん先輩………え、みのりん先輩!?」

 

いつの間かすぐ隣に居たみのりに驚いて距離を置く

 

「一之瀬じゃないか」

 

「みのりん先輩どうして?」

 

「教室に入って行くのを見たから気になって」

 

みのりはその幼児にな〜るくんをマジマジと見る

 

「ソレ、わたし達に食べさせるつもりだったの?」

 

「でも興味ありますよね?ね?」

 

少し怪しむも、確かに効果は見てみたいという好奇心が勝ってしまった

 

「それじゃあ決まりですね!」

 

「あ、効き目は二時間程だからね。では!」

 

「博士もありがとうございます!」

 

「こちらこそ感謝致す!」

 

 

 

 

 

二人は部室に来ていた

 

「さて、どうやって食べさせるか…」

 

「普通にキャンディーと偽って食べさせたら?」

 

「それならみのりん先輩がお願いします。俺だと絶対怪しむ」

 

「分かった」

 

みのりは完全に帝側へとついてしまった

 

二人が企んでると、ローラと桜川が部室に入って来た

 

「あ、丁度良いところに!二人共、桜川先生の事手伝って欲しいの」

 

「お願い出来るかしら?」

 

「良いですよ〜」

 

「任せて」

 

帝は小瓶を机の上に置いて、お手伝いする為に部室を一旦後にした

 

 

 

帝達が部室を去った後、入れ違いでまなつ達が入って来た

 

「あれ?帝君とローラは?」

 

「気長に待つか」

 

「待ってる間に今日の部活決めますか!」

 

三人が椅子に腰を下ろして待つのだが、机の上に置いてある小瓶に目が移る

 

「キャンディーだ!」

 

「キャンディーだな」

 

「キャンディー?」

 

三人は顔を見合わせた後、そろりと小瓶に手を入れる

 

「キャンディーがあるなんて誰のだろう?」

 

「まぁいいじゃないか?置いてあるのだから、きっと誰でも食べていいと思う」

 

「わたしは紫の!ぶどう味かな?」

 

まなつは白、さんごは紫、あすかは赤のキャンディーを口に入れた

 

「ん、イチゴか。美味しいな」

 

「わたしはヨーグルト味?」

 

「あ、やっぱりぶどうだった!」

 

美味しそうに口の中で転がす三人だった

 

 

 

 

 

////////

 

「ありがとうね二人共!」

 

「大丈夫」

 

「さて、さんご達はもう来てるかな?」

 

用事を済ませた後、三人は部室の中へと足を踏み入れると

 

「「「……」」」

 

「「「?」」」

 

幼稚園児くらいの大きさの子供が居た

 

「え、何この子達?」

 

ローラがドン引きする中、帝とみのりはヒソヒソ話してた

 

「みのりん先輩見て下さい机の上」

 

「食べたね。実験は成功ってところかしら?」

 

二人がガッツポーズを取ってると、ローラがそれをこっそり盗み聞きしていた

 

「貴方達、何か知ってるのかしら〜?」

 

「科学部で発明した、食べると幼児化する幼児にな〜るくんです!」

 

「イエイ」

 

「あ、貴方達────バッカじゃないのォォォ!!」

 

 

 

ローラに全ての事を話した

 

「一体何を考えてるの!全く…」

 

「多分この子達まなつ達だと思う」

 

「そんな事見れば分かるわよ!!」

 

色々と説明を聞いて疲れ果てたローラは椅子にもたれ掛かる

 

そんなローラに小さくなったまなつがローラの元へ

 

「ごめんねまなつ。もう少しだけ我慢してね」

 

まなつは小さな手でローラに伸ばす

 

「励ましてくれるのね。ありが──」

 

しかしまなつは、ローラの鼻を摘んで引き千切ろうとしていた

 

「いたたたた!!!?」

 

「あはは〜おもしろい〜!」

 

「何するのよ!待ちなさい!!」

 

逃げ回るまなつを追い掛けるローラ

 

帝とみのりはやれやれと横目で見ていた。

そんな二人にも、それぞれ小さくなったさんご達は寄ってくる

 

「みかどくん、だっこ〜!」

 

「え、今?」

 

「だっこ〜!だっこぉ〜!」

 

涙目になりながらさんごは抱っこをせがむ。

抱っこされたさんごは、帝の体に張り付いてしまう

 

「…」

 

あすかはというと、みのりのスカートを引っ張って呼んでいた

 

「どうしたの?」

 

「ふふ!」

 

和かに笑うあすかにみのりは一瞬固まる

 

「いい子ね」

 

みのりが頭を撫でると、更にあすかは笑顔になっていく

 

そんなこんなで、それぞれ面倒を見る子達が決まったので奮闘する事になった

 

 

「ろ〜らおそい!もっとはやくはしって!」

 

「む、無茶言わないでよ!」

 

ローラは、まなつをおんぶしながら全力で屋上を走り回っていた

 

小さくなった子の中で、まなつが一番やんちゃだったのだ

 

「はいよ〜しるば〜!」

 

「痛い痛い!髪引っ張らないでお願いだから!」

 

「あ」

 

「な、何?今度は何よ?」

 

「おしっこ」

 

「なっ!?」

 

突然そう言われてローラは慌ただしくなる

 

「トイレ…でも人に見られる訳には…」

 

「おしっこ!おしっこ!」

 

「我慢して!」

 

「うぅ〜……あはぁ〜」

 

「背中が温かい……まさか、そんなぁ〜!!」

 

ローラはまなつを降ろして、がっくりと膝を突いて凹んでいた

 

「うきゃきゃきゃ!」

 

 

「さんご、まなつ達と遊ばないの?」

 

「あそばない。みかどくんがいい」

 

さんごはさんごで、大人しくはしてるものの恥ずかしがって帝以外の人と交流したくないと言う

 

「あっちいこぉ!ねぇねぇ!」

 

「分かった分かった!小さい頃のさんごはパワフルだな」

 

 

「──なりました。めでたしめでたし」

 

「コレよんで」

 

みのりはあすかに絵本を読ませていた。あすかは絵本というより、みのりが読んでくれる事に嬉しく思いずっとこの状態なのだ

 

「桃太郎ね。むか〜しむかしあるところに、お爺さんとお婆さんがいました」

 

 

 

 

 

幼児にな〜るくんを食べて一時間が経過した

 

まなつ達は、未だに元気いっぱいで遊んで貰っていた

 

「ローラ着替えたんだ」

 

「ええそうよ!貴方達はいいわよね!」

 

ローラの足元。まなつはげしげしと現在進行形で蹴られていた

 

「あすか先輩大人しい」

 

「さんごは恥ずかしがり屋だけだからな」

 

「ズルいわよ…」

 

「気にすんなよ。俺とローラは将来結婚するんだから、それの予行練習と思えば?」

 

「え!?みかどくんけっこんしちゃうの!?」

 

ローラよりいち早く反応したのはさんごだった

 

さんごはゆっくりとローラへ寄って

 

「やっ!」

 

「あ痛!?」

 

まなつだけではなく、さんごまで加わりローラの足を蹴り始めた

 

「みかどくんは、わたしとけっこんするの!とらないでぇ〜!」

 

泣きながらローラを攻撃して余計困らせる

 

そこへあすかも参戦して、ローラに指を指してこう言った

 

「おとなげない。このどろぼうねこ!」

 

「誰がどろぼう猫よ!!シャー!!」

 

帝とみのりはふと時計に目を移す。

効果が切れるまで残り30分

 

「この調子なら」

 

「そうね。後はローラがどれだけ耐えれるか──」

 

その時、みのりの声を遮って大きな音が外から聞こえた

 

「「ヤラネーダ!」」

 

「こんな時に!?」

 

三人が部室から出ようとする時、まなつ達が引き止める

 

「ろ〜ら〜、もっとあそぼ〜!」

 

「みかどくんいかないで…さびしいよぉ〜…ひっく…」

 

「かいぶつたいじならまかせろ!」

 

「「「……」」」

 

 

 

 

 

////////

 

「余り物のゼッタイヤラネーダの素でやりくりしてる私って偉い!!」

 

一人寂しくやる気パワーを奪うアリス

 

その彼女の前に帝達が現れる

 

「ちょっと待ちなさい!」

 

「あらローラ様……その子は?」

 

アリスも変わり果てたまなつ達に首を傾げる

 

「あ〜!帝様と初夜して子供を産んだのですね!次は手土産持って来ますね!」

 

「違うわ!!」

 

「まぁ、茶番はそこまで。まなつ様達ですね」

 

ローラは隣で手を繋ぐまなつに視線を移す

 

「取り敢えず変身してくれますか?」

 

いつまで経っても変身しないローラ達に、わざわざアリスから促してくれた

 

「それ本気で言ってるの?」

 

ローラは隣を指さす

 

ローラの隣で手を繋ぐまなつは、ローラと遊びたくて喚き叫んでいた

 

「ろ〜ら〜ろ〜ら!あそんで!あんなひとほっておいてこうえん!!こうえんであそびたいぃ〜!!」

 

さんごはコアラの様に帝の脚にしがみ付いていた

 

「さんご、さんご!お願いだから離れて?」

 

「いかないであぶないよ〜!うわぁぁん!!」

 

挙げ句の果てには泣いてしまう始末

 

「うぉぉぉ!!」

 

「あすか先輩危ない」

 

あすかはあすかで、ヤラネーダに単身突撃しようとしていた

 

「大変ですね。少し待ちましょうか?」

 

「助かるわ」

 

「ちょっとだけ待ってなさい!」

 

気を利かせたアリスに、帝達はまなつ達を宥め始める

 

 

「まなつまなつ遊ぶのは後。良いわね?」

 

「い゛〜や゛〜た゛〜!」

 

 

「みかどくんこっち〜!!」

 

「さんごさんご!?服引っ張らないで!」

 

 

「なんでだめなんだ?」

 

「え、何でって言われても…」

 

 

それから数分してようやく離れてくれた

 

「気を取り直して行くわよ!」

 

 

 

「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」

 

「「レッツメイク!キャッチ!」」

 

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

「エモーショナルスタート!」

 

『FANTOME!』

 

 

 

「やっとですね!ヤラネーダ!」

 

「ヤラネーダ!」

 

「カバーは任せろ!」

 

帝達がヤラネーダと激突する中、離れた場所でまなつ達は何やら話し合っていた

 

 

 

「あのかいぶつたおしたら、はやくあそべるかな?」

 

「でもあぶないよ…」

 

「だからだ!」

 

まなつとあすかはやる気満々だが、さんごだけは乗り気ではなかった

 

「こわいよぉ〜…」

 

「なくな!」

 

「わたしたちもがんばるから!」

 

「う、うん…!」

 

まなつに励まして貰ってさんごも覚悟を決めた

 

幼児となってしまっているが、それぞれが持つやる気パワーはいつも通り

 

まなつ達は両手でパクトを持って変身した

 

 

 

「「「ぷりきゅあ!とろぴかるちぇんじ!」」」

 

「「「れっつめいく!きゃっち!」」」

 

 

「ときめくとこなつ!きゅあさま〜!」

 

「きらめくほうせき!きゅあこ〜らる!」

 

「はためくつばさ!きゅあふらみんご!」

 

 

 

「「やあぁぁ!」」

 

変身して早々にパパイアとラメールの間を通り抜けて、サマーとフラミンゴはヤラネーダへ立ち向かって行く

 

「え!?」

 

「二人共待って!」

 

ポカポカと可愛い手でヤラネーダを叩くも、やはり力が全然無い為全く効いてない

 

「ヤラネーダ?」

 

ヤラネーダが息を吹き掛けると、コロコロと転がっていった

 

「ちょっと大丈夫なの!?」

 

「まだまだぁ〜!」

 

「だから待ちなさいよ!」

 

ラメールはサマーを抱いて捕まえた

 

「大人しくしてなさいよ…ってコラ!何処に登ってるのよ!」

 

サマーはラメールの手をスルリと抜けて、頭の上に乗っかった

 

「いけ〜らめ〜る!」

 

「降りなさいっての!!」

 

フラミンゴの方は、パパイアに膝枕をされていた

 

「何処も痛くない?」

 

「う、うん…」

 

「それなら良かった。ここはわたし達に任せて欲しいの」

 

一方でコーラルは

 

「うぅ…」

 

怖がって蹲っていた

 

ヤラネーダが歩いて来てるが気付いてない

 

「コーラル!」

 

帝はコーラルを抱き、分身した三人の帝でヤラネーダを後退させる

 

「コーラル大丈夫!?」

 

「ん〜!ん〜!」

 

「あ、おい!」

 

コーラルは帝の顔に抱きついて半泣き状態だ。

プリキュア に変身しても性格だけは変わらなかった様だ

 

「これ以上長引いてもコーラル達に振り回されるだけだ!一気に浄化するぞ!」

 

帝はプリキュア の王杖を出した

 

 

『ABSOLUTE!』

 

 

「──【地に伏せてろ】!」

 

帝の言葉でヤラネーダの動きは止まった

 

「ラメール今だよ!」

 

「分かってるわ!」

 

未だに頭の上から離れないサマーを無視したまま、マーメイドアクアパクトを構える

 

 

 

「パフュームシャイニーリング!」

 

「シャボンフォーム!」

 

「アクアチャージ!」

 

「プリキュア!オーシャンバブルシャワー!」

 

 

「ビクトリー!」

 

 

 

「今回は面白いものを見せてもらいました!満足たっぷりです!」

 

 

 

 

 

////////

 

「な、何とかなったわ〜……早く頭から降りなさい!」

 

「パパイア時間は?」

 

「…あ、丁度二時間経った」

 

「「え?」」

 

サマー達の体が光りだした

 

そしてポンっと拍子抜けた音と同時に、元の大きさに戻った

 

「ぎゃっ!?」

 

「重っ!?」

 

ラメールはサマーを頭の上に乗せていたせいで潰れ、帝はコーラルを抱いていたので急な重量に腰を落としてしまう

 

パパイアはフラミンゴを膝枕していたので、変な事にはならなかった

 

「何でプリキュア に変身してるの?それに何でラメール潰れてるの?」

 

「み、帝君!?何で抱っこなんか!?」

 

「お、おいパパイア、いつの間に膝枕なんか…」

 

こうして幼児化問題は終息したのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう懲り懲りよぉぉぉ!!!」




ネタはまだまだあります。

ここまでの拝読ありがとうございました!


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第59話 ローラが生徒会長!?清き一票の争い!

今回はあまり書けなかったな〜

ではスタート


いつもの様にトロピカる部が朝登校すると、校門前で何やら人集りがあった

 

「生徒会選挙の演説か」

 

「選挙?演説?」

 

「新しい生徒会長を決めるの」

 

「え、今の生徒会長は辞めちゃうの?」

 

「卒業前に、新しい生徒会長に引き継ぎとかしないといけないし」

 

「三年生は卒業…引き継ぎって!あすか先輩辞めないで〜!!」

 

まなつはそう言ってあすかに泣きつく

 

あすか本人もまだ引退する気は無いと思っている

 

「いいわね生徒会長!学校版の女王って感じ!決めたわ、わたし生徒会長になる!」

 

 

 

 

 

ローラは生徒会長に立候補する為生徒会室に向かっていた

 

「フフ、イイ予行練習になるわね」

 

「練習?」

 

「そう、グランオーシャンの女王になる為のね。この学校を纏める会長になれない様なら、女王になれる筈がない!」

 

「へぇ〜。あ、そう言う理由なら帝はどうなの?ローラみたいに立候補はしないの?」

 

「今はトロピカる部で遊びたいからな」

 

「おお帝!」

 

「それに、俺ならいつでも上に行けるからな。今のうちに遊べるだけ遊ぶだけ」

 

「おお…凄い自信…」

 

生徒会室の前に着き、ローラは勢い良く扉を開けた

 

「ちょっといいかしら?わたし──」

 

「大きな声ですもの、聴こえていました。生徒会長立候補の申請ですね」

 

廊下での会話は全て聴こえてたらしく、生徒会長の百合子は話を進める

 

丁度そこへ風紀員長の正美がやって来た

 

「あの、書類書き終わりました」

 

「あれ風紀員長も生徒会長立候補ですか?」

 

「ええ、わたしも今回は立候補しますの」

 

「残念だったわね。生徒会長になるのはわたしだから」

 

「まぁ、お互いに頑張りましょう」

 

お互いに火花を散らして、ローラも申請を済ませた

 

一週間後の最終演説までトロピカる部総出で、選挙活動に勤しむのだった

 

 

 

 

 

////////

 

「わたし、生徒会長になるローラ・ラメールよ!宜しく!」

 

しかし、行き交う生徒は止まりさえしなかった

 

それもその筈。別の場所では、もう一人の候補者である一条の所に集まっているのだ

 

「一条さんは、白鳥会長の元で生徒会副会長を務めてたから皆んなに支持されてるの。皆んな、一条さんに勝てる筈が無いと思って立候補しない」

 

「だから立候補は、ローラと風紀員長と一条さんを合わせた三人だけなんだ」

 

「その分、ライバルが減って良いかもな」

 

一条について知ったローラに、更に火がついてやる気を上げる

 

「わたし、ローラ・ラメールよ!!わたしが生徒会長になったら最高なんだから!!」

 

もっと声を張り上げた結果、一応反応して止まってくれる生徒が増えた

 

「週に一度は海に行って、海中で学校生活を送る様にするわ!」

 

「「「「はぁ?」」」」

 

「生徒会長って名前もどうかと思う……そうね、女王にしましょう。その方がわたしにしっくりくるわ」

 

「なんじゃそりゃ!?」

 

「わたしの事、女王と呼んで〜!」

 

少しはローラに注目するものの、皆んなそれを無視して歩き始めた

 

「リアクションが薄いわね…」

 

「海中で学校生活なんて有り得ないだろ。もっと堅実な演説しないと」

 

 

 

 

 

休み時間の合間、桜川にもローラが生徒会長立候補した事を話しておいた

 

「ローラさんが生徒会長ね〜!とっても素敵じゃない!で、トロピカる部はどうするの?」

 

「当然続けるわ。トロピカる部と生徒会長を両立させるんでご心配無く」

 

「そっか、白鳥さんも生徒会長とテニス部を両立してたし」

 

「それは初耳」

 

「あら聞いてない?滝沢さんがテニス部に居た頃は、ダブルスのチームを組んでたそうなの」

 

桜川の言葉に全員が反応した。

それもその筈、誰もその事は知らないし本人は何も言ってなかったのだから

 

「二人共優秀な選手で、地区大会の決勝まで行ったんだから」

 

 

 

 

 

「知ってたんですか!?」

 

お昼休み、桜川と話した内容をみのりに説明するとみのりもその事は知っていた

 

「本人が言う気も無かったから」

 

「みのりん先輩、もうちょっとテニス部での事を詳しく──」

 

「そんな事より、今は生徒会選挙に集中しましょう!良い作戦を思い付いたのよ!」

 

 

 

 

 

////////

 

次の日から、ローラの言う作戦が始まった

 

 

「「わたしが会長になったら!」」

 

「部費を一割上げます!」

 

「部費を五倍にします!」

 

「そして、一部厳しい校則の見直しに関して学校と話し合います!」

 

「わたし校則無くします!」

 

との具合に、ローラは一条に張り合う形で約束事を言っていた

 

 

別の日も

 

「わたしは休み時間を、皆さんにゆっくり出来る様に校庭のベンチを増やします!」

 

「休み時間くらいじゃ足りないわ!わたしは学校のお休みを増やします。学校は週三だけ来て、後は部活動をしましょう!」

 

ローラの張り合いは益々エスカレートして行った

 

遠くでその様子を見ていた帝、みのり、あすかは遠い目をしていた

 

「本当にこれでいいのか?」

 

「さぁ?」

 

「これはダメだな…」

 

 

 

 

 

最終演説の日

 

あれやこれやと工夫を施すも、ローラに支持する者はほぼいなかった

 

「こうなったら最終演説に懸けるしかないわ。何かこれってアイディア無いかしら…」

 

「やっぱりさ、本当にローラがしたい事を言えばいいんじゃない?」

 

「やりたい事は海の中で学校生活ね」

 

「いくら何でも実現させるのは無理があるだろう」

 

「じゃあさ、実現出来る様なアイディアを皆んなで考えようよ」

 

ひとまずそれで考えることにして、最初に案を出したのはさんごだった

 

「あの校則の話だけど、少しオシャレしても良いことに出来ないかな?」

 

「校則を無くす事は出来ないが、内容によっては先生達に相談出来るかもな」

 

「図書室の本をもっと増やせば、休み時間がもっと楽しくなる」

 

「古くなった備品、あと花壇なんかを増やすとか?」

 

「まともだ…!」

 

「協力しないぞ?」

 

みのりに帝と、続々とアイディアが出て来始める

 

「海の中の学校はどうしよう?」

 

「あ、ダイビングスーツを着るとか?」

 

「お母さんの知り合いにダイビングスーツ貸してくれる人いるよ。あ、そうだ!ダイビングスーツあるならさ、いっその事スクーバダイビング教えてくれる授業とか良くない?」

 

「それ良いアイディアかも!他には他には?」

 

 

 

 

 

////////

 

それからアイディアを出し合い、最終演説に向かうと準備していた時に起こった

 

街中でヤラネーダが現れたのだ

 

「よりによってこんな時に!」

 

「やる事はいつも通りだ。ローラは最終演説頑張れよ」

 

「え、でも…」

 

ローラに気を遣って言った事だが、当の本人は少したじろいでいた

 

「わたし達で考えたアイディアを学校の皆んなに伝えて!ローラ頑張って!」

 

 

 

 

 

ヤラネーダが現れた場所に行くと、既にやる気パワーを奪ったあとだった

 

「選挙カーかよ。世間も選挙真っ只中。ハッ!俺達もこのビッグウェーブに乗れと言うことか!?」

 

「行くよ!」

 

「「「うん!」」」

 

「あすか先輩ツッコんで下さいよ〜!」

 

「引っ付くな鬱陶しい!!」

 

 

 

「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」

 

「「「「レッツメイク!」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

 

「エモーショナルスタート!」

 

『FANTOME!』

 

 

 

「ヤラネーダ!」

 

もう突進するヤラネーダだが、帝は余裕の表情をしていた

 

「そんな直線的な攻撃が今更効くと思うか?」

 

ステッキを軽く地面に突くと、サマー達の実態の無い分身を作り出した

 

ローラが不在の分、撹乱させて戦おうと工夫する予定だったが

 

「今更そんな小細工が通じるかよ。行け、超ゼッタイヤラネーダ!!」

 

チョンギーレが指示を出すと、ヤラネーダはドリフトしながら砂埃を撒き散らして分身を全て消し飛ばした

 

「こいつ…うわっ!」

 

「帝!」

 

土煙に紛れて、ヤラネーダは帝を吹き飛ばした

 

「「きゃあ!」」

 

「「うぅ…!」」

 

続いてサマーとコーラル、パパイアとフラミンゴも目に見えないヤラネーダに攻撃される

 

「この!」

 

 

『キングハンド』

 

『NATURAE!』

 

『AUTO!』

 

 

 

 

 

その後も帝達は奮闘したが、全く歯が立たなかった

 

「超ゼッタイヤラネーダ…確かに強いがローラが居れば」

 

「強がりはよせよ。どちらにしろ、もう終わりなんだからよ」

 

ジリジリと近付くヤラネーダ。追い詰められる帝達に、彼女が颯爽と現れる

 

「そこまでよ!」

 

「「ローラ!?」」

 

 

 

「プリキュア!トロピカルチェンジ!」

 

「レッツメイク!キャッチ!」

 

「フェイス!」

 

「ネイル!」

 

「ドレス!」

 

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

 

「ハァッ!」

 

変身して一撃を負わせて一度距離を取り、体勢を整える

 

「演説は?上手く行った?」

 

「ううん、途中で出て来ちゃった」

 

「何で!?」

 

「貴女達を放って置いて、楽しい学校にしますだなんて言えないわ」

 

「ヤラネーダ!!」

 

「それじゃあ皆んな行くわよ!」

 

ヤラネーダが話の腰を折るように向かってき、ラメールの合図で全員での蹴りで押し返した

 

 

「マーメイドアクアポット!サーチ!」

 

「黄緑!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

 

「ランドハートクルリング!」

 

「「「「「おめかしアップ!」」」」」

 

「「「「「エクセレン・トロピカルスタイル!」」」」」

 

「「「「「5つの力!大地を照らせ!」」」」」

 

「「「「「プリキュア!ランドビート・ダイナミック!」」」」」

 

 

「「「「「ビクトリー!」」」」」

 

 

 

 

 

////////

 

「どう言うことよ!?」

 

学校に帰ってみると既に選挙は終わっており、生徒会長は一条に決まっていた

 

「演説の途中で抜ければ失格となるのよ」

 

「そんなの聞いてないわよ!」

 

「言おうとしたら出て行ったのでしょう」

 

どうやら正美の話も碌に聞かずに駆け付けていた様だ

 

「でもこれで良かったんじゃないか?」

 

「それどう言う意味よ」

 

「俺達トロピカる部の女王はローラなんだから」

 

「ふ、ふん!そうやって機嫌取って変なことしようとしても無駄よ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうは言うが、帝に言われて少しは嬉しかったローラであった




ここまでの拝読ありがとうございました


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第60話 あすかの修学旅行!そして秘める過去

新しいパソコンが届いて気分が良い。
前まで使っていたのは、10年近く使っており液晶漏れをしていて色々機能も限界でした…

でも小説書いてるのはスマホ何ですけどね!

ではスタート


「「「「ッ!」」」」

 

線路の上、その場所でプリキュア に変身したサマー、コーラル、パパイア、そして帝達が走っては跳んで急いでいた

 

「早く追い付かないと!」

 

「マズいわ!」

 

「きっと間に合う!プリキュア と帝の力があれば!」

 

「ハッ!」

 

帝は、両手にプリキュア の王杖とオーシャンステッキを持っていた

 

軽く走ってはステッキの力でワープして、ショートカットをしていた

 

「ちょっと待て」

 

途中、帝は引き止めた

 

「どうしたの帝君。まだあすか先輩が乗ってる列車は見えてないよ」

 

サマーも隣で望遠鏡で確認するも視認は出来なかった

 

「水分補給だ」

 

バックからペットボトルを四つ出して、サマー達に渡す

 

「ありがとう。でも急がないと追い付けない」

 

「プリキュア と同じ力だが、体力はそこまで上がっては無い。疲れるんだ」

 

あおぞら市から、ノンストップでワープを使い付けてる。

いくら帝とはいえ、ここまで連続で使ったのは初めて

 

「それに心配は無い。水分補給程度の休憩なら、夕日が沈むまでには追い付く筈だ」

 

軽く休憩を終えた帝達は、急いで列車へと向かう

 

そもそも何故帝達が、列車を追い掛けているかと言うと理由は二つあるのだ

 

 

 

 

 

////////

 

「だから、出歩いたら見つかるだろ」

 

「大丈夫よ。その時はその時」

 

修学旅行中のあすかの目の前にローラが居た

 

本来なら一、二年生は学校で授業を受けてる筈だが、ローラはアクアポットを使ってあすかのバックに潜んでいたのだ

 

帝達が追い掛けてる理由の一つがローラである

 

あすかもローラの存在に気付いた時には遅かった。

その為帰す訳にもいかず、とにかく隠れる様に言い聞かせたのだが、当の本人は好奇心旺盛なのでその願いは叶わずだった

 

「ねぇ、さっき言ってた生徒会長の揉め事って何?」

 

つい先程まで、百合子と話していたあすかだった。

その話をローラは盗み聞きして、質問した

 

「別に大した事ではない」

 

「そんな訳ないでしょう。わたし達は仲間でプリキュア 。帝にも言ったことあるけど、偶には他の人に頼る事もしないと、ね?」

 

話したくはなかったが、ローラに上手いこと言いくるめられて話す事にした

 

「百合子とは小学生の頃から一緒だった。性格は全然違うけど気が合った。中学に入ってから、一緒にテニス部に入って────」

 

あすかと百合子のコンビは無類の強さを発揮していた。

その強さもあって二人は、地区大会決勝へと駒を進めたのだが事件は起きた

 

対戦校の相手が、百合子のラケットに細工をしようとする所をあすかが幸運にも目撃した

 

勿論止めに入ったのだが、そこであすかの悪いところが出てしまった

 

胸ぐらを掴み上げて止めに入り、それを目撃したのは大会スタッフ並びに対戦校の他メンバーだった

 

更に最悪は続くのであった

 

相手は暴力を振るわれたと嘘の証言で誤魔化し、その事が明るみになればテニス部は活動停止、或いは廃部とのこと

 

そこで百合子は独断ではあったが、部を守る為にある条件を呑むことにした。

決勝戦、お互いに試合を棄権すれば丸く収まると

 

しかしあすかの性格上、それで納得する訳もない

 

意見が二つに分かれてしまう

 

部の仲間の為にも抗議するあすか、部の仲間の為に棄権に賛同な百合子

 

だが客観的に見て、部員達は百合子の方へとつく

 

後の事は知っての通り、あすかはその大会で姿を消して今の彼女に至る。

百合子との関係にも溝が出来てしまった

 

「あすからしいわね」

 

話の区切りはついた途端、列車全体が謎の衝撃で揺れ始めた

 

あすか達が居るのは前の車両。そして衝撃がしたのは生徒達が居る後ろの車両。

そこでは、列車を媒体とした超ゼッタイヤラネーダがのしかかっていた

 

急いであすか達は避難誘導に駆け付けるが、その誘導する車両で思わぬ事が起きた

 

「貴女ローラさん!?」

 

「え、あ…」

 

とうとうローラの存在が百合子に見つかってしまった

 

「今はそんな事いいだろう!」

 

あすかはローラと小言で話し出す

 

「皆んなの前でプリキュア になるのはマズい」

 

「やっぱり避難誘導が先ね」

 

話し合いの結果、人目を避ける事を優先して避難誘導に専念する事となった

 

「全く、勝手な真似はしないで貴女達も逃げなさい!」

 

「それはこっちの台詞だ。下がってろ!」

 

「……わたしは生徒会長として──」

 

「またそれか。『生徒会長として』」

 

あすかと百合子の言い争いが始まろうとするが、お互い一度冷静に考える

 

「言い争ってる場合じゃ」

 

「ないようね」

 

その後は何とか三人だけで、前の車両へと誘導し終える

 

「よし何とか避難は完了した──」

 

だが急に列車が急ブレーキを掛けてる

 

「ッ!?」

 

「百合子!!」

 

急なブレーキに対応出来なかった百合子は、転がり倒れ込んだ

 

「クッ…!」

 

 

 

「プリキュア!トロピカルチェンジ!」

 

「レッツメイク!」

 

「キャッチ!」

 

「チーク!」

 

「アイズ!」

 

「リップ!」

 

「ヘアー!」

 

「ドレス!」

 

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

 

 

「大丈夫か?」

 

「え、えぇ大丈夫です…」

 

「そうか良かった。安心しろ、すぐに皆んなを元に戻してやる」

 

そう言って、今も尚一人で戦うラメールの元へフラミンゴは外へ出た

 

「皆んなのやる気パワーを返してもらう!」

 

浮遊してるヤラネーダに向かって高くジャンプする

 

 

「ハートルージュロッド!」

 

「プリキュア!ぶっとびフラミンゴスマッシュ!」

 

 

 

 

 

フラミンゴ達がヤラネーダと交戦してる場所から、少し離れた場所

 

「見つけた!」

 

サマーが望遠鏡を覗きながら、フラミンゴ達を視認した

 

「あそこなら届きそうだな」

 

帝はサマー達三人を抱える

 

「え、帝?」

 

「何するの?」

 

そしてワープの為の穴を開け、サマー達を投げ入れた

 

「帝く──」

 

コーラルが何か言おうとしたが、投げ入れられた後だったので最後まで聞き取れなかった

 

 

 

 

 

「「「うわぁぁ!?」」」

 

「ヤラネーダ!?」

 

突然放り出されたサマー達は、ヤラネーダへとぶつかった

 

「皆んな!」

 

「それにしても良くヤラネーダが居るって分かったな」

 

「「「え?」」」

 

「「え?」」

 

「『え?』じゃないだろ」

 

「あ、帝!」

 

一瞬お互いに固まってしまったが、そこへ帝が横入りして戦いに意識を集中させる

 

「ラメールサーチ」

 

「う、うん!」

 

 

「マーメイドアクアポット!サーチ!」

 

「赤!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

 

「ランドハートクルリング!」

 

「「「「「おめかしアップ!」」」」」

 

「「「「「エクセレン・トロピカルスタイル!」」」」」

 

「「「「「5つの力!大地を照らせ!」」」」」

 

「「「「「プリキュア!ランドビート・ダイナミック!」」」」」

 

 

「「「「「ビクトリー!」」」」」

 

 

 

 

 

////////

 

「まさかあすかの忘れ物を、プリキュア になって届けるなんてね。よくやるわね」

 

帝達は列車での騒ぎの後、ラメールを引き摺ってあおぞら市へと帰る事となっていた

 

そして今は、日は暮れ始めて走って帰宅途中だ

 

「そもそもラメールのせいでしょう?貴女が旅行バックから枕を出しちゃうから」

 

帝達があすかを追い掛けていたもう一つの理由。それは枕だった

 

あすかは枕が変わると寝れないというのを、南乃島に行く時に皆んな知っており、急いで届けようとなっていたのだ

 

「あ〜……てへ!」

 

「くぅ〜!そのテヘ顔が可愛いから俺は許す!」

 

「いやいやダメでしょ!」

 

「お陰でわたし達一日中プリキュア になって走ってばかりだよ…」

 

そんな雑談をしながらあおぞら市へと帰って来た

 

これであすかは修学旅行を満喫出来ると誰もが思っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおぉぉぉい!何でくるるんが居るんだよ〜〜!!」

 

「く〜るる〜ん!」

 

くるるんさえ忘れて帰らなければ




今回は過去話だけ掘り下げて、後は割愛みたいな感じで短くなっていました

次回はいつ振りかのさんご回。さんご回って片手で数える程しかなく無い?

ここまでの拝読ありがとうございました


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第61話 可愛いの大舞台!さんごのモデルデビュー!

お気に入りが60件到達しました!
感謝しかありません!この調子で頑張って行きます!

ではスタート!


「えぇ〜凄い!さんごファッションショーに出るの!?」

 

トロピカる部で集まった時、さんごが今朝起きた事を話してくれた

 

ファッションショーでデザイナーの「コニー」という人物から直々に、モデルとして出て欲しいと頼まれたのだ

 

「ファッションショーというと?」

 

「あおぞらプリティーコレクション。毎年、コスメショップの関係でお母さんが手伝ってるの」

 

「ランウェイを歩くって事か?」

 

「そうなんです〜」

 

「ねぇ、そのランウェイってなんなの?」

 

「モデルさんが歩く花道って事。お客さんに服をお披露目するの」

 

みのりからそう説明された。

目立つ事が好きなローラは、ランウェイを歩く自分の姿を想像してニヤニヤと笑みを浮かべる

 

「そのファッションショー、わたしが出てもいいわ!」

 

「今回はさんごが選ばれたんだ。それに、さんごはこのファッションショーが本当に好きなんだよ。だろ?」

 

「うん。あおぞらプリティーコレクションはね、オシャレなファッションブランドが幾つも出るし、全部がキラキラしてて可愛くて、見ているわたしまで幸せな気持ちになれるんだ!昔から大好きで憧れだったの!だから、すっごく嬉しくて!」

 

さんごの熱弁に思わず皆んな黙ってしまうが、それくらい夢中にさせるものだと思った

 

「俺の可愛いさんごがこんなにも積極的になるなんて…育てて良かった〜」

 

「いや、お前は育ててないだろ」

 

「何がともあれ、わたし達も応援するから頑張って!」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

それからは、モデルとしての練習を積み重ねる日々が始まった

 

勿論、さんごは教わった事を練習するだけではなく、帝達にもそれを教えたりしていた

 

「先ず基本の立ち方ね。姿勢を良くして、顎を引いて、それで頭の天辺から真っ直ぐ下に。体の中心に一本の芯が入ってる事を意識するの。そうすればバランスも取れるんだって」

 

試しに頭の上に本を乗せてバランス調整をやってみる

 

「おっと!」

 

「意外と難しいね〜」

 

運動神経の良いまなつとあすかは苦戦していた

 

そんな二人を差し置いて意外な人物達が成功していた

 

「本は友達」

 

「立ってるだけなら簡単だけど、歩くとなるとどうだろうな」

 

みのりと帝はバランスを保っていた

 

「よっと……そういえばさんご、この服って何?」

 

隣にあるカゴの中に様々な服が入ってる事に帝は気付いた

 

「ファッションショーで使う衣装よ」

 

そこへタイミング良く、みゆきが出て来て説明してくれる

 

「折角だし皆んな来てみる?サンプルだから問題ないけど」

 

 

 

試しにまなつとさんごが試着してみた

 

「可愛い…あれ?」

 

さんごはフレアスカートの折り目となっている部分に、ハート柄のデザインが隠れてる事に気付いた

 

「このスカート、こうすると模様が見える。折角可愛い柄があるのに見えないと勿体ないね」

 

「その通りよ。ファッションショーはね、服の魅力を余す事なくお客さんに伝える事が大切なの」

 

「服の魅力?」

 

「どうすればその服が魅力的に見えるか、考えるのもモデルのお仕事よ」

 

モデルの仕事にはそういう事も含まれていた

 

服を只見せるだけではなく、如何にして魅力を伝えるかもモデル次第

 

「コニーさんも良く言ってる事なんだけど、モデルはお客さんに『可愛い』を届けるってこと」

 

「…可愛いを、届ける」

 

 

 

 

 

////////

 

ファッションショー当日

 

本番前に一度、リハーサルがある為その準備をしていた

 

「さんごまだかなぁ〜?」

 

「取り敢えず落ち着け帝」

 

さんごのモデルデビューに、帝は自分の事のように浮き足だっていた

 

「帝、わたしだって充分可愛いわよ?」

 

「ア〜ハイハイローラモカワイイカワイイ」

 

「ガガーン!あの帝がわたしに興味を示さないなんて……」

 

「しょうがないよ。今の帝はさんごにしか目が入ってないから!」

 

「そ、そうよね。わたしに掛かれば帝なんてイチコロよ!」

 

「お前、帝のこと嫌いじゃなかったのか?」

 

「え、ええそうよ!帝なんて全然好きじゃないわ!」

 

「じゃあ何であんな事を言ったのか?」という疑問がみのりとあすかの中で浮かぶ

 

そうしてる間にもリハーサルは進み、さんごの番となる

 

「あ、さんごだ!お〜い!」

 

少し遠くで見守る帝達の存在には気付かず、少し緊張した表情をしままランウェイを歩き出した

 

その緊張が達したのか、歩いてる最中さんごは足がもつれて倒れてしまった

 

再開しようとすぐさま立ち上がったのは良いが、その場から一歩も動こうとはしなかった

 

「あれ、どうしたのかな?」

 

「様子が変だな…」

 

その様子にも帝達が気付いて心配になり近付く

 

「さんご!」

 

結局そのまま動けずに、他のモデルの人に連れられて舞台裏へと帰ってしまった

 

帝達も後を追い掛けて裏へと回る

 

「さんご大丈夫?」

 

「皆んな……ちょっと滑っちゃった」

 

「気にすんな」

 

「練習通りすれば大丈夫」

 

「さんごは、皆んなに可愛いを届けるんでしょ?」

 

「う、うん…」

 

 

 

 

 

「さんご大丈夫かな?励ましたけれど全然元気が無かったよ」

 

「気にすんなとも言ったけど、やっぱり気にはするよな…」

 

「それでも俺は信じてる。必ずさんごは自分の力で……?」

 

ふとランウェイへ視線を移すと、誰かが歩いていた

 

「まだ時間じゃないよね?」

 

誰かと気にしていたが、すぐにその正体を知る事になる

 

軽い風が吹くと、ランウェイを歩く人の帽子が飛んで行き、その人──ヤラネーダの素顔が露になった

 

「ヤラネーダ!?」

 

「あらあらバレてしまったらしょうがないわ」

 

「ヌメリー!?」

 

「超ゼッタイヤラネーダ、残りのやる気パワーも奪ってしまいなさい」

 

「ヤラネーダ!!」

 

ヤラネーダが高く飛び上がると、人間サイズからいつもの巨大な姿へと変えた

 

「行くよ皆んな!」

 

「…悪い、此処は任せた!」

 

「え、待って帝!」

 

みのりの言葉は届いてる筈だが、それを無視して舞台裏の建物へと走って行った

 

「まさか帝、さんごを呼びに行ったんじゃあ…」

 

「な!?さんごは今ファッションショーに集中してるんだぞ!一体何を考えてるんだ?」

 

「大丈夫だよきっと」

 

「まなつ…」

 

「だって帝だよ?さんごの為に動く帝は、絶対何か理由があって動いてると思うの。心配は要らないよ」

 

まなつに言われて、改めてヤラネーダへと向き合う

 

「だから今は!」

 

 

 

 

 

////////

 

「確かこの辺だった様な……此処か」

 

さんごの元へ走った帝は、その居場所を見つけた

 

入り口でさんごを探してると、さんごも帝の存在に気付いて駆け寄る

 

「帝君どうしたの?」

 

「その事なんだけど……何かあったの?」

 

奥を覗くと、何やらモデルにスタッフの方々がコニーを中心に集まっていた

 

「実はファッションショーで使う風船が今届いたの。でも、今から準備するにも時間が掛かるから」

 

「そういう事か…参ったな」

 

「あ、帝君はどうしたの?何かあったの?」

 

「…ヤラネーダが現れた」

 

それを聞いてさんごは難しい表情をした

 

「…分かった。わたしも行くからちょっと待ってて──」

 

トロピカルパクトを持って来ようとするさんごだが、帝は腕を掴んで止めた

 

「駄目だ」

 

「え?」

 

「さんごは此処に残ってファッションショーの準備をやるんだ」

 

「でも、ヤラネーダが出たんでしょう?それなら皆んなのやる気を取り戻す事が大事なんじゃ…」

 

「確かに大事だ。けれど、今のさんごにはそれ以上に大事な事がある」

 

例えヤラネーダを浄化しても、肝心なファッションショーがダメになってしまえば意味が無い

 

「ショーを成功させる為にも、此処に残って準備するんだ」

 

「……」

 

「あの服を着て、その可愛いを届けれるのはさんごだけなんだ。そしてそれは、この会場に居る皆んながそう思ってる」

 

「皆んなが、そう思ってる…」

 

「皆んな可愛いが大好きだから。さんごも可愛いが大好きだから、このモデルの手伝いを引き受けたんでしょう?ヤラネーダの事は俺達に任せて」

 

帝は優しく抱きしめた後、すぐさま外へと向かって行った

 

「帝君……ありがとう」

 

 

 

 

 

「遅くなった!」

 

『ATTACK!』

 

会場に戻って来て早々、ヤラネーダに蹴りを入れて倒させる

 

「今だ!抑え込むんだ!」

 

サマー達は両手両足を力一杯抑え込んだが、それでもヤラネーダの力が僅かに強く、起き上がろうとしていた

 

「皆んな!!」

 

そこへ、準備を終えたさんごがやって来た

 

「さっき転んだのみ〜ちゃった」

 

「えっ?」

 

ヌメリーはそう挑発した。どうやらリハーサルの時のさんごを、ヌメリーも何処かで見ていたのだ

 

「仲間の所まで来られるかしら?そこのランウェイを通って。怖いなら無理しなくてもいいのよ。嫌々やったところで──」

 

「違う!わたしがやるのは好きだから──大好きだから!!」

 

 

 

「プリキュア!トロピカルチェンジ!」

 

「レッツメイク!」

 

「キャッチ!」

 

「リップ!」

 

「アイズ!」

 

「ヘアー!」

 

「チーク!」

 

「ドレス!」

 

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

 

 

足を踏みしめ、そして勢い良くランウェイの上を走り出す

 

「わたしの大好きな、此処に居る皆んなの可愛いと大好きを絶対に壊させはしない!!」

 

ランウェイを走り切り、ヤラネーダの元へと大きく跳んだ

 

「許さないんだから!!」

 

 

「ハートルージュロッド!」

 

「プリキュア!もこもこコーラルディフュージョン!」

 

 

コーラルの技を受け、起き上がる最中だったヤラネーダは完全に地に伏せた

 

「ラメールお願い!」

 

「オーライ!」

 

 

「マーメイドアクアポット!サーチ!」

 

「青!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

 

「ランドハートクルリング!」

 

「「「「「おめかしアップ!」」」」」

 

「「「「「エクセレン・トロピカルスタイル!」」」」」

 

「「「「「5つの力!大地を照らせ!」」」」」

 

「「「「「プリキュア!ランドビート・ダイナミック!」」」」」

 

 

「「「「「ビクトリー!」」」」」

 

 

 

 

 

////////

 

ファッションショーは無事に開催された

 

そして可愛く仕上がったさんごは、生き生きした表情でランウェイを歩いていた

 

(わたし、可愛いでいっぱいのこの場所に居られてとっても幸せ!)

 

観客席の方に居る帝と目が合った

 

(帝君、いつもわたしの背中を押してくれてありがとう!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、最大級の笑顔で微笑むのであった




次回10本立てか。書くの大変そう…

ここまでの拝読ありがとうございました!


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第62話 いやいやいや、10本立てなんて出来るわけない

メタ発言が多し

ではスタート


「10本立てなんて出来るかァァァァァ!!」

 

「開幕一言目がそれって大丈夫なの?」

 

「ローラよく考えてみろ。TVで出来るが、こんな文字でしか表現出来ない小説に何が出来るって言うんだ!?」

 

「元も子もない事言ってどうするのよ…」

 

まなつはボードの前に立ち、ペンを走らせる

 

「じゃあ、小説でも出来る10本立てを考えよう!」

 

「10本連続子作りフィーバーと……もがッ!?」

 

ローラがくるるんを、帝の口の中に押し込みうるさい口を封じた

 

「じゃあ、わたしが作る料理を皆んなで食べるって言うのは?最近腕を上げたの」

 

「「却下!!」」

 

みのりの意見をあすかとローラが一刀両断。

言わずとも知れず、彼女の料理を食べれば人の山が出来るのを誰もが知る

 

「はいは〜い!わたし達の活躍を見せる為、ヤラネーダ10本勝負!!」

 

「人数足りないし、わたし達疲れちゃうよ…」

 

「え〜、そう言うさんごは何かある?」

 

まなつに突然振られるが、さんごは既に考えついていた

 

「可愛いものを皆んなで探すとかかな?」

 

「案外良いんじゃないのか?」

 

「ありがとう帝君!」

 

「そうだな…よし、それで──」

 

「待ちなさいよ」

 

あすかが同意しようとする時、ローラが待ったを掛けた

 

「みのり、図鑑持ってたわよね?」

 

「持ってるけど……沢山ある。どれがいい?」

 

「なんでも」

 

みのりは適当に見繕った図鑑一冊をローラに渡す

 

それをローラがペラペラとページをめくり、適当にさんごに見せる

 

「さんご、これどう思う?」

 

「わぁ〜可愛い!なんて動物?」

 

「それは、ハダカデバネズミ」

 

「これは?」

 

「アイアイだ!可愛いよね、このくりっとした目!」

 

「最後、これは?」

 

「ウォンバットの赤ちゃん!この前TVで見たよ!可愛いよね!」

 

ローラは本を勢いよく閉じて、頭を抱える

 

「貴女、さっきから『可愛い可愛い』しか言ってないじゃない!いや寧ろ、最近『可愛い』の発言しか聞かないわ」

 

「えぇ!?」

 

さんごの感覚を当てに出来ずにいたローラ

 

「う〜ん…スポーツはどうだ?」

 

「それなら皆んなでトロピカれますね!」

 

「それはどうかな?六人で出来るスポーツは限られる。しかもそれを10立てという短い時間でするのも問題」

 

みのりの冷静な分析。これにはあすかも、自分の意見にぐぐもってしまう

 

「皆んなダメね。やっぱりここは、次期王女たるこのわたしの意見がないとね!」

 

「その内容とは?」

 

「簡単よ!このローラ様のありがた〜いお話をたっぷり10本立てでお送りするわ!!」

 

「「「「……」」」」

 

「な、何よ皆んな黙って?」

 

あすかは徐に手を挙げる

 

「帝」

 

「何?」

 

「許可する」

 

あすかの手が下がるのが合図。

帝はローラの正面に詰め寄り両肩を掴んだ

 

「はぁ…はぁ…そ、それって性的に食べて良いって事ですよねあすか先輩!!」

 

「そういう意味だったの!?」

 

「だからローラ!一緒に外へ!!」

 

ローラを外へ連れ出した帝は、色々とやり始めた

 

 

「ちょっと制服返しなさいよ…あ、下着!!」

 

「ローラの匂い……スゥゥゥゥ!!!」

 

「ひぃぃぃ!!?!」

 

「あ、ココはやっぱり綺麗。あ〜触ったら柔らかそう」

 

「ダメダメダメ!そんなとこ触らないでぇぇぇ!!」

 

 

((((今日も平和だなぁ〜))))

 

 

 

 

 

それから暫くして、帝とローラは帰って来た

 

「さ、散々な目に遭ったわ…」

 

「じゃあ次を決めよ!」

 

「無関心!?」

 

「だっていつもの事じゃん」

 

一々ローラに構ってる時間も無いので先へ進める

 

「あ、そうだ!ゲストさんを呼ぶのはどう?」

 

「それいいかも!そのゲストさんに一本、二本任せるものいいかも知れないよ!」

 

まなつとさんごがそう言うと、まるで待っていたかの様にくるるんが扉の前に立つ

 

「くるるん!」

 

くるるんが扉を開けると、外から三人の人影が現れた

 

「は〜い!ゲストのハートキャッチプリキュア !が来たよ!!」

 

「あのえりか、いきなりは図々しいかと…ここは先輩としての威厳を──」

 

「だからこうやって、先輩として堂々と来たんだよ?」

 

「……あ、なるほど!」

 

「つぼみ、『なるほど』じゃないよ…」

 

「ところで、ゆりさんの姿が見えませんけど…」

 

見渡すと、部室の外遠くで高校生の女性が立っていた

 

「遠ッ!?」

 

「ゆりさ〜ん!何でそんなに遠くに居るのですか〜?」

 

 

「少し寒気がするから」

 

 

改めて部室内を覗くと、まなつ達に抑えられてる帝の姿を見る

 

「き、聞いたかよ!プリキュア だって!一度パンツの色を…じゃなくてご挨拶を!!」

 

「下心丸みえじゃないか!」

 

「こうなった帝を止めるの至難ですよ!」

 

「さんごもっと気合い入れなさい!」

 

「ふんっ!」

 

まなつ達が抑えてる中、みのりだけは一人勝手に自己紹介をしていた

 

「一之瀬みのりです。ご指導ご鞭撻の方宜しくお願いします」

 

「あ、ご丁寧に。わたしは──」

 

「皆さんの事は知っています。『花咲つぼみ』『来海えりか』『明堂院いつき』『月影ゆり』の皆さんですよね?」

 

「フフン!勉強熱心な後輩達だね!」

 

「自己紹介もいいけど、時間」

 

いつの間にか、ゆりが近くまで歩いて来ており、部室の時計を確認した

 

「……でしたらまた後日という事で」

 

「「嘘!?」」

 

えりかもだが、思わずつぼみまで声に出した

 

「そうね」

 

「ほら行くよ二人共。お邪魔しました」

 

ゆりを先頭に、いつきが二人を引き摺って帰って行く

 

「だぁ!待って!」

 

まなつ達を振り解いて帝が大声で叫ぶ

 

「ゆりさ〜〜ん!!」

 

呼ばれて振り返り、足を止めた

 

「パンツは何色です…ガッ!?」

 

瞬時に帝のこめかみに鉛筆が突き刺さる

 

投げたのは当然ゆりだった

 

「…あの人俺の事殺す気だったよ

 

「寧ろその方が助かる」

 

「酷いなあすか先輩。薄情者!」

 

「…そういえばわたし達何してたっけ?」

 

「ほらあれ、小説で出来る10本立てを皆んなで考え……」

 

「「「「「「あ…」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局何も決まらず終わってしまう一日だった




ハトプリそこまで見てないから口調が心配

あまり面白味の無い内容ですした

次回は……どうしようか。一応また日常回を書こうと思ってます

ここまでの拝読ありがとうございます


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第63話 ハプニング続出!?一年生組の調理実習!

色々とやばいっす

ではスタート!


「調理実習の班長誰にしようか?」

 

一年生の教室。そこでトロピカる部の一年生組は、まなつの机に集まって話合っていた

 

「まぁ、最初から決まってる様なもんだけど」

 

「うん、それじゃあ──」

 

「「はい!」」

 

まなつとさんごの会話を遮って、帝とローラが手を挙げる

 

「このグランオーシャン次期女王のわたしが、皆んなを率いて料理をしてあげるわ!」

 

「ローラってわたしより下手だよね?」

 

「失礼ね!!」

 

「もしかして帝君も…?」

 

ジトーッと帝を横目で見る。そして帝は笑顔で答えた

 

「ああ!」

 

「…じゃあ班長はわたしって事でいいかな?」

 

「いいよ!」

 

「「ちょっと!!」」

 

怒るのも無理は無いが、正直言ってこの二人に任せると被害者が続出する

 

最初からまなつとさんごは、さんごが班長する事前提で話していた

 

「俺は?俺は何でダメなんだ?」

 

「帝君は料理下手極端に言って下手なの!でも料理以前の問題だよ!この前だって、余り物でホットドッグ作ろとした時──」

 

 

 

『──さんご大変だ!!』

 

『──何帝く…キャアァァ!?』

 

『──IHが火を噴いてる!!』

 

『──何でIHで火が付くの!?』

 

 

 

「何でソーセージ焼くのに火が噴くの?あり得ないよぉ…」

 

「何が原因だったの?」

 

「分かんないよ。フライパンに火が付くならまだしも、IHのコンロにだよ?」

 

「色々不安だけど、明日は頑張ろう!」

 

 

 

 

 

////////

 

次の日

 

桜川の元、家庭科室で調理実習が行われる

 

「わたしとまなつで、お米研ぐのとお味噌汁に生姜焼きをするから、帝君とローラはお肉を包丁で切るのと野菜をお願いね」

 

帝達が作ろうとしてるメニューは「ご飯」「生姜焼き」「お味噌汁」「野菜サラダ」

 

各々役割り分担して作る事となった

 

「なぁさんご、肉を俺達でするなら焼くのも俺達がした方が──」

 

「駄目」

 

「え、でも──」

 

「この間のホットドッグ。誰のせいで大事になったと思う?」

 

「はい…」

 

頑なに火元に近付けさせたくないさんご。帝は渋々返事するしかなかった

 

「お願いね」

 

それだけ言って、さんごはまなつと一緒に作業に取り掛かった

 

「わたし達もやるわよ」

 

「そうだな。俺が肉を切るよ」

 

ローラは野菜を洗い、帝はソーセージと睨めっこしていた

 

「どうしたのよ帝?」

 

「いや、このソーセージ見てると思い出す。俺のソーセージをさんごが咥えてるのを」

 

「え、キモ…流石にそれは引くわ…」

 

「違うよ!ホットドッグの話だよね!?」

 

「あ〜この前習ったあれ?え〜と……交尾!」

 

「まなつは喋らないで」

 

ローラがソーセージを取り上げて、取り敢えず肉を帝の前に出す

 

「取り敢えず適当でいいから切りなさい。それなりの大きさで」

 

「オーライ」

 

帝は包丁を持って構えた

 

「へ?」

 

しかしその姿に色々とツッコまざる得なかった

 

包丁を持つ右手は只単に握り締め、猫の手の左手は何もせずぶら下げてる。

そして極め付けは、包丁を頭の高さまで上げていた

 

「ちょま──」

 

勢いよく振り下ろされる包丁は、大きな音を立てて肉を切る…というより叩き付けていた

 

「帝君!?」

 

ガンガン叩き付ける音が教室中に響き渡り、周りのクラスメイトは引いていた

 

「帝君!帝君ストップ!!」

 

さんごに呼び止められてやっと止まった帝だが、止まった勢いで包丁は教室の外へ投げ出してしまった

 

「「あ゛ーー!!」」

 

それを見たまなつとさんごは、女の子とは思えぬ声を出した

 

包丁を取りに廊下へ急ぐと

 

「あ、ぁ…ぁぁ……」

 

青ざめた顔色で座り込むあすかに、その隣で壁に突き刺さる包丁があった

 

どうやら包丁は、授業で移動中だったあすかの目の前を横切り壁に突き刺さっと考えられる

 

「「あすか先輩!?」」

 

「だ、誰だ包丁を投げた奴は!?」

 

「み、帝…」

 

「殺す気か!!」

 

 

 

 

 

「さてと、包丁も戻って来たし……また切るか!」

 

「帝君よく見て!!」

 

まな板の上は、見るも無惨に変わり果てたお肉だった

 

「お〜見事にミンチになっちゃったね」

 

「これ、食べれるのかしら?」

 

まなつは思わず感心を、ローラは食べれるか不安がっていた

 

「あの皇さん、包丁の持ち方が…」

 

「何ですか先生?」

 

「ひぃ!!」

 

アドバイスでやって来た桜川へ体を向けるが、包丁の先も一緒に向けてしまう

 

「と、取り敢えず包丁は置いて下さい!」

 

「え、はい」

 

そう言って帝は包丁をまな板に突き立てた

 

「〜〜〜ッ!!?!」

 

ローラが声にならない悲鳴を上げる

 

何故なら、包丁を突き立てた場所はローラの人差し指と中指の間だからだ

 

あと少し左右どちらかにズレてると指を刺していたところだった

 

「まなつまなつ!わたしの指ちゃんとあるわよね??」

 

「あ、あるから落ち着いて!」

 

「帝君、包丁持つの禁止!!」

 

「じゃあ俺は何をすればいいんだよ…」

 

帝は至って真面目にしてるのだが、問題は"真面目"にして既にこの状態ということ

 

事態の重さを知ったさんごが出した決断は

 

「…ゆで卵。それなら簡単だよ」

 

「任せろ!」

 

「わたしと帝君が代わるから…」

 

「あ、帝。卵は先生の所にあるから」

 

「は〜い」

 

帝が卵を取りに行ったのを見て、さんごは深い溜め息を吐く

 

「さんご大丈夫だよ!確かにコンロは使うけど、ゆで卵なら水に浸して6分〜12分くらいで出来るから。その間は基本何もしなくていいから」

 

「いくら帝でもゆで卵で失敗する訳ないわよ」

 

「ゆで卵の準備出来たぞ」

 

まなつとローラが話してる内に帝が帰って来た

 

「じゃあ卵を鍋の中に入れて。もう準備はしてるから……あれ、帝卵は?」

 

帝の両手を見るが卵は一つも持っていない

 

「だから準備したって」

 

「何処に?」

 

「あそこ」

 

帝が指さすのは電子レンジ

 

する時、電子レンジから大きな音が鳴り響いた

 

いくつもある中から音のした場所は、帝が指さしたたった一つの電子レンジからだった

 

そこでは、中身が飛び散ったであろう物がグチャグチャになっており、レンジの蓋は悲しく開かれてあった

 

明らかに見て爆発が起きたのだ

 

「「「……」」」

 

「え、卵って爆発するの??」

 

「何で卵を電子レンジで温めちゃうの!!?」

 

予想通りさんごの雷が落ちた

 

「ゆで卵だから器に水入れて、その中に卵入れてレンジでチンって…」

 

「普通ゆで卵は鍋でやるものなの!!」

 

「そうなのか!?」

 

「そうなの!!」

 

 

 

 

 

家庭室では不安と恐怖が支配していた

 

次はどんな事件が巻き起こるのか、自分達は生きて調理実習を終えれるかどうか

 

そんな中でも、帝達の班は殺気立っていた。特にさんごが

 

「あ、あのさんごさん、何か手伝いを──」

 

「しなくていい」

 

「あ、はい…」

 

不機嫌極まるさんごは、ぶっきらぼうに返事をして帝に何もさせない様に指示する

 

「さんご怒ってるね」

 

「当たり前よ。それに命が幾つあっても足りないわ」

 

さんごは静かに作業をする。帝を無視して

 

流石にそれはマズイと思い、まなつが助け舟を出す

 

「ねぇさんご、確かに帝にやらせるのは危ないけど、このままだと帝の成績にも影響しちゃうよ」

 

「……」

 

「意地張ってないで」

 

「…もう」

 

さんごは包丁を置き、帝にお玉と小皿を渡した

 

「お味噌汁のアクなら取れるでしょう?」

 

「あ、ありがとうさんご!期待を裏切らない様に頑張る!!」

 

喜ぶ帝を見て、やっぱりさんごも頬を緩める

 

「まなつ、ローラ後少しで終わるよ。わたし達も頑張ろうか!」

 

 

 

 

 

////////

 

「で、あるからして〜──」

 

帝達が大暴れの中、みのりは静かに授業に集中していた

 

だがその時だった

 

学校中の火災報知器が鳴り響いた

 

「え、火事?」

 

それに伴い、緊急放送もされる

 

『火事発生!火事発生!至急生徒はグランドに避難して下さい!』

 

みのりは火事でも落ち着いて、ハンカチを取り出し口に当てて避難した

 

 

 

 

 

数分で生徒教職員含め全員避難された

 

消防車が慌てて駆け付け、火元の消火と調査を行う

 

それが十数分以上掛かり、事態は鎮静された

 

そして全体へ校長が話す

 

「え〜、今回の火事の原因は家庭科室の引火によるものです。皆さん、くれぐれも火の扱いには気を付けて下さい」

 

みのりはふと思い出す。さっきの時間帯は、帝達一年生が家庭科室で調理実習をしていた

 

(まさか……考え過ぎかな?)

 

余計な事は考えるのはやめて、校長の長い話をウトウトしながら、みのりは聞くのであった

 

一方で騒動を起こした犯人はというと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アクを取るだけで何で火事になるの!?わたしが知りたいよ!!」

 

「そんな事言われても、何か勝手に火が燃え上がったんだもん」

 

「ローラ危なかったね。後ちょっとで焼き魚になるところだったよ」

 

「いつも思うけど、その狂気的な発想やめてくれる?」




本来ここまで主人公が家庭科苦手にするつもりはなかった

そろそろローラとの距離感を縮ませたいので、その話を考えてます。主人公に意識させますよ〜

ここまでの拝読ありがとうございました!


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第64話 乙女チックな想い、ローラの芽生える恋心!

オリ回です

ではスタート!


「ねぇ帝、今じゃなきゃダメ?」

 

突然ベッドの上で倒され、馬乗りでローラに跨っていた

 

「じゃなきゃ、こんな状況になってないと思うが?ローラはどうだ?」

 

「わたしは、その……」

 

帝はローラの首元まで顔を近付け、首筋を舐めては吸い、マーキングをしていた

 

「分かったから少し待って。その前にシャワー浴びてから」

 

「いいや今欲しい──お前の全部」

 

耳元で囁き、服を脱ぎ始める

 

ローラも上だけ脱ぎ、帝の首に両腕を絡ませて引き寄せる

 

「しょうがないわね。ほら、始めましょう」

 

帝とローラの唇が近付き、淫らな行為をする準備を始めようとした時だった

 

 

「ほほう、ローラ様も発情期のご様子」

 

 

「……」

 

「どうも〜」

 

「うわぁぁぁぁああ!!!?」

 

ベッドの脇でアリスが顔を覗かせて見ていた

 

突然現れてローラは反対側へ転がり落ちる

 

「な、なななな///」

 

「面白い反応を致しますのね。まるで漫画の様に転がり落ちましたよ」

 

「うるさい出て行け!帝も何か言って……あれ、帝?」

 

ローラは周りを見渡すも帝の姿は何処にも居ない

 

「何処へやったの!」

 

「何処って言われましても、ローラ様が消したじゃないですか」

 

「………ん??」

 

言っている意味が分からなかった

 

「あ〜なるほど」

 

「な、何よ」

 

「ローラ様、これは貴女の夢ですよ」

 

「ゆ、夢!?」

 

言われてみればすぐに分かること。

見慣れないベッドになどなど

 

「夢にまで帝様が出てるとなりますと…余程意識されてらっしゃるのですね。しかも、あの様な」

 

アリスはニヤニヤと笑い出す

 

「帝様の事が本当にす──」

 

「言うなァァァァ!!!」

 

全力でアリスの口を塞ぐ

 

「そもそも人の夢に入るってどういう了見よ!」

 

「みのり様の夢に入った事はありますよ」

 

「く…話の通じてる様で通じてない。人の夢の中に入ったのよ、それなりの理由なんでしょうね?」

 

「いえ特に何も」

 

それは、今のローラを苛立たせるには充分な一言だった

 

「な、何よ…じゃああれなの?わたしが、帝に対してどれくらい思ってるのかを夢の中で確認しようとしてたのかしら?」

 

「よくご存知ですね。花丸百点です」

 

「ば、馬鹿にしてぇぇ!!」

 

「夢は無意識に己の心を移す物です。ストレスなどが溜まっていれば、悪夢を見ると言った具合いです。好意に思えば思うほど、夢の中にも出て来る。至極単純な事です」

 

アリスが話し終わると、周りの空間が歪み始めた

 

「そろそろお目覚めの様ですね。ではこれにて失礼します。あ、夢の中での出来事は、サービスとして覚えてる様にしておきますね」

 

「余計なお世話よ!!」

 

「では──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────ッ!!」

 

勢いよく飛び上がる様にしてベッドから身を起こした

 

「はぁ…はぁ…」

 

顔に手を当てて唸る様にして夢でのやり取りを思い出してみる

 

「最悪だわ……」

 

「むにゃむにゃ…」

 

隣を見るとまなつが寝ていた

 

時計を見るとまだ六時前。ちょっとだけ起きるにしては早い時間帯

 

 

 

 

 

「ローラどうしたの?げっそりとして」

 

「あ?あ〜何でもない…悪夢を見たのよ」

 

家を出ても尚、ローラは疲れ切った表情で登校していた

 

そして目の前に、一緒に登校していた帝とさんごと出会した

 

まなつは朝から会えて嬉しかったが、ローラはこれ以上無い程の表情で嫌がっていた

 

(よりにもよってこんな時に…)

 

「おはよ!」

 

「おはようまなつ」

 

「二人共おはよう」

 

「…」

 

皆んなが挨拶する中で、ローラは黙りを決め込んでいた

 

「ローラ?」

 

帝は気になって肩に手を置こうとした時

 

「触るな!!」

 

「ッ!?」

 

触られない様抵抗した結果、帝の股間を蹴り上げた

 

「ふぐぅ…ま、待てぇ……」

 

「うっさいバ〜カバ〜カ!!」

 

ローラは一目散に逃げ出した。まなつとさんごが何か叫んでいたが、そんなものは無視して一人門を潜ったのだ

 

 

 

 

 

////////

 

部活の時間。今朝の事を話すと、みのりとあすかは苦笑いをしていた

 

「それは災難だったな」

 

「また何かしたの?」

 

「今回に限っては何もやってない。挨拶をだな」

 

確認の為まなつとさんごの方へ目を向けると、二人も揃って首を上下に振った

 

丁度そこへローラが部室の扉を開ける

 

「お、おいローラ今朝の事だが…」

 

帝がまたも手を出そうとした時

 

 

『──ねぇ帝、今じゃなきゃダメ?』

 

 

「ッ///」

 

夢での出来事を思い出し頬を赤く染める

 

そして無慈悲な平手打ちが帝を襲った

 

「…何で!?」

 

そしてまたも叩かれる

 

「ッ…だから!!」

 

ローラは帝を叩くだけ叩いて出て行ってしまった

 

「俺悪くないよな!?」

 

「帝君の事だから、いつの間にか怒らせたのかも知れないよ?」

 

「今まで築き上げた信頼とは…」

 

 

 

 

 

 

ローラは図書室で人魚姫の本を読んでいた

 

「はぁ…」

 

「溜め息まで吐いてどうしたのローラ?」

 

「うわぁぁ!?みのり!?」

 

いつの間にか背後に居た事に気付かなかった

 

「また帝と何かあったの?」

 

「そ、そういう訳じゃないのだけど…」

 

「じゃあ何故?」

 

「……自分の気持ちが分からなくて、ムシャクシャしてつい…」

 

「相談に乗るよ」

 

意を決してみのりに相談する事にした

 

「少しあってね、帝の事を意識する様になったの。目を合わせると恥ずかしくて……人魚姫の本を読めば何か分かるかなって」

 

「なるほど。でも何で人魚姫?」

 

「この本に出て来る人魚は、人間に恋をするでしょう?だから」

 

「……ローラは帝に恋をしてるの?」

 

「はぁ!?何でそうなるのよ!」

 

みのりに言われ、急激に顔の熱が跳ね上がる

 

「わたしにはそういう風に聞こえたけど」

 

「み、帝なんてどうでもいいのよ!友達としては好きよ!でもアイツは、これまで類を見ない程の変態なのよ!一体どういう間違いを犯せば好きになるのよ」

 

「さんご」

 

「…さんごもよく今まで一緒に居られたわよね。わたしなら限界を超えて一年で縁を切ってるわ」

 

「ローラも帝と出会ってからあと少しで一年経つよ」

 

「それは…あれよ!わたしの忍耐力が凄かったって話よ!」

 

みのりは薄々気付いている。色々帝についてあれやこれやとローラは言っているが、恐らくは好きでいる

 

しかし、自分ではそれを認めたくないのか否定するだけ

 

「とにかく、ローラは帝の事を意識している。男女でのそういう気持ちは紛れもない恋なの。どんなにローラ自身が拒絶しても、それはもう止まらない。恋は盲目」

 

「いや、でも…」

 

「ローラの相談事に、わたしはその答えを教えただけ。どうするかはローラ次第」

 

「はぁ…」

 

ローラがこの先どうするかの深い溜め息を吐いた時、外から大きな音がした

 

窓の外を見ると、街で超ゼッタイヤラネーダが暴れていた

 

「話も終わったし、ヤラネーダを止めに行こう」

 

 

 

 

 

////////

 

「出たなヤラネーダ!」

 

超ゼッタイヤラネーダと居たのは、アリスだった

 

「まなつ様は相変わらずやる気一杯ですね。若いって良いですね。見ているこっちまでやる気を貰えます」

 

「えへへ〜ありがとう!」

 

「喜んでどうする!」

 

「あ、そうだった!切り替えて行くよ!」

 

「「「「うん!」」」」

 

「…」

 

皆んなまなつに返事を返すが、ローラだけは無言で帝を見ていた

 

「ローラどうしたの?やっぱり今日はやめた方が…」

 

「え…へ、平気よ!少しぼ〜っとしてただけだから!」

 

「ならやるよ!」

 

 

 

「「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」」

 

「「「「「レッツメイク!キャッチ!」」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

「モヤモヤ吹き飛ばせ!」

 

「「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」」」」

 

 

「エモーショナルスタート!」

 

『FANTOME!』

 

 

 

「ヤラネーダ!」

 

『ぺけ!』

 

先制攻撃はヤラネーダだったが、急な攻撃にも落ち着いてコーラルが対処する

 

そしてコーラルが防御と同時に、サマー達が飛び出した

 

「「「やぁぁ!」」」

 

サマー、パパイア、フラミンゴのトリプルキックでヤラネーダを後退させる

 

「ヤラネー…」

 

「でしたら……ヤラネーダ、そこで動かないプリキュアに狙いを絞りなさい!」

 

「ヤラネーダ!」

 

未だにコーラルの背後で動かなかったラメールに狙いを定められ、ヤラネーダは襲い掛かる

 

『ぺけ!』

 

ヤラネーダの拳が激しくぶつかる。だがコーラルがシールドで守りに入る

 

「くぅ…!」

 

「あ、コーラル!?」

 

ようやく意識がヤラネーダへ向かったが、その時は既にコーラルが懸命に防御をしていた

 

「ラメール逃げ…きゃあ!」

 

「コーラル!」

 

シールドを打ち破られた拍子で、コーラルは大きく弾け飛んだ

 

「ヤラネーダ!!」

 

(やられる!)

 

目を瞑り、攻撃に耐えようとするも

 

「…?」

 

いつになっても来ない。ふと目を開けると

 

『『『ぐぅぅ!!』』』

 

分身した帝三人が受け止めてラメールを守っていた

 

「うりゃあ!!」

 

そして本物の帝が飛び上がり、ヤラネーダの顔に強烈な蹴りで倒した

 

(あ…)

 

その後ろ姿を見たラメールは見惚れていた

 

攻撃を終えて上手く着地した後でもラメールは、その背中をずっと見ていた

 

背丈は自分とは大差の無い筈なのに、その背中はとても大きく、頼もしく、いつまでも見ていたい気持ちになる程だった

 

「ラメール大丈夫か?」

 

「え、えぇありがとう…」

 

「じゃあいつものやる気カムバック!」

 

「…」

 

だけどローラは帝を見つめたまま静止していた

 

「ラメール?」

 

「うわっ!?」

 

動かないラメールの顔を覗く様に近付くと、ラメールは驚き思わず一歩下がってしまった

 

「な、何?」

 

「いや、やる気を取り返して欲しいのだが…」

 

帝は、今にも起き上がろうとするヤラネーダに指をさしてお願いした

 

「あ、あぁ任せなさい!」

 

「?」

 

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

「い、行くわよ皆んな!」

 

 

 

「ランドハートクルリング!」

 

「「「「「おめかしアップ!」」」」」

 

「「「「「エクセレン・トロピカルスタイル!」」」」」

 

「「「「「5つの力!大地を照らせ!」」」」」

 

「「「「「プリキュア!ランドビート・ダイナミック!」」」」」

 

 

「「「「「ビクトリー!」」」」」

 

 

 

「フフフ…!」

 

超ゼッタイヤラネーダが浄化されたにも関わらず、アリスは笑っていた

 

その視線の先にはラメールの姿を捉えていた

 

 

 

 

 

////////

 

部室に戻り、皆んなローラの様子がおかしい事に心配し始めた

 

「ローラ本当に大丈夫?」

 

「帝君一体何やったの?」

 

「薄情しろ」

 

「待てよ!本当に何も知らないんだ!!」

 

まなつ達三人が詰め寄るのをローラは慌てて止めに入る

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい!帝は何もしてないわ!」

 

「じゃあ何で今日はずっと不機嫌だったんだ?」

 

「それは、その…」

 

黙ってしまったローラに皆首を傾げる

 

それを見てみのりが動いた

 

「皆んな、きっとローラは何か帝に大切な話があると思うの。わたし達が居るから恥ずかしくて言えないのと思う」

 

「は、恥ずかしくなんて!」

 

「ほら皆んな出て行くよ」

 

三人の背中を強引に押して、みのりは追い出した。

そして出て行く直前、みのりはローラの元へ駆け寄り耳打ちする

 

「先ずは、距離を詰めるところから始めてみたら?」

 

それだけ言うとみのりも退出した

 

残ったのは帝とローラの二人だけ

 

「それで、みのりん先輩が言っていた話って?」

 

「あの…その……」

 

ローラは手を胸に当てる

 

心臓の音が大きく聴こえる。ドキドキを脈打つ音。

顔も赤く染まってるに違いない

 

ローラは緊張が達する前に、照れながらも帝に言ったのだ

 

「こ、今度の休み…い、一緒に出掛けない?」

 

いつものローラとは違い、帝は固まる

 

「ね、ねぇ聞いてるの?恥ずかしくなって来たから早くしなさい///」

 

「そ、そうだな、出掛けようか!場所は?」

 

「ど、何処でもいいわよ………帝と一緒なら」

 

「最後なんて言ったんだ?よく聞こえ──」

 

ローラは帝の口を両手で塞いだ

 

「いいの!それよりも約束よ。今度の休み」

 

「はいはい。場所は俺が勝手に決めるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日ローラは、家に帰ってからずっと頬が緩んでいた




10月も終盤。そろそろトロプリも終盤に入って来たので、ヒロインであるローラを動かし始めます。暫くは、ローラを中心としたオリ回、オリストが多くなります

ここまでの拝読ありがとうございました!


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第65話 夢は沢山でデッカく!その時一番なりたいもの!

ではスタート!


「皆んな揃ったわね!一人ずつテスト行くわよ!」

 

あおぞら市主催の子供達のコメントを展示するイベント。通称「大人になったら何になる?」の練習をしていた

 

勿論一年生組全員が参加していた

 

「大人になったら、お母さんのコスメショップを一緒にやる!」

 

「大人になったら女王になる。勿論、大人にまる前でもOKよ!」

 

「大人になったら始皇帝より更に上の存在になる!」

 

それぞれ個性溢れるコメントを残した

 

最後はまなつなのだが

 

「大人になったら〜……えっと〜……」

 

練習とはいえ、自分の番が回ってもそれに答えられなかった

 

 

 

 

「これにまなつ達が出るのか?」

 

部室に集まって撮影の事を話した

 

みのりもあすかも興味があった。そしてその隣でまなつは何やら職業に関する本を熟読していた

 

「明日が撮影の本番…何だけど」

 

「あ〜もう…やりたいって手を挙げたけど、今はまだ決められないし、やっぱ大事なのは今だよ〜!」

 

「やるって決めたんなら何か考えないとダメだぞ」

 

「あすか先輩は大人になったらテニス選手になるの?」

 

「はぁ!?誰だその話した奴……って一人しかいないよな」

 

あすかはローラに厳しい視線を向ける

 

「別に隠す事はないでしょう?あすかは何も間違っていないんだし」

 

「それはそうだが…」

 

「みのりん先輩は?」

 

「わたしは本に関わる仕事がしたい。図書館の司書や本屋とか」

 

「う〜ん…大人になったらかぁ〜」

 

みのりやあすかの事も聞いたが、余計悩む羽目となってしまった

 

「そういえば帝は?結構漠然としていたけど」

 

「何度も言わせるな。俺は始皇帝よりも更に上の存在へ──」

 

「あ、それ以外で」

 

冷たい発言に思わず肩が落ちる

 

「帝君前に言ってた事は?」

 

「どんなどんな?」

 

「皆んなを幸せにするって!」

 

「それなら難民を助ける仕事とかいいそうだな!」

 

「医者や牧師もある」

 

「待て待て、俺よりもまなつだろ?ていうか、こういう話は人生の先輩でもある両親に聞くのが一番早いんじゃないのか?」

 

「そうか!」

 

 

 

 

 

「ただいま〜!」

 

「「「「お邪魔します」」」」

 

帝の提案により夏海家へ皆んなで行く事になった

 

「おかえりまなつ」

 

そんな帝達を出迎えてくれたのは、夏休み中南乃島でお世話になったまなつの父親の太洋だった

 

「お、皆んなも一緒か!」

 

「その節はどうもありがとうございます」

 

軽く挨拶を終えた後、碧と大洋にリビングで部室での話を聞かせた

 

「なるほど、大人になったらか…」

 

「お父さんは、子供の頃からスクーバーのインストラクターになりたかったの?」

 

「いや、小学校に入る前は消防車になりたかったな」

 

「え?」

 

「消防車ですか?」

 

「消防士さんではなく?」

 

「そう消防車。南乃島には消防車が無かったから、TVで観た消防車が凄く格好良くてそれで消防車になりたいと思ったんだ」

 

大洋のなりたいものが無機物という事に、少々驚くも夢を抱くのは人それぞれ

 

「私が小学生の頃は、バレリーナになる事が夢だったね」

 

「バレーやってたんですか?」

 

「ええ。でも全然上達しなくて、それでバレーは無理だって。で、次になりたいと思ったのが獣医さん」

 

「かなり思い切りましたね」

 

「バレリーナと全然違う」

 

碧も色んな夢を持っていた。中学生ではネイリストとなっていた

 

大洋も消防車からパトカーになり、そこから海賊、料理人、カメラマン、歌手と多種多様な夢を見た

 

「お父さんも夢がいっぱいあったんだ〜!」

 

「まなつと同じだ。だから夢は一つでもいっぱいでも良い!大事なのは──」

 

「「今!」」

 

「私も今、水族館で働きたいって思ったの!」

 

「とにかく、今なりたいものがあっても無くても、未来には無限の可能性があるって事だ!」

 

大洋からそう言われたその日、まなつだけじゃなく、皆んな自分の将来の事について改めて考える様になった

 

 

 

 

 

////////

 

そして後日

 

放課後皆んなで撮影されたコメントを観るべく、ショッピングモールへと足を運ばせていた

 

「わたしの大人になったらは、いつ流れるかな〜?」

 

「結局、まなつは何にしたんだ?」

 

「それは観てのお楽しみ!」

 

「勿体ぶって教えてくれないの」

 

「それはまた期待が高まるな」

 

しかし道中で、イベントが開催されているショッピングモールでヤラネーダの出現を見た

 

「またヤラネーダか!」

 

「行くわよ!」

 

 

 

「「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」」

 

「「「「「レッツメイク!キャッチ!」」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

「子供もなれるよ!」

 

「「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」」」」

 

 

「トロピカルスタート!」

 

『LA・MER!』

 

 

 

「そこまでだ!」

 

「来たわねプリキュア !」

 

超ゼッタイヤラネーダはロボットの姿をしており、エルダと何故かドッキングしていた

 

「ヤラネーダ!」

 

ボディ部分からビームが放射されるが、帝達は容易くかわす

 

「ヤラネーダ!」

 

ならばと今度は、バックパックのウイングで飛んで姿勢を固定し、両手両足のロケット攻撃を仕掛ける

 

『ぺけ!』

 

「うっ!」

 

「くっ!」

 

「はっ!」

 

コーラル達はそれぞれそれを受け止める

 

「──今だな」

 

手足を無くしたロボットなど恐れる事は無いと踏み、帝は走り出すがそう上手くは行かない

 

「ヤラネーダ!!」

 

「何!?」

 

ボディの一部部分が展開し、中から幾つものミサイルが発射された

 

一瞬不意を突かれたが、冷静にステッキで弾き飛ばして回避した

 

「あ、な〜んだ。あっちにもいるじゃん。よ〜し、もっと奪ってやる!子供のやる気パワーなんて無くなっちゃえ!!」

 

他にも逃げ惑う子供達をエルダが見つけた。そこにヤラネーダをけしかけようとする

 

「やめてぇぇ!!」

 

だが狙いに気付いたサマーが妨害して危機は去った

 

「何でそんな事するの?」

 

「大人になるなんて馬鹿げてるからに決まってるじゃん。ずっと子供のままの方が楽しいに決まってる」

 

「そんな事無い!大人になっても楽しい事はいっぱいあるよ!」

 

「大人になったら遊べないし、お菓子だって食べれないんだよ!」

 

「大人になったってお菓子を食べれば良いし、遊べば良い!」

 

「皆んなを勝手に大人になってエルダの事を置いて行っちゃうんだ!!アンタだって言ってたじゃん!大人になったら何になるか分かんないって、今が一番大事だって、エルダ聞いてたんだから!!」

 

「…そう、いつだって今が大事だよ。だから、わたしは大人になったら──」

 

その時、イベントで流れていた大型のモニターが映り変わった

 

 

『大人になったその時のわたしが、一番なりたいものになる!』

 

 

「え?」

 

「ッ!」

 

サマーのコメント撮影に気を取られた隙を狙い、サマーは直接エルダを狙いヤラネーダと切り離した

 

「えびゃ!?」

 

エルダが離れた途端、コーラル達が受け止めていたロケットパンチ・キックのブーストが無くなり力を無くした

 

「帝!」

 

帝はサマーの所まで走ってジャンプし、サマーは両手を使って更に帝を上へと高く上げ飛ばした

 

そしてプリキュア の王杖の先端から、青いオーラが溜め込まれる

 

 

「くるくるラメールストリーム!」

 

 

動かなくなったヤラネーダに一撃を加え、地面へと墜落した

 

「ラメール!」

 

「オーライ!」

 

 

「マーメイドアクアポット!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

 

「ランドハートクルリング!」

 

「「「「「おめかしアップ!」」」」」

 

「「「「「エクセレン・トロピカルスタイル!」」」」」

 

「「「「「5つの力!大地を照らせ!」」」」」

 

「「「「「プリキュア!ランドビート・ダイナミック!」」」」」

 

 

「「「「「ビクトリー!」」」」」

 

 

 

 

 

////////

 

『大人になったその時のわたしが、一番なりたいものになる!』

 

 

「まなつらしいな」

 

「勿体ぶってこれなんだから」

 

「いつかきっとわたしも見つけるんだ!一番なりたいもの!」

 

まなつのコメントが終われば、続々と他の人のも流れ始める

 

 

『大人になっても、沢山の可愛いものに囲まれていたい!』

 

 

「沢山の可愛いものか!」

 

「さんごらしいんじゃない?」

 

「先の事はまだ分からないけどね」

 

 

『大人になったら、世界中…特に大切な人達を幸せに出来る人になりたい!』

 

 

「帝は…これどうなんだ?」

 

「やっぱりって感じだね」

 

「始皇帝になる事が夢だが、強いて言うならこれも大事かなと思っただけだ」

 

残すはローラだけとなった

 

 

『大人になったら、伝説の女王になる!』

 

 

「ローラもブレない」

 

「伝説になれるのか?」

 

「当然でしょ?究極の女王でもいいのよ。それとも史上最強の女王かしら?」

 

皆、練習前と少し違う言い方をしていた。それでも、個性に溢れる夢を抱いて残したもの

 

「だったら、もう一つ追加!ローラがグランオーシャンの女王様になっても、それが伝説でも究極でも史上最強でも、どんな女王様だったとしても、ずっとず〜っと友達でいる事!」

 

「わたしも」

 

「わたしも!」

 

「だな!」

 

「俺としては友達の先の関係でも良いけどな?」

 

「友達って…そんなの当たり前じゃない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大人になったら、皆はどんな姿になっているのか。その時が待ち遠しく感じる日となった




次回はオリ回かなと予定しております。
前回の話の続きである、ローラとのお出掛けのものとなります

ここまでの拝読ありがとうございました


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第66話 二人のお出掛け!わたしは貴方のことが──

そんな訳でお出掛けだよん!
最近伸び率が悪くなってはいるものの、モチベはまだ保たれている!

ではスタート!


「……」

 

駅前

 

そこでローラはいつもの私服姿で立っていた

 

少しソワソワしながらも時間を確認し、何度も窓の方を見ては髪の毛を整えていた

 

こうして待っているのも30分が経過しようとしていた

 

「ローラ!」

 

ローラが待っていた人物。帝だった

 

「早いな。約束の10分前だぞ?」

 

「そう?そんな事より早く行きましょう!」

 

珍しくローラが手を引いて駅の方へ駆け込んだ

 

 

 

「行ったね」

 

「ねぇやめようよ。バレたら怒られるよ」

 

「何を言ってるのかねさんご君。ピカリン探偵は、二人の行く末を見守る為にこうやって見張っているのです」

 

「そのサングラスまだ持っていたのかよ…」

 

「気付かれない様、細心の注意で行きましょう!」

 

こうしてまなつ達も、陰ながら二人の後を追い掛けるのであった

 

 

 

 

 

////////

 

二人がやって来た場所は遊園地

 

「……!」

 

ローラは初めて見るものに目を輝かしていた

 

「最初はどれに乗る?」

 

帝は園内のマップを広げてローラに見せる

 

「ここは近い場所から行きましょ!」

 

「あ、おい!」

 

 

 

最初に乗るのはコーヒーカップだった

 

お客が全員乗ると音楽が鳴り、カップがゆっくりと回転し始める

 

「回る…!」

 

「この真ん中のハンドルを回す程、回転力が上がるけど」

 

「いえ、このままでいいわ。ゆっくりしたいの。それに、そんなお子ちゃま事はしないわよ」

 

しかしそんな帝達から離れたカップでは、大絶叫が鳴り響いていた

 

 

 

「見て見てさんご!早い早い!あはは〜!!」

 

「まなつ待って…う、酔った…」

 

「コーヒーカップがこんなにも絶叫マシーンになるなんて思わなかった」

 

「いいから止めろ!!」

 

「は〜い…熱ッ!?」

 

まなつは止めようとするが、高速で回るハンドルを触ろうとすれば摩擦で触れず苦戦する

 

もうこの絶叫マシーンを止められない

 

「止められないならもっとスピードを…とりぁ!!」

 

「やめろォォォォ!!」

 

 

 

「あ〜楽しかったわ!一部何か凄いカップがあったけど…」

 

「そうだな。ところで次は?」

 

「それはもう決まってるわ!」

 

今度は遊園地の定番とも言える乗り物、ジェットコースター

 

 

 

「次はジェットコースターか!」

 

まなつ達も後を追い、二列程空けて後ろから帝達を観察する

 

「二人共普通に話してるね」

 

「こんなもんだろう」

 

「あ、皆んな動くよ」

 

発進のベルが鳴ると、みのりは隣で座るあすかに異変に気付いた

 

「あ、あすか先輩…!」

 

「ん、何だ?」

 

「そ、それ」

 

みのりは震える手であすかの安全バーを上げたのだ

 

「え?」

 

あすかだけ何故か、ちゃんとロックが掛かっていなかった

 

「嘘だ──」

 

そして地獄のジェットコースターが幕を開けた

 

 

 

「人間が作るアトラクションは面白いものが多いわね!気に入ったわ!」

 

「それは良かったよ」

 

ローラはご満悦。帝もそれを見て安心していた

 

 

 

「し、死ぬかと思った…」

 

「え、そんなに怖かったですか?」

 

「わたしはちょっと怖かったな」

 

「あすか先輩少し浮いてましたよ」

 

「怖い事言うな!!」

 

 

 

時間を見ればもうお昼前。帝とローラはお昼を交わえ、午後も色んな所を回った

 

ミラーハウスやフリーフォール、メリーゴーランドなどなど

 

そして次に差し迫ったのは

 

「帝アレなんかどうよ!」

 

ローラはお化け屋敷に目がついた

 

「こ、ここか」

 

「あら、な〜に怖いのかしら?」

 

(実際まなつと一緒に見たからな。あれ以来、怖くはないが少し気が引けるところが…)

 

そんな事も思いつつ、ローラと一緒に中へ入って行く

 

 

 

「二人共お化け屋敷に入った」

 

「追い掛けるか!」

 

「あの待って!まなつが…」

 

まなつへ目を向けると、蹲って震えていた

 

「ほ、本当に行くの?」

 

「行かないとこの先の展開が分からないぞ」

 

「それにお化け屋敷といえば、カップルの距離をより近付けさせる方法としては効率が良い」

 

「でも〜!」

 

渋るのでまなつを置いて行こうとするが

 

「じゃあわたしがまなつと待っておくよ。出て来た時、どんな事になっているのかも気になりません?」

 

「そう、だな」

 

「さんご君、まなつ君を頼みましたぞ」

 

 

 

一方で中に入った二人なのだが、帝は少し難しい顔をしていた

 

「なぁローラ」

 

「な、何よ」

 

「怖いのか?」

 

帝の左腕にしっかり抱きしめており、帝自身歩き難い状態だった

 

「べ、別にそういう訳じゃないわよ。思ったより暗くて、転ばない様にしがみ付いてるだけで──」

 

すると突然上から不気味な人形が落ちて来た

 

「…少しビックリしたけどそうでも無いな」

 

「え、えぇそうね…」

 

ローラもそこまでは驚かなかった。本当に暗いだけで引っ付いているだけみたいだ

 

暫く歩いてると、ローラは何か蹴ってしまった

 

「何か蹴ってしまった」

 

「え?」

 

暗がりの中、足で弄りローラはソレを見つけた

 

「何かしらコレ?」

 

拾い上げて、よく確認すると

 

「ひいっ!?」

 

思わず驚いて落としてしまった

 

「何驚いてんだよ」

 

帝も落ちたソレを拾い上げた

 

「……」

 

だがソレを見た帝は固まってしまった

 

「な、生首…」

 

「み、帝、早く行きましょ…誰?」

 

ローラの肩に手を叩く者が居た。恐る恐る振り返ると

 

引きちぎられた様な痕の様な、首無しが居た。

また子供騙しのクオリティかと思いきや、妙にリアリティがあり怖がらすには充分だった

 

「〜〜〜ッ!!?」

 

ローラは声を抑えて帝の手を引いて全速力で逃げ出した

 

全速力で走る事数分でようやく出口へと行けた

 

「はぁ…はぁ…」

 

「流石にビックリしたな。子供騙しかと思ったら、急にクオリティが上がるんだもん」

 

「し、しんど…」

 

 

 

 

 

////////

 

「次は何乗ろうか…ってローラ?」

 

「え、何?」

 

「ぼーっとしていたから、もしかして疲れた?」

 

「や、大丈夫よ!」

 

いつの間にか帝の事をジッと見つめていた

 

そんな時だった

 

「ヤラネーダ!!」

 

「えぇヤラネーダ!?」

 

「やっておしまい超ゼッタイヤラネーダ!」

 

 

 

「あ、ヤラネーダだ!」

 

「急いで駆け付けるぞ!」

 

「今出たら尾行してる事にバレちゃう」

 

草陰から飛び出すまなつとあすかをみのりが引き止める

 

「いやヤラネーダ!」

 

「あの皆んな、ローラの様子が少し」

 

「「「え?」」」

 

 

 

「…何で…こう……なの?」

 

「ローラ変身──」

 

「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ーーー!!!」

 

「「「ッ!?」」」

 

突然の叫びに、帝やヤラネーダにヌメリー、そして草陰に隠れていたまなつ達も驚いた

 

「ッ!!」

 

 

 

「プリキュア!トロピカルチェンジ!」

 

「レッツメイク!キャッチ!」

 

「フェイス!」

 

「ネイル!」

 

「ドレス!」

 

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

 

「人が折角気持ち良くデートしてるのに──」

 

ラメールは一人単身で飛び上がり

 

「邪魔してんじゃないわよ!!!」

 

渾身の蹴りでヤラネーダを蹴り飛ばし、建物に寄りかかる

 

「フンっ!」

 

更に着地と同時にヤラネーダの腹にもう一撃加える

 

そこからラメールの怒りが爆発する

 

「わたしがどれだけ今日を楽しみにしていたか知ってる?知らないわよね!!」

 

足でヤラネーダを踏み付けてはそれを何度も繰り返す

 

「30分前に駅に着くぐらい楽しみにしてたのよ!昨日だって緊張して眠れないし!!この!このッ!」

 

いつの間にか、ヤラネーダを中心にクレーターが出来つつあった

 

ラメールはヤラネーダの下への潜り込み持ち上げる

 

「覚悟しなさい!わたしを怒らせたどうなるか!」

 

そして力強く空高く投げ飛ばした

 

「後悔なんて微塵も与えさせない!!」

 

 

 

「パフュームシャイニーリング!」

 

「シャボンフォーム!」

 

「アクアチャージ!」

 

「プリキュア!オーシャンバブルシャワー!」

 

 

「ビクトリー!」

 

 

 

 

 

////////

 

ヤラネーダとの戦闘で、時間は差し迫りいつの間にか夕方を過ぎていた

 

最後に乗るのは観覧車

 

二人だけの密接空間が始まるのだが、二人が乗ってから喋る事もなく上へと上がって行く

 

「……」

 

「あの、ローラさん?」

 

「…」

 

「あの〜…」

 

「……ごめんなさい」

 

急に謝って来た事に帝はキョトンとする

 

「何でローラが謝るんだ?」

 

「とにかく謝りたいの。ごめん」

 

「別に良いよ。それより俺嬉しかった」

 

「え?」

 

「俺とのお出掛けを楽しみにしていたローラに」

 

それを聞いてローラは赤くなる

 

「悪かったわね」

 

「それに"デート"って言ってくれた事も」

 

「……ッ///」

 

言われて気付いた。ヤラネーダを倒すのに夢中で気付かなかったが、確かに先程そう言っていたのだ

 

ますます赤くなり、頭から湯気が立ち込める

 

「あ、あれは咄嗟で!」

 

「ローラ!」

 

帝は精一杯の笑顔で言う

 

「誘ってくれてありがとうな!」

 

「っ!」

 

心臓の鼓動が大きく鳴った

 

この時、ローラ自身嫌でも理解した。自分は帝にいつの間にか惹かれて、恋をしてる事に

 

「……また一緒に…」

 

「ん?」

 

「また一緒に、出掛けましょ!」

 

「いいよ。今度はローラが行きたい所に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして始まる人魚の恋物語

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今回はありがとうございます」

 

みのりは、カメラに収めた記録メディアを帝の母親のたいこに手渡した

 

「御礼は私の方よ!無理言ってごめんなさいね」

 

今回何故まなつ達が帝とローラを尾行していたかと言うと、全部たいこがカメラに収めたい為仕組んだ事だった

 

「貴女達も遊園地は楽しめた?」

 

「はい!楽しめました!」

 

「お母さんありがとうございます」

 

「もう御礼はいいって言ってるのに。さんごちゃんは真面目ね」

 

「あはは…」

 

しかしあすかは苦笑いしか出来なかった

 

(わたしもノリで尾行していたが、何か悪い事したみたいで嫌な感じだなぁ…)

 

少々罪悪感を感じていたあすかだった




またオリ回書きたいですが、忙しいとハロウィン回の後になるかもです。

ここらでローラが惚れていた事に気付かせました

ここまでの拝読ありがとうございました!


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第67話 サウィン&ハロウィンパーティー!まなつ失敗を恐れるな!

後書きで、今考えてる今後の予定を書いております。暇な方はどうぞ

スタート!


トロピカる部のメンバーはいつもながら、次の部活動をやるべくパイナップル農園に来ていた

 

それもこれも全部ハロウィンに向けての下準備

 

帝達はパイナップルを採り、まなつがそれを集めて山積みにしていた

 

「ねぇまなつ、ハロウィンって何?」

 

「ハロウィンはね〜、色んな仮装をして楽しむお祭りだよ!」

 

「諸説はあるけど、秋の収穫のお祝い」

 

「悪魔を追い払う行事じゃなかったっけ?」

 

「そもそも元はハロウィンじゃなくて、サウィン祭って呼ばれていた。秋の収穫とかの意味も、サウィンからなんだよ」

 

「帝、意外と博識」

 

「みのりん先輩には負けますけどね」

 

「…人間って変なの!」

 

パイナップルを投げ、まなつは上手くキャッチする

 

「とにかく楽しければいいんだよ〜!」

 

気持ちが昂ってワサワサと動くと、山積みになっているパイナップルの山が揺れ始める

 

「ま、まなつ〜!」

 

「おわ〜!?」

 

崩れ落ちる前に、帝達が大慌てで押さえ込む

 

「「「「「詰みすぎ!」」」」」

 

「まなつってば、一つの事に夢中になると周りが見えなくなっちゃうんだから…」

 

「大丈夫大丈夫!だって、絶対盛り上げたいからさ!トロピカる部主催のハロウィンパーティー!」

 

 

 

 

 

////////

 

ハロウィンパーティー当日

 

全ての準備を終えたトロピカる部。他の生徒達にも手伝って貰い、より豪華なものとなった

 

後は仮装をしたら終わりという段階まで来ていた

 

「ハッピーハロウィン!遂にこの日がやって来た〜!」

 

まなつは衣装に着替え終わり、部室へとダイブする

 

「皆んな、準備はいい〜?」

 

部室へ入ると、帝達は着替えているがローラだけ鏡の前で睨めっこしていた

 

「う〜ん…う〜ん!」

 

何着も着直してはいるが、ローラはどれも気に入らない様子だった

 

「中々良いんじゃない?」

 

「似合ってるよ」

 

「ローラなら『何でも着こなせるなんて流石わたし!』とか思ってたけど」

 

ローラは帝達の方へ振り向き首を傾げる

 

「参考までに聞くけど皆んなは何の仮装なの?」

 

「わたしはキョンシー」

 

「わたしのは海賊!」

 

「わたしはドラキュラ。と、くるるんはコウモリ」

 

「くるるん!」

 

「わたしは、世にも恐ろしい狼人間!!」

 

「俺は始皇帝に相応しく王様関連。魔王ルシファー!ここのボタンを押すと背中の翼が開くよ」

 

バサッと六枚の翼が大きく広がった

 

帝はルシファー、まなつは狼人間、さんごは海賊、みのりはキョンシー、あすかはドラキュラ、くるるんはコウモリの具合だ

 

「ローラまだ迷ってるの?」

 

「う〜ん…わたしという素材を活かしきれてない」

 

「ローラは人魚そのままでいいんじゃ?」

 

「わたしは本気なの!コレじゃあ優勝狙えない!ちょっと出掛けて来る!」

 

ローラの言う優勝とは、ハロウィン仮装コンテストでのこと

 

「帝君ついて行かないの?」

 

「え、良いの!」

 

「ローラと帝、お互いの面倒はお互いが見てるって感じだしな」

 

「衣装は預かって置く」

 

「それじゃあお言葉に甘えて」

 

帝は制服に着替え直してローラを追い掛けに走って行った

 

 

 

 

 

「ローラ!」

 

「…わざわざついて来たの?」

 

「許可は貰った!」

 

「そ、なら行くわよ」

 

二人は無言のまま歩き出す。コレと言った会話もせずにだ

 

(それにしても帝と二人っきりって、この間以来ね……っ///)

 

「なぁローラ」

 

帝の手が不意にローラの手の甲に当たった

 

「さ、触んないでよ変態!!」

 

「これから俺はどうやって接していけばいいんだ?」

 

話してる間にも、目的地であるレンタル衣装のお店に行き着いた

 

「結構豊富だな。これ何かどうだ?」

 

「う〜ん…」

 

帝から衣装を貰い、制服の上から合わせてみる

 

「ならコレ」

 

「でもねぇ…」

 

「それなら…コレとコレにコレは?」

 

幾つも合わせてみたものの、ローラが満足するものは無かった

 

「さっき聞こうとしたが、ローラはどんなヤツをご所望なの?」

 

「こう…バッってインパクトがあるのを」

 

「なら──」

 

 

 

「ありがとうございました!」

 

店から出てローラは満足気の表情だった

 

「フフ、良いモノを選んじゃったわ!これで優勝間違いなしよ!ありがとう帝!」

 

「これでやっと準備は整った……お?」

 

「何よ帝……お?」

 

二人は学校でヤラネーダが現れた事を確認した

 

「急ぐわよ!」

 

帝はローラをお姫様抱っこして学校へと跳んで行く

 

 

 

 

 

////////

 

「皆んな待たせたわね…ってあれ?」

 

「ヤラネーダいないな。さっきまで姿形はあったのに」

 

帝とローラは周りを見渡すと、やる気を失くしている人達を目にする

 

「一体これ、どう言う事?」

 

「まなつそれ…あ」

 

帝はまなつが手に持つアクアポットを見て察した

 

「ローラどうしよう…わたしがやる気パワーカムバックしようと……」

 

「しようとしたら、上手くいかずこうなった訳か…」

 

「何でわたしを待ってくれなかったのよ?」

 

「だって、早くやっつけないと滅茶苦茶にされちゃいそうだったから…」

 

「やる気パワーカムバックは、わたしにしか出来ないの!」

 

いつもさり気なくしてるやる気パワーカムバックは、どういう訳かローラにしか出来ないらしい。

今回はまなつがしてしまった為、この様な事態を招いてしまった

 

「やる気パワー、入ったままみたい」

 

アクアポットの中はやる気パワーで満たされていた。一応取り返してはいるが、問題はこの後の処理に困る

 

「この、も〜ど〜れ〜!やる気パワー出ろ〜!!」

 

ローラが気合いを入れてやってみるが変化は無い。

ローラもこの様な事態は予想外らしく、対処法が分からなかった

 

「案外振り掛けたらいけるとか?」

 

「そんな単純なものじゃ──」

 

「それだ!ちょっと貸して!」

 

まなつはアクアポットを勝手に取り、試しに桜川に振って掛ける事にした

 

「ふん…あ、出て来た!」

 

パラパラとやる気パワーが落ちて、桜川の目が覚めていく

 

「戻る、のか?」

 

「もっといっぱい振り掛けて!」

 

「…やる気が漲る〜!!」

 

やる気パワーを振り掛けて桜川のやる気が戻った

 

「やった!他の人にも!」

 

まなつは色んな人にやる気を振り掛けて何とか起こそうとする。

しかし、見ている帝達はハラハラする

 

「ほ、本当に大丈夫?」

 

「待て、先生の様子を見てからの方が」

 

「大丈夫大丈夫!」

 

そう言って、倒れてる人達全員に振り掛けが終わった

 

「私が生徒会長として、この学校を守る!」

 

「え?」

 

突然桜川がそう口にした

 

「さぁ、生徒会の引き継ぎよ!」

 

「桜川先生が生徒会長!?」

 

様子がおかしくなったのは桜川だけでは無い

 

「さぁ、英語の授業を始めるわよ!」

 

「桜川先生のやる気が…」

 

「生徒会長に…」

 

百合子は桜川のやる気が入ってしまいとんでもない事になった

 

それは他の人も同様

 

全員、別の人のやる気パワーが入ってしまい、手が付けられない状態になってしまった

 

「このやり方だと駄目みたい」

 

「じ、地獄絵図だ…」

 

だがそれも一時的なもの

 

一同、順番にまたやる気を失くしてその場に座り込み始めた

 

「皆んな、わたしのせいだ…」

 

「一人で突っ走るからよ。言ったでしょ?まなつは夢中になると周りが見えなくなるって」

 

「まぁまぁローラ、まなつをそんなに責めるなって。まなつだって良かれと思ってやった事だし、な?」

 

「皆んなの、言う通りだよね。わたし焦っちゃって……それだけじゃない、これまで上手く行ってたのは皆んながいつも助けてくれたから。なのに、皆んなの意見を聞かなかったから。わたしって、なんてお馬鹿さん!!」

 

まなつが完全に凹んでしまった

 

そこへタイミング悪く、パイナップルを素体とした超ゼッタイヤラネーダが現れた

 

「行くわよ…まなつ?」

 

急いで変身しようとするが、まなつは動かなかった

 

「どうしよう…わたし、また失敗しちゃうかもぉ…」

 

「もう、しっかりしなさい!前しか見てないのが、まなつの取り柄じゃなかったの!?」

 

「でもわたし、それで失敗してぇ…」

 

先程の戦闘で失敗する事を恐れてしまっている

 

今での様に、皆んなが助けてもらっても自分が変な所で失敗してしまうかもと

 

「大丈夫だよ」

 

「誰にだって失敗はある」

 

「間違いに気付いたなら直せばいい」

 

「そう悲観的になるなよ」

 

それでもまなつは自分の力で立とうとしない

 

それに痺れを切らしたローラが言い放つ

 

「このまま何もしないつもり!?今、一番大事なことは?」

 

「今、一番大事なことは…大事な…っ!」

 

まなつの目の色が変わった

 

「今…それは、皆んなのハロウィンを守ること!!」

 

 

 

「「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」」

 

「「「「「レッツメイク!キャッチ!」」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

「仮装じゃないよ!」

 

「「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」」」」

 

 

「プリキュア の王杖!」

 

『ABSOLUTE!』

 

 

 

「出たなプリキュア !やっちまえ!」

 

チョンギーレが指示を出すと、ヤラネーダは腕を伸ばして攻撃して来る

 

「──【弾けろ】!」

 

帝の言葉に、向かって来る両腕はお互いに衝突して目の前で弾けた

 

「チャンスだ」

 

サマーを除いた全員で懐に入った時

 

「「「「あぁ!?」」」」

 

「何…んっ!?」

 

腕のパイナップルが飛んでき、輪っかに挟まれて身動きが取れなかった

 

「ダメ、外れない!」

 

「帝何とか!」

 

「んー!んーっ!!」

 

フラミンゴは帝なら対処出来ると思い目を向けるが、帝は皆んなと違い口までも塞がれて喋れなくなっていた

 

「サマー何するの!?」

 

サマーは、ハリボテで作られたキャンディを振り回していた

 

「こんな攻撃全部弾き返してやる!」

 

「待てサマー!」

 

「ちゃんと考えないとやられちゃうわ!」

 

「んー!んー!」

 

「え…」

 

サマーの頭の中で、自分がやられる姿を想像してしまった

 

「また、わたし失敗を…」

 

ネガティブな思考がサマーの動きを止めてしまった

 

「ッ!?」

 

それでもヤラネーダは待ってはくれない。葉っぱの部分を回転させ、手に持つキャンディを切り刻んでいく

 

「サマー見て!その刃なら」

 

「このリングを」

 

「切れるかも!」

 

「ヤラネーダをこっちに誘導して!」

 

「ヤラネーダを…」

 

ここでサマーには二つの選択肢が与えられた

 

一つは、皆んなの言う通りヤラネーダを誘導するか

 

二つは、単身で進んで行くか

 

「二つに一つ!」

 

サマーが選んだ選択肢は

 

「…よし」

 

後ろに下がり、ヤラネーダを誘導する事だった

 

相手に悟られない様に少しずつ下がる

 

「皆んな今だよ!」

 

サマーの合図で全員が自ら刃へ向かって行く

 

そして上手くパイナップルのリングだけを切り落とした

 

「やった!」

 

「よし帝、これで口は動く筈だ!」

 

「少し酸っぱないな。まぁいい…【止まれ】!」

 

帝の言葉を聞いたヤラネーダは動きを止めた

 

「今度こそお願いラメール!」

 

「オーライ!」

 

 

「マーメイドアクアポット!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

 

「ランドハートクルリング!」

 

「「「「「おめかしアップ!」」」」」

 

「「「「「エクセレン・トロピカルスタイル!」」」」」

 

「「「「「5つの力!大地を照らせ!」」」」」

 

「「「「「プリキュア!ランドビート・ダイナミック!」」」」」

 

 

「「「「「ビクトリー!」」」」」

 

 

 

 

 

////////

 

浄化が終わるとやる気パワーは元に戻った。勿論、最初に奪われたやる気パワーも、本来持つべき者の所へ返っていた

 

「皆んな元に戻ったんだ〜!良かった〜!皆んなに迷惑かけてごめんなさ〜い!!」

 

「まぁ、すぐに動けるのは」

 

「まなつの良い所だよね!」

 

「今回はそれが災いしたな」

 

「それでも終わり良ければ全て良しだ」

 

「皆んなのやる気も戻った事だし、今、一番大事なことは?」

 

「うん!ハロウィンパーティーで、目一杯トロピカっちゃお〜!」

 

まなつも立ち直り、そして始まったハロウィンパーティー

 

 

 

 

 

『仮装コンテスト優勝は〜──』

 

「は〜い!」

 

『フランケン人魚。ローラ・ラメールさんです!』

 

「当然の結果よね!」

 

「あれって仮装の意味あるのか?」

 

「帝君がチョイスしたの?」

 

「ううん。インパクトが欲しいって言ってたから、何か組み合わせても良いんじゃないかってアドバイスしただけ。選んだのはローラ」

 

「ローラらしいかも」

 

そして最後は、トロピカる部全員で記念写真を取ってハロウィンパーティーは幕を閉じたのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、みのりん先輩。トリックオアトリート!お菓子をくれないと、はぁ…はぁ…い、悪戯しますよ〜!」

 

「みのり」

 

「ありがとうあすか先輩。はい帝」

 

あすからお菓子を受け取り、そのまま帝へと手渡した

 

「え、あ、はい…」

 

「フフ、残念だったね帝君」

 

「ならさんご!トリックオアトリート!」

 

「はい帝君!」

 

そう言ってさんごもお菓子を渡した

 

「お前の考えは全部お見通しだ」

 

そう言ってまなつ達は、懐から大量のお菓子を見せつけるのであった




次週はアニメがお休みらしいのでネタ回を書きます。
そのネタ回、そして続けて後々重要となるオリ回を一話。
そして、三、四話を予定でオリストを考えております。オリストに関しては、少し感覚を開けた後投稿かなと考えております

あとついでに、別作品で書いてある「魔法つかいプリキュア !」の方で、トロプリ組を出張コラボさせようかと考えております。
興味ある方は是非

ここまでの拝読ありがとうございました


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第68話 秋の思い出!走り切った運動会!

今更運動会ネタだって?そんなの関係ねぇ!

ではスタート!


「皆んな注目」

 

部室で集まる皆んなを帝は注目させる

 

「実は皆んなに見せたいものがあるんだよ」

 

そう言って机の上に出したのは、幾つもの写真だった

 

その写真というのが

 

「少し前に運動会で撮れた写真。皆んなは自分が写ってる写真は買ったりしてるけど、トロピカる部の記録として残す写真はまだだったよね?」

 

「アルバム作りって事?」

 

「う〜ん、そんな感じかなみのりん先輩」

 

「トロピカる部のアルバム作りか…いいな!」

 

「うん!」

 

「あら、この写り具合いいじゃない!」

 

「え、じゃあ!今日の部活動はアルバム作りで!」

 

唐突に決まった部活動

 

「まぁそれと同時に、思い出に浸ろうかなぁって」

 

「それなら…あ、この写真!さんごとローラが玉入れしてるヤツだ!あれは面白かったな〜!」

 

「なっ!?まなつこそ変な写真あるわよ!」

 

「これは…わたしとみのりと帝の三人での借り物競走の時か…」

 

「あの時は大変だった」

 

「でも、どれも良い感じに撮れてますね!」

 

10月も入って間もない頃

 

その日は晴れた空で、運動会日和となった

 

 

 

 

 

////////

 

「さんご、ハチマキはキツく縛らないといけないぞ」

 

「痛!痛いよ帝君…」

 

「フフ、狙うは優勝!白組が取る!」

 

「ローラもやる気充分だね!」

 

帝達一年生組は白組。

そしてその白組に対抗する赤組は

 

「今日は負けないぞ皆んな!」

 

「手加減なし」

 

先輩であるあすかとみのりだった

 

 

 

 

 

『さぁ、いよいよ始まりましたあおぞら中学校運動会!最初の種目は借り物競走!走者の方は集まって下さい!』

 

 

「よ〜し」

 

一年生組で借り物競走に出るのは帝だった

 

「帝君頑張って!」

 

「目指すは一位よ!それ以外は帰って来るな!!」

 

「応援してるよ!」

 

まなつ達にエールを送られて張り切る

 

そんな帝と一緒に走る者達はというと

 

「帝も借り物競走だったのか?」

 

「偶然ね」

 

「え…」

 

みのりとあすかも同じく借り物競走だった。しかも同じタイミングでの走者

 

「ま、まぁいい。皆んなの為にも一位になる!」

 

「望むところだ!」

 

 

『位置について、よ〜い──』

 

 

そしてスタートの合図である、スターターピストルが鳴り響く

 

「「「ッ!」」」

 

全員一斉にダッシュ。最初にお題箱に到着したのはあすか

 

「お題はっと…『元気な後輩』。それなら簡単だ!」

 

そして続く他の走者。少し遅れてみのりが到着する

 

「『頼りになる後輩』。あの子ね」

 

みのりとあすかは順調な滑り出し

 

最後に遅れて帝は走って来る。お題箱に来るまでの障害物に少々苦戦を強いられていた様だ

 

「お題は何かな?『嫁』。ん、嫁!?嫁って何だよ!?誰だよふざけた奴!」

 

帝はお題を取ってから一歩足りとも動かない。何せ難易度が桁外れなのだからだ。借りてどうこう出来る問題ではない

 

「嫁…アイツだな」

 

帝が動いた頃、あすかはお題を探すべく一年生のテントへ足を運んだ

 

「まなつ!」

 

「あすか先輩?」

 

「わたしと来い!」

 

「あすか先輩、まなつを呼ぶなんて何のお題何ですか?」

 

「元気な後輩だ」

 

それだけではさんごとローラは納得した

 

「分かりました!」

 

まなつがグランドに出ようとする時

 

「待って!」

 

そこへみのりがやって来た

 

「まなつ、付き合って!」

 

「わ、わぁ〜!みのりん先輩大胆!」

 

みのりの言い方に、さんごは興奮して思わず両手を顔を隠す

 

みのりとあすかは、まなつを巡っていた

 

「まなつ、お前が必要なんだ!」

 

「まなつお願い!頼れる後輩は貴女なの!」

 

「え、えぇ…そんな事言われましても…」

 

誰が仕込んだのか知らないが、急に昼ドラで流れる様な音楽が流れ始めた。

 

「え、何か昼ドラみたいな事始まってるよ!?」

 

「マジでどうでもいい…」

 

「わたし、みのりん先輩もあすか先輩も大好きなんです!」

 

「ならわたしを選べ!」

 

「まなつ!」

 

そんな茶番が繰り広げられてる中で、遅れていた帝がその場に現れた

 

「何やってんだ?」

 

「まなつを巡っての昼ドラだよ帝君!」

 

「それよりも帝はどうして?まさか、貴方もまなつを?」

 

「あ、いや。俺はローラ」

 

「え、わたし?」

 

帝はローラをお姫様抱っこしてその場を後にした

 

一方で三人は

 

「「どっち!」」

 

「わ、わたしは……どちらも選べないよ〜!」

 

「あの〜…もう三人一緒に行けば解決じゃないですか?」

 

未だに終わらない茶番にさんごが口を挟んだ

 

「あ、そうだね!みのりん先輩!あすか先輩!」

 

まなつは二人の手を引いて競技へと戻って行った

 

だがもう既にゴールテープは切られていた

 

 

『一位は皇さんです。お題は『嫁』でした』

 

 

「はぁぁぁ!?嫁って何よそれ!?」

 

「このまま一緒に夜のホテルへ」

 

「今すぐ降ろしなさいよォォォ!!」

 

 

 

 

 

『続いての競技は玉入れです。選手の人はグラウンド中央に集まって下さい』

 

 

「さんご行くわよ!」

 

「うん!」

 

玉入れに参加するのはさんごとローラ。少し珍しい組み合わせで、さんごは気張っていた

 

「こんな風に二人だけって初めてだね!」

 

「ええ」

 

 

『では、よ〜い──』

 

 

開始の合図が鳴り響いた

 

「おりゃおりゃおりゃ!!」

 

スタートの合図と同時にローラは、に持てるだけ持ち、二個ずつ玉を投げていく

 

「えい!えい!」

 

さんごも、ゆっくりとだが投げ入れる

 

白組、ローラが主に頑張るがそれに見合うだけの玉が中々入らない

 

逆に、赤組は少しずつ入り差を開けていく

 

「ローラ、無闇に投げてもダメだよ!」

 

「ク…この!」

 

「こうやって確実に!」

 

ローラを横目にさんごは投げる。すると簡単に入った

 

「そんなんじゃ追いつけないわ!」

 

「でも、この方が確実だよ?」

 

「負ける訳にはいかない…のッ!」

 

ローラが渾身の力で投げると、カゴの淵に球が当たりグラグラと揺れる

 

そして

 

「「あ…」」

 

そのままバランスを崩してカゴは転倒し、中身の殆どが地面へ転がった

 

「……」

 

「てへ!」

 

「ローラ!!」

 

 

『終了です!投げるのをやめて下さい』

 

 

「まだよ!隠れて入れるのよさんご!」

 

「えぇ…」

 

 

『そこの生徒、その行為は反則です。今すぐやめなさい』

 

 

 

 

 

『続いての競技はパン食い競走です』

 

 

「よ〜し!パン食べるぞ〜!!」

 

「まなつ、あおぞら中のパン食い競走のパンはトロピカルメロンパン」

 

「そうなんですか!?やった〜!」

 

パン食い競走に出るのはまなつとみのり

 

パンがトロピカルメロンパンだと知り、まなつは俄然やる気を出す

 

 

『走者位置について下さい』

 

 

「みのりん先輩負けませんよ!」

 

「今度は負けない」

 

 

『よ〜い──』

 

 

「「ッ!」」

 

まなつは全速力でメロンパンへと向かって行く

 

「パンパンパンパンパン!!」

 

「速い…」

 

いち早くパンの前に来たまなつは、ジャンプしてパンを食べようとする

 

「パン!トロピカルメロンパン食べれないよ〜」

 

「まだまだね」

 

みのりは狙いを定めて、一発でパンを咥えて走り出した

 

ほいひぃ(美味しい)

 

「みのりん先輩ズルい〜!」

 

まなつは必死にパンを食べようとするが、全く食べれず終わってしまった

 

 

 

 

 

『午後の競技を始めます。午後の競技最初は二人三脚です』

 

 

「これで俺は一応最後だな」

 

「絶対勝とうね!」

 

二人三脚に出るのは帝とまなつのコンビ。玉入れの時と同じ様に、こちらも珍しい組み合わせ

 

「さて、練習通りな」

 

「練習の時の様に変な所触らないでね」

 

「あれは事故だ」

 

「え〜!服の中に手を入れてたよね?」

 

帝は紐をキツく結び位置につく

 

 

『位置について。よ〜い──』

 

 

スターターピストルが鳴り、帝とまなつが走ろうとした時、一歩踏み出す前に二人仲良く顔から転けてしまう

 

 

「早いわよ!!」

 

 

テントからローラの声が大きく聞こえた

 

帝とまなつは顔をさすりながら立ち上がる

 

「びっくりした〜!急に目の前が真っ暗になっちゃうんだもん」

 

「トロピカり過ぎた。何でいきなり出オチしなきゃいけないんだ。今度こそ息を合わせるぞ」

 

「うん!せ〜の!」

 

ようやくスタートを切った帝達。だがもう既に出遅れていた

 

「うわ〜んどうしよう!」

 

「取り敢えず全力で行くぞ!」

 

お互いに息を合わせてペースを上げる。そのお陰か、少しずつ前の走者達に追いつく

 

「先ずは一組…ひゃわ!?」

 

「ど、どうしたまなつ?」

 

変な声を上げ、少しずつスピードが落ちていく

 

「さ、触ってるじゃんか!」

 

まなつの胸をよく見ると帝は肩ではなく、まなつの脇腹を通してそこから胸を揉んでいた

 

「触ってないって!」

 

「ひゃう!?も、もう〜///」

 

 

 

 

 

『え〜、続いての競技は女子騎馬戦です』

 

 

「あすか達赤組との総力戦よ!全力でやるわよ!!」

 

「「お〜!」」

 

まなつ達皆んな、頭として上に乗り気合いを入れる

 

 

『よ〜い──』

 

 

それから騎馬戦は激戦を繰り広げていた

 

そしてその死闘の末、両者共に三組ずつ残った

 

白組はローラ、まなつ、さんご

 

赤組はみのり、あすか、百合子

 

「誰が相手だろうとわたしが一番になる!覚悟しなさい!」

 

「結構強力な人が残ったね」

 

「生徒会長までいるよ」

 

「足引っ張るなよ」

 

「それはこちらの台詞です」

 

(この二人大丈夫かな?)

 

更に残り時間も僅かお互いに早く決着をつけたい

 

緊迫感が蔓延る中で最初に動いたのはさんごだった

 

「わたしが様子見で動くから、まなつとローラは…わあっ!?」

 

しかし、馬となっていた支えの人達が躓いて転倒した

 

これにより、落馬とみなしさんごは失格となった

 

「さんご大丈夫!?」

 

「おのれよくもさんごを!許さん!」

 

「わたし達関係ないだろ!?」

 

「問答無用よ!行きなさい!!」

 

ローラはあすかへ向かうが、その前に立ちはだかったのがみのり

 

「ここから先は通さないよ」

 

「クッ…まなつ!」

 

しかしまなつには百合子が相手をしていた

 

「生徒会長強い!」

 

「少々大人気ないですが手加減はしませんよ」

 

まなつからの援護は期待出来ない。残った選択肢は、みのりとあすかをローラ一人で相手をすること

 

「行くよ!」

 

「覚悟しろ!」

 

「何なのよ!!」

 

あすかが激しく攻め、みのりが隙を突いて手を伸ばしていく

 

ローラはあすかの手を弾いて、みのり手からは頭を大きく振って辛うじて避ける。

しかし防戦一方。攻めるには厳しい状況下

 

だがそれでも隙はある

 

(今!)

 

みのりにようやく隙が出来た。この好機を逃しはしなかったローラ

 

手を伸ばしてハチマキを掴み取ろうとした時、隣からあすかの腕がそれを阻害した

 

「あすか貴女!!」

 

「悪いなローラ!」

 

「「ッ!!」」

 

ローラとあすかの腕が交差する。腕を使っての鍔迫り合いが続く

 

「クッ…痛いわよ!」

 

「中々手こずってるようね」

 

「生徒会長まで…」

 

振り返ると百合子が迫っていた。どうやらまなつもやられたらしい

 

(マズいわ…)

 

「追い詰めましたよローラさん」

 

「観念するんだな」

 

「大人しくしてて」

 

「ひ、卑怯者!三体一なんて勝てる訳ないじゃない!」

 

あすかと百合子が同時に襲い掛かる

 

ローラは何とか二人の手を掴みギリギリの所で押さえた

 

「むぎぎぎ!!」

 

「ローラローラ」

 

振り返るとみのりが後ろに回り込んでいた

 

「や、やめなさい。今なら許してあげるから、ね?」

 

「何を許すんだよ…」

 

「ローラ……勝負とは無情なものなの」

 

「みのりやめ……あぁぁぁ!!」

 

ヒラリとローラのハチマキを取り上げて終了となった

 

 

 

 

 

////////

 

「結局勝ったのは赤組だったな」

 

「最後のあすか先輩のリレーも凄ったよね〜!」

 

「まなつだってそうだろ?いきなり一位に躍り出るんだから」

 

「次はわたし達が優勝するわ!」

 

「でも、もしかしたら一緒になるかも」

 

「来年が楽しみだね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

来年の運動会を楽しみに、また話し出したのだった




次回は後々重要?となるオリ回

ここまでの拝読ありがとうございました〜


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第69話 2022年4月16日

今回は後々関わって来る重要回的なアレです

ではスタート


「ロ〜ラッ!」

 

「ギャアァァァ!!」

 

急に背後から帝に胸を掴まれて、絶叫しながらも的確に肘で溝に一撃を加える

 

「で、で何よ」

 

「ゲホッ…い、一緒に部室に行こうって…」

 

「もっと普通に話し掛けれないの?」

 

「二人共どうしたの?早く部室に行こう」

 

「まなつ、ローラは日直だから」

 

「そういう訳だから先に行ってなさい」

 

仕方なく、帝達三人で部室へ行く事になった

 

 

 

 

 

「遅くなっちゃった」

 

屋上へと続く階段を登りながらそう呟いた

 

「はぁ…それにしても帝はよく飽きないわね。人の胸を掴んで何が楽しのか全然理解出来ない……したとしても嫌だわ」

 

部室前に着くと、外からでも分かるくらい中で騒いでいた

 

 

「まなつ〜!久し振りにパンツ見せて〜!」

 

「え、嫌…」

 

「おい二人共走り回るな」

 

「みのりん先輩何読んでるんですか?」

 

「料理の本」

 

 

ローラは肩をすくめて扉に手を掛ける。騒がしいけど温かな時間。それがこれから始まると思うと嬉しくなる

 

そしていつも通り元気に部室に入る

 

「もう皆んな!外まで声が聞こえるわよ!」

 

だが入った途端、急に静かになった

 

「?」

 

部室内は誰も居なかった

 

(はは〜ん、隠れてるわね)

 

そう思い、隠れてそうな場所を探し始める

 

「分かってるのよ。隠れてないで出て来なさいよ」

 

しかし数分探しても見つからない

 

「…ちょっと何処に隠れてるのよ。いい加減にしなさい!」

 

もう諦めたのか椅子に座った。その時やっと気付いた

 

「ちょっと、部室が何でこんなにも散らかってるのよ。それに埃だらけじゃない」

 

いそいそと落ちてる物を拾っていく。顔を上げようとした時、机に頭をぶつけてしまった

 

「いった〜!」

 

その時、机に置いてあった物も衝撃で目の前に落ちた

 

「もう…え?」

 

落ちたのは卓上カレンダー。カレンダーの日付けに丸をされており、その日付けに疑問を持つ

 

「4月16日…2022年?どういう事よ…?」

 

ついこの間ハロウィンが終わったばかりの筈。

しかし、日付けはそれよりも更に数ヶ月先を進ませていた

 

「もしかしてこれって…!」

 

ローラは少し前の事を思い出す。状況は違えど、こんな事を出来るのはたった一人しか知らない

 

「また夢……アリス居るのでしょ!出て来なさい!」

 

「はい何でしょう?」

 

「うわっ!?」

 

突然目の前に現れて、ローラは驚き尻餅をつく

 

「いつも思うけど、貴女出て来る時距離が近いのよ!もう少し離れなさい!」

 

「そんな悲しい事を言わないで下さい…しくしく」

 

「……それよりもまたわたしの夢の中に入ったわね?早く出て行きなさいよ」

 

しかしアリスは首を傾げて惚ける

 

「はて?夢ではありませんよ」

 

「は、はぁ?じゃあ一体何なのよ此処は?」

 

「有り得るかも知れない"未来"です」

 

「み、未来!?」

 

「えぇ、先日も話した通り、みのり様にも同じ様な夢を見せました。まぁみのり様が見た未来は、帝様と深い関係を持った光景ですが」

 

急なスケールの大きい話にローラはこんがらがって来た

 

「どうせまた変な事を企んでるんでしょ?分かった付き合ってあげる。わたしは何をすれば良いのよ?」

 

「ローラ様に見せたいものがあります。それを見るまで帰れません」

 

「何サラッととんでもない事言ってるのよ……まぁいいわ、その見せたいものって何よ?」

 

「それを探すのもローラ様自身です。それが出来れば帰してあげます」

 

「全部丸投げ…分かったわ。それじゃあ貴女も一緒に……」

 

ふと目を離した隙に、アリスは姿を消していた

 

「怒るのも疲れたわ…」

 

取り敢えず部室から出て、街の様子を見る事が最優先

 

外へ出て最初に思ったのが

 

「何よ…これ!?」

 

あおぞら市は暗く沈み、街は破壊されて滅茶苦茶な状態だった

 

「ッ!」

 

街へ急ぐも校舎へ走り抜けるが、そこでも目を逸らす光景があった

 

「皆んな!?」

 

廊下で沢山の人達がやる気を失って倒れていた

 

 

 

 

 

それは学校だけではない。街を出れば、街中全ての人々がやる気を失っていた

 

(たった数ヶ月でこんなにもなるっていうの?未来で、わたし達は負けたって事?)

 

ローラは走ってまだ動ける人を探す。しかしそんな人はもう何処にも居ない

 

あおぞら市は完全に壊滅してしまっているのだ

 

「誰か、誰か居ないの!?」

 

その呼び声に反応する者が居た

 

「「ヤラネーダ!!」」

 

突然建物の中から現れたヤラネーダ二体だった

 

「クッ!」

 

 

 

「プリキュア!トロピカルチェンジ!」

 

「レッツメイク!キャッチ!」

 

「フェイス!」

 

「ネイル!」

 

「ドレス!」

 

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

 

「おりゃぁぁぁ!!」

 

ラメールの一撃が一体のヤラネーダを吹き飛ばした

 

ラメールはすぐさまもう一体のヤラネーダの足元へ駆け込み

 

「やぁ!」

 

「ヤラネ!?」

 

足払いでヤラネーダを転倒させる

 

「マーメイドアクアポット!サーチ!」

 

転倒されたヤラネーダからやる気パワーを奪い返そうとサーチするが

 

「え、無い!?それじゃあこっち!」

 

一体目のヤラネーダにやる気パワーは無かった。ならば二体目とサーチする

 

「え…こっちのヤラネーダもやる気パワーを持ってない?じゃあ誰がやる気パワーを…」

 

「ヤラネーダ!」

 

「しま──」

 

やる気パワーを探すのに夢中で、ヤラネーダの攻撃を正面から受けて、建物の中に転がっていく

 

「油断した…でも、やる気パワーを持ってないなら容赦はしないわ」

 

ラメールはすぐさま飛び出し、飛び蹴りをかましてやり返した

 

「一網打尽で浄化してあげるわ!」

 

 

 

「パフュームシャイニーリング!」

 

「シャボンフォーム!」

 

「アクアチャージ!」

 

「プリキュア!オーシャンバブルシャワー!」

 

 

「ビクトリー!」

 

 

 

(思ってた以上に強かった。次は気を付けないと)

 

一息ついて変身を解いた直後、少し離れた場所で大きな爆発音が鳴り響いた

 

「また!?」

 

ローラは急いで走って行く

 

 

 

 

////////

 

「今度のヤラネーダは当たりなのでしょうね?」

 

やる気パワーを持っていれば、街中のやる気を一気に取り返せれる。

それを願い、マーメイドアクアパクトを持って走る

 

そして目の前の建物が大きく崩れた。

土煙りが大きく立ち、その中から一人の人影が飛び出した

 

「あれは!!」

 

思わずローラは建物の影に隠れた

 

ローラが見た人影に思わず二度見をしてしまう。

プリキュア に変身してるとはいえ、それは紛れもない自分自身。

キュアラメールの姿だった

 

「もしかしてだけど、あれが未来のわたしって事よね?」

 

ラメールは降り注ぐ攻撃を素手で弾き返して、建物の側面を足場にして大勢を整える

 

「敵はヤラネーダ?それとも魔女?まなつや皆んなは?」

 

ローラは必死に周りを探す。しかしそれらしい人影は何処にもない

 

戦っているのはラメール一人だけ

 

 

「この化け物め!!」

 

 

ラメールの怒号が離れているローラの耳に届く

 

ラメールの言う化け物が土煙りから出て来た

 

「一体だ…れ……!?」

 

ローラは目を疑った

 

それは今まで共に笑い合って、過ごして来た人物。

時に敵として現れた事もあったが、今はそんな事気にせず部活動を励んでいる

 

約束した。何か迷ったりしたら頼ってと。力になると

 

他人の幸せを大事にしてる彼

 

そんな彼が今、未来の自分自身と対立している

 

「帝…何で……」

 

 

 

 

 

////////

 

「最初の威勢はどうしたラメール?」

 

「黙りなさい!!」

 

ラメールは目の前に居る帝に、殺意とも言える目を向けていた

 

「そろそろ諦めたらどうだ?勝ち目は無い」

 

「うるさい!!」

 

ラメールは怒りのまま飛び出す

 

『DEFENCE!』

 

振るう拳は青い盾によって阻まれた

 

「ッ!!」

 

それでも尚、ラメールは拳を打ち付けるのをやめない。

破るまで叩き付けるつもりだ

 

「ほう…」

 

その甲斐あってか帝の盾にヒビが入る

 

「ハァッ!!」

 

最後の渾身の一撃で完全に盾を打ち砕いた

 

そのまま手を開いて帝の首を掴もうとする

 

「ッ!?」

 

しかし、掴んだかと思いきやすり抜けた

 

『FANTOME!』

 

直前でディスクを入れ替え、更に能力までも変更していた

 

すり抜けたラメールの後ろから首を掴んでは引き寄せ、地面に抑え込んだ

 

更に動きを封じ込める為に、首を足裏で踏み潰す

 

「がっ!?」

 

ラメールはジタバタして抵抗するも、肺に空気が送り込まれず、力が上手く入らない

 

「化け……もの…めぇ!許さな…いん、だからぁ…!!」

 

「これでようやくラメールも俺の手に──」

 

「やめなさい!!」

 

建物の影からローラが出て来て叫んだ

 

 

 

 

 

////////

 

なす術もなくやられるラメールを見て、ローラは我慢出来なかった

 

このままでは取り返しのつかない事になる

 

それを予感したローラは、二人の前に出て止めるしか出来なかった

 

「あれ?またローラか?」

 

そう言って、帝は足に力を入れてラメールの首をへし折った

 

抵抗していたラメールの手は、力を失くして動かなくなった

 

「なるほどな…別の時間軸から来たローラか。こんな芸当が出来るのはアリスだけだ」

 

ローラを一目見ただけで全てを察して当てた

 

「久し振りに制服姿の見れて嬉しいよ。しかし、リボンがズレてる。直してやろう」

 

帝はローラに近付き制服の乱れを整える

 

「今のお前の考えを当ててやる。『何でこんな事をする?』『一体何があったの?』。そんな所だろ?」

 

ローラは唇を噛み締めて黙る。それは図星を表していた

 

「悪いが今はその質問に答える気は無い。俺はラメールを…ローラを連れて行かないといけないからな」

 

制服から手を引いて、倒れてるラメールの頬を撫でる

 

「人は俺を歪んでると言うだろ。でも俺は、殺す程まで愛してる。文字通りな」

 

帝は立ち上がり、ローラの目を見て話す

 

「俺を止めたいなら俺を殺すんだな。ローラがな。そしてちゃんと見届けろ。この悲惨な結末を変えられるのはお前だけだ」

 

「変えるって?」

 

「アリスは帰すと言ったのだろう?」

 

「え、えぇ…」

 

「戻ったらすぐにでも俺を殺すんだ」

 

想像もしない言葉を投げられてローラは一気に冷静さを欠く

 

「じ、冗談じゃない!帝は大切な友達よ!そんな事出来る筈が──」

 

「何にも分かってない。その大切な友達が、今この地球を終わらせようとしている!もしやり直せるなら、ローラはきっと俺を殺す」

 

「そんな筈は無い!だってわたしは貴方の事が──」

 

「それがどうした?絵空事では何も救えない!周りをよく見ろ」

 

現実、街は崩壊し、人々はやる気を奪われ、未来の自分はたった今その命を落とした

 

「…道を踏み外したならもう一度戻せば…」

 

「ローラもそう思った。けれど俺からしたら鬱陶しく思える。対話が無理だと判断して結局勝負に出た。勝つと信じて。だが負けた、負けるんだよ」

 

「それでもわたしは…信じる!」

 

「流石俺が惚れ込んだ女だ。ますます気に入った……俺はこれで失礼する」

 

ラメールを抱いた後、頬擦りし、自分の手の中にラメールがいる事を堪能して立ち去ろうとする

 

「わたしは絶対帝を止める!どんな犠牲を払ってでも!」

 

「…どう足掻こうと、ローラは此処で死んで俺と一生共にする。悪いが、俺のやる気が勝つ」

 

ラメールを抱えて姿を消した

 

「ここまでよ」

 

突然アリスが背後に現れ、指を鳴らすとローラは意識を失った

 

 

 

 

 

////////

 

「……ラ!」

 

(ぅ…ん…)

 

「ロー………ラ!」

 

(だ…れ…?)

 

誰かの声がする。その声に誘われ目を開けると

 

「ローラ!おいローラ!」

 

目の前に帝の顔があった

 

「みか…ど?」

 

「何こんな所で寝てるんだよ?風邪引くぞ」

 

「え、寝て…」

 

顔を上げると、教室で自分の机に突っ伏して居た

 

「中々部室に顔を出さないから心配したんだぞ。来てみれば寝てるで」

 

「帝…」

 

「何ロー…ラ?」

 

ローラはいつの間にか涙を流していた

 

「おい大丈夫か?何か悪夢でも?」

 

「え?あ…」

 

ローラも自分が涙を流してる事に気付いた

 

「な、何でもないわ…」

 

「そう?なら早く部室に行こうか」

 

「ねぇ帝」

 

「何?」

 

「これからも、わたし達の側に居てくれるわよね?」

 

「何当たり前の事言ってんだ?変なローラ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歩く彼の背中を見て願うしかなかった

 

帝が、あの様な道を進まないことを




不意に重たい話を盛り込みます

間に合えば、次は打って変わって日常回を挟みたいです

ここまでの拝読ありがとうございました〜


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第70話 汝はトロピカなりや?

前回と比べて温度差が激しいです。
馬鹿が人狼やるとこうなります

ではスタート!


トロピカる部は只今、桜川を含めて総出で人狼ゲームをしていた

 

「あまりターンが無いからな。怪しい奴を片っ端からから吊るし首にするぞ」

 

「あすか先輩怖〜い!」

 

「俺占い師」

 

「待って!わたしも占い師です!」

 

帝が占い師のカミングアウトに遅れて、自分もとまなつも手を挙げる

 

「わたしの占いでは、さんごは白だったよ!」

 

「俺はローラが黒だった」

 

「二人共占い師か…しかも帝に関してはローラが黒と言ってる」

 

「だけど、どっちかが嘘を吐いてると言う事」

 

「わたしは無実よ!」

 

「「それなら」」

 

そこで手を挙げたのがみのりと桜川だった

 

「あ、桜川先生から」

 

「では…ローラさんを首吊りすれば良いんじゃないのかな?」

 

「わたしはまなつ。人狼又は狂人者の可能性も捨て切れない」

 

「こっちも意見が割れたな…てかみのり、それだと埒があかないぞ?まぁ、そういうゲームだから仕方ないけど…」

 

「あ、そろそろ投票の時間ですよ」

 

さんごは時計を見せ、投票箱と紙とペンを出す

 

そして集計が終わる

 

その結果は

 

 

まなつ 一票

 

ローラ 六票

 

 

「ちょっと!!」

 

「よし、ローラは首吊るしだ!」

 

「待って、待ちなさいよ!嫌ぁぁぁぁああ!!」

 

 

一日目 昼

 

ローラ 処刑

 

 

二日目

 

みのりが噛まれました

 

 

「「「そんな、みのりん先輩!!」」」

 

「わたしの心配は!?」

 

「ローラ、死人は喋っちゃダメ。三途の川を渡るよ」

 

「渡りたくないわよ…」

 

みのりとローラは少し席から離れ、ゲームは再開される

 

「キュアップ・ラパパと魔法の言葉で!帝が白!」

 

先程の占いで帝は人狼陣営と断定となった。そこで、真の占い師であるまなつが占ったのは帝

 

「人狼ではなかったがこれで帝が狂人者、つまり裏切り者と確定だな」

 

「フ、ならば人狼を勝たせるのみ!」

 

「そうはさせるか!帝を吊るし首だ!」

 

「それはおかしいだろ!?」

 

「夏海さん、もう人は絞れてますから皇さんは無視したらいいんじゃないかな?」

 

「それに、人数的にもうこれが最終ターンだと思うよ」

 

今の所カミングアウトしてないのはあすか、桜川

 

どちらかが村人で人狼。この二日目の投票で全てが決まる

 

「俺はあすか先輩が怪しい」

 

「何でだ?」

 

「終始殺る気満々じゃないですか〜」

 

「お前狂人者だよな?」

 

「村人確定のさんごは?」

 

「わたしは先生かな?あすか先輩と違って話してる姿が少なかったし」

 

「一之瀬さんよりかは喋ってる気はするけど…」

 

そして投票時間となった

 

その結果は

 

 

あすか 一票

 

桜川 四票

 

 

「先生ごめんなさい!」

 

 

二日目 昼

 

桜川 処刑

 

 

三日目

 

犠牲者なし

 

 

三日目に犠牲者なしという事で、人狼が全滅した

 

これで村人陣営の勝利条件を満たしたのだった

 

「「やった〜!」」

 

「クソッ!まさか桜川先生が人狼だったなんて!」

 

「まさか帝、桜川先生に票を入れたのか?」

 

「納得しないわ!次期女王となるわたしが生き残れさえ出来なかったなんて!」

 

「じゃあもう一回?」

 

「まだ、職員室に戻らなくても大丈夫だからいいわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだまだ、トロピカる部の人狼ゲームは続くのであった




今週はこれで終いや〜

配役はこんな感じです

帝 狂人者

まなつ 占い師

さんご 村人

みのり 村人

あすか 村人

ローラ 村人

桜川 人狼

ここまでの拝読ありがとうございました〜


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第71話 グランオーシャンへ訪問!新たな指輪の存在!

大分遅れてしまいました

ではスタート!


ある日のこと

 

学校の屋上でまなつとローラは、昨夜見た事を話していた

 

「グランオーシャンに招待された?」

 

「そうなんだよ!昨夜いきなり、トロピカルハートドレッサーに女王様が出て来て呼び掛けたの!」

 

「わたしも最初夢かと思ったけど──」

 

けれどそれに不信と思いあすかが会話を遮った

 

「女王様から連絡ってそんな事出来たのか?」

 

くるるんがやって来た時、ローラがマーメイドアクアパクトを手にした時を除いて女王との関連が全くない。

しかもそれは全てローラ関係

 

まなつ達からしたら驚きもあるが、それと同時に不信がるのも致したかない

 

何故なら、今まで直接連絡をして来なかったからだ

場所が海の底のグランオーシャンとはいえ、こんな簡単に連絡出来るなら何らかの方法でその手段を用いた筈だ

 

音信不通の人が急に連絡したとなると罠の可能性が捨て切れない

 

「わたしもビックリしたんだけどね、グランオーシャンの皆んなのやる気が回復して来たから連絡出来る様になったんだって」

 

「そうか、それは良かったな」

 

「それでね!」

 

まなつとローラの話では、これまでの活躍を労う為に一度、プリキュア 達をグランオーシャンに招待して帰って来るようにとのこと

 

「凄いよね〜!わたし一度行ってみたかったんだローラの故郷!」

 

「どんな所何だろうねグランオーシャンって!」

 

「やっぱり昔話やお伽話とかで出て来る海の王国、もしくは海底に沈んだムー大陸やアトランティスのモデルとか。さもなくばニライカナイ」

 

中でもみのりが、未知なるグランオーシャンに一番興奮していた

 

「帝は一度わたしと訪れた事あるわよね。まだ嬴政って名乗っていた頃に」

 

「えぇ〜いいな〜帝!」

 

「いいな〜って、あの時あとまわしの魔女から逃げてる途中だったから、まともに見れてないぞ」

 

「それでもだよ!今度の週末は、グランオーシャンでトロピカっちゃおう〜!

 

 

 

 

 

////////

 

そして週末

 

ローラは人魚の姿、まなつ達はプリキュアの姿、帝はオーシャンステッキを持って海の中へとダイブした

 

進む先には大きな渦が発生していた。ローラが言うには、魔法の力で守ってるらしい

 

そしてそれを開けるには人魚か、海の妖精の力を借りなければならないというものだった

 

渦を通って抜けた先に待っていたのは、ローラの故郷のグランオーシャンだった

 

「めちゃくちゃトロピカってる〜〜!!」

 

「ん、何だアレは?」

 

グランオーシャンの中から、一隻の船がこちらへ向かって来た

 

「乗れってことか?」

 

「ほら行くわよ!」

 

船に乗るとそのままグランオーシャン内へと案内され、そこに住む人々に大歓迎された

 

「歓迎されてるね。少し恥ずかしい気もするけど…」

 

「わたし今、本物のおとぎの国に居る!」

 

「凄いねローラ!」

 

「わたしが地上に行った時は、まだ皆んなやる気を奪われて大変だったけどもうこんなにも復興してるのね」

 

 

 

 

 

いつまでもプリキュアの姿でいる訳にもいかず、一度変身を解いた。

溺れてしまう不安もあったがその心配は無かった

 

「リップを持っていれば、変身を解いても水中で息が出来るなんて」

 

「本当プリキュアのアイテムって便利だよな」

 

また、謎だったアイテムの仕組みをも知る事が出来た

 

そして廊下を進むこと少しすると、女王が居るという部屋に辿り着いた

 

「女王様ただいま!」

 

「おかえりなさいローラ。ようこそグランオーシャンへ。遥々ご苦労様でしたね」

 

「初めまして女王様!わたし夏海まなつ!女王様のお名前は?」

 

いつもの様に接しようとするまなつに対し、皆んな黙ってしまい呆れてしまった

 

「無礼…」

 

「え、そうかなぁ?」

 

「女王様は女王様だもの。そうでしょう?」

 

「フフ、改めまして。わたしがグランオーシャンの女王です。皆さんの活躍にはいつも感謝していますのよ。ありがとう」

 

勿体ない言葉に照れつつも、感謝しているのは女王だけではない。

女王がローラを人間界に送り出さなければ、プリキュアどころか今の皆んなとの出会いも無かった

 

「心ばかりですが、お礼の食事を用意しました。どうぞこちらへ」

 

その誘いも甘く受け止め、楽しみながらもより良い時間を過ごした

 

そしてお腹も膨れ、一度落ち着いた頃合いで女王から話があった

 

「実は皆さんを呼んだのには、お礼の他にもう一つ理由があります」

 

「理由?」

 

「えぇ、皆さんが見つけてくれた大地のリング。あのリングには対となる『海のリング』が存在するのです。そしてそのリングは、このグランオーシャンの何処かに隠されているのです」

 

「その海のリング気になるな。大地のリングもプリキュアの力になったし探す価値はありそうだけど?」

 

その海のリングも大地のリング同様にプリキュアの力になれば、今後のあとまわしの魔女達相手にも遅れを取ることなく戦える

 

探さない理由が無い

 

「でもどうやって探すの?」

 

「何か手掛かりがあれば…」

 

「伝承とか言い伝えしとか?」

 

「言い伝えによれば、海のリングは大地のリングに反応する様です」

 

場所の手掛かりは無かったが、大地のリングが探知機代わりになるということだけでも知れた

 

「なら丁度良いわ。海のリングを探しながら、皆んなでグランオーシャンを見て周りましょうよ。わたしが案内するから」

 

ローラの提案により、グランオーシャンを巡りつつ海のリングを見つけるのを同時にし始める

 

 

 

 

 

探す事時間が経ったが、それでもグランオーシャンをたっぷり堪能出来て満足感だった

 

そして今はとある花畑にやって来ていた

 

「此処はシャボンフラワーの花園。わたしのお気に入りの場所よ!」

 

「めっちゃトロピカってるよ!」

 

「この花の実はね、くるるんの大好物かいがらクッキーの原料なのよ」

 

「なら、集めてお土産に持って帰らない?」

 

「それはいいかもな……あれ、この匂いって確か」

 

翼はシャボンフラワーの匂いを嗅いである事を思い出した

 

「なぁローラ、この香りって南乃島でブレスレットを見つけた時の匂いじゃないか?」

 

「…本当そうね。あの時からのモヤモヤが今になってスッキリしたわ」

 

「それは良かったねローラ。あ、そうだ!ローラのお父さんとお母さんは?」

 

此処に来るまで人魚が沢山居たが、ローラの両親には一度も目にしてない

 

「ローラのご両親に挨拶しないとな。将来夫となる男だから。認めさせて貰えるチャンスだ!」

 

「残念帝!人魚は人間とは違って親からは生まれないの。大きな貝から生まれるのよ!」

 

「そうなの!?」

 

ローラ、というより人魚の意外な誕生に驚きを隠せなかった

 

「それってローラとの子供が作れないってことかなのか!?」

 

「あ〜可哀想な帝!生めれるなら生んだあげても良かったのにね〜!」

 

「でも人間の姿になれば解決だと思うけど」

 

何の事も無いみのりの発言に、ローラは冷や汗が止まらなかった

 

確かに人魚の姿では無理とは思うが、人間の姿になればその可能性もあるということ

 

「それってまだ望みは消えた訳じゃないって事だよな?そうだよな!!」

 

「ちょちょちょ落ち着きなさい……ギャアァァァ!!胸に顔を埋めないでよ!!」

 

「トロピカルパクトも貝の形をしてるし、何か縁が深いのかもな」

 

「……そうだ忘れてた。わたしまた夢を見たんだ!伝説のプリキュアの夢」

 

伝説のプリキュアの夢。それは前にも同じ様な事があった

 

あの時夢を見てから大地のリングが現れた。今回もきっと何か意味があるに違いない

 

「で、どんな夢を見たんだ?」

 

まなつの話によれば、何者かと戦ってる夢との事。そして何故か伝説のプリキュアが泣いていた

 

「海のリングに繋がる手掛かりは無いようだが…」

 

「とにかく一応女王様にも聞いてみましょう!」

 

 

 

 

 

////////

 

「リングは見つかりましたか?」

 

「まだです。ところで女王様くるるんは?」

 

「さぁ?」

 

「え、『さぁ?』」

 

素っ気ない態度にローラは思わず聞き返してしまった

 

「これを、くるるんにプレゼントしようと思って」

 

「何ですそれは?そんな汚い実もペットの話もどうでもいいのです」

 

くるるんもシャボンフラワーも怪訝な目でそう言い放った。

先程まで温厚としていた女王に違和感を感じ始めた

 

「それよりリングです。ちゃんと探したのですか?」

 

「えっと、一応そのつもりですけど…」

 

「仕方ありませんね。大地のリングとコンパクト、そしてステッキを渡して下さい。一時的にパワーアップして探しやすくします」

 

「えっと、分かりました…」

 

女王の威圧感に押され、まなつは素直に渡そうとするが帝とローラがそれを止めた

 

「──お前、本当に女王なのか?」

 

「女王はくるるんの事を凄く可愛がってた。どうでもいいなんて言わない!シャボンフラワーの実も汚い呼ばわりしない!トロピカルパクトやオーシャンステッキを渡せとかも変よ!薄情なさい!貴女は一体誰?」

 

ローラと女王が一触即発する時、扉からいなくなってたくるるんが飛び出して来た

 

「くるるん!くるるるん〜!」

 

「待ちやがれコイツ!」

 

くるるんの後に居る筈のないチョンギーレまでも入って来た

 

「もう言い逃れは出来ない。さぁ、お前の正体を表せ。さもなくば力づくで…」

 

帝がオーシャンステッキを手に掛けるのを見て諦めたのか、女王は溜め息をついて泡となって消えた

 

「バレたらしょうがないわね」

 

女王の下にはヌメリーが隠れていた。やはり、ローラの言う様に先程まで会っていた女王は偽物

 

「幻!?」

 

「そうよ。この街に居た住人は全部偽物。あとまわしの魔女様から授かった蜃気楼で出来た幻だったの」

 

「くるるん!くるるん!」

 

くるるんに呼ばれて急いでその場を退出した

 

 

 

くるるんの案内で、奥の奥へと進んだ先の部屋に入ってそこで衝撃の光景を目にした

 

「なっ!?女王様!?」

 

暗い部屋の中で本物の女王が捕まっており、他の住人も怪しげな装置を取り付けられていた

 

「あ〜あ、見つかっちゃった!」

 

「女王様や皆んなに何をしたの!?」

 

チョンギーレやヌメリーだけではなく、エルダまでもグランオーシャンに侵入を許していた

 

「その装置で妖精達の記憶を吸い出して、その記憶を基にグランオーシャンの住人の幻が作られたって訳」

 

「記憶を吸い出すなんてよくもこんな物を!!」

 

「その装置は元々此処にあったもの(・・・・・・・・・・)よ?」

 

元々(・・)だと?」

 

「とにかく女王や皆んなを助けるよ!行くよ皆んな!」

 

 

 

「「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」」

 

「「「「「レッツメイク!キャッチ!」」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

「今日も元気だ!」

 

「「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」」」」

 

 

「ルーレットスタート!」

 

『ATTACK!』

 

 

 

あの場では狭く戦い難い為一度表へ出て戦闘する事となった

 

「もう逃げられないよ」

 

「まぁそんな慌てんな。お前らの相手はコイツだ」

 

チョンギーレは壺からタコを一匹だけ取り出した

 

「おいまさか…止めろ!!」

 

 

「出てらっしゃい!超ゼッタイヤラネーダ!」

 

 

帝の言う事など無視してヌメリーは、タコを使ってヤラネーダを生み出した

 

「生き物がヤラネーダに!?」

 

「こんなの初めてかも…!」

 

「初めても何も生き物をヤラネーダにする事は禁止されていた」

 

「何でよ?」

 

「余りにも強過ぎて危険なんだよ。俺があとまわしの魔女に居た時でさえも、オッカマーに注意されてそれだけは避けていたが…」

 

あのオッカマーでさえも使用を堅く禁じらていたやり方。

その強さはあまりにも未知数。何が起きても不思議ではない

 

「やぁぁぁ!!」

 

「「ハァッ!!」

 

「「「ハァァァ!!」」」

 

サマーの連続攻撃、帝とラメールの踵落とし、コーラル達揃っての攻撃を同時に繰り出したが、当のヤラネーダには全く効いてなどいなかった

 

「ッ!!」

 

容易く跳ね返されたが、パパイアは大勢を整え目眩しの為のビームを放つ

 

「ヤラネーダ!」

 

しかし、ヤラネーダは建物の破片を投げ捨て、ビームから守る盾と同時にパパイアへの攻撃へとした

 

「ッ!?」

 

ビームは弾かれたが、間一髪のところでパパイアは何とか避け切った

 

「このまま防戦一方はマズイわ!帝合わせて!」

 

「分かった──来い、プリキュアの王杖!」

 

『CORAL!』

 

すぐさまトロピカルディスクに変え、ローラはマーメイドアクアパクトをシャボンフォームとチェンジさせる

 

「プリキュア!オーシャンバブルシャワー!」

 

「もこもこコーラルディフュージョン!」

 

オーシャンバブルシャワーに、もこもこコーラルディフュージョンを纏わせた強力な一撃が直撃した

 

これで倒したと確信した

 

 

「ヤラネーダ!!」

 

「「ッ!?」」

 

ものともせず打ち払ってみせた

 

「俺とラメールの力が通用しないだと!?」

 

「クッ…一気に決めるわよ!!」

 

 

 

「ランドハートクルリング!」

 

「「「「「おめかしアップ!」」」」」

 

「「「「「エクセレン・トロピカルスタイル!」」」」」

 

「「「「「5つの力!大地を照らせ!」」」」」

 

「「「「「プリキュア!ランドビート・ダイナミック!」」」」」

 

 

 

「これなら…なっ!?」

 

「ヤラネーダ!!」

 

だが、ランドビート・ダイナミックでさえも容易く弾かせて失敗に終わらせた

 

「ヤラネーダ!」

 

「これ以上調子に乗るな!」

 

『ABSOLUTE!』

 

ヤラネーダの触手が襲い掛かって来るが、帝は冷静に多少する

 

「【動くな】!」

 

言葉を発すると同時にヤラネーダの動きが止まった

 

「後は煮るなり焼くなり…」

 

「ッ!帝君動いてる!効いてないよ!!」

 

僅かにヤラネーダの触手が動き始め

 

「ヤラネーダ!!」

 

そしてこれまで絶対的な力を誇っていたABSOLUTEの言霊が破られた

 

「何だと!?」

 

触手は帝達を拘束し強く締め上げる

 

「こんな奴らに負けたくない!」

 

「こんなに綺麗な国を…」

 

「優しい妖精達を…」

 

「これ以上好きにさせてたまるものか!」

 

「絶対諦めないわ。わたしは皆んなを守って、グランオーシャンの女王になるのよ!!」

 

すると近くにあった貝の石像から、青き光が輝き満ちり辺りを照らし出す

 

その拍子に、ヤラネーダは目を眩ませて拘束を解いた

 

そして光の中心には帝達が探し求めてた物、海のリングがあった

 

「わたし達の心に応えてくれたのよ。あの指輪が有ればきっと…」

 

だがそんな希望も一瞬で絶望に塗り替えられる

 

今まで身を潜めていたバトラーが現れ海のリンクを横取りしたのだ

 

「ご苦労様です。海と大地のリングは、プリキュアの強い心に反応して力を発揮します。ですから、グランオーシャンを乗っ取って貴方達を追い込んでみた訳ですが、見事に上手く行きましたね」

 

「海のリングが狙いだったのか!」

 

「さて、これで貴方達の役目は終わりです。やってしまいなさい」

 

「クッ…ッ!?」

 

全員ヤラネーダを向き直るのだが、ラメールはヤラネーダの背後に注目した

 

「マズい見て!」

 

グランオーシャンを覆っていた結界からヒビが入り、外の海水が流れ込んでいた

 

「グランオーシャンを、外から守っていた魔法の壁が壊れる!!」

 

「俺が修復する!元に戻──」

 

プリキュアの王杖の力で壁を修復しようと言葉を紡ごうとしたが、背後からの水鉄砲でステッキをはたき落とされてしまった

 

「そうはさせませんよ」

 

妨害したのは当然バトラーだった。杖から水鉄砲で出したのだ

 

「貴方の力は驚異的です。その力は無機物にも反応してしまいますからね」

 

帝の力はステッキを無しでは意味を成さない。そこの弱点を突かれた

 

「ッ!!」

 

ステッキを拾い上げるがもう遅い。壁が壊れた大量の海水がグランオーシャンへ流れ込み、帝達を呑み込んでしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

激流は無情にも、グランオーシャンの下まで流して行った




今週中には投稿したいです

ここまでの拝読ありがとうございます!


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第72話 失くした記憶と海の指輪、そしてPICAROの兆し

あと少し!あと少しで最終目標のお気に入り70!精進します

ではスタート!


「ぅ…ん…あ…帝?」

 

「気付いたか」

 

「此処は?」

 

まなつが目を覚ました後に続いて、さんご達も目を覚ました

 

「壁が壊れて街の方まで流された」

 

「グランオーシャンを、皆んなをあんな目に合わせるなんて!許せない!!」

 

「本物の女王様を助けないと!」

 

 

 

 

 

何とか城の中へと戻って来たはいいが、帝達は迷子になっていた

 

「ローラ地図とか持ってないの?」

 

「持ってないわよ!こんな場所まで来た事ないから…」

 

取り敢えずは手当たり次第に扉を開けて始める。

その中でも一部屋だけ気になる所があった

 

中は洞窟の様に薄暗いが、壁に埋め込まれてある淡く光る貝が辺りを照らしていた

 

「何だろうコレ?」

 

まなつは淡く光る貝を触れてみた

 

「──ッ!!」

 

「どうしたまなつ?」

 

「これって…」

 

貝を触ってからまなつの様子がおかしくなっている。

不自然と思い、帝達も壁に埋め込まれてる貝に触れてみる

 

「「「「「──ッ!」」」」」

 

触れると頭の中に色んな映像が流れ込んで来る。

その映像には、人魚と人間が共に笑い合って過ごしていた

 

「もしかしてこれって人魚の記憶?」

 

「ヌメリーが言ってた装置を使って、色んな人魚達の記憶が此処にあるのか」

 

「あ…」

 

そして一番大きく強い光を放つ貝を見つけ、全員それに触れて記憶を読み取った

 

今度の記憶は、他の人魚が伝説のプリキュアと何者かが戦ってるのを傍観してる記憶だった

 

「伝説のプリキュアを見つけた人魚の記憶……?」

 

ローラは他にも気になる記憶の貝を見つけた。今気にする事でもなかったが、どうしてもその記憶を覗いて見たかった

 

「……──ッ!?」

 

その貝に触れ、人魚の記憶を見た

 

見を終わったのか貝から手を離すも、全く動こうとしなかった

 

「どうしたローラ、伝説のプリキュアについての記憶が他にもあったのか?」

 

「え、いや何でもない記憶よ…」

 

「そうか。それなら早いとこ此処から出るぞ」

 

「そうね、早く女王様を助けないと」

 

 

 

 

 

////////

 

「ローラ、人間の子達。ありがとうございます」

 

ようやく女王様が捕まっていた部屋へと辿り着き、他の妖精達も解放して落ち着きを取り戻した

 

「改めまして女王様、わたしの名前は夏海まなつ!女王様の名前は?」

 

「私は『メルジーヌ・ミューゼス・ムネモシュネ』。貴女達がローラが見つけた人間なのね」

 

「メルジーヌ女王様、海のリングが奪われちゃったの!」

 

「あとまわしの魔女の目的は何ですか?」

 

「『愚者の棺』を解放する事です。海の世界に伝わる伝説の秘宝。愚者の棺がやる気パワーで満たされる時、不老不死の力が得られると言われています」

 

「その力を得て魔女は何を?」

 

「それは恐らく『永遠のあとまわし』」

 

魔女が企む最後の到達点が永遠のあとまわし。それがやる気パワーを奪う理由と、あとまわしの魔女の計画

 

「やる気パワーにそんな莫大な力が…」

 

「愚者の棺の力を解放した者は居ません。それ故、誰も知らないのです。ですから不老不死も本当に存在するかどうか…」

 

存在しようがしまいが、どちらにしろやる気パワーを奪う事が悪い事は承知。どんな力だろうとそれを阻止しなければならない

 

「私から話すことはこれが全てです。皆さん、魔女の野望を食い止めて下さい」

 

「待って女王様…もう一つ、話してない事無い?」

 

そう言ってローラは、人魚の記憶を見た洞窟の貝を見せる

 

「ッ!?」

 

それに激しく動揺した女王。明らかに何かを隠してバレてしまった時の反応

 

「気付いてしまったのねローラ……」

 

「女王様、コレはわたしの記憶よ。わたしの知らないわたしの記憶」

 

「え、何どういう事?何を見たのローラ?」

 

ローラはその貝をまなつに触れさせて、自分と思われる記憶を見せつけた

 

「──」

 

そこに映っていたのは、南乃島で遊ぶ二人の幼い女の子達の記憶。

一人はローラなのだが、もう一人はまなつだった

 

「これって、あの時のわたし」

 

「まなつは覚えていたの?」

 

「うん、あれがローラだったんだ。まさか人魚だったなんて思わなかった。海が大好きな子で、島の外から遊びに来た子だと思ってた」

 

幼い頃の時、二人は既に面識はあったらしい。しかしローラは記憶を失くしており、まなつもローラどころか人魚という事すら知らずじまいだった

 

それでもその時は楽しく遊んだ。時間を忘れる程まで

 

そして約束したのだ。また次の日も会って遊ぼうと

 

「でも次の日、秘密のビーチに行ってもその子はもう来なくて。わたし、その子の名前も聞かなかった。だから何処の子かも分からなくて」

 

それがきっかけで今のまなつが出来上がった。

後悔しない様に、その時感じた一番大事な事をやる

 

「だからわたし決めたんだ。初めて会った人には最初に名前を聞こうって!いつでも、今一番大事な事をやろうって!」

 

「でも、わたしはそんな事を覚えてない。人間の世界に行った事も、まなつと会って遊んだ事も!どうしてなの……これってどういう事なの女王様!?」

 

「仕方のない事なのですローラ。それが人魚の国の掟。人魚の世界と人間の世界は交わってはいけない。それが古来より決まりごと」

 

人間と関わった者は記憶を消す。女王は冷徹にも、それをずっと隠しては守って来ていた

 

「じゃあ、今わたし達がこうして話してる事も女王様からの記憶から消されちゃうの?」

 

「えぇ、全てが解決した時には」

 

「わたしの記憶も?わたしがまなつやさんご、みのり、あすか、帝と過ごした事も?」

 

「そうです。全てが終わって、ローラがグランオーシャンに戻った時に」

 

「わたしが女王になっても!?」

 

「それが掟ですから」

 

ここまで頑なに掟を守り続ける理由があまりにも不明瞭過ぎる。理不尽過ぎる

 

それが限界を迎え、ローラの中で気持ちが込み上げる

 

「そんなの酷い!わたしは嫌!皆んなの事忘れたくない!そんなの絶対嫌!!」

 

それでも女王の意思は折れる事は無く、首を横に振るだけだった

 

「クッ!!」

 

「なぁ女王様、さっきの愚者の棺で一つ質問がある」

 

「…何でしょう?」

 

「愚者の棺────もし、人間が使えたらどうする?」

 

「帝、お前何を言って…」

 

今、その話をするのがとてもおかしかった

 

それでも帝は平然と話を続けた

 

「ローラの記憶は俺だって消させたくない。それは皆んなだって同じ気持ちだ。だから愚者の棺を俺が使って、この国を支配する」

 

「帝君」

 

「いや考えてみろよ。皆んなが幸せになる事が俺の望みだ。ローラの記憶を消されたら元も子もない。そのついでに魔女達も倒して、地上も支配する。そうすれば皆んな幸せになる」

 

「帝待って…」

 

「あ、そうだ!支配した後は人魚達にも交流の場を設けようよ!そうすれば、トロピカった事が沢山──」

 

「待ってって言ってるでしょ!!」

 

ローラの怒号がグランオーシャン中に響き渡った

 

しかし帝は何に対してローラが怒っているのか理解が出来なかった

 

「ローラ一体何を怒ってる?全てを掌握して、記憶が残ればまた皆んなでトロピカるな事が──」

 

「帝ふざけてるの?こんな時に何を言ってるの?自分が言った事ちゃんと理解してるの?」

 

ローラは首を傾げながら、光の無い瞳で帝の顔を覗き込んでいた

 

「は?だから、俺がグランオーシャンも地上も全て支配して掌握すれば、ローラも記憶を消さずに済んで皆んな幸せ……に………ッ!!?」

 

そこでようやく自分が何を言ったのか理解して、口を思いっきり塞いだ

 

(あれ?俺はこんな時に何を言ってんだ?これじゃあまるで、さんごの時と何も変わって…)

 

激しく動揺する素振りから見て、完全に無意識に言った事なのだろう

 

しかし逆にそれが恐ろしかった

 

「帝、わたしの目をよく見て。そしてその目に映る自分の顔をよく見なさい」

 

「ぁ…」

 

口から手を離すと、口角が上がっており笑みを浮かべていた

 

「何で、笑ってるの?そんなに面白い事なの?他人を犠牲にしてまで掴む幸せが?」

 

心の何処かで、まだあの時との折り合いがついてない。そうローラは感じてしまった

 

その時だった。アクアポットからトロピカルハートドレッサーが現れ、鏡に人間界で暴れる超ゼッタイヤラネーダが映し出された

 

「待ちが大変な事になってる!」

 

「救えるのはわたし達だけ」

 

「ローラ!」

 

「今一番大事なのは皆んなのやる気を守ること!」

 

ローラは女王に睨みつけた後その場を後にする。

けれどローラの腕を帝が掴んだ

 

「…悪い。もうあんな事は言わない」

 

「…お願いね。わたしだって帝とはもう戦いたくないから」

 

最後に仲直りのハグを済ませて急いで人間界へと戻って行った

 

 

 

 

 

////////

 

地上へ出るとドレッサーから見た場所から、移動して浜辺でやる気パワーを奪っていた

 

「待ちなさい!」

 

「おや、随分と渋といですね」

 

「行くよ皆んな!」

 

「「「「「オーライ!」」」」」

 

 

 

「「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」」

 

「「「「「レッツメイク!キャッチ!」」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

「今日も本気だ!」

 

「「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」」」」

 

 

「プリキュア の王杖!」

 

『ABSOLUTE!』

 

 

 

「ヤラネーダ!」

 

触手で襲って来るも全員何とか対処してやり過ごせた。

しかし触手でも攻撃が効かないと見るや否や、墨を吐いて来た

 

『ぺけ!』

 

コーラルが防御をしてくれたが、防いだ事によって墨が辺りに散ってしまい自分達の視界を封じてしまった

 

「見えない…うわっ!」

 

「フラミンゴ!?キャアァァ!!」

 

視界を奪われた中で、フラミンゴとラメールに容赦の無い攻撃が襲う

 

「皆んな何処に居るの?」

 

「コーラルあまり動くな!俺が何とかする──【開け】」

 

言葉を発した瞬間、墨は周りへと弾けて視界が開いた

 

「ヤラネーダ!!」

 

それを読んでいたか、視界が自由になった瞬間の隙を突いて触手が襲って来る

 

「二度目は無い!!【止まれ】!!」

 

ヤラネーダの動きが止まったが、それでも尚帝は言葉を発し続ける

 

「【動くな】【留まれ】【停止】【静止】しろ!」

 

思いつく限りの言葉を発して守りに徹する

 

これだけの言霊を一度に浴びれば、もう動く事は無いとそう思った

 

思っていた

 

「ヤラ……ネーダ!!」

 

「何!?」

 

だがそれさえも振り切って、触手が帝に直撃した

 

「グッ…!」

 

油断から来た不意打ちとはいえ、後ずさる程度で済みはした

 

しかしそれ以上に問題なのは

 

(ABSOLUTEが…俺の絶対が通用しない!俺の力が劣ってと言うのか…?)

 

帝が持つ最強で絶対の力のプリキュアの王杖、ABSOLUTEがここへ来て全く通用しなくなった

 

それ程まで生き物を使ってのヤラネーダは強いのだ

 

「諦めちゃダメよ帝!」

 

「いいえ諦めるしかありません。生き物から作ったヤラネーダは、海のリング無しでは倒せませんよ?それにステッキの力でも、もうどうする事も出来ません」

 

「倒して見せる!」

 

「ここで諦めたら!」

 

「皆んなのやる気が!」

 

「わたし達が守らないと!」

 

「絶対に負けない!」

 

絶望的な状況でもサマー達はまだ諦めてなどない。希望の光を向かって走り続けている

 

それに応えたのがトロピカルハートドレッサー。

ドレッサーが青く輝き、鏡の中から奪われた筈の海のリングが現れたのだ

 

「海のリング…!」

 

サマーがドレッサーを手に持つと、鏡から伝説のプリキュアの姿が映し出され呼び掛ける

 

『後は、頼みましたよ』

 

「ラメール!」

 

「オーライ!」

 

 

「マーメイドアクアポット!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

「行くわよ!」

 

 

 

「マリンハートクルリング!」

 

「「「「「おめかしアップ!」」」」」

 

「「「「「エクセレン・トロピカルスタイル!」」」」」

 

「「「「「5つの力!海に轟け!」」」」」

 

「「「「「プリキュア!マリンビート・ダイナミック!」」」」」

 

 

「「「「「ビクトリー!」」」」」

 

 

 

 

 

新たな力で強力なヤラネーダを浄化する事が出来た。

しかし、帝達の表情からは喜びは無かった

 

「また伝説のプリキュアに助けられたな」

 

「えぇ」

 

「これからどうなるんだろう…?」

 

「そんなの決まってる。いつだって、どんな時だって、今一番大事な事をやるだけ」

 

 

 

 

 

////////

 

その日の夜

 

(全く何も出来なかった…それにローラの記憶も……)

 

帝はローラと初めて出会った岩場に足を運んでいた。

そこで今日起きた出来事を整理しつつ考えていた

 

だがどう考えても理想の答えが見つからなかった

 

「どうすればいいんだ……」

 

「お悩み相談でしたら私が承りますよ?」

 

いつも突然現れるアリスだが、帝は眉一つ動かさなかった

 

「愚者の棺、アレを手にすれば俺は強くなれるか?」

 

「それだけではありません。この地球全て掌握出来ます。そうすればきっと、ローラ様の記憶も消さずに済みますよ?ですが……」

 

アリスは一通の手紙を帝に差し出した

 

「先ずは、生き物で作ったヤラネーダよりも強くなる必要があります。この招待状を持ってある場所へと向かって下さい」

 

「招待状?」

 

「『サンシャニティー』。別名太陽の国と呼ばれる国へ赴けば手に入ります────"三つ目のリング"が」

 

「それって、大地のリングと海のリングの他にも指輪があるって事か?」

 

「そうです。大地を見守り、海すらも包み込み、何者にもに囚われない包容のあるリング。それが───"空のリング"」

 

「その、サンシャニティーって場所に行けば空のリングが手に入るのか?」

 

「断言は出来ませんが、そこに指輪がある事は確かです」

 

招待状を手に取ればその指輪が手に入る。しかしこれはなんとも言えぬもの

 

プリキュアのパワーアップを目的ではなく、自分の為に出向くこと。

まなつ達には何も言わず、必要なら嘘をつかなければならない

 

それもまた

 

さんごでいざこざした件は反省したつもり。けれど強くなるには必要な行動

 

「如何なされますか?」

 

「今、俺の思う一番大事な事は」

 

帝はその招待状を受け取った

 

「──どんな手段を使ってでもそこへ辿り着く。これは絶対だ。意思は、揺るがない」

 

「フフ、では私はこれで」

 

軽く後ろへ下がるとアリスは雲のように消え去った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして帝はまた、誤った道のスタート地点に立ってしまった




もうダメだこの主人公〜。迷惑掛ける未来しか見えぬ

次回からは4、5話使ってオリストに入ります

ここまでの拝読ありがとうございました〜!


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第73話 サンシャニティーにご招待!太陽祭でドタバタ!

今回からオリスト入ります。映画の話は書かない代わりにこう言う長編のオリストを書く作者です

ではスタート!


「サンシャニティーに招待されたって!?」

 

今まで以上の大声で部室内を響かせた

 

「ビックリした〜!ローラいきなり大声出さないでよ!」

 

「何言ってるのよまなつ!あのサンシャニティーよ!驚くと言うか、大声を出すと言うか……あ゛〜と、とにかく凄い事なのよ!!」

 

語彙力が著しく低下する程サンシャニティーという所の招待は大変光栄らしい事みたいだ

 

「でも、アリスがその招待状をくれたのよね?怪しくない?」

 

「そこは大丈夫よまなつ!この招待状の下を見てみなさい。このサインは王、女王、王子、王女のものしか書いてはならないものなの」

 

「アリスの事だ。巧みに作った偽物かも知れないぞ」

 

「…いや、今回は信じてみようかと思ってる」

 

あすかの疑問に帝が水を差す

 

「アリスは言ってたんだ。大地のリング、海のリングに続く三つ目のリングがそこにあると」

 

「え、そうなの!?」

 

「大地を見守り、海すらも包み込み、何者にもに囚われない包容のあるリング。それが『空のリング』。そう言っていた」

 

「空のリング…女王様もあとまわしの魔女の使い達もそんな事は一言も…」

 

「ですが、そのリングを手に入れたらわたし達今よりもっと強くなると思う」

 

みのりの言う事ももっともだが、さんごの言う事も間違ってはいない

 

行くべきか、行かざるべきか

 

「行ってみようよ!罠だったらそれで逃げればいいし、そうじゃなかったら強くなる機会を失っちゃう!」

 

「まなつ……本音は?」

 

「面白そうだから行ってみたい!!」

 

あすかの質問に素直に答え、項垂れてしまった

 

「とにかく行くべきよ!行かなかったら失礼よ!」

 

「うっ…ローラに正論言われるとか癪だな」

 

「はぁ!?何よそれ!!」

 

 

 

 

 

////////

 

招待当日

 

指定された浜辺へ行き、お迎えを待っているトロピカる部一同

 

「こんな浜辺で一体どうやって行くんだ?」

 

「待って下さい……うん、この場所で合ってますよ」

 

帝は招待状を何度も確認するが、この浜辺で迎えが来るとの事

 

「そう言えば帝、招待された理由がまだ聞いてないのだけど何書いてるの?」

 

「掻い摘んで言いますと……100年に一度行われる『太陽祭』って言う祭りに参加お願いしますとのこと」

 

「太陽祭?」

 

「そこから先はわたしが説明するわ!」

 

みのりに疑問にまさかのローラが答えてくれるという

 

「聞いた話によると、太陽祭はわたし達生き物の傲慢さを悔い改め、その上で『巫女』が太陽に祈りを捧げるのよ。補足すると巫女は王女ね」

 

「太陽に傲慢……なんだかギリシャ神話のイカロスみたいな話ね」

 

「みのりん先輩イカロスって?」

 

「蝋の翼を持ったイカロスと言う青年が、父親の忠告を聞かず天高く飛んでしまったせいで、太陽の熱に翼が溶けて落ちて死んでしまったと言う話。外国の神話よ」

 

「さっすがみのりん先輩!わたし達の知らない事を何でも知ってる〜!」

 

まなつもさんごも丁寧な説明に首を振り満足していた

 

そう話してると、空から大きな鳥が一匹やって来た

 

「ようやく来たようね」

 

「あの鳥可愛いけど…」

 

「何か少し大きくないか?」

 

「いや、アレはちょっとどころの騒ぎじゃないぞ!?」

 

帝達は大急ぎでその場から離れると、巨大な赤い鳥が舞い降りた

 

「トロピカってる〜!!」

 

「『ホムラ鳥』ね。雛や子供は手の平サイズよ」

 

「「大人でこのサイズ!?」」

 

冷静な一年生組とは違い、先輩組は予想外のサイズに困惑するばかり。

しかし戸惑ってばかりでは先に進まない

 

「早く乗るわよ!」

 

ホムラ鳥の背中からハシゴが降り、それを登って背中へと乗る

 

「フワフワしてる!可愛い!」

 

「羽毛布団みたい!」

 

「あんまり触るとホムラ鳥嫌がるんじゃないのか?」

 

「遠足に行くんじゃないんだぞ」

 

「確かにフワフワ…!」

 

「さぁホムラ鳥飛んで行きなさい!!」

 

 

 

 

 

////////

 

「超!超超超超トロピカってる〜〜〜!!」

 

ホムラ鳥は空高くまで飛び、雲を抜けた先から一時間程飛んで辿り着いた場所は空に浮かぶ島とも言える国

 

「あそこがサンシャニティー。別名太陽の国!」

 

「どうやって浮かんでるのか気になる…!」

 

「皆んな周りを見てみろ!」

 

自分達が乗るホムラ鳥以外にも、大量の大人のホムラ鳥が飛んでおり背中には招待客を乗せていた

 

「帝君見て見て!あれホムラ鳥の子供じゃない?」

 

「あ、本当だ!」

 

興奮が収まらぬままホムラ鳥はサンシャニティーへ着陸し、トロピカる部はようやく太陽の国に上陸した

 

「「「「「「あ、あっつぅ……」」」」」」

 

上陸して最初の一言目が全員一致の残念な言葉だった

 

「さ、流石太陽の国ね。平均温度が37℃なのだけあるわ…」

 

「それもう沖縄だろ…」

 

「でも国は活気づいていいな」

 

既に国中お祭り騒ぎで賑わっていた

 

「招待状によれば午前中は特に何も無いが、お昼に王子が街中でパレードするって書いてある。最後は夜にお城でパーティーで一泊して終わり、と」

 

「じゃあそれまでお祭り楽しも〜〜!!」

 

「まなつ待って!」

 

先に飛び出したまなつを、さんごとみのりが後を追い掛けて行った

 

「俺達も行こうか」

 

帝、あすか、ローラも動き始めて太陽祭りを堪能するのであった

 

 

 

 

 

////////

 

「どうしてこうなったァァァ!?」

 

道行く住人が、道の真ん中で叫ぶ帝に注目した。

しかしその周りにはまなつ達の姿は誰一人としていなかった

 

帝は今、俗に言う迷子となっていた

 

「迷子!俺迷子!ま〜い〜ご〜な〜の〜!!」

 

最初こそ、まなつ達とはしゃいではお祭りを楽しんでいたのだが、ふと気付くと一人となっていたのだ

 

「最悪だ〜。この広い国で迷子なんて洒落にならないぞ…はぁ……」

 

溜め息をついてどうやってまなつ達と合流するか考えてると、まだ子供のホムラ鳥が帝の頭の上に乗ったのだ

 

「ピィー!ピィー!」

 

「痛たたた!!」

 

ホムラ鳥は帝の髪の毛を引っ張って何処かへ案内しようとしていた

 

「もう何なんだよ…」

 

ホムラ鳥は建物の路地裏へと飛んで行った。何とか見失わず路地裏へ足を踏み入れると、ホムラ鳥の姿が何処にも無かった

 

代わりに、紅いドレスに身を包んだローラが待っていた

 

「見つけた……おん?何でドレス?」

 

「フフ、そう仰られましてもこれが正装なので」

 

「喋り方も少しおかしい様な……まぁいいか!」

 

考えるのが面倒となり、いつもの様にローラの胸を触ったのだが

 

「キャアァァァァァ!!!」

 

「ッ……あれ?」

 

胸を触って殴られ、叩かれ、投げ飛ばされる。というのがいつものパターンなのだが、今回はそういうものが無かった

 

ローラは只々胸元を手で隠して、涙目になっていた

 

「な、何をするのですか!?ふ、ふしだらです!こういう事は将来を誓い合った者同士でする事です///」

 

「全く予想外の反応で困惑するのだが…」

 

「え…?わたしの反応がおかしいのでしょうか?」

 

「うんまぁ…いつもと違うし。それにこれ俺の挨拶みたいなもんだし」

 

「そ、そうなのですね…最近の事情はあまり存じませんので。で、ではお恥ずかしですがどうぞ///」

 

ローラは頬を染めながらも胸元を軽く開いた

 

(…あれ?)

 

そこでようやく帝は違和感に気付いた。お互いの会話に絶妙に噛み合ってない事に

 

「あの、どうかなされたのですか?」

 

「絶妙に通じてない事にどうかなさってる」

 

「??」

 

「まぁいい。それよりもまなつ達は?」

 

「フフ、そうでしたね此方へ。皆さんが待っております」

 

ローラが先導する背中を見てやはり違和感を感じる

 

(ローラ…だよな?顔もまんまだし、違うとすればドレスに変わってる程度だし)

 

「この先を抜けて真っ直ぐ進めば皆さんと会えますよ」

 

路地裏からの出口。光が差す方へローラが飛び出して行った

 

「あ、おい!」

 

帝も後を追い掛け路地裏を飛び出した。

けれど出たタイミングが悪く、通行人とぶつかってしまった

 

「あ、悪い!」

 

「もう気を付け……帝?」

 

「え、あれローラ!?」

 

ぶつかった相手はローラだった。それだけなら何も問題は無かった

 

目の前に居るローラは先程見た紅いドレスなど身に付けておらず、いつもの私服姿だったのだ

 

「お前あのドレスは??」

 

「ドレス?わたしはずっとこの服よ。それよりも一体何処に居たのよ?」

 

「何処居たってさっきまで一緒だったろ?」

 

「はぁ?」

 

「帝見つけた!」

 

帝を探していたまなつ達も合流出来た。息を切らす彼女達を見て、かなり走り回ったのだろう

 

「帝君何処に行ってたの?」

 

「え、いや。ローラと一緒に」

 

「だ・か・ら!わたしは今!帝を見つけたばかりなのよ?」

 

「全く…」

 

「ねぇ帝、そのホムラ鳥は何?」

 

みのりが帝の頭を指差して初めて気付いた。いつの間にか、先程路地裏で姿をくらましたホムラ鳥が乗っかっていた

 

「ピィー!」

 

ホムラ鳥は帝の髪の毛を使って、何かを作っていた

 

「巣作りしてる」

 

「何!?」

 

帝は追い払うも、すぐに肩に乗り頬擦りする

 

「帝君に懐いてる!」

 

「いいなぁ〜!」

 

「俺は迷惑極まりないんだが…」

 

「ほら皆んな、パレードが始まるわよ。あと帝、迷子にならないでよ」

 

「ローラが手を繋いでくれたら迷子にならないよ?」

 

「……」

 

ローラは悩んだ末、ぶっきらぼうだが手を差し出した

 

「はい…」

 

「お、マジで!」

 

「仕方なくよ!仕方なく……手繋いであげる」

 

「ありがとな!」

 

「ッ///」

 

しかし手を繋いだ時、ローラは恥ずかしさのあまり帝を頬を叩いてしまった

 

 

 

 

 

////////

 

城へと続く大きく開けた道の真ん中。城下町で王族にも関わらず、歩いて国の人々に手を振って応えていた

 

 

「グレン様よ!」

 

「グレン王子!」

 

「王子!」

 

「グレン王子万歳!!」

 

 

「おぉ〜、凄い熱気!この国の王子って『グレン』って人なんだね〜」

 

「グレン王子はね、人望もあってどんな人にも平等に手を差し伸べてるのよ」

 

「と、帝を探してる最中に小耳を挟んだよね?」

 

ローラの説明はそこら辺の所から引っ張って来た情報らしい

 

それでも、人々を見ればそれは納得のもの。誰もがグレンに親しみを持っている

 

「ねぇ、もうちょっと前に行って見てみようよ!」

 

「この人混みの中をか!?」

 

「まなつやめた方が…」

 

「だって後ろの方だとよく見えないんだもん!」

 

まなつはローラの手を引いて強引に人混みの中へ消えて行った

 

「ちょ、まな…あいた!?」

 

人の腕や体がローラへ当たり、痛め付ける

 

そうして苦労して前へと出て来れた

 

「よしローラ…あれ?」

 

まなつは繋いだ手を確認すると、そこにはローラの姿は無かった

 

「ま、まなつぅ…」

 

何とか食らい付いて来たローラが強引に前へ出たのだが

 

「あ…!」

 

勢い余ってローラはグレンの前に躍り出てしまった

 

勿論護衛の人はそんな無礼を見逃す訳なかった

 

巨体な護衛が槍を突きつける

 

「貴様!王子の前に出るとは何事か!!」

 

「待て…この者、あのお方に似ている」

 

もう一人の武器を持たない護衛の人物。その者が槍を退かして、ローラの事を観察する

 

「二人共もういいよ。その辺で許してあげ…て……」

 

グレンが二人を宥めながらローラを庇うのだが、ローラの姿を見た途端動きを止めた

 

「い、いえ!こういう礼儀を知っていながらやってしまったのです。本当に失礼しま──」

 

「ホムラ!!」

 

グレンはローラの事を「ホムラ」と呼び、唐突に公衆の面前で抱きしめたのだ

 

「……へ?」

 

「生きていたのか…心配したぞホムラ!!」

 

「あ、あのグレン王子。誰かと勘違いしてるのでは…」

 

「ローラ大丈夫!?」

 

そこへまなつが割り込んで来たお陰で、それが助け舟となった

 

「ローラ?ホムラではないのか?いやしかし……」

 

グレンが食い入る様にローラの事を見つめてると、大きな地響きと共に炎の柱がまなつ達の目の前に立った

 

「え、何!?」

 

「二人共、あれも催し物なのか?」

 

「違います!これは!」

 

巨大な炎の柱から火の粉が飛び散り、街や市民へと攻撃をし始める

 

楽しい祭りから一変、周りは大パニックを起こってしまう。

護衛の人達も市民の安全を最優先するも、逃げ戸惑う人達のせいで上手く連携が取れなかった

 

「グレン王子下がって下さい!」

 

「ここは我々が!」

 

先程の巨体の護衛二人がグレンを守ろうと前へ出る

 

「待てホムラがまだ!!」

 

火の粉は不運にもグレンの方へと向かっていく

 

「ッ!!」

 

それを見たローラは、マーメイドアクアパクトを持って前に出た

 

ハートクルリングを挿してプリキュアへと変身した

 

キュアラメールへ変身してすぐさま火の粉を蹴り返した

 

「ハァ!!」

 

「ラメール!」

 

「まなつ、貴女も早くプリキュアに変身しなさい!」

 

「え、でも王子様が見てるよ?」

 

「緊急事態なのよ!そんな悠長な事は言ってられない!」

 

まなつもすぐさまプリキュアへ変身した

 

「サマー一気に叩くわよ!」

 

「オーライ!」

 

サマーとラメールが同時攻撃を仕掛けて炎の柱へと飛び込んだが

 

「「あっつぅ〜!!!」」

 

二人の攻撃をすり抜けると同時に、あまりの熱さに悶える始末

 

「わたし人魚なのよ!!」

 

炎の柱が言う事を聞くはずも無く火の粉を辺りに散らして、建物を破壊して行く

 

「今度はこっち狙って来たよ〜!!」

 

蹲るサマーの目の前に、ぺけ印のシールドがサマーの窮地を救った

 

「コーラル!?」

 

「わたしだけじゃないよ!」

 

周りを見れば帝、パパイア、フラミンゴが市民の避難誘導をしていた

 

「ありがとう皆んな!」

 

「皆んな行くわよ!」

 

 

 

「マリンハートクルリング!」

 

「「「「「おめかしアップ!」」」」」

 

「「「「「エクセレン・トロピカルスタイル!」」」」」

 

「「「「「5つの力!海に轟け!」」」」」

 

「「「「「プリキュア!マリンビート・ダイナミック!」」」」」

 

 

「「「「「ビクトリー!」」」」」

 

 

 

 

 

「お疲れ様皆んな」

 

帝に一人ずつハイタッチを交わしてから、変身を解いた

 

「グレン王子、お怪我はありませんでしたか?」

 

「ホムラ…なのか?」

 

「残念ながらわたくしはホムラという人物ではありません。わたくしの名前は、ローラ・アポロドロース・ヒュギーヌス・ラメールと申し上げます」

 

「そうか、ローラと言うのか……良い名前だ」

 

目に見えて落ち込んでいるのが分かる。余程期待していたのだろう

 

「良い大義であった。貴女方は招待客だろ?夜のパーティーに是非出席して欲しい。我ら国民までも守ってくれた。それを皆に伝えたい」

 

「勿論パーティーにも出席します。楽しみにしております」

 

「では」

 

グレンはローラを一目見た後、警備強化など対策を急ぐ為城へと帰って行った

 

「王子様、ローラの事をホムラって言ってたよね?何か知ってる?」

 

「全然」

 

「ホムラと言えばホムラ鳥」

 

みのりはふと、いつの間にか頭の上に乗り替えたホムラ鳥へ視線を移す

 

「追い払わないのか?」

 

「諦めた。懐いてるなら懐いてるで好きにさせる」

 

「あはは、帝君が折れるなんて珍しい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてパーティーの時間まで、城下町で太陽祭を堪能する帝達であった




ちょっとオリキャラも出て来ましたが、このオリスト限定ですので。
あと地味に空のリングとかいう、明らかに強化入りそうなアイテムの話題が出て来ました

突発的な強化なんてよくある事です

ここまでの拝読ありがとうございました


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第74話 夜のおもてなし、奪われたお姫様

多忙で大分遅れております。アニメ本編は裏で書いてありますので、オリストが終わり次第一気に投稿予定です

ではスタート


そしてパーティーの時間となった夜の時間

 

城下町はまだ騒がしくも明るくもありつつあるが、まだ太陽祭のメインが始まってすらない。

寧ろ、このパーティーこそが太陽祭のメインなのだ

 

帝達は個室で正装に着替え、それぞれ大広間へと向かっている最中だった

 

帝は黒のタキシード、まなつはピンク、さんごは薄紫、みのりは黄色、あすかは赤、ローラは水色のドレスをそれぞれ着飾っていた

 

「さんごお前可愛い過ぎな。目に入れても全く痛くない」

 

「フフ、ありがとう帝君!」

 

「いやいや、目に入れたら痛いよ?」

 

「まなつ、少し国語を勉強したらどうだ?」

 

「帰ったら付き合うよ」

 

「国語もいいけど作法もまなつは覚えないと。貴女、一体何にをしでかすか分からないもの」

 

「皆んなして酷い!!」

 

そして大扉の前で一同足を止める

 

「皆んな、礼儀正しくね」

 

ローラの注意を聞いて大扉を開けて大広間へと足を踏み入れた

 

「わぁ〜!!トロピカってる〜〜!!」

 

入って早々大声で叫ぶまなつに、一気に注目される

 

「みのり、馬鹿に効く薬は無いの?」

 

「それよりもここからは自由行動な」

 

部長である、あすかの許可でトロピカる部の面々は散らばって行った

 

 

 

「帝君、見た事の無い料理が沢山あるよ!」

 

「お、おい。受け皿に入らねぇぞ!?」

 

さんごの皿には、かなりの量の料理が置かれた

 

「大丈夫だよ!わたしと一緒に食べるんだから!」

 

「それ俺の分も入ってるのか!?」

 

「偶には一緒のご飯を共用して食べようよ!」

 

フォークを刺した料理を帝の口へと放り込む

 

「…うん美味しい。少しピリッとするけど、濃くなくサッパリとし過ぎずの丁度良い加減」

 

「帝君!」

 

「ほい」

 

「あ〜ん……ん〜っ!美味しいね!」

 

帝とさんごの二人は、お互いに食べさせ合いをしていた

 

 

 

「みのりん先輩みのりん先輩!これ美味しいですよ!あとこれも!」

 

「う、うん分かったから…」

 

まなつは、みのりの皿に勝手に入れては困らせていた

 

「まなつ、わたしはもういいから…」

 

「お肉だよお肉!お肉食べましょう!!」

 

「もう…」

 

 

 

「いい味ね」

 

「そう、だな」

 

あすかとローラはグラスを片手にジュースを飲んでいた

 

「ジュースだけど、甘くてサッパリしてる。それにこの果実が、原料となっている物の臭みを良い香りに変えてるわ」

 

「ローラ、食レポ出来るんだ…」

 

「フフン!」

 

「その顔腹立つな…」

 

あすか達も盛り上がってる最中、大扉からグレン王子、王様に女王が入場した

 

中でもグレンだけは誰かを探しており、誰か見つけたと思ったらあすか達の方へと向かって来た

 

グレンは一礼した後、改めて名乗った

 

「改めて自己紹介しよう。私はグレンと申します。以後お見知り置きを」

 

「わ、わたくしの方こそ、ローラ・アポロドーロス・ヒュギーヌス・ラメールと申します」

 

「滝沢あすかです」

 

「ローラさん、あすかさん。パレードの時はありがとうございます。他の方にもお礼を言いたいのですが…」

 

グレンは辺りを見渡すが、帝達の事を中々発見出来ない

 

「帝達の事は気にしなくていいと思います」

 

「ところで王子はどうしてこちらへ?」

 

「そうでした。ローラさん、私と一曲余興に付き合ってくれますか?」

 

グレンがローラに手を出したタイミングで、大広間に音楽が鳴り響く

 

「…では、お願いします」

 

ローラもそれで察してその手を受け取り、そのまま広間の中央に連れて行かれた

 

「……」

 

「あれ?あすか先輩ローラは?」

 

一人になった時、帝とさんごが顔を出して声を掛けた

 

「帝も分かるだろ?」

 

広間の中央に目を向けると、ローラとグレンが踊っていた。

勿論音楽が鳴り始めてから、他の人達も広間中央に集まって男女で踊り始めたのだ

 

「さんご、折角だからあすか先輩と踊ってみたら?」

 

「えでも、そうしたら帝君一人になっちゃうよ?」

 

「気にしない気にしない!」

 

さんごとあすかの背中を押し、笑顔で中央まで見送った

 

 

 

「はぁ…」

 

帝は一人寂しく城のバルコニーで、溜め息を吐いては柵にもたれ掛かっていた

 

(ローラはあの王子と一緒だし、さんごはあすか先輩。まなつとみのりん先輩はまだ食べてるし……何か寂しいな)

 

そんな感情に浸ってると、後ろから女の子が喋りかけて来た

 

「溜め息を吐いていましたら、幸せが逃げてしまいますよ?」

 

「え?」

 

振り返ると、赤いドレスを着たローラが立っていた

 

「路地裏以来ですね」

 

「ローラ?」

 

「フフ、意地悪はこの辺にしときましょうか。わたしは貴方の言うローラさんとは別人です」

 

「べ、別人!?」

 

髪色から声色まで、顔も何もかも同じ存在。違いを出すとなると、今着てるドレスのみ。それ以外は瓜二つなのだ

 

「じゃあお前は誰何だ?」

 

「…一曲お付き合い出来ますでしょうか?」

 

少女は手を差し出て、ダンスの誘いをした

 

「一曲って、音楽なんて此処には…」

 

ふと耳を澄ませると、音楽が外まで漏れていた

 

「そういう事か。暇だし付き合うよ」

 

差し伸べられた手を取り、少女と余興をする事となった

 

「路地裏では助かった。ありがとう」

 

「いえ。困っている人を助けるのが好きなので。そう言えばまだ、お名前をお伺っていませんでしたね」

 

「帝だ」

 

「帝様。フフ、良いお名前ですね!」

 

「君の名前は?」

 

ローラと違うと言われてから、少女の名前が気になり質問を返したのだが、ダンスの振りに紛れて指で唇を押さえられた

 

「ひ・み・つ!」

 

「秘密ってお前なぁ…」

 

「女性に秘密は付き物ですよ」

 

「なら、何処から来たんだ?」

 

「秘密です!他にご質問はありますでしょうか?」

 

「…辞めだ。答える気無いだろ?」

 

「フフ、バレちゃいましたか」

 

けれどそこで一番聞きたい事を思い出した。

そもそも今回はその用事で遥々ここまで来たのだ。

未だに手掛かり無しという訳にもいかない

 

「なぁ、空のリングって聞いた事ないか?」

 

「…"太陽の指輪"でしたら聞いた事ありますが、空のリングと言うのは初耳です」

 

「…因みにどんな指輪何だ?」

 

「そうですね……一口で言ってしまいますと、その所有者によって形を変えると言われております。心の中の太陽は人それぞれ異なる輝きを持ち、その人だけの指輪になると伝えられて……もしかして欲しいのですか?」

 

「それが空のリングならな」

 

「でしたら──」

 

ダンスも終盤へと差し掛かり、お互いに最後を決めて終わりを告げた

 

帝の手を離す前に、少女は懐から一個の指輪を取り出しては握らせた。それが少女が言っていた「太陽の指輪」

 

「指輪…お前が持っていたのか。それに…良いのか?」

 

「はい。今のわたしにはもう必要無い物ですので。代わりと言って何ですが、一つだけお願いを宜しいでしょうか?」

 

「いいよ。タダより高い物は無いしな」

 

「グレン王子を救ってはくれませんか?」

 

「命を狙われてるのか?」

 

「いえ。グレン王子は帝様とよく似ておられます」

 

「俺と?」

 

そこへ踊り終えたさんごがバルコニーへやって来た

 

「あ、帝君!こんな所に居たんだね。ところで誰と話してたの?」

 

「誰って…あれ?」

 

隣を向くがそこには少女の姿は何処にもなかった。

音も無く消えたのだ

 

その代わり、懐いていたホムラ鳥が柵に止まっていた

 

「まさかとは思うが、お前があの少女とか言うなよ?」

 

「ピィ?」

 

ホムラ鳥は首を傾げて城の天辺まで飛んで行った

 

「帝君戻ろうか。夜になると冷えるって聞いたから」

 

「それは大変だな」

 

 

 

 

 

////////

 

帝と少女がまだバルコニーでダンスしてる時、ローラとグレンは思う以上に距離を縮めていた

 

「ダンスがお上手ですね」

 

「お褒めの言葉ありがとうございます」

 

「…もう少し距離を縮めては如何なものですか?こうフランクに」

 

「じゃあ遠慮無くそうするわ。でも何で急に?」

 

「その方が話しやすいので」

 

グレンはローラの腰に手を当て、息が掛かる程まで身を引き寄せた

 

「時にローラは心に決めた人はいるのかい?」

 

「え?えぇまぁ…」

 

「浮かない顔だけど何かあったのですか?」

 

「ここ最近彼の様子がおかしいのよ。なんていうか、昔みたいに戻ったみたいで」

 

ローラの言う彼とは帝の事だ。グランオーシャンでの一件以来、ローラは少し様子を伺っているのだ

 

「不安なのか…」

 

「まぁそうね…」

 

「…そろそろ音楽も終わります。その時良いお知らせを言いますので、きっと喜びとなるよ」

 

「それは楽しみね」

 

音楽が止まり、お互いに一礼した後グレンは大広間の奥にある階段を登り声を上げる

 

「諸君!今年の太陽祭は盛り上がっていますか?時に、トラブルもありましたがご安心下さい!外敵から救って下さった勇気あるお客様がお越しなさってます!そんな彼女達に讃える拍手を!!」

 

広間の明かりが消えたと思いきや、まなつ達へとスポットライトが照らされた

 

「おぉ〜ってあれ、さんごと帝は?」

 

「それなら…来たよ」

 

バルコニーから帰って来た二人にもスポットライトが照らされていた

 

「何が始まるんだ?」

 

「王子が昼間のわたし達の活躍を讃えてくれるってさ」

 

「それでわたし達だけにライトが照らされてるんですね」

 

広間中大勢から拍手喝采を浴びてむず痒くもありつつ、プリキュアとしてやって来て改めて良かったと認識した

 

「では、ローラ・アポロドーロス・ヒュギーヌス・ラメールよ。私の所へ」

 

帝やまなつ達がいる中で、何故かローラだけが呼ばれた。

首を傾げつつもグレンの元へ歩いて行く

 

「ローラよ。昼間の騒動での沈静化感謝する」

 

「こちらこそお言葉光栄に御座います」

 

「そこで私は思った。この人こそ、共に国を背負うパートナーとして相応しいと。ローラ───私の"妃"になってくれないだろうか?」

 

「……へ?」

 

「「「「「えぇぇぇぇ!!!?!」」」」」

 

感謝の言葉より突然の求婚。ローラは素っ頓狂な声を出し、帝達は驚きの声を大きく上げた

 

「ちょっと待って!急過ぎるわよ!それにこの国には王女がいる筈よ?」

 

「今この国には王女はいない」

 

「なっ!?」

 

「だからローラ。君にこの国の王女、いずれは女王になって欲しい」

 

「でも…」

 

ローラはふと帝達へ目を向ける。あわあわと慌ててる仕草をしていたのだ

 

「折角だけどお断りするわ。わたしには皆んなが居る。それに……心に決めた人がいるから」

 

「…あの少年か?」

 

「えぇ…帝よ」

 

「そうか、なら────亡き者にすれば済む話だな」

 

グレンが指を鳴らすと、大広間の扉から大勢の兵士達が現れて、逃げられない様に広間を囲い込んだ

 

この状況に、王様、女王共々予期してなかった

 

「グレン!」

 

「お父様、お母様。私はもうこの手は離しません。邪魔する者は全員始末する!!」

 

突然の豹変に動揺しない人などいない。兵士達も、王の声など全く聞こえてない

 

「全員捕らえろ!特にあの客人は丁重に持てなすんだ」

 

兵士達は次々と広間に居る人達を捕らえては、引き摺って何処かへ連れ去って行く

 

逃げようとするなら、女子供問わず捩じ伏せる

 

それは帝達も同様だ

 

「さんご、みのり下がれ!」

 

「ほっ!急に何なの!?」

 

「どうやら面倒事になったな!」

 

あすかがさんごとみのりを庇い、帝とまなつが降り掛かる火の粉を払い除ける

 

しかし数が数で防戦一方。帝はやむなくステッキを握る

 

「ルーレットスタート!」

 

『ATTACK!』

 

オーシャンステッキを両手で持ち、回転しながら一気に振り抜ける

 

それによって風圧が起き、周りの兵士達を吹き飛ばした

 

「ローラ!!」

 

帝は一心不乱にローラの元へ駆け抜ける

 

「帝君!」

 

「勝手な」

 

「皆んな来るよ!」

 

「取り敢えずわたし達も変身」

 

まなつ達はプリキュアへと変身を遂げた。

散開して兵士達を傷付けず、無力化しようとしたがそんな彼女達の前に、二人の兵士が立ちはだかった

 

その兵士は街でグレンを護衛していた者

 

拳を握る者の名は「ソル」

 

槍を握る者の名は「バーナー」

 

「「「「やぁぁぁ!!!」」」」

 

 

 

 

 

「邪魔だ退けェェ!!」

 

兵士を一人殴り、かわしてからジャンプして、兵士達を足場にしてその上を跳んで行く

 

「帝!」

 

「ローラ──ッ!?」

 

あと一歩の所で誰かに腹を蹴り飛ばされた。受け身を取りつつ前方を確認すると、先程まで居なかった人物が立っていた

 

「隠れていたのか…」

 

「オレはそういう者なので」

 

手には鎖が巻き付けてあり、その先には大きな鉄球が付けられてあった

 

「ヒート、排除しろ」

 

「帝逃げて!」

 

ヒートが鉄球を振り回すが帝は、ステッキを巧みに使い受け流した

 

「ハッ!」

 

振り回した勢いを利用して、天井高くまで振り上げ、今度は叩き付けて来た。

上手く避けたが、床にクレーターが出来上がった

 

当たれば一撃必殺。しかし重い武器な事もあり、遅ければ動きも単調で読みやすい

 

「プリキュアの王杖!」

 

ならば最短距離で正面突破

 

(この程度の相手なら造作もない)

 

『ABSOLUTE!』

 

「──【這い蹲れ】!」

 

「ッ!?」

 

四つん這いになるヒートの横をすり抜けた

 

これで帝を邪魔する者はグレンのみ

 

「何考えてるか知らないが、ローラは返して貰う」

 

「ダメだ」

 

グレンの指先から小さな火の玉が出て来た。攻撃のつもりか、何をもって出したのか不明だが帝は安全に最小限の動きで回避する

 

「その油断が命取りとなる」

 

指を弾くと火の玉は光を発した

 

(これは──)

 

その瞬間、光は帝を呑み込み大きな爆発を起こしたのだ

 

「帝!!」

 

爆発で起きた煙から帝は上へと飛び出した

 

「グッ…!」

 

帝は何とか回避していた。

しかし、爆発が起きた場所は跡形も無く吹き飛んでいた

 

帝も無事でいたが、爆風の影響で左半身が軽度の火傷で負っていた

 

「この…!」

 

「帝左!!」

 

ローラが声を上げるも帝には見えていなかった

 

「がっ──」

 

火傷が目にも負っており、まともに開けれる状態では無く、視界が悪かったのだ

 

鉄球が直撃した帝は当然、一瞬で意識を刈り取られた。

崩れ落ちる帝だが何とか踏ん張った

 

本能か、それとも彼のプライドがそれを許さなかったか定かではないが耐え切ったのは事実

 

(意識が朦朧とする……早くローラを…)

 

 

 

 

 

ソルと戦っているのはサマーとコーラル

 

自分達と同じサイズの拳を受け切るのも限界に近付いて来た

 

『ぺけ!』

 

「くっ…きゃあ!」

 

「コーラル…大丈夫?」

 

「だ、大丈夫…でも」

 

コーラルのシールドがたった一撃で破られた。見た目通りの破壊力に手が未だに痺れている

 

「そんなものか!!」

 

「コーラル危ない…うわっ!!」

 

「サマー!!」

 

薙ぎ払われた腕からコーラルを庇う為にサマーが代わりに受け、床をバウンドしながら転がっていく

 

「はぁ…ぁ…」

 

力を振り絞り立ち上がったが、とうとう力尽きてしまいその場に倒れ変身も解けてしまった

 

「まなつ…ハッ!」

 

まなつを心配するあまり背を向けてしまったのが失敗だった

 

コーラルに覆い被さる様に背後から大きな影が重なる

 

「プリキュア!もこもこコーラルディフュージョン!」

 

すぐさま振り返り、超至近距離での技を放った

 

「ッ!?」

 

しかしそれでも尚立っていた

 

「終わりだ!」

 

「ッ!」

 

『ぺけ!』

 

振り抜く拳にシールドで防御するも、力技で強引に押し込まれた

 

「ぁ…ぁ…」

 

今の一撃でさんごも倒された

 

 

 

 

 

「クソ!」

 

「なんて槍捌き!」

 

パパイアとフラミンゴはハートルージュロッドを用いて、バーナーの槍に対抗しているが一枚も二枚も上手だった

 

「緩い!」

 

「ッ!?」

 

フラミンゴのハートルージュロッドが弾かれてしまった

 

けれどパパイアすぐにフォローに入る

 

「フラミンゴ伏せて!」

 

「ッ!」

 

「プリキュア!ぱんぱかパパイアショット!」

 

「無駄な事を」

 

バーナーは槍を巧みに回してパパイア攻撃を無力化した

 

「防いだ!?」

 

「だから言ったろ。何をしても無駄だと!」

 

「「キャアァァ!!」」

 

一瞬で距離を詰め横の薙ぎ払いで吹き飛ばされ、パパイアとフラミンゴは壁に打ち付けられて変身が解けてしまった

 

 

 

 

 

「ぐわっ!!」

 

炎の縄が帝を拘束し、柱へと括り付けられ完全に動きを封じた

 

「プリキュアの王杖!」

 

拘束されてるとはいえ手は未だ健全。ステッキさえ握らせれば此方のペースと考える

 

「【解けろ】!」

 

しかし、プリキュアの王杖を使っても炎の縄が解かれる事はなかった

 

「何でだ!?」

 

「プリキュアの王杖が通用しないなんて!?」

 

「なら力づくで──」

 

腕に力を入れようとした時、何かが頭を強打し気絶させた

 

「帝!!」

 

「全員牢に入れるんだ」

 

「グレン貴方…ッ!?」

 

抵抗とも言える睨みで威嚇しようとしたが、それすらもローラに与えさせない程のモノを見てしまった

 

グレンの背後から黒い炎が燃え上がっているのを

 

「これで君は私のもの。もう二度と────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────離さない」




頭の中では構成は出来ているが、それ故に難しい

ここまでの拝読ありがとうございました!


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第75話 君がいないと何も出来ない、ローラ奪還開始!

自分の別小説のまほプリで、トロプリ組が出張しております。相変わらずのノリと勢いなので、気になる方は見てみるのもアリです。
因みにまだそこまで進んで無いので、今なら最初から読んでも追い付きます。
追い付きます


「魔法つかいプリキュア! 〜奇跡と魔法と幸福の翼〜」
第14話、第15話より
https://syosetu.org/novel/271514/





「クソッ!!」

 

捕らえられてしまった帝は、牢の中でかなり荒れていた。

まなつやみのりが先程から宥めるも、中々収まってはくれなかった

 

「こんな事あるか?ふざけるな!!」

 

「帝君、あまり動くと傷が開いちゃうよ…」

 

「ここ最近いっつもこれだ!グランオーシャンからそうだ。人魚の記憶と来て今度はローラを奪われた!もう、うんざりだ!!」

 

「トロピカルパクトも取られた。オーシャンステッキも無い」

 

帝は血相を変えて、同じ牢に閉じ込められている王様のに掴みかかった

 

「これはどう言うことだ説明しろ!!何で守るべき民主を牢に捕らえる?」

 

「そう申されても…」

 

「私達も何でグレンがあの様な行為に至ったかの動機が分かりません…」

 

「…もういい!」

 

掴んだ手を離したと思いきや、帝は鉄格子に向かって体当たりをした。

勿論人間の力でどうこう出来る問題では無い

 

体当たりした衝撃が返って、逆に帝を吹き飛ばした

 

「帝何やってんの!?」

 

「見りゃ分かるだろ。壊す!」

 

「鉄だよ。いくら何でも無理よ」

 

「自分の体痛め付けるだけだ」

 

「だからって此処で大人しく待っていられるか!お前らはローラが心配じゃないのか!?」

 

ローラが居ないことに苛立ちが高まり、まなつ達に八つ当たりをし始めた

 

ローラの事が好きで、心配な帝にしてもここまで異常になるのは明らかに変としか言いようが無い

 

まるでローラに依存してるかの様だ

 

「俺は何度だってやる!此処から出てローラを助けれるのなら何度でも──」

 

「帝君少しは皆んなの話を聞いて!!」

 

さんごの大声に帝は口を止めた

 

「帝君がローラを心配する気持ちは分かる。けれど、わたし達は今の帝君の方が心配なの!何でもかんでも走って行っちゃってるから!周りが見えてない!!」

 

「だけど、でも…ローラが」

 

「ローラを言い訳にしないで!帝君がまずしっかりしないと!」

 

「無理だ!ローラが居ないと俺は何も出来ない!ローラ無しでは生きていけない!!」

 

「ローラローラって……帝君──」

 

「帝様!!」

 

さんごと歪み合っている最中牢屋の外から聴き覚えの声がした。

それによって二人の会話が一時中断される

 

「帝様、ようやく見つけました!」

 

「「ローラ!?」」

 

「何で此処にローラが?」

 

「逃げれたのか?」

 

「いや違う。コイツはローラじゃない」

 

帝は分かっていた。見た目はローラと瓜二つだが、全く持って違う人物。今まで度々帝の前に現れた謎の少女

 

「じゃあ誰なの?」

 

「もしやホムラなのか?」

 

そう告げたのは王様だった

 

「……」

 

無言を貫く。しかしそれは肯定の意味と捉える

 

「仕方ありません。全てお話しましょう」

 

少女は、観念した様子だった。何がどう仕方ないのかは謎だが、手掛かりを握っているのは確かなこと

 

「わたしの名前は『ホムラ』と申し上げます。そしてこの国の巫女であり、王女。以後お見知り置きを」

 

「ホムラと言ったらグレン王子が言っていた人?」

 

「はい、まなつ様の言う様に恐らくわたしの事です」

 

「この状況、それにグレンの様子。全部お前は知っているんだな?」

 

「…はい。それを話す為に此処へ来ました」

 

ホムラは浮かない表情をしながらもその口を開いてくれた

 

「先ずわたしは、二年前に事故でこの世を去りました」

 

 

 

 

 

////////

 

「此処、は…?」

 

いつの間にか気絶させられていたローラが目を覚ました

 

「此処はあらゆる儀式に使う広間"太陽の間"だよローラ」

 

「わたしをどうするつもり?」

 

「式を挙げる。二人だけで。誰にも邪魔されずにね」

 

「こんなのおかしいわ!」

 

「いいや、おかしくなどない」

 

グレンの体から黒い炎が燃え上がり、何者かの顔へと形を変えローラの瞳に映す。

得体の知れない何かに、ローラは只々恐怖するしかなかった

 

「い、嫌…やめて!」

 

「大丈夫。目を閉じてる間に全てが終わる」

 

逃げるローラを、グレンは強引に手を掴んで逃げられない様にした

 

(誰か…誰か、まなつ!さんご!みのり!あすか!お願い、誰でもいいから助けて──────帝!!)

 

 

 

 

 

////////

 

「え、じゃあ──ゆ、幽霊!?」

 

幽霊が大の苦手なまなつは、あすかの背中に隠れて震え上がっていた

 

「確かに幽霊…みたいなものですね。実際、魂だけがこの世を彷徨っていましたし」

 

「幽霊って普通触れないのじゃないか?俺バルコニーでお前に触れれたが?」

 

「巫女というのは少し特殊な力を宿してるものなんです。恐らくその影響で、死後も実態を保てるかと推測します。あまり人前に出るのは難しいと思いましたので、代わりの御姿をしてこの国、皆さんを見守っていたんです」

 

ホムラの体が淡い赤い光りに包まれると、人間としての姿から鳥の姿、ホムラ鳥へと変身を遂げた

 

「あ、その子って帝君に引っ付いていたホムラ鳥!」

 

ホムラは元の姿に戻ると一息ついていた

 

「お前の正体は分かった。次の話に移るが、グレンについて何か知っているのか?」

 

「はい。彼は今、邪悪な者に操られているのです」

 

「それについて教え下さい。わたし達で何とかします!」

 

あすかの協力的な意見にまなつ達は賛成するが、帝はまだ渋っていた

 

「なぁ、操られるって事は心に何か弱い所があったんじゃないのか?そこを突け入られた」

 

「それに関しましては皆さんもうお分かりの筈です。特に帝様なら」

 

「…俺か」

 

グレンの弱い心。それはホムラを失った悲しみから、邪悪な者に目を付けられた

 

「その邪悪なる存在の名は『イフリート』。グレン王子の悲しんだ心を利用しているのです……図々しい願いですが、グレン王子を助けて頂きたいのです。お願いします!」

 

頭を深く下げてお願いする姿。しかし、その様なお願いをする前に帝の心はもう既に決まっていた

 

「…言いたい事は山程ある。けれど、こう二回もお願いされたらな…」

 

「え、二回?」

 

「覚えてないのか?バルコニーでの事」

 

「覚えてくれていたのですね」

 

「え〜と、なんだかよく分からないけど帝もやるって事だよね?」

 

「ああ」

 

「よし早速──」

 

「待って」

 

まなつが景気づけに気合を入れて一致団結しようとしたが、みのりに水を刺された

 

「先ず此処から出ないと」

 

「それにコンパクトやステッキだって無いんだぞ?」

 

「あ〜そうだった!!」

 

「まなつ、忘れてたんだね…」

 

「それなら警備の奴らをどうにかするかだが……待てよ」

 

抜け出す為に策を練ろうと考え始めた帝だが、そこである違和感に気付いた

 

「おいホムラ、一体どうやって此処に来た?牢の外には警備が居た筈だが?」

 

「それなら眠らせました」

 

ホムラがこちらに手の平を向けると、淡く光っているのを確認した

 

ホムラは牢の鍵を開けて捕らえられていた人達を解放させた

 

「皆さんのお持ち物でしたら必要かと思いまして、こちらに用意してあります」

 

牢屋から出してくれるだけでは留まらず、トロピカルパクトにオーシャンステッキ、そして私服も持ち出してくれた

 

「用意がいいな」

 

「急いで着替えるか」

 

「では帝様は此方へ」

 

「え、待て」

 

ホムラは帝を手を引いて別の場所へと移動させる

 

「帝様、女性が着替えるのですよ?」

 

「知ってる。だからこの目に焼き付けておく」

 

「あのですね、路地裏の時から思っていましたが帝様は……どうかなさいましたか?わたしの顔を見て?」

 

何か文句のひとつでも言おうとしたが、帝の視線が妙に気になって尋ねる

 

「…いや、本当にローラに似てるなって思ってな。それに…」

 

ホムラの顔を思わずローラと重ねて見てしまった

 

バルコニーで「帝とグレンはよく似ている」と言われた事の意味がようやく分かった。

お互いに、大切な人に懸ける想いが強いところ

 

ローラがいない事で焦り、ムキになり、心配する様に、グレンも同じ心境だったのだろう

 

「帝準備出来たよ」

 

「よし、じゃあ行くか。ローラを助けに」

 

着替えを終えたまなつ達と共に、帝はローラの元へと急ぐのであった

 

 

 

 

 

////////

 

牢屋に居た人達は全員避難させ、帝達は太陽の間に急ぐ為走っていた

 

しかし太陽の間は本城にあって、牢屋はその離れの地下

 

一度外へ出て城の内部へと侵入しなければならない。

更には、イフリートによって洗脳されている兵士達にも気を付けなければならない

 

「中々近付けそうにないな」

 

「此処は焦らずチャンスを待とう」

 

あすかがソワソワするも、確実に前に進む為には慎重な行動も大事とする為、みのりは通ろうとする道から、兵士達が背を向けるその時まで待機する様に抑える

 

緊迫するムードで、帝はさんごに話し掛けた

 

「なぁさんご、ちょっといいか?」

 

「え?うん大丈夫だよ」

 

許可を得て、まなつ達から離れ過ぎずの距離で二人だけとなった

 

「牢屋でのやり取り、ローラの事を気にし過ぎて頭に血が上っていた。ごめんな」

 

「ううん。わたしも、ホムラさんが来なかったらあの後何を言ってたか分からなかった…」

 

「「…フフ」」

 

お互いに目が合い思わず笑った。そこへ丁度良くみのりが入って来た

 

「二人共来て。今なら行ける」

 

みのりの後に着いて行き、兵士の目を盗んで何とか城内へと潜り込めた

 

そして太陽の間までの道のりだが

 

「わたし達が入りましたのが裏口です。太陽の間は、大広間を通ってその奥にある部屋がそうです」

 

「大広間って確か、正面入り口の階段を登らないと行けなかったな」

 

「てか、そもそも普通大広間って一階じゃないのか?何で二階なんだよ。城の設計おかしくねぇか?」

 

「あ、そうですね!慣れって恐ろしいものですね」

 

喋りながらも長い廊下を突き進む。この廊下の突き当たりを曲がれば正面玄関までもうすぐ

 

パッと見れば問題は何も無いが、油断していると

 

「あ、皆んなしゃがんで!」

 

さんごに言われて全員その場に伏せる

 

廊下の隣は外との境目。しかも窓が大量にある為、外からも中からも覗けばお互いの様子が丸分かりなのだ

 

その場に伏せて身を隠さないとすぐにバレてしまう

 

巡回する兵士達にも気を配らなければならないのだ

 

息を潜めて通り過ぎて行くのをジッと待って耐え忍ぶ

 

「やっと行ったね。ありがとうさんご!」

 

「し〜っ!」

 

「んん!」

 

声も抑えてないと外に漏れる可能性もある。そこも考慮しないといけない

 

「先へ急ぎ──」

 

その瞬間、廊下の壁を破壊して外部から誰かが侵入した

 

「え、何!?」

 

「クッ、何だ!?」

 

咄嗟の事で避けるにしても二手に分断された

 

帝、まなつ、みのり、ホムラ。さんご、あすか

 

その両者の間に居るのは、拳を主体として戦う兵士ソル

 

「皆んな行くよ!」

 

 

 

「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」

 

「「「「レッツメイク!」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

 

 

「先へは行かせん!!」

 

帝、ホムラへとソルが襲い掛かって来る

 

『ぺけ!』

 

離れた場所だが、コーラルがシールドを展開してソルを弾いた

 

「此処はわたしに任せて帝君達は行って!」

 

「ハァッ!!」

 

コーラルのシールドで弾かれた後、間髪入れずフラミンゴが足を払いソルの体勢を崩した

 

「行くんだ帝!」

 

「…分かった!」

 

帝はサマー達を引き連れて先へ進み、コーラルとフラミンゴにソルを任した

 

「…チームを変えて挑もうと無駄だ」

 

「無駄なんかじゃない!友達の為に戦う事は──無駄なんかじゃない!!」

 

コーラルは足の裏に全体重を乗せて一気に飛び出した。

その勢いで、床が抉れしまったが初速は想像以上のものとなった

 

『ぺけ!』

 

「ダァッ!」

 

そしてシールドを張りつつそのまま突進を仕掛け、対してソルもそれに正面から立ち向かい拳をぶつけた

 

「クゥゥ──ッ!!」

 

「──ッ!!」

 

ぶつかったエネルギーが大きく、お互いに大きく後方へ吹き飛んだ

 

「まだ…行ける!」

 

「この…ッ!?」

 

今度はソルから仕掛けようとした時、ソルを包む影が上から大きくなって来る

 

「食らえ!!」

 

コーラルとソルが吹き飛んだのと同時に、フラミンゴは天井に移動し、そこから足場にして威力を増した踵落としを繰り出した

 

「あグゥ!!?」

 

脳天を直撃し、そのまま力任せに床へと叩き付けた

 

「此処から先へは行かせない!何があっても!絶対に!!」

 

 

 

 

 

「よし、正面玄関に近付い……そうだよな!」

 

ようやく正面玄関に辿り着いたのだが、此処へ来る事が分かっていたのかもう一人の槍の兵士バーナーが待ち伏せていた

 

「帝」

 

サマーが此方へと視線を向けた。言葉にしなくとも、その目を見れば大体の予想はつく

 

帝はそれに頷き、ホムラの手を引いて走り出した

 

「行かさん!」

 

槍で貫こうとするとも、サマーとパパイアが蹴り飛ばしてそれを防いだ

 

「行かすよ!」

 

「二人は先へ進んで!」

 

サマーとパパイアが二人を見送り、バーナーと改めて対峙する

 

お互いに出方を伺いすり足で動く

 

そして

 

「やっ!」

 

「ッ!」

 

突然パパイアがビームを出して動いた。けれどそれで食らうバーナーではなく、槍を正面で回して打ち消した

 

「おりゃ!」

 

防御に槍を使った為無防備となった今、サマーはチャンスと見て側面から拳を振るった

 

「甘い!」

 

回転させる槍を地面に突き立てジャンプし避けた

 

「フッ!」

 

そして着地と同時に蹴りを放ちサマーを吹っ飛ばした

 

「なんのこれしき!」

 

「ッ!」

 

吹き飛ぶ体を何とか立て直しからのすぐに飛び出し、パパイアもそれを見て走り出した

 

武器は槍の一本のみ。防げるのは片方のみ。両側から挟み込んでしまえば、どちらかの攻撃は通る

 

「考えたな。ならばこうするまでだ!」

 

バーナーはまた槍を大きく回し、その遠心力を利用して床へと思いっきり叩き付けた

 

床は割れ、その衝撃波によってサマーとパパイアを寄せ付けなかった

 

「くぅ〜!中々上手くいかない!」

 

「サマー、倒すのが目的じゃない!帝がローラを助け出すまでの時間稼ぎよ!」

 

「でも、倒しちゃっても良いよね?」

 

「えぇ!!」

 

そして二人は再度飛び掛かった

 

 

 

 

 

大広間まで戻って来た帝は、その奥にある扉へと走っていた

 

「帝様待って下さい!」

 

突然帝の手を引いて止めた。何事かと思ってると、二人を阻む様にして炎の柱は二つ立った

 

「この炎…城下町で見たのと同じだ」

 

「またしても邪魔をするのか?」

 

炎の中から現れたのはヒートだ

 

「昼の騒ぎはお前の仕業か?」

 

「左様」

 

「なるほどな。操られているから仕方ないけど……それはちょっと、許せないな」

 

「帝様…」

 

「分かっている。下がってろ」

 

帝はキングハンドを装備したオーシャンステッキ、プリキュアの王杖を両手に持つ

 

「だから───一撃で終わらせる!」

 

『NATURAE!』

 

『FANTOME!』

 

『ABSOLUTE!』

 

三体の分身を出現させ走らせる

 

バーナーは炎の柱を幾つも立たせ牽制するも、帝達はそれを華麗に避ける

 

「ならば!」

 

手で穴を作りそこに口を当てさせる。

そして肺にはち切れんばかりの空気を蓄え、それを炎として吹き出した

 

「ッ!?」

 

火炎放射による広範囲の攻撃を避ける事は出来なかった。

炎が帝四人を呑み込んだ

 

「これで……ッ!?」

 

けれどそれを掻い潜って帝が身を乗り出した。

多少の火傷は負ってはいるが、重症となるものは一つもない

 

直前、分身した帝三人が肉の壁となり本物の帝を守り抜いたのだ

 

帝は懐に忍び込みバーナーの額に手を添える

 

「【眠れ】」

 

その言霊を受けたバーナーは崩れ落ち、深い眠りについた

 

「はぁ…はぁ……これで良いんだろう?」

 

「はい」

 

帝はホムラと共に、ローラが待つ太陽の間の扉の前に立つ

 

「その前に帝様、お手当ての方を」

 

「そんな悠長にしてる暇は──」

 

帝を無視してホムラは体に手を添えた。そこから淡い光が体の中へと流れ込み、帝の火傷した箇所を癒していく

 

「お手当てが終わりました」

 

「巫女って不思議なもん……?」

 

手当を終えたホムラを視線を移すと、僅かながら体が透けていた

 

「あぁこれの事ですか?力を使ったせいですよ。もう長くはないでしょう」

 

今日この日までホムラは何とか生き長らえていたが、巫女としての力を使い続けた事により本当の死が近付いていた

 

「無理はするな」

 

「それよりもローラ様を」

 

無視された、というより話したくないのか。そういう感情が読み取れる

 

 

 

 

 

////////

 

太陽の間の扉を開けると、中は教会の様な物の配置をしていた

 

そしてその先には、白いベールに包まれたローラがグレンと共に居た

 

「ローラ!!」

 

「部外者か…」

 

「ローラ帰ろう!皆んなが待ってる!」

 

帝が手を伸ばしながら呼び掛けるが、ローラは何も答えない。

それどころか、太陽の間に入ってから一度も此方を見ていない

 

「ほらローラ呼んでいる。挨拶はしないと」

 

「…」

 

帝の呼び掛けには反応もしなかったが、グレンの言葉には何故か従い此方へとゆっくり歩いて来る

 

そしてようやく口を開いてくれた

 

しかしそれは、帝にとって良くないものだった

 

「帰らないわ」

 

「な、何言ってるんだ!?」

 

「わたしは此処でグレンと共に生きる。そう決めたの」

 

「ローラ…」

 

ローラは確かに帝を見ているが、その瞳には映ってはいない

 

それはまるで

 

「あの瞳、グレン王子や他の兵士の皆様と同じです」

 

「操られているのか!?」

 

ローラはベールを脱ぎ捨て、マーメイドアクアパクトを取り出した

 

「おいまさか!」

 

 

 

「プリキュア、トロピカルチェンジ」

 

 

「ゆらめく大海原、キュアラメール」

 

 

 

プリキュア へと変身したラメールは、そのまま容赦無く帝達へと襲い掛かって来た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「消えなさい」




最近トロピカれないせいで、更新速度が遅くなっております。まぁ原因はこのオリストです。
思ってたより書く内容が多過ぎてシンドイです…


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第76話 6つの力、空に想いを込めて!

今回でオリスト終了です。長かった…

ではスタート!


ラメールの拳を帝は打ち払う事しか出来なかった

 

下手に傷付ける訳にもいかず、帝は防御するしか選択肢はなかった

 

「ラメールやめろ!」

 

「ッ!」

 

帝はステッキをしまい、背中に回り込んでハンマーロックでラメールを拘束する

 

「ラメー…グッ!?」

 

ラメールは柔軟な体で拘束を抜け出し、帝に裏拳をかました

 

「ラメール正気に戻れ!頼むお願いだから!」

 

それでも帝の声が届く事はなかった

 

言葉で駄目なら少し力付くで止めるしか方法は無かった。

プリキュアの王杖(レガリア)なら言霊の強制で鎮める事は出来る

 

「ラメール!止ま──ッ!?」

 

しかしそれを予期していたのか、瞬時に帝の口を手で塞ぎ腹部に拳を減り込ませた

 

「がッ!?」

 

只、目の前に居る邪魔者を倒す事を考えてるラメールの判断は早い。

そしてラメール相手に加減をしてる帝は、逆に判断を鈍らせる

 

それが差となりつつある

 

「グ…あ゛ッ!がぁ…っ!」

 

顔を充填的に殴られ、今や帝はサンドバッグ状態と化していた

 

ラメールの拳は血に染まっていき、床に鮮血が散ってゆく

 

「ッ!!」

 

顎に入った拳は口の中にまで影響を及ぼし、床に歯を転がす

 

もうこれ以上は死の危険性がある。転がる歯を見てようやく我に帰り、ホムラはラメールを止めようと近付こうとするも

 

「ぐ、来るなぁ!!」

 

「で、ですが!」

 

「ローラ居るんだろ?聞こえてる筈…ブハッ!」

 

「此処に居るわよ。グレンとわたしの邪魔をする人は容赦しない。骨を砕いてやるわ。じっくりといたぶって」

 

襟元を掴んで備え付けられてあった長椅子へと投げられ、強引に座らせてはそのまま殴り続ける

 

目は腫れ、鼻の骨は変形し、下顎も砕けている

 

それでも尚、帝はラメールに必死になっていた

 

「ろーら、ろーらぁ…おれは此処にいる…ここにいるから…ずっといっしょにいる、そばにいるからなぁ…」

 

「う、ゥゥァ…ッ!」

 

まだラメールの意識があるのか頭を抑えつつ苦しそうにするが、それを振り払う様に硬く拳を握り、帝の息の根を止めようとしに掛かる

 

大きく振りかぶり帝の顔へと

 

「ろ、…らぁ……」

 

ラメールの瞳が僅かに揺れ動き、拳が直前で止まった

 

そして力のない帝を優しく抱き寄せた

 

「帝、わたし…」

 

「あぁ……もどったんだ…」

 

「何故元に戻った?あり得ない…」

 

洗脳が解けるのは予想外といった表情をしていた

 

「帝様、今傷を治します」

 

ホムラが近寄り、額に手を添えて癒しの光を与える。

砕けた骨だけではなく、抜けた歯までも新しく生え変わった

 

けれどホムラの体は余計に弱まっていく

 

「ホムラもう無理はするな」

 

「いいんです。わたしにはこれしか出来ませんので…」

 

「そうか」

 

改めて三人はグレンの方へと向く。そこでは静かに怒っていた。けれど同時に余裕の笑みも浮かべている

 

「たかだか二人程度では止められない。もう一度ローラを手に入れれば──」

 

 

「とりゃあーー!!」

 

 

太陽の間の扉をサマー達が蹴破って乱入した

 

「サマー!皆んな!」

 

「ラメール元に戻ったんだね!」

 

「手こずって遅れたが、一応間に合いはしたな」

 

フラミンゴの言葉通り、サマー達の体はボロボロ。かなり激戦を繰り広げたに違いないが、それでも此処へ辿り着いた

 

ラメールを助ける為に

 

「…所詮は使い捨ての人間に過ぎない。しかしここまで追い詰めた。であれば、もう加減の必要性は何処にも無い!!」

 

グレンから莫大な炎のエネルギーが蓄積され始める。

嫌な予感を察した帝達は、急いでその場から退避しようと逃げるが

 

「もう遅い!」

 

その内包される炎を全て外へ放出した

 

自分達の足ではどうにも出来ないと瞬時に判断し、プリキュア の王杖で使い避難を試みる

 

「全員外へ──」

 

言葉を出す前に光が当たり一体を全て呑み、巨大な爆発を引き起こした

 

 

 

 

 

城はほぼ破壊されて無くなっていた。そんな瓦礫の山から、腕一本が這いずり出て来た

 

『ぺけ!』

 

同時にぺけ印のシールドが瓦礫の山を退かして、中から帝達が出て来た

 

「も、もうダメかと思った〜〜!!」

 

出て来たサマーの一言通り危機一髪だった

 

爆発の直前、ギリギリのところでプリキュア の王杖によって全員城外へ避難出来たが、崩れ落ちる建物に対しては考えていなかった

 

けれど、コーラルの咄嗟の判断で生き埋めにならずに済んだ

 

「コーラルありがとう」

 

「うん、でも…」

 

周りを見渡せば火が立ち込み、爆発が起きた中心にはヤラネーダより倍以上のある大きさで佇む炎の怪獣──イフリートが居た

 

「デカイ…」

 

「帝、ホムラちゃんを守ってて!」

 

「おいどうする気だよ!?」

 

「こうするんだよ!」

 

サマー達が高くジャンプして飛び出した

 

 

 

「ハートカルテットリング!」

 

「パフュームシャイニーリング!」

 

 

「「「「プリキュア !ミックストロピカル!」」」」

 

「プリキュア!オーシャンバブルシャワー!」

 

 

 

浄化技が届く前に全て気化してしまった

 

「嘘!?」

 

「それならアレをやるぞ!」

 

 

 

「ランドハートクルリング!」

 

 

「「「「「プリキュア!ランドビート・ダイナミック!」」」」」

 

 

 

ランドビート・ダイナミックで放たれたゾウの攻撃が直撃したがそれでもビクともしなかった。

イフリートはそのままゾウを両手で掴み上げ、握り潰して消滅させた

 

「コイツ……ッ!?」

 

イフリートが目を付けたのは帝達。イフリートから見れば石ころの様な存在にも容赦無く、膨大な炎のエネルギーを集約させ巨大な火球へと形作る

 

「コーラル皆んなを守れ!守るんだ!!」

 

『ぺけ!』

 

全員がコーラルの後ろへと避難するが、とてもじゃないがそれだけでは防げるとは思えない。

コーラルはあくまで保険

 

帝はシールドを飛び越えて、ステッキを構え始める。

メインとなる盾は帝で、それを防げるのはプリキュア の王杖だけと判断したのだ

 

「帝君無茶だよ!!」

 

「────ッ!!!」

 

コーラルが叫ぶのと同時にイフリートの火球は放たれた

 

両手を前に出して太陽ともいえるその火球を受け止めたのだ。

しかしその火力は凄まじく、帝の周辺はおろか、コーラルのシールドですら溶け始める

 

それを至近距離で受ける帝も異常だった

 

「──負けるか。俺は始皇帝で絶対なのだ!【爆ぜろ】!!」

 

火球を空高くまで打ち上げ、サンシャニティー全体に爆発による光と音が満ちた

 

「何とか防いだ…ッ!?」

 

一安心も束の間、イフリートは休む間も無く次の攻撃準備へ移行していた

 

(プリキュアの王杖でやっと返せれたというのに間髪入れず次……厄介だ)

 

「そうだ帝!何も受け止めなくてもいいんだよ!避けちゃえば──」

 

「それはダメ。今の破壊力を見る限り、地面にでも直撃したらこの国は地上に落とされる」

 

「パパイアの言う通りだ。わたし達が全部受け止めないと何もかも終わりだ」

 

「だけど、帝君ですらもう限界ですよ!」

 

「ねぇ帝、何か案は無いの?」

 

次の攻撃にもう時間が無い。切羽詰まる中で、頼られる帝だが打開する方法が思いつかない

 

「帝様、一つだけ打開する方法があります。わたしが差し上げた、太陽の指輪を出して貰えませんか?」

 

何か作戦を思い付いたのか、それを頼りに言われた通り指輪を出した

 

「この指輪に、わたしの残る全ての力を捧げます。それが出来れば必ず勝機はあります」

 

「それナイスアイディア!帝、早く頼んじゃいなよ!」

 

「…嫌だ」

 

これが唯一の策しか無いと踏み込むも、帝はそれを拒否した

 

「それってつまり───『わたしの命を使わないと勝機は無い』。そうだろ?」

 

ホムラの顔が一瞬強張った。それは図星のサイン

 

「…はい。それに、このまま何も出来ず終わるくらいなら、せめて何かと考え付きました」

 

「それが、この命を懸けた選択か?」

 

「そもそも最初からわたしには時間無いのです」

 

「待ちなさいよ。もっと他に方法が──」

 

「ありません。皆さんの力はとても素晴らしいものですが、あと一歩足りないと感じてる筈です」

 

ランドビート・ダイナミックでも通用しないとなると、残る手段は一つしか残されてない。

しかしそれすらも怪しい

 

ホムラは太陽の指輪に手を添えて残りの力を送り始めた

 

「わたしが今日まで彷徨い続けた意味。それはこの瞬間の為とわたしは思っております」

 

形を保っていた体から温かな赤い粒子へ還っていく。

それが何の意味かはもう全員察していた

 

「願わくは、皆さんに太陽の御加護が宿りますように」

 

残りある全ての力を太陽の指輪へと変換したホムラは、そのしがらみから解放された

 

すると太陽の指輪にも変化があった

 

羽の模様があり、白く、どこまでも透き通る様な指輪。

これが帝達が追い求め探していた空のリング「スカイハートクルリング」

 

帝の手の中に収まりそれを大事に握る

 

「ホムラ……指輪は俺のステッキでは使えない。だから力を貸してくれラメール」

 

「えぇ!」

 

ラメールがリングを受け取ると同時にイフリートも再度火球を撃ち放った

 

だがそれよりも早く、ラメールはマーメイドアクアパクトにスカイハートクルリングをセットした

 

 

「「スカイハートクルリング!」」

 

帝とラメールはパクトとプリキュア の王杖を高く投げ、その二つのアイテムが融合させる

 

マーメイドアクアパクトを思わせる形のしたステッキが、帝とラメール一本ずつ手にする

 

これが二人専用のステッキ

 

「「マーメイドアクアステッキ!」」

 

マーメイドアクアステッキを手にしたラメールの姿は、エクセレン・トロピカルスタイルに変身していた

 

 

二人はマーメイドアクアステッキを地面に突き立て、自分達を守る水の繭を作り出す

 

激しくぶつかり合う水と火。普通なら火を消化する水が勝つのだが、それ以上に火球の火力が強過ぎて逆に水の繭が蒸発され追い詰められる

 

「クッ、折角の空のリングでも無理なのか…」

 

「──そんな訳ないだろフラミンゴ。ホムラが俺達に託した想いがこの程度で」

 

「負ける筈ないわ!本番はここからよ!」

 

マーメイドアクアステッキの上部には、ルーレットの代わりにマーメイドアクアパクトが融合されている。

勿論それには、元のパクトの機能が依然として備わっている

 

ステッキの出力を上げる為、二人はステッキ上部の中央のパレットを回転させる

 

それによって水の繭は蒸発されないどころか、火球に負けず消化していく

 

「皆んな、わたし達の合図があるまで待ってくれる?」

 

「二人だけで大丈夫?」

 

パパイアが心配するがラメールは笑っていた

 

「わたしと帝とのコンビよ!大丈夫以外あり得ないわよ」

 

「帝君信じてるよ!」

 

「ああ。行くぞラメール!」

 

帝はラメールの手を絡めて握り、脚に力を込める

 

「いっけぇぇ!帝!ラメール!」

 

サマーは二人の背中を押し、一気に繭から飛び出した。

消化され小さくなりつつあった火球も、打ち破った

 

地面に足がついた途端、足元に水が溢れ出した。

二人はそれを利用し、波の上を滑る様にして地上で波乗りをする

 

『小癪な!』

 

イフリートは巨大な両手で叩き潰そうと落としてくる

 

二人はそれを見てジャンプして腕に着地して、駆け上り頭へと接近する

 

『近付けさせるものか!』

 

腕から炎の柱を出して攻撃をするも、緩急をつけて二人は華麗に避ける

 

そしてとうとう顔まで到達した

 

再度パレットを回転させ、今度はステッキに水を纏わせコーティングさせる

 

「「食らえ!!」」

 

両側からステッキを振り翳して、顔面を凹ませた

 

イフリートの体勢が崩れた。けれどそのせいで空中へと放り出された帝とラメール

 

ステッキに纏っていた水が、今度は二人の体へと移り身に纏わせる。

それによって二人は空中に浮かんでいた

 

『──ッ!』

 

イフリートは二人へ顔を向け、口から高密度のビームを放った

 

「やらせるか」

 

帝の周りに二つの水の球が現れ、それが形を変えてイルカの姿となる。

水のイルカ達はビームに自ら飛び込み相殺した

 

相殺した事で両者の間には煙りが巻き起こる

 

「ラメール!」

 

「プリキュア!くるくるラメールストリーム!」

 

ラメールの放った技が煙りの中から現れ、イフリートの腹部に直撃して内側が露わになった

 

その中の中心部をよく見ると、核となっているグレンを発見した

 

「「ッ!」」

 

すかさず帝とラメールはグレンの元へ駆け抜ける

 

『取られてなるものかァァァ!!』

 

核となるグレンを取られまいと、体中から小さな火球を無造作に放つも、水のコーティングをしてる二人には全く効かなかった

 

何者にも囚われず、空や大地を自由に駆け回るその姿は海を泳ぐ人魚

 

これがスカイハートクルリングの力

 

二人は更に飛行するスピードを上げ、イフリートの体内へ侵入し、グレンを救出してそのまま貫通して地に足をつく

 

『グォォォ!!?』

 

グレンを失ったイフリートは形を保てず苦しみ始める。

それでも尚イフリートは足掻き続ける

 

取り返そうと拳を握り仕掛けようと抵抗する

 

「「皆んな!!」」

 

その合図を聞いて、帝とラメールの前に二つの影が飛び出した

 

「プリキュア!おてんとサマーストライク!」

 

「プリキュア!ぶっとびフラミンゴスマッシュ!」

 

サマーとフラミンゴの技がイフリートの拳を弾いた

 

「タイミングバッチリね!」

 

「皆んな、これで最後だ。終わらせるぞ!」

 

「「「「「オーライ!」」」」」

 

 

 

「「「スカイハートクルリング!」」」

 

帝、サマー、ラメールの掛け声でトロピカルハートドレッサーにスカイハートクルリングをセットする

 

「「「「「おめかしアップ!」」」」」

 

「「マーメイドアクアステッキ!」」

 

「「「「エクセレン・トロピカルスタイル!」」」」

 

帝とラメールはマーメイドアクアステッキ、サマー達はエクセレン・トロピカルスタイルへと変身した

 

「「「「「「6つの力!空に羽ばたけ!」」」」」」

 

サマーがドレッサーの鏡を持ち、その両側から帝とラメールがマーメイドアクアステッキを重ね合わせ鏡に手を翳す

 

するとハートの光が放たれ、白いワシが召喚される。

そこから回転ジャンプをして、大きく両手両足を広げて叫ぶ

 

「「「「「「プリキュア!スカイビート・ダイナミック!」」」」」」

 

ワシは、対象を捉えて上空から一気に急降下で体当たりをして食らわした

 

そして時計回りにサマー、帝、パパイア、コーラル、フラミンゴ、ラメールで円を作り勝利の掛け声を一斉に叫んだ

 

「「「「「「ビクトリー!」」」」」」

 

 

 

 

 

「「はぁ…はぁ…ッ!」」

 

帝とラメールは肩で息をしながら、両者無言でハイタッチを交わして勝利に喜んだ

 

「ぅ…ん……」

 

今まで洗脳されて操られていたグレンが目を覚ました。

そして他の兵士達も続々と目を覚まし始める

 

これで、当初の目的である空のリングの入手、サンシャニティーでの事件も全てが終わったのだった

 

 

 

 

 

////////

 

「本当に行かれるのですね。此方が色々と御迷惑を掛けたのもありますが、謝罪と感謝を込めてもう少し此処で留まる事は出来ませんか?」

 

「俺達にもやらなきゃいけない事が山程あるから遠慮しとく」

 

まだまだ疲れ切った体だが、あの戦闘から数時間しか経っていない。しかしそろそろ帰らなければならない

 

「あのローラ……」

 

「謝らなくていいわよ。無事でなによりよ」

 

ローラもグレンがした事は全く気にしていなかった

 

「それよりも、グレンはホムラに謝らないとね!」

 

「そうだな」

 

「ローラ!早く行くぞ〜!」

 

「分かってるわよ!」

 

帝に呼ばれてローラは手を振ってそそくさと走る

 

帝達がホムラ鳥に乗る姿を微笑ましく見ていた

 

「貴方方に、太陽の御加護が宿りますように」

 

 

 

 

 

ホムラ鳥に乗って帰る途中、先程グレンの話を遮った事について話していた

 

「もう少し話しても良かったじゃないのか?」

 

「あ〜それなんですけど…」

 

あすかの言葉にさんごとみのりと横目で帝を見る

 

 

「ローラ!これからは俺以外の男とは喋るなよ!絶対に!!」

 

「そんなのわたしの勝手でしょ?」

 

「うわぁぁんん!!まなつ〜ローラが浮気するよ〜!!」

 

「ローラダメだよ」

 

「わたしが悪いの!?」

 

 

「ローラと離れていたせいで重症。今は放置していた方が帝の為になると思う」

 

「ローラに人権を…」

 

「んふふ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

様々な障害があったものの、空のリングを手にしたトロピカる部御一行

 

彼女達にまた新しい力を得たのだった




空のリングについては今後も出します。オリスト限定じゃないっすよ

何気に主人公とプリキュア 達の合体技って今回が初めて

下にいつも通りの詳細で〜す


スカイハートクルリング

帝とラメールがパワーアップする為のアイテム。マーメイドアクアパクトにセットする事でプリキュア の王杖と融合して「マーメイドアクアステッキ」になる。
トロピカルハートドレッサーでは、6人揃っての浄化技「プリキュア!スカイビート・ダイナミック!」を放つ事が出来る


マーメイドアクアステッキ

スカイハートクルリングをマーメイドアクアパクトにセットする事で、プリキュアの王杖と融合し、帝とラメールの手に一本ずつ分け与えられる。
ラメールに関してはエクセレン・トロピカルスタイルに変身する
水を自由自在に操る事で、人魚の如く空、地上を高速で動ける事が可能。
更にステッキとパクトとしての機能も健全な為、その力も行使出来る


プリキュア!スカイビート・ダイナミック

トロピカルハートドレッサーとスカイハートクルリングを使用する事で、本当の意味での全員で放つ事が出来る浄化技。
使用する際、帝とラメールはマーメイドアクアステッキ、サマー達はエクセレン・トロピカルスタイルへと変身する。
サマーがドレッサーの鏡を持ち、その両側から帝とラメールがマーメイドアクアステッキを重ね合わせ鏡に手を翳す事で、ハートの光が放たれ、白いワシが召喚される。
そこから回転ジャンプをして、大きく両手両足を広げて「プリキュア!スカイビート・ダイナミック!」と叫ぶ事で、召喚されたワシが急降下しながら対象へと攻撃して浄化する。
「ビクトリー!」の掛け声は、時計回りにサマー、帝、パパイア、コーラル、フラミンゴ、ラメールの順に円となって一斉に行う


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第77話 あすかと百合子、交わる告白!

あすか回

ではスタート!


「生徒会長も引退か〜」

 

「あすか先輩も引退しちゃうんですよね〜」

 

「まぁな。まだ先だけど」

 

先程行われた学校集会で、本日をもって生徒会の座から降りた百合子。

それの感傷に相まって、あすかの引退もそろそろだと思いふける

 

「ねぇ、部活動も生徒会みたいに引退式とかするの?」

 

「どうなんだろう?」

 

「聞いた事ないな…」

 

「だったらやろうよ!トロピカルってる楽しいイベントを六人でさ!」

 

「でも何するんだ?」

 

部活動の引退式などやった事ない為、どんな風に行えばいいのか困る

 

「アイディア浮かばないなら」

 

 

 

 

 

みのりの提案で、市内にある図書館へ足を運ぶ事にした

 

「これだけ本があれば何かヒントがあるでしょう?」

 

「さてさて、何処から手をつけようか……さんご?」

 

「やっぱり可愛いな〜。フェニックス学院の制服!」

 

これから本を漁って引退式のアイディアを探そうとしたが、さんごの独り言で全員が偶々図書館に居たフェニックス学院の生徒に注目する

 

「フェニックス学院?」

 

「進学校でありながら、部活も強くて有名な高校」

 

「そういえば、この近くにあるんだよね?」

 

「ねぇ、中学と高校って何が違うの?」

 

「え?中学は中学で、高校は高校だよ!」

 

「…要するに何も知らないのね」

 

「じゃあ見に行こうよ高校!」

 

知らなければ知ってみる。行動あるのみのまなつにさんごとローラも賛成する

 

しかし唐突な事に帝、みのり、あすかは動揺する。

これでは、何の為に図書館へ来たか分からなくなった

 

「イベントは?」

 

「お願いします!!」

 

 

 

 

 

結局、まなつに押し切られてフェニックス学院まで来てしまう羽目になった

 

放課後である為、校内は既に部活動をする生徒達で溢れかえっていた

 

「おぉ〜!流石高校の部活は違うなぁ〜!」

 

「あれ見て!テニス部ね」

 

練習でも白熱してる部員を見てると、途中見知った人がコートに入った

 

「あれ?あすか先輩、あの人って」

 

「あ…」

 

まだ中学生の百合子がコートで練習を受けていた

 

「何で此処に…」

 

「なら本人に聞いてみましょう!生徒会長〜!!」

 

まなつの呼び声に百合子が気付いた。コーチの許可を得て此方へと移動してくれた

 

「もう生徒会長ではないわ」

 

「何で此処に居るの?」

 

「推薦入学の候補だから。今体験入学してるのよ。貴女達こそ何をしてるの?」

 

「まなつ達が学校を見たいって言うから」

 

百合子の質問に答えたのはあすか。しかし、答えたもののぶっきらぼうな言い方

 

「貴女もでしょう、フェニックス学院は。貴女の夢だから」

 

意外な事に、あすかもフェニックス学院の入学を決めていたのだ。

けれど、あすかの歯切れの悪さから察するにまだ迷いがあった

 

「この前、壁打ちしてるのを見たわ」

 

「ッ!」

 

「コートの此方側に来たいのなら、只見ているだけじゃ無理よ。まだテニスに未練があるのでしょう?本当は自分が此処に居た筈だって思っているのでしょう?」

 

「そんな事…思ってない……」

 

そうは言ってるが、顔には出ている事に百合子は気付いてる。

そこで百合子はある提案をした

 

「コーチ、彼女と試合させてくれませんか?」

 

「何故だね?」

 

「晴れて推薦を頂く為です。彼女に勝たなければ自分で納得出来ません」

 

「勝手に話を進めるな!」

 

「良いじゃない。コーチに良い所を見せれば、貴女が推薦を得られるかも知れないわよ。それとも負けるのが怖い?逃げる気?」

 

「上等だ、やってやるよ」

 

あからさまな挑発だが、あすかはそれを受けて立った。

この勝負に意味があるのか、はたまた無いのか

 

 

 

 

 

試合は学校が休みの日に行われた

 

「あすか先輩頑張って下さ〜い!」

 

「あぁ!」

 

コート中央。ネットを挟んであすかと百合子の睨み合いになっていた

 

試合が始まる前から既にこの緊迫感

 

サーブは百合子から始まった

 

「ッ!」

 

最初の一級。様子見と思い悠長に構えていたのが痛手となった

 

ボールはサービスコートへ入れ、予想外の速さにあすかは一歩も動けずポイントを先制された

 

その後も百合子が有利に進み、呆気なく1ゲームを取られた

 

「流石元生徒会長」

 

「え、もう終わったの?」

 

「いいえ、1ゲーム取られただけ。今回は5ゲームマッチだから先に3ゲーム取ればいいの」

 

「つまり、三回勝てば良いんだね!」

 

「よ〜し、まだまだこれからだ!頑張れ〜あすか先輩!!」

 

コートチェンジの際、百合子は何かあすかに話しかけていた

 

「残念だわ。その程度だったなんてね」

 

「いいウォーミングアップになった」

 

コートチェンジを終え、あすかのサーブからゲームが再開される

 

「フッ!」

 

あすかのサーブを難なく返した後、切り返しても追い付けないコートの端にボールを返してポイントを先取した

 

「まぐれよ」

 

「本当はビビッてるんだろ?怖がりだから、なっ!」

 

「誰が怖がりよ!」

 

強烈なサーブをものともせず百合子は返した

 

「合宿の夜、トイレが怖いって泣きそうだっただろ?」

 

「は?」

 

「だからわたしが付いて行った!」

 

「そっちこそ、合宿で財布落として泣きべそかいてたでしょ!」

 

「泣くか!」

 

その後も激しいラリーと共に、あすかは順調にポイントを稼いではゲームを勝ち取っていた

 

そしてあすか有利が進み、いつの間にか2ゲームを取って逆転した。

ブランクがある事を想定していたが、ここまで出来るとは百合子自身思わなかった

 

「相当鍛えてる様ね。テニスを辞めたんじゃなかったの?」

 

「辞めた!」

 

会話を続けながらも二人のラリーはまたも続く

 

「なら何でまた?」

 

「まなつ達だ!トロピカる部が教えてくれた。仲間も捨てたもんじゃないって!またテニスが出来るんじゃないかって!そう思ったんだ!」

 

「わたしだって思ってた!貴女とずっとテニスしたかった!!」

 

「ッ!!」

 

その言葉で足を止めてしまいポイントを取られてしまった

 

しかし、百合子から出た言葉は嘘偽りの無い本音だった

 

「あの時は、貴女を守る為。あの試合さえ棄権すれば、ずっとダブルスを組んでいられたのに…」

 

「だったら棄権じゃなくて一緒に戦って欲しかった」

 

少し試合が中断してしまった時、ここでタイミング悪く少し離れた場所でヤラネーダが現れた

 

「アイツらか」

 

「あすか先輩、わたし達に任せて!」

 

「試合頑張って!」

 

帝達はすぐさまヤラネーダの元へと向かって行った

 

「アレと似た空を見たわ修学旅行の時に。そして彼女が現れたのも。夢じゃなかったのね。あの子、貴女何でしょ?」

 

百合子にプリキュアだとバレてしまった。

あすかはその事に関しては何も追求はしなかった

 

そしてラケットを置き、試合を放棄しようとしていた

 

勿論それを百合子は止めると分かっていた

 

「待って、試合を続けなさい!そうすれば、貴女が推薦候補にだって!」

 

「推薦?そしたら百合子はどうする気だ?」

 

「わたしの学力ならフェニックス学院に入れるわ」

 

「大した自身だな」

 

「また、一緒にテニスが出来るわ」

 

「悪い。でも今はこの試合より仲間が大切だから」

 

あすかは結局その試合を投げ出して、仲間の為にコートを後にした

 

 

 

 

 

////////

 

「あ、蟹だ」

 

ヤラネーダが現れたのは浜辺。しかも今回も蟹である生き物を使っての超ゼッタイヤラネーダときた

 

「皆んな行くよ!」

 

「あぁ!」

 

気を引き締めて行こうとしたのだが、いる筈の無いあすかの声がした

 

「何で!?」

 

「試合は?」

 

「今一番大事なのはこっちだから。行くぞ皆んな!」

 

 

 

「「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」」

 

「「「「「レッツメイク!キャッチ!」」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

「燃えるど根性!」

 

「「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」」」」

 

 

「フェスティバルスタート!」

 

『ACTIVITY!』

 

 

 

「ヤラネーダ!」

 

目から発した攻撃で足元が爆発したが、全員難なくジャンプで回避した。

それでも攻撃の手は緩めず、ハサミだけを分離させ飛ばして来た

 

「コーラル肩貸してこのまま!」

 

「うん!」

 

『ぺけ!』

 

帝はコーラルの肩を持ってACTIVITYの能力で強化させ、強化されたシールドでヤラネーダの攻撃を見事に弾いた

 

「ハァッ…え?」

 

着地と同時にパパイアがビームを放ったが、蟹とは思えない程の超高速の動きで攻撃を避けたのだ

 

「ハァ…うわっ!?」

 

動きが止まった瞬間をラメールが狙うも失敗に終わる

 

「帝タッチ!」

 

「頼んだ!」

 

サマーが帝とハイタッチした事で、ACTIVITYの能力を受け力を増した。

踏みしめる脚で一気に捕まえようとしたが

 

「やぁっ…速!?うわっ!?」

 

飛びついたが、ACTIVITYの能力を受けたサマーを上回り避けられた挙句、カウンターを貰った

 

「速過ぎる。蟹じゃないだろ…」

 

「任せろ!」

 

フラミンゴはヤラネーダの動きを観察し、狙いを定める

 

「行くぞ!」

 

 

「ハートルージュロッド!」

 

「プリキュア!ぶっとびフラミンゴスマッシュ!」

 

 

「ヤラネーダ…」

 

技が見事に直撃しヤラネーダの動きが止まった

 

「今だ!」

 

 

 

「マリンハートクルリング!」

 

「「「「「おめかしアップ!」」」」」

 

「「「「「エクセレン・トロピカルスタイル!」」」」」

 

「「「「「5つの力!海に轟け!」」」」」

 

「「「「「プリキュア!マリンビート・ダイナミック!」」」」」

 

 

「「「「「ビクトリー!」」」」」

 

 

 

 

 

////////

 

「みのりん先輩ここは?」

 

「そこはさっきの応用の式を使えば解ける」

 

「…帝解らないのだけど」

 

「あぁそれは……まなつ?」

 

今日のトロピカる部は部室で勉強会という形になっていた。何故かと言うと、今日はあすかは参考書買うのに部活を休んだのだ

 

それに倣って帝達も勉強会を開いているのだ

 

「頭がパンク…帝ヘルプミ〜…」

 

「何処が解らないんだ?」

 

帝がまなつとローラを相手にしてる横で、少し余裕のあるさんごはみのりと話していた

 

「あすか先輩フェニックス学院を第一志望にしたらしいですね!」

 

「うん。だから暫くは会うのは難しいかもね」

 

「えぇ〜!あすか先輩が居ないとトロピカれないよ〜!」

 

「でも応援したいのよね?」

 

「なら俺達も黙って勉強だな」

 

「それとこれとはちょっと違うと思うけど…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

百合子との仲を少しずつ取り戻し、今は共にテニスをする為勉強に励むあすかだった




次回はさんご回!

ではここまでの拝読ありがとうございました!


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第78話 わたしの本当の"好き"は此処に!

さんご回!

ではスタート!


「わたし、モデルオーディションに出るわ!」

 

学校の休み時間の時、ローラが雑誌の中身を見せながら帝とさんごに宣言した

 

「書類審査に通ったら、次は動画を送って最後は面接だって」

 

「ほら、楽勝ね」

 

「じゃあ帰りに神社にでも寄って、落ちます様にと願掛けておくか」

 

「何でよ!?」

 

「だって、ローラは俺のものだし。アイドルローラを世界中の人々が、こぞって取り合って戦争でもしたらどうする?それくらいなら俺は死ぬ」

 

「ローラも応募するんだ…」

 

いつものやり取りの中で、さんごだけは曇った表情をしてたのを帝は見逃さなかった

 

 

 

 

 

その日の夜

 

「お邪魔しま〜す」

 

「本当、いつもさんごは真面目だな。部屋に入る事なんてしょっちゅうだろ?」

 

今日はさんごが皇家に泊まる日だった

 

いつも通りお風呂から上がり、パジャマ姿のさんごは帝の部屋に入って早々にベッドに腰を掛けた

 

「トロピカ卒業フェスティバル楽しみだね」

 

「そうだな……なぁさんご、今日元気無かったけどどうした?」

 

「…気付いていたんだね」

 

隠していたつもりだったが、やっぱりといった表情をした。

でも少しだけ、心の中では気付いて欲しいとも思っていた。

その気持ちが溢れていたに違いない

 

「…実はわたしもオーディション応募したって言ったら驚く?」

 

「別に?寧ろやらない方が驚きだよ。応募したって事は、それくらいやる気があるって事だろ?何か思う事があるの?」

 

「テニスが好きなあすか先輩、本と物語が好きなみのりん先輩、女王様を目指して頑張るローラ、何でも好きになったものに全力で一生懸命になれるまなつ、一途な想いで真っ直ぐな帝君。皆んなすっごくキラキラしてる。好きなもの、やりたい事を見つけて。それに夢中で」

 

しかしそれが、さんごにとって考えさせられるものとなっていた

 

「『でも自分は?』『わたしは何がしたいんだろう?』『本当に好きなのは何なんだろう?』そう考えたら少し怖くなっちゃって」

 

「そんな事はないよ。さんごだって自分の可愛いを言える様になったし、メイクにだって詳しいし得意じゃん」

 

「得意って本気で勉強した訳じゃないし……でもわたしも、皆んなの様にキラキラしたい。もっと心からトロピカりたい。だから、一度試してみようかと思ったんだ。わたしの好きが本物か……誰かに誘われるとかじゃなくて、わたしが頑張って、わたしの好きを信じたいの!」

 

「好きを信じたいか……なら俺は全力で応援する!さんごの幸せを掴むまで!」

 

さんごの手を取り、顔を近付けおでこ同士くっ付ける

 

「帝君のことも応援してるよ」

 

 

 

 

 

////////

 

それから暫く日が経ち、一次審査の発表のお知らせが届いた。

それをトロピカる部の皆んなで見届ける事となった

 

震える手で封筒の中身を見て

 

「あ!一次審査合格!」

 

「やったぁ!」

 

さんごは見事一次審査を突破した

 

ローラも封筒が返って来たのだが、表面を見てずっと固まっていた

 

「…なんか戻って来てるんだけど?」

 

送った筈の封筒がそのまま返って来ていた。

封筒には「あて所に尋ねあたりません」の半が押されていた

 

つまり要は

 

「残念だったな。郵便は宛て先の住所を書かないと届かないんだ」

 

「ドンマイ」

 

「良かった。これでローラの魅力を知る者はトロピカる部だけに収まった」

 

「ムキーー!こうなったら、絶対さんごを合格させるわよ!皆んな気合い入れなさい!!」

 

二次審査へ向けて動画作成。総出でさんごに協力してそれが完成した

 

そして後日、二時審査でも通過したという連絡が入り、さんごはとうとう三次審査面接まで進む事が出来た

 

 

 

 

 

////////

 

次となる三次審査は、あおぞら出版という場所での面接

 

この面接が通れば最終審査となる

 

近くで応援したいが、そこから先は参加者のみとなっており、帝達は玄関で見送った後外でさんごが通る事を祈っていた

 

「もう始まってる頃よね?」

 

「そういえばちょっと意外だった。ローラがこの前言ってたこと」

 

それは二次審査の通知が来てすぐの出来事だった

 

 

 

『──気が早いかも知れないけど、もしモデルの仕事であおぞら市を留守にしている時に、ヤラネーダが出たらどうしよって…』

 

『──確かに、さんごのバリアは強力だしな』

 

『──だよね〜!いざとなれば守ってくれるから安心して戦えるところあるしな〜』

 

『──今更何言ってるの?大丈夫よ、さんごが抜けたってわたし達で何とかするわ』

 

『──何とかなる?』

 

『──「なる」じゃなくて「するの」よ!そうでしょ?』

 

 

 

「わたしはグランオーシャンの女王になるだもん。その程度こと出来なくて当然よ」

 

さんごがプリキュア としての活動に支障を不安があったが、それを安心して見送れる様にローラが背中を押した時の話だった

 

「皆んな〜通りました〜!」

 

面接を終えたさんごが帰って来た

 

その表情や言葉を察するに上手くいったのだろう

 

「次はこのまま最終審査!」

 

「流石さんごだな!審査員も見る目がある……で思い出したが、ゆなちゃんも審査員だったよな。元気してたか?」

 

「はい、わたしは元気ですよ」

 

「え?」

 

振り返ると、休憩なのか外に出て居るゆなと出会った

 

「ゆなちゃん!相変わらず綺麗だね!」

 

「ありがとう。本当はゆっくり話したいのだけど時間が無くて。さんごさん、ちょっといいですか?」

 

ゆなに呼ばれ、さんごは二人っきりで話す為その場から離れて行った

 

「あ、保護者として俺も一緒に──」

 

「帝はこっちだ」

 

二人の邪魔をする事は間違いないので、何か起きる前にあすかが帝を引き摺った

 

 

 

 

 

それから暫くして、話を終えたさんごが帰って来た

 

「おかえりさんご!どんな話だったの?」

 

「うん、ちょっとね…」

 

「帝止まれ。そろそろ時間だ」

 

時計を確認すると最終審査まで残り時間は少ない。

移動しようと準備していると、離れた場所でヤラネーダが現れるのを見てしまった

 

「あれは!」

 

「さんごはオーディションに行って!」

 

「安心なさい!」

 

「あっちはわたし達が!」

 

「片付ける!」

 

「オーディション頑張れよ!」

 

 

 

 

 

ナマコのヤラネーダが現れた場所に到着したが、既にやる気を奪われた人達でいっぱいだった

 

 

 

「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」

 

「「「「レッツメイク!キャッチ!」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

「フェスティバルスタート!」

 

『PUPPET!』

 

 

 

変身したサマー達を見て、その場に居たヌメリーは首を傾げていた

 

「あら、一人足りないわよ?」

 

「それが何?」

 

「例えコーラルがいなくたって」

 

「何とかしてみせる!」

 

「これ以上の邪魔はさせない」

 

「行くぞ!」

 

全員が一斉に攻撃をするも、いつも通りに上手くいかなかった

 

殴ればぬかるみで滑り、柔らかい体で衝撃が跳ね返りまともなダメージが入らない

 

「攻撃が効かない!」

 

「滑ってるせいだ!」

 

「ヤラネーダ!」

 

「取り敢えず避けるんだ!」

 

口から吐かれる触手を、PUPPETの能力でサマー達を操って回避させた

 

「帝!」

 

「え…うわっ!」

 

サマー達に気を取られ、自分にも攻撃が来てる事に油断して気付かず食らってしまい建物に押し付けられた

 

「よくも帝を!──プリキュア!おてんとサマーストライク!」

 

直情的になりはしたが、サマーの技がヤラネーダに直撃した

 

「お返しするわ」

 

けれど、それをヤラネーダは耐えるどころか跳ね返し来た。

跳ね返って来る事など想定外で、避ける事も出来ず帝達は、自分達の技を食らう羽目になった

 

「「「「「うわぁぁ!?」」」」」

 

「参った?」

 

思わぬ大ダメージを負ってしまうが、それを耐え忍んで持ち堪えた

 

「まだよ!」

 

「約束したんだ、全力で応援するって!この程度で諦めるか!」

 

「あっそう」

 

「ヤラネーダ」

 

最後のトドメをと近付いて攻撃する時だった

 

全力で走って、帝達の前に出て庇うさんごが現れたのが

 

「ダメェェェ!!」

 

 

 

「プリキュア!トロピカルチェンジ!」

 

「レッツメイク!」

 

「キャッチ!」

 

「リップ!」

 

「アイズ!」

 

「ヘアー!」

 

「チーク!」

 

「ドレス!」

 

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

 

 

『ぺけ!』

 

ヤラネーダの攻撃を弾いて、何故此処に居るのか答えた

 

「オーディション、順番を後ろに回してくれたからわたしも戦える!大丈夫だよ!ヤラネーダの攻撃は全部防ぐから、皆んなは攻撃をお願い!」

 

「ヤラネーダ!!」

 

ヤラネーダは口から液体を飛ばすも、コーラルは正面から受け止め防ぐ。

そしてコーラルが引き受けている間に、帝達はとにかく連打の応酬でダメージを与え続ける

 

(戦闘でのわたしの役目は守ること。皆んなが元気に戦える様に、こうしてわたしが支えること)

 

コーラルは何とか堪えてるてが、更に追い討ちを掛けるようにヤラネーダが力を上げた

 

少しだけ押されつつあるが

 

(やっと分かった、わたしの本当の好きなもの。わたしの可愛いが皆んなに伝わってもっと可愛くなる。わたしの力が皆んなを助けて、もっと可愛く、もっと強くなる!そう───)

 

流石のヤラネーダも効かないとはいえ、攻撃して来る帝を鬱陶しく思い体のトゲをミサイルとして撃ち出して、帝達に襲い掛かる

 

数は全部で五つ。それを同時に

 

『ぺけ!』

 

コーラルはいつもの人差し指二本から、両の指を絡ませて全て同時に五つのシールドを展開して、帝達をミサイル攻撃から守り抜いた

 

「わたしの好きは此処にある!!」

 

その手を力強く握り、更にシールドを強固にしてヤラネーダの攻撃を跳ね返した

 

宣言通りコーラルは皆んなを守り抜き、そして自分に降り掛かる攻撃すら跳ね返してチャンスを作る

 

 

「プリキュア!もこもこコーラルディフュージョン!」

 

 

「マーメイドアクアポット!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

 

「マリンハートクルリング!」

 

「「「「「おめかしアップ!」」」」」

 

「「「「「エクセレン・トロピカルスタイル!」」」」」

 

「「「「「5つの力!海に轟け!」」」」」

 

「「「「「プリキュア!マリンビート・ダイナミック!」」」」」

 

 

「「「「「ビクトリー!」」」」」

 

 

 

 

 

////////

 

「勿体ない。辞退しなきゃ合格してたのに」

 

その後さんごは、最終審査で自ら辞退する事を言い出してオーディションが終わったのだ

 

しかしそれは、さんごの新しい道を進ませる力となった

 

「でも気付いちゃったんだ。自分が人前に出るより、誰かを可愛くしたり、可愛いものを皆んなに伝える方が嬉しいし楽しいって。だから、そういう道に進みたい」

 

「じゃあモデルはやらないの?」

 

「心が決まりましたから」

 

「さんごは強いな」

 

「でしょ!わたしは前からさんごが強いって知ってた!」

 

「なら俺はそれよりも前から、出会ったその瞬間からそう感じ取り思った!!」

 

皆んなにそう言われて多少の恥ずかしさが出て来る。

でもやはり、今のさんごは

 

「今は皆んなと、トロピカる部で色んな事をチャレンジして…あと、プリキュア で頑張るのがわたしの一番やりたいこと!」

 

「うん!じゃあ先ずは、トロピカ卒業フェスティバルでやる事決めよう!いっくよ〜!皆んなで──」

 

「皆んなでトロピカっちゃお〜!」

 

「「「「お〜!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本当の"好き"を見つけたさんご。それがどの様な形で将来彩るのか

 

それはまた




次回はみのり回!

ここまでの拝読ありがとうございました〜!


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第79話 伝説のパパイアの冒険譚!

みのり回!

ではスタート!


今日も今日とて、部室で集まり話し合っていた。

トロピカ卒業フェスティバル参加の部活動が多くなって来ており、そろそろトロピカる部でもどんな事をするのか決めなければならなかった

 

全員の意見を聞いた限りでは

 

主役はローラ、ならば演劇に向いてる。演劇をやるなら、みのりのマーメイド物語が良いと話が進んでいた

 

しかし

 

「…悪いけど、マーメイド物語はダメな所がいっぱいあるから面白くないよ」

 

「なら、面白くなる様に書き直せば良いじゃない?」

 

「そうだよ!そうすればもっともっと面白くなるよ!!」

 

「……少し、考えさせて」

 

まなつとローラに押し切られたものの、考える時間が欲しいとの事で今日はそれで解散となった

 

 

 

 

 

「マーメイド物語、絶対面白い演劇になると思うんだけどなぁ〜!」

 

「でも、みのりん先輩がやりたくないなら無理強いが出来ないよ?」

 

「みのりは書きたいと思ってるよ」

 

「何でそう思うんだ?」

 

下校中、そんな会話が広げられていた。

みのりが書くのを自信満々に言うローラ。

その根拠とは

 

「さっき考えさせてって言ったでしょ?嫌なら即断るわ。書きたい気持ちがあるから迷ってるのよ」

 

「そうか?」

 

「大体、キャラクターや設定を考えて文章を何ページも書くなんて好きじゃなきゃやらないでしょ?」

 

確かに理にかなった意見。人は、気持ちを原動力にして動いてるのが大半

 

「わたしだったら絶対やらないわ。そんな面倒臭い事。頼まれたって無理!」

 

「わたしも無理!」

 

「でも、本当はやりたくないんじゃないのか?俺達が頼んでるから、仕方なくやってる様にしか見えないのだが…」

 

「もうさっきから聞いていれば何よ!帝、みのりに書いてもらいたくないの?」

 

先程から否定的な意見しか言わない帝に、とうとうローラが口を出した

 

「そういう意味じゃないけど、人の黒歴史を掘り起こすのはどうかと思って」

 

「帝の言う事も納得だな。マーメイド物語が、みのりの心の傷になってるのかもな」

 

 

 

 

 

////////

 

次の日の休日に、まなつとローラから全員が呼び出された

 

「伝説のパパイアを探しに行こうと思うの!」

 

「まなつ、伝説のパパイアは物語に出て来る果物であって──」

 

「分かってるよさんご!」

 

一之瀬宅の前に辿り着いたまなつ達は、インターホンを鳴らしてみのりを呼び出した

 

「おはよう。皆んな揃ってどうしたの?」

 

「冒険に誘いに来たのよ」

 

「皆んなで行こう!伝説のパパイアを探しに!」

 

「え?」

 

「マーメイド物語に書いてあったよ。伝説のパパイアを食べたら凄い力を得られるって!みのりん先輩が伝説のパパイアを見つけたら、すっごい力で楽しく書けると思うんだ〜!」

 

「でも──」

 

「今、一番大事なことは伝説のパパイアを見つけること!レッツゴー!!」

 

思い立ったが矢先の行動で、まなつは飛び出して行った

 

「待ってまなつ!伝説のパパイアは…」

 

「それさっきさんごも言いましたよ」

 

「みのりが考えたもので実際には無いんでしょ?まなつなりの行動よ」

 

「まなつも無い事くらい分かっているさ。でも実際、外に出ればアイディアが浮かぶかも知れないだろ?」

 

「お散歩しながら一緒に考えませんか?」

 

 

 

 

 

とは言ったものの探す当てはあるのかと思う面々

 

一応まなつは心当たりがあるらしく行ってみるとそこは果物屋。

確かにそこに行けばパパイアは有りはするが、求めてる物とは違った

 

その様子を見た店主の人が、パパイア農園の存在を教えてくれて一同その農園まで足を運ぶ事にした

 

「そんな訳で伝説のパパイア探し開始……と言いたいけど、みのりん先輩伝説のパパイアってどんなの?」

 

「えっと、見た目は普通のパパイアと同じかな?」

 

「じゃあ味が違うの?普通のパパイアとどっちが甘い?」

 

「どっちと言われても、わたしパパイア食べたこと無いから」

 

パパイアを食べたことからと言われ、一同困惑してしまう

 

「パパイア食べた事ないの?パパイアのお話書いたのに?」

 

「っ!」

 

ギクリとみのりは反応してしまう。そんなみのりに対して、全員からアレやこれやと色々と言われる羽目となった

 

「パパイアの事詳しいからいっぱい食べたかと…」

 

「一応キュアパパイアだよね?」

 

「ていうか、先ず食べない?」

 

「お、おい皆んな…」

 

あすかが止めに入ろうとしたのだが

 

「ッ!!」

 

ローラの言葉がトドメとなり、赤面しながら逃げ出してしまった

 

「わっ!?」

 

ただ途中、石に躓いて転んでしまった

 

うつ伏せになって転んで顔が見えないが、かえってそれがみのりの本音を引き出せた

 

「…だからわたしはダメなんだ。本を読んでそれで分かった気になって、頭でっかちで、恥ずかしい。穴があったら入りたい…」

 

「別に恥ずかしがる事なんてないわよ。わたしだってパパイア食べたことない(・・・・・・・)し」

 

「食べた云々なら俺だって食べた事無いし」

 

「食べた事ないなら今食べれば良いんだよ!」

 

「そうだね」

 

「パパイア皆んなで食べてみるか?」

 

しかし、皆んながそう言うも反応が無い。

そこでローラは思い付いた

 

「パパイア農園って日当たりが最高ね。どうして?」

 

帝に目配せで相槌をする様お願いする。帝もローラが何をしようとするのか、理解してそれに乗っかる

 

「誰か知ってるか?」

 

わざとみのりが話易くする様に、帝とローラが仕向けたのだ

 

「……パパイアは、パパイアは南国フルーツだから日当たりが大事。太陽の光をいっぱい浴びて育つの」

 

どうやら二人の作戦は上手く行き、ようやくみのりが口を開いてくれた

 

「へぇ〜!」

 

「そうなんだ!」

 

みのりが顔を上げると、さんごが泥だらけの顔を拭き、あすかが眼鏡を渡し、帝が手を貸す

 

「怪我が無くて良かったです」

 

「眼鏡も無事だぞ」

 

「起き上がれますか?」

 

「ありがとう…」

 

少々小恥ずかしくもあり、またも赤面する

 

「けどあれだな。パパイアの実って一つの木にいっぱい実るんだな」

 

「パパイアの実は幹の周りに輪になって出来る。仲良く身を寄せ合ってるみたいに。だから、パパイアの花言葉は『同胞』」

 

「同胞って?」

 

「分かりやすく言えば友達だな。それにしてもパパイアに花言葉があったんだな。初耳」

 

「太陽いっぱい浴びて、友達いっぱいで楽しそうだね!」

 

「うん」

 

話がひと段落ついたところで、園長から声が掛かった

 

 

 

 

 

園長からパパイアを使った料理を用意してくれた

 

「みのり、初めてのパパイア一緒に食べましょう」

 

「うん」

 

「「「「「「いただきます!」」」」」」

 

みのりはパパイアを先ず観察していた。その見た目の色、匂いと

 

そして見た目を堪能して口の中にへ運ぶ

 

「まったりとした舌触りで、思ったよりクセが無い。甘さ控えめで優しい味がする。わたしは凄く好き」

 

初めて食べた感想は控えめに言っても高評だった

 

「良かった〜!キュアパパイアがパパイア美味しくないって言ったら、どうしようかと思った!」

 

「それはそれで面白いわね!」

 

「皆んなも食べてみて」

 

帝達もそれぞれ、口の中へと運んで満足していた

 

そしてみのりは考える。何故ここまでパパイアが美味しくのか

 

太陽の光をいっぱい浴びたから、栄養満点だから、農園の人が愛情を込めて育てたから

 

どれもそうなのだがそれだけではない

 

その答えはもう目の前にある

 

(皆んながわたしの為に色々考えてくれて、そんな皆んなと一緒に食べたから。伝説のパパイアがあるとしたら、こんな味なのかも)

 

そんな気持ちに浸ってるが、それに水刺すのがヤラネーダだった

 

突然の雰囲気の変化に一同は察知した

 

 

 

 

 

「ヤラネーダ!!」

 

エルダとザリガニのヤラネーダが、農園の人達のやる気を奪っていた

 

「行くよ皆んな!」

 

「「「「「オーライ!」」」」」

 

 

 

「「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」」

 

「「「「「レッツメイク!キャッチ!」」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

「今日も元気だ!」

 

「「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」」」」

 

 

「トロピカルスタート!」

 

『FLAMINGO!』

 

 

 

「もう、アンタ達と遊んでる暇無いんだから!今日のエルダは本気だよ!」

 

「ヤラネーダ!」

 

瞬間、ヤラネーダが目の前から消えた

 

「え!?」

 

消えたのではなく、超高速で動き回ってるが故そう見えてるのだ

 

「「「「「「ッ!」」」」」」

 

速さに撹乱させられるが、ギリギリ目で捉え切れ避けてみせた

 

「ハァ…あっ!?」

 

「ハァァ…クソ!」

 

フラミンゴ、ラメールの脚技もすんなり避けられた。

避けれるとはいえ、攻撃を当てるには至難の業だった

 

「ヤラネーダ!」

 

「危ない!」

 

『ぺけ!』

 

ヤラネーダはサマーとパパイアを狙うが、コーラルが防御に入った

 

「くぅぅ!!」

 

しかし耐え忍ぶで精一杯。反撃する暇なんて無い

 

「ぶっとびフラミンゴ──」

 

コーラルが惹きつけてる間に帝が攻撃しようとするも、瞬く間に帝の背後に移動した

 

「速ッ!?」

 

帝は攻撃を中断して回避に専念し、寸前で避けれた。

だが攻撃が頬に掠る

 

「どう?エルダのヤラネーダ強いでしょ?」

 

「パパイアは、パパイアは太陽の光を浴びて育つ!」

 

突然の話にエルダは意味を理解していなかった

 

「わたしは皆んなと出会って、プリキュア になって、太陽みたいにキラキラした冒険をした。ドキドキワクワクする物語にも負けない、トロピカってる物語を、皆んなと一緒にして来た!」

 

「何言ってんの意味分かんない!」

 

「わたしは、キュアパパイアってこと!皆んな、わたしに考えがある。ヤラネーダの周りから攻撃を!」

 

パパイアの指示通り、全員が一斉に囲い込んで仕掛ける

 

「周りから同時に一斉攻撃すれば、ヤラネーダは上に逃げる!」

 

帝達の攻撃は逃げられて外れたが、その逃げた先は空中。パパイアの狙い通りとなった

 

そのチャンスをパパイアは最大限に活かす

 

「フッ!」

 

ビームでヤラネーダの目を潰して視界を封じた

 

 

「ハートルージュロッド!」

 

「プリキュア !ぱんぱかパパイアショット!」

 

 

渾身の一撃で放ったぱんぱかパパイアショットが、あの超ゼッタイヤラネーダをダウンさせた

 

「パパイアを食べたパパイアは一味違う!」

 

 

「マーメイドアクアポット!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

「皆んなこの調子で!」

 

 

 

「マリンハートクルリング!」

 

「「「「「おめかしアップ!」」」」」

 

「「「「「エクセレン・トロピカルスタイル!」」」」」

 

「「「「「5つの力!海に轟け!」」」」」

 

「「「「「プリキュア!マリンビート・ダイナミック!」」」」」

 

 

「「「「「ビクトリー!」」」」」

 

 

 

 

 

////////

 

やる気パワーが元に戻り、収穫前のパパイアにも何事もなかった

 

「でも、伝説のパパイアは何処にも見つからなかったよ」

 

「え、マジで探してたの?あれ空想って理解してたよなまなつ?」

 

「見つかったよ。皆んなと出会って感じた、沢山のトロピカってる気持ち。それが、わたしにとっての伝説のパパイア」

 

それはいくら探しても見つからない伝説のパパイア。

けれどみのりは、その伝説のパパイアをとうとう見つけ出した

 

「演劇の台本わたしに書かせて。マーメイド物語じゃなくて"わたし達の物語"。それを書く事こそが、わたしにとって今、一番大事なことだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その伝説のパパイアとは、ここまで一緒に築いて来た友達との物語




次回は総集編?

ここまでの拝読ありがとうございました


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第80話 わたし達の物語!トロピカる物語!

今年最後の投稿が振り返り。良いね!

ではスタート!


「という訳で、トロフェスまであと僅か!今日は劇の内容について話し合いたいと思いま〜す!」

 

この前みのりが書いてくれると言ってくれ、まなつの言うように今日はその劇のテーマを決める会議を開いていた

 

「みのりはどうなの?大体の構成は出来てるの?」

 

「あるけど皆んなの意見も聞きたい。だって、わたし達の物語を書くから」

 

「あと、劇のタイトルも決めないとね」

 

「タイトルね……『THE トロピカる部 美しき人魚の秘宝!』。何てどう?」

 

「甘いなローラ!『THE MOVIE REVOLUTION TROPICAL』なんてどうだ!」

 

「帝、厨二病には少し早いよ。もう少しだけ待って」

 

中二病(・・・)じゃなくて厨二病(・・・)なんすね…」

 

 

 

 

 

それからというものの、全員が案を出し合うも中々決まる事はなかった。

それどころか、余計に頭を悩ませる羽目となってしまう

 

「中々決まらないね」

 

「こうなったら中身を先に考えよう!そうすればタイトルも決めやすくなる筈だ!」

 

「実は本当にあった事を基にして話を作りたいと思ってるの。例えば、まなつとローラが出会ったのはどんな感じだった?」

 

タイトルはあとまわしにして、先に劇の内容の細かい部分を決める事にした

 

そこでみのりは参考までにまなつとローラの出会い話を聞く事に

 

「そうね、わたし達の出会い。あとまわしの魔女によって、壊滅寸前のグランオーシャン。その時、美しい人魚が立ち上がった」

 

 

『──ローラ、次期女王候補の貴女にお願いがあります。グランオーシャンを救えるのは貴女しかいません』

 

『──分かりました女王様!わたしが人魚と人間の架け橋となりましょう!』

 

 

ほぼ(・・)こんな感じよ」

 

ほぼ(・・)?」

 

「ちょっと話を盛ってないか?」

 

「つ、続きを話すわよ」

 

その辺についての事はローラ本人しか知らぬ為、あまり妙な事は言えなかった。

取り敢えず話の続きを聞く事をした

 

「人間の世界へ向かう途中、海の中でリップを拾った美しい人魚はやがてその持ち主の少女と出会う」

 

「そうそう、それがわたし!」

 

 

『──あんな所に美しい人魚が!運命の出会いだよトロピカってる〜!』

 

 

「あれ?そんな感じだったけ?」

 

「それでまなつがリップを初めて塗ってくれて、あの時初めてまなつの『トロピカる』って言葉を聞いたのよね」

 

「そのネタ使える」

 

今の話の中で使えるネタをピックアップしてメモを書き出す

 

「でもその後ヤラネーダが現れて大変だったのよ」

 

「そうそう、ローラがピンチになっていたから慌てて家から駆け付けたんだよ。あ、その時初めてプリキュア に変身したの!」

 

「その場には一応俺も居たんだけど…」

 

「あ、そうよ!帝も同じ日に出会ったのよ!」

 

「じゃあ帝、ローラとの出会いを教えて」

 

話の区切りもよく、まなつから帝へとバトンタッチとなった

 

「ローラとの馴れ初め話か」

 

「馴れ初め言うな」

 

「ローラとの馴れ初めは、俺が釣りをしていた時だったな」

 

「話聞いてる?」

 

 

『──何てカッコ良く、たくましく、凛々しい人間なの!嗚呼、どうかわたしの旦那になって下さるかしら?』

 

『──可愛くて、知的で、美しい人魚の貴女と共に過ごせるなら俺は人間を辞めたっていい!』

 

 

「てな感じで──」

 

「な訳ないでしょ!一字一句合ってないわよ!!」

 

「おかしいな、俺の記憶ではこんな感じだったんだけど…」

 

「その記憶がおかしいって言ってるのよ」

 

「そういえばローラって、最初帝君の事を『人間』って呼んでたね。今と比べたらかなり距離が縮まったね」

 

「う〜む、一応そのネタもメモ」

 

「ま、まぁそうね。帝との出会いの話はこれくらいで、さんごの話を聞かせなさいよ」

 

名前呼びに変わった話を切り出されて少し照れ恥ずかしくなり、ローラはさんごにへと話題を変えた

 

「わたしは、入学式の時にまなつ達と同じクラスになったんだけど、実はまなつとは前にPretty Holicで会ってたんだよね。あと、帝君とは幼馴染だからあまり新鮮味は無かったかな?」

 

「そのネタ使える」

 

「まなつとの出会いですよね?俺の新鮮味がどうこうじゃないですよね?」

 

「それで、わたしが初めてローラと出会ったのは水族館で皆んなとはぐれて迷っちゃって。その時聴こえて来た歌声を辿るとローラと出会ったの」

 

「歌に導かれて出会う。そのネタも使える」

 

その後は、自分の可愛いを信じれない事を打ち明け、それがきっかけとなりプリキュア として覚醒して共に戦う事となったのだ

 

 

 

 

 

部室で話すのも良いが、出会った事を振り返るならその場所に行ってみる事も良い事なので、一同は外に出る事にした

 

「あ、此処。あすか先輩に助けて貰った場所だ」

 

「そういえばそうだったな」

 

街中を歩いてると、偶々あすかと初めて出会った場所に行き着いた

 

「『名乗る程じゃないけど、滝沢 あすか』って言ってたな」

 

「そのネタ使える」

 

「使うのか!?」

 

「他にも『わたしは誰とも連むつもりは無い』なんてカッコつけちゃって!」

 

「カッコいいけどさ、将来の事を考えたら黒歴史だよな!」

 

「お前達が言うな」

 

これ以上変な事を喋る前に、強引に帝とローラの口を塞いでやった

 

「でも、わたし達がピンチの時に助けに来てくれて!」

 

あすかがプリキュア に変身したのは、部室が完成したその日。

帝達が特殊なヤラネーダ相手に苦戦している時に、颯爽と駆け付けたのだ

 

 

 

 

 

場所は変わり、みのりが初めてプリキュア に変身した博物館に辿り着いた

 

「みのりはどんな風に出会ったんだ?」

 

「わたしは此処の博物館で」

 

「此処でまなつ達と話してる時にみのりがやって来て」

 

「あの時は本当に驚いた。でも、ローラのお陰で一歩踏み出せた」

 

みのりの話を終えると、目の前でくるるんが自分もと主張して飛び跳ねていた

 

「くるるん!くるる〜ん!」

 

「分かってるって!くるるんとの出会いも忘れちゃダメだよね!」

 

そう言って全員くるるんとの出会いを思い出すが、総じて思い出したのは

 

「打ち上げられてたな」

 

「打ち上げられてたわね」

 

「打ち上げられてた」

 

「打ち上げられてたよね」

 

「打ち上げられてたよな」

 

「ネタとしては使えない」

 

打ち上げられてた事しか思い出せず、みのりもこの話は使えないと切り捨てた

 

「それじゃあ最後は、わたしの輝かしい変身について話すわ──」

 

がしかし、博物館の外から大きな音が聞こえた

 

 

 

 

 

その場に駆け付けると、アリスとチョウチンアンコウの超ゼッタイヤラネーダが空を泳いでいた

 

「わたしの華麗で輝かしい変身の瞬間をこれから話そうとしてる時に!」

 

「おや、タイミングが悪かったですか?では出直します。失礼します」

 

「やる気パワーは置いて行きなさいよ!!」

 

「え、中々ローラ様面倒ですね…」

 

「うるさい!!」

 

「「「「「まぁまぁ」」」」」

 

犬の様に喚くローラを宥めてから、それぞれパクトを取り出す

 

 

 

「「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」」

 

「「「「「レッツメイク!キャッチ!」」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

「思い出沢山!」

 

「「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」」」」

 

 

「トロピカルスタート!」

 

『LA・MER!』

 

 

 

「ではヤラネーダ!行ってらっしゃ──」

 

 

「プリキュア !」

 

「「くるくるラメールストリーム!」」

 

 

帝とラメールは最早容赦無く技をぶつけた。そのまま押され続け建物に減り込んだ

 

「いくら何でも早すぎる様にも思えます。もう少し手加減を…」

 

「悪いがもうヤラネーダの浄化は作業と化してる!なぁ皆んな?」

 

「「「「「え、いやそれは…」」」」」

 

何で自分達に振ってくるのか困惑はしつつ、取り敢えず浄化を最優先する

 

「帝アレ!」

 

「あ〜アレだな!」

 

 

「「スカイハートクルリング!」」

 

「「マーメイドアクアステッキ!」」

 

 

水球が二つずつ帝とラメールの周りに現れ、ヤラネーダに向かって放つ

 

「ヤラネー!」

 

そこまでのダメージは通らなかったが、その表情は歪めれてた

 

「「ハァッ!」」

 

サマーとフラミンゴが追撃して倒し、コーラルとパパイアでヤラネーダを押さえ込んだ

 

「行くわよ!」

 

パレットを回しステッキの力を上げ、ヤラネーダの真上に大きな水球を生成する

 

「おりゃ!!」

 

ラメールがステッキを振り下ろして水球が落ちて行く

 

コーラルとパパイアも直前で避け、ヤラネーダだけを巻き込んだ

 

「回れ!」

 

帝はステッキを回して、ヤラネーダにぶつけて弾けた水をもう一度集め直して渦潮を作り閉じ込めた

 

 

「マーメイドアクアポット!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

「チャンスだ!さぁ一気に行くよ皆んな!」

 

 

 

「「「スカイハートクルリング!」」」

 

「「「「「おめかしアップ!」」」」」

 

「「マーメイドアクアステッキ!」」

 

「「「「エクセレン・トロピカルスタイル!」」」」

 

「「「「「「6つの力!空に羽ばたけ!」」」」」」

 

「「「「「「プリキュア!スカイビート・ダイナミック!」」」」」」

 

 

「「「「「「ビクトリー!」」」」」」

 

 

 

「それが空のリングの力。ゾクゾクして来ましたよ」

 

 

 

 

 

////////

 

ヤラネーダを浄化を終え、クレープを食べながらローラは話の続きをするであった

 

「グランオーシャンの女王様は、人魚はプリキュア になれないって言ってたんだよな?」

 

「そ、だけどわたしはプリキュア になれた。つまり人魚の常識を打ち破った訳よ!」

 

「あの時ローラは魔女の屋敷に連れ去られちゃったんだよね」

 

「でも嬴政…帝と一緒に協力してなんとか脱出出来たのよ」

 

 

 

 

 

「で、これをどう纏めるかだよな?」

 

色々と振り返って部室へ戻り時間は夕方。そろそろ決めないといけない時間帯になって来た

 

「そのままやってもダメだから、舞台は中世ヨーロッパの海辺の小さな街にする。ローラの役名はロザリア。何処か遠い国のプリンセスって事にして──」

 

「プリンセス!良いわねわたしにピッタリ!」

 

「そして修行をしに来た街でわたし達と出会う」

 

「わたし達はその世界で何をしてるんだろう?」

 

ローラの役は最初から決まってはいたが、帝達の役となるとどうなるか。

そこでまなつは、元気良く手を挙げて自ら役を言った

 

「はいはい!わたしは街で一番トロピカってる女の子!」

 

「じゃあわたしはお花屋さんとかやってみたいなぁ〜!」

 

「あすかは?」

 

「順当にいけばお城の衛兵か騎士かな」

 

「俺はやっぱ王様かな?その世界でも俺とローラはくっ付く!」

 

「いや現実でもくっ付いてないし。みのりはどんな役にするの?」

 

「わたしは、港の倉庫に事務所を構える名探偵……というのは仮の姿で、実は封印されたパパイアの秘宝の記憶を失ったドラゴン末裔で…」

 

「いやそれ設定盛り過ぎだろ」

 

「流石にキャラが浮かびますよ」

 

その後も、自分達の役に色んな後付け設定やシーンなど考え付くものを言い出してみる

 

そんな話し合いを見てさんごはふと思った

 

「でも不思議。一年前は皆んな知らない同士だったのに、今は六人でこんな風に笑って楽しく話してるなんて」

 

「うん、これはそんなお話。それがわたし達の物語。最初はバラバラだった六人が、出会って仲良くなってそれぞれ大切なものを見つけるってお話」

 

「皆んなが仲良しになるまでのお話って訳ね」

 

「なんか感動的だな」

 

「そこまでに至る話。面白そうだな」

 

「みのり、纏まりそう?」

 

「うん、頭の中で物語が動き出した。あとは書くだけ」

 

いよいよ劇のお話に色が付いてきた。

残りはそのタイトルだが

 

「あ!良いタイトル思いついた!」

 

「どんなどんな?」

 

「へへ、聞きたい?」

 

「焦らしてないで早く言いなさいよ」

 

「わたし達の物語。題して────」

 

まなつは大きくボードにそのタイトルを書いた

 

そのタイトルはその名の通り、皆んながトロピカった物語

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───トロピカる物語!」




ここまでの拝読ありがとうございました!


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第81話 トロフェスに向けて!誕生、最強のヤラネーダ

新しいプリキュア「デパプリ」の情報が色々と解禁されましたね。同時にデパプリの小説の準備にも入っております

ではスタート!


トロフェスの準備を進める為、あおぞら中の生徒達は休みである土曜日でも学校に足を運んでいた

 

勿論主催であるトロピカる部の同様だった

 

部室では、台本を目の前に頭を抱えて唸るみのり。

それを心配する帝達だった

 

台本自体は完成しているのだが、ラストが何やら気に入らないらしく書き直しを図っている

 

みのりらしいと言えばそうなのだが、誰もそのラストについては言及はしてはいない。それくらい今のままでも良いという証拠

 

そこでローラが徐に台本を手に取り音読し始めた

 

「『小さな港町に遠い国からやって来た女の子・ロザリア。そこで彼女が出会ったのが、トロピカった少女・ナッチーとその仲間達。実はロザリアは、とある国のプリンセスだった』良いじゃない!」

 

「そしてラストシーンは、大冒険の末に辿り着いた伝説の塔台で永遠の誓いをたてて終わるんだけど…」

 

「もうひとアイディアが欲しいんだってさ。俺達も考えてはいるけど……何か無い?」

 

「…そうだ!いつかローラが校内放送で歌った、グランオーシャンの歌を披露するの!」

 

「うん、ローラの歌を入れるのは良いと思う。でも、もっと別の何かが欲しい」

 

「何か原稿間近の先生みたいだな」

 

まなつの案も取り入れてもう一度構成を練る為、邪魔にならない様各々のは部室から出て行ってトロフェスの準備を進めるのであった

 

 

 

 

 

一度学校から帰宅して、私服に着替えてきつもの水族館で演技の練習に勤しむのであった

 

「あ〜美味しい!このお饅頭はどうしてこんなに美味しの?」

 

「ロザリオ王国にはお饅頭は無いの?」

 

「メロンパンならあるわ!」

 

「じゃあ栗羊羹は?」

 

「な〜にそれ?」

 

「モンブランものみたいだな」

 

「今度皆んなで食べに行きたいな」

 

「それならこの町の美味しいもの全部食べに行こう」

 

「わたし、この町に来て皆んなに会えて良かった!お饅頭よりも、栗羊羹よりも、皆んなに出会えた事がわたしの一番のしあわちぇ……あー!間違えた〜!」

 

ローラの台詞で最後噛んでしまった事に嘆く。けれどそれを皆んなは笑っていた

 

「意外に台詞の量が多いからな。まぁそれでも何とかなるだろ」

 

「でも、緊張でわたしも噛んじゃいそう」

 

「もし本番で失敗してもそのまま演技を続ければいいと思う」

 

「そっか!それなら安心だね」

 

「だからって油断するなよ。ちゃんと台詞は覚えること」

 

 

 

 

 

練習も一度休憩に入り、夏海家の庭でお饅頭を食べる事となっていた。

そのお饅頭を見てみのりは劇と同じ共通点を見つけた

 

「劇の台本と同じ」

 

「そういえば劇の中でも饅頭食べてたな」

 

「本番でも本当にお饅頭食べるの?」

 

「そもそも食べていいのか?」

 

「食べよう!本当に食べた〜い!」

 

「まなつはお饅頭食べたいだけでしょ?」

 

皆んなの笑う顔を見て、ローラは思った事をそのまま言葉にした

 

「わたし、この街に来て皆んなに出会えて良かった」

 

「今の台詞」

 

「その感じだよローラ!」

 

「え、その感じって?」

 

「さっき失敗した台詞、今の感じて良いんだよ!」

 

「そうそう」

 

「とっても自然だった」

 

「そ、そうね!」

 

褒められている筈なのだが、受け答えするローラの表情は何処か寂しげに見えた

 

帝はその表情が少し気掛かりだった

 

 

 

 

 

その帰り道で、ローラの表情についてさんごと話していた

 

「え?ローラそんな顔だったの?」

 

「あぁ…人間界に来てローラの心境が変わって、本当は帰りたくないのかなって思って」

 

「帰っちゃうと記憶消されちゃうもんね…」

 

「俺はそんな悲劇は嫌だ!ローラには此処に残って欲しい。じゃなきゃ俺は…」

 

さんごは足を止めて、帝の代わりその言葉の続きを口にする

 

「ローラがグランオーシャンに帰るなら、帝君もその後について行くの?」

 

「そう、考えてる」

 

「そうなんだ……もしそうなら、帝君とも中々会えなくなるね…」

 

「今の俺はローラの事で頭がいっぱいなんだ。ローラ無しじゃ俺は本当に生きていけない…」

 

帝の背中を見てさんごは不安に駆られる。その想いが、いつの日かの様に爆発して暴走しまわない事を祈るばかりだった

 

 

 

 

 

////////

 

準備は日曜日に渡って行われた

 

「みのりん先生頑張って下さい!俺達がついてます!」

 

「おい帝、みのりの邪魔になるだろ」

 

「あと少し、あと少しで何か閃きそうな気がする…」

 

 

「皆んな〜!そろそろお芝居の発声練習するわよ〜!」

 

 

部室の外から桜川の声がした

 

まなつとローラは挨拶しようと外へ出ると、桜川が何故かその場にへたり込んでいた

 

「え、先生?」

 

「…まさかこんな時に!?」

 

その様子を見てやる気パワーを奪われた事を察したローラ

 

何処よと探してると、空に一体のヤラネーダがやる気パワーを奪っていた

 

「今度はサメのヤラネーダか?」

 

 

 

「「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」」

 

「「「「「レッツメイク!キャッチ!」」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

 

サマー達は一斉に空へと飛び出しヤラネーダへ一直線。五連続の鋭い攻撃が身体中に突き刺さりヤラネーダの動きが止まる

 

「思った通り、サメと言っても小判鮫はそれ程凶暴じゃない!」

 

「ラメールお願い!」

 

「オーライ!」

 

 

「マーメイドアクアポット!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

「帝行くわよ!」

 

「待ってました!」

 

 

 

「「「スカイハートクルリング!」」」

 

「「「「「おめかしアップ!」」」」」

 

「「マーメイドアクアステッキ!」」

 

「「「「エクセレン・トロピカルスタイル!」」」」

 

「「「「「「6つの力!空に羽ばたけ!」」」」」」

 

「「「「「「プリキュア!スカイビート・ダイナミック!」」」」」」

 

 

「「「「「「ビクトリー!」」」」」」

 

 

 

「やったね〜!トロフェスの準備再開だ〜!」

 

これで終わりかと思いきやそうでもなかった。浄化すればやる気パワーが元に戻り、皆いつもの調子に戻る筈が、それは一部の人のみという奇妙な事が起きていた

 

「どういう事だ?」

 

「元に戻らない人がいるよ」

 

そんな疑問を浮かび上がらせていると、帝達…というより学校全体を埋め尽くす程の大きな影が出来た。

何事かと思い上を見上げると巨大な生物が空を泳いでいた

 

「まさか…」

 

「これは、シロナガスクジラのヤラネーダ!?」

 

「小判鮫は、クジラのお腹に付いて来たオマケです。この海で最も強い生物はクジラなのですよ!」

 

「バトラー!」

 

ラメールはすくさまマーメイドアクアステッキを振り翳し、水球をヤラネーダに打ち付けるもその巨体故かあまりダメージが入っていなかった

 

「そんな…クッ!」

 

「だったら!───トロピカルディスク!」

 

帝はマーメイドアクアステッキを解いて、プリキュアの王杖(レガリア)に切り替えてトロピカルディスクをセットした

 

『PAPAYA!』

 

「ぱんぱかパパイアショット!」

 

無数の緑の粒がヤラネーダの腹を痛み付けるも、それでも尚ヤラネーダが怯む事はなかった

 

「大き過ぎてこっちの攻撃が効いてない!」

 

「このままじゃ街全体のやる気パワーが奪われちゃうよ!」

 

「皆んな行こう!」

 

街中へ進軍するバトラーとヤラネーダを追い掛け、帝達も学校から飛び出して行った

 

 

 

 

 

「遥か昔、魔女様が滅ぼそうとした世界もこんな感じでしたでしょうか。あの時は、伝説のプリキュアに邪魔をされてしまう。魔女様の望みは叶いませんでしたが」

 

「どういう事?」

 

ようやく追い付いた帝達が、バトラーの独り言を耳にした

 

「あとまわしの魔女は、大昔にも街をこんな風にしようとしたの?」

 

「その通りです。最もその頃は、"破壊の魔女"と呼ばれていましたが」

 

「破壊の魔女…」

 

「馬鹿馬鹿しい。ラメール、早くやる気パワーを回収するんだ!」

 

「えぇ!マーメイドアクアポット───」

 

「そうはさせません!」

 

やる気パワーをサーチをしようと操作途中、バトラーが妨害してラメールの手から弾かれてしまった

 

「大丈夫か!?」

 

「えぇそれよりも──やる気パワーカムバック!」

 

自分の身よりも早くアクアポットを拾い上げて、天井ボタンを押すのだがやる気パワーが吸い取れなかった

 

「えっ!?」

 

「動かないよ?」

 

「まさか壊れたのか!?」

 

アクアポットが頼みの綱なのだが、それが先程の妨害で故障してしまっていた

 

このままだと無防備にやる気パワーを奪われ続けてしまう。

それを悟ったサマーは一人単身で行動を起こした

 

「絶対許せない!皆んなのやる気パワー返せぇぇぇ!!」

 

サマーはジャンプして手を伸ばそうとしたが、ヤラネーダは口を大きく開けて息を吸い込み始め、そのままサマーを体内へと飲み込んでしまった

 

「サマー!」

 

「食べられちゃった!」

 

「助けに行くぞ!」

 

「帝は外から吐き出せて!」

 

「それって皆んなも!?」

 

帝が驚く暇してる間に、フラミンゴが先行してコーラル達もヤラネーダの体内へと侵入したのだった

 

「外からと言われても…」

 

 

『ABSOLUTE!』

 

 

トロピカルディスクを外し、ABSOLUTEで強引に吐き出させようとして言葉を発する時

 

「ッ!」

 

帝の足元に水鉄砲が放たれて中断される

 

「──邪魔するかバトラー」

 

「別にそういうつもりではありません」

 

そう言いつつも連続で水鉄砲を放ち、帝が言葉を発する隙を与えさせなかった

 

帝も攻撃してくるバトラーに気を取られて、避けるので精一杯だった

 

「ちゃんと返して差し上げますよ」

 

クジラのヤラネーダが潮吹きすると、中からコーラル達が吐き出された

 

「【ゆっくり降りて来い】!」

 

宙に放り出されたコーラル達を気遣い、言霊でゆっくりと帝の近くへと降ろした

 

「さて、ヤラネーダも満腹になった様ですしそろそろ引き上げますか」

 

「待て…ラメール、サマーは?」

 

「ぅ…え?」

 

帝に言われて辺りを見渡すが、そこにはサマーの姿は居なかった

 

「まさか…そんな!」

 

「ではご機嫌用」

 

去って行くバトラー達を眺めるラメールの様子を見て察する。サマーだけ取り残されて、今も尚ヤラネーダの体内に居るのだと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遂にあとまわしの魔女との決戦が唐突に行われるのであった




今週中には出したいところです。今月からまた暫く忙しくなりそうですからそれなりに頑張りたいです

ここまでの拝読ありがとうございました


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第82話 魔女の屋敷再び、それぞれの目的

結構ドタバタしましたがなんとか追いつきました

ではスタート!


「まさか街中の人々のやる気パワーを全部奪うなんてな」

 

浜辺でどうしたもんかと困ってる帝。クジラのヤラネーダが街全体のやる気パワーを奪って去って行った。

しかしそれだけには収まらず、ヤラネーダの体内に取り残されたままのまなつも心配

 

何がともあれ、深海に潜って行ったヤラネーダを追う以外の選択肢は無かった

 

危険な場所に行く事は明らか。くるるんは地上でお留守番をし、帝達で魔女の屋敷に潜入する

 

 

 

「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」

 

「「「「レッツメイク!キャッチ!」」」」

 

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

「ルーレットスタート!」

 

『TECHNIC!』

 

 

 

「魔女の屋敷は任せて。バッチリ覚えてるから」

 

 

 

 

 

////////

 

グランオーシャンへ続く海域の目の前で、二手に分かれる事をラメールが提案する

 

「わたしはグランオーシャンに行って、女王様にアクアポットを直してもらってくる。魔女の屋敷の場所は、さっき教えた通りよ。分からなかったら帝に聞けば──」

 

「その事だがラメール。俺もグランオーシャンへ行く」

 

わざわざ遮ってまで帝は、ラメールと共にグランオーシャンまでついて行くと言い出した

 

「それはダメよ。以前捕まったとはいえ、わたしは内部の事はあまり知らない。唯一帝だけが知ってるのよ」

 

アクアポットが直るまでは、まなつの救出が最も最優先事項。以前まで屋敷に居た帝なら、屋敷の外部と内部構造を隅々まで把握している

 

帝が屋敷に行かなければ、まなつを見つけるまでに時間は掛かる上に何があるか分からない

 

「そんな事は百も承知だ。だからこうすれば良い」

 

帝は指を鳴らすと、コーラルの隣に分身の帝が一人現れた

 

「確かにこの方法ならわたし達も安心して行けるし、ラメールも屋敷の道中迷わず来れるな」

 

この様な発想にフラミンゴは感心して頷いた

 

「分かったわ。じゃあわたしと帝で行ってくるわ。まなつの事頼んだわよ」

 

帝とラメールを見送り、コーラル達も帝を先頭に動き始める

 

「お願いね帝君」

 

『オーライ。最短距離で案内するからな』

 

 

 

 

 

グランオーシャンへ早く着いた帝とラメールは、女王様にアクアポットの修理を頼んでいた

 

「これで大丈夫。直るまでに少し時間は掛かりますが……そういえば、貴女のその姿を直接見るのは初めてですね」

 

女王様は、プリキュア となったラメールを不思議に見ていた。以前にもグランオーシャンへ訪ねたが、その時は人魚の姿で会っていた

 

「人魚はプリキュア になれない筈なのに、何故わたしはなれたの?」

 

その問いに女王様は黙っていた

 

「もしかしてだが、女王様もプリキュアに変身しようとしたがなれなかったとか?」

 

「……そう、わたしもかつてプリキュアになろうとした事がありました。世界の危機を救う為に」

 

「世界の危機って、こうなる前にもあったのかよ?」

 

「伝説のプリキュアによって世界は救われ、その後何百年かは世界は平和でした。けれどそこへ、また新たな危機が迫っていました」

 

女王様の話によると、ならず者がやる気パワーが入った杯を何処からか入手して、愚者の棺を解放しようとしていた

 

そして、まだ女王になる前の女王様がプリキュアに変身して阻止しようと試みたが、それは叶わなかった

 

変身こそは出来なかったが、やる気パワーの入った杯だけでも取り返してとある島の洞窟に隠した。人魚のブレスレットと共に

 

そのとある島というのが、まなつの故郷でもある南乃島だった

 

「女王様は南乃島の事を覚えてるの?人間との記憶は消されちゃうんでしょ?」

 

「あの時人間とは関わりを持ちませんでしたから。でももしかしたら、自分ではそう思っているだけでわたしの記憶も消されているのかも知れませんね」

 

人間と関わりを持たなければ記憶は消されないという裏口を見つけたと思ったが、それでも覚えてないだけで消されてる可能性もなきにしもあらず

 

それを知るには、あの部屋に行って記憶を洗い出さないといけない

 

「消えるのは人魚の記憶だけなの?人魚と関わった人間も消されちゃうの?」

 

「その可能性は低いだろ。現にまなつがそうだ」

 

「あ、そうね。わたしと気付かなかったけど、うろ覚えでなら覚えていたし」

 

「…だとしてもです。貴女にもいずれ分かる日がきっと来るでしょう。自らその記憶を消してしまいたいという日が」

 

それでも尚女王様の意思が変わる事は無かった。掟よりも、その言葉の裏に何かある様な気も

 

だからといって、それで引き下がる訳にもいかない

 

「どうして?わたしはそんな事思ったりはしない!まなつ達の事を忘れたいだなんて絶対にあり得ない!」

 

女王様はただ首を横に振るだけ。此方の意見を根本から否定している

 

「だったら伝説のプリキュアはどうなの?彼女と心を通わせた人間が居たから、グランオーシャンには今も伝説として語り継がれてるんじゃないの?」

 

「ラメール、伝説は所詮伝説だ。誰も知らないからこそ伝説なんだ。それを知ってしまえば意味が無い」

 

「帝貴方どっちなのよ!」

 

「俺はいつだってラメールの味方だ!だけど、冷静になって考えてみればそういう事も考えられる」

 

「……では貴方方だけにお話しましょう。伝説のプリキュアが私に全てを語ってくれた様に」

 

「「全て…?」」

 

「伝説のプリキュアの秘密を」

 

 

 

 

 

////////

 

その頃コーラル達は、分身の帝の案内の元で屋敷内部へ辿り着いてまなつを探していたが一向に見つからなかった

 

ローラが捕らえられていた檻にもその姿は見受けられない

 

『困ったな…』

 

「帝君、他に心当たりはある?」

 

『此処に居ないとなると別の部屋か…』

 

「取り敢えず歩きながら考えよう」

 

「そうだな。こっちに行くぞ」

 

分身の帝を頼りに廊下を歩いていると、その曲がり角で召使いの一人と出会した

 

「「「あ!」」」

 

『ヌメリーか』

 

「あら貴女達どうして此処に?」

 

「まなつは何処?」

 

「まなつ?あの子もこのお屋敷に居るの?」

 

「とぼけるな!」

 

「本当に知らないのに…」

 

ヌメリーの様子からして本当に知らない様だ

 

ヌメリーもヌメリーで、見つけたからには対処しなければならない。

懐から取り出したのは、ゼンゼンヤラネーダの素

 

「古いのしか無いわね。でも仕方ないわ。プリキュアの姿を魔女様に見せる訳にいかないってバトラーが」

 

 

「出てらっしゃい!ゼンゼンヤラネーダ!」

 

 

ヌメリーは自分の持つ聴診器を使ってヤラネーダを生み出した

 

「ヤラネーダ!!」

 

『三人共、この場所じゃ狭過ぎて戦えない。外に誘導するからついて来い!』

 

「「「オーライ!」」」

 

相手も同じ場所で戦うとはいえ、ヤラネーダの大きさも考えたら思う様に動けない事を悟り、屋敷の外へ出て一度体勢の立て直しを図る

 

 

 

 

 

屋敷の外へ誘導に最高して思う存分派手な動きが可能となった

 

「帝行くぞ!」

 

『おう!』

 

聴診器のチェストピース部分で攻撃を仕掛けて来たが、帝とフラミンゴの蹴りで打ち上げて防御する

 

「「やぁぁ!!」」

 

一瞬の隙を突いてコーラルとパパイアの飛び蹴りで、ヤラネーダを蹴りつけてダウンさせた

 

「皆んな〜!!」

 

「「「まなつ!」」」

 

そして自力で脱出して来たまなつが、ヤラネーダとの戦闘を見掛けてようやく合流する事が出来た

 

 

 

「プリキュア!トロピカルチェンジ!」

 

「レッツメイク!キャッチ!」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

 

 

『サマーも揃った所で一気に頼むぞ!』

 

 

 

「ハートカルテットリング!」

 

 

「「「「プリキュア !ミックストロピカル!」」」」

 

 

「「「「ビクトリー!」」」」

 

 

 

ゼンゼンヤラネーダを浄化出来たのも束の間、今度は街で大暴れしたクジラの超ゼッタイヤラネーダとチョンギーレが現れた

 

「なんだか知らねぇが、あと少しで魔女様の願いが叶うんだ。邪魔すんじゃねぇ!」

 

「やる気パワーを返して!」

 

「かったりぃ。何言っても無駄だ。やる気パワーは抜き取った後だ」

 

「ヤラネーダ!」

 

ヤラネーダは尾鰭で岩を粉々にして帝達目掛けて叩いてきた

 

「うわっ!?」

 

「「ッ!!」」

 

サマー、パパイアとフラミンゴは軽やかに避けたのだが、コーラルに向かって来る岩石は一回り大きく四方何処に逃げても避け切れない

 

「ど、どうしよう…」

 

『コーラル!!』

 

地面を蹴り、コーラルを押して分身の帝がコーラルを助け出した。

けれど逆に帝が取り残されてしまう

 

『うわ──』

 

直撃は免れず、他の岩石と挟まれる様にして潰され分身の帝は消滅してしまった

 

「帝君!!」

 

「ヤラネーダ!!」

 

拡散した攻撃がダメならば、次は一網打尽にしようと激しい潮吹きが襲い掛かって来る

 

「プリキュア!くるくるラメールストリーム!」

 

だがその潮吹きを相殺する者が現れた

 

「ラメール!帝!」

 

「遅れた!今どんな状況だ?」

 

「見ての通りだ。それとやる気パワーは抜き取られた後だ」

 

「オーライ」

 

 

 

「マリンハートクルリング!」

 

「「「「「おめかしアップ!」」」」」

 

「「「「「エクセレン・トロピカルスタイル!」」」」」

 

「「「「「5つの力!海に轟け!」」」」」

 

「「「「「プリキュア!マリンビート・ダイナミック!」」」」」

 

 

「「「「「ビクトリー!」」」」」

 

 

 

 

 

「ラメール、アクアポットは?」

 

「まだよ。直すには時間が掛かるって」

 

帝とラメール、アクアポットの修理を待たずしてこの場に来てしまったが、それが結果的にクジラのヤラネーダを倒す事には繋がった

 

「やっぱり魔女と話してみよう。話せばきっと分かって貰えると思うんだ。魔女に、皆んなのやる気パワーを返してってお願いしようよ!」

 

「待てサマー。いくら何でも無茶だ」

 

「いいえ、話してみる価値はあるかもよ。女王様から聞いたの。伝説のプリキュアと魔女の話を。魔女にはきっと、まだ心がある筈だって」

 

「それを信じるしかない。急いで屋敷へ戻るぞ」

 

 

 

 

 

////////

 

「此処が魔女が居る部屋だ!」

 

帝は扉を蹴り飛ばすと、そこにはあとまわしの魔女とバトラーが居た

 

「お前達は誰だ?何処かで会ったか?思い出せない…!」

 

「思い出す必要はありません。魔女様ご覧下さい。やる気パワーが遂に満杯に」

 

魔女の様子がおかしいところもあったが、それを逸らすようにバトラーが仕向ける

 

バトラーの隣には、クジラのヤラネーダから取り出したやる気パワーを合わせて、ようやくいっぱいとなった大きな瓶があった

 

「これでようやく永遠のあとまわしの世界が!」

 

「永遠のあとまわしだなんて何の為にそんな事を?」

 

「それは勿論……勿論、勿論…」

 

何か言い掛けたのだが、魔女は言葉を詰まらせた

 

「あれ?ワタシは何をあとまわしにしようとしていた…とても大事な事だった気がする……」

 

やはり明らかに様子がおかしい。目的の先にあるものを見失っている。まるで忘れている様な

 

「あとまわしの魔女思い出しなさい!貴女は──」

 

「魔女様はそれを考える必要はありません。後は、このバトラー目にお任せを」

 

すると部屋の隅から大きな物体が音を立てて出て来た

 

「おぉ、愚者の棺!」

 

それは女王が言っていた愚者の棺だった

 

「へっ、邪魔はさせねぇぜ!」

 

「アレが愚者の棺なの?」

 

「そうみたいね」

 

後を追って来たチョンギーレ、ヌメリー、エルダも続々と集まって来た

 

これでお互いに全員が揃い踏みとなった

 

「さぁ、いよいよ愚者の棺を解放する時です。魔女様はそこでご覧になって下さい。私がこの世界を滅ぼして差し上げますから」

 

「「え?」」

 

「世界を滅ぼす?」

 

「何だよそれ?」

 

バトラーの言葉にチョンギーレ達、そして帝がまるで初めて聞いた様な反応した

 

「ちょっと待て。そんなの聞いてないぞ!」

 

「俺も同じだ。そんな話はオッカマーやアリスも知らないぞ」

 

「話してませんでしたっけ?この愚者の棺は、世界を滅ぼす事によって地球上の全ての生き物の生命エネルギーを集めるんです。そして棺を解放した者は不老不死、つまり永遠の命をもたらす」

 

「永遠の命があれば、ワタシの望む永遠のあとまわしが願いを叶える」

 

「それはまた物騒な物だな…フッ」

 

「帝君?」

 

それを聞いて帝は何故か口角を上げた。待っていたと言わんばかりに

 

「魔女様の願いとはいえ、流石にオレもそれは承諾しかねるぜ」

 

世界を滅ぼす事に関しては、チョンギーレは反対だった

 

「おや、反抗するおつもりですか?ならば──こうするのみです!!」

 

バトラーは懐から取り出した超ゼッタイヤラネーダの素を、チョンギーレに向かって投げつけた

 

「何!?」

 

 

「ヤラネーダ!!」

 

 

バトラーは容赦無くチョンギーレをヤラネーダに変えてしまった

 

「チョンギーレ!?」

 

「ちょっとなんて事するの!?」

 

「貴女達は黙ってなさい。さぁチョンギーレヤラネーダ、邪魔者を消してしまいなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バトラーの突然の行為に場は騒然となるが、それでも始まった

 

世界と皆んなのやる気を取り返す為の戦いが




正直トロプリ話数的に足りるのかなと思ってます。あと三週で色々やるってどんな内容になる事やら

内容後半、若干駆け足で書いたので少し変になってるかもかも

ここまでの拝読ありがとうございました


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第83話 魔女と伝説の仲直り、そして予想外の復活

マーベル沼にハマったり、バイク乗り始めたから中々書けれなかったぜ!
そろそろ佳境になって来ました!

ではスタート!


「ヤラネーダ!!」

 

立ち塞がるチョンギーレヤラネーダにと交戦する帝達。

しかし予想以上の強さに苦戦を強いられる

 

それをチャンスと見たバトラーは、やる気パワーが入ったビンを愚者の棺に注入する

 

「さぁ魔女様、世界の破滅をとくとご覧あれ!」

 

愚者の棺にやる気パワーが溜まり始め、満タンになるのにもう間も無く

 

「あと少しで、世界の破滅が訪れる」

 

「そんな事させない!」

 

サマーが飛び蹴りで瓶にかまして、バトラーは落としてしまい瓶は無惨にも砕け散った。微量だがやる気パワーも行き場を無くして散っていった

 

棺を確認すると、ギリギリだが満タンになってはいなかった。

まだ解放はされていない

 

「何をするのだ!あと少しで永遠のあとまわしが叶うというのに!!」

 

「何をそんなにあとまわしにしたいの?」

 

「ッ…わたしは、何をあとまわしにしようとしていたのだ…?」

 

「?──ッ!?」

 

魔女との会話で気を取られ、ヤラネーダの薙ぎ払いに気付かず直撃してしまった。

更には変身まで解けてしまい気絶

 

「早く助けに──」

 

帝達が助けようと動いた時、倒れてるまなつの床が開いて落ちて行った

 

「まなつ!」

 

フラミンゴがパクトと指輪を回収しながらも穴へ飛び込み、続いてコーラル達も後に続いた

 

帝も飛び込もうとしたが、足を止めて振り返る。

その先には、まなつを落とし穴に落としたと思われる人物、エルダがソッポを向いて知らんぷりをしていた

 

それだけを確認すると帝も穴に飛び込んで行った

 

 

 

 

 

////////

 

「此処なら暫くは安全だろう」

 

落とし穴の先は、ローラが一度捕らえられていた地下牢。

目が覚めたまなつを起こして、帝の案内で牢屋から近い物置部屋に隠れるようした

 

「助かった〜!ありがとう帝」

 

「ねぇローラ、さっき魔女に言った言葉。あれってどういう意味なの?」

 

 

 

『──あとまわしの魔女思い出しなさい!貴女は』

 

 

 

「女王様から聞いたのよ。伝説のプリキュアとあとまわしの魔女の過去。あとまわしの魔女は何百年前も昔、"破壊の魔女"と呼ばれる存在だった」

 

「何故破壊するかの理由は至ってシンプル。"破壊する為だけに生まれたから破壊するだけ"。ついでに全部話すかローラ」

 

「そうね、皆んなにも知った方がいいわ」

 

帝とローラは、女王から聞いた話をそのまままなつ達に話した

 

人間達を滅ぼそうと動く魔女だったが、その時代の人達の抵抗によって傷付いてしまう。そして、海沿いの岩場に流れ着いて場所で出会ってしまったのだ

 

一人の少女──アウネーテと

 

アウネーテは魔女の傷付いた体を見て、看病と食べ物を分け与えた。

しかし彼女は、助けた相手が破壊の魔女とは知らなかった

 

魔女は名を聞かれたがそれは答えなかった

 

明日も来ると言い残して帰ったアウネーテだったが、その日の夜の内に魔女は自分の宿命を優先して海へと消えて行った

 

勿論、次の日に訪れたアウネーテは会うことはなかった

 

これで終わりかと思われたが、再会は突然で早かった

 

魔女が次に襲ったのは、アウネーテが住む町近くだった

 

そこで流石に危険と感じ、当時の人魚の女王は一人の人魚を人間界へ向わせ、プリキュアを誕生させた

 

彼女、アウネーテはキュアオアシスとなりヤラネーダを次々と浄化して行くのだがその最中で出会う羽目となる

 

プリキュアと破壊の魔女。お互いの正体を知ってしまっても尚、譲れない思いがぶつかり合い戦いは一層激しくなる

 

全力を出し合っても実力差はほぼ互角。それを察した魔女は「決着は明日と」言ってその場を後にして海へと帰って行った

 

しかしと言うものの、それから魔女が地上へと赴く事は一度もなかった。

当時から仕えていたバトラーが促そうとするも、魔女は来る日も来る日も「明日と」と言い残してあとまわしにし始めた

 

何年、何十年、何百年との月日が流れ着いて最終的に何をあとまわしにしていたかすらも忘れてしまった

 

それが、あとまわしの魔女と呼ばれる由来となった

 

「それじゃあ、わたし達が会った伝説のプリキュアって」

 

「魂だけになっても魔女を止めようとしているんだ」

 

「わたし達が聞かされたのはここまで。で、皆んなはどうする?」

 

伝説のプリキュアと魔女との関係を洗いざらい話した

 

そこで改めてローラは問う。これからの魔女についてに

 

「行こう!もう一度、あとまわしの魔女の所へ!きちんと話して奪われたやる気パワーを返して貰おう!」

 

「話せば分かる」

 

「昔の事も、きっと忘れてるだけだよね!」

 

「なら、思い出させてやるか!」

 

「どうやら愚問だったね」

 

全員が満場一致で、魔女との対話に賛成の意見だった。

そうさせたのは今の話を聞いての同情からではなく、ここまでまなつが引っ張って出て来た答え

 

「わたし達は、わたし達の今、一番大事なことをやろう!」

 

まなつと言葉と同時に、屋根が破壊されてチョンギーレヤラネーダが此方を覗いていた

 

「見つかったか!」

 

「皆んな行くぞ!」

 

 

 

「「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」」

 

「「「「「レッツメイク!キャッチ!」」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

「全速前進!」

 

「「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」」」」

 

 

 

ヤラネーダの腕が物置部屋に突っ込まれる。その腕のせいで部屋の大半の面積を取られてしまい、自由に動く事が難しくてなった

 

『『『この!』』』

 

分身の帝三人現れ、ヤラネーダの腕を押さえ付けた。

TECHNICの能力を用心深く残して置いたお陰でそれ以上は暴れる事はなかった

 

「外に出るんだ!俺が誘導させるからタイミング合わせろよ!」

 

「「「「「オーライ!」」」」」

 

 

 

 

 

サマー達が屋敷に出ると、壁を破壊しながらヤラネーダも外へ出て来た

 

 

 

「マリンハートクルリング!」

 

「「「「「おめかしアップ!」」」」」

 

「「「「「エクセレン・トロピカルスタイル!」」」」」

 

「「「「「5つの力!海に轟け!」」」」」

 

「「「「「プリキュア!マリンビート・ダイナミック!」」」」」

 

 

「「「「「ビクトリー!」」」」」

 

 

 

「チョンギーレ!」

 

「戻ったのね!」

 

浄化されて元に戻ったチョンギーレは、ヌメリーとエルダの元へ戻って行った。

これでヤラネーダの問題は全て解決した

 

すると、屋敷を半壊させながら魔女自らが帝達の前に現れた

 

残すは魔女との対話のみ

 

「ワタシは全てを思い出した!アイツはもうこの世にはいない!ならばワタシのやる事は一つ、破壊だァァァ!!」

 

「話を聞いて!」

 

「あの時の決着をつけてやる!!」

 

サマーの言葉など意に返さず、両手から放たれる水流で容赦無く攻撃して来る

 

「グゥ…その相手はわたし達じゃない!」

 

「そうだお前達じゃない。アイツはもういない!いないいない!!」

 

攻撃を受けて怯んだサマーに対し、追い討ちを掛けるように尾鰭で叩いて来るが、分身の帝三人がサマーの前に出て盾となった

 

『『『グッ!』』』

 

しかし受け止めるにも力及ばず、庇ったサマーごと地面に叩き付けれてしまう。

ラメールが側へと駆け寄りサマーの体を抱き起こした

 

「そうよ、貴女の大切な人はもういない!でも、その人を思う心があれば──」

 

「心など無い!ワタシには必要無い!!」

 

ラメールの説得でも耳には届かず、更に攻撃が襲い掛かって来る

 

『ぺけ!』

 

「そんな事ない!貴女は心を持っている!優しい心を…きゃあ!」

 

コーラルが助けに入ったが、シールドが持ち堪えられず三人纏めて吹き飛ばされてしまう

 

「貴女はもう破壊の魔女なんかじゃない!」

 

「ワタシは破壊の魔女だ!」

 

「アンタ、伝説のプリキュアとの対決をずっとあとまわしにして来た。彼女の事を大切に思ってたんだ!」

 

「違う!ワタシが望むのは破壊!!」

 

『『『ッ!!』』』

 

水流を鞭の様にして振り回してサマー達に襲い掛かって来るも、それより早く分身した帝達が前に出て代わりにダメージを受けて吹き飛ばされた

 

「「「「「帝(君)!」」」」」

 

『なんて奴だ…』

 

『これは相当難しいぞ…』

 

『だけどやるしかないんだ…』

 

分身達はその言葉を残して消滅してしまった

 

「…大丈夫。わたし達に任せて」

 

サマーは瞳を閉じて、誰かに語りかける様にして一人喋った。

そして今度は魔女へと向ける

 

「貴女は戦う事を望んでない。ずっとあとまわしにして来た大切なことをやろう!」

 

「プリキュアを倒して世界を破壊すること!それがワタシの一番大事なことだ!!」

 

「そうじゃない!貴女が本当にあとまわしにして来た事は!」

 

「破壊だ!!」

 

「違う。貴女が本当にあとまわしにして来た事は、破壊じゃなくて"仲良しになること"!人間の女の子と仲良しになること!それが貴女がずっとあとまわしにして来た、勇気が無くて出来なかったこと!!」

 

目の前まで近付いたサマーの体は、緑の光りに包まれその姿を変えていく

 

変化した姿は誰もが一度目にした人物であり、魔女も遥か昔から知る人物

 

「お前は…」

 

『やっと会えた』

 

伝説のプリキュアとの再会に魔女は涙を流した

 

「私は、私も会いたかった…!」

 

『じゃあ、貴女の今、一番大事なことを』

 

「私は、お前と…"友達"にぃ…!」

 

伝説のプリキュアに手を出すと、それを優しく受け取り魔女は和かに笑った。

ようやくしがらみから解放された魔女は、伝説のプリキュアとの再会へて満足そうにして泡となった

 

まるで人魚姫みたいに

 

『ありがとうサマー、皆んな』

 

「貴女の名前は?」

 

「『キュアオアシス』」

 

最後に名を告げ、泡となった魔女と共に空へと還って行ったのだった

 

「また会いましょう。キュアオアシス」

 

「良かった。今の二人すっごくトロピカってるよ」

 

「魔女様行っちゃったの?」

 

「そうみたいね」

 

「最期は幸せそうで良かったんじゃないか?」

 

魔女の最期に、チョンギーレ達も納得してそれ以上は何も言わなかった

 

一人を除いて

 

「うぅ…魔女様、どうして私を置いて行ってしまわれたのです?人間の少女などに惑わされて」

 

一番魔女に忠実だったバトラーだけは、このハッピーエンドは気に入らなかった

 

「こうなったら、魔女様の意志はこのバトラーが…この世界は私が破壊しましょう!!」

 

バトラーが起こした行動はヤラネーダの素を使い、自ら超ゼッタイヤラネーダになって世界を破壊しようとするのだ

 

「ヤラネーダ!!」

 

バトラーヤラネーダとなったバトラーは、今まで以上の大きさとなり、決定的に違う所は自分の意識がハッキリしている所だった

 

「──ッ!」

 

そしてチョンギーレ達三人からやる気パワーを吸い取り、愚者の棺へと溜め込んだ。

しかしまだそれだけでは足りない。けれど、あとほんの一握り程度だけ

 

残りのやる気パワーを埋める為、バトラーヤラネーダが次に狙う相手は勿論

 

「やる気パワー最後の一杯は貴女達から奪いま────」

 

バトラーヤラネーダの巨大な手がサマー達に差し迫る時、忽然と音も無く姿を消したのだ

 

「へ?」

 

これから激闘が繰り広げれると予想して構えていたサマーも、この事態を目の当たりにして変な声が出てしまった

 

「俺だ」

 

何処からともなく声がして辺りを見渡すと、愚者の棺の影から帝が姿を現した

 

「あ、な〜んだ帝か〜!」

 

手にチラつかせてるプリキュアの王杖(レガリア)を見て、サマーは納得した

 

しかし帝が持っているのはプリキュアの王杖だけではなかった。

もう片方の手には、やる気パワーが入っている器を手にしていた

 

「なぁ皆んな。愚者の棺がやる気パワーで満ちると、世界を滅ぼす程の力が解放され、満たした者には不老不死が与えられる」

 

「帝君?」

 

「溜め込んだ力を外に出すくらいなら、自分の中に取り込んだ方が良いと思わないか?」

 

「帝お前まさか!」

 

帝はゆっくりと愚者の棺へ近付き、やる気パワーを注ぎ始めた

 

「止めないと!」

 

「【動くな】」

 

パパイアがビームで器を破壊しようとしたが、プリキュアの王杖によってサマー達の動きを封じられた

 

「愚者の棺の存在を知ってから俺はずっと待っていた。この時を!!」

 

やる気パワーを全て注ぎ終わると、愚者の棺に腕を入れて、自分の体内へと移し替えていた

 

完全に空となった愚者の棺は、帝によって簡単に破壊された

 

しかし放出される筈の力は全て帝の中に

 

帝は紫のオーラを身に纏い、背後には今まで手にしたディスク、オーシャンディスク、エモーショナルディスク、フェスティバルディスク、トロピカルディスクを浮かばせていた

 

「ローラ、皆んな迎える準備は出来たよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何を、考えてるのよ帝?」




次回からオリストです。本来ならバトラーと対決でしたが、この小説のラスボスは主人公です。
この小説書くにあたって最初から決めていた事でした〜!

では、ここまでの拝読ありがとうございます!


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第84話 ローラや皆んなの為ならこの世の全てを敵に回す。誰もが幸せな世界でトロピカる部を続けたい。悲しいことや辛いことなどせずに済む。その為に俺は世界に君臨する。これが俺の“今、一番大事なこと“だ。

そんな訳で最終決戦です。ちょっと文章力が乏しくなっている上、主人公めちゃくちゃです

ではスタート!


「何を、考えてるのよ?」

 

愚者の棺に溜まってあったやる気パワーを全て、自分の体内へ移し替えた帝の行為

 

それはサマー達からしたら全くもって意味不明。

しかし帝にとっては意味のある行為

 

「何を、しているのよ?」

 

「見れば分かるだろ?」

 

「答えなさい!!」

 

「……」

 

「お願い、答えて……お願いだから…!」

 

震え声のラメールはこの状況を理解出来ていない。してる筈なのだが、そう思いたくはない

 

「…俺の描く理想の幸せじゃなきゃ、この世界に守る価値など無い」

 

「何馬鹿な事言ってる帝!守る価値が無い?ふざけるな!!」

 

「ふざけてなどない。知っているだろ、俺の戦う目的」

 

帝が戦う意味。それは皆んなの幸せを願ってのこと。それはもう皆んなが知っている

 

知っているからこそ疑問にしか浮かばない

 

「帝、早くやる気パワーを出さないと!」

 

「手放なさい」

 

「本当にこれが帝の今、一番大事なことなの?」

 

「そうだ」

 

「帝君──」

 

「くどいぞお前達。そもそもこの先の未来はもう終わっている。

 

帝はサマー達に手の平を向ける。完全に敵対関係となってしまっている

 

「わたしは…貴方と戦いたくは──」

 

帝から紫の光弾が放たれ、無慈悲にも説得するラメールを攻撃した

 

冷徹な目で見抜く帝は懐から、超ゼッタイヤラネーダの素を四つ取り出して使用した

 

「「「「ヤラネーダ!!」」」」

 

「ヤラネーダ、サマー達の相手をしろ。俺はラメールだ」

 

ヤラネーダ達はサマー達へジャンプして、ラメールから全員を引き剥がした

 

「帝君!!」

 

「大丈夫だコーラル。後で相手をしてやるからな」

 

一人一体という過酷な条件で相手をする事となってしまった

 

そして倒れているラメールに見下して言葉を投げる

 

「ラメール」

 

「み、かど…」

 

「寝てる暇はないぞ。それとも諦めたか?」

 

雑にラメールの髪を掴み上げて起こさせる。今から始まるのは強者が弱者に対しての暴力、虐めだ

 

帝は拳を作り振り上げる

 

「これで──」

 

「帝君ダメェェェェエエ!!」

 

『ぺけ!』

 

直前、コーラルのシールドが間に割って入り、やむを得ずラメールから距離を置く。

コーラルは、後ろからヤラネーダが追いかけて来るにも関わらず、ラメールを助ける事を最優先とした

 

実力差もあるが何より、精神的に問題を抱えたままでは無様にやられるのはオチ

 

「ラメール歩いて!」

 

コーラルは逃げる様に促すが、当のラメールは動くこともせずその場に崩れ落ちる始末。

そして変身も解けてしまい、完全に戦意喪失となってしまった

 

「一分だ。一分待とう。それだけの時間があれば立て直しもきくだろう」

 

「……」

 

コーラルはローラの手を引いて無言でその場から逃げ出した

 

「ヤラネーダ!」

 

「追うな。いずれ戻って来る。必ずな」

 

追跡しようとするヤラネーダをわざわざ止める指示を出した。

このまま逃げてしまう恐れもあるが、帝の中ではそうは思わなかった

 

彼女達は絶対に逃げない。何故なら

 

プリキュアだから

 

 

 

 

 

なんとか逃げおおせたサマー達は岩陰に隠れていた

 

「クソ!まさか、あそこで帝があんな行動を取るなんて考えもしなかった!」

 

「コーラルの件でもうそんな気は無くなったと思ってたけど」

 

「多分ずっと機会を伺ってたのかも。帝君、慎重な所あるから」

 

「また話し合いでなんとか出来ないかな?」

 

「……そんなの無理よ」

 

サマー達が帝についてどうするか話し合いをしていたが、ローラだけはそうではなかった

 

「いやほら、前はコーラルと話して解決したし」

 

「今の帝は、そんな生易しいものじゃないわよ……本気で、本気でわたし達を倒そうとしていた。折角ここまで来たのに…」

 

「だが、帝を何とかしないと世界が終わってしまう」

 

「約束したのに…」

 

「ローラ気にしたらダメだよ」

 

「もう、無理…色々耐えて来たけど無理よ…」

 

突然の帝の裏切りがローラを弱らせる。自分の気持ちにも最近気が付き始めて、これからというのにこの仕打ち

 

そんな弱音を吐くローラにコーラルは少しムカムカとしていた

 

「ローラらしくない。こういう時、いつものローラなら帝君を何とかしようと動く」

 

「そんな無理よ…」

 

「無理無理ばっか!」

 

「ちょちょ、コーラル落ち着いて!」

 

「サマーは黙ってて!」

 

「はい…」

 

止めようものならコーラルがすぐに怒る。サマーの様子を見て、それにパパイアとフラミンゴは萎縮する

 

「わたし思うの。今の帝君を止められるのは、わたしやサマー達じゃない。ローラだけなの」

 

「それは理想論よ!見たでしょ?わたしは帝とは戦いたくない!こんな結末わたしは嫌よ!!」

 

「それでも!!」

 

「ッ!」

 

声を張り上げたコーラルにローラは少しビクつかせた

 

「それでもローラしかいないの。ローラしか帝君を助けれない…」

 

涙が出る程まで悔しかった。コーラルの声は、もう何言っても届かない事は自分でも重々知っている

 

もし、彼に届かせる言葉を誰か持っているとしたらそれは一人。彼が一番大事な人と思っているローラだけ

 

ローラ以外の人の説得はほぼ皆無

 

「ローラの声ならきっと帝君は聞いてくれる」

 

「もし無理だったら?」

 

「そんな事は絶対にないよ。だって帝君、ローラの事大好きだから!」

 

「…」

 

「ねぇローラ。ローラの今、一番大事なことは何?」

 

「わたしの、今、一番大事な、こと……」

 

深く考えてみる。今、一番大事なことは何か

 

愚者の棺を壊す?

 

違う

 

帝を止める?

 

少し違う

 

なら帝を────

 

「「「「ヤラネーダ!」」」」

 

上を見上げれば四体のヤラネーダが顔を覗かせていた。

上手く隠れてたかと思ったが、その認識が甘かった

 

「「「「やあぁぁ!!」」」」

 

サマー達がヤラネーダを体当たりをして、ローラに近付けさせない様にする

 

「待ってて!わたしも早く変身──」

 

「ローラ行って!」

 

変身しようとパクトを持つもサマーがそれを止める

 

「此処はわたし達に任せるんだ!」

 

「ローラはローラにしか出来ない事がある!」

 

「待ってるから!ローラが帝君を連れて帰って来るのを!!」

 

「皆んな……ッ!!」

 

ローラはサマー達を信じ、作られた道を全力で泳いで行った

 

 

 

 

 

////////

 

「来たな、ローラ」

 

半壊した屋敷で待っていた帝。ローラが来るのが最初から分かっていた

 

「ローラ俺と来い。お前が来ればこの世界はより良い方向へとなる。人魚の掟、人間界での小さな事で悩む事など無くなる。さぁ!」

 

「今の帝にはついて行けない。止める為に此処に来たの」

 

「フフ…アハハハ!俺を止める?究極にして完全、完全にして完璧、完璧にして最強、最強にして無敵!今の俺は誰にも止められない。この俺が絶対だからだ!全ての生物を超越し、全ての頂点に君臨した人間。それが俺、始皇帝である皇帝だ」

 

そんな無茶苦茶で自分勝手な事が良い訳がない。

腹も立つし、なんて返せば良いのか分からないが思える事は一つだけ

 

「『皆んなを幸せにする』あのやる気と願いは嘘だったの?」

 

そもそも帝の戦う理由はそれなのだ。誰かの為に全力で成し遂げる

 

けれど今は……それよりもずっと前からだ。その考えが余りにも極端になり過ぎている

 

さんごの時もそうだったが、他人の為と言いつつもそれは一周回って自己中心的なもの

 

それが帝を暴走させている最大の要因

 

しかしその事について本人が全くもって悪いと思っていない。寧ろ良いと感じている始末

 

「いいや、皆んなを幸せにする事は俺の夢。だが悲しい事に、その夢は今のままでは一生叶う事など無い」

 

「そんな事──」

 

「ある。一年近くお前達と一緒に過ごしたからこそ分かる。あすか先輩は仲間から裏切られ、みのりん先輩は否定され、さんごは自分の殻に閉じこもってしまった」

 

帝の言う様にこの一年で沢山の光景を目にした。良い事も悪い事も全部。

最終的に良い結果とはなりはしたが、それまでの過程が帝の考えをより強固なものとする

 

「お前もそうだろ?グランオーシャンに帰れば記憶を消される。本当にそれが幸せなのか?」

 

「……」

 

「だからこそ必要なのだ。誰かが世界を掌握し、統治して一つになれさえすれば幸せの世界を実現出来る!人は大きな力を恐れ、平伏し、従う!世界を掌握する者…つまり始皇帝である俺が世界を導く者となる!!正しく本来あるべき王としての姿…素晴らしいとは思わないかローラ?」

 

「それが帝の目指す夢の果て…」

 

「最後だ。ローラ、俺の手を取れ。俺と一緒にこの世界を導く王として、やる気が絶えない幸せな世界を創るんだ。プリキュアの力も、その時初めて正義と為す。またトロピカる部の皆んなで、トロピカるな事を成し遂げよう」

 

手を伸ばし誘いを掛ける。けれどローラは、首を横に振ってその手を受け取る事はなかった

 

「愚かな、永遠にトロピカる部で幸せな日々が送れるというのに。それは誤った選択だ」

 

「だとしてもわたしはこの世界を守る。そして───」

 

 

 

「プリキュア!トロピカルチェンジ!」

 

「レッツメイク!キャッチ!」

 

「フェイス!」

 

「ネイル!」

 

「ドレス!」

 

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

 

「そして帝、貴方を連れて帰る!それがわたしの今、一番大事なこと!!」

 

「ッ!!」

 

ラメールの言葉で戦闘が突然始まった。不意打ちの紫のビームを放たれたが、ラメールはジャンプして避け、海中を今まで以上に泳ぐ

 

帝の背後で浮かんでいる幾つものルーレットの針が一斉に動き、能力を同時に発動させる

 

『ATTACK!』

 

『NATURAE!』

 

『SPACE-TIME!』

 

ラメールに手の平を向け、渦潮を仕掛けて来る。ATTACKで攻撃力を増し、SPACE-TIMEで視覚からの位置から送り付け不意打ちを食らわす

 

「グゥ…ッ!!」

 

痛みに耐えながら渦潮を抜けようとするも、周りを見れば四つの渦に取り囲まれていた

 

完全に逃げ場を無くした上、徐々に近付いて来る。

渦潮の勢いが更に増して、とうとう四つの渦が一つになってしまう

 

巨大な渦潮にラメールは呑み込まれ、体を引き千切られる感覚に襲われる

 

無理矢理渦からの脱出をしたのだが、体はボロボロな上想像以上にダメージが蓄積されており肩で息をしていた

 

それでも引く訳にはいかない

 

「プリキュア!オーシャンバブルシャワー!」

 

距離を取りながらも浄化技を放ちはした

 

しかし、帝に触れるとオーシャンバブルシャワーの泡が全て弾けて終わる。

これといった事は何もしてはいない。只普通に受けただけ

 

それが何を意味するのかはもう言わずと知れてる

 

「全く効いてないなんて…」

 

歯軋りしてまう気持ちが込み上げる。

帝は文字通り無傷だった。水中というのに、わざと服についた埃を払うフリをして余裕を表していた

 

「よくもそれで俺を止めようとしたな。それでも俺は手加減は、しない!!」

 

帝は懐から超ゼッタイヤラネーダの素を一つ取り出した

 

ラメールは訝しげにその様子を見る。今更ヤラネーダが出て来たところで、自分の足を引っ張るだけ。それは本人が一番よく分かっている

 

「見せてやる。全てを懸けた俺の覚悟を!」

 

すると帝は、バトラーと同じ様にヤラネーダの素を自分に使い、それを体内へと取り込んだ

 

帝の周りを紫のオーラが渦巻き、帝自身に変化をもたらす

 

「あ、あぁ…」

 

その様子にラメールは絶句する

 

肌の色は青緑で鱗も所々身に付け、瞳は赤く染まり見た目は完全に人間と魚の境目、半魚人と化していた

 

「見ろよラメール。やる気パワー、ヤラネーダ、そして俺自身の力。その全てを兼ね備えた俺は人間という枠からはみ出した。これも全部お前達の為だ」

 

瞳が光ると帝の姿が消え、一瞬で目の前まで迫った

 

「────ッ!?」

 

顎を打ち上げられた。驚く余り一瞬反応が遅れたというのもあるが、それでも攻撃どころか近付いて来た事すら視認出来なかった

 

気付けば顎は跳ね上げられ、その勢いは止まらず海の外、海上まで打ち上げられた

 

「がっ────」

 

痛みを耐える瞳は空を見上げていたが、瞬く間に帝の姿によって遮られる

 

(いつの間──)

 

考える暇など与えられず、今度は踵落としを胸に食らわし、また海の中へと強制的に引き戻した

 

水中だというのに落ちるスピードは和らぐ事なく、屋敷近くの地面に叩き付けられ埋もれる形となった

 

(速過ぎる…!)

 

何とか体を起こし、顔を上げるとその先に帝は此方を見据えていた

 

「これならどうなの!──プリキュア!くるくるラメールストリーム!」

 

『DEFENCE!』

 

今度は受けるのではなく、盾を展開させて防御する。

当然ながら、くるくるラメールストリームでは突破出来ず無駄な攻撃となった

 

だがそれは囮。本命は、技に隠れたラメール自身

 

「ッ!」

 

盾を蹴り上げて強引に引き剥がして拳を振るも、届く前に喉を掴まれてしまった

 

「ぁ…が…っ、!」

 

ジタバタもがいて振り解こうとするも、肺に空気が行き届かず力を出し切れない。

握られる手に力が込められ始め、息苦しさが増して意識が遠のいて行く

 

次第にもがく体は力を失くして、その腕を下ろしてしまう。

それを見た帝は喉を掴む手を緩め、代わりに渾身の一撃を腹に加える

 

「ブハッ!!?」

 

その衝撃は全身に一気に伝わり、背中から衝撃波が出る程だった。

車に撥ねられた人形の様にラメールは転がって行く

 

「オエ゛ッ……!!」

 

急激な意識の目覚めの混乱と、腹に貰った攻撃に吐き気をもようして、地面に吐瀉物を撒き散らす

 

「どうした?俺を止めるんじゃなかったのか?」

 

「…プッ!」

 

口の中に残る吐瀉物を吐き出し、口周りを拭い。

足元がまだおぼつくが弱音を吐いてる暇はない

 

ラメールは指輪一つ取り出す。その指輪は、とある幸せの国の女王から譲り貰った物。

共に女王になってより良い国作りと、友達からの贈り物

 

(シャロン、わたしに力を貸して!)

 

 

 

「スノーハートクルリング!」

 

「おめかしアップ!」

 

「スノークリスタル・トロピカルスタイル!」

 

 

 

 

「ッ!!」

 

ラメールもパワーアップして機動力は先程よりも格段に上がっている。

それを活かして連撃を繰り出すも全て避けられるか、受け流される

 

これでも尚帝とは互角に戦えない

 

「どうしたそれで全力か?もっと本気で打ってこい!!」

 

「ハアァァァアアッ!!」

 

挑発されてか、更に攻撃を繰り出す速度にキレが増して来る

 

思い付く限りの組み合わせで攻撃し続ける

 

右拳からフェイントを掛け、腰を低くして左足で蹴り付けようとするも読まれており、受け止められ投げ飛ばされる

 

体勢を整え、水を蹴り付けて体を一回転させて踵落としを繰り出したが、またも脚を掴まれ二度と地面に打ち付けた後、脇に拳を打ち付け軽く吹っ飛ばす

 

ラメールの背中に回り込んでは蹴り付けて、這い蹲らせるも瞬時に起き上がってジャンプして距離を置く

 

易々と逃す訳にも行かず、地面を蹴り距離を詰める。折角距離を置いたにも関わらず、たったひと蹴りで追い付かれてしまっている

 

完全に帝の方が実力が上で、それを埋める事はほぼ不可能

 

「クッ…っ!」

 

ここまで接近したのなら通用しない打撃ではなく、自分の体の柔らかさを活かして掴み技で反撃しようと試みるも、容易に手を簡単に振り払われてしまう

 

そして反撃の頭突きでラメールを怯ませ、帝はラメールの左肩を掴んで関節を外して脱臼させる

 

(痛い!痛い痛い痛い痛い痛い!!)

 

人生で初めての脱臼に涙を流しながら心の中で泣き叫ぶ。

初めてという事は、戻し方も分からないというのも事実

 

(でも──ッ!?)

 

肩を気にする余り帝の姿を見失ってしまった。戦闘において相手を見失う事は命取り

 

後頭部から強い衝撃を受けて顔から倒れてしまう。

軽く蹴り飛ばして仰向けにさせては、顔を何度も何度も強く踏み付けて痛め付ける

 

「ッ!!」

 

ラメールも只踏み付けられるだけでは終わらない。帝の足をタイミングよく掴んではそのまま持ち上げ、自分の両足を曲げて帝の腹に蹴り付ける

 

「まだ抵抗するか」

 

「抵抗、するわよ!!」

 

ラメールは近接に持ち込む為に接近するが、ジャンプで避けられラメールの真上を通り背中に回り込み、背中から抱いて締め上げる

 

「無駄だ。諦めろ」

 

「諦めないわ…絶対……うぎゃッ!?」

 

喋るラメールの股間を膝で蹴り上げて黙らせた

 

「嗚呼、俺のローラ。何でこうも聞き分けが出来ないのか?」

 

ラメールの顎下を優しく撫で、頬を舌で舐め回して堪能する

 

「思った通りローラは美味しい。食べても良いか?」

 

「それで帝が全部捨ててくれるなら。わたしは、わたしの人生を貴方に捧げても良いわ」

 

「それは良い提案だ。だが無理だ」

 

「そう言うと思ったわ」

 

締め上げられてる状態で器用に手を動かして、シャボンフォームに変形させたパクトを帝の腰に当てる

 

「クッ!」

 

食らっても無傷に済むとはいえ、当たれば痛いものは痛い。

それを思い、ラメールを蹴り飛ばして至近距離からの技を回避する

 

「フッ!」

 

ラメールが振り返ると同時に拳を突き出して殴り掛かる。

対しラメールは防御するのだが、脱臼して使い物にならない左腕を持ち上げて拳を受け止める

 

「〜〜ッ!!」

 

拳を受け止めたのは良いが肩から鈍い音が聴こえた。

しかしこれがラメールの狙い

 

帝の拳を受け止めた衝撃を利用して、外れた肩を強引に戻したのだ。その代償として、激しい痛みを感じる事となったが安いもの

 

脱臼した肩が治って左は完全復活。手にも力が入り、引き戻そうとする帝の拳もがっちり掴んでいる

 

「この!離せ!」

 

「えぇ、離してあげるわよ!!」

 

帝を引き寄せ右拳で頬を打ち抜き、大きく後ろへ後退りして帝は殴られた頬をさする

 

「キッ!調子に乗るな!!」

 

勢い付いてるラメールに癪に触り、今まで以上のエネルギーを右手に集めて紫の球体を作り投げつけた

 

直撃し、爆発と泡でラメールの姿が見えなくなる。

確実に手応えはあった。勝利を確信して力を抜くと、泡の中からラメールが飛び出して懐に潜られた

 

「おりゃあァァァ!!!」

 

腕での防御は間に合わない。かと言って能力を使うにしても間に合わない

 

帝の顔面にラメールの渾身の右がクリーンヒットし、屋敷まで吹っ飛び壁をぶち破って瓦礫に埋もれていった

 

「クソ……ッ!?」

 

瓦礫から這い出た帝だが、自分の姿を見て衝撃を受けた

 

「貴方の負けよ帝。もうこんな事は辞めて」

 

そして目の前には、ラメールが帝を見下ろしていた。

帝は両手に尻餅を付いて倒れて見上げている状態

 

「そんな、馬鹿な……この俺が負けるだと?」

 

これまで帝は戦闘では多少の苦戦は有りはしたが、倒れるという事自体は無かった。

それは彼自身が無意識の内にそうさせなかったのだ。

本能なのだ。倒れたら負けというその事実が

 

そして帝は今、ラメールの攻撃によって初めて倒れた(・・・・・・)のだ。

帝にとってそれは屈辱以上のもの

 

「ほら手」

 

そして追い討ちを掛けるようにラメールは手を差し出した

 

その行為によって帝の中で何かが解放された

 

「ふざけるな!!!」

 

「ッ!?」

 

激しい怒号を浴びせられ、ラメールの手を振り叩いた

 

「そんな事!!あってはならない!!」

 

帝の体が光り輝き始め、ラメールはそれは危険と察知しその場からすぐに離脱しようとするも、それよりも早く光りがラメールを呑み込んだ

 

光りが辺りを包み込むと巨大な爆発が発生し、何もかも全て吹き飛ばした

 

 

 

 

 

「く、うぅ…」

 

水中で浮かぶラメールの姿はボロボロだった。

少しだが気絶していた事に気付いた

 

体を起こして辺りを見渡すと有り得ない光景が広がっていた

 

「そんな…なんて威力なのよ」

 

激しい爆発によって屋敷だけではなく、足場となっていた岩場までもが消し飛んでいた。あるのは海水のみ

 

そしてラメールの正面先には帝が見据えていた

 

「帝…あ」

 

スノーハートクルリングの力を使い切ったのか、スノークリスタル・トロピカルスタイルが解けて元の姿に戻ってしまった

 

「こんな時に…うっ!?」

 

突然の咆哮。ラメールはそのうるささに両耳を塞ぐのだが、それでも頭の芯まで響かせる

 

「ごのッ!!ごのッ!!ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!」

 

大声を出しているのは帝だった。プライドをズタボロにされたあまりからの怒りの咆哮

 

「ローラ!ローラッ!!ロォォォォラァァァァァァアアッッ!!!」

 

「言いたい事があるならハッキリ言いなさいよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨の様に降り注ぐ攻撃の中に、ラメールは飛び込むのであった




次回で決着付けます

ここまでの拝読ありがとうございました!


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第85話 わたし達にも譲れない想いがあるの。ねぇ帝、全部終わったら話したいことがあるの。貴方に対するわたしの大切な想い、絶対聞かせるからね。その為に"今、一番大事なこと"をやるわ。

サブタイで会話をし始める始末

今回で決着です

ではスタート!


水中で青い閃光と紫の閃光が激しくぶつかり合い、その度に衝撃波と轟音が鳴り響く

 

最初こそは互角に衝突し合ってるように見えるが、次第に青い閃光が押され始める

 

「ウラァ!!」

 

「ッ!」

 

帝の攻撃を両腕でクロスして防御するも、踏ん張りが効かず後方へ飛ばされ、腕は痺れが残る

 

「この!」

 

尚も追撃する帝に反撃をするも避けられた挙句懐に侵入を許し、顎に向けて飛び膝蹴りが襲った

 

「あぐっ!!」

 

帝を見失わない様に顔を下げるが、既に目の前から消えていた

 

「何処に…グッ!!」

 

背中から激しい痛みが走る。背後から攻撃されたと思い振り返るも、帝の姿は居ない

 

「きゃっ!?」

 

今度は右横腹に打撃が加わった。

それから上下左右至る所から攻撃の嵐がラメールに襲い掛かる

 

帝はラメールに視認出来ない程の速さで攻撃している。

何も抵抗出来ず、苦痛の表情を浮かべて只々その身に受けるしかない

 

それだというのにラメールは何処か余裕があった

 

(本当に嫌になるわ。帝と会ってから散々振り回されて痛い目ばかり遭う。なのに一緒に居るととても安心する。嗚呼、やっぱりわたし帝の事が────)

 

ガードをした腕が打ち上げられ正面がガラ空きとなる。

ノーガードで今の帝の攻撃を食らうとひとたまりもない

 

けれどラメールは知っている。これは囮。正面から来ると思わせる為の布石

 

本命は

 

「ッ!」

 

「何ッ!?」

 

背後を振り返ると帝が拳を振り上げている途中だった。

攻撃を予測したラメールは帝の拳をようやく受け止めた

 

そしてラメールは、苦痛の表情からいつの間にか笑っていた

 

(帝の事が────大好きなのね)

 

「何笑ってる!?」

 

帝は受け止めたラメールの手を更に上から掴み逃げられない様にし、腹に膝蹴りを食らわす

 

更に蹴り飛ばして、紫のエネルギー弾を無数に放った

 

膝蹴りがまともに直撃したラメールは、その場から逃げる事が出来なかった

 

(あ───)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ぺけ!!!!』

 

ラメールの周りにぺけ印のシールドが無数に展開し、帝の攻撃を全て防ぎ切った

 

「大丈夫ラメール?」

 

「ごめん!結構遅れちゃった!」

 

「わたし達がフォローする!」

 

「帝を頼むぞ!」

 

「皆んな…!」

 

ヤラネーダを全て浄化し終えたサマー達は、ラメールとようやく合流出来た

 

「お前達の相手は後だ。消えろ」

 

突然現れた分身の帝三人がサマー達に襲い掛かる

 

サマーとコーラル、パパイア、フラミンゴの三組に散らばりそれぞれ戦闘を繰り広げる

 

そしてラメールは一直線に帝へ接近する

 

「帝!!!」

 

彼の名を叫びながら拳を振り抜き、蹴り回すも全て軽やかに避けられる。

シャイニーパフュームリングをセットしながらシャボンフォームに切り替え、そのまま至近距離で連発するが、細かく体を揺さぶられる全部かわされた

 

反撃に出る帝は腹を蹴り上げ、肋に拳を減り込ませ、顎を跳ね上げる

 

堪らずアクアパクトを持つ手が降り、帝はそれを弾き飛ばして海の底へと落とした

 

パクトを手放したラメールは一度距離を取り、スノーハートクルリングを使ってもう一度変身しようとするが、あっという間に帝が距離を詰めて来た

 

「──ッ!」

 

小細工などさせぬ様に帝は手を出す。

ラメールは避けならがも、トロピカルハートドレッサーにセットしようと抵抗するが虚しくも手を取られ、スノーハートクルリングを奪われてしまう

 

指輪を握ったままラメールの頬を右から左へと殴り飛ばし、両手で両肩に打撃を浴びせサマーソルトをかます

 

高く飛ばされたラメールを見て、スノーハートクルリングを適当に投げ捨てる

 

ラメールは体勢を整え、体を捻り真上から踵落としを繰り出すが避けられた挙句、カウンターで溝に拳を打ち込まれ、怯んだ隙にラメールの首に足を掛けられ上体を固定され、両手で右脚を掴んで捕らえた

 

「こんの〜〜ッ!!」

 

「このまま脚をへし折ってやる!!!」

 

ラメールは必死に逃げようと抵抗するも、上体を固定されてまともに動けない。

どうにかして抜け出す策を考えていると、帝の背後から何者かが此方へ向かっているのを見た

 

それを見てラメールは強硬策に出た

 

「クッ──ああぁぁぁぁああッッ!!」

 

変身を解いて人魚の姿まで戻った。脚が尾鰭に変わった事で、運良く鱗が帝の手の平を滑らせてそのまま強引に抜け出した

 

「ッ!?」

 

抜け出した勢いに背後に回り込み、遅れて振り返る帝に尾鰭を使って目元に蹴りを入れた

 

「何ッ!?」

 

だが変身を解いた事で今のローラは完全に裸同然。すぐさま反撃しようと拳を引いて打ち出そうとする

 

『ぺけ!』

 

その途中、ぺけ印のシールドに阻まれて弾かれた

 

背後から迫っていた者はコーラルだった。ローラが押されてる事を危惧して飛び出したのだ

 

そしてコーラルの手には、先程叩かれ落とされたマーメイドアクアパクトを握り締めていた

 

「ローラ!!」

 

コーラルからパクトを受け取りプリキュアに変身する

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!───ハァッ!!」

 

名乗りを上げながら踵で肩を蹴り下ろし、更にそこにコーラルも加わる

 

反撃しようものならコーラルが防御しては受け流して、帝の攻撃を全て自分が引き受ける

 

ラメールは、コーラルが防御する度に動きが止まる隙を突いて休みなく攻撃する。

手刀で喉を打ち付けては踵で後頭部を蹴り倒し、腹を膝で蹴り上げて強制的に上体を起こしては回し蹴りで首に叩き込んだ

 

「ガッ!?」

 

そして初めて帝は後ろへ引いたのだが、逃してしまえば勝機が断たれる。

ラメールとコーラルは間髪入れず、パクトとハートルージュロッドを構える

 

 

「プリキュア!くるくるラメールストリーム!」

「プリキュア!もこもこコーラルディフュージョン!」

 

 

「クソッ!!」

 

『DEFENCE!』

 

咄嗟に盾三枚を展開するが、二人の技が直撃すると一枚は容易く砕け、二枚目は少しばかり耐えたがそれでも破れてあっという間に三枚目の盾まで突破されようとする

 

 

 

 

 

「「「ハアァァァ!!」」」

 

 

「プリキュア!おてんとサマーストライク!」

「プリキュア!ぱんぱかパパイアショット!」

「プリキュア!ぶっとびフラミンゴスマッシュ!」

 

 

ラメールとコーラルが二枚目の盾を破壊すると同時に、サマー達もまた分身の帝を薙ぎ倒した所だった

 

「早くラメールの所へ──」

 

 

「皆さん!」

 

 

突然呼び出されて振り返ると、そこにはグランオーシャンが国ごと移動して目の前に現れた

 

「グランオーシャン!?」

 

「国ごと移動出来たのか…」

 

「お待たせしました。コレをローラに」

 

サマーは女王から修理されたアクアポットを受け取った

 

「よし行こう!」

 

 

 

 

 

「「行っけえぇぇぇ!!」」

 

盾にひびが入り、とうとう三枚目の盾も打ち砕かれ、二人の技をその身に受ける

 

「ラメール!」

 

そこへサマー達も合流してアクアポットを受け取った

 

「行くわよ帝!」

 

 

「マーメイドアクアポット!サーチ!」

 

「やる気パワー!ウルトラスーパーアメイジングカムバック!!」

 

 

愚者の棺から取り込んだやる気パワーが、帝の体内から全て放出されてアクアポットの中へ吸い込まれて行った

 

「やる気パワーが…!?」

 

「帝受け取りなさい!これがわたし達皆んなのトロピカったやる気を!!」

 

 

 

「マリンハートクルリング!」

 

「「「「「おめかしアップ!」」」」」

 

「「「「「エクセレン・トロピカルスタイル!」」」」」

 

「「「「「5つの力!海に轟け!」」」」」

 

「「「「「プリキュア!マリンビート・ダイナミック!」」」」」

 

 

 

「だから何だと言うんだ!!」

 

『ABSOLUTE!』

 

「【跳ね返す】!」

 

両者の技と言霊が激しくぶつかり合い、大きなエネルギーが辺りに撒き散らす

 

しかし次第に帝の方が少しずつだが押され始めていた

 

「グゥッ!こんな筈じゃ…オオォォォ!!」

 

そして巨大なパワーのぶつかり合いの果ては、お互いに耐え切れず弾けて爆発し吹き飛ばされてしまう

 

「「「「きゃあぁぁ!!」」」」

 

「耐えた…ッ!?」

 

耐え切ったと、これで本当に勝利を確信して追撃を仕掛けようとしたタイミングで、ラメールが目の前まで迫って来ていた

 

ラメールは拳を構えて顔目掛けて突き出した。

しかし拳は目の前まで来ると殴る代わりに開いて、帝の頭に手を回して抱き寄せてはそのまま顔を近付けて────唇を重ねた

 

「ッ!?」

 

突き放そうと抵抗するが、すればする程技逆にラメールも強く抱きしめ、舌を入れて絡みついてくる

 

観念したのか、段々と抵抗する気も失くしてそのまま帝は受け入れ始めた。

ラメールもそれを察すると、ようやく長いキスを止めて離れてた

 

唇は離したものの未だに密着状態という事は変わらなかった

 

落ち着きを取り戻した帝は小言を言い始めた

 

「幸せにしたかった……」

 

「帝…」

 

「俺はただ、皆んなを幸せにしたかった。世界が一つになり、やる気と幸せが絶えない日々の姿を。大人になっても、トロピカる部の皆んなで部活をしたかった……」

 

「…貴方の考えは間違っては無い。わたしも帝と同じ気持ちよ。でもね、やり方が間違っていた」

 

ラメールは帝の手を引いてサマー達の所まで誘導して、笑顔でこう言ってくれた

 

「でも戻って来てくれた。ありがとう」

 

 

 

 

 

////////

 

グランオーシャンに乗り、地上へ出るとそこには晴れ渡れた空が広がっていた

 

「後はコレね。それ!」

 

ラメールは回収した全てのやる気パワーをあるべき所へ戻した

 

グランオーシャンに住む妖精、あおぞら市に居る街中の人々にやる気パワーが戻って行った

 

 

 

 

 

全てを終えたサマー達は女王と対峙して、感謝の言葉を貰っていた

 

「貴女達のお陰です。ありがとうプリキュア の皆さん」

 

「これで一安心だね!」

 

「ちょっと待った!!」

 

サマーが締めくくろうとしたのだが、チョンギーレ達が待ったを掛けた

 

「やる気パワーが戻ったのはいいのだけど…」

 

「バトラーは何処に行ったか知らない?」

 

ヌメリーとエルダの言葉に全員がハッとする。

そして何処かへとやった張本人である帝へと視線が集まる

 

「あはは……ごめん、俺も何処へ飛ばしたか分からない…」

 

「「「「「えぇ!?」」」」」

 

「海の何処かとは思うけど…あの巨体だしいつか見つかるとは思うけど……」

 

最後の最後までやらかした気不味さに耐え切れず縮こまるばかりであった

 

「かったりぃが探すか」

 

「そうね」

 

「な〜んで尻拭いしなきゃならないのかなぁ?」

 

グサグサと刺さる帝を、コーラルは優しく宥めていた

 

「まぁいいんじゃねぇのか?それより色々と世話になったな。それに迷惑も掛けて済まなかったな」

 

「ごめんね〜」

 

「バイバ〜イ!」

 

三人は別れの挨拶を言うと、海へ飛び込んで何処かへと旅立って行った

 

「終わったな。これで一件落着」

 

「まだ終わってないわよ」

 

「そうだよ!早く戻って準備しよ!」

 

「スケジュールが遅れちゃったから」

 

「取り戻そう!」

 

「ああ!気合い入れていくぞ!」

 

「「「「「トロピカ卒業フェスティバル!」」」」」

 

サマー達が元気に声に出す中で、帝だけは独り帰ろうとしていた

 

「何処へ行くのよ?」

 

そんな帝を引き止めたのがラメールだった

 

「あんな事しでかしといて、気不味くなったからって帰る気?」

 

「…」

 

「全く、本当にもう…」

 

両手を腰に当てて溜め息を吐くも、やれやれといった様子で帝の手を取り、サマー達の元へ駆け出した

 

「帝には一番働いて貰うわよ!」

 

「ラメール…ローラには敵わないな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

笑顔で出迎え、次なる準備へとトロピカ部は急ぐのであった




最後はヒロインとサブヒロインの連携でした。折角二人もいるんだから使わなきゃそんそん!

前回言うの忘れてましたが、作者は映画フォームを意地でも出す人です

ここまでの拝読ありがとうございました!


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第86話 約束の告白を今!迫られる究極の選択

ちょっと短いです

ではスタート!


あとまわしの魔女との戦いが終わり、トロピカる部の面々に穏やかな日常が訪れる。

そして今はトロフェスの準備の真最中なのだが、その途中でローラは帝を呼び出していた

 

部室から少し離れた場所で、帝は呼び出された事に首を傾げていた。

変な事は特にしてはないが、先日またも敵対した事についての言及なのかと思ってもいた

 

しかし、ローラが口にしたのはそうではなかった

 

「あの時の約束覚えてる?」

 

「あの時?あの時あの時……あ、もしかして俺が告白したアレ?」

 

「色々間違ったやり方もあったけど、根本的には変わりなかったのよね。帝がどれだけわたし達の事を想ってやってくれたこと」

 

ローラは柵にもたれながら、髪を弄って独り言の様に喋る

 

「そんな貴方に少しずつ惹かれてた。まなつ達とは違う視線を向けてくれる、わたしだけに向ける態度。全部、全部……フフ///」

 

「なんか…変」

 

「変って何よ!?」

 

「だってローラが異常に優し過ぎる!!」

 

「わ、わたしはいつだって優しわよ!!」

 

帝の態度に軽く怒ると、すぐさま呆れ、そして柔らかな表情に変わる

 

「もう……一度しか言わないからちゃんと聞きなさいよ」

 

ローラは何度も深呼吸をして心の準備をして気持ちを整える

 

「帝、わたし貴方の事が───」

 

「ローラ、俺と付き合って下さい!!!」

 

「ちょっとおぉぉぉぉおお!!」

 

「え?何か間違ってたか?」

 

一世一代の大勝負のローラに被せて帝は言ったのだが、本人は壮大なやらかしをした事に気付いていなかった

 

「わたしが大事な話をしようとするのに何で被せるの!?」

 

「いやだって、あの日の約束覚えてるって言われたから」

 

「あ……」

 

 

『──その時になっても、まだわたしの事を好きでいてくれるなら、また告白でもなんでもしなさい』

 

 

覚えてはいた。なのだが、少々気持ちが前のめりになっており仕方なかった

 

「で、返事は?」

 

「え…?」

 

「本当はローラから言うつもりだったんだろ?なら返事もすぐに返せるよね〜?」

 

意地悪な言い方に妙に腹が立つ。それに多分、その答えが分かっててわざとしてるのだ

 

「…い、一度しか言わないからよく聞きなさいよ」

 

ローラは手招きをして帝を呼び、耳元で小さく呟いた

 

「わたしも貴方と一緒に居たいから…その……いいわよ///」

 

帝から離れてその反応を確認すると、意外な反応を示していた

 

「え、何で泣いてるのよ?」

 

ポロポロと涙の雫を零していた

 

「だって、ローラが俺の事を」

 

「…帝が泣いてるの初めて見た」

 

ローラはもう一度ゆっくりと近く。今度は耳元ではなく、真っ直ぐ正面唇を重ねようとしていた

 

 

 

 

 

「「あ…」」

 

ガタンと物音が聴こえ視線を向けると、まなつとさんごが物陰から覗き見していた

 

「「「「……」」」」

 

お互いに無言が続き、先に口を開いたのはローラだった

 

「ぎ…」

 

「「ぎ?」」

 

「ギァァァァッッ!!!」

 

発狂してしまうのも無理はない。自分からせがんでしようとするのを見られたからだ

 

そこからの動揺は激しいものだった

 

「いいいいいつからみみみ見てたのよ!?」

 

二人はお互いに見合わせて

 

「『あの時の約束』」

 

「『覚えてる?』」

 

「「辺りかな?」」

 

「最初から!それ最初からじゃない!!」

 

ローラが二人に騒ぎ立ててる反対で、帝の両隣りにみのりとあすかが立っていた

 

「そんな訳でおめでとう帝。あと、劇のネタに使っても良い?」

 

「おいみのり、そんな事言うとローラが怒るぞ?」

 

「聞こえてるわよ!!」

 

「うわ来た!!」

 

みのりとあすかは走り出してローラが追い掛ける。

帝はそれを横目で見るだけで何もする事はしなかった

 

「帝も捕まえるの手伝いなさい!」

 

「ローラ!」

 

そう言って追い掛けるローラを捕まえた

 

「わたしじゃないわよ…」

 

「ずっと一緒にいような」

 

「フフ、ええ」

 

「帝もローラもトロピカって来た所で、早速トロフェス最後の追い込みするぞ〜!!」

 

 

 

 

 

////////

 

他の部の面倒を見つつも自分達の準備をするトロピカる部。

劇の方は順調で一通り通しての練習では上手く行った

 

そして気付けば夕方となっていた

 

その際に差し入れを貰ったり、学校で寝泊まりする為の寝袋まで用意して貰った

 

「あすか先輩が居なくなると寂しくなっちゃうね」

 

「でもまた新入部員が入って来るさ」

 

「あ、そうしたらわたしも先輩?」

 

「そうだ。頼んだぞまなつ先輩(・・)

 

「お〜良い響き!」

 

あすかの卒業も寂しくなるが、それと同時に来るであろう出会いに想像を膨らませる

 

「さんご先輩!ローラ先輩!帝先輩!」

 

「『さんご先輩』。何か良い〜!」

 

「先輩って言うのも悪くないわね!」

 

「新しいパンツとの出会いが俺を待っている!」

 

それを口にした帝は、ローラから肘打ちを貰いその場に崩れ落ちた

 

「お前馬鹿だろ…」

 

帝もいつもの調子に戻り、今後変な騒動は起こしはしないと思う面々だった

 

 

 

 

 

夜となり、円になって就寝する皆んなだったが、どうにも一人寝相の悪い人が居た

 

「ぷりきゅぁ〜とろぴかるちぇんじぃ〜…」

 

寝言を言いながらゴロゴロと床を転がるまなつ。

その先には帝が寝息を立てて、おでこ同士がぶつかり互いに夢から目覚める

 

「あえ?」

 

「いったぁ〜…ゆっくり寝れないのか?」

 

「ごめんごめん…あれローラは?」

 

 

 

 

 

部室の外で、ローラがトロピカルハートドレッサーで女王と話していた

 

「そんな…明日なの?」

 

「妖精達も元気になり、街の復興に取り組み始めました。グランオーシャンは、これから新しい海へ旅立ちます」

 

明日、つまりトロフェス当日にグランオーシャンは今の海から移動して、別の場所に大移動するのが明日の朝

それがど言う事なのかローラは分かる

 

「貴女は本当によく頑張りました。女王候補としての役目を立派に果たし、グランオーシャンを守った。その功績により、貴女を正式にグランオーシャン次期女王に指名します」

 

「わたしが女王…!正式に」

 

それはローラが目標にしていたこと。それがようやく叶う時が来た

 

「ですけどもし」

 

「もし?」

 

「もし貴女が、人間の世界の友達とそのまま暮らしたいのならそれも構いません。女王を、辞退してずっと人間界に留まるのも良いでしょう。ローラ、貴女が決める事です」

 

そんな二人の会話を、後ろで静かに聞いてしまった帝とまなつ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

迫られる究極の選択にローラは何を選び、帝とまなつはどうすべきか




最後の最後でゴールインしました!

そして次回は最終回の話を書きますが、三話分に分けてお送りする予定です

ここまでの拝読ありがとうございました!


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第87話 これからの道のり、ウィンチェスター神話

最終回の話です。今作戦闘でのバトンタッチが無かったので、そこは新主人公に任せました

ではスタート!


「次期女王として決めるのは貴女次第です」

 

その会話を聞いてしまった帝とまなつ。二人は静かに、そして急いで部室へと戻って狸寝入りする

 

すると同時にローラも戻り、その夜は静かに眠った

 

 

 

 

 

////////

 

次の日になるとローラもだが、話を聞いてしまった帝とまなつは元気が無かった

 

「どうしたローラ?」

 

「あ、お腹空いた」

 

「どうしたの?さっきから変だよ?」

 

「まなつと帝も」

 

ローラは慌てて心配させない様な態度を取るがが、帝とまなつに関してはローラから視線を外した

 

「い、いや〜何て言いますかね!まなつ!」

 

「ほ、ほら!大事な事を決められない時って結構悩むよね〜なんて……」

 

「…まなつ、帝!」

 

「何の話しだ?」

 

「「……」」

 

二人の会話でローラは察した。夜、女王との会話を聴かれてしまったのだろうと

 

これはもう隠す事は無理と判断してローラは

 

「わたしから話すわ」

 

 

 

 

 

ローラは部室で全て話した。帰って女王となるか、人間界に残って一緒に暮らすかの選択を

 

「急過ぎるだろ!」

 

「それでどうする?」

 

「女王になるのはまだ先なんでしょ?なら別に今決めなくても!」

 

「それじゃあ、あとまわしの魔女と一緒になっちゃう。あとまわしにしちゃ駄目なの」

 

「だけど女王様も言ってた。ローラが帰ったらわたし達の事を忘れてしまう。もしかしたらわたし達もローラの事を…」

 

さんごとあすかは良くは思ってなかった。みのりも、これまでの記憶が無くなる事を恐れていた。

例えローラの記憶が消えても、自分達だけでも覚えていたらと思うがそれも怪しい

 

「「それでも忘れない!」」

 

帝とまなつは立ち上がってそう告げた

 

「もし記憶を消されても忘れないよ」

 

「このまま一緒に俺達と暮らすか、グランオーシャンに帰って女王になるか」

 

「うん。わたしは、ローラが今、一番大事だって思う方をやって欲しい!」

 

「まなつ、帝……わたしの今、一番大事なこと…」

 

究極の選択を迫られる中で、考え込むローラに水を刺す出来事が起こった

 

「うわ何!?」

 

トロフェスがもう始まろうとする時に、大きな振動を感じた

振動の中心地であるグラウンドだった

 

 

 

 

 

////////

 

「ヤラネーダ!!」

 

「おいおい、どっから来たんだよ!?」

 

帝達の目の前に、何処か消えたバトラーヤラネーダが現れたのだ

 

「少々遠い場所へ飛ばされましたが、何も問題はありません。貴方方プリキュアを倒し、魔女様の代わりに私がこの世界を破壊しましょう!!」

 

バトラーヤラネーダの周りには、やる気パワーを奪い取られた人達で溢れかえっていた

 

「忠誠心もここまで来ると逆に褒めたくもなるな」

 

「帝も大概でしょ?」

 

「馬鹿な事言ってないで」

 

「早く倒しましょう!」

 

「そして皆んなでトロフェスをやろう!」

 

「皆んな変身するよ!!」

 

 

 

「「「「「プリキュア!トロピカルチェンジ!」」」」」

 

「「「「「レッツメイク!キャッチ!」」」」」

 

 

「ときめく常夏!キュアサマー!」

 

「きらめく宝石!キュアコーラル!」

 

「ひらめく果実!キュアパパイア!」

 

「はためく翼!キュアフラミンゴ!」

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

「あっという間に!」

 

「「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア !」」」」」

 

 

「プリキュアの王杖(レガリア)!」

 

『ABSOLUTE!』

 

 

 

 

「「ハァッ!!」」

 

サマーとフラミンゴが腹目掛けて拳を食らわすのだが、全くもって効いていなかった

 

「たあぁぁ!!」

 

上空からラメールの膝蹴りを繰り出すも、両腕で防がれてしまった

 

「「「効いてない!?」」」

 

「わたしが惹きつけるから帝──」

 

「やらせませんよ!!」

 

サマー達を振り払い、囮として走り出したパパイアへ火球を吐き出した

 

『ぺけ!』

 

コーラルが素早くパパイアの前に出て、シールドで防御するも既にヒビが入り今にも砕けそうだった

 

「ぐぅぅ…ッ!!」

 

「無駄ですよ」

 

瞬間、火球が爆発して炎に燃えながらコーラルとパパイアは吹き飛ばされた

 

「【這い蹲れ】!」

 

間髪入れず今度はプリキュアの王杖の能力で、バトラーヤラネーダを地面に手をつかせた

 

「寝てろ。早いとこマリンビート・ダイナミックで……あ?」

 

地に伏せたバトラーヤラネーダの様子がおかしかった。

プリキュアの王杖で動けない筈が、じんわりと体を起こそうとしていた

 

「おいそんな嘘だろ…?」

 

そしてとうとう言霊の力を跳ね除けて起き上がった

 

「随分と呆気ないものですね」

 

バトラーヤラネーダは巨大な拳を帝へと振り下げる。

プリキュアの王杖でも通じないとなると自力で避けるしかない

 

なのだが、プライドの高い帝は再度プリキュアの王杖を使って対抗しようとしていた

 

「止ま──」

 

「帝!!」

 

横からラメールが飛び込んで、タックルに近い感じで帝を助け出して転がる

 

「何考えてるのよ!わたしを心配させないで!」

 

「悪い!」

 

起き上がる二人の周りに突然無数の敵が現れて取り囲む

 

「「「「コワスンダー!!」」」」

 

ヤラネーダとは別の存在が居た。それが「コワスンダー」

 

そしていつの間にか、サマー達の周りにもコワスンダーが配置されていた

 

未だにコワスンダーを増やし続けるバトラーヤラネーダ。

もう帝達六人だけでは手に負えない数となってしまう

 

「帝…」

 

「大丈夫。俺がついてるから心配するな」

 

帝はラメールの手を握り身を寄せ合う。そしてラメールは心の中で祈っていた

 

この危機的状況から抜け出す為に

 

(お願い誰か助けて!皆んなを…帝を助けて!!)

 

その時だった。無風だったのだが急な風が吹き、次第に強風となり、晴れた空に落雷が起き始めた

 

「何が…」

 

そして帝とラメールの目の前に雷が一つ落ち、辺り一体が光りに包まれ、激しい耳鳴りが起きて全員がその場に蹲る

 

「眩しい!!」

 

「それに何だこの音!?頭が割れそうだ!!」

 

眩い閃光が収まると、発した光のその中心地には一人の少女が立っていた

 

「貴女は?」

 

その少女の姿は白い衣装に身を包み込んでおり、白く長い髪を揺らして笑顔で此方に振り返る

 

「祈りを聴いて飛んで来たの。アナタですよね?」

 

見た目はサマーやラメール達とは少し違うが、プリキュアの衣装と遜色ない姿だった

 

「え?え、えぇまぁ…」

 

「OK」

 

少女は指パッチンをした。それに何の意味があるかと思ってると

 

「「「「コワスンダー!!??」」」」

 

コワスンダー達の目と口から眩い閃光を発しながら浄化されて消滅した

 

Yes!(よし!)

 

ガッツポーズを取り、浄化した事に喜んでいた

 

That's next!(次はアッチ!)

 

そう言って少女は一瞬で姿を消した

 

 

 

「遅くなりました」

 

「「「「うわっ!?」」」」

 

今度はサマー達の目の前に現れて驚かした

 

「コワスンダー!!」

 

「ッ!」

 

少女は手を翳すと同時に瞳が金色に輝き、手の平から金色のオーラを放出する

 

そのオーラを受けたコワスンダーは、限りなく止まってるみたくスローモーションとなって動きが鈍くなっていた

 

「ん」

 

そして手を軽く閉じて弾く様に開けると、勢いよく後方へと吹っ飛ばされた

 

少女は周りをぐるりと見渡してコワスンダーの姿を確認して、またも指を鳴らすと先程と同じく視界に捉えたコワスンダー全て浄化させた

 

「凄い!」

 

「あ、アナタって──」

 

「コワスンダー!」

 

背後から不意打ちを食らわそうとするコワスンダーだが、少女は振り返りもせず適当に手を振っては、触れずに簡単に吹き飛ばした

 

「はいはい、そういうのはお腹いっぱい。ごちそうさま」

 

少女はサマーへと視線を移し替えて急にハグをした

 

「おわっ!?」

 

「お久し振りです。プリキュアのサマー…で良かったのかな?」

 

「あれ?わたし貴女と何処かで会った?」

 

「え……oh shit!(あ、しまった!)

 

少女は頭を抱えて完全にやらかした状態となっていた

 

「え〜とそれならどうしよう……取り敢えず自己紹介は置いといて──」

 

少女は姿を消して、近くに居たコワスンダーの頭の上に瞬間移動していた

 

「こっちを片付けましょう」

 

少女はコワスンダーに手を軽く置いて、直接浄化させた。

足場にしてたコワスンダーが浄化されて少女はそのまま落下していく

 

完全に無防備となった少女だが、余裕の表情をしていた

 

「早く助けないと!」

 

「あ、お構いなく!」

 

コワスンダーが足で攻撃して来るが巧みに避けて、その足を辿って頭まで到達して地面に蹴り落とす

 

「これで終わりです!」

 

ようやく地面に着地したと思ったら、すぐさま天高くジャンプして太陽を背にする

 

「フッ」

 

そして学校中に響き渡る程の大きな音の指パッチンが鳴り響く

 

バトラーヤラネーダ以外、残りのコワスンダー全て浄化されるのであった

 

「あれだけの数のコワスンダーを……もしや貴女もプリキュアですか?」

 

「あ、はい。ワタシはプリキュア。『キュアフレーバー』と名乗らせてもらってます」

 

少女もとい、キュアフレーバーは満面の笑みでそう返した

 

「では貴方も消えて──」

 

「それ!」

 

また手を翳すと、先程とは違いバトラーヤラネーダはその場に蹲り苦しみの声を上げる

 

「あぎゃ!?」

 

今バトラーヤラネーダは、全身から激しい痛みで支配していた。

その痛みを起こしたのはフレーバー

 

「このまま浄化しますね」

 

ゆっくりと手を握り締めて、痛みをより強く起こさせる

 

「お、おい止めろ!」

 

けれどそれを帝は、腕を掴んで下げる様にして止めに入る

 

「やり過ぎだ!それに今浄化してしまったら、やる気パワーを奪われた皆んなが元に戻らなくなる!」

 

「それは、ごめんなさい」

 

フレーバーはすぐに両手を広げて解放させる

 

「ラメール!」

 

「オーライ!」

 

 

「マーメイドアクアポット!サーチ!」

 

「やる気パワーカムバック!」

 

 

「最後は六人全員で!!」

 

 

 

「「「スカイハートクルリング!」」」

 

「「「「「おめかしアップ!」」」」」

 

「「マーメイドアクアステッキ!」」

 

「「「「エクセレン・トロピカルスタイル!」」」」

 

「「「「「「6つの力!空に羽ばたけ!」」」」」」

 

「「「「「「プリキュア!スカイビート・ダイナミック!」」」」」」

 

 

「「「「「「ビクトリー!」」」」」」

 

 

 

やる気パワーは全て元に戻り戦いは終わりを告げた

 

「あれ?」

 

やる気パワーは全て戻ったのだが、アクアポットから飴玉くらいの大きさのやる気パワーの塊が出て来て地面に転がる

 

「コレは……あ」

 

サマーが手に取ると弾けて消えてしまった

 

「今のはバトラー様のやる気パワーの様ですね」

 

「へぇ〜……ッ!?」

 

声のする方向へ目を向けるとアリスが居た。あまりにも自然に会話に入って来るものだから気付かなかった

 

「どうやら、バトラー様のやる気パワーまでも吸い取っちゃいましたね」

 

バトラーへ目を向けると、確かにやる気パワーを失って寝転んで居た

 

「まぁ、アレはあれで放置しましょう。面倒ごとの種なので」

 

アリスはバトラーを担いでこう言った

 

「此処での用事は全て済みました。なので一応(・・)お別れです。では……あ、バトラー様はチョンギーレ様達にお渡ししときますね」

 

最後に帝に手を振って、海へと向かって行った

 

バトラーを運ぶ途中で、帝達と共に居たフレーバーの事を考える

 

(次の場所は『おいしーなタウン』。そして『デリシャスパーティ♡プリキュア』。フレーバー様のお相手は少々嫌ですね)

 

 

 

 

 

////////

 

「ありがとうフレーバー!」

 

「フフ、どう致しまして。それに人助けするのは"ハンター"として当たり前」

 

サマーとの会話を済ませると、フレーバーは帝に近付いてハグをした

 

「ミカドもお久し振りです」

 

「え、あ、ちょ!」

 

フレーバーを引き剥がすと、ラメールが顔を近付けて問いただす

 

「帝、誰よその女?」

 

「俺も知らないよ!何処かで会ったか?」

 

「この姿で話すのは初めてでしたね。ほら、古い屋敷の裏庭で会ってるの覚えてますか?」

 

「「……あーーっ!!」」

 

フレーバーの言う古い屋敷というのは、夏に学校新聞キャンペーンで訪れた屋敷の事だ

 

ちょっとだけだったが、帝とサマーはその時お世話になったのを思い出した

 

「改めて自己紹介。ワタシはキュアフレーバー。宜しくね」

 

「先に言われた!わたしは夏海まなつ!」

 

「あ、そっちの名前ね。ワタシは"ジーク"。『ジーク・ウィンチェスター』。本名はジャンヌだけど気にしないで」

 

フレーバーはコーラル達にも握手で丁寧に挨拶してくれた

 

「また会えて嬉しかった。機会があれば次もね」

 

「待て」

 

立ち去ろうとするフレーバーを引き止めた。帝には、まだ聞きたい事が沢山あった

 

「プリキュアというのは分かったが、突然消えては現れたり、触れずに吹き飛ばしたり、ましてや浄化なんて。お前は一体」

 

「う〜ん…ハンターであり、プリキュア?」

 

「そのハンターっていうのも気になるがそれは置いておく。誤魔化さないで言うんだ。お前の正体は何だ?何者なんだ?」

 

「…」

 

「まさかお前も人魚とか言わないよな?」

 

「…まぁいっか」

 

「なら教えろ。お前誰なんだ?」

 

決心がついたのかフレーバーはこう口にした

 

「────I'm God(ワタシは神よ)

 

それだけ言うと、風の音と共に瞬く間に消えた

 

「人魚の次は神かよ!?」

 

「自分の事を始皇帝とか名乗る人も居るけどどうなのよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしていよいよ、この六人での最後の部活動が始まる




そんな訳で次回の新主人公は初心に帰ってプリキュアに変身します!男とは言え、処女作のスタプリ以来の主人公プリキュアです。
更に初の女の子主人公!

ではここまでの拝読ありがとうございました


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第88話 トロピカる部 〜えがおのままで〜

アニメ最終回は泣けた!

ではスタート!


「では!トロピカる部も劇の準備だ!」

 

トロフェスは何事もなく再開し、トロピカる部も劇の準備に入るのだが、その直前でローラからとある提案があった

 

「一つ提案があるの。ラストシーン、プリンセスは皆んなと仲良く暮しましたってじゃなくて、女王になる為に自分の国に帰ったってラストに変更したいの」

 

「それってローラ…」

 

「えぇそうよ帝」

 

ラストシーンの突然の変更は何も問題は無かった。けれどその変更後の内容は、悩んでいたローラの答えそのものにも聞こえた

 

「ローラが決めた事なら!」

 

それを察して尚まなつはその変更を受け入れ、急遽台本を変更するのであった

 

 

 

 

 

////////

 

『間もなくトロピカる部の演劇が始まります!』

 

 

「沢山集まってる」

 

「緊張して来た…」

 

「そんな時は『人』って字を手の平に書いて飲み込むと良いぞ」

 

「良い事聞いたわ。ちょっとやってみようかしら?」

 

舞台裏ではいつでも準備完了の帝達が待機していた。

そしてまなつは、気合を入れる為にリップを唇に塗る

 

「皆んな、六人全員での最後の部活だ。気合い入れて行くぞ!」

 

「トロピカってこ〜!」

 

「「「「「「お〜!」」」」」」

 

 

 

 

 

最初はまなつとローラが初めて出会った時の話を基に作られたやり取り

 

「わたしはナッチー!貴女の名前は?」

 

「わたしはロザリア!遠い異国からやって来たの!ところでお腹空いたわね。貴女何か持ってないかしら?」

 

「お饅頭があるよ!」

 

 

 

次は帝。みのりも帝となると台本を考えるのに苦難していた。

その結果、オブラートに包み込んだものとなった

 

「貴方がこの国の王子かしら?」

 

「ロザリア、貴女に一目惚れした。俺と一緒に城に来てくれ!」

 

「違う!え、今完全に色々飛ばしたわよね?」

 

「一目惚れってそういうもんだろ?」

 

「だからっていきなりアドリブはビックリよ…」

 

 

 

その次はさんご。さんごとの始まりは、自分の好きを真っ直ぐに正直な事を心信じる事をだった

 

「お勧めの色はどれ?」

 

「わたしは紫が好きなんだけど、今町で人気なのは──」

 

「わたしは貴女のお勧めのが欲しいの」

 

「ならやっぱり紫で!」

 

 

 

それからみのり。みのりとも様々な事が起きた。

人魚という存在を現実に感じ、一度は入れ替わった事だってあった

 

「へぇ〜貴女作家なの?」

 

「でも今スランプなの」

 

 

「ムム!ロザリアは何処に居る?」

 

 

「追われてるのね。わたしと服を取り替えて逃げましょう」

 

「え?また貴女の少女なポエムが読めるのね」

 

「黙れ」

 

 

 

最後の出会いはあすか。あすかとは良くも悪くもというコンビだった。少々ローラに強い当たりで話す事も多かったが、今となっては全てが良い思い出

 

「ふぅ〜ん、わたしの用心棒になる気は無いね」

 

「あぁ、わたしは仲間など信じない!」

 

「別に仲間じゃなくても良いのよ。強ければ」

 

「なんじゃそれりゃ!?」

 

 

 

 

 

劇は順調に進み、これまで体験した事をこの劇に全て詰め込んだ。

一つ一つが自分達の思い出の1ページ

 

そしてラストシーン直前となった

 

「いよいよだ」

 

「変更したラストシーン」

 

「一応台詞はバッチリだけど」

 

「忘れても自分の言葉で話せばいい。それがわたし達の物語だから」

 

「行こう」

 

帝達全員で表舞台へ行くと、ローラが真剣な表情で待っていた

 

そしてまなつのローラは、心の準備が出来てお互いに小さく頷いてラストシーンが始まる

 

「本当の事言うわ。実はわたしがこの町に来たのは女王になる為なの!」

 

「「「「「女王?」」」」」

 

「そう、わたしの国では実力で選ばれてるの。だからわたしは手柄を上げなきゃいけなかった。そして遂に伝説の灯台を見つけた。これでわたしは女王になれる!」

 

「それじゃロザリアは、わたし達と一緒に暮らせないんだね…?」

 

「えぇ。女王になる為この町に来て、皆んなと仲良くなって、毎日すっごく楽しくて、ずっと一緒に居たいと思って。だけど…だけどわたしは帰らなきゃ。わたしの夢を叶える為に帰らなきゃ!」

 

その台詞は第三者から聴けば本当に出来たものと思える。

しかしこれはローラとのお別れの言葉なのだ

 

戻るか留まるかの二択を迫られ、悩んだ末がこの答えなのだ。女王になることは最初からいつも言っていた

 

「皆んなとの仲良しの思い出を胸に」

 

「そうか」

 

「残念だけど」

 

「女王様だなんて凄いね」

 

「自分で決めた事なら応援するしかないな」

 

帝達も気持ちを噛み締め、最後はまなつの台詞なのだが

 

「うん、トロピカ……トロピカってる…」

 

いつも自分を背中を押してくれた魔法のリップは、その瞬間だけ唇から剥がれ落ちてしまった

 

「ありがとう。ねぇ、最後に皆んな──」

 

リップが落ちると、蓋をしていた想いが爆発してまなつはローラへと飛び込んだ

 

「行かないで!!」

 

今まで散々我慢していたものが、次々と押し寄せて全て吐き出した

 

「行かないでよローラぁ!帰るなんて言わないでよぉ…また一緒にトロピカろうよ…っ!」

 

涙を流し、鼻水で顔がぐちゃぐちゃになるがそんなのは気にしてはない。

ただ単純に「大切な友達と別れたくない」その一心だけ

 

この広い世界で出会えた奇跡に

 

「一緒に部活して、一緒勉強…しなくていいけど、夜は一緒のベッドで寝て、朝は一緒にご飯を食べて、お昼は皆んなでトロピカルメロンパン食べてぇ…っ!」

 

「ぁ……」

 

「わたし、ローラが一番大事なことして欲しくて応援するって決めたのに……っ!」

 

「…ありがとうまなつ」

 

そして本当の最後。最後は、話し合いで決めたグランオーシャンの歌「なかよしのうた」で締めくくり閉幕

 

「さぁ、最後に皆んなで歌いましょう!」

 

 

『ひとりで うたうより』

 

『ともだちと うたおう』

 

 

まなつも心を落ち着かせて歌おうとしたのだが、その際にハリボテに寄り掛かってしまい倒してしまった

 

「うぎゃっ!?」

 

その倒れた先にはローラが居て下敷きになってしまった

 

「だ、大丈夫!?よっこら…あ」

 

「うがっ!?」

 

まなつは持ち上げとうとしたが、手を滑らせてまたもローラの頭にハリボテが打ち付ける

 

「何すんのよ!わたし女王なのよ!!」

 

「ごめんローラ!」

 

「ロザリアだっつーの!」

 

「ローラが怒った〜!」

 

「プッ…!」

 

みのりが思わず吹き出すと、それに釣られて観客達にも笑いが伝染して巻き起こった

 

「ちょっと冗談じゃないわよ!感動のシーンなのに笑いが巻き起こってしまったじゃない!」

 

「問題ない。これがわたし達の物語だから」

 

「変に悲しむよりこっちの方が良いんじゃないのか?」

 

「はぁ!?」

 

「プッ…フフ、アハハ!」

 

最終的には回りに回ってまなつ自身も笑い出した。

そんなまなつを見て、ローラは仕方ないっていう表情をする

 

「オーライ。ここから立て直しましょう」

 

「うん、六人でな」

 

「さん、はい!」

 

 

『ひとりで うたうより』

 

『ともだちと うたおう』

 

『いっしょに うたうと』

 

『むねが ぽかぽか』

 

『あったかい』

 

 

それからは何とか上手く立て直して、最後まで乗り切り劇は拍手喝采で閉幕となった

 

「わたし達ずっと友達よ!」

 

「うん!」

 

「いつまでも!」

 

「ずっとずっと!」

 

「友達だ!」

 

「何があってもな!」

 

そして最後にローラは観客の皆んなに大事な話をする

 

「聞いて、話があるの!わたしの本当の名前は、ローラ・アポロドーロス・ヒュギーヌス・ラメール!」

 

ローラはそう言って姿を変え始めて、この大勢の前で元の人魚の姿を晒そうとしていた

 

「おい!?」

 

「人魚の国からやって来た人魚よ!」

 

ローラの本当の姿を見ると、全員が固まってしまった

 

「そう、ローラは人魚!大好きな友達!」

 

「わたしも大好きよ。だから最後に貴方達にも大サービス!尾鰭に触っても良いわよ〜?」

 

それに食い付いたのは、人魚騒ぎを起こした事もあった風紀員長の正美がいち早く確認する

 

「やっぱり幻のではなかった…本物の人魚よ〜〜!!」

 

その瞬間会場の熱は一気に跳ね上がり人魚コールが起きる始末

 

ローラも調子に乗ってヘッドスピンをやったりとしていた

 

こうして、六人でのトロピカる部最後の部活動は大成功で幕を閉じるのであった

 

 

 

 

 

////////

 

トロフェスが終わってその夕方。そのままローラとの最後のお別れに直行した

 

「あれで良かったの?」

 

「だってわたし人魚だし。隠したままお別れなんて嫌だもの」

 

「えぇ…俺達の苦労は一体なんだったのだろう」

 

ローラはあすかに歩み寄り握手を交わす

 

「あすか。わたしは明日の卒業式には出られないけど、卒業おめでとう」

 

「ありがとう」

 

「高校に行ったらテニス頑張って」

 

「ローラも女王になっても元気でな」

 

次は帝へと向かい合って、その胸に顔を埋める

 

「貴方と離れたくない。ずっと一緒に居たい。これからも…っ」

 

「もう無理して言わなくてもいい。そうじゃないと、お前に着いて行きそうになる。そうなったら絶対ローラに迷惑を掛ける。それだけは嫌だ…」

 

「帝…あ」

 

顔を上げると、帝は大粒の雫を落として泣いていた。

だけど笑顔で保って言う

 

「大好きだよ」

 

「わたしも大好きよ」

 

もうお別れかと思うと、ローラも我慢していたものが瞳から溢れ出る

 

「ローラ、こういう時こそリップで気合いだよ!」

 

初めて会った時と同じ様にローラにリップを塗ってあげた。

そしてそのリップをまなつはローラに持たせた

 

「コレはローラにあげる。寂しくなったらコレを塗って元気を出して」

 

「皆んなで友達でいた事もわたし忘れちゃうのかな…?」

 

「え?」

 

「人魚の一生は長いんだって。わたしが女王になって長い時間が経って、その頃にはまなつ達はもう居なくなってる。わたしは海の中で独り」

 

例え記憶があっても、長生きする人魚にこの先何百年後は忘れてる可能性もある

 

そしてもう一つの可能性としては

 

「大昔、人間と関わった人魚が寂しさから記憶を消す装置を作ったんだって…」

 

それが例の装置

 

「会えなくなっても、ずっと覚えてるって寂しい事なのかな?」

 

「寂しくない!忘れてしまう方が寂しい!」

 

「忘れてしまったら寂しい事も分からなくなっちゃうよ!」

 

「だからこそ思い出というのは凄く尊いものなんだ。覚えてるからって全部が悪いだけじゃない!」

 

「例え会えなくなってもローラは一番大事な友達だよ!ずっと、ずっと!!」

 

「まなつ、さんご、みのり、あすか、帝。わたしの事忘れない?」

 

思っていても確認したくなる。でも、だからこそ皆んなのその声で聴きたい

 

「ああ!」

 

「絶対に!」

 

「忘れない!」

 

「何があっても!」

 

「一生覚えてる!」

 

その真っ直ぐな瞳を見てローラは安心した

 

「ありがとう────また会いましょう!」

 

人魚の姿へと戻り、涙を流しながら海へと飛び込んで行った

 

「ローラ!!」

 

すると最後にローラは大きく海から飛び跳ねて姿を現した。

これがローラにとってお別れの挨拶

 

もうその瞳には涙なんてない。あるのは胸いっぱいの、皆んなと過ごした楽しい思い出

 

「ローーラーーー!!絶対!また会おうねぇぇぇ!!!」

 

 

 

 

 

その日の夜は全員が、ローラとの思い出に浸りながら眠りについた

 

ローラと共に過ごした楽しい体験、喧嘩したりもあった、驚く事もあった。笑って、泣いて、苦難を乗り越えて

 

そんな大事な記憶は、ローラが残していった思い出の品と共に静かに、ゆっくりと消えていく

 

唯一の繋がりであるハートクルリングとオーシャンステッキも、皆んなの手の中から消えていった

 

そして皆んなの記憶からも、ローラとの思い出の記憶だけ切り取られて夜は続いていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「おやすみ、ローラ」」」」」




次回で最終回です

ここまでの拝読ありがとうございました!


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最終話 これからもみんなで!トロピカってこ〜!!

これで最終話となります。

最後の後書きに今後の事を書いておりますので、最後までどうぞ宜しくお願いします

ではスタート!


待ちに待った三年生の卒業式

 

あすかも無事卒業し、百合子と共にフェニックス学院へ進学へ決まっていた

 

トロピカる部ではあすかの卒業をお祝いしていた

 

「あすか先輩〜!卒業おめでとうございます〜〜!!」

 

あすかと離れ難いまなつは、大泣きして胸に飛び込んでいた

 

「あすか先輩俺も!」

 

「お前は駄目だ。変な事するだろ?」

 

「だってあすか先輩の胸が揉めるのが今日で最後なんですよ!!」

 

「そこは嘘でもいいから否定してくれ…」

 

机ではさんごとみのりが祝いの準備をしてるのだが、用意されてるトロピカルメロンパンの数に違和感を感じた

 

「あれ?六つ(・・)ある」

 

「何で間違えたのかな?帝君」

 

「六つじゃなかったか?おかしいな…」

 

買って来たのは帝なのだが、その本人でさえも何で余分に一個買ってしまったのか考えていた

 

 

 

 

 

////////

 

「まなつ〜!」

 

「待ってて!」

 

卒業式から少し経ったある日。帝はまなつと一緒に、二人がよくお気に入りとしている岩場へと人探しの為約束をしていた

 

「「行ってきま〜す!」」

 

 

 

 

 

「今日は見つかると思うか?」

 

「う〜ん…成せばなる!!」

 

そうこうしてるとお気に入りの岩場に着いた

 

「到着!」

 

「…あれ?」

 

そこには自分達以外にも一人の少女が居た。しかし見た目は人間ではなかった

 

下半身は脚ではなく尾鰭が生えていた

 

当然好奇心旺盛のまなつは飛びつくのであった

 

「凄い!人魚って本当に居たんだ!」

 

「しかもめっちゃ可愛い!!」

 

「わたしの名前は──」

 

「貴方達はわたしを知らないのね。ならわたしが探してる人間ではないわ」

 

思った以上に塩対応をされて興奮が少し冷めてしまう。

しかしながら人探しをしている様だった

 

「誰かを探してるの?」

 

「えぇ、友達を」

 

「へぇ〜わたし達と同じだ!」

 

「何か手掛かりになる物は持っているのか?」

 

「コレ」

 

そう言って人魚が取り出したのは一つのリップだった。

それを見てまなつは反応した

 

「それわたしのリップ!何でローラ(・・・)が持ってるの?」

 

「「「え?」」」

 

「何でまなつ(・・・)がわたしの名前を知ってるのよ?それに後、()はわたしの胸を触ろうとしないで!」

 

「ケチなローラ(・・・)…」

 

「「「……へ???」」」

 

三人共初対面な筈なのに、何故かお互いの名前を知って口にした。

それに対して三人は首を傾げていると、ローラが持っていた物が光り出した

 

「アクアポット?」

 

アクアポットの画面から大きく光が発せられ、中から勢いよく今まで撮って上げたシャボンピクチャーが溢れ出た

 

それを見て全てを思い出した

 

何もかも

 

三人は顔を見合わせて大きく叫んだ

 

「「「トロピカってる〜!!」」」

 

 

 

 

 

帝とまなつはローラを連れて皆んなの所へ向かう。

そこではさんご、みのり、あすかも記憶を取り戻して感動の再会となった

 

たった数日程度の間だったが、それ以上に大喜びをしてまた皆んなで過ごす日々が続くのであった

 

 

 

ローラとの再会から一気に生活が変わり、それぞれの今、一番大事なことをし始める

 

学年も上がり部活もパワーアップした。新入生で後輩達が増えて、トロピカる部を増設するまでに至った。

その際にトロピカる部も「もっとトロピカる部」へと改名された

 

まなつも筆頭に毎日がトロピカっていた

 

 

さんごは家の仕事を手伝いつつ、コスメの勉強に励んでいた。

帝も何故か、さんごと共にコスメの勉強を始めてよくPretty Holicに出入りしていた

 

 

みのりは、トロフェス以来から小説をまた書き始めたららしく、自宅に帰っては頻繁に机に向かう事が多くなっていた

 

 

あすかは、高校で思いっきりテニスをやっている。多少の衝突はありつつも、百合子がストッパーとなり良い環境で打ち込んでいる

 

 

ローラは、次期女王としての勉強の日々だった。作法など学び、そして帝にまなつ達と出会った経験を他の妖精達にも教えて、人間界の架け橋となっていた。

偶に人間界にやって来ては、変わらず皆んなと楽しく過ごす事が多い

 

 

そしてローラから聞いた話では、魔女の召し使いのチョンギーレ達も、屋敷の跡地で色々とやっているらしい

 

 

中でも特に進展があった出来事があるとすれば。それは──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある公園で、男女二人がベンチに座ってスプーンでアイスを食べていた

 

「…最近ポカポカして来たから大丈夫かなと思ったけど、冷たい物食べたら寒いね。ローラは大丈夫?」

 

「だから言ったのに…わたしは平気よ。だってわたし人魚だし」

 

ブルブルと震えて食べるのは帝と、平気で口の中に放り込むのはローラ

 

ローラはひと口を堪能して味を噛み締めた後、少し険しい表情を浮かべる

 

「ムム、わたしが居ない間に随分と美味しいものが増えたじゃない…」

 

「まぁ、その為のお出掛けだし?それと」

 

帝はひと口サイズのアイスをローラに差し出した

 

「ほら、あ〜ん」

 

「…自分で食べるから」

 

「あ〜ん」

 

「……」

 

こうなってしまった帝は、例えるならブレーキという機能を取り外した自動車

 

とはいえ、帝という人間は出会った時からこういう性格の人。

それに、帝だから自分は惹かれたのだ。今更文句を言ったところでどうにかなる訳でもない

 

「一回だけよ?」

 

「じゃあ、はいあ〜ん!」

 

「あ〜ん…」

 

パクリとローラが帝のアイスを食べた時だった。

すぐ隣でシャッター音が聴こえたのだ

 

振り返ると、まなつ達がアクアポットを持って帝とローラの様子をシャボンピクチャーに撮り納めていた

 

「……一体いつから居たのよ?」

 

「え?ローラが家を出た辺りから」

 

「そこから!?思ってた以上に最初ね!?」

 

「ローラの乙女の場面をいっぱい撮ってある」

 

「やめて!!」

 

ローラ達が騒いでる隣では、帝はさんごとあすかから今日撮ったシャボンピクチャーを見返していた

 

「今思えばよく撮れてるな」

 

「あ、見て帝君。このローラすっごく可愛いと思わない?」

 

「デジタル化出来ない?」

 

「ちょっと!そっちはそっちで何やってるのよ!!」

 

ローラはアクアポットを引ったくりあげた

 

「あ〜もう!何でよりにもよってこんな恥ずかしい写真ばかり撮るのよ〜!!」

 

「良いじゃん。どれも可愛いし」

 

「恥ずかしい写真を可愛いと言うつもりなら、帝の恥ずかしい写真を撮っても平気よね?」

 

ローラはアクアポットをまなつに渡して、アイスを帝の目の前まで差し出す

 

「ほら、帝もあ〜んよ。そしてその瞬間をまなつが撮る!」

 

「あ、でも帝君の性格なら…」

 

「え、ローラがしてくれるの?やった〜!!」

 

「ほらね」

 

幼馴染のさんごはその返答は予想通り。ローラはまだまだ帝の事を甘く見ていた様だ

 

「う、うるさい!ほら帝!」

 

「それじゃあ遠慮なく!!」

 

帝はスプーンのアイスへと口を開けると思われたが、それをスルーしてローラの顔へと近付き

 

そして────

 

「ひゃっ!?///」

 

ローラに軽くキスをした

 

「ごちそうさま」

 

「何がごちそうさまよ!全然違うじゃない!!」

 

「ちゃんと食べたさ。唇についてるアイスをね。美味しかったよ」

 

「〜〜ッッ////」

 

またも隣でシャッター音が聴こえた

 

「衝撃的な瞬間が撮れたよ〜!」

 

アクアポットから出て来た写真は二枚。キスした瞬間と頬を染めるローラ

 

「ま〜な〜つ〜!!」

 

「わたし関係ないよ〜!!」

 

「おい、アイス持って走り回るな」

 

「いつも通り」

 

「確かにそうですね」

 

「仕方ないし、全員揃ったついでだから皆んなでどっか行くか?」

 

「賛成〜!」

 

「あ、まなつ!」

 

まなつが騒いで何処へ行くか考えてる中で、ローラは頬を膨らませていた

 

「折角の帝とのお出掛けが…」

 

「まぁまた今度な?」

 

「そうね。そうと決まればとことん振り回してやる!行くわよ皆んな!」

 

皆んなは手を繋いで大きな横一列で歩き始めた

 

大切な友達がその隣にいる事を大事に思い、今日もまたトロピカった日常が始まるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつまででも、どこまででも

 

「今日も皆んなで!」

 

「「「「「「トロピカろう!」」」」」」




という訳で無事完走致しました〜!

と、言うのは間違い。毎作品読んで下さるお方には分かりますが、まだ続きます!
後日談とヒロイン達のifルートを書きます。

先ず後日談なのですが、どれくらい書くかは不確定状態です。作者がトロプリにハマり過ぎているので、満足するまで書き続けるという事となっております。一応四話分が確定で書く予定を立てております

ifルートに関しては、昔ボソッと呟いていたので「まぁ書こうかな」くらいのノリです。書きやすや的にみのり、あすか、まなつ、さんごの順番の予定です。

合計で八話分は確実に書きます。暫く作者の自己満にお付き合い下さい。投稿頻度に関しては、一応本編が終わってますので一気にスピードが下がります。
今までの様に周一ではなく、最低月一も考慮の方をご理解ください

他にも言いたい事は山程ありますが長くなってしまいますので、ここら辺で失礼します

では、これまでの拝読ありがとうございました!



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後日談
わたしの今、一番大事なことは


後日談始めました〜
ちょくちょくやって行きますので宜しくお願いします

ではスタート!


「「さんご!お願いがあるの!!」」

 

「ど、どうしたの二人揃って?」

 

朝のHRが終わると同時に帝とまなつはさんごの机に集まった

 

「「進学校って何処に決めればいいの?」」

 

「えぇ!?二人共まだ決めてないの!?」

 

帝達三人は今、中学三年生であって高校へ進学するのに進路希望を書かないといけないのだ。

なのだが、帝とまなつの進路希望には真っ白な芸術と化していた

 

「いや〜、したい事が沢山あって決められないよ〜!!」

 

「帝君は?」

 

「将来的にさんごの家の方で働こうかと考えてるんだけど、そういう専門校って何処選べば良いのか…?」

 

「それならわたしと同じ高校に進学する?」

 

「よし決まりだな」

 

「あ〜!帝の裏切り者〜!!」

 

鶴の一声ならぬさんごの一声で、帝の進路が早々に決まった。

さんごの進路希望書をそのまま書き写して、帝は綺麗に書き切った

 

「まなつって最初のオリエンテーションの時もそうだったけど」

 

「やりたい事沢山だな!」

 

「そうなんだよ〜……やはりここはあの先輩達に聞くしかないね」

 

 

 

 

 

////////

 

「て、訳でみのりん先輩!一緒に考えて下さい!!」

 

「無理」

 

「そんなぁ〜…」

 

みのりを頼って彼女が通う高校まで足を運んだのだが、一瞬で一刀両断された

 

「そもそも、まなつの高校を決めるのに何でわたしを頼るの?」

 

「う゛ッ!!」

 

みのりからかなり厳しめの言葉を貰って、心にグサッと突き刺さる

 

「まなつならやりたい事沢山ある分、それなりに選択肢はあると思うんだけど?」

 

「それで迷うのがまなつなんだよ」

 

「長所と短所が一緒なのがね…」

 

「ならもっと理解のある人に頼んでみたら良い」

 

 

 

 

 

フェニックス学院のテニスコートに帝達はやって来た。

そこまで来て相談する相手となるの一人しかいない

 

「それでわたしか…」

 

あすかは頭を抱えて溜め息を吐いていた

 

「みのり、全部わたしに丸投げしたな」

 

「それは…そうかも知れない」

 

「はぁ…流石のわたしもこれは何も言えないぞ」

 

「まさかあすか先輩!みのりん先輩と同じ…!」

 

あすかが無言で首を縦に振ると、まなつは肩を落としてしまった

 

「例え言ったとして、まなつの将来をわたしの勝手な相談で決める訳にもいかない。それは自分でも分かってるだろ?」

 

「はい…」

 

「あと帝はさんごにくっ付きすぎだ。少しは自分でも考えろ」

 

「結構考えた結果、二年前の出来事になったのですが…」

 

「ま、まぁわたしは気にしてないので大丈夫ですよ!まなつ、提出は一応来週までらしいから今日は一旦帰ってお母さんとも相談してみたら?」

 

「うん…」

 

 

 

 

 

////////

 

帰ってみて一度一人で考えてみるも、やりたい事が沢山あり過ぎて手に付かなかった

 

あれから一時間以上は机と向かっている

 

「どうしよう…」

 

机に突っ伏して気持ちをリセットする為に、一度仮眠を取る事にしたのだった

 

 

 

 

 

「あれ?」

 

目を開けるとそこは海の中であった

 

息は出来るし、冷たさも感じない。恐らくはこれは夢

 

折角夢の中なら少し泳いでみようと移動していると、とある人物を発見した

 

その人物は、今あおぞら市には不在で人魚の国で必死に頑張っている大切な友達

 

「ローラ?」

 

「まなつ?」

 

人魚姿のローラは振り返り、まなつの側まで泳いで近付いた

 

「夢の中でもローラと会えるなんて嬉しいよ!」

 

「あぁ、やっぱりこれ夢なのね」

 

「もう寂しかったよ〜!」

 

「寂しいも何も、つい数ヶ月前に会ったばかりじゃない?」

 

「あははそうだった〜!」

 

ローラも偶になら人間界に遊びにやって来ているのだ。

主にお互いに状況報告などをして、お出掛けする事が多い

 

「まなつ、何か悩みでもあるの?」

 

「え、あ…うんまぁ…わたし、大人になったら何をしたいのかなぁ〜って」

 

「意外ね。まなつなら何でもやりたがるのに」

 

「大人になったらそういうのは出来ないからね。一つを選ばなきゃいけないんだ」

 

「人間も大変なのね」

 

ローラは言葉に相槌を打ったのだが、その声のトーンに違和感を感じてまなつは疑問を持つ

 

「ローラも元気が無いの?」

 

「え、どうしてよ?」

 

「そう思ったから?」

 

「……わたしの方も色々あってね」

 

グランオーシャンで上手く行ってない事が目に見えて分かる。

自信満々のローラも、まなつと同じ様に壁にぶつかっている最中

 

「それでも、ローラの今、一番大事だと思うことをやれば良いと思う」

 

「まなつ…」

 

「ローラが何に悩んでるのかまでは聞かないよ。分からないけど、目の前の一つ一つを頑張ってみたらいつかきっと上手く行くよ。だってローラだもん!」

 

そんなまなつの言葉にローラは笑みを浮かべた

 

「どうしたの?」

 

「まなつの相談を聞いていた筈が、わたしの相談の話になっているからよ」

 

「あ、そうだった!」

 

「…それで良いのよ」

 

「え?」

 

「まなつはまなつらしくいれば良いのよ。まなつの言った通り今、一番大事だと思う事をすれば良い。悩みなんてまなつらしくないわ」

 

「うん、そうだよね。ありがとうローラ!」

 

まなつはローラに抱きついた。そしてお互いに満足して別れの時間となる

 

「それじゃあまた今度ね」

 

「待ってるよローラ!」

 

 

 

 

 

////////

 

「…はぐっ!?」

 

突然の目覚め。口の端から垂れていた涎を拭い、窓の外を見ると日は落ちて夜となっていた

 

時計の針は8時20分。仮眠のつもりが三時間以上も夢の中に居たのだ

 

「……だよね!ローラが此処に居る訳ないし!」

 

それでも夢の中での会話を思い出す

 

「まだ提出まで時間はある。先ずは一つずつ……今、一番大事なことは────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海の細波を聴きながら、まなつは今、一番大事なことを見つけてそれに向かって挑戦し始めるのであった




最後ちょっと微妙な終わり方にしてしまいました…

後日談は基本、全員を偏りなく出して行きたい

ここまでの拝読ありがとうございました!


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次期女王・ローラの一日

前回の話がまなつsideとすれば、今回の話はローラsideです

ではスタート!


「…しまったわ。行き詰まった」

 

自室に篭って自習勉強をするローラがそう口を開いた

 

「この問題を解決するにはどのようにして、グランオーシャン皆んなの力を合わせてするか…」

 

ローラが勉強しているのは、次期女王としてのこと。

あとまわしの魔女の時と同じような事が、もしかしたらこの先あるかも知れない。

その時に備えて、被害を最小限に留めてどう皆んなを誘導させるか

 

そういった勉強をしているのだが、ローラはそれに頭を悩ませていた

 

「くるるん貴方なら──」

 

横目でくるるんに案を求めようと呼び掛けたが、くるるんはスヤスヤと眠っていた

 

「いつも通りね……外に出ようかしら?」

 

ローラの一日は殆ど次期女王としての勉強で手一杯だった

 

気晴らしに、グランオーシャンを散歩する時もあるが大抵の場合

 

 

「ローラ様!」

 

「こんにちは」

 

 

「今日も良い天気ですね」

 

「えぇそうね」

 

 

「あら、貴女迷子?わたしが送ってあげるわ!」

 

 

外に出れば声を掛けられて休まる時間が余計にない

 

「なんか……休んだ気にならないわ」

 

結局自室に戻る羽目となってしまった

 

「……」

 

ローラはアクアポットを取り出して、シャボンピクチャーでトロピカる部の写真を眺めている

 

丁度その時だった。ドアをノックして入室して来る者が

 

「失礼します」

 

「貴方は」

 

入って来たのは年老いた魚の妖精

 

「少しばかりお話を宜しいでしょうか?」

 

「あ、待って。今何か出すから」

 

「時間は掛けません。一つだけ」

 

準備する手を止めて素直に話を聞く事にした

 

「伝説のプリキュアになり、我が国であるグランオーシャンをも救った。けれど、この平穏な日々が続くと限りますか?」

 

「それはどういう意味?」

 

「地上の生き物によって海は汚れて、生き物も減り続ける一方。貴女が皆に言う様に、人間はそれ程良いものとは思えません」

 

「まなつ達はそんな人間じゃない!」

 

「他はどうですか?」

 

「ッ!」

 

「この先女王として率いるのではあれば、未来の事にも目を配る事を忠告して置きます」

 

言いたい事はそれだけだったらしく、すぐさま部屋から退出して行った

 

ローラはベッドに身を倒して天井を見上げながら考える

 

(確かに人間は魚だって食べることだってある。でもだからって蔑ろには出来ない。これから皆んなと付き合っていきたい。わたしどうすれば…)

 

目を瞑れば少しは楽になると思い閉じて、そのまま深い眠りにつくのだった

 

 

 

 

 

////////

 

「あれ?」

 

ふと目を開けるとそこは海中だった

 

グランオーシャンではなく、ただ青が広がる海の中

 

「これって…」

 

 

「ローラ?」

 

 

聴き覚えのある声がした。そんな馬鹿なと思いつつも期待して振り返ると、今一番会いたい人物がそこには居た

 

「まなつ?」

 

「夢の中でもローラと会えるなんて嬉しいよ!」

 

「あぁ、やっぱりこれ夢なのね」

 

場所が何処だろうと海の中にまなつが居る筈がない。

あおぞら市とグランオーシャンの距離を考えれば夢と思うのが妥当

 

「もう寂しかったよ〜!」

 

「寂しいも何も、つい数ヶ月前に会ったばかりじゃない?」

 

「あははそうだった〜!」

 

距離は遠いが、近くを通り掛かったりした時などは顔を見せてはいる。

実際ローラの言うように、数ヶ月前に顔を合わせては遊んだばかり

 

変わりなく元気そうなまなつだが、濃い時間を過ごしたローラならまなつの表情が少しでも様子がおかしいと感じるのは容易に察せる

 

「まなつ、何か悩みでもあるの?」

 

「え、あ…うんまぁ…わたし、大人になったら何をしたいのかなぁ〜って」

 

「意外ね。まなつなら何でもやりたがるのに」

 

「大人になったらそういうのは出来ないからね。一つを選ばなきゃいけないんだ」

 

「人間も大変なのね」

 

何か悩んでいるのは自分だけではなかった。お気楽なまなつだっていつかは大人になる。今はその成長途中。悩みの一つや二つはあるのは当然

 

そんな事を考えてると、まなつはローラの顔をジッと見ていた。

隠してる事を見透かすように

 

「ローラも元気が無いの?」

 

「え、どうしてよ?」

 

「そう思ったから?」

 

「……わたしの方も色々あってね」

 

こういう時に限ってまなつは鋭い。トロフェスの時でもそうだった。グランオーシャンへ帰るか、それとも人間界に残るか悩んでいる時も既に知っていた

 

本当ならこの悩みをまなつに打ち明けたい。でもそれでどうする。言ったところで慰めの言葉は貰えるだろうが、それでは何の解決策にもなっていない

 

例え言って策があったとしても、それを聞いたまなつはどう思う。どう捉える

 

一番の友達を傷付けたくない。それがとても怖かった

 

「それでも、ローラの今、一番大事だと思うことをやれば良いと思う」

 

「まなつ…」

 

「ローラが何に悩んでるのかまでは聞かないよ。分からないけど、目の前の一つ一つを頑張ってみたらいつかきっと上手く行くよ。だってローラだもん!」

 

そんなまなつの言葉に思わず笑みを浮かべてしまう

 

「どうしたの?」

 

「まなつの相談を聞いていた筈が、わたしの相談の話になっているからよ」

 

「あ、そうだった!」

 

まなつに背中を押してくれた。それはいつだってそうだ。どんなピンチの時でも、その明るい笑顔で皆んなを率いて導いてくれている

 

それは今だってそうだ

 

だから、そんなまなつにお礼ばかりの言葉を返す

 

「…それで良いのよ」

 

「え?」

 

「まなつはまなつらしくいれば良いのよ。まなつの言った通り今、一番大事だと思う事をすれば良い。悩みなんてまなつらしくないわ」

 

「うん、そうだよね。ありがとうローラ!」

 

「わっ!?」

 

まなつはローラに抱きついた。心なしかローラの気持ちは落ち着き、心地良い思いでいっぱいとなる

 

「それじゃあまた今度ね」

 

「待ってるよローラ!」

 

夢の中とはいえ、お互いに充分に満足した時間を過ごせれて立ち直った

 

それからローラは、ようやく目を覚ますのであった

 

 

 

 

 

////////

 

「あれ……まなつ?」

 

ベッドから身を起こして、夢と現実の区別を頭で整理する。

外を見れば朝になっていた

 

仮眠のつもりだったが、いつの間にか日を跨いでいたらしい

 

「まなつ、今も貴女は頑張っているのよね。そして今もトロピカってるのよね……っ!」

 

ローラは勢いよく立ち上がり、机の上に置いてあるリップを手にする

 

そのリップは、グランオーシャンに帰る時にまなつから貰った大切な物。

キャップを取り、気合いのリップを唇に塗る

 

「やってやるわ。誰が何て言おうとわたしは、わたしが思う幸せを女王になって描いてみせるわ!」

 

その志はかつての友人である女王と、愛しき始皇帝と同じものだった

 

「だってわたしは次期女王だもの!」

 

その瞳はどこまでも透き通り、最高の未来を映し出していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日もトロピカっていくわよ!!」




今の状態ですと、一ヶ月に一投稿ですね。せめて二話分くらいは出したい

ここまでの拝読ありがとうございました!


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トロピカる部のみんなと一緒に

かなり久し振りの投稿です。結構他の小説で忙しいかったので、中々手が出せない状態でした

ではスタートです!


「トロピカる部復活!!」

 

「一人は除いてな」

 

まなつの家に集まって久々にトロピカる部の面々が揃ったのだが、帝の言う様に一人だけ居ない

 

「あすかね」

 

あすかだけいないのは訳あってなのだ。

あすかはもうすぐ高校を卒業し、その後はテニスでプロの世界に飛び立つ

 

そこで元トロピカる部達は、応援も兼ねての企画案を出す為集合しているのだ

 

「それにしても時間取れて良かったねローラ」

 

「あおぞら市に来るのにまた二、三年離れるから。やるとしたら今しかないからね。帝を介してみのりと相談したから」

 

「さて諸君、あすか先輩の為に何か案は考えて来たかね?」

 

みのりの眼鏡がキラリと光る。事前に、先ずは一つでも各自で考える様にしていた。

企画としては一つだけ決めるが、良い案があればそれを取り入れて複数やる事も考えている

 

最初に挙手をしたのはさんごだった

 

「スポーツの世界ってよく分からないけど、メイクする時間が無さそうにも思えるから、この機に沢山するのはどうかな?」

 

そういうプロの世界に入れば、確かに練習に時間を費やす事は大いにあり得る。一つの羽を伸ばすみたいな感じなのだ

 

次に手を挙げたのは帝

 

「これはローラと考えた案なのだが、羽休みとしてグランオーシャンに遊びに行くのは?」

 

「皆んななら、いつでも歓迎するわよ」

 

「そうなの!行ってみた〜い…けど」

 

珍しく押し止まったまなつ。それと同時に手を挙げて、自分が考えて来た事を話した

 

「最後はやっぱり、皆んなと部活がやりたいなぁ」

 

「それならわたしも。実は初めての部活動はお弁当作りだったから、それに称してまた皆んなで出来ればと」

 

まなつの意見に賛同しつつ、みのりはお弁当作りの提案をした。それがトロピカる部初めての活動内容もあり、思い出深いのもをチョイスしたのだ

 

「確かに良いかも!」

 

「ま、まぁグランオーシャンはいつでも歓迎よ」

 

「二人の案をまとめたそれで、決まりと言う事で良いか?」

 

まなつ達はそれに賛同し、それに向けての準備を始めるのであった。

あすかにもその事を伝え、了承も得ることが出来、都合の良い日にまたあおぞら中学に集まる事となるのであった

 

 

 

 

 

////////

 

「ではこれより、トロピカる部によるお弁当作りを始めて行きたいと思いま〜す!」

 

「この感じ久し振りだな」

 

「なら抱き着きましょうか?」

 

「それは遠慮しておく」

 

今日作ろうしてるお弁当は、当時と同じくるるん弁当。何もかも初めての部活動と同じ。

しかも今回は、ローラも最初から参加しているので流れもスムーズに出来る筈だ

 

「帝、お料理の腕は上がった?」

 

「愚問ですよみのりん先輩。勿論上がっているに決まって──」

 

「上がってませんよ」

 

帝の言葉を遮ってさんごが言い切った。少し静寂な空間となるも、すぐに帝は口を開けてる

 

「上がっているに──」

 

「上がってないよ」

 

悲しい事に、一番近くで見ているさんごからそう言われてはこれ以上何も言い出せず、みのりは静かに帝の肩に手を置いて悟った様な目で同情してくれた

 

「じゃあさんご、わたしとくるるん作ろっか!」

 

「うん!」

 

まなつとさんごはお米を持ってすすぎ洗いの準備に取り掛かり、みのりとローラは別の準備をする。前と同じく、二人は卵を幾つか手に取る

 

「みのり割れるの?」

 

「今回は大丈夫。練習して来たから」

 

しかし、言葉とは裏腹に卵を持つ手は震えており、「割る」というより握り潰してボールの中へと投下された

 

進歩が無く、見てられなくなったローラは思わず両手で顔を覆う

 

「一緒に作りましょう」

 

結局みのりは、ローラと一緒に作業を始めた。

まなつとさんご、みのりとローラと来たら自然に帝とあすかがペアとなる

 

このあまりにも対極的なペアに、まなつ達は息を呑む。あすかにかなり負担が掛かる事は目に見えて分かるが、それをどの様にして中和するか誰にも分からない

 

「うっわあそこ凄いわね」

 

「あすか先輩なら何とかなる!」

 

「なんか、一番あすか先輩が負担掛かりそうな…」

 

「言ってしまえばわたし達はその分楽になる」

 

「こっちにも爆弾抱えてるのよ。全然楽じゃないわ」

 

まなつ達が雑談混じりで作業を進めてく中で、帝とあすかペアも作業に取り掛かる

 

「おかず作っていくぞ。準備はいいな?」

 

「任せて下さい」

 

この二人がまず調理するのはウインナー。しかもそれもタコさんの形にする。とりわけ簡単なものだ。

といはいえ帝だ。ただ調理するというだけで、今まで幾つも問題を起こして来たモンスターだ。細心の注意を払って取り組まなければならない

 

「いいか帝、タコさんを作るにはこうやってすれば…ほらな?」

 

見本として一つだけあすかが目の前で披露してくれた。綺麗に切れ目を入れており、火を通せば仕上がれば良いもので出来る

 

次は帝の番だ。ウキウキで包丁を手に持ってウインナーに切れ目を入れていく。そこで少しあすかは驚く

 

意外にもちゃんと調理をしており、特にこれといった問題は見受けられなかった。さんごが言うほどまでに、そこまで酷くはない。今のところは

 

包丁を手に持って切るだけが調理とは言わない。その他にも過程はあるのだ

 

そこんところにも注意しなければならない。聞いた話では帝は一度、家庭科の授業で火事の騒動を起こしている。恐らくだが、さんごがそこに危惧している

 

なので、帝が火を扱う際は監視をしないといけない

 

「よし、火を通しますよ!」

 

フライパンを取り出して、ガスコンロの火を点火する。ある程度熱が行き届き、少し早い気もするが油を敷く

 

これで下準備は完了。後は見計らってウインナーを投げ入れるだけ

 

「帝、もう入れていいぞ」

 

「は〜い」

 

フライパンに入れて、コロコロと中で転がして充分に中まで火を通していく。菜箸で偶に突きながら様子を見ていく

 

「…」

 

かなり身構えて警戒はしてたが、そこそこにちゃんと出来ている。いや、ウインナーくらき出来て欲しいのだが、思わず歓喜するくらい帝の成長ぶりは凄い

 

(まさか最後に、帝のこんな姿を見られるなんて…)

 

あすがウルっと来てしまう直前で、帝から声が掛かる

 

「あすか先輩出来ましたよ。少し失敗しましたが…」

 

「気にするな。わたしから見ても充分だと思……は?」

 

帝の完成品を見て、そんな声が出てしまった

 

「待て待て待て!何で…何でちょっと目を離した隙に全部焦がしてんだ!!」

 

一体何がどうなっているのだろうか。目を離していた時間はそこまで長くない。寧ろ短いのだ

 

だというのに、振り返れば「あらま不思議!一瞬でウインナーが黒くなりました〜!マジック成功〜!」並のものだ

 

何故こんなすぐに焦がしてしまったのか原因を探る。案外簡単に見つかった

 

コンロのダイヤルを見れば、強火MAXまで回されていた

 

気持ちは分かる。火を強くすればその分時間が短縮されて、次の工程に移れる。他の人の手伝いだって出来る。

だがもう少し考えて欲しい。料理というものは、時間を掛けてじっくり作った方が美味し物もあるという事を

 

帝は今、「え?俺何かやらかしましたか?」の表情でこちらを見ている。悪意は無い筈なんだ。無自覚というものは本当に恐ろしいものだ

 

「分かった。帝、わたしと一緒に手取り足取りやろう。上手く調理が出来る道がそれしかない」

 

「大丈夫ですよ。俺の事は気にせず、あすか先輩は他の事をしていて大丈夫──」

 

「お願いします!一緒に調理させて下さい!!」

 

 

 

 

 

////////

 

「これで、完成!」

 

まなつが最後にくるるんのお目めである、グリーンピースを乗せてようやくくるるん弁当が完成した。

初めてした時と比べて時間はあまり掛からなかった。

皆んなちゃんと成長しているのが目に見えて分かる

 

「あすか先輩、久し振りの部活どうしでしたか?楽しめました?」

 

「充分過ぎるくらい楽しめた。まぁ、それと同じくらいハラハラもしたが…」

 

「それは良かったです!じゃあこのお弁当は部室で!」

 

「そうだな!」

 

それぞれお弁当を手に持って、あすかを先頭に部室へと向かうのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家庭科室を出る直前で、あすかは振り返って皆んなの顔を見る。そして、その姿を見て笑みが自然と溢れるのであった




次回は成長した帝とローラとの絡み話です。また次回まで時間は掛かると思われますが、その時まで待って頂けると嬉しいです!

ここまでの拝読ありがとうございました!


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