Enger Freund (hirag)
しおりを挟む

1話

どうも皆さん!hiragです。諦めた夢やこえ無きの投稿者です。

今回は今までの作品と変わり、女性主人公で書かせてもらいます。
誤字脱字があると思いますがそこは、指摘していただけるとありがたいです。


「ねぇ、紗夜。今度一緒にキャンプに行こうよ」

 

「私にはそんな時間はないわ。行くならあなた一人で行けばいいでしょ」

 

「やっぱり、日菜と何かあったのね…」

 

「――!? 貴女には関係ないでしょ!もうほっといて…私にはギターしかないんだから!! これ以上貴方に構っていられないわ!」

 

_________________

Pipi…pipi…

 

「うぅ~ん…夢?それに…もう朝~?」

 

でも…まだ眠たいし、もうひとねむ―zzz

 

「白夜!起きなさい!」

 

「あ~おはよう…紗夜…」

 

「もう朝ご飯出来ていますよ!!」

 

紗夜に布団をはがれて冷気が体全体を覆ってきた

 

「うぅ…寒い…ひどいよ!紗夜」

 

「これくらいしないと貴方は起きないでしょう」

 

幼馴染の紗夜。風紀委員の生真面目な子、最近よく私を起こしに来てくれる

 

「そんなことないよ~キャンプの時はしっかり早起きするよ」

 

「それなら普段から早起きできるでしょ?早く着替えてください。私は下で待ってますから」

 

「は~い」

 

それにしても、今日も紗夜は機嫌悪そう。また日菜とケンカしたのかな?

 

 

~食卓~

 

「おはよう…お母さん」

 

「おはよう。ようやく起きてきたわね、ごめんね紗夜ちゃんいつも起こしに来てくれて」

 

「いえ、私こそいつも朝食頂いているので…」

 

「いいのよ!ほら、白夜も早く食べなさい」

「は~い」

 

さっきお母さんが言った通り、最近紗夜ちゃんが家で朝食を食べに来ることが多い

 

「紗夜、今日はライブあるの?」

 

「あるけど…なに?」

 

「ただ聞いただけだよ」

 

目が怖い…

 

_________________

 

~花咲川女子学園~

 

「紗夜」

「なに?」

「に、睨まないでよ~」

 

紗夜は普段から機嫌悪そうなのに今日は一段と機嫌よくないな

 

「別に睨んでないわ」

「ホント~まぁいっか!今日、紗夜にいいことが起こると思うよ」

 

「また勘ですか…」

 

私の勘は当たることが多い、テストとかは全然使えないけど…

 

「まぁまぁ、もし外れたら○ックのポテト奢るよ」

 

「ポ、ポテ…そこまで言うのなら期待しておきます」

 

ポテトに弱いな紗夜は…

 

 

~放課後~

 

「じゃあ、紗夜また後でね」

「後でって、本当に来るの?」

 

「バイトのシフトも入ってないし、いいでしょ?」

「好きにすれば…」

 

素っ気ないな~まぁいっか。さて紗夜のライブまで時間あるし、近くのカフェで時間をつぶそ~っと

 

_________________

 

~CiRCLE~

 

♪♪♪♪~

 

う~ん…何だろう。紗夜以外、全然音があっていないような…

それになんだか解散しそうな雰囲気だ。これは紗夜にポテトを奢らないとな~

 

「ありがとうございました」

 

あれ?気が付いたら終わちゃってた。取り敢えず、ロビーで待っておこうかな

 

 

~ロビー~

 

「貴女とやっていけない!!」

 

あちゃ~予想的中だ…これは謝っておかないと…

 

「基礎レベルを上げなければ後から出てきたバンドに追い抜かれるわ」

 

「あなたの理想は分かるでも、貴女にはバンド意外に大切な物はないの?」

 

「ないわ。わざわざ時間と労力をかけて、バンドなんてやらない」

 

そう…だよね。紗夜は私達より自分の理想が大切だよね…

 

「この中で考えが違うのは一人だけ」

 

「そうね。私が抜ければいい話、その方がお互いのためになる。今までありがとう」

 

「ホント最悪!」

 

あ~行っちゃった。取り敢えず、紗夜を慰めないと――

 

「白夜!…聞いていたの?」

「う、うん。全部聞いちゃった…ごめん」

 

「別に…気にしてないわ」

 

「ねぇ、あなた」

 

振り向くと透き通った銀色の髪の人が立っていた

 

「私ですか?」

「貴女の演奏を見たわ」

 

「そうですか。ラストの曲、油断してコードチェンジが遅れました。拙いものを聞かせて申し訳ありません」

 

「貴女に提案があるの。私とバンドを組んでほしい」

「え⁉」

 

「良かったね!紗夜!」

 

「まだ組むって決まったわけじゃないわよ」

 

「でも、この人…えっと…すみません。お名前は…」

 

「湊 友希那よ」

 

湊さんか…うん!この人なら紗夜の理想が叶うかも

 

「湊さんと組んだ方がいいよ」

 

「実力も分からない相手とは組まないわ。すみません、そういうわけですので…」

 

「私の出番は次の次。聞いてもらえばわかるわ」

 

「じゃあ、紗夜。私は邪魔みたいだから、先に帰るね」

 

「えぇ、気をつけて帰りなさい」

 

「うん!あ、そうだ。これ上げるよ!」

 

「○ックのクーポン…どうして?」

 

「お祝い!詳しいことはまた今度聞かせてね?」

 

「え、えぇ…」

 

うん!良かった良かった

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2話

~本屋~

 

今日はバイトも休みだから気分転換に本屋でアウトドアの本を読みに来ていた

 

「ふ~ん、今年の流行はハンモックか。買いたいけど~お金が…」

 

「あれ?はくちゃん?」

「あ⁉日菜!久しぶり~」

 

日菜、紗夜と同じく私の幼馴染。

 

学校が違うから中々会う機会がないけど、偶に一緒にショッピングに行ったりしている

 

「久しぶり、なに読んでいるの?」

「キャンプの特集…最近だといろんなテントがあるけど…」

「あるけど?どうかしたの」

 

日菜ちゃんにテント一覧表を見せてみた

 

「わぁ~すごい値段!ホント、ハクちゃんはキャンプ好きだね」

「うん。キャンプの時に食べるご飯美味しいからね」

 

「へぇー 今度、あたしもやってみようかな?」

「じゃあ!今週あたり行かない?」

 

「う~ん…今週はダメかな」

 

「どうして?」

 

「それはね…これだよ!」

 

日菜ちゃんのカバンから一枚の紙が出てきた

 

「えっと…アイドル募集…もしかして日菜、これに応募するの?」

 

「うん!」

 

うんって、大丈夫かな~日菜は何でもできるけど…すぐ辞めちゃうし···

 

「あれ?これアイドルバンドって書いてるよ。日菜楽器何かできるの?」

 

 

「ううん、触ったことないよ!でも、るんっ♪てきたから応募してみた」

「そ、そうなんだ…怖いもの知らずだね」

 

日菜ちゃんとは長い付き合いだけど、るんっ♪どういう意味か分からない

 

「まぁ、確かに怖いもの知らずかもね。でもそれも面白くない?」

 

「ヒヤヒヤするよ!私も紗夜も…あ!」

 

「あはは…おねえちゃん、心配してくれるかな」

 

「家ではどうなの?」

 

「家に帰ってきて、すぐ部屋に籠ってるよ」

 

そっか…紗夜、日菜といい関係じゃないのね

 

buu…buu…

 

「あ!ごめん 電話だ」

 

「うん!」

 

店長?今日休むこと伝えたのに何かあったのかな?

 

「もしもし店長。何かありました?」

 

『あ~白夜ちゃん?悪いけど…お店。閉店することにしちゃって』

 

「はい?」

 

『近くにショッピングモールあるでしょ?あそこにネールショップが出来て、お客さん全然来なくなって、だから仕方なく閉店することにしたよ』

 

「えぇ…」

 

『今までありがとうね。あ、今月分振り込んでおくからね』

 

「はい…分かりました。では、お元気で…」

pipipi…

 

はぁ~なくなっちゃったか。まぁ~薄々そうなると思っていたけど

 

「どうかしたの?」

 

「日菜…バイト先のお店閉めちゃったみたい」

 

「あちゃ~これからどうするの?」

 

「取り敢えず、何処か探すとするよ。じゃあ早速行ってくるね!」

 

「相変わらず前向きだね。ハクちゃんは…」

 

_________________

 

~商店街~

 

「あ~ホントに閉まってるし」

 

さて、バイトを探すにしてもどうしようかな?家の近くにはCiRCLEと江戸川音楽店があるけど、私、音楽について詳しくないんだよね

 

「いっそ日菜と一緒にアイドルになっちゃうかな…」

あれ?ネールショップのバイトさん。お店どうしたの?」

 

声がする方に振り向くと常連のお客さんが来ていた。

 

「あ!常連さん。どうやら今日閉店しちゃったみたいなんですよ」

 

[

あちゃ~そうだったんだ、アタシここのネール好きだったんだけどな」

 

「それはどうも。さて、バイト先どうしようかな?」

「それならアタシとコンビニバイトしてみる?」

 

「いいの!」

「うん。ちょうど人手足りなかったから。あ、アタシは 今井リサ」

 

「立花白夜です。気軽に白夜って呼んでね。よろしくね リサさん」

「うん。よろしくね白夜☆」

 

この後早速、面接を受けて明日から働くことになった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

3話

~花咲川女子学園~

 

「バイト先も見つかったし、最近調子いいな~」

「あ、おはよう白夜ちゃん」

 

「おはよう!彩ちゃん」

「何かあったの?」

 

「昨日、新しいバイト先が見つかったの!それにね。友達がアイドルになるかもしれないんだよね」

 

「へぇ~その子もアイドル目指しているんだね」

 

目指している…のかな?日菜の事だし、飽きたらすぐ辞めてそうだけど…うん?その子も?

 

「もしかして彩ちゃんもアイドル目指してるの?」

「う、うん…実は今週末にアイドルバンドの話が持ちかけられて…」

 

今週末?あれ確か日菜もアイドルバンドのオーディションがあるって言ってたような

 

「彩ちゃんその審査って…」

「立花さん、丸山さん。そろそろ時間です、席について下さい」

 

「え⁉」

 

時計を見るともうすぐ授業が始まる時間だ

 

「彩ちゃん。また後でね」

「うん」

 

_________________

~昼休み~

 

「あれ?白夜ちゃん。紗夜ちゃんとお昼取らないの?」

「今日は風紀委員の仕事もあるから、向こうで食べるってそれより、さっきの話なんだけど」

 

「どうかしたの?」

「私の勘だと、彩ちゃんはドジしなかったら合格できるよ」

 

「うぅ…酷いよ白夜ちゃん!それじゃあ、いつもわたしがドジってるみたいじゃん」

 

「だって、さっきも古文でも噛んでいたでしょ?」

「うぅ…」

 

「でも大丈夫。緊張したときは深呼吸して、上手くいくって念じればいいよ」

「うん、ありがとう。白夜ちゃん」

 

「よし!助言もしたし、彩ちゃん…」

「うん?」

 

「明日の小テスト教えてぇ~~‼」

「わぁ!お、教えるから落ち着いて~!!」

 

_________________

 

~放課後~

 

「教えてくれてありがとう!彩ちゃん」

「こちらこそアドバイスありがとう。白夜ちゃんはいつも元気だね」

 

うん?急にどうしたんだろう

 

「どうかしたの?」

「実は…」

 

話を聞いてみると実はアイドル研修生で、今まで色々アイドルの審査を受けてきたけど、上手くいってなく、次のチャンスがなかったら辞める気だったみたい。

 

「それで今回が最後なんだ…」

「白夜ちゃんは、いつも前向きだからすごくうらやましんだ」

 

「そんなことないよ。私だって普通の人間だよ!彩ちゃんとそんなに変らないよ」

 

そう。私は普通の人間…紗夜ちゃんや日菜ちゃんみたいに才能はない。ただの人間…

 

「じゃあ、今度の審査が上手くいったらパーティーしよう!」

「パ、パーティ-?」

 

「うん!彩ちゃん、スイーツ好きだよね?だから、お祝いでスイーツパーティーしようよ!」

 

「いいよ!昨日いいお店見つけたんだ!」

 

「立花さん。少しいいですか?」

 

あれ?紗夜ちゃん。どうしたんだろう?

 

「じゃあ、彩ちゃん頑張ってね」

「うん!ありがとう白夜ちゃん」

 

さて、彩ちゃんを見送ったところで…

 

「どうしたの?紗夜?」

「あなたに頼みがあるのですが…」

 

_________________

 

~帰り道~

 

「ふ~ん…メンバーね~」

「最低でも、あと三人ほしいところね」

 

三人ねぇ~紗夜ちゃん達に合う人なんていないような…

 

「でも、どうして私にそのこと話すの?そういうことはボーカルの人と話せば…」

 

「湊さんと話してみたけど、貴女は私達と違って顔が広いから…」

 

う~ん…確かにいろんな人と会っているけど…

 

「今までそんな人いなかったよ。ごめんね…力になれなくて」

「本来は私達が探すことだから気にしないで…」

 

紗夜も日菜もいろんなことに挑戦しているな

 

「それに比べたら私は…」

「何か言ったかしら?」

 

「ううん。なんでもないよ!今日バイトだからこっちに行くね」

「えぇ、気を付けて…」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

4話

立花白夜…私の幼馴染。

 

彼女は私達と同じ病院で、一日遅れで生まれたと母に聞かされた。

 

初めて出会ったのは…幼い時、彼女はいつも公園で一人ベンチに座っていた。

 

来る日も来る日もずっと一人で…

 

そんな姿を見かねた日菜が話しかけたことがきっかけで私達は仲良く遊ぶようになった。

 

でも、次第に日菜は天才と呼ばれ、私と比べられるようになる。それでも彼女は…

 

「どうしてみんな紗夜と日菜を比べるのかな?」

「日菜に出来るのに私に出来ないから…」

 

「それがどうしたの?人には得意不得意があって当たり前じゃない!」

 

「白夜…」

「私は何があっても二人の味方だよ。何があっても裏切らないから」

 

私は彼女の前向きなところが羨ましかった。

 

「どうして…あなたは私達を…」

「そんなの決まってるよ。私は二人の――」

 

彼女だけは違う。彼女だけは私達と変わらず接してくれる唯一存在。

 

私は彼女の言葉で救われた。だから、彼女には私の音を聴いてほしい…

 

_________________

 

「う~ん…わかんない!」

 

白夜は参考書と問題集を広げて考え込んでいる

 

「立花さんどうかしたのですか?」

「あ、紗夜ちゃん…実はこの前の宿題が難しくて…」

 

本当にこの子は世話が焼けるわね

 

「仕方ないわね。丁度、私も分からないとこがあるので一緒にやりましょう」

「やったー!ありがとう!紗夜ちゃん」

 

「どの問題ですか?」

「えっと…ここなんだけど…」

 

問題集を見てみると、基礎から間違っていることに気が付いた

 

「は~」

「な、なに?」

 

「立花さん。基礎から色々間違っています」

「え!嘘!どこどこ!」

 

「まず、二次関数は…」

 

_________________

 

~羽沢珈琲店~

 

「いやぁ~さっきはありがとう」

「別に…復習になったから、それより早く帰って練習したいのだけど…」

 

「まぁまぁ、ここのコーヒーとケーキ美味しいから。なに呑む?」

 

私にお茶をしている時間なんてないのに…この子はいつも強引だから仕方ないわね

 

「あ、つぐみちゃん!!」

「こんにちは!立花先輩」

 

こんなところにも、本当にこの子は顔が広いわね

 

「コーヒーと季節限定のケーキをお願い!紗夜は?」

「私は何でもいいわ」

 

「じゃあ、私と同じもので!」

「かしこまりました!」

 

ウェイターの子が厨房に向かっていくのを見送り、白夜と向き合う

 

「あの子は…」

 

「つぐみちゃん?あの子はこの羽沢珈琲店の看板娘だよ。それにキーボードが上手なんだよ」

 

「なんですって⁉」

 

「あ!つぐみちゃんは勧誘できないよ。もう彼女は彼女でバンド組んでいるから」

 

「そうなのね…」

 

このままでは…メンバーが…

 

「大丈夫!多分もうすぐメンバー揃うと思うよ!そんなに焦らないで…」

 

「焦っていません!」

 

「ゲホッ…ゲホッ」

「大丈夫ですか⁉」

 

「う、うん…変なところに水がはいちゃっただけだから」

 

一瞬だけど白夜の手に赤いものが付いているのが見えた…

 

「それならいいのですが…あ!季節限定ケーキとコーヒーです」

 

「ありがとう!」

「ありがとうございます」

 

さくらんぼのベイクドチーズケーキ…とてもおいしそうね

 

「じゃあ!さっそく…」

「つぐ。こっちにも季節限定ケーキ!」

 

「ごめんね…ひまりちゃん、さっきので売り切れちゃった」

「そんなぁ~」

 

「ひ~ちゃんどんまい」

「明日、また来ればいいさ」

 

「巴の言う通り、明日の練習の後に来たらいいじゃん」

「今日食べたかったの!」

 

「騒がしいわね」

「紗夜、ちょっとごめんね」

 

白夜はケーキを持ち、羽沢さん方に向かっていった

 

「白夜さんこんにちは~」

「モカ…知り合い?」

 

「この前、新しく入ったバイトさん」

「立花 白夜です。花咲川女子の二年生です。お近づきにこれあげる」

 

白夜は限定ケーキを彼女たちの前に置いた

 

「いいんですか!」

「いいの!いいの!みんなモカちゃんと同い年?」

 

「そうですけど…本当にいいんですか?」

「うん…私の好きでやっているから。あ!お代は私が払うからね」

 

「そんな!お代まで!」

「お言葉に甘えればいいじゃないか!」

 

「何かお返しに…」

「それもいいの!じゃあ!またね」

 

白夜が戻り、珈琲を飲み干す

 

「私の一口食べる?」

「ううん…それは紗夜の分だからいいよ」

 

「貴女が食べたくて注文したのでしょ?ほら…」

 

ケーキを白夜に差し出す

 

「じゃあ…一口だけ…うん!おいしい!」

 

この子は本当においしそうに食べるわね

 

_________________

 

~夜~

 

「ゲホ…ゲホ…!!」

 

洗面台に赤黒い血が飛び散る

 

「はぁ…はぁ…これは…少しヤバいかも」

 

胃のあたりがキリキリ痛む

 

「みんなにバレないようにしないと…特に、あの二人に気づかれないようにしないと…」

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

5話

「ハクちゃ~ん!起きって~」

 

今日は日菜が起こしに来てくれたみたい…

 

身体を揺さぶられて、吐き気が…

 

「う~ん…ごめん日菜…私…風邪気味みたいなの…」

「そうなの⁉大丈夫?」

 

「大丈夫…ちょっと、咳が出るだけだから…ゲホゲホ!」

「無理しないでね!」

 

「うん、明日ぐらいには元気になってると思うから」

「そう…」

 

「日菜ちゃん、学校遅刻しちゃうよ」

「え⁉もうこんな時間!じゃあ、ハクちゃんまた後でね」

 

「うん…」

 

日菜は慌ただしく部屋を出て行った。

 

うん?また後で?放課後に来るのかな

 

「いいの?言わなくて」

「うん、日菜も紗夜も頑張っているから、邪魔したくない」

 

私なんかのために、寄り道をしてほしくない

 

「じゃあ、病院に行ってくるね」

「気を付けてね」

 

_________________

~病院~

 

「昨日、カフェで血を吐きました」

「それで?」

 

「ここ最近、鳩尾が痛いです。特にお腹が減っているときです」

「ふむ…CT検査で少し調べてみましょう」

 

 

数分後

 

「検査の結果が出るまで、待合室で待っていてください」

「はい…」

 

仕方なく待合室で、スマホを見ていると彩ちゃんから大量のメッセージが届いていた

 

『風邪って聞いたけど大丈夫?』

『放課後お見舞いに行っていい?』

「寝ているのかな?」

 

など色々メッセージが届いていた

 

『いま、検査待ちだよ』

 

さて、情報取集しよっと…うん?いま、見覚えがある人が…

 

「こんにちは湊さん」

「――?何処かで会いましたか?」

 

白髪で髪を後ろに括っている女性が、右手に包帯を巻いていた

 

「えっと…あの夜CiRCLEで会いませんでしたか?」

「すみません。その…CiRCLEって何処ですか?」

 

あれ?なんかおかしいな?湊さんは、羽丘女子なのに、花咲川の制服着ているし…もしかして

 

「人間違えならすみません。湊 友希那さんですよね?」

「いえ…友希那は従姉妹です。私の名前は湊 朱音(あかね)です」

 

朱音さん…ホント、友希那さんと見た目が似ている…

 

髪の色も、顔も…違うところは…頬に少し、傷があるぐらい?

 

「貴女は?」

「あ!ごめんね。私は立花 白夜」

 

「立花さん…よろしくお願いします」

 

なんだろう…この子の話し方まるで紗夜みたい

 

「どうかしましたか?」

「ううん…何もないよ。貴女は花咲川の生徒だよね?」

 

「はい。本当は今日転校してきたのですが…昨日の試合で少し…」

 

「そうだったんだ…」

「貴女はどうかしたのですか?」

 

「私は…」

『立花さん…立花白夜さん。第二診察室に来てください』

 

「呼ばれちゃった…ごめんね。また今度。学校で会おうね」

「はい、よろしくお願いします」

 

 

診察室

 

「お待たせしました」

「診断の結果は?」

 

「胃潰瘍です…」

「胃潰瘍?」

 

「胃液によって胃の組織が剥がされています。原因としては喫煙やアルコールなどですが、立花さんに考えられるのは ‘ストレス’ でしょう」

 

「ストレス…」

「心当たりは?」

 

心当たり…ここ最近忙しかったからそのせいかな

 

「初期段階なので薬で対処しましょう」

「分かりました」

 

_________________

 

~立花家~

 

医者に処方された薬を飲み、布団に戻る

 

はぁ~このまま悪化したら、私どうなるんだろう…

 

「ハクちゃん…調子どう?」

「咳も収まったし、調子もよくなってきたよ」

 

「良かった!ねぇねぇ、聞いて!この前のオーディション上手くいったよ!」

 

「良かったね。それで、何時からお仕事なの?」

「う~ん…まだわかんない。今は何かギターの練習してって」

 

「え?ギター?」

「うん!そうだよ!ズガガーン♪って音がるんっ♪てきたんだよね」

 

これも運命のいたずらなのかな。よりによって紗夜と同じギターを手にするなんて…

 

「日菜…もう楽器って換えられないの?」

「うん!もう決まっちゃったよ。どうかしたの?」

 

「ううん…何でもない」

 

私はどうしたらいいんだろう。この事を紗夜に話すべきなのか。それとも秘密にした方がいいかも…

 

アイドルバンドって言っても、テレビとかに出演するまでまだ時間はある

 

その間に、二人の関係を何とかすればいい。例え、この命を使ってでも…

 

「ハクちゃん?どうかしたの?」

「ううん…風邪のせいかな。少しボーっとして。それより、風邪がうつるかもしれないから今日はもう帰ったほうが…」

 

「別にうつっても問題ないよ」

「ダ~メ。アイドルになるんだから体を大切にしないと」

 

「ちぇー…」

「じゃあ、何か分かったら私に教えて、紗夜より先に!」

 

「なんで?」

「日菜はあまり話すタイミングないでしょ?だから、私が代わりに伝えるよ」

 

「そんなことないけど…うん!分かった。じゃあハクちゃん!またね」

 

紗夜にとって都合がいいことだけを伝える。これが最善の方法

 

Pastel*Palettes 日菜から聞いたバンド名…後でゆっくり調べておこう

 

もし、花咲川の生徒もいるなら、少し注意しないと…

 




今回は提供されたオリキャラを採用してみました
改めて提供された方有り難うございました!(^^)!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

6話

~翌日~

 

日菜の事はどう伝えたらいいのか…

 

「白夜、大丈夫?」

「うん。熱も引いたし、咳も何とか治まっているよ」

 

「それなら良かった」

 

あの後、Pastel*Palettesについて調べてみたけど、検索には引っ掛からなかった

 

それもそうだよね。まだ、活動してないのだから

 

「白夜。私はこれからより一層ギターに集中したいから…」

「私に構っている時間がない でしょ?大丈夫、私もバイトで忙しいから別に問題はないよ」

 

「そう…」

 

~花咲川~

 

「あ!おはよう白夜ちゃん!体の方は大丈夫?」

「おはよう。ただの風邪だから…」

 

「それなら良かった…あ!聞いて白夜ちゃん!私オーディションに合格したよ!」

「良かったね!他のメンバーは誰か分かる?」

 

「えっと…」

 

彩ちゃんから他のメンバーの事を聞いた。

 

やっぱり、嫌な予感は的中した。彩ちゃんのアイドルバンドの中に日菜がいた

 

「そっか…彩ちゃんこのことは他には…」

「え、白夜ちゃんにしか話してないよ」

 

「分かった。この事は誰にも話さないでね」

「う、うん」

 

「ねぇ、今日転校生が来るらしいよ」

「へぇーどんな子なんだろう?」

 

何やら隣のクラスが騒いでいる。転校生…誰なんだろう

 

「立花さん。立花 白夜さん 至急、職員室に来てください」

 

「じゃあ、彩ちゃんまた後でね」

「うん。またね~」

 

_________________

 

~職員室前~

 

呼び出された理由は、課題の再提出と…

 

「転校生の子を校内の案内してほしいの。頼めるかしら?」

「大丈夫ですけど、授業は…」

 

「一限目の体育は休んでいいよ。体育の先生には話しておくから。湊さん入っておいで!」

 

「失礼します。あら、立花さん」

「朱音ちゃん!やっぱり、そうだったんだ!」

 

「知り合いなの?それなら大丈夫そうね」

「任せ下さい!さぁ、ここを案内するよ」

「はい。お願いします」

 

_________________

 

「ここが生徒会室、あまり来ることはないと思うけど」

「そうですねところで立花さん。貴女は何か隠していますね」

 

「どうしてそう思うのかな?」

 

「貴女は先ほど、授業を休むと聞きました。確か、この時間は体育だったと思います。それを休むってことは体に何か問題があると」

 

どうしてわかるのかな?

 

「朱音ちゃんだけに話しておくよ。私の体は胃潰瘍に蝕まれている。少しのストレスでも胃の表面が削られる状態で少し運動控えるように言われてるの」

 

「成程…もし私に何かできることがあれば協力します」

「うん、ありがとう」

 

 

~屋上~

 

朱音ちゃんを体育館に見送った後、私も見学しようとしたけど…胃がキリキリ痛みだしたから誰もいない屋上に逃げてきた

 

「薬を二錠っと…」

 

ふぅ~血の味もしないし間に合ったかな…

 

「うぅ…まだ胃が痛い…」

「はい…分かりました。えぇ、では午後に…はい」

 

屋上に一人の女性がやってきた。私は急いで薬の容器をポケットに入れた

 

「あら、ごめんなさい…誰かいると思わなくて…」

「いえ、大丈夫です。もしかして…千聖さんですか?」

 

「えぇ、そうよ。貴女は?」

「立花 白夜です。」

 

「白夜ちゃんね。授業中なのにどうしてここに居るのかしら?」

「少し気分転換でここにいるだけです。貴女は?」

 

千聖「私はお仕事の電話をしに来ただけよ。そろそろ時間だから失礼するわね。貴女もサボるのは程々にね」

 

そう言い残し、千聖さんは屋上を後にした

 

「サボりね…あの人も何か抱えてそう…」

 

はぁ~(*´Д`)

 

_________________

 

~放課後~

 

「ありがとうございました~」

「さ~した~」

 

あの後、教員には見学中に抜け出したことを怒られた。

 

「ふぅ~レジ打ち難しいね」

「すぐになれますよ~」

 

「そうかなぁ~あ、いらっしゃいませ」

「シャイ~ン」

 

気の抜けた挨拶が聞こえた気がした

 

「そう言えば、白夜さん。この前一緒にいた人は誰ですか?」

「紗夜の事?」

 

「日菜先輩じゃなくてですか~?」

「日菜のこと知っているの?」

 

「学校でも、天才って噂になっていますから」

 

天才か…やっぱりそんな噂が立つよね…

 

「あと、日菜先輩からこれを白夜さんにって…」

 

モカちゃんが持っていた封筒を受け取り中身を見る

 

「チケット?」

 

来週末に行われるPastel*Palettesのライブチケットが入っていた

 

これは…どうしたらいいのかな?

 

「ありがとうモカちゃん」

「白夜さん大丈夫ですか~?」

 

「うん?どうしてそう思うのかな?」

 

「少し顔色が悪いような…」

 

「大丈夫だよ!少し疲れただけだから…」

 

_________________

 

そして…来週末に行われたPastel*Palettesのライブ当日…

 

「最前席って新鮮…」

 

いつも紗夜のライブには一番後ろの席で聞いてたから一番前は何か落ち着かない…

 

「こんにちはー!!私達!」

 

「「「「「Pastel*Palettesです」」」」」

 

♪♪♪♪~

 

あれ?なんかおかしい…みんな楽器から音が聞こえないような…気のせいかな?

 

それと微かに彩ちゃんの声だけが微かに聞こえる気が…

 

そして事件は起こった。

 

「音が止まった?」

 

機材トラブルにしては、いきなり全部の音が止まるのはおかしい。

 

彩ちゃん達も想定外だからか焦っている。

 

そう言えば不審な点が幾つもあった。

 

まず一つ今日学校で彩ちゃんにライブを見に行くって伝えた時に暗い顔をしていた

 

二つ目はライブをするにも時間が短すぎるような···

 

これは経験者に聞いてみた方がいいかも

 

こうして、彩ちゃん達Pastel*Palettesの初ライブは最悪の形で終わったのであった

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

7話

お待たせしました~

色々と忙しく作る時間がありませんでした


~キャンプ場~

 

「どうして…あーなったんだろう?」

 

録音されたものを実際のライブで流すのって…

 

彩ちゃんもあれ以降全然学校に来てないし…それに…

 

大変なことになちゃった

 

焚火を眺めながら昨日の出来事を思い出す

 

□□□□□□□□□□□□

 

~羽沢珈琲店~

 

「え⁉初ライブまで練習量ですか?」

「急にどうしたんですか?」

 

「二週間で初心者がライブできるのか気になって…」

 

「アタシは太鼓をやっているのでドラムには直ぐになれました」

 

「あたしはギターになれるまでかなり時間が掛りました」

 

「あたしもそれなりに時間が掛りました~」

 

「楽器になれたら今度は皆で音を合わせる必要があるから、二週間ではライブなんてできませんよ」

 

「やっぱり…そんな早くできるわけないよね」

 

「もしかして白夜さんも何か楽器を始めるのですか?」

 

「え⁉ううん…私なんか音楽の才能無いし…」

 

「才能なんか関係ありませんよ。やる気があれば大丈夫ですよ!」

 

「いや、だから…私は…」

 

「じゃあ!今度弦を見に行くからその時に白夜さんも見に行きましょうよ!」

 

「えっと…話を…」

 

蘭ちゃんが私の肩に手を置き首を振る

 

「諦めた方がいいですよ」

 

「ひーちゃんがこうなったら止められないからね~」

 

□□□□□□□□□□□□

 

「はぁ~考えてもわかんないや」

 

「白夜先輩どうかしたのですか?」

 

この前、知り合った香澄ちゃんに星を見に行こうって話を振ってみたらノリノリで食いついてくれた

 

本人も気分転換を必要としていたみたい…それに作曲にもいい刺激になると思ったから声をかけてみた

 

ちなみに、寝袋は私の予備を使ってもらっている

 

「なんでもないよ…それより何か歌詞思いつきそう?」

 

「う~ん…まだキラキラドキドキも…」

 

「まだ日も高いからね~そうだ!近くで屋台もやっているみたいだし、少し見に行かない?」

 

「いいですね!行きましょう!」

 

 

 

~数時間後~

 

 

買い食いをしたり、辺りを散歩していたらすっかり真っ暗になっていた

 

「さて、香澄ちゃんここで問題…キャンプのごはんと言えば何でしょう?」

 

「バーベキュー!」

 

「正解!」

 

リュックの中から○mazonで買った折り畳み式のコンロを取り出す

 

「小っちゃくてかわいい~白夜先輩これは?」

「これで肉を焼きます!」

 

「え⁉でも、火なら焚火で焼けば…」

「それもいいけど…大きな網持ってきてないし」

 

ぶっちゃけ…あと片付けが大変なんだよね

 

「白夜先輩。お米は?」

 

「あ!お米の準備忘れてた!ちょっと待ってね直ぐに用意するから。香澄ちゃんは焚火に火をつけてくれる?」

 

「わかりましたー!」

 

急いで飯盒炊飯のお馴染みの容器にお米と水を入れる。

 

「火点きました!」

「はいは~い!」

 

そこら辺の枝で作った吊るし台に容器を引っ掛ける

 

「どれぐらい待つのですか?」

「う~ん…大体40分ぐらいかな」

 

「そんな~」

「まぁまぁ…日も暮れてきたしそろそろ…」

 

空を見上げると満天の星空が広がっていた

 

「わぁ…!!キラキラしている!」

「星の鼓動…聞こえる?」

 

香澄ちゃんが目を瞑っている。しばらくすると――

 

「う~んまだ聞こえません…」

「そっか…私も聞いてみたかったな」

 

「白夜先輩もいつか聞こえますよ」

「そうかもね」

 

ジュ~~

 

音がする方向を振り向くと容器から水が吹きこぼれていた

 

白夜「あ!上に石を置くの忘れてた!」

 

その後は、二人で肉を焼いたり温泉に入ったりして、その日は就寝した

 

~翌日~

 

「ふわぁ~…じかんは…6:58…朝食の準備しよ…」

 

横を見ると香澄ちゃんは涎を垂らしながらまだ寝ている

 

「これは…洗わないとダメだね…せっかくだし一枚」

 

折角だしこの写真を有咲ちゃんに送ろーっと

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

8話

~音楽店~

 

「うぅ…本当にやらないとダメなの?というか私、音符すら読めないんだけど…」

 

「その内、読めるようになりますよ」

 

拒否権はないみたいです…

 

「まずは…どれからやりますか?」

 

「じゃあ、ドラムから…」

 

それから私は一通り試しにやってみたけど、どの楽器も私に合わなかった

 

ドラムは手足が動かすのに混乱するし、ベースもギターも弦を抑える力がない

 

キーボードもどの指でキーを押せばいいのかもわからない。改めて自分に音楽の才能がないことを痛感した。

 

「ほ、本当にできないのですね」

 

「だから言ったじゃん!出来ないって…」

 

「これは…どうにもできないですね~」

 

「はぁ~少し休んでくる」

 

練習部屋を出て、Pastel*Palettesのポスターに目が入る

 

彩ちゃん大丈夫かな

 

「白夜?」

 

後ろを振り向くと紗夜が弦を持って立っていた

 

「紗夜…」

 

「こんなところで何をしているの?」

 

「友達に付き合ってここに来ただけだよ。それよりあっちに行こうよ」

 

私の後ろにはポスターにはギターを持った日菜が映っている。これは紗夜には見せられない

 

「え、ちょっと…」

 

「いいからいいから…」

 

「レジは向こうなんだけど…」

 

「じゃあ、これは私が買うから!もう少しあっちを見てきたら…」

 

「そう言うわけには、それに早く帰って練習を…」

 

紗夜が私の隣を通り過ぎようとした瞬間、動きを止めた

 

「白夜…このあと少しいいかしら…」

 

「うん…」

 

私が恐れていたことが起こってしまった

 

_______________

 

~紗夜部屋~

 

モカちゃん達に先に帰ることを伝え、紗夜についていった

 

「あ、あのね…」

 

「あなた…知っていたの?」

 

「うん…」

 

「そう」

 

「で、でも日菜がギターを始めたのは紗夜に憧れて…」

 

 

「憧れ⁉そんなことを言うのはやめて!!あなたも知っているでしょ⁉私がどれだけ負担に感じているか!!」

 

 

私は知っていた。いや、正確には知っていて黙っていた

 

 

「私にはギターしかないの!!それすらも…奪われたくない!」

 

 

「紗夜、日菜は――ッ!?」

 

 

胸が熱い…胃がキリキリと痛む…時間がない。でも言わなくちゃ、私の思いを…

 

 

「日菜と比べられるのが嫌だから?それだったら私なんか二人に比べたら何もできないバカだよ!」

 

 

「あなたは私達と血の繋がりがないじゃない!」

 

 

「血のつながりがなくても···私は二人を姉と同然だと思っていた。でも!私が…二人を…」

 

 

痛みだ段々増し、それに息苦しくなってきた

 

「白夜…」

 

 

「二人と一緒に同じことが出来て楽しかった。あの日のせいで二人の関係は…ゲホッ!」

 

「あの日…」

 

 

「私は…ゲホゲホ!あの時に私が二人の事を裏切った…あの約束も私が破った」

 

 

そう。あの時、彼女達の存在を否定しないと約束したのに…

 

 

「でも、私は…ゲホゲホ…もう一度···ゴフッ!!」

 

 

口を押えていた手を見ると血がべっとりついていた

 

気分も悪くなってきてその場に倒れる

 

「白夜! 白夜――!」

 

「お姉ちゃん?どうしたのって…ハクちゃん!」

 

「日菜!早く救急車を!」

「う、うん!」

 

「白夜!しっかりして――!」

 

 

 

ああ…これは罰なのかな…

 

 

叶わない願いを願ってしまった私に神様が罰を下したのかな?

 

 

 

_______________

 

~病院~

 

「検査の結果ですが完全に胃に穴が開いています」

 

「穴ですか…」

 

「はい。立花さんは以前に胃潰瘍で検査を受けに来ておりますね」

 

「胃潰瘍…」

 

「取り敢えず、いまは薬を投与して様子見をするしかありません。後お母さんに少し話が…」

 

「分かりました。紗夜ちゃんは白夜の所に行ってあげて」

 

「わかりました」

 

白夜のお母さまと別れ、白夜の病室に入ると――

 

「おねーちゃん…」

 

「日菜…」

 

ベットの上で横になっている白夜の傍に日菜が座っていた

 

「ハクちゃん、何の病気だったの?」

 

「胃潰瘍らしい」

 

「そう…だったんだね…だから最近ハクちゃんは様子がおかしかったんだね」

 

「情けないわね。彼女が病気なのに自分の事しか見えてなかったなんて…」

 

「そんなことないよ。ゲホゲホ…」

 

目を覚ました白夜が上体を起こしながらそう言った

 

「ハクちゃん!」

 

「今は横になっていないと…」

 

「大丈夫…ッ!!」

 

白夜は上体を起こすが出来たが腹部を押さえてる

 

「いままで無茶し過ぎた結果かな?」

 

「白夜…」

 

 

「私はね昔の二人に戻ってほしかった。仲良く私と遊んでくれたあの時みたいにね。私は紗夜が傷つかないように日菜の事は黙っていた。日菜には紗夜とよりを戻すために色々アドバイスをしてきた」

 

 

「······」

 

「でも、どれもこれも空回りで終わった」

 

 

「空回りじゃないよ!ハクちゃんのおかげでお姉ちゃんと同じギターを出来た。それにちょっとだけどお姉ちゃんとお話しできたし…」

 

 

「話って言っていもあなたが一方的に部屋にやってきただけでしょ?」

 

「えへへ…」

 

「あ、そうさせたのは私の所為だと思う」

 

「え⁉」

 

「積極的に話かけたらいいってアドバイスしたのだけど…」

 

「そうそう!」

 

「本当は違う形でこうして話したかったけど…これはこれで良かったかも。紗夜」

 

「なに?」

 

「自分が追い越される悔しさはよくわかる。でも、それでも努力して追い越せばいいじゃない」

 

「……」

 

「日菜。人の気持ちを理解するのは難しい。でも、理解しようと努力した方がいいよ」

 

「分かった!」

 

「白夜ちゃんすこしいいかな?」

 

「はい」

 

「お母さんと話した結果、手術する必要があることになったから」

 

「手術ですか」

 

「はい。いまの白夜ちゃんの胃は小さい穴が開いているからそれを塞がないとダメだからね」

 

「どれぐらい掛かりそうですか?」

 

「早かったら一ヶ月後を目途に考えてるよ。遅くても二ヶ月ぐらい掛かりますね」

 

 

「そうですか…」

 

「では、わたしはこれで」

 

 

そう言い残し、医師は病室から出て行った

 

 

「二ヶ月か…退院するときはもう夏だね」

 

「そうね…」

 

「ねぇ!退院したら海に行こうよ!」

 

「いいね!何人か誘って行こうか。ねぇ紗夜」

 

「私も⁉私には遊んでいる暇は…」

 

「息抜きしないと私みたいに身体を壊すよ」

 

 

本人は冗談のつもりで言っているけど。私には楔を打ち込まれたような気がした

 

 

「お姉ちゃん?大丈夫?」

 

「え、えぇ…」

 

「あと、おじいちゃんの牧場も一緒に行こうよ」

 

「あ~あのバターのおじいさんの所だね!」

 

「あの人…少し苦手だけど…」

 

「おじいちゃん。紗夜の事好きだからね~」

 

おじいさまに好かれているのは別にいいけど…毎回牛乳を薦められるのは…ちょっと…

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

9話

「はぁ~退屈だ~~」

 

午前中は朝起きては錠剤とバランスのいい病院食…それが終われば問診と···

 

テレビを見ても全然面白いものもない…

 

はぁ~彩ちゃん大丈夫かな?学校で会っても中々目を合わせてくれかったし…助けてあげたいけど、私がちょっかい出せないし…

 

 

紗夜も音楽で忙しそうだし…見守ることしかできないのかな?

 

日菜もギター始めたし…みんな新しいことに挑戦してるね…

 

それに比べて私は…何やってんだろう…二人を仲直りさせるって言いつつ何にも進展ないし…胃に穴を空けちゃうし…

 

 

 

はぁ~」

 

「どうしたの?ため息なんておねぇさんが何でも聞くよ?」

 

「最近、友達が大変なの…」

 

「大変って?」

 

 

「ある友達の話だけどね。目標のために頑張ってるけど…最近、体調管理行きとどいてるか心配で…」

 

 

「うんうん…」

 

 

「妹の方は少し変わってて…姉の真似をするけど直ぐに飽きちゃうし…最近その子アイドルバンドに入ったんだよね。二人共新しいことに挑戦してて…なんだか私だけ置いてけぼりくらってるみたいで…」

 

 

「不安なんだね…」

 

「うん…って!リサちゃんいつの間に⁉」

 

「今更⁉ついさっき来たばかりだよー」

 

 

気が付かなかった…情けないところを見せちゃった

 

 

「さっきの二人って紗夜と日菜の事だよね?」

 

「うん。二人は私にとって大切な友達なんだ…けど」

 

「仲が良くないっと…」

 

「昔はね。よく三人で笑ったり泣いたりしてたんだけど…中学生の頃だったかな」

 

紗夜が日菜に冷たくなったのも、日菜が紗夜を避けるようになったのも

 

全部あの時から始まった…あの時私が日菜を守る為に紗夜を裏切り、二人の仲を引き裂いた

 

 

「……や!白夜!」

 

「え⁉な、なに?」

 

「大丈夫?ボーっとしてたけど…」

 

「うん。大丈夫だよ…薬の所為かな?少し眠たくなってきたよ…」

 

「じゃあ、アタシは帰るね」

 

「お見舞い…ありがとう…zzz」

 

□□□□□□□□□□□□□□□

 

 

「またあの子一人だよ」

 

うるさい…

 

「可哀想~妹の方は頭いいのにねぇ~」

 

うるさい…うるさい

 

「でも妹の方も無神経じゃない?」

 

うるさい…うるさい…黙れ!

 

二人の事を悪く言わないで!

 

「いつも二人に引っ付いてる子も変っているよね~だって···」

 

「わたしだったらあの二人には関わらないけどね」

 

「あの子も少し□□だよねぇ」

 

消えろ!消えて!

 

「氷川って少し生意気だよな」

 

「少しわからせてやろうぜ」

 

やめて!紗夜に手を出さないで!やめて!

 

「なら、お前がアイツらを――」

_________________

 

 

「やめて!はぁ…はぁ…」

 

どうして…今になって昔の夢を見るの…もう三年前の出来事なのに···

 

忘れようとしてたのに…

 

外を見ると日が沈まりかけていた。

 

足元を見てみると紗夜と日菜がぐっすり眠っていた

 

「二人共同じ体勢で眠ってるし、こういう時だけは双子みたいね」

 

二人を起こさないようにこっそり…布団から抜け出し談話ホールに向かおうとしたとき、テーブルに手紙が置いていることに気が付いた

 

_________________

 

白夜へ

 

馬の世話や牛の世話で忙しく会いに行くことが出来ないのでこうやって手紙を書かせて貰いました。

 

最近の事をおかあさんから聞きました。わしも昔胃に穴をあけることがあったよ、だからしんどい気持ちはよくわかるよ。

 

そんなときは、あまり無理せずに消化にいいものを食べてね。あと、胃の穴が塞がっても油断はしないように、おじいちゃんは再発して死に掛けたから注意

 

 

追試、元気になったらまた、紗夜ちゃんと日菜ちゃんと一緒に来なさい。美味しい牛乳を用意しとくからね

 

あと、ツバキも待ってるからね

 

 

祖父より

_________________

 

~談話ホール~

 

「おじいちゃん…ありがとう」

 

一枚の写真が同封されていた。写真には一頭の葦毛の仔馬が写っていた

 

この子の名前は”ツバキ”半年前に産まれたばかりの女の子

 

退院したら絶対会いに行こう。おじいちゃんところの牛乳美味しんだよね

 

「白夜。ここにいたのね」

 

「あ、おはよう紗夜…ぐっすり眠ってたね。日菜は?」

 

「まだ寝ているわ。あの子いつの間に来たのかしら。その手紙は何だったかしら?」

 

「これ?これはおじいちゃんからの手紙だったよ。今度来るときは二人も連れて来てって」

 

「そう…白夜、この前言っていたあの時って…」

 

「その話はまた今度でいいかな?今は話したい気分じゃないの…」

 

悪い夢を見た後だから余計に話したくない…

 

「そう···ごめんなさい…」

 

「紗夜が謝ることは無いよ。それより、学校の方はどうなってるの?」

 

「皆さん貴女が居ない事を寂しがっていまるわ。特に丸山さん」

 

「彩ちゃんが?」

 

「会って謝りたいと言っていたわ」

 

そう言った紗夜は手が少し震えてるように見えた

 

「そうなんだ…ねぇ、紗夜」

 

「なに?」

 

私は紗夜の手を握る

 

「あまり思い詰めないで…辛いことがあったら何でも話してね」

 

「あ、ありがとう…///」

 

紗夜は頬を少し赤くしながらそう言った

 

「あ~おねえちゃんだけズルい!あたしもハクちゃんの手握る~」

 

「ちょ、ちょっと日菜…」

 

談話ホールにやって来た日菜が私の右手を握って来た

 

ああ…懐かしい…こんな時間が永遠に続けばいいのに

 

 

~数分後~

 

 

面会時間が過ぎ、病室に戻って見ると病院食が置いてあった

 

「はぁ…おかあさんのごはんが恋しいよ」

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

10話

 

「(・_・D フムフム…外でもローストビーフできるんだ~今度やってみようかな?」

 

病院ですることがないから、お母さんにキャンプの本を持ってきてもらったけど

 

見れば見るほどキャンプをしたくなるし、お腹が空いてきちゃった

 

 

コンコン

 

「どうぞー」

 

「失礼します」

 

今日の面会に来たのは意外な人物だった

 

「いらっしゃい珍しいね。千聖さん」

 

「日菜ちゃんからここにいること聞いたわ。それに私だけじゃないわ」

 

「え?」

 

千聖さんがカーテンをめくると彩ちゃんが俯きながら立っていた

 

「彩ちゃん…」

 

「あ、あのね…白夜ちゃん。この前はごめんなさい!」

 

彩ちゃんは急に頭を下げた

 

「彩ちゃん。なんのことで謝ってるの?」

 

「私…この前のライブで…白夜ちゃんを…みんなを騙して」

 

ああ…そのことね

 

「彩ちゃん。私は怒ってないよ…彩ちゃんや千聖さんも騙されていたんだよね?」

 

「白夜ちゃん…」

 

楽器に触った事がない人に直ぐにライブをするっておかしなこと

 

大人の目的は分からないけど、とにかく彩ちゃん達も被害者

 

「彩ちゃん、千聖さん。今度のライブ楽しみにしているからね」

 

「どうしてそのことを?」

 

「日菜から聞いた」

 

「日菜ちゃん…まだ決まってないのに…」

 

「日菜は独特な感覚でやっちゃうからそのあたりは大目に見てね」

 

「えぇ、そのあたりは気を付けるわ。ところで白夜ちゃん」

 

「なに?」

 

「貴女は昔、羽丘に居たって本当の事かしら?」

 

「どこでそのことを聞いたの?」

 

「え⁉」

 

「学校で噂になっているのを小耳に挟んだだけよ」

 

私が羽丘から花咲川に転校した理由を知っているのは数名だけのはず…

 

一体だれが…

 

「そっかー確かに私は元は羽丘の生徒だったよ。でも、色々あって花咲川に転校したんだ」

 

当時、羽丘も花咲川も中高一貫学校だった。そのおかげで簡単に転校することが出来た。

 

私は勿論、紗夜も…日菜だけ羽丘に残し、私達は花咲川に転校した。

 

いや、正確にはそうするしかなかった…

 

 

「――やちゃん!白夜ちゃん!」

 

「え?な、なに?」

 

「大丈夫?急にボーっとしてたけど?」

 

「大丈夫だよ。すこし、疲れてるだけだから」

 

「それならいいのだけど…」

 

「彩ちゃん。そろそろ…」

 

「う、うん!それじゃあ私達は練習にいくね」

 

「うん。二人共頑張ってね」

 

二人が出て行くのを見送り深呼吸をする

 

彩ちゃんのライブもう一度見てみたいな。今度こそ録音じゃなく生の音で…

 

 

□□□□□□□□□□□□□□

 

「ま、まて!氷川!あぐっ!」

 

飛び散る赤い液体

 

「こんなことをしてただ…うぐっ!」

 

体がふらつくほどの反動がバットで打ち込んだ強さが伝わる

 

少女の後ろには妹の姿。目の前は血まみれの虐めっ子の女子生徒が横たわっていた

 

「お、おねーちゃん…」

 

「逃げるわよ!」

 

「う、うん!」

 

ある程度学校から離れてから少女は言った

 

「あなたはこのまま家に帰りなさい!」

 

「でも、おねーちゃん…」

 

「速くいきなさい!」

 

姉は雨の中降りしきりる中でそう妹に言い放つ

 

「う、うん…」

 

 

二人の姉妹は各々別方向に走っていった

 

□□□□□□□□□□□□□□

 

 

「あれ?私寝ちゃってた…」

 

「あ!ようやく起きた!」

 

「日菜…今何時?」

 

「午後の5時だよ。ぐっすり眠ってたね」

 

「面会がないとただ暇だからね。あれからどう?紗夜と話せてる?」

 

「うん!少しづつだけど話せるようになったよ!再来週の七夕祭りにも一緒に行こうと思ってるの!」

 

「七夕まつりか…いいなぁ~私も行きたいな~」

 

「その日は抜け出せないの?」

 

「う~ん…まだ分からない。手術自体何時になるか分からないし…」

 

「どうしてハクちゃんの手術はそんなに遅いんだろう?」

 

「こういうのは色々手順があるんだよ。私は重症じゃないし…」

 

「じー…」

 

「な、なに?」

 

「ハクちゃん嘘ついてるでしょ?」

 

「え⁉う、嘘なんてついてないよ」

 

「ふぅ~ん…ところでハクちゃん。どうしてまだ右側の前髪だけ伸ばしてるの?」

 

日菜が今言った通り、私は右前髪を顔の半分が隠れるくらいに伸ばしている

 

「それは…」

 

「あの日の事…まだ気にしてるの?」

 

「うん。でも、あの時…私は二人を助けたかった!」

 

「分かってる…分かってるよ。おねーちゃんもわたしも…」

 

「それに···この顔は好きじゃないし···」

 

「?いま、なんて言ったの?」

 

「ううん!何でもないよ」

 

「面会時間終了しましたので、お帰り下さい」

 

「もう時間か…もっとお話ししたかったのに」

 

「また今度来たらいいじゃん…日菜」

 

「なに?」

 

「頑張ってね」

 

「うん!ハクちゃんも頑張ってね!」

 

「ありがとう」

 

日菜が帰ったあと、手洗いに向かう。

 

洗面台付属の鏡を見つめ、前髪を上げ鏡に映った自分の姿に嫌気がした

 

右目の下に切り傷の跡。それに···

 

 

傷を指で隠し鏡を見る

 

「ホントに忌々しい顔…」

 

 

…どうしてこんなにも似ているのだろう

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

11話

~2週間後~

 

 

「ふわぁ~」

 

本を読み終え伸びをする。数十分間同じ体勢だったせいか腰が痛い

 

そういえば今日は七夕祭りだったけ…

 

外を見てみると雨が降っている

 

折角の祭りなのに残念···

 

 

「はぁ~行きたかったなぁ~」

 

コツコツ…

 

足音が近づいてくる。誰だろう…

 

「立花さん…こんにちは…」

 

「えっと…」

 

黒髪ロングの胸が大きい人が入って来た。確かこの人は同じクラスの···し、し…

 

「白金燐子です…あのこれ…みんなから花束です」

 

「ありがとう…そんなところにいないでこっちにおいでよ」

 

「は、はい…失礼します」

 

うん。近くで見れば燐子ちゃんはスタイルいいなぁ~

 

「あ、あの…そんなに見ないで…ください…」

 

「ご、ごめんね。燐子ちゃん中々美人で見とれちゃった」

 

「そ、そんなこと…ないですよ///」

 

「最近紗夜は来てくれてないけど、元気にしている?」

 

「……」

 

燐子ちゃんは少し俯いてしまった…これは何かあったのかな?

 

「立花さんは…わたしがRoseliaの…キーボードを担当していることは知っていますか?」

 

「Roselia?えっと…紗夜がいるバンドがそんな名前だったような…」

 

「はい。そのRoseliaです…」

 

そっか…紗夜メンバー集まったんだ。

 

「それで何かあったの?もしかしてバンド内で問題が?」

 

「い、いえ…そういうわけでないです。ただ…何か思い詰めている…ような気がして…」

 

思い詰めている…か

 

頑張ってるからあまり口出ししたくなかったけど…私が動くしかないか

 

「燐子ちゃん。先生呼んでくれるかな?」

 

「は、はい…わかりました」

 

 

―数分後―

 

 

「ふぅ~1ヶ月ぶりの外だー!天気も晴れたし!」

 

先生とお話をして、今日の一日外出の許可を頂いた。折角の七夕祭りもあるからね

 

まぁ~あまり羽目を外さないように注意されたけどね

 

「先生は…少し心配そうにしていましが…良かったですね」

 

「うん。さて、祭りまでまだ時間あるし…何しようかな?」

 

「それなら少し…歩きませんか?」

 

「いいね!学校の事も色々聞きたいな」

 

「わたしが答えれる程度なら…」

 

「えっと…先ずは…」

 

_________________

 

~夕方~

 

燐子ちゃんから学校行事や最近の授業について色々教えてもらっていたら夕方になっていた

 

そして、そのまま商店街までやって来た

 

さてさて…日菜と紗夜には祭りに行くことも伝えてないし…見つかると色々小言を言われそうだから

 

「見つかる前に短冊だけ飾ったら直ぐに帰ろう。えっと…短冊は何処?」

 

人が多くてここが何処だか分からないし、どうしよう…

 

「白夜さ~ん」

 

この気の抜けた声は… 

 

声が聞こえた方を見てみるとモカちゃんが両手いっぱいに食べ物を持ちながらやって来た

 

「モカちゃん!久しぶりだね」

 

「お久しぶりですーもう退院したのですか~?」

 

「ううん。まだ手術もしてないよ。他のみんなは?」

 

「来てますよーでも、みんなとはぐれてしまって」

 

はぐれたわりにはそんなに焦ってないように見える

 

「白夜さんは一人ですか?」

 

「うん。短冊を飾ったら直ぐに戻ろうと思ってね。飾る笹はあっちかな?」

 

「そうですよ。あっちですよ~その前に少しいいですか?」

 

「うん?」

 

 

―数分後 射的屋台―

 

 

パンッ!

 

「また外したー」

 

「ひーちゃんあと一発だよ~」

 

直ぐに病院に戻るつもりだったのに、Afterglowの皆に捕まってしまうとは…

 

「もう少し上を狙ったらどうだ?」

 

「これくらい?当たれ!」

 

ひまりちゃんが撃ったコルクはぬいぐるみに当たったには当たったけど…下に落ちなかった

 

「あ~お嬢ちゃん残念だったな~はい。残念賞のラムネ」

 

「うぅ~悔しい…」

 

「私もう行ってもいいよね?」

 

「もう少しいいじゃないですか~」

 

「久しぶりの外出だし、もう少し楽しんだらいいと思いますよ」

 

「それもそうだけど…」

 

「白夜さん~!ミッシェルを取ってください!」

 

「え、私!?取れるかな~」

 

蘭ちゃんの言っていることも一理あるし、もう少しだけ楽しもうかな?

 

「じゃあ、おじさん。私もやる」

 

「はいよ!さっきの嬢ちゃんみたいに一つも落ちなかったら、駄菓子一つあげるから」

 

コルクを太い方から詰め込み腕をいっぱい伸ばす。

 

確か、頭の方を撃てばいいのかな?

 

 

集中···集中···

 

 

パンッ!

 

その瞬間、不思議なことが起こった。

 

打ち出したコルクがゆっくりと飛んでいくように見える

 

ううん···コルクだけじゃなく周りの時間が遅くなったような感じ…一秒一秒が数十秒に感じた

 

コルクはそのままミッシェルの右上に当たり倒れた

 

 

「――!?いまのは?」

 

「これって取れたことになるのかな?」

 

「店の人に聞いてみたら?」

 

「う、うん。おじさん倒れたよー」

 

「お!やるねぇ~嬢ちゃん。じゃあこれは嬢ちゃんのモノだな」

 

「良かった。取れたよひまりちゃん!」

 

「ありがとうございます。白夜さん!」

 

その後、駄菓子を狙って撃ってみたけど、さっきの現象は起こらなかった

 

_________________

 

 

射的屋台を後にした私は蘭ちゃん達と別れ、短冊に願い事を書いていた

 

「これで良しっと…願い事は二つあるけど大丈夫だよね?」

 

これを飾って…よし!さて、日菜に見つかる前に帰ろうっと…あ!月が出てる

 

折角だから、公園でゆっくりしてから帰ろう

 

 

―公園―

 

 

おじいちゃんの牧場だったら天の川が見えたかな?

 

この公園は…

 

「なつかしいなぁ」

 

私が初めて二人と出会った公園…よく一人でブランコをこいでいたっけ

 

それから三人で高さを競っていたなぁ~いつも日菜が高くてその次に紗夜…

 

私は高いのが怖くて全然こげなかった…

 

チュンチュンッ!

 

鳥が頭上を通ると同時に一枚の短冊が落ちて来た

 

「わっとと…えっと…『おねーちゃんと仲良く過ごせますように』これって…」

 

名前はまだ書かれてないけどこの短冊は…

 

「はぁ…はぁ…こっちに飛んでいったのは見えたのに…」

 

「はぁ…はぁ…だから、言ったじゃない…あら?」

 

鳥を追って来た二人は肩で息をしていた

 

「やぁ!二人共」

 

「ハクちゃん!」

 

「どうしてここに⁉」

 

「えっと…先生と話して、少しだけ外出の許可を貰ったの。ごめんね二人に黙ってて…」

 

「それならいいのだけど…」

 

「ハクちゃん。その短冊…」

 

「これ?さっき鳥が私の上に落としてきたよ」

 

「よかったー」

 

「二人とも座ったら?」

 

「そうね。久しぶりにかなり走ったわ」

 

「……」

「……」

「……」

 

二人共何も話さないから少し気まずい…

 

普段なら私が話始めてもいいけど、今回は敢えて何も話さない事にした。

 

今日は二人が距離を縮めるチャンスなんだから…

 

「「あの」」

 

「あっ…ごめん」

 

「いえ、いいのよ」

 

「おねーちゃんとこうやって話すの久しぶりだから緊張しちゃう」

 

「あなた普段から緊張しないでしょう?小さい頃から…」

 

そう言うと紗夜は何か思い詰めた顔をしていた

 

「おねーちゃん?」

 

「いえ、何でもないわ。この公園は…」

 

「あ!もしかしておねーちゃんも覚えてる!?ハクちゃんは?」

 

「もちろん、覚えてるよ。だって、ここは私達が初めて出会った場所」

 

あの時、私に一緒に遊ぼうって言ってくれたのは“紗夜”だったけ

 

「二人がいなかったら私はひとりぼっちだったかもね。いまは紗夜はRoselia。日菜はパスパレ…二人共忙しそうにしてるもんね」

 

「でも…ううん、なんでもない」

 

「どうしたの?」

 

「ううん!言葉にしたら、お願いごとって叶わなくなっちゃうから」

 

「そう…そろそろ行きましょう」

 

「えっ…もう行っちゃうの?」

 

「それ飾らないの?」

 

「うん!そうだったね」

 

「さて、私もそろそろ…病院に戻らないと」

 

「えぇ…気を付けて」

 

「え~ハクちゃんも?」

 

「先生が心配しちゃうからね。それにもうすぐ手術があるし」

 

「――!そう…なんだ…」

 

「でも、今日は久しぶりに三人で話が出来て楽しかったよ。ありがとう二人共」

 

ベンチから立ち上がり、その場を後にしようとすると――

 

「白夜!」

 

「うん?なに?紗夜」

 

「その…頑張って…また会いに行くわ」

 

「ありがとう。紗夜も頑張ってね」

 

「またねーハクちゃん!」

 

 

 

 

 

 

病室に戻って来ると空はくっきりと晴て星々が見える

 

「織姫様と彦星様は今年も無事に会えたかな?間にある天の川を渡って」

 

射的で感じたあれは何だったんだろう?

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

12話

外はすっかり日が昇る時間が早くなった

 

蝉の鳴き声を聞くと夏になったように思ってしまう。私自身あまり夏は好きじゃないけどね

 

あの現象が起きた事を先生に話すと“ゾーン”って言う現象に似たものらしい

 

本来はスポーツ選手が集中したときに起こる現象みたい

 

私にスポーツ経験はあまり無いのにどうしてそんな現象が起きたのだろう?

 

そんなことより今日は私の手術日…

 

 

まずはお腹を切って穴が開いている部分を塞ぐ。

 

術後状態が良かったら直ぐに退院出来るみたい…

 

「お腹切られるのか…すこし怖いなぁ」

 

コンコン

 

「どうぞー」

 

先生と看護婦さんがタンカーを運んできた。時間みたい

 

「白夜ちゃん。そろそろ…」

 

「はい、行きましょう先生」

 

タンカーに乗せられ手術室に向かう途中に紗夜と日菜の姿が見えた

 

二人は不安な顔をしていた。もう、日菜には難しい手術じゃないって言ったのになんでそんな顔をしているのかな

 

そんな顔されたら私も不安に感じちゃうじゃん

 

パタン!

 

手術室に入り、麻酔をかけられる。次第に瞼が重たくなってきた

 

□□□□□□□□□□□□

 

 

「お前達にはすまないと思っている」

 

「言い訳はそれだけ!?まさか私だけじゃなく――」

 

もう何年も見ていなかったお父さんとお母さんが喧嘩をしている

 

これは昔の記憶…

 

たしかこの時は、三人で遊園地に行く約束をしてたっけ?

 

もちろん、その約束は果たされることはなかった

 

「お前を含めてアイツの事も俺は…」

 

「あの子達はどうするつもりなの⁉」

 

「白夜の事は勿論!□□も□□の分も含めて養育費を払う」

 

あの時、私は扉の隙間から二人の様子を見ていた

 

そして逃げた

 

二人の怒鳴り声が聞こえない公園に···

 

「どうしておとうさんもおかあさんもいつもケンカしてるんだろう?」

 

一人ブランコに乗りながらそう呟いていた

 

「ねぇ、あなた」

 

顔を上げると二人の女の子がいた。でも、二人はただの女の子じゃなかった

 

二人は双子だった。

 

顔も髪も手の大きさもほぼ全てが同じだった。

 

「ねぇねぇ、きみ なまえは?」

 

明るい女の子が食い気味に聞いてきた

 

「ひなちゃん!この子こまってるでしょ」

 

「えへへ…うれしくて」

 

「はくや」

 

「え?」

 

「たちばな はくや。きみたちは?」

 

「わたしはひかわさよ。こっちはひな」

 

「よろしくねーハクちゃん!」

 

「ハクちゃん?わたしのこと?」

 

「うん!ハクちゃんはどうして一人なの?」

 

「ちょっとひなちゃん…」

 

「おとうさんもおかあさんもいつもケンカしてるから…いつもわたし…ひとりなの」

 

「それなら!わたしたちといっしょにあそぼうよ」

 

紗夜が左手を指し伸ばす

 

「いいの?」

 

「ひとりよりみんなであそんだほうがたのしいよ」

 

日菜も紗夜と同じように右手を指し伸ばしてきた。

 

私は二人の手を両手で掴んだ。これは…私達の出会い、一番大切な思い出…

 

 

 

場面が切り替わり、中学の頃の記憶に遡る

 

廊下にテストの結果を見ていた

 

「流石、日菜ちゃんだね!」

「今回のテスト難しかったのに満点って凄いね!」

 

「どれだけ勉強したの?」

 

日菜の周りに生徒が集まっていた

 

「特に勉強してないよ~」

 

そんな日菜を尻目に私と紗夜は茫然と結果を見ていた

 

日菜が1位、私が25位そして紗夜が5位だった

 

「また、負けた…」

 

 

「本当に日菜は凄いね。何でも出来ちゃうし、テストも満点取っちゃうし···」

 

「······」

 

「で、でも、今回のテスト難しかったし仕方ないよ!」

 

「···」

 

紗夜は黙って踵を返してどこかに行こうとしていた

 

「ちょ、ちょっと紗夜!?」

 

「ついてこないで!あなたとは違うクラスでしょう」

 

「でも···」

 

「先生の話を聞いてるだけだよ~勉強しても点が取れない人って可笑しいね〜」

 

 

「ッー!」

 

「おやおや~頼れる学級委員長さんじゃないか~」

 

「本当だ!妹より格下の委員長さんだ」

 

二人の生徒が嫌味を言いながら紗夜に近付いた

 

「失礼ですが、通してくれますか?」

 

「何々?今から勉強~?アハハ···無駄なことなのに」

 

「そうそう!ムダムダ。どうせまた妹に負けるのに」

 

「ちょっと!あんた達!」

 

私が一人に掴み掛かろうとするが、紗夜に止められる

 

「紗夜・・・」

 

「貴方達には関係ないことです。失礼します」

 

紗夜は二人の間を通り抜けていった

 

「ひどいな~私達は折角アンタの心配してるのに~」

 

「やっぱり日菜ちゃんの方が何でもできて委員長より愛想があるし~」

 

――ッ!!

 

一人がそう言うと紗夜は何処かに走り去っていった

 

私は急いで紗夜を探しに向かった

 

 

彼此1時間ぐらい探し、彼女は屋上で雨に打たれていた

 

「ここにいたんだね」

 

「白夜・・・どうしてここに?」

 

紗夜の目元は赤く腫れていた。雨の所為で流した涙と見分けがつかなかった

 

「最後にここを探してなかったからね」

 

「そう・・・貴女も私を笑いに来たの?」

 

「そんなことしないよ。どうしてみんなは二人を比べるんだろうね?」

 

「そんなの決まってるでしょう!あの子(日菜)に直ぐに出来るのに私はできないから――」

 

「それがどうしたの?人には得意不得意があって当たり前じゃない!」

 

私は紗夜に手を指し伸ばす

 

「私は何があっても二人の味方だよ」

 

「どうして・・・あなたは私達を・・・」

 

「そんなの決まってるよ。私は二人の大切な友達だから!」

 

「――――――っ!!」

 

紗夜は私の胸の中で泣き続けた。

 

冷たい雨の中で二人で抱き合った。

 

彼女は妹に比べられる事にコンプレックス・・・劣等感を抱いていた

 

それなら私が出来ることは二人を比べない事・・・平等に二人と接する事が最善だと思っていた

 

そしていつか彼女たちが笑い合えるように・・・

 

 

 

その突如、身の毛もすくむような音と同時に場面が切り替わる

 

 

 

 

「氷川さん、あなたには失望しました」

 

「待ってください!私はやってません!」

 

これは同じく中学の頃、ある日の出来事

 

「他の生徒が貴女が二人に暴行をした所を見ているのよ」

 

「言いがかりです!その時間帯私は――」

 

「言い訳はもういいわ。あなたには来月からここから退学してもらうわ」

 

「そんな…」

 

 

「あの静かな紗夜さんがあんなことするなんて…」

 

「以外だよね」

 

「日菜さんを守ったって聞いたけど…金属バットで滅多打ちって…」

 

「おねーちゃん…」

 

「日菜…ごめん…こんなことになるなんて思ってなかった…」

 

「ハクちゃん、どうして!あんなことをしたの!」

 

日菜が私の胸ぐらを掴む。

 

私は謝ることしか出来なかった

 

「ごめんなさい…ごめん…なさい…」

 

「ハクちゃんには感謝してるけど…どうして!あの姿で!ハクちゃんの所為で!おねーちゃんは…」

 

わかってる…わかってる

 

「私は日菜を救いたかった!でも、あの時はああするしか…せめて償いとして私は!」

 

私は二人に目に見えない大きな傷を付けてしまった。

 

何が親友よ!二人の事を傷つけないようにした行動が、より深く二人の関係を悪化させてしまった

 

カッターナイフを取り出し首元に近づけた。

 

「待って!ハクちゃん!」

 

日菜が腕を掴んで来たせいで狙いが逸れて目の下を深く切った

 

そして後日、私は大切な親友の一人を捨て、もう一人についていく事を選んだ

 

 

 

 

□□□□□□□□□□□□

 

目を覚ますといつもと同じ病室にいることに気がついた。

 

「私…生きてる?」

 

身体がだる重い…両腕を上げようとするが上がらない

 

「ようやく起きましたね」

 

「先生…手術は…」

 

「えぇ、無事に終わりましたよ。よく頑張りましたね」

 

「よかった…あの、身体が動かないのは…」

 

「麻酔の副作用だね。明日には収まるから心配しなくていいよ」

 

「そうですか。あの二人は?」

 

「あの双子なら病室の外で待ってるよ。会うかい?」

 

「いいえ…こんな情けない姿は二人に見せたくないから今日は帰るように言ってくれますか」

 

「わかりました」

 

_________________

 

 

ハクちゃんの手術が終わって二時間…あたしとおねーちゃんは病室の前で待っている

 

「ハクちゃん…大丈夫かな?」

 

「日菜…少しは落ち着きなさい。さっきも言ったけど今は信じて待つしか···」

 

そういうおねーちゃんもチラチラ時計を見て、落ち着かない様子だった

 

ガラガラ――

 

「先生!ハクちゃんは!ハクちゃんは生きてますか!」

 

「落ち着きなさい。先生白夜の様子は?」

 

「無事に目を覚ましましたよ」

 

「よかった…おねーちゃん!」

 

「本当に…よかった…」

 

「本人も疲れているみたいだし、それに君達も手術中ずっと待っていたのでしょう?今日は帰って休みなさい」

 

「わかりました。日菜」

 

「う、うん…」

 

 

 

-帰宅中-

 

「ハクちゃんの手術無事に終わってよかったね!おねーちゃん」

 

「えぇ、そうね…日菜、さっきの話本当だと思う?」

 

「さっきの?」

 

「白夜のお母さまの話…あの子が…」

 

「あたしは信じるよ!だってその方が るんっ♪ってくるし」

 

「…私はまだ信じられないわ。まずはお母さんに真相を聞かないと…」

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。