IS×AC ガチタンが行く リメイク版 (ガチタン愛好者)
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番外編~設定~

本編の前に設定です。一部ネタバレを含む恐れがあります。ご了承下さい。


主人公:有澤隆彦

本作の主人公。有澤重工社長の有澤隆文の息子。父の影響を強く受けロボット大好き、ロマン大好きになる。ISに乗れると分かってからは元々の憧れもありガチタンを操るようになる。

 

父:有澤隆文

主人公の父親。重装甲、大火力をこよなく愛する。職人気質で社員に混ざって設計、作成を行うことも。シミュレーターでの成績は企業連の中ではトップクラス。もちろん使うのはガチタン。

 

企業連

主人公の企業である有澤重工も所属する複数の企業で成り立つ組織。女尊男卑の流れで解雇されたキチガイ職人が数多く存在する。現在はISの武器、スラスター等を手掛けており、実弾からレーザーまで何でもござれ。国産と言い張るISにも必ずどこかに企業連が関わっている。世界中表裏全ての組織に諜報員を送り込んでいる。基本は監視するだけで裏工作等はしない。以下企業連所属企業の紹介

 

GA(グローバルアーマメンツ)

アメリカを拠点におく企業。実弾と装甲の技術に優れており、アサルトライフルやマシンガン等を生産する。ISだけにとどまらずその技術をいかした重機なども手掛けている。またブースター技術に秀でるクーガー、電子機器が得意なMSACインターナショナルを傘下におく。そのため自社でISが作れる。

 

MSACインターナショナル

GA傘下の企業。ミサイル技術に秀でており企業連製造の全てのミサイル製造を請け負っている。レーダーも製造しているが完全にBFF社の下位互換な性能なので全く売れず在庫が大量に余っている。

 

クーガー

GA傘下の企業。スラスター等の推進機の技術に秀でている。現在ISにはでかすぎる超大型外付けブースターを開発している。

 

有澤重工

日本に拠点をおく企業。大鑑巨砲主義を掲げており、GAよりもさらに装甲と炸薬の技術に秀でている。なお他の技術はからっきしなので自社だけではISが作れない。また武装はグレネードのみであり世界中に熱烈なファンが存在する。GAと業務提携を結んでいる。

 

テクノクラート

ロシアに拠点をおく企業。ロケットの技術が高く、宇宙産業にも手を出している。武器としてのロケットはその命中率と特異な性質から人気はあまりない。

 

BFF社

イギリスに拠点をおく企業。スナイパーライフルの技術が高く命中精度は自他共に認める世界一。それにともないレーダーの技術も最高クラス。なにやら巨大兵器を作っているという噂もある。

 

インテリオルユニオン

北欧に拠点をおく企業。光学兵器の技術力が高くレーザー等が得意。なにやら有害物質を撒き散らしたがるトーラスを傘下におく。

 

トーラス

コジマ粒子を発見したはいいが健康被害を及ぼす汚染が確認され、企業連からは「コジマ粒子を人体に影響の出ないようにしろ。無理なら除染機を作れ。それも無理なら開発中止!」と言われ現在必死で無害化コジマ粒子と除染機を開発中。たまに建物から緑色の粒子が漏れ出ている。

 

オーメルサイエンステクノロジー

ヨーロッパに拠点をおく企業。何かに秀でたものではなくバランスの良い物作りを掲げる。変態揃いの企業連の中では割とマトモな企業。

 

アルゼブラ

中東に拠点をおく企業。ユーラシア大陸ほぼ全土に手を出しており、影響下にある地域の広さは企業連1。武器が安いのが特徴で人気のある企業。また知名度は低いがパイルバンカーなんかも作っている。

 

レイレナード社

既に存在しない倒産した企業。非常に尖った性能の武装を作っていた。今でも愛用者が非常に多い。

 

世界設定

基本は原作に準じている。ただ企業連が全世界に影響力を持つので戦争等は起こっていない。

 

篠ノ乃 束

原作と同じく重度の人間不信。天才故の悩みで話が通じる者がいない。ISで宇宙を目指していたのに誰も宇宙を目指さない現状に不満を感じている。箒を助けてもらった恩で企業連に参加、思いの外居心地がよく自由を謳歌している。

 

SE(シールドエネルギー)

ACで言うところのAP。大体25000ほどが平均。重さによって決まるので高機動な機体はこれが低く設定されている。0になるとISが解除されるが搭乗者を守るエネルギーフィールドが形成される。非装甲部に命中すると大きく削られる。

 

IS適正

SS,S,A,B,C,D,Eまである。SSはブリュンヒルデクラスでEはISは反応するし、かろうじて動かせるが、、、といった具合。いわゆる粗製というやつ。処理能力が遅いだけなので、AIなどでサポートすればマトモに戦える。しかし普通のISはそのAIを載せる余裕があるなら適正高い人を乗せるのでこのことはあまり知られていない。

 

IS学園

建築に企業連が多く出資し関わったため原作と比べ割と要塞と化している。主な変更点はアリーナの物理的天井。原作では観客席から天井まで巨大なバリアシールドを張っていたが非効率としてバリアシールドは観客席だけに。天井には有澤装甲とインテリオルの対レーザー塗装により傷一つ付かない。建物も短気な生徒がISで暴れたとしても壊れないほど頑丈。下手なシェルターより安全。

 

直接装填技術

ISの何もないところから武器が出るのを見た人が

「直接薬室に弾丸を出現させれば装填機構不要になるんじゃね?」と言ったのをきっかけに開発された。バススロットから直接装填するためマガジンが不要に。本来なら使用後の薬莢もそのまま回収できるのだが「カッコ悪い!実弾兵器はばらまかれる空薬莢がカッコいいんだ!」との意見から廃莢システムは残してある。排出された薬莢は地面をコロコロ転がった後バススロットに回収される。また、「マガジンの無い見た目はカッコ悪い」という意見からダミーマガジンが付いている。つまりメリットとしてはマガジンの交換が不要になることと、装填機構が無い分頑丈な砲身となり弾丸の初速が向上する点などだけである。

 

コジマ粒子

児島博士によって発見された粒子。電流によって増殖や整流といった制御を行う事が可能である。緑色であり有害。人体に侵入すると疲労感や体調不良を引き起こし、過剰となると吐血等を引き起こし死に至る。除染機で除染しない限り数年の間漂い汚染を撒き散らす。ネクストには欠かせない粒子でネクストの活動と切っても放せない関係にある。

 

無害化コジマ粒子

トーラスの努力により生まれた無害化されたコジマ粒子。色も無色となり人体への影響も一切無くなった。その代償としてエネルギーが1割程度にまで減ってしまい、ネクストを動かすことは出来るもののPAやAAといった強力な武装が一切使えなくなってしまう。尚それ以外の能力は発揮できる。



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第1話~始まりは突然に~

リメイク版ということで本文はほぼ書き直しです。


ざわ…ざわ…

 

ある日のこと。とある建物は暑苦しい野郎共で賑わっていた。

 

「フハハハハ!俺は選ばれし者となる!」

 

「頑張れよー」

 

集められたのは16歳前後の少年。何故こうなっているのかは数日前に遡る。

 

 

 

IS(インフィニット・ストラトス)。それは天才科学者である篠ノ野束が開発したマルチフォームパワードスーツの総称である。その圧倒的な性能は既存のあるとあらゆる兵器を旧式化させた。しかしISがもたらした影響はそれだけではなかった。なんと女性しか扱うことができなかったのだ。それ故瞬く間に世界は

 

既存のあらゆる兵器を凌駕するISは女性しか扱えない=女性は男性より偉い

 

という馬鹿げた思想の下に女尊男卑の世界へと変貌した。今や女性は男性より偉い。これが常識となった世界にひとつの楔が打ち込まれた。ブリュンヒルデという称号を持つ世界最強の女である織斑千冬、その弟である織斑一夏がひょんなことからISを動かしてしまったのだ。調べてないだけで他にも動かせる者がいるかもしれないと世界中で彼と同い年の16歳前後の少年を対象に適性検査が行われているのだ。因みに何故16歳前後に限定してるかというと、もし適正があった場合に無理矢理入学させるIS学園は高等学校の扱いであるからだ。あまりにも年齢がかけ離れていると適正がある者も生徒にも悪影響を及ぼすと判断されたからである。

 

「次の方どうぞー」

 

適性検査といっても機械に触れるだけだ。回転は速い。ちなみに万が一何かの間違いで適性があった場合は混乱を防ぐために後日連絡される。

 

「これでいいのか?」

 

「ありがとうございます」

 

「さてと、さっさと帰るかね」

 

有澤隆彦もこの騒動に巻き込まれた中の一人だ。一応進学先は決まっている16歳だが国の命令とあってはしょうがない。

 

「どうせ適正なんざ無いだろうし帰って武器設計の続きと洒落混むかね」

 

彼の家は日本で、というか世界でも知らぬものはいない企業連を構築する企業の一つ、有澤重工だ。大昔から続く老舗で現在の社長である有澤隆文は43代目となる。その一人息子である隆彦は若さゆえの自由な発想を生かしてロマン溢れる様々なIS用武器を設計していた。

 

「もし、万が一何かの間違いで適性があったなら自分で考案した武器をこの手で使えるのかねぇ?まぁ取らぬ狸の皮算用って奴だろうけどな!」

 

人はそれをフラグという

 

 

 

適性検査から数日後のこと。有澤重工にスーツ姿の男女数名がやって来た。隆彦も父である隆文に社長室に呼び出され

 

「有澤隆彦君。単刀直入に言わせてもらおう。今回の一斉検査で唯一君にISの適性が見つかった。ランクは最低のEだが適性は適性だ。というわけで君はIS学園に入学してもらうことになる。拒否権はない。まずは入学までにこれらに目を通しておいてくれ。以上だ」

 

「えっと……………はい」

 

混乱する隆彦の前に分厚い広辞苑並の参考書が置かれる。必読と大きく書かれたそれのタイトルは

 

[IS学基礎]

 

とあった。

 

「それでは質問は入学してからにしてくれ。こちらも手続きやらで忙しいんだ。重要なことは他の書類に書いてある」

 

それだけ言い残してスーツ姿の男女、IS学園の職員は去っていった。

 

 

 

「さて」

 

彼らが退室してから沈黙を破ったのは父である有澤隆文

 

「私も混乱が隠せないが結果だけ纏めるとお前は適性が見つかりIS学園へ入学することになった。ここまではいいな?」

 

「ああ」

 

「でだ、取り敢えずお前はこれらの書類に目を通して参考書の内容を頭に叩き込め。恐らく他の女子生徒は基礎知識は身に付けている筈だ。学習も彼女らに合わせたレベルだろう。置いていかれない用に頑張れ。出来る限りのサポートはする」

 

「分かった」

 

「それとだ。企業連初のIS乗りということで十中八九テストパイロットになるだろう。これから激動の人生が待ってるぞ。出来る限り楽しみなさい。でないと持たないから」

 

「分かった。それじゃあ」

 

それだけ言って隆彦は自室に戻った。

 

 

 

自室にて一時間ほど放心状態だった隆彦は徐々に現状を飲み込み

 

「いよっしゃぁぁぁぁぁ!!!!!!夢じゃないよな!?ああ!目の前のうんざりするような本の山がこれを現実だと教えてくれている!」

 

叫んだ。はしゃいだ。当然だ、夢にまで見たISを自らの手で動かせるのだから。因みに無骨過ぎて女性受けの悪い企業連にとっても悲願だったりする。

 

「さて、はしゃいでもやる量は変わらない。追い付けずとも足を引っ張らない程度にはなっておかねば」

 

その後しばらくの間彼の部屋からは明かりが消えることはなく、たまに発狂した彼の叫び声が聞こえることとなった。

 

 

 

有澤重工社長室

「うむ、なにやらヤバい叫び声が聞こえるが私には助けてやれん。頑張れ息子よ」

 

社長室にて隆文はそうぼやく

 

「やれることはやってやろう。それが親としての、社長としての務めだ」

 

隆文は電話を手に取り

 

「私だ。既に知っているだろうがうちの息子に適性が見つかった。コアを一つ融通してくれ…………ああ、分かっている……………ああ、そのつもりだ。よろしく頼む」

 

ガチャ

 

「ふう、私に出来るのはこれくらいだ。頼むぞ…………」

 

 

 

企業連side

「有澤重工の息子さんが適性があったらしい。社長からコアを一つ融通してくれとのことだ」

 

「容易いな。当然………」

 

「ああ、データ取りは任せていいらしい。遠慮なくやってくれとのことだ」

 

「なんと!?遂に女性受けが悪く埃を被っていたあれやこれやが陽の目を浴びる日が!」

 

「そうだ。思う存分やって企業連の素晴らしさを世に知らしめよう!」

 

企業連はISパーツを世に広く送り出している。しかし構成する社員の大半がリストラされた男性職人であり、製造する武器やISパーツが無骨過ぎて女性受けがすこぶる悪いのだ。辛うじて細かいネジやファンブレードといったパーツ類の製造で成り立ってはいるがデュノア社や倉持技研と比べると影が薄い。企業連にとって有澤隆彦は希望の星だった。




文字数は2000文字前後でやっていく予定です。


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第2話~準備~

「うごご…………頭が痛い…………」

 

自室で唸る隆彦。本来ならば小学校から少しずつ進めていくISの基礎中の基礎からやっているのだから無理もない。女性がISという特権を持っている以上この世界は基本的に共学の学校はない。それ故男性は物作りの道に進まない限り死ぬまでISに関わることはほとんど無いのだ。しかも物作りは作る側なので動かす側の知識は一切無い。

 

「覚えること多すぎだろ。やべぇ」

 

動かし方だけではない。ISに関わる法律等も履修内容に含まれている。受験時期に適性が見つかったため準備期間は2ヶ月程度。その僅かな期間である程度の知識を叩き込まないといけない。あれから一週間が経過したが参考書は半分も終わっていない。

 

「ええと…………アラスカ条約が……………イメージインターフェースが…………」

 

連日頭を抱えながら急ピッチで学ぶ隆彦。すると突然

 

「すまない。ちょっといいか?」

 

父である隆文に呼び出された。

 

 

 

「勉強中にすまない。企業連代表ということでコアを一つ融通してもらってな。お前の専用機を現在組んでいるところなんだ」

 

「ふむ…………で?」

 

「勉強は入学してからでも出来るが専用機の構築は今のうちに済ませておかないといけないんだ。何ざっくりとしたアセンが組めたなら後はこっちの領分だ。お前は機体コンセプトを考えてくれるだけでいい。条件はただ一つ。企業連のパーツのみで構築することだ。いいな?」

 

「分かった」

 

 

 

有澤重工工場

「忙しい中呼び出してすまない」

 

「いえいえ、構いません」

 

隆彦が向かったのは有澤重工で作業を行う工場の一画。そこには企業連を構築する全ての企業の担当者が集合していた。

 

「では今から隆彦君の専用機の構築を始めます。といってもざっくりとした方針が分かれば良いので緊張しないでくださいね?」

 

「はい」

 

「ではまず機体からです。企業連はISのボディを頭部、胸部、腕部、脚部に分けて設計します。それぞれ自由に組み合わせて無限に近いバリエーションから選べるのが強みです。ですが隆彦君の適性は最低のE。色々妥協しないといけないことをご了承下さい」

 

「具体的には?」

 

「処理が追い付かないので腕部を武器と一体型の武器腕タイプ、若しくは脚部を動かさなくて良いタンクあるいはフロートタイプにしていただくことになります。これにより処理が軽くなり低い適性でもある程度動くことができます」

 

「タンクで」

 

「即答ですか。まあでしょうね」

 

というもの当然実家である有澤重工を贔屓してしまう。有澤重工は数少ないタンク脚を製造している企業だ。というかISのボディはタンク脚以外作っていない。さらに武器と一体型の武器腕にした場合、脚をタンクにする以上に選択肢が狭まってしまう。それもあっての即答だった。

 

「では脚部は有澤のKIRITUMIと。では他のパーツなんですが、脚を有澤にした影響で実弾防御が桁外れに高くてですね、その代わり光学系に脆くなっています。実弾防御を伸ばすかある程度の実弾と光学系の防御を取るか。どうします?」

 

「どうせなんです。実弾防御に全振りしましょうか」

 

「ではそのように。であれば他は全てGAフレーム一択ですね。それと脚をタンクにしたお陰で積載量……………バススロットに相当の余裕が生じます。正直こちらが用意する全ての武器弾薬を詰め込んで余裕があるくらいです。宣伝も兼ねて全て載せておきましょう。いくら載せても機動性は無いに等しいので」

 

「それは有り難いです。選択肢が多いに越したことはない」

 

「ではこれで終わりです。後は組上がった専用機を持ってきますので楽しみにしててください。恐らく数日で完成します。パーツを組むだけなので。あっ!一番大事なことを忘れてました」

 

「?」

 

「待機状態のデザインですよ!ISは待機時に小物に変化させておけるんです。専用機は常時身に付けておくものなのでどんなのがいいでしょうか?」

 

「例えばどんなのが?」

 

「ブレスレットやイヤリングといったアクセサリーが多いです」

 

「でも俺はアクセサリーを身に付け無いし………………腕時計は!?あれなら付けてても違和感がない」

 

「可能です。ではそのように」

 

それを聞いた企業連の人間はさっさとその場を立ち去る。時間が無いのは彼らも同じなのだ。

 

 

 

数日後

「完成しましたよ!これが隆彦君の専用機です!」

 

「ありがとうございます!」

 

手渡されたのは無骨な腕時計。象が踏んでも壊れなさそうなグレーの外観には小さく地球を象った企業連のロゴが入っている。

 

「ではフィッティングやらを済ませましょう。初期設定だけでも終わらせておかないといけません。場所を変えましょう」

 

 

 

企業連本部

「すげえ。ここが………」

 

「ええ、企業連の本部です。ISは日本が中心なので本部も日本に移設しました。ISが登場する以前はアメリカだったのですが………」

 

有澤重工から程近い近所に企業連本部はあった。ISは日本人が開発したこともあり日本が中心だ。

 

「そしてここが企業連の誇るアリーナです。壁や天井は装甲で覆われておりパイルバンカー程度では穴も空きません。好きなように暴れてください」

 

だだっ広い空間。体育館を大きくしたようなそこは多少の起伏がある大地。無骨な壁と天井がここが室内であることを思い出させる。

 

「取り敢えず今日は展開と軽い移動だけです。訓練は後日シミュレーションで行います。いわば不具合の洗い出しですね」

 

「分かりました。ええっと展開はイメージでしたっけ。ふんっ!」

 

キィィン

 

隆彦を光が包んだ。光が収まるとそこには

 

「「「おお!」」」

 

人より少し大きいくらいのロボットがいた。頭まで覆っており露出が無いためパワードスーツというよりはロボットである。

 

「成功だ!」

 

隆彦を含むその場の全員が歓喜した。

 

 

 

 

 




企業連の製造するボディは全てフルスキンです。なので企業連所属のパイロット以外企業連のボディを使用する人間は皆無です。


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第3話~背負うモノ~

「成功だ!」

 

誰がいったかその言葉を皮切りにその場は歓声に包まれた。客観的に見ればただ待機状態のISを起動しただけ。しかし前代未聞の男性が無事起動できたというのはとても大きい

 

「さて、時間がない。フィッティングやらをちゃっちゃと済ませようか」

 

とはいえフィッティングといってもやることはISを装着したまま異常がないかデータを眺めるだけ。操縦者にISが合わせるためにやることはない。ほどなくして

 

「よし、フィッティング終了。解除して」

 

「はい」

 

シュイン

 

光と共に腕時計に戻るIS。質量保存の法則はどこへやら

 

「さて、後はこっちで武装の搭載やらをやっておきます。あなたはシミュレーションで訓練をしておいてください。それと…………」

 

「?」

 

「専用機ですし名前、大事ですよね?どうしますか?」

 

「名前か…………」

 

そこいらの大量生産品ならいざ知らず唯一無二の隆彦の専用機。有澤らしい名前を考えた結果

 

「KAZAWAだ」

 

「成る程、有澤らしいですね。ではその名前で登録しておきます」

 

 

 

専用機を持ち帰った後はシミュレーションを使った訓練に移行した。シミュレーションとはいえそこは技術力がトンチキな企業連。リアルさは折り紙つき。更に指導役に抜擢されたのが幸か不幸か鬼指導で有名なセレンということもあり

 

「動きが単調だ。良い的だぞ!」

 

「装甲に頼りすぎだ!回避を覚えろ!」

 

「何だその構えは!狙いが雑で無駄弾が多すぎるぞ!」

 

時間がない為に死んで覚える方式でしごかれた結果

 

「オカシイ…………KAZAWAってこんなに脆かったっけ…………実弾相手なのに…………」

 

「少々相性が悪い位で倒せると思ったか?」

 

「すんません。思ってました」

 

専用機を手にして思い上がっていた気持ちを粉微塵に粉砕された隆彦は結局一度も勝てないまま訓練を終えた。片付けを済ませて帰ろうとするとセレンから

 

「結局のところISで一番重要なのはイメージだ。隙間時間でイメトレをしておけ。最後の方はマシな動きになっていたぞ。次会ったときに腕が落ちていたら許さないからな」

 

「イエスマム!」

 

 

 

シミュレーションでの訓練が終わり家に帰った隆彦だが彼に休みは無い。遅れに遅れているISの知識を叩き込む作業が続く。唯一の救いはIS以外の学力は人並みだったことだろうか。しかも僅かな隙間時間は専用機を使うためのイメトレを行う。その結果数日で

 

「くぁwせdrftgyふじこlp………………」

 

立派な廃人が出来上がった。本来ならば何年もかけて行うISの基礎知識を数週間で叩き込んだ上に僅かな隙間時間はイメトレで埋まる。その姿を見た父隆文は

 

「まあ、そうなるな。こればっかりはどうにもしてやれん。出来ることといえばこいつの完成を急ぐこと位か…………」

 

飯時でさえも虚ろな目で飯を食う息子を見た隆文の手元には複数の設計図が握られていた。それには巨大な大砲のような何かが書かれていた。

 

 

 

企業連side

「有澤の息子さんはあの後どうなった?」

 

「専用機のアセンも終わって訓練も終えました」

 

「教官は?」

 

「インテリオルの……………」

 

「あっ(察し)」

 

「当然その後は廃人になってましたがね」

 

「あの人は優秀なんだがスパルタが過ぎるのがな」

 

「まあそのお陰で企業連パイロットもある程度の地位を確保してますし」

 

「だな」

 

一応男ばかりの企業連にも少なからず女性は存在し、当然ISのパイロットも存在している。彼女らは全員が国家代表並みの技量を有しておりそのお陰で男ばかりの企業連は世界である程度の発言力を有している。出回っている全てのISに関わっているというのもあるだろう。そんな彼女たちの指導役がインテリオル出身のセレン・ヘイズだ。

 

「あれだけしごかれれば学園でもある程度の地位を確立できるでしょう。あそこは強さがあればどこまででも上り詰められます」

 

「そうなれば当然」

 

「ええ、我々の力も更に増すでしょう」

 

 

 

入学式前日

「終わ………………た………………」

 

ギリギリではあるが入学式までに済ませておくべき全てを終わらせた隆彦は死にかけだった。無駄に技術力の高い企業連全面協力の下極限まで睡眠時間を削ったスパルタ突貫教育。しかしその効果はあった

 

「これなら………なんとかなるかな?」

 

シミュレーションでのISの戦闘は代表候補生程度であれば三回に一回の確率で勝利できるようになり、IS学園に入学する生徒の平均程度の学力を手に入れた。今まで一切ISに関わっていなかったことを踏まえると驚異の結果である。最も兵器関連の基礎知識はあったが

 

「そうなんだ。俺は企業連の代表だ。恥をかかないように気を付けないと。戦闘での結果を出しつつデータ取りも…………」

 

彼に課せられた企業連代表という肩書きは少年が背負うには重すぎるモノだった。

 

 

 




トレーナーを始めた上にリアルが忙しくなったので更新が遅れます。申し訳ありません。


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第4話~入学~

地獄の毎日を過ごしていた隆彦だが、そんな日々も終わりを迎える。そう、IS学園の入学式がやってきたのだ。何とか基礎知識の叩き込みも間に合った隆彦は疲れはててはいるもののこれから始まる新しい生活に期待を馳せた。

 

「忘れ物は………………無し!というかここで気がついたら忘れ物じゃない!」

 

筆記用具といった基本的な物から企業連との専用連絡端末、一番忘れちゃいけない専用機にその他諸々

 

「よし!行くか!」

 

既に着替えといった大まかな荷物は学園に届いているらしい。隆彦の荷物は鞄一つだけ、隆彦は意気揚々と教室に向かった。

 

 

 

「ここか」

 

今俺は1-4と書かれた教室の前にいる。入学式が一通り終わり既にクラス全員が揃っている状況だ。というのも混乱を避けるために俺ともう一人の男性操縦者は入学式に不参加だったのだ。後は先生に呼ばれるのを待つばかり。それと女子高生はうるさいと聞いたことがあるから耳栓もバッチリだ。企業連の長い話が嫌いな連中が発明した小型でバレにくく聞きたいと思った音は聞こえる便利な耳栓だ。技術の無駄遣いだと思うが企業連はこんな奴らが大半だ。

 

「有澤君入ってきて」

 

呼ばれてしまった。自己紹介とかしなきゃだよな、どうしよどうしよ………落ち着けい!

そうだ。素数でも数えよう。1、2、3、5、7、8、9………なんかちがーう!自分でツッコミを入れたら落ち着いたな。よし、行くか。男は根性!

 

ガラガラガラ

 

きゃあああああああああああああああ! ! ! !

 

それはまさしく音圧だった。後に有澤はこう語る。

 

「女子高生集めたら最強の武器ができそうだ。それと大きすぎる音量に耳栓は意味を成さない」

 

というのも音というのは耳からだけでなく少なからず他の体の部位からも入ってくる。骨伝導のイヤホン等が良い例だ。つまるところ完全には防ぎきれなかった。しかし

 

耳栓がなければ即死だったな………

 

「ええと………取り敢えず自己紹介お願いしてもいいかな?」

 

「ひゃい!分かりましたでございます!」

 

困惑しながらも自己紹介を促す教師に思わずテンパる隆彦

 

いかんいかん平常心平常心………

 

「初めまして。企業連代表をやっている有澤隆彦と言います。色々と迷惑をかけるかもしれませんがこれからよろしくお願いします」

 

よしっ言い切った。台本通りだ。俺ってばやればできる子なんだっ!

 

「それじゃあ次は皆の自己紹介からだね。有澤君はもうやったから出席番号順にやっていこうか」

 

俺は緊張していて一人も顔と名前を覚えられなかったのだった。

 

「自己紹介も済んだところで細かいクラスの役員とか決めよっか。まずクラスの代表。これはクラス対抗戦とかに出る人のことね。推薦や立候補があればお願いね」

 

「はいっ!有澤君がいいです!」

 

マジかよ………どうせ珍しいからだろうな。

 

「いいね彼企業連代表として専用機も持ってるって言うし」

 

オイゴラァァ!て言うかなぜ先生はそれを知っている?まだ言ってないのに。やめてくれストレスが………ん?約一名笑顔じゃなくあれは………尊敬の眼差し?がいるな。珍しいな水色の髪色とか初めて見た。綺麗な赤目で………やべっ目が合った。気まずい………セクハラとか言われないよな!?昨今その辺厳しいし………

 

「他にいないなら有澤君でいいかな?」

 

「一応聞きますが拒否権とかは?」

 

「あるわけ無いでしょ。下調べもしてるよ。企業連の人が自信満々に「シミュレーターで訓練はバッチリだ。そんじょそこらのひよっこには負けんよ」って言ってたし、実力が無いからは通らないよ。だいたいみんなほぼ初心者だしね。知識はあっても普通はシミュレーターすらやってないから。じゃあよろしく」

 

というわけで代表は俺になった。まあ企業連の宣伝にもなるしいいか。よし

 

「クラス代表になりました。有澤です。やれる限りのことはやります。応援よろしくお願いします」

 

「「「「よろしくね!」」」」

 

 

 

 

 

 

放課後、隆彦は担任に呼ばれた

 

「有澤君ちょっといいかな?」

 

「何ですか?休憩時間の質問責めで死にそうなんですが?」

 

「しゃべれるなら問題ないね。はいこれ寮の鍵」

 

「そういえばもらってなかったですね。ありがとうございます」

 

「部屋は一人目の子と二人部屋ね。男同士仲良くなさいな。あっそれと寮監と相手の了承があれば部屋は変えられるから。恋人とか出来ても安心だよ」

 

「出来るといいですがね。俺と趣味嗜好が合う女子なんざいやしませんよ」

 

「そんなこと言わないの。世界は広いんだから」

 

俺だって彼女欲しいけどもこんなロマンたっぷりの趣味嗜好を理解してくれる人が果たしているのかどうか。いてほしいな。企業連には山ほどいたが…………GAの緑色のあの人とか………

 

 

 

 

 

 

 

 

寮の部屋の前

 

「ここか。一応ノックはしておこう」

 

コンコン

 

「どうぞー」

 

元気そうな声が帰ってきた。声的に男だし部屋は間違えて無いようだ。

 

ガチャ

 

「どうも。この部屋を使う有澤だ。よろしく頼む」

 

「俺は織斑一夏!男同士仲良くやろうぜ!」

 

うわあ。第一印象はこれである。凄いコミュ力の高そうな男子だ。顔もイケメンって感じでモテそうだ。

 

「男同士とはいえプライベートもある。まずは色々とルールとか決めていこう」

 

「いいぜ!まずはー………」

 

男同士気兼ねなく話せるのが嬉しいのだろう。彼は終始ハイテンションだった。しかしこいつはやたらと距離感が近いな。これもコミュ力お化けの特徴なのか?ただこいつはあの束博士と仲のいいブリュンヒルデの弟だ。仲良くしておくに越したことはない。もしかしたら一夏繋がりで束博士とも友好関係が、、、無理だろうな。聞いた話によれば博士は天才であるがゆえに孤独で人間不信だと言う。あちらから接触してこない限りは干渉するのはよそう。藪をつついて蛇を出したくないからな。

 

「お前のこと隆彦って呼んでもいいか?俺のことは一夏って呼んでくれ」

 

いきなり名前呼びかよ、だから距離感をだな…………



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第五話~クラス対抗戦 前編~

待たせたな!待っててくれた人がいたかは不明ですが………えー、ぼちぼち再開していきまーす。休止中に一つ小説を書いた影響で書き方とか変わってるかもですがご了承ください。同一人物です。


「おはようございます。今日は待ちに待ったクラス対抗戦ですよ!」

 

遂にこの日が来てしまった。この日まで俺は毎日必死だった。IS関連の知識は頑張ったとはいえ基礎止まり。ついていくのがやっとだった。幸いクラスの皆は優しく、分からないところを教えてくれたりしてくれたお陰でなんとかなった。ただとても腹立たしい出来事が一つ。ルームメイトの一夏がやたらと絡んでくるのだ。勉強があるといってもお構い無し。風の噂ではこいつ参考書を読まずに捨てたとかなんとか。人のことは言えんが大丈夫なのか?こうして勉強している俺ですらギリギリだと言うのに。因みに1組の代表はこいつ、一夏だ。何でも英国代表と一悶着あったらしいが何だかんだで代表になったそうな。

 

「言ってなかったけど対抗戦で優勝したクラスには食堂のデザート無料パス1学期分が贈呈されるから頑張ってねー」

 

先生のその発言の瞬間教室がざわめいた。見回すとクラス全員が俺を見ている。

 

「「「有澤君!私たちのためになんとしても優勝を!」」」

 

やっぱり女子高生は甘いものが好きなんだな。ここでいいところ見せれれば俺も少しはモテるかもしれん!頑張るぞー!

 

★★★

 

そして対抗戦なんだが1組VS2組、3組VS4組となった。1組VS2組に関しては経験の差なのか2組が勝った。何でも中国の代表候補生らしい。平等を期すため俺は戦うそのときまで相手の機体を見ることは出来ない。さて俺の出番だ。行くか。そういえば実際に動かすのは初めてだな。シミュレーター通りにいくといいが、、、システム起動!

 

『おはようございます。メインシステム、パイロットデータの認証を開始します、、、

メインシステム。通常モードを起動しました。これより作戦行動を開始します』

 

補助用のAIだが起動時に分かりやすいように音声が流れる。気持ちを切り替えるという面でも有効だし何よりカッコいい。

 

「よし異常は無さそうだ。KAZAWA 出るぞ!」

 

ピーピーピー!

 

「!?」

 

「すいません、有澤君。重量過多でカタパルトが動かないので自力で出てください」

 

なんとも締まらない出撃となった。

 

★★★

 

結果は圧勝だった。唯一専用機持ちがいない3組は量産機のラファールで来た。開口一番俺に向かって

 

「何なのその機体wダッサw専用機持ちって言うからどんなのかと思ったら。所詮男ってのはこんなものねwしかも無様にピットから落ちて地面を進むだなんて。良い的よw」

 

ブチッ 堪忍袋の尾が切れた。沸点が低い?自分の自慢の機体をバカにされたら誰だってこうなる。ぶちギレた俺は挨拶代わりに右手のWADOUを一発撃ち込んだ。こいつは有澤謹製のグレネードランチャーで火力は折り紙つきである。俺はまあ量産機とはいえ3発はかかるかなと思っていた。俺は自分の会社を甘く見ていた。

 

ボグァァァァァァン!!!!

 

[ラファール・リヴァイブ、シールドエネルギーエンプティ。勝者、有澤隆彦]

 

「は?」

 

想像を絶する爆炎に相手が包まれたかと思えば試合終了のアナウンス。大事なのは爆煙ではなく爆炎ということ。

 

「え?一撃………?」

 

爆炎が収まればそこには縮こまって震える女の子が一人。うっすら膜に覆われている辺り安全装置は働いたようだ。

 

「えーと………大丈夫?」

 

「あつい………いたい………みみがおかしい?きーんって、なにもきこえない………」ガタガタガタ

 

「なんか……ごめんなさい」

 

どうやらトラウマを植え付けてしまったらしい。今後この生徒は相手がグレネードを構えると体が震える症状に悩まされることとなる。なおこの一撃で葬り去った大火力だがギリギリで避けようとして近接信管が作動したものであり、直撃ではないことをここに記す。

 

★★★

 

「さあ決勝戦はどちらも専用機を操る者同士。2組と4組だぁ!」

 

ワァァァァ

 

盛り上がる会場。

 

「2組代表。凰鈴音!中国の代表候補生だー!機体の名前は某有名漫画とは一切関わりはありません!」

 

「対する4組代表は今一番注目されている二人目の男性操縦者。有澤隆彦だー!初戦は圧倒的火力で圧勝でしたが決勝戦はどうなるのか!?では入場してください!」

 

よし行くか。今度はまずは相手の攻撃を受けてみよう。この機体最大の特徴である耐久性をまだ実感出来ていないからな。では、、、システム起動!

 

★★★

 

『おはようございます。メインシステム、パイロットデータの認証を開始します、、、

メインシステム。通常モードを起動しました。これより作戦行動を再開、あなたの帰還を歓迎します』

 

帰還を歓迎しますといってもほんの数分前の話だが、設定上二回目以降はこうなるからしょうがない。とても小柄な相手に驚くが慢心はしない隆彦。何せシミュレーターではフルボッコだったからである。相手が悪かったと言えばそれまでだが

 

「あなたが噂の二人目ね。初戦は圧勝だとか言ってるけどあたしはそう簡単には負けないからね!」

 

この凰という少女は初戦で慢心して挑んだ一夏に思いのほか苦戦したため相手が男でも容赦はしないと決めていたのだ。

 

「しかし見慣れない機体ね。企業連のオリジナルってことかしら。全身装甲だなんて初めて見たわ。それにその脚部パーツは戦車?見た感じ低機動、高火力ってところ?」

 

「ああ。その通りだ。初戦はあっさり終わってしまったからな。楽しませてくれよ!」

 

互いに挑発しあって

 

ビー!

 

戦いの幕開けを告げるブザーが鳴った。

 

★★★

 

ズゴン!

 

「!?」

 

隆彦が開始直後に感じたのは僅かな衝撃。見ればほんの少しだけSEが減っている。

 

「うっそ!?衝撃砲が効いてない!?想像以上ね」

 

驚く鳳。無理もない、一応この衝撃砲は秘密兵器であり当初の予定ではこれだけで削りきる予定だったからだ。一方の隆彦は

 

「何かの攻撃?効いてないし無視でいいや」

 

衝撃砲はいわば空気砲であり弾も砲身も見えない。どうしようかと考えたとき、遠距離が効かないと判断した鳳が巨大なブレードで切り掛かってきた。シミュレーションでさんざんみじん切りにされた記憶が強い隆彦は対抗すべくブレードを呼び出そうとする。近接で射撃武器は不利だ。

 

「さて、武器一覧はってうぎゃ!?」

 

一般的な初心者は声で呼び出す。しかし豊富なバススロットで武器庫とさえ呼ばれるラファール・リヴァイブのさらに数倍のバススロットに武装をてんこ盛りなので全てを把握しきれない。何せタンク脚にしたことで生まれた圧倒的バススロットに各企業が彼らの持っている武装全てをぶちこんだのだ。なお弾薬含めて割と余裕で収まっている。そこでディスプレイからタッチで選ぶ形式にしたのだが………

 

「多すぎ!?」

 

そう、ディスプレイによる補助が必要なレベルで多すぎる武装。お目当てを選ぶのでも一苦労。しかも会社によって表記が異なり、名前もアルファベットと数字の組み合わせなため何が何だか分からない。救いは名前の横に大雑把にブレードだとかライフルだとか書いてあること。名前は編集できそうなので後で分かりやすいように変えようと誓う隆彦。ついでに無断で聞いてない武装もぶちこんだ企業の連中は後で〆ると心に誓う。

 

「ええと………射突型ブレード!?ブレードなのか!?じゃあこれ!」

 

慌ててタップ、と同時にWADOUが消え、そしてその腕に装備されていたのは…………

 

「なんじゃこりゃあああああ!?」

 

鉄塊、皆も一度は見たことがあるブルドーザーの先っちょ部分。

 

「何で解体専用工具が入ってるんだよ!こいつ高層ビルとかを大雑把に潰すやつじゃん!」

 

GAが伊達と酔狂でぶちこんだネタ武器というやつであった。因みに不要になった大型建築をぶち壊して更地にするのにはうってつけである。

 

「ええい!ままよ!」

 

やけくそでドーザーを突き出す。が

 

「当たるわけないでしょ!」

 

鈍重なタンクから繰り出される非常にリーチの短い攻撃。当たるはずもなく

 

「お返しよ!」

 

叩きつけられた巨大なブレード。しかし

 

ガキン!ビリビリ

 

「かった!?てか手が痺れる!?まさかこれ中身は電子機器じゃなくて装甲板!?」

 

下半身のタンク部分はまさに巨大な鉄の塊。そんなものに全力でブレードを叩きつければそうなる。

 

「まじ!?あっ、レーザーブレードじゃないのか。なら安心だな」

 

そう、シミュレーションでみじん切りにされたのは刃が輝くレーザーブレード。実弾防御がトチ狂っているKAZAWAに物理的なブレードは効かない。まあこれがかの零落白夜であったなら話は別だっただろう。

 

「お返しだ!」

 

役立たずのドーザーブレードを投げ飛ばし、呼び出したのは安心と信頼のSAKUNAMI。やはり実家ということもあってか有澤武器の使用率は高い。またさっき使ったWADOUよりも発射速度が早く、使い勝手が良い。グレネード故の至近距離での巻き込まれもKAZAWAなら問題なし。更に腕が痺れた鳳は思わず距離を取ってしまっている。

 

「さあて、仕切り直しだ」

 

そう言って隆彦はSAKUNAMIの照準を合わせた。




色々変更点が多くて最早新作な気が………


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第六話~クラス対抗戦 後編~

「さあて、仕切り直しだ」

 

そう言って隆彦はSAKUNAMIの照準を合わせた。当然その動きは距離を取ってしまった鳳にも見えており

 

『まずい、距離を取っちゃった。衝撃砲は効かないしダメージを与えるには双牙天月でも不十分。SEを削りきるのは諦めるしかないか………』

 

何せ自慢のブレードも弾かれてしまう始末。珍しい全身装甲を採用しているせいで装甲の無い部分を攻めることは出来ない。

 

『なら!』

 

双牙天月を合体させて思いっきりぶん投げる。飛んでいく双牙天月の影に隠れるように突進して距離を可能な限り詰める。一方の隆彦もやられっぱなしではない。

 

「させるか!ほれ!」

 

素早くタップ。さっきのような事故が起こらないように恐らく外れがないであろうジャンル、ガトリングキャノンを選択。背中に三本バレルが目立つガトリングキャノンが装備される。

 

「食らえや!」

 

ドガガガガガガガガ!

 

大口径ゆえに発射速度は普通のガトリングと比べて遅く、発射音は繋がっていない。しかし一発一発の破壊力は申し分ない。あっという間に発射煙で包まれる。

 

「やったか!?」

 

しかし人はそれをフラグという。その言葉への返事は

 

ズガンズガン!

 

何かが切断される音と急に軽くなった背中だった。誘爆も起きているがKAZAWAにダメージを与えるには至っていない。ふと振り返れば

 

「はぁい」

 

大層良い笑顔をした鳳がいた。ぶん投げたブレードをガトリングを発射する寸前で掴んで横へ緊急回避。乱射に夢中な隙を突いて切断という寸法だ。つまりぶん投げたブレードは威嚇目的で隆彦に攻撃させて隙を作るためのもの。

 

「さすがにこれなら効くでしょ!」

 

そして隙をさらした隆彦の後頭部へ零距離の衝撃砲。SEは削れずとも衝撃で気絶させれば判定勝ちになる。最も

 

「ところがどっこい、効いてないんだなぁ」

 

気絶させられれば、の話だが

 

「そい」

 

そして仕留めたと思って隙を見せた鳳のISの一部を掴んで

 

「捕まえた」

 

ドゴォォォォォォン!

 

大爆発が二人を包んだ。その瞬間

 

[甲龍、シールドエネルギーエンプティ。勝者、有澤隆彦]

 

勝負が決まった。ISが解除されて事件にへたりこんでいる鳳にキャリキャリとキャタピラを響かせながら近づく。

 

「流石は中国の代表候補生、良い戦いだった。ありがとうございました」

 

「こちらこそ。まさか負けるなんてね、でも次は負けないから!ところで………」

 

「ん?」

 

「最後のあれなに?一応あたしのSEほとんど残ってた筈なんだけど…………」

 

「あれは張り付かれてどうしようもなくなったときの最終手段、グレネードアーマー、と俺は呼んでいる。簡単に言うとISの回りにグレネードを展開しての自爆技さ、狙わなくていいから即座に使える。自爆だから自分もダメージを受けるけどな」

 

見ればあの頑丈極まりないKAZAWAのSEが半分にまで減っている。

 

「うそ………あたしのSEを一撃で吹っ飛ばした爆発を食らっても半分しか減ってないの…………うわぁ」

 

鳳は本気でドン引いていた。なお普通のISよりもかなりSEが豊富なKAZAWAの半分なので耐久に乏しい(それでも標準的な量だが)ラファールの8割程の量は残っていたりする。

 

「今回は負けたけど……次は勝つからね。待ってなさいよ!」

 

「当然だ。楽しみに待ってる!」

 

隆彦はそう言って自分のピットに戻るのだった。

 

★★★

 

ピットには担任の先生が待っていた。

 

「最高だよ、有澤君。とてもいい試合だった。やはり企業連の報告通りかなりの実力のようだ。後は慣れだけね。取り敢えず、おめでとう!」

 

「ありがとうございます」

 

そしてこのあとスイーツ食べ放題を勝ち取った隆彦はクラスでもみくちゃにされるのだった。そしてしばらくの間は体重計の設置してある辺りから悲鳴が聞こえることとなる。

 

★★★

 

表彰式等が全て終わり放課後。俺は勉強の合間にISのディスプレイを開いていた。武装の整理のためだ。

 

「今日は武装を選ぶのにかなりの時間を使ってしまった。俺の機体の強みは多種多様な武装を扱える点だからな。武器の名前も分かりやすいものに設定しておこう。覚えやすくすればタップしなくても口頭で呼び出し、更には無言で出せるようになる。まずはそこを目指すか」

 

見慣れた有澤製品はともかく、特にGAの武装名はおんなじようなアルファベットと数字の組み合わせ。名前を変えて、間違ってもドーザーを使わないようにするのだった。

 

★★★

ところ変わってここは企業連、マッドサイエンティストの巣窟、トーラス社。ここで一人の博士が今後の世界を揺るがすとんでもない発見をした。

 

「やったぞこれが新物質、名付けてコジマ粒子だぁぁぁぁ!これなら攻撃と防御を両立できる。レーザーなんざ目じゃねぇ。しかもエネルギー問題も全て解決だ!ああ、ここまで長かった。隕石から漏れでた謎の緑色の粒子を持ち帰って研究すること数年。今では粒子の増産まで可能になった。ふぅ………ゲホッゴホッ!?なんじゃこりゃ、こいつは………血?なんだ!?全身が痛い!そして謎の倦怠感…………これは………やべぇぇぇぇ!!」

 

児島博士の新発見に大騒ぎだった。なお研究者は博士一人だったため彼以外に被害者は出なかったのが救いである。

 

★★★

 

企業連side

 

「報告によるとこの企業連のメインサーバーにハッキングの形跡があったとのことだったな」

 

「はい。ですが形跡だけでファイアウォール等は突破されていません。ギリギリでしたが」

 

「うちの技術者はみな優秀だ。一つの事しかできん代わりにその分野においては世界一を誇る。そんな彼らが作ったファイアウォールを破壊一歩手前までいくとは。まあ誰がやったかは察しがつくがな」

 

「やはりあの博士でしょうか?」

 

「他に誰がいる。大方今回のクラス対抗戦で目をつけられたのだろう。どうやら乱入を企てていたらしいがうちの誇るアリーナの天井が破れず撤退したらしい。有澤さんのところとインテリオルが手を組むとああなるとはな。重すぎてISには採用できないのが悔しいな。タンクにすら載せられないのならば施設防衛にしか使えん。」

 

「アリーナは無事でしたが今後は大丈夫ですかね?相手は天才もとい天災博士ですよ?一回防がれた程度で諦めるとは思えません。いつか直接ここへ乗り込んで来るかも」

 

「こちらには全てに秀でる天才はいないが一つの事に秀でる技術者を全ての分野に持っている。もし乗り込んで来たのならば、その時は盛大に歓迎しよう」

 

そう話していた時だった。突然ノックも無しに部屋の扉が開かれる。息を切らした社員が

 

ガチャ!

 

「大変です!トーラスの連中が、、、」

 

「またか………取り敢えずは博士のことは保留でいいだろう。まずやるべきは奴ら、トーラスの変態技術者どもの説教だな。あいつらは加減を知らん」

 

「ですね。行きたくないなぁ」

 

そう言うと彼らは説教のためにトーラス社に電話をかけるのだった。

 

★★★

そして舞台はトーラス社へ戻る。そこには会議室で正座させられている児島博士とそれを睨み付けている企業連の重役。何せ発見が発見だ。

 

「で、この惨事をどうするのかね?」

 

「これは所謂コラテラルダメージというものに過ぎない。目標達成のための、致し方ない犠牲DA」

 

「ほほう、で、トーラス社の研究棟全てが緊急閉鎖されて業務が滞っている事に対しては?」

 

「反省も後悔もしておりません!ええ、決して粗方研究が終わったからと増殖装置を暴走させたりなんて決して!」

 

「加減しろ馬鹿!安全が確保されるまではあの粒子は封印だ!で、毒性は?」

 

「体験した限りですと………吐血、倦怠感、寒気、その他体調不良のオンパレードでした。助けに来た者は数分でぶっ倒れてましたが」

 

「ずっと触れあっていて慣れたのか………ともかく、封印だ。他にはないか?」

 

「毒性………といって良いのか分かりませんが無機物を急速に劣化させる効果も見られます。あの粒子に鉄の塊を触れさせ続けたところ数週間で鉄がポロポロと崩れて………」

 

「研究棟から必要なものを全て運び出せ!引っ越しだ!コンクリートで何重にも固めるぞ!」

 

発見したのはいいが、性質がとんでもない粒子。幸いなのは放射線のように物質を貫通する事が無いため密閉さえしていれば汚染が広がることはない。

 

「小瓶一本だけ粒子の持ち出しを認める。とにかく研究を続けてこれらを解決しろ。何をやらかすか分からんからその小瓶には常に監視を複数人付ける。いいな?」

 

「……はい」

 

不本意そうな博士。この粒子が未来で世界を揺るがすことになろうとはこの時誰も予想だにしていなかった。



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