比企谷八幡とイナズマイレブン (チャキ)
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第1話

どうもチャキです!第1話どうぞ!


八幡side

 

オレは今、家の近くの河川敷でサッカーの練習をしている。もちろん1人でだ。え?サッカーは1人でするもんじゃないって?そりゃわかってるんだよ。オレも1人じゃなくて他のやつともやりたいさ。けど、この腐った目だからって一緒にして貰えなかった。だからこうして1人でドリブルやリフティングやシュートの練習をしている。

 

八幡「はぁ…やっぱ1人じゃな〜…」

 

すると…

 

「なぁ!そこのお前!」

 

八幡「ん?」

 

何やら声がしたので、そっちの方へ無理向いてみると、そこには同じ雷門中のジャージに、オレンジのバンダナと、こげ茶色でネコ耳のように逆立った髪をした男子がいた。

 

八幡「もしかして、オレを呼んだのか?」

 

「ああ、そうだ。なんでお前は1人でサッカーしてるんだ?」

 

八幡「いや、なんでって…一緒する奴がいねぇんだよ」

 

「え?そうなのか?」

 

八幡「ああ、こんな見た目だから一緒してくれねぇんだ」

 

「そ、そうだったのか…なんかスマンな」

 

八幡「いや、気にするな。もう、慣れてるから」

 

「慣れてるって…」

 

バンダナをつけた男子は苦笑していた。だって実際に慣れてるからな。

 

「だったらオレと一緒にしようぜ」

 

八幡「は?お前と?」

 

「ああ!1人より2人でやった方が楽しいだろ!」

 

八幡「まぁ、確かに1人よりは良いかもな」

 

円堂「だろ!あ、オレ円堂守。よろしくな!」

 

向こうが名乗ったんだ、こっちも名乗らないとな。

 

八幡「比企谷八幡だ」

 

円堂「よし、比企谷!シュート打ってこい!」

 

八幡「円堂、お前ゴールキーパーできるのか?」

 

円堂「あったりまえよ!オレのポジションはキーパーだからな」

 

八幡「そうなのか」

 

円堂「ああ。比企谷、お前はどこのポジションなんだ?」

 

八幡「オレか?オレはキーパー以外ならどこでも」

 

円堂「そっか。じゃあこい!」

 

八幡「わかったよ。じゃあいくぞ!」

 

オレはボールを置き助走をつけてシュートを打つ。オレのシュートは右に曲がる。円堂からしたら左に曲がっているはずだ。でも円堂はそれを瞬時に反応してシュートを止める。

 

円堂「いいシュートだ!」

 

八幡「止めたくせによく言うぜ」

 

円堂「はははっ、よしもっと打ってこい」

 

八幡「よし!」

 

そして円堂からボールを受け取り、またシュートを打つ。今度はさらに回転をかけ右にさらに曲がる。けどまた止められる。

 

円堂「すげぇ回転だな」

 

八幡「あ、ああ。1人でいつも練習してからな」

 

円堂「あはは…」

 

その後も円堂に向かって何度もシュートを打つ。止められたりしたが、逆に入ったりもした。

 

円堂「なぁ比企谷」

 

八幡「なんだ?」

 

円堂「サッカー部に入らないか?」

 

八幡「は?ウチの中学にはサッカー部ないはずだが?」

 

円堂「ないんなら作るんだよ!」

 

八幡「は?作る?サッカー部をか?」

 

円堂「ああ、そうだ!」

 

八幡「作ってもいいが、部員集まるのか?」

 

円堂「それだったら探すんだよ!」

 

八幡「ああ、そうかい。で?部員はお前だけか?」

 

円堂「いや、もう1人いる」

 

八幡「へぇ〜」

 

いるんだね。というよりコイツすげぇ暑苦しいやつだな。というよりサッカー部作るのにかなり熱が入っているようだ。でも、この数分間円堂とやっていると楽しかった。こんな思いは初めてだ。他の人とやるとこんなにも楽しいだなんて。

 

「あ、やっぱりここにいた」

 

八幡「?」

 

何やら声がしたので、そっちを見てみるとそこには、緑がかった髪の外ハネとヘアピン、そして同じ雷門中の制服を着た女子がいた。誰だ?

 

円堂「お、木野」

 

お前の知り合いか。そしたらもう1人の部員ってもしかしてコイツなのか?

 

木野「もう、探したんだからね」

 

円堂「悪い悪い」

 

木野「まったく…ん?そちらの方は?」

 

円堂「ああ、コイツは比企谷。今、一緒に練習してるんだ」

 

木野「そうなんだ。あ、私木野秋って言います」

 

八幡「比企谷八幡だ。同じ学年だから敬語はいいぞ」

 

木野「わかった」

 

円堂「それでさ木野。比企谷にサッカー部に入らないか誘ってたところなんだ」

 

木野「そうなんだ」

 

円堂「ああ!それで比企谷。どうだ?一緒にサッカー部作らないか?」

 

八幡「そうだな…」

 

木野「?どうかしたの?」

 

八幡「あ、いや。今まで誘ってもらえた事なかったから、ちょっと驚いてるんだ」

 

木野「そうなんだ」

 

円堂「でも今は違う!オレがお前を誘ってるんだ。だから一緒にサッカーやろうぜ!」

 

確かに今は円堂に誘ってもらえている。それは驚きもあるが、嬉しさもある。今まで誘って貰えなかったオレがこうして誘ってくれる人がいるんだからな。

 

八幡「ああ、いいぜ。サッカー部に入る」

 

円堂「本当か!?」

 

八幡「ああ」

 

円堂「あはっ!やったぁぁぁーー!」

 

円堂はその場でジャンプをして喜んでいる。

 

円堂「よろしくな!比企谷!」

 

八幡「お、おう」

 

というか暑苦しいやつだな。松岡〇造かよ。でも、コイツと一緒にサッカーをやるのも悪くないかもな。

 

木野「よろしくね。比企谷君」

 

八幡「ああ、よろしく」

 

 

 

そして翌日オレ達はサッカー部を作った。かなりボロい部室だがその中にはサッカー部の看板があった。

 

円堂「本当にサッカー部はあったんだ!」

 

八幡「みたいだな」

 

ここサッカー部は無いとか言ってたけど、本当はサッカー部はあったんだな。けど、なんで無くなったんだ?

 

円堂「よし!サッカー部設立だな!」

 

木野「そうだね」

 

八幡「まぁ、それはいいけど。その前に」

 

円堂「なんだ?」

 

八幡「ここ、部室にするのならまず掃除しようぜ。見る限りガラクタが沢山あるし、物置みたいになってるだろ」

 

木野「そうだね。まずは掃除からだね」

 

円堂「よし、それじゃあ掃除をはじめようぜ!」

 

円堂の一言で掃除が始まる。オレと円堂は中にある重いものを運ぶ係、木野は軽いものとかを運んだり、拭き掃除など役割を分担して掃除をした。そして中の掃除が終わると次は外の掃除だ。部室の壁や屋根などを拭いてキレイにする。これだけでもマジ疲れるな。そして……

 

 

八幡「ハァ〜…やっと終わった」

 

木野「おつかれさま比企谷君」

 

八幡「ああ、マジ疲れた」

 

木野「あはは…」

 

円堂「これでよしっと」

 

円堂はそう言ってサッカー部の看板を部室の前にかける。

 

円堂「これでサッカー部の設立だ!」

 

八幡「ああ…そうだな」

 

円堂「なんだ比企谷。元気無いな」

 

八幡「掃除して疲れたんだよ。普段教室の掃除でもここまでしねぇからな」

 

木野「まぁ、確かにそうだね」

 

円堂「でもこれでやっとサッカーできるんだ!嬉しいだろ!」

 

八幡「そうかもしれねぇが未だに3人しかいないんじゃな」

 

円堂「それは探したり、入ってくれるのを待つだけだ!」

 

八幡「……そうだな」

 

でも、やっぱり思ってしまう。ホントに入ってくれる奴なんているのかと。でもそう思っていたら2人入ってきた。1人は染岡、もう1人は半田という。この時マジで入ってきたと思った。

 

円堂「ほら比企谷見ろ!2人も入ってくれたんだぞ!」

 

八幡「お、おう。そうだな」

 

染岡「よろしくな」

 

半田「よろしく」

 

八幡「お、おう。よろしく?」

 

木野「なんで疑問形?」

 

八幡「仕方ねぇだろ。こういうのには慣れてねぇんだからよ」

 

まぁ、でも入ってくれたのはありがたい。今までは円堂と2人で練習してたからな。と言っても基礎練習みたいなものだけどな。そして、その日から2人を加えた練習もした。パス練習やリフティングやドリブルに守備練習それにシュート練習もした。2人の時と違って効率も良くて中々良い練習ができる。でも時々他の部活の人とトラブルになったりしたけどな。そんなこんなで1年が経過した時、更にこのサッカーに入部してくれる人が現れた。しかも4人も。1人目は宍戸、2人目は少林寺、3人目は栗松、4人目は壁山が入ってきてくれた。全員1年生だけどな。けど、入ってきてくれたのは嬉しい。それにオレもだんだん円堂達といるとやっぱり楽しいと思えるようになってきた。

 

 

…けれどそれでも人数は揃わない。オレを含めても8人。そんな人数ではサッカーなんてできないし、グラウンドも他の部活に取られたりしてまともな練習ができない。そしてだんだん他の奴らもやる気を無くしてしまった。

 

そんなある日

 

円堂「さぁ、練習だぁ!」

 

勢いよくドアを開け、暑苦しく宣言する円堂。

 

円堂「さぁ、練習……」

 

そしてまた円堂が声をかけるが他の奴らは一向に動こうとしない。栗松はゲームをして、宍戸はその横で見ている。染岡は椅子に座り腕を頭の後ろで組んでいる。半田はマンガを見ていて、壁山はお菓子を食っている。少林寺、改めて少林はなんかカンフーのポーズをとっている。あと、少林というのはみんなそう呼んでいるからオレもそう呼んでいる。

 

円堂「どうしたどうした。ずーっと、練習してないんだぞ」

 

まぁ、確かに練習はしていない。

 

染岡「グラウンド借りられたのかよ」

 

円堂「…そ、それはこれからまた、ラグビー部に交渉して」

 

半田「だと思った」

 

栗松「どうせ笑い者になるだけでやんすよ」

 

宍戸「八人ぽっちならテニスコートだけでも十分だろうって」

 

半田「グラウンドが空いてる日にやればいいんじゃないの」

 

壁山「そうそう」

 

少林「空いたことないけど」

 

おいおい、コイツら言いたい放題だな。まぁ、事実だけどよ。

 

円堂「俺達はサッカー部なんだ!」

 

そう言って部室に貼ってあったポスターを叩き。

 

円堂「フットボールフロンティア今年こそこれに出ようぜ!な、半田、染岡」

 

半田「無理無理」

 

円堂「な、壁山、少林」

 

壁山「…」

 

何も言わない壁山、少林。

 

円堂「な、栗松、宍戸」

 

栗松「部員8人じゃ試合にならないでやんす」

 

ゲームしながら言うなよ。

 

円堂「お前らな!サッカーやりたくてサッカー部に入部したんだろうが!サッカー部がサッカーをやらなくてどうすんだよ!」

 

そう言って部室を出ていく円堂。まぁ、ある意味正論だな。

 

半田「何1人で暑くなってんだ?」

 

染岡「頑張ってもしょうがないさ。もうすぐ廃部っていう噂もあるしな」

 

「「「「「廃部!?」」」」」

 

え!マジかよ。廃部って…なんのために円堂と一緒にこのサッカー部を作ったんだ。オレも1人ではなくて他の人達とサッカーをやりたいからこのサッカー部に入部したんだ。でも、どうすれば…まぁ、今は考えても無駄だ。廃部も所詮噂だ。嘘に決まってる。そう思い部室を出ると1人でボールを蹴ってる円堂がいた。

 

円堂「お、比企谷。一緒に練習しないか?」

 

八幡「いいぞ」

 

そして少し円堂とパス練習をしていると…

 

木野「円堂くーん、比企谷くーん」

 

八幡「ん?」

 

オレと円堂を呼ぶ声。それはウチのサッカー部のマネージャーの木野だった。

 

円堂「おう、木野」

 

八幡「うっす」

 

木野「ごめん、グラウンド借りられなくて」

 

円堂「仕方ないさ」

 

木野「みんなは?」

 

円堂「いつもと同じ」

 

木野「練習しろって言ってこようか?」

 

八幡「言っても無駄だろ」

 

木野「またそういう事言う」

 

八幡「事実だろ?」

 

木野「そうかもしれないけど」

 

円堂「木野ありがとう。でもいいよ。そのうちやる気になってくれるさ」

 

八幡「そうだと良いけど」

 

円堂「大丈夫さ!アイツらだって本当はサッカー大好きなんだから」

 

八幡「かもな」

 

木野「じゃあまた河川敷行くんだ?」

 

八幡「河川敷?何しに行くんだ?」

 

円堂「実は小学生チームの練習に付き合ってるんだ」

 

八幡「へぇ〜」

 

木野「でも小学生相手で練習になってるの?」

 

確かにそうだな。

 

円堂「ああ……。けどアイツら結構やるんだぜ!木野も比企谷も見りゃわかるって」

 

八幡「そこまで言うんなら見てみようかな」

 

円堂「本当か!ありがとうな!」

 

そして時間は夕方になる頃オレと円堂は河川敷で小学生チームと練習をしていた。小学生だと思っていたら、コイツら少しだがやる。シュートの狙いやカット、ドリブルも中々やるようだ。

 

円堂「どうだ比企谷」

 

八幡「確かに少しはやれるようだな。お前が指導してんのか」

 

円堂「ああ、まぁな」

 

そしてその後も練習が続いた。オレも混ざり練習をした。こうやって見ると、小学校低学年の頃の小町を思い出すな。あ、小町は死んでないぜ!死なせはせんよ。生きてるよ。今は小学校高学年だからな。そんな時1人の小学生の男子が円堂に向かってシュートを打つ時。

 

「今度こそ俺が決めてやるー!見ろ俺の必殺シュート!」

 

そう言ってボールを蹴ったがボールはゴール出なくて横に飛び、近くを歩いていた人の前を通り過ぎる。

 

「「っ!」」

 

なんかヤバそうな人達だな。見るからに高校生ぐらいの人達だ。

 

「誰だ!これを蹴った奴は!」

 

円堂「だ、大丈夫ですか?すいませんでした。あのボールを…ぐっ!」

 

八幡「っ!」

 

円堂はもう1人の高校生に腹を蹴られて、膝を地面につける。

 

木野「円堂君」

 

「ボールってこれか?」

 

そう言ってボールの上に座る高校生。チッ!

 

「あれ?雷門中じゃねぇの?部員全然いねぇ弱小サッカー部ですよ」

 

「くだらねぇ。ガキ相手に玉蹴りか?」

 

「ヤスイさんお手本見せてやっらどうです?」

 

「いいねぇ。やってやろうじゃねぇの。ぺっ」

 

そう言ってボールに唾をかける高校生。

 

円堂・八幡「「っ!」」

 

コイツ!なんてことをしやがる。

 

「あらよっと!」

 

そしてボールを蹴るが流石初心者。ボールは大きく曲がる。けど、曲がった先には一緒に練習していた小学生がいた。ヤバい!けどここからじゃ間に合わねぇ!どうしたら…と思っていたら河川敷の上から1人の青年が走ってきた。見た目は白く逆立った髪で、白のパーカにオレンジジャケットみたいなのを着ている。その青年はジャンプをして飛んできたボールを蹴り、さっきボールを蹴った高校生の顔面に当てる。うわぁ…痛そう。けど、少しスカッとした。

 

八幡「すげぇ…」

 

するともう1人の高校生が

 

「てんめぇ!」

 

と言うと青年はその高校生を強く睨んだ。

 

「ひっ!お、覚えてろよ!」

 

そう言ってのびている高校生を担いで走って去っていった。

 

「ありがとう」

 

小学生がお礼を言うとすごい優しそうな笑顔を向ける。そしてポケットに手をつっこみ去ろうとした時

 

円堂「待ってくれ!」

 

円堂が呼び止めようとする。

 

円堂「お前のキックすごいな。サッカーやってんのか?ね?どこの学校なんだ?良かったら一緒に練習しないか?」

 

円堂よ、さすがに初対面で図々しくないか?けど、その青年はちらっと円堂を見ると、何も言わずに去っていった。

 

円堂「あ、おい」

 

円堂は止めも残念そうな顔をしている。

 

八幡「おい、円堂。流石に初対面で図々しくないか?」

 

円堂「でも、一緒に練習した方が楽しいじゃないか」

 

八幡「そうかもしれないが相手の事も考えろよ。まず、お礼を言うとかさ」

 

円堂「あ、そうだった。あは、あはは…」

 

まったく……コイツと言うやつは。

 

 

 

八幡「だでーま」

 

小町「あ、おかえりお兄ちゃん。遅かったね。もしかして練習?」

 

八幡「まぁな」

 

小町「そっか。じゃあご飯の前にお風呂入ってきてね」

 

八幡「はいよ」

 

けど、あの時の奴。ホントすごいキック力だったな。オレもあんな風に蹴ってみたいもんだ。

 

 

 




いかがでしたか?ではまたお会いしましょう。


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第2話

どうもチャキです!第2話どうぞ!


八幡side

 

河川敷の練習から翌日。どうやらオレのクラスに転入生が来るらしい。誰だろうがオレには関係ねぇと思っていたら、その転入生はあの河川敷で出会った青年だった。すると…

 

円堂「あー!」

 

と指をさしながら叫ぶ円堂。とりあえずお前めっちゃ目立ってるからな。

 

担任「なんだ?知り合いか?」

 

円堂「いや、その知り合いって訳じゃあないんですけど」

 

担任「いいから座れ」

 

円堂「あ、はい」

 

そう言って座る円堂。そして隠れてガッツポーズをとる。わかりやすいやつだな。そして担任の先生が転入生の豪炎寺の事を説明する。どうやら前はサッカー名門、木戸川清修にいたらしい。そして休み時間になると円堂が豪炎寺の席へと向かっていく。おいおい、早速かよ。

 

円堂「豪炎寺、昨日自己紹介してなかったからさ。俺、円堂守。サッカー部のキャプテンやってるんだ。ポジションはキーパー」

 

おお、すげえぐいぐい行くなおい。

 

円堂「お前も入らないか?木戸川清修ってサッカーの名門だもんな」

 

確かにサッカーの名門だが、部活は個人が決めるもの。誘うのは良いが、あんまりしつこい勧誘はダメだろ。

 

円堂「どうりであのキック。凄いはずだぜ!」

 

確かにすごいキック力だった。けど、何やら浮かばない顔だな。

 

豪炎寺「サッカーは……もうやめたんだ……」

 

円堂「やめたって、どうして」

 

豪炎寺「俺に構うな」

 

何やら訳ありのようだ。円堂も円堂で何残念そうにしてるんだよ。すると…

 

半田「円堂。冬海先生がお前を呼んでる。校長室に来いってさ」

 

冬海先生、名目上サッカー部の顧問らしい。けど顧問らしい事したことは何一つ無い。しかも何考えてるのかイマイチ分からん。

 

円堂「校長室?」

 

半田「大事な話があるらしい。俺、嫌な予感がするんだ。例えば、廃部の話とかさ……」

 

円堂「廃部ぅ!?」

 

木野「私もそんな噂聞いたけど……」

 

マジかよ。本当にその噂あるんだ。全然気にしてなかったからな。

 

円堂「冗談じゃないぞ!廃部にされてたまるか」

 

そう言って校長室へと向かう円堂。そしてオレは自分の席から立ち豪炎寺の席に向かう。何をするかって?そりゃ…

 

八幡「豪炎寺」

 

豪炎寺「なんだ?」

 

八幡「昨日、河川敷にいたんだけどさ。その時に小学生の女の子を助けてくれてありがとうな」

 

豪炎寺「え?」

 

八幡「それだけだ」

 

そう言って自分の席に戻る。

 

 

そして場所は変わり部活。円堂からありえない話を聞く。それは練習試合をすることになった。その相手はなんとあの帝国学園だった。しかも負けたら廃部らしい。おいおい、マジかよ。もう、これって確実に廃部決定じゃん。

 

円堂「やるさ!廃部になんてされない!きっちり11人揃えてやる!」

 

宍戸「相手は帝国ですよ。無理、絶対無理」

 

少林「ボコボコにされて恥かくだけですよ」

 

半田「はぁ、結局廃部って事か」

 

壁山「この部室ともおさらばですね」

 

お前らの言いたいことは分かる。相手はあの帝国だもんな。ここまで頑張ったのに廃部か……。まぁ、人生諦めが肝心って言うしな。

 

円堂「お前らな!サッカーを愛する気持ちがあれば、不可能だって可能になる!何も始まってもないのに諦めちゃダメだ!諦めちゃダメなんだよ!」

 

っ!オレは何をやってたんだ!オレはサッカーを…円堂達とサッカーをしたくてこのサッカー部を作り入部したんだ!確かにやる前から諦めちゃダメだよな。円堂…ありがとう。助かった。そして円堂は部員の勧誘へと出かけた。オレ?オレは1人で練習。オレも勧誘したいけど、この見た目じゃあな。なので1人で練習をしているのである以上!

 

そして放課後オレは鉄塔広場へと向かっている。なぜって?だってそこにはアイツがいるからな。ん?アレは…豪炎寺?なんでここに?まぁ、いいや。そう思いながら豪炎寺とすれ違い、坂を登っていくと…

 

「おりゃあ!」

 

ほら聞こえた。この声の主は円堂。ここで練習しているから来てくれって言われたしな。登りきると、そこには円堂がタイヤに吹っ飛ばされる姿だった。

 

円堂「イッテテ…ん?比企谷!比企谷じゃないか!来てくれたんだな!」

 

八幡「お、おう。それよりすげえ練習だな」

 

円堂「へへっ。まぁな」

 

八幡「手伝うぞ」

 

円堂「本当か!ありがとう!」

 

そこからオレと円堂の2人だけの練習が始まった。というか他の奴らは来ねぇのか?まぁ、いい。オレは木にぶら下がっているタイヤを円堂に向かって投げる。

 

八幡「おらっ!」

 

円堂「ぐあ!」

 

タイヤにまた吹っ飛ばされる。

 

八幡「大丈夫か!円堂!」

 

円堂「あ、ああ…大丈夫だ。続けてくれ」

 

八幡「良いんだな」

 

円堂「ああ!」

 

八幡「よし!行くぞ!」

 

円堂「おう!」

 

八幡「っら!」

 

再びタイヤを投げる。

 

円堂「うあっ!」

 

そしてまた吹っ飛ばされる。

 

円堂「いてて」

 

八幡「おい、大丈夫か?」

 

円堂「あ、ああ…なんとか」

 

助け起こそうと駆け寄ると

 

「無茶苦茶だなその特訓」

 

八幡・円堂「「ん?」」

 

声をかけられたのでそっちを見てみると、そこにはロングの青髪で、後ろに髪をまとめてポニーテールにしており、左目は髪に隠れていた。

 

円堂「風丸!?」

 

八幡「知り合いか?」

 

円堂「ああ!俺の友達」

 

風丸「風丸だよろしく」

 

八幡「比企谷だ」

 

風丸「そうか比企谷か。それにしても変な特訓だな」

 

円堂「ああ、アレだよ」

 

そう言って円堂は近くにあったノートに指を指す。ちょっと休憩のついでに見せてもらったが、まったく読めない。めっちゃ字が汚い。

 

風丸「読めねぇ…比企谷はどうだ読めるか?」

 

八幡「いやさっぱりわからん」

 

風丸「だよな。お前これ読めるのか?」

 

円堂「うん、読めるよ。シュートの止め方が書いてあるんだ」

 

風丸・八幡「「へぇ」」

 

そんなことが書いてあるんだ。

 

円堂「それ書いたのじいちゃんなんだよね」

 

じいちゃん?お前のおじいさんか。

 

円堂「ああ、俺が生まれる前に死んじまってるけどね。昔雷門サッカー部の監督だったさ。その時作ったノートらしいんだけどさ。帝国学園はスピードもパワーも想像以上さ。そいつらのシュートを止めるには、じいちゃんの技をマスターしなきゃいけないと思ってさ」

 

風丸「お前、本気で帝国に勝つつもりなんだ」

 

円堂「ああ!」

 

風丸「ん」

 

風丸はそう言って円堂に手を差し出す。なんだ?

 

円堂「え?何?」

 

風丸「お前のその気合いのった!」

 

円堂「ありがとう風丸!」

 

風丸「俺はやるぜ!お前らはどうするだ?」

 

円堂「え?」

 

そう言って風丸の視線の先を見ると染岡達がいた。

 

円堂「みんな!あだ!」

 

円堂は盛大にもつれて倒れてしまう。何やってんだよ。

 

壁山「キャプテン!」

 

栗松「大丈夫でやんすか?」

 

そう言って壁山と栗松は円堂を助け起こす。

 

染岡「帝国と試合する前にお前の方がバテるぞ」

 

円堂「へへっ。大丈夫だって」

 

風丸「コイツら俺が来るよりも前からお前達の事見てたみたいだぞ」

 

円堂「え?」

 

八幡「ああ、だからあんなに視線が感じたのか」

 

半田「気づいてたのか?」

 

八幡「フッ、ぼっちは視線に敏感なんだよ」

 

染岡「お前それ、自分で言って悲しくないか?」

 

八幡「うっせ」

 

全然悲しくないんだからね!……キモイなオレ。

 

円堂「何言ってんだ!比企谷はぼっちなんかじゃない!俺達がいる!」

 

八幡「あ、ああそうだったな。悪いそれで?」

 

半田「あ、ああ。円堂が他の運動部に声をかけてるの見てたら」

 

染岡「ちょっとな…」

 

栗松「その特訓もなんかこう胸がジーンと暑くなってきたでやんす」

 

宍戸「キャプテン!比企谷先輩!俺も特訓一緒にやらせてください」

 

少林「俺も!」

 

栗松「俺もやりたいでやんす」

 

壁山「一緒にやってもいいスっか」

 

八幡「お前ら…どうするよ円堂」

 

円堂「あったり前じゃないか!大歓迎だよ!おお!俺すげえ嬉しい!やろうぜ!」

 

「「「「「やろうぜ!」」」」」

 

円堂の一言で空気が変わり、みんなで猛特訓が始まった。タイヤ引きや、オフェンスやデフェンスの練習、など色々やった。結構色んな特訓をやった。

 

円堂「よし!やるぞ!」

 

「「「「「おう!」」」」」

 

人数は少ないがみんなが一致団結した瞬間だった。オレも性格に似合わず掛け声なんかもした。

 

そして試合当日。このサッカー部に入部してくれた人が1人いる。

 

円堂「みんな紹介するよ。今日の試合助っ人に入ってくれる、松野空介だ」

 

マックス「僕の事はマックスって呼んでいいよ。君たちのキャプテン見ていると、なんだか退屈しなさそうだなって思ってさ」

 

染岡「退屈って遊びじゃあねぇんだぜ試合は」

 

マックス「心配いらないよ。サッカーはまだやった事無いけど、こう見えて器用なんだよね」

 

円堂「と言うことだ!期待しよぜ!」

 

半田「しかし、これでもまだ10人だぜ」

 

「11人だけど」

 

半田「っ!ごめん影野気づかないで」

 

円堂「影野のも入部したんだっけな」

 

あー、そういえばそうだったな。オレも忘れてた。悪い影野。

 

影野「いいのさ。俺はもっと存在感を出せる男になりたくて来たんだからね。フッ、フッフッフッ」

 

なんとも不気味な笑い方だな。でもこれでやっと11人揃った。そして時間になったのでグラウンドの方へと向かう。するとうちの雷門中の校門に大きい車が止まる。え?もしかしてあれが帝国学園の車?マシかよ。すると車のドアが開き、レッドカーペットがしかれる。そして帝国学園のサッカー部の人達が出てくる。そして円堂が帝国学園のキャプテンとおもられる人に近づき。というかなんでゴーグルとマントつけてるの?まさか厨二病?

 

円堂「雷門中サッカー部のキャプテン円堂守です。練習試合の申し込みありがとうございます」

 

と律儀に挨拶をする。アイツがあんな挨拶ができるだなんて思わなかったわ。

 

「初めてのグラウンドなんでね。ウォーミングアップしてもいいか?」

 

円堂「え、あ、どうぞ」

 

その一言で帝国のウォーミングアップが始まる。これで少しは帝国の動きが分かるかもしれないと思った。けど、それは予想を遥かに超えていた。スピードもパワーも予想以上だった。

 

八幡「マジかよ」

 

染岡「あんなのとやるのかよ」

 

ごもっとも。これはさすがにヤバいだろう。なんでウチと練習試合をしようと思ったんだ?するとゴーグルをかけた帝国のキャプテンが指パッチンをすると周りにいた奴らが、ソイツにボールを回し、円堂に向かってシュートする。円堂は何とか止めたが、グローブが少し焦げていた。うわぁお、すげえな。

 

円堂「面白くなって来たぜ!」

 

そう言って両手を叩く円堂。いや、何一つ面白くないからな。

 

円堂「よぉし、一週間の練習の成果!こいつらに見せてやろうぜ!みんな!」

 

「「「「えええっ!?」」」」

 

いやいや、確かに昨日までは諦めたらダメだって思ったけどさ。さすがにこれは無理だろ。

 

壁山「あのー…ちょっとキャプテン」

 

円堂「?なんだ?」

 

壁山「俺…トイレ行ってくるっす」

 

円堂「え?あ、おい壁山!」

 

ええ〜…ここでトイレっすか壁山さん。マジかよ。

 

「どうするんだ?アイツが抜けたことにより人数は足りなくなったぞ。あと1人いるのかなぁ?」

 

くっ!あの1人はいねぇ。このままじゃ試合が出来ねぇ。くっそ!こうなったら。

 

八幡「おい、お前ら壁山探すぞ!」

 

円堂「そ、そうだな。よし!壁山を探しに行くぞ!」

 

「「「「お、おう…」」」」

 

なんだか元気の無い部員。そしてオレ達は壁山大捜索が始まった。トイレに行くって言ってたけど、どこまで行ったんだよアイツは。

 

円堂「あ、比企谷。壁山見つかったか?」

 

八幡「いや、見つかんねぇよ。もし、見つかったら言ってるし」

 

円堂「だよな」

 

ホントどこいったんだよ。

 

半田「おーい、円堂、比企谷」

 

八幡「半田か。そっちはどうだ?壁山見つかったか?」

 

半田「いや、どこにも」

 

円堂「ったく…どこいったんだ」

 

八幡「まったくだな」

 

アイツが行きそうなところは全部回ったけど、見つからない。ホントどこいったんだよ。すると…

 

栗松「うわぁぁぁ!」

 

栗松のは叫び声が聞こえた。そっちを見るとロッカーがガタガタと動いていた。まさかポルターガイスト?んなわけねぇよな。

 

円堂「そこにいるのか壁山?」

 

と言ってロッカーを開けると、なにかの衝撃で円堂は軽く吹っ飛んだ。

 

壁山「ど、どうもキャプテン。…どうも」

 

「「「壁山…」」」

 

八幡「お前、どうやって入ったんだ?」

 

半田「確かに…」

 

ロッカーには壁山が入っていたが、サイズが合わないのか、ロッカーはボコっと膨れていた。

 

円堂「そんなことより、何やってんだよ。早く出ろよ」

 

壁山「それがその…抜けられないんすよ。助けてください」

 

そう言ってジャンプをする壁山。

 

栗松「ならそのままサッカーすればいいでやんすね。鉄壁の守り。なんって」

 

壁山「そんな〜!出して欲しいっす!うわっ!?」

 

その時ロッカーがツルッと滑り倒れてしまう。

 

八幡「ハァ…どうする?」

 

円堂「どうするって言っても…」

 

ホントどうやって出そうかと思っていたら…

 

少林「俺がやってみます!キャプテン!比企谷先輩!」

 

八幡「少林?」

 

円堂「わかった少林!頼むぞ!」

 

そして少林はロッカーの底にめがけて飛び蹴りをする。するとその衝撃でロッカーから壁山が出てくる。

 

壁山「で、出れた」

 

八幡「壁山…なんであんなところにいたんだ?」

 

壁山「すいません。俺ちょっと怖くなったんす」

 

円堂「壁山。逃げたら何も始まらない。一度逃げたらずーっと、逃げ続けることになる。そんなのカッコ悪いだろ!」

 

壁山「きゃ、キャプテン……」

 

弱気になる壁山を円堂は熱く語りかける。

 

壁山「俺、やるだけやってみるっす」

 

円堂「その意気だ壁山」

 

壁山「比企谷さんもすみません」

 

八幡「別に気にしてないから大丈夫だ」

 

壁山「はいっす!」

 

よし、これで全員揃ったことだし、グラウンドへと向かう。するとそこには1人の男子生徒がいた。誰だ?

 

八幡「コイツ誰?」

 

目金「僕は目金欠流」

 

木野「彼サッカー部に入ってくれるって」

 

八幡「へぇ〜、じゃあ君ベンチね」

 

目金「ええ!?僕、11人目じゃないんですか!?」

 

八幡「ああ、そうだけど。な?」

 

半田「ああ、君を入れて12人だ」

 

目金「何でですか!?僕が颯爽と11人目になって弱小サッカー部を救うはずが……!」

 

ああ、うるせぇな。てか何言ってんだコイツ?

 

八幡「うるせぇぞ。いいからベンチにいけ!」

 

目金「いいんですか!?いいんですね!?」

 

オレは目金の言うことを無視してグラウンドへ入る。

 

審判「これより、帝国学園対雷門中学の練習試合を始めます」

 

整列する雷門イレブンと帝国イレブン。入部して初めての試合、一体どうなるのか分からないが、やれるだけやるか。

 

審判「両キャプテン。コイントスを」

 

しかし、帝国のゴーグルを付けたキャプテンはポジションにつこうとする。

 

審判「鬼道君。コイントスを」

 

なるほどアイツの名前は鬼道と言うのか。

 

鬼道「好きに始めろ」

 

なるほど、強者の余裕か。そしてオレ達のフォーメーションは4-4-2となっている。因みにオレは染岡とツートップとなっている。

 

八幡「行くぞ染岡」

 

染岡「おう」

 

そして試合開始のホイッスルが鳴る。オレはキックオフで染岡にパスをする。染岡はバックパスでマックスへと渡す。そして再び染岡へと渡る。すると帝国の2人が染岡へスライディングをするが、それを染岡はジャンプをして躱す。そしてまたドリブルをするがまた1人染岡へと接近する。

 

八幡「染岡こっちだ!」

 

染岡「おう比企谷!」

 

オレは染岡からパスを受け取る。そして再び染岡へと渡す。染岡とワンツーパスで帝国を躱す。するとまた1人染岡へと接近する。すると染岡の左に風丸が上がってくる。

 

風丸「染岡、パスだパス」

 

そう言うと染岡は風丸にパスが通り、染岡、マックス、宍戸とパスが通る。中々いい感じにきている。けど、かなり強いと言われている帝国相手に上手く行きすぎじゃねぇ?宍戸のセンタリング。半田が合わせると見せかけスルーし、染岡がシュートを放つ。誰もがゴールが決まると思った瞬間、帝国ゴールキーパーはなんなんキャッチする。

 

「鬼道。俺の仕事はここまでだ」

 

そして相手キーパーの仕事終了宣言。なんかヤバそうだ!そう思いオレは一足先に戻る。

 

鬼道「ああ。始めよう……帝国のサッカーを」

 

始めるって…一体何を始めるんだよ。

 

鬼道「行け」

 

鬼道がパスを出し、受け取った選手はピッチ中央。センターラインからシュートを放つ。やっぱりな!

 

八幡「おらっ!」

 

オレはそのロングシュートを止めるため蹴り返そうと、ボールを蹴る。

 

円堂「比企谷!」

 

鬼道「ほう…」

 

オレは足を踏ん張り蹴り返そうとするも威力が高すぎる。ここまでレベルが違うのかよ。

 

八幡「ぐわぁ!?」

 

オレはシュートを抑えられず吹っ飛ばされる。けどさっきよりかは威力を落とせた。それにゴールに近づくにつれて威力も落ちるはずだ。そしてそのシュートを円堂は何とか止める。けど円堂の身体は少し後ろへ下がっていた。

 

少林「大丈夫ですか?比企谷先輩」

 

八幡「あ、ああ。何とかな」

 

鬼道(アイツ…他の奴らより早く自分の陣地に戻っていた。中々勘のいい奴だな。面白い)

 

そしてボールは鬼道に渡る。その鬼道にオレは向かっていく。

 

鬼道「豪炎寺以外にも面白そうな奴がいるんだなんてな」

 

ほう…

 

八幡「お前らの目的は豪炎寺かよ…オレらは眼中に無いと言うわけか」

 

なるほど豪炎寺目的でオレ達と練習試合を申し込んできたのかよ。コイツら絶対舐めてやがるな。

 

鬼道「じゃあな」

 

八幡「なっ!」

 

鬼道はオレを難なく突破する。そしてその後は意図も簡単にゴールを奪われる。その後オレ達は相手の動きについていけないまま、前半が終了した。得点は10対0で負けている。ベンチに行くと木野の隣に女子生徒が座っていた。誰だ?それより全員息が上がっている。

 

風丸「どうなってんだアイツら。誰一人息が乱れてないぜ」

 

マックス「そりゃそうさ。奴ら走ってないからね」

 

少林「僕らずっと遊ばれてるって感じですよ」

 

だろうな。目的が豪炎寺だからオレらには興味はないだろうな。

 

円堂「くそっ。このまま終わってたまるか。後半は奴らを走らせて消耗させるんだ」

 

八幡「それをしたら余計オレらが消耗するだけだ」

 

円堂「うっ…けど!勝利の女神がどちらに微笑むかなんて最後までやってみなくちゃ分からないだろ!そうだろ!なぁ?皆!」

 

しかし、この円堂の熱い雰囲気の語りですら誰一人賛同しない。いや、体力も無いし、何言ってるか訳分からんし。

 

審判「後半を開始します。集まってください」

 

審判からの後半開始宣言。チームメイトも前半と同じポジションにつく。審判のホイッスル。帝国ボールで後半戦が開始された。ボールは鬼道へ。

 

鬼道「行くぞ……デスゾーン開始。そして奴を引きずりだせ!」

 

そう言ってボールを高く上げ、前を走る三人の選手の真ん中辺りに飛んでいく。そこで三人の選手はジャンプ。ボールを中心に正三角形の頂点の一で回転。黒というか紫のオーラを纏いながら三人同時に蹴る。ものすごいスピードと威力だ。ブロックする暇も無い。そして、帝国のシュートは円堂に向かっていく。

 

円堂「止めてやる!」

 

円堂は真正面からボールを受け止める。けど、止めきれず円堂共ゴールに突き刺さる。

 

八幡「マジかよ…」

 

こんな状況だけど、オレ『マジかよ』って言い過ぎじゃねぇ?

 

 

 

 




いかがでしたか?ではまたお会いしましょう。


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第3話

どうもチャキです!今までセリフの前に名前を出していましたが、今回は無くしてみました。どっちがいいか教えてください。では第3話どうぞ!


八幡side

 

さっきのデスゾーンのシュートで11対0となってしまった。完全に帝国がこの試合を支配している。一体どうすれば……。

 

「続けろ。奴をあぶり出すまで」

 

来るまで?まさか豪炎寺が来るまでの間何をする気だ。

 

「サイクロン!」

 

帝国ディフェンダーの蹴りによって出来た竜巻で飛ばされる半田。

 

「百列ショット!」

 

空中で連続キックをして放つ。けど円堂は止めることができず得点が決まってしまう。さらにボールをわざと人に当てたりしている。

 

「キラースライド」

 

「うわぁ!」

 

足が何本にも見えるスライディング。それから次々とゴールが決まってしまう。なんだよこれ…これが帝国サッカーなのか。その後も次々とシュートも決まり、みんなボロボロになっていく。そして、得点は18対0になってしまう。

 

「でてこいよ。さもないとあの2人を…」

 

「叩きのめす!」

 

鬼道が言った2人とは円堂とオレだ。オレと円堂は帝国の攻撃陣により、人間サンドバッグ状態になっていた。顔面、腹を交互に攻撃される。

 

「ああ…アイツら…」

 

「ゴールを決めることが目的じゃない。円堂と比企谷を潰すのが目的」

 

まだまだ続く人間サンドバッグの中、風丸が…

 

「ふざけるな…こんなの…こんなのサッカーじゃねぇ!」

 

「「風丸!」」

 

風丸はそう言ってオレと円堂を押しのけ帝国が打ってきたシュートをヘディングで防ぐ。がその反動なのか自分自身がゴールへと飛ばされる。

 

「うぅ…」

 

「風丸…」

 

「風丸大丈夫か」

 

オレと円堂は風丸の元へと駆け寄る。

 

「円…堂…比企…谷…」

 

これはダメだ。風丸はもう試合をできる状態じゃない。

 

「円堂、風丸を目金と交代しよう」

 

「あ、ああそうだな!おい!目金!風丸とこうた…あれ?目金の奴どこ行った?」

 

「は?」

 

そう言われてベンチの方を見ると目金の姿がなかった。おいおい…どこ行きやがったんだ?まさか逃げたんじゃ……。これじゃ交代できねぇ……。

 

「スマン風丸。交代をすることが出来なくなった」

 

「お、俺は…大丈夫だ」

 

いや、大丈夫な訳ねぇだろ。

 

「お前の気持ち受け止めたぜ」

 

「ああ、そうだな」

 

オレは風丸をゴールから離れた場所にうつす。

 

「スマンなこんな所に置いてしまって」

 

「気にするな…いいから早く」

 

「ああ」

 

オレはそう言ってゴールへと向かう。

 

「絶対!このゴールは守ってみせる!」

 

そうだ!風丸が身を張って守ったんだ!絶対に決めさせちゃならない!

 

「フッ、1度としても守れてないがな。いや、1回だけだがな」

 

言わせておけば……。すると鬼道はボールを上にあげる。そして

 

「百列ショット」

 

またあのシュート。そのシュートは円堂めがけて飛んでいく。

 

「このシュート決めさせてたまるもんか!」

 

そう言って両手でシュートに立ち向かう。けど円堂の身体はだんだんゴールの方へと向かっていく。このままじゃ!そう思いオレは円堂の後ろに回り、円堂の背中を両手で押さえる。

 

「比企谷!」

 

「よそ見するな!止めるぞ!」

 

「!ああ…!」

 

オレと円堂の力で帝国のシュートを止めようとする。けれどこれでもまだパワーが足りない。けど諦めない!

 

「「うおおおおぉぉぉぉ!!」」

 

声を出して止めるようとしたが、パワー負けしてしまいボールオレと円堂と一緒にゴールへと突き刺さる。

 

「うわぁ!」

 

「ぐあぁ!」

 

くっそ!止めることが出来なかった。

 

『ああ!惜しい!2人がかりで止めたかに見えたか、円堂、比企谷。だがボールのパワーはそれを遥かに超えてゴールの中へ、帝国はこれで19点目』

 

うるせぇな。なんだアイツは?実況かよ。

 

「無様だなぁ」

 

「無理だな」

 

「お前らでは俺らから一点を取ることすらな」

 

笑う帝国イレブン。ダメだ。正論に加えて体力も残ってない。くっ……これが実力差か。そしてオレの心は折れようとした時だった…。

 

「まだだ!」

 

と隣で円堂の声が聞こえた。

 

「まだ……終わってねぇ。まだ……終わってねぇぞ!」

 

「っ!」

 

そうだ!オレは何勝手に折れようとしてたんだ。1人が諦めてねぇんだ。だからオレも折れちゃダメなんだ!オレと円堂はボロボロの身体を無理やり起こす。そしてまた人間サンドバッグ状態になってしまう。そして…

 

「「ぐあぁ!」」

 

また2人でシュートを止めようとしたが呆気なくゴールが決まってしまった。

 

『ゴーーーール。これで帝国は20点目!』

 

くっそ!くそくそくそくそ!負けてしまうのか…これで本当にサッカー部は廃部になってしまうのか……。せっかく円堂達とやるサッカーが楽しいと思えてきたのに……本当に終わりなのか…。すると…

 

「誰だアイツ!」

 

「あんな奴うちの学校にいたか?」

 

観客達そう騒ぎ立てる。一体なんだ?と思い見てみると、そこには目金が着ていたユニホォームを着た豪炎寺がグラウンドへと入ってきた。アイツ…。

 

『おや?彼はもしや、昨年のフットボールフロンティアで、一年生ながらその強烈なシュートで一躍ヒーローとなった、豪炎寺修也!その豪炎寺君が、なんと雷門のユニフォームを着て、我々の前に登場!』

 

あまりの事に冬海先生と審判が駆け寄る。

 

「待ちなさい!君はウチのサッカー部では……」

 

「良いですよ。俺たちは」

 

冬海先生の言葉を遮る鬼道。

 

「それでは、帝国学園が承認したため!選手交代を認める!」

 

審判の宣言により、豪炎寺の参加が決定した。

 

「豪炎寺!やっぱり来てくれたか!」

 

円堂は豪炎寺の肩に手をかけるが崩れる。

 

「ああ、大丈夫か?」

 

すかさず豪炎寺が支える。

 

「遅すぎるぜお前!」

 

「ホント…もっと早く来て欲しかったもんだぜ」

 

「フッ」

 

豪炎寺が参加するということで風丸と豪炎寺を交代させる。そして風丸がいたポジションには少林、少林がいたポジションにはオレが入り、オレがポジションには豪炎寺が入る。そしてオレ達のキックオフで始まるがすぐにボールを奪われてしまう。

 

「行け。デスゾーン」

 

鬼道からフォワード陣へボールが渡る。そして、デスゾーンを放つ。 

 

「よし」

 

『走ったぁ!何故か豪炎寺、円堂を全くフォローせず!一人帝国ゴールに上がっていく!』

 

アイツ…まさか!

 

「なに?」

 

『目金と同じ敵前逃亡かぁ?』

 

違う!アイツは信じてるんだ。円堂がボールを止めて、そのボールが来ることを。すると円堂から今までにない力を感じる。その力はオレンジ色にも見える巨大な右手。その右手でガッチリとシュートを止める。けど…

 

「ぐっ!」

 

相当ダメージが大きいみたいだ。これじゃ豪炎寺にパスを送れない。だったら……

 

「円堂!こっちだ!」

 

オレは円堂にパスを要求する。

 

「!そうか。頼むぞ!比企谷!」

 

そう言ってロングスローでオレにボールが渡る。ああ、言われなくても。円堂が体を張って止めったボールは絶対に豪炎寺に繋げる。

 

「いかせるか!」

 

そう言ってオレを止めにかかる帝国。ここで止められる訳には行かないんだ!その時内側から力がは触れてきた。けど、今は繋げることで集中しており、その事に気づかない。そして一瞬オレの姿が消える。

 

「なっ!消えた!」

 

敵が驚いているとオレの姿が現れる。その現れた場所はさっき向かって来てた敵の後ろだった。そして無意識にオレはこう言っていた。

 

「ファントムドライブ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ファントムドライブ

 

一瞬にして自分の姿を消し相手の背後に現れるドリブル技。

 

※黒〇のバスケのバニシングドライブみたいな感じのやつです。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『なんと!比企谷が必殺技で帝国を抜いた!』

 

「豪炎寺!頼むぞ!」

 

相手を突破したオレは豪炎寺にパスを出す。オレからパスを受け取った豪炎寺はボールを高く上げ、自分もジャンプする。そして炎を纏い

 

「ファイアトルネード」

 

左脚でシュートを放つ。ボールは炎を纏いキーパーに止められることなくゴールへと入っていく。これでやっと1点決まった。

 

「ただいま、帝国学園側から試合放棄の申し出があり!ゲームはここで終了!」

 

『なんと!ここで帝国学園は試合を放棄!これは実質雷門側の勝利とも言える展開です!』

 

まぁ、確かに名目上そうかもな。

 

(円堂守、比企谷八幡か…思わぬ収穫があったな)

 

そして帝国イレブン達は乗ってきた車に乗り帰って行った。

 

「よく来てくれたなぁ。これで、新生雷門サッカー部の誕生だ。これから一緒にやっていこうぜ豪炎」

 

と言いかけると豪炎寺はユニフォームを脱ぎ円堂にユニホォームを投げ渡される。

 

「……今回限りだ」

 

そう言って去っていく豪炎寺。 

 

「あ、豪炎寺。ありがとな!ありがとう!」

 

周りは止めないのかという意見に、いいんだと答える円堂。

 

「さぁ見ろよみんな。この1点!この1点が雷門の始まりさ。この1点が俺たちの始まりさ!」

 

そう言って人差し指を上にあげる。すると周りの奴らも一斉に上げ出す。え?何これ?良くみんな合わせられるね。不思議だよ。

 

「ほら、比企谷も」

 

と誘ってくる円堂。周りも期待の眼差しを向けてくる。

 

「わ、わーたよ。ほら、これでいいか?」

 

「ああ!ニヒッ」

 

そう言って笑い出す円堂。まぁ、たまにはこういうのもいいかもしれないな。

 

「というか比企谷。いつの間にあんな必殺技身につけたんだ?ファントムドライブって」

 

「確かに」

 

「すげえ必殺技だったな」

 

上から半田、染岡、円堂と言ってくる。

 

「いや、正直オレにもわからん。気づけば体が勝手に動いてそう言ってたんだ」

 

「それでもすごいじゃないか!よーし!みんな!比企谷に負けずに俺達も頑張ろうぜ!」

 

「「「「「おう!」」」」」

 

ホントあの必殺技はたまたまなんだけどな。しかもファントムドライブって…厨二病かよまったく。

 

そして翌日部室で会議している。

 

「帝国戦で俺達の問題がわかったそれで…」

 

「問題点も何もまず体力無さすぎ」

 

マックスが円堂の言葉を遮り事実を言ってくる。その一言で周りは酷く落ち込む。まぁ、本当のことだからな。

 

「あ、ゴメン。今の凹んだ?」

 

ああ、バッチリ凹んだよ。

 

「円堂。話を続けてくれ」

 

「まぁ、体力作りはもちろんなんだけど、こんなフォーメーションを考えたんだ」

 

そう言ってホワイトボードにフォーメーションを書く円堂。そのフォーメーションは帝国戦で使ったフォーメーションはオレと染岡のツートップと、染岡のワントップのフォーメーションだった。ワントップになると4-5-1となる。そんな会議中に

 

「あの~キャプテン」

 

「ん?なんだ?」

 

「この間の豪炎寺さん呼べないんですかねぇ」

 

「そうだよねぇ〜結局のところあの一点。豪炎寺君のシュートだったんだからねぇ」

 

宍戸と敵前逃亡を図った目金が言う。

 

「今の俺たちじゃ、あんな風になれないっす」

 

壁山も続けて言う。すると染岡が急に立ち上がり

 

「あんなのは邪道だ……俺が本物のサッカーを見せてやる」

 

と言うがね。この世はそういう風にできている。

 

「豪炎寺はやらないんだろ?」

 

「それは分からないけど……」

 

「円堂までアイツを頼りすぎだ」

 

「そ、そんなことは」

 

「俺たちだって出来るさ。もっと俺たちを信じろよ」

 

染岡の苛立ちはますます上がっていく。そんな時部室のドアが開く。

 

「皆お客さんよ……何かあったの?」

 

「いや、ちょっとな」

 

「それで客って誰だ?」

 

「あ、うん。どうぞ!」

 

木野の一言で入ってくる客。その客というのはウェーブがかかった茶色の長い髪に赤色のつり目。制服は一般の生徒と違って赤を着ていた。コイツは我が雷門中の理事長の娘、雷門夏未が入ってきたのだ。なんでコイツがここに?

 

「くさいわ」

 

と鼻をつまみながら一言漏らす。

 

「こんな奴。何で連れてきたんだよ」

 

「話があるって言うから」 

 

明らかに苛立つ染岡。落ち着けよお前。そんなカリカリしてたら高血圧になるぞ。

 

「帝国学園との練習試合。廃部だけは逃れたようね」

 

「お、おう」

 

なんか圧力がやべぇな……理事長の娘マジパネェ…。

 

「これからガンガン試合していくからな」

 

「次の対戦校を決めてあげたわ」

 

え?練習試合?早くない?そんなに決まるものなの?

 

「次の試合……!」

 

喜ぶ円堂を筆頭としたサッカー部の面々。まぁ、喜ぶのはいいが雷門を無視するのはやめてあげてね。オレも昔やられたことあるから。

 

「おい、お前らまだ話終わってねぇんだ。最後まで聞け!」

 

「ああ、そうだな。悪い、続けてくれ」

 

「ええ、次の対戦相手は尾刈斗中よ」

 

「オカルト中?」

 

「尾刈斗中よ。でも、ただ試合をやればいいってだけじゃないわ」

 

「また、負けたら廃部か?」

 

「ええ、その通りよ」

 

「……またかよ…………」

 

「ただし、勝利すればフットボールフロンティアへの参加は認めましょう」

 

おお…マジかよ。

 

「精々頑張ることね」

 

そのまま去っていく雷門。フットボールフロンティア……日本一の中学サッカー部を決める大会か……。これに参加できるということで盛り上がるサッカー部部員。

 

「フットボールフロンティア…これに出られるのか」

 

「ああ、みたいだな」

 

「喜ぶのは早い。俺たちは次の試合に勝たない限り出場できないんだぞ」

 

「染岡の言う通りだよ。そもそも負けたら廃部だし」

 

「皆。この一戦絶対に負けられないぜ。練習やろうぜ!」

 

「「「「おう!」」」」

 

そして放課後、グラウンドはラクビー部に占領されているので、オレ達は今、河川敷で練習をする。けど、何を焦ってるのか染岡はラフプレーを連発をしている。そんな中、帝国学園戦でいた新聞部の音無が練習の見学ということで見に来ていて尾刈斗中には怖い噂があるとかでそれを教えてくれた。

 

「尾刈斗中と試合した人達は3日後に全員高熱を出して倒れるとか」

 

「高熱?」

 

「尾刈斗中の中に風邪でも引いてる奴でもいたんじゃないか?」

 

「あのな。もし、風邪でも引いていたら、試合自体出れねぇだろうが」

 

「あ、確かに」

 

ちょっとは考えれば分かるだろう。

 

「ハァ…まぁいいや。音無、続けてくれ」

 

「はい、続けますね。尾刈斗中が負けそうになるとすごい風が吹き、結局試合が中止になっちゃうとか」

 

すごい風?

 

「尾刈斗中のゴールにシュートを決めようとすると、足が動かなくなるとか」

 

「そんな怪奇現象みたいなのが本当に起きるのか」

 

「噂ではそう言ってます」

 

「そうか……。ま、所詮噂は噂だろうしな」

 

「比企谷の言う通りだ!」

 

そう噂は噂だ。そんなの誰が嘘っぱちを言ってるだけだ。

 

「けどやっぱり豪炎寺さんを」

 

「そうでやんすね」

 

「なんだ!お前ら!豪炎寺なんかに頼らなくても俺がシュートを決めてやる!フォワードならここにいるぜ」

 

そう言って自分に指を指す染岡。因みにオレもフォワードできるから行けるぜ。

 

「おう、その勢いだ。なんか豪炎寺、豪炎寺ってそりゃ染岡も怒るって」

 

「そうだな」

 

「ま、元からいるメンバーで頑張るってのもいいかもしれないしね」

 

「そうだな」

 

「でも、キャプテン。もしあの時豪炎寺さんが来てくれなかったらオレ達廃部だったんすよ。今度だって…な?」

 

弱気の言葉を言う宍戸。近くにいた栗松と少林に同意を求める。

 

「負けられない試合だってキャプテンも言ってたじゃないですか」

 

まぁ、確かに負けられない試合だけどよ。

 

「みんな人に頼ってたら強くなれないぞ!」

 

「そうだ!」

 

円堂と染岡が正論を言う。染岡はいつもまともな事言ってるが、円堂がまともな事言うだなんて…。ま、たまに役に立つ事言うけどな。

 

「よし!みんな!練習だ!」

 

「おう!」

 

「「「「「おう!」」」」」

 

円堂の一言で練習を再開する。オレも練習再開する前に。

 

「音無」

 

「はい、なんですか比企谷先輩」

 

「尾刈斗中の事教えてくれてありがとうな。オレら尾刈斗中の事全然知らなかったから助かったわ。と言っても個人的にだけど」

 

そういうと、音無はすごい明るい顔になり。

 

「はい!お役に立てて何よりです!」

 

「じゃそういうことだ」

 

オレはそう言って練習を再開する。それからオフェンスとデフェンスに別れて練習をする。そんな中オレがボールを持ちゴールへと上がっていると

 

「行かせないぞ!」

 

そういう言って風丸が立ち塞がる。パスを出そうとするが周りはマークされてパスが出せない。だったら…

 

「これならどうだ!ファントムドライブ」

 

「っ!消えた!?」

 

「こっちだ!」

 

風丸がオレを探している間にオレは風丸の後ろにいた。

 

「いつの間に!」

 

「いいぞ!比企谷。そのまま打ってこい!」

 

「行くぞ円堂!」

 

オレは足を大きく振りシュートを放つ。けれど円堂は横っ跳びでキャッチする。

 

「いいシュートだ!よし!次行くぞ!」

 

そう言って円堂はボールを高く蹴りあげる。やっぱり円堂からゴールを奪うのはまだまだ先のようだな。そしてちょっとした休憩時間。風丸が話しかけてきた。

 

「やっぱりすごいな比企谷のあの技」

 

「そうか?」

 

「ああ、一瞬どこいったかわからなかったからな」

 

「そうか。けどまだまだだ。もっと身につけないといざと言う時に出来なかったらダメだしな」

 

「そっか。比企谷ならできるさ!」

 

「ありがとよ」

 

こうやって誰かに応援してくれたのは初めてだな。悪い気持ちじゃない。ホントオレは円堂とサッカー部作って良かったと思う。けれど、ドリブル技だけじゃなくてシュート技も使えるようになりたいしな。頑張って練習するしかないな。けどどんなシュート技が良いんだろうか。誰かのシュート技を真似するとか?けど、今まで見てきたシュート技は、百列ショット、デスゾーン、そしてファイヤートルネードの3つ。この中で真似するとしたら…やっぱりファイヤートルネードだろうな。けどまるまる真似するのはダメだろうだから、少しアレンジしてみるとか、もしくは名前を変えるとかするか。よし、そうと決まれば早速練習だな。

 

 

 

 

 

 




いかがでしたか?ではまたお会いしましょう。


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第4話

どうもチャキです!前回は入れませんでしたが、今回の話ではセリフの前に名前を入れてみました。これでどっちがいいのかまた教えてくれれば嬉しいです。それでは第4話どうぞ!


八幡side

 

サッカー部での練習を終えた後、1人でシュート技の練習することにした。前まで1人で練習してたし、何も問題ない。けれど、難しいな。というか豪炎寺の奴、すげぇなあのファイアートルネードをいとも簡単に使ってるんだからな。そう思いオレはまた回転しながらジャンプをする…が、途中でバランスを崩してしまい地上へと落下した。

 

ドサッ!

 

八幡「った!……やっぱできねぇのかな。違う技にした方がいいのかな。……いや、諦めねぇ…ものにしてみせる!」

 

あんなすごい技を見せられたんじゃ負けられない。染岡だって頑張ってるんだ。オレも諦めずに頑張ってこの技を完成させるんだ。そしてその後もひたすら練習したが、何も掴めないまま家に帰り寝た。そして翌日、病院から円堂が出てくるのが見えた。

 

八幡「円堂?」

 

なんで円堂が病院から出てくるんだ?もしかしてどっか悪いのか?そう思いオレは円堂を追いかけた。

 

八幡「おい、円堂」

 

円堂「ん?ああ、比企谷か」

 

八幡「お前どっか悪いのか?」

 

円堂「え?なんでだ?」

 

八幡「いや、たまたまお前が病院から出てくるのを見えてたな。どっか悪いのかなって思ってさ」

 

円堂「あ、ああ…そうなのか…なぁ、比企谷」

 

八幡「あん?」

 

円堂「俺もう豪炎寺を無理に誘わない事にした」

 

八幡「は?いきなりなんだよ」

 

豪炎寺を誘わないって言ったて。お前前まで豪炎寺をサッカー部に毎日の如く誘ってたくせに。どういう風の吹き回しだ?

 

八幡「というか何かあったのか?」

 

円堂「比企谷はすごいな。分かっちまうんだな。なぁ、この後、ちょっと時間あるか?」

 

八幡「ああ、良いけど」

 

オレと円堂は場所を変えて話すことにした。ベンチに座った円堂が口を開く。

 

円堂「実は豪炎寺が病院に入っていくのたまたま見つけてさ。どっか悪いのかなって思って後を追ったんだ」

 

八幡「なんだ、ストーカーしてたのか」

 

円堂「違うわ!」

 

八幡「悪い悪い冗談だ。それで?」

 

円堂「ああ、それで途中で見失って」

 

何してんだよ。

 

円堂「そしたら近くの病室のドアが開いて豪炎寺が出てきたんだ」

 

八幡「ほう…病室ということは誰かの見舞か?」

 

円堂「ああ、豪炎寺の妹だった」

 

八幡「へぇ〜、豪炎寺に妹いたんだな」

 

知らなかった。あの豪炎寺に妹がいるなんて。

 

円堂「でもその妹、眠り続けてるらしいんだ」

 

八幡「え?」

 

円堂の言葉に驚きを隠せなかった。

 

円堂「1年前のフットボールフロンティアの決勝で、豪炎寺の応援に行く途中で事故にあってその日から目を覚まさないらしいんだ」

 

八幡「1年前…ということは木戸川と帝国の戦いか?」

 

円堂「ああ」

 

八幡「そうか……そんな事があったんだな」

 

円堂「後、比企谷。俺が話したのにこれを言うのもなんだけど、この事他の奴らには」

 

八幡「わかってる。言うわけないだろ」

 

円堂「サンキュー」

 

そしてオレ達は家に帰るため別々の道を歩き進めた。そしてまた翌日、部室に行くと…

 

音無「新聞部の音無春奈。今日からサッカー部のマネージャーします。皆さんの練習を見てるだけじゃ物足りなくて、だったら一緒の部活をした方が早い、そう思ったんです。新聞部の取材力を活かして、皆さんのお役に立ちたいと思います。よろしくお願いいします」

 

と言って一礼する音無。すごいなあんな長ゼリフ噛まずに言えるだなんて。

 

木野「ってわけ」

 

円堂「え?あ、よろしく」

 

半田「音無?」

 

マックス「やかましの間違いじゃ」

 

おいそこ!やめてやれよ。確かにグイグイ来るやつだけど、やめてやれよ。けどうちの学校兼部ありだっけ?知らなかったよ。

 

音無「比企谷先輩!」

 

八幡「お、おう。どした?」

 

音無「これからよろしくお願いします」

 

八幡「お、おう。よろしく」

 

まぁ、でも1人マネージャー増えて木野も少しは楽になるだろうし、良いかもな。そして今日も河川敷で練習するのでオレ達は河川敷に向かうとそこには先客がいた。それは何本もシュートを打っている染岡だった。

 

円堂「染岡。頑張ってるな」

 

染岡「円堂……へっ、上手くいかねーよ……。なんかいけそうなのに、全然ゴールが決まらねぇ。これじゃストライカー失格だな」

 

その言葉で円堂は少し怒ったような表情になる。その後風丸が全体の指揮の元練習が始まる。けど円堂、染岡、オレは河川敷の横の原っぱみたいなところに寝転びながら話す。

 

円堂「無理すんなよ染岡。今故障されちゃかなわないからな」

 

染岡「タイヤで無茶な特訓している円堂には言われたくねーよ」

 

うん、ごもっとも。そのセリフは円堂だけに言われたくない。確かに鉄塔にいけばタイヤで特訓してるところ見たことあるしな。

 

円堂「ははっ。俺、こないだ皆で試合出来てすっげー嬉しかったんだ。やっとサッカーらしくなってきたって思ったんだ。染岡と比企谷はどう思った?」

 

八幡「オレも試合ができて嬉しかった。いつも1人でサッカーをしていたから、試合なんてできるとは思ってなかったからな。染岡はどうなんだよ」

 

染岡「羨ましかったんだよ。俺」

 

円堂「何が?」

 

円堂よ、お前はもっとデリカシーというものを学びなさい。それで人の心は傷つくんだからな!ソースはオレ!

 

染岡「豪炎寺だよ。あいつ、出て来ただけでオーラが違った。一年生があいつ呼んでくれってのも分かる。あいつがシュートを決めた時、あれが俺だったらなって思ったんだ」

 

円堂「そっかぁ……」

 

染岡「……豪炎寺には負けたくない。俺もあんなシュート撃てるようになりたいんだ」

 

なるほどな。確かにオレもあんなシュート撃てたらと思う。

 

円堂「よし!お前のシュート、完成させようぜ!そいつで尾刈斗中に勝つんだ!」

 

八幡「いや、お前。自分で何言ってるのか分かってる?」

 

染岡「比企谷の言う通りだぜ。試合まであと何日だと思ってるんだ」

 

円堂「だから頑張るんじゃないか!」

 

は?

 

円堂「豪炎寺になろうとするなよ。お前は染岡竜吾だ。お前には、お前のサッカーがあるだろ?もっと自分に自信を持てよ!」

 

なるほど確かに円堂の言うことは正しいかもな。さっきまで何言ってんだコイツ?みたいな感じだったけど。今の言葉はいいかもしれないな。

 

八幡「円堂の言う通りだな。お前は豪炎寺修也にはなれない。だってお前は染岡竜吾だからだ。目標を持つのはいい事だが、でもソイツにはなれない。お前はお前なんだから。お前にはお前のサッカーがあるんだ。それを相手に見せつけてやればいいんじゃねぇの?知らんけど」

 

円堂「最後の一言で台無しだな」

 

八幡「うるせぇ」

 

染岡「俺のサッカーか……。よぉし!やってやろうじゃねぇか!俺のサッカー!俺のシュート!」

 

染岡はオレと円堂の言葉でやる気を出した。自分のサッカーで頑張って必殺シュートをあみ出そうとしている。こんなの見せられたらオレも頑張るしかないな。オレも必殺シュートをできるように頑張らなくてはな。

 

その後練習に参加する。

 

八幡「ほら、染岡」

 

オレは染岡にパスをする。そしてパスをもらった染岡は上がっていき円堂にシュートを撃つ。けど、止められてしまう。けど、染岡の目は諦めていなかった。何度も何度もシュートを止められるが、諦めずに何度も何度もシュートを撃っていく。そして…

 

染岡「そりゃあああぁぁ!」

 

染岡の渾身のシュート。そのシュートは青いドラゴンが出てきて円堂に向かっていく。けど円堂は驚いたのか反応出来ずにボールはゴールの中へと入っていく。

 

栗松「すっげぇ……」

 

風丸「今までのシュートとまるで違う……」

 

半田「今ドラゴンが、ガァッって吠えたような」

 

少林「僕もそんな感じしましたよ」

 

確かにドラゴンが吠えてたような感じはした。すると円堂が染岡の元へ駆け寄る。

 

円堂「染岡!すげぇシュートだったな」

 

八幡「ああ、そうだな。今のがお前のシュートだ」

 

染岡「これが…俺のシュート」

 

八幡「ああ」

 

円堂「やったな!」

 

そう言って染岡の肩を組む円堂。

 

円堂「よし!このシュートに名前付けようぜ!」

 

その一言で染岡のシュートの名前を考えることになった。けれど染岡スペシャルと染岡ドラゴンって…誰だよこの名前言ったやつ。名前からしてちょっとダサいだろ。

 

円堂「あ、豪炎寺」

 

円堂が呟く。橋の方を見るとそこには豪炎寺が。

 

染岡「何ぃ!?」

 

うん、染岡さん。一旦落ち着きましょうや。いちいち反応してたら疲れまっせ。

 

 

豪炎寺「円堂……俺やるよ」

 

と言って強い眼差しを円堂に向ける。

 

円堂「豪炎寺……」

 

「「「「「やったー!」」」」」

 

喜ぶ1年部員達。こうして豪炎寺を正式に部員に迎えて、新たなるスタートを切るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日部室で豪炎寺が入ったのが嬉しかったのか1年共はすごく嬉しがっていた。そのことで染岡が

 

染岡「待てよ。そんなやつになんの用がある。雷門中には俺の必殺シュートがあるじゃないか」

 

半田「染岡…」

 

円堂「どうしたんだよ染岡。雷門中のストライカーが2人になるんだぜこんな心強い事ないじゃないか」

 

けれど、染岡は気に入らないのか豪炎寺の前まで行き

 

染岡「ストライカーは俺1人で十分だ」

 

豪炎寺「結構つまらないことで拘るんだな」

 

染岡よ落ち着けよ。豪炎寺も豪炎寺で煽るなよ。

 

染岡「つまらないことだと!?」

 

と豪炎寺の胸ぐらを掴む。すると部室のドアが開く。

 

木野「みんないる〜?」

 

とサッカー部のマネージャーである木野であった。木野の後に続いて音無も入ってきた。

 

音無「これ見てください!」

 

そう言って1枚のDVDを持っていた。すると豪炎寺の胸ぐらを掴んでいた染岡は手を離す。そして音無が持ってきたDVDを見ると、それはなにかの試合だった。

 

半田「これは?」

 

音無「尾刈斗中の試合です」

 

風丸「こんなのどこで」

 

音無「えへへ。新聞部の情報網を使ってゲットしたんです。私にかかればおちゃのこさいさいですよ」

 

八幡「ふむ…所謂職権乱用か?」

 

音無「違いますよ比企谷先輩!人聞きの悪い事言わないでください!」

 

そう言ってズイッと近づいてくる音無。オレは仰け反りながら…

 

八幡「わ、悪い悪い、冗談だ。冗談」

 

音無「もう…」

 

そう言って少し頬を膨らませる音無。

 

八幡「かわいい」

 

音無「えっ!?///」

 

あー!やっちまった〜!!思わず口走ってしまった。音無の顔を見ると真っ赤になっていた。うわぁ〜…めっちゃ怒ってるよ〜。

 

八幡「あ、えっと…悪い変な事言った。スマン音無」

 

音無「い、いえ…大丈夫です///」

 

八幡「そ、そうか」

 

ふと視線を感じたのでそっちを見ると木野がすごい笑顔で見ていた。

 

八幡「なんだ?」

 

木野「ううん、別に?」

 

八幡「なんだよ。そこまで言うんならはっきり言えよ。気持ち悪いなら気持ち悪いって正直に言ってもらった方が良い」

 

木野「はぁ〜…まったく比企谷君は相変わらずなんだから」

 

八幡「は?なんだよ」

 

木野「な〜んでもありませ〜ん」

 

そう言って何も答えてくれない。一体なんだよ教えてくれよ。気になるだろう。それにいつまで顔を赤くしてるんですか音無さんや。そんなに怒るんですか?そんなに気持ち悪かった?

 

音無(か、かわいいって言われた〜!///そんな事言われたの初めてだよ。私って比企谷先輩からしたらかわいく見えるんだ。なんだか嬉しいな)

 

八幡「ハァ…それで何かわかったか?」

 

円堂「いや、特には…ん?」

 

八幡「何かあったのか?」

 

そう言ってモニターに集中している奴らの隙間からモニターを見る。

 

マックス「なんかこいつら止まってるんだ?」

 

八幡「止まってる?なんでだ?パントマイムか?」

 

風丸「いや、違うだろ」

 

ですよね〜。すると顔を真っ赤にしていた音無が復活し。

 

音無「多分動けないんです。噂では尾刈斗中の呪いだとか」

 

そう言って手をお化けのようなポーズをとる音無。

 

「「「「「呪い?」」」」」

 

んなバカな。けどなんでコイツらずっと動かずに止まってるんだ?わからん。

 

そして…

 

『はい。いよいよこの日を迎えました。雷門中対尾刈斗中の練習試合。あの帝国学園と下した我が雷門サッカー部の勇姿を見ようと多くの観客が押し寄せております』

 

と実況が入る。なんでもいいけど君、実況ちょっと上手くない?その道に行った方が良くない?そんな事よりオレらは各自でウォーミングアップをしていると尾刈斗中の人達がやってきた。みるからに不気味な奴らだ。

 

影野「不気味だ…」

 

半田「お前が言うなよ」

 

確かにな。お前が向こうにいても違和感ないと思うぞ。そして両チーム揃って、センターで整列すると監督同士の挨拶をしていると、尾刈斗中の監督、地木流灰人が豪炎寺が視界に入ると…

 

地木流「君が豪炎寺君か。帝国戦での君が撃ったシュート見せてもらいましたよ。いやはや全くもって素晴らしかった。今日はおてわらやかにお願いしますよ」

 

その監督が豪炎寺だけ褒めている態度が気に食わなかったのか染岡が突っかかるが、軽く流される。またその態度が気に入らなかった染岡は苛立ち始める。

 

八幡「落ち着け。苛立っても何も始まらねぇぞ」

 

円堂「比企谷の言う通りだ染岡。そんな相手には見せつけてやればいいんだよお前の必殺シュート」

 

染岡「ああ!」

 

必殺シュートね……オレもまだ完成していない。出来ればこの試合前には完成しときたかったんだけどな…無理だった。けど、今日の試合でもし豪炎寺のファイヤートルネードを見れるのなら、それを参考にしたいしな。

 

そんな事を考えながらポジションに着く。フォーメーションは、FWに染岡、豪炎寺のツートップ。MFには半田、オレ、マックス、少林。DFには風丸、壁山、影野、栗松。そしてGKは円堂というフォーメーションとなっている。因みにベンチは宍戸と目金だ。そして今試合開始のホイッスルが鳴る。

 

 

 

 

 




いかがでしたか?ではまたお会いしましょう。


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第5話

どうもチャキです!第5話どうぞ!


八幡side

 

ホイッスルが鳴り尾刈斗中キャプテン幽谷が、吸血鬼みたいな見た目をした武羅渡に渡しそのまま上がっていく。その武羅渡にマックスが当たりに行くが、躱されてしまう。けどすぐに少林がスライディングでボールで弾くが、弾いた先に月村がいた。オレもボールを奪おうとスライディングをするが、躱されてしまう。

 

壁山「さ、させないっス」

 

壁山がブロックに入るが相手の巧みなドリブルに抜かされてしまう。そしてあっという間にゴール前へ。

 

月村「喰らえ!ファントムシュート」

 

ボールが紫色に光り輝いたと思ったら分裂し、不気味に揺らめきながらそれぞれゴールへ襲いかかる。けど大丈夫だ。

 

円堂「ゴットハンド!」

 

神々しい光の手でガッチリとキャッチする。

 

風丸「ものにしたんだな円堂!」

 

円堂「ああ、まぁな」

 

そう言って風丸にボールを渡す。ボールをもらった風丸は自慢の脚力で上がっていく。

 

風丸「比企谷!」

 

横にいたオレにパスをする風丸。ボールをもらったオレはそのまま上がっていくが、目の前にミイラみたいな見た目の奴が立ちふさがる。

 

八幡「いくぜ!ファントムドライブ!」

 

ミイラ「何!?」

 

一瞬にして姿を消したオレに驚いている様子だ。突破したオレは周りを見る。するとちょうどいいところに少林が上がってきたので。

 

八幡「少林」

 

少林「はい」

 

少林は豪炎寺に回そうとするが、豪炎寺には厳しいマークが着く。しかも3人がかりでだ。かなりと言って良いほど警戒をしているらしい。だが1人フリーな奴がいる。

 

八幡「少林!染岡がフリーだ。染岡に回せ!」

 

少林「はい!染岡さん!」

 

ボールを受け取った染岡は、真っ直ぐにゴールへ向かっていく。

 

染岡「行くぜ・・・ドラゴンクラァァァッシュ!!」

 

蒼く光り輝くボールは、獰猛な龍と共にゴールへ。ジェイソンのような面をつけた相手キーパーは、ボールに飛びつくも触れることは出来ず、染岡の必殺シュートはゴールネットを揺らす。それよりもあの必殺シュートの名前ドラゴンクラッシュにしたんだな。え?名ずけたのは目金だって?へぇ〜、中々やるじゃん。そして染岡の1点で勢い付くオレ達。そして尾刈斗中のキックオフで始まるが今度はマックスがスライディングでボールを奪い、オレにパスがくる。そのオレに近づいてくるのはキョンシーみたいな見た目の奴だった。というかなんなのこいつら?コスプレ集団かよ。そう思いながら…

 

八幡「ファントムドライブ!」

 

そしてまた突破していく。そして豪炎寺にパスを回そうかと思い見ると、やはりマークが厳しい。だったら

 

八幡「染岡!頼むぞ!」

 

染岡「おう、任せとけ!ドラゴンクラッシュ!」

 

そしてまた染岡のシュートが相手ゴールを襲い、キーパーはまたボールに触れることなく入っていく。これで2点目だな。でも…何かがおかしい。こんなにもあっさり点を取れるものなのか。相手は何か隠しているのだろうか。

 

豪炎寺「比企谷」

 

八幡「ん?ああ、豪炎寺か。どした?」

 

豪炎寺「何かおかしいとは思わないか?」

 

八幡「お前も思ったか」

 

豪炎寺「ああ、奴らは何か隠している」

 

やっぱりか。豪炎寺がそう言うのならそうだろうな。そして尾刈斗中のキックオフで試合は再開するが

 

地木流「まさか豪炎寺君以外にあんなストライカーがいたんだなんて予想外でしたよ。雷門中の皆さん。いつまでも雑魚が調子に乗ってんじゃねぇぞ!てめぇら、そいつらに地獄見せてやれ!」

 

尾刈斗中イレブン「「「おう!」」」

 

な、なんだ?尾刈斗中の監督の様子が豹変したぞ。しかも顔色も変わったような。そんな事よりも試合に集中しねぇとな。けど他の奴らも監督に気を取られていた。

 

八幡「お前ら試合に集中しろ!」

 

風丸「比企谷の言う通りだ!来るぞ!」

 

オレと風丸の一言で他の奴らは試合に集中する。これでよし。そしてボールを持った幽谷を中心に五人で列を組み前線に上がっているのだが、目まぐるしくその配置が入れ替わっているのだ。なんだこれ?すると風丸の指揮で相手にマークに着くが何を思ったのか仲間同士でマークしていた。何が起きてるんだ?後ろにいた円堂が人声かけるが

 

幽谷「無駄だ…ゴーストロック!」

 

地木流「マーレマーレ、マレトマレ!!」

 

幽谷がそう声を上げたと同時に、監督の呟きが大声に変わる。その瞬間オレの足が…いや、他の奴ら全員足が動かなくなった。くっそ!どうなってやがる!オレらが驚いている中、幽谷がゴール前まで上がってきて。

 

幽谷「これがゴーストロックだ!ファントムシュート!」

 

円堂「くっそ!」

 

円堂は一生懸命手を伸ばすが足が動かれないので、触れることも無くゴールの中へと入っていく。その同時に足が動けるようになった。一体どういうことだ?

 

『幽谷のシュート炸裂!2-1、尾刈斗中1点を取り返しました!』

 

取られてしまったものはしょうがない。

 

豪炎寺「何なんだ、今の・・・」

 

染岡「取られたら取り返せばいい」

 

そう言って豪炎寺からボールを奪い1人上がっていく。あのバカ何やってんだよ。けど尾刈斗は誰も止めようとしない。妙だ、明らかにおかしい何故誰一人止めようとしない。そして染岡がゴール前まで来た時だった。相手ゴールキーパーを手を妙な動きをしだす。手を回転されるようにして、ぐるぐると回している。なんの意味があるんだ?

 

染岡「ドラゴンクラッシュ!!」

 

染岡がまたドラゴンクラッシュを放つが、そのドラゴンクラッシュをいとも簡単にキャッチする。何故だ?さっきまではあんなにあっさりと入ったのに…。

 

鉈「これぞゆがむ空間。どんなシュートにもこの技には無力!」

 

そう言ってパントキックでボールを蹴りあげる。そのボールは前線の幽谷へ渡る。やっば!これカウンターアタックじゃん!

 

八幡「お前ら早くもどれ!」

 

幽谷「無駄だ。お前達は既に俺達の呪いにかかっている。ゴーストロック!」

 

地木流「マーレ、トマレェ!!」

 

また幽谷の一声で足が動かなくなる。円堂も動けなくて、何とかしようと思っているうちにゴールを入れられ同点になってしまう。その後オレ達のボールで再開するが、またゴーストロックをされ、動けなくなってしまった。そしてまた1点を入れられ3-2で前半が終了してしまった。

 

 

ハーフタイムを使い部室で作戦会議をすることになった。

 

風丸「クソ!どうなってるんだ?」

 

半田「急に足が動かなくなるなんて」

 

壁山「やっぱり呪いじゃ…」

 

円堂「みんな何ビビってんだよ。まだ前半が終わったばかりじゃないか」

 

壁山「うわぁぁぁ!怖いッス!怖いッス!俺これ以上怖くて無理っス」

 

そう言う壁山を風丸と宍戸が止める。確かに急に足が動かなくなるのは怖いけど、多分何かしらの仕掛があるはず。けど、それが分からない。

 

八幡「あ」

 

円堂「何かわかったのか比企谷」

 

八幡「いや、それはまだだが。あの監督が変な事を言い出してから尾刈斗中の動きが変わったなって思ってさ」

 

音無「あ、確かに言ってましたね」

 

木野「じゃああの呪文に秘密が?」

 

八幡「それはわからんが」

 

円堂「答えは試合中に見つけるしかないな」

 

八幡「かもな」

 

いや、ホントあのゴーストロックの謎を解かないと。いや、あともう1つあのキーパーの技だ。あの染岡のシュートをいとも簡単にキャッチするんだからな。あの技も見破らないと、逆転出来ねぇ。謎は晴れないまま後半戦が始まった。ボールはこっちからスタートだ。そしてキックオフのホイッスルが鳴ると豪炎寺が少林にバックパスをしたのだ。

 

染岡「何してんだ!」

 

円堂「なんでファイヤトルネードを撃ちに行かないんだ豪炎寺!」

 

2人からの反論が来る。けど豪炎寺は今撃っても同じ事だと思ったのだろう。そして染岡が上がるが尾刈斗のディフェンダーに抑えられる。そして少林が半田にパスをする。その半田は豪炎寺ではなく染岡に渡す。染岡はディフェンダー2人を抜きボールを取ろうとするも、尾刈斗のディフェンダーに邪魔されて、ボールはグラウンドの外へと出る。半田は1年共に反論を食らう。けど半田は豪炎寺が使い物にならないと判断したのか染岡に渡したらしい。これじゃあ仲間割れだ。豪炎寺はキーパーの技の秘密を知るまでシュートを撃たない。染岡は積極的に撃つが入らない。だったら自分から撃つまでまだ。

 

 

そしてマックスのスローインで少林に渡る。その少林は豪炎寺にパスをするが、そのパスをオレがカットする。

 

半田「何やってんだ比企谷!」

 

八幡「お前らがつまらないことで仲間割れするからだろうが!」

 

半田「つまらないことだと!?」

 

八幡「事実だろうが!」

 

そう言いながらオレは1人で上がっていく。

 

染岡「比企谷!こっち渡せ!」

 

と言ってくるがオレは渡さずに

 

八幡「ダメだ。お前はもっと冷静になれ!」

 

染岡「何!?」

 

そのままスピードをあげてゴール前まで上がっていくと、キーパーの鉈がまたあの妙な動きをし始める。それを見た瞬間、目の前が歪んだような、立ちくらみしたような感じがした。な、なんだこれは…思っても仕方ない。オレはシュートを撃つが、ボールはゴールを外れて外に出てしまう。

 

染岡「何やってんだよ」

 

八幡「わ、悪い」

 

染岡「ったく!」

 

そう言いながら染岡は自陣へと戻っていく。けど、ホントなんだったんだあの感覚は。なんで目の前が歪んだような感じがしたんだ?

 

豪炎寺「比企谷」

 

八幡「なんだ?」

 

オレも自陣へ戻っていると豪炎寺に話しかけられた。

 

豪炎寺「さっきなんであんなシュートになったんだ?」

 

八幡「ああ、実はあのキーパーの手を見ていると、なんか知らねぇけど目の前が歪んだような…あ、足がふらつくような感じだ」

 

豪炎寺「平衡感覚が失うみたいな感じか?」

 

八幡「多分そんな感じだな」

 

豪炎寺「そうか」

 

自分でも何言ってるか分からねぇけど。そしてゴールキックからスタートする。そしてまた幽谷が

 

幽谷「ゴーストロック!」

 

再びゴーストロックが発動される。また足が動かなくなってしまう。くっそ!なんで足が動かねぇんだよ。本当に呪いなんかあるのか?いや、そんなのあるはずが無い。何かしらの仕掛けがあるはずなんだ!けどどうしたらいいんだ。そんな事考えている間にも幽谷はどんどん雷門イレブンを突破していく。やばいもう一点入れられたらもう逆転は難しい。と思った瞬間

 

円堂「ゴロゴロゴロ、ドッカァァァァァン!」

 

と円堂が手を叩き叫び出す。一体何してんだ?と思っていたら足が動けるようになっていた。

 

幽谷「ファントムシュート!!」

 

円堂「熱血パンチ!!」

 

円堂は幽谷が放ったシュートに間に合わないと思ったのかパンチングをしてセーブする。

 

『と、止めました円堂!幽谷のファントムシュートを止めました!!』

 

すると他の奴らは円堂の周りに集まる。

 

風丸「円堂お前」

 

円堂「見たかオレの熱血パンチ!」

 

風丸「ああ!じゃなくて!どうして動けたんだよ」

 

壁山「風丸さんも動けてるっス」

 

影野「壁山お前も」

 

え?なにこれ?なんかの漫才か?

 

八幡「んで?なんで動けたんだ?」

 

円堂「ああ、それはな。コロコロ変わるフォーメーションで、ぐるぐるになった俺達の頭に、あの監督がトマレって暗示を刷り込む。つまり俺達は目の耳をゴワンゴワンしされていたんだよ」

 

八幡「なるほど。催眠術の1種か」

 

そしてオレは豪炎寺のところに行き。

 

八幡「ということはあのキーパーもだよな」

 

豪炎寺「ああ、多分な」

 

八幡「じゃ、頼むぞ」

 

豪炎寺「わかった」

 

そして円堂がボールをフォワードに回すように指示をして、ボールを蹴り少林に渡す。

 

少林「でもキャプテン染岡さんのシュートじゃあ」

 

円堂「アイツを信じろ!少林!あの監督の言う通り、俺達はまだまだ弱小チームだ。だから一人一人の力を合わせなきゃ強くなれない。俺達が魔と守り、お前達が繋ぎ、アイツらが決める!俺達の1点は全員で取る一点なんだ!」

 

ほう…こういう時やっぱ頼りになることを言うなアイツは。

 

円堂「さあ!行こうぜみんな!」

 

そう言うと少林が上がっていく。

 

八幡「よし!お前ら!上がれ!」

 

「「「「「おう!!」」」」」

 

オレの一言で円堂以外全員上がってくる。そして少林は染岡にパスをする。けどディフェンダーが止めにかかるが、それを躱しゴールまで上がっていく。

 

地木流「無駄無駄!鉈がゴールを守る限り俺達の勝利は確実なんだ!」

 

すると染岡の様子がおかしい……まさか…!

 

豪炎寺「奴の手を見るな!あれも催眠術だ!平衡感覚を失いシュートが弱まるぞ!」

 

と豪炎寺が染岡に言う。なるほど、だからオレはあの時目の前が歪んだような感覚になった訳か。すると染岡の目の前に2人の巨漢ディフェンダーが立ち塞がる。これじゃあシュートが撃てない。そう思ってたその時

 

染岡「豪炎寺ィィー!」

 

そう叫びシュート体制に入る。まさか染岡の奴…

 

染岡「ドラゴンクラッシュュュ!」

 

染岡が放ったドラゴンクラッシュはゴールではなく上空へと上がっていく。やっぱりか。

 

半田「どこ狙ってんだよ染岡!」

 

八幡「違う!」

 

半田「え?」

 

八幡「よく見ろ!あれはパスだ!」

 

半田「パス?あ…」

 

そうあれはシュートではなく豪炎寺へのパスだったのだ。そして豪炎寺は相手の隙を狙い上空へとジャンプをして

 

豪炎寺「ファイアトルネード!」

 

ファイアトルネードを撃つと、蒼き龍はたちまち赤き龍へ変わりゴールに向かう。

 

鉈「うわあぁぁぁぁー!!」

 

相手ゴールキーパーはボールごとゴールの中へと入っていく。それで同点となった。そしてあの技はドラゴントルネードと目金が名ずけた。そのままやないかい。そして試合は再開すると、また染岡と豪炎寺でドラゴントルネードを放ちゴールを決めて逆転をしたところで試合が終了した。

 

 

 

 

 

壁山「勝った……勝ったんッスね俺達」

 

円堂「やってくれたな染岡、豪炎寺。お前達のドラゴントルネードが教えてくれたよ。1人じゃできないことも、2人で力を合わせればできるようになるってな」

 

染岡「エースストライカーの座は譲った訳じゃねぇからな」

 

とそっぽを向きながら言う染岡。

 

豪炎寺「フッ」

 

 

円堂「よーしみんな!フットボールフロンティアに乗り込むぞ!」

 

「「「「おう!」」」」

 

と掛け声をする。オレ?やらねぇよんな事。でも…やっとあのフットボールフロンティアに出られるのか。夢みたいだ。今まで1人だったオレを誘ってくれた円堂に感謝しねぇとな。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そして場所は変わり河川敷。オレはファイアトルネードのアレンジ技の練習していた…が上手く出来なかった。

 

八幡「ハァ…ハァ…くっ、やっぱできねぇ。後もうちょいなのによ。何かが足りないのか?」

 

そう言いながら汗を拭い、特訓を再会しようとした時だった。

 

「あれ?比企谷先輩?」

 

八幡「?なんだ音無か。どうしたんだよこんなところで」

 

音無「比企谷先輩こそ何してるんですか?試合の後だと言うのに」

 

八幡「ああ、ちょっと必殺シュートの練習をな」

 

音無「必殺シュートの練習ですか?」

 

八幡「ああ」

 

音無「なんでまた?」

 

八幡「いや、豪炎寺の必殺シュートだけでは無く、染岡も必殺シュートを撃てるようになって、しかも2人で連携の必殺シュートをするようになって、オレも何か必殺シュートを撃てるようになりたいなって思ってな」

 

音無「そうなんですか」

 

八幡「ああ、だからこうして1人で練習してんだよ」

 

音無「なんでですか?皆さんと一緒にやればいいじゃないですか?」

 

八幡「それもそうなんだが…」

 

音無「どうしたんですか?」

 

八幡「そうだな…これを完成させて、試合で出してアイツらをびっくりされてみたいと思ってな」

 

音無「びっくりさせたいと」

 

八幡「ああ…それに今しようとしている必殺シュートは、豪炎寺のパクリなんだけどな」

 

音無「パクリ?ということはあのファイアトルネードを撃てるようにしたいという事ですか?」

 

八幡「ま、そういう事だな。けど何かしらのアレンジができればなって思ってさ」

 

音無「そうなんですか」

 

すると急に音無は顎に手を置き何か考えている様子だった。

 

音無「比企谷先輩。それ私、お手伝いしてもよろしいですか?」

 

八幡「手伝い?」

 

音無「はい!」

 

八幡「いや、悪いって。その気持ちは正直嬉しいが」

 

音無「いいえ!全然悪くありません!」

 

八幡「音無…けどやっぱりな……」

 

音無「比企谷先輩がなんと言うおうと、私は絶対にお手伝いします!そして皆さんをびっくりさせましょう!」

 

音無の目を見ると真剣な眼差しでこちらを見てくる。まさかこいつにこんな一面があるなんて。しかも頑固というかなんというか……

 

音無「それにキャプテンも言ってたじゃないですか?1人じゃできないことも、2人で力を合わせればできるようになるって」

 

八幡「…そうだな」

 

音無「先輩はもっと他の人を頼ってください!キャプテンや豪炎寺さんや他の人達だけじゃなくて、マネージャーの私も頼って欲しいんです。比企谷先輩とは短い付き合いですけど、やっぱり頼って欲しいんです!」

 

ここまで言ってくれるとなると、その気持ちを無下に出来ないな。というか後輩にこんな事言わずだなんてな。

 

八幡「ああ、わかった。じゃあ頼めるか音無」

 

音無「はい!任せてください!」

 

こうしてオレは音無と共にオレの必殺シュートを身につける特訓をすることになった。

 

 

 

 




いかがでしたか?ではまた会いましょう。


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第6話

どうもチャキです!アンケート結果によりセリフの前に名前をつけた方が良いと言うことになりましたので、これからはセリフの前に名前をつけていきます。それでは第6話どうぞ!


八幡side

 

音無と必殺シュートの特訓をすることになったが、今日はもう遅いのでお互い家に帰り明日に備えた。

 

翌日

 

うーんホント何が足りないのかわからん。ファイアトルネード、ホントどやって撃ってるんだろうな。何回かやっているがどうしても外してしまう。音無も手伝ってくれると言ってくれてるし、協力して完成させるか。そんな事思いながら校門を通り歩いていると……

 

円堂「フットボールフロンティア!」

 

と円堂が叫びながら走っていく。あ、そうかオレ達念願のフットボールフロンティアに出られるんだな。

 

そして時間は過ぎて、学校も終わり今は全員部室へと集まる。

 

円堂「皆!分かってるなあ!?」

 

「「「「「おお!」」」」」

 

円堂を中心に部室はかつてないほどの熱気に包まれている。それも当然。ようやくフットボールフロンティアが始まるのだ。因みにオレは一緒になって『おお!』とかは言ってない。いや、ホント君達息合うね。

 

円堂「とうとうフットボールフロンティアが始まるんだ!」

 

「「「「「おお!」」」」」

 

またもや全員の息が合う。ていうか豪炎寺も言ってないな。まぁ、豪炎寺はこういうのは言わなそうだしな。

 

風丸「で?相手はどこなんだ?」

 

円堂「相手は…」

 

真剣な顔になる円堂。お、まさか対戦相手知っているのか?

 

円堂「知らない!」

 

八幡「知らねぇのかよ!」

 

円堂の言葉で全員苦笑いをする奴もいれば、オレと同じ知らねぇのかよという顔になる奴もいる。すると円堂の後ろにある部室の扉が開き

 

冬海「野生中ですよ」

 

とサッカー部の顧問である冬海先生が入ってきた。

 

冬海「野生中は確か…」

 

音無「去年の地区大会の決勝で帝国と戦ってます」

 

八幡「え?マジで?」

 

音無「はい」

 

八幡「おいおい、初戦からすげぇ奴らと戦うな」

 

そして嫌味のように先生が「大差で初戦敗退はしないように」と告げる。その先生仮にも顧問なんだからもう少しやる気出してくれても良いのでは?

 

冬海「ああ、それから」

 

土門「チーッス。俺、土門飛鳥。一応ディフェンス希望ね。」

 

外から高身で少し色黒の男が顔を出す。見ない顔だな・・・転校生か?冬海先生がまた嫌味を言って去っていく。それに対して土門は指差しながら怪訝そうな表情を浮かべる。正しい反応だ。その後、秋と土門がかねてよりの仲であることが分かり、円堂が土門に歓迎の意を表す。

 

土門「それにしても相手は野生中だろ?大丈夫かなあ」

 

急に土門がそんなことを口にする。

 

八幡「何かあるのか?」

 

土門「前の中学で戦った事あるしね。瞬発力、機動力共に大会屈指だ。特に高さ勝負にはめっぽう強いのが特徴だ」

 

八幡「そんなにジャンプ力がすげぇのか?」

 

土門「ああ」

 

なるほど。これはオレの必殺シュートが完成したとしても、撃てるかどうかわからねぇな。

 

円堂「高さなら大丈夫だ。俺達にはファイアトルネード、ドラゴンクラッシュ、ドラゴントルネードがあるんだぜ」

 

土門「どうかな。あいつらのジャンプ力とんでもないよ。ドラゴントルネードだって上から抑え込まれるかもしれない」

 

染岡「んなわけ無いだろ」

 

と土門の言葉に否定をする染岡。

 

豪炎寺「土門の言う通りだ。俺も戦ったことがあるが、空中戦だけなら帝国をも凌ぐ。あのジャンプ力で上をとられたら…」

 

なるほどな。これは初戦から厄介な相手になってしまったな。そして土門と豪炎寺の言葉を聞いた途端、1年共が少し落ち込む。それにつられて周りも少し暗くなった時だった。

 

円堂「新必殺技だ!」

 

と円堂が言う。

 

円堂「新しい必殺技を生み出すんだよ!空を制するんだ!」

 

八幡「いや、お前よくそんな簡単な事言うな」

 

円堂「何言ってんだ比企谷!やってみなきゃわかんねぇだろ!」

 

八幡「まぁ、確かにそうだけど」

 

円堂「ほら!行くぞ!」

 

そう言って練習が始まる。まずは円堂がはしご車の上からボールを投げて、それを皆でひたすら蹴る練習。オレもこれで必殺シュートのヒントにならないかと思い参加する。けど何もつかめない。オレは一旦休憩の為に木にもたれ掛かる。

 

音無「お疲れ様です。比企谷先輩」

 

と音無が近づいてきた。

 

音無「どうですか?あの必殺シュートのヒント何か掴めましたか?」

 

八幡「全然、さっぱりだ」

 

音無「そうですか」

 

チラッと横を方を見ると、そこでは何やら円堂達が古株さんを中心に何やら盛り上がっている。何話してるんだ?

 

音無「あ、そうだ!私、実は豪炎寺さんのファイアトルネードを撮っていたんです。ちょっと待っててください」

 

ほう、豪炎寺のファイアトルネードを録画しているとは、さすが新聞部だな。

 

音無「ありました!こちらです」

 

八幡「おう、サンキュ音無」

 

オレはそう言って音無からビデオカメラを受け取り、動画を再生する。そこには確かに豪炎寺のファイアトルネードが映っていた。

 

音無「どうですか?比企谷先輩!」

 

八幡「ああ、助かったよ音無」

 

音無「お役に立てて良かったです」

 

と満面の笑みに向けてくる音無。そんなに嬉しかったのか?そんな音無を見ていると妹の小町みたいだなと思ってきた。

 

八幡「ああ、役に立った。マジでサンキュな音無」

 

そしてオレは音無の頭の上に手を置き、軽く撫でた。

 

音無「ぇ…」

 

八幡「ん?……はっ!」

 

オレは音無の頭の上にのっていた手をすぐさまどける。

 

八幡「す、スマン。妹のくせで撫でてしまった。嫌な気持ちにしたのなら謝る」

 

音無「そ、そんな事ありません!確かにびっくりはしましたが嫌な気持ちになんてなってませんから。気にしないでください」

 

八幡「そ、そうか」

 

そう言ってオレは再びファイアトルネードの動画を再生する。やっべぇ…マジで焦ったー。無意識で音無の頭を撫でちゃったよ。通報されないで良かったわ。

 

音無(ひ、比企谷先輩に頭を撫でられた。頭を撫でられたのお兄ちゃん以外初めてだな。それにお兄ちゃんとはまた違った感覚だった。気持ちよかったな〜)

 

 

 

その後は新必殺技を生み出すため、他の奴らは特訓をしていた。オレは練習が終わった後も特訓の続きをした。音無から借りたビデオカメラでファイアトルネードの動画を何度も再生しては、ボールを蹴るの繰り返しをしていた。そんな時だった……

 

豪炎寺「比企谷」

 

八幡「?豪炎寺か」

 

呼ばれてたので、声のした方を見るとそこには豪炎寺がいた。

 

豪炎寺「こんな時間まで練習か?」

 

八幡「まぁな。オレもお前と染岡の必殺シュートを見ていたら、オレも生み出したいと思ってな。それで特訓しているんだ」

 

豪炎寺「さっきお前のシュートを見たけど、あれはまさかファイアトルネードか?」

 

八幡「え?見ちゃった?」

 

豪炎寺「ああ」

 

八幡「マジかー……」

 

まさか見られていたとは思わなかったなー。くっそ…これじゃあドッキリ失敗だな。あ、そうだ、だったら…

 

八幡「まぁ、実はお前のファイアトルネードを真似していたんだ」

 

豪炎寺「やっぱりか。でも俺のファイアトルネードとは違う雰囲気だったぞ」

 

八幡「え?マジ?」

 

豪炎寺「ああ」

 

八幡「そうかでもまだ完成してないんだ。音無から借りたビデオカメラでお前のファイアトルネードの動画を見ながら何度もやったけど、全然完成しないんだ。だからお前さえ良ければさ、オレのシュートを見て何かアドバイスくれないか?」

 

豪炎寺「ああ、いいぞ」

 

八幡「え?マジで?」

 

豪炎寺「ああ、別にそれぐらいいいさ」

 

八幡「そうか。サンキュ!あ、それとこれは他の奴らには内緒にしてくれないか?ちょっと、あいつらを驚かせようと思ってな」

 

豪炎寺「なるほどわかった。誰にも言わない」

 

八幡「よし、じゃあ早速シュート撃ってみるからアドバイスくれ」

 

豪炎寺「ああ」

 

横で見ている豪炎寺に、未完成の必殺技を見せる。シュートはなんとかゴールに入るが、威力が足りないのだ。

 

八幡「こんな感じだ」

 

豪炎寺「なるほど。まず俺から見てもこのシュートはほぼ完成していると思うが、威力が足りないようだな」

 

八幡「あ、やっぱりお前もそう思うか?実はそうなんだ。最初は外してばっかりだったけど、なんとか入るようにはしたんだけど、次は威力が足りないんだよ」

 

豪炎寺「なるほど…じゃあ――」

 

八幡「ほう、じゃあ――」

 

オレは豪炎寺とファイアトルネード(パクリ)を完成されるために話し合った。そして色々出し合い練習を続けること数十分後、オレはまた横で見ていた豪炎寺に、またあの必殺シュートを見せると…自分でも分かるくらい、威力が上がったのだ。

 

八幡「おぉ…さっきよりも威力が上がった」

 

豪炎寺「ああ、そうだな。それにやはり俺のファイアトルネードとは違った雰囲気だな」

 

八幡「ああ、オレもそう思う。お前のは真っ赤な炎だが、オレのはなんだか黒い炎だな」

 

豪炎寺「ああ、そうだな」

 

さっきも言ったがオレのは豪炎寺のと違って黒い。もし、この必殺シュートに名前をつけるんだったら……

 

八幡「…ダークトルネードなんてどうだ?」

 

豪炎寺「良いんじゃないか」

 

よし、じゃあこのシュートの名前はダークトルネードに決まりだな。その後も何度もシュートを撃ったが完成しないまま、豪炎寺と別れて家に帰った。

 

そしてある日の部室での出来事である。いつものように部室で集まり話し合いをしていると…

 

「「「「「秘伝書!?」」」」」

 

オレの新必殺技は音無と豪炎寺のおかげで完成しつつある。そんな中円堂が秘伝書の存在を口にする。なんでも雷々軒というラーメン屋の人に教えて貰ったらしい。

 

八幡「というかなんでそんな人がそんな事知ってるんだよ」

 

円堂「…さぁ?」

 

と首を傾げる円堂。いや、なんで知らねぇんだよ。それよりもオレは雷々軒という店が気になってきたな。今度行ってみようかな。

 

円堂「まぁ、細かい事は良いじゃないか。とにかく秘伝書があるのは理事長室らしい。行くぞ!お前ら」

 

そう言って円堂達は理事長室へと向かっていった。オレ?行くわけねぇだろ。もし見つかってみろ、どんな罰を受けるかわからねぇしな。お、どうやら豪炎寺も行かないみたいだな。

 

八幡「アイツらホントに盗んで来るんじゃ…」

 

豪炎寺「それは……ないと思うが」

 

八幡「なんださっきの間は?まぁ、そんな事よりもお前のおかげで完成しつつある。ホントサンキュな」

 

豪炎寺「ああ」

 

その後も豪炎寺と色々話していると、円堂が手に秘伝書を持って帰ってきた。後盗んだんじゃなくて、理事長の娘の雷門夏未がくれたらしい。なんでくれたんだろうと思いながら、円堂のじいさんが書いたという秘伝書を見ると…何書いてあるかさっぱりわからなかった。これは円堂が持っていたノートと同じ字だな。だったら円堂は読めるな。

 

風丸・染岡「「円堂!」」

 

そんな事思っていると、秘伝書を見ている円堂に風丸と染岡が怒鳴る。

 

円堂「すっげぇー、ゴットハンドの極意だって」

 

風丸・染岡「「読めるのかよ!?」」

 

ほら、やっぱり読める。でも思うんだよな。よくあんな字を読めるよな。その後、円堂が野生中相手に勝つための必殺技を探していると…

 

円堂「あった!相手の高さに勝つにはこれだ。イナズマ落とし」

 

ほう、イナズマ落としか。中々凄そうな技じゃないか。一体どんな技だろうな。

 

円堂「読むぞ…一人がビョーンと飛ぶ。もう一人がその上でバーンとなって、グルっとなってズバーン!これぞ、イナズマ落としの極意!」

 

は?え?何?ビョーン?バーン?ズバーン?何言ってんの?

 

八幡「おい円堂。お前のじいさんの語彙力どうなってんだよ」

 

円堂「さあ?サッカー一筋の人だったらしいから」

 

いや、だからって語彙力無さすぎだろ。もっと語彙力仕事しろよな。

 

円堂「でもさ、爺ちゃんは嘘はつかないよ。ここには本当にイナズマ落としの極意が書かれているんだ。あとは特訓さえすればいいんだよ!」

 

風丸「どっからくるんだその自信」

 

八幡「まったくだな」

 

イナズマ落としのヒントはあの語彙力が無い言葉のみ。あれで本当にイナズマ落としの事わかるのか?そしてみんな揃って外に出て特訓する事になった。メニューは…

 

染岡「今日のメインイベントはこれだ!!」

 

と言って染岡がぐるぐる巻きにした毛布を穴に詰めたタイヤを見せびらかす。相手の技を受ける特訓・・・らしい。そのメニューの最初の生贄に宍戸が捧げられた。オレは気づかれないようにステルスでその場を離れて円堂の所に避難する。だってあんなの絶対に受けたくないし。そして円堂の近くに行くとすぐに豪炎寺がやってきた。

 

豪炎寺「円堂、比企谷。ちょっといいか?さっきの必殺技のことだが…」

 

円堂「ん?」

 

豪炎寺が土に絵を描きながらこういうことじゃないか、と説明する。なるほどな。そういう事だったのか。あんな語彙力の無い内容でよく豪炎寺は分かったな。そしてそれを聞いた円堂は目を輝かせていた。その後特訓してる奴らの悲鳴を聞きながら、オレ達3人は必殺技の話を進める。

 

八幡「今の説明によれば結構不安定な足場でオーバーヘッドキックが出来る奴といえば、豪炎寺しか思いつかねぇな」

 

円堂「ああ、そうだな」

 

豪炎寺「俺が?」

 

八幡「ああ、お前しかいねぇだろ」

 

円堂「そしてお前の踏み台になれる奴は…」

 

と言いかけたところで向こうの方で壁山が飛んでいくのが見えた。あ、適任者見っけ。

 

その後日が暮れるまで練習は続いた。壁山は円堂と一緒にタイヤを二つ身につけ、ジャンプ力を鍛える特訓。豪炎寺は染岡、風丸を踏み台に空中でオーバーヘッドキックの特訓。そしてオレはひたすらにダークトルネードの特訓をする。そして全員、既にボロボロなっていた。

 

八幡「はあぁぁぁぁぁぁー!」

 

真っ黒い炎がボールを包み飛んでいくが、まだ全然威力が足りない。何度も何度もシュートを撃つが、まだ全然足りない。体が壊れそうで、辞めたい気持ちが出てくる。けど、他の奴らもボロボロになりながら頑張ってるんだ!オレ1人がやめてしまえば、その気持ちは連鎖していき他の奴らもやめてしまうかもしれない。だからオレは何度もシュートを撃つ…が何度目かのシュートの時バランスを崩してしまい、地面に叩きつけられる。

 

八幡「がはっ!」

 

やっべぇ…受け身ミスってしまった。体がいてぇ……

 

音無「比企谷先輩!今日はもうやめましょう!体がもうボロボロじゃないですか」

 

八幡「大丈夫だ音無。これぐらい帝国戦の時と比べたらかわいいもんだ。それにほかの皆も頑張ってるんだ。オレ1人が辞められるかよ!」

 

音無の心配は正直ありがたいが、これだけは引けない。そう思い立ち上がると…

 

音無「でも、そんな義務感を感じながらやったって何にもなりませんよ!焦るばかりじゃ、何も掴めないんですから!」

 

八幡「え?」

 

義務感?焦る?

 

音無「今までの比企谷先輩は冷静で他の人に的確な指示を出していたじゃないですか!なのに今の先輩は何か焦っているようにも見えます!」

 

オレが焦っている…か。確かにそうかもしれないな。オレはいつの間にかサッカーの楽しさを忘れていたようだ。円堂に教えられたサッカーの楽しさをな。

 

八幡「フゥ…そうだな。確かに焦っていたのかもしれないな。焦ってサッカーの楽しさを忘れるところだったわ。また助けられたな。サンキュ音無」

 

ホント音無にはダークトルネードの事で沢山助けられたな。今度何かお礼でもしねぇとな。

 

八幡「よし、じゃあラスト1本!」

 

音無「え!?ちょっ!比企谷先輩!?」

 

八幡「大丈夫だって。ラスト1本。これでほんとに今日は終わりにするからさ」

 

音無「…わかりました。ラスト1本やったら本当に終わってください。約束ですよ!」

 

八幡「わかってるって」

 

オレはそう言いながらボールの前に立ち、気持ちを落ち着かせようと、深呼吸をする。焦っても何も掴めない。それだとますますダークトルネードの完成が遠くなってしまう。音無と豪炎寺が手伝ってくれたんだ。それを無下にできない。もっとイメージをするんだ。そう思いボールを高く上げる。そして回転しながらジャンプをする。オレの足は黒い炎を纏う。

 

八幡「うおぉぉぉぉ!……はっ!」

 

そして左足でシュートを放つ。ボールは黒い炎を纏い飛んでいく。今までの中で1番威力だと肌に感じる。そして今度こそオレは上手いこと地面に着地する事ができた。そしてそのシュートを見た音無は…

 

音無「比企谷先輩…今って…」

 

八幡「ああ…完成だ」

 

音無「おめでとうございます比企谷先輩!」

 

八幡「サンキュ。でもこれを完成させることができたのは音無のおかげでもあるんだ。だから色々とサンキュな」

 

音無「いえ、お役に立てて良かったです!」

 

音無は満面の笑みでそう言う。その音無の満面の笑みを見て一瞬ドキッとしてしまう。

 

音無「?どうかしましたか?」

 

八幡「い、いや…なんでも無い」

 

音無「ほんとですか?」

 

八幡「ああ、ホントホント。ハチマン嘘つかない」

 

音無「なんで名前の方カタコトなんですか?」

 

八幡「たまたまだ」

 

そんな事話していると円堂と豪炎寺達もやってくる。やっべぇ…見られたかな?豪炎寺は良いとして、円堂達にも見られたのなら、どうしょう?

 

円堂「比企谷、さっきのすごい音だったな!一体何してたんだ?」

 

良かった…どうやら見てないみたいだ。

 

八幡「ああ、オレの必殺シュートだ。今さっき完成した」

 

円堂「本当か!?見せてくれよ!」

 

八幡「スマンが見せられない」

 

円堂「え?なんでだ?」

 

八幡「音無とラスト1本撃ったら終わりという約束したからな。だから見せられない。けど、野生中の時に見せてやるよ」

 

円堂「本当か!?約束だぞ!」

 

八幡「ああ。後、豪炎寺、お前もありがとうな。おかげで完成できた」

 

豪炎寺「ああ。それなら良かった。おめでとう」

 

八幡「おう」

 

円堂「えっ!?豪炎寺は知ってるのかよ!」

 

豪炎寺「まぁな」

 

音無「私も知ってます」

 

円堂「そうなのか。くぅ〜!知りたいけど野生中戦まで我慢しなきゃな!」

 

八幡「まさかあの円堂の口から、我慢が出るとはな」

 

豪炎寺「そうだな」

 

円堂「ひでぇなお前ら」

 

そしてここにいる全員同時に笑い出す。ホントコイツらといると楽しいな。そしてこの日以降、オレはダークトルネードの感覚を忘れないウチに何度も放つ。何本か撃ってみたが、全部成功した。よし、完璧に身につけたとも、言っていいだろう。このシュートで野生中のゴールを奪ってみせる。

 

あれからイナズマ落としは完成することができずにいた。なんと壁山が高いとこが苦手だったらしい。それで何度も飛ぶがどうしても下を見てしまい失敗してしまう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そして試合当日。

 

野生中はなんとジャングルみたいな所にあった。すげぇ自然豊かな場所だな。そしてそのグラウンド周辺には沢山の応援いた。と言っても全部野生中のだけどな。

 

円堂「俺達にも応援してくれる奴はいるぞ!ほら、あそこに!」

 

そう言って円堂が指を指した方に小学生3人がいた。どうやら壁山の弟とその友達らしい。でも、3人だけかと思っていたら…

 

「お兄ちゃーん!」

 

と聞き覚えのある声が聞こえる。声のした方を見るとそこには、マイスイートシスター、小町がいた。

 

八幡「こ、小町。なんでここに?」

 

小町「何って応援にしに来たに決まってるじゃん。お兄ちゃんの為に小町頑張って応援するね!あ、今の小町的にポイント高ーい!」

 

八幡「あー、ハイハイ。そうですね」

 

まさか小町が応援来るとは思ってなかったな。まぁ、帰らすのもアレだし、まぁいいか。

 

風丸「あれが比企谷の妹さんか?」

 

八幡「ああ、そうだが」

 

半田「似てないな」

 

八幡「まぁな。オレみたいに目が腐ってたらあんなかわいい訳ねぇだろ。いや、ホント似てなくて良かったわ」

 

風丸「シスコン?」

 

八幡「誰がシスコンだ!ただ妹が大事なだけだ!」

 

半田「それをシスコンって言うんじゃ…」

 

そんな事を話していると、試合が始まってしまうのでポジションにつく。フォーメーションは尾刈斗戦と同じで、染岡と豪炎寺のツートップ。オレはミッドフィルダーのポジションである。さてさてさーて。一体どうなる事やら。

 

 

 

 

 




いかがでしたか?ではまたお会いしましょう。


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第7話

どうもチャキです!第7話どうぞ!


八幡side

 

前半は雷門ボールから始まる。ピィーと試合開始の笛が鳴り、ボールは一旦後ろに下げ、豪炎寺と染岡は相手陣地に攻め上がる。すると野生中の監督がいきなり雄叫びをあげた。

 

鶏井「他山先生がこの試合に勝ったらおやつ食べ放題だってよ!皆!やるコケ!!」

 

なんかニワトリみたいな頭をした野生中キャプテンがメンバーに言う。いやいや、何その動機。ただおやつ食べ放題の為だけにやる気を出すのかよ。そしてボールをキープしていた風丸に、相手の7番が襲いかかる。風丸は素早くロングパスを出し、染岡へ回す。

 

染岡「野生中の実力、見せてもらおうか・・・豪炎寺!!」

 

染岡が空高くパス。豪炎寺は追いかけるように上昇し、ファイアトルネードの構え。だがその後を追うよう鶏井もジャンプする。その高さは豪炎寺よりもはるかに超えボールを奪った。話に聞いていた通りのジャンプ力だな。本当にファイアトルネードを抑えられるとはな。これじゃあオレのダークトルネードも抑えこまれるな。確実に得点するにはやはり、イナズマ落としが必要だ。けれど、あの技はまだ完成していない。そしてボールを持った鶏井はロングパスでチーターみたいな見た目をした水前寺にわたる。そのボールを奪おうと半田が近づくが、とてつもない足の速さで半田との距離を突き放す。あの風丸でさえ止められない。そしてどんどん攻めていく水前寺。けどボールを高く蹴りあげる。そこにワシみたいな見た目をした大鷲が走ってくる。これまさか!

 

八幡「ディフェンス!それはセンタリングだ!止めろ!」

 

影野「おう」

 

影野がオレの声に反応しジャンプをするが大鷲のジャンプ力には叶わない。

 

大鷲「コンドルダイブ!」

 

頭でボールを突きシュートを放つ。そのボールに円堂が向かう。あれなら間に合う…と思っていたら…

 

五利「ターザンキック!」

 

ゴリラみたいな見た目をした五利がシュートの軌道を変える。逆をつかれてしまった。けど、円堂はすぐさま体勢を立て直し――

 

円堂「熱血パンチ!」

 

見事弾いてみせる。だがかなりギリギリだ。

 

『雷門中円堂防いだ!だが恐るべし野生中の個人技!雷門中誰1人ついていけない!!』 

 

 全くもってその通りだ。新必殺技だけでなく、基礎能力の向上もしっかり取り組んだがそれでもこの差だ。ボールは円堂から風丸へ。取られないように細心の注意をはらいながらパスを回し、豪炎寺へ。しかし、豪炎寺の周りには3人のマークが。

 

染岡「豪炎寺!」

 

とその横をフリーの染岡が走り込んできた。豪炎寺はすかさず染岡にパを出す。パスを貰った染岡はそのままシュート体制に入る。なるほど、空中戦がダメなら地上ってわけか。考えたな染岡。ん?いや、ちょっと

 

八幡「待て!染岡!」

 

染岡「ドラゴンクラッシュ!」

 

呼びかけ虚しく、染岡はドラゴンクラッシュの構えに入る。が、相手DFのアルマジロのようなタックルでボールごと染岡は吹き飛ばされる。おいおい、すげぇ飛ばされぞ。

 

八幡「おい、染岡大丈夫か!?」

 

染岡「ぐぅ…」

 

オレ達は染岡に駆け寄り、声をかけるが染岡は足首を抑えている。まさか今ので……。その後マネージャーに治療を受けるが、足を捻っていて、試合続行不可能ということになった。選手交代ということで、土門が入ることになった。染岡の代わりにオレ…ではなく壁山が入ることになった。

 

壁山「ちょ、ちょっと待ってください。なんで俺がFWなんですか?比企谷さんがいるじゃないですか」

 

豪炎寺「ドラゴントルネードが使えない今、頼みの綱はイナズマ落としだけだ」

 

八幡「豪炎寺の言う通りだ。このままじゃ時間の問題だ。ここでイナズマ落としを決めれば、勢いも変わる」

 

しっかし…空中へ鶏井、地上は獅子王で守る。これは一筋縄じゃ無理だな。

 

相手のスローインから試合再開。駆け上がる相手6番に、新しく入った土門が立ち塞がる。

 

土門「いっちょやりますか・・・キラースライド!!」

 

連続蹴りのスライディングでボールを奪い取る。あれは・・・帝国のDF技じゃ……。そのまま上がっていく土門。ある程度上がったところでボールを高く上げる。それに対して壁山と豪炎寺、相手キャプテン鶏井が飛び上がる。

 

壁山「ヒィィ!!」

 

案の定、壁山が恐怖に耐えきれず体勢を崩してしまう。それにより豪炎寺が飛べず、相手にボールを取られてしまう。くっ、やっぱり無理なのか?そしてその後もマイボールなるも、豪炎寺と壁山の連携ミスですぐ野生中ボールになって、シュートの雨あられとなっている。

 

蛇丸「スネークショット!!」

 

ヘビみたいな見た目をした蛇丸の必殺シュート。ヘビのように左右に動きゴールに向かっている。そのシュートの先を読んだオレが

 

八幡「はぁ!」

 

蹴り返す。このままじゃ円堂の手が持たない。

 

円堂「サンキュー比企谷。助かった」

 

八幡「気にするな」

 

すると前半戦終了を知らせる笛の音が聞こえる。

 

『ここで前半終了!!両チーム無得点、だが試合を支配しているのは野生中だ!!』

 

ここで前半戦終了か。良いタイミングなのか分からないな。

 

円堂「みんなやったな!」

 

八幡「どこがだよ」

 

染岡「コテンパンじゃねぇか」

 

円堂「でも同点だぜ。あんなすごい連中相手にだ。後半も俺は絶対ゴールは割らせない。そして2人のイナズマ落としと、比企谷の必殺シュートを決めて勝つんだ!」

 

うん、確かにそうしたいが、出来ないから困ってるんだよ。わかるか?円堂。

 

壁山「俺をディフェンスに戻してください。無理なら交代してください」

 

円堂「壁山…」

 

壁山「それに比企谷さんには新必殺シュートがあるんですよね。ならそれを撃てば…」

 

八幡「甘ったれるな!」

 

壁山「っ!」

 

オレの大声で全員一瞬ビクッとなる。

 

八幡「無理だから戻してくれや、交代してくださいだとか、お前はそうやって最後まで逃げ続けるのか?そんな輩の頼みなんざ聞くかよ」

 

壁山「それは…」

 

八幡「1度や2度失敗したからって、逃げ続けても何も始まんねぇぞ!」

 

壁山「そんなこと言わなくたって──」

 

八幡「何度失敗したっていい、ただ諦めるな。オレは、全員で勝ちに行きたいんだよ」

 

オレはそのままの気持ちを壁山にぶつける。すると壁山の目はさっきと違って光がやどる。もうちょっとだな。

 

八幡「お前は1人じゃない。オレ達がついている。失敗したっていい!その分オレ達がフォローしてやる。なぁ、お前ら」

 

風丸「そうだ!比企谷の言う通り。俺達がフォローする」

 

半田「そうだぜ壁山」

 

栗松「俺達にまかせるでやんす!」

 

少林「そうそう」

 

壁山「みんな…」

 

オレはそのままグラウンドに戻る。すると豪炎寺がすぐに後を追ってきた。

 

豪炎寺「言うじゃねえか」

 

八幡「ああでも言わないとダメだろうと思ってな。けど…キャラに無いことをするもんじゃねぇな」

 

豪炎寺「フッ、そうか」

 

八幡「ま、後は任せたぞ」

 

豪炎寺「ああ」

 

 

『エンドチェンジして、野生中のキックオフで後半開始!ボールは水前寺にパスされ、高速ドリブルだ!!』

 

水前寺がボールを持ってどんどん上がっていく。果敢に守るも、誰もボールを奪えずに相手の10番へ。

 

蛇丸「スネークショット!」

 

またあの左右に動くシュート。今度はカバー出来なかったので、円堂が熱血パンチで弾く。けだけどやはりかなり消耗している。すると円堂は一瞬顔を歪める。

 

円堂「痛くなんか…ねぇ!」

 

円堂が前線にパス。それを見て豪炎寺と壁山が上がるも――

 

壁山「何度上げて貰っても…俺には無理っす無理っす」

 

くっ、やはりまだダメか。すると一人豪炎寺はボールを受け取るべく飛ぶも、やはり鶏井には叶わない。再びボールは相手の前線へ。円堂が待つゴールへ何度も何度もシュートを叩き込む。

 

八幡「円堂の負担を減らすんだ!シュートを止めろ!」

 

DF「「「おう!」」」

 

ディフェンスも相手のシュートを体を張って止めるようとするが、ほとんど止めきれず円堂が止める。が腕が限界なのか、ボールをキャッチし損ねる。転がったボールを水前寺がスライディングでシュートをする。そのシュートをオレが止め、前に思いっきり蹴る。

 

円堂「スマン、比企谷。また助かった」

 

風丸「ありがとうな比企谷」

 

八幡「気にするな。けど、円堂はもう限界だぞ。だからこっから死んでもボールにくらいつけ!そしてゴールを守るんだ!」

 

風丸「ああ、そうだな!」

 

栗松「まかせるでやんす!」

 

影野「俺も…やる!」

 

八幡「頼むぞ」

 

そしてDF陣が士気を高める。一人では抑えきれない相手も2人で、2人でもダメなら3人でと複数でプレスをかけ始めた。有効ではあるが・・・相手よりも動くせいでどんどん消耗してしまう。そんな時、壁山は目を瞑り、膝をつけて下を向いていた。

 

豪炎寺「目を開けろ壁山!」

 

八幡「そうだぞ。見ろ!アイツらの姿を!」

 

壁山「…」

 

壁山は目を開け顔を上げる。豪炎寺に任せると言っときながら声かけちゃったよ。

 

壁山「みんな…疲れてるのに…キャプテンはあの手でシュートの痛みに耐えている。誰も諦めようとしない。何故っす…何故そこまで…」

 

八幡「それはお前と豪炎寺を信じているからだ!」

 

豪炎寺「比企谷の言う通り、目を閉じるという事は恐怖から逃げるだけじゃない、アイツらの信頼を裏切るって事だ!」

 

壁山「っ!」

 

八幡「それにお前の弟も見てるんだろ!その弟にカッコ悪いところ見せたままでいいのか!」

 

壁山「…」

 

そして野生中の五利のターザンキックが炸裂する。けど円堂はあんなにボロボロの手でゴットハンドで止める。けどやっぱりダメージは相当なものらしい。だったら…オレは少し下がり

 

八幡「円堂!こっちだ!」

 

円堂「頼むぞ!比企谷!」

 

言われなくても、このボールは豪炎寺と壁山に繋がる。アイツらが必死になって守ったこのボールは死んでも繋げる!

 

『円堂からボールを貰った比企谷。そのまま上がっていく!けどその前に野生中獅子王が立ち塞がる!』

 

八幡「どけ!ファントムドライブ!」

 

獅子王「何!?」

 

ファントムドライブで突破したオレは豪炎寺と壁山に向かってボールを蹴りあげる!

 

八幡「頼むぞ!豪炎寺!…壁山!」

 

壁山は臆することなく、ボールを追いかける。それに追従して豪炎寺も上がる。よし、これなら!再び壁山と豪炎寺、相手の鶏井は跳ぶ。一瞬躊躇う壁山・・・だが!

 

壁山「これが俺の…イナズマ落としぃぃ!」

 

壁山は地に背を向け、上を見据える。そして豪炎寺は壁山の腹を踏み台にさらに高く。なるほどな下を見なければいいと言うことか。高さを得た豪炎寺はそのままオーバーヘッドキック。打ち出されたボールは紫電を纏いながら一直線に相手ゴールへ降り注ぐ。 

 

『ゴール!ついに野生中のゴールをこじ開けた!!豪炎寺と壁山の新しい必殺技だ!!雷門中、一点先制!!』

 

 

よくやったな壁山!全員が沸き立つ。疲労も痛みも忘れて、喜び舞い上がる。残り時間もわずかだ。オレのダークトルネードを決めるにはあの鶏井が邪魔だ。

 

八幡「豪炎寺」

 

豪炎寺「ん?なんだ?」

 

八幡「次はオレがシュートを決める。けどその前に相手のキャプテンをオレから遠ざけてくれ。でないとシュートが撃てない。多分さっきのイナズマ落としでお前にマーク来ると思うから」

 

豪炎寺「わかったやってみよう」

 

八幡「壁山はあのでかいDFを遠ざけてくれ」

 

壁山「はいっす!」

 

そして相手キックオフから試合再開、残り時間はあと僅か。 

 

壁山「はああ!!」

 

引き続き前陣からスタートの壁山が、相手のボールを奪い取る。勢いに乗っているせいか、ディフェンスのキレも増している、いい傾向だ。

 

壁山「比企谷さん!」

 

八幡「ああ」

 

壁山のパスを受け取り、相手ゴールへ切り込んでいく。容赦のないディフェンスが待ち構えるが、全て躱して更に前へ上がる。壁山がやり遂げたんだオレもやらなくちゃ先輩の顔が台無しだからな。それに小町も見ているんだ。カッコ悪いところ見せる訳にはいかない!周りを見ると、予定通り豪炎寺は鶏井を、壁山は獅子王を遠ざけてくれている。よし!これなら。

 

八幡「喰らえ!オレの必殺シュート!」

 

オレはボールを高く上げる。そして回転しながらジャンプをする。オレの足は黒い炎を纏う。

 

『おっと、これは!もしや豪炎寺のファイアトルネードか!?けど、色が違うぞ!』

 

それもそうだ。豪炎寺のファイアトルネードを真似しているが、色が違う。そう…これがオレの…

 

八幡「ダークトルネード!」

 

必殺シュートだ!

 

黒い炎を纏ったシュートは相手ゴールキーパーは触れることができず、ゴールの中へと入っていった。

 

『ゴール!雷門中2点目!比企谷の新必殺シュート技で野生中のゴールを奪った!とここで試合終了だぁぁぁぁぁー!』

 

壁山「比企谷さんナイスシュートッス!」

 

八幡「お前もナイスパスだったぞ」

 

壁山だけじゃない。このシュートのヒントを教えてくれた。

 

八幡「豪炎寺もサンキュな」

 

豪炎寺「ああ」

 

それと最初から最後まで付き合ってくれた音無にも感謝しねぇとな、と思いベンチの方を見ると音無がこっちに手を振っていた。流石に無視するのはあれなので、軽く手を上げて振った。

 

『2-0で雷門中の勝利!!2回戦へと駒を進めましたァァ!!』

 

そしてベンチに戻った円堂と壁山はハイタッチするが円堂が小さい悲鳴をあげる。グローブを外させると、円堂の手は真っ赤に腫れていた。それもそうだろう、あんなに何度も打たれては守ってを繰り返したんだからな。冷やすものを準備しようとしたら、誰かが円堂の手に氷袋を押し付ける。誰か、と思ったらまさかの雷門夏未お嬢様だった。まさかお前がこんなことするなんて思わなかったな。

 

夏未「サッカーなんかにそこまで情熱を注ぐなんて…バカね」

 

円堂「バカってなんだよ。おい!?」

 

と雷門は去って出ていく。所謂無視ですね。そんな時だった。

 

小町「お兄ちゃん」

 

八幡「ん?小町どうしたんだ?」

 

小町「お兄ちゃん、カッコよかったよ!」

 

八幡「お、おう…そうか。サンキュ」

 

小町「じゃ小町先帰るね!」

 

八幡「ああ、気をつけて帰れよ」

 

小町「はーい」

 

小町はそう言って走って去って行った。

 

風丸「良かったな比企谷。妹さんに褒められて」

 

八幡「そうだな。まさか言われるとは思ってなかったからな」

 

半田「それに比企谷のあの必殺シュート。凄かったな!」

 

円堂「本当に凄かったぞ!比企谷。えっと確かダークトルネードだっけ?豪炎寺のファイアトルネードと同じくらいの威力があったぞ!」

 

八幡「まぁ、そうなるように練習したからな」

 

いや、ホント結構練習したよ。夜遅くまで練習したからな。豪炎寺にアドバイスしてもらったり、音無にも遅くまで付き合ってもらったしな。ホント苦労したわ。

 

 

 

そして翌日、全ての授業も終わり円堂達と部室に行くとそこには雷門夏未がいた。

 

円堂「…お前なんでここに?」

 

夏未「今日から私、雷門夏未はサッカー部のマネージャーになりましたので、よろしく」

 

「「「「ええぇぇーー!」」」」

 

マジですか。いやいや、1番有り得なさそうな空気だったじゃん。一体どうしたんだよ。

 

 

 

 




いかがでした?ではまたお会いしましょう。


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第8話

どうもチャキです!第8話どうぞ!


八幡side

 

フットボールフロンティア地区予選第1試合、野生中に勝利したオレ達。ますます勢いを増していく部員達。オレはそんな奴らの空気についていけてないが、いつも通り河川敷で練習をする。けど…今日はやけに集中できない。理由は、河川敷の上の橋に他校の生徒達が見ているからだ。

 

半田「なんか最近ギャラリー増えてないか?」

 

栗松「そうでやんすね」

 

円堂「どうしたどうした?動き止めるな」

 

風丸「ついに俺たちにも出来たんじゃないのか……?」

 

円堂「出来たって……何が?」

 

風丸「ファンだよ」

 

「「「ええぇぇ!?」」」

 

風丸の一言で騒ぎ始める円堂達。オレは豪炎寺に近づき

 

八幡「なぁ豪炎寺。あれってさもしかして」

 

豪炎寺「ああ、十中八九他校偵察だろうな」

 

八幡「だよな…はぁ」

 

というかこいつらめでたい奴らだ。アレが自分達のファンと勘違いするなんて。けど、確かにオレ達のデータは少ない。だからこうしてデータ収集をしに来ているのだろう。

 

円堂「さぁ練習練習!必殺技にもっと磨きをかけるぞ!」

 

と円堂が言う。おい。こっちの手の内を堂々とさらしてどうする。と、思ってるとグラウンドに突っ込んでくる一台の車……雷門お嬢様の車だ。そして車から降りてきた雷門が一言。

 

夏未「必殺技の練習は禁止します」

 

ま、妥当な判断だろう。

 

円堂「いきなり何言ってんだよ。必殺技なしでどうやって地区予選勝ち抜けるんだよ」

 

いやいや、必殺技だけがサッカーじゃないからね。パスやドリブル、それを11人でやるからサッカーだと誰かが言ってたような言ってないような。

 

八幡「オレは雷門の意見に賛成だ」

 

円堂「比企谷まで何言ってんだよ」

 

何言ってんだよって言われても…日本語?とまぁ、しょうもない考えは置いといて。

 

八幡「あれ見てわからねぇのかよ」

 

オレは偵察部隊に向かって指を指す。

 

円堂「何って俺達のファンだろ!」

 

八幡「はぁ…違ぇよ」

 

円堂「じゃあなんだよ」

 

八幡「あれはオレ達のデータを取りに来た偵察部隊だよ」

 

「「「ええぇぇ!」」」

 

ダメだ〜。コイツらほとんどが偵察部隊の事を自分達のファンだと思っていたらしい。いや、他校の生徒でファンって少しぐらいおかしい思えよな。

 

音無「分かった!ここで必殺技の練習をすると他校にこちらの情報を渡しちゃうのですね!」

 

八幡「正解だ音無。今のオレたちはどうぞ見てください、好きなだけ分析して対策してくださいって言ってるものだ。だから必殺技の練習はやめとこうぜ」

 

円堂「必殺技なしでどうやって」

 

豪炎寺「円堂。必殺技だけがサッカーじゃない。パス回し、トラップ、シュート。やることは山ほどある」

 

さっきオレが思ってた事と似ている。

 

円堂「だったら誰にも見られない秘密の場所で練習しよう!必殺技のさ」

 

八幡「またそう簡単な事言う。そんな都合のいい場所どこにあるんだよ」

 

円堂「でもさ必要だろ」

 

はぁ…ホント能天気というかなんというか……アレだな。円堂はバカなんだ。そうだ、そうに違いない。ほら見ろ、あの豪炎寺ですら頭を抱えるんだぞ。やっぱりバカなんだ。

 

 

 

そして日にちを跨いでも、他校の偵察は減ることは無かった。むしろ増えている。いや、増えるなよ。というかそこに居たら他の人達に迷惑だろ。少しは考えろよな。もう…正直

 

八幡「うぜぇ…」

 

豪炎寺「声に出てるぞ」

 

八幡「やっべ」

 

豪炎寺「まぁ、気持ちは分からんでもないが」

 

八幡「ていうかアレ、ほとんど道占領して迷惑だろ」

 

豪炎寺「そうだな」

 

八幡「はぁ…視線が痛い」

 

豪炎寺「気にしないことが1番だ」

 

八幡「そうだな」

 

そんな会話をしながら基礎練をしていると、2台のトラックがやってきた。

 

八幡「うっわ…レーダーみたいなのある」

 

風丸「ホントだ」

 

八幡「ていうか誰?」

 

音無「次の対戦相手ですよ比企谷先輩」

 

八幡「次の対戦相手?どこだ?」

 

音無「御影専農のメンバーです。私データベース作ったんです。キャプテンでありキーパーの杉森。エースストライカーの下鶴です!」

 

音無はそう言って横からデータを見せてくる。

 

八幡「ほーん」

 

染岡「徹底的に観察する気でいやがる・・・嫌な感じだぜ」

 

豪炎寺「気にせず行こう…さあ、シュート練習だ!」

 

豪炎寺の声掛けで全員が再び練習に意識を向ける。数十分程そうしていると、急に杉森と下鶴が降りてきてグラウンド内に入ってくる。

 

八幡「おいお前ら」

 

杉森「なんだ?」

 

八幡「なんだじゃねぇよ。オレ達は今練習してるんだ。勝手に入ってくるな」

 

杉森「何故、必殺技を隠す」

 

八幡「はぁ?話聞いてる?勝手に入ってくるなって言ってんだろ。それに質問を質問で返すな」

 

円堂「落ち着け比企谷」

 

八幡「オレはいつだって落ち着いているが」

 

下鶴「今更隠しても無駄だ。既に我々は君たちの能力を把握している」

 

杉森「君達では我々に100%勝てない」

 

円堂「勝負はやってみなくちゃ分からないだろう?」

 

下鶴「勝負?これは害虫駆除に過ぎない」

 

そう言われた途端、部員のブーイングの嵐。追い出してやる、と2人に迫る染岡を円堂が制する。思いのほか冷静だなと思ったら、そんなこと無かった。多分、切れてるなあれ。

 

円堂「俺たちを害虫って言ったこと取り消せ」

 

杉森「事実を言ったまでだが」

 

下鶴「理解出来ないとは思わなかった」

 

八幡「事実ならなんでも言っていい、そう言ってるんだなお前らは」

 

杉森「そう言っているのだが」

 

八幡「そうかそうか。………言質とったからな」

 

杉森・下鶴「「っ!?」」

 

八幡「ならオレからも…お前らさ何故必殺技を隠すって言うけど、何故むしろ見せてもらえるって思ったんだよ。頭おかしいんじゃねぇの?それにデータだけでオレ達に勝った気取りかよ。ますます頭おかしいな、いや、頭の中お花畑かよ」

 

杉森「貴様、我々を侮辱しているのか」

 

八幡「あれれ〜?さっき君達、事実ならなんでも言っていいって言ってたじゃん。だからオレは事実を言ったんだけど?売り言葉に買い言葉って知ってる?」

 

下鶴「事実では無い!今すぐその言葉を撤回しろ!」

 

円堂「なら!俺達を害虫って言ったこと取り消せ」

 

ちょっと円堂さん?この流れだったらオレが言うはずだったよね。なんで君が言っちゃうの?

 

杉森「それはできん」

 

円堂「くっ!もう許せねぇ!俺たちの必殺技を見せてやる!今すぐ決闘だ!」

 

え?はぁ!?何言っちゃってるのこいつ?マジで?

 

こうして円堂は御影専農の奴らに喧嘩をふっかけ、決闘をする事になった。内容はPK対決。お互いシュート1本、止められるかどうかで決着をつけることになった。

 

八幡「どうしてこんな事に…?」

 

風丸「それは比企谷と円堂の所為だろ」

 

八幡「え?オレ?」

 

「「「うん!」」」

 

八幡「いや待て!オレは悪くない。そう社会が悪い」

 

風丸「なんだよそれ」

 

そんなしょうもないやり取りをしているうちに決闘が始まろうとしていた。

 

下鶴「では始める」

 

円堂「よし来い!」

 

そして木野が笛を吹き、その合図で下鶴が軽くドリブルをする。さ〜て一体どんなシュートを撃ってくるんだ?そしてボールを高く上げ、足に炎を纏いながら回転する。おいおいちょっと待てよ。

 

下鶴「ファイアトルネード!」

 

まさかのファイアトルネード!?豪炎寺のとそっくり…いや、もうあれはファイアトルネードそのものだ。

 

円堂「熱血パンチ!」

 

円堂は熱血パンチで立ち向かうが、防ぎきれずボールはゴール中へと入っていった。

 

染岡「ファイアトルネードだ」

 

八幡「うっそ〜ん」

 

目金「こちらの能力を解析したと言ってましたが必殺技をコピーされているとは」

 

ホントな。そんなんチートでチーターやん!どこぞのトゲトゲ頭のやつも言いそうだな。そんな事考えていると、次蹴るのは豪炎寺。あれを見せられたらな。

 

染岡「決めろ!豪炎寺!」

 

半田「ファイアトルネードはお前の必殺技だ!」

 

壁山「コピーは本物には敵わないって教えてやるっすよ!」

 

円堂「頼むぞ!」

 

頷く豪炎寺。ていうか、一つ思ったこと。杉森の頭に付いてる電極なに?まぁ、そんな事は置いといて、また木野の笛の合図で豪炎寺もドリブルを始める。そしてそのまま

 

豪炎寺「ファイアトルネード!」

 

杉森「シュートポケット!」

 

腕を交差させた後、何やら空間が杉森の前に形成される。そこにシュートが入るとシュートの威力は弱まってゆき、杉森に片手で止められた。

 

八幡「とめ…た」

 

円堂「嘘だろ…」

 

こうしてオレ達は完敗したのであった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そして翌日

 

オレ達はこれまで御影専農と戦ってきた人達の情報を見ていた。そいつらはいつも冷静で正確なサッカーをしているらしい。どの試合も無失点で終わっている。ということはあのゴールキーパーの杉森の実力がわかる。

 

豪炎寺「恐らく、俺達のデータを全て把握しているというのは本当のことだ」

 

八幡「だろうな」

 

豪炎寺「ファイアトルネードを止められたのなら、比企谷のダークトルネード、そして染岡のドラゴンクラッシュ、ドラゴントルネードも効かないかもしれない」

 

風丸「下手すればイナズマ落しもだ」

 

円堂「なら、新必殺技だ!」

 

八幡「話聞いてる?それができたら今頃苦労していないんだよ」

 

風丸「比企谷の言う通りだ」

 

染岡「河川敷や鉄塔広場で練習なんてしたら、あっという間に知れ渡っちまうぜ」

 

ごもっとも。そうなればオレ達の練習場所がどんどん無くなっていく。あれ?詰んでね?そう思っていた時部室の扉が開いた。

 

木野「みんな夏未さんが呼んでるわよ」

 

八幡「こんな時になんだよ」

 

円堂「まぁ、とにかく行ってみようぜ」

 

八幡「ええ〜、行かないって選択肢は?」

 

風丸「相変わらずだな比企谷は」

 

音無「まぁ、行ってみましょうよ比企谷先輩」

 

八幡「はぁ…わーたよ。行けばいいんだろ」

 

音無「はい!」

 

というわけでオレ達は雷門に指定された場所に来たのはいいんだが、肝心の雷門が居ない。呼び出しといていないってどういう事だよ。

 

八幡「なぁ、雷門どこにいるんだよ。いないなら帰っていい?」

 

風丸「ダメだろ」

 

八幡「だよな」

 

指定された場所は校舎からは離れ、辺りには木々が生い茂っている。何ともまあ不気味な場所である。こんな場所があるとは知らなかったな。

 

目金「ここは・・・雷門中学七不思議の一つ、開かずの扉・・・!」

 

突如、目金が妙な事を口ずさむ。それを聞いて全員顔を青くする。…そんな七不思議なんて、うちの学校にあったんだな。と、その時!音を立てながら扉が開いた!

 

八幡「めっちゃ開くじゃん」

 

「ヒイィィー」

 

みんな各々驚いている。そんな中、音無はオレの後ろへと隠れる。ちょっと伸びちゃうから引っ張らないで?

 

中から一人の生徒が顔を出す。

 

夏未「皆揃ったわね?」

 

八幡「お前かよ…」

 

雷門に中に入るよう促され、薄暗い階段を下に降りて行く。どこまで続いているんだろうか。金属製の扉に着いているセンサーが俺達に反応し、音を立てて開くと明かりが灯る。

 

円堂「ここは?」

 

夏未「伝説のイナズマイレブンの秘密特訓場・・・イナビカリ修練場よ」

 

そんなものがあったのも驚きだが、何より学校の地下にこんな場所があったのが驚きだ。今日は驚きの連続だな。何故こんな場所を見つけられたのか、と雷門に尋ねると「見つけたの」としか返してくれなかった。よく見つけなこんな所。…まあ何にせよ、今のオレらには好都合だ。ここなら誰にも見られることなく練習が出来る。

 

雷門曰く、必殺技の練習場としてリフォームしたらしいが、この様子なら必殺技の練習だけでなく、単純なトレーニングにも使えそうだ。

 

そして特訓開始する。するとマネージャー達は外に出て、扉を閉める。どうやらタイムロック式らしく、一定の時間練習をこなさない限りは開かないらしい。なるほど、逃げ道はないと。やべぇ〜帰りたくなってきた。それぞれが持ち場につき、機械が作動する。もう、どうにもでもなれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「し、死ぬ…」

 

そう口から零れた。いや、もうホント死ぬよこれ。他の皆もボロボロで倒れ伏していた。そんなオレ達を見たマネージャーの木野、音無は軽い悲鳴をあげる。今のオレの目は多分ゾンビみたいな目をしているんだろうな。サッカーボールを次々発射するガトリングガン。少しでも止まったら後ろの人にぶつかる巨大ルーレット。走らなければ後ろの車に轢かれる動く床。当たると存在を消されそうなレーザー銃。他にも人を殺す為に作ったんじゃないかとする思える設備が選り取りみどりだ。あ〜、やべぇ…思い出しただけでヤバイ。

 

円堂「元気出せ…あのイナズマイレブンと同じ特訓を乗り越えたんだ」

 

豪炎寺「その通りだ…この特訓は無駄にはならない」

 

円堂「試合まで1週間…毎日続けるぞ…!」

 

そう言われて他の奴らは「おー」と小さい声で答える。ホントにこれ1週間続けるの?死ぬよマジで。

 

 

 

 




いかがでしたか?ではまたお会いしましょう。


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第9話

どうもチャキです!第9話どうぞ!


八幡side

 

あれから本当に御影専農戦までの1週間の間、イナビカリ修練場で特訓をした。いや、本当死ぬかと思ったけど何とかお兄ちゃんは生きてるよ小町。オレ以外の奴らもかなり疲れている。体がボロボロになりそうなくらい特訓をした。そのおかげで小町や母ちゃんに心配されたな。そんなこんなで試合当日。オレ達は試合会場である。御影専農の学校に来ている。あとついでに御影専農は正式名は御影専修農業高校附属中学校と言うらしい。かなり長い名前の学校だな。だから略して御影専農と言うのか。まぁ、これは試合には関係ないけどな。

 

『さあ、フットボールフロンティア地区大会2回戦の開始です!!』

 

実況のその一声に、会場全体が興奮の渦に包まれる。そういえば実況しているのは確か…名前は…角馬圭太と言ってたな。

 

角馬『本日は雷門中と御影専修農業高校附属中学校の対戦!御影専農のその強さは帝国に匹敵するとも言われています!それに対し雷門中はどう戦うのか!?』

 

オレ達はイナビカリ修練所での特訓を乗り越えたんだ。アイツらがとったというデータや予測を超えている。……多分。だからアイツらの思い通りに行かせない。こんなところで負けてたまるかよ。

 

フォーメーションは野生中戦と同じでオレはMFだ。FWはいつものように豪炎寺と染岡のツートップ。

 

角馬『審判によるキックオフのホイッスルが…鳴ったァァァ!!試合開始です!!』

 

そんな事を考えていると試合が始まった。ボールは豪炎寺から染岡、染岡から豪炎寺。そしてまた豪炎寺から染岡に渡り攻めていく。オレもその後ろを追いながら攻めていく。そして目の前に立ちはだかるのは先日、俺達をボロボロに打ち負かしてくれたエース下鶴。

 

染岡「何ッ!?」

 

染岡が驚きの声を漏らす。一瞬にしてボールを奪われただとか、そんなことではない。下鶴は動かないのだ。チッ、舐めやがって。多分だがオレ達のシュートでは1点すら取れないとか思っているのだろうか。

 

杉森「ディフェンスフォーメーション、ガンマ3。発動!!」

 

キャプテンでありキーパー、杉森がそう指示を出すと、全員が素早く動いて陣形を組む。その様はさながら機械のよう。確かにサッカーサイボーグと言われるだけあるな。パスを受け取った豪炎寺がゴールに目線をやると、目の前には徹底されたマークが。

 

染岡「豪炎寺こっちだ!!」

 

染岡が豪炎寺からのパスを受け、そのままシュート体勢をとる。

 

染岡「ドラゴンクラッシュ!」

 

 

蒼龍がボールと共に暴れ回る。向かう先はゴール。が、ゴール前には4人のDFが真ん中に道を開けるように待ち構える。その4人はボールとすれ違いざまにボールに蹴りを加える。DF達を抜ける頃にはシュートの威力は完全に殺され、杉森は苦労することなくボールをキャッチする。なるほどな、角度とか力加減とか色々計算されたシュートブロックか。嫌だなホント。

 

染岡「何だ…今の守備は!?」

 

杉森「当たり前だ。君達のサッカーなど、全て予測出来ている!」

 

八幡「一旦戻るぞ染岡。攻撃に備えるぞ」

 

染岡「ああ」

 

 

その後杉森は顔色一つ変えることなくロングパス。相手は一気に前線へと上がる。こちらのゴールまで迫る御影専農FW陣。だが、こちらのDF陣がそれを見逃してはくれない。風丸が一瞬で接近、スライディングでボールを奪い取る。早いなアイツ。前よりも早くなっているようにも見える。これもイナビカリ修練所のおかげかね。そして風丸はボールを持って上がっていき、宍戸にパスをする。けどすぐに御影専農がボール奪い返し上がっていく。速いな、計算だけじゃなくフィジカルも整っている。マックスと栗松が相手の進行を許してしまう。迫る10番は自分に任せ、下鶴のマークに着くように風丸達に指示を出す円堂。

 

ん?いや、ちょっと待て

 

八幡「違う円堂!逆だ!逆からもう1人攻めてきているぞ!」

 

そう、下鶴とは反対方向に9番の山岸が上がって来ていたのだ。

 

下鶴「何!?」

 

円堂「わかった!」

 

下鶴や他の御影専農の奴らも驚いている。

 

山岸「チッ」

 

9番はダイレクトでシュートを撃つも、それをすぐに反応してキャッチする。もしあの時オレが言ってなかったら、まだ状況が変わっていたかもしれないな。そして円堂はすぐさまパスを出そうとするも出せなかった。なぜなら付近の味方が相手にマークされていたのだ。なら、こうするまでだ!オレはそう思い走り出す。それをすぐに気づいた円堂が

 

円堂「比企谷!」

 

八幡「はい、っよ」

 

円堂からロングパスを受け取る。そのまま上がっていく。いや、少し下がっておいて良かったな。

 

八幡「お前ら上がれ!」

 

オレの掛け声と共に攻撃陣が上がっていく。オレのすぐ近くに豪炎寺も上がってくる。そしてオレはアタッキングサードに差し掛かると同時にボールを上に上げて、自分は回転しながら飛び上がる。そして足には黒い炎を纏って…

 

八幡「ダークトルネード!」

 

自分でも分かるくらい前よりも威力が上がっているのを確認できる。基礎能力の向上によって既存の必殺技の威力が底上げされたのだ。そして黒い炎を纏ったシュートは杉森に向かっていっている。

 

杉森「シュートポケット…ぐッ!!」

 

シュートがゴールを貫くことはなかったが、予測より速く、力強いシュートだったのだろう。杉森はセーブしきれずボールを弾く。ボールが弾かれたその先にいるのは豪炎寺だ。

 

八幡「やれ!豪炎寺!」

 

豪炎寺「ああ!ファイアトルネード!」

 

豪炎寺の想いに呼応するように勢いを増した火炎が脚に宿る。

 

空高く上げられたボールに回転しながら迫り、同じ高さまで上昇すると同時に勢いを乗せて蹴りを叩き込む。打ち出されたボールは火炎を纏い、敵を打ち破らんとゴールへ迫る。

 

杉森「シュートポケット!!」

 

先程と同じく、腕を大きく開いて溜めた力をバリアとして展開する。が、またしても止めきることは叶わずボールは弾かれてしまう。それを再びキープするのは豪炎寺、背後から上がってきた染岡と共にゴールへ向かう。染岡が蒼い龍を使役し、豪炎寺が龍に炎を吹き込む。

 

染岡「ドラゴォォン!!」

 

豪炎寺「トルネェェド!!」

 

炎に染められた紅龍が容赦無く牙を剥く。杉森は再びシュートポケットを展開し迎え撃つ。苦悶の声を上げながら杉森は耐える。ひたすら耐える。それでもドラゴントルネードの勢いは殺しきれず、ボールは前に進もうとする。それを咄嗟に弾いて何とかやり過ごす杉森。

 

だが。

 

壁山「豪炎寺さん!!」

 

豪炎寺「──よし!!」

 

後陣から上がってきた壁山が豪炎寺と合流すると同時に大きく飛ぶ。豪炎寺は壁山を踏み台にさらに高くまで跳躍。オーバーヘッドキックで放たれたボールは、稲妻の様に降り注ぐ。

 

壁山「イナズマ落としィィ!!」

 

杉森「ロケットこぶしッッ!!」

 

杉森は今まで見せてこなかった技でイナズマ落としに抵抗する。円堂のゴッドハンドのように拳にエネルギーを集約させ、それをそのまま拳の形で打ち出した。打ち出された拳状のエネルギーは襲い来るイナズマ落としを真正面から弾き飛ばす。と言うよりもオレ達の連続シュートを全て防ぐとはな。

 

杉森「オフェンスフォーメーション、デルタ5!!」

 

杉森がオフェンスの指示を出すと、御影専農は一気に攻撃的なプレイへと転向する。ボールの奪取を試みるも、あっさりと躱されてしまった。

 

そのまま一糸乱れぬ連携で御影専農は前へ前へと上がっていく。当然全員タックルなりスライディングなりを仕掛けるが全てやり過ごされる。一気にゴール前へ。 

 

円堂「ディフェンス囲め!!」

 

風丸と土門が10番のマークに着く。が、先程同様サイドから走ってきていた9番にパスを出し、そのままキック。迫るボールに円堂が飛び付くが、ボールはその前で曲がる。狙いはゴールではなく、そのまた逆サイドから上がってきていた下鶴へのパスだった。

 

円堂が踏ん張って耐え、下鶴のシュートをパンチングする。が、そのボールにも回転がかけられており、拳に触れた瞬間9番の方向へと曲がっていく。

 

そのまま9番がヘディングでボールを押し込んで──

 

角馬『ゴール!!決まってしまった!!御影専農、これで1点先取だ!』

 

円堂の健闘むなしく、無情にも失点を告げるホイッスルがなる。ヤツら、あんな所まで計算して狙っていたというのか…?

 

円堂「クッソォォ…!!」

 

円堂が地面に拳を叩き付けて悔しがる。だがまだ1点だ、大丈夫だ。まだオレ達攻撃陣が攻め立てれば取り返せる。まだ前半だ。なんとかなるだろうな。

 

が、その想いは虚しくも打ち砕かれることとなる。ホイッスルでこちらのキックオフから試合再開。すぐさま染岡から9番がボールを奪い取り、下鶴へ。下鶴は───ゴールの杉森まで。

 

バックパス?何故攻めてこない?…いや、待てよ。……まさか、こいつら……!

 

八幡「お前ら、何としてもボールを奪え!コイツら、このまま逃げ切るつもりだ!」

 

 

「「「何!?」」」

 

ずっとキーパーがボールを持っている訳にも行かず、杉森は1番近いDFへパスを回す。そして全員でボールを奪おうとするも、次から次へと別の選手にパスを回していく。

 

やはりコイツらはこのまま前半逃げ切るつもりだ。

 

そうこうしてるうちに前半を終えるホイッスルがなってしまう。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そしてオレ達は自分達の控え室に向かっている途中、御影専農の奴らと出くわすと、円堂が杉森に話しかける。

 

円堂「杉森!」

 

円堂の声で杉森とその他の御影専農の奴らも円堂の方に振り向く。

 

円堂「なんで攻撃しないんだよ。あれじゃあサッカーにならないだろう!」

 

杉森「それが監督命令だ」

 

円堂「なんだって!?」

 

ホントなんだってばよ。そんな理由で攻撃しないのかよ。

 

杉森「10点差でも1点差でも同じことだ。リスクを侵さずタイムアップを待つ」

 

円堂「…何もかも計算通りに行くと思っているのかよ!」

 

オレ達のデータは全て把握している。故に杉森からはゴールは奪えない。俺達は既に負けている。そう淡々と語る杉森。すると我慢できなかったのか円堂が

 

円堂「そんなの分からないだろ!勝利の女神は勝利を強く信じる方に微笑むんだ」

 

杉森「データに無いことは決して起きない」

 

円堂「データ、データって、そんなサッカーやってて楽しいのか!?」

 

杉森「楽しい?」

 

どうやらこいつらの頭にハテナマークがいっぱいだろうな。

 

円堂「そうさ!サッカーは楽しいもんだろ!仲間とボールを通して通じ合う素晴らしいものだ!」

 

杉森「素晴らしい?君の意見は理解不能だ」

 

円堂「不能?それはこっちのセリフだ!見てろ!俺達がお前らに本当のサッカーを見せてやる!」

 

そう言って指を指す円堂。というかコイツらホントに感情とか無いのか?そこまでサイボーグになったのか?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

角馬『あーっと!後半早々、御影専農は全員下がってのディフェンス!これでは雷門中守りを崩せない!!』

 

やはりと言うべきか、御影専農はボールを下げ、前半の最後同様守りに徹するつもりだ。が、何やら司令塔である杉森の表情には曇りが見える。今はそんな事よりもボールを奪うことだけ専念しよう。

 

それに必殺技ではないが、あれを試してみるか。そう思いオレはパスを受けた眼鏡をかけた大部に向かってスライディングタックルをする。けどそんなスライディングタックルをヒラリと横に躱される。けど、オレはそれを待っていたのだ。そう思いオレは地面に片手をついて、それを軸にして身体を反転されて2発目のタックルを打ち込む。

 

八幡「フッ!」

 

大部「な!?」

 

そしてオレは相手からボールを奪う事ができたのだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

今のはキャプテン翼の松山光が使うフェイントタックルと同じようにしてボールを奪いました。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

角馬『なんと!比企谷がボールを奪う事ができた!比企谷のスライディングが躱されたと思いきや!反転して大部からボールを奪った!』

 

杉森「なんだと!?」

 

どうやら杉森や他の連中も驚いているようだ。そんな事は気にせずオレはそのまま上がっていく。けれどすぐに我に返った杉森が指示を出す。そしてすぐさまオレの前に2人が立ち塞がる。これじゃせっかく奪ったのに、シュートすら出来ない。どうすればと思っていると後ろから声をかけられた。

 

円堂「比企谷!こっちだ!」

 

呼ばれて振り向いてみると、円堂がいたのだ。え?何やってんの?お前?ゴールはどうした?けど、今はそんな事に構っている暇はない。今ので驚いたのか相手の動きが止まっているうちにオレは円堂にパスを出す。それを受け取った円堂は勢いよくゴール前まで上がっていく。まぁ、今思えば攻撃してこないんじゃゴールに居ても仕方ねえもんな。でもだからってここまで上がってくるかね普通。

 

角馬『なんと!キーパー円堂!ゴールをがら空きにして上がっていくぞ!』

 

杉森「何だと!?」

 

どうやら、杉森も相当驚いているようだ。

 

円堂「行くぞ!!うおおおおおお!!」

 

杉森「君のシュートは…データにない!!」

 

悲鳴に近い叫び声を上げながら杉森は円堂のシュートをキャッチする。円堂は心の底から悔しがる。 

 

杉森「なぜお前が攻撃に参加する。」

 

円堂「点を取るために決まってるだろ!それがサッカーだ!」

 

円堂が堂々と告げる。まぁ、確かにそうだけど……

 

染岡・八幡「「いいから!早く戻れ!」」

 

染岡と全く同じことを円堂に向かって言う。

 

円堂「へへっ!」

 

八幡「笑ってる場合か!」

 

円堂は何やら満足そうに自分ゴールへと戻っていく。はぁ…まったく。

 

杉森「オフェンスフォーメーション、シルバー1だ!」

 

御影専農監督「ま、待て!命令違反だぞ!」

 

杉森は「オフェンス」を指示した。ベンチの監督は「命令違反」と声を荒らげた。なるほど、お前は自分の監督の指示に逆らったのか。

 

杉森が蹴ったボールを追いかける。ボールを持った相手の前には壁山。すると、突然壁山は倒れ込む。倒れ際に頭でボールをマックスにパスしてみせる。 

 

壁山「松野さん!」

 

マックス「へえ、やるじゃん壁山!」

 

すぐさまボールを奪いに来るが、マックスは華麗なターンで躱してみせる。どうやらイナビカリ修練所の成果が出てきているみたいだ。豪炎寺にパスを回そうとした瞬間、下鶴のスライディングでボールを零してしまう。こちらのディフェンス網を掻い潜り、下鶴はゴール目前まで迫る。待機していた風丸と土門がボールを奪いにかかるが── 

 

下鶴「パトリオットシュート!!」

 

突如下鶴は高くボールを蹴りあげる。ファイアトルネードか、と警戒したが下鶴自身は跳躍する素振りを見せない。その時だった。ボールは突如煙を吐きながら急降下。その様子はさながらパトリオットミサイルの様。そのシュートを拳でボールを弾く円堂。弾かれたボールはラインの外へ。

 

相手のコーナーキックだ。蹴られたボールは再び下鶴へ。空高く蹴り上げ、再びパトリオットシュートを放つ。するとまたもや円堂が前に出てくる。何してんの?ホント。ゴールがら空きだよ。すると

 

円堂「豪炎寺、こっちだ!」

 

豪炎寺「円堂、何する気だ!」

 

円堂「止まるな!このままシュートだ!!」

 

豪炎寺「何!?」

 

円堂「俺を信じろ!」

 

突然の提案に豪炎寺も戸惑う。だがもうシュートは目前までせまっている。半ば強制的に豪炎寺は円堂と共にボールを迎え撃つ。

 

円堂「行くぜ!」

 

豪炎寺「おう!」

 

そんな掛け声をしながら、2人はツインシュートでシュートを打ち返す。するとそのボールは雷が辺りに迸る。あれは…新必殺技なのか?

 

2人のカウンターキックで打ち出されたボールは、そのまま真っ直ぐ相手ゴールへと稲妻と共に進んでいく。

 

杉森「有り得ない…有り得るかァァァァ!!!」

 

これも予測していなかったのだろう。杉森が雄叫びと共に腕を前へ突き出す。稲妻は守護神の守りを突き破り、 ゴールネットを揺らす。

 

角馬『遂に、雷門中のゴォォォル!!!』

 

どうやらこれで同点。振り出しに戻ったという訳だな。

 

円堂「やったぜ!守備と攻撃が同時なら、ヤツらも対応出来ないんだ!」

 

豪炎寺「ああ!あんな技が決められるなんてな。」

 

円堂「ほんとだ。何か身体が軽いとは思ったんだけど。」

 

それも特訓の成果だろうな。けれどまだ同点。気が抜けないな。そして相手のキックオフから再開する。それから他の連中の動きも前とは違う。やはりこれもイナビカリ修練所の特訓でオレ達の身体能力がレベルアップしているからだろうな。

 

染岡「比企谷!」

 

八幡「おう」

 

染岡からボールを受け取り上がっていく。すると目の前に相手DFが立ち塞がる。けれど無意味だ。

 

八幡「ファントムドライブ!」

 

ファントムドライブで相手DFを抜き、ゴール前まで上がっていく。そしてペナルティエリア前まで行くと、杉森と1体1の形になる。そしてオレはボールを上にあげて、回転しながら飛び上がる。

 

八幡「行けっ!ダークトルネード!」

 

野生中やさっきよりも力が入る。多分、さっきよりもパワーが上がっている筈だ。

 

杉森「シュートポケット!」

 

腕を大きく開いて溜めた力をバリアとして展開する。けれど威力は落ちずそのままバリアを貫通し杉森ごとゴールの中へとねじ込む。

 

角馬『ゴォォォル!!!雷門中2点目!比企谷のダークトルネードで逆転だァァァ!!』

 

八幡「よし」

 

オレは小さくガッツポーズを取る。やはり点を取るのは嬉しいな。

 

円堂「さあ皆!!残りも油断せずにガンガン行くぞ!」

 

「「「「おお!」」」」

 

後ろからの円堂の声を受けて、全員が今一度気を引き締め直す。闘志に充ちた雷門側とは対象に、御影専農側は何やら絶望しきった表情。力無いキックオフ。すぐさま染岡がボールを奪い全速前進。御影専農は誰一人として動かない。否、一人。未だその瞳に闘志を宿し続けている者がいた。

 

染岡「うおおおお!!ドラゴォォンクラッァァシュ!!!」

 

染岡全身全霊のドラゴンクラッシュ。試合序盤で繰り出したそれよりも明らかに強力だ。 

 

杉森「シュートポケットオォォォォォ!!!」

 

再び守護神は吠える。展開したバリアが打ち砕かれようと、決して諦めずに腕を突き出す。暴れる蒼い龍を抑え込み、守護神はボールをその手に収める。

 

下鶴「キャプテン…!」

 

杉森「皆!俺は負けたくない…皆も同じなんじゃないか!?最後まで…戦うんだ!!」

 

杉森が頭に着けていた電極を剥がす。恐らく、あれでデータの管理、情報の共有を行っていたのだろう。それを見て、フィールドプレイヤー達も全員電極を剥がす。そしてそいつらの眼には熱い闘志が満ちていた。フッ、なんだよ。そんな顔できるんじゃねぇか。初めっからそうしていればいいのに。

 

杉森「最後の1秒まで諦めるなァ!」

 

杉森の豪快なスロー。ボールは高く、遠くへ飛んでいく。それを追いかけていく御影専農イレブン。彼らは今この瞬間、自分達の意志に従ってボールを追っていた。

 

円堂「面白くなってきた!」

 

そこから全身全霊全力のぶつかり合い。攻めて守って、また攻めて。先程までとは別のような空間へと変貌を遂げる。観客達の声も、次第に熱が籠っていった。

 

円堂「決めろ!豪炎寺!」

 

円堂はそう言いながらロングスローで豪炎寺へと渡す。そして豪炎寺はボールが自分の上まで来ると、回転しながら飛び上がる。

 

豪炎寺「ファイアトルネード!」

 

豪炎寺がファイアトルネードを撃とうとしたと同時に下鶴もファイアトルネードを撃ち、ボールを同時に蹴った。行き場を失った力は、近くにいた豪炎寺と下鶴へ襲い掛かる。体勢を崩した2人はそのまま転落、身体を痛めたのか顔を歪めている。

 

 

杉森「改ァァァァァァ!!」

 

杉森が下鶴の名前を呼ぶ。それに答えるように、下鶴は頭でボールを杉森に。

 

下鶴「キャプテン…」

 

杉森「───オォォォォォォォォォ!!!」

 

杉森は咆哮と共に駆け出す。守護神が、護るべき場所から飛び出した。いや、お前も攻めてくるのかよ!杉森はどんどん上がっていく。キーパーにも関わらず、雷門のディフェンスを潜り抜けて。

 

杉森「行くぞ!!円堂ォォォォォォォォ!!」

 

放たれたシュート。空気を斬り裂きながらゴールへと迫る。

 

円堂「ゴッドハンドォォォ!!!」

 

杉森の全力に、円堂も全力を持って答える。この試合で初めて顕現した神の手。好敵手の全力を、真正面から受け止める。

 

杉森「円堂ォォォォォォ!」

 

杉森は円堂の名前を大声で叫ぶ。なんとも力が入った気持ちだな。そして円堂は杉森の全力シュートをガッチリと止めた。

 

角馬『試合終了ォォォ!!準決勝進出を果たしたのは、雷門中だァァァァ!!』

 

その声で会場は一気に盛り上がる。負けてもいい試合だったぞとか、御影専農の連中への言葉が聞こえてくる。オレはそんな中、豪炎寺の元へ向かい。

 

八幡「大丈夫か?豪炎寺」

 

豪炎寺「ああ」

 

嘘だろ。未だに立ち上がれないのに、何が「ああ」だよまったく。

 

八幡「ほら、肩貸すぞ」

 

豪炎寺「すまん、助かる」

 

八幡「どういたしまして、っと」

 

オレは自分の肩を貸して豪炎寺を助け起こす。

 

染岡「比企谷、俺も手伝うぞ」

 

八幡「おう、頼むわ」

 

染岡「任せろ」

 

染岡の手伝いもあって豪炎寺は立ち上がることができた。まさかと思うが捻挫か?それとも骨折か?どっちにしても1人では歩きづらいだろうな。すると

 

円堂「杉森!」

 

円堂が自陣へ戻った杉森を追いかけ、声を掛ける。 

 

円堂「またサッカーしような、サッカー!」

 

杉森「…ああ、また!」

 

2人は握手を交わす。そこでまた拍手喝采の勢いは強くなる。ホント御影専農の奴ら、いい顔になったな。

 

 

こうしてオレ達は準決勝まで駒を進めることが出来た。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

翌日

 

いつも通り部室にいるのだが…

 

円堂「ええ!ドクターストップ!?」

 

そう、昨日の下鶴との激突なのか、落下した時受け身を受け損なったのか分からないが、それでドクターストップになったらしい。そうすると次の準決勝には豪炎寺は出場出来ない。

 

豪炎寺「すまん」

 

円堂「そんなぁぁぁー」

 

なんとも弱々しい声を出す円堂であった。

 

 

 




いかがでしたか?ではまた会いましょう。


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第10話

どうもチャキです!第10話どうぞ!


八幡side

 

豪炎寺「…すまん」

 

円堂「気にすんなって!準決勝は俺達に任せとけって!」

 

豪炎寺はその言葉を聞いて頷き、タクシーへと乗り込んで行ってしまった。

 

円堂「準決勝は豪炎寺抜きか」

 

土門「せっかく、すごいシュートを編み出したのにさ」

 

円堂「イナズマ1号だろ」

 

へぇ〜、あのシュートの名前イナズマ1号って言うのか。円堂曰く爺さんのノートに全く同じ内容のシュートが記されていたらしい。FWとGKの連携シュートらしい。

 

けれど全体の雰囲気は何となくだが、豪炎寺が欠けたことにより落ち込み気味だ。

 

土門「豪炎寺がいなくたって、お前達なら大丈夫だろ?いざとなったら、俺も出るしな。」

 

へぇ〜、言うじゃあねぇか。

 

円堂「そうだな。俺達が頑張らなくちゃな!よし、早速練習だ!」

 

「「「「「おーう!」」」」」

 

円堂の声でここにいたほぼ全員が声を上げる。え?オレ?言うまでもないだろ。やるかよ。

 

そして部室にて

 

木野「準々決勝の尾刈斗中対秋葉名戸学園。この戦いに勝った方が、次の準決勝で私達と戦うことになるわ」

 

風丸「尾刈斗中って」

 

円堂「あいつらだよな」

 

八幡「ほぼ、なんかのコスプレ集団の奴らだっけ?」

 

風丸「比企谷、お前酷いな」

 

八幡「冗談だ。というかアイツらまだあんな事しているのか?」

 

木野「それがね。猛特訓の末に大分戦力を上げたらしいよ」

 

八幡「へぇ〜」

 

夏未「それで、秋葉名戸学園っていうのはどんなチームなの?」

 

と雷門が木野に訪ねる。まぁ、確かに気になるわな。かなり珍しい名前の学校みたいだし。

 

木野「学力は優秀だけど、少々マニアックな生徒が沢山いる学校。フットボールフロンティア出場校中、最弱の呼び声が高いチーム」

 

最弱ね…。頭はいいのに運動が苦手な奴らって事か?いるよなそういう奴。クラスに1人はいるんじゃないかな?まぁ、どっちでもいいがな。そんな事を思っていると木野が突然顔を赤くしている。

 

八幡「どした?」

 

木野「えっと…尾刈斗中との試合前にメイド喫茶に入り浸っていた…ですって。」

 

目金「メイド喫茶ですと!?」

 

夏未「何それ?」

 

マックス「そんな奴らが良く勝ち進めてきたね」

 

まったくだ。まさか、本当は運動神経は良いとか言うんじゃないだろうな。それで、余裕だからメイド喫茶に行っているとか?もしそれだったら、相手をおちょくっているだろ。その情報を聞いて、一部は「次は尾刈斗」と確信を持ったようだ。すると…

 

音無「大変です!大変です!」

 

部室の外から息を切らしながら音無が走って来る。大分焦り、驚きの色が強い。

 

八幡「なんかあったのか?」

 

音無「今、準々決勝の結果がネットにアップされたんですけど…秋葉名戸が準決勝進出だそうです!」

 

円堂「─尾刈斗が、負けた!?」

 

なん…だと…。まさかあの尾刈斗中を倒すなんて……。

 

八幡「スコアは?」

 

音無「1対0です」

 

八幡「ギリギリの戦いだったのか?」

 

円堂「かもしれない。一体どんなチームなんだ?」

 

まじでそれ。気になってきたな。

 

目金「これは行って見るしかないようですね・・・メイド喫茶に」

 

やけに凛々しい表情で目金が立ち上がる。…お前、自分が行きたいだけなのでは?目金は尾刈斗に勝った理由はメイド喫茶にある、と豪語する。オレ達は秋葉名戸のことを何も知らない、これは情報収集といかにも真っ当な理由を述べる。でも、言わせて欲しい。

 

八幡「お前…自分が行きたいだけだろ」

 

目金「何を言いますか比企谷君。僕はただ秋葉名戸学園の情報を得る為に行くんです!」

 

八幡「…ホントかよ」

 

円堂「…なるほど」

 

八幡「は?」

 

円堂「よし!行ってみようぜ!」

 

マックス「まじ?」

 

コイツ…単純すぎるだろ…まったく……。その後、マネージャー以外の奴らはメイド喫茶に行ってしまった。オレは円堂達とは一緒に行っていない。すると

 

音無「比企谷先輩は行かないんですか?皆さん行ってしまいましたけど」

 

八幡「オレ?オレは行かねぇよ」

 

木野「どうして?」

 

八幡「今財布の中に300円しか入ってないからな」

 

木野「た、確かにそれじゃあ行くのも無理だね」

 

八幡「やめろ、そんな顔で見るんじゃねぇよ。ああいう店は少し高いから何も頼めないんだよ」

 

音無「なるほど」

 

八幡「まぁ、情報収集はアイツらに任せるか。まっ、期待はしてないけどな」

 

木野「してないんだ…」

 

ちょっと苦笑気味に言われてしまった。

 

八幡「だろうよ。次の対戦相手の情報をメイド喫茶で得られるのか?」

 

木野「それは…」

 

音無「…」

 

八幡「無理だろうよ」

 

木野「キッパリ言うんだ」

 

八幡「まぁ、何かしら情報でも得られたらそれはそれでラッキーだろうよ」

 

音無「そうですね」

 

夏未「それで?あなたはその間どうするの?」

 

八幡「そうだな…。久々に1人で練習するかね」

 

オレはそう言って立ち上がり体を伸ばす。

 

八幡「じゃあアイツら帰ってきたらそう言っておいてくれ」

 

音無「は、はい」

 

オレは軽く手を振りながら部室を出て1人で練習しながら考える。今持っている必殺シュートだけでこれから勝って行くのは難しいだろう。どんな相手か分からない秋葉名戸。もし、それに勝ったとしても次の相手は確実に帝国学園だ。あの帝国のゴールキーパーから点を取るのは難しいだろう。そんな相手に負けないくらいのシュート技を編み出さないとダメかもな。でも、そう簡単にいくわけないだろうしな。ダークトルネードの時は豪炎寺を参考にしたけど、今は違う。どんなイメージをしたら良いのだろうか。まっ、そのうち何か掴めるだろ。そう思いながらオレは1人で練習を続けるのであった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そして円堂達が帰ってきた。

 

八幡「んで、何か情報は得られたのか?」

 

円堂「まぁ、得られたけど」

 

八幡「なんだよ」

 

風丸「メイド喫茶に入り浸っていた奴らが秋葉名戸学園だったんだ」

 

八幡「は?」

 

どういう事?

 

 

そして現在河川敷で練習をしているヤツらと、作戦を練る奴らとで分かれている。オレは作戦組だけどな。

 

円堂「皆気が緩んでるな」

 

マックス「仕方ないよ。あんな奴らが準決勝の相手なんだ」

 

目金「ですが仮にも準決勝に勝ち進んできたチーム。油断禁物ですよ」

 

半田「全然強そうには見えなかったぞ」

 

八幡「そんなにか?」

 

マックス「うん」

 

八幡「気になるな」

 

そんな中、練習している染岡達を見てみると、何やら集中していない奴らに、それを見た染岡は腹を立てる。

 

八幡「こんなんで大丈夫かよ」

 

マックス「まっ、相手は参加校の中で最弱だし、何とかなるんじゃない?」

 

八幡「だと良いけどな」

 

ほんとに大丈夫なんだろうか。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そして試合当日。

 

角馬『フットボールフロンティア地区予選準決勝!雷門中と秋葉名戸学園の試合は間もなく始まります!』

 

夏未「…これを、着ろと?」

 

「我が校における試合では、マネージャーは全員メイド服着用という決まりになっております!」

 

といって、秋葉名戸のマネージャー…らしき人達が、こちらのマネージャー陣にメイド服を手渡す。雷門は激しく取り乱し、猛抗議。が、押し切られて結局メイド服を着ることになった。

 

夏未「ど、どうして私がこんな格好を・・・」

 

木野・音無「「いぇーい!」」

 

雷門とは反対に、木野と音無は結構乗り気である。秋葉名戸の選手が3人の周りをグルグルと囲んでいる。写真を撮られている間、雷門の顔は死んでいた。人ってあんな顔出来るんだな。すると音無がオレの方へ近づいてきて

 

音無「どうですか比企谷先輩。このメイド服似合ってますか?」

 

と聞いてくる。なんでこの子はオレなんかに聞いてくるのだろうか?木野や雷門などに聞いたらいいのになんでオレに聞いてくるんだよ。

 

音無「あの…比企谷先輩?」

 

っ!……なんでそんな目で見てくるんだよ。上目遣いなんてどこで覚えたんだよ。けど何かしら答えないとな……。

 

八幡「まぁ…似合ってると…思うぞ」

 

音無「あ、ありがとうございます!」

 

なんていい笑顔なんだ。そんな笑顔を向けられたら勘違いして告白してすぐ振られてしまう。振られるのかよ……。そんな1人漫才をしていると作戦会議が始まる。

 

円堂「えっと…豪炎寺の枠は…」

 

と、全体を見渡し土門に視線を向ける。

 

土門「はいよ。俺ね」

 

八幡「じゃあオレがFWに入ればいいか?」

 

円堂「そうだな」

 

目金「待ってください!」

 

といきなり目金が言う。どうしたんだ?と思い全員目金に視線が集中する。

 

目金「ここは切り札の出番でしょう。メイド喫茶に行ったおかげで彼らのサッカーが理解出来ました。僕が必ず勝利に導いて見せましょう!」

 

豪炎寺本人の推薦、土門の了承もあって豪炎寺の代わりは目金に決まった。本人はやる気満々みたいだしな。

 

八幡「そういうことなら目金。FWは任せたぞ」

 

目金「はい!」

 

けれど目金をFWに据えることに疑問を口にした奴もいたが、円堂の一言で何も言わなくなる。何故か目金は「大舟に乗ったつもりでいてください」なんて言い出しやがった。まぁ、そこまで言うんなら少しぐらいは期待してやるか。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

試合が開始されたのはいいが…なんなんだコイツらは…ボールを持っても一向に攻めてこないし、変なセリフを言いながらパスを出したり、風丸は首にスカーフみたいなのをつけている奴に悪の軍団とか言われてるし、なんだなんだこの試合は…。そしてそんな変なペースに呑まれている時にオレはまたあの首にスカーフみたいなのをつけている奴からボールを奪おうと近寄ると…

 

ヒーロー「でたな!ゾンビ!」

 

八幡「あ?」

 

今コイツなんて言いやがった?ゾンビだと?確かにオレの目はゾンビみたい感じだが、お前に言われる筋合いはない!だってコイツ絶対に厨二病だろ!?そしてボールを奪おうとするもまたパスをつなぎ攻めてこない。ちょっとイライラしてきたぞ。しかし変なテンションでこちらのペースを崩してきてるな。

 

そしてお互い1点も取れないまま前半が終了してしまった。そしてベンチに戻るとマネージャーからドリンクをもらう。

 

音無「どうぞ比企谷先輩」

 

八幡「サンキュ」

 

目金「まるで攻めてこないだなんて、僕にも予想外でしたよ」

 

染岡「お前アイツらのサッカー理解したんじゃなかったのかよ!」

 

八幡「同感だな。言ってること全然違うじゃん」

 

半田「でもなんでボールが取れないんだ?」

 

風丸「アイツらの妙なノリに調子を狂わせられたせいだ」

 

影野「得体の知れない…」

 

!?

 

豪炎寺「…お前もな」

 

八幡「…だな」

 

でも…なんだかな〜…って感じだよな。なんか企んでいるようにも見える。まさか…いやそんなわけないか。

 

風丸「どうした?比企谷」

 

八幡「いんや、なんにも」

 

風丸「そうか」

 

ふと、相手のベンチを見ると、ヤツらはゲーム機片手に勤しんでいる。アイツらやる気あんのか?

 

円堂「とにかく、ボールを奪ってチャンスを作るんだ!!」

 

そしてハーフタイムが終わり、後半開始のホイッスルが響く。

 

芸夢「よし、行くぞ!!」

 

円堂「何!?」

 

相手からのキックオフ。すると、前半が嘘のように攻め込んでくるではないか。動きがまるで違う!…前半は力を温存していたというわけか。が、攻めてくれるならこちらとしてもやりやすい。半田がボールを奪いにかかる。

 

ヒーロー「変身!フェイクボール!!」

 

4番が半田とすれ違う。半田は何も気付かずそのまま走り続けるが…

 

半田「って、あれぇ!?」

 

半田がボールと思って蹴っていたのはなんとスイカだった。どっからでてきたそのスイカは!?というかあのスイカどこかで…はっ!相手の監督が持ってたな確か?でも、まさかな……

 

4番が一気に駆け上がり、ゴール前の6番へのセンタリング。6番は10番の脚を掴み、持ち上げる。10番は面白い程にピンとしており、バットのように持たれている。

 

芸夢「ど根性バットォ!!」

 

円堂「何ッ!?」

 

10番をボールに叩き付け、ゴールを狙う。全く予想出来ず、固まっていた円堂はゴールを許す。

 

角馬『決まったァァァァ!?後半開始直後、秋葉名戸が先制点をもぎ取ったァァァ!!』

 

いや、なんだよあのシュートは?というかまさかだったな。アイツら……

 

八幡「アイツら…自分達に体力がないからって後半に仕掛けてきたな」

 

風丸「なるほど。それだと筋が通るな」

 

そしてオレ達のキックオフで始まり染岡が相手をどんどん抜いていきゴールへと向かう。すると相手DF陣は砂煙を発生させる。

 

「「「五・里・霧・中!!」」」

 

染岡「こんな目眩しで俺のシュートが止められると思ったか!喰らえ、ドラゴンクラァァァッシュ!!」

 

染岡のドラゴンクラッシュが砂塵の中に突っ込む。砂塵が晴れる頃、ボールはゴールの後ろに転がってきた。妙だな、確かにゴールの真ん中を捉えていたはず。なのに後ろに?それた?いや、それたのなら左右どちらかに行くはず。その後もこちらのシュートは尽く決まらない。次第に焦りが募っていく。ここで負ける訳にはいかない。…いっそのことあれを打つか。

 

そして再び染岡が上がっていく中、オレは染岡に声をかける。

 

八幡「染岡!こっちだ!」

 

染岡「おう、比企谷。それで何かわかったのか?」

 

八幡「まだあの仕掛けはわからんが、任せろ」

 

染岡「わかった頼む」

 

オレはボールを持ち上がっていく。そしてセンターラインを超えたあたりでオレは大きく足を振り上げる。

 

角馬『おーっと比企谷!センターラインを超えたあたりで足を大きく振り上げた!まさか、そこからシュートか!?』

 

これはできたばっかりだがやるしかない!ここなら相手も外れるとか思うだろう。だがな、このシュートは大きく飛ぶんだ!

 

八幡「いっけぇぇ!」

 

そう叫びながらオレはボールにものすごい縦回転をかけて上に向かって打つ。

 

芸夢「フッ、苦し紛れのシュートか」

 

ヒーロー「醜いなゾンビ!」

 

いくらでもほざいてろ。絶対にこのシュートは入る!そしてオレの放ったシュートを見た相手は呆れていた。ゴールキーパーさえ構えてない。そして、DFもあの砂煙を立ててない。そしてオレの放ったシュートは外れると思いきや、一気に急降下して相手のゴールの中に入った。

 

相手の秋葉名戸もチームメイトの円堂達も何が起きたかわかってないような顔だった。そしてそんな中、実況である角馬がいち早く我に返り

 

角馬『ご、ゴォーーーーール!!比企谷が放ったシュートはゴールを大きく外れると思いきや、突然急降下をして相手ゴールを襲った!これで1-1同点です!』

 

八幡「よし、これで振り出しだな」

 

いや〜、1発で成功して良かったわ。このドライブシュート。かなり練習したからな。円堂と出会う前から練習してたからな。出来たらかっこよくね?みたいなノリでしてみたけど、役に立てて良かったわ。けど必殺技を使わないで入れちゃったよ。

 

円堂「すっげぇ〜!なんだ!今のシュート!一気に下へ降りたぞ!」

 

半田「…ああ」

 

そんな八幡のシュートを見た豪炎寺が言う。

 

豪炎寺「あれは…ドライブシュート」

 

木野「ドライブシュート?」

 

音無「確か縦回転するシュートでしたっけ?」

 

豪炎寺「ああ、そうだ。まさに大空から翼を広げ獲物を取らえる鳥のように落ちるシュート。けどこれは習得するのは非常に難しい」

 

木野「そんなシュートを比企谷君はできたんだ」

 

音無「…すごい」

 

夏未「でもこれでも同点。残り時間も心配だわ」

 

そして八幡達に戻る。

 

円堂「すっげぇな比企谷!あんなシュート打てるだなんて」

 

風丸「ああ」

 

八幡「ありがとよ。でも、このシュートをもう打てないだろうな」

 

円堂「なんで?」

 

八幡「警戒させるに決まってるだろうが!だから次はあの砂煙とシュートが外れる訳を探さないとな……」

 

いや、ホントなんで外れるんだ?意味がわからん。そんな中試合は開始される。オレが同点にしたおかげで相手はまた攻めなくてはいけなくなり、上がってくるが染岡がボールを奪い上がっていくと、また、あの砂煙が発生する。すると

 

目金「まさか!?」

 

何やら目金が気づいたみたいだ。そう言うと、目金は砂煙の中に突撃していく。染岡が雄叫びと共にシュートを放とうとしたその時。

 

目金「シュートを撃ってはいけません!!」

 

ヒーロー「この、離せ!!」

 

砂塵が晴れた時、そこにあったのはゴールを押している秋葉名戸の姿。…なるほどな。砂塵を発生させ姿を隠し、その隙にゴールの位置を変える。ゴールをずらしたから、シュートが決まらなかったわけだ。ってかゴールずらしてもいいの?

 

 

半田のスローインから試合再開、そこで目金がボールを渡すように要求する。並々ならぬ目金の熱意に押され、半田は目金へとボールを投げる。ボールを受け取った目金はそのまま上がっていく。そしてその前に立ち塞がったのはあの厨二病である。

 

ヒーロー「ここは通さん!」

 

目金「正々堂々と悪に挑むそれが正義でしょう!」

 

ヒーロー「…っ」

 

目金「スイカとボールをすり替えて相手を欺くなどヒーローの技ではありません!」

 

そう言われて怯んだ時相手はつまずいてしまい、すり替える予定だったスイカに顔がぶつかりスイカは砕けてしまった。

 

その隙に突破して上がっていく目金。そして次に立ち塞がったのは相手のキャプテン野部流とさっきバットにされた漫画だった。

 

目金「ノベルライト先生、漫画萌先生。僕は悲しい。あなたたちの描くシルキーナナの勇気と愛に幾度となく元気をもらいました。なのにそんな作者であるあなた達がこんな卑怯な事をする人達だったとはシルキーナナに謝りなさい!」

 

そう言ってものすごいスピードで抜けていく。そして次に立ち塞がったのは呂簿だった。そいつは何故かロボットのように変形しながらスライディングをしてくる。そんなスライディングをジャンプで躱す。

 

目金「合体中などに攻撃を仕掛けるなどロボットマニアとして失格です!」

 

アイツ…すげぇな。どんどん上がっていくじゃん。そして目金はゴール前まで上がってきた。ゴールをさせまいと砂煙を起こすDF陣。

 

目金「まだこんな事を続けるつもりですか!!」

 

芸夢「これが…オタクの必殺技だ!!」

 

目金「キミ達など…オタクではありません!オタクとは、1つの世界を真摯に、真っ直ぐに極めた者!ゲームのルールを破ってまで勝とうとする貴方達に、オタクを名乗る資格などありません!!」

 

その一言に砂煙を起こすのを辞める秋葉名戸。GKは1人でゴールをずらそうとする。隠そうともしやがらない。

 

目金「染岡君、ドラゴンクラッシュを」

 

そう言って染岡にパスを渡す。

 

染岡「だけど!」

 

目金「僕に考えがあります!」

 

何かあるみたいだな。

 

八幡「目金を信じようぜ」

 

染岡「比企谷…わかった!」

 

そして染岡はシュート体制に入り

 

染岡「ドラゴンクラッシュ!」

 

染岡が放った蒼い龍がゴールへと向かっていく。

 

相戸留「ゴールずらし!」

 

腹でゴールを押し、ずらしてしまうキーパー。このまま行けば、染岡のシュートを外れてしまう。その時だった。目金が身を呈してシュートの軌道を調整する。ずらされたゴールにずらされたシュートが襲い掛かる。

 

角馬『ゴォール!目金がドラゴンクラッシュの軌道を変えてゴールに押し込んだ!雷門!逆転です!』

 

マジでか……。アイツマジですげぇな。少し見直したわ。

 

目金「これぞ、メガネクラッシュ…」

 

そう言いながら倒れる目金。いや、マジでメガネがクラッシュしてしまってるぞ。大丈夫か? そのままベンチに下がり、土門と交代する目金。

 

漫画「どうして、どうして君はそんな姿になってまで…」

 

目金「目を覚まして欲しかったのですよ、同じオタクとして…サッカーも悪くないですよ」

 

漫画「…っ!目金君。君の言葉で目が覚めたよ!僕達もう卑怯な真似は辞めるよ!」

 

ほう…言うじゃねぇか。

 

円堂「よし、まだ試合は終わってない!気を抜かずいくぞ!」

 

「「「「「おう!」」」」」

 

その後目覚めた秋葉名戸学園はフェイクボールとか五里霧中とかを使わず正々堂々と挑んでくる。こいつらの目付き変わったな。そして土門からボールを受け取ったオレはそのまま上がっていくが、相手のDFが立ち塞がる。

 

八幡「ファントムドライブ!」

 

オレは一瞬にして相手を抜き去る。

 

八幡「染岡!」

 

オレは染岡にパスを送る。すると目金がベンチから声をかける。

 

目金「染岡君!ドラゴンクラッシュです!!」

 

染岡「おう任せろ!!ドラゴンクラァァァッシュッッ!!」

 

染岡は目金の言う通りダイレクトでドラゴンクラッシュをゴールに叩き込む。キーパーごとボールはゴールネットに突き刺さり、追加点をとったと同時に試合終了のホイッスルが鳴る

 

角馬『試合終了ー!3-1で雷門も勝利!これで決勝進出だ!』

 

ふぅ…何とか勝てたな。それに今日は目金がMVPかもしれないな。さて次は…

 

円堂「次は帝国だな」

 

八幡「…ああ」

 

因縁の相手といえばいいのかねこういう時は。練習試合の時の借りを返さないとな。あの時は向こうが試合放棄したけど、得点的に考えたらオレ達の負けになる。だからリベンジというわけだな。それにあのゴールキーパーから点を取るための必殺技を編み出さないとな。

 

というかなんで目金と秋葉名戸の間には奇妙な友情が生まれているんだ?

 

 




いかがでしたか?ではまたお会いしましょう。


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第11話

どうもチャキです!第11話どうぞ!


八幡side

 

準決勝で秋葉名戸を打ち破り、とうとうフットボールフロンティア地区大会の決勝へと駒を進めたオレ達。次の決勝に勝てば、全国大会へ出場出来るというのも勿論大きなことなのだが、それ以上に重要なことがある。それは、決勝の相手が帝国学園だということ。

 

あの練習試合の事を思い出す。ほとんど素人集団だったオレらに練習試合を申し込んできた帝国学園。そして練習試合は雷門曰く負けたら廃部という条件を出してきやがったのだ。その時は明らかに無理そうだった。けれど1人だけ諦めていなかった奴がいた。そいつはこのサッカー部のキャプテン円堂守だった。あいつは本気で帝国に勝ちに行くつもりだった。他の奴らは無駄な足掻きとか言っていたが、円堂は諦めずひたすら人に声をかけまくった。その結果11人揃えやがった。ん?でも目金もいたから12人か。まぁ、そんな事はどうでもいい。そして練習試合当日。あれはあまりにも酷だった。圧倒的な実力の差をその目で見た。どんなに頑張っても1点すら取れずにどんどん相手の得点が決まっていくのだから。オレや他の奴らもボコボコにされた。オレと円堂なんてサンドバッグだぞ。そして1点も取れず為す術なく諦めかけたその時、豪炎寺が飛び入り参加して1点を決めてくれた。すると何故か帝国が試合放棄をして去ってしまった。その結果オレ達の勝ち扱いとなった。得点では負けたけど、実質勝ったと同じだ。そのおかげで廃部は免れたけどな。そこから尾刈斗中では豪炎寺も正式に参加することになった。そしてその試合は催眠術に苦戦したがなんとか勝つことができて、フットボールフロンティアの出場を学校に認められ、野生中、御影専農中、秋葉名戸中と戦い、勝利し、ようやくここまで辿り着いたんだ。そんな帝国はオレ達の因縁の相手なのかわからんが、再戦の機会がこうして回ってきた。練習に熱が入らないわけがないな。

 

円堂「よおーし!こい!比企谷!」

 

八幡「はいよ」

 

そう答えたオレはボールを上にあげて回転しながらジャンプする。オレの足には黒い炎が纏う。

 

八幡「ダークトルネード!」

 

自分のシュート技を使い円堂に向かって撃つ。

 

円堂「ゴットハンド!」

 

円堂はそれに対してゴットハンドを使用しダークトルネードに迎え撃つ。そしてオレのダークトルネードはゴットハンドによってがっちりと受け止められてしまった。

 

円堂「いいシュートだったぞ!比企谷!」

 

八幡「まったく…止めたくせに」

 

豪炎寺「だがもう自分のものにしているじゃないか」

 

八幡「そうだけど、やっぱり止められると悔しいよな」

 

豪炎寺「それはそうだな」

 

やはり今のダークトルネードだけじゃ帝国ゴールキーパーには通用しないと思う。今までの奴らとは格が違う。そんな奴からゴールを奪うにはもっと火力が必要となってしまう。円堂みたいになってしまうが、これは新必殺技が必要になるな。そんな事を考えながら練習に打ち込む。すると、席を外していた土門に遅れて音無が帰ってきた。2人の顔は何やら元気がなかった。土門は朝からあんな感じだったけど、音無までとは思わなかった。

 

そんな事よりも今は練習に集中だ。2人のことはいくらでも考えられる。集中する時は集中するってな。ダークトルネードよりも火力があるシュートを編み出すため、オレはボールを軽く上げその後右、左へと足をボールにこすりつけてエネルギーを溜め、その後その場で一回転した後右足でボレーキックを打ち込みシュートを放つ。……がそのシュートはゴールから大きく外れてしまう。

 

八幡「チッ、またか」

 

その場で小さくつぶやく。どうしてもゴールの枠をとらえていない。火力をあげるため力いっぱい蹴ると枠を逸れて、枠に収まるように力をコントロールすると次は逆に火力が足りなくなってしまう。しかもダークトルネードよりも火力が無くこれじゃあ絶対に帝国ゴールキーパーからゴールを奪えない。一体どうすればいいのやら。

 

豪炎寺「比企谷」

 

八幡「なんだ?」

 

考え事をしていると後ろから豪炎寺に声をかけられる。

 

豪炎寺「今のは新しい必殺技か?」

 

八幡「ああ、次の帝国戦。あのゴールキーパーからゴール奪うにはもっと火力のあるシュートが必要だ。だからこうして新しい必殺技の練習をしているんだ」

 

豪炎寺「なるほどな。確かにあのゴールキーパーからゴールを奪うのは一筋縄ではいかないな」

 

八幡「だろ?だからこうして練習してるんだ。けど見ての通りゴールの枠から逸れてしまう」

 

豪炎寺「確かにゴールの枠を逸れているが、ダークトルネードよりも火力はあった」

 

八幡「火力があってもゴールの枠に入らなきゃ意味ねぇがな」

 

豪炎寺「確かにな。まぁこれは練習あるのみだな」

 

八幡「言われなくてもわかってるつーの」

 

豪炎寺「フッ、そうか。まぁ、頑張れよ。応援してる」

 

八幡「サンキュ」

 

なんとか帝国戦までには完成させたいな。そんな事を思いながら練習に専念する。染岡や豪炎寺は自分の必殺技や連携技に磨きをつける。

 

その後練習も終わり全員帰っていく。オレも疲れたので家に帰る。あー、早く帰って風呂でも入るかね。そんな事を思いながら歩いていると、前方で1人の女子が歩いていた。その後ろ姿からその女子は音無だとわかった。音無はなにやら落ち込んだ様子でトボトボ歩いていた。そういえば練習の時もなにやら元気がなかったな。一体どうしたんだ?そんな事を思っていると前の信号が赤になっていた。音無はその事に気づかずそのまま進もうとしていた。そしてタイミング悪くそこに1台のトラックがやってくる。それを見たオレは全速力で音無の所へ走り、音無の手首を掴み止める。

 

音無「え!?」

 

あまりにも急だったので音無は驚きの声をあげ、足を止める。そしてその後トラックは過ぎ去っていく。危なかった。間一髪だった。

 

音無「比企谷先輩!?どうして?」

 

八幡「おい、音無。前の信号赤だぞ。そのまま行ってたら危なかったぞ」

 

音無「あ、本当だ」

 

八幡「ったく」

 

音無「すみません。ありがとうございました」

 

八幡「気にするな。それよりもどうした?何かあったのか?」

 

音無「え?」

 

八幡「練習の時からなんだか元気がなかったからな。ああ、別に無理に聞こうとは思わない。けど何か悩み事でもあるのなら誰かに相談してみたらどうだ?例えば…木野とか雷門とかさ。オレら男子に言えないことでも、女子同士なら言えることでもあるしな」

 

音無「はい…そうですね。……あの比企谷先輩」

 

八幡「ん?なんだ?」

 

音無「比企谷先輩は私が相談したらのってくれますか?」

 

八幡「まぁ、相談にのるくらいならオレでもできるしな。でも無理に相談しろとは言わない。それは音無が自分でタイミングを決めたらいいからな」

 

音無「はい、ありがとうございます」

 

八幡「気にするな」

 

そう言いながらオレは音無の頭に手を乗せて撫でる。

 

音無「え?」

 

八幡「あ、す、スマン!」

 

そう言ってオレは素早く手をどける。またやっちまったー!

 

音無「あ」

 

するとなにやら悲しげな表情になる音無。え?なんでそんな顔になるの?オレ勘違いしちゃうよ?

 

八幡「わ、悪い」

 

音無「い、いえ、大丈夫です」

 

八幡「そ、そうか。なら良かった。あ、それじゃあオレはもう行くな。この先気をつけて帰れよ」

 

音無「あ、はい。ありがとうございます」

 

八幡「じゃあな」

 

音無「はい。さようなら」

 

オレはその場から逃げるようにして去っていく。

 

 

音無(また、比企谷先輩に頭を撫でられた。前と同じでお兄ちゃんとは違った感触だった。これは一体なんだろう?でももうお兄ちゃんとは会えない。それにさっきもお兄ちゃんから会っちゃいけないって言われてしまった。もう本当に会ったらダメなのかな?)

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

翌日

 

土門「ほらほら、パスパス」

 

壁山にマークされている影野に土門がパスを要求し、その後を追いかけてくるマックスをどんどん追い放していく。昨日とは打って変わって調子良さそうじゃないか。昨日はあれだけ暗かったのに。何があったんだ?まぁ、いい。オレはどんどん上がっていく土門にスライディングをしかける。けど土門は軽く横に避ける。だけどオレには2発目のタックルがある。そう思い片手でぐるっと回転させてタックルをあびせる。

 

八幡「フッ!」

 

土門「うわぁ!」

 

土門はフェイントタックルをくらいバランスを崩してしまう。そんな中オレは土門からボールを奪う。そして近くまできていた風丸に渡す。

 

土門「くっそ〜!フェイントタックルかよ!」

 

八幡「残念だったな」

 

土門「くぅ〜!今度は騙されないぞ!」

 

八幡「フッ、そうか」

 

そして土門はそのままボールを奪いに行った。ホント昨日とはまるで違うな。ん?冬海先生?珍しいなオレらの練習を見に来るなんてな。いつもは見に来ようとはしなかったくせになんで今になって見に来たんだ?それになんだか少し笑っているようにも見える。ホント不気味なやつだな。すると近くに雷門がやってきた。なにやら話し込んでいるみたいだな。すると間もなく、冬海先生の焦ったような、驚いたような声がオレ達の耳に入ってくる。何でも、雷門が遠征用のバスを冬海先生に動かして欲しいとか。

その要望に対して冬海先生は、異常なほどに取り乱している。まずいことが起こった様な感じだな。それからは冬海先生は免許が無いだのと色々な理由で逃れようとするも、雷門が次々と冬海先生の逃げ道を塞いでいく。まじパネェっすわ雷門さん。

 

夏未「冬海先生!」

 

冬海「は、はいぃ!」

 

とうとう押し負けたようだ。オレもあんな大人にはならないように気をつけよう。そして重い足取りで車庫へと向かっていく冬海先生。そして雷門に着いてくるように言われたオレ達がその背中を追う。いざバスに乗り込んでからも、冬海先生の抵抗は続く。バッテリーが上がっているのかな?と言ったら雷門が「ふざけないで!」と言われバスのエンジンをかける。それでも尚バスを動かそうとはしない。何故あんなに拒否するのだろうか。ここは私有地であるのなら免許がなくても少し動かして止まっても逮捕されない。それでも尚拒否するには何かしらの理由があるからだろう。

 

八幡「横からすみません。冬海先生、何故先生はそんなにもバスを動かしたくないんですか?」

 

冬海「そ、それは…」

 

八幡「なにか言えない理由があるとでも?」

 

冬海「……」

 

八幡「黙りかよ。あんた国会議員かなんかかよ。確か先生は雷門の願いを断る理由はないと言っていたはずですが?それなのに何で雷門の言う事を断るんですか?あなたは嘘をついたんですか?」

 

冬海「……」

 

また黙りだ。はぁ…ホント国会議員か弁護士かよまったく。でもなんでそんなにも拒否するんだ?何か理由でもあるのだろうか?私有地で雷門の許可があるのなら免許がなくても動かせる。だったら私有地や免許の問題では無いのか。なら…どうして?バスのエンジンをかけるのも躊躇っていた。そんなにもバスを動かそうとしないのはバスに何か細工をしたというのか?

 

八幡「あんたまさかバスに何か細工をしたのか?」

 

冬海「っ!」

 

冬海先生はかなり驚いているようだ。それに円堂達も同時に声をあげる。そりゃあそうなるわな。

 

八幡「…ビンゴかよ」

 

夏未「あなたどうしてわかったの?」

 

八幡「いや、ただの勘だ」

 

夏未「そう」

 

すると雷門は、懐から1枚の手紙を取り出した。その手紙にはこれから起ころうとしていた恐ろしい犯罪の内容……冬海先生によるバスへの細工について記されているらしい。

 

八幡「マジかよ。オレの勘が当たるなんてな」

 

そして冬海先生は不気味な笑いをしながらバスから降りてくる。そして冬海先生は全て自白した。バスのブレーキオイルを抜いたことを。

 

円堂「一体なんのためにこんなこと!」

 

冬海「あなた達を決勝戦に参加させると困る方がいるのですよ……」

 

豪炎寺「帝国の学園長か! 帝国のためなら、生徒がどうなっても良いというのか!?」 

 

豪炎寺が強い口調で冬海に問い詰める。帝国の総帥か、確かにフットボールフロンティアの連覇記録を伸ばすためには、試合の以前に対戦相手を消してしまった方が都合が良いというわけか。まさか、帝国の学園長は今までもそうやってきたというか。

 

冬海「君達は知らないんだ、あの方がどれだけ恐ろしいか……」

 

豪炎寺「ああ、知りたくもない!」

 

夏未「貴方のような教師は学校を去りなさい! これは理事長の言葉と思ってもらって結構よ!」

 

冬海「クビですか?そりゃいい。いい加減こんなところで教師をやってるのも飽きてきたところです」

 

なにやらもう開き直っているような感じだな。

 

冬海「しかし、この雷門中に入り込んだ帝国のスパイが私だけとは思わないことです……ねえ、土門君?」

 

木野「土門くん…」

 

そう言って冬海はどこかへ行ってしまう。最後に残していった爆弾により、皆の視線が土門へと向けられ、更に土門は顔色が悪くなる。

 

栗松「そ、そういや帝国学園にいたって」

 

染岡「そんなのありかよ!」

 

壁山「土門さん酷いっす!」

 

そして皆から次々に非難の声が浴びせられる。これが人間の性なのだろう。内部に敵を見つければ排除しようと群がる。今まさにそれが目の前で起きている。だが、1人だけそれを否定する人物がいた。

 

円堂「バカなこというなよ!今まで一緒にサッカーやってきたじゃないか。その仲間を信じられないのか!」

 

円堂が他の奴らと土門の間に入ってそう言う。

 

円堂「オレは土門を信じる。な?土門」

 

そう言って土門の方を振り返る。

 

土門「円堂……冬海の言う通りだよ」

 

円堂「え?」

 

土門「悪ぃ!」

 

そう言って走ってどこかへ去っていった。

 

夏未「これを見て。告発された手紙よ」

 

そう言って雷門はオレ達に手紙を見せてくる。そして円堂がその手紙見てなにやら驚いた顔になる。

 

円堂「これは土門の字だ!」

 

八幡「ということは土門はオレ達に危険を知らせたのか?」

 

木野「土門くん…」

 

円堂「くっ…俺土門探しに行ってくる!」

 

そういった円堂も走って去ってしまった。まぁ、土門の事は円堂に任せるとするか。オレが行ってもどうにもできなさそうだしな。

 

八幡「なぁ、お前ら。なんでそんなに土門を責めたんだ?」

 

染岡「それは土門が帝国のスパイだったから」

 

壁山「そうっす」

 

少林「なんか裏切られた感じがして」

 

八幡「まぁ、確かに裏切られた感はあったな。実際に土門は帝国のスパイだったし。でもな理由も聞かずに全員で責めるのはどうかと思うぞ?」

 

染岡「それは…」

 

八幡「それにもし土門が本当に帝国側なら何故告発したんだ?言わなければ、オレ達を決勝戦に出場させないという目的は達成できたんだ。それなのに告発してオレ達を助けてくれたんだぞ?」

 

「「「「「……」」」」」

 

全員黙ってしまう。

 

八幡「そこまでしてくれた土門をまだ責めるか?」

 

宍戸「そ、そんな事できないです!」

 

栗松「そうでやんす!」

 

半田「俺も」

 

八幡「そうか。なら土門に言う事くらいわかるよな」

 

染岡「ああ」

 

壁山「俺も…土門さんに謝りたいっす!」

 

それに続いて全員謝りたいと言い出す。フッ、なんだよ。わかってんじゃねぇか。

 

 

 

翌日、土門は全員に謝罪に来た。その後、全員からも土門に責めたことについて謝罪した。そして全員手を取りあった。

 

壁山「冬海先生がいなくなって清々したっすね」

 

栗松「中ボスを倒して1面クリアって感じかな」

 

少林「貴方のような教師は学校を去りなさい!って決まってたよね」

 

木野「流石夏未さんね」

 

音無「サッカー部最強のマネージャー」

 

染岡「これで気持ちよく地区大会決勝に行けるぜ!」

 

目金「ちょっといいですか?」

 

円堂「どうした?」

 

目金「このフットボールフロンティア規約書によると……監督不在のチームは出場出来ないそうですよ」

 

円堂「ええ!?お前知ってたのかよ」

 

夏未「と、当然です! だから早く監督を探しなさい!これは理事長の言葉と思って貰って結構です」

 

八幡「横暴だな」

 

夏未「何か言いまして?」

 

八幡「いえ、なにも」

 

こっわ!雷門こっわ!めっちゃくちゃ低い声出すじゃん!めっちゃくちゃ怖かったわー。

 

 

 

そしてやってまりいました第1回新監督を探そうの会。

 

半田「誰か運動部の顧問で頼めないかな?」

 

壁山「あ、それいいっすね」

 

染岡「雷門夏未が頼めばやってくれるじゃないか?そもそもあんたが冬海を追い出さなきゃこんなことにはならなかったんだ。責任取ってもらおうじゃないか」

 

そういうと周りの奴らは何故か拍手する。

 

夏未「冬海先生を顧問にしたままでみんな試合に集中できて?」

 

そう言われると全員黙ってしまう。まぁ、それは確かに一理あるな。

 

目金「とはいえいささか短絡的でしたね。せめて代わりの監督を用意してから追放しても良かったのではありませんか?」

 

これは目金の方が1枚上手のようだな。

 

円堂「みんな手分けして新監督を探すんだ」

 

風丸「誰でもいいって訳じゃあねぇぞ」

 

八幡「まぁ、そうだな。また冬海みたいな奴を引き当てる訳にはいかねぇしな」

 

円堂「じゃあどうすればいいんだよ!比企谷!なんかないか!?」

 

八幡「横暴だなおい。それになんかあるのならとっくに言ってるつーの」

 

すると1人の部員の声が聞こえてくる。その声の主は影野だった。

 

影野「どれだけ影が薄くても、監督がいることで俺達は試合に出られていた……ククッ」

 

いや、もうホントびっくりするからやめてね?

 

豪炎寺「円堂」

 

円堂「ん?」

 

豪炎寺「雷雷軒の親父さんはお前のおじいさんを知っていた。ということは」

 

円堂「そうか」

 

そして円堂達とマネージャーの木野達は雷雷軒というラーメン屋の店主に監督になって貰えるように頼みに行った。オレ?オレは行かない。だってラーメン屋だろ?だったら金が必要となる。財布の中身はラーメンを食べられるような金額は入ってない。オレは遠慮して1人で練習をしていた。そんな中音無が話しかけてきた。

 

音無「比企谷先輩は行かないんですか?」

 

八幡「ああ、大人数で行ったら店に迷惑だろ。だから行かないんだ」

 

音無「そう…なんですか」

 

八幡「ああ」

 

リフティングをしながら答える。

 

音無「それじゃあ比企谷先輩」

 

八幡「ん?なんだ?」

 

音無「私の相談事、聞いてくれますか?」

 

 




いかがでしたか?ではまたお会いしましょう。


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第12話

どうもチャキです!第12話どうぞ!


八幡side

 

今オレは1人で練習をしている。他の奴らは雷雷軒の所へ行っている。理由は昨日帝国からのスパイとしていた冬海先生を追放したからだ。別にあの人がいなくてもいいのだが、フットボールフロンティアでは監督がいないチームは出場を認めないらしく、そこであいつらは円堂のじいさんのことを知っている雷雷軒の店主に監督になって貰えるよう頼みに行った。オレは何故行かなかったかと言うとそんな大勢で行ったら店に迷惑をかけてしまうから行かなかった。だからこうしてアイツらが戻ってくるまで1人で練習をしていたのだが、オレと同じく雷雷軒に行かなかったマネージャーの音無が「私の相談事、聞いてくれますか?」と言ってきたのだ。

 

八幡「…え?相談事?」

 

音無「…はい」

 

八幡「どうしてオレなんだ?」

 

音無「昨日比企谷先輩、相談くらい乗るって言ってたじゃないですか」

 

八幡「まぁ、確かに言ったが」

 

昨日確かに言ったよ?でもね本当にオレでいいのか?

 

八幡「いやオレよりも頼りになる奴なんて沢山いるだろ。木野や雷門とかさ」

 

音無「私は比企谷先輩に相談したいんです」

 

音無は諦めようとはしない。それを見たオレは1歩下がる。なんでそんなにオレに相談事をするんだ?相談には乗るとは言ったがまさか昨日の今日でしてくるとは思わなかった。それに音無の目を見ると酷く悩まされているようにも見える。はぁ……仕方ないか…オレも相談に乗ると言ったからには責任取るしかないな。

 

八幡「…わかったよ。じゃあ聞かせてくれるか?」

 

音無「はい」

 

オレと音無は場所を移動し階段の所に座り話をする。オレは音無から少し離れたところに座り込む。でも一向に相談してこない。だからって急かす訳にはいかない。音無のペースに合わせる。

 

八幡「音無のペースでいいからゆっくり話してみろ。オレはいくらでも待つから」

 

音無「あ、ありがとうございます」

 

そう言った音無は1回深呼吸をして気持ちを落ち着かせた後、音無の口が開く。

 

音無「他の人には言ってなかったんですが私、実の兄がいるんです」

 

八幡「そうなのか?」

 

音無「はい…」

 

衝撃的な事実で驚きを隠せない。まさか音無に兄がいるとは思ってなかった。でも実の兄がいるけど、一緒に住んでいないのか?

 

八幡「お前の親は離婚とかしたのか?」

 

音無「いいえ、両親は私が幼い頃他界しました」

 

八幡「っ!悪い、辛い事言わせたな」

 

音無「いえ!そんな事ありません。比企谷先輩は知らなかったんですから、仕方ないですよ。それに私は気にしてませんから」

 

八幡「そうか」

 

そっか。なら良かった。それにしてもまさか音無の実の親はもういないのか。音無は気にしてないとは言ってたけど、やはり辛い事を言わせたのは確かだ。

 

音無「それで私と兄は別々の家に養子として引き取られました。そして兄とは離れ離れになった後、音信不通になってしまったんです」

 

段々と音無の声が弱々しくなっていく。

 

音無「そんな中、この前偶然兄の姿を見たんです」

 

八幡「そうなのか」

 

音無「はい…」

 

八幡「で?どこで見たんだ?」

 

音無「帝国との練習試合の時でした」

 

八幡「は?帝国?まさか音無の兄は帝国学園の誰かなのか?」

 

音無「はい、そうです。私の兄は帝国学園サッカー部キャプテン、鬼道有人です」

 

八幡「え?」

 

これまた新事実。音無と離れ離れになった兄はあの帝国学園の鬼道だったとは。

 

八幡「なぁ?」

 

音無「なんですか?」

 

八幡「ここまで聞いといてなんだが、こんな大事なことオレに話して良いのか?確かに相談に乗るとは言ったが」

 

音無「大丈夫です。私は比企谷先輩の事信用しているので」

 

八幡「お、おう。……そうか」

 

音無「はい、だから大丈夫です」

 

八幡「わかった。音無がそう言うのなら。じゃあ続けてくれるか?」

 

音無「はい、わかりました。続きなんですが…そんな中昨日木野先輩に頼まれて土門さんを追いかけた先に兄がいたんです」

 

八幡「ほう…ん?でもなんでいたんだ?」

 

音無「はい、そこなんです。でも会えたのは嬉しかったのですが、すぐに疑ってしまったんです。偵察にでも来たんじゃないかって」

 

八幡「まぁ、そう思っても仕方ないよな」

 

音無「そして、思わず腕を掴んじゃったんですけど……無理やり振り払われて、俺とお前は……会っちゃいけないって……言われちゃって……それでもしかしたら私なんていらないと思ってるのかなって考えてしまうんです」

 

なるほどな。確かにそう言われたらそう思ってしまうかもしれないな。鬼道は音無にとってはやっと会えた家族。それなのに会っちゃいけないと拒絶されてしまった。ふと横を見ると音無は顔を伏せていた。多分泣いているのだろうか。そんな音無の姿を見ていると小町と重ねてしまう。嫌な夢とか落ち込んだ時はオレの胸で泣いていたな。そんな時はよく頭を撫でて落ち着かせたもんだ。そう思いながらオレは音無の頭に手を乗せて撫でる。

 

音無「あ」

 

八幡「スマン。嫌だったか?」

 

音無「いえ、ちょっと驚いてしまっただけです。それに嫌と言うよりも落ち着くと言いますか。撫でるの上手いんですね」

 

八幡「まぁ、妹によくやってたからな」

 

音無「そういえば比企谷先輩には妹さんいらっしゃいましたね。確か野生中戦の時に応戦に来てましたね」

 

八幡「ああ」

 

そう言いながら今回はまだオレは音無の頭を撫で続ける。音無の髪はサラサラしていてその感触が手に伝わってくる。何を思ったのかオレは口を開いた。

 

八幡「仮にだ」

 

音無「え?」

 

八幡「もし、仮に鬼道が音無の事いらないと思っているのならもっと冷たく、他人のように扱うと思うんだ。確かに鬼道に言った言葉はそう聞こえるかもしれない。でも何かしらの理由があるんじゃないか?」

 

音無「理由ですか?」

 

八幡「ああ、と言っても確証はないからなんとも言えないがな。突然だが昔の鬼道の事聞いてもいいか?音無が嫌じゃなければだけど」

 

音無「はい、いいですよ。昔のお兄ちゃんは優しくて、私がいじめられてたら、すぐに助けに来てくれました。自分よりも体の大きい子にも立ち向かって助けてくれました」

 

八幡「いいやつじゃねぇか。もし最初っからいらないと思っていたのなら、そんな事しねぇと思うぞ」

 

音無「確かにそうですね」

 

八幡「それなのに冷たくなった理由は何かしらあるんじゃねぇか?まぁ、関係のないオレがとやかく言う資格はないが、お前の兄、鬼道有人を信じてみたらどうだ?」

 

音無「信じるですか?」

 

八幡「ああ、そうだ。いくら苗字が違えど、音無と鬼道は血の繋がった兄妹なんだろ?だったらその兄である鬼道有人を信じてみたらどうだ?」

 

そう言われた音無は顔を下に向けしばし考え込んでいた。音無が考えている間オレは答えが出るまで隣で静かに待った。オレも両親からはほっとかれているが、妹の小町はオレの事を信じてくれている。だからオレも小町を信じている。けど偶に物忘れがあるけどな。そして答えが出たのか顔をあげた。

 

音無「そうですよね。妹の私が信じなくちゃいけないのに、お兄ちゃんの事疑ってばっかりでした。家族なのにそんな事も忘れてしまうところでした。ありがとうございます比企谷先輩」

 

八幡「なに気にするな。相談に乗ると言ったからには最後まで責任持つさ。それでどうだ?少しは落ち着いたか?」

 

音無「はい、お陰様で」

 

八幡「なら、良かった。音無が元気ないと心配する奴とかいるからな。木野とか雷門とか円堂達とか」

 

音無「比企谷先輩はしてくれないんですか?」

 

八幡「あ?するに決まってるだろ。オレにできた数少ない後輩なんだからよ」

 

音無「…そっか、良かった」

 

八幡「ん?なんか言ったか?」

 

音無「い、いえ!何も!」

 

音無は慌てたように両手を自分の前でブンブン振っていた。それとオレは難聴主人公ではないからな。ただたんに音無の声が小さくて聞こえなかっただけだからね!……キモイなオレ。

 

まぁ、そんな事よりも音無が元気になって良かった。あのままだと昨日みたいに事故に遭ってしまうかもしれなかったしな。それだともっと大変な事になってしまうところだったわ。

 

八幡「そういえばアイツら雷雷軒の人に監督になってもらえるように頼みに行ったけど、どうなったんだろうか?」

 

音無「そういえばそうですね」

 

八幡「もう、既に終わってると思うんだけど、何してんだ?」

 

音無「そうですね」

 

八幡「まさかと思うがオレらのこと忘れてるんじゃねぇか?」

 

音無「それはないんじゃないですか。比企谷先輩、皆さんに学校で待ってるって言ってたじゃないですか。それに木野先輩もいますから誰かしら呼びに来てくれますよ」

 

八幡「けど、未だに来てねぇが?」

 

音無「そ、それは…」

 

音無は何かしら言おうとしていたが何も言えなくなってきている。実際にアイツらは誰もオレを呼びに来てない。ったくどこに行ったんだよ。監督になってもらってたらすぐに戻ってくるだろうし、戻ってこないという事はダメだったのだろう。じゃあなんで戻ってこねぇんだよ。まさか河川敷にいるのか?

 

八幡「仕方ない。河川敷に行ってみるか。音無はどうする?」

 

音無「私も行きます」

 

八幡「わかった。じゃあ行くか」

 

音無「はい」

 

ということでオレと音無はアイツらがいるであろう河川敷に向かって歩き出す。ったくいつまでかかってんだよまったく。河川敷に向かっている途中音無と他愛もない会話でもしながら歩く。そして話しているうちに河川敷に到着する。するとやはり円堂達の声が聞こえてくる。どうやら練習をしているようだ。それと同時にオレの事も忘れているようだ。あれ?やばい、昔の事を思い出してしまう。そんなことを思いながら階段を降りて円堂の方に近づく。すると円堂もこちらに気づいたようで声をかけてくる。

 

円堂「比企谷、どこに行ってたんだよ。練習始まってるんだぞ!」

 

と言ってきたのだ。あ〜、やっぱり忘れていたのかよ。オレちゃんと伝えたよね。学校で待ってるってよ。円堂の言葉で少しカチンときてしまったオレは円堂の前まで行き、円堂の頭に向かってチョップをした。

 

円堂「あだっ!何すんだよ比企谷!」

 

八幡「それはこっちのセリフだ!オレお前らが雷雷軒に行く時言ったよな。学校で待ってるって。なのに呼びに来ないとはどういう事だ?」

 

円堂「え?…………あ」

 

八幡「なんで呼びに来なかったんだ?」

 

円堂「あ、いや、そ、それは……」

 

八幡「もしかして忘れてたのか?」

 

円堂「え、あ、いや…」

 

かなり動揺しまくっている。確実に忘れ去られてたようだ。

 

八幡「もしかしてお前らも忘れてたのか?」

 

オレはそう言いながら振り返る。すると、全員一斉に視線を逸らす。

 

八幡「お前ら……」

 

円堂「ごめん比企谷」

 

後ろで円堂が頭を下げて謝ってきた。

 

円堂「確かに比企谷が言っていた事は聞いていた。けどオレ監督の事で頭がいっぱいになってて忘れていた。だから本当にごめん」

 

顔をあげてどうして忘れたのか理由を言った後再度頭を下げてきた。

 

八幡「いいよ。そこまで怒ってねぇから」

 

円堂「本当か?」

 

八幡「ああ、本当だ」

 

円堂「そっか。良かった」

 

八幡「けど、次は気をつけろよ」

 

円堂「ああ、わかった」

 

八幡「お前らもな」

 

そう言うと全員頷く。よし、わかったのなら良い。けど昔の事を思い出したのはちょっと嫌だな。クラスの打ち上げに誘って貰えなかった思い出が蘇ってきやがった。

 

その後オレも混ざり練習をする。けれど監督がいない今、オレ達は不戦敗で負けてしまう。その事でモチベーションが下がり練習に身が入らない状態にある。そんな時だった。

 

土門「…鬼道さん」

 

その言葉を聞いたオレらは土門の視線の先を見ると鬼道がいた。

 

半田「偵察に来たんだな」

 

まぁ、そう考えるのが妥当だろうな。

 

目金「いやいや、不戦敗寸前の僕達を笑いに来たんですよ」

 

まぁ、そう思われても仕方ないよな。そんな事を言っているうちに円堂は鬼道の方へと向かっていった。ふと音無をみると少し不安そうな顔をしていた為、オレは音無に近づき。

 

八幡「大丈夫だ。鬼道を信じろ」

 

音無「はい、そうですね」

 

そして視線は円堂と鬼道の方へ移る。何を話しているかはこっからじゃあ聞こえてこない。そして数分後、会話が終了したのか2人はその場で別れる。鬼道は車に乗り、円堂はオレ達の方へ戻って来る。

 

染岡「あいつなんだって?」

 

円堂「今度一緒に練習する約束をしてきた」

 

染岡「はぁ?」

 

えー…あいつなにやってんの?ホント毎回毎回意味わかんねぇことするな。

 

 

そんな日から数日後、円堂がまた雷雷軒の人に監督になってもらえるように頼みに行ったらしい。ということで今日は円堂抜きで練習が始まる。染岡と風丸の指揮の中でだけどな。オフェンスやデフェンスに別れて練習をする。オレもその練習に混ざるが、新しいシュート技を編み出すためにもそっちの練習をする。けれど何回やっても失敗してしまう。一体何が足りないのだろうか。その原因の1つがチームのモチベーションが原因なのかもしれない。空気がなんだかなって感じである。そんな練習も終わりそれぞれ帰路に着く。

 

 

そしてその翌日

 

円堂「新監督だ!」

 

そう言って円堂が連れてきた人物は…

 

響木「響木 正剛だ、よろしく頼む。さぁ、決勝戦はもうすぐだ。お前ら全員鍛えてやる!」

 

「「「「「おう!」」」」」

 

ということで新監督になった響木監督に全員鍛え直される。前の冬海と違って的確なアドバイスとかもらう。フォーメーションやプレスのかけかたや、パス回しや、攻め方などのアドバイスをもらう。前とは違って厳しいがこっちの方が身が入るというもんだ。それにオレの新シュート技のアドバイスをくれた。そのおかげで完成させる事ができた。完成したことを知った円堂は見てみたいということで、見せることになった。見せるのはいいんだが円堂がそのシュートを受けることになった。なんでだよ!?でも、まぁいいだろう。見せてやる。これがオレの新必殺シュートだ!

 

八幡「せいっ!」

 

黒や、紫みたいな色のエネルギーがボールを纏い、ゴールへと向かっていく。そしてゴールの前に立っていた円堂はそのシュートに反応することができず、シュートはゴールネットを揺らした。

 

円堂「……すげぇ」

 

染岡「なんだ今の」

 

豪炎寺「すごい威力だな」

 

皆オレのシュートを見て驚きを隠せないご様子。

 

八幡「やっとできた」

 

響木「やったな比企谷」

 

八幡「はい、これも監督のアドバイスがあったおかげです」

 

響木「なぁに。それが監督の務めだからな。それに比企谷が努力したおかげでもあるんだぞ」

 

八幡「そうですか?」

 

響木「ああ、だから自分に自信をもて」

 

八幡「はい、わかりました」

 

豪炎寺「これなら帝国に張り合えそうだな」

 

八幡「ああ」

 

円堂「よぉーし!このシュートに名前をつけよう!」

 

と円堂が言ってくる。それを聞いて皆それぞれ考えた名前を次々に出してくる。染岡のドラゴンクラッシュの時と同じで全員楽しそうに名前を言っていく。

 

 

 

 

 

フッ、まったく。こいつらといると飽きねぇな。そんな輪に誘ってくれた円堂には感謝しねぇとな。

 

円堂「比企谷もなんか言えよ。自分の技だろ」

 

八幡「へいへい」

 

さぁてと、どんな名前にしましょうかね。

 

 

 

 




いかがでしたか?ではまたお会いしましょう。


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第13話

どうもチャキです!第13話どうぞ!


八幡side

 

オレ達は今、フットボールフロンティア地区大会決勝戦の会場である帝国学園まで、電車に乗って移動している途中だ。ホントならバス移動とかだったのだが、この前冬海の件もあり電車で移動することになった。そんな中、円堂が立ち上がる。

 

円堂「いよいよ地区大会決勝だ!あの帝国とまた戦えるんだ!特訓の成果、出し切っていこうぜ!」

 

「「「おおぉー!」」」

 

円堂の声に合わせて他の奴らも気合を入れる。

 

八幡「気合いを入れるのはわかるが、ここは公共の場だ。少しは声を抑えろ」

 

円堂「あ、そうだったな。でも、抑えられないんだ!」

 

わかってたけど、やはり少しはわきまえて欲しい。

 

円堂「響木監督!」

 

円堂に呼ばれて立った響木監督。アンタもか!

 

響木「俺からはたった一つ。全てを出し切るんだ。後悔しない為に!」

 

「「「はい!」」」

 

けれど気がかりなのは帝国学園の学園長だな。冬海にあんな命令までだしてオレ達を決勝に出させないようにしたんだ。この試合何かしらあると企んでるのではないだろうか。

 

するとマネージャー2人の話し声が聞こえてくる。

 

音無「あれ?夏未さんは?」

 

木野「電車は嫌いなんですって…」

 

そう言って苦笑いする木野。電車の窓から見ると確かに雷門の車が走ってるな。なるほど、あれがお嬢様の特権ってやつか。

 

すると外の景色にデカい建物が入ってきた。

 

八幡「あれは?」

 

壁山「な、何スか!?アレ!」

 

染岡「まるで要塞だな……」

 

目金「あれが帝国学園です。そして中央に大きくそびえているのが……決勝を戦うスタジアムです」

 

あれが帝国学園。デカすぎるだろう。私立かよってくらいのでかさだな。

 

そして帝国学園に到着すると円堂が突然叫ぶ。いや、ホントそういうのやめてね。オレ達までそんな事する奴に見えてしまうからホントやめてね。お願いだから。そう思いながら進んでいくと突然響木監督が。

 

響木「気をつけろ!バスに細工してくる連中だ!何をしてくるか分からん!落とし穴があるかもしれない!壁が迫ってくるかもしれない!」

 

響木の言葉に壁山、栗松、宍戸、少林は壁や床のチェックを始める。それを見た一部の奴らは呆れる。

 

夏未「…監督が選手をからかうだなんて」

 

木野「た、多分監督なりの緊張をほぐす方法なんだよ……」

 

そんなやり取りしてる中後ろにいた音無が浮かばない顔になっていた。

 

八幡「大丈夫か?」

 

音無「あ、はい…大丈夫です」

 

八幡「なら、いいが」

 

音無「…本当に大丈夫なんでしょうか」

 

普通の奴なら何が?と聞いてしまうだろうが、オレにはその言葉の意味がわかる。

 

八幡「さぁな。オレにはなんとも言えない。だがこれは鬼道と向き合えるチャンスかもしれない。だから顔を合わせた時は気をしっかり持てよ」

 

音無「……はい」

 

ちょっと心配だがこれは音無と鬼道の問題だ。赤の他人のオレが深く入り込んでいい事ではない。

 

 

 

 

そのまま歩き自分達のロッカールームに到着する。そして円堂が扉を開けようとした時、中から鬼道が出てきた。

 

円堂「鬼道!」

 

鬼道「無事に着いたみたいだな」

 

染岡「何だと!?まるで事故でもあった方が良いような言い方じゃねぇか!まさか、この部屋に何かしかけたんじゃ……」

 

鬼道「安心しろ。何もない」

 

そう言って鬼道は立ち去ろうとする。けれど染岡が呼び止める。

 

染岡「待て!何やってたのか白状しろ!」

 

円堂「染岡。鬼道はそんな奴じゃない」

 

染岡「止めるな円堂!」

 

鬼道「勝手に入ってすまなかった」

 

そう言い残しこの場を去っていく。

 

円堂「鬼道!試合楽しみにしてるからな!」

 

そんな鬼道に円堂がそう声をかける。こいつはいつだってこうだな。ま、そんなことよりも早く荷物を置くとするかね。そう思いロッカールームに入る。

 

染岡「おい、比企谷!何か仕掛けられてるかもしれないんだぞ」

 

八幡「別に何も起きてねぇし、見た感じ何もねぇぞ」

 

染岡「きっとこの部屋のどこかに隠してるんだ。見つけてやる!」

 

八幡「はぁ…探すんなら勝手にどうぞ。けど時間は守ってくれよ」

 

そしてこのロッカールームに何か仕掛けてないかをメンバーの殆どが探していた。探していないのは円堂、豪炎寺、土門、マネージャーズにオレだ。

 

 

そして数分後

 

 

円堂「何も仕掛けられてないって。鬼道が大丈夫だって言ってだろ?」

 

染岡「騙されてんじゃないのか?あいつも帝国の一員だぞ」

 

円堂「鬼道は信じていい!俺には分かる!」

 

八幡「なぁ、もう着替えていいか?」

 

円堂「そうだな。よしみんな!準備するぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

円堂「スッキリ!これで準備完了!」

 

円堂はそう言いながらトイレを出ていく。そんな事を言いながらトイレから出ていく奴初めて見たわ。

 

円堂「比企谷、先に戻っとくぞ」

 

八幡「ああ」

 

オレはまだ用を足している途中だ。まったくここの建物広すぎてトイレに着くまで少し時間がかかってしまった。早く済ませて戻るか。

 

 

そして用を済ませたオレはさっさと戻るため来た道を戻っていた時だった。ある声が聞こえて来たのだ。

 

「雷門中のキャプテン円堂守君だったね?」

 

ん?円堂?それにこの声は一体誰だ?そう思い声のした方へ近寄っていき、耳を澄ませる。

 

円堂「はい」

 

影山「私は帝国学園サッカー部監督。影山」

 

っ!帝国学園の学園長か。なんでこんなところに?いや、自分の学校の学園長なんだいても怪しまれはしないだろう。

 

影山「君に話がある。鬼道の事だ」

 

円堂「鬼道…」

 

影山「君のチームのマネージャー、音無春奈が鬼道の実の妹だということを知っているかね?」

 

円堂「えっ!?音無が鬼道の…」

 

普通ならそうなる。オレは音無の口から聞いていたから驚きはしなかったが、なんでその事を円堂に話したのかで驚いている。一体なぜその事を今、円堂に話したんだ?もしかして円堂を揺さぶるため?

 

影山「幼くして両親を亡くした2人は施設で育ち、鬼道が6歳、音無春奈が5歳の時に別々の家に引き取られた」

 

円堂「そうだったんだ」

 

影山「鬼道は妹と暮らすため養父と契約をかわした。フットボールフロンティア全国大会で三年間優勝し続けると。鬼道は勝ち続けないと妹を引き取ることはできない」

 

なるほど、そういう事か。今、その話をした訳はオレ達に負けろと言っているもんだな。それに鬼道は妹の音無の為にそんな条件を交わしたのか。でも、これで鬼道は音無と一緒に暮らしたいと思っている。だから音無の事は嫌ってもないし、邪魔者だとも思っていない事がわかった。けれどこの事を音無に話す訳にはいかないな。これは鬼道本人から話さなきゃいけないこと。オレにできることは、この試合で負けることではなく、本気でぶつかることだけだ。だが、円堂はどうだろうな。

 

影山「もし、地区大会レベルで負けたともなれば……鬼道自身、家から追い出されるかもしれないな」

 

さらに追い討ちの様に言ってくるなこの人。

 

影山「忘れるな。雷門が勝てば鬼道たち兄妹は破滅する」

 

そう言って影山はどこかへ去って行った。そしてその後すぐに響木監督がやってきた様だ。

 

こんだけ言われたら円堂の心は揺れるだろうな。けどあの影山はひとつ間違っている事がある。オレ達に負けて鬼道と音無、兄妹の関係が破滅すると言っていたが、そんだけで破滅するようなら所詮それだけの関係だったということだ。だからそんだけで破滅するようならあいつらは兄妹をやってない。

 

そう思いオレは元の場所へ戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてアップ中、壁山がボールを蹴り損ないずっこける。どうやらいつにない大舞台で緊張しているようだ。確かに気持ちは分かるがな。そしてふと音無の方を見るとやはり元気がない。まだ鬼道の事で悩んでいるのだろう。鬼道の事は円堂と影山の話を盗み聞きをしていたから知っているが話す気は無い。なのでオレは気にせずアップを続ける。円堂はあの話がきっかけなのかアップにも集中できていない。円堂はアップの途中で顔を洗いに行った。

 

でも円堂の気持ちも少しはわかる。オレ達が勝てば勝てば鬼道と音無は永遠に引き裂かれ、鬼道は家を追い出されるかもしれないとか言われたらな。だがそれで手を抜いて勝っても鬼道は多分、喜びはしないだろうな。

 

そんな事を考えながらアップをしていると、宍戸が緊張している壁山をリラックスさせるためにくすぐっていた。何してんだよ。余りのことに壁山がボールを高く蹴り上げる。そしてボールは天高く上り…

 

ガンッ!

 

と当たる音が聞こえてきた。どうやら天井に当たったらしい。え?もしかして今ので天井に届いたのか?すげぇな壁山。そう思っているとボールが落ちてきて宍戸の頭に直撃したのだ。

 

宍戸「いだっ!」

 

これぞ所謂因果応報と言うやつだ。というか上手いこと宍戸に当たったな。ん?何か落ちてきて…!

 

八幡「宍戸!危ねぇ!」

 

天井から何かが宍戸のいる所へ落ちてきたのだ。そして宍戸に当たりそうなところで間一髪オレがそれを手で受け止める。

 

宍戸「うああぁぁぁ!」

 

宍戸の叫びでフィールドにいた全員がこちらを向く。

 

八幡「いって〜」

 

風丸「おい大丈夫か比企谷」

 

八幡「ああ、なんとかな」

 

風丸「何が落ちてきたんだ?」

 

八幡「ああそれは……ボルト?」

 

そこにはかなりデカいボルトがあった。地面にも何個か同じやつが落ちている。

 

染岡「みたいだな」

 

円堂「何があった!」

 

八幡「これが天井から落ちてきたんだ」

 

円堂「ボルト?」

 

染岡「ったく、危ねぇな。帝国はちゃんと整備してんのか?」

 

確かにちゃんと整備していればこんなことにはならないはず。一体なぜ?誰がこんな事を?天井…ボルト…整備……っ!

 

八幡「…ま、まさか…!」

 

円堂「何かわかったのか!?比企谷!」

 

八幡「わかったも何も、最悪なストーリーが思い浮かぶぜ。オレの妄想で済めばいいんだが…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時間はきてしまい両チーム整列して入場する。ボルトは鬼瓦刑事へと渡された。そして円堂は一応と言っていいのか落ち着きを取り戻している。そのままでいてくれたら良いのだが。

 

『雷門。帝国。両チームの入場です』

 

そして整列し、全員と握手していく。オレは鬼道と握手する時、気づかれないように鬼道の耳に囁く。

 

八幡「天井か?」

 

鬼道「おそらく」

 

八幡「はいよ」

 

そのまま自然な流れで移動していく。そして円堂も鬼道に何か言われたようだ。

 

八幡「鬼道はなんて言ってた?」

 

円堂「ああ。試合開始と同時に全員を下げろって」

 

八幡「ああ、わかった」

 

ということで全員にはキックオフと同時に思いっきり下がれと指示をした。何を言っているんだと反発とかはあったが説得して頼み込む。

 

 

ピー

 

と試合開始の合図と共に全員、ペナルティーエリア近くまで下がる。そして上を見上げると…

 

八幡「…マジか…」

 

そこには何本もの鉄骨が落ちてくるのが見えてきた。

 

ドンッ!ドドッン!…ドンッ!

 

鉄骨はスタジアムに落ちると同時に砂煙を上げる。

 

角馬『ああっと!?どういうことだ!?突然雷門中側の天井から鉄骨が降り注いできた!?大事故発生!』

 

やっば。視界が塞がれて見えない。全員無事だよな。

 

角馬『酷い……グラウンドには鉄骨が突き刺さり、雷門中イレブンも……お?何と!雷門中イレブンは無事です!誰一人怪我さえしてない模様です!』

 

フゥ…なんとか無事のようだな。けど、エグイなこの光景…。もしあのままだったら怪我じゃ済まねぇな。

 

すると鬼道がどこかへ去っていくのが見え、オレは円堂と共に追いかける。鬼道のあとをついて行くと、とある部屋に辿り着いた。 

 

鬼道「総帥!これがあなたのやり方ですか!天に唾すれば自分にかかる。あれがヒントになったのです。あなたにしては軽率でしたね」

 

すると源田、寺門、響木監督も付いてきた。

 

影山「言ってる意味が分からんが?私が細工したという証拠でもあるのかね?」

 

鬼瓦「あるぜ!」

 

後ろから響くでかい声。それと共にその証拠品がオレらの頭上を通過して、影山のデスクの上に放り投げられた。

 

鬼瓦「そいつが証拠だ」

 

円堂「刑事さん!」

 

証拠というのは天井から落ちてきたデカいボルト。どうやらスタジアムの工事関係者が、影山の指示でボルトを緩めていたそう。いや、やることエグイな。

 

 

鬼道「俺はもうあなたの指示では戦いません」

 

源田「俺たちも、鬼道と同じ意見です!」

 

近くにいた帝国のゴールキーパーの源田も続けて言う。

 

影山「勝手にするがいい。私にも、もはやお前たちなど必要ない」

 

 

そしてその後、影山は刑事さんに連れていかれた。でも何故か気になる。オレの勘違いで終わってくれたら良いのだが。

 

鬼道「響木監督。円堂。比企谷。本当にすみませんでした。試合をする資格はありません。俺たちの負けです」

 

円堂「えっ?なに言い出すんだよ」

 

八幡「今の責任を取るために雷門の不戦勝って、形を取りたいってことなんじゃねぇのか?」

 

静かに頷く鬼道。すると響木監督が円堂の肩に手を置き

 

響木「円堂、判断はお前に任せる。提案を受けるのも、試合をするのもお前次第だ」

 

円堂「監督…」

 

そして円堂は鬼道達の方を見て

 

円堂「へっ。やるに決まってんだろ。俺たちはサッカーをしに来たんだ。お前たち帝国学園とな」

 

鬼道「感謝する」

 

 

ということで試合をするにあたって、鉄骨が突き刺さっていたグラウンドとはまた別のグラウンドへとチェンジをしこれで試合ができる。今度こそフットボールフロンティア地区大会決勝戦が始まろうとしていた。

 

 

 

 

鬼道「見せるぞ!生まれ変わった帝国のサッカーを!」

 

帝国学園「「「ああ!」」」

 

円堂「行くぞ!!俺たちの熱い雷門魂を!!全力でぶつけるんだ!」

 

「「「おう!」」」

 

 

スターティングメンバーは御影と同じだ。

 

 

ピー

 

ホイッスルと同時に試合開始。雷門ボールで始まった帝国戦。まずは豪炎寺がドリブルで上がっていく。ディフェンス二人がスライディングを仕掛けて来たが、ボールを横にいる染岡に渡し、自身は跳んで躱した。

 

染岡「ドラゴン」

 

豪炎寺「トルネード!」

 

まずは染岡と豪炎寺の連携技、ドラゴントルネードが炸裂する。すると、源田は大きく飛び上がって、拳を地面に叩きつけ……

 

源田「パワーシールド!」

 

何かオーラの壁が出てきた。そしてシュートは弾かれてしまっまた。

 

源田「パワーシールドにはどんなシュートも通用しない」

 

さすがナンバーワンゴールキーパーだ。そう易々と点を入れさしてくれないか。

 

 

 

 

そしてボールは帝国ディフェンダーの五条に。そこから鬼道に渡り、寺門へ。

 

寺門「百裂ショット!」

 

寺門の百裂ショットがオレらのゴールへと向かっていく。でもそのシュートなら円堂が止めてくれる。

 

円堂「熱血パンチ!」

 

が、熱血パンチで上手いこと弾けずボールは後ろへ。幸いゴールポストに当たって点にはならなかった。まさか…あいつ…あの事を気にしてるんじゃ…

 

そして次に帝国のコーナーキック。それに佐久間がヘディングで合わせる。今度は円堂の正面……だが、円堂はそれをキャッチし損ねる。そして慌ててボールをキャッチする。そしてボールは円堂から少林へと渡されるがすぐに鬼道が奪う。そしてディフェンスを躱し上がってくる。これで円堂と1体1となってしまう。

 

鬼道「円堂ォォ!」

 

鬼道はそう叫びならが足を大きく振り上げる。そして鬼道がシュートを打ち込もうしたと同時に豪炎寺が両足のスライディングタックルを仕掛ける。ボールは斜め後ろに行き洞面のもとへ。しかし、打ち合いのせいで痛めたのか、足を抑える鬼道。たまらず、洞面は試合を中断すべくボールを外に出した。

 

円堂「サンキュー豪炎寺」

 

だが豪炎寺は何も言わずに去っていく。豪炎寺の奴…まさか…。でもその前に円堂だ。明らかに試合に集中できていない。こうなったら……。

 

 

 

そして試合は再開される。洞面が出したことにより雷門のスローインから始まる。半田がマックスへパスを送るがすぐに帝国学園の咲山にボールを奪われてそのまま上がっていく。そして咲山は鬼道にパスを送ろうとしていたのをオレがカットする。

 

円堂「ナイス!比企谷!」

 

そしてそのまま上がろうするのではなく、くるっと反転し円堂の方へ振り向く。

 

円堂「比企谷…?」

 

頭にクエスチョンマークが浮かんでいる円堂に対して、オレは大きく足を振り上げてシュートを打ち込んだ。

 

円堂「えっ!?……うわっ!」

 

味方が蹴ったボールの為キーパーはそれを触れてしまえばハンドになってしまう。その為体又は足で受け止めなくてはならない。けれど円堂はあまりの出来事に驚いている。そしてシュートは円堂の腹に直撃し、そのままボールと共にゴールの中へ入っていき。ゴールネットを揺らした。

 

 

 




いかがでしたか?ではまたお会いしましょう。


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第14話

どうもチャキです!第14話どうぞ!


八幡side

 

オレの蹴ったボールが円堂と共に雷門ゴールへと入った時、オレを除いた雷門イレブンと帝国は静まり返っていた。そりゃそうだ、オレがチームメイトである円堂に向かってボールを蹴ったんだからな。そして円堂はあまりの出来事に反応できなかった。そしてボールは円堂と一緒にゴールの中に入った。所謂オウンゴールをしたんだからな。

 

そしてすぐさま我に返ったレフリーが笛を吹いた。あれ?審判も驚いてたの?そしてその笛で次々と我に返っていく選手達。そして最初に口を開いたのはフィールドに奴らではなく、実況をしていた角馬だった。

 

角馬『な、なんと言う事だー!先制点は比企谷のオウンゴールにより帝国だー!一体どうしたと言うんだ比企谷ー!』

 

円堂「…ひき…がや…」

 

フィールドで最初に口を開いたのは円堂だった。円堂は何故オレがあんな事をしたのかという目で見ていた。ほかの奴らも一緒だった。そして風丸がこっちに向かってくる。多分予想だが問い詰める為だろう。

 

風丸「お、おい比企谷。なんで…なんであんな事をしたんだ!?」

 

ほらな。まぁ、当たり前の事だよな。誰でもあんな事をすれば誰だって問い詰めるわな。そんな事を思いながら円堂の元へ歩みよる。

 

八幡「円堂…オレがなんでこんな事したかわかるか?」

 

円堂「い、いや……」

 

八幡「そうか、なら自分の胸に手を当てて考えろ」

 

そう言ってオレは円堂に背を向けて、ポジションに戻る。

 

染岡「おい!比企谷!一体何をしてるんだ!」

 

八幡「早く戻れ」

 

染岡「質問に答えろ!」

 

豪炎寺「染岡一旦戻れ」

 

染岡「くっ……くっそ!」

 

染岡はオレを睨みながら自分のポジションへと戻っていく。おー怖い怖い。他の奴らも睨んでいたり、なんでってみたいな顔をしていたりと、様々だ。これはまた随分な嫌われようだな。そしてオレがオウンゴールしたことにより、雷門のキックオフから始まる。そしてまずは1点を取るためにほぼ全員帝国陣内へと上がっていく。オレも上がってもいいが、多分…いや絶対にパスは来ないだろう。だったらディフェンスしかないか。ボールを持ったらすぐに誰かにパスを送ればいいし。

 

染岡「ドラゴンクラッシュ!」

 

染岡が帝国のゴールへドラゴンクラッシュを放つ。……だが

 

源田「パワーシールド!」

 

源田の守りには敵わない。ボールは高く弾かれた。が、そのボールの先には豪炎寺が既に炎と共に待ち構えていた。

 

豪炎寺「ファイアトルネード!」

 

間髪入れずに豪炎寺がファイアトルネードを放つ。染岡のシュートを止めるために源田は技を使った直後、これなら反応が間に合わず、ゴールを割れるかもしれない。だが…

 

源田「パワーシールド!」

 

予想に反し、源田は豪炎寺の速攻に対してしっかりとパワーシールドで応戦してきた。どうやらあの技は連続で出せるようだな。まったく厄介だな。そしてまた弾かれたボールは咲山に渡り、すかさず鬼道へとわたる。そしてオレは鬼道に迎え打つ。

 

鬼道「比企谷、さっきのはどういうつもりんだ?」

 

八幡「あ?ああ、アレはただ単に今の円堂を見てるとイラついたら、ついな」

 

鬼道「なに?」

 

鬼道からボールを奪おうとしても、奪えない。流石鬼道だな。そんな事を思っていると、鬼道に華麗に突破される。くっ、やはり今のオレでは無理か。そして佐久間と寺門が鬼道の脇から前線へダッシュする。一体何をする気だ?そう思っていると、鬼道が指笛を鳴らす。すると地中からペンギンが顔を出す。そして鬼道がシュート。ペンギンも打ち出され、そのシュートにさらに佐久間と寺門がツインシュートをいれ威力アップさせる。

 

鬼道「皇帝ペンギン──」

 

佐久間・寺門「「2号!」」

 

凄まじい力が加えられたボールの後をペンギンが追う。この試合で見たどのシュートよりも明らかに強力なものだと一目で分かる。これは……

 

円堂「ゴットハンド!」

 

円堂はゴッドハンドで迎え打つが、その指一本に付き一羽のペンギンが突き刺さる。そのペンギンたちはゴッドハンドを打ち破り、シュートは円堂ごとゴールに刺さった。

 

角馬『ゴール!これで帝国学園2点目だ!鉄壁を誇るゴットハンドを打ち破ったのは帝国の新必殺シュートだ!』

 

まさかゴットハンドが破られるとはな。

 

 

そして前半終了を知らせるホイッスルが鳴らされる。そして全員ベンチに戻る。

 

風丸「どうしたんだ円堂?」

 

円堂「俺にも分からない」

 

ここにいる全員が全員円堂の不調に気づいている。

 

染岡「それに比企谷もだ!なんでオウンゴールなんかしたんだ!」

 

八幡「あ?それは今の円堂を見てたらイラついただけだ」

 

染岡「おまっ!そんな理由で!」

 

壁山「そんなどうしてですか?」

 

そしてオレにまたなんでオウンゴールしたのかと理由を聞いてくる。オレはそれを無視してトイレへと向かう。

 

音無「比企谷先輩!」

 

振り返ると音無が走ってくる。なんで追いかけてくるの?

 

八幡「なんだ音無」

 

音無「本当の事話さないんですか?それに誤解を解いた方がいいのではないでしょうか」

 

なるほどな。そのために追いかけてくれたのか。優しいな音無は。だがアレは誤解じゃない。意図的にやったもんだからな。それに……

 

八幡「誤解は解けないだろ。もう解が出ている。そこで問題は終わっている」

 

音無「ですがそれだと比企谷先輩が」

 

八幡「もういいんだ音無」

 

オレは音無の言葉を遮る。

 

音無「なんで…ですか」

 

音無の声は弱々しくなっている。

 

八幡「もう、オレはオウンゴールしてしまった。それによりオレのレッテルは決まってしまった。もうそうなればもう無理だ。だからもういいんだ」

 

音無「だ、だったら皆さんと話し合えば」

 

八幡「話し合っても意味は無い」

 

音無「そんな…!」

 

八幡「すまんな。もう行くな」

 

そう言って早足でトイレへ向かった。音無の気持ちは正直嬉しい。だがオレはもうアイツらと一緒にサッカーはできないんだろうな。短い間だったが楽しい思い出が蘇ってくる。楽しい事、苦しい事、染岡が他の部活の人とトラブルをおこしかけたりしたな。あ〜、懐かしいな。はぁ……弱くなったな…いや、初めっから弱かったかもしれないな。

 

そしてトイレを済ませて早く戻ろうとした時だった。

 

 

豪炎寺「比企谷」

 

ふと呼ばれたので声のした方を見ると豪炎寺がいた。

 

八幡「なんだ?」

 

一体なんだろうな。まさかあのオウンゴールの事で何か言われるのだろうか。はぁ……まぁ仕方ないか。覚悟を決める。

 

豪炎寺「お前、円堂のこの状態の原因知ってるだろ?」

 

あれ?思ってたのと違う。なぜだ?オウンゴールの事で文句を言いに来たのではないのか?

 

豪炎寺「どうやら何か勘違いしているようだな」

 

八幡「…」

 

なんでわかったんだ?

 

豪炎寺「お前はわかりやすいからな」

 

八幡「……さいで」

 

豪炎寺「それでどうなんだ?円堂の不調の原因知っているのか?」

 

言ってもいいのだが、これはオレが勝手に言っていいもんではない。

 

八幡「……ああ」

 

豪炎寺「そうか。これからどうするんだ?」

 

八幡「どうするってもな。オレはもうベンチに行くしかないだろ。あんな事したんだから」

 

豪炎寺「それはどうかな」

 

八幡「は?」

 

豪炎寺「こい」

 

そう言って歩き出す豪炎寺。オレは一体何が何だかわからなかった。でも今はついて行くしかない。と言うよりも戻らないと行けないから必然的について行かないとダメだが、豪炎寺の言葉の意味がわからない。そしてついて行くと着いた場所は雷門ベンチだった。そこでは話し声が聞こえてきた。

 

染岡「監督!比企谷を下げてください!」

 

染岡が響木監督にオレをベンチに下げるよう言っているようだ。やっぱりそうだよな。オウンゴールしたんだからそうなるのは当たり前だ。豪炎寺はわざわざこんな事を聞かせるために言ったのか。だが……

 

響木「それは無理だ」

 

染岡「なんでですか!?」

 

響木「比企谷は中盤の要だ。もし、ここで比企谷を下げたら余計攻め込まれてしまう。それを防ぐためには比企谷が必要なんだ」

 

染岡「ぐっ……ですがあいつはオウンゴールをしたんですよ!」

 

フッ、そりゃあそういう態度取られるわな。

 

音無「違います!」

 

染岡「っ!」

 

音無……。

 

音無「確かに比企谷先輩はオウンゴールしました。ですが……ですが!比企谷先輩が何の意味も無くそんな事はしません!」

 

音無はそう全員に言った。沈黙の時間が少し流れる。すると音無が慌てたように頭を下げる。

 

音無「す、すいません!」

 

染岡「あ、いや…こっちこそ悪い。熱くなりすぎた」

 

音無「いえ、大丈夫です」

 

すると風丸が前へ出てくる。

 

風丸「染岡、お前の気持ちは分からんでもない。だが、音無の言う通り比企谷は何も意味も無くそんな事はしない。理由は比企谷に後で聞けばいいんじゃないか。さっきみたいに言うんじゃなくて、優しく普通にさ」

 

染岡「あ、ああ……そうだな。あの時も熱くなりすぎて考えてなかった」

 

風丸「だったら後で謝ったらいいさ」

 

染岡「そうだな」

 

あの染岡が……確かにあの時オレもなんでしたかという理由は言ってなかった。それも悪いと思うが、やはりこれは円堂自身で気づくことが大切なこともあるし、下手したら鬼道と音無の事でボロが出てしまうかもしれなかった。

 

豪炎寺「こんだけ言われてもまだ、ベンチに戻るのか?」

 

八幡「確かにきいた。けど……」

 

豪炎寺「オウンゴールをしたことを悔やんでいるのなら、プレイで取り返せば良い。新しいシュート技も取得したろ」

 

そっか…確かに豪炎寺の言う通り失敗したのならそれを取り返すぐらいの成果を上げればいい。

 

八幡「そうだな。サンキュ豪炎寺」

 

豪炎寺「ああ」

 

オレは豪炎寺の横を通り過ぎて他の奴ら前へ出る。

 

染岡「…比企谷」

 

染岡の声により、ほぼ全員オレの方へ視線を移す。

 

八幡「染岡、さっきはあんな態度をとって悪かった」

 

オレは染岡に頭を下げる。

 

八幡「理由は……まだ言えないが、試合が終わったら言う」

 

染岡「…わかった。絶対約束守れよ」

 

八幡「フッ、ああ。わかってる」

 

染岡「フッ…それと俺も悪かった。あの時熱くなりすぎた」

 

八幡「いや、大丈夫だ。気にしてないから」

 

染岡「そっか」

 

オレは染岡から他の奴らへと視線を移す。

 

八幡「他の奴らも悪かった。すまない」

 

再びオレは頭を下げ、謝罪する。

 

風丸「ああ、いいぞ」

 

八幡「え?そんなあっさりと」

 

風丸「だが条件がある」

 

八幡「条件?」

 

風丸「ああ、それは比企谷がオウンゴールした1点を取り返してくれたらな」

 

八幡「フッ、ったく……ちゃっかりしてな。でも、わかった。必ず1点取り返してやる」

 

風丸「頼んだぞ。守りは俺らに任せてくれたらいいから」

 

八幡「わかった」

 

そして次にオレは視線を音無に移し、音無に近づく。

 

八幡「音無もありがとな。オレの為に」

 

音無「い、いえ」

 

八幡「それと悪かったな。あんな態度をとってしまって」

 

音無「い、いえ、大丈夫。気にしてませんから」

 

八幡「そっか…なら良かった」

 

これでオレとこいつらの亀裂は無くなっただろう。次は円堂、お前の番だ。何としてもいつもの円堂に戻れよ。待ってるからな。

 

 

 

 

そして後半が始まる。開始早々帝国が攻め上がってくる。オレはすかさずボールを持っていた鬼道に迎え打つ。だが鬼道のボールのキープ力は高い。そう易々と奪わせてくれない。けど諦めてたらダメだ。そう思いオレは更に圧をかける。

 

鬼道「やるな」

 

八幡「そっちもな」

 

鬼道「でもこれならどうだ!イリュージョンボール!」

 

ボールが3つになる。3つの内どれか1つが本物、もう2つは幻覚、どれも同じように見えて、本物も見分けがつかない。オレはまたもや抜かれてしまう。だったら……

 

八幡「サイドからも上がってきている!注意しろ!」

 

「「おう!」」

 

オレの掛け声と共に半田、マックスがサイドから上がって来ている帝国の咲山、洞面にマークにつく。

 

鬼道(やはり比企谷は良く周りを見ている。それにより中盤も支配されずにいる。比企谷はこの雷門の中盤の要かもな)

 

そして寺門にボールが渡りシュートを打ってくる。

 

円堂「風丸!?」

 

そのシュートをゴール前まで下がってきていた風丸が身体を張って止める。

 

風丸「お前の調子が悪い時は、俺たちがフォローする。仲間だろ!」

 

角馬『な、何と!雷門ディフェンス陣がゴール前に集結!』

 

そして風丸が弾いたボールは佐久間の元へ行き、そのままシュートを放つ。そのシュートを壁山が身を呈して守る。そして弾いたボールを寺門がヘディングするが、それを栗松がガードする。そしてまた弾かれたボールをシュートされ、またガードをする。その繰り返し。

 

角馬『帝国のシュートの嵐を雷門ディフェンス!身体を張って防ぎ続ける』

 

シュートの痛みで風丸達の身体がボロボロになっていく。

 

円堂「みんな……」

 

そして何度も何度も身体で受け止めているうちに、栗松が吹き飛ばされ、スペースができてしまう。これはマズイと思った瞬間わずかだが鬼道の指示の方が早く帝国の佐久間、寺門、そしてマークを外した洞面が上へ飛ぶ。これはデスゾーンか。そう思い空いたスペースへと向かおうとしたが、鬼道にマークされてしまう。

 

鬼道「悪いが行かせない」

 

八幡「チッ」

 

そしてデスゾーンは打たれてしまい、ディフェンス陣の間を抜けゴールへ。しかも、円堂の反応が一歩遅れている。マズイ入ってしまうそう思った時だった。

 

土門「うおおぉぉぉーー!」

 

土門が顔面で受け止めて弾いた。そしてボールはコートの外へ出て、土門はその場に倒れ込んでしまう。そんな土門に雷門イレブンは駆け寄る。オレはゆっくりとその場へ近づいていく。

 

円堂「土門、大丈夫か?」

 

土門「あ、ああ」

 

ほんとかよモロに顔面で受けたのに大丈夫ってすごいな。

 

円堂「なんて無茶を…」

 

土門「デスゾーンはこうでもしなきゃ止められない……くっ。円堂。俺も雷門イレブンになれたかな……」

 

そう円堂に聞く。多分、土門は前に帝国にいたからそんな事を聞いたのだろう。そしてそんな土門の問に円堂は

 

円堂「当たり前だ!お前はとっくに仲間だ!」

 

土門「そっか」

 

良かったな土門……。オレも雷門イレブンの一員なのかな。

 

そして土門は担架で運ばれていく。するとボールを持った豪炎寺がオレの隣に来てこう言う。

 

豪炎寺「比企谷。邪魔するなよ」

 

八幡「しねぇよ。……頼むわ」

 

豪炎寺「ああ」

 

そして豪炎寺は数歩前に出てボールを高くあげる。

 

豪炎寺「円堂!」

 

そう円堂に呼びかけながら、ファイアトルネードをぶち込む豪炎寺。そしてボールは円堂の腹部へ当たる。あまりに突然なので円堂の準備ができていなかった。そして円堂は後方へ吹っ飛ばされる。この光景に敵味方共に唖然とする。

 

豪炎寺「俺がサッカーにかける情熱の全てを込めたボールだ」

 

円堂「豪炎寺……」

 

豪炎寺「グラウンドの外で何があったかは関係ない。ホイッスルが鳴ったら試合に集中しろ!」

 

そしてオレも言いたいことを言いに円堂の元へ寄る。

 

円堂「比企谷……」

 

そしてオレは円堂だけに聞こえるようにこう言う。

 

八幡「円堂。悪いがお前と影山の話を聞いていた」

 

円堂「!」

 

八幡「お前の気持ちは分からんでもない。だが、そんな勝利で鬼道達は喜ぶと思うか?」

 

円堂「っ!」

 

八幡「それだけだ」

 

そう言ってオレは円堂に背を向けて位置につく。そして土門の代わりに影野が入る。そして相手のコーナーキック。ボールは鬼道に渡り、鬼道は上にジャンプした佐久間へ。そして、佐久間がヘディングで鬼道にボールを渡し、

 

鬼道・佐久間「「ツインブースト!」」

 

鬼道のダイレクトシュート。そのまま円堂へと向かっていく。そしてそのシュートに円堂はパンチングを入れる。熱血パンチかと思いきや眼にも止まらぬ速度で連続パンチを繰り出す。そして弾く。

 

目金「爆裂パンチ」

 

そう目金が名ずける。それは放っておいて、あいつこんな状況で新しい技をやっぱりあいつはすげぇよ。それにしてもまったく世話のやける奴だ。そしてボールはオレへと渡り、そのまま勢いよく上がっていく。そして帝国ディフェンス辺見が立ち塞がる。

 

八幡「ファントムドライブ!」

 

だがオレはファントムドライブで突破する。このままシュートを打ってもいいが、どうやら豪炎寺があのシールドを破る秘策があるらしいから、それをしてもらおうと思い、豪炎寺と染岡へ視線を送る。すると2人は頷く。

 

八幡「豪炎寺!」

 

オレは豪炎寺へとパスを送る。だが、帝国ディフェンス成神がそれを読み、パスカットしようとするが

 

成神「なにぃ!?」

 

角馬『おおっと!比企谷の出したパスが急に曲がり帝国ディフェンス成神の前をボールが掠め去る!』

 

そうオレは回転をかけて曲がるようにした。それにつられ、豪炎寺へのマークが薄れる。そして曲がった先にいた染岡にボールが渡る。そして

 

染岡「ドラゴンクラッシュ!」

 

染岡がシュートを放つ。

 

源田「パワーシールド!」

 

だがそれを源田がシールドを張り防ぐ。そんな中、豪炎寺がファイアトルネードをぶち込む。

 

豪炎寺「パワーシールドは衝撃波で出来た壁!弱点は薄さだ!遠くから飛んできたものは跳ね返せても至近距離から押し込めば!」

 

なるほどな。そういうことだったか。やっぱ豪炎寺はすげぇな。そんな事を考えているとパワーシールドにひびが入っていく。

 

源田「なに!?」

 

豪炎寺「ぶち抜ける!」

 

染岡「ドラゴン!」

 

豪炎寺「トルネード!」

 

青龍が赤龍へと変わり、源田のパワーシールドをぶち破りゴールへと叩き込んだ。

 

角馬『ゴール!雷門、一点を返した!』

 

そして試合再開し、帝国はパスを繋げようとするがそれをすかさずオレがカットする。そしてそのまま上がっていく。見せてやる!オレの新必殺技を!オレはペナルティエリア近くまで差し掛かった時、オレはボールを軽く上げた後、足を右、左へ十字を描くようにぶつけた後、更にバツを描くようにまた足を右、左へとぶつけた後、最後に右足で渾身のインパクトをボールに叩き込む!これが新必殺シュート技!

 

八幡「ナイトメア・レイン!」

 

黒や紫のオーラがボールを包み込む。それはまさに闇のような夜のようなオーラ。その事から名ずけられた技である。

 

源田「くっ、これじゃあ、あの技には間に合わん!くっ!…パワーシールド!」

 

源田は最初に何やら呟いていが、パワーシールドを繰り出す。そしてそのパワーシールドとナイトメア・レインがぶつかり合う。するとパワーシールドにひびが入っていく。そしてパワーシールドをぶち抜き、ゴールへと突き刺さる。

 

角馬『ゴール!比企谷の新必殺技で雷門同点に追いついた!』

 

八幡「うしっ!」

 

その場で片手でガッツポーズをする。決まった、オレの新しいシュート技が。これでオウンゴールした分は取り返したぞ。

 

豪炎寺「ナイスシュート、比企谷」

 

八幡「サンキュ」

 

そう言って豪炎寺とハイタッチを交わす。

 

染岡「やったな比企谷!」

 

八幡「おう」

 

そして染岡ともハイタッチをする。

 

八幡「だがまだ試合は終わってない。気を引き締めよう」

 

豪炎寺・染岡「「おう!」」

 

そして試合再開する。そこからはお互いに攻めては守りの繰り返し。円堂も元に戻り、前半のようにはいかない。オレも前半の分取り返すために、チームメイトに指示を出す。これにより中盤は支配されてないが、やはり鬼道の方が何枚も上手のようだ。試合終了まで刻々と近づいてくる中、鬼道がボールを持ち、佐久間、寺門が上がってきた。

 

 

これは…!前半と同じだ!そして鬼道が再び口笛を鳴らすとペンギンが出てきて、前に出して再び佐久間と寺門のツインシュートを打ち込み皇帝ペンギン2号が放たれる。

 

円堂「ゴッドハンド!」

 

円堂はゴッドハンドで対抗する。だが、徐々に押され始めた。

 

豪炎寺・八幡「「円堂!」」

 

押し込まれているが、アイツの目は死んでいない。

 

円堂「このボールは、絶対に止めるんだ!」

 

すると円堂は空いてた左手も前に突き出して両手でのゴッドハンドを繰り出す。両手で放ったゴッドハンドはペンギンたちを蹴散らし、ボールをキャッチした。

 

マジか……やっぱあいつもすげぇな。

 

円堂「行くぞ!」

 

円堂はそう言ってスローで風丸に渡す。そしてボールを持った風丸が眼にも止まらぬ速さでジグザグにドリブルをする。

 

風丸「疾風ダッシュ!」

 

ボールは少林に渡り、

 

少林「竜巻旋風!」

 

ボールを高速回転させることで砂煙の竜巻を生み出し、突破する。そしてボールは半田に渡る。けど成神が半田へとスライディングを仕掛ける。

 

八幡「半田!こっちだ!」

 

半田「頼むぞ!比企谷!」

 

ああ、言われなくても。絶対にゴール前まで運んでやる!そう思い上がっていくが、戻ってきた咲山が立ち塞がってくる。これじゃあ運べない一体どうすれば……あ、そうだ!オレはその場で足を踏み込み、足を振り上げる!

 

角馬『おーっと!比企谷足を大きく振り上げる!これはもしや秋葉名戸戦で見せたドライブシュートか!?』

 

だいたいあっている。だがこれはシュートではない!そう思って思いっきりボールを高くあげる。これはドライブシュートを利用したパス。ドライブパスだ!

 

八幡「豪炎寺!壁山!」

 

オレのあげたボールに豪炎寺と壁山が飛びつく。

 

源田「パワーシールドを超える最強の必殺技!フルパワーシールドだ!」

 

そうして現れた衝撃波の壁は先ほどの壁よりかなりデカい。多分源田言っていたあの技っていうのはこれの事か。イナズマ落としの体勢に入ってる豪炎寺と壁山。そこにもう一人跳んできた。その人物は円堂だ。ゴールからここまで上がってきていたのだ。そして二人は空中で同時にオーバーヘッドキック。イナズマ落としの青い雷とイナズマ一号の黄色い雷がボールから迸る。

 

円堂「いっけぇぇっ!」

 

シュートはフルパワーシールドに激突。回転するボールはそのままフルパワーシールドを突き破りゴールに刺さったのだ。そして敵味方その光景に唖然している中、試合終了のホイッスルが鳴った。

 

円堂「…やった……やったぁ……やったぁぁぁー!」

 

円堂の元へ全員駆け寄る。

 

風丸「ほら、比企谷も行くぞ!」

 

八幡「…ああ」

 

風丸に誘われオレも円堂に駆け寄る。オレ達はあの無敗の帝国学園を破ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

円堂「みんな迷惑かけてごめん」

 

風丸「もう、いいさ」

 

円堂「比企谷もごめん!俺の為にやってくれたのに俺全然わからなくて」

 

八幡「いや、こっちこそ悪い。いくらお前を試合に集中させるためとはいえ、オウンゴールしてしまったんだ。オレはもう……」

 

円堂「そんなことはない!」

 

八幡「円堂……?」

 

円堂「確かにやり方はあれだったけど!けど、比企谷は俺の為にやってくれたんだ。だからそんな事言わないでくれ!比企谷は俺らの大切な仲間なんだから」

 

八幡「オレも……仲間と言ってくれるのか」

 

オレは思わず聞き返す。すると円堂は

 

円堂「当たり前だ!なぁ!みんな!」

 

「「「「ああ!」」」」

 

風丸「その通りだ!比企谷!お前は俺達の仲間だ」

 

豪炎寺「そうだ!お前がいてくれたから中盤を任せて、俺と染岡は攻めることができたんだ。だからそんな事思わないでいいんだ」

 

染岡「比企谷、お前のやった事やっと理解した。そういうことだったんだな。そういう事なら言ってくれよ。1人で抱え込むなよな」

 

半田「ホントだぜ」

 

八幡「風丸…豪炎寺…染岡…半田…」

 

オレは……オレは必要とされているのか。いつも声をかけても嫌がられて、ひとりぼっちだったオレが……。そんな中木野が声をかけてける。

 

木野「比企谷君」

 

八幡「木野…」

 

木野「比企谷君。皆は比企谷君の事もうとっくに仲間と思っているんだよ。だから、もう1人で抱え込まずにみんなに頼ってもいいんだよ。もちろん私達マネージャーにも頼ってよね」

 

そう言ってにっこり笑う木野。後ろにいた雷門は腕組みはしてるものの、頷いている。

 

音無「そうですよ比企谷先輩!比企谷先輩は雷門イレブンの一員です!」

 

音無も続けて言ってくる。ああ……オレは……オレはもう……1人じゃないんだな。こいつらがいる。オウンゴールしたオレでも受け入れてくれるこいつがいるんだ。

 

八幡「…ありがとうな、お前ら。これからも…その…よろしく頼む」

 

円堂「おう!」

 

「「はい(っす)(でやんす)」」

 

風丸「まったく世話のやける奴だな」

 

八幡「ちょっと待て!それは円堂だろうが!」

 

円堂「なんでだよ!」

 

豪炎寺「まぁ、それも言えてるな」

 

円堂「ひでぇな!」

 

そんな会話の中笑いが込み上げ、全員で笑った。

 

風丸「おっと……皆お待ちかねみたいだぞ」

 

観客から一斉に巻き起こる雷門コール。円堂たちは手を振って答えた。

 

音無「ほら、比企谷先輩も!」

 

八幡「わ、わかったよ」

 

音無に言われてオレも手を振って答える。と言うよりも近い近い近い、もうちょっと離れてくれませんかね。

 

 

そんな中、帝国イレブンは退場していく。それを悲しそうに見つめる音無。仕方ない。

 

八幡「行ってこい音無」

 

音無「え?」

 

八幡「早く行かねぇと鬼道見失うぞ」

 

音無「でも……」

 

それでも音無の足は動かなかった。どうすればいいのだろうと思った時だった。ある事が頭の中を過ぎった。

 

八幡「…実はな音無。鬼道は…………」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

オレは円堂と影山の話を音無にした。そして音無は鬼道の元へと走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして音無と鬼道の関係が元に戻る所をオレらは見ていた。と言うよりもオレも半分気になっていたが、円堂と木野に連行されました。突如音無が抱きつき、それを拒むはずもなく、鬼道は優しく受け止める。仲睦まじい兄妹の姿がそこにはあった。

 

八幡「まったく世話のやける後輩だな」

 

木野「それは比企谷君もでしょ」

 

八幡「うるせぇ」

 

木野「ふふっ。あ、それにしても比企谷君。なんで鬼道君が音無さんを引き取ろうとしている事知ってたの?」

 

八幡「それは円堂と影山が話している時偶然、聞いてしまってな。それでだ」

 

木野「ああ、そういう事だったの」

 

八幡「ああ、それより早く戻ろうぜ」

 

円堂「そうだな」

 

木野「そうね」

 

そう言ってオレらはグラウンドへと戻って行った。

 

 

最後に音無、良かったな。

 

 

 

 




いかがでしたか?ではまたお会いしましょう。


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第15話

どうもチャキです!第15話どうぞ!



前回八幡の新必殺技ナイト・メア・レインとしましたが、少し変えてナイトメア・レインに変わります。どうぞよろしくです。


八幡side

 

フットボールフロンティア地区予選決勝戦で優勝した翌日。オレたち雷門中サッカー部は雷雷軒を貸し切って集まっていた。翌日の朝刊には、デカデカとオレたちの優勝したところの写真が写っていた。小町と母ちゃんも喜んでいた。だってオレが新聞に写ったんだぜ?それだけで喜んでいたしな。それよりも雷雷軒で打ち上げみたいな事をやっている。まさかオレが打ち上げに参加する時が来るとは思ってなかったな。

 

円堂「やったぞぉ!」

 

「「「やったぞぉっー!」」」

 

円堂が叫んだ後、それを全員で復唱している。オレはやってない。オレの他にもやっていない奴がいる。例えば豪炎寺だ。お前もそういうのやらないタイプだよな。

 

木野「もう何度目よ」

 

木野がツッコム。確かに木野の言う通りこれで何回目だろうかこのやり取り。

 

円堂「何度だっていいじゃあないか。俺達優勝したぞぉ!」

 

「「「優勝したぞぉー!」」」

 

またもやこのやり取り。ホント飽きねぇな。それにしても地区予選で優勝しただけなのにこの盛り上がり様。それにこの雷雷軒のラーメンや炒飯などの食べ物とかが全て監督、響木監督の奢りだそうだ。監督太っ腹だな。オレもラーメンを頼んで食べているけどな。それにしても賑やかというか、騒がしい。

 

風丸「しかし、帝国学園も全国大会に出られるとはな」

 

隣にいた風丸が口を開く。確かにそれに関しては同感だ。前年度の優勝校には自動的に出場枠が与えられるらしい。

 

円堂「大舞台でもう一度戦えるんだ!ワクワクしてくるぜ!ほい、餃子お待ち!」

 

円堂は円堂で響木監督の手伝いをしている。

 

夏未「それは決勝まで勝ち進むという宣言と受け取って良いのかしら?」

 

と言われる。円堂はそれに対して何もわかっていない様子だ。それに対して雷門は続けて言う。

 

夏未「前年度優勝校と同地区の出場校は別ブロックになるのよ」

 

八幡「と言う事は帝国とは決勝戦以外では当たらないということか」

 

夏未「ええ、そうよ」

 

円堂「へぇ、そうなのか。また帝国と決勝戦か」

 

土門「おいおい気が早すぎるぜ」

 

八幡「まったくだ。全国はそんなに甘くはないぞ」

 

円堂「わかってるって!」

 

本当かよ……。

 

木野「でも、夏未さん。なんでそんなに詳しいの?」

 

夏未「大会規約には隅から隅まで目を通したわ。ルールを知らずに慌てるのはもうこりごりだもの」

 

八幡「さすが経験者は語るだな」

 

そういうと雷門は何も言えなくなってしまった。なんだ?いつもみたいに言い返してこない。あー、あれか。痛いところをつかれたからいえなくなってしまったって訳か。その後、今後マネージャーの役割は雷門が事務面、音無が情報面、木野がフィジカル面をそれぞれ担当するということになった。というか雷門がそう決めた時、木野と音無が苦笑いしていた。うん、なんかわかる気がする。

 

風丸「それにしても比企谷の新必殺シュート、凄かったな」

 

染岡「ああ、そうだな。俺と豪炎寺の2人で破ったパワーシールドを1人で破ってしまうんだからな」

 

豪炎寺「ああ、確かにな」

 

八幡「たまたまだ」

 

そう、たまたまあの技で破れただけだ。オレも正直驚いたが、あの時は嬉しさのあまり忘れていた。

 

染岡「こりゃあ俺達も負けていられねぇな」

 

豪炎寺「ああ」

 

え?何?オレらってそういう競いをやってたの?マジで?嫌だなぁ…。そう思いながらラーメンをすする。それからも話は盛り上がってくる。オレも話を振られたりするので、それに答える。こんな騒がしい奴らの中にいるけど、居心地は悪くない。むしろ良い。いやはやホントにこいつらがオレのことを受け入れてくれて良かった。ホント…

 

八幡「…ありがとうな」

 

円堂「え?何が?」

 

八幡「え?」

 

円堂「いや、比企谷さっきありがとうなって言っただろう」

 

え?やっばっ……声に出てしまったか。どうする?正直に言うか?それとも誤魔化すか……。

 

風丸「俺も聞こえたぞ」

 

豪炎寺「俺もだ」

 

音無「私も聞こえました」

 

どんだけ聞こえてんだよ。お前らどんだけ耳良いんだよ。これは正直に言った方が良いのかもしれないな。いや、ちょっと誤魔化してみようか。

 

八幡「は?オレそんな事言ったか?」

 

風丸「言ったさ。バッチリ聞こえたぞ」

 

風丸…コノヤロウ……。ていうか全員の視線がオレの方に集中している。やはりここは正直に言うか。

 

八幡「はぁ……わーったよ言うよ。オレを受け入れてくれて……ありがとうなって意味で言ったんだ」

 

するとこの場シーンと静かになる。

 

八幡「…なんだよ」

 

円堂「いや、受け入れるも何も初めっから比企谷の事は受け入れてるし。な?」

 

円堂がそういうと全員が頷く。

 

風丸「それで悩んでいたのか?」

 

八幡「悩むというか、なんというか……。今でも思うんだよな。オレあんな事したのに居ていいのかな?って思うんだ」

 

そう、オレは帝国戦の時にオウンゴールをした。なのにこいつらはオレを受け入れてくれた。昨日はああ思ったけど、やはり気になってしまう。

 

円堂「良いに決まってるだろ!」

 

八幡「円堂……」

 

オレがそんな事思っていると円堂が口を開く。

 

円堂「昨日も言ったが、比企谷はもう雷門イレブンの一員だ!誰が何を言おうと、比企谷は俺たちの仲間なんだ!だから、もうそんな事言わないでくれ!いくら比企谷でも怒るぞ!」

 

風丸「そうだぞ、比企谷。いくら自虐ネタでも笑えないぞ」

 

八幡「いや、別にそういう訳じゃ…」

 

豪炎寺「オウンゴールの事気にしているのなら大丈夫だ。もう俺達は気にしてない」

 

ふと周りを見ると、視線があった奴らは全員頷いていく。こいつらはもう、あんな事気にしていない様子だ。くっそ……こいつら……

 

八幡「お前ら……良い奴かよ…まったく」

 

ホント良い奴すぎる。まったく……ホント…ホント…

 

八幡「ありがとうな。改めてよろしく頼む」

 

「「「「おう!」」」」

 

ホントありがとうな。

 

響木「比企谷、何か頼むものあるか?」

 

八幡「じゃあ替え玉お願いします」

 

響木「わかった」

 

その後も全員でワイワイ話が盛り上がっていく。

 

土門「監督!餃子もう一皿!」

 

夏未「私も追加をお願いするわ」

 

土門と雷門の注文が重なるも、残念なことにあと1人前しかないようだ。

 

土門「じゃ、夏未ちゃんどーぞ」

 

夏未「夏未……ちゃん(・・・)

 

そう言って鋭い目で土門を睨む雷門。それにより土門は顔を青くして恐怖を覚えている。だが…

 

夏未「悪くないわね。その呼び方」

 

八幡「良かったな土門。寿命が伸びたな」

 

土門「ひでぇ」

 

するとこの場はどっと笑いが溢れ出す。

 

夏未「だけど、理事長代理としての私への敬意は忘れないでいただきたいわ。私の言葉は理事長の言葉よ?」

 

ほう……そりゃあなんとも重みがあるな。

 

響木「それじゃあ理事長ならどんな言葉をコイツらに送るかね?」

 

監督の一言で雷門は顔を引き締めてから、マネージャーとしてではなく理事長代理としてのエールを我ら雷門サッカー部に送る。

 

夏未「今やサッカー部は雷門中の名誉を背負っていると言えるわ。必ず全国制覇を成し遂げてちょうだい!」

 

円堂「おう!やってやるぜ!な!」

 

円堂は豪炎寺に同意を求め、豪炎寺は親指を立てて円堂に応える。

 

円堂「よーしやってやろうぜ!!絶対に全国制覇ぁぁああああっ!」

 

「「「絶対に全国制覇ぁぁぁああああっ!」」」

 

円堂の言葉に全員が声を上げる。ここまで来たのなら全国制覇したいよな。コイツらとならできるかもしれないな。

 

 

そしてその後、食べながら、あれやこれやと話が話が盛り上がる。そしてお開きになったのは、外から夕光が射し始めた頃だった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そして数日後、オレ達は河川敷に集まっていた。何故ならイナズマイレブンと練習試合をすることになったからだ。なにやら打ち上げが終わった後、イナズマイレブンの一員である浮島さんと会って、なんやかんやあって試合をすることになった。イナズマイレブン、聞いた話によると伝説があるらしい。というかイナズマイレブン、雷門OBのメンバーなんか見た事のある人ばかりだ。うちの学校の生徒指導部の先生に駅前の紳士服店や理髪店の人などなど、稲妻町で見かける人達ばかりだ。まさか身近にこんなすごい人達がいたなんて、思わねぇよ。そんな中、他の奴らはあの伝説のイナズマイレブンの話で盛り上がっている。

 

円堂「夢みたいだイナズマイレブンとサッカーができるだなんて」

 

風丸「40年ぶりの伝説復活だ」

 

土門「何が飛び出るのか楽しみだな。な、比企谷」

 

八幡「なんでそこでオレに振る?……まぁ、でも確かにそうだな」

 

どんなプレーを見せてくるのか楽しみだな。それをお手本に出来たらいいかもな。

 

円堂「いいか!今日は胸を借りるつもりで全力でぶつかっていこう!」

 

「「「おう!」」」

 

この試合の審判は刑事の鬼瓦刑事にしてもらうことになった。休みなのにありがとうございます。

 

スターティングメンバーはFWは豪炎寺と染岡。MFは半田、少林、オレ、マックス。DFは風丸、壁山、土門、栗松。そしてGKは円堂となっている。

 

そして試合開始のホイッスルが鳴り、民山さんがボールをビルダーさんへと渡す。するとビルダーさんは

 

ビルダー「小僧共よく見ておけこれがイナズマイレブンのサッカーだ!」

 

そう言って足を大きく振り上げる。

 

円堂「えっ?キックオフシュート?」

 

まじかよ初っ端から本気じゃん。そう思いオレはシュートコースを塞ぐように立つ。…………が空振りをしてしまいその場で倒れてしまう。あれ?

 

その隙をついて半田がボールを奪い攻め上がる。そしてボールは豪炎寺に渡り、豪炎寺は軽めのシュートを放つ。小手調べ程度かもな。まぁ、あれぐらいなら響木監督なら止められると思っていたが、雷門の執事のバトラーさんがヘディングでクリアしようとするも失敗してしまいボールはそのままゴールの中へと入っていった。

 

八幡「……入っちゃったよ」

 

その後も試合は続くがこれはさすがになんというか…。でもこの人達は伝説のイナズマイレブンだとしてもそれは40年前の話であって、今もその当時の強さを持っているとは限らない。はっきり言ってしまえば、オレらのボール支配率がほとんどだろうな。シュートも簡単に止めることができる。

 

 

 

 

その後

 

八幡「豪炎寺!」

 

オレが豪炎寺に対してドライブパスを送る。ボールがドライブの頂点達した時に豪炎寺が炎を纏い回転しながら上へとジャンプする。

 

豪炎寺「ファイアトルネード!」

 

お得意のファイアトルネードを放つ。これには響木監督は反応するもボールに触れることができずゴールの中へ入りこちらの得点になった。これで2-0。はぁ……これは練習にもならないかもな。と思っていると

 

響木「お前達!なんだそのザマは!!」

 

と響木監督の声が響く。

 

響木「俺達は伝説イナズマイレブンなんだ。そして、ここにその伝説を夢に描いた子供達がいる。俺達にはその思いを背負う責任があるんだ。その思いに答えてやろうじゃないか!本当のイナズマイレブンとして」

 

 

ん?なんだ?

 

 

「「「「俺達は伝説イナズマイレブン!」」」」

 

「証明しようぜ!伝説は真実だと!」

 

「「「おう!」」」

 

な、なんだ!?今までとは違う雰囲気だ。まさか響木監督の言葉で目覚めたとでも言うのか?

 

八幡「さっきとは違う雰囲気だ。気をつけろ!」

 

「「「「おう!」」」」

 

オレがそういうと全員返事をする。だが、イナズマイレブンのプレーが見違えるように変わる。プレスのかけ方や、パス回しなど全てが変わる。

 

八幡「サイドから1人上がってくるぞ!マークしろ!」

 

マックス「任せろ」

 

マックスがサイドから上がってくる民山さんにマークにつくがそれを難なくかわし、雷門中の菅田先生からパスを受け取った後、縦と横のキックを組み合わせてシュートを放つ。

 

民山「クロスドライブ!」

 

円堂「熱血パンチ!」

 

円堂はそのシュートに対して熱血パンチで対応するが、一瞬にして破られゴールを決められてしまった。ここまで変わるとでも言うのか。そしてオレたちのキックオフで再開する。けれどさっきとは見違えるようなディフェンス。オレはその裏をかくようにして鋭いカーブパスで染岡に送る。

 

染岡「ドラゴンクラッシュ!」

 

スペースが空いたことにより染岡がシュートしやすくなり、ドラゴンクラッシュを放つ。

 

響木「見せてやろう。これが元祖ゴッドハンドだ!うおりゃぁぁぁ!」

 

見事元祖ゴッドハンドでガッチリと止められてしまう。

 

そして響木監督の投げたボールを浮島さんとビルダーさんの二人がそれぞれの足で挟み、同時に上に蹴り上げる。そのボールにビルダーさんはジャンプしてそのまま、浮島さんはオーバーヘッドキックを同時に蹴り込みシュートを放つ。そのシュートはボールを中心に炎の羽根が生える。それはまるで鳥のように飛んでいっているかのように、オレたち雷門ゴールへと襲いかかる。そして円堂はそのシュートに飛びつくが触れることも出来ずゴールの中へと入っていった。これで同点。すげぇ…なんだよあれ。今まで見たことも無い技だ。もしかしたらあの皇帝ペンギン2号に匹敵するのではないだろうか。そんな事を思っていると円堂が審判さんにタイムを要求した。いや、あのね、サッカーにはタイムはないんだよ。知ってる?円堂。

 

円堂「みんな来てくれ!」

 

どうやら許可が降りたようだ。そして雷門ベンチに集まると、円堂は自分のじいさんのノートを取り開く。

 

円堂「あったぞ。炎の風見鶏だ」

 

風丸「炎の風見鶏?」

 

言われてみればそういう感じだったな。

 

染岡「解読できたのか?」

 

円堂「ああ。その上、今日はお手本が目の前にある。絶対にものにしようぜ」

 

マックス「で?誰がやるの?」

 

円堂「えーっと『この技はスピードがビューン。ジャンプ力がビヨヨーン』か」

 

相変わらず語彙力が無さそうだな。ホント意味が分からない。けれど円堂が言ったように、今回はお手本がある。だからいけるかもしれないな。

 

風丸「スピードとジャンプか……陸上部の出番だな!」

 

なるほどな。確かにそれは言えてるかもしれない。スピードに関しては1番に速いから適任かもしれない。そしてもう1人は豪炎寺と決まった。そしてタイムも終わり全員ポジションにつく。

 

円堂「風丸、豪炎寺!頼んだぜ!」

 

風丸・豪炎寺「「おう!」」

 

2人はさっきの技を何度も何度も挑戦するが、全て失敗に終わってしまう。タイミングが噛み合わなかったり、空中にボールをあげれたとしても、タイミングよく蹴れなかったりしていた。

 

響木「浮島!もう一度見せてやるか!」

 

浮島「ああ!しっかりとな!」

 

そんな中、もう一本お手本を見えてくれるイナズマイレブン。案外優しいんですね。と思いながら炎の風見鶏を見ているとあることに気づいた。フッ、なるほど。そういうことか。

 

浮島・ビルダー「「炎の風見鶏!」」

 

円堂「ゴッドハンド!」

 

ゴッドハンドで立ち向かうが簡単に敗れてしまいイナズマイレブンの得点になった。でも、炎の風見鶏のコツがわかった事だし教えようとするかと思った時だった。

 

影野「この技の鍵は……二人の距離だよ!」

 

円堂「え?」

 

ほう、影野の奴気づいたのか。

 

影野「二人がボールを中心に同じ距離、同じスピードで合わせないと駄目なんだ」

 

オレの思ってることほぼ同じ事を言っている。

 

円堂「良く、気づいたな」

 

ホント、よく気づいたな影野。

 

そしてその後、風丸と豪炎寺は影野の言ったことをすると、見事炎の風見鶏を完成させることができた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そして試合が終了した。

 

 

円堂「さあ!次はいよいよ全国大会だぞ!」

 

 

「「「「おー!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

比企谷八幡

 

背番号17

 

ポジションMF(場合によっては変わる。GK以外ならどこでもいける)

 

 

習得必殺技

 

ファントムドライブ:ドリブル技

 

ダークトルネード:シュート技

 

ナイトメア・レイン:シュート技

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたか?ではまたお会いしましょう。


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第16話

どうもチャキです!第16話どうぞ!


八幡side

 

豪炎寺・風丸「「炎の風見鶏!」」

 

放課後の練習。風丸と豪炎寺の炎の風見鶏が綺麗にゴールに決まった。 

 

 

円堂「すげえ!息ピッタリだ!」

 

染岡「こりゃドラゴントルネードも負けてらんないぜ」

 

確かにあんな威力の必殺技を見せられたらこっちも負けてられないな。

 

円堂「どうだ影野!?」

 

影野「完璧!」

 

風丸「お前のおかげだよ。影野!」

 

影野のアドバイスにより、炎の風見鶏を習得した風丸と豪炎寺。そんな二人に影響され一層練習を張り切るオレたち雷門イレブン。そんな中、雷門中のグラウンドの前に高そうな車が止まった。すると車から1人の男性がおりてきた。

 

土門「なぁ、あのおじさん誰?」

 

染岡「おいおいうちの理事長だぞ」

 

八幡「つまり雷門の父親だ」

 

土門「んな事言ったて俺転校生なんだからさ、知らないつーの」

 

八幡「転校生してきてどれくらい経ってると思ってるんだお前。豪炎寺ですら知ってるのに」

 

そういうと土門はなにか誤魔化そうとしているとか口笛を吹いている。

 

円堂「なんで理事長が?」

 

夏未「さあ……」

 

円堂「分かった!理事長も元イナズマイレブンなんだな!」

 

夏未「なんでそうなるのよ……父はね、中学サッカー協会の会長。しかもフットボールフロンティア大会実行委員長でもあるのよ」

 

え?雷門の親父さんってそんな偉い人だったの?マジ?とりあえずそんなお偉い人がきたのでオレたちは整列する。

 

理事長「諸君、全国大会出場おめでとう」

 

「「「ありがとうございます!」」」

 

理事長からの労いの言葉に礼を言うサッカー部一同。いくらオレでもこの時くらいは声出しているぞ。ホントだぞ。

 

 

理事長「監督、夏未から聞いた時は驚きましたよ。まさか伝説のイナズマイレブンがチームを率いているとは……」

 

響木「よして下さい。昔のことですよ」

 

理事長「いやいや、よく戻って来て下さった。そして!君たちのおかげでフットボールフロンティアは大きな盛り上がりを見せている。全国大会でも熱いゲームを期待しているよ!」

 

円堂「はい!皆!優勝目指して頑張ろうぜ!」

 

「「「おおぉーっ!」」」

 

理事長「おお。頼もしい!」

 

円堂「理事長も応援して下さい!」

 

理事長「任せておきたまえ!」

 

この理事長。円堂みたいに熱い人だな。意外だ。雷門があんなんだから、同じ性格なのかなと少し身構えたがそんな心配は無さそうだ。

 

その後雷門が練習を再開させたいと言ったら、理事長はもうひとつ用事があると言う。その用事とはオレらの部室にあるらしい。なのでオレたちは部室に理事長を案内する。聞くところによればこの部室は響木監督の代かららしい。といことは40年以上の年期物かよ。よく崩れないなこの部室。そして理事長やサッカー部員と共に中に入って、響木監督が部室の物をどけ、壁を見るとあらゆる落書きが出て来た。 

 

『俺たちは逃げたんじゃない!』

 

『必殺技完成』

 

『強くなりたい』

 

といった落書きが書いてあった。

 

 

染岡「しっかし気が付かなかったな」

 

半田「俺達ずっとここ使ってたのに……」

 

八幡「だな」

 

影野「正に影の存在……」

 

確かにな。

 

円堂「あはっ!こいつはじいちゃんのだな!」

 

見るからに読めない字があった。やっぱりお前のじいさんの字かよ。

 

響木「何もかも、あの頃のままさ」

 

理事長「ここにはイナズマイレブンの全てがあるんですな。選手たちの血と汗と涙を感じます」

 

すると理事長はボールを手に取り、リフティングをし始める。中々うまい。

 

理事長「中々のもんだろう?こう見えても昔からサッカーが好きでね」

 

しかし発言の最後でコントロールをミスってボールは円堂の顔面に綺麗に直撃する。これは痛いな。

 

理事長「すまん……」

 

一瞬空気がいたたまれない感じなったな。

 

理事長「それより、これからサッカー部員が増えて来ることを考えると、ここはもう狭いのではないかね?」

 

円堂「そう言われれば……」

 

理事長「確かにここは懐かしい。しかしいつまでも古いものに拘っていても仕方なかろう。新しい部室を用意したいのだが……どうかな?サッカー部復活のお祝いと全国大会出場のご褒美と思ってくれたまえ」

 

その言葉に特に一年生組は喜ぶ。確かにここは見るからに古い。だから新しいものがおしくなる気持ちも分かる。だがそんな時円堂が口を開く。

 

円堂「俺このままでいい」

 

そう発言する。その言葉に1年は驚いている。

 

円堂「この部室は試合もできなかった俺達のことも、昔のイナズマイレブンのこともみんな知ってる。それにこうして仲間も増えてきた。この部室は雷門イレブンの歴史そのものなんだ。俺たちの大事な仲間なんだよ!」

 

八幡「フッ、お前らしいな」

 

染岡「だな」

 

風丸「この部室に全国優勝のトロフィー飾ってやろうぜ!」

 

円堂「おっ。それ良い考え!」

 

栗松「キャプテン!分かったでやんす!」

 

少林「俺たちもこのままで良いです」

 

円堂「みんなありがとう!」

 

まったく……どうやらオレは円堂の影響に汚染されたらしい。まぁ、それでもいいか。こいつらといると楽しいからな。理事長との話も終え、再び練習の為グラウンドに向かうオレたち雷門イレブン。その途中で校舎の方から生徒たちの声援が送られてくる。

 

『頑張れー!』

 

『頑張れよー!』

 

『応援してるからなー!』

 

前とは大違いだな。前なんて全然見て貰えなかったからな。グラウンドへ戻ろうとした時、風丸が陸上部の部員に話しかけられているのを視界に入った。その後、円堂に一声かけてから陸上部の方へ向かっていった。しばらく練習した後、風丸が戻ってきた。だが、何があったかは分からないが一度も炎の風見鶏はこの日、成功することは無かった。陸上部の方でなにかあったらしいな。

 

八幡「風丸」

 

風丸「なんだ?比企谷」

 

八幡「陸上部の方で何かあったのか?」

 

風丸「いや、なんでもないさ」

 

八幡「そうか。ならいいが」

 

絶対になにかあっただろう。そうだな……例えば陸上部に戻ってきて欲しいなんて言われたんじゃないか?まぁ、知らんけど。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

円堂の話によれば風丸はあの宮坂っていう一年に陸上に戻らないかと聞かれているそう。で、どっちか悩んでいるらしい。これはオレたちがとやかく言う権利なんてな。残ろうが戻ろうが最終的に決めるのは風丸だ。円堂も似たような感じの答えを出して伝えてたそうだ。は昨日よりも炎の風見鶏を精度を上げてきた。どうやら、一旦区切りはついたようだな。が、そんな中で雷門に一本の電話がかかってきたのだ。その内容は理事長が全国大会の会場であるフットボールフロンティアスタジアムの下見の帰りに事故にあったらしい。そのことにより雷門、木野そして円堂が向かった。オレを含めた他の奴らは残って練習の続きをするが、理事長のことが心配であまり集中できなかった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そして翌日。今日はフットボールフロンティア全国大会の開会式だ。

 

 

王将『全国中学サッカーファンの皆様!遂にこの日を迎えました!今ここ、激闘の殿堂フットボールフロンティアスタジアムはかつてない激闘の予感に、早くも興奮の渦と化しています!フットボールフロンティア開幕!』

 

ついに始まった全国大会。空には花火が打ち上げられたり、飛行船が取んだりで会場は大盛況だ。実況しているのは角馬王将さん。まさか地区予選の時に実況していた角馬の親父さんなのかね。

 

王将『各地域より激戦を勝ち抜いてきた強豪チームが今日より日本一をかけてさらなる激闘に臨みます!一番強いチームはどのイレブンなのか!?今から紹介しましょう!近畿ブロック代表、戦国伊賀島中学!』

 

入場が始まった。

 

 

円堂「とうとう来たぞ!今日まで色んなことがあったけど、ここまで来たら!思いっきり暴れてやろうぜ!」

 

「「「おう!」」」

 

円堂が士気を上げていく。

 

円堂「壁山!トイレは大丈夫か!?」

 

壁山「さっき行って来たっス!」

 

お、おう…ここでもそれを確認するのね。

 

木野「皆頑張ってね!理事長さんの為にも!」

 

二列に整列して、いつでも入場できるようにする。先頭は円堂と何故かオレ。なんでや!?そこは豪炎寺やろ!なんでオレやねん!?おかしいやん!?ふざけんなよ!

 

王将『続いて関東ブロック代表、雷門中学校!』

 

響木「さぁお前たち、行ってこい!」

 

先導の人について行く。

 

王将『雷門中学校は地区予選大会においてあの帝国学園を下した恐るべきチーム!伝説のイナズマイレブン再びと注目が集まっております!』

 

そして続いて帝国学園の入場。

 

王将『更に!昨年度優勝校の帝国学園が特別出場枠にて参戦!関東ブロックの地区予選決勝において雷門中と激闘を繰り広げながらも惜敗した超名門中学!特別枠にて王者復活を狙います!』

 

隣に並んでる帝国に対し、円堂は声を掛ける。

 

円堂「足の怪我はもういいのか?」

 

鬼道「人のことより自分のことの心配をしろ」

 

まったくだ。ここは全国、地区予選とはまったく違う。

 

源田「比企谷」

 

すると鬼道の隣にいた源田がオレに話してくる。

 

八幡「なんだ?」

 

源田「今度こそお前のシュート止めてやるからな」

 

八幡「お、おう。そうか」

 

源田「比企谷だけじゃない。全てのシュートを止めてやるからな」

 

八幡「あ、ああ…」

 

やる気がこっちまで伝わってくる。オレらも負けてられないな。そんな事を思いながら、他のチームの紹介を聞きながら待つ。

 

王将『そして残る一校!推薦招待校として世宇子中学校の参戦が承認されております!』

 

誰も知らない中学。入場を全選手が注目してると、

 

円堂「あれ?」

 

看板を持った先導の女の子だけで、後ろには誰もいない。

 

王将『えー、世宇子中学は調整中につき本日開会式には欠場とのことです』

 

あらら、あの子可哀想だな。それに少しだけ頬が赤くなっていた。

 

 

 

 

 

 

組み合わせの結果、開会式の翌日……つまり今日、オレたち雷門と戦国伊賀島中学の試合が決まった。

 

音無「戦国伊賀島中のサッカー部監督の伊賀仙一校長は本物の忍者の末裔と言われており、秘伝の忍術を使って選手を鍛え上げているそうです」

 

音無からの情報に唖然とするオレたち。

 

土門「忍術って言われてもなぁ……」

 

壁山「一体どんなサッカーをするんスかね」

 

いや、もう意味がわからん。

 

円堂「いいさ!どんなチームだってサッカーをすることには変わりない!俺たちは今まで通り真正面から全力でぶつかっていこう!炎の風見鶏。チャンスがあればバッチリ決めていけよ!」

 

豪炎寺「ああ!」

 

風丸「おう!」

 

すると、木野が控室に入ってくる。

 

木野「皆。練習時間よ」 

 

そして、そのタイミングで木野のケータイが鳴る。

 

木野「夏未さんからのメールだわ。『雷門イレブンの皆へ。大事な全国大会の最初の試合なのにマネージャーの役目を果たせなくてごめんなさい。でも私は勝利を信じてます。必ず勝ちなさい。これは理事長の言葉と思ってもらって構いません』だそうよ」

 

栗松「応援しているのか命令しているのか分からないでやんすねぇ」

 

マックス「ま、いかにも雷門夏未って感じじゃない?」

 

円堂「よーし!絶対に勝つぞー!」

 

「「「おぉー!」」」

 

もちろんオレは言わないぞ。でも、まぁ…やりますかね。

 

 

そして早速練習が始まる。攻め、守備に分かれてそれぞれが動き、連携を確認する。全員、緊張に引き摺られて動きが悪くなっている様子もない。オレもこんな大舞台で少し緊張していたが、だんだんほぐれてきた。そんな中、染岡が守備陣が固めるゴールへと駆けていく。次々に追い抜き、最後に壁山が目の前に前に立ち塞がった時、咄嗟に後ろにいたオレにパスが来る。

 

八幡「お、おい。どした?」

 

染岡「い、いや。壁山が巨大に見えた」

 

八幡「は?」

 

壁山「デカイのは元からっす」

 

失礼な事言うけど、確かにな。

 

円堂「いい守備だ。試合でもその調子で頼むぞ、壁山!」

 

壁山「はいっス!!」

 

まぁ、実際にオレは感じたことないから分からないが確かにいい守備だったと思う。そして練習を再開する。

 

八幡「豪炎寺!」

 

オレがドライブパスで豪炎寺にパスを送る。豪炎寺はそのパスを受け取ろうとした時だった。豪炎寺の前に影が降ってきて、ボールを奪っていく。一体なんなんだ?目まぐるしいスピードで駆けた後にそれは止まる。紫色のユニフォームに身を包み、その腕にはキャプテンマーク。

 

円堂「誰だ!?」

 

「お前に名乗るなは無い」

 

え〜、何こいつカッコつけてるの?ホントそういうの痛いよホント。ソースはオレ。すると名無しくんはボールを豪炎寺に渡した後

 

「豪炎寺修也。俺と勝負しろ」

 

豪炎寺「なに?」

 

「噂は聞いてるぞ。天才ストライカーなんだってな」

 

豪炎寺「お前は?」

 

豪炎寺?さっきの話聞いてたか?円堂が誰だって聞いても名乗らなかったんだぞ。だから名乗るわけ無いだろう。

 

霧隠「俺は戦国伊賀島中の霧隠才次」

 

八幡「いや、名乗るんかい」

 

じゃあ初めっから名乗れよな。何?なんなの?お前?新手のツンデレ?んなわけないか。それよりもこういつが今日の対戦相手かよ。

 

霧隠「俺も足には自信がある。どっちが上か決めとこうじゃないか。ここからフィールドをドリブルして速さを競う。簡単だろう?」

 

あ、コイツ人の事情を考えないタイプの人間だ。

 

豪炎寺「断る。迷惑だ」

 

ボールを投げ返す豪炎寺。だろうな。もし、オレもやられたら、そうするしな。

 

 

霧隠「なっ!?逃げるのか!?腰抜けめ!」

 

円堂「腰抜けだと!?」 

 

霧隠「お前には言ってない」

 

うん、今のはあいつの言ってることが正しい。

 

円堂「仲間を馬鹿にされて黙ってられるか!その勝負、俺が受ける!」

 

風丸「待て円堂。そんな茶番にお前が付き合う必要ねぇだろ」

 

八幡「風丸の言う通りだ。こんなのは無視するのが1番だ」

 

まったくめんどくさい相手だな。

 

風丸「この中で一番足が速いのは俺だ。だから、その勝負。俺が受けよう」

 

ん?あれ?あれれ〜?おかっしいぞ〜。風丸君、さっき付き合う必要ないって言ったよね?なんであんたがやることになってるの?おかしいよね?

 

霧隠「誰だ?お前は?」

 

風丸「お前に名乗る名は無い」

 

風丸お前もかよ!なんなの?それ流行ってるの?いろいろあってコーンを置きそこまでドリブルで行ってコーンを回って帰って来るまでの速さを競うことに。音無のホイッスルで始めて、スタートダッシュはほぼ互角。だけどオレはふと視線を感じたので、電光掲示板の上を見る。そこには2人の人影が見えた。そんな中風丸と霧隠は何か言い合いをしながらドリブルをしている。そしてゴールに近づいた瞬間、電光掲示板の上にいた2人が飛んできて、風丸と霧隠からボールを奪う。

 

「勝手な行動は慎め霧隠」

 

霧隠「フン」

 

「サッカーは個人競技に在らず。チーム同士で競い合うものだ」

 

霧隠「ちっ、わかったよ。名前覚えとくぜ。えっと…ふじたるくん」

 

風丸「風丸だ」

 

すると戦国伊賀島の1人が近づいてくる。

 

「霧隠の無礼を謝罪する」

 

そう言って軽く頭を下げる。

 

円堂「え、あ、おう」

 

「では、ごめん」

 

そう言って3人の姿が消えた。おいおいマジで忍術みたいなの使ってるじゃん。

 

 

 




いかがでしたか?ではまたお会いしましょう。


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第17話

どうもチャキです!第17話どうぞ!


八幡side

 

 

 

王将『今まで数々の名勝負を生み出してきたフットボールフロンティア全国大会! その初戦を飾るのは、雷門中と戦国伊賀島中!! この勝負は名勝負に名を並べることになるのか!?』

 

さてさてさ〜て、オレたちの全国大会初戦がいよいよ始まろうとしている。ポジションはいつも通りMFだ。

 

ピー

 

雷門ボールで試合開始。ボールは染岡に渡り、半田へパスを出したところ、練習に割り込んできた名無しこと霧隠がパスカットをしたのだ。オレは霧隠に向かおうとするも、霧隠のスピードは早くもう追いつけない所までにいた。

 

八幡「ディフェンス!」

 

風丸「任せろ!」

 

オレはすぐさまディフェンスに止めるように指示を出す。その指示にいち早く風丸が対応する為、霧隠にプレッシャーをかける。だが、その霧隠が風丸に当たる直前姿が消えた後風丸の後ろに姿が現れたのだ。

 

霧隠「見たか!これが伊賀島流忍法、残像!」

 

そう言って霧隠がゴールに向かってシュートを放つが、それを円堂ががっちりと受け止める。そしてボールは土門からオレへとわたる。そして戦国伊賀島の陣地にオレと豪炎寺が攻め込む。

 

初鳥「伊賀島流蹴球戦術、鶴翼の陣」

 

その指示を出した瞬間、伊賀島が素早く反応しオレと豪炎寺を計8人で左右に別れ、斜めに広がる形で圧を掛けてくる。これは中央へしかドリブルのいき場所を無くす。目の前には大柄な2人のDFが。ちっ、誘導かよ。このままやばいと思いオレはバックパスをしようとした時だった。

 

「「伊賀島流忍法、四股踏み」」

 

男二人が四股を踏んで、その風圧でオレと豪炎寺を吹き飛ばした。そして弾かれたボールは伊賀島のゴールキーパーの所へと転がっていく。

 

そしてその後、ボールを奪いゴールへと攻め上がる。まず最初にシュートを放ったのは……

 

染岡「ドラゴン!」

 

豪炎寺「トルネード!」

 

ドラゴントルネードを放つが……。

 

百地「伊賀島流忍法、つむじの術!」

 

伊賀島のゴールキーパー百地の前に2つの竜巻が出てきて、その2つの竜巻がひとつになり大きな竜巻へと変化する。その竜巻にドラゴントルネードは威力を殺され上空へ投げ出されて、それを軽々とキャッチされた。マジかよ……さすが全国だな。

 

甲賀「伊賀島流忍法、分身フェイント!」

 

甲賀が3人に増えて、土門を突破する。

 

 

そして、ディフェンスラインから壁山が上がってくる。これは豪炎寺とのイナズマ落としをやろうとしているのだが…。

 

風魔「伊賀島流忍法、くもの糸!」

 

すると、ディフェンスに行った奴の手から中心にくもの糸がのび、一瞬でくもの巣を形成し、壁山の足を止めさせれ、イナズマ落としは不発になってしまった。

 

すると風丸がオーバーラップしてくる。なるほど炎の風見鶏をするのか。ボールはマックスから風丸へとわたり攻め上がる。そんな風丸に迎えうったのが高坂だ。その高坂をフェイントで躱した。

 

高坂「伊賀島流忍法、影縫いの術!」

 

影が伸びて風丸からボールを奪う。そしてボールは霧隠へとわたる。オレもボールを奪おうとしたが、残像にやられて簡単に突破されてしまう。

 

霧隠「伊賀島流忍法、つちだるま!」

 

放たれたシュートは地面を転がりながら土を纏っていきどんどん大きくな土の塊になっていく。そして霧隠が何か指で切ると、大きな土の塊が崩壊し、中からボールが現れさっきよりも早いスピードでゴールへと向かっていく。

 

円堂「熱血パンチ!」

 

円堂は熱血パンチで迎え打つが、パワー負けてして弾かれてしまい、シュートは雷門ゴールへと突き刺さった。

 

王将『ゴール!先取点は戦国伊賀島だ!』

 

先取点を伊賀島に取られてしまったな。それと円堂が嫌な倒れ方をした。腕を下にして倒れた。何も無ければいいのだが。その後、たたみかけるようにして伊賀島の柳生が攻めてくる。これ以上攻めさせてたまるかよ!

 

八幡「させるか!」

 

オレは弧を描く様にして右足を振ると、黒い紫色のした斬撃のようなものが伸びて、柳生の前に着弾した後、衝撃波のようなものが飛び出て柳生の攻めを阻止した。

 

柳生「ぐわぁ!」

 

そして弾かれたボールはフィールドの外へと出る。

 

王将『なんと!ここで比企谷の新必殺技で伊賀島の攻めを阻止!』

 

それと同時に前半終了の笛が鳴り響く。なんとかしのげたな。

 

王将『ここで前半終了!! 戦国伊賀島が1点リードして後半へ持ち越しだ!! 雷門はここから取り返せるか!?』

 

オレたちはベンチへと戻る。

 

円堂「比企谷、さっきは助かった。ありがとう」

 

八幡「気にするな」

 

風丸「それにしてもいつの間にあんな技を?」

 

八幡「さぁ?わからん。なんかできた」

 

風丸「そうなのか?」

 

八幡「ああ」

 

目金「では、あの技をデスカット…と名付けましょう!」

 

メガネをキランと輝けさせながら言ってくる目金。まぁ、いいんじゃね?

 

風丸「それにしても、思った以上に厄介な相手だな」

 

土門「あぁ、何をしてくるか予測がつかない」

 

八幡「そうだな」

 

マックス「流石に全国大会の相手は一筋縄じゃいかないってことかな」

 

円堂「嫌!絶対に突破口はあるはずだ!一筋縄でダメなら二筋縄!二筋縄でダメなら三筋縄だ!」

 

また新しい言葉を生み出しやがったな。もう訳わかんねぇよ。でも、円堂らしいけどな。

 

木野「はい。しっかり水分補給してね」

 

円堂「ありがと……くっ」

 

顔をしかめる円堂。まさか……!オレは円堂に近づく。

 

八幡「おい、円堂」

 

円堂「どうした?比企谷」

 

八幡「グローブ外せ」

 

円堂「え?なんで?」

 

八幡「良いから外せっての。手を見せろ」

 

オレはそう言って円堂の右手首をつかみ、無理やりグローブを外す。すると円堂の手は腫れあがっていた。

 

八幡「やっぱりか」

 

風丸「こんな状態でゴールを守ってたのか」

 

八幡「みたいだな」

 

円堂「心配すんなって。左手だけでもゴールを守ってみせるさ」

 

風丸「円堂」

 

その後、円堂は木野に応急処置をしてもらう。

 

八幡「お前ら、わかっているよな」

 

風丸「ああ、全力で円堂のカバーするぞ!」

 

栗松「わかってるでやんす」

 

土門「ペナルティエリアには一歩たりとも踏み込ませてたまるか」

 

マックス「攻撃は僕たちが阻止してやるさ」

 

染岡「いつも俺たちのゴールを守ってくれてるんだ。今度は俺たちが円堂を守る番だ」

 

壁山「キャプテンの所へは一歩も通さないっす!」

 

オレも後半は守り中心にするか。

 

 

そして後半が開始される。

 

王将『後半開始早々伊賀島の猛攻撃だ!』

 

風丸「この俺が、ゴールを許しはしないッ!!」

 

そう叫ぶ風丸からは、いつも以上の覇気が伝わってくる。風丸の気持ちがオレにも伝わってくる。そして攻め上がるが、すぐさまボールを奪われてしまう。

 

初鳥「伊賀島流蹴球戦術、偃月の陣!!」

 

一人の選手の背後に、他の選手がまるでV字のように並び、砂塵を巻きあげながら雷門ゴールに向かって突進してくる。あまりの強さにディフェンスに行った奴らは悉く吹き飛ばされて行く。そしてゴール前はオレ、風丸、壁山が残ったところで砂塵の中からボールを持った霧隠が姿を現したのだ。

 

風丸「行くぞ比企谷!」

 

八幡「あいよ」

 

風丸と2人で霧隠からボールを奪いにかかる。まず風丸がスライディングを仕掛けるが、それは残像だったようですり抜けてしまう。そしてその先に俺が待ち構えていたが、まさかの二重の残像で出し抜かれてしまった。残すは壁山1人。

 

風丸・八幡「「壁山!」」

 

壁山「えっ!?お、俺だけ!?」

 

霧隠「もらった!」

 

霧隠がシュートを放った。

 

壁山「絶対に通さないっす!うおおぉぉぉぉぉ!」

 

壁山の背後に巨大な壁がせり上がってくる。その壁で霧隠のシュートを止めた。

 

円堂「すごいぞ壁山!」

 

すると弾かれたボールが霧隠にわたる。

 

霧隠「くっそ!俺の力を見せてやる」

 

もう一度攻め上がってくる霧隠。

 

霧隠「伊賀島流忍法、つちだるま!」

 

先程ゴール奪ったシュートが放たれる。やばいこれ以上点を取らせてたまるか。そう思い迎え打つが、土の塊が弾けて、中から出てきたシュートはオレの横を通り過ぎる。その後風丸も横を通り過ぎられてしまう。

 

円堂「ゴットハンド!」

 

円堂はゴットハンドで迎え打つが、神の手は砕かれ再びシュートがゴールに突き刺さると思った時だった

 

風丸「させるかぁ!!」

 

なんとものすごいスピードで風丸が、間一髪のところでボールに追いついたのだ。ゴッドハンドで威力が削られていたため、簡単に受け止められたようだ。そしてそのまま風丸が上がっていく。オレもそれに続き上がっていく。そして伊賀島のくもの糸もものすごいスピードで躱していく。すげぇなあいつ。そして風丸と豪炎寺が同時にボールを蹴り上げ、上と下から蹴りを叩き込むと炎鳥が姿を現す。

 

風丸・豪炎寺「「炎の風見鶏!」」

 

 

相手のキーパーは反応が間に合わず、そのままゴールへと押し込まれる。1点取り返した、これで同点だ。そして伊賀島ボールから試合は再開する。伊賀島も点を取るために攻め込んでくる。ボールを持っているのは霧隠だ。今度こそ止めてやる。さっき覚えたあの技でな。

 

八幡「デスカット!」

 

霧隠「なに!?ぐわぁ!?」

 

衝撃波に当たり軽く吹き飛ばされる霧隠。こぼれ玉を風丸が拾う。そして体勢を立て直した霧隠が風丸の方へ向かう。

 

霧隠「このままじゃ終わらせない!」

 

風丸「ああ、勝負だ!」

 

これは試合前の練習の時の続きだろう。だったらそれに水を指す訳にはいかねぇな。そう思いながらオレはゴール前まで上がる。

 

霧隠「お前の速さじゃ俺を振り切れない!」

 

風丸「足が速いだけじゃダメなんだよ、サッカーは!」

 

霧隠「なに!?」

 

そして風丸は霧隠に背を向けたと思ったらボールを霧隠の上に蹴り上げる。ボールに視線が移動している間に後ろへと移動して突破する風丸。

 

風丸「比企谷!」

 

八幡「おう」

 

風丸によるセンタリング。高く上げられたボールにオレは回転しながら飛び上がる。そして黒い炎を纏い…

 

八幡「ダークトルネード!」

 

シュートを放つ。

 

百地「なっ、ぐああっ!?」

 

備えていなかったキーパーごとゴールに押し込んだ。ホイッスルが響き、電子掲示板には2-1の文字。逆転勝利だ。

 

王将『ここで試合終了!! 何と雷門中、怒涛の追い上げで逆転!! 2回戦へと駒を進めたァァァ!!』

 

すると風丸が近づいてきた。

 

風丸「ナイスシュート」

 

ああ、なるほど。それを言うために来たのかよ。まぁ、いい。だったらオレは…

 

八幡「お前もナイスパス」

 

そう言ってオレは風丸とハイタッチを交わす。オレも風丸のセンタリングがあったからシュートを打てたのだからな。そして風丸は霧隠の方へ向かっていき手を差し出した。霧隠はその手を取って立ち上がった後、2人はがっちりと手を組んだ。すると霧隠はオレに気づきオレの方に向かってくる。え?なに?どうしたの?オレなんかした?

 

……いややったな。デスカットをぶつけたしな。

 

霧隠「まさか俺が止められるなんてな。思ってもなかったぜ」

 

八幡「お、おう。そうか」

 

霧隠「でも次は負けないぜ」

 

そう言って手を差し出してくる。なるほどな。前のオレならキョドってたけど今は違うぞ。すごいだろ。とくだらない事を考えながらその手を取る。

 

八幡「まぁ、こっちもそう易々と負けるつもりはないからな」

 

霧隠「ああ」

 

そして霧隠は自分のチームの方へと歩いて行った。

 

八幡「さてと。オレたちも戻りますか」

 

風丸「ああ」

 

そう言ってオレと風丸は自分のチームの方へ戻った。その後、風丸はサッカーを続けることに。陸上部の後輩君も風丸のプレーに感動したそうだ。良かったな風丸。

 

 

 

でもこれで全国という強さがわかった。1回戦これだけでも苦戦したのだから、次の試合もそう簡単ではないだろうな。これは厳しくなってきたな。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

デスカット

 

ディフェンス技

 

 

 

スピニングカットとボルケイノカットと同じと思ってください。デーモンカットとは違います。ややこしくてすみません。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 




いかがでしたか?ではまたお会いしましょう。


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第18話

どうもチャキです!第19話


八幡side

 

フットボールフロンティア全国大会1回戦。その試合で円堂は手を怪我をしてしまったが、なんとか突破したオレ達雷門中。円堂の手は病院で見てもらった結果、2、3日ぐらいで動かせるらしい。思ったより軽い怪我で良かったわ。

 

そして数日後、今オレ達はイナビカリ修練場にて特訓中である。そして同日の今日。フットボールフロンティアスタジアムでは帝国学園と開会式で欠席していた世宇子中との試合が行われていた。さて、どっちが勝つのかなと思いながらも特訓を続ける。最初は死にそうなくらいだったのに今はそんな感じは無くなった。慣れってことかね。怖いねぇ〜。そんなくだらない事を思っていると、音無が息を切らせて入ってきた。

 

音無「帝国学園が……」

 

円堂「初戦突破か!よしっ!」

 

円堂は喜んで近くにいた豪炎寺の手のひらに軽くパンチをする。というか君たちね最後まで聞こうね。勝ったか負けたか分からないでしょ?かく言うオレも心の中では帝国が勝ったと思ってしまう。

 

音無「10-0で…」

 

円堂「結構な点差だな」

 

音無「世宇子中に完敗しました」

 

「「「「ええ(は)……?」」」」

 

その場にいた全員驚愕した。

 

円堂「嘘だろ音無」

 

染岡「ガセじゃねぇのか?あの帝国が初戦で負けるはずがねぇだろ!」

 

壁山「それも10-0って帝国が1点も取れないなんてありえないっスよ」

 

八幡「一体何があったんだ…」

 

まさかあの帝国が完敗しただなんて、オレ達には信じられなかった。

 

音無「見たこともない技が次々決まって、帝国が手も足も出なかったそうです…」

 

八幡「マジかよ……」

 

豪炎寺「あの帝国が…」

 

円堂「そんな訳ない!帝国だぞ!アイツらの強さは戦った俺達が1番よく知ってる!アイツら本気で強いんだ!鬼道がいるんだぞ!」

 

音無「お兄ちゃん……出なかったんです」

 

「「「「え?」」」」

 

音無「お兄ちゃんウチとの試合で怪我したじゃないですか。相手はノーマークの学校だったから、大事をとって控えに回ってたんです。そしたら相手が圧倒的で…!お兄ちゃんが出ようとした時には…もう」

 

円堂「あの鬼道が……。そんな事絶対にありえねぇ!」

 

壁山「キャプテン。お、落ち着いて欲しいッス」

 

円堂「落ち着いていられるか!鬼道達が完敗なんてありえねぇ」

 

そう言った円堂はイナビカリ修練場を飛び出して行った。

 

染岡「円堂!」

 

壁山「キャプテン!」

 

円堂の奴多分だが…帝国学園に向かったのだろう。まったく。それよりもだ。

 

八幡「なぁ、音無。さっき鬼道が出ようとした時にはって言ってたよな」

 

音無「はい」

 

八幡「という事は試合はタイムアップで終わったんじゃ無くて、帝国の試合続行不可能、又は棄権で終わったってことなのか?」

 

音無「はい、その通りです。帝国の試合続行不可能でした」

 

八幡「ふむ…て事は……」

 

染岡「どうした?」

 

八幡「世宇子中は帝国よりも遥かに強いってことになる。なんせ世宇子中は1試合丸々使ってないからな」

 

豪炎寺「確かにそう考えられるな。しかも丸々使って無くてあの点差」

 

八幡「少し……いやかなり強敵かもな…」

 

予想だが、世宇子中は決勝に行くのは確実かもしれないな。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

円堂「みんな!全国大会2回戦のあいては千羽山中だ!」

 

音無「千羽山中は山々に囲まれ、大自然に鍛えられた選手達がいます」

 

壁山「きっと自然に恵まれた環境なんっスね」

 

少林「みんなのんびりしてそう」

 

うん、確かにそう感じる人もいるかもな。でも野生中みたいな感じなのかね。いや、でも野生中は森で千羽山中は山って感じかな。

 

音無「彼らは無限の壁と呼ばれる鉄壁のディフェンスを誇っています。未だかつて得点を許していません」

 

木野「全国大会まで!?」

 

音無「ええ、1点たりとも」

 

無失点か。相当なディフェンス力なのだろう。

 

音無「シュート力には難点もありますが、この鉄壁のディフェンスでここまで勝ち抜いて来たんです」

 

円堂「わかった!その無限の壁とかいう鉄壁のディフェンスを破れば良いんだな!」

 

八幡「お前ホントわかってる?敗れてないから鉄壁って言われてるんだぞ」

 

あまりの発言に全員苦笑してしまう。まぁ、いつも通りだな。

 

円堂「鉄壁って鉄の壁だろ」

 

豪炎寺「まぁ、意味ではそうだな」

 

八幡「漢字でもそう書くしな」

 

円堂「だったら!こっちはダイヤモンドの攻めをすれば良いんだよ」

 

「「「「はぁ?」」」」

 

八幡「意味わかんねぇよ」

 

円堂「鉄壁のディフェンスが崩れるまで攻める。これがダイヤモンドの攻めだ。その為には特訓だー!」

 

あ、やっぱりそうなるのね。

 

というわけでいつものように特訓をすることになりました。そして練習中、少林が何やらカンフーの型のようなものをとったあと、ヘディングシュートを放つ。それを見た目金がすかさず発言する。

 

目金「クンフーヘッド!」

 

そう名付けたのだ。

 

少林「なんかだんだん名前つけるの早くなりましたね」

 

目金「フッフッフッ、特訓の成果ですよ」

 

少林「特訓?」

 

目金「ありとあらゆるゲームをやり込み。漫画を読み必殺技の名前を日々研究しているのです」

 

八幡「それ特訓言わねぇだろ。それにいつもやっていることじゃねぇの?」

 

目金「あぅ…」

 

近くにいたオレが思わず言うとちょっと落ち込んでしまった。別にゲームや漫画を読むのは良いけど、サッカーもやれよな。

 

風丸「宍戸!パス!」

 

宍戸「はい!」

 

宍戸が風丸に向かってパスを送るが、ボールは風丸の後ろに行ってしまう。

 

宍戸「あれ?」

 

風丸「何やってんだよ」

 

宍戸「すみません。いつもみたいにやったつもりだったんですが…」

 

風丸「パスは正確に頼むぞ」

 

ふむ…まぁ、そういう時もあるよな。たまたまだろう。

 

壁山「壁山ヘディング!」

 

が、顔面に当たってしまう。あれもたまたまだろう。

 

土門「栗松!」

 

栗松「どぁ!?」

 

土門が栗松にパスを送ったがものすごいスピードで向かってきたので栗松は咄嗟に避けた。

 

土門「もしかして俺のボールスピード違反だったかな」

 

力加減をミスったのだろう。あれもたまたまだろう。うん、きっとそうだそうに違いない。

 

マックス「比企谷いくぞ!」

 

八幡「ああ」

 

オレはマックスからパスを受けるために前に出る。そしてマックスがパスは送られるが、風丸の時みたいにパスの飛距離が弱い。いつもならこんな事ないのだけど。一体何故だ。

 

マックス「おっかしいな。いつもみたいにやったんだけどな」

 

八幡「まぁ、たまたまだろう」

 

マックス「そうかな」

 

これもたまたまだろう。

 

染岡「ドラゴン!」

 

豪炎寺「トルネード!」

 

この技を豪炎寺が放った瞬間、ドラゴンが現れたが一瞬にして消えてしまっい、普通のシュートへと変わった。うん……これも……たまたまだろう。豪炎寺達もそう思ったのか何度もやるが、普通のシュートになってしまう。おかしい……。たまたまと思っていたけど、こうも全員ミスをしてしまうのはおかしい。

 

そう思っていると木野が笛を吹く。

 

木野「はい、ちょっと休憩」

 

音無「スポーツドリンクで水分補給」

 

夏未「レモンのはちみつ漬けもあるわ」

 

「「「「おお!」」」」

 

全員レモンのはちみつ漬けを次々と取っていく。オレも1枚取り、全員口の中に運ぶ。

 

円堂「すっぺ〜」

 

確かにこれはすっぱい。けれどうまいな。というか何故だろう。どっかのマネージャーはレモンのはちみつ漬けはレモン丸ごと入れてた人いたような。オレは一体誰のことを言っているんだ?訳分からん。

 

円堂「よーし!また練習だ!」

 

「「「「おおー!」」」」

 

その後もオフェンスとディフェンスとか練習を続ける。そんな中、円堂のところで数人集まり話す。

 

豪炎寺「円堂、本気で無限の壁を突崩す気か?」

 

円堂「ああ!正面からズバーンと」

 

八幡「簡単に言うなホント」

 

土門「今の俺達できるのかね」

 

円堂「え……大丈夫さ。俺達には炎の風見鶏だってイナズマ1号だってある」

 

八幡「決められればの話だがな」

 

円堂「気合いがあればなんでも決まるさ」

 

八幡「はぁ…」

 

ホントこいつ……いや、今更か。

 

木野「ねぇ、土門君。トライペガサスだったら?」

 

土門「ああ、俺達のトライペガサスか。あれなら」

 

八幡「なんだ?それ」

 

円堂「俺も気になる!」

 

土門「一ノ瀬と俺ともう1人のやつとの技だったんだ」

 

豪炎寺「3人技か」

 

円堂「3人の息がピッタリじゃないとできないよな」

 

八幡「だろうな」

 

円堂「なぁなぁ。一ノ瀬ってどんな奴」

 

木野「私と土門君がアメリカに留学してた頃の時。サッカーすっごく上手かったんだ」

 

土門「ああ、俺達のチームをアメリカン少年リーグ優勝に導いた立て役者だったんだ。天才だったよ。フィールドの魔術師って呼ばれてたんだ」

 

円堂「フィールドの魔術師……カッコイイ。会ってみてぇ。その一ノ瀬ってどこにいるの?」

 

そういうと土門は人差し指を空に向かって指す。それにつられてオレと円堂、豪炎寺は空を見上げる。空?宇宙…って訳でもないだろうし。…………まさか。

 

土門「死んじまった」

 

やっぱりそういう事か。

 

円堂「え?」

 

木野「でも土門君。あなたならあの技みんなに教えることできるんじゃない?」

 

土門「かもな」

 

そういうも、うーんと唸るばかりで全然教えてくれない。

 

円堂「早く教えろよ!」

 

土門「言葉にするのムズいんだよ」

 

そう言ってしゃがみこむ。それにつられオレたちもしゃがみこむ。

 

土門「いいか?」

 

そう言って土でそのトライペガサスを教えてもらう。中々面白そうな技だ。すると音無が門から出ていくのが見えた。その後、オレは豪炎寺と共に音無の後を追った。そしてついた場所は河川敷だった。土手で何やら話しているみたいだ。

 

豪炎寺「行ってくる」

 

そう言って数歩歩き出す。そしてオレは豪炎寺が何をしようとしているのかを瞬時に悟った。

 

八幡「ああ…手加減しろよな」

 

豪炎寺「……わかってる」

 

え?何そのちょっとした間は?ほんとにわかってるの?と思っていると、豪炎寺は高く蹴り上げ

 

豪炎寺「ふっ!」

 

ファイアトルネードを鬼道に向かって放つ。見るからに威力は抑えられているみたいだ。良かったホントにわかってたみたいだ。そしてそのファイアトルネードを鬼道が蹴り返す。それよりも音無に当たってたらどうするんだよまったく。

 

鬼道「こんなボールを蹴ることができる奴は!」

 

蹴り返されたボールは豪炎寺の元へやってくる。鬼道も鬼道でコントロール良いね。

 

鬼道「豪炎寺!それに比企谷!」

 

うん、確かにオレもいるよ。でもね、オレはこんな事やらないからね。ほんとだよ。そう思いながら豪炎寺と共に鬼道の所へ向かう。

 

音無「豪炎寺先輩、比企谷先輩!お兄ちゃんは別にスパイをしてた訳じゃないんです。本当です」

 

豪炎寺「お兄ちゃん(・・・・・)…か」

 

多分豪炎寺は自分の妹の事を思っているのだろう。

 

豪炎寺「こい」

 

鬼道「ああ」

 

2人は階段を降りていく。鬼道は降り際に音無の肩をほんっと叩いてから降りていく。オレはそんな音無の隣に立つ。少し距離を空けてね。

 

音無「比企谷先輩」

 

八幡「今は見守っとけ。豪炎寺は何か策があるらしいからさ」

 

音無「…はい」

 

その後オレは土手に座り2人の様子を見ることにした。そして2人は距離を取り、豪炎寺がボールを思いっきり蹴り込む。それはパスとかではないシュートと同じくらいに思えてくる。そしてそのボールを鬼道は蹴り返す。

 

豪炎寺「鬼道!そんなに悔しいか!」

 

鬼道「悔しいさ!世宇子中を俺は倒したい!」

 

豪炎寺「だったらやれよ!」

 

鬼道「無理だ!帝国はフットボールフロンティアから敗退した」

 

豪炎寺「自分から負けを認めるのか!鬼道!」

 

そう言って豪炎寺は鬼道に向かってファイアトルネードを放つ。鬼道に当たると思っていたが、そのファイアトルネードは鬼道の顔をスレスレを横切り土手にぶつかる。

 

豪炎寺「1つだけ方法はある。お前は円堂を正面からしか見たことがないだろう。あいつに背中を任せる気はないか」

 

なるほどね。そういう事か。鬼道も今の発言の意味することがわかったらしい。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そして試合当日

 

「そろそろ試合を始めませんか?」

 

審判の人がそう言ってくる。

 

木野「すみません。もうちょっとだけ待ってください」

 

風丸「監督いい加減にしてください」

 

響木「いや、まだだ。もう1人来る」

 

染岡「もう1人もう1人って、全員揃ってるじゃないですか。っておい壁山は?」

 

少林「トイレです」

 

またかよあいつ。でも待っているのは壁山ではない。

 

風丸「すぐ戻ってきます。とにかく全員いますよ」

 

「いいですか。大会規定により後3分以内にフィールドでないと試合放棄とみなします」

 

おうおう、やばいな。まぁ、でも3分もあれば十分だろう。

 

風丸「監督!どうしたんです!?」

 

染岡「誰を待ってるんです」

 

栗松「全国大会で試合放棄でやんすか」

 

少林「そんな」

 

木野「円堂君、キャプテンでしょ!監督に何か言ってよ」

 

円堂「良くわかんないけど、監督がまだだって言ってるんだから、まだなんじゃないか」

 

木野「もう」

 

「後1分」

 

宍戸「試合放棄なんて勘弁してください」

 

半田「来る来るって、誰が来るんですか」

 

少林「もう誰も来ませんよ」

 

風丸「全員揃っているんですよ」

 

染岡「なんで試合始めないんですか監督」

 

「後30秒」

 

木野「響木監督一体誰が来るんですか」

 

そんな時だった。1人の足音が聞こえてきた。

 

響木「来たな」

 

八幡「そうですね」

 

オレは入場口の方を見ると、そこには雷門のユニフォームを纏った鬼道の姿があったのだ。

 

 

「「「「ええ!?」」」」

 

 

 

 

 




いかがでしたか?ではまたお会いしましょう。


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第19話

どうもチャキです!第19話どうぞ!


八幡side

 

「「「「うそぉぉおおおおお!!?」」」」

 

鬼道の姿を見て円堂達は驚きを隠せないみたいだ。そりゃそうだよな。あの帝国の鬼道が来たんだから。

 

円堂「鬼道…」

 

それにしても遅かったな。もうちょっと遅かったらオレら雷門中は試合放棄で負けてたんだぞ。わかってんのか?お?

 

木野「どういう事ですか?」

 

まぁ、気にはなるだろうな。実況も観客達も驚いているようだ。それにそんなのアリなのかと言う声も聞こえてくる。

 

王将『えー、しばしお待ちよ。あー、ありました。大会規定第64条第2項。プレイヤーは試合開始前に転入手続きを完了をしていれば大会中でのチーム移籍は可能である』

 

そう言って観客達に納得される。

 

八幡「よお、鬼道。何か言うことあるか?」

 

鬼道「俺はあのまま引き下がれない。世宇子には必ずリベンジする」

 

ほお……。

 

円堂「鬼道、俺にはわかってたぜ。お前があのまま諦めるような奴って事は」

 

染岡「なんて執念だ」

 

少林「でもちょっと心強いね!」

 

宍戸「鬼道さんがいれば必殺技がなくても千羽山の守りを崩れるかも。よーし!頑張るぞ!」

 

響木「宍戸、少林寺、お前たちはベンチだ」

 

宍戸・少林「「あ……はい」」

 

円堂「宍戸!少林!準備だけはしといてくれよ!いつお前たちの力が必要になるか分からないんだ」

 

宍戸・少林「「あ、はい!」」

 

ふっ、ホントいつも訳分からないこと言ってる癖にこういう時だけは、いい事言うんだな。

 

 

 

そして今回のスターティングメンバーはFWにいつも通り染岡と豪炎寺。MFに半田、オレ、マックス、鬼道。DFは風丸、壁山、土門、栗松。そしてGKは円堂。向こうはかなり守備が厚そうだな。

 

そして試合開始のホイッスルが鳴り響く。ボールは雷門スタート。染岡から豪炎寺、そして豪炎寺から半田へとボールがわたる。そして半田から染岡へパスを送るも…

 

「いただきでごんす」

 

パスが弱く相手に取られてしまう。

染岡「弱いぞ!半田!もっと強くだ!」

 

円堂「ドンマイ!ドンマイ!しっかり繋いでいけ」

 

やはりタイミングが合っていない。こんな調子で勝つことができるのか?そして、風丸がボールをカットして栗松にパスを出そうとするも、今度は強すぎる。土門がマックスにパスを出す時も、強すぎてマックスの頭上を超えてしまう。くっ、やっぱりダメか。その後もパスが通らずその隙を狙われて攻め込まれてしまう。

 

風丸「任せろ!」

 

敵のカウンターに風丸が向かう。

 

育井「モグラフェイント!」

 

地面にボールを押し込んだと思ったら、風丸の足元を通って後ろから出てきて、そのままダイレクトシュートを放つ。正面だったので円堂がキャッチする。そして円堂から栗松、栗松から半田に出そうとするも、またパスミス。そして次々とパスミスが続いていく。オレもパスを受けようにも弱くて届かなかったり、他の誰かに送ろうとするも、強すぎたりして送れない。そんな中、鬼道は全員を観察していた。全員の動きを。なるほど。そういう事ですか。なら、存分に見てもらおうじゃないか。

 

すると、千羽山のキャプテン原野にボールが渡る。そのままボールに乗って走ってくる。

 

王将『これは千羽山の必殺技!ラン・ボール・ラン!』

 

次々と雷門イレブンを躱していく。

 

土門「キラースライド!」

 

土門がキラースライドで止めに行くが直前で上に飛んで、ボールから離れると、ボールはゴールへと向かっていく。

 

壁山「ザ・ウォール!」

 

壁山が戦国伊賀島の時に見せたあの技で防ぐ。これも目金が名ずけたのか?

 

壁山「栗松!」

 

弾いたボールは栗松の頭上を超えていく。

 

栗松「強いでやんす」

 

そしてまたボールが奪われてしまう。

 

田主丸「シャインドライブ!」

 

眩い光を放ちながらゴールへ向かってくる。オレはブロックしようと、飛び出すがあまりの眩しさに腕で視界を遮り目を瞑る。そして光がなくなったのを確認して目をゆっくり開けると、ゴールラインの内側を転がるボールの姿があった。

 

王将『ゴール!先制点は千羽山中だ!』

 

なるほど、シュートの威力はそこまでないが、強い光で相手の視界を奪うシュートか。また厄介なシュートだな、おい。

 

円堂「ドンマイドンマイ!勝負はまだまだこれからだ!」

 

確かに、まだ始まったばかり。まだ巻き返せる。ふと鬼道の方を見る。どうやら観察は終了したようだな。そう思っていると鬼道が動き始めた。

 

鬼道「栗松、お前はいつもより2歩後ろから守れ。それから松野、豪炎寺にパス出す時は3歩、染岡と比企谷には2歩半。いつもより前にだせ」

 

鬼道は次々と修正点を出していく。すげえな、いつも周りを見ているオレでも気づかなかったわ。さすが天才ゲームメーカーだな。

 

 

 

こちらからの試合再開。豪炎寺が後ろにボールを下げてマックスが受け取るがすぐに奪われる。千羽山の速攻で攻め込まれてしまう……が、ボールを颯爽と奪った者がいる。それは栗松だった。

 

鬼道「栗松、土門へパスだ!3歩先!」

 

栗松「さ、3歩先でやんすか」

 

と言いながら土門へパスを送る。すると……

 

栗松「通ったでやんす」

 

パスは吸い込まれるようにして土門の足元へ収まった。

 

土門「マックス!」

 

鬼道「待て土門!」

 

鬼道が土門のパスを止めされる。

 

鬼道「いけ!」

 

土門「は、はい!」

 

鬼道の指示に従い土門はマックスへパスを送る。すると、そのパスも通ったのだ。そしてマックスはそのまま持ち込んでいく。

 

鬼道「染岡にパスだ!」

 

マックスはさっき鬼道に言われた通り、いつもより前にパスを送る。するとそのパスも通る。

 

染岡「ドンピシャだぜ!ドラゴンクラッシュ!」

 

綾野「まきわりチョップ!」

 

やっとできたシュートだったが、千羽山のGKに止められてしまった。

 

綾野「豚の鼻くそズラ」

 

え?何?突然の悪口?

 

円堂「すげぇぜ鬼道!さすが天才ゲームメーカーだぜ!」

 

鬼道「フッ、今のがゲームメイクと言えるのならな」

 

染岡「どういうことだ?」

 

鬼道「お前達は自分の力に気づいていない。走力、キック力、どれをとってもお前達は実力は格段にアップした。だが、それには個人差があり、当然今までの感覚でやっていれば、ズレが生じる」

 

なるほど、それでパスが通らなかったんだな。

 

鬼道「俺はそのズレを修正しただけだ」

 

円堂「だけって…だったらもっとすげぇぜ鬼道!ちょっと一緒にやっただけでそんなことできるなんて。やっぱお前は大大大大大天才だ!」

 

どんだけ大大言ってんだよ。でも、気持ちは分かる。オレも今まで中盤で全員見てきたが、こんなことはできなかったな。

 

そして試合は再開する。その後も、順調にパスが通っていくオレ達。風丸からテンポを遅らせて送り、ボールはマックスへと渡る。

 

マックス「なっ!?」

 

「「「せーの!かごめ、かごめ、かーごめかごめ」」」

 

王将「これは千羽山の必殺ディフェンス、かごめかごめだ」

 

マックスを中心に3人の千羽山の選手が囲む。そしてゆっくりと周りを歩いていく。見た目は突破できそうだが、隙がない。それにどんどん詰め寄っているようにも見える。

 

八幡「マックス!」

 

オレはマックスに声をかけ、パスを貰いに行こうとする。

 

マックス「っ!比企g」

 

それに気づいたのかマックスがオレにパスを送ろうしたその時3人はマックスに対して降り注ぎ、ボールを奪っていく。しかしすかさず鬼道がスライディングでボールを奪う。

 

鬼道「比企谷!」

 

スライディングから一瞬で体勢を建て直した鬼道からパスが送られてくる。そのまま持ち込んでいく。そして、オレはボールを浮かして、足でボールにエネルギーを溜めていく。ボールは黒と紫のオーラに包まれていく。

 

八幡「ナイトメア・レイン!」

 

最後にボレーでボールを蹴り出す。シュートはそのまま千羽山ゴールへと向かっていく。これでいけるかと思っていたら、ゴール前に仁王立ちのゴールキーパーと左右に1人ずつディフェンスが立っていた。

 

「「「無限の壁!」」」

 

3人の背後に壮大な壁が出現。そしてオレの放ったナイトメア・レインが呆気なく止められてしまった。あれが噂の無限の壁。あれでここまで無失点で来たのか。

 

『ここで前半終了!1-0で千羽山リードで前半終了だ!』

 

ちっ!なんてタイミングの悪い。どうせなら同点で折り返したかったんだがな。そう上手くはいかないか。そう思いベンチへと戻る。

 

円堂「みんな!元気出せよ!まだ負けたと決まった訳じゃないんだぞ。大丈夫、追いつけるって」

 

鬼道「後半は染岡のワントップで行く」

 

円堂「え?ワントップで?」

 

鬼道「確かに無限の壁は脅威だが、弱点ならある」

 

八幡「弱点?」

 

鬼道「それは、無限の壁が3人の連携技である事。染岡、攻撃すると見せかけて、できるだけ5番のディフェンダーを4番引き離すんだ。そうすれば簡単に無限の壁は使えない」

 

土門「その手があったか」

 

なるほど。確かにそうすれば無限の壁は使えなくなる。誰もが納得していると、1人だけ反対する者がいた。

 

半田「ちょっと待てよ!豪炎寺を下げるって本当にそれでいいのかよ。そんなの俺達のサッカーじゃない。豪炎寺と染岡のツートップ。それが俺達のサッカーだろ!」

 

まぁ……その気持ちは分からなくもない。

 

鬼道「わかってないな。いいか、ここはフットボールフロンティア。全国の強豪が雌雄を決する全国大会。そして、そのピッチに今お前達は立っている。もうお仲間サッカーなどしている場合じゃない。お前達は全国もう全国レベルなんだ」

 

しばしの沈黙が流れる。その沈黙を破ったのが豪炎寺だった。

 

豪炎寺「頼んだぞ」

 

染岡「任せろ!」

 

円堂「やってみようぜ半田」

 

半田「…わかったよ」

 

渋々といった感じだな。

 

ピー!

 

 

後半開始のホイッスルが鳴る。千羽山ボールでの開始。

 

王将『さぁ、後半戦が始まった。得点差は僅かに1点。雷門、無限の壁を破る事ができるのか!』

 

円堂「まずは1点!同点同点!」

 

千羽山はすぐさま上がってくる。どんどんパスを繋いでいくが、鬼道がパスカットする。それを見た染岡が前線に駆け上がっていく。5番塩谷がマークにつく。よしっ、かかった。

 

背後から上がってきたていた壁山と共に、豪炎寺がゴール前で飛び上がる。壁山を足場にして、さらに高く飛び上がりオーバーヘッドキックを放つ。

 

「「イナズマ落とし!」」

 

5番がいないこの時は無限の壁は使えない。これで同点になったと思った。だが、ゴール前には離れていたはずの5番の姿があった。って事は……

 

「「「無限の壁!」」」

 

またもや無限の壁に行く手を阻まれる。まさか、あそこから間に合ったとでも言うのか?なんつー走力してんだよ。そして次は炎の風見鶏を打つも止められてしまう。

 

その後もシュートを打っては無限の壁に止められてしまう。一体どうすればあの壁を……。ん?これは……

 

鬼道・八幡「「円堂!」」

 

呼ばれたのが誰なのか、円堂本人は首を振って探している。

 

八幡「上がれ!」

 

オレが指示を出す。

 

鬼道「松野バックパスだ!」

 

すかさず鬼道はマックスへ指示を出す。ダッシュで前線へと上がってきた円堂。マックスからバックパスを貰い、円堂は豪炎寺と共にツインシュートを放つ。

 

「「イナズマ1号!」」

 

「「「無限の壁!」」」

 

だが、無限の壁に阻まれて、ゴールラインの外へ。ちっ、これでもダメなのか。オレ達はあの壁を破れないのか。一体どうすれば……。このままだと時間が……。

 

半田「やっぱり無理だったんだ。いきなりワントップだなんて」

 

円堂「おい!みんな!どうしたんだよ!」

 

ふと周りを見ていると、みんなの表情が暗い。無限の壁を破れなくて、いい案も浮かばない。そういう気持ちで溢れかえっているのだろう。

 

円堂「何凹んでんだ!まさか諦めたとか言うんじゃないだろうな!まだ試合は終わってないんだぞ!土門!栗松!風丸!」

 

マックス「でも無限の壁が破れないんじゃ」

 

土門「やっぱり、必要なんだよ。必殺技が」

 

くっ……確かに。あの壁を破れるような必殺技。オレらの必殺技はことごとく無限の壁に阻まれている。

 

円堂「必殺技ならある!」

 

なに?そんなの一体……

 

円堂「俺達の必殺技は炎の風見鶏でも、イナズマ1号でもない!俺達の本当の必殺技は最後まで諦めない気持ちなんだ!」

 

っ!諦めない……気持ち……

 

円堂「帝国と戦った時からずっとそうだった。尾刈斗中の時も、野生中の時も、御影専農の時も、秋葉名戸の時も、戦国伊賀島の時だって、諦めなかったからここまで来られたんだろ!俺は諦めない!諦めたらそこで終わりなんだ!そんなの俺達のサッカーじゃない!!俺達のサッカーは絶対に最後まで諦めない事だろ!?だったらやろうぜ!最後まで!俺達のサッカーを!」

 

そうだ……そうだよ。何勝手に諦めてんだよ。最初の帝国の時だって、オレが折れそうだった時、こいつだけは諦めてなかった。だからオレも最後まで戦えたんだ。オレがこいつらと一緒に過ごせるのも円堂のおかげ。そしてここまで来たのも円堂やこいつらがいて、最後まで諦めなかったからだ。危うく忘れる所だった。大事な気持ちをな。どっかのウルトラマンも言ってたな。例えわずかな希望でも、勝利を信じて戦う。信じる心。その心の強さが不可能を可能にする…と。

 

ん?ウルトラマンってなんだ?オレは何を言ってるんだ?まぁ、そんな事はどうでもいいか。

 

半田「俺達のサッカー…」

 

染岡「円堂!」

 

壁山「キャプテン!」

 

マックス「円堂!」

 

栗松「キャプテン!」

 

風丸「円堂!」

 

土門「円堂!」

 

豪炎寺・八幡「「フッ」」

 

まったく……良い奴だよお前は。

 

鬼道「よし!残り5分全力で行くぞ!」

 

「「「「「おう!!」」」」」

 

 

 

 

王将『さぁ、円堂も上がったぞ。雷門最後の全員攻撃だ!』

 

さてとやりますか。

 

半田からのコーナーキック。染岡がヘディングで合わせようとするもその前に相手キーパーが弾く。円堂がヘディングで返し、マックスにボールが渡り、そのままシュートを放つが、またキーパーに弾かれる。だが、さすがに無限の壁は使っていなかった。その後もパスを繋いではシュートをして、弾かれ、それを拾いまたシュートとオレ達の総攻撃が繰り返させる。オレもチャンスを見てカーブをかけたシュートをするも弾かれてしまった。すると、ボールは鬼道に渡ると、マックスがやられたかごめかごめが鬼道を襲おうとしていた。そんな時だった。

 

円堂「鬼道!」

 

円堂が鬼道に呼びかけながら、鬼道へ近づいていく。鬼道はそれを見て、空中へとボールを蹴り上げた。するとそれは雷雲となり雷を纏ったボールが落ちてくる。それを鬼道、円堂、豪炎寺の3人で同時に蹴り飛ばす。

 

「「「無限の壁!」」」

 

その行く手を無限の壁が阻む。けれど、今までとは断然違う。今までは受け止められてきたが、このシュートはどんどん深く奥へ進んでいる。そしてあの無限の壁を突き破り、ゴールに突き刺さったのだ。

 

 

王将『はっ!無限の壁が破られた!千羽山ついに失点!無失点記録が途絶えたぞ!』

 

あの無限の壁ついに破ったんだ。

 

円堂「まだだ!まだあと1点!取って勝つぞ!」

 

 

そして残り時間あとわずか。千羽山が上がってくる。オレはボール持っていた田主丸にスライディングを仕掛ける。すると田主丸はヒラリとスライディングを避けた。

 

八幡「フッ!」

 

が、オレは地面に手をついて反転し再度スライディングタックルを仕掛ける。

 

田主丸「なっ!?」

 

オレはフェイントタックルでボールを奪いそのまま上がっていく。前半の時はよくも止めてくれたな。もう一度、食らわしてやるよ!

 

八幡「ナイトメア・レイン!」

 

前半とは違い今度はキーパーは反応できずゴールにオレのシュートは突き刺さったのだ。

 

その同時に試合終了のホイッスルが鳴り響いた。

 

王将『ここでホイッスル!2-1。雷門、無限の壁を破って逆転勝利だ』

 

 

宍戸「キャプテン!」

 

するとベンチから宍戸が飛び出してきて、円堂に飛びついた。宍戸は泣きながらオレ達の勝利を何度も確認してくる。確かにかなりギリギリの戦いだったからな。無理もないか。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そしてその夕方。オレは何故か豪炎寺と鬼道とで歩いている。向かう先は…まぁ、この道を通るって事はあそこしかないよな。

 

鬼道「どこに行くんだ?」

 

豪炎寺「来れば分かる」

 

その夕方。オレは何故か豪炎寺と鬼道とで歩いている。向かう先は…まぁ、この道を通るって事はあそこしかないよな。というか

 

八幡「まったく、なんでオレまで…」

 

豪炎寺「別に良いじゃないか」

 

八幡「良かねぇよ」

 

豪炎寺「でも、素直に着いて来てんじゃないか」

 

八幡「お前がしつこいからだろ」

 

豪炎寺「そうか?」

 

惚けるようにして豪炎寺は言い放つ。こいつ…はぁ、ホントなんで着いてきてしまったんだろうか。ああ、そうだ。今オレ達が向かっている場所は鉄塔広場である。鉄塔広場に着くとそこには、やはりと言うべきか我が雷門のキャプテンである円堂の姿があった。円堂はいつものようにタイヤの特訓をしていた。

 

鬼道「円堂…」

 

豪炎寺「やっぱり来てたか」

 

円堂「鬼道、豪炎寺。それに比企谷まで」

 

八幡「…よぉ」

 

とりあえず近くにあったベンチに座りながら雑談をすることになった。

 

鬼道「お前、よくあんなトレーニングをやってるのか?」

 

円堂「ああ!キーパー力をつけるにはこれが1番なんだ。それに今日だって点入れられちゃったからな。もっともっと、力つけないとな」

 

鬼道「だが、程々にしてけよ。試合前に怪我でもしたら元もこもない」

 

円堂「大丈夫だっていつもやってんだから」

 

鬼道「いつも…」

 

だろうと思ったよ。最初の時だってやってるところ見てたしな。

 

円堂「いつか、じいちゃんみたいなキーパーになりたくてさ」

 

鬼道「お前の原点、円堂守が生まれた場所という訳か」

 

円堂「でもビックリしたよな。いきなり鬼道がピッチに現れた時は。まさかお前が来るなんて思ってもいなかったからさ」

 

だろうな。オレも知ってなかったら同じ事を思っていただろうな。

 

鬼道「それは悪かったな。驚かせて」

 

円堂「でも、嬉しかったぜ。俺、ずっと思ってたんだ。こいつと一緒にプレイできたら、楽しいだろうなぁって。初めてお前の球を受けた時から」

 

本当かよ。…………いや、こいつなら有り得るかもしれないな。

 

円堂「世の中にはこんなすげぇ球を蹴る奴がいるのかって。それにお前のゲームメイク力」

 

鬼道「だがサッカーはそれだけでは勝てない」

 

まぁ、確かにそうだな。

 

鬼道「考えてみればあの時からかもしれないな。もっと別のサッカーがあるのかもしれない、と思い出したのは」

 

円堂「別のサッカー?」

 

鬼道「ああ。それがなんなのか今の俺には分からない。だが、今日お前達とプレイしてて俺は思った。ここならそれが見つかるかもしれないと。豪炎寺に再びボールを蹴らせたお前となら」

 

円堂「鬼道、これからよろしく頼むぜ」

 

鬼道「ああ、こっちこそな」

 

そう言って2人は握手を交わすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?オレいらなくね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたか?ではまたお会いしましょう。


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第20話

どうもチャキです。第20話です。


八幡side

 

フットボールフロンティア全国大会、第2回戦の相手である千羽山中を破ったオレ達。そして次の準決勝に向けて練習に熱が入る。鬼道の加入もあり、練習の質も向上している。

 

そんな中、染岡が円堂に向かってドラゴンクラッシュを放った。そんなドラゴンクラッシュに対して円堂は熱血パンチで迎え撃つ。勝負の結果は円堂の勝ちだった。パンチによりボールはベンチの方へ飛んでいった。ボールを目で追いかけると、そこには見覚えのない少年がいた。うちの学校ではなさそうな感じだ。

 

円堂「おーい、ボール!」

 

円堂がボールを求めて、その少年に向かって手を振る。すると何故かこちらに向かってドリブルをしてくる。見るからに素人では無さそうだ。そんな少年に半田と栗松が行く手を阻むがあっさりと抜き去っていく。そのままゴール前まで到達し、円堂に向かって笑いかける。すると円堂は「こい」っと言ってシュートを促す。

 

 

それを見た少年は、地面に手をつけて凄まじい速さで回転を始めた。すると周りの空気が少年に巻き込まれるようにして、竜巻のようなものを作り出した。そして風に巻き上げられたボールを、その凄まじい回転で思いっきり蹴り込んだ。

 

少年「スピニングシュート!」

 

円堂「ゴッドハンド!」

 

そんな少年の必殺シュートを円堂はゴッドハンドで迎え撃つ。少し押されていたが、何とか止めることに成功した。

 

少年「君の勝ちだ」

 

円堂「ペナルティーエリアの中からシュートを撃たれてたらそっちの勝ちさ」

 

少年「素晴らしい技だね。あー、アメリカの仲間にも見せてやりたいな」

 

ほーん、アメリカね。そんなところからわざわざ日本に来たのかよ。

 

円堂「アメリカでサッカーをやっているのか」

 

少年「うん、この間ジュニアチーム代表候補に選ばれたんだ」

 

鬼道「聞いたことがある。将来アメリカ代表入り確実だろうと、評価されている天才日本人プレイヤーがいると」

 

それを聞いた鬼道が口を開き、説明してくれた。へぇ、そんな奴がいるんだな。オレは全然知らなかった。というか聞いた事すらなかった。

 

八幡「へぇ、よく知ってるな」

 

鬼道「たまたまだ」

 

ホントかよ。こいつなんでも知ってそうだから、たまたまなんてありえねぇだろう。

 

 

そして少年がすごいプレイヤーだと知ると、全員興味津々となっている。

 

円堂「どうして日本へ?」

 

少年「会いたい友達がこの学校にいるんだ」

 

へぇ、会いたい友達ね。そういえば木野と土門も友達に会いに空港に行ってるって言ってたな。

 

木野「何してるのみんな」

 

そんな事を思っていると、木野と土門が帰って来てたみたいだ。

 

円堂「あ、木野!こっち来いよ。今すっごいサッカーの上手い奴が来て」

 

と円堂が喋っている途中に少年改めて帰国子女が、木野に抱きついたのだ。

 

えっと……どゆこと?

 

土門「お、お前!何して…っ!」

 

土門が少年に怒鳴ろうとしたが、なにかに気づいたのかすぐにやめた。どうしたんだ?そして少年は木野から離れた後

 

少年「久しぶりだね。俺だよ」

 

そう言って、チョリースみたいな感じで、手を動かしていた。え?何それ?ん?というかこいつはもしかして、木野と土門に会いに来たのか?そして木野と土門はもしかしてこいつに会いに空港に行ったのか?

 

木野「一之瀬君!?」

 

どうやらビンゴのようだ。

 

一之瀬「ただいま…秋」

 

 

 

その後、木野、土門、一之瀬はベンチで話をすることになった。どうやら長い間、会っていなかったらしい。だから積もる話もあるのだろう。その間オレ達は練習を再開することになった。

 

円堂「比企谷!そっちに行ったぞ!」

 

八幡「はいよ」

 

円堂の言う通り、ボールを持った半田がこっちに向かって来ている。そんな半田に向かっていき、右足に力を込める。

 

八幡「デスカット!」

 

戦国伊賀島戦に覚えた技を半田に向かって放つ。そして半田はデスカットの衝撃波みたいなのが当たり、吹き飛ぶ。

 

半田「やっぱすげぇなその技」

 

八幡「そうか?」

 

半田「ああ」

 

鬼道「半田の言う通りだ。比企谷は初めっから中盤の守りが高かったが、デスカットを習得した事により、さらに中盤の守りが高くなった。これにより相手は簡単に攻め込めなくなっている筈だ」

 

鬼道がすかさずそう言ってくれる。そう言ってくれるのは嬉しいのだがな。

 

八幡「そうは言うが、そう簡単じゃねぇと思うんだが?」

 

鬼道「かもしれない。だが、守りが高くなったのは確かだ」

 

半田「ああ、そうだぜ」

 

円堂「比企谷!鬼道と半田の言う通りだ。だから中盤の守りは頼んだぞ」

 

八幡「まぁ…できる限りの事はするつもりだ」

 

鬼道「ああ、頼んだぞ」

 

八幡「へいへい」

 

その後、少し練習した後、円堂が一之瀬に一緒に練習をしようと誘う。そして一之瀬も混ざり練習をする。そして雷門イレブンは次々と一之瀬に立ち向かうが、それを軽々と躱して抜き去っていく。そして何故かオレも立ち向かう事になった。まぁ、仕方ないからやるか。影野を抜いた後オレは一之瀬にスライディングを仕掛ける。だが、一之瀬はこれもヒラリと躱した。ならば!

 

八幡「フッ!」

 

オレは地面に手をついて、反転してタックル仕掛ける。

 

一之瀬「っ!」

 

一之瀬は一瞬驚いた顔になった。だが、一之瀬はすぐさまジャンプして、フェイントタックルを躱したのだ。

 

一之瀬(まさか、あの状態から仕掛けてくるなんて驚いたな)

 

そしてそんな光景を見た周りの奴らは驚いていた。

 

豪炎寺「まさか、比企谷のフェイントタックルを初見で躱すなんて」

 

円堂「ああ、すげぇな」

 

そして一之瀬の次の相手は鬼道だ。お互い睨み合いの状態から一之瀬は突如、ヒールリフトを仕掛ける。鬼道はそれを読んでいたかのように、飛び上がってボールの正面を捉える。だが、そのボールには強烈なスピンがかかっていたようで、鬼道が胸でトラップするよりも早く斜めの方向へとそれた。鬼道と互角以上に渡り合っていた。一之瀬ってすげぇな。そりゃあ代表候補に選ばれるだけはあるわ。

 

 

 

円堂「よし!次は俺とPK対決だ!」

 

興奮した円堂は一之瀬とPK対決をすることになった。1本目は触れることさえできなかった。

 

壁山「すごいっす。あんなギリギリに」

 

鬼道「奴の実力は本物だ」

 

八幡「そうだな」

 

正直言うと悔しいな。オレのフェイントタックルを初見で躱したんだからな。それにあんなボールテクニック。確か土門の奴が言ってたな。えっと…フィールドの魔術師だったかな。

 

そして続く2本目は指を掠ったのだ。そして2人の勝負はどんどん続いていく。決めては、止めての繰り返し。一之瀬はシュートの威力や速度を上げ、円堂もそれに負けずと反応していく。

 

でもオレ達は見ているだけだったが、練習を各自で再開させた。

 

 

 

1時間後…オレは水分補給の為、ベンチいると円堂の声が聞こえてきた。

 

円堂「15対15だ!」

 

ほう…かなりいい勝負をしているみたいだな。でも、さすがにやりすぎだろ。

 

音無「もう、1時間以上やってますよ」

 

木野「2人共負けず嫌いだから」

 

八幡「似たもの同士ってことか」

 

音無「そうですね。外見は全然違うのに」

 

木野「そう、初めて円堂君と会った時からずっと感じてた」

 

確かに木野の言う通りアイツら2人は似たもの同士だな。

 

その後、さすがに疲れたのか休憩をすることになった。そりゃあ長時間してたら疲れるだろう。ベンチに近づいてくると、一之瀬はオレに気づき話しかけてきた。

 

一之瀬「やぁ」

 

八幡「おう」

 

え?まさか話しかけてくるとは。

 

一之瀬「あの時のスライディングは驚いたよ」

 

八幡「避けた癖によく言うぜ」

 

一之瀬「それでも、驚いたのは本当だよ」

 

八幡「そうか」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

その後、練習も終わった後、一之瀬が円堂に提案を持ち込んだ。

 

一之瀬「円堂、仲良くなった記念に一緒にやりたい事があるんだ」

 

円堂「いいぜ!やろう!」

 

一之瀬「協力してくれ土門」

 

え?土門にも?一体何する気だ?

 

土門「まさか…あれか?」

 

どうやら土門は何をするのか察したようだ。

 

一之瀬「そう、トライペガサス」

 

トライペガサス?確か土門が前に話してくれた3人技だったような。まさかそれをするのか?

 

 

円堂「くぅー!燃えてきた!よし!やろう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、そう簡単にいかないのが現実。そりゃあ連携技だからな。お互いを理解し会わないと出来ないからな。ん?だったらなんでイナズマブレイクの時は初めてでできたんだ?でも、3人の息が合わないとダメなのは確かだ。

 

そして一之瀬曰く、3つの直線が1つの点で交わった時が成功らしい。

 

確かに今も3つ線は1つの点で交わっていなかった。多分だが、この技は3人が全く同じスピード、タイミングで一点に交わらないとダメなのかもしれない。これは、かなり苦戦しそうだな。

 

そして、3人は再びトライペガサスに挑戦する。一斉に走り出し、段々と加速していき、3人交差する。すると蒼いエネルギーが軌道に沿って噴き出し、ペガサスの姿が現れた。成功かと思ったが、すぐにその形は崩れ、行き場を失ったエネルギー達が3人に襲いかかる。

 

どうやら失敗のようだ。何が失敗の原因になったのだろうと思い、交差した所を見ると、1本の直線がズレていた。そこを走っていたのは円堂だった。

 

円堂「すまない。原因は俺だ」

 

今までやってきた本数は100以上…らしい。よく数えてたな。もうオレなんてだいぶ前から数えるのやめたぞ。普通なら諦めようなんて考えになる。ほら、あれだ。押してダメなら諦めろみたいな感じのやつだよ。でも、それをオレは言わない。何故って、円堂達はそれぐらいで諦めたりしねぇからな。あんだけ関わってきたんだから、嫌でも分かる。

 

円堂「頼む!もう一度。なんか掴めそうな気がするんだ」

 

一之瀬「いいよ。俺も諦めは悪い方なんだ」

 

やっぱりな。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

その後、今日の所は終わりにしようと話になった。次は明日またトライペガサスに挑戦するらしい。練習は終わりだけど、円堂は一之瀬を自分の家に招き、アメリカでの話を聞いたりするらしい。それに全員が誘われていた。え?オレか?誘われたよ。まさかこのオレが誘われるだなんて思ってもなかった。けれど、オレは円堂の家を知らない。その事を伝えると、円堂が連れていってくれるらしい。それはありがたい。

 

そして夜

 

オレは一之瀬と共に円堂に連れられ円堂の家に来た。それから、他の奴らも続々とやってきて、色んな話をして盛り上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

どうやら今日の午後の飛行機で一之瀬はアメリカに帰るらしい。だからその前に3人でトライペガサスを完成させるみたいだ。そして、トライペガサスに挑戦するが、昨日のようにエネルギーによるペガサスの形成が不安定なせいか、どうしても蹴り込む前にエネルギーが霧散してしまう。かなり惜しい所までは来ている。後は微妙な修正が必要なようだ。

 

一之瀬「よし……GO!」

 

一之瀬の合図で3人は一斉に走り出す。交差した点から蒼いエネルギーが噴き出し、そこから姿を現したペガサスが天を翔ける。そのペガサスに道を示すべく飛び上がった3人だったが、ペガサスの姿は消えてしまい、行き場を失ったエネルギーによって地面に叩きつけられる。

 

土門「もう少しなのに」

 

一之瀬「まだ時間はある」

 

円堂「もう一度だ!」

 

 

だが、何回やってもペガサスを従う事はできず、蹴り込む前に姿を消してしまう。ただただ時間が過ぎていき、一之瀬が乗らなくては行けない飛行機時間が迫ってくる。それでも3人は諦めず走り続ける。けれど一向に成功しない。そんな時だった。突然木野が前に出て来たのだ。一体どうしたんだ?

 

木野「私が目印になる。3人が1点に交差できるようにポイントに立つわ」

 

壁山「マネージャー、そんな事したら危ないっすよ」

 

壁山の言う通りだ。いくらなんでもそれは危険過ぎる。もし、失敗したら行き場を失ったエネルギーが木野に襲いかかる。そうなれば無事ではすまない。

 

八幡「木野、お前自分が何を言ってるのかわかってるのか?」

 

木野「うん、わかってるつもりだよ。それでも私がやりたいの!」

 

木野はどうやら譲らないみたいだ。木野は本来のトライペガサスの姿を見ている筈。その時のことで何か思い出したのかもしれない。けれど、危険なのは変わりわない。

 

八幡「お前が立って成功するとは限らない。もし仮に成功したら良いが、もし失敗したらどうなるのかお前は知っている筈だ。それでもやるって言うのか?」

 

木野「うん…やる!だってみんなを信じてるから」

 

その目は真剣な眼差しでまっすぐオレを見ていた。

 

八幡「……………そうか。なら、好きにしろ。それで良いか?円堂」

 

円堂「ああ。頼むぞ木野」

 

木野「ありがとう。円堂君、比企谷君」

 

栗松「キャプテン!比企谷さん!もし失敗したらマネージャーが…」

 

八幡「本人がやるって言ってんだから良いだろ」

 

栗松「でも……」

 

円堂「大丈夫!絶対に成功させる!」

 

一之瀬「信じる心には行動で応える…だね」

 

円堂「そう言う事!」

 

まったく……あのマネージャーはどっかの誰かさんと似ているなまったく。そのままオレは豪炎寺の方へ寄る。

 

八幡「豪炎寺、担架運ぶの手伝ってくれるか?」

 

豪炎寺「ああ」

 

風丸「俺も手伝う」

 

八幡「頼むわ」

 

影野「じゃあ俺は救急箱持ってくる」

 

八幡「おう」

 

こうして各自、万が一の為の備えをすることになった。

 

 

そして円堂達の方では

 

一之瀬「それにしても良いのかな?さっきの比企谷は?」

 

円堂「何が?」

 

一之瀬「いや、ほらちょっと冷たいなって思って。もしかして怒ってないか?」

 

木野「ああ、大丈夫だよ」

 

一之瀬「え?なんで?」

 

木野「あれがいつもの比企谷君だから」

 

土門「そうそう。確かに何も知らない奴から見たら、冷たいとか、怒ってそうとか、色々思われるかもしれない」

 

木野「けれど、それが比企谷君だから」

 

一之瀬「そうなのか」

 

円堂「ああ、実はそうなんだぜ!確かに言い方とかアレだとか言われるけど、それでもそのおかげで俺達は助けられた事があるんだ」

 

一之瀬「へぇ、すごいんだね彼は」

 

円堂「ああ、俺達の大切な仲間だ!」

 

とそんな会話をしているとは八幡は知らない。

 

 

 

 

担架を運び終えると、グラウンドには交差する点に木野が立ち、3人は最初の位置に立っていた。どうやらもうすぐ始まるみたいだな。

 

一之瀬「…GO!」

 

一之瀬の合図で一斉に走り出す。そして3人は木野の横で交差する。すると、3人が描いた軌道に沿って蒼炎が吹き出し、雄々しきペガサスを作り出す。ペガサスの上空へ翔けると、乗り手を待つかのようにその場で動きを止めた。

 

「「「いっけえええぇぇ!!」」」

 

ここで初めてボールに蹴り込む事ができた。力に導かれたペガサスは、そのまままっすぐ翔け落ちていき、ゴールに突き刺さったのだ。

 

「「「「や、やったぁあー!」」」」

 

4人が互いに手を取り合い喜びあっている。それにしても成功させるなんてな。取り越し苦労だったか。

 

そしてどうやら木野は1年達が守ってたみたいで無傷だったようだ。

 

円堂「お前達!嬉しいことしてくれるぜ!」

 

栗松「万が一に備えてたのは俺達だけじゃないでやんす」

 

と言いながら指を指してくる。そこには八幡達がいた。担架に救急箱など備えていた。

 

円堂「みんな…サンキュー!」

 

風丸「円堂、担架を運ぼうとって言ったのは比企谷なんだぜ」

 

八幡「なっ!おまっ!」

 

円堂「比企谷…!ありがとうな!」

 

八幡「っ……風丸!てめぇ何勝手に言ってくれてんだ!」

 

風丸「別に良いじゃないか」

 

八幡「良かねぇよ」

 

まったく何勝手に言ってくれてんだよ。すると一之瀬が口を開いた。

 

一之瀬「君は優しいんだね」

 

八幡「は?急になんだよ」

 

そう聞くも一之瀬はにっこりと笑うだけ。あー、もうなんだってんだよ。

 

 

 

 

そして夕方

 

オレ達は空を見上げていた。それは一之瀬の飛行機がどれだろうという訳で、見上げている。すると1機の飛行機が飛んでいるのが見えた。多分あれが一之瀬が乗っている飛行機なのだろう。

 

円堂「一之瀬!またサッカーやろうな!」

 

そんな声が聞こえる筈がないとわかっていながら、円堂は一之瀬に言う。

 

「うん、やろう!」

 

八幡「は?」

 

聞こえる筈のない声が後ろから聞こえてきた。ゆっくりと振り返ってみると、そこには今頃飛行機に乗って帰っている筈の一之瀬の姿があった。

 

八幡「なんでいるんだよ」

 

一之瀬「あんなに胸がワクワクしたのは初めてだ。だから、帰るに帰れない。もう少しここに居る」

 

そう言って一之瀬は持っていた飛行機のチケット破り捨てたのだ。こんな時に言うのはアレだけど、ポイ捨てするなよ。

 

一之瀬「俺、1つの事に熱く燃えるみんなとサッカーがしたい!円堂達と一緒にサッカーがしたいんだ!」

 

すごい熱い気持ちをオレ達に伝えてくる一之瀬。

 

円堂「雷門に来てくれるのか?」

 

一之瀬「うん、よろしく!」

 

円堂「こちらこそよろしく」

 

2人は握手を交わす。そんな2人の握手に次々と手を重ねていく部員。

 

豪炎寺「行かないのか?」

 

八幡「そう言うお前らも行かねぇのかよ」

 

というかオレはそう言うキャラじゃねえからな。やんねぇよ。

 

音無「みなさーん!」

 

すると音無がこっち駆け寄ってきた。一体なんだ?

 

音無「次の対戦相手が決まりました」

 

円堂「どこだ?」

 

音無「つ、次の対戦相手は……木戸川清修です」

 

豪炎寺「!」

 

木戸川清修……豪炎寺が前にいたという学校か。

 

 

 

 

 




いかがでしたか?ではまたお会いしましょう。


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第21話

どうもチャキです。第21話どうぞ!


八幡side

 

雷門に新たな仲間一之瀬が加わって数日。連携の幅も広がり、中盤も硬くなってきていると思う。これも鬼道と一之瀬のおかげだな。あれ?それじゃあ俺、要らなくね?

 

鬼道「お前は要らなくなんかないからな」

 

八幡「何、もしかしてエスパー?」

 

鬼道「お前がわかりやすいだけだ」

 

八幡「さいで…」

 

え?オレってばそんなにわかりやすい訳?そんな事はないと思うんだけどな。ただ鬼道達の勘が良いじゃなくて?んー、訳分からん。そんな事を思いながら練習を再開させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鬼道「よし、ダイレクトで裏に通してシュートだ」

 

鬼道がそう言って一之瀬にパスを送る。そして一之瀬がシュート体勢に入る。それを土門が止めに入るが、ボールは高く蹴りあげられる。土門はジャンプをするも届かない。そしてシュートを打たれたと思い円堂は大きくジャンプをするが、ボールは染岡の方へ送られる。それに気づいた円堂は地面に手をついて、体勢を立直し反対側へ走り出す。そして染岡がダイレクトシュートを放つ。そしてそのシュートに円堂が飛びつく。が、そんな円堂とボールの間に1人の影が入ってきた。

 

円堂「比企谷!?」

 

染岡「なに!?」

 

そう……オレです。オレが染岡のダイレクトシュートを止めました。はい。

 

一之瀬「嘘…だろ」

 

鬼道「ナイスディフェンスだ。比企谷」

 

八幡「そりゃどうも」

 

土門「一之瀬のボールコントロールもすごいけど、比企谷のディフェンスもすげぇや。もしかしたらフィールドの魔術師の天敵現る、ってか?」

 

八幡「オレらは野生動物か」

 

一之瀬「でも、すごいや。でもなんで染岡にパスをするってわかったんだ?」

 

八幡「一之瀬が一瞬染岡の方を見たから、もしかしてって思ったんだ」

 

一之瀬「え?それだけで?」

 

八幡「ああ」

 

一之瀬「それだけで阻止されちゃうのか」

 

土門「比企谷は周りを見ているからな」

 

八幡「いや、そんなしょっちゅう見ている訳ねぇだろ」

 

鬼道「だが、比企谷がいることにより中盤の守りも高いのは本当だ」

 

八幡「買いかぶりすぎだ」

 

円堂「そんな事ないさ。比企谷がいてくれたから、失点しなかった事もあるんだから」

 

土門「そうだぜ」

 

一之瀬「ここまで言うって事は、きっと本当な事なんだろうな」

 

八幡「あー、もう。いつまでその話してんだよ」

 

円堂「それもそうだな。よーし、もっと精度を上げていくぞ!」

 

「「「おう!」」」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

音無「お疲れ様です」

 

八幡「サンキュ」

 

鬼道「ありがとう春奈」

 

あれから約1時間後、練習の合間の休憩中。俺と鬼道は音無からドリンクを貰い、水分補給をしっかりとる。それにしても一之瀬はすげぇわ。さっき、パスコースを読むことはできたが、やはりボールコントロールや状況判断が優れている。更にはパスの正確さも凄まじい。相手を思っての優しく、足元にピタッとくっつくようなパスを出してくる。ホントこれだけ見ると本当に俺いらなくね?って思ってしまう。

 

 

そんな事を思っていると雷門が近づいてくる。

 

夏未「ちょっと聞いて。Aブロックの準決勝の結果が届いたわ。決勝進出したのは世宇子中よ」

 

円堂「世宇子中か」

 

鬼道「やはり来たか」

 

やはり世宇子中が決勝進出した。そりゃあの帝国にあんな点差で勝ったんだ。そんな奴らが他の奴らにそう簡単に負ける筈がない。なんてったって、全試合を圧倒的点差と相手が棄権で完勝しているのだから。

 

円堂「鬼道!世宇子中とはもう1回戦うんだろ。準決勝は絶対に負けられないぞ」

 

鬼道「ああ、もちろんだ」

 

円堂「よーしみんな!頑張ろうぜ!!」

 

「「「「「おお!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鬼道「円堂は守備の確認を徹底してくれ。相手はオフェンス重視で攻めてくる筈だ」

 

円堂「ああ、任せろ!」

 

練習を終えた後、公園で円堂、豪炎寺、鬼道が作戦会議をしていた。そして何故かその輪に俺まで参加させられていた。ホントなんで俺が参加しなくちゃいけないんだ。お前らだけでやってくれないかな。

 

鬼道「次に比企谷」

 

八幡「なんだよ」

 

鬼道「比企谷は俺や他の奴らと中盤の守りに徹底してくれ。後、時には点を取る為に攻めてくれ」

 

八幡「へいへい」

 

鬼道「後、何やらDFと何やら作戦を練っているんだろ」

 

八幡「いや、大したことじゃねぇよ」

 

鬼道「本当か?」

 

鬼道は笑いながら問いかけてくる。こいつ絶対に何かわかって言ってるのでは無いだろうか。まぁ、別にバレてもいいんだけど。

 

八幡「それよりこっちの主体はカウンターにするのか?それともバランス型か?」

 

鬼道「多分カウンター主体になるだろう。豪炎寺、攻守の切り替えに注意してくれ」

 

豪炎寺「…ああ」

 

なんとも曖昧というか遅い返事だな。まぁ、仕方ねぇか。相手は前にいた学校なんだから。いくら豪炎寺でもそうなるのかもしれない。それを見かねた円堂が1つ提案を出してくる。

 

円堂「よーし、作戦会議は一旦休憩だ。こいよ」

 

そう言って円堂は歩き始める。

 

鬼道「おい、どこに行く気だ?」

 

八幡「じゃあ俺帰っても良い?」

 

鬼道「まだ、ダメだ。はぁ…円堂について行くぞ」

 

八幡「ええ…」

 

もう良いじゃねぇか。終わったんなら帰ってもさ。はぁ…仕方ねぇか。

 

 

 

 

 

 

そして俺、鬼道そして豪炎寺は円堂の後をついて行き着いた場所は……

 

鬼道「駄菓子屋?」

 

八幡「みたいだな」

 

俺達は円堂に連れてこられた場所は駄菓子屋だった。看板にもひらがなでだがしやと書かれていた。

 

円堂「なんだよ。来たことないのか?」

 

鬼道・豪炎寺「「ああ」」

 

八幡「無いな」

 

いや、マジで来たことないな。鬼道は鬼道で育ちのせいか、駄菓子屋に来たことなんて無いだろう。そんな事を思っていると、円堂は駄菓子屋の中にいた子供達と喋っていた。

 

鬼道「こんな所、まだ残っていたんだな。稲妻町には」

 

豪炎寺「ああ、俺も初めて来た」

 

八幡「俺もだ」

 

円堂はなんの菓子を買おうか子供達と話しながら悩んでいる。俺らは近くのベンチ座りながら話す。

 

鬼道「駄菓子屋か子供みたいだな」

 

豪炎寺「え?」

 

いや、俺らまだまだ子供だと思うけどな。

 

鬼道「純粋でまっすぐで、だからサッカーバカになれるのかもしれないな」

 

豪炎寺「ああ」

 

八幡「お前らちょっと酷い事言って事自覚ある?」

 

鬼道「比企谷もそう思ってるだろ?」

 

八幡「まぁ…多少は」

 

鬼道「なら、俺らと同じじゃあないか」

 

八幡「かもな」

 

鬼道の言う通り。こういう純粋でまっすぐな、サッカーにかける気持ちが伝わって来るのが伝わってくる。初めて会った時からサッカーの事しか考えてないような気持ちがな。

 

八幡「まぁでも、そんなサッカーバカに汚染された俺らも大概だけどな」

 

鬼道「フッ、確かにな」

 

豪炎寺「比企谷も結構酷い事言ってるぞ」

 

八幡「だな」

 

こうやってバカみたいな話ができるのは、紛れもなく円堂のおかげだ。あの時に出会ってなかったらホント俺、今は何をしているのだろうな。

 

そんな会話をしていると何やら駄菓子屋が騒がしく聞こえた。俺と鬼道、豪炎寺は駄菓子屋の中を見るとそこには、濃い緑のような色のジャージに、奇妙な髪型をした3人組がいた。ていうかなんだそのサングラス。ダサいぞ。後で黒歴史を産む事になるぞ。ソースは俺。というのはどうでも良くて、どうやらあの3人が順番を守らないから円堂が注意しているみたいだ。

 

「3対1で俺達の勝ち…みたいな」

 

と真ん中の奴が言うが…なんだその語尾。

 

円堂「人数の問題じゃないだろ!」

 

「いいえ、人数の問題です」

 

「俺たちは常に三位一体なんだよ」

 

はい?こいつら三位一体の意味知ってるのか?まぁ、どうでもいいか。すると3人組はこちらに気づいたようだ。

 

「豪炎寺!」

 

「久しぶりだな。決勝戦から逃げたツンツン君」

 

どうやら豪炎寺とお知り合いのようだな。

 

「「「俺達は!!」」」

 

勝「武方勝!」

 

友「友!」

 

努「努!」

 

「「「3人合わせて!武方三兄弟!」」」

 

青(勝)と緑(努)の手の上に乗るピンク(友)。何やってんの?組体操?

 

八幡「で?結局誰?」

 

鬼道「そいつらは去年、豪炎寺の代わりに出場した木戸川清修のスリートップだよ」

 

八幡「へー、こいつらが…」

 

円堂「豪炎寺の元チームメイト」

 

勝「さすがは鬼道有人。有力選手のデータは全てインプットされるみたいじゃん」

 

鬼道「フッ、3つ子のFWが珍しいかったから覚えただけだ」

 

うわっ、何それ酷。遠回しにお前らは有力選手じゃないって言ってるようなもんだろ。

 

努「何!?今年の俺達の活躍見てないのか?豪炎寺なんかいなくたって、勝てる事を証明したのに」

 

友「今の木戸川清修は史上最強と言っても良いでしょう。なんてたって豪炎寺よりもすごいストライカーが、3人もいるのですからね」

 

自分で言うなよな。

 

勝「まっ、なんつーか。準決勝の相手が雷門中じゃん。かるーくご挨拶みたいな」

 

友「宣言しに来たんですよ」

 

「「「俺達が豪炎寺修也を叩き潰すとな!」」」

 

また組体操をしているよ。ていうか店に迷惑だからやめろよ。

 

 

 

 

ということで迷惑になるので店の外で揉める事になりました。

 

円堂「どういう事だ!なんでお前たちは!」

 

友「豪炎寺修也を叩き潰し木戸川清修の…いえ、僕達三兄弟の恨みを晴らしたい」

 

勝「それは」

 

努「それは」

 

「「「豪炎寺が知っているから聞いてみて!」」」

 

3人は一斉に豪炎寺の方へ指を指す。

 

あっ、そっすか。

 

そしてその恨みについてだが、豪炎寺…からではなく武方三兄弟が話してくれた。いや、豪炎寺に聞いてみてとか言いながら自分らが言うのかよ。

 

それより内容は去年のフットボールフロンティアでは、木戸川清修は豪炎寺のおかげで決勝まで勝ち進んだらしい。けれどあの三兄弟は控えだった。それで豪炎寺に全国制覇という夢を(勝手に)託したらしい。豪炎寺がいれば必ず勝てると信じていた。けれど、豪炎寺は決勝戦に現れなかった。それでプレッシャーに負けて、逃げた卑怯者扱い。いや、自分勝手すぎるだろ。

 

円堂「違う!豪炎寺はそんな男じゃない!あの日豪炎寺は…」

 

豪炎寺「やめろ」

 

豪炎寺が円堂の言葉を遮る。

 

円堂「だけどさ」

 

豪炎寺「もう済んだ事だ。事実は変えられない」

 

確かに豪炎寺の言う通りだ。やってしまったことには変わりは無い。

 

すると勝という奴がカバンからボール取り出した。

 

勝「まっ、せっかく挨拶に来たんだし。偵察するよ。今の豪炎寺クンの力を見てみたいなーみたいな」

 

豪炎寺「悪いがその気はない」

 

そう言って豪炎寺は三兄弟に背を向け去ろうとする。

 

勝「おや〜?また逃げるおつもりですか?やっぱりお前は…臆病者の卑怯者だ!」

 

そう言ってボールを蹴る。そしてそのボールを円堂が手で弾いた。

 

円堂「くっそ〜、もう我慢できない。お前らの偵察とやら俺が豪炎寺の代わりに受けてたってやる!」

 

八幡「はぁ?」

 

豪炎寺「円堂?」

 

友「何言ってるの?」

 

ホントそれ。

 

勝「超意味わかんないんですけどみたいな」

 

マジでそれ。

 

円堂「ストライカーなら相手のキーパーの力を知りたいんじゃないのか?」

 

勝「それはそうだが」

 

円堂「お前らが豪炎寺よりすごいというのなら、俺からゴールを奪って証明してみろ!」

 

勝「う〜わ、マジで時代遅れの熱血くん感じ」

 

鬼道「これは五分と五分の偵察だ。何故ならこちらはキーパー力、そっちはフォワード力を見せ合うんだからな」

 

ああ……鬼道はん、あんたはそっち側なのね。

 

円堂「それでどうするんだ?やるのか?やらないのか?どっちだ!」

 

勝「卑怯者の豪炎寺クンと違って俺達が逃げる訳ないしょ…みたいな」

 

円堂「よしっ、ついてこい!」

 

 

はぁ…面倒な事になったな。まぁ、でも相手の力を見れるんだし、見とかないとな。

 

こうして俺達7人は河川敷へと移動を開始した。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

努「これはまたおもしろくなってきたな」

 

勝「偵察ていうか決闘って感じ?」

 

「「「それなら武方三兄弟の力、見せつけてやりましょうかー!」」」

 

はぁ、どうでもいいから早くやれよ。こっちも暇じゃないんだから、さっさとシュート見せて帰りやがれ。

 

勝「行くぞ」

 

努「よし」

 

青い髪をした武方が上にボールをあげると緑色の髪をした武方が回転しながら飛び上がった。

 

円堂「これは!?」

 

鬼道「ファイアトルネード!?」

 

豪炎寺「いや、回転が逆だ!」

 

そう、まさに今俺達が見ているのはファイアトルネードとは回転が逆な技だ。俺と同じだが違うパクリ方法だな。

 

努「これがファイアトルネードを超える必殺技!くらえ!バックトルネード!」

 

左足で叩き落とすかのように放つ。

 

円堂「爆裂パンチ!」

 

円堂は爆裂パンチで対抗する。そしてボールを弾く。…だが

 

「「バックトルネード!」」

 

残り2人も立て続けにシュートをうち、円堂は反応出来ずゴールに刺さる。

 

円堂「なにするんだよ!」

 

勝「はぁーい。ちょっとゴール奪って見ました。みたいな」

 

円堂「ちょっと待てよ!そんなの止められるわけないだろ!」

 

八幡「ふふっ…」

 

鬼道「比企谷?」

 

八幡「フッハハハハハハハハ!」

 

俺は大声でわざとらしく笑う。

 

円堂「えっ!?比企谷?」

 

勝「何?急に笑ったりなんかして?もしかして頭イカレちゃった?みたいな」

 

八幡「あーあ…ホントバカすぎて笑ってしまったわ」

 

友「バカすぎてですって?それはどう言う意味ですかな?」

 

八幡「いやー、だってボールを3つ使ったって事は、お前らはボール3つ使わないと円堂からゴールを奪えないって事だろ?」

 

努「はあ!?」

 

勝「何言っちゃってるのみたいな」

 

八幡「あーあ、わかったわかった。言い訳はいいからさ。何も言うな。……それにしても、俺らには卑怯者とか臆病者とか言っときながらお前らの方が臆病者で卑怯者じゃねぇか」

 

「「「なんだと!?」」」

 

八幡「あれ?もしかて図星だったか?それは悪い事したな」

 

友「黙って聞いていれば僕達が臆病者で卑怯者ですって?」

 

八幡「あれ?違ったか?」

 

努「違う!」

 

友「ボール1個で点を取ればいいんですね」

 

八幡「そうだな」

 

友「では今からそれを証明しましょう。よく見ておきなさい」

 

勝「やってやろうじゃん」

 

「「「フッフッフッフッ」」」

 

さてさてさーて。こいつら一体どんな必殺技を見せてくれるのやら。そして、武方三兄弟がボールを蹴ろうとした時だった。聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「やめろぉぉ!」

 

声が聞こえた方を見るとそこには、風丸、一之瀬、木野、土門、そして宍戸がいた。

 

風丸「ストップ!ストップだ!喧嘩はまずいぞ!円堂!」

 

円堂「へ?喧嘩?」

 

土門「違うのか?」

 

一之瀬「俺は決闘って聞いたけど」

 

円堂「誰がそんな事…」

 

宍戸「だって!やってやるとか、ついて来いとか!物凄い喧嘩になりそうな感じだったじゃないですか!」

 

お前か…宍戸よ。

 

円堂「サッカーの勝負だよ。サッカーの」

 

宍戸「え?サッカーの?」

 

木野「もう!慌てちゃったじゃないの!」

 

夏未「ほーんと。人騒がせだこと。ま、いつもの事だけどね」

 

お前も来たのかよ。さてと、これからどうする気だ?このまま続けてるか、それとも辞めるかどっちだろうな。

 

勝「さーて、ギャラリーも増えたことだし」

 

「「「見せてやるぜ!武方三兄弟最強必殺技を!」」」

 

なんともまぁアホな奴らだ。自分達から切り札を晒しに来やがったわ。

 

ボールは青から緑に蹴り、緑が上にあげて、ピンクが青の肩を踏み台にして飛び上がり空中で蹴る。そして…

 

 

「「「トライアルグルZ!」」」

 

と言いながら最後に駄菓子屋で見せたあの組体操のポーズをとる。

 

円堂「爆裂パンチ!」

 

円堂はさっきと同様爆裂パンチで対抗するが、パンチを1回繰り出しただけで、ボールは手を弾いて円堂の顔面に直撃しそのままボールと一緒にゴールへと入った。見るからに、さっきのバックトルネードとは威力が格段に上のようだ。

 

勝「どうだ!見たか!腐り目!ボール1個でゴールを奪ってやったぞ!」

 

友「これで僕達が臆病者で卑怯者では無いことが証明されました」

 

努「わかったか!」

 

八幡「いや、何言っちゃってるの?」

 

「「「は?」」」

 

八幡「ボール1個使うのは当たり前の事だから。それを威張って言うことかよ。恥ずかしくねぇの?」

 

「「「なっ!?」」」

 

三兄弟の顔がみるみる赤くなっていく。そんなことをしていると

 

「何やってるんだお前達!」

 

大人の声が聞こえてきた。聞こえてきた方を見ると、そこには木戸川清修のジャージを着た生徒と木戸川清修の監督らしき人がいた。

 

「サッカー選手ならば試合で正々堂々と戦え!」

 

「「「わかりました…」」」

 

「君もそれでいいな?」

 

円堂「はい、すみませんでした」

 

「そっちの君も言いたい事が色々あるかもしれない。けれど、言い過ぎには気をつけまたえ」

 

まさか聞かれていたのか。でも確かに言い方もそうだし、ちょっと言い過ぎたな。

 

八幡「はい、申し訳ありませんでした」

 

「うん、分かれば良い。お前たちは先に帰ってろ!」

 

「「「はい」」」

 

武方三兄弟は監督さんの指示によりそそくさと帰って行った。そしてその後、豪炎寺が監督の名前を呼んだ。どうやらあの人は二階堂と言うらしい。そして、もう1人木戸川清修の生徒に一之瀬、土門、木野が話しかけていた。名前は西垣と言うらしい。そして、その西垣とは知り会いのようだ。

 

まぁ、それよりも決闘騒動は終わったので帰るとしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鬼道「それにしても比企谷がまさかあんな事を言うなんてな」

 

八幡「なんだよ」

 

鬼道「いや、まさか比企谷があんな感情的になるの初めて見たからな」

 

豪炎寺「御影専農の時も同じ事してたしな」

 

円堂「あー、あったあった」

 

鬼道「ほう、その時も同じ事をしたのか」

 

八幡「別にアイツらが矛盾な事を言っていたから、言い返しただけだ」

 

鬼道「そうしといてやるよ」

 

八幡「ヤロウ…」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そして俺達は来来軒にてラーメンを食べている。

 

鬼道「問題はあのパワーとスピードをどう阻止するだ」

 

風丸「トライアングルZか」

 

宍戸「あんなすごい技見た事ないですよ」

 

風丸「今まで戦った中でも最強のシュートじゃないか」

 

八幡「かもな。帝国のデスゾーンよりも威力はあったと思う」

 

鬼道「わかるか?」

 

八幡「まぁ、それなりにな」

 

円堂「大丈夫だ。今日は初めてだから驚いただけさ。試合では絶対に止めてみせる」

 

風丸「本当にできるのか」

 

鬼道「根拠は?」

 

円堂「死に物狂いで特訓する」

 

やっぱりか。

 

鬼道「物凄く単純な理論だな」

 

響「円堂の言っている事は間違ってないぞ。サッカーの中で絶対に嘘をつかないのが一つだけある。それは練習だ。練習で得たものしか試合に出てこない」

 

鬼道「確かにそれは正論ですね」

 

風丸「なら、あれも上手く行くかもしれないな比企谷」

 

円堂「あれ?」

 

豪炎寺「確か比企谷と何かしているのは知っていたが、一体何をしているんだ?」

 

風丸「もう、言ってもいいんじゃないか?」

 

八幡「そうだな」

 

円堂「なんだよ。早く教えてくれよ!」

 

八幡「俺がDFとしている事。それは…」

 

円堂「それは!」

 

円堂は目をキラキラさせながら復唱してくる。

 

八幡「オフサイドトラップだ」

 

円堂「お、オフサイドトラップ?」

 

鬼道「なるほど。あの動きはそういう事だったか」

 

八幡「少しでも相手の攻めを阻止できないかと思ってな」

 

鬼道「期待しているぞ」

 

八幡「期待されても困るわ」

 

風丸「まったく相変わらずだな比企谷は」

 

円堂「よーし!明日から特訓だ!」

 

そして残り少ない日で木戸川清修戦に向けて特訓が開始された。

 

 

 

 

 




いかがでしたか?ではまた〜。


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第22話

どうもチャキです。第22話どうぞ!


 

王将『本日はBブロック準決勝!昨年の準優勝チーム、名門木戸川清修と今大会台風の目となっている、雷門中の試合です!』

 

いよいよ、今日はフットボールフロンティアの準決勝だ。相手は豪炎寺が去年いた学校で、去年の大会では準優勝している。いくら、豪炎寺がいないとはいえ、強敵なのは間違いない。そして、着替え終わり更衣室から出るとちょうど木戸川清修と鉢合わせしたのだ。武方三兄弟と確か一之瀬と土門と木野の3人の知り合いで、西垣とか言っていたな。後は、見るからに木戸川のGKのやつがいた。

 

勝「豪炎寺」

 

友「今回は逃げなかったみたいですね」

 

豪炎寺「俺は正々堂々と戦う。それだけだ」

 

勝「ま、精々楽しませてくれよな。みたいな」

 

努「この1年でお前の力が鈍ってなければいいけどな!」

 

豪炎寺に突っかかって来る3人。え、何?こいつら豪炎寺の事好きすぎだろ。

 

勝「そこの熱血クンも俺達のトライアルグルZに吹き飛ばされないようにね!みたいな?」

 

円堂「ああ、必ず止めてやる!俺達は絶対に負けない!」

 

と円堂は言う。俺的には少し不安があるが、そこは円堂に任せるとしよう。

 

 

 

 

 

そして、今回のフォーメーションはいつも通りなのだが、半田の代わりに一之瀬が入ることになった。向こうは三兄弟のスリートップである。

 

そして、試合開始の笛が鳴り響いた。木戸川ボールから開始される。開始と同時に三兄弟が攻めてくる。染岡と豪炎寺が迎え討つが抜かれてしまう。

 

八幡「マックス!俺と一緒に中央を塞ぐぞ!」

 

マックス「おう!」

 

だが、ピンク頭のやつがボールを前に上へと蹴り上げられる。そのセンタリングに合わせるかのように緑頭の奴が飛び上がる。ちっ、早速かよ。

 

努「バックトルネード!」

 

こうしてあっさりと1本目のシュートを許してしまった。そして、蒼炎を纏ったシュートは円堂へと向かっていく。

 

円堂「爆裂パンチ!」

 

円堂はこの前のように爆裂パンチで対抗する。だが、どんどんと押し込まれている。そして、シュートは円堂を吹き飛ばしゴールの中に押し込まれた。

 

王将『ゴール!木戸川清修、開始早々先取点を取った!』

 

円堂「くっそ、どうなってるんだ。この前とはパワーが違う」

 

八幡「どうやら、この前のは本気じゃなかったって事か」

 

友「その通り。わかっているじゃわりませんか」

 

勝「ただ、目が腐っているだけじゃないようだな。みたいな?」

 

 

うるせぇよ。目は関係ないだろ。でも、こんな早々に先取点を取られるとはな。

 

そして、先取点に勢いづいたのか木戸川の猛攻は止まらなかった。始まって早々染岡からボールを奪った木戸川は攻め上がってくる。そして、先程と同じでピンク頭がセンタリングをあげようとしていた。それを見た俺は手を上にあげる。それを合図にDFの風丸達は一斉に前へと走り出す。ピンク頭がボールを蹴りセンタリングをし、それに合わせて、緑頭がバックトルネードをしようとしていた。すると…

 

ピー

 

と笛の音が鳴り響いた。それを聞いた緑頭はバックトルネードを中断し、地面へと着地した。

 

努「な、なんだ?」

 

友「一体何が…」

 

王将『おーっと!これはオフサイドだ!』

 

努「な、なんだと!?」

 

どうやら上手くいったみたいだな。オフサイドトラップ。練習の成果が出たみたいだ。俺は右手の親指を立てて小さく上げて、風丸達に見えるように見せる。それを見た風丸達も親指を立ててこちらに見せてくる。

 

鬼道「どうやら上手くいったみたいだな」

 

八幡「ああ。これで少しはあいつらの攻撃を抑えてやるよ」

 

鬼道「ああ、頼む」

 

そして、こちらのフリーキックから再開されるが、パスカットされ、すぐさま緑頭にバックトルネードを放たれてしまった。ここからじゃあオフサイドトラップは間に合わない。

 

努「バックトルネード!」

 

円堂「今度はやられない!ゴッドハンド!」

 

今度は黄金に輝く巨大な手で、バックトルネードをガッチリと受け止めた。

 

そこから円堂から風丸、風丸から鬼道へ、そして鬼道から俺へと渡ってくる。パスを繋げつつゴール前と上がる。

 

「いかせるか!」

 

だが、俺の前に木戸川DFが立ち塞がる。

 

八幡「ファントムドライブ!」

 

ファントムドライブで抜いた後、ボールを上に蹴り上げてから、回転しながら飛び上がる。

 

八幡「ダークトルネード!」

 

軟山「タフネスブロック!」

 

木戸川GKは自分の腹で俺のダークトルネードを受け止め、そして腹で上空へと弾きた。

 

八幡「くっそ…」

 

そして、速攻と言わんばかりに木戸川は雷門ゴールへ向かい始めた。やっべ、早く戻らないと。

 

青頭がボールを持ち攻めようとするも、鬼道が前に待ち構えていた。そして、後ろにはマックスが抑え挟み撃ちを仕掛けた。だが、青頭は横にいたピンク頭にパスを送るが、土門がそれを空中でクリア。クリアされたボールをマックスが取るが、あっという間に取られ、センタリングをあげられる。

 

努「バックトルネード!」

 

緑頭が3回目のバックトルネードを放つ。

 

円堂「爆裂パンチ!」

 

 

それを円堂は今度は爆裂パンチ対抗し弾き返した。リベンジ達成ってところか。

 

 

 

すると木戸川の動きに変化が見えるようになった。正確には三兄弟とチームの間にでだ。ゴールを奪えない焦りが見える。それにより、連携が上手くいってない。それに、またオフサイドトラップによりシュートを決めれなくて、苛立ちも見える。そして、パスミスによりゴールラインをわってしまいこちらボールから再開することになった。

 

八幡「で?どうするんだ?鬼道」

 

鬼道「比企谷もわかってるんじゃないのか?誰かのせいであの三兄弟が焦り始めてるのは」

 

八幡「やかましいわ」

 

一之瀬「でも、あのオフサイドトラップにより、あの3人が攻めにくくなっているのは、事実なのは確かだと思うけど」

 

土門「だな。比企谷と練習したかいがあったな」

 

鬼道「それにしても比企谷は、相手が嫌がる作戦を思いつくな」

 

比企谷「相手のしたい事させないようにしているからな。話戻すけど、DFは機能しているから、後は攻めだろうな」

 

円堂「でも豪炎寺が攻めると、あの3人が反応するぞ。相当豪炎寺を警戒してるだろうし」

 

八幡「そんなの簡単さ、豪炎寺を囮にすればいいだろ」

 

鬼道「ふっ、やはり比企谷も同じ事思っていたか」

 

八幡「現状それしかねぇだろ」

 

一之瀬「なるほど。みんなが言ってることが少しわかった気がするよ」

 

八幡「は?何が?」

 

一之瀬「君の事だよ。確かによく周りを見ているし、さっきのオフサイドトラップもそうだし、鬼道と思っている事が一緒だなんて。すごいんだな比企谷は」

 

円堂「だろ!」

 

土門「なんで円堂が嬉しそうなんだよ」

 

八幡「はぁ…それより早く作戦練るぞ」

 

 

 

 

そしてゴールキックから試合再開。本来は大きく蹴って、前線へ送るのだが、今回は近くにいた俺へパスを送る。それにつられた三兄弟は一斉に俺に食いつく。

 

鬼道「今だ!」

 

鬼道の指示が飛んだ瞬間、豪炎寺と染岡が各サイドへ一気に走り出す。それを三兄弟はつられて見てしまう。その間に円堂と土門は前線へと駆け上がっていく。

 

八幡「よそ目はいけねぇな。鬼道!」

 

俺はドライブパスでセンターライン付近にいる鬼道にパスを送り、一之瀬へとボールを渡す。

 

一之瀬「行くぞ!」

 

そして、3人はトップスピードのまま一点に交差する。すると、それぞれ描いた軌道に沿って蒼い炎が上空へと浮き上がる。その中から姿を現れたのは、雄々しく強大なペガサスだ。

 

「「「トライペガサス!」」」

 

そしてペガサスは木戸川ゴールへ進んでいく。あまりの圧力に怯んだ木戸川ゴールキーパーは必殺技を出す暇もなく、ペガサスはキーパーを吹き飛ばし、ゴールの中に入っていった。これで、同点だ。

 

王将『なんとキーパー円堂が加わった攻撃で雷門中が同点に追いついたー!』

 

あの必殺技を見た木戸川は驚きを隠せない様子のようだ。だが、今の状況は振り出しに戻ると同じ。これから突き放さないといけない。だが、あの三兄弟はあの技を出てない。あの技ではオフサイドトラップは効かないだろうし、どうすれば止めればいいのだろうか。そんなことを考えていると前半終了の笛が鳴った。

 

 

王将『ここで前半終了!同点のまま試合は後半に委ねられた!準決勝にふさわしい激闘だ!』

 

 

 

ハーフタイム。ベンチに集まり水分補給をしっかりする。

 

木野「みんな頑張って!三兄弟と中盤の連携を崩せているわ。この調子だと逆転できるわ」

 

八幡「だと良いんだがな」

 

鬼道「ああ、後半になれば修正してくるだろう」

 

一之瀬「そうだね。そうなるとオフサイドトラップにも警戒してくるだろうし」

 

豪炎寺「それにまだあの技を出していない」

 

一之瀬「トライアルグルZか」

 

八幡「十中八九使ってくるだろうな」

 

豪炎寺「このまま終わるはずがない」

 

バックトルネードもほとんど通用しない事は向こうはわかっているはずだ。なら、あの技を使われるのも時間の問題か。

 

円堂「大丈夫さ!どんなシュートだろうと、俺が必ず止めてみせる!」

 

 

そうこうしているうちに後半が始まる。俺達はポジションにつく。

 

後半開始早々ボールは取られてしまい、青頭にボールが渡ってしまった。

 

勝「そろそろ見せてやろうじゃん!行くぜ!」

 

そう言って三兄弟は一斉に攻め上がってくる。やはりと言うべきか、攻めてきた。

 

八幡「壁山!少しでもいいから相手のシュートコースを塞げ!」

 

壁山「はいッス!」

 

そしてボールはドリブルしていた青頭から緑頭へ。そして緑頭からピンク頭へ。そして、高く上げられたボールをピンク頭がゴールへと蹴り込むと、着地際にあの組体操のようなものをとっていた。

 

「「「トライアルグルZ!!」」」

 

前に見たとはいえすごい威力だ。そして、円堂はそれに対してゴッドハンドで対抗する…がどんどん押し込まれていく。そして円堂は帝国戦で見せた両手でゴッドハンドをするがそれすらも効かなくて、ゴッドハンドを突き破りゴールへと突き刺さった。

 

王将『ゴール!木戸川清修!武方三兄弟の必殺技トライアルグルZで2点目を奪った!』

 

 

まさかとは思っていたが、ゴッドハンドを破られるとはな。それに、2点目を先に奪われてしまった。ふと、豪炎寺の方を見るとあの三兄弟と何やら話しているようだ。

 

試合開始早々、三兄弟はボールを奪って雷門ゴールへと攻め上がってくる。攻めてくるピンク頭に俺はスライディングを仕掛ける。だが、そのスライディングは横に移動し躱されてしまった。だが、手を地面について身体を反転される。

 

八幡「フッ」

 

友「のわっ!」

 

フェイントタックルが決まりボールを奪うことに成功した。

 

円堂「よしっ!トライペガサスだ!」

 

円堂と土門が木戸川ゴールへ攻め上がって行く。それを見た俺は一之瀬にパスを送る。そして、前半のように3人がトップスピードで一点に交差しようとした時、相手の西垣が行く手阻んだ

 

西垣「スピニングカット!」

 

脚から衝撃波の刃を飛ばし地面に刻む。するとそこから吹き出すようにして出てきた衝撃波に3人が弾き飛ばされてしまった。

 

西垣「ペガサスの羽根が折れたな…行け!」

 

ボールを持っていた西垣は、それを青頭にパスを送った。おいおい、これはやばいぞ!

 

王将『これはまずいぞ!キーパー円堂が前線にいる状況で武方三兄弟にボールが渡ってしまった!』

 

鬼道がすぐさま指示を出すが、トライペガサスを阻止されたショックなのか反応が遅れてしまった。そして、三兄弟はどんどんと攻め上がっていく。

 

勝「キーパーがいなくても全力で行くぜ!」

 

このままだと追加点を許してしまう。そんな事されるかよ!

 

八幡「うおおぉぉぉ!デスカット!」

 

先程の西垣同様、俺は脚から衝撃波の刃を飛ばし地面に刻み、そこから黒紫色のような色をした衝撃波が出てきて、今度は武方三兄弟が弾き返したのだ。

 

王将『なんと!ゴール前に戻ってきた比企谷が武方三兄弟の行く手を阻んだ!木戸川清修チャンスを逃した!』

 

ボールは外に出てしまったが、なんとか追加点を取られるのを阻止できた。

 

円堂「悪い比企谷!助かった!」

 

八幡「気にすんな。切り替えろ」

 

円堂「ああ。でも、まさかトライペガサスが止められるだなんて」

 

八幡「焦るな」

 

豪炎寺「比企谷の言う通りだ。円堂、俺が必ずゴールを決める!」

 

スローインから再開し、ボールは雷門陣内。そのまま、青頭にパスを出そうとするが、それを豪炎寺が空中でカットし、そのまま攻め上がって行く。

 

豪炎寺「染岡!」

 

それを聞いた染岡はゴール前まで走り出す。そして豪炎寺は染岡にパスを送る。

 

染岡「ドラゴン!」

 

豪炎寺「トルネード!」

 

軟山「タフネスブロック!」

 

木戸川GKは腹でドラゴントルネードに対抗してきた。そして、俺と同じようにボールは上空へ弾き返された。ちっ、今度こそはと思っていたが破れなかった。

 

すると、弾かれたボールに豪炎寺が素早く飛びついた。

 

豪炎寺「ファイアトルネード!」

 

必殺技を発動した直後なのか、キーパーはそのシュートに飛びつくが、指先で掠めることもなくゴールへと入っていった。

 

王将『ゴール!1度弾かれたシュートに豪炎寺が素晴らしい反応で食らいつき、必殺ファイアトルネードを決めた!雷門中再び同点!』

 

 

まったく、豪炎寺の奴本当に有言実行しやがった。それにしても染岡も反応も凄かったな。

 

…………でも、こいつばかり良いとこ取られるのは癪だな。今度こそ俺が決めて、勝ち越し点を奪ってやる!

 

八幡「豪炎寺、染岡」

 

豪炎寺「なんだ?」

 

染岡「どうしたんだ?」

 

八幡「今度は俺にもやらせろよ」

 

「「っ!」」

 

八幡「俺のシュートは止められてしまったからな。今度こそは決めてやる。決めて逆転してやるよ」

 

豪炎寺「そうか、じゃあ任せようか」

 

染岡「ちゃんと決めろよ」

 

八幡「わーってるよ。だけど、フォロー頼むぞ」

 

豪炎寺「ああ」

 

染岡「まさせろ」

 

木戸川のキックオフで再開される。開始直後俺は素早く三兄弟からボールを奪うことに成功した。

 

王将『おーっと!比企谷!開始早々木戸川清修からボールを奪い攻め上がって行くぞ!』

 

速攻で奪った為か木戸川の動きが一瞬だが鈍った。だが、相手の跳山が、すぐさま俺の方へ向かってくる。俺はそいつをヒールリフトで躱し、次に来た女川を近くにいた豪炎寺とのワンツーで躱す。そして次に立ち塞がったのはあの西垣である。一瞬視線を動かし染岡の位置を確認する。

 

八幡「染岡!」

 

それにつられたのか、西垣は一瞬染岡の方へ向いた。今がチャンスだ!

 

八幡「ファントムドライブ!」

 

西垣「何っ!?パスじゃないのか!?」

 

当たり前だろ、今の染岡は囮だよ。そして、とうとう俺はキーパーと1体1の状態となった。さぁ、見せてやる。俺のもう1つのシュートを。俺はボールを浮かせた後、足で右から左、下から上へと十字を描いた後、更にバツ描くように足で右上から左下、右下から左上と足でエネルギー溜めていく。そして最後に右脚で渾身のインパクトで蹴りこんだ。

 

八幡「ナイトメア・レイン!」

 

黒紫色のオーラを纏ったシュートが木戸川ゴールへと向かっていく。

 

軟山「タフネスブロック!」

 

ダークトルネードのようにタフネスブロックで対抗してくる。だが、ナイトメア・レインはダークトルネードよりも威力は高い。それに距離も近いからな。

 

軟山「ぐああっ!」

 

木戸川キーパー諸共俺のシュートはゴールに突き刺さった。

 

王将『ご、ゴォォール!!比企谷、試合再開直後ボールを奪い攻め上がり、豪炎寺とワンツーをし、染岡を囮にして、必殺技ナイトメア・レインで3点目を勝ち取り、雷門中連続ゴールで逆転!』

 

豪炎寺「ナイスシュート」

 

染岡「良いシュートだったぜ」

 

八幡「おう、ありがとな」

 

俺達は互いの拳をぶつけあった。

 

王将『さぁ、木戸川清修。逆転されてしまい後を追うかたちとなった。同点に追いつけるか!?』

 

 

再び木戸川のキックオフで試合再開される。そこからは木戸川は同点に追いつく為、全力で攻めてくる。だが、それを俺らが全力で阻止をする。そして、俺達が攻めれば木戸川も負けずと守ってくる。このまま逃げ切れるが油断は出来ない。

 

そう思っていたその時、鋭いスライディングでマックスからボールを奪い三兄弟が攻め上がって行く。これはまずい。

 

勝「このまま終わってたまるかよ!」

 

努「勝つのは僕達だ!」

 

友「このまま1点取った後、すぐにもう1点入れてやりますよ!」

 

ちっ、距離がありすぎて間に合わない。そして、2度目のシュートが放たれる。

 

「「「トライアルグルZ!」」」

 

円堂「ゴッドハンド!」

 

再びゴッドハンドとトライアルグルZが激突する。やばい!このままだと入ってしまう。俺は全力で走り円堂を支えようとした時、2人の影が円堂の後ろに現れたのだ。

 

栗松「キャプテン!」

 

壁山「危ないッス!」

 

壁山と栗松が円堂の背中を押して支えていた。

 

「「「はああああぁぁぁ!!」」」

 

そしてトライアルグルZは完全威力は無くなり、ボールは円堂のの中にあった。

 

王将『止めた!止めたぞ!3人がかりのキーパー技でトライアルグルZを止めたぞ!木戸川清修同点ならず!』

 

円堂「よっしゃあ!」

 

大手をあげた喜ぶ壁山と栗松。だけど、まだ試合終了じゃない。

 

八幡「円堂!こっちだ!後1点を入れて完全に終わらせるぞ!」

 

円堂「おう!」

 

ボールは俺に渡り前線へ上がっていく。すると俺よりも前にいた豪炎寺がこちらを見た。

 

豪炎寺「比企谷!」

 

八幡「豪炎寺」

 

それがパスだとわかった俺は豪炎寺にパスを送った。

 

王将『おっと!?豪炎寺がフリーだ!木戸川ゴールへ迫る!このまま1点を決めて木戸川清修にトドメを指すのか!?』

 

だが、豪炎寺を止めるべく武方三兄弟が立ち塞がる。俺が豪炎寺達の横に行くと、俺にパスと読んだのか1人がこちらに向かおうとした時、豪炎寺は一之瀬へバックパスを送った。

 

豪炎寺「今だ決めろトライペガサス!」

 

「「「おう!」」」

 

円堂、土門が前線へ上がっていき、トライペガサスの体勢入った。

 

西垣「トライペガサスは決めさせない!スピニングカット!」

 

再び3人の交差するところにスピニングが立ち塞がる。そして、スピニングカットと3人は真正面からぶつかった。だが、さっきと同じようになる。と思っていた時、衝撃波の壁から3人揃って顔を出したのだ。そして、3人は交差する。その中心から現れたのは、ペガサスから全身を炎に身に纏った巨大なフェニックス。この土壇場で進化させたと言うのか。

 

だが、不死鳥を止めようと武方三兄弟が止めに入るが、呆気なく吹き飛ばされた。そして、不死鳥はそのまま木戸川ゴールへと突き刺さった。

 

王将『ゴール!雷門新必殺技で4点目だ!』

 

「「「やった!」」」

 

ゴール前では3人がグータッチを交わしていた。

 

八幡「やったな」

 

豪炎寺「ああ」

 

 

そして、ここで試合終了を知らせる笛が鳴り響いた。

 

王将『試合終了!雷門中が40年ぶりの決勝進出を果たしたぁ!』

 

決勝進出か。まさかここまで来るとは思ってなかった。もし、あの時円堂に声をかけて貰えなかったら、俺は今も1人だったのかな。まったく……円堂には感謝してもしきれねぇな。

 

 

音無「やりましたね比企谷先輩!決勝進出ですよ!」

 

八幡「ああ、そうだな。まさかここまでくるとはな。初めの頃なんてこの大会に出れねぇと思っていたからな」

 

木野「ほんとね」

 

風丸「ほんと、夢みたいだな」

 

八幡「つねってやろうか」

 

風丸「やめてくれ」

 

フッ、笑みをこぼす。すると、豪炎寺と木戸川の監督の姿が視界に入った。そして、豪炎寺と武方三兄弟の青頭が握手するのが見えた。どうやら蟠りは解消したようだ。

 

全員が喜びを分かちあっている中、1人の様子がおかしいと感じた。それは円堂である。自分の拳をじっと見つめている。予想だが、このままじゃいけないとか思っているのだろう。確かに円堂は少し分からなくもない。このまま世宇子に勝てるかと言われるとそれは……分からない。

 

 

 

 

 

 

 



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第23話

どうもチャキです。第23話です。


 

準決勝も勝ち残すところは決勝のみ。そして、相手は世宇子中。帝国ですら手も足も出なかった相手だ。そんな相手に勝てるのか不安だな。

 

音無「比企谷先輩おはようございます」

 

八幡「ん?音無か。おう、おはようさん」

 

後ろから現れたのは音無だった。声をかけられる前に走る足音が聞こえたから、俺の姿を見て走ってきたのだろう。なんて優しい奴なんだ。

 

音無「比企谷先輩と朝から会うなんて初めてですね」

 

八幡「言われてみればそうだな」

 

音無の言う通り朝から会うなんてな。

 

音無「いよいよ残すところ決勝ですね」

 

八幡「…そうだな」

 

音無「勝て…ますかね」

 

八幡「わからん…としか言えないな」

 

音無「そう…ですよね」

 

八幡「まぁ、時間はまだあるし。何かしらの案が1つや2つ浮かぶだろう」

 

音無「そうですよね」

 

多分、何しら浮かぶだろう。何も浮かばなければなんとかなるだろう……多分。

 

音無「私も……何か手伝えることがあればって思ったのですが…何も思いつかなくて……」

 

八幡「その気持ちだけでもありがたいよ。それに音無や木野、雷門は俺達の事サポートしてくれてるじゃねぇか。だから俺らは安心して練習に集中できるんだ。だから、そんな顔するなって」

 

そう言って、俺は無意識に音無の頭を撫でていた。

 

音無「あっ……はい、ありがとうございます。そう言って貰えると嬉しいです」

 

八幡「そうか」

 

そう言って音無の頭に置いていた手をどかした。

 

音無「あっ…」

 

すると何故か音無は少し残念そうな表情になっていた。一体何故そんなに残念そうなのかはわからんがそのまま学校へと向かった。校門を通って玄関の方へ向かっていと道の途中で見知った人達が集まっていた。

 

八幡「何してんだあいつら?」

 

音無「さぁ?なんでしょうか?」

 

音無と一緒にそいつらの元へ向かう。そこには豪炎寺、風丸、木野、鬼道、一之瀬がいた。

 

八幡「お前ら何たむろしてんだよ」

 

風丸「あ、比企谷に音無」

 

音無「おはようございます。それで何故ここで集まっているんですか?」

 

風丸「ああ、実は円堂が…」

 

そう言って前方に視線を向けたので、そちらを見ると1人トボトボと歩いている円堂の後ろ姿が見えた。そこからどうしてああなったのか説明してくれた。どうやら木戸川との試合で、トライアルグルZを1人で止めれなかった事が引き金となり、不安と焦りが襲ってきたらしい。

 

八幡「なるほどね。それでああなった訳か」

 

風丸「そうなんだ」

 

木野「どうしたらいいのかな」

 

八幡「さぁな。それはわからん」

 

 

 

俺らがどうすれば良いのかなんて分からねぇよ。だが、あんな円堂を見るのは初めてかもしれないな。

 

 

 

それからの円堂は常に浮かばない顔をしていた。授業中に指名されても上の空だ。なにしてんだか。

 

そんな昼休み。校舎内を歩いていると曲がり角を曲がろうとした時、人とぶつかりそうになった。

 

八幡「おっと…すいません」

 

音無「こっちもすいません、って比企谷先輩」

 

八幡「音無か」

 

ぶつかりそうになった人は音無だった。ふと音無の手元を見ると沢山のノートが積み重なっていた。どうやら授業のノートみたいだ。

 

八幡「音無、そのノートどうしたんだ?」

 

音無「えーっと、授業ノートでして、それをこれから担当の先生に提出するところだったんです」

 

八幡「そうか。え?音無1人でか?」

 

音無「もう1人いたんですが忘れているらしくて」

 

あははっと苦笑気味に答える音無。なるほど、それで音無1人で運ばなくてはいけない状況だったわけか。それを知った俺は音無が持っていたノートを半分以上手に持った。

 

音無「え!?ちょっと比企谷先輩!?」

 

八幡「沢山持っていると危ないぞ」

 

音無「ですけど」

 

八幡「いいからどこに持っていくんだ?」

 

音無「えっと、職員室まで…です」

 

八幡「そっか、じゃあ行くぞ」

 

音無「あ、はい」

 

俺達は職員室向かっている途中、音無が口を開いた。

 

音無「あ、あの、比企谷先輩。キャプテンの様子どうですか?」

 

八幡「ん?円堂か?そうだな……上の空というかなんというか、授業もあんまり集中していないようだったな」

 

音無「そうですか……何か声をかけられたんですか?」

 

八幡「いや、していない」

 

音無「え?どうしてですか?」

 

八幡「なんて声をかければいいのかわからなかった。それに言えたとしても、空回りしてしまうかもしれなかったからな」

 

音無「そう…ですか」

 

八幡「まぁ、様子を見ながらだなこれからの事は」

 

音無「そうですね」

 

そして、ノートを職員室に届け終わった。

 

音無「比企谷先輩、手伝って下さりありがとうございました」

 

八幡「なに、気にするな。俺が勝手に手伝っただけだしな」

 

音無「それでも助かりました」

 

八幡「そうか。じゃあ俺は行くな」

 

音無「はい、わかりました」

 

そう言って音無と別れ自分の教室に戻ると、円堂は何やら考え込んでいる顔になっていた。やはり、不安や緊張がかなりあるようだ。それにどうやら嫌な夢を見たらしい。

 

豪炎寺「比企谷」

 

八幡「豪炎寺か。……円堂はあれからあんな感じか?」

 

豪炎寺「ああ」

 

八幡「…そうか」

 

豪炎寺も木野も何を言って良いのかわからないって感じだろう。俺もそうだし、このままだと他の奴らまで伝染してしまうのではないだろうか。そうなってしまえば栗松や壁山といった後輩達が不安になってしまう。何とかしないといけないかもな。

 

 

 

放課後となり、俺は便所を済ませてから部室に向かった。円堂や豪炎寺は先に行っているみたいだし、俺もさっさと行くか。

 

八幡「うー……っす…」

 

鬼道「比企谷か」

 

八幡「お、おう。なんか空気重いな」

 

俺が見た光景は机を囲むようにして、円堂、豪炎寺、鬼道が座っている。机には秘伝書が置かれていた。

 

八幡「練習は?」

 

鬼道「染岡と風丸に任せてある」

 

八幡「なるほど」

 

一之瀬「ごめん、遅くなった!」

 

そんな会話をしながら着替えていると、一之瀬と土門が入ってきた。

 

土門「珍しい空気だな」

 

一之瀬「練習は?」

 

その質問は俺もさっきした。なので同じ事を鬼道が答える。

 

土門「一之瀬から聞いたぞ。大分根が深そうだなぁ、ゴッドハンドの事」

 

そう言われて、円堂は頭を机につける。

 

土門「本当に深そうだな」

 

豪炎寺「鬼道。雷門で世宇子の力を目の当たりにしているのはお前だけだ。ゴッドハンドは世宇子のシュートに通用すると思うか?」

 

鬼道「……わからない。俺だって世宇子の力の全て把握している訳じゃない。ただ、武方三兄弟のトライアルグルZ。あのシュートより遥かに強く恐ろしいことは確かだな」

 

なるほど。それほど恐ろしいとはな。

 

一之瀬「その恐ろしいシュートを止める自信がない。そういうことか」

 

円堂「昨日のは栗松と壁山に支えられてどうにかなったけど、世宇子今までにない激しい戦いなる。壁山達も俺のフォローに入っていられないよ」

 

確かに、円堂の言う通りあいつら2人が毎回のようにフォローできるかと言われると無理な話だ。

 

円堂「このままじゃキャプテンとしても、キーパーとしても俺、全然だめだ」

 

土門「それは、お前のじいさんの特訓ノート。ゴッドハンドよりすごいキーパー技のヒントはないのか?」

 

円堂は特訓ノートを開き俺らに見せてくる。相変わらず読めねぇ字だな。

 

一之瀬「なにこれ?読めないよ」

 

だよな〜

 

 

土門「円堂は読めるんだ」

 

一之瀬「へぇ」

 

八幡「それで、ゴッドハンドよりすごいキーパー技はあるのか?」

 

円堂「ああ、これだ」

 

円堂はそう言って1枚ページをめくる。

 

円堂「ゴッドハンドよりすごいキーパー技。名ずけてマジン・ザ・ハンド」

 

ほう…魔人ね。

 

円堂「じいちゃんによれば最強のキーパー技をあみだしたんだって」

 

土門「おー、なんかすごそうじゃん」

 

円堂「ここポイントって書いてあるんだ」

 

円堂はそう言って、ノートに描かれた人の絵に赤い丸がついた所を指で指した。

 

一之瀬「胸?」

 

土門「心臓じゃないのか?」

 

確かに2人の言う通り、そういう風にも見て取れる。

 

八幡「他には書いてないのか?」

 

円堂「書いてない」

 

おいおい、いつもはビョーンとか、スバーンとか、擬音が書かれているのに書いてないのか。そして、静まり返った部室のドアを開ける者がいたそれは、練習をしていた栗松達だった。

 

少林「早く練習来てくださいよ!」

 

宍戸「みんな待ってますよ」

 

少林「決勝までこの勢い、止めたくないんですよね!」

 

栗松達1年は必ず優勝すると意気込んでいる。そして、暗い部分を悟られまいと円堂は口を開く。

 

円堂「よォーしやろうぜ!今さ、作戦会議をやってたんだ!な!な!」

 

ここで俺らに振るのかよこいつ。

 

豪炎寺「あ、ああ」

 

ほら見ろ、豪炎寺ですらあの反応だぞ。

 

円堂「世宇子なんかぶっ飛ばしてやろぜ!」

 

「「「おう!」」」

 

そう言って円堂は栗松達を引き連れてグラウンドの方へ向かって行った。

 

鬼道「円堂は壁にぶち当たったな」

 

豪炎寺「ああ」

 

鬼道「誰でもレベルアップすればするぼど大きい壁にぶち当たる。乗り越えてもっと大きいレベルに上がるか、そこで沈むか。あの諦めの悪い奴がそんな簡単に沈むとは思えないがな」

 

一之瀬「みんなでバックアップしていこうよ。木戸川戦の壁山や栗松みたいにさ。きっとそういうのもここがポイントってことじゃない」

 

一之瀬はそう言って手を自分の胸に置いた。

 

八幡「うわっ…」

 

俺は思わずその言葉が漏れてしまった。

 

一之瀬「ちょっ、比企谷!?」

 

八幡「いや…悪い……つい本音が…」

 

一之瀬「酷くね!?」

 

いや、なんかうまくまとめやがったなとは思ったけどね。でもね、何故かちょっとムカついた。

 

八幡「ほら、俺らも行くぞ」

 

一之瀬「あっ、ちょっと待てよ比企谷!」

 

歩き出した俺を追いかけるようにして、一之瀬は小走りで向かってくる。

 

土門「まったく、比企谷は相変わらずだな」

 

豪炎寺「ああ、そうだな」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

後日の放課後。俺は豪炎寺と鬼道に連れられ鉄塔広場へと向っていた。何故鉄塔広場に向かっているのかと言うと、その理由は

 

円堂「でやぁ!」

 

タイヤを背負ってタイヤに吹っ飛ばされている円堂がいるからである。なんで、俺まで連れてくるんだよ。今日は早く帰るつもりだったんだけどな。

 

鬼道「こんなことだと思ったよ」

 

豪炎寺「それでマジン・ザ・ハンドがマスターできるのか?」

 

円堂「とにかく俺にはこれしかないからさ」

 

本当に追い詰められているようだな。

 

豪炎寺「手伝おう」

 

円堂「本当!?」

 

鬼道「サッカー馬鹿になってみるか」

 

豪炎寺「世宇子に勝つ秘訣になるかもしれない」

 

八幡「お前ら何気なく酷い事言ってる事自覚しろよな」

 

豪炎寺「比企谷に言われたくないな」

 

鬼道「だな」

 

八幡「は?なんでだよ」

 

豪炎寺「自分こそ自覚がないようだな」

 

こいつらは何言っているのかわからん。まぁ、そんなことよりも俺らは円堂のマジン・ザ・ハンドをマスターするための特訓に付き合うことになった。円堂と俺らの間に3つのタイヤがぶら下がっており、そして交代で俺らがシュートを打ち円堂がそれを止めるという内容だ。シンプルだが円堂からしたら、タイヤのせいで視界が悪いだろう。

 

円堂「来い!」

 

鬼道「はぁ!」

 

豪炎寺「ふん!」

 

鬼道と豪炎寺が交代で蹴ったことにより、俺の番が来てしまった。まぁ、ここまで来たんだから付き合うしかないか。

 

円堂「来い比企谷!」

 

八幡「ふっ!」

 

俺はドライブ回転かけながら前へ押し出すようにして、シュートを打ち込んだ。俺のシュートは3つタイヤを通り抜け、円堂へと向かっていく。すると、円堂の前でシュートはガクッと下に落ちた。

 

円堂「ぐっ……ああっ!」

 

円堂は咄嗟にしゃがみ正面で受け止めるが吹き飛ばされる。

 

円堂「なんだ今の……直前で落ちた」

 

八幡「シュートはまっすぐ飛ぶだけじゃないんだぞ」

 

鬼道「なるほど、いい考えだな」

 

八幡「そりゃどうも」

 

その後も交代をしながらシュートを打ち込んでいると、円堂の後ろには木野と雷門の姿があった。

 

円堂「あれ?2人ともどうした?」

 

どうやら円堂も気づいたらしい。

 

 

夏未「身体がボロボロになるわ。いますぐやめなさい!」

 

円堂「まだまだ。諦めてたまるか」

 

雷門は円堂の身体を心配し、止めようとするも円堂はやめようとしない。そんな雷門と木野に豪炎寺と鬼道が口を開く。

 

豪炎寺「無駄だよ」

 

鬼道「やめろと言ってやめる男か?」

 

確かに鬼道の言う通り、こいつがそう易々とやめようとはしないだろう。

 

円堂「絶対にマジン・ザ・ハンドを覚えて、決勝戦を戦い抜くんだ。みんなで優勝したいじゃあないか」

 

八幡「だ、そうですよ。お二人さん」

 

円堂「よしっ、続けるぞ」

 

その後、雷門達は危なくない所でいてもらい、円堂の特訓が再開された。またさっきと同じで順番に円堂に向かってシュート打っていく。ていうか今更だがこれって、いつまで続けるんだよ。俺ってほぼ無理やり連れてこられたんだけど。そう思っていた時だった。豪炎寺が円堂に向かってファイアトルネードを打とうとしていた。この人円堂を殺す気だと思った。そして、豪炎寺が放ったファイアトルネードは俺達と円堂の間にあったタイヤを全て蹴散らし、円堂をも吹っ飛ばした。円堂はスローモーションのように宙に浮き、数メートル飛び地面に叩きつけられた。叩きつけられた円堂は目を回していた。

 

八幡「お前、あいつを殺す気か?」

 

豪炎寺「いや、そんなつもりはなかった」

 

八幡「…本当かよ」

 

そういうと豪炎寺は目線を逸らした。

 

八幡「おい、目をそらすな」

 

雷門「そんな事はどうでも良いから、早く運ぶわよ!」

 

雷門の言う通りだな。円堂は豪炎寺と鬼道に担がれながら監督のいる雷雷軒へと急いだ。え?俺か?俺はこいつらの鞄を両手に持ってるから、円堂を運べねえよ。

 

響「随分と無茶をしたな」

 

円堂「無茶じゃないよ。特訓だよ」

 

響「新しいキーパー技をあみ出そうとしているって聞いたぞ」

 

円堂「うん、マジン・ザ・ハンド」

 

すると響監督が反応した。

 

円堂「もしかして監督知ってる?」

 

響「ああ。そうかお前もついにあれに挑戦するのか」

 

円堂「監督はできた?」

 

響「俺はマスター出来なかった。だが、お前ならできるかもしれない。頑張れよ」

 

円堂「おう!」

 

 

すると、店のドアが開いた。そっちをみるとそこには鬼瓦刑事の姿があった。

 

鬼瓦「おいおいどうした?お揃いで」

 

円堂「刑事さん」

 

鬼瓦「ひっでぇ格好だな」

 

円堂「世宇子に勝つにはこんくらいなんともない」

 

鬼瓦「威勢が良いのは結構だが、勝つことに執念を燃やしすぎると影山みたいになるぞ」

 

円堂「影山に?」

 

何故そこで影山の名前が出てくるだ?

 

夏未「……刑事さんは冬海先生に会ったそうよ」

 

刑事さんは影山を追うために会ったそうだ。そして、40年前から地区大会決勝戦での雷門と帝国の試合で起きた鉄骨落下事件まで、一連の不可解な事件を解明するまでは、影山の過去を知る必要があるらしい。そして、その過去の事を今いる俺達に話してくれた。

 

影山東吾──その名は影山の父親だという、そしてその影山東吾は昔日本サッカー界を代表し、人気も実力もトップレベルの人物だったらしい。だが、円堂大介率いる若手の台頭により、代表を外されたらしい。ショックだったのか、それからの影山東吾は荒れてしまった。そして、影山東吾が出ると試合に負けるや疫病神だと言われる事になった。その後、失踪し母親は病院死になり、影山は1人きりになってしまった。

 

鬼瓦「奴の中で家族を壊したサッカーへの憎しみと勝ちへの拘りに対する執念が膨れ上がっていったんだろう……」

 

鬼道「勝つことが絶対。敗者には存在価値は無い。影山がよく言ってた言葉だ」

 

鬼瓦「そのために沢山の人を苦しめてる。……豪炎寺、お前もその1人」

 

豪炎寺「何?」

 

鬼瓦「妹さんの事故、奴が関係している可能性がある」

 

「「「え……」」」

 

な、なん……だと。豪炎寺の妹の事故が影山に関係しているなんて。……いや、考えてみれば辻褄というかタイミングが良すぎる。木戸川清修と帝国の試合当日に豪炎寺の妹は事故にあい、豪炎寺は試合に出てない。そして帝国が優勝した。そして、豪炎寺は首からかけているペンダントを握りしめている。妹に貰った物なんだろうな。でも、少し気持ちはわかる。俺にも妹がいる。もし、小町が意図的に誰かに事故にあわされたら、それはもう…抑えきれない怒りが膨れ上がるだろう。

 

円堂「許せない!どんな理由があってもサッカーを汚して良い訳がない!間違っている」

 

鬼道「影山は今どこに?」

 

鬼瓦「まだわからん。しかし、冬海がおかしなこと言っていてな」

 

八幡「なんて言ってたんですか?」

 

鬼瓦刑事が言うには、冬海先生は『プロジェクトZ』を知っているか。このフットボールフロンティアは『プロジェクトZ』によって支配されている。影山はサッカーから離れないし、離れられない。そして影山は、まるで神であるかのように空から自分たちを嘲笑っていると。

 

鬼瓦「どうやらその計画と影山が空にいるっていうのは繋がっているらしい」

 

プロジェクトZ……空……これらになんの関係があるのか分からない。

 

鬼瓦「帝国にいたお前には空と聞いてなにか思いつく事はあるか?」

 

鬼道「いえ、俺にはさっぱり」

 

プロジェクトZ……世宇子……空……ダメだ。考えても何も繋がらない。一体どういう意味があるのだろうか。結局、そろそろいい時間にもなるのでここで、お開きとなり解散となった。

 

 

 

 



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第24話

どうもチャキです。第24話ですどうぞ。


 

次の日、円堂はマジン・ザ・ハンドを習得する為に特訓をしていた。マジン・ザ・ハンドが書いてあったノートには、人の絵に胸あたりり赤い丸の印がつけられていたので円堂は、ガトリングガンからボールが出てくる機械で、出てきたボールを自分の体で受けたり、肺とか心臓を鍛えれば良いと言われ水を入れた洗面器に顔を突っ込んだり、呼吸とアドバイスをもらい練習で大声を出したりと、どこを鍛えているのかわからんな。そういうことで今は円堂も全員の練習に参加をしている。練習をしているといつの間にかマネージャー達の姿が見えなくなっていた。さっきまで3人一緒にいてビデオカメラで練習を撮っていたのにどこ行ったんだ?まぁ、あの3人もやる事あるしな。練習に集中するか。

 

音無「皆さ〜ん、おにぎりが出来ました」

 

練習をしていると音無の声が聞こえる。なるほど、姿が見えなかったのはそういう事か。他の奴らはそれを聞いて顔に輝きが戻ってくる。俺はと言うと鬼道のあとを追うようにして手を洗いに向かった。

 

手を洗い終えて、鬼道と共に戻っていると雷門に手を洗ってくるように言われた円堂達とすれ違う。というか何故驚いたような顔になってるんだよお前らは。良いから早く洗って来いよ。

 

ほんの少し待ち全員が手を洗った事を確認すると、食べても良いと許可が出たので全員一斉に食べ始める。というか無茶苦茶早く食べるやん。どうしてそんなに早く食べるんだよと思いながらおにぎりを食べる。

 

八幡「美味いな」

 

そう一言が思わず漏れ出す。丁度小腹が空いていたし丁度良かった。塩加減も丁度良い。運動して出た汗を補給するかのような感じだな。

 

音無「どうですか?比企谷先輩、おいしいですか?」

 

八幡「ああ、おいしいぞ」

 

音無「本当ですか!?ありがとうございます!まだまだありますので!食べてください!はいどうぞ!」

 

そう言われて大きいおにぎりを差し出してくる。いや、他のおにぎりよりもちょっと大きくない?まぁ、持ってきてくれたんだし、せっかくだがら受け取るか。

 

八幡「お、おお、サンキュ」

 

音無「はい、お兄ちゃんにもあげる!」

 

鬼道「ああ、ありがとうな春菜」

 

音無「じゃんじゃん食べてくださいね。お兄ちゃん、比企谷先輩!」

 

鬼道「ああ」

 

八幡「お、おう」

 

音無はちょっと嬉しそうに木野達の所へ向かった。そして、俺は音無から貰ったおにぎりを見る。やっぱちょっと大きいよな。

 

鬼道「どうした比企谷?」

 

八幡「ん?ああ、いや、やっぱ大きいよなって思ってな」

 

鬼道「確かに」

 

そう言いながらも鬼道は嬉しそうだ。まぁ、実の妹である音無から作って貰ったんだそりゃ嬉しいよな。俺も小町から貰ったら心の底から嬉しい。そう思いながらおにぎりを口に運ぶ。

 

八幡「うん、うまっ」

 

また、そう一言口から漏れ出す。

 

 

一方の音無はと言うと、八幡に自分の作ったおにぎりを食べてもらい、おいしいと言われ嬉しさのあまり口角が上がってしまった。

 

壁山「音無さん」

 

音無「どうしたの壁山君」

 

壁山「俺にもあのおにぎりくれないッスか?」

 

音無「ああ、ごめんなさい。あのおにぎりはもう無いんですよ」

 

壁山「ええ〜!そんな〜!」

 

音無「ごめんなさい。ほら、まだ他にもおにぎりあるからそれ食べてください」

 

壁山「わかったッス」

 

壁山は少し残念そうにしながら他のおにぎりを食べに行った。だが、音無は少し嘘をついていた。それは、あの大きいおにぎりは八幡と兄だけの為に作った物だったのだ。

 

 

その後おにぎりを食べ終わった後練習を再開させた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

小町「ねぇ、お兄ちゃん」

 

八幡「ん?どうした?小町」

 

家でゆっくりと過ごしていると小町が話しかけてくる。

 

小町「そろそろだよね。決勝戦」

 

八幡「ああ、そうだな」

 

小町の言う通り世宇子中との決勝戦の日が近づいている。

 

小町「勝てそう?」

 

八幡「それはわからん。当日になってみないとな」

 

俺達が苦戦したあの帝国が棄権するほどの強さ。しかも、他の学校との試合も最後までしていないらしい。そんな奴らに勝てるのかと言われると言えない。それに、マジン・ザ・ハンドも完成していない。

 

小町「そっか……ねぇ、お兄ちゃん」

 

八幡「ん?」

 

小町「サッカー楽しい?」

 

八幡「……ああ、楽しいぞ」

 

小町「そっか、なら良かった」

 

そう言って小町はニコッと笑顔を見せてくる。

 

小町「お兄ちゃんいつも1人でサッカーをしていて、全然楽しそうに見えなくて、小町心配してたんだ」

 

八幡「小町…」

 

小町「でも、お兄ちゃんがサッカー部に入った時はすごいびっくりしたんだけどさ、お兄ちゃんが楽しそうにしているのを知った時、小町すごい嬉しかったんだ」

 

その言葉を聞いて小町がどれくらい俺の事を心配してくれていたんだなと思った。

 

八幡「ありがとな小町。心配してくれて」

 

小町「当然でしょ?お兄ちゃんを心配するなんて。あっ、今の小町的にポイント高い!」

 

八幡「最後のがなければな。ほら、さっさと風呂入ってこい」

 

小町「はーい」

 

そう言って小町は風呂場へと向かった。

 

まさか、小町にあんなに心配されていたとはな。まったく兄としてしっかりしないとな。

 

 

 

 

 

 

数日後

 

 

マジン・ザ・ハンドを完成させる為に今日も特訓をしていた。なのだが、何をとち狂ったのか円堂は必殺シュート2本同時に止めようとしていた。元々頭が悪いと思っていたがもっと悪くなってしまったか。

 

染岡「ドラゴン!」

 

豪炎寺「トルネード!」

 

鬼道・一之瀬「「ツインブースト!」」

 

 

2本のシュートが円堂に向かっていく…が、シュートが円堂の元へ辿り着く前に、円堂とボールの間に割って入る人影が現れた。すると、そいつは2本のシュートを片手ずつ軽く止められていた。止めた奴を見るとそこには長い金髪の男のような奴がいた。一体誰なんだ?

 

円堂「すっげぇ!ツインブーストとドラゴントルネードを止めるなんて。お前すっげぇキーパーだな」

 

「残念ながら私はキーパーではない。私のチームのキーパーはこの程度のシュート、指1本で止めてしまうだろうね」

 

なんだこいつ?冷やかしに来たのか?

 

鬼道「そのチームというのは世宇子中の事だろう。アフロディ」

 

すると鬼道がそう言いながら円堂達の方へ近づいていく。ていうか世宇子中だと?という事はこいつが帝国に勝ったチームの奴か。そんな奴が一体何故ここに来たんだ?

 

アフロディ「円堂守君だね。改めて自己紹介させてもらうよ。私は世宇子中のアフロディ。君の事は影山総帥から聞いているよ」

 

鬼道「やはり世宇子中には影山がいるのか」

 

染岡「てめぇ、宣戦布告にきやがったな」

 

アフロディ「宣戦布告?…フフッ」

 

アフロディは染岡の言葉を聞いて笑った。

 

染岡「なにがおかしい?」

 

アフロディ「宣戦布告というのは戦う為にするもの。私は君達と戦うつもりは無い」

 

八幡「なんだ?じゃあ棄権してくれるていうのか?」

 

アフロディ「フフッ、面白い冗談を言うんだね比企谷君」

 

八幡「ほう…俺の事知ってるのか?」

 

アフロディ「ああ、もちろんさ。君の周りを見る目は一目置いてるのさ」

 

八幡「は?お前が?」

 

アフロディ「そうさ、君のように周りを見る目は私のチームにはいない。だから、比企谷君。私のチームに来ないか?」

 

「「「「「なっ!?」」」」」

 

アフロディの言葉に円堂達が驚きの声をあげる。だよな、俺も声には出さなかったがかなり驚いている。だが、すぐに冷静にその言葉に答える。

 

八幡「はっ、それこそ面白い冗談だな。寝言なら寝て言えよ」

 

アフロディ「そうかい、非常に残念だ。君のように空間把握能力が優れていて、勘も優れている人はそうはいないのに、そんな君がこんなチームにいては宝の持ち腐れというものだ」

 

なんだと?今…こいつなんて言った?こんなチーム…だと?

 

八幡「おいてめぇ、今なんて言った?」

 

アフロディ「こんなチームにいては宝の持ち腐れと言ったんだ」

 

染岡「てめぇ!!こんなチームだと!?俺達をバカにしているのか!?」

 

染岡は2度も発せられた言葉に怒りが爆発する。染岡だけではなく他の奴らも怒りが見える。そんな光景を見て俺は一旦冷静になることにした。俺までこうなっては止める奴はいなくなってしまう。危うく我を忘れるところだった。まぁ、冷静になった1番の理由は我がチームキャプテンがすごい怒り顔になっているからだ。

 

八幡「で?ここに来た本当の理由はなんだ?」

 

アフロディ「ああ、そうだった。忘れるところだった。もう一度言う。私は君達と戦うつもりはない。君達は戦はない方が良い。その方が良い」

 

一之瀬「なぜだよ」

 

アフロディ「何故?負けるからさ」

 

は?ちょっと何言ってるか分からない。

 

アフロディ「神と人間が戦っても勝敗は見えている」

 

一之瀬「自分が神だと言うつもりかよ」

 

アフロディ「さぁ、どうだろうね」

 

おいおい、自分で神とか……どんだけ厨二病をこじらせてるんだよ。ちょっと痛いよ?そういうの。……マジで。

 

円堂「試合はやって見なきゃ分からないぞ」

 

アフロディ「そうかな?林檎は木から落ちるだろ。世の中には逆らえない事実というものがあるんだ。それは、そこにいる鬼道有人君が1番良く知っているはずだ」

 

その言葉を聞いて鬼道は前に出ようとするが豪炎寺に止められる。

 

アフロディ「だから練習はやめたまえ。神と人間の間の差は練習では埋められるものでは無い。無駄な事さ」

 

円堂「うるさい!練習が無駄な事なんて誰も言わせない!練習はおにぎりだ!」

 

………………ん?ちょっと何言ってるか分からない。最初はいい事言ってると思ったのに。まぁ、でもあいつが相当怒っているのはわかった。

 

円堂「俺達の血となり肉となるんだ!」

 

アフロディ「アハハ、上手いこと言うね。なるほど、練習はおにぎりか」

 

円堂「笑うとこじゃねえぞ」

 

おいおい、怒っているのはわかっていたが、御影専農の時よりも怒っているようだ。

 

アフロディ「しょうがないな。それが無駄な事を今から教えてあげるよ」

 

そう言ってアフロディは持っていたボールを上へ蹴り上げたと思ったら、アフロディの姿は消え、蹴り上げられたボールの元へ移動していた。そして、アフロディはこちらに向かって軽くボールを蹴った。ボールは凄まじい回転し、赤い閃光を纏う。そのシュートは軽いのにすごい威力だと俺は理解した。そして、そのシュートを円堂が正面から受け止める…が、円堂はゴールの中へ吹き飛ばされた。そして、ボールはゴールバーを超えた。

 

鬼道・豪炎寺「「円堂!」」

 

鬼道と豪炎寺は吹き飛ばされた円堂の元へ駆け寄る中、他の奴らも後を追うようにして駆け寄る。集まった奴らが円堂に呼びかける。目を閉じていた円堂の目はゆっくりと開いたのだが……

 

円堂「どけよ!」

 

円堂は集まった仲間を怒気で声を発してどかせた。

 

円堂「来いよ!もう一発!」

 

後ろから鬼道が抑えようとするも、円堂はそれを振り払う。普段見ない一面に誰も円堂を止められない。あれは完全に頭に血が昇ってやがる。そして、俺は円堂とアフロディの間に割って入る。

 

円堂「比企谷どけ!」

 

八幡「どく訳にはいかねぇなぁ。今のお前を見てるとそんな気にはなれねえな」

 

円堂「なんだと……!」

 

八幡「頭に血が昇り過ぎだ。ちったあ頭冷やせ」

 

円堂「っ!いいからどけっぐあ!?」

 

「「「円堂(君)!?」」」

 

俺は円堂が最後まで言い終わる前にヤクザキックのごとく円堂の腹に蹴りを加える。

 

円堂「ぐっぅ……!な、何するだ!!!」

 

八幡「頭冷やせって言ってんだろうが。周り見てみろよ。お前の事心配しているのに、八つ当たりしている奴は、こうされても仕方ないと思うが?それにそんな震えた足で次の1発止められるのかよ」

 

俺はそんな円堂を無視してアフロディの方へ向く。

 

アフロディ「君は落ち着いているみたいだね。比企谷君」

 

八幡「は?何言ってんだお前。俺が怒ってないっていつ言った?自分の居場所を馬鹿にされて怒らない奴なんていねぇと思うがな」

 

アフロディ「居場所?ここが?君の?」

 

八幡「ああ、そうだ。なんか文句あんのか?」

 

アフロディ「いいや、文句はないさ。まさかそんな風に言うとは思ってなかったね」

 

八幡「そうかよ。それで悪いんだが今日はお引き取り願いたいんだが」

 

アフロディ「ああ、そうしよう。それに少し決勝戦が楽しみになってきたよ」

 

そう言うとアフロディはその場から姿を消した。

 

一之瀬「なんて奴だ」

 

鬼道「世宇子中はあいつみたいな奴らばかりだ」

 

豪炎寺「決勝戦。とんでもないことになりそうだな」

 

そうだな。それは言えているが……俺はそんな事を思いながら円堂の方へ向く。

 

八幡「それで?ちったあ頭冷えたか?」

 

そう言って円堂に手を差し出す。

 

円堂「ああ、バッチリ冷えたよ」

 

そう言って俺の手を取ったので、引っ張り立ち上がらせる。

 

八幡「言っとくが今回は謝んねぇぞ」

 

円堂「ああ、別に良いさ。今回はちょっと周りが見えてなかった。皆ごめん」

 

ようやくいつも通りの円堂に戻ったな。

 

円堂「でもさ比企谷。俺の頭冷やす為とはいえ、もうちょっと加減してくれよ」

 

八幡「これでも加減した方だぞ」

 

円堂「マジかよ」

 

ここで少しだが笑いが生まれる。

 

一之瀬「でもまさか比企谷があんな事するなんてな」

 

染岡「ああ、正直びっくりした」

 

風丸「俺も」

 

夏未「ホントにびっくりさせないでちょうだい!」

 

八幡「俺は悪くない円堂が悪い」

 

円堂「まあまあ、今回は俺が悪かったんだし、その辺で終わりにしよ」

 

円堂が間に入りこの話は終わりとなった。

 

円堂「さっきシュートで新しい技見えた気がするぜ。やれるよ俺達」

 

響木「いや、今のお前達には絶対に不可能だ」

 

いつの間にやってきたのか、響木監督の一言がその場にいる全員に突きつけられる。

 

 



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