椎葉朱莉の不思議な日常 (たかなおにぎり)
しおりを挟む

日常編
第1話 椎葉朱莉の不思議な日常


椎葉朱莉の不思議な日常第1話。


ピリリリリ、ピリリリリ。

 

スマホのアラームで私は目覚めた。

季節は春。

庭には綺麗な桜が咲いている。

 

「ふわぁ〜.....。」

 

私は大きなあくびを一つした。

何もやる気がおきない。

それに、

何故か昨日までの記憶が一切ない。

お酒飲んだんだっけ....?

 

「う〜ん......。」

 

私はその場に寝転んだ。

考えるのもめんどくさい。

散らかった部屋を見て絶望した。

 

 

 

 

あ、あれ......?

何か違和感が......。

誰かに、見られている気がする。

私は気配がする方へ近づいた。

 

「だ、誰かいるの......?」

 

私は寂しい一人暮らし。

誰もいるはずがない。

 

気配は押し入れの中から感じる。

私は昔、ここに引っ越してきた時に押し入れに穴を開けてしまった事がある。

その穴から中を覗いた。

 

.......⁉︎

 

人の目の様なものが見えた。

「な、何⁉︎」

私は驚いて、声を上げた。

 

「中に誰かいるの⁉︎」

 

私は恐る恐る、押し入れの扉を開こうとした。

ガチッ、

しかし、何らかの力で扉が開かない。

穴を見ると、その目が笑っている様な形になっていた。

 

「な、何......これ......?」

 

私は恐怖のあまり、動けなくなってしまった。

 

 

 

 

 

「やれやれ、この家の主人は騒がしいなぁ.....。」

 

庭の方から女の声が聞こえた。

 

「今度は誰⁉︎」

 

私は勇気を振り絞って庭に向かった。

すると、庭に人影の様なものが見えた。

 

「おや、もしかして私のことが見えているのかな?」

 

庭には、ホウキを持った赤髪の女が立っていた。

身長の高いその女は、私に近づいた。

 

「こ、こないで‼︎だ、誰なの⁉︎あなたは‼︎この家から出てって‼︎け、警察呼ぶよ⁉︎」

 

「警察を呼ぶとは......呼ぶなら好きに呼べばいい。私は警察には見えないだろうからね。」

 

そう言ってホウキの女はニヤリと笑った。

 

「あ、あなたは何者......?」

 

「私は妖怪だよ。物に取り憑く妖怪。」

 

「まぁ、好きにホウキと呼んでくれたらいい。」

 

そう言ってホウキの女は家にあがった。

勝手に家にあがるな。私はその女の服の袖を引っ張った。

 

「ちょ、ちょっと何勝手にあがろうとしてるの‼︎」

 

「あれれ?私たちは君が引っ越してくる何十年も前からここに住んでるんだよ?」

 

「出て行くのは君の方じゃないか?」

 

「そ、れ、に!君が引っ越してきてから家が散らかってばっかりだ。」

 

ホウキの女が山積みになってしまったゴミを指差して言った。

私はなんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

 

「ご、ごめん........。」

 

「謝るのはいつでもできる。早く家を片付けてほしいね。」

 

「..........っ⁉︎」

 

そう言ってホウキの女は口を大きく開き、中からホウキを取り出した。

そして、「ほれ。」と言って私に差し出した。

 

「い、いらない.......。」

 

「なんだい、せっかく出してあげたのに......。」

 

そう言ってホウキの女はホウキを口の中に戻した。

私は目をつぶってその一部始終を見ないようにした。

どういう構造になってるんだこの人の体は......。

 

「あ、そうだ.......あの押し入れの目は....ホ、ホウキの知り合いなの......?」

 

「あ〜、ノゾキマちゃんのことかい?」

 

ノゾキマちゃん........?

あの目の名前?

 

「ノゾキマちゃんは人見知りが激しくてね。いっつも押し入れに引きこもってるんだ。」

 

 

ガシッ‼︎

ホウキの女が押し入れを開けようとするも、

やっぱり押し入れは開かない。

 

「ノゾキマちゃん‼︎引きこもってないで出ておいで!」

 

「……………」

 

「何か言いたいのか?」

 

スッ、

そう言ってホウキの女は50音が書かれた紙をノゾキマの前に広げた。

ーーーーーーーーーーー

あかさたなはまやらわ

いきしちにひみ り

うくすつぬふむゆるを

えけせてねへめ れ 。

おこそとのほもよろん゛

ーーーーーーーーーーー

 

「ご、50音......?」

 

「私たちの会話方法だよ。目を上下左右に動かして、発したい平仮名のところで瞬きをする。ゲームの名前入力みたいなものだよ。」

 

「…………………」

 

右、右、下、瞬き。

「し」

下、瞬き。

「い」

右、右、右、右、右、瞬き。

「は」

右に9回。下、下、下、瞬き。

「ば」

右に6回。下、下、瞬き。

「む」

右に4回。下、下、下、瞬き。

「ね」

右に3回。下、瞬き。

「ち」

下、瞬き。

「い」

右に2回。瞬き。

「さ」

下、瞬き。

「い」

 

「椎葉胸小さい。」

 

「はっ⁉︎何なの急に‼︎」

 

ノゾキマの目が笑っていた。

 

「し、失礼な子では無いんだけど......挨拶がわりだよ....。」

 

 

 

 

 

 

 

その夜。

 

 

「んぅ........。」

 

「くかぁぁー........。」

 

スッ、

ホウキの女のでかいイビキで目覚めてしまった。

私は尿意を催し、トイレに向かった。

 

トイレは1階の廊下の奥にある。

寝室から最も遠い。

 

ガタッ、

 

「っ⁉︎」

 

今、何か物音がした....?

その物音は絶えることなく聞こえてくる。

 

私は散らかったリビングを覗いた。

 

っ⁉︎

 

 

そこには、8本もの触手を携えたタコの様な生物がいた。

ドン‼︎

突然、触手を使い、私を襲おうとした。

間一髪避けるも、私はその場に転んでしまった。

 

「だ、誰か‼︎」

 

「エタンドル‼︎」

 

パァァァ!

ホウキ女の声とともに、眩しい光が私を包んだ。

 

「な、何が起きてるの......⁉︎」

 

光が消えると、怪物も跡形もなく消えていた。

 

「あ、ありがとう!ホウキ!」

 

「部屋が散らかっていると、邪悪な妖怪も出てくるんよ。」

 

「い、今のどうやったの⁉︎」

 

バチン‼︎

突然、ホウキ女が私の頬を叩いた。

痛い。あまりの突然さに私は言葉を失った。

 

「え、え......?」

 

「まったく、椎葉ちゃんはもう普通の人間じゃないんだよ‼︎ああいう妖怪は‼︎自分の姿が見えている人間を喰うんだよ‼︎もうちょっとで食べられそうだったんだぞ⁉︎」

 

「ご、ごめん.......?」

 

「私はもう妖力を使い切ってしまった。全快には2ヶ月はかかる。とにかく‼︎夜は町も家の中も出歩くな‼︎」

 

 

 

 

 

 

「わかった?」

 

「う、うん......。」

 

私がそう言うと、ホウキ女はニコリと笑って寝室へ戻っていった。

 

「はぁ〜眠たい眠たい。」

 

この日から、私の不思議な日常が始まるのであった。

 

「漏らしちゃった........。」

 

 

 

 

 

 

つづく




よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2話 消えない蝋燭

椎葉朱莉の不思議な日常 第2話


「んぅ.........。」

 

昨日とは大違い、目覚めが悪い。

隣で寝てるホウキ女のでかいイビキのせいだ。

 

「あれー?椎葉ちゃん、目にクマできてるよ?」

 

お前のせいだよ。

 

「さーて、朝ごはん朝ごはんー♬」

 

そう言ってホウキ女はスキップで階段を降りて行った。

私もお腹が空いてきた。

 

 

 

 

 

相変わらずリビングは散らかっている。

片付ける気力が起きない。

 

「はぁ〜......。」

 

「ん.....朝からお酒....?」

 

ため息をつく私を尻目に、ホウキ女はお酒をガブガブ飲んでいた。

いつもスト○ングゼロ無くなっていたのはこいつの仕業か。

 

「妖怪は酔ったり二日酔いになったりしないもんね!」

 

いいなぁ.......。

ホウキ女はタバコを吸い出した。

 

私は禁煙をしている。

理由は友達(と思ってる人)に勧められたから。

 

「タバコを吸っても害ないしね。」

 

禁煙をしている私の目の前でタバコを吸うホウキ女に私はムカついた。

私はホウキ女を鬼の形相で睨みつけた。

ギロッ

 

「ど、どうしたの....⁉︎椎葉ちゃん⁉︎」

 

「いやなんでも。」

 

「そんな怒らなくてもいいじゃ〜ん。」

 

確かに、私もこれぐらいの事でイライラしてはダメか。

…………ん?

 

「だっ、誰⁉︎」

 

「友達のサケノミちゃんだよ。」

 

サケノミと紹介されたこの女はテーブルにスト○ングゼロの缶を5個ならべていた。

 

「飲み過ぎだよ。」

 

「しゅごうい酒豪だからね!」

 

何だその寒いオヤジギャグ。

笑う人なんていな、

「アハハハハハ‼︎」

 

いた⁉︎

 

ホウキ女は口を大きく開いて笑っていた。

時々笑いすぎて口からホウキを吐き出していた。

 

「あ、ホーちゃん!ホウキ出ちゃってるよ!」

 

そう言ってサケノミはホウキ女の口を押さえた。

何だこの会話。

 

 

ピーンポーン

 

誰か来たみたいだ。

この家に人が訪ねてくるなんて珍しい。

 

「2年ぶりぐらいの来客かな?」

 

「椎葉ちゃん友達いないもんね!」

 

「黙れ。」

 

 

ガチャッ、

 

「はい?」

 

「あ、あの........。」

 

ドアを開けた先にいたのは、小学2年生くらいの小さな子供。

少し大きめのろうそくを手に持っていた。

 

「どうしたの?」

 

「こ、このろうそくを貰ってください‼︎」

 

「えっ、ちょ、ちょっと⁉︎」

 

女の子は、ろうそくを私に押し付けるように渡して逃げ去ってしまった。

 

「誰誰?誰が来たんだい?」

 

「な、なんか.....小さな女の子がろうそくを....。」

 

「何だぁ、近所の子供の悪戯か〜。1mmでも恋人だと思った私たちが馬鹿だった。」

 

「ま、椎葉ちゃんに恋人なんているはずないもんね!」

 

いや、あの様子だと悪戯ではなくあの子はいじめられてて、なんかの罰ゲームとかでやらされたんだろうな......。

てかお前今何つった。

 

「こ、このろうそくどうしよう......。」

 

「そこに飾っとけば?どうせすぐ消えるでしょ。」

 

私はろうそくをリビングの棚に置いた。

相変わらず火の強さは変わらない。

 

「はぁ〜.....。」

 

「椎葉ちゃん‼︎忘れてないよね?」

 

「な、何が?」

 

「早く部屋、片付けてほしいな。」

 

「あ、はい.......。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4時間後。

 

「よーし、ちょっと片付いた‼︎」

 

少しきれいになった気がする。

まだちょっと散らかってるけど。

 

「まぁ、今日はこのぐらいでいいよ。」

 

「あれ?サケノミさんは?」

 

サケノミの姿が見当たらない。

帰ったのかな?

 

「何か、気分が悪くなったから帰るって。」

 

「そりゃあんだけ酒飲んだら気分悪くなるよね.....。」

 

そう言って私は少しきれいになったリビングを見渡した。

部屋が広く感じた。

 

あれ?

何故かろうそくの火がついたまま。

4時間経っても消えないろうそくなんて珍しい。

 

「すごいね〜、普通は1時間ぐらいで消えちゃうのに。」

 

しばらく無言の時間が続いた。

そして、いきなり私を強い眠気が襲った。

 

「..........何か眠たくない?」

 

「た、たしかに.......それに.....なんか吐き気が....。」

 

やばい。今にも吐きそうなぐらいの吐き気が襲う。

私は立っていられなくなり、床を這いながらトイレに向かった。

 

ドンドンドン‼︎

 

押し入れから物音が聞こえる。

ノゾキマちゃんも苦しいのかな..?

 

「う、うう......。」

 

バギッ‼︎

 

押入れの扉が破れる音がした。

ノゾキマちゃん......⁉︎

押入れの中から出てきたのは、フードを被った前髪の長い女の子。

 

「お、おや......ノゾキマちゃんも耐えられないのかい....?」

 

ノゾキマちゃんはろうそくを掴み、庭から外へ投げ捨てた。

 

「ノ、ノゾキマちゃん.......?」

 

「あのろうそく、呪い、のろうそく。」

 

喋った⁉︎

初めてノゾキマちゃんの声を聞いた。

目以外のパーツもあったんだ....。

 

「じゃ、戻る。」

 

「あ、ノゾキマちゃん‼︎せっかく出てきたんだから、お茶でも一緒に、」

 

スッ、

ノゾキマちゃんは押し入れに戻っていった。

 

「はぁ、ま、これで一件落着だね。」

 

「だね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?何だこれ.....?」

 

スッ、

 

「ろうそくか......フーッ、あれ?消えない.....?」

 

「こりゃぁ珍しい‼︎家に持ち帰って私のコレクションにしよう‼︎」

 

悪夢は続く。

 

 




肩が痛い。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話 亡骸を抱く少女

椎葉朱莉の不思議な日常 第3話


「へへへへ.......。」

 

パチッ、

私は部屋の電気を付けた。

そこにはホウキ女がいた。

私のパソコンで何してる。

 

「私の部屋で何してるの?」

 

「っ⁉︎」

 

パタン!

ホウキ女は驚いた様子でパソコンの蓋を閉じた。

 

「私のパソコンで何見てたの?」

 

「い、いや......べ、別に.....変なのとか見てないし。」

 

私は無言でパソコンの蓋を開けた。

そこには、某有名エロサイトp○rnhubの画面が広がっていた。

 

「何?これは。」

 

「こ、これは.......、ん、仕方ないでしょ‼︎私のガラケーじゃ見れないんだから‼︎」

 

「いや何開き直ってんの。」

 

「スマホならお店で盗んでくればいいじゃん。私以外に見えてないんだから。」

 

このホウキ女は私以外に見えていない。

盗むなんて簡単なはず。

 

「指紋がないからタッチしても動かない‼︎」

 

「それは残念だけど、私のパソコンでエロサイト見るのやめてくれる?」

 

「それはやだ。」

 

そう言ってホウキ女はエロサイトを見始めた。

ちょい待てや。

 

「聞いてる?」

 

「うるさいな〜、そんなにしつこく言うなら、

椎葉ちゃんが夜な夜なオ○ニーしてるとこ公開しちゃうよ?」

 

「そ、それはやめて‼︎」

 

いつの間に撮られてたんだ....?

ていうか何撮ってんだよ。

 

「じゃ、邪魔しないでね。」

 

「ん、んぅ...。」

 

それから、

ホウキ女は事あるごとに、「投稿するぞ」と言うようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ.......何でこんな雨の中買い物なんて.......。」

 

今日も「投稿するぞ」と脅され、コンビニへ買い物に行く。

外は大雨が降っている。

 

「..........ん?」

 

あの子..?

何をしているんだ?

 

路地裏の入り口で、大きな袋を持って立っている女の子がいた。

こんな雨の中、誰を待っているのだろう。

こういうのには関わらない方がいいとホウキ女に言われた。

私には関係ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

やっぱり無視できない‼︎

私はその女の子に話しかけた。

もしかしたら虐待を受けているのかもしれない。

 

「どうしたの?キミ。」

 

「あ、ひ、人を待ってるんです.....。」

 

近くで彼女の腕を見ると、無数の傷が付いていた。

やっぱり、虐待されてるんだ。

 

「な、な、なんですか....⁉︎」

 

「付いてきて。

 

「や、やめてください‼︎」

 

私は彼女の腕を掴み、

児童相談所に連れて行こうとした。

 

「助けてください‼︎誘拐です‼︎」

 

ま、まずい‼︎

私は思わず彼女の手を離した。

 

「誘拐....⁉︎おい、あの子を助けるぞ‼︎」

 

「い、いや、勘違いです‼︎」

 

私は必死で誤解を解こうとするも、

駆けつけた警察に連行された。

虐待されている子供を助けようとしただけなのに.....。

 

 

 

 

3時間後。

 

ようやく誤解が解けて、

取り調べから解放された。

 

「はぁ.......。」

 

ついてないな。

やっぱり、ああいうのには関わらない方がいいのか.....。

 

「あ、あの‼︎」

 

誰かに後ろから声をかけられた。

さっきの子かな?

 

「先程は.....私の勘違いで....すいません!」

 

「あ、い、いや、私の方こそ強引に連れて行こうとして...ごめんね。」

 

私は謝ったあと、

ずっと気になっていたことを聞くことにした。

 

「そういえば.....ずっと持ってるその袋は何が入ってるの?」

 

「こ、これですか......。」

 

そう言うと、彼女は袋の中を覗いた後、私の顔を見た。

 

「私を理解してくれるなら.......お教えします。」

 

「分かった、必ず理解してみせる!」

 

私がそう言うと、

彼女は下を向いて話し始めた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

私は、海外のとても貧しい町で生まれました。

私が生まれてからすぐに食べ物を奪い合う大きな戦いが始まりました。

 

私たちは貧しい町の中でも、特に貧しいので、すぐに食料が底を尽きました。

 

そこで、母は私に言ったんです。

 

「私の腕を食べなさい。」

 

その言葉を聞いた瞬間、

私は全身の汗が止まらなくなりました。

 

自分が母の腕を食べると、

私は助かる。

母は死ぬ。

 

私は心の中でとてつもない葛藤に苦しみました。

でも、苦しいのは母も同じ。

母は「あなたが生きてくれるならば私は死ねる」と言いました。

その言葉を聞いた私は、泣く泣く母の腕を切り落とし、母と分け合いました。

 

幸い、私と母の命は助かりました。

 

 

 

 

 

 

 

しかし、私は忘れられませんでした。

人間の味が。

 

そして私は我慢できず、母を殺害しました。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「えっ......?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そして、母の味を堪能しました。

あの時の味は2度と忘れません。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「この袋の中には、母の頭が入っています。」

 

っ⁉︎

そう言って彼女は袋から母親の生首を取り出した。

その生首は、悲しそうな顔をしていた。

 

「な、ど、どういう.....、」

 

「あなたは私を必ず理解すると言いました。

あなたの腕だけでいい。私にください。」

 

「い、いや」

 

「お願いします‼︎あの時食べた味が今も忘れられないんです‼︎」

 

私はただ逃げることだけを考えてその場から走り去った。

後ろは振り返らなかったが、確実に背後からの気配を感じた。

 

 

 

 

つづく




雨。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4話 風呂場の女神

椎葉朱莉の不思議な日常 第4話


今日も晴れ。

暖かい空気。

桜の木が花を咲かせた。

 

そして、

 

 

 

 

 

散らかった部屋‼︎

 

「あぁ〜.....ちょっと目を離したらこれだよ。」

 

「リバウンドだ.....。」

 

なぜ私はこうも掃除が出来ないのだろう.....。

そう思いながら、ペットボトルをポイ捨てした。

 

「ポイ捨てするな‼︎」

 

しまった。

こういうのが積み重なって散らかっていくのか。

私は反省した。

 

「今日は風呂場を片付けてもらおうか。」

 

風呂場は、

ゴミ袋が積もって湯船に浸かれなくなっている。

臭いも酷い。

 

「湯船に浸かれないから疲れが取れなくてねー。」

 

「疲れることあるの?」

 

「失礼な‼︎私だって疲れることの1つや2つぐらい....、」

 

「行ってきまーす。」

 

「聞けよ人の話最後まで。」

 

 

 

 

 

風呂場。

 

ガラッ、

はぁ.......。

 

「相変わらず酷いな......。」

 

とりあえず、大量のゴミ袋を退けよう。

ゴミ袋の周りにはハエがたかっていた。

 

「うわぁ........ホウキー‼︎」

 

ゴミ袋の処理はホウキに任そう。

 

「何ぃー?」

 

「ゴミ袋。退けて。」

 

私はハエのたかったゴミ山を指差して言った。

 

「え、シンプルに嫌だ。」

 

「妖怪だから虫は好物でしょ‼︎」

 

「偏見にも程がある‼︎」

 

「あ、フッ、片付けないと投、」

 

「動画は私が削除した‼︎殴られたくなかったらゴミの山を片付けろ‼︎」

 

お決まりの必殺技を繰り出す前に、

私が胸ぐらを掴んで言った。

 

「ひぃええ......脅しだぁ......。」

 

 

 

1時間後。

 

少し片付いた。

少しだけ。

 

「ゴミ袋が消えただけだけど?」

 

「でもあとは垢を落とすだけ!」

 

浴槽には一面垢が広がっている。

何年も掃除してないからそうなるよね。

 

「洗剤買ってきて!」

 

「えぇ〜‼︎」

 

「何で私なのさ〜‼︎」

 

「だって、ホウキなら見えないからお金払わなくていいでしょ!」

 

「自動ドアがあるから入れない‼︎」

 

便利なこともあれば、不便なこともあるのか。

妖怪も大変だなぁ。

 

ピカァァァァァン‼︎

 

っ⁉︎

突然、浴槽が光に包まれた。

 

そして、鏡から人のようなものが出てきた。

鏡の妖怪⁉︎

 

鏡から出て来たのは、

とても美人とは言えない顔立ちの女の人。

 

「だ、誰ですか....⁉︎」

 

「私は風呂場の女神だ。」

 

風呂場の女神....?

女神と言うよりは女囚人。

 

「お、お久しぶりです‼︎女神様‼︎」

 

どうやら偉大な人らしい。

ホウキ女が跪いている。

 

「あ、相変わらずお綺麗で......。」

 

「綺麗?お世辞にも程があるよホウキ。」

 

「な、女神様になんて事を‼︎」

 

ボコッ、

私はホウキに頬を殴られた。

思わず失礼な事を口にしてしまった。

 

「いくら人間でも、女神様に大変失礼だ‼︎死刑にしましょう‼︎」

 

えっ、ええ⁉︎

ホウキ女は私の腕を掴み、壁に押し付けた。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ‼︎」

 

「さぁ、女神様‼︎この無礼者に制裁を‼︎」

 

私は必死で手を振り払おうとするも、

ホウキ女の強い力で押さえられてしまう。

 

本当に殺す気......⁉︎

 

「さぁ、早く‼︎」

 

「........もういい。」

 

......え?

 

「え.....?何故ですか⁉︎この女は女神様を侮辱しました‼︎」

 

「わかってる.........私も自分の顔が醜いことなど百も承知だ。」

 

「な、何言ってるんですか‼︎女神様はお綺麗です‼︎」

 

パチン‼︎

女神様は、指を鳴らした。

 

「これが20年前の私。」

 

20年前の女神様は、

とても美しい人だった。

 

「しかし、そなたが引っ越してきてから私はどんどん汚れていった。」

 

「何故か........風呂場が汚れてしまったからである。」

 

「私は風呂場の女神だ。風呂場とは一心同体。風呂場が汚れれば私も汚れる。」

 

「だから頼む。そなたが風呂場を掃除して、私を綺麗にしてくれないか?」

 

私は女神様の願いを受け入れた。

というか、元々の原因は自分だ。

 

「本当か⁉︎ならば、2ヶ月後、またここに現れる。そのときには綺麗にすると約束してくれるな?」

 

「はい‼︎」

 

「絶対に守れよ。」

 

私は女神様と握手をした。

パァァァン

女神様は眩しい光と共に消えていった。

 

「........早く片付けてよね!」

 

「わかってるわかってる!」

 

 

 

つづく



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

喪失編
第5話 すがたをうしなう


椎葉朱莉の不思議な日常 第5話


はぁー......。

 

今日も雨か....。

季節は梅雨。

ここ最近はずっと雨が降っている。

 

私は雨が嫌いだ。

別に、外に出るわけじゃないけど。

 

「また雨かぁ.....。」

 

私は庭を見ながら麦茶を飲んだ。

物凄い雨。

 

 

 

そういえば、

さっきからホウキ女の姿がない。

 

「ホウキー?どこに行ったの?」

 

返事がない。

私の倍雨が嫌いなホウキ女が外に出るはずがない。

寝室で寝てるのか?

 

「まだ寝てんの?」

 

私はホウキ女の名前を呼びながら、

寝室へ向かった。

 

ガチャッ、

寝室にホウキ女はいない。

 

その後、

一日中ホウキ女を探したが、帰ってきたり、見つかったりしなかった。

サケノミの家に行っているのか.....?

 

私はノゾキマちゃんに尋ねることにした。

 

しかし、

ノゾキマちゃんの目は穴からは見えなかった。

ノゾキマちゃんも......いない?

 

もしかして.......姿が見えなくなった?

まさか.....、急にそんなことがあるわけ......。

 

 

でも....あの人たちが見えるようになったのも、

急にだったな.....。

何の前触れのなく、突然の事だった。

 

「ま、まさか.......ちが、うよね....。出かけてるだけだよね.....。」

 

私はそうであることを願って、

眠ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、

2人の姿は1週間経っても現れない。

 

本当に見えなくなってしまったのか.....?

嫌だ.......そんなの......絶対に嫌だ‼︎

 

「いるんでしょ‼︎ホウキ‼︎出てきて‼︎お願い‼︎」

 

「部屋も片付けるし‼︎エロサイトもいっぱい見ていいから‼︎」

 

私は喉が潰れるほどの大声で、

ホウキ女を呼ぶ。

 

『うるさいぞ‼︎』

 

隣人に注意されてしまった。

 

私は、

謎の孤独感と不安感に押し潰されそうになった。

誰かに狙われている......?

誰かが狙っている......?

誰も信用できなくなった。

1週間いなくなるだけで、こんなにも不安になるなんて.....。

 

 

そもそも私は長い夢を見ていたのかもしれない。

ずっと眠っていたのかもしれない。

最初から妖怪なんか見えてなかったんだ。

 

そうだ.......絶対にそうだ......。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1ヶ月後。

 

私は2人のことを忘れかけていた。

 

ピリリ、ピリリ

 

電話が鳴った。

私に電話をかけてくるのは1人しかいない。

 

ピッ、

 

「はい。」

 

『あ、朱莉?』

 

姉の琴音だ。

琴音には子供がいる。

確か、15歳になるんだっけ.....?

もう受験生か。

 

「どうしたの?琴音。」

 

『急で申し訳ないんだけど......今から私の家に来てくれない?』

 

本当に急じゃん。

 

「えっ⁉︎今から⁉︎」

 

『うん!どうせ暇でしょ⁉︎』

 

姉の口調はどこか、

怯えているようだった。

 

「ひ、暇って......。わかったよ。」

 

私は、久しぶりに姉の子供に会いたくなった。

 

『本当⁉︎じゃあ、出来るだけ早くね‼︎』

 

「あ、うん。」

 

ピッ、

何をあんなに急いでるんだ.....?

 

とりあえず、

私は支度をした。

 

 

 

 

 

 

姉の子供に会うのは久しぶりだなぁ。

身長も大きくなってるんだろうな。

あの子が小4の時以来、会っていない。

 

私はそんなことを考えながら、

揺れる電車の中で眠った。

 

 

 

目が覚めると、

ちょうど電車は目的地で止まっていた。

 

私は電車を降りて、琴音の家に向かった。

方向音痴な私は途中で道に迷ったりしたが、

無事に琴音の家にたどり着いた。

 

ピンポーン

 

ガチャッ、

私がチャイムを鳴らすと、物凄い速さで琴音が玄関のドアを開けた。

 

「うわっ⁉︎びっくりした‼︎」

 

「あー!久しぶり!朱莉!」

 

「何で私を呼んだの?」

 

「そ、それはね.......。」

 

 

 

 

 

姉によると、

娘の夏樹がとある理由で引きこもって出てこないから、

私に引っ張り出してほしいとのこと。

 

まったく、親なんだから自分で何とかしろよ。

 

私は夏樹ちゃんの部屋がある二階に向かった。

コンコン、

夏樹ちゃんの部屋の扉をノックした。

 

「夏樹ちゃん?覚えてる?お母さんの妹の朱莉だけど....。」

 

返事はない。

 

しばらく沈黙が続いた。

すると突然、

ガチャッ、

 

沈黙を裂くように扉が開いた。

夏樹ちゃんが開けてくれた。

 

「あ、朱莉さん.......。」

 

「久しぶり!夏樹ちゃん!」

 

久しぶりに見た夏樹ちゃんの姿は、

長い前髪にボサボサの髪。

少し私より高くなった身長。

最後に会ったときの面影はどこにもなかった。

 

「大きくなったね!」

 

「い、いや.......。」

 

「と、とりあえず入ってください.....。」

 

敬語?

タメ口でいいのに。

 

「あ、じゃあ、お邪魔しまーす。」

 

私は夏樹ちゃんの部屋に入った。

部屋の中はそれほど変わっていない。

可愛らしい人形がまだ残っている。

 

「お、お茶持ってきましょうか.....?」

 

「あ、ありがとう。」

 

ドン‼︎

夏樹ちゃんは、見えない何かにぶつかって倒れた。

 

「大丈夫⁉︎夏樹ちゃん‼︎」

 

「あ、だ、大丈夫です......。」

 

「ちょっと気をつけてよ.......。」

 

ん?

独り言?

夏樹ちゃんが言った。

 

「誰と話してるの?」

 

「あ、いや、なんでもないですよ.....‼︎」

 

なら、いいけど。

 

 

 

 

 

「持ってきました......。」

 

夏樹ちゃんがお茶を持ってきてくれた。

 

「ありがとう!」

 

あれ?

コップが5個.....?

誰の分だ...?

 

「何で5個もあるの?」

 

「あ、え、あ、その‼︎.......、」

 

「ねぇ、さっきから変だよ?

ずっと独り言言ったり、お茶5個も持ってきたり.....。」

 

「学校も行ってないみたいだけど........なんかあったの?」

 

「...........朱莉さんは、私のことバカにしたりしませんよね....?」

 

「え、当たり前じゃん‼︎」

 

「じゃ、じゃあ........お教えします......。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「私には妖怪が見えてるんです。」

 

 

⁉︎

 

 

 

つづく

 

 






目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第6話 どうして

椎葉朱莉の不思議な日常 第6話


「私には妖怪が見えてるんです.....。」

 

⁉︎

 

妖怪が.......見えてる.....?

私は姉の娘の夏樹ちゃんに、

衝撃の一言を告げられた。

 

「い、今なんて言った⁉︎」

 

「だ、だから、私には妖怪が見えるんです‼︎」

 

ど、どういうこと....?

 

「い、いつから⁉︎」

 

「い、1ヶ月ぐらい前から......。」

 

1ヶ月前、

私が妖怪が見えなくなったのと同じ時期。

何か関係があるのか.....?

 

「ど、どうしたんですか......?」

 

「じ、実はね......、私も前まで妖怪が見えていたの。」

 

「えっ⁉︎」

 

夏樹ちゃんは驚いた様子で私を見た。

 

「い、いつまで見えてたんですか⁉︎」

 

「1ヶ月ぐらい前......、ちょうど夏樹ちゃんが妖怪が見えるようになったのと同じぐらいの時期.....。」

 

「ほ、本当ですよね......?」

 

「本当だよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は夏樹ちゃんにしか見えていないという妖怪を紹介してもらうことにした。

 

「今私の横にいるのが、ゾウキンです。」

 

ゾウキンという名前の妖怪は、その名の通り、

雑巾に取り憑く妖怪らしい。

そして、悲しくなると目からゾウキンを出すらしい。

 

「で、左にいるのが、オシャベリです。」

 

オシャベリという名前の妖怪も、その名の通り、

とにかくよく喋る妖怪らしい。

 

 

私が今まで一緒に暮らしてきたホウキ女や、ノゾキマちゃんたちとは真逆だ。

 

「ど、どうして、その2人が見えるようになったの.....?」

 

私の場合は訳もわからずに、

突如として見えるようになった。

夏樹ちゃんもそうなのかな......?

 

「1ヶ月前、凄く嫌なことがあったんです。」

 

「嫌なこと......?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

1ヶ月前、

私がまだ引きこもる前の話です。

 

私はいつものように学校に行きました。

学校に着いて、下駄箱から靴を取ろうとしました。

 

そして、

靴の中には画鋲が入っていました。

 

私は今まで全くいじめとかはなく、友達も多い方でした。

朱莉さんとは違って。

 

なのにある日突然、靴の中に画鋲を入れられていたんです。

私は、靴の中から画鋲を取り出して、その場に投げ捨てました。

 

そしてその事を忘れることにして、教室に向かいました。

しかし、教室に着くと、私の机が逆さまにされていました。

 

なぜ、突然いじめられてしまったのか、私には訳が分かりませんでした。

 

私はその事を友達の友里に話しました。

友達はこう言ったんです。

 

 

 

 

 

 

「は?知らないし、てかあんた何?私を疑ってるの?」

 

「い、いやそういう訳じゃ.....。」

 

「私たち友達だもんね.....?」

 

「は?何言ってんの?」

 

えっ.....?

どういうこと.....?

 

「別に、あたしはあんたのこと友達だと思ってないんだけど。」

 

「で、でも‼︎いつも一緒にいたじゃん‼︎」

 

私は友里の両肩を掴んで言いました。

 

「離せよ‼︎」

 

バッ‼︎

友里は私の手を振り払い、私を突き飛ばしました。

 

「気付いてないなら教えてやるよ。本当はお前のこと影で嘲笑ってたんだよ‼︎」

 

そ、そんな.......。

私は友達だと思われていなかったんです。

 

 

 

 

 

 

その日、

私は深い絶望感に襲われて眠ることが出来ませんでした。

そして、それと同時にクラスメイトを強く憎みました。

 

その日からも私は何回か学校に行きましたが、

いじめはどんどんエスカレートしていくばっかりでした。

 

いじめられるようになってから1週間、

私は、ついに学校に行かなくなりました。

 

親は私を心配して、毎日部屋の扉を叩いては私を引っ張り出そうとしました。

 

「夏樹‼︎出てきなさい‼︎」

 

「.........。」

 

みんな、死んじゃえばいいんだ。

私は心の中でそう思いました。

 

その時、

私の部屋の中から声がしたんです。

 

「なら、そいつらを殺してあげようか?」

 

その声の主は、

ゾウキンでした。

 

彼女によると、

人間は強い憎しみや、孤独感を感じた時に、妖怪が見える力に目覚めるらしい。

 

そして、

私はゾウキンに願い事をしました。

 

「友里を殺してほしい。」

 

私がそう言った翌日から、

友里は家に帰ってこなくなったそうです。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「友里ちゃんは........どうなったの......?」

 

「知りません。友達じゃないので。」

 

さっきの話によると、

私は強い憎しみや孤独感を感じていたから妖怪が見えた...?

見えなくなったのは、それらが無くなったから.....?

 

「ん?何?」

 

夏樹ちゃんが誰かと会話をしている。

私に見えていない誰かと。

 

「朱莉さんが見えなくなったのは、憎しみや、孤独感が無くなったわけではなく、単純に、妖怪から必要とされなくなったからだそうです。」

 

「........えっ?」

 

必要とされなくなったから.....?

 

どういうこと.......?

 

 

 

 

つづく



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第7話 番号619

椎葉朱莉の不思議な日常 第8話


-役目は果たせたか?

妖怪番号619-

 

「申し訳ございません。あと、1ヶ月ほどお待ちいただければ、目的を達成できると思います。」

 

-いつまで待たせるつもりだ。

5回は聞いたぞ、そのセリフ-

 

-奴を早く捕まえてこい

奴はとてつもない禁忌を犯したのだ-

 

 

「今、奴は妖怪が見えなくなってしまっています。

妖怪は、自分のことが見えていない人間に触れることができません。ご存知の通り、奴の体内にはバリアストーンと呼ばれる石の成分が充満しており、この崩壊しかけている妖怪の世界を救うには、奴を殺し、その心臓をあの祭壇へ捧げるしか無いのです。

ですが、魔王様。」

 

 

-どうした619-

 

 

「私は、奴を殺したくありません。

私は奴を殺さずに、この世界を救う方法があると思うのです。奴は魔王様が思われているような人間ではありません。

奴なら、必ず協力してくれるはずです。」

 

 

-何をバカなこと言う‼︎

619、ワシはお前を信用している

 

お前は残酷なやつだったはずだ。

ある時は、重罪を犯した人間を縛り上げ血祭りにした。

 

そのまたある時は、無能な妖怪の爪を一本一本剥いで殺した。

有無も言わさず、妖怪の悲鳴も聞かずに。

ただ笑顔を浮かべてその様子を眺めていただろ。

 

619、いつからお前はそのような事を考えるようになってしまったのだ-

 

 

「ま、魔王様........。」

 

 

-いいか、619。

お前はあいつを殺す事だけ考えろ。

あいつに情を持つな。

 

もし、今後そのような事を考えるのであれば.....-

 

 

「あれば........?」

 

 

-お前を裏切り者と見なし、

刑罰を与える-

 

 

「そ、そんな.......‼︎」

 

 

-それが嫌なら、

早く、あいつの憎しみを呼び覚まし、殺してここに連れてくるんだ‼︎-

 

 

「............い、嫌です.....。」

 

 

-今何と言った?

まさか、嫌と言ったのではあるまいな?-

 

 

「わ、私は.......奴を殺しません‼︎

意地でも、何が何でも‼︎必ず‼︎奴を殺さずに世界を救う方法を探します‼︎」

 

 

-黙れ‼︎

 

見損なったぞ、619。

どうやらお前はワシたち妖怪を裏切るようだな。

 

おい‼︎

619を捕まえろ‼︎

 

捕まえて、血祭りにしろ‼︎-

 

 

ダッ‼︎

 

「待て‼︎」

 

「っ‼︎」

 

 

-絶対に逃すな‼︎

必ず捕まえろ‼︎-

 

 

 

 

 

 

 

私は必死であの場から逃げた。

ここは.......どこなんだ.....?

見たこともない場所に来てしまった。

 

「はぁ、はぁ.......。」

 

もう、疲れて動けない......。

このままでは....駆けつけた手下に捕まってしまう。

今、私の妖力は、封じられて使えなくなってしまっている。

 

と、とにかく......、隠れる場所を......。

 

 

 

「ホウキ。」

 

っ⁉︎

 

「誰だ....⁉︎」

 

どこにいる⁉︎

どこから来る⁉︎

 

私はわずかな力を振り絞って立ち上がった。

そして、声の主を目で探した。

 

「私だ。ホウキ。」

 

人間界で暮らしていたときに聞いた声.....。

こ、この声は.......。

 

「ノゾキマちゃん.....⁉︎」

 

ノゾキマちゃんだ。

私とノゾキマちゃんは、

人間界を離れてから1度も会っていなかった。

 

「ホウキ。お前は、私と人間界に逃げる。」

 

「に、人間界に.......?」

 

人間界には、椎葉ちゃんがいる。

それに、手下共から逃げれるかもしれない。

 

「で、でも......どうやって......?」

 

「付いてきて。」

 

私の手を握り、

ノゾキマちゃんは森の中へ私を連れて行った。

 

「こんな森の中に........?」

 

「離れてて。」

 

私はその言葉通り、

後ろに3歩ほど下がった。

 

「メタンプシコーズ‼︎」

 

ドォォォォン‼︎

ノゾキマちゃんの、聞いたこともない大声とともに、

空に大きな空間が広がった。

 

「そこにいるのか⁉︎」

 

やばい‼︎

魔王様の手下が来た‼︎

 

「早く‼︎」

 

「分かってる‼︎」

 

私とノゾキマちゃんは、

その大きな空間に飛び込んだ。

 

「フェルミー。」

 

ノゾキマちゃんがそう言うと、

大きな空間が閉じた。

 

そして、すぐに私たちは眩しい光に包まれ、何も見えなくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、ホウキ。ホウキ。」

 

んん.......。

ここは......?

 

見慣れた庭......。

見慣れたゴミの山.....。

 

 

椎葉ちゃんの家だ‼︎

戻って来たんだ‼︎

 

「あれ?ノゾキマちゃん.....?」

 

ノゾキマちゃんが消えた。

押入れに隠れたのかな。

 

「そうだ、椎葉ちゃーん!」

 

..........出かけてるのかな?

はぁ、もう今日は疲れた......寝よう。

 

私はそのままベッドで眠った。

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 




619


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第8話 裏切り?

椎葉朱莉の不思議な日常 第8話


私は疲れて、

椎葉ちゃんの家のベッドで眠ってしまった。

 

 

 

 

 

んぅ........。

私は腕を伸ばそうとしたが、

何故か腕が動かない。

 

それは何故か?

 

 

 

 

椎葉ちゃんが私を抱きしめるように寝ていた。

とても幸せそうな顔で。

 

「しししし、椎葉ちゃん⁉︎ちょ、は、離して‼︎」

 

母親以外に抱かれたことのない私は全身を真っ赤にした。

それと同時に、大量の汗が噴き出した。

 

 

こ、こんなことされたのは初めて...。

椎葉ちゃんの体、暖かい......。

こ、このままでもいいかな......。

 

 

フーッ、

椎葉ちゃんの吐息が耳にかかる。

私の体が跳ね上がる。

変な気分になりそうだ。

 

 

私は目を閉じた。

椎葉ちゃんの手の感触が倍感じるようになった。

 

 

パチッ、

 

「う...........⁉︎」

 

椎葉ちゃんが目を覚ました。

私の方を見ては、ニヤリと微笑んだ。

 

「ずっと........寂しかったんだからね......?」

 

「ご、ごめん.......。」

 

「もう...........どこにも行かないで。」

 

「.........もちろんだよ。」

 

私は、

妖怪の世界や、バリアストーンのことを椎葉ちゃんに話そうかと悩んだ。

私は不安だった。

 

もし、椎葉ちゃんに嫌われてしまったら.......。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「椎葉ちゃん。」

 

「ん?どうしたの?」

 

 

『説明』

 

 

「妖怪が私の命を狙ってる.....?」

 

「そう、だから私は、」

 

「近寄らないで‼︎」

 

「えっ.........?」

 

「ホウキも裏で私の命狙ってたんでしょ⁉︎」

 

「いや、私は‼︎」

 

「喋りかけてこないで‼︎」

 

「妖怪なんかと喋りたくもない‼︎」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

なんてことになってしまったら.......。

私には妖怪中の裏切り者、嫌われ者という称号だけが残る。

魔王様の期待を裏切った、不届き者。

ならどうしたら.....。

 

どうしたら椎葉ちゃんを傷つけずに妖怪の世界を救えるんだ.....。

 

「ホウキ?」

 

「どうかした?」

 

椎葉ちゃんが心配そうな顔で私を見た。

私は、「なんでもない」と答えた。

 

なんでもあるんだけど......。

とりあえず、朝ごはんを食べよう。

 

私は椎葉ちゃんを引き剥がして、

散らかっているリビングへ向かった。

 

 

 

 

「目玉焼き?」

 

フライパンの上には、

大きな目玉焼きが乗っていた。

 

目玉焼きは私の大好物だ。

テンションが上がる。

 

私はノリノリで椅子に座った。

しばらくはあの事を忘れて、今は目玉焼きを味わうことにした。

 

「あれ⁉︎」

 

「どうしたの?椎葉ちゃん?」

 

「な、なんか........目玉焼きについてる.......‼︎」

 

椎葉ちゃんが見せた目玉焼きに付いていたのは、

赤く光る謎の小さい四角形。

発信器.......?

 

「な、何だこれ.........。」

 

魔王様の手下か誰かの仕業か?

私が食べる目玉焼きに発信器を付けて、私の体内に埋め込ませるつもりだったのか?

だとしたら、この近くに魔王様の手下が.......⁉︎

 

いや、待てよ。

私は元々他の下級妖怪とは喋ったこともない。

私の大好物など知ってるはずがない。

 

だとしたら、考えられる犯人はただ1人‼︎

その犯人は、押入れにいる。

 

 

私は椅子から降りて、押入れに向かった。

 

「ど、どこ行くの⁉︎ホウキ‼︎」

 

 

 

 

ドッ‼︎ドッ‼︎

犯人は、ノゾキマちゃんしかいない‼︎

 

「ノゾキマちゃん‼︎ここを開けてくれるかな⁉︎」

 

ドッ‼︎ドッ‼︎

相変わらず押入れの扉は開かない。

私は精一杯の力でこじ開けようとした。

 

「な、何してるの⁉︎ホウキ⁉︎」

 

チッ、

早く開けろよ。

 

「早く開けろ‼︎お前も魔王様の手下なんだろ‼︎」

 

私は喉が潰れるぐらいの大声で言った。

そして、押入れの扉を叩いた。

 

「や、やめて‼︎ホウキ‼︎落ち着いて‼︎」

 

「開けろ‼︎開けろ‼︎開けろ‼︎」

 

ガッ、

椎葉ちゃんが私の腕を掴んで止めようとした。

 

しかし、

私はもう誰にも止められない。

目の前にある扉だけを叩くことにしか意識がない。

 

「椎葉ちゃんは黙ってて‼︎」

 

「開けろ‼︎あけ、」

 

ガラッ‼︎

 

開いた。

その直後、押入れの入り口が大きく歪み始め、

人間の大人が十分にくぐれる大きさになった。

その奥は、真っ暗で何も見えない。

 

「やっと開けてくれたんだね。」

 

「ちょ、ちょっとホウキ!」

 

私は椎葉ちゃんが止めるのも聞かずに、

押入れの中に入って行った。

 

椎葉ちゃんも私に続けて入って行くのが聞こえた。

押入れの中は、

何もない真っ暗な空間が広がっている。

その奥に人影のようなものが見える。

ノゾキマだ。

 

ノゾキマが奥で偉そうに立っている。

下級妖怪のくせに。

 

「ノゾキマちゃんも魔王様の手下だったんだね。」

 

「何のことだ。知らない。」

 

とぼけるな。

私の目玉焼きに発信器を入れただろ。

 

「発信器。ノゾキマちゃんの仕業だよね?」

 

「知らない。」

 

 

ガッ‼︎

「っ‼︎とぼけるのもいい加減にしろ‼︎お前は魔王の手下で‼︎私の体内に発信器を付けて居場所を伝えようとしてたんだろ‼︎えぇ⁉︎」

 

私は鬼の形相でノゾキマの胸ぐらを掴んだ。

手が赤くなっている。そして、震えている。

 

「ホ、ホウキ‼︎」

 

「大人しく認めろ‼︎それなら命は助け、」

 

「だったら何であの時お前を助けた?」

 

っ......‼︎

 

「私がもし仮に魔王の手下であったなら、あの時お前を殺しているはずだ。

自分の命を助けてくれた恩人の胸ぐらを掴むなんて.......何て恩知らずな奴だ。」

 

「だ、だけど‼︎私の好物を知っているのは、」

 

「私だけじゃないだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

  サケノミがいるだろ?」

 

っ⁉︎

ま、まさか‼︎サケノミが犯人だと言いたいのか⁉︎

 

「な、何を言う‼︎親友のあの子がそんな事をするはず、」

 

「親友。 そう思ってるのはお前だけかもね。」

 

「っ⁉︎」

 

ノゾキマは鋭い目つきで私を見る。

 

 

う、嘘だ......。サケノミは犯人なんかじゃない.....‼︎

親友だ......。私のたった1人の親友だ‼︎

その親友が......私を裏切るなんて......、

そんな事あるはずがない‼︎

 

「本当は。影でお前のこと、嘲笑ってるかもしれないな。」

 

そう言ってノゾキマは笑う。

見下すような目つきで。

 

「(夏樹ちゃんと同じこと......‼︎)」

 

「黙れ‼︎このメスガキ‼︎お前にサケノミの何が分かる⁉︎サケノミはそんな事をする奴じゃない‼︎」

 

「お前が影で残虐非道な事を繰り返していたのを秘密にしているように、サケノミにも秘密はたくさんある。」

 

「なっ‼︎」

 

椎葉ちゃんの前でそれを言うな‼︎

それ以上喋るな‼︎

 

「お、おい‼︎」

 

「知ってる?椎葉。この女は、裏でとんでもない悪行を繰り返していたんだよ。

ある時は、か弱い妖怪を捕まえて火炙りにして、それを晒し者にした。」

 

「もうやめて‼︎」

 

「またある時は‼︎無能な妖怪を八つ裂きにし、それを売り捌いた‼︎」

 

私は何も言えなくなった。

後ろからの視線が変わっていくのを痛いほど感じた。

 

「ち、違うよ、違うんだよ、椎葉ちゃん‼︎」

 

「さらに、椎葉の命までも狙ってる‼︎」

 

「っ⁉︎ホ、ホウキ.......?」

 

椎葉ちゃんの目が完全に変わった。

 

「さらに‼︎」

 

私はノゾキマが口を開く前に、

椎葉ちゃんを引っ張り、押入れから抜け出した。

 

スッ、

扉を閉める。

私の心はもうギリギリだ。

 

「ホ、ホウキ.........さっきのこと.......。」

 

「い、今まで、黙っててごめん。」

 

「で、でも‼︎今はもう椎葉ちゃんの命は狙ってない‼︎必ず、私が椎葉ちゃんを守る。」

 

椎葉ちゃんは、

そう言った私を抱きしめた。

 

「本当.......だよね?」

 

「うん。」

 

「信じて.......いいんだよね?」

 

「うん。私を信じて。」

 

そう言って、

私は椎葉ちゃんを強く抱きしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜。

 

ピリリ、ピリリ、

私は親友だと思っているサケノミに電話をかけた。

 

『ん?どうしたのー?ホーちゃん』

 

『あ、あのさ......サケノミ。私たちって......

親友、だよね.....?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『は?何言ってんの?w』

 

 

 

つづく



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第9話 親友

椎葉朱莉の不思議な日常 第9話


『あ、あのさ......サケノミ........私たちって、親友.....だよね?』

 

私は親友だと思っているサケノミに問いかけた。

返事は決まっているはず..........はず。

 

 

 

 

 

 

 

 

『は?何言ってんの?w』

 

 

っ⁉︎

えっ.....?

何言ってんのって......。

 

『えっ、ど、どういう......。』

 

私とサケノミは親友じゃなかった......?

嘘だ.......‼︎違う‼︎絶対違う‼︎

 

サケノミとは、自分の隠していた秘密も、過去も、全部話したんだ‼︎

私が非道な妖怪だった頃の話も‼︎

とても他の人には言えない話も‼︎

それでも‼︎いつも笑ってくれた‼︎

いつも隣で、お酒飲んで.......‼︎

楽しくしてた‼︎

 

 

 

で、でも.........楽しいと思っていたのは自分だけなのかもしれない......。

本当は、そんな過去を持つ私に怯えて、逃げ出したかったのかもしれない。

あいつの言う通り、影で嘲笑っていたのかもしれない。

もしそうだとしたら........

今まで......ごめん.....。

 

 

 

 

 

『何でそんな分かり切ったこと聞くの?』

 

『ご、ごめん.......。』

 

 

 

 

『親友に決まってるじゃん!』

 

え.......?

親友.....?

 

『い、今なんて......?』

 

『だ、か、ら‼︎私とホーちゃんは親友‼︎』

 

サ、サケノミ......‼︎

私は涙が止まらなくなった。

今までで1番嬉しい一言。

 

『うはっ.......うっ.......‼︎』

 

『ど、どうしたの⁉︎泣いてるの⁉︎』

 

『な、なひてはんかひない‼︎』

 

嬉しさのあまり、

口からほうきが出そうになり、うまく喋れない。

私は、そのほうきを口に戻し、

感謝の言葉を伝えて、電話を切ろうとした。

 

『あ、そういえば、今ホウキ大変なんだって⁉︎』

 

大変......?

魔王様のことか。

 

『ねぇ、サケノミ。サケノミは.....魔王様の手下じゃないよね....?』

 

『発信器を目玉焼きに入れたりしてないよね.....?』

 

『するわけないでしょ‼︎そんなこと‼︎そもそも私は、魔王様の大アンチだからね‼︎』

 

笑いながらサケノミはそう言った。

相変わらずでよかった。

やっぱり、親友が裏切ったりするはずない。

私たち2人は、永遠に親友なんだ。

 

『ふふっ、また今度、一緒にお酒飲もうね。』

 

『もちろん!スト○ングゼロいっぱい用意しといてよ!』

 

『うん!じゃあね!』

 

 

そう言って私は笑顔で電話を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、

その笑顔はすぐに消えた。

 

「..........何?」

 

私の前に人影。

その人影を私は強く睨んだ。

 

「どこから聞いてたかは知らないけど、

私とサケノミは親友だから。両方が思い合ってる。」

 

私の前に立っているのは、

ノゾキマだ。

 

私はノゾキマに誇らしげな顔して言った。

ノゾキマは下を向いている。

謝るつもりか。

 

今なら許してやってもいい。

 

「謝るなら下向いてないでさっさと謝れば?」

 

返事はない。

ただ下を向いて立っているだけ。

私はその態度にムカつき始めた。

早く謝れ。何でずっと黙ってる。

 

「ねぇ聞いてる⁉︎」

 

私は強い口調で言った。

しかし、返事はなく、沈黙だけが広がった。

 

ポタッ、

ノゾキマの目から、水が落ちた。

泣けばいいとでも思っているのか。

私は床に落ちたその涙を見た。

........赤い......?

 

 

こ、これは涙じゃない‼︎

 

ガッ!

私はノゾキマの髪を掴み、

前を向かせた。

 

 

はっ.........⁉︎

ど、どういうこと.........⁉︎

 

 

ノゾキマの顔は、

目が抉り取られて空洞になり、

顔一面に血がベットリとついている。

 

ドサッ、

ノゾキマが倒れた。

 

な、何が起きてるんだ......⁉︎

何があったんだ.......⁉︎

 

「ノ、ノゾキマちゃん⁉︎」

 

ノゾキマの顔をよく見ると、

歯は全て抜かれて、舌も切られていた。

 

息をしていない。

し、死んでる.......‼︎

 

ガチャッ、

扉が開いた。

 

「っ‼︎キャ、キャーーーーーーー‼︎」

 

椎葉ちゃんの悲鳴が家中に響いた。

ち、違うんだ‼︎椎葉ちゃん‼︎

 

「わ、私が殺したんじゃない‼︎信じて椎葉ちゃん‼︎」

 

「ち、近寄らないで‼︎来ないで‼︎」

 

そう言って椎葉ちゃんは、その場から逃げ出した。

な、何でこんなことに.........。

私は膝から崩れ落ちた。

 

 

椎葉ちゃんからの信頼を失ってしまった。

何もかも失った......。

魔王様からの信頼も、ノゾキマも.........。

 

「うっ、うわぁぁぁぁぁん‼︎」

 

私は涙を流し、泣き叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日から、

椎葉ちゃんは私を無視するようになった。

見えていないわけではない。

見ていないんだ。

 

「し、椎葉ちゃん........。」

 

「.................。」

 

私が喋りかけても、

椎葉ちゃんは振り向きもしてくれない。

 

そりゃ、そうだよな........。

早く.......椎葉ちゃんに本当の事を話さなきゃ......。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日。

 

椎葉ちゃんに無視されるようになってから、

3週間ほど経過した。

 

リビングのテーブルに一枚の紙が置かれていた。

その紙には、大量の数字が書かれている。

そして、たくさんのマンションの写真が載ってる。

付箋のようなものが貼ってあった。

ーーーーーーーーーーー

今週水曜日

ーーーーーーーーーーー

 

今日は火曜日

ま、まさか........‼︎

引っ越すつもりじゃ‼︎

 

「し、椎葉ちゃん‼︎」

 

私は大声で椎葉ちゃんを呼んだ。

椎葉ちゃんにここを離れてもらうと困る‼︎

 

私は急いで椎葉ちゃんを探す。

 

どこにもいない‼︎

寝室、自室、風呂場、どこにも椎葉ちゃんの姿は見当たらない。

どこに行ったんだ........。

 

ガチャッ、

玄関の扉が開いた。

 

し、椎葉ちゃんが帰ってきた⁉︎

私は走って玄関まで飛び出した。

 

「椎葉ちゃん‼︎あ、」

 

「ん?どしたん、ホーちゃん。」

 

サケノミか.........。

私は何故か、涙が溢れ出してきた。

何かが堪えられなくなった。

 

「どどど、どうしたの⁉︎ホーちゃん⁉︎」

 

サケノミが心配そうな顔で私を見る。

バッ‼︎

私はサケノミに抱きついた。

 

「お、おお。」

 

「さ、サケノミ.........っ‼︎」

 

「ん、..........よしよし。」

 

サッ、

サケノミが私の頭を撫でる。

涙が止まり始めた。

サケノミの優しさに包まれて、体中が暖かくなった。

 

「ね、ねぇ.......サケノミ。」

 

「うーん?どうしたの?」

 

「わ、私.........どうしたらいいんだろう........。」

 

私はサケノミに問いかけた。

自分では何も考えられなくなっていた。

 

私は、

今までのことを全てサケノミに話した。

ノゾキマの死に、涙を流した。

そして、

椎葉ちゃんに無視されるようになったこと、

引越しをしようとしていることも話した。

 

「ど、どうしたらいいのかな..........。」

 

「うーん、落ち着いて話をしたらいいんじゃない?」

 

「椎葉ちゃんも、悪い子ではないからちゃんと聞いてくれるよ!」

 

「そ、そうだよね!」

 

少し、安心した。

そして、その日の夜。

私は椎葉ちゃんと寝室で全てを話すことにした。

 

 

 

つづく



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第10話 過去

椎葉朱莉の不思議な日常 第10話


「.........何、話って。」

 

冷たい口調で椎葉ちゃんがそう言った。

私は誤解を解くために、喋りだした。

 

「ノ、ノゾキマちゃんのことだけど.......

殺したのは私じゃないの‼︎それだけは信じて‼︎」

 

私にも、

ノゾキマが誰に殺されたのかは分からない。

 

「..............信じて......くれないかな.......?」

 

「.......信じる。」

 

その言葉を聞いた瞬間、

私は何かから解放された気がした。

やっと誤解が解けた。

 

「本当に⁉︎」

 

「あ、あのさ......。」

 

喜ぶ私の声を遮るように、

椎葉ちゃんが喋りだした。

 

「な、何?」

 

「夏樹ちゃんって知ってる?」

 

夏樹ちゃん......?

そういえば、妖怪が見えるようになったって、妖怪の世界で噂になってた気が.......。

 

「妖怪が見える子.......?」

 

「うん。その夏樹ちゃんがね、ホウキに会いたいんだって。」

 

夏樹ちゃんが......?

確か、あの子の所にはゾウキンが居たはず.....。

私はあいつが嫌いだ。

大が付くほどの嫌いだ。

見るだけで虫唾が走る。

 

「な、何で......?」

 

「なんかホウキに話したいことがあるらしいよ。」

 

私に話したいこと......?

顔も見たことないのに.....?

 

「話したいこと.......?」

 

「今週の水曜日、明日。水辺公園で待っててほしいって。」

 

っ‼︎

今週の水曜日で思い出した‼︎

引越しを止めないと‼︎

 

「椎葉ちゃん‼︎引越しのことだけど‼︎」

 

私は椎葉ちゃんに詰め寄って言った。

ここから引っ越されると、大変なことになる。

 

「引越し......?何のこと?」

 

「テ、テーブルに不動産屋のチラシが置いてたから‼︎」

 

「あ、あれ?あれは友達が引っ越すから住所の確認のために。」

 

そ、そうなんだ.....。

私は安心した。

椎葉ちゃんは引っ越す気は全くないらしい。

ところで......、

 

「椎葉ちゃん友達いたの?」

 

「なっ‼︎私にも友達の1人や2人ぐらい居るよ‼︎」

 

椎葉ちゃんがそう言った瞬間、

私は今までの楽しかった日常が戻ってきた気がした。

いや、戻ってきてはないんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノゾキマが何故殺されたのかも分かっていない。

そもそも、殺されたのかどうかすらも分からない。

近所を歩いている妖怪から、魔王様の手下が人間界に降りてきているとの噂を聞いた。

私の逃げ道はどんどん狭まっているんだ。

そのうち、この家も見つかりそうだ。

そうなってしまったら........、

 

私は命を賭けてでも椎葉ちゃんを守り抜く。

 

 

そして、

次の日。

私は警戒しながら家を出た。

 

水辺公園までは、

かなりの距離がある。

 

誰がいつ、

私のことを捕まえようとするか分からない。

魔王の手下がウロウロしているかもしれない。

私はマスクにフードを被り、サングラスをかけて完全に顔が見えなくした。

まるで街を歩く芸能人のような格好に。

 

周りを歩く妖怪たちが二度見をしていく。

ていうか、普通に暑い。

気づけば、私の体中が汗でびしょびしょになっていた。

 

「はぁ........はぁ........。」

 

妖怪だって汗をかく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

水辺公園に着いた。

私の服は汗でびしょびしょだ。

 

夏樹ちゃんを探す。

 

あっ‼︎

あのベンチに座っているのが夏樹ちゃんか......?

誰かを探しているような動きをしている。

 

「な、夏樹ちゃん!」

 

「っ!あ、ホウキさん!」

 

当たってた。

私は夏樹ちゃんの横に座った。

 

「で、で、何?話って......。」

 

「あ、朱莉さんの事なんですけど......。」

 

そう言って、

夏樹ちゃんは椎葉ちゃんの事について話し始めた。

ほとんど知っている話だった。

 

そして、

最後の話。

椎葉ちゃんの過去を教えてくれるらしい。

 

「この話は誰にも言わないでほしいんですけど.......。」

 

「う、うん......。」

 

 

 

 

 

 

 

「朱莉さんは過去に、何度も自殺未遂を繰り返していたんです。」

 

じ、自殺......⁉︎

 

「えっ.......⁉︎」

 

「朱莉さんが今の家に引っ越す前、私たちと一緒に暮らしていた時の話です。

 

朱莉さんは、元々働いていた職場でいじめに遭い、退職し、

自暴自棄になりました。

朱莉さんのスマホの検索履歴には、自殺に関するワードがいくつもありました。

 

 

目の前で首を包丁で切ろうとしたり、突然泣き叫んでは笑い出したり、とにかく狂気じみた行動を取るようになりました。

 

私の母、朱莉さんにとっての姉は、

朱莉さんのことを心配して、幾つもの精神病院に連れて行きました。

しかし、そのたびに朱莉さんは暴れ狂い、手に負えないほどになりました。

 

見かねた姉は、朱莉さんを一軒家に移住させました。

事あるごとに暴れ狂う朱莉さんと一緒にいたくなかったんだと思います。

 

そして、朱莉さんを移住させた後、姉は、朱莉さんの頭をパイプで殴りました。

記憶を失わせるためです。

頭を強く打たせて、記憶を失わせようとしました。

 

結果。

 

成功しました。

 

無事、朱莉さんは記憶を失いました。

記憶を失った代償に、妖怪が見えるなどの意味のわからない言動をするようになりました。

まぁ、私も見えるようになるんですけど。

 

 

朱莉さんの記憶を失わせたのは、姉なんです。

姉が朱莉さんの頭をパイプで殴ったんです。

 

私の話は終わりです。

 

もう一度言いますが、

この事は誰にも話さないでください。

あなたと私、朱莉さんの姉だけの秘密です。」

 

夏樹ちゃんの話が終わった。

椎葉ちゃんにそんな過去が.......。

記憶を失わせたのが姉だということは知っていた。

でも、狂っていた話は初めて聞いた。

 

「い、言ったらどうなるの.......?」

 

「朱莉さんが大変なことになるかもしれません。」

 

大変なこと........?

とにかく、誰にも話してはいけないことなんだろう。

 

「わ、分かったよ‼︎絶対に、誰にも話さない‼︎」

 

「お願いします。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰り道。

 

 

.........前から歩いてくる妖怪が、私のことをジロジロ見ている。

私は早足で前に出ようとした。

 

「あ、あいつは‼︎」

 

突然、妖怪が声を上げた。

ま、まさか‼︎

魔王様の手下か⁉︎

 

「待て‼︎ホウキ女‼︎」

 

やはり‼︎

 

「メレディクションチュリ‼︎」

 

ドン‼︎

私は手下に向かって妖術を放った。

しかし、間一髪、避けられてしまった。

 

「なっ⁉︎」

 

「アタシェ‼︎」

 

シュルッ‼︎

手下の声とともに、

紫色の鎖のようなものが私を縛った。

 

まずい‼︎

反撃をしようとするも、

何故か力が入らない。

このままでは、つかま.........。

 

 

 

 

 

 

 

私は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

つづく



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

過去編
第11話 いじめ


椎葉朱莉の不思議な日常 第11話


「椎葉、これお願いできる?」

 

「あ、は、はい。」

 

私は上司から仕事を受け取った。

本当は、断りたい。

断って、早く帰りたい。

そして、姪っ子と遊びたい。

 

「あ、そうそう、椎葉!」

 

っ、

早くどっか行ってよ......。

 

「は、はい......。」

 

「今日、飲み会があるんだけど、来る?」

 

飲み会........。

私は毎回そこで酷い目に遭わされる。

断る勇気がない。

 

「.......。」

 

でも、ここはハッキリ言うしか‼︎

きっと分かってくれるはず‼︎

 

「す、すいません.........私今日用事があって、」

 

「は?いやw、せっかく誘ってあげてんのに何?」

 

えっ.......。

 

「来ないとでも言うの?」

 

「あ、いや、そんなわけじゃ......。」

 

「じゃあ決まりだね!行くとき声かけるから!」

 

行くことになってしまった。

はぁ.......。

 

ドン!

 

っ⁉︎

 

「お前は無能な社員なんだってことに早く気づけ.....‼︎」

 

耳打ちされた言葉に、

私は傷ついた。

 

 

チッ、

何なんだよあのクソ上司‼︎

強制的に参加させるなら聞くな‼︎

 

大体、

私のことを無能とか言うけど、お前が仕事してるの、私は見たことない‼︎

美人な後輩女ばっかりに喋りやがって‼︎

そのせいで最近あいつらが調子に乗り出してる‼︎

たいして可愛くないくせに‼︎

 

こんな会社、辞めてやる‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぁ......、

それが出来ればやってるか......。

 

大した学歴を持ってない私を受け入れてくれる会社なんてそう見つからない。

それに、姪っ子の養育費まで払わないといけない。

姉の収入じゃ足りないんだ。

1人じゃ満足に生活できてないらしい。

 

 

あぁ........、

彼氏がほしいぃ.......。

私の愚痴を理解してくれる、彼氏がいればなぁ......。

 

 

「真紀子ちゃーん、可愛いねー!」

 

っ、

今日もクソ上司は女に手を出す。

それしか能が無いんだろう。

それのためだけに会社に来てるんだろう。

 

「どうせ私は可愛くないですよー.......。」

 

私は独り言を言った。

あんな上司に媚びばっかり売ってる女より、私の方がよっぽど可愛いに決まってる‼︎

 

あぁ........あんな女になりたい‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仕事が終わった。

しかし、

まだ私には上司たちとの飲み会というこの世で1番辛い仕事が残っている。

 

私は、黙って上司たちについて行った。

そして、居酒屋の中に入った。

 

 

「椎葉は何にする?」

 

どうせ頼んでくれないくせに、

クソ上司が私に聞いた。

 

「あ、じゃあ、」

 

「ビール3つで!」

 

勝手に決めんな。

まだ何も言ってない。

 

 

 

 

ビールが運ばれてきた。

 

「じゃ、かんぱ〜い‼︎」

 

今日一日女と喋ってるだけの上司が乾杯の音頭をとった。

 

「か、かんぱい.......。」

 

 

1時間後、

珍しく、何も起きずに飲み会が進む。

いつもなら酷い目に遭わされている時間だ。

今のうちに.......。

 

「あ、あの........姪っ子が家で待ってるんで......帰ってもいいですか.......?」

 

「は?」

 

だ、ダメか.......?

クソ上司が私に詰め寄る。

嫌な予感がする。

 

「今、空気が悪くなったんだけど、どうしてくれるの?」

 

「え、い、いや.....。」

 

「みんな!椎葉を押さえて!」

 

やばい。

これから酷い目に遭わされるんだ。

私は媚び女に両腕を押さえられた。

私の目の前には、湯気をだす大根がある。

食わされるんだ.......。

私は必死で抵抗をする。

 

「い、嫌だ‼︎離してください‼︎」

 

湯気をだす大根が、口元まで近づく。

私は覚悟を決めて口を開いた。

 

ジュッ、

っ⁉︎

 

「ひっ⁉︎」

 

案の定、

私は熱さに耐えきれず、大根を吐き出した。

 

「うわっ!汚なーい!」

 

バカ女の声が聞こえる。

私は水をガブ飲みする。

 

「はぁ、はぁ、」

 

「ほら、落としたもの食えよ‼︎」

 

クソ上司が髪を掴んで、落とした大根を食わそうとする。

 

「い、痛っ‼︎食べます‼︎食べますから離して‼︎」

 

パクッ、

まだ大根には熱がこもっていた。

私は熱いのを我慢し、飲み込んだ。

 

「よくできました!ご褒美だよ。」

 

バシャッ‼︎

 

っ⁉︎

あ、熱い‼︎熱い‼︎

おでんの汁を浴びせられた。

 

体中が熱さで痛い‼︎

 

「わー、かわいそー!」

 

「椎葉さん!頑張って!」

 

「あっ‼︎あああああづい‼︎あづい‼︎」

 

私は叫びながら転がり回った。

耐えられない‼︎体中がとてつもなく痛い‼︎

助けて‼︎誰か助けて‼︎

 

「よし、もう時間も時間だし、帰るか。」

 

「そうですね!」

 

はっ⁉︎

帰るな‼︎このままにして帰るな‼︎

 

「椎葉、会計頼んだぞ。」

 

そ、そんな........。

私は熱さに耐えながら、領収書を手にした。

 

ーーーーーーーーーーーー

56000円

ーーーーーーーーーーーー

 

「..........チッ、ふざけるな‼︎」

 

ビリッ、

私はその領収書をビリビリに破いた。

こんな会社、辞めてやる‼︎

姪っ子の養育費なんてどうでもいい‼︎私の精神が壊れるだけだ‼︎

この会社を辞めたあと、全員皆殺しにしてやる‼︎

あのクソ上司、バカ媚び売り女‼︎

全員、殺してやる‼︎

 

「はぁ、はぁ、..........全員、死んでしまえ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は何とか5万6000円の会計を済まし、

家へ帰宅した。

 

「おかえりなさい。朱莉さん。」

 

姪っ子の夏樹ちゃんが出迎える。

今は誰とも話したくない。

 

「..........悪いけど、君がどうなっても私は知らないから。」

 

「えっ、えっ?」

 

「どういうことですか⁉︎あ、あと、何でびしょぬれなんですか⁉︎」

 

「..........。」

 

私は無言で自分の部屋に戻った。

そして、クソ上司どもを殺害する計画を考える。

 

会社で出待ちして、1人ずつ殺す?

ダメだ、すぐにバレてしまう。

毒薬を飲ませる?

何かスッキリしない。

 

ていうか、警察に捕まって終わるか.....。

 

はぁ.......、

デス○ートでもあればいいのに......。

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日。

 

 

 

私はいつもより早く会社についた。

早く、このクソ会社を辞めたい。

 

「お、椎葉、早いな。」

 

来るのだけは早いクソ上司が絡んでくる。

 

「なぁ、頼むよー、この仕事やっといてくれないか?」

 

「残念ですが、私は今日限りでここを辞めさせていただきます。」

 

「えっ⁉︎ど、どういうことだよ‼︎」

 

「どうもこうもありません。さようなら。」

 

そして、

私は名前も知らない偉い人に退職届を提出し、

会社を出た。

 

やった‼︎

これで私は自由だ‼︎やった‼︎

もう、酷い目に遭わずに済むんだ‼︎

 

「やった‼︎」

 

バイバイクソ上司‼︎バイバイ媚び売り女‼︎

私は自由だ‼︎

もう誰も私をいじめない‼︎

あとは.......、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「琴音、大事な話があるの。」

 

私は琴音と2人きりでリビングの椅子に座った。

会社を辞めた事を報告する。

 

「何?朱莉。」

 

「私........会社を辞めた。」

 

琴音は少し驚いた顔をした後、

真剣な目で私を見る。

 

「そ、そうなんだ......。」

 

「次の就職先は決まってるの?」

 

次の、就職先.......?

何言ってるの?

 

「もう、仕事はしない。」

 

私は仕事をする気なんて全くない。

もう誰がどうなってもどうでもいい。

琴音なら、私の苦しみを分かってくれるはず。

 

 

 

 

 

「は?どういうつもり?」

 

え........?

琴音......?

 

「夏樹の養育費はどうするの⁉︎」

 

「し、知らないよ‼︎琴音が今以上に仕事すればいいでしょ‼︎」

 

「私より楽な職場でしょ‼︎」

 

「ら、楽なって‼︎仕事内容は朱莉の方が楽じゃない‼︎」

 

どうやら琴音は私のことを受け入れてくれないみたい。

私の苦しみを知らないんだ。

 

「あのさ‼︎私があの職場でどれほど苦しんだか知ってる⁉︎」

 

「知らないよ‼︎それと仕事しないは違うでしょ‼︎」

 

あぁ.......頭が痛い。

何もかも、破壊したい。

暴れ狂ってしまいたい。

 

「ねぇ、聞いてるの⁉︎朱莉⁉︎」

 

「黙れ‼︎」

 

ドン‼︎パリン‼︎

そう言って私は近くにあった皿を叩き割った。

 

「私の苦しみなんて何も分からないくせに‼︎」

 

もう何も考えられない。

私はとにかく暴れ狂った。

 

「お、落ち着いて‼︎朱莉‼︎」

 

「はぁ、はぁ、........っ‼︎」

 

私はリビングを飛び出し、

自分の部屋に閉じこもった。

 

「は、ハッハッハッハッハッ‼︎」

 

私は狂ったような笑い声をあげた。

しかし、

 

「あ、あれ........?」

 

何故か、涙が出てくる。

おかしいなぁ.......。

涙が止まらない。

私は全然悲しくないのに.....。

 

っ‼︎

窓の奥に視線を感じた。

誰かが見てる.....⁉︎

 

また私のことをいじめようとしてる?

なんで?なんでそんなことをするの?

 

「ねぇ、いるんでしょ?」

 

へん事してよ。

きこえてるんでしょ?

わたしのことみてるんでしょ?

 

なんでへんじしてくれないの?

わたしのことをむししていじめるき?

 

ひどいな。ひどいよ。

なかよくしようよ。いじめてないで。

いじめないで。

 

 

 

 

 

 

 

 

何日か後。

 

わたしは完ぜんにじ由になれた。

だれも、わたしのことを気にかけなくなった。

 

ことねちゃんがわたしを病いんにつれていったりして、いじわるしてくるの。

そのたびに、わたしはあばれて、いやがるの。

だれだって病いんはきらいだよね。

 

 

ある日、わたしはことねちゃんに大じな話があるってよびだされた。

 

「朱莉、相談があるの。」

 

「なぁに?ことねちゃん。」

 

 

 

ええ?

 

 

 

 

 

 

 

1ヶ月後。

 

わぁ、すごく大きい家!

 

「ほんとうにいいの⁉︎」

 

「うん、今日からここが、朱莉のお家だよ!」

 

わたしはおひっこしをすることになった。

ことねちゃんにすすめられて。

 

あれ?

でも、ことねちゃん、お金ないんじゃ........。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.........ごめんね。朱莉。」

 

なんであやま、

ガン‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピリリリ、ピリリリ、

 

スマホのアラームで、私は目が覚めた。

季節は春。

庭には綺麗な桜が咲いている。

 

「ふわぁ〜.......。」

 

私は大きなあくびを一つした。

何もやる気が起きない。

それに、

何故か昨日までの記憶が一切ない。

 

 

 

 

 

つづく



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第12話 裏切り

椎葉朱莉の不思議な日常 第12話


私は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

んぅ.........。

私は目覚めた。

手首のあたりが冷たい。

そして、動かない。

 

私は十字架の柱に拘束されていた。

 

 

どうやらこの十字架の柱は、妖力を吸収する力を持っているみたい。妖術が使えない。

 

ここはどこかの倉庫のようだ。

私は魔王様の手下に捕らえられた。

 

「.............‼︎」

 

ガン!

私は力いっぱいに、私を繋いでいる鎖を引きちぎろうとした。

妖術が使えなくても、パワーは人間の倍ある。

ガン‼︎ガン‼︎

チッ、なかなかちぎれない。

 

キィィィィ........。

 

鉄の重い扉が開く音がした。

私は動きを止めた。

中から、小さい妖怪が入ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノ、ノゾキマ.......⁉︎

その妖怪は、ノゾキマだった。

死んだはずのノゾキマが、今ここにいる。

 

「久しぶり。ホウキ。」

 

見下すような声で私に言う。

その目、私はノゾキマのその目が大嫌いだ。

 

「死んだと思ってたのに、生きてたんだ。」

 

「私は死なない。不老不死、誰に何をされても死なないんだ。」

 

「何でこんなことをするんだ!早く解放してほしい。」

 

ノゾキマの顔を見る限り、

解放する気はなさそうだ。

 

「さっき、椎葉の姪の夏樹と何か話していたようだが、夏樹から何を聞いた?」

 

「言ったら、解放してくれるのか?」

 

「約束する。」

 

「あ、」

 

っ‼︎

私は口を開きかけた。

夏樹ちゃんに誰にも言わないでと言われていた。

私は口を閉じた。

 

「.......さぁ、早く、早く言いなよ。」

 

「残念だけど、教えるつもりはない。」

 

私はキッパリと断った。

椎葉ちゃんを守るため。

 

「そう。じゃあ泣かしてまででも聞き出してやる‼︎」

 

ノゾキマの目の色が変わった。

赤く血が滲むような目。

今にも襲いかかってきそうな目。

 

「あ、そうそう、私を殺したのは誰か知ってる?」

 

知らない。

私はそう答えた。

 

「.........お前だよ、ホウキ。」

 

 

.......え?

私が.....ノゾキマを殺した?

ど、どう言うことだ......?

私はノゾキマを殺した覚えなんて全くない‼︎

 

「はっ⁉︎な、何を言ってるんだ‼︎」

 

「覚えてないのかなー?

あ、そっか、誰かに記憶を消されたんだ?」

 

記憶を消された.......?

誰が......そんなこと。

 

「ど、どういうこと⁉︎」

 

「私が知っているのはあんたが私を殺したことだけ、

それ以外は何も知らない。

ま、記憶を消された覚えがないなら、

 

誰かとの電話中に記憶を吸い取られたんじゃない?」

 

 

っ‼︎

それがもしそうなら、

私の記憶を吸い取ったのは、サケノミ.....?

 

「サ、サケノミが私の........?」

 

「さぁ、どうだろうね。」

 

 

 

 

 

 

「ちなみにもう一度聞くけど、本当に話さないんだな?」

 

何回聞いても答えは同じ。

話さない。

 

「当たり前でしょ。」

 

私は椎葉ちゃんを守る。

私がそう言うと、ノゾキマは私の服を脱がす。

性的な拷問でもするつもりか。

それでも私は屈しない。

 

「あんたがこんなエロガキだとは思わなかったよ。」

 

「っ‼︎別にレイプするわけじゃない‼︎」

 

どうやら電気拷問をするみたいだ。

そんなの、痛くも痒くもない。

 

「吐くまで続けてやる。」

 

そう言ってノゾキマはレバーを下ろした。

ガン‼︎

私の体中に電流が流れる。

大したことないな。

 

「それで私が吐くとでも?」

 

「フッ、まだ弱だよ。」

 

ガシャン‼︎

『強』

 

 

『弱』より何倍もの強い電流が流れる。

い、痛い‼︎体中が痺れる‼︎

全身が痛い‼︎

 

「うっ、........っ‼︎」

 

「さすがに苦しいかな?

人間なら死んでる強さだからな。」

 

こ、このままでは気絶してしまう.....‼︎

 

「さ、下げろ‼︎下げろ‼︎」

 

「あれ?さっきまでの余裕は?」

 

ノゾキマは舐めた目で私を見る。

クソッ、妖術が使えれば......‼︎

 

「そんなにお願いするなら下げてあげるよ。」

 

ガシャン‼︎

電流が止まった。

 

「はぁ、はぁ........。」

 

ガシャン‼︎

 

っ⁉︎

『極強』

 

とてつもない量の電流が私を襲う。

下げてあげるって.......そういうことじゃない‼︎

 

「ぐあっ‼︎ゔぁぁぁぁぁ‼︎」

 

し、死ぬ‼︎

死んでしまう‼︎

 

「早く言えよ。そしたら助かるぞ?」

 

い、言うわけない.....‼︎

し、椎葉ちゃんを守るんだ......‼︎

 

「ぐっ、言わない......‼︎何度聞かれても言わない‼︎」

 

「今すぐこの鎖ごと引きちぎってやる‼︎」

 

そして、

私は再び、鎖を引きちぎろうとした。

精一杯の力を振り絞る。

 

「生意気なことを言うな‼︎この裏切り者‼︎」

 

ガシャン‼︎

電流が止まった。

 

「はぁ、はぁ、」

 

「本当はお前も寂しかったんだろ?」

 

え.......?

 

「他の妖怪から聞いたよ。ホウキ、お前は6歳から劣悪な孤児院に居たんだろ?」

 

だ、誰からそれを.....‼︎

ノゾキマが言う通り、私は6歳のとき両親を殺されて、ずっと劣悪な孤児院に居た。

食べ物も十分に与えられず、職員からの暴力も絶えない。

 

「だ、誰からそれを聞いた‼︎」

 

「お前のことをよく知る妖怪だよ。」

 

サケノミ.....⁉︎

 

「私もそうだよ。私も劣悪な孤児院で過ごしたんだ。」

 

「あ、あんたも........?」

 

「同じ過去を持つ者同士.........情報を共有しあおうじゃないか。」

 

ノゾキマは私に顔を近づけて言った。

情報を共有........?馬鹿らしい。

何が同じ過去を持つ同士だ。

お前と私は違う。

 

「悪いけど、あんたの髪の毛臭いから離れてくれる?」

 

「っ‼︎んだと‼︎」

 

ノゾキマの声が変わった瞬間、

光の球のようなものが、ノゾキマに命中した。

ピュン‼︎

 

「ホーちゃん‼︎」

 

「ホウキ‼︎」

 

サケノミ‼︎

椎葉ちゃんも‼︎

助けに来てくれたんだ‼︎

 

「サケノミは相変わらず妖術が下手くそだ。

こんなんじゃ、かすり傷にもならない。」

 

「それでいいんだよ。催眠妖術だから‼︎」

 

パチン!

そう言ってサケノミは指を鳴らした。

 

「なっ‼︎.............。」

 

バタッ、

ノゾキマは倒れた。

眠ってしまった。

 

「今、解いてあげるからね!」

 

「あ、ありがとう!2人とも!」

 

私はふと、椎葉ちゃんの顔を見た。

真っ赤っかだ。

ま、まさか、私の裸を見て....⁉︎

 

「な、なんで裸なの........?」

 

「サ、サケノミ‼︎解くのは後でいいから、早く服を着せて‼︎」

 

「あ、え?別にそのままでいいでしょ?」

 

「良くない‼︎」

 

 

 

 

つづく



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第13話 孤児院

椎葉朱莉の不思議な日常 第13話


18年前。

当時6歳の私は、優しい両親と幸せに暮らしていた。

ちょっとおっちょこちょいの母と、カッコいい父。

私は両親が大好きだった。

 

「パパ!」

 

「どうしたんだい?」

 

「このお人形さんに穴が空いちゃったから縫って!」

 

私には大切にしている人形があった。

1歳の誕生日に買ってもらった小さな人形。

私は毎日この人形と一緒に寝ていた。

 

「パパに出来るかなぁ〜......。」

 

「ママじゃ絶対に失敗するから!」

 

「何よ!失礼ね〜!」

 

 

 

 

私は4月から小学生になった。

仲の良い友達と一緒に。

 

優しい先生と、仲の良い友達に囲まれながら、楽しい学校生活を送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが、ずっと続くはずだった。

 

ある日。

 

 

ピンポーン、

誰かが家のチャイムを鳴らした。

 

友達のレイナちゃんかな⁉︎

私はこの日、友達のレイナちゃんと遊ぶ約束をしていた。

 

「誰か来たな......。」

 

「レイナちゃんだよ!きっと!」

 

 

ガチャッ、

 

「はーい.........っ‼︎」

 

「全員そこから動くな。」

 

玄関の扉から入ってきたのは、

ガタイのいい銃を持った男3人。

 

だれ......?

このおじさんたち.....。

銃.......持ってる.....?

 

「ど、どちら様で......⁉︎」

 

「動くなと言っている‼︎」

 

おじさんたちは土足で家に上がり込む。

玄関には土がついてしまった。

 

「入ってこないでよ‼︎おじさんたち誰⁉︎」

 

「ホウキ‼︎」

 

お母さんに口を押さえられた。

喋ってはいけないらしい。

 

「生意気なことを言うガキだな。

おじさんたちは悪い人なんだよ。」

 

悪い人.......?

私は急に怖くなった。

 

「全員そこから動いたらぶち殺す‼︎」

 

そう言って悪いおじさんたちは、

家の中の物を物色する。

お金盗む気じゃ.....‼︎

 

「ん?何だこれ。」

 

そ、それは‼︎

お父さんが大事にしている宝石‼︎

 

「20年前、母から貰ったお守りです.......。」

 

「こりゃ、高く売れそうだな。」

 

「これ、貰ってくぞ!」

 

「ダ、ダメ‼︎」

 

私は声を大にして言った。

その場から動いてしまった。

 

「ホ、ホウキ‼︎」

 

バァァァァン‼︎

家の中に銃声が響いた。

私はこの時初めて銃声を聞いた。

 

「動くなつったよな?

テメェら全員皆殺しだ‼︎」

 

3人の悪いおじさんが銃を私たち3人に向けた。

殺される......‼︎

 

「に、逃げなさいホウキ‼︎」

 

「えっ⁉︎」

 

「早く‼︎」

 

バァァァァン‼︎

私は銃声から離れるように逃げた。

「早く‼︎」

この言葉が私が聞いた両親の最後の言葉だった。

 

 

私は恐怖で震えながら、

屋根裏に隠れた。

見つかったら、殺される......‼︎

銃声は聞こえなくなっていた。

そして、

悪いおじさんたちが私を探す音が聞こえる。

 

「チッ、どこに隠れやがった。」

 

お、お願い.......‼︎

来ないで.....‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

音は聞こえなくなった。

居なくなった......?

 

私は屋根裏から降りた、両親たちがいるリビングに向かった。

私はそこで、強いトラウマを植え付けられることになる。

 

「ママ.........パパ..........?」

 

両親は頭から血を流して倒れていた。

テーブルにあったお皿はぐちゃぐちゃにされ、

窓も割られていた。

 

「うっ........うわぁぁぁぁん‼︎」

 

私は声を上げて泣き叫んだ。

自分のせいで、両親が殺されてしまった。

 

 

パパ、ママ、私はこれからどうしたらいいの.......?

どうして生きていけばいいの.....?

パパとママが居ないなんて嫌だ.......‼︎

 

「っ.........?」

 

父の死体の近くに一枚の紙が落ちていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

親戚を頼りなさい

ーーーーーーーーーーーーーー

 

遠く離れた街に、親戚のおじさんがいる。

しばらく会っていないおじさん。

 

 

私は両親の死体の横で寝た。

 

 

 

 

 

 

 

次の日。

 

私は家族写真と食料などをリュックに入れ、

両親に別れを言い、家を出発して親戚のおじさんの家に向かった。

 

妖怪の世界には電車などはなく、歩いて行くしかない。

私は3日かけて親戚のおじさんの家にたどり着いた。

 

ピンポーン、

家のチャイムを鳴らした。

 

私はもう空腹の限界だった。

 

入れてもらったら、何か食べさせてもらおう。

ガチャッ、

 

「はーい。」

 

中から親戚のおじさんが出てきた。

親戚のおじさんは、私に気づいたみたい。

 

「おー、ホウキちゃんかい?」

 

「う、うん。」

 

「急にどうしたんだい?」

 

私は3日前に起きた事を全て話した。

話を進めて行くたびに親戚のおじさんの顔は変わっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

冷たい表情に。

 

「ふーん、両親が殺されたからおじさんを頼りに来たと?」

 

「う、うん。」

 

「悪いけど、おじさんは君を養うことは出来ないんだ。

帰ってくれ。」

 

えっ......⁉︎

そ、そんな......。

おじさんは玄関の扉を閉めようとした。

 

「ま、待って‼︎」

 

「ッチ、困ってるんだったら、近くにある孤児院にでも行けばいい。そこなら食べ物もあるし、生活も出来る。」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

孤児院

ーーーーーーーーーー

 

まだ漢字の読めない私は、

紙に書かれた文字を見て孤児院を探した。

 

「早く見つけないと.......もうお腹がペコペコ......。」

 

っ、

 

妖怪......

 

スッ、

ーーーーーーーーーー

孤児院

ーーーーーーーーーー

 

同じ文字だ‼︎

やっと孤児院を見つけた‼︎

 

 

私は助かったんだと思った。

この時だけは。

 

でも、

本当はここからが地獄の始まりだったんだ。

 

 

 

 

つづく

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第14話 脱出

椎葉朱莉の不思議な日常 第14話


私は親戚のおじさんに教えられた孤児院にたどり着いた。

 

 

「あー、君かい?話は聞いてるよ。」

 

「は、はい....。」

 

中から太ったおじさんが出てきた。

孤児院の職員さんかな?

優しそうな笑顔をしていた。

 

「さ、中に入って!」

 

「は、はい!」

 

パパ、ママ、

私はここで新しい生活を始めます。

そして、大人になったらパパとママのお墓を建てます。

それまで、私を見守っていてください。

 

 

ガシャン‼︎

入り口の門が大きな音を立てて閉じられた。

 

「っ‼︎びっくりした.......。」

 

「おい、さっさと歩け‼︎」

 

えっ.....?

おじさん.....?

おじさんの笑顔は消えていた。

怖い顔に豹変していた。

 

「聞こえないのか‼︎歩けと言っている‼︎」

 

ドカッ‼︎

 

「っ⁉︎」

 

私は頬を殴った。

 

痛い‼︎

何で急に怒りだして......っ‼︎

 

壁から少し顔を出して、

怯えた様子でこちらを見つめる女の子がいた。

 

まさか.......、

ここは怖い所なんじゃ....‼︎

 

私はすぐさま逃げ出そうとした。

しかし、おじさんにあっさり捕まった。

 

「チッ、ここに入った以上お前も俺たちの家族なんだ。たっぷりと教育してやんよ。」

 

な、何.....⁉︎教育って......‼︎

や、嫌だ‼︎離して‼︎嫌だ‼︎

 

「やめて‼︎離して‼︎」

 

「うるせえガキだな。口を塞いどけ。」

 

「ん〜っ‼︎」

 

口にガムテープを貼られた。

喋れなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おじさんに連れて行かれた場所は、

とても生活の出来るような場所ではなかった。

 

「え、え.......?」

 

おじさんに怯える子供達でいっぱいの部屋。

10人の子供たちが私を見ている。

 

「今日からお前たちの家族になる、

妖怪番号は619。みんな仲良くするように‼︎」

 

「は、はい......。」

 

「さぁ、行け‼︎」

 

バッ‼︎

 

「うわっ‼︎」

 

背中を押されて10人の子供たちの中に入っていった。

みんな、寂しそうな目で私を見ている。

 

怖い......。

こんな所.....嫌だ.....。

 

 

ママ、パパ、

私は騙されたみたい。

本当はここは怖い所だったみたい。

他の子供たちはみんな死んだ目をしている。

私が話しかけても、何も誰も答えてくれない。

見向きもしてくれない。

こんな所.......嫌だよ......。

早くママとパパに会いたい.....。

会えないのは分かってるけど......。

 

 

 

 

 

「お前ら全員飯の用意をしろ‼︎」

 

お昼ご飯の時間になったみたい。

さっきのおじさんが大きな鍋を持ってきた。

 

他の子供たちはみんなそれぞれの机に布をひいた。

何をしたらいいのか分からない私を尻目に。

 

「おい‼︎619‼︎早くしろ‼︎」

 

私はおじさんに怒鳴られた。

 

「な、何をしたらいいんでしょうか.......。」

 

「周りを見ろ‼︎机に布を敷くだけだ。グダグダ言わずにさっさとしろ‼︎」

 

ドン‼︎

 

「いっ‼︎」

 

おじさんに蹴られた。

あまりの痛みに涙が溢れた。

 

 

 

 

 

モグモグ.......。

あまり美味しくない。

もちろん口には出さない。

出したら殺されてしまうから。

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜。

 

私は10人が同時に寝る部屋で両親との家族写真を眺めていた。

この頃の楽しかった日々は、もう戻らない......。

そう思うと、涙が止まらなくなった。

ママとパパに、会いたい........‼︎

小学生になった姿を見せてあげたい.....‼︎

 

私は気づけば眠っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

10年後。

 

 

私の目は、他の子供たちと同じようになっていた。

体は、おじさんによって付けられた傷やあざでいっぱい。

入った時とは全く違う姿になっていた。

 

「コラ‼︎さっさと用意しろ‼︎」

 

ドン‼︎

今日もおじさんの暴力が絶えない。

もう何も感じなくなっていた。

 

 

そんな私が唯一、

入った時と同じように続けていたこと、

それは、

 

「ママ、パパ、私は元気だよ.......。」

 

毎日おじさんの目を盗んで、

家族写真と会話をすること。

 

これをしている時だけは、自分でいられる気がする。

 

ガラッ‼︎

っ‼︎

まずい‼︎

 

「........おい、619。何をしていた。」

 

「な、何もしていません.....‼︎」

 

バッ、

あっ‼︎

おじさんは家族写真を拾い上げた。

 

「フンッ、どうせ戻ってこない日常なんか捨てろ‼︎」

 

ビリッ‼︎

えっ.......。

や、やめろ‼︎

破らないで‼︎

 

「やめてください‼︎それは家族との大事なっ‼︎」

 

ドン‼︎

 

「うるせえな‼︎他のガキが起きんだろ‼︎」

 

「分かったならさっさと寝ろ‼︎」

 

そう言っておじさんは戻って行った。

 

そ、そんな.........。

家族との思い出は、粉々になって消えてしまった。

ママ........パパ........‼︎

 

溢れ出る涙を拭いながら、

私はある決意をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここから抜け出す。

 

このままでは私の精神が持たない....‼︎

壊れてしまう‼︎

 

「ね、ねぇ、みんな........聞いて‼︎」

 

私は同じように大きくなった10人の仲間たちに話しかけた。

赤信号、みんなで渡れば怖くない。

私は「10人全員でここから逃げ出そう」と言った。

 

「.........も、もし、見つかったらどうするの......?」

 

私の横で寝ていた子が言った。

 

「その時はその時だよ‼︎どうせこのままじゃ、精神が崩壊しちゃうだけだ‼︎」

 

10人なら、少なくとも5人は逃げ出せる。

 

「で、でも......怖いよ.....見つかったら何されるか.....。」

 

「そ、そうだよね.......殺されるかもしれないし.....。」

 

他の子たちも喋り出した。

しかし、否定的な意見ばかりだ。

 

「なら‼︎おじさんの寝込みを襲って、おじさんを殺してしまえばいいんだ‼︎」

 

「ええ⁉︎」

 

10人もいるんだ。

10対1で、負けるはずがない。

それに、おじさんを殺してしまえば確実にここから逃げ出せる。

 

「そ、そんなこと出来ないよ.......。」

 

「じゃあ、どうするの⁉︎ここに残るの⁉︎

ここに残って、おじさんの暴力を受け続けるの⁉︎」

 

「そ、それは嫌だけど........。」

 

「じゃあ、決まり‼︎明日の夜、3時。作戦決行‼︎」

 

私は半ば強引にみんなの協力を得ることができた。

明日の夜。私はおじさんをどう殺すか考える。

 

全員で殴り殺すか?

いや、私たちの力じゃそれは出来ない。

食べ物に毒を混ぜる?

その毒を何処で手に入れられる?無理だ。

 

考えているうちに、私は眠ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

そして、ついに作戦決行の午前3時に。

 

「ほ、本当にやるの.......?」

 

「やるの‼︎」

 

私たち10人は、

固まりながら、おじさんが寝ている寝室に向かう。

 

ギイイイ.......。

扉を軋ませながら開けた先には、

作戦通り、おじさんがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、作戦と違ったのは、

 

 

 

 

おじさんが起きていたこと。

 

 

 

「お前ら‼︎何で起きている‼︎」

 

や、やばい‼︎

 

「みんな逃げて‼︎」

 

私たち10人は、一斉に逃げ出した。

捕まったら殺されるかもしれない‼︎

私たちは精一杯の力を振り絞って走った。

 

おじさんは太っているため、すぐにバテた様子。

 

私たち10人は再び集まった。

 

「はぁ、はぁ、さっきは危なかったよ.......‼︎」

 

「でももう安心して、門の鍵を手に入れたの。

これでこの孤児院から抜け出せる‼︎」

 

「本当に⁉︎」

 

「うん‼︎」

 

私たち9人は門に向かった。

庭にある大きな門。

この門をくぐれば、この地獄の生活も終わる‼︎

 

「開けるよ、みんな!」

 

ガチャッ、

キイイイイ......。

 

扉が開いた。

私たち9人は一斉に走り出した。

 

やった‼︎

自由だ‼︎

私は、自由になれたんだ‼︎

 

 

ママ、パパ、

もう少し、待っていてください。

私はやっと、ここから抜け出せました。

あと、10年お待ち下さい。

そしたら、立派なお墓を建てます。

それまで待っていてください。

 

 

 

 

つづく



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第15話 魔王様

椎葉朱莉の不思議な日常 第15話


私は地獄から抜け出せた。

地獄の孤児院から。

 

 

 

「はぁ.......。」

 

とりあえず、人間界に行こう。

私は孤児院で人間の世界があることを知った。

人間界なら、私の姿は見えていないから、食べ物に困らないし、住む所にも困らない。

でもどうやって行けばいいんだ......?

 

ぐぅ......。

午前3時、町はもう暗くなってしまった。

開いてるお店は少なくなっていく。

私は空腹の限界だ。

 

 

こうなったら、

万引きするしかない.....‼︎

 

妖怪の世界でも、物を盗んだら犯罪だ。

そんなことは分かってる。

でも、このままでは確実に飢えてしまう。

 

 

私は近くにあったスーパーに目をつけた。

そして、窓からスーパーの構造を見る。

盗みやすそうな位置にあるお菓子コーナー。

お菓子か.......、いや、食べれれば何でもいい。

監視カメラにもギリ映らなさそうだ。

 

ウィーン

 

私は真っ先にお菓子コーナーに向かう。

そして、誰も見ていないのを確認して、服の袖に小さなお菓子を隠した。

 

よし、

あとは店から出るだけ‼︎

気づかれないように........っ‼︎

 

「キミ、さっきなんか隠してたよね?」

 

バ、バレた⁉︎

まずい.....。

でも、事情を話せば分かってくれるかも.....。

 

「す、すいません‼︎く、空腹の限界で......。」

 

「だからって、店の商品盗んだらダメだろ。ちょっとこっち来てもらおうか。」

 

私は事務室まで連れて行かれた。

 

どうやら事情を分かってくれたみたいで、

食べ物を食べさせてくれた。

 

「キミ、ご両親は何処に居るの?」

 

「りょ、両親は10年前に殺されて........。」

 

「そうか、それは大変だったね。

住む場所も無いのかい?」

 

「はい.....。」

 

「なら、魔王様の所を訪ねればいい。」

 

魔王様.......?

店員さんが言うには、

この世界で最も偉い人らしい。

 

「魔王様なら君を理解してくださるはずだよ。」

 

「や、優しい人ですか.....?」

 

「うーん、普段は温厚な方だよ。」

 

私は店員さんに魔王様の所を教えてもらい、

貰った食べ物を完食して、朝まで寝させてもらうことにした。

 

 

 

 

 

朝。

 

 

「本当に、ありがとうございました!」

 

「もう万引きはしちゃダメだよ。」

 

「は、はい、すいません!」

 

私は店員さんにお礼と謝罪をして、

魔王様がいる場所に向かう。

 

 

 

日差しが強い。

汗が噴き出してきた。

地図を頼りに歩いて魔王様がいる場所に向かう。

 

「はぁ、暑い........。」

 

 

 

 

 

 

私は何とか魔王様の所にたどり着いた。

門番が2人立っている。

 

「す、すいません.......。」

 

「何者だお前。」

 

私は門番に事情を話し、

中に入れてもらえることになった。

 

-誰だお前は-

 

「ホウキといいます......。」

 

-妖怪番号は?-

 

番号......?

っ、孤児院で呼ばれてた番号か.....?

 

「619です。」

 

-何の用だ-

 

私はさっきと同じように事情を話す。

分かってくれたような顔をしている。

 

-住む場所がないなら、ここで働くがいい-

 

「は、働く.......?」

 

私は働いたことがない。

そりゃ、6歳から10年間あの場所にいたから。

妖怪の世界では12歳から働く義務を課せられる。

働くことがどれぐらい大変なのかも分からない。

 

「ど、どんな仕事で......?」

 

-まずは簡単な仕事からだ-

 

 

 

その仕事というのは、地獄から取り寄せた死にたての人間の肉を引き裂き、調理するという仕事。

妖怪レストランで出される料理を作る。

 

最初はあまりのグロさに耐えきれず、

何度も吐き出したが、3年経てば何も感じなくなった。

 

私は今日も作業をするロボットのように、人間の肉を切る。

仕事がキツい訳ではない。でも、楽しくはない。

まぁ、楽しい仕事なんてあるわけないけど。

 

「619、魔王様がお呼びだ。」

 

「え?」

 

ある日、私は魔王様に呼び出された。

な、何か悪いことでもしてしまったか.....?

 

「は、はい魔王様.......。」

 

-619、お前に相談がある-

 

 

 

 

「え、え?」

 

魔王様が言うには、

私を妖怪刑場の職員にしたいとのこと。

妖怪刑場は、悪いことをした妖怪が殺される場所。

毎年何万人もの処刑者が出てるらしい。

 

-お前の一生懸命な姿にワシは感動した

刑場の職員は給料も高いぞ

 

 

どうだ?やるか?-

 

せっかくだから.......やってみるか。

 

「やります!」

 

-よし、では決定だ。明日からお前は刑場に行け-

 

 

 

 

 

 

次の日。

 

私は少しワクワクしながら刑場に向かった。

処刑台の上には、大きなギロチンが。

このギロチンで首を切り落とす。

 

「ま、初日はそこで見学しといて。」

 

「は、はい!」

 

そして、

早くも処刑者が運ばれてきた。

その処刑者は、見覚えのある人物だった。

 

 

 

 

 

 

 

「孤児院の..........おじさん......?」

 

孤児院のおじさんだ。

処刑の理由は恐らく暴行だろう。

私はされなかったが、強姦をしていたとの噂もある。

 

私は孤児院の事を思い出してきた。

あの時受けた暴力......浴びせられた罵声.....。

復讐するなら今しかない......‼︎

 

「す、すいません‼︎」

 

「ん?どうしたの?」

 

「私にやらせてください‼︎」

 

おじさんの首を切り落とす‼︎

 

「619.......⁉︎」

 

おじさんは驚いた様子で私を見る。

 

「い、いいけど......。」

 

 

 

 

そして、

私はおじさんの首を切り落とした。

私は気づいてしまった。

切り落とした時のこの快感に。

 

 

 

最初のうちはノリノリで切り落としていた。

ある時は勝手に妖怪の世界に入り込んだ人間を血祭りにしたり、そのまたある時は、無能な妖怪の爪を一本一本剥いで殺したり。

しかし、3年後には精神的苦痛を感じるようになった。

誰かを殺すことに心が痛くなる。

 

私は魔王様にそのことを相談した。

 

結果。

ブチ切れられた。

そして私は罰として人間界に飛ばされてしまった。

むしろありがたい。私はずっと人間界に行きたかったのだ。

 

私が目をつけたのは、綺麗な新築の家。

広い庭がある。ホウキ妖怪にとっては最高の場所だ。

ここに棲みつこう。

 

「ん?」

 

どうやら先客が居たみたいだ。

押入れから目だけが見える妖怪(?)

私はその子をノゾキマちゃんと名付けた。

私は毎晩その子に癒される。

 

どうやらノゾキマちゃんは言葉が発せないようで、

会話が出来ない。

そこで私は50音の紙を見せて、発したい文字の場所で瞬きをするという、ゲームの名前入力のようなシステムを作った。

 

毎晩ノゾキマちゃんとそれで会話をした。

孤独を埋めるために。

 

 

 

 

1年後。

この家にも慣れてきたある日、大人の女2人と、子供がこの家に来た。

 

どうやらその人たちには私たちが見えていないみたいだ。

 

「ほんとうにいいの⁉︎」

 

「うん、今日からここが朱莉のお家だよ。」

 

ん?

大人の女の1人は子供のような喋り方をしていた。

ていうか、ここに住む?

それは困る......。

 

なんせ、

ガン‼︎

 

っ⁉︎

玄関に鉄の鈍い音が響いた。

 

「ごめんね。朱莉。」

 

えっ、えー.......。

殴った方の女は、殴られた方の女の髪を掴み、ベッドに寝かせた。

そして、家中を散らかし始めた。

 

「えっ、ちょ、何して‼︎」

 

「これで、全て終わる‼︎全てが終わったんだ‼︎」

ガタッ、バン‼︎

 

「お、お母さん.......。」

 

 

 

 

 

次の日。

 

「ん、んぅ.......。」

 

お、起きた......。

な、何で言えばいいんだろう.....。

ま、黙っておくか.......。

 

 

つづく



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

日常編2
第16話 人肉焼肉


椎葉朱莉の不思議な日常 第16話


はぁ........、

眠たい。

 

相変わらずホウキのでかいイビキのせいで眠れなかった。

1階で寝てよもう.....。

 

「ぐがぁぁぁぁ......。」

 

「うるさいな.......。」

 

ポン!

私はホウキのお腹を軽く叩いた。

叩かれたホウキは、小さく唸り声をあげた。

 

 

 

 

 

ピンポーン、

家のチャイムが鳴った。

誰だよこんな朝っぱらから......。

私の家に来る人なんか新聞の勧誘と押し売りぐらいだろ....。

無視しよ。

 

 

 

 

ドンドン‼︎

ピンポーンピンポーン‼︎

 

しつこいなぁ.......。

仕方ない.......出るか......。

 

私は階段を降りて、

玄関に向かった。

 

ガチャッ、

 

「はぁい........。」

 

「こんにちは!椎葉朱莉さん!」

 

扉を開けると同時に、

勢いよく挨拶した少女。

その少女は何故か私の名前を知っていた。

 

会ったことあったっけ.......?

見覚えのない顔だ。

 

「今日はあなたに用事があって来たんです!」

 

苦手なタイプの子だ.......。

テンションがやたら高い。

 

「な、何かな........?」

 

「ま、家に入れてもらってから話します!」

 

私がいつ入れてあげると言った?

勝手に話進めないで。

 

「い、いやちょっと!」

 

「何ですか?早く入れてくださいよ!」

 

「お、お姉さん今忙しいから帰ってくれるかな....?」

 

「なら手伝います!」

 

いや帰れよ。

結局、私はこの変な子を家の中に入れることになった。

何か変な匂いするんだけどこの子......。

 

「ん?お客さんかい?」

 

「う、うん、ていうか勝手に入って来たというか......。」

 

「誰と話してるんですか?」

 

「あ、いや、何でもないよ。」

 

どうやらこの子にはホウキのことが見えていないみたいだ。

まぁ、見えないのが普通なんだけど。

 

「で、何?用って。」

 

「やっと........あなたに会えました......!」

 

急に何を言うの.....?

突然、その女の子は涙を流し始めた。

 

「えっ⁉︎ちょ、ちょっと⁉︎」

 

「あーあー、小さい子泣かせたー。」

 

遠くから冷やかすようにホウキが言う。

違う、この子が勝手に泣いたんだ。

 

「きゅ、急にどうしたの⁉︎」

 

「も、もう、逃がしませんよ.......。」

 

えっ.....⁉︎

ガッ‼︎

女の子が突然私の腕を掴んだ。

嫌な予感がする‼︎

 

「今度こそ美味しくいただきますよ!」

 

ま、まさかあの時の‼︎

女の子は塩を私の腕に振りかける。

母親を喰った子じゃ.....‼︎

 

「た、助けてホウキ‼︎」

 

シーン.......。

 

ったく‼︎

何で肝心な時に居ないんだよ‼︎

あの赤髪エロババア‼︎

 

「いただきまーす‼︎」

 

やばい、喰われる‼︎

私は女の子の腹を蹴った。

ドン‼︎

 

「うぐっ‼︎」

 

女の子は腹を押さえながら倒れる。

今のうちに女の子の口を塞がなければ‼︎

私はガムテープを探した。

あぁもう誰だよこんなに散らかした奴は‼︎

 

「な、何でそんなことするんですか.......左腕を私にください‼︎」

 

ま、まずい‼︎

リビングのテーブルを挟んで女の子と対峙する。

目が怖い。普通の目じゃない。

 

「さぁ、私にください‼︎」

 

やばい‼︎

私は咄嗟に椅子を持ち上げ、女の子の頭に振り落とした。

ドン‼︎

女の子は倒れた。

 

「はぁ、はぁ、だ、大丈夫........?」

 

い、息をする音が聞こえない........?

も、もしかして.......死んじゃった?

ど、どうしよう........。

 

女の子は、死んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜。

 

「えっ⁉︎今日は焼肉⁉︎」

 

「う、うん。」

 

「やったー‼︎」

 

ホウキは妖怪だからそんな事気にしないよね.......。

私は女の子の死体を焼肉に使った。

死体を隠すために。

それ以外の方法は思い付かなかった。

私は何度か嘔吐を繰り返したが、無事に肉を捌けた。

私はその肉を一枚だけ焼いて食べた。

 

 

 

 

ちょっと美味しかった。

 

 

 

 

つづく



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第17話 隣の狂人さん

椎葉朱莉の不思議な日常 第17話


ピンポーン、

 

珍しい。

二日連続で誰かが私の家に来るなんて.....。

今度こそ押し売りかなんかだろう。

 

「ホウキ出てー。」

 

「私見えてないから無理ー。」

 

だよね......めんどくさ。

無視するか......。

 

ドンドン‼︎

「大事な話があるんです‼︎いるなら必ず出てください‼︎」

 

来客は扉を叩き始めた。

 

「出てよ〜........出ない限りずっといるつもりだよ.....?」

 

「はぁ、仕方ないなぁ.......。」

 

私は仕方なく、玄関に向かった。

ガチャッ、

 

「はい........。」

 

「やっと開けてくれた朱莉ちゃん!」

 

扉を開けた先にいたのは、

隣のおばさんの田中智子さんだ。

下の名前で呼ばれるほど喋った事ないんだけど.....。

 

「な、何の用ですか.......?」

 

「はい、回覧板。確認したらお隣に回しといてくれる?」

 

回覧板......?

こんなのもらった事ないけど.....。

てか、隣の人って......。

 

 

 

 

隣の人はとても怖い。

いつも人殺しのような目をしている。

隣に回すのが嫌だから私に渡したんじゃ.....。

 

「あ、はい.......分かりました......。」

 

私は仕方なくそれを受け取って読んだ。

 

『清掃ボランティア募集』

 

はい行かない。

私が掃除できないのを知らないんだな。

さっさと隣の人に渡そ。

 

私は家を出て、隣の人の家に向かった。

最近ここから物音が絶えないんだよなぁ.....。

それも伝えとこうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

ピンポーン

チャイムを鳴らす。

しばらく経っても、返事はない。

出かけているのか?

 

私は無意識にドアノブに手をかけた。

ガチャ、

うん⁉︎

玄関の鍵は開いていた。

 

や、やば!

勝手に入っちゃっていいのかな......。

 

「えっ?入っちゃうの?」

 

「これだけ置いて帰る。」

 

回覧板だけ置いて帰ろう。

 

私はそう思い、リビングに向かった。

 

「失礼しまーす..........っ⁉︎」

 

リビングに向かった私の目に入ってきたのは、

首吊り自殺をしていた隣人の姿だった。

 

「だっ、大丈夫ですか⁉︎」

 

私はすぐさま隣人を縄から下ろし、体を揺らした。

息をしていない.....?

早く救急車を呼ばないと‼︎

 

「ホウキ‼︎救急車を呼んで‼︎」

 

「えっ?出前?」

 

「救、急、車‼︎」

 

変なボケしてないで早く呼んで‼︎

えっと、呼吸してない時は......こうするんだっけ....⁉︎

 

スッ、

私は唇を隣人の唇と合わせ、人工呼吸を始めた。

 

「っ⁉︎何急にディープキスしてんの⁉︎」

 

人工呼吸だよバカ‼︎

私は顔を真っ赤にしながら空気を隣人に送り込む。

 

「ふー、ふー、」

 

そして、救急車が到着した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうやら、隣人は何とか助かったみたい。

あと3秒遅かったら死んでいたらしい。

良かった良かった。

 

私は病院の近くの自販機でジュースを買った。

ゴトン!

 

「ねー、私の分はー?」

 

「自分のお金で買って。」

 

「私お金持ってないけど?」

 

ウィーン

病院からさっきの隣人が出てきた。

そして、私たちの方に向かってくる。

お礼を言いに来たのかな。

 

バチン‼︎

 

っ⁉︎

えっ.....?

私は隣人にビンタされた。

 

「えっ、は、っ?」

 

「うわぁ、強烈。」

 

グッ、

そして、隣人は私の胸ぐらを掴んだ。

 

「何で私を助けたんですか⁉︎

あなたが私を助けなければ、私は死ねていたのに‼︎」

 

そ、そんなこと言われても‼︎

 

「ひ、人が目の前で自殺してたら助けるでしょ⁉︎」

 

「死にたくて自殺してるんですから、余計なお世話ですよ‼︎」

 

「そもそも、何で自殺なんかしようとするんですか⁉︎

あなたはまだお若いのに‼︎」

 

「..........っ、愛する人に裏切られたんですよ。」

 

え.....?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

私は元々、

幸せな夫婦でした。

 

私は夫だけが生き甲斐でした。

毎日夫の笑顔を見るのが一番幸せでした。

 

 

それなのに......

 

夫は私が会ったことない女と浮気したんですよ...‼︎

そして、夫が隠していた借金だけが私の手元に残ったんです.....。

 

あなたに分かりますか?

愛していた人に裏切られる気持ちが‼︎

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「だから、今度こそこのナイフで自殺してやりますよ.....‼︎

私の人生絶望しかないんだから‼︎」

 

そう言って隣人はポケットからナイフを取り出した。

私はナイフを持つ手を止めた。

 

「もう止めても無駄ですよ。私は死にます。」

 

「ダメですよ‼︎1度限りの人生‼︎そんなことで終わらしちゃいけません‼︎」

 

「止めないでください‼︎

私は死にたいんです‼︎」

 

隣人のナイフを持つ手が動く。

仕方ない。

こうするしか......‼︎

グサッ‼︎

 

「うぐっ‼︎」

 

「え、えっ........?」

 

ポタッ、ポタッ、

血が垂れ落ちる。

 

私は、隣人が手を滑らせて私のお腹にナイフが刺さったように見せかけた。

つまり、自分から腹を刺しにいったのだ。

 

そして、私は痛みを我慢しながらナイフをお腹から抜いた。

 

「椎葉ちゃん⁉︎」

 

「っ、これであなたはめでたく牢獄行きです......‼︎

死にたくても死ぬことなんてできません。」

 

「あ、いや、て、手が滑って.........っ‼︎」

 

「さぁどうします?

ここで自殺をしないと約束するか。それとも、牢獄にぶちこまれるか。

そうですね、6年は出てこれないと思いますよ。」

 

「6年以上‼︎あなたは牢獄で過ごすんですよ....?それでもいいんですか⁉︎」

 

そろそろ限界だ。

立っているのも辛くなってきた。

 

「い、いや......‼︎」

 

「なら自殺しないと約束してください。

これからの人生‼︎まだまだ色んなことがあるんですから‼︎」

 

そう言った直後、

私は強い目眩に襲われて倒れた。

視界が真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、んぅ......。」

 

まったく、

こんな無茶するからだよ。

 

私は妖術で椎葉ちゃんを回復させた。

何気に妖術を人間に使ったのは初めてだ。

 

「何であそこまでするの?

見ず知らずの人に。」

 

私は不思議で仕方なかった。

赤の他人に何故そこまでするのか。

 

 

「な、なんか........あの人が自分と重なって見えたんだ、私.....。」

 

自分と重なって.......?

もしかして、記憶を失う前のことを思い出した⁉︎

 

「私も過去に何度も自殺未遂を繰り返してたんだと思う.....。

その度に、琴音と夏樹ちゃんを悲しませてたんだと思う。」

 

椎葉ちゃんが過去を思い出し始めている。

これは間違いないみたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、智子さん.......。」

 

「なぁに?智幸くん。」

 

「借金のことなんだけど.........。

全部元カノに押し付けといたから‼︎」

 

 

 

 

 

つづく



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第18話 ホウキの恋

椎葉朱莉の不思議な日常 第18話


「ねー椎葉ちゃーん、お腹空いたんだけどー。」

 

「これ買ったらすぐフードコート行くから待ってて。」

 

私とホウキは、ショッピングモールに来ていた。

新しい靴を買いに来たのだ。

 

「靴選びに時間かけすぎだよー!」

 

ホウキの文句が絶えない。

ついて行きたいって言ったのはホウキの方なのに。

 

「はぁ〜‼︎何でそんなに悩めるかなぁ〜‼︎」

 

うるさいなぁ。

私にしか聞こえないのを良いことに、

ホウキは駄々をこねはじめた。

 

「お腹空いた‼︎お腹空いた‼︎お腹空いたー‼︎.......ひっ‼︎」

 

ギロッ

「黙れよ。」

 

私は鬼の形相でホウキを睨んで言った。

 

「す、すいません......。」

 

ホウキは黙った。

私は買い物を続けた。

 

 

 

 

 

1時間後。

 

「すぐ終わるって言ったのに‼︎1時間もかかってるじゃんか‼︎」

 

「ホウキが途中でゲーセン寄りたいって言ったからでしょ‼︎」

 

「あ、」

 

やべ、しまった‼︎

沢山の人の前で大声を出してしまった。

 

「何だ?あの子。1人で喋ってるぞ。」

 

「本当だ。」

 

ホウキの事は見えてないんだった......。

周りの人が私を変な奴を見る目で見る。

私の後ろでホウキが笑ってる声が聞こえる。

お前のせいだぞ。

 

 

 

 

 

 

「やっと昼ごはんだぁー!」

 

本当ならもっと早くに食べてたんだけどね。

誰かさんのせいで遅れた。

 

「椎葉ちゃんの奢りだよ!」

 

「ええ......。」

 

そんなお金無いんだけど.....。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いっただっきまーす‼︎」

 

私が頼んだのはパスタ。

量は一番少なめにしている。

 

「うまぁー‼︎」

 

一方、目の前でカツを頬張るこの女は

特盛ご飯大盛りのカツ丼を頼んだ。

 

こいつのせいで私のパスタが減った。

あと、財布の中身も。

 

「水入れに行こ。」

 

「あ、私の分も。」

 

ホウキは水を入れに行った。

はぁ.......。

スッ、

 

っ⁉︎

財布の中が空っぽだ‼︎

帰りの電車代どうしよう.......。

ホウキの妖術で何とかしてもらうか.....。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ‼︎」

 

私は何かにつまづいて転びそうになった。

ガシッ‼︎

 

「え.........?」

 

「大丈夫ですか?」

 

優しそうな男の人が私の腕を掴んで止めてくれた。

.........って‼︎ええー⁉︎

わ、私のことが見えてる⁉︎

 

「あ、え、あ、ありがとう.......ございます.....。」

 

「ふふっ、気を付けてくださいねっ。」

 

そう言って男の人はニコリと笑った。

ズキュン‼︎

その瞬間、

私の胸を何かが射抜いた。

どこかへ行ってしまうあの人を、私はずっと見つめていた。

 

名前聞いとけばよかったな.......。

あれ.....?

私、あの人のこと好きになってる.....?

私は今まで恋をしたことがない。

 

人間界の男はカッコいい人が多いけど、

あの人は特にカッコよかった。

 

あの人の姿は見えなくなっていた。

 

「ホウキー?

まだー?」

 

「う、あ、い、今行く‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1週間後

 

ちょっと前からホウキの様子がおかしい。

やたら寝癖を整えるようになった。

それに、体中に香水をかけている。

さらにさらに、今まで着ていなかったワンピースを着るようになった。

いつも青色の甚平ばかり着ているのに。

今までそんなことなかったのに。

何かあったのか?

 

「ホウキ。ちょっと。」

 

「何?椎葉ちゃん。」

 

私は話を聞いてみることにした。

もしかしたら、大事なことかもしれない。

 

「何か最近おしゃれに目覚めたみたいだけど、

何かあったの?」

 

「えっ⁉︎そ、それは.......。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「好きな人が出来た?」

 

「う、うん...........人間の男の人なんだけど....

すごく優しくてカッコいいんだ!」

 

「話したことあるの?」

 

「え、それは.......一回しか会ったことないけど。」

 

え?

一回しか会ったことないの?

それだけでその人の事分からないでしょ。

 

「ちゃんと話してみたら?」

 

「え、えー.......それはぁー......。」

 

恥ずかしがりながらホウキが言う。

こんなに女々しいホウキを見たのは初めてだ。

ホウキも女の子なんだな。

 

「どこに住んでるのかも分からないし.........。」

 

「この近くじゃないの?」

 

「だとしたらもーう‼︎」

 

バチン‼︎

はっ⁉︎

私はホウキに頬を叩かれた。

興奮しすぎだよ.......。

 

「あ、ごめん!」

 

 

こうして、ホウキの恋が始まるのであった。

 

 

つづく



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第19話 爆破

椎葉朱莉の不思議な日常 第19話


「椎葉ちゃーん‼︎始まるよ‼︎ワールドカップ‼︎」

 

ホウキがでかい声で私を呼んだ。

私はスポーツに興味がない。

 

「ふーん。」

 

「日本対アメリカ‼︎」

 

ホウキが言うには、

この試合に勝てばベスト8進出が決まるらしい。

サッカーって何点先取だっけ?

そもそもそんなルールじゃなかったっけ。

 

「ほら!椎葉ちゃんも応援!」

 

私の方を振り返ったホウキは、

顔に日本とアメリカの国旗のペイントをしていた。

どっちの味方だよ。

 

「どっち応援してんの?」

 

「そりゃ、

アメリカに決まってんじゃん‼︎」

 

日本応援しろよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合は2-2で膠着状態が続く。

もう10分ぐらい点入ってないけど......。

 

「ねぇ、これいつ終わるの?」

 

「黙ってて‼︎」

 

怒られた。

その瞬間、

日本のチームの選手がボールをゴールに入れた!

/ゴオオオオオオオル‼︎\

 

「はっ⁉︎何やってんだよアメリカ‼︎」

 

だから日本応援しろって。

その30秒後、

試合が終わるブザーが鳴った。

日本の勝利だ。

 

 

ん?

アメリカの選手が審判に何か言ってる....。

 

『Isn't it strange⁉︎』

 

何て言ってるんだ....?

 

『nothing is wrong』

 

アメリカの選手は、

サッカーボールを指差していた。

 

『something is wrong with this ball‼︎』

 

ボール?

他の選手たちもボールを指差す。

その中には日本の選手も混じっていた。

 

『僕もこのボールはおかしいと思います。』

 

「ん?なんだなんだ?」

 

会場がざわつき始めた。

ボールがおかしいらしい。

 

パッ!

 

「あっ!消えちゃった!」

 

中継が消えて、画面が真っ黒になった。

 

「終わったんじゃない?」

 

ピッ、

リモコンでチャンネルを変えても、

何故か画面は黒いままだ。

故障か?

 

「あれー?映らないなぁ.......。」

 

「壊れたんじゃない?」

 

「えー⁉︎試合見れないじゃん‼︎」

 

「試合は終わったよ。」

 

「ちーがーう‼︎さっきの抗議の続き‼︎」

 

それももう終わってると思うけどなぁ.....。

私がそう思った直後、

ガシッ!

ホウキは私の腕を掴んだ。

 

「な、何⁉︎」

 

「よし、私たちが直接会場に行くよ‼︎」

 

は、はっ⁉︎

い、いきないそれは.....‼︎

 

「テレポーテーション‼︎」

 

シュン‼︎

私の視界に映る景色が一瞬にして変わった。

たくさんの人が相手選手の抗議にざわめく景色に、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

変わるはずだった。

 

「えっ、え.......?」

 

私の視界に広がったのは、

黒く焼き焦げた選手や、観覧客の死体だった。

 

「ど、どういうこと........?」

 

「に、人間がいっぱい死んでる‼︎」

 

上を見上げてみたら、

ドームの天井が破れたように開いていた。

それに、なんか火薬の臭いがする。

もしかして、誰かがここを爆破したのか.....?

ドームの外では、警備員が避難を促していた。

 

「ん?椎葉ちゃん‼︎あそこに誰かいるよ‼︎」

 

ホウキが人影に指をさした。

ノ、ノゾキマちゃん......⁉︎

 

「ホ、ホウキ‼︎あの人って‼︎」

 

「ん?ごめん、目悪くてよく見えない。」

 

っ‼︎

今一瞬、ノゾキマちゃんと目があった気がする。

 

ノゾキマちゃんがこのドームを爆破した犯人なのか...⁉︎

ノゾキマちゃんは今まで、私たちを裏切ったり、ホウキを誘拐して拷問したりしてきたけど、そんなことはしないはず‼︎

 

「ノゾキマちゃんがいる‼︎」

 

「えっ?ノゾキマ?」

 

私がそう言うと、

ノゾキマちゃんは私たちを指さした。

何か喋ってる......?遠くてよく聞こえない。

 

「起爆‼︎」

 

っ⁉︎

き、起爆っ⁉︎

やばっ、に、逃げなきゃ‼︎

 

「ホウキ、」

 

 

バァァァァァァァァァン‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、ん........。」

 

間一髪、私はテレポーテーションを使い、

爆撃を回避した。

 

椎葉ちゃんも無事だ。

 

チッ、

ノゾキマめ......。

あいつの目的は何なんだ。

魔王様の命令か?

 

またいつ私たちを狙ってくるか分からない。

しばらくは、椎葉ちゃんにも外出を禁止してもらおう。

 

私は椎葉ちゃんの家の周りに結界を張っている。

私が許した者しか入れない仕組みだ。

とにかく、家にいれば安全なのだ。

 

「ん、何が起こったの.......?」

 

「ていうか........私は.......誰......?」

 

っ⁉︎

爆破の衝撃で......記憶を失っている⁉︎

 

「あなたは..........誰?」

 

 

つづく

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

酒豪編
第20話 ピストル


椎葉朱莉の不思議な日常 第20話


「私は.......誰....,.?」

 

椎葉ちゃんが記憶を失った。

さっきの爆風の影響で。

クソッ、

もうちょっと気付くのが早ければ.....。

 

「あなたは.........誰.....?」

 

恐らく、

何も覚えてないんだろう。

 

「私はホウキ。あなたは椎葉朱莉。」

 

「こ、ここは......?」

 

「ここはあなたの家。」

 

「な、何で私の家にいるの......?」

 

「訳あってあなたは私と同居してるの。」

 

「な、何で.....?」

 

一から説明しなきゃダメか.....。

 

 

 

 

私は椎葉ちゃんに今までのことを説明した。

椎葉ちゃんは少し不思議そうにしている。

 

「ぜ、全然分からないけど、とりあえず、

私とホウキさんは同居していて、この街の周りに私の命を狙った輩がウロウロしていて、ホウキさんは私を守るために同居してるってこと?」

 

「うん、大体はあってる。

しばらくは、この家から出ないで。

この家にいれば椎葉ちゃんは安全だから。」

 

「あ、は、はい......。」

 

 

 

 

 

 

 

ピンポーン

 

っ、こんな時に......。

気配によると、妖怪が訪ねてきたみたいだ。

もしかしたら、魔王様の手下かもしれない。

私は警戒しながら玄関に向かった。

 

ガチャッ、

 

「はい......。」

 

「こんちゃー!ホーちゃん!」

 

なんだサケノミか.....。

手に大きな風呂敷を持っていた。

 

「椎葉ちゃんはー?」

 

「そ、それが.......。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーーー⁉︎記憶喪失⁉︎」

 

「サケノミのことも忘れちゃってると思う......。」

 

「だ、誰ですか........?」

 

やっぱり。

サケノミのことも忘れてしまっていた。

 

「私?私は天才酒豪家サケノミだよ!

そしてこっちはエロサイト大好きなスケベホウキ妖怪!」

 

「変なこと教えないで!」

 

私が見るエロサイトはp○rnhud一択。

それ以外は認めない。

 

「て、天才酒豪家のサケノミさんは何故ここへ?」

 

「え?あ、ホーちゃんにこれを渡しに来たんだった!」

 

そう言ってサケノミはでかい風呂敷を広げた。

中から出てきたのは...........ピストル?

黒色のピストルが中から出てきた。

 

「な、何これ........。」

 

「何って.........ピストルだよ。」

 

そんなことは知ってる。

私が聞きたいのは何でこれを持ってきたかだ。

 

「何でサケノミがこれを?」

 

私がそう言うと、

サケノミはピストルを持ち上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さようなら、ホーちゃん。」

 

っ⁉︎

バァァァン‼︎

 

ピストルの轟音が鳴り響く。

私は間一髪球を避けた。

ど、どうして.......サケノミが私を.......⁉︎

 

「あー、避けられちゃったかぁ。

1発でやるつもりだったんだけどなぁ.......。」

 

「サ、サケノミ⁉︎何でこんなこと.......っ‼︎」

 

グッ‼︎

サケノミが私の胸ぐらを掴む。

いつもの優しい顔ではなかった。

 

「サ、サケノミさん⁉︎」

 

「あのさぁ........、覚えてないの?」

 

「は、な、何を⁉︎」

 

私がそう言うと、

サケノミは少し見下すような笑顔で言った。

そして、その笑顔は一瞬で消えた。

 

「ホーちゃんが孤児院を脱出したとき、逃げ遅れた10人目の元仲間だよ‼︎」

 

えっ..........?

 

「あのとき孤児院を脱出したのは9人。私だけが逃げ遅れた。何度も助けてと言ったよ.....。それでもあんたは助けてくれなかった‼︎」

 

「な、なんのこと、」

 

「あのとき言ったよね⁉︎

『10人全員で脱出しよう』って‼︎」

 

私の胸ぐらを掴む手が震え始める。

私は徐々にあのときのことを思い出し始めた。

 

「あんたが居なければあの地獄の日々は無かったのに‼︎

この傷も‼︎このアザも‼︎何もかも無かったのに‼︎」

 

「ご、ごめん.........。」

 

「サ、サケノミさん.......。」

 

サケノミは泣き始めた。

私はあの時、サケノミを見捨てたことを強く後悔した。

 

「サ、サケノミ........。」

 

「んだよ‼︎裏切り者‼︎」

 

サケノミは割れた声で言った。

 

「本当に.......ごめん‼︎」

 

私は頭を下げて、サケノミの手を握って言った。

許してもらえないかもしれない。

さらに嫌われてしまうかもしれない。

でも、何もしない言わないよりはマシだと思った。

 

「これからは.........サケノミのことを見捨てたりなんかしない‼︎絶対に‼︎」

 

「だから.........今まで通り.........っ⁉︎」

 

 

 

私が頭を上げると、

サケノミはピストルの銃口を自分の首に向けていた。

 

「サ、サケノミ⁉︎それだけは絶対にダメ‼︎」

 

自殺するつもりなんだ‼︎

それだけは絶対にさせない‼︎

私はサケノミの腕を掴み、ピストルを振り払おうとする。

 

「離せっ‼︎離せこの‼︎うわっ‼︎」

 

バァァァン‼︎

 

家の中にピストルの轟音が響いた。

その球はリビングの大きい鏡に命中し、誰にも当たらなかった。

 

「絶対に、自殺だけはさせない‼︎」

 

「死なせない‼︎」

 

「ホ、ホーちゃん.........。」

 

ギュッ

私はサケノミを抱きしめた。

サケノミも、私を抱きしめた。

 

「お、おお.......。」

 

 

 

 

つづく



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第21話 サケノミとノゾキマ

椎葉朱莉の不思議な日常 第21話


深夜。

 

私は自分の家で目覚めた。

変な時間に起きてしまったなぁ......。

 

酒でも飲んで時間潰すか......。

 

この家の主人は寝てしまっている。

ちょっとぐらい物音立てても大丈夫だろう。

 

「よいしょっと......。」

 

私は体を起こし、

リビングに向かった。

 

っ‼︎

 

リビングから気配を感じる.....!

私は恐る恐るリビングに向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガラッ、

ノゾキマッ‼︎

 

「どうだサケノミ、ホウキは。」

 

「ん、残念だけど、私とホーちゃんは親友。

絶対に裏切ったりなんかしない。この先も、ずっと。」

 

リビングに居たのは、

ノゾキマだ。

ノゾキマは昨日、私にホーちゃんを殺すように言ってきた。

一度はその気になったが、ホーちゃんの説得で気を取り戻した。

 

「バカなのか?あいつはお前を見捨てたんだぞ?」

 

「過去は過去、今は今だから。

それに、ホーちゃんは2度と私を見捨てたりはしないと言ってくれた。だから私は、ホーちゃんを信じる。」

 

スチャッ、

ノゾキマが銃を構える。

 

「じゃあ死ね。」

 

「いいの?こんなとこで撃って。

簡単に避けれるけど?」

 

私がそう言うと、

ノゾキマはニヤリと笑う。

気味の悪い笑い顔で。

 

「サケノミに撃つんじゃない。

ホウキに撃つんだよ。」

 

は、は......?

ホーちゃんはここに居ないはず.....。

 

「フッ、ここからどうやってホーちゃんに?」

 

「このピストルは紐付けされた妖怪に必ず当たる仕組みなんだよ。」

 

「...........?」

 

ここに名前を打ち込めば、書かれた妖怪に必ず命中する。ここに、番号619.......っと。これで紐付けが完了した。

私がこの引き金を引けば、ホウキは確実に死ぬ。

さぁ、どうする?私に親友を殺されるか、自分で親友を売り出すか。」

 

そんなの答えは決まってる.......‼︎

 

 

「どっちもしない‼︎」

 

シュルッ、

体から鞭を出す。

フエ‼︎

 

バシッ‼︎

私はノゾキマが持っているピストルを鞭で払い落とした。

 

「苦手な妖術で私と勝負する気?」

 

ノゾキマの目の色が変わった。

本気を出すつもりだ。

 

「ジュレ‼︎」

 

ビュュュ!

冷たい冷気が私を襲う。

私は鞭でそれを防ぐ。

そして、反撃のチャンスをうかがう。

 

「メレディクショ、」

 

「させないよ、

パラリジドゥソメイル‼︎」

 

っ‼︎

か、体が全く動かない⁉︎

こ、声も出せない‼︎

このままでは......ホーちゃんが‼︎

 

私は必死で体を動かそうとする。

ダメだ‼︎全く動かない‼︎

 

「アハハ、全く動いてないよ、消えな。

アンエ、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エタンドル‼︎」

 

パァァァァァ‼︎

突然、誰かの声と共に、眩しい光が家中を包んだ。

光が消えた。

ノゾキマは消えていた。

 

「大丈夫⁉︎サケノミ‼︎」

 

ホ、ホーちゃん‼︎

助けに来てくれたんだ!

 

ホーちゃんは私の金縛りを解いた。

そして、私はノゾキマが持っていたピストルのことについて

話した。

 

「このピストルは、ホーちゃんに必ず命中するって.....。」

 

「そんなの、嘘に決まってるでしょ。

こんなピストルに名前を書いたぐらいで......。

ノゾキマの言うことを簡単に信じちゃいけないよ。」

 

「そ、そうなの.........?」

 

「ノ、ノゾキマはどこに行ったの⁉︎」

 

ノゾキマは眩しい光と共にどこかへ消えていった。

 

「多分、妖怪の世界に強制的に戻らされたと思う。」

 

死んだわけではないらしい。

ホーちゃんが言うには、

この先も何度も私の命を狙ってくる。

その時は、迷わず自分を呼べ。とのこと。

 

「やっぱホーちゃんは頼れるなあ!」

 

ツン!

 

「うひっ⁉︎腰つつかないで‼︎」

 

ホーちゃんは腰が弱点だ。

ここを指でつつくと、かわいい声をあげる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チッ、ホウキめ........あともうちょっとだったのに......。」

 

私は見事に撃退されてしまった。

このままでは魔王様がお怒りになってしまう。

 

私は手下どもを集めることにした。

1週間後、人間界を襲撃するつもりだ。

椎葉の姪、夏樹を人質にとり、

椎葉たちをおびき寄せる。

そして、何としてでもホウキを捕まえて、妖怪の世界に連れ戻す。

この世界を救うために.......‼︎

 

「待っててください。魔王様。」

 

この私が世界を救ってみせます。

3ヶ月後、

この世界に大爆発が起きる前に......。

 

全ては3ヶ月後。運命が決まる。

 

 

 

 

つづく



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

襲撃編
第22話 ホウキの恋2


椎葉朱莉の不思議な日常 第22話


「ねえ買い物に行っ、」

 

「ダメ。椎葉ちゃんはここから出ないで。」

 

相変わらずホウキさんは私を外に出してくれない。

もしかして嘘つかれてる?誘拐されてる?

私の命を狙ってきた人なんて、この前のサケノミさんぐらいじゃん。

 

「いつまでこの状態なんですか‼︎」

 

「安全になるまで。」

 

「だから、それはいつなんですか⁉︎」

 

「うるさいな‼︎こっちだって椎葉ちゃんを守ろうと頑張ってんだよ‼︎」

 

ホウキさんは顔を180°変えて言った。

怖いよ。怖い怖い。

 

「ご、ごめんなさい.......。」

 

私は威圧に押され、謝った。

 

「っ、出かけてくる。」

 

自分はすぐに出かけるくせに......。

ずるい。

いいもん。ホウキさんに黙って出かけちゃおーっと。

 

私はホウキさんが居なくなったのを確認して、

家をこっそり抜け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ったく、椎葉ちゃんったら文句ばっかり。

いつまでこんな生活が続くかなんて私も知らないし。

妖怪の世界が崩壊するか、誰かが世界を救ったりしたらこの生活は終わるかもしれないけど。

それまでは我慢して欲しいな。

 

「はぁーあ。」

 

私は今日も椎葉ちゃんの分のご飯を買いに行く。

買うって言うか.......見えないのをいいことに、盗むだけなんだけど。

私は自動ドアの前で、人が通るのを待った。

私は妖怪だから自動ドアが反応しない。

 

「早く誰か通れよー.......。」

 

はぁ、

ここのスーパーは客が少ないんだな.......。

誰も通らない。

 

お腹空いてきたな......。

椎葉ちゃんも待ってるから早くしないと。

 

瞬間移動使えって思うかもしれないけど、

残念ながら、瞬間移動は1ヶ月に一回しか使えない。

往復で一回。

 

 

んー、マジで誰も通らないなぁ。

他の店探すか......。

ったく、どこの店も自動ドアばっかり。

妖怪のことも考えて作ってほしいな。

 

「ん?あ、あなたは!」

 

ん?

あの男.......私を見てきている?

魔王様の手下か......⁉︎

 

「フードコートで会った方ですよね?」

 

「えっ、え?」

 

フードコート........っ‼︎

あの時の⁉︎

 

「あの時転びそうになった私を助けてくれた人?」

 

「そ、そうです!覚えてくれてたんですね!」

 

や、やっぱり‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この男の人は、桐島真という名前らしい。

顔や性格だけじゃなく、名前までカッコいいのか。

 

「あなたのお名前を教えてもらっていいですか?」

 

「えっ?」

 

な、名前.......。

人間にホウキという名前の人はいないか.....。

ホウキ......豊喜........。

 

「ほ、豊喜、」

 

「えっ?」

 

「豊喜朱莉といいます!」

 

名前勝手に使ってごめんね。椎葉ちゃん。

 

「豊喜朱莉さん.........いい名前ですね!」

 

偽名を褒められる........、

何だろうこの気持ち。

 

「き、桐島さんはこの近くに住んでるんですか?」

 

「そこの角を左に曲がったところに住んでます。

ほら、パン屋が見えるじゃないですか、そこをまっすぐ行けば僕の家です。」

 

近くに住んでるんだ!

それならいつでも会いに行ける!

 

「あ、あの........桐島さん........。」

 

「なんですか?」

 

私は桐島さんをデートに誘うことにした。

 

「あの、その........。」

 

って!

言おうとするだけなら誰でもいつでも出来るんだよなぁ。

 

「わ、わたしと.........。」

 

「今度一緒にご飯でも行きましょうか?」

 

っ⁉︎

なんと、桐島さんの方から誘ってくれた。

もちろん。断るわけがない。

 

「は、はい!」

 

私は1週間後、桐島さんとデートの約束をした。

向こうはそんなつもりないのかもしれないけど。

とにかく、桐島さんと仲良くなれるチャンスだ!

このチャンスを無駄にするわけにはいかない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャ、

 

「ただいまー。........椎葉ちゃん?」

 

椎葉ちゃんの「おかえり」が聞こえない。

寝てるのか?

私は寝室に向かう。

 

しかし、

椎葉ちゃんの姿はない。

 

 

ま、まさか.......‼︎

勝手に外出を⁉︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「らんらーらららんらんらんらんらーらららん♪」

 

バッ‼︎

 

「ふぐっ⁉︎」

 

フラッ、バタッ

 

「...............。」

 

「やっと捕まえましたよ。

……………………朱莉さん。」

 

「もう逃がしませんからね。」

 

 

 

 

つづく



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第23話 姪の裏切り

椎葉朱莉の不思議な日常 第23話


「らんらーらららんらんらんらんらーらららん♪」

 

バッ‼︎

 

「ふぐっ⁉︎」

 

茂みに隠れていた私は、

茂みを飛び出し、朱莉さんの口を、毒をまぶしたハンカチで覆った。

作戦、成功。

私は朱莉さんを手に入れた。

私には、朱莉さんが必要だった。

 

 

 

 

 

 

 

私は朱莉さんの口をガムテープで塞ぎ、

人が入るぐらいの大きさのスーツケースに詰め込んだ。

 

思ったより、重くないな。

最近ちゃんと食べてないんだろうな。

目的地に着いたらたんまりと食べさせてやろう。

 

最後の、晩酌を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゾウキン。あいつを呼んで。」

 

「あ、はいはい。」

 

私は家に帰り、

ゾウキンに言った。

母親は仕事に行っている時間。

家には私と妖怪たち、そして、朱莉さんの4人。

 

「大丈夫なん?ホウキが飛んできたらどうするん?」

 

「その時はあんたたちが頑張って足止めして。」

 

「無理やって!あいつめっちゃ強いもん!

私らなんか2秒でやられるって!」

 

「そもそも、こんなことやっても意味ないねんて!

朱莉とかいう子に迷惑かかるだけやで!」

グッ!

胸ぐらを掴んだ。

 

「ちょっと黙ってくれるかな。オシャベリ。」

 

「は、はい.........。」

 

朱莉さんが起きたらどうする。

朱莉さんにはあいつが来るまで寝ててもらわないといけない。

 

 

「ねえ、あいつはまだ来ないの⁉︎」

 

「私に言われても知らないよ。」

 

1時間経ってもあいつは来ない。

早くしないと.....朱莉さんが起きちゃう。

 

「何やってんのあいつは‼︎

もういい、ゾウキン!準備して。」

 

「ええ、妖怪使いが荒いなぁ.......。」

 

「何?」

 

「いや、何でもないです........。」

 

私はゾウキンに、これからすることの準備を命じた。

心臓を取り出すための包丁。手袋。そして、あいつから貰った妖怪発信器という装置。

これを朱莉さんに付ければ、朱莉さんの居場所が、妖力の強い妖怪、つまりホウキに居場所が伝わる。

朱莉さんの心臓を取り出し、ホウキをおびき寄せて捕獲する作戦。

 

ガタッ、

 

朱莉さんが起きてしまったようだ。

 

「〜〜‼︎〜‼︎」

 

スーツケースの中で暴れている。

状況が理解できていないみたいだ。

 

 

パカッ

「おはようございます。朱莉さん。」

 

私はスーツケースを開けて、

中を覗いた。

手足を拘束されて、口を塞がれ、目隠しをされた朱莉さんがいる。

 

「〜〜⁉︎〜⁉︎」

 

記憶を失ったと聞いたけど、

私のことは覚えていたようだ。

 

「安心してください。手荒なことはしません。

ただ心臓を取り出すだけです。」

 

そう言って私は、朱莉さんの腕に発信器を付けた。

これでホウキをおびき寄せる。

 

朱莉さんは相変わらず暴れている。

何か言いたいのか。

 

ビリッ、

 

「な、何でこんなことをするの⁉︎」

 

私は口のガムテープを剥がし、朱莉さんの声を聞く。

朱莉さんの声は、恐怖で震えていた。

そりゃそうだよな。

信じていた人に裏切られるんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、

元はと言えば、朱莉さんが悪いんだよ。

朱莉さんが、私をいじめに導いたんだ。

あいつに言われたよ。

朱莉さんは裏でクラスのみんなに私の悪口を言いふらしてたんだね。

「あんなやつのために学費を払うのは嫌」「母親が甘やかすから中途半端になった」いろんな事言ってたみたいじゃん。

そのせいで、私はいじめられた。

机に「死ね」と書かれ、上靴には画鋲を入れられ、

挙げ句の果てには、クラスのみんなの前で裸にさせられた。

それも全部、朱莉さんのせいだったんだ。

朱莉さんが裏で指示してたんだ。

 

 

死んでしまえばいいんだ。

心臓をぶちぬかれて死ねばいい。

出来るなら私がこの手で殺したい。

 

「こんなこと許されると思ってるの⁉︎」

 

チッ、

誰が何を言う。

お前だって何度も許されないことをしてきたくせに。

そうだ、こいつは今動けないんだ。

殺しさえしなければ、何度でも殴れる‼︎

 

ドスッ‼︎

私は朱莉さんの頭を足で踏みつけた。

 

「っ‼︎」

 

全体重を乗っける。

潰れてしまうぐらい。

 

「い、痛い‼︎やめて‼︎」

 

?やめて?

私が受けたいじめよりは何倍もマシだよ。

何百倍も‼︎

ドスッ‼︎ドスッ‼︎

 

「っ‼︎痛‼︎うがっ‼︎」

 

私は何も言わず、

朱莉さんの頭を踏みつけ続ける。

やがて、朱莉さんが何も言わなくなった。

死んだか。でも、息はしてる。

なぁんだ。

ダメだ。もっと痛ぶりたい。

もっと苦しめたい。

 

グッ、

私は朱莉さんの髪を掴んだ。

そして、2、3発顔をぶん殴る。

 

「っ‼︎っ‼︎」

 

スッキリしないな........。

こいつには死ぬと同等の苦しみを味わって欲しい。

 

私は朱莉さんが着ていた服を全部破り、全裸にし、

体中に激辛ソースを塗る。

全身を痛みに襲わす。

 

「っ‼︎い、痛い‼︎痛い‼︎あっ‼︎ゔっ‼︎」

 

朱莉さんが声を上げて苦しみ始める。

気味がいい。

ざまぁみろ。

もっと苦しめ‼︎もっと足掻け‼︎

 

「ゔぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

さらにソースを上からかけまくる。

瓶からソースが無くなった。

スーツケースの中はソースでいっぱいになった。

 

「ハハハハハハハハ‼︎」

 

笑いが止まらない‼︎

ざまぁみろ‼︎全身を真っ赤にしながらもがき苦しんでる‼︎

そのまま死ね‼︎そのまま死んでしまえ‼︎

 

「ゔぁ、.........ゔ.........。」

 

「朱莉さん。あなたが悪いんですよ?

あなたが私をいじめたから。

だから私も朱莉さんをいじめます。

では、おやすみなさい。」

 

「や、や、やめて‼︎........ゔあっ‼︎」

 

バチチッ‼︎

 

私はスタンガンで朱莉さんを眠らせた。

心臓を取り出されるのが楽しみだ。

ホウキにも同じ拷問を受けてもらおう。

あいつと仲良くする奴は同罪だ。

さぁ、ノゾキマ。早くこっちへ来い。

 

 

 

 

 

 

つづく



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第24話 椎葉悪

椎葉朱莉の不思議な日常 第24話


私が激辛ソースをかけてから1時間後。

朱莉さんは何も言わなくなった。

体中が赤くなり、痙攣している。

 

「まだノゾキマは来ないの?」

 

「来る来る!来ます来ます!」

 

本当か?

2時間経ってもこない。

何をしてるんだ。

 

このままではホウキが先に来てしまう。

私はそう思い、朱莉さんの腕に付けた発信器を外した。

 

「み、水.........。」

 

朱莉さんが水を欲しがっている。

そんなもの、いくらでもあげるよ。

 

バシャッ‼︎

 

私はバケツいっぱいに入れた水を、朱莉さんに思いっきりかけた。

 

「っ‼︎」

 

「美味しい?」

 

「も、もうこんなことやめて.........。」

 

朱莉さんは涙を流して言う。

やめるわけないじゃん。こんな楽しいこと。

 

「何でこんなことするの⁉︎

夏樹ちゃんはそんなことする子じゃない‼︎」

 

よく言うよ。

お前のせいで私は地獄を見たんだよ。

友達も失い、何もかも失った。

あぁ〜あ、記憶なんか失わさなければよかった。

あいつが爆破に協力しろとか言うから。

私はあの時、サッカードームにいた。

そして、朱莉さんとホウキをおびき寄せ爆破した。

結果、逃げられて、朱莉さんが記憶を失った。

本当なら朱莉さんとホウキを負傷させてそこを捕まえる作戦だった。

 

「あなたは自分がした事を覚えてないんですね。」

 

「な、何のこと⁉︎」

 

やっぱり。

あんなことも忘れてしまったのか。

 

「でも、思い出す必要は無いですね。

朱莉さんはもうじき殺されます。」

 

「っ⁉︎や、やめて‼︎」

 

「あんた1人の命‼︎妖怪の世界を救うためにはどうってことないんですよ。」

 

「え、え.......妖怪の........世界.....?」

 

チッ、

そんなことも忘れてるのかよ。

めんどくせぇな。

 

「なら全て思い出させてやりますよ‼︎」

 

「い、意味がわからない......何のこと......ゔあっ⁉︎」

 

ドン‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はパイプで朱莉さんの頭を殴った。

母親が朱莉さんにやった時と同じように。

記憶を取り戻させる。

 

「ゔ、ゔぅ...........あれ........ここは......?

っ‼︎動けない‼︎っ⁉︎夏樹ちゃん⁉︎

ど、どういうこと⁉︎」

 

記憶が入れ替わったみたいだ。

状況を理解できていない。

 

「朱莉さんが私の事をいじめるように指示してたんですね。」

 

「え、えっ⁉︎な、何のこと⁉︎そんなの知らない‼︎」

 

この反応、思い出したな。

記憶を蘇らせることに成功したんだ。

 

「ノゾキマから聞きましたよ。

朱莉さんがそんな人だなんて思っていませんでした。」

 

「ちち、違う‼︎誤解だよ‼︎私はやってない‼︎」

 

ん?

 

「あれ?さっき知らないって言いましたよね?」

 

「えっ‼︎」

 

本当は、知ってるんだな。

思い出したんだな。

 

「本当のことを話してください。何故、私をいじめるように指示したんですか?」

 

「う、うぅ..........っ‼︎」

 

っ‼︎

今一瞬誰かに合図を送ったような....

バァァァァァン‼︎

 

っ⁉︎

私の胸元を弾が貫通した。

中から血が溢れ出す。

な、何が起きた.......⁉︎

 

「ゔっ、あっ‼︎ゔがっ‼︎」

 

「アッハッハッハッハッハッ‼︎」

 

朱莉さんは狂った高笑いをしている。

極悪人の顔だ。

 

「まんまと引っ掛かったね!

記憶なんて最初から失ってないんだよ!

最初っからね‼︎」

 

っ⁉︎

何でガムテープの拘束が解かれてるの......⁉︎

 

「知ってた?

私ってねぇ、副業で殺し屋やってたんだよ。

だからぁ、人を殺すことだけは得意なんだぁ〜!

こんな拘束も、どうってことないね!」

 

こ、殺し屋......⁉︎

そ、そんなの知らない......‼︎

 

「はぁ、はぁ、はぁ、」

 

「私があんたをいじめてた理由。知りたい?」

 

「し、し、知りたい.........。」

 

私は声を振り絞って言った。

それが聞こえたのか、朱莉さんはニヤリと笑った。

 

「ただの暇つぶしだよハッハッハッ‼︎」

 

そう言って朱莉さんは私に銃口を向ける。

や、やばい‼︎

 

「はぁ、はぁ、ぞ、ゾウキン‼︎オシャベリ‼︎」

 

どっちでもいいから、早く助けて‼︎

 

「あかん!夏樹がピンチや!」

 

「夏樹今助けっ‼︎」

 

バァァァァァン‼︎

 

え、え.......?

 

2人は頭を撃ち抜かれた。

 

「あれれぇー?妖怪ってこんなに弱いのー?」

 

朱莉さんは私たちを煽るように言う。

ノ、ノゾキマは何してる⁉︎

は、早く来い‼︎

 

「次は夏樹ちゃんの番だよ。」

 

スチャッ、

 

こ、ここまでか.........。

し、仕方ない。

私は覚悟を決めて目を瞑った。

 

 

カチッ、カチッ、

 

「っ!チッ、弾切れか.......。

仕方ない、私がこの手で終わらせてやろう。」

 

そう言って朱莉さんは握り拳を作り、私の顔に近づける。

 

「さっきは痛かったなぁー。お返しするね!」

 

「や、やめてください.........‼︎」

 

「残念だけど!私の辞書にやめるという文字はないの!じゃ、1発目!」

 

ドン‼︎

 

「っ‼︎」

 

その後も、私は何度も朱莉さんに殴られる。

私は泣き叫ぶのを我慢して耐えた。

 

「さってと、じゃ、そろそろ解剖始めよう!」

 

か、解剖........?

う、嘘だよね......朱莉さん.......?

 

「や、いやです‼︎やめてください‼︎」

 

「あれー?夏樹ちゃん、私のこと殺そうとしてなかったっけぇ?」

 

朱莉さんはナイフを持って私ににじり寄る。

来るな‼︎来るな‼︎

 

「安心して、解剖したお肉は私が後でちゃんと頂くから。」

 

私は行き止まりに追い詰められた。

も、もうお終いだ........。

 

「じゃ、いっただっきまーす!」

 

スッ‼︎

 

ドスッ‼︎

 

 

 

 

つづく



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第25話 覗魔

椎葉朱莉の不思議な日常 第25話


「じゃ、いったっだっきまーす!」

 

スッ、

ドスッ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ‼︎落ち着け!椎葉!」

 

ノ、ノゾキマ⁉︎

ノゾキマは、私を庇ってナイフを刺された。

 

「待たせてごめん。夏樹。」

 

ノゾキマは余裕そうな顔をしている。

ノゾキマの目にはスコープのような物が付いていた。

 

「ノゾキマちゃんも、まんまと私に騙されたね!」

 

「何のことだろ?騙されているのはお前の方だよ。」

 

「は?」

 

「後ろを見てみろ。」

 

後ろ......‼︎

 

そこには銃を構えたサケノミの姿が。

朱莉さんの頭を確実に狙っている。

 

「サケノミ........?何で銃なんか構えてんの?」

 

「そこから、一歩も動くな。

 

お前は椎葉朱莉じゃない!」

 

椎葉朱莉じゃない.......?

じゃあ、一体この人は......。

 

「お前は、もう1人の椎葉朱莉。

椎葉の邪悪な姿だ!」

 

もう1人の姿.......?

朱莉さんは二重人格だったのか?

 

「チッ、バレたか。せっかく表に出れると思ったのによ。

まぁいい元の椎葉に戻るか.....。」

 

そう言って朱莉さんは頭を落とした。

10秒後、頭を起こす。

 

「な、何が.....?」

 

元の朱莉さんに戻ったみたいだ。

私をいじめてたという事実は変わらないけど。

ていうか、二重人格だなんて知らないんだけど⁉︎

 

「ど、どういうことですか、サケノミさん!」

 

「あんたは何も喋らないで‼︎

私たちを裏切ったあんたはね。

ノゾキマに騙されてたんだよ。」

 

「え.........?」

 

「ノゾキマ........?」

 

「悪いな。利用させてもらうよ。

お前の心の中に潜む憎悪を、強大化させる。

このスコープでお前の心の中を覗いているんだ。

お前は今、椎葉への憎悪と驚きでいっぱいだ。

今のお前ならホウキを超えれる。」

 

そう言ってノゾキマは大きな紫色の光る球を出現させた。

目の色が変わる。ま、まさか、それを私にぶつける気じゃ....⁉︎

 

「お、おい!待て!ノゾキマ!話が違う‼︎ホーちゃんには危害を加えないと約束しただろ!」

 

サケノミが止めにはいる。

しかし、ノゾキマはもう球を投げる寸前だ。

 

「悪いなサケノミ。私は妖怪の世界を救うんだ‼︎」

 

ドォォォォン‼︎

ノゾキマが投げた球は私に直撃し、

紫色の風が家中を吹き荒らす。

 

「っ‼︎何も見えない‼︎」

 

っ、っ‼︎がぁっ‼︎あ、頭が痛い‼︎

割れる‼︎頭が割れる‼︎

 

ドゥン‼︎

 

「だ、大丈夫⁉︎夏樹ちゃ、っ‼︎」

 

誰か止めて‼︎誰か‼︎

段々、自分が支配されていく。

悪魔みたいなやつに支配されていく。

 

「これでお前は私のいいなりだ。

私が自由自在にお前の強大な妖力を操れるようになったのだ‼︎」

 

「ノ、ノゾキマ‼︎あんたは一体何を企んでっ⁉︎」

 

「私は妖怪の世界を救いたいんだよ。

分かるか?救うチャンスは今しかないんだよ‼︎

手始めにお前をこの膨大な妖力で消し去ってやる‼︎」

 

そう言ってノゾキマは私の手を上に上げさせる。

ダメだ........抵抗も何もできない.....‼︎

 

「椎葉ちゃん‼︎逃げるよ‼︎」

 

「えっ、ちょ、ちょっと‼︎」

 

2人が逃げ出した。

早く、早く逃げて‼︎

じゃないと........。

 

「死ねぇ‼︎」

 

チュドン‼︎

ビーム球のようなものが落下して、

爆発する。

風がすごい勢いで流れる。

 

「はぁ、はぁ、.........。」

 

何故か.......息が苦しい......。

体中が痛い.......‼︎

 

「チッ、人間の体で妖術を普通に使えるわけがないか.....。

夏樹に大きな負担がかかってる。」

 

「はぁ、はぁ、も、もうやめて.........‼︎」

 

「残念だが、妖怪の世界を救うためだ。我慢してくれ。」

 

そ、そんなの出来るわけない........‼︎

だ、誰か助けて.........‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は椎葉ちゃんを連れて、家に戻った。

ホーちゃんを探す。

 

「ホーちゃん⁉︎どこにいるの⁉︎」

 

「ホウキー‼︎」

 

チッ、

何でこんな時に限って出かけてるんだよ‼︎

あのエロサイト大好きスケベオナ中ホウキ妖怪は‼︎

 

「もう‼︎肝心な時に‼︎」

 

「ね、ねぇ‼︎サケノミ‼︎あれ見て‼︎」

 

椎葉ちゃんが空を指さした。

っ‼︎

 

そこには、天高く浮かぶ妖怪の世界への入り口があった。

 

 

 

 

 

つづく



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第26話 襲撃禍のデート

椎葉朱莉の不思議な日常 第26話


そこには天高く浮かぶ、妖怪の世界への入り口があった。

 

「あ、あれは.......‼︎」

 

ま、まさか‼︎

妖怪全員でホーちゃんを捕まえる気じゃ.....⁉︎

 

と、とにかく‼︎

私が足止めしないと‼︎

まったく、ホーちゃんは一体どこに⁉︎

 

この様子じゃあと1時間で着陸しそうだ‼︎

ホーちゃんを守るためにも、この街を守るためにも、

私が足止めするしかない‼︎

 

「サケノミ!ど、どうするの⁉︎」

 

「っ、バ、バリアー‼︎」

 

私はやったこともない結界張りをやってみる。

当然、出来るはずがない。

出来てもすぐに破られてしまう。

 

ど、どうすれば........‼︎

 

「大人しく私たちに捕まるんだな。」

 

っ⁉︎

 

「ノ、ノゾキマ‼︎」

 

「夏樹ちゃん‼︎」

 

夏樹の顔は極悪非道の顔をしていた。

私が初めて会った時のホーちゃんの顔のようだ。

 

「は、早く逃げてください........‼︎じゃ、じゃないと......」

 

バンバンバン‼︎

床が爆発する。

火花が飛び散った。

 

「し、椎葉ちゃん‼︎逃げるよ‼︎」

 

グッ、

私は椎葉ちゃんの腕を掴んで言った。

 

「な、夏樹ちゃん‼︎必ず助けるから‼︎」

 

「逃すな‼︎」

 

私たちはひたすら走って逃げた。

ホーちゃんを探しながら。

何処にもいない‼︎何処行ったんだよ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃ホウキたちは.........。

 

「こんな高そうな所........大丈夫なんですか.......?」

 

私は桐島さんとデートに行っていた。

にしても、高そうなレストランだなぁ......。

こんなレストランは初めてだ。

 

「うん!何でも好きなもの食べて!」

 

「えっ⁉︎何でもですか⁉︎」

 

「うん!何でも!」

 

そう言われると迷うなぁ.......。

うわぁ、これ美味しそうだなー!

あ、でも、5000円.........。

あんまり高いのばっかりだと嫌われてしまったりしたら嫌だし.......。

ここは安いやつにしとくか........。

っ‼︎

いや待てよ、あまり安いやつにしすぎると遠慮していると思われちゃうか?せっかく連れてきてもらったのに......。

あぁ、もうどうしたら‼︎

 

「ん?どうしたの?豊喜さん?」

 

「あ、いや、何でもないですよ........

あ、わ、私これ食べたいです!」

 

ピッ、

私が指さしたのはあまり美味しそうじゃないパスタ。

でも、値段も普通ぐらいで丁度いい。

 

「わかった!じゃあ頼むよ!」

 

 

 

 

 

 

 

1時間後。

 

料理が運ばれてきた。

 

桐島さんが頼んだのはステーキ。

美味しそう.........。

 

一方、私の方は不味そうなパスタ。

まぁ、味は食べてみないと分からない。

一口食べてみよう。

 

パクッ、

う〜ん.........不味くはないし........美味しくもない。

普通。

 

「美味しい?」

 

えっ⁉︎

...........ここで本当のことを言ったら、嫌われちゃうか......。

 

「は、はい!とっても美味しいです!」

 

「そう!それはよかった!」

 

ふ、ふう.........。

 

「一口、食べる?」

 

えっ⁉︎

そ、それって........。

 

か、間接キス⁉︎

 

「え、あ、え、い、いや、」

 

「ほら、口開けて。」

 

そう言って桐島さんは私に肉を刺したフォークを向けた。

こ、こんなことされたら...........断れない........‼︎

 

私はそのお肉を、口に運んだ。

間接キス。

 

「お、美味しいです!」

 

ものすごく美味しい。

桐島さんは笑顔で私を見つめる。

優しい笑顔だ。

 

この時間がずっと続けばいいのに........。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この幸せな時間は終わりを告げてしまった。

 

「じゃあ、そろそろ帰ろうか。」

 

「え、あ、はい!」

 

今日はいろいろな話をしてとても楽しい1日だった。

こんなに楽しい日は久しぶりだ。

 

「きょ、今日はありがとうございました!」

 

「ううん。こちらこそ。」

 

私が帰ろうとして、

後ろを向いた瞬間!

 

バッ‼︎

 

「っ⁉︎」

 

え、えっ⁉︎

き、桐島さんが私に抱きついてる⁉︎

体中に温もりを感じる。

 

「あ、あの.......ちょ、ちょっと.......?」

 

「1人では絶対に帰しませんから。」

 

っ⁉︎

そ、それってどういう意味⁉︎

 

「べ、別に.........1人で帰れますから‼︎」

 

「そういうことじゃありません。

絶対に1人にしないという意味です。」

 

絶対に1人にしない.....⁉︎

そ、それって、告白⁉︎

 

「僕と、付き合ってください。」

 

告白だぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎

 

 

 

 

つづく



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第27話 桐島さん

椎葉朱莉の不思議な日常 第27話


告白だぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎

 

「え、そ、それってどういう.....⁉︎」

 

「そのまんまの意味です。

僕と付き合ってください。」

 

私は桐島さんから告白されたみたいだ。

 

 

そ、そんな、急に言われても......‼︎

こ、断ったら嫌われそうだし.......。

断る理由もない......‼︎よし‼︎ここは勇気を出して....‼︎

 

 

「は、はい‼︎」

 

私は大きな声で返事した。

この人の彼女になら、なってもいい.......。

 

「じゃあ、今日からよろしくお願いします!」

 

ギュッ

そう言って桐島さんは私を抱きしめた。

今度は正面から。

 

 

 

桐島さんは私が妖怪だということを知らない。

そもそも、私はこの人や椎葉ちゃんと夏樹ちゃんとかにしか見えていない。

でも、桐島さんはそのことに気付いていないみたいだ。

 

「あ、あの..........。」

 

私と桐島さんはもう、恋人同士なんだもんね......。

恋人同士は、隠し事をしちゃいけないって聞いたことがある.....。

 

「私たちは、恋人同士になったんですよね.......?」

 

「うん!そうだよ!」

 

「な、なら........

お互い、隠し事はやめましょうね.......?」

 

私はこの時気づいてしまった。

私のことが見える人間が、

普通なわけないと。

何かやばいことを隠しているかもしれない。

私も妖怪であることを隠しているけど。

 

 

「隠し事........?

うーん........一個あるよ!」

 

「な、何ですか......?」

 

「ピーマンが食べれない!」

 

小一か。

私は思わず笑ってしまった。

 

「な、何笑ってるんだ‼︎」

 

「い、いや、子供っぽいところもあるんだなって....‼︎」

 

「ほ、豊喜さんだって!嫌いな食べ物ぐらいあるでしょ⁉︎」

 

「私はトマトが苦手です!」

 

特にプチトマトが。

 

「あの噛んだ時の感じがすごく苦手なんですよねー。」

 

「あー、分かるよ。すごく分かる。」

 

どうやら桐島さんもトマトが苦手のようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私と桐島さんは、一緒に家に帰ることになった。

 

私たちはその道中、

いろんな話で盛り上がった。

 

お酒に酔って眠ってしまった話。中学校時代、川で変な魚を捕まえた話。会社を退職した変な子の話。

とにかく面白い話ばかりだった。

 

「あ、そろそろ家に着きます!」

 

私の家が見えてきた。

もうちょっと桐島さんと一緒に居たいけど......

椎葉ちゃんがお腹を空かせて待ってるんだ。

早く帰って何か食べさせてあげないと。

 

「じゃあ、さようなら!」

 

「うん、また今度会おうね!」

 

私は桐島さんに別れを告げて、

ガチャッ、

扉を開けて家の中に入った。

 

「ただいまー。」

 

...........返事が聞こえない。

夜も遅いし、もう寝ちゃったのか?

 

そう思って私は寝室に向かった。

しかし、椎葉ちゃんの姿は見当たらない。

ま、まさか‼︎勝手に外出を⁉︎

 

だとしたらまずい‼︎

急いで探さないと‼︎

 

私はそう思い、サケノミに電話をかける。

一応、サケノミのところに椎葉ちゃんが居ないか聞く。

 

プルルルル、プルルルル、

 

で、出ない........。

電話を持たずに出かけてるのか........?

 

 

 

っ⁉︎

な、何だあれは.......‼︎

 

空には、妖怪の世界への入り口が広がっていた。

妖怪の世界が........人間界に降りてきてる.......?

しかも、もうすぐ着地寸前の所まできている。

着地させてはまずい‼︎

町が壊れてしまう‼︎

 

「バリア‼︎」

 

ビャン‼︎

 

私は結界を張って足止めをしようとした。

せいぜいもって5分ぐらいだ。

5分で椎葉ちゃんとサケノミを探し、着地を防ぐ方法を考える。

もたもたしている時間はない‼︎急いで探さないと‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふふ、ハッハッハッハッ‼︎」

 

「はぁ、はぁ、も、もう死んじゃう.........。

これ以上はやめて....,.....。」

 

もうすぐだ‼︎

もうすぐで妖怪の世界を救える‼︎

そしたら私は英雄になるんだ‼︎

ハハハハハ‼︎

さぁ、さっさと出てこいホウキ‼︎

お前に逃げ場は無いんだよ‼︎

 

 

 

つづく



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。