ISーインフィニット・ストラトスー White of black (凍結) (蒼京 龍騎)
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原作開始前
第一話 黒騎士


どうも、蒼京龍騎です。
先に書いている小説の方のネタがあまりにも思いつかなかったんで、ISの作品を描きたかったという衝動に駆られて書きました。なので内容は若干酷いかもしれません。許して。


ISーインフィニット・ストラトスー

White of black

第一話 黒騎士

 

これは、『白騎士事件』と呼ばれる事件の影に隠れたもう一つの事件、『黒騎士事件』を引き起こした家族の一人に転生した男の物語。

 

 

 

「、、、、っ、な、なんだお前は、、、、?」

空。翼がないと存在できない場所に、『それ』はいた。

一つは、巨大な人型が純白の装甲を纏い、手に一本の刀を携えたもの。

一つは、白の装甲を全身に纏った鎧武者のような巨人が、手に二本の刀を携えたもの。

それは、ISと呼ばれた装備だった。

だが、ありえない。

今、白の装甲を纏い空に浮かぶ女性はそう考えた。

現存するISは、今自身が持っているものしか無いはず。

では、この目の前にあるものは?

考えるも、答えは浮かばない。

「おい!!貴様何者だ!!!」

叫ぶと、その物体は、静かに呟いた。

「、、、、、『黒騎士』。それが俺の名だ」

『黒騎士』と呼ばれる存在が、緑に光る双眼で女性を睨みつけるようにしながら呟き終えると刀を構える。

「、、、、、白騎士。お前はやっちゃいけないことをした。その罪を贖え」

直後、黒騎士という名のISは、世界で最初のIS操縦者であるはずだった女性、織斑千冬に向けて空を蹴った。

 

 

 

「、、、、、ん?ここは?」

真っ白な空間。そこで俺は目覚めた。

辺りを見渡してみるが、何も無い。

「、、、、えーと俺、何してたんだっけか」

いや、そんなことよりまず記憶がきっちりあるかだ。

まず、名前は榊原 玄輝(さかきばら くろき)。これはいいな。

年齢、、、、???

まぁ高校クラスの知識はだいたいあるから18ぐらいか?

好きな物、ロボ。嫌いなもの、人間のクズ。

親が嫌いなものに該当。育児放棄&虐待祭りでアパート借りて逃げても合鍵作って入り込んで暴力ふるって、、、、これ以上思い出したくねぇな。

ここに来る前は、、、、確か親に破られたIS2巻と買ってなかった6~11巻を買おうとしてチャーコンフォーに行って、その道中で車に轢かれ、、、、、ゑ?

「、、、、これって、あれか?」

、、、、転生?いや、その前段階的なやつか?

そう考えていると、いきなり目の前にデカい画面が出現した。

「、、、、えーなになに?あーやっぱ転生、転生後の情報、、、?」

転生先→ISーインフィニット・ストラトスー

使用IS→ラインバレル(漫画版)

肉体→ナノマシンによる身体能力の向上と再生能力付与、あらゆる病気に対する耐性

親→父、篠ノ之束の助手 母、試験型IS<無銘>、並びにラインバレル試験操縦者

「────情報過多すぎて訳分からんわ!!!ってか待って俺のISラインバレルなのは良いけど俺IS五巻までの知識しか」

俺はそう叫ぶが、神は文句を聞き入れないらしい。

俺の体は宙に浮き、そのままなにかに引っ張り上げられるような感覚がすると同時に、意識が途切れる。

 

 

 

「、、、、ねぇ、この子の名前何にする?」

「──いいのがあるぞ。俺が今博士に秘密で、極秘で開発しているやつのアダ名」

────目が覚める。眩しい光が目に入る。

────目の前に二人の男女が居た。

女の方は、病人服を纏い、髪は黒に茶色のメッシュがかかったショートヘアー、涙を浮かべながらこちらを見ている大きな黒の瞳。

男の方は、白衣を纏い、派手な長い金髪に、俺の事を優しく見る紅の瞳。

誰だ、この人らと思った。

次に体を見てみるが、見た瞬間。

俺は、一瞬で俺の現状を理解した。

「、、、オギャァァァァァッ!?(俺赤ん坊じゃねぇかァァァァッ!?)

「、、、あっ!?泣き出しちゃった!?こういう時どうすればいいんだっけ!?」

そう、目の前にいるのは、この世界での俺の父母らしい。

あたふたと、母が慌てふためく。

「おっと、名付けが遅れて怒っちゃったか?ほれーよしよーし」

そう言いながら、親父が俺を抱っこして頭をさすさすと撫でる。

────親父よ。悪いけど問題はそこじゃない。無理な話だけど気づいてくれ。俺見た目こうでも精神年齢18ぐらいだから。

、、、、、でもやべぇ、めっちゃ心地いい、、、、、、( ˘ω˘ ) スヤァ…

、、、、って寝るな俺ェ!!!!まだ俺の名前聞いてねぇぞ!!!

「、、、それで、この子の名前、どうするんだっけ?」

「、、、、、現在開発段階の俺のIS、ナンバー000。識別名(コードネーム)

『黒騎士』。そこから始めの二文字を取って、黒騎(くろき)三七城 黒騎(みなしろ くろき)ってのはどうだ?」

「、、、、かっこいい」

「だろ?」

、、、、すげぇ、偶然か必然かは知らんけど前世と名前が同じだ。オマケに名前クソかっこいい、、、

と、そこで母が俺を再び見て大きな笑みを浮かべた。

「、、、、きっと有名になるね、この子は」

「、、、ああ。俺の黒騎士さえあれば、世界は平和になる。そうすりゃ一生家族全員幸せに暮らせるぞ」

、、、、、ん?あれちょっと待て。スルーしてたけど確かISって篠ノ之束が一人で開発したはずだよな?まさかとは思うけど、、、、

と考えていると、急に眠気がやってきた。

、、、、あー、そういや俺今赤ん坊だから、泣いたら眠くなるか、、、、

「、、、、楽しみだね」

「、、、、ああ」

嬉しそうに微笑んでいる両親の顔を見ながら、俺は夢の世界へ入った。

 

 

 

────1年後。

「おとーたん、おかーたん」

「「、、、、、喋ったァァァァァァッ!?」」

俺は一歳ぐらいで喋れるようになっていた。四足歩行はどうにもならなかったが。

まだ言葉は拙いが、ギリギリ伝わるレベルだった。

、、、、まぁここまで来るのに、母乳飲んだりアレを漏らしたりと、精神年齢18ぐらいの俺には恥ずい事象が山ほどあったが、それを何とか乗り越えここまで来た。

そしてついに、俺の周囲について重要な情報を幾つか掴むことに成功した。

まず父親。名前は三七城 天児(あまがつ)

────ゑ?天児?、、、、、( ˙꒳˙ )ohやばい嫌な予感しかしねぇ、、、、、、

ま、まぁそれは置いといてだ、経緯は不明だがどうやら篠ノ之束のところでISを作るために協力しているらしい。

、、、、、え、ドユコト?記憶が正しければ束博士って確か織斑家と自分の妹以外眼中に全く無い人だよな?なんでIS制作に協力させるほど仲良しなの?、、、、まぁ考えても仕方ないか。

だが、問題は次だ。どうやら親父は博士に秘密でISを一機作っているらしい。

親父が発していた言葉からの憶測だが、どうやら完全戦闘用のISらしい。

「平和のため」とか「これなら戦争を終わらせられる」といった言葉でこの考えに行き着いた。

、、、、どうにも嫌な予感しかしないが、今の俺にはどうすることもできねぇからこっちも考えても仕方ない。

ちなみに親父は俺にデレデレで、毎回頭を撫でてくる。その都度( ˘ω˘ ) スヤァ…となるのが俺の常になったという。最高な父です。

次に母。名前は三七城 藍子(あいこ)。束と親父が開発途中のISの起動実験を織斑千冬と共にやっているらしい。

どうやら俺の母と千冬先生、、いや今は先生じゃなかった、、、は仲がいいらしく、ちょくちょく家にも来るしその度俺のことを撫でに来る。、、、、デカいです(何がとは言わん)。

母は、、、優しい。とにかく甘えさせてくる。抱っこなんて日常茶飯事だし、ご飯が手製の離乳食だが死ぬほど美味いし、、、、最高な母です。

、、、、、話が脱線したが、とりあえず、だ。これでIS学園に入るためのコネができた。

多分俺は確定でISが使えるから、入学した際はちょっとばかり贔屓してくれるはずだ(下衆な笑み)。

 

 

 

そんな情報を地道に集めて数ヶ月経ったある日。

────母に変化が起こった。

嬉しそうにルンルンと口ずさみながら料理をしていた母が、いきなり倒れた。

病院で診てもらったが原因は不明。だがそんな身体では実験はできないと、ISの起動役から外された。母が自分の意思で、しかも喜んで実験に参加していたので、皆が申し訳なさそうな顔を向けていた。

だが、母は笑顔でいた。

「ぜんっぜん大丈夫!!!こうなっちゃった以上、黒騎の世話に全力を注いじゃうもんねー!!!」

そう母は宣言した。

宣言通り、母は今まで以上に俺に愛情を注いでくれるようになった。

以前でさえ、ISの実験に結果を纏めるレポートなど、やることが沢山あったのにほぼ毎日俺の世話を欠かさずやっていた。

「どうして、そうなってまでも俺の事を構ってくれるのか」

と聞いたことがある。

「何言ってるの黒騎。私はあなたのことが大好きだから、構うに決まってるでしょ?」

────そう言われた瞬間泣いた。

前世がクソすぎたことも相まって、号泣した。

いやだって、前の親平気で俺の事殺しにくるしアパートに押し入って暴力ふるうし、金奪ってく強盗まがいだぞ?いや優しすぎない俺の今の親、、、、、

 

 

そんな優しい母が倒れた原因を、理由を、俺は知っている。

────親父が作っているISのせいだ。

あの機体は、束博士が作っているISよりパイロットにかかる負担が大きいらしい。

それの起動実験に何度も付き合っていた故、今の状態になった。

「、、、、、藍子、済まない。俺がもっと早めに止めていれば、、、、」

「、、、気にしないで。私はそれを承知で乗っていたんだから」

親が俺を寝かしつける時に、俺は寝たフリをして親の目を騙し、耳をすますと会話が聞こえてきた。

「、、、、俺もISに乗れればいいんだが、、、、クソっ」

「こーら、そんな言葉使わない。黒騎に移ったらどうするの」

「、、、、すまない」

「もう、天児さんがそんなんじゃあ黒騎も心配しちゃうよ。もっとしゃきっと」

「、、、、すまない」

「、、、、とりあえず、表面上は試験役から降りたけど、まだ『あれ』には乗るからね?」

「駄目だッ!!!」

そこで、始めて父が声を荒らげた。

それはそうだ。現状、ただでさえ元気が無くなってきている母を再びあのISに乗せれば、何が起こるか、知りたくもない。

「、、、でも、あれが完成すれば世界が平和になるんでしょ?」

「そうだが、、、、ッ!!!俺はお前の方が大切なんだッ!!!あんなものより!!!」

「、、、、知ってるよ。束さんがISを世界に知らしめるために、どこかのミサイル基地をハッキングして自作自演な計画を考えていること。それを止めるためにも、あれが必要不可欠なんでしょ?だから、私は乗るよ」

、、、、ああ。なるほど。親父があのISを作っていたのは、これが理由か。

白騎士事件。それを止めるために作ってたのか。

「、、、、、ッ!!、、、、、やめてくれ。頼む。もう家族を失いたくない、、、、」

鼻水をすする音。嗚咽の音。

「、、、、これは私の選択。だから、天児さんが気にする必要はないよ」

「、、、、嫌だ、、、、嫌だ、、、、、ッ!!!!」

「、、、、、あと一回。それが私が乗れる回数で、私が終わる数。だから、もう私自身、寿命があまりないんだ」

「ま、待ってくれ。あと少しであのISからの負担を軽減するナノマシンが完成するんだ。

だからそれまで待ってくれ頼む、お願いだ、、、、ッ!!!」

「、、、、でもその頃にはもう既に計画は実行されちゃってる。でも私が一回乗れば、そのナノマシンを完成させるためのデータも集まるし、、、、黒騎に、『これ』を渡せる」

「、、、、ッ」

「、、、、ねぇお願い。私は無意味に死にたくないの」

「、、、無意味じゃない。俺らが幸せになれる。だから、、、無意味じゃない」

「、、、それが、世界を不幸にしてまで得た幸せなら、私はいらない。だから、、、、ゴホッゲホッ」

「ッ!!藍子!!」

「、、、、これが私の最後のお願い。こんなワガママな嫁でごめんね。でも、これだけは忘れないで」

「、、、、言うな、、、、言うな、、、、ッ!!!」

「、、、、大好きだよ。天児さん。黒騎」

その一言で、俺は寝床から起き上がり、母の元へ行こうとした。

────しかし。

砂糖のような甘い匂いが、部屋に漂ってきた。

その匂いを嗅ぐと、猛烈な眠気がやってきた。

────まさか、睡眠薬、、、、?

「、、、、いや、だ、、、、」

そこで、始めて俺は自分の心情を口に出した。

先程の言葉で、母が死のうとしているのが分かったからだ。

前の世界とは違い、俺に愛情を注いでくれる母を、失いたくなかった。

「やだ、、、、やだ、、、、」

そう呟きながら、どうにか眠気に抵抗し起き上がろうとするも、上手く体が動かない。

「、、、、、ふざ、、、、けんな、、、」

そう吐き捨てると、俺の意識はそこで途切れた。

 

そして、次の日、目を覚ますと。

────母は、居なくなっていた。

どうしようもない虚無感が、俺を襲う。

泣きたい。でも何故か泣けない。

悔しい。あの時動けなかったのが。

怒りたい。不甲斐ない俺に。

見てもらいたかった。成長した俺を。

そのような感情がごちゃ混ぜになったような感情が、俺を襲う。

 

 

以来、親父は人が変わったかのように研究へ没頭するようになってしまった。

何度か千冬が俺の家に来たが、その度親父は千冬に「妻は出ていった」と嘘を吐いていた。千冬は疑惑の目を向けながらもその言葉を信じていたようだった。

俺はどうしようもない感情を伴いながら5才になっていた。

保育園にも入っていたが、卒園までの記憶が無い。

家でも、味がしないコンビニ弁当を食うことと寝ること以外はひたすら自分の部屋の天井を見上げる日々が続いた。

だが、一度鏡を見て自分の姿を確認したことがある。

どうしてかは分からないが、おそらく、少しでも孤独感を紛らわしたかったんだろう。

ピンとはねた特徴的なくせっ毛が目立つ金色のメッシュがかかった黒い髪。

今の年齢には合っていないであろう死んだように暗い黒の瞳。

顔立ちは母の方に似ていた。

少しだけ嬉しさを感じた。

 

そして、俺が6才になった頃、『それ』は唐突に、起こった。

その日は、外に出たい気分だったので俺は昼飯を食った後すぐに家から出て、晩飯の時間まで外をほっつき歩いていた。

外の空気に満足して、家に戻ると。

────家が、燃えている。

ごうごうと、音をたてながら燃えている。

「、、、、、ッ!!親父!!!」

俺はそう叫びながら裏口に回ってから家に入る。

「親父ッ!!!どこだっ!!!!」

叫ぶと、親父が階段からゆっくりと現れた。

「、、、、黒騎、話がある。ついてこい」

いきなり、親父が呟くように言う。

「何言ってんだよ!!!逃げるんだよ!!!」

「安心しろ。ここには頑丈な地下設備がある」

親父がそう言うと、まだ燃えていない冷蔵庫を退けてその裏に手を触れると、エレベーターのような扉が現れた。

「、、、、、は?」

「、、、、ついてこい」

親父は俺の腕を強引に掴んでそのエレベーターの中へ自身と共に入る。

「、、、、なんの用だよ親父」

そう冷たく言い放つが、親父は全く気にしていない様子だった。

「、、、、黒騎、お前だけだ。今の俺の家族は。だけど、俺もすぐに藍子の元へ逝こうと思う。だから、お前に、最後に『これ』を託しに来た」

そう親父が無感情な声で言うと、エレベーターの扉が開き。

その向こう側の、無機質な白の空間に。

────白い武者(ラインバレル)が、佇んでいた。

「、、、、IS殲滅用IS。識別名、『黒騎士』。向こうがISの始祖となる白騎士なら、こちらはISを滅ぼすための熾天使となる黒騎士。お前の名前の元であり、いがみ合いを続ける世界を正すための力になる『はずだった』機体だ」

親父は、そう言い終えると冷たい、無感情な目を俺に向ける。

「、、、、今日、あと少ししたら計画は実行される。だから、お前は逃げろ。これは、お前を守るための鎧であり、お前に害を成すものを滅ぼすための機体だ」

親父は俺にそう言ってくる。

「おい待てよ親父!!!いきなりこんな状況になってて、訳が分からねぇよ!!!」

そう叫ぶが、親父はこちらを見ない。

「、、、、ってかそもそも親父、俺は知ってるぞ!!母さんはこれに乗って死んだんだろ!?そんなのに乗れって言われてもお断りだ!!!第一、アンタは母さんが死ぬと知っててこの機体に乗せたんだ。そんな奴の言う事なんて聞くかよッ!!!」

そう、親父は母さんを止めなかった。止められるはずだったのに。

そう考えると、どす黒い感情が溢れ出てくる。

「、、、、そうか」

言って、親父が目を細めると。

 

パシュッ。

 

「、、、、、え」

親父の手に、細長い銃が握られていた。

その銃口は俺に向いていて、俺は自分の体を見る。

────細長い、注射器のような棒が、俺の胸に突き刺さっていた。

「、、、、、ッ!?、、ッ!?」

それを自覚すると同時に、全身に激しい痛みと息苦しさが俺を襲ってくる。

床に伏せて胸の棒を引っこ抜く。

だが、痛みは収まらない。

顔を苦痛に歪めながら、ひゅーっ、ひゅーっ、と風切り音のような呼吸をする。

「黒騎士操縦者身体強化兼保護用ナノマシン、【Dーゾイル】。始めは死ぬほど痛いが、

すぐに良くなる」

親父が、床に伏せた俺を優しく持ち上げ、黒騎士に向かって歩く。

「、、、、確かに俺は藍子を止めなかった。止められなかった。彼女が望んでいることだから、望みを叶えるためだから。と、藍子のことしか考えてなかった。

お前から母を奪うという考えが浮かばなかった。

────すまない、黒騎。こんなことしかできない父親で」

そう言いながら、親父は黒騎士に触れる。

すると、黒騎士の胴体部分が上下に開き、『ちょうど俺1人』をしまえそうなスペースが出現する。

親父は、そのスペースに俺を入れる。

「、、、、、この後、織斑家がお前を引き取ってくれる。そこでお前は生きろ。こんなクソみたいな俺のことは忘れてくれ。ああ、でも母さんのことは忘れるなよ。お前の母さんは何時でもお前のことを思っていたからな、良い母親だ」

そこで、俺は気がついた。

親父の目に、光が灯っていることに。

最後の最後に、優しい父親の目をしていることに。

「あと一つ、言っておきたいことがある。

、、、、、俺らは、いつまでも。

────お前の傍に居るぞ。俺らの愛しの黒騎」

「、、、ま、待っ」

待ってくれ、親父。と言おうとしたが、言い切る前に黒騎士の胴体部が閉じ、視界が真っ暗

になる。

「、、、、、おい、、、まだ、、、ありがとうの一言すら言えてねぇぞ、、、、クソっ、、、!!!!」

真っ暗な空間で、朦朧としながらそう吐き捨てた後、俺の意識は闇へと誘われた。

 

 

 

いつからだろう。この子が普通じゃないと気付いたのは。

齢一才で言葉を喋り、教えてもいないのに自分たちのことを「お父さん」と、「お母さん」と呼んだ。

天才だ。俺たちは抱き合って泣いた。

成長すれば、俺らを超えると、思った。

精一杯、愛情を注ごう。そう思った。

だが、ある日。

千冬と束博士が、地下のISラボである会話をしているのを、聞いてしまった。

「あーもう!!!どいつもこいつも私たちのISを馬鹿にして!!今こそ思い知らせてやる!!!」

「、、、、思い知らせてやる、とは具体的にどうするんだ?」

「よくぞ聞いてくれました!!!まず!!もう少ししたら、世界中のミサイル基地を私がハッキングする!!そして、そこにあるミサイルを日本に向けて発射する!!それで、、、、」

「、、、、なるほど。そのミサイルを、私がISを使い切り落とす。

、、、、酷い自作自演だが、乗った」

「そうこなくっちゃ!!!」

、、、、馬鹿か?とその時思った。

大規模な自作自演。その結末は俺には見えていた。

────ISの『武力』としての価値が認められる。

本来ISは宇宙で活動するためのパワードスーツだ。束博士はそれを目的としてISを作っている。俺もそれに賛同し研究を手伝っていたがそれを行えば結果が目的と大きく違うことになってしまう。

だが、そう言っている俺は。

束博士より早くISの武力としての有用性に気付き、戦闘用という、宇宙で活動するためという目的から大きく外れたものを作ってしまっている。

しかし、今思えばなぜ俺は戦闘用のISを作っていたのかという重要なことをいまいちよく覚えていない。

いや、それよりも。

止めなければ。

そうして俺は、二人に向かってそんなことはやめろ、と説得を試したが無駄だった。

予想される結末を話しても「そんな馬鹿な」と言った。

もう既に、二人はISをどんな形でも認めて欲しい、という顕示欲の傀儡と化していた。

説得という手段が潰された俺は、次の手段を考えた。

、、、、、『白騎士』の破壊。

だが、ISは並の兵器では傷つけられない。

故に、『黒騎士』の開発を急がなければならなかった。

、、、、だが。

あと一回、試験的に起動すれば完成まで間近という場面で。

藍子に、限界が訪れた。

いきなり吐血して倒れたと聞いた時は、全身の血の気が引く感覚がした。

俺が開発している黒騎士は、戦闘用にしたせいかパイロットへの負担が尋常でないほど大きい。

だから、藍子への負担を軽減するためにパイロットスーツを開発してみたが、どれもいまいち効き目がない。

────そこで、ふとある考えが浮かんだ。

もし、ISの技術をナノマシンレベルにまで詰め込み、それを人体に入れたら、負担を気にせずに済む、パイロットスーツなんて必要のない肉体が手に入るのでは、と。

結果、目論見はある程度上手くいった。

どうにか大体の構造は考えれた。だが、データが少し足りず、完成まであと少しという所で行き詰まった。

、、、、あと一回、藍子が乗ればわかるのに。

その考えが浮かんだ瞬間、俺は俺の右頬を殴った。

「、、、、俺は嫁を犠牲にする気か!?ふざけるなッ!!!」

そう吐き捨てて、脳を全力で稼働させて残りの部分を考える。

、、、、しかし。

「私、もう一度乗る」

ある日、藍子がそう提案してきた。

理解できなかった。

君をそんな体にしたモノだぞ!!と言ったが、妻は。

「、、、、知ってるよ。束さんがISを世界に知らしめるために、どこかのミサイル基地をハッキングして自作自演な計画を考えていること。それを止めるためにも、あれが必要不可欠なんでしょ?だから、私は乗るよ」

優しい、優しい目を向けながら俺を見つめてくる。

────頼む、そんな目で俺を見ないでくれ。

あの目は、謝罪の、罪悪感を孕んでいる目。

その目で見られたら、俺はお前の提案を呑んでしまいそうになる。

そう言いそうになった。

だが、俺はぐっと口を閉じて耐え、駄目だ、と言おうとした。

けど。

「お願い。無意味に死にたくないの」

その一言で、俺は藍子を、妻を、あのIS(死神)に再び乗せてしまった。

そして、最後の起動を行ってしまった。

藍子は、起動中は全く無口だった。

そして、全ての起動実験が終わり、ISの動力を切ると。

「、、、ありがとね。私の愛しのダーリン♪」

そう笑顔で言って、藍子は死んだ。

直後。俺を言いようのない思いが襲ってくる。

────なぜ藍子をISに乗せた?

────なぜ止めなかった?

────なぜ幸せな暮らしより、茨の道を選んだ?

結論は、すぐに出た。

、、、、俺も、束らと何も変わらなかったのだ。

、、、、、家族より、ISを選んだ。

世界を救うため、藍子のためと宣っておきながら、結局は自分のためだけになっている。

喉から何かがせりあがってきて、胃の内容物を床に吐き散らす。

、、、、何が世界のためだ。何が家族が幸せになるためだ。

ふざけるな。俺にそんな資格、そもそもなかったんだ。

嗚呼、憎い。

篠ノ之束が。

嗚呼、屠りたい。

織斑千冬を。

嗚呼、呪いたい。

、、、俺自身を。

そこから、俺はナノマシンの完成を目指すことに没頭すると共に、ある実験も始めた。

────意識の複製。並びにそれの電子化。ISへのインプット。

それらを完成させるために、黒騎と触れる時間を無くした。寝る時間を無くした。飯を摂る時間を可能な限り減らした。ISを完成させること以外に使う時間を減らした。

その甲斐あってか、ナノマシンの完成と同時に、先程の実験も成功した。

さらに、ナノマシンには思わぬ機能が付いていることが分かった。

────これで、黒騎を一人にしないで済む。黒騎が死ぬ心配が無くなる。

そう思いながら、俺はナノマシンを注射器に詰め、専用の銃へセットし懐にしまう。

そして、家にガソリンを撒いてから、火をつけた。

────思い出と共に、死にたかった。

すぐさま、ガソリンを撒いていなかった裏玄関から、自身を呼ぶ黒騎の叫び声が聞こえてきた。

俺は、階段の影から現れ、黒騎を地下に連れていく。

そして、そこで始めて黒騎にISを見せた。

だが、黒騎は夜中にひっそりと起きていた事があり、話を聞いていたようなのでこれの存在を知っていた。

────母親を殺したモノとして。

この場所で、黒騎士を託すために連れて来たが、当然黒騎は黒騎士を拒絶した。

だから、俺は人生で初めて、自分の意思で息子を苦しめるに対して腹を括った。

懐から銃を引き抜き、黒騎に向けて注射器を放つ。

俺が開発した、『男でもISが操縦できる』ようになり、死ににくい体にするナノマシン、【Dーゾイル】を。

すぐさま、黒騎は床に伏せて苦しそうにもがく。

俺は、胸を締め付けるような罪悪感に耐えながら黒騎を自身の腕で抱く。

そのまま黒騎士の方まで足を運び、黒騎士のコックピットに当たる部分を展開する。

そして、空いたスペースに黒騎を置くと、俺は黒騎に向かって、重く閉ざしていた口を開く。

「、、、、確かに俺は藍子を止めなかった。止められなかった。彼女が望んでいることだから、望みを叶えるためだから。と、藍子のことしか考えてなかった。

お前から母を奪うという考えが浮かばなかった。

────すまない、黒騎。こんなことしかできない父親で」

黒騎の、俺を見る目が変わる。

「、、、、、この後、織斑家がお前を引き取ってくれる。そこでお前は生きろ。こんなクソみたいな俺のことは忘れてくれ。ああ、でも母さんのことは忘れるなよ。お前の母さんは何時でもお前のことを思っていたからな、これに乗っている時でさえ。良い母親だ」

まるで、俺に対して罪悪感を感じている目を。

だが、俺は言葉を止めずに言う。

「あと一つ、言っておきたいことがある。

、、、、、俺らは、いつまでも」

ああ、そうだ。いつまでも。

「────お前の傍に居るぞ。俺らの愛しの黒騎」

やっと、言えた。

ああ、やっと言えた。

1行にも満たない言葉だが、やっと言えた。

────こんな、お前に愛を伝えられない親父で、ごめんな。

「ま、‪待っ」

黒騎の言葉を待たず、俺は黒騎士のコックピットを操作して閉じ、横にある緊急射出ボタンを押す。

黒騎士が地上に向けて、猛スピードで運ばれていくのを見送る。

「、、、、ごめんな。黒騎」

お前にこんな経験をさせる親父で。

そう思った直後、上の方から爆発音のような振動が響き、ラボの天井の一部が崩落する。

「、、、、ああ、やりきった。これで、お前の所に行ってもいいよな?

────藍子」

俺は、俺に向かって落ちてくる天井を見ながら、呟いた。

 

 

 

 

「、、、、ッ」

目が覚める。

だが、真っ暗で何も見えない。

、、、いや、正確にはほんのりと、視界の端の方に淡く光っている何かがあった。

だが、それに触る気力が起きてこない。

母さん。それに続いて、親父も死んだ。

しかも、この機体に母さんを乗せていたのは、本当は俺のためだった。

勝手に勘違いして、親父を憎んでいた俺が憎い。

「、、、、前世よりひでぇ仕打ちじゃねぇか、、、、クソッ、、、!!!」

『、、、、、搭乗者に【Dーゾイル】が投与されていることを確認。ISナンバー000。識別名黒騎士起動。搭乗者と機体との接続テストを開始します』

真っ暗な空間に、いきなり謎の声が響いた。

と、次の瞬間。

「ガ、、、、ッ!?」

体に電流が流されたかのように、俺の体がビクッと後ろに逸れる。

目に、手に、足に、全身に。

体が別の何かに変わるような感覚が襲ってくる。

「、、、、、ッ?」

その感覚に慣れ、気持ち悪さから少しでも逃れるために閉じていた目を開く。

「へ?」

目の前には、いつもの街の光景が広がっていた。

だが、違う。

視点の高さが、俺の身長と合っていない。

俺は頭を下に向けて、自分の体を見てみる。

「、、、、マジ、かよ」

俺の体は、変わっていた。

全身が、鉄のようなもので出来たものへと。

「、、、、って待てよ?、、、、これ」

冷静になってから再び体を見てみる。

、、、、どうやら、あそこで見たことは本当らしい。

親父が作ったIS、黒騎士。その見た目は、この世界に来る前に見た情報と同じだった。

「、、、、ラインバレルじゃねぇか」

胸にある目玉のようなものが付いた装甲。

爪のように鋭い指先。

腕に装着されている二本の刀。

尻尾のような腰に付いている長い長方形の箱。

誰がどう見ても(あっちの世界では)ラインバレルだった。

「、、、つまり」

俺は左腕に装着されている刀を引き抜く。

重さは、一切感じない。

それを両手で持ち、縦に一閃すると、ビュオンという風切り音が鳴った。

「、、、、やっぱIS。いきなりでも馴染む」

一度も使ったことが無いのに、何年も使っていたかのように使える。

と、ビーッビーッと煩い電子音と共に、視界にデカデカと『警告』の文字が表示される。

「、、、、んだよ?、、、、あ」

後ろを振り返り、真っ暗な空を見て。

俺は今日がどんな日か思い出した。

────『白騎士事件』。白騎士と呼ばれる白いISが空中に浮き、日本へ発射されたミサイルを全て切り落とし、その後に来た外国諸国の軍の最新鋭戦闘機すら容易く落とし、ISの力を見せつけた事件。その白騎士が、俺の視界にある。

もう既にミサイルは撃ち落とした後であるらしく、そこら中に兵器の残骸が広がっていた。

「、、、、、」

そこで、俺はどうするか迷った。

原作では、このまま白騎士は無双っぷりを見せつけるだけで終わるのだが。

──もし、そこに俺が介入すれば?

と、そこで親父の言葉が急にフラッシュバックする。

 

これは、お前を守るための鎧であり、お前に『害を成すもの』を滅ぼすための機体だ。

 

、、、、そうだ。元はと言えばISが出来たこと自体、駄目だったんだ。

束と千冬が、こんな馬鹿げたことをしなければ、親父も、母さんも死なずに済んだ。

ああ、そうだ。今の俺は『転生者』じゃない。

ISという世界の傍観者じゃない。

この世界に生きる、一人の人間。

三七城 黒騎として。

「、、、、正当な、報復をしよう」

ふつふつと怒りが滾ってくる。

だが、頭は冷静だ。

ゆっくりと、足が地面から離れ俺は宙に浮く。

巨大な右手で、巨大な刀を握りしめる。

「、、、、待ってろよ。始まりの白騎士。俺が、『終わりの黒騎士』が、そいつをぶっ壊してやるよ」

 

 

そして、今に至る。

「、、、やってはいけないこと、だと?」

白騎士が、いや、バイザーで顔を隠した千冬が俺に聞いてくる。

「、、、、お前らの自作自演。それのせいで俺の家族は死んだ。

────親父は、お前らを説得しようとした。

──でも、お前らはそれを聞き入れなかった。

そのせいで、俺の親父と母さんが死んだ。だから、俺はお前の白騎士を、、、、」

俺は言葉を切って、一度刀を構え直すと、言葉を続ける。

「、、、、ブチ壊す。できる限り壊す」

俺は腰に付いている箱を翼のように展開し、俺は白騎士に向かって加速する。

そのまま、構えていた右手の刀を振り下ろす。だが、白騎士が持っていた刀に防がれてしまう。

ガキィン!!と激しい音が鳴る。

「、、、、お前、まさか、、、、素人か?」

そう千冬の声が聞こえる。

「、、、、素人だと思いたければ思っておけばいい」

俺はそう返し、まだ攻撃に使っていない左手の刀を思い切り突き出す。

「、、、、ちっ」

あと少しで刺さる、といったところで、いきなり白騎士の姿が消えた。

いや、正確には『加速して離れた』と言った方がいいか。

瞬時加速(イグニッションブースト)。いわゆる溜めダッシュ。

「、、、、ひとつ聞く。なぜ、お前はISを持っている?今は私のこれしか無いはずだが?」

俺から距離を取った白騎士が聞く。

「、、、、じゃあ、言おう。これを作ったのは、篠ノ之束の助手だ」

「、、、、!?」

と、そこで始めて、白騎士が驚愕したように機体を揺らした。

「、、、ま、まさか、、、、いや、ありえない、、、、まさか、、三七城、、、?」

そう困惑する白騎士に向かって、俺は冷たい目を向けながら腰にある長い箱を横に展開して、中にあるサブアームによって運ばれた銃のような武器を刀を鞘に納めてから手に取る。

<エグゼキューター>。ラインバレルの切り札であり今は俺の黒騎士の切り札。

「、、、、木っ端微塵にしてやるよ、白騎士」

その銃口を天に向けて、<エグゼキューター>を展開する。

緑の光の剣が、<エグゼキューター>から発生し、周囲を緑の光で照らす。

そのまま、俺は白騎士を睨む。

「、、、、ッ」

白騎士は、その攻撃を避けるように右へ向き瞬時加速を発動しようとする。

だが、俺はあえてそれを見逃す。

ぶっ壊すとか木っ端微塵にするとか言っておいて、今更ながらこいつを壊せば一夏がISに乗れないことに気がついた。故に見逃す。

どうやらあれだけ決意を固めておいても、俺はまだできる限り原作通りに話を進めようとしているらしい。意外と俺の方が人間的にクズかもしれねぇな。

そう心の中でボヤきながら、俺は<エグゼキューター>を振り下ろす。

緑の刃は真っ直ぐに千冬に向かい、切ろうとするが、千冬が瞬時加速をする方が早かった。

斬撃が、空を切る。

<エグゼキューター>から発生していた緑の剣が霧散し、辺りに静寂が訪れる。

「、、、、なんだと?、、、、わかった。そうする」

と、俺の攻撃を回避した千冬から、誰かと会話しているような声が聞こえた。

「、、、、黒騎士。この勝負はお預けだ。私は撤退させてもらう」

千冬は再び瞬時加速を行う予備動作に入った。

────逃がすと思ってんのか?

「おい、待ちやがれ、、、、!?」

そう叫び、俺も瞬時加速を行い追撃に入ろうとした所で。

視界が、ぐらついた。

空中でバランスを崩しそうになったが、体勢を立て直し目を手で覆い隠すが、次第にぐらつきが悪化していった。

目だけではなく、感覚がぐらつく。

意識が、ぐらつく。

気づけば俺は全身の力を抜いて、地に向かって落下を始めていた。

体に浮遊感を感じながら、俺の意識は闇へと堕ちる。

 




はい、いかがでしたでしょうか。
俺にとって鉄のラインバレルは人生最初の方で出会ったロボット作品なので、好きなISとコラボさせました。悔いはない。
まぁこれ自体衝動書きみたいなものなので、完全に不定期投稿になります。許して。(3度目)
あと自分デート・ア・ライブの二次創作も書いてるんで、そちらの方も良ければ見てやってください。気力向上に繋がるので、、、、
それでは、多分次はデアラの方でお会いすることになるので、それまでしばしさらばじゃー!!(・ω・)ノシ(そういや(・ω・)ノシ←今更思ったんだがこれってどうゆー意味なんだろ)


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オーバードライブ

はい、蒼京龍騎です。
次はイレギュラーブルーで会うとと言ったな。あれは嘘だ。
早めに書けちゃったぜ(´>ω∂`)テヘペロ
つーわけで二話目ドゾー(*゚-゚)っ


ISーインフィニット・ストラトスー

White of black

第二話 オーバードライブ

 

「、、、、どういうことだ、束」

「、、、、あー、多分だけどあれ完全戦闘型のISだねー。あんなのを三七城くんが作ってたとなると、、、、」

「私が聞きたいのはそこじゃない!!なぜあんなのがある!?どうして三七城があんなのを作ってた!?」

「こっちも多分な憶測になるけど、元々三七城くんが作ってたものを誰かが奪ったか、脅して作らせてたか、もしくは、、、、私たちを止めるために急ピッチで作ったか」

「、、、、一番最後のはありえないと思う。私たちが計画についてラボで喋ったのは少なくとも一か月前。その間にIS一機作るのは無理だ」

「私もその案に賛成、だからその前の二つだね。今のところ」

「、、、、だが三七城が私たちに秘密でISを作っていたとは思えない」

「いやー残念だけど、私はその可能性が一番高いと思ってるんだよねー」

「、、、、何故だ」

「いやーなんかISのパーツが無くなってることがしょっちゅうあってね。私が無意識のうちにISのパーツで『おもちゃ』でも作ってたんじゃないかなって思ってたんだけど、、、」

「、、、、つまりは?」

「私のISのパーツをちまちま奪って作ってたんだろうね。あーしてやられた、、、」

「、、、、それで、あのISはどうする。壊すか?それとも封印するか?」

「、、、、、いやーそれはちょっと、、、、今のところ放置でいいと思うよ。動きもなんか素人くさかったし。──で、一つ思ったんだけど、そういや三七城くんに息子って居たよね?今どこにいるんだろ?」

「、、、、、ッ!?」

「あ、ちょっと!?」

 

 

 

「、、、、い!おい!!大丈夫か!?」

「、、、、、ッ?」

俺は、目が覚める。

目の前には、一人の少年がいた。

そして、俺が見上げているのは、見知らぬ天井。

寝ていたせいか、ぼんやりとする。

「、、、、よかった。家の前で倒れてたから心配したんだぞ」

俺は、かけられていた布団を横にずらして起き上がる。

「、、、、、ここは?ってかお前は?」

「ああ、自己紹介がまだだったな。俺は織斑一夏(おりむらいちか)。ここは俺ん家」

ふむ、なるほど織斑一夏、か。

────え、織斑一夏?

「、、、、織、斑、、、?」

「そう、織斑」

、、、、どうやら、俺この段階で主人公との接触を果たしてしまったらしい。

会うのはIS学園ぐらいかなと思っていたんだが、、、、、って!?

「ハァッ!?」

「のわっ!?いきなり叫ばないでくれよ!?」

ちょっと待てェ!!!なんでこの段階で主人公と遭遇してんだよ!?

、、、いや待て、確か親父、、、、

『織斑家がお前を引き取ってくれる』

、、、、あっなるほど。

「、、、、あのー悪いけどいい加減君の名前を教えてくれないか?名前さえ教えてくれれば千冬姉が君を家に戻してくれるし」

「、、、、俺は、、、、」

そこで、気絶するまでの記憶がフラッシュバックする。

両親の死。

帰るべき家を無くす。

白騎士との戦闘。

猛烈に吐き気がしてきて、俺は手で口を抑える。

「、、、ッ!?お、おい大丈夫か!?今バケツ持ってくる!!」

心が、ぐちゃぐちゃになる。

胃が、苦痛を吐き出そうと内容物をせりあがらせてくる。

目が、そんな苦痛のせいで涙をだす。

体が、急激に重力を感じるようになった。

「ほら、バケツ!!」

涙で滲んだ視界に、ぼやけて映ったバケツに向かって、俺は吐いた。

今までの苦痛を吐き出すかのように、大量に吐く。

「、、、おえっ、ぐおぇっ、、、、」

誰かが、俺の背中をさすってくる。

一通り吐き終え、ある程度スッキリした所で、俺は口を開く。

「、、、、すまない、取り乱した。俺の名前は、、、三七城。三七城黒騎、だ」

言うと、一夏が驚いたような表情を浮かべた。

「三七城って、、、あ!!千冬姉がよく行ってる家の名前じゃないか、、、?」

「、、、、ああ、そうだ」

「でもお前なんで俺の家の前に居たんだ?しかもなんか謎の刀を握ってたし」

一夏が、指で俺の右の方を指さす。

その方向を見ると。

「、、、刀?」

一本の刀が赤い鞘に収められて、そこにあった。

一夏が言うには、俺が持っていたものらしい。

俺は、この世界では一度も刀を持った記憶はない。

つまり、、、俺のISの。

「、、、、待機形態、か」

「、、、ん?なんか言ったか?」

「いや、なんでもねぇ」

一夏はきょとんとしながらも気の所為にしたらしく、首をぶんと振っていた。

「それより礼を言わせてくれ。俺を介抱してくれてありがとう、織斑さん」

「いや、気にする事はないぜ。あと俺の事は一夏でいい。多分だけど同い年だろ?俺6才」

「、、、そうだ。そして俺の事も黒騎でいい。それで一夏、お前は千冬さんから俺について何か聞いたか?」

「いや、特には」

「、、、、そうか」

どうやら、親父が千冬になにか言って俺を引き取って貰えるよう図っていたとばかり思っていたが、違うらしい。

と、玄関からガチャリという音とともに、バタバタと駆けるような足音が聞こえた。

「おい一夏!!お前のところに、、、、、は、黒騎?」

部屋の扉をバァンと開けて、入ってきたのは千冬だった。

だが、俺を見るなり顔を真っ青にしていた。

「あ!!千冬姉ちょうどいいところに!!」

「、、、、すいません千冬さん。お邪魔してます」

「、、、、は?、、、、は?」

千冬は、珍しいことに驚愕の表情を浮かべたまま固まっていた。

「ど、どうしたんだよ千冬姉、、、?」

「、、、『黒騎が君の家に来ていたら、俺は恐らく死んでいる。だからその時は面倒を見てやって欲しい。その為のサポートは幾つか残してある』。

、、、、お前の親父が、言っていた言葉だ、黒騎」

現状を理解した、といったように少し困惑を残しつつも元の表情に戻った千冬が言う。

「、、、、黒騎。一体何があった?」

そう聞かれたので俺は、、、『嘘』を混じえつつ真実を語った。

俺が先程戦闘した黒騎士であるということを隠すために。

まず、母の体調が崩れたのは親父が作ったISに乗っていたせいということ。

そして出ていったというのは嘘で、そのISに乗って死んだこと。

散歩から帰ると、家が燃えていて親父が死んでいたということ。

ショックで辺りをほっつきあるっていたら謎の男に『これはお前の親のものだ』と刀を渡され、その刀を抜いた直後に眠らされたということ。

そして、気づけばここに居て一夏に介抱されていたということ。

「、、、、そう、か」

そこで、千冬は納得したような、悲しそうな表情を浮かべた。

「、、、、黒騎。お前はこれから私らが面倒を見る。ただし、お前にはそれ相応に働いてもらうからな。穀潰しは家には要らん」

そう言われた。だが俺は元からタダで住ませてもらおうなんざ意識は無い。ただ、、、、

「、、、それはもちろんわかっています。だけど俺は一つ、千冬さんにお願いしたいことがあります。、、、、俺に稽古をつけてください。よく母から聞いています、千冬さんは強いと。無力なガキのままじゃどうにもならない。もっと強くなりたいです」

そう返す。

俺には、既にISという暴力手段がある。だが、手段があってもそれを使いこなす技術がない。

故に、俺はそう頼む。千冬は、将来ISの最強パイロット、ブリュンヒルデになる。素でも原作最強クラス(五巻までの時点)で強い。しかも一夏と同じく俺の主武装は刀だ。学んでおいて損は無い。

「、、、、強いな、お前は」

千冬が俺に言う。

「、、、、いや、弱い。だから弱さを知って、克服したい。お願いします。俺に稽古をつけてください」

俺はベットの上で土下座する。

誠心誠意、取り組むことを誓うためだ。

「、、、いいだろう。なら明日から稽古をつけてやる。だが私の稽古は、地獄だぞ?」

「承知の上です」

ニタリと、悪魔的な笑みを浮かべる千冬に対して、俺は怯まず答える。

「よろしい。なら今日は飯を食って寝ろ。明日に備えるためな。一夏、悪いが私は寝る。こいつに何か作ってやれ」

「わ、わかった」

と言い残し、千冬が部屋から出ていく。

「、、、、お前すごいな。千冬姉のあの顔を見て怯まなかった人っていないぞ?」

一夏が不思議、といった表情で俺を見る。

「、、、、今の俺には怯んでる暇すらない。強くならないといけない」

、、、、将来的に、復讐するために。

「、、、よく分からないけど、頑張れよ!!俺はとりあえず飯作ってやるから待ってろ!!」

「すまない」

一夏がどたどたと走りながら、部屋の扉から出ていく。

「、、、、、ふぅ」

何勢い任せに言ってんだ俺ェェェェェェ!?

失礼極まりないよな!?住ませてもらうのに稽古して、なんて、、、、

ファ〇ク!!アホかいね!!!(どこかの閣下風)

「、、、、まぁ、なっちまったもんはしゃーねーか。明日からは最強目指すつもりで頑張ろう」

そう思いながら、俺は再びベッドに横たわり、目を閉じた。

 

 

────クイ。ニクイ。白騎士。

───ニクイ。ニクイ。篠ノ之束。

ニクイ。ニクイ。織斑千冬。

ミンナコワシテヤル。

オレノカゾクヲウバッタ。

ムクイヲウケロ。

オレガ、【アマガツ】ガホロボシテヤル。

──スベテノISヲ。

 

 

「、、、、きろ!!!起きんか馬鹿者!!!」

「のわっ!?」

ガァンガァンガァン!!!!とうるさく鉄と鉄がぶつかり合う音がして、俺は目が覚める。

反射的に体を起こすと、俺は知らないベッドに横たわっていた。

ベッドの横では、トレーニング用であろうダンベルを二つ手に持った千冬が立っていた。

「、、、、まったく。鍛えて欲しいと言ったのはどこのどいつだ?」

「、、、、あ、夢じゃなかったんですね」

あ、やばいこの状況一夏だったら出席簿で殴られる。

「、、、、まだ寝惚けているのか?」

、、、、あれ?無事に済んだ、、、?

「いえ、すみません。もう目覚めました」

そう言いながら、俺はベッドから降りる。

「よろしい。ならとっとと着替えてとっとと飯を食え。その後九時から十一時までランニング。その後一時間飯を食って休憩した後、六時まで剣道の修行。そして一時間飯を食って風呂に入ったらストレッチを一時間。これを休日に毎回やる」

ワーオ殺す気マンマンスケジュールじゃあないかたまげたなぁ、、、、

「分かりました」

俺は部屋に置いてあった着替えを着てリビングまで向かい、そこに並べてあったご飯、目玉焼き、味噌汁、牛乳といった一般的な朝食を平らげてから千冬と共に玄関へ向かう。

「、、、あれ、そういえば一夏はどこへ?」

「ああ、あいつなら、、、、あ」

と、そこで千冬が何かに気付いたような驚愕の表情を浮かべる。

「黒騎。お前って保育園通ってたよな?」

「、、、、いや、もうちょくちょくサボってますね」

「それはそれでダメなのでは、、、?」

千冬が、今度は困惑の表情を浮かべる。、、、、ってか今更思ったんだがこんなに感情豊かだっけ千冬先生、、、、

「、、、、まぁ、どうにか言い訳考えといて、保育園卒園する時ぐらいはきっちり行きますから」

「、、、、ダメだろう、絶対」

そう言いつつも、ランニングが開始される。

 

「ふっ、ふっ」

「、、、、、?」

一時間ほど歩いた頃だろうか。俺は体の違和感に気付いた。

千冬はほんの少し呼吸を大きくしているのだが、俺は一切苦しさや疲労を感じず通常の呼吸のままここまで歩いていた。

────明らかに、異常だ。

千冬は女性でも体を鍛えている。だから一時間ほど走っても少ししか息が上がっていない。

これならばまだわかる。

それに対して俺は、家からほぼ出ておらず、オマケに体を鍛えたことも無い。さらに、俺は体の方はまだ子供だ。大人に体力面でも速さの面でも勝てるわけが無い。

で、今この状態である。

少し遅めのスペースで走っている千冬に難なく追いつき、呼吸も平然として行えている。

────親父が俺に打ち込んだあの注射器が、なにか関係してんのか?

「、、、、黒騎。そろそろ休憩するか?」

「、、、はい、そうします」

そうして、俺らは偶然近くに見えた公園のベンチに腰掛けた。

俺はそのベンチに座りながら手のひらをじっと見つめる。

────俺は、人じゃなくなったのか?それとも人だけど人じゃない状態へ片足突っ込んでんのか?

そう考えると、手が少しだけ、カタカタと震えた。

「、、、、黒騎。気のせいだったらすまないが、お前息が上がっていないな」

ビクゥ、と体を揺らしながら俺はため息をつく。

さすが千冬さん、気づくのが早い。

「、、、はい。実は、、、おかしいことに呼吸が苦しくないんです。疲労も感じないんです。千冬さんと同じペースで走っているのに、、、、」

「、、、、なんだと?」

「、、、、実はあの火事の日の朝、親父に変な注射を打たれたんです。打たれた直後は呼吸もままならないほどの激痛が襲ってきたんですが、目覚めた後はびっくりするほど体が軽かったんです」

俺は事実に嘘を交えながら千冬に語る。

「、、、その注射が、そうなった原因だと言いたいのか?」

「、、、、恐らくですが」

「なるほど、、、、そういうことなら『アイツ』に頼めば何とかなりそうだな、、、、」

と、千冬が呟いた直後。

「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!!!!世紀の天才少女、篠ノ之束さんの登場だよーっ!!!」

いきなり、空中からメイドコスにウサミミを着けた変態が降ってきた。

いや間違った、変態じゃなくて天才だった。

ISの開発者、篠ノ之束。

原作通りの独特さだなぁ、、、、

「、、、相変わらず派手な登場だな」

「もっちろん!!ってかちーちゃんいきなりどっか行くから心配したんだよ!!って、その隣の子って、、、」

束が、俺の事を指さす。

「ああ。三七城の息子、三七城黒騎だ」

千冬が言うと、束が興味深そうに俺の顔を覗き込んでくる。

「、、、、ほえー、確かに面影ある、、、」

「、、、、父母から聞いています。篠ノ之束博士ですね。両親がお世話になりました」

と、俺はその場で礼をする。

「いえいえー!!で、用ってのはこの子の事だよね!!この天才博士にまっかせなさーい!!!」

と言うと、どこからともなくタブレット端末のようなものを取り出すとカタカタと何かを打ち始めた。

「、、、、あちゃーこりゃ人間離れしちゃってるねー、、、、下手すりゃ死ぬっていうレベルで、、、、 え!?ISの技術を小型化してるやつなの!?うーわ変態のしょぎょー、、、、ふむ、なるほどね」

「、、、どうだった?」

「ごめん!!どうしてくーちゃんがこうなってるのかは分かったけどこれ私じゃ治すの無理ー!!死ぬほどかったいプロテクトが何十にもかけられてるし、奥に行く度難易度激上がりするしこりゃ最終的には私でも解除不能なプロテクトになっちゃってる、、、、狂気の沙汰やってのけるねー三七城くん、、、、」

束がううむと唸りながら呟く。

ってか俺の呼び名くーちゃんって、、、可愛いなおい。

「、、、、じゃあ、どうして黒騎がこうなってるのか教えてくれ」

「えーそれはね、、、、簡単に言っちゃえば『くーちゃん自身がISになっちゃってる』、って感じかな?」

「「、、、、、は?」」

俺と千冬が同時に素っ頓狂な声を上げた。

だって、そりゃそうだろう。いきなり「あなたはロボットになっちゃってます!!」って言われりゃそうなるだろ。

「、、、、えーIS操縦者身体強化兼保護用及びIS男性操作可能用循環型ナノマシン【Dーゾイル】、ね。これがくーちゃんが入れられたっていうものの名前。でもこれの正体はなんとー、、、、ババン!!!小型化したISモドキでしたー!!!」

「「、、、、、は?」」

また、俺と千冬が素っ頓狂な声を上げた。

「いやーよくやったよ三七城くん、、、、私より劣っているって悩んでいたのに、、、、、死ぬ気で考えたんだろうね、、、、で話は戻るんだけど、その入れられたナノマシン一粒一粒がISモドキ、まぁコアなしISって言った方がいいね。それが全身にくまなく回って肉体に作用して、くーちゃんは疲労無しで動けてさらにISっぽいことはなんでもできちゃうスーパーボディを手に入れちゃった、って感じかな」

「ち、ちょっと待ってくだい!!!それってつまり、飛行やら自動再生とかがこの状態でも使えるってことですか!?」

俺は驚きながら叫ぶと、束は「あったりー!!」と親指を立てていた。

────えマジで?俺ISみたいになっちゃったのか?

束博士が言ってんなら事実なんだろうが、、、できれば信じたくねぇ、、、、

ってか待て。これって完全にラインバレルの設定っぽくなってるじゃねぇか。

ナノマシンの名前も一字違うだけだし、、、、ん?いやこれアニメ版の設定じゃねーか。騙したな神様。

「、、、、って今更ながら、くーちゃんはどうしてISのことを知ってて、その上そこまでISに詳しいのかなー?」

「、、、言われてみればそうだな。おい黒騎。正直に答えろ」

し、しまった!?

俺の体がISになってるとか言われたからつい自動再生やら飛行やらについて言ってしまった!!

、、、、よし誤魔化そう!!

「えー、父母が寝ている際にひっそりとその類の文章を読み漁っていたのと、父母の会話を盗み聞きしていたからで、、、、決して束さんの所から盗み見たという訳では、、、、」

「、、、、ふーん?」

「、、、、ほう?」

ちょっ!?怖い!?目が怖いぜ二人ともォ!?

「ほ、本当ですよ、、、?」

「、、、、まぁそういうことにしといてあげる!!あ、あと一つ聞きたいんだけど、、、、もしかしてIS動かしたことある?、、、まぁ今更カマかけても仕方ないか。思いっきりログ残ってるし」

そう、先程とは打って変わって冷たい目線で言われ、俺は全身の血の気が引く感覚がした。

────バレる。俺が黒騎士だということを。

、、、、ん?いや待て!!まだ起死回生の手段はあった!!!

千冬に言った嘘がある!!!

「、、、、すいません、おそらくですが一度起動したことがあります。知らない男から渡された刀を引っこ抜いたら、ISらしきものを纏ったはずです」

「ねぇ、その刀って今持ってる?」

「、、、、残念ですが、今は織斑家に、、、」

と、言いかけたところで。

「え、何言ってるの?刀っぽいの手に持ってるじゃん」

「、、、、へ?」

俺は自分の手の方に目を向けた。

、、、、昨日見た刀が、俺の右手に握られていた。

「あ、あれ?俺確かに家に、、、、?」

と、困惑していると束らが一瞬顔を見合わせながらきょとんとして、再び俺の方を向く。

「、、、、まぁ持ってるからヨシ!!じゃあ早速私たちに見せてよ!!」

「、、、、、え?いやそれはさすがに」

「人目のことならだいじょーぶ!!既に人払い済み」

oh....お仕事が早い事で、、、、、

これで退路が完全に塞がれた。

「、、、、はぁ、負けました。大人しく展開します」

俺は両手を上げてヒラヒラと振り降伏のポーズをとる。

「分かればよろしい」

と、束が胸を張りながら(その際にアレがばるんと揺れていたができるだけ気にしない、、)言った後に、俺は目を閉じてから刀の鞘と持ち手に手を添える。

「、、、、、来い」

そう呟きながら、俺は鞘から刀を抜く。

瞬間、俺の体に光の粒子がまとわりつき、それらが人の形を成していく。

そして前と同じように、体がISになる奇妙な感覚に耐えながら目を開く。

、、、、だが。

目を開けた瞬間に、俺は喉元にあるものを突きつけられていることに気付いた。

それは、前に見たことがあった。

────白騎士のブレードだった。

「、、、、おい。なぜお前がそれを、『黒騎士』を持っている?」

俺の後ろから、千冬が冷たい口調で言い放つ。

「、、、寄越されたものって言ったじゃないですか」

俺はしらばっくれて嘘をつく。

「、、、、そうか。ならいい」

と、千冬が刃を収めて白騎士を解除する。

「、、、、ちーちゃん、これって」

「、、、、ああ。恐らくあの時襲ってきた奴が、黒騎に刀を渡したやつだ」

ISによって強化された聴覚が、そのような会話を聞き取る。

────よし、何とか騙せた。

ブレードを突きつけられた瞬間、俺は死を覚悟したが大丈夫なようだった。

「、、、、さっきのはすまない、黒騎。私らはお前のISの元の持ち主に因縁があってだな、、、、」

と、千冬の方も嘘をつく。

まぁ、千冬らは俺に知られたくはないんだろう。

自作自演の『白騎士事件』についてのことを。

「いいですよ。因縁があったっていうのなら気にしませんし。で、こいつについて調べるんですよね?だったら早めにして頂けると助かります」

「りょうかーい!!そんじゃ、さささーっと」

と、束が先程とは比べ物にならないスピードでタブレット端末に指を打ちつけていく。

「、、、、ふむふぅむ、なるほど。あー、これはナノマシン必須だね、、、ってかこれ本当に戦闘特化じゃん。カタログスペックだけでもこれから作ろうとしてる第三か四世代に匹敵するね、、、、いや本当によくやったよ、、、、」

と、モロに聞こえる独り言を呟きながら作業を続ける。

、、、、って、おい待て、今とんでもないワードが聞こえたぞ。これ実質第零世代なのに第三世代か第四世代に匹敵、、、!?

とんだオーバースペックじゃねぇか、、、、、

「、、、、よし、一通り終わり!!それじゃ、くーちゃんにはこれの名付けをしてもらおうかな!!」

「、、、、え、あれこいつの名前、、、、」

黒騎士で良くないか?と言おうとしたところで、束が俺の言葉を切って言う。

「いやー識別名は黒騎士だけど、なんか、、、ね?ってな訳で付けて!!!」

「、、、、なんか納得いきませんが、、、分かりました」

まぁ、もう見た目で決まってるんだけどな。

和名は、、、、雰囲気で付ける。

「じゃあ、名前は

『ラインバレル』。

和名は、、、

機帝(きてい)

、、、、これでお願いします」

和名、アニメ版鉄のラインバレルOPの『鬼帝の剣』から鬼帝を機帝に変えて付けただけだけど、、、、意外と良くね?

「オッケー!!『ラインバレル』に、『機帝』ね!!うんうん、いい名前!!」

と、上機嫌に束が名前をこのISに打ち込んだと思った時。

─────ス。

「、、、、ッ?」

謎の声が、俺の耳に響いた。

いや、違う。俺はこの声を聞いたことが、、、、

────ロス。

───コロス。

───白騎士。

───篠ノ之束。

───織斑千冬。

「ぐあ、、、、、っ!?」

いきなり、猛烈な頭痛が俺を襲った。

頭を抱えながら、俺は地に膝をつく。

「、、、!?どうした!?」

「え!?ちょっといきなりなんなの!?IS内部のナノマシンが異常活性化!?どうなってるの!?」

呪詛のような、怨念を込めた声が何度も聞こえる。

────コロセ。

────コワセ。

────ハカイシロ。

────ソンザイヲ。

────ニクキ、ISヲ。

────オウサツシロ。

「あ、、、がぁっ、、、、!?」

呪詛が聞こえる度────アア、コワサナイト。頭痛が酷く────ISヲ。なっていく。

意識が────ヒヒッ。何かと────アア、ニクイ。混ざり合うような────

ブチコロス。

「IS強制停止信号送信!!」

そんな叫び声が聞こえると、ラインバレルが解除されて、呪詛のような声がいきなり聞こえなくなり、何かと混ざりかけていた俺の意識が元に戻る。

「が、、、、っ」

少し高い位置から地面に落ち、俺はその衝撃で苦悶の声をあげる。

「黒騎!?大丈夫か!?」

「ちょっと!?大丈夫くーちゃん!?」

心配そうな顔で、二人が俺の元へ駆けてくる。

「、、、、だ、大丈夫、です。、、、、ッ」

その場から起き上がろうとしたがまだ頭痛が続いており、俺はしゃがみながら頭を抑える。

「一体何があった!?お前が入力した途端いきなり頭を抑え始めたのだが!?」

「知らないよ!?私はただラインバレルに名前を入力しようとしただけだよ!?」

「、、、、二人とも、、喧嘩は、、、やめてください、、、、」

「、、、、すまない」

「、、、、ごめん」

と、二人の喧嘩を仲裁したところで、頭痛が完全に消え去った。

「、、、、とにかく、束。さっきの原因はなんだ?」

「んー、分からないとしか言いようが無いんだよね、、、前例が無いのもあるし、このISかなり特殊だし、、、、」

と、二人がラインバレルについて話し合いを始めようとしていたところで、俺は二人の前に入るようにして座った。

「、、、、すいません、一ついいですか?ラインバレルに乗っていて、束さんが俺の機体に名前を入れてくれる時、変な声がしたんです。ISが憎いとか、殺せとか壊せとか」

と、俺はさっき体験したことを語る。

「あと、何かと意識が混ざるような、いや、乗っ取られていくような感覚もしました」

「、、、、、ダメだね。こりゃ完全に迷宮入り案件だ」

先程の一言で、束はもうお手上げといった様子で手を挙げた。

「少なくとも、私が開発したISにはそんな機能はないし、かといって三七城くん独自のシステムだったら多分ロックかかってるからさっきみたいに私には解読不能だし、、、、天才にも、越えられぬ壁はあるのさ、、、、」

「、、、、どうにもならないのか?」

「はっきり言っちゃえば、どうにもならないね。もう後は使わないことにするか、使うんだったらさっきのようなことが起きないように神頼みでもしたらいいんじゃないとしか言いようが、、、、」

と言うと、千冬が「そうか」と束に短く返す。

「さっき束が言っていた通りだ。そのISは束でもよく分からないらしい。なら、お前はさっきみたいなことが起こることを危惧しながら使うといい。だが、私らが居ない状況下ではなるべく使うな」

「、、、、はい」

そう言われ、俺は改めて親父の黒騎士の異様性について再確認した。

自分の記憶には一切ない第二の始まりのIS。

宇宙用が発展したものではなく、初めから戦闘用として作られていること。

この後になっても中々出現しない全身装甲(フルスキン)のISであること。

やはり、異様すぎだ。このISは。

「、、、、言い忘れていたが、訓練は体力面の強化科目を全てやめる。お前の体力は実質無限だからやっても無意味だ。だから今日はもうやめにして、明日から技術面でお前を鍛えてやる。情けはかけないぞ」

話の重さに耐えかねたのか、千冬が俺に脅し混じりで言う。

「、、、はい」

俺はそう答える。だが、束がうーむ、と唸りながらまだ何か悩んでいるようだった。

「、、、、どうした束?まだ何か引っかかるのか?」

「いや、ちょっと、ね」

「「、、、、?」」

「さっき偶然システムに介入できてね。一瞬だけデータを取れたんだけど、ここ見てみて。リミッター解除コードと、リミッター全解除コードってのがこのラインバレルにはあるっぽいんだよね。で、そのリミッター解除コードってのが【オーバードライブ】っていうらしいんだけど、全解除の方は見れなかったんだよねー、、、、」

束が、画面に表示されている文章に指を当てる。

、、、、なに?オーバードライブ?って、、、あっ、、、

【オーバードライブ】。あっちの世界でのラインバレルの形態の一つ。

自身を連続転送させることにより瞬間移動を使った急襲戦法が使える、ある意味卑怯な形態。だがその分肉体にかかる負荷が尋常ではなく、負荷軽減用のカウンターナノマシンを起動しなければパイロットの命に危険が及ぶ諸刃の剣。

そんな形態が、俺のラインバレルに存在している。

ごくりと、俺は唾を飲んだ。

「、、、、まぁ私は使わないことを勧めるけどね。さっきみたいなのが起こったらもう乗せるの禁止になるからね」

「、、、なぁ一つ思ったんだが、もうお前が新しいISを黒騎に作ってそれに乗せれば万事解決じゃないのか?」

「それがねぇ、無理っぽいんだよね。私が作ったISは皮膚からの微弱な電気信号を読み取って操作するんだけど、くーちゃんの場合ナノマシンが直接神経から電気信号を読み取ってISに送信してるし、意識をIS側に移してるっぽいから、、、、私のに乗ったら何が起きるか分からないし、無事に乗れたとしてもパイロットから送られてくる情報の量が膨大すぎて無茶な挙動して派手に壊れると思う、、、、いやホントにすごいね、、、この操縦方法、さしずめ一体化型(フルダイブ)とでも言った方がいいかな」

おいおい、もう滅茶苦茶じゃねぇか。なんだよ無茶な挙動って、、、、、ってかって、また原作で聞いた事ない単語が、、、、もしかしなくとも俺IS世界の常識壊しかけてんじゃね?今更だけど。

「、、、、三七城。何がお前をそこまで駆り立てた?息子を人から離して、戦う力を与えてまで、、、、お前は何を求めたんだ、、、、、?」

千冬が小さく呟いた。もう居ない俺の親父に問いかけるように。

────親父が求めたのは、あなたと束さんの死、そして俺が平和に暮らすことですよ。だが、あなた達がその答えに辿り着くことは無い。だって、その前に、、、、

俺が殺しますから。

俺は言葉に出さず、心の中で千冬に言葉を返した。

 

結局、ラインバレルは千冬らがいない状況では使わないということで全員合意した。

そして、束は世間に存在が露呈したISのコア作りで忙しくなるのでしばらく会えないと言い残して公園から去った。

、、、、あれ?確か原作じゃあ無言で居なくなるはずじゃね?

あーまた原作ストーリーが壊れたなぁ、、、、、

まぁ今更どうにもならねぇからそれは置いといて、俺は卒園して小学校に入学するまで鍛錬は中止と千冬から言われた。

なので無意味としか思えなかった保育園時代はバッサリカット。

俺は卒園し、一夏と同じ小学校へ入学した。奇跡的にクラスも一緒だったので俺は内心狂喜乱舞した。一夏とは既に仲を深めていたためお互い喜びあった。

保育園時代に用はなかったが、俺はこの小学校時代に少し用があった。

篠ノ乃箒。束の妹。一夏はここで箒と出会った。

一夏は箒と同門の剣道を学んでおり、それが将来ISに乗る二人の役に立つ。

そう、俺はその剣道に用があった。

ISという物語の人物である、一夏と箒が学び、ISに乗った際にも活きた剣術。

それを学びたいと思うのも、仕方ないだろう。

だから俺は千冬に頼んで、この体力無限の体を平日でも鍛えるため、という名目で一夏と箒がいる道場に入門することにした。

初めはうーむ、と渋っていた千冬だったが、どうにか説得して入門できた。

入門当初、俺は礼儀作法などを手早く覚え、素振りや振る際の力の入れ方、ブレさせずに振る練習を主に意識して練習し、体力無限のおかげで何度も何度も休憩なしで練習に打ち込むことができた。そのおかげで、剣術に関しては俺より少し先に入門した人より上達していた。古武術もその道場でやっていたが、同じように無限の体力を活用し手早く体に覚えさせた。

、、、、まぁ道場の何人かから「お前休憩していないが大丈夫なのか?」と何回か聞かれたことがあったが、その都度「体力だけは人一倍あるので」と返しておいた。本当は人一倍というか人無限なんだけどな(上手いこと言ったつもり)。

そして、休日には千冬の鬼畜練習をやった。

剣術は道場で学んでいるので、近接格闘術や体の柔軟性を強化することに力を入れたメニューとなっていた。

朝9時から昼飯まで千冬に投げ飛ばされまくる近接格闘術の訓練。

昼から晩飯までも千冬に投げ飛ばされまくる近接格闘術の訓練。

晩飯を食い終わったら風呂に入り、その後ストレッチ。

といったメニューを休日は毎回欠かさずやった。

「、、、、、」

だが、俺にはまだ『何か』が足りなかった。

満足出来ない何かがあった。

強さは着実に身についているのに。

今の自宅のベッドの上で寝転がり、俺は天井に向かって手を伸ばし考える。

、、、、、ISが使えないからか?

いや、違う。どうせIS学園へ入ったらたっぷり使えるんだ。

、、、、、本編みたいなハーレム要素?

俺にそんな趣味はない。

、、、、、友人?

そう考えた瞬間、少しだけ頭痛がした。

俺は一夏以外にも、友人が欲しいのか?

「、、、、、でも、今の俺には要らない。いや、必要ない。ただの重荷だ。友人なんて、、、、そんなもんだろ、、、、」

そう自分に言い聞かせるように言って、俺は目を閉じて眠りについた。

 

 

次の日、いつものように学校へ行こうとしている最中に、いつもなら見ない光景が見れた。

「やーい、何とか言えよこの弱虫女ー!!」

「ギャハハ!!縮こまったまんま動かないぜこいつ!!ダンゴムシに改名だな!!」

「やーい!!少しは反撃してみろやーい!!」

俺よりも少し体の大きい、、、小学二年か三年の三人組が、何歳かは分からない少女を取り囲んで踏みつけていた。

「い、いたいです、、、、やめてください、、、、」

少女から、弱々しい声が聞こえる。

「ギャハハ!!誰がやめるかっての!!」

「そーだそーだ!!やめて欲しけりゃこーてーしてみろよ!!」

「それ言うんなら肯定だぜ!!ギャハハ!!」

、、、、、下らん。俺は足早にその場を去ることを決めた。

面倒事にも、巻き込まれたくない。後で大人が来てどうにかしてくれる。

そう思いながら、俺は止めていた足を再び学校へ向けて歩ませる。

、、、、だが。

 

「、、、、誰か、、、助けて、、、、」

 

その一声、たった一声で俺の向かう先は変更された。

「おい、やめてやれよ大人気ない」

俺はその三人組を見上げながら言う。

「、、、、あぁ?んだテメェ?」

「悪いけどさぁ、俺らいま遊んでるの。邪魔しないでくれる?」

「ガキはとっとと帰ってママのおっぱいでも飲んでるんだな!!ギャハハ!!」

と、怒りや挑発を含ませた声で俺を脅す。

「女の子を虐める奴は等しく悪だ。お前らこそ家に帰ってママに甘えてろ。ド三流」

先程の挑発に挑発で返すと、三人組の一人が俺の胸倉を掴んで持ち上げる。

その顔には、あからさまな怒りが現れていた。

「ああ!?いまなんつったテメェ!!」

と言われながら、俺は思いっきり後ろへ投げ飛ばされる。

背中が地面で擦れ、痛みを感じる。

だが、『あの時』じゃあない。

「、、、、きーめた。お前もおもちゃにくわえてやるよ。そこのダンゴムシみたくな!!」

「おーいいね!!こういうやつにはわからせるのが一番って俺の母ちゃんが言ってた!!」

「よーし!!そんじゃこいつ使ってどう遊ぶ?とりま蹴る?」

そんな会話が聞こえた。

、、、、、流石に、キレてきた。

、、、ああ、そうだ。

頭の中で、前世の記憶が蘇る。

 

『玄輝ィ!!何度言えば分かんだよこのクソガキィ!!!!』

クソ野郎(父親)が俺を酒瓶で殴る。

『ほんっと、いつになったらわかるんでしょうかねぇこのガキは』

クソババァ(母親)が、俺を嘲笑うように見下す。

『、、、、、ああ。そうだ、流石に死ぬかもしれないぐらいの恐怖を植え付ければ、抵抗しなくなるだろ』

そう言いながら、クソ野郎が俺の喉を締める。

 

ああ、そうだったな。

あんな奴の言葉、使いたくないけど、使うか。

「、、、、ああ。そうだ、流石に死ぬかもしれないぐらいの恐怖を植え付ければ、抵抗しなくなるだろ」

「ああ?何言ってんだ?」

「負け惜しみじゃねぇの?ギャハハ!!カッコわりぃ!!」

「やーい!!負け犬の気分はどぉ?ギャハハ」

俺はそう言ってくる野郎共を無視して、右手に思いっきり力を込める。

そのまま、拳を地面へ振り下ろす。

ズシン、バキリ、と地震かと思える衝撃が周囲に響いた。

「「「、、、、、へ?」」」

「、、、、、さっさと退け。クソイキリ共」

出せる限り、殺意を表面へ出す。

今状況を理解した、といった表情で三人組が顔を真っ青にする。

「「「ひ、ひぃぃぃぃぃっ!?」」」

と、その場から三人組がどこかへ向けて駆け出した。

「、、、、大丈夫か?」

俺は少女の元まで歩き、その顔を覗き込むようにしゃがむ。

「、、、、っ?」

少女が、顔を上げる。

そこで、少女の顔を見て、俺は気付いた。

「、、、、ラウラ?」

その少女の顔が、IS原作ヒロインの一人であるラウラ・ボーデヴィッヒに瓜二つだったことに。

 

 




はい、いかがだったでしょうか?
前に続きクッソ長めに書いてもうた、、、、、許して。
次回も早めに出しますので、、、、お許しを、、、
あと今後は下に軽く設定載せます。
それでは次回まで、しばし(`・ω・)ゞサラバダッ


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日常の終わり、願いの始まり

はい、どうも蒼京龍騎です。
今回でやっと原作開始前が終わる、、、、、
次回から本編へ突撃ィ!!!!
それでは、(⊃σ▂σ)⊃ドウゾドウゾ


ISーインフィニット・ストラトスー

White of brack

第三話 日常の終わり、願いの始まり

 

「、、、ラウラ?」

俺は、俺と同じような年の少女に向かって手を差し伸べながら、思わずそう呟いてしまう。

だって、目の前にいる土まみれのワンピースを着た少女の顔が、IS原作のヒロインの一人であるラウラ・ボーデヴィッヒにそっくりだったからだ。

いや、いくつか相違点はある。髪はショートヘアーだし、目に眼帯もしてない。

「、、、、?ラウラじゃない、私、ライラ」

少女は不思議そうに顔をきょとんとさせて否定する。

「、、、、ライラっていうのか。わりぃ、知り合いに顔が似てたんでな。俺は黒騎だ。とりあえず立てるか?」

俺はライラという少女に向かって自分の名前を名乗り、聞く。

そう、先程ライラはクソガキ共にいじめを受けていて、さんざん体を踏みつけられていた。そのため、体のあちこちにいくつか出血している箇所も見られた。

ライラは立ち上がろうと俺の手を取り、起き上がろうとしたがすぐに顔を歪めた。

「、、、、っ」

「、、、立てないのか?」

ライラはこくこくと首を振って頷く。

足を見てみると、ところどころ赤くなっており、より強く踏みつけられたのだろうと察せた。

「、、、、おぶってやる。捕まれ」

俺は背をライラに向け、ライラに背中に乗るよう催促する。

「、、、あり、がと」

遠慮しがちに、ライラがゆっくりと俺の背中に乗る。

「そんじゃ、一旦病院に向かうぞ。親への連絡はそれからでも間に合う」

「、、、、うん」

俺はライラを背に乗せ、落ちないようにゆっくりと立ち上がる。

そのまま、俺は最寄りの病院まで歩を進める。

「、、、、助けてくれて、ありがとう」

しばらく歩いたところで、ライラが話しかけてきた。

「、、、、別に。ただあのまま見捨てたら、一生後悔しそうだったからな」

「それが理由?」

「そうだが」

「変わってるね、黒騎は」

「ああ。ガチな意味で人間やめてるからな。変わっててもおかしくねぇだろ」

「、、、、、私は、黒騎は立派な人だと思うけどな」

「そうか」

そうこう話している内に、最寄りの病院まで早めに着いた。

「お前、ケータイ持ってるか?」

「持ってる。あとお前じゃくて、ライラ」

「、、、、ライラ。お前の母ちゃんに連絡しねぇといけねぇから、ちょっと連絡してくれねぇか?」

「、、、、無理。お母さんいつも忙しい。お父さんも」

そう言われて、俺は大きくため息をつく。

いつまでこいつに付き合えばいいんだ、と。

俺は頭をガリガリとかく。

「、、、、しゃあねぇ、とりま俺がついてってやる。そこで湿布なりなんなり貰ったら、ライラは親のどっちかが来るまでしばらく病院に居ろ。わかったか?」

ライラは少し間を開けた後こくりと頷き、それを確認した俺は病院に入る。

「、、、、あーしまった、無断で学校休んじまった。あとで千冬さんに謝っとこう」

 

 

病院でのライラの診察結果は、複数の擦り傷と少し強めの打撲だった。

足は折れているんじゃないかと思っていたので、俺は内心ホッとする。

いや待て、なんで俺ホッとしてる?

俺にとっちゃこいつは赤の他人だぞ?安心する要素はどこにある。

第一、まずなんであの時助けた?俺は正義のヒーローでも演じたかったのか?

「、、、、騎。ねぇ黒騎」

いや違う。あれは衝動的なものだった。だったら俺を動かした感情はなんだ?

「ねぇ黒騎。ねぇってば」

、、、哀れみ?俺の過去と似たような状況に遭ってたから助けたかったのか?

「おーい、聞いてるー?」

「ああもううるせぇな!!!今大事なこと考えてんだよ!!」

先程からしつこく呼ばれてカチンときたので、俺は席でふんぞり返りながら大声でライラに叫ぶ。

「説明、終わった」

、、、は?終わったんならどこかで待ってろよ。なんで俺のところ来た?

「、、、、で?なんで俺のところに来た?待つんじゃねぇのか?」

「黒騎の隣で待ちたい」

、、、、は?こいつ今なんて言った?

「黒騎の隣がいい」

俺の思考を読み取ったかのように、ライラが言葉を変えて同じことを言う。

「、、、、理由は?」

「安心する」

「、、、、、はぁーっ、もう勝手にしろ」

「うん」

と、ライラが俺の隣へちょこんと座る。

「、、、、、」

「、、、、、」

無言のまま、時間が過ぎる。

俺は、改めてライラを見てみる。

ラウラにそっくりな顔立ち、ラウラと同じ目の色。ラウラと同じ髪の色。

やはり、どこからどう見てもラウラだった。

だが、肝心な本人は自身のことをライラと言っている。

、、、、訳が分からん。クローンとしか言いようがないほど似ているのに、本人は違うという。表情からしても、嘘はついていない。

────試験管ガール。

不意に、原作で千冬がラウラに言っていた言葉が頭に浮かぶ。

ラウラはIS関連の実験のため、生み出された人間の内の一人のはず。

つまり、他にそのような人物がいてもおかしくない。

、、、、ライラが、その内の一人なのか?

「、、、、?黒騎、さっきから私をじっと見てるけど、どうしたの?」

「なんでもねーよ」

俺は適当に言葉を返す。

「、、、、あ、あの、黒騎?」

さっきとは違い、たじたじとした様子で俺の名前を呼ぶ。

「なんだよ?要件は手早く頼む」

「、、、特に必要とかそういうわけじゃないけど、、、、フルネーム教えてくれる?」

「、、、、三七城、三七城黒騎だ」

「三七城、、、、三七城ね、ふふっ」

と、俺の苗字を聞いた瞬間、ライラが少し笑った。

「なんだよ、そんなにおかしい苗字か?」

「いや、違う。かっこいい苗字だな、って」

「、、、、、そうか」

と言ったところで。

バシーン!!!と俺の頭に衝撃が走る。

「いっでぇ!?」

多分今ので俺の脳細胞が何千個か死んだ。

あ。俺は知ってるぞ、この感覚。

「、、、、、学校を無断で休んでおいて、病院で女子と喋っているとは、随分と偉くなったようだな黒騎」

出たァ(ネコ型ロボットボイス)。一夏の脳細胞破壊兵器、千冬さん。

「、、、、、すいません千冬さん。話せば長くなりますが、とりあえずこの女の子助けてました。無断で休んだことについては申し訳ないです」

「ライラです。先程黒騎に助けてもらったものです」

俺が頭を下げると、ライラも自分の名前を言いながら頭を下げる。

「、、、、、はぁ。まぁそういうことにしておいてやる。とっとと帰るぞ黒騎」

ため息をついてから、ぐいっと、千冬が俺の腕を引っ張る。

「、、、、あーまぁこうなりますよねー、、、、ってな訳で悪ぃライラ、俺もう帰んねぇと」

「、、、、、わかった。

────黒騎。助けてくれて、ありがとね。

それじゃ、また会えたら、その時はまたお礼言わせてもらうね」

ライラが少し名残惜しそうな表情を浮かべる。

「おう、また会えることを期待して待ってるわ。そんじゃあな」

そうして、俺は帰路へつく。

 

 

色々と衝撃的だったその出会いから五年。

ライラと会うことは無く、至って普通の日々が続き、俺は小学六年生の卒業間際になっていた。

だが、世間ではその五年間でISが本格的に兵器へと変わりだし、モンド・グロッソと呼ばれるIS同士の戦闘による大会が行われることが二年前決定し、一年前に千冬がその大会へ出場し優勝をもぎ取った。そこへ、再び千冬が出場することになった。

────モンド・グロッソ、か。こりゃ警戒しないとな、、、、

俺はまだ暗い外を眺めながら自室であぐらをかき、黙想しながらそう思った。

既に俺は周囲の大人より強くなっていた。(千冬という最強は例外)

剣道の世界大会優勝。古武術もマスター。千冬の近接格闘技術を完全会得。

といった、かなーり苦難で地道な道を進んで、ようやくこの域まで達した。

だが、俺にはまだ悩むことがある。

、、、、、一夏の誘拐事件。

千冬が今日、モンド・グロッソで決勝戦を行う日に一夏が攫われるという、千冬にとって最悪の日。

俺は、それに対して介入すべきか否かを考えていた。

まず介入する場合。やろうと思えば俺一人で追っ払えるが、その後のラウラや千冬の行動に原作との相違点が出る。そのせいで俺の前世の記憶が役に立たなくなる。まぁ元々五巻から先は俺にとって未知の領域だから役に立つもクソもないんだが。

介入しない場合。あえて一夏を攫わせることで、俺の良心を犠牲に、千冬とラウラに原作通り動いてもらうことになる。

今のところ、介入しない方針で動こうかと考えているが、介入した場合には話がどのように進むのかも見てみたい。

、、、、、よし、リスクは最小限にしたいから介入しない方針でいこう。

冷血な奴だと思われるかもしれないが、この状況なら恐らく七十パーセントの人は俺と同じ答えを選ぶと思う。

────俺も攫われれば良くね?

唐突に、そんな考えが浮かんだ。

そうすれば攫われたとしてもその場で一夏を救うことができるし、攫われて千冬が駆けつけてくれればある程度原作通りに進む。

、、、、まぁ、本音を言えば暴れたい。ここ数年、待機形態での刀の状態として使う以外にラインバレルを使っていないからだ。これなら正当防衛で千冬も許してくれる。最近待機形態の状態なら『俺の中にしまえるようになった』し、まずバレんだろ。

「、、、、よーし、こんなプランでいいか。そんじゃ寝るか」

そう思いながら、俺は眠りにつく。

 

 

「、、、、、、きろ。おい、とっとと起きろ」

「、、、、あ?」

目覚めると、俺は真っ暗な空間にいた。

体を動かそうとしても、腕と足がきつい紐で縛られているのか動かない。

冷たいコンクリートのような床が、不気味なほど冷たい。

、、、、どうやら、目論見は成功したようだ。

「これからお前にはいくつか質問に答えてもらう。答えない場合は体を刃物で切り裂く」

冷たく、殺意が篭った恐ろしい男の声が、真っ暗な空間に響く。

「、、、、、けっ、いきなり人を攫っといて言う言葉がそれかよ。礼儀知らずなクソ野郎だな。赤ん坊からやり直してこいバーカ」

だが、俺は怯まず挑発する。

「、、、、まず一つ目。織斑千冬とはどういう関係だ?数年前から居候していたようだが」

男は俺の挑発を無視し、聞く。

「、、、、あー無視ですかーはいはい。────俺と千冬さんは師弟関係。血縁関係はない。これで満足か?」

俺は適当に返す。

「、、、、まぁいい。二つ目、お前の体の一部は機械に置き換わっているか?」

「んなわけねぇだろアホ。こちとら純度100パーの人間だ。つーか一夏どこに行った」

そう返すと、先程とは違い男がため息を漏らしていた。

「、、、、三つ目、【Dーゾイル】というナノマシンを知っているか?」

──────は?【Dーゾイル】、、、、!?

「、、、、ッ!?」

そこで、俺は初めてたじろぐ。

、、、、【Dーゾイル】。俺に打ち込まれたナノマシン。

親父が作った、コアなしISをナノレベルまで縮小し、それを人に投与することで人体を強化し、男でもISに乗れるようになるというナノマシン。

このことについて知っているのは、俺、親父、束、千冬の四人だけのはずだ。

「、、、、なんで、テメェがそれのことを知ってる」

怒気を含ませた俺の声が響く。

「ある情報屋からな。さて、その様子だとどうやら何か知ってるようだな。吐け」

と、首元に新しく冷たい感触が生まれる。

目を凝らして見ると、細い、メスのような刃物を喉に突きつけられていることが理解出来た。

「、、、、、テメェらに教えるわけねぇだろボケェ!!!」

俺は腕に力を入れて、無理矢理紐を引きちぎる。

そのまま、うっすらと見えている男の顔面を右手で殴る。

そのまま、足の紐も引きちぎって立つ。

「、、、、そうか。なら『その力』、実証してもらおう」

と、男が少しだけ笑みを浮かべると。

 

ドスッ。

 

背に、少し衝撃が走った。

「、、、、、あ?」

俺はその部分に触れてみる。

そして、背中に冷たい異物があることに気付く。

その異物が、背に刺さっていることも。

「、、、、、が、、、あ、、、、ッ!?」

自覚した瞬間、背に激しい痛みがやってくる。

俺は背の異物を引っこ抜いて、ナイフのような形状をした刃物を自身の右へ放り投げる。

「そうだ。お前の持つその力を見せろ。三七城天児が開発した、『IS殺し』の力の一端を」

男がククッと乾いたような声で笑った直後。

違和感に気づく。

先程まで痛んだ背中の痛みが消えている。

傷がある部分に触れてみるが、傷は無い。

投げ捨てたナイフには、きっちりと血の跡が付いている。

、、、、、ああ。これ束さんが言ってたISの能力か。

以前束が言っていた、『黒騎がISになっている』という言葉。

その実感が、ようやく湧いた。

俺が、人ではなくなっている実感が。

「、、、、、俺らと共に来い、三七城黒騎。お前の復讐を手伝ってやる。そして、それが終わった暁には、お前の体をある程度元に戻してやる」

男が俺に向かって言う。

 

────ふぅむ。復讐を手伝ってやる、俺の体を元に戻してやる、ね。

────随分と勝手言ってくれるじゃねぇか。

「、、、、お前らさ、なにか勘違いしてない?」

「、、、、は?」

男が不思議そうに俺を見る。

「いつ、俺がお前らに手伝って欲しいって言った?悪いがこれは俺の復讐だ。

俺の、

俺による、

俺の手でのみ行う、

、、、、Bad End Vengeance(バッドエンドな復讐)

、、、、だからテメェらの手は借りねぇよ。残念だったな」

俺は右手に力を込めて、『俺にしまってあった』刀を右手に出現させる。

最近知ったのだが、俺の体に待機形態のラインバレルを、ISが拡張領域(パススロット)に武器をしまうようにしまえることが分かったのだ。

故に、俺の体にしまっておけば緊急時でもISが展開できる。

そして、そのまま刀を鞘から抜いてラインバレルを身に纏う。

その際、ISのハイパーセンサーにより男の全貌がはっきりと見える。

褐色の肌に、テカっているスキンヘッド。やけにごつい体。

まず日本人でないことは理解出来た。

「とりま一夏は返してもらうぜ。あいつに対しての恨みはねぇからな。つーわけで一夏の場所吐け」

ラインバレルの左腕の刀を抜き、男の喉元に突きつけながら脅す。

だが、男は。

恐怖もせず。

泣き顔を見せず。

俺のラインバレルを、神聖な物でも見るような、キラキラとした瞳を向けていた。

「、、、、おお、これが、、、、『黒騎士』。IS殺しの力。世界を覆す究極の力。天児博士の技術の結晶。────ああ。美しい」

恍惚とした表情で、男はラインバレルをじっと見る。

おい待て。

、、、、、なんで黒騎士って名称まで知ってる?

それになんだよ、さっきも言ってたIS殺しの力に、世界を覆す究極の力って、、、、

「、、、、知らないのだったら教えよう。

────これはISを殺すための力だ、三七城黒騎。

君の父がISに憎悪を滾らせ、その憎悪によって創り出された『IS殺し』。その力はISを滅ぼすためにあり、狂ってしまった世界の歯車を戻す役目を持っている。

篠ノ之束が開発したISのせいで男女平等になりかけていた世界のバランスが崩れ去り、一気に女尊男卑の世界が到来した。

────そんな狂った世界、憎いとは思わないか?壊したいとは思わないか?

せっかく平和になりかけていた世界が、ISという兵器一つで様変わり。憤りを覚えるよ、俺は」

憐れむような口調で、俺に語る。

「そんな時に、三七城天児という人物についての情報が入った。なんでも、男でもISに乗るためのナノマシンを作っていたとか。それを聞いた瞬間、心が踊ったよ」

男が、今度は楽しそうな口調になる。

「ああ、この人なら世界を戻してくれる、と思った。だが、駄目だった。

天児博士は、せっかく世界を戻す【Dーゾイル】を完成させたというのに、設計図ごと自らの命を絶った。

、、、、三七城黒騎。君に完成品を投与してな」

男の口調がまた変わる。

今度は怒りを込めた声だった。

「、、、、俺は頭から血が出るまで掻き毟った、怒りのあまりな。喉から手が出るほど欲しかったものがあと少しで手に入るというのに、また遠ざかった。

────だが、黒騎士が白騎士と戦っていると聞いて、歓喜したよ。俺らと同じだ、って。

でも、違った。なら、もういいか」

何か納得したように、男は首を縦に振る。

直後、男は腰から拳銃を取り出して自身の頭に銃口を向ける。

「、、、、、相容れないなら、こんな世界とは別れよう」

ググッ、とトリガーにかけている指の力が強まる。

「おいテメェ何してやがる!?とっとと銃を捨てろ!!!」

俺は男に刀を向け、自殺を止めさせようとするが男は止まらない。

「、、、、そうだ。最後に一つだけ言っておこう。

────君が自分のことを、ナノマシンで強化されただけの『ただの人間』と思っているなら、それは大きな間違いだ。そもそも君は、、、、『本来なら存在しない命』であると共に、『人としての大切な要素が欠落している』のだから」

瞬間。パァンと乾いた銃声と共に、男の頭から血とヌメヌメした何かが飛び散る。

男は倒れ、辺りに静寂が訪れる。

「、、、、、最後のあれは、、、、どういう意味だ、、、、?」

血溜まりに浸かっている男を見下ろしながら、俺は呟く。

────本来なら存在しない命。人としての要素の欠落。

意味がわからない。俺は自分の何かが欠落している感覚はないし、存在しないのならここには居ない。

、、、、わからない。

と、俺が悩んだ瞬間に。

 

ドゴォォォォォォン!!!!

 

という、一際大きな音が聞こえた。

「一夏!!どこだ!!!!」

その叫び声は、間違いなく千冬の声だった。

、、、、ああ、助けに来たのか。

「千冬さん!?助けに来てくれたんですか!?」

俺はそう叫びながら千冬の声がした方向へ向けて、コンクリートの壁を突き破りながら進む。

「黒騎!?無事か!?」

千冬が自身のIS、暮桜の腕をラインバレルの肩に置く。

「俺は無事です!!それより一夏は!?」

「今から探す!!黒騎も手伝ってくれ!!」

必死な様子で、俺に頼んでくる。

「了解!!」

俺はそう返して、一夏を探すためコンクリートの壁をラインバレルの刀、<不知火>(しらぬい)(ちょっと前に命名)で豆腐のように切り裂いてゆく。

「一夏ァ!!!どこだ!!!」

叫ぶと、なんと言っているのかは聞こえないがボソボソとしたか細い声が聞こえてきた。

だが、その声は間違いなく一夏のものだった。

「、、、、、そこかッ!!!」

俺は声がした方向に向けて、<エグゼキューター>を取り出し射撃モードに変更して引き金を引く。

緑色のビームが<エグゼキューター>から発射され、ドゴォ、とコンクリートが崩れる音と共に、縛られている上に目隠しされた一夏の姿が現れた。

「一夏!?無事か!?」

「、、、、っ!?黒騎!?」

一夏に向かって駆け出し、<不知火>で慎重に縄を切ってから目隠しを取る。

「、、、な、、、!?」

目隠しを取り、俺を見た一夏が信じられないといった表情を浮かべた。

「黒騎、、、、なのか!?お前、なんでISに、、、、、」

と、狼狽え一夏がその場に立ち尽くす。

「説明は後だ!!とっとと帰るぞ!!」

そう返し、俺は千冬に通信用のチャンネルを繋げる。

「千冬さん!!一夏を見つけました!!」

『、、、、、、そうか。、、、、、よかった』

大きな、安堵のため息が聞こえた。

「じゃあ、一夏は俺が連れて帰ります!!千冬さんは早くモンド・グロッゾに!!」

と叫ぶが、千冬は「いい」と言った後に言葉を続ける。

「、、、、恐らく、今から戻ったとしても間に合わない。恐らく私は不戦敗になるだろう。だが、一夏とお前が無事ならそれでいい。だから、気にするな」

千冬が悟ったように言う。

、、、、、ああ、駄目だ。

揺らいでしまう。復讐を果たすことを決意した心が。

優しすぎた。自身にとって大切な大会をほっぽり出しても助けに来た。

俺の事も気にしてくれた。

駄目だ。優しさを向けられると、俺は、、、、、

「、、、、、すいません千冬さん。俺がもっと警戒していれば、、、、」

本心から、言葉が出た。

「いいと言っているだろう。これは私の責任だ。お前らを置いて大会へ出場した、私のな」

「、、、、、すいません」

俺は千冬に対して、そう返すことしか、出来なかった。

 

 

 

「、、、、、、」

「、、、、、、」

家のリビングで、剣呑な雰囲気が漂う。

千冬が俺らを救うために、大切な大会を棄権してまで助けに来た。

さらに、俺らの場所を知り、教えたドイツ軍に対価としてそのドイツ軍のIS部隊に一年間教官として移住する条件も呑んだ。

俺と一夏は、千冬に対し申し訳ないと思い俯いていた。

「、、、、、おい、お前らさっさと飯を食え」

空気の重さに嫌気がさしたのか、千冬がそう勧める。

「、、、、すいません」

「、、、、ごめん」

俺らは謝ってから箸を手に取る。

「、、、、はぁ、お前らがそんな状態だと私も安心してドイツへ行けん。もっと心を強く持て」

「「、、、、、、」」

「ああ、そうだ。黒騎、お前に言いたいことがある。後で部屋に来い」

「、、、、わかりました」

そうして俺らは、無言で飯を食った。

だが、申し訳なさのせいか味はほとんどしなかった。

そして飯を食い終わり、俺はすぐさま千冬の部屋に向かった。

「、、、、来たか」

千冬が椅子に座りながら俺を見据える。

「、、、、、黒騎。次にこんなことがあった場合には、一夏を守って欲しい。今のお前なら

ば、そこら辺のISには負けることはないだろう。だから一夏を」

「わかってますよ。俺がきっちりと一夏を見ておきますので、千冬さんは安心してドイツへ行ってください。万が一危険と判断した場合は連絡しますが、そうでない場合は俺がカタをつけておきます。もう、、、、心配させませんから」

千冬の言葉を遮って、俺は言う。

「、、、、、どんどん成長しているな、お前は。私も負ける日が近いかもしれない」

どこか悲しげな表情をし、自嘲気味に微笑みながら千冬が呟く。

「いや、さすがにまだ千冬さんには敵いませんよ。

────でも、いつか追いついてやりますから。その時は手合わせをお願いしますね。『千冬先生』」

俺も微笑み返すと、千冬の部屋から去る。

 

 

そして、千冬がドイツへ行った頃、俺らは中学生になっていた。

俺と一夏は生活費の足しにするためとバイトを始め、学業も一生懸命にやった。

それも全て、俺と一夏が藍越学園へ入るため。

────というのは表面上で、本当は一夏と共に偶然IS学園の受験場所に迷い込んで偶然ISを起動できたというシナリオを組み立てるため。

抜かりはない。あとは待つのみ。

そうして平穏な日々を一年間過ごし、千冬がドイツから帰ってくると俺は再び稽古をつけてもらった。

そして、稽古をしながら二年が過ぎて、遂にその日がやってきた。

──藍越学園への入試日。俺の本当の意味でのスタート地点。

「いやー、まさか黒騎も藍越学園受けるとは、、、お前は剣道が強いところ行くかと思ってた」

受験会場の少し前の地点で一夏が俺に話しかけてくる。

いやまぁ、確かに剣道強いところ行こうかなーとは思ったんだが俺IS学園行きたいし。お前に便乗しないと行けねぇから。

「んなわけあるか。とりまこのままの貧乏生活はヤバいから安定した生活を手に入れるために行くんだよ。お前だって安定した生活を送りてぇだろ?」

「まぁそりゃもちろんだけど、、、、」

と返し、目的地の多目的ホールに着くと、やはり原作通り迷路のような作りで二階への道が一切見当たらなかった。

「、、、、えーこれ二階へどう行けばいいんだ?」

一夏がうーむと唸る。

「、、、、知らねぇよ、、、とりあえずあそこの扉でも開けて、そこに人いたら聞くって感じでいいんじゃないか?」

「、、、、そうだな」

よっしゃ誘導成功。

一夏がその扉のドアノブに手を添えて、扉を開く。

「あー君たち、受験生だよね?はい、向こうで着替えて。時間押してるから急いでね。ここ、四時までしか借りれないからやりにくいったらないわ。まったく、何考えて、、、」

と、原作通り三十代後半の女教師に言われる。

そのまま女教師は部屋から出ていき、部屋には俺と一夏しか居なかった。

「、、、、着替えて、ってなんだ?最新のカンニング対策か??」

「、、、、まぁとりまこのカーテンでも開いてみよーっと」

俺は一夏の言葉を聞かないフリをして無視し、カーテンを開く。

そこには、ISがあった。しかも二つ。

「これって、、、IS、だよな?なんでこんなところに、、、、」

「知らねぇよ。まぁどうせ反応しねぇし触っても大丈夫じゃね?」

と、俺はそのIS、、、、恐らく打鉄だろう、、、に手を向ける。

「おいおい、触っても大丈夫なのか?」

「どうせうんともすんとも言わねぇんだ。お前も触ればどうだ?なかなかない機会だぞ?」

そう言って、一夏にISに触れるよう催促する。うん、我ながら完璧な誘導。

「、、、、じゃあ、そうするか」

一夏が打鉄に触れる。

瞬間、一夏が一瞬だけ頭を抑えて、その直後一夏が触れていた打鉄が一夏に纏われ、起動した。

それを見た俺も打鉄に触れた。

瞬時に脳に情報が送られ、ISの最適化が始まる。

そして俺も一夏と同じように打鉄を纏った。

「、、、、まじ、かよ」

絶句していた一夏を後目に、俺は心の中で狂喜乱舞していた。

 

────さぁて。これで俺が原作開始前に干渉可能な重大なメインイベントはほぼ終わる。

────次は、IS学園だ。

────待ってろよ、シャルロット(俺の推し)

 




はい、いかがだったでしょうか。
ものすんごく適当になってると思いますが、まぁ早く本編行きたかったし、、、、しょうがないね♂
はい、じゃあ前言ってた設定です。
細かい設定は別で出すので、かなーり雑ですが、許して。

<不知火>
ラインバレルの腕に付いている太刀。
切断力は極めて高く、ISのシールドエネルギーをかなり削ることが出来、当たり所によってはシールドを無視して直接IS本体を切る事ができる。

<エグゼキューター>
ラインバレルの腰部に接続されている瞬時加速用テールスラスターに収納されているレーザーブレードカノン。
射撃モードと斬撃モードが存在し、射撃モード時には高威力の緑色のビームを対象に向かって放つが、放つ度エネルギーが消費される。斬撃モードでは零落白夜並の威力を持った巨大なビームの柱を形成し、それを敵に振り下ろす。


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原作第一巻
再会


どうも、蒼京龍騎です。
今まで五日間で投稿してたのに時間かかってしまった、、、、
学校の授業がムズいわ宿題が鬼のように出るわでまぁ地獄、、、、
まぁどうにか完成したので、本編(∩´。•ω•)⊃ドゾー
あ、あと今回から本編へ凸ります。


ISーインフィニット・ストラトスー

White of black

第四話 再会

 

 

「全員揃ってますねー。それじゃあSHR(ショートホームルーム)始めますよー」

教室にそんな声が響く。

黒板の前で黒縁メガネをかけて笑顔を浮かべながら立っている女性副担任、山田真耶(やまだ まや)先生。

身長はやや低めで、周囲の生徒とほぼ変わらない。しかも服と眼鏡のサイズが合っておらず、ダボッとしていたりズレていたりしている。そのせいで余計小さく見える。

、、、原作の『子供が無理して大人の服を着ました』って表現はマジで正しかったな。

「それでは皆さん、一年間よろしくお願いしますね」

「、、、、、、」

だが、教室が妙な緊張感に包まれているせいか、返事は一切聞こえてこない。

「じゃ、じゃあ自己紹介をお願いします。えっと、出席番号順で」

先生が少し狼狽える。俺が反応してやろうとも思ったが、そんな余裕はない。

、、、、俺と一夏以外、女子だからだ。

転生前は「いやいや、声ぐらい出せるだろ」と思っていたが同じ環境になったからこそ理解出来る。これは声を出すのは無理だ。

視線の多くが、教壇近くと中央に行き交う。

考えていると、一夏が俺に目を向けて、助けを求めるかのような表情をしていた。

────悪いが、俺がお前を助けることはできん。お前がどうにかしろ。

と謝りながら、腕を頭の後ろで組んで足も組み、ふんぞり返るという不良児スタイルで座っていた俺は一夏に向けていた目線を天井に移す。

その際一夏がガーン、といった効果音が聞こえてきそうな顔をしていたが、俺はあえて無視する。

「織斑一夏くん。織斑一夏くんっ」

「は、はいっ!?」

と、焦っていたのか一夏の声が裏返っていた。

くすくすと周囲の女子が笑い出す。

「あっ、あの、お、大声出しちゃってごめんなさい。お、怒ってる?怒ってるかな?ゴメンね、ゴメンね!でもね、あのね、自己紹介、『あ』から始まって今『お』の織斑くんなんだよね。だから、ご、ゴメンね?自己紹介してくれるかな?だ、ダメかな?」

先生が頭をぺこぺこと下げながら一夏に頼み込む。

「いや、あの、そんなに謝らなくても、、、、っていうか自己紹介しますから、先生落ち着いてください」

「ほ、本当?本当ですか?本当ですね?や、約束ですよ。絶対ですよ!」

がばっと顔を上げ、山田先生が一夏の手を取って熱心に詰め寄る。

その際、原作通り視線の多くが一夏の方へ向かっていた。

、、、、まぁ、俺の方にも一部視線が集まっていたんだが。

────ここまで原作通りに進むと逆に面白くねぇな、、、、、

俺はそう思いながらその光景を傍観する。

一夏が覚悟を決めたような表情をし、生徒らの方に向き直ると口を開く。

「えー、えっと、織斑一夏です。よろしくお願いします」

儀礼的に頭を下げて、上げる。

やはり、周囲からは『え、これで終わりじゃないよね?』といった雰囲気が漂った。

無言のまま、一夏が固まる。

俺はその光景がシュールすぎて、笑いそうになったが口内を噛んでどうにか堪える。

──こういう無言状態になるとなぜか笑っちゃう人、何人かは居るよな?

俺だけだったら悲しすぎるぞ、、、、、

そして、硬直が解けた一夏が深呼吸するように呼吸すると。

「以上です」

がたたっと、周囲の女子の数人がずっこけた。

「あ、あのー、、、、」

山田先生が泣きそうになりながら一夏に声をかける。

と、教室の入口から誰かが入ってきて、一夏の頭をスパァンと叩いた。

「いっ────!?」

と、小さい苦悶に満ちた声が聞こえた。

「、、、、、千冬さん、相変わらず痛そうな叩きかますな、、、、」

俺は一夏を叩いた本人、今日から俺らのクラスの担任となる織斑千冬に聞こえないように呟く。

「げぇっ、関羽!?」

スパァン、と再び一夏が叩かれる。

「誰が三国志の英雄か、馬鹿者」

トーン低めの声が千冬から発せられる。

やっぱここの一夏のセリフと千冬のツッコミは笑えるな、、、、、

「あ、織斑先生。もう会議は終わられたんですか?」

「ああ、山田君。クラスへの挨拶を押し付けてすまなかったな」

千冬が、先程とは違った優しい声で山田先生に言う。

「い、いえっ。副担任ですから、これくらいはしないと、、、、」

さっきまでの涙声が嘘のように、山田先生は若干熱っぽいくらいの視線と声で千冬に応える。

「諸君、私が織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。私の仕事は弱冠十五才を十六才まで鍛え抜くことだ。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな」

千冬が教壇に立ち、普通なら困惑されるような簡素な自己紹介をする。

だが、教室に響いたのは困惑のざわめきとは正反対の、黄色い声援だった。

「キャ──────!!!!千冬様、本物の千冬様よ!!!!」

「ずっとファンでした!!」

「私、お姉様に憧れてこの学校に来たんです!!北九州から!!」

「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しいです!!」

「私、お姉様のためなら死ねます!!」

きゃいきゃいと騒ぐ女子たちを、千冬はかなりうっとおしそうな目で見る。

「、、、、毎年、よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ。感心させられる。それとも何か?私のクラスにだけ馬鹿者を集中させているのか?」

本当にうっとおしそうに、千冬が顔を俯ける。

悪いがどのクラスに行っても変わらねぇと思うぜ千冬さん。あんた元ブリュンヒルデだし。憧れられるのもしゃあねぇだろ。

と思っていると、さらに女子たちの黄色い声援が加速する。

「きゃああああああっ!!!お姉様!!もっと叱って!!罵って!!!」

「でも時には優しくして!!」

「そしてつけあがらないように躾をして~!!!!」

うるせぇよお前ら!!!元気なのは何よりだが!!!!

と心の中で俺は叫ぶ。いやホント声が共鳴したり反響するわでうるさいったらありゃしねぇ。

「で?お前は満足に挨拶も満足にできんのか、お前は」

千冬が一夏に対して辛辣な言葉をかける。いやほんとそれは辛辣だと思った。こんな状況でまともに挨拶しろってのが無理だろ。

「いや、千冬姉、俺は──」

パアンッ!!!本日三度目の一夏への攻撃が当たった。マジでアホになりかねんぞあの叩きは、、、

「織斑先生と呼べ」

「、、、はい、織斑先生」

と、やり取りしていると、急に千冬の目線が俺に向けられる。

「三七城。お前がこの馬鹿に向かって見本を見せてやれ」

えぇ....(困惑)

なぜヘイトが俺に向いたんだよ、、、、まぁいいか。俺も怒られたくないしな。

俺は席を立って教壇の方まで歩く。

その際チラッと山田先生の方を見たんだが、俺と目線が合うとビクゥと体を揺らしていた。

、、、、まぁ、実戦テストであんなことしちまったからこうなるわな。

そう、IS学園に入る際に実戦テストのようなものがあり、そこで教官として対峙したのがこの山田先生だったのだがいかんせんフルボッコしすぎた。

試合開始の直後、一瞬で山田先生のIS、ラファール・リヴァイブを戦闘不能まで追い込み、オマケに動けないのにその首元に刃を寸止めで当てるという虐めじみたことをした結果こうなった。我ながらガチでやりすぎたと思った。

────まぁそれもこれも俺が試験的に『オーバードライブ』使ったせいだけどな。

「、、、三七城黒騎だ。今日から皆と共にISに関しての勉強をさせて頂く。所持ISは『ラインバレル』。和名は『機帝』。察している人も居ると思うが専用機だ。以後、よろしく」

少し格好をつけて挨拶する。このIS学園で、俺はクール系キャラで押し通すということは決めていたからだ。一夏が優男なら、俺は冷徹クール男で行こうって思ってたしな。

俺が挨拶すると、教室に少しざわめきが起こった。

「え、国家代表でも、国家代表候補生でもないのに専用機持ち?どういうこと??」

「あれじゃない?ISに乗れる男の人だから専用機くれたんじゃない?」

「その理論でいったら織斑くんも専用機持ち、、、?」

、、、、一夏が専用機持ちってのは合ってるが、俺の場合くれたってのだけハズレだ。ラインバレルは俺の親父が作ったって言っても信じないだろうがな。

「よし、下がっていいぞ三七城。どうだ、三七城はまともに挨拶出来たぞ?お前はどうだ?」

と、俺が席に戻ると煽るように千冬が一夏を見下ろす。一夏は悔しそうに目を細めていた。

いやーさすがに虐めすぎじゃねぇか千冬さん、、、、後で一夏を慰めとこう、、、、

と考えていると、チャイムが鳴った。

「さぁ、SHR(ショートホームルーム)は終わりだ。諸君らにはこれから」

と千冬が言いかけた所で、急に教室の扉が開いた。

「すいません。遅れました」

そう入ってきたのは、一人の少女だった。

輝くような銀髪。それを肩につくかつかないかという絶妙な所で整えている。

目はルビーのような赤色。

俺は、彼女を知っていた。

だが、俺の知る『彼女』ではない。

では、誰だ?

考えるも、何も思い浮かばない。

「、、、、登校初日から遅刻とはいい度胸だな。ライラ・ボードウィーク」

千冬が入ってきた少女に向かって、怒気を放ちながら言う。

俺は、そこで始めて気づいた。

「ライラ、って」

そう、俺が数年間に助けた少女。俺が知る人に似すぎていて強烈に記憶に残っていた少女。

──いやいや、まさかそんな天文学的な確率が出そうな再会なんてねぇだろ。別人だ別人。

俺はその考えを否定し、扉の方に向けていた視線を机に向け直す。

だが、遅刻したその少女は俺の隣の席に座ると、一言。

「、、、、久しぶりだね、黒騎。私の事覚えてる?」

少女が微笑みながら俺に言う。

え待って。今この子なんつった?久しぶり?覚えてる?ってことは一度合ってるってことか?つまりあのライラか。俺の名前も知ってるし。いやはやまさか天文学的確率がガチで起こり得るとは、、、、、、って。

「ハァッ!?!?!?」

後で聞いたのだが、その日、誰のかは知らない叫び声が学校中に木霊したという、、、、、

 

 

「それにしてもニュースを見て驚いた。黒騎がIS使えた男の人の一人だったって」

「いやー、俺も驚いた。まさかお前がIS学園に入ってくるとは、、、、」

一時間目のIS基礎理論授業が終わって、今は休み時間。

俺とライラは久しぶりの再会に驚愕しつつも喜びあっていた。

「そういえば黒騎、IS関連で困ったことない?あったら私が教えるから」

「あー、今のところ無いな。電話帳サイズの入学前の参考書寄越されたから死ぬ気で覚えたので、どうにか理解できたからな。まぁ分からないところ出てきたらお前に頼むわ」

そう、IS学園へ送られることになってしばらくしたら、電話帳と見間違えるほどの分厚い参考書を寄越され、それを覚えろと言われた。

どうにか徹夜で詰め込んだが、本当に地獄だった、、、、、

「うん。いつでも頼って」

うわ、微笑むような笑顔が眩しい。オマケにめちゃ俺に優しい。この子は女神か?前世でこういう経験皆無だったのもあるが。やばい本当に聖母に見えてきた、、、、、

「黒騎。自己紹介が少しだけ聞こえたんだけど、専用機持ってるんだよね?今日の放課後、私と手合わせしてみない?」

「別にいいぞ。俺もこいつ使いたいしな」

と、俺は机の横にかけてあった刀、ラインバレルの待機形態を手に取った。

「それが待機形態?刀って珍しいね。ISの待機形態ってほとんどアクセサリーの類なのに」

「いや、まぁ細かいことは言えないが俺のISはちょっと特殊でな。カスタム・ウィングが腰に付いてるし全身装甲だし、あと機体の再生が尋常じゃなく早い」

「、、、、確かにかなり特徴的だね。特に全身装甲ってところが気になる」

「やはり珍しいのか、全身装甲」

「珍しいね。全身装甲にする意味が無いから。ISはシールドバリアーで守られてるし、いざって時は絶対防御が発動するから、そもそも装甲自体あって無いようなものだからね」

「ふむ」

と話していると、再びチャイムが鳴る。

「おっと、授業開始だ。分からないことがあったら頼むぞライラ」

「うん」

と、何故かライラの頬が赤くなっていることに俺は気づく。

「、、、お前、熱でもあるのか?」

「いや、大丈夫。ちょっと暑いだけ」

顔を変えずライラが言葉を返す。

「そうか」

そう返し、俺は黒板に顔を向けた。

 

 

その後、二時間目はISの基本的な運用についての解説が行われたが、幸い俺は参考書を見てきたので大抵の単語は理解できた。それでも分からない所はライラに教えてもらい、どうにか乗り切ることが出来た。一夏の方は原作通り全て分からなかったようで、千冬から叩き&説教を食らっていた。南無三。

と、二時間終わりの休み時間に、今度は今までのことについてライラと話そうと思いライラの方を向く。

だが。

「ちょっと、そこの男子二人、少しよろしくて?」

「へ?」

「、、、、、」

一夏が素っ頓狂な声を出す。

俺は知っている、この声の主を。

セシリア・オルコット。原作でのヒロインの一人。始めはこんな感じでプライド高めのキャラ。まぁこの後一夏に惚れるんだがな。

「、、、、、って待て、俺も呼ばれているのか?」

あれ、原作じゃあ一夏一人にだけ話すはず、、、、って、原作から『俺』ってキャラが追加されてたんだった。変わっててもおかしくないか。

「男子二人、と言ったでしょう?この教室にはあなた方以外に男子はおりませんわ」

と言われ、俺は面倒くさいので「悪かったな」と適当に言いながら体をセシリアの方へ向ける。

あんまり原作キャラと関わりたくないんだけどな。下手すりゃ原作壊れるし。

「あ、ああすまない。どういう要件だ?」

一夏が聞くが、セシリアがわざとらしく声を上げた。

「まぁ!!なんですの、そのお返事。わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるんではないかしら?」

うーん、やっぱどうしてもこういうセリフにはイラついてしまうな。

女が偉い立場になったのはIS世界での常識だが、そうやって偉さを振りかざすやつは正直向こうの世界でも、ここの世界でも苦手だ。

「悪いな。俺、君が誰だか知らないし」

「悪いが俺も同じく」

と、一夏が返し、俺も一夏に合わせて返す。

その反応が気に入らなかったのか、セシリアが吊り目を細めて、いかにも男を見下した口調で続ける。

「わたくしを知らない?このセシリア・オルコットを?イギリスの代表候補生にして、入試首席のこのわたくしを!?」

「それ俺も首席だったぞ」

俺が言った瞬間、ピシリ、と氷が割れたような音がした。

「、、、、なんですって?」

「ああ、俺の場合テストは無かったが、教官との戦闘試験なら一瞬で倒したぞ。お前の首席って、女子だけってやつではないか?」

「ああ、そういえば俺も教官倒したぞ」

一夏も言うと、今度はバキッ、という氷が砕けたような音がした。

「、、、、テストが免除?戦闘試験のみで首席?ありません。ありませんわ」

と、困惑するようにセシリアがブツブツと呟き始める。

、、、、あれ、俺何かやっちゃいましたか?(確信犯)

「、、、えー、とりあえず落ち着けよ。な」

一夏がセシリアをなだめるように言う。

「、、、、こ、これで落ち着いていられる訳──」

キーンコーンカーンコーン。

話に割って入ってきたのは三時間目のチャイムだった。ナイスタイミング。

「っ、、、、!!また後で来ますわ!!逃げないことね!!よくって!?」

「逃げないさ。そもそも学校だから逃げようもないしな」

俺は煽り混じりで返答したが、聞こえていないようだった。

「それではこの時間は実践で使用する各種装備の特性について説明する」

一、二時間目とは違い千冬が教壇に立っていた。その右横では山田先生がノートを持って何かをメモする準備をしていた。

「ああ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」

ふと思い出したように千冬が言う。

「クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけではなく、生徒会の開く会議や委員会への出席、、、まぁクラス長だな。ちなみにクラス対抗戦は、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点でたいした差はないが、競走は向上心を産む。一度決まると一年間変更はないからそのつもりで」

ざわざわと教室が色めき立つ。

「はいっ。織斑くんを推薦します!!」

うん、原作通──

「私は三七城くんを推薦します!!」

────ゑ?

「私も三七城くんがいいと思います!!」

「私は織斑くんがいいと思います!!」

おい待て。待て待て待て。

「では候補者は織斑一夏と三七城黒騎、、、他にはいないか?自他推薦は問わないぞ」

、、、、原作 こ わ れ た

「お、俺!?」

一夏が立ち上がり、視線が一斉に一夏に集まる。その視線には、『彼ならきっと何とかしてくれるはずだ』というなんとも勝手な希望が込められていた。

「織斑。席に着け、邪魔だ。さて、他にはいないのか?いないならこの二人で投票を行うが」

「ちょっ、ちょっと待った!!俺はそんなのやらな────」

「自他推薦は問わないと言った。他薦されたものに拒否権などない。選ばれた以上は覚悟をしろ。ちょうどいい見本がそこに居るから見習え」

と、千冬が俺に視線を向ける。

いや、外見落ち着いてるかもしれねぇが内心クッソ焦ってますからね?そんな『お前が見本』みたいなこと言われたって、、、、

「待ってください!!納得がいきませんわ!!」

バンッと机を叩いてセシリアが立ち上がる。

ナイス助け舟!!!

「そのような選出は認められません!!大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ!!わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」

はいはい、原作通りのセリフですね、、、、

────駄目だ。知っているはずなのに実際に聞くと超ムカつく、、、、

「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを、物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります!!わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!!!」

あ~ストレスの溜まる音ォ~(#^ω^)ビキビキ

「いいですか!?クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれはわたくしですわ!!」

怒涛の剣幕でセシリアが叫ぶ。

ってかいい加減黙ってくれ。そろそろキレる。キレてしまう。

「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛で────」

ブッチン。

「イギリスだって大してお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」

「そろそろ黙れ劣悪食事国代表が。そこまで言うんならお前の強さを証明しろ。『自称』クラス代表レベル」

────あっ。

「な、、、、、っ!?」

どうやら、一夏と俺は同時にキレたらしい。

一夏の場合不味いことを言ったといったような表情をしていたが、俺の場合言いたいことを言えたので鼻で笑いながらスッキリとした笑みを浮かべていたことだろう。

セシリアの顔は、驚くほど赤くなっていた。

「あっ、あっ、あなた方ねぇ!!わたくしの祖国を侮辱しますの!?」

「そっちだってさんざんこっちのこと侮辱してきただろ。因果応報だ阿呆」

ああやばい、俺の口が暴れだしやがった。煽り返してどうするんだよ馬鹿が、、、、

「ッ────!!!決闘ですわ!!」

バンッと机を叩いくセシリア。

いやーあのお顔真っ赤、実に気味がいい。(これで俺はセシリアファンを完全に敵に回した。死んだな)

「おう。いいぜ。四の五の言うよりわかりやすい」

「その決闘、受けて立ってやる。まぁ、俺に恐れて漏らさないようオムツでも履いてくることだな。プライドだけ高い傲慢野郎が」

ああああやばいやばい!!!前世の昔の癖が止まらない!!!やめろ!!女子に対してそれはマズイ!!!俺の口そろそろ止まれぇ!!!!

「お、おい黒騎、それはさすがに言い過ぎじゃ、、、、」

と一夏が止めてくる。

残念だが一夏、俺一度こうなったら俺でも止めらんねぇんだわ、、、、、

「ごっ!?傲慢野郎とはなんですの!?」

「ただ立場を自慢してふんぞり返って、傲っているようにしか見えないから言ってんだよ。まだふんぞり返りたいなら俺をその決闘でボコして見せろ」

「ええ!!徹底的に蹂躙してさしあげますわ!!!あなたこそ手を抜いたりとかしたら許しませんよ!!!」

「安心しろ。貴様が思ってるより俺は優しくない。鏖殺してやるよ、エセクラス代表」

あーあ、もう滅茶苦茶だよ、、、、

「さて、話は纏まったな。それでは勝負は一週間後の月曜。放課後に織斑対オルコットを第三アリーナで行い、その後勝者に三七城と勝負してもらう。織斑とオルコットはそれぞれ用意しておくように。それでは授業を」

あーやっとこのクソみたいな口喧嘩が終わる、、、

そう思っていた時期が俺にもありました。

「待ってください!!なぜ彼が勝負の勝者と戦うということになるのですか!?」

叫ぶと、千冬は無言のまま文字と写真で埋め尽くされた紙をセシリアに見せる。内容は見えなかった。

すると、セシリアはしばし絶句したのち渋々その提案を呑んでいた。

え、プライドの塊のセシリアがあっさり呑んだぞ?一体何を見せたんだ千冬さん、、、、

ぱんっと手を打って千冬が話を締める。

俺は言いたいことを言えたのでスッキリとして席に着く。

「、、、、黒騎、もしかして一度暴れ出すと自分でも手が付けられないタイプ?」

「、、、、お察しの通りだよ」

俺のことを憐れむような目で見るライラに弱めの声色で返す。

 

 

「ふぅっ。やっと全部の授業が終わった、、、、授業の一つ一つが長く感じるな」

「IS関係の授業は長くて複雑な単語が多くあるから、そう感じても不思議じゃないよ」

うん。改めてなんだこの女神。俺の言うことに逐一反応してくれるし反応が優しい。

「、、、、で、この後模擬戦やるんだよな。許可申請とかは」

「もうしてきた」

ライラがペラッと二枚の紙を机から取り出す。

そこには、第二アリーナ使用許可証と書かれた紙とISによる模擬戦許可証と書かれた紙があった。あれ、確かライラ今日学校始まってから一回も教室から動いてないよな。どこの時間で手に入れたんだそれ、、、、

「それじゃ、行こ」

と言い、ライラが俺の手のひらを握ってくる。

いきなり握られたものだから、俺は思わずビクッとしてしまう。

めっちゃ柔らかい。餅か?って言いたくなるぐらい柔らかい。そしてスベッスベで冷たい。そんな感触が合わさって気持ちよく感じる。

「、、、、?もしかして、手を握られるの嫌だった?」

「いや全然。むしろウェルカム」

やべ本音が出た。せっかく話し相手ができたのに気味悪がられる。

「そう。じゃあそうするね」

、、、、あれ?気味悪がられなかったぞ?それどころか更に手を強く握られてんだけど。

そのまま、引っ張られるようにアリーナに向かって歩を進める。

「、、、、なぁ、ライラはどうしてIS学園に来たんだ?」

その道中、周囲の女子からの物珍しいものを見るような目線を浴びつつも、ライラに聞く。

「、、、、強く、なりたかったから。何にも負けないくらい」

と、真面目な顔で返してくる。本気の表情だった。

「、、、、俺と模擬戦をしたいっていうのも、強くなりたいからか?」

「うん。黒騎は多分クラスの中で、いや、それどころか多分生徒会長抜きだったら最強だと思う。この間の試験ひっそりと見てたけど、クラス代表でもあそこまで早く倒せない。だから手合わせをお願いしたいな、って」

、、、、えマジで?俺そんな強いの?いやまさか、そのようなことがあろうはずがございません。(パラガスボイス)

ってかあれは反則レベルでやばいオーバードライブを使ったからであって俺の実力では、、、、、

「着いたよ。ここが第二アリーナ。私はとりあえずISスーツ着てくるね。黒騎も早くしてね」

「おう」

ライラが更衣室らしき所へ向かって歩く。

俺はそのままその場で立ち尽くす。

何故かって?────俺ISスーツに着替えなくても問題ないからだ。着たらむしろ動きが鈍った。

本来ならISの動作性を上げるためのISスーツだが、俺が着た場合何故かISの動きが鈍ったのだ。ここら辺の理由は知らん。多分【Dーゾイル】絡みだろうが。

暇なので、俺は刀を引っこ抜いてその場で素振りを始める。

だが、素振りを始めて十数えた所でライラがやってきた。黒のスーツを纏って。

「おまたせ黒騎、、、、?なんでISスーツ着てないの?」

当然の事ながら、ライラが不思議そうに俺を見る。

「俺の場合ISスーツ着ない方が全力出せるんだ、数値的にも。理由は知らん。だから俺はこれで準備は完了だ」

「わかった。それじゃあ先に」

と、ライラが手に十字架のネックレスを祈るように手に持ち、目を閉じる。

十字架のネックレスが光の粒子へと変わり、その粒子がライラの体を包む。

そして、数秒後にはライラの体に黒のシャープ形状の装甲が目立つISが装着されていた。

更に、背には大剣らしきものが翼のように三つ取り付けられている。

、、、、ん?いや待てこいつどっかで見覚えのある形状してるな、、、、

「、、、、これが私のIS、『シュヴァルツェア・ステルベン』。ドイツの実験型第三世代だけど、甘く見ない方がいいよ」

おいおい、シュヴァルツェアって、、、、通りで見覚えがあるわけだし、マジでラウラとの関係性匂わせてくるな、、、、、

「お前も専用機か」

「うん。ドイツが失敗作だって初期化しようとしてたやつを貰った。そして私好みに改造したのがこの子」

、、、、、後でじっくりラウラとの関係を聞くか。

そう決意し、俺はライラを待たせないために刀の鞘と柄をそれぞれ左手と右手で持つ。

そして、一度目を瞑る。

「、、、、来い。ラインバレル」

刀を鞘から抜き、もう既に慣れている、体がISになる感覚を味わいながらゆっくりと目を開ける。

既に視界はISと同調して、いつもより視野が広く見えた。

「、、、、うん。やっぱり特徴的だね。そのラインバレルって」

「ああ。それより模擬戦、始めないのか?」

「ちょっと待って」

と、ライラが目をあちらこちらに向けて何かを操作する。

すると、アリーナの正面にあったモニターに大きく『countdown』の文字が表示された。

「私が、『始める』って言ったらカウントスリーでスタート。ゼロになったらお互い攻撃していい。あとその待機時間に瞬時加速用の準備をしてもいいよ」

「了解」

「じゃあ、始めるね」

モニターが、カウントダウンを始める。

スリー。

俺はラインバレルのテールスラスターを展開し、出現した五つのスラスターにエネルギーを貯める。

ツー。

ライラが背の大剣を手に持ち、俺に向けて構える。

ワン。

俺は腕に付いている<不知火>を両方とも鞘から抜き、両手で構える。

ゼロ。

俺はテールスラスターの、左端のスラスターを起動して加速する。

そのまま、そのスラスターの右隣のスラスターを起動して方向転換する。

そして、円を描くようにライラへ近づき、その背に向けて刃を構える。

「その動きは知ってる」

と、ライラが後ろへ急旋回し大剣を構える。

俺は気にせず中央のスラスターを起動しライラに突っ込もうとしたが、ライラに先手を打たれたことに気付く。

ライラは俺に刃先を向けていた大剣を変形させると、展開した刀身から銃身のようなものが現れ、そこから銃弾が放たれた。

仕込みアサルトライフルとは、かっこいいじゃねぇか。

不意を突かれたが、至って俺は冷静だ。すぐさま余ったテールスラスターを使い左へ急旋回と急加速を同時に行い、射線から逸れる。

「、、、、凄い。ラインバレル、個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッションブースト)も使えるんだ。それを扱いこなしてる黒騎も凄い」

と、ライラが驚いたような表情で俺を見る。

「、、、、?ああこれ個別連続瞬時加速って言うのか。てっきり名前がないもんだと思ってて勝手に多重瞬時加速(オーバーイグニッションブースト)って名付けてたが」

どうやらこの武装の名は、俺が今まで勝手に付けていた多重瞬時加速ではなく、どうやら個別連続瞬時加速が正しいようだ。これって五巻より後で出てきたりするのか?

「、、、、まぁこれ一部の人しか知らない技術だからね。黒騎が知らないのも無理はないよ」

そう会話しながら、お互いの剣を向け合う。

「、、、、今度は正面から行くぞ」

「うん。私もそうする」

俺はライラの胴体めがけて<不知火>を構え、加速する。

<不知火>とライラの大剣が衝突し、激しい金属音と火花を撒き散らしながら互いの剣がせめぎ合う。

「、、、、ねぇ黒騎。手加減してない?」

ライラから、どこか負の感情が篭っているような声が聞こえた瞬間、<不知火>がライラの大剣に弾かれる。

「、、、、シールド、クローモード。<ハイキャスト>、アサルトモード」

と、ライラの小さい呟きが聞こえると、シュヴァルツェア・ステルベンの肩部装甲が分離した。

いや、分離ではなく、変形?

分離した装甲は三本の爪のような形に変化し、装甲が付いていた箇所から出現したサブアームによってガッチリと支えられた。

「今度はこっちの番」

ライラが俺に向かって加速する。

俺は<不知火>を向かってきたライラに振り下ろす。

だが、手応えが一切ない。

「後ろだよ」

「────ッ!?」

俺は<不知火>を後ろへ振り抜く。

だが、またしても────

「隙あり」

と、肩に激痛が走った。

「が、、、、、ッ!?」

見てみると、ラインバレルの両肩がそれぞれ三本のレーザークローに貫かれていた。

おいおい、痛覚まで共有されんのは知らねぇぞ親父、、、、

そのまま、ライラは俺に向けて変形させた大剣に内蔵されている銃口を俺に向ける。

「チェックメイト」

ライラがトリガーにかける指の力を強める。

「、、、、、はぁーっ。お前に使う予定は全く無かったのだが、致し方無い」

俺はそうため息混じりに呟く。正直これを使ったら虐めになりかねないのだ。

「、、、、?何を言って」

すぅーっ、と大きく息を吸い込み、俺はラインバレルを『解放』する。

「コード【オーバードライブ】。発動」

そう囁くと、俺の視界にデカデカと『OverDrive』の文字が灯る。

体に力が漲る。滾る。

「ッ!!させない!!」

マズイことが起こっていると察したのか、ライラが引き金を引き切る。

ダダダッと大口径の弾丸が連射されるが、それらは全て俺には当たらなかった。

だって、俺は。

「後ろだ」

「え」

ライラの後ろへ、文字通り『瞬間移動』したからだ。

そして、ライラの瞳に映るラインバレルの姿は、ちょうど夕日がさす今の時間帯でははっきり見えやすかっただろう。

今のラインバレルのカラーは黒。黒騎士というコードネームに相応しい状態。

────コード【オーバードライブ】。ラインバレルのリミッター解除コード。

これを使用した瞬間、機体性能が向上し、その上空間と空間を移動するというワープじみた能力が使えるというコード。

オマケに、『ちょっとえげつない』攻撃手段が一つ増えるのだが、いかんせん攻撃力が高すぎるため事故防止としてほぼ封印している。

「、、、、いつ後ろに?私がビームクローで拘束してたはずなのに」

「それは、、、、ワープだワープ」

そう返すと、ライラが大剣状態へと戻した、、、えー<ハイキャスト>だっけか、、、を振りかぶってくる。

だが、俺は座標をライラの背後に設定し、再びその地点まで瞬間移動して回避する。

「、、、、本当に厄介だね。その【オーバードライブ】って形態」

現状を飲み込んだといった様子で、ライラが落ち着きを取り戻す。

「おう。だがこれエネルギーの消費が大きい上に追加武装の威力が酷いからな、、、、そんなこんなで封印しようかと思っていた形態だったんだがな。お前にだけ、使うことにしよう」

俺は覚悟を決め、ラインバレルの腕部とテールスラスターの装甲を展開する。

展開した装甲の間から黄金の放熱板が数枚現れ、そこから黄金の粒子が放たれる。

「、、、、腕部搭載型圧縮転送フィールド発生装置、起動。オーバーライド実行。発動間隔はそれぞれ1、1、1、1で実行。カウントスタート」

俺は単語の羅列のスラスラと述べていく。

瞬間、ラインバレルの手のひらの内側の空間が歪み始める。

「圧縮転送フィールド。オーバーライド。、、、、聞いたことない」

「それはそうだ。何故なら」

カウントワン。俺はライラの背後へ移動する。

そのまま、手のひらでシュヴァルツェア・ステルベンに掴みかかる。

「っ!?掴み攻撃、、、!?」

俺の攻撃方法に困惑したのか、ライラが狼狽えるがすぐに冷静になり、<ハイキャスト>の刃を俺の手のひらに向けて振り下ろす。

普通なら、ここで俺の腕はぶっ壊れてる。

、、、、だが。

「、、、、、え」

「俺専用のアビリティだからな」

俺の腕は壊れていない。むしろ、俺に斬りかかっていた<ハイキャスト>の刀身が消えていた。いや、空間ごと抉りとられた、と言うべきだな。

腕部搭載型圧縮転送フィールド発生装置。対象を空間ごと抉りとり、ダメージを与えるラインバレルの【オーバードライブ】時限定の腕にある武装。

その性質上、たとえISでも防御は不可能に等しい。

俺はそんな物騒極まりない腕を、再びライラに向けて伸ばす。

「、、、、ッ!!!」

ライラが慌てて回避行動を取るが、遅い。

カウントワンモア。そう言った一秒後に俺はライラのすぐ上へ転送される。

俺の手のひらは容赦なくシュヴァルツェア・ステルベンの背部に装着されていた三本目の<ハイキャスト>を、接続していた周囲の装甲ごと抉りとる。

「一本だけでも!!!」

と<ハイキャスト>をアサルトモードへと変更し銃弾を放ってくる。

カウントワンモア。再びライラの背後へ俺を転送し、がら空きなその背を<不知火>で切る。

「ぐあ、、、、っ」

勢いを失い、墜落しているライラを見下ろす。

ラストカウント。俺はライラの直下に転移し、落下してきたシュヴァルツェア・ステルベンをお姫様抱っこ形式でキャッチする。

「、、、、うん。やっぱり勝てない」

ボロボロになった自身のISを見ながら、悔しそうにライラが呟く。

ラインバレルのカラーが白に戻り、展開していた放熱板が収納されてラインバレルは通常形態へと戻った。

「、、、、まぁ、これが俺の『オーバードライブ』だ。正直な話これ使うと殺しかねないから使いたくなかったが、さすがに本気出して欲しいってのに出さないのも失礼じゃないかなと思ってだな、、、、だが正直やりすぎた。すまない」

「いや、黒騎の全力が知れたからいい。付き合ってくれてありがとう」

ライラが微笑む。いや優しすぎだろ。

「、、、、あ、そういやシュヴァルツェア、、、、いや、ドイツの実験機ってことは」

と、不意に違和感に気付く。

AIC(アクティブ・イナーシャル・キャンセラー)使えなかったか?どこかでそんな話を聞いたことが、、、、」

そう、本編で猛威を奮ったシュヴァルツェア・レーゲンのAIC。慣性を停止させるフィールドを発生させ、ISを行動不能にするという反則じみた能力。

シュヴァルツェア・ステルベンなら持っているのではないかと思い、聞いてみた。

「確かに、一応実験型のAICは積んでるけど、実験段階だから上手く動作しない。起動して使えたとしても数秒しか持たないし細かい調整とかもできない」

「、、、、積んではいるのか。お前にそれが組み合わさったら予想もしたくないことになりそうだな。多分【オーバードライブ】使っても負けるな」

俺は自嘲するように肩をすくめる。

正直、さっきのはオーバーライドによる連続転送で撹乱できた上に、圧縮転送フィールドを用いたから勝てただけだと思っている。AICを使われればおそらく一瞬で俺が負けていただろう。

「それは言い過ぎだと思う、、、けど、黒騎が言うなら、勝てるように頑張る」

何この子すんごい健気。その健気さ俺に分けて。

「おう、頑張れ。────というかいい加減IS解除しないか?」

先程からずっとお姫様抱っこ状態だったので、いい加減この体制から離れたいと思っていた俺はそう提案する。

「うん、そうする」

と、先にライラがISを解除し十字架のペンダントへと形状が戻る。

俺もISを解除し、腰に刀を下げて地に降りる。

「それでは、飯でも食いに行くか?」

「そうしよう。お腹減った」

ライラの腹がきゅるると小さく鳴った。それを恥じるように腹を抑えながらライラが頬を赤く染めている。めっちゃ微笑ましい。

そして、俺はもう一つ重大な事実に気がついた。

「千冬さんとかから学んだ武術を、ISで使うのは思っていたより難しいな」

 

 

「、、、、で、どうしてこうなった?」

俺は現状を見てそう呟く。

俺らは食堂へ向かっていたのだが、その道中でクラスの女子に見つかり、足止めを食らっていた。

俺の目の前には、見切れないほど居る、クラスの内外含めた女子生徒。それらが一斉に体を俺の方に向けて何かしてほしそうな目をしていた。

「三七城くん!!一緒にご飯食べよっ!!!」

「いや、私と食べよう!!!」

「こらっ!!抜け駆けするな!!」

まぁ、大抵そんな感じの内容だったのだが。

────すまんが俺はさっさとライラと飯が食いてぇんだ。悪いけど退いてくれるとありがたい。

「悪いなお前ら。俺は既にライラとの約束をしているのでな。俺はライラと食わせてもらう。なに、まだ隣は空いているんだ。お前ら同士でじゃんけんするなりなんなりして誰が座るか決めるといい。だからとりあえず道を開けて欲しい」

と、俺は精一杯のイケボで返す。

幸いなことに、この世界での俺の声は諏訪部順一そのものって言いたくなるほど似ていたので、アーチャー声(俺からすればテルミドール声だが)にすれば退いてくれるだろう。

「「「、、、、、はにゃあ」」」

と、数人の女子がいきなりぶっ倒れた。ついでにいい感じに食堂への道が開いたんだが、どうしたんだ一体?

「、、、、え待って、何今のイケボ。すんごい耳元で囁いて欲しいんだけど」

「今の三七城くんの雰囲気って、あれだね、王女をエスコートする騎士っぽかったね」

「、、、、騎士、白馬の王子、その名は三七城黒騎、、、、、捗る」

、、、、うーん。嫌な予感がしてきた。

「ってかさっき言ってた、隣の席、、、、誰座る?」

『私!!!』

と、満場一致の如くその場の女子が同時に叫ぶ。そのせいで余計音が反響してうるさい。

「よし、それじゃあじゃんけんで!!!」

『ジャーンケーン!!!』

「、、、、面倒だから先食いに行こう」

「うん」

何故か、ライラがムスッと顔を膨らませ、不機嫌そうに目を細めていた。

時間食いすぎたか。

俺はライラの手を掴む。

「え?黒騎?」

「時間を食ってしまって悪いな。さっさと食いに行こう」

そのまま、ライラを引っ張るようにして食堂まで向かい、そこでメニューを選び注文する。

俺は普通サイズの牛丼、ライラも俺と同じく普通サイズの牛丼を頼んでいた。

そのまま近くの横長なテーブルに座り、牛丼をテーブルの上に置く。

俺は隣に居るライラの方を見る。ぷいっと顔を背けられた。悲しいなぁ、、、、

「、、、、黒騎、人気だね」

「まぁ珍しい、、ってか男子生徒二人しか居ないからな。つい興味が湧いてしまうのも仕方ないことだろ」

「確かに」

俺は目線を目の前の牛丼に向けて、それを口の中にかきこむ。

程よく厚い肉の噛みごたえと、ふっくらとしたご飯の食感が合わさり、旨く感じる。

来る前までは、食堂の飯の美味さというものを気にせず、ただ食えればいいという思考をしていたが、これはいい。

「はーい、ちょーっとお隣失礼するよー」

と、飯を食っている俺の隣から声がした。

俺は箸を止めて一旦隣へ来た人の顔を見ようと目を向ける。

「ああ。じゃんけんは終わりか。あの人数なら早めに終わると、、、、、」

カチャーン、と俺の箸が床に落ちる。

俺は多分、間抜け面を晒しながら固まっていただろう。

だって、そこに居たのは。

「、、、、更識、、、、楯無」

「おっ、私のこと知ってもらえているようで何よりだよ」

このIS学園の生徒会長であり、IS学園最強である、更識楯無(さらしき たてなし)その人だったのだから。

いや待て待て!?本日何度目の待て待てかは知らんが待て!?なぜ更識楯無がここに居る!?

一夏はどうした!?あんた一夏の指導役、、、、いやこれ五巻の話だったわ。

「、、、、何故IS学園生徒会長がここに居る。ここにはつまらんものしか無いぞ」

俺は冷静さを取り戻し、落とした箸を拾い上げた後そう聞いてみる。

「いやー面白いものならあるよ、三七城黒騎っていう人が、ね」

と、楯無が右目を閉じて俺にウィンクしてくる。

「、、、、悪いが大人しく飯を食わせてくれ。その後に質問ならいくらでも聞く」

「いやいや、ちょーっと急用があってね」

と、楯無が俺の耳に口を近づけ、小さな声で言った。

「、、、、君のIS、ラインバレルの出自を教えて欲しいの」

聞いた瞬間、俺はすぐさま席から立って楯無から距離を取った。

そのまま、楯無を睨みつけるように見据える。

────こればかりは、教える訳にはいかない。俺の親父が作った第零世代なんて言えば、押収されること間違い無しだ。

だが、それで制作会社をデタラメに言ったところですぐにバレる。

千冬さんが尽力してくれたおかげでどうにかIS学園にラインバレルを持ち込めているが、バレる訳にはいかない。

「、、、、ふーむ。様子から察するに、どうやら聞かれたくない情報のようだね」

「当たり前だろう。生徒会長といえど、プライバシーぐらいは守って頂きたい」

楯無が、俺と同じように俺を見据える。

まるで、獲物が逃げないように見張る野獣のように。

「、、、、やーめた。聞くのはまた今度にする。その時は、『手段を選ばず』、『洗いざらい』話してもらうから。覚悟してなよ、三七城くん」

「、、、、、出来ればもう二度と関わらないで欲しい」

俺を脅した後、うっとおしそうにしている俺に呆れたのか楯無は食堂から離れていく。

────助かった。いや、天に助けられた、か。

あのまま追求されていたら確実に戦闘沙汰になっていた。だが次は手段を選ばないときた。となると、次は確実に『ミステリアス・レイディ』を用いて俺を、、、、駄目だ。負けるイメージしか思い浮かばない。

「、、、騎。黒騎ってば」

「なんだ」

「さっきの人って、生徒会長だよね。黒騎に用があったみたいだけど、あんな感じであしらっちゃってたけど大丈夫かな」

「、、、、まぁ、大丈夫じゃないか?」

俺は適当に返し、食事を再開する。

 

 

「ふーむ、調べた所ではラインバレルは第三世代、と。でも第三世代相当の技術は見当たらず、しかも第一世代の技術と未知の技術が発見された、か。────怪しい」

IS学園、生徒会室。真っ暗な空間で一人の少女が呟く。

更識楯無。IS学園の生徒会長。

彼女の手にはほんのり光る電子端末が握られており、そこには『三七城黒騎』と大きく書かれた文字の下に彼の出自などが細かく書かれていた。

「、、、、、三七城天児。三七城藍子。共に篠ノ乃束の協力者。三七城藍子は数年前に死去。両者経歴が一切不明。さらに、三七城天児の方は白騎士事件当日に起こった火災によって死亡、、、、そして、その三七城家の庭から謎の『人型物体』が出現したという目撃情報。極め付きに、、、、」

楯無は画面を下へスライドさせ、一つの記事に目を通す。

政府が隠匿し、明かされなかった、もう一つの事件が書かれたその見出しを。

「、、、、『黒騎士事件』。第二の始まりのIS、通称『黒騎士』が白騎士へ攻撃を仕掛け、撃退した事件。────その黒騎士に、ラインバレルがそっくり、いや、瓜二つなんだよねぇ」

改めて、楯無はその記事に写っている『黒騎士』と『ラインバレル』を見比べる。

────やはり、同一の機体であるとしか思えなかった。

「、、、、もしこの機体が始まりの、第ゼロ世代のISなら、、、、今では使われていない技術もあるはず。それも法に触れるレベルで危険な技術が」

楯無は端末を閉じ、カーテンを開けて夕日を浴びる。

「、、、、見逃す訳にはいかないよねぇ。生徒会長として」

憂鬱げに、楯無はぼやいた。

 

 

「いやー、食った食った。学食というものを舐めていた、、、、意外と美味いんだな」

「IS学園だからね。将来有望なパイロットには栄養価の高い美味しい食べ物を食べてもらって、体調を崩さないようにしてもらいたいからね」

結局、更識楯無というイレギュラーの介入はあっさり終わり、少々食堂がザワつきながらも俺の食事は終わった。

なので、今は今日の朝に千冬から渡された鍵を持って寮舎に入り、自分の部屋へと移動している最中だ。

「、、、、で、なんでお前は着いてきている?」

今俺が向かっているのは、俺の部屋。だというのにライラはずっと着いてきている。

もしかして部屋近いのか?とも思ったが、俺の部屋の近くは全て埋まっていたはず。

「私の部屋、黒騎と同じ部屋だから」

、、、、、えー、流石に今の聞き間違いだよな。まさか一夏と同じ展開だなどと、そのようなことが(以下略)

「聞き間違いじゃないよ。もしかして黒騎、千冬先生から聞かされてなかった?」

「、、、、なんの事か知らん。千冬先生からは鍵だけ渡された」

そう言葉を返すと、ライラが手元の端末を操作して画面を俺に向ける。

────ゑ?

端末の画面には、『三七城黒騎の部屋が確保出来なかったため、寮舎の部屋を増設しますが、その間に三七城黒騎にはライラ・ボードウィークの部屋へ移住していただくことを決定しました。ご協力の程をよろしくお願いします』と書かれたメールが映し出されていた。

送り主は案の定IS学園だった。

、、っておいおいおいおいおい!?ふざけんな!?齢16(精神年齢34歳)の童貞の俺に、、、、、女の子と同室で暮らせと!?

と心の中で叫んでいると、あっという間に自分の部屋へと到着した。

ライラがその扉の横にあるカードリーダーにカードを差し込み、ピピッという電子音と共に扉の鍵が空いたことにより、俺は先程の言葉が事実であることを認識させられる。

「、、、、?入らないの?」

「、、、、ッ!!すまない、入らせてもらう」

俺はどうにか動揺を隠して、自分の部屋へと足を踏み入れる。

、、、、、だだっ広いくせにデカいベッドと冷蔵庫、テレビや電子レンジ以外何もなかった。あと部屋の隅に数段重なってるダンボールぐらいしか。

それが、部屋を見渡した俺の感想だ。

いや、その他にでっかい風呂とか広めのトイレとかもきっちりあるんだが、いかんせん質素すぎて前世での俺の生活からすれば、、、、

「、、、、、暇を持て余しそうだな」

そうボヤいてしまう。

「安心して。黒騎のために色々揃えてきてるから」

ライラが部屋の隅にあったダンボールを物色し始める。って、俺のため?ドユコト?

「えっと、この辺に、、、、、あった」

ライラが取り出したのは。

「、、、、、お前がそれを持ってるとは驚きだな。そっち方面には興味が無いと思っていたが」

裁縫セットだった。

「それ、女の子に対して失礼だと思う」

ライラが頬を膨らませ少し俺を睨む。

だが、なんというか、、、、その様子が可愛かった。

こう、自分の娘を見ているような感覚が、、、、、

「この学校って、制服自由に変えたりしていいから要望あったら言って。二人でやってみよ」

「、、、、じゃあ、コート風にもできるってことか?」

「うん。できるよ」

、、、、、マジか、自由すぎないかIS学園。これだけで俺にとっては内容のハードさに合った報酬だわ。ってかそういや、上級生にブラジャー丸出しの痴じyゲフンゲフン、、、、ワイルド女子が居たからいいのか。

前世ではカッコイイ服という物に非常に興味を持っていたため、幾らか裁縫にも手を付けたこともあったのでやろうと思えば制服の一つや二つ、コート風にするのは造作もない。

「そこで、なんだけど、、、、お互い要望出してお互いの服改造しよ」

ライラが頬を少し赤く染め、先程までとは違ったか細い声で俺に提案する。

「、、、、、?どういうことだ?」

「、、、、朴念仁、、、じゃなくって、要するに私が黒騎に私の制服をこうしたい、って要望を出して、反対に黒騎は私に制服をこうしたい、って要望を出して、それぞれ相手の服を繕うの。どう、やってみる?」

、、、、、なんか一瞬朴念仁って聞こえた気がしたが、、、、気のせいか。

「面白そうだ、乗った。それでは早速始めよう。ライラ、要望はなんだ?」

「黒騎にお任せする。黒騎が繕ったもので学校行きたい」

「良いのか?俺はあまり女子の好きな物とかには疎いぞ」

「大丈夫。どんな服でも私は大丈夫だから。あと黒騎はコートで良いんだよね?」

「ああ、それで頼む。出来れば袖は肘ぐらいまで折り曲げて短くしてくれ」

「わかった」

と、ライラの制服を手渡される。

────えー、今更非常に申し訳ないのかもしれんのだが、、、、ライラにはどうしてもシスター服が似合いそうにしか思えない。さっきのシュヴァルツェア・ステルベンの待機形態が十字架だったってのもあるし、ライラの性格も相まって余計にその思考が頭から離れない。

だが、今俺がシスター服っぽい制服でも繕ってみろ。厨二全開なシスター服になるぞ。

「、、、、、、」

まぁ、本人が大丈夫なら、大丈夫だろう。

と、俺は安直な考えをしてすぐさま作業へと取り掛かる。

 

 

「「完成」」

と、俺とライラが同じタイミングで制服を完成させた。

ライラが持っているコート風制服に目をやると、、、、

「、、、、パーフェクト」

そう言葉を漏らすほど出来が良かった。

まずコートの下の部分が二つに分離されている。これだけで百点。

袖も肘ぐらいまで折られており、きっちりと縫って留めた部分が見られた。

胸の部分には追加のポケットが縫い付けられており、向日葵のような花の刺繍が目を引く。

うん、カッコイイ。ダンテっぽくて良いぞ。d('∀'*)グッド

後は俺が持ってきた革のハンドガードを付けて着れば、更にパーフェクト。

一方、俺の方はと言うと、、、、、

「、、、、シスター風のゴスロリ衣装?」

ライラは俺が繕った制服を見て、困惑したような、嬉しがっているような表情を浮かべていた。

俺はライラ用の制服に、胸に黒の布を使って十字架を縫い合わせ、腕の部分には白と黒のフリルを二箇所、肩と手首辺りに付けておいたが、今更ながらゴスロリっぽく作ってしまったことに後悔する。

「あー、やはり気に食わなかったか。ライラは、、、なんというか、聖女のようだったからな。修道着っぽくしようとしたが俺のセンスでこうなってしまったんだが「かわいい」、、、、ん?」

「かわいい。フリルがいい。あと胸の十字架。これステルベンを意識してくれたんだよね。嬉しい。あと、、、、」

と、途中までハキハキと俺の制服の良い点を上げてくれたのだが、途中から顔を赤くしてもごもごと口だけを動かしていた。

「、、、、聖女、って、、、、ッッッ///」

かすかにそのような言葉は聞こえたが、それ以外は小さすぎて聞き取れなかった。

「おい、大丈夫か?熱でもあるのか?」

流石に赤くなりすぎていたので、熱でもあるのではと心配した俺はライラの額に自分の手を当てる。その時にライラの髪に手が触れたのだが、サラッサラ。

「はひゃぁっ!?!?」

いきなり触れられたことに驚いたのか、手を当てた瞬間ライラが思いっきり後ろへ下がった。そしてそのまま、何故か床にあった鉛筆に片足を乗せたせいでバランスが崩れ頭から床へ倒れた。

ゴンッ、という、なんとも痛ましい音が響く。

「、、、、きゅう」

そんか声が聞こえた後、ライラはピクリとも動かなくなった。

「おい!?大丈夫か!?」

俺はライラの元まで駆け寄り、脈や呼吸を測ってみたが、無事なようだ。

「、、、、無事なようだな。寝かせておけばそのうち起きるだろう」

ベッドにライラを寝かせ、布団をかける。

「、、、、、改めて見ると、、、綺麗だな」

銀の髪が、部屋の明かりを反射し艶かしく光る。

小さい顔は可愛らしく、すぅすぅと聞こえる寝息が余計可愛さを引き立てていた。

俺はベッドに座り、少し微笑む。

「────まさか、こんな形で再会するなんてな」

少しだけ、彼女の頬を撫でる。

「、、、、俺も眠くなってくたし、寝るか」

と、ISを使っていたせいかいつもより早めに眠気が訪れたので、俺は自分のベッドに横たわる。

「おやすみ、ライラ」

部屋の明かりを消し、目を閉じる。

 

 

「、、、、」

時計の針が、深夜一時を示した頃に、ライラは目を覚ました。

自分はベッドにおり、隣のベッドでは黒騎が目を閉じて眠っていた。

恐らく、黒騎にいきなり触れられた時に自身が焦ってなにかに足を取られ、そのまま頭から転んで気絶していたのだろうと思った。

そして、気絶した自身をベッドまで運んだとも。

「、、、、やっぱり、黒騎は優しいね」

ライラは呟き、黒騎の顔に自身の顔を近づける。

すぅすぅと可愛い寝息をたてている癖に、その顔立ちは凛々しい。

そこらの女子なら、簡単に射止められてしまうだろう。

「、、、、ふふっ」

そこで、ライラは微笑んだ。

今この空間には、自分と黒騎しかいない。その事実が彼女を喜ばせる。

これで、『決意』が固められる。

ライラは黒騎の唇に自身の唇を当て、一瞬と言えるほど短いキスをする。

「、、、、」

自身の唇に指を当て、そこから感じられる温もりから、自身の好きな人とキスしたという事実を再確認する。

「、、、、、もう、離さない。私の王子様。

────その『呪い』からも、解放してあげるから。

──それが、『救われた』私ができる、恩返しだから」

そう、どこか悲しげに言い終えると、黒騎の布団に潜って、全身で黒騎を感じながら再び目を閉じた。

 




はい、いかがだったでしょうか。
なんせ暇無い時に書いてたんであんまクオリティは良くないかもしれません。
ですが、そんなんでも読んでいただけたなら幸いです。
あと感想や評価を頂けると作者のやる気に直結しますので、どうかお願いします。
それでは次回まで、( ゚д゚)ノシ サラバジャー

設定
【オーバードライブ】

ラインバレルのリミッター解除形態。機体色が白から黒へと変わり黒騎士の名にふさわしい見た目となる。
この形態になった際に機体出力が向上し、機動力、攻撃力共に高くなっている。
また、空間と空間を移動するというワープじみたことができるようになり、いきなり敵の背後に出現し奇襲を仕掛けられるといった戦法が使えるようになっている。
さらに、武装が二つ解禁され使用可能となる。

腕部圧縮転送フィールド発生装置
ラインバレルの腕に搭載されている武装。普段は威力やエネルギー消費量故に封印しているが【オーバードライブ】時に封印が解除され、使用可能となる。
発動時には掌の内側の空間が歪み、触れたものを空間ごと全て削るといったフィールドを発生させる。
この性能ゆえ、ISといえども防御不可能で、絶対防御さえも貫通しパイロットを殺すことができるという悪魔のような武装となっている。

オーバーライド
【オーバードライブ】の空間移動能力を、発動間隔を設定することにより連続で空間転移が可能となる。
シンプルだが、使いこなせば凶悪な武装となり得る。





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カクセイノアマガツ

(=゚ω゚)ノドモ、蒼京龍騎です。
今回はある都合により短くなりましたが、ついにラインバレルファン待望、
スパロボのある作品では『経験値泥棒』とまで呼ばれるほど強くなった『アレ』が登場します。
お楽しみに、、、、ふっふっふっ(ΦωΦ)。
それでは、(⊃σ▂σ)⊃ドウゾドウゾ


ISーインフィニット・ストラトスー

White of black

 

第五話 カクセイノアマガツ

 

 

「、、、、くーちゃんめちゃんこ強くなってるね」

「はい。現在三七城黒騎の強さは国家代表レベルであると思われます」

「まぁ、それは知ってるんだけど、さ。なーんか違和感あるんだよねぇ」

「、、、、、ISの方が、ですか?」

「そうそう。三七城くんが私のパーツ盗んで作ったIS、ラインバレル。なんか私の作ったものとは根っこから違うんだよー。この間のくーちゃん対どっかの子の模擬戦の時も、機体のダメージと連動してくーちゃんが痛みを感じていたっぽいし、エネルギーシールドの防御力が紙っぺらだし、あと絶対防御無いっぽかったし。それに、、、『AIじゃない何か』からのアシストがかかった動きしてたね」

「、、、、三七城天児が彼をサポートしているとでも?」

「違うかもしれないし、合ってるかもしれないよー」

「、、、、というと?」

「それはねぇ、、、、、

──────ってこと」

「、、、、まさか、、、そんな技術が造られていたとすれば、、、、」

「うん、軽く世界大混乱だね。『不死身実現しちゃう』んだもん」

「、、、やはり破壊した方がよろしいのでは?もしそうだったとすれば、ISは、、、、」

「だいじょーぶい。既に手は打っておいたから。これでさっきのが本当か嘘かわかるよー」

「、、、、、先程のが事実でないことを祈ります」

「だねー」

 

 

「、、、、有り得ません。有り得ませんわ」

IS学園、寮舎の一室。そこで金の長い髪と、蒼の瞳が特徴的な人物が思い悩んでいた。

セシリア・オルコット。イギリスの代表候補生にして専用機<ブルー・ティアーズ>を持つ人物。

「、、、、教官を、わたくしより早く倒しているなんて」

彼女が悩んでいる対象は、先日IS学園へやってきたイレギュラー。

二人目のISが使える男、三七城黒騎。

昨日、彼と口喧嘩になり決闘を申し込んだのだが、今更ながら勝てるのか怪しくなってきた。

それもそうだ。だって、、、、、

「、、、、、っ!!!」

昨日見えた、黒騎の目が忘れられない。

アレは、黒騎自身、セシリアが眼中に無いといったような目だった。

更に、その目には幾つかの修羅場を掻い潜ってきたような、歴戦の戦士のような力強さがと、得体の知れない不気味さを感じてしまっていた。

つまり、それほどの相手だということだ。

「、、、、ですが、負ける訳にはいきませんわ」

そう呟き、セシリアは彼に勝つという決意を強く固めた。

 

 

「、、、、はっ!!!」

俺は目が覚める。

寝起きでまだ重い体を起こし、時計を見るとまだ朝の五時ほどだった。

えー昨日は確か、、、、ライラと制服を改造しててそのまま、、、、、

「、、、、、ん?」

と、視界に映る光景に違和感を覚える。

布団が、モゾモゾと動いていたのだ。

俺は体を動かしてない。

じゃあ一体なんなんだ、、、、?

俺は恐る恐る布団をめくる。

「すぅ、、、すぅ、、、、」

「、、、、、」

ライラが、俺の布団に潜っていた。

、、、、、ゑ?

「、、、、お前、なぜそこに居る」

思わず口から言葉が出た。

「、、、、うーん、あ、黒騎。おはよう」

ライラは寝ぼけているのか、どこか間の抜けた声を出しながら目を擦る。

「、、、、もう一度聞く。なぜ俺の布団に潜っていた?」

「、、、、ごめん、不快だったのなら謝る」

ライラが申し訳なさそうに俯く。

「いや、俺が聞きたいのは謝罪じゃない。どうして俺の布団に潜っていたかの理由だ」

少しキツめに言ってしまう。

何故だろう。寝起きだからとかいう赤ん坊レベルでの怒りじゃなくて、なんかこう、、、、理由がわからない怒りが俺の中で少し渦巻いていた。

「、、、、、寒かったから」

ライラが顔を逸らしながら答える。その顔は、少し赤かった。

嘘をついていることは明白だったが、まぁそういうことにしておこう。

「、、、、まぁそういうことにしておいてやる。とっとと準備済ませて飯食いに行くぞ」

「うん」

と、俺らは飯を食いに行く支度を開始する。

俺は歯を磨き、クローゼットの中でライラに見られないよう制服に着替える。

「、、、、、ふむ、かなりしっくりくる」

ライラが繕ったその制服は、思っていたよりかなり体に馴染んだ。

俺はコートを翻し、少しカッコをつけながらグローブを手にはめる。

うん。これができるとやっぱ落ち着く。しかもめっちゃ心強い。

そう、俺がライラにコート風にしてくれと頼んだのはこれが理由でもあった。

これは、俺にとって前世からの一種のルーティーンである。

これを行うことで俺は自分は強いと思いこみが出来、不思議と心が強く保てるのだ。

クソみたいな前世の環境で、俺が編み出した心の拠り所でもあった。

「、、、、俺は着替え終わったぞ。ライラは、、、、、!?」

俺は目線をライラに向けるのだが、、、、、

「、、、、、可愛い」

天使と見紛うほどの可愛さだった。

いや、思っていたより俺の繕った服が似合っていた。

意外なことに付けすぎたと感じていたはずのフリルが可愛さを数倍に引き上げていた。

うん。マジ天使( ´ ω ` )

「、、、、あ、ありがとう///」

ライラが照れを隠すためか、顔を手で覆う。

oh......顔が赤くなって更に可愛くなりやがった。仕草まで可愛すぎだろ。俺を殺す気か?尊死させる気かコンチクショウ。ってか神様にマジ感謝。眼福祭りでたまらねぇぜ!!!!

「さて、それでは飯を食いに行くとしよう」

「うん。今日のご飯楽しみ」

そうして俺らは、食堂まで特にこれといったイベント無しで来れた。

、、、、、だが、そこからが問題だった。

『きゃぁぁぁぁぁぁっ!?』

俺が食堂に入った瞬間、そんな複数の絶叫が響いた。

「っ?、、、、やはり絶叫はうるさいな。静かにして貰えないだろうか」

呟くと、俺は食堂の券売機の前まで向かう。

「おーい、みなしー」

「、、、、誰だ?」

と、券売機で何を買おうか悩んでいる俺に声がかけられた。

見てみると、クラスメイトの布仏本音、通称のほほんさん(一夏だけそう呼んでるはず)がそこにいた。

ってかくーちゃんに続いてみなしーか、、、、なぜかしっくりくる。

「、、、、布仏か。何の用だ」

俺は視線を券売機に戻し冷たい口調で言う。

「いやー、ご飯一緒に食べようよーって誘おうとしてたところー」

「、、、、好きにしろ」

「そうするねー」

と言いつつ、布仏は隣にあった券売機で何かを注文していた。

ちなみに、なんかさっきから後ろで、

『あ、先越された!!』

『ずるいぞ布仏さん!!!』

『いいなー、私も隣に座りたいなー』

といった女子の会話が聞こえたが、俺は一切合切無視する。

俺は券売機で、カツ丼を選んで注文する。

ライラも同じくカツ丼を注文していた。

券が券売機から排出され、その券を手に持って食堂の人に手渡す。

28と書かれたプレートを渡され、俺は近くのテーブルに座る。

「ねぇねぇみなしー、部活どこに入るか決めたー?」

隣に座ってきた布仏に、「なんで俺に絡んでくるんだ?」と若干呆れながらも、俺は言葉を返す。

「決めていない。というか、俺はそもそも部活に入る気は無い。それに時間を費やすぐらいなら俺はその時間でISを使う」

「おー、クールだねぇー。ちなみにISには何時間ぐらい乗ってるのー?」

「おおよそ、、、、えーと、あれ確か白騎士戦で三十分ぐらい乗って、その後束さん協力の元試験起動を十分、誘拐された時に脱出するために一時間ぐらい、そして試験で三十秒、、、、いや試験の時間だけ短くないか、、、だいたい二時間だ」

ちょっと途中どれぐらい乗っていたかを思い出すためにボソボソと口に出して言っていたが、どうやらその部分は布仏には聞こえていないようだ。

「うーん、短くない?国家代表なら数百時間は乗ってるよー。だから多分「問題ない」、、、え?」

俺は布仏がその先何を言おうとしていたかがわかったので彼女の言葉を遮る。

「俺の『ラインバレル』を舐めてもらっては困る。こいつは俺の相棒で、形見だ。だから、負けない。いや、負けられない」

「、、、、そっかぁ。まぁ、私から言えるのは頑張っての一言ぐらいだけどねー」

「ああ。頑張るさ」

「、、、、、なんか私、除け者にされてない?」

ライラが放ったその一言で、俺、布仏、ライラが同時に、少しだけ笑い声を上げた。

 

 

そして、特にこれといったイベントはその日以降無く、、、、いやまぁ何人かの女子生徒が俺に忠告を言いに来たが丁寧に追い返しておいたのだが割愛。

てな感じであっという間にその日はやってきた。

「、、、、ついに来たか」

前日の試合の勝者であるセシリアとの対決日。一夏は敗北したが、俺はその仇も含めて今日は戦うつもりだ。

ちなみに、きっちり原作通りの敗北だった。

一夏とは最近あまり喋っていないが、ダチであることに変わりは無い。

「あら、逃げずに来ましたのね、、、、って、あなた、ISはどうしましたの?スーツも着ていないようですが、、、、」

鼻をフンと鳴らして、アリーナで先に待機していたセシリアと、そこに響く大きな歓声が俺を迎えた。

だが、俺を見るとセシリアはすぐさま顔を困惑の表情に変えていた。

「俺にISスーツは無用なのでな。ISは今から展開する」

俺は待機形態のラインバレルである刀を鞘から抜き放つ。

「来い、ラインバレル」

もう何度も展開し、慣れたので目を開けたままISを纏う。

視界が急に鮮明になり、体の大きさが変わる。

「、、、、噂で聞いていましたが、本当に全身装甲ですわね、、、」

「ああ。それじゃあ、始めよう」

俺は<不知火>を抜き、その刀身をセシリアに向ける。

向こうも手に持つ大型のライフル、<スターライトMk.Ⅲ>を俺に向ける。

、、、、、いやーあの、どこ狙ってるかバレバレだぞ?

俺の第一印象はそれだった。いくらなんでもわかり易すぎる。

<スターライトMk.Ⅲ>の銃口は、ラインバレルの頭部に標準を合わせてから微動だにしない。

────しゃーない、切り落とすか。

試合開始の合図などなく、いきなりセシリアのライフルから銃弾が放たれる。

「、、、、期待外れかもな」

俺はがっかりしながら呟き、その弾丸を<不知火>で切り落とす。

「な、、、、っ!?回避ではなく、迎撃!?」

俺の行動に驚いたのか、セシリアが狼狽えている。

続けてセシリアが同じように銃弾を放つが、それすら切り落とす。

「お前、どこ狙ってるのかが丸わかりだぞ。よくそんなのでクラス代表になろうとしたな」

煽るように俺が言うと、セシリアは予想通り顔を歪め怒りを露わにする。

「なんですって、、、、!!!いいでしょう、なら見せて差し上げますわ!!【ブルー・ティアーズ】!!!」

セシリアが叫ぶと、装甲だと思っていたパーツの内四つが分離し、空中に留まった。

【ブルー・ティアーズ】。機体の名前と同じ名前を冠する武装。

簡単に、ガンダムで例えるならこれはライフルビット、、、、いや、ホルスタービットか?まぁどっちでもいいとして、そんな感じの武装だ。

「ふむ、、、数が多ければ良いという問題ではないと思うがな。何でも数で押せると思ったのなら、大した勘違いだぞ」

「あ!!な!!た!!ねぇ!!!!もう堪忍袋の緒が切れましたわ!!!!そのIS、鉄クズになるまで傷付けてやりますわ!!!!」

流石にさっきの俺の言葉にはキレたらしい。顔を真っ赤にしてそのビットを俺に向けて飛ばす。

そして、あっという間に俺はビットに包囲され窮地に陥った。

「どうです!!これで逃げ場はありませんよ!!!」

────ヤバい。これ俺終わった。

、、、、とでも言うと思ったかドアホ。

「、、、、袋のネズミにした。とでも言いたげだが、その袋には穴が空いているぞ」

俺はテールスラスターを展開し、スラスターを順次起動させ個別連続瞬時加速を使用して【ブルー・ティアーズ】の上部に移動する。そしてそのまま【ブルー・ティアーズ】の内の一つを掴んで盾にするように持つ。

『え!?ええっ!?!?!?』

その時だ。会場全体(セシリアや山田先生含む)から驚愕したような叫び声が聞こえたのは。

「い、今のは個別連続瞬時加速、、、!?なぜISに乗った経験が少ないあなたがそんな高等技術を!?」

「、、、、慣れだ」

顎が空いて閉じないといった様子のセシリアを見ながら、俺は【ブルー・ティアーズ】をセシリアに構えながら彼女に向けて加速する。

「くっ、、、!!!」

セシリアは加速している俺に当てるのは難しいと判断したのか、ビットごと俺を撃ち抜くことにしたらしい。

残った三基を自身の近くに戻し、集中砲火の構えをセシリアがとった。

だが、俺は既にそこまで折り込み済みだ。

激しいビームとミサイルの弾幕が【ブルー・ティアーズ】に向けて放たれ、衝撃が伝わってくる。

「、、、、愚策に出たな。セシリア・オルコット。だが勝利へのその渇望に敬意を表し、俺は『これ』を使おう」

俺は【ブルー・ティアーズ】の影で、『一言呟く』。

 

 

今黒騎と決闘しているセシリアは、今まで感じなかった危機を感じていた。

戦闘前に聞かされた情報では、三七城黒騎はISに乗っている時間は二時間、乗るISは<ラインバレル>という第三世代機だが他の第三世代より性能が劣っている。

────そのはずだった。

実際はどうだ。彼は高等技術である個別連続瞬時加速を難なく使いこなし、弾丸を恐れず正面から切り落とし、機体の性能は下手すれば<ブルー・ティアーズ>より上ではないか。

────認められない。

いきなりひょいと出てきた、ただの男がそんな技術と力を持っている。

セシリアはそれを認めたくなかった。

「負ける訳にはいきません、、、こんな、どこの誰とも知らない馬の骨ごときにッ!!!」

掴まれていない【ブルー・ティアーズ】三基を自身の元に戻し、全攻撃をこちらに向かってくるラインバレルに集中させる。

段々と、掴まれていたビットがバラバラになってゆく。

そして、バラバラになった【ブルー・ティアーズ】の隙間からラインバレルの一部が見えた瞬間、セシリアは勝ちを確信した。

「これでおしまいですわっ!!!!」

ビットに<スターライトMk.Ⅲ>の弾丸が当たり、小規模の爆発を起こした。

その瞬間、セシリアの視界に映っていたレーダーからIS反応が消える。

「、、、ふ、ふふっ、どうやら、私にはかなわなかったようで」

「慢心は死を呼ぶぞ。セシリア・オルコット」

いきなり、『後ろから』声をかけられた。

「っ!?」

すぐさま後ろへ振り返り、<スターライトMk.Ⅲ>から弾丸を放つが手応えはない。

「、、、っ!!!どこへ、、、、、!?」

消えたラインバレルを捜索するため、再びレーダーを見たセシリアは絶句した。

レーダーの点がそれぞれ別々の場所で、少しの間隔を開けながら点滅していたのだ。

「ジャミング!?」

そう思ったが、ジャミングではなかった。もしジャミングがかかっているなら、、、、

「どうした、攻撃しないのか?」

今度は前から、声がかけられた。

「ひ、、、、っ!?!?」

思わずセシリアは悲鳴をあげそうになる。

今まで、このようなシチュエーションには遭遇したことがなかった。

見えない恐怖。彼がいつどこから襲ってくるかが分からない。

「ではこちらから仕掛けさせてもらおう」

瞬間。視界に映っていた【ブルー・ティアーズ】の反応がフッと消える。

「っ!?」

セシリアは何が起こったのか理解出来ず、とりあえずといった様子で【ブルー・ティアーズ】が存在していた場所を見る。

そこには、【ブルー・ティアーズ】『だったもの』があった。

だが、それぞれの真ん中が綺麗に、空間ごと抉り取られたかのように消滅している。

「肉体ごと削り取られたくなければ、降伏することを勧める」

脅しのように、黒騎が言う。

「、、、、ふ、ざけないでくださいましッ!!!」

セシリアは恐怖で震える手を動かし<スターライトMk.Ⅲ>を乱射する。

だが、放った弾丸は全てアリーナの壁に当たって消滅するだけだった。

「、、、、っ!?」

急に、セシリアはガクッと体制を崩した。

PICがあるので崩れないはずの体制が。

「な、なんですの一体、、、!?」

そこで、自身の、<ブルー・ティアーズ>の足を見て気付く。

『消えていた』。先程まであったはずの足が。

それと同時に、ラインバレルがセシリアの目の前に姿を現す。

だが、その姿は。

「、、、、、黒い、、、、騎士、、、、」

試合開始時とは真逆の、黒の装甲を纏うそれは、今のセシリアに更に恐怖を植え付けるのには十分なプレッシャーを放っていた。

「、、、、さて、そろそろ終いとしよう」

黒騎が言うと、ラインバレルのてのひらの内の空間が歪む。

瞬間、装甲の大部分が消え去りダメージレベルEの表記が視界に出る。

その上で、喉元に刀の刃先を向けられる。

「、、、、ま、魔王、、、、」

黄色く、禍々しく光りこちらを見下すその機械の瞳は、まさに魔王という単語が相応しかった。

かろうじてその言葉を発したセシリアは、恐怖心によってか意識が途切れてしまった。

そして会場には、「勝者、三七城黒騎」というアナウンスが流れたが現状を理解出来ず、唖然とする生徒達により無音の空間へと変貌していた。

 

 

バッシーン!!!!

「いっでぇ!?」

決闘を終え、ピットに戻った俺はすぐさま千冬の出席簿の叩きを食らった。

「やりすぎだ貴様。いくらISに自己再生機能があるとしても、今回ばかりは言わせてもらう。ダメージレベルがEだったぞ」

そう言われたが、いまいちそこまでのダメージを負わせたという実感が湧いてこない。

「、、、、、まぁ、搭乗者本人には肉体的ダメージが無いので不問にする。

────それで三七城、一つ聞きたいことがある」

先程の高圧的な態度とはうってかわり、千冬がこちらを気にするような目で見る。

「以前束が言っていた【オーバードライブ】を使っていたようだが、肉体に違和感は感じないか?」

「大丈夫です。体のどこかが悪いっていうのもありませんし、至って健康です」

「、、、、そうか、ならいい。以上があったらすぐに知らせろ。以前のようなことが起これば私らでは対処不能だ」

「了解しました」

俺は改めて千冬が俺のことを心配しているかの理由を思い出した。

以前の試験起動時に起きたあの件を、千冬はまだ心配していたようだった。

「、、、、復讐相手が優しすぎるのも、困りものだな」

俺は呟き、ピットから離れる千冬を見送る。

 

 

翌日。俺が教室に入るとザワついていた教室が一気に静かになった。

だが、一部の女子がヒソヒソと何かを話し始める。

「ねぇ昨日の決闘見た?」

「見たけど、、、あれはもういじめの領域じゃ、、、」

「うーん、、、あれを見たあとじゃ恐ろしく思えちゃうな、、、、」

と、クラスメイトの大半が俺を恐れているらしい。

いや俺だって正直いってマジでやりすぎたと思うよ?でもイラついてたし、その原因作ったのあっちだし、、、、

「黒騎、大丈夫?色々言われてるみたいだけど」

ああ、やはりライラは女神だった。皆がこうなっていても俺を心配してくれる。本当に女神の生まれ変わりとしか思えない。

「安心しろ。この程度で折れているようならこの学園には来ていない」

俺が席に座ると、直後山田先生が教室に入ってきてSHRが始まる。

その途中で、いきなり爆弾発言が始まった。

「えーそれでは、一年一組のクラス代表は三七城黒騎くんに決定です」

────えーあれ?いつの間に俺がクラス代表になってんだ?

「先生、一つ質問がある」

俺は手を挙げて席から立つ。

「はい?なんでしょうか」

「なぜ俺がクラス代表になっている?」

それを聞いた瞬間、周囲がシーンと静まり返った。

、、、、え、なにこの空気。

「え、えーと、それは、、、この前の試合で三七城くんが勝利しましたよね。なのでそういうことになりました、、、、」

オドオドとしながら山田先生が言う。

あれー?おかしーぞー?

あの試合俺にとってはただストレス発散のためにやってたようなもんだぞ?それがどうしてそうなったし。

「、、、、、先生。悪いが俺はクラス代表をやる気はない。やらせるなら織斑一夏を推薦する。そっちの方が女子からの人気も高いし適任だろう。俺は既に恐怖の対象となっているようなのでな。相応しくない」

俺は正直に言う。正直にいえば幾分かは聞いてくれるだろうしな。

まぁその際一夏から「は!?お前友を売る気かコンチクショウ!!!」というオーラが全開ダダ漏れだった。

「え、えぇーと、、、、?でも勝ちは勝ちですし、、、あのー、、、、」

と、困り果てた様子で山田先生が言う。正直可哀想だったので決意が折れそうになったが、『可能な限り原作通りに進める』という断固たる決意を思い出して立ち直る。

立ち直ったが。

バシーン!!!

「いっだ!?」

「決まったことにいちいち文句を言うな阿呆」

出たよ鬼畜の千冬先生、、、、マジでこの叩きが痛すぎる。

「クラス代表は三七城黒騎。異存はないな?」

クラス全員(俺除く)がはーいと返事をする。

、、、、、原作、壊したくなかったなぁ、、、、、(泣)

 

 

「はーい、ちょっと失礼するよー」

と、最後の授業が終わった瞬間に教室に誰かが訪れる。

「三七城黒騎くんをちょーっとばかり借りたいんだけど、どこに、、、って、居た!!」

その人物を見て、俺は即座に窓側へ駆けた。あの悪魔から逃げなきゃいけなかった。

そのまま窓を開けて、そこから飛び降りる(アーイキャーンフラーイ!!!)。

「あっ!!こら待ちなさい!!!」

俺は落下した際に前転して衝撃を流し、全力疾走で寮まで向かう。

「流石にあの悪魔も寮のトイレまでは追ってこれまい!!!」

まぁ、走っている俺の方がバカだって気づいたのはこの一秒後なんですけどね。

「みーつっけたー」

ハイ、案の定IS、『ミステリアス・レイディ』を展開してあっという間に追いついて来ました。ってかなんでこの世界の住人そうホイホイとIS展開できるんですかねぇ、、、、学校じゃ許可なしの展開厳禁って書いてあっただろうがよ、、、、

「全く、なんで逃げるのさー?」

「、、、、それよりもIS展開して大丈夫なのか?学則には厳禁と書いてあったが」

「生徒会会長なのでオーケー」

あーもうめちゃくちゃだよ、、、、、

「ま、それは置いといて、だ。

────三七城黒騎くん。君のIS、ラインバレルに不可解な点がいくつも見られたため、生徒会会長権限を行使し強制的に調べさせて貰います」

さっきまでの飄々とした様子から一転、こちらに大型の槍、『蒼流旋』を向けて殺気を放つ。

「、、、、やるのならアリーナでやろう。その方が被害が少ない」

俺は策を考えるための時間稼ぎとして、アリーナへの移動を提案する。

「オッケー。まぁその間に逃げようって考えてても、逃がさないからね?」

ヒェッ!?怖い怖い怖い!?蒼流旋を向けながらその笑顔はヤメロォ!!!

いやマジでどうしよ、、、、想定してた『最悪』が今来やがった、、、、

逃げる?無理。ソッコーでブッ殺される。

一か八か戦闘?、、、、馬鹿言え!?最強に勝てるわけないだろ!?

交渉?あの様子じゃ聞いてくれそうもない、、、、

オワタ\(^o^)/

もう何も思いつかねぇ、、、、平和的な解決法も、武力による解決法も分かんねぇ、、、、

もうだめだ、、、、おしまいだァ、、、、

時は残酷かな、そうこう考えているうちに既にアリーナへ足を踏み入れていた。

ちなみにきっちりとシールド貼られてたので逃げられない。詰みです。

「最後に一つだけ聞いておくけど、それを大人しく渡して貰えるかな?そうすれば余計な戦闘は避けられるのだけど」

最後の忠告、といった様子で蒼流旋を俺に向けて構え直す。

「、、、、悪いが」

────こうなったらヤケクソだ。お前が最強だろうが、大人しく渡す訳にはいかない。

「お断りだ」

俺は瞬時にラインバレルを纏い、先手必勝と言わんばかりにすぐさま【オーバードライブ】を発動する。

こうでもしないと、勝てるかもしれないという希望的観測さえもできないからだ。

そしてそのまま、圧縮転送フィールドを発生させた手を楯無に向けて突撃する。

「んー、それは残念。じゃあさっきの言葉通り、実力行使に移らせていただくよ」

瞬間。

「がっ、、、、!?」

耳に爆発音のような音が聞こえると同時、背に衝撃と痛みが走った。

見ると、少しの水が空中にたゆたっているのが見えた。

清き熱情(クリア・パッション)』。ナノマシンを扱うIS、『ミステリアス・レイディ』が持つ攻撃手段の一つ。

ナノマシンを含ませた水を操作し、その水にエネルギーを送り込み高温の熱を発生させることにより水蒸気爆発のような爆発を起こし敵を攻撃する。

その有用性は、いかなるISを含めたとしても軍を抜く。

痛みによって思考が鈍り、俺はバランスを崩して地面へ墜落する。

「どう?私の『清き熱情』の味は」

楯無が、空中で俺を見下しながら余裕の表情を見せる。

「、、、、死ぬほど不味い」

俺も余裕を見せるように、起き上がりながら楯無の言葉にそのまま答えてみせる。

「へぇ?じゃあ味覚がおかしくなってるのかもね。もっと味わったらどうかな?」

楯無が指をパチンと鳴らす。

すると、俺の周りにうっすらと白い霧が発生する。

、、、、、不味い。連続で俺に『清き熱情』を食らわせる気だ。

流石にそんなことをされれば、ラインバレルは破損したとしてもすぐさま自己再生で治るがそれを上回る速度で破壊される。そうなれば自己再生も意味をなさない。

さらに、その際発生する痛みに耐えられないかもしれない。俺は痛みに耐える訓練などは行ったことがないただの人間だ。もし気絶したとしても【Dーゾイル】が気付けをしてくれるかもしれないが確証は無い。

俺は急いで言葉を紡ぐ。

「オーバーライド発動!!!発動間隔、ワンセコンドリピート!!!」

叫び、ラインバレルの装甲を展開し放熱板を出現させ、オーバーライドを実行する。

楯無の右隣に転移し、『ミステリアス・レイディ』に触れて装甲を削ろうとする。

────だが。

「な、、、、っ!?」

「クセがわかり易すぎるんだよねぇ。そんなんじゃ躱されちゃうぞ?」

楯無は俺の出現場所がわかっていたのか、後ろへ引いて腕を回避する。

そして俺の喉元には、蒼流旋の穂先が置かれていた。

「ちぃっ!!!」

次は楯無の後ろへ転送し腕を伸ばすが、今度はおちょくるようにくるりと一回転して回避した。

そして、また蒼流旋の穂先を喉元に向けられる。

「分かったでしょ?君じゃ私に勝てない。だから大人しくそのISを渡して」

最後の慈悲、とでも言うように楯無が俺を見る。

もう、強さの差は圧倒的だった。俺がどうしようが楯無には指一本触れられない。

だけども。

「、、、、お断りだな。貴様のような暴力で全てを解決する女に渡すISなんぞ一つもない」

俺はその、最後の慈悲さえも断る。

それを受け入れてしまったら、俺は俺でなくなってしまうような気がした。

「、、、、、そう。────なら怪我は覚悟してもらわないとね」

直後、俺の全身に衝撃と痛みが走る。

全身を焼かれるような痛み。

ラインバレルが、俺の体がどんどん壊れていくのを感じる。

「がぁっ!?あああああああっ!?!?」

そう苦悶の声を発することしか出来ない。

痛い。痛い。熱い。痺れる。

目もやられ、周りが何も見えなくなる。

「、、、、、あ、、、、あ」

辛うじて、そう小さく声を出すことはできたが体は動かなかった。

視界には、あちこちが壊れてビーッという電子音を鳴らすラインバレルのパラメーターが表示されていた。

「、、、、ほら、勝てなかったでしょ?」

楯無が、俺を見下ろす。

無力感による悔しさが、俺を襲う。

 

────力を。

 

────もっと、力を。

 

────最強を倒せるほどの、力を。

 

────俺に寄越せ。ラインバレル。

 

────もう、無力なのは嫌だ。

 

────大切な人の形見さえ失うのは、御免だ。

 

そう願うと、視界に映る景色が急に変化した。

辺りは真っ白で何も無く、俺は誰かに膝枕をされているようだった。

先程まで感じていた痛みは、ない。

「、、、、、黒騎。安心してくれ。お前に襲いかかってくる理不尽は、俺が消してやる

、、、、もう、傷つけさせない」

男の声が、真上から聞こえた。

だが、この声は、、、、聞いたことがある。だけど、誰の声だ?

だが、もうそんなことはどうでもいい。

心地いい。眠い。

俺はその眠気を受け入れるように、瞼を閉じる。

段々と、意識が微睡む。

そして、俺は誰かと『交代』する。

 

 

「、、、、ふぅっ、やっと眠ったみたいね。まったく、手間取らせてくれちゃって」

更識楯無は、そう愚痴を零しながら目の前のIS、『ラインバレル』を持ち上げその顔を覗き込む。

「、、、、全身装甲。まともに『清き熱情』を食らったのにこのダメージ。

、、、、、やっぱり、知らない技術の宝庫とでも言うべきかしら」

そう呟き、ラインバレルを引き摺るように牽引し、その場から立ち去ろうとする。

「帰って調べないと、、、、ああやることが増え」

と、憂鬱げに言っていた時だ。

急に、腕の感覚が『無くなった』。

「っ?」

楯無はラインバレルを牽引していたはずの腕を見る。

 

そこにあったはずの『ミステリアス・レイディ』の腕が、綺麗さっぱり消えていた。

 

更に、その腕で掴んでいたはずのラインバレルの姿までもが見えなくなっていた。

「っ!?」

だが、流石国家代表と言うべきか、すぐさま蒼流旋を持ち直し警戒態勢に入る。

楯無は、センサーの反応には無い、誰かからの明確な感情を感じ取っていた。

猛烈な殺意。それが自身に向けられている。

「、、、、さぁて、どこから来るのかしら?」

「よぉ、クソアマ。今日はいい月が出ているな。絶好の殺し日和だ」

楯無の直上から、声が聞こえた。

顔を上にあげ、『それ』の姿を見る。

『それ』は、月を後ろに、こちらを見下しながら腕を組み王のような雄々しい雰囲気を醸し出す。

その姿は、ラインバレルにそっくりだが違う。

先程まで黄金に輝き、金の粒子を振りまいていた放熱板は真っ赤に染まり血のような粒子を流し、目の黄色の双眼にはバイザーが装着され、赤の単眼へと変貌していた。

それは、先程まで相手にしていた三七城黒騎とは比べ物にならないほどの威圧感を出している。それこそ、最強である自身さえ怖気付くほど。

「さぁ、第二ラウンドを始めようか。

────徹底的に嬲ってやるよ。俺の息子を傷つけた罰としてな」

そこで、楯無は気付く。

自分が相手にしていたのは、黒い騎士という高貴なものではなく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────最悪の『鬼』を相手にしていたのだと。




はい、いかがだったでしょうか。
主人公に関係ないところは排斥しまくってるので、今回は短めです。
さて、それじゃ次回に向けて最強のラインバレルの戦闘を書きますか!!!
次回はガチと書いて本気でやります。
それでは次回まで、( ゚д゚)ノシ サラバジャー


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IS殺し

ドーモ、蒼京龍騎です。(´Д` )イェァ
今回は後半かなーり主人公がサイコパス化してますw
グロ描写もあるので、苦手な方はお気をつけください、、、、
それでは、(⊃σ▂σ)⊃ドウゾドウゾ


ISーインフィニット・ストラトスー

White of brack

第六話 IS殺し

 

 

楯無は、現在進行形で危機に陥っていた。

戦闘不能のダメージを負ったわけでも、誰かを人質に取られたという訳でもない。

、、、、、強すぎた。それから発せられる威圧感は。

「どうした?ビビってんのか?弱いもの虐めしか出来んのかお前は?」

口調は荒々しく、既に三七城黒騎の面影はない。

いわば、今のラインバレルは『誰か』に操縦されているように思えた。

「、、、、あなた、誰なのよ」

楯無は警戒しながら、ラインバレルに問う。

すると、ラインバレルはフッ、と鼻で笑うように頭を揺らす。

「────三七城天児。三七城黒騎の父にして『ラインバレル』の開発者だ。今は訳あって意識を電子データに変換してこいつにインプットしている。だが人間としての俺は死んでる。だから安心しろ、地獄からお前を喰いに来たとかいう訳じゃねーから」

────意識を電子データに変換?ラインバレルにインプット?

すぐさまそのような疑問が楯無の頭に思い浮かんだが、その疑念を取り払って蒼流旋を構える。

「おお、さすがロシア国家代表の尻軽女。尻が軽いから武器構えるのも早いねー」

と、ラインバレルはこちらを煽ってくる。

しかし、これしきで怒る楯無ではない。

「、、、、尻軽で結構よ。私の目的は変わらない。あなたを回収する」

「へいへい、捕れるもんなら盗ってみろ」

その挑発に乗り、楯無は蒼流旋に内蔵されている四門のガトリングから豪雨の如き弾幕を、ラインバレルに向けて放つ。

「はいはい、すごいすごい」

だが、ラインバレルは腕から刀を一本引き抜くと、それだけで弾丸の雨を切り裂いてゆく。

腕の動きは高速すぎるせいで、楯無にも見えなかった。

そしてそのまま、少しずつ楯無に向かって前進を開始した。

「っ!!」

ラインバレルに近づかれるのが、どれほど危険か知っているので楯無はガトリングを放ちながら後退する。

が、そうしようとした瞬間、背後に何かがぶつかった。

「おおっと、余所見運転はいけねぇなー尻軽女」

バッと振り返り、すぐさま『清き熱情』を発動し背後を爆発で吹き飛ばす。

「おー怖い怖い。それ当たったら痛そうだし怖いんだよなー」

再び振り返ると、ラインバレルが顔を自身に近づけて楯無の顔を覗き込むように見ていた。

「、、、、、これが第零世代。思ってたよりえげつない性能してるわね、、、、」

楯無は、正面に見える禍々しい顔を見ながら呟く。

「、、、、、束のクソ野郎が作るのには劣るがな。まぁあの畜生が作れなかった武装をこのラインバレルにたっぷりと搭載しているから、まぁ強さは白騎士と五分五分ぐらいだろ」

余裕たっぷりといった様子で、ラインバレルが答える。

その様子に、楯無は怒りを覚えた。

「、、、、随分と余裕たっぷりね。そこまで挑発されるとお姉さんそろそろキレちゃうよ?」

「怒って何かが変わるんならやって見せろよ。自称お姉さんという名の扇子ババァ」

ブッチン。と楯無の中で何かが切れた。

「もう怒っちゃったもんねー。ラインバレルをボッコボコにして絶対回収してやるもんねー」

「いいからとっとと来い。そろそろ黒騎は嫁、、、じゃなかったルームメイトと飯を食うんだ。それに間に合わなかったら黒騎がどやされる」

指をクイクイと動かし挑発してくる。

まだ眼中に自身は入っていないらしい。

楯無はすぐさまラインバレルの周囲に霧を発生させる。

連続での『清き熱情』を食らわせるために。

だが。

「、、、、、前言撤回。ソッコーでお前倒すわ。思ったより時間ない」

ラインバレルが呟くと、ラインバレルの周囲に発生させていた霧が霧散した。

「な、、、、っ!?」

そこで、楯無は初めて狼狽した。

自身が先程まで制御していたナノマシンからの反応が消え、こちらからの操作も効かなくなり操作不能になったからだ。

狼狽えながらも、楯無はどうにか蒼流旋を構え警戒を解かないようにする。

「そんじゃ、黒騎の分のお返しをさせてもらうぜ」

ラインバレルが、天に向けて右手を掲げる。

「────『清き熱情』」

「ぐ、、、、っ!?」

瞬間。

楯無の背に衝撃が走った。

見ると、宙に少しだけ『水』が浮いていた。

「な、なんで『清き熱情』が、、、、!?」

そう、それは紛れもなく『清き熱情』による攻撃だった。

しかし、自身による操作不能になっている上に、自分で自分を傷付けるといった趣味は持っていない。

では、誰が────

「それの答えを教えてやるよ。俺がお前のナノマシンをハッキングして乗っ取った。そしてそれを操作して『清き熱情』を発動させた。どうだ?わかりやすいだろ?」

ラインバレルが、倒れた楯無を見下す。

だが楯無は困惑の表情を浮かべながらも立ち上がり、再びガトリングの砲門をラインバレルに向ける。

────まだ戦える。『アレ』も、使える。

それだけで、その事実だけで楯無が立ち上がるには十分だった。

「、、、、なんだ、まだ戦う気か。────しょうがないなぁ。そんなに死にたいなら」

ラインバレルが視界から消える。

「楽 に 殺 し て や る よ」

ガァン!!!!と鉄と鉄がぶつかるような音が響く。

「ッッッ!!!!」

それは、オーバーライドで楯無の横に移動したラインバレルが放った蹴りを、楯無が蒼流旋で受け止めた際の音だった。

ぶつかった際の衝撃で、楯無の腕が軋む。

今のラインバレルは、黒騎が操作していた時より、機体の出力も含めあらゆる能力が向上しているようだった。

「ハハッ、武器で止めるか。

────ならそれ、邪魔だな」

と、ラインバレルが蒼流旋の真ん中、ガトリング砲を内蔵している箇所を掴む。

ギギギ、と軋む音が聞こえる。

すると、楯無の視界に『警告、蒼流旋に高圧力がかかっています。このままでは爆発の可能性大。すぐさま蒼流旋の使用を停止し、離れてください』という表示が出された。

────不味い。想定以上だった。

ただ握るだけで武器を壊しかねない出力。

つまり、機体を掴まれれば握りつぶされるという可能性を示していた。

次第に、軋む音はベキベキと折れるような音に変わってゆく。

「く、、、っ!!!」

仕方なく、楯無は重要な武装である蒼流旋すら手放す。

自身が蒼流旋を手放したことを確認したラインバレルは、そのまま蒼流旋を握り潰して地面に落とす。

真ん中からひしゃげたように曲がった蒼流旋は、もう誰が見ても使用不可能と言えるほどのダメージだった。

「、、、、、『清き熱情』も使えない。蒼流旋も壊された。

、、、、残るは『ラスティー・ネイル』と、、、、」

────奥の手。

楯無は静かに蛇腹剣『ラスティー・ネイル』を手に出現させる。

「、、、、ほほぉ、武器ぶっ壊したから奥の手でも出てくるかなーって、もっとハデなのを期待したが、残るはそれだけっぽいな」

ラインバレルが余裕をもって言う。

「なにを言っているのやら。まだまだ武器は沢山あるわよ!!!」

武器が少なく、限界が近いことを悟られないため楯無は声を大にする。

「、、、、ふーん。じゃあその無限も残らずぶっ壊してやるよ

────Bumdress(尻軽女)

ラインバレルは手を開き、その内側の空間を歪める。

圧縮転送フィールド。この世に現存する兵器の、いかなる防御を無視し対象を消し飛ばす必殺の武装。もちろんISも例外ではない。

本格的に、追い詰められた。

肉体的にも、精神的にも。

こうなったら刺し違えてでも────

「あっ、いいこと思いついた」

と考えていた時に、いきなりラインバレルが声を出す。

「ちょっと提案するんだけどさ、停戦しないか?そんで俺の案呑んでくれ」

「、、、、、は?」

楯無は、その言葉を聞いて唖然とした。

状況的に、向こうの方が圧倒的に有利なのに、停戦したいと申し出る意味がわからなかった。

停戦するより、自身を殺した方が手っ取り早いはずなのに。

「いやさ、どうせ『殺した方が早いのになぜ停戦を提案する?』とか思ってそうだから言うけどさ、お前殺したら色々やばいじゃん。殺した後にデメリットしかないじゃん。だからちょっとこっちの案を呑んでもらおうかなーと」

「、、、、」

心の底から困惑した。

だが、このまま戦っても勝ち目は無い。

楯無は、停戦を受け入れるしかなかった。

「、、、、、どんな案?」

「それは────」

 

 

「おーい、起きたかーい?」

「────っ!?」

俺は目が覚める。

どうやら俺はベッドで横になっていたらしい。

ここは────医務室か?

だが、そんなことより、、、、

「、、、、なぜ包帯を巻いている?」

今の楯無は腕や足に包帯を巻いていた。

重症だった。どこからどう見ても。

だが、俺はそんなダメージを与えた記憶はない。

むしろ、手も出せず敗北したはず。

「いやー、ちょっと色々あってね。君のラインバレル回収の件は無しってことで。だからさっきはごめんねー」

は?いやいやおいおい待て待て。何がどうなってそうなった?もっと詳しく、、、

「こっちにも事情というのがあってね、詳細は話せないんだよ、、、、ってか話したら学校滅ぼされる」

なんか後半物騒なこと言ってた気がするが、、、、気のせいか。

「、、、、まぁ、見逃してくれるのならそれに越したことはない。感謝する」

俺はそう頭を下げる。

「いえいえー」

と、楯無が笑う。

、、、、やっべ、原作で聞いた通りめっちゃ綺麗な笑顔だな、、、、、こりゃ一夏が思わず見つめてしまうのも納得。

「それじゃ、私はそろそろ退散するね。いろいろ仕事もあるし」

そう言い、楯無が部屋から出ていく。

「、、、、俺も部屋戻るか」

俺はふらふらとした足取りで、寮へと戻る。

 

 

「おかえり、、、、?すごく疲れてるみたいだけど、大丈夫?」

「、、、、大丈夫だ」

俺は謎の疲労に襲われていた。

何故か、眠くて眠くて仕方がない。

「ちょっと面倒事に、、、、巻き込まれただけだ」

俺はベッドに突っ伏す。

すぐさま、意識が微睡んでいく。

「、、、、、、っ?」

閉じた目を開けると、そこは。

「俺の、家?」

この世界での、焼けて無くなったはずの俺の家のリビングだった。

、、、、、これは夢だ。

すぐさま、その思考が頭をよぎった。

「黒騎」

「ッ!?」

後ろから名を呼ばれ、俺は即座に振り返る。

そこには、、、、、

「、、、、、親父」

「、、、ああ。大きくなったな、黒騎」

嬉しそうに俺を見る、親父の姿があった。

「、、、、、親父が死んで、今何年になると思う?」

俺の口は、自然とそんな言葉を発していた。

夢だと、知っているはずなのに。

「、、、、、ちょうど十年ぐらいだな」

「その間、親父はなにをしていた?」

「、、、、、お前を『守ってた』」

「どうやってだ?」

「、、、、、『ラインバレル』としてお前を守っていた」

「ッ!?」

は?ラインバレルとして?どういうことだ?まさかラインバレルに親父が、あっちの世界のラインバレルの天児みたく脳だけ入ってるっていうのか?

「、、、、悪いが、ここまでらしい。『また』会おう、黒騎」

「お、おい!?待っ」

叫ぶも、気づけば目が覚めていた。

「、、、、、、」

現実味がありすぎた。いくらなんでも。

「黒騎、大丈夫?すごくうなされてたけど」

ライラが横たわっている俺の顔を覗き込んで言う。

「、、、、なんでも無い。心配するな」

そう返して起き上がり、俺は着替えを済ませて校舎へと向かう。

 

 

「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット、三七城。試しに飛んでみせろ」

四月の下旬、すっかり桜の花も全て落ちきった頃。俺らは変わらず千冬の授業を受けていた。

「早くしろ。熟練したIS操縦者は展開(オープン)まで一秒とかからないぞ」

千冬に急かされて、俺は左手で刀を構えて少しだけ刀身を出す。

「来い、ラインバレル」

呟くと、全身がISに置き換わる感覚が襲ってきた。

そうして、一秒とかからずラインバレルが俺に装着された。

「ふむ、上出来だ」

一夏とセシリアより早く着装できたためか、千冬にそう褒められる。

一方一夏はというと、、、、

「織斑、集中しろ」

まだISを纏えていないようだった。

急かされ、焦った一夏が急いで右手に装着されているガントレットを左手で掴む。

これが、一夏がISを展開するためのポーズ。

白式が一夏の体に纏わさり、形を成す。

気づけば、セシリアもIS『ブルー・ティアーズ』を纏っていた。

だが、思ったより俺が派手にぶっ壊したせいか、装甲の一部に未だ欠損が見れた。

「よし、飛べ」

俺は腰部のスラスターを起動し個別連続瞬時加速を発動してジグザグに急上昇する。

登りきった後に下を見ると、セシリアが俺を見上げていた。思ったより高く飛びすぎたなこれ。

、、、っておいおい、わざわざジグザグに飛ぶ必要はないんじゃないか?と思ったそこの君、こう飛んだのにはきちんと理由がある。

「おい三七城。飛べとは言ったが高等技術を披露しろとは誰も言っていないぞ」

すぐさま、千冬から苦言を言われた。

「すいません、以後気をつけます」

いや、気をつけませんけどね。だってここの女子の一部に俺TUEEEEアピールして圧力かけとかねぇとまた『今朝』みたいなことが、、、、、

 

「うわ、自分だけこれできるぞ、的なアピールしてる。これだから男は、、、」

「調子乗りすぎてない?三七城ってやつ、男のくせに」

「そもそもなんで男がIS乗れたのよ。学園に来ないでモルモットにでもなってれば良かったのに」

 

はい早速キマシタワー。女尊男卑のこの世界だからこそのこれよ。

ISの世界じゃあ女性しかIS使えないから、必然的に男の立場が急下落。あっという間に女尊男卑の世界到来。

こういう奴がいるから俺はちょっかいをかけられない為にもこういうアピールをしているのだ。

、、、、、まぁ、今回の場合は逆効果だったが気にしない。

「おおー、やっぱり凄いな黒騎は」

耳元で一夏の声が聞こえた。

どうやら、俺に対して回線を繋げたらしい。

「お前も慣れれば使えるようになる。凄いで終わらさず、使えるように練習するといいぞ一夏」

「え!?俺も使えるのかそれ!?」

「高等技術、と言っていただろう?つまり訓練すればどんなISでもできないことはない、、、、はずだ」

やっべできるかどうかド忘れした。まぁ希望持たせといて一夏のやる気引き出しておこう。

「さっさと飛べ馬鹿者」

「あっ!!悪い黒騎、一旦回線切る」

「ああ。とっとと飛んでこい、一夏」

千冬からの注意を受けて、一夏が回線を切って空へと飛んでくる。

「、、、、随分と仲がよろしいようですわね」

今度は、セシリアが俺に対して回線を繋げてきた。

「ああ。同じ屋根の下、数年間暮らした家族のようなものだからな。仲が悪いはずがない」

「、、、、あの、後で一夏さんの好きな物とかを教えて頂くことは、、、、」

、、、、、それ俺に聞くのかい!?直接聞けやおめぇ!!!

「却下する」

内心驚きながらすっぱりと断る。

「で、でしたらわたくしがあなたにIS関連のことについてご教授して差し上げるので」

「それならライラに聞けば事足りる。どんな条件を出されようが俺は教える気は無い。どうしても聞きたいなら俺に勝って言う事聞かすか、本人に直接聞け」

これ以上話すのは億劫だったので、俺はセシリアからの返答を待たず回線をブツ切りする。

「織斑、オルコット、三七城、急降下と完全停止をやって見せろ。目標は地表から十センチだ。ああ、そうだ。三七城、降下する際に個別連続瞬時加速を行うことを禁止する。分かったのなら返事をしろ」

「、、、、、了解」

「了解です。では一夏さん、お先に」

俺が渋々と言葉を返すと、その後に言葉を発したセシリアが地表に向かい加速を開始し、どんどん姿が小さくなっていく。

無事に成功したようで、周囲からセシリアに対して羨望の眼差しが向かっていた。

「うまいもんだなぁ」

「流石、国家代表候補生。とでも言うべき実力だな」

その光景に、俺と一夏が感嘆の声を漏らす。

「よし、俺も行くか」

と、一夏もカスタムウィングにエネルギーを集め加速する。

ズドォォォォン!!!!

はい、原作通り墜落しました。

周囲の女子が、一夏を見てクスクスと笑っている。

「情けないぞ、一夏。昨日私が教えてやっただろう」

そこへ、箒のトドメの一声。

、、、、、マジで可哀想だなこれ。

「一夏、お前に一つアドバイスするが調整がアバウトすぎる。もっと細かくイメージしろ、機体に反映させるイメージをはっきりとさせろ」

墜落した一夏に向けても慰めるつもりでアドバイスを送ってから、俺は腰部スラスターを展開し急加速、そしてちょうど十センチになるようにスラスターを吹かして急停止する。

「十センチジャスト。最大加速からジャストで止められている。素晴らしい結果だ」

メジャーを持った千冬が俺に告げる。

、、、、、、(;´ФДФ`)ウソーン

あんな偉いこと言っておきながらなんだけど、成功するとは思ってなかった。失敗してもいいやって感じでスラスターフルスロットルにしてたし。

もしやだけど、なんかアシストかかってたのかこれ?

「「、、、、、ちっ」」

と、二つの小さな舌打ちの音が聞こえた。

まぁ、恐らくセシリアと箒だろう。大方真剣にやってる一夏に対して余裕ぶっこいてる俺に対しての逆恨みだろ。

「大丈夫か、一夏」

「あ、ああ。何とかな」

とりあえず俺は一夏に腕を差し伸べ、引っ張り起こす。

「シールドバリアーのお陰で無傷だったのが幸いだな。もしお前が良ければ、後で俺が飛び方について教えてやる。お前も今のままでは嫌だろう」

「本当か!?助かった!!箒の説明擬音だらけでわかりづらかっ、、、、、あっ」

一夏の顔が、笑顔から一転、しまったといった表情をして口を抑える。

俺はとある人物に目線を向ける。

──────あー、一夏南無三。

真っ先に思い浮かんだのが、その言葉だった。

箒が鬼神の如き表情で一夏と俺を睨む。ガチで怖い。

「一夏、さっきのは一体どういう意味だ、、、?」

「ヴェッ,マリモ!!!」

殺気のあまり一夏の呂律が酷いことになっていた。ってかこの一夏の悲鳴のような叫びどっかで聞き覚えが、、、、ああオンドゥル語か。

「おい、馬鹿ども。邪魔だ。端っこでやっていろ」

セシリアと箒の頭を押しのけて、千冬が一夏の前に立つ。

「織斑、武装を展開しろ。それくらいは自由にできるようになっただろう」

「は、はぁ」

「返事は『はい』だ」

「は、はいっ」

「よし。でははじめろ」

一夏が横を向いて、ISを展開した時のように右手を突き出し、それを左手で握る。

しばらくすると、一夏の手から光の粒子が放出され、それが形を成す。

<雪片弐型>。今の一夏の唯一にして最強の武装。

「遅い。0.5秒で出せるようになれ」

一夏的には頑張った方なのだが、千冬は厳しく一夏に言う。

「セシリア、武装を展開しろ」

「はい」

今度はセシリアが武装を展開するようだ。

左手を肩の高さまで上げて、真横に腕を突き出す。

すると、爆発したかのように光が放出され、気付けばその手に<スターライトMk.Ⅲ>が握られていた。その速度は圧倒的に、一夏より早かった。

って待って、これ銃口俺に向いてね?

見ると、<スターライトMk.Ⅲ>の銃口は俺の方を向いていた。

「、、、、、セシリア・オルコット。俺と殺り合いたいのならアリーナで殺り合おうか」

思わず、脅すように低い声が出てしまう。

「ヒッ!?」

怯えるように体を竦めると、セシリアがすぐさま銃口を俺からそらす。

「さすがだな、代表候補生。──ただしそのポーズはやめろ。横に向かって銃身を展開させて誰を撃つ気だ。先程の、もし誤って三七城を撃っていたら病院送りになるぞ。正面に展開できるようにしろ」

「、、、、、、はい」

さっきの俺のこともあったのか、原作とは違い顔は渋々そうだったがすんなりと受け入れていた。

「セシリア、近接用の武装を展開しろ」

「えっ。あ、はっ、はいっ」

頭の中で文句を言っていたのか、反応が遅れていたセシリアだった。

<スターライトMk.Ⅲ>を光の粒子に変換、収納(クローズ)し新しく近接用の武装を展開しようと光の粒子が出る。

だが、なかなか光の粒子が形を成さず、空中をさまよっている。

「くっ、、、、」

「まだか?」

「す、すぐです。──ああ、もうっ!!<インターセプター>!!!」

ヤケクソといった様子で、セシリアが武器の名前を叫ぶ。

すぐさま光の粒子が形を成し、一本の剣がセシリアの腕に現れる。

しかし、これは初心者用の手段であるためセシリアにとってこの手段を使わなければいけないというのは、けっこうな屈辱だっただろう。

ってか名前を叫べば武器が出てくるって、どこのゲッ〇ーだよ。(ゲ〇ター トマホォウク!!!!)

「、、、、何秒かかっている。お前は、実践でも相手に待ってもらうのか?」

「じ、実践では近接の間合いに入らせません!!ですから、問題ありませんわ!!!」

「ほう。織斑と三七城との対戦で初心者に簡単に懐を許していたように見えたが?」

「あ、あれは、その、、、、」

ごにょごにょと口を動かすセシリアを後目に、千冬が俺に目線を向けてくる。

「三七城。武装を展開しろ」

「了解」

俺はすぐさま両腕に付いている鞘から刀を引き抜いて構える。

「よし、上出来だ、、、、?待て、三七城。今まで気にしていなかったが、お前今それをどこから取り出した?」

千冬が不思議そうに、顔をしかめる。

「腕部からですが」

「拡張領域に収納できないのか?」

、、、、、あれ?そういえばまっっったく気にしたこと無かったが、このラインバレル、拡張領域あるの?

そう思って、視界に拡張領域の表示を出すと、、、、、

「、、、、、九割方【オーバードライブ】に食われています。なので収納は無理ですね」

待って。つまりこれ俺一夏と同じく射撃系の武装<エグゼキューター>抜きだった一切しまえないってことじゃん。まぁ<エグゼキューター>あるだけ一夏よりマシか。

「そうか。なら仕方ない」

キーンコーンカーンコーン。

千冬と話していると、それを遮るようにチャイムが鳴った。

「時間だな。今日の授業はここまでだ。織斑、グラウンドを片付けておけよ」

千冬から言われ、一夏が渋面になる。

セシリアと箒に目線を向けたようだが、その二人からはぷいっとそっぽを向かれる。

流石に一人でこのクレーターを埋めるのはキツそうだと思ったので、一夏に声をかける。

なんかもう、クラス代表になっちゃって物語壊してしまったせいか逆に大胆に動ける。

「一夏、俺も手伝うから安心しろ。なぁに、この程度小一時間で埋めて見せようじゃないか」

「、、、、、助かる」

しょんぼりとした一夏と共に、俺は一時間ほどグラウンド埋めを行った。

 

 

「というわけで、織斑くんと三七城くんようこそIS学園へ!!!」

「ようこそー!!!」

、、、、、、ど う し て こ う な っ た 。

グラウンドの後片付けを終え、寮に戻った途端クラッカーの音が耳に響いた。

本来なら一夏のクラス代表就任祝いなのだが、俺がクラス代表になったせいか歓迎パーティーへとすり変わっていた。これを見た瞬間、どっかの蜘蛛男の「すり替えておいたのさ!!」のセリフが脳裏に浮かんだ。

、、、、いやまぁ理由なら思い浮かぶよ?そりゃこんな怖い奴の就任祝いなんて誰も開きたくないわな。こうやって歓迎パーティーにした方が都合がいいんだろ。まぁこーゆーの慣れてるから気にしないけど。

「織斑くん、残念だったねークラス代表戦」

「けど一次移行を済ませてない機体であそこまで戦えていたのってすごいよねー」

「そうだよねー」

「い、いや、そんなことは、、、、」

「、、、、、、」

俺とは違ってちやほやされている一夏を見ながら、適当に席に座って、購買で買ったココアシガレットをポッケから取り出し口に咥える。

タバコを吸いたかったが、ここは学園なのでそんなものが置かれているはずがない。

前世じゃ確か静かになりたい時はタバコ吸ってたから、、、、、待て。そういや俺タバコ吸ってたな。ってことは俺の年齢実は二十歳越え?高校クラスの知識はあるから高校生だなと思ってたら実は二十歳越え?、、、、、ソンナァ、、、ウソダァ、、、、ウソダドンドコドーン!!!!

「黒騎、クラス代表おめでとう」

「みなしー、おめでとー」

と、俺に対してお祝いの言葉を送る声が右から聞こえた。

「、、、、ライラに布仏か。礼を言う」

ココアシガレットを咥えながら言う。ほんとこの二人優しすぎないか?こんな恐ろしい奴ほっときゃいいのに、わざわざ構ってくるとか女神か?

「いえいえー。あ、それココアシガレットじゃん。好きなのそれー?」

「ああ。タバコを吸っているように感じて落ち着ゲフンゲフン、、、、甘いから好きだ」

あっぶね、未成年で喫煙してんのこいつって思われるところだった。

「ふーん、、、、あ、私にも一本ちょーだい」

「私も、食べたことないから一本欲しい」

「、、、、いいぞ。取れ」

俺はシガレットの箱を二人に差し出す。

そこから二人は一本ずつシガレットを取り、俺と同じように口に咥える。

「へっへー、タバコっぽーい」

「、、、、初めて食べたけど、確かに甘いね」

それぞれ感想を述べる。

「黒騎。一つ聞きたいんだけど、オルコットさんと戦ってた時どう感じた?」

「ふむ。どう感じたかと聞かれれば、、、、一言で言うならば『単純で強いが弱点も大きいスタイル』だな。ビット射撃と狙撃の弾幕で押して近づけないようにして近接戦闘を封じるスタイルだが、逆に言えば近づけば勝ちと言っているような感じだ。だからお前のステルベンも、近づきさえすればオルコットに余裕で勝てると思うぞ。見たところビットを動かしている最中にオルコット自身は動けないようだからな」

「、、、、あの戦闘だけでそこまで推測できてるのは、すごい」

「まぁな。人間観察は得意な方だ」

そう話していると、横からいきなり「ねぇ」という声が聞こえた。

見てみると、一人の女子が俺に向かってボイスレコーダーを構えていた。

「、、、、誰だ貴様」

「あ、さっきの聞いてなかった?私は二年の新聞部の黛薫子。よろしくね。新聞部副部長やってまーす。はいこれ名刺」

流れるように自己紹介をした後、薫子は俺に名刺を差し出してくる。

「ではでは早速、『鬼帝』(おにみかど)の異名を持つ三七城くんへ質問!!クラス代表になった感想を」

「待て。今あんたなんて言った?おにみかど?異名?」

思わず言葉が出た。いや待って、おにみかど?鬼の帝?、、、、、あ。

おにみかど→鬼帝→きてい→鬼帝の剣

神様、こんなところまでラインバレル要素仕組んでくるとはたまげたなぁ、、、、、

「え、もしかして聞いてない?あの戦いっぷりがヤバいって学園内で噂になってて、あ、もちろん新聞のネタにありがたく使わせて貰ったけど。今三七城くんの異名『鬼帝』だよ?」

「、、、、、どうリアクションを返したらいいのか分からん」

俺は顔を抑えて大きくため息をつく。

いや戦いっぷりがヤバかったのは自覚あったが、その名前つけるまでに至ってたのか、、、、

「で、改めて聞くけどクラス代表になった感想を、どうぞ!!」

「、、、、あー、えー、まぁ、代表として恥のないように行動したいと思う」

「えー。もっといいコメントちょうだいよ~。俺に近寄るな、消し飛ばすぞ。とか!」

、、、、、ほほぉ。なるほど、そういう系のコメントが欲しいのか。よろしい。

「、、、、ならば別の言葉にしてくれ。今から言うから、聞き逃すなよ?」

「お、ノリいいね」

俺は大きく息を吸って(この際加えていたシガレットは指で挟んで口から離した)、少しカッコつけて言う。

「|The one who named me the kitei Give me your name by tomorrow morning. Otherwise, the next class competition will be ruined.《俺に鬼帝って名前付けたやつ明日の朝までに名乗りあげろ。さもなくば次のクラス対抗戦荒らすぞ》」

「おおー?よく聞き取れなかったけどカッコイイから音声データで貰っとくね」

「好きにしろ」

あー楽しみだ。あの英語の中身が脅しと知った瞬間の顔が楽しみだなぁ、、、(ゲスの笑み)

ふと見ると、薫子は次にセシリアを標的にしたらしく、彼女の元に駆けて行った。

「、、、、、ねぇ黒騎、大丈夫?あんなこと言っちゃって」

「、、、、聞こえてたのか」

どうやらライラは俺の英語の意味が理解出来ていたらしい。

「思いっきり聞こえてたよ。それよりそんな脅すようなことはやめてあげた方が、、、」

「大丈夫だ、どうせ俺の学校内評判は最悪だと思うからな。俺を恐怖の対象にしていけば、いつかクラス代表からも降りられるだろう?」

「まさかとは思うけど、それが理由で言ったの?」

Jackpot(大当たり)

「そこまでしてやりたくないの?」

深刻そうな顔でライラが言う。いや俺やりたくなかったのに強制的に入らされたんだぞ?それならそうして評判下げまくって解任された方が楽でいいじゃん。

「ああ。やりたくないな」

「、、、、、、そう」

その言葉を最後に、俺とライラは十時まで続いたその歓迎パーティーで、口を開くことは無かった。

 

 

「通達、三七城黒騎を発見。これより対象の捕縛に移る」

「了解。アンタレス3r、引き続き同居人のライラ・ボードウィークを監視する」

「デネブ1o、了解。全ては正しき世界への修正のために」

 

「「「全ては正しき世界への修正のために」」」

 

 

────ガサゴソ。

「、、、、、ッ」

妙な物音が耳に響き、俺は目が覚める。

「なんだ、、?」

風で草が揺らいだような音ではなく、何かが動いているような音だった。

「、、、、、」

俺は無言のまま、右手に待機状態のラインバレルを出現させ刀身を鞘から完全に引き抜く。

そのまま、足を部屋の玄関の方に向けて進める。

覗き穴から外を見るが、人は居ない。

「、、、、気のせいだったか」

そう呟き、刀を鞘に納刀する。

「動くな」

背に冷たい感触を覚えると同時、後ろから男の声が聞こえる。

この感触、、、、銃か。

「三七城黒騎。我々と共に来てもらおう」

脅すように、銃の先を俺の背中に押し付ける。

、、、、、サイズ的に拳銃、、、、S&W?いやそれにしては形が角張りすぎている、、、、グロックか。丸い感触でないからサプレッサー無し、、、随分度胸があるな。

って待て。なんでこんなこと分かるんだ俺?

いや考えてる場合じゃねぇよ!?なんだよお前ら!?

「、、、、誰だ」

そう聞くと、男は黙れと言うように銃を再度俺に押し付ける。

「両手を上に上げて、ラインバレルを此方に寄越せ。従わない場合は貴様のルームメイトを嬲る」

「むぐーっ!!!ふほひっ!!!」

布で口を縛られているのか、息のようなライラの声が聞こえた。

俺が目覚めた時、ライラはベッドで寝ていた。俺が起きてからそんなに時間は経ってない。その間にライラを縛り上げるのは無理だ。つまり、、、、二人居やがる。

だが一番まずいのは、、、こいつら、ライラを人質に取りやがった。

「、、、、、分かった。大人しく寄越すし抵抗もしない。だからライラを嬲るのだけはやめろ」

ライラを嬲ると聞かされた俺は、大人しく右手のラインバレルを床に落とし、両手を上に上げる。

「よろしい。ならば迎えを用意しているのであと三十分ほどここに居ろ」

「、、、、、」

俺はその言葉に従い、腕を上げたままじっとする。

残念なことに、ラインバレルを盗られている上にライラが人質に取られている以上抵抗は出来ない。このまま攫われるという選択肢しか無かった。

 

「、、、、、、なぁ、、ヒヒッ、この子可愛いしヤッちゃってもいいか、、?」

待機してしばらくした頃、汚いとしか言いようがない声が部屋に響いた。

「ああ。もう『薬切れ』か早いなぁ。こうなったら発散させるまで制御効かないからな、仕方ないか、、、、ああ、いいぞ。ただし迎えが来たらすぐやめろ。いいな?」

ヤる?発散?、、、、、まさかこいつ、、、ッ!?

「やったぜぇ、、、、さぁ嬢ちゃん、俺と楽しいこと、しようぜぇ、、?ヒヒヒッ」

「ひ、ひや、、、、ッ!!!!」

「ッ!?ライラッ!!!」

駄目だ。もう限界だ。

俺は後ろへ振り向き男の手からすぐさま拳銃を奪う。

後ろを見ると、太っている男がライラに向けて穢らわしい手を近づけていた。

俺は慣れない手つきで銃を、ライラの服に手を伸ばしていた男の体に向けて、、、、、

パァン!!!────カラン。

「、、、、お、、、え、、、?」

引き金を引いた。

男の喉元から、血が滴る。

そして、その血を見た瞬間。

俺の中で、『何か』が破裂した。

「、、、、ッ!?、、、、ッ!?」

男は苦しそうに喉を抑えてベッドから転がり落ちる。

、、、、なんだろう。さっきまで威勢が良かったのに、無様だな。

俺は不思議な気分に浸かりながら、転がり落ちた男の元まで歩き足で体を踏みつけてそいつの頭に銃口を向けて、容赦なく引き金を引いた。

再び破裂音が鳴り、頭から鮮血が散ると男がピクリとも動かなくなった。

「は、、、、ッ!?き、貴様ッ!!!」

後ろから、狼狽したような声が聞こえる。

振り返ると、背負っていて見えていなかったのか、どこかに置いていたのを取ったのかは知らないが男が両手でアサルトライフル、AK-47を持ち俺に向けて構える。

「、、、、どこの誰かは知らんが、とりあえず死んでおけ、駄犬」

自然と口から言葉が出た俺は、そのまま銃を男に向けて構える。

だが、男が先に引き金を引いた。

弾丸が、俺の体のあちこちに当たる。

だが、痛みは蚊に刺された程度のものしか感じない。

撃たれ続けながら、俺は前進を続ける。銃口は男の頭に向けたまま。

「な、、、、ッ!?」

男は驚きつつも、俺に弾丸を浴びせ続ける。

そして三十回ほど弾丸を撃ち込まれた頃、ついに男の銃の弾丸が切れる。

「ひ、ひぃっ!?」

男は俺を怯えるような目で見て、慌ててリロードを開始する。

だが、俺は男の銃に向けて照準を定め、撃つ。

男の銃が弾かれるように床に落ちる。

男は腰が抜けたのか、床にペタンと座り込む。

「く、くるなぁっ、、、!!!!」

そう情けない声を発して俺から離れようと腕で体を動かす。

だがすぐに壁にぶつかり、動きが止まる。

「ここまで来訪するのに苦労しただろう。褒美に永久の休暇を寄越してやろう、駄犬」

「た、、、、助けっ、、!!!」

「任務ご苦労。さらばだ」

俺は助けを乞う男へ向けて容赦なく撃った。

残りの弾丸を使い切るために、まず男の頭を撃って始末してから、次に両手、両足、心臓、肝臓、肺、、、の片方を撃った所で弾丸が切れた。ここで弾切れかよつまんねぇな。

銃が虚しくカチカチと音をたてる。

俺は銃を投げ捨てライラの元まで駆け寄る。

「ライラ、無事か?」

口を縛っていた布を解き、腕と足を縛っていたロープを刀で切ってライラを解放する。

「く、黒騎、、、、?」

ライラの俺を見る目が、いつもと違った。

その目には、涙で潤っており、少しの怯えが見えた。

、、、怖かったよな。いきなり拘束されて、好きでもない人にヤられそうになったもんな。

そんな中、男の俺が居るもんな。怖がっても仕方ない。

俺は無言でライラを抱きしめる。

「怖かったよな。だが安心しろ、もうこの部屋に俺とお前以外居ない。だから、安心しろ」

そのまま、優しくライラの頭を撫でる。

「、、、、ほん、とうっ?」

涙声になりながら、ライラが声を出す。

「本当だ。全部俺が片付けた」

「、、、、、黒騎、っ、ぐすっ、、お願いがあるのっ」

「なんだ?」

「、、、怖いからっ、一緒に寝て欲しいっ」

「、、、、ああ。俺でよければ側に居てやる」

「ありっ、、がとっ、、、、」

俺はライラを抱きしめながらベッドに横たわる。

すぐに、ライラからすぅ、すぅという小さく可愛らしい寝息が聞こえてきた。

さっきは色んなことが一度に起こりすぎたし、こうなるのは仕方ない。

「、、、、ああ。やはり可愛らしい」

俺は寝ているライラの顔を見て、言葉を零し眠りにつく。

 

 

「、、、、、えー今日の三七城黒騎誘拐作戦についての報告。乗り込んだ二名は三七城黒騎によって射殺されたので成功せず、だそうだ。ってなんだよ、生身で銃弾食らいまくっても死なねぇって。心臓と肝臓七割消えてんのに生きてる上ISみたく自己再生してるってマジモンの化け物じゃねーか。オマケに貰った映像見たらそいつ人殺しても平気な顔してたな、、、、俺らと同じ匂いがプンプンするぜ」

「それが私達の求めている『力』よオータム。三七城天児の最大の発明品にして遺作である、【Dーゾイル】。三七城黒騎はその力を使ってほぼ不死身、、、いや、ISのようになっているわ。それのお陰でオーパーツレベルのオーバースペックを持った【黒騎士】を使えているの」

あるビルの屋上。そこで二人の女性が会話していた。

一人は手に平たい端末を持った、ふわりとしたロングヘアーが特徴的なスーツの女性、オータム。

もう一人は、太陽のように眩く長い金の髪に、もう一人と同じくスーツを纏っている、スコール。

「ふーん、ってことはそれを使えれば【黒騎士】を、、、!!!」

オータムが、年頃の少女のようにキラキラと目を輝かせる。

「残念だけど、ことはそう簡単に進まないの。昨日の夕方、強力なIS反応があったでしょう?あれは【黒騎士】から発せられたものなのだけど、調べたらパイロットネームが変わってたのよ」

「なに?【黒騎士】にパイロットが二人いるのか?」

先程の様子から一転、困惑するように顔をしかめるオータム。

「いえ、それがそのパイロット、、、、『死んでるの』」

オータムの質問に、スコールは深刻そうな表情を浮かばせる。

「、、、、おいおい冗談キツイぜ。まさか死人が霊になってISに乗り移ったとか言うわけじゃないよな?」

「そういう訳じゃないわ。でも、そのパイロットが少し特殊でね」

スコールは手元に端末を取り寄せ、一枚の画像をオータムに見せる。

「、、、、、ッ!?」

その画像を見たオータムはたじろいだ。

その画像に、始めて見た時より大きく変わっていた【黒騎士】の上に表示されていたパイロットネームは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「、、、、三七城天児だと!?なんで死んだやつがパイロットになってるんだよ!?」

 




はい、いかがだったでしょうか。
最近、文章量に対してストーリーの進み具合が遅いと思い始めてきたんですがこれでちょうどいいのか悪いのかがいまいちよく分からないです、、、、w
ってかいい加減イレギュラーブルー書かないといけないのにどうしても指がこっちに行ってしまう、、、、
蒼「いい加減話書けよ作者ァ、、、、じゃないと【魔牙突】食らわすぞ?」
と言われそうですwってか言われてるかもw
まぁ、そんなこんなでそれでは次回まで、ヾ(▒_▒⊂ )))Σ≡サラバ


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mad rage of amagatu

クッソ難産だった、、、、、(疲労困憊)


ISーインフィニット・ストラトスー

White of black

第七話 mad rage of amagatu

 

 

────えーと、ここどこ?

俺は気づけば知らない場所に居た。

昨日は、、、、そうだ。家に不審者二人入ってきて、一人がライラを辱めようとしたから『ブッ殺した』んだった。

、、、、、待て。俺人殺してるじゃん。なんでこんなに冷静なの?

「、、、、、あんたらのようなクズ、もう面倒みきれねぇ。いい加減死ね老害が」

俺の耳に、俺の声が響いた。

だが、俺は一切口を開いていない。

「お、おい!?親にこんなことして、タダで済むとでも、、、!?!?」

「そっそうよ!!!今なら許してあげるから、今すぐ辞めなさい!!!」

後ろから、思い出したくもないクソッタレ共の声が聞こえた。

振り返って、見てみると。

『俺』がクソ共に向けて銃を構えていた。、、、、いやおま、それどこから調達したの?

ジジイの方は太ももから血が滲んでおり、俺が撃ったということがはっきりと分かった。

対してババァは無傷で、強気で俺の方を見る。

銃を持っている俺は、何かが吹っ切れたように満面の、狂気じみた笑みをクソ共に向けていた。

「許す?俺からさんざん金を奪い取った挙句、サンドバックにまでしてきたくせによォ?

ア゛ア゛!?」

俺が銃をババァに向けて撃つ。

「ぎっ、、、、!?い、いだぁぁぁい!?!?」

ババァが痛みに耐えきれなかったのか、床でのたうち回る。

俺はその様が面白いといった様子で声を上げて笑っていた。

「お前らはよォ、一つのミスで死ぬんだ。そう、俺が大切に取っておいた、初回発行版のIS二巻を破りやがったんだからよォ!?」

俺は怒りを吐き出すように椅子を蹴り飛ばす。

「俺を殴ろうが金を取られようが!!!傷は治るし金は働きゃ取り戻せるからお前らを怒りの矛先にせず!!!産んでくれた恩として我慢していたがよォ!?モノは戻んねぇんだよ!!!俺の人生の宝奪いやがって、、、、、死ねこの害悪共がァァァ!!!!」

叫びながら、俺はクソ共へ向けて銃を乱射する。

バァン、バァン、カララン、と銃声と薬莢の落ちる音がする。

弾を撃ち切り、カチカチという音が鳴った所で俺は銃を下ろす。

クソ共は既に頭に銃弾を食らっており、ピクピクと痙攣するだけで、何も言わない肉塊へと変貌していた。

「、、、、、、ふぅっ。よし、悪は滅びた!!!今こそ奪われた金を回収してその金でIS二巻買ってやるぜヒャッハー!!!!あ、そうだ六から十二巻も買ってないんだった。それも買ってこーっと」

向こうに居る俺は意気揚々と財布を取り出し、クソ共の財布を抜き取ってその中身を全て財布の中にブチ込む。

、、、、、、あ、これもしかしてアッチの世界での死ぬ前の記憶か?

転生する際、前世の記憶は「親から都合のいいサンドバックな金づる扱いされてたこと」と「趣味」、「死ぬ直前に何をしていたのか」を覚えていたのだが、その死ぬ前に何をしたかで俺は破かれたIS二巻と持っていない六から十二巻を買おうとして死んだということは覚えている。

、、、、それで、向こうの俺は今から俺が買おうとしていた部分を買おうとしている。

つまり、そういうことだろう。

──────ざまぁ、くたばってて良かったよ。

まず思い浮かんだのがそれだった。

あんな害悪共、生きてても有用性が無かったから死んで良かったと心の底から思う。

そして、俺は向こうの俺に「ナイッスゥ!!!!」と叫び右の親指を立てて拳を突き出す。

と、向こうの俺に変化が訪れた。

「、、、、、お前は、いつまでも傍観者だ」

向こうの俺が、睨むように目を細めながら目線を俺に向けてくる。

「、、、、、なんでもかんでも、自分事じゃない。全部他人が勝手にやって勝手に死んだことだから、お前が関わっていても俺は関係ないと、『傍観』する」

恨み言のように、俺に言う。

「、、、、、転生して恵まれた第二の生を受けても、織斑千冬に復讐すると決めたくせに『物語』に関わるから復讐をやめようか考えている。お前は、自分のことでさえ他人事のようにしか思えないんだ」

────うるせぇな。んな事俺が一番わかってるっつーの。

「分かっているのなら、何故傍観者でいることを辞めない?それでいることがお前にとって、、、、、」

急に向こうの俺が無言になる。

おーい、ちょっとー?と声をかけるが一切合切聞こえていないようで、その場に立って固まっている。

「、、、、、どうやらここまでのようだ。お前を少しでも矯正出来れば良かったのだが、叶わぬ願いらしい」

────さっきから勝手にべらべら喋りやがって、用済みになったら送り返すとかお前頭おかしくね?

「うるさい、とっとと帰れ」

その声を聞いた瞬間、俺の意識は現実へと戻る。

 

 

「、、、、、い!!!おい!!黒騎!!!」

「、、、、、ッ?」

目を覚ますと、目の前に千冬が居た。

ここは、、、、学園の医務室か。

「黒騎!?無事か!?一体何があった!?」

「、、、、千冬、さん?」

珍しいことに、千冬が慌てふためいているようだった。

何があった?って、多分部屋の死体のことだろう。

俺はゆっくりと体を起こし、昨日あったことを話す。

「、、、、そう、だったのか、、、、クソッ!!!」

千冬が俺の話を聞いた直後、壁を殴りつけて苛立ちを露骨に表した。

「私らが寮に居た上でお前らを危険な目に合わせてしまった、、、、、すまない、、、ッ!!!」

どうやら、同じ寮に居ながら俺らの異変を感じ取れなかったことに負い目を感じているらしい。

どう言葉をかけようか迷った所で、部屋の扉が勢いよく開く。

「黒騎ッ!!!」

扉を開けて中に入ってきた人物は、すぐさま俺の近くまで駆け寄ってくる。

「、、、、ああ。ライラ、無事か?怪我はないか?」

俺は入ってきたライラに向けて言う。

昨日ライラは侵入してきた男にヤられそうになり、心にトラウマを抱えていないか心配だった。

「そんなことはどうでもいい!!!黒騎撃たれたでしょ!?黒騎こそ無事なのっ!?」

「なんだと!?」

ライラの叫びを聞き、すぐさま千冬が俺を見る。

あーライラ。それそこで言わないで欲しかった。余計話が面倒なことになる。

「、、、それはお前の見間違いだ。俺は弾丸を一発も食らっていないし、無傷だ」

と、俺は布団から出て自分の服を捲る。

今の俺の制服は、銃弾によって開けられた穴が無数に存在していた。その穴からは無傷の素肌が見える。

穴は主に心臓と肝臓辺りに集中しており、相手の殺意の高さが察せた。

そこで千冬が、思い出したように顔をハッとさせライラの方を向く。

「ボードウィーク、すまないが私と三七城だけにして欲しい。お前は山田先生に授業が遅れることを」

「そんなに聞かれたくない会話なんですか?それは」

千冬の言葉を遮りライラが呟く。

「、、、、、もしかしてだとは思いますけど、黒騎がISを操縦できていることに、今の黒騎の状態が関係してるんじゃないですか?」

「ボードウィーク、二度は言わん。私と三七城だけにしろ」

俺の秘密について察してきたライラに対し、千冬は脅すようにライラを睨む。

「、、、、ライラ。悪いが二人だけにして欲しい」

俺もライラに頼む。するとライラは渋々といった様子で部屋から出ていく。

「、、、、黒騎。まず体に不調はないか?」

部屋からライラが出ていった瞬間、千冬が俺に声をかける。

「今のところは。特に不調等ありません」

「昨日、ラインバレルを奪おうとした奴に見覚えは?」

「これっぽっちもありません。ですが恐らく、以前誘拐された時に居た男と同じ組織の奴らでしょう。もし違うのなら、ラインバレルだけ奪って行くはずです。ISは女性さえいれば動くから俺を攫わずともラインバレルを動かせると考える。ですが、今回は俺も攫おうとしたためそう考えました」

「、、、、、そうか。

────改めてすまない、黒騎」

千冬が俺に向かって深々と頭を下げる。

「いえ、気にしていませんので大丈夫です。ああ、そうだ。死体の件ですが」

「もう業者が片付けた。血の跡を一つも残さず綺麗にしろと念を押しておいたから綺麗になっているはずだ」

千冬さん、、、あんたの念を押すっていうのは脅しに近いんだ。今度からやめてさしあげろ(唐突の淫夢)

脳内で少しふざけていると、「あ」と千冬が小さく呟き、段々と顔色が曇ってゆく。

「、、、、黒騎。いきなりで悪いが来週にクラス代表が出場するISを使った対抗戦がある。お前がクラス代表だから出場してもらうことになるが、棄権するかどうかはお前に任せる」

千冬が俺を案ずるように言う。

だが、俺は棄権する気なんて毛頭ない。

「俺は変わらず出場します。不調はありませんので」

そう返すと、部屋に少しの静寂が訪れる。

「────黒騎。嫌なら答えなくていいが、一つ聞きたいことがある」

しばらくして千冬が静寂を破り、俺に聞く。

俺は静かに頷く。

 

「───人を殺した感触は、どうだった」

 

その一言で、俺は多分今、最大の笑みを浮かべただろう。

────へぇ、それを貴女が聞くのか。白騎士事件の実行者サンよ。

アンタ、ミサイルの二次被害で家幾つかぶっ壊れたの知ってる?その中に人残ってたの知ってる?

、、、、、その言葉、アンタにだけは言われたくない。

俺は脳内で勝手に組み立てられる言葉を頭からかき消し、笑みをどうにか変えて深刻そうな表情に変える。

「、、、、、最悪でした」

「、、、、そうか。聞いてしまってすまない」

「いえ、むしろ話せてスッキリしました。ありがとうございます」

俺は表面上は感謝の言葉を出してスッキリした風な顔にし、内心ではドス黒い感情を吐き出しながら寮へと戻る。

 

 

「、、、、、ちっ、なんで一組の代表が一夏じゃなくて『アイツ』なのよ、、、、、聞いた話と違うじゃない、、、、」

IS学園の寮内、ある部屋で爪を噛みながら顔を怒りに染めている少女がいた。

少女の名は、凰 鈴音(ファン リンイン)。中国の国家代表候補生にしてIS学園、一年二組のクラス代表である。

「、、、、毎度のこと私の邪魔ばっかりして!!!このっ!!!くぉのっ!!!」

イラついている最中に、嫌な記憶を掘り返してしまったので辛抱ならず地団駄を踏む。

彼女は一夏がクラス代表だと聞いた為、二組のクラス代表を『説得』してその座を譲ってもらったのだが、実は一組の代表は一夏ではなかったのだ。

本来の一組のクラス代表の名は────三七城黒騎。

彼自身は自覚していないようだが、彼は何度も鈴と一夏の恋路の邪魔をしてきたのだ。

鈴の脳内で、最も最悪な『あの日』の記憶がフラッシュバックする。

一夏が鈴の父と母が経営している中華料理屋に一夏が来た際、自身の料理を振る舞った時の記憶が。

 

 

鈴「ね、ねぇ一夏、私の料理美味しい?」モジモジ

一夏「ああ!!すんげーうまい!!これなら毎日食いたいな!!!」バクバク

鈴「そ、そう、、、?だったら、私が毎日作ってあげないことはないけど、、、」モゴモゴ

黒騎「失礼する。ここに一夏という名の阿呆は居るか?」ガラガラ

一夏「な!?黒騎!?おまっ、なぜここが!?」ガタッ

黒騎「千冬さんから教えてもらった。とりあえず帰るぞ一夏。貴様宿題が溜まりに溜まって先生からのげんこつを食らってもまだやっていないそうだな。帰ってから千冬さんの説教と、俺からの補習地獄があるから、覚悟の準備をしておけ(#^ω^)」ゴゴゴ

一夏「ひ、ヒィッ!?ヤメローシニタクナーイ!!!シニタクナーイ!!!!」ジタバタ

黒騎「黙れ阿呆」シュトウビシッ

一夏「アーウ、、、、」キゼツ

黒騎「騒がせてしまってすまなかったな。代金は置いていくのでご容赦を。ああ、お釣りは要らん、迷惑料として貰ってくれ。それでは」ガラガラバタン

一夏「、、、、、、」ヒキズラレ

鈴「(゜д゜)」ポカーン

鈴父「、、、、、ドンマイ、我が娘よ」ガッショウ

鈴母「、、、、またチャンスは巡ってくるわよ」ガッショウ

 

 

「、、、、だぁぁぁぁぁっ!!!!あの黒ヤローメーッ!!!私の、、、一世一代の二度とないかもしれないチャンスを奪いおって!!!」

更に強く地団駄を踏む。

あの日は、中国へと帰ってしまう前に日本に居られる、最後の日の前日で一夏と会える最後の日だというのに、そんな日まであの厄災に邪魔された。

鈴がこうなるのも、無理はなかった。

「、、、、、ふっ、ふふふっ、、、ああ、そうだ。私クラス代表じゃん。でアイツもクラス代表じゃん。って事はクラス代表戦で戦うじゃん。

────徹底的にボコボコにしてやるんだから。泣きわめいても許さないわよ、、、、ふふふっ」

そう呟く鈴の目からは、完全に光が消え去っていた。

 

 

「あ、黒騎。おかえり」

部屋に戻ると、ライラが俺を出迎えた。

「ああ、ただいま」

俺はそう会釈し、速攻でベッドに突っ伏す。

「、、、、かなり疲れたな、、、、眠い」

「、、、、昨日撃たれたことが、原因?」

ライラから唐突に発せられた言葉で、俺は一瞬体をビクゥと揺らす。

「だから、俺は撃たれていない。お前が見たそれは夢だろう」

「、、、、じゃああの制服の穴は?」

「俺が制服を改造した結果だ」

「血の跡は?」

「インクを染み込ませて作った」

俺は嘘を吐いて誤魔化そうとした。

すると、ライラが申し訳なさそうにしながら俯く。

「、、、、、ごめん」

「なぜ謝る」

「、、、、そこまで追求されたくないことだとは思わなかった。聞きすぎて、ごめんなさい」

、、、、え、お前女神?聞かれたくないと察した瞬間謝ってくれたぞ?

、、、、これが原作ヒロインズなら、、、ホワンホワンホワーン

 

「一夏!!何か隠し事があるだろう!!言え!!!」

箒は竹刀を構え一夏を脅し。

「わたくしに隠し事だなんて、そこまでして知られたくない秘密ですの?」

セシリアは<スターライトMk.Ⅲ>を一夏に向け。

「いーちーかー?」

鈴は<龍砲>の照準を一夏に向け。

「ほう、嫁が私にも話せないことがあるとはな。どんな秘密だ、吐け」

ラウラはAICで一夏拘束&レールカノンを一夏に向け。

「一夏?僕に隠し事なんて悲しいなぁ、、、、」

シャルロットの場合一夏に『灰色の鱗殻』(グレースケール)を近距離で構え。

 

────それぞれ一夏を脅して無理にでも聞いたはずだ。(偏見ありスギィ!!!と思われるかもだが俺はそうなるとしか思えん)

だが、目の前に居る女神はどうだ。聞かれたくないことだと察した瞬間謝ってきたんだぞ。どこぞのツンデレモップ&金髪ドリル貴族&貧ny(おっと危ない)&寝込み襲い眼帯&ノブリスオブリージュ(いや違ァウ!!!それAC!!)とはえらい違うなぁ、、、、、

、、、、あれ、これ今の俺めっちゃ恵まれた環境にいるのでは?

「いや、俺も細かな事情を話せなくてすまん。重大なプライバシーなのでな」

「、、、、わかった。今度から追求しない。約束する」

「すまんな」

そう返して、その日は特に何も予定がなかったので俺は眠りについた。

そして、後日俺は知ることになる。

────クラス対抗戦の相手が、原作通り鈴だったことに。

 

 

「みなしー、おはよ~」

「黒騎、おはよう」

「ああ、おはよう。布仏、ライラ」

一週間後、クラス対抗戦当日。

相手が鈴だったことには心底驚いたが特にどうこうあった訳ではなく、強いていえば一夏にISの使い方を幾つかご教授したって事を除けばそこまで特別なイベントは起こらず、この日を迎えた。

────だが、その前に言いたい。

今日の対抗戦、原作通りなら無人機の邪魔が入るがクラス代表が俺になったことで変わっていないかが心配だ。

そしてもう一つ。教室移動の際チラッと見えた鈴の顔がまるでこれから誰かを殺しにかかるような殺意マシマシの顔をしていたのだが、一体誰を殺しにかかるってんだ、、、、、

「ねぇねぇ、今日みなしー代表で戦うけど、準備は大丈夫~?お腹減ってるならお菓子あげよーかー?」

布仏が俺に視線を向け、机の中を漁って中からポッキーの箱を取り出すと、俺に向かって差し出す。

「ありがたく頂こう」

そう返して、俺は布仏からポッキーの箱を受け取り中からポッキーを一本取り出し口に咥える。

、、、、、ポッキーも意外とタバコっぽいな。シガレット程ではないが。

と考えていると、教室の入口から千冬が入ってきて教壇に立つ。

「さて、全員集まっているな。知っていると思うが、今日はクラス対抗戦の日だ。このクラスからは三七城が出場する。相手は二組のクラス代表にして中国国家代表候補生、凰鈴音だ」

瞬間、ザワザワと教室がざわめいた。

「え、あのいきなり代表譲ってもらったって子代表候補生だったの?」

「らしいけど、、、、ある意味可哀想」

「あの子は三七城くんの恐ろしさを知らないのよ、、、、南無阿弥陀仏」

「イギリスの代表候補生であるオルコットさんさえ蹂躙したからね、、、、中国の代表候補生といえど勝てるわけが無い」

皆、鈴のことを哀れんでいるようだった。

何故かセシリアがその話題を聞いた瞬間怒ったように顔をしかめていたのだが、気にしないでおこう。

「さて、これから全員でアリーナへ向かう。観客席に指定はないから好きに座れ。三七城、お前は先にピットへ向かいそこでISの準備をしろ。わかったな?」

「了解」

俺は千冬に軽く言葉を返してから席から立ち上がる。

「頑張ってね~」

「黒騎、ファイト」

教室から出る途中で後ろから応援のエールを貰ったので、俺は後ろの二人へ向けて右手の親指を立てた。

 

 

「、、、、、やっと来たわねぇ、、、三七城ォ、、、、」

「、、、、、なぜそこまで怒っている?」

ピットでラインバレルを纏い、アリーナへ出た瞬間に鈴から憎悪がこもりにこもった声が俺に向けて放たれる。

、、、、、いやホントなんでそこまで怒ってる?俺なんもヘイト買うような言動してねーぞ?

「忘れたとは言わせないわよ、、、、何度も何度も私と一夏の、、、、一夏のぉ、、、っ!!!!」

言いながら、鈴が自身の肩の近くに浮遊している棘付き装甲(スパイクアーマー)を展開し、不可視の砲身を展開する。

「、、、、、<龍砲>、か。不可視の砲身による弾道を悟らせない衝撃波によって対象へとダメージを与える武装。

────そちらが遠距離戦を挑んでくるのならば、こちらもそうさせてもらおう」

向こうが遠距離戦に持ち込んでくると判断した俺は、中央のテールスラスターを展開し中から<エグゼキューター>を取り出す。

そのまま射撃モードへと切り替えて鈴に向けて構える。

『ではこれより、クラス対抗戦第一試合、一組代表三七城黒騎vs二組代表凰鈴音の試合を開始致します!!!』

アリーナに大きく、試合開始を予告するアナウンスが響く。

『両者準備は、、、、いいですね。では第一試合、、、、

3!!

2!!

1!!

試合!!開始!!!』

「くたばれこの黒ヤロォォォォォ!!!!」

合図と共に、予想と反して鈴が俺めがけて突っ込んでくる。

その手には大型の青龍刀、双天牙月(そうてんがげつ)が両手に二本握られておりその刃先は俺に向けられている。

突っ込んでくる鈴に対して、俺は静かに<エグゼキューター>の引き金を二度引く。

緑のレーザーが鈴へ向かって直進するが、鈴はそれを<龍砲>を放ち相殺させる。

「、、、、、ただのエネルギーの無駄だな、使うのはやめよう。やはりこちらの方がいい」

俺は<エグゼキューター>をスラスターの中へ戻し、鞘から<不知火>を引き抜きいて正面から鈴の斬撃を受け止める。

ギィンと大きな金属音がなり、数メートル後ろへ押された直後、鈴の<龍砲>の照準が俺を狙う。

「、、、、ちっ」

それから逃れるために、腰部のテールスラスターを展開し個別連続瞬時加速を発動させる。

鈴の頭上を通って後ろへ回る軌道を取り、鈴の後ろをとった。

そのまま甲龍の背に<不知火>を振り下ろす。

<不知火>の刃が鈴に当たり、甲龍が絶対防御を発動させたためSEをかなりの量削れた。

「ぐっ!?やったわね!!?」

すぐさま鈴が<龍砲>の砲身を俺に向けてくるが、俺は上へ急加速しどうにか<龍砲>の砲撃を避ける。

撃たれた地面を見てみると、かなりの出力で撃っていたのか土煙が舞っている上にぽっかりとクレーターのような穴が空いていた。

「ああもう!!!ちょこまかと逃げ回るんじゃないわよ!!男のくせに!!!」

「男が逃げてはいけないというのは勝手な考えだ。時には逃げることも重要となる。そんな思考に染まったままでは俺には勝てんぞ、凰鈴音」

「ムキーッ!!!上から説教してんじゃないわよ!!!!」

怒りに身を任せ、といった様子で<龍砲>をかなりの威力で乱射してくるので、俺は回避に徹することにした。

あの様子では、エネルギーが切れるのも時間の問題だ。

いくら燃費と安定性を追求した甲龍といえど、エネルギーを使う武装をなりふり構わず乱射すればエネルギーの方が先に尽きる。

つまり、、、、、あわよくば向こうのエネルギー切れで俺が勝てる。

────下手すりゃセシリアより簡単に勝てるかもしれないな。

「ッ!!しまったエネルギーが!!」

だが、俺が思っていたことに気付いたらしい。

<龍砲>を撃つのをやめて、双天牙月を構えて突撃してくる。

慌てているようで、俺がこれから『何をするか』を考えていないらしい。

「、、、、攻守交替だな」

俺は大きく笑みを浮かべ、<エグゼキューター>を取り出しアリーナの天井へ向けて構える。

<エグゼキューター>の銃身が展開し、内側から黄金の装甲が現れる。

ラインバレルのエネルギーが<エグゼキューター>へと集まり、巨大な緑の刃を形成する。

それは、白式の零落白夜に劣らない威力を持った刃。

「ッ!!まずっ」

慌てて急制動をかけ、停止した鈴へ向けて光の刃を振り下ろす。

「終わりだ。凰鈴────」

────瞬間。

 

ズドォォォォォン!!!!

 

「「!?」」

アリーナに衝撃が走り、振り下ろした刃の軌道が鈴から外れアリーナの地面を大きく抉る。

音が聞こえた方を見ると、もくもくと煙が上がっている。

見上げると、アリーナの遮断シールドにぽっかりと『IS一機分』ほどの穴が空いていた。

────どうやら、原作通り来てくれたようだな。

『三七城、試合は中止よ!!すぐピットへ戻りなさい!!!』

鈴からプライベートチャンネルの声が聞こえると、俺の視界に文字が表示される。

────ステージ中央に熱源。所属不明のISと断定。ロックされています。

「、、、、ほう、俺を狙ってくるのか」

原作通りならば観客席にいる一夏を狙うと思っていたんだが、どうやら向こうの狙いは俺に変わったらしい。

『三七城!!さっさとしなさい!!』

「、、、、、、」

鈴からの忠告を聞きながら、俺は静かに<エグゼキューター>を構え、躊躇なく引き金を引く。

レーザーが煙の中へ吸い込まれるように向かうが、着弾音は一切聞こえなかった。

代わりに、レーザーが何かで弾かれたようなバチィという音が響いた。

『ちょっと三七城!?いきなりなにしてんのよ!?』

「落ち着け凰鈴音。ロックされているということは、向こうは俺らと戦う気だぞ。先手を撃たずしてどうする」

『いやそれでも』

鈴が叫び散らしていると、煙の中から一本の熱線が鈴に向かって飛んでくる。

『、、、、ッ!!やばっ』

混乱していたのか、対応が遅れている。急いで<龍砲>を展開してるがあのままじゃ確定で直撃だ。

「、、、、ちっ」

俺は小さく舌打ちをしてから、鈴の目の前まで瞬時加速で移動し熱線を<不知火>の刃で受け止める。

「っ、けっこう重いな」

熱線が切り裂かれて二つに分かれ、俺と鈴を避けるような軌道へ変化しアリーナの遮断シールドへ直撃する。

「、、、、凰鈴音、もっと警戒しろ。ロックされているのを忘れていたのか。俺が間に入っていなければ、今頃にはISが大破しているぞ」

『っ、わ、悪かったわよ』

「わかったのならいい。それより兎に角、向こうのISが御目見になるぞ」

煙が邪魔だと言わんばかりに、熱線が放たれ煙が吹き飛んでゆく。

しばらくすると煙が完全に無くなり、異形の『それ』が姿を現す。

深い灰色の装甲。

つま先よりも下まで伸びている、異常に長い手。

首なしで、肩と頭が一体化しているような頭部。

そして、、、ラインバレルと同じ『全身装甲』。

更に、通常のISとは違い腕を入れると二メートルほどの巨体で、体の各所に姿勢を維持するためのものなのかは分からないがスラスターが付いている。

頭部には剥き出しのセンサーレンズが不規則に並び、腕にはビーム砲口らしき穴が左右合計四つ存在した。

『三七城くん!!凰さん!!今すぐアリーナから脱出してください!!すぐに先生たちがISで制圧に「無駄だ」、、、え?』

山田先生が回線で呼びかけてくるが、俺はその間に割り込んで言葉を止めさせる。

「今アリーナの状況を見てみろ。入ってきた時はあっさり破られたのに、先程のレーザーの砲撃ではシールドは無傷。恐らく遮断シールドのレベルが4ほどになっているはずだ。ついでに扉も封鎖されていると見て良いだろう。ならば、俺らはここでこのISを食い止める」

『え!?何言ってるんですか!!生徒にもしものことがあったら────』

「すまないが、話はここまでだ。凰鈴音、協力しろ」

俺は回線を切って、鈴へ呼びかける。

「言われずとも、と言いたいところだけど、、、、アンタと協力するのが上手く行きそうにない気がしてならないのは私だけ?」

────いやどんだけ俺に恨み持ってんだよ、逆に尊敬に値するわ。

「つべこべ言うな。お前の動きに合わせて俺が動く。これで文句は無いだろう」

「、、、ああもう分かったわよ!!こうなったら溜まった恨みをあいつにぶつけてやるんだから!!!」

渋々といった様子で、俺の提案を受け入れた鈴は<龍砲>と双天牙月を構える。

いやまぁ、嫌なら断っても良かったんだがな。下手すりゃお前が居なくとも俺だけで勝てるし。

そう思いながらも、俺は初の原作キャラとの共闘に心踊っていた。

「、、、、さて、いざ戦闘開────」

開始。と言い、【オーバードライブ】を発動させ『ようとした』。

「、、、、ッ?」

急に、左腕の感覚が無くなった。

ダランと、俺の腕が垂れる。

「、、、、なんだ一体、、、!?」

疑問に思いながら、左腕を見てみると。

────感覚と、目に映る光景が、ズレていた。

ダランと垂れているはずの腕が、左横へ向けて腕を伸ばしている。

「、、、ッ!?」

次は右足の感覚が無くなり、バランスを崩して倒れる、、、、はずなのに。

視界に映る光景は一切変わっていない。

地面に体が付いている感触は、感じるのに。

『ちょっと三七城!?アンタのISエネルギーが急激に減ってるんだけど何が起こってるの!?』

回線から鈴の声が響いてくるが、俺にも何が起こってるのか分からないから答えようがない。

「分からん、、、急に体の感覚が無くなっ、、、、ッ!!」

今度は右腕。

素早く次が来て、左足。

「、、、、っ!?なんだよ、、、ッ!?なんなんだよっ!?」

『三七城!?大丈夫なの!?』

次は、ゆっくりと胴体の感覚が無くなってくる。

まるで、何かに『乗っ取られる』ように、下半身の方から、じわじわと。

遂に体の感覚が無くなり、残っていた頭さえもじわじわと感覚が無くなってゆく。

「やめろ、、、っ!!やめろっ!!!」

叫ぶが、感覚の消失は止まらない。

頭までそれが登って来たせいか、段々と意識が微睡んでくる。

 

────ムジン、IS。

 

────シノノノ、タバネ。

 

「っ?、、、、誰、だ?」

微睡んでゆく感覚の最中で、声が聞こえた。

その声を、俺は聞いたことがあるしよく知っている。

だが、今発せられているその声は、憎悪に染まりきっている。

 

────シノノノォ、、、、タバネェェェェェェェ!!!!!!

 

その叫び声を聞いた瞬間、俺の意識はフッと消えた。

 

 

 

 

 

「ちょっと三七城!!どうしたのよ!!」

鈴は真横にいる黒騎に対して声を大にして呼びかける。

先程から、ISのエネルギーが急減少したり、「体の感覚が急に無くなった」や「なんなんだよ」といった意味が分からない叫び声を発していたと思いきや、急に回線を切られたのだ。

こうなれば、誰でも心配する。

「、、、っ!?三七城!?さっきから一体何が起こってるの!?」

急に、視界に『回線復帰』の表示が映し出され黒騎と回線が繋がる

、、、、だが。

 

────ラインバレル、三七城天児の電子コード確認。IS殲滅システム【アマガツ】暴走機動(オーバードアクティベート)

 

回線の向こうから聞こえてきたのは、無機質な機械音声だった。

「ちょっと!?無事なんでしょ!?ふざけないでよ!!!」

黒騎がふざけて発しているのかと思い、そう呼びかけるが返答はない。

「、、、、、ノ」

「っ!!ねぇ三七城!!」

さすがにおふざけが過ぎるので、ラインバレルの肩に腕を置いてこちらへ顔を向けさせようとする。

、、、、瞬間。

「、、、、シノノノォ、、、、タバネェェェェェェェ!!!!!!」

「が、、、、っ!?」

腹に強く殴られた衝撃が走り鈴は後ろへと大きく吹き飛ばされる。

そしてアリーナの壁へぶつかり、甲龍のSEが大幅に削られる。

「ごほっ、げほっ、、、い、いきなり何すんの、、、!?」

血が混じった咳を出しながら、黒騎の方を向く。

だが、鈴の視界に映るラインバレルの姿が、違った。

純白の装甲は黒へと変わり、腕と腰部のスラスターの装甲が展開し、そこから禍々しい血のような粒子を放っている。

さらに、目にあったはずの緑の双眼がバイザーのようなものに覆われ赤の単眼へ変化し、口に当たる部分の装甲が展開し、そこから低い咆哮が発せられる。

「な、、、、なんなのよ、、これ、、、!?」

鈴は小さく呟く。

「ブッツブレロォ!!!!!」

考えている間に、ラインバレルが地を蹴って加速し異形のISに蹴りを入れる。

異形のISはそれを腕で受け止めるが装甲がミシミシと音を立ててひしゃげ、遮断シールドまで蹴り飛ばされる。

蹴り飛ばされたことで関節がイカれたのか、異形のISがギギギという音を鳴らしながらゆっくりと動くが、ラインバレルはその上に向かって飛んで急降下しながら拳を突き出す。

ドォン!!!と一際大きな音が鳴った直後、衝撃波が発生してアリーナ全体に砂塵が舞った。

一寸先も見えないような状況に立たされ、鈴は困惑する。

だが、そんな状況の中でアリーナにはガァンゴォンという鉄と鉄がぶつかり合うような鈍い音が、連続して響き渡っていた。

『凰さん!!!先程から三七城くんの生体反応が意識不明となっているんですが、何が起こってるんですか!?』

「分からないわよっ!!!いきなり変なこと言い出したと思って殴られたと思ったらこれよ!!!私にも訳が分からない!!!!」

急に山田先生から回線が繋がるが、動揺しているせいで敬語を忘れ怒鳴り気味に答えてしまう。

『そちらから三七城くんの様子は確認出来ますか!?こっちの方は砂塵のせいで全く見えません!!』

「こっちも同じよ!!!本当なら甲龍動かして見に行きたいんだけど、さっき殴られたせいか甲龍が言うことを、、、、ちっ!!!」

そう、先程殴られた影響か甲龍が思ったように動かなくなっているのだ。

こんな状態では、見に行きたくとも行けない。

しばらく待機していると、先程までうるさかった鈍い音が一際大きいガァン!!!という音を皮切りに消えた。

更に、砂塵が消えてラインバレルの姿を確認できるようになったところで。

「、、、、、は?」

鈴は自身の視界に映った光景を疑った。

先程まで猛威を奮っていた異形のISの装甲があちこちひしゃげており、腕部は引きちぎられ地面にその残骸が転がっていた。

頭部には、まるで握りつぶされたようにラインバレルの手の跡がくっきり残っている。無論センサーレンズは全て割れており、そこから魚の目のようなカメラアイが露出している。

下半身も引きちぎられ、その残骸が鈴の目の前に置いてあった。

そして、今鈴の目の前で胴体の装甲も引き裂かれ、そこからISの心臓部であるISコアが露出する。

ラインバレルは、躊躇うことなくそのコアに手を伸ばし、握り潰す。

金色の粉末が、ラインバレルの手から舞い落ちる。

「、、、、え?」

そこで、酷く違和感を感じた。

────人が、乗っていない。

人が乗らないと動かないはずのISが、人を乗せずに動いている。

「まさか、無人機、、ッ!?」

鈴の言葉に反応するかのように、ラインバレルがギロリと鈴を睨む。

「、、、、アイ、、、、エス、、、、、ッ!!!!」

ラインバレルが鈴のいる方向へと体を向け、ゆっくりと体を揺らしながら近づいてくる。

手のひらに、圧縮転送フィールドを発生させながら。

「えっ?ちょっと三七城?流石に冗談よね、、、?」

酷い悪ふざけだ、と思いながら鈴はラインバレルを見据えるが、その歩みは止まらない。

、、、、遂に、鈴の目の前に来た。

手のひらを、鈴へ向けてゆっくりと動かしてくる。

「ね、ねぇ三七城、、、さっきのことを怒ってるのなら素直に謝るわ。だからこんな悪ふざけは、、、、ガッ!?」

先程の発言に怒っているからこんなことをしている、と考えた鈴は謝罪するが、途端にラインバレルが圧縮転送フィールドを消して鈴の喉を掴んで締め上げてくる。

「、、、、、、、シェン、ロン、、、、、、ダイサンセダイ、、、ッ!!!!」

「ぐ、、、、が、、、、っ」

ラインバレルが怒りを込めた声を放ち、鈴の首をさらに強く締める。

手足を動かしてもがくが、力が緩まる気配はない。

「、、、、シ、ネェ、、、、!!!!」

甲龍の絶対防御も発動せず、段々と意識が薄れていく。

 

────ああ。ここで私、死んじゃうのか。

────嫌だ、、、死にたくない、、、、!!!

────まだ、言えてないのに、、、、、死ねないのに、、、、、

「いち、、、、か、、、、、」

朦朧とした意識の中、鈴は遺言のように呟──────

 

「リィィィィィィィィィィィィィン!!!!!」

 

────いたがその叫び声を聞いて意識が戻る。

一夏の駆る白式がラインバレルの腕を切り落とし、鈴が拘束から開放される。

だらんと地面に倒れそうになったところを一夏が支える。

「鈴、大丈夫か!?」

「、、、、いち、か?」

「ああ!!遅れてごめん!!」

「、、、、、一夏、、、ッ!!!」

段々と、鈴の目から涙が溢れてくる。

思わず一夏へと抱きつきそうになったが、体が動かず成すことは出来なかった。

「後は俺に任せろ。今教師の人達も来たから、もう大丈夫だ」

その言葉を聞いた瞬間、先程まで命の危機に晒されていたせいか強烈な眠気が鈴を襲う。

ゆっくりと瞼を閉じる鈴が見た光景は。

 

 

────白い騎士と、黒い鬼が向き合っている瞬間だった。

 

 

 

 

 

「ふんふんふーん♪」

「、、、、束様。今度は一体何を作っているのですか?」

「いやーちょっと、ね。くーちゃんへの『プレゼント』を作ってるんだ!!!多分今回のラインバレルの暴走でくーちゃんのラインバレル没収されちゃうと思うから、、、、専用機からいきなり量産機に乗せられるっていうの、可哀想じゃん!!!」

「、、、、それにしても、、、、飛行機型のISですか?珍しいですね」

「いやいやただの飛行機型なわけないじゃん!!!まぁくーちゃんが装着してからのお楽しみなんだけど」

「これをどうやって三七城黒騎へ?」

「、、、、クーちゃん、お願い♪」

「、、、、分かりました。それで、この機体の名前は決めているのですか?」

「うん!!とってもいい名前を決めてあるのさ!!!この機体にはあーちゃんの<無銘>のコアを積んでるからね!!適当に付けたらあーちゃんに怒られちゃう!!」

「、、、、三七城藍子が乗っていた、<白騎士>と同じく始まりのISである<無銘>。

、、、、なるほど、織斑一夏のような状態にするのですね」

「まぁそれもあるけど、メインはくーちゃんにあげることだからね!!!そこのところ間違えないように!!!」

「、、、、すいません。そして改めてこの機体の名前を、、、、」

「ああごめんねクーちゃん!!!それでね、じっくり考えた結果。

この機体の名前はね──────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────救世主(メサイア)

 



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原作第二巻
overd wepon


キバのsupernova聴いて気分がノッていた&推しが出せるので早めの投稿。



ISーインフィニット・ストラトスー

White of black

 

第八話 overd weapon

 

 

「おい黒騎!!!聞こえてないのか!?おい!!」

俺は目の前にいる友人に声をかけるが、返事の代わりにフシュゥゥゥゥという低い咆哮が返ってくる。

クラス代表によるクラス対抗戦の最中、会場に突如として『無人IS』が奇襲。

しかし、俺にとって家族のように大切な親友、黒騎が駆るラインバレルがそれを破壊、直後に暴走し対戦相手の鈴を攻撃したのだ。

俺も、聞いた時には信じられなかったが直接目で見たことにより信じざるを得なかった。

『織斑くん、鈴さんを連れて退却を!!ここは私たち教師に任せてください!!』

地を滑走するように移動しているISに乗ってきた山田先生が通信をかけてくる。

「で、でもあいつは!!」

だが、俺は逃げる気になれない。何故なら、、分かってしまう。

今の黒騎は、恐ろしく強い。教師だけでは負ける。

そういった確信があった。

「……オリ、ムラ」

「ッ!!黒騎!?無事なのか!?」

指をギギギと動かしながら、黒騎が言う。

だが……

「シロ……キシィィィィィィ!!!!!!」

叫びながら、地を蹴って黒騎が駆るラインバレルが俺に向かって加速してくる。

「黒騎っ!!俺だ!!一夏だ!!わからねぇのか!?」

必死に呼びかけ、叫ぶも、向こうが止まる気配はない。

段々と俺に近づいてきて、目の前まで来ようとしたところで。

「何やってるんですか!!!」

俺の目の前に山田先生が割り込んで、巨大なシールドを前面に展開する。

ガァン!!と音を立てて黒騎がシールドへ突っ込む。

「ドケェ!!!ザコドモガァ!!!!!」

しかし、黒騎が尋常ではない力でシールドを殴り、山田先生が構えているシールドがどんどんひしゃげていく。

「逃げてください!!早く!!」

「わ、分かりました!!!」

血気迫る様子で言われ、言われるがまま眠っている鈴を持ってアリーナの出口へ向かう。

このまま鈴を医務室へ連れて、その後に黒騎を………

「きゃぁぁぁぁぁぁっ!?」

「ぐわぁぁぁぁぁっ!?」

「ッ!?先生!?」

出口へ着いた瞬間、複数名の教師の悲鳴が同時に聞こえた。

その中には、山田先生の声も含まれる。

「……鈴、ここで待っててくれ。ちょっと行ってくる」

このままじゃマズイ。そう直感した俺は出口の壁に鈴をゆっくりともたれかからせる。

手に<雪片弐型>を展開してアリーナの内部へ向かって思いっきり加速する。

「………まじ、かよ」

アリーナの中の光景を見て、俺の口から出た言葉がそれだった。

先程までISに乗っていた十数人ほどいた教師たちが、全員ISを解除し地に伏せ倒れている。

それも、俺がアリーナの出口へ鈴を連れて行っている間に、だ。

「………これ、勝てるか?」

今更だが、勝てるかどうか怪しくなってきた。

相手は、熟練のIS乗りでもある教師たちを一斉に相手取り、その上ISが展開不能になるほどのダメージを全員に与えている。

素人同然の俺では、まず絶対に勝てない。

……でも、俺がやらないと皆に被害が及ぶかもしれない。

そこで、俺の腹は決まった。

「……黒騎、これはお前の意思でやってるわけじゃないってことは何となくわかる。けどな」

俺は<雪片弐型>をラインバレルに向け。

「ちょっと歯を食いしばっとけ」

俺より圧倒的な敵に対して、宣戦を布告する。

その言葉に反応するように、ラインバレルが体を震わせて俺の方を見る。

「……ハカイ、スル。シロキシ………!!!!」

ドォン!!という音を立ててラインバレルが地を蹴り俺に向かって加速する。

「来い!!!」

一回転し、ラインバレルが俺に向けて蹴りを繰り出して来るがそれを<雪片弐型>で真っ向から切りかかる。

ギィン!!と蹴りが<雪片弐型>にぶつかり、斬撃と蹴りが拮抗し止まる。

「ッ!!!!」

その蹴りの重さに、一瞬よろけそうになる。

一度、黒騎とは模擬戦で戦ったことがあるのだが、蹴りの強さがその時よりかなり強い。

まるで……怒りに身を任せて暴れているかのように、強力で荒々しい。

それが、今の黒騎の戦い方が、気に入らない。

「こんなの…お前の戦い方じゃないだろ!!!!」

<雪片弐型>に思い切り力を乗せ、蹴りを押し返す。

「目を覚ませ!!!黒騎!!」

「………シロキシ……ハカイ……やめ、ろ……」

瞬間。ラインバレルが頭を抑えると、怒りに染まりきった声以外に、苦しげな黒騎の声が聞こえた。

やはり、自分の意思で動かしているわけではないようだった。

「黒騎!!!今止めてやるからな!!!」

「……一夏……【零落白夜】を、ラインバレルに……俺が抑えていられる間に……!!!」

どうやら意識が少しながらも戻っているようで、必死でラインバレルを抑えてくれているようだった。

「わかった!!!ちょっと歯を食いしばっとけよ!!!!」

言われた通りに、【零落白夜】を発動させるため、<雪片弐型>へエネルギーを貯め始める。

だが……

「オレノジャマヲ……スルナァァァァァァ!!!!!」

ラインバレルが拘束を振り払うように手を振り回してから空へ向けて叫び、俺へ向けて再び加速してくる。

「しまっ……」

今は<雪片弐型>にエネルギーを送るため静止している。こんな状況じゃ避けられない。

気づけば、目の前にラインバレルの拳が…ああ、俺死んだな。

「やめてッ!!!!」

ガキィン!!!と目の前に『黒のIS』が割り込んで来てラインバレルの拳を俺の代わりに受け止める。

「黒、騎……っ!!!」

その割り込んで来たパイロットを、俺は知っている。

「ッ!!!ボードウィーク……!?」

ライラ・ボードウィーク。黒騎のルームメイト。

「お前、避難したんじゃ……!?」

「黒騎が暴れてるって、聞いたから………止めに来た!!!!」

ライラがラインバレルを睨みながら叫ぶと、ラインバレルの腕を掴み身動きが取れないようにワイヤーブレードを射出して自身ごとラインバレルを拘束する。

「【零落白夜】を使って!!早く!!!」

「は!?お前も巻き込まれるぞ!!!」

【零落白夜】は一撃必殺な分、制御が効かない。

もしこのまま放てば、確実にライラが巻き込まれる。

「いいから!!!早くしないと拘束が……くっ!!!」

「ハナセッ!!!!コノクソアマガァァァァァ!!!!」

ラインバレルが全身をバタバタと動かし、拘束から逃れようともがく。

普通なら脱出不可能な程の拘束だと思うのだが、いかんせん機体自体の力が尋常ではない。

ライラが気を抜いてしまえば、すぐに外れてしまいそうなほどラインバレルが暴れる。

「………ッ!!!すまねぇ!!!!」

そう叫びながら、<雪片弐型>に最大までエネルギーを貯め【零落白夜】を発動する。

巨大なエネルギーの刃が、<雪片弐型>から展開される。

「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

雄叫びを上げながら、その刃をラインバレルに向けて振り下ろす。

「コノ……ヤクサイガァァァァァ!!!!!」

【零落白夜】の刃が、ラインバレルとライラを切り裂く。

それによって両方のエネルギーがゼロになったようで、ラインバレルとライラのISが解除される。

「「黒騎!!!」」

二人同時に黒騎の元へ駆け寄る。

「……気絶してるみたい」

「……だな」

さっきまで暴れていたというのに、黒騎は安らかにすぅすぅと息をして気絶していた。

「ボードウィークさん、ありがとう。君が居なかったらヤバかった」

あの時、ライラが割り込んで来てくれなければ確実にやられていただろう。

そう思い、感謝の言葉を言わずにはいられなかった。

「ライラでいいよ。そして、私からもお礼を言わせてもらうね。ありがとう、黒騎を止めてくれて」

「親友を止めるのは親友の役目だろ、だから礼はいらないぜ」

そう返すと、ライラは笑顔を浮かべて黒騎の方を向く。

「……良い友達だね。黒騎の友達は」

どこか儚げに、ライラが呟く。

 

その後、後からやってきた先生方が黒騎を医務室へ運び、俺らは怪我をしていなかったので教室へと戻った。

 

 

 

 

 

 

────なんで私を憎むの?

 

────テメェらに、人生を、妻を、俺自身を奪われたからだ。だからテメェらが憎い。

 

────やったのはあの馬鹿達だよ。私はただ使われただけ。嫌だったけど、従うしかなかった。

 

────殺されたいのか、クソ餓鬼が。やった時点でテメェも関係者だ。ブッ壊す。

 

────壊してくれてもいいけど、まだやめて欲しい。『時期』が来たら殺してもらいたいけど。

 

────テメェの願いなど聞かねぇ。必ず、殺してやる。必ずだ。

 

 

 

 

 

 

 

「────ッ!!!!」

目が覚める。

まず目に映ったのは、真っ白な天井。

背にはふかふかの感触。

どうやら、俺は学園の医務室のベッドの上で横になってるらしい。

カーテンが閉められているせいで、周りを見ることは出来なかったが。

昨日は……確かラインバレルが制御不能になって………途中で目が覚めたら鈴を攻撃していて……そして一夏の【零落白夜】で……!!

「あ、起きた?」

聞いたことがある声と共に、カーテンがシャァァと音を立てて開く。

「……何の用だ」

そこには、現IS学園生徒会長であり最強である更識楯無がいた。

以前の怪我は完治しているらしく、腕や足に包帯は見えない。

「いや、ちょーっと言いたいことがあってね。まぁすぐ終わるから気楽にしてて」

楯無はそう笑いながら言うと、近くにあった椅子を俺のベッドの横までずらして座る。

「………君のラインバレル、正式に『封印』することが決定したから。今君が遠隔で呼ぼうとしても呼べない場所に置いてあるから、もう二度とラインバレルには乗れないと考えてちょうだい」

「………は?」

は?待て?封印?まさかラインバレルが鈴を────ッ!!!

「……その様子だと知らないようね。それじゃあ君が寝ている間に起こったことを見せてあげる」

楯無がポケットからスマホを取り出し、しばらく指を走らせた後俺にその画面を向けてくる。

それは、ちょうど俺が気絶したと思われる部分から始まった。

ラインバレルが鈴を殴り飛ばした直後、ラインバレルの白色の部分が黒に変わり、黄金の放熱板からは血のような粒子を放っている。

目のツインアイにはバイザーが下ろされ赤い単眼へと変化し、口元の装甲が展開して禍々しい口が開く。

「………アマ、ガツ」

自然と、俺の口から言葉が出ていた。

俺の目に映る今のラインバレルの姿は、本編では圧倒的な存在感を見せつけ、パイロットである主人公を乗せながら暴走した形態であり、とあるスパロボシリーズでは敵として登場し猛威を奮い、何人ものプレイヤーを驚愕させ『経験値泥棒』のあだ名を付けられるほど暴れた……ラインバレルの本来の形態。

【ラインバレル・アマガツ】。それがその形態の名前だった。

「……へぇ、この形態アマガツって言うんだ」

「なぜ……なぜアマガツがラインバレルに………!?」

知らない。なんでラインバレルにアマガツが?まさか本編みたく………俺の親父の脳載っけられてる訳じゃないよな……?

映像に目を向けると、ラインバレルは無人機を圧倒的な力で蹴る。

シールドバリアーによって並大抵のことでは傷つかない装甲が簡単にひしゃげ、アリーナの端まで蹴り飛ばされる。

そこからは、もう虐めの領域だった。

無人機の腕と下半身を引きちぎり、投げ捨ててから頭を強く握り、無人機の胴体部分の装甲を引っペがして露出したコアを握りつぶした。

そのあとは、俺の見た通りだった。

ラインバレルが鈴を攻撃し、その途中で一夏とライラが乱入し協力してラインバレルを止めた。

「………ふざ、けるな」

まず出た声が、それだった。

親父、なんでこんなシステムをラインバレルに………!!!!

「……まぁ、これが封印するに至った理由。文句は受け付けないわ。もう決定したから」

「………ああ」

俺は力なく、そう返すことしか出来なかった。

 

 

 

「やっぱりハヅキ社製のがいいなぁ」

「え?そう?ハヅキのってデザインだけって感じじゃない?」

「そのデザインがいいの!!」

「私は性能的に見てミューレイのがいいかなぁ。特にスムーズモデル」

「あー、あれねー。モノはいいけど、高いじゃん」

あの事件からしばらく経った日、俺は相変わらず肩を落としながら和気藹々としている教室の中で一人通夜ムードで居た。

ラインバレルが封印決定になった。仕方の無いことだなと思っていたのだが……ライラまで居なくなったから寂しい。

なんとそのしばらくの間にライラが別の部屋に行ってしまったのだ。部屋が空いたらしく、そこへ移ることになったらしい。だから今の俺のLPはゼロ。死にそう。

流石にマズイと思ったのか、学園から俺専用のものとしてのラファール貸し出されたが……悪いけど傷口に塩塗ったくられた気分になった。

今日は一夏やライラから質問攻めに合うかもと思っていたのだが、二人とも空気を読んでくれているのか誰かから教えられたのかは分からないが何も聞かずにただおはようとだけ挨拶はしてくれた。

だが………あったものが無いっていうのは、非常に辛い。

「……騎」

ラインバレルは形見でもあった。だからそれが無いのは、寂しい。

「黒騎、ねぇ黒騎」

「……なんだ」

「元気出して、私にできることがあったら協力するから」

ああ、前言撤回。女神がここに居た。この子のおかげで大概のストレスはどうにでもなる。

「……すまない、大丈夫だ」

俺は姿勢を正して、正面の黒板を向く。

「諸君、おはよう」

教室の扉が開き、千冬が教室へと入ってくる。

「「「おはようございます!!」」」

それまでザワザワとしていた教室が一瞬で静まる。

「今日から本格的な実践訓練を開始する。訓練機ではあるがISを使用しての授業になるので各自気を引き締めるように。各自のISスーツが届くまでは学校指定のものを使うので忘れないようにな。忘れた者は代わりに学校指定の水着で訓練を受けてもらう。それでもないものは、まぁ下着でも構わんだろう」

待て待て。水着は、マズイ。ここに男子二人居るのを忘れてないか?

と、俺は心の中で千冬にツッコむ。

ちなみに本編でもあったように、学校指定のISスーツはタンクトップとスパッツをくっ付けたようなやつだった。

まぁ、俺は【Dーゾイル】の効果でそんなの着なくとも大丈夫なんだがな。(ISは壊れるらしいから全然大丈夫じゃないけどな)

「では山田先生、ホームルームを」

「は、はいっ」

一通り重要な報告をし終えたのか、千冬が山田先生へバトンタッチする。

「ええとですね、今日はなんと『転校生』を紹介します!!しかも二名です!!」

「え……」

「「「ええええええっ!?」」」

いきなりの転校生紹介に、クラス中が一気にざわつき始める。

ふーん、転校生か。………ん?転校生?……ゑ!?

え!?ちょっ!?おまっ!?今日だっけ!?転校してくんの今日だっけ!?

俺は予想外の事態に感情が大暴れする。

顔はどうにか平然を保てているが、手の方は制御が効かず机の中でひたすらガッツポーズをとっている。

そりゃそうだろう。だって推しがいきなり自分のいる学校に転校してくるとなったら誰だってこうなるだろ。

そんな風に静かに暴れていると、教室のドアが開く。

「失礼します」

「……………」

クラスに入ってきた二人の転校生を見て、ざわめきがピタリと止まる。

フォォォォォォォォォ!!!!シャルロットダァ!!!!!ホンモノノシャルロットダァァァァァァ!!!!!

俺は入ってきた内の一人を見て、心の中で大狂乱する。

────シャルロット(俺の推し)が、学校へ来たからだ。

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思いますが、皆さんよろしくお願いします」

シャルルがにこやかな顔で言ってから一礼する。

「お、男……?」

一夏がそう呟くが今の俺には聞こえない。

ああ……笑顔がマブい。心撃たれる。ズキューンと。

既に知っているかもしれないが、俺はシャルロッ党である。本編でのシャルロットの可愛さに心撃たれた党の一員である。

初めはこうやって男としてIS学園に来るんだよな。ってか男装してるけど俺からすりゃ十分可愛い。この時点で俺がこうなってるなら……うん、女子に戻ったら軽く死ねるな俺。

「はい。こちらに僕と同じ境遇の方が二人いると聞いて本国より転入を──」

アア~脳が溶ける。シャルロットボイス最高。

語彙力は死んだ。ここにいるのは(語彙力)ランク(下から)1、三七城黒騎だ。

「きゃ……」

「はい?」

『きゃぁぁぁぁぁぁ────っ!!!!』

「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!」

クラスの女子たちが歓喜の叫びを上げたので、俺も女子に便乗してバレないように雄叫びを上げる。

「男子!!三人目の男子!!」

「しかもうちのクラス!!」

「美形!!守ってあげたくなる系の!!」

うんうん、今の言葉を言った女子とはいい酒が飲めそうだ。

「地球に生まれてきてよかった~~~~」

この瞬間だけ、俺はこのクラスの全員と酒を飲みながらシャルロット談義をしたい気分になった。まぁ俺含む皆、年齢のせいで飲めねぇけどな!!!(泣)

「あー、騒ぐな。静かにしろ」

うっとおしそうに千冬がぼやく。だが残念ながら今の俺らの気分の高揚は誰にも止められんぜ!!!フォォォォォォォォォ!!!!!

「み、皆さん静かに!!まだ自己紹介が終わってませんから~!!!」

おっと、そうだ。この後はシャルロットと同時に転校してきたあの軍隊少女の紹介があった。

俺はその少女、ラウラ・ボーデヴィッヒに目を向ける。

────うーん、やっぱ原作通り軍人って感じだな。

目に光がないような、そんな冷たい目をしてる。

「……………」

当の本人は、無言のまま後ろで腕を組んでいる。クラスの女子たちを下らないものでも見るように見下しながら。

「……挨拶をしろ、ラウラ」

「はい、教官」

いきなり佇まいを直して素直に返事をし、千冬に敬礼をするラウラにクラス一同がぽかんとする。

敬礼をされた千冬はさっきとはまた違った面倒くさそうな顔をした。

「ここではそう呼ぶな。もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。私の事は織斑先生と呼べ」

「了解しました」

両手を伸ばて体の横につけ、足をかかとで合わせて背筋を伸ばす様は、本当に軍人だった。

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

「…………」

教室に再び静寂が訪れる。クラスメイトらは続く言葉を待っているようだったが、多分いくら待っても出てこないぞ。

「あ、あの、以上……ですか?」

「以上だ」

わーお、一気にお通夜ムードへ変わりやがった。

山田先生が笑顔で聞くが、返ってきたのは無感情な即答。いや冗談抜きで山田先生可哀想。もう泣いちゃいそうになってるし。一夏、慰めてやれ。(無茶ぶり)

そんなことを考えていると、ラウラとバッチリと目が合った。

「!!貴様らが────」

つかつかと、ラウラが一夏へ向けて歩き出す。

 

バシンッ!!!

 

ラウラが一夏の頬に、思いっきり平手打ちをかます。

うおっ!?ちょっと待て!?今の痛そうな音したぞ!?本編じゃあまり痛さが分からなかったがこれは痛いって音したぞオイ!?

「…………」

「う?」

訳が分からないといった様子で、一夏がぽかんとする。

「私は認めない。貴様があの人の弟であるなど、認めるものか」

「…………ッ!!!いきなり何しやがる!!」

我に返った一夏が叫ぶも、無視するように席へ………あれ、今度は俺の方へ?なんか嫌な予感が…構えとこ。

案の定、俺にも平手打ちをかまして来そうになったのでラウラの腕を掴んで止める。

その際ラウラが怒りを現すように顔をしかめ、俺を睨む。

「……認めない。認めてたまるか。貴様があの人の一番弟子であるなど」

───どうやら、あの事件で俺も攫われたからかラウラのヘイトは俺にも向いてるらしい。

まぁ、知ったこっちゃねぇがな。

「大人しく席へ座れ。ラウラ・ボーデヴィッヒ」

俺も少しだけ怒りを顕にして、ラウラを威嚇すると「ふん」と鼻を鳴らして掴んでいた俺の手を振りほどき、席へ戻っていった。

「あー……ゴホンゴホン!!ではHRを終わる。各自すぐに着替えて第二グラウンドに集合。今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。解散!!」

その言葉を聞いた瞬間に俺は席から立つ。早めにクラスから出ないとクラス内にいる女子と着替える羽目になってしまう。それだけは回避せねば。

確か今日は、第三アリーナの更衣室が空いてた気が……

「おい三七城。デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子だろう」

「……へ?」

え、今千冬さんなんと仰った?あれここ原作じゃ一夏じゃ………(’ω’)ファッ!?

ええい!!何か知らんがこれはチャンス!!!男は攻めるのみィ!!!!

「君が三七城君?初めまして。僕は──」

「すまないが挨拶は後だ。先に移動するぞ。でなければ女子と着替えることになる」

俺はシャルルの手を取り、教室を出る。

フォォォォォォォォォ!?!?柔けぇ!!めっちゃ柔けぇ!?

やばいやばいやばい、一旦冷静にならねぇと!!

「男子は空いているアリーナで着替えることになっている。これから実習の都度移動することになるから、早めに覚えておいた方がいいぞ」

「う、うん……」

そわそわと、シャルルが落ち着かなさそうにしている。

「どうした、不調でもあるのか?」

「いや、大丈夫…」

「ならいい。不調があればすぐ言え」

「わかった……」

このまま階段を降りて一回へ。そのままの速度で廊下を突っ切らないと────

「ああっ!!転校生発見!!」

「しかも三七城君と一緒!!」

そう、既にHRは終わっており廊下には各学年の情報収集係のような女子が群れを成しているからだ。

だが……今日はいくらなんでも多すぎる。道が塞がってて通れねぇ。

「者ども出会え出会えい!!」

ホントなんでIS学園にはユニークなキャラが沢山いるんだろうな。これが世界最難関の入試を突破してきた人達だとは思えねぇ。

「三七城君の金色メッシュの黒髪もいいけど、純粋な金髪っていうのもいいわね」

「しかも瞳はアメジスト!!」

「きゃああっ!!見て見て!!ふたり!!手!!繋いでる!!」

「日本に生まれて良かった!!ありがとうお母さん!!今年の母の日は河原の花以外のをあげるね!!」

「残虐鬼帝×純粋貴族……攻めと受け……鼻血出そう」

きゃいきゃいと騒ぐ女子達を見ながら、俺の心は絶望していた。

駄目だ終わった。どう足掻いても通れねぇ。この後千冬からの出席簿ストライク&地獄の補習を食らうことになる………もう駄目だ、おしまいだぁ………

────とでも、言うと思ったか?この程度想定の範囲内だぜ!!!!

「ジェネレーター出力再上昇。オペレーション、パターン2」

「え?今なんて言ったの……わっ!?」

本来なら駄目だが、今は緊急時(?)だ。致し方ない。

俺はシャルルの首と膝裏に腕を添えて持ち上げ、俗に言うお姫様抱っこをして壁に向かって走る。

「ち、ちょっと三七城君!?」

シャルルが顔を真っ赤にしていた。それがクッソ可愛くて鼻血が出そうになったが堪えて壁に向けて走る。

「少し黙っていろ。舌を噛むぞ」

そのまま【Dーゾイル】の力を使い浮遊し、壁に足裏を着けて最短距離を征くため走る。

「「「…………え?」」」

シャルル含む女子がぽかんとしながら俺を見る。

残念だが、俺は死にたくないんでね。質問を聞いてる暇などないのさ。

そう心の中で呟き、俺はアリーナへ向けて全力で走る。

その道中でも様々な妨害に遭ったが、何もかも【Dーゾイル】の力で突破してやった。

特に遅れることはなく……いや、むしろ【Dーゾイル】の力を使ったおかげでいつもより五分近く早く来ることが出来た。

「着いたぞ。今から下ろす」

「は、はい……」

顔を赤くしながら何故か敬語になっているシャルルの返事を聞いてから、ゆっくりと下ろす。

どうせ更衣室近いし、もうここで挨拶済ませておこう。着替えてる最中じゃダメだしな。

「さて、それではここで軽く挨拶させて頂こう。俺は一年一組所属、三七城黒騎。呼ぶ時は気軽に黒騎とかみなしーとかでいい。専用機を持ってたが、諸事情により今は持っていない。だから今乗っているのはラファールだ。以後、よろしく」

「よ、よろしく。僕のこともシャルルでいいよ、黒騎」

「了解した、シャルル」

そう名前を呼ぶと、シャルルが更に顔を真っ赤にする。

その顔を、外では平然として心の内では「可愛い…( ゚ཫ ゚)ゴフッ」と吐血しながら数秒見た後に更衣室の入口のパネルを操作する。

いつも通り圧縮空気が抜ける音を響かせながら、ドアが斜めにスライドして開く。

「……ふむ、まだ時間に余裕はあるな。着替えに五分ほど使っても有り余る」

時計を見ると、まだ授業開始十五分前だった。今から着替えても十分間に合う。

「さて、では早速着るとしよう」

制服のボタンをプチプチと開けていき、それをロッカーにしまってからTシャツも脱ぐ。

「わあっ!?」

綺麗な悲鳴ありがとうございます(ΦωΦ)グヘヘ…

そう、これはあえてわざとやった。推しの悲鳴を直に聞きたかったから。悔いはない。

「……?どうした、着替えないのか?それともやはり体調が優れないのか?」

シャルルの悲鳴に対して、俺はそう聞く。

「い、いや、き、着替えるよ?体調も大丈夫だから、とりあえずあっち向いてて……ね?」

「?了解した」

俺は頭にハテナを浮かべながらシャルルの言う通りにシャルルとは反対の方を向きながら着替える。

…………うん、めっちゃ視線感じる。これでもかってくらい感じる。

からかいたくなったので、学校指定のISスーツのジッパーを上げようとしたところでシャルルに声をかける。

「シャルル、先程から俺を見ているようだが……面白いものでもあったか?」

「え!?み、見てないよ!?何を言ってるのかな!?」

必死に反論するように、声を大にして言葉を返してくる。ああ、最高。

「……そうか。ではそういうことにしておこう。では俺らは早めに行くとしよう」

「そ、そうだね!!うん、それがいいと思うよ!?」

さっきのことでかなり焦っているようだ。おかしな口調になっている。

ああ………これが『仰げば尊死』ってやつか…………

「授業開始五分前にきっちりと来るとは、真面目だな」

第二グラウンドに着き次第、千冬からそう言われる。まだ生徒はあまり来ておらず、俺とシャルル、その他一夏と箒、セシリアと鈴、更にラウラを含め数名といったぐらいだ。ちなみに専用機持ちは皆ISを展開している。

「織斑先生、俺とシャルルもISを展開していいですか?俺の場合今日がラファールでの初陣となるから、ある程度慣らしておきたいです」

そう、実は今日がラファールを初めて使う日だ。それまでは一切展開してない。何故かと言うと………鬱ってたからね。しょうがないね。

「周囲を見ろ。もう既に展開している奴がいるだろう」

俺は千冬からの返答をOKの合図として受け取り、ブレスレットの形で待機形態になっているラファールを掴み、纏った自分をイメージする。

すぐさまラファールが体に纏わさったが……違和感が凄い。

なんというか、ラインバレルとは違って完全な一体化じゃなくて、感覚がISと俺で混じっているというかなんというか……その上視界になんかHUD(ヘッドアップディスプレイ)みたいなの表示されてるし……纏った時点で既にラインバレルと完全に違うことがわかる。

「………ん?」

ふと、視界の右上にある表記が目に入った。

そこには、『限界稼働時間』の文字の下に5:00と書かれたパネルのような表示があった。

よく聞いてみると、ラファールからフシュゥゥゥと熱を放出するような音も聞こえる。

────あー、これが束さんの言ってたある程度使うとぶっ壊れるってやつか。ラファールにこんな表記出る訳ないし、こんな排気音も出さない。教科書でそう紹介されていたから、おそらく確実だ。

「どう?初めて量産機に乗った感想は」

<ラファール・リヴァイブ・カスタムⅡ>を纏ったシャルルがそう聞いてくるが………悪い感想しか言えねぇ。ラインバレルが俺に合いすぎてた。

「……やはりラインバレルと比べると違和感が凄いな。あいつは近距離特化に対してこのラファールは武装からして射撃特化型らしい。纏った時点でかなり違和感を感じた」

どうにかマイルドに言えることができた。

「へぇ、黒騎の専用機って近距離特化なんだ。武装はどんなのがあるの?」

「刀二本とレーザーブレードカノン一本、圧縮転送フィールドにオーバーライドだ」

「え?レーザーブレードカノン?圧縮……なに?」

「……もう一度言うぞ。圧縮転送────」

「よし、そろそろ時間だ。全員並べ!!」

千冬から大声で号令があったので、俺らはすぐさま列を作って並ぶ。

「では、本日から格闘及び射撃を含む実践訓練を開始する」

「「「はい!!」」」

一組と二組の合同練習だから、人数はいつもの倍ぐらいいる。出てくる返事もいつもより大きく感じる。

「今日は戦闘を実演してもらおう。今日はちょうど衣替えをしたばかりのやつと新しく来たやつがいるからな。────三七城!!デュノア!!」

「りょうか……は?」

え?今千冬なんと申した?俺が実戦?待て待て、俺今日初めてラファール纏ったんだけど?

「わかりました」

シャルルは普通に返事をする。

「いや、待ってください。俺は今日ラファールを纏ったばかりで……」

「つべこべ言うな。この実戦で慣らせばいいだろう」

やばい、千冬が鬼に見えてきた。いや元から鬼畜教官だったか。

「……わかりました」

力なく、そう返すことしか出来なかった。

「それで、対戦相手は誰ですか?」

「ああ。対戦相手は────」

シャルルが千冬にそう聞いた直後。

キィィィィン……と、空気を切り裂くような音が俺の耳に響く。

「ああああーっ!!ど、どいてください~っ!!!!」

ふと空を見上げると、一夏へ向かって加速しているISが一機……あ、墜落した。

咄嗟に白式を展開した一夏と、墜落したIS、山田先生の駆るラファール・リヴァイブが数メートル後方へ吹っ飛ぶ。

見ると、一夏が山田先生を押し倒すような体勢で……山田先生の胸を鷲掴みにしていた。

原作読んでた時も、正直このシーンは俺にとっては刺激が強すぎたというか……見てはいけないものを見ている感じだったからページ開いた瞬間にこの絵面が絵で出てきた時は顔真っ赤にしてすぐ閉じてたな。あの頃の俺は初心だった。

山田先生が顔を真っ赤にして何か言っているが、よく聞こえない。(ISの音の収集機能をオフにしてるから当たり前か)

直後、一夏が何か身の危険を感じ取ったのかその場から飛び退く。

すぐさま、一夏がいた場所にレーザーが通過した。

「ホホホホホ……。残念です。外してしまいましたわ……」

一夏に対してレーザーを放った張本人、セシリアの顔を見てみるが……うん、原作通り怖い顔してるな。顔は笑ってるのに殺意が溢れ出てる。

「…………」

今度はガシーンと、何かと何かが合体したような音が聞こえた。

次は鈴の方を見る。

先程のガシーンは、どうやら甲龍の武装である双天牙月を連結した時の音らしい。

鈴は合体させた双天牙月を、迷うことなく一夏の首元めがけてブーメランの要領で投げる。

その速度がかなり早く、一夏も間一髪のところで回避出来たが勢い余って仰向けになる。

だが、投げられた双天牙月は本当にブーメランの如く一夏へ向けて戻ってくる。一夏は仰向けになっているので避けられない。

「……俺の射撃の腕を試すとしよう」

俺はボソリと呟き、拡張領域から六十口径リボルバーの<グナー>を右手に呼び出す。この銃はアメリカのコルトスミス社製実弾銃器で、装弾数が五発と少ない代わりに威力と命中精度と安定性、整備性が極めて高くメインウェポンが弾切れした時のサブアームとして名高い…らしい。

そんな<グナー>を構え、双天牙月の刃に照準を合わせる。

なんとも便利なことに、視界のHUDっぽいやつに今銃口がどこを向いているのか的なアシスト機能が付いている。

刃が俺の方に向くタイミングを見極め、引き金を引くと少しの反動と共に大口径の弾丸が<グナー>の銃口から放たれる。

その際山田先生が少し起き上がり、俺と同じく双天牙月めがけて銃弾を放つが俺の方が早い。

大口径の弾丸が双天牙月の刃の部分に当たり、その上山田先生が放った弾丸も当たり弾かれるように双天牙月が地面へ落ちる。

「……存外、やれるものだな。俺も」

正直外すかもと思っていたのが、意外と当てられる。というかリボルバーがすごくしっくりくる。まるで────前世から握っているかのように。

<グナー>をクルクルと回し、腰の横のホルスターにしまうような動作をしながら拡張領域へとしまう。

周囲を見てみると、他の生徒たちが唖然として俺の事を見ていた。

「え、すごっ。二人とも動いてる刃に当てたよね今」

「しかも弾丸が切れないように滑らすような弾道で………」

「実は刀より銃の方が合ってたんじゃ……」

皆そう言ってるが俺的には刀がしっくりしてたって言うか刀の方が強いんだが。

「さて、山田先生も来たからそろそろ模擬戦を始めるぞ。三七城、デュノア、準備はいいな?」

千冬が場の雰囲気を戻すように言う。

「大丈夫です」

「できています」

その言葉に、俺とシャルルは返事をしてから首肯する。

正直負ける気しかしないが、やぶれかぶれ、ヤケクソ八卦六十四掌だ(?)。

俺は両手にそれぞれ、この機体のもう一つの武装である四七口径LMG<ガルム44>を呼び出し、構える。ってかこのラファール、武装が<グナー>二丁と<ガルム44>二丁しかない。あと<グナー>と<ガルム44>用の弾倉それぞれ4つ。なんだこの貧乏武装。

対するシャルルは手に五五口径アサルトライフル<ヴェント>一丁と名称不明のSMG一丁、その上大型の物理シールドの中にパイルバンカーが仕込んである。更に拡張領域にはまだまだ武装が………幾つか俺に分けてくれねぇかな。俺のラファール拡張領域が腐るほど余ってるから。

「では、はじめ!!!」

合図と共に、俺とシャルル、山田先生が空へ飛ぶ。

「まぁ、勝てるよう努力はしよう。シャルル、俺は後衛をやる。慣れんラファールで前衛は無理だ」

「分かった、じゃあ僕が前衛だね。が、頑張ろう、黒騎」

「い、行きますよ!!三七城君!!デュノアさん!!」

いつも通りの言葉とは反して、山田先生の目付きがいつもとは違う目付きになる。

歴戦の戦士のような、鋭く冷静な目へと。

俺は後方でひたすら弾幕を張ることに徹することにして、シャルルは俺と山田先生に挟まれるようなポジションにつく。

俺はまだラファールに慣れてねぇから、後衛の方が何かとやりやすい。弾の無駄も減らせるし。

<ガルム44>の照準を山田先生に合わせ、引き金を引く。

<グナー>よりかは軽い反動が連続して起こり、幾つもの弾丸が山田先生へ向かって飛ぶ。

だが、俺がどこを狙って撃っているのかが分かっているようで、山田先生は弾丸をひょいひょいと躱している。当たる気配がまるでない。

「……回避ルートを先読みして撃つか」

「わかった。僕がショットガンで逃げ道をある程度塞ぐから、精密射撃をお願い」

「了解した」

ならば次の手段。シャルルが山田先生へ近づき、ショットガンをサブマシンガンと入れ替える形で呼び出して撃つ。

散弾がシャルルのショットガンから発射され、山田先生は左上に避ける。

「今」

俺はその隙を見計らい、右手の<ガルム44>を弾速が早い<グナー>に切り替え山田先生に向けて放つ。

目論見通り、<グナー>の弾丸は山田先生の生身の部分に直撃しSEを削る。

大口径だったこともあったのか、SEの減少を視認できるほどには減った。

「素晴らしいコンビネーションですね!!デュノアさんが前衛、三七城君は慣れないラファールだから後衛、良い選択です!!さっきの射撃も良かったですよ!!デュノアさんが私の逃げ道をショットガンで制限して三七城君が精密射撃!!」

弾丸を当てられた山田先生は、感嘆といった様子で興奮しながら俺らがやったコンビネーションを喋る。

「黒騎が上手く僕に合わせてくれたからです」

「シャルルが上手く誘導してくれたからだな」

シャルルと俺が同時にお互いを褒める。

「ですけど……そのコンビネーションには欠点がありますよ!!!」

そう指摘しながら、山田先生のラファールが俺に向かって加速してくる。

「『後衛が近づかれれば終わり』という点です!!」

山田先生が腕に細い筒のような銃…グレネードランチャーを展開して俺に向かって撃ってくる。

急いで右へ避けようとした、が。

「ぐっ!?」

逃げた先にグレネードランチャーから放たれたと思わしきグレネード弾が飛来していて、俺の目の前で炸裂し爆風と衝撃でよろける。

おそらくだが、俺が逃げるルートを予測して先に撃っていたようだ。

「しまっ……!?」

気づけば、もう最初に山田先生が放ったグレネード弾が俺の目の前にある。

視界が爆炎の炎に包まれ体に衝撃が走る。

「………」

気づけば俺は墜落しており、上では山田先生とシャルルが撃ち合っている。

だが、シャルルもまともにグレネードを食らい俺と同じように墜落してくる。

「……やはり教師。強いな」

「……だね」

「さて、これで諸君にもIS学園教員の実力は理解できただろう。以後は敬意を持って接するように」

ぱんぱんと手を叩いて、千冬が唖然としていたクラスメイトらの意識を戻す。

「専用機持ちは織斑、オルコット、デュノア、凰、ボーデヴィッヒ、ボードウィーク、三七城……は修理中だったな」

ボキリ。俺の精神に9999のダメージ。俺は即死んだ。

「では八人グループになって実習を行う。各グループリーダーは専用機持ちがやること。ただし三七城は特例としてデュノアのグループに入れる。いいな?では分かれろ」

あ、ありがてぇ………俺とラファール共に復活(リヴァイブ)ッ!!!!

前言撤回、千冬様マジ優しい。死ぬほど助かった。

千冬が言い終わった瞬間に一夏とシャルルに二クラス分の女子が詰め寄って行った。

「織斑君、一緒に頑張ろう!!」

「わかんないところ教えて~」

「デュノア君の操縦技術を見たいなぁ」

「ね、ね、私もいいよね?同じグループに入れて!!」

………これが敗北者の気分か。存外、辛いものだな。泣きたくなるよ。

今の俺は、一夏とシャルルに群がっている女子達とは離れ一人ポツンと取り残されてる状態。泣いてもいいか?俺はいつでも泣けるぜ?

そんな状況に、千冬は呆れたような表情を浮かべ額を指で押さえながら低い声で告げる。

「この馬鹿どもが……。出席番号順に一人づつ各グループに入れ!!順番はさっき言った通り。次にもたつくようなら今日はISを背負ってグラウンド百周させるからな!!」

流石にそう脅されれば動かないはずもなく、大慌てで女子たちがそれぞれの専用機持ちの元へ歩いていく。

俺もシャルルの元へ歩いていき、二分とかからず専用機持ちグループが出来上がった。

「最初からそうしろ。馬鹿どもが」

大きくため息を漏らし、うなだれる千冬。本当にお疲れ様です。

「ええと、いいですかーみなさん。これから訓練機を一班一体取りに来てください。数は『打鉄』が三機、『リヴァイブ』が二機です。好きな方を班で決めてくださいね。あ、早い者勝ちですよー」

山田先生がいつもの十数倍しっかりとしている。さっきの戦闘で気が引き締まったんだろう。きっちりとした先生らしい。いつものドジな感じが完全に抜けている。

班員の一人が『リヴァイブ』を取りに行き、帰ってきた所を見計らってシャルルが声を出す。

「さて、じゃあ早速始めるよ。まずは────」

だが。

「「「よろしくお願いします!!!」」」

と、大声を上げて班の女子たちがシャルルにお辞儀&手を差し出すということをいきなりやったのだ。

「……?え、えっと?」

もちろんお辞儀された上、手を伸ばされているご本人困惑中。

そのまま、場の空気が固まる。一切動く気配がない。

よし、ここは俺が一つここの雰囲気を律してや────

スパーン!!!

「「「いったああっっ!!!!」」」

女子たちも悲鳴が見事にハモった。一列だから余程叩きやすかったんだろう。頭を抑えながら顔を上げた女子たちは、やっと目の前に出席簿を持った修羅がいることに気づいたらしい。

「やる気があってなによりだ。それならば私が直接見てやろう。最初は誰だ?」

「あ、いえ、その……」

「わ、私たちはデュノア君でいいかな~……なんて」

「せ、先生のお手を煩わせるわけには……」

「なに、遠慮するな。将来有望なやつらには相応のレベルの訓練が必要だろう。……ああ、出席番号順で始めるか。デュノア、お前は三七城にラファールについて色々教えてやれ」

ひぃっ、と小さく悲鳴を上げる女子たちの声が聞こえた。

……ん?待て、千冬の言葉通りならこのままいくと俺とシャルル二人きりで訓練………いやご都合展開すぎだろォ!?待て待て!?今日はご都合展開が多い気がすんだが!?いや気がするじゃねぇガチだこりゃ!!!

「わかりました。それじゃあ黒騎、とりあえず向こうに行こう。そっちの方が広いからね」

「あ、ああ……」

俺にとって都合の良すぎる展開が多すぎて、もう神様が何か仕込んだんじゃないかって思えてしまう。

とりあえずその考えをどうにか振り払い、シャルルについて行く。

「そういえば、まずラファールってどんなISかは知ってる?」

移動している最中にシャルルがそう聞いてくる。

授業で習ったから、それぐらいならわかる。

「確か、万能性に富んでいる機体のはずだ。豊富なパッケージに、豊富な武装。それにより武装次第で距離や役割を選ばない戦闘ができる。機体自体も安定性と操縦性が良好で、世界シェアは三位」

「うん、まあ大体そんなところだね。今の黒騎の武装は完全に射撃型の武装ラインナップらしいけど、初めからそうだった?」

「ああ。正直ブレードの一本だけでも欲しいところだったが、貸してもらっている立場だからそんな我儘を言える訳ないしな。まぁ、いざとなったら備え付けの物理シールドで殴るとしよう」

「ず、随分とアグレッシブだね」

若干引き気味にシャルルが言う。やべ言葉の選択ミスったな。

「まぁな。こう見えて学園の女子たちからは『鬼帝』と呼ばれている程だからな。ラインバレルがあった時の話だが」

「おにみかど?」

「鬼の帝王だな。イギリス代表候補生に入学初日に喧嘩を売られたから、その喧嘩を買って戦い完全勝利した際にこの異名が付けられた」

「────え!?代表候補生に勝ったの!?」

先程から一転、シャルルが目を光らせながら俺の方を向く。

なんか……守りたい、この純粋な目。

「一応言っておくが嘘ではない。まぁ、ラインバレルあってこその勝利だったがな」

「凄い……まだISに乗って一、二ヶ月ぐらいでしょ?」

「そうだな。だが俺とラインバレルは相性が良くてな、俺が思った通りに動いてくれる素直なやつだったから、勝てただけだ」

話していると、急にシャルルの足が止まる。

何事かと思ったが、目的の広い場所に着いたらしい。

「着いたね。それじゃあ、まず簡単な視界に映っている画面について説明するね。これは────」

と、シャルルの解説が始まるので俺は真剣にその話を聞く。

……うん、予想はしてたけどめっちゃわかりやすい。

「ここの集音機能ってものはね、周囲の音を拾ってくれる機能で一定の範囲の音を聞き取りやすくしてくれるんだ。簡単にいえば補聴器の高性能版だね」

俺でもわかりやすいように例えを用いて説明してくれる。その上不必要な情報が入っていなくて短く、理解しやすいように言葉が纏められている。

改めてやっぱスゲーイ…………

「では午前の実習はここまでだ。午後は今日使った訓練機の整備を行うので、各自格納庫で班別に集合すること。専用機持ちは訓練機と自機の両方を見るように。では解散!!」

気づけば、午前中の実習が終わっていた。

集中していたせいか、あっという間に感じた。

「あ、もう終わりの時間か。どう?僕の解説分かりやすかった?」

終わった瞬間にシャルルが聞いてくる。

「上から目線になるが、完璧というレベルで良い。将来この学園で教師をやればいいのではないかと思えるほど分かりやすかった」

「そ、そうかな…」

あはは、と照れ気味にシャルルが微笑む。やべぇ気を抜いたら尊死する。

改めて千冬の方を見てみると、千冬が指導していた女子たちが「も、もう堪忍してください……」といったような顔をしながら横たわっていた。南無三。

「さて、俺はそろそろ更衣室で着替えるとしよう。シャルルも着替えるか?」

俺はラファールを解除しながら、シャルルに聞くが。

「え、ええっと……僕はちょっと機体の微調整をしてから行くから、先に行って着替えて待っててよ。時間がかかるかもしれないから、待ってなくていいからね」

「…了解した、では先に着替えている」

そう返すと、俺はラファールを待機形態に………?

ふと、視界の右上の表記のことを思い出す。

それに目を向けると────

「……?どうしたの?」

止まっていた俺が気になったのか、シャルルが声をかけてくる。

「……ああ、なんでもない。少々欠伸をしていただけだ」

俺は適当に理由を言ってからラファールを待機形態に変え、更衣室に向かう。

更衣室で手早く着替えを終え、更衣室前の壁に背を付ける。

 

「────なぜ、稼働限界時間の数字が『減っていない』?」

 

誰も居ない廊下で、俺は呟く。

 

 

 

 

 

 

「────だぁぁぁぁぁぁっ!!!!コアの方が言うことを聞いてくれないー!!!!助けてクーちゃーん!!!」

「……?どうしたのですか、束様」

「いやね?くーちゃんに渡す機体のボディは完成したんだよ。────けどこの機体の脳ミソであり心臓でもある<無銘>のコアが全く動いてくれない!!!初期化してやろうとも思ったけどいざやったらコア側から拒否されるし!?ドユコト!?」

「……私に聞かれましても……」

「いやーそれにしても、まさか開発者でも分からないイレギュラーが発生するとはねー」

「……恐らくの話になりますが…この機体、いや、<無銘>は三七城黒騎にしか反応しないのでは?」

「………それだァァァァァァっ!!!!!」

「……???」

「そうだ!!!産みの親の私でダメなら、<無銘>を使っていたあーちゃんの子供のくーちゃんなら!!天才なのにそれは思いつかなかった!!!ナイス、クーちゃん!!」

「……それで、どうやって三七城黒騎にこれを触れさせるのですか?」

「うーん、学園からくーちゃん引っ張り出してきてもいいけど……できるなら派手にやりたいし……あ!!!いい方法があった!!学園に転入してきた二人の内一人のISに芸術の欠片もないシステムが載ってたんだった!!

 

 

──────どうせだから救世主を喚ぶための生贄になってもらおう!!」

 

 

 




いかがだったでしょうか。
はい、ラインバレル封印決定。
チートを野ざらしにする訳ないじゃないか!!!アッハッハッハッ!!!!!
ラウラと同じような感じにはさせねぇよ!!!!検査なんていらねぇ!!!即封印じゃ封印!!!
ネクストからノーマルへ乗り換えて貰うぜぇ!!!ヒャッハー!!!!!
(これを書いた日の作者は異常なまでにテンションが高かったんです。許して)


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ラファール・ブラスト

遂に……遂にあと少しでフラグが……フラグが立てられる……


ISーインフィニット・ストラトスー

White of black

 

第九話 ラファール・ブラスト

 

 

────ここ、は?……ああ、俺は封印されたのか。【アマガツ】が暴走したから、当たり前か。

 

────残念だけど、君は私と同じくもう表舞台に立つことは無いよ。

 

────暮桜、か。千冬が使っていたISが、何の用だ。

 

────あまり千冬を責めないであげて。千冬は……

 

────黙れ。あいつはISという力に溺れたただの阿呆だ。そいつが使っていたモノの話なんぞ聞く気はねぇ。俺の目的も変わらねぇ。千冬と束、ISは……俺が殺す。

 

────千冬は、あの後ずっと悩んでたの。こんな世界になったのは天児の言うことを信じなかった自分だって。だから、せめてその罪滅ぼしに黒騎のことを自分が守ってあげようと一生懸命に……

 

────煩い。どうでもいい。俺はただ殺すだけだ。説得は無意味だと思え。

 

────じゃあ、聞いてくれるまで粘るから。天児の千冬に対する誤解を正せるまで、ね。

 

────鬱陶しい。俺は寝る。

 

────あ、ちょっ……スリープ状態にしてでも話聞かない気だ……

 

────千冬。天児は私が説得するから、千冬は……黒騎をお願い。

 

 

 

 

 

「……まぁ、当たり前といえば当たり前か」

俺はライラが居なくなった寮の自室で、隣のベッドに座っているシャルルを見て呟く。

千冬からいきなり「ああ、デュノアはお前の部屋に住むことになった」って言われた時は思わず千冬にバスターランチャー(威力キチガイFSS版)をかましたくなるほど慌てたが、良く考えれば当たり前の結果だった。

今のシャルルは男という扱い。空いている俺の部屋に来るのは当然。

ちなみに原作では箒が一夏の部屋から出ていくはずなのだが、何故かそのままらしい。

……うん。完全に神様何か仕込みやがったなありがとうございます。

「黒騎、今日からよろしくね」

「ああ、よろしく。まぁ気楽に過ごすといい。飲み物は炭酸飲料のみだが冷蔵庫にしまってある。飲みたければ自由に取っていい。補充は俺がやっておく」

「……それ、健康的に大丈夫かな?」

心配そうに、シャルルが俺を見る。

あ、やっぱ心配されたわ。俺基本的に炭酸飲料しか飲まないんだよなぁ……そのせいで【Dーゾイル】のおかげで体調は一切崩さないがライラに心配される。

……もう止めるとしようか。

「……今からお茶などを追加するとしよう。ああ、何か追加して欲しいもののリクエストはあるか?」

「いや、僕はお茶で大丈夫。日本のお茶飲んだことないから飲んでみたいな」

「了解した。部屋で少しくつろいでいてくれ。早めに買ってくる」

そう返してから、俺は部屋から出て購買まで行……こうとしたが。

「あ、黒騎。どこか行くの?」

ばったりライラと遭遇した。

ライラも丁度部屋を出たところらしく、玄関が空いてそこからライラが顔を出しているような状態だった。

ちなみに、ライラは布仏と同室になった。離れた今でもちょくちょく部屋に誘われて俺、ライラ、布仏の三人で集まって喋りながらお菓子を食ったりしている。

「ああ。購買で少々茶を買おうと思ってな、お前もどこか行くのか?」

「うん、アリーナでISの訓練。って、黒騎がお茶って……珍しい」

「なぁに、新しい住居人に頼まれたのでな。っと、そうだ。この後お茶買い終わったらその訓練に参加してもいいか?もう少しラファールに慣れておきたい」

謎の稼働限界についても知りたいしな。と心の中で付け加える。

すると、ライラが顔に笑みを浮かべて首肯する。

「うん、全然いいよ。私も一人でする訓練より、誰かとやった方が楽しいから」

「助かる。茶を買って部屋に届けたらすぐ向かう」

「分かった。先に行って待っているね」

俺はおう、と返して購買まで歩く。

女子たちの妨害が入るかと思ったが、特に何事も起こらず購買でペットボトルのお茶を買えたので、そのまま部屋まで戻る。

「おかえり、早かったね」

ベッドの上で持ってきたであろうパソコンを操作しながら、シャルルが俺に言う。

「思ったより妨害に会わなかったからな。茶は冷蔵庫に閉まっておくぞ。飲みたい時に飲むといい」

「ありがとう、黒騎」

言いながら、シャルルが笑顔を浮かべる。

……うん。最高!!!(語彙力死亡定期)

っと、そうだ。この後ライラと共に訓練に行くことを伝えねば。

……ん、待てよ?シャルルも誘えばよくね?

「そういえばだが、この後ラファールに慣れるためライラと共に訓練しようと思う。そこでシャルルも訓練共にどうだ?」

そう誘うが、シャルルは申し訳なさそうに顔を逸らす。

「あー、ごめんね。この後ちょっと個人的な用事があって、無理なんだよね」

ガビーン……シャルルとの仲を深めるチャンスだと思ったのに…………

こういうところじゃ神は非情である。

「……そうか。ならば俺はアリーナへ向かい訓練をしてくる。用があれば連絡してくれ、早めに返す」

俺は表面上は冷静を保ち、内心では四つん這いで「ウソダドンドコドーン!!!!!」と叫びながら部屋から出て更衣室まで向かう。

更衣室に着き、ISスーツに着替えてからアリーナまで歩く。

その道中で、アリーナ側から激しい発砲音と大型の銃火器の独特な響くような銃声がバラバラに聞こえた。

「……?既に誰か模擬戦をしているのか?」

そう呟いた直後、一際大きなガァン!!という金属同士がぶつかる音がしたのを皮切りに、急に周囲が静かになる。

既に誰が戦っているのか、と考えながらながら俺はアリーナのピットでラファールを纏い、アリーナへ出て。

「……は?」

見えた光景に、絶句する。

「……貴様のような、なんの苦労もせずに専用機を使っている無能な輩が、私は殺したくなるほど嫌いだ」

「…………」

ラウラが、ラウラ自身の専用ISである『シュヴァルツェア・レーゲン』を纏って、『シュヴァルツェア・ステルベン』を纏っているライラの頭を踏みつけている。

既にライラのステルベンには、機体のあちこちにラウラが持っているリボルバーカノンで撃たれたであろう凹み、プラズマ手刀で切りつけられた後であろう焦げ跡があちこちに着いていた。

更に……ラウラは、既に戦闘不能で気絶しているライラの頭を踏みつけて、見下している。

その光景に、驚きよりまず怒りが湧いてきた。

無言で拡張領域から<グナー>を取り出し、ラウラに向けて怒りをぶつけるように弾倉に入っている六発の弾丸を全てラウラに向けて放つ。

……だが。

「ふん。奇襲如きで私に傷を負わせられると思っているのか」

弾丸は、ラウラに当たらずラウラより少し離れたところで停止した。

「……AIC」

忌々しげに、俺はその装備の名前を呟く。

シュヴァルツェア・レーゲンに搭載されている、IS本編でも猛威を奮った武装、AIC(アクティブ・イナーシャル・キャンセラー)

物体の慣性を停止させ、動きを止めるという反則じみた力。

今実物を見たことで、確信した。

────想像していたより、かなり厄介な代物だ。

「ちょうどいいところに来たな。貴様もついでに潰してやる。二度とISを操縦できない程度には痛めつけてやる」

言うと、ラウラは床に伏せているライラの顔を蹴飛ばしアリーナの端までライラが吹き飛ぶ。

──────こいつ、ライラの顔を蹴りやがった。

ブチン。

そこで、俺の中で何かがキレた。

「……だ」

「……なんだと?」

「ここまで誰かを殴ってやりたいと思ったのは、人生で三度目だ」

怒りを最大まで込めた声で呟き、武装を<グナー>から<ガルム44>に切り替え両手でそれを持つ。

「先程の発言、撤回してもらおうか。ライラは苦労をせずにここに来た訳では無い」

ライラの人生について、ほぼ何も知らない俺でもこれだけは言える。

ライラは、死ぬような思いをしながら努力してここにいるということだけは。

学園に来てからライラと共に過ごした事、何度もやった模擬戦。この二つからそれが言える。

部屋で一度見させてもらった、学園に来る前から書いていたと思われる文字が見えなくなるほどにISについて書かれたノート。

俺や代表候補生の弱点を、寮へ帰ったら俺に迷惑をかけないように夜中にひっそりと起きてノートに纏めて対策を練り、日を跨ぐにつれて強くなっていたライラ。

模擬戦でライラと剣を交えた時に感じた、ライラの強くなりたいという強い意志を表したかのような刃の重み。

そんなライラの努力を否定するのは……たとえ神が許しても俺が許さん。

「はっ、戯言を。そこの女は私たちの中でも最大の失敗作として捨てられ、そのくせ今までしぶとくのうのうと生きていた。挙句自身と同じ失敗作のISに乗っている、ただの存在価値の無いゴミ「いい加減黙りやがれ。胸糞悪ぃな」」

俺は嘲笑うラウラの言葉を遮り、前世と同じ喋り方で言い放つ。

もう限界だ。演技なんてやってられるか。

「さっきから黙って聞いていればなんだ?

──失敗作?

ふざけんな。

──存在価値がない?

いや、あるね。

──のうのうと生きてきた?

違う。ぜってぇ違う。

テメェなんぞにライラを罵倒する権利なんざねぇよ。

────むしろ、失敗作はテメェだ。人を罵倒することしかできねぇ口先だけの餓鬼が」

「ッ!!!貴様ァ……!!!」

そこで、初めてラウラの顔が怒るように眉をひそめる。

リボルバーカノンの銃口を、俺に向ける。

「……ISが操縦できない程度にいたぶってやろうと思ったが、やめだ。

────二度とその足で地に立てないようにしてやる」

「やってみろ。今の俺は……なぜか誰にも負ける気がしねぇ」

瞬間。

 

『────三七城黒騎の感情の激化を確認。

【Dーゾイル】リミッター解除。ファクターアイ発現。

コネクティブ・ラファール。【Dーゾイル】通常IS専用単一仕様能力(ワンオフアビリティ)

<限界無限>(リミットオフ)、機動』

 

頭の中で、ラインバレルに初めて乗った時に聞こえた声と同じ声が、意味の分からないことを喋り出す。

いきなり、視界のHUDに『unknown mode shift』の文字が表示されると、手の甲と、肩、太もも、足裏に針が刺さるような痛みを感じた。

直後。俺とラファール側それぞれが混じっていたような感覚が消え失せ、俺の感覚が完全にラファールと一体化するような感覚に襲われる。

それと同時に、ラファールから微かに聞こえていた排気音がうるさく感じるほど大きくなり、ラファールの装甲の各所が展開し熱を帯び始める。

その熱によるものなのか、段々とラファールの装甲の色が緑から赤へと変化していく。

『<限界無限>発動によりラファールに深刻な負荷発生。稼働限界時間、残り五分』

更に、以前から気になっていた稼働限界時間のタイマーが減少を始めた。

────ああ。何か知らんがこれのためのタイマーなのか。

「……ッ!?……なんだ、それは!?

なんだ……その赤いラファールと『赤い目』は!?」

その光景を見ていたラウラが、顔を先程の怒りの表情から一変。

困惑の表情を浮かべながら、右足を後ろへと少し下げる。

なんか最後の方赤い目とか赤いファールとか聞こえた気がするが、どうでもいいか。

「さぁ?俺にもわからん。

────ただ、これだけは分かるぜ。

これなら、AICって卑怯装置気にしなくてもテメェの顔を一発殴れるってことはな」

言いながら、右腕を右に伸ばす。

『ラインバレルとのコアネットワーク接続を確認。<不知火>展開』

すると、右手に。

────封印されているはずのラインバレルの<不知火>が現れる。

それを見た俺は、使い慣れている得物が出現したので大きく笑みを浮かべ、ラインバレルを扱う時と同じように背中に力を込める。

「……言っておくが、俺は最初から全力で行かせてもらうぜ?」

ラファールのスラスターを吹かし、ラウラへ向けて加速する。

……普通のラファールの時よりも、早い。まるで、ラインバレルを扱っているかのようだ。

「なっ!?」

スペック以上の加速をしたせいか、ラウラが驚く。

しかし、流石軍人。すぐに体勢を整え俺を睨みAICを使おうとする。

だが。

「AICは、対象を集中してイメージしないと使えねぇんだったな。

────なら、こうされりゃ使えねぇよなァ!!!」

スラスターを左右別々に起動させ、ラインバレルと同じように不規則な軌道で個別瞬時加速を行い視線が追いつかないように動く。

「行くぜ行くぜ行くぜェ!!!!」

「……ちぃっ!!鬱陶しい!!!!」

ラウラがワイヤーブレードを射出し俺へ向けて飛ばしてくるが、全て見切れる。

身を捩り、回避しきれないものを<不知火>で切り落とし必要最低限の動きでワイヤーブレードを回避してラウラに肉薄する。

ああ……やっぱり<不知火>の方が馴染む。

「ええい!!ちょこまかと!!!」

遂にはリボルバーカノンを超至近距離で放ってくるが、放たれる弾丸を全て<不知火>で切り落とす。

ラウラに肉薄するほど近づけた俺は、ラウラの顔に向けて左の拳を構え。

「ぶっ飛べェ!!!!」

その顔に一発殴りを………

 

キーンコーンカーンコーン

 

「…………」

「…………嘘だろ?」

食らわす直前に、チャイムが鳴る。アリーナを使える時間が終わったのだ。

「……興ざめだ。今日のところは退くとしよう」

チャイムに邪魔されて、やる気が萎えたのかラウラがISを解除し足早にピットへと向かう。

────が、ラウラは急に足を止めて俺の方へと向く。

「……一つ聞かせろ」

俺へ対して、何かを聞きたいようだった。

無視してライラを担いで立ち去ろうとしたが、何故体が動かなかった。

──俺を見るラウラの目には、困惑と同情、そして親近感。この三つの感情が読み取れた。

なぜそんな目をしている?と疑問に思ったが、答えは出ない。

「……貴様は、私と同じく……いや、なんでもない。忘れろ」

何かを言おうとしていたらしいが、途中で言葉を撤回する。

「……貴様は私が必ず倒す。覚えておけ」

先程よりも小さい憎しみを込めた言葉を残して、ラウラがアリーナから去る。

「……ッ!!ライラ!!」

ラウラがアリーナから去ったことを確認してから、ライラの元へ駆ける。

見ると、幸いISの絶対防御が発動していたようでライラ自身に傷は見られなかった。

「……気絶しているだけか。

────よかった」

大きくため息をつき、アリーナの地面に座り込む。

もし怪我をしていたら、俺はラウラを今からでも殺しに行くことになりそうだ。

いや、もうラウラ許さん。原作キャラだろうが知るか。一回ブッ飛ばしてやる。

「……それにしても」

────さっきのあれは、一体なんだ?

俺は自分の手のひらを、夕日により橙色に染まっている空にかざし、空と手のひらを見ながら心の中で呟く。

怒りに身を任せていたことにより、使っていた時は不思議に思わなかった、あの現象。

ラファールにあんな機能はない。だとしたらあの謎の声は……

『【Dーゾイル】通常IS専用単一仕様能力』

不意に、謎の声が言っていたそのワードが頭に浮かんだ。

【Dーゾイル】は、ナノマシンだがその一つ一つが極小のナノサイズまで小さくなったISだ。

言うなれば、【Dーゾイル】はコアがないことと、大きさがナノレベルなことを除けば普通のIS。

つまり……単一仕様能力が発現してもおかしくは……

────いやおかしいだろ!?

コアがないからそもそも本来のISとしては機能してない訳だし……待て。『コア』がない?

今まで気づかなかったが、なぜこの【Dーゾイル】は動いている?

ISにとってコアは心臓でもあり脳でもあるはず。ならこの【Dーゾイル】はどうやって動いている?

──まさかラインバレル本編みたく、動力源であるコアがラインバレルと共有になっているのか?

それなら、先程<不知火>が出現したのもなんとなく頷ける。

「……っと、考えている場合ではないな」

目の前で気絶しているライラをどうするか。

……まぁ、当然。

「……医務室へ運ぶか」

 

 

「……あの目、まさかとは思うが……」

アリーナのピット。そこでドイツ代表候補生であるラウラ・ボーデヴィッヒは呟く。

先程三七城黒騎が見せた、あの現象。

ラファールが赤くなったのはどうしてかは分からないが、そのパイロットである彼の『目』の変化に驚愕したのだ。

ラファールが赤くなった直後、彼の両目の瞳が『紅』に輝いたのだ。

──まるで、自身の忌々しい左目のように。

ラウラは眼帯で覆っている左目に手を添え、眼帯を取って自身の『黄金に輝く』左目を見る。

この目は、ラウラにとって忌むべきものであり、同時に自身を強くしてくれたもの。

忌々しげに、その目を見る。

「私と同じ、いや、同系統の手術を……?」

あの状態になってから、情報より明らかに動きが良くなっていた。

通常の銃弾より圧倒的に火力と弾速が早いはずのリボルバーカノンの弾丸を見切った上で切り落とし、幾つものワイヤーブレードを必要最低限の動きで避けて避けきれないものは切り落とす。

あんな動き、素人ならまず出来ない。

しかも……専用機ではなく、第二世代型であの動き。

ラウラが不思議に思うのも、無理はない。

「……まぁいい。潰した後に聞くだけだ」

再び眼帯を付け、ラウラはアリーナから去る。

 

 

「あ、おかえり。訓練どうだった?」

ライラを医務室へ預け、部屋へと戻った俺にシャルルがそう聞いてくる。

ベッドの上でパソコンを弄っていたが、何をしているのかはよく分からない。

「……思わぬ妨害に遭ってな。まともに訓練が出来なかった。

────あの野郎、次は会い次第倒してやる」

女の子の顔を蹴りやがって。

心の中で言葉の続きを言って、俺は自分のベッドへ飛び込むように倒れる。

「……もしかして、その妨害してきた人ってボーデヴィッヒさん?」

え、すげ。どうしてわかったし。

「よくわかったな」

「いや、なんか因縁ありそうだなーって思ったから」

シャルルの言っている因縁とは、おそらく朝のことだろう。

まぁ、正確には因縁というか向こうが一方的に恨みに来てるというか……

「……一方的な逆恨みだ。どうしようもないことに苛立って、ただ力を振るっているただの餓鬼のな」

言うと、シャルルが不思議そうに首を傾げる。

「なんか黒騎って大人っぽいよね。言葉もそうだし、雰囲気も」

まぁ、こちとら中身おおよそ34歳のオッサンだからな。当たり前と言っちゃ当たり前なんだが……なんか悲しい。

「色々あったからな。こうなっても致し方ない」

「……僕は黒騎のこと、まだ色々と分からないけど、黒騎は黒騎で色々苦労してるんだね」

「ああ。苦労が多すぎてその内過労死するのではと思える程にはな。まぁ冗談だが」

冗談を交えて返すと、シャルルが口元に手を当て少し微笑む。

その際思わず胸を抑えて「尊()ッ!!!!」と言おうとしかけたがどうにか耐える。

「まぁ、今日から改めてよろしく。シャルル」

「うん。よろしくね、黒騎」

その後は、シャルルと俺でそれぞれ風呂に入る時間帯を決めたり、部屋のことで色々と話し合った。

しばらくすると、お互い納得する形で一通り決め終わった。

「そういえば黒騎、もうラファールには慣れた?授業の説明でまだ聞きたいこととかある?お茶くれたし、今日は色々お世話になったから何かお礼させてほしいな」

パソコンをパタンと閉じたシャルルがそう聞いてくる。

「……礼などいらん。と言いたいところだが、ラファールでの戦い方が上手くイメージできん。そこについて教えて貰えるとありがたい」

「分かった。それじゃあ明日、アリーナで実際に武器とか使って解説するね」

「頼む」

「任せて。今日みたく教えられるように頑張るから」

屈託のない笑顔を俺に向ける。

なおそれによって、俺は心の中で歓喜に震えて暴れ回っていたのは言うまでもないだろう。

こうして、推しが部屋に居る生活の初日が終わった。

ちなみに、その日は推しが隣のベッドで寝てるって考えただけでドキがムラムr((殴

ムネムネしたので一切眠れなかった。(((;゚Д゚)))ドキドキ

 

 

シャルルが俺の部屋に越してきて五日目。

一日目にシャルルから「ラファールなら銃火器の使い方をある程度覚えた方がいい」と言われた俺は毎日放課後にアリーナを借りてシャルル指導の下で射撃訓練をしていた。

日別に使う火器を分けて、それについて詳しく教えた後にお互いその武器オンリーでの模擬戦という形式だったのだが、それがかなりやりやすかったし、模擬戦で特徴を実際に感じられるから分かりやすかった。

一日目は基本的に扱いやすいハンドガン。

二日目は近接戦闘や牽制で大いに役立つショットガン。

三日目はショットガンと同じく牽制と連射力に優れ取り回しが良いサブマシンガン。

四日目は全体的にバランスが良いアサルトライフル。

そして今日……狙撃に適しているスナイパーライフル。

シャルルがアリーナの設定を変え、アリーナのそこら中に的を出現させる。

「それじゃあ、今日はスナイパーライフルについて教えるね。でも実を言うとあまりスナイパーライフルってISの武装の中でも人気ないんだよね。だから今日のはついで感覚で覚える感じでいいよ」

的を指しながらシャルルが解説を始める。

「まずスナイパーライフルは高い命中精度と高い威力が特徴の銃火器なんだけど、一般向けじゃなんだよね。なんでかわかる?」

一般向けでは無い、か。つまり使い勝手に難があるって感じだな。

スナイパーライフル、狙撃、命中精度、威力……あ、わかった。

「……命中精度と威力に特化しすぎて他の部分の性能がかなり低いのか?」

「うーん、一応正解だけど……正確には『慣れる』必要があるって点なんだよね」

「慣れる?」

「そう、慣れ。他の銃ってある程度連射が効くし、装弾数も多いから外した時のプレッシャーもそこまで大きくないんだよね。でもスナイパーライフルって連射速度が遅いし装弾数も少ないから外した時のプレッシャーが大きいんだ。あとIS同士の戦闘って常にお互いが素早く動くから、スナイパーライフルの『狙撃』の分野が生かしにくいんだよね。まぁ、代表候補生のオルコットさんとかの例外はいるけど」

例外……言われてみりゃ確かに。セシリアの<スターライトMk.Ⅲ>ってスナイパーライフルみたいな感じなのにめっちゃ上手く扱えてるよな。

「オルコットさんの場合、BT兵器の<ブルー・ティアーズ>を使って擬似的に一対多数の状況を作って相手の動きを制限してから狙撃するっていうスタイルをとっているから、狙撃が機体と凄く相性が良くて強いって感じだと思うんだ」

「ふむ、つまりスナイパーライフルは一対多数で相手の動きがある程度絞られている状況以外では役に立たんということか」

「そう、そんな感じ。だから一対一の戦闘が多いIS同士の戦闘でスナイパーライフルが使われることは滅多にないんだよね」

一通り解説が終わったのか、シャルルが手のひらを広げ武装を展開する。

「試しにこれで撃ってみて。スナイパーライフルがどれだけ使いにくいかわかるはずだから」

シャルルからスナイパーライフルを渡された俺は、銃の全体をじっくりと見てみる。

その銃は、どことなくドラグノフという銃に形状が似ていた。

俺はシャルルから渡された銃を構え、武器とハイパーセンサーを接続して視界にターゲットサイトを表示させる。

「……取り回しも絶望的だな」

構えてみて分かった。

長い。とにかく銃身が長い。

そのせいで、取り回しが他の銃に比べて絶望的に悪い。

とりあえず、ターゲットサイトの十字の表示の中央が的の中央に来るように銃を動かし、引き金を引く。

ドォン!!!カランカラン。

大きな炸裂音と薬莢が地面に落ちる音と共に、大口径の弾丸が銃口から射出される。

その弾丸は、的のギリギリ右端に当たって穴を穿った。

「……おかしいな。確かに的の中央に合わせたはずだが」

ターゲットサイトの中央に、きっちりと的の中心を合わせたはずだが……誤差が大きすぎる。

「……これが使いにくいって言われてる理由のナンバーワンなんだ。スナイパーライフルに限らず他の銃にも言えることなんだけど、弾丸って空気とか風の影響を受けやすいからなかなか狙ったところに当たらないんだよね。他の銃は連射しながらある程度目測での調整ができるけどスナイパーライフルって連射ができないから、撃ったらサイトを調整、撃ったらサイトを調整を繰り返さないと駄目だから使われないんだ」

「なるほど。これは確かに一対多数以外では使えんな」

相手が調整する暇を与えるわけが無い。

だから、一対多数時には片方に敵を抑えてもらい、その間に調整と狙いをつけられる余裕ができるから初めて使えるといった感じか。

セシリアの場合<ブルー・ティアーズ>が敵を抑える役割を担っているから単独での狙撃が成り立つ訳だ。

……あれ、これ俺ラインバレル無かったら負けてたんじゃね?狙撃で蹂躙されてたな絶対。

「ねえ、ちょっとアレ……」

「ウソっ、ドイツの第三世代型だ」

「あれ?でもボードウィークさんのもドイツの第三世代型だよね?」

急にアリーナ内がざわつき始める。

見ると、ちょうど漆黒のIS……『シュヴァルツェア・レーゲン』に乗ったラウラがアリーナへと来ていた。

ラウラは俺と同じアリーナで特訓していたライラを一度睨むと、俺の方へ歩いてきた。

「おい」

俺の近くまで来たラウラが開放回線(オープンチャンネル)で呼びかけてくる。

……反応してもいいけど無視しよう。今の俺はシャルルとの時間を邪魔されて猛烈に気分が悪い。

「…………」

俺はラウラの呼び掛けを無視して手に持つスナイパーライフルを凝視する。

「……無視か、貴様」

ジャキッ、とラウラが怒りの形相を浮かべてレールガンを俺に向けてくる。

「昨日、ライラの顔を蹴った貴様とは口をききたくないのでな。今すぐライラに謝ってくるというのであれば話を聞いてやる」

だが、俺は怯まず言い返す。

「……余程あの失敗作に思い入れがあるようだな。なんだ?肉体関係でも持ったのか?でなければあの失敗作を思う理由が見当たらん」

────ああ、よっぽど死にたいんだなこいつ。

やばい、昨日のことも相まってもう限界だ。ブチギレよう。

「……今すぐ殺してやろうか。出来損ないの『越界の瞳』(ヴォーダン・オージェ)の不適合者が」

俺はラウラを挑発することにした。

効果てきめん、といった様子でラウラの顔がどんどん青くなっていく。

「……!?貴様、どこでそれを……!?」

「ある情報網からな。それにしても驚いた、貴様も失敗作のくせに人を失敗作呼ばわりか。これは脳みそまで失敗作だな、もう一度試験管の中へと戻れば良いのではないか?

で き そ こ な い」

原作知識をフル活用して、ラウラの怒りを買いまくる。

「……ッ!!!キ、サマァッ!!!!」

ラウラも堪忍袋の緒が切れたようで、リボルバーカノンの銃口を俺に向け引き金に指をかける。

そして、引き金を躊躇なく引いたので俺はラファールの肩部にあるシールドを外して正面に構える。

ドォン!!!という大きな銃声と共に、構えていたシールドに衝撃が走る……はずだった。

「もうやめて。二人とも」

構えていたシールドを避けると、ライラが<ハイキャスト>を盾のように構えて俺の目の前に立っているのが見えた。

その表情は恐怖に染まっていて、ラウラに対して無理に立ち向かっているように見えた。

「これ以上やるなら私も容赦しないよ。だから武器を」

「邪魔をッ!!!するな!!!」

ライラがラウラを止めようとしたが、ラウラは手からプラズマ手刀を展開しライラに向けて振り下ろそうとしていた。

『そこの生徒!!何をやっている!!学年とクラス、出席番号を言え!!!』

突如としてアリーナにスピーカー越しと思われる怒声が響いた。

先生が騒ぎを聞きつけたのかアリーナまで来たんだろう。

「……ちっ、仕方がない。今日は引くとしよう」

二度も横槍が入って興が削がれた、といった様子でラウラがアリーナの出口へと向かう。

その出口では、教師が鬼の形相で待機していたがラウラのあの様子だと無視して部屋へ戻るだろう。

「黒騎、大丈夫?」

「……ああ、助かった。ありがとうライラ」

ライラが心配そうに俺のことを見るが、その顔はまだ恐怖に染まっていた。

思わず、口が開く。

「一つ聞きたいのだが、ライラとボーデヴィッヒは一体どういう関係なのだ?奴はライラのことを忌み嫌っていたようだが」

「……ここじゃ話せないから、今日この後私の部屋に来て。そこでなら話せるから」

その際、ライラの手や足が震えていたことから、余程辛い話なのだろうと察した俺は静かに頷く。

俺が頷いたのを確認したライラがISを解除し足早にアリーナの出口まで向かう。

「……という訳だ。この後少々部屋を開ける。いつ戻れるかは分からないが、その間自由にしていてくれ」

「……分かった」

シャルルも状況を察してくれたようだ。何も言わずに了承の言葉を返してくれた。

────何故か言葉が少し刺々しく感じたが。

その後すぐにISを解除して更衣室へ向かい、そこでスーツから制服に着替え俺はそのままライラの部屋まで向かう。

ドアの横にあるインターホンを押して来たことを伝えようとしたが、そうする直前でドアが開き中から薄い黒の布地の寝間着を着たライラが現れる。

「……早いね」

ライラの目はくすんでいて、その上鼻水をすする音も聞こえたので、先程まで泣いていたのだとわかった。

「着替えが思った他早く終わったのでな」

そう返して、部屋へと上がる。

とりあえず、部屋にあるテーブルの下にある椅子を引っ張り出してそこに座る。

ライラも同じようにテーブルから椅子を引っ張り出し、俺の隣に座る。

「……私ね、人工的に作られた人間の失敗作なんだ」

静かに、泣きそうになりながらライラが呟く。

俺は口を開かず、ライラの話を静かに聞く。

 

 

「ドイツの極秘研究で、強い兵士を沢山作ろうっていう計画で生まれたのが私。親なんて居ない。生まれてしばらくしたらすぐに人殺しの技術を叩き込まれた」

 

「他の皆は上手く覚えたり、実際に上手くできてる中……私だけできなかった。

────人を殺す技術を覚えるのが、嫌だった」

 

「……ナイフを握るのが怖かった。どうしたら人が死ぬのかを知るのが嫌だった」

 

「もちろん、私は『役立たず』って周りから言われた。それで教官からも虐められたりした。

────でも、そんな中でね、同じ気持ちを持っている子を見つけたの」

 

「……それがラウラなんだ。ラウラも本当は刃を握るのが怖かったけど、やらなきゃいけないから、っていう気持ちでやってたんだ。それでラウラと私は意気投合して仲良くなった」

 

「それでも、ラウラはずっと成績優秀で毎回一番の成績を取ってたんだ。それに比べて私は最下位でなにもしてないし、できなかった」

 

「────それが面白くなかったんだろうね。訓練を受けている子総出で私の事を虐めに来たんだ。ナイフで体を切られたり本を破かれたりしたけど抵抗する気はなかった。

人殺しの知識をつけるぐらいなら、自分が傷つく方がいいから」

 

「────でもその度ラウラが助けてくれたんだ。あの時なんか教官に面と向かってクズ野郎って言って怒鳴ってたっけ」

 

「私にはラウラが居たからそんな日常の中でも生きていられた。心を保っていられた」

 

「……でも、そんな日常の中で過ごして、五歳ぐらいの時かな。

────私は初めての野外訓練で車に乗っている最中に、雪が積もっていた外に放り出された。

多分私の事をよく思っていない子に突き飛ばされたんだと思う」

 

「その時初めて体全体で雪に触れたんだけど、冷たくて気持ちよかった。

────突き飛ばされたことなんてどうでもよかった。

ただただ、もうこんな世界とはお別れできるって思った。

多分軍の方では、私は訓練中の不慮の事故による死亡扱いになってるから、死んでもいいと思った。

────兵士って役目から開放されると思った」

 

「だんだん眠くなって、死んでもいいって気持ちで雪の上で寝たの。

────でも、目が覚めたらベッドの上に居て私は生きてた。

偶然近くを通りかかった、今の私のお父さんとお母さんが私を見つけて私を拾ってくれた。

その後はその家でしばらくお世話になって、正式にその家の子供になったの。

名前だけそのままにして、ライラ・ボードウィークに。

そして、そのお祝いで日本に行って、その時黒騎に会ったの」

 

「……その時助けてくれた黒騎の姿が、かっこいいと思った。

私も、黒騎みたく強くなりたいと思った。

──その時にIS学園に入ることを決めたんだ。両親も快く承諾してくれたし、かなりの権力者だったからなのかは分からないけど、ドイツの軍部を脅してまで私に専用機……『シュヴァルツェア・ステルベン』までくれた」

 

「そして、死ぬ気で勉強を頑張ってIS学園に入って、黒騎ともう一度会った。

もう、正直これだけで努力が報われたと思った。

私の目標が、同じ学園の同じクラスに居るって分かって嬉しかった」

 

「でも、今週。

────ラウラが来た。私は嬉しくなって話しかけようとしたけど無視された。

……ラウラは、私が生きていたのが嬉しいんだ。でも私が死亡扱いにされた時に助けられなかったことで悩んでるから私に辛く当たってるんだ。

既に、私に嫌われているんじゃないか。って思いこんでるから、どうせなら絶交してもらおうとしてるんだ。ラウラって感情を表現するの苦手だから、私には分かる。けど……」

 

 

「……黒騎。私、どうすれば良いのか分からないの……っ。

教えて……私はどうすればいいの……」

言いたいことを一通り吐き出したのか、ライラが俺に抱きつく。

そして、俺の胸で抑えきれなくなった涙を流す。

……正直俺は、今のライラにどういう言葉を言えばいいか迷っている。

仲直りしろ、と言ってもどうするかが問題になる。その方法は俺の脳に思い浮かばない。

戦って言うことを聞かせろ、は駄目だ。力に訴えかける方法はなるべく避けたい。

なら────

「────ボーデヴィッヒに、自分の気持ちを吐き出せば良いのではないか?」

自然と、口が開いていた。

「聞いたところ、ボーデヴィッヒはお前に嫌われていると勘違いしているのだろう?ならばお前がボーデヴィッヒに気持ちを伝えればいい。私はラウラを嫌っていない、とな」

言い終えると、ライラが顔をゆっくりと俺に向ける。

その目は、先程までとは違い少しだが光が戻っていた。

「……信じて、くれるかな」

「そこまではわからん。だが……ライラが仲直りをしたいと強く思うのならば、必ずボーデヴィッヒは気付いてくれるはずだ」

仲がいいなら、正直に伝えれば相手の気持ちがわかるはずだ。

「……私、やってみる。ラウラに、私の気持ちを伝えてみる」

どうやら、迷いは晴れたらしい。ライラが目を見開いて力強く言う。

俺はそんなライラの姿を見て、笑みを浮かべる。

「ああ。頑張れよ」

「……今日はありがとね、黒騎。もう大丈夫」

ゆっくりと、ライラが密着させていた体を俺から離す。

「分かった。ではおやすみ、ライラ。お前の気持ちが届くことを俺も願おう」

「うん、おやすみ。本当にありがとね、黒騎」

微笑み返された俺はライラから離れ部屋から出る。

 

 

「……今のを聞くと、恨んでいた自分が馬鹿馬鹿しく思えるな」

玄関のドアを開け、部屋に戻った俺は小さく呟く。

ラウラとライラにあんな過去があったと聞かされれば、何も知らず恨んでいた自分が憎く思える。

「……俺も、ラウラと和解できるように善処しよう」

そう呟き、周囲を見渡すと……

「……?シャルルは何処へ行った?」

部屋にいるはずのシャルルが見当たらない。

だが、耳を澄ますとシャワーが流れる音が聞こえたので、シャワーを浴びているのだと分かった。

「……そういえばボディソープが切れかけだったはず」

そこで、昨日シャルルが言っていたことを思い出しクローゼットから予備のボディソープを取り出し脱衣所まで持っていく。

今日も俺が初めに入ろうと思っていたので、まだ補充していないはず。

脱衣所に入り、ボディソープを洗面台に置く。

ガチャ。

「────ん?」

ガチャ?ああ、シャルルが風呂から出てきたのk……アレ?

そういや、ライラの件ですっかり忘れてたが……これ……

────原作のラッキースケベ遭遇シーン通りじゃねぇかァァァァァァッ!?!?

「く……くろ、き……!?」

言いながら、風呂から出てきたのは……

 

 

 

────全裸のシャルル(女子)だった。

 




黒騎にラインバレルを降りてもらったが、誰もパイロットが粗製とは言っていない(?)


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