地獄はあるか?此処がそうだけど (雪月-dox-)
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無機質な色

久しぶりの投稿になります。気力が続けば続くかも!


「お帰りなさい!無事…」

 

「…ん、次」

 

だったんですね。と言い終わる前に、目の前の彼女は次の任務を出す様と指示して来る。

 

「あの、少しは休憩した方がいいですよ…?」

 

 

苦笑いを通り越し、少しだけ目を吊り上げなら赤毛の少女は目の前の女性を見つめる。それに対し彼女は小さくため息を付いて端末を操作すると一番上に表示された任務を受けようとする、が

 

 

「アークさん、もう一度言います。休憩をして下さい、任務を提示されても許可は出来ません」

 

「…なんで?」

 

「なんでって…今日だけで10件以上の任務を終わらせているんですよ?今月のノルマだって終わっていますし、緊急時でもないのに…」

 

 

意味が分からない、と小首を傾げるアークさんに苛立ちを覚えながら言葉を続ける。私の荒げた声に周りのゴッドイーター達の視線を集めるも「いつもの事」と、思っているのか直ぐに自分の作業へと戻っていく。

 

 

「大体、こんなやり方じゃ…いつか死んでしまいます!」

 

「…いつかは死ぬからいいんじゃない?」

 

「っ…!!貴女はまたそんな事を!」

 

 

何時もそうだ。誰とも組まない上に無茶苦茶な量の任務を引き受けては顔色一つ変えずに帰還する。必死に引き留めて命の危険を伝えれば平然と「死んでも構わない」と言葉を変えて口にする。

 

 

「まぁまぁ!ヒバリちゃんがこう言ってんだ!今日は休もうぜ、な?…俺から見ていても最近のお前、張り切り過ぎだ」

 

「タツミさん…」

 

 

似合わないウィンクを此方にしながらアークさんの背後から肩を叩いて声を掛けるタツミさん。振り返るアークさんはタツミさんと私を交互に見た後に、上段に居たリンドウさんを見つけ

 

 

「…わかった」

 

 

短くそう告げるとターミナルの方へと歩いて行ってしまった。

 

 

「…はぁ…」

 

「ご苦労さん、2人とも」

 

 

アークさんと代わる様に階段から降りて来たリンドウさんに会釈をする。アークさんが大人しくしたのは三人を相手に無理矢理任務を受けることは難しいと考えたから、そう思うととても寂しく思います。

 

 

「此方こそありがとうございます。タツミさんもありがとうございます」

 

「いいって事よ、俺も思う事があったしな…」

 

「俺は上から見てただけだから、礼を言われるような事はしてないぞ」

 

 

苦笑いを零すタツミさんと肩を竦めるリンドウさん、其処に万屋のおじさんも加わって

 

 

「わりぃな、嬢ちゃん。物資を売れないって言ったんだが、何も持たずに行こうとするから慌てて握らせちまった」

 

「い、いえ!私こそ無理なお願いをしてしまって…」

 

「いいさ、ある意味アナグラの中じゃ割と大変な事だしな」

 

 

それだけ言うといつもの位置に戻るおじさん。リンドウさんも深刻そうな表情で何か考えながら自室へ戻っていきました。

 

 

「ヒバリちゃん、なんでアークがあんなに風になったのかわからないか?」

 

「…分からないんです。確かに1日に3回、5回と任務に行く時はありましたが…」

 

「そっか…止める時は、また呼んでくれ」

 

 

そう言って離れていくタツミさんに会釈をしては仕事を再開する。けど、ぐるぐると頭の中ではアークさんが変わってしまった原因を探してばかりでした…。

 

 

 

 

何時もの部屋へと戻って来ては衣服を脱ぎ捨ててシャワー室に直行する。汗を流しながら今日を振り返る。日が昇る頃に端末で任務を受け、朝に報告し、再び任務。この時にはヒバリが居てそこから軽い任務を順当に消化して行った。午後になっておじさんが今日はもう売れないと言ったので、流石に買い過ぎたかと思い頷いて、出撃しようとしたら慌てて回復錠を何個かくれた。コンゴウ4体とヴァジュラ2体、それから最近時々話題になる白いヴァジュラを見かけて追跡、この時点でヒバリから帰投する様にと強く言われたので帰る事に。流石に新種を追うのはやばかったかと思ったが別の理由だったようだ。

 

 

「…三人とも怒ってた?」

 

 

明らかに怒っていたヒバリ、軽い調子だったけど任務に出ない様にと入り口を塞いだタツミ、上から睨みを効かすリンドウ。

 

 

「…悪い事、した?」

 

 

何故ああなったのか良く分からない、無理をしているつもりは無いし、体調は頗る良かった。怪我もしてない。

 

 

「明日…謝ろ」

 

 

でも、誰かを怒らせたのは確かだし、進んで嫌われたい訳じゃない。なら、謝って関係を悪くしない様にするしかない。すっかり真っ白になってしまった髪をタオルで拭きながら、鏡に映る自分を見る。肩まで伸びた白い髪に茶色い瞳、蠟燭の様な肌色、いつもの自分の顔だ。…そう言えばアレから時間は経ったけど髪の色だけは戻らない。テーブルに置いてある小さな紙箱とライターを取り、少し考えてからテーブルに戻しては衣服を着る事もなくベッドへと倒れ込み、膝を抱え込むように丸まって瞼を閉じる。…今日はあの夢を見ないといいな。




と、言う訳で第一話でした!


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優しい赤色

読んで頂けて感激!過去の記憶を思い出しながらなので間違いがあるかも!


ぱちりと目を覚ましてはもぞもぞとベッドから這い出る。軽く背伸びをしては身体を解し、適当な服に着替える。パーカーにジーンズ、今日は露出が少ない。ジャイアントトウモロコシを頬張りながら任務を受ける為に部屋を出ようとする。時間は8時半

 

 

「…おはようさん、支部長が呼んでる。行ってやってくれ」

 

 

部屋を出ると丁度訪ねようとした所なのか、リンドウが立っていた。私はリンドウがいる事に、リンドウはジャイアントトウモロコシを咥えている私に驚いて少し固まった

 

 

「んむゅ」

 

「しっかり食べてから行けよ?」

 

 

苦笑いするリンドウに頷きながらスタスタと横を通り抜けて支部長室に向かう為にエレベーターに乗る。…何階だっけ?

 

 

 

 

 

エレベーターに乗って支部長室へ向かう我らが戦乙女、アラガミ殺戮人形とも言われてるな。いつもの無表情でトウモロコシを咥えたままなのは一部の人間なら心に焼き付けているだろう

 

 

「あいつ、咥えたまま行きやがった」

 

 

動くエレベーターを見ながらやれやれと肩を竦めてため息を吐く。…ま、いいか。俺も仕事仕事っと

 

 

 

 

 

少し迷ったが無事に到着した、迷ったおかげでジャイアントトウモロコシは胃に収められたので良しとしよう

 

 

「…アークです」

 

「入って来たまえ」

 

 

直ぐに返って来た返答にかなり待たせたのだろうか?と考えるも取り合えず入る事に

 

 

「朝から呼び出して申し訳ない。君に少し伝えなければならない事があってね」

 

 

そう言って机の上で手を組み直すシックザール支部長。いつも何を言っているのか理解に苦しむが今日は普通に喋ってくれる様だ

 

 

「…何でしょうか?」

 

「警戒する事ではない、我々フェンリルは対アラガミを目的としてゴッドイーターを纏めているのは知っているな?人類の希望ともなる組織だが…根幹は企業だ。そこで最近の君の状況を見てやらなければならない事が出来た」

 

「…?」

 

「君には一カ月程休暇してもらう。給料は普段の平均額を振り込む事になっている」

 

「休暇、ですか?」

 

「そうだ、休暇明けには新人の訓練をして貰う。君の戦闘実績なら安心して任せられる。あぁ、これは支部長命令だ」

 

「…了解です」

 

 

支部長命令で休暇を言い渡す事に意味があるのだろうか?と、疑問に思ったが口には出さずに大人しく頷く。…新人訓練、死なない術を叩き込めばいいのかな?

 

 

「話は以上だ。休暇は今日から、しっかりと身体を休めると良い。神機の方も本格的なオーバーホールをする様に伝えている」

 

 

それを聞いては静かに支部長室から退室する。…今日から暇になってしまった、新人用の訓練メニューを考えておいた方がいいのだろうか?あ、謝りに行かないと…昨日の出来事を思い出すと自然と俯きがちになる。何かをしたからああなった、けど何が悪いのか理解出来ていない。この状態で謝っても意味が無い…この考えは逃げなのだろうか

 

 

「やぁ、何かあったのかい?」

 

 

とぼとぼと歩いていると前から声を掛けられる、顔を上げれば榊博士が立っていた。手には資料を持っている支部長室に行く途中だろうか

 

 

「…長期休暇を言い渡されました」

 

「ふむ、なるほど…アーク君、君は周りを見た事はあるかい?」

 

「周り…?」

 

 

聞き返すと榊博士は頷きながら人差し指を立てながら解説する様に説明を始める

 

 

「君は最近の自分の事を周りがどう思っているのか、気にした事は?ヒバリ君やタツミ君、リンドウ君。その他の子達も最初は驚きの目で見ていたはずだ、だが…今は驚きではなく様々な表情をする者が多いはずだ。困惑する者、畏怖する者、怒る者」

 

「…昨日、怒られました」

 

「そうだろう。君の任務の消化率は大したものだ、極東支部の3割は君一人で消化しているが、同時に君に負担が掛かり過ぎる。それはとても危険な事でありいつ死んでも可笑しくない」

 

「ですが…」

 

「心身共に異常は無い。それこそが異常だ、何かの拍子に突然身体が動けなくなったり気が付かないストレスが蓄積されそれが爆発した時、何が起きるの分からない。私としてはこの2つを危険視しているよ。君は極東支部において重要な戦力だからね」

 

「…」

 

「君は他者との繋がりをしっかりと見直すべきだ。悪い意味ではないよ?悪い関係や悪くなりつつ関係を元に戻す為に見直すんだ。君が死ぬ事を良しとしない他者に死ぬ事を善とする言動は衝突の原因となるのは分かっているはずだ」

 

「…はい」

 

「うむ、なら早めに謝りに行くといい。私も用事があるのでねこの辺で失礼するよ」

 

 

そう言って歩き始める博士に頭を下げる。普段はマッドだとか思っていたけど、カウンセリングの経験もあるのだろうか。…今回は感謝しよう、あの時の事を思い出せば確かに私が悪い

 

 

 

 

出撃準備をせずにロビーに向かえば驚きの表情で周りのゴッドイーター達に見られる。何が珍しいのか分からないが目的の人物の元へ歩いて行く

 

 

「おはよ、ヒバリ」

 

「あ、アークさん…はい、おはようございます」

 

 

私を見つけるとヒバリはバツが悪そうな顔をした後に私の格好を見ても驚く事はなかった

 

 

「大丈夫、命令には従うから。…昨日はごめん」

 

「…アークさん、少しだけこちらに」

 

 

昨日の事を謝ればヒバリは受付を端末へと切り替え一つの部屋へと私の手を取り引っ張って行く。大人しく従って部屋に入れば誰も使っていない空き部屋だと分かる

 

 

「すいません。あまり周りには聞かれたくなかったので…昨日は私こそ怒鳴ってしまって…ごめんなさい」

 

「…ううん、大丈夫。私が悪かったから」

 

「アークさん…何故あんな無茶な事を始めたんですか?」

 

 

じっと、私を見つめるヒバリを見つめ返しながら素直に伝えようか迷う。無茶な事をしている自覚はなかったしタツミが言って居た様に異様に張り切っていたのは確か、でもその理由は…

 

 

「言えない理由が、あるんですか…?」

 

 

どうしようか迷っている間にヒバリが俯いてしまった。言えない、言いたくない?…何故?…ヒバリが俯いているのは私に死んで欲しくないから、榊博士の説明で答えは知って居る、なら

 

 

「夢、怖い夢を見たの。誰も居ない世界で私だけが立ってて、とても怖かった。それ現実になるんじゃないかって。…半分八つ当たりでアラガミを狩ってた。誰に止められても任務に出てる時が対抗してる様で安心したから」

 

「アークさん…大丈夫です。誰も居なくなったりしません、極東のゴッドイーター達は皆腕利きです。絶対に皆が居なくなることはありません、アークさんも私も」

 

「…ヒバリ、ありがとう」

 

「はい…!」

 

 

そっか、簡単な事だったのかもしれない。私だけが一人で先を走り過ぎていた、それだけだったんだ。「他者との関係を見直す」…思えばしっかりと会話をした人は少ない、私の手を力強く握るヒバリにぎこちなく笑えば驚かれた、なんで?




そんな訳で2話目です!夜中に投稿したのにお気に入りが付いてる事に驚くのと共にとても感謝です!


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防衛の黒、隊長の黒

今回も戦闘描写はないです…


「お仕事が終わったら迎えに行きますね!」

 

「…うん、またね」

 

 

あの後もう一度笑って欲しいとヒバリに強請られ笑み?を捻り出した。すると「やっぱり、意識してだとできないんですね」と呟いているのを聞いた、何かしたかな?と思いながら考え込むヒバリを眺める事1~2分、意識が戻って来た彼女から「夜、空いていますか?」と聞かれたので一緒に夕飯を摂る約束をした。その後、部屋から出ては受付で分かれ。次の人物を探す為にフラフラとアナグラを散策…この時間だとリンドウは任務に行っているはず、なら

 

 

「俺はリンドウの代わりかい!」

 

「暇そうだったから」

 

「あー、確かに今日は暇だな。うん」

 

 

丁度、廊下にいたタツミを見つけ声を掛ける事にリンドウが見つからないからと言うと突っ込み?をしながらそう言って来た

 

 

「んで、急にどうしたんだ?お前が俺に声を掛けるなんて珍しい」

 

「ん…昨日は、ごめん。それとありがとう」

 

「昨日?あぁ、ヒバリちゃんを怒らせたあれか」

 

 

そこまで言うと、腕を組んで唸るタツミ真剣な表情で私を見つめた後に口を開いた

 

 

「まぁ、謝って来たって事は自分が何を言ったのか、何故ヒバリちゃんが怒ったのかは理解出来てるな?」

 

「うん」

 

「んじゃ、もうあんな事言うなよ?ヒバリちゃんが怒ったのもお前を心配してるからだぞ?うらや…コホン。取り敢えず、自分が死んでも良いなんて風に聞こえる言葉は禁止だ。俺がお前の口から聞いただけでも2回だからな?…ヒバリちゃんに何回言ったんだよ」

 

「…5回?」

 

「疑問符を付けるな、考えるだけでも恐ろしい」

 

「ごめん」

 

「あぁ、いいよ。気にするな…所でヒバリちゃんは今日空いてるとか暇そうな雰囲気とかあったか?」

 

 

先程の真剣な雰囲気の何処かへと消し去っては何時も雰囲気に戻るタツミ。その切り替えは見習いたいと思う。今日のヒバリの予定…

 

 

「受付でお仕事、お昼は空いてるかも…?」

 

「ほんとか!?うっし!ちょっと用事が出来た。またな!あ、任務の時は声を掛けろよ!」

 

 

そう言って慌てた様子でタツミは廊下を駆けて行った、その背中を小さく手を振りながら見送る

 

 

 

 

 

タツミと別れて暇になってしまったので自室に戻りターミナルを起動する。アラガミ図鑑で時間を潰そうと考えていたのだが、一通のメールが来ている事に気が付いてはメールを開く

 

 

「第一部隊に移動?」

 

 

その文面を無意識に読み上げた後にそっと閉じた。どうやら無配属で実質支部長直属扱いからしっかりとした部隊へ配属されるようだ。そう言えば新人ゴッドイーター達は第一部隊で初陣を果たし、実戦経験を積んだ後に他へと移るらしい

 

 

「…新人教育。あ、メニュー考えないと」

 

 

そうと決まれば早速取り掛かるテーブルの紙箱から煙草を出しては火を点け咥える、ターミナルの画面を眺めながら指を動かして行く

 

 

 

 

 

三本目の煙草に手を伸ばそうとした時、扉が叩かれる。誰か来たようだ

 

 

「アーク居るか?リンドウだ」

 

「…?」

 

 

ふと、時計を見ればお昼のピークが去った頃なっていた。失礼にならない様に急いで扉を開ける

 

 

「よっ、朝ぶりだな」

 

「ん、お帰り」

 

「おう、昼は食ったか?俺は今から行く所なんだが一緒にどうだ?序に話したい事もある」

 

「…行く」

 

 

どうやらお昼をお誘いの様だ。話と言うのは部隊移動の件だろうか?リンドウに頷いてはそのまま部屋を出て歩き始める。リンドウの方をちらりと見ると観察する様に私を見ていた

 

 

「…?」

 

「いや、昨日までの雰囲気は何処に行ったのかと思ってな」

 

「…気付いたから。昨日はごめん」

 

 

歩きながらそう言えば驚きで固まるリンドウ、不思議に思いながら首を傾げ見つめると何かを理解した顔に変わる

 

 

「なるほど、機嫌が良かったのはそう言う事か」

 

「どう言う事…?」

 

「んや、何でもない。強いて言うならしっかりとお前とは話し合うべきだったと思っただけだ」

 

「??」

 

 

そんな会話をしながら食堂に付けば配給券を使ってジャイアントトウモロコシを貰う、それを後ろから眺めていたリンドウは首を傾げる

 

 

「お前、それしか使わないのか?」

 

「…お腹は膨れるよ?」

 

「まぁ、そうだが…食堂はしっかりと使ったことあるか?」

 

「あまりない」

 

「…ここに来てからどの位たった?」

 

「8カ月?」

 

 

急な質問に首を傾げながら答えるとリンドウは憐れむような視線で私の肩にぽん、と手を置いた

 

 

「券と金を出せば良いモン食えるんだぞ?」

 

「…そうなの?」

 

 

8カ月間ずっとトウモロコシだけだったのか?と呟くリンドウから離れては近くの席に移動する。良く分からないがジャイアントトウモロコシ以外の物も食べられるらしい、ピークが過ぎたと言ってもまだ少しだけ居るゴッドイーター達からもリンドウと同じ視線を感じた。私と違いそれなりに厚みのあるステーキを皿に乗せたリンドウが正面に座る

 

 

「…なぁ、アーク。あれだけ任務に出てるんだ、報酬金もかなり出てるだろ?あー…余り口を出す事じゃないがもう少し食ったり飲んだりした方がいいぞ?」

 

「…??」

 

 

もぐもぐとトウモロコシを食べていると心配そうに声を掛けて来るリンドウ。何かしただろうか?

 

 

「いや、それでいいならいいんだが…低燃費過ぎるだろう。あ、その辺も伝えておくか…」

 

「…話って部隊移動の事?」

 

「ん?あぁ、そうだ。急にお前が俺の部隊に来るって言うから驚いたんだ…支部長から何か言われたか?」

 

「何も?」

 

「そうか、ならいいんだ。お前程腕の立つ奴が来れば任務の消化も楽になるしな…あ、休暇中だったな」

 

「うん、1カ月。支部長命令で言われた」

 

「まぁ、そうなるわな」

 

 

リンドウから質問をされ、それに答える形で話して行く。最近怪我をしたかとか任務以外は何をしているのか、とか

 

 

「…ソーマ並みか?いや、此処まで…こりゃ…手が掛かるぞ」

 

「??」

 

 

頭を抱えるリンドウを眺めながら首を傾げる。何故、ソーマが出て来るんだろうか

 

 

「まぁ、いいか。よし…今日から任務以外でやる事も探してみろ。後は周りと仲良くしろよ?」

 

「…?うん」

 

 

そう言って席を立つリンドウ、食器を片付け食堂から出て行こうとした所で何か思い出したのかこっちに戻って来る

 

 

「忘れ物?」

 

「んや、こいつをやる。配属祝いだ」

 

 

そう言って差し出された配給ビール券を1枚受け取る。いつも持ち歩いてるのかな?

 

 

「貴重品だ、味わって飲めよ?」

 

「ありがとう」

 

「おう、まぁ…なんだ。休暇が明けたら忙しくなる気がする、さっきの事は今のうちにやっておけよ?」

 

 

んじゃな、と言って去って行くリンドウに小さく手を振りながら私も食堂を後にする。ヒバリとの約束までに時間は大分ある…何しよう



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華麗な色

UA250突破しました!ありがとうございます!


任務以外にやる事、趣味?を作る様にと言われたので何かないか探してみる事にした。メニューを作るのも良いのかと考えたが、あれは任務に入ってしまう気がしたのでやめておいた。…ふと気が付いた事がある。アナグラの施設は殆ど知らないと言う事だ

 

 

「アークさん。どうかしたんですか?」

 

 

自室以外に行き慣れているロビーに来れば仕事が一段落したのか私に気が付いたヒバリが声を掛けて来た、丁度会話をしていたのかエリックもいた

 

 

「…おつかれ、ヒバリ、エリック。私は特に…アナグラの中を見て歩いてる」

 

「アナグラを?」

 

 

ヒバリとエリックの二人が声を揃えて反応する。そんなに可笑しな事だったかな?

 

 

「何か探してるんですか?」

 

「ううん、趣味を作ろうと思って歩き回ってた。…後、ロビーと支部長室、食堂と私の部屋しか知らないから見て歩いてる」

 

「…アークさん、アナグラの施設は一応知っておいた方がいいですよ。趣味、ですか」

 

「…わかった」

 

 

顔を引き攣らせるヒバリと目をキラリと光らせるエリック、あの顔は何か閃いた顔だ

 

 

「えっと、そうですね。…私が案内」

 

「待ちたまえ、ヒバリ君。君は仕事で離れる事が出来ないだろう?ここは僕が!」

 

「ぅ…凄く心配ですが、分かりました。エリックさんお願いします…変な事教えないでくださいね?」

 

「任せたまえ!このエリック・デア=フォーゲルヴァイデの名に誓って!華麗に戦乙女に趣味を見出させ、アナグラをしっかりと案内しよう!」

 

「は、はい…アークさん、手に負えないと判断したら置いて来てください」

 

「…??」

 

 

物凄くキラキラとした雰囲気でポーズを取りながら宣言をするエリック。彼風に言うのなら「華麗なポーズ」なのだろうか?硬直するヒバリと一緒に眺めてた…戦乙女って何だろう?

 

 

 

 

 

 

 

「さて、取り合えずはアナグラの案内はさっきでの最後だ。何か質問があれば僕が華麗に分かり易く答えよう!」

 

「…大丈夫、エリックの説明は分かり易かった」

 

 

意外と言えば意外な事にエリックの説明は細かく分かり易い、更に言うのであれば小話を挟む等私に気を遣ってくれているのが良く分かる

 

 

「それならよかった!しかし…君はここに来てからそれなりの時間が経つはずだが…」

 

「ロビーと自室しか行く所なかったから」

 

「食事で食堂は使うだろう?」

 

「ジャイアントトウモロコシを部屋で食べてた」

 

 

そう答えるとエリックは引き攣った表情で私を見る。ジャイアントトウモロコシってそんなに嫌われているの?

 

 

「成程、これは重傷だ…よし、この僕がアナグラでの楽しみ方も教えよう!」

 

「楽しみ方?」

 

「そう、ストレスの発散方法だ。どんなに強いゴッドイーターでもストレスは感じる、貯め過ぎるのは良くないからね!例えばソーマはクールで孤高だが、ぶどうジュースが好きで良く飲んでいる。リンドウはビールを好んでいるね。女性ならカノン君はお菓子作り、甘い物が好きみたいだね。ジーナ君も甘い物が好きでカノン君と仲がいい」

 

「…好みはストレスの発散になるの?」

 

「勿論!まぁ、僕はそれに加えてコミュニケーションを良く取って居るのさ。僕の華麗な会話は周りを笑わせられると自負しているよ」

 

 

ポーズを取りながら胸を張るエリックに小さく拍手を送る。私には絶対に出来ない事だ、羨ましいとは思はないけど出来たら「コミュニケーション」は取り易い…と思う

 

 

「拍手は止めたまえ、僕にとって華麗でいる事が普通なのだ。拍手は恥ずかしいからね」

 

「…そう?私には出来ない事だから凄いと思う」

 

「そ、そうかい?」

 

「うん…あ、趣味はどう作るの?」

 

「おっと、僕とした事が忘れていたよ。趣味、か」

 

 

エリックに質問すると私を見ながら何かを考えている。顔から服装に視線が移り小さく頷いた後

 

 

「アーク君は服装を気にした事はあるかい?僕は僕に合う、華麗な服装をコーディネートしてるんだ」

 

「華麗な服装…?…気にした事はない、かな」

 

「そう!華麗な服装だ!自分の魅力最大限に引き出す様な服装…所謂、おしゃれと言う奴だね。君なら服装に気を配れば誰もが振り向くぐらい美しくなるだろうね!」

 

「…??」

 

 

エリックの説明を頷いて聞いて行く。服装に関してはあまり気にした事が無い、元々持っていた着れる物と制服ぐらいだろうか

 

 

「自分に合う服を研究して行くのも趣味となるはずだ。後はカノン君のお菓子作りも趣味さ、ただ…お菓子作りは少し難しい手軽に出来るのなら読書や旧文化のアニメや漫画なんかもいいね」

 

「ん、ありがとう。エリック」

 

「このぐらいお安い御用さ!…それにしても大分印象が違うね」

 

「…?」

 

「いや、すまない。今のは忘れてくれ、華麗じゃない言葉だった」

 

 

首を傾げるとエリックは申し訳なさそうにかぶりを振った

 

 

「わかった」

 

「すまないね、アーク君は行きたい所はないのかい?」

 

「…整備室に行きたい」

 

「整備室?」

 

「うん、私の神機…調整中だから、様子を見に行く」

 

「成程…僕も君の神機には興味があるな」

 

「…行こ」

 

 

ほほう、と食い付いて来たエリックと一緒に整備室へ。多分、きっと…リッカが怒ってるんだろうな…と思いながらエレベーターに乗った



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恐い灰色

UA380越え、お気に入り登録などありがとうございます!


神機の様子を見る為に整備室、神機を保管している区画へと移動する。一緒にエリックを連れて来たのはリッカの怒りを少しだけでもいいから緩和して欲しいと言う願いも込めている。…けしてデコイとして期待している訳じゃない

 

 

「…」

 

「無言で入るのかい?」

 

「…こんばんは」

 

「あーーー!!やっと来たっ!」

 

 

無言で入って様子だけ見て帰ろうとしたけど、エリックの問い掛けに小さく挨拶をすればスパナを片手にずんずん!と効果音が付きそうな勢いで奥の方からタンクトップにオーバーオール姿の少女、楠リッカが掴み掛らん勢いで近寄って来る。普段は見せないリッカの怒りに隣にいたエリックは硬直していた

 

 

「…お邪魔しました」

 

「逃がすかぁぁ!」

 

 

阿修羅すら跪いて許しを請うのではないかと錯覚する程の怒りを込めて近づいて来るリッカをエリックを盾に逃走を試みるもゴッドイーターの動体視力でも負えない速度で先回りされ首根っこを引っ掴まれる

 

 

「あぅ…」

 

「あぅ…じゃない!こっち来る!どーやったら貴重な試作の刀身をぼろぼろに出来るの!」

 

 

がっちりと掴まれては子猫の様に引きずられて行く。可笑しい、身長は私の方が高いはずなのに…数cmだけだけど。リッカに引きずられて行くと私の神機から取り外しされた刀身…試作の太刀が刃毀れした状態で机に置いてあった

 

 

「これ、何を斬ったの??」

 

「…クアトリガの大型ミサイル」

 

「なんで!」

 

「ぅぅ…距離を詰める時に撃たれたから、切り払って取り付いた」

 

「大人しく避けるか装甲で防ぎなさぁぁい!!」

 

 

ぴっ!と声を漏らしながらがくがく震える身体を落ち着ける。今のリッカは鬼、アラガミより怖い。ヴァジュラ五体に囲まれた方がいい

 

 

「アラガミは1体ずつ相手にするのはゴッドイーターの基本よね?…アークぅ?」

 

「…ごめんなさい」

 

「ま、まぁまぁ…リッカ君あまりアーク君を怒らないくれたまえ。無茶をしなければ生き残れない状況だったのかもしれない」

 

 

リッカと私の会話に割り込むエリックを神を見る様な目で見つめる。心成しか後光が射しているように見える

 

 

「エリック、アンタこれを見た後に言える?」

 

「…?何だいこれは?」

 

 

それを聞いたリッカはエリックを引っ張り近くの机に向かって行く。二人の陰で良く見えないが何かの図面の様な物が広がっていた。リッカから解放された隙に私の神機に近づく、刀身や装甲は外されておりグリップの部分だけが残っていた、黄色い目の様にも見える神機のコアに優しく右手を添えてゆっくりと撫でる。この子がどう感じているのかは分からないけど…何時も無茶苦茶な使い方をしても大人しくしてくれている事に対するせめてものお詫びと感謝を伝える様に。…?気のせいか一瞬コアが光った気がする

 

 

「…アーク君。申し訳ないけどアレを見た後だと君を弁護する事は出来ない。寧ろ、幾つか言わなければならない事があるよ」

 

「アーク、この際あんたの無茶苦茶を徹底的に矯正させて貰うわ」

 

 

コアから手を放して後ろを振り返れば鬼が二人に増えていた。私は絶望で目の前が真っ暗になった

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

あの後、リッカからはオーバーホールを受けた私の神機から任務の出撃数、どの様なアラガミをどの様に相手にしたのかを全て看破され、其処にエリックが私の言い訳を全て潰して行くという地獄の様なお説教を受けた。正座のし過ぎで真面に立てなくなった私はリッカに立たされながら椅子に漸く座る事が出来た

 

 

「アーク、今後こんな戦い方する時は一人で行かない事を約束しなさい。そうすれば神機の摩耗も減るわ…何時も何時も一人で行って無事に帰って来れ無かったらどうするの?」

 

「…ごめんなさい」

 

 

最後は真剣な表情のリッカにそう言われ静かに頷いた。この雰囲気は昨日ヒバリで十分に体験した、言葉を間違えない様に謝罪だけ

 

 

「…はぁ、本当に分かってくれてるの?…次の任務もちゃんと帰って来るのよ?」

 

「うん」

 

 

其処に缶ジュースを自販機から買って来たエリックが戻って来ては私をリッカと挟む様に隣に座り缶を差し出して来る

 

 

「安心したまえ、その時は僕が付いて行こう。ついでにソーマも巻き込んでね…所でリクエスト通りにアーク君には初恋ジュースを買って来たんだが本当に飲むのかい?」

 

「うん、ありがとう」

 

「あ、あぁ…飲むのならいいのだがね」

 

 

カシュッと音を立てながらプルタブを上げて缶を開ける。ゆっくりと飲んでいると二人が若干身を引きながら私を見ていた。普通に美味しいと思うんだけど

 

 

「…あ、そろそろ戻らないと。ヒバリが迎えに来る」

 

「ん?おっと!もうこんな時間か!僕も愛しのエリナに会いに行かないと、一足先に失礼するよ!」

 

「はいはい!あたしも仕事がまだ残ってるから戻るよ!…誰かさんの刃を直さないとだからね」

 

「あぅ…」

 

「落ち込むならしっかりと周りを頼りなさいね?」

 

 

エリックが居なくなった廊下で意地悪な笑みを浮かべるリッカは私の背中を数回ぺちぺちと叩いて仕事へと戻って行った。…時間に遅れないようにしなきゃ

 




アークの神機は旧型ですが、刀身部だけは試作段階の太刀と言う刀身をオリジナルとして入れております。

特徴
・ロングよりも長くバスター程の厚み、重みはない刀身。切り落とす事を目的としている

特殊アクション
・神斬り:オラクルを刀身に込め振るう事で斬撃を飛ばす事が可能。斬撃には刀身の属性が乗る
・止水:刀身にオラクルを込めた状態を維持する事で劣化版のバースト状態へ移行が可能


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優しい赤色#2

UA500突破ありがとうございます!お気に入りもありがとうございます!


整備室でリッカとエリックの二人にお叱りを受けた後、ぐったりしながら自室に戻りヒバリが来るまでゆっくりする事にした。正座の影響で膝がまだ痛い…片手で擦りながらぷかぷかと煙草を吹かしながらぼーっと、天井を眺める。…一カ月の休暇はとても長いと思う。最後に吸い込みゆっくりと煙を吐いては輪が出来ないか試したがただ煙が出ただけだった、灰皿で煙草を消すとタイミング良く扉が叩かれる

 

 

「アークさん、いらっしゃいますか?ヒバリです」

 

 

ヒバリが迎えに来てくれたようだ、ゆっくりと立ち上がり扉を開ければ私服姿のヒバリが立っていた

 

 

「いるよ。お疲れ様」

 

「アークさんもお疲れ様です。休暇一日目はどうでしたか?」

 

「…一カ月は長いなって」

 

 

鍵を掛けてはそんな会話をしながら二人で歩き始める。ヒバリ曰く「アークさんぐらいですよ。そう言うの…」とジト目で見られたが実際一日の休暇でわかった事がある。任務に出なければ時間を余して仕方がないと言う事だ。…一カ月の休暇はコミュニケーションを取る様に過ごせば暇にならないのかな?

 

 

「煙草吸われてるんですね。普段は臭いがしないので分かりませんでした」

 

「…ん、リンドウ程吸ってないから…かな?」

 

「ふふ、リンドウさんの場合は吸い過ぎでサクヤさんに怒られてますから…アークさんも吸い過ぎはダメですよ?」

 

「…多分、大丈夫」

 

 

食堂に着くとピークは過ぎており空席が目立っていた。お昼もこんな感じだった気がする、そう思いながらお昼と同じ様にポケットから配給券を取り出そうとするとその手をヒバリに抑えられた。首を傾げならヒバリを見ると真剣に私を見ながら

 

 

「…?」

 

「アークさん、私が奢りますから他の物も食べてみましょう。きっと、ジャイアントトウモロコシよりも美味しいですから」

 

「…でも、ヒバリに悪い」

 

「大丈夫ですから!其処の席に座って居て下さい!」

 

 

そう言って注文しに行ったヒバリを見送っては座って居るのも悪い気がしたので飲み物を取りに行く事にした。水の入ったコップを二つ、空のコップを二つとリンドウから貰った券を使い缶ビールを受け取る。席に戻るとヒバリが座って待っていた。私とヒバリの席には確か…ミートパスタ?が置かれている

 

 

「持って来た」

 

「ありがとうございます。…ビールですか?」

 

「うん。リンドウから貰った、配属祝いだ。って」

 

 

水入りのコップを渡した後に空のコップにビールを注いではヒバリに差し出す。私にとってはビールもパスタも初めて、少しだけワクワクしてる

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

黙々と食べ進めるアークさんを見ては少しだけ安心する。…ジャイアントトウモロコシと初恋ジュース以外は飲み食いしないんじゃ…なんて考えていたのは内緒です。普段よりも頬が緩んでいるように見えますし。あ、ビールを飲んで硬直してる

 

 

「…苦い、熱い?」

 

「ふふ、お酒ですから。飲んだ事はなかったんですか?」

 

「…うん、初めて」

 

 

首を傾げならコメントをするアークさん、苦い物は好きじゃないみたいです。私も食べ進めながら初めて見るアークさんの姿に嬉しくなってました。極東支部に来た時は無表情で単独任務ばかり、ソーマさんの様に周りから距離を置いているのかと思いましたが…アークさんの場合は自分の戦い方が他の人と合わない事自覚しているのか誰とも組みませんでした、戦闘実績は輝かしい物で周りのゴッドイーター達も一目置く程でしたが、その…目が生きていなかったのは印象的でした。何もかも諦めた目、私は悲しく感じましたが不気味に感じる方も多かった様です。…特に昨日のアークさんの目は忘れられません

 

 

「アークさん?」

 

「…ん、にゅ?」

 

 

はっと気が付くと既に食べ終えたアークさんが頬を赤くしてテーブルに突っ伏していました!…酔いました?

 

 

「ビール、苦手。むにぃ…」

 

「あわわ!?」

 

 

可愛らしい鳴き声?を漏らしてはそのままくったりとしてしまい、私は慌てました。と、取り合えずお部屋に運ばないと!…私でアークさんを運べるでしょうか?

 

 

「…どうした?」

 

 

アークさんの肩を揺すって起こそうとしていると背後から声を掛けられ振り返れば空のトレイを片手に不思議そうに此方を見ているソーマさんが立っていました

 

 

「あ、ソーマさん…実はアークさんが酔い潰れてしまって」

 

「酔い潰れた?そいつがか?」

 

 

アークさんがお酒を飲む事が余程意外だったのか驚きながら寝ている彼女を見ては呆れた様子でため息を吐き

 

 

「こいつが自分で缶ビールを貰うとは思えないな…あのバカ何も考えずに渡しやがったな」

 

「あ、あはは…直ぐに分かるんですね」

 

「はぁ…お前らのトレイもよこせ。…後で部屋に運んでやる。部屋の場所は知らないからお前も来い」

 

「えっ!あ、はい!」

 

 

ソーマさんの言葉に驚いていると私達のトレイも持って短くそう言えば足早に片付けに行きました。その間アークさんの様子を見る事に。…普段は見れない幸せそうにスヤスヤと眠る寝顔はとても可愛かったです

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

ふわふわとした頃から記憶が無い。目を覚ました時には自室のベッドに居て頭痛を感じ唸りながら起き上がる。ふら付く脚で立ち上がりテーブルを見れば手紙が置いてあった

 

 

 

『お部屋に勝手に上がりました。ごめんなさい。ヒバリ

 

  追記:お部屋が酷いので掃除をしましょう』

 

 

 

何故か最後の文に悪寒を感じたが気にする余裕がないので再びベッドに転がる。頭痛に苦しみながら瞼を下ろせばゆっくりと眠りに落ちて行った




今更人物紹介

・アーク

性別:女
年齢:19
身長:158cm
髪色:白
好物:初恋ジュース
所属:第一部隊(仮)


原作開始八カ月前に極東支部に配属されたゴッドイーター。神機は旧型の近接。使用している刀身は試作の「太刀」
当初はどの部隊にも配属させれておらず支部長直属と思われていたが本人は気が付いていない。無表情で無茶苦茶な量の任務を消化し、一人で複数のアラガミを相手にするのは当たり前。アラガミを次々と討伐し誰と会話しても感情が見て取れない事から「殺戮人形」と囁かれる、彼女の行動により助けられた一部のゴッドイーターや住民からは荒々しくも勇敢に戦う姿から「戦乙女」と呼ばれている。勿論本人は気が付いていない


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孤高の色

UA650突破!ありがとうございます!


コンコンと扉がノックされる音で目を覚ます。寝惚けた目で時計を確認すれば午後を回っていた。頭痛も感じないので体調は戻ったようだ、ゆっくりと起き上がっては扉へと向かい開けては顔を覗かせる

 

 

「やぁ、おはよう。寝ている所すまないね」

 

「…ん、おはよ。エリック、どうしたの?」

 

「昨日言った贈り物さ。有効活用してくれたまえ」

 

 

そう言って大きな紙袋を華麗なポーズを決めながら差し出して来る。大人しく受け取ると「それじゃ、僕は任務に行ってくるよ」と言って帰って行くのでいってらっしゃいと言えば振り返らずに親指を立てて歩いて行った

 

 

「何だろう?」

 

 

エリックから受け取った紙袋を抱えてはベッドにおいて中を確認してみる。紙袋の中には女性物の衣装や下着、化粧品?が入っていた。どれも見た事の無い衣装だが…どれが私に似合うのか分からない

 

 

「適当に着てみる…それだと今までと変わらない…?」

 

 

うーん、と唸りながら考える。よく見れば衣装の殆どが上下セットの様だ、一つずつ着てはヒバリ達にどれが似合うのか聞いてみるのが良いのかもしれない、我ながら名案だと思う

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

一番上にあった衣装を身に着けては鏡の前に立ってみる。灰色のTシャツの上に黒いスチームパンク風のコートを羽織る、下は黒いショートデニムに同じく黒のニーハイソックスを履いてみる。全身黒一色…色を変えた方がいいだろうか?黒のデニムを青に変えてはくるりと一回転、うん。十分動ける 時計を見れば受付が一番混み合う午後の時間になっていた、ヒバリに合うのは迷惑になりそうなので高確率で会える人の所に行こうと考えラボラトリへ、向かう先は榊博士の研究室だ

 

 

「…?…は?」

 

「…??」

 

 

研究室に向かう途中廊下でソーマとすれ違った、フードを深く被るソーマは私に気が付き一瞬だけ目が合う、直ぐに視線を外すが声を漏らしながら振り返って来たので私も振り返り何事かと首を傾げた

 

 

「…」

 

「似合う?」

 

「…………似合ってるんじゃないか?」

 

 

何かを後悔した様子で此方を見ていたので服装の感想を求めてみた、私の中ではソーマは真面な感性を持ってる…と思ってる。訳が分からないと言った風に腕を組んだ後に小さく似合うと言った、私は紙とペンを取り出し似合うの欄に〇を付けていく

 

 

「…何してんだ?」

 

「エリックから服を貰ったから、何が似合うのか聞いて歩いてる。…分からないから」

 

「…それならロビーの方がいいだろ。なんで此処なんだ?」

 

「榊博士に感想を貰おうと思ってた」

 

「お前…おっさんには少し難しいと思うぞ」

 

 

はぁ…と、ため息を吐くソーマを見ながら何か間違っただろうか?と思うが多分、忙しくて相手にされないと意味なのだろう

 

 

「ソーマは何で此処に?」

 

「メディカルチェックだ。…任務はどうしたんだ?」

 

「休暇を言い渡された」

 

「そうか」

 

 

そして途切れる会話、今では普通に会話しているが初めて会った時のソーマは色々と凄かった、と私が言える立場じゃないけど荒々しかったのは印象的だった。一回だけ一緒に任務に出撃した時、警戒しているソーマに背後から声を掛けたら全力の横振りが飛んで来たので弾き上げをした後に小首を傾げたら謝られた事もあった。それから負い目があるのか会話はしてくれる

 

 

「………最近の暴走が原因か?」

 

「ぅ…皆に怒られた、勘弁」

 

「ふっ、そうか。…お前は」

 

「ぅぅ…?」

 

「…」

 

「…?」

 

「俺を化け物だと思うか?」

 

「…ソーマは化け物じゃないよ。人を食べないし、ソーマの心には色がある」

 

「俺の心に色?」

 

「うん、綺麗な色がある。だから…化け物じゃない」

 

「…そうか」

 

 

短くそう言うとエレベーターに向かって歩き始めるソーマを見送り、私は博士の所に行こうかどうしようか迷ったがロビーに向かう事にした。今考えればこの選択は間違って居たのだと思う

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

ロビーに向かえば一斉に視線が私に集中する。奇怪な物を見る視線から別の何かを感じる視線、様々な視線に晒され流石の私も少しだけ身体を強張らせた。よく見れば雨宮指揮官すら手からクリップボードを落としそうになっていた、何時もの二階の手すりに身体を寄り掛からせながら私を見て固まるリンドウのに近寄る、隣にはサクヤもいた…何だろう目が輝いてる

 

 

「よ、よぉ。どうしたんだ。アーク?」

 

「…おしゃれしてみた。似合う?」

 

「おしゃれ?あー…似合うぞ?」

 

 

一瞬だけ目を点にするもしっかりと評価をくれる辺り流石リンドウ。サクヤにも聞いてみ…?

 

 

「ねぇ、アーク。服は他にもあるのかしら?」

 

「…あ、ある。エリックから貰った。…近い」

 

 

私に詰め寄る様に接近して来るサクヤから逃げようとするが腕を掴まれて逃げる事が出来ない。気が付けば私の背後にはカノンとジーナが居た。二人共サクヤと同じ雰囲気を出しながら、だ。素早くリンドウにアイコンタクトを送る

 

 

――――助けて

――――わり、無理

――――(´Д⊂グスン

――――後で飯奢ってやるから(アイコンタクトの方が感情豊かだな)

 

 

短いアイコンタクトを交わした私は顔を背けるリンドウを見つめながら三人に自室へと連行された。リンドウから視線を外すと受付から羨ましそうに連行される私を見ていたヒバリと目が合う

 

 

――――た…

――――私も行きたいです

――――…

 

 

この後、めちゃくちゃ(お部屋の状態について)怒られ。清掃終了後に着せ替え人形にされ更に写真を撮られた



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新しい色

UA800突破しました!ありがとうございます!(漸く原作開始になります)


あの事件(私にとって)からあっという間に休暇は過ぎて行った、今ではしっかりとお部屋の掃除をしている。切っ掛けは少しアレだけど、第一部隊や第二部隊、第三部隊とも会話をするようになった。ソーマからは良く初恋ジュースを貰ったりする、本人曰く「おっさんにいつも押し付けられるんだ」って言ってた、私も榊博士から良く貰う。今日もサクヤ、ジーナ、カノンが組み合わせてくれた衣装を着てはロビーに向かう。因みに今はジーナ発案の組み合わせ、黒のフードロングコートに白のYシャツ、チェック柄の紫のミニスカート。髪は後ろで青のリボンでまとめている。…そう言えばジーナが私の胸を見て少しだけ固まっていた様な気がする。ロビーを歩けば今まで遠巻きで見ていた会話もしたこともない人から挨拶される様になった、その事を万屋のおじさんに言ったら笑いながら「お前さんの可愛さに気付いたんだろうよ」と言って居たけど、良く分からなかった

 

 

「おはようございます、アークさん!」

 

「うん、おはよ。ヒバリ」

 

「今日から任務ですね。えっと…リンドウさんから何か聞いて居たり?」

 

「…ん、特に聞いてない。あ、ロビーに待っていれば良いって聞いた」

 

「あ、あはは…分かりました。今日の9時に新人のゴッドイーターが二名配属されます。…一人は新型との事です」

 

「…わかった。見て来るね」

 

 

苦笑いを零すヒバリから話しを聞いては二階のエレベータに向かう、確か待ち合わせ…顔合わせは此処だったはず、暫く待っていると時間通りに初々しい雰囲気でエレベーターから赤毛の女の子が降りて来た。髪を後ろに縛っており真新しい緑色のフェンリル制服を着ていた。その背後からは雨宮指揮官と黄色いニット帽にマフラーを首に巻いた少年が降りて来る

 

 

「む、待たせてしまったか?」

 

「大丈夫。その子達?」

 

「あぁ、紹介しよう。彼は藤木コウタで彼女は霊代アキだ、本日付けで二名共極東支部第一部隊配属となる。霊代アキは新型だ」

 

「「よ、よろしくお願います!」」

 

 

緊張しながら敬礼をする彼女達を見る。すると雨宮指揮官の言葉に其処にいたゴッドイーター達の殆どがアキに集まる。視線の種類で言うのなら色々…興味や嫉妬、期待かな

 

 

「よろしく、私はアーク。第一部隊の教育係になってる」

 

 

食べる?とチョコを差し出すと二人共おずおずと受け取ってくれた。それを見ていた雨宮指揮官はふっ…と笑い

 

 

「顔合わせは済んだな、込み入った話は基礎訓練の後だ。来い」

 

 

それだけ言うと雨宮指揮官は二人を連れてエレベーターに乗って居なくなる。…今日はこれで終わり?受付に戻りヒバリにこの事を話すと

 

 

「顔合わせは終わりましたし…あ、訓練の様子でも覗いて見るのはどうでしょうか?」

 

「ん、やる事ないからそうする」

 

 

ヒバリに聞けば良い案が貰えた、早速訓練場へと向かう。上部にあるガラス壁の部屋から見下ろすと丁度二人が走ったり跳んだり神機を振り回したりダミーを撃ったりと休む暇無く動き回っていた

 

 

「君から見て彼らはどう見えるかい?」

 

「…今は弱い」

 

 

静かに眺めているといつの間にか榊博士が隣に居た。何時もの様に初恋ジュースをくれる、ありがとう

 

 

「今は弱い、か。と言う事は期待はしてるんだね?」

 

「二人共懸命に食い付いてる、身体能力も良い、実戦経験を積めばきっと強くなる」

 

「ふむ、それは良かった。霊代アキ君は新型神機の適合者だ。リンドウ君にも言って居るけどしっかりと見てくれると嬉しい。勿論、私も博士として可能な限り支援はするけどね」

 

「ん、何かあったら相談する」

 

 

博士から再び二人に視線を戻すと丁度コウタの放ったバレットがアキの肩を掠めた瞬間だった。間髪入れずに雨宮指揮官のクリップボードがコウタの後頭部に突き刺さり悲鳴を上げ、アキはバレットが掠めた事よりも目にも止まらぬ速度でコウタの頭を射抜いたクリップボードと雨宮指揮官に恐怖している様子だった

 

 

「うーん、あのクリップボード。何で出来てるか分からないんだ」

 

「おーぱーつ?」

 

「案外そうかもしれない。所でアーク君、新しい飲料を開発したんだけど試飲してみないかい?」

 

「新しい?」

 

「そう!まだ開発段階なんだがね、特別にあげよう」

 

 

そう言って懐から青い缶を取り出し私に差し出して来る。受け取ってラベルを見れば『失恋フレーバー』と書いてある

 

 

「ん、後で飲んでみる」

 

「うむ、感想をくれるとありがたい。さて、私は失礼するよ。訓練も終わったみたいだしね」

 

 

去って行く榊博士に小さく手を振りながら缶をポケットに仕舞い込みロビーに戻る事にした。恐らくこの後雨宮指揮官から鞭を貰った後に飴を貰うだろうから時間が掛かる

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「よぉ、丁度来たか」

 

「訓練室に行ってた」

 

「訓練室?」

 

 

エレベーターから降りればリンドウ、サクヤ、ソーマ…第一部隊が揃っていた。何でも新しく配属されるアキとコウタを歓迎しに来たらしい、らしいと言うのはソーマはリンドウが連行して来たとか

 

 

「うん、新人の様子見」

 

「おー…しっかりと教育係をやってるな。関心関心、俺の仕事もやるか?」

 

「…?」

 

 

そんな事言いながら私の頭をぽんぽんと撫でて来るリンドウを隣のサクヤがジト目で見つめ、ソーマが睨み付ける

 

 

「リンドウ?アークに丸投げしようとか考えてない?」

 

「はは、そんな訳ないぞ。だから足を踏むな」

 

 

棒読みで笑った瞬間にサクヤの踵がリンドウの右足を踏み付けるのをソーマが呆れた様子でため息を吐いていた

 

 

「…お前らいい加減にしろ。もう来てるぞ」

 

「あら!初めまして、新人さん…大丈夫?」

 

「いでで!力加減をしろって!っと、おう!やっと来たか。…随分と扱かれたみたいだな」

 

「私達が第一部隊、よろしく」

 

 

エレベーターからアキとコウタが現れるが二人揃ってゲッソリとしていた、取り合えず昨日考えた言葉を贈ると二人共歓迎されている事に喜んでいるようだ

 

 

「え、えっと…私は霊代アキです!よろしくお願いします!」

 

「お、俺は藤木コウタです!よろしくお願いします!」

 

「俺は雨宮リンドウだ。第一部隊の隊長をやってるぞ…んで」

 

「私は橘サクヤよ。二人ともよろしくね?」

 

「…ソーマだ」

 

「…アーク」

 

「お前らなぁ…まぁ、いいか。よし、しっかり聞けよ?午後から実際に任務を受けて現地で最終訓練をする、アークが付くから安心して行ってこい。明日は俺とサクヤが担当するから時間は…」

 

 

真剣な表情でリンドウの業務連絡を聞く二人から視線を外しては時計を見る針は丁度12時を指している。ヒバリと一緒に行こうかな?そう考えていると

 

 

―――珍しく真面目に連絡をしてるんだ、聞いてやれ。…また着せ替え人形にされるぞ

―――!…分かった、聞く

 

 

ソーマからのアイコンタクトに背筋を伸ばしてはチラリとサクヤを見る…ばっちりバレてた。…今日は疲れそう



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アラガミは何色?

昼食を楽しく取った後アキとコウタを乗せてジープを走らせる。任務内容はオウガテイルと呼ばれる広く知れ渡っているアラガミの討伐。どの位広いかと言われると訓練ダミーに使われる位にはメジャーな存在。贖罪の町と呼ばれるエリアに向かう途中、二人と他愛のない会話をする

 

 

「えっと、アークさんも旧型何ですか?」

 

「ん、極東支部にはアキ以外に新型は居ない。私は接近の旧型」

 

「へぇ~…アキって凄いんだな!」

 

「そ、そんな事ないよ!?コウタより銃の腕は下だし…」

 

「いやいや、俺は旧型だぜ?…銃も良いけど剣もカッコいいよなぁ」

 

 

アキは緊張すると口数が少なくなり、コウタは緊張を感じると会話をするタイプの様だ。現場に着けば流石のコウタも無言になって私の後を付いて来る。崖の上に立って軽く索敵をする、見える範囲にはいないようだ。アキはロングブレードとアサルトの組み合わせ、バランスの取れた構成でコウタはアサルト、これなら距離を詰められない様に動けばオウガテイルなら問題ないだろう。けど、アキは新型…なら、接近もやらなければいけない。私は二人の方を向いて口を開く

 

 

「…二つ注意一つは連絡。一つ目、会話も軽口もして大丈夫。だけど、警戒は怠らないで死角になっている場所には常に意識を向けて。ビルの上、崖の上、地面。アラガミは何処から来るか分からない。二つ目、任務に行く時はしっかりと準備して、スタングレネード、ホールドトラップ、回復錠…可能な限り全部持ち込む事。…最後にこの任務が終わった後が私の仕事、根を上げても挫折してもいい。けど、私に付いて来れたら死なせない…あ、これ渡しておくね」

 

 

二人に三個づつ私が改造した強力なスタングレネードを渡しておく、通常の三倍の威力を発揮する代物だ

 

 

「判り易い様に赤色にした。使う時は気を付けて、強力だけど自分や味方の動きも止めるかもしれないから」

 

「…はい!」

 

「了解です!」

 

「…ん、いこ」

 

 

こくりと頷いては崖を滑って下へと行く。二人が来たのを確認しては一人ずつオウガテイルを相手にする事を伝える、最初はコウタで次はアキ

 

 

「落ち着いて急所を撃って。危ないと判断したら私が割って入るから」

 

「うっす!」

 

 

気合を入れる様に一言返事をするコウタと同じく静かに深呼吸をするアキを見ては私が先行して索敵を始める、建物を陰に慎重に索敵を進めると広いエリアに一頭のオウガテイルが何かを食べているのを発見。コウタを見れば彼はこくりと頷き静かに位置を取り…バレットを放った。放たれたバレットは真っすぐにオウガテイルの頭部に着弾、不意の攻撃に悲鳴を上げるオウガテイルに更にバレットが放たれる。少しすればオウガテイルは活動を停止し倒れるもバレットが撃ち続けられるので止める事にした

 

 

「コウタ、ストップ。もう動かない」

 

「っ!?」

 

 

死体にバレットを放ち続けるコウタを背後からぽふっと頭を触ると身体を跳ねさせながら動きを止める。その後申し訳なさそうに顔を俯かせたのでリンドウやソーマが私にやる様にニット帽の上からわしゃわしゃと撫でてアキを呼ぶ

 

 

「倒したアラガミは捕食形態でコアを摘出、素材を取る事が出来る。さっきのオウガテイルを捕食して来て、コウタは落ち着いたら合流。私は警戒しておくから」

 

「分かりました、コウタ。後でね?」

 

「あ、あぁ…」

 

 

それだけ伝えて近くの建物の屋上へ、周りを見渡せばもう一体のオウガテイルを発見。アキにはアレを狩らせよう、そう考えていると捕食を終えたアキが手を振るのが見えたので下に降りる事にした。意外にもコウタは既に復帰しており頭を下げられたのでチョコを渡しておいた

 

 

「アークさんって、チョコが好きなんですか?」

 

「…ん。ヒバリが時々くれる」

 

「へぇ~…(餌付け?)」

 

 

何だか失礼な事を考えたコウタを睨み付けると綺麗な謝罪が貰えた。次のオウガテイルを発見したのでアキにも好きに戦う様に伝える。アキは頷くと神機を銃形態に変更し静かに移動を始める

 

 

「…!」

 

 

オウガテイルの背後に回り込んではアサルトで数発バレットを放ち、痛みで硬直している間にロングブレードに切り替え一気に肉薄し、振り向き咆哮を上げるオウガテイルの口に剣先を突き入れそのまま切り裂きながら横を通り抜ける。ブレードを引き抜いては再びアサルトに切り替え、背後からバレットで滅多打ち

 

 

「すげぇ…」

 

 

隣でコウタが声を漏らしていた。確かにあの切り替え速度は凄い

 

 

「アークさん!終わりました!」

 

「うん、それじゃ帰ろうか」

 

「うす!」

 

 

コアの回収を終えて戻って来たアキと合流しては移動しジープに乗り込む、今日の任務は終わり。…何か忘れている様な気がする

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

今私は着せ替え人形になってます。何時もの様にアイコンタクトは「頑張って来い」だった、コウタにはまだ伝わらない。…後、アキの適応力は凄い。既に着せ替え班(ヒバリ、サクヤ、ジーナ、カノン)に加わり身長の差もある為か膝の上に載せられ抱き締められている。写真、止めて




UA900突破!ありがとうございます!お気に入り登録も増えて感激です…!


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生と死の…紫色

今回は短めです!
UA1400突破しましたありがとうございます!
お気に入り30突破しましたありがとうございます!

評価も貰えて感激でございます!ありがとうございます!


PiPi!PiPi! 目覚ましのアラーム音が鼓膜を叩く。もぞもぞと身体を動かしては頭の上に腕を伸ばす、アラーム音を鳴らす時計を軽く叩くと音が止まった。軽くぼーっとしては私を包み込んでいる人物を見上げる

 

 

「…ジーナ、仕事」

 

 

目を閉じているジーナを軽く揺すると緩い力で抱き締められる。ジーナの吐息が耳に掛かって擽ったい

 

 

「…今日は非番なの。もう少しこうして居ても良いかしら?」

 

「ぅ…?」

 

 

耳元で囁かれながら時計の隣にある端末に手を伸ばす。画面を確認して…

 

 

「…私も非番だった」

 

「フフ…丁度良いわ」

 

 

今日はアキとコウタはリンドウとサクヤの二人が付いて訓練に行く予定だった事を思い出す。…そう言えば着せ替えをされている最中に明日は何をしようか悩んだ記憶がある

 

 

「すぅ…すぅ…」

 

「…」

 

 

意識を戻すと私を抱えたままジーナが寝息を立て始めたなんで一緒に寝てるんだっけ?ん…擽ったい…

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

気が付けば私も二度寝をしていたのか目を開ける。相変わらず吐息が耳に掛かって擽ったい…途中から少し心地良かったのは内緒

 

 

「…ジーナ、11時」

 

「ん…おはよ」

 

 

少し揺さぶれば直ぐに目を覚ますジーナ。流れる様に私を撫でながらそう呟いてはゆっくりと起き出す。ジーナから解放されたので私も起き出して身体を伸ばす

 

 

「流石に寝すぎたかしら?」

 

「ん、多分…大丈夫」

 

 

他愛ない会話をしながら衣服を整えては部屋を出る。今日はサクヤとアキの二人が選んだ服装、リボンはカノンが決めてくれた

 

 

「活発そうな服装ね」

 

「そう…?」

 

 

青色のホットパンツに白のタンクトップ、上着は黒色のショートライダースレザージャケットを着ている。ジーナの前でくるりと回ると撫でられた

 

 

「…ん。この後どうする?」

 

「そうね…今日は貴女と交流でもしようかしら」

 

「私と…?」

 

「えぇ、少し前の貴女の輝きも悪くはなかったけど…変わった貴女の輝きも見てみたいわ。その内見せてね?」

 

「…??」

 

 

時々ジーナの言う事が分からない時があるけど、頷いたら満足そうにしているので深くは考えてない。私が理解している事は任務を『生と死の交流』と呼んでいる事と何かと私を抱えたがる事

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

ジーナと二人でロビーに向かうと丁度訓練グループも戻って来た様だ。二人共動きに問題は無いそうだ

 

 

「今日の最後はソーマとエリックと組んで鉄塔の森に行って来い。軽い任務だが油断するなよ?んじゃ、解散。しっかりと飯を食べる様に」

 

 

そう言って自室に向かって行くリンドウに手を振ると振り返してくれた、隣に居るジーナには珍しい物を見る様な顔していたけど

 

 

「私が大人しくアナグラにいる事が珍しいのよ。貴女程じゃないけど此処にいる時間は少ないわ」

 

「…最近の私は良くいるよ?」

 

「そうね、それはいい事よ」

 

 

何故かジーナに抱えられながら昼食を摂りに行く事になった。食堂に着けば丁度食べている最中のヒバリが居て、急にむせて苦しんでいたので介護したのは別のお話

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「エリック、アキ達と一緒に私の訓練受ける?」

 

「申し訳ない…」

 

「大丈夫、怒ってない。私も人の事言えないから…でも、怪我の確率は下がるよ?」

 

 

医療ベッドの上で腕と頭に包帯を巻いた状態のエリックが目を泳がせながら返答を考えているのを眺めてる。何が起きたかと言うと初めて会うアキとコウタに先輩風を吹かして華麗さを伝授しようと話し掛けようと油断した瞬間、頭上からオウガテイルが降って来たのだ。アキとコウタが即座に反応しオウガテイルを銃撃、絶命した死体の下敷きになり軽い怪我をしたのだ…ソーマが珍しくエリックの事を鬱陶しい以外の理由でぶん殴ったらしい。本人に確認したらバツが悪そうに後で謝る、と言っていた

 

 

「死を間近で感じた気分はどう?生を実感できるでしょ?」

 

「ジーナ…勘弁しておくれ。今は自分自身が情けなくてどうしようもないんだ」

 

「そう?でも、早く治ると良いわね」

 

 

見た事もないエリックの姿に首を傾げる。生きているなら情けないなんて思わないけど…華麗じゃないからかな?

 

 

「生きているなら…華麗な事だと思う。エリックが死ななくて良かった、エリックの華麗な色は好きだから」

 

「アーク君…ありがとう」

 

「ん…気が向いたら声を掛けてね」

 

 

エリックの目に色が戻って来たからもう大丈夫だと思う、きっと明日には華麗なエリックに戻るはず。隣に居たジーナが私を見て「貴女には貴女にしか見えない輝き…いえ、色があるのね」と言われた、私も上手く説明出来ないけど…確かにそうかもしれない




生!存!上田生存!上田生存!上田生存!


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紫色のアラガミ

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評価や感想等も下さり誠にありがとうございます!


何時もの様にベッドから起き出しては昨日と同じ…色違いを身に着けてロビーへと向かう。朝は食堂に行くのも面倒なのでジャイアントトウモロコシを齧りながら向かう

 

 

「おはようございます!…アークさん、何食べてるんすか?」

 

「…おはよ。トウモロコシ…いる?」

 

「へ?え、いや!お腹いっぱいなので大丈夫っす!」

 

 

モグモグとトウモロコシを食べながらロビーに付けば既にコウタが居た。なんか固まっていたので食べ掛けを差し出したら慌てた様子で断られた

 

「ご、ごめんなさいぃ!」

 

「遅れました!」

 

「大丈夫、まだ時間じゃないから」

 

 

食べ終えた頃にアキとカノンの二人が息を切らせながら走って来た、取り合えず集合したけどまだ時間じゃないので三人に出撃する準備だけする様に伝えた。後、今日は長期任務とも

 

 

「準備終わりました!…アークさん、長期任務ってどんな…?」

 

「ん…戦闘に慣れる為に連続で任務を消化する。神機の強化にも繋がるし良い事尽くめ。私も手伝うから大丈夫」

 

「…連続で任務って?」

 

「…?帰りは夜だから気を付けてね?」

 

「よ、夜ですか…?」

 

 

固まるアキとコウタに青ざめるカノン。首を傾げながらヒバリの所に向かえば任務の事を聞く、今日の為にヒバリには三人で一気に片付く任務を纏めて貰っていた。大丈夫、無理はしないから…ん、最近は何時も撫でて来る…嫌じゃないよ?

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

鉄塔の森へと車を走らせる。最初任務はシユウの討伐…シュンじゃない、シユウ。シユウとは背の高い鳥の様な人型のアラガミだ。両翼と下半身は固く破砕性能の高いバレットやバスターでないと結合崩壊を狙うのは難しい。また、熱の弾を放ったり翼手を使い武闘家のような動きをする為注意が必要

 

 

「いや、アークさん強過ぎっす…」

 

「うんうん…」

 

「ほ、ほへぇ…」

 

「…ごめん、次は三人で戦ってみて。危なくなったらアイテムで支援する」

 

 

唖然とする三人に謝る、これでは訓練にならない。久しぶりにこの子を使ったら勢いに任せて神斬りでシユウを半分にしてしまった。死体をもぐもぐさせて居ると何時もよりも多めに食べている気がする

 

 

「了解っす!」

 

「はい!」

 

「は、はい!」

 

「次の任務はグボロ・グボロ。砲塔には気を付けて」

 

 

そう伝えると二人はグボロ・グボロを探す為に走って行った、もぐもぐし終えた神機を撫でれば少しだけ顔を出して擦り付いて来る。ごめんね、今は我慢…遠くから三人を見よう

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「コウタ!そっち向いたよ!」

 

「任せろ!」

 

「アッハハハハ!撃てないってどんな気持ち!?」

 

 

コウタとカノンちゃん、私はアークさんに感化されたのか何時もよりも積極的に動いていた、グボロ・グボロの両ヒレを結合崩壊させては背後へ通り抜けると同時に捕食しバースト状態へ入る。捕食状態から再び突撃するタイミングでグボロ・グボロが後ろへと跳ねようとするが同時に姿勢を地面に擦り付けるギリギリまで下げる。すると後ろからのカノンちゃんの砲撃がグボロ・グボロに直撃、跳ねる事を中断しては最後のあがきに出て来る。私達の攻撃を無視して砲塔を使おうとするがそれを許す程私達は馬鹿じゃない、距離を取って一斉にバレットで集中砲火する

 

 

「砲塔を折った!アキ!」

 

「まっかせてぇぇぇ!」

 

「吹っ飛ばすわァ!!」

 

コウタが砲塔を結合崩壊させるとグボロ・グボロはびたん!と地面に伏せる、そのタイミングを逃さずに肉薄してはロングブレードを開いた口から脳天に向かって突き刺しインパルスエッジをお見舞いする。同時に身体を左にずらせばカノンちゃんのバレットが炸裂し…グボロ・グボロが破裂した

 

 

「あー…アキ、大丈夫か?」

 

「う、ぅ…臭い」

 

「あ、あわわ!ごめんなさい!ごめんなさい!」

 

 

ぺっ!ぺっ!と口に入った血を吹きながら袖で口を拭い必死に謝るカノンちゃんに気にしない様に伝える。誤射姫と言われるだけあり結構冷や冷やしたけど…兎も角周りを警戒しながらも捕食を始める。色々とグロ画像になったグボロ・グボロに手を合わせるコウタの耳を引っ張りながら後ろを向けば何時の間にか後ろに居たアークさんがハンカチを差し出していた

 

 

「使って、そのままだと気分が悪いと思うから」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「ん、三人共良く動けてる。短い間に凄い」

 

 

アークさんはいつも無表情なんだけどヒバリさん程…では無いけど分かるようになって来た、今?喜んでるよっ

 

 

「へへっ、バレットの勉強をしたんっす!」

 

「よ、よかった…今日は誰も撃ってないですよね…?」

 

「ん…カノンはそのままの方がいいかも。コウタもしっかりと支援出来てる…次は属性も考えると良い」

 

 

…アークさん、修正するのを諦めましたね?

 

 

「アキはしっかりと新型の動きが出来てる。口の中に突き入れるのは危険だからおすすめはしないけど」

 

「ぅぐ…は、はい」

 

「ん、他は出来てるから大丈夫」

 

 

よしよしとアークさんに撫でられながら、つ、次は気を付けるもん!そう気合を入れた時だった、紫色に光るアラガミが現れたのは…

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「離れて…!」

 

 

アキをコウタに突き飛ばし、素早く装甲を展開する。同時に猛烈な衝撃が装甲越しに身体を突き抜けるが抑えられない程じゃない。ギャリギャリと火花を散らす装甲を解いては一気に後ろへと下がる、真っすぐに見つめる先には紫色に輝くサソリの様なアラガミ…スサノオが咆哮を上げながら立っていた

 

 

「っ!…アークさん!?」

 

「アキ、カノンとコウタを連れて撤退。私が時間を稼ぐ」

 

 

チラリと三人を見ればカノンとコウタはスサノオが放つ暴力的な威圧に呆然としている、辛うじてアキは脚が震えているも動ける様だ

 

 

「で、でも…!」

 

「早く、車の所まで下がって救援を呼んで。…このアラガミは早過ぎる」

 

 

そう言いながらスサノオの前で挑発フェロモンを自身に打ち投げ捨てる。後ろを振り向こうとしたスサノオが神機を構え直した私だけを見据え飛び掛かって来る。滞空に居るスサノオに向けて神斬りを放ち止水を発動し横っ飛びに転がる。神斬りを受けたスサノオは一瞬硬直し落下するが着地と同時に尻尾を伸ばし身体を一回転、迫る剣の様な先端を紫のオーラを纏った神機で弾き反動で飛び上がっては神斬りを放つ、斬撃はスサノオの胸部に直撃し結合崩壊を起こす…が

 

 

「…っ!」

 

 

巨大化させた腕を振るい突進を仕掛けて来る、咄嗟に捕食形態で近くの鉄塔に食い付かせては飛び移るも向きを変えたスサノオの腕からは無数のビームが私に降り注ぐ。鉄塔を蹴ってはスサノオに向けて飛び込み装甲を展開し衝撃と熱に耐える。一発、二発…三発目を貰う前に装甲を解いては刀身で切り払う。この時点で止水が解けるが構わない

 

 

「…喰らえ」

 

 

四発目が衣服を掠めるがその前にスサノオにプレデターが届く…!顔の真横を抉り取る様に喰い千切ると同時にバースト状態へ、更に止水を発動させ神斬りを下へ放つ

 

 

「■■■■■■■■――――!!!!」

 

 

悲鳴を上げるスサノオから飛び降りては距離を取る。右腕を切り落とした程度では活動を停止する事は無い、予想通り左腕からビームを乱射しながら尻尾の剣で薙ぎ払いをして来る。尻尾を躱し乍らビームを切り払い赤色のスタングレネードを投げ付ける。強力な光と炸裂音を感じながら再び肉薄する

 

 

「よぉ、生きてるか?…随分とワイルドな格好になったな…」

 

「…生きてる。…?」

 

 

肉薄する私に並走して来たリンドウを見てはアキ達が無事な事に安堵した。生きているか?に頷いて、その後の事には首を傾げた

 

 

「あぁ、いや。さっさと片付けて帰るぞ!」

 

「うん、よろしく」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「全員生きてるな。…大丈夫か?」

 

「う、うす…」

 

「「はい…」

 

 

あの後リンドウの助太刀もあり片腕しかないスサノオを素早く撃破した。右腕を斬り飛ばした事にリンドウは驚いていた「そいつが普及すればもっと戦いが楽になるかもな」とも言っていた

 

 

「まぁ…なんだ。酒でも飲んで忘れろ、アレは別格だから早々出会わないさ」

 

 

そう言ってアキ、コウタ、カノンに配給券を渡してリンドウは報告に向かって行った。コウタは配給券をポケットに仕舞うと一足先に家族に会う為に帰って行った。ゴッドイーターになってから初めて死を感じたから仕方が無い

 

 

「アキ、カノン。ご飯食べに行こ」

 

 

私はまだ何処か不安定な二人の手を引っ張り食堂へ向かう。途中涙目で心配しに来たヒバリも合流して私の奢りで少し騒がしい夕食を取った…気が付いたらパーティーに発展してたみたい



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プライドの色

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ありがとうございます!感想も頂けて感激です!

今回は新しい書き方をしてみました!


あー…どーも。第一部隊隊長の雨宮リンドウだ。アークじゃないのかって?今回は俺なんだなぁ…これがさ。今のアナグラは突然出現したスサノオに警戒が上がってんだ、何の予兆も無く現れた接触禁忌種…新人の教育にも悪いしベテランでも厳しい。まだ他に報告が上がってないからいいがはっきり言ってアークじゃなきゃヤバかったかもな…命の危険に晒されている状況で新人を逃がすのに迷い無く挑発フェロモンを使うなんざ何人のゴッドイーターが出来るか…兎も角今回の大手柄はアークだ。…しかし、アークを狙ったかの様な…いや、考え過ぎか。こりゃ、俺も気を引き締めんといかんなぁ…あぁ、そうそう。あれから一週間が経ったんだがアキとコウタは無事にコンゴウを撃破、順調に力を付けてる。これもコウタが言う「アークさんのデスマーチ」の結果かね?死んだ魚みたいな目をしてたが…やってる事は連続で任務の消化だけどな?あ、やべ。今日だっけか…新型来るの身嗜みは大丈夫だな?うっし、行くか…何も起きなきゃいいがなぁ

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

今日はロシアから新型が来ると言う事で任務には出ていない。ロビーのソファでカノンから貰ったクッキーを食べている。…でも、食べている時は撫でないで欲しい、舌を噛んでしまう

 

 

「はぁ…癒されます」

 

「…?」

 

 

私を膝に乗せて頭を撫でて来るカノンを見上げればほわほわとした笑顔だった、目の前の万屋のおじさんを見ると苦笑いしていたので深くは考えない様にした

 

 

「第一部隊いるかー?上に集まれー」

 

「行ってくる」

 

「はい!」

 

 

リンドウから招集が来たのでカノンの膝から降りては二階に向かって行く。ヒバリも何か緊張している様子だけど、どうしたんだろう?

 

 

「点呼ー。サクヤ、ソーマ、アキ、コウタ、アーク。そして俺、全員いるな?」

 

「誰も返事してないわよ?」

 

「集まってりゃいいのよ」

 

 

笑うリンドウに呆れるサクヤ、ソーマは相変わらず一番遠い位置に居る。アキとコウタもバレットを弄っていたのかターミナルから慌てて出て来た

 

 

「それで…出迎えるという事でいいのね?」

 

「おう、ちょっとばかりプライドが高そうな嬢ちゃんだ。アキと同じ新型…仲良くしてやってくれよ?アークには引き続き教育を頼む、新型で訓練の成績は良いが実戦経験が無い。頼んだぞ?」

 

「ん、大丈夫。量を増やすから」

 

 

そう返事をすると後ろでアキとコウタが青褪めていた、なんでだろう?首を傾げているとエレベーターが開き銀髪の女の子が降りて来た。身長は私より高い…寒そうな服装だった。後ろでコウタが喜んでいるのは良いけど少し騒ぎ過ぎなのでチラッと見たら大人しくなった

 

 

「アリサ・イリーニチナ・アミエーラです。本日付けで極東支部配属になりました、よろしくお願いします」

 

 

そう言うと私達第一部隊をリンドウから私までを見てはコウタで視線が止まり明らかに軽蔑の色を浮かべ、最後に私を見ては驚いている

 

 

「自己紹介ありがとうな。俺は第一部隊隊長の雨宮リンドウだ。サクヤにソーマ、新人のコウタとお前と同じ新型のアキだ。最後に新人教育のアーク、しっかり習えよ?」

 

「…自覚が無さそうな人達ですね。それに旧型に習う事なんてあるんですか?足を…」

 

 

新型と彼女の容姿に騒ぎ始める周りのゴッドイーター達を蔑む様な態度を取りながらアリサが言う、それを聞いてコウタは首を傾げリンドウはあちゃー…と言いたげに頭を押さえてる。ソーマは話は終わったばかりに何処かに行ってしまいサクヤもリンドウと似た様な顔をしている

 

 

「えっと、アリサちゃん!しー!しぃーー!」

 

「えっ?え?」

 

 

慌てた様子でアキがアリサの口を止めに行き、周りのゴッドイーター達も最初は荒れた雰囲気があったが最後の私に対して言った言葉を聞いた瞬間から哀れむ様な雰囲気へと変わった。反発は予想していたが別の反応が返って来たのは予想外だったのかアリサも戸惑っている

 

 

「良く分かんないけど、一緒に頑張って行こうぜ!アークさんは厳しいからさ…」

 

「え、は、はい…?」

 

 

最初は明るく最後は死んだ目でアリサに声を掛けるコウタに「極東っておかしい…」と呟きながら私を見るアリサを見つめ返すと顔を逸らされた。取り敢えず、チョコを上げたら戸惑いながらも受け取ってくれた

 

その後、榊博士のアラガミ講義の手伝いをした。途中で居眠りをしそうになったコウタの背中をぺちぺちする。ビシッ!と音が出そうな程に背筋を伸ばして座り直すコウタに隣のアリサがビビり、アキは何時もの事なので気にせずノートを取っていた

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

こんにちは、アリサです。初めて極東支部に来たのですが正直最悪でした。着任早々ゴッドイーターとしての自覚が無い人達は居ますし第一部隊の隊長もいい加減そうですし…どうやって生きて来たんでしょうか?それに、教育係と紹介されたのは私よりも背が小さく…見た目なら14歳程に見えます。旧型の様ですし教わる事は無いと言おうとしたら同じ新型のアキに遮られてしまいました。…後、周りのゴッドイーター達の視線の意味が分かりませんでした…その、少し後悔しているのは受付の方とその近くのソファに座って居た眼帯を付けた女性と凶悪な笑みを浮かべているピンク髪の方の視線が特に怖かったです…まるで子羊を喰らう直前の狼の様な…あ、あぁぁ…!はっ!トラウマが刺激されました。か、考えるのは止めましょう

 

それはそうと講義でのコウタの奇行はどうにかならないでしょうか…あ、榊博士から一枚のディスクを貰いました。「君が知りたそうな情報だ。見ておいて損は無いはずだよ?」と言われて貰ったのですが…映像?監視カメラのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

え?アークさんは人間です?あ、ゴッドイーターですね、そうですね。…スサノオのビームを切り払うのはおかしいと思いますよ!?と言うか極東では普通に接触禁忌種がいるんですか?キョクトウオカシイ…成程、あの視線とあの雰囲気…そして、コウタの死んだ目…相当ヤバい訓練何でしょうか…?



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不穏な灰色

UA3500突破!
お気に入り95突破!
総合評価230突破しました!ありがとうございます!

誤字報告や感想などもありがとうございます!!

あ、それと久しぶりの投稿になります!申し訳ないです!(リマスターやってたのぉぉぉん!!!)


おはようございます!霊代アキです!今日はアリサを交えて私とコウタ、アークさんの四人で任務に出てて…えぇ、そうです。デスマーチです…オウガテイルから始まり、今はグボロ・グボロを二体相手にしています。途中からエリックさんが加わってアークさんは討伐する様子を煙草を咥え乍ら眺めている状況です。勿論、眺めているだけではありませんよ?コウタに飛び掛かるグボロ・グボロに私とアリサが反応出来ずエリックがコウタを突き飛ばした瞬間…一瞬で刺身になったんですよね…紫の光がグボロ・グボロに迫りそのまま二つに…アークさんの神斬りは本当に強力です。試作の刀身との事ですが…と、考えていたらアークさんに背中をぺちられました!痛くない!可愛い!顔恐い!あ、アリサちゃんがグボロ・グボロの亡骸を真っ青になりながら捕食してる。私もしないと素材が!…?え、グロ画像?魚だから問題ないよ~

 

 

…そう言えば、アークさんて何歳なんだろう…?煙草を吸ってると言う事は二十歳…だよね?

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

今日の訓練を終えてアナグラに帰投する。帰り際任務に関係ないヴァジュラとの交戦が合ったが前回の様なトラブルは起きてはいない。けど、一つ気になる事が出来た…アリサの事なのだが普段は特に問題無くアラガミと戦う事が出来る、新型の性能をしっかりと引き出しアキとの連携も問題は無いコウタやエリックと組ませてもしっかりと役割を分担していたりと優秀だ。故にヴァジュラと対面した時の彼女の様子が異常なのだろう…錯乱こそしなかったが神機を取り落とし身体を抱き締めながら座り込んでしまったのだ、その異変にいち早く気が付いたのはエリックで素早くスタングレネードをヴァジュラに投げると同時にアキとコウタに叫ぶ。アキがヴァジュラの注意を惹きコウタが支援、私はアリサを抱えて走って来るエリックを後ろに下がらせヴァジュラを仕留める為に動いた。お陰で怪我はした者は居ない…アリサは強烈なトラウマをヴァジュラに抱えているのだろうか?

 

 

「…あの、今日はごめんなさい。先に休ませてもらいますね」

 

「…ん、…アリサ。何かあったら遠慮無く言って」

 

「はい…」

 

 

何時もの高圧的な態度は鳴りを潜めて少しふら付きながらエレベーターへと向かって行くアリサを見送る。アリサの変化にアキ達も心配そうに見送っているのを見ては今日の動きの改善点を考えて置く様にと少しだけ時間を使って伝えては私もエレベーターに乗り医務区へと向かう。アリサのメンタル面や健康面に詳しいであろう人物に会う為だ

 

 

「…?」

 

 

医務区に降り廊下を歩き始める、大車を探してうろうろしていると明かりの付いていない部屋から点滅する光を見つけ足を止める。何かしているのだろうか?ドアに手を掛けては軽く引っ張る、鍵が掛かってる?

 

 

「…。…。…。」

 

 

小さく男の声が聞こえる、背伸びをして覗き込めば虚ろな表情なアリサがベッドに座っており何かの映像を眺めている。隣には中年の男が繰り返し何かを囁き続けていた、恐らくあれが大車だろう

 

 

「…」

 

 

この状況を見て何人が正常な医療行為だと言い切れるだろうか?少なくとも私は"普通の医療行為"には見えない。大車ダイゴ…詳しく調べる必要がありそうだ。原因不明の不快感が沸き上がり力任せにドアを引っ張ればバキリッ!と鍵が壊れる音を大きく立てる。部屋の中で大車が慌てて息を飲むのを感じながらドアを開け放って踏み入れる

 

 

「な、何なんだ!お前は!?」

 

「此処は極東、医務室は少ない。鍵を掛けるのは迷惑」

 

 

アラガミを殺す時と同じ睨み効かせると大車は小さく悲鳴を上げながら部屋を飛び出して行った。医務室で煙草を吸っていたのか臭い、アリサに近寄り肩を揺すっても反応が無い。…取り敢えず映像を止めて軽く頬をぺちる

 

 

「…!いた!痛いです!?」

 

「起きた?」

 

「え?あ、アークさん?」

 

「大車は用事で離席、ご飯食べに行こ」

 

「え、えぇ…?」

 

 

先程の様子とは違い普段通りのアリサの反応が返って来て安心した。アレは洗脳だろうか?それともトラウマを抑える治療なのだろうか?

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「…以上」

 

「…それは書いてなかったな。他に話した相手は居るか?」

 

「ううん、後で榊博士に話そうと思ってた」

 

「榊のおっさんかぁ…ん-…まぁ、大丈夫だろう」

 

 

アナグラが静かになり始めた時間帯を狙ってリンドウの部屋を訪ねていた。挨拶もそこそこに(カノンのクッキーを上げたりとか)今日あった事を伝えていた。アキ達の成長から始まりアリサの異変、医務室で見た事、そして大車ダイゴは信用出来ないと言う事…最後にアリサのゴッドイーターに取っては致命的なトラウマがある事を報告されているか?等だ

 

 

「分かった、俺も注意しておこう。…お前も気を付けろよ?」

 

「ん、大丈夫。リンドウも気を付けて」

 

「おう。明日も早いんだろ?早く寝ろよ?」

 

 

そんな会話をしながら部屋を後にする、向かう先はターミナル。私の権限が届く範囲で情報を集め様と思う



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黒色の獣

アリサの問題を残しながらも時は経つ。あれから3日後、今日も変わらない任務を受けている。変わった事と言えば大車の事をツバキ指揮官や榊博士に伝えると二人は渋い顔を作り私に警戒して置く様にとだけ言われている…今は情報を集めているらしい。目標であるクアトリガを屠り煙草を吹かしながらコアを抜き取る。神機がもぐもぐしている姿を眺めていると通信機が鳴り響く

 

 

「…?」

 

 

取り出して確認すれば救難信号が届いていた。座標は贖罪の町中心部…妙な胸騒ぎを感じ車に飛び乗り、煙草を車に備え付けられている灰皿にねじ込み、アクセルを踏み込み全速力で走らせる。程無くして贖罪の町に到着すると、激しい爆発音とアラガミの咆哮が響き渡っていた。更に言うのであれば周りの気温が下がり一部の建物には氷柱が出来ている。観察をしながらも戦闘音がする方向へと疾走する。アキ、コウタ、ソーマを取り囲む様に展開するヴァジュラの亜種を視界に収め、脚に力を込める。ソーマの防御を抜けアキへと殺到する氷柱を振り上げで放った神斬りで薙ぎ払い割り込めばアキとコウタの二人が驚いた表情をする。

 

 

「「アークさん!?」」

 

「アーク!中にリンドウ達がいる!連れ出して来てくれ!」

 

 

贖罪の町にある廃教会を中心とした地形、周りのビルや建物から更に顔を覗かす白ヴァジュラを視界に入れ、小さく頷き、教会内部へと走る。アキ達の表情を見る限り、まだ持ち堪えられそうだが、時間は少ない…まるで何か引き寄せられる様にアラガミが増え続けているし、最近は動ける様になったと言ってもルーキー…これ以上のイレギュラーは処理出来ないだろう。

 

 

「違うの違うの違うの違うの!嫌嫌嫌嫌嫌ぁ!!!」

 

 

中に入れば瓦礫が廊下に山の様に積まれており、呆然としているサクヤと頭を抱えながら錯乱しているアリサを発見する。素早く周りを見渡すがリンドウの姿が見当たらない。

 

 

「私じゃない!私じゃない!私のセイじゃない!!」

 

 

瓦礫の向こうから戦闘音が聞こえる…リンドウは反対側だろう。一先ずはアリサを落ち着かせなければ…そう考えて彼女の元へ駆け寄る。表情は恐怖で引き攣り、見開いた瞳からは涙を流し、髪を振り乱し叫び続けるアリサに声を掛ける。

 

 

「…アリサ」

 

「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…!」

 

「アリサ…!」

 

「ひっ!?」

 

 

錯乱し続けるアリサの両肩を強く掴み、名前を叫べば、怯えた様子で声を漏らす。その瞳を真っすぐに覗き込み、名前を紡ぐ。後ろに居たサクヤも私の声に我を取り戻したのか、瓦礫に向かって退かす為にバレットを撃ち始めた。呆然とするよりずっといいだろう。

 

 

「帰ろう、アリサ」

 

「アーク…さん」

 

 

優しくアリサの頬を撫でては軽く抱き締め、落ち着かせる。少しづつ全身の力が抜けて行くアリサは、そのまま私に寄り掛かる様に気を失ってしまった…揺さぶっても起きない。瓦礫の向こう側からヴァジュラの悲鳴が聞こえると静かになる…リンドウが狩った様だ。

 

 

「アーク!其処に居るのか!?」

 

「いる。リンドウは?」

 

「あー、厄介な奴とデートを強要されてな…瓦礫の反対側だ。アーク、サクヤ…第一部隊を連れて撤退してくれ。頼む」

 

 

リンドウの声に返事を返せば何時もの様な調子で伝えられる…がリンドウが言い切る前に瓦礫を見つめ

 

 

「リンドウ、下がって…サクヤはアリサをお願い。私の後ろに居れば大丈夫」

 

「アーク?」

 

 

アリサから離れては神機を構える。背後に居るサクヤがアリサを抱き抱えて距離を取るのを確認して、そっとコアに触れればパキパキと小さな音を立て何かが外れる音が響く。…神機と言うものはゴッドイーター達が使える様に調整されたアラガミだ。無論、調整だけではその危険性が無くなる訳では無い。人が扱えるようにする為に拘束具を取り付け、更に抑え込んでいる。その拘束具は神機の性能を落とすが安全性を格段に引き上げる事が出来る…と、神機を握った時に聞かされた。

 

 

「…っ…いい子。今日は窮屈な思いはしなくて良いよ」

 

 

今やった事は単純、拘束具を外し、神機本来の性能のを引き出したのだ。神機から黒い触手の様な物が右腕に絡まり突き刺さるが優しく光が輝く神機のコアを撫でては痛覚を意識的に遮断し刀身にオーラを纏わせる。紫色を通り越し真っ黒なオーラを圧縮させ振り降ろし一閃。爆音、爆風を起こしながら放たれた神斬りは瓦礫を吹き飛ばし、リンドウを襲っていた2体目の白ヴァジュラすら肉塊へと変えた。

 

 

「!?…助かったぞ、アーク!」

 

「…ん」

 

 

驚くリンドウの声が砂煙の中から聞こえる。ポケットに左手を突っ込んでは赤いスタングレネードを取り出す。リンドウが私の所まで走って来てはぎょっとしながら見て来るが説明をしている暇はない

 

 

「…わかってる。その姿は後で聞かせてもらうぞ。サクヤ!俺は無事だ!アリサを背負え、逃げるぞ!」

 

「……ん」

 

 

ため息を吐きながらも私にそれだけ伝えると、サクヤに声を掛け外へ走り出すリンドウを追う。ソーマが1体アキとコウタが1体を瀕死にさせているが白ヴァジュラはまだまだ集まる。いや、それよりも

 

 

「…黒い」

 

 

白ヴァジュラに囲まれ現れたのは黒いヴァジュラ。女神を連想させる白ヴァジュラとは異なり、年を取った男性を連想させる顔を此方へと向けている。心なしか上機嫌にも感じる表情だ。

 

 

「ちっ…!ソーマ!アキとコウタを守れ!道は俺が拓く!サクヤ、アリサを頼むぞ!アキ、コウタ!ありったけのアイテムを投げ付けてやれ!アークは…」

 

「了解」

 

「まだ、何も言ってないんだがなぁ…よし、生きて帰るぞ!」

 

 

リンドウの指示を聞く前に部隊の最後尾に位置取りする。部隊と適切な距離を取り、私に向かって殺到する氷柱を切り払い、神斬りで牽制する。黒ヴァジュラからの雷撃を躱し、スタングレネードを投げ付ける。強烈な爆音と閃光がヴァジュラ達を包み、動きを止める。一番手前に居る白ヴァジュラの顔面を袈裟斬りして後方へ飛ぶ。と同時にスタングレネードの影響を受けない距離にいた白ヴァジュラの氷柱が私の居た場所に突き刺さる。スタングレネードを更に投げ付け、動きを止めては神斬りを数回放つ。迫って来ていた白ヴァジュラに直撃し悲鳴が上るが、厄介な事に黒ヴァジュラはスタンが効きにくい様だ。

 

 

「…くっ!」

 

 

通常のヴァジュラよりも速い黒ヴァジュラの雷撃を装甲で防ぐが、装甲を貫通し雷撃が身体を駆け巡る。硬直する身体を無理矢理動かし、追撃して来る白ヴァジュラの右目を突き刺し抉り、距離を取るよりも早く左右から飛び込んで来る白ヴァジュラ達を視界に入れ、舌打ちをする。

 

 

「こっちだ!ヘリに乗り込め!」

 

 

リンドウの声を聞きながら、部隊の生存の為に負傷を覚悟して左右の白ヴァジュラを巻き込む出力の神斬りを放とうとオーラを溜めようとした瞬間、白ヴァジュラ達の顔面に赤いレーザーが数発着弾し、背中が2回爆発する。後ろを見ればジーナとカノンとエリックが崖からバレットを撃ち下ろしており、私の左右にタツミとブレンダンが並ぶ。

 

 

「よっ!大分やばい状況だな!」

 

「軽口を叩いている暇はないぞ!タツミ!」

 

「わーってるよ!ヘリは二台ある!このまま守り切るぞ!」

 

 

お互いに頷き合い、戦線を維持しながら距離を詰めて来る白ヴァジュラを攻撃し距離を離す。ヘリポートまで来れば白ヴァジュラ達は数を減らし、もう少しで逃げ切れそうだった。黒ヴァジュラが後方支援組に強大な雷撃を放つまでは。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「…ん」

 

 

ぱちりと目を覚ます。真っ白な天井を見るに医務室なのだろうか…消毒の匂いが鼻腔を刺激する。この匂いは好きじゃない。…?右手が暖かい?

 

 

「…」

 

 

右手を確認しようと見れば、アキが私の手を握って舟をこいでいた。声を掛けようか迷ったが止めておいた。

 

 

「…目を覚ましたのね。…ありがと、アーク」

 

 

アキを眺めていると反対側から声を掛けられた。ズキズキと痛む顔を向ければジーナが安心した様子で私を撫でていた。

 

 

「…痛い」

 

「そうね、大火傷だそうよ」

 

「…ジーナは大丈夫?」

 

「えぇ…貴女のおかげでね。全員無事よ」

 

 

…あの時、忌々し気に顔を歪めた黒いヴァジュラが最後に放った雷撃は私やタツミ、ブレンダンではなく、距離を取って戦っていたジーナ達を狙ったのだ。それに気が付いた私は飛び上がり、ジーナ達と雷撃の間に飛び込んだが装甲を展開する暇も無く、止水を発動させた刀身で受け止めた…それが私の覚えている最後だ。

 

 

「エリックが泣き乍ら礼を言っていたわ。落ちて来た貴女を受け止めたのは彼なの」

 

「ん…」

 

 

気を失った後は黒ヴァジュラは姿を晦まし、白ヴァジュラ達も居なくなったそうだ。あの任務で怪我をしたのは重傷の私と軽傷のリンドウ、そして気を失ったアリサ…まだ目を覚ましていないそうだ。…私は二日程寝ていたみたい

あの錯乱…ヴァジュラ相手の時に蹲るだけだったとなれば、大車のやっていた催眠のトリガーは戦場の雰囲気か、あの白と黒のヴァジュラの何方かだろうか。



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