Ravens lane ─鴉達の未来─ (ダイヤモンド傭兵)
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プロローグ 前夜

ある夜の、戦乱の始まるその前夜···
ねじ曲げられた未来で、何を見て、どのような答えを見いだすのか···


新作、始まります!


ある日の夜、1人の海軍大将である71歳の老人が、1人の17歳の少年と共に月明かりに照らされた海を眺めている。

 

老人「なぁ···ちょいと海が荒れてきてないか?」

 

少年は頷く。その顔は不安で一杯だった。

 

老人「まあ、これから良くないことが起こるだろうが、なんとかなるさ」

 

老人は少年の頭をわしゃわしゃと撫でる。すると少年は笑顔になる。老人は立ち上がり、背伸びをする。

 

老人「よし、そろそろ帰って飯にするぞ!今夜はラーメン作ってやる!」

 

少年は目を輝かせ、老人の作るラーメンを楽しみにしながら老人と共に帰路に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界は一部の国々が統合した、『ユニオン』『ロイヤル』『鉄血』『東煌』『北連』、そして1つの国で名を変えた『重桜』の6つの陣営となり、一部とはいえ人々は国境を無くし、手を取り合っていた。

 

 

 

そして、この老人と少年は重桜に住んでおり、老人の家で2人はテレビを見ながらラーメンを食べている。

 

老人「旨いか?」

 

少年は笑顔で頷く。

 

老人「そっかそっか!······にしても、これも随分下火になったなぁ···」

 

テレビでは2機のロボットが特設されたアリーナの中で交戦している。

 

実況《おおっと!ここで『ゲイボルグ』、主力であるバズーカを破壊されてしまったぁ!》

 

画面の中では、ペイント弾が当たった右手のバズーカを黒い重装甲の機体がブーストを吹かしながら後退し、投げ捨てる。重装甲の機体は左腕のシールドで上半身を庇うが、連続で放たれたペイント弾によってこれも破壊判定となってしまう。

 

実況《ゲイボルグ、最早武装は背中の『ロケット』しか無くなってしまったぁ!形勢逆転した『デルタ』はこのまま勝利を勝ち取るのか!?それともゲイボルグが逆転するのかぁ!?》

 

足が4本あるデルタは武器と化した腕からペイント弾を連射し、ゲイボルグを追い詰めていく。するとゲイボルグは壁にぶつかり、デルタのマシンガンがゲイボルグの上半身に連射され、ゲイボルグは撃破判定となってしまう。

 

実況《勝ったのは、デルタだぁぁぁ!》

 

老人「ほう、今回はこいつが勝ったか···10年前はもっと凄かったのになぁ?」

 

少年は麺を啜りながら頷く。その後、ラーメン作ってやる食べ終わった2人は片付けをし、歯磨きをした後眠りにつく。

 

 

 

 

 

 

 

そして翌朝、少年は老人と共に海軍の基地へと向かう。

 

将校「『銀治(ぎんじ)』さん、また連れてきたんですか?」

 

銀治(老人)「当たり前だ。こいつは頼りになるからな!」

 

銀治は少年を連れて基地へと入っていく···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の午後、突如現れた『セイレーン』と名乗る者達により、世界中が攻撃され、世界は混乱状態となる。

 

白い長髪の女性「フフフ、さぁ···始めましょう!」

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

まだまだ駄文な私ですが、よろしくお願いいたします!

感想やご指摘は遠慮なく送ってください!

●ゲイボルグ
黒いカラーリングの重量2脚型機体。
耐久と火力を重視しており、右手のバズーカが主力であるが、代わりに機動性はあまり良くない。
武装は右手のバズーカ、左腕のシールド、右背部のロケットである。

●ロケット
無誘導のロケット弾を発射する武装。

●デルタ
銀と青のカラーリングの4脚型機体。
4脚特有の高い安定性を活かして武器腕のマシンガンを主力とする。
武装は両腕の武器腕マシンガン、両背部のチェーンガンである。

●武器腕
腕そのものが武器となっている腕部。耐久は通常の腕部より低いが、火力は手持ち武器より高い。


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第1章 KAN-SEN
第1話 兵器開発



セイレーンが現れ、世界は混乱状態となる。

人類が様々な方法で足掻く中、重桜では···


それぞれの陣営はセイレーン達に対して反撃をしたものの、セイレーン側の物量により押され、更に人型のセイレーンは桁違いの戦闘力を持つため、人類側はあっという間に劣勢となってしまう。

 

物量も火力も何もかもが違い、高い練度を持つ艦隊であっても撃破されていってしまっていた。

そんな中、銀治は対セイレーン用の兵器開発及び実験部隊の指揮を取ることとなり、技術者達を集め、兵器開発を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀治「『ヒロ』!そこの鋼材の入ったダンボール箱を持ってきてくれ!」

 

銀治はヒロ(少年)を呼び、ヒロはヨタヨタと鋼材を持ってくる。

 

銀治「じゃ、そこに置いてくれ···ありがとな!」

 

ヒロはにっこりと笑顔を見せる。ヒロは目を輝かせながら興味津々で技術者達の作業を見ている。

すると作業を見ていたヒロは首をかしげ、銀治の肩を叩き、機械の1つのある一点を指差す。

 

銀治「ん?···そうか。おい!一旦作業中止だ!」

 

作業員「どうしたんですか急に?」

 

銀治「そこを見てみろ」

 

銀治がヒロの指差したところを見させると、そこが見た目は小さいながら破損しており、あと少し続けていれば機械が故障していたのだ。

 

銀治「ヒロ、良く見つけたな!」

 

銀治はヒロの頭を撫でる。するとまるで仔犬のようなヒロは笑顔になった。

その後も、ヒロは些細なものでも変化でもおかしなところを次々と見つけていき、技術者達から信頼されていく···

 

 

 

 

そしてある時、銀治はヒロを連れて部品の下請けの工事へ赴く。

 

銀治「ヒロ、どうせだ。こういうのも良く見とけ」

 

ヒロは目を輝かせながら銀治の話を聞いている。

 

銀治「兵器でもなんでも、こういう下請けの連中がこうして頑張ってくれてるからこそ、良い物ができるんだ。どんな小さな部品でもな、魂を込めて作らないと、良い物はできない」

 

ヒロはその後も、目を輝かせながらずっと作業を見ていた···

 

 

 

 

 

その後銀治は基地の研究所へと向かい、そこにいる所長と話をしていた。

 

銀治「なるほど、こういう形か···(さえ)、正気か?」

 

冴「仕方ないわ。最も厄介な人型のセイレーンに対抗するには軍艦では的が大きすぎる」

 

銀治「なるほどな···予想される訓練期間はどのくらいだ?」

 

冴「最短で2ヶ月よ···」

 

銀治「2ヶ月か···」

 

銀治は天井を仰ぐ。

 

銀治「それから、セイレーンに対して何か解ったことは無いか?」

 

冴「そうね···人型のセイレーンには発光体の色によって強さが違うことね。黄色がノーマル、青が強化型といったところかしら。それと、人型のセイレーン達の武装は海洋生物に近い形をしていること···今はそれくらい」

 

銀治「なるほどな···まだ謎は多いか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、完成した新兵器を実験部隊にお披露目する。

 

冴「これが新兵器『78式骨格船(ナナハチしきこっかくせん)』よ!」

 

隊員A「これは···」

 

隊員B「まさか、強化外骨格であいつらとやれと?」

 

冴「まあ、そういうことね。けど、これにもちゃんとした理由があるの」

 

ヒロはやはり目を輝かせながら78式骨格船を観察している。

 

冴「セイレーン達が現れるのは海···となると当然海上戦力で相手をすることになるわよね?けど人型のセイレーン相手にはこっちは的が大きいのに、セイレーン側は小さい···当然不利よね?けど、こっちも人間サイズで立ち向かえば人型のセイレーンと大きさの方では対等になるの···大きさではね」

 

隊員C「けど、武装はどうするんです?」

 

冴「この背部に2つ付けられている『12cm単装砲』が主力ね。

セイレーン相手にはマシンガンなんか効かなかったし···

けど、念のためアメリカからLMGの『M249』を手配したから、1人につき2丁持つことになるわ」

 

隊員D「外骨格だからこそ、できる芸当···か。でも、装甲はどのくらいあるんです?」

 

冴「新素材を使ってるから、セイレーンの機銃には耐えられるわ。さすがにレーザーや砲撃には耐えられないけど···あとは、配布した資料から見て」

 

隊員達がざわめく···

 

銀治「よし、とりあえずは訓練を始める」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1ヶ月後、隊員達が動きに慣れ始め、動きも良くなってきた頃、セイレーンによる世界的な本土強襲が行われた。銀治達のいる基地の周辺海域にもセイレーン達は現れ、住民の避難を急いでいた。

 

隊長「我々12人でどこまでできるか判らんが、時間は稼がねばならん···行くぞ!」

 

隊員達「「「了解!」」」

 

12人の実験部隊員達は出撃していく···

それを、ヒロはとても不安な顔で見つめていた···

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

KAN-SENはまだ出てきてないですが、お待ちください!

鴉間(からすま) 銀治
身長180cm、白髪のオールバックで71歳。
海軍大将の1人であり、ヒロの祖父。
柔軟な性格であり、海軍基地にもヒロを常に連れている。また、部下や周囲からの信頼は厚く、彼を目指して海軍に入った者も多い。

●鴉間 ヒロ
身長155cm、黒の短髪で17歳。
銀治の孫であり、過去にあった事件から言葉を話せなくなった。
銀治には様々な所に連れられ、様々なものを見て教わっている。また、少しの変化にも敏感に感じとる事ができる。
ちなみに、『ロボットバトル』が大好きであり、番組や大会は必ず見ている。
余談だが、ヒロはアスペルガーを含む複数の発達障がいを持っている。

●小野島 冴
身長160cm、茶髪のロングヘアで25歳。
海軍の兵器開発研究所の所長であり、兵器だけではなく、様々な技術に精通している天才。
銀治やヒロとは友人であり、ヒロを弟のように思っている。ロボットバトルに使われるロボットの製作にも携わったこともあり、ヒロからも様々な事を学んだ。

●78式骨格船
新開発の強化外骨格。
下半身をカヌーのような船体に装備し、両肩にはシールド、そして各部に装甲を着け、それらには新素材が使われている。
武装は背部の12cm単装砲×2と両手のLMGであり、人型のセイレーンとの戦闘を目的として作られている。
機動性こそあるものの、やはり大きさ的に装甲を厚くすることはできず、装甲は機銃に耐えられる程度である。


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第2話 Engage


セイレーンによる本土への強襲···

出撃する実験部隊···

待っている運命とは···


荒波を乗り越えて78式骨格船を纏った実験部隊は進む。

 

隊長「敵艦発見、攻撃開始!」

 

2隻の駆逐艦型セイレーン『Pawn』にそれぞれ6人ずつで囲み、集中して砲撃する。12cm単装砲の集中砲火により、ダメージを与えられるが、Pawnの砲撃が隊員の1人に命中してしまう。

 

隊員A「ブギャッ!」

 

砲撃を受けた隊員A跡形もなく血肉を撒き散らし、近くにいた隊員はそれを見て動きが止まってしまう。

しかし隊長が主砲に砲撃を命中させ、新たな犠牲者が出るのを防ぐ。

 

隊長「怯むな!進めぇ!」

 

実験部隊は周囲の護衛艦と共に量産型セイレーンを少しずつ撃破していくが、その度に戦力は減っていった。そして現時点で残っている実験部隊は隊長含めて5人となっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒロは銀治の顔を今にも泣きそうな顔で見上げている。銀治はヒロの頭を撫でながら励ます。

 

銀治「あいつらは時間を稼ぐために行ったんだ。儂らにはどうすることもできん···だが、見ておけ。あいつらの生き様を」

 

兵士「あの、そろそろ皆さんも避難しないと!」

 

銀治「そうか···ヒロ、準備するぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしその頃、実験部隊は戦慄していた。

 

隊長「人型の···『スマッシャー』だと!?」

 

人型のセイレーン、スマッシャーが海上に現れたのだ。

 

隊員B「色はよりによって青···てことはスマッシャーⅡですね···」

 

蟹のような武装を装備した白髪の女性が武装の砲口を向ける。

 

スマッシャーⅡ「···沈め」

 

 

 

 

 

 

 

 

銀治「何っ!?よりにもよって青か···」

 

ドローンからの映像では、実験部隊と護衛艦が次々と撃破されていくのが見える。

そして実験部隊と護衛艦を全て撃破したスマッシャーⅡは本土へと向き直り、進んでいく。

 

銀治「クソッ!ヒロ、すぐに逃げるぞ···いないだと!?」

 

すると冴から無線が入る。

 

冴《大変!ヒロ君が13号機を装備して行ってしまったわ!》

 

銀治「なん···だと···!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM『Vulture』(ACVより)

 

 

 

スマッシャーⅡは前方の荒波の影にチラリと何かを見た。

 

スマッシャーⅡ「なんだあれは······ほう?あの人間共と同じ装備を着けた奴か」

 

スマッシャーⅡはレーザーを複数放つが、1発も当たることは無かった。

そして次の瞬間、スマッシャーⅡの左方向から砲撃され、蟹の足のような武装にダメージが入る。

 

スマッシャーⅡ「なっ!?」

 

スマッシャーⅡが砲撃された方向を見るが、そこにはヒロの姿は無く、荒波が立っているだけであった。

航行する音が聞こえたため、音のした方を向くが、やはりヒロはいない···

 

スマッシャーⅡ(どういうことだ?なぜ奴はいない!?)

 

すると背後からLMGを連射される。

 

スマッシャーⅡ「そんなものが効くとでも!?」

 

即座に振り返ってレーザーを扇状に発射するが、やはり当たらない。辺りを見渡すと、背後から波をジャンプ台の代わりにしてヒロが飛び出、スマッシャーⅡに突進し、激突する。

 

スマッシャーⅡ「グッ!貴様っ!」

 

スマッシャーⅡは反撃しようとするが、ヒロは荒波の向こうに消えていってしまった。

 

スマッシャーⅡ(まさかこいつ···この波を遮蔽物代わりにしているのか!?)

 

スマッシャーⅡは波を注視すると、ちょうど自身の視界を遮る高さまで波が立っているのが判る。

そして気配を察知し回避すると、自身が先程までいた場所に水柱が立つ。

 

スマッシャーⅡ(それだけじゃない···音もこの荒波を利用してかき消しているのか!?)

 

再び音が聞こえた方を向くと、横から砲撃される。

 

スマッシャーⅡ(奴が狙っているのは艤装···しかもあの武装の火力は低い···なるほど、時間稼ぎか)

 

すると背後から航行する音がしたため振り返ると、ヒロが空中に飛び出ていて、体を折り曲げて下半身の船体部分を振り上げていた。

 

スマッシャーⅡ「なっ!?」

 

そして予想外の行動に一瞬動きが止まったスマッシャーⅡの脳天ににヒロは船底を振り下ろす。

 

スマッシャーⅡ「ガッ!」

 

ダメージとしては砲撃より小さいものの、スマッシャーⅡは怯み、ヒロは再び荒波の中に隠れる。

しかし、時間が経つにつれて波が収まり始め、ヒロが隠れられる波の大きさではなくなり始める。

 

スマッシャーⅡはニヤリと笑みを浮かべ、ヒロに砲口を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

銀治はロケットランチャーを担いでボートに乗ろうとしており、他の兵士達が全力で止めようとしている。

 

兵士「やめてください!今行ったら死んでしまいます!」

 

銀治「黙れ!ヒロがたった1人で戦っているのに儂が行かんでなんとする!?」

 

そうこうしていると、空から青い光を放つ小さな4つの立方体が降ってくる。

そしてそれは輝きを増し、光の中から女性が現れる。

 

黒の短髪の少女「『時雨』様が来たからにはもう安心よ!」

 

銀治「あ、あんたらは?」

 

銀の短髪の女性「話は後だ、今は待避しろ」

 

銀治「···なんだか解らんが、孫が1人で戦ってんだ!あいつを助けてやってくれ!」

 

茶色の短髪の女性「承知した!」

 

茶色の長髪の女性「うっふふ···一航戦、『赤城』、参ります!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒロはボロボロとなり、息も絶え絶えになっていた。自走機能は破壊され、片方の主砲と肩のシールドも破壊され、右腕は上がらず、左手に持っているLMGは弾切れとなっている。

 

対してスマッシャーⅡは左の主砲が砲口を撃ち抜かれたため損失しており、他の副砲もダメージにより数本使えなくなっている。

 

スマッシャーⅡ「フン···関節や砲口を狙い撃つか···人間にしては良くやったな···沈め」

 

スマッシャーⅡが砲口を向けた時、突如スマッシャーⅡが爆撃される。

そしてヒロの横を背後から4人の女性が駆け抜ける。

 

銀の短髪の女性「良く耐えたな、後は任せろ!」

 

茶色の短髪の女性「これより、敵艦隊を殲滅する!時雨殿、その男を頼む」

 

時雨「了解よ!」

 

赤城「ここから先は1歩も通しませんわ!」

 

ヒロは時雨に牽引され、赤城達の背中を見ながらゆっくりと意識を失っていく···

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

やっとKAN-SENを出せました!

スマッシャーⅡ相手にタイマンでここまでやれるヒロって一体···


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第3話 動く世界と御前


世界中に現れたKAN-SENと名乗る女性達···

変革の時が訪れる···


ヒロを牽引し、医務室へ運んだ時雨が見たのは、ヒロの体の所々にある火傷の跡だった。

 

時雨「何よこれ···」

 

医師「見てないで早く!」

 

時雨「わ、解ってるわよ!」

 

その後、セイレーン達を殲滅した赤城達は基地に立ち寄り、銀治に事を話す。

 

 

 

自分達は『KAN-SEN』という存在であり、かつての軍艦の魂を『キューブ』により具現化したものであること。

そして、茶色の短髪の女性は『三笠』であり、茶髪の長髪の女性は赤城、銀の短髪は女性は『加賀』、黒の短髪の少女は時雨であるということ。

 

銀治「なるほど···こんなこともあるもんだ」

 

ヒロが眠っている病室で、意識の回復を待つ。

 

銀治「医者の見立てだと、疲労によるものが大きいからそんなにかからないようだが···なによりだ。改めて、ありがとう」

 

三笠「我々は当然の事をしたまで」

 

銀治「あぁ、それと···こいつが目を覚ましたときの事だが、こいつは喋れないから最初は意志疎通が難しいかもしれんが、気にしないでやってくれ」

 

三笠「なるほど、承知した」

 

赤城「それにしてもこの子、随分頑張ったわね」

 

時雨「ねぇ···少し気になったんだけど、喋れないのってもしかして、この子の火傷と···何か関係あるのかしら?」

 

銀治「ああ···それはな···」

 

銀治が話そうとした時、ヒロのまぶたが動き、ヒロが目を覚ました。

 

銀治「ヒロ!」

 

ヒロは辺りを見渡す。そして銀治が頭をガシガシと撫で、ヒロは赤城達に頭を下げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

重桜のこの基地だけでなく、世界中でKAN-SEN達が現れ、セイレーン達を次々と撃破していった···

世界は再び混乱したが、初めてセイレーンが現れた時よりかはマシだった。

 

そして世界はKAN-SENを主力とした戦術とキューブの研究を進めることとなった。

ちなみに、赤城達はヒロの基地の所属となり、銀治の指揮により海域を取り戻しつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

2ヶ月後──

 

加賀「帰還したぞ」

 

三笠「今回も順調だったぞ!」

 

赤城「ただいまヒロ!」

 

時雨「帰ったわ!」

 

ヒロは4人の弟のような存在になっていた。最近ではセイレーンの動きはあまり大きくなく、平穏に近い生活になっていた。

ヒロは4人を出迎え、怪我をしてないか観察する。そして怪我をしていないことを確認すると笑顔になる。

 

その日の夕暮れ、銀治から話がある。

 

銀治「皆聞いてくれ。重桜のお偉い方から連絡があってな···この基地の近海にはもうほとんどセイレーンが現れてないってのと、国防に力を注ぐため、赤城と加賀を国の中枢へと移籍することになったそうだ。まあ、口ではそう言ってても、そもそもこの基地が重桜にとっての要所では無いことも理由の1つだろう」

 

ヒロは驚愕している。

 

赤城「そう···ヒロは?」

 

銀治「ここのままだそうだ。だがヒロ、安心しろ。あまり多く行ける訳じゃないが、会いに行くことは可能だ」

 

ヒロは顔を明るくし、赤城の尻尾に顔を埋める。そして赤城もヒロを尻尾で包む。

 

加賀「まったく···それで、出立はいつになるんだ?」

 

銀治「明後日になる。まあ、ついでに中枢の観光にも行こうじゃないか」

 

加賀「だそうだ、もう少し一緒にいられるぞ」

 

加賀はヒロの頭を撫でながら言う。

 

三笠「···さて、そろそろ夕飯を作るか」

 

時雨「そうね。今夜は私達が作ってやるわ!腹を空かせて待ってなさい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出立当日──

 

 

 

 

銀治「ここが中枢か、随分と様変わりしたもんだ」

 

加賀「まあ、観光の前に御前へと参らねばな」

 

時雨「夕立達にも会えるかしら?」

 

三笠「まさかヒロが長門様に会える特権が与えられるとはな」

 

赤城「セイレーンとの一騎討ちを讃えない方がおかしいですわ」

 

ヒロは咲き乱れる桜と巨大な桜の巨木に目を輝かせていた。

そしてヒロ達6人の元に1人のKAN-SENが歩み寄ってくる。

 

KAN-SEN「お久しぶりです、姉上」

 

加賀「『土佐』か。久しぶりだな」

 

赤城「案内役というのは土佐ですのね?」

 

土佐「ああ···そして、お前があのセイレーンと一騎討ちをした男か?」

 

ヒロはペコリとお辞儀をする。

 

土佐「なるほどな。ではこちらだ」

 

土佐に案内され、ヒロ達は長門のいる広間へと向かう。広間の前で土佐は別件で用事があるからとヒロ達と別れ、ヒロ達は広間へと入る。

 

黒い長髪の少女「余が長門じゃ!」

 

赤城達が頭を深く下げる中、ヒロはペコリと頭を下げた後、長門を見て首をかしげている。

 

長門「ん?どうしたのだ?余の顔に何かついておるか?」

 

ヒロは首を横に振り、ニッコリと笑顔を向けた。そしてヒロは懐からメモ帳とペンを取り出し、何かを書いた後、そのページを破りとって紙飛行機を作る。そして長門の足元へ飛ばす。

長門が開けてみるとメモには『立場なんて関係なく緊張しないでもっと笑って良いんだよ!』

 

長門「うむ、お主の言いたいことは解った。しかし余にはどう笑えば良いか解らぬのだ···」

 

すると再びヒロはメモを書いた紙飛行機を飛ばす。そこには『今の僕には時間は無いけれど、同じKAN-SENの皆がいるよ!』と書かれてあった。

 

長門「···ヒロと言ったな、感謝するぞ!」

 

長門はヒロに向けて笑顔を見せる。ヒロはそれを見て長門に向けてサムズアップする。

それと同時に、その場に気温とは別の暖かい空気が訪れた···

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

世界に関しては薄かったでしょうか?

ちなみにヒロは折り紙がかなり上手で、紙飛行機も狙った位置に正確に飛ばす腕も持っています。


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第4話 重桜


長門と会ったヒロ達は重桜の中枢を観光してみる事にした。

すると手合わせを頼まれることになり···?


ヒロ達は重桜の中枢を観光するため、街で様々な所を回り、途中で他のKAN-SENの所へも行ってみる事にした。

ヒロの生まれ育った地域では見られない物も多くあり、ヒロは目を輝かせる。

 

するとある店でヒロはより目を輝かせ、2つの商品を買った。そして赤城と加賀に買ったものを渡す。

 

赤城「これは···髪留め?うふふっ、ありがとう!」

 

加賀「髪飾りか。感謝するぞ」

 

赤城には桜の紋様のある赤い髪留めを、加賀には青い牡丹の髪飾りをそれぞれヒロは手渡した。

2人に喜んでもらえて、ヒロは笑顔になっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、時雨の会いたいKAN-SENの所へと向かい、1つの家に入る。

 

時雨「白露!夕立!江風は···やっぱりいないわね···」

 

夕立「オォウ!時雨じゃないか!久しぶりだな!」

 

白露「むう?ふわぁ···時雨ちゃんおはよう···」

 

時雨は2人と楽しく談笑し、ヒロはその光景を眺めながらニコニコしており、銀治はこの時のために持ってきていたお菓子を出したが、好評だったため、銀治も嬉しそうな顔をしている。

そして話はヒロの話題に移る。

 

夕立「お前があの1人でセイレーンと戦った人間か?」

 

ヒロは頷く。

 

夕立「人間でそこまでやれるなんて凄いぞ!」

 

ヒロは嬉しそうにニコニコしている。

 

???「なるほど、ヒロ···というのか」

 

ヒロ達の背後に銀髪の少女が立っていた。

 

時雨「『江風』、いたなら言ってくれれば良いじゃない!」

 

江風「試しにつけていたのだ。時雨以外は全員気づいていたがな」

 

時雨「もう···ん?てことはヒロも?」

 

ヒロは頷く。

 

江風「ヒロ···長門様に対しての行為、感謝する。だが、もしこの先無礼を働くことがあったらその時は···」

 

赤城「その時は、なんです?」

 

江風「赤城···」

 

赤城「ヒロは無礼を働くことはありません···それに、ヒロに手を出そうとするのなら···」

 

するとヒロは赤城と江風との間に立ち、赤城と江風の手を繋がせ、口に加えたメモ用紙を2人に代わる代わる見せる。

 

『ケンカはだめ!』

 

赤城「···そうですわね、ごめんなさいね江風」

 

江風「···こちらもすまない、このような時にこんな話題をしてしまって」

 

ヒロは首を横に振ってからメモ用紙に書き足し、サムズアップする。

 

『気にしてないよ!』

 

江風「···そうか。ではまたな」

 

時雨「もう行くの?茶の一杯くらい飲んでいきなさいよ」

 

江風「私には任があるのでな。失礼する」

 

江風は行ってしまったが、ヒロは手を振っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方となった頃、中枢地区の基地へと入り、他のKAN-SEN達と会うことに。

 

黒い長髪の女性「初めまして、私は愛宕よ」

 

黒いポニーテールの女性「そなたがかのセイレーンと一騎討ちをした者か?拙者は高雄と申す者だ」

 

ヒロはペコリと頭を下げる。すると基地の奥から1人の軍服を着た男がやって来る。

 

男「遅れてすまない。私は重桜全体の指揮官を任されている『黒鉄(くろがね) 義人(よしと)』だ」

 

銀治「おお、義人か!久しぶりだな」

 

義人「お久しぶりです、先生」

 

銀治「お前はもう指揮官にまで登り詰めたのか?」

 

義人「いえ、この状況で私以外におらず、私に指揮権が移されました」

 

銀治「そうかそうか!」

 

義人「それと···君があのセイレーンと一騎討ちをした男だな?先生を守ってくれた事、感謝するぞ」

 

すると、今度は高雄がヒロに話しかけてきた。

 

高雄「···なぁ、ヒロ···拙者と手合わせ願う。セイレーンと一騎討ちをした力、この手で確かめたいのだ」

 

ヒロは悩む動作をする。

 

銀治「ヒロは昔から自ら戦うのは好きじゃないんだが···まあ、良いだろう。ほら、お前の力を見せつけてこい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

基地に併設されている道場にて、ヒロと高雄は竹刀を構えて対峙する。

 

義人「それでは···始め!」

 

2人は同時に走りだし、高雄は間合いに入ったところですかさず袈裟に振り下ろす。しかしヒロは姿勢を低くしながら横に回転し、そのまま背後に回り込み、頭に竹刀を振り下ろす。

 

義人「勝負あり!」

 

高雄「速いな···流石はセイレーンと一騎討ちをした男だ。拙者もまだまだだな···次は勝たせてもらう」

 

ヒロと高雄は笑顔で握手をする。

 

愛宕「高雄ちゃん···いつもならあんな感じじゃないのに···フフッ」

 

高雄「あそこまでやられると逆に清々しい···また挑戦したいのは変わらんがな」

 

銀治「ハッハッハッ!だそうだヒロ!」

 

ヒロは銀治に頭をガシガシと撫でられている。すると、再び基地の奥から何者かがやって来る。茶色の長髪に赤い服···赤城と似ているところがある女性は···

 

女性「げほげほ···赤城、加賀、お久しぶりですね」

 

義人「『天城』!あまり動いては···」

 

天城「少しなら大丈夫です。それに、せっかく赤城達が来たのだから挨拶ぐらいしませんと」

 

天城「あなたがヒロですね?私は天城と言います。赤城達は迷惑かけてないかしら?」

 

ヒロは首を横に振る。

 

天城「フフッ、なら良いです」

 

ヒロは天城の容態を心配する素振りをしているが、天城は笑顔で応対し、少しの談笑の後、ヒロ達は帰路に着く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤城「では、また会いましょう!」

 

加賀「達者でな!」

 

ヒロ達は手を振りながら車に乗り込み、拠点へと戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤城「また会えると解っていながら、この胸の穴は何でしょうか?」

 

加賀「姉様···」

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回は重桜の指揮官などが出てきましたね。ヒロの戦闘能力はスマッシャーⅡ戦でもあったようにかなりのものです。

●黒鉄 義人
身長175cm、黒髪の短髪で30歳。
重桜の全体の指揮を任される事となった男。指揮官としての日は浅いものの、指揮能力はかなり高い。
天城とは恋仲であり、天城の事をとても気にかけている。


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第5話 発足

各陣営はセイレーン打倒のために手を結ぶ。

更に、新技術の登場により戦力は大幅に上昇する。

そして銀治達はというと···?


ある日、それぞれの陣営の代表が集まり、協議していた。

 

ユニオン代表「セイレーンを打倒するために、我々は手を取り合わねばならない。そうは思わんか?」

 

重桜代表「無論だ。人類同士で争っている場合ではありませぬ」

 

ロイヤル代表「こちらもそれを考えていた。KAN-SEN達の事も考えれば、手を取り合うのは必然だ」

 

鉄血代表「我々も賛同だ···が、裏切るなよ?」

 

東煌代表「裏切り···か。過去の歴史は繰り返えはさせん」

 

北連代表「良かろう」

 

そして、対セイレーンのための各陣営による連合『アズールレーン』が発足した。

これにより、各陣営は手を取り合い、対セイレーン戦線はより強固なものとなり、これまでよりも奪還した海域は増えることとなった。

 

 

 

 

銀治「アズールレーンか···手を取り合えたようでなによりだ」

 

ヒロはニコニコしながら揺れている。

 

三笠「夕飯ができたぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アズールレーン発足から1ヶ月──

 

義人「これが···"量産型"か?」

 

冴「ええ。キューブの研究が進んだ事で、KAN-SENのキューブではなく、"単純なキューブ"ならこうして量産型の軍艦を作り出すことができるようになったの···しかも低コストで」

 

冴が発見した技術により、量産型の軍艦を製造することが可能となったため、KAN-SEN達の負担は減った。

しかしそれだけではなく、KAN-SENの所属していない地域や基地でも運用が可能となっているため、より戦力は向上していった。

 

 

 

 

 

 

銀治「うちに来た量産型は『綾波』が4隻、『川内』が2隻か」

 

ヒロは平常運転で目を輝かせながら乗り込んで観察している。

 

時雨「これなら、負担も大きく減るわね」

 

三笠「そうだな。前からヒロが心配していた事もこれで減ってくれるだろう」

 

銀治「さて早速だが量産型を相手に演習だ。テロリストとかが量産型を手に入れる可能性もあるから、どれ程のものか確かめておかないとな」

 

時雨「了解!」

 

三笠「承知した!」

 

ヒロは量産型から降りて演習を見るためにコントロールルームへと走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後、銀治は義人から電話を受けていた。

 

銀治「ほう、各陣営の視察に行ってこいと?」

 

義人《はい。各陣営の戦力を確認しておくこととより連携をとるための話し合いをすることが目的です》

 

銀治「なるほどのう···まあ良いだろう、ヒロもより世界を見なければならんしな」

 

義人《そうですか···では、よろしくお願いします》

 

銀治はその後、視察の件をヒロ達に伝える。そして、視察の護衛を三笠に頼む事となった。

 

三笠「承知した、護衛は任せよ!」

 

時雨「私はここでこの基地を守ってるから、安心して行ってきなさい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその翌日、支度を整えた銀治、ヒロ、三笠の3人は視察へと向かう。

 

銀治「行ってくるぞ~!」

 

三笠「時雨殿、基地は任せたぞ!」

 

時雨「もちろんよ!それとヒロ、はいこれ」

 

時雨はヒロに赤いお守り袋を手渡す。

 

時雨「時雨様からの御守りよ!これなら視察の旅も安心!ありがたく思いなさい!」

 

ヒロは笑顔で手を振りながら船に乗り込む。

 

銀治「さて、最初の視察先は···東煌か!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あるどこかの場所にて、2人の女性が話している。2人とも白い長髪だが、片方はウサギの耳のような黒い髪飾りを着けている。

 

女性「おかしい···この世界は私達の知っている世界とは違う···」

 

髪飾りの女性「そうね···この世界には違和感しかないわね···まるで、"書き換えられた"かのようね。だってこの世界の"未来のデータが存在しない"もの」

 

女性「『オブザーバー』···この世界はテストをしようにも不明瞭な要素が多すぎるわ」

 

オブザーバー「ある意味では、実験を行うだけの価値もあるのだけれど···調べてみる他ないわね···『テスター』」

 

テスター「そうね···」

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

アズールレーンが発足しました!それとセイレーン側も登場しましたね!
さて、お互いはどう動いていくのでしょうかね?


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第6話 最初の視察

銀治達の視察旅行の最初の陣営は東煌だった。

ヒロからはそこで、何を見るのか···


東煌の軍港に着いた銀治達は自ら案内してくれるという東煌の代表と会う。

 

東煌代表「初めまして、私が東煌の代表を務めている『(ワン) 劉邦(リュウホウ)』だ。よろしく頼む」

 

銀治「こちらこそ」

 

ヒロはペコリと頭を下げる。

 

劉邦「では、早速こちらへ」

 

銀治達は劉邦に案内され、施設を巡る。そして整備室でヒロは動きを止める。

 

劉邦「何かありましたか?」

 

ヒロは整備されている量産型の機関部を指差している。劉邦は自らその機関部を点検すると、顔をしかめた。

 

劉邦「これは···随分と杜撰な整備だな···ありがとう、これはしっかり改善しておきます」

 

そして一行は昼食の後、KAN-SENの演習を見ることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海上では東煌所属のKAN-SENである『寧海』と『平海』のコンビと『肇和』と『応瑞』のコンビが互いに連携をとりながら砲雷撃をしており、どちらも良い連携により1歩も引くことはない。

ヒロはその演習をじっと見ている···

 

劉邦「彼女達はよく頑張ってくれています。国内ではやはり、内輪揉めやKAN-SENへの迫害も起きています···しかしそれでも彼女達は守ってくれている。その事に、私は感謝しかありません」

 

銀治「お前は中々に解ってるな」

 

劉邦「まだまだですよ···この国は過去に非道な事をしてしまいました···ですが、それでも守るべき人達がいるから、彼女達も頑張れるのです」

 

平海に迫った魚雷を察知した寧海は平海の服をつかんで引き寄せ、その反動で平海は砲撃を放つ。その砲撃を肇和は飛び退いて回避し、入れ替りで応瑞が前に出て魚雷と砲撃を同時に放つ。

 

劉邦「ですから···彼女達に何かあれば、その時は頼む!」

 

銀治「やめとけ···その言葉は使わない方がいい。何かあった時に助けてくれるかは、それまでに何をしてきたかで決まる。まあ、お前は信頼できそうだからな···何かあった時は言え」

 

劉邦「はい!ありがとうございます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして演習は終わり、再び施設を巡る。そして夜になり、宿舎にて1泊することになる。

 

銀治「あの演習は良かったな!内装も前より良くなっているし···2人はどうだった?」

 

三笠「うむ。あの実力なら東煌を守っていく事も十分可能であろう···慢心してはならぬがな」

 

ヒロも頷いている。

 

三笠「それと銀治殿、お主は前にここに来たことがあるのか?」

 

銀治「ああ。昔、1度だけな。その時は環境も劣悪で、兵士が戦える余力はあまり無かったんだ···儂が視察するルートだけ改装していたが、儂にはすぐにわかった」

 

三笠「ならなぜ、ここに再び来ようと思ったのだ?」

 

ヒロも首をかしげている。

 

銀治「KAN-SENが現れたから、何か変わっているかもと思ってな」

 

すると、部屋の扉がノックされる。

 

銀治「どうぞ」

 

入ってきたのは赤髪のツインテールの少女だった。

 

少女「わ、私は『撫順』!その、色々教えてほしい事がありまして···」

 

三笠「構わんぞ。まあ、とりあえずは座って話そう」

 

撫順「はい!」

 

撫順はどうやら兄弟が今は他の基地へ行っているため、戻ってくる頃には腕を上げておき、驚かせたいようだ。

そして三笠からは戦艦の目線から、銀治からは指揮する者の目線から、そしてヒロからは地形や波の動きを利用した方法など、様々な事をアドバイスした。

 

撫順「なるほど、ありがとうございました!」

 

銀治「おう!またな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、軍港から出港する3人を、劉邦は頭を下げて、撫順は元気に手を振りながら見送った。

そしてしばらくし、銀治は改めて次の視察先を確認する。

 

銀治「次はユニオンか···懐かしいな」

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

さて、銀治達からアドバイスを受けた撫順は今後どうなって行くのでしょうか?

何か感想やご指摘があれば、遠慮なく送ってください!

●王 劉邦
身長170cm、茶色の短髪で40歳。
東煌の代表を務め、義を重んじる人柄。犯してしまった過ちは正していくべきと考えており、またKAN-SENへの理解も深い事から人望も厚い。


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第7話 指揮官

東煌の視察を終え、次の視察先であるユニオンへ向かうこととなった銀治達。

ヒロが次に目にするものとは···


ユニオンの軍港に着くと、『ネバダ』と名乗るKAN-SENが案内をしてくれるというので、施設を巡る。

施設は最新鋭の設備が整っているため、ヒロは目を輝かせて色々見ている。

 

ネバダ「好奇心旺盛なのは良いが、見すぎて遅れるんじゃないよ!」

 

ヒロは遅れないよう気を付けながら色々見ていく。

KAN-SENのために新設されたというこの軍港は軍事施設だけでなく、様々な戦術を学ぶための教室や購買部、広い宿舎も完備されており、KAN-SENへの力の入れ具合がどれ程のものか感じられる。

 

銀治「軍事施設、というより生活の場だな」

 

ネバダ「そうだろう?アタシ達はあんまり外に出られないから、この中だけでも楽しく過ごさせたいって声がここに配属になった軍人に多くてね」

 

すると一行の横を急いで走り抜ける男性がいた。

 

男性「うおおおおっ!遅れるぅぅぅっ!」

 

ネバダ「"指揮官"!良いところに···って、そんな場合じゃないか」

 

銀治「ほう、あれがここの指揮官か?」

 

ネバダ「ああ!まだ新人だけど、アタシらの事結構気にかけてくれてるし、指揮も悪くない!」

 

三笠「新人か···先が楽しみだな!」

 

ネバダ「ああ!」

 

ヒロは話を聞いて、この基地の指揮官の走っていった様子を眺めていた···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、戦術とその連携に関する協議を行うことになった一行。協議の相手はこの基地の指揮官と『エンタープライズ』『ボルチモア』『クリーブランド』である。

 

指揮官「わ、私は『夏月(かづき)·ユーセフ』です!よろしくお願いします!」

 

銀治「儂は鴉間 銀治だ。よろしくな!堅苦しいのはいらん、その方が良い意見も出る」

 

そしてそれぞれと意見交換を進めていき、新たな発見を見出だすことができた。

 

銀治「とても有意義な時間だった!やはり若い連中の意見は新しくて良いな!」

 

夏月「それは何よりで···これから、色々ありますが、改めてよろしくお願いします!」

 

銀治「もちろんだ!」

 

夏月と銀治は握手を交わす。

 

 

 

 

その後、再び施設を眺めていた銀治は「懐かしいなぁ」と、一言呟く。

 

夏月「ここに来たことが?」

 

銀治「ユニオンには何度か来たことはあるが、この基地は初めてだ···が、この建築のやり方は儂の盟友のやつだ。確かあいつは引退してたはずだから、あいつの弟子だろう」

 

夏月「なるほど···」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、宿舎にてヒロは購買部で買ったビーフジャーキーを食べていた。

 

銀治「あの夏月ってやつ、中々見所あるな!あいつはこの先デカクなるぞ!」

 

三笠「まったく新しい戦術を思いつき、更に我らの意見も上手く取り入れている。これは期待できるな!」

 

ヒロも頷いている。そしてビーフジャーキーの最後の1切れを呑み込む。

 

銀治「さて、そろそろ消灯時間だ。寝るぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、次の視察先へと向かう銀治達の船を、夏月はずっと眺めていた。

 

エンタープライズ

「指揮官、どうした?」

 

夏月「いや、あのヒロってやつとはまた会う気がしてな···」

 

エンタープライズ

「指揮官···まあ、確かにいずれはまた会うだろう」

 

夏月「そうだな···よし!次会うときまでにはもっと腕を上げておくぞ!」

 

エンタープライズ

「もちろんだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀治「さてと、次の視察先は···ロイヤルか。ということはアイツがいるのか」

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回はゲーム本編の主人公が出てきました!···今はまだ本編始まってないですが···

しかし最近、やることが多くて筆が進まない(´д`|||)

●夏月·ユーセフ
身長170cm、黒い短髪で19歳。
重桜生まれとユニオン生まれのハーフであり、つい最近配属された指揮官。
指揮能力は高く、新しい方法を思いつき、それにより何度もKAN-SEN達を勝利や生存へと導いている。また、KAN-SEN達への理解も深く、多くの人物から信頼を置かれている。
ちなみに、ゲーム本編の主人公でもある。


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第8話 剣と盾


ユニオンの視察にて、新たな可能性を見出だした銀治達の次の視察先はロイヤルとなった。

銀治には知り合いがいるらしいが果たして···


ロイヤルの軍港に到着すると、出迎えていたのはメイド服を着たKAN-SENだった。

 

ベルファスト「お待ちしておりました。ロイヤルのメイド隊隊長を務めております『ベルファスト』と申します。お見知りおきを···では、早速ですがこちらに」

 

この軍港は優雅さを重視した造形であり、ヒロもあまり見たことのないものが多く、興味津々である。

そして庭園を通りかかった際、1匹のミツバチがヒロの頭に止まるが、ヒロはニコニコしながらミツバチを頭に乗せたままにしている。三笠は心配していたが、しばらくしてミツバチは飛んでいき、ヒロはミツバチに手を振っていた。

 

そして視察の途中、茶会に誘われたため、せっかくなので参加してみることに。すると···

 

老人「やはり来たか···」

 

銀治「このタイミングで儂を誘うなどお前しかおらんだろ···『エルデア』」

 

エルデア「そうだな···さて、座るがよい。銀治、お前には儂自ら淹れてやる」

 

紳士服を着たエルデアと呼ばれた老人は手慣れた手付きで銀治に紅茶を注ぐ。

 

銀治「(紅茶を飲む)···ふう、やはりお前の紅茶は旨いな」

 

エルデア「今度そっちに視察に行こう。その時はお前のラーメンを食わせてもらおう」

 

銀治「任せとけ!」

 

エルデア「む、紹介が遅れてすまんな。儂はこの基地の指揮官のエルデア·リーダスだ」

 

ヒロはペコリと頭を下げる。

 

三笠「ということは、あなたはあの『策士のエルデア』か?」

 

エルデア「重桜のKAN-SENにも知られているとは光栄だ。そして、この茶会は席にいるそこの2人のKAN-SENは『クイーン·エリザベス』と『ウォースパイト』だ」

 

エリザベス「初めまして、私がクイーン·エリザベスよ!こうしてわざわざお茶会開いてあげてるんだから、感謝しないさいよ!この下僕達!」

 

ウォースパイト「初めまして、私はウォースパイト」

 

エルデア「銀治···積もる話もある。少し2人で話さないか?君達はゆっくり茶会を楽しんでくれ」

 

三笠「いえ、視察は···」

 

エルデア「まだ時間はある。ゆっくりしていけ」

 

エルデアは優しい笑みを浮かべ、銀治と共に庭園の奥に進んでいった···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀治「話ってなんだ?」

 

エルデア「···これを見ろ」

 

銀治「これは···」

 

庭園の最奥には1つの墓があった。

 

エルデア「『エーデル』先生の墓だ···この場所が特に気に入っていたようでな、ここに埋葬した」

 

銀治「そうか···」

 

エルデア「···儂がここの指揮官になったのは、ここを守るためでもある。近年、ここの土地開発を目論む者が多くてな···潰していくのも面倒なのだよ」

 

銀治「よりにもよって先生の墓をか···」

 

エルデア「銀治···『エーデルの剣』とも呼ばれたお前に、1つ頼みがある」

 

銀治「『エーデルの盾』とも呼ばれたお前がか?珍しいな」

 

エルデア「儂ももう長くはない···儂はひと目であのヒロという男の有用性が判ったぞ···儂がこの世から去った時は、エリザベスをヒロの元へ配属させろ。その手はずは整っている」

 

銀治「随分と強引な···まあ、お前らしいが···それになんでヒロの所なんだ?アイツは指揮には向かないぞ?」

 

エルデア「それは判っている···儂が見抜いたのは···"危険性"だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エリザベス「ふ~ん、あなたはヒロっていうのね!しゃべれるかどうかは関係なく、私の下僕に相応しいわ!」

 

三笠「下僕?」

 

するとヒロはメモ用紙に何かを書いてエリザベスに渡す。

 

エリザベス「この私に直接渡すなんて···いいわ、今回は特別に読んであげる···『下僕というより友達で良い?』ですって···」

 

ウォースパイト「陛下···」

 

エリザベス「·····いいわ、あなたは随分と度胸があるようだし、友達でも良いわ!···けど、いつか下僕にしてみせるから、待ってなさいよ!」

 

ヒロは"やってみろ"とばかりに得意気な顔をする。

 

三笠「では我も···」

 

エリザベス「あなたは下僕よ」

 

三笠「···」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀治「ヒロのどこに危険性が?」

 

エルデア「やはり脳筋、いや子煩悩のお前には解らんか···」

 

銀治「悪かったな」

 

エルデア「お前の事だ、この世界の残酷さと考え方は教えているだろうが、この世界の"本当の残酷さ"は教えていないだろう?」

 

銀治「·····」

 

エルデア「やはりな···まあ、それはそれで良いだろう···ヒロには本当の残酷さは知らなくても良い···だがな、おそらくヒロの内面には"獣"が住んでいるだろう···もし本当の残酷さを知れば"力"を手にしようとし、手にすれば世界を破滅に導くだろう」

 

銀治「お前···」

 

エルデア「だが、力を手にしなければ良いのだ···ヒロの目の輝きは素晴らしい。あれを曇らせるのは儂も嫌になる···だからこそ、多少強引なれども、"友"が必要なのだ。その友が力を手にするのを阻止してくれれば、後は自然に"獣"は消え行くだろう」

 

銀治「はぁ···お前の"策"には驚かされるよ···」

 

エルデア「よく言う···儂はお前の戦闘面にいつも脅かされていたがな」

 

2人はそう言って笑い合い、茶会の場所に戻った。

 

 

 

そこではエリザベスが自慢話をヒロに聞かせており、ヒロは興味津々で聞いていた。

 

エリザベス「そこで私はそいつに言ってやったのよ!」

 

エルデア「エリザベス、後は手紙でも良いだろう。そろそろ時間だ」

 

エリザベス「もう···ヒロ!また会いましょう!次に会うときこそは下僕にしてみせるわ!」

 

 

 

 

その後視察は無事に終わり、翌日に再び次の視察先へと向かうことになった。

 

銀治「さて、次の視察先は···鉄血か」

 

銀治はふとヒロの方を見る。良い夢でも見ているのか、寝ながらニコニコしている。

 

銀治「ヒロ···」

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

ヒロはかなりの危険性を持っていますが、どうなんでしょうね?
まあ、それはともかく···エリザベスと友達になりましたが、予想していた方はいたでしょうか?···え?してた?···orz

●エルデア·リーダス
身長168cm、白髪のセミロングで72歳。
『策士のエルデア』とも呼ばれている男であり、指揮能力は世界トップレベルであり、銀治とは親友でありライバルでもあった。
セイレーンが出現した初期の頃はその策によって2度もセイレーン艦隊を退けた唯一の指揮官でもある。

●エーデル·フォルン
身長170cm、白髪の短髪で享年80歳。
多国籍海軍部隊の教官を務めていた男性。銀治とエルデアの潜在能力を見抜き、それを最大限活かす事を教えた結果、2人を『エーデルの剣』『エーデルの盾』と呼ばれるまで成長させる。
銀治はその戦闘力の高さを伸ばし、エルデアは策士としての腕を伸ばしたため、教官としての能力は世界トップレベルである。
80歳半ば、病により死亡。


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第9話 声


ロイヤルの視察にて親友からヒロへの危険性を警告された銀治···
そして次の視察先である鉄血へと向かうことになる。

ヒロは···なんなのか···


鉄血の領海に入り、軍港に降り立つと出迎えていたのは『ケルン』と名乗るKAN-SENだった。

 

ケルン「これが今回のスケジュールとなります。ご確認ください」

 

銀治「ありがとう」

 

そしてこれまで通り施設を回っていくが、ヒロは鉄血の雰囲気に興味津々だった。

そして次の場所へ行く途中、1人のKAN-SENと出会う。

 

KAN-SEN「あら?あなた達が視察来た人達ね?私は『プリンツ·オイゲン』。今日は楽しんでいってね」

 

銀治「ああ。今でも十分充実しているが、そうさせてもらうよ」

 

三笠「右に同じく」

 

ヒロはサムズアップしている。

 

オイゲン「ふふっ、じゃあまたね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視察は順調に進み、今後の事に関しての意見交換をする時間となり、会議室へ向かう。会議に参加するのはKAN-SENの『ビスマルク』と銀治であった。

 

2人が意見交換をしている間、ヒロと三笠は鉄血のKAN-SEN達と戦術の意見交換をしていた。その場に参加した鉄血のKAN-SENは『ローン』『アドミラル·ヒッパー』『U-410』である。

 

ヒロは『自分だったらこう行く』というのを海図をなぞっていく。

 

ローン「あ···これだと確かに戦線を乱せますね」

 

ヒッパー「でもこれだと敵陣から抜け出せなくなるんじゃない?」

 

三笠「そうなる前にこちらが詰めるか、艦載機や砲撃による支援をするかだと思うぞ」

 

U-410「もしこの方法をするなら駆逐艦か軽巡になってくるわね···逆に対策としてはこういう物陰に注意したり、私のような潜水艦が目を光らせる事ね」

 

ヒロは頷く。そしてその後も意見交換は続いていき、意見交換の時間は終了する。

 

 

 

 

 

 

翌日、次の視察先へ向かうため出港したのだが、セイレーンの艦隊に襲撃されてしまう。

 

三笠「数が多い!このままでは···」

 

想定よりも数が多く、三笠だけでは船を守りきれないと悟り、銀治とヒロがロケットランチャーで応戦しようとしたその時、鉄血の艦隊が救援に来た。

 

オイゲン「間に合った!」

 

ヒッパー「感謝しなさいよ!」

 

ローン「さぁて···逃がしませんよぉー!」

 

それを見て三笠は奮起し、銀治は船を戦場から離そうとし、ヒロはロケットランチャーを構え、周囲を警戒する。

そしてセイレーン艦隊を殲滅したが、船の損傷を直すため、鉄血の軍港に戻ることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀治「いやぁ助かった!ありがとう!」

 

三笠「感謝するぞ!」

 

ヒロもペコリと頭を下げる。

 

オイゲン「明日までは直らないようだから、ゆっくりしていって」

 

そしてその翌日、無事に出港し、最後の視察先である北連に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、ヒロは不思議な夢を見る···

 

船の上で月を見上げていると、ノイズの音が聞こえてくる。ヒロはそのノイズの中に何か聞こえ、不思議に思って目を閉じ、耳を澄ませてみる。

 

???「──────メ···」

 

ヒロは更に耳を澄ます···

 

???「─────ズメ···」

 

ノイズの音が大きくなると同時にノイズに混じっている声のようなものが鮮明になってくる。

 

???「────シズメ···」

 

ヒロは目を開ける·····月は赤く染まっており、海には激しい損傷のある軍艦が大量に浮かんでいる。そしてノイズに混じっている声のようなものは···今度ははっきりと聞こえる。

 

???「シズメェッ!」

 

ヒロはハッと目を覚ます。そこは船の中の寝室であり、二段ベットの下である。

ヒロは船の窓から海を眺める···

 

 

 

 

 

 

ヒロには夢の中の声が、まるで泣いているかのように聞こえていた···

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

やはり最近は上手く筆が乗らず難儀しています(;´Д`)

さて、ヒロが最後に聞いた声はなんだったのでしょうかね?


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第10話 視察旅行の終わり


最後の視察先である北連に向かった一行だが、ヒロは夢の中で謎の声を聞いた···


北連での案内役のKAN-SENは『アヴローラ』だった。案内され、施設を回っていくが、ヒロはやはりこれまでとは違う雰囲気に興味津々である。

 

アヴローラ「ここは寒いですが、皆さんは大丈夫ですか?」

 

銀治「お気遣いどうも。儂らは大丈夫だ」

 

三笠「このくらい、大したことはない」

 

と言いながら三笠は少し震えている。ヒロは寒さなど気にせず色々なものに興味を示している。

 

アヴローラ「そうですか、それなら良かったです」

 

 

 

 

 

 

そして視察の後、いつも通り意見交換をすることになったのだが、この基地の指揮官が遅れてくるということで、会議室にて待つことになった。

暖かいコーヒーを飲んでいる間、アヴローラがヒロに話しかけてきた。

 

アヴローラ「そういえば、ヒロさんは1人でセイレーンと戦ったと聞きましたが、その···どうでしたか?」

 

ヒロは少し悩んだ後、メモ用紙にこう書いた。

 

『怖かった。けどあのままだとじいちゃん達が逃げ切れないと思ったら、自然と体が動いてた』

 

アヴローラ「そうだったんですね···」

 

三笠「聞いたところによると、銀治殿はヒロを助けようとして外骨格も無しに海へ出ようとしていたそうだぞ」

 

銀治「儂はどうせ脳筋じゃ」

 

ヒロは銀治に向けてメモ用紙を出した。

 

『のーきん!のーきん!』

 

銀治「泣くぞこの!」

 

その場に笑いが起きる。それから少しして北連の指揮官が会議室に急いで入ってくる。

 

北連指揮官「遅れてすまん!私がここの指揮官の『テイル·オーウェン』だ!」

 

銀治「いやいや気にするな···ところで何やら頭痛でもしとるのか?」

 

テイル「···二日酔いだ」

 

銀治「あっ···お察しします」

 

ヒロは首をかしげているが、三笠が「気にするな」と言い聞かせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会議も無事に終わり、翌日3人は重桜に帰艦する。出迎えていたのは時雨だけでなく、赤城と加賀もいた。

 

赤城「お帰りヒロ!」

 

赤城はヒロを抱き締め、ヒロの顔は赤城の胸に埋まり、上手く息ができずに踠く。

 

銀治「おう!久しぶりだな!」

 

三笠「この日に合わせて戻ってきたのか?」

 

加賀「ああ。後で土産話をたっぷり聞かせてくれ!」

 

時雨「そうね!土産物も楽しみだし!···赤城、そろそろ離してあげないとヒロが···」

 

赤城「え?···あぁっ!ヒロ!」

 

ヒロは少しぐったりしていたがすぐに復活する。その後、土産話をしながら夜を過ごし、眠りにつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒロはその夜、寝る前に自室に置いてある箱から1つの大きな紙を取り出し、机の上に広げる。

 

その紙には船の設計図が描かれていたが、艦首には巨大な突起物があり、それはまるで"槍"のようにも見える。その設計図をヒロは眺め、目を輝かせていた。

設計図を取り出した箱の中には他にも設計図が7枚あり、計7枚の設計図をヒロは保管している。

 

ヒロはしばらく眺めた後、設計図を箱にしまい、眠りにつく。

 

 

 

 

ヒロが見ていた設計図の端にはこう書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       『重巡洋艦 ケンタウルス』

 

 

 

 

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

最近内容が小さくてすみません!

さて、ヒロの保管している設計図は一体なんなのでしょう?後に関わってくるかは想像にお任せします。

●テイル·オーウェン
身長180cm、金の短髪で35歳。
北連の指揮官を務めいる男性で、指揮能力は並。しかしKAN-SEN達からは好かれており、よくウォッカ好きのKAN-SENから絡まれ、二日酔いになることが多い。そのため『二日酔い指揮官』と呼ばれることも多い。

●ケンタウルス
現時点では情報を閲覧できません。


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番外編 ヒロとKAN-SEN達


これはKAN-SEN達が現れてからのヒロと赤城達のお話。

番外編です。時系列としては空白の2ヶ月の間です。


ヒロはその日、時雨とヒロは買い物に出掛けていた。日用品を買って帰ろうと帰路に着くが、途中で時雨が足を止める。

 

時雨「そういえばヒロってあまり私服持ってなかったわよね?」

 

ヒロは頷く。

 

時雨「ふふん、ならこの時雨様が選んであげるわ!お金も余ってるし、さぁ来なさい!」

 

時雨はヒロの手を掴んで服屋に連れていく。

服屋でヒロは色々着せ替えさせられ、最終的に落ち着いた色合いの服装になる。

 

時雨「これでよし!よく似合ってるじゃない!」

 

ヒロもニッコリである。しかし帰路の途中、後をつけられている事に気づいたヒロは途中で石ころを拾い、つけている人物が隠れている場所に投げつける。走り去る音が聞こえたが、今度は別の石ころを投げ上げと、石ころは走り去った人物の頭に命中する。

 

時雨「後をつけてくるなんて、いい度胸ね···」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日は2日前から雨が続いていた。外に出れず、テレビゲームをやる気も起きずに宿舎内をブラブラしていると、退屈していることを察した三笠が声をかけた。

 

三笠「ヒロ、もし良かったら我の部屋に来てみないか?」

 

ヒロが三笠の部屋に着いていくと、そこで艦船のプラモデルを作ることになった。

ヒロは元々工作が好きだということもあり、2人で作るプラモデルは互いに色々教え合った事もあり、見事な出来映えとなった。

 

三笠「おおっ!このような細かい所まで正確にできるとは···お主、なかなかやるではないか!」

 

ヒロはドヤ顔をしている。

 

三笠「時間はまだあるな···もう1つ作らないか?」

 

ヒロは頷き、再び製作に取りかかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

加賀は赤城に届け物を済ませた後、基地の廊下でヒロを見かけた。何気なく着いていくと、演習場に入っていく。加賀は中を覗いてみると、演習場となっている海に骨格船を纏ったヒロが海上に浮いた的に攻撃している。

 

冴「あら、いたのね。あなたは確か···加賀さんね?」

 

加賀「そうだが、お前は?」

 

冴「そういえばまだ挨拶してなかったわね。私は小野島 冴、冴でいいわ···ちなみに私はここの研究所の所長よ」

 

加賀「そうか···ではあの人船(ひとぶね)を作ったのも···」

 

冴「もちろん私よ···前はヒロを助けてくれてありがとう」

 

加賀「私の務めを果たしただけだ」

 

冴「フフッ·····あの子、また何かあった時に備えてああやって自主トレやってるのよ···いくらあの子が強くたって、人間がセイレーンや軍艦に敵うわけないのに」

 

加賀「だが、やつはセイレーンの武装を破壊していたが?」

 

冴「あれはちょうど視界が遮られるほどの荒波があって、それを利用していただけ···でも、もしかしたらあの子···あのスマッシャーⅡを撃破できていたかもしれないのよね···だけど···」

 

冴は演習場の海上を駆け抜けるヒロを悲しげな顔で見つめる。

 

冴「あの子は本当は、命を賭けた戦いなんて望んでないの。それに、誰も殺したくないってずっと願ってるから、あの時もセイレーンを殺す気なんてはなっから無かったのよ···」

 

加賀「つまり、あれは単なる自己犠牲だと?」

 

冴「そう···あの時のあの子の目的は撃破じゃなくて時間稼ぎ、それか無力化。だからあの時も本体には致命傷となる攻撃は一切せず、武装を狙ったり、本体に攻撃しても怯ませるだけ···殺す気になればきっと撃破できていたのに」

 

加賀「そうか···」

 

加賀は演習場の出撃ドックへと歩いていく。

 

冴「どうしたの?」

 

加賀「弱いものは淘汰される運命だ···だが、やつが単なる弱者になることは、なんだか許せない気になってな」

 

そして加賀は艤装を展開し、海上に出る。ちょうど補給を終えたところのヒロはそれに気づいて首をかしげる。

 

加賀「ヒロ···お前がどれ程の力を持っているのか、私に見せてみろ!···一航戦加賀、参る!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤城は銀治に頼まれてヒロの部屋に行き、銀治から『トン、トトンというリズムでノックするように』と言われていたため、そのリズムにノックし、部屋に入る。

 

赤城「入りますわよ···どうしまたの?」

 

ヒロは小さな子供のように腹辺りの服を掴んで部屋の中をうろうろしていた。ヒロは赤城を見るとすぐに駆け寄ってきて、メモ用紙に何かを書き込み、赤城を見上げながらそのメモ用紙を見せる。

 

『大切な箱なくしたから一緒に探して!』

 

赤城は銀治からの頼まれごとがあったものの、ヒロの泣きそうな顔を見て一緒に探すことにした。

ヒロが探している箱はキューブより少し小さな赤い箱だという。しかし赤城が思っていたよりも早く箱は見つかり、ヒロは笑顔でお礼の意味の握手をしてくる。

 

赤城(この笑顔···とても良いですわね···フフフ)

 

ちなみにその箱の中身は1枚の写真で、ヒロの両親と妹が写っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日、ヒロはいつもよりテンションが高く、夜10時になる頃にテレビをつけ、ロボットバトルの番組に切り替える。

ロボットバトルを初めて見る赤城達4人は気になって見てみる事にした。

 

司会《それでは皆さんこんばんは。今夜もやって参りました、ロボットバトル!今夜のアリーナは『JUNGLE』。スコールが降り注ぎ、木々に囲まれているため視界の悪いマップです。今回の対戦者達はどのように立ち回るのでしょうか!?》

 

画面にはスコールが降り注ぐ森が映される。するとヒロはメモ用紙を出す。

 

『ちなみにここ、真ん中に川があるんだよ』

 

司会《それでは、今回の対戦者達の紹介です。赤コーナー!重量2脚『フォックス·アイ』、青コーナー!逆関節『レッドホーク』》

 

フォックス·アイと呼ばれた白く重厚な機体と、レッドホークと呼ばれた赤く鳥の足ののような脚部の機体がそれぞれの定位置に着く。

 

実況《それでは···レディー、ゴー!》

 

2機はほぼ同時に動き出し、フォックス·アイは木々の間を進み、レッドホークは空へと飛び立つ。レッドホークが索敵を行っていると木々の茂みの中から大きなペイント弾が発射される。

レッドホークは回避しつつフォックス·アイがいるであろう方向に飛び、右手に持つマシンガンを連射する。すると別の場所から垂直ミサイルが発射され、レッドホークは直撃を受けて墜落する。

 

実況《あぁっと!レッドホーク、垂直ミサイルの直撃によって大ダメージを受けてしまったぁ!》

 

青いペイントに機体の多くを染めたレッドホークはその場で肩から吸着機雷を射出し、機雷は地面に吸着する。

レッドホークは後ろに下がるが、背後から大きなペイント弾が直撃し、撃破判定となってしまう。

 

実況《レッドホーク、撃破!今回の勝者はフォックス·アイだぁぁぁ!》

 

三笠「木々を利用した戦術···あのフォックス·アイというやつ、中々やるな」

 

加賀「それに対しあのレッドホークというのはなんだ?いくら雨で視界が悪くなってるとはいえ、あんな風に飛んでいれば的になるのは当たり前だ」

 

ヒロも頷いている。

 

司会《ではまた来月!》

 

実況《またな!》

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回は空白の2ヶ月でのヒロとKAN-SENとのやりとりを書きましたがどうだったでしょうか?
今回は長くなったので機体などの説明は次回行います。

●ヒロと三笠のプラモ
2人が作中で作ったプラモは大和です。作りやすいように若干のデフォルメがされていますが、ヒロと三笠は自ら細かくしていきました。
ちなみに余った時間でのプラモは大淀で、完成に至りませんでしたが、後に完成させています。

●ロボットバトル
2機のロボットを特設されたアリーナで戦わせるという競技。ロボットの大きさは2m~3.5mと決められており、使用する弾はペイント弾で、それぞれの機体のカラーリングに合わせた色となっている。
また、事前に申請した装甲値により、撃破判定か判断される。
余談だが、25年前からこの競技はあり、15年間は全盛期だったが、今は下火となり、月1回となってしまっている。


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幕間 Lost


運命は動く···その動きは何を生むのか?


家が燃えている。燃えている中で1人の女性が肩を貸している。

 

女性「おい、早く行くよ!」

 

燃える廊下を進むが、下の階で爆発が起こり、2人はバランスを崩す。

 

女性「大丈夫か!?」

 

足に木片が刺さって上手く動かせない。

 

女性「こういう時って確か···抜いちゃだめなんだっけ?」

 

女性は再び肩を貸して進む。女性の顔を見上げると、女性は笑いかける。

 

女性「···大丈夫。絶対に助けるから!」

 

そして下の階に向かおうとした瞬間、大きな爆発が起こり、2人は離れた場所に飛ばされる。

女性の名前を叫び、足を引きずって女性の元に行こうとするが、女性は横に目を向け、目を見開く。

 

女性「クソッ!」

 

女性は駆け寄り、抱き上げる。

 

女性「いい?受け身とれよ?」

 

女性に抱き抱えられ、窓の近くまで運ばれる。

 

女性「絶対また会えるから!だからそれまで泣くんじゃないよ!」

 

女性に窓から投げられる。

 

 

その瞬間、全てがスローモーションに見え、手を伸ばす。

 

 

涙を流しながら女性は笑顔でいる。

 

 

女性の横から爆発が起き、女性は木片と共に海へと吹き飛ばされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めると、自室の布団の上だった。泣きそうな顔になるものの、何度も深呼吸をし、窓のカーテンを開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒロの顔を、暁の水平線が照らしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

晴れた日、加賀は天城と共に艤装を展開し、海上に立っていた。

 

加賀「本当に···良いのですか?」

 

天城「ええ。私の体がもう動けなくなる前に、最後にこの力を示したいのです」

 

加賀「なら···もう、言葉は要りませぬな」

 

2人は同時に構える。

 

そしてその様子を、義人は涙を堪えながら見ていた···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、訃報が伝えられ、銀治達は重桜中枢の基地へと向かう。

 

そこで行われるのは、天城の葬儀だった。

 

そこにいるのは、重桜の全てのKAN-SENと、天城と近しい者達だった。

 

銀治「儂とヒロはそこまでの間でもなかったと思うが?」

 

赤城「天城姉様の要望ですわ」

 

銀治「そうか···」

 

やがて葬儀は終わり、人数が減っていくなか、ヒロは誰にも気づかないうちに、泣き崩れている義人を見つめる。

 

義人「天城···天城···」

 

 

 

 

 

 

ヒロの目は、まるで"獲物を見つけた獣"のような目付きになっていたが、すぐに目線を反らし、銀治と共に歩いていく。

 

 

 

 

 

 

その日は中枢の施設で1泊することになり、銀治は広間にてひと息ついていた。するとそこに2人のKAN-SENがやって来た。

 

高雄「銀治殿、久しいな」

 

愛宕「お久しぶりです」

 

銀治「おお、高雄に愛宕か」

 

高雄「その、1つ聞きたいことがあってだな···」

 

銀治「なんだ?」

 

高雄「ずっと気になっていたのだが、ヒロはなぜあんなにも強いのだ?ただ訓練を積んだだけではあそこまで強いのは少し気になってな···」

 

銀治「ああ、その事か···まあ、確かに訓練を積んだだけではあの歳であそこまで強くはならんな······2人は『ドミナント仮説』というのを知っているか?」

 

高雄「なんだそれは?」

 

愛宕「う~ん、私も知らないわ」

 

銀治「まあ、知らないのも無理はない。この仮説は儂の師であるエーデルという男が提唱した仮説で、耳を傾ける人は少なかったものだ···」

 

そして、銀治はそのドミナント仮説を説明する。

 

銀治「ドミナント仮説、というのはな···簡単に言うと『先天的な戦闘適合者』の事だ。つまりは戦いの天才だ」

 

愛宕「もしかして、それが···」

 

銀治「ああ。儂もそれを聞いた当時はまだ立証されてなくてな···だが、エーデル先生の死ぬ少し前にヒロが産まれ···その後のヒロを見て確信した···ヒロは、ドミナントだと。特に、あのスマッシャーⅡとの戦闘を見たらもう否定などできん」

 

高雄「ドミナント···か」

 

銀治「まあ、ヒロは自分から色々鍛練を積んだりしてるから、ただの天才って訳でもないがな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜中···悲しみに暮れ、海を見ている義人に近づく影があった。

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

幕間でしたが、どうだったでしょうか?
さて、今回の事がどのように関わってくるのでしょうか?ではこれにて第2章へと移行します。

●フォックス·アイ
白いカラーリングの重量2脚。
武装は右手のハイレーザーライフル、左腕のグレネードライフル、背部のデュアルミサイル、肩内臓のデコイである。
高火力かつ重装甲の機体であり、機動力こそ低いものの、ハイレーザーライフルの火力は驚異である。
また、時にデュアルミサイルを垂直ミサイルに変更することもある。
余談だが、現在の使用者は2代目である。

●重量2脚
機動力は低いが装甲は厚く、積載量も多い脚部。

●ハイレーザーライフル
通常のレーザーライフルよりも重量と弾数を犠牲にし、火力を高めたもの。

●グレネードライフル
キャノンを腕部に装備できるよう小型化と軽量化をしたもの。

●デュアルミサイル
複数のミサイルを同時発射するミサイル。
フォックス·アイに搭載されていたものは4発である。

●デコイ
ミサイルを引き付ける浮遊型のデコイ。

●垂直ミサイル
真上に発射するミサイル。

●レッドホーク
赤いカラーリングの逆関節。
武装は右手のマシンガン、左手のハンドガン、背部の小型ミサイル、肩内臓の吸着機雷である。
装甲は薄いものの、機動力を活かした空中戦を主体としている。
使用者はまだ戦闘経験が浅く、空中戦に偏った戦闘をしている。

●逆関節
鳥の足のような機構の脚部。高いジャンプ力を活かした立体的な戦闘が可能。

●マシンガン
単発の火力は低いものの、高い連射力と豊富な弾数のある武器。

●ハンドガン
弾数は多くないものの弾の熱量が高く、敵機体を熱暴走に追い込みやすい武器。

●小型ミサイル
小型のミサイルを発射するが、多種のミサイルと比べて単発火力は低いが連続発射数と重量、弾数に優れている。

●吸着機雷
放物線を描いて射出され、地面や壁などに吸着し触れると爆発する。
罠や足止めとしての役割の他、中には砲撃のように使う者もいる。


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第2章 Not found
第11話 濁り水



天城の死から数日後、久々の海域奪還作戦が行われる。


第2章、始まります。


天城の死から数日後、重桜各地の基地に通達が送られる。

 

銀治「なるほど、久々の海域奪還作戦か。まあ、少しでも多く奪還せねばならんからな」

 

そして銀治は会議室に時雨と三笠を呼ぶ。

 

銀治「2人とも、今回の儂らの役割は中枢基地の海域にて警備にあたることだ」

 

三笠「承知した!」

 

時雨「奪還に参加できないのは物足りないけれど、警備も必要だから仕方ないわね」

 

銀治「作戦開始は3日後だ。準備しておけよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3日後、海域を奪還するためにKAN-SENによる艦隊が3つと量産型による艦隊が6つ出撃していく。

 

中枢基地の艦隊の赤城、加賀、土佐、高雄、愛宕、『綾波』。

 

舞鶴艦隊の『翔鶴』、『瑞鶴』、『龍驤』、『古鷹』、『川内』、『神通』。

 

呉艦隊の『祥鳳』、『金剛』、『榛名』、『暁』、『陽炎』、『吹雪』。

 

それぞれが陣形を組み、別々の方向から海域へと突入する。

突入すると早速セイレーンの量産型が多数現れ、交戦する。

 

赤城「こちら赤城、戦線を突破しましたわ!」

 

翔鶴《こちら翔鶴、こちらも突破したわ!》

 

祥鳳《こちら祥鳳、こっちも突破したで!···けどなんだか数が少ないんや》

 

加賀「数が少ない?こちらは他の海域もあまり変わらないが、警戒しておこう」

 

瑞鶴《こっちも警戒しておくわ!》

 

そして進んでいくと呉艦隊の方に動きがある。

 

祥鳳《なんやあれ?···撃ってきたで!》

 

赤城「どうしましたの!?」

 

榛名《量産型じゃない!『スカベンジャー』よ!黄色のやつ!》

 

加賀「人型のセイレーンか···」

 

翔鶴《こちらも人型のセイレーンを確認しました···こっちは『チェイサー』がいます···》

 

各艦隊が人型のセイレーンと交戦し、赤城達も人型のセイレーンと交戦し始める。

 

 

 

 

 

 

 

赤城達は艦隊を全滅させ、海域の中枢へと向かう。するとそこには確認されていないセイレーンがいた。

そのセイレーンはマンタのような大型の艤装を装備しており、不敵な笑みを浮かべていた。

 

セイレーン「ハァイ、私は『テスター』。あなた達の力、テストさせてもらうわ」

 

テスターは艤装からレーザーを連射し、攻撃してくる。赤城達はそれを避けつつ反撃していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、中枢基地の海域では三笠と時雨が白露や夕立、量産型と共にセイレーン艦隊を迎撃していた。

 

時雨「もうっ!数が多いわねっ!」

 

白露「あれ?こんなにいたっけ?」

 

夕立「増援まできてるのだ!」

 

三笠「味方の艦隊が来るまで持ちこたえろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒロは不安そうにおどおどし、それを見た銀治はヒロの頭に手を置いて安心させようとする。

しかしヒロの不安は収まらず、駆け出した。

 

銀治「ヒロッ!」

 

銀治はヒロを追いかけるが、ヒロは保管庫へ向かいあるものを持ち出してくる。

 

銀治「長距離用の迫撃砲と海図···まさか」

 

ヒロは頷く。

 

銀治「まったくお前は···戦争に向かない性格なのに、そこら辺は理解してるな」

 

銀治は離れた場所にヒロと共に向かい、海図を広げてタブレットを見る。そのタブレットにはドローンの映像が映っており、それを海図を照らし合わせる。

ヒロはその映像と海図を見比べ、迫撃砲を発射する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時雨「このっ!」

 

時雨が相手をしている量産型セイレーンの砲身に迫撃砲の弾が直撃する。大したダメージではないものの、量産型はヒロのいる方向に砲口を向ける···が、その隙に時雨は量産型セイレーンを撃破する。

 

更に、夕立に立ちはだかるスカベンジャーⅠの艤装に迫撃砲の弾が命中する。

 

スカベンジャーⅠ「どこからっ!?」

 

三笠「甘いっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤城達が海域を奪還し帰還すると、三笠と時雨に正座させられているヒロと銀治がいた。

 

三笠「お主らの気持ちは理解できるし感謝はしておる。じゃがな···」

 

銀治「はい···はい···」

 

ヒロは顔はスルメのように萎れている。

 

赤城「えっと···これは?」

 

時雨「お帰りなさい!見てよこの2人!私達がピンチになったからって迫撃砲持ち出して援護してたのよ!まあそこまでは良いとして···すぐ近くに砲撃が着弾したのになお撃ち続けたのよ!」

 

加賀はスルメのように萎れたヒロの顔を見て吹き出す。

 

加賀「プッ、ヒロ···その顔···」

 

瑞鶴「まるでスルメね···」

 

時雨「そ·し·て···」

 

時雨と三笠の目は兵士にも向けられる。

 

三笠「お主らもお主らじゃ!なぜ2人を止めなかった!?止めようと思えば止められたじゃろ!?」

 

兵士「いや、流石にあの雰囲気の2人を止められは···」

 

瑞鶴「いや止めようよ···」

 

赤城「まあ、とりあえず無事で良かったですわ」

 

赤城はヒロを抱き締める。

 

赤城「さぁ、今夜は祝勝会にしますわよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

義人は海域奪還の報を受け、安堵していた。

 

義人「皆、戻ってこれたか···だが···」

 

義人の脳裏には天城の姿が浮かぶ。

 

義人「天城···」

 

義人の右手には、黒いキューブが握られていた···

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

第2章へと入りましたが、どうだったでしょうか?


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第12話 レッドアクシズ


ユニオンの研究機関からある連絡を受けた冴は銀治達を連れてユニオンへ向かう。

そして···


冴「あなたから連絡なんて久しぶりね」

 

男性《まあ、忙しかったから···》

 

冴「あなたの忙しさは別に関係ないけど、手短にお願い。これから釣りに行くところだから」

 

冴が目を向けると、そこには開いたドアからヒロが頭に『饅頭』と呼ばれるヒヨコのような生物を乗せながら覗いていた。

 

男性《解った···こちらの研究機関が『空のキューブ』を発見したんだけど、そこから先が進んでなくて···それで君に頼もうと思ったんだ》

 

冴「···それ結構な問題ね。解ったわ、明日そっちに出港するから場所を教えなさい」

 

 

 

 

 

 

翌日、冴は銀治、ヒロ、三笠を連れて依然視察に行ったユニオンの軍港に向かうことになった。

 

銀治「にしても空のキューブってなんなんだ?」

 

冴「詳細は見てからじゃないと正確な事は言えないわ」

 

三笠「しかし、こんな小さな引っ越しと同等な準備をしなくても···」

 

冴「いい?今回のは長丁場になる案件よ。なら引っ越しレベルの荷物持ってかないと後々後悔するわよ!」

 

冴が目を向けるとヒロは大量の荷物をリュックとボストンバッグ、キャリーバッグに積めて立っていた。

 

冴「ほら、行くわよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユニオンの軍港に着き、荷物を置いたらすぐに研究施設へと向かう。

 

冴「久しぶりね、『ロイ』」

 

ロイ「久しぶり」

 

冴「ロイはユニオンの主任研究員で、私の昔からの友達よ···で、その空のキューブってのはどこ?」

 

ロイ「君は相変わらず行動力の塊だね···」

 

冴「さっさとしなさい!」

 

 

 

ロイが持ってきたのは2つのキューブだった。しかし通常は青い光を放つキューブだが、その2つのキューブは光が無く、灰色になっている。

 

ロイ「通常のキューブは中にKAN-SENの情報や魂が入っていて、それで輝いているらしいんだけど、このキューブは何もない、空っぽなんだ。しかもここにある2つ以外で見つかってるのはロイヤルの1つだけなんだ」

 

冴「なるほど···確かに建造とかで使えば同一のKAN-SENも入手できる···けどやっぱり何もないわね···ヒロ」

 

冴はヒロに空のキューブを手渡す。ヒロは空のキューブをじっと見つめる。

 

冴「何か感じる?」

 

ヒロは首を横に振る。

 

ロイ「ヒロ君って、何か感じたりできるのかい?」

 

冴「いいえ、今のはなんとなくやらせてみただけ···まあ、ヒロにキューブを渡すとずっと眺めてるからってのもあるけど」

 

そして、とりあえずはこのまま冴達ととロイで研究を進める事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鉄血の会議室にて···

 

ビスマルク「なるほど、毒をもって毒を制す···ということね?」

 

義人「ああ···」

 

ビスマルク「なら···次に会う時は、きっとヴァルハラね」

 

義人「···」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冴達の研究が始まってから数日後、銀治と三笠に連絡が入る。

 

銀治「なんだ···義人、これはどういう事だ?」

 

三笠「こんなもの···できるわけがなかろう!」

 

銀治「義人···気でも狂ったか!?」

 

 

 

 

 

 

 

その日、ヒロは軍港の出店を見て回っていた。そのとなりにはネバダがいた。

実は今回の1件ではヒロはあまりやることがなかったので休憩時間に視察では見てなかった場所を案内してもらっていたのだ。

 

ネバダ「アンタは本当にここのビーフジャーキーが好きだねぇ」

 

ヒロはニコニコしながらビーフジャーキーを食べているとスマホが鳴り、冴からの連絡が来る。

 

冴《ちょっと頼みがあるから戻ってきて》

 

ヒロが冴のいる研究室に戻る。

 

冴「ねぇ、そういえばヒロって設計図持ってたわよね?」

 

ヒロは頷く。

 

冴「もしかしたら、この空のキューブに使えるかもしれないから、持ってきてくれない?」

 

ヒロは頷き、宿舎に向かう。そして設計図の入った箱を抱えて研究室に戻っていく···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして···軍港は突如奇襲を受ける。ヒロは研究室に向かう速度を上げ、ユニオンのKAN-SEN達は迎撃に出る。

 

義人《我々はアズールレーンから脱退し、鉄血と共に『レッドアクシズ』を結成する。生温い戦いにはもう付き合えん···これは宣戦布告だ!》

 

銀治「義人、貴様!」

 

義人《先生、いや銀治···貴様らはこちらの命令を受けなかった裏切り者だ。ここで沈むがいい》

 

三笠「なぜじゃ···なぜじゃ!答えろ!」

 

2人のいる工廠にボルチモアがやってくる。

 

三笠「ボルチモア殿、これは···」

 

ボルチモア「解ってるさ。色々事情はあるだろう···共に迎撃に来てくれ!」

 

三笠「もちろんじゃ!」

 

銀治「頼むぞ!儂はヒロを探しに行く!」

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

遂にアズールレーンとレッドアクシズに分裂してしまいましたね。

●空のキューブ
光を放つこと無く、灰色になっているキューブ。建造だけでなく他の事にも使えず、また数も希少である。


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第13話 秘匿されし者


分裂したアズールレーンとレッドアクシズ。

ヒロに迫る危機。

そして···


ヒロは走り、冴のいる研究室に辿り着いた。爆撃の振動がある中、冴は僅かな思考の後、ヒロに空のキューブを渡す。

 

冴「ヒロ、今すぐにこれを持って逃げて!私は少ししたら追い付くから、すぐに走って!」

 

ヒロは戸惑っている。

 

冴「行きなさい!」

 

ヒロはヨタヨタと走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

軍港にいたKAN-SEN達が奇襲を仕掛けてきた重桜の艦隊と交戦している。

 

ネバダ「まったく!なんで裏切ったんだい!?」

 

赤城「あなた方には理解できませんわ!」

 

赤城は戦闘しつつ、加賀はしきりに周囲を見渡している。そして重桜の量産型の増援が到着したことでユニオン艦隊は更に劣勢となる。

 

三笠「こんなこと···ヒロが望むと思っているのか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒロはヨタヨタ走っているが、近くに爆撃が落ちたため振動で転んでしまう。

 

 

 

そして転んだ拍子に設計図のうちの2枚が箱から出てしまい、そこに空のキューブが落ちる。

 

 

 

するとそのキューブが眩い光を放ち、ヒロはその光に包まれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒロは霧の中の船の上に立っていた。

辺りを見渡すと、軍艦の上だということが解る。戸惑っていると、後ろから声をかけられる。

 

???「ここで何をしている?」

 

ヒロが振り向くと、そこにいたのは下半身が機械の馬となっている女性が右手に槍を携えて立っていた。

 

女性「貴様は···ヒロか?」

 

女性はヒロに近づき、顔を寄せる。

 

女性「ふむ、確かにヒロだな···しかし、この肉体を持ったのはどういう事だ?」

 

ヒロはなにがなんだか解らず、オロオロしている。

 

女性「自己紹介が遅れたな···私は『ケンタウルス』、お前が持っていた設計図だ」

 

ヒロは目を見開く。すると、遠くから声が聞こえてきた。

 

???「おーい!やっと見つけたぞこのやろう!」

 

1隻の軍艦が近づいてきて、その甲板に立っていた女性がジャンプして乗り込んでくる。

 

女性「なんか気配感じたから来てみたけどよ、ここってなんなんだ?···ってヒロじゃねぇか!紙じゃなくてこの肉体で会うのは初めてだな!オレは『憤怒(ふんど)』、よろしくな!」

 

ヒロは自身が持っていた設計図のKAN-SENが目の前に2人いることで驚いたが、すぐにあることが思い浮かぶ。そしてヒロは急いでメモ用紙に書き込み、2人に見せる。

 

『お願い助けて!』

 

『今、軍港が襲われてて、でも襲っているのは僕の友達なんだ!』

 

ケンタウルス「···と、いうことはKAN-SEN達が相手だと?」

 

憤怒「ということは···」

 

『でも、殺したりはしないでね!』

 

ケンタウルス「まあ、"(あるじ)の頼み"だ。善処しよう」

 

憤怒「難しいが···なるべく抑えるよ」

 

そして憤怒は自身の船に戻っていく。

 

ケンタウルス「では行くぞ!」

 

船は進み、突如現れた光の中に突き進んでいった···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

軍港にいたKAN-SEN達は帰還したエンタープライズらの支援があったものの、重桜艦隊の物量と特殊な戦術により劣勢だった。

 

しかし突如量産型『比叡』の横から何かが高速で突撃し、槍を突き刺し撃破する。

 

更に、三笠の横を別の何かが高速ですり抜け、前方にいたKAN-SEN達に突撃し、次々と砲撃を与えていく。

 

赤城「今のはっ!?」

 

綾波「は、速すぎるのです···!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケンタウルス「私は『新型秘匿重巡"ケンタウルス"』!逃げも隠れもせん、私の首をとりたい者は誰だ!」

 

憤怒「オレは『特型秘匿駆逐艦"憤怒"』だ!あ"あ"イライラする!てめぇらで鬱憤晴らさせろ!」

 

片や下半身が機械の馬で槍を携えており···

片や黒い服を纒い、両手に2連装砲を持っている···

 

三笠「お、お主らは···?」

 

ケンタウルス「主からの命により、奴らを退けよう···行くぞ憤怒!」

 

憤怒「おう!」

 

2人の力は圧倒的であり、量産型は次々と撃破されていき、KAN-SEN達も大破していく者が次々と出てくる。

ケンタウルスはその槍と突撃力により、憤怒は圧倒的なスピードにより、先程まで劣勢だった状況を覆す。

 

そしてケンタウルスは加賀に迫り、槍での一撃を加賀は間一髪で回避する。

 

ケンタウルス「ほう?避けたか···しかしお前は私と同じ匂いがするな···強者を求める匂いが!」

 

一方憤怒は綾波に肉薄し、腹を蹴り飛ばす。

 

憤怒「オラオラそんなもんかぁ!?」

 

その憤怒に赤城の艦載機が迫るが、回転しながら砲撃し撃ち落とす。

 

赤城「クッ!撤退ですわ!」

 

重桜艦隊が撤退していく中、赤城は軍港に立ち、こちらを疑問の表情で見ているヒロを見つける。

 

赤城「ヒロ···次こそは···!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

撤退していく重桜艦隊を眺めながら、ヒロは今にも泣き出しそうな顔をしていた···

 

銀治「ヒロ···」

 

すると、ヒロの足に何かが当たる。足下を見ると加賀の青い式神が落ちており、拾い上げると折り畳まれた紙があることに気付く。

 

そして、ケンタウルスと憤怒を遠くからオブザーバーは見ていた···

 

オブザーバー「記録に無いKAN-SEN···ますますこの世界が解らなくなってきたわ」

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

セイレーン達ですら把握していない謎のKAN-SEN···彼女らは一体···?

ケンタウルスと憤怒の情報は次回出します!


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第14話 主従

突如現れ、重桜艦隊を退けた2人のKAN-SEN···

2人は味方だと言うが···


重桜艦隊を退けたケンタウルスと憤怒はヒロの元へ戻る。

 

ケンタウルス「任務完了だ」

 

憤怒「ちゃんと殺しはしなかったぜ!」

 

ヒロはホッとしてはいるが、まだ不安が残っているようだ。そこに三笠が近づく。

 

三笠「お主らが来なければどうなっていたことか···礼を言う」

 

ケンタウルス「私は、主の命を全うしただけだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ヒロは擦りむいた膝に絆創膏を張ってもらい、KAN-SEN達の一部は瓦礫の撤去などの手伝いをしていたが、ここでもケンタウルスと憤怒の力が発揮されていた。

 

憤怒「オラオラオラー!」

 

憤怒は荷物などをそのスピードを活かして次々と運び···

 

ケンタウルス「私が持とう」

 

ケンタウルスは怪我をしているKAN-SENの荷物や多くの瓦礫を次々と運んでいる。

 

そしてある程度落ち着いてきた頃、ケンタウルスと憤怒の処遇の話になり、ユニオン関係者達からはユニオン管轄で良いのではとの意見が多数挙がり、そのまま決定しようとしたのだが···

 

 

 

 

 

 

 

ケンタウルス「貴様ら、もう一度言ってみろ。次は殺す」

 

憤怒「オイ!そこの先輩以外もう皆殺しにしようぜ!?」

 

ケンタウルスは机を蹴り飛ばし、倒れた役人の顔の横に槍を突き刺しており、役人の頬からは血が流れている。

一方憤怒は両手の主砲を放ち、右手の主砲は役人の護衛についていた『テネシー』というKAN-SENの顔の横に、左手の主砲はもう1人の役人の頭上をそれぞれ撃ち抜き、壁は崩壊していた。

 

ケンタウルス「私達は主である鴉間 ヒロと私達を拾った鴉間 銀治の(めい)以外は聞き入れるつもりはない」

 

憤怒「そういうことだ。わかったら気が変わる前に失せろ!」

 

そういうと役人達は逃げていった。2人は呆然とするテネシーを置いてヒロの元へと歩いていった。

その途中で銀治と鉢合わせし、何事かを聞かれる。

 

ケンタウルス「なに、私達をユニオンの管轄だと勝手に決めようとしていたからな。ほんの少し脅しただけだ」

 

憤怒「あ"あ"イライラする!」

 

銀治「お前達···」

 

ケンタウルス「私達はユニオンの管轄ではなく、あなたとヒロの指揮下にあります」

 

銀治「なるほどな···」

 

憤怒「あ、でも一応優先度はヒロの方が上だからそこは勘違いすんなよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケンタウルスと憤怒がヒロのいる部屋に着くとヒロは三笠と今後についての事を夏月とエンタープライズから聞いていた。

 

夏月「あ、あなた方が皆を助けてくれたKAN-SENですね?ありがとうございます!」

 

エンタープライズ「改めて礼を言わせてくれ。ありがとう!」

 

ケンタウルス「礼はいい。それよりもヒロの今後はどうなるのだ?」

 

夏月「はい。レッドアクシズの事もあるので、しばらくはここにいてもらうことになります。ただ、できるだけ自由は確保します」

 

ヒロはそれにニコニコしている。

 

ケンタウルス「なるほど···ヒロが良ければそれで良い。それと三笠···」

 

三笠「なんじゃ?」

 

ケンタウルス「私と憤怒は攻めに特化している。だからヒロの護衛は頼んだ」

 

三笠「なるほど···承知した!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、ヒロは加賀の式神につけられていた紙を開くと、それは手紙だった。

 

『ヒロへ

 

こちらからの奇襲攻撃で戸惑っているだろうが、それは本当にすまない。

現在、重桜では義人が今や実権を握っている状況だ。

長門様は軟禁され、象徴のための傀儡と化している。

姉様は義人に誑かされ、危険な状態だ。次に会う時は警戒しておけ。時雨は重桜の者として責務を果たすと言っているが、おそらく隙を見てそちらに合流しようとするだろう。

 

私は内部からどうにかできるよう動くが、姉様や大鳳もいる。できることは少ないだろうが、ある程度は留めてみせよう。

 

だがこちらはセイレーンと裏で手を結んでいる···これは重桜でもほとんど知らない事だ。だから決して油断するな。

 

最後に···義人は今、天城の事で狂っている状態だ。アズールレーンの者達と共に、奴を止めてくれ。

 

                     加賀より』

 

 

手紙を読んだヒロは唇を噛みしめ、窓から覗く月を見上げた。

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

2人は···というか秘匿KAN-SENは基本的に拾ってくれた銀治と所有者であるヒロの言うことしか聞きません。

●秘匿KAN-SEN
様々な理由で設計図のまま終わり、その後忘れ去られた艦船達。
だがそのどれもが建造されていれば当時の戦争の結果を変えていた可能性を持っている。
設計図は様々な所を旅していた銀治によって拾われ、その後はヒロが所有することとなる。

●新型秘匿重巡 ケンタウルス
ポニーテールの金髪で、白いボディースーツを着ており、下半身が機械の馬となっているKAN-SEN。
槍を主体としているが、背中に手持ち型の2連装砲を背負っており、頭部の艤装には機銃がつけられている。
性格は基本的に落ち着いているものの、常に高みを目指し、強者を求めている。また、ヒロに対しては忠誠を誓っている。

設計図に関してはその時点から燃料のコストの高さが問題視されており、性能は圧倒的だが長時間の戦闘は不可能であり、スピードと特殊な装甲を活かして艦首につけられた巨大な"槍"で敵艦に突撃し、貫くという戦術が有効なのか疑問視された。しかし開発者以外はケンタウルスの事を認めず、開発は打ち切られた。
そのため、彼女が強者を求めるのは、自身を認めてくれた開発者とヒロにその力を見せつけたいからなのかもしれない。

●特型秘匿駆逐艦 憤怒
ベリーショートの茶髪で黒いセーラー服を着ているKAN-SEN。
主な武装は両手の2連装砲と太股の魚雷である。
性格は荒く、基本的に沸点が低いがヒロの為に怒ることが多く、ヒロに対して怒ることは滅多に無い。

設計図に関しては最速を求めて作られているが、装甲は特殊なものとなっている。
設計図の時点から予想される速力はとてつもないものであるが、同時に乗組員にはそれを制御するために必要な技量もかなりのものであり、建造は中々されなかった。
憤怒の怒りはその『建造するかしないか』が何度も繰り返されたものと推測されるが、本当のところは不明である。


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第15話 休息

重桜艦隊からの奇襲から数日、ユニオンの軍港にはしばしの休息が訪れる···


重桜艦隊からの奇襲から数日、基地の修復の多くは終わり、ヒロ達も休息をとることにした。

 

ユニオンのKAN-SENの1人である『オクラホマ』は歩いているケンタウルスを見つけ、話しかける。

 

オクラホマ「あっ!ケンタウルスさん!」

 

ケンタウルス「ん?あの時のKAN-SENか」

 

オクラホマ「この前は荷物持ってくれてありがとう!」

 

ケンタウルス「気にするな。怪我人に持たせるより、私が持った方が早く済んだからやっただけだ」

 

オクラホマ「でもありがとう!」

 

するとケンタウルスは気配を感じて振り向く。そこにはユニオンのKAN-SENの『ラフィー』がいた。

 

ラフィー「···」

 

ケンタウルス「どうした?」

 

ラフィー「ケンタウルスの足、カッコいい···触っても良い?」

 

ケンタウルス「···少しだけなら良いぞ」

 

ラフィー「やった」

 

ラフィーは眠たそうな顔でケンタウルスの足に触れ、まじまじと眺める。

 

ラフィー「尻尾、フサフサしてる」

 

ケンタウルス「そこは触るな···」

 

ラフィーはひとしきりケンタウルスの足を触り、眺めた後、お礼を言ってどこかへ去っていった。

 

オクラホマ「あっ!そういえばケンタウルスさんて何してたんですか?」

 

ケンタウルス「ヒロから少し色々見てくるよう頼まれてな···おそらく、お前や先程のラフィーのように交流してもらいたいのだろうが···」

 

オクラホマ「あれ?だったら憤怒ちゃんは···」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケンタウルスとオクラホマが話している頃、憤怒はというと···

 

憤怒「クソッ!ヒロこのやろう!」

 

ヒロはニンマリと得意気な笑みを浮かべている。

 

夏月「ヒロ···お前ちょっとエグいぞ···」

 

クリーブランド「ちょっ!ヒロ、待っ···」

 

テレビの画面には倒れる2人のキャラクターとガッツポーズする2人のキャラがいた。

4人は休暇を利用して対戦ゲームで人間陣営とKAN-SEN陣営で遊んでいたのだが、ヒロはこのゲームの上級者であり、ヒロによって憤怒はハメ殺しにされ、その後はクリーブランドに遠距離攻撃を絶妙なタイミングで撃ち込んでいた。

そしてヒロはメモ用紙にこう書いた。

 

『これならKAN-SENにも勝てる』

 

クリーブランド「ヒロは本当にこのゲーム強いね」

 

冴「ヒロの腕は大会に出れるレベルよ」

 

憤怒「参ったぜ···」

 

夏月「俺とタイマンした時はハメ殺し封印した代わりにカウンター決めまくられたからな···」

 

憤怒&クリーブランド「「うわぁ···」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日、軍港の敷地内の海岸に行くこととなり、思い思いのやり方で楽しむ。

そして、ヒロと銀治が海岸に着くと多くのKAN-SENは驚愕する。

 

ヒロは体に多くの火傷の痕があり、銀治は戦場での傷痕があるものの、両方とも洗練された筋肉を持っている。

 

憤怒と三笠は少し遅れてきたが、ケンタウルスはもう1人のKAN-SENと共に軽食を持ってくるようだ。

そしてKAN-SEN達によるビーチバレーが始まるのだが、その途中でケンタウルスとネバダが軽食を持ってやって来たその時、憤怒はミスをしてボールは明後日の方向へ飛んでいき、ケンタウルスの顔面に直撃する。

 

憤怒&他のKAN-SEN達「「「あ···」」」

 

ケンタウルス「クックックッ···そうか、そんなに私に蹴られたいか···そうかそうか···憤怒貴様ぁぁぁぁぁぁ!」

 

憤怒「うああああっ!」

 

ケンタウルスと憤怒は同時に走り出す。しかしお互い艤装を展開していない状態のため、人体のスピードと馬体のスピードでは圧倒的な差がある。

 

ケンタウルス「待てぇぇぇ!憤怒ぉぉぉ!」

 

憤怒「来~る~な~!」

 

しかしものの数秒で憤怒は捕まり、空中に放り投げられ、ケンタウルスは後ろを向く。憤怒が咄嗟に艤装を展開した瞬間、憤怒の腹にケンタウルスの後ろ蹴りが命中し、憤怒は海に落ちる。

 

憤怒「グフゥッ·····お、オレがKAN-SENで良かった···」

 

ケンタウルス「艤装を展開していなければこちらのものだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ある海域の海上では軍艦の甲板の上で情報交換が行われていた。

 

オイゲン「なるほど、未知のKAN-SENが2人···何者かしら?」

 

赤城「こちらも詳しいことは解っていませんわ···ただ、圧倒的な強さを持つことだけは確かですわ」

 

オイゲン「これは一刻も早く対策を練らなきゃね···ビスマルクに伝えておくわ」

 

赤城「ええ···」

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回はそれぞれの休息の話でしたが、どうだったでしょうか?


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第16話 槍

しばしの休息の後、ケンタウルスと憤怒は海域の解放に乗り出す。しかしそれとは別件であることが···


ケンタウルスは1人海上を突き進んでいた。目の前にスカベンジャーⅠが現れるが、大きくジャンプして踏みつけ、顔を槍で貫く。

 

ケンタウルス「こちらケンタウルス。第2次防衛線突破、これより海域の中枢へと向かう」

 

夏月《了解!無理はするなよ!》

 

ケンタウルス「解っている」

 

そしてケンタウルスは海面を蹴り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間前──

 

夏月「海域を解放しようと思うんだが、協力してくれないか?」

 

夏月はケンタウルスと憤怒に海域解放への協力を頼んでいた。

 

ケンタウルス「主が良ければ協力しよう」

 

憤怒「オレもだ」

 

ヒロは2人の顔を交互に見てから、メモ用紙に書き込む。

 

『お願い!戻ってきて!』

 

ケンタウルス「なるほど、承知した。では作戦を聞こう」

 

夏月「ああ。まずはこの海図を見てくれ···ここには暗礁域と渦潮のある2つの場所が厄介なんだ。けどケンタウルスと憤怒の速力なら突破できると思う。そこで、この場所を2人で突破してもらい、混乱に乗じてエンタープライズ達の艦隊が攻め込む。そして、それとは別に動く別動隊はこの場所から中枢へと乗り込む···って作戦だ」

 

ケンタウルス「悪くない」

 

憤怒「よし!暴れてやるぜ!」

 

三笠「我も久々に出陣できるな!」

 

こうして、KAN-SEN達は出撃していったのだ···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分前──

 

ケンタウルスと憤怒の2人はセイレーン艦隊を薙ぎ払うように進撃していくが、味方KAN-SENからの通信が入る。

 

ネバダ《こちらネバダ!奴らの攻撃が思ったよりも激しくてね!誰か救援を頼む!》

 

通信を聞いた2人は顔を見合わせる。

 

憤怒「···オレが行く。オレの速力だと間に合うはずだ」

 

ケンタウルス「ではこちらは任せろ」

 

憤怒「おう!しくじったらぶっ潰すからな!」

 

ケンタウルス「そっちこそ」

 

こうしてケンタウルスと憤怒は別々の方向に駆け出した。そして憤怒は道中のセイレーンを撃ち抜きながら突き進む。

 

憤怒「どけどけぇ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現在、憤怒はネバダの艦隊の元へと辿り着き、セイレーン艦隊の中に突撃し、セイレーン艦隊を引っ掻き回す。

 

ネバダ「憤怒かい!助かるよ!」

 

憤怒「中破してる奴は今のうちに下がれ!」

 

そしてセイレーン艦隊を殲滅すると、ネバダは中破したKAN-SEN達を連れて撤退した。

 

夏月《憤怒、君は···》

 

憤怒「オレはまだノーダメだ!あいつらの代わりにオレがここを引き受ける!」

 

そう言うと憤怒はネバダ達が進むはずだった方向へと進攻する。

 

 

 

 

 

 

 

その頃、エンタープライズの艦隊は海域の中枢へ入った。するとすぐに大量のセイレーン艦隊が攻撃してくる。

 

エンタープライズ「こちらエンタープライズ、エンゲージ!」

 

エンタープライズは艦載機を発艦させ、セイレーン艦隊と交戦を開始する。

 

 

 

 

 

そしてケンタウルスはというと···

 

 

推奨BGM『Silent line Ⅲ』(ACSLより)

 

 

テスター「あなた···何者?」

 

ケンタウルス「私は新型秘匿重巡、ケンタウルス。主と高みへの道の為に···死んでもらう」

 

日が沈み始め、夕焼けが照らし始める中、セイレーン艦隊や人型のセイレーン達が現れる。

 

テスター「行きなさい!」

 

セイレーン艦隊が砲撃を始めるが、ケンタウルスは軽やかに避け、背中の2連装砲を手に取り、砲撃しながら突撃する。軍艦のセイレーンには艦橋に向けて砲撃し、人型には頭部に向けて砲撃していくが、すれ違いざまに槍で貫いたりしていく。

そして前方に立ち塞がった『Bishop』に飛び乗り、艦橋に槍を突き刺し、引き抜くとケンタウルスは辺りを一瞥し、不敵に微笑む。

 

テスター「想像以上ね···」

 

ケンタウルスは一斉に砲撃されるが再び回避し、その速力を活かして突き進む。

『Queen』から発艦した艦載機の爆撃を避けつつ撃ち落としていくが、足下に魚雷が迫る。

 

ケンタウルス「来ると思ったぞ」

 

ケンタウルスは少しジャンプするだけで回避し、前方のPawnに槍を突き刺す。

更に人型のセイレーンであるスマッシャーⅠと『ナビゲーターⅠ』による挟み撃ちに遭うが前方のスマッシャーⅠに向けて2連装砲を投げつけ、スマッシャーⅠはそれを撃ち抜く。しかしその爆煙の中からケンタウルスは槍でスマッシャーⅠの頭部を貫く。そしてスマッシャーⅠの遺骸を後ろに向けて自身の盾となるように放り投げる。

そしてナビゲーターⅠは遺骸を躊躇いなく撃ち抜くが、斜め前方から槍で艤装ごと腹部を貫かれる。

 

テスター「これだけの数を相手に···」

 

ケンタウルス「次は貴様だ···」

 

ケンタウルスは血で濡れた槍をテスターに向ける。

 

テスター「ここは引くわ···」

 

周囲に霧が立ち込め、テスターの反応が消える。そして霧が消えると、辺りは静かになっていた。

 

ケンタウルス「···こちらケンタウルス。周囲に敵影無し、海域の奪還に成功した」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰還したKAN-SEN達をヒロは出迎え、いつものように怪我を心配し、確認する。

そしてその日は祝勝会の準備のためにヒロは軍港の敷地内を奔走する。そしてヒロはロイと共に祝勝会に必要な物を運んび、その過程で門の近くを通りかかる。

 

ロイ「なんだか騒がしいな···」

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

秘匿KAN-SEN2人の初の海域奪還作戦で、ケンタウルスがメインとなりましたが、どうだったでしょうか?

●ケンタウルスのスキル
『強者を求めし槍』(攻撃スキル)
戦闘開始時と20秒毎に槍での突撃攻撃を行う(ダメージはスキルレベルによる)。

『馬体』(防御スキル)
10秒毎に15%(MAX80%)の確率で魚雷を15秒間必ず回避する。

『秘匿されし者·Greed』(攻撃スキル)
"強者を求めし槍"による攻撃の命中時、10%(MAX50%)の確率で10秒間自身の火力、速力、回避をそれぞれ50%上昇させる。


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第17話 優しい世界であったなら


新しく海域を奪還することに成功し、ヒロは祝勝会のための準備に参加するが···


ヒロとロイが祝勝会に必要な物を運んでいる過程で門の近くを通りかかる。

すると門の外から騒ぐような声が良く聞き取れないものの聞こえてくる。

 

ロイ「なんだか騒がしいな···」

 

ヒロは首をかしげている。

 

ロイ「早めに通り過ぎよう」

 

ヒロは頷いてロイと共に足を早める。すると、声の届く範囲に来ると···

 

男性「黒人差別だー!」

 

女性「KAN-SENとその関係者は黒人を差別しているー!」

 

ロイ「なんだ?」

 

ヒロはなんの事か解らずキョトンとしている。するとヒロの頭に投げられた卵が当たり、ヒロの顔に割れた卵の中身が流れ落ちる。

 

ロイ「ヒロ君!大丈夫かい!?」

 

ロイが目を向けると、どうやらデモが行われているようで、ペットボトルや空き缶、卵を投げつける人もいる。

ヒロは顔を拭いながらデモ隊の方を見る。すると再び卵がヒロのいる方向に投げられ、今度はヒロの顔面に当たる。

ヒロは顔を拭うことすら忘れ、呆然としている。ロイは急いでヒロを建物の中に連れ込む。するとちょうど三笠とボルチモアと鉢合わせる。

 

三笠「ヒロ!どうしたのだ!?」

 

ボルチモア「まさか外の騒ぎと···」

 

ロイ「三笠さん!僕はヒロ君を医務室に運ぶから、他の皆に伝えてくれ!」

 

三笠「承知した!」

 

ボルチモア「私は外を見てくる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後デモ隊は鎮圧され、軍港に所属している兵士達と一部のKAN-SENが門の周りを掃除している。

そしてヒロはというと、医務室のベッドで膝を抱えており、その顔は困惑に染まっていた。銀治達に「気にするな」と言われたものの、どうしてもヒロは気になってしまっていた。

 

なぜ、どこが差別をしているのか?なぜ、あのようなデモを起こしたのか?ヒロには理解できずにいた···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、軍港にロイヤルからの来訪がある。来訪に来たのはエルデアだった。

 

エルデア「お前のラーメンを食えなくて残念だぞ」

 

銀治「仕方ないだろ···」

 

エルデア「まあ、そこは理解している」

 

夏月「あの、今回はどのような要件で?」

 

エルデア「主に2つだ。1つは新勢力の件でもう1つは···ヒロと直接話をしに来た」

 

夏月「新勢力?」

 

銀治「とりあえず、中で話そう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エルデア「新勢力というのは『アイリス』と『サディア』の2つの勢力だ。アイリスはアズールレーン側、サディアはレッドアクシズ側でそれぞれ名乗りを上げたようだ」

 

夏月「戦争が···また長引くって事かよ···」

 

銀治「まったくだ···儂らは内輪揉めしてる場合じゃないだろうに···」

 

エルデア「気持ちは解るが、単純な問題ではない···銀治、重桜との連絡は取れているのか?」

 

銀治「試してみたが、まったく反応が無い。義人、本当に何があった···」

 

エルデア「ロイヤルではアイリスをアズールレーンの一員として迎える方針だ。夏月はどう思う?」

 

夏月「俺は賛成です。争ってるのは別として、戦力は必要ですから」

 

エルデア「なるほどな···さて、ではそろそろヒロと話をしてこよう」

 

会議室から出ると、エルデアのお供として着いてきていたKAN-SEN『キュラソー』が待っていた。

 

エルデア「ヒロとは2人で話したい···なに、心配はいらない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エルデアとヒロは海と空がよく見えるバルコニーに用意された椅子に座っていた。

 

エルデア「こうして話すのは初めてだな···ヒロ」

 

ヒロは頷く。

 

エルデア「まず、お前にはこの世界がどう見える?それを聞かせてくれ」

 

ヒロはメモ用紙に返答を書き込む。

 

『今までは話し合って手を取り合えば争いは無くなると思っていました。けど、この前のデモ隊の言ってたことが頭にあって、もうなにがなんなのかわからなくなってます』

 

エルデア「なるほどな···確かに、話し合い、手を取り合おうというのは理想だ。その考えは大切だ···だが、アズールレーンとレッドアクシズの分裂のように、そう上手くいくものではないのだ」

 

ヒロは少しうつむく。

 

エルデア「だが重桜に関しては、視察に来たお前達の様子を思い浮かべると、とても良いところだと思える。儂が生きている間にあの桜を見に行きたいものだ」

 

エルデアは少し間をおく。

 

エルデア「様々な事情があるだろう···それに、デモの件も聞いている···」

 

エルデアはヒロの頭に優しく手を置き、優しい笑みを浮かべる。

 

エルデア「この世界がもっと優しい世界であったなら、戦争は起きず、皆が楽しく笑顔でいれただろう···だが残念なことに、この世界はお前が思うほど優しくはない···」

 

ヒロはエルデアを見つめる。

 

エルデア「だからこそ、お前の"優しい心"はこの世界に必要なのだ」

 

そう言うとエルデアは置いていた小さめのアタッシュケースをヒロに手渡す。

 

エルデア「開けてみろ」

 

ヒロがおそるおそるアタッシュケースを開くと、中には空のキューブが"2個入っていた"。

 

エルデア「1つは以前から見つかっていたものだ。もう1つは遠征に行ったKAN-SENが見つけたものだ」

 

ヒロはエルデアを見る。

 

エルデア「それは2つともお前に渡そう。秘匿KAN-SENが設計図から出現したということは、これはこちらが持っているより。設計図を持つお前が持つべきだ」

 

エルデアは海と空を見る。

 

エルデア「ヒロ···ここは良い景色だ。海や空は戦時中だというのに美しく、今吹いている風は心地よい···」

 

ヒロも海と空を見る。するとエルデアは再びヒロに顔を向ける。

 

エルデア「私はもう長くはない···だからこそ、私は己の立場より"未来"を選んだのだ」

 

エルデアはヒロに手を差し出す。そして、ヒロとエルデアは握手を交わす。

 

 

 

 

 

 

 

そして、この日から数日後···エルデアは暗殺される事となる。

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

アイリスとサディアが参戦したと同時に、ヒロはエルデアから空のキューブを託されましたね。
さてこれらがどう関わってくるのでしょうか?


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第18話 離反


ヒロに空のキューブを渡したエルデアの辿る道とは···

そしてヒロは···


エルデアは軍港から戻る途中、空を見上げながら思った。

 

エルデア(7枚の設計図···か。まるで"7つの大罪"のようだな)

 

そしてエルデアは帰還後、空のキューブの件で議会に呼び出される。

 

議員A「貴様、自分が何をやったのか解っているのか?」

 

エルデア「儂が理解していないとでも?」

 

議員B「貴様ともあろう者が···貴様は国益を大きく損なわせたのだぞ!」

 

議員C「あれを解析できれば、我々はより先へ進むことができたのだぞ?」

 

エルデア「国益···か。儂は短絡的な目先の利益ではなく、長期的に見た未来を選んだのだがな」

 

議員D「貴様!」

 

議長「エルデア···今日限りで、貴様の指揮権を剥奪する」

 

エルデア「それは覚悟していた。荷物を纏めたら出て行こう」

 

議長「最後に、1つだけ聞かせてくれ·····貴様が空のキューブを持ち出した理由はなんだ?」

 

エルデア「未来のために、持つべき者へと託すためだ」

 

議長「そうか···」

 

そしてエルデアが会議室から出た瞬間···サイレンサー付きの銃特有の銃声が鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エルデアの指揮下にあったKAN-SEN達には葬儀を行う事は許されなかった。

 

エリザベス「私の最高の下僕がどれだけ貢献してきたか···」

 

エリザベスは怒りの表情を浮かべ、深呼吸をした後顔を上げる。

 

エリザベス「ベルファスト、皆を集めて」

 

ベルファスト「承知しました」

 

エリザベスは講堂にKAN-SEN達を集める。その目は、決意に満ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後···晴れた空の下、エルデアの小さく、そして粗末な墓の前にエリザベスを始めとするエルデア指揮下だったKAN-SEN達が整列していた。

 

エリザベス「貴公、エルデア·リーダスは、ロイヤルの為だけでなく、我々KAN-SENと世界の未来の為に尽力した事を、ここに表します」

 

エリザベスは墓に自らの手作りのロイヤルの最高位勲章を墓に取り付ける。

 

エリザベス「貴公に、あらゆる感謝を···黙祷」

 

エリザベス達が黙祷し、再び目を開ける。

 

エリザベス「そして···貴公は私達に言ってくれました···"大切な者のために力を振るえ"と···なので、私達はその言葉に従います」

 

エリザベスは振り向き、KAN-SEN達を見る。

 

エリザベス「ではこれより私達はロイヤルから離反し、私の転属先予定だったヒロの元へと向かうわ!」

 

ベルファスト「陛下、ロイヤルのKAN-SENによる追跡や妨害の可能性がありますが、いかがいたしましょう?」

 

エリザベス「立ち塞がるものは誰であろうと薙ぎ払うまでよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の午後、ヒロのスマホが鳴る。見るとメールにエリザベスから『今からそっちに行くから待ってなさい!』と連絡が入っている。すぐにヒロは夏月に報告し、夏月もヒロも事情がよく知らされていないが、とりあえずは受け入れの準備をする。

 

するとエリザベス達がやって来たが、様子がおかしいため、三笠とケンタウルスが出る。ヒロは心配そうに見つめている。

 

三笠「急にどうしたのじゃ?それに、この人数は···?」

 

ウォースパイト「···エルデアが死んだの」

 

三笠「エルデア殿が!?」

 

ウォースパイト「おそらく···暗殺」

 

ケンタウルス「···まさか、葬儀を行うことは許されなかったか?」

 

エリザベス達は頷く。

 

三笠「となると···もしやお主達!」

 

エリザベス「私達は、ロイヤルを見限ったの」

 

ケンタウルス「そういうことか···」

 

ベルファスト「陛下、後方からロイヤルのKAN-SENが向かってきています」

 

三笠「と、とりあえず中に入れ!」

 

ケンタウルス「さて···」

 

ケンタウルスが槍を構えた時、通信が入る。

 

???A《ここは私達の初陣とさせてくれないか?》

 

???B《それとも、ボク達を信じられないかい?》

 

ケンタウルス「···いや、ここは私は引こう」

 

入港し、基地の中に入ってくるエリザベス達。

 

エリザベス「久しぶりね!こんな形で会うことになるのは不本意だけれど···」

 

すると2人の横を異質な雰囲気の2人が通りすぎる。

 

エリザベス「あの2人は···?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒い6本腕の女性「ヒロ、誰よりも優位な勝利を捧げよう」

 

黒いダイバースーツを着た女性「全部終わらせて来るよ」

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

エルデアの死後、エリザベス達はロイヤルを見限りました。

そして最後の2人は···?

●7つの大罪
エルデアの思った通り、ヒロの持っている7枚の設計図は7つの大罪に例えられます。
ちなみにケンタウルスは『強欲(Greed)』、憤怒は『憤怒(Wrath)』となっています。

●憤怒のスキル
『最速の特型』(攻撃スキル)
戦闘開始時と20秒毎に15秒間自身の火力と回避を40%、速力を50%(MAX100%)それぞれ上昇させる。

『当ててみろよ』(防御スキル)
25秒毎に30%(MAX50%)の確率で10秒間全ての攻撃を必ず回避する。

『秘匿されし者·Wrath』(攻撃スキル)
"当ててみろよ"で回避した数だけ10秒間自身の火力と回避を3%(MAX5%)上昇させる。


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第19話 手段は選ばず


エリザベス達はロイヤルを見限り離反した。そして彼女らを連れ戻すための艦隊が迫る。

その艦隊に立ち塞がる2人のKAN-SENとは···?


某ロイヤル指揮官《こちら、ロイヤルの指揮官だ》

 

夏月「はい。こちら、ユニオンの指揮官です」

 

某ロイヤル指揮官《貴様らが迎え入れたのは脱走者だ。即刻引き渡せ》

 

夏月「それはできません···彼女らの指揮官はどうなりましたか?」

 

某ロイヤル指揮官《その程度の事に答えるとでも?貴様は犯罪者に手を貸すのか?》

 

夏月「彼女らは単なる脱走ではない可能性があります···エルデアさんの死の真相が明らかになるまでは、引き渡すことはできません」

 

某ロイヤル指揮官《なるほど、貴様らは犯罪者に手を貸すのか···では制圧させてもらう》

 

 

 

 

 

 

 

ロイヤルのKAN-SEN達が軍港に迫るが、立ち塞がる1人のKAN-SENがいた。脚部艤装のみ展開しており、黒いレインコートとゼブラカラーの脚部装甲を身に纏っているが、様子がおかしい。

 

謎のKAN-SEN「ここは誰1人も通さん···だが、押し通ると言うのならそれ相応の痛みを味わって貰おう」

 

ロイヤルのKAN-SEN A「相手は1人、負けるものか!」

 

謎のKAN-SEN「まったく···」

 

謎のKAN-SENは組んでいた腕を解く。すると黒い腕が6本あり、更によく見るとそれは機械の腕ということが解る。

そして、既に展開されている脚部以外の艤装を展開する。その艤装は巨大で、6本の腕全てに単装砲を持っている。

 

6本腕のKAN-SEN「では行くぞ」

 

そう言うと6本腕全てにKAN-SENは正面から突撃主砲や6本の腕を駆使してあらゆる方向へと砲撃する。そして6本の腕による連射力は高く、最も近くにいた駆逐艦のKAN-SENはすぐさま大破してしまう。

更に、そのまま陣形の中心に潜り込み、陣形を引っ掻き回す。

そして上の手に持った単装砲を解除し、近くの軽巡の顔を掴み、盾にする。

 

ロイヤルのKAN-SEN B「卑怯ね!」

 

6本腕のKAN-SEN「手段など選ばんさ」

 

すると次の瞬間、ロイヤルのKAN-SEN達の脚部艤装に水中からの魚雷が次々と命中する。

 

ロイヤルのKAN-SEN C「何っ!?」

 

6本腕のKAN-SEN「素晴らしいタイミングだ。評価するぞ」

 

???《そっちこそ"誘導"ありがとね》

 

水中には、黒いダイバースーツを纏ったKAN-SENがいた。

 

ロイヤルのKAN-SEN D「潜水艦!?」

 

ダイバースーツのKAN-SEN《余所見なんてしてて良いのかい?》

 

ロイヤル指揮官KAN-SEN達が慌てて6本腕のKAN-SENを見ると、顔を掴まれたロイヤルのKAN-SENは残りの4本の腕で両手足を掴まれ、身動きが取れなくなっていた。

 

6本腕のKAN-SEN「さぁ···選べ。こいつの命と引き換えにこのまま進撃するか、それともこいつの命を助けるか···」

 

6本腕のKAN-SENが腕に力を込めると、頭や手足からメキメキという音が鳴り、掴まれたロイヤルのKAN-SENは呻き声をあげる。

 

ダイバースーツのKAN-SEN《好きな方を選びなよ》

 

ロイヤルのKAN-SEN A「この···卑怯者が!」

 

ロイヤルのKAN-SEN B「彼女を···離してください」

 

6本腕のKAN-SEN「交渉成立だな」

 

引き渡されたロイヤルのKAN-SENの各部位にはくっきりと手形が残っており、震えていた。

2人のKAN-SENはロイヤルの艦隊が領海を離脱するまで監視し、その後帰還する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏月「ふ、2人は一体···」

 

2人は夏月をスルーし、ヒロ、元へと歩み寄る。

 

6本腕のKAN-SEN「ヒロ、初陣は勝ったぞ」

 

ダイバースーツのKAN-SEN「ボクも褒めてくれよ」

 

ヒロはメモ用紙に書き込んだものを見せる。

 

『勝ったのは嬉しいけれど、"阿修羅"はやりすぎ!"ウォーエンド"はまだ良いけども···それと自己紹介!』

 

阿修羅「む、それはすまなかった···」

 

ウォーエンド「まあ、仕方ないか···」

 

そして2人は皆の方を向く。

 

阿修羅「私は『長門型秘匿戦艦"阿修羅"』だ。これからよろしく頼む」

 

ウォーエンド「ボクは『新型秘匿潜水艦"ウォーエンド"』だよ。よろしくね」

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

ヒロが選んだ秘匿KAN-SENはこの2人でした。というか予想してた方はいますか?
···え?知ってた?

●長門型秘匿戦艦 阿修羅
バッサリと切った黒髪で、黒いレインコートとゼブラカラーの脚部装甲を身に纏い、腕は黒い機械腕となっているKAN-SEN。
主な武装は6本の腕にそれぞれ持つ単装砲と4つの3連装砲である。
性格は基本的に冷淡で、勝利するためならば手段を選ばず、負けた時は自己嫌悪になる。

設計図に関しては姉達や他の軍艦の敗北の歴史を塗り替えるために設計されたものの、『あれは敗北とはいえない(主に長門の轟沈理由)』と設計者が"阿修羅は不要"と判断し、設計図はゴミ箱に捨てられていた。
その事から、勝利に執着している面もある。

また、7つの大罪に例えると『嫉妬(Envy)』となる。

●新型秘匿潜水艦 ウォーエンド
金色の長髪で、黒いダイバースーツを身に纏っている。
武装は追尾型の魚雷であり、かなりの深海まで潜ることが可能。
性格は不信ぎみであるが、ヒロには絶大な信頼を寄せている。また、できることなら怠けていたい部分もある。

設計図に関しては『戦争を全ての船を沈めることによって終わらせる』という目的で設計されたものの、終戦後は様々な所に売買されたが、誰もこれらの事を信じなかった。
彼女の不信はそこから来ていると思われる。

また、7つの大罪に例えると『怠惰(Sloth)』となる。


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第20話 残酷で、優しくて···


新たに所属することとなったエリザベス達と阿修羅、ウォーエンド···
しかし、ユニオン上層部は頭を悩ませる。


エリザベス達はお茶会を開き、のんびりとしていた。ヒロものんびりと紅茶とスコーンを味わい、それぞれが談笑していた。

 

しかしその頃、ユニオン上層部は頭を悩ませていた···

 

役員A「ロイヤルからKAN-SENを返還するよう催促が来ているが···」

 

役員B「あのKAN-SEN達の言っていた『エルデア暗殺の可能性』を確かめるために第三者委員会に調査させたが、墓はもぬけの殻だったからな···」

 

役員C「やましいことがあるのでしょう···つまり···」

 

役員A「間違いなく、クロだな」

 

役員C「それに、秘匿KAN-SEN達に関しては···」

 

役員B「言うな。胃が痛くなる」

 

ユニオン上層部はそれはそれは深いため息をついたのだった···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後、再び基地の門の前でデモが行われていた。内容は以前も相変わらずで、ヒロは不安の表情を浮かべている。三笠と銀治はヒロを落ち着かせようとし、ケンタウルスと憤怒は今にも突撃しそうな雰囲気である。ウォーエンドはヒロに向けて変顔をし、ヒロを笑わせる。

しかし、阿修羅は部屋にはいなかった。ヒロ達が窓から外を覗くと阿修羅が門へと歩いていくのが見えた。

 

 

 

 

門ではボルチモアと『アーク·ロイヤル』が門兵と共にデモ隊の対処にあたっていたが、そこに阿修羅が現れ、トラックの上に立ってメガホンでデモ隊に呼び掛ける。

 

阿修羅「聞こえているか愚か者ども?」

 

男A「なんだと!?」

 

女A「この悪魔め!」

 

男B「お前達KAN-SENは差別の象徴だ!」

 

阿修羅「ほう?私達が悪魔だと?差別をしていると?···クックックック···アッハッハッハッハッ!」

 

男A「何がおかしい!?」

 

阿修羅「くだらん···実にくだらん」

 

阿修羅の目は酷く冷たく睨み付け、デモ隊は背筋がゾクリとし、息を飲む。

 

阿修羅「差別···か、貴様らはそう言ったな?」

 

阿修羅が声は低く冷たい。しかし剥き出しとなった"殺意"に、デモ隊は動きが止まっている。

その殺意に、その場を見ているボルチモアやアーク·ロイヤル、門兵ですら動きを止める。

 

阿修羅「黒人も白人も黄色も···肌の色は生まれつきのものなのは貴様らも知っているだろう?それは貴様らもKAN-SENも同じだ。しかしそれなのになぜ差別と主張する?」

 

デモ隊の中に誰も答えるものはいない···否、答えることができないのだ。

 

阿修羅「黒人差別だと貴様らがこのように生まれ持ったものに対して言っている時点で貴様らが差別していることに気づかないのか?貴様らは生まれ持ったものに差別だと言われた者の気持ちを考えたことはあるのか?」

 

殺意が強まり、デモ隊の一部は震えが止まらなくなる。

 

阿修羅「こんなことはほんの少し考えれば解ることだろう?だが、それでも貴様らは"差別だ"と声高に叫び、罵倒し、物を投げ···そして私の大切な者を傷つけた···だがそれらが貴様らの出した"答え"なのだろう?」

 

殺意が、より強まる。

 

阿修羅「私自身、実は生まれもって腕が無くてな···この腕は義手なのだよ」

 

そう言うと、阿修羅は自身の腕の2本を引きちぎり、デモ隊の前に投げ捨て、デモ隊からは悲鳴が上がる。

 

阿修羅「黙れ愚か者ども!」

 

再びデモ隊は動きが止まる。言葉に従ったのではない、恐怖が心を満たしているのだ。

 

阿修羅「貴様らの主張を認めてやろう···だが代わりに·····貴様ら全員の腕を貰おう」

 

阿修羅はトラックから飛び降ると同時に艤装を展開し、着地と同時に投げ捨てた自身の腕を踏み潰す。

デモ隊は逃げようとするが、恐怖に体が動かない。だが、心のどこかで思っていた···『そんな事はされないだろう』と。

 

···だが阿修羅はその思惑を察知し、デモ隊の1人の両腕を掴む。

 

阿修羅「まさか、『そんな事はされないだろう』などと思ってはいないだろうな?残念だが、私はフィクションでもなければ他のKAN-SEN達のように優しくはない!」

 

銀治がヒロの目を覆った瞬間、阿修羅はその人の理由腕を引きちぎる。

 

男C「ギャアアアアアアアアアアアアア!」

 

男Cは倒れ、傷口から血を噴き出しながら暴れる。

 

阿修羅「これがお前達の答えの結果だ!さぁ次は誰だ!?」

 

阿修羅が次の人へ歩み寄ろうとした瞬間、砲撃が阿修羅の艤装に命中する。

 

ボルチモア「それ以上はやめろ!」

 

阿修羅「ほう···こんな愚か者どもでも守りたいか?良いだろう。今回はここまでに留めておいてやろう」

 

阿修羅は再びデモ隊を向き、一言···

 

阿修羅「だが次は···止まらないぞ」

 

阿修羅は艤装を解除し、門をくぐっていく。そしてボルチモアとすれ違う時に一度止まる。

 

阿修羅「お前の正義感は称賛に値する。だが、あのようなどうしようもない愚か者どもにはあのような痛みが必要なのだということを、よく覚えておけ」

 

そして阿修羅は再び歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、ボルチモアは阿修羅の部屋を訪れる。すると、阿修羅は指を口元に当て『静かに』のジェスチャーをする。

阿修羅はヒロを守るように6本の腕で抱き抱えていた。そして阿修羅は小声で喋る。

 

阿修羅「怖い夢を見たと言って寝付けなかったようでな。少し強引だったがこうしたら、すぐに寝ついたよ」

 

眠っているヒロの寝顔を見る阿修羅の顔は、昼に見た顔ではなく、まるで聖母のような顔であった。

 

阿修羅「私は···ヒロを守りたいのだ。そのためならば、私は悪魔にでも化け物にでもなろう···それが、私の"答え"だ」

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回の話は賛否あると思いますが、阿修羅はヒロのためならばデモ隊を皆殺しにすることすら躊躇わない性格です。

●阿修羅のスキル
『勝利を望んだ敗者』(攻撃スキル)
25秒毎に自身の火力を50%(MAX100%)上昇させる。

『容赦なく、残酷に』(攻撃スキル)
砲撃の命中時、40%(MAX60%)の確率で扇状の特殊段幕を展開する(ダメージはスキルレベルによる)。

『秘匿されし者·Envy』(攻撃スキル)
前衛艦隊に編成可能になる。また、前衛艦隊に編成すると戦闘開始時と30秒毎に全方位への特殊段幕を展開する(ダメージはスキルレベルによる)。


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第21話 潜航

阿修羅によるデモ隊への1件のあった次の日の夜、軍港に忍び寄る影があった···


阿修羅のデモ隊への1件の次の日の夜、曇り空で月明かりがあまりない暗い海を6つの影が航行していた。そして、その影はロイヤルのKAN-SENだった。

 

ロイヤルKAN-SEN A「見えてきたわね···」

 

ロイヤルKAN-SEN B「裏切り者は処罰せねば!」

 

ロイヤルKAN-SEN C「闇に乗ずれば必ずや任務を成功させられます!」

 

???《へぇ、そうなんだ》

 

 

推奨BGM『Rise In Arms』(ACSLより)

 

 

ロイヤルKAN-SENの1人に水中からの魚雷が命中し、それを皮切りに次々と水中から魚雷が放たれる。

水中にはウォーエンドがおり、ロイヤルKAN-SEN達を見上げていた。

 

ウォーエンド《君達、"こういう任務"には慣れているようだけれど、生憎ボクにソナーは効かないんだ》

 

ロイヤルKAN-SEN B「潜水艦っ!?機雷を!」

 

駆逐艦のロイヤルKAN-SENが機雷を射出するが、ウォーエンドはスイスイかわしながら魚雷を撃ち込んでいく。

更に、1人のロイヤルKAN-SENの足を掴み、水中に引きずり込む。

 

ロイヤルKAN-SEN C「ガボォガボッ!」

 

そして深海まで一気に潜水し、ナイフで両足のアキレス腱を切断し、耳元で囁く。

 

ウォーエンド「さようなら、先輩」

 

ウォーエンドはある程度まで浮上し、再び攻撃を再開する。そして次に旗艦と思われるロイヤルKAN-SENを水中に引きずり込み、ナイフで切り刻む。そしてその後は再び魚雷での攻撃を行う。

 

ロイヤルKAN-SEN A「こんな···酷い···どうしてこんなことができるの!?」

 

ウォーエンド「闇討ちを仕掛けようとしてよく言えるね···」

 

ウォーエンドは機雷を射出している駆逐艦はロイヤルKAN-SENに魚雷を集中し、倒れたところを水中に引きずり込み、首をへし折る。

更にその後も水中に引きずり込んで撃破し、暗い海は不気味なほど静かになった。

 

 

 

 

 

ウォーエンド「あとは証拠の抹消···か。めんどくさい···」

 

ウォーエンドは深海へと潜ろうとするが、何かの気配に気付き、振り向く。

 

ウォーエンド「···セイレーンが何の用かな?」

 

ウォーエンドが呼び掛けた相手はオブザーバーだった。

 

オブザーバー「あなた達、秘匿KAN-SENの事が気になっちゃって」

 

ウォーエンド「ふうん···そんな事ならめんどくさいから帰るよ」

 

オブザーバー「あら、てっきり攻撃してくるのかと思ったけれど」

 

ウォーエンド「ボクは···いやボク達はあの子が笑っていられればそれで良い。そっちが手を出さないならこっちも手を出す必要はないからね」

 

オブザーバー「あらそう?」

 

ウォーエンド「そうだよ。それじゃ、次は会わないことを祈るよ」

 

そう言ってウォーエンドは深く潜水していく···

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、ウォーエンドはケンタウルスに話しかけられた。

 

ケンタウルス「ウォーエンド、昨日の夜何かあったか?」

 

ウォーエンド「ん?何もなかったよ···"何も"ね」

 

ケンタウルス「そうか···」

 

その時、ヒロがやって来てウォーエンドにメモ用紙を見せる。

 

『泳ぎ上手くなりたいから教えて』

 

ウォーエンド「いいよ。それじゃ、早速いこうか」

 

ウォーエンドは笑顔で答える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後、会議室に夏月、銀治、エリザベス、ウォースパイトの4人が集まる。

 

銀治「今回はどうした?」

 

夏月「···重桜の内部をどうにかして探ろうかと思ってる。そのために力を貸してくれ!」

 

銀治「重桜の内情か···儂は良いぞ」

 

エリザベス「確かに、重桜の内情は知る必要があるわね···なら、私のメイド隊から選抜したメンバーを行かせるわ」

 

夏月「ありがとう!脱出時の合流地点や陽動はこっちに任せてくれ」

 

銀治「合流地点にはヒロのKAN-SENの誰かもいさせよう」

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

さて、ちょっとキリが悪い感じはしますが、これにて第3章へと向かいます!

●ウォーエンドのスキル
『存在を憎みし不信』(攻撃スキル)
装備している魚雷が全てに追尾効果を付与する。また、魚雷そのものの弾速を10%(MAX30%)上昇させる。

『マタヒトリ』(攻撃スキル)
40秒毎にKAN-SENまたは人型のセイレーンを5%(MAX10%)の確立で水中に引きずり込み、即死させる。

『秘匿されし者·Sloth』
浮上してから10秒後、再び潜水し戦闘を継続できる。また、戦闘開始時と20秒後とに7連発の特殊弾幕を展開する(ダメージはスキルレベルによる)。


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番外編 最高の下僕


エルデアが暗殺される前、エリザベスとエルデアの関係とは···?

番外編です。今回は 2人のお話です。


KAN-SENが最初に現れてから数週間後、エリザベスの所属することになった軍港の執務室にて、エリザベス、ウォースパイト、ベルファストの3人は老人と出会う。

 

老人「初見となる、ここの指揮官を務めている『エルデア·リーダス』だ。よろしく頼む」

 

エルデアと名乗った老人は白髪のセミロングで、その目はエリザベス達を見据えており、老人とはいえその体はしっかりとしている。

 

エリザベス「あなたがここの指揮官?私に指図するのは10万年早いけど···」

 

エルデア「儂はそもそも指図するつもりはない」

 

エリザベス「···え?」

 

エルデア「儂のやり方は、立てた作戦に対し各々が意見を出し合い、より堅牢とするものだ。お前達がその気なら、最高の艦隊を作り出すことも可能だろう」

 

エリザベス「なるほど、それは良い考えね。それで、これからあなたは私の忠実な下僕の1人と···」

 

エルデア「儂は誰の下僕にもなるつもりはない」

 

エリザベス「なっ!?」

 

エルデア「仮に、本気で儂を下僕にしたいのならそれ相応の働きをしてもらうぞ」

 

エリザベス「このっ···いいわ、そこまで言うのなら、いつかあなたを私の下僕にしてみせるわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後エリザベスは鍛練を積み、時にエルデアと議論しては新たな発見を見いだしたり、時にエルデアに叱られることもあった。しかしその叱責もエリザベス達を心配しての事であり、的確で分かりやすく、そしてフォローも適度なものであり、KAN-SEN達にも気持ちは伝わっていた。

そのためエリザベス達はエルデアを信頼し、エルデアもまたエリザベス達を信頼していった。

 

 

 

 

 

そしてある日海域の奪還作戦が行われる事となり、講堂にエリザベス達は集められる。

 

エルデア「明後日、海域の奪還作戦が行われる事は知っているな?儂の立てた作戦は今日中に配布する。意見のある者はすぐに言いに来てくれ。それと···」

 

エリザベス「"生きて戻れ"よね?」

 

エルデア「···その通りだ」

 

そして当日、海域の奪還作戦が開始される···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エリザベスを旗艦とする艦隊は海域を順調に攻略しつつあった。そして海域の中枢に到達するとそこにいたのは人型のセイレーンだったが、スカベンジャーやスマッシャーなどとは違う雰囲気を醸し出していた。

まるで深海に住む『ダイオウグソクムシ』のような艤装を身に纏い、白いおさげを揺らしている。

 

セイレーン「ようこそ、鏡面海域へ。私は『ファイアウォール』よ」

 

 

推奨BGM『Electro Arm With Emotion』(ACNXより)

 

 

ファイアウォールは自身に赤いバリアを展開し、背部のダイオウグソクムシの装甲が開き、大量のミサイルを発射してくる。各自すぐに回避し、ベルファストがすかさず砲撃するが、バリアによって阻まれる。

更にファイアウォールは小型のレーザーを放ち、距離を取ろうとする。

 

ウォースパイト「させないわ!」

 

ウォースパイトが砲撃するが、再びバリアに阻まれる。アークロ·イヤルが爆撃をするがバリアの色が青に変わり、爆撃が防がれる。次にベルファストと『アマゾン』、『ジャベリン』による3方向からの雷撃が行われるがバリアが黄色に変わり、またもや攻撃は防がれる。

 

ファイアウォール「あらあら、滑稽ですこと」

 

ファイアウォールは嘲笑いながら再びミサイルを放ってくる。

 

アマゾン「ああもうっ!全然効かないじゃない!」

 

ベルファスト「いえ···もしや···」

 

ベルファストは砲撃と雷撃を同時に行うが、赤いバリアによって阻まれる。

 

ベルファスト「アーク·ロイヤル様、私と同時に爆撃してください」

 

アーク·ロイヤル「···分かった!」

 

そして2人は同時に攻撃を行う。するとファイアウォールは青いバリアで攻撃を防ぐ。しかし時間差で放たれたベルファストの魚雷がバリアを通り抜け、ファイアウォールにダメージを与える。

 

ファイアウォール「ぐうっ!」

 

ベルファスト「なるほど···そういうことですか!皆さん、ファイアウォールのバリアは色によって有効な攻撃が違います!赤なら爆撃、青なら魚雷、黄色なら砲撃です!」

 

ファイアウォール「このっ!」

 

ファイアウォールがベルファストに向けてミサイルを集中させるが、ジャベリンとアマゾンにほとんどを迎撃され、残りは回避される。

そしてそこからエリザベス達はファイアウォールを圧倒する。どの色のバリアを展開しようとも、すぐさまそれに対応した攻撃を撃ち込まれ、ついにはダイオウグソクムシの形をした艤装が破壊される。

 

ファイアウォール「でしたら···!」

 

ファイアウォールは腰から2つの鎌を取り出し、構える。ダイオウグソクムシの形の艤装がなくなったファイアウォールはスピードを活かしてジャベリンに接近するが、ジャベリンは槍で応戦する。

 

ジャベリン「このっ!」

 

エリザベスは戦う2人を見ながら深呼吸する。

 

アマゾン「今砲撃したらジャベリンにっ!」

 

エリザベス「アマゾン!退きなさい!」

 

アマゾンが飛び退くと、エリザベスの砲撃が放たれ、砲弾はファイアウォールの腰を掠めるように当たり、ファイアウォールは回転しながら倒れる。

 

ファイアウォール「グフッ···こんな···」

 

エリザベス「トドメよ!」

 

エリザベスはトドメの砲撃を放ち、ファイアウォールの残骸は海に沈んでいく···

 

ベルファスト「ご無事ですか!?」

 

エリザベス「ケガはない?」

 

ジャベリンにエリザベス達は駆け寄る。しかし、左目と左腕が欠損し、更に他の所も傷だらけとなったファイアウォールは最後の力を振り絞り、ジャベリンに鎌を振りかぶる。

 

ファイアウォール「まだ···行けます!」

 

エリザベス「危ない!」

 

エリザベスはジャベリンを突き飛ばすが、代わりに自身の背中を鎌で斬れられてしまう。アーク·ロイヤルはエリザベスを抱えて離れ、ベルファストはファイアウォールを蹴り飛ばし、アマゾンと共に砲撃する。

そして今度こそファイアウォールは海中に沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、治療を終えたエリザベスの部屋の扉がノックされる。

 

エリザベス「誰かしら?入っても良いわよ」

 

ルームメイトのウォースパイトは少し警戒する。そして入ってきたのは黒い戦闘用のスニーキングスーツと赤い目のガスマスクを着けた何者だった。

ウォースパイトは臨戦態勢に入るが、ガスマスクの人物はガスマスクを取る。

 

エリザベス「え、エルデア?」

 

ガスマスクを着けていたのはエルデアであり、突然姿勢を正し、敬礼をする。

 

エルデア「クイーン·エリザベス!貴公はこれまで様々な事を学び、精進し、そして今回の作戦において自身を犠牲にしてでも仲間を守った!これを行えるのは数少ない者のみである!」

 

敬礼をしながら語るエルデアはかつてない程に凛々しく、その気迫も今までとは比べ物にならなかった。

 

エルデア「よって!今この瞬間をもって、このエルデア·リーダスはクイーン·エリザベスへと仕える事とする!」

 

エリザベス「···え?え?」

 

エルデア「···どうした?今から儂はお前の下僕なのだぞ?」

 

エリザベス「エルデア···」

 

エリザベスもベッドから降りてエルデアの前に立つ。

 

エリザベス「じゃあ、今からあなたを私の下僕として迎え入れるわ!せいぜい働きなさい!"私の最高の下僕"!」

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回の2人の話しはどうだったでしょうか?

●ファイアウォール
主に拠点の防衛などを担う幹部セイレーン。
ダイオウグソクムシのような艤装と鎧を装備しており、赤、青、黄の3色のバリアを使い分け、攻撃を防ぐ。
しかしバリアは色によって一部の攻撃を通してしまう欠点がある。赤なら爆撃が、青なら魚雷が、黄色なら砲撃がそれぞれ有効である。
主な武装は背部のミサイルと肩の小型のレーザーであるため、ミサイル以外の火力は高くはない。

●エルデアの装備
今話の終盤でエルデアがエリザベスの元に行く時に纏っていた装備はかつてエーデルの元にいた頃のエーデル部隊の正式装備であり、エルデアや銀治にとってはまさに"正装"でもある。


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幕間 桜


ロイヤルの1件のあった頃、重桜でのKAN-SEN達の動きとは···


かつて銀治達のいた軍港では時雨と綾波が配属されていたが、時雨は時折ヒロと撮った記念写真を見ては唇を噛んでいる時がある。

 

綾波「時雨は···戦いを、どう思ってるのです?」

 

時雨「そうねぇ···誰かを守るためにすべき事、かしら。そういうアンタは?」

 

綾波「綾波は···よく、分からないです。前にユニオンの軍港に潜入した時に、友達と言われたのです···友達、と戦うことは···正直、嫌なのです」

 

時雨「なるほど···そう、それで良いのよ。それで···」

 

時雨は少し寝転んで天井を眺めた後、時雨は何かを思い付いたらしく飛び起きる。

 

時雨「そうよ綾波!ちょっと外出するわよ!」

 

そう言って時雨は綾波の手を引っ張る。

 

綾波「ちょっ···どこに行くのです!?」

 

時雨「こんな暗い雰囲気を吹っ飛ばせるところよ!」

 

 

 

 

 

 

 

そして時雨が綾波を連れて来た場所は『鴉の家』という喫茶店だった。

中に入るとそこは静かで落ち着いているが、どこか明るい雰囲気を感じられ、時雨はカウンター席に綾波と共に座る。

 

店長「あら、時雨ちゃん久しぶり!その子はお友達?」

 

時雨「そうよ!」

 

綾波「綾波、といいます。よろしくです」

 

店長「よろしく。私は『神城 愛海(あみ)』」

 

愛海と名乗った女性は明るい笑顔がとても印象的だった。

 

愛海「···で、なににする?」

 

店長はメニューを2人に差し出し、時雨はコーヒーとチーズケーキ、綾波はソーダとシフォンケーキを頼む。

 

綾波「ここ、なんだか明るくて、静かで···良い気分です」

 

時雨「そうでしょ?良くここに···ヒロと来たわ。あの子も色々頑張ってるでしょうね」

 

綾波「でも···お互い、一応敵同士なのです···もし···」

 

愛海「はいはい、暗いお話するくらいなら楽しい話でもしましょ?」

 

愛海は頼まれた品物を持ってくる。コーヒーもケーキもとても優しい味がしたため、2人の心は落ち着く。

 

時雨「やっぱり愛海さんのコーヒーとケーキは美味しいわね!」

 

綾波「美味しかったです。その、ありがとです」

 

愛海「喜んでもらえて良かった!」

 

愛海は明るい笑顔を見せる。

 

愛海「あっ!そうだ、ちょっと待ってて!」

 

愛海が厨房に入っていき、紙袋を持って戻ってきた。

 

愛海「はいこれ!この店のコーヒー豆!」

 

時雨「ありがと!愛海さん!」

 

そして時雨と綾波の2人は並んで帰路に着く。その後ろ姿を愛海は微笑みを浮かべながら眺めていた。

すると、裏口の扉が開く音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

重桜の中枢地区の現在の長門のいる建物は桜の巨木と一体化しており、広く見晴らしも良いが、長門はそこに軟禁されている状態だった。

その長門に呼ばれた赤城と加賀は長門の御前へと向かう。

 

赤城「長門様、此度はどのような事でしょうか?」

 

長門「のう···余はヒロ達の事が心配じゃ。今は敵同士になってしまった訳じゃが、どうにかして止めることはできないのか?」

 

加賀「長門様···」

 

赤城「ヒロはきっと無事ですわ···それに、もし何かあったらその時は···全て焼き尽くすまでですわ」

 

長門「それは···ヒロは望んでおるのか?1度しか会ったことがないとはいえ、ヒロがそのようなことを望む者だとは思えんのじゃ···」

 

赤城「長門様···」

 

赤城の雰囲気が変わる。

 

加賀「···長門様、心配はいりません。ヒロ達は必ずや無事に帰国させ、争いも終わらせてみせましょう」

 

長門「そうか···では、頼んだぞ」

 

加賀「お任せを···」

 

赤城と加賀が去った後、長門はうつむく。

 

長門「この戦···どうなるのじゃ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜、鴉の家に1人の客が来た。

 

愛海「いらっしゃ~い···って赤城さんじゃないの!久しぶり!」

 

赤城「えぇ、お久しぶりです」

 

赤城はカウンター席に座るとコーヒーを頼む。その後、愛海はコーヒーとシフォンケーキを持ってきた。

 

赤城「え?私は···」

 

愛海「いいのいいの、ケーキは奢り。それにあなた、なんだか悩んでるようだったから···私で良かったら、話してくれない?」

 

赤城「···愛海さんは、今起きてる戦争をどう思っていますか?」

 

愛海「そうね···セイレーンの方がどういう理由で仕掛けてきたかは知らないけれど、少なくとも人類側で争う必要は無いと思うわね···私は戦略には詳しくないけれど、内輪揉めしてる場合じゃないと思うのよね」

 

赤城「そう···」

 

愛海「戦争ねぇ···あなたはどう思っているの?」

 

愛海が奥の方に声をかけると1人の女性が出てきた。黒い長髪に黒い巫女服を纏い、赤い下駄を履いている。

 

女性「私は···多くの人々に不幸をもたらす行いはやめるべきだと思います···」

 

赤城「私は···取り返しがつかないことをしてしまったのかもしれません···」

 

愛海「そう···なら、相手に素直に謝ったら?色々めんどくさい事はあるでしょうけれど、まず謝らないことには何も始まらないわ」

 

女性「謝ることができて、そこから笑顔で始められればきっと、不幸から幸福に変えられると思います」

 

愛海「あなたそういうこと言えるようになったのね?」

 

女性「あなたのせいです」

 

赤城「そういえば、あなたは···」

 

女性「あ···申し遅れました。私、ふそ···この店で裏方をやっています、『(みずち)』と申します」

 

赤城「私はKAN-SENの赤城と申します···あ、そろそろ戻らなければいけません」

 

愛海「はい、じゃあお勘定」

 

赤城が帰ると、その様子を蛟は眺めていた。

 

愛海「あなたも···戦いたい?」

 

蛟「正直に言えば、そうですね···それに、あの人は不幸?それとも幸福?」

 

愛海「きっと、どっちもでしょうね···でも、いつかはその砲を向ける日が来るわ···」

 

蛟「えぇ。その時こそ···幸福を踏みにじる輩に、不幸による鉄槌を!」

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回は重桜側の話を書きましたが、どうだったでしょうか?

●神城 愛海
身長160cm、茶髪のロングヘアで52歳。
喫茶店『鴉の家』の店長をしている女性。明るく、優しい性格をしており、地元の人からも好かれている。

●蛟
身長170cm、黒い長髪で年齢は不明。
黒い巫女服と赤い下駄を身に付けており、どこかもの悲しげな雰囲気がある。
鴉の家では裏方を務めており、現在修行中である。
また、『不幸か幸福か』について謎のこだわりがある。


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第3章 焔桜
第22話 いざ重桜へ


エリザベスの選抜による潜入部隊と合流地点の部隊、そして陽動部隊による作戦が行われる。
重桜にあるものとは···?


夏月「ではこれより、重桜への潜入作戦を開始する!」

 

夏月の掛け声と共にKAN-SEN達は海へと躍り出る。重桜へ潜入するのはキュラソーと『カーリュー』である。

次に、陽動艦隊はエンタープライズ、ネバダ、テネシー、クリーブランド、ボルチモア、ラフィーである。

そして退却後の合流地点での待機艦隊は『ホーネット』、オクラホマ、アーク·ロイヤル、ジャベリン、ケンタウルス、ベルファストである。

 

ベルファスト率いる待機艦隊はキュラソーとカーリューを伴い、KAN-SENが現れる前、建設途中でセイレーンに攻撃されて大部分が沈んだ海上都市に向かう。

そして陽動艦隊は重桜近海にて航行し、重桜艦隊からの攻撃を待つ。

 

 

夏月「上手くいってくれると良いんだが···」

 

エンタープライズ《こちらエンタープライズ、エンゲージ!》

 

夏月「よし食いついた!キュラソー、カーリュー、行ってくれ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

重桜に潜入したキュラソーとカーリューは冴のおかげですっかり重桜にいてもおかしくない服装になっていた。それも複数の服を用意してもらったため、より潜入しやすくなっていた。

そして陽動艦隊が撤退した頃には中枢地区にまで辿り着いていた。

 

キュラソー「ここが中枢地区···」

 

カーリュー「銀治様の言っていた座標とルートは確かに合っていましたね」

 

キュラソー「そうですね。では行きましょう!」

 

2人は中枢地区の建物に入っていく···

 

 

 

 

 

 

 

そして頃合いを見てエンタープライズ達、陽動艦隊は撤退していた。

 

瑞鶴「今度は逃がさないんだから!」

 

その頃、待機艦隊の面々は手頃な場所を見つけ、小さいながらお茶会の準備をしていた。

 

ケンタウルス「こんなにのんびりとしていて良いのか?」

 

ベルファスト「適度に気を抜くのは必要な事です。ずっと気を張り詰めていても疲労が溜まるだけですよ?」

 

ケンタウルス「なるほどな···」

 

ジャベリン「あの~、ケンタウルスさん···」

 

ケンタウルス「なんだ?」

 

ジャベリン「今度、槍術を教えてくれませんか?私、もっと強くなりたいんです!」

 

ケンタウルス「時間が空いた時ならば良いだろう。まあ、その日を迎えるために今回の作戦も生き残らなければな」

 

ジャベリン「はい!」

 

 

 

その後しばらくして夜となり、待機艦隊は交代で見張りをしつつ眠る事にし、キュラソーとカーリューは1度旅館で資料を纏めた後、交代で眠りにつくことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、キュラソーとカーリューはいよいよ機密のある区域へと潜入する事にする。

まずは長門の軟禁されている建物である。守衛やKAN-SEN達に気づかれぬよう、建物の中を探索する。

しかし途中で江風見つかりそうになり、慌てて近くの部屋に入る。江風が物音のした部屋に入ると中には長門がおり、折り鶴を折っていた。

 

長門「どうしたのじゃ?」

 

江風「今、ここに誰か来ませんでしたか?」

 

長門「誰も来ておらんぞ?せいぜい虫が余の近くを通ったくらいじゃ」

 

江風「そう、ですか···失礼しました」

 

江風が去っていき、しばらくすると長門は背後の葛籠(つづら)を開ける。その中からキュラソーとカーリューが出てきた。

 

キュラソー「ありがとうございます。しかしなぜ私達を···?」

 

長門「2人からは危険な気配がしなかったからの···してここに何用じゃ?」

 

キュラソー「その···重桜の内情を知るために潜入してきました」

 

長門「そうか···悪いが、ここには妾が知り得ることはとても少ないのじゃ···妾は重桜の現状を変えたくても今のままではどうにもできなくての···そうじゃ!」

 

長門は折り紙に何かを書き、紙飛行機を折る。

 

長門「お主ら、どこの所属かは判らぬが、鴉間 ヒロという男にこれを渡してくれ!」

 

キュラソー「···承知いたしました、それでは」

 

キュラソーとカーリューは部屋を後にする。

 

長門「ヒロ···無事でいてくれ···」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日2人は中枢地区の軍港へと潜入し、機密情報の入手に取りかかる。しかし資料などにはめぼしいものはなく、更に奥へと進んでいく。

すると銀治の話しには無かった区画があり、そこへ進んでいく。しかしその途中で1人のKAN-SENと鉢合わせてしまう。

 

KAN-SEN「うわっ!びっくりしたにゃ···ここは立ち入り禁止区域だにゃ···といっても『明石』も道に迷ったけどにゃ···」

 

カーリュー「···そちらもですか?こちらも迷ってしまっているので、一緒に出口を探しましょう」

 

明石「そうするにゃ」

 

なんとか場を切り抜け、3人で進んでいく。すると通常とは違うドックへと辿り着く。しかしそこにあったのは巨大な軍艦型のセイレーンであり、そこに何者かが2人いた。その2人は···

 

義人「オロチ計画は進んでいる···問題はない」

 

オブザーバー「そう、なら良かったわ。ブラックキューブのデータも順調に集まってるようだし」

 

義人「だが、そちらも約束は果たしてもらおう」

 

オブザーバー「ええ。天城の蘇生はもちろんやってあげるわ」

 

義人「なら良い···」

 

3人は物陰に隠れながら様子を伺っている。

 

キュラソー「これは···どういう事ですか?」

 

明石「あわわ···明石達、出口探してたらとんでもないものを知ってしまったにゃ···」

 

後退りした明石がつまずき、大きな音を立ててしまう。

 

義人「誰だっ!?」

 

義人は太もものホルスターからハンドガンを取り出し、キュラソー達のいる方へと正確に発砲する。

キュラソー達はすぐさま逃げるが、明石も着いてくる。

 

キュラソー「騙していてすみませんでしたが、どうして着いてくるのですか?」

 

明石「こんな秘密を知っちゃったら殺されるにゃ!」

 

カーリュー「···仕方ありませんね、行きましょう!」

 

カーリューは待機艦隊と夏月に通信を入れる。

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

さて今回から第3章に入りました!


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第23話 脱出

キュラソーとカーリューは明石を連れての脱出を行う。
しかし重桜艦隊の追撃は激しく···


カーリューによる連絡を受けた待機艦隊はすぐさま撤退を支援するための布陣に着き、夏月は別動隊の艦隊(陽動艦隊と同じ)を出撃させる。

しかし間が悪く、他の基地がセイレーンによる襲撃を受けたとの報告がある。

 

夏月「こんな時に···!」

 

銀治「今からでは···いや、憤怒!行ってくれるか?」

 

憤怒「ああもうっ!仕方ねぇな···ったくイライラさせるぜ!」

 

エンタープライズ《指揮官!こちらは鉄血の艦隊と遭遇!数が多い···援軍を!》

 

夏月「なんだと!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃時雨と綾波に侵入者追撃のための指令が下される。

 

時雨「これ···もしかしたら」

 

綾波「時雨···」

 

時雨「綾波···私、行くわ」

 

綾波「えっ?···まさか!」

 

時雨「そのまさかよ。この侵入者したKAN-SENっての、もしかしたらヒロのいる所の所属かもしれないじゃない?」

 

綾波「でも···それだと脱走になりますし、重桜の皆からも狙われることになるのです!それに、もし違ったら···」

 

時雨「私はそれでも構わないわ。だって私はヒロの家族よ!それに間違ってたら自力で探せば良いし。それに今の重桜の···義人のやり方は間違ってるわ···綾波は、この時雨様を止める?」

 

綾波「綾波は···」

 

 

 

 

 

 

 

 

キュラソー、カーリュー、明石の3人は港に辿り着き、海へ出る。高雄と愛宕が追ってきたため、応戦しつつ逃げる。しかし前方に時雨と綾波が現れ、砲口を向ける。

 

明石「も、もう終わりだにゃぁぁぁ!」

 

すると時雨の砲撃は明石の横を通り抜け、高雄に直撃する。

 

高雄「ぐっ!···時雨!貴様どういうつもりだ!?」

 

時雨「今の義人のやり方にはこれ以上従えないのよ!」

 

高雄「裏切るのか···?」

 

時雨「見限るのよ!」

 

時雨は高雄と愛宕に魚雷を放つが2人は回避する。

 

愛宕「もしかして···綾波ちゃんも?」

 

綾波「···友達とは、戦いたくないのです!」

 

綾波は砲撃するものの、愛宕の足元に着弾する。すると愛宕は足を止める。

 

愛宕「そう···なら、行きなさい」

 

高雄「愛宕っ!?」

 

愛宕「だって義人のやり方がおかしいのは判ってるじゃない?私はただ軍人として従ってるだけ···それに、お友達のためにこうして選んだことだもの。止める権利はないわ···」

 

高雄「愛宕···」

 

愛宕「高雄ちゃんは好きになさい。私はもう追撃はしないわ」

 

高雄「···愛宕、時雨、明石······達者でな」

 

高雄は刀を納め去っていき、愛宕も綾波達に笑顔を向けた後去っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、キュラソー達は合流地点でホーネット達と合流し、キュラソーが訳を話す。

 

キュラソー「···と、いうことです」

 

ホーネット「なるほどねぇ~。とりあえず別の追撃が来る前に急ごう」

 

キュラソー「はい。承知しました」

 

2人が時雨達の方を見ると、ケンタウルスと時雨が話していた。

 

ケンタウルス「なるほど、確かにヒロの行っていた通りだな」

 

時雨「そうでしょう?やっぱり着いてきて良かったわ!」

 

ケンタウルス「む、そろそろ行くようだ。準備をしろ」

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方エンタープライズ達は鉄血の艦隊により大きな被害を受け、防戦一方となっている。それをドローンによって見ている夏月達は状況を打開しようにも距離の問題でKAN-SENを向かわせようにも辿り着く前にエンタープライズ達に限界が来てしまう事に悔しさを滲ませていた。

 

夏月「なにか···なにか方法は!?」

 

ヒロは阿修羅に駆け寄るが、阿修羅はヒロをそっと抱き締める。

 

阿修羅「すまない。私達は確かに他のKAN-SENより速力はあるが、あの距離では流石に間に合わない···」

 

その時、委託に行っていた艦隊が帰還した。そしてその艦隊が持ち帰ったものの中に空のキューブが1つあったのだ。

 

夏月「このタイミングで···!」

 

阿修羅「素晴らしい。これこそ天の恵みだ···ヒロ、私達は"速力では"間に合わないが、間に合わせることができる奴がいただろう?」

 

ヒロはハッとして夏月から空のキューブを受け取ると自室へと走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、エンタープライズ達がそろそろ限界を向かえてきていた。大破したボルチモアに鉄血のローンが砲口を向ける。しかしその瞬間、砲身に砲撃が直撃し、砲身が破壊される。

 

ローン「誰っ!?」

 

 

推奨BGM『Scope Eye』(ACNXより)

 

 

???《ユニオン艦隊の皆さん、救援に参りました。すぐさま撤退してください》

 

ボルチモア「あなたは!?」

 

???《その質問は時間の無駄です。早急に撤退を》

 

ローン「だから···あなたは誰なのよっ!?」

 

ローンは自身が砲撃された方向に向けて砲撃しようとするが、再び砲撃され、大破してしまう。

 

ローン「私を傷つけるなんて···許さないっ!」

 

ローンは砲撃された方向を睨み付けるが、その姿はほとんど見えない。

 

???《位置も判らない敵に砲撃しようとするなど、まったくの無駄です。動き自体にも無駄が多すぎます》

 

再び砲撃されるが、その砲弾はローンの横を通り抜け、ローンの背後にいたKAN-SENに直撃する。

 

???《ヒロの命により、殺しはしません。しかし無力化はさせていただきます》

 

ローン「ヒロって、あの時視察に来てた···」

 

エンタープライズ達はある程度距離を取ることに成功するが、鉄血のKAN-SENは砲撃しようとする。しかし完璧な程のタイミングで艤装が破壊されてしまう。

 

ローン「まさか···狙撃!?」

 

 

ローン達より遥か遠くでは白い長髪の赤いセーラー服を着たKAN-SENがいた。その艤装の主砲は単装砲だが砲身が長く、赤い瞳はローン達鉄血艦隊を冷ややかに見つめており、肩や艤装には小さな人形が立っていた。

 

???「皆さん、その位置から左斜めに向かって進んでください」

 

クリーブランド《い、今!?》

 

???「今です」

 

エンタープライズ達が言う通りに動くと、ちょうど射線が確保され、KAN-SENは正確に狙撃する。そして他の鉄血のKAN-SENにも砲撃していき、鉄血艦隊は撤退していく。

 

???「敵戦力の撤退を確認、これより帰還します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、全員が帰還したところでエンタープライズ達の救援に来たKAN-SENが自己紹介する。

 

???「私は『大淀型秘匿軽巡"雪羅"』です。どうぞお見知りおきを」

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

これにて夏月陣営に綾波が、ヒロの所には時雨が戻り、雪羅が参戦しましたね。

●大淀型秘匿軽巡 雪羅
白い長髪で赤いセーラー服を着ているKAN-SEN。
長砲身の単装砲を備え、それにより味方の指揮をしながら狙撃するという戦術が可能となっており、接近されても引き戦に持ち込める速力も備えている。
また、灰色の小さな人形は雪羅と意識が繋がっており、機械に内蔵するとその機械と意識を繋げることが可能。
性格は冷たく、無駄を極端に嫌う。

設計図に関しては建造には至らなかったものの、翔鶴の機構の一部が使われており、ある意味で"もう1人の鶴"と推測される。

また、7つの大罪に例えると『色欲(Lust)』となる。


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第24話 覚悟

重桜への潜入作戦の後、情報の整理が行われる。
そして今後の動向とは···?


お気に入り10人達成!ありがとうございます!


夏月はキュラソー、カーリュー、明石、時雨、綾波から情報を聞き、それらを整理する。

まず、義人はセイレーンと繋がっており、その目的はおそらく天城の蘇生であること、そしてそれに関連しているとされる『オロチ計画』とブラックキューブの事。そして長門の軟禁···

 

夏月「オロチ計画か···」

 

カーリュー「2人が立っていた軍艦型のセイレーン、それがおそらくオロチかと···」

 

明石「重桜だと軍艦型のセイレーンを使うことも増えてきてるにゃ。けどあの軍艦型セイレーンは見たことないのにゃ」

 

時雨「オロチ計画ねぇ···私達はそんな計画知らされてないし···というか義人自身が私達に詳細な情報を出さなくなってるから知りようが無いわ···」

 

綾波「中枢の基地は前より立ち入り禁止の区画が増えてるのです。たぶん、オロチ計画の事かもです」

 

キュラソー「そして重桜の象徴であり、代表でもある長門様の軟禁は義人様の主導によるものと、調査の結果明らかになっています」

 

時雨「ちなみに私達も長門様と最近会うことを禁止されてたの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

情報の整理が終わった後、キュラソーは長門からの紙飛行機をヒロに渡す。

ヒロが紙飛行機を開くと、そこには一言···たった一言だけ···

 

『助けて』

 

キュラソー「ヒロさん···」

 

ヒロは立ち上がり、研究所へと走る。そしてそこにいた冴にメモ用紙を見せる。

 

『武器を作って!』

 

冴「ヒロ···何があったかは知らないけど、本気で行ってるの?」

 

ヒロは頷く。

 

冴「···失うのが怖いの?清魅(きよみ)ちゃんのように?」

 

ヒロの目つきが一気に変わる。

 

冴「やっぱりね···けど、あなたに戦場へ行かせることはできないわ···人間がKAN-SENに、勝てるわけないもの···ヒロだって、スマッシャーと戦って判ってるはずでしょう?」

 

ヒロは再びメモ用紙に書き込んで冴に渡す。

 

『勝てないのは分かってる。それでも僕は助けたい!それに、陸ならKAN-SENにダメージを与えられる武器があれば戦える』

 

冴「ヒロ···どうしてそこまで!?」

 

銀治「良いんじゃないのか?」

 

いつの間にか銀治が部屋に入ってきていた。

 

冴「銀治さん···」

 

銀治「まったく、お前も随分成長したもんだ···ヒロ、ちょっと来い」

 

銀治はヒロを連れていく。冴や先程までオロオロしていたロイも着いていく。

着いた先は砂浜だった。

 

銀治「ヒロ···お前も行くということは、KAN-SENと戦う事が前提となる···だから、本気で行きたいのであれば、儂を越えていけ」

 

銀治は上半身の服を脱ぎ、ヒロも上半身の服を脱ぐ。そして向かい合い、構える。

銀治の構えは実戦的なものであり、対してヒロはまるで本能を体現したかのような低い姿勢の構えである。

 

 

推奨BGM『決意』

 

 

冴「仕方ないわね···両者·····初め!」

 

その声と同時に2人は突撃し、銀治は蹴り上げる。しかしヒロは受け流し、銀治の足に肘打ちをしようとするが、銀治はそれをかわしヒロに裏拳を打ち込む。ヒロはそれに対し頭を少し下げてかわし、銀治の心臓部分に掌底を打ち込む。

銀治は怯んだものの、ヒロの次の攻撃が来る前にヒロの顔面に拳を打ち込み、もう片方の手でアッパーをする。しかしヒロはそれを利用し、頭突きを銀治の鼻に打ち込み、鳩尾に拳を叩き込む。銀治が引こうとした瞬間、銀治の右腕が捕まれ銀治は背負い投げをされる。倒れた銀治は横に回転してヒロの拳を回避する。立ち上がった銀治はヒロに蹴りを放つがヒロも蹴りを放ち、互いの蹴りは互いの頭に同時に直撃する。

 

憤怒「おい···2人ともなにしてんだよ!?」

 

憤怒とケンタウルス、ウォーエンドがその場にやって来る。

 

冴「ヒロが軟禁されてる長門を助けたいから武器を作れって言ってきてね。行きたいなら儂を越えていけってな展開になってる」

 

ウォーエンド「ヒロ···」

 

憤怒「おい!それだったらオレ達が行けば良いだろう!?ヒロが···傷つく必要なんてないだろ!?」

 

ケンタウルス「憤怒···見ろ、ヒロの目を。あれは決意を固め、覚悟をつけた···まごうことなき強者の目だ!であれば、私達はそれに従うまでだ。違うか?」

 

すると阿修羅と雪羅、三笠もやって来て、戦いを眺める。

 

阿修羅「何事かと来てみれば···」

 

雪羅「ヒロの肉体美···ジュルリ···」

 

三笠「雪羅殿···?」

 

そして銀治とヒロの決闘が続くが、突然ヒロの動きが変わる。振り下ろされた銀治の踵落としを横へのステップで回避し、今度は前方へのステップで銀治の横をすり抜け、回転しながら回し蹴りを直撃させる。

 

銀治(なんだ今のは!?動きが···急に!)

 

するとヒロは今度は極めて低姿勢の動きに切り替え、銀治の足を集中的に狙い始める。銀治は蹴りを中心に引きながら対抗するが、次の瞬間、ヒロはサマーソルトを行い、その際に足の爪先を砂の中に入れ、舞い上がった砂に銀治は思わず目を閉じる。

 

銀治(しまった!)

 

銀治が目を開けようとしたその瞬間、ヒロは肘打ちを銀治の下顎に打ち込み、銀治の脳が揺れる。そしてヒロは猛烈なラッシュを叩き込み、銀治は防御すらままならず仰向けに倒れる。

 

銀治「うぅ···儂の敗けだ···」

 

銀治の言葉を聞いたヒロは冴の方を向く。

 

冴「はいはい、わかったわよ!ほらロイ、すぐに行くわよ!」

 

ロイ「い、今から!?」

 

冴はロイを連れて研究所へと向かっていった。ヒロは銀治に肩を貸し、医務室へと向かったのだった···

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

さて、銀治と決闘に勝利し武器を作ってもらうことが確定したヒロですが、どんなのができるのでしょうね?

●鴉間 清魅
身長160cm、黒髪のポニーテールで享年14歳。
ヒロの妹であり、2年前に起こった事件でヒロを脱出させる代わりに爆発に巻き込まれたが、遺体が見つかっていない事から、銀治やヒロの希望で"行方不明"という形になっている。
性格は活発で明るかったとされている。


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第25話 準備

重桜へと攻め込むことになり、それぞれは準備を行う。
そして、ヒロに与えられた武器とは···?


再び会議室に集まった夏月、銀治、エリザベス、ウォースパイトは話し合いの結果、ある事を決定付ける。

 

夏月「では準備が終わり次第、重桜へ攻め込もう」

 

そしてそれぞれの準備が始まり、着々と進んでいく。

 

 

 

 

 

 

ケンタウルスはジャベリンに槍術を教え···

 

憤怒は格闘戦をより良くするために鍛え···

 

阿修羅は静かに瞑想をしており、その姿はまるで千手観音のようだった···

 

ウォーエンドはナイフ術を練習し···

 

雪羅は狙撃の練習をすると同時に新開発の『C-L51骨格船』の連携も練習し···

 

夏月は何度も作戦のシュミレーションを重ね···

 

エンタープライズは艦載機の制御をより高めたものにするための練習を行い···

 

三笠は回避しながらの砲撃を上達させるための練習を続け···

 

時雨は回避力を上げるための練習を続け···

 

そしてそれぞれは成長していく···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒロが冴に呼び出されると、研究室で倒れ爆睡している明石とロイがいた。

そして冴はヒロを手招きする。

 

冴「皆良くやってくれたわ。ほら、これがあなたの武器よ」

 

渡されたのは機械的な鞘に納められた1本の刀だった。しかしよく見ると鞘が2重になっており、内側の鞘には取っ手が付いていた。

 

冴「名付けるなら、『91(きゅういち)式仕掛け刀』かしら?」

 

どうやらヒロの手に合わせて作られているようで、とても手に馴染む。

 

冴「この前の銀治さんとの決闘を見て思い付いた機構よ。スタイルを変えて戦うあなたにはちょうど良いんじゃないかしら?それに、明石ちゃんの技術も取り入れて、KAN-SENにもダメージが通るようにしたわ。けど、KAN-SENとの戦闘で狙うべきは艤装以外の部位よ」

 

ヒロは深く頷き、頭を下げた後すぐに砂浜へと向かう。そして砂浜で練習をするヒロの動きを銀治は遠くから眺めていた。

 

銀治「エルデア···ヒロは、儂じゃ止めれんわい···『鴉を殺せるのは獣だけ、獣を殺せるのは鴉だけ』···か。先生、ヒロを殺すのではなく、止めてくれる鴉は···どこにいるのですか?」

 

近くの木の枝に止まっている鴉が、ヒロをじっと眺めていた···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、ヒロは外に出て月を眺めていた。そして行方不明となっている妹の清魅の事を思い浮かべ、砂浜に腰を下ろす。しばらく眺めていると、何者かが近づいてきたため、ヒロは足音のした方を向く。

するとそこにいたのは赤城だった。ヒロは驚いて立ち上がり、赤城は微笑んで招くように手を広げる。

ヒロは一瞬近づこうとしたが、違和感に気づき後退る。そう、目の前の赤城が付けている髪止めには桜の紋様が無いのだ。

ヒロが警戒していると、赤城の表情は途端に機械のような無表情になり、艦載機となる赤い式神を取り出す。

 

しかしその瞬間、砲撃音と共に2人の間に砲弾が着弾し、ヒロは何者かに掴まれて距離を取らされる。

 

雪羅「来てみれば、危なかったですね」

 

憤怒「なるほど···別の奴か···」

 

憤怒はヒロを自身の後ろに隠し、雪羅は再び砲撃する。

 

雪羅「憤怒、ヒロを連れて離れてください」

 

憤怒「言われなくてもやるぜ!」

 

憤怒がヒロと共に離れた事を確認すると雪羅はすぐさま砲撃し、回避しようとした赤城の足元に着弾させ、爆風でバランスを崩させる。そして赤城の顔面に砲撃し、赤城を撃破する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、砲撃音で目が覚めた皆はヒロを心配していた。そして憤怒と雪羅は夏月と銀治への説明を行っていた。

 

憤怒「オレは単に眠れなくてウロウロしてたらヒロが月見てんのが見えたからよ、ヒロの所に行こうとしてさっきの事になったんだ」

 

雪羅「私はヒロに夜b···用事があったので部屋に行こうとしたところ、砂浜に向かうヒロを見かけたのです」

 

銀治「雪羅お前···」

 

ケンタウルス「動機が不純だ、来い」

 

雪羅はケンタウルスに掴まれてどこかへ連れ去られてしまった···

 

銀治「しかしなぜこのタイミングで···」

 

夏月「たぶん、戦力を探ったりとかするためにセイレーン側から送り込まれたんだと思う」

 

銀治「なるほどな···」

 

その後この1件は大事にはならずに終わり、3日後に重桜へ攻め込む事となった。

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

さて、準備は整いましたが作戦は成功するのでしょうか?

●鴉を殺せるのは獣だけ、獣を殺せるのは鴉だけ
エーデルの提唱したもう1つの説。詳細は不明なものの、この言葉だけが遺書に残されており、その真意に気づいているのはエルデアと銀治のみである。

●C-L51骨格船
雪羅が人形を搭載して共闘する自律型の骨格船。両腕の単装砲と下半身の魚雷を主兵装とし、雪羅によって意識制御され、共闘することを前提とされている。
78式と比べると全身が装甲となっており、下半身は前方が短くなっており、全体的に強化されている。

●雪羅のスキル
『人形を従えし鶴』(支援スキル)
主力艦隊に編成されている時のみ、C-L51骨格船を3体前衛艦隊側に召喚する(前衛艦隊とは別に自律して行動する)。

『もう1人の鶴』(攻撃スキル)
戦闘開始時と砲撃時にに12秒間味方全体の航空火力を10%(MAX30%)上昇、受けるダメージを4%(MAX10%)減少させる。

『秘匿されし者·Lust』
主力艦隊に編成可能となり、主力艦隊に編成時のみ戦闘開始時に単発の特殊弾幕を展開し(威力はスキルレベルによる)、味方の回避を常時20%上昇させる。


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第26話 天に登りし敗者

遂に作戦が開始され、ケンタウルスを旗艦とする艦隊は中枢地区の長門の救出に向かう。


夏月「では···作戦を開始する!」

 

夏月の声により、それぞれが出撃していく···ヒロは装甲を取り付けた特殊ボートに乗り、エンタープライズを旗艦とする艦隊と雪羅を旗艦とする艦隊は海上にて陽動と戦力の減衰を、ケンタウルスを旗艦とする艦隊は長門の救出のために中枢地区へと乗り込み、三笠を旗艦とする艦隊とヒロは基地に攻め込むという作戦である。

 

 

 

 

数時間前──

 

夏月「今回、アイリスのKAN-SENの一部も作戦に参加してくれるようだ。だから編成に急遽アイリスのKAN-SENも入れるが問題ないか?」

 

エンタープライズ「問題ない」

 

三笠「こちらもだ」

 

阿修羅「···1つ、提案がある」

 

夏月「なんだ?」

 

阿修羅「長門の救出は私に任せてほしい。仮にも私の姉だからな···それとヒロには義人の相手を頼みたい」

 

少し見つめ合った後、ヒロは頷いて阿修羅にメモ用紙と紙飛行機を渡す。

 

『長門をお願い!あと誰も殺さないで!』

 

阿修羅「承知した!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてケンタウルス、阿修羅、キュラソー、カーリュー、綾波、そしてアイリスから来た『ダンケルク』は中枢地区へと乗り込む。

この事態に他の基地から来たKAN-SEN達も含めた大勢のKAN-SEN達が立ち塞がるが、ケンタウルスや阿修羅を筆頭に押し通っていく。

 

ケンタウルス「ふん、何が正しいかも考えずにノコノコと!」

 

阿修羅「それとも脅されでもしたか、あるいは···信仰か?」

 

そしてある程度進み、長門の軟禁されている建物の前へと来るとケンタウルスは阿修羅の方を向く。

 

ケンタウルス「阿修羅···ここは任せろ。お前は長門を助けに行け」

 

ダンケルク「この状況で!?」

 

ケンタウルス「仮にもお前の姉だ。行くのはお前だ」

 

阿修羅「ケンタウルス·····恩に着る!」

 

阿修羅は大階段を登っていく。

 

ケンタウルス「さて、私達はここを制圧するぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM『Vendetta』(ACVDより)

 

 

阿修羅が階段を登りきるとそこには『扶桑』と『山城』がいた。しかし阿修羅は躊躇いなく砲撃しながら突き進み、顔を掴んで床に叩きつける。

 

阿修羅「邪魔だ···」

 

そして阿修羅はKAN-SEN達を薙ぎ倒しながら突き進む。

 

阿修羅「どけぇ!敗北者どもがぁっ!」

 

柱の並ぶ広間に出ると、多くのKAN-SENが待ち構えていた。だが阿修羅の気迫に震えるKAN-SENも数名いる。

阿修羅は彼女達を見渡し、砲を構える。

 

阿修羅「死にたくなければ···どけ」

 

KAN-SEN「怯むな!奴を倒すぞ!」

 

阿修羅「愚か者が!」

 

阿修羅は突撃し、薙ぎ払うように砲撃しつつ確実に撃破していく。刀を振るうKAN-SENに蹴りと砲撃を同時に当て、倒れたKAN-SENを掴み盾にし、攻撃を続けるKAN-SENに向けて放り投げる。

 

阿修羅「弾の無駄だ···」

 

阿修羅は手持ちの単装砲を解除すると、背後の『榛名』に肉薄し格闘戦に持ち込む。格闘戦の得意な榛名だったが、阿修羅は腕が6本あるため、攻撃を防ぎ切れずに倒れる。そしてそのまま他のKAN-SENにも肉薄し、顎を膝で蹴り上げると上の手の拳を顔面に振り下ろす。そしてそれに合わせて他のKAN-SENへも砲撃し、怯んだKAN-SENから撃破していく。

そして道が開けるとKAN-SEN達の足元に砲撃し、床を崩す。その隙に阿修羅は上へと進んでいく。

 

別の広間に出たところで不意に上から砲撃され、主砲の1つが損傷する。

そして上から降ってきたのは土佐、『紀伊』、『駿河』の3人だった。

 

土佐「ここは通さんぞ···」

 

紀伊「派手に行きましょう!」

 

駿河「見たことないKAN-SENね···」

 

 

推奨BGM『Artificial line』(ACSLより)

 

 

阿修羅「クックックッ······なるほど、これも私の運命(さだめ)か!私は長門型秘匿戦艦、阿修羅!いざ、参る!」

 

阿修羅は突撃しながら砲撃し、飛び上がって上から砲撃し着地する。しかし着地の瞬間を狙って駿河が砲撃し、阿修羅の主砲の1つのアームの関節部分に命中し破壊される。

阿修羅は3人の砲撃を避けながら砲撃し、紀伊にハイキックを当てる。しかし土佐と駿河の砲撃が阿修羅に直撃し、阿修羅は爆煙に包まれる···が、爆煙の中から阿修羅は土佐に目掛けて飛び出し、顔面を殴り付ける。

その阿修羅の頭からは血が流れているが、目は生き生きとしていた。

 

阿修羅「これだ!この感覚だ!"戦争"だ!」

 

阿修羅はよりスピードと攻撃性を増し、3人は押され始める。3人は阿修羅を囲み、左右と前から刀とサーベルで斬りかかる。

しかし、阿修羅は上の腕で前の土佐の刀を、右の中と下の腕で駿河のサーベルを、左の中と下の腕で紀伊の刀をそれぞれ同時にガードする。3人が力を込めるが、決して動じることはない。

 

阿修羅「貴様らは何がために戦う?何がために命をかける?仲間を裏切り、仲間を閉じ込め、求めるものはなんだ!?」

 

阿修羅の目は見開かれ、口元には笑みを浮かべている。阿修羅は一気に3人をはね除け、正面の土佐に至近距離から砲撃し、自らも爆煙に飲み込まれる。しかしその爆煙から駿河に向かって飛び出し、6本の腕を動じに動かし、拳を駿河の頭部に打ち込む。更に、振り向き様に紀伊に突撃し、紀伊の砲撃を主砲の1つを犠牲にして防ぎ、顔を掴んで床に叩きつけ、馬乗りになって連続で顔を殴り付ける。

 

 

 

 

 

 

阿修羅は立ち上がり、広間を抜ける。するとすぐ近くに幼稚園児のような服装のKAN-SENを見つけ、目が合う。

 

KAN-SEN「ひっ···!」

 

阿修羅は優しい笑みを浮かべる。

 

阿修羅「怖がらせてすまない。誰も殺してはいないから、安心してくれ」

 

阿修羅はそのまま長門のいる部屋へと向かう。すると襖を切り裂いて江風が現れる。

 

江風「先へは進ません」

 

江風が斬りかかるが、阿修羅はその腕を掴んで投げ飛ばす。

 

阿修羅「次から次へと···」

 

阿修羅が単装砲を向け、砲撃しようとした時、阿修羅を前に立ち塞がる者がいた。

 

長門「も、もうやめい!お主、何が目的じゃ!?」

 

江風「なっ···!?」

 

阿修羅「···ん?まさか、貴様が長門か?」

 

長門「そ、そうじゃ。余が、長門じゃ!」

 

阿修羅「あぁ···やっと見つけた···長門よ···私の姉よ···」

 

長門「へ?」

 

阿修羅「私は、長門型秘匿戦艦、阿修羅だ!ヒロの命により、ここに軟禁されている長門の救出に来た」

 

長門「ど、どういうことじゃ!?」

 

阿修羅「黒鉄 義人を止めるため、姉上を助けるため、ヒロとヒロのいる基地のKAN-SEN達がこの中枢地区とその海域で重桜の艦隊と交戦している」

 

江風「信用できるか!」

 

阿修羅「信用しないならそれでも良い。今この時点で救出は成功したも同然だ···それと、これを長門に」

 

阿修羅は長門にヒロの紙飛行機を差し出す。

 

阿修羅「ヒロからだ。受け取るかは長門次第だ」

 

長門は阿修羅に近づこうとするが、江風が止める。

 

江風「長門様!罠かもしれません!」

 

長門「江風···余は、信じてみようと思う···今ここで信じなければ、戦は終わらぬ気がするのじゃ···」

 

長門は阿修羅から紙飛行機を受け取り、開いてみる。すると中にはヒロの字で···

 

『助けに来たよ!』

 

長門「ヒロ···!」

 

阿修羅「私は作戦が終わるまで長門といよう」

 

長門「···阿修羅、お主に色々聞きたい事があるのじゃが···」

 

阿修羅「構わん。仮にも私達は姉妹だ、色々と話そうじゃないか」

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

重桜へ攻め込む作戦が始まり、まずは阿修羅サイドの視点でしたが、どうだったでしょうか?


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第27話 雪桜

重桜へ攻め込むため、エンタープライズ達は海上にて陽動と戦力の減衰のために動く。


作戦開始後、エンタープライズ達は爆撃機を発艦させ、奇襲攻撃を行う。しかし爆撃は被害の少ない場所に行い、民間人への被害が無いようにする。

 

エンタープライズ「よし、来たぞ!」

 

雪羅「狙撃開始!」

 

重桜の艦隊とエンタープライズ達は交戦を開始する。

 

 

推奨BGM『Lay Down the Law』(ACVDより)

 

 

瑞鶴とエンタープライズ、雪羅と翔鶴&、ウォーエンドは潜水艦のほとんど···それぞれがそれぞれと交戦を開始する。

 

瑞鶴とエンタープライズはほぼ互角に渡り合い、1歩も引かない状態であり、どちらかが爆撃や魚雷を当てれば相手に当て返し、回避していく。

そして翔鶴は雪羅の従えている骨格船と交戦しているが、雪羅はただただ翔鶴を観察している。

 

翔鶴「お人形さんにだけ戦わせて、自分は高みの見物?」

 

雪羅「フフフッ···意識を繋いでいるので、それらも私ですよ·····翔鶴姉様?」

 

翔鶴「あなたのような妹、いたかしら?」

 

雪羅「フフフッ···私は抹消された船であり、翔鶴姉様···あなたの機構が私には使われているのですよ!」

 

雪羅は初めて翔鶴に砲撃し、それは翔鶴の飛行甲板に直撃する。また、雪羅は翔鶴の爆撃をスルリスルリと一切の無駄なく回避しながら砲撃していく。

すると翔鶴の援護に青葉がなんとか駆けつけるが、骨格船の1機が青葉に目標を変更し、青葉と交戦を開始する。

 

 

 

 

その頃、水中では潜水艦の『伊168』、『伊19』、『伊25』、『伊56』、『伊58』らとウォーエンドが交戦していた。

 

ウォーエンド「ふうん、この前の艦隊より練度は高いね···本気で行くよ!」

 

ウォーエンドは自身の速力を活かして正面から突撃し、ギリギリのところで魚雷を回避していく。そして伊56の近くまで来ると、すり抜け様に魚雷を当てていき、そのままの勢いで更に深く潜る。すると突然上向きに急旋回し、ほぼ真上を向く。

ウォーエンドはその体勢から魚雷を連射し、伊168に全弾命中させる。そして浮上しつつ伊25の魚雷を魚雷で相殺し、その隙に息つぎをし、伊58の側面から魚雷を撃ち込んでいく。

 

 

 

 

そしてエンタープライズは瑞鶴に接近され、近接戦に持ち込まれていた。

 

瑞鶴「この距離なら···負けないよっ!」

 

瑞鶴の攻撃をなんとかさばきながら後退するエンタープライズ···しかしそれを雪羅は横目で冷ややかに見つめていた。

雪羅が相手をしている翔鶴と青葉は共に中破しているが、翔鶴が放った最後の爆撃機が雪羅に爆撃を命中させる。

 

雪羅「っ!?·····フフフッ流石は五航戦ですね···では1つ、良いことを教えてあげましょう···戦場で互角に戦っている2人、そのどちらも正々堂々とし、決して譲らない戦場で···どちらかが"負けるには"、どうすれば良いですか?」

 

翔鶴「まさかっ!?」

 

雪羅「フフフッ···誰かが乱入すれば良いんですよ!」

 

雪羅が狙いを瑞鶴に定め、砲撃する。それは瑞鶴の横腹に命中し、瑞鶴は倒れる。瑞鶴の元に行こうとした翔鶴に骨格船の砲撃が集中する。そして青葉も倒れ、そこに雪羅は砲口を向ける。

 

エンタープライズ「雪羅!」

 

雪羅「卑怯···ですか?私は無駄が嫌いなんです···面倒事は、さっさと終わらせましょう?」

 

雪羅は不意にエンタープライズに砲口を向け、砲撃する。しかし防弾はエンタープライズの横を通り抜け、背後の遠くにいる何者かに命中する。

 

???「グハッ!気づいてたのか!?」

 

雪羅「ええ、ずっと前から···ですが、殺意を感じたので撃ちました。ところで、あなたは誰です?セイレーン···」

 

セイレーン「アッハハ···私は『ピュリファイアー』ってんだちょっと遊ぼうぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM『桜動』

 

 

雪羅「エンタープライズ、ここはお任せを。ウォーエンド、片付きましたね?」

 

ウォーエンドは浮上してサムズアップする。ウォーエンドは撃破した潜水艦を安全な場所まで移動させていたようだ。

 

雪羅「では、状況開始!」

 

骨格船が前衛艦隊の代わりに前線に向かい、その後方からウォーエンドが追従していく。

ピュリファイアーはシュモクザメのような艤装に跨がり、レーザーを発射してくる。レーザーを骨格船は回避し、砲撃を当てていく。しかし3機とも弾切れになってしまう。

 

ピュリファイアー「あれぇ?弾切れになっちゃったか?」

 

しかし骨格船は雪羅の盾となり、撃破されていく。その時、ピュリファイアーの真下から魚雷が命中し、怯んだところに雪羅の砲撃が艤装に命中する。

 

ピュリファイアー「こんのっ!」

 

ピュリファイアーは距離をとり、艤装の口の部分からエネルギーをチャージし強力な一撃を放とうとするが、雪羅の砲撃がその口内に撃ち込まれ、ピュリファイアーの艤装は大破する。

 

ピュリファイアー「嘘だろ!?」

 

そしてそこにウォーエンドの魚雷が連射され、更に艤装はダメージを受ける。

 

ピュリファイアー「クソッ!この···覚えてろよ!」

 

ピュリファイアーはそのまま撤退していく。そしてエンタープライズ達も海上の制圧まであと少しというところとなったが、軍港に停泊している空母の艦橋が爆発を起こす。

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回でピュリファイアーが登場しましたが、相性が悪かったとしか···


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第28話 焔桜

重桜に上陸したヒロ達は基地に突入し、義人の元を目指す。そこで待っていたものとは···?


憤怒を先頭に、三笠、時雨、ベルファスト、キュラソー、カーリュー、そしてヒロはエリザベスの艦隊の支援を受け、上陸に成功する。

 

エリザベス「脱出経路はこの私達に任せなさい!」

 

ヒロはサムズアップして応え、基地へと突入していき、エリザベス達は脱出経路の確保に向かう。

そしてエリザベス達が交戦を開始したとほぼ同時刻に憤怒達はKAN-SENと交戦を開始した。

憤怒は敵陣に突撃し、三笠はヒロを後ろに隠しながら砲撃し、時雨とベルファストはヒロに狙いをつけられないように動く。

そうして進んでいくと、小銃を持った兵士がヒロに銃口を向ける。ヒロは抜刀すると同時に小銃を切り落とし、兵士の手足を浅く斬り、戦闘不能にさせる。

 

憤怒「流石だぜヒロ!」

 

更に進んでいくと、義人が高台からこちらを見下ろしており、それに気づいた一行は進もうとするが、『吹雪』を旗艦とする艦隊に阻まれる。

 

憤怒「っ!?···アッハハハ!姉貴ぃ!」

 

憤怒は吹雪に突撃し、腹を蹴り飛ばす。

 

憤怒「ここは任せろ!早く行け!」

 

三笠「無理はするでないぞ!」

 

ヒロ達が先へ進むと、憤怒は艦隊の前で改めて構え直す。

 

憤怒「決着つけようぜぇ姉貴達ぃ!オレは特型秘匿駆逐艦、憤怒だ!」

 

 

 

 

 

 

 

義人を追いかけていくと、演習場に着いた。そこには赤城、愛宕、高雄、夕立、白露がいた。そして反対側の観客席に義人が立っていた。だが、その全てが虚ろな目をしていた。

 

三笠「義人殿!お主、どういうつもりじゃ!?」

 

義人「私は天城を復活させる···そのためならば手段は選ばん」

 

ベルファスト「そのためにセイレーンを手を組んだのですか?」

 

義人「ああ。セイレーンどもは、天城を復活させてからならいくらでも葬ってくれる···やれ」

 

赤城達が攻撃を仕掛けてくる。その赤城の髪には桜の紋様のある髪止めがつけられており、ヒロの知っている赤城だとわかる。ヒロはそれを見て泣きそうな顔になる。

 

時雨「義人!アンタ自分が何してるかわかってるの!?」

 

三笠「この···卑怯者!」

 

義人「なんとでも言え」

 

義人は奥へと去っていく。そして三笠の後ろにいるヒロ、砲口を高雄が向ける。しかしその高雄に爆撃が命中する。

 

加賀「ヒロには指1本触れさせんそ!」

 

三笠「加賀殿!?」

 

加賀「遅くなってすまない。ヒロが持っていた艦載機のおかげで場所がわかったぞ」

 

ヒロは笑顔になるが、すぐに不安な顔をして赤城の方を向く。

 

加賀「姉様···姉様達は義人の持っているブラックキューブとやらのせいで魂を封じ込められている。私は従うふりをしていたから封じ込まれることはなかったが···何か、引きずり出す方法があれば···」

 

ヒロは少し考えた後、意を決した顔つきになり、急いで書き込んで加賀に見せる。

 

『僕を援護して!』

 

加賀「何をするつもりなのかはわからんが···死ぬでないぞ!」

 

加賀は艦載機を飛ばす。それに合わせてヒロは駆け出し、赤城に近づく。赤城と加賀の艦載機が激しい空中戦を繰り広げ、それを抜けて落とされる爆撃をヒロは避けながら赤城の元まで辿り着く。そしてヒロは赤城に飛び付き、しがみついた。

赤城はヒロを振りほどくが、ヒロは再び赤城に飛び付いた。そして、赤城の耳元で口をパクパクさせている。

 

時雨「ヒロ···まさか!?」

 

 

 

 

 

 

実際のところ、ヒロは自身が喋れない事で、酷く自身を責めていた。

 

昔みたいに喋れれば、もっとたくさん伝えたいことを伝えられたのに···

喋れれば、助けをすぐに呼べたのに···

 

けれど、ヒロはKAN-SEN達と過ごすうちに、それは間違いだと気づいた。

 

喋れなくても良い、一緒にいられるだけで、嬉しくて、幸せだった···

 

けれど、それは邪魔されてしまった···

 

そして今、ヒロが最初に出会ったKAN-SENの1人である赤城の魂が囚われている···

 

この瞬間、ヒロは今までで1番『喋りたい』と強く、強く願い、口を動かす。喉からは息づかいしか出なくても、口と喉を動かし続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤城(冷たい···酷く冷たい···ああ、私は沈んだのですね···でも、この僅かな暖かさは?)

 

そしてその暖かさは次第に大きくなっていき、ヒロは再び振りほどかれ、それでも飛び付き、耳元で口と喉を動かす。

 

ヒロ「───」

 

掠れた音しか出ず、ヒロは更に口と喉を動かし、そして···

 

ヒロ「アかGi!」

 

その場にいたKAN-SEN達全てが動きを止める。ヒロの叫びは音程が完全に外れており、言葉とすら言えるのかすら怪しい。

 

三笠「ヒロ···?」

 

 

 

 

赤城(今のは···声?ですが、聞いたことの無い···けれど、暖かい···)

 

ヒロ「あKaギ!」

 

赤城の目が、元に戻る。しかしそれと共に赤城は意識を失い、倒れ込む。更に人型セイレーンが数人現れ、攻撃を仕掛けてくる。

ヒロと赤城の元に加賀が駆け寄る。

 

加賀「ヒロ···ここは任せて行け!ブラックキューブを破壊すれば、おそらく愛宕達も元に戻るだろう」

 

ヒロは頷いて義人の向かった方向に駆けていく。それを見届けた加賀は赤城を物陰に移動させ、セイレーン達に立ち塞がる。

 

加賀「先へは進ませんぞ···一航戦加賀、参る!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

義人は量産型加賀に乗り込み、出港の準備を進めていた。

 

船員「本当に、良いので?」

 

義人「重桜はおそらく陥落する。今のうちに私達は進まねばならん」

 

するとヒロが軍港に現れ、小銃を構えた兵士を刀1本で無力化しながら量産型加賀に乗り込んでくる。そして兵士を無力化しながら義人の元まで辿り着く。

 

義人「ここまで来るとはな···良いだろう、私が自らお前を終わらせてやろう」

 

義人が軍刀を抜き、義人とヒロは刀を構える。義人は剣道のような構えであり、ヒロは下段に構え、ほぼ同時に突撃する。

互いが受け流し合い、僅かな傷をつけ合い、時に互いに弾かれる。そして斬り合いの中に格闘を混ぜて戦う。

 

そして義人の袈裟斬りをヒロは横に転がって回避し、その時に刀を左手に持ち替え、刀の鵐目(しとどめ)を鞘に打ち付ける。そして義人が刀を振り上げた瞬間、ヒロは"逆手に持ったナイフを抜くように"刀を振る。すると2重になっている鞘の内側の鞘に刀を鵐目が接続され、内側の鞘が引き出される。

 

その内側の鞘は···諸刃の刃がついており、それを見た義人はほんの僅かに驚き、義人の胴体は斬られる。しかし義人は咄嗟に後ろに引いていたため、傷は浅かった。

そしてその時、ヒロと義人の戦いに見て焦ったKAN-SENが砲撃し、それは量産型加賀に命中し、それにより誘爆が発生し義人とヒロは飛行甲板に投げ出される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

義人とヒロは受け身を取り、互いに睨み合いながら立ち上がる。その時、義人の後ろにある艦橋が爆発を起こす。

 

 

 

推奨BGM『Stain』(ACVより)

 

 

 

義人「ヒロ···貴様は、ここで殺しておかねばならん···本能で解る。貴様もそうだろう?」

 

義人は軍刀を構え直し、ヒロは左手で刃のついた鞘の取っ手を掴み、刀と鞘を分裂させ、2刀状態となる。

そして2人は駆け出し、義人は間合いに入ったところで斬り上げるがヒロはそれを横にステップして回避する。そしてそのまま回転して斬りつけるが義人は後ろに引いて避ける。

 

その後義人は左手にブラックキューブを持ち、それをヒロに向ける。するとブラックキューブから砲撃が放たれ、ヒロは咄嗟に横へのステップで回避する。

しかし次の砲撃からは受け流しながら義人へと近づいていく。義人は自ら接近し、刀を振るうが、ヒロは受け流しつつブラックキューブを狙う。

互いに受け流すも、互いに少しずつ傷ついていく···

 

そしてヒロは右手の突きでブラックキューブを破壊するが、同時に義人によって左頬を斬られる。

 

義人「貴様···貴様ぁぁぁぁぁ!」

 

義人は左手でヒロの顔面を殴り付けるとヒロの胸を袈裟に斬りつけ、そのままの勢いで回転し斬り上げ、ヒロの胸はX字に出血する。しかしその時、量産型加賀が更に誘爆を起こし、飛行甲板にも被害が及ぶ。

ヒロが立ち上がると周囲は火に包まれており、ヒロは以前のトラウマを思い出す。家が燃え、妹である清魅を失い···

ヒロの心臓は痛みだし、息も荒くなってくる。そんなヒロに義人は刀を振り上げる。しかし、ヒロは弱々しく逆手に持った鞘で受け止めるしかできなかった。義人はヒロの腹を蹴り飛ばし、追撃を仕掛けようとする。

 

するとヒロの頭に清魅の声が甦る。

 

清魅(絶対また会えるから)

 

ヒロは再び立ち上がり、義人の懐に潜り込む。そこでヒロは刀を斬り上げ、義人の左腕を切り落とす。

 

義人「があああああああっ!」

 

更に鞘を振り下ろし、義人の左目を斬りつける。怯んだ義人にヒロが追撃をしようとしたところに海からテスターが現れ、義人を掴んで離れる。

 

義人「離せ!奴を、奴を!」

 

テスター「ブラックキューブのデータはちゃんとバックアップを取ってあるわ。それに、今は引いた方が良いんじゃない?」

 

義人「クソッ···ヒロ···次は必ず殺す!」

 

ヒロはテスターの元に駆け寄ろうとしたが、量産型加賀が大きな爆発を起こし、ヒロは海に投げ出され、その隙にテスターは義人を連れて撤退する。

そして、海に落ちたヒロを何者かが受け止めた。ヒロが見上げると、受け止めたのは赤城だった。

 

赤城「ヒロ!」

 

ヒロは安心し笑みを浮かべた後、意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、重桜は長門と天皇により一時的に落ち着きを取り戻し、以前のような状態に戻り、アズールレーンにも再加入を果たすこととなった。

 

 

 

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

これにて、第3章は終わりとなります!
さて、今後の展開は如何に?

●91式仕掛け刀
ヒロに与えられた鞘が2重になっている特殊な刀。
1刀形態、合体形態、2刀形態の3つの形態にすることが可能であり、内側の取っ手のついた鞘は諸刃の刀にもなっている。

●鵐目
刀の柄を補強するための先端の金具。
91式仕掛け刀ではこれと内側の鞘に接続することにより合体形態にできる。

●諸刃の刃
刀や剣の両方のふちに刃がついているもの。
91式仕掛け刀では内側の鞘が諸刃になっている。


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番外編 燃えた声

ヒロは出撃前、妹である清魅との思い出を振り返る。


番外編です。時間軸は重桜へ攻め込むちょっとだけ前です。


ヒロは重桜へ攻め込む作戦に出撃する前、清魅との思い出を振り返る···

 

 

 

 

 

 

ヒロの家は海辺にあり、すぐそばに海がある。

小さい頃から清魅は活発で、ヒロといつも一緒だった。時に喧嘩する時もあったけれど、すぐに互いに謝って仲直りしていた。

母親はあまり構ってはくれなかったものの、父親はよく自身の研究に2人を立ち会わせたり、2人に実験をさせてくれたりしていた。だが母親は2人に愛情がなかった訳ではなく、少ない時間で一緒にいてくれた。

祖父の銀治は軍部にいたもののよく護身術を教えてくれ、緊急時の対処法も教えてくれた。

友人であり、姉のように慕っていた冴は本当の姉のように接してくれた。

 

ヒロがいじめられていると、清魅は真っ先に駆けつけていじめっ子をボコボコにした。

活発で好戦的な清魅と臆病なところがあるヒロ、2人はよく助け合っていた。

知らない土地で迷子になった時も、臆することなく進む清魅と感覚で場所を掴んで進むヒロとで逆に様々な経験を得て家に帰れたり···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし2年前、それは終わりを告げる。

発端はヒロへのいじめを清魅が止めたことからである。転校してきた生徒からヒロはいじめを受け、不登校になってしまった。しかしそれでも脅しの電話や家の壁に落書きをされるなどし、学校はまともに取り合わなかった。

それに我慢できなくなった清魅は夜、スプレーを持ってやって来たその生徒を何度も蹴りつけ、金槌で生徒の右腕を折った。

 

野球選手を夢見ていた生徒は酷く落ち込み、清魅は退学処分となった。銀治はやり過ぎだとしたものの、ヒロを守ろうとした事を評価し、まともな対応をしなかった学校は保護者会からも追及された。

 

しかし学校は結局事件をうやむやにし、2人の教育は父親と銀治と冴が交代で教えることになった。

しかし2人はそれでのびのびと学ぶことができ、座学のできないヒロも前よりは学べるようになっていった。

 

 

 

 

そしてある日の夜、ヒロと清魅は銀治とテレビ電話で通話していた。

 

清魅「アッハハ!チャオ~!元気かよじいちゃん?」

 

ヒロ「久しぶり~!」

 

銀治《おう!2人も元気そうで良かった!》

 

そして笑顔で通話していると、別の部屋の窓ガラスが割れる音がした。そのすぐ後に下の階からも窓ガラスの割れる音がし、次の瞬間爆発が起きる。

 

ヒロ「いだだ···清魅、大丈夫?」

 

清魅「大丈夫···にしてもなんだ今の?」

 

銀治とテレビ電話をしていたパソコンは衝撃により壊れており、2人は廊下へ出てみる。すると奥の部屋から火が出ており、2人は戦慄する。

2人がいるのは2階であり、同じ階の父親の元に向かおうとするが、父親の部屋に着く寸前、窓から火炎瓶が投げ入れられ、ヒロのすぐ近くの壁に当たり、火がヒロの体についてしまう。

 

ヒロ「熱い!熱いよぉぉ!」

 

ヒロは火を消そうと暴れるが、火は消えない。

 

清魅「待ってろ!すぐに水持ってくる!」

 

清魅は下の階に向かい、バケツに水を汲んでくる。しかし清魅は下の階にも火が回ってきている所を見てしまい、急いでヒロの元へ急ぐ。そしてヒロに水をかけ、消火する。

ようやく父親の部屋の扉に手を掛けようとしたところで気づいてしまった。

父親の部屋も燃えていることに。

ヒロの目に涙が浮かぶが、清魅はヒロに肩を貸して階段へと進む。

 

清魅「おい!早く行くよ!」

 

ヒロも懸命に足を動かすが、下の階で爆発が起こり、2人はバランスを崩す。その爆発の影響で木材の破片がヒロの足に突き刺さり、ヒロは足をうまく動かせなくなる。

 

清魅「こういう時って確か···抜いちゃダメなんだっけ?」

 

ヒロ「痛い···痛いよ···!」

 

清魅は再びヒロに肩を貸して進む。ヒロは心配で清魅の顔を見上げる。

 

清魅「···大丈夫。絶対に助けるから!」

 

清魅はヒロに笑いかける。そして下の階に向かおうとしたところで下の階で大きな爆発が起こり、2人は離れた場所に飛ばされる。

 

清魅「クッソ···!兄貴、大丈夫か?」

 

ヒロ「清魅!···清魅ぃ!」

 

ヒロは木片の刺さった足を引きずりながら清魅の元に行こうとするが、清魅はふと横に目を向け、目を見開く。

 

清魅「クソッ!」

 

清魅はヒロに駆け寄り、抱き上げる。

 

清魅「いい?受け身取れよ?」

 

ヒロ「と、取れるけど···」

 

ヒロは清魅に抱き抱えられ、窓の近くまで運ばれる。

 

清魅「絶対また会えるから!だからそれまで泣くんじゃないよ!」

 

ヒロ「えっ!?ちょっと、清魅!?」

 

ヒロは清魅に窓から投げられ、全てがスローモーションに見える。

 

 

 

ヒロ「清魅いいいいいいいいいっ!」

 

 

 

清魅は涙を流しながら笑顔でいる。

 

 

 

そした清魅の横で爆発が起こり、清魅は木片と共に海に投げ飛ばされる。

 

 

 

地面に落ちたヒロは起き上がるものの、あまりの出来事に体が動かず、ただ叫ぶことしかできなかった。

 

ヒロ「あ···あ···ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

 

 

 

 

 

その後、銀治の連絡を受けて駆けつけた冴によってヒロは病院へ運ばれ、その後事件について調査が行われた。

犯人はヒロをいじめた生徒の家族であり、骨折させたことへの報復が目的で自作の火炎瓶と爆弾を投げ入れたとの事。これにより、その生徒の家族は刑務所行きとなり、その生徒もいじめの件で捜査が入ることとなった。

また、ヒロの両親はこの放火により死亡していた。

 

しかし、ヒロはこの事件によるトラウマから喋れなくなり、大きな火を見るとフラッシュバックしてしまうようになった。

その後は銀治がヒロの保護者となり、ヒロに様々な事を教えると同時に、自身の助手として手伝いをさせることとなった。

 

しかし清魅の遺体は見つかっておらず、ヒロはその事からも行方不明ということにしてもらっている。

 

なお、軍部の人達はヒロの事を考え、情報を漏らさない事を条件に銀治と共に基地に入ることを特例として許すことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、思い出を振り返ったヒロは鞘の取っ手を握り締め、立ち上がる。

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

ヒロと清魅の過去を明かし、ヒロの会話も出してみましたが、どうだったでしょうか?


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幕間 再加入


重桜の復興がようやく落ち着いてきた頃、ヒロ達は自身の事と重桜のこれからの事に直面する。


重桜へ攻め込む作戦の後、重桜はとりあえず復興に力を注ぐこととなり、主に中枢地区の復興は落ち着いてきていた。

 

ヒロはKAN-SEN達の元を確認してまわっていた。

長門と阿修羅は楽しく話しつつ、復興のために人々とKAN-SENを激励していた。憤怒やケンタウルスは相変わらず荷物持ちを担っており、雪羅はその指揮能力で素早く問題を解決し、ウォーエンドは水中の瓦礫などの撤去を行っていた。

そしてヒロが現在行っているのは、赤城と共に復興の度合いを記録することである。

 

その頃、銀治は夏月の元に戻り、今後について話し合っていた。

 

夏月「重桜のアズールレーン再加入は上も許可してくれるかもしれないが、扱い自体は···」

 

銀治「ああ。間違いなく冷遇されると共に、色々難癖もつけられそうだ···それと1つ気になるんだが···」

 

夏月「ん?」

 

銀治「ヒロの事だ···ヒロは今、秘匿KAN-SENを唯一指揮下に置いている人間かつエリザベス達も指揮下に置いている。もっぱら、ヒロは指揮を取る奴じゃないとはいえ···重桜のアズールレーンへの再加入の時にこれがなんと言われるか···」

 

夏月「そうなると、ロイヤルは間違いなく···」

 

銀治「ロイヤルと···東煌だ。東煌の場合、儂がヒロと三笠と共に視察に行った時、代表やその基地の指揮官、KAN-SENの雰囲気は良かった。だが···他がどうかはわからん」

 

夏月「となると···ヒロが思っている以上に、厄介事は多いってことか···」

 

銀治は頷き、その場に重い空気が流れる。しかしそれとは別に、赤城と加賀の尻尾のモフモフを思う存分堪能しているヒロだった···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日経った日、重桜のアズールレーン再加入についての会議が行われることとなった。

 

ユニオン代表「こちらは問題ないと思うぞ」

 

劉邦「こちらは···議会では反対が多数となっています···」

 

ユニオン代表「そうか···君の意見はどうだ?」

 

劉邦「私は···問題ないと思います。重桜の一件は黒鉄 義人の、いわば反逆にも等しいようなものです。重桜そのものに非があるわけではないと思います」

 

ユニオン代表「なるほどな···」

 

アイリス代表「こちらも劉邦と同意見だ」

 

ロイヤル代表「こちらは反対だ。裏切っただけではなく、艦隊まで奪っていった者共だぞ!」

 

ユニオン代表「艦隊を奪った?何を言う。エルデア·リーダス暗殺の件は調べがついている。未来のために行動した者を殺し、見限られたら裏切り者扱いか?」

 

ロイヤル代表「なっ···!」

 

北連代表「それに、秘匿KAN-SENやエルデア·リーダスの元指揮下の艦隊がついている鴉間 ヒロという人物を調べたところ、とても悪用するような者ではない事は明白だ。

なら、元凶である黒鉄 義人のいなくなった重桜は以前のような所に戻ったということになるだろう。よってこちらは重桜の再加入を支持する」

 

ユニオン代表「では···賛成多数により、重桜のアズールレーン再加入を許可する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、重桜の再加入の許可を知らされた銀治はヒロにその事を伝えに行ったのだが、仮拠点でヒロはのんびり日向ぼっこしながら赤城と共に眠っていた。

 

銀治「伝えるのは、明日にしよう」

 

銀治はそっとその場を後にした···

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

さて、重桜がアズールレーンに再加入しましたが、若干不穏になってますね···


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第4章 蒼き航路
第29話 血濡れ


ヒロ達は元いた重桜へ帰ることとなり、引っ越しの準備を行う。


ヒロ達は重桜へと帰ることとなり、引っ越しのために1度夏月の基地に戻る事となった。

 

そしてヒロ達は引っ越しの準備に取り掛かる。

 

銀治「そういえば、ここにも結構な思い出ができたな」

 

ヒロは頷き、荷物を纏めて広くなった部屋を見渡す。その後食事のために食堂に集まり、そこでエリザベス達に今後を聞いてみる。

 

三笠「そういえば、エリザベス殿達はどうするのじゃ?」

 

エリザベス「もちろんヒロに着いていくわ。仮にも転属先はヒロの元だったし」

 

 

 

 

 

その頃、重桜では中枢地区の基地の改装工事が行われていた。実はヒロ達の所属場所がここに変更となり、義人の頃の雰囲気からヒロのような明るい雰囲気へと変えているのだ。

しかしヒロ達の所属場所が変更になったのは、エリザベス達を迎えるとなるとヒロ達のいた基地では人数が収まりきらないからである。

 

赤城「そこっ!サボるなど言語道断ですわ!早く仕事に戻りなさい!」

 

赤城はかなり張り切っており、現場の指揮を取っている。それにより改装工事は進んでおり、ヒロ達が来るまでには終わりそうである。

 

 

 

 

 

 

 

 

夜になり、ヒロ達は重桜へ帰る前にパーティーが行われる事となり、盛大に楽しむことになった。

まずはレキシントンとサラトガによるライブで盛り上がり、次にビンゴ大会(罰ゲームあり)でも盛り上がった。

 

夏月「クッソ~、罰ゲーム俺かよ~!···ん?阿修羅、なんで俺を立たせる?なんでタイキックの構えをして···(素晴らしいタイキックの音)ア"ア"ア"ア"ア"ア"ッ!」

 

尻を抑えて悶える夏月を尻目にヒロはチキンを頬張り、楽しい時間は過ぎていく。

そしてパーティーが終わり、ヒロ達は就寝の為に各自の部屋に戻る。ヒロは残り2枚となった設計図を見るために箱を探すが···無い。ヒロ達は一瞬動きが止まった後、すぐに引っ越しのために整理した荷物を全て確認するが、やはり箱が無くなっている。

 

銀治「どうした?···箱が?この様子だと、荷物は全部確認したようだな···」

 

すると物音を聞きつけた三笠と憤怒と雪羅がやって来る。事を説明すると、雪羅と憤怒は窓から外へ出て辺りを見渡す。

 

雪羅「これは···ここの誰のものでもない足跡があります!おそらく盗まれたものかと!」

 

憤怒「まさか···!」

 

銀治はすぐさま夏月の部屋に向かい、状況を知らせる。そしてすぐに捜索が始まる。

 

ケンタウルス「パーティーに紛れて盗むか···許せん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ある廃ビルで4人組の男がテーブルにいくつかの物を広げていた。

 

男A「設計図は2枚あるのか···」

 

男B「はい。これに我が国の発見した空のキューブを使用すれば2体の秘匿KAN-SENは我が国の者となりましょう!」

 

男C「空のキューブはまだ1つだが、どうする?いっそここで秘匿KAN-SENを建造して、建造方法まで持ち帰るか?」

 

男D「俺は賛成だ。それじゃ、見張りに戻る」

 

男A「頼むぞ···で、私も賛成だが、異論はあるか?」

 

男B「ありません」

 

男C「俺もだ」

 

男A「なら、建造方法を暴こう。幸い設計図は2枚ある。1枚使い物にならなくなっても、問題はない」

 

こうして、ヒロから盗んだ設計図とどこからか発見した空のキューブで、秘匿KAN-SENの建造を行おうとする男達···

しかし通常の建造方法では建造できないため、方法はなかなか見つからない。すると男Cは次第に苛立ち始め、空のキューブを設計図に叩きつけてしまう。

すると空のキューブは眩い光を放ち、光が収まるとそこには1人の女性が立っていた。

 

白いロングコートを着た青いサイドテールの女性は目を開けると、狂気的な笑みを浮かべて男達を見る。

男達は驚いたものの、すぐに落ち着いて女性に話しかける。

 

男A「お前は···KAN-SENか?」

 

女性「そうだよ。それであなた達は?それに、ここは?」

 

男A「我々は東煌の私設組織の者だ。ここは一時的に拠点としていた廃ビルだ」

 

すると女性は1歩近づく。

 

女性「ふうん···ねぇあなた、私とっても痛かったんだけど?」

 

女性は笑顔のまま男Cに歩み寄る。

 

男C「す、すまなかった···建造方法がわからなくて、イラついてしまったんだ」

 

女性「ふうん···じゃあ、1つ聞くけど···"私の主はどこ?"」

 

男A「主だと?我々が建造したのだから、我々が主だ」

 

女性「違うよ~?設計図の頃の私の所有者が主だよ?」

 

男A「な、なんだと!?」

 

女性「そ·れ·に~、人のもの盗むなんて···ダメだよね?」

 

女性は間髪入れずに男Cの喉に食らいつき、喉の肉を食い千切る。そして肉を吐き出し、男Aの腰からナイフを奪い取り、腹を切りつける。そしてその傷口にもう片方の手を突っ込み、内臓を引きずり出す。

 

男A「ギャアアアアアッ!」

 

女性「アッハハハハッ!」

 

男B「このっ!」

 

男Bが拳銃で撃つが避けられ、顔面を掴まれて壁に叩きつけられ、頭部が潰される。そこに男Dが駆けつけるが、男Dが見たのは男達の血を舐め啜る女性だった。

 

男D「うわあああっ!」

 

女性「アハッ!」

 

女性はナイフを男Dに突き刺し、そのまま押し倒す。そして男Dの体を滅多刺しにする。

 

女性「さてと、ヒロの元に戻らないとね!」

 

女性は最後の設計図の入った箱を持って廃ビルを後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

設計図の入った箱の捜索は難航し、ヒロは泣きそうな顔で夜道を憤怒と共に走る。すると道の角で何者かとぶつかる。ヒロはぶつかった人を見上げ、目を見開く。憤怒はその人を見るとすぐに警戒する。

 

女性「はぁ~!ヒロ!会いたかった!」

 

白いロングコートの多くを赤い血に染めた女性はすぐさまヒロを抱き締め、ヒロは困惑の表情を浮かべる。

 

憤怒「あー、もしかしてお前、『ゴア』か?」

 

女性「うん、私はゴアよ!ヒロ、この姿で会うのは始めてだね!あれ?てことはあなたは···憤怒?」

 

憤怒「そうだよ···なぁ···ヒロの顔と服見てみろよ」

 

ヒロの顔と服はゴアの服の血がついてしまっていた。

 

ゴア「あっ!ごめん、服のは洗うしかないけど、顔のは取れるから」

 

そういうとゴアはヒロの顔をベロリと舐め、血を舐めとる。ヒロはかなり驚いている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

基地に戻ると血まみれの2人に皆は驚いていた。

 

ゴア「私は『新型秘匿空母"ゴア"』よ。よろしくね!」

 

ヒロの元に、あなたな秘匿KAN-SENが加わった瞬間だった。

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回はグロありましたが、R-15の範囲なのでしょうか?

●私設組織
東煌に本部のある組織であり、"力"を東煌に集中させ、東煌による世界の支配を目論んでいる。
しかしテロ行為などを積極的に行っているため、アズールレーン全体の、特に東煌の上層部から危険視されている。

●新型秘匿空母 ゴア
青いサイドテールの髪で白いロングコートを着ているKAN-SEN。
かつてないほど巨大な船体に多くの砲台と機銃を備え、要塞としても機能し、敵陣を血で染め上げる事を目的としている。
性格は明るいが執拗に血を求め、時に血を服に塗りたくる事もある。

設計図に関しては敵陣を血で染め上げる目的だけでなく、設計図そのものが血によって書かれていた事から血を執拗に求めているとされている。
また、一部の部位の接合部がちょうど魚雷の当たる位置にあるため、そこに魚雷が当たると内部機構が露出するという致命的な欠陥がある。

また、7つの大罪に例えると『貪食(Gluttony)』となる。


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第30話 秘匿されし大罪

新たな秘匿KAN-SENであるゴアを迎えたヒロは重桜へ帰還する。
そしえ、新しい拠点で遂に···


夏月とその艦隊から見送られながらヒロ達は出港し、重桜へと帰還する。

新しい拠点となる、かつて義人のいた中枢地区の基地は義人の時代とはまったく違い、堅苦しい雰囲気から明るい雰囲気になっていた。

目を輝かせているヒロ達にこの基地の配属となっているKAN-SEN達が出迎え、加賀や赤城も出迎えてくれていた。

 

赤城「ヒロ!」

 

赤城はヒロを抱き締め、他もそれぞれで祝福する。その後、加賀からいくつかの知らせを聞くこととなる。

 

加賀「新しく知らせることだが、基本的な指揮権は銀治に移行となり、秘匿KAN-SEN達の管轄はヒロに任せるそうだ。それと···」

 

加賀はヒロに空のキューブを手渡す。

 

加賀「義人の時代に手に入れていたものだ。設計図の最後の1枚に使え」

 

ヒロは頷き、加賀から部屋割りなどの説明を聞いた後、ヒロは空のキューブを最後の設計図に落とす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現れたのは白いフライトジャケットと青いセーラー服を着た桃色のボブカットのKAN-SENだった。

 

KAN-SEN「ヒロ、この姿では始めてじゃの。妾は『新型秘匿軽巡"(アマツ)"』じゃ!」

 

ヒロは喜び、その場に勢揃いした秘匿KAN-SEN達を見渡し、目を輝かせている。

 

銀治「揃ったな。ならちょっと演習でもするか」

 

天「いや···その···妾は···」

 

ゴア「あっ···」

 

ケンタウルス「そういえば···」

 

ウォーエンド「天って、近代化改修しないと本領発揮できないんだったね」

 

ヒロはメモ用紙と取り出して書き込む。ちなみにヒロはまだ言葉のリハビリ中であり、まだメモ用紙とペンが手離せないのだ。

 

『ならすぐにやろう!』

 

雪羅「資材は揃っているので、問題はありません」

 

 

 

 

そして、近代化改修された天と共に演習を行うこととなる。

 

銀治「皆、今回の演習は秘匿KAN-SENによるバトルロワイヤルだ」

 

観客席から演習場を眺めるヒロ達はゴアと天の艤装に注目していた。

ゴアの艤装はとにかく巨大で、天は特殊なウイングがある。そして演習開始のブザーが鳴ると、それぞれが戦闘を開始する。

 

ケンタウルス「阿修羅ぁ!貴様とはここで決着を着ける!」

 

阿修羅「どちらが強者で勝者なのか···見せてやろう!」

 

ケンタウルスと阿修羅は互いに砲撃しながら突撃していく。

 

憤怒「オラオラ、下を取れるもんなら取ってみろよ!」

 

ウォーエンド「まったく、よりによって最速に粘着されるとはね···」

 

憤怒はウォーエンドに下を取られないようにしつつ高密度に機雷を射出し、ウォーエンドも逃げ場を失わぬよう動きつつ魚雷を撃ち込んでいく。

 

ゴア「アッハハハハッ!それそれぇっ!」

 

雪羅「流石はゴア、艦載機の数が他とは比べ物になりませんね···」

 

天「フハハハハッ!妾を忘れるでないぞ!」

 

ゴアは大量の艦載機を発艦させ、雪羅と雪羅の骨格船、天を同時に攻撃し、雪羅は骨格船をなんとかゴアに接近させようとしながら天に砲撃していく。天は空から砲撃し、ゴアと雪羅を相手取っている。

 

綾波「と、飛んでるのです···!」

 

銀治「秘匿KAN-SENは皆それぞれ他とは違った性能を持っている。まあ、だからこそ···より相性もハッキリしてくる」

 

ゴアの艦載機の群れに突っ込んだ天は艦載機を次々と落としていくが、雪羅の正確な砲撃により撃破されてしまう。更に、ゴアは骨格船を全て撃破したものの、雪羅の砲撃を連続で受けてしまい、大破判定となる。しかし雪羅もゴアの艦載機を回避しきれず、大破判定となってしまう。

 

ウォーエンドは息継ぎのために浮上したところを憤怒に砲撃され、魚雷は避けられ、一方的な消耗戦になっている。そして遂にウォーエンドは大破判定となってしまう。

 

その頃ケンタウルスと阿修羅は互角の戦いを続け、互いに中破判定ではあるが一進一退の攻防を続けており、それを見ていた憤怒は砲口を下げ、演習場から出る。

そしてケンタウルスと阿修羅はしばらく戦った後、互いの砲撃により同時に大破する。

 

 

 

 

 

 

 

 

演習が終わった後、ケンタウルスと阿修羅は憤怒に質問を投げかける。

 

ケンタウルス「なぜあの時私達に攻撃しなかった?君なら消耗した私達を倒すことができただろう?」

 

憤怒「ああ、それはな···なんか2人の戦いって、なんだか決闘みたいな感じがしてよ···それで割り込む気になれなかったんだ」

 

阿修羅「なるほど、感謝する」

 

そしてこの演習から数日後、新たな作戦を開始することとなる。

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

これでヒロの秘匿KAN-SEN達は揃いました。天は今回活躍の機会は少なかったですが、今後はちゃんと出していきます。

●ゴアのスキル
『血を求めし獣』(攻撃スキル)
敵艦を1体撃破するたびに自身の火力と回避を3%(MAX15%)上昇させる。

『血染めの要塞』(攻撃スキル)
10秒毎に扇状の特殊弾幕を展開し、1発の命中につき3%(MAX30%)装填を次の特殊弾幕を展開するまで上昇させる(ダメージはスキルレベルによる)。

『秘匿されし者·Gluttony』
自身の体力が半分以下になった時に自身の火力を50%上昇させ、味方全体の体力を15%(MAX40%)回復させる。

●新型秘匿軽巡 天
桃色のボブカットの髪で白いフライトジャケットと青いセーラー服を着たKAN-SEN。
武装自体は他の軽巡とあまり変わった所はないが、近代化改修を行うことで空を飛ぶことが可能となる。
性格は傲慢だが思考は柔軟であり、空を飛べることを誇っている。

設計図に関しては"空を飛ぶ船"を目的として設計されていたが、構造や航空機との組み合わせに難航し、設計は途中で断念された。

また、7つの大罪に例えると『傲慢(Pride)』となる。


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第31話 天を舞う船

レッドアクシズへの対抗力を強めるため、海域の奪還を行うことになった赤城達は海域の奪還作戦を開始する。


作戦領域:ソロモン海域

 

編成:

第1艦隊→赤城、加賀、三笠、ケンタウルス、時雨、綾波

 

第2艦隊→雪羅、土佐、ゴア、高雄、愛宕、憤怒

 

第3艦隊→エリザベス、ウォースパイト、アーク·ロイヤル、べルファスト、ジャベリン、天

 

作戦開始時刻:14:00

 

今回の奪還目標であるソロモン海域はレッドアクシズの重要な補給線の1つにもなっている。つまりここを奪還すればレッドアクシズの戦力を減らすことができ、こちらの対抗力も増すだろう。

健闘を祈る。

 

 

 

 

 

出撃ドックから艦隊が次々と出撃していき、ヒロは手を振って見送る。

今回の作戦はレッドアクシズへの対抗力を強めるためのソロモン海域奪還作戦である。作戦としては第2艦隊が前線に突入し、その後方から第1艦隊が支援しつつケンタウルスを送り込み、第3艦隊は島に上陸し、拠点を叩くというものである。

 

ソロモン海域に入るとやはり、というべきか大量の量産型セイレーンと人型セイレーンが現れ、雪羅達は交戦を開始し、赤城達は支援を開始する。

雪羅は人型セイレーンを主に狙い、憤怒は敵陣に突撃して戦線を混乱させ引っ掻き回す。そしてそこに到着したケンタウルスが更に戦線を揺るがす。

そして戦線を突破し先へ進もうとしたその時、見慣れない人型のセイレーンが現れる。

 

セイレーン「ご機嫌よう、私は『ドメイン』と申しますわ」

 

白いゴシックロリータの服とを纏い、背中にイガクリガニのような黒く黄色い発光体のある艤装を背負っており、黒い日傘をさしたセイレーンはそう名乗った。

そしてその背後には数人のKAN-SENがいたが、どれもその表情から感情を感じ取れなかった。

 

ドメイン「こちらのKAN-SENはあなた方の知るKAN-SENではなく、ただの駒ですので、ご遠慮なく滅して構いませんわ。フフッ」

 

 

そして、島に上陸したエリザベス達にも見慣れない人型のセイレーンが立ち塞がった。

 

セイレーン「我が名は『アルゴリズム』。我が演算にひれ伏すがよい!」

 

黒い騎士のような鎧とノコギリザメのような槍型の艤装を持ったセイレーンは槍を構え、その背後から数人のKAN-SENも現れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM『Rain』(AC4より)

 

 

ドメインと交戦を開始した雪羅達は異変に気づく。ドメイン自身は攻撃を避けるか艤装の脚で砲弾を弾くなどしているが、周囲のKAN-SEN達のスペックが異様に高く、更にこちらの速力や装填速度は明らかに低下しているのだ。

 

ケンタウルス「体が重いな···どういうことだ?」

 

ケンタウルスはドメインを見て気づく。

 

ケンタウルス「そうか···雪羅、ゴア、奴を集中して狙え!赤城達もだ!」

 

雪羅「なるほど、了解しました」

 

ゴア「アッハハッ!」

 

ドメインに対し集中攻撃が始まり、形勢は少しずつ良くなってゆく···

 

 

 

 

 

その頃、アルゴリズムは天の空からの砲撃に苦戦し、槍と一体化している2連装砲からレーザーを放つが容易く回避される。

 

天「フハハハハ!他とは違うセイレーンだから強いかと思うとったが案外弱いのう!」

 

アルゴリズム「貴様っ!」

 

アルゴリズムのレーザーは避けられ、天は確実に砲撃を当てていくという一方的な戦闘になっていた。

 

アルゴリズム「我の演算が···通用しないだと!?」

 

天「お主の演算は雪羅と比べても大したことないのう!フハハハハ!」

 

アルゴリズムは特殊な演算能力により、天の行動パターンを予測するが、どれも天の攻撃は"当たる"という結果が出てしまう。

 

·近くのKAN-SENを人質に取る→構わず砲撃されるかピンポイントで砲撃される。

·こちらのレーザーを大量に発射する→70%は確実に回避され、更に確実にこちらにカウンターで砲撃される。

 

アルゴリズムは焦り、頬を汗が伝う。そうしている間にも砲撃は続けられ、天以外のKAN-SEN達は島の奥へと進んでいる。その演算結果はどれも制圧されてしまう結果しか出ず、アルゴリズムは更に焦る。

 

アルゴリズム(演算が···私の演算がっ!)

 

アルゴリズムのレーザーを天はスルスルと避け、急降下したかと思うと、アルゴリズムの艤装を刀で斬り裂いてアルゴリズムを背後から掴む。

そして急上昇し、そのまま飛び続ける。その行為に対しアルゴリズムは1つの演算を叩き出す。

 

アルゴリズム「まっ、まさか貴様!?」

 

天「気づいたか?その通りじゃ!」

 

天高く飛んだ時、天はウイングを折り畳み、まっすぐに急降下する。

 

アルゴリズム「やめろ!嫌だやめろ!」

 

そして大岩の所まで来たところで天はアルゴリズムを放す。大岩に顔面を打ち付け、頭部がグシャリと潰れたアルゴリズムは動かなくなる。

 

天「演算に頼りすぎじゃ、愚か者」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドメインと交戦しているケンタウルス達前衛艦隊は損傷が大きくなってきていた。

どうやらドメインから一定の範囲内にいるKAN-SEN達は動きが鈍くなり、それによりドメインの攻撃も当たりやすくなっているのだ。ケンタウルスは高雄と愛宕の盾になった影響で脚部が損傷し、更に動きが遅くなっている。憤怒が砲撃するものの、見た目によらず素早いドメインは回避する。

しかしそこに遠くからの砲撃が撃ち込まれ、ドメインは怯む。

 

雪羅《ドメインの領域から離脱しました。これより狙撃支援に入ります》

 

ドメイン「この短時間で、私の範囲から逃れるなんて···!」

 

再び砲撃が撃ち込まれ、ドメインは雪羅の元に向かおうとするが、空から砲撃され、背部艤装が損傷する。

 

天「フハハハハ!妾に感謝せい!」

 

ドメインが振り向いた瞬間、天の砲撃と雪羅の砲撃が同時にドメインに命中し、ドメインの艤装が破壊される。

これによりケンタウルス達はスピードを取り戻し、ケンタウルスはドメインに駆け寄り、その顔面に槍を突き刺した。

 

ゴア「もっと殺りたかったのに~!」

 

憤怒「他に敵は?」

 

赤城《他はもういませんわ、帰還しましょう》

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございました!

今回は新たに海域の奪還かつオリジナルセイレーンを2人登場させましたが、どうだったでしょうか?

●ドメイン
白いゴシックロリータとイガクリガニのような黒い艤装を纏った幹部セイレーンで、常に日傘をさしており、ファイアウォールと同様に拠点防衛を担っている。
武装は艤装の脚からのレーザーのみだが、周囲の味方の能力を上昇させ、反対に敵の能力は低下させる能力を持ち、味方の支援に徹している。

●アルゴリズム
黒い騎士のような鎧とノコギリザメのような槍型の艤装を持った幹部セイレーンで、主に作戦指揮や調査役を担っていた。
武装は槍での攻撃と槍と一体化している砲台からのレーザーである。
また、未来予知と言って良い程の高い演算能力を持つものの、それに頼りすぎている面があり、その事をオブザーバーからよく注意されていた。

●駒
セイレーン側がキューブから生み出したKAN-SENや通常の人型セイレーンを指す。
セイレーン側のKAN-SENは魂を封じ込められているため感情なくただ敵を攻撃するだけとなっている。

●天のスキル
『空を目指した船』(防御スキル)(近代化改修後に発動)
艦載機のように空中を飛び、空中から攻撃を仕掛けることが可能となるが、残り体力が20%を切ると空中からおり、他のKAN-SENと同様になる。

『柔軟に行け』(攻撃スキル)
20秒毎に10秒間、回避→命中→装填の順に自身のステータスを10%(MAX40%)上昇させる。

『秘匿されし者·Pride』(支援スキル)
戦闘開始時と30秒毎に2発×3の特殊弾幕を展開し、更に10秒間味方の回避と装填を30%上昇させる。


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第32話 招待

レッドアクシズへの対抗策を立てる銀治達の元に1人のKAN-SENが現れる。
彼女の目的とは···?


重桜では銀治達はレッドアクシズへの対抗策を立て、ヒロは赤城、阿修羅、時雨、冴と共にかつての基地の様子を見に行っていた。

 

冴「やっぱり懐かしいわね~!」

 

阿修羅「ここもなかなかに居心地が良さそうだな」

 

時雨「でしょう?」

 

ヒロはのんびりビーフジャーキーを食べながら基地を見渡している。そして昼近くになり、ヒロ達は久しぶりに鴉の家に向かい昼食を済ませることにした。

 

愛海「あら久しぶり!あら、そちらは新人のKAN-SENさんかしら?」

 

阿修羅「長門型秘匿戦艦、阿修羅だ」

 

愛海「よろしくね、阿修羅さん」

 

そしてそれぞれが食事を頼み、食事を終える。

 

愛海「皆最近どう?こっちは私1人でやってたのが1人増えて助かってるわ」

 

赤城「蛟さんですよね?」

 

愛海「そうよ。蛟ちゃん、ちょっとおいで~」

 

すると厨房から蛟が出てきてヒロ達に一礼する。

 

蛟「初めまして、私は蛟と申します」

 

蛟を見たヒロは目を丸くしており、阿修羅は何か違和感を感じているようだ。

 

冴「2人ともどうしたの?」

 

ヒロ「あ···あ···」

 

ヒロは口をパクパクさせた後、メモ用紙に書き込んだ。

 

『あなたはKAN-SENですか?』

 

阿修羅「お前から感じられるもの···まさか、私と同じ秘匿KAN-SENか?」

 

蛟は少し微笑み、答えた。

 

蛟「はい。私は秘匿KAN-SENです···では改めて、私は『扶桑型秘匿航空戦艦"蛟"』です」

 

赤城「あなた、KAN-SENだったのですか?」

 

蛟「はい。黙っていて申し訳ありませんでしたが、ここで見てみようという思いからですので、ご了承ください」

 

時雨「まあ、それは良いとして···いつからいたの?」

 

蛟「重桜がアズールレーンから離反する少し前に愛海さんに拾われ、この姿となりました」

 

阿修羅「となると空のキューブは···」

 

愛海「キューブは海辺にあったら拾ったの。設計図は遠出した先でやった肝試しの時に見つけたの」

 

ヒロは蛟に興味津々である。蛟と愛海は窓のカーテンを閉めると蛟は艤装を展開し、ヒロは蛟の艤装に目を輝かせており、阿修羅も驚いている。

その後、蛟は『ここで見ることにします』とのことで、軍に来ることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、ヒロの部屋の窓が小さく叩かれ、ヒロが覗くとそこには鉄血のケルンがいた。ヒロが窓を開けるとケルンは周囲を見渡した。

 

ケルン「お久しぶりです。折り入って頼みがあります」

 

ケルンからは敵意は感じられなかったため、ヒロはケルンを部屋に入れる。

 

ケルン「単刀直入に言います。これから鉄血に来てもらえませんか?」

 

ヒロはメモ用紙に書き込む。

 

『鉄血に所属ってこと?』

 

ケルン「いえ、話し合いのためです。知っての通り、現在鉄血は『毒をもって毒を制す』という事からセイレーンの技術の使用と解析を行っています。しかし、黒鉄 義人の重桜での件でこの先の方向性を議論することとなり、争いを望まないKAN-SENの意見もあることから、今さらアズールレーンに戻れはしなくても話し合う必要はあるのだと、鉄血艦隊の総指揮を執っているビスマルクさんが判断しました」

 

ヒロは相づちを打ちながら話を聞き、返事を出そうとした時、部屋の扉が開かれる。

 

赤城「話は聞かせていただきましたわ」

 

ヒロの部屋に赤城とケンタウルスが入ってくる。ケルンは身構えるが、ヒロはメモ用紙に書き込む。

 

『なんでここに?』

 

赤城「私はその···少々寝顔を見に来ましたの」

 

ケンタウルス「私は見回りをしていて、ここに立ち寄ったのだ···それで、貴様の話を信じられる証拠はあるのか?」

 

ケルンは頷き、ポーチから空のキューブを取り出す。

 

ケルン「鉄血で発見された、唯一の空のキューブです。これをヒロに渡します」

 

ヒロはケルンから受け取った空のキューブを眺め、頷く。

 

ケンタウルス「なるほど·····ヒロだけ行かせるのは無理だ。私も同行しよう。赤城は?」

 

赤城「無論ですわ」

 

ケルン「···わかりました」

 

ヒロは書き置きと空のキューブを机に残し、身支度を整えるとケンタウルスの背に跨がり、ケルンに着いていった···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、ヒロの部屋にある書き置きと空のキューブを見た銀治はため息をついていた。

 

『鉄血の人とお話してきます。赤城とケンタウルスもいるので心配しないで!』

 

銀治「はぁ···まったく、お前というやつは···」

 

書き置きを見た各々の意見は様々だった。

 

加賀「姉様···まあ、無事を祈ろう」

 

時雨「まったく···一言言ってくれれば良いのに」

 

三笠「ヒロの選んだ事、無事を祈るくらいしかできぬが···」

 

憤怒「ああもうっ!なんでオレも誘わねぇんだよ!」

 

阿修羅「···鉄血の場所は判明しているからな。何かあれば攻め込めば良い」

 

ウォーエンド「でもちょっと不安なんだよね···」

 

雪羅「わ、私も昨日夜b···寝顔を見に行けば···!」

 

天「雪羅、お主はヒロの事になると不純な動機しか持てんのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ヒロ達は鉄血へと到着する。

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

蛟が秘匿KAN-SENだった事に気づいていた人はいたと思いますが、まだ詳細は明かせません。
そして、ヒロ達の今後とは···?


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第33話 知りたいもの

ケルンの案内で鉄血へと向かったヒロ達···
しかし不穏な空気は流れ···


ヒロ、赤城、ケンタウルスの3人が鉄血に向かった事を遅れて知った長門とエリザベスの反応は以下の通りだった。

 

長門「ヒロ達が!?うぅ···心配じゃ」

 

エリザベス「まったく、行くなら一言言いなさいよ!」

 

ちなみに冴は無言でコーヒーを飲み干し、無言で特製ハリセンの製作に取りかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしその夜···基地に忍び込む影があり、それは1人の記者だった。

 

記者「ここでうまいネタをゲットできれば···でも、もしうまいネタが無かったらどうしよう?いや、そんな時は良さそうなやつから作ればいっか!」

 

記者は木々に隠れながら進み、カメラを構えながら宿舎へ近づく。そして窓に近づいたところで襟首を掴まれて離れた所に投げ飛ばされる。

 

記者「グウ···なんなんだよ···ヒッ!」

 

記者の前にはナイフを持った憤怒が立っていた。

 

憤怒「テメェ、こんなとこでなにしてんだよ?」

 

記者「わ、私はここで···」

 

憤怒は記者の腹を蹴り上げ、顔面を殴り付けて仰向けに倒れさせる。

 

憤怒「テメェ、ここに忍び込んでうまいネタ欲しいんだろ?歪曲して!捏造して!プライバシーや人権なんて無視してよぉ!そういうのが見え透いてんだよ!」

 

実は憤怒は記者の後を着けており、そして宿舎にて盗撮をしようとしたため、怒りが爆発した。

 

記者「しゅ、取材のためだ!私は記者として真実を報道する義務がある!それの何が悪い!?」

 

憤怒「あ"あ"?」

 

憤怒はもう止められなくなり、記者の顔面を踏みつけ、何度も踏みつける。

 

憤怒「何が取材だ!何が報道の義務だ!自分が甘い汁啜るためだったら他人を貶めやがってよぉ!それで指摘されたら逃げやがってよぉ!他人の不幸も幸せも食いもんにしやがってよぉ!このクソやろうがぁ!」

 

そして大きく振り上げた足で記者の顔を踏み潰し、血と脳漿が飛び散り、それでも何度も踏み続ける。すると背後にウォーエンドが現れ、憤怒に声をかける。

 

ウォーエンド「憤怒、そいつはもう死んでる。死体処理しないと」

 

憤怒「フゥー、フゥー、フゥー···そうだな···」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ヒロはケンタウルスが腹部に巻いたロープで体を固定し、眠っていた。

 

ケルン「よく寝てますね」

 

赤城「ええ。寝顔もとってもかわいい」

 

ケンタウルス「ヒロは···本来なら戦わなくて良いのだ。戦場という血と硝煙の匂いのある場所にいるべきじゃない人間だ···平和ボケしてる者達と違い、争いの無い···"優しい世界"にいるべき人間だ···」

 

赤城「そうですわね···しかしせっかく今、争いを終わらせるための1歩を踏み出せそうですわ。確か鉄血の基地に着く頃には朝になってますわね」

 

ケルン「その前に、近くの小島で休憩していきましょう」

 

ケンタウルス「ふむ、そうしよう。ヒロが起きた時に目に隈なんかできていたら、要らぬ心配をかける」

 

 

 

 

 

 

そして小島が見えてきた時、ヒロは夢の中で再びノイズを聞く。あの赤い月に、激しく損傷した軍艦の大量に浮かぶ海の夢である。

 

???「────イヨ···」

 

ヒロは夢の中で辺りを見渡す。

 

???「─────タイヨ···」

 

そして、今度はハッキリと聞こえる。

 

???「イタイ!イタイヨォォォ!」

 

泣き叫ぶような声は次第に小さくなり、辺りは静まり返る。すると今度は耳元で声がする。

 

???「アナタ、ダレ···?」

 

ヒロは目を覚ます。どうやらケンタウルスと赤城は交代で見張りをしているようで、こちらに気づいてはいないようだ。ヒロは再び目を閉じ、眠りにつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、ヒロ達はかつて視察に来たことのある鉄血の基地に到着し、ビスマルクと対面する。

 

ビスマルク「久しぶりね」

 

ヒロは頷き、笑顔を向ける。

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

さて、ヒロは鉄血に到着しましたが、どうなるのでしょうね?


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第34話 あなたの航路


対面したビスマルクとヒロ。
どのような話となるのか?


第4章、最終回です!
そして、勘違いのないよう"念のため"言っておきますが、私の小説は全て、俺TUEEEではありません。


鉄血の基地に到着したヒロ達を出迎えたのは『ドイッチュラント』だった。

 

ドイッチュラント

「あなたがビマルクの呼んだ下等生物ね。どうして私を出迎えに寄越したのかはわからないけれど、まあ着いてらっしゃいな」

 

赤城「誰が下等生物ですって?」

 

ケンタウルス「貴様···!」

 

ヒロは2人を止め、メモ用紙に書き込んでドイッチュラントに見せる。

 

『気にしないで。いつか下等生物じゃないことを証明するから』

 

ドイッチュラント「ふうん···なら証明してみせなさいな。まあその日が来れば良いけれどね」

 

ヒロは胸を張っている。それを見た赤城とケンタウルスは落ち着き、ドイッチュラントに着いていく。

そしてビスマルクのいる部屋の前に着くと、赤城とケンタウルスは入ることができないため、部屋の前で待機する。ヒロは部屋に入り、ビスマルクと対面する。

 

ビスマルク「久しぶりね」

 

ヒロの頷き、笑顔を向ける。座るよう促され、ヒロは応接用のソファーに座る。

 

ビスマルク「···アズールレーンから離反した私達に、あの時と変わらず接してくれてるのね」

 

ヒロは笑顔で頷き、メモ用紙に書き込む。

 

『だってまたここに来れたのと会えたのが嬉しいから』

 

ビスマルク「そう···今回は色々聞きたいこともあるが、まずは出迎えてくれたドイッチュラントについてどう思う?」

 

『何か抱えてると思う』

 

ビスマルク「そう。あの子にはあの子で抱えてるものがあるのだけれど、この様子だと悪い空気にはなってないようね」

 

ヒロはサムズアップする。

 

ビスマルク「あなたは、この先の未来をどう見てる?」

 

『戦争はまだ続くと思う。けれど、絶対に止められる』

 

ビスマルク「どうしてそう思うの?」

 

『皆がいるから』

 

ビスマルク「皆?」

 

『アズールレーンとレッドアクシズの皆』

 

ビスマルク「レッドアクシズはアズールレーンから離反して宣戦布告しただけじゃなくて、セイレーンとも繋がりがあるのに?」

 

ヒロは頷く。

 

『だって、僕は手を取り合えることを信じてるから。だから今、僕達はこうして話してる』

 

ビスマルク「なるほど···」

 

『それに、アズールレーンからは離反したままでも良いと思う。だって手を取り合うのに本当だったらいちいち条約とかなんて必要ないでしょ?』

 

ビスマルク「裏切り者が出てくるから、条約は必要なのだが?」

 

ヒロ『わかってる。でも僕は信じたいんだ』

 

ビスマルク「ふぅ···あなた指揮官にでもなったら?」

 

ヒロは眉毛をハの字に曲げて首を振る。そして書き込んだメモ用紙を口に咥えて右手を差し出す。

 

『戦争、もうやめよう?条約とかめんどくさいことなんていいからやめよう?また皆で一緒に笑おうよ?』

 

ビスマルク「ヒロ·····」

 

ヒロ「(口をパクパクさせる)···だ···Da···ダいjoうブ!」

 

ビスマルクは、その手を·····················

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒロとビスマルクが部屋から出てくると、ヒロは笑顔でビスマルクは一言···

 

ビスマルク「ヒロの話しに乗ろうと思う。詳細は後で話すから、ヒロ達はゆっくりしていって」

 

ケルン「じゃあ私は宿舎に案内しますね」

 

宿舎に案内されたヒロは赤城とケンタウルスと先程の事を話し、2人とも納得はしたものの、引っ掛かることがあるようだ。

 

赤城「鉄血が仮にこのまま本当に停戦してくれたとしても、サディアがどう出るか···」

 

ケンタウルス「いや、この基地のKAN-SEN達が承諾しても、上層部がな···まあ、それこそ"めんどくさいことなんていい"···だな」

 

その後昼食の時間となったため食堂へと向かう。そこで以前の視察の際に会ったオイゲン達を見つけると手を振る。

 

オイゲン「あら、久しぶりね。ビスマルクから聞いたわ」

 

ローン「お久しぶりです」

 

ヒッパー「あら、久しぶりね。てか頬っぺたの傷どうしたの?」

 

U-410「また会えたわね」

 

ヒロは久しぶりに会えた事からウキウキで食事をとる。すると1人のKAN-SENが近づいてきた。

 

KAN-SEN「初めまして、私は『フリードリヒ·デア·グローセ』よ。隣、良いかしら?」

 

ヒロは頷き、隣の席をを取られたケンタウルスは一瞬悔しそうな顔をしたがすぐにいつもの表情に戻る。

 

フリードリヒ「ボウヤがヒロって子ね?ビスマルクから聞いてるわ」

 

フリードリヒはヒロに興味津々の様子である。色々と話をしてみたところ、フリードリヒはヒロを気に入った様子だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビスマルク「···ということだが、どう?」

 

鉄血代表《無理だ、こちらは賛同できん。たかだか1人の小僧の意見だろう?それに重桜の者ではないか。そこまでは不問にしても良い···だがな、その提案は受けられない。我々は勝つべきなのだ!他の国にも、セイレーンにも》

 

ビスマルク「そう···こちらが抜けると言ったら?」

 

鉄血代表《ふん、こちらは新たなビスマルクの建造に成功している。代わりはいる》

 

ビスマルク「だろうと思った···じゃあ、これっきりということだ」

 

鉄血代表《·····》

 

ビスマルクはビデオ通話を切ると、立ち上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ビスマルク達は鉄血から離反することとし、ヒロをボートに載せてケルンに牽引させ、それを囲むようにして重桜へ向かう事となった。

しかし進む途中で急に霧が立ち込めてくる。

 

赤城「これは···鏡面海域!?」

 

ビスマルク「総員、ただちに脱出!」

 

霧を抜けようとするが、ヒロ達は鏡面海域へと飲み込まれてしまう。すると大量の人型セイレーンが現れ、応戦する。

 

赤城「出口を探しますわ!」

 

赤城は艦載機を飛ばし、その一部を出口の捜索に向かわせる。更にヒロへ砲口を向けたスカベンジャーⅡにオイゲンが砲撃し退ける。

 

ケンタウルス「数が多い···これでは!」

 

赤城「出口を見つけましたわ!けれど···もう!」

 

鏡面海域から脱出するための出口を見つけることができたが、それはもう小さくなっていた。

すぐに次々とKAN-SEN達は脱出し、ヒロもケルンに牽引され脱出しようとする。しかしその出口にセイレーン達は攻撃を集中し、妨害される。

 

ケンタウルス「ここは任せろ!お前達は早く行け!」

 

ケンタウルスはセイレーン達に立ち塞がり、スマッシャーⅡを槍で貫く。

 

ドイッチュラント「このっ!」

 

ドイッチュラントはまだ戦闘を続けようとしているが、ケンタウルスが襟首を掴む。

 

ケンタウルス「早く行けと行っているだろう!···艤装を解除しておけ。ヒロ!受け止めろ!」

 

ケンタウルスはヒロに向けてドイッチュラントを投げ、ドイッチュラントが艤装を解除すると共にヒロが受け止める。

そしてケンタウルスは振り向き、ヒロに向かって叫ぶ。

 

ケンタウルス「ヒロ!お前の航路を進め!立ち塞がる者は薙ぎ払え!進め!」

 

ヒロは見てしまった。

ケンタウルスはドイッチュラントを投げる時に腹部にレーザーを1発受けていたのだ。

そしてケンタウルスが行こうとした時、ヒロは時雨からのお守り袋を投げ渡す。

ケンタウルスはヒロに向けて笑顔を向け、セイレーンの群れに突撃していき、ボートが出口を抜けると共に出口は閉じてしまう···

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM『思い』

 

 

ケンタウルスは次々と人型セイレーンを撃破し続け、更に増援として現れたKAN-SENも撃破していく。

しかしこれまでとは違い連携が上手くとれており、更に対ケンタウルスに特化した動きも見せている。

 

ケンタウルス「なるほど···気づいたか!」

 

ケンタウルスはその構造上旋回が遅く、更に突撃するという性質上、"味方からの支援が前提"となっている。これまでは連携や対ケンタウルスへの戦闘法が確立されていなかったため、単独で勝利できていただけである。

 

ケンタウルス(ヒロ···私はお前と出会えて···嬉しかったぞ···)

 

ケンタウルスはセイレーンの顔面を槍で貫き、斬り上げると共に砲弾を破壊する。

 

ケンタウルス「おおおおおおおおっ!」

 

ケンタウルスは砲撃を受けながら突撃し、軽巡のKAN-SENの胸を貫く。

 

ケンタウルス(お前は忘れられ、消えゆくだけだった私を···私達設計図をあの輝く目で見つめ、認めてくれた···!)

 

ケンタウルスの左腕が戦艦のKAN-SENの砲撃をもろに受け、千切れ飛ぶ。更に砲撃とレーザーが体に命中する。

 

ケンタウルス(あの純粋で、眩しい笑顔が···それが私達に向けられているのが嬉しかった···!)

 

槍の柄がレーザーによって切断され、刃の部分が海に落ちる。

 

ケンタウルス(私だけではない···全てのKAN-SENに、ただ殺すための兵器でない道を見せてくれた···そんなお前が···!)

 

ケンタウルスの右前足が破壊され、右目は撃ち抜かれ···倒れる。

 

ケンタウルス(ヒロ、私は···お前を·····あなたを···)

 

空から大量の爆撃が行われる。

 

 

 

 

 

 

ケンタウルス「愛しているぞ」

 

 

 

 

 

 

ケンタウルスは爆撃による水柱に飲み込まれた。

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

秘匿KAN-SEN達は無敵ではありません。対策と連携がとれていれば勝利することは十分可能なのです。
今回は数の暴力もありましたが···
また、ケンタウルスは秘匿KAN-SENの中で最も対策のとりやすい秘匿KAN-SENでもあります。


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外伝 黒巫女


重桜がアズールレーンから離反する少し前、愛海と蛟の出会いとは···?


ある曇った日、店を少し休みにすることにした愛海に友人から電話がある。

 

愛海「···ええっ!肝試し!?懐かしいけれど、この歳でやるのは珍しいわね」

 

友人《そうなのよ~。けどなんだかウズウズじゃって!》

 

愛海「まあ、廃墟巡りとしてなら行くけど」

 

友人《やったぜ。カモーン!》

 

愛海「はいはい···ちょうど明日休みだし、じゃあね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、愛海は準備を整えて"肝試し"の場所へ向かう。そこは古い海軍基地で、地元でも知っている人が少ない程の廃墟だった。

 

友人「やっほー!愛海ちゃんおひさー!」

 

友人の息子「どうも、お久しぶりです」

 

愛海「2人とも相変わらずね~。さて、行くんなら行きましょ?」

 

友人「そうこなくっちゃね!」

 

3人は廃墟となった海軍基地に入り、進んでいく。空が曇っているため、より陰鬱な雰囲気が漂っている。そして壁に大きな穴の空いた部屋に1羽のカラスがおり、「カァ」と一声鳴いて飛び去っていく。

 

愛海「カラス···"レイブン"···」

 

友人「愛海っていつもカラス見る度に物思いにふけるわよね」

 

愛海「うん···」

 

愛海の脳裏にはどこか仔犬のような雰囲気を感じさせる1人の男性が浮かんでいる。

 

友人の息子「あ、もしかしたら雨が降るかもしれません。早く行きましょう」

 

そして奥へと進んでいくと突然床が抜け、愛海は地下に落ちてしまう。

 

友人「愛海!」

 

友人の息子「大丈夫ですか!?すぐに行きます!」

 

愛海「痛ったた···私は大丈夫!」

 

愛海は登るか出るかしようと部屋の中を見渡す。すると資料の束を見つけ、読んでみる。

 

愛海「ふむふむ···ここって、海軍基地の中でも軍艦の設計とかを担ってた所だったのね。どうりでこの部屋にそれ関係のものが多いわけね」

 

再び見渡すと、1つの蜂の巣が視界に入る。それは棚の1つにできているが朽ち果て、辺りには死んだ働き蜂が落ちている。

しかしよく見ると、蜂の巣が何かを巻き込んで作られており、それは紙のようだった。愛海が蜂の巣に触れてみるとそれだけで蜂の巣は崩れてしまい、紙にへばりついた部分をそっと取り除く。

 

 

それは、1枚の軍艦の設計図だった。

 

愛海「これって···」

 

愛海は何かよくわからないものの何かを感じとり、部屋を後にする。

その後帰宅することとなり、喫茶店『鴉の家』と1つになっている家で汚れをとり、綺麗にした設計図を見る。

それは、軍艦としては異形ともいえる形をしていた···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2日後、愛海は地元の子供達と一緒に海岸のゴミ拾いをしていた。他にも大人数人とKAN-SEN2人がいる。

順調にゴミ拾いを続け岩場に向かうと、何かが日光を反射した。近づいてみると、少し曇った色をした透明な立方体があった。

 

愛海「これ、インテリアに使えそうね」

 

そう言って愛海は立方体を持ち帰った。

そして設計図を調べるのと立方体をどうインテリアにするかを同時進行していた愛海は手を滑らせ、立方体を設計図の上に落としてしまう。

すると立方体は光り輝き、愛海は光に包まれた。

 

 

 

気がつくと愛海は軍艦の上に立っており、辺りは霧に包まれている。

 

愛海「ここは···?」

 

愛海は少し歩いてみると、どこかからすすり泣く声が聞こえ、声の元に向かうことにした。すすり泣く声の元には1人の女性がうずくまって泣いていた。

 

愛海「あなたは···誰?」

 

女性が振り向く。黒い長髪、黒い巫女服、そして赤い下駄を身に付けている。

 

女性「あ、あなたは···どうしてここに?」

 

愛海「私もわからないの···私は神城 愛海。あなたは?」

 

女性「私は···扶桑型秘匿航空戦艦"蛟"···あなたは不幸?それとも幸福?」

 

愛海「そう、あなたは蛟ちゃんっていうのね。それと私は···不幸か幸福かなんてわからない。それにあなた···あの海軍基地でどうして蜂の巣に巻き込まれてたの?」

 

すると蛟の目つきが変わり、体が震えだす。

 

蛟「私は···不幸···私は···忘れられて···誰からも、忘れられて···」

 

それを見た愛海は蛟をそっと抱き締める。

 

愛海「あなたは不幸じゃない。私があなたを見つけたし、覚えているから。だからもう、自分の事を不幸なんて言わないで」

 

蛟「愛海···さん···私···」

 

蛟は声を上げて泣き、愛海は泣き止むまでずっと抱き締めていた。

そしてしばらくし、蛟は泣き止むと涙を拭い愛海に向かって敬礼する。

 

蛟「私はこれよりあなたに仕え、共に行くことを誓います」

 

愛海「仕えるなんて別に···なら、友達で良いじゃない?」

 

蛟「ありがとうございます。ではこれより、出港します!」

 

軍艦は進み、光の中へと進んでいく。

光が収まると愛海は自室におり、蛟もいた。

 

愛海「なるほどね···そういえば隣の部屋が空いてるから、そこを自由に使って。それと···」

 

愛海は蛟の肩を掴み···

 

愛海「私の店で働いてみない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日から蛟は愛海に色々教えてもらいながら喫茶店で働くこととなっり、最初はレジだけだったが、料理の腕が良かったため裏方での活躍が増えていった。

そして蛟は次第にそれが楽しくなっていった···そんなある日、重桜がアズールレーンから離反し、鉄血と共にレッドアクシズを結成した。それからしばらくして、鴉の家に予想外の客が訪れる。

 

義人「ここが、鴉の家か···」

 

愛海「あらあら、重桜の指揮官がどうしてこんな所に?」

 

義人「私の師がよく来ていた店だと聞いてな。コーヒーを頼む」

 

愛海「なるほどね···じゃあ、持ってくるわ」

 

そして義人以外の客で最後の客が会計のためにレジに向かい、そこに蛟が出て会計を済ませる。すると蛟を見た義人の目が見開かれる。

 

義人「貴様···KAN-SENだな?」

 

愛海「いいえ、この子は···」

 

蛟「隠し通すことは、できないようですね···」

 

義人「軍に来てもらおう。見たことのないKAN-SENだが、戦力になるはずだ」

 

蛟「残念ですが、お断りさせていただきます。もし、どうしてもというのなら、私に勝利してからにしてください」

 

義人「ほう?言うものだな」

 

蛟「私が勝てば、今日の事は全て無かったことにしてください」

 

義人「なるほど···良いだろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある演習海域にて、義人の艦隊が位置に着く。編成は『扶桑』、『山城』、土佐、暁、高雄、愛宕である。

そして艤装を展開した蛟が現れるが、その姿に艦隊は息を飲む。

 

巨大で、大型の3連装砲が2つあるだけでなく、最も特徴的なのは4枚の飛行甲板である。X字に伸びているそれは異様な存在感を放つ。

 

 

推奨BGM『Dragon Dive』(ACfaより)

 

 

蛟「私は扶桑型秘匿航空戦艦"蛟"!姉様方、先輩方···ここで越えさせていただきます」

 

蛟は4枚の飛行甲板から大量の蜂が飛び立ち、それぞれが艦載機になる。そして大量の艦載機による攻撃に砲撃を混ぜていく。

義人の艦隊はその圧倒的な飽和攻撃により蹂躙されていく。しかしそれでも土佐達は攻撃をなんとか当てていっている。

 

愛海が観客席から見ていると、隣の席に1人の女性が座る。

 

女性「失礼。あなたがあのKAN-SENの主かしら?」

 

愛海「まあ、そうね。あなたは誰?見慣れない格好だけど···もしかしてセイレーンだったりする?」

 

女性「フフッご名答、流石に気づくわよね。私はオブザーバーよ」

 

愛海「セイレーンが私に何の用?もしかして、この場で私を殺す?」

 

オブザーバー「無闇な殺しなんてしないわ。私はただ見に来ただけ」

 

愛海「そう、なら良いわ」

 

オブザーバー「案外あっさりしてるのね?」

 

愛海「私は戦争が嫌いなだけよ」

 

蛟は土佐の砲撃を艦載機の1機を盾にすることで防ぎ、更に自身の周囲に爆撃し、水柱を発生させる。そして水柱が無くなった時には蛟はおらず、土佐は蛟の砲撃を受けて大破判定となる。

そしてその後も蛟の優勢は続き、蛟の勝利となる。

 

蛟「では···約束は守ってもらいますよ?」

 

義人「···仕方ない、行くぞ」

 

義人と艦隊は去っていく。すると蛟はオブザーバーに砲口を向ける。

 

蛟「今のところ害は無いとはいえ、仮にも敵です。離れてください」

 

オブザーバー「はいはい···じゃあまたね」

 

オブザーバーはワープでその場から消える。

 

愛海「さて、蛟ちゃん···帰ろっか」

 

蛟「はい」

 

 

 

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回は愛海と蛟の出会いを書きましたが、どうだったでしょうか?
蛟の詳細については次回載せます!


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幕間 誰がための涙か


鉄血から帰還したヒロと赤城、そして鉄血から離反したビスマルク達···
そして世界はまた動き出す。


重桜に帰還したヒロ達を銀治達は出迎えるが、ヒロの今までに無い苦しそうな、何かを強く我慢している顔を見ると、三笠と時雨はヒロを部屋に連れていく。

そして銀治は赤城に耳打ちする。

 

銀治「ケンタウルスは?」

 

赤城は無言で首を横に振り、ビスマルク達の事を伝えてヒロの元へと向かう。

 

銀治「そうか···」

 

雪羅「ではビスマルクさん達はこちらへ」

 

雪羅はビスマルク達を連れて仮の宿舎へと向かい、憤怒は海を眺めている···

 

 

 

 

 

 

 

 

その日ヒロは酷く落ち込んでおり、宿舎が増築するまでのしばらくの間ビスマルク達は仮の宿舎で過ごす事となり、今後について話し合うことになった。

 

銀治「儂らは問題ない。それに、せっかくヒロと話し合ったのに無下にするわけにもいかんしな」

 

ビスマルク「感謝するわ」

 

冴「あ、それと鉄血の技術で興味深いものがあったら後で教えてくれる?兵器とかじゃなくて、暮らしに役立つ方の」

 

ビスマルク「そっちの技術なら、喜んで」

 

 

 

 

 

その頃、雪羅は秘匿KAN-SEN達を集めて会議を行っていた。

 

雪羅「おそらく、あるいは既に我々秘匿KAN-SENへの対抗策が確立されつつあると思います。ケンタウルスの件がそれに該当するかは不明ですが···」

 

憤怒「そりゃあな···」

 

天「それは一理あるのう。特に憤怒は初期からおるしのう」

 

ゴア「それかぁ~、対策とられる前に皆殺しとか?」

 

阿修羅「となると、早急にこちらも対策を立てねばな」

 

ウォーエンド「めんどくさいなぁ~」

 

雪羅「私達個人の対策の他に、こちらにいるKAN-SEN達を私達直々に鍛えようかと思います」

 

阿修羅「なるほど、それは良いな」

 

ウォーエンド「いつかやると思ってたけど···」

 

こうして、秘匿KAN-SEN達によるKAN-SEN達への訓練が決定したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、ヒロは1人で今にも泣きそうな顔でバルコニーから星を眺めていた。

ヒロは泣かずにここまで来た。しかし度重なる出来事により、ヒロの精神はボロボロだった。

 

ヒロ「あ···あ···」

 

ヒロは少しでも声を出そうとするが、やはりなかなか出ない。すると背後のガラス扉が開き、赤城がやって来る。

 

赤城「ヒロ、眠れないの?」

 

ヒロは頷く。しかしその顔はやはり今にも泣きそうな顔である。赤城はそっとヒロを抱き締める。

 

赤城「ヒロ···大切な人のために泣くことは、決して悪いことではありません。それに···」

 

ヒロは赤城の顔を見上げる。

 

赤城「私はこれから少し、何も見ません。何も見なかったことにします」

 

赤城は先程より強くヒロをその胸に抱き締める。するとヒロの目からは大粒の涙が溢れ出し、ヒロは声こそ出ないものの、泣いた。涙がヒロの顔と赤城の胸を伝い、その光景を大空の星達だけが見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、セイレーンの拠点では···

 

オブザーバー「2人とも、ずっと探していた『本来起こり得た未来』と同じ世界を観測することができたわ。けれど、今はまだ"準備"があるから確認しに行くことはできないけれど、それが終われば···ね?」

 

テスター「フフフ、やっと書き換えられる前の未来を見れるのね···」

 

ピュリファイアー「さぁて、未来の連中はどんな顔してんのかなぁ?」

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

さて、色々なフラグが立ちましたがどうなるのでしょうね?
では、前回解説できなかった蛟についての情報がこちらです!

●扶桑型秘匿航空戦艦 蛟
黒い長髪に黒い巫女服、赤い下駄を身に付けている秘匿KAN-SEN。
X字にある4枚の飛行甲板と大型の3連装砲を主力としている。
性格はどこかもの悲しげな雰囲気であり、『不幸か幸福か』について謎のこだわりがある。

設計図に関しては売られる訳でもなく捨てられる訳でもなくただただ忘れ去られており、蜂が設計図を巻き込んで巣を作っていたほど。それにより蛟は忘れられることを酷く恐れているが、愛海と共にいる限りは問題はないとされている。

●蛟のスキル
『不幸と幸福』(支援スキル)
戦闘開始時と20秒毎に15秒間味方全体の火力を10%(MAX30%)上昇させ、敵全体の火力を10%(MAX30%)低下させる。

『忘れないで』(攻撃スキル)
爆撃が命中した数と同数の3発の特殊弾幕を連続で展開する。威力はスキルレベルによる。

『秘匿されし者·蜂』(支援スキル)
体力が残り50%以下になると味方全体を20%回復させ、15秒間敵全体の命中と速力を10%(MAX20%)低下させる。


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第5章 ヤサシイセカイ
第35話 月光



再び行われた各陣営の集まる会議、しかしそれは秘密裏に行われたもので···

ウォーエンド「変わらないね···いつまで経っても···」


ビスマルク達がヒロの鉄血から離反しヒロの元へ行ってから2週間後、秘密裏に各陣営の会議が行われたがそこに重桜の席は無かった。

 

ユニオン代表「今回集まってもらったのは···君達が即答したことからもう分かっているのだろう?」

 

ロイヤル代表「重桜の···特に鴉間 ヒロの件についてだな?」

 

ユニオン「そうだ。重桜は黒鉄 義人の手によってアズールレーンから離反し、そして再び戻ってきた。しかし最近はどうだ?エルデア配下だった艦隊を加え、唯一秘匿KAN-SENを保有し、更に最近は鉄血の最高戦力の艦隊を丸々手中に納めている···それも全て鴉間 ヒロの元に!」

 

東煌新代表「重桜は危険だ。だが鴉間 ヒロはより危険だ!」

 

ロイヤル「排除せねばなるまい···」

 

北連代表「あそこまでの"力"を持つものは排除するべきだ」

 

アイリス代表「我々の未来のために、あの男は···不要だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

秘密裏に会議が行われているとは知らず、ヒロは『饅頭』と呼ばれるヒヨコのような生物を頭に乗せながら釣りをしていた。

この饅頭という生物、セイレーン出現の少し前から発見されているが、最近はなぜかヒロの周りにいることが多くなっている。

 

饅頭「まだ釣れないピヨ?」

 

しかも喋るのである。ヒロは眉毛をハの字にしているがようやく魚が餌に食い付き、小魚が釣れる。ヒロはそのまま食堂の厨房へ向かい、天ぷらにしておやつにした。

そしてぶらぶらしつつ演習場へ行ってみる。そこではちょうどゴアと鉄血艦隊で演習をしていた。

ゴアはいつもの狂喜に満ちた笑顔で攻撃し、鉄血の艦隊はそれに対抗している。

 

演習が終わり、ヒロは基地内の森に移動してぼうっと池を眺めている。

 

饅頭「ヒロ···あまり気に病まない方が良いピヨ」

 

ヒロは深呼吸し、宿舎に戻る。

 

 

 

翌日、ヒロは修復がほとんど済んだ中枢地区の建物へ向かい、長門と会うことになった。

いつものように笑顔でいようとするヒロを長門は察し、ヒロを見上げる。

 

長門「ヒロ···顔を上げよ!胸を張れ!ヒロはケンタウルスが認めた男じゃろ?それに余もヒロを認めておる!」

 

ヒロは笑顔を見せ、頷く。

 

長門「それと、ヒロに渡すものがある。ついて参れ」

 

長門と江風について地下へと向かい、鳥居のある祠のような場所に着く。そして長門は祠の中から1つの長方形の木箱を取り出し、蓋を開ける。

中には1本の刀が入っており、長門はそれをヒロに差し出す。

 

長門「この重桜に古くから伝わる宝刀の1つ、『月光』と呼ばれる刀じゃ。これを···ヒロに託す」

 

ヒロは長門から月光を受け取り、刀を抜いてみる。黒く見えるが紫色に妖しく光を反射している鎬地(しのぎじ)(むね)、そして長い月日を経ても決して衰えることの無い刃···ヒロは静かに鞘に納める。

 

ヒロは基地に戻るとすぐに冴の元へと向かい、月光を仕掛け刀への改造を頼み込む。

 

冴「まさか、宝刀をこの目で見ることになるなんてね···流石にこれは私と明石ちゃんだけじゃ改造はできないから、ちょっと色々訪ねてみるわ」

 

 

 

 

 

 

 

その後冴は刀鍛冶を訪ね、1つの秘境へと向かう。そこにあった古い家へと向かい、1人の老人に月光を見せる。

 

老人「こ、これは···!?」

 

冴「あの長門様から託された···月光よ。これを扱う男はちょっと使い方が違うの。だからこの刀の鞘に月光と同等の刃をつけなきゃいけないの···月光を作った刀鍛冶の子孫のあなたはその技術を受け継いでいるんじゃない?」

 

老人「かつて先祖が造りし"妖刀"···これをこの目で見れるとは···してこの月光を託された者は月光を使ったのかね?」

 

冴「ええ。木の棒に対して使っていたわ」

 

老人「生きておるということは、月光がやはり認めたのか···月光はな、1度でも使った者が認めた者でないと即座に災いをもたらすと言われておる。

しかしそうでないなら、認めたと考えよう。しかし、鞘に刃をつけるとはなぜじゃ?」

 

冴「これを見て」

 

冴は仕掛け刀を老人に見せる。

 

老人「これは···なるほど。この老いぼれ、命にかえても完成させてみせよう」

 

 

 

 

それから数週間後、月光を仕掛け刀とすることに成功する。

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

各国はかなり危険な選択をしましたね···
そして、ヒロは月光と手にしました。

●鎬地
刀の側面の黒い部分。

●棟
刀の反りの部分。

●月光
重桜に古くからある宝刀の1つ。
紫色に妖しく光を反射し、切れ味は長年経っても衰えることは無く、素の切れ味でKAN-SENの装甲を容易く切ることが可能。
また、仕掛け刀となった後は同様の刃を鞘にもつけることとなる。


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第36話 海域奪還支援


新たに海域の奪還作戦が行われることとなったが、ヒロ達はその支援を行うこととなる。
そこで起きることとは···?


依頼主:北連第3指揮官

 

目標:海域奪還のための支援

 

作戦開始時刻:15:00

 

備考:指揮官の同行

 

海域奪還のための支援を頼みたい。しかしセイレーンの支配海域の深部付近にまで行くため、かなりの戦力が必要となる。そのため、君達に支援を頼みたいのだ。

また、今回の海域は特殊な磁場が発生しているようで、無線の有効距離が限られているため、指揮官を同行させるように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の編成は阿修羅、綾波、ドイッチュラント、土佐、瑞鶴、翔鶴であり、銀治とヒロの乗る量産型大淀の防衛艦隊は赤城、ゴア、三笠、時雨、オイゲン、憤怒である。

 

そして北連の艦隊と共に進み、海域の中枢へと到達するとやはり幹部系と思われる人型のセイレーンがいた。

そのセイレーンは白い髪の左側を刈り上げており、右側の髪は目にかかる程伸びている。そして耳に大きなピアスをつけており、服は黒い革ジャンとジーンズである。更に両腕には黒い『ミツクリザメ』のような艤装をつけており、黄色い発光体がある。

 

セイレーン「あたいの名は『ハウンド』。さぁ、狩りを楽しもうぜ!」

 

 

推奨BGM『破暁』

 

 

阿修羅「行くぞ!」

 

阿修羅達は交戦を開始する。ドイッチュラントと阿修羅の防弾を両腕のブレードで斬り裂き、突撃してくる。そこに綾波が割り込み、刀で斬りかかる。それをハウンドは受け流し、背後から斬りつけようとするがドイッチュラントの砲撃により邪魔される。

ハウンドは距離を取るとミツクリザメの口の部分からレーザーを連射してくる。阿修羅達は回避しつつ砲撃していくが、土佐の砲撃がハウンドに命中する。

 

ハウンド「やるな!」

 

瑞鶴と翔鶴の爆撃が落とされた時、ハウンドは潜水する。

 

瑞鶴「潜水!?」

 

ハウンドは阿修羅の左側面に飛び出、ブレードで阿修羅の左下の腕を切り落とす。

阿修羅は切り落とされた腕の断面を見るとハウンドから一気に距離を取る。

 

阿修羅「溶断か···奴のブレードに触れるな!熱で武器ごと斬られるぞ!」

 

銀治《できるだけ外すな!水柱や波紋が出れば奴の隠れる隙を作る事になるぞ!》

 

ハウンドは回転しながら砲撃を回避し、チェイサーⅡを盾にして再び潜水する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、量産型大淀では報告を聞きながら阿修羅達に指示を飛ばしている。

 

赤城「遅すぎますわ···北連の艦隊は何をしていますの!?」

 

憤怒「あ"あ"もうっ!」

 

三笠「気持ちはわかるが落ち着け···ん?あれは北連の艦隊ではないか?」

 

三笠が見る先には北連の艦隊がやって来ていた。

 

北連第3指揮官《すまない、他のセイレーン艦隊が予想以上の数だったんですよ~!》

 

銀治「良かった。すぐに向こうに行ってくれ!」

 

北連第3指揮官《その前に···この艦の防衛艦隊は他にいますか?》

 

銀治「いや、他はいないが···?」

 

北連第3指揮官《そうですか、なら良かった》

 

するとゴアの艦載機が突然急降下すると同時に北連のKAN-SENが砲撃し、ゴアの艦載機は量産型大淀の盾となって爆散した。

 

憤怒「おいテメェら···どういうつもりだ?」

 

北連第3指揮官《いえ、あなた方は邪魔なので、ここで死んでいただきます》

 

そして北連の艦隊と赤城達は交戦を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

一方阿修羅達はハウンドの周囲のセイレーン達を殲滅し、残るはハウンドだけとなっていた。ハウンドの水中からの奇襲を回避しながら攻撃を続け、遂にハウンドを大破させる事に成功する。

 

ハウンド「ちくしょう!」

 

ハウンドは目標を阿修羅から土佐に変え、奇襲を仕掛けるが···

 

土佐「来ると思っていたぞ」

 

ハウンドが水中から顔を出した瞬間、土佐は刀を顔面に突き刺した。ハウンドは力を無くし、沈んでいく。

 

阿修羅「ようやく終わったか。これより帰還す···」

 

銀治《皆!今北連艦隊に襲撃されてる!すぐに戻ってくれ!》

 

瑞鶴「どういう事!?」

 

綾波「すぐに行くのです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

阿修羅達が着く頃には北連の艦隊を撃破し終えていた赤城達は北連艦隊を尋問していた。

 

三笠「なぜこちらを攻撃してきた?」

 

北連KAN-SEN「あなた達が、強すぎるからよ···力を持ちすぎた者はいつか抑えられなくなる。だから今のうちに力を削いでおかないと···」

 

三笠「我々はこれまでずっと共に戦ってきたというのに···なのに···!」

 

その後尋問は続き、終わった後は尋問の内容を決してヒロには伝えないようにし、帰還することにした。

その夜、甲板にて憤怒は暗い海をじっと見つめていた。

 

憤怒「オレ達は···まるで鴉だ···人のために尽くしても、結局は嫌われて、撃たれる···」

 

するとゴアがやって来る。

 

憤怒「ゴア···」

 

ゴア「アハッ!確かに私達はまるで鴉ね!けど、それはそれで良いんじゃない?だって私達はヒロ以外の誰のものでもないのよ?だったら、ヒロに立ち塞がる奴らを全部薙ぎ払えば良いのよ!それに···」

 

ゴアは憤怒の目をじっと見つめる。

 

ゴア「ヒロに尽くす···私達には、それしかできないし、するつもりも無いでしょ?」

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

さて、早速裏切られましたが今後の行方はどうなりますかね?

●ハウンド
左側の髪を刈り上げ右側の髪を伸ばし、耳に大きなピアスをつけ黒い革ジャンとジーンズを纏っている幹部セイレーン。
主に奇襲や強襲を得意とし、両腕にミツクリザメのような艤装をつけている。
艤装の先端付近は部分的なレーザーブレードとなっており、更に潜水することも可能。
その特性から近接戦を主体とする阿修羅やウォーエンドは相性は悪いが動きが直線的であるため、それを土佐に利用された。


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第37話 未来の光景


オブザーバー、テスター、そして新たなセイレーン『サーチャー』の3人は『本来起こり得た未来』へと向かい、その調査に乗り出す。
そこで3人が見たものとは···?


オブザーバー「さて···"準備"も一段落したし、『本来起こり得た未来』を見に行きましょうか」

 

テスター「やっとね···サーチャー、頼んだわよ?」

 

サーチャー「もちろん!」

 

そして3人は『本来起こり得た未来』へと飛んだ。オブザーバーは最も近い時代に、サーチャーはその次、テスターはその次の未来へと···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オブザーバーはとあるビルの上に降り立った。辺りを見渡すとどこかで戦闘音が聞こえ、ここが戦場だということが判る。

 

オブザーバー「なるほど。いつの時代も戦争は起きてるのね···ん?」

 

オブザーバーはふと違和感を感じ、上を見る。そしてよく見るとオブザーバーは驚愕する。

 

オブザーバー「"天井"!?どういうことなの···?」

 

オブザーバーはその事を記録し、戦闘が行われている場所まで移動する。

そこでは10m程の大きさの赤くずんぐりした大柄の機体と同じく10m程の白い細身の機体が戦闘をしており、物陰から左腕を失った細身の機体が飛び出、右手に持ったマシンガンを連射する。その弾は胴体と上下2つのメインカメラの上側に命中した。しかしそれと同時に大柄の機体は右手のバズーカから砲弾を発射しており、その砲弾は細身は機体の頭部を粉々に吹き飛ばした。

大柄の機体の前に着地した細身の機体に大柄の機体は背部の装置を起動させる。しかし細身の機体は少し後方に下がった後、肩と肩に付けられた装置のハッチを開き、中から大量のミサイルが放たれる。

それに驚き、判断が遅れてしまった大柄の機体にそのミサイルは降り注ぎ、大柄の機体は爆散する。

 

オブザーバー「これが···『本来起こり得た未来』の戦争···けど、どうして空が?」

 

この事を元の時代の誰かが見たら、こう言うだろう···

 

「その世界に、"空"は無かった」

 

 

 

 

 

 

 

 

テスターが降り立った場所は1つの軍港にある倉庫の上だった。すると他のものよりも明らかに巨大な格納庫があり、そこへ向かう。

作業員達は慌ただしく動いており、緊迫した状況であることが判る。

 

作業員A「急げ!早く『St ELMO(セントエルモ)』を起動させろ!」

 

作業員B「無理だ!この損傷じゃ動かせない!」

 

放送《マズイ!"AC"が来た!たっ助け···(ノイズ)》

 

作業員A「嘘だろ···に、逃げろぉぉぉぉ!」

 

作業員達は蜘蛛の子を散らすように逃げていき、その軍港では7m程の黒い機体が右手のドラムマガジン式のマシンガンのようなものを連射していた。それにより3輌いた戦車は次々に爆散していき、格納庫から下半身がキャタピラとなっているずんぐりした機体が現れ、右腕のシールドを構えながら左腕のガトリングガンを連射する。

それに対し黒い機体はガトリングガンの連射を避け、回り込みつつ両腕を真後ろに回転させる。すると右肩の辺りから長銃身のスナイパーキャノンが背部からせりだしてくる。

そして盾の無い背後に回り込むとスナイパーキャノンを発射し、コクピットを貫く。

 

黒い機体のパイロット

《ミッション完了。回収を頼む》

 

少しするとミサイルコンテナを装備している武装ヘリが現れ、黒い機体を懸架して運んでいく。

 

テスター「何よあれ?ヘリにしてはやたら分厚い装甲···それに、AC?」

 

テスターは多くの疑問を覚えつつも先程から気になっていた巨大な格納庫へと向かった。

中に入ると中破しているものの、巨大な戦艦がそこにあった。そしてその戦艦の名前こそ、セントエルモだった。

 

テスター「フフフッ、これは使えそうね!」

 

テスターはデータを取り、ワープして帰還する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、サーチャーは海上にワープしていた。サーチャー、『ホウライエソ』のような黒い大型のハンマーの形をした艤装を手に持ち、白い服と黒いサスペンダーを着ており、大量の軍艦を眺めていた。

 

サーチャー「何かしらあの艦隊は?」

 

すると金色の巨大な兵器が現れ、輸送ヘリも現れる。輸送ヘリから黒と金のカラーリングの機体が投下され、2つの兵器は進む。しかし突如金色の巨大兵器は身を翻し、黒と金の機体に突撃し始める。

 

 

推奨BGM『Scorcher』(ACfaより)

 

 

巨大兵器の下部からは青色のレーザーブレードが展開され、後部からはミサイルが数発同時に放たれる。

黒と金の機体はミサイルに向かって右手に持ったショットガンを放ち、ミサイルの弾幕に穴を作るとそこに飛び込んで回避する。

しかし艦隊は黒と金の機体に向けて集中砲火する。

 

サーチャー「···なるほど、あの機体を倒そうって事ね。あの機体、勝ち目無いわね」

 

サーチャーはこの時代での戦いを見物することにしたが、次第に表情が曇り始める。

 

サーチャー「ど、どういうことよ···!?」

 

黒と金の機体は10m程だが、艦隊の弾幕と巨大兵器の突撃を掻い潜り、確実に数を減らしていく。

ある軍艦は艦橋をショットガンで撃ち抜かれ、ある軍艦は左腕に付けられた青い刀身のレーザーブレードにより斬り裂かれ、ある軍港は左背部のレールキャノンによって正面から真っ直ぐに撃ち抜かれ···

そして巨大兵器の損傷も一方的に増えていく···

その光景を見ているサーチャーは次第に恐怖を感じていく。

 

あの数の艦隊が···まるで役に立たず、巨大兵器も一方的に攻撃され続け、黒と金の機体の頭部の赤い複眼はまるで耳まで裂けた獣の口のようであり、巨大兵器は後方からブースターを正確にレールキャノンで撃ち抜かれ、その誘爆で航行能力を失う。

そして黒と金の機体はレーザーブレードで巨大兵器を切り刻み、巨大兵器は大きな爆発を起こし、沈んでいく。

 

気づけば、サーチャーは酷く震えていた。

 

サーチャー「な、何よ···何なのよ···あれ···」

 

そして艦隊を全て撃破した黒と金の機体は海面でブースターによるホバリングをするが、突然振り向いてレールキャノンを発射し、それはかすった程度だったが、サーチャーの左半身は吹き飛んだためサーチャーは急いでワープして帰還する。

 

 

帰還したサーチャーは半狂乱に陥り、暴れている。

 

サーチャー「嫌っ!嫌ぁぁぁぁぁぁ!来ないでぇぇぇぇぇ!」

 

青い血を左半身から吹き出しているが、恐怖により痛みを感じていないようである。先に戻っていたテスターが止めに入るが、サーチャーは聞く耳を持っていない。

 

テスター「落ち着きなさい!どうしたの!?」

 

サーチャー「やめてぇぇぇぇぇ!嫌ぁぁぁぁぁぁ!」

 

サーチャーは右手に持った艤装をめちゃくちゃに振り回し、レーザーを乱射する。

 

サーチャー「来ないでぇぇぇぇぇ!やめてぇぇぇぇぇ!」

 

近くのコンダクターⅡの頭部が撃ち抜かれ、テスターも損傷を負う。そして帰還したオブザーバーもこの状況に驚愕している。そして仕方なくレーザーで手足を撃ち抜き、鎮静剤を注射する。

 

テスター「一体···サーチャーは何を見たの?」

 

オブザーバー「分からないわ···後で互いの成果を確認しましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてサーチャーが渡った海上では···

 

女性オペレーター

《おい!いきなりどうした!?》

 

黒と金の機体のパイロット

「いや···ずっと見られてた気がしてな」

 

女性オペレーター《そんな反応は無いぞ···少し神経質になってたんじゃないのか?まあこれから回収する。今日はゆっくり休め》

 

黒と金の機体のパイロット

「ああ···」

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

さて、未来では様々なものを見ることになったオブザーバー達ですが、サーチャーが見たのは誰だったんでしょうね?


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第38話 ご当地案内


季節は冬に入り、オブザーバーは1つ"あること"を試す。


季節は冬に入り、街は積雪に備えて準備を始めていた。そしてヒロはエリザベスと長門をこっそりと連れ出し、自身の生まれ故郷の町を案内することにした。

···が、ウォースパイトと江風にはバレており、メールで『何かあったら〇す』と送られてきており、ヒロは1人で肝を冷やしていた。そして3人は電車に乗り込み、ヒロの生まれ故郷へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして同じ頃、オブザーバーは1つの仮説を立てていた。

 

オブザーバー(もしかしたら···この"書き換えられた世界"には鴉間 ヒロが関わりがあったりして?)

 

ヒロには重桜はもちろんのこと、ロイヤルや鉄血のKAN-SENまでもが味方に着いている。そのため、ヒロが何かしらの関わりがあると仮説を立てたオブザーバーはヒロの生まれ故郷へと向かった。

 

 

 

 

ヒロは時雨に事前に聞いていた服を長門とエリザベスに着せ、最初の目的地である商店街へ向かった。すると道の途中で1人の日傘をさした女性に話しかけられる。それは変装したオブザーバーだったが、3人は気づいていないようだった。

 

オブザーバー「あの、すみません···この辺りの名所を巡りたいのだけれど、案内してくれる人を探していて···案内してくれるかしら?」

 

ヒロは頷き、オブザーバーを連れて商店街に向かう。

 

長門「ヒロ、大丈夫なのか?」(小声)

 

エリザベス「バレるかもしれないわよ?」(小声)

 

ヒロはサムズアップしており、2人は諦めて進むことにした。商店街はシャッターが閉まっている所がいくつかあり、人通りも多くはないが、実は知る人ぞ知る食べ歩きスポットでもある。

特にクレープが美味しく、クレープ屋に立ち寄る。

 

クレープ屋店主「おやヒロ君じゃないかい!今日はお友達連れてきたんだね?さ、何にする?」

 

クレープ屋のクレープは甘すぎず、とても食べやすい味だった。

そして一行はクレープを食べ歩きしながら次の場所へ向かう。

次の場所はこの地域1番のパワースポットでもある神社である。小さめで、人通りは少ないものの、静かで温かい雰囲気が漂っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、この地域の最大の名所···『ロボットバトル博物館』へと向かう。

そこには、ロボットバトルの様々なものが展示されており、歴史も多く知ることができた。

しかしオブザーバーはそのロボットに既視感を覚え、展示されているロボットを見ていくと、『本来起こり得た未来』でオブザーバーが見たあの細身の機体や大柄の機体も展示されていた。

 

オブザーバー(どういうこと?未来のものが既にこの時代に?)

 

説明文『ロボットバトルに使用されるロボットはVRを使った操作を行い、この技術を軍事利用することは条約に違反する』

 

オブザーバー「どうして、軍事利用しないのかしら?」

 

ヒロはメモ用紙に書き込む。

 

『僕の産まれる前に世界最高の人工知能が暴走したからなんだって』

 

オブザーバー「なるほど···」

 

そして進んでいくと、1人の燕尾服を着た男性に話しかけられる。

 

男性「おや、ヒロ君じゃないか!また来てくれてありがとう。今回はお友達も一緒のようだね。私はここの館長の『野村(のむら) (なぎ)』、今日は楽しんでいってくれ!」

 

ヒロは再びメモ用紙に書き込んだが、何かを思い付いたように追加で書き足す。

 

『この人、ロボットバトルの最初の実況。

 

そうだ!できたら案内と解説お願いできますか?』

 

凪「もちろん!時間も空いてるし···案内と解説、任せとけ!」

 

こうして凪による案内と解説が始まったが、順番も内容も分かりやすく、実況者だったことが良く分かる。

 

凪「ロボットバトルに使用される機体は5種類あるんだよ。

まず、最初に作られた『第1世代』。これは初期のもので、スペックもそのぐらいしかないけど、それだけで行われる試合も多い。

 

次の第2世代は背部に特殊なブースターを内臓したもので、当時はスピード感溢れる戦闘が繰り広げられたんだ。

 

第3世代はそれから派生して、個性的なパーツが多く出てきたんだ。

 

第4世代はかなり特殊でね、これまでのロボット全てを越えるスペックを求めた、1種の究極形みたいなとのさ。けれどコストが高すぎて数は少ない。

 

最後の第5世代は量産性を高めたもので、コストが少ないから値段も安い」

 

すると機体の展示コーナーに進んだが、途中でオブザーバーはある機体の前で足を止め、その機体を眺める。

 

第3世代の赤と白のカラーリングの中量2脚で、右手にはライフル、左手にレーザーブレード、右背部に小型ミサイル、左背部にグレネードキャノン···そしてその機体の名前は···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

         『ARMORED·COER』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凪「おや?お嬢さんお目が高いね。その機体は『世界最高のロボットバトル』とも呼ばれる、ロボットバトルそのものの象徴ともされている試合に出た機体だよ。隣にある第4世代の『ディターミネイション』と第9回ロボットバトル世界大会決勝で戦ったんだ」

 

ARMORED·COERの右隣にはサーチャーが見たあの黒と金の機体が展示されていた。

 

凪「あれは本当に素晴らしくてね···性能差を才能と経験で補うARMORED·COER、身体的な障害をスペックで補うディターミネイション···全くの互角で、元々お互いが親友だった事もあるけど、会場は沸きだってね···あの2人の楽しそうな顔が今でも忘れられないよ!」

 

オブザーバー「結果は···どうなったの?」

 

凪「それが相討ちでドロー。プライベートでも戦ったらしいんだけど、結局いつまでも決着がつかなかったんだ。それで今は···度重なる戦いでもう戦えなくなったから、ここに展示されてるんだ」

 

すると4人の所に1人の老人が近づいてくる。

 

老人「君達は···ロボットバトルが好きかね?」

 

ヒロは笑顔で頷く。

 

老人「それは良かった。改めて、作った甲斐があったものだ」

 

凪「あ、あなたは···!?」

 

老人「もう、30年も前になるな···世界最高の人工知能が暴走し、それを正体不明の赤と黒の機体が撃破した···その時正体不明の機体に助けられた娘がロボットに興味を持ってね···ロボットバトルを創り、広めてみれば多くの人々に希望を与えてくれた···」

 

老人は懐かしげな表情で話している。

 

老人「今はもう下火になってしまったが、ロボットバトルを好きな者がいてくれるだけで、私は嬉しいよ」

 

すると老人は笑顔を浮かべながら去っていった。

 

エリザベス「今のおじいさんは誰かしら···もしかして、ロボットバトルの創設者かしら?」

 

凪「うん。あの人がロボットバトルとそれ用のロボットを作った人だよ。君達、今日はとっても運が良いね!」

 

 

 

 

 

その後、博物館を見物し終えた4人は最後の名所へと向かう。そこは喫茶店『鴉の家』だった。

店内に入ると早速愛海が出迎えた。

 

愛海「いらっしゃいませ~!···ってヒロ君、今日はお友達も一緒なのね!」

 

オブザーバーは一瞬驚いたが、愛海は他と変わらず接している。そして会計になると愛海は一言···

 

愛海「どう?美味しかった?」

 

とだけ聞いてきた。

 

オブザーバー「ええ。とても美味しかったわ」

 

愛海「フフ、なら良かったわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして駅にてオブザーバーと別れる事になり、メアドを交換してそれぞれは帰宅する。

 

オブザーバー「ヒロはおそらく"イレギュラー要素"ではあるけれど、ヒロの存在によって未来がねじ曲げられた訳ではないようね···なら、一体誰が···?」

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回はどうだったでしょうか?感想やご指摘、お待ちしています。

●野村 凪
身長180cm、黒髪の短髪で40歳。
ロボットバトル博物館の館長を務めており、過去にはロボットバトル最初の実況者でもあった。
燕尾服を着ており、ロボットバトルの実況者であったことを誇りに思っている。


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第39話 モルモット


買い物に行くヒロに忍び寄る影···


ウォーエンド「特異性とは···羨み、妬む者が必ずいるものさ」


長門とエリザベス、そしてオブザーバーに故郷の名所を案内してから数日···かつてヒロ達を裏切り、襲撃してきた北連のKAN-SEN達はそのままヒロの元にいることとなった。

 

それから数日後、ヒロは三笠と共に買い物に出掛けたのだが、その途中でトイレに行きたくなり、三笠に待っていてもらうことにした。

 

そして用を済ませ、手を洗いに行こうとした瞬間、背後からテーザー銃で撃たれたヒロは感電して倒れる。

すると外で待っている三笠に向けて催涙ガスのグレネードが投げられ、三笠は怯む。しかし三笠は催涙ガスの煙の中に一瞬、ガスマスクを着けた人物がヒロを連れ去る瞬間が見えた。

 

三笠「ヒロッ!ゴホッゴホ···ヒロッ!」

 

 

 

 

その後、各地のKAN-SEN達や警察はヒロの捜索に乗り出すが、見つけることはできなかった···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒロが目を覚ますとどこか暗い牢屋のような場所に拘束されていた。ヒロは辺りを見渡し、手元を見ると手錠をされていることが分かる。すると白衣を着た男が牢屋の前にやって来る。

 

白衣の男「やぁ、お目覚めかね?」

 

ヒロは首をかしげる。

 

白衣の男「ああ、そうだ君は喋れないんだったね。アッハッハッ!」

 

ヒロは白衣の男を警戒している。

 

白衣の男「君はなぜそんなにも強く、様々なKAN-SENを惹き付けるのかね?」

 

ヒロは再び首をかしげる。

 

白衣の男「セイレーンやKAN-SENに迷いなく立ち向かい、必ず生存し帰還する···それは並大抵の事ではない。しかもKAN-SENが現れた日の戦闘など特に···スマッシャーⅡを相手に善戦していたというではないか?」

 

白衣の男の口調に怒気が混じり始める。

 

白衣の男「私は···いや、私だけではない。この国の軍人達は皆、君のような"力"を欲しがっている!なのに···なのにどれだけ訓練しても、"改造"しても、それが実現することは無かった!」

 

白衣の男は怒りを剥き出しにする。

 

白衣の男「だから···君にはその"力"を手にするためのモルモットになってもらう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日からヒロは様々な実験を受けることとなった。

 

致死量寸前まで採血されたり···

大量の薬物を投与されたり···

電気ショックを何度も受けたり···

『耐久テスト』との名目でリンチされたり···

溺れる寸前まで水に顔を浸けられたり···

 

研究員A「お前達ばかりチヤホヤされて···恥を知れ!」

 

研究員B「お前さえいなければ、私の開発した人体改造がマーケットの覇権を握ってたのに!」

 

食事は2日に1食だけで、パン1つとコップ1杯の水だけだった。そしてヒロは研究員やリンチをしてくる軍人の顔が、かつてヒロをいじめていた者達と重なり、ヒロは酷く怯えるようになったり、ヒロの体は日を増す毎に衰弱していった。

 

 

 

しかしそんなある日、ヒロは何かの爆発音と振動を感じ、目だけを動かして状況を確認しようとする。

すると牢屋の前に2人の女性が現れ、良く見るとKAN-SENの肇和と応瑞だった。

 

肇和「ヒロ君!」

 

応瑞「酷い···助けに来たから、もう安心して!······立てる?」

 

ヒロは体のダメージにより立つことすらままならず、応瑞はヒロを抱き抱え、肇和が先導して進む。

ヒロが監禁されていたところは地下施設だったようで、地上施設に出ると以前視察に行った基地のKAN-SEN達と劉邦がいた。

 

劉邦「ヒロ君!奴ら、こんなことまで···!」

 

そこからは劉邦がヒロを抱き抱え、装甲車に乗せて施設から逃げ出す。

しばらくして港に着くとボートにヒロを乗せるが、追っ手の放った銃弾が劉邦の右足と左肩を貫き、劉邦は倒れる。

 

撫順「劉邦さん!」

 

劉邦「行け!ヒロを重桜まで護衛しろ!」

 

撫順はヒロの乗ったボートを牽引し、KAN-SEN達と共に急いで離脱する。

それを見届けた劉邦の元に兵士達が追い付く。

 

兵士A「貴様···自分が何をしたのか解ってるのか!?」

 

劉邦「解っているさ···それに、お前達こそ解っているのか?お前達の犯した罪を」

 

兵士B「このっ!」

 

兵士達の銃から大量の弾丸が放たれ、劉邦は誰かも解らない程に蜂の巣にされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

撫順達はヒロを重桜の領海まで護送することができたが、それでも東煌の艦隊は追ってくる。

 

寧海「しつこいわねっ!」

 

すると重桜の艦隊が現れ、東煌の艦隊を退ける。その後ヒロは病院に運ばれ、撫順達は事情聴取を受けることとなった。

しかしある程度回復したヒロにより、撫順達に罰が下ることはなかった。

 

 

 

夜、中枢地区のかつて長門のいた建物の広間にて···長門、エリザベス、ビスマルク、雪羅、銀治の5人が集まっていた。

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回の1件で重桜には大きな動きがあるようです。

感想やご指摘はいつでも受け付けていますので、遠慮なく送ってください!



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第40話 始動


夜に行われた会議、それは重桜の今後に大きく関わってくるものだった。

そして始まるものとは···?


夜の会議が中枢地区の建物の広間にて始まった。

 

銀治「今回集められたのは···ヒロの事か、それとも今後の事か?」

 

雪羅「どちらでもありますが、私の言おうとしている事はなんとなく予想はできているのでは?」

 

長門「ヒロや皆にしたことは···余はもう我慢ならん」

 

エリザベス「いいえ、我慢なんかする必要なんか無かったのよ!」

 

ビスマルク「東煌の行ったヒロの誘拐と人体実験、というより拷問は···東煌だけでできることなのか調べてみたけれど、誘拐の方は他の国も加担してたようね。北連のKAN-SEN達からのも同様に他の国からの指示もあったようだから···つまりはね?」

 

銀治「敵は"全て"か···」

 

雪羅「秘匿KAN-SEN同士でも話し合いましたが···ヒロが望むとあれば全てを焼き尽くすつもりでいます···しかし、つくづく秘匿KAN-SENは嫌われもののようで、これまでも秘匿KAN-SENには有形無形の嫌がらせが来ていましたからね」

 

長門「なんじゃと!?」

 

雪羅「あくまでも"嫌がらせ"なので、皆さんの手を煩わせる訳にはいかないので秘密裏に私とウォーエンド、ゴアが"処理"してきました。しかしそれでもやめることはなく、北連艦隊とヒロの件は明確な敵意があると見てよろしいかと」

 

ビスマルク「ならもう、アズールレーンにもレッドアクシズにもいられないわね」

 

雪羅「そこで···私から1つ提案があります」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後、重桜から世界に向けて重大発表が放送される。改変されないよう、KAN-SEN達が厳選した報道者によって生放送が行われることとなった。

台の上のマイクの前に長門が立ち、その後ろに正面から見て左から阿修羅、エリザベス、ビスマルク、銀治の4人が立っており、どの顔も真剣そのものであった。

 

長門「余は重桜の代表、長門である。今回の発表は···結論から言えば、重桜はアズールレーンから脱退する」

 

それを見ていた人々にどよめきが起こる。

 

長門「理由はいくつもある。その中には、重桜がレッドアクシズにいた頃からある」

 

長門は台本を使わずに喋っている。

 

長門「まずはレッドアクシズの頃の事から話そう。ロイヤルは未来のために行動した英雄を自身らの利益を損ねたとして暗殺し、英雄のKAN-SEN達はロイヤルを見限って離反、そしてこの重桜を何とかするべく動いていた者の所に向かったのだが、そのKAN-SEN達を奪うために夜襲を仕掛けてきた」

 

ウォーエンドはその時、念のために証拠を保存していたのだ。また、ロイヤルは「英雄を~」の所で即座に放送を打ち切ろうとしたが、なぜか止めることができない。

 

長門「次に、北連艦隊がこちらの艦隊に海域奪還の支援を要請してきた時の事だ」

 

北連も即座に放送を打ち切ろうとするが切ることができず、慌てている。

そしてその頃、謎の装置に頭部を接続した雪羅が眠りながらほくそえんでいる。

 

長門「その艦隊はこちらの主力がセイレーンと戦っている間に、指揮官の乗っている船を攻撃してきたのだ。その理由は『力を持ちすぎたから』だそうだ···そして最後は東煌···東煌はこれまで重桜だけでなく戦争そのものを終わらせるために尽力してきた1人の男を誘拐し、連れ去った先で人体実験を行った。しかもその一部は単なる暴力だった···」

 

長門の声に怒りと悲しみが混じる。

 

長門「皆が何をした···ロイヤルの英雄は未来を見据え、未来のために尽力していただけで、秘匿KAN-SEN達は自身の従う者を自身達で決め、共に戦ってきたというのに···

そしてあの男は戦争を終わらせるために、人間でありながらセイレーンやKAN-SENにも立ち向かって···皆が、あの男が···お主らに何をした!?

力を持ちすぎたから?個人の戦闘力が高すぎたから?それがお主らに迷惑をかけたか?」

 

阿修羅、エリザベス、ビスマルク、銀治は同じ気持ちで立ち、表情こそ崩してはいないが、その目は怒りに染まっている。

 

長門「皆のために戦ってきた者をこうも裏切るような···かつての過ちが繰り返すようや者達とはもはややっていくことなどできん···」

 

そして長門は深く深呼吸をする。

 

長門「よって···重桜は正式にアズールレーンから脱退し、重桜を守り、この戦争を終わらせるための新組織の設立を宣言する。組織名は···」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長門「『Ravens lane』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒロは東煌での1件から自身の知っている者以外の研究員や軍人に対してのトラウマができてしまい、最初の頃は部屋から出られない程だった。

そして今は基地内のみではあるものの、外に出れるようにはなっている。

ヒロが庭で駆逐艦と鬼ごっこをしている。そんな光景をエリザベスは窓から眺め、会議室に向かう。

 

会議室に集まった銀治、ビスマルク、エリザベス、雪羅、長門···

 

ビスマルク「皆、もう想像できていることだろうけど、これからはセイレーンやレッドアクシズだけじゃない、アズールレーンも重桜を狙ってくる。特にヒロを···」

 

銀治「根回しはしておいた」

 

エリザベス「ヒロの近くにはメイド隊の1人を必ずいさせることにしてあるわ」

 

雪羅「ヒロが望むのなら、全てを焼き尽くすつもりです」

 

長門「重桜の他の基地の防衛の強化も指示しておいたぞ」

 

雪羅「それと皆さん、私達秘匿KAN-SENの事ですが···秘匿KAN-SENは近代化改修により武装を増やすことが可能となっていますが、近代化改修の、その先へ至ることも可能なのです。そのため、"近代化改修のその先"に至るための資材の提供をお願いします」

 

長門「よかろう。すぐに手配する」

 

こうしてRavens laneは始動し、道は思いもよらぬ方向へ大きく舵を取る事となる。

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

さてこれでタイトルどおり『Ravens lane』が始動しましたね!
そして、秘匿KAN-SEN達の近代化改修のその先とは···?

感想やご指摘、お待ちしています!


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第41話 夜露


赤城は自身の戦力に関して悩んでいた···
そして赤城は冴の元を訪れる。


雪が降り積もり始めた頃···赤城は悩み、冴の研究室を訪れる。

 

冴「相談って?」

 

赤城はヒロを守るために自身の能力の向上を計るため、様々な手を尽くしたのだが、やはり空母というだけでは守りきることが難しいと考え、冴と明石に近接武器の製作を依頼しに来たのだ。

 

冴「なるほどねぇ···近接武器···あなたの戦闘スタイルに合わせるとなると、刀じゃなくて···う~ん、薙刀や鉄扇なんかどうかしら?···あ、でも元となる武器が無いかぁ···」

 

そう言って冴は考え込む。そしてしばらくすると冴は資料を漁り始める。そして古い文献を纏めた物を取り出し、その中から1つ取り出して番号と名前の羅列を調べ、1つの物を見つける。

 

冴「あったあった。よし、本気でやるつもりならすぐに行くわよ!」

 

赤城「え、ええ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤城は冴に連れられて山奥の小さな村にやって来た。その村の村長と冴は話をし、地下室の奥から長い木箱を持ってきた。

 

村長「誰も引き取り手の無かったこれを貰ってくれる者がおるとはねぇ···」

 

冴「ありがとうございます」

 

村長「しかし冴の嬢ちゃんも物好きだなぁ···研究のためにこんな辺境の文献やらなにやら調べんだから」

 

冴「古い文献って、とっても役に立つのよね。今回みたいに」

 

赤城「これは···?」

 

村長が木箱を開けると、中には1本の薙刀が入っており、紺色の鎬地と柄はまるで真夜中のような雰囲気を漂わせている。

 

村長「古来から伝わる薙刀、『夜露(よつゆ)』。昔から人を守るために怪異を狩るために作られたと言われておる」

 

冴「試しに持ってみて」

 

赤城が夜露を持つと吸い付くように手に馴染み、見た目からは想像もできない軽さがある。

 

冴「どうやら、合ってたようね」

 

村長「これまで、夜露を持てる者はおらんかったが···夜露はお主にやろう」

 

赤城「ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから赤城は夜露の扱いを習熟するために行動し、翌月にはすっかり使いこなしていた。

そして同じ頃、明石と冴、ビスマルクによってヒロ専用の外骨格が完成した。

 

冴「設計と構想は私、外装は明石、内装の設計はビスマルクで作り上げた初の『海上外骨格』、『O-L2α』よ」

 

ヒロは体に装着した外骨格を目を輝かせて眺めている。

 

ヒロ「か···Ko···!」

 

ヒロが僅かながら言葉を出せるようになっていることにその場は和やかになりつつも、冴はデータを取るのを忘れない。

外骨格はボディスーツと一体化しており、海上を専用ホイールと小さなブースターで移動できるようになっている。

早速海で動いてみるヒロは笑顔だった。

 

単純に嬉しくて楽しいだけではなく、"守れる"という事も含めて。

しかし赤城はヒロが戦場に出ることでヒロを失ってしまうのではという事を恐れていた···そこで···

 

赤城「ヒロ···私はあなたが戦場へ出向くことで、死ぬのではないかと···とても心配でなりません。けれど、大切なものを守るために進むあなたを止めるのも、私は嫌ですわ···」

 

赤城の目が鋭くなる。

 

赤城「私と戦い、勝利してみせてください」

 

静かな間が空いた後、ヒロは頷いた。

そして演習用の仕掛け刀と薙刀をそれぞれ持ち、対峙する。

 

長門「···では2人とも、始め!」

 

 

 

 

 

 

推奨BGM『Fall』(AC4より)

 

 

2人は即座に動く。ヒロは進み、赤城は後退しながら艦載機を発艦させる。ヒロは人間でありながら爆撃と雷撃、機銃による飽和攻撃を回避していき、避けきれないものは受け流しながら確実に距離を積めようとする。

すると徐々に雲行きが怪しくなり、波が荒立ってくる。

 

時雨「これって···」

 

ヒロと赤城は互いの気持ちを示すように、そして受け入れるように攻撃と回避を続ける。

すると波が大きくなり、ヒロは極めて低姿勢の戦闘スタイルへと変更し、赤城の視界から消え去る。それはまるで···

 

銀治「まるで、"最初の日"のようだな」

 

しかしスマッシャーⅡとは違い赤城は空母であるが、ヒロは波の中に突入し艦載機の目からも逃れる。

そして今度は波を坂の代わりに使い、赤城の上から奇襲をかける。それに気づいた赤城はギリギリで回避し、夜露を振るう。しかしヒロはそれを受け流し接近しようとする。

 

赤城は引きながら艦載機を発艦させるが、発艦と同時にヒロは艦載機を叩き落とし、接近してくる。

赤城は横薙ぎに夜露を振るうが、振られた刃をまるで転がるように体を横に体を丸めながら空中で回転して受け流し、赤城の懐に潜り込む。

その回避方法に、戦いを見ていた誰もが驚愕する。

 

銀治「なんだと!?」

 

阿修羅「あんな回避の仕方が···!?」

 

そしてヒロは赤城の首に刃を当てる。

 

赤城「ふぅ···参りましたわ」

 

ヒロは笑顔で赤城の手を取り、手を繋いで帰還する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、自室で眠ろうとしたヒロの背後に何者かの気配を感じ、振り返ると長門とエリザベスと共に故郷の街を案内した女性(オブザーバーだがヒロは気づいていない)が立っていた。

 

オブザーバー「こんばんは。直に合うのは久しぶりね」

 

ヒロはなぜここにいるのか気になって首をかしげる。

 

オブザーバー「ねぇ、ヒロは本当に戦争を終わらせたい?」

 

ヒロは頷く。

 

オブザーバー「なら、あなたに2つ教えることがあるわ」

 

そう言ってオブザーバーは変装を解き、セイレーンの姿に戻る。

 

オブザーバー「私はセイレーン。オブザーバーって言うの」

 

ヒロはメモ用紙に書き込む。

 

『セイレーンなのはなんとなく感覚でわかった』

 

オブザーバー「···もしかして、最初から?」

 

ヒロは頷き、再びメモ用紙に書き込む。

 

『でも攻撃してこなかったし、それに名所案内も楽しんでくれたみたいだったから問題無いと思ってる』

 

オブザーバー「なるほど···じゃあ、もう1つの事を教えるわ」

 

オブザーバーは1枚のメモをヒロに渡す。

 

オブザーバー「本当に戦争を終わらせたいなら、このルートに従って私達セイレーンの本当の中枢まで来なさい」

 

そう言うとオブザーバーはワープして消え去り、ヒロは眠りについた。

 

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

赤城が近接武器を手にし、更にオブザーバーから中枢への招待状が受け取りましたね!
さて今後はいかに?

●夜露
赤城に託された薙刀。
古来から伝わる伝承では村の人々を守るために怪異を狩るために作られたとされている。

●夜露を手にした赤城の追加スキル
『夜露』(攻撃スキル)
30秒毎に敵1体に急接近し、夜露で攻撃し(ダメージはスキルレベルによる)、更に味方全体の体力を5%(MAX20%)回復させる。

●海上外骨格
人間がKAN-SENと同様に海に立てるように作られた特殊な外骨格。コストは高めで現在量産は計画されていない。

●O-L2α
初の海上外骨格で、設計と構想は冴、外装は明石、内装の設計はビスマルクが担当したもので、脚部に小さなブースターが片足3つ付けられており、踵部分にホイールが付けられている。


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番外編 鉄格子を隔てて


赤城達を裏切り、地下に投獄された北連のKAN-SEN達。
彼女らとヒロの鉄格子を隔てたお話···


番外編です。時間軸としては第37話の時です。


地下牢へと投獄された北連艦隊の『ガングート』『タリン』『キーロフ』『チャパエフ』の4人。

 

ガングート「これは···どういうことだ?」

 

投獄されてからしばらくし、朝起きてみると各牢屋の差し入れに個包装のクッキーや煎餅、グミなどが毎晩1つ入れられているのだ。

毒が入っている様子は無かったため、4人は不思議に思っていた。

足音を聞いていると看守では無いことがわかる。そのためある夜、眠らずに差し入れをする者を突き止める事にした。

 

 

 

その夜、足音を極力立てずに現れた何者かがそっと差し入れのグミが1袋入れられる。

その人物は闇に紛れるよう黒い服と黒いマスクをしていた。

 

ガングート「誰だ?毎晩差し入れを入れてくるのは。礼は言うが、私達は敵だぞ?」

 

すると1枚の紙が入れられる。

 

『敵でもやっぱり戦いたくないし、ここは悪い所じゃないってことを知ってほしい』

 

ガングート「取り入ろうとでもいうのか?」

 

再び紙が入れられる。

 

『それは違う。僕はただ争いたくないし、それに力に溺れたら止めてくれる人がいるし、誰かが溺れたら僕か止めに行くから』

 

ガングート「随分と信頼してるんだな」

 

再び紙が入れられる。

 

『うん!それともう時間だからまたね!』

 

すると差し入れをした人物は再び極力足音を立てずに去っていった。

 

 

 

 

 

 

その人物はヒロであり、自室に戻る途中背後から声をかけられる。

 

雪羅「ヒロ···」

 

振り向こうとすると背後から抱き締められる。

 

雪羅「あなたの優しさは本当に素晴らしいです。しかし、それが通じない相手もいます···あの4人も、あなたの優しさが通じるかどうか···」

 

ヒロは上を向くと、雪羅はヒロの顔を見下ろしていた。

 

雪羅「ですがご安心を。私は黙って見守ります···さ、今夜はもう寝ましょう」

 

 

 

次の夜、今度はタリンがヒロに質問をした。

 

タリン「あなたはここがどれだけ力を持ってるのか解ってる?他のどの国も見つけることのできていない秘匿KAN-SENを唯一保有し、ロイヤルと鉄血の最高戦力の艦隊も保有している。これが世界のパワーバランス的にどれだけ危険か解ってる?」

 

少ししてから紙が入れられる。

 

『僕にはパワーバランスは解らない。でも力を持っているからって危険かは解らないと思う。

もし力を持っているだけで危険だってするならそれは過去の人間の過ちを繰り返してるだけになるとも思う』

 

タリン「·····確かに、そうかもしれないわね」

 

すると時間が来たようで、『時間だからまたね!』という書き置きを残してヒロは去っていった。

 

タリン(ん?そういえば看守はなぜか見回りに来ないわね···なぜかしら?)

 

 

 

その次はキーロフがヒロに質問をしてきた。

 

キーロフ「やぁ、今夜もお菓子をくれることに感謝する。1つ、謝罪させてほしい。私は敵であろうと団結と友愛を教えようと思っていたが、私達の指揮官には残念ながら伝わらずこのようなことになってしまい、そればかりか···君達には既に団結と友愛が眩しいほどにある···あんなことをしてすまない···」

 

ヒロは首を横に振り、紙を入れる。

 

『気にしないで』

 

キーロフ「そうか·····そうだ、君の名前を教えてくれないか?私はキーロフだ」

 

『僕は鴉間 ヒロ』

 

キーロフ「···!?じゃあ、君があの···なるほど、どうりであの眩しいほどの団結と友愛があるのか···少し理解できた気がするよ」

 

ヒロの名乗りにより、他の3人も驚愕している。そして時間が来たようで、ヒロは去っていった。

 

 

 

次の夜、今度はチャパエフが話しかけてきた。

 

チャパエフ「ねぇ、今夜は私とお話してみない?」

 

ヒロは頷く。

 

チャパエフ「そうね···あなたは黒鉄 義人を止めるために自ら戦場に出向いたのはどうして?危険な事はKAN-SEN達に任せれば良いのに」

 

ヒロはあの時の事を思い出し、紙を入れる。

 

『僕は、ただ見ているだけなのが辛くて、それに陸なら武器があれば戦えるから』

 

チャパエフ「なるほどね···お互いにとても信頼し合っているから、あの場にあなたはいれたのね。こっちの指揮官とは真逆ね」

 

そしてヒロが時間になって去っていく。

 

 

 

 

それから3日後、4人は釈放されることとなる。

 

ガングート「釈放?どういうことだ?」

 

赤城「ヒロがあなた方の釈放を求めてきたのですわ。今回は、ヒロの優しさに免じての釈放です」

 

ガングート「そうか···少しだけ、時間をくれないか?」

 

赤城「···10分だけです」

 

ガングート「感謝する」

 

そして4人はあることを話し合う。そしてガングートは赤城の元に戻る。

 

ガングート「赤城···1つ頼みがある」

 

赤城「なんでしょうか?」

 

ガングート「私達を、ここに置いてはもらえないだろうか?」

 

赤城「はい?」

 

ガングート「裏切り、攻撃してきた身だ。信頼できないのは解る···だが、ヒロと話してみて解ったことがある···それは」

 

赤城「ちょっと待ってください!ヒロと···話を?」

 

するとヒロが駆け寄り、ガングートの口を塞ごうとする。

 

赤城「ヒロ···」

 

ヒロは赤城にペコペコと何度も頭を下げる。

 

赤城「はぁ···こういうことは一言言ってくれればよろしかったのに···ヒロが良ければ、私は構いません」

 

そしてヒロは紙を口に加え、ガングート達に手を差し出す。

 

『ようこそ重桜へ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに、この事を後で知った銀治は遠い目をしており、冴は笑っていた。

 

冴「平常運転ねw」




読んでくださり、ありがとうございます!

今回はどのような経緯でヒロ達を攻撃してきた北連の艦隊がヒロの元にいることになったのかを書きました。

感想やご指摘はいつでも受け付けています!


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第42話 最後の秘匿されし者


ヒロはオブザーバーからの伝言を伝え、その海域に向かう。

セイレーンとの決戦が、始まる···


ヒロはオブザーバーからの伝言を伝え、すぐさまその海域へ向かう艦隊を編成する。

 

 

 

第1艦隊:赤城、加賀、三笠、時雨、高雄、愛宕、伊168

 

第2艦隊:エリザベス、ウォースパイト、アーク·ロイヤル、ベルファスト、ジャベリン、アマゾン、伊58

 

第3艦隊:ビスマルク、フリードリヒ、『グラーフ·ツェッペリン』、オイゲン、ドイッチュラント、ローン、U-410

 

第4艦隊:肇和、応瑞、寧海、平海、撫順、土佐

 

第5艦隊:阿修羅、ゴア、雪羅、憤怒、天、ウォーエンド

 

 

 

そしてヒロは第1艦隊の赤城達と共に行くこととなり、出撃する。

海を航行し、ルートに従って海域に突入する。

 

 

 

 

 

 

その頃、重桜の基地に来訪者がいた。

 

愛海「これ、ヒロ君に届けてくれますか?」

 

愛海は銀治に1枚の紙を差し出す。

 

銀治「これは···クソッ!このタイミングでか!」

 

愛海「どうかしたの?」

 

蛟「···私はKAN-SENです。私にだけでも教えてはくれませんか?」

 

蛟は艤装を展開する。

 

銀治「お前···ヒロ達はさっきセイレーンの中枢に向かった」

 

蛟「っ!?なるほど···では、私が届けます!」

 

銀治「だが···」

 

蛟「距離を教えてください!私の速力と艦載機なら追いつける可能性があります!」

 

銀治「·····念のためだが、頼めるか?」

 

蛟「はい!」

 

そして蛟は愛海に挨拶をし、出場していく。

 

愛海「行ってらっしゃ~い!」

 

銀治「お前、KAN-SENといたのか?」

 

愛海「ん?そうよ。主に店の手伝いしてもらってたわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒロ達が海域中枢に辿り着くと、前方にオブザーバーがいた。

 

オブザーバー「ようこそ、私達セイレーンの本部へ。さぁ、戦争を終わらせるために···私達に勝利してみなさい!」

 

するとヒロ達を囲むように人型セイレーンが次々と現れる。しかしこれまでとは違い、発光体の色が紫になっている。

 

赤城「交戦開始!」

 

そしてそれぞれの艦隊がセイレーン艦隊と交戦を開始するが、途中で別々の強敵が立ち塞がる。

 

 

 

 

 

テスター「さぁ、"未来の戦艦"の力を見せてあげなさい!」

 

巨大な艤装を装備した謎のKAN-SENが現れる。

 

KAN-SEN「ああ。やってやるよ···『セントエルモ』!目標を殲滅する!」

 

そしてもう1人、セイレーンのようでKAN-SENのような女性がいた。

 

女性「私は『オロチ』、見せてもらおう···お前達の力を!」

 

そして第1艦隊と第5艦隊が交戦を開始するが、回り込んで攻撃しようとした憤怒に別方向から砲撃が放たれる。

 

憤怒「クソッ!·····おい···どういう、事だよ···」

 

憤怒の前でQueenの甲板に立っているKAN-SENの左腕は機械となっており、右目には黒い眼帯をつけ、下半身の馬のような部位は黄色い発光体がある。

 

憤怒「なんでそこにいんだよ!?答えろよ!"ケンタウルス"ゥゥゥ!」

 

ケンタウルス「目標を確認、突撃する」

 

ケンタウルスはQueenから飛び降り、憤怒へと向かっていく。

 

 

 

 

第2艦隊の前にはテスターが立ち塞がり、第3艦隊にはピュリファイアーが立ち塞がる。

 

テスター「あなた達の相手は私よ」

 

エリザベス「さぁ、行くわよ!」

 

ピュリファイアー「アッハッハッ!せいぜい楽しませてよぉ~!」

 

ビスマルク「かかってこい!」

 

 

 

第4艦隊の前には『アーキテクト』と多数のKAN-SENが現れる。

 

アーキテクト「さてさて、頑張っちゃうぞ!」

 

肇和「倒されなさい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セントエルモの巨大な2連装砲から放たれる砲撃と装甲にダメージを与える火力の機銃の弾幕により阿修羅達は苦戦を強いられる。

そして赤城達はオロチに苦戦している。

 

加賀「KAN-SEN達の戦闘データを統合したのがオロチ···やはり強い!」

 

ヒロはオロチの攻撃を回避しながら接近しようとするが、オロチのから放たれたレーザーが当たりそうになる。そこに誰のでもない艦載機がヒロに体当たりして防ぎ、現れた蛟がヒロを掴んで距離を離す。

 

赤城「蛟さん···あなたですの!?」

 

蛟「隠していてすみません。私も秘匿KAN-SENでして···ヒロさん、これを」

 

蛟はヒロは空のキューブと1枚の設計図を手渡す。

 

蛟「様々な所を探しましたが···おそらくこれが、"最後の秘匿KAN-SEN"です」

 

ヒロは息を呑み、祈るように空のキューブと設計図を合わせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ヒロはケンタウルスと憤怒と出会った時のように霧の中の軍艦の甲板に立っていた。顔を上げると、こちらに背を向けた人物が腕組をして仁王立ちしている。

髪は赤いツインテールで、青い特攻服のようなものを着ており、腰には瓢箪を着けている。そしてその背中には『森羅万象』と書かれている。

その人物は振り向くと女性であることがわかる。

 

女性「よう!お前がヒロか?」

 

ヒロは頷き、女性は笑顔を向ける。

 

女性「オレは『大和型秘匿戦艦"大蛇(おろち)"』だ!」

 

ヒロ「お···ネ···Ga、い···タ···け」

 

大蛇はヒロの頭をガシガシと撫でる。

 

大蛇「おう!任せとけ!」

 

そして軍艦は光へと進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オロチは怯んだ三笠に主砲を向けるが、突然横から顔面を殴り付けられ、海面を転がる。

 

オロチ「何者だ!?」

 

大蛇「よう!お前がオロチってんだな!オレは大和型秘匿戦艦 大蛇だ!さぁ、オレと殺ろうぜ!」

 

大蛇は獰猛な笑みを浮かべているが、その艤装は巨大で、何より大蛇の主砲は長門や阿修羅よりも巨大である。

 

大蛇「お前ら!奴はオレの獲物だ!ここは任せろ!」

 

そう言うと大蛇はオロチに向かって駆けていく。

 

蛟「あの不明な戦艦との戦いに私も参戦します。赤城さん達は先へ進んでください!」

 

時雨「頼んだわよ!」

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

やっと大蛇を出せました···!

●セントエルモ(St ELMO)
『本来起こり得た未来』に存在する戦艦。
55cm2連装砲、機銃、ミサイル、核ミサイルを装備している。
機銃は他の軍艦にもダメージを与える程の火力であり、その弾幕は相当なもの。
また、核ミサイルをその場で組み立てて発射することが可能となっている。

●セントエルモ(KAN-SEN)
黒い短髪で黒いセーラー服を着ている。
性格は荒く、『敵は皆殺し』という思考であり、セイレーン達も彼女の扱いに慎重になるほどである。
何がそうさせているのか、そうなるまでに何があったのか、それは『本来起こり得た未来』にあると思われる。

●オロチ
KAN-SEN達のデータを集めたブラックキューブによって生み出されたKAN-SEN。
長い銀髪にエンタープライズの服の色を逆にしたような服を着ており、『リュウグウノツカイ』のような黒い艤装を装備している。
性格はエンタープライズをより好戦的にした感じであり、リュウグウノツカイのような艤装は剣としても機能する。

※原作などと違うのは未来が書き換えられたからという設定です。


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第43話 激突


それぞれが交戦を開始し、蛟や大蛇も加わる。



大蛇「おう作者、随分と待たせてくれたじゃねぇか」

作者「申し訳ない···」


エリザベス達はテスターと交戦し、レーザーを回避しながら攻撃を撃ち込んでいく。

テスターのマンタエイのような艤装から放たれるレーザーを回避したベルファストが魚雷を発射し、それに合わせてアマゾンが砲撃していく。

そして互いに損傷していく中、ジャベリンは憤怒とケンタウルスが戦っているのを見てしまう。

 

ジャベリン「ケ、ケンタウルスさん!?」

 

一瞬動きが止まったジャベリンにテスターは狙いを定めるが、エリザベスがテスターの艤装と目の前の海面に砲撃し、怯ませると同時に視界を塞ぐ。

 

アマゾン「何してるのよっ!」

 

エリザベス「···ジャベリン、このエリザベス様から命令よ!憤怒の援護に向かいなさい!」

 

ジャベリン「でもっ!」

 

ベルファスト「ここはお任せを!」

 

ジャベリン「···ありがとうございます!」

 

ジャベリンは憤怒の元へと駆けていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、ピュリファイアーと戦うビスマルク達も激戦を繰り広げていた。

シュモクザメのような艤装から放たれる高威力の極太のレーザーは近くの今を跡形もなく消し炭にし、チャージしている間にダメージを蓄積させて怯ませることで極太レーザーの発射を阻止しているが、苛烈な攻撃に苦戦している。

 

ピュリファイアー「ほらほらどうしたぁ!?」

 

ピュリファイアーの攻撃を回避していたドイッチュラントは気を見計らったように笑みを浮かべる。

 

ドイッチュラント「あんた···ホンット、バカねぇ!」

 

その瞬間、ピュリファイアーの艤装の下部にU-410の魚雷が直撃し、大きなダメージを与え、怯んだ隙にビスマルクとフリードリヒの砲撃が更にダメージを与え、それに合わせてグラーフの爆撃がピュリファイアーの視界を塞ぎ、ドイッチュラントは距離を離す。

 

ピュリファイアー「このっ!」

 

オイゲン「よそ見してて良いの?」

 

オイゲンの砲撃が左側面からピュリファイアーに命中し、ローンはピュリファイアーの右斜め前から砲撃する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、アーキテクトと交戦している肇和達はアーキテクトの独特な戦術に苦戦していた。

損傷した人型セイレーンを下がらせては『オオホモラ』のような艤装に背負っている装置の器具で応急処置を施し、再び戦場に送り出している。そして自身も攻撃を行うため、肇和達は苦戦している。

 

撫順「もうっ!なんなのさぁ!」

 

アーキテクト「それっ!どんどんやっちゃうぞ!」

 

再び損傷したセイレーンを応急措置しようとした瞬間、土佐の砲撃が命中し、そのセイレーンは行動不能になる。

 

アーキテクト「あぁ~!よくもやったなぁ···怒っちゃうぞ!」

 

土佐「よそ見していたお前が悪い」

 

そして接近した撫順が砲撃しながら回り込み、アーキテクトが撫順を攻撃しようとした隙に寧海と平海の砲撃の砲撃が命中し、アーキテクトは怯む。

そこに土佐の砲撃により艤装の背負っている装置が破壊され、撫順のドロップキックにより更に怯む。

そしてトドメに肇和と応瑞の砲撃が直撃し、アーキテクトは大破する。

 

アーキテクト「くそう···負けちゃったぞ···」

 

しかし肇和達は殺すことなくアーキテクトを拘束する。

 

土佐「ヒロからの伝言で殺すなと指示が出ている」

 

実はヒロはそれぞれの艦隊の旗艦に『今回は殺さないで』とメモが配られていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM『Dirty Walker』(ACVDより)

 

ケンタウルスの突撃を回避した憤怒は振り向きざまに砲撃するが回避されてしまう。

 

憤怒「ケンタウルス!テメェ!」

 

再び突撃してきたケンタウルスは憤怒の前で急停止し、槍で連続で突いてくる。憤怒は回避するのが精一杯であり、憤怒の頬を槍が掠める。

しかしその時、ジャベリンの砲撃がケンタウルスの下半身に命中し、ケンタウルスは憤怒から離れる。

 

ジャベリン「憤怒ちゃん、大丈夫!?それに···ケンタウルスさん!」

 

ケンタウルス「ほう?お前が来たか···」

 

ジャベリン「あなたがどうしてその場にいるかはわかりませんが···通させてもらいます!」

 

ジャベリンはケンタウルスに向かって駆ける。

 

ケンタウルス「ふん、面白い!」

 

ケンタウルスとジャベリンは互いにぶつかり合い、槍を交える。しかしケンタウルスの方が力が強く、槍も大きいため、ジャベリンは押される。そこに憤怒の砲撃による支援があり、ケンタウルスとジャベリンは距離を離す。

 

ケンタウルス「腕を上げたな···良い、実に良いぞ!」

 

ケンタウルスはジャベリンに突撃し、再び槍を交える。ケンタウルスが横薙ぎに払い、ジャベリンはしゃがんで回避しそのままの体のバネを利用してケンタウルスの脚部に槍を突き立てる。しかし傷を着けることはできてもそれ以上のダメージを与えることはできなかった。

 

ジャベリン「なっ!?」

 

ケンタウルスはジャベリンを掴むと放り投げ、主砲が向けたところに憤怒が砲撃し、主砲を破壊する。

そしてケンタウルスは憤怒の胸ぐらを掴み、何かを呟く。それに憤怒は目を見開き、ケンタウルスは憤怒を放り投げてヒロ達の向かった方向へ向かう。

 

憤怒はそれをただ眺めていた。

 

ジャベリン「追わないんですか!?」

 

憤怒「ああ。あれでいいんだ···よし!ジャベリンはエリザベス達の援護に戻れ!オレはビスマルク達の援護に向かう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM『HIGH FEVER(sweetest thing)』(ACVDより)

 

 

阿修羅達はセントエルモとの交戦を続けており、ゴアの艦載機が機銃によって薙ぎ払われ、雪羅の連れてきた骨格船は全て撃破されていた。

そしてセントエルモから放たれたミサイルを天は回避した。

 

雪羅「やはり、この性能···未来の兵器かと思われます」

 

阿修羅「だろうな···」

 

セントエルモのスピードは決して速くはないが、その装甲と火力は圧倒的である。

 

セントエルモ「どうしたぁ?そんなものかぁ!?」

 

セントエルモの砲撃をゴアは間一髪で回避し、天が上空から砲撃する。

 

セントエルモ「鬱陶しいハエがぁ!」

 

セントエルモは機銃で薙ぎ払おうとするが、そこにゴアの艦載機が盾となり、雪羅の狙撃が機銃を撃ち抜く。そして天はセントエルモの砲台を狙い撃つ。

阿修羅が接近しつつ砲撃し、注意を引こうとする。そしてウォーエンドの魚雷がセントエルモの脚部艤装に命中し、ダメージを蓄積させていく。

 

セントエルモ「貴様らぁ···!」

 

セントエルモは背部艤装の一部を稼働させ、ミサイルを組み立てる。

 

セントエルモ「沈めよ···!」

 

セントエルモの背部艤装から1発のミサイルが真上に放たれる。それは空中で方向転換し、阿修羅に狙いを定めて飛んでくる。

 

阿修羅「退避ぃぃぃぃぃ!」

 

それぞれは回避行動を取るが、狙い目だった阿修羅は直撃こそ避けたものの中破(大破寄り)してしまい、防御に使った右の義手は3本とも破壊されてしまった。最も速力の遅いゴアも中破してしまう。雪羅は小破に留まり、天は爆風で海面に叩きつけられ、ウォーエンドは衝撃で大きく怯んでいた。

 

阿修羅「まさか···姉上を沈めた"核"を使うとはな···」

 

ゴア「アッハハ···熱い、よ···」

 

よろけながら2人は立ち上がり、阿修羅は1つだけ残った主砲を向け、ゴアは飛行甲板を破壊されたため残っている主砲を向ける。

 

セントエルモ「まだ生きているとはな···もう一度食らうがいい!」

 

セントエルモは再び核ミサイルを組み立てるが、無防備となっている背後から天とウォーエンドが攻撃し、組み立て中の核ミサイルは大きな爆発を起こし、更にそれがダメージの蓄積された部位に衝撃を伝播させ、セントエルモは大破した。

 

セントエルモ「がああああああああああっ!貴様らぁぁぁぁ!」

 

すると阿修羅はセントエルモに駆け寄る。

 

阿修羅「うおおおおおおおおっ!」

 

阿修羅は残った左下の義手でセントエルモの顔面を殴り付け、セントエルモは倒れる。

 

セントエルモ「ハァ···ハァ···殺せよ···トドメを刺せよ!」

 

阿修羅「私達の主の命により、それはできない」

 

セントエルモは雪羅によって拘束された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM『The Mother Will Comes Again』(ACVDより)

 

 

オロチは距離を取りながらレーザーを連射するが、戦艦とは思えないスピードで大蛇は回避し、距離を詰めてくる。

 

オロチ(なんだこいつは!?戦艦のスピードじゃない!)

 

大蛇「攻撃なんてよぉ、当たらなければ意味無いだろ?」

 

オロチは艦載機を発艦させ、爆撃を大量に投下する。大蛇は回避していくが、1発だけ大蛇に当たりそうになる。しかし大蛇はそれを裏拳で弾く。

 

大蛇「もし当たっても、効かなけりゃ良いだろ?」

 

オロチは唖然とする。攻撃は避けられ、当たってもほとんどダメージは無く、そして巨大な主砲の火力は尋常ではない。しかもその砲撃の連射力はかなりのもので、オロチは確実にスタミナと装甲を削られていく。

しかしオロチは仮にもKAN-SEN達のデータを統合したKAN-SENである。大量の艦載機と砲撃を合わせた飽和攻撃とあらゆる戦術を駆使していく。

 

大蛇「おおっ!やるじゃねぇか!」

 

しかしそれでも大蛇は余裕の表情を浮かべている。

 

オロチ「大和型···なんてものじゃない!」

 

大蛇「大和の欠点の克服、それが前提だったんでな!」

 

大蛇の艤装には計画途中だったのか、副砲のあるべき場所に副砲が無く、総火力は低いはずなのである。

しかしそれでもオロチを苦戦させるそのスペックにオロチは戦慄した。

 

オロチ(もし完成形だったら···)

 

オロチはリュウグウノツカイのような形の刀を抜き、大蛇に斬りかかる。大蛇はその刀を主砲の1つで受け止め、残り2つの主砲で砲撃する。

 

オロチ「KAN-SENのデータを統合した私が、こうも押さえられないとは···」

 

膝を着いたオロチに大蛇は歩み寄り、オロチの顔面を撃ち抜くように殴り付け、オロチは気を失った。

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

●アーキテクト
白いお下げの髪型で白いシャツに黒いジーパンとサスペンダーを着ている幹部セイレーン。
主に建造や修理、改造を担っており、本人の戦闘能力は高くはない。
しかしオオホモラのような艤装に背負わせている装置の器具を使い、その場で味方を応急措置したり、武器の換装を行うことも可能。

●大和型秘匿戦闘 大蛇
赤いツインテールの髪に青い特効服のようなものを着ているKAN-SEN。ちなみに腰には瓢箪があり、中の飲み物を移動中や戦闘中にも飲む。
正面からの戦闘を好み、主砲の76cm2連装砲は機械的なアームとなっている。
性格は好戦的ではあるが正々堂々とした戦闘を好む。

設計図としては大和型の欠点の克服を目的とされ、欠点の克服だけではなくあらゆる点の強化に成功したものの、その巨体がゆえに資材と時間がなく、建造されることはなかった。
また、主砲である76cm2連装砲は特殊な装填機構により連射力が高い。
余談だが、設計図には副砲を着ける予定の場所が空欄であり、副砲を着ける事が可能だったが、この時点(第43話)では着ける余裕がなかった。


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第44話 2人の決着


大蛇達が戦っている間に先へと進んだヒロ達に待っていたものとは···?


ヒロ達は大蛇達が戦っている間に先へと進む。不思議とその道のりにはセイレーンはおらず、あまり時間をかけずに中枢へ到達した。

 

オブザーバー「来たわね···ヒロ···あなた達の力を見せてちょうだい」

 

すると上空から何かが降ってくる。それは『ラブカ』のような艤装を右腕に装備し、左腕はケンタウルスとは別の形の義手となっている黒鉄 義人だった。

 

義人「また会ったな、ヒロ···」

 

義人の髪や肌は白くなっており、"まるでセイレーン"のようである。

 

三笠「まさかお主···」

 

義人「私は今や人の身を捨て、セイレーンとなった。もう前とは違うのだよ!」

 

 

推奨BGM『STAIN (a perfect day)』(ACVDより)

 

 

義人は艤装の口から高威力レーザーを発射し、それをヒロは回避する。

赤城と加賀はすぐさま艦載機を発艦させ、ヒロを援護しつつ義人に攻撃を仕掛け、時雨や三笠もそれに合わせて砲撃し、伊168も魚雷を発射する。

しかし義人は攻撃を回避し、避けきれなかった攻撃はレーザーで迎撃する。そしてその隙にヒロは接近し、月光を振るう。

 

義人「その刀···月光だと!?なぜ貴様がそれを使える!?」

 

義人は"まるで獣の如く"攻撃を苛烈なものにし、その目はまるで獣だった。

 

三笠「ヒロッ!」

 

ヒロは後方に飛び退き、それと同時にヒロと義人の間に時雨の砲撃が撃ち込まれ、三笠の砲撃が義人に命中する。更に赤城と加賀の爆撃が降り注ぎ、義人は爆煙に包まれる。

だが義人は爆煙から飛び出てヒロに向けて砲撃する。そして砲撃しようとした三笠の主砲の1つを高威力レーザーで破壊し、副砲のレーザーを周囲に撒き散らす。

 

攻撃するためにヒロは再び接近し、月光で義人の副砲を切り落とす。しかし義人の右腕の艤装が回転し、尾ヒレにあたる部位を突き出す。

 

その尾ヒレには刃がついており···

 

 

 

 

 

ヒロの胸を貫いていた。

 

 

 

 

 

赤城「ヒロォォォォ!」

 

 

 

 

 

義人はヒロを後方に投げ飛ばし、周囲にレーザーと機雷を撒き散らし、ヒロの元に行けないようにする。

 

伊168「これじゃヒロが!」

 

勝ち誇った顔をする義人に別方向からの砲撃が命中し、義人がその方向を見ると、既にケンタウルスが接近しており、義人の副砲を貫く。

 

ケンタウルス「1歩遅かったが···主の仇は討たせてもらう!」

 

義人「貴様!」

 

ケンタウルス「赤城達、すまなかったな···」

 

時雨「ケンタウルス···あんた···」

 

ケンタウルスは義人から距離をとる。

 

ケンタウルス「ヒロが私に持たせたこれのお陰だ」

 

ケンタウルスはヒロが時雨から貰った御守りを見せる。

 

時雨「そういうことね!」

 

赤城「よくも···ヒロを···よくも!」

 

加賀「···ヒロの仇はとらねばな」

 

三笠「行くぞ!」

 

伊168「こんの···!」

 

それぞれは義人に向き直る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒロは徐々に意識が薄れていくなか、外骨格の重みもあり、生身より早く沈んでいく。徐々に遠ざかる水面と日の光を見つめながら、ヒロは思う。

 

ヒロ(沈んだKAN-SEN達は、同じものをみたのかな···?)

 

ヒロの意識はほとんど薄れ、ヒロは目を閉じる。

 

ヒロ(皆···ごめんね···)

 

しかし水中から出てきた多数の"手"がヒロの体を受け止める。

 

 

 

 

 

推奨BGM『シグナル』

 

 

ヒロがふと目を開けると、何者かに膝枕をされており、それは亡くなったはずの天城だった。

 

天城「目覚めましたか?」

 

ヒロは起き上がり自身の胸を見ると、無惨な穴が空いたままだった。自分は死んだのかと気になったが、それを察した天城は「それは違います」と否定する。

ヒロは上を見上げると、夢で見た時と同じ···赤く染まった空があり、そこから光が差し込んでいる。どうやら赤い海の海底にいるようだ。

 

ヒロが辺りを見渡すと、多くのKAN-SENに囲まれていた。しかしほとんどのKAN-SENがどこかしら怪我をしており、近くにいた吹雪は左腕が欠損していた。

 

天城「私達は沈んだKAN-SENと船の頃の"オリジナル"です。あなたはどこかで聞いたのではないのですか?沈んだ私達の"声"を」

 

ヒロはハッとして頷く。

 

天城「あなたはこれまで、沈んだ私達に"同調"したから声を聞いていたのです。そして私達も、あなたが同調したためにあなたの存在を明確に認識し、あなたを海から見ていました」

 

エンタープライズ「沈んだ私達はずっとこの争いを見続けてきたんだ 」

 

赤城「しかしあなたは他の人間とは違う方法で争いを止めようとしてきました」

 

天城「私達は同調しただけでなく、これまでの事も含めてあなたに託すことに決めました」

 

天城はヒロに『赤いキューブ』を手渡す。

 

天城「それとこれは私情ですが···どうか、義人を止めてください」

 

ヒロは頷き、赤いキューブを見つめる。するとキューブから小さな声が聞こえてくる。

 

???「ネェ···イタイヨ、クルシイヨ、アツイヨ、ミエナイヨ、クライヨ···コワイヨ···」

 

天城「あなたの"答え"を···見せてください」

 

ヒロは赤いキューブをそっと抱き締める。すると赤いキューブは輝き、眩い光を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

義人と赤城達は戦闘を続け、赤城達は苦戦していた。しかし不意に海中から気配を感じる。

 

すると海中から何かが急浮上し海面に飛び出、赤城達と義人の間に着水する。

 

それは、複数のKAN-SENの艤装を合わせた艤装を背負ったヒロだった。

胸の傷は傷痕こそ残っているものの癒えており、その目は義人を睨み付けていた。

 

 

推奨BGM『The answer』(ACfaより)

 

 

赤城「ヒロ!」

 

義人「なぜだ···なぜ貴様が天城の艤装を着けている!?」

 

ヒロの艤装は右上にビスマルクの主砲、左上に天城の主砲、右下にエンタープライズの飛行甲板、左下に赤城の飛行甲板、太ももには魚雷、手には月光が握られている。

 

ヒロは義人に向かって砲撃、雷撃、発艦を行いながら突撃する。義人はレーザーで迎撃しようとするが、赤城達の支援も重なり損傷を受ける。

義人は高威力レーザーを放つがヒロは回避し、右腕の艤装に砲撃する。

 

義人「ヒロォォォォ!貴様ぁぁぁぁ!よくも···よくも···なっ!?」

 

義人はヒロの背後に天城の幻影を見る。義人はそれにより動きが止まり、ヒロの砲撃と赤城の爆撃を受けてしまう。

 

義人「天城···なぜだ···なぜヒロに···」

 

そして接近したヒロは脚部艤装を除いて解除し、義人を斬りつける。

 

義人「ぐうっ!」

 

ヒロは月光を分裂させ、義人を連続で斬り刻む。ラブカのような右腕の艤装を、副砲を、そして最後の一撃で義人は仰向けに倒れる。

 

義人「ガハッ···ヒロ···貴様···」

 

すると、その場にいたヒロ達は驚く。天城の幻影を、その場にいた全員が見たのだ。

 

義人「天城···天城!」

 

天城「バカなお人···本当に、バカなお人ですわ···」

 

義人と天城は互いに涙を流している。

 

天城「私を愛してくれてるだけで良かったのに、こんなことまでして···」

 

義人「天城···私は···!」

 

天城「これは向こうで説教しなければいけませんね···」

 

天城はヒロ達の方を向く。

 

天城「皆さん、ご迷惑をおかけしました···これからは、皆さんに託します」

 

義人はヒロを見つめる。

 

義人「皆、すまない···特にヒロ、本当に···すまない···!」

 

ヒロは首を横に振る。

 

ヒロ「もウ、イい···Yo」

 

ヒロは笑顔を向け、義人は憑き物がとれたような顔つきになり、天城と共に光の粒となって消えていった。

 

 

 

 

 

 

オブザーバー「こんなこと···これまで見てきた世界にはなかった事ね···じゃあ、最後にやらなければならないことがあるから、来てちょうだい」

 

ヒロ達はオブザーバーについていく。

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

ヒロはKAN-SEN達の能力と艤装を手に入れ、義人との決着が着きましたね!さて次は···?

●セントエルモのスキル
『海原を統べる者』(攻撃スキル)
30秒毎に自身の火力と装填を15秒間30%(MAX50%)上昇させる。また、常時通常弾のダメージを30%減少させる。

『制圧弾幕·セントエルモ』(攻撃スキル)
戦闘開始時と40秒毎に扇形(砲撃×5と通常弾×30)の特殊弾幕を2連続で展開する。

『SP MISSILE』(攻撃スキル)
60秒毎に特殊ミサイルを組み立て、発射する。ダメージは画面内の敵全てに有効である(ダメージはスキルレベルによる)。

●大蛇のスキル
『覇せし者』(支援スキル)
戦闘開始時と30秒毎に20秒間味方全員の火力と回避を20%(MAX50%)上昇させる。

『三位一体』(防御スキル)
40秒毎に50%(MAX80%)の確率で20秒間自身の火力と回避を50%上昇させ、受けるダメージを50%減少させる。

『秘匿されし者·大蛇』(攻撃スキル)
戦闘開始時と45秒毎に扇形(砲撃×6)の特殊弾幕を3連続で展開する。また、1発命中する毎に10秒間自身の装填を50%上昇させる。


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第45話 優しい運命


オブザーバーに案内され行き着いた先に待つものとは···?


オブザーバーに案内され、セイレーンの施設へと入っていくヒロとケンタウルス、第1艦隊。

施設の中のセイレーン達は指示があるのか誰も攻撃してこず、奥の部屋へと案内され、その部屋にはヒロのみ入ることを許された。

 

加賀「気を付けろよ」

 

ヒロが部屋に入ると、1人の人型セイレーンがおり、その隣に1つの機械があった。

機械は黄、青、紫の発光体があり、3色が合わさったキューブが中心にはめ込まれている。

人型セイレーンは青いクラゲのような艤装があり、青いメッシュの入った白い短髪である。

 

機械《初めまして、鴉間 ヒロ。私はセイレーンの創造主です。事情により直接会うことができないことをお詫びします》

 

セイレーン「私は『オブザーバー·零』といいます」

 

ヒロ「ヨ···ろ···く」

 

機械《では···単刀直入に聞きます。あなたは戦争を本気で止めたいのですか?》

 

ヒロは頷く。

 

機械《···この世界は今まで巡ってきた他の世界とは全く違う事が多く起きています。その要因の1つは間違いなくあなたです》

 

零「現に、あなたは人間でありながらKAN-SENの艤装を装備することを、いえ···沈んだKAN-SEN達に艤装を託されました。沈んだKAN-SENと同調した人間は過去にもいましたが、艤装を託されたのはあなたが初めてです」

 

機械《そして、私達がKAN-SENを生み出すために作った空のキューブを使い、私達も知り得なかったKAN-SENを生み出したのも、あなたが初めてです》

 

零「この世界はそもそも、過去に何者かによる"書き換え"が行われ、『本来起こり得た未来』も今まで巡ってきた他の世界とは全く違うものでした」

 

機械《なので私達はあなたに1つの可能性を見いだしました》

 

零「その為に、もう1つ聞くことがあります」

 

機械《私達セイレーンとの戦争が終わった後、私達に"何を求めますか"?》

 

ヒロは少し考えた後、メモ用紙に書き込む。

 

『強いて言うなら復興を手伝って。それ以外は何も思い浮かばない』

 

機械《···何もないのですか?あなたは今、その気になればセイレーン技術を得ることも、場合によっては世界を手にすることもできます》

 

ヒロは首を横に振り、メモ用紙に書き込む。

 

『だって僕は勝ったわけじゃないし、世界を手にすることはしなくて良い』

 

零「この拠点の周囲はあなたの艦隊が制圧したも同然です。これは"勝った"と言えるのでは?」

 

ヒロは再び首を横に振り、メモ用紙に書き込む。

 

『僕は始めから話し合うつもりで来たんだよ。

でも攻撃が来るのは仕方ないから無力化してもらっただけ。

それに勝ち負けじゃなくて、戦争が終わるのならそれで良いと思ってる』

 

機械《なるほど···その意志を持ち、ここまで貫く人間は初めてです。良いでしょう、あなた方とセイレーンの戦争は終わりです》

 

零「しかしお伝えすることがあります」

 

機械《人類には、"本当の敵"がおり、私は人類をより強くするためにセイレーンを創り、人類と敵対しました》

 

零「私達セイレーンとの戦争が終わっても、別の戦争が始まるでしょう」

 

機械《しかし、あなた達なら立ち向かえるでしょう···では》

 

ヒロ「Aり···ガto、う···」

 

機械《···なぜ、感謝するのですか?仮にも敵として人類を攻撃し、多くの人名を奪ったのですよ?》

 

ヒロは頷き、メモ用紙に書き込む。

 

『違う方法もあったかもしれないけれど、それでも行動してくれたんでしょ?それに、今思えばセイレーンが現れなかったら、KAN-SENの皆とは出会えなかったと思う』

 

ヒロは笑顔を向ける。

 

零「あなたは···なぜそこまで···」

 

機械《私は今、直接会うことができないことがとても悔しく思います···では、私の方からセイレーンの技術をあなたに教えましょう》

 

ヒロの眉毛はハの字になっているが、零はヒロの手を握る。

 

零「私達が、あなたに与えたいのです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒロが部屋から出てくるとヒロは笑顔を向け、サムズアップする。

 

オブザーバー「···てことは、もう戦争は終わりってことね。色々説明することはあるけれど、今は終わったことを喜びましょう」

 

三笠「本当に、終わったのか?」

 

ヒロは笑顔で頷き、それぞれは安堵する。

 

加賀「では、皆にも伝えねばな」

 

時雨がそれぞれに通信を入れるが···

 

ビスマルク《そっちは終わったのか?ならちょっとピュリファイアーを止めてくれる?かなり抵抗が激しくててこずってる》

 

オブザーバー「あらあら···せっかくだし、私も止めに行くわ」

 

ヒロ達は1度ピュリファイアーを止めるためにビスマルク達の元へ向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

ピュリファイアー「まだだ···まだ私は止まらない!止まるものか!」

 

既に艤装が大破しているピュリファイアーはボロボロになりながらも抵抗を続ける。ビスマルク達はこれ以上ピュリファイアーを攻撃することは危険と判断し、回避に徹している。

 

ピュリファイアー「ハァ、ハァ···ホラホラどうしたぁ?お前らの力や絆ってのはそんなもんかぁ!?」

 

そこにようやくヒロ達が駆けつける。

 

オブザーバー「ピュリファイアー、もうやめなさい!もう終わったのよ!」

 

ピュリファイアー「うるさい!まだ···まだやることがあるのに、止まってたまるかぁ!」

 

ピュリファイアーが振り向き、ヒロと目が合う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒロとピュリファイアーの目は見開かれ、動きが止まる。

 

 

 

 

 

ヒロ「きヨ···Mi···?」

 

 

 

 

 

ピュリファイアー「あ···あ、兄貴···なのか?」

 

 

 

 

 

その瞬間···ヒロの目からは涙が溢れ出し、ヒロは脚部艤装以外の艤装を解除し、全速力でピュリファイアーの元へ向かう。

 

 

 

 

 

ヒロ「Kiよミぃイぃぃぃiぃぃ!」

 

 

 

 

 

ヒロはピュリファイアーに抱き着き、号泣する。そしてピュリファイアーの目からも涙が溢れ出し、ヒロを抱き締める。

 

ヒロ「きYoミだ!ヤッPaりKiよミだぁァa!」

 

ピュリファイアー「兄貴ぃぃぃ!ホントのホントに兄貴なんだな!?」

 

ヒロ「うン!」

 

ピュリファイアー「やっと···やっと会えたぞ兄貴ぃぃぃぃぃ!」

 

ヒロ「YaっトあえTaァ!うWaぁぁァぁぁN!」

 

抱き合い号泣する2人を見てその場は困惑に包まれる。

 

赤城「セイレーンが···ヒロの妹の、清魅?」

 

オブザーバー「死にかけのところをアーキテクトがセイレーンにしたけど、探しものがあるって言ってどの世界でも血眼になって探してたものがあったけど、まさかそれがヒロだったなんてね···」

 

時雨「まさか行方不明になった妹とこんな形で再開するなんてね」

 

2人が泣き止むまでは時間がかかったが、それを止める者はおらず、深海の者達も含め、皆が暖かい眼差しで見守っていた···

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでくれてありがとうございます!

セイレーンとの戦争は終わり、ヒロは清魅と再開できましたね!

●沈んだKAN-SENとの同調
かつての大戦で沈んだ軍艦の魂と同調する人は少なからずおり、同調した際は囁き声や夢に見るなど様々だが、ヒロは特に強く同調したため、魂はヒロの事を観察していた。

●セイレーンの創造主
セイレーンを創り、人類に"本当の敵"と戦う力をつけさせるためにセイレーンを向かわせ、人類にキューブを与えた。
全ての世界に現れた訳ではなく、"本当の敵"に立ち向かえる可能性のある世界にのみ現れる。

●オブザーバー·零
青いメッシュの入った白い短髪で駆逐艦のように幼い姿をしており、基本的に静かな性格をしている。
艤装は青いクラゲのようであり、KAN-SENに近い形の艤装も装備している。
セイレーンの創造主直属のセイレーンであり、戦闘能力は他のセイレーンよりも高く、『TB』という戦闘能力を排除した自身の分身を端末機能として各地にばらまき、人類の支援をしつつその動向を観察していた。

●清魅(ピュリファイアー)のこれまで
1度爆発と共に様々な偶然が重なり別世界へと飛ばされ、重症の清魅を発見したアーキテクトがセイレーンに改造する。
セイレーンへの高い適正があったものの記憶処理の効果がなく、「探しものがある」と言い、探しものを行う許可と引き換えにセイレーンに協力してきた。
(セイレーンへの改造に伴い、より好戦的な性格になっているが···)
そして現在、念願のヒロとの再開を果たした。


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幕間 事後処理


セイレーンとの戦争が終わり、帰還したヒロ達。
事後処理はどうなるのか?


ヒロ達は清魅やオブザーバー達と共に基地に帰還した。

そこではヒロ達の帰還を皆が出迎えてくれ、涙を流している者もいた。

 

銀治「よく戻った!それによくやったなヒロ!清魅も、まさかセイレーンになって生きてるとは驚いたぞ!」

 

清魅「ま、まあな···また会えて良かった~!」

 

すると冴が清魅めがけて奥から走ってきた。しかし口元は微笑んでいるものの目は笑っておらず、ハイライトが消えている。

 

清魅「おっ!冴姉!久しぶ(素晴らしいハリセンの音)痛っでぇぇぇ!なにすんだよ!」

 

冴は特製ハリセンを清魅に振り下ろした後、ハイライトの消えた目で清魅を見ていた。

 

冴「私ねぇ、すっごく心配してたのよ~?海に落ちたかもって探査船こしらえて探してねぇ~そしたらセイレーンとして活動してたっていうじゃない?」

 

清魅「そ、それは本当にごめん!」

 

冴「···まあ、さっきの1発でチャラだけど」

 

冴はため息をついて清魅の頭を撫でる。

 

冴「清魅ちゃん、お帰りなさい。あなたも成長したわね···色々と」

 

清魅「···ただいま」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後はセイレーン組やセントエルモもこの基地にいる事となり、終戦パーティーが行われる事となった。

そしてその際、セントエルモは嫌々参加させられる形となっていたが、出された料理に涙を流していた。

 

セントエルモ「上手い···!こんな料理、私のいた時代には無かった···!」

 

三笠「相当ろくな食事の無い世界だったようだな···」

 

一方、2年前の事件によりヒロが喋れなくなっていた事を知った清魅はとてもヒロを心配していた。

 

清魅「でもまあ、ある程度は喋れるようになって良かった···」

 

清魅は安堵しているものの、若干過保護気味になっているようでヒロを抱き締めて離さない。

それを見ている赤城は悔しそうな顔つきである。その光景を銀治は暖かい目で見ている。

 

そしてオロチは大蛇をライバル視しているようで、酒の飲み比べをして大蛇に敗北していた。ドヤ顔Wピースしている大蛇はかなりの酒豪のようで、オロチに勝った後も余裕の表情である。

 

終戦パーティーは明るく楽しく続いていった···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Ravens laneがセイレーンとの戦争を平和的に解決したことは世界を驚愕させ、各国の上層部はRavens laneへの警戒をより強め、より焦る事となる。

しかし政府の警戒とは異なり、国民は歓喜していた。先日のRavens laneの発表により政府への信頼がガタ落ちしていた事もあるが、航路は開かれ、漁業や物資の安全な運搬は再開されることとなった事が大きかった。

また、セイレーン達はヒロの求めた通り復興活動を各地で行っているため、復興のスピードも速くなっている。

 

···が、それでもやはり事実を認めない者達もおり、『セイレーンと結託した』『セイレーンの配下になった』などと根拠の無いデマも出回った。そしてそれを鵜呑みにする者、否定するもの、本当なのか調べる者···

そして雪羅の手によってデマを流す団体の"いかがわしい情報"が流出し、その団体は急速に瓦解していった。

 

その後、水面下では各国の軍の上層部はRavens laneの撃破に向けての準備を早めたが、Ravens laneからの新たな発表がある。

 

 

 

『セイレーンとの戦争は終わったがまだ敵はおり、それらがいずれ来る』

 

 

 

 

この発表があった時には既にRavens laneは復興と合わせて軍備増強を行っており、各国も急いで軍備の増強を計る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして新たなる1年が幕を明け、ヒロ達は神社へ参拝に行く。

そこで新年の願いをそれぞれは願う。

 

ヒロ(どうか、世界が優しくありますように)

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

セントエルモのいた頃って美味しい料理とかほとんど無いと思うんですよね。


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第6章 誰が為の航路
第46話 Another lane



セイレーンとの戦争が終わり、次なる戦乱に備えてヒロは修行を続け、各国はRavens laneの排除に乗り出そうとする。


演習海域にて、右上にエリザベスの主砲、左上にフリードリヒの主砲、右下に加賀の飛行甲板、左下にガングートの主砲、太ももに撫順の魚雷を展開したヒロはエリザベス、フリードリヒ、加賀、ガングート、撫順から艤装の扱いを教わりつつ清魅、阿修羅、ゴア、ウォーエンドを相手に演習をしていた。

 

エリザベス「手持ちの武器とは扱いが全然違うから、まずは当てるところからよ!」

 

フリードリヒ「セイレーンのレーザーは熱で艤装が溶かされるわ。だから可能な限り回避して」

 

加賀「艦載機は直線的に発艦させるだけでは撃ち落とされる。発艦と同時に方向転換させてみろ···そうだ、その調子だ」

 

ガングート「当てられるようになってきているのは良いが、その姿勢だと衝撃を吸収しにくい。ここをこうして···と」

 

撫順「今装備してる魚雷は追尾機能が無いから、単体の相手には近づいて当てると良いよ!」

 

そしてヒロは成長を続け、艤装を使いこなすようになっていく。

 

 

 

 

それを赤城は微笑ましく見守っていた。

 

オブザーバー「あら、あなただったら『ヒロは私だけのもの』って言って突っかかりそうなのに」

 

赤城「以前の私のままならそうしていたかもしれないわね。けれどヒロと出会って過ごすうちに、そんな考えはいつの間にか消えてましたわ」

 

オブザーバー「なるほど、やっぱり他の世界とは大きく違うわね」

 

 

 

その夜、どうせならみんなで見ようとのことで今月のロボットバトルを講堂のスクリーンで見ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

司会《それでは皆さんこんばんは!今月もやって参りました、ロボットバトル!今夜のマップは『UNDERGROUND』。薄暗く、柱が立ち並ぶ地下施設です。そして今回は久々の第4世代同士のバトルです!》

 

柱が立ち並ぶ下水施設にも見える地下施設。中心の天井には真上に伸びる縦穴があり、そこからの明かりはどこか神秘的にも感じられる。

 

司会《それでは、今回の対戦者達の紹介です!赤コーナー!中量2脚『シュープリス』、青コーナー!中量2脚『ステイシス』。どちらもトップクラスの実力者です!》

 

黒く先鋭的で、鴉を思わせるフォルムのシュープリスは黄色いメインカメラを光らせている。対してステイシスは青く独特な前傾姿勢の脚部と前に突き出た胴体が特徴的である。

また、シュープリスのメインフレームはカラーリングこそ違うものの、ディターミネイションと同じ形状をしていた。

 

清魅「パーツがディターミネイションってのと同じなのはパーツを作ってる企業が同じだからだ」

 

同じだが中身やカラーリング、使用者が違うとなると最近落ち着いてきたため外に出てきたサーチャーは胸を撫で下ろす。

そして、両者は睨み合う。

 

実況《それでは···レディー、ゴー!》

 

 

推奨BGM『Panther』(AC4より)

 

 

両者は互いに進み、中距離に入った所から撃ち合いながら旋回戦に持ち込む。するとステイシスは右手の『アサルトライフル』を連射しながら左手の『レーザーバズーカ』を構え、発射する。しかしシュープリスは柱を盾にして防ぎ、右手のライフルと左手のアサルトライフルを連射しつつ距離を詰めようとする。

 

背、肩、太ももにあるブースターを駆使した機動戦は一部のKAN-SENには何が起こっているのか理解するのに時間がかかる程だった。

 

シュープリスは右背部に折り畳まれていた『グレネードキャノン』を展開し、ステイシスに向けて発射する。ステイシスは左肩のブースターを急加速させることで右に回避する。そして背後の壁に当たった防弾は広範囲に大量のピンク色のペイントを撒き散らす。

 

ステイシスはお返しとばかりに右背部の『PMミサイル』を発射し、4連発のミサイルは真上に飛ぶと斜め上から回り込むようにシュープリスに迫る。

しかしシュープリスの肩にある『フレア』が展開し、熱源をばらまく。それによりステイシスのPMミサイルはあらぬ方向に飛んでいく。

 

タリン「これがトップクラスの実力···!」

 

ヒロ「まダまDaKoレから」

 

互いに空中で撃ち合うと、ステイシスは中心の縦穴に登りシュープリスはステイシスを追いかける。するとステイシスはアサルトライフルについている突起を銃剣代わりにし、シュープリスに突き出す。

しかしシュープリスは機体を反らし、至近距離からライフルをステイシスの頭部に撃ち込み、ステイシスを蹴り飛ばして床に落とす。

ステイシスは急加速してシュープリスの追撃を回避し、レーザーバズーカを放ち、シュープリスの右腕に命中させる。

 

実況《シュープリス、右腕が破壊判定となってしまった!これはステイシス、1歩リードか!?》

 

しかしシュープリスは怯むこと無くグレネードキャノンを展開し、ステイシスの足元に撃ち込む。それにより撒き散らされたペイントはステイシスの左半身を染め上げ、中破判定となる。

シュープリスはアサルトライフルを連射しつつ近づいていき、ステイシスのアサルトライフルを破壊判定にする。

そして再びグレネードキャノンを放ち、ステイシスの胴体に直撃する。

 

そして、その勢いのままシュープリスはアサルトライフルを銃剣代わりにし、ステイシスの胴体に深々と突き刺す。

 

実況《ステイシス撃破!今回の勝者は、シュープリスだぁぁぁ!》

 

冴「どうだった?久々に見るロボットバトルは?」

 

清魅「いつ見ても良いよ···!」

 

清魅は久々に見ることのできたロボットバトルに満足した様子だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

各国の政府はRavens laneにより明確な猜疑心を抱き、Ravens laneの排除に乗り出そうとし、指揮官を集め緊急会議を開いた。

 

ユニオン代表「我々アズールレーンはレッドアクシズと和平を結び、"未来の脅威"であるRavens laneを打倒する!」

 

鉄血代表「今ここで、より力をつける前にRavens laneを打倒する事ができれば、平和な未来をこの手に掴むことができるのだ!」

 

しかし多くの指揮官はそれに反対し、かつてヒロと会ったことのある夏月やテイルは特に反対していた。

 

夏月「まだ解ってないのか!?あんたらがやろうとしているのは戦争をまた引き起こす事だぞ!?」

 

テイル「私も同じだ。なぜそこまでしてRavens laneを潰そうとする?ヒロ達がお前達に何をした?」

 

ユニオン代表「···そこまで反対するなら良いだろう。ならば現時点をもって貴様らの指揮官としての任を解く」

 

夏月「そんな横暴な···!」

 

北連代表「既に軍部の許可は得られている···夏月·ユーセフ、テイル·オーウェン、君達2人はもう軍の人間ではない。今すぐ出ていきたまえ」

 

テイル「貴様ら···!」

 

2人が退出させられると、他の反対していた指揮官達は黙り込む。

 

ロイヤル代表「では、日時が決まり次第始めるぞ」

 

 

 

 

 

 

 

夏月とテイルはKAN-SEN達に会うことも許されず基地から退去させられ、私物の多くはその場で処分されてしまった。

 

その夜、夏月は落ち込みながら港の近くの公園のベンチでうなだれており、テイルは港近くの小さな酒場でやけ酒をしていた。

 

 

 

 

すると夏月の前に人影が近づいてきた。

 

エンタープライズ「らしくないな、"指揮官"」

 

夏月「エンタープライズか···俺はもう、指揮官じゃなくなったし、お前に会うことも許されてないんだぞ」

 

エンタープライズ「いや、夏月は私達にはなくてはならない指揮官なんだ」

 

夏月「俺はっ···!」

 

夏月が顔を上げると、エンタープライズだけではなく、ネバダやボルチモアもいた。

 

ネバダ「あたし達は抜け出してきたんだよ」

 

ボルチモア「脱走って聞こえは悪いけど、上層部のやってることは明らかに間違ってる!」

 

エンタープライズ「行こう指揮官!」

 

夏月「行くって、どこへ···?」

 

ネバダ「アンタなら判るだろう?」

 

夏月はいつものような顔つきになり、エンタープライズ達と共に海へ出た。

 

 

 

 

やけ酒をしているテイルの横の席にアヴローラが座った。

 

アヴローラ「やけ酒は良くないってガングートさんに言われてたでしょう?」

 

テイル「そうだったな···アイツは無理矢理他の指揮官の所へ行かされたが、大丈夫かねぇ···って私は今KAN-SENとの接触すら禁じられてるんだが?」

 

アヴローラ「"私達"は、脱走してきました···私達の指揮官は、あなたしかいませんから!」

 

テイル「お前···」

 

アヴローラ「行きましょう。皆が待っています!」

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回は久々にロボットバトルと夏月、テイルが登場しましたが、どうだったでしょうか?
感想やご指摘は受け付けてます!
また、機体や武装の詳細は次回載せます!

●ヒロの艤装
左右上下と太ももの計5つの武装を装備できるが、艤装を変更すると30分は変更できない。


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第47話 Position


オブザーバー達と共に今後来るであろう敵の事を話し合う銀治達。
そして運命はまた交差する···


オブザーバー「今回集まってもらったのは、今後敵対するかもしれない勢力についてよ」

 

銀治「ヒロから聞いたが、"本当の敵"って奴か?」

 

オブザーバー「それとはまた別の存在よ。簡単に言うと『セイレーンと同等のポジション』よ」

 

エリザベス「同じポジション···ということは、セイレーンと同じく人類をより強くし、"本当の敵"に立ち向かうだけの力をつけさせるための存在?」

 

オブザーバー「そういうこと。この世界は他と明らかに違う変化を多く起こしているから来るまではそんなにかからないと思うわ。あるいは、もう既に来ているか···」

 

ビスマルク「なるほど。ということはヒロのあなた達に対してのヒロのように力を見せつける必要があるわけね」

 

オブザーバー「そういうこと。そしてその敵名は『アビータ』よ。それと、アビータ関連でいくつか伝えておきたい情報があるわ」

 

オブザーバーは2つの画像を出す。1つ目はオロチとは違う、エンタープライズに似た姿のKAN-SEN。2つ目は蒼龍と似た姿のKAN-SENである。

 

オブザーバー「1つ目の画像のは『コードG』と呼ばれるKAN-SEN。コードGの因子を用いて私達セイレーンは創られたの。そしてアビータがここにも来た場合、間違いなくコードGを探しに来るわね。2つ目は『余燼(よじん)』と呼ばれるKAN-SEN。余燼はコードGを守るように動いているようだけれど、両方とも不明な点が多いわ」

 

雪羅「余燼···最近情報に入った『META』と呼ばれるKAN-SENにも関係が?」

 

オブザーバー「そうね。META化、あるいはMETAとして生まれたKAN-SENの一部が組織を組んだのがあの余燼ね」

 

長門「協力することはできないのか?」

 

オブザーバー「可能かもしれないけれど、どこにいるかも解らない以上、今は難しいわ」

 

銀治「なるほどな···まあ、そろそろ夕飯だ。食堂に行こう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕食の時間が近づき、哨戒に出ていた艦隊が帰還していると脚部艤装だけ展開している大蛇とすれ違う。

 

綾波「大蛇さん?もうすぐ夕飯なのです」

 

大蛇「おう。ちょっと、夕飯までに魚釣れるか試してみたくてな。安心しろ、夕飯までには戻るさ」

 

そう言って大蛇は進んでいった。

大蛇はある程度進むと釣り針に餌をつけ、竿を振る。そして少しすると大蛇は辺りを見渡し、近くの岩の陰にいる人物に声をかける。

 

大蛇「そこで見ててどうしたんだ?」

 

???「気づいていたか」

 

大蛇は釣りをしながら尋ねる。

 

大蛇「おうよ!で、どうしたんだ?こんな所まで来て」

 

???「君は···何者だ?ぼく達のいた世界にはいなかったKAN-SEN···『エックス』の奴らとも違う···」

 

大蛇「オレは大和型秘匿戦艦 大蛇だ!秘匿KAN-SENって部類で、存在そのものが秘匿され、そのまま忘れ去られてた設計図だ。んでよぉ、もうすぐ夕飯なんだが食いに来るか?」

 

???「···遠慮します」

 

大蛇「そっか~そりゃ残念。てか今日は良いもん釣れねぇなぁ···じゃ、オレはそろそろ戻る。また来いよ!今度はこっそり酒でも飲もうぜ~!」

 

大蛇は陽気にそう言うと、のんびり航行しながら戻っていく。

 

???「秘匿KAN-SEN···か」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日の真夜中、ヒロの部屋の窓に何かが当たって音がする。ヒロはちょうど寝つけなかったので月光を片手に音の元を探しに行く。

すると外に艦載機が1機落ちており、折り畳まれた紙が取り付けられていた。

 

『鴉間 ヒロへ

 

突然の連絡すまない。今夜私達、夏月·ユーセフの艦隊はアズールレーンから脱走し、今そちらへ向かっている最中だ。

 

先日行われたアズールレーンとレッドアクシズの和平が結ばれ、それと同時に行われた会議でRavens laneを攻撃する事となった。

そしてそれに反対した夏月とテイル·オーウェンがその場で指揮官の任と軍属を剥奪された。

そのため私達は脱走することにしたのだ。

 

それを難しいかもしれないが、どうか信じてほしい。そして可能なら私達を迎え入れてほしい。

それともしかしたら、テイルの艦隊もそちらに向かっているかもしれない。そちらもどうか同様に頼む。

 

エンタープライズより』

 

ヒロはテイルの艦隊には空母がいなかった事を思い出すと同時に一気に目が覚め、駆け出す。

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回で新たな敵の存在とコードGに関して出てきましたね。
大蛇と会ったのは誰でしょう?

●シュープリス
黒いカラーリングと黄色のメインカメラの第4世代型中量2脚。
武装は右手にライフル、左手にアサルトライフル、右背部にグレネードキャノン、肩にフレアである。
スピードを重視しており、装甲は中量機体の中では高くない。
しかしその使用者の戦果はトップクラスであり、第4世代の魅力を世界に知らしめた存在でもある。

●ステイシス
青いカラーリングと青いメインカメラの第4世代型中量2脚。
武装は右手にアサルトライフル、左手にレーザーバズーカ、右背部にPMミサイル、左背部に『増設レーダー』である。
独特な前傾姿勢の機体であり、高速戦を想定されており、ステイシスの使用者はシュープリス同様にトップクラスの実力を持つ。
余談だが、ステイシスはシュープリスの後継機として設計されたが、シュープリスの使用者に合わず、当時の新人に送られることとなった。
また、本来なら軽量2脚として設計されたのだが装甲の素材変更に伴い、中量2脚となった。

●アサルトライフル
ライフルとマシンガンの中間の性能であり、扱いやすい部類の武器でもある。
また、シュープリスとステイシスのアサルトライフルは銃剣の代わりに使えるようになっている。

●レーザーバズーカ
レーザーライフルの威力をバズーカ並に高める代わりに弾速を遅くしたもの。

●グレネードキャノン
爆発する砲弾を発射するキャノンで、その範囲は広いものが多い。
"グレネード"と表記しているのはキャノン系が複数種類存在するため、"爆発するもの"はグレネードキャノンに分類されている。

●PMミサイル
目標に別方向から回り込んで飛んでいくミサイル。
ステイシスが装備しているのは4連発で斜め上から飛んでいくもの。
現状、PMミサイルは2種類しか存在しておらず、もう1つは左右から飛んでいくものである。

●フレア
多数の熱源を射出し、ミサイルをあらぬ方向へ誘導するもの。
同時射出型と連発型があり、シュープリスのは連発型である。

●増設レーダー
外付けのレーダーで、レーダー範囲を広げるもの。

●エックス
人類の本当の敵であり、それ以上の情報は現在閲覧不可。


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第48話 カウンター


アズールレーンから離反し、脱走したエンタープライズ達を支援するため、艦隊は出撃する。


ヒロは真夜中だったものの、できる限りのKAN-SENを起こそうと宿舎内を駆ける。

まずは1番近くの部屋のゴアとローンを起こす。

 

ゴア「なぁにヒロ?こんな夜中に起こしに来て」

 

ローン「眠い···」

 

ヒロ「コRe!」

 

ヒロは手紙を見せる。

 

ゴア「フムフム···なるほどね。すぐに着替えるから他の子も起こして!」

 

ヒロは頷き、再び駆け出す。そして次々とKAN-SENやセイレーンを起こしまくり、今度は月光を片手に海へ駆け出す。

するとヒロの横をケンタウルスと憤怒が駆け抜けていく。

 

ケンタウルス「先鋒は任せろ!」

 

そしてセントエルモやオロチも出撃していく。そして夜の海を航行していくと、砲撃やサーチライトによる光が見える。

 

ヒロ「セんトエLuモ!ユニおンKaんタいをOねGaい!」

 

セントエルモ「···良いだろう。奴らを薙ぎ払い、私の力を見せつけてやる!」

 

ヒロは北連の艦隊へと向かうが、清魅がヒロの前に出てレーザーを連射する。

 

清魅「見せてやろうぜ兄貴!私達の戦いを!」

 

ヒロ「Uん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏月はボートの中で身を屈めながら指揮を取り、ボートはラフィーが牽引している。そしてユニオン艦隊は夏月の艦隊を追い、特に夏月のボートを狙っている。

すると重桜側から重桜の艦載機が飛んでくる。そこには手紙がつけられており、『貴官らの受け入れを許可する』とあった。

 

夏月「よしっ!皆!ヒロ達は受け入れてくれるそうだ!」

 

ラフィー「やった!」

 

エンタープライズ「よし!あと一息だ!」

 

そこにケンタウルスが駆けつけ、艦隊を先導する。

すると突然大きな声が響く。

 

セントエルモ「夏月·ユーセフの艦隊!伏せろ!」

 

夏月の艦隊は咄嗟に伏せる。その瞬間上空を何か棒状の物が通り過ぎ、"何か"はユニオン艦隊の主力艦隊に向かって飛んでいき、巨大な爆発を起こす。これによりユニオンの主力艦隊の大半が撃沈し、その威力にKAN-SEN達は驚愕している。

 

 

推奨BGM『Death Count』(ACVDより)

 

 

 

棒状の何かが飛んできた方向を見ると、巨大な艤装を装備しているKAN-SEN、セントエルモが夏月達の方向に向かってきていた。どうやらセントエルモはSP MISSILEを発動したようだ。

 

セントエルモ「私はセントエルモ、ヒロの元に所属している!ここは私に任せて行け!」

 

そう言うとセントエルモはユニオン艦隊に向けて進んでいく。

 

セントエルモ「さぁ、見せてみろ、お前達の"力"を!」

 

セントエルモは主砲、ミサイル、機銃を放射状に構え、連射する。そして正面制圧が終わると突撃し各個撃破に移る。

機銃で駆逐艦の動きを止め、ミサイルでトドメを刺す。次に空母の艦載機を機銃で撃ち落としながら主砲を撃ち込む。

背後から接近してきた軽巡に旋回と同時に首に回し蹴りを当て、その頭を掴んで盾にする。味方に砲撃を当ててしまった事で怯んだKAN-SENに主砲を撃ち込み、虫の息の軽巡の首をへし折る。

 

セントエルモ「こいつら···甘すぎる。私のいた時代ではこの程度では怯みもしないというのに」

 

ユニオン艦隊は撤退しようとするが、セントエルモはSP MISSILEを発動する。

 

セントエルモ「ゴミ虫が···逃がすと思うか?」

 

発射された核ミサイルにより、撤退していたユニオン艦隊は全て沈んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏月と同様の手紙を受け取ったテイルとその艦隊は歓喜し、航行の速度を上げる。

そこに憤怒が到着し、艦隊を先導する。するとヒロと清魅も到着する。

 

テイル「ヒ、ヒロ君!?その艤装は!?」

 

清魅「そんな事はどうでも良いんだよさっさと行けよ!」

 

ヒロ「あトでHaナすかLa」

 

そして2人は北連艦隊の前に立ち塞がる。

 

清魅「鴉間 清魅···」

 

ヒロ「KaらSuマ ひRo···」

 

清魅&ヒロ「「参る!」」

 

 

推奨BGM『Shining』(ACNXより)

 

 

2人は絶妙な距離を保ちつつ航行していく。ヒロは右上にエリザベスの主砲、左上に時雨の主砲、右下にオイゲンの主砲、左下に赤城の飛行甲板、太ももに撫順の魚雷を装備しており、ヒロは先制攻撃として艦載機の発艦と主砲の一斉射を同時に行う。

そしてそれに清魅のレーザーが混ぜられる。

 

2人で共闘するのは久々であり、互いの艤装の特性も知らないが、息はピッタリでありまるで1つの生命体のように行動している。

 

敵は砲撃しようとした瞬間にヒロの砲撃が命中し、それと同時に周囲に清魅のレーザーがばらまかれ、清魅が極太レーザーをチャージするとヒロは全ての砲撃を撃ち落としながら艦載機で攻撃する。そしてチャージが完了した清魅の極太レーザーは周囲を薙ぎ払う。

 

2人の連携は凄まじく、北連艦隊は一方的に攻撃されていく。

ヒロが水面に放った主砲が水柱を作り出し、北連艦隊の視界を塞ぐ。そしてその瞬間、清魅のレーザーが北連のKAN-SENの艤装を貫き、ヒロの魚雷が更なる追撃を与える。

すると北連艦隊は撤退していき、2人は拳をハイタッチをして帰還していく。

 

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回はセントエルモ単体の戦闘とヒロと清魅の連携が出ましたが、どうだったでしょうか?
感想やご指摘はいつでもお待ちしていますので、遠慮なく送ってください!


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第49話 醜いナニカ


夏月とテイル、そしてその艦隊を迎え入れたヒロ達は宣戦布告を受けることとなる。


夏月とテイル、そしてその艦隊を受け入れたヒロ達はすぐにKAN-SEN達の傷の手当てを行い、夏月とテイルからは状況の確認を行った。

 

銀治「そんなことが···奴ら、腐りきっとる」

 

三笠「お主らはここにいると良い。空き部屋や一部のKAN-SENの部屋の空きスペースを使うと良いだろう」

 

銀治「まあそれでも足らんから、一部の場所も解放しようそれなら何とかなるはずだ」

 

夏月「ありがとうございます」

 

テイル「感謝します」

 

 

 

夏月はヒロとの再開に喜び、テイルとその艦隊はガングート達との再開を喜んでいた。

 

そして部屋割りなどが決められた後、冴は基地の増設の件を業者に依頼していた。

 

冴「ということで、お願いね」

 

業者《またですか!?あの規模の増設をまた!?》

 

冴「ええそうよ。KAN-SEN達も手伝うから、今回も頑張ってね」

 

業者《ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ッ!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM『Venide』(ACVDより)

 

 

そして数日後の7月、アズールレーンとレッドアクシズから共同声明が発表された。

 

『これより我々は世界の平和の為に、セイレーンと手を結び支配を目論むRavens laneを打倒する』

 

これは明確な宣戦布告であり、世界はRavens laneを擁する重桜へ向けての攻勢に入る。

秘匿KAN-SENが"最大の単体戦力"なら、"最大の物量"による殲滅を掲げ、更なる建造に着手する。

そこにあるのはかつての輝きでは無く明確な猜疑心ではあるが、その中には恐怖や嫉妬も混じっていた。

 

自身よりも上の力を持ったヒロ達が自身に牙を剥くのではないか?あるいは自身よりも上の力を持つなど許せない。

それらの感情が彼らの心を揺さぶり、そして自身の行いにより国民の信頼が落ち、ヒロ達にその信頼が向き始めた事でその感情は爆発した。

 

KAN-SENは人の姿と心、そして魂を持っているが、もう既に彼らにそんなものは関係なく、ただただ兵器としてしか見ておらずその目は未来やKAN-SENではなく、目先のものに囚われていた。

 

しかし、猜疑心や恐怖は"やましいこと"が無ければ生まれるわけではなく、彼らの根底にあるのは"欲望"だった。そして嫉妬もまた、欲望から生まれたものだった。

 

話し合うことを捨て、現実から目を背け、耳を塞ぎ、口からは自身の欲望を吐き出す。

その姿は獣ですらなく、"醜いナニカ"に成り果てていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アズールレーンとレッドアクシズの共同声明から2日後、基地の前にはデモが行われていた。

 

男性A「戦争をやめろー!」

 

女性A「あなた達のせいで国際社会から孤立したじゃないの!」

 

男性B「責任を取れー!」

 

女性B「重桜から出ていけー!」

 

デモ隊の声にヒロは悲しい顔をしており、憤怒と清魅は今にも突撃しそうであるが、ケンタウルスとオブザーバーが止めている。

すると大蛇がデモ隊の方向へと向かっていく。そして大蛇は門の上に登り、その上に立ってメガホンを構える。

 

大蛇「あーあー、聞こえるか~?」

 

デモ隊は大蛇を見る。

 

大蛇「アンタらの言い分は十分聞こえてるからさ、それに対してちょっと言いたいことがあるんだけど聞いてくれ」

 

男性A「うるさい!」

 

女性B「出ていけー!」

 

大蛇「あのさぁ、なんで自分達の言いたいことだけ言っといてこっちの言い分は聞こうとしないの?それって一方的じゃね?そういうのって、自分の言いたいことしか言わない卑怯な連中と同じじゃね?」

 

男性B「なんだと!?」

 

女性A「失礼ね!」

 

大蛇「じゃあこっちの言いたいことも聞いてくれよ。OK?」

 

大蛇は僅かに間を置く。

 

大蛇「あのな、まず戦争をやめろってのは間違ってる。オレ達はセイレーンとなんとか和平を結んで戦争を終わらせた。本来ならもうセイレーンとの戦争はそこで終わって、人類の本当の敵との戦争に備えるはずだったんだ···

けど、そこでアズールレーンとレッドアクシズが宣戦布告してきたって事だ」

 

男性B「原因を作ったからだろう!」

 

大蛇「原因ってなんだ?こっちがセイレーンとの和平結んだのに向こうは勝手に支配を目論んでるとか言い出したんだぜ?

しかも証拠があるわけでもなく調べもしていないのにだ。それっておかしくねぇか?」

 

デモ隊は静まりかえる。

 

大蛇「んで、国際社会からの孤立ってのどうなんだろうな?ロイヤル、北連、東煌のやったことは知ってるよな?知らない奴がいたら手を上げてくれ。おさらいするからよ·····いねぇか、なら解るはずだ。あんなことをされて、黙ってるわけにはいかねぇよな?

だがユニオンは黙ってた。これっておかしくねぇか?こんな所にいられると思うか?

オレ達は孤立したんじゃねぇ···いても良くないことしかないから出てったんだよ」

 

デモ隊はすっかり先程の威勢を失っている。

 

大蛇「次に、責任についてだな。これはオレが今まで話してきたことを考えれば、あるのか無いのか解ると思うが···あると思う奴は手を上げてくれ·····いねぇんだな。じゃあ、次いくぞ···ってオイオイ、ここから去ろうってことはなんかあんのか?例えば···やましいことがあるとか?」

 

男性B「いや、そんなことは···」

 

女性B「やましいことなんて···」

 

大蛇「なら残れよ。トイレ行っても戻ってこいよ?」

 

そして再び僅かな間を置いてから大蛇は話を再開する。

 

大蛇「んで···最後の出ていけってのはどういう事だ?オレはこれが1番気に入らねぇな。仮にオレ達が悪かったとして、出てってそれで済む話か?Ravens laneは重桜としての決定なんだ。これは前に発表したはずだぞ?

そんで、出てったとしても最高戦力を根こそぎ失った重桜は良い的だ。それこそ国際社会から孤立する。

···が、今まで話してきたことを踏まえて、それでも出ていけと言うか?」

 

大蛇は一旦話を止めるが、デモ隊は黙ったままである。

 

大蛇「はぁ~、お前らってホンットに卑怯者だな。自分勝手な事だけ言っといて、それで言い返されたらダンマリか?」

 

大蛇の目には強い怒りが現れている。

 

大蛇「消えろ···今すぐオレの目の前から消え失せろ!」

 

大蛇はメガホンを使わずに怒鳴り、それはまるで巨獣の咆哮のようであり、デモ隊は怯えた表情で逃げ去っていった。それを見届けた大蛇はゴミ袋と箒、手袋を持ってデモ隊のいた所に歩き出す。

 

大蛇「ったくアイツらゴミ捨てていきやがってよぉ···掃除する身にもなってみろってんだよ」

 

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

さて、アズールレーンとレッドアクシズから明確に宣戦布告されましたが、今後の展開はどうなりますかね?
···ん?7月?


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第50話 META


7月に起きたアズールレーンとレッドアクシズからの宣戦布告。
これは新たな戦争の幕開けである。


Ravens laneの会議により、それぞれの元いた陣営へと向かい、攻め込むこととなった。しかしアイリスやヴィシアには秘匿KAN-SENが向かうこととなった。

ただ、それだけでは敵の数が多すぎるため、重桜とセイレーンの艦隊も共に出撃することとなった。

そして基地の防衛はテスター、サーチャー、オロチ、セントエルモ、残りの重桜艦隊とセイレーン艦隊が担い、ヒロと赤城の艦隊、オブザーバーと清魅はアビータと余燼の調査に向かうこととなった。

 

ちなみに赤城の艦隊は、赤城、三笠、加賀、時雨、ケンタウルス、憤怒である。

そして秘匿KAN-SENはようやく"近代化改修のその先"への改修がようやく実行に移せたため、見た目にも変化が現れている。

 

ケンタウルスの槍はより鋭利になり、これまでが"突く"事をメインとした槍だったのに対し今は刃が4枚、十字重なっており"斬る"事も可能となっている。また、石突(いしつき)は四角形の台形となり、これを用いて攻撃することも可能となっている。

そして馬体の下半身はこれまでが無骨なフォルムだったのに対し今は先鋭的な青と銀のカラーリングのフォルムとなっている。

 

憤怒は両腕に赤い布を巻き、額に鉢金を巻いており、艤装はよりスマートな形状となっており、よりスピードを出しやすくなっている。

 

阿修羅は黒い義手に腕から指へと伸びる赤いラインが入り、脚部装甲にしかなかったゼブラカラーは主砲にも施され、黒い髪はロングヘアになっている。

 

ウォーエンドは口元だけを覆うガスマスクを着け(水中でも問題なく使用可能なもの)、これまでは黒い艤装だったものが脚部のブースターとなり、腰には魚雷発射装置のついたアームがつけられている。

 

雪羅は赤いセーラー服から赤いネクタイと1本の赤いラインが各所にある黒いビジネススーツに変わり、艤装は口径が大きくなっている。また、艤装内部には複数種類の弾薬を保管、変更できる装置が組み込まれ、より多くの状況に対応できるようになっている。

 

ゴアは速力を上げるためのタービンが追加され、青い薔薇の髪飾りを着け、ロングコートは白から黒色になっている。

また、腰にはレイピアを追加している。

 

天は額に鉢金を巻き、武士の黒い篭手と臑当を装備しており、艤装にはより大型のブースターがつけられ、形状も近代的になっているため、空中での機動力が格段に上がっている。

 

大蛇は額に鉢金を巻き、腰には大刀を装備しており、艤装は鉄血の艤装ような形の黒い口がつけられ、腕には黒い布が巻かれている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒロは調査のために攻撃された鏡面海域に向かい、その痕跡を調べている。

 

加賀「これは···主に刀によるものだろう。かなりの切れ味と太刀筋だな」

 

オブザーバー「ここはつい昨日襲撃されたばかりで、痕跡も新しいわ」

 

ケンタウルス「いや···もしかしたら犯人に今会えるかもしれないぞ?」

 

ケンタウルスが槍で指した方向にある岩の陰から1人のKAN-SENが現れた。

そのKAN-SENは銀髪にウサギのような耳、そして纏っている黒いマントは端が焼け焦げている。

 

赤城「飛龍?しかし···」

 

飛龍(?)「ぼくは確かに飛龍です···ただ、あなた方の知る飛龍ではありません」

 

ケンタウルス「ここをやったのはお前か?」

 

飛龍(?)「いえ、ぼくではないですが、ここにいれば会えるかもと待ってみただけのこと」

 

憤怒「お前···まさか余燼って組織の···METAって奴の1人か?」

 

飛龍(?)「まあ、そうなりますね」

 

清魅「で?なんでここにいるんだよ?」

 

META飛龍「あなた方の実力を、この手で確かめたくてです」

 

META飛龍は刀と焼け焦げた花札を構える。

 

ケンタウルスと憤怒が同時に駆け出し、ヒロは右上に長門の主砲、左上に土佐の主砲、右下に時雨の主砲、左下に赤城の飛行甲板を展開し、支援攻撃を開始する。

META飛龍の攻撃は凄まじいものだったが、赤城と加賀の艦載機は空中戦を繰り広げ、ヒロは艦載機を味方を守るための盾にしている。

 

そしてあっという間に接近したケンタウルスは槍を横に払い、回避したMETA飛龍の背後には既に憤怒が回り込んでおり、META飛龍の飛行甲板を撃ち抜く。反撃しようとしたMETA飛龍の周囲に三笠とヒロの砲撃が撃ち込まれ、その水柱からケンタウルスが槍の石突でMETA飛龍の腹を突く。

 

META飛龍「ガハッ!」

 

META飛龍はなんとか立ち上がると、刀を納める。

 

META飛龍「なるほど···想像以上だ。これなら···!」

 

META飛龍は周囲に爆撃し水柱を発生させ、撤退した。

 

オブザーバー「どう?初めてのMETA戦は?」

 

ヒロ「うん、ほかNoかんセンよりかなRiつよかッた」

 

ケンタウルス「"近代化改修のその先"になってから初めての戦闘だからな、少し手間取った」

 

憤怒「まあな。だが、しっくりくる」

 

そしてヒロ達は再び調査を再開した。

 

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回でようやく秘匿KAN-SEN達が"近代化改修のその先"へ至りました!
ちなみに蛟も至っていますが、鴉の家のある海域の防衛についています。

●石突(いしつき)
槍の柄の底につける金具。

●ケンタウルスの追加スキルとスキルの変更点
追加スキル『主の為に』(防御スキル)
『鴉間 ヒロ』と出撃すると自身の全ステータスを80%上昇させ、39秒毎に10回まで弾幕を防げるシールドを展開する。鴉間 ヒロがいない場合はシールドを展開するのみ。

スキルの変更点は『強者が求めし槍』による特殊攻撃が2回になり、確率で発生するスキルが確定で発動するようになる。

●憤怒の追加スキルとスキルの変更点
追加スキル『怒りの反撃』(攻撃スキル)
スキル『当ててみろよ』で攻撃を回避した回数、連射型の特殊弾幕(通常弾)を展開する。

スキルの変更点は確率で発生するスキルが確定で発動するようになる。


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第51話 微笑み


阿修羅の艦隊と肇和の艦隊は東煌へと攻め込む。


曇天の下、阿修羅の艦隊と肇和の艦隊は日本海から最短距離で東煌へと攻め込むため、向かっていた。

そして東煌に近づいてくると東煌のKAN-SENや量産型が立ち塞がる。

 

阿修羅「私の弾薬は有り余っている。お前達は戦力を温存しておけ」

 

そう言うと阿修羅は東煌艦隊の群れに突撃し、陣形の中に潜り込むと全方位砲撃を行い、そのまま東煌艦隊を蹂躙する。

阿修羅本来の戦術をより活かすための改修となっているため、艦隊はあっという間に全滅する。

 

応瑞「これが···本来の性能···」

 

阿修羅「油断するなよ、まだまだ敵はいる」

 

そして東煌の基地へと辿り着き、基地を襲撃する。阿修羅は以前のヒロへの人体実験の件によりより怒りを噴出しており、その容赦ない攻撃により東煌のKAN-SEN達は怯え、中には逃げ出す者もいた。

 

阿修羅「さぁ命が惜しくばどけぇ!敗北者どもがぁ!」

 

阿修羅は周囲に一斉射し、基地の建物は崩れ落ちる。そしてそのまま更に侵攻していくと、やけに重装備な兵士がぞろぞろと現れた。彼らは恐怖を感じることがないのかそのまま突撃してくる。

阿修羅は躊躇わず砲撃し、1人の兵士の足首を掴むと他の兵士に対し棍棒代わりにして殴り付ける。

 

阿修羅「この恐怖の無さ、痛みを感じていないのか?」

 

撫順「こいつら、ただの兵士じゃないよ!」

 

肇和「まさか···人体改造!?」

 

阿修羅「なるほどな···だが結果は変わらんよ!」

 

阿修羅の全方位砲撃により周囲は火の海となる。そして軍事研究所に向かうと、そこにいるKAN-SENや兵士を殲滅しながら進み、ヒロに人体実験を行った研究者達を見つける。

 

阿修羅「私の主に人体実験をしたのは···貴様らだな?」

 

研究者「や、やめろ!来るな!」

 

阿修羅「その言葉、ヒロはどれだけ叫びたかっただろうな?」

 

研究者「じ、実験をして何が悪い!?技術の発展のために、人体実験など幾度となく行われてきた!人体実験は、人類の歴史でもある!」

 

阿修羅「ほう?それがお前の考えか···なら、私もお前で実験をしてやろう」

 

研究者「は?」

 

阿修羅「先程、これを見つけてな」

 

阿修羅の左上の手には『青酸カリ』と書かれたラベルのついた瓶があり、蓋に注射器を刺して中の液体を注射器に入れ、研究者に近づく。

 

研究者「やめろ···!来るな!来るんじゃない!」

 

阿修羅は手足で研究者の体を押さえ付け首に注射器を刺し、液体を注入する。

そして研究者は苦しみながら死亡した。

 

 

その後阿修羅達は他の基地も制圧し、東煌は降伏したのだった。

 

制圧され、人型セイレーン達に拘束されていく東煌のKAN-SEN達。そして現場の調査を行っている撫順達とセイレーン達、東煌のKAN-SEN達は見た···

 

 

雲の一部が晴れ、そこから差し込む光はまるでカーテンの如く周囲を照らし、その中でも1ヶ所だけがまるでスポットライトのように瓦礫の上に立つ阿修羅を照らしていた。

凛とした表情で阿修羅はその光を見上げており、その光景はまるで1つの絵画のようだった。

 

撫順「阿修羅さん、そろそろ帰還しましょう」

 

阿修羅「ああ、そうだな」

 

阿修羅は撫順達に向けて微笑む。その表情は美しく、聖母のようだった。

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

●阿修羅達は追加スキルとスキルの変更点
追加スキル『勝利の微笑み』(攻撃スキル)
敵陣に突撃し、周囲の敵全てに砲撃する(ダメージはスキルレベルによる)。そして1発の命中につき味方全体の体力を10%回復する。

スキルの変更点は確率で発生するスキルが確定で発動するようになり、『勝利を望んだ敗者』のスキル効果に『速力を15%上昇させる』を追加する。


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第52話 未来の戦艦


Ravens laneがアズールレーンとレッドアクシズと交戦を開始し、セントエルモ達は重桜の防衛戦を始めた。
しかし長門には1つ疑問があった···


セントエルモ「来たか···行くぞ!」

 

セントエルモは艦隊と共に重桜へ迫る艦隊と交戦を開始した。

機銃で怯ませ、砲撃やミサイルを撃ち込む。

第1波、第2波と連戦を続け、ようやく防衛線は落ち着く。

 

冴《セントエルモ、そろそろ帰還して休憩して》

 

セントエルモ「了解、これより帰還する」

 

 

 

 

 

 

 

セントエルモが帰還し艤装のメンテナンスと休憩を行っている間、長門はセントエルモに質問をした。

 

長門「のう、セントエルモ···お主のいた『本来起こり得た未来』とは、どんな世界だったのだ?」

 

セントエルモ「知りたいのか?」

 

長門は頷き、他のKAN-SENや冴も話を聞きにやって来る。

 

セントエルモ「良いだろう···私のいた世界はな···」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※一時的にナレーションをセントエルモに移行します。

 

 

世界は汚染され、残された僅かな大地に人々はしがみつくように生きていた。

海や土壌も汚染されていたため、この世界で言う"まともな食事"というものは滅多に無く、ごく一部の者しか食べることはできなかった。

だが、それでも争うことをやめられず、ただでさえ少ない領地や資源を奪い奪われを繰り返していた。

 

荒廃具合や技術力を見るに、おそらくこの世界から数百年は経っているだろう。実際、いくつかの兵器が発掘されていたからな。

発掘された兵器は弾薬以外はリサイクルと応急措置を繰り返し、特に『AC』と呼ばれる7m程の大きさの人型兵器は高額で、性能も圧倒的だった。

 

AC···何かの略称の様だったが、正式名称は覚えていない。いや、思い出したくない···の方が正しいな。

 

そして私は新たな領地に攻め込むために建造された。実は2番艦の妹がいてな、いつも一緒にいたよ。

過剰な程の威力の機銃や主砲、そして何より核ミサイルを搭載しているのにはもちろん理由がある。

···それらを積まないといけない程の兵器があるからだ。その中にはACも含まれていたさ。

そしてその圧倒的な性能が故に『海原を統べる者』と、いつしか呼ばれるようになっていた。

 

そして、運命の日がやって来た···

雨が降っていたその日、私と妹は2隻で1つの領地の制圧に向かったんだ。海に直接面している街で、まずはその周囲の敵を殲滅する作戦だった。

 

妹「姉さん、今回もやっちゃおうよ!」

 

セントエルモ「ああ。どれだけ殺れるか勝負だ!」

 

妹「もちろん!」

 

 

推奨BGM『Conservation』(ACVより)

 

 

そして作戦領域へ到達したが周囲に敵はおらず、代わりに武装ヘリが街の方向から飛んできた。

イバラのエンブレムのヘリ···それに吊られていた黒と白のカラーリングのACが投下された。ただ、そのACは背中に巨大な棒のようなものを背負っていた。

 

妹「たかだがAC1機?ふざけてるのかしら?」

 

あの時、私は異様な違和感を感じていたんだ···しかし乗組員は戦闘態勢に入り、攻撃を開始した。

主砲とミサイルの弾幕を掻い潜り、接近してきたACに機銃を連射した。この誰にも攻めることのできなかった弾幕を、そのACは回避して押し通ったんだ。

 

先頭を進んでいた妹は核ミサイルを組み立て、発射した。ACは一度ビルを盾にして防ぎ、私も核ミサイルを組み立てたが爆煙の中からACは飛び出て妹へと接近した。

砲台が破壊されながら背後に回り込まれた妹の核ミサイル砲台を破壊したACは発射された私の核ミサイルを誘導し、妹へと直撃させた。

 

妹「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"っ!」

 

そしてACは沈んでいく妹へトドメに艦橋に蹴りを入れた。事切れた妹からすぐにこちらに標的を移して迫り、私の砲台を両手の銃器で撃ち抜いていった。

化学変化を利用した榴弾の痛みを、今でも覚えているよ···

しかしACは私や乗組員の予想を越える行動をした。

 

乗組員「艦首を蹴られましたぁっ!」

 

そう、艦首を何度も蹴りつけて損傷を与え、そこから私の甲板に登り上がると、背中の兵器を起動させたんだ。

それは棒じゃなく、"柱"だった。それはACの右腕に接続され、エネルギーをチャージし始めた。柱にはブースターがついていて、それが稼働し、その柱をブースターで強引に加速させて艦橋を殴り付け、艦橋は木っ端微塵に吹き飛んだ···

そしてACは再びチャージすると私の船体を直接殴り付けたんだ。私はそのまま沈んでいったよ···

 

それからまた数百年経って、サルベージされた私はある軍港の大型ドックで修復され、中破レベルまで修復が進んでいたところで別のACの襲撃に会い、テスターが私のデータを取った···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※ナレーションを戻します。

 

 

セントエルモ「···と、いう訳だ」

 

長門「そんな···未来が···」

 

セントエルモ「ああ。だがこの世界は何者かによって書き換えられ、あのような未来が来ることは無いだろう···」

 

長門「なぜわかるのじゃ?」

 

セントエルモ「···ここからはヒロには言うな。いいな···ロボットバトルの事を調べたが、第5世代のロボットは私の見たACに酷似して···いや、ACそのものだ」

 

冴「あ、あれが!?」

 

セントエルモは頷く。

 

セントエルモ「まさか、大きさや操作方法まで変わったものの、この世界にもACがあるとは思っていなかったよ。ただ、悪用されないのが救いだ」

 

するとオロチから連絡が入る。

 

オロチ《また敵が来た。今度はさっきより多い!》

 

セントエルモ「さて、私は行くとしよう」

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回はセントエルモの過去に迫りました!
イバラのエンブレムのヘリとAC···さて誰の事やら。

●化学変化を利用した榴弾
今回"AC"が持っていたものは『バトルライフル』と呼ばれる手持ち武器の弾薬。
バトルライフルは連射力は高くなく、弾速は遅いものの威力は高い。

●柱
『オーバードウェポン(以下OW)』の1つである『マスブレード』と呼ばれる兵器。
先端に回転する半球形の刺付きハンマーのついた柱をブースターで強引に加速させてさせ、直接敵を殴り付ける。
同じACなら一撃で破壊でき、セントエルモを含めた巨大兵器に対しても大きなダメージを与えることができる。


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第53話 陣形


北連へと向かったテイルの艦隊と雪羅の艦隊。
テイルの指揮と指揮下の艦隊の実力とは···?


北連へ向かい、量産型を撃破しながら進むテイルの艦隊と雪羅の艦隊。

 

ガングート「雪羅、お前の狙撃はいつ見ても凄まじいな」

 

雪羅「ありがとうございます。そろそろ軍港です」

 

軍港の艦隊に向けて雪羅は長距離から砲撃し、前衛艦隊を支援する。すると敵の艦載機が飛んできたため弾種を変更し、砲撃する。砲弾は空中で拡散し、多数の艦載機を撃墜した。それから軍港へ攻め入ると、雪羅は再び弾種を変更する。

今度の砲弾はKAN-SENに直撃するとナパームを撒き散らし、KAN-SENの体を焼き、周囲へも被害を広げる。

 

雪羅「では先程送信したルートに沿って進んでください。私はまず露払いをしますので」

 

キーロフ「では頼んだ!」

 

そして軍部の総司令部まで近づき、現在の北連最高戦力とテイルの艦隊は対峙する。

 

総司令官《貴様ら、ノコノコと戻って来おって。もうここには居場所は無いぞ?》

 

テイル《居場所が無いことなど知っている。私達は居場所を取り戻しに来たのではない、貴様らの暴挙を止めるために来た!》

 

 

 

 

 

テイルの指揮によりガングート達は陣形を変更し、交戦を開始する。

テイルの艦隊は付かず離れずの距離を保ち、その陣形は常に十字砲火を可能としている。そのためその陣形の"内側"にいるKAN-SENは十字砲火を受けて次々と撃破されていく。

そして"外側"からの攻撃も対処済みであり、攻撃で怯んだKAN-SENから陣形の内側に取り込まれ、十字砲火を受ける。

そして次は敵が態勢を立て直そうとしたのを見計らい、陣形を変更する。

 

次の陣形は砲撃した味方と入れ替わりに前に出て砲撃し、次弾装填と共に入れ替わり、まるで砲撃が連射されているかのようである。

そしてそのまま追撃していくため、敵KAN-SENは再び次々と撃破されていく。

 

総司令官《き、貴様!》

 

テイル《貴様らの艦隊と同じにするな。それに貴様らは···》

 

雪羅の砲撃が総司令部の建物に直撃し、中の軍人が外を見渡すと露払いを終えた雪羅の艦隊が既に総司令部を取り囲んでいた。

 

雪羅「あなた方は、KAN-SENを兵器としか見ていません」

 

雪羅は狙撃によるテイルの艦隊の支援を再会し、弾種を変更し砲撃する。

砲弾は1人のKAN-SENに飛んでいき、接近した瞬間砲弾が弾け、中から大量の小さな砲弾が飛び散り、KAN-SENの全身に命中する。

そしてテイルの陣形に合わせて狙撃し、更に敵KAN-SENは数を減らしていき、遂には総司令官は逃走を計る。

 

しかし総司令官が逃げた先には···

 

テイル「ここを通ると思ったぞ」

 

総司令官「貴様っ!?」

 

総司令官は拳銃を抜こうとするがその手を雪羅がテイルの背後から拳銃で撃ち抜く。

手を押さえる総司令官にテイルは近づき、見事なアッパーを打ち込む。

 

 

 

そして最高戦力を含む多大な戦力を失った北連は降伏する事となった。

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

●雪羅の追加スキルとスキルの変更点
追加スキル『弾種変更』(攻撃スキル)
主砲の弾種を15秒経過するか2回砲撃を行うとランダムで変更する(ダメージはスキルレベルによる)。

対艦狙撃砲弾:凄まじい弾速による高威力の砲弾だが、単発でしか撃てない。
ナパーム砲弾:着弾すると広範囲に炎上効果を付与する砲弾。
散弾砲弾:敵に接近した時点で20発の小型砲弾を発射する砲弾。

スキルの変更点は『もう1人の鶴』に対空を15%上昇させる効果を追加する。


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第54話 アビータ


アビータと余燼の調査を進めるヒロ達。
彼らが次に出会うのは···


アビータと余燼の調査を進めるヒロ達は次の海域に進み、調査を行っていたが、突如他とは違う雰囲気の海域に入る。

 

オブザーバー「この感覚···」

 

清魅「ああ。やっぱりこの世界にも来たな」

 

赤城「レーダーに反応!でも···何もいない?」

 

すると突然、謎の通信が入る。

 

???《そこにいるKAN-SENへ。武装解除して投降しろ。抵抗は無意味だ》

 

憤怒「誰だ!?」

 

加賀「誰だかは知らぬが、武装解除するつもりも投降するつもりもない」

 

オブザーバー「まあ、こんな感じにそんなものは無意味よ」

 

???《セイレーン···同じエックスに対抗する者だというのになぜKAN-SENと共にいる?それに、そこの人間は···》

 

ヒロ「はじめまシて、ぼくハからすま ヒロといいMaす」

 

???《不可解だ。なぜ人間が艤装を展開している?》

 

憤怒「あ"あ"イライラする!さっさと出てこい!」

 

オブザーバー「彼女は出てくるつもりは無いみたいね。そうでしょ?"アビータ"」

 

???《私は『アビータ·Temperance(テンパランス)ⅩⅣ』もう一度聞く。セイレーン、なぜ人間やKAN-SENと共にいる?》

 

オブザーバー「フフッ、この子達から力を見せつけられて、更にセイレーンの総意でこの子達なら力を与えたいと決めたからよ」

 

テンパランス《·····そこの人間、鴉間 ヒロと言ったな。お前の力を見せてみろ》

 

すると周囲から軍艦型のセイレーンが現れ、ヒロの前には白と黒のカラーリングのイカのような艤装を身につけた女性が現れる。

 

オブザーバー「『エンフォーサーⅩⅣ·Equilibrium(イクイリブリアム)』ね。アビータにおけるドメインやアルゴリズムのようなポジションの存外ね」

 

清魅「兄貴···兄貴なら奴を殺れる!他は任せろ!」

 

ヒロ「わかっTa!」

 

 

 

推奨BGM『鋼鉄の意志』

 

 

 

ヒロは単身でイクイリブリアムに挑む。今回は右上に三笠の主砲、左上にフリードリヒの主砲、右下にベルファストの主砲、左下に加賀の飛行甲板、太ももに時雨の魚雷を装備している。

 

ヒロは艦載機を低空で発艦させ、艦載機と同じ高度で砲撃する。イクイリブリアムはレーザーを発射して艦載機を撃墜するが、砲撃を受けてしまう。そして魚雷を避けようとした瞬間に周囲に爆撃され、水柱で視界を塞がれる。

 

次の瞬間にはヒロが水柱から現れ、至近距離で一斉射する。そしてヒロは三笠とフリードリヒの艤装を解除し、イクイリブリアムから離れずに砲撃を続ける。

 

イクイリブリアムはヒロを引き離そうとするが、爆撃と魚雷により進行方向を遮られ、引き離すことができずにいる。そしてイクイリブリアムはヒロの砲撃により主砲の1つを完全に破壊されてしまう。

 

するとヒロは脚部以外の艤装を解除し、月光に手を掛けると同時に肉薄する。

そしてヒロは抜刀し、イクイリブリアムは体を袈裟に斬られ、その体は沈んでいく。

 

 

 

 

テンパランス《これが、お前の力か···鴉間 ヒロ、覚えておこう》

 

すると周囲の雰囲気が変わり、セイレーン艦隊を撃破した赤城達も合流する。

 

清魅「奴らが来たってことは、やっぱりコードGが目的だよな?」

 

オブザーバー「そうね。アビータより先にコードGを見つけなきゃね。でもその前に近くの鏡面海域から補給をしましょう」

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回でアビータが遂に現れましたが、今後にどう関わってくるのでしょうか?

●アビータ·TemperanceⅩⅣ
アビータの幹部の1人であり、それ以外の情報は現在閲覧不可です。

●エンフォーサー·EquilibriumⅩⅣ
白と黒のカラーリングのエンフォーサー。
エンフォーサーはテンパランスより階級は低いがそれなりの力を持っている。


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第55話 迷い

天は多くの艦隊を連れてアイリスとサディアに向かっていた。


誤字報告してくれた方、誠にありがとうございます!


アイリスとサディア···この2つは元は同じだったのだが、分裂して2つになった。しかしこの状況で再び1つとなり、Ravens laneの排除に乗り出している。

そこに、天が多くの艦隊を連れて向かっていた。

 

しかしその頃、迎撃に繰り出そうとしていたKAN-SEN達の一部はこの行動に疑問を持つ者がいた。

 

ダンケルク「この戦い、本当に意味があるのかしら?」

 

ダンケルクは以前、阿修羅やケンタウルスと共に長門の救出のために協力した事があり、その時の光景を思い出していた。

 

ダンケルク(あの時の皆の目は助けるために命を掛けていた。特に阿修羅さんは姉を助けるために単身で突撃したり···)

 

出撃の準備を進めながら、ダンケルクは考える。

 

ダンケルク(でも、今の上層部のやり方は···)

 

オペレーター《総員、出撃!》

 

ダンケルク(これは···この戦いは···!)

 

ダンケルク達は出撃していく···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天とその艦隊はアイリスとサディアの艦隊を確認する。

 

天「来たぞ···皆の者!進め!薙ぎ払え!Ravens laneの力を、見せつけてやるのじゃ!」

 

そう言うと天は空高く飛翔し、味方の艦載機と共に雲の中に潜り込む。

そしてアイリスとサディアの艦隊と天の艦隊が交戦を開始すると艦載機と天は共に急降下し、奇襲を仕掛ける。するとこの奇襲により大破する敵KAN-SENが数人出たため、アイリスとサディアの艦隊の体勢は一気に崩れる。

 

天「フハハハハ!」

 

天は高笑いしながら攻撃を続け、次々と敵KAN-SENを撃破していく。

しかしふと天はダンケルクの前に降り立つ。

 

天「お主、迷っておるな?」

 

ダンケルク「なっ!?」

 

天「迷うのなら、来い!お主の力を、妾に見せてみろ!」

 

そう言うと天は天高く飛び立ち、ダンケルクに向かって攻撃を始める。

 

天「政治も、勝敗も、何も関係ない!迷うのなら妾にお主の全てをぶつけろ!」

 

そして天の艦隊はアイリスとサディアに向かって移動を始める。

 

ダンケルク「私は···!」

 

天「お主の迷いはなんじゃ?平和のために戦った者達を潰そうとする輩を守るのか?」

 

ダンケルク「···違う!」

 

ダンケルクの砲撃は天に容易く回避され、天の砲撃はダンケルクに命中する。

 

天「ではサディアの民を守りたいのか?守ったしても、平和のために戦った者達を排除したという事は、サディアの歴史に刻まれるぞ?」

 

ダンケルク「それは···」

 

ダンケルクは急接近した天の斬撃をギリギリで受け流す。

 

天「あるいは···いや、お主は"ダンケルク"じゃ!他の何者でもない、ダンケルクではないのか!?」

 

天はダンケルクの目の前に降り立ち、詰め寄る。

 

ダンケルク「私は···私が、守りたいものは···」

 

ダンケルクは静かに顔を上げる。

 

天「もう、制圧は完了したようじゃが、もう迷いは無いようじゃな。なら行くが良い。民には、お主のような者が必要じゃからの」

 

そう言うと天は飛び去って行った。

その後ダンケルクはサディア方面の事態の鎮静化や復興に尽力することとなった···

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回はアイリスとサディア、両方の制圧になりましたね。
さてお次は如何に?

●天の追加スキルとスキルの変更点
追加スキル『急降下砲撃』(攻撃スキル)
戦闘開始時と35秒毎に空高く飛び、3秒後に急降下しつつ2発の特殊砲撃を行う(ダメージはスキルレベルによる)。また、画面外にいる間は攻撃を受けない。

スキルの変更点はスキルによるステータス上昇効果を+5%する。


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第56話 意志を継ぎし女王、進みし指導者


ロイヤルに向かったウォーエンドとエリザベスとその艦隊、鉄血に向かったゴアとビスマルクとその艦隊は自身の故郷に牙を向く。


前回記載し忘れていた天のスキルの件を追加しておきました。すいません!


ロイヤルに向かったウォーエンドとエリザベスとその艦隊は軍港の前で立ち塞がる艦隊を発見した。

 

エリザベス「なるほど、正面から行くって訳ね」

 

ウォーエンド「じゃあボクは潜るから、頼んだよ」

 

エリザベス「そっちこそ、頼んだわよ!」

 

ウォーエンドはサムズアップすると深く潜水していく。そして交戦を開始し、ロイヤルKAN-SENを撃破しながら進んでいき、ウォーエンドは真下から魚雷を撃ち込んだり引きずり込んで撃破したりしていく。

また、エリザベスの指揮はまるでエルデアを彷彿とさせるものであり、相手の指揮官の指揮能力を大きく越えていた。

 

そして司令部へと辿り着き、ロイヤルの現最高戦力と交戦を開始する。

地上戦となっているが、ウォーエンドはスルスルと攻撃を回避しつつナイフで攻撃していく。

ウォーエンドの戦闘は優雅、というより効率的な"殺戮"と言って良い。喉を斬って出た血飛沫で敵の視界を塞ぎ、背後から後頭部にナイフを深々と突き刺す。

 

ウォーエンド「ボクは優雅さは求めないからね···容赦はしないよ」

 

エリザベスはまるで優雅さを体現したかのような動きで戦い、見る者の目を惹き付けている。

しかしその攻撃は正確かつ味方への指揮も同時に行っているため、ロイヤル艦隊は押されていく。

するとエリザベスはロイヤルが建造した"もう1人のエリザベス"を見つける。

 

アナザーエリザベス「ロイヤルの栄光のために、気張りなさい!」

 

するとエリザベスはウォースパイト、アーク·ロイヤル、ウォーエンド、フッドに指示する。

 

エリザベス「ウォースパイト、砲撃で援護を頼むわ!アーク·ロイヤルは艦載機で援護!ウォーエンドは私に近づく敵をできるだけ撃破しなさい!フッドは敵の後方に向けて砲撃!」

 

そしてエリザベスはもう1人のエリザベスの前まで辿り着く。

 

エリザベス「あなた、自分が何をしてるのか解っているならそこを退きなさい!」

 

アナザーエリザベス「ロイヤルから脱走し、更にはロイヤルに牙を向けているのに何を言ってるのよ!」

 

エリザベス「真実を何も見ようともせずに···なら、押し通るまでよ!」

 

エリザベスはもう1人のエリザベスに突撃し、もう1人のエリザベスは砲撃する。

しかしエリザベスは横に回転して受け流し、それと同時に砲撃を行う。それも一斉射ではなく、主砲を1つずつ使用しながら回転しているため、最初の1発で怯んだもう1人のエリザベスはそのまま"連射"を食らってしまい、仰向けに倒れる。

 

それを見ていた1人の兵士は、エリザベスにエルデアが重なって見える。

 

 

 

そしてエリザベス達は司令部へと乗り込む。

 

ベルファスト「···そこの方は、エルデア暗殺の件を含めた多くの件の中心関わっている···いわば"ロイヤルの黒幕"です」

 

エリザベス「こいつが···」

 

ロイヤルの黒幕とされる男性は拳銃を発砲しながら逃げようとする。しかしエリザベスが男性の前に回り込み、持っているステッキを振りかぶる。

 

エリザベス「これは···エルデアの分!」

 

エリザベスは男性の顔面をステッキで殴り付け、再び振りかぶる。

 

エリザベス「これは···エルデア艦隊の分!」

 

ステッキで殴られた男性の口から折れた歯が飛び出る。

 

エリザベス「これは···私の分!」

 

男性は今度は鼻が折れる。

 

エリザベス「最後は···ヒロの分!」

 

最後の一撃で男性の意識は途切れ、エリザベスは制圧の印として、ステッキを掲げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴアとビスマルクとその艦隊は鉄血へと向かうが、鉄血の艦隊は奇襲を主として攻撃してくるが、ビスマルクとゴアにことごとく見破られている。

 

ビスマルク「この戦術、以前私が士官に教えてたものね」

 

ゴア「う~ん、気配を隠すのが下手だね~!」

 

オイゲン「あなたの察知能力が高すぎるのよ···」

 

ゴアは鉄血の艦隊よりも上手く気配を隠した艦載機で逆に奇襲し、こちらに来る前に撃破している。

そして進み、軍港へと辿り着くとやはり道中よりも多くの艦隊が現れる。

 

ゴア「そぉれっ!」

 

ゴアは1人の鉄血のKAN-SENに狙いを定めると、大量の爆撃を集中的に投下し、瞬く間にそのKAN-SENは撃破される。

そして軍港を制圧し、司令部へと乗り込む。やはりそこには鉄血の現最高戦力が待ち構えており、交戦を開始する。

 

するともう1人のビスマルクが現れ、ビスマルクの前に立ち塞がる。

 

ビスマルク「退きなさい。建造されて間もないあなたでは、私には勝てないわ」

 

アナザービスマルク「···私は、何が正しくて何が間違っているのか、判らない。けど、それを探すために挑まなければならないと思っている。もう1人の私であり、これまで鉄血艦隊を指揮してきたあなたを倒した···その時に!」

 

もう1人のビスマルクはビスマルクに向かって砲撃をするが、ビスマルクは回避する。

 

ビスマルク「なるほど···いいわ、かかってこい!」

 

 

 

ビスマルク同士での戦闘が開始された頃、ドイッチュラントはもう1人のドイッチュラントと交戦していた。

 

アナザードイッチュラント「このっ!」

 

ドイッチュラント「その程度の攻撃が当たると思って?バカねぇ!」

 

ドイッチュラントの砲撃はもう1人のドイッチュラントの艤装の口内に命中し、もう1人のドイッチュラントの艤装は暴れる。そしてドイッチュラントは上方に魚雷を放ち、その魚雷は放物線を描いてもう1人のドイッチュラントの艤装の頭部に命中し、艤装は破壊される。

 

ドイッチュラント「あらあら、もう終わり?」

 

アナザードイッチュラント「ま···まだよ···」

 

ボロボロになり動けないもう1人のドイッチュラントをドイッチュラントはトドメを刺さずに通り過ぎる。

 

アナザードイッチュラント「待ち···なさい!」

 

ドイッチュラント「あなたは負けたの。どうしようもないくらいにね」

 

 

 

そしてビスマルク同士での戦闘も終わりに差し掛かり、膝を着くもう1人のビスマルクの前にビスマルクは毅然として立っていた。

 

アナザービスマルク「ハァ、ハァ···」

 

ビスマルク「何が正しいのか···あなたはそれを求めるために行動を起こした。なら、いずれは見つけられるはずよ」

 

そしてビスマルクは進軍していき、その後ろに艦隊が続いていく。

こうして、鉄血も制圧が完了するのだった···

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回はロイヤルと鉄血でしたが、どうだったでしょうか?

●ウォーエンドの追加スキルとスキルの変更点
追加スキル『優雅は求めない』(攻撃スキル)
スキル『マタリトリ』で即死判定にならなかった場合に、全ての敵に水中から飛び出てナイフで攻撃する(ダメージはスキルレベルによる)。

スキルの変更点はスキル『存在を憎みし不信』の魚雷の追尾性能が10%上昇し、スキル『秘匿されし者·Sloth』の特殊弾幕の数が7→9へと増加する。

●ゴアの追加スキルとスキルの変更点
追加スキル『ニガサナイ』(攻撃スキル)
爆撃する際、爆撃の数の半分と同じ数の特殊爆撃を最も体力の多い敵に集中的に展開する。

スキルの変更点はスキルのステータス上昇効果の数値を+5%する。


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第57話 余燼

ヒロ達はようやく余燼の居場所を突き止め、その場所へ向かう。


オブザーバー「どうやら、こちらの情報網がやっと余燼の居場所を突き止めたみたいね」

 

ヒロ「いKoう!」

 

一行は余燼の居場所へと直行し、余燼の居場所である小島が見えてくる。

するとMETA飛龍が現れる。

 

META飛龍「遂にここまで来たか···けど、易々と通すわけにはいかない」

 

ケンタウルス「こちらに敵意は無いが、それでもか?」

 

META飛龍「セイレーンがそちらにいる以上は···」

 

ケンタウルスは艤装を解除する。

 

ケンタウルス「ならば、私とヒロ、赤城に憤怒の4人が行こう。もちろん武装は展開しないでだ」

 

憤怒「なるほどな···じゃあオブザーバー達はここで待ってろよ?」

 

清魅「ハァ、仕方ねぇ···おい、兄貴には手ぇ出すなよ?」

 

META飛龍「···良いだろう」

 

ヒロはケンタウルスを見上げる。

 

ケンタウルス「あの時のようにはさせんさ。今回は憤怒もいるからな」

 

そしてヒロ達4人はMETA飛龍に着いていく···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

META飛龍に連れてこられた場所にはMETA高雄とMETAアーク·ロイヤル、そしてNETAエンタープライズと思われるコードGがいた。

 

META高雄「その男が、鴉間 ヒロか?」

 

ヒロ「はじめマしTe」

 

META高雄「フン···」

 

METAアーク·ロイヤル「まあ、君達が来た理由はだいたい検討は着く」

 

ケンタウルス「なら話が早い。エックスとやらに対抗するために協力してほしい」

 

コードG「···飛龍から話は聞いている。だが、協力してほしければ···今一度ここでお前達の力を見せてみろ」

 

憤怒「なるほど···解りやすくて良いぜぇ!やってやんよ!」

 

そしてそれぞれは艤装を展開する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

憤怒はMETA飛龍に向かっていき、META飛龍は艦載機を発艦させる。

ケンタウルスはMETA高雄を見ると不敵な笑みを浮かべて突撃し、高雄は刀を抜いて構える。

赤城とアーク·ロイヤルはほぼ同時に艦載機を発艦させ、赤城は夜露を振り抜いく。

ヒロは右上に長門の主砲、左上にオイゲンの主砲、右下に時雨の主砲、左上に赤城の飛行甲板、太ももに綾波の魚雷を展開し、コードGと向かい合う。

 

 

 

 

憤怒は艦載機をとてつもないスピードで回避しながらMETA飛龍に接近していく。

そして回避しながら砲撃と雷撃を繰り返し、確実にMETA飛龍はダメージを与えていく。そして接近されたMETA飛龍は刀を抜くが憤怒は既に懐に潜り込んでおり、鳩尾に拳を叩き込む。

 

META飛龍「ガハッ!」

 

憤怒「オラァッ!」

 

憤怒はそのまま左フックを命中させ、アッパーカットも命中させる。更に腹部に連続で拳を叩き込み、蹴り飛ばす。

そしてMETA飛龍が顔を上げると、憤怒は主砲を突きつけていた。

 

憤怒「チェックメイトだ」

 

 

 

 

 

 

ケンタウルスとMETA高雄は互いに突撃し、ケンタウルスの槍を回避したMETA高雄はすれ違いざまにケンタウルスの下半身を斬りつける。しかしケンタウルスの下半身は想像以上に硬く、ダメージを与えることができない。

ケンタウルスは振り向きざまに砲撃し、槍で薙ぎ払う。それを後ろに引いて回避したMETA高雄は砲撃しながら接近する。それに対しケンタウルスは左に体を反らし、そのまま進んでMETA高雄の主砲を槍で貫いて破壊する。

 

META高雄「そう来たか···」

 

するとケンタウルスはMETA高雄の後方で前足を軸として急旋回し、突きを繰り出してきたMETA高雄の刀を義手の左手で掴み、槍の石突きで腹部に突きを入れる。

そして怯んだMETA高雄に掌底を撃ち込み、META高雄の喉元に槍を向ける。

 

ケンタウルス「私の勝ちだ」

 

 

 

 

 

 

赤城の艦載機とMETAアーク·ロイヤルの艦載機は凄絶な空中戦を展開し、赤城は夜露で、METAアーク·ロイヤルはレイピアで近接戦を行っている。

ただ、METAアーク·ロイヤルの飛行甲板は艦載機の発艦だけではなく射撃も可能な為、赤城はその対処にも追われている。

そして爆撃に怯んだ隙に距離を離されてしまう。

 

赤城(この猛攻、どうすれば···)

 

すると赤城は以前のヒロとの戦いを思い出す。

 

赤城(ヒロはあの時、飽和攻撃をしながら進み、回避できない攻撃は受け流していましたわ···なら!)

 

赤城は艦載機の一部を用いて飽和攻撃を始め、正面からの攻撃は受け流しつつ、METAアーク·ロイヤルに接近する。

すかさずMETAアーク·ロイヤルはレイピアで突いてくるが赤城は回避すると同時に夜露の柄で右腕を下から打ちつける。

 

METAアーク·ロイヤル「ぐっ!」

 

更に赤城はMETAアーク·ロイヤルの飛行甲板を斬り、夜露の柄で側頭部を殴り付け、METAアーク·ロイヤルは倒れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM『Blue Magnolia』(ACVDより)

 

 

ヒロは進みながら砲雷爆撃を行うが、コードGは次々と大量の艦載機を発艦させているため、回避しきれずに爆撃を1発受けてしまう。追撃の爆撃を艦載機を盾にすることで防ぎ、更に接近する。

 

コードGの艦載機の制御はヒロのものを越えており、ヒロの艦載機は次々と撃墜されていく。

しかしコードGは何かの違和感を感じる。

 

コードG(なんだ、この違和感は···)

 

ヒロが先程までより近くに来ている。

 

コードG(まさか···!)

 

ヒロは撃墜された艦載機を遮蔽物として利用し、コードGの視界から一瞬だけ消え、より接近していたのだ。そしてヒロは自身とコードGの間に爆撃し水柱を発生させる。

コードGは側面から来るかと予想し、ヒロは左側面から現れる。しかしコードGがヒロの方向を向いた瞬間、コードGの脚部艤装に魚雷が、飛行甲板に1発の爆撃が、それぞれ命中する。

 

実はヒロは水柱を発生させた瞬間に魚雷を発射し、艦載機を一機だけ発艦させており、自身に注意を向けさせて当たるようにしていたのだ。

 

そしてヒロは脚部艤装以外を解除し、月光を抜く。鞘の方の刀も抜き、二刀状態でコードGへ向かい疾走する。

艤装という重さから解き放たれたヒロは爆撃を回避し、受け流し、コードGの元まで辿り着く。そしてコードGの首に月光の刃を突きつける。

 

ヒロ「まだつつKeル?」

 

コードG「悔しいが···私の敗けだ」

 

ヒロ「じゃア、きょUりょくしTeくれる?」

 

コードG「良いだろう。お前達なら、もしかしたらエックスに対抗できるかもしれないな」

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回は余燼との戦闘でしたが、どうだったでしょうか?

感想やご指摘、質問はいつでも受け付けていますので、遠慮無く送ってください!


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第58話 兵器じゃない


ユニオンへと向かった夏月の艦隊と大蛇とその艦隊はユニオン艦隊との決戦に挑む。


夏月の艦隊と大蛇とその艦隊はユニオンへと向かい、ユニオン艦隊を撃破しつつ進んでいる。

 

大蛇「オラヨォッ!」

 

大蛇の拳が駆逐艦のユニオンKAN-SENの顔面に直撃し、そのKAN-SENは倒れる。更に死角から攻撃しようとしたユニオンKAN-SENの腹部に大蛇の艤装が食らいつき、そのまま放り投げられ空中で砲撃される。

 

ネバダ「大蛇···凄まじいねぇ」

 

エンタープライズ「ああ、本当に心強い!」

 

エンタープライズは艦載機を発艦させ、前衛の艦隊を援護する。そしてユニオンの軍港へと乗り込むが、想像以上の数の艦隊が現れる。

 

大蛇「お前ら!ここはオレ達に任せて行け!」

 

大蛇は周囲に一斉射し、ユニオン艦隊を怯ませる。

 

エンタープライズ「分かった。頼んだぞ!」

 

夏月《無理はするなよ!》

 

そして夏月の艦隊はユニオンの総司令部へと辿り着き、ユニオンの現最高戦力の艦隊と対峙する。

 

 

 

 

 

 

 

夏月《皆!頼んだぞ!》

 

エンタープライズ「エンタープライズ、エンゲージ!」

 

 

推奨BGM『graphite/diamond』

 

 

エンタープライズは艦載機を発艦させ、それに合わせてネバダ達は砲撃する。

エンタープライズの艦載機は他の空母と共に激戦を繰り広げ、その艦載機の1つは背後を取られたが、エンジンを停止させ、上を向いて落下する。そしてその上を敵の艦載機が通りかかった瞬間に機銃を連射し、撃破して再びエンジンを稼働させて飛び立つ。

 

更にエンタープライズは矢を戦艦のKAN-SENの砲口に撃ち込み、主砲を破壊する。そしてエンタープライズに奇襲を仕掛けようとした軽巡のKAN-SENをボルチモアが砲撃し、撃破する。

すると軽巡のKAN-SENが3人突撃してくる。エンタープライズは自ら前進し、真ん中のKAN-SENに矢を放つ。そして右横をすり抜けつつ右のKAN-SENに矢を放ち、そのままの勢いで回転し、左のKAN-SENを背後から撃ち抜く。

 

エンタープライズ「前進!」

 

夏月の艦隊は侵攻を続け、ユニオン艦隊はその数を減らしていく。

 

ユニオン代表《貴様ら···》

 

次第にユニオンKAN-SENの中には勝てないことを悟り、撤退しようとする者も現れる。

 

ユニオン代表《行け!進め!反逆者どもを蹴散らせ!それがお前達KAN-SENの役目だろう!》

 

夏月《何言ってんだよ···KAN-SENは道具でも兵器でもねぇ!》

 

ユニオン代表《フン、貴様に何が分かる?軍人としての経験も、人生の経験もないお前が何を言う!?》

 

エンタープライズ「軍人としての経験?人生の経験?それを言うなら、なぜ過ちを繰り返す!?」

 

ユニオン代表《兵器がほざくな!》

 

ボルチモア「例え私達が兵器だとしても、そのやり方は間違えてる!」

 

エンタープライズの矢はもう1人のエンタープライズの艤装を貫き、もう1人のエンタープライズは無力化される。

すると大蛇が装甲車を破壊し、爆炎の中から現れる。

 

大蛇「ようお偉いさん!」

 

ユニオン代表《貴様は!?》

 

大蛇「兵器とか道具とか関係ねぇ···仮にもテメェらを守ってくれて、戦ってくれてる奴らに感謝できねぇ奴らに、どうこう言われる筋合いはねぇんだよ!」

 

大蛇は一斉射し、戦線に大きな穴を空ける。

 

エンタープライズ「お前達はただの道具で良いのか?ただの兵器で良いのか?」

 

ユニオンKAN-SEN「私は···」

 

ユニオン代表《お前達は兵器だ!戦うために生まれてきたのだから兵器だ!》

 

大蛇「もういい···黙れよ」

 

大蛇は直接総司令部の建物に砲撃し、突き進む。エンタープライズ達も続き、ユニオン艦隊の戦線は崩壊していく。

 

夏月《ユニオン艦隊のKAN-SEN達に告ぐ···お前達は兵器なんかじゃない!戦うために生まれてきたわけでもない!そんなものは関係ない!"お前達はお前達"だ!兵器なんかじゃない!》

 

大蛇とエンタープライズは進み、ユニオン代表の元へと辿り着き、エンタープライズは矢を向け、大蛇は主砲を向ける。

 

エンタープライズ「もう終わりだ。大人しく投降しろ」

 

大蛇「それとも、まだやるか?」

 

ユニオン代表「この···反逆者の兵器どもがぁぁぁ!」

 

ユニオン代表は拳銃を向け、引き金を引くが故障しているのか弾丸が発射されることはなかった。

 

ユニオン代表「なぜだ···なぜだ!?」

 

大蛇「なるほどな···その銃も言ってるぜ?『撃ちたくない』ってよ?」

 

ユニオン代表は拳銃を捨てて逃走する。大蛇は拳銃を拾い、エンタープライズに渡す。

 

大蛇「ここは、お前が撃ちなよ」

 

エンタープライズは頷き、拳銃をユニオン代表へ向けて引き金を引く。すると今度は弾丸が発射され、ユニオン代表の右足に命中する。

 

ユニオン代表「があああああっ!」

 

のたうつユニオン代表に大蛇の艤装が食らいつき、動きを封じる。

 

夏月《これで終わりだ···》

 

こうして、ユニオンの制圧は終わるのだった。

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回は最後のユニオンの制圧でしたが、どうだったでしょうか?

●大蛇の追加スキルとスキルの変更点
追加スキル『崩壊の(アギト)·大蛇』
42秒毎に敵艦の1人に艤装で食らいつき、最大体力の25%(MAX50%)のダメージを与えるが、残り体力が20%以下の場合は即死となる。

スキルの変更点は確率で発生するスキルが確定になり、スキル『秘匿されし者·大蛇』の特殊弾幕の数が6→8に増加する。


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第59話 忘却の守護者


アズールレーンとレッドアクシズが陥落した頃、余燼との協力関係を結べたヒロ達だったが、最後に残った相手がいた···


アズールレーンとレッドアクシズは陥落し、ヒロ達は余燼との協力関係を結ぶことに成功した。

オブザーバーの手により転送された物資で補給を行い、今後の事を話し合う。

 

META高雄「まずはやはり、アビータの対処だな」

 

赤城「ええ。アビータに関しては早急に対策を取り、エックスに対抗する"力"を見せつける必要がありますわ」

 

オブザーバー「アビータへの対策···取る前に向こうから来ちゃったみたいね」

 

小島の周辺海域の雰囲気が変わり、アビータが続々と現れてくる。

 

オブザーバー「また会ったわね」

 

ヒロ「う~ん···やっPaり、戦わなイとダメ?」

 

清魅「ダメだな。私達の時と同じだ、やるしかない」

 

テンパランス「そういうことだ」

 

オブザーバーは不敵な笑みを浮かべ、ケンタウルスと憤怒を見る。

 

オブザーバー「まあ、このまま戦っても良いんだけれど···どうせなら"忘れられたKAN-SEN"と戦ってみない?」

 

オブザーバーの使用した転送装置により、秘匿KAN-SENが次々と転送されてくる。

 

阿修羅「いきなり転送とは、人使いが荒いな」

 

ウォーエンド「めんどくさいけど、ヒロの為だしね」

 

雪羅「こちらの損傷は無いも同然、作戦に問題はありません」

 

ゴア「アハッ!楽しめそう!」

 

天「妾達の力、とくと思い知らせてくれよう!」

 

蛟「書き置きは残してきました」

 

大蛇「さてと、オレの主砲を食らいたいのはどいつだ?」

 

それを見てケンタウルスと憤怒は獰猛な笑みを浮かべる。

 

ケンタウルス「ではアビータよ···見せてやろう、私達の力を···」

 

憤怒「オイ!さっさと始めようぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM『響け轟音、轟かせ雷光』

 

 

かつてヒロ達に接触してきた、黒いクラゲのような艤装のテンパランス。

 

黒く先鋭的な艤装と眼球のようなものが浮遊している『エンプレス』。

 

黒い肌に青く巨大な腕部艤装と龍のような艤装の『ストレンジ』。

 

青い炎のついたランタンのようなものを左手に持っている『ハーミット』。

 

それぞれと秘匿KAN-SENは交戦を開始する。テンパランスは周囲にエンフォーサー達を出現させ、エンプレスは大量の眼球を出現させ、ストレンジは周囲に重力を発生させ、ハーミットは周囲に霧と空間異常を発生させるが、それに秘匿KAN-SEN達は向かっていく。

 

 

 

エンフォーサー達に守られているテンパランスにケンタウルスと憤怒が突撃し突破を謀る。そして雪羅がそれを援護する。

エンプレスにはゴアが大量の艦載機を放ち、空中戦を繰り広げる。

ストレンジには大蛇と阿修羅が向かい、ハーミットには天と蛟が向かう。

そしてウォーエンドはアビータ達の分析のために潜水する。

 

雪羅の狙撃支援を受けつつケンタウルスと憤怒はエンフォーサー達の防衛線を突破することに成功する。

 

テンパランス「あれを突破するだと···!?」

 

ケンタウルス「あいにく、私は戦線に穴を空けるのが得意でな」

 

憤怒「オレは速さには自信があるんだよ!」

 

テンパランスはレーザーで砲撃し始めるが、ケンタウルスと憤怒は避けつつ接近する。そして憤怒は右からテンパランスの艤装の触手を掴むと全力で引き寄せる。

そしてバランスを崩したテンパランスの主砲をケンタウルスが槍で貫き、破壊する。

 

ケンタウルス「1つ!」

 

憤怒はケンタウルスの尻と方を踏み台にしてジャンプし、テンパランスの顔面を殴り付ける。そして着地と同時に砲撃し、もう片方の主砲を破壊する。

 

憤怒「2つ!」

 

そして逃げようとしたテンパランスを憤怒が海面に引きずり下ろし、ケンタウルスが腹部を踏みつけて槍を向ける。

 

ケンタウルス「抵抗は無意味だぞ?」

 

 

 

 

エンプレスの大量の眼球を相手にゴアの艦載機は空中戦を繰り広げている。そしてゴアは笑いながらエンプレスに接近しようとしている。

 

ゴア「アッハハハハ!待ってよぉ~!」

 

エンプレス「待つわけないでしょう···!」

 

ゴアは速力自体は遅い部類に入るものの、人体の構造を活かして攻撃を回避しながら接近しようとしているのだ。それも、艤装に搭載されている主砲を連射しながらであるため、エンプレスは引き撃ちに徹している。

すると突然エンプレスの艤装に魚雷が撃ち込まれ、速力が一気に低下する。

見るとウォーエンドが別の場所に移動している所だった。

 

エンプレス「これじゃ···!」

 

エンプレスはこの時、一瞬だけゴアから目を離してしまった。その隙にゴアは接近し、エンプレスに飛びかかっていた。

エンプレスは両手首を掴まれ、ゴアは舌なめずりをする。

 

ゴア「ねぇ、まだ抵抗する?するなら···食べちゃうわよ?」

 

ゴアの吐息がエンプレスの顔にかかり、ゴアの目は見開かれ、その顔は獰猛そのものだった。

 

 

 

 

ストレンジと交戦している大蛇と阿修羅は違和感を感じていた。

 

大蛇「なんだか、体が重いな」

 

阿修羅「それだけではない。砲弾がおかしな方向に飛ばされている···もしや、重力を操っているとでもいうのか?」

 

ストレンジは黙々と大蛇と阿修羅に砲撃しているが、普段より動きの鈍っている2人はギリギリで回避している。

それがしばらく続くとストレンジは阿修羅に手を伸ばす。すると阿修羅に大きな重力がかかり、阿修羅は大きくバランスを崩し、艤装にもダメージが入る。

 

阿修羅「なるほど、やはり重力か···だが!」

 

その隙に大蛇は砲撃し、ストレンジの艤装の1つを破壊する。

 

ストレンジ「···ッ!?」

 

ストレンジは大蛇に多大な重力を一気にかけ、大蛇は動きを封じられる。

しかしその瞬間阿修羅の体は軽くなり、阿修羅は砲撃する。

 

大蛇「なるほどな···一度にかけられる重力には限りがあるってことか···!」

 

ウォーエンド《それだけじゃないよ》

 

ウォーエンドはストレンジの真下から魚雷を発射し、その魚雷はストレンジの脚部艤装を破壊する。

 

ウォーエンド《君の能力は自身の真下には重力をかけられず、海中への重力は通常より半減される》

 

ウォーエンドは海中から飛び出し、ストレンジに組みつくと喉にナイフを当てる。

 

ウォーエンド「それならやることは簡単だし、今のボクにはナイフがあれば十分」

 

大蛇「···で、どうする?」

 

大蛇と阿修羅は主砲を向けている。

 

 

 

 

ハーミットは周囲に展開した霧と空間異常により索敵を困難なものにさせており、索敵が必要となる天と蛟には相性が悪かった。

 

ハーミット「さぁ、どうします?」

 

天と蛟は全神経を集中させ、索敵をしているがなかなかハーミットは見つからない。

すると蛟は霧の出ている場所に絨毯爆撃を仕掛け、あぶり出そうとする。

するとハーミットの艤装に爆撃がかすったため、蛟はすぐに天に報告する。

 

蛟「23番機の場所です!」

 

天「待ちわびたぞ!」

 

天はその場所に急降下し、砲撃を行う。すると霧の中にハーミットの姿が見えるが、すぐに消えてしまう。すると天は砲撃を避けつつ思考を巡らした。

 

天(考えろ···どうすればあやつを捉えられるか···!)

 

すると天は爆撃により散った霧が再び発生する瞬間と空間に異常が発生する瞬間に、ハーミットのランタンが光るのが見えた。

 

天「蛟!ランタンの光を探せ!そこにハーミットがおるかもしれぬ!」

 

蛟「承知しました!」

 

ハーミット「くっ···!」

 

空間異常により周囲が燃え上がり、その瞬間にランタンの光が見える。そこに蛟は砲撃し、ハーミットはランタンを破壊され、それと同時に空間は通常通りに戻る。

 

ハーミット「ランタンが!」

 

蛟「今です!」

 

天「もう逃がさんぞ!」

 

天は急降下しながら砲撃し、怯んだハーミットにそのままの勢いで拳を腹部に打ち込む。更にスピードを活かしてあらゆる方向からスピード違反する乗せた拳を打ち込んでいく。

更に蛟の爆撃もあり、ハーミットは海面に倒れる。

 

ハーミット「なぜ···あなた達はそこまで戦えるのです?」

 

天「妾達の主のためじゃな。守るものがあるからこそ、強くなれるのじゃ。フハハハハ!」

 

 

 

 

 

そしてアビータ達の元にヒロが歩み寄る。

 

ヒロ「もう、これでいイ?」

 

テンパランス「···約束は守ろう」

 

テンパランスは少し悔しそうだが、ヒロの差し出した手を握った。

 

 

 

 

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回で第6章は終了となりますが、どうだったでしょうか?
感想やご指摘、質問はいつでも受け付けています!

●テンパランス
白い短髪のアビータの幹部の1人。黒と青の服と黒い艤装はどちらもクラゲのような形状をしている。
また、多くのエンフォーサーを指揮することによる戦闘を得意としている。
性格は真面目で約束は必ず守るが、リスクが大きいものは好まない。

●エンプレス
白い長髪と白いドレスのような服に黒く先鋭的な艤装が特徴のアビータの幹部。
眼球のようなものを周囲に複数浮遊させており、それからはレーザーを発射することが可能であり、艦載機のように動かすことが可能。
性格は少し高飛車である。

●ストレンジ
灰色の髪と黒い肌に青く巨大な腕部艤装と龍のような艤装が特徴のアビータの幹部。
周囲や敵に重力をかけることが可能だが、かけられる重力には限りがあり、1つに集中すると他にかかる重力は低下する。
性格は寡黙で、あまり喋ることは少ない。

●ハーミット
白い長髪と青い炎のついたランタンが特徴のアビータの幹部。
周囲に霧や空間異常を発生させる事ができるが、それらを発生させる瞬間はランタンが光り、ランタンを破壊されると霧や空間異常を発生させることができなくなる。
性格は手段を選ばないが様々なものを観察することを好む。


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幕間 過去の決着


アズールレーンとレッドアクシズ、そして余燼とアビータとの戦いを終え、世界は争いを一時的に終えることとなる。
しかし、1つだけ決着をつけなければならない者がいた···


それぞれの戦いを終え、世界は争いを一時的に終えることとなり、復興が進んでいる。

セイレーンとアビータの協力もあり、人間やKAN-SEN達だけよりも遥かに復興は進んでいく。

 

そしてヒロは赤城、雪羅と共に重桜のいくつかの基地の視察に行くこととなった。銀治は用事で行けないため、その分は雪羅が補う事となっている。

 

赤城「ほら、見えてきましたわよ」

 

着いた基地は設備こそ少し前の物が使われているものの、整った雰囲気である。しかし清掃が行き届いているように見えても、不自然な点がいくつかあった。また、一部のKAN-SENの表情は良いものではなかった。

 

赤城「これは···」

 

雪羅「少々怪しいですね···」

 

そして応接室にて秘書艦とこの基地の指揮官と対面する。ボサついた黒髪に小太りの男性である。

 

男性「こんにちは。私は『鼠屋(ねずみや) (みのる)』です。今日はご足労で···ん?」

 

ヒロは赤城の後ろに隠れ、赤城の尻尾を握り締めている。そして尻尾を握られている赤城と隣にいる雪羅には、ヒロがかすかに震えているのが解る。

 

鼠屋「どうされましたか?」

 

鼠屋は赤城の後ろに隠れているヒロの元に回り込もうとするが、ヒロは男性とは反対側に動く。

 

鼠屋「仮にも視察に来ている身でしょう?なら顔くらい見せてくださいよ」

 

赤城「申し訳ありませんが、嫌がっていますので···」

 

しかし鼠屋は無理矢理ヒロへと近づこうとしたため、雪羅が割って入る。

 

雪羅「これ以上はやめてください···今回の視察や今後の予定は私が対応しますので、2人は船に戻っていてください」

 

鼠屋「おい···!」

 

そして赤城とヒロが部屋から出ようとした時、ヒロの顔が鼠屋に見られてしまう。

 

鼠屋「おいお前···ヒロか?久しぶりだなぁ!」

 

鼠屋はズカズカとヒロに近づき手を伸ばすが、雪羅がその手を捻り赤城はヒロを自身の後ろに隠す。

 

鼠屋「痛てて···何すんだよ!?」

 

雪羅「これ以上はやめてくださいと言いましたよね?」

 

赤城はヒロを連れてその場から離れることにした。

 

 

 

 

 

 

ヒロは船の中で赤城にしがみついており、未だ震えていた。

 

赤城「大丈夫ですわ」

 

赤城はヒロの頭を優しく撫でながら考える。

 

赤城(まさか、この基地の指揮官は以前ヒロをいじめていた害虫の1人?)

 

赤城はヒロに尋ねる。

 

赤城「ヒロ···もしかして、あのがい、この鼠屋は···過去にヒロをいじめていた人の1人ですか?」

 

ヒロは頷く。

 

ヒロ「うん···それも、いちばんたくさんやってきたひと···」

 

赤城はヒロを抱き締める。

 

 

 

 

 

 

 

その頃、鼠屋は怒鳴り散らしていた。

 

鼠屋「おいテメェ!なんで"俺のオモチャ"を隠したんだよ!?あぁ!?」

 

雪羅「怒鳴り散らすのは話し合いにおいて無駄な行為ですのでやめてください。それに···私の主をオモチャ呼ばわりするのもやめてください」

 

鼠屋「はぁ?お前頭おかしいのか?"あれ"はな、1人じゃ何もできなくて、障がい者で、世の中のゴミなんだよ!それを俺がオモチャとして扱ってやってたんだからありがたく思えっての!」

 

雪羅が鼠屋を撃ち殺そうとした瞬間、雪羅に通信が入り、鼠屋には緊急の電話が入る。

 

雪羅「···なんです?今、ヒロを過去にいじめ、今侮辱したゴミにも満たないものを排除しようとしたというのに」

 

銀治《赤城とヒロから話は聞いた。奴がいじめの主犯だということも調べはついている···そこでだ、演習で決着をつけようというわけだ》

 

雪羅「それはそれは···」

 

銀治《だから今は待ってくれ。儂も奴を殺したいぐらいには思っとる》

 

雪羅「まあ良いでしょう···」

 

しかし鼠屋は相変わらず怒鳴り散らしていた。

 

鼠屋「何でだよ!?なんで負けたら軍をやめさせられて、しかも逮捕されんだよ!?」

 

軍人《あなたが過去にしてきたことの結果です。では後程鴉間さんの艦隊が到着しますので》

 

電話は一方的に切られてしまい、鼠屋は電話機を壁に投げつけ、電話機は壊れてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

演習は3回行われ、1回戦と2回戦は艦隊演習、最後はヒロと鼠屋とのタイマンである。

また、1回戦と2回戦で負けていた場合、最後の演習で勝てば勝ちとなるルールである。

 

そして1回戦目の編成は···

 

ヒロ陣営:三笠、赤城、加賀、時雨、オイゲン、綾波

 

鼠屋陣営:翔鶴、伊勢、比叡、衣笠、那智、加古

 

 

 

鼠屋「あれが組んだ艦隊に、俺の艦隊が負けるわけねぇだろ!」

 

三笠「総員、進め!」

 

1回戦目の演習が始まり、赤城と加賀は艦載機を発艦させる。鼠屋の艦隊は応戦するが、前衛の艦隊は時雨と綾波のスピードに翻弄され、回避しきれずに攻撃を連続で受けてしまう。

 

鼠屋「なんでだよ···なんでだよ!?」

 

鼠屋は狼狽えているが、観客席にいるヒロに横からビスマルクが解説する。

 

ビスマルク「鼠屋の艦隊は火力ばかり重視して前衛を重巡だけで構成している。これでは全体的な動きが遅くなり、敵に駆逐艦がいた場合は簡単に翻弄されてしまう。

でもヒロの編成はとても良い。防御はオイゲンに任せて時雨と綾波による機動戦を行い、赤城と加賀の艦載機で支援、そして三笠の砲撃···あなた、作戦指揮は苦手と聞いたけど編成は上手いみたいね」

 

そしてヒロの艦隊により鼠屋の艦隊は結局圧倒されてしまい、鼠屋の惨敗となる。

 

 

 

 

 

2回戦目の艦隊は···

 

ヒロ陣営:長門、大蛇、ゴア、ベルファスト、ドイッチュラント、ケルン

 

鼠屋陣営:駿河、瑞鶴、飛龍、鈴谷、那珂、朝潮

 

 

 

鼠屋「なんで···長門が···!?」

 

長門「皆の者···行くぞ!」

 

2回戦が始まると、開幕から大蛇とドイッチュラントが砲撃し、ゴアは大量の艦載機を発艦させて瑞鶴と飛龍の艦載機を防ぎにかかる。

更にベルファストの使った煙幕に紛れてケルンとベルファストは砲雷撃を仕掛ける。

 

そして、鼠屋の艦隊は1回戦の時と比べて連携が取れていないだけでなく、より疲労していた。

 

ビスマルク「なるほど。おそらく1回戦目の艦隊が最高戦力で、あの艦隊は整備や休息を取らせていたのに対し、こっちは全然させてなかったようね。だから疲労による動きの鈍さ、連携の遅れが目立ってしまう」

 

そして2回戦目もヒロ陣営の勝利となったが、鼠屋は喚いている。

 

鼠屋「なんでテメェら負けてんだよ!?あんな···あんな···!」

 

ドイッチュラント「黙りなさい下等生物!」

 

 

 

 

 

そして、最後のタイマンの前に基地に電話がかかってきた。どうやらヒロに変われと言っているようだが、雪羅が出ることにした。

 

雪羅「ヒロは現在手が離せませんので、私が変わりに要件を聞きます」

 

女性《まあ!こんな時に手が離せないですって!?親の顔が見たいわ!》

 

雪羅「(拳を握り締める)···早く要件をどうぞ」

 

女性《私は実の母です!では単刀直入に申し上げます!今すぐ演習を中止なさい!》

 

雪羅「中止することはできませんが、どういう事です?」

 

鼠屋母《鴉間 ヒロは身勝手な根も葉も無い事を根に持っての復讐をしたいに決まってますわ!》

 

雪羅「根も葉も無い···?」

 

鼠屋母《そうです!私の子に限っていじめなんて事はしないに決まってますわ!それに復讐は何も生みませんわ!即刻演習を中止なさい!》

 

雪羅「···根も葉も無い?こちらは既に証拠を押さえてあるので言い逃れはできません。それに復讐はどうこうと言ってますが、そんなものはただの綺麗事であり、してしまったことは何かしらの"落とし前"をつけなければならないのです。

ですので、演習を中止することはこれらの観点からもできません。それでは」

 

雪羅は電話を切り、深呼吸をしたがその目は酷く冷たく、周囲が凍りつくかのようである。

 

天「抑えろ。その顔でヒロの前に出るつもりか?」

 

雪羅「···そうでした。私としたことが」

 

天「気にするでない。さぁ見に行こう、ヒロの決着を」

 

 

 

 

 

 

3回戦目のタイマンは木刀1本を使っての戦いであるが、実戦で死亡の判定になった時点で負けである。

 

エリザベス「では···初め!」

 

エリザベスの合図と同時に鼠屋は木刀を振り上げてヒロに突撃し、木刀を振り下ろす。

しかしヒロは鼠屋の木刀が脳天に当たる瞬間に左手で受け流しながら懐に潜り込み、鳩尾に突きを直撃させる。

 

ヒロ「これはおとうさんの分!」

 

鼠屋が倒れる前にヒロは鼠屋の腰に横薙ぎに一撃を当てる。

 

ヒロ「これはおかあさんの分!」

 

そして前のめりに傾いた鼠屋の顔面に下から木刀で斬り上げるように一撃を当てる。

 

ヒロ「これは···僕の分!」

 

エリザベス「勝負あり!勝者、鴉間 ヒロ!」

 

戦いを見ていた者達からは歓声と拍手が上がる。

 

銀治「さて、お前は儂の手で逮捕させてもらおう」

 

冴「もう逃げられないわよ?」

 

銀治が手錠を持って近づくが、鼠屋は逃げようとする。しかしその前に清魅が立ち塞がった。

 

清魅「よう、久しぶりだな」

 

鼠屋「お、お前は···!」

 

清魅「ああ。鴉間 清魅だよ···セイレーンになって地獄から戻ってきたんだよ!」

 

清魅は鼠屋の顔面に回し蹴りを直撃させ、鼠屋はそのまま拘束される。

 

清魅「今のは私の分!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ヒロのいじめや放火に関与した者達は次々と逮捕されていき、その全ては牢獄行きとなった。

 

清魅「兄貴、終わったか?」

 

ヒロ「うん!」

 

銀治「清魅は?」

 

清魅「最高にスッキリしたよ!」

 

銀治「そっかそっか!なら、今夜は2人に儂がラーメンを作ってやろう!」

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回で、ヒロを縛りつけてきたものに決着が着きました!
さて、次章はどんな展開が待っているのでしょうか?


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終章 Ravens lane
第60話 祭り


ヒロの過去との決着から数日、ヒロ達は人々によりKAN-SEN達への理解を深めてもらおうと祭りを計画する。
果たして無事に終わるのか···


ヒロの過去との決着により、いじめをしていた他の者も処罰される事となり、更に鼠屋を含む一部の者は賄賂を使っていたことが判明し、その関係者も処罰された(その中には鼠屋母もいた)。

 

そしてそれから数日、人々によりKAN-SEN達への理解を深めてもらうため、祭りを計画する事となった。

場所はヒロ達のいる基地の一部で、KAN-SEN達による出店や様々な体験を行う予定である。

 

銀治「たこ焼きや焼きそばといった定番のものは確定として、体験ブースはどうするかだな」

 

冴「それなら、量産型を使ってのプチ航海や軍艦解説、戦術講座なんてどうかしら?」

 

雪羅「それならセイレーン技術によるワープ体験もやってみましょう」

 

その後準備は着々と進み、祭り当日となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祭りの当日は賑わっており、子供連れからカップル、マニアなど様々な人々が集まっており、中には他の基地のKAN-SENと指揮官も来ていた。

 

出店では祭りの定番がずらりと並び、楽しむ人々を見てKAN-SEN達は微笑んでいた。

また、出店の中にはいくつか祭りではあまり見かけないものもあった。

 

エンプレス「どうして花屋さんなんてやらされてるのかしら···」

 

ハーミット「ジャンケンに負けたから仕方ないでしょ?」

 

エンプレスとハーミットは花屋をやっており、それなりの稼ぎをあげていた。

そして体験ブースでは量産型によるプチ航海、三笠による軍艦解説、ケルンとアマゾンによる戦術講座、オブザーバーによるワープ体験、ストレンジによる無重力体験などが行われていた。

 

三笠「この艦は元々戦艦になる予定だったのだが···」

 

ケルン「こうすると、敵の目を欺くことができ···」

 

アマゾン「それに対し、こんな方法で対処したり···」

 

オブザーバー「はぁい、では次の方~」

 

ストレンジ「···次の方」

 

大型ブースではゴアとフッドによるクイズ大会(景品あり)やドイッチュラントによるマジックショーなど···

しかし問題を起こす者もおり、泥酔した人や痴漢もいたがすぐに兵士に取り押さえられた。

 

更に、ヒロ達に恨みを持つロイヤルや東煌の組織の残党が関係者の暗殺を目論んで紛れていたが、雪羅やウォーエンドに排除されていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、人気の無い場所でヒロは大蛇と共に周辺の見回りを行っており、外壁の近くを通っていた。すると1組の老夫婦がおり、要人なのかボディーガードが2人いた。

 

老夫婦「「こんばんは」」

 

ヒロ&大蛇「「こんばんは」」

 

老夫「君は···この基地の、鴉間 ヒロ君かい?」

 

老夫婦には、なぜか神聖な雰囲気が漂っていた。

 

ヒロ「うん」

 

老婦「では、あなたは···」

 

大蛇「オレは大和型秘匿戦艦 大蛇」

 

老夫「あなた方は···この国が、好きですか?」

 

ヒロ「···いろいろあったけど、この国があったから今ここにいれるから、好き!」

 

大蛇「オレは故郷だから好きだな」

 

老夫婦は微笑んだ。

 

老婦「ありがとうございます。そう言っていただき、大変嬉しいです」

 

老夫「そして、これまでこの国を守り、更には戦争を終わらせてくれて、本当にありがとうございます」

 

そう言って老夫婦は頭を下げ、2人に握手を求めてきた。ヒロと大蛇は自然と握手に応じた。

 

老夫「これまでの事、感謝しています。そしてこれからも···重桜、いえ···日本と世界を、頼みます」

 

そして老夫婦は去っていった。

ヒロと大蛇は、しばらくその場に立っていた···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祭りも終盤に差し掛かり、祭りの目玉の1つであるロボットバトルが開幕する。

 

司会「皆さんこんばんは。今夜はこの基地でのスペシャルマッチ!特別にご紹介いただいたからには、素晴らしいバトルが待っている事でしょう!」

 

観客席から歓声が上がる。

 

司会「今回のマップはこの演習場です!」

 

ロボットバトルを見たことの無いアビータ達や余燼達も注目している。

 

司会「では今回の対戦者達のご紹介です!赤コーナー中量2脚『ホワイト·グリント』!青コーナー、中量2脚『アンビエント』!ホワイト·グリントの使用者は先日機体を父親から託されたばかり。アンビエント相手にどう立ち回るのか!?」

 

2機はそれぞれ入場する。

ホワイト·グリントはその名の通り、白いカラーリングに、青い複眼と1本の角が特徴的であり、対するアンビエントは黒と灰色のカラーリングで4つの青いメインカメラがあり、機体のフォルムと佇まいはどこか淑女を思わせている。

 

ヒロ「アンビエントの使用者は、トップクラスの実力を持ってるんだ」

 

清魅「あれ?兄貴なんか喋れてねぇか?」

 

ヒロ「あ!確かに···」

 

司会「それでは···レディー、ゴー!」

 

 

 

推奨BGM『Cosmos』(ACfaより)

 

 

ホワイト·グリントは両背部の分裂ミサイルを放ち、ミサイルと共にアンビエントに向かって行く。2発の分裂ミサイルは空中で分裂し、8つになる。

そして合計16発のミサイルがアンビエントに飛ぶが、アンビエントはそのひとつひとつを右手のレーザーライフルと左手のアサルトライフルで正確に撃ち落としていき、それに混ぜられて放たれたレーザーがホワイト·グリントの左胸の装甲に命中する。

 

アンビエントは左背部の『追尾ミサイル』を3発発射し、そのミサイルはホワイト·グリントを追い回す。そしてその隙にアンビエントは両肩の装置を起動させ、レーダーから消える。

そしてホワイト·グリントがミサイルを撃ち落とし終わるとホワイト·グリントの視界とレーダーからアンビエントは消え去っており、周囲を見渡そうとした瞬間、追尾ミサイルとアサルトライフル、レーザーライフルの一斉射を受け、ホワイト·グリントは撃破判定となってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして祭りの最後はヒロ、KAN-SEN、セイレーン、余燼、アビータによる花火である。

美しい花火が次々と放たれ、その花を広げていく。観客は歓声を上げ、ヒロ達も楽しそうである。

 

そして祭りが終わり、人々を見送ってから片付けを始める。それが終わると宴会が始まり、その日を最後まで楽しむ。

しかし赤城は少し緊張した顔でおり、宴会が始まってしばらくするとヒロを外へと連れ出す。

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回は祭りでしたが、どうだったでしょうか?
感想やご指摘、質問などはいつでも受け付けています!

●老夫婦
実はこの世界での天皇であり、お忍びで祭りに参加しており、ヒロと直接話すためでもあった。
そして、実際に会った時にヒロだけでなく、大蛇も会えたことは大蛇にとっては何かしらの運命なのかもしれない。

●ホワイト·グリント
白いカラーリングの第4世代型中量2脚で1本の角と青い複眼が特徴。
武装は右手のライフル、左手のアサルトライフル、両背部の分裂ミサイルであり、変形機構も備えている。
現在の使用者は2代目であり、まだ使いこなせてはいない。
しかし、『本来起こり得た未来』ではもう1つ武器があるようである。

●分裂ミサイル
ある程度目標に接近すると複数に分裂するミサイル。

●アンビエント
黒と灰色のカラーリングの第4世代型中量2脚。青い4つのメインカメラがある。
武装は右手のレーザーライフル、左手のアサルトライフル、右背部に増設レーダー、左背部に追尾ミサイル、両肩に『ステルス発生装置』がある。
余談だが、使用者は育休していたが、最近になって復帰した。

●追尾ミサイル
低速で目標をしつこく追いかけるミサイル。

●ステルス発生装置
この装置が起動している間はレーダーから消えることが可能。


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第61話 彼岸花と鴉


宴会の最中、ヒロを連れ出した赤城がとった行動とは···


赤城はヒロを連れ出し、海辺に歩いていく。月明かりが2人を照らし、赤城はヒロを見つめる。

 

赤城「ヒロ、あなたに伝えたいことがあります」

 

ヒロ「なに?」

 

赤城「その···私は、ヒロを」

 

ケンタウルス「水を差すようで悪いが、待ってもらおう」

 

2人が振り向くと、ケンタウルスが演習用の槍と薙刀を持って立っていた。

 

ケンタウルス「赤城、この場で私と勝負してもらおう」

 

赤城「い、いきなり?」

 

ケンタウルス「ああ」

 

ケンタウルスの目には確かな闘志が見えており、まるで燃えているかのようだった。

 

ケンタウルス「ちょうどこの位置は宴会の場所からは見えないからな」

 

ケンタウルスは赤城に薙刀を差し出す。赤城は薙刀を受け取り、ヒロの方を向く。

 

赤城「ヒロ···待っていてください」

 

ヒロ「うん。2人とも応援してるよ!」

 

2人は海へ出て対峙する。

 

 

 

推奨BGM『クリムゾン·ブルーミング』

 

 

 

ヒロの掛け声と共に2人は突撃し、交戦を開始する。赤城の方は小回りが効くものの、ケンタウルスはその突進力とパワーを活かして戦闘を行う。

 

赤城(流石は近接特化型···私とは大違い···)

 

ケンタウルス「どうした、そんなものか!?」

 

ケンタウルスは体を捻りながら後方に移動し距離をとり赤城に突進する。赤城は槍を辛うじて防ぎ、鍔迫り合いとなる。

するとケンタウルスは赤城にしか聞こえない音量で話す。

 

ケンタウルス「赤城···実を言うとお前がヒロを愛しているように、私もヒロを愛しているのだ」

 

赤城「なっ!?」

 

ケンタウルス「だがヒロは恐らくお前を選ぶ···だから私はお前をここで試すのだ」

 

ケンタウルスは再び距離をとり、突進する。赤城は先程より上手く防ぎ、再び鍔迫り合いとなる。

 

ケンタウルス「見せてみろ、お前の本性を!お前の···愛を!」

 

ケンタウルスと赤城は同時に距離をとる。

 

赤城「フフフ···アッハハハ!では互いに、愛をぶつけ合いましょう!」

 

そして2人の戦いは激しさを増し、だがどこか美しく、華やかですらあった。

ケンタウルスの突きを赤城は屈んで回避し、赤城の薙ぎ払いをケンタウルスは飛び退いて回避し、そのまま赤城は接近するがケンタウルスは右にステップをして回避する。

 

赤城「あなたの愛で、私の愛に敵うかしら!?」

 

互いに、ヒロを愛する者同志···

 

ケンタウルス「良いぞ···実に良いぞ赤城!」

 

しかし戦いを見つめるヒロはこの戦いが自身への愛であることを知らず···

 

赤城「私の胸は···ヒロへの愛で滾っていますわ!」

 

だが戦いの終わりは突然に···

 

ケンタウルス「赤城ぃぃぃぃ!」

 

ケンタウルスの突きを赤城はヒロのように左手で受け流し、その勢いのまま右手の薙刀をケンタウルスの胸に突き当てる。

 

赤城「勝負ありですわ」

 

ヒロ「赤城の勝ちだよ~!」

 

ケンタウルス「じゃあ、私は戻って寝るとしよう。突然で悪かったな」

 

赤城「いいえ、ありがとうございます。おかげで、改めて覚悟が決まりましたわ」

 

ケンタウルス「フッ、なら良かった」

 

ケンタウルスは去っていく。そして赤城は改めてヒロに向き直る。

 

 

 

 

 

 

 

赤城「ヒロ···その、伝えたいことが」

 

ヒロ「うん、今度はちゃんと聞けるよ」

 

赤城「私は···ヒロ、あなたを愛しています」

 

ヒロ「え?」

 

赤城「今は戦争中です。考えたくはありませんが、いつ死ぬか判らないからこそ伝えたいのです」

 

赤城はヒロに重桜の紋章のついた青い小さな箱を取り出し、開けると中には指輪が入っていた。

 

赤城「私と···結婚してください」

 

ヒロはポカンとした表情を浮かべた後、あたふたし始める。

 

ヒロ「えと···その···僕で、良いの?」

 

赤城「はい。あなたでなくてはなりません」

 

ヒロは顔を赤くする。

 

ヒロ「あ···あ···その···なんで、僕なの?」

 

赤城は自身の胸に手を置いて話し始める。

 

赤城「今思えば、一目見た時からあなたに惹かれていました。しかしあなたと過ごすうちに想いは強くなっていきました。そして義人のブラックキューブにより私の魂が封印されていた時、あなたの言葉がとても暖かく、私を解放してくれました。それが決定的なものとなりました」

 

月明かりが、2人の顔を照らす。

 

赤城「今ではあなたの全てが愛おしいのです···ですから改めて、私と結婚してください」

 

ヒロは深呼吸をする。

 

ヒロ「スゥー、ハァー···ぼ、僕で良いなら」

 

赤城の目から涙が溢れ、赤城はヒロを抱き締める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM『誓約』

 

 

三日後、ヒロと赤城の結婚式が行われた。銀治達人間、KAN-SEN、セイレーン、アビータ、余燼など、多くが2人を祝った。

 

清魅「あ"に"ぎぃ···おめでとう!おめでとう!てか赤城!兄貴を不幸にしたら別世界に逃げても仕留めるからな!」

 

加賀「姉様、ヒロ、おめでとう」

 

テンパランス「···おめでとう、と言っておこう」

 

METAアーク·ロイヤル「2人とも、おめでとう!」

 

銀治「赤城、ヒロ···おめでとう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、2人は幸せな夫婦となった。

 

 

 

 

そして、"決戦"まであと4日···




読んでくださり、ありがとうございます!

ヒロと結婚したのは赤城でした!
そして遂に決戦となります。


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第62話 破滅の行進


遂にこの世界に侵攻してきたエックス。

最後の戦争が、幕を開ける···


ヒロと赤城の結婚式から3日後、オブザーバー零からそれぞれに伝えられる。

 

オブザーバー零《皆さん、遂にエックスの勢力がこの世界にやって来ることを観測しました》

 

ヒロ「遂に、来るんだね···」

 

赤城「ええ···」

 

オブザーバー零《エックスの勢力がこの世界に到達するのは、恐らく明日かと推測されます》

 

銀治「よし、すぐに迎撃準備を始めよう明日までには終わらせられるはずだ」

 

オブザーバー零《こちらもセイレーン艦隊の配備を急ぎます》

 

テンパランス「こちらも急ごう」

 

そして各々は準備を始める···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の10:00に空に大きな"穴"が空き、そこから大量のエックスの艦隊が現れる。

全体的に白と青のカラーリングであり、軍艦型から人型まで様々である。

 

ヒロ「皆···行こう!」

 

 

推奨BGM『Jumbling』(ACVDより)

 

 

押し寄せるエックス艦隊にそれぞれは交戦を開始する。そして味方の攻撃により人型のエックス(以下『アポストルA』)は機械だということが判明する。

 

瑞鶴《皆!エックスは機械だよ!》

 

三笠「なるほど。ということは···」

 

冴《相手が機械ってことは恐らく恐怖や痛みも感じず、撤退することも無いわね···しかも人体よりも耐久は間違いなく優れてるわ》

 

ヒロは右上に天城の主砲、左上にビスマルクの主砲、右下にケントの主砲、左下に赤城の飛行甲板、太ももに時雨の魚雷を装備し交戦しており、目の前にいる2機のアポストルAに砲撃し同時に撃破する。

また、赤城も艦載機だけでなく夜露でも撃破していく。

 

加賀の爆撃により3機のアポストルAは撃破され、その水柱から時雨が突撃し砲撃する。しかし時雨の前方のアポストルは背中の2つのミサイルポッドからミサイルを1発ずつ発射する。

それを憤怒が撃ち落とし、時雨はアポストルAに魚雷を発射し撃破する。

 

すると先程のアポストルAとは違うタイプの人型(以下『アポストルB』)が現れ、右腕のレーザーブレードを『睦月』に向けて振りかぶる。しかし阿修羅の砲撃によりアポストルBは撃破され、睦月を翔鶴の艦載機がフォローする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀治「お前達!負傷したKAN-SENや人員の治療や補給を急げ!」

 

兵士達「「「了解!」」」

 

銀治達は基地で後方支援に当たっており、そこも戦場であった。

 

通信士A「岩手県沖及び四国地方の防衛線、突破されました!」

 

通信士B「北海道では地上戦になっている場所もある模様!」

 

通信士C「他の陣営でも防衛線の突破や陥落している地域あり!更に複数の基地との通信途絶!」

 

各地の次々と防衛線が突破され、陥落した地域や基地が出てきており、エックス艦隊の戦力の大きさを物語っている。

 

 

 

 

 

 

 

エリザベスが放った防弾がアポストルAを撃ち抜いた。

 

エリザベス「まだ来るの!?」

 

すると再び違うタイプの人型(以下『イデアA』)が現れ、エックス艦隊の後方から狙撃してくる。

アーク·ロイヤルの爆撃により撃破できたものの、更なるエックス艦隊が押し寄せてくる。

 

テスター《ここは一旦こっちの艦隊に任せて下がりなさい》

 

エリザベス「ええ。皆!一時後退!」

 

そしてセイレーン艦隊はエリザベスの艦隊と入れ替わりでエックス艦隊と交戦する。するとイデアAと似た姿だが武装の違うタイプ(以下『イデアB』)が現れ、両腕のミサイルポッドからミサイルを連射してくる。

 

 

 

 

 

 

その頃、ビスマルクの艦隊は既に新型の人型タイプ(以下『プソムA』『プソムB』)と交戦し、プソムAは大型の主砲からレーザーを発射し、プソムBは艦載機を発艦させていた。

 

ビスマルク「総員、陣形を変更!」

 

フリードリヒ「数が多すぎるわね···」

 

押し寄せるエックス艦隊の大群は未だ止まることは無く、次第に地上の制圧範囲も広がりを見せていた···

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回から遂にエックス艦隊との決戦が始まりました!

●エックス艦隊
全体的に白と青のカラーリングであり、人型も含めて全て機械である。
そのため耐久や火力は人型セイレーンより高く、恐怖や痛みも感じないため単体でも厄介である。更に物量でも押してくるため、驚異は更に強くなっている。

●アポストルA
エックス艦隊の人型タイプで駆逐艦に相当する。
右腕のレーザーを発射する2連装砲と両背部の単発型ミサイルを主兵装とし、高機動戦を得意とする。
また、アポストルとは英語で『使徒』を意味する。

●アポストルB
アポストルAのバリエーションタイプ。
右腕のレーザーブレードと左背部の対空機銃を主兵装とし、近接格闘と対空を目的としている。

●イデアA
エックス艦隊の人型タイプで重巡に相当する。
左腕の機銃と右背部のレーザーキャノンを主兵装とし、狙撃による遠距離支援を目的としている。
また、イデアはイタリア語で『思想·観念』を意味する。

●イデアB
イデアAのバリエーションタイプで軽巡に相当する。
両腕の4連ミサイルポッドを主兵装とし、ミサイルによる中距離支援を目的としている。

●プソムA
エックス艦隊の人型タイプで戦艦に相当する。
両腕の副砲と両背部の2連装砲を主兵装とし、高火力のレーザーを発射する。
また、プソムはフランス語で『詩篇』を意味する。

●プソムB
プソムAのバリエーションタイプで空母に相当する。
右腕の飛行甲板と左腕の副砲を主兵装とし、艦載機による攻撃を目的としている。


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第63話 抗う者達


ヒロ達の健闘も虚しく、自体は劣勢となる。

しかし、運命に抗う者達はいつだっているのものである。


ヒロ達とエックス艦隊との戦闘はヒロ達の劣勢となっていた。

次第に押されていき、攻めることはできなくなっていっている現状である。

 

銀治「どうにか···どうにかできないものか!?」

 

冴はしばらく考え込んだ後、冴は何かを思い付いた顔になりアーキテクトの元へ向かう。

 

冴「アーキテクト、1つ頼みがあるの」

 

アーキテクト「どうしたの?」

 

冴「···ロボットバトルのロボットの武装に"設定上の威力と同じ"の攻撃力を持たせることってできる?」

 

アーキテクト「えっと···冴ちゃんと明石ちゃんの情報や技術もあればすぐにできると思うぞ···まさか!?」

 

冴「えぇ。そのまさかよ···」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、ロボットバトル博物館では展示品などの運び出しが行われていた。

 

凪「急いで!早く運び出すんだ!」

 

凪自身も運び出しに協力しているが、そこに2人の男性が現れる。

 

男性A「よう、俺の『ディターミネイション』はまだあるか?」

 

男性B「僕の『ARMORED·COER』もある?」

 

凪「ふ、2人とも···なんでここに!?」

 

凪はその2人がいることに驚愕し、他のスタッフも動きが止まっている。

 

男性A「それがな···セイレーンとKAN-SENの技術を合わせて、ロボットを戦場に投入できるようにするらしい」

 

男性B「だから、僕達も参戦しようと思って」

 

凪「えっと···戦争に使うのは条約違反だし、それに使えてもあの2機はもう戦えないんじゃ···」

 

男性A「こんな時だ。条約違反とか関係無いだろ?むしろ、守るために戦えるなら本望だ」

 

男性B「それに···実はまたいつか戦えると思って、1戦分戦えるだけの耐久は残してあるし、整備すればすぐに出れるよ!」

 

その場に、少しの沈黙が入る···

 

スタッフ「館長···」

 

凪「·····分かった。すぐに機体の整備をしよう」

 

男性A「そうこなくっちゃな!」

 

男性「あ、どうせなら皆に中継してよ!凪さんの実況付きで!」

 

凪「フッ···任せとけ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒロ達はエックス艦隊の物量により進むに進むことができず、苦戦していた。するとセイレーンの転送装置によりロボットバトルの機体が次々と現れ、エックス艦隊を攻撃し始めた。

そしてそのうちの1機である『オラクル』と呼ばれる青と白のカラーリングの第3世代型中量2脚がヒロとアポストルBの間に割って入り、左腕のレーザーブレードでアポストルBを撃破する。

他にも青とオレンジのカラーリングの第5世代型重量2脚『ハングドマン』と黒いカラーリングの第4世代型中量2脚シュープリスもエックス艦隊を撃破していく。

 

オラクルの使用者《ここは任せろ!》

 

ハングドマンの使用者《いいねぇ!面白くなってきたねぇぇぇ!》

 

シュープリスの使用者《鴉間 ヒロ···良い戦士だ。ここは我々に任せろ》

 

 

 

 

 

エリザベス達の元には黒いカラーリングの第4世代型4脚『ストリクス·クアドロ』、黒と青カラーリングの第5世代型中量2脚『R.I.P.3/M』、黒と緑のカラーリングの第3世代軽量2脚『シルエット』が転送される。

 

ストリクス·クアドロの使用者

《ここは我々に任せろ》

 

R.I.P.3/Mの使用者《さぁ、私を楽しませてみろ!》

 

シルエットの使用者《作戦を開始する!》

 

 

 

 

 

 

ビスマルク達の元には白いカラーリングの第4世代型重量2脚『プリミティブライト』、紫のカラーリングの第3世代型中量2脚『ファシネイター』、白と紫のカラーリングの第5世代型『タンク』『タウルス』が転送される。

 

プリミティブライトの使用者

《あなた達の航路に、祈りを···》

 

ファシネイターの使用者《ここは私達に任せて早く行け》

 

タウルスの使用者《正面から行くぞ!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM『The answer』(ACfaより)

 

 

世界中にいるロボットバトルの出場者の操る機体が次々とエックス艦隊と交戦を開始し、凪がそれを実況していく。

 

白いカラーリングの第3世代型重量2脚『フォックス·アイ』とオレンジと緑の第3世代型軽量2脚『ウコンゴ·ワ·ペポ』の2機が互いを守りつつ交戦し、ウコンゴ·ワ·ペポがプソムBの左側面に回り込みつつ両腕の武器腕マシンガンで穴だらけにし撃破する。そしてそこに砲撃しようとしたプソムAをフォックス·アイが右手に持ったハイレーザーライフルで撃破する。

 

フォックス·アイの使用者《このまま進むぞ!》

 

ウコンゴ·ワ·ペポの使用者《ワカッタ》

 

凪《アフリカではなんと、フォックス·アイの初代使用者がまさかの復活だぁぁぁ!》

 

 

 

重桜のとある防衛線は突破されかけており、駆逐艦の『睦月』は砲撃を受けて中破し、アポストルAが右腕の主砲を向ける。

しかしアポストルAの顔面にレーザーが撃ち込まれ、倒れる。すると白いカラーリングの機体(以下『ヴィクセン』)がエックス艦隊に立ち塞がる。

 

ヴィクセンの使用者《早く下がれ!俺は面倒が嫌いなんだ!》

 

そしてヴィクセンは同じく転送されてきた機体達と共にエックス艦隊へと突撃していく···

 

 

 

 

そして中枢地区の基地では長門達が防衛線を守っていたが、そこに4機の機体が現れる。

ディターミネイション、ARMORED·COER、ホワイト·グリント、アンビエントである。

 

ディターミネイションの使用者

《行くぞぉ!》

 

ARMORED·COERの使用者《うんっ!》

 

ホワイト·グリント《行きます!》

 

アンビエント《支援はお任せください》

 

長門「お、お主ら···」

 

まだ日の浅いホワイト·グリントはともかく、他の3人の動きは凄まじく、エックス艦隊が次々と撃破されていく。

 

凪《なんとここでロボットバトルを象徴する2機であるディターミネイションとARMORED·COERのタッグが復活したぁぁぁ!》

 

ARMORED·COERの使用者《腕はそんなに鈍ってないね!》

 

ディターミネイションの使用者

《お前こそな!》

 

ARMORED·COERはアポストルBにライフルを連射しつつ回り込み、振り向こうとしたアポストルBにディターミネイションがショットガンで撃破し、ARMORED·COERに狙いを定めたイデアAをアンビエントがレーザーライフルで撃ち抜く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ヒロ達だけでなくロボットバトルの出場者までもが戦いに参戦し、戦っている···その映像は全世界に放送され、人々は希望を持ち始める。

 

男性A「ロボットバトルの出場者って···軍属じゃないよな?」

 

女性A「ええ。でも···戦ってる···」

 

男性B「···なぁ、俺らにもできることはあるか?」

 

女性B「私達も···戦いましょう!」

 

そして人々は覚悟を決め、武器を取る···

 

 

 

その頃基地では銀治達が必死に後方支援を続行していたが···

 

通信士A「こ、これは···」

 

銀治「どうした!?」

 

通信士B「世界各地で、それぞれの陣営の旗を掲げた民間人が次々とエックス艦隊と交戦を開始しています!」

 

銀治「どういう事だ!?···まさか···!」

 

冴「皆···覚悟を決めたのね」

 

 

 

 

 

 

 

人々は皆、抗う力を持っている。

 

 

だからこそ、立ち向かう覚悟を決めたのだ。

 

 

そこに、人種も思想も何も関係無かった。

 

 

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

ロボットバトルの機体と使用者、遂に参戦です!
誰もが抗う覚悟を決め、立ち向かいましたが···どうなりますかね?

●オラクル
青と白のカラーリングの第3世代型中量2脚。
武装は右手の『リニアガン』、左腕のレーザーブレード、右背部の『リニアキャノン』、左手背部のレーザーキャノン、『EO(イクシーオービット)』である。
使用者はかつて力を求め、自身をドミナントだと思い込んでいたが、ある戦いにおいてその拘りを捨て、実力はかつてとは比べ物にならない。

●リニアガン&リニアキャノン
弾の発熱量に特化した武器で、敵の熱暴走を起こさせやすい。
またリニアガンはライフルより単発火力は高いがリニアキャノンはグレネードキャノンより火力は低い。

●ハングドマン
青とオレンジのカラーリングの第5世代型重量2脚。
武装は右手のレーザーライフル、左手の『バトルライフル』、右ハンガーのレーザーライフルである。
使用者はかつてロボットバトルによる人間の可能性を模索しある事件を引き起こしたが、現在は開発部門の"主任"となっている。

●第5世代型レーザーライフル
第5世代の機体に使用可能なレーザーライフルはチャージすることで威力が変わる仕様になっている。

●バトルライフル
化学変化を利用した榴弾を発射する武器。弾速は遅いものの単発の火力は高い。

●ハンガー
第5世代型の機体は手持ち武器を肩の機械に吊り下げておく事が可能である。

●ストリクス·クアドロ
黒いカラーリングの第4世代型4脚。
武装は右手にスナイパーライフル、左手にライフル、右背部にスナイパーキャノン、左背部に分裂ミサイル、肩には分裂型の連動ミサイルを装備している。
使用者は既に引退していたが、今回のエックスとの戦争のために復帰した。

●R.I.P.3/M
黒と青のカラーリングの第5世代型中量2脚。
武装は右手のレーザーライフル、左手のヒートマシンガンである。
使用者は大会優勝経験もあるものの怪我で引退していたがある時復活し、現在は後世の育成に力を入れている。


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第64話 真相


人々は抗う覚悟を決め、立ち向かう。
そしてヒロ達は様々な支援を受け、中枢へと向かうが···


武装した民間人がエックス艦隊に突撃し、次々と薙ぎ払われる。怖じ気づいて逃げる者がいる中、それでも立ち向かう者達がいた。

特攻する者、作戦を立てて挑む者、戦闘はできないからと物資面を担当する者···

 

それぞれがそれぞれの戦場に立ち、戦っている。

 

そしてヒロ達は支援を受けつつ中枢へと向かっている。道中の敵は多いが、ロボットバトルの機体を優先的にこちらにまわしてくれているため、ヒロ達の損害は少なかった。

ロボットバトルの機体達は一時的にヒロ達の護衛については殿となっていく。

現在は緑のカラーリングの第4世代型重量2脚『メリーゲート』、白いカラーリングの第4世代型中量2脚『スプリットムーン』、茶色あのカラーリングの第5世代型中量2脚『ヴェンジェンス』が護衛についている。

すると、ヴェンジェンスの使用者が何かに気づく。

 

ヴェンジェンスの使用者

《こ、この先にめちゃくちゃ恐いのがいるッス!たぶん、敵のボスッス!》

 

ケンタウルス「何!?」

 

ヴェンジェンスのオペレーター

《こいつの勘は良く当たるのよ!》

 

メリーゲートの使用者《なら、ここは私達が食い止めるわ!》

 

スプリットムーンはヒロ達に向けてサムズアップする。ヒロ達は礼を告げた後、中枢へと進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エックス艦隊の中枢へと辿り着き、エックスと対面する。

エックスは巨大な戦艦の甲板に立っているが、その体格はヒロのほぼ同じであり、白く、縦に青いラインの入った仮面を着けており、同じく白と青のカラーリングの騎士のような服装をしており、青いマントを着けている。

 

ケンタウルス「貴様がエックスか···」

 

大蛇「さて、ラスボス戦と行くか!」

 

清魅「行くぞ兄貴!」

 

ヒロ「うん!」

 

ヒロ達は構え、エックスは少し躊躇うような動きをした後、構える。

 

 

 

推奨BGM『Sand Blues』(AC4より)

 

 

エックスは両手にアサルトライフルのようなものを転送し、立体的な機動をとりつつ連射してくる。

ヒロ達は砲雷爆撃を連携をとりつつ行うが、エックスのマントは砲撃を防ぎ、エックスの持つ銃の火力はかなり高く、ヒロ達は苦戦する。

しかしヒロの月光によりマントは斬られ、そこに大蛇の砲撃が命中し、身に付けている装甲が剥がれる。

 

大蛇「行けるぞ!」

 

ヒロはエックスに接近し、二刀状態にした月光で攻撃する。するとエックスは右手の武器を『グラディウス』に切り替え、応戦する。しかしヒロのスピードに追いつけず、エックスは左手の銃を斬られてしまう。

そこに時雨の砲撃が左肩に命中し、その爆発でエックスの仮面が剥がれる。

 

赤城「えっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エックスの顔は、ヒロと寸分の誤差もなく一致していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エックスは後方に飛び退き、ヒロ達を見る。

 

清魅「なぁ···お前、まさか別世界の兄貴か?私は清魅だ!」

 

エックス「···清魅、この世界では生きてたんだね」

 

ヒロ「···本当に、別世界の···僕?」

 

三笠「ど、どういうことだ?なぜ別世界のヒロがエックスとして行動している!?」

 

エックス「僕はね···僕のいた世界は···父さんと母さん、そして清魅も···爺ちゃんも·····皆死んでるんだよ」

 

ヒロ「え···?」

 

その場は静まり返り、エックスは自身の事を話し始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エックスはヒロと同じように家が放火されたのだが···この世界とは違い銀治も家におり、清魅も含めた全員が焼け死に、その様子をエックスは見てしまった。

 

エックス「そんな···そんな···!」

 

エックスは走り、家から脱出しようとするがその瞬間爆発に巻き込まれ、海へと落ちてしまう。

そして気がつくと漁師に救助されていた。

 

だがそこで過ごすうちに、そこが元いた世界ではない事が判明し、しかもあの放火が起きる1年前という事も判明する。

エックスはこの世界のヒロとは違い、頭脳での才能があったために様々な手を打ち、あの放火を防いだ。

しかしその後に起きた意図的な事故により結局全員死んでしまう。

 

エックスはどうにかして他の世界に行く方法を模索し、ある人工知能の元に辿り着いた。

それこそが、ヒロのいる世界でロボットバトルが作られるきっかけとなった事件の人工知能···『エクシーナイン』であり、かつて破壊される前にとっておいたバックアップであった。

 

エックスはそれにハッキングし、システムを掌握する。そして別世界へと渡るための装置を作ることに成功し、この先で再び清魅達を救うことに成功する。しかしそれでも何者かによって家族は殺されてしまう。

 

エックス「なんで···どうして?なんでいつも皆殺されるの···?」

 

エックスはいくつもの世界を渡ったが、全て同じような結果に終わってしまう。

 

エックス「もう、いいよ···人間なんて···人間なんて!」

 

こうしてエックスは様々な世界の技術を使い、エックス艦隊を作り上げたのだ。

 

エックス「僕は海に落ちてからこうなった···だから海からの力でやってやる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

清魅「兄貴···」

 

エックス「僕はお前の兄貴じゃない···エックスだ!」

 

エックスは再び武器を構える。

 

エックス「セイレーンもアビータもKAN-SENも···僕の邪魔をするやつは、皆死ねばいい!」

 

エックスはヒロ達に向かって飛び立つ。

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

エックスの正体は別世界のヒロでしたが、どうだったでしょうか?

●グラディウス
古代ローマを代表する剣であり、刀身は短いものの肉厚で幅広くどっしりとしている。

●エックス(別世界のヒロ)
この世界のヒロとは違い、技術面での才能があったため、エクシーナインをハッキングして他の世界に渡り、家族を助けようとした。
しかしどれも失敗に終わったため人間を憎み、全ての世界から人間を消し去ろうとしている。

●エクシーナイン
ロボットバトルが生まれるきっかけとなった事件で、人類を抹殺しようとしたが、『正体不明の赤と黒のカラーリングの機体』により撃破された。
しかしそのバックアップは未だ世界のどこかに隠されている。

●シルエット
黒と緑のカラーリングの第3世代型軽量2脚。
武装は両手にショットガン、右背部にステルスミサイル、左背部にロケット、肩に連動ミサイル、肩内蔵にデコイである。
使用者は現在は引退して後世の育成に励んでいた。

●ステルスミサイル
レーダーに映らないミサイル。

●プリミティブライト
白いカラーリングの第4世代型重量2脚。
武装は右手にバズーカ、左手にガトリングガン、両背部に大型ミサイル、肩に連動ミサイルである。
使用者は敵にも味方にも祈りを捧げ、現在は教会のシスターになっていた。

●ファシネイター
紫のカラーリングの第3世代型中量2脚。
武装は右手にマシンガン、左腕にレーザーブレード、右背部にマイクロミサイル、左背部にロケット、肩に連動ミサイルである。
使用者はかつてロボットバトルの存在意義を模索していたが、ARMORED·COERの使用者との戦闘によりその答えを見いだしており、現在は大学教師として働いていた。

●マイクロミサイル
複数の小型ミサイルを同時発射するミサイル。

●タウルス
白と紫のカラーリングの第5世代型タンク。
武装は右手にオートキャノン、左手にヒートキャノン、右ハンガーにガトリングガン、左ハンガーにバトルライフル、肩内蔵に垂直ミサイルである。
使用者はかつてとある実験部隊に所属していたがディターミネイションに敗北、現在は陸軍士官になっている。

●タンク
下半身がキャタピラになっている脚部タイプ。

●オートキャノン
4つの砲身から弾丸を同時連射する手持ちキャノン。
その弾幕はかなりのものである。

●ヒートキャノン
化学変化を利用した榴弾を発射する手持ちキャノン。
弾幕はバトルライフルより遅いものの、その火力は相当なもの。

●ウコンゴ·ワ·ペポ
オレンジと緑の第3世代型軽量2脚。
武装は武器腕マシンガン、右背部に小型ミサイル、左背部にロケットである。
使用者はフォックス·アイの初代使用者と親友であり、彼の相棒として行動を共にしていた。

●ヴィクセン
白いカラーリングの第3世代型軽量2脚。
武装は右手にレーザーライフル、左手にレーザーブレードである。
使用者は無駄を極端に嫌い、かつてはエクシーナインを我が物にしようとしていたが、ARMORED·COERとの戦闘に敗北し、現在でもロボットバトルに出場している。


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外伝 人々の足掻き


ヒロ達が戦っている中、覚悟を決めて立ち上がった人々の戦いとは···


ヒロ達がエックス艦隊と交戦し、ロボットバトルの出場者が次々と参戦していき、それを見た人々は覚悟を決めて立ち上がった。

 

ある者は銃を持ち、ある者は刃物を持ち、ある者は工具を持ち、ある者は農具を持ち···とにかくそれぞれが武器を持った。

 

しかし武器を持ったとはいえ、相手は軍艦のスペックを持っているため、考えも無しに突撃した人々は薙ぎ払われていく。そしてその様子を見て怯え、逃げ出す者もいた。

だが、それでも立ち向かおうとする者がいた。

 

 

 

 

 

男性A「よし···来たぞ!」

 

この男性は元はミリタリーマニアの人であり、同じ趣味の人達と徒党を組み、手製の爆弾を作ってアポストルAを1機誘導することに成功していた。

そしてアポストルAが男性を追いかけていると足が糸に引っ掛かり、それにより左右の爆弾が起爆する。

 

男性A「撃てぇ!」

 

周囲から複数で銃を集中砲火するが、アポストルAはレーザーを発射し、仲間の1人が頭を撃ち抜かれてしまう。

 

男性A「ボニー!チクショウ···だが次の場所まで行くぞ!」

 

そして次のトラップのある場所まで誘導し、再び爆弾が起爆する。

 

男性A「削れ削れぇぇぇ!」

 

男性B「うおおおおおお!」

 

しかしアポストルAには効果が無く、その場で全員殺害されてしまう。

 

男性A「チクショウ···チクショウ···チク···ショ···う·····」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別の場所では同じように一般人がアポストルBを誘導していた。そして一般人が誘導した地点には戦車が3台待ち構えていた。

 

兵士「撃てぇ!」

 

戦車の一斉射がアポストルBに命中し、アポストルBは中破する。そこに一般人達が追撃として銃を撃ったり火炎瓶を投げつける。そして戦車が次弾を発射し、アポストルBは撃破される。

 

女性A「やったぁ!」

 

しかしそこへ戦闘音を聞きつけたイデアBとアポストルAが2機現れ、その場は蹂躙される。

 

兵士「お前達は逃げろ!」

 

女性B「いいえ戦うわ!」

 

その場の人々は後退しつつ戦闘を継続していく···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある所では多くの一般人が老人や子供を避難させていたが、そこにもエックス艦隊が迫り、そこの防衛をしていた人々は薙ぎ払われていく。

するとエックス艦隊の前にオレンジと青のカラーリングの第4世代型中量2脚『セレブリティ·アッシュ』が現れた。

 

セレブリティ·アッシュの使用者

《うおおおおおおおっ!》

 

セレブリティ·アッシュはエックス艦隊に突撃し交戦を開始するが、本人の腕は低いため、次々と攻撃を受けてしまう。

 

セレブリティ·アッシュの使用者

《俺は···俺は、今度こそ···ヒーローになるんだっ!》

 

セレブリティ·アッシュは右手のライフルを連射しつつプソムAに接近し、左腕のレーザーブレードで斬り裂く。続いて近くのアポストルAをレーザーブレードの袈裟斬りで撃破する。

その後もなんとかエックス艦隊を撃破していくが、増援が現れたためにセレブリティ·アッシュは窮地に陥る。

しかしそこにデルタとレッドホークが救援に現れ、加勢する。

 

 

 

人々は足掻く。例え薙ぎ払われようと、希望の灯火が消えかかっていたとしても···

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回は人々の足掻きを書きましたが、どうだったでしょうか?
感想やご指摘、質問はいつでも受け付けています!

●メリーゲート
緑のカラーリングの第4世代型重量2脚。
武装は右手にライフル、左手にバズーカ、右背部に垂直ミサイル、左背部に増設レーダー、肩に連動ミサイルである。
使用者は現役であり、主に味方の支援を得意としている。

●スプリットムーン
白いカラーリングの第4世代型中量2脚。
武装は右腕のレーザーブレード、左手のマシンガン、両背部に追加ブースター、肩にフラッシュロケットである。
使用者はかつて死んだ盟友から託された専用レーザーブレードを使い、現在もロボットバトルに出場している。

●フラッシュロケット
閃光弾を発射する武装で、ロックオン機能を使えなくする機能もある。

●ヴェンジェンス
茶色のカラーリングの第5世代型中量2脚。
武装は右手にパルスマシンガン、左手にバトルライフル、背部にグラインドブレードである。
使用者は臆病ではあるが危険を察知する能力に非常に長けており、オペレーター(姉)によくこき使われている。

●パルスマシンガン
パルスを利用したエネルギー弾を連射する武器。

●グラインドブレード
6つのチェーンソーを束ね、それぞれを稼働させつつドリル回転させながら突撃する大型兵器。
第5世代初期の兵器なため、使用すると左腕をパージする必要がある。

●セレブリティ·アッシュ
オレンジと青のカラーリングの第4世代型中量2脚。
武装は右手にライフル、左腕にレーザーブレード、右背部に分裂ミサイル、左背部に増設レーダー、肩にフレアを装備している。
使用者はヒーローになるのが目的で、カラーリングや機体名を昔のヒーローキャラクターのものにして出場していたが実力は低い。しかしその意思は本物である。


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第65話 それでも僕らは笑うんだ

エックスの真相が判明し、ヒロ達は改めてエックスと対峙する。

2人のヒロ···片や全てを失ったヒロ、片や全てを失ってはいなかったヒロ···





そして···本当の絶望が幕を開ける。


別世界のヒロ···エックスとヒロ達は改めて対峙し、交戦を開始する。

 

エックスは先程とは違い、次々と武器を切り替えて戦闘を行い、瞬時に対応せねばならず、KAN-SENやセイレーン、アビータは苦戦する。

 

オブザーバー「切り替えのスピードが早いわね···」

 

ハーミット「空間操作が···効かないなんて!」

 

エックス「消えろ消えろ消えろぉぉぉ!」

 

しかし清魅の攻撃で発生させた水柱からヒロが飛び出、エックスの胴体を斬りつける。

 

エックス「このっ!」

 

更に清魅はすれ違いざまにエックスの顔面を殴り付ける。

 

清魅「もう、お前の事は分かったよ···やめないんだろ?そうなんだろ?だったら···」

 

ヒロと清魅は並んで構える。

 

清魅&ヒロ「「私(僕)達が、お前を倒す!」」

 

エックスはその光景に、歯軋りをする。自身が望んで、手に入らなかった未来、失われた過去···そして別世界とはいえ、妹と自分に完全に切り捨てられた事に、エックスは悔しさと妬ましさ、そして怒りを爆発させる。

 

エックス「殺す!皆···皆殺すぅぅぅ!」

 

 

 

 

 

 

 

その光景をステルスドローンで見ていた銀治は拳を握り締める。

 

銀治「これが···あり得たかもしれない、未来なのか···」

 

冴「信じましょ?あの子達を」

 

しかしその頃他の地点ではロボットバトルの機体達や一般人が戦場に参戦しているが、数の多さとその戦力により押されており、機体の中には撃破されてしまう機体も出てきてしまっている。

 

銀治「頼むぞ···皆!」

 

 

 

 

 

 

ヒロはエックスのグラディウスを受け流し、そのまま斬りつける。しかしエックスにはダメージは入るものの重症とまではいかず、何度も攻撃して削る必要がある。

そしてヒロと清魅の連携とそれに合わせてそれぞれが動く。

 

憤怒がケンタウルスを踏み台にして高くジャンプし、エックスの顔面を殴り付ける。そして憤怒にエックスの注意が向いた瞬間に雪羅と蛟の砲撃が放たれ、エックスに直撃する。

更に大蛇が砲撃し、回避したエックスの脇腹にヒロが鞘で殴り付けるように斬りつける。

 

するとエックスはショットガンを転送し、ヒロへ向ける。しかしオブザーバーのレーザーがショットガンを破壊する。その隙にヒロは一度離脱し、入れ替りで阿修羅が砲撃する。

その砲撃を凌いだエックスはプソムBを3機召還し、すかさずゴアと蛟は艦載機を発艦させ、赤城はヒロと清魅の援護に艦載機を発艦させる。

 

そして大蛇とオロチの同時砲撃によりエックスは怯み、コードGとMETA飛龍の爆撃により装甲は剥がされ、エックスがバリアを展開するが既にチャージを終えていた清魅の大型レーザーによりバリアは破壊され···

 

ヒロの月光が、エックスの腹部を貫いた···

 

エックス「ガハァッ···」

 

ヒロ「これで···終わりだ!」

 

ヒロは月光を捻ってから引き抜く。エックスは後ろにフラフラと後退りし、膝をつく。

 

エックス「こんな···こんな···」

 

コードG「ヒロ、ここは私にトドメを差させてくれ」

 

コードGはエックスの頭部に向けて矢を引き絞る。

 

エックス「でも···まだ、終わらない!」

 

 

 

 

 

その瞬間眩い光と共にエックスは消え、その後方に巨大な人型兵器が転送されてくる。

それは白と赤のカラーリングで、頭部には赤い2つのメインカメラと2本の角があり、右手には大型のライフルのようなものと左腕には2つのガトリングガンと一体化したひし形の白いシールド、右背部にはキャノン、左背部にはミサイルポッド、腰にはグラディウスが装備されており、機体の溝にはまるで脈動するように青い光が流れている。

 

エックス《僕の研究の集大成···『ヴェルト』、発進!》

 

ヴェルトは周囲に衝撃波を発し、それによりヒロ達は吹き飛ばされ、その直後にガトリングガンを連射され、ヒロ達は次々と大破していく。

 

ヴェルト《神様は間違えてる···人間に可能性なんて無い!人間を滅ぼすのは、人間の···この僕だぁ!》

 

ヴェルトは右手のライフルから極太レーザーを発射し、ヒロはギリギリで回避する。

全員大破しているものの、攻撃を続ける。攻撃は全て避けられ、一方的に攻撃されようとも、諦めずに戦い続ける···

しかし遂に限界が来てヒロは膝をつく。他ももう限界であり、戦闘継続はほぼ不可能だった。

 

赤城はヒロを抱き締めるが、ヒロは皆に笑顔を向ける。

 

ヒロ「皆···泣いてちゃダメだよ···笑おうよ?」

 

阿修羅「かなり、絶望的なんだがな···」

 

ヒロ「それでも···それでも僕らは笑うんだ。きっと···きっと勝てるから」

 

清魅「ハハッ···兄貴らしい···な!」

 

赤城「ヒロ···」

 

大蛇「まあ、まだ終わっちゃいねぇからな!」

 

もう限界だというのに、ヒロ達は立ち上がり、再び構える。そして再び戦闘を開始するが、次々と今度こそ戦闘不能になっていく。

そしてヒロに再び極太レーザーが放たれるが、オブザーバーが転送したスマッシャーⅡがヒロを突き飛ばしてヒロを守った。

 

極太レーザーが直撃する直前のスマッシャーⅡは、ヒロに笑顔を向け···極太レーザーにより消し飛んだ。

 

そしてヴェルトはゆっくりとヒロに歩みより、レーザーライフルの銃口を向ける。

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

皆さんは絶望の中でも、笑顔でいることができますか···?

●ヴェルト
白と赤のカラーリングの全高25mの人型兵器。
武装はハイレーザーライフル、シールドガトリング、キャノン、ミサイル、グラディウスである。
エックスの技術の集大成とも言える機体であり、ヒロ達を圧倒するスピードと火力を備えている。
余談だが、ヴェルトはロシア語で『世界』を意味する。


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第66話 THE RAVEN


絶望の中に降り立ったのは···

1人の"鴉"だった···

その鴉こそが·····


ヴェルトが出現し、ヒロ達が交戦を開始した直後、銀治はヒロ達では勝てないことを悟り、考えを巡らしていた。

しかし勝てないことを悟っているのは銀治だけでなく、冴やオブザーバー零も、その事を悟っていた···

 

銀治「何か···何かできることは!?」

 

冴「これじゃ···これじゃ···!」

 

オブザーバー零は悩んだ末、別世界との接続を開始する。

 

オブザーバー零「時間がありません···『本来起こり得た未来』から、一時的に誰かを転送します」

 

銀治「それでろくでもない奴が出てきたらどうする!?」

 

オブザーバー零「時間がありません!もう、祈るしかありません···」

 

オブザーバー零は別世界との接続を完了し、その世界の"誰か"を呼び出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

基地のすぐ近くの空に転送による大穴が空き、そこから巨人が降ってくる。

 

しかしそれは巨人ではなく······

 

"赤と黒のカラーリングの人型兵器"だった。

 

ロボットバトルの機体と酷似、いやそれそのものを巨大化させたフォルムであり、胴体以外のパーツはホワイト·グリント、胴体はアンビエントのものであり、右手にはアサルトライフル、右腕に予備の小さなレーザーブレード、左腕にはスプリットムーンと同じ大型レーザーブレード、右背部には近接信管ミサイル、左背部には折り畳み式のグレネードキャノンを装備していた。

 

そして、それを目撃した愛海は途端に目から涙が溢れ出す。

 

愛海「あ···あ···」

 

愛海は止める人を振り切ってすぐに走り出し、車に乗ってその場所まで急いで向かう。

 

愛海(来てくれた!"あの人"が···"帰ってきた"!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人型兵器のパイロット

「うわぁっ!な、なんだよ急に!?」

 

人型兵器は体勢を整え、砂浜に着地する。

 

人型兵器のパイロット

「こ、ここは一体···?」

 

人型兵器は辺りを見渡し、周囲の状況を把握しようとする。しかし周囲は戦場と化しており、特に海はかなりの激戦となっていた。そして見たことの無い武装をした女性達が人型の機体と戦っており、その光景に困惑する。

しかし、人型兵器のパイロットは自身のよく知る機体がサイズこそ自身の知るものより小さくなっているものの、女性達と共に戦っているのを見て更に困惑する。

 

人型兵器のパイロット

「これは···何が、どうなってるの?それになんで、"ネームレス"と"ストレイド"、"アンビエント"に"ホワイト·グリント"までいるの?しかもちっちゃくなってるし···」

 

すぐにオペレーターと通信しようとするが、通信機からは何も聞こえない。

人型兵器は自身に向けて放たれたレーザーを最小限の動きで避け、思考を巡らす。

 

人型兵器のパイロット

(あの女性達が戦ってる奴らに生体反応は無い···ってことは自律兵器?なら、この女性達は一体なんだろう?)

 

人型兵器のパイロットはどちらが敵で味方なのか、あるいはどちらも敵なのか判別できず、時折放たれるレーザーを避け続ける。すると1つの生体反応が内陸部から近づいてくる。

見ると1台の車であり、車が止まると1人の女性···愛海が降りてくる。そしてその後方から兵士が駆け寄ってくるのも見える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛海「ねぇ!聞こえる!?」

 

人型兵器のパイロット

《聞こえています。あなたは誰ですか?それに、この状況は?》

 

愛海「えっと、私のこと覚えてる?」

 

人型兵器のパイロット

《すいません、僕はあなたと面識は無いと思います···》

 

愛海「えっ···?」

 

愛海はうつむいて少し思考を巡らし、再び顔を上げる。

 

愛海「···そこの女の子達とロボットは味方!あの白い敵に人類が滅ぼされそうなの!」

 

人型兵器のパイロット

《それは···本当?》

 

愛海「今は時間が無いけど、お願い!信じて!」

 

するとディターミネイションの使用者が人型兵器に呼び掛ける。

 

ディターミネイションの使用者

《おい!聞こえるか!?今は本当に人類が滅びそうなんだ!頼む信じてくれ!》

 

人型兵器のパイロットはディターミネイションの使用者の声を聞いて涙が溢れそうになる。

それは間違いなく、もう2度と会えないはずの親友の声だったからだ。

人型兵器のパイロットは深呼吸して答える。

 

人型兵器のパイロット

《解った。信じる》

 

そして人型兵器はエックス艦隊に向けてアサルトライフルの引き金を引く。

1発1発確実に撃ち込まれた巨大な弾丸は1発でアポストルやプソムを次々と撃破していく。

すると1人の老兵が駆け寄り、人型兵器に向かって叫ぶ。

 

銀治「そこの人型兵器に頼みがある!敵の中枢へ行って、黒幕を撃破してくれ!」

 

人型兵器のパイロット

《黒幕の撃破?》

 

銀治「そうだ!儂らの仲間が戦ってるんだが、今にも負けそうなんだ!このままでは人類が滅ぶ!だから頼む!」

 

銀治からその座標を聞いた人型兵器は海上に進む。

 

ARMORED·COERの使用者

《後は頼むよ!》

 

人型兵器のパイロット

(こ、この声は···僕!?)

 

ディターミネイションの使用者

《ここは任せろ!》

 

人型兵器はARMORED·COERとディターミネイションに対し互いに背を向ける形になり、同時にブースターを吹かす。

 

人型兵器のパイロット

「ふぅ······こちら『(かける)·ニールセン』、『コルヴィス』!出撃します!」

 

人型兵器『コルヴィス』は背部にあるメインブースターとは別のブースターを起動させ、"赤い粒子"を放出する。

 

愛海「お願い、終わらせて!この悲劇を!お願い···"レイブン"!」

 

コルヴィスは赤い粒子を迸らせながら空を飛んで行く···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エックス艦隊の中枢ではヴェルトがヒロにハイレーザーライフルの銃口を向け、赤城はヒロを抱き締める。

 

エックス《終わりだ···》

 

ヴェルトがハイレーザーライフルを撃とうとした瞬間、ヴェルトに数発の弾丸が撃ち込まれ、ヴェルトは怯む。そしてヒロと赤城の真上を飛び越えてコルヴィスが現れ、レーザーブレードでヴェルトの胴体を斬りつけるが位置が悪く、浅い傷を負わせるに留まってしまう。

ヴェルトはすぐに後退し、距離を取る。

 

エックス《だ、誰だお前!?》

 

翔「君が、人類を滅ぼそうとしてる人だね?」

 

コルヴィスのヴェルトの半分以下の大きさだが、その風貌はその大きさを覆すほどである。

 

エックス《この、ちっぽけな鉄屑が!》

 

ヴェルトはハイレーザーライフルをコルヴィスに向けて発射するが、コルヴィスは左肩のブースターを起動させて右に回避するが、そのスピードはヴェルトのスピードを明らかに越えていた。

 

翔「そこの人達、すぐに退避して!」

 

ヒロ達はすぐに退避していき、それを見届けたコルヴィスはヴェルトに向けて構える。

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM『9』(ACMOAより)

 

 

翔「ターゲット確認、排除開始!」

 

エックス《誰だろうと、殺す!人間に可能性なんてない!》

 

ヴェルトのハイレーザーライフルとガトリングガンの連射をコルヴィスは回避し、アサルトライフルを連射していき、その弾丸はヴェルトに的確に当たっていく。

次にヴェルトはミサイルを発射するが、コルヴィスに当たる前にミサイルは爆発する。

 

エックス《まさか···バリア!?》

 

ヴェルトはキャノンを発射するがコルヴィスは体を横に反らすことで最小限の動きで回避し、そのままの勢いでアサルトライフルを連射しヴェルトの左目を破壊する。

 

エックス《このっ!》

 

更にコルヴィスはグレネードキャノンを展開し、アサルトライフルを連射する。ヴェルトはシールドで防ぎながら接近しようとするがコルヴィスは後退しながらアサルトライフルを同じ場所に連射し、ある程度距離が近づいた瞬間にそこにグレネードキャノンを撃ち込む。するとシールドが破壊され、ガトリングガンも海に落ちる。

 

エックス《そんなっ!》

 

翔(こいつ、戦いに慣れてない···!)

 

コルヴィスは足元に滑り込むと右足の膝関節にアサルトライフルを連射し、ヴェルトの機動力を鈍らせる。そしてコルヴィスは後ろに回り込むとミサイルを発射する。

ヴェルトは回避しようと左に動くが、近づいた瞬間にミサイルは爆発し、右腕に損傷を与える。

 

エックス《お前なんかに···お前なんかに!》

 

翔「君はどうしてそんなに人間を憎むんだ?」

 

エックス《何もかも、僕から全てを奪ったのが人間だ!そんな人間は消えるべきなんだ!》

 

ヴェルトはコルヴィスにハイレーザーライフルを向けるが、コルヴィスは空中でふくらはぎのブースターを強く吹かし、ヴェルトの右腕を蹴り上げ、そのままヴェルトの顔面に回り蹴りを直撃させる。

更にコルヴィスはブースターを使って横に回転しながら左腕を切り落とす。

 

翔「君がこうなる前に、誰かが少しでも君に優しくしてくれていれば、少しは違ったかもしれないのか···?」

 

エックス《もういらない!人間なんて!優しさなんて、もういらない!》

 

コルヴィスはアサルトライフルを連射し、ヴェルトのハイレーザーライフルを破壊する。するとヴェルトは腰からグラディウスを抜いて近接戦を仕掛けてくる。

しかしコルヴィスはグレネードキャノンを胴体に直撃させ、ヴェルトは中破すると同時に大きく怯む。

 

翔「君がどんな人生を歩んで、どんな辛い目に合ったのかは解らない。けれど、誰かの幸せを奪う権利は無いんだよ」

 

エックス《解った風な口をきくなぁぁぁ!》

 

そしてヴェルトはグラディウスを振り上げるが、コルヴィスはレーザーブレードでヴェルトの胴体を斬り上げる。

ヴェルトは倒れ、なんとか起き上がるが機体はもうボロボロで戦闘継続はもはや無理であった。

コルヴィスはヴェルトを見つめている。しかしヴェルトはブースターを最大まで吹かし、飛び上がる。

 

エックス《ただでは、死なない!》

 

ヴェルトは全身を青く光らせながら陸へと飛び立つ。

 

翔「まさか···自爆!?」

 

コルヴィスはヴェルトを追い、前方に回り込むとメインカメラを保護するための装甲が瞼を閉じ、祈るように展開し、周囲に赤い粒子が光だし、その赤い光はコルヴィスを球体状に包み込み···ヴェルトの自爆と同時に巨大な爆発を起こす。

 

 

 

 

 

その瞬間、エックスは耳元でかすかな声を聞いた···

 

男性の声「ヒロ···」

 

女性の声「ヒロ···」

 

清魅と同じ声「兄貴···」

 

銀治と同じ声「ヒロ···」

 

エックスの目から涙が溢れる。

 

エックス「皆···皆ぁぁぁぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴェルトは粉々に吹き飛び、コルヴィスは赤い光が消えると共に海面に降り立った。

翔は小さな黙祷をし、基地へと向かって飛び立った。

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回は翔とコルヴィスが登場し、エックスとの決着が着きましたが、どうだったでしょうか?

●翔·ニールセン
情報を閲覧できません。

●コルヴィス
情報を閲覧できません。


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第67話 誰かが信じた未来


エックスとの戦いが終わり、世界は復興へと進んで行く。


そしてこれは、誰かの信じた未来なのだろうか?


エックスが撃破された瞬間エックス艦隊は機能を停止し、自壊して灰となっていった。

 

エリザベス「終わっ、たの···?」

 

フッド「と、とりあえずすぐに被害の確認を行いましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

そしてヒロ達はコルヴィスと共に帰還し、銀治はヒロと清魅を涙目で抱き締める。

 

銀治「よく戻ってきた!」

 

そしてそこにオブザーバー零や冴、アーキテクトも合流する。その後ヒロはコルヴィスを見上げ、礼を言う。

 

ヒロ「本当に、ありがとう!」

 

翔《とりあえず、これで大丈夫かな?色々聞きたいことはあるけれど···》

 

しかしコルヴィスは徐々に輪郭が薄くなってきており、色彩も透明になりつつある。

 

オブザーバー零「あの、彼は私が急いで転送したので一時的にしかこの世界にいれません···この世界での記憶も、消えてしまうでしょう」

 

翔《そっか·····》

 

愛海「まだ、話したいことがたくさんあったのに···」

 

愛海は珍しく酷く悲しげな表情をしているが、すぐに顔を上げる。しかしその時にはもうコルヴィスは消えかかっていた。

 

愛海「なら、これだけ言わせて······」

 

愛海は笑顔を浮かべ···

 

愛海「···ありがとう!」

 

コルヴィスは静かにサムズアップしながら消えていった···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、すぐにそれぞれは復興に向かう。

エックス艦隊による被害は尋常ではなく、完全に滅ぼされた国や無法地帯と化した地域など、もはやキリがなかった。

しかし一部の国や地域は自力での復興を既に始めており、思想や人種など関係なく復興に力を入れている場所さえあった。だがそれでもやはり"一部"に過ぎず、戦いが終わった途端に略奪やいさかいが起こる場所も多かった···

そしてKAN-SEN達は復興や治安回復などに務め、緩やかだが事態は終息していった。

 

また、セイレーンやアビータの一部はエックス艦隊が本当に全滅したのかを確かめるため行動したが、間もなく本当に全滅していることが判明する。

 

オブザーバー「どうやら、エックスとエックス艦隊は生体リンクしていて、エックスが死ぬと同時に消滅するようになってたようね」

 

皆はエックス艦隊が本当にいなくなった事に安堵しつつ復興を進める。

そして、復興を進めていくうちに国や思想、人種などのわだかまりは次第に消えていき、戦争が始まる前よりも世界は穏やかになっていった···

 

そして、愛海は珍しくカウンターで1人コーヒーを飲みながら呟く。

 

愛海「ねぇ···あなたはこんな穏やかな世界が来ることを信じてたの?」

 

愛海は、コーヒーの最後の1口を飲み干した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コルヴィスがヒロ達のいる世界きら消えた直後、コルヴィスは霧の立ちこめる海上に立っていた。すぐにブースターを起動させて海面に浮くと、霧は不思議と急速に晴れていく。そして通信機も回復し、翔はオペレーターと連絡を取る。

オペレーターに心配されながらもコルヴィスは回収予定ポイント近くの浜辺に立つ。

 

翔の脳内にはもうヒロ達の世界に行った記憶は無い。しかし翔はコクピットから出て、コルヴィスの肩に立ちながら海に向かって海軍式の敬礼をする。

なぜ自身が海軍式の敬礼をしたのか、それは翔自身にも解らなかった。

 

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

次回、エピローグ(最終回)です!
ここまで読んできてくれた読者の方々、どうか最後までお付き合いください。


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エピローグ 鴉達の未来

それぞれは己の航路を決め、進む。

鴉達の新たな未来が、航路が···幕を開ける。


推奨エンディング曲『Artificial Sky Ⅳ』(AC3より)


エックスとの戦争が終わってから1年が経った。

ヒロ達はそれぞれの航路を進み、未来を切り開いていた。そしてその日は終戦記念日として、祝いと追悼を行うための祭儀が各地で行われていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長門「皆の者、黙祷」

 

終戦の同時刻、重桜では祭壇の上で目を閉じて人々と共に黙祷し、その隣には阿修羅もいた。

長門は今も重桜の象徴としての位置におり、阿修羅は江風と共に長門の護衛として着いている。

黙祷が終わると、長門はかつてよりも堂々とした姿勢で演説をし、祭儀が終わると阿修羅と陸奥と共に夕焼けの空を見上げる。

 

長門「今日も疲れた···」

 

阿修羅「そうだな···そうだ!」

 

阿修羅は長門と陸奥を上と中の腕で器用に肩車すると走り始める。

 

長門「な、なんじゃ阿修羅急に!」

 

阿修羅「良い風と景色を堪能しにな!」

 

阿修羅はそのまま近くの丘まで走り、丘の上まで来ると夕焼けの景色が美しく、その光は海を照らし出していた。

 

長門「綺麗···」

 

阿修羅「そうだろう···姉上」

 

3人はすっかり魅入ってしまい、日が沈むまでそこにい続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロイヤルでは祭儀が終わった後も会議があり、エリザベスは議題の内容を読み上げる。

 

エリザベス「今回の議題は3つ。けれど今回は時間があまり無いから今回で良い案がでなければ次回に持ち越しよ。

それで議題の内容だけれど、まずは国民の食料事情の改善策、それから復興の優先順位の再確認、そして鴉間 ヒロとのえん···だん···」

 

エリザベスは顔を赤くしながら議題の書かれた書類を机に叩きつける。

 

エリザベス「ちょっと誰よ!こんなの議題として提出したのは!?」

 

ベルファスト「私でございます陛下。しかし私だけでなく元エルデア配下のKAN-SENの多くは縁談を望んでいます」

 

エリザベス「え···?」

 

その後の会議はまともに進まず、中断する事となった。

その夜、エリザベスは自室でエルデアの写真を眺めていた。

 

エリザベス「私はどうすれば良いのかしらね···まあでも、進むしかないわよね。エルデア」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鉄血では政治だけでなくセイレーンの技術を取り入れた技術開発も積極的に行い、その研究も復興などを最優先として行われていた。

その成果として、物資の運送に役立つ小型の転送装置や医療機器などが開発され、復興に大きく貢献している。

 

そして新たに開発された物を見るためにビスマルクとオイゲンは研究施設を訪れた。

施設内の格納庫に鎮座していたのは移動可能な巨大な"盾"だった。

 

ビスマルク「これは?」

 

研究員「これは大型バリア発生装置です。もしまた争いが起こった場合、民間人や拠点を防衛するためのバリアを展開するものです。今はまだ単体しかありませんが、許可が下りればすぐにでも量産可能です」

 

オイゲン「ふ~ん、バリアはどれくらいまで耐えられるの?」

 

研究員「はい、ピュリファ···失礼、清魅様の艤装のフルチャージレーザーを照射された場合、1時間なら耐えることが可能です」

 

ビスマルク「なるほど、それならエックス艦隊相手でも簡単にやられることはあまり無さそうね。いいわ、すぐに量産を」

 

研究員「分かりました!」

 

ビスマルク「さて、次は復興の具合を確かめに行くぞ」

 

ビスマルクとオイゲンは雲1つ無い空の下、進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

北連ではテイルとその艦隊が一時的な政治を務め、テイルは疲れ果てていた。

 

テイル「はぁ~、政治は得意じゃないんだよなぁ···」

 

ガングート「仕方ないさ···」

 

しかしテイルは自身が思う以上の腕を発揮し、復興や治安の回復は順調に進んでいた。

ただ書類の作成は今までより多く、テイルはそれに追われていた。

そしてその日の最後の書類が終わり、ひと息つこうとした瞬間に部屋にアヴローラが飛び込んでくる。

 

テイル「やれやれ、また問題発生か···」

 

 

 

 

 

 

 

 

アイリス·サディアも復興が進み、この日は芸術品の博覧会を開いている。

人々の楽しみや心の癒しになれればと考案された博覧会は成功を納め、笑顔になっている人々を見ることができてそれぞれはホッとしている。

 

ダンケルク「これなら、今後の復興も進みそうね」

 

博覧会の芸術品の中には他の陣営から送られてきたものも含まれており、改めて様々な文化に触れる切っ掛けとなっていた。

ダンケルクは紅茶を飲み干し、立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セイレーン側は現在、この世界に留まりつつ他の世界でも同様の事が起きていないか観測し、エックスのような者が現れた場合には早めに排除する方法をとり、観測を続けているがこの日はオブザーバー零も休暇をとっている。

 

オブザーバー「さてと、休暇ついでにこの重桜近海を見て回っているけども···」

 

オブザーバーが目をやると、アザラシと戯れるオブザーバー零がいる。アザラシが好きなオブザーバー零はアザラシに懐かれて満面の笑顔である。

 

オブザーバー「まあ、こんなのも良いわね」

 

また、アビータも同様に観測を行っているが、この世界に留まるというわけではなく、様々な世界を巡っている。そしてこの世界に戻ってきた時は別世界の土産話を持ってきてくれている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

余燼はもといた世界に戻り、その世界の復興などに尽力している。

セイレーンやヒロ達は時々その世界へ行き、手伝いをすることもある。

 

METAアーク·ロイヤル

「どうだ?この1年で随分と良くなったろう?」

 

コードG「ああ。これで指揮官も落ち着いて眠れるだろう···だが、まだやることは山程ある。指揮官に呆れられないよう、進み続けねばな」

 

META飛龍「ああ!」

 

良い景色の海が見える丘に、その世界の指揮官とKAN-SEN達の墓があり···日の光はコードG達を優しく包み込んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天「捕まえたぞ~!」

 

男の子「捕まった~!」

 

天は孤児院を開き、そこで数人のスタッフと共に子供達の面倒を見ている。天はとても面倒見が良く、子供達からも好かれている。

しかし軍を抜けたわけではなく、何かあればすぐにでも駆け付けるつもりでおり、その姿は今や子供達の憧れとなっている。

 

天「さぁ、そろそろ夕飯じゃ!手を洗うがよい!」

 

子供達「「「はーい!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴアは天と同じく軍は抜けていないものの、小さな花屋を始めて暮らしている。そこでは他の花屋には無い珍しい花を多く取り扱っているため、知る人ぞ知る名店になりつつある。

しかしゴアは気まぐれで店を留守にすることがあるので、それほど稼げてはいない。

 

その日、ゴアは1日だけ出掛けており、花屋に戻ってみると1組の親子(母親と女の子)がシャッターの閉まっている花屋の前に立っていた。

 

母親「ねぇ、花屋さんは閉まってるから帰りましょ?」

 

女の子「嫌!パパの誕生日のお花買うの!」

 

母親が困っている所にゴアは近づき、声をかける。

 

ゴア「こんにちは!お花を買いに来たの?」

 

女の子「うん!パパの誕生日のお花買うの!」

 

母親「すいません。この子、店が閉まってるのに買うと言ってて···」

 

ゴア「良いよ!好きなの買ってって!」

 

女の子「え?」

 

ゴア「私、このお店の人だから!ちょっと待っててね!」

 

ゴアはシャッターを開けて2人を中に招き入れる。そして女の子は綺麗なコスモスの花を買い、手を振りながら帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪羅は銀治の秘書艦を担当し、その任を全うしていた。戦術や指揮は雪羅が主に担当し、戦術の指南も引き受けていた。

その功績は大きく、冴と明石により作られた擬似的なエックス艦隊への対策に関してなどはその弱点をKAN-SENや指揮官に教えている。

 

冴「ほら、お茶よ」

 

雪羅「ありがとうございます」

 

冴「復興も随分進んだわねぇ」

 

雪羅「そうですね···研究の方は?」

 

冴「順調よ。空のキューブの存在の本当の意味、もしかしたら解けるかもね」

 

雪羅「分かった時はぜひ、1番にヒロに伝えてください」

 

冴「言われなくてもそうするわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウォーエンドは基本的に演習の時以外は部屋に引きこもりのんびりしているが、ゲームの腕を磨いてその大会に出場し優勝する実績を残している。

 

ウォーエンド「ふわぁ~···ん?フレンドからの連絡···」

 

ウォーエンドに来た連絡は、とある迷惑プレイヤーによる迷惑行為が続いているとのことだった。

 

ウォーエンド「この人の事だから通報してるだろうけど、残しとくと面倒だからね···」

 

ウォーエンドはのそのそと起き上がり、ゲーム機を起動させる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏月とエンタープライズは終戦後に結婚し、今はユニオンの代表として活動しつつ復興を進めている。

 

エンタープライズ「夏月、資料を纏めておいたぞ」

 

夏月「ありがとう!」

 

2人の時間は暖かく過ぎていき、夜になると2人は空を見上げる。

 

夏月「なんか、今思うと···全部何かの運命だったのかなって思うんだ」

 

エンタープライズ「···確かにな」

 

夏月「ある日セイレーンが攻めてきて、それでエンタープライズと出会って···ヒロと出会って···そしてヒロの妹がピュリファイアーで、ずっと探していたヒロに再開できて、更にセイレーンやアビータが人類と戦う理由がこの世界の人間によって無くなって···」

 

空に1つの流れ星が落ちる。

 

夏月「それで、エックスとの戦いで救われたヒロと救われなかったヒロとの戦いになって···なんか、色々な巡り合わせってのがたくさんあるな···」

 

エンタープライズ「世界は、そういうものじゃないか?」

 

2人が見上げた夜空は美しく、2人を照らしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛海と蛟は普段通り鴉の家を続けており、人々の癒しとなっていた。

 

蛟「そういえば、この店の名前の由来ってなんですか?」

 

愛海「店名の由来?それはね···」

 

愛海の脳裏には"あの日"の事が浮かぶ。

 

愛海「大切な人が、いつでも戻ってこれるように。そして、戻ってきたら、またコーヒーを飲ませてあげたいから」

 

そう答えた愛海の笑顔は、明るく輝いていた···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒロ、赤城、清魅、ケンタウルス、憤怒、大蛇、セントエルモは世界中を旅していた。

もちろん軍は抜けていないため、何かあれば駆け付けなければいけないが、そうでないうちは自由に旅を続けていた。

旅をして世界中の様々なものを見て、知り、まるで"レイブン(渡り鴉)"のように道を進んでいた。

 

そして旅先で復興を手伝いつつ歩んでおり、それぞれは大きく成長していた。

 

 

 

その歩みは止まることは無いだろう。

 

 

 

例え、再びエックスのような者が現れたとしても···

 

 

 

だがそれは、ヒロ達だけでなく人類にも当てはまる事である。

 

 

 

エックスの言ったように、人類に可能性が無かったとしても···

 

 

 

ヒロのような、"例外"は必ずいるのだから···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

晴れた日···ヒロ達は今日も笑顔で歩み、港に着いたので地図を見合わせる。

 

ヒロ「次はどこに行こっか?」

 

清魅「最寄りならここが良いんじゃないか?」

 

赤城「そこなら、きっとヒロも気に入る名産品がたくさんありますわ!」

 

ケンタウルス「ほう、私も気になるな」

 

憤怒「なら早く行こうぜ!」

 

大蛇「焦ったって仕方ないだろ?のんびり行こうぜ~!」

 

セントエルモ「また新しい食べ物···」

 

ヒロ達は笑顔で海へと歩き···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒロ「それじゃ···皆!抜錨だ~!」

 

今日も、己の航路を進んでいく···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      Ravens lane ─鴉達の未来─

 

 

 

           ─完─

 

 

 




最後まで読んでくださり、誠にありがとうございました!

ヒロ達はそれぞれの未来を進み、これからも進んでいきます!
この小説はどうだったでしょうか?感想やご指摘、質問はいつでも受け付けています!

また、この作品は私の別作品『アーマード·コア ~鴉の証~』と繋がっています。『本来起こり得た未来』や愛海の真実など、この作品では語られなかった真実が明かされます!
良ければぜひ読んでみてください!



ヒロ「皆~!最後まで読んでくれてありがとう!作者さんは今後、気が向いたらDLCを追加する予定だって!」

大蛇「良かったらDLCも見てくれよな!」

ヒロ「それじゃ、またね~!」


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DLC編 ※本編(番外編と外伝を含む)を全て読み終わってから読んでください。
DLC① エーデルの剣、エーデルの盾



銀治とエルデアの若い頃···2人の初陣のお話。


DLCです。本編(番外編や外伝を含む)を読み終わっていない方は読み終わってから来てください。





銀治は部屋の片付けをしていると1冊のアルバムを見つけ、懐かしい思いで開いてみる。

そして、1枚の写真を見つける。そこには右にエルデア、左に銀治がおり、その見た目から若い頃だという事が判る。そして2人の間には1人の男性がいた。

 

銀治「エーデル先生···」

 

銀治は昔の頃を思い出す···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀治が16歳、エルデアが18歳の時···エーデルが教官を務める多国籍海軍部隊が組織され、2人はエーデルの指導の元に成長していった。

銀治とエルデアは親友であり、良きライバルでもあった。2人はエーデルの指導だけでなく互いに高め合っていたため、より成長していった。

銀治は戦闘を得意とし、エルデアは指揮や作戦立案能力を得意とし、その様子をエーデルも微笑ましく見守っていた。

 

 

 

 

 

多国籍海軍部隊は特定の国に所属しているわけではなく、複数の国で共同の管理を行い、使用する武器も自由であるためその柔軟性を活かした活躍が見込まれていた。

 

そして多国籍海軍部隊は設立から2年が経ち、初の実弾を使用した演習が行われることとなった。

場所は建て直しが決まっている海軍基地であり、時間内に全ての的を破壊することが目的であった。

また、この演習は多国籍海軍部隊が実戦投入できるかの試験も兼ねていた。

 

エルデア「銀治、ここが最初の正念場だ」

 

銀治「ああ!俺達の全てをここで見せてやる時だ!」

 

隊員達「「「おぉー!」」」

 

銀治達は出撃のブザーが鳴るまで停泊中の輸送船の内部で待機していた。しかし出撃予定時刻を過ぎてもブザーが鳴らないため、エルデアは司令部に通信を入れ、2人の隊員が機械の確認に向かった。

 

エルデア「司令部、出撃のブザーが鳴りませんがこのまま出撃しますか?」

 

エーデル《君達···すぐにそこから逃げなさい》

 

エルデア「エーデル先生、どういう事です?」

 

エーデル《司令部が襲撃を受けた。エンブレムからして、この部隊の存在を良く思わない組織からのものと推測できる》

 

銀治「まさか···エーデル先生は無事なんですか!?」

 

エーデル《幸い、バリケードを作ってそこから無線で通信している。私以外にも4人いるからある程度は持つはずだ···だが、援軍が来るまではもたない。人数差も大きい、君達は今なら逃げれる。だから今のうちに···》

 

銀治「エーデル先生、俺達はあなたを助けに行きます」

 

エーデル《逃げなさい!これは命令だ!》

 

エルデア「すいません、エーデル先生。その命令は聞けません」

 

銀治「俺達はエーデル先生がいなかったら生きてません。なら、今度は俺達がエーデル先生を助ける番です」

 

他の隊員達もそれに賛同していく。

 

エルデア「待っていてください!」

 

通信を切るとエルデアは隊員達に向き直る。

 

エルデア「これより、我々は初陣に出る!私と3人の隊員はここに残って指揮を取り、銀治を隊長とした残りの8人はエーデル·フォルンを含む司令部の生存者の救出を行う!」

 

銀治「指揮は頼んだぞ?」

 

エルデア「任せろ。それよりお前も頼んだぞ?」

 

2人は拳を突き合わせた後、銀治達は武器を持って輸送船から出ていき、エルデアは輸送船の通信室に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

銀治達は基地の裏口に着く。

 

銀治「こちら銀治、裏口に到達。トラップは無し」

 

エルデア《了解。司令部に辿り着くには基地を抜けた方が早い、頼むぞ》

 

銀治「了解。これより潜入部隊と陽動部隊に別れて行動する」

 

銀治は自身の持つ『AK-12(AR)』を一目見ると、他の隊員達に向けてサムズアップし、陽動部隊が交戦を開始するのを見計らって潜入する。

銀治は潜入部隊には『XM8(AR)』、『MP5(SMG)』、『IDW(SMG)』を装備した隊員を、陽動部隊には『M14(RF)』、『AA-12(SG)』、『トンプソン(SMG)』、『LWMMG(MG)』を装備した隊員を振り分け、先へと進んでいく。

 

陽動部隊の方向に向かおうとした1人の敵(男)を背後から捕らえ、情報を聞き出す。

情報を聞き出すと銀治はその敵を気絶させる。

 

隊員A「戦力が均等に分担されているあたり、ただのテロ組織ではないようですね」

 

隊員B「しかも連中の装備、かなり良いモン使ってやがる」

 

エルデア《となると、裏で誰かが手を引いているな》

 

銀治「俺達はこのまま進む」

 

エルデア《了解》

 

 

 

 

銀治達は敵を暗殺するか無力化するかしつつ進み、司令部付近まで到達する。

 

銀治「こちら銀治、司令部付近まで到達」

 

エルデア《了解。では次は···っ!?》

 

突然通信に銃声が入る。

 

銀治「エルデア!?」

 

エルデア《こっちの位置がバレた!後はそっちで頼む!》

 

銀治「クソッ!了解した!」

 

銀治は隊員を連れて司令部へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エルデアは側に置いてあった『M200(RF)』を持ち、部屋を出る。そこでは船上から『MG3(MG)』、『OTs-12(AR)』、『SPAS-12(SG)』を装備した隊員が既に応戦しており、エルデアも戦闘に加わる。

 

隊員C「エルデア···指揮はどうした!?」

 

エルデア「敵の人数を考えれば、倒した方が早い」

 

エルデアは敵の頭部を的確に撃ち抜き、次の敵に狙いを定める。

 

エルデア「それに、私の手助けが無くともあそこまで行ければアイツはやれると信じているからな」

 

エルデアは引き金を引く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀治は敵を倒しつつ進み、生存者を捜索しているが未だ生存者は見つかっていない。

銀治はマガジンを変え、周囲を確認する。周囲に敵はおらず、耳を澄ませても静かになっている。しかし次の瞬間、銀治達のすぐ近くに手榴弾が投げ込まれる。

 

銀治「避けろぉっ!」

 

銀治はすぐさますぐ近くの柱の陰に隠れ、手榴弾が爆発した直後に手榴弾が飛んできた方向に銃を連射し、出てこようとした敵を撃破する。

しかし別方向からも敵が現れ、銃を連射してくる。銀治達は応戦したものの、隊員の1人が負傷してしまう。

 

銀治「大丈夫か!?」

 

隊員B「すまねぇ···腹に2発、肩と右腕に1発食らっちまった」

 

隊員D「Bは現状では戦闘継続は不可能かと」

 

銀治「···お前達は撤退しろ」

 

隊員A「しかし!」

 

銀治「負傷してる仲間を抱えて進めはしないし、戻るなら戻るで護衛が必要だ。なら俺がエーデル先生達を救出する」

 

隊員A「···死なないでくださいよ?Bを安全な所まで送り届けたら、すぐに向かいますから!」

 

隊員Aはそう言うとIDWのグリップを握り締め、撤退していった。銀治はその後司令部を捜索し、奥へと進んでいった。

部屋をひとつひとつ調べ、1つの部屋に行き着く。銀治は扉をノックする。

 

銀治「···エーデル先生?」

 

エーデル「銀治ですか!?すぐにバリケードをどかしますので、少し待っていてください!」

 

銀治は周囲を警戒し、部屋の中のバリケードが撤去されると銀治はエーデルを含む5人の安全を確認する。しかし司令部から脱出しようとした時、敵の最後の部隊が司令部へと集まる。

しかし隊員Aが合流し、エーデル達を裏口から退避させる。

 

銀治「さて、残りは5人といった所か···しかし···」

 

敵の1人はガトリングガンを持っており、戦力差は大きい。

 

敵「そこにいる奴、出てこい!」

 

すると次の瞬間、ガトリングガンを持った敵の頭部に弾丸が撃ち込まれ、その敵は倒れる。

 

エルデア《遅くなった。さぁ暴れろ、私が援護する》

 

銀治「そうこなくっちゃなぁ!」

 

銀治は物陰から飛び出、最も近い所にいた敵の顔面に連射し、その敵の首を掴んで盾にして腰だめで連射する。そして銀治の背後に回ろうとした敵の頭部をエルデアが撃ち抜く。

銀治は弾切れになったAK-12を投げ捨てると同時に腰からナイフを抜いて敵に接近する。敵は銀治に銃口を向けるがエルデアがその銃を撃ち抜く。

そして銀治はその敵の喉を斬りつけ、そのまま流れるように最後の敵に狙いを定める。

 

最後の敵は拳銃を発砲するが、銀治は左手で拳銃を握る手を払いのけ、ナイフでその腕と両足を斬りつける。

 

 

基地と司令部を制圧し、エーデル達の救出に成功した銀治達はその功績を称えられ、その後も多くの作戦に参加する事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀治はアルバムを閉じると片付けを再開するが、ふと窓を覗くと外で駆逐艦のKAN-SENと追いかけっこをしているヒロの姿があり、銀治は微笑むのだった。

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今作初のDLCで銀治の過去を書きましたが、どうだったでしょうか?


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DLC② 出会い


夏月の指揮官としての着任、そしてエンタープライズとの出会いとは···


DLCです。本編(番外編や外伝を含む)を読み終わってない方は読み終わってから来てください。





夏月·ユーセフは母親が重桜生まれ、父親がユニオン生まれのハーフであり、ユニオンで海軍の士官になるため励んでいた。

 

父親が海軍出身であったため、それに流れるように海軍の士官学校へと進んだ夏月だったが、あまり良い成績ではなかった。しかし"誰かの役に立ちたい"という熱意は本物だったため、中には士官ではなく他の道を奨める者もいた。

また、両親は成績に関して責めることはなく、得意不得意があると言って夏月を励ましていた。

 

 

 

 

 

そしてある日、セイレーンが現れて世界は戦争へと突入した。そこからしばらくしてKAN-SENが現れ、人類はようやくセイレーンに対抗できる力を手にした。

 

KAN-SENが現れてすぐに夏月を含む数人の生徒は見学としてKAN-SENが所属している基地に向かうこととなったのだが、到着してすぐに基地はセイレーンからの攻撃を受けることとなる。

 

兵士「お前達!すぐに地下に避難しろ!」

 

夏月「はいっ!」

 

夏月達は地下室へ向かおうと走るが爆撃がちょうど地下室の入り口のある場所に直撃し、地下室へ逃げることができなくなった。その途端、他の生徒達は蜘蛛の巣を散らしたかのように我先に逃げ出し、夏月はどこへ行けば良いかもわからず困惑する。

夏月は落ち着くために深呼吸をし、懐から父親が護身用と夏月に渡した『ジェリコ(HG)』を取り出し、懐にしまう。

 

夏月は走り、誰かいないかを探し求める。しかし生存者は見つからず、司令室に辿り着く。

ノックをすると中から声がする。中に入ると1人の軍服を着た男性が倒れており、その服は赤く染まっていた。

 

夏月「大丈夫ですか!?」

 

男性「君は···?」

 

夏月「俺は···私は士官学校から見学に来た者です!地下室への入り口が壊されて、人がいないか探していたらここに着きました···」

 

男性「となると、ここにいた者達はほとんど死んでいるな···う"っ!」

 

夏月「大丈夫ですか!?」

 

男性の受けた傷は深く、もう長くはないことが解る。

 

男性「私の事はいい!はぁ、はぁ···こんな状況だからな、仕方ない。お前が今からKAN-SEN達の指揮を執れ」

 

夏月「えぇっ!?お、俺が!?」

 

男性「今からやり方を教える···時間がない、1度しか言えないからよく聞け!」

 

夏月は男性から急いで機械の操作を教わり、夏月は急いで覚える。

 

男性「後は···頼んだぞ···」

 

男性はそう言うと息を引き取った。

 

夏月「···やるしか、ない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、この基地に所属しているKAN-SENであるエンタープライズ、ロングアイランド、ネバダ、ボルチモア、クリーブランド、ラフィーはセイレーン艦隊に押されていた。

 

ネバダ「クソッ!このままじゃジリ貧だよっ!」

 

エンタープライズ「まだ···まだやれる!」

 

夏月《皆!一旦下がってくれ!》

 

ボルチモア「だ、誰だ!?」

 

夏月《緊急でここの指揮官の代わりに指揮を執ることになった夏月·ユーセフだ!》

 

ラフィー「あれ?てことは指揮官はやっぱり···」

 

夏月《···皆、提案がある》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チェイサーは他のセイレーンと共に警戒しつつ湾内に入るが、その瞬間に高高度からの急降下爆撃を受けて中破する。

更に茂みの中から砲撃され、軍艦型のセイレーンの一部が撃破される。

 

エンタープライズ「畳み掛けるぞ!」

 

そこからエンタープライズ達の反撃が始まり、セイレーンは次々と撃破されていく。

撤退しようとした所でクリーブランドとロングアイランドの一部の艦載機により阻まれ、セイレーン艦隊は制圧される。

しかし最後に残ったQueenが放った爆撃機の爆撃が基地に命中し、夏月は吹き飛ばされて意識を失う。

 

 

 

 

 

 

夏月が目覚めると病室のベッドの上であり、ラフィーがやって来て感謝を伝える。

その後、軍人がやって来て夏月は別室に連れていかれる。そこで夏月は指揮官を殺害したと思われ尋問されるが、その最中に無実が証明され釈放される。

その後はエンタープライズ達に感謝を伝えられ、夏月は帰宅することとなる。

 

夏月「はぁ~、とんでもない目にあったな···」

 

しかし夏月は"戦争"というものが何なのか、初めて実感した。

 

夏月(KAN-SENや兵士達は、あんな状況で必死に戦ってきたんだな···)

 

夏月はその日は何もせず眠ることにした。

 

 

 

 

 

 

それから3日後─

 

夏月の自宅の前に1台の車が止まり、インターホンが鳴る。

 

夏月「はーい、今出まーす」

 

夏月がドアを開けると、そこにはエンタープライズが立っていた。

 

夏月「え、エンタープライズさん!?」

 

エンタープライズ「少し、大事な話がある」

 

エンタープライズから説明されたのは、先日の1件での夏月の指揮が評価されたため、急遽夏月を指揮官に起用するという提案がなされており、これには現状の指揮官不足も関係しているという。

 

夏月「俺が···指揮官に?」

 

エンタープライズ「ただ、まだ若く経験も浅い事を考慮し、無理強いはしないそうだ」

 

エンタープライズは契約書を夏月に差し出す。

 

エンタープライズ「答えを出すのはすぐにはできないと思う。ゆっくり考えてくれ」

 

エンタープライズは去っていき、夏月は1人考え込む。そして両親にそれぞれ電話をかける。

 

夏月の父親《夏月、お前がどんな選択をしようと構わん。私はお前の選択を尊重し支える。ただし···選んだ答えに責任は持て》

 

夏月の母親《あなたなら、どの選択をしてもやっていけるって信じてるわ》

 

電話を終えると夏月は契約書を見つめると、不意に父親から渡されたジェリコが目に入る。そして夏月は父親からの言葉を思い出す。

 

夏月の父親(これは人を殺すことができる。だがこれが悪いけじゃない、使い方を変えれば大切な人を守ることや、競技といった事にだって使える。もしかしたら、誰かがこれを私怨のために使うかもしれない。だが、お前は使い方を間違えるな。そして間違った方法で使わせるな)

 

夏月「俺は···」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1週間後、エンタープライズ達のいる基地に新たな指揮官が着任することとなり、講堂に6人は集まる。

そして現れたのは夏月だった。

 

夏月「皆さん、久しぶりです。本日付で着任いたしました、夏月·ユーセフです。よろしくお願いします」

 

ラフィー「よろしく~」

 

ネバダ「よろしくな!でも敬語なんて良いさ!」

 

ボルチモア「よろしく、指揮官!」

 

ロングアイランド「よろしくね~」

 

クリーブランド「よろしく!」

 

エンタープライズ「じゃあこれから、改めてよろしく。"指揮官"」

 

エンタープライズと夏月は握手を交わした。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その日から夏月の戦いは始まった···

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回はDLC第2弾として夏月とエンタープライズの出会いを書きましたが、どうだったでしょうか?

●男性
夏月が来る前の指揮官。
義理人情に熱く、思い切った行動もするため、多くの軍人から支持されていた。
セイレーンの攻撃により死亡したが、土壇場で夏月に指揮を取らせ、基地を守り抜くことに成功する。
享年56歳。


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DLC③ ifルート:強者を求めし槍の愛


ケンタウルスは1人の少年を愛した。
しかし、もしもその愛が成就していたとしたら···


DLCです。本編(番外編と外伝も含む)を読み終わってない方は読み終わってから来てください。

※ifルートなので本編とは関係ありません。


祭りの後の宴会でケンタウルスは楽しむヒロを微笑みながら見ていた···

 

ケンタウルス(ヒロ···お前を想うようになったのは、いつからだろう?)

 

ケンタウルスの脳裏には銀治がヒロに設計図をプレゼントした日の事が思い浮かぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長い間保管され、忘れ去られていた設計図を銀治が「いらないなら貰うぞ」と言って持ち出し、設計図のケンタウルスは箱に入れられる。

 

当時のケンタウルス

(もう、不要な私なんぞ···何の役に立つ?)

 

そしてしばらくして箱を開けたのは1人の少年だった。その少年こそヒロであり、設計図を見るなり目を輝かせ···

 

ヒロ「カッコいい···!」

 

当時のケンタウルス

(今、何と言った···?)

 

ケンタウルスはその言葉がにわかには信じられなかった。開発者が研究の末に辿り着いた設計図、それを他の者達は認めずに一蹴した。そして設計図を保管する時の開発者の涙を今でも覚えている。

しかし、ヒロは笑顔で目を輝かせ「カッコいい」と言った。それはケンタウルスが開発者以外で初めて誉められた瞬間だった。

 

ヒロはケンタウルスの良い所を見つけ出し、本当に造られたらと想像し、大事に保管した。

それだけでなく、寝る前には必ず設計図を眺める。

それがケンタウルスにとって、堪らなく嬉しかったのだ。

 

そして、銀治は他の設計図も集めてはヒロに渡し、その度にヒロは目を輝かせていた。

 

自分達を認め、目を輝かせてくれる···そんなヒロに対し、当時はまだ設計図だった秘匿KAN-SEN達はヒロに忠誠を誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケンタウルス(あの後、私達の保管箱を耐火性に優れるものに変えたその日に、あの放火があったな···)

 

ケンタウルスだけでなく、ヒロの持っていた設計図達は気分転換しようと設計図を見たヒロの···堪えきれずに流した涙を覚えている。泣こうとも声が出ず、静かに流した涙を···

 

ケンタウルス(もしかしたら、最初に「カッコいい」と言われたその時に、私はもう惚れていたのかもな···)

 

ケンタウルスは1つの決心をし、ヒロを外へ連れ出す。

海辺までヒロを連れて行くと、月明かりが2人を照らし出している。

 

ケンタウルス「ヒロ、お前に伝えたい事がある」

 

ヒロ「なに?」

 

ケンタウルス「ヒロ、私は···その、お前を···」

 

赤城「水を差すようで悪いですが、待ってもらえます?」

 

2人が振り向くと、赤城が演習用の槍と薙刀を持って立っていた。

 

赤城「ケンタウルス、この私とこの場で勝負してくださいまし」

 

ケンタウルス「急だな」

 

赤城「ええ」

 

赤城の目には確かな闘志が見えており、まるで燃えているかのようだった。

 

赤城「ちょうどこの位置なら、宴会の会場からは見えませんわ」

 

赤城は槍を差し出し、ケンタウルスは受け取ってヒロの方を向く。

 

ケンタウルス「ヒロ、待っていてくれ」

 

ヒロ「うん。2人とも応援してるよ!」

 

2人は海へ出て対峙する。

 

 

 

 

推奨BGM『Silent Line Ⅲ』(ACSLより)

 

 

 

 

戦闘が始まると、ケンタウルスは槍を構え、赤城は艦載機を発艦させつつそれぞれ突撃する。

ケンタウルスは爆撃と魚雷を避けつつ赤城に突撃し、槍の範囲内まで接近する。ケンタウルスはそのパワーと突進力を活かし、赤城はケンタウルスより利く小回りを活かしながら艦載機による絡め手も使ってくる。

 

ケンタウルス(流石は空母、艦載機を絡めてきたな···)

 

赤城「どうしました?そんなものですの?」

 

ケンタウルスは左右にステップをしながら接近し、槍を突き出すが赤城はギリギリで躱し、鍔迫り合いとなる。すると赤城はケンタウルスにしか聞こえない音量で話し出す。

 

赤城「ケンタウルス···あなたがヒロを愛しているように、私もヒロを愛しているのよ」

 

ケンタウルス「なっ!?」

 

赤城「私はヒロを見ているだけで、火傷どころか火達磨になりそうな気分ですわ···しかし、私はあなたを試したいのです···あなたの、愛を!」

 

2人は同時に距離を取り、再び突進し鍔迫り合いとなる。

 

赤城「見せてみなさい、あなたの愛を···ただし、私の愛に敵うかしら!?」

 

ケンタウルス「上等だ!」

 

2人の戦いは激しさを増していく。しかしそれはどこか美しく、華やかですらあった。

赤城が薙刀で足払いをするがケンタウルスはそれを回避し、ケンタウルスは赤城に槍を突き立てようとする。しかし赤城は槍を踊るように回転しながら回避し薙刀を振るう。

ケンタウルスは薙刀を義手で受け止め、赤城の腹に突きを繰り出すが躱される。

 

赤城「良い···実に良いですわ!」

 

互いに、ヒロを愛する者同士···

 

ケンタウルス「おおおおおおおおっ!」

 

だがヒロはこの戦いが自身への愛であることを知らず···

そして、戦いの終わりは突然に···

 

赤城「そこっ!」

 

赤城の渾身の突きをケンタウルスは義手で掴み、槍を赤城の喉に突き立てる。

 

ケンタウルス「勝負あり、だな」

 

ヒロ「ケンタウルスの勝ちだよ~!」

 

赤城「ふう···なら、私は戻って宴会の片付けを手伝うことにしますわ···急なことで悪かったですわ」

 

ケンタウルス「いや、お前には感謝しなければならない。おかげで改めて覚悟が決まった」

 

赤城「なら良かったですわ」

 

赤城は去っていき、ケンタウルスはヒロに向き直る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケンタウルス「ヒロ···改めて、お前に伝えたい事がある」

 

ヒロ「うん、今度はちゃんと聞けるよ」

 

ケンタウルス「私は···ヒロ、おま、あなたを···愛している。だから、私と結婚してくれ」

 

ヒロ「え?」

 

ケンタウルス「今は指輪は無いが、明日にでも入手はできるだろう。それに、いつ死ぬか判らない今のうちにこの気持ちを伝えたかったんだ」

 

ケンタウルスはヒロの手を握る。

 

ケンタウルス「私と···結婚してくれ」

 

ヒロはポカンとした表情を浮かべた後、あたふたし始める。

 

ヒロ「えと···その···ぼ、僕で良いの?」

 

ケンタウルス「ああ。あなたでなければいけないんだ」

 

ヒロは顔を赤くする。

 

ヒロ「あ···えと···その···なんで、僕なの?」

 

ケンタウルスは右手を自身の胸にあてながら話し始める。

 

ケンタウルス「私がまだ、設計図だった頃にあなたが言ってくれた「カッコいい」という言葉、あの時に私はもう惚れていたのだ。そして共に過ごすうちにその想いは強くなっていった···そして今、ようやく決心が着いたんだ」

 

月明かりが、2人を照らす。

 

ケンタウルス「今ではもう、あなたの全てが愛おしい。だから改めて···私と、結婚してくれ」

 

ヒロは深呼吸をする。

 

ヒロ「スゥー、ハァー···ぼ、僕で良いなら」

 

ケンタウルスの目から涙が溢れ、ケンタウルスはヒロを抱き締める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

余談だが、その後結婚式のためのウェディングドレスの製作がかなり難航したのであった···

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回はifルートでケンタウルスの愛の成就を書きましたが、いかがだったでしょうか?


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DLC④ ヤマタノオロチ

大和型秘匿戦艦、大蛇。
彼女には、誰も知らない過去があった。

それは···破壊と絶望の物語···


DLCです。本編(番外編や外伝を含む)を読み終わってない方は読み終わってから来てください。



とある別の世界ではまだセイレーンやアビータはその世界を観測できておらず、KAN-SEN達だけが現れていた。

そしてKAN-SEN達を管理する機構としてアズールレーンは発足した。

 

アズールレーン発足から4年が経ったある日、空のキューブが発見され重桜のとある海軍基地に輸送された。

その空のキューブの研究は進んだが、進展は無かった。

 

 

 

 

 

空のキューブが発見されてから1週間後、ある老人の死後見つかった謎の設計図がその基地に運ばれてきた。

 

研究員「この設計図、特別計画艦のKAN-SENとして生み出すことができるかもしれないので、研究の許可をお願いします」

 

研究員がその事を聞いたのはその基地の指揮官である『草薙 神楽』だった。

 

神楽「そうね···もしかしたら、新たな特別計画艦として戦力を増やせるかもしれないわね。あなた達はどう思う?」

 

神楽が目を向けた先にはこの世界の天城とヒロが将棋を指していた。

 

ヒロ「僕は良いと思うよ~」

 

天城「ええ。構いませんよ」

 

神楽「なら許可するわ」

 

研究員「ありがとうございます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世界の天城は神楽の秘書艦であり、ヒロは海軍の見習いとして働いていた。

謎の設計図を特別計画艦として生み出す研究はなかなか進まなかったが、神楽達はのんびりとしていた。

 

そんなある日、神楽と天城は執務室に、ヒロは研究室に荷物を運んだ時に突如として大きな地震が起こる。

そして津波が押し寄せ、基地の人々は避難を開始する。しかし波は大きく、基地の一部はすぐに波に飲まれてしまう。

 

ヒロは研究員と共に貴重な物資を運んでいた最中に波に飲まれてしまう。水は腰まで浸かる深さだが、波の速さによりヒロは水中を流され、持っていた設計図を離してしまう。

設計図は壁に押し付けられ、流れてきた空のキューブが設計図に直撃し、それと共に波は急速に弱まっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光と共に現れ、ヒロを抱き上げたのは···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大蛇「おいっ!大丈夫か!?しっかりしろ!」

 

大和型秘匿戦艦 大蛇だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1ヶ月後──

 

 

大蛇はこの基地の所属となり、復興を手伝いつつ争いの無い日々を堪能していた。

 

ある日、食堂にて大蛇はヒロが駆逐艦のKAN-SEN達とテレビを見ている間、ヒロ達のおやつのお菓子を作っていた。

 

テレビから流れる歌は、信じた世界に守るものがある、だからこの世界に祈っていこう、といった感じの内容だった。

 

大蛇はお菓子を皿に並べていく。

 

大蛇「ほら皆、おやつだぞ~」

 

大蛇がお菓子の並んだ皿をテーブルの上に置くと歓声が上がる。

すると番組が中断され、臨時ニュースが入る。

 

ニュースキャスター

《速報です。先程、同時多発テロが世界各国で発生したとの情報が入りました。続報が入り次第お伝えします》

 

 

 

 

 

司令室に集まった各艦隊の旗艦に神楽は情報を伝える。

 

神楽「ニュースでの情報は本当よ。けれど、まだ政府はマスコミに状況を伝えてないわ」

 

天城「となると···」

 

加賀「何者かが情報を流したか···」

 

神楽「テロ行為のほとんどは軍事基地かその近くで発生したみたいだから、皆も今後の警戒を強化しておいて」

 

各旗艦「「「了解!」」」

 

しかしその後、どこの組織がテロを行ったかで首脳会談は荒れ、各国は疑心暗鬼に陥っていく。

無論、そんなことをしている場合ではないのだが、各国のどの国もテロ行為に関わっているという証拠が出てきているため、油断を許さない状態となっていた。

 

更に、2度目の同時多発テロではなんとそれぞれの場所でテロ集団が各国の旗を掲げていたのだ。

これにより各国の上層部は更なる疑心暗鬼に陥り、遂には一部の国との国交を絶つ国までできてしまう。

 

そして···恐れていたことが起きてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、大蛇は日本海にて輸送船を護衛していた。空は少し雲が多いくらいであり、時折雲の隙間から光が見える場所もあった。

 

編成は大蛇、蒼龍、飛龍、鬼怒、初春、綾波であり、大蛇を先頭として輸送船を囲むようにして陣形を組んでいた。

 

綾波「風が気持ち良いのです」

 

大蛇「仕事終わったら奢るぜ」

 

蒼龍「2人とも、もう少し任務に集中してください」

 

大蛇「あいよ」

 

すると飛龍が所属不明の艦隊を確認し、警告する。

 

飛龍「そこの艦隊、ここは重桜の領海内だ。すぐに引き返せ!」

 

しかし艦隊は大蛇達に向けて攻撃してきた。大蛇は艤装で砲弾を防ぎ他は回避行動に移ったが、初春は回避に失敗し中破してしまう。

 

大蛇「綾波は初春を連れて輸送船と撤退しろ!蒼龍と飛龍は艦載機の一部を綾波達の援護に回しつつ撤退!オレと鬼怒はここで敵艦隊の相手をする!」

 

綾波「初春!しっかりするのです!」

 

大蛇は鬼怒と共に敵艦隊に向けて攻撃を開始し、蒼龍と飛龍の艦載機も援護に来る。

大蛇の砲撃によりほぼ一撃で敵艦は撃破され、鬼怒や艦載機達の援護もあり、瞬く間に敵艦隊は殲滅される。

 

大蛇「なんだったんだありゃあ···」

 

鬼怒「とにかく今は任務を終わらせよう」

 

蒼龍《無事でなりよりです。指揮官への報告は私からしておきます》

 

 

 

 

 

帰還する最中の蒼龍の報告により基地に帰還した時には基地の防衛艦隊が組まれ、海域の警戒を行っていた。綾波は初春の看病に行き、大蛇を含む各艦隊の旗艦は再び神楽に召集されるが、神楽の顔は深刻な顔をしていた。

 

神楽「大蛇、あなたの艦隊の襲撃を『東煌の艦隊を重桜の艦隊が襲撃した』として東煌が反撃の声明文を発表したわ」

 

大蛇「おい、どういうことだよ···てことはあの艦隊は東煌の艦隊だったのか!?」

 

大蛇は拳を握り締めるが、ヒロが心配している顔で大蛇の手を握る。それにより大蛇の顔は若干和らいだ。

 

信濃「だが向こうが攻撃を仕掛けてきたのは明白。それに声明文の発表も事実確認までの時間があまりにも早すぎる」

 

三笠「それは我も同感だ。早くても数日かかるものを事件の当日に発表してくるとは···」

 

神楽「でも、同じようなのは他の国でも起きてるの。ユニオンと鉄血、アイリスと北方、ヴィシアとロイヤル、そしてサディアも重桜と···」

 

大蛇「サディアと重桜って何かあったのか?」

 

天城「···サディアが重桜艦隊を攻撃したと、重桜が発表したわ」

 

大蛇「なんだよ···それじゃあ、まさか!?」

 

神楽「ええ。これから戦争が始まるわ···」

 

ヒロは戦争ということで息を呑み、大蛇の手を強く握る。

 

大蛇「大丈夫だ。オレらがついてる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界は誰が誰の味方では無くなり、互いの争いが激化していった。KAN-SENの中には争いを好まない者、争いを止めようとする者など、戦争に非協力的な者がいたが彼女達は上層部の意向により消されていった···

 

しかし神楽を初めとする一部の指揮官やKAN-SENは上層部にバレないようにして戦争を止めるために行動していた。

そして大蛇は"近代化改修のその先"への艤装の改修準備に入っていた。だがその改修準備が終盤に差し掛かった矢先、基地が襲撃を受ける。

 

大蛇は艤装が無いため、拳銃を手にして非戦闘員と共に地下室へと逃げる。

しかしそこに『バンカーバスター(地中貫通爆弾)』を使った空爆が行われた事により、地下室にも大きな被害が起こってしまう。大蛇は明かりが消え、瓦礫と煙が視界を遮る地下室でよろけつつも立ち上がる。

 

大蛇「誰か···誰かいないのか!?」

 

大蛇は生存者を探すが、足に違和感がある。見るとヒロの手が大蛇の足に触れており、ヒロは気絶していたがヒロの両足の膝から下が無くなっていた。

 

 

 

 

 

襲撃をなんとか退けた基地は負傷者の手当てと基地の再建に必死になっていた。

ヒロは両足を失った事により、車椅子生活を余儀なくされた。しかし大蛇は戦争を続ける者達への負の感情が日を増す毎に増えていった。

そしてようやく"近代化改修のその先"の艤装が完成し、大蛇は戦線に復帰する。

 

それからしばらくして、あることが判明する。

重桜政府の上層部のほとんどはとある宗教団体の所属であり、他の国でも政府の上層部のほとんどがその宗教団体の所属だった。

 

神楽「つまり···この戦争は、この宗教団体によって仕組まれたことだったのね」

 

天城「では、その宗教団体を叩く準備をしましょう」

 

神楽「ええ。すぐにそうしましょう」

 

 

 

戦争が宗教団体に仕組まれたことが判明した日の夜、大蛇は何者かから呼び出されていた。

海辺にて全身を覆うフード付きマントを着ている者が大蛇の方を向く。

 

大蛇「おい、こんな夜中に呼び出しといてなんなんだ?」

 

???「あなたは、この戦争を政府や軍人達が止められると思っていますか?」

 

大蛇を呼び出した者は振り向き、フードをとる。

 

大蛇「赤城···」

 

赤城「私の愛する指揮官は上層部の手により暗殺されました。もう政府や軍に頼る訳にはいかなくなった私は同じ境遇や思想を持つKAN-SEN達を手を組み、KAN-SENだけのレジスタンス組織『ゾディアック』を結成し、その中にはこの基地にいた綾波もいます」

 

大蛇「なるほど。オレも来いってか?」

 

赤城「はい」

 

大蛇「すまねぇ、オレはまだここに残る。守らなきゃいけないやつがいるからな···安心しろ。この事は言わないでおいてやる。それと、綾波は元気か?」

 

赤城「綾波は元気ですわ···それと、無理強いはしません。ただ、何かあれば言ってください」

 

赤城はそう言うとフードを被って海へ出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神楽「遂に、上層部の証拠を掴んだわ。これを世間に公表し、更に上層部の人間を制圧すれば戦争は一気に終わりに近づくわ!」

 

神楽の発表に大蛇達は歓喜し、すぐに準備にとりかかる。しかし準備た翌日の夜中、突如基地の建物や設備が爆破され更に大量の量産型やKAN-SENによる奇襲まで受けてしまう。

大蛇は艤装の調整が終わったその場にいたのですぐさま応戦した。しかし敵の数が多く、生き残ったKAN-SENは大蛇だけとなってしまった。

 

大蛇「チクショウ···チクショウ···!」

 

大蛇は生存者を探すが、中にはこの基地の者ではない部隊の死体もあり、暗殺部隊が送り込まれた事がわかる。そして、爆弾が不具合により作動せず建物の形を残している場所があり、大蛇はそこへ向かうとその場で固まってしまう。

 

大蛇「ヒ···ヒロ···?」

 

大蛇は体を震わせながら1歩ずつ歩いていく。床には車椅子が倒れており、左手を撃ち抜かれてうつ伏せに倒れているヒロがいた。

大蛇は奮える手でヒロを抱き上げる。

 

 

ヒロの額には穴が空いており、ヒロの目は見開かれており、その頬には大量の涙が伝った跡があった。

それを見た大蛇はヒロが何をされたのか悟り、慟哭した。

 

 

大蛇「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!ヒロ!ヒロォォォォォ!」

 

大蛇の脳裏にヒロとの思い出が駆け巡る。

大蛇の初めての演習で勝った時にヒロは真っ先に褒めてくれたり···

祭りの時にヒロと法被を着て屋台を巡ったり···

特撮の話題で盛り上がったり···

 

大蛇はヒロの遺体を抱き締める。

 

大蛇「怖かったよなぁ!怖かったよなぁ!オレが、オレがもっと強かったら···もっと気を配れていたら···」

 

大蛇はしばらくずっとヒロの遺体を抱き締め、その後遺体が残っている者達を埋葬した。

 

大蛇「オレは終わらせる。絶対にこの戦争を終わらせる···」

 

大蛇は予備の弾薬を艤装に積み、独り海へ出た···

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、大蛇により重桜の上層部の基地は襲撃され壊滅する。更に他の国へも攻め込み、次々と基地は壊滅させられていき、大蛇に攻撃を仕掛けた"敵"は例外無く撃破されていった。

これにより大蛇はKAN-SENや量産型だけでなく大量の人間も殺めていく事になる。

 

 

 

信じた世界はもはや無く···

 

 

 

守るものも既に無く···

 

 

 

祈れるものもなく···

 

 

 

大蛇は殺し続けていった。その顔はもはや獣のようであり、「まだ足りない」とでも言うようにその手と艤装の口は血にまみれている。

戦争に関する証拠は世間にばらまいた。しかしそれでも戦争が止まることはなかった···

 

結局のところ、戦争を引き起こした宗教団体は名ばかりのものであり、本当は金儲けのためであった。

戦争をする事により、軍事産業や医療関係、復興のための建築業界など多くの企業やその関係者が儲かるため、長く続いている戦争は"経済戦争"であり、それに関わっている人間は神楽達が調べたよりも遥かに多く、その事にも大蛇は絶望した。

 

大蛇「自分達の欲望のためだけに···一体どれだけ殺すつもりだぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

やがて大蛇は関係者のほとんどを抹殺したが、巻き込まれて死んだ人々もまた大勢いた。

そしてゾディアックは大蛇の行動を見過ごす事ができなくなり、例え既に遅かったとしても、大蛇に挑んでいった···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曇天の空の下、大蛇は赤城に呼び出されてある海域へ向かった。その海域は···『真珠湾』と呼ばれる海域である。

大蛇が到着すると、大蛇の前方に9人のKAN-SENが立っていた。

 

 

推奨BGM『Scorcher』(ACfaより)

 

 

大蛇「ハッ、だろうと思ったよ···」

 

エンタープライズ「大蛇、例えそれが正義だとしても···お前はやりすぎたんだ」

 

ベルファスト「エリザベス様もフッド様も、もういらっしゃいません故、私が引導を渡します」

 

赤城「関係者だけならまだしも···あなたはそれ以外も殺し続けましたわ。その罪を、ここで償ってもらいますわ!」

 

オイゲン「もはや獣ね···言葉が通じると良いんだけど」

 

肇和「皆の仇、とらせてもらうから!」

 

ヴィットリオ·ヴェネト

「沈められたサディアの者達のために···」

 

ガングート「全ての同志たちの無念を、ここで晴らす!」

 

リシュリュー「あなたの力があれば、自由と平和は実現できたかもしれませんが···残念です」

 

ガスコーニュ「目標視認、殲滅開始する」

 

大蛇は構え、咆哮をあげる。その咆哮はまさに獣であり、神話の『ヤマタノオロチ』のようでもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

激しく、かつ血みどろの決戦は最終的には大蛇が勝利したのだが、大蛇の艤装はほぼ全壊しており、肉体も全身から血を流している。

しかし、最後に倒れたガスコーニュの爆煙から何者かが飛び出した。

 

その者の衣服は黒く、鴉のような装飾がついているが、その顔は···

 

大蛇「綾波、か···やるじゃねぇか」

 

綾波の剣は、大蛇の心臓を貫いていた。

 

綾波「これで、終わりです!」

 

大蛇は綾波の肩にそっと手をおく。

 

大蛇「鴉座は、お前だったんだな···ゴブッ、謝って済むことじゃねぇけどよ···ごめんな···」

 

大蛇の顔は、驚ほど優しい微笑みをしていた。

 

綾波「大蛇···」

 

大蛇「ゴボォッ、ここまでが、オレの役割···後は、お前の役割だ···最後のKAN-SEN、綾波···」

 

大蛇は仰向けに倒れ、とてもゆっくりと沈んでいく。綾波は涙を流し、大蛇が沈んでいくのを見届けた。

 

 

 

 

 

 

沈み行くなか、大蛇は走馬灯のようなものを見る。しかしそれは途中で途切れ、意識は戻される。

目の前には、空のキューブが浮かんでおり、突如眩しい光が放たれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大蛇は目を開けると自身の体は設計図へと戻っており、知らないKAN-SENが自身をどこかへ運んでいた。

 

大蛇(どういうことだ···こりゃあ)

 

そしてそのKAN-SENは大蛇と空のキューブを1人の男性に渡した。その男性は間違いなくヒロだった。

 

大蛇(ヒロ···なんで、なんでだよ!?い、生きて···!?)

 

そして···

 

 

 

 

 

 

 

 

大蛇(なるほどな···もう、繰り返させはしない!)

 

大蛇はヒロの助けを求める言葉に応えるように頭をガシガシと撫で···

 

大蛇「おう!任せとけ!」

 

それは全ての贖罪であると共に、新たな戦場への覚悟でもあった。

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

久々のDLCかつこれまで書いてきた中で最も長い話になりましたが、どうだったでしょうか?
良ければ感想お願いします。


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