転生者達によるグダグダ界境防衛 (暇人のお話)
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キャラ設定(ネタバレあり)


どうも皆さんご無沙汰しております。暇人のお話です。取りあえず設定とか最初の分の構想が出来たので懐かしの投稿です。あまりに久しぶりすぎて誤字脱字ありましたら色々知らせてください。モンハンの方同様に拙い文章かもしれないので温かい目でご覧ください。


キャラ紹介(転生者と転生者達に影響を受けた人たち)

※年齢は第二次侵攻時の年齢です

 

主人公1

武半煌(たけなかきら)

ポジション:ガンナー

年齢:19歳

誕生日:11月6日

身長:173cm

血液型:O型

星座:とけい座

職業:大学生

好きなもの:煎餅 辛いもの 日向ぼっこ ライトノベル小説

説明:一応この作品のメイン主人公。原作を知っていて改変に動こうとするが、ボーダーを突き止めた頃には最上などの旧ボーダーの人は死んでいたためショックを受けている。ちなみにトリオン兵に会ったことがあるため案外簡単に第一次侵攻前に入隊できた。性格は明るめで柿崎とよく遊んだりしている。またかなりの本好きなので諏訪隊の隊室によくお邪魔する。転生者達でチームを組んでいる。戦闘時の攻撃力は低いが守備に関してはかなり高く、A級隊員でも破るのは非常に困難である。ちなみに隊長は松山にやってもらっている。

派閥は忍田派。

パラメーター

トリオン:6

攻撃:5

防御・援護:12

機動:6

技術:6

射程:4

指揮:3

特殊戦術:5

トータル:47

 

トリガーセット

メイン アステロイド(突撃銃) ハウンド(突撃銃) シールド 

サブ  レイガスト スラスター バッグワーム 

 

主人公2

松山慎次(まつやましんじ)

ポジション:アタッカー

年齢:17歳

誕生日:8月10日

身長:179cm

血液型:B型

星座:ペンギン座

職業:高校生

好きなもの:オタ活(二次元限定) 歌うこと いっぱい食べること 家族(父以外)

説明: 主人公その2。松山隊の隊長。趣味とか好みに対してかなり冷静で真面目な人だけど割と苦労人。原作は全く知らず、父親を第一次侵攻で亡くしたが全くと言っていいほど近界民を恨んでおらず、むしろDVばかりする父親が死んだことに感謝しているほどである。オタ活はそんな生活の癒やしだったらしい。橘高などとたまにアニメについて語り合っている時は人格が変わる。若干中二病。右目に眼帯をしているがそれは父親のせいで失明したからである。本人は眼帯には気に入っている。武半に半ば無理矢理隊長をやらされている苦労人。本人は嫌がっていない。

派閥は玉狛派。

パラメーター

トリオン:7

攻撃:8

防御・援護:5

機動:8

技術:5

射程:2

指揮:6

特殊戦術:3

トータル:44

 

トリガーセット

メイン 孤月 旋空 シールド

サブ  アステロイド シールド グラスホッパー バッグワーム

 

主人公3

明道芽生 (あけみちめい)

ポジション:アタッカー

年齢:18歳

誕生日:1月28日

身長:168cm

血液型:A型

星座:かぎ座

職業:高校生

好きなもの:餅 猫 体を動かすこと

説明: 主人公その3。元気が取り柄の超攻撃アタッカーの火の玉娘。松山隊の切り込み隊長。前進しか知らないthe馬鹿。馬鹿なのでオプショントリガーを使いこなせないがグラスホッパーは松山に言われたから渋々入れている。純粋な剣術だけだったら太刀川と同レベルだがオプショントリガーを使われるとだいぶ変わる。サイドエフェクトを持っているが本人は自覚がなく使っているが戦闘になるとあまり使いこなせていない。成績は米屋以下。そのせいで今さんに滅茶苦茶迷惑をかけている。太刀川隊によく出入りするためか弟子認定されている。本人は喜んでいる。原作は聞いたことあるくらいで中身はほとんど知らないので異世界ライフを堪能している。

派閥はない。

パラメーター

トリオン:8

攻撃:11

防御・援護:2

機動:10

技術:8

射程:1

指揮:1

特殊戦術:1

トータル:42

 

トリガーセット

メイン 孤月 シールド

サブ 孤月 シールド グラスホッパー バッグワーム

 

サイドエフェクト:強化視覚

菊地原の強化聴覚の目のバージョン。視力は大体7.0で動体視力が上がっている。慣れないと体の動きと目の動きが合わずに無理をして体を壊すことがよくあった。トリオン体の時は視力が10.0にまで上昇するが目から入る情報が多すぎるため頭が追いつかなくなるから設定で視力を落としている。

 

主人公4

速水菜桜(はやみなお)

ポジション:オペレーター

年齢:21歳

誕生日:9月4日

身長:150㎝

血液型:A型

星座:おおかみ座

職業:大学生

好きなもの:キャンプ 外で何かすること 料理

説明: 主人公その4。松山隊のオペレーター。母性あふれる21歳組の小さきおかんその2(おかんその1は木崎)。特に体調管理に口うるさい。この人の尽力で寺島は体系を保つことが出来ている。ぶっちゃけオペレーターとしての資質は低い。周りの人たちの影響でなんとなく入隊。はじめはシューターとしての戦闘員で入隊したけど転生者達の存在を知り部隊を組んだときトリオン量とかから消去法でオペレーターになる。原作はアニメしか知らず最初の何話か見ていたが、個人の都合で見なくなったから大規模侵攻に入るくらいしか知らない。休日はよく東とキャンプに行ったり諏訪宅で飲むときに木崎と料理対決をしたりする(ただし勝てない)。

派閥は忍田派。

パラメーター

トリオン:4

機器操作:6

情報解析:5

並列処理:6

戦術:7

指揮:6

トータル:34

 

 

主人公5

三雲咲舞(みくもえま)

ポジション:スナイパー

年齢:18歳

誕生日:6月19日

身長:165㎝

血液型:AB型

星座:うさぎ座

職業:高校生

好きなもの:絵画 プラモデル作り 弟

説明: 主人公その5。姓が三雲だが別に姉弟ではなく、小さいときに両親が事故で死んでいるため三雲家に引き取られた。原作を知っているが変えたくない派なので異世界ライフを堪能している。前世がブラコンだったからか今世でもブラコンになっている。手先が器用なので色々書いたり作ったりしている。父親の橋の設計も一緒に考えたりして楽しんでいる。同じクラスの加賀美とはよく一緒に人形を作ったりしている。ただし人形だけはなぜかゲテモノになる。ボーダーに入る気は全くなかったが原作通り入る修を見て心配になったからなんとなく入隊。器用なので入ってすぐ正隊員になる。部隊は決めていない。

派閥はない。(強いて言うと修派)

パラメーター

トリオン:5

攻撃:6

防御・援護:9

機動:6

技術:10

射程:9

指揮:4

特殊戦術:3

トータル:52

 

トリガーセット

メイン イーグレット ライトニング シールド

サブ  シールド バッグワーム レイガスト

 

主人公6

加藤健也(かとうけんや)

ポジション:スナイパー

年齢:17歳

誕生日:2月4日

身長:178㎝

血液型:B型

星座:かえる座

職業:高校生

好きなもの:理数科目 はっきりすること もぎゃってる香取を眺めること

説明:主人公その6。転生者の中で一番真面目。合理的思考の塊。香取達と第一次進行時に知り合い、助けたあとボーダーで再会し香取隊に所属していて隊のまとめ役になっている。原作知識は無く、近界民はやばい奴という考えから敵として殲滅した方がいいという考えであったが、近界民が人間であることを知り、殲滅することが不可能とわかり防衛に専念するようになる。香取に対して恋心があるのかは不明だが見ていて面白いと思っている。ちなみに染井と速水が自分と香取をくっつけようと画策していることもちゃっかり知っている。

派閥は城戸派

パラメーター

トリオン:6

攻撃:8

防御・援護:7

機動:6

技術:7

射程:8

指揮:6

特殊戦術:3

トータル:51

 

トリガーセット

メイン イーグレット アイビス シールド

サブ  シールド バッグワーム スパイダー

 

主人公7

鈴村創司(すずむらそうし)

ポジション:エンジニア

年齢:26歳

誕生日:4月10日

身長:187㎝

血液型:O型

星座:はやぶさ座

職業:ボーダーエンジニア

好きなもの:改造 エナジードリンク 麻雀

説明:主人公(?) その7。滾るが口癖の転生者の中でただ一人のマッドサイエンティスト。モルモットは転生者組と麻雀組の4人。原作を知っていて、死者を減らそうと頑張っている。本当は戦闘員になりたかったけどトリオン量の都合からエンジニアになった。銃トリガーは大体こいつが作った。最近はトリオン兵を改造してガン○ムを作ろうとして城戸に怒られた。ちなみに近界民に兄が殺されているのでとても恨んでいる。1回遠征にメンテナンスなどのためについて行ったことがあるが、そこで捕らえた敵兵を色々して以来遠征出禁になった。

派閥は城戸派。

 

主人公8

空閑景虎(くがかげとら)

ポジション:アタッカー

年齢:18歳

誕生日:11月25日

身長:187㎝

血液型:A型

星座:くじら座

職業:フリーター

好きなもの:戦うこと 温泉 酒

説明:主人公その8。近界出身の転生者。前世の記憶はほとんどなく、代わりに長尾景虎の性格と記憶が大きく反映されている。名字が空閑だが別に兄弟ではなく戸籍の都合上空閑の名字を使っている。こんな名前だが女のため勘違いされやすい。記憶はないが知識はあるため学校に行っていないのは学力が足りないわけでなく、高校の卒業資格を取って大学に行けばいいと思っているからである。遊真とレプリカとともに旅をしてきた。遊真とは有吾の死後、旅の途中で知り合った。原作を一切知らないので遊真のことを第一に行動している。ちなみに遊真は景虎が前世の記憶があることを知っている。黒トリガーの使い手であり、様々な武器を使うことが出来る新たな完璧万能手の期待がある。黒トリガーの制作者は転生先の父親。玄界に来てからはアルバイトをして過ごしている。烏丸とバイト先で知り合った。好きなものに酒とあるが近界では飲酒に制限が特になかったため向こうでは普通に飲んでいたがこっちに来て以降飲んでいないのでどうにか飲もうとして木崎とかに怒られた。

派閥は玉狛派。

パラメーター

トリオン:7

攻撃:8

防御・援護:6

機動:9

技術:8

射程:2.5

指揮:6

特殊戦術:5

トータル:51.5

 

トリガーセット

メイン 孤月(槍) スコーピオン シールド 

サブ  レイガスト 孤月 シールド 

※ボーダーに入ったときカモフラージュのために持たされているから槍を使うことが出来る。団体ランク戦をするときは外す。

 

黒トリガー装備時

トリガー名:毘天

トリオン:33

攻撃:20

防御・援護:10

機動:15

技術:8

射程:3

指揮:6

特殊戦術:5

トータル:100

※元ネタはFGOの長尾景虎です。違う点として使う武器が刀、薙刀、斧、槍、槌、弓、大剣、大楯の8種類を使い分けて戦う。でも基本は刀と槍しか使わない。宝具展開時にはどこからか馬型のトリオン兵が出てきて本体が8人に分身する。分身体の強さは本体と変わらない。分身体の操作は自分で行うため景虎一人では2体までが限界。レプリカがいると全て操作が可能になる。※本来の長尾景虎の宝具と大きくかけ離れているのは仕様です。

 

松山隊:原作開始約半年前に結成したボーダー本部所属のB級12位部隊。隊を作ろうと言ったのは武半だがクジで松山が隊長を務めている。全員が転生者である。能力値は割と平均だが明道が猪突猛進しまくったり明道が罠にかかったりしてすぐ落ちたりしてランク戦ではなかなか勝てない。特に荒船隊、那須隊、鈴鳴第一などの中遠距離が多いチームに負けやすい。

 

原作キャラの若干の変更点

迅悠一:大学に行っている

寺島雷蔵:太っていない

三輪秀次:姉が死んでない(でも意識不明の重体のためやっぱり恨んでいる)

香取葉子:性格軟化

三雲修:身体能力の若干の向上

 




設定集いかがでしょうか?これおかしいんじゃね?と思ったら連絡ください。設定にはまだ出てこないキャラもいるのでこんなキャラいるんだ程度に思っていてください。
今は時間があり少しずつ書けていますがまたどれだけ忙しくなるか分からないのでご了承ください。
今回から章分けなど色々な物にチャレンジしてみたいと思うのでやってみた結果うまく出来なかったらアドバイスお願いします。

ではこれからの活躍にトリガー・オン!


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幕間の物語
プロローグ①


どうも暇人です。ワールドトリガーのアニメを見て書きたくなり大人気作品に改変を入れるのを悩んだけどノリと勢いで書いてしまいました。拙い文章ですがどうぞご覧になってください。2話連続で投稿します。


三門市人口28万人ある日この町に異世界への門が開いた

「近界民」後にそう呼ばれる異次元からの侵略者が門付近の地域を蹂躙。町は恐怖に包まれた。こちらの世界とは異なる技術をもつ近界民には地球上の兵器では効果は薄く、誰もが都市の壊滅は時間の問題だと思い始めたその時、突如現れた謎の集団が近界民を撃退しこう言った。

「こいつらのことは任せてほしい」

「この日のため我々はずっと備えてきた」

近界民の技術を独自で研究し「こちらの世界」を守るために戦う組織界境防衛機関「ボーダー」

彼らはわずかな期間で巨大な基地を作り上げ近界民に対する防御体制を整えた。それから4年、門は以前開いているが三門市を出ていく人間は少なく、ボーダーへの信頼からか住民は時折とどく爆音や閃光に慣れていた・・・

 

某月某日防衛任務

 

『門発生 門発生 警戒区域の方は注意してください』

どうも皆さんこんにちは。ボーダー隊員の武半煌です。現在防衛任務中なのだが本日4回目の門発生…多くない?

「いや~今日は一段と門多いな~。まあ、小遣い稼ぎにはちょうどいいなぁ」

「煌さんそんな不謹慎なことは言わないでください。僕たちは防衛任務をしているんですよ。もっと責任もってやってください」

そんな真面目なことを言ってくるのは我らが隊長松山慎次だ。部隊最年少なのにくじ運の無さとどっかの誰かのせいで(こいつのせい)隊長になってしまった苦労人である。

「になこと言ったってB級の出来高制じゃ体のいいアルバイトと同じだろ?未知のトリオン兵が来ない限り負けはない。だったら少しでも稼がないと今月ピンチなんだよ。苦学生なめんなよ?」

「いや、それは先輩の無駄遣いじゃないですか…今度は何買ったんですか?」

松っちはあきれているようだが買ったものを聞けば許すだろう。

「ふっふっふ…よくぞ聞いてくれた。今回買ったのは松っちオススメソード・○―トオンライン全巻セットだ」

「え?マジすか?!煌さん誰押しですか?!やっぱりア○ナですか?それともユ○キですか?!ちなみに俺はリ○が一番好きなんですよ!UW行くときの演説がもう最高で他にm「長い!長い!口調変わってんぞ。1回落ち着け敵来てんだぞ」…あ、す、すみません」

予想通りだったがいささか反応が良かったな…次からは気をつけよう。

「そんじゃ終わったら話を聞かせてくれ。指揮は任せたぞ」

「了解。じゃあ菜桜さん、トリオン兵はどのくらいですか?」

『ん~とね~、バムスター3、モールモッド4、バンダー2よ。芽生ちゃんもう突っ込んでるから援護早めにね』

「了解。じゃあ煌さんよろしく…え??」

「あの馬鹿…まーた突っ込んで行きやがった。てかいつの間に?」

『門が出た瞬間に珍しくグラスホッパー使って飛んでっちゃった♡』

「「飛んでっちゃった♡」じゃないでしょ?!止めてくださいよ!」

『あの子が止まったことないでしょ。諦めているわ』

「取りあえず追いかけよう。あのくらい芽生なら倒せるけどバンダーがいる。気付かずにやられるかもしれない」

「り、了解です。ひとまずバンダーをお願いします。その後で菜桜さんの援護を。多分菜桜さんならモールモッドに突っ込んでると思うので。僕はバムスターを抑えます。菜桜さんは煌さんのサポートをお願いします」

『「了解」』

 

 

「さて、バンダーが2体、距離は大体100メートルか。バンダーの弱点は砲撃直後の目だっけか?」

銃とレイガストを握りトリオン兵の方に向かっている。バンダーの砲撃の威力は高いため当たればおそらく即死だろう。しかもここは町にある程度近いため砲撃の流れ弾も注意しなければならない。その為には周辺マップが欲しかった。なんてことを考えていたら仲間から通信が来た。

『取りあえずその辺の立体マップ送るから砲撃に注意して撃破してね』

オペレーターからマップが送られてきて敵とのしっかりとした距離が分かり、手持ちのハウンドで仕留める。そう思ったのだが……

「あの、速水さん?これ違う場所のマップなんですけど?」

マップが間違っていたため敵すら分からなくなってしまった。

『あれ~?また間違えちゃった?ごめんすぐ送り直すからちょっと頑張ってて』

「えー」

何も言えなくなるが取りあえず見える範囲で近づき続けた。だがそれでは攻撃を受けたりもし避けたとしても後ろに町があったら大変だ。理想は一発だけ耐えて撃ち抜くこと。これしかないな。

「来い!」

バンダーの砲撃を一発だけ左手のレイガストとシールドで耐える。シールドは割れたがレガストが耐えきったため傷はない。そしてバンダーは弱点である目をさらしている。

「当たれ!」

ライフルの弾をハウンドに切り替えて弧を描くように銃口を横に向けて撃った。向こうはそれに気がついて避けるがその先にアステロイドに切り替えたライフルが狙いを定めている。そしてそこから撃たれた弾は若干のばらつきのあと目に吸い込まれていった。

「よし、まず1体目!次は…『警戒!!』…?!」

1体を倒したがもう1体いることを少し忘れてた。だが速水の声のおかげで避けることが出来た。

「やばいやばい…一つに集中したらもう一方緩くなるの気をつけないとな」

再び集中し直してバンダーに向かう。

『その後方警戒区域の外になるんで注意してください』

仲間からの情報を頭に入れつつどうすればいいのか考えた。

1.回り込んで倒す 2.ここから頑張って撃ち倒す 3.援護を待つ

この三つを即座に考えたが1と3は時間がかかるから明道のフォローに入ることが出来ないからダメ。2はまず当たらないから論外。そうなると…

「4、突っ込んでゼロ距離ブッパ…これだな」

そう判断するとレイガストを目に構え、砲撃に備えるようにした。

「くっ…」

バンダーから高威力の砲撃が飛んでくる。シールドではおそらく耐えきれないがレイガストなら耐えることが出来る。制作者に感謝だな。レイガストは重くて扱いづらいが機動力向上のオプショントリガー、スラスターがある。これを使えば…

「スラスターON!」

かなりの加速で敵に接近できる。

『武半君何やってんの?!』

速水が驚きの声を上げるが武半は砲撃をレイガストで耐えながら急接近していく。勿論距離が近くなるほど威力が上がるのでレイガストは割れるが十分に近づくことが出来た。そして右手にはライフルが握られていて、アステロイドが装填されている。

「いっけー!」

砲撃後の隙だらけの目にアステロイドをゼロ距離で撃ち込むことでバンダーを倒した。

『も~無理しないでよね。武半君まで突っ込んだら大変でしょ?』

速水が心配そうな声をしながら通話してきた。

「いや~時間とか考えたらこれが最適だったのでつい…」

『でも無事ならいいわ。そろそろ芽生ちゃんの方に行かないとまずいからお願いね。今度はちゃんとマップ送るから』

そう言うと今度は正しいマップが送られて来た。

「了解だ。じゃあ火の玉娘の救援と行きますか」

 

 

「そーっれ!」

一人の隊員がモールモッド4体と斬り合っている。

「やっぱり硬いね~このブレード。…切りがいがあっていいね!」

四方から来るブレードを紙一重でよけ反撃を繰り出す明道。

しかし戦闘用のモールモッド4体が相手では分が悪い。所々傷が出来、トリオンが漏れていた。しかし彼女は一切怯むことなく突っ込んでいく。

「さあ!もっとかかって来ーい!」

そう言うと彼女は高速で振り回される20本近くのブレードを腕1本を犠牲にかいくぐり、2体のモールモッドの目を切り裂き、もう1体の足を半分切った。

「よしっ、これで終りっ?!」

足を切った個体にトドメをさそうとしたら突如ブレードが襲いかかり左足を切られた。

「ありゃ??」

モールモッドの数は4体。彼女は今ので全て倒した気でいたのだが相手の数を数え間違えていたため切る数を間違えていたのであった。

「あれれ??モールモッドのブレードって8本じゃないの??6本だったっけ?どおりで数が変だとと思ったらそういうことなのね」

実際は6本あるのだがそんなことはさておき4体目がブレードを振りかざし身動きがとれない明道にトドメをささんとしていた。

「やっば…」

次の瞬間、彼女の体を真っ二つに切り裂かんとしていたブレードは彼女の体に届くことはなかった。

「あれ?」

目を開けるとそこには仏頂面でレイガストのシールドモードでブレードを防ぐ頼れる(?) 先輩がいた。

「よぉ、無事か?火の玉娘ぇ。ったく~毎回勝手に突っ込んでんじゃねーぞ。フォローする俺らの身になれや全く」

「あははー、いや~敵が見えたらやっぱり突っ込んだ方がいいじゃないですか~。ほら、私切り込み隊長ですから!」

「あほ!切り込み隊長っても基本サポートがあるから出来るんだよ」

「太刀川さんなら出来るじゃないですか~」

「あのバトルジャンキーと一緒にすんなし。ってか今結構辛いんだけど?倒してくんない?」

「あ、そうでした。それっ!」

武半が抑えているモールモッドを一瞬のうちに切り裂いた。

「お、もう1体来た。先輩、ガードよろしくです」

「いや、もう大丈夫だろ」

「え?先輩何言っているんですか?4体いるんで後1体です。ほら、こっち来てますし」

モールモッドが足りない足を駆使して二人に突っ込んでいった。しかしその刃が二人に届くことはなかった。なぜなら…

「松っち~」

「旋空孤月!」

松山の旋空によりモールモッドの胴体は輪切りにされたからだ。

「先輩方無事ですか?」

孤月を鞘に収めながら松山が合流した。

「おーう隊長。馬鹿が左腕と左足無いくらいだ。問題ない」

「いや、それ大丈夫じゃない奴じゃないですか。明道先輩、大丈夫ですか?」

「うん。ちょっとバランス悪いけど大丈夫。まだトリオンあるしね」

「そうですか。菜桜さん、敵の増援はありますか?」

現状の敵は排除したが増援があっては大変なのでオペレーターに確認を取るとしばらくして返信が帰ってきた。

『んーとね~。うん、今のところは大丈夫。そろそろ交代の時間だから来たら交代してね』

「次ってどこのチームですか?」

『うちは香取隊と交代ね。華ちゃんにはもう連絡してあるから後は現地でよろしく』

「そう言ってたら来ましたね」

基地本部の方からハイネックが特徴の紫色の隊服の4人組が近づいてきた。

「お疲れ様です。交代の時間です」

真面目そうな眼鏡の少年が話しかけてきた。

「若村か、お疲れ。後は頼めるか?」

「大丈夫だ。それよりもそっちも大変そうだな」

「まあ、なんとかなってるからいいんだけどね」

「でもすごいよね。最年少でチーム率いているんだもん」

「要所は先輩が助けてくれるからな」

「そりゃ何よりだ。うちは健也がいなかったらどうなってることやら…」

「いやいや、こっちはこっちで大変なんだよ。特に明道さんとかが…」

いやいや香取なんかはなどと松山は若村、三浦とお互いの問題児について談笑をしていた。一方リーダー(?) 達の方では…

「カトリンおひさ~元気してる?」

「ぎゃー!芽生さん止めてください!」

シャシャシャシャシャ

明道が香取を撫でまくってわちゃわちゃしているところを加藤は写真を激写していた。

「お前香取の写真何枚撮る気だよ…ってかそれ何枚目だ?」

「取りあえず滅茶苦茶かわいいんで撮れるだけっすね。ちなみにそろそろ写真のストレージ5GB超えるくらいですかね?」

「お前の携帯の画質知らんからあれだけどざっと五千枚以上かよ…通報されんなよ?」

「御両親の許可取っているんで問題ないです」

「両親の許可とかやべーな…籍でもいれんのか?」

想像以上にしっかりと対策を取って写真を撮る加藤に若干引きながらからかってみた。

「籍いれるかどうかはよくわかんないです。正直恋愛脳だけで決める結婚は合理的ではないんで」

「恋愛くらい心で判断しろや…あれか?恋の証明でもすんのか?」

「さすがにそこまではしないですけど、ある程度の見切りはつけますよ。特に稼ぎと性格は」

「まあ、幸せが一番だからな」

「あ゛―!また撮ってるなー!いい加減止めろー!」

「じゃあこれで交代でいいですよね?」

「聞けー!」

香取は自分の写真を撮っていることにようやく気付き、苦情を言ったが完璧にスルーをされたのであった。

「今日はトリオン体を損傷した人もいるんでベイルアウトで帰りましょう」

「ほーい」

「了解だ」

「「「ベイルアウト」」」

そう言うと三人は光の筋となって本部へ帰還するのであった。

 

ボーダー本部 松山隊隊室

防衛任務を終えた隊室から突如と大きなげんこつの音が聞こえた。

「いったーい!」

隊室には大きなたんこぶを二つ両手で抑えている明道がいるのだった。

「お前はこれで何回目の独断専行だ?いい加減怒るぞ!」

ちなみにげんこつを落とした主は武半である。

「う゛~暴力反対です…っていうかもう怒ってるじゃないですか~」

涙目で訴えてくるが誰一人として気にしていない。

「さすがに擁護は出来ないっす」

「まーね~これで芽生ちゃんの特攻記録記念すべき50回目だものね」

「え?もうそんなにいくんですか?どんだけ反省してないんですか…」

「実際防衛任務中は滅多に負けないからかもね~」

「ちなみにどれだけ負けてないんですか?」

「ん~だいたい勝率9割くらいかな~?」

「えっへん!すごいでs…あいたっ!」

3度目のげんこつが武半によって振り下ろされていた。

「お前な~!戦力が3分の2になったら作戦続行は困難って言われてんの知って…るわけないと思うけどそのくらい人手は大事なんだよ。だから無理するなよ」

「頭を1回殴ると脳細胞たくさん死ぬから馬鹿になるんだぞー!それに3分の2って1人落ちたらダメじゃないですか!それで勝ててるのはなぜ?!」

「安心しろ元々馬鹿だからこれ以上馬鹿にはならん。むしろ突然変異でよくなるかもしれんぞ。ランク戦は乱戦だからあんまし関係ない!」

「うわー鬼がいるよ~。それに説明雑だ~」

などと供述しているが頭を殴るのは良くないので4発目はなかった。(皆もしないようにね)

ひとまず反省会が続くがほとんどは明道の行動についてだった。

「取りあえず明道先輩は突撃してもいいんで何か一言言ってからにしてください。じゃないとこちらも対応できないんで」

「う~ん、出来たらやる!」

全く聞いていないようだった。

「それをしてくださいとの話だったのですが?!」

「はっはっは、通信機の使い方が分かりゃ「行きます」でいいんだよ。取りあえず注意はしてくれ」

「煌さんも笑い事じゃないですよ。いい加減ガンナーらしく戦ってくださいよ。どこにゼロ距離でライフル撃ちまくるガンナーがいるんですか」

「ここにいる。あと諏訪隊とか」

「そうじゃないんですが…それに諏訪隊は近距離であってゼロではないです。確かに諏訪さんは何回かやってますけど真似はしないでください」

「うえ~煌さんも怒られてやんの~」

「確かに武半はまともだけど若干おかしいよね~」

「ん?そうか?」

明道は若干小馬鹿にして、速水はよくわかんないことを言っているが言われているが武半本人は特に気にしておらず、こちらも反省の色が一切見えないのであった。そのため松山は「はぁ」とため息を漏らすのであった。こんな感じで気疲れがひどい松山なのであった。

「ん?どうした松っち、疲れたのか?」

「まあ、それなりに…取りあえず今日は解散しましょう。明後日また任務なんで忘れないようにしてください」

「おう」

「分かったわ」

「あ、明後日補修なんで行けないけどどうしよう?」

「了解です……え?」

ここに来てやっかいの種をまいた明道なのだが本人は気がついていない。

「……今度は何の科目だ?」

「物理と地理!」

「よし物理は面倒見てやる。地理は速水さんお願いしていいですか?」

「うん。オッケ~。芽生ちゃん今日と明日は寝かせないわよ~??」

「ぴゃあ!松山さん助けてください!」

年長者二人組が笑いながら魔の提案をして明道は助けを求めたが松山は「頑張ってください」、とだけ言って報告書の作成などを行うのであった。なお、このあと3時間明道は拘束されたのであった。

 




いかがでしたでしょうか?
久しぶりに書いていたのでアレかもしれませんが感想等あったらお願いします。


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プロローグ②

どうも暇人です。2話連続でどうぞ。


松山隊作戦室。隊員達の趣味が多く部屋にあり、ランク戦と防衛任務以外の時は基本遊ぶためにしか使われていない部屋である。そんな部屋で1人、とてもぐったりしている明道がいた。

「うえぇ~疲れた~」

明道は大量の参考書の中にダイブした。他にも速水と武半の2人もぐったりしていた。

明道の補修が明後日に控えていてその対策のために3時間みっちり防衛任務開けの疲れきっているなか行われていた。学習は確かに進んだが元々の頭があれなのでページ数にして2~3ページしか進まなかったのであるが明道にしては上出来だった。

「でも芽生ちゃんにしてはよく頑張ったよ~。あとは明日また少し勉強してなんとかするしかないわね」

「は~い~」

気の抜けた返事が返ってきたがいつも勉強しない彼女なので大目に見るとしよう。

「煌さん!終わったのなら早速○AOについて話し合いましょう!すぐしましょう!」

松山がキラキラした目で話してきた。勿論武半はそんな元気がないので断ろうとしたが約束をしてあったので少し付き合うことにした。

「やっぱりあそこでのラスボス戦は燃えましたよね。システムすら超越した瞬間は驚きました」

「まあそもそも第一巻でラスボスが出た方が驚いたけどね。あと始まってすぐ2年近く時がたって混乱したんだが」

「え?そんなにたってませんよ?せいぜい数ヶ月のはずですけど……」

お互いの話がかみ合っていないようだった。同じ作品でこんなに差が出るのは不思議だったがその時武半はあることに気がついた。

「なあ松っち、最初に倒した大型のモンスターは?見た目でいいから教えてくれ」

「え?コボルトの見た目をした剣を2種類使う奴ですけど…なにか?」

「ああ~なるほど…」

武半は納得したが松山は分かっていないようだった。焦れた松山が答えを求めてきたので答えることにした。

「あの作品はアニメと小説で最初が若干違うんだよ。アニメはゲーム開始の後に多分少しストーリがあるんだ。で、小説はそのままそのシーンがカットされて2年近く時がたっているんだ。そのまま一気に二刀流が読めるぞ。お前、小説読んだことないから分からなかっただろ。ちなみにアニメの最初は外伝とか別の巻に載ってるけどな」

松山は開いた口が塞がらず呆然としていた。

「……ま、まじですか?」

「おう、大まじだ」

「俺んち父親があれだったんで本とかの残る媒体は持つことが出来なかったのでアニメしか見れなかったので盲点でした。あの、煌さん、小説読ませてもらってもいいですか?」

「いいぞ。何ならそこにあるから好きなだけ読んでいいぞ」

「ありがとうございます!」

それだけ言うと松山は本に飛びつき読みあさるのであった。

「じゃあ俺は帰るとするか…速水さんと明道は?帰るなら送るけどどうします?」

「私は開発室に行って寺島君の面倒見ないと行けないからあとでいいわ」

「私も太刀川さんのところに行って餅パするんで大丈夫で~す」

2人からそんな答えが返ってきたから仕方なく一人で帰ることにした。

「あ、煌さん。代わりに報告書の提出お願いします」

……訂正、仕事が増えた。

 

 

松山にいらぬ仕事を押しつけられた武半は忍田本部長の所に向かって行った。なぜパソコンなどでの提出にしないのかは謎だがボーダーでは基本手書きの提出だ。

「んお?武半じゃないか!どうだ試作のトリガーは?!戦闘力は数倍に跳ね上がっただろう?」

「げぇ!鈴村さん?!」

通路から来たのはボーダー唯一のマッドサイエンティストの鈴村創司だ。

「どうだ?素晴らしいできだろう?!」

「あんな危ないもの使えるか!てかそもそもB級の俺にはオリジナルトリガーは扱えないだろ!」

「ぬぅ…し、しかしあれを使えば銃トリガーの火力はもっと上がり多くの隊員が遠距離主体になり安全に戦えるようになるであろう!こんなにも滾る効果があるのに…なぜそれが上は分かってくれない!」

「銃トリガーはトリオン能力高くないと安定しないからって却下されたの忘れたのかよ!こっちの世界だと剣は銃より強いんだよ!」

「だ、だがこれが実用に至ればもっと被害が減る…」

「だったら撃つごとに反動がアホみたいになることの改良をしてください。火力用のオプショントリガーは魅力的なんで期待してます。それと新しいスナイパートリガーは威力もそこそこあり軽くて速射もしやすいから扱いやすいけど射程がアイビス以下は使いにくいって東さんが言っていたんで改良をお願いします」

なんだかんだ言って武半はちゃんと試験はしていたのでコメントをしっかり残すのであった。

「ほう…銃トリガーは分かったがスナイパーの方はそれではもはやガトリングガンを一般化した方がいいのかね?…取りあえず礼を言っておくよ」

ありがとうと言ってくるがどうせまた奇抜な改造をして怒られるのであるが今は気にしないでおこう。

途中で自分が報告書を出しに行く途中なのを思い出して離れようとしたらまた鈴村が話しかけてきた。

「そういえばそろそろ彼がボーダーに入るのではなかったか?」

「あ…そういえばそろそろか……まあ詳しい時期は覚えてないけどもうすぐのはずだな」

「よいな?俺たちは彼らの未来がよりよくなるために動かなければならない。俺は戦闘員じゃないからこんな事しか出来ないが、戦闘員のお前なら出来ると思っておる。頼んだぞ?」

「ああ。出来る範囲でやってやるよ。だから俺はここにいる」

覚悟を持った目で武半は答える。それに安心したのか鈴村は少し穏やかな目で去って行った。

 

周りの何も知らない人がこの会話を聞けば知り合いがボーダーに入ることの話をしているか、可能性としては低いがこのどちらかはたまた両方があの実力派エリートのようなサイドエフェクトを持っているのではないかと思うだろう。だが実際には全く違う内容だった。二人の知り合いが入隊するわけでもないしサイドエフェクトももちろん二人は持っていない。ではなぜか。それは、二人は…いや、彼らは元々この世界の人間ではないからだ。そう、彼らは俗に言う異世界転生をした者達なのであった。

 

 

転生前、武半は普通の大学生だった。大学で短期留学をするために飛行機に乗っていたのだが事故が起きた。バードストライクが起きて飛行機が墜落し、乗員乗客が全員死亡という大事故だった。だが、何の因果か彼の魂だけ冥界へ行かずに神の所へ登っていった。そこで彼は神に出会った。

 

「やっと来たのぉ」

目の前にひげがふっさふさのじじいがいた。

「じじいとはなんだじじいとは」

心を読んできやがった。

「そりゃあ神様じゃからのぉ」

「テンプレ過ぎて突っ込みませんけどそれでその神様が何の用です?異世界に行って世界救え的なノリですか?」

正直異世界転生とか憧れてはいたが前世が悪いわけでなく、むしろいい方向に傾いていたので全く魅力を感じていなかったからどうでもいいが取りあえず聞いてみた。

「いや、そんな気は全くないぞ。むしろガチャの外れ枠での転生だからむしろ早く済ませたい」

「………え?…ガチャ?」

今なんて言いやがったこの神は?

「ガチャの外れ枠じゃ」

聞き間違いじゃなかった。

「ガチャで転生ってどういうことですか?」

「神様の仕事は基本ガチャで決めるんじゃよ。天気とか地震などの自然災害とかは神様の仕事ガチャのあたり枠じゃのぉ」

とんでもないこと言いおったこのじじい。あれ全部こいつのガチャかよ。

「じゃあ事故とかもそうなのか?」

「いや、あれは人間のやったことじゃからわしは関与しとらん」

「ってことは転生がガチャってどういうことですか?」

いまいち転生とこいつの仕事の関わりが気になったので聞いてみた。

「簡単じゃ、よく輪廻転生ってあるじゃろ?それはほとんど確実に記憶なしで行われておる。だが多くは記憶をなくして転生する。そして外れ枠での転生は記憶を残したままなのじゃ」

「それって当たりじゃないんですか?」

よく見るものだとだいたい神様のミスで転生とか当たりで転生というものだったのだが違うのか?

「外れに決まっておる。だいたい記憶があって転生しても何になるか分からんどころか魂の摩耗で早死にする方がずっと確率は高いんじゃ。だから記憶ありの転生は外れとなっておる」

想定外だった。確かに仏教の輪廻転生は六道のどれかになると言われているから納得だが今聞くと恐ろしい。ん?ほとんど?

「なあ神様、さっきほとんど行われると言ったな?例外はあるのか?」

「ほぉ、それに気がつくとはたいしたもんじゃ。多くの奴はこれに気がつかずに魂のリセットがされずわしが超絶適当に引いた結果で早死にする。だが気がついてわしに聞いた者は魂のリセットをした上でさらに特典がある。あとはその結果次第じゃ」

「どうするんだ?」

「ガチャを引いてもらう」

「またガチャかよ」

ガチャ多いな。

「神事はだいたいガチャじゃ。ほれよく神頼みの時はガチャが多かろう。…さて内容じゃが、お主に三回ガチャを引いてもらう。項目は1、何になるか。2、どこに行くか。3、特典の有無。4、記憶の有無じゃな。4の結果はわしが引いたものだからありになっておるがの」

「ちなみに確率は?」

「人間になる確率はだいたい70%というところだな。特典の有無はだいたい1%じゃ。場所は全く分からん。これまで何千億人と転生させたが規則性がわからんのでのぉ」

「人間率以外に高いな。でもこれがなんでほとんどになるんだ?」

「簡単じゃ。ごくまれに神になるからじゃ。ヘラクレスとかがそれになるかのぉ」

「なるほどな」

「さて、では早速引いとくれ。あとが詰まっとる」

神に言われるがまま引いてみた。

 

転生:人間 転生先:ワールドトリガー 特典:なし 記憶の有無 あり

 

なんだこれ?

「ほぉ、良かったのぉ人間で」

「まあ、良かったけどさぁ…ワールドトリガー以外普通すぎない?」

「そんなもんじゃ。転生先が元いた世界ってのもざらにあるなかアニメに行けるならよいじゃろ」

神様はそう言うが転生するのに特典がないのはさみしい。

「じゃあ転生させるかのぉ」

「え?ちょ、早い!」

「じゃあ、ほいほいのほい!」

「おい!きk…」

 

 

こうして武半はワールドトリガーの世界に転生したのだった。

転生して19年。変えられたことは小さく少ないがこれはまだ物語の序盤に過ぎない。そもそも自分が変えた未来なんて数少なく、他の奴の影響の方が大きい。転生者が多かったのには驚いたがそれもまた良い未来のためにいいことなのかもしれない。そんな思いを胸に抱きつつ今日もグダグダなこの世界を生きる。少しでも良い未来にするために。

「忍田本部長、失礼します。B級松山隊の武半です。報告書の提出に来ました」

さあ、今日も頑張ろう。

「ああ、夜遅くに悪いな。今印鑑を用意するから机に置いておいてくれ」

……今日は後3時間で終わるのだった。……明日も頑張ろう。

 

 

 




いかがでしたでしょうか?
一応この時は原作開始から約1ヶ月前の時系列です。いくつか転生者達の日常を書いた後原作に入ろうと思っています。その時の時系列はバラバラなのであしからず。
何か気になったことがあったら報告などよろしくお願いします。


それでは次回、「武半煌」にトリガー・オン!


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武半煌①

どうも暇人です。
思ったより早く書けたので投稿します。
長くなったので前半と後半に分けます。
後半はまたいつか投稿します。


どうも、武半です。転生してから早18年と少し、幼少期はトリオン兵に襲われたり第一次侵攻で色々あったりとそれなりに危機感を感じた日々があったが今現在最大のピンチに遭遇してます。それは………

「さあ出来たわ。たくさん作ったからたくさん食べてね♡」

「「「い、いただきます……」」」

緑色に染まる加古炒飯が目の前に広がっているのであった。

「な、なんでこうなったんだ?」

こうなった経緯はおよそ30分前………

 

「諏訪さーん、今日もお邪魔しまーす」

「おーう武半、相変わらずよく来るなお前」

「そりゃ本読むならここが一番種類があるんで」

「お、煌君いらっしゃい。今日もコーヒーでいいかい?」

「どうも堤さん、お願いします」

武半は暇なときボーダーにいると基本自分達の隊室ではなく諏訪隊の所に行くことが多い。それでよく麻雀とかに巻き込まれるのが別にお金をかけないので気にしていない。

「んで?今日は何を読むんだ?」

諏訪が何を読むのか聞いてきた。最初は諏訪オススメの推理小説を薦めてきたのだが正直コナンくらいしか分からなかった。…え?コナンは違うって?……そんなこんなで最近は諏訪さんがストックしている本から選んで読んでいる。

「今日は電気文庫の本からオススメお願いします」

「んじゃあ戦場のワルキューレでいいか?一応ミリタリーものだ」

諏訪が適当に本棚をなぞって選んだ本を渡してきた。

「あざーす」

それを受け取ると武半はコーヒーを片手に読みふけるのだった。

……あの人が来るまでは……

「堤君いるかしら?」

「あれ?加古ちゃん?どうしたの?」

入り口にはボーダー本部所属A級加古隊の隊長の加古望がいるのだった。

「この前堤君にレポート借りたでしょ。それを返しに来たのよ。あとお礼に来たの」

手に持っている紙の束をひらひらさせながらそう言った。

「あ、加古さん。こんにちは」

「あら、武半君。あなたもいたのね。ちょうどいいわ」

ちょうどいいとはどういう意味だ?この時武半はこの言葉の意味を分かっていなかったのだが諏訪隊の二人は察していた。

「あ~俺これからランク戦行ってくるからまたn…」

「いやいや諏訪さんどこ行くんですか?今日弓場にボロ負けしたからもう行かないって言ってたじゃないですか。逃がしませんよ?」

堤が笑顔でがっしりと諏訪を抑えていた。

「いや…いいだろ別に…また行ったって…」

「早く行かないとダメになるかもやつかもしれないじゃないですか…ダメージが少ないように早く行きましょう」

堤はなんとかして諏訪を逃さないように腕をがっちりつかんで放さなかった。そしてそのまま隊室を出てどこかに向かおうとしていた。

「大丈夫よ。タッパーに入れてきたから電子レンジを使わせてもらえればすぐ用意できるから」

ここで加古がそんなことを言ってきて二人はがっくり肩を落とすのだった。

「加古さん、何をタッパーに入れてきたんですか?」

「ばっ!お前死にたいのか!」

諏訪が小声で言ってきたが遅かった。

「私特性の新作炒飯、山菜炒飯よ」

「炒飯……?………あっ」

思い出した。武半はここにきてやっと気がついた。

加古望の炒飯は神様ガチャ以上のギャンブルだということに……

「俺の分はないと思うので俺は帰りますね。諏訪さん、本はここに置いておきます。ありがとうございました」

そう言って隊室を離れようとしたが一歩遅く、諏訪に捕まった。

「おう武半、いつも本貸してるだろ?たまにはどうだ一緒に?」

諏訪が肩を組んできて身動きを封じてきた。

「取りあえず器を用意するね。加古ちゃん、3つでいいかい?」

堤に至っては回避を諦めてちゃっかり武半を巻き込むように皿を3つ用意していた。

「あら、ありがとう。堤君、レンジ借りるわね」

そう言うと加古は電子レンジのあるほうに消えていった。

「お前ら、胃薬飲んどけよ…」

諏訪はそれだけ言い武半と堤に胃薬を手渡し、トレードマークのたばこをしまい決意を決めた表情でソファに腰掛けた。

武半と堤は胃薬を適量飲み、諏訪と同じく腰掛けた。まるで死刑宣告を言い渡された受刑者のような顔で…

 

「おまたせ♡たくさん召し上がってね♡」

目の前に緑色の炒飯が広げられている。

「でもよくこんなにたくさんの山菜見つけたね…高かったんじゃないの?そ、そんな高価ものを多くいただくのはちょっと……」

「この前双葉と山菜採りに行ったときにいっぱい採ってきたの。だからお金はあまりかかってないわよ」

「そ、そうなんだ……ありがたくいただくよ……」

少しでも量を減らそうという堤の希望が撃ち砕かれて三人は目の前の炒飯に向かうのだった。

「「「い、いただきます……」」」

三人は仲良く同時に一口目を食べた……

その瞬間口の中になんとも言えないえぐみが支配した。そして諏訪と堤は倒れた。

「あら?そんなにおいしかったかのかしら」

加古は二人が倒れたのがおいしさからだと思い、喜んでいた。だから堤が二度死ぬんでしょうね…

「あの…加古さん…これ何入れたんですか?…」

倒れた二人に関して一切突っ込みを入れずに加古に聞いてみた。

「え?蕗の薹と、コシアブラとタラの芽、他にも色々ね」

(それだけでこんなえぐみの強い炒飯が出来るのか?確かに春の山菜をこれだけ詰め込んだら苦くはなるけどこんなには……待てよ??…この形……)

炒飯の中にある渦を巻いたような山菜を発見した。

「あの…加古さん。この山菜は?」

「え?これってこごみでしょ?ちゃんと茹でて下処理したわよ?」

と言って首をかしげているが武半はこれの正体を知っていた。

「加古さん、これは確かにこごみに見えますがこれはゼンマイです」

「お団子ダンダン?」

「それは巻く方のぜんまい。ってか侍じゃないですか」

素なのかどうかは分からないがゼンマイについて分かっていなかったようだ。

「ゼンマイっていうのはゼンマイ科のシダ植物で春に山で採れる高級な山菜です。こごみと非常に似ていてよく素人は間違えやすいものです。ただこごみは加古さんの行った通りに茹でるとかの灰汁抜きでいいんですけどゼンマイは違うんですよ」

「え?そうなの?灰汁抜きって茹でるんじゃないの?」

この人の料理がゲテモノになる理由ってそこそこ大事な料理工程が抜けているからじゃないかと思い始めた武半だが説明を続けた。

「詳しいことは省きますけど簡単に言えば重曹を使って茹でますね。…それで灰汁抜きって何でするか知ってますか?」

「ええ、苦みとかを減らすためでしょ?」

「まあ、だいたい合ってます。正確には毒素を抜くためですね」

「え?!山菜って毒があるの?!」

自分が知らずに毒を盛っていたかもしれないことに驚いて目を丸くした。

「大丈夫ですよ。毒って言ってもチアミナーゼとサイカシンです。どちらも生で大量に摂取しない限り危険は少ないです」

「よかったわ~」

一応安全だということを伝えるとほっと胸をなで下ろしていた。

「でも一応しっかり調べてから作ることをオススメします。……それとこの炒飯はゼンマイを避ければ大丈夫なものが多いんで二人の代わりに食べておきます。これがあるから少し食べにくいだけで他はとてもおいしいです」

「ごめんなさいね。今度は調べてから作ることにするわ。……でも二人が倒れたのは何でかしら?そんなに食べてないから毒じゃないと思うのだけど…」

「……きっと疲れてたんですよ……」

まずかったなんて言えるわけないので取りあえずそう言って二人の名誉を守るのだった。

「何か悪いことをしたわね。じゃあ今度は元気なときに来るわ。またね武半君」

さらっと次の炒飯の予告を言うと加古は隊室を出て行った。

諏訪と堤は相変わらずダウンしているので食べることはできなので一人で1時間程時間をかけて苦い炒飯を食べるのであった。

2時間後に諏訪と堤は目が覚めたのだがそこには武半が某団長のように希望の華が咲いていたのだった……

(※山菜はものによってはきちんとした処理をしないと危険なので正しい下処理を行った上で食べてください。)

 

数時間後何とか炒飯のダメージから復活したから暇つぶしに個人ランク戦をしようと訓練ブースに行った。対戦相手を探そうとしたが今日は珍しくいつもいる3馬鹿や餅川がいなかった。そういえば新学期だから忙しいのかと思っていたらとても野太い声が後ろからかけられた。

「よう久しぶりだな武半ァ。暇ならちょっと付き合えや」

そこにはグラサンをかけたオールバックの男がいた。

「おーっす。何だ?ランク戦か?」

太刀川ほどではないが数多くのランク戦をこなしている猛者、弓場がいた。ランク戦の誘いかと思って聞いてみた。

「いや、迅と柿崎が暇だってんでなァ。2対2の相手探してたんだ。そこにお前がいたから声かけただけだ」

「珍しい組み合わせだな。…面白そうだな、やるか」

いつもとは全く違う組み合わせにワクワクしつつ会場に向かうのだった。

 

「よっす。久しぶりだな武半」

「元気してた?」

「おう、ザキに迅。卒業式以来か?だいぶ久しぶりかもな。まあそれなりに元気してるぞ」

柿崎と迅が爽やかな笑顔で挨拶をしてきた。それにまあまあ適当に返しつつどうチームを組か考えていた。

「チーム分けどうする?」

「取りあえず俺と迅、弓場と武半は分けた方がいいんじゃないか?」

「案外迅とザキで組んだ方が面白いかもよ」

「俺ァ迅と戦ってみてェな」

上から迅、柿崎、武半、弓場の順番で相談をした。数分の談義の結果柿崎と弓場、武半と迅という組み合わせになった。

「じゃあ一本勝負でいいか?後迅、お前は風刃使うなよ」

「もちもち。使わないから安心してよ」

「それでマップは市街地Aの昼でいいな?」

「あァ問題ねェ」

確認が取れたので4人はアナウンスとともに仮想訓練室にワープしていった。

『転送開始』

 




いかがでしたでしょうか?
次話では隊員同士の戦闘を書こうと頑張ってます。戦闘描写苦手なんで遅くなります。

それでは次回、「武半煌②」にトリガー・オン!


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武半煌②

どうも暇人です。
最近忙しすぎて暇人じゃなくなってます。
少し時間とれたんでちょっと頑張って書いてみました。
初めて評価ついてうれしかったんでもっと評価されるように頑張りたいです。
初の戦闘描写を書いたので不安ですがそれなりにできたと思う、多分知らんけど。
それではどうぞ。


4人がある程度一定の距離を離して市街地Aに転送された。転送されるのと同時に4人はバッグワームを展開し、各々合流を目指した。しかしわずかに迅が遠くに転送されたため弓場と柿崎が武半を追うように合流したため開始早々2対1の状況に持ち込まれていた。

 

「おいおい、いきなり来るのかよ…ってかよくここにいるのが分かったな」

 

弓場の射程に入らないように下がりつつレイガストを盾に威嚇射撃を行う。しかし柿崎からの攻撃も来るためシールドを出さざるを得ないためなかなか反撃が出来ない。

 

「おめェーの悪い癖だぜ。合流の時に最短を行こうとする。……いい加減直せや」

「う゛…またやってた?…ってか毎度毎度親切だなこの野郎」

「まァ直さねー限りいいカモだからなァ。悪いがやらせてもらうぞ」

 

逃走を図ろうとした武半だがとうとう弓場の射程に入ってしまい攻撃を食らってしまった。弓場のトリガーは銃トリガーのリボルバータイプ。射程は22メートル前後とガンナーにしては短いがその分威力は高い。通常のシールドでは防ぐことが出来ず、より強力な集中シールド、エスクードですら数発で砕くことの出来る火力を持つ。しかし、

 

「ちっ、やっぱ硬ェなおい」

 

武半はレイガストで器用に弓場の弾を捌き続けた。

 

「どうする弓場、メテオラで崩すか?」

 

柿崎が状況を変えるためにメテオラを撃つべきか言ってきた。武半の堅い守りを崩すにはこのままでは埒があかないと判断したからだ。

 

「……いや、そうしたらスラスターで爆風を利用されて逃げられちまう。迅が来る前に腕の1本でも落とすぞ!」

「了解!」

 

二人からの集中砲火をくらいレイガストは割れかけ、トリオン体にも所々弾痕が出来、そして住宅の塀に追い詰められた。

 

「おいおい……フルぼっこだなおい……ちったぁ手加減しろや」

「そうでもしないとお前の守りは崩せないからな。悪いな」

柿崎と弓場の銃口が武半に向かい、今にもトドメをささんとしていた。しかし、

「エスクード」

「「!?」」

 

突如エスクードが地面からせり上がってきた。弓場は体制を崩しつつも避けることに成功したが柿崎は避けることが出来ず宙に舞うのだった。

「スラスターオン!」

 

体制が崩れている柿崎にスラスターで急速接近し右腕の肘から下を切り裂いた。

 

「ザキ!」

 

いち早く体制を立て直した弓場が武半に銃を乱射した。攻撃直後のため防御が間に合わず左腕が吹き飛ばされ、足にもダメージを負った。

 

「悪い弓場。油断した」

「いや、気にすんな。俺も反応が遅れた……まんまとやられたなァ」

 

弓場がにらみつける先にはサングラスを首にぶら下げている男がいた。

 

「いや~悪いな武半、遅れちまった」

「遅いんだよまったく……このセクハラエリート」

「えっ…頑張ってきたのにひどくない?てか武半がこっち来てくれれば楽だし後いい加減に癖直してよ」

「あ~はいはい、そのうちナ」

「絶対思ってないでしょ。あともう弓場ちゃん達来るけどどうする?」

 

無駄話している間に体制を整えて弓場と柿崎が距離を詰めてくる。

 

「ザキは俺がやるから弓場を頼んだ」

「了解」

 

一対一の状況に持ち込もうとしたが弓場達は二人で確実に落とす作戦をとっておりバラけさせることは叶わなかった。だが迅に銃トリガーはあまり効果がなく、柿崎も左腕がないため銃が扱えず孤月を用いて攻撃しようとするが武半の攻撃でうかつに近づくことが出来ずに弓場達は押されつつあった。

 

「相変わらずうぜェな未来予知ってやつァ」

「いやいや~弓場ちゃんの弾は早くて避けにくいからね~。全力でやらせてもらうよ!」

 

迅のスコーピオンを用いた不規則高速斬撃をどうにか捌きながら反撃を繰り返すが所々斬られトリオンが漏れ、ベイルアウト寸前まで追い込まれていた。

 

(このままじゃジワジワやられちまう……こうなったらアレを使うか)

 

付近に柿崎と武半がやり合っているのをレーダーで確認した弓場はとっさに片方の銃を下に向け、シールドを貼った。迅も予知で察したのかシールドを貼り衝撃に備えた。銃が撃たれた瞬間爆発が起き、一瞬土煙に覆われた。本来のランク戦ならオペレーターからの視覚支援が入り問題なく見えるのだが今回はそれがないため迅は弓場を見失い、弓場はバッグワームを起動し、そのまま柿崎の方にジャンプした。そうして一気に柿崎達に近づいた弓場は銃を撃ち武半を落とそうとした。

 

(弓場が来た…弓場が撃つ弾はアステロイドとバイパーだけ、そしてさっきの爆発からメテオラが入っているはず……だけどあいつのバイパーの弾道は固定だから避けれる!)

 

弓場が来た瞬間彼のトリガー構成を瞬時に思い出し回避行動をとったがここで弓場の策にはまってしまった。

 

「?!」

 

突如弾が曲がり、なめらかな曲線を描いて追従してきた。そしてそのまま残った足に命中した。

 

「ハ、ハウンド…だと?!」

 

受け身をとれずに地面に転がった武半をあらかじめ待機していた柿崎が旋空孤月で武半の胴体を切り裂いた。

 

『戦闘体活動限界 ベイルアウト』

 

活動限界を迎えた武半の体は光の帯となって消えていった。これで2対1となったがその後すぐ弓場がトリオン漏出過多でベイルアウトし、すぐに追いついた迅が柿崎を倒して迅・武半チームの勝利となった。

 

 

「いや~まじか、弓場このやろうトリガー構成変えすぎだろ」

 

模擬戦後ラウンジでさっきの戦闘での愚痴をこぼした武半。一方弓場は勝ち誇ったような表情をしていた。

 

「お前らをやるにはこのくらいしねえと倒せねえからな。ザキと合流中に話してどっちかにくらわせるためにつけたからな」

 

まァ元々検証程度つもりだったンだがなと言っていて、結局弓場のトリガー構成は元々あったバイパーがメテオラとハウンドに設定されており、今回は使わなかったがレッドバレットも用意していたとのこと。

 

「弓場ちゃんの行動はなんとなく読めてたけど地面に撃った後引いたのは意外だったな~。てっきり俺にとどめ指すかと思ったもん」

「確かに弓場にしては意外だったな」

「あァ?そんなもん落とせる奴先に落とすに決まってンだろ?確かに迅とタイマンはりたかったがせっかくの珍しいチームだ。変わったことした方がいい訓練だからなァ」

 

弓場の思いがけない一言で温かい笑みをこぼした3人に弓場が文句を言いながらも楽しく談笑をするのであった。

 

 

「そういえばなんで武半は弓場の弾をあんなに防げるんだ?いくらレイガストでもあんなには防げないだろ」

 

さっきの模擬戦で疑問に思っていたことを柿崎が聞いてきた。

「あれ?ザキには言ってなかったけ?」

 

「あ~柿崎は聞いてないんじゃない?武半はあんまり模擬戦とかしないし、やっても弓場ちゃん以上の火力をくらわないから分からないかもね」

「まぁ、俺がレイガストであんなに弓場の攻撃防げるのは簡単に言うとレイガストの形を曲面に変えているからだな」

「曲面に?それであんなに変わるんか?ってかどんな理由だそれ?」

 

柿崎は全く分かっていなかったようなので追加で補足をした。

 

「俺が参考にしたのは戦車とかに用いられる装甲なんだけど、戦車の装甲ってある一定の時期から曲面装甲を採用するようになったんだ。理由としては曲面装甲を用いることで本体の厚さは変えずに見かけ上の厚さが変わる事で防御力が大幅にアップしたからなんだ。さらに曲面だと跳弾もしやすくなる。そんで俺はそれを参考にレイガストの形を変えたって訳だ」

「じゃあ全員がそれ使えばお前みたいに硬い守備力になるのか?」

「いや、あくまで見かけの厚さが変わるだけで実際の厚さは変わってないから弾が来る方向に対してちゃんとした角度を作らないと安定してガードできないし、レイガスト自体が重いから慣れないと取り回しが難しいってのがある。だから今のところ村上とレイジさんくらいにしか教えてない」

「それをシールドでやったらどうなんだ?」

 

弓場がレイガストでなくシールドでやったらどうか聞いてきた。

 

「その方が便利だけど曲面装甲はシールドでやると弓場レベルの弾を防ぎには強度が足りない。あとさっきも言ったが角度をいちいち調整しないといけないからレイガストが一番扱いやすいんだ」

 

ボーダー隊員の中で不遇とも言われやすいレイガストに意外な一面があり目を丸くした柿崎だったが尚のこと気になったことがあった。

 

「それだけの腕があればチームを作ってA級にもなれるんじゃないか?」

 

そう。武半は大規模侵攻前から入隊しているが一度も自分からチームを作ったことがなく、ほとんどソロで活動していたのだ。最初期の頃はチームに入っていてがしばらくして止め、後はチームに参加することはなかったのだ。

 

「まあ、簡単だよ。俺には人を導いたりすることは出来ないからさ、チームは組まないんだよ。組みたいと思っているやつもいるにはいるけどそいつはつい一年くらい前まで三輪のとこにいたから入ってくれるかわかんないんだよね。ほら、俺忍田派だけど玉狛っぽい考えしてるからさ…」

 

少し寂しそうな表情で語るが本人はとても組みたそうだった。

 

「大丈夫だよ。武半はそのうちにチームを組むって俺のサイドエフェクトがそう言っている」

 

迅がめちゃくちゃ決め顔で言ってきて少しウザいが気にとめておくことにした武半だった。

 

「じゃあ俺は上から呼び出しもらってるからまたね~。今日は楽しかったよ」

「俺達は防衛任務だから行くな。じゃあな武半」

「おう。また学校でな」

 

去っていく3人の背中を眺めながら帰るかなどと思っていたらある人に呼び止められるのだった。

 

「あら武半君また会ったわね。さっきの炒飯を改良した物を作ったのだけど試食してくれるかしら?」

 

加古のお誘いに拒否権はなく一瞬で死んだ魚の目をしたようになりそのまま加古隊室に連れて行かれるのだった。そして堤と太刀川を巻き込んで山菜炒飯改を食べて仲良く希望の華が咲いたのであった。

 

チャンチャン。

 




いかがでしたでしょうか。
小説書く時間はとれなくても少しゲームとかしてると早く様々なキャラを登場させていきたくてうずうずしています。
取りあえず夏頃まで時間とれそうにないんで投稿ペースは落ちます。それでは次回をお楽しみに。

次回 「松山慎次①」にトリガー・オン!


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松山慎次①

どうもご無沙汰しています。暇人です。
最近少し生活リズムが安定してきて少しずつ書く時間がとれるようになりました。
といっても全然暇じゃないんですけどね…
ああ、時間が欲しい。てか一日片手時間以上の睡眠時間をくださいマジで。

愚痴はこの辺にして本編開始です。今回は日記形式で少し書いてみました。タグ変更の必要とかあったら教えてください。
あとシリアス注意を一応念のためしておきます
キャラエピソードを松山隊の分書いたら原作入りたいと思ってますので気長に待っててください。
それではどうぞ。


○月×日

今日もクソ親父の機嫌が悪い。応援している野球チームが33-4で負けて相当怒っていた。そのせいでテレビは壊れるし家中八つ当たりで割られたビール瓶が散らかり歩く隙間もない。テレビが壊れたせいでアニメが見られないじゃないかぁ。でも母さんも何で傷だらけになりながら片付けをするのだろうか。そもそもなんで結婚したのか未だに分からない。俺は今日殴られずにすんだけど母さんは殴られてしまった。

 

…あの親父早く死んだらいいのに。

 

○月△日

今日はまあまあクソ親父の機嫌が良かった。パチンコで当たったらしく酒とつまみを大量に買ってきて4時から飲んだくれていた。しかしそのパチンコに使われた金は俺の小遣いだった。当然文句を言ったが「大当たりしたからいいだろ別に?まあこれで許せ」とだけ言いスルメを渡してきた。殺意が沸いたが今ここで機嫌を悪くすると血が出かねないので我慢することにした。

 

□月♢日

この日のことだけは許せなかった。あのクソ親父は学費だけでなく母さんの持病の治療費まで酒に使いやがった。母さんは自分のことよりも俺の学費を使ったことに怒っていたけど俺は傷が目立つからほとんど学校に行っていなかったためそこはいい。でも母さんの持病は治療費が高く、簡単には貯まらない。それをこいつも知っていたはずなのに酒なんか買いやがった。俺はついに怒りの沸点を超えて殴りかかったけどまだ中学生の自分では大人の腕力に勝てず逆に殴られまくった。そのせいで右目が潰れ光を失ったことを知ったのは3日後だった。母さんは元々クソ親父に隠して離婚を準備していてやっとの事で離婚を申し立て裁判所にも申し立てたがクソ親父の両親が権力者のためもみ消されてしまった。この時俺はこいつに何をしても無駄だということを悟った。

 

△月□日

この日、後に第一次大規模侵攻と呼ばれる異世界からの侵略者がやってきた。俺はあの化け物のことに大きく感謝することになった。被害に遭われた方には申し訳ないが俺は感謝してもしきれない。理由は二つある。

一つは家庭に関することだ。もうあの生活をしなくていい。なぜなら……

あのクソ親父を殺してくれたからだ。あいつが瓦礫に押しつぶされた瞬間はスカッとした。いや、どちらかといえばその瞬間は感無量だったが幸せしかない。助けろとのたまったが逆に罵詈雑言をたたきつけてやった。超スッキリした。それともう一つ、この事件をきっかけに前世の記憶がよみがえったことである。神様ガチャの結果で命に関わる事故に遭ったとき記憶が戻るというクソみたいな仕様の結果だったが割といいタイミング出来たと思う。前世の記憶と今世の記憶が混ざったおかげで二重人格っぽくなってが、周りにも精神病になった人が多かったため「大変だったね」で済まされるからだ。それに前世の俺は若干中二病をこじらせていたらしいので恥ずかしかったがカモフラージュのために使わせてもらおうと思う。俺は、いや僕は。この第二の生を謳歌しようと思う。

 …そんなことはどうでも良くて、近界民が現れたことによって2つ、大きく生活が変わった。一つ目は僕の家が近界民によって壊されたことで国とボーダーと言われる組織からの保証で新しい家が支給された。今はそこで一人暮らしをしている。母さんは持病が悪化したために入院をしているが命に別状はないために数年かけてゆっくり療養すれば完治とは言わないがかなり体調が良くなるらしい。早く良くなってほしいものだ。そして二つ目は……

 

 

「私はボーダー本部長の忍田真史だ。君たちの入隊を歓迎する。今回このような新しい組織へ入ってくれたことに感謝する。今は一人でも多くの人手を借りたい。三門市の、そして人類の未来のために日々精進し正隊員となってともに戦える日を心待ちにしている。それではこれから君たちの先輩となる正隊員に説明を受けてもらいたい。まずアタッカー希望の訓練生は寺島のところへ、シューター希望の訓練生は武半の所へ行って実際にどんなものかの説明を受けてもらい、その後は彼らの指示に従って訓練を開始して欲しい。それでは解散とする」

 

そう、ボーダーへ入隊したのだ。いくら保証などがあるとはいえ家賃と治療費と学費を払うのは中学生では少し無理がある。正隊員になれば給料がもらえるとのことなのでこれに乗らない手はなかった。母さんには少し反対されたけど生きていくためには仕方がないと説得し、許可を得たのだ。

……さて、見たところ今回入隊したのはおよそ50人。そのうちアタッカー志望の訓練生はわずかに10人だった。それもそのはず。いくら説明で死なない体になると言われているとはいえよく分からない怪物相手に接近戦をしようとは普通の神経なら思わない。よって、そのような危険に身を置く者達は大体が復讐にとらわれている者だった。特に俺と同い年に見える目つきが滅茶苦茶怖い男がいた。確か三輪なんとかって名前だったような…まあ、関わらないでおこう。しかし女性がいるのには驚いたな……

 

「皆さん入隊おめでとうございます。先ほど紹介がありました、え~これからは自分、寺島が説明させていただきます。まだ自分も入隊して日が浅いのですがよろしくお願いします」

 

細い体のちょっとダル目の茶髪の人、寺島さんが正隊員になる方法と武器紹介、近界民との戦い方について教えてくれた。

寺島さん曰く正隊員になるには訓練生にあらかじめ与えられたポイント、1000ポイントあるものを4000にまであげる必要があるのだとか。そのためにこれから訓練を行うとのこと。……いきなりの模擬戦から。

 

「じゃあとりあえずまずは一回やってみてくれ。制限時間は5分。防御力は高いけど相手はほとんど攻撃しない雑魚だからやれるだけやってみて。最初は……そこの片目の君から」

「あ、はい」

 

『訓練開始』

 

訳も分からず訓練質にたたき込まれ無機質な機械音とともに戦闘が開始した。

手にある刀のような武器(孤月といったか?) を握りしめ敵の近界民を観察した。

(孤月…説明された感じ鍔のない日本刀。五右衛門の斬鉄剣みたいな形状をしててかっこいい。硬く、鋭いけどわずかに重い武器。そしてあの近界民…大規模侵攻の時に人をいっぱいさらったやつに似ている。名前は……ハムスター?……そんなやつは弱点が目。基本的に近界民の弱点は目にあるらしいからそこを斬れば一撃だそうな。動きも鈍そうだから攪乱して倒す的な感じかな?……やれるだけやるさ!)

 

取りあえず様子見がてら前足を斬ってみる……弾かれはしなかったが浅い。ジャンプして胴体を斬るが弱点まで斬ることが出来ない。ならばどうするか…相手はこちらがあまりに動かないと軽く突っ込んでくる。ならばそこでカウンターを当てる。アレをやるか。

孤月を腰に構え、敵が来るのを待つ。約十数秒、狙ったとおりに近界民が軽く突っ込んでくる。後はそれに合わせて斬るだけ。3・2・1・今!

 

「天翔○閃!」

 

抜刀術の構えから左足を強く踏み込んだ一閃。近界民が少し体をビクビクさせた後倒れた。前世で大人気となったアニメの技(こっちの世界でも同じのがある)を生身でやっても形だけでそこまでの威力は得られなかったが、変身したら滅茶苦茶うまくできた。ちなみにこの一閃を見切った訓練生はわずかに2名。他は何が起こったかすら分かっていなかった。

 

『記録 48秒』

 

(う~ん初見ならまあまあの結果だと思う。後は他の人のを見て暇をしてよう)

 

「すごいね君。普通初めての人は1分切ればすごいのに50秒かからないのはものすごい逸材だよ。すごく期待してる。でもさっきの技名はあんまり言っちゃダメだよ。色々問題があるから」

 

寺島さんから講評とメタ発言をもらった。いいのだろうかこれで……

次に唯一の女性が訓練に挑んだ。結果はというと7秒でかなり早かった。少し攪乱しその後は猪突猛進で敵を倒した。恐ろしい。本部長を見てめっちゃ目をキラキラさせていたやべー人だと思ってたけど想像以上に強かった。

その後の訓練生は足がすくんで時間切れだったり時間ギリギリでクリアしたりといたって普通だった。そして最後、俺が見かけた黒髪の少年(俺もだが)。こいつはすごかった。撃破時間は2分ほどかかっていたが近界民を滅多刺しにしていた。もう細切れにでもする勢いで孤月を振り回していた。寺島さんが止めなかったらマジで粉々にしていただろう。関わらないのが吉だな……

そんなこんなで他にも探知追跡訓練や地形踏破訓練などを行いこの日の訓練は終わった。ちなみに獲得ポイントは180ポイントだった。……これいつ正隊員になれるのだろう。一応ランク戦というものがあり、用意する予定だったのだが調整が間に合わず、もうしばらくかかるらしい。ただ模擬戦は出来るらしい。

模擬戦をやる前にラウンジで飲み物を片手にのんびりしていたら一番会いたくない人が鬼のような目つきで目の前にいた。

 

「……………」

「何か用ですか?」

「俺は三輪秀次13歳。あなたは?」

 

いきなりの自己紹介ですかさいですか……

もう少し愛想良くしてもらってもいいですか??

 

「僕は松山慎次、同じく13歳です……えっと、何か?」

「お前…どこであんな剣技を覚えた?」

「え?あ…え~と…」

 

どうしよう前世のアニメなんて言えない。っていうか同い年って分かった瞬間態度変えすぎじゃない?堅苦しいのよりはいいけど少し違和感が…

 

「フ、フィーリングで」

「……ならば頼みがある。俺に剣を教えて欲しい」

「はい?」

「……俺は1体でも多くの近界民を殺したい。そのためには力がいる。だからお前みたいな強いやつに剣を教わりたい。同じ目的を持った者同士協力した方がいい」

 

自分が強いかどうかはさておき同じ目的を持った者同士…あ~この人もお金が欲しいのか、なら協力してもいいかな。一緒にやった方が楽しいだろうし。

 

「いいよ。といっても僕の剣は我流だからいまいち上手に伝えられるか分からないけど」

「構わない。よろしく頼む」

 

そのまま僕たちは模擬戦用の訓練室に入り、日が暮れるまで模擬戦に明け暮れるのだった。

 

×月○日

この日、僕は多くのことが変わった。ボーダーに入った。友達が出来た。なぜか剣を教えることになった。そして話したところ三輪君とは同じ学校だった。しかもお隣さんだった。そのため学校に一緒に行こうとの話になり僕は数ヶ月ぶりに学校に行くことが出来た。朝ご飯と夜ご飯を三輪君の家でお世話になることになった。ただお姉さんが意識不明の重体で入院しているそうで申し訳なかったけど「困ったときはお互い様、子どもが遠慮するんじゃないの。秀次もあなたと会って少し明るくなったからそのお礼よ」と言われてしまい、母さんとも話をしてお世話になることになった。また、学校に行ったことで先生にとても心配されたけど訳を話したら納得と優しい言葉をくれた。学力を取り戻すために色々してくれた。前世の記憶があるから学力に問題はないと思うけどとてもうれしかった。他にも……

 

「おい慎次。学校に行くぞ」

「お、分かった」

 

前世も含めて十数年ぶりの制服に身を包み、鞄を背負って家を出た。日記はまた帰ってから書こう。

 

「なあ、今日って課題あったっけ?」

「今日は数学と英語がそうだ。まさかやってないのか?」

「いや、確認しただけ。サンキュー」

「ふっ、そうか。ならいい」

 

そのまま二人で雑談をして朗らかに笑いながら学校へ行くのだった。

 




いかがでしたでしょうか。
正直設定でここまで重くするつもりなかったんや。気がつけばキーボードに打ち込んでいた。ノリと勢いって恐ろしいね。
ちなみに次の話を制作中なのですが過去一長い予感。多分七千字越えるかも。

それでは次回「松山慎次②」にトリガー・オン!


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松山慎次②

お久しぶりです!!
最近まで全く暇人じゃななかった暇人です。
いや~7月いっぱいまで課題の嵐でろくに書けてませんでした。8月も色々あり、ここまで書くことが中々出来ず楽しみにしてくださった方がいたら申し訳ないです。

前置きはこのくらいにして久しぶりの更新です。今までに比べて少し長いですけど温かい目で見てください。
それではどうぞ。


○月×日

ボーダーに入隊してから早くも半年。無事正隊員になり今日も三輪君と一緒に防衛任務に明け暮れている。三輪君はすごい。近界民を見つけたらすぐに飛んでいってバラバラにしていく。そんなにお金がないのだろうか……

それはともかく大きくボーダーは変わった。同期入隊の嵐山さんと柿崎さんがインタビューを受けてから入隊希望がとても増えた。単純な数値で4倍くらいの人数になった。人数が増えたことでチームを作り団体ランク戦を行うように方針が決まった。僕は三輪君と一緒に東さんという人のところでチームを組むようになった。他にも嵐山さんと柿崎さん、武半さんの三人でチームを作ったとも言っていた。

あとは……玉狛っていう支部からも二人でチームを作ったらしい。今のところ分かっているのはこれだけだが他も数人チームを作りつつあるらしい。それからしばらくして上層部から第一回チーム模擬戦が開催された。対戦チームは僕たち東隊と嵐山隊、そして玉狛第一こと木崎隊だった。初めてのチーム戦で色々と大変だったなぁ。

それに二人に伝えなきゃいけないこともあったから少し言いにくかったなぁ……

 

 

 

 

「じゃあこれからミーティングを始めようと思う。何か意見があったら言ってくれ」

 

そう言って仕切るのは我らが隊長東春秋21歳。ロン毛で垂れ目のがたいがいい人で、どう見ても21歳の貫禄じゃないんだよな、この人。

 

「取りあえず合流を最優先にしてその後行動にしましょう。特に俺たちでは一対一で玉狛には勝てないので逃げに徹しましょう」

 

合理的な意見を述べるのは我が友、三輪秀次13歳。お金欲しさに一緒に頑張っている。だけど目つきが怖い。

 

「なるほどな。じゃあ合流後はどうしようか」

「…木崎さんと小南の火力はとても高いので俺と松山で当たります。東さんはそのサポートをお願いします。嵐山隊との当たる際は引きつけつつ仲間が来るのを待ちます。確かにあのチームの連携は強いですが一人の駒としての戦力はそこまで高くないので問題ないと思います」

「……」

 

本当に同い年かと思う意見ばかり出てきて混乱しています。はい。いや、自分の方が前世込みで年上だけど僕の時絶対こんな感じじゃなかった。この世界の13歳怖いんだけど……

 

「慎次、呆けてないで何か意見を言ってくれ。そうじゃないとミーティングの意味が無いだろ?」

 

呆然としていたら少し困った表情で東さんが聞いてきた。危ない危ない何も考えてなかった。

え~と今日の相手は木崎隊と嵐山隊。木崎隊は隊長の木崎レイジさんとアタッカーの小南。嵐山隊は隊長の嵐山さん、同い年の柿崎さんと武半さんのトリオ。嵐山隊は連携重視で戦う姿を防衛任務で何回か見たけど木崎隊はよくわかんないんだよな~。だけど火力が高いって良く聞くから接近に注意しなきゃいけないのは三輪君と同じ。でもそれでいいのかな?僕たちは東さんの援護がある上での戦略しか立ててないし自分たちがしっかりと揃っていること前提に話が進んでいる気がするんだけどな……いや、でも普通はそうなのか??

 

「…だいぶ悩んでるな。何か気になるのか?ただ早くしてくれ。もうすぐ時間になる」

 

頭で唸っていてあまりの長考に三輪君が聞いてきた。気がつけば開始まで後5分になっていた。

 

「あ、ごめん。大体の考えは同じだから僕もそれでいいよ。時間を取ってごめんね」

「……分かった」

「はっはっは。いや別に大丈夫だぞ松山。悩んだ上での決定なら問題は無い。ただそういった勘や考えは後で何かしらの機転に繋がるかもしれないからその時言ってくれ」

 

三輪君は少し怒っている感じだったけど東さんはのんきそうだった。

 

「よし、じゃあ今日の作戦はそんな感じで行こう。何かあったら俺が指示を出す。いつも通りのそれでいいな?」

「「はい」」

 

そのまま光と共に模擬戦会場に転送されていった。

 

 

模擬戦のステージは市街地。住宅街が広がる防衛任務で戦う警戒区域と似たような町並みになっている。模擬戦ではルールとして始めの転送位置は緊急で召集されたときにチームで動けないことを想定してバラバラに転送されている。ちなみに間隔は大体均等になっている。

転送された人たちは全員バッグワームを展開しレーダー上から姿を消した。東隊と嵐山隊は合流を目指すようだったが木崎隊は合流を目指していなかった。なぜなら   

 

「レイジさん、東さん見つけたからそっち行くわよ」

『ああ、ただ他のやつに注意しろ。仲間は遠いしお前なら大丈夫だと思うが念のためな。俺は他を抑える』

「了解!」

 

  東が小南に見つかったからだ。

本来バッグワームを展開中ならレーダー上に写ることはないため見つかることはない。

しかし、転送直後の一瞬はレーダーに写っている。そのためある程度は進んだ方向の予測ができるのだ。さらに今回の転送位置は東を挟んで小南と木崎がいたので小南は合流せずに東を、木崎は邪魔が入らないように他の隊員を抑えに行ったのだ。

とはいえ東の隠密行動のスキルは決して低いわけでもなく、むしろ高い分類に入り、いくらある程度の予想ができてもどこに行ったのかは本来なら分からないが小南の卓越した直感のため見つかってしまったのだ。

そして、東は小南の素早い攻撃によりすぐにベイルアウトをしてしまうのだった。

 

『戦闘体活動限界 ベイルアウト』

 

無機質な機械音と共に東の体は光の筋となって空へ消えていった。

開始早々隊長を失った三輪は混乱に陥っていた。隊長の不在、まだ13歳の少年に冷静な判断を仰ぐのはまだできなかった。

 

「あ、東さんが……落とされた?!…ど、どうすれば??……いや、早く隠れないと…あ、でも合流しないと俺たちの戦略が…でっ、でも…!」

 

三輪は初めての団体模擬戦、隊長の不在、近くに仲間がいない孤独から完全に冷静さを失っていてその場に立ち止まってしまった。

 

「ハッ、ハッ、ハア……」

 

呼吸は乱れ頭が回らないためまともな思考ができずにいた。そんなため索敵なんてまともに行えず、バッグワームが解除されているのにもかかわらず接敵に気がつかなかった。

 

「??!」

 

発砲音にかろうじて気がついた三輪はシールドをなんとか展開し身を守るがシールドを広く展開しすぎたため一部が割れて被弾してしまった。

 

「嵐山、武半!三輪を発見した!倒してから合流する!」

 

柿崎の登場により三輪はどんどん追い込まれていった。三輪のトリガー構成は遠距離武器がなく、武器は孤月一本なので前に出ることができず、トリオン体が削られていく一方だった。

 

このまま押し切れる  柿崎はそう判断していた。作戦を立てたときは個々の力で他の隊を倒すのは難しいのではないかと言うことだったが三輪は東が落ちたことに動揺しいつもの動きができないと考えた上で攻撃をしたが予想通りだった。嵐山と武半は木崎とやり合っているが二対一なら問題は無いだろう。

この気を逃さずに攻め込んでいた柿崎はあと一歩という所まで追い詰めていた。だがここで予想外のことが二つ起きた。

一つは小南と木崎が合流したことだ。てっきりこちら側に来ると踏んだがこちらには来ず、合流を行った。そのため嵐山達の戦線が崩された。

そして二つ目。いや、これは予想外というより忘れていたこと。それは  

 

「三輪君!!」

「し、慎次か…」

「ごめん。遅くなった。もう大丈夫だよ」

「ちっ、揃っちまったか」

 

松山が遅れながらも合流し、戦況は一変した。

とはいえ三輪は被弾が激しく、松山も遠距離の武器はないため撤退するしかなかった。

柿崎も無理に追撃はせず、チームに合流するのだった。

 

 

「三輪君大丈夫かい?まだ戦えそう?」

「…いや、もうほとんどトリオンがない。それに足も少しやられたからほとんど走れない。もうダメだ。俺たちはもう勝てないんだ…」

「何言ってるんだよ…トリオンの流出は止まったからまだ大丈夫だよ。それに合流できたからやれることは増えたし、まだ「もう無理だ!!」……え?」

 

説得を試みた松山だが三輪には全く響いていないようだった。それどころか希望すら持っていなかった。

 

「東さんがもうやられたからもう高度な作戦は作れない!俺ももうベイルアウト寸前で機動力も無い!確かにお前は無事で可能性もある!でもそのための方法は!?手段は!?どうやったら玉狛に勝てるんだよ!」

「三輪君……」

 

いつもは冷静な三輪はその面影もなく、分からないことに対して泣き叫んでいる中学生になっていた。

 

「三輪君、君はそれでいいのか?」

「…なに?」

「確かに今の三輪君で勝ち目はない。君が勝つことを諦めているから。諦めたら何もできなくなっちゃう。だから、諦めるな!」

「この状況でどうしたらいいんだよ!」

「僕に作戦がある。だから、ついてきて欲しい」

 

三輪はイライラと不安、混乱が絶頂に達していたため強く当たることしかしなくなっていたが松山はまだ冷静さを保っていた。段々そのことに気がついた三輪も少し落ち着き始めていた。そのまま二人はマップ中央の乱戦地帯に向かうのだった。

 

「それで?どんな策があるんだ?」

 

冷静になった三輪がなんとかついてきながら作戦を聞いてきた。

 

「うん。といっても東さんに比べたらお粗末なものだけどね」

「…おい」

「で、でも大丈夫。今の僕たちは他の隊にはないアドバンテージがあるんだ」

「アドバンテージだと?」

 

三輪自身メリットなど全くないように感じていたのだが松山から予想外なことを聞かされて不思議に思った。

 

「うん。それはね    」

「なっ?!そんなことがアドバンテージになるのか?」

「あはは、普通はそうは思わないけど結構大事だよ。戦力の差が敗北の決定条件じゃないとはよく言ったものだよ。それにこの模擬戦は確かに勝利をつかむことは大事だけど本当に大事なのはチーム戦をどのようにやるのかさ。もし結果が大事なら玉狛の人たちは僕たちと同じトリガーを使わないとズルだからね」

 

目から鱗。まさにそんな言葉が当てはまるような顔を三輪はしていた。そんなことはお構いなしに松山は戦場に向かうのだった。

 

 

一方その頃主戦場では木崎隊が嵐山隊を圧倒していた。始めは弾の撃ち合いだったが小南が合流したことによるアタッカーの存在で嵐山の右足と武半の両腕が切られ、かなりのピンチとなっていた。柿崎もすぐに合流したが焼け石に水で小南を近寄らせないようにすることはできたが木崎の砲撃の圧力に前に出られないでいた。特に木崎のトリガーは試作だが唯一の銃系トリガーを用いている。今回の模擬戦は特に使用トリガーの規定はないため試作トリガーを持ち込むことができている。そのため蹂躙といっても差し支えない状況になっている。さらにエスクードと言われるシールドの何倍も硬い防御壁を用いることで嵐山隊の攻撃はほとんど通らない一方的な戦線だった。

 

「あ~エスクード硬すぎだろ!それに小南のやつも相変わらず素早いな……嵐山じゃ追い切れない」

「どうする二人とも。木崎さんを抑えてくれるなら俺が切り込んでもいいかもしれないけどどうだ?」

「無茶言うな!さすがに無理だ。俺の火力だけじゃ木崎さんを抑えきれないし嵐山、お前足をやられてるだろ!……くそっ!なんとかしねーと…」

「ん?……これは…」

「どうした武半?何かあったのか」

「ああ、東隊が近づいてきてる」

「何?」

 

レーダーを見ると光点が一つ近づいていることが確認できた。そのことに木崎達も気がついたのか少し弾幕が減ったがすぐに元通りの弾幕になった。

 

「どういうことだ?三輪はもうトリオン切れ間近だし足も切っている。だから姿を消してあんなに早く来ることはできないはずなのにレーダーには一つしか写っていないだと?」

 

柿崎達は三輪の状況を知っているためこの状況に多少の戸惑いを見せていた。一方木崎達は三輪の現状を知らないのでバッグワームをしているどちらかの奇襲に警戒していた。

レーダーの距離にしておよそ50メートルになったとき、木崎達が補足した。

 

 

 

………バッグワームを展開していて胴体がやたらと膨らんでいる不明物体を……………

 

「えっ??!!なにあれ??!」

「……何しているんだあれは?」

 

顔は確かに松山の顔なのだが体型がおかしすぎる。やけに体系が太い。いつもとは違う体型に目を取られている内に松山達は行って先の行動に移っていた。

 

「それじゃあ…行ってこい!」

 

体をひねりその勢いのままあるものを小南に投げた。

 

「レイジさん、何か飛んで……え?!」

 

「悪いがやらせてもらう」

 

三輪秀次が飛んできたのだ。

松山が言ったアドバンテージ、それは二人の体格が似ていてお互いまだ少し小さいことだ。柿崎達も体格は似ているが三輪達よりは大きい。身長差がなく、どちらかを持ち上げてもトリオン体の筋力なら多少機動力を失うだけである程度で問題なく動ける。特に嵐山隊には三輪が少し急いできているようにしか見えない。そのため嫌でも隠れた松山の存在を意識せざるを得ない。よって嵐山隊の動きを一時的に止めることができた。そして小南達からしたら三輪が少し遅めに近づき、松山が奇襲するとう予想は同じだが姿が見えていてなおかつ圧倒的予想外の動きによる動揺を誘えることができる。これが松山の考えたアドバンテージである。

予想通り小南は驚きのあまり動きが硬直し、木崎ですらも援護が間に合わずそのまま飛んでくる三輪の斬撃を防ぎ小南を守ることは叶わなかった。

 

『戦闘体活動限界 ベイルアウト』

 

小南のベイルアウトで正気を取り戻した木崎は即座に三輪に銃を向けて三輪をベイルアウトさせて即座に松山に意識を向けた。松山は低姿勢でシールドを小さくして突っ込んできていたが木崎の圧倒的な弾幕によりベイルアウトした。しかし、わずかとはいえ木崎の全ての意識が松山に向いていたため嵐山隊の接近に気付いておらず、武半と柿崎の銃撃により足をやられ、嵐山と柿崎の連携によりベイルアウトして第一回チーム模擬戦の結果は嵐山隊の勝利となった。

 

 

模擬戦終了後隊室で反省会をしていたのだが………

 

「……………」

 

模擬戦終了後の東隊室は三輪君の回りを中心に非常に暗い空気が漂っていた。そんな空気に耐えかねたのか東さんが口を開いた。

 

「どうしたんだ三輪?今日の模擬戦で途中動けなくなったから落ち込んでいるのか?そもそも今回は俺が最初に落とされたのが原因なんだからそんなに気にするな。そんな中1点取ったのはすごいじゃないか」

 

東さんは負けた原因は俺にあると言って三輪君を励ましたが三輪君の表情は暗いままだった。

 

「いえ。俺は今日何もしてません。全部慎次のおかげです。…あいつがいなかったら俺は柿崎さんにやられてました。東さんがやられたとき不安しかなくなってしまって…何もできませんでした」

 

ぽつりぽつりと思った事を言ってきた三輪君。褒められたことに少し照れてしまった。

 

「そうだな…こっちから音声は送れないけどそっちの音声は聞くことができるからどんな状況だったか大体は分かっている。確かに松山は落ち着いていて指示も的確。さらに面白い作戦を考えていて少し俺も面白かった」

 

東さんまで褒めてきたのでちょっと止めて欲しかったけどまだ何かあるような気がしたのでまだ聞くことにした。

 

「でもな、俺はその作戦を聞いてすぐに行動に移せる三輪も十分に役割を果たしてると思う。だから三輪一人がどうだったから悪い、じゃあないんだ」

「東さん……」

「俺が思うに戦闘での勝利は個々の力だけじゃ無いと思うんだ。松山はどう思う?」

「…一番大切なのは作戦じゃないでしょうか?よくアニメでも一人が強くても作戦負けとかしているんで…」

 

急に振られて少し迷ったが思っていることを言ってみた。

 

「ああ、そうだな。アニメとかかよく分からんけど俺もそう思う。それで俺たちが今回していないのは相手の作戦や戦術を考慮していなかったことだと思うんだ」

「相手の作戦、ですか?」

「ああ。相手も俺たちと同様に作戦を立てる。人や隊によっては俺たちより高度な作戦を考えている。嵐山隊が戦闘をしても状況に応じて戦う相手を選んでいるように、木崎隊が小南の突貫力を中心に作戦を立てていた。俺たちは俺たちがどう動くのかを決めただけで相手がどう動くのかを決めていなかった。俺がまだ生きていたらちょいちょい意見を挟んでも良かったけど先に落とされたからそれができなかった。だからいつもあらかじめそのことを考慮しなきゃいけないと今回の模擬戦で思ったんだ」

 

三輪君は口を半開きにしながら東さんの話を聞いていた。僕自身もそこまで考えていなかったから結構驚いたな。

 

「だからな…これから成長すればいいんだよ。何回も模擬戦をしてどんな状況でもしっかり動けるように、それが今回の模擬戦の意味じゃないか?」

「……はい!」

 

三輪君の表情が一変して何か決意を決めたような顔つきになった。東さんもほっとした表情になった。そして爆弾発言をした。

 

「それと話は変わるが東隊に新しく二人の隊員が加わることになった。一人は二宮匡貴、三輪達の3つ年上のシューターだ。もう一人は過去望、二宮と同い年のシューターだ。後まだ誰がとは決まっていないが新しくオペレーターという支援の役割を持った隊員を編成して隊に組み込むことが決まり、オペレーターを含めた最大5人でチームを組むようにと上から指示が来たから明日からそんな感じになる」

 

突然新しい隊員の情報に三輪君は目を点にしていたがすぐに一つの情報について問いただした。

 

「待ってください東さん!新しく3人入って5人までのチームと言うことは誰かを追い出すってことですか?!」

「いや、追い出しはしない。脱隊という形になる」

「言い方はどうでもいいですよ!俺は嫌です!このチームで強くなりたいです!」

 

三輪君は声を荒げて反対をしていた。もとから言うつもりだったがこれから言うことを考えると申し訳ないが話が進まないので言うことにした。

 

「実はね、三輪君。僕がチームを抜けるんだ。…っていうかこれからボーダーを休みがちになるんだ」

「…は?!!」

「いいのか?そんなにあっさり言って」

「ああ、はい全然大丈夫ですよ」

「ちょっと待て慎次?!!どういうことだ??!!なぜ!!」

 

三輪君がものすごい剣幕で聞いてきた。急に仲間が止めるとなったらそりゃそうなるわなと思いつつ理由を説明した。

 

「実は母さんが入院している病院を建て直すことが決まってそのついでに一時退院することになったんだ。そしたら母さんの両親、つまり僕のじいさん達から家を建て直してそっちで住まないかって言われたんだ。それで中学校を卒業するまではそっちで暮らすことになったんだ」

「……どこに行くんだ?」

「四塚市に引っ越すことになったんだ。少し遠いから防衛任務をやるのに移動が大変だし四塚市はボーダーに対しての理解が薄いから平日の防衛任務は難しくなるんだ。それを東さんに相談して、新しくメンバーを入れることになったんだ」

「……なんで言ってくれなかったんだ」

「実は決まったのが一昨日で三輪君と今日まで会う機会が無くて話せなかったんだ…」

「あ……」

 

実は三輪は一昨日の金曜日に風邪をひいて学校を休んでいて、そのままその日は話すことがなく、土曜日は引っ越しの話などを聞きに行っていたので今日まで話す機会が無かったのだ。

 

「そ、そうなのか……」

「でもボーダーは止めないよ。防衛任務ももう忍田本部長とかと話は付けて土日や長期休暇だけにしてもらったから参加できるし高校生になったらこっちも戻るからまたちゃんと戦えるよ。そしたらまたよろしくね秀次」

「…分かった」

 

そう言うと三輪君は安心してくれた。

 

 

 

○月□日

 三輪君達に一時的に休む話をしたら二宮さん達と一緒に送別会と入隊祝いを同時に行うために焼肉に行った。そういえば焼肉なんて前世以来であまりのおいしさから涙がこぼれてめっちゃ心配されたのは少しなんか申し訳なくなった。でもカルビおいしかったんだ。ハラミもうまかったんだ。東さんオススメのギアラも少し噛み切れなかったんだけどおいしかったです。

三輪君には高校に上がったらチームを組もうとのお誘いをもらった。とてもうれしかった。でも高校になって君のお眼鏡にかなう実力があったらお願いしたいと言っておいた。

今からもう楽しみだ。早く高校生になりたいなー

 

 

 

 

 

「三門市よ!私は帰ってきたぞ!」

 

大規模侵攻から3年。高校生になってまた三門市に帰ってきた。いや、別に毎週来てはいるので帰ってきたという表現はおかしいが取りあえず帰ってきた。

 

「遅かったな、慎次。米屋と奈良坂はもう待ってるぞ」

「お、あらためましてだな。俺は米屋洋介。ポジションはアタッカーをやってる。よろしくな」

「俺は奈良坂透だ。ポジションはスナイパー。これからよろしく頼む」

「どうも秀次と昔チームを組んでた松山です。よろしく」

 

こうして僕の新生三輪隊としての活動が始まるのだった。

 




いかがでしたでしょうか?
久しぶりすぎてこれでいいのかわかんないまま書いてたんで何かあったら言ってください。
松山が三輪隊にいるのは小寺君が入るまでで、色々あってから武半達とチームは組むようになるんでそこはまた後日書いていきたいと思います。

それでは次回「明道芽生」にトリガー・オン!


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明道芽生

どうも久しぶりです暇人です。
いや~中々書くのが難しくて時間かかりましたねはい。
まあ、色んなゲームに手を伸ばしてたりしたのもあるんですが一番はモチベですかね。
こんな感じにしようあんな感じにしようという展開が浮かんでも実際文字にするのが難しいので大変です。
そこそこ長いですが楽しく読んでいただけたら幸いです。
それではどうぞ


ある年越しに近い日。私は今どこにいるでしょーか?ヒントは餅です。さあシンキングターイム。

 

 

 

 

タイムアーップ! 正解はですねぇ………

 

「よし、お前ら焼く準備は整ったか?まず俺。七輪…ヨシ!」

「きな粉、醤油、海苔、その他調味料…ヨシです」

「お餅大量…ヨシ!!!」

「ではこれから第1回ボーダー餅パーティー(3人だけ)を開催する!焼け-!」

「「おー!」」

 

太刀川さん、とっきー、私の三人で猫の合図をした後に七輪に大量に餅を投下。しばらくすると段々お餅がぷっくりと膨れてきて同時に香ばしい匂いが部屋を満たしてきた。これにはついついニヤニヤしてしまいます。いつもはクールアシスタントのとっきーも少し頬が緩んでいます。これに醤油とか垂らしたらどうなっちゃうんでしょうか……

あ、クイズの答えは太刀川隊室です。みんな分かったかな??

そんなこんなしている内にとっきーが醤油と砂糖を混ぜたものをひっくり返して綺麗な格子状の焼き目が入った餅に塗っていく。お餅の焼ける匂いに追加して醤油の焼ける匂いがジュワ~という音と同時に部屋に充満していく。換気扇は回しているみたいだけど焼いている餅の量が量なので換気しきれず、隊室が段々香ばしいにおいで充満するようになりました。もう、おなかがペコペコです……

 

「そろそろどうだ?」

「ええ、もう大丈夫ですね。俺が取るんで二人は少し待っててください」

 

太刀川さんがしびれを切らし始め、とっきーが確認したところGOサインが出たので海苔に巻いてもらうのを待ちながらコップに麦茶を注いでおいて餅を待つことにしよう。

 

「用意できました。熱いんで二人とも注意してください」

 

ついにこの時が来た……

炙られた醤油が輝きお餅本体の重さで少し延びながら海苔よりも大きな餅が海苔に巻かれ、磯辺巻きが目の前に用意された。後はこれにかぶりつくだけ……いざっ!

 

「「「いただきます!!!」」」

 

かぶりつくとまずあまりの熱さに思わず口から離してしまった…でも少し触れたあぶり醤油が唇につき、舐めるとそのおいしさからまた食べたい意欲がでてしまった……

今度はしっかりフーフーしてから食べる。

その後口の中に広がったのはまずモチッ。とにかくモチッ、だ。歯にくっつきながら咀嚼すると砂糖醤油の甘くも香ばしい風味が口の中に広がりおいしさで満たされていく。食べ進めて海苔のゾーンに入ると海苔の風味も加わって全てを包んでくれるような感触になっていった。

これは……いいものだ!

 

「「「うまい!!!」」」

 

三人同時に声が出た。だがこれはそれほどまでにおいしいのだ。是非もないよね!

 

「なあとっきー。今からでもいいから唯我と交換で太刀川隊に来てくんねー?そんで俺に餅を焼いてくれ」

「そういったことなら丁重にお断りします。俺はあそこが大好きなので」

「他にも……部屋の掃除をしてくれ」

「……いやです」

 

太刀川さんがとっきーにとんでもないことを持ちかけてる……そうだ!

 

「ねー太刀川さんあたしにはそういうのないの?」

「あ?…いやーお前にそういうのはないかな……むしろいらん」

「??!!……ま、まさか…太刀川さん…私とは、遊びだったんですか??」

「はぁっ??!!…おまっ、何とんでもないこと言ってんの?!!」

「そうなんですか太刀川さん??これは忍田さんに言わないとですね」

「ちょっっ!待て、これは芽生が適当言ってるだけだ。なー芽生?」

「そ、そんな……太刀川さん…あんなことまでしておいてそれはないですよ」

「おいー!!」

 

おお、我ながら迫真の演技。太刀川さんめっちゃ焦ってる。やはりこの手は有効だったか……さすが二ノさんのアドバイスだ。

 

「明道先輩、そろそろどうですか?太刀川さん身に覚えのない内容で混乱してますよ」

「あれ?ばれちゃってる?」

「まあ、それなりにわかりやすかったですよ?でも本当に心当たりがなかったら焦らないと思うんですけど何かあったんですか?」

「あ~実は1回バトル中に接触事故があってその時風間さんもいて色々あったの」

「……意外に前科あったんですね」

「まぁでも気にしてないからこうして揺さぶるのがいいって二ノさん言ってたの」

 

うーん、やはりとっきーはだませないか。しかし太刀川さんがフリーズしてる。おもしろ。

 

「太刀川さん大丈夫ですよ。全部明道先輩の悪ふざけなんで」

「お?そ、そうなのか……よかったぜマジで根に持っててさらされると思って怖かったぜ……」

 

とっきーが補足してくれたおかげで太刀川さんがめっちゃ胸をなで下ろしてる……

 

「そんなこんなしている間にもうお餅が焦げかけてるんで全部回収して新しいの焼き始めますね。次は二人とも何がいいですか?」

「あれ?マジか…うーわかなり焦げてらぁ…。取りあえず俺は普通に焼いてくれ。きな粉つけて食う」

「私はバターをつけて食べるんでもう一枚磯辺巻きでお願いします」

「バターですか?……確かに用意はしてますけどどうやって塗るんですか?」

「耐熱容器の中にバターと醤油を入れて加熱しながら混ぜて溶かしたものを塗るの。こうするといい感じになるの」

「へぇ、おいしそうですね。やってみますね。ちなみに俺はもう一枚磯辺巻きで食べますんで間違えないでくださいね」

 

相変わらずナイスアシストのとっきーの気遣いで餅パーティーが私たちは何もしてないのにサクサク進んでいく……あなたが神か?

 

「おだてても餅しか出しませんよ」

 

何で分かったの??エスパー?

 

「顔に出てます」

「え?本当??」

「結構芽生って顔に出るからわかりやすいよな」

「え?さっきだまされた人がそれ言っちゃいます?」

「こ、細かいことは気にすんな」

「え゛ー!気にします!!」

「はっはっはっは」

 

そんなこんなで第1回ボーダー餅パーティー終盤まで平和に進むのであった。

しかし、事件は起きた。

 

「お?とっきー電話なってねーか?」

「あ、マナーモードにしていたから気がつきませんでした。太刀川さんありがとうございます。ちょっと失礼しますね。…………もしもし?嵐山さん、どうしたんですか?……え?賢が…何したんですか?……え?赤点ですか?…分かりました取りあえず俺が見に行きます。すみません、賢のテストが赤点だったらしくてその補修対策に行くのでこれで失礼します」

「おう。これお土産に持って行け」

「ありがとうございます。後で食べますね」

 

太刀川から今回焼かなかった餅をいくつかお土産として時枝に渡し、時枝は太刀川隊室を後にした。一方明道は残りの餅を焼いていたが、時枝が帰ったことでこれを最後の餅として焼いていた。

 

「太刀川さーん、最後何食べますか?」

「おー、最後はきな粉で食べる。そっちは?」

「私はさっき食べたんでバター醤油食べます」

「おっけー」

 

 

 

七輪で残りの餅を焼いているときに事件は起こった。

 

「明道―、きな粉どこだ?」

「えー?確か七輪の隣の椅子の上に置いてあるはずですよ?」

「お?そうだったか?……おぉ、あったあった……ってあ!」

「え?」

 

太刀川の驚いた声と同時に手元からきな粉の袋が滑って七輪のすぐそばに落ちた。つい先ほどまで太刀川はバター醤油の磯辺巻きを食べていて少し手に油がついていたのだ。そのため手から袋が滑って落ちてしまった。

 

「太刀川さんどうしたの?!……ってきな粉が……」

「俺の心配はないんかい…まあ、少し舞ったくらいで大丈夫だ」

「よかった~、中身が無事で???!!!」

「だな、よかっt……????!」

 

 

ボン!!!!!

 

 

 

 

 

 

突如太刀川隊室で原因不明の爆発が起きた。そのことをボーダー本部の火災報知器が感知し、ボーダー全体に知らせることとなった。ボーダー本部には爆発物の持ち込みは禁止されているため、上層部は近界民の新手の攻撃かと考えC級隊員にはC級ランク戦会場に集合命令を出し、本部にいた一部B級隊員には急遽任務に出ていたA級隊員と防衛任務の交代がされ、A級隊員は現場に急行した。また、今回の現場が太刀川隊室であることから迅の到着を待ってから突入がされた。しかし、そこで彼らが目にしたものは……………

 

「太刀川、何をしている」

「いや~、はっはっは………」

「明道…………お前も何してるんだよ………」

「餅パです」

 

A級B級混合部隊が目にしたのは少し黒焦げになっている太刀川隊室と太刀川、明道の両名と横に転がった七輪があったのだった。

 

「風間さん…それが、きな粉が七輪の上に行ったら急に爆発が起きたんだ!きっとこれは魔法だって!」

「そうですそうです!だからこれは事故です!」

 

「「この………大馬鹿が!!!!!!!」」

 

風間と武半の怒声と共にげんこつが二人の頭に落ちた。

 

「「痛って――――!!!!」」

 

「太刀川…お前は大学生になって未だに粉塵爆発すら知らんのか」

「え?なにそれ??」

「あ、モン○ンのテオ夫妻がやるアレですか?でもきな粉ですよ?何で爆発するんですか?」

「モ○ハンとやらは知らんが粉塵爆発は爆発濃度以上の粉塵量、酸素、後は火がつくのに最低限の着火源があれば何でも起きる。今回きな粉が七輪の上に大量に舞って連鎖的に爆発したらしいな」

「「へー」」

 

風間の解説に気の抜けた返事をした二人は全く知らないようだった。

 

「まあそんなことはどうでもいい。忍田さんにこれからのことを聞いておけ」

「え゛??」

「け~いー 」

「??!あ、し、しのださん?お、俺はどうしたらいいの??」

「あ、私も気になります!」

「なんでお前はそんなにのんきなの??!」

「明道……お前にも話がある」

「あ、はい」

 

般若のような顔をした忍田が二人の前に立っていた。その間二人は正座待機で判決の時を待つのだった。その結果…………

 

“私はお餅を焼いて隊室を爆破しました。そして粉塵爆発を知らない馬鹿です”

“私は理系なのに粉塵爆発も知らない愚か者です”

 

「ぶっ……はっはっ!!お前ら……何してんだよ」

「諏訪さん笑わないでくださいよ!」

「いや、……無理……っぷはっはは!」

「太刀川さん……さすがに粉塵爆発くらいは知っててくださいよ……柚宇さんでも知ってるんですから……」

「え?マジか」

「明道先輩、粉塵爆発くらい今時小学生でも知ってるんで少し恥ずかしいです」

「だって~化学の授業とか訳わかんなくていつも寝てるんだも~ん。あと、粉塵爆発という言葉は知ってるからね!これ、大事!」

「いや~言葉だけ知ってても意味がわかんないと意味が無いからね~。芽生ちゃん、諦めて勉強しよっか…」

「え??」

 

太刀川と明道の首にはプラカードかかけられていてボーダー本部のラウンジで正座をさせられていた。二人の処遇はこの公開処刑と太刀川には未来永劫隊室及びボーダー本部でのきな粉餅禁止と反省文原稿用紙10枚と二宮と加古、堤による勉強会で、明道には反省文5枚と化学の勉強が松山隊(特に武半)主導で行われるようになった。なお、特別顧問として忍田本部長が監視を行うことに決まった。

 

「「い、いやだー!!」」

「「いいからとっととやれ!!」」

 

二人の悲鳴と教師陣の怒声がボーダー中に三日三晩響いたが誰一人として同情することはなかった。

え?時枝君ですか?彼は事件前にいなくなったので無罪です。

 

 

 

「はぁ、勉強なんてしたくない~。なんで勉強しなきゃいけないんですか?」

 

勉強会が終わった後、松山隊には防衛任務があったので警戒区域で任務に当たっていた中、明道が愚痴を始めた。

 

「んあ?そりゃあ勉強しないと将来のためになんないだろうがよ」

「ん~よく色んな人にそう言われるんですけどあんまりピンとこないんですよね~」

『え~そう?私は結構しっくりきてるし、実際そうだったからいいんじゃないの?』

「ん~私前の世界でも勉強ほとんどしなかったんですよね~。でもそれでもそれなりに生活はしてたんですよね~」

「明道先輩そんなんでどんな生活送ってたんですか…?」

「おん?超極悪ヤクザの娘。ちなみに日本にほとんどいなくて海外で麻薬栽培とかしていたから中学校から行ってないかな?」

『「「??!」」』

 

明道の衝撃的な過去に思わず全員が驚愕しその場に立ち止まってしまった。だからその国の言語はしゃべれますよと言っていたが誰も聞いてなかった。

 

「あれ?私なんか言った?」

『「「言ったわ(よ)!!」」』

「わ~お…きれいなノリ突っ込みだね」

「しっかし前世と今世でどっちかまともじゃないやつ多いな。俺と松っちは今世で速水さんと明道は前世か……」

「え?煌さん今世でなんかあったの?」

『そういえばあんまり聞かないね~。武半君の今世』

「あれ?そうでしたっけ?」

「確かに聞いたことないですね。僕らのことは入るときに大体話したんすけど煌さんのことってあんまり聞いたことなかったっすね」

「あ~あんま楽しくねーぞ?」

「え~いいじゃないですか~面白そうだし!」

「つまんないって言ってんのにな……まあ、一言で言うと後悔と危険の連続だな」

「危険は分かりますけど後悔、ですか…」

「え~なんか意外。どんなことがあったんですか?」

『ズバズバ聞くね~芽生ちゃん……』

「いやだってせっかく異世界転生したからいろいろ変えたいって言ってたんで」

「まあ、まず俺が産まれたときにその時難産で母親が死んだだろ、んで小学校入学したらイジメとかで殺されかけて、トリオン兵とかにもその頃から襲われ初めたかな?ボーダーのこと知ってはいたけど結局どこにあるのか分かんなくてやっと探したと思っても旧ボーダーの人たちが死んでいたから一瞬だけ殺されかけた。第一次侵攻の時も参加したはいいけど助けに行ったとこほぼ全員死んでいた。犠牲者とか減らそうと思って参加したのに結局死者数行方不明者数もほとんど減らせなかったからな~。したいこと、やりたいことがほとんど出来なかった。他にもあるが……まあそれは別にいいか」

『「「……………」」』

 

想定外。まさにそのような感じだった。三人ともそれぞれ何かしらのトラウマや重い過去がある。だが彼はその期間が長い。明道も前世と今世の分およそ50年と長いが、本人はその時は不幸と思っていなかったためあまり気にしていないが、武半はこの世界に来てからずっと前世の記憶があり、産まれたときから困難の連続。どうにかしようともがいてももがいてもその手からしたかったことが滑り落ちていく。武半は少しずつ思い出すように話をしていた。なんともないように話しているようだったがそこから喪失感や無力感がひしひしと伝わってきていた。

 

「な?面白くないだろ?」

 

皆が皆、想像以上の彼の境遇に言葉を出すことが出来ず、その日の防衛任務は終わることとなった。ただ、一人を除いて……………

 

防衛任務が終わり解散となったが、明道は武半のもとに訪れていた。

 

「どうした?明道。忘れものか?」

「いや~そうじゃなくってですね、あの~その~少し言っておかなきゃいけないことがあってですね」

「言っておきたいこと……補修か?」

「いや!そうじゃなくて!……あ、それもあるか………」

「あんのかい」

「あっ、えっと、さっきのことについてなの!」

「さっきの……?あぁ、俺の今世か?まあ、あんま気にしてないからそっちも気にすんなや」

「えっとそっちもあるんだけどそうじゃなくて………」

「??」

 

てっきり武半は明道が彼の過去について聞いて不快にさせたのではないかと思い謝罪に来たのかと思っていたがどうやら違うようだった。

 

「大規模侵攻で人を助けることが出来なかったって言ってたけどそんなこと無いと思う。私が……うんん、私の友達が煌さんに助けられたって人がいたから……その、そんな悲しい顔しないでください」

「おう。ありがとな。………ただ、勉強はしろよ」

「あ、はい……今それ言います?」

「言わないと勉強しないからな、お前は。んじゃ帰るぞ」

 

そう言って笑うと武半は隊室を後にした。

 

 

「もー、あの男は……なんかずるいなぁ」

 

明道は四年ほど前の大規模侵攻のことを思い出していた。

普通の日曜日のなんてことない日常が突如崩れ去ったあの日、明道はショッピングモールに部活の友達と買い物に行っていた。一通りの買い物を済ませて帰ろうとしたときに突如大きな音がしたと思ったら空からよくわかんない生物が降ってきた。そしてその生物は無作為に他の人を襲い始めた。明道は昔からサイドエフェクトの影響で目が良かったためそのことがよく見えてしまった。大きな虫みたいな化け物に切り裂かれる人、四足歩行のよく分からない化け物に食べられる人、そしてその化け物に胸を貫かれて捨てられていく人を。

明道は混乱している友達にその光景を見せないようにしながら逃げ続けた。しかし中学生女子の体力で逃げ続けるのには無理があった。とうとう明道とその友人は追い詰められていた。明道は化け物をにらみつけるが化け物…トリオン兵は機械的な行動しか行わないためそんなことに怯む様子は起こさない。もうダメだ。そう思い友達の上に覆い被さり、守ろうとした。しかし、コンクリートの壁すら切り裂く刃の前ではその行為は全くの無駄であった。しかし、その瞬間に奇跡は起きた。突如化け物が真っ二つに切り裂かれた。明道を除く人たちは何が起きたのか一切分からなかったが、明道はその類い希なる視力で捉えることが出来ていた。灰色の軍服のような服をマントとともに身にまとい、右手に日本刀のような武器を携え、左手に光る四角いキューブを持っている人がいるのだった。

 

「大丈夫ですか?!けが人がいる人は直ちに言ってください。すぐに増援が来て避難させます!」

 

それだけ言うと左手から光の球を打ち出して他の化け物に対して攻撃を行い、近づけないように立ち回っていた。すると一人の大人が声を荒げた。

 

「おい!あの化け物達は何だ!!そしてお前は何者だ!!説明しろ!」

「こ、子どもがいったい何をしてるんだ!」

「そ、そうだ!警察を待ちなさい!」

 

その一人の声を皮切りに他の大人が次々に質問を始めた。どう見てもそんなことに答えられる状況では無いはずなのに大人達は声を荒げて質問をし始めた。しかし、戦っている人は一言、「静かに、死にますよ」とだけ言って戦闘を続けておよそ10分程度で化け物を15体ほど倒した後質問に答えるのだった。

その人曰く、先ほどの化け物は近界民と言われる異世界からの侵略者であること。自分はそれらを倒すボーダーであるということ。そして自分たち以外近界民には勝てず、既に自衛隊や警察は壊滅状態にあるとのこと。そのため邪魔をして欲しくない、逃げて欲しいと。そう言うと大人達はそんな馬鹿なといったが、少し離れて現実を見ると街が荒れ果てているのを見て現実を直視したのだ。その後は彼の指示通りに避難を開始するのだった。その人は他のボーダーの人たちに避難を任せて他の場所に行くようだった。

明道はそんな彼にお礼を言おうと近寄ったが彼は「無事で良かった。でも友達を守ろうとしたのは偉いけど自分が死ぬかもしれない状況の時は自分のことを優先しろ。もっといい方法がなかったか考えて欲しい」と言ってどこかに行ってしまった。明道は彼が去るときに目元が赤く晴れていることに気がついた。自分では泣いていないつもりで実際に涙は出てなかったけど彼は気がついていたようだった。彼が言ったことについて避難指示をしている隊員、木崎さんに聞いてみた。

 

「あいつは今日初めて助けに行ったところで生き残りがいたらしい。だから生き残りがいて良かったのと君が危険なことをしていたことに不安を覚えたんだろう」

 

それだけ聞くと自分の行動の浅はかさについて反省するのだった。しかし、明道にはその行動が最善だとしか考えられなかった。でも彼が言っていたことも正しいと思っていた。だから明道はその答えを知ろうと彼の名前を木崎に聞き、ボーダーに行ってその答えを聞こうとした。そのため、入隊募集が始まってすぐ入ろうと思った。

しかし、親から止められてしまい、入るのは高校生になってからと言われてしまった。

そして入隊試験を受け、その結果は合格だった。テストは散々だったが、トリオン量が多かったため入隊は出来たことを知るよしは明道になかった。しかし入隊できたためあのとき助けてくれた彼、武半煌にあのときの答えを聞こうとした。しかし彼と話すこと中々出来なかった。なぜなら彼は広報部隊の嵐山隊所属。忙しく会えない。そのため木崎に頼んで玉狛で会うことにしてもらった。そのおかげか、入隊してからおよそ半年で武半に会うことが出来た。そして、彼の答えは       

 

 

 

「おい、明道。何ぼーっとしてんだ?帰るぞー」

「あ、はーい」

 

気がつくと武半は隊室の前に立っていて明道が出るのを待っているようだった。慌てて明道は返事をして武半の方に行くのだった。

 

「?明道、何か考えてたのか?」

「!……いーえ、何でも」

「そうか?気になるが……まあいいか」

「そうですゾ。乙女の秘密を聞くのはセクハラですからな」

「乙女ね~」

「む?ちょっと失礼じゃないですか?」

「いやなんでも」

「だいたいそういうのは何でも無くないもんですよ」

「それもそっか。すまん気にしないでくれ」

「しょうが無いですな~。今回だけですゾ」

「おう、助かるわ」

 

二人はそのまま帰路につくのだった。明道は武半に言われたことをまた思い出しながら家に帰り、なぜか今日はその日のことがよく頭に残ったことにモヤモヤしながらその日を終えるのだった。

 




いかがでしたでしょうか?
前回に引き続きいっぱい書けました。実際どのくらいの文章量がいいんですかね?個人的には5千から8千程度が好きなんでそんな風に書いてますが実際の所は不明です。
次回の話も構想はできているんでそんなに時間はかからないと思いたい。それでは次回をお楽しみに。


次回「速水菜桜」にトリガー・オン!


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速水菜桜

どうも相変わらず暇じゃない暇人です。
最近FGOでぐだぐだ来たじゃないですか。
もう爆死の爆死で萎えてます。
そんなこんなで久しぶりに投稿します。これが終わったら原作に入るんで気長に待っててくれるとうれしいです。
あ、今回は前回に比べて少し短いです。
それではどうぞー


初夏のある日、ロン毛の長身男とポニーテールの低身長女というアンバランスな二人組が山奥の渓流で手に釣り竿を持ち、各々が釣り糸を垂らしていた。

じりじりとした夏の太陽光が川の水面に反射し木陰の下でもまぶしく、そして暑く感じる。そしてさらに朝から泣き続けている蝉が暑さを増している気がする。しかし川の水が流れる音がさらさらと心地いいように聞こえ、その暑さを和らげている気がする。だがそんないい天気とは逆に糸を垂らしている釣り竿はウンともスンともいわず、そのウキは川の流れに身を任せるだけだった。

隣で釣り糸を垂らしてはすぐに糸を引いて尺には満たないものの、25㎝近くのイワナやヤマメが釣れているのだった。

 

「いやー今日は大量でいいな~」

「東さん、私全然釣れないんですけど~」

「ん?この前のキャンプは速水の方が釣れてたし、それに今日はまだ初日だからこの雰囲気を楽しんでいこう」

「むぅ~もう少し私も釣りたいです」

「はっはっは、だったらウキを丸いのじゃなくてハネみたいのにしてずっとキープさせてみたらどうだ?」

「え?それなんて釣り方なんです?」

「それはミャク釣りってやつだ。本来こういった渓流では浮き釣りよりその方がいい場合が多いんだ」

「ほぉーなるほど」

 

東の助言通りに速水は慣れた手つきでウキを交換し再び糸を水面に垂らした。ウキとは違って常に糸を張らないといけないので思ったより腕がきついようだったが、効果は覿面で少しずつだが釣れるようになった。

そのまま二人は場所を移動しながら釣りを続け、日が暮れるまで釣りを続け、東はイワナ7匹とヤマメ3匹を釣り、速水はヤマメ2匹を釣り上げ今晩のおかずとして釣りキャンプ一日目を終えるのだった。(20㎝以下のサイズはリリースしています)

 

 

 

 

夜、現代日本はどんな田舎にも必ず街灯などがあり、全くの暗闇はない。しかしここは〇〇県の山奥、人の手が一切加わっていない場所では自分たちの焚き火以外の明かりはなく、世界で自分たちしかいないような感覚に陥っていた。そんな感覚から呼び戻すのはお互いの存在とたくさんの夜行性の動物の鳴き声がそんな感覚から呼び戻す。

そんな環境の中で二人は野営の準備をしていた。東さんは今夜寝るためのテントと食器などの準備をし、飯盒でご飯を炊いていた。私は今日釣ったばかりの新鮮な魚を捌き、それぞれ塩焼き、刺身、その辺で適当に採ってきた山菜を交えたホイル焼きを作っていた。

※こちらの山菜は下処理をきちんと行った物なのであしからず。

 

「東さん、出来たので食べましょうか」

「ああ、こっちも米が炊けたから盛っておくぞ」

「あ、ありがとうございます」

 

そのまま二人は夜ご飯を楽しんだ。山菜のホイル焼きも山菜が時期でないかもしれないと若干心配したが、山奥の方ほど春が残っていたためそれなりにいい山菜だったため問題が無かった。だが私からしたら少しいまいちだった。

 

「速水、どうしたんだ?何か悪いものでもあったのか?」

「ん~いえ、確かにおいしく出来てはいるんですけどこの前木崎君に作ってもらったホイル焼きの方がおいしく感じちゃってちょっと不満なんです」

「……いや、確かに木崎の飯もうまいがここ山奥だぞ?あいつほどは難しいんじゃないか?」

「いえ、この前木崎君達と寺島君を運動させようってことで玉狛の側の川でBBQしたんですよ。その時もこんな感じで作っていたんですけどやっぱりそっちの方がおいしく感じてしまって……」

「お前は相変わらず木崎にライバル心燃やしてるな」

「それは当然です。やっぱり女として男に料理負けたくないです」

「まあこれからは男女関係なくとかあるけど速水はそんな感じなんだな」

 

そんなこんなで夕食を楽しみながら時間は過ぎていき、時間は夜の10時を過ぎていた。

 

「ところで東さん、話しって何なんですか?わざわざこんな山奥で話す内容なんてありますか?」

「ん?ああ、忘れていた。そういえばそうだったな」

 

今回のキャンプはいつも行っているようなキャンプ場ではなく山奥で、誘ってきたのは東であり、私に話しがあるとのことだった。それならわざわざこんな山奥に来る必要は無いのだが、東さんがせっかくだから源流行をしながらでもいいか?と聞いてきて、私はそれを了承したのである。

 

「それでいったいなんなんです?あ、これどうぞ」

「おお、ありがとう。実はな……」

 

焚き火を挟み、イワナを入れて即興で作ったイワナ酒を渡し、飲みながら語るのだった。

東さん曰く、お弟子さんの鳩原未来ちゃんがトリガーを一般人に渡すボーダーの規律違反をしただけではなく、本人も近界に逃亡したとのこと。このことは当事者の二宮隊、追撃に出た風間隊、後は師匠である東とたまたまその場にいた兄弟弟子の木崎君だけらしい。なぜそのことを私に話したのかというと、私と鳩原は家が近所でそれなりに交流が深かったため情報を与えて鳩原におかしな行動がなかったのかを聞き、捜索に役立てようと上層部は考えたらしい。ちなみに私は未来ちゃんがボーダーを規律違反で止めたと言うことは聞いていたがよもやそのような無いようだとは知らなかった。

しかし私はスナイパーではなかったため鳩原とボーダーでの関わりはさほど多くは無く、また、日常生活でもあまり変わっている様子はなかったことを伝えた。

 

「そうか、変わった様子はなかったか……」

「そうですね、そんなに変わった様子はなかったかと…」

 

東さんはやっぱりかと呟くと少し気を落としたようだったが、私はそう言えばといなくなる数日前の不思議な状況について語った。

 

「その日の数日前に未来ちゃんを訪ねた人がいましたね」

「訪ねた人?いったいどんなやつだった?」

 

なにか進展があるかもしれないと思った東さんは身を乗り出して聞いてきた。

 

「確か少し明るめの髪の毛で背はある程度大きかったと思います。年齢は20歳くらいの確か男性だった気がします。他にも3人ほどいましたけどフードをかぶっていたので顔とかは分からなかったですね」

「…いや、大きな進展だ。後はそこから探すことが出来るかもしれない。ありがとう、速水」

「いえ、問題ないですよ。………あ、後もう一人いました」

「もう一人?どんなやつだったか覚えているか?」

「確か、青紫色の髪の毛をした仮面をした女性だったと思います」

「仮面?」

「確かしていたと思います。ただ、記憶が曖昧なんです」

「どういうことだ?」

「青い髪の毛の女性かと思ったら丸坊主の男性にも見えましたし、やたらに右腕が大きい人にも見えたのです。その時は気のせいかと思ったのですけどいざ思い出すと自信がなくなってきてしまって…すみません」

「………」

 

 

 

 

 

その謎の人物については何か怪しいものを感じた東だが、今は情報が少なすぎて判断が出来なかったため話しはこれまでとした。しかし、鳩原に協力者がいた情報と、人数や性別などの情報を入手できたのでこれはこれでよしとした。

 

「東さん、あまり気を詰めすぎないでくださいね」

「ん?どうしたんだ急に」

「東さんがこの話をしてからずっと思い詰めているような気がしたので」

「………ばれていたか……」

「それはもう…とてもわかりやすかったですよ」

「ははは、やっぱりか…」

「ここに呼んだのは機密の話しをしたいだけでなく、他の人にみられたくなかったからですね。特に自分の隊の人には……」

「…ああ、あいつらにはこんな姿見せたくないからな。それに、少し愚痴も聞いて欲しかったんだ」

 

焚き火の火を見て、アルコールが回っており今日一日の疲れからか東はぽつりぽつりと語り始めた。

自分はなぜ鳩原のことに気がついてやれなかったのか。なぜ彼女は近界に行くまでに至ったのか。他にもいくつか愚痴をこぼしていた。

 

「俺はどうしてやれば良かったのか…考えても分からないんだ。俺が鳩原に出来たことは何だったのか、もしかしたら俺は気がつかないうちに相談を受け、そしてそれが鳩原のためになることが出来なかったんだろうか、そんなことばかりを考えるんだ」

 

東は師匠として、またボーダー戦闘員の年長者の立場として多くの悩みや相談を受けてきてそれを解決してきた東だからこその悩みだった。

 

「存外他人の意見なんて決断には関係ないのかもしれませんよ、特にいつもそんなことしそうにない人が急に何かをなした時って…」

「どういうことだ?」

 

悩みに悩んでいる東からしたら予想外の答えがきて、少し混乱した東だったが速水は気にすることなく続けた。

 

「私が思うのに人が誰かに話を聞いて欲しい時って自分が考えて悩んだ末に何か他の人からの後押しをして欲しいときに行くものだと思っているんです。…確かに課題とかを他の人に聞いたりして頼ったりはあります。でも、本当に切羽詰まったとき、誰かを危険にさらすかもしれない時は特に人は誰かを頼りません。なぜならそれは一時しのぎでしかないから。根本的な解決にならない以上中途半端な助言や助けは結局本当の助けにはならないことを本能で悟っているから。そして、未来ちゃんのような優しい子は迷惑をかけたくないって思って話しかけづらいのも余計に影響を与えます。だから東さんが悩む必要ってあんまりないのでは?」

「……意外に速水ってドライだよな」

「え?そうですか?」

 

自分の悩みが速水にしたら全く見当違いだった内容に東は少し困惑しつつも納得している部分もいくつかあった。特に、鳩原の性格について考えた上での彼女の決断については。

 

「……そうか、そういう考え方もあるのか、今まで解決とかそれに繋がることを考えていたから盲点だったな……ありがとう、速水」

「いえいえ、この程度だったらいくらでも聞きますよ。まあ私だったら本当に困ったときは東さんとかに聞きますかねぇ?私って基本的にどうでもいいことしか身内に頼らないので本当に頼るときは頼りがいがある人がいいんです」

「……頼ってくれるのはうれしいがそれあんまりあいつらに言ってやるなよ?絶対めんどくさいことになるから」

「ふふっ、分かってますよ。それじゃあ東さん、また明日もよろしくお願いします。おやすになさい」

「ああ、おやすみ」

 

そう速水はにっこり笑うと残っているイワナ酒を飲み干し、テントに戻って寝る準備を進めていた。一方東は火を眺めつつ自分のことを振り返っていた。

もしかしたら自分がしてきたアドバイスはその場しのぎにしかなってなかったのではないか、もっと言うことができたのかなど。だがそれでも鳩原のことに関してはむしろ言わない方がよかったのだと。

しかし一方で速水について、

 

「…あいつって結構天然たらしみたいなところあるよな。この前諏訪も麻雀で「あいつ自分が女なの分かってるようで分かってない発言するんで正直めんどくせーって」言ってたし…まあ、気をつければいいか?」

 

などと自分から女性を誘ったことを全く覚えていないようなことを言っており、テントで寝るときも予算の都合上テントが一つしか無かったため寝顔に少しドギマギしていたのは本人のみぞ知る話しである。

 

 

 

 

 

源流行二日目、二人は昨日より上流に向かいながら今日も釣りを楽しんでいた。東さんは少し寝不足みたいだったけど、渓流の冷たい水で顔を洗ってたから目は覚めてたみたいだから、いつも通りの様子だった。

そして今回の源流行での大目玉であり最終目的地、魚止めの滝。地域や釣り用の雑誌などには別名イワナ止めの滝や狢返しの滝とも言われ、落差はおよそ10メートル、魚はおろか、陸上動物ですら登り切ることは困難なほどに大きな滝が目の前に広がっている。ここは魚が住むことの出来る限界の場所だから、大小含めかなりの魚群が見て取れる。餌となる川虫や小魚もこれ以上上流へ行くことは困難なため必然的に多くの餌となるものも多い、まさに魚の楽園のような場所である。ここで釣りを行うことは釣り人にとっても一つの目標とされるところである。そのような知識を知っていても実際に来てみると大間違いで絶景だった。

 

「さて、今日はここだな」

「そうですねーここに来るのはとても大変なので来れただけでも感無量になりますね~」

「一応今日で釣り自体は最後になるから何匹か持ち帰えるか」

「そうですね、せっかくなので皆にも食べて欲しいですからいっぱい釣りましょう」

「…いや、一人30㎝以上のサイズで5匹までにしよう」

「なぜですか?」

「生態系の保護っていうのもあるけど他に人が来ることを考えると釣りすぎも良くないからな」

「来ますか?こんな山奥に…」

「さあ?」

 

来るかも分からない人への気遣いをしながら開始。今日こそはと思っていたが相変わらず東さんの方がどんどん釣り上げ、あっという間に目標数釣っていた。一方私はは相変わらず釣れておらず、メダカサイズのを何匹か釣り上げただけですよ。……この差ってなんですか?

 

「東さん、どうやったらそんなに釣れるんですか?」

「ん?ああ、俺はいつもやっている感じと同じにやっているからな。スナイパーなら釣りもうまくなると思うぞ?」

「…それ絶対無理なやつです」

「はっはっは、まあ頑張れ」

「む~~」

 

結局私は2匹しか釣る事は出来ず、東さんが暇で余分に釣った魚をもらいその日を終えるのだった。

二日目の夜は昨日釣った分の残りを焼き、簡単に済ませた後少し早めに就寝をして三日目、帰宅を迎えるのだった。

 

「さて、帰るか」

「はい、しかしいっぱい休み取れて良かったですね。おかげでかなりリフレッシュ出来た気がします」

「まあ、速水に聞いた内容の事情聴衆ってことも含めての休暇ってのもあるけどな…」

「え?それ初耳なんですけど…」

「初めて言ったからな」

「………」

 

楽しいはずの休暇が思いも知らないことが目的だったため開いた口が塞がらなかったが、東はクックックと笑っていたのだった。そんな彼の笑いと共に来た道を戻るのだった。

途中で3人の釣り人とすれ違い多少会話をした。一人は麦わら帽子をかぶった高校生くらいの少年、二人目は頭にバンダナをつけた大男、そして三人目はサングラスに帽子をかぶった長身長の男性と、少し異様な組み合わせだったがとても仲が良さそうな三人組だった。釣りポイントについての話を東さんがしていたら麦わらの子が「にしても親子で源流行なんて最高だやなぁ」と言ってきたときは驚いた。どうやら他の二人もそう思っていたらしく慌てて訂正したら逆に驚かれた。確かに私の背は小さいですよ…でも東さんが父親は無理があるのでは?と思ったがやっぱりそう見えるよなーって言っていた。………解せぬ。

そんなこんなで釣りキチ三人組と会話を終えると再び帰路についた私たちは東さんの車に乗り込んで三門市に帰るのだった。

 




いかがでしたでしょうか?
今回は今後に繋げたいちょっとした伏線と完全にほのぼのした回にしてみました。
取りあえずこの次は原作に入るからそのまま大規模侵攻までは原作通りに進めて、それが片付き次第第二のキャラエピソードに入るつもりではいるんで原作に追いつくのは何年先になることやら………
ってなわけでまた次回。

次回「出会い」にトリガー・オン!


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原作
出会い


どうも暇人です。
ワールドトリガー24巻発売おめでとうございます!!
正直めちゃくちゃよかったです。特に草壁隊の面々が尊かったです。

そんなわけでやっと原作に入りました。
ここから設定に本編で明らかになったことをちょいちょい追加していきたいと思います。多くなりすぎたら2つに分けます。
あと原作前にしていた章管理を幕間の物語にしました。理由?その方がいいと思ったからさ!

それではうん、楽しんでください。



12月の始め、世間はクリスマスモードとなっていたが、ボーダーは絶賛大きな問題を抱えていた。それは警戒区域外で突如と発生するイレギュラーゲート。今のところは付近にボーダー隊員がいたため大きな被害は受けなかったが、いつそれが隊員のいないところで起きないか分からないため、ボーダーでは緊張が走っていた。特に現在はA級上位部隊が遠征に行っているため戦力的に不足していたこともあってか、早急の対策が求められていた。そのため非番の隊員にも常時警戒せよとの通達があり、不審なものを見かけたら即対処せよとの通達も来ており、暇な隊員は見回りをしている人も多少ながらいた。そんな隊員の一人が松山隊の武半だった。

 

「いや~イレギュラーゲートの季節になりましたな~」

 

右手にコーヒーの缶を持ち、三門市を一望しながら独りごちるのだった。他の人が見たらそんな季節あってたまるかと突っ込みを入れるのだがあいにくこの場には彼一人しかいないのでそのようなことを言う人は誰もいなかった。そうしていると突如通信が入ってきた。相手はあのマッドエンジニアだった。

 

『イレギュラーゲートが開いたがお前は今どこにいる?』

「今は三門市立第三中学校の側にいるんでそっちのゲートは難しいっすね。他に誰かいますか?」

 

自分のいるところの反対側でゲートが開いたようだったがここからでは本部基地から行った方が早く到着するので他の人に頼むことにした。

 

『んぁー香取隊が防衛任務に就いておるから奴らに任せる。それで、お前はそんなところで何をしとるんじゃ?』

「あーイレギュラーゲートってことはほぼ間違いなくラッドがいるはずなんでそろそろ彼が来るかもしれないと思って暇なときはこの辺ぶらついてるんです」

『……そういえばそんな時期か。忙しすぎて忘れてたわい』

「って訳なんでこれで失礼します。緊急の要件があったらまた連絡ください」

『分かった。ただ、くれぐれもばれないようにしろよ。というより話しかけたら負けだからな!』

「はいはい了解しましたよ」

 

武半達が言っている彼とは原作主人公の空閑遊真のことであり、彼は初登場で事故を起こしているのであわよくば止められないかなーと思い武半は見回りをしているのだ。だって運転手さんかわいそうじゃん?事故起こしても怪我一つ無い相手とか軽く恐怖じゃん。余談だが武半の授業は午後からなのでこの時間帯は問題がないのだ。

ちなみに二人ともイレギュラーゲートの原因について知っていて、対処法まで知っているが、彼らは一切報告していない。理由は二つある。一つ目はこのイベントを解決してしまうと原作主人公の一人、三雲が正隊員になれない可能性が出てくるのだ。実際三雲はラッド捜索のおこぼれ的なもので正隊員になったのでこれがないと大規模侵攻に間に合わないどころか最悪学校のゲート事件で首になりかねない。そのため彼らは泣く泣くこのイベントをスルーすることにした。そして二つ目はラッドを未だに見つけられていないからだ。見つけられないことには対応も糞もないので放置することにしたのだ。

 

「さて、現在の時刻は午前9時半か……どのくらい遅刻してんのか分からんからなんとも言えんが今日もいないか?」

 

一般の中学校だったらとっくに学校が始まっている時間を過ぎているが一向に白頭の少年が来る気配は無い。今日も外れかと思い立ち去ろうとしたときに突如、

 

「遊真!!」

 

と名前らしきものを呼んだ後に車のブレーキ音と大きな衝突音が聞こえた。内心驚きながらももしかしてと思い音のする場所に行くとそこにあったのは前方が大きくへこんだ車と加害者であろう慌てふためくその持ち主、そして多分被害者の白髪の少年とその付き添いのようなこちらも白髪の男性。内心全く知らない白髪の男性に驚きつつも取りあえず警察と救急車を呼び、大丈夫ですかと声をかけながら現場に向かった。

 

「あ……ほ、本当に、もうしわけない。だ、大丈夫かい??」

「大丈夫。怪我なんか無いから安心してください」

「い、いやっ、そんなわけ。だって車にはねられてんだよ??無事なわけ……」

「いえいえ本当に大丈夫だって」

 

運転手はけっこう慌てている様子だったが、一方ひかれた少年は≡3≡のような顔をしながら全く問題ないようだった。取りあえず自分が警察と救急車を呼んだことを伝え、しばらく待つように頼んだ後白髪の少年に話を聞くのだった。

 

「ところで君、本当に大丈夫なのか?車のへこみ具合から結構勢い強そうだけど」

「全く、俺は何回大丈夫だと言ったらいいんだ?それに、俺は君なんて名前じゃ無いぞ」

「おっと、失礼。俺は武半煌、19歳の大学生だ。まあ、好きに呼んでもらって構わんよ」

「ふむ、ではキラさんと。俺は空閑遊真。遊真でいいよ」

「では私もここで自己紹介を。私は空閑景虎。年齢は遊真が15で私が18です。まあ好きに呼んでください」

「じゃあ遊真に景虎か。よろしく頼むよ。名字が同じってことは二人は兄弟なのか?」

「ええ、まあ実の姉弟ではないのですがまあそんなところです」

「…景虎って女性なのか?一人称私だから…」

「ん?ええ。こんな見た目ですが私は女ですよ」

「……すみませんでした」

 

原作にはいなかった空閑景虎という存在。髪が短く身長も女性にしてはやや大柄だったので気がつかなかったため土下座までとはいかなかったが全力で謝罪した武半だった。ちなみに空閑が相変わらず景虎って間違えられるよな、と言っていた。

そんなこんなで警察が到着し、事情聴衆などが会ったのだが、遊真本人が大丈夫だと言い張り、謝罪と言うことでその場は解決となった。その後すぐに遊真は学校に遅れると言い、学校に向かうのだった。遅刻の理由などを学校などに連絡したのかと聞いたらしてないらしく、携帯なども持っていないとのことなので自分の携帯を使わせて連絡をさせたのであった。また、その証人として来いと言われたのでそのまま二人についていくことにした。

 

 

 

 

 

「そういえば遊真達は何で三門市に来たんだ?親の転勤かなんかなのか?」

「ん?なんで俺たちが別の所から来たって分かるんだ?」

「確かに。私たちどこから来たとか言ってないですよ?」

 

遊真の真偽を確かめる目の圧が強い。確か嘘を言うと反応するサイドエフェクトがあるんだっけか?こりゃ怖いわ。下手なこと言って怪しまれても面倒だな。

 

「ああ、まずこの時間帯に中学生が道ばたにいるのがおかしいのとそもそも付き添いがいるってのも気になったんだ。それに、職業柄三門の人とはよく話したりもするんだが二人みたいな綺麗な白髪は子どもだとまずいないからな」

「確かに。俺たちの所も髪が白いのはじいさんばっかだったからな。疑ってしまって申し訳ない」

「職業柄ということは其方の職業は警官かなにかですか?」

「いんやあそこに見えるボーダーの基地が見えるだろ?俺はそこの隊員だ。B級松山隊の武半煌、近界民退治はお任せってね」

「ほう!これはこれは其方はボーダーの隊員でしたか!それでは是非とも手合わせ願いたいものです。後でどうです??」

 

景虎からの圧が強い。…ってか怖い。

 

「…いやいや近界民って言ったよね?!まあ、近界民も誰構わず倒すつもりはねーな。街に被害が出ない限り俺は基本スルーする。まあ、これ言うと指令に怒られるから言わないんだけどね」

「ふむ、じゃあキラさんに聞きたいことあるんだけどいい?」

「ん?まあ答えられる範疇なら」

「あのさキラさんって「遊真」……景虎……」

「すみませんね煌殿今のは無かったことにできませんかね?」

「…まあ構わんよ。いいときになったら教えてくれ」

「キラさん、誠に申し訳ない」

「いいってことよ。ほれ学校着いたぞ」

「おっと、ではまた今度。景虎、行ってきます」

「またな」

「ええ、いってらっしゃい」

 

遊真と別れた後、景虎と武半は学校から離れるのだったが少し聞きたいことがあると武半は景虎に声をかけると奇遇ですね私もですと言い、二人は近くの人気の無い神社に行くのだった。

 

 

 

 

 

 

「さて、聞きたいこととは何ですか?」

 

笑っているのに笑っていない。景虎からなんともいえない不気味な気配がし、空気がピリピリするのを感じる。そんな重圧の中武半は口を開いた。

 

「なあ景虎、お前、転生者だろ?」

「あははははは、あいにくですが遊真を危険にさらすことはできないのでここで排除させて……え?今なんと?」

「景虎って転生者だろ?」

「……何故気づかれましたか?」

「俺も転生者だからだ」

「……なんと!其方もでしたか!」

「ああ。おまけにこの世界についてよーく知ってるよ。だから正直空閑を俺は見に来たんだ。そしたら景虎がいた。君は本来いない存在だから転生者の可能性が非常に高かった。だから聞いたんだ」

 

自分が分かった理由を話すと景虎はなるほどとうなずき、自分のことについて語った。彼女は二つの人格が混ざっており、一つは武半達と同様に死んで神様ガチャによりこの世界での生を決められたこと。二つ目の人格はその時の特典で景虎の元となった人間が知っていたゲームのキャラからランダムに選ばれた人格が混ざったことによって産まれた存在であること。前世の記憶がほとんどない代わりに特典で得た人格の知識がほとんどを占めているとのこと。そして近界で産まれ、旅の途中で遊真に会ったこと。そこでも冒険などいろいろなことを聞いた。

一方で武半もこの世界のことや他の転生者達について話した。特にこれから起こりうる内容について。

 

「なるほどこの世界は其方からしたら本の世界ということですか。いささか不思議ですね」

「まあ、俺を含め絶対他の転生者の影響でいくつか既に原作ブレイクしているから今更だけど、大体のあらすじを変えてまで変えたいとは思っていなくてね。できることなら協力して欲しい」

「うーん、できることならお願いしたいのですがそもそも私たち近界民ですし、ボーダーから敵視されません?」

「あーまあ急に現れたら攻撃されるかもしれないけど俺や親近界民派閥の人もいるからその人に話をつけてもらうしかないな」

「なるほど、ではここで其方に会えたことは僥倖だったということですね」

 

よかったよかったと笑顔で語る景虎を見ながら武半も無事に原作主人公達と関わるきっかけができたことに対して内心興奮しながら語り合うのだった。

気がつけばもう太陽は空の真ん中付近にあり、小腹が空いた頃柿崎から電話があり、今日の午後の講義だが急遽休講になったそうで、一日の予定が頓挫してしまったので景虎と連絡を取ることができるようにするためご飯を食べに行くついでに携帯ショップに行って携帯を購入するのだった。その時に景虎がすまあとふおん言うのですねこのような板で会話がでいるのは実に不思議ですと言っていて、若干店員が引く事件が起きたがそれはまた別のお話。

 

 

 

 

 

 

 

景虎と連絡を交換した次の日、大学の午前中の講義が終わり、防衛任務に就いていた武半。イレギュラーゲートは相変わらず開き続けているため防衛任務はいつもより警戒区域周辺に割り当てられていた。しかし警戒区域のすぐそばでゲートが開くことはなかったため一部隊員からは不評だった。そう、松山隊の特攻娘だ。

 

「はぁ、なんでわざわざ警戒区域ギリギリでやるんだろう?戦いにくいじゃん」

「そんなこと言わないでくださいよ明道先輩。もし僕たちの側でゲートが開いたときに間に合わなかったら大問題なんですから」

「ん~言い分は分かるけど私みたいなとにかく前に突っむ系は広い方がやりやすい。だからギリギリはやだ。壁際には悪魔がいるってモ○ハンで学んだ」

「いったいいつの話しですか…」

『壁際の悪魔はすごく前だね~。芽生ちゃんひょっとしてその世代?』

「いえ、住処にあったのがたまたまそれだったのでそれしかやったことなかったです。たまに町中歩いて新作情報見て何これって思いました」

「海外にもPG2あるの不思議ですね」

「そんなことより集中しろよーいつ来るか分からんからなー」

「そんなリラックスした感じで言われても困ります」

 

はっはっはと笑いながらくだらない(?)談笑をしながら任務に就くのだったが、午後1時6分突如として警報が鳴り響いた。場所は……

 

『三門市立第三中学校にイレギュラーゲート発生!付近の隊は直ちに急行せよ、だって!』

「第三中ってここからすぐそばじゃないですか!」

「私先に行きます!」

「せ、先輩!?」

「行け!すぐに追いつく!」

「はい!」

「き、煌さん……」

「すまない、あいつに行かせた方が早かった。もうしない」

「い、いえ、俺の判断が遅いだけです。くっ、こんなのじゃ鱗滝さんに殴られます。判断が遅い!って」

「悔やむのはいいが後でだ。頼むぞ隊長」

「はっ、はい!」

 

松山の割とどうでもいい部分は一切触れずに必要な最小限の謝罪と励ましをして二人は現場に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

三雲修は自分の力の無さに愕然とし無力さに歯をかみしめた。狭いところの優位性、わずかとはいえ地の利があるから正隊員が来るまで待つ、なんて浅はかな考えはとっくに打ち砕かれた。敵の腕のようなものを何本か切り落とすことはできたが隠されていた腕に気付かずにやられてしまった。空閑の言うとおりだって言うのか…C級隊員の僕の力じゃ………!

そんな彼の思いとは無関係に近界民、モールモッドは無慈悲にそのブレードを振り下ろした。しかし三雲にそのブレードが当たることはなかった。なぜなら……

 

「悪いなオサム、お前のトリガーちょっと借りるぜ。トリガー・オン」

 

三雲の目の前には白髪のクラスメイト、空閑がいた。いつ取ったのかは分からないが自分のトリガーを持っていることに驚いた三雲だったが空閑はお構いなしに戦闘を始めた。

モールモッドは持ち前のブレードを縦横無尽に振り回し、敵を排除しようと動くが、空閑はその挙動を全て見切っており、捌ききっていた。しかし、三雲のトリガーは訓練用。とてもじゃないがトリオン兵最高硬度のブレード相手には分が悪すぎた。みるみる刃こぼれをし、今にも折れそうなくらいに傷ついていた。三雲もそのトリガーが訓練用のため止めようとするが、空閑は聞かずに素早い動きで前足を切断し、狭い廊下で動きがとれないのをいいところに弱点である内臓から目を一閃した。

そして二体目が登ってきた瞬間、空閑も反応して斬りかかろうとしたところで状況が変わった。

トリオン兵は目にも止まらぬ高速斬撃で沈黙したからだ。

空閑はすぐにトリガーをオフにし、三雲に渡したことでばれてはいないようだった。

 

「ごめん!遅れました!大丈夫?怪我はない!?」

 

次々に質問されて答えるのに手間取った三雲だがけが人はおらず、自分も無事だということも伝えた。そして自分がC級隊員であり、無許可でトリガーを使用したことも……

しかし明道と名乗ったボーダー隊員はそのことはこれから隊長とか仲間が来てから決めるから今は気にしなくていいよと言われ、取りあえず空閑を助けたふりをして校庭に向かうのだった。

 

「無事だぞ!」

「逃げ遅れたやつもいっしょだ!」

「やっぱりボーダーかっこいい!」

 

などと三雲と明道に数多くの賞賛が浴びせられていた。明道は賞賛そっちのけで教員と生徒数などの確認を行っていたため三雲の方に賞賛が集められ、居心地悪そうにしていた。空閑は話しを盛るに盛って収集がつきそうにもなかった。ちなみに明道は足し算に戸惑って先生を困らせたのはその場にいた教員とオペレーターの速水のみぞ知るのは別の話。

 

そうしていると松山隊のメンバーと嵐山隊(佐鳥はいない。多分どっかにいる)が学校に到着した。嵐山は弟と妹の安全を確認しに行き、時枝はトリオン兵の回収と現場調査を行っていた。松山は若干頭がショートしている明道の手助けに行っていた。武半と木虎は今回の功労者である三雲と話しをするのだった。

 

「明道から聞いたけど君が近界民を倒してくれたC級隊員だね?」

「…はい。他の隊員を待っていたら間に合わないと思ったので自分の判断でやりました」

 

三雲は自分が侵した罰則について理解しているつもりだったがいざこの場で判決を言い渡されるのだと思うと少し緊張している様子だった。

 

「そうか…すまない。そしてありがとう」

「え?」

 

三雲は突然の謝罪と礼に驚いていた。空閑からも褒められたじゃんと横から口を挟んできた。

混乱している三雲に対して武半は言葉をさらに付け加えた。

 

「確かに君がやったことはボーダーの規律違反をしている。でも、それを守っていたら他の人が死ぬかもしれない。そこで自分の命と他者の命を天秤にかけることはとても難しい。その状況で動くことができる人間は強い人だ。俺はそんな人を責められるほど偉い人間じゃないからな。まあ、俺個人としては命は大切にして欲しいけどな」

 

そう言って強く三雲のことを責めることはなかった武半だが、木虎は反発をした。

彼女曰く、規律違反をした者は組織の規律を守るため、ひいては三雲のように真似をする者が現れないようにするために処罰すべきだと反論した。

しかしその意見を一蹴したのは空閑の一言だった。

 

「遅れてきたのに何でえらそうなの?」

「……誰?あなた」

「オサムに助けられた人間だよ。日本だと人を助けるのにも許可がいるのか?」

 

空閑の核心を得た一言に嵐山達ははっとしたが木虎は勝ち誇ったようにトリガーを使わなければねと答えた。しかし空閑にトリガーは近界民のものということを告げられ、近界民に許可を取っているのかと聞かれ、苦し紛れに反論した。しかし自分が、三雲が褒められていることに嫉妬しているのがばれ、恐怖を覚えた。

それに付け加え、空閑からおまえは間に合ってないのにとやかく言う権利ないと思うし、助けに来てくれたあけみちさん?ならともかくおまえは文句言えないんじゃない?と。

これだけ言われ、木虎のメンタルが若干ボロボロになっていたところで武半が口を開いた。

 

「まあ、落ち着けよ木虎」

「武半さん……」

「彼が言っていることは全て正論だよ。いの一番に駆けつけたはずの明道が間に合ってないんだ。ボーダーでトップレベルの機動力をもつあいつが間に合わない段階でボーダーは間に合うことができない。もし間に合わずにけが人や死者が出たのなら記者会見じゃすまなくなる。そうなったら俺たちはこの街を守ることができなくなるかもしれない。……それを防ぐことができただけで御の字なんだよ。三雲君の処罰はその後上が決めればいい。だよな嵐山」

「なるほど!武半の言うとおりだ!今回のことはうちの隊から報告しておくけどいいか?」

「あーいいぞ。多分松っちじゃまだこういうのなれてないから頼んだ」

「了解だ。じゃあそんなわけで三雲くん。君は今日中に本部に出頭してくれ。処罰が重くならないように力を尽くすよ。妹と弟を助けてもらった恩もある。本当にありがとう」

 

嵐山は爽やかに三雲に礼を言い、握手をしてから学校を後にした。木虎は三雲を本部まで同行させることを目的に再び中学校へ向かうのだった。

一方松山隊は防衛任務を他の隊に引き継いだため軽めの反省会をしてから解散をした。

 

 

 

 

 

はずだったのだが……………

 

「おいマッド……なんで俺はこんな所に行かされてるんだ?」

『黙ってそのキューブを指定の場所に置け!安心しろ!許可は取ってある!!』

「…普通のことなのに珍しいと思った自分が悲しくなってくる……で、これ何なの?」

『しばらくしたら分かる!いいから置け!何のために東や諏訪達にも置かせたと思ってる!』

「あんたあの人たちにも頼んでたのか……さて、これで最後だな。言われた通りトリオンを入れておいたけどこれでいいのか?」

『ん?おお!問題ないでかしたぞ!今度一緒に新トリガーを開発する権利をあ「いらねーよ!」……むぅ、つまらん。まあいい取りあえずもうお主の仕事は終わりじゃ。もう帰っていいぞー』

「軽いなおい。まあ取りあえず終わったのならいいか。もうトリオンもないから戦えないけどいいか?」

『構わん構わんぞれじゃ期待しとけー』

 

謎のキューブを地図に示された場所に置き一方的に通信を切られた武半は軽くため息をついて帰宅するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この装置が起動するまであと1時間!!

 




いかがでしたでしょうか?
原作に入ると少し書きやすくなっているのが不思議です。まあ、次話は大分先になるけどね!!
できれば今年中にもう一話進めたいなーなんて。
ちなみにPG2はplay game2ndの略です。

それでは次回「バリアー炸裂!!川の上の決戦」にトリガー・オン!


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