新しき<剣帝>の軌跡 (kohac)
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序章
序章



誤字、幼稚な文だったり、このキャラそんなのじゃないとかは
優しめにご指摘いただけると嬉しいです。

初めてですがよろしくお願いします。


序章 プロローグ

 

 

ーーーゼムリア大陸。その大陸の西の国エレボニア帝国と、東の国カルバード共和国の間にある

クロスベル貿易都市。クロスベルの町でいま、ある話題で盛り上がっていた。その内容は、今年

の夏ごろに完成する、オルキスタワーのことである。世界初の地上四十階の高層タワーは、クロ

スベルだけではなくゼムリア大陸中をも驚かせた。そんな、完成に向け建造されているタワーか

ら少し離れたビルの屋上から、ビルを眺める一人の少年がいた。

赤地の服を着た黒髪の青年は、右腰に片手剣を、左腰には刀を携えていた。ふと、持っていた腕

時計を青年は横目で見るとーーー

 

 

 「やべっ!そろそろ列車が駅に着く頃じゃねえか!!」

 

 

今日は七耀暦1204年、3月30日で時計は、もうすぐ10時になろうとしている。この列車

を逃すと翌日の朝に目的地に着けなくなるため、青年は慌てて足元に置いていたバッグを持って

クロスベル駅へと向かった。

出発寸前で列車に乗り込めた青年は、肩で息をしながら近くの座席に座った。荒れた息を整えな

がらひと月前の、彼の目的地である、エレボニア帝国帝都近郊都市トリスタへ行くことになった

発端を自身の赤地の服を見ながら思いだしていた。

 

 

ーーーーーー

 

 

 「ーーーフライベアくん、トールズ士官学校って知っているかい?」

 

 

トールズ士官学校ーーーエレボニア帝国に住む人ならば、誰もが知っている程の有名な士官学校

だ。その話を、たった今、活動を終えアジトに戻った俺にしてきたのは、自分よりも若く見える

緑髪の少年だった。

 

 

 「ああ、もちろん知っているが・・・どうかしたのか? カンパネルラ。」

 

 

 「その、士官学校に階級制度を無視した新しいクラスが発足する、ってことは?」

 

 

 「っ!!」

 

 

フライベアは自分の耳を疑った、それもそのはずである。エレボニア帝国内は階級制度は存在し

ており、貴族派と平民の革新派との水面下の争いが絶えないのが現状である。それなのにーーー

 

 

 「・・・で、お前のいう新クラスの発足で何かあるのか?」

 

 

なんとか、動揺を抑えきり、カンパネルラの真意を探りながら返すと、

 

 

 「もちろんっ、そこへ君に入学してもらうからだよ。」

 

 

 「・・・・・・はぁ?冗談じゃないぞ。大体、俺は19だぞ。新クラスには、

 入学なんてできないぞ?」

 

 

 「大丈夫だよ、君は16,7に普通に見えるし、根回しも、やってあげるしさ、

 それに、例の計画のためにもなるからさぁーーー」

 

 

 「そういうわけじゃなーーー」

 

 

 「ーーーそこまでです、フライベア」

 

 

カンパネルラに反論をしかけたとき、自分の背後から凛とした声に振り向くと、アジトの入り口

に一人、人が立っているのが見えた。逆光で眩む目を細めて見ると、風でたなびくブロンドの髪

と、光を反射する白銀の鎧と、鉄仮面が見えた。瞬間、フライベアは無意識的にその人物の名を

漏らしていた。

 

 

 「・・・<鋼の・・聖女>・・・・・・アリアン、ロード・・・。」

 

 

彼女はフライベアの声に反応したのか、ゆっくりと彼に近づき、そして不思議なほど透き通った

声で、

 

 

 「いい機会ではありませんか。そこで自身を磨いてみてはどうでしょう?あなたは

 唯一、私の鉄仮面を外させた者なのですから。」

 

 

 「あれはまぐれですって、しかもあれはーーー」

 

 

 「謙遜することはありません。また、手合わせをしてもらいたいものです。」

 

 

 「・・・はぁ。」

 

 

これで何回目になるだろうか・・・。彼女の誘いは日を追うごとに回数を増している。また手合

わせに誘われてはたまらないと、フライベアは今のやり取りを見て笑いをこらえているカンパネ

ルラに話を振った。

 

 

 「エレボニア帝国には第二柱がいるだろう。俺が行く必要はないだろう?」

 

 

 「フライベア」

 

 

フライベアの願いはアリアンロードの無言で一蹴された。観念したのか両手をあげて首を大きく

左右に振ると、

 

 

 「・・・わかったよ。いきますよ、そのⅦ組へ」

 

 

 「やっとわかってくれましたか。では、近いうちに手合わせしましょうね。それと、トリスタ

 といいましたか?いずれあなたに会いに行くかもしれません。」

 

 

 「か、勘弁してくれ。」

 

 

とうとう堪えきれなくなってのか、大笑いをしているカンパネルラはしばらく笑い続けたが笑い

終えるとフライベアの前に立って、右手を差し出してはっきりと告げた。

 

 

 「ーーーそれじゃあ頑張ってね。執行者NO.ⅩⅦ<新・剣帝>コーネリア=フライベア」



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Ⅶ組特別オリエンテーション -再会ー

なんやかんやでボリュームが出てしまった。今回は特別オリエンテーションでダンジョン探索
前までです。

誤字、幼稚な文だったり、このキャラそんなのじゃないとかは
優しめにご指摘いただけると嬉しいです。

初めてですがよろしくお願いします


『ーーーぎは、トリスタ。次は、トリスタです。お降りの方は荷物等の忘れ物が

 ございませんよう気をつけてください。』

 

 

 「う・・ん・・・、トリスタ、か・・・もう着いたのか・・・。」

 

 

回想の途中で、寝てしまったのか列車内に響くアナウンスで、フライベアは目を覚ました。寝起き

で霞む目を細めながら周囲の座席を見渡すと、出発時と比べ、多少は人がいるものの自分と同じ服

装は無かった。大きく背伸びをして、列車から降りとぼとぼとトリスタ駅から出ると目の前に広が

る景色にフライベアは、意識を覚醒させると同時に思わず声を漏らした。

 

 

 「へぇ~~~」

 

 

街中に咲き乱れ、舞い散る花びらは朝日を浴び、白く輝いていた。街の奥に目をやると大きな学校

ーーートールズ士官学校が見えた。しかし、いまそこへ向かう人影は一つも見えない。フライベア

は近くにあった時計を見つけると、大きめのバッグ片手に走り、時計を見ると時刻は9時56分ー

ーー入学式は、既に始まっていた。

 

 

 (まただよ・・・)

 

 

そう内心で漏らしつつ、フライベアは本日二回目の全力疾走でトールズ士官学校へ走って行った。

トールズ士官学校前の坂を上がると、校門の前で立っている小柄な少女にフライベアは驚いた。

 

 

 「フ、フィー!?」

 

 

フライベアの声に反応したのか、少女は首をかしげながらこちらに振り向くと、フライベアに気付

いたのか少し慌てて走ってきた。彼女の髪が銀髪ではなく、栗色でいることに気づきフライベアは

内心で思わず、やってしまったと思った。

 

 

 「新入生の、Ⅶ組の生徒だよね!もう入学式終わっちゃうよ、急ーーー」

 

 

緑色の士官制服を着た少女の頭を、フライベアは無意識的に撫でた。急に頭を撫でられてからなの

か顔を少し赤くして、黙り込んでしまったところで自分がしていていることに気づき、すみません

、と彼女の頭から手を離した。

 

 

 「・・・そんなことされると、女の子は勘違いしちゃうからね、気を付けてね?」

 

 

 「・・・はい、気分を害したのなら本当にすみません。」

 

 

見ず知らずの人にいきなり頭を撫でられたのが、恥ずかしかったのかは分からないが下を向いたま

ま、いつもされるけど撫でやすいのかなぁ、私、と漏らしていると

 

 

『ーーー上、解散。』

 

 

マイクでの放送があると、左手奥の講堂から次々と士官制服を着た生徒が出たきた。しかし、彼ら

の士官制服は白や緑で、彼と同じ赤色の士官制服を着た人は一人も出てこない。その様子を一緒に

見ていた少女は、

 

 

 「入学式終わっちゃったね・・・、ところで、自己紹介まだだったね。私はトワ。

 トワ=ハーシェル、トールズ士官学校の生徒会長をやっているの、よろしくね。」

 

 

 「俺は、コーネリア=フライベア。ベアって呼んでください。」

 

 

 「よろしくね、ベア君。早速だけどベア君のバッグを学生寮に持っていくから預かるね。」

 

 

フライベアのバッグを持つためにこちらに近づくトワを、片手を出してフライベアは止めた。

 

 

 「大丈夫です、トワ会長。自分で運びますよ。こいつはかなり重いので。」

 

 

まさか、遠慮されるとは思っていなかったのだろう。トワは少しびっくりしている。

 

 

 「な、なんで?もうすぐⅦ組のオリエンテーションが始まるよ?」

 

 

 「これを持った会長がもし、転んで怪我でもされたら私が嫌だからです。」

 

 

この後、どうしても持っていく、の一点張りするトワをなんとか説得し、バッグを第三学生寮にフ

ライベアは、トワに手を引かれトールズ士官学校の奥にある旧校舎に案内された。ここでⅦ組の特

別オリエンテーションがある、と説明され説明が終わった後、「それじゃあ、頑張ってね。」と応

援をされた後、何か嫌な予感を感じながらその校舎の扉を開け、中に入った。外見は古めかしく、

ぱっと見、廃墟に見えたものの、中は一応管理されていたらしく、ほこりやカビ臭さは感じられな

かった。そんな中、今いる薄暗いフロアに若い女性の声が響いてきた。

 

 

 「やっときたわね。」

 

 

二週間ぶりに聞くその声に、フライベアは警戒を解き、奥から出たきた赤髪の女性に返事をした。

 

 

 「二週間ぶりですね、サラさん。」

 

 

 「あなたの事だからサボるんじゃないかと思ったわ。・・・お帰りなさい、ベア。」

 

 

 「ーーーただいま、サラさん。そして、これからよろしくお願いします。」

 

 

お互い、数秒抱擁した後、今後の説明を受けた。特別オリエンテーションは穴を降りたところ

からダンジョン区画を抜けてここに帰ってくる、ということ、トールズ士官学校<Ⅶ組>への

入学を決めた時にもらった導力機ーーー戦術オーブメントと、それにセットする結晶回路<ツ

ォーク>のこと、導力魔法<アーツ>について、あらかた説明が終わるとサラーーーサラ=バ

レスタインは一息つくと、別の話を振ってきた。

 

 

 「しかし、よくトールズ士官学校に入学する気になったわね。しかも、《ARCUS》の

 適合者だったなんてね。」

 

 

カンパネルラの工作活動と根回しのおかげで、フライベアが適合者になっていることはサラが

知る由もない。俺は、あまり言われたくないことに、「あははは・・・」と苦笑いしてしまう。

そんな彼にサラは衝撃的な情報を出してきた。

 

 

 「そうそう、Ⅶ組にフィーも入学したわよ。」

 

 

 「っっっ!!!」

 

 

ーーーフィ=クラウゼル。今、何をしているのだろうと、気になると同時に、今一番会いたく

ない存在だった。

 

 

 (フィーは、まだ恨んでいるんだろうな・・・)

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

フィーとの別れたいの日のことは忘れられるはずがなかった・・・今からほぼ三か月前の事で

ある。猟兵《イェーガー》と呼ばれる、傭兵の集団のツートップ、『闘神』が率いる『赤い星

座』と『猟兵王』が率いる『西風の旅団』が衝突した。その時、両団長が一騎打ちをし、結果

相打ちし、両団長は死んだ。その結果、『西風の旅団』は解散という形となった。それまでの

一年半ほど、フライベアとフィーは一緒にいた。お互い実の親の顔を知らなかったためか、二

人はすぐに打ち解け仲良くなり、自他ともに、兄妹、と認めるほどになった。

しかし、あの日俺らは、サラさんにトールズ士官学校に来ないかと誘われた。フィーは行く当

てもなかったためサラさんの提案に乗ったが、俺はそれを断った。 俺はまだ修行しなければ

ならないからと、そういい終わるか否か、お腹に鈍い衝撃が走った。自分の視線を下へ向ける

と、溢れんばかりの涙を両目に溜めたフィーが見上げていた。

 

 

 「---だったら、私も、ベアについて・・いく。」

 

 

 「ーーー駄目だ。フィーはサラさんと一緒に行くんだ。」

 

 

 「・・・いやだ・・いかないで、ベア・・・」

 

 

いつもなら、ここで俺が折れるところだが、今回ばかりはそうはいかない。フライベアは心を

鬼にしてフィーに一言、言い放った。

 

 

 「今のフィーでは、正直足手まといなんだ・・・だから・・・無理だ。」

 

 

 「・・・・・・もういい。・・・嘘つき・・・。」

 

 

そう言って、一人走り去ってしまうフィー。どうすべきか分からず軽くおろおろしているサラ

に、フィーをお願いします。と、告げて俺はその場を去った。そのあとどうなるかも知らずーーー

 

 

 -------------------

 

 

 「ーーーそれじゃあ、頑張ってね。」

 

 

そう言われて、送り出された俺は目の前の穴にジャンプする。穴の中は坂になっておりしばら

く滑ると、地下一階に着いた。前には扉が開けられておりとりあえず、そこへ行こうと一歩歩

き出したとき、銃が構えられる音が聞こえた。ゆっくりと音のなるほうへ振り向こうとした時

懐かしい声が聞こえた。

 

 

 「・・・ベア。今からベアを追い越すから・・・」

 

 

 「・・・・・・フィー。」

 

 

そこには、先程フライベアと話していたトワほどの小柄な少女で、銀髪のーーーフィーが鋭い

目線を送りながら、双銃剣を構えていた。

 

 

 




次回から、バトルが入ってきます。正直うまく書けるか不安です。
最初のバトルがフライベア対フィーは考えていませんでしたが
まぁ、いいかなと思います。

読んでいただきありがとうございます。
次回で序章が今のところ終わる予定です。


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Ⅶ組特別オリエンテーション ーⅦ組結成ー

 「へぇ~、フィーが俺を越える?・・・やってみろよ、相手してやる。」

 

 

 「ーーーうん、全力で行くよ!!」

 

 

そう言うと、フィーは双銃で連続射撃をしてくる。フライベアは、背後にいるフィーから距離を

取りながら振り向き、飛んで来る銃弾をその場で躱し続ける。フィーはフライベアがその場から

動かないと知ると、連続射撃の速度をさらに上げ十発ほど放つと入魂した一発を打ち出した。そ

れまで、フライベアの全身を狙っていた銃弾が突然、フライベアの上半身へ狙いを変えてきた。

徐々に中腰になりながらもそれらを避けた。直後それまでとは精度が格段に違う銃弾に気が付いた。

 

 

 (ーーー誘導、されたか。・・・なら!!)

 

 

中腰になり、避けられないフライベアの腹部に飛んで来る銃弾を、フライベアは右腰の片手剣を

半分ほど抜刀させ、飛んできた銃弾を切った。キンッ、と音がしたあとフライベアの左右に半分

になった銃弾が地面に落ちた。

 

 

 「っ!!」

 

 

 「・・・かなり、やるようになったなフィー。なら少し全力でいくぞ!!」

 

 

銃弾を真っ二つにされたのがショックなのか、一瞬だけ放心したフィー。その一瞬で勝負が決ま

る。半分抜刀した剣を納刀すると、

 

 

 「ライトニングブレイド!」

 

 

二回連続で高速抜刀された剣からは衝撃波が発生し、フィーの双銃剣を弾き飛ばした。

 

 

 「っっっ!!」

 

 

フライベアはフィーに戦意が無くなった事を確認すると、フィーへと近づき、ぎゅっと、抱きし

めた。フィーが息を飲み込むのがわかる。フライベアはゆっくりと語りかける。

 

 

 「ごめんな、フィー。あの時は会わなければならない人がいたんだ・・・」

 

 

 「・・・・・・」

 

 

 「それに、サラさんはよくしてくれただろう?」

 

 

 「・・・・・・」

 

 

こ、困ったなぁ。フライベアはそのように感じずにはいられなかった。これ以上どう、声をかけ

たものかと困り果てていると、フィーも抱きしめてきてフライベアに顔を埋めた。

 

 

 「・・・もう、勝手にどこにもいかない?」

 

 

 「もちろんだよ、フィー。もう用事は終わったから、また一緒だ。」

 

 

そう言いながら、フィーの頭を撫でる。フィーは顔をあげ、頭を撫でられるのが余程心地良いの

か、ずっと目を閉じて嬉しそうな顔をしている。数十秒か数分か分からないほど撫でた後、フィ

ーを解放すると、あっ、と残念そうにフライベアを解放する。

 

 

 「それじゃ、行こうぜフィー。とっととこのオリエンテーションを終わらせるぜ!」

 

 

 「うん、レッツゴー。」

 

 

風のようにダンジョン内を駆け抜ける二人に、魔獣たちは足止めさえも出来なかった。二人は、

あっという間に出口間際までたどり着くと、剣戟や、銃声の後に魔獣のものだと思われる絶叫

が聞こえてきた。二人は、お互いに頷き合うと一際大きな扉を開けた。そこでは、大した怪我

はしていないものの肩で息をしながらも、大型魔獣と対峙しているⅦ組のメンバーがいた。魔

獣は、背中に翼と強固な皮膚を持ち合わせており、同様の魔獣が近くで絶命していた。

 

 

 「もう一体、あんなの相手にしていたらあいつら全滅しちまう!フィー、一気に行くぞ。」

 

 

 「オッケー!」

 

 

フィーが先行し、連続射撃で大型魔獣を牽制する。フライベアは左腰に携えた刀に右手をかけ

踏み込み体制を取った。そんな様子を見ていた、黒髪の少年が声をあげた。

 

 

 「待ってくれ!・・・二人では危険だ!」

 

 

 「まあ、見てな!ーーー秘技、<裏疾風>!!」

 

 

 「っっ!」

 

 

さっきの少年が衝撃を受けたのが分かる。フライベアは超高速で魔獣に接近すると、すぐさま

刀を抜刀、斬撃を叩き込む。それを皮切りに、先ほどの速さで魔獣の周りをから斬撃を加えた。

斬撃がかなり効いたらしく、よろめき始める魔獣を見逃すほど甘くない。フライベアとフィー

は無言で頷き合う。そして、魔獣に追撃するためお互い駆け出した。

 

 

 「止めだ!フィー!」

 

 

 「うん。これで決める!」

 

 

 「「シルフィードテンペスト!!」」

 

 

まるで竜巻のように打ち出したフィーの銃弾に、先ほどフィーに放ったのとおなじフライベアの

衝撃波が融合し、巨大な竜巻を創り出した。竜巻が止むと、魔獣が銃弾と斬撃によってボロボロ

になって落ちてきた。弱弱しい魔獣の断末魔を聞いた後、二人は向き合って話し出した。

 

 

 「流石だな、西風の妖精<シルフィード>」

 

 

 「<剣閃>もね」

 

 

あまりの出来事に呆然とするメンバーをよそに、二人はハイタッチしたり、ピースサインをした

りしているとフライベアは不思議なことに気が付く。

 

 

 「しかし、久々の割にはフィーの動きが手に取るようにわかったな」

 

 

 「うん、私もそう感じた」

 

 

 --それが、戦術オーブメント《ARCUS》の真価ねーー

 

 

突然の声に、全員驚きながら見上げると、階段の上にはフライベア以外全員を地下に落とした

張本人ーーサラ=バレスタインが笑顔で拍手していた。そこから手すりを飛び越えて階段を下

りてくると、やっぱり、最後は友情とチームワークの勝利は王道よねー、とか言いながら正面

まで移動してくる。今はそのようなことを聞きたくないといわんばかりに、黒髪の少年がいま

おそらく全員が持っているであろう疑問を投げかける。

 

 

 「教えてください、サラ教官。そこの二人もそうですが、俺たちが戦った時に感じた、

 不思議な感覚。これは一体・・・」

 

 

その後のサラは真剣な表情で様々なことを話してくれた。《ARCUS》の持つ『戦術リンク』

はまだ試験段階ながらも、『持つ者同士を深く繋ぎ、感覚だけで互いの動きを察し、手に取る

ように分かるようにし、連携できるようにする』という戦場の革命ともいえる代物だった。そ

してトールズ士官学校《Ⅶ組》は、《ARCUS》の適合者レベルの高い数値を示したメンバ

ーを、階級制度を無視して集めて作ったクラスであること。予算の関係上で途中下車はできな

いこと、《Ⅶ組》のカリギュラムは、他よりキツイこと。

 

 

 「だからこそ、ここで改めて聞かせてほしいの。《Ⅶ組》でやっていくか、それとももともと

 振り分けられるはずだったクラスにいくか。選択権は君たちにある。」

 

 

長い説明の後、サラは再び全員に問う。彼らの意思を。今後の学院生活において重要な選択であ

るため、皆暫く考えるだろう、と踏んでいたサラはすぐに驚かされることになる。

 

 

 「コーネリア=フライベア。参加させてもらう」

 

 

 「私も」

 

 

 「っっ!!!フィーはいいとして、ベア、理由を聞かせてもらってもいいかしら。」

 

 

サラは、フィーは恐らくフライベアが参加したから、と踏んだもののフライベアの理由が全く分

からなかった。そんな中、彼はゆっくりと言葉を紡いだ。

 

 

 「・・・俺にはどうしても越えなくてはいけない人がいる。師匠でさえ越えられなかった人を

 越してようやく、自分の呼び名を堂々と受け入れることができる。その修行をここでならでき

 ると思ったからだ。」

 

 

 「かなり、わけありみたいね・・・」

 

 

 「ははは・・・まあ、そんなところです・・・」

 

 

その後、黒髪の少年ーーーリィン=シュバルツァー、青髪の少女ーーーラウラ=S=アルゼイド、

偉丈夫の少年と紅茶色の髪の少年ーーーガイウス=ウォーゼル、エリオット=クレイグ、そして

三つ編みの少女ーーーエマ=ミルスティン、金髪の少女ーーーアリサ=R、が次々と参加を決め

そして最後、緑髪の少年と金髪の少年ーーーマキアス=レーグニッツ、ユーシス=アルバレアの

二人は、一悶着こそあったものの参加を決意した。

 

 

 「これで全員参加っと・・・それじゃあ、ビシバシ鍛えていくわよ!」

 

 

七耀暦1204年、3月31日ーーーこの日、トールズ士官学校一年《Ⅶ組》が発足した。後に

彼らがエレボニア帝国全土を揺るがす大事件に巻き込まれることを、誰も知る由もなく・・・

 

 

 

 

 

 




前回、言っていたように何とか特別オリエンテーションを終わらせることができました。

戦闘の描写はこんな感じでいいのかな?ご意見お待ちしています!
あと、今回フライベアが使用したクラフトについて。


『ライトニングブレイド』CP30 直線M(地点指定) 威力A 遅延+20 加速+10
    ソールトリガーのファレルが使用する技です。私としては演出がカッコイイと思う
    技の一つです。


『裏疾風《うらはやて》』CP30 円L(地点指定) 威力S+ 遅延+30 物理完全防御無効
    お馴染みの、風の剣聖が使うアレ、です



これから、サブストーリーを挿みながら進行していきたいです。
これからよろしくお願いします。



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1章ーー動き始めた新たな歯車ーー
自由行動日前日


いよいよ、第一章に突入です!!



よろしくお願いします!!



《Ⅶ組》発足から、はや二週間が過ぎようかとしている。その間には、様々な出来事が起こった。

ある意味、ラッキーハプニングを起こしたリィンは、今だアリサとは仲直りできていない。だがお

互いを気にかけていることから仲直りするのは時間の問題だろう、ということを他のメンバーは確

信していた。それから、ユーシスとマキアスの仲は相変わらずであり、二人が揃うとすぐに一触即

発のムードを漂わせた。そして、フライベアにとって一番の出来事は特別オリエンテーションがあ

った次の日、リィンに話しかけられた時に起こった。

 

 

 「フライベア、昨日見せた弐ノ型『疾風』、物凄く洗練され、目で追うことすらできなかった

 けど、いつから『八葉一刀流』の手ほどきを受けていたのか?」

 

 

 「へぇ、リィンは『八葉一刀流』を知っているのか。俺はユン・カーファイ氏に八年ほど前に弟

 子入りして、一年弱ほどで《剣聖》をいただいてね。その後はユン氏と別れて各地を放浪したん

 だがー--って、どうかしたのか?リィン。それに、ラウラはポカーンとして大丈夫か?」

 

 

話の途中から、心あらずといった状態のリィンと、いつから話を聞いていたのかーーーラウラもリ

ィン同様、呆気にとられていた。それもそのはずである《剣聖》はいわば、『八葉一刀流』の免許

皆伝したという意味であるうえ、《風の剣聖》で有名な、アリオス=マクレインでさえ、《剣聖》

をいただくのに一年半を要しているからである。だがその後からが大変だった。その日から毎日、

ラウラから、何度も手合せを申し込まれるのが嫌で放課後逃げ続けた。さらには、今週に入ると、

とうとうフライベアの自室にまで押し入って来るようになりその度に、二階の自室の窓から外に飛

び降りて逃げて、周囲を警戒しながら部屋に戻ってベッドに入るころには、日が明け始めるのだった。そんな日々が続くのだから、当然ーー

 

 

 「ぐぅ~ぐぅ~・・・・・・」

 

 

 「ベア、起きて、ベア・・・」

 

 

 「・・・ああ、おはよう、フィー」

 

 

 「ベア、もう夕方だよ」

 

 

フィーに起こされて目を擦ると、ははは・・・と苦笑いしながらこちらを見ているエリオット、

エマ、リィンが目に入る。

 

 

 「ベア、後で教官室の私のところにまで来て頂戴」

 

 

 「・・・わ、分かりました」

 

 

その後、明日の自由行動日は有意義に過ごしてね、と言い諸連絡をした後そそくさと教室をサラを

見送っていると、座っていたラウラが立ち上がり、フライベアに近づいてきた。思わず逃げ出そう

とするフライベアをラウラは言葉で制止させた。

 

 

 「フライベア、その・・・ここのところ取り乱してお主に迷惑をかけたな、すまない。」

 

 

 「ああ、別にいいぜ。自分を高めるために強者に挑みたくなるのは分かるからな、だが

 しばらくは我慢してくれ。そん時は付き合うから・・・な?」

 

 

 「そ。そうか!かたじけない、そなたに感謝を」

 

 

 「(持っても、五月が限界かな・・・)」

 

 

突然の吉報に喜びを隠しきれないラウラを見ながら、ふと、そんなことを考える。教室を出て、の

んびりとした足取りで教官室前に立ち、

 

 

 「失礼します。サラ教官はおられますでしょうか?」

 

 

 「あ、来た来た。入ってちょうだい」

 

 

言われた通りに入室し、サラの隣に立つと資料整理を中断してこちらを振り向くと、

 

 

 「ベアとは一度じっくりと話したいと思ていたのよね」

 

 

 「で、いったい何でしょうか、サラさん」

 

 

 「あなた、私とフィーと別れた後、一体何をーーー」

 

 

うおっほん!!、と咳をしながらこちらを睨む、ハインリッヒ教頭に気づいたのか、小声で、や

っぱ夜にあたしの自室にきて、話すサラに苦笑いしながら、わ、わかりました・・・と返事をし

そのまま第三学生寮に帰り、剣と刀の手入れを終えるころには、空は暗くなっていた。サラに呼

ばれたことを思い出し階段を上がり、三階の右端のーーーサラの部屋にノックして入ると、お酒

で出来上がりつつあるサラが目に映った。

 

 

 「ぷはぁ~やっと来たわね、ベア。少し語りましょう。後、ベア、あなたお酒持ってるでしょ

 ~持ってきなさいよ~」

 

 

 「どうせ断れないんでしょう?ってかなんで俺のコレクションのこと知ってるんだよ・・・」

 

 

フライベアが頭を抱えながら部屋に入ったのを確認すると、サラ缶ビールを飲みながら話を進

めた。

 

 

 「遊撃士《ブレイサー》の頃よりもまた腕を上げたんじゃない、ベア。」

 

 

 「サラさんも、『紫電《エクレール》』の頃とお変わり無いようで」

 

 

お互い、いままで思っていたことを話す。二年間だけではあるが、二人はA級遊撃士としてコン

ビを組み帝国内を駆け回っていた。帝国内にいるA級遊撃士はせいぜい二十人程度であるのに関

わらず二人はその中のトップクラスでこのコンビに解決できない事件はない、とまで言われてい

たがーーー

 

 

 「まさか、協会《ギルド》が潰れて、解散するなんてな・・・そういえば、サラさんは

 襲撃してきた奴に応戦したんですよね?」

 

 

 「まあ、ね。《死線》っていったかなぁ。私と互角・・・いや、もしかしたら負けてい

 たかもね」

 

 

後に、帝国遊撃士協会襲撃事件、と呼ばれる帝国にいたほとんどの遊撃士が死亡または、解散さ

せた事件にフライベアとサラも巻き込まれた。その後サラはトールズ士官学校の教官となり、フ

ライベアは帝国内を放浪し、偶然『西風の旅団』に声をかけられて加わってフィーと出会ったの

である。一通り語ったのでそろそろ自室に戻ろうとした時、

 

 

 「そういえばベア、『西風の旅団』が解散した後、何をしていたの?」

 

 

 「また、帝国内を放浪してましたよ。」

 

 

嘘である。あの後放浪する途中で俺は、《新・剣帝》として『身喰らう蛇《ウロボロス》』に入

るのだが、それはまた別の機会に・・・

サラに、飲みすぎるなよ、と一応釘を刺した後自室に戻るとーーーまるで見計らったように、

《ARCUS》が、ピピピピピ・・・、と鳴りはじめた・・・

 

 

 

 

 

 



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ただそんな平穏な一日を

大変遅くなって済みませんでした!!
大学って大変なんだな、思いながら書かせていただきました。


さて、今回アンケートを集計した結果アリアンロードとの散策が多かったので
今回書かせてもらいました。
また、次に多かったフィーとトワとの散策はまた別の話で書こうと思っています!

アンケートに答えてくださった皆さんありがとうございました!!

よろしくお願いします


明日の自由行動日をずっと寝ることに費やそう、とサラの部屋を出て自室に戻りながらそう

決意し、部屋に戻ると《ARCUS》呼び出し音が、必要最低限の家具しかない殺風景な空

間に響いた。あと小一時間ほどで、日曜日になろうとするのにーーー誰だろうと、思い《A

RCUS》を開いて通信に出ると、通信越しに少年の声が聞こえてきた。

 

 

 『もしもし、フライベア君。今、話せるかな?』

 

 

 「・・・いろいろと突っ込みたいが、どこからかけている。カンパネルラ」

 

 

 『クロスベルだよ。いや~便利だねここは、導力ネットワークが普及しているからさ、端

 末があれば帝国へも導力通信ができるからね。あ、ところでさーーーえ?話したいことが

 あるから変わって、って?仕方ないなぁ、フライベア少し待っててね~』

 

 

通信越しに伝わる、カンパネルラの笑いを堪える様子にフライベアは嫌な予感を感じた。そ

の予感は見事に当たってしまう。カンパネルラがこのように笑いを堪えているときは、必ず

と言っていいほどーーー

 

 

 『聞こえていますか?フライベア』

 

 

そう、必ずと言っていいほど、彼女ーーーアリアンロードが絡んでいる、のだと・・・

 

 

 「・・・・・・・・・」

 

 

 『どうかしましたか?』

 

 

 「い、いえ。何の用事ですか?アリアンロード」

 

 

 『明日、列車に乗ってトリスタに行きます。恐らく朝には着きますので迎えに来てくださ

 い。では頼みましたよ。』

 

 

フライベアに反論させる間もなく、用件だけを伝えるアリアンロードと交代するカンパネル

ラと通信を続ける。

 

 

 「これは、お前の差し金か?」

 

 

 『違うよ、帝国は彼女ーーーリアンヌ=サンドロットにとって縁の地だからさ、やはり

 気になるんじゃないかな。今と昔の景色は彼女から見れば、見る影もないくらいに変化

 しているから見てみたい、と僕はそう思うよ』

 

 

リアンヌ=サンドロットーーー今から約250年も前に起こった「獅子戦役」にて活躍した

《槍の聖女》と呼ばれるおとぎ話になるほど有名な人物。それがアリアンロードの正体、そ

んな衝撃的な事をさらっと暴露しながらも、カンパネルラは話を続ける。

 

 

 『だから、アリアンロードを頼んだよ。フライベア君』

 

 

 「はいはい分かった。なんか疲れたからもう通信切るぞ」

 

 

 『ああっと、一つ言い忘れてた。君の荷物に導力ラジオが入っていたよねえ』

 

 

 「ええっと・・・バッグの一番上にあった奴か?」

 

 

どこに置いたか、と周りを見渡すと机の上に置いてあるのを見つけ、ラジオのスイッチを入

れようとしながら、

 

 

 「というか、このラジオを入れたのお前だったよな。なんで入れたんだ?

 俺はラジオなんて聞くほうじゃないのだが」

 

 

 『明日の午後9時から、面白いラジオ番組が始まるんだよ聞いてみるといいよ。

 周波数は89.6MHzに合わせると聴けるよ。じゃあ、またね~』

 

 

フライベアを無視しながら、そう言って通信を切るカンパネルラ。フライベアは《ARCU

S》を机の上に置く。その右隣にはもう一つ、戦術オーブメントが置かれている。《ARC

US》と比べると無骨で、どこか古臭さを感じるもののーーー相当手入れされていたのだろ

う、《ARCUS》と同じくらい新品に見えるそれを取ると、両手で優しく握りしめた。

 

 

 (・・・レオンハルト師匠)

 

 

瞳を閉じると、今でもその姿が鮮明に蘇るーーー白銀を思わせる、アッシュブロンドの髪に底

なし沼の中に輝きを秘めた、深い紫の瞳。そして、剣の師匠でもあり、フライベアの父親同然

のように、17年間世話してくれた人物だ。そして、この戦術オーブメントは彼の持っていた

ものだーーー

 

 

 (ーーーどうして、死んでしまったんだよ・・・師匠)

 

 

そのまま、ベッドに倒れこみ、つうーっ、と涙を流しながらフライベアは眠りについた・・・

 

 

   -----------------

 

 

四月といえども早朝は冷え込むようだーーー日曜日、フライベアは肌寒さを覚えながら目を覚

ました。目の横にできた涙痕を水で洗い流し、外に出る準備をする。片手剣と刀を両腰に携え

いつもの赤い制服を着て、その両ポケットに二つの戦術オーブメントを入れて、第三学生寮を

出てトリスタ駅に向かう。駅舎に入りクロスベルからの列車を待つ間、帝国時報を読む。フラ

イベアはある記事が目に留まった。

 

 

 「ーーークロスベルにて、市長殺害未遂事件発生,かぁ。」

 

 

時報を読み終わると、アナウンスが入った後、金属同士が擦れあった時に聞こえる甲高い音と蒸気が排出する音が聞こえてきたので、

時報をしまい改札口の端に立つ。ぞろぞろと、たくさんの乗客が改札口を過ぎやがてその人数

が少なくなった頃、アリアンロードが出てきた。

 

 

 「お待たせしましたね、お迎えありがとうございます。」

 

 

 「・・・・・・・・・」

 

 

 「フライベア、大丈夫ですか?」

 

 

黒のタートルネックの上から羽織った薄地のベージュのジャケットと、上と同じ、黒のジーン

ズのアリアンロードが心配そうにこちらを見ている。いつも、鎧を着ている彼女しか見たこと

がなかったため、ギャップ萌えしてしまっていた、とはフライベアは言えなかった。

 

 

 「・・・あ、すみません。これからどうしましょうか?」

 

 

 「そうですねでは、一通りトリスタを案内願いますか?」

 

 

 「わかりました。じゃあ行きましょうか」

 

 

アリアンロードを先導してトリスタ駅から出る。出ようとした時、アリアンロードがフライベ

アの手を握ろうとして左手を出していることに、フライベアは気づくことはなかった。トリス

タ駅の扉を開くと、あの日ーーー入学式の日と変わらない、白く咲き乱れ舞い散る花びらが改

めてフライベアを、アリアンロードを出迎えたくれた。

 

 

 「ライノの花ですか、懐かしいですね」

 

 

そう言い、ライノの花を見つめ呟くアリアンロードは何かを思い出してしまったのだろう、花

を懐かしそうに見つめる中に哀しみをフライベアは感じたが、あえてなにも詮索しなかった。

二人はまず、ブックストア《ケインズ書店》へ立ち寄った。

 

 

 「(さぁてと、今晩はどの料理を作ろうかねぇ。)」

 

 

そう心で呟きながら近くにあった料理レシピ本を手に取り目を通していく。あらかた本を見終

えると、小説を立ちながら熟読しているアリアンロードのもとに行く途中である本に目が行っ

た。《赤い月のロゼ 1》という小説で、200年前の中世のエレボニア帝国を舞台に主人公

のアルフォンスが帝都で起こる「吸血鬼事件」の解決に挑む、という物語だった。暇つぶしに

でも読んでみるかと思いながら、アリアンロードが読んでいた本と《赤い月のロゼ 1》を買

って店を後にした。その後ガーデニングショップと教会を巡り終えるころには、時間帯は昼に

なったので喫茶《キルシェ》で焙煎コーヒーとクリスピーピザを注文し、外で食べていると昨

日ぶりの声ーーーリィンがやってきた。

 

 

 「やあ、フライベア。と、そちらの女性は・・・?」

 

 

まぁ、当然の反応だよなぁと思いながら、どう返事をしようかと考え込んでしまう。

 

 

 「(そのままアリアンロードの名前を出すのはちょいとリスキーかな?)」

 

 

軽く深呼吸をして、リィンすまんな、と思いながら話を進める。

 

 

 「彼女は俺の知り合いでね、アリーって言うんだ。で、アリー。こちらはリィン、リィン=

 シュバルツァー。俺のクラスメイトだ。」

 

 

いきなりアリーと呼ばれ、少し戸惑っているアリアンロードにリィンに見えないようにウィン

クをすると、フライベアの意図に気づいたのか

 

 

 「紹介に預かったアリーです。よろしくお願いしますね、リィン」

 

 

 「こちらこそお願いします。アリーさん」

 

 

互いの自己紹介も終わってリィンと雑談しながら昼食を食べ終えると、これから昼食だという

リィンと別れて再び散策を再開するためアリアンロードに声をかける。

 

 

 「四時の列車までまだ時間がありますし、もう少し散策しましょうか?アリアンロード」

 

 

振り向きながら提案するものの、さっきから無言のアリアンロードに気づき心配になり顔色を

うかがっているとリアクションが薄い彼女が不満を抱いているのがわかった。

 

 

 「ど、どうかしたんですか?」

 

 

 「・・・もう呼んでくれないのですか?」

 

 

 「へ?・・・ああ、そういうことですか」

 

 

右手で頬を優しくひっかきながらフライベアは軽く咳払いをした後、

 

 

 「それじゃあ、行きましょうか。アリー」

 

 

 「ーーーええ、行きましょう」

 

 

どことなく嬉しそうに見えるアリアンロードを連れブディック《ル・サージュ》に入る。そこ

でホワイトブラウスとピンキーヒールを見繕って購入した。その後隣にある食品・雑貨《ブラ

ンドン商店》では店内の一角で何かをひたすらに見つめているアリアンロードが気になり、

 

 

 「何かいいのあった?アリー」

 

 

待ってました、と言わんばかりにフライベアに商品を手に取り見せてくる。彼女が持っていた

ものは灰色の猫ーーーみっしぃのぬいぐるみだった。クロスベルではミシュラム ワンダーラ

ンドというテーマパークで超がつくほどの人気のキャラなのだが、エレボニア帝国でも知名度

が上がった来ているのだ。そんなみっしぃのぬいぐるみを、両手で抱きしめたまま少し潤んだ

瞳で無言でねだってくる彼女を恐らく誰ひとり見たことはないだろう。役得感を噛みしめなが

らもアリアンロードが持っているぬいぐるみを買い、アリアンロードにプレゼントし店を出る

と時刻は列車が来る頃になっていた。そのまま、トリスタ駅に行きアリアンロードを見送る。

 

 

 「それでは、またいずれ通信しますね」

 

 

 「へいへい、じゃあカンパネルラによろしく言っておいてくれ」

 

 

列車の発車ベルが鳴り響くと、名残惜しそうに乗車するアリアンロード。ドアが閉まり、クロ

スベルに向け出発する列車が、夕日の明かりに溶けるまで見送るとたまにはこんな日もあって

もいいかな、とそうフライベアは思いながら駅を出るのだった。

 

 

 




自由行動日、夕方~夜まででもう一話書こうと思っています。
話もまだ、最初ですがこれからもよろしくお願いします!!


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対面

済みません!!

前回のあとがきでは自由行動日であと一話と書きましたが
もうあと一話入ります。急な変更で申し訳ないです。


アリアンロードと別れ、夕食のレシピを考えながら駅を出ると、またしても《ARCUS》の通信音

がフライベアの士官制服の右ポケットから鳴り響いた。《ARCUS》を開き通信に出ると、入学式

で聞いた声ーーートワの声が、通信越しに聞こえてきた。

 

 

 『もしもし、フライベア君?』

 

 

 「トワ会長ですか?どうしたんですか?」

 

 

 『皆よりも遅くなってけれど、フライベア君の学生手帳が発行できたから、あまり遅くならない

 うちに生徒会室に取りに来てほしいけど、駄目かな?』

 

 

 「分かりました、ってもしかしてトワ会長は今、生徒会の仕事中ですか?」

 

 

 『え?うん、そうだけれどどうかしたの?』

 

 

 「いいえ特に何もないのですが・・・分かりました。今、手が離せないので一時間後には

 取りに行きます」

 

 

心の中でトワに謝りながら通信を切るフライベアは何か差し入れでも持っていこう、と思い《ブラ

ンドン商店》で、フレッシュハーブ、ハニーシロップ、百薬精酒を購入して、特別オリエンテーシ

ョンの時に手に入れた、魔獣のゼラチンをポーチから出し購入した三品と一緒にいれておく。そし

て、小走りでフライベアはトールズ士官学院は向かった。

 

 

 -----------------

 

 

学院に着くとそのまま、本校舎の二階に上がり調理室に入り、ニコラスに許可を調理に取り掛かる。

小鍋に百薬精酒を注ぎ、アルコールを飛ばしながら魔獣のゼラチンを溶かす。その間にティーポッ

トを準備して、ゼラチンが完全に溶かしたらさっとハニーシロップを加え、ティーポットにフレッ

シュハーブといままでのものを合わせ蓋をする。そして、ティーポットの熱さに我慢しつつ、中身

を蒸らしながら生徒会室へ足を進めるドアの前に立ち、ノックをして生徒会室に入る。

 

 

 「トワ会長、お疲れ様です。ハーブティーを淹れてきたので飲みませんか?」

 

 

 「ありがとう、フライベア君。じゃあ、お言葉に甘えてもらうね」

 

 

大きく背伸びした後書類を整理をして、机の上にできたスペースにティーカップを置く。そこにハ

ーブティーをゆっくりと注ぐと、部屋いっぱいに広がるフレッシュハーブの爽やかな香りが二人の

鼻腔に入ってきた。これほどのハーブティーを味わうのは初めてなのだろう、初めは驚いた様子を

見せたがやがて目を閉じてハーブティーの香りを楽しみ、少し熱そうにハーブティーを口に含んだ

 

 

 「どうですか、トワ会長。芳醇ハーブティーは」

 

 

 「うん!とてもおいしいよ、フライベア君。」

 

 

頷きながら、反応してくれるトワに思わず安堵し、顔を綻ばせていると不意にドアをノックする音

が聞こえてきた。トワはカップを机に置き入室を促すとドアが開き、トワと同じ緑色の制服を着た

銀髪の少年が入ってきた。

 

 

 「トワ、生徒会の仕事手伝いに来たぜ~、ってもしかして邪魔したか?」

 

 

 「ち、違うよ!クロウ君。ハーブティーを頂いているだけだよ!」

 

 

なにか察したのだろう、踵を返して出ていこうとするクロウをトワは慌てて誤解を解いた。分かっ

てる分かってる、冗談だって、と笑いながら軽く話すとフライベアのほうを向いて

 

 

 「よっ、俺はクロウ=アームブラストだ。よろしくな、Ⅶ組の・・・」

 

 

 「ーーーフライベア君だよ、クロウ君」

 

 

 「よろしくな、フライベア」

 

 

 「こちらこそよろしくお願いします、クロウ先輩」

 

 

言葉に詰まったクロウは、トワにすかさずフォローを入れてもらい何とか一通り自己紹介をすると

トワはあることに気づき不思議そうな顔をした。

 

 

 「あれ、アンちゃんとジョルジュ君とは一緒に来なかったの?」

 

 

 「え?いや一緒に来たんだが・・・」

 

 

 「早く行き過ぎだよ、クロウ。置いていかないでよ」

 

 

 「まったくだ・・・う~ん私のトワ、会いたかったよ」

 

 

クロウに文句を言いながら、空いていたドアから整備士が着るようなオレンジ色のつなぎを着た男

性と、黒のライダースーツを着こなす女性が入ってきた。女性はトワを見るや否や抱き着いた。毎

回されているからだろうか、トワもまたか、という表情で対応していた。暫く抱きしめていたが、

満足したのかトワを解放すると生徒会室に広がる爽やかな香りに気づいたのか深呼吸をし出した。

 

 

 「とてもいい香りだね、ここまでのものはなかなかないよ」

 

 

 「そうだね、トワこれは君が?」

 

 

 「違うよ、ジョルジュ君。これは、そこにいるフライベア君が淹れたハーブティーなんだよ」

 

 

 「え?俺にはゼリカが言っていることがあまり伝わらないんだが・・・」

 

 

 「ここまでのものが分からないなんて、可哀想に思うよ・・・」

 

 

 「あれ、そこまで言いのは酷くね?」

 

 

この二人にとっては日常的なやり取りらしく、トワ達は特にフォローを入れることもなくただ苦笑

いしていた。一通りやり取りを終えると、トワはフライベア近づくと

 

 

 「改めて紹介するね、フライベア君。クロウ君ことクロウ=アームブラストと、アンちゃんこと

 アンゼリカ=ログナー、そしてジョルジュ君ことジョルジュ=ノームだよ。」

 

 

 「紹介に預かったアンゼリカです。フライベア君、だったかなよろしく」

 

 

 「同じくジョルジュです。君たちの《ARCUS》のメンテナンスもしているよ、ぜひ来てみて

 ほしい」

 

 

 「紹介ありがとうございます、私はコーネリア=フライベアです。よろしくお願いします

 ---話は変わりますが、ハーブティーもまだ多く残ってますし皆さんも飲まれませんか?」

 

 

その後、全員で生徒会の仕事を終わらせ、芳醇ハーブティーに舌鼓を打つのだった。

 



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自由行動日 夜編

書いているうちに
あれ、アリアンロードって出しにくい?
と、再確認してしまいました。ですが、頑張って出していきますよ!
それでは、遅くなりましたがどうぞ!


生徒会の仕事を手伝った後にとびっきりの笑顔で感謝してもらいトワ達と別れ、ゆっくりな足取り

で夕食のメニューを考えながら階段を降りると、これから夕食を取るのだろう、学生食堂の前にか

なりの学生が列を成していた。

 

 

 「ん~なんか面倒になってきたし、この際学食でもいいかなぁ・・・」

 

 

つぶやきながら列の最後尾を探していると最後尾の少し前に今日は見かけなかったフィーの姿があ

った。少し虚ろな目で時折欠伸をしてるためか、フライベアは今日のフィーの行動が容易に想像で

きた。フィーに何か料理でも作るかと思いフィーを呼ぶと、こちらに気づいたのか列を抜けてこち

らに向かってきて、

 

 

 「何か呼んだ?ベア」

 

 

 「ああ、フィー。これから夕食か?俺は今から作るんだが、一緒に食うか?」

 

 

 「うん、私も久々にベアの料理、食べたいから」

 

 

目をキラキラさせながら快く了承するフィーにそれまで消えかかっていたやる気を再燃させたフラ

イベアはフィーを連れて学生会館を出る。学院から出ていく途中で、

 

 

 「で、フィー。何かリクエストはあるか?」

 

 

 「何でもいいよ。ベアの料理は何でもおいしいから」

 

 

一見、なげやりな言葉に一般的には聞こえるが、フィーがこの言葉を言ったことでフライベアは思

わず笑みをこぼしてしまった。フィーが食べたい料理がなんであるか分かってしまったからだ。そ

のまま再び『ブランドン商店』で材料を買って、第三学生寮のキッチンに入る。フィーには食器を

準備をしてもらい、フライベアは調理に取り掛かる。小麦粉に水を加えながら生地を作り、生地を

回し遠心力でのばし、トマトソースを塗る。その上に小さくカットしたポテト、肉、にがトマトを

散りばめ最後にチーズをたっぷりと乗せ、オーブンでこんがりと焼き上げる。9分程強火で焼くと

溶け出し、こんがり焼けたチーズが完成を知らせる。オーブンからピザを取り出し、素早く切り分

け置かれた食器の上にのせる。

 

 

 「お待たせ、クワトロチーズピザだぜ」

 

 

 「ん、美味しそう」

 

 

声はいつもと変わらないものの、表情は嬉しそうにしてピザを頬張るフィーを確認してフライベア

は今まで使ってきた器具を洗い始める。が、洗っている途中で突然上着の後ろ袖を引かれた。引か

れた方を向くと、左頬にチーズをくっ付けたフィーがこちらを見ていた。

 

 

 「どうした、フィー?あ、もしかして久しぶりに作ったからいつもの材料で作らなかったから味

 が変だったか?」

 

 

口を開かず、首を振って答えるフィーはゆっくりと口を開いた。

 

 

 「ベアと一緒に食べたい」

 

 

 「へ?・・・はいはい、分かったよ」

 

 

上目づかいのフィーに、やれやれと洗い物を切り上げてフィーに引かれるまま椅子に座る。そして

自分の膝あたりをポンポンと叩いて、

 

 

 「ほら、おいでよフィー」

 

 

 「おー」

 

 

抑揚のない声でフライベアの膝に座って、再びピザを食べ始めたフィーと一緒にフライベアもピザ

を小皿に取り頬張っていく。やがて、ピザの残りが半分を切りはじめた頃、それまで大人しく食事

をしていたフィーは手を休め、ピザを片手に持ったまま器用に太腿の上で反転してフライベアと向

かい合うように体を向け、ピザをフライベアの口に持ってきて、

 

 

 「ベア、あ~んして」

 

 

 「あ~ん・・・・・・サンキューな、フィー。」

 

 

お返しにフライベアがフィーの頭をゆっくりと撫でる。頭を撫でられるのが余程好きなのかーーー

撫でられている間ずっと目を閉じ、気持ちよさそうにしている。その後もフィーがピザを食べさせ

フライベアが頭を撫でる、誰もが見ても仲の良い兄弟に見える二人の食事はお酒で酔ったサラが、

ベア~おつまみ作って~、と乱入してくるまで続けられた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

サラが乱入してきた後、さっと簡単なおつまみを調理した後まではよかったものの単位を盾にサラ

と一緒に飲むことを強要されたが、ひたすら愚痴を聞いて適当に慰めて自室へ逃げ込んだ頃には時

計はもうすぐ午後九時を指そうとしていた。

 

 

 「くそ・・・サラさん、アルコールキツイものばかり飲ませやがって・・・あぁ、ラジオつけな

 いとな」

 

 

昨日、通信でカンパネルラに言われた事を思い出し、おぼつかない足取りで導力ラジオのスイッチ

を入れ、周波数を89.6MHzに合わせるとノイズ音が少し鳴り響いた後陽気な音楽が流れ始め

た。どうやら番組が始まったようだ、ラジオ越しにMCの声が聞こえてきた。

 

 

 『こんばんわ、皆さん。日曜の夜をいかがお過ごーーー』

 

 

 「ぶっ!」

 

 

自分が知っている人物の声が聞こえてきて思わず吹き出してしまったフライベア。な、なんでヴィ

ータさんがラジオMCしてんだよ、と呟きながらもラジオを聴き続ける。《身喰らう蛇》に所属し

第二柱《蒼の深淵》である、ヴィータ・クロチルダ。『幻焔計画』のためにエレボニア帝国にいる

ものの、今まで実際に会ったことははなかったが・・・

 

 

 「まさか、カンパネルラの奴言っていたことってこういうことか」

 

 

今頃、笑っているであろうカンパネルラを思うとなんだか腹が立ってきたので頭を振って振り払い

ラジオに意識を傾ける。

 

 

 『いまから《アーベントタイム》始まります。メインMCは私ことミスティです、よろしくお願

 いしますね。当番組は皆さんのお便りを募集しています。さて、四月も中旬になりましたがまだ

 まだライノの花が白い花を咲かせていますーーー』

 

 

 「へぇ~こんな番組はいいな、聞きやすくて」

 

 

《アーベントタイム》はその後最近のニュースのことを話したり、季節ごとの周りの変化の事や、

曲なども流していた。その中でもPNムンムンボーイという投稿者の質問が面白く夜中に関わらず

思わず笑ってしまったとか

 




次は実技テストですね。戦闘シーンは苦手ですが頑張ります(汗)
あと、キャラSIDEの部分を加えていきたいです。


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フライベアの本気

大変長くお待たせいたしました!!
やっと投稿することができました。一か月前に足を骨折してしまい
昨日退院することができました。いや~PCが使えないのがここま
で苦痛に感じたことはありません。これからはできるだけ更新を早
くできるように頑張ります


作者「え、スマホ?・・・知らない子ですね」(未だにガラケー)


実技テスト当日。雲一つない晴れ渡っている空の下《Ⅶ組》の面々はサラの指示でグラウンド

に出ていた。が、肝心なサラは未だに来ていない中これから行われる実技テストの内容をそれ

ぞれ話している。開始時刻から数分後慌てた様子もなく歩いてグラウンドにやってきた。

 

 

 「皆集まっているわね、それじゃあ始めましょうか」

 

 

そう言って、サラが指を鳴らすと彼女の前に一瞬にして傀儡めいた物体が現れた。

 

 

 「「「っ!」」」

 

 

フライベアは何一つリアクションしない中、他のメンバーは見たことの無いものが突然現れた

のだからか驚きを隠せないでいる。フライベア以外の反応に納得したのか、頷きながら説明を

続ける。

 

 

 「こいつは、とある筋から押し付けられたものでね。色々と便利だから、実技テスト

 で使わせてもらうことにしたわ」

 

 

悔しそうに言い放つサラ。ぎりぎりまで、使うか使わないかと悩み葛藤したのだろう。だから

昨日はあんなに飲んでいたのか、と呟くと聞こえていたのだろうすごい形相で睨まれた。お~

怖い怖い。咳払いした後、サラはまずリィン、エリオット、ガイウスの三人を指名して前に出

させて、実技テストの内容を説明する。要約すると、傀儡めいた物体と戦闘して倒すのだが、

ただ倒すのではなく戦術リンクを駆使して倒すことが大事であり、それが実技テストの目的で

あり、同時に評価点となる、という。

 

 

 「三人とも、準備は出来たわね。それじゃあ、頑張りなさい!《Ⅶ組》実技テスト、開始!!」

 

 

サラの合図で戦闘が開始される。リィンとガイウスの二人が前衛として傀儡に攻撃をしながら

も、そのどちらかがもう片方の攻撃のスキをフォローし、後衛のエリオットがアーツで援護す

る。途中、傀儡の放った強力な範囲アーツで危ないところもあったものの、《ARCUS》の

戦術リンクを活用して何とか撃破する。三人は武器を納めると何やら満足した顔で呟いた。

 

 

 「うん、うん。上出来ね、早速昨日の旧校舎の探索が生きたわね。」

 

 

サラの呟きに三人以外の全員がそれぞれの反応を見せる。どうやら前日の自由行動日に学院長

から旧校舎の調査をリィンが引き受け、三人で調査をしたらしい。その時も魔獣と戦闘があっ

たようだ。フライベアはリィン達も頑張っているんだな思っていると、またサラが指を鳴らし

て傀儡を呼び出す。その後、ラウラ、アリサ、エマのチームとマキアス、ユーシス、フィーの

チームも苦戦しながらもなんとか勝利を収めることができ、一通り終わりを迎ーーー

 

 

 「あ、あの~サラさん。俺、まだやっていないんだが・・・」

 

 

 「大丈夫よ、ベア。あなたの分もあるから」

 

 

笑いながらもサラは指を鳴らして傀儡を引っ込めた。サラの行動に疑問符を浮かべた全員がサ

ラの行動を見守る中、サラは自分の獲物である強化ブレードと導力銃を取り出して

 

 

 「さあ来なさい!ベア。」

 

 

 「い、いや、実技テストの目的からそれていますし、」

 

 

 「嫌なら別にいいけど、その代わり一か月補講にするわよ」

 

 

 「職権乱用ですから、それ!」

 

 

やれやれ、とサラと対峙するフライベア。審判をリィンとラウラに任せ、片手剣を構えずに刀

を構えると、

 

 

 「ベア、刀ではなくて片手剣で、全力で来なさいよ。」

 

 

渋々、刀を納刀し腰から外し投げ捨てる。お互いの準備が完了したことを確認すると、リィン

 

 

 「それでは、始ーーー」

 

 

言い終わるや否やお互いの剣がものすごい音でぶつかり合い、一拍おいて風がリィン達を駆け

抜けた。

 

 

ーーーサラsideーーー

 

 

リィン達が驚いた声を上げているが、今はそちらに気をまわしている暇は無い。今はベアの方

に集中しなくてはと、自分の強化ブレードに全体重を込める。

 

 

 (教官の意地にかけて、今回は勝たせてもらうわ!)

 

 

思い返せば、今まで7勝8敗と負けているからここでベアに勝ち引き分け、ということで区切

りをつけるために、敢えて自分の生徒が見ている中でベアとの対戦を申し込んだのだ。だから

、だからこそ絶対に負けたくはない、そう思い導力銃を至近距離から連射する。しかし、ベア

はそのことに察知したのか少し距離を取った。

 

 

 (流石ね・・・だったらこのまま持久戦に持ち込めるのまで!)

 

 

ベアに距離を詰められないように、導力銃で牽制をかけ続ける。

 

 

 (このまま牽制しつつ、わざと隙を見せてベアに懐に飛び込ませて、そこにカウンターを入

 れて・・・仕留める!!この勝負、勝つのはーーー)

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーーフライベアsideーーー

 

 

  (・・・なんて、サラさんは考えているんだろうな。)

 

 

次々と恐らく模造弾であろう、銃弾をひたすら避けながらサラのこの後の行動を確信する。確

かに、一騎打ちにおいては悪くはない作戦ではある。だが、

 

 

  (あの様子じゃあ、その”作戦”が失敗した後のことを考えていないな。・・・サラさん、

  元A級遊撃士なんですからしっかりしてくださいよ。でも、今回はありがたいかなアレの

  調整もやっと終わったしな、使ってみるかな!この勝負、勝つのはーーー)

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

  ((私(俺)に、決まっている!!!!))

 

 

遂にサラが行動を見せる。ラウラとリィン以外は気づくことができなかったものの、数瞬だけ

サラが放つ弾幕が薄くなったのだ。それに気づいたフライベアは一気にサラとの距離を詰めて

横に薙ぎ払う。が、しかし

 

 

  「引っかかったわね、ベア!!喰らいなさい!---『電光石火』!!!」

 

 

フライベアの行動を完全に見切っていたサラは、フライベアの渾身の一撃を軽々とよけ、カウ

ンターと言わんばかりに強力なクラフトを繰り出してきた。どんなに修練を積んだとしても、

わずかな時間に生じる硬直を克服することはできない。その事実を知っているラウラ、リィン

はもとい二人の試合を見ている全員がこの勝負の結果が目に見えていたーーーはずだった。

そう、フライベアが言葉を紡ぐまでは、

 

 

  「サラさんこそ引っかかりましたね。オーブメント、駆動!-ーーアースウォール!!!」

 

 

そういうと、すぐに変化が起きた。フライベアの周囲の地面が突如、隆起してフライベアを保

護する壁のように変化し、そしてサラのクラフトを完全防御したのだ。

 

 

  「「「「っ!!!!!」」」」

 

 

これには誰一人驚きを隠せず、動揺している。自分たちが今まで見たことがないアーツを見た

ことに驚いているのはもちろん一番驚いたのは、無論サラだった。勝利を確信して渾身のクラ

フトを放ったものの、それはいとも容易く防がれてしまった。それだけでも、ショックなのに

さらには、

 

 

  「・・・アーツを、駆動時間なしで発動させるなんて・・・」

 

 

誰かが声を漏らして呟く。無理もなかったのだ、本来ならばアーツはオーブメントを

駆動させて発動させるまでに多かれ少なかれ時間がかかる。そのことは、実際にアーツを発

動させたことのある全員が理解していた。しかし、現に目の前ではその定理ともいえるものが

覆された。

 

 

  ---サラsideーーー

 

 

  (な、なに今の。何が起こったの?)

 

 

思わず、考え込んでしまう。しかし、前からの声がサラの思考に割り込んできた。

 

 

  「敵を前にして、ずいぶん余裕ですね。・・・なら、全力で行きますよ!!」

 

 

フライベアの覇気がさらに大きくなる。この攻撃は受けてはならない、と脳が本能的に警鐘を

鳴らすがクラフトを放つ際、後方へ大きく跳躍してしまった時点で回避はできないのだ。みる

みるとフライベアが接近する導力銃で足止めを試みるものの無駄に終わり、自分の着地点スレ

スレにフライベアが到着しサラが着地する瞬間、今まで感じたこともない衝撃が襲った。とっ

さに強化ブレードの柄で直撃こそは避けれたものの威力は殺せるはずはなく、

 

 

  「(これが、ベアの本気ーーー)きゃーーーーーっっっっ!!!!」

 

 

吹き飛ばされて、土壁に激突することこそはなかったものの衝撃でサラは意識を手放すのだった

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

  ---フライベアsideーーー

 

 

  (・・・できた!調整はきちんとできてる。これなら使えそう)

 

 

周りが驚きであふれているのが感じられる。正直自分でも驚いている、とある人の協力で理論上

では出来るようになってはいるが、実戦で使えなければ意味がない。どうやら今回はあたりを引

いたようだ。ここで意識を切り替える、クラフトを放った際後ろへジャンプしてしているため、

決着をつけるならサラが着地するまでだと確信しサラを見る。案の定何が起こったか分からず、

思考していた。

 

 

  「敵を前にして、ずいぶん余裕ですね。・・・なら、全力で行きますよ!!」

 

 

サラの意識をこちらに向けさせて、攻撃を再開する。サラが着地するであろうポイントへ駆け抜

ける、道中こちらへ近づけまいと導力銃で応戦してくる。いちいち躱していないためか模造弾に

も関わらず、側頭部に掠めた際皮膚が擦り切れ血が出てくる。が、止まらず辿り着くと覇気を解

き放ち力を込める。脳内で再生されるのは、師匠の、レーヴェの技の動き。

 

 

  「---受けて見ろ、《剣帝》の一撃を・・・『鬼炎斬』っ!!」

 

 

繰り返し再生される彼の動きに、幾度となく練習して今自分の動きが重なり放たれる。とっさに

サラは強化ブレードの柄で直撃を躱したものの勢いを殺しきれるはずもなく、

 

 

  「きゃーーーーーっっっっ!!!!」

 

 

大きく吹き飛ばされて、気絶したのを確認するとフライベアはサラを起こすためサラに近づくの

だった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 

 

 

唖然とした空気が戦闘が終わったグラウンドに訪れた。ここまで実力が違うのか、と思ってしま

う。しかし、

 

 

  「上がいるとわかると、やる気が上がるな」

 

 

  「・・・ふん、珍しく意見が合ったな。マキアス=レーグニッツ」

 

 

  「こちらの台詞だ、ユーシス=アルバレア」

 

 

やはり仲が悪い二人は火花を散らしていた。だが、マキアスが言ったことは全員が思っている事

だった。フライベアに起こされてたサラは周りの反応を見て、

 

 

  (やはり、ベアとの戦いは良い刺激になったようね・・・かなり痛かったけれど)

 

 

服のあちこちに付いた土埃を払い、今晩ベアに一杯付き合ってもらおうと決めたサラは

 

 

  「さて、みんなお待ちかねの今週末の特別カリキュラムについてするわね。皆、封筒を渡す

  から受け取って」

 

 

各々が封筒を受け取り、中身を取り出し確認すると紙にA班、B班の五人づつの二つの班に分け

られそれぞれ実習地と書かれた場所が記されている。皆の疑問に答えるように

 

 

  「《Ⅶ組》の特別なカリキュラムは、課外活動のことよ。あなた達にはこの紙に書かれてい

  る場所に行って、用意された課題をこなしてもらうわ、これで説明は終わりよいろいろ準備

  があると思うからーーー以上で解散!」

 

 

それぞれがグラウンドから出ていく中、フライベアは後ろからフィーに呼び止められた。

 

 

  「ベア、まだ少し血が出ている」

 

 

  「ん、あぁありがとな、フィー」

 

 

ハンカチで血をぬぐってくれるフィー、一通り終わるとそのまま課外活動の買い足しに付き合わ

されるのだった・・・そして夜、

 

 

  「ヒィック、何よ~ベア。まだまだ飲めるわよね~」

 

 

  「か、勘弁してくださいよサラさん、もう、のめない・・・」

 

 

フライベアはサラに酔い潰されてしまうのだった・・・

 

 

 




新クラフト紹介

  鬼炎斬  Sクラフト 円M(地点指定) 威力SSS CP100以上 延焼100% 

お馴染みのレーヴェのSクラフトです。いや~カッコイイなと思います。


感想お待ちしています!


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4月 課外実習~波乱の予感?~

試験で単位を落として、補講、再履修、などで遅くなってしまいました。
これからはできるだけ投稿ペースを元に戻していきます。


実技テストでやりすぎたかなぁ、と後悔しながらもあっという間に日は過ぎ去っていき

今日は土曜日ーーー課外活動の一日目となった。日が昇り始めて間もない時間帯、フラ

イベアは身支度をして第三学生寮から出た。列車が出発するまでまだ1時間程あるため

時間つぶしにあるところを目指す。あまり人が入らない通りを進みお目当ての店のドア

を開ける。《質屋 ミヒュト》ーーー恐らくこれまでにこの質屋に流されたものであろ

う数々の武器や、家具、装飾品などが並び、そして、カウンターの奥には新聞を広げた

おじさんがおり、近くの導力ラジオから聞こえる内容から恐らく競馬であろう、時々、

お~よし!と声を上げている。相変わらずだな、と思いつつも

 

 

  「なかなか調子いいみたいすね、おっさん」

 

 

  「ん?、誰だ・・・ってベアか。」

 

 

  「なぜそこで露骨にがっかりしているんですか、それは置いといて実はおっさんに

  頼みたいことがーーー」

 

 

  「あ、なんだ?金のことか?残念だが貸せんぞ。どうであれ今のお前は仮にも学生

  だからな」

 

 

どこぞのグータラ教師と全く同じ扱いされ咄嗟に否定の言葉を挿もうとしたが、目の

前のおっさんーーーミヒュトがからかっているんだと思い、言葉を飲み込み、

 

 

  「ち、違いますよ、今ここに流れてきたクォーツを見せてほしいんですよ」

 

 

  「は?クォーツだと。まぁあるが・・・で何を代わり渡すんだ」

 

 

商いというものは、それ相応の対価を支払って成り立っているんだ、と一つ釘を刺すミ

ヒュトに気にせず話を進める。

 

 

  「そうですね・・・リベール王国限定の最高級ワイン三本でどうですか?」

 

 

  「ほう・・・で、本心は?」

 

 

  「サラさんに飲まれるぐらいならこっちに流したい、と」

 

 

  「いいだろう、チョイと待ってろ・・・ほら、これがすべてだ。俺が持っていても

  あまり意味がないもんでな、必要分持ってっていいぞ」

 

 

彼女の悪癖を悟ったのだろう、納得した様子で奥から一つの箱を持ってきた。運ばれて

きた、色とりどりのツォークを一つ一つ見ていく。その間またしてもラジオの前に座り

おぉそうくるか、と競馬の実況を聞き唸っていた。一通り見終わり改めて1属性ずつの

ツォークを取り出し自分の《ARCUS》に装着していく。しかし、もし<Ⅶ組>全員

が彼の《ARCUS》を見たら違和感を感じるであろう。その中央は未だぽっかりと空

いたままであるからだ。リィン達はマスタークォーツという物をもらっていたが・・・

 

 

  「ありがと、おっさん。じゃあ、ちょっと持ってくるわ」

 

 

そう言い残し一度自室に戻る。隠し棚からワインを持ち出し、質屋に流し終えこれでグ

ータラ教師の魔の手から逃れられる、と少し晴れやかな気持ちで駅の中に入ると、《Ⅶ

組》のいつもの光景がB班内で起こっていた。相変わらずそりが合わないユーシスとマ

キアスの二人を、いったいどうしたらいいか、を声すらかけ辛そうにしているガイウス

、エマ、フィーがフライベアを見つけるや否や”何とかしてよ”こちらを見てくる。すま

ん、どうにもできないわ、マジで。手を合わせ、謝ってそそくさとケルディク行の列車

に乗り込んだ。リィン達は先に乗り込んでいたらしく、既に座席に座り課外活動につい

て話していた・・・なぜかサラも交じって。

 

 

  「・・・サラさん?なんでこの列車にーーーイルンデスカ?」

 

 

フライベアを見た途端に目を閉じ狸寝入りをし始めたため、追及をやめサラの演技を感

じない寝顔を見てあることに気づき、

 

 

  「もしかして、サラさん。ケルディック名産の地ビールを飲む気なんですか?」

 

 

こぼした言葉に反応したのか、ちょっぴり嬉しそうに頬を綻ばせていた。

 

 

 

 

 




お酒があまりの飲めない私から見ると、地ビールとかお酒をごくごく飲めるサラさんが羨ましく
見えます、ほんと。
後、9月末に発売された『閃の軌跡2』についてですが、これ以降にはなってしまいますが
2でのキャラクターや、お話をできるだけ入れていこうとは考えています。ご意見募集しています


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新たに生まれる歯車

申し上げることはただ一つ・・・

遅れて申し訳ありませんでしたあああああああああ!!


ここからオリジナル展開を所々で入れていく予定です。オリジナル展開に
対するご意見はもちろんご指摘していただてると嬉しいです。


 のんびりと列車に揺られること約数十分、A班は実習地である交易町ケルディックに到着してい

た。ケルディックに到着する前に列車の車窓から見えた一面に広がる畑や、駅から出て周りを見渡

して一同が持った感想は、落ち着いたのどかな雰囲気であった。A班各々が町の雰囲気、風景を

を堪能している中、ケルディック名産の地ビール飲みたさにサラもA班にくっ付いて来ていた。

 

 

  「それじゃあ、今回の実習でお世話になるところに案内するわ」

 

 

心なしか・・・もはや、隠しきれなくなったのか頬を綻ばせて自分の生徒を置いて進んでいくサラ

にフライベア以外頭を抱えつつも、サラの後を追いかけて建物に入っていく。入る途中で視界の隅

でカンパネルラが、こっちにおいでよ、と手を振ってるのが見えた。

 

 

  「・・・すまん、エリオット。先に入っていてくれ、用事ができた」

 

 

  「どうしたの、フライベア?一緒に行った方がいい?」

 

 

  「大丈夫だすぐに戻る」

 

 

少し急ぎながらケルディックの駅前に戻ると、さっき自分たちが通った駅前は不気味なまでに静かだ

った。しかし、不気味なのはそこだけで駅前から少し進んだ広場には相変わらず人が行き交っており

、少し遠くからはケルディックの大市ならではの賑わいも聞こえてくる。

 

 

  (強力な人避けをしてるな・・・)

 

 

同じような場面を数回か見たことがあるためかすぐにこの不気味な光景を理解できた。が、ここま

で強力な人避けをしていることからカンパネルラが自分を呼んだ事の重大さを知ることができた。

軽く深呼吸して駅舎のドアを開け中に入り周りを見渡す。すると右手側の奥のベンチに座り、紅茶

を飲む彼がいた。そして、フライベアを見つけると

 

 

  「遅かったねフライベア。どう?紅茶、君も飲む?」

 

 

  「こっちはいまから忙しくなるんだ、用件は何だ。」

 

 

こちらの気迫に押されたのか、ティーセットを指を鳴らして片付けると、

 

 

  「実はフライベア君にお話をしたい方をお連れしてきたんだよ。強い人避けをしたのはその

   方が他の人に見られるのがダメだからね、ではお連れしましょう」

 

 

カンパネルラが詠唱すると二人の前に魔法陣が現れ光を放つ、徐々にまぶしくなりフライベアは

たまらず腕で目を覆う。あたりが白で塗りつぶされた直後光が弱くなっていくが、強烈な光を見

たせいでまだ視力が回復しきれていないフライベアをよそにカンパネルラは、終わったら呼んで

ねー、と言い残してどこかにワープして行った。光も収まり視力がようやく回復すると、

目の前には黒いローブをまとい頭がすっぽり覆うフードを被った人が立っていた。どのように

話を切り出せばよいか分からず戸惑っていると

 

 

  「突然で申し訳ありません、コーネリア=フライベア。

   ですが、私が視た限り、では今あなたに伝えなければならないのです。」

 

 

あなたは誰なんだ、っと言いかけたとき今までの出来事が脳内に引っかかった。さっきカンパネ

ルラは普段使わない敬語でこちらに話してきた、しかも姿までもが見られるのが不味いこと、そ

して目の前の人物が話した『ーーー視た限り』、とーーー。これらを結び付けて導き出した答え

をゆっくりを口に出した。

 

 

  「・・・あなたは、盟主(マスター)なのか?」

 

 

長く感じる一瞬、無意識のうちに身構えるフライベアをよそに目の前の人物は

 

 

  「はい・・・あなたとお会いするのは2度目ですねーーー」

 

 

そう言って会釈をしたーーー

 

 




何とか大学も2年生へと進級できましたが、必須科目の再履修とかで
大変になりそうです、ができるだけ早く次話を投稿したいです。


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対面

最後に書いたの4年前だったという事実から目を逸らしたい…
閃の軌跡も完結してしまったんですよね( ´゚д゚`)…


 駅舎内にいても、ケルディック名物の大市で賑わう人々の声がかすかに聞こえてくるものの

フライベアの中では確かに緊張が走っていた。曲者しかいないに等しい《身喰らう蛇》の頂点

である目の前の人物ーーー盟主(マスター)がここに出向いてくること自体が自身の想像の

遥か右斜め上だったためだ。

 

 

  「ーーー私に、御用とはなんでしょうか。」

 

 

未だ動揺が隠し切れず、声が震えていながらもなんとか話を切り出した。

 

 

  「ええ、先程も言ったようにフライベア、あなたに話さなければならないことがあり

   カンパネルラに無理を言ってここに来ましたーーーあまり時間をかけるわけにはいかない

   ので早速本題に入りましょう。」

 

 

盟主(マスター)が軽く咳払いをしてると、フライベアもようやく気持ちを落ち着け目の前の

人物の紡ぎ出す言葉に集中し始めた。

 

 

  「単刀直入に言いますね、コーネリア=フライベア、あなたに未来を変えてほしいのです・・・」

 

 

  「---ちょっと待ってくださいよ!はいわかりました、って未来に行けませんよ!」

 

 

飛び抜けた内容に思わず素な反応をしてしまうフライベアを落ち着かせて盟主(マスター)

は話を続ける。

 

 

  「そうではありませんよ。私が未来を視ることができるのは知っていますね。」

 

 

  「・・・あぁ、そうですね。」

 

 

そのことは以前《身喰らう蛇》に入る時に盟主(マスター)と会い、話したのを覚えている。

 

  「このままではそう遠くない日に悲劇が起こり、多くのものを失いますーーーその悲劇を

   変えることができるのは、新たに生まれた未知な存在のであるフライベアだけです。」

 

 

ーーーいままでこのような事はありませんでした、どことなく悔しさを感じさせながら話す。

あははっ・・・と苦笑いを返しつつフライベアは返答に迷っていた。盟主(マスター)がこのような

話をしないと思っていたうえ、もしかしたらその悲劇を生み出す可能性だってあるからだった。

しかし、自分が見てきたものが脳裏をよぎり、今までの思考を首を振って否定し決意を固める。

 

 

 

  「・・・・・・わかりました」

 

 

  「ーーーよろしいのですか」

 

 

  「もちろんだ、俺にできるかどうかなんてわからないけれども尽力するまでだ。・・・

   それに、レンやレーヴェ達のようなことを1つでも無くさなければならないんだっ!」

 

 

彼女、彼達の過去を思い出したためか後半の発言が自然を感情がこもってしまい思わず咳払いを

してしまう。

 

 

  「ふふふふ、フライベア、貴方を数か月ぶりに見ましたがまたいきいきしましたね。」

 

 

  「ははは・・・、どうも・・・」

 

 

  「それと遅くなりましたがあなたに渡す・・・いえ、《剣帝》に返すものがあります。」

 

 

盟主(マスター)はそういうとどこからか身喰らう蛇(ウロボロス)をかたどった1アージュほどの杖

を取り出して詠唱をすると先程のカンパネルラが出した光よりは幾分優しい光がフライベアの前

現れた。光が収まると、そこには一振りの剣があった。”黄金の魔剣”と呼ばれた剣にフライベアは

目を疑った。

 

 

  「これは、レーヴェのーーー」

 

 

  「そうです、”福音計画”のさなかで多大なる損傷を受けましたがこの日までに間に合って

   よかった・・・さぁ、フライベア受けとってくださいーーーこの、”魔剣ケルンバイター”を。」

 

 

そう言われ、ケルンバイターを手に取る。確かな重さを感じるけれども思ったよりは軽く何度か

その場で素振りをして、一通り素振りをして魔剣を仕舞おうとすると、たちまち光る粒子になり

消滅した。

 

 

  (・・・これは、すごい。正に剣が体の一部に感じる。)

 

 

  「それでは、フライベアお願いします。」

 

 

  「はい、《新・剣帝》コーネリア=フライベア承りします。」

 

 

そういって、ケルディック駅舎を出ていく。扉が閉まる音が駅舎に響く中、どこからかまた出てきた

カンパネルラは、

 

 

  「あれ?盟主(マスター)まだ彼と話さなくてよかったの?」

 

 

  「ええ、また会えますもの、それに話すべきではない。この”0”の状態から彼がどこまで

   行けるか見せてもらいたいからーーー。」

 

 

  「そういうものかなー?」

 

 

  「そういうものですよ。では行きましょう、カンパネルラ。私たちもやらなければいけないことが

   ありますからね。」

 

 

再び眩しい光が起こり消えた時には駅舎には誰の姿も無かった。無人と化した駅舎には列車に乗るために

人が集まり出し、やがて普段と変わらない光景に戻っていった。

 

 

 



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