僕と怪物 (無名の餅)
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トレーナーとウマ娘

実質初投稿です。至らぬ点があれば教えてください。
書きたい衝動で一気に書いたので設定がガバガバかもしれませんが温かい目でよろしくお願いします。


ジリリリリリリリ……

けたたましいベルの音で体を起こす。

この音がとても嫌いだった。

これが鳴ると自分の憩いの時間が消える感覚があって辛かった。

だが、今は存外悪くないと思える

きっと希望が見えたからだ。

 

朝の準備を終え、気にしていなかった身だしなみを整える。必死にトレーニングメニューを書き留めたノートも忘れず持っていく。

家から出てすぐの桜並木の道を歩く。そうして進んでいるとぽつんと1人桜を見ながら立ち尽くす見知ったウマ娘がいた。弾む気持ちを抑え声をかける。

「おう、オグリ」

「トレーナー…!!」

こちらに気づくと長く美しい銀の髪と尻尾を揺らし走って近づく………どころでない!!

「ちょまっ」

 

ばたっっ

 

飛び込むように来た彼女の衝撃を抑え込むことはできずそのまま倒れ込んだ。

「……おい」

「…すまないこういうことも多々あるんだ」

「あってたまるか。誤解されるだろ…早くどいてくれ」

「私は誤解されても構わないぞ」

「俺が誤解されるとクビになっちまう」

「ふふっ、それはまずいな。すぐに退くとしよう」

お互い倒れて服に付いてしまった桜の花びらを払う。

「トレーナー、頭に付いてるぞ。少し屈んでくれ」

言われるとおりに屈むと頭を撫でられた。馬鹿にされているのか俺は

「早く取ってくれ」

「なかなか取れないんだ」

「ばーか」

そこまでして撫でたいものなのか。そんな感情が伝わってくるから照れ隠しで罵倒してやる。多分全てバレているのだが。

上目で確認すると彼女の頭にも桜の花びらが付いていたのがわかった。それを指摘してやると取ってくれなどと言って目を瞑って待っているので俺は迷わず花弁をつまんで地に落とす。

「取れたぞ」

「むぅ」

「むぅじゃない。早く行かなきゃ遅刻しちまうぞ」

「それはトレーナーがいつも遅いからだ」

「……それは本当にごめん」

いつも俺は彼女を待たせているから彼女なりの気苦労があるのだろう。100%察してやれることはできないが代わりに謝罪しておく。

「気にするな。案外君を待つ時間もそう悪くない。好きな人を待つ時間は楽しいものだとトメさんも言っていた。」

「……そうか。」

そこから少しの沈黙、学園まで静かに2人で歩いた。

「私はこっちだ」

「違う。お前はあっち。流石に教室までは自分で行けるようにしとけ」

「…やはり広いな」

「つべこべ言うな。俺はトレーナー室にいるからなんかあったら呼べよ。」

「ああ、またトレーニングで頼む」

彼女と別れ違う道を歩く。時々振り返ってはこちらを見ている彼女に手を振る事を繰り返す。

そうしてしばらく経つと

「で、あんたら一体いつ付き合うんや?」

いきなり後ろから聞き覚えのある声がした。

「うぉっ!!?びっくりさせないでくれよタマモクロス…」

「ははっ!堪忍な。でもまぁあんたも早く返事してやらんとあかんで?いい加減オグリが可哀想やないか」

「……わかってるよ。」

「はぁ。あんたはトレーナーでオグリはその担当ウマ娘、そこに引いたらあかん一線ってのがあるかもしれんけどな、オグリはそう思っとらん。薄々気付いとるやろ?」

「…彼女の理想に私情を挟むわけにもいかないさ」

「うじうじしとるなぁ。別にあんたも断らんってことは気がないわけやないんやろ?理事長でもその秘書でも確認とってみればええやん」

「2人とも新レースのことで手がいっぱいなんだ。それこそこっちの問題に手を焼かせることはできない。今はこれでいいんだ」

「生真面目なやっちゃな。そんな事言ってたらいつまでもなんもならんで。ま、ウチには関係の無いことやけどな。ほなそろそろ時間まずいからウチは行くで。オグリの面倒ちゃーんと見たってな」

「それに関しては保証するよ。」

そう言うとにこっと笑いタマモクロスは向こうへパタパタと駆けていった。

「……とりあえず仕事だな」

俺はとことこ歩き、トレーナー室へ向かった




ウマ娘というコンテンツでは恐らく恋愛系(R18要素のない)ならギリギリセーフだろうと思ってますがぶっちゃけ私自身ちゃんとわかっておりません。
当然ダメならこの小説は無いものとなりますがご了承ください。

それとこのような感じでかなり自己満な小説です。こんな感じの流れでも大丈夫だよって人は続きが出たら見てくれると嬉しいです。
続きはモチベと時間があったら書きます。応援してくれたらモチベが上がりますのでよろしくお願いします。それでは。


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心地よい今

昨日の深夜テンションの続きです。
温かい目で見守ってください。


「はぁ…」

つい深いため息をこぼす。

「何度見たって…そう書いてんだよなぁ…」

この男は一体どうしてこう嘆いているのかーその答えは1冊の学校案内用のパンフレットにあった。

題名は『日本ウマ娘トレーニングセンター学園の心得』

ここにはトレセン学園のモットーや施設の紹介、そして学園の規則等について書かれていた。そのうちのルールの1つとしてこんなものがある。

ーートレセン学園ではトレーナーと担当のウマ娘がそれ以上の関係を持つことを禁止するーー

このルールを破るとトレーナーはすぐにこの学園から離れなければならないらしい。ウマ娘の方は何週間かの地域活動や謹慎処分を受けることになるとも書いていた。

「離れたく…ねぇもんなぁ。」

自分の処遇もだが謹慎になるオグリを見たくはない。しかし…

オグリはきっと俺の事が好きだ。恥ずかしい勘違いの可能性もまだなくはないが今の現状、勘違いである方が全然楽なのも確かだ。

悲しいのはきっと…俺もオグリが好きだからだろう。断るにも断りきれない。彼女の声が、髪が、顔が、耳、尻尾まで全てが愛おしい。この現状をどうにかするには……

「…俺はともかくオグリに飽きてもらうしかないだろうな。」

「何をだ?」

「何を…ってそれはおまうぉぉぉお!!??」

突然の背後の奇襲(オグリの声)に対応しきれず椅子から転げ落ちた!

「大丈夫かトレーナー!?

悪かった。必死に考え事をしていたものだから邪魔しちゃ悪いと思って。」

「あー…悪い。そんな気を使わなくていいんだぞ」

「わかった。……それで何を飽きてほしいって?」

「ん!?んーそれはなぁ……」

「それは?」

まじまじと見つめてきてやりづらい。透き通るくらいキラキラしていて眩しい。

「しょ、そう!食事にな!飽きてもらったら食費が浮くなぁ!って!」

「それは無理だ…。」

「だよなー!!ハハハ!」

「ほんとにか?変なトレーナーだな」

「そうか?俺はいつだってこうだぜ!さぁ今日はダートコースが多めのトレーニングだぞぉ!」

「わかった。」

ふぅ。正直ホッとした。これから先こういう事が無いようにしなければ……!!

「それと…トレーナー…私聞いてしまったんだが。」

「え…?なに…を?」

もしかして他にも口走っていたことがあったか!?まずい!!

「今言うべきことじゃないかもしれないんだが…」

「…ゴクッ」

唾を飲み込む。この雰囲気は流石になにか言ってる!!!アホか俺は!!!

「な、何を言ってた?」

「さっき私を見て『おまうぉー!』って叫んでいたが私はどちらかというとおウマだ。ウマ娘だ。」

「……………………ソウダナ」

「ん?どうした?トレーナー凄い顔だぞ。まるで担当のウマ娘が1秒近く出遅れたみたいな顔をしている。」

「いや…なんでもないさ。……なんでもな。」

 

自分にとっては心の底からほっとした反面、ものすごくくだらないことを言われてしまったので、その日のダートコースを予定より5周多く走らせたのだった。




活動報告にも書かせていただきましたが改めて。必須タグ付け忘れの報告感謝致します。
初心者なので勝手がまだまだ分かりませんがこういう事が無いように善処していきます。抜け目があればまたお願いします。

今回も読んでくれてありがとうございます。
また、前回お気に入りも何件か来ており凄く嬉しいです。自分のモチベが繋がる限り書いていきたい所存です。それではまた会う時まで


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たづなさんと、どきどきオグリ

今日はいつもより文字数多めです。


ここは理事長室の前。

たづなさんと廊下で会ったので世間話(ウマ娘の話)をしていると少々盛り上がってしまい熱が上がってきたところで仕事に戻らなければいけない時間になった。そこで

「明日、もっとお話できませんか!?」

と言われたので二つ返事で了承した。

 

その日のオグリのトレーニング終了後。オグリに声をかける

「明日はミーティングがあるから自主トレを頼むな。この紙に書いてるからしっかりやるんだぞ。」

「急なミーティングだな。」

「ああ、少したづなさんと話してくるから」

「ん?」

「ん?」

さっきまで凛々しい顔をしていたが一瞬できょとんした顔に変わった。しまったな…つい口が滑ってしまった。

「私もついて行く。」

「あほか。」

「何がアホなんだ。」

「たづなさんとはそういうのじゃねぇから」

「関係ない。私が行くと言ったら行くんだ。」

「あのなぁ…」

こうしてなんやかんやあって最終的にはオグリの為だからといった理由でしぶしぶ納得してもらった。

 

――――――――――――――――――――

 

 

「はぁ。明日はトレーナーがいないのか……」

寮に戻ってすぐに私は口を開いてしまった。この言葉は同室の親友に聞こえてしまう

「なんや?あのトレーナー明日はおらんのか?」

「あぁ…秘書の人とお出かけに行くらしい。」

こう言うと彼女は予想外だったらしく声が大きくなった。

「え!?あんたのトレーナーがたづなさんと!?」

「声がでかいぞ…」

「あー堪忍堪忍。でもそないことがあったんや。…あ、オグリ明日のトレーニングはどうするん」

私はトレーニングメニューが書かれた紙をタマに見せる。

「こりゃ丁寧なやっちゃな」

「あぁ。自慢のトレーナーだ」

「洒落になっとらんわ。……やからか!今日あんたいつもより3割くらいご飯の量少なかったで!!」

なん…だと!?

確かに今日はご飯を食べながらぼーっとしていた気がする…あんまり量を気にしてなかったな……っていうかタマはよく見てくれているな…。

「確かにそうかもしれない。タマどうしよう。」

「どしたんや」

「お腹がすいた。」

「……流石に我慢せぇや」

その日はそのまま寝ようと思ったのだがなかなか寝付けなかったのはきっと空腹のせいだろう。うん。

 

――――――――――――――――――――

 

俺はたづなさんとラーメン屋に来ていた。

当初の予定はもっと落ち着いた所にしようかなぁと思っていたのだがたづなさんに急な仕事が入った。俺の腹の虫も鳴いてしまい、これを聴きとったたづなさんは気を利かしてラーメン屋に行くことにしてくれた。

「あの時のダービーは凄かったですねぇ…三つ巴の戦いが目を離せませんでした…。」

「わかります…!自分のオグリにもあんな走りをさせたいもんです…!」

「まぁ!ふふふっ」

こんな感じで共通の趣味で話せる相手はありがたい。しかも向こうはかなりのベテランだからすごく頼れる存在だ。分からないところを質問したりあの時のレースは凄かったと感動を共有したりたづなさんが話すウマ娘の裏話もなかなかタメになった。お酒が進んだたづなさんは理事長の暴走癖を少しだけ愚痴っていた。たづなさんの可愛い一面が見れたところで……

 

「……朝ですね。」

「…えぇ。」

朝の7時。オグリに今日は先に行ってくれって連絡しておかねば…。

「連絡ですか?」

「え、えぇ…そうです。毎朝いつも一緒に学園まで行ってるので今日は無理そうだと伝えておかねばと。」

「ふふっ、なかなか見ませんでしたねぇ朝から一緒にいるトレーナーとウマ娘は」

「そうですか?」

「ええ。やっぱりお互いプライベートの時間を大事にしてる人が多かった気がします。仲良しと言いますか…かなり愛されてますねぇ。」

思わずその時飲んでいた牛乳をむせてしまった。

「大丈夫ですか!?」

「げほっ!げほっ!え、えぇげほっダイジョブデス。それじゃ今日はここまでにしときましょう!」

「え、えぇ。…そうですね!それではまた後で♪」

これ以上はまた口を滑らして何かやってしまうかもしれなかったので切り上げることにした。あくびを噛み殺して頑張ろうとしていたたづなさんを見ると俺も頑張ろうって思えた。

 

――――――――――――――――――――

 

あまり眠れなかった……朝も早くから目が覚めた。若干寝不足気味だな。

「先に出るよ。タマ。」

まだ寝ぼけているタマに声をかける

「んーまだ7時やで?」

「あぁ。朝が昨日から待ちきれなかったんだ。行ってくる」

ブーン

「ひゃっ!?!?」

な、なんだ?……あっスマホか…急に震え出すから苦手だ…。すまない。今日は君を見る気になれないんだ。

「それじゃ、いってきます」

「ん。いってらっさい。また後でな」

そうして、私はいつもの学園の近くの桜並木のあるところへ……おや。

「桜が…散ってしまったな。」

意外と早いんだな…もうお花見が出来ないのは悲しいな…。

 

そんな事を思いながら数十分。

いつもならそろそろ来るはずだが…

「オグリ!?」

「トレーナー!!……なんだタマか」

「…悪かったなぁトレーナーじゃなくて。…ってそんな事はええねん!もう遅刻ギリギリやぞ!?」

「でもトレーナーが…」

「きっとまだ寝とんねん!!急ぎや!」

「えぇ……」

「えぇ…ちゃうねん!走るで!!」

「トレーナー……」

やはり私もついていくべきだったか…。

 

――――――――――――――――――――

 

トレーニング時間までに仮眠を取ろうと思ったのだが小1時間寝すぎてしまった…。早く向かわないと…。

 

急いでトレーニング場に行くと他のウマ娘にタイムを取ってもらっていた。良かった。俺がいなくてもしっかりやれているな。さて…タイムはどうだったんだろうか…。

「2分40秒です。」

それを聞いたオグリはかなり落ち込んだ顔をした

どうやらダメだったらしい。きっと2000mのタイムだったのだろうがいつもはこんなタイムは出さないはずだ。

「悪いオグリ、遅れてしまった。」

「!!」

オグリはこちらを見た瞬間物凄いダッシュで近寄りそのまま……

どっかーん

倒れ込んでしまった。この流れ最近多いな。

「おーい。悪かったって。拗ねないでくれ。」

「トレーナー。」

彼女は俺の胸に顔をうずめたまま声を出した。

「どうした?」

「楽しかったか?」

「…ああ。」

耳がピクっと動く。

「私は楽しくなかったぞ。」

あれ……?めっちゃ怒ってる?

尻尾もバサバサ揺れてるし…まるで虫を払うみたいだ

「本当に悪かった。朝まで話してしまってたんだ。」

「それならそれで連絡をくれ。それが無理ならウマ娘としか話さないでくれ。」

そりゃまた酷い…ウマ娘としか話せないのは仕事に影響する。

 

…ん?

 

「オグリ、俺連絡入れたよな?」

「なんの事だ。見てないぞ。」

「朝7時くらいに。なんかしてたか?」

「嘘をつくな。その時は既に起きていた。………あっ」

うずめていた顔を上げて目が合った。

その後すぐに目を逸らして呟いた

「……スマホは苦手だ。」

「さてはお前見なかったな?」

「うるさいぞ…。大体トレーナーが私とお出かけに行かないのが悪いんだ。」

「ひでぇ八つ当たりだなぁおい!?」

 

―――――――――――――――――――

 

 

仕事の合間にトレーナーさんを見に行きました。朝まで付き合わせてしまって申し訳なかったなぁ…体調とか悪くしてないと良いんですが…?

あら?あらあらあら!…ふふふっ♪

私の目に映るのはトレーナーさんと、その背中にべったりくっついているウマ娘。

トレーナーさんも幸せ者ですねぇ。

 

今日のお仕事はもっと頑張れそうです。あの二人がこのまま一緒にどこまでも走れますように。そう思ったたづなさんでした。

 

 

―――――――――――――――――――

 

「オグリさん。」

「なんだ。」

「もう門限なので背中にくっつくのやめて帰ってください。」

「やだ。」

さっきからこの調子だ。既に寮の前まで来てるのに一向に離れようとしない。

俺の理性が消えないうちに早く行って欲しい。ずっと背中に柔らかい感触が感じられて困っているんだよなぁ…

「トレーナー」

「はい。」

「ウマ娘より人の方が好きか」

「…門限だぞ。」

「良いから答えてくれ。」

なんて答えるのが正解なんだ…?

俺の立場上ウマ娘の方が好きなんて言ったら事案だぞ…しかも寮の前だし…通報されちゃうよ…

「正直に答えてくれ。」

……しょうがない。

「あまり酷いことを言いたくないが…オグリの方が大事にしているよ」

「!!そうか!そうか~!……じゃあもっとくっついてて良いよな。」むぎゅー

「おい…。離れてくれ。」

「やぁだ。」

この後もくっつくオグリに仕方なくラーメンを奢ることで手を打った。

 

もちろんそのラーメン屋がたづなさんから教えてもらったってことは…当然黙っておいた。




いつもより長く書いて集中力が持たなかったので誤字とか変な表現もあるかもですが温かい目で誤字報告してくれると助かります。


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俺とオグリ、辿る軌跡

ある日の朝…

「トレーナー!これを見てくれ!」

「ん…?なんだ?」

オグリが手に持ってるのは珍しくスマホだった。

画面には『貴方が1年前に撮った写真を覚えていますか?』と書いていた。最近のスマホはこういったことをしてくれるので昔を振り返りやすくなっていて良いなぁとしみじみ感じる。

「おー。懐かしいなあ」

緊張していてがちがちになっている俺、可愛いというよりは凛々しい、そしてこちらも緊張していて不思議と近寄り難いオーラを放っていた。

2人の間は少し空いており、何ともよそよそしいツーショットだった。

「この頃のトレーナーは可愛かったな。」

「うっさいわい。」

「トレーナー、少し昔の話でもしないか?」

「……まぁ良いけど。ちょうど1年前ってことはこの日が選抜レースだったんだな。」

この写真を撮ったのはオグリをスカウトした選抜レースの後だった。カメラマンはタマモクロスにお願いした。本当にこの頃から彼女にはお世話になっているなぁ。

「あぁ…この頃はまだ少しだけ桜も咲いていたのを覚えているぞ。」

「今年は桜前線みたいなやつが少し早かったんだっけか。もう散っちゃったな。」

桜並木の道と呼んでいた場所は今はそういうには惜しかった。見上げると緑のカーテンのようになっている葉桜から陽光が射している。桜こそ散ってしまったがこの快晴は1年前とは変わらないな。

「トレーナー…覚えているか?この時の自分の一人称を。」

「……お前だって1年前他のトレーナーからなんて呼ばれてたか覚えてるんだろうな?」

…そう、それはまだ

俺が”僕”で オグリが”怪物”だった時の話だ。

 

 

――――――――――――――――――――

 

「きょ、今日から俺もトレーナーだ……!!立派なウマ娘をスカウトして育てるんだ……!!」

これからのトレーナー生活に理想と不安を抱いてトレセン学園までやってきた。するとすぐ近くでベテラントレーナーの2人組が話していたので挨拶がてら話に混じることになった。

そしてしばらく話しているとこんな話題が。

「新入り、地方から来たウマ娘にゃあ気をつけとけよ。」

「へ?地方から来たら何かあるんですか?」

正直、俺はそこら辺の知識がほとんど無かった。

「…地方じゃ負け無しのウマ娘も中央に来た瞬間凡走しか出来ねぇことは結構あるんだ。土地勘だったり、他のウマ娘との才能の違いだったりに差をつけられる。戦績だけを見てウマ娘を選ぶような奴にはなるんじゃねぇぞ。先輩からのアドバイスだ。」

「なるほど。ありがとうございます。」

「頑張れよ!そういやこの学園にも何人か地方出身のウマ娘ってのがいるんだ。”地方から来た怪物”なんて呼ばれてはいるが地方のウマ娘だ。気になるんなら期待しすぎない程度に見てこい。」

「俺のイチオシはスーパークリークだな!長く使える脚、スパートをかける末脚、レースをしっかり見ることも出来る洞察力、そして何よりでけぇあの胸だ。目の保養になるぜ」

2人目の男の人が豪快に笑う。俺もつられて笑った。

「はははっ!胸はともかく気にはしておきます!最も僕みたいな初心者トレーナーにスカウトできるとは思えませんが…」

「なぁに、初心者のうちから当たって砕けろの精神をつけとくのは大事な事だぜ。気張りな兄弟。」

「はい!ありがとうございます!」

俺は気前のいい2人に軽く会釈してその場を去った。良い話も聞けたし良かった。

「スーパークリーク……スカウトできるかなぁ。」

そうは言ったものの心の中では地方のウマ娘の話がずっと気になっていて仕方なかった。そんな時……

「……またここに来てしまった。」

 

 

銀髪をなびかせた迷子のウマ娘に会ったのだった。




今日はもともと書く気は無かったのですが、応援コメントを頂きこのまま寝るわけにもいかないと思い、いつもより少ないですが書かせていただきました。今回から回想編に入りたいと思います。よろしくお願いします。


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地方から来た怪物?

ウマ娘のゲームのキャラごとのストーリーとは所々違う内容になってるのでご了承ください。
また違った世界線での出来事と思ってもらえればと思います。


「……またここに来てしまった。」

 

出会いというの偶然か、それとも運命か。

そんなことに気づくのはまた少しあとのお話

今大事なのは…そこで困っているウマ娘を助けること。

 

「どうしたの?」

 

こちらに気づく名も知らぬウマ娘。

 

「あぁ、ここの学園のトレーナーか。道に迷ってしまってな。」

 

どこまで行くのかと尋ねるとトレーニング場までだと言うので俺はトレーニング場までの道を口で教えてあげた。

 

「助かる。ありがとう。」

 

そのままスタスタと去っていったウマ娘

名前くらい聞いとけばよかったかなぁと少し後悔しつつも話すのが得意そうには見えなかったので仕方ない!と自らを説得する。……まぁ次にあった時にでも聞けばいいか!!

 

 

そうしてしばらくそこの近くで休憩していた。

 

そしたらなんとさっき見たウマ娘と同じ形容をしている子が同じ場所で困っていた!!

 

これが…タイムリープか!?

 

なんて冗談は置いておきつつ俺はこのウマ娘に不安を覚えた…よっぽどの方向音痴だぞ……

 

「あの……」

 

「……君はさっきの。」

 

「良かったら一緒に行こうか……」

 

「本当か!助かる。」

 

そうして彼女とトレーニング場に行くことにした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「へぇ。オグリキャップさんって言うんだ。」

 

「あぁ。だが大半は私のことをオグリと呼ぶな。」

 

君もそう呼んでくれて構わない。そう言われたもののいきなりの事で気が引けたので妥協してオグリさんと呼ぶことに。折角なので情報収集もしておこう。

 

「オグリさんはスーパークリークって子を知ってる?」

 

「さぁ……?知らないな。」

 

「そうなんだ。じゃあさ。地方から来た怪物は知ってる?」

 

「チホーカラキタカイブツか……聞いたこともないな……。すまないな。頼りになれなくて。」

 

 

「あぁ。いいよ良いよ。ほら、トレーニング場が見えてきたよ。」

 

「むっ、あそこがトレーニング場だな。」

 

「そうだね。今度こそは本当にそうだね。」

 

既に3回くらい違うところに向かおうとしていたが、何とかたどり着いた。そこにはオグリさんと同じ銀髪の子がそこに堂々と立っていた。

 

「おう!オグリー!」

 

「待たせたな。タマ。」

 

「いやぁ、やっと道を覚えてくれて嬉しいで。ウチもいつもおってやれるわけちゃうから心を鬼にしたんやけど……正解やったな。」

 

「道はここのトレーナーに教えてもらった。」

 

「どうも。」

 

「ってちょいちょいちょい!!!結局そうなるんかい!!!」

 

「ごめん…そんな事情があったとは…」

 

「かまへん。かまへん。知る由もないことや。後でウチががっちり教えとくわ。ありがとうな~」

 

ウチはタマモクロスや。と手を差し出す。その手を俺は握り返し返事をした。

そうしているとオグリさんがソワソワし始めたのでトレーニングをするのではなかったのかと指摘すると思い出したように併走の準備を開始した。

 

 

せっかくの機会なので2人のトレーニングを見ることにした。

芝に腰を下ろすと、風が吹いた。芝の上で吹く風ってこんなに気持ちいいんだな。そんなふうに思っていると今にも併走が始まろうとしていた。

 

「よっしゃ、行くでぇー!よーい……ドンや!」

 

その瞬間、風が強くなった気がした。

 

「は、はやいな……。

 

2人ともさっきまでのほのぼのした雰囲気から一変、とんでもないスピードで併走を始めた。

こんな子がトレセンにはたくさんいるのか…!!

 

3周くらいしたところで併走が終わると今日は解散の流れになった。タマモクロスは外を走ってきたがオグリキャップはそこにずっといた。話しかけてみよう。

 

「お疲れ様。すごかったよ。」

 

「あぁ、君はさっきの。」

 

彼女はあれだけハイペースな走りをしていても、なお涼しい顔をしていた。

 

「やはり中央はすごいな。タマみたいなウマ娘が他にもいると思うとドキドキしてくるぞ…。」

 

………ん?

 

「やはり中央はすごいって…君、地方から来たの?」

 

「笠松というところから来た。」

 

「えーーーーー!」

 

トレーニング場に、1つ叫びが起きた。

 

「?何かおかしいのか?タマだってそうだろう。」

 

「えーーーーーーーー!!!!???」

 

トレーニング場に、もうひとつ叫びが起きた。




更新遅れてすいませんでした。
誤字あれば報告お願いします。
また、他の人にならって改行をいつもの小説より多く使いました。ご意見あればコメント残してくれると助かります。それでは。


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求める者、応える者

だいぶ設定がめちゃくちゃになってます。
たすけてー


あの2人の併走を見終わってオグリキャップから衝撃の事実を知らされた俺は足早にトレーナー室に行き、考えをまとめることにした。

 

俺が悩んでいたのは地方から来た怪物がどっちなのかだ。オグリキャップか…タマモクロスか…。果たして一体…

 

このままでは埒が明かないな。よし、たづなさんに聞いてみよう!

 

 

____________________

 

「地方から来た怪物はオグリキャップさんのことですね。」

 

はやかったー!!!

俺が悩んでたこと結構しょぼかったー!!!

 

「とゆうか……タマモクロスさんは確か地方のウマ娘ではなかった気が?」

 

「え……」

 

勘違いしてるじゃないか…。

 

____________________

 

とゆうわけで朝から栗東寮の近くで待っていた。

別に俺が言う必要も無いかもしれなかったが誤解を解いておく必要があると思った。

 

ちゃんと例の2人が仲睦まじそうに出てきたので声をかけ、ついでに前の件の話をした。

 

 

「あれ?タマは地方から来たんじゃないのか?」

 

「ちゃうで、なんやあんた勘違いしとったんか。」

 

「すまない…何となく同じ空気を感じたからてっきり。」

 

「なんでやねん。芦毛いうところしか共通点ないやろ。」

 

なんとかオグリキャップの勘違いを払拭することが出来た。…あぁ、後はあれも伝えとかないとな。

 

「それと、オグリキャップ。実は君が地方から来た怪物らしいんだ。」

「……!そうだったのか!たまに怪物だ……と私の方を見ている人がいた気がしたがどこに怪物がいるのか探していたんだ。……ふふふっ、私だったのか。」

 

……天然だなぁ。

 

 

朝から長く話して遅刻させる訳にもいかなかったので今日はこれにて解散。

 

それよりも気になることが1つ。

地方から来た怪物では、中央のウマ娘には敵わないのか?

本当にオグリキャップは中央で戦えないのか?

 

どうしても気になった俺は次の選抜レース……オグリキャップとスーパークリークが出るレースの日時を手帳にメモしておいた。

 

 

翌日

 

「ちょっとまってくれ。」

と急に背後から聞こえたので振り向いた。

その先にはオグリキャップが。

 

「あぁ。オグリさん。どうしたの?」

「ここらへんで緑の多いところを探しているんだが…」

「緑が多いところ……ですか」

 

自然に囲まれる場所…このハイテクな学園にあっただろうか。

確か少し遠いが一応あった気が…地図アプリ使えばわかるか。

 

ポケットからスマホを取り出して地図アプリを開いた俺をオグリキャップは興味津々に見ていた。

 

「スマホ使えるのか。すごいな。」

 

「え?スマホ持ってないの?」

 

「いや、一応持ってはいるが少し苦手だ。」

 

「あぁ、見るからに使えなさそうですもんね。……あっ、ありましたよ。向こうの方に歩いていったらあるそうです。」

 

「ありがと……ちょっと待ってくれ。見るからに使えないとはなんだ。」

 

小言を言われてしまったが聞こえないふりをして目的地へ向かうことにした。

 

 

「うん。いい所だ。中央にもちゃんとこういった場所はあるのだな。」

 

オグリキャップは楽しそうにでこぼこした道を歩いていた。

 

当の俺は……歩き慣れない道に少しふらふらしていた。

 

「…大丈夫か?」

「あ、あぁ。オグリさんはすごいな。この道かなり不安定じゃないですか?」

 

「しっかりと道を踏みしめておけば大丈夫だ。」

 

……すごいパワーだ。これが彼女の武器なのか…?んっ?

 

「オグリさん…。」

「ん?なんだ?」

 

「…あっ、ごめんなさい。やっぱりなんでもないです。」

 

「…そうか。」

 

言おうと思ったが伏せておいた。

 

 

彼女のシューズ……見るからに彼女自身のパワーに耐えきれてないじゃないか……!

 

それを見た俺は帰った後、ショップに来た。

彼女のパワーに耐えれるシューズを選ぶんだ……って

 

「アホか俺は。」

 

好きな色とかはともかく靴のサイズすら分からないのはダメだろ……

 

諦めて帰ろう…としたその時。

 

「おぉ!あん時のトレーナーやん!」

 

と元気な声で向かってきたウマ娘

 

「あぁ、タマモクロスさんか…どうしたんだ?こんな所で、」

 

「靴見に来たんや。アンタこそなんしにきたんや?」

 

「僕は……オグリキャップのシューズを買おうと思ったんだ。でもやめた。」

 

「はぁ?なんでおんどれがオグリのシューズを?しかもやめたってなんやねん。」

 

俺は彼女にこれまでの経緯を話した…すると。

 

「なんや!それならウチに任せとき!ちなみに予算はどれくらいなん?」

と言われたので、手元にある予算を見せると彼女は少し悩んで彼女の特徴について話し出した。

 

「オグリの足は27.0cmとかやったはずや。で、スピードが出そうな軽い靴もええけど…どっちかって言うと必要なのはパワーに耐えれる耐久性の方かもな。ほんまごっつパワーがあるからなぁ。」

 

やっぱり一緒に走るウマ娘の立場としても彼女のパワーはすごいのか…!

軽くて耐久性のあるような靴……あっ!

 

「これかな?」 「これやろ。」

 

2人で一緒に指を指した。その方向は一点に…同じ靴に向いていた。

何だかおかしくなって顔を見合せ2人で笑った。

 

「なんや。わかっとるやん。あいつも喜ぶで。」

 

こうして、なんだかんだオグリのシューズを買うことができた。

 

 

 

翌日

 

 

「オグリさん。これ…」

「これは…シューズだな。くれるのか?」

 

彼女は少し驚いて聞いてきた。

 

「この前シューズがかなりボロボロだったことに気づいたんだ。良かったら貰ってくれませんか?」

 

「何故だ?君はまだ私のトレーナーでもないと言うのに。」

 

なぜ?本当にそうだ。俺はオグリのトレーナーじゃない。なのに……どうして?

……あぁ、そっか。

 

「君が本気で走るところを見たいんだ。」

「……」

 

「中央でも勝つところ。皆にも見せてやりたい。」

「……そうか。」

 

彼女は少し顔を赤らめて呟いた。

 

「なんだか…懐かしい。温かい気持ちになった。」

 

「ん?」

 

「いや、なんでもない。私にも私の走りを見せたい人が地方に沢山いるんだ。……ありがとう。このシューズ、大事に使わせてもらうよ。」

 

 

そう言ってシューズを履き慣らすついでにグラウンドを何周か走ることにした彼女。その目は小さい頃に玩具を買ってもらった子供のようなキラキラした目をしていて。

 

とても楽しそうに走る彼女を見ていると心が固まった。

 




長い回想。次で終わりそうです。

回想が終わり次第またイチャイチャさせたいなぁ。


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