仮面ライダーの力を得たが、転生先は最速のウマ娘 (エム3)
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ウマ娘だが、男だ。

現実世界で、死を迎えた主人公。神様に転生させてもらい、いざきたのはウマ娘の世界。だが、俺の能力は 仮面ライダーだ。


俺が、この世界に来たのはある出来事の後。まあ、簡単なことだよな。俺は、まあ、アニメや特撮系統が好きなただのお兄さんだな。

 

俺はあの時、自分の好きな仮面ライダーのベルトを買うために出かけた。その時偶然、あるアニメが目についた。それは今人気の『ウマ娘プリティダービー』知ってると思うが、競馬の馬の擬人化のアニメだな。つい最近アプリの出たし、読者の人達もやってんだろ?ちなみに俺もやってる。

 

それで、Blu-rayと目当てのベルトを買って、家に帰る時、事件が起きた。まあ、簡単に説明すると、道路に飛び出した子供を助けて、代わりに轢かれて死んだ。まあ、そんだけなんだよな。んで、このまま死んじまうのかと思ったら、神様に呼び出されてた。

 

神様「お前さんに感謝しよう。子供を助けようとしたその心に・・・んじゃ、堅苦しいのはこの辺にしよう」

 

「いや、簡単だな?神様なんだろ?真面目にしないのか?」

 

神様「堅苦しい方がいいのか?」

 

「・・・別にそうじゃねぇけど・・・」

 

神様「ならええじゃろ?さて、そんじゃあ、お前さんの希望に応えよう。特典は・・・まあ、希望がないなら、こちらで決めるが、どうする?」

 

「なら、俺が買ってきたBlu-rayの世界に行きたい。後は・・・いらねぇかな。そっちで決めてくれや」

 

神様「そうか・・・なら、これとこれと・・・あ、そうじゃ。お前さんに言いたい事があるんじゃけどな?」

 

「あん?」

 

神様「お前さんの過去を見たんじゃがな?今まで転生させた奴らよりもお前さんは格段に善行を積んでいるようじゃからな。能力はこちらで決めるが・・・そうじゃな。お前さんが買った仮面ライダーのベルトがあったじゃろ?あれのスピードの速いやつにするからな。もちろんデメリットはない!ただし、姿は変わらん!そんな世界じゃないからな!」

 

「いや、それめちゃめちゃ速いじゃん・・・」

 

神様「よし!こんなもんじゃろ!お前さんの能力は転生先の1番最強!見た目もいい感じにしたから、大丈夫じゃろ!」

 

「・・・まあ、わかった。なんとかしてみる。あ、ちなみに転生した後の俺の名前は?」

 

 

神様「あれ?言ってなかったかの?お前さんの名前は・・・

 

 

 

 

 

 

 

『ファイズアクセル』じゃ!」

 

その言葉を聞いた後、俺は白い光に包まれた。

 

 

 

「うーん、チームのメンバーも足りないし、スカウトしなきゃ・・・よし、模擬レース見に行ってみよう。」

 

僕はトレセン学園って場所で仕事してる。チームのトレーナーです。トレセン学園には、ウマ娘って言う女の子達が切磋琢磨トレーニングしてる場所だね。もちろんトレーナーもいるよ?それで、僕はその学園にある一つのチームのトレーナーです。今日は、メンバーが足んないからスカウトに来たけど・・・

 

トレーナー「んー・・・みんないい走りをしてるけど・・・」

 

自主トレしてる娘達を見てるけど、どの子の走りも凄いと思う。けど、彼女と同じようには感じない。今日もダメかなぁ・・・

 

トレーナー「・・・って、あれ?あの子達は・・・」

 

その時、僕は一人のウマ娘に目をつけた・・・いや、娘じゃない

 

トレーナー「男?なんであんなところに・・・危ない・・・よね?・・・ん?けど、耳と尻尾・・・あの子、ウマ娘!?」

 

僕が目につけた奴は、隣の小さいウマ娘と何か話してる。どうやら、何かアドバイスをしてるみたいだけど・・・

 

「ライス、頑張ってついていきます!」

 

「・・・好きにしろ。だが、俺は先に走らせてもらう」

 

小さい女の子はライスって、名前らしい。もう一人の方はわからないや。。すると、その二人は並走するのかと思ったが、男の方が駆け出し、ライスの方は後を追うように走り出す。

 

トレーナー「あの二人、いい走りする・・・特にあの男の子、もしかしたらスズカよりも速い・・・けど、あの男の子・・・

 

・・・そういえば、前に理事長が言ってた・・・確か・・・この学園には何処にも属してない最強で最速の男のウマ娘がいるって・・・まさか・・・な。

とにかく、あの二人をスカウトしないと!

 

トレーナーside end

 

アクセルside

 

「・・・まあ、こんなものか・・・ライス、しっかりと水分を補給しろ」

 

俺は一緒に走ってたウマ娘・・・ライスシャワーにスポドリを投げ渡す。

 

ライス「あわわ・・・!あ、ありがとう!お兄様!」

 

ライスと出会ったのは、軽く自主トレをする為に走ってる時だった。軽く流してるだけなのだが、物陰に隠れてこっそりと覗かれていた。だから、俺は声を掛けて、理由を聞くと、自分も勝ちたいから、俺の走りを見てたら、自分も早くなれるかもしれないから・・・って言われた。

その際に、だったら見てるより、一緒に走れば、よくわかる。と言って、その日から、俺はライスと走ってる。ライスとも、少しずつ、親密になってきて、最近は俺を『お兄様』と呼ぶようになった。

 

ライス「や、やっぱりお兄様は速いね・・・!ライスじゃ、いつまでも追いつけないや・・・!」

 

アクセル「・・・謙遜するな。ライス、お前はいい走りをしている。自身の走りに誇りを持て。それに、俺自身、ライスと走って学ぶことも多い。俺は今、ライス・・・お前と走れて充実している」

 

ライス「そ、そうかな・・・!ら、ライスも、お兄様と走れて楽しいよ!それに・・・いつも一人で走ってたから、なんて言えばいいのかな・・・し、新鮮?だよ!」

 

アクセル「・・・そうか。」

 

「なぁ!そこの二人!ちょっといい!?」

 

アクセル「・・・ん?」

 

ライス「ひゃあ!?」

 

声を掛けられた方向に視線を向けると、一人の男性がそこにいた。俺は体ごと男の方に向ける。ちなみにライスは驚いたのか、俺の後ろに隠れている。

 

アクセル「俺達に何か用か?」

 

「うん!二人ってどっかのチームに所属してる!?」

 

アクセル「?俺はどこのチームにも入ってない。ライスは?」

 

俺はライスの方に視線を向けると、ライスは首を横に振る。

 

アクセル「俺達は、どこにも属していない。それがどうかしたか?」

 

トレーナー「だ、だったら!僕のチームに入らない!?」

 

アクセル「・・・チーム?」

 

トレーナー「僕はトレーナーだ!メンバーがたりてないから、君達をうちで育てたい!どう!?メンバーはメジロマックイーンただ一人なんだけど・・・」

 

ライス「マックイーンさんが所属してるチーム・・・?」

 

アクセル「・・・前に、メンバー歓迎をしていた場所か・・・」

 

トレーナー「二人の走りはすごい!他の子達よりもずば抜けて君達が速い!君達を育てたいんだ!お願い!」

 

見事なまでの90度頭を下げるトレーナー。その瞬間わかった事は、こいつは嘘偽りを言ってない事。そして、成し遂げようとする意思があるという事。・・・こいつになら・・・

 

アクセル「・・・お前、トレーナーと言ったな」

 

トレーナー「・・・?あ、ああ!」

 

アクセル「お前と一緒にチームに入れば・・・俺は楽しめるのか?」

 

トレーナー「・・・え?どういう意味?」

 

アクセル「俺は走る事が好きというやつの感情がいまいちわからない。学ぶ事は多いとは思うが、楽しいなどと思った事は一度もない。ライスと一緒に走っても未だにわからない。すまない。ライス」

 

ライス「・・・っ・・・う、ううん!ライスは平気だよ!」

 

アクセル「だから問う。お前についていけば、俺はわかるのか?走る事が・・・楽しいという感情は」

 

俺の問いに、トレーナーは頭をかきながら、唸っている。

 

トレーナー「・・・ごめん。僕は保証はできない。けど、学ぶ事は多いと思うよ?その子と一緒に走ったら、学んだこともあるんでしょ?なら、マックイーンと走っても、わかると思う。どう?」

 

こいつの言ってる事は正論だ。たしかに、俺には学ばなければいけない事が多い。だからこそチームに所属していれば何かと学ぶこともあるだろう。と言うことだろう。

 

アクセル「・・・わかった。俺はお前をトレーナーだと認めよう。」

 

ライス「わ、私は、お兄様が行くなら、ら、ライスもいきます!」

 

トレーナー「あ、ありがとう!二人とも!それなら、二人の名前、ちゃんと知りたいんだけど・・・」

 

ライス「ら、ライスシャワーです!ま、負けたくない気持ちは誰にも負けてないと、思ってます!よ、よろしくお願いします!」

 

トレーナー「ライスシャワーだね!よろしく!それと・・・」

 

トレーナーの視線が俺に向けられる。そして、俺はこの世界で生まれ、与えられた名前を告げる。

 

 

 

 

 

 

 

アクセル「ファイズアクセル。一応、トレセン学園、最速のウマ娘と呼ばれている。よろしく頼む。トレーナー」

 

 

 

 

どうやら、この世界では、俺は最速最強らしい。

 

 

 




ご愛読ありがとうございます。
ここに書きますが、最強主人公です。いや、最速ですね。
ヒロインは未だに未定です。
気長になってもらえれば嬉しいです


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チーム入りしたが、前途多難

2話目
駄文注意


俺とライスは、トレーナーに連れられて、所属するチームに連れられた。

 

「ここが僕のチーム!【シリウス】だよ!」

 

「こ、ここがトレーナーさんのチーム?」

 

「メンバー不足だと言っていたが、よくできているな」

 

トレーナーの案内の元、俺達が所属するチーム【シリウス】に到着し、扉を開き、中に入ると、そこにはたった一人だけウマ娘が椅子に座り、読書をしていた。

 

「あら?トレーナーさん?随分と遅かったのですね?メンバー勧誘をしていましたの?」

 

「うん。ごめんね。マックイーン。でも、今回は違うよ!今回はメンバーになってくれる子を見つけたんだよ!しかも二人!」

 

「本当ですの!?一体誰が・・・!?」

 

そのウマ娘・・・メジロ家のウマ娘の一人、メジロマックイーンは俺達に視線を向けると、驚愕の表情のまま、固まってしまう。

 

「こ、こんにちわ。マックイーンさん・・・!ら、ライスシャワーです・・・!」

 

「ファイズアクセル。ライスともどもよろしく頼む。メジロマックイーン」

 

俺とライスは、マックイーンに対して、軽く挨拶するが、なにも応答がない。変わらず、固まったままだ。

 

「・・・?おい、平気か?」

 

俺は少し心配になり、彼女に声をかけるが、なにも反応はなく、ただ立ち尽くしている。

 

アクセル「おい、トレーナー。メジロマックイーンはどうしたというんだ?」

 

トレーナー「あ、あれ?マックイーン、大丈夫?何かあった?僕また何かしたかな?」

 

トレーナーも声をかける。すると、マックイーンはプルプルと震え出して顔を俯かせている。

 

「・・・・・・ですの・・・・・・」

 

トレーナー「え?」

 

「も、もしかして、本物のファイズアクセルさんですの!?」

 

「・・・?俺以外に、ファイズアクセルの名を持つものはいないはずだが・・・?」

 

「本当に、日本全冠を成し、トレセン学園の生徒会長、シンボリルドルフさんを圧倒して、最強と名高い、ファイズアクセルさんですの!?」

 

「え!?生徒会長を!?しかも、日本全冠!?」

 

ああ。確かにそんな事もした。元々は、俺は学長から許可をもらい、チーム所属してなくても、代理として全て走ったりもした。その全てを俺の走りをしたら、圧勝し、いつしか、最速最強と呼ばれるようになった。

 

「ああ。その事なら本当だが、ルドルフを圧倒は誤解だ。あれはただの模擬レース。本当の勝負ならわからなかった。」

 

「ら、ライスもそのレース見てたよ・・・!!お兄様、風みたいに、ビューン!って走ってたよね!」

 

「風かどうかはわからないが、俺はただ走っただけだ。」

 

「それは本当かどうかはともかく!ほ、本物でしたら、さ、サインを頂いてもよろしいですか!?」

 

「それくらいなら別に良い。これから、同じチームメイトになるからな。」

 

俺は、マックイーンが取り出した色紙に、サインを書き、マックイーンに手渡す。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「別に気にするな。それより、トレーナー。俺達もこのチームに加入したわけだが、これからどうする?練習か?」

 

「ううん。今日は、マックイーンにはいつもの練習をしてもらって、二人は、さっき走ってたからストレッチして、今日は2人の事教えてもらってもいい?」

 

「ライス達の事?」

 

「うん。2人はなにが得意なのか。差しなのか。先行なのかとか、コースはなにが得意とか。色々ね」

 

なるほど。最初は俺達の脚質を把握する。ということか。

 

「わかった。指示通り行う。ライス、行くぞ」

 

「う、うん!!」

 

俺は、ライスを引き連れ、柔軟を行う。だが、ライスは走りは良いのだが、体が硬いのは皆知ってるだろうか?だから、俺は後ろから、ライスの上半身を軽く押してやる。

 

「んぅ〜・・・っ・・・!」

 

「少し我慢しろ。痛いかもしれないが、柔軟は大事だ。これもトレーニングだ。」

 

「わ、わかっ・・・たよ・・・!

 

ライスは痛みによって、苦悶の表情を浮かべている。・・・こんな俺だが、何故か罪悪感が有る。何故だ?それから、少し柔軟をした後、俺達は、トレーナーと話す為、チームに戻ったのだが。そこには、マックイーンとトレーナー以外に1人のウマ娘が立っていた。そこに立っていたのは、元々の脚質とは全く合わない中距離、長距離のレースで三冠を達成したウマ娘。

 

「ブルボン?何故ここにいる?」

 

「お久しぶりです。ファイズアクセル。トレーナーからスカウトされたと質問に解答します」

 

「トレーナーに?だが、ブルボンは他のチームに所属していたはずだろう。」

 

「それが、ミホノブルボンが所属してたトレーナーが、ブルボンを追い出したんだよ。何でも、自分の思い通りに動かないウマ娘はいらないって。ちなみに、ブルボン以外のその人の担当ウマ娘は全員ウチにくるから。」

 

「・・・は?」

 

「理由に解答。それはあなたがいるからです。ファイズアクセル」

 

「俺が・・・?」

 

意味がわからなかった。このチームにこれから所属するウマ娘が入る理由が俺?その意味を考えていた瞬間、扉が開いた。俺たちは全員視線を扉に向けると、そこには2人のウマ娘が立っていた。

 

「あの、ここがチームシリウスであってますか?」

 

「うん!あってるよ!ようこそ!サイレンススズカさん!ナリタタイシンさん!」

 

「どうも・・・・・あんたもよろしく」

 

「いや、俺は何故お前がこのチームに入るのか気になるんだが?タイシン」

 

「他のチームがなかったから。そいつに頼まれて、決めただけ・・・・・・あとは、ファイズ、あんたがいたから」

 

いや、だから、何で俺が居るから、タイシンが入るなんてことになる?

 

「あんたは、あたしの事、馬鹿にしなかったでしょ?小さいからレースで勝てるわけがない。そんな事言われてたけど、ファイズ。あんただけは馬鹿にしなかった。覚えてる?」

 

そんな事言ったか・・・?俺はただ、タイシンの走りに見所を感じたから何かを言っただけなんだが・・・

 

「あたしはあんたと一緒に練習したい。それで、全部のレースに勝つ!あたしを馬鹿にしてる奴ら、全部ぶっちぎって勝ってやるんだ!」

 

「・・・そうか。それと、サイレンススズカは、はじめましてだな?」

 

「あ、えっと、はい。サイレンススズカです。」

 

「俺は、ファイズアクセル。こっちはライスシャワーだ。」

 

「ら、ライスシャワーです・・・!」

 

(ファイズアクセルって、確かスピカのトレーナーさんが言ってた最速男のウマ娘・・・!)

 

わかりづらいが彼女も驚いているな。そんなに驚く事なんだろうか?

 

「ねえ、マックイーン、そんなにファイズアクセルってすごいウマ娘なの?僕も理事長から聞いた話しか知らないんだけど・・・」

 

「当たり前です。ファイズアクセルさんは、その存在こそ珍しい男のウマ娘ですのよ?それに、生徒会長との模擬レースはこの学園、全ての人の頭に残っているレースですわ。一緒に他のウマ娘も走ってましたけど、その全てをスタートで突き放し、最終コーナーの立ち上がりで、生徒会長をも突き放して勝利しましたの。ですけど、プライベートではとても紳士だと聞きましたの。その話の後、ファイズさんは【音速の貴公子】と呼ばれるようになりましたのよ?」

 

俺、そんな風に言われてたのか。いやまあ、ライスからそれとなく聞いてはいたけど、にわかには信じがたい話だったから、半信半疑だったのだ。

「そんなにすごかったんだ・・・あれ?という事は・・・すごい人がチームに入ってくれたって事!?」

 

「そんなの当たり前です!!トレーナーさんはどうして知らなかったのか私が聞きたいくらいです!!様々なテレビ番組にも出演していますのよ!?」

 

 

2人の漫才のような掛け合いを俺とライスは眺めていた。ライスは、必死に笑いを堪えているように見える。そんなに面白いだろうか?

 

「と、とにかく!これでマックイーンを合わせて、5人!チームとしての活動ができる!!みんなのメイクデビューもやるし!ファイズアクセルはレース内容組んでいくからよろしくね!」

 

「「「はい!!」」」

 

「ん・・・よろしく」

 

「・・・・・・」コクッ

 

それぞれがトレーナーの言葉に答える。これが俺達、チームシリウスの門出だった。

 

 

 



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最速最強の実力 9.9秒間のレッドゾーン

3話目です。
軽く模擬レース回。
気軽に見てください


「あ、そうだ。ファイズアクセルちょっといいかな?」

 

「・・・?」

 

俺は寮へと戻ろうとした時、俺はトレーナーに呼び止められた。

 

「実は、スピカってチームから、模擬レースをしたいって言われてるんだけど、その・・・・・走ってくれないかな?ファイズアクセル」

 

「スピカ・・・?確か、ウオッカやスカーレット達がいるチームだったか。だが、何故俺に頼む?」

 

「実は、元々はマックイーンだけのつもりだったんだけど、チームとして活動できる様になったし、今まで、お世話になってるから、少しでも何かお返しできないかなって思ったんだ。だから・・・その・・・」

 

「最速である俺の走りから何かを学んでほしいと思い、それが恩返しになると?」

 

俺の問いに、トレーナーは少し気まずそうにしながら、首を縦に振る、

 

「他に走りたいと言う奴はいなかったのか?わざわざ俺が走る必要もないだろう。」

 

「いや、それが・・・ね?実は向こうにもすごいウマ娘がいるんだけど・・・その子がね?ファイズアクセルの事、ルドルフから聞いてたらしくて・・・本当に速いのか試してみるか?って事になってたらしくて・・・」

 

「・・・つまり、挑戦状という事でいいのか?」

 

「・・・うん。」

 

なるほど。そのウマ娘は余程の自信家なのか、ただの馬鹿なのか。どちらにせよ、あまり良いとは思えないな。すると、近くにいたタイシンが不機嫌そうな顔をして、マックイーンは頭に手を当てて、ため息をついている。

 

「どうした?2人とも?」

 

「別に・・・なんでもない。」

 

「いえ、その・・・どうしてか、そのウマ娘に心当たりがありまして・・・」

 

「?知り合いなのか?」

 

「ええ。恐らく、いえ、十中八九、テイオーですわ。」

 

「テイオー・・・・・・トウカイテイオーか?」

 

「ええ。彼女は生徒会長みたいになりたいとずっと言ってましたの。ですけど、生徒会長が、ファイズアクセルさんに負けたと言ったんでしょう。それを信じきれていないと言ったところでしょうか。」

 

憧れの存在が敗北したという事実を受け入れられない・・・か。俺には全く持ってわからない。

 

「・・・子供じゃないんだから、素直に受け入れろっての」

 

「何でそんなに不機嫌なんだ?タイシン。」

 

「・・・トウカイテイオーのことはよく知ってるから、ファイズの事、どんな風に言ってるのか想像できるし、それにムカついただけ。」

 

「ら、ライスもテイオーさんの事知ってるけど、自信家って感じだよ・・・!だ、だけど、すごい速いのは確かだよ・・・!」

 

そんなに速いのか・・・・・それならば、少し気になる。

 

「・・・わかった。走るのは別にいいぞ。ただし一つ聞きたい。大丈夫なのか?」

 

「え?何が?むしろ走ってくれるのは嬉しい限りだよ?」

 

 

「いや、そうじゃない。走ることを聞いてるわけじゃない。

 

 

 

 

 

 

そのテイオーと呼ばれてるやつに、絶対的な超えられない壁を突きつける。それで絶望しても文句は言われないな?ということだ」

 

 

その一言を言った瞬間、タイシンは薄く笑い、トレーナーとマックイーンは驚愕の表情をして、ライスはアワアワとしていて、ブルボンは相変わらずの無表情だった。

 

「え、えっと・・・それって、トウカイテイオーに勝つってこと?」

 

「・・・?逆に聞くが、負ける要素がどこに有る?慢心している奴ほど、潰しやすいものはない。レースに出られなくするつもりはないが、現実を見てもらうだけだ。自身よりも速く、ずっと先にいる存在を知ってもらうだけだ」

 

「け、けどさ。トウカイテイオーって、今はすごい調子のいいウマ娘だよ?この間のレースもぶっちぎりの一位だったし・・・」

 

「なら、その模擬レースの日、結果を見ておくことだな。約束しよう。俺が勝つ。」

 

俺はトレーナーに断言した後、扉を開き、寮へと戻る。すると、他の連中も俺の隣に並び歩く。

 

「あんなこと言ってたけど、実際勝てるの?ムカつくけど、トウカイテイオーは速いよ?いや、あんたが負けるとは思ってないけど・・・」

 

「問題ないと思います。タイシンさん。現状況でのファイズアクセルの勝率は、100%です。現在の2人のスピードを比較。圧倒的にファイズアクセルの方が上です。」

 

「ライスも、お兄様が勝つと思うなぁ。」

 

「テイオーには申し訳ありませんが、私もファイズアクセルさんが勝つと思いますわ。あの会長との走りを見てしまいましたから、更にそう思ってしまいますわ。」

 

各々が反応する中、俺は考え事に集中していた。それは・・・・・・

 

 

 

 

 

本気を出すか・・・それだけを俺は考えていた。

 

そして翌日、俺達、チームシリウスは今回の模擬レースの相手、チームスピカの元へと尋ねる。

 

「先輩、来ましたよ!チームシリウス全員集合してます!」

 

「おう。来たか。おー?マックイーンしかいなかったチームのくせに随分、えげつないメンツじゃねぇか?ミホノブルボンにナリタタイシン、ライスシャワー、サイレンススズカに・・・・・・?まさか!?ファイズアクセル!?マジでか!?」

 

「久しぶりだな。沖野トレーナー。」

 

俺はスピカのトレーナー・・・沖野に軽くだが挨拶をする。

 

「おう!久しぶりだな!つっても、数日前だけどな!にしてもお前がシリウスに入るとはなぁ。リギルからも誘われてたんじゃねぇのか?」

 

「誘われていたぞ。全て断らせてもらったが」

 

「何でだ?俺がいうのも何だけどよ。リギルはトレーニング環境としては最高だぜ?おハナさんの練習メニューも最高の物だ。なんでだ?」

 

「つまらないからだ。」

 

「なるほどなぁ。俺にはよくわからんが、お前にはお前の理由があるわけか。それは俺がなんか言えるわけがねぇわ。」

 

頭を掻きながら、苦笑している沖野。

 

「なぁ、トレーナー。そろそろスペに説明した方がいいんじゃねぇか?スペのやつ、何で男の人に耳と尻尾生えてるのか不思議でしょうがないんじゃねぇの?」

 

チームスピカのメンバーの1人。白髪のヘッドフォンの様なものをつけてる人物、ゴールドシップがチラッと1人のウマ娘を見ながら沖野に話しかける。

 

「あ、忘れてたな。スペ、こいつが俺の後輩トレーナーな?んで、こいつらは後輩のチーム【シリウス】のウマ娘達だ。元々はメジロマックイーンしかいなかったけどな?つい最近、メンバーが増えたって聞いたから、合同練習を頼んだ。」

 

「な、なるほど?え、えっと。初めまして!スペシャルウィークです!北海道から来ました!」

 

「あ、君が先輩の言ってたウマ娘さん?初めまして、チームシリウスのトレーナーです。それと、ウチのチームのメンバー。」

 

「改めて、メジロマックイーンです。マックイーンと呼んでくださいませ」

 

「ら、ライスシャワーです!よ、よろしくお願いします!」

 

「ミホノブルボンです。」

 

「ナリタタイシン。舐めたら蹴っ飛ばすからよろしく」

 

「ファイズアクセル、よろしく頼む」

 

「サイレンススズカです。よろしくお願いします」

 

俺たちはもう一度、軽く挨拶して、俺はスピカのメンバーに会った時から、気になっていた事を沖野に聞いてみる。

 

「ところで、沖野、そこでずっと俺を見ているウマ娘はトウカイテイオーであっているか?」

 

そう。スピカに来た時から、1人のウマ娘がジーッと俺を見つめ続けているのだ。正直な所、気になって仕方なかった。

 

「そうだな。テイオー、どうせルドルフから聞いてると思うが、そいつがファイズアクセルだ。トレセン学園、最速のウマ娘な?」

 

「そ、そうだったんですか!?トレーナーさん!!私知らなかったんですけど!?」

 

「そりゃそうだろ。あの時、スズカのレース見たのが初めてなら見た事ないの当たり前だろ?こいつ自身、そこまでレース出るようなやつじゃないからな」

 

「それって遅いからじゃないの?どうせ、カイチョーに勝ったのもデマカセでしょ?」

 

ジト目で俺を見るトウカイテイオー。驚愕の表情で俺とトレーナーを交互に見るスペシャルウィーク。

 

「は?アクセルと走った事ないやつが何言ってんの?」

 

目を鋭くさせて、トウカイテイオーを睨むタイシン。よく見ると、無言だが、何故かブルボンも少しだが目を鋭くさせている。

 

「だってさぁ〜?ファイズアクセルって名前のウマ娘なんて見た事ないもん。テレビに出てるなんて言われてるけど、ほとんどカイチョーが出てるし、信じられるわけないじゃーん」

 

小馬鹿にした様にいうトウカイテイオー・・・少しイラッとした。だからなのだろうか。俺は無言でトウカイテイオーに近づく。身長差があるからだろうか。俺はテイオーを見下す様になってしまう。

 

「・・・・・・」

 

「な、なんだよぉ?」

 

少し怯えた様な声を出すテイオー。俺はテイオーと同じ視線になる様に、少し屈む。すると、何故かテイオーが「ヒッ!」と何故か声を上げる。だが、俺はそれを無視し、言葉を告げる。

 

 

 

 

 

「黙って俺と走れ。それで答えは出るだろう?」

 

俺はそれだけを言い、コースへと向かうため、扉開き出て行った・・・。

だが、何故、テイオーは悲鳴をあげたのだろうか?

 

 

 

ライスside

 

「お兄様が怒ってる所・・・ライス、久しぶりに見たかも」

 

ライスの言葉で、みんなの視線がライスに向く。

 

「ライスシャワー、ファイズアクセルが怒ってたの?」

 

「うん。ライス、お兄様が怒ってるところを見たんだ。その時はまだ、そんなに怒ってるわけじゃ無かったの。けど、一回だけお兄様が本当に怒ってる時を見た事があって・・・」

 

「ライスさん、それはいつですの?」

 

「え、えっと、タイシンさんと走る前・・・だよ?ライス、お兄様の走ってる所、何回も見てるんだ。タイシンさんと走ってる時も見た事あるよ?けど、タイシンさん、一回だけタイシンさん遅れちゃった時ある・・・よね?」

 

「・・・あー、チケットに絡まれてたから一回だけあるかも。」

 

思い出した様に呟くタイシンさん。・・・って事はお兄様の怒った所見てないんだよね。

 

「その時ね?お兄様が走ってる時に、通りがかったトレーナーさんがね?えーっと・・・ウララちゃんの事、話してたの。」

 

「ウララ・・・ハルウララさんの事ですね?」

 

「うん。それで・・・【あんな勝てないウマ娘がなんでこの学園にいるんだよ。さっさと辞めて消えてくれねぇかな】って言ってたの」

 

「・・・んだと?」

 

沖野さんの目つきが鋭くなる。マックイーンさん達も怒りの表情を浮かべてる。

ゴールドシップさん。ウォッカさん。ダイワスカーレットさんも。

 

「そ、それでね?トレーナーさんが言ってた事を生徒会長さんに、言おうと思ったんだけど・・・風がね?ゴウっ!!ってなったの。その後、トレーナーさんが地面でね?寝てたの」

 

「・・・え?」

 

「それで・・・隣にお兄様がいて・・・ ら、ライスも、よくわからなかったけど・・・その時のお兄様がすごい怖かったんだ。」

 

「・・・解析の結果、ファイズアクセルさんは、ハルウララさんの事を馬鹿にしたトレーナーさんに怒っていた。という事でしょうか?」

 

「そう・・・なのでしょうか?」

 

・・・ブルボンさんが言ってる事は多分間違ってないと思う。けど、怒ってる理由は違う。ウララちゃんの事でもあるけど、それ以外にも多分理由はあると思う。

 

「ん?けど、ライス、ファイズが怒ってるって事は・・・テイオーに対して怒ってたって事?」

 

「え!?」

 

「そうでしょう。初対面とはいえ、あのような態度をしては、ファイズさんも怒るのは当たり前です。」

 

「んだな。テイオー、走る前にしっかり謝っとけ。これからも、シリウスとは合同練習する時あるからな。」

 

「・・・僕が負けたらねぇ〜!ま!僕は絶対に負けないけど!」

 

テイオーさん。まだ勝つつもりなんだ・・・・・・

 

 

 

 

 

 

ライスはわかるもん。一緒に何回も走ってるから。

今、トレセン学園に、お兄様より速い人なんて・・・・・・

 

 

 

 

 

存在しないもん。

 

 

 

ファイズside

 

 

「・・・まだか?」

 

俺は軽く、ランニングをし、ストレッチをした後、待機していた。すると、全員がやってくる。

 

「遅い。何をしていた?」

 

「い、いやぁ、少し話し込んじまってた。悪かったな?」

 

「・・・さっさと終わらせるぞ。準備しろ」

 

「わかった。テイオーは待たせないようにさっさと並べ。他のやつは軽くストレッチした後、観戦だ。しっかり見とけ。」

 

俺は早速、ゲートへと向かう。続いてトウカイテイオーも同じように隣のゲートへ立つ。

 

「最強無敵のテイオー様の実力、見せてあげるよ!」

 

「・・・トレーナー。合図を頼む」

 

「わかった!それじゃあ・・・位置について・・・よーい!!

 

 

 

 

ドンっ!!!」

 

トレーナーの合図の後、ゲートが開く。ほぼ同時に、俺とテイオーは駆け出す。横並びにスタートダッシュを決めたが、俺は敢えてスピードを緩める。

 

(なるほど・・・・・・最強無敵を名乗るだけはあるか・・・)

 

トウカイテイオー・・・彼女の走りを見るために俺は敢えて先を譲った。後ろから相手を見ていれば、ある程度の実力を知れるからである・・・と言っても、これも特典の影響のようなものだ。

 

(スピードは中々、スタミナも、パワーもある・・・だが、所詮はその程度だな・・・これならライスの方が速い・・・)

 

ライスには走りを見て、改善すべき所を指摘している。それからライスは順調に成長しており、今のライスなら余裕で勝てるほどだった。

 

 

(残り1000m・・・・・・潮時だな。終わらせる・・・)

 

 

唐突だが、この小説を見ている人たちは、俺の特典をわかっているはずだろう。俺の能力は、仮面ライダーファイズのスピード特化のタイプ。アクセルフォームの力を持っている。だが、普段は力を出さないようにしている。私生活に影響を及ぼす可能性があるからだ。特典はレースに使うようにしてある。その為に、俺は制限を解放するためのコードを作り出し、呟くと解除するシステムにを作り出した。

 

その言葉は皆知っているだろう。あの言葉だ。

 

「・・・Start.up」

 

俺はコードを呟く。その瞬間、ドクンッ!と心臓が鳴り、体が熱くなる。そして、俺は力強く、地を蹴った。

 

 

 

 

テイオーSide

 

僕はカイチョーみたいになりたい。カイチョーのレースを見た時から僕はそう思ってた。その為に、僕は最強無敵になるって決めたんだ。

 

だから、カイチョーと同じトレセン学園に入ったんだ。スピカに入って、トレーナーやみんなとトレーニングして、少しでもカイチョーに近づく為に色々やってきたんだ。けど、カイチョーと話した時から、変になったんだ。

 

「ねぇ。カイチョーって、負けたことってあるの?」

 

「ん?私だって負ける時はあるさ。模擬レースとはいえ・・・私は負けたよ。彼に。」

 

「彼?」

 

「ああ。唯一抜きん出て並ぶものなし・・・私はそう言ってきたが、彼にこそ。この言葉が似合う。疾風迅雷。電光石火・・・彼こそ最速だ」

 

カイチョーは黄昏たようにそう言ってた。けど、カイチョーのほっぺは赤く染まってて・・・マヤちゃんが言ってた言葉をその時思い出したんだ・・・恋をしてる乙女って。カイチョーは僕を見ているようで見ていないってそう思った。

 

だからこそ、カイチョーの言う・・・彼に嫉妬した。だから、僕はトレーナーに聞いてみたんだ。

 

「ねぇ、トレーナー。」

 

「ん?どした?テイオー?」

 

「トレセン学園の中で、1番速い人って、やっぱりカイチョーなんだよね?」

 

「んあ?そんなの決まって・・・・・・ああ、いや、1人いたな。シンボリルドルフより速いやつ。」

 

「・・・・・・それって誰?」

 

「ファイズアクセル。」

 

ファイズアクセル・・・そんな名前、聞いた事なかった。

 

「誰?それ?」

 

「しらねぇのかよ?たった1人、男のウマ娘だよ。イケメンだし、速いし、ファンも多い。模擬レースで、ぶっちぎりの一位。あのシンボリルドルフが負けたってこともあって、すげぇ注目されたんだぞ?日本全冠を成し、日本最強まで上り詰めた奴だよ。あいつスカウトしようとしたんだが、断られちまったんだよな」

 

トレーナーは惜しいことしたよなぁと、悔やんでいたが、僕にはどうでもよかった。カイチョーに勝って、日本全冠。そんなすごい人がいたこと自体知らなかった。けど、カイチョーに勝った。その言葉を信じたくなかった。だから、僕は勝負したいと思った。僕が勝って、カイチョーの敵討ちをしたいと思ったから。

 

そして今、僕はそう思っていた。彼と走るその時まで。

 

(なんで・・・?)

 

理解できなかった。

 

(なんでなんで・・・?)

 

僕は絶好調だった。足の違和感も消えたし、この間のレースで三冠を達成した。この調子だから、この人にも勝てるとそう思ってた。

 

(なんでなんでなんで・・・?僕より後ろにいた・・・よね?)

 

コースの半分までは僕が前を走ってた。このまま勝てるとそう思ってた。たいした事ない人だってそう思ってたけど。

 

「・・・・・・」ゴニョゴニョ

 

彼が何か喋った様に聞こえたから、僕はチラッと後ろを見た。けど・・・

 

 

 

 

 

 

 

その場所に、あの人はいなかった。

 

 

 

「・・・・・・え?」

 

 

 

目を疑った。さっきまでそこにいたはずなのに、いない。もっと後ろにいるのかと思ったけど、その考えは突然の声でかき消された。

 

「ウオオオーーーー!!!」と歓声が上がる。前を見るといつのまにか、多くの人が歓声をあげてる。知らない間に人が集まっていたみたいだった。けど、みんな僕を見てない。その視線は一点に向けられてる。

 

 

 

(まさか・・・・・・)

 

僕はみんなが見てる先・・・ゴールを見る。信じたくなかった。けど、僕の目に写ってるのは紛れもなく現実。

 

 

(なんでもう・・・・・・そこにいるのさ・・・・・・!?)

 

 

 

ゴールでファイズアクセルが・・・・・・人差し指を立てて・・・空に向かって掲げていた。




ご愛読ありがとうございます。
これこそ最強です


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彼女達との交友関係

4話目です。
今回はシリアス&勘違い回です。

ある意味で、ファイズの恐ろしい片鱗が見える・・・かも?


走り終えた俺は、トレーナー達と合流し、スピカ合同トレーニングに参加している。最初はあれほど、ジト目を向けていたトウカイテイオーも、レース後には、何故か静かになっていて、練習が捗っているが・・・

 

 

(先程まで自信に満ち溢れていた彼女が急に静かになるのは違和感があるが・・・今、俺が何か言っても逆効果だろう・・・それに対応しなければいけないのは・・・彼女だけではないからな・・・)

 

俺はあの後もコースを軽く走っている。理由は単純。スピカのトレーナーに頼まれたからだ。ランニング程度の走りをしてほしいとのことだった。だが、その隣には、全力疾走中のスペがいる。(スペというのは、彼女自身にそう呼んでほしいと言われた)

 

「全力で走ってるのに、何でついてくるんですかぁ〜!![

 

「いや、ランニングついでに、スペの走りを見て欲しいって言われたからだが・・・。お前は、能力はピカイチだが、力み過ぎている。余計な力を抜け。そうすれば、早く走れる。ほら、頑張れ」

 

「は、はいー!!」

 

スペはギアを上げて、スピードを上げる。俺も少し、ギアを上げて、なるべく並走するように走る。チラッとトレーナー達に視線を向けると、他のメンバーは俺たちの様子を見ながら、後ろをついてきていた。

 

「今現在のファイズアクセルのスピードは、約5%と推測します。」

 

「あれで5%なのかよ?いや、まあ、あの速さが100%なら、妥当・・・なのか?」

 

「た、多分だけど、お、お兄様は今、3%ぐらいだと思うよ?ら、ライスと一緒に走ってる時よりゆっくりだし、その時で5%だって言ってたから」

 

「あれ、けど、ファイズがテイオーと走ってる時って、あれより少し速いくらいじゃなかった?って事は、あの時は・・・8%くらい?」

 

「あの速さで・・・・・・8%・・・」

 

「やはり、ファイズさんは最速ですね。」

 

(聞こえているんだが・・・・・・まあいいか)「ほら、スペ、少しスピードを上げるぞ。ついてこい。」ゴウッ!!

 

「えぇ〜!?ま、待ってくださいよぉ〜!!」ダッ!

 

俺は更にギアを上げて駆ける。スペも追いかけてくる。やはり、素質は一級品だな。ただレースについてが素人なだけだな。ちゃんと知識と作戦を頭に入れておけば・・・彼女は化けるかもしれないな。

 

 

そんな事を思いながらも、俺とスペは走り続けた後、トレーナーから休憩を指示された。と言っても、休憩時間は、走りの疲れを残さないために、軽く柔軟をしている。他のメンバーも同じ様にしている。すると・・・

 

「あの・・・・・・」

 

「なんだ?スペ。」

 

スペに声をかけられ、視線だけをスペに向けながら、柔軟をしている。

 

「テイオーさんの事・・・やっぱり怒ってますよね?」

 

「テイオーの事・・・?いや、別に怒ってはいないぞ。流石にイラっとはしたが・・・あんな事、勝ち続けている者なら、よくある事だろう。特に彼女は、最強無敵を目指している。余計に自信がついてしまったんだろう。仕方ない。気にする必要もないからな」

 

「・・・ファイズさんって、優しいんですね。少し意外です。」

 

「そうか・・・?普通だろう。それに、あんな事、トレセンに入学してきたときに散々言われたからな。男のウマ娘が勝てるのか?とか、ただ女達に囲まれる為にトレセンに入ったんだろうなとか言われたぞ。」

 

「そ、そんな事が・・・た、大変だったんですね・・・ファイズさん・・・」

 

「まあ、そう言われてたが、気にせずトレーニングをしてたが。日本全冠を成してから、全てが変わった。結果、ライスやタイシン、ブルボン、スズカにマックイーン、そしてトレーナーと出会って・・・今こうやってチームとして練習をしている。それに・・・」

 

「・・・?」

 

「スペとも出会えた。」

 

「・・・っ!//」

 

転生前に見たが、買ってきたBlu-rayの一つ目には彼女が表紙に載っていた。主人公と呼ばれるポジションに彼女はいるのだ。そして物語には必ず彼女が大きく関わる。要するに、彼女と知り合いになれば、原作が何かはわからないが、物語に関わる可能性があると言う事だ。

そんな彼女と知人になっておけば、俺も物語に加われる。彼女に出会えた事は、俺にとっては嬉しい事なんだ。

 

「おーい!ファイズ!スペ!今からお昼食べるぞぉ~!食堂に集合だってよ!」

 

すると、ゴールドシップが、お昼だからと俺たち二人を呼ぶ。どうやら、スピカのメンバーと一緒に昼食を取るらしい。

 

「おい、スペ。行くぞ」

 

「は、はい!!//」

 

俺は、スペに声をかけた後、みんなの元へと歩く。スペも俺の後に続く。その時何故か、スペの頬が赤いような気がしたが、気にする必要などないだろう。

その後、俺達はトレセン学園内にある食堂に向かっている。ここにいる全てのウマ娘が友人達と食事を楽しむ場所。だが、ある一部のウマ娘の食事の量が異常であり、それがある意味で名物にもなっている場所である。だが、向かう途中、ある事に気づいた。

 

「・・・?トウカイテイオーはどこに行った?」

 

そう。トウカイテイオーがいなかったのだ。先程までは一緒にいたはずだ。だか、いつのまにか消えている。その事には全員が気づいていなかった。

 

「あ?さっきまで一緒にいたよな・・・トレピッピ、気づいてなかったのか?」

 

「気づいてるわけねーだろ・・・お前らと話してだろうが。けど、テイオーのやつ、どこ行きやがった?」

 

「そのうち来るでしょ。わたし、お腹すいちゃった。先にご飯食べましょ」

 

「んだな。腹空かせたら来るだろ。先行こうぜ」

 

「・・・・・・そうだろうか?探さなくていいのか?」

 

「まあ・・・別に平気だろ。テイオーならどうせルドルフの所にでも行ってるんじゃねぇか?」

 

沖野もそう言っている事だし、大丈夫であろう。そもそも俺には何も関係ない。俺はただ走っただけだ。慢心し、ただ自分から崩壊した奴には何も思いはしない。そして、俺達は、食堂への移動を再開した。そして、到着早々、俺たちにとっては見慣れた光景を見た。たった一つの机に山盛りのご飯。そのご飯が、ものすごい勢いで、あるウマ娘の胃袋へと入っていく。

ある地方から中央へとやってきて、瞬く間にレースでの活躍が話題に上がり、怪物とまで呼ばれたウマ娘。白髪のウマ娘。オグリキャップだ。

 

 

「・・・相変わらずの食欲だな。オグリ」

 

「・・・もぐもぐ・・・ふぁいふ、いっふぉにふぅふぁ?」

 

「すまない。今日はスピカのメンバーと食うことになっている。」

 

「・・・ふぉうふぁ・・・」

 

オグリは器用に口に物を入れながら、一緒に食べるかと誘ってきたが、今回はスピカのメンバーとの食事がある事を伝えると、耳がぺたりと倒れる。相当、残念だった様だ。今度、埋め合わせでもしておこう。

そして、俺達は、各自で料理を取った後、席につき、会話をそこそこしながら、食事を取っている。

 

今更だが、説明しておこう。ウマ娘が食事を取る量は尋常ではない。とは言うが、特別、別格なものもいる。オグリがいい例でもある。それよりは少ないが、スペもなかなか食っている。ライスも意外と食べる。初めて見た時はあの小さい体のどこに入るのか謎でしかなかった。

それ以外にも、人間と同じ量しか食べない奴もいる。ちなみに俺も人間と同じ量しか食べない・・・

 

 

 

 

 

いや、食べれないと言えばいいのか・・・まあ、その話は追々話すことになるかもしれない。知る事になるかもしれないが、今は明かされることはないだろう。

 

料理を黙々と口に運んでいると、目の前に箸で摘まれたコロッケが目の前に現れる。俺は目の前に座っているゴールドシップを見た。

 

 

 

「相変わらず、お前、少食だよな。そんなんで足りんのか?なんなら、このマックイーンのコロッケをやろう!」

 

「人のご飯を勝手に取らないでください!それは私のです!」

 

ゴールドシップが何故か、メジロマックイーンが食しているコロッケを奪い取り、俺に渡そうとする。それを奪い返し阻止するメジロマックイーン。なんの漫才だろうか。

 

「・・・賑やかだな。あの2人は」

 

「・・・まあ、あの2人は仲良いからな。しょうがねぇよ。」

 

その2人を見て、俺とウォッカは呆れている・・・いや、ウォッカ、お前とスカーレットも似た様な感じでは・・・?そう思ったが、言葉には出さないでおこう。

 

「ギャアアアア!!箸ぃぃぃぃーーーッ!!!」

 

すると、突然、ゴールドシップが何故か目を押さえながら、悶絶している。よく見ると、ゴールドシップとメジロマックイーンが取り合っていたコロッケが二つに割れていた。どうやら、2人がコロッケを箸で引っ張りあっていると、コロッケが二つに割れて、その際、ゴールドシップの目に箸が突き刺さったらしい。

 

・・・ピタゴラスイッチか?

 

「・・・何をしているんだ・・・お前達は・・・」

 

「ご、ゴールドシップさん。大丈夫かな?お兄様?」

 

「・・・まあ、ゴールドシップの事だ。大丈夫だろう。あいつは、いつものことだ」

 

「変に心配する必要ないぜ?ライスシャワー。ファイズの言う通り、ゴルシのあれはいつものことだしな。いっつも、メジロマックイーンを揶揄って、自分に返ってきてんだよ。自業自得ってやつだな。」

 

沖野も慣れてる様にそうは言うが、見慣れていない奴は相当慌てると思うが・・・

 

そんなハプニングが起こった昼食も終わり、その後は更に全員で並走したが、その時もトウカイテイオーはいなかった。練習後、流石に心配だったので、スピカとシリウスメンバー全員でトウカイテイオーを探す。

 

「・・・あと探していないのは、生徒会室ぐらいか・・・」

 

俺は唯一探していない場所の生徒会室を訪れる。2回ノックをした後。

 

「入っていいぞ」

 

相手からの返答があった後、俺はノブを回して、扉を開ける。中にいたのは、3人のウマ娘がいた。

 

トレセン学園の生徒会長。数多のレースを制覇し、皇帝と呼ばれている、シンボリルドルフ。

 

生徒会副会長。女帝と呼ばれたウマ娘、エアグルーヴ。

 

生徒会書記。一匹狼な気質があり、レース前に闘志を燃やす。彼女もまた怪物と呼ばれているウマ娘。ナリタブライアンがいる。

 

「君がここに来るのは珍しいな。ファイズ。」

 

「少し用事がある。エアグルーヴもブライアンも、邪魔をしてしまったか?」

 

「いや、こちらも問題はない。今は休憩中だからな。」

 

「問題ない。少し飽きてきた所だ。走りたい。ファイズ。今度一緒に走るぞ」

 

「練習を一緒にやると言う意味なら別に構わないぞ」

 

「その言葉、忘れるなよ。次はお前の前に出る。それと・・・お前の料理、また食わせろ。」

 

「気が向いたらな。」

 

不敵に笑いながら、ナリタブライアンとの約束をして、俺は3人に本題の話をする。

 

「それより、ルドルフ。ここに、トウカイテイオーが来なかったか?」

 

「テイオーが?いや、ここには来ていない・・・そうだな?2人とも」

 

「はい。会長。今の時間まで、生徒会を訪れた人物はファイズ以外にはいません。」

 

「私も見てない。あの騒がしい奴が来ればすぐわかる」

 

どうやらここにも訪れていないらしい。となると完全に当てが外れた事になる。

 

「テイオーに何か用事でもあったのかい?」

 

「・・・つい先程、俺はトウカイテイオーに挑まれ、俺はレースをした」

 

「・・・っ・・・それでどうだった?テイオーとの走りは」

 

「他の奴に比べたら遅くはない。だが、速い訳でもない。期待はしたが、外れだった。それが感想だな」

 

「・・・そうか。」

 

「その後、トウカイテイオーが姿を消した。途中から練習にも参加していない。そして、メンバー全員でトウカイテイオーを探している。だから俺はここに来た。トウカイテイオーならルドルフに会いに行くかもなという助言でな」

 

・・・結局、いなかったわけだが。

 

 

「そうだったのか・・・テイオーは今、一敗塗地・・・大敗を味わったと言うことだな。」

 

「だが、生徒会室にいないなら、完全に当てがなくなったな。俺はトレーナーの元に戻る。邪魔をしたな」

 

俺は生徒会室を後にする。あと探していない場所は・・・・・・

 

 

 

 

ルドルフSide

 

「・・・テイオーですら、彼には敵わなかったか」

 

「会長、やはり、今いる生徒達では彼には敵うものはいないかと」

 

「・・・私も、今はあいつには勝てない。あいつを満足させる事はできない。」

 

 

私は彼に負けてから、学園の中で彼と相対する事ができる人物を探している。その中で、勝てる可能性があったのはテイオーだけだった。私を超える可能性があるテイオーなら彼に勝てると・・・そう思っていたが。テイオーを語っていたときの彼の目。

 

 

 

冷たく、失望した様なあの目。あんな目をした彼を見るのは初めてだった。

 

「・・・彼があんな目をするとは思わなかった。跼天蹐地。ここまで恐ろしいとは・・・」

 

「・・・あいつがあんな目をした事は、今回が初めての事じゃない。」

 

ブライアンが若干震えた声で言った。私とエアグルーヴが彼女に視線を見ると、彼女の足が震えているのが目に入る。頂点立地。勇ましい彼女の姿には到底思えなかった。

 

「・・・?ブライアン、何か知っているのか?」

 

「一度だけ・・・あいつのあの目を見た事がある。会長やエアグルーヴは・・・ハルウララを知ってるか?」

 

「ハルウララ・・・知っているさ。確か、以前、理事長が首にしたトレーナーの担当ウマ娘だったな。なんでもレースで結果を出せないウマ娘達をセクハラとパワハラで指導していたトレーナーのウマ娘の1人・・・だな」

 

「そのトレーナー・・・実はある人物にトレーナーという仕事を続けられない状態にされているんだ。」

 

「何だと・・・?」

 

「半身不随になっているらしい。そして私は、そのトレーナーがその原因となる怪我をする光景を見た。私は・・・その時、逃げ出したんだ。底が知れない・・・あの恐怖から」

 

「・・・何を見たんだ?」

 

私は恐怖が半分、興味が半分の気持ちで彼女に問い返した。彼女から返ってきた答えは。

 

 

 

 

「ファイズが・・・トレーナーの首に蹴りを入れていた」

 

その言葉に私達は驚愕してしまう。あの心優しい彼が、そんな暴行に走る可能性がないからだ。そんなわけがない。

 

「馬鹿な・・・!あいつに限ってそんな非道を・・・!」

 

「私だって信じられなかったさ。だが・・そのトレーナーを見下して、ファイズが言ってた。

 

 

 

 

 

 

 

【お前は彼女達を道具だと思っているのか?自分の成果が出ない事を、道具である彼女達のせいだと?ふざけるのも大概にしろよ?

道具に感情はいるか?心はいるか?彼女達には彼女達にしかない可能性がある。

それを引き出せていないのはトレーニングメニューを考えている貴様に原因がある。お前はこの学園にいる必要はない。お前の非道はすでに理事長や生徒会長に報告済みだ。お前が担当していたウマ娘達は、他のトレーナーが担当する事になるだろう。よかったな・・・そうだな。先程、お前がハルウララに言っていた言葉をそのまま返す。

 

 

 

 

 

 

お前の様な奴は消えた方がいいぞ?いや、消えろ。この学園から。】

 

 

 

「あいつのあの目は・・・軽蔑と侮蔑、そして・・・失望の目だ。」

 

 

ナリタブライアンのその言葉で私は理解してしまった。

 

彼は・・・逃げ出したテイオーに・・・失望しているのだと。

 

 

(テイオーがあそこにいないとなると・・・図書室にいるはずもない。そうなると・・・どこかで落ち込んでいるのか?)

 

 

なお、彼はそんな事は微塵も思っていない模様。




ご愛読ありがとうございます。
次回をお楽しみに。


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苦しみと失望

5話目。
前話で、勘違いだと思われてた事が、勘違いではなくなります。



「ここにも・・・いないか。本当にどこにいる?トウカイテイオー・・・」

 

俺は、生徒会室を訪れた後、図書室やトレーニングルームを探してみたのだが、結局トウカイテイオーはいなかった。もうほとんど探す場所は残っていない。とその時、スマホが鳴り響き手に取り画面を見ると、どうやらトレーナーからの連絡だった。

 

「もしもし?」

 

【あ、ファイズ?トウカイテイオー見つかった?」

 

「いや、あれから探してはいるんだが、一向に見つからない。トレーナー達の方は?」

 

【うーん、こっちも先輩達と探してはいるけど、めぼしい場所はないかなぁ。こっちは後探してない場所も残ってないし・・・本当にどこにいるんだろうね?】

 

どうやらトレーナー達もトウカイテイオーを見つけられていないらしい。

 

「トレーナー達はこれからどうする?他の場所も探すのか?」

 

【うーん、とりあえず、ファイズはこっちに戻ってきてくれる?】

 

「了解。今から戻る」

 

俺は電話を切り、ポケットにしまい、トレーナー達がいる場所まで少し駆け足で向かう。軽く走ってるつもりなのだが、周りの目が集まっている所を見ると、かなりの速度が出ているみたいだが、気にせず走る。

数秒後、トレーナー達が見えたので、走る速度を緩め、ブレーキをかける。

 

「すまない。待たせたな」

 

「う、ううん。全然待ってないよ。けど・・・はやくない?あれから1分も経ってないけど・・・」

 

「気にしない方がいい。それで、トウカイテイオーは見つからなかったのか?」

 

「はい。カフェテリアやコースに戻っていると思ったのですが、どこにもいませんでしたわ」

 

「タイキやフクキタルにも聞いたけど・・・誰も見てないって言ってました。

 

マックイーンやスズカもそれぞれの方法で探したらしいが、有力な情報は得られなかったらしい

 

「なら、完全に手詰まりというわけか?他に誰もトウカイテイオーの行きそうな場所を知らないと?」

 

「うーん、先輩達も、色々当たったみたいだけど、結局いなかったらしいし・・・」

 

「あ、あと探してない場所なら、ライス知ってるよ!」

 

「本当か?ライス、何処だ?」

 

「寮の中だよ。お兄様と、トレーナーさんは、お、男の人だから寮に入らないもんね?」

 

「・・・そういえばそうだったな。俺は一人で行動してたから、無理だったわけだが。しかし、トレーナー達は行ったんじゃないのか?スカーレットやウオッカ、ゴルシに行かせれば良かっただろう?」

 

あくまでも、トレセン学園の寮はウマ娘専用だ。男である、俺やトレーナーは入らなくても、ゴルシ達に頼めば探ることはできたはずだ。

 

「あー、そうなんだけどさ。先輩に話を聞いたらさ。トウカイテイオーなら部屋に籠るなんて事しないと思ってたんだよ。それで、みんなに頼んで、他のコースとか、チームの人達に聞いたりとかしてたんだからさ・・・」

 

「確かに、トウカイテイオーならそうかもしれないが・・・そういう奴に限って、案外籠る可能性が高いと思うぞ?」

 

恐らく・・・だけどな。すると。

 

「あれ?ファイズさんに、ライスちゃん達だー!なになに?何の話してるのー?」

 

俺達に話しかける一人のウマ娘が現れる。オレンジ色の髪、小柄だがその走りは多くのものを惹きつける。

 

「マヤノトップガン・・・」

 

「うん!マヤだよー♪」

 

彼女の名前はマヤノトップガン。最近はウェディングドレスの新衣装が登場したウマ娘だ。(現実世界)大人の女性を目指しているウマ娘でもある。

 

「マヤノトップガンはどうしてここにいる?」

 

「えーっとね?カフェテリアでスイーツを食べようと思ったんだけど、ファイズさん達が集まってたから来たの!それで、なんの話してたの?」

 

「トウカイテイオーを探している。何処にいるか知らないか?」

 

「テイオーちゃん?テイオーちゃんなら、寮の部屋に籠ってるよ?」

 

「・・・何だと?」

 

こんな近くに情報があったとは・・・だが、彼女はトウカイテイオーとルームメイトだ。部屋に戻っている事を彼女が知っていることは何も不思議ではない。

 

「トウカイテイオーは、部屋に戻っているのか?」

 

「うん。けどね、テイオーちゃん、すごく震えてたんだ。顔色も悪くてさ。マヤも心配で、事情を聞いてみたら走るのが怖くなっちゃったんだって。越えられない壁があるから。走っても無駄なんだって。ユーコピー?」

 

「・・・・・・」

 

つまり、俺に負けた事によって、努力では俺を越えられないから何もしないで諦めたと?たった一度の敗北と挫折で、あいつの心は折れたと?

 

 

 

 

フザケルナヨ?トウカイテイオー?

 

 

 

 

ファイズside off

 

 

 

ライス視点

 

「お、お兄・・・・・・様?」

 

ライスはマヤノトップガンさんの話を聞いた後、お兄様が、急に顔を俯かせて、黙っていたから、心配で声をかけたの。けど、お兄様は顔を上げて、マヤノトップガンさんを見つめてる。

 

「マヤノトップガン、トウカイテイオーのいる部屋に案内しろ。今すぐ」

 

「え?けど、ライスちゃん達はいいけど、トレーナーちゃんとファイズさんは入れないんじゃないの?」

 

「フジキセキに言えば、俺も入れる。俺も一応、ウマ娘だ。トレーナーには待ってもらうしかない。それで問題ない。頼めるか?」

 

「アイコピー♪ファイズさんの頼みなら任せてよ♪」

マヤノトップガンさんは、お兄様の手を引きながら、寮の方へと向かっていく。ライス達も後を追うように、寮に向かったの。

 

「また・・・あの感じだった・・・お兄様・・・さっきの時より怒ってる・・・!」

 

「疑問、ライスシャワー。先程のトウカイテイオーさんとの会話よりも、今の話を聞いたファイズさんからステータス『怒り』を感じるのですか?」

 

「う、うん!もしかしたら・・・テイオーさん危ないかも・・・!お、お兄様、本当に怒ってたら、な、何するか分からないから・・・!」

 

また・・・ウララちゃんのトレーナーさんの時みたいになっちゃう・・・!お兄様が・・・!

 

「そ、それって危険じゃないか!と、とりあえずファイズ達の後を追うよ!みんなは先行ってて!僕は先輩達に連絡入れとくから!」

 

「「「はい!」」」

 

ライス達は、急いで寮に向かって走る。お兄様・・・!早まっちゃダメだよ・・・!!

 

ライス視点 end

 

 

トウカイテイオーSide

 

「・・・・・・嫌だ・・・もう嫌だ・・・!」

 

僕は昼食に向かう最中、みんなが話に夢中なってる時に抜け出した。最初はカイチョーのいる生徒会室に行こうとしたんだけど、急に怖くなって、寮の自室にまで走って戻ってきた。マヤノに心配されたけど、僕は全部、マヤノに話したんだ。

 

「カイチョーみたいに頑張ろうって思ってたけど・・・!カイチョー以上に速い人がいて・・・!その人と走って・・・!完敗したんだ・・・!こんなんじゃあ・・・!カイチョーにだって勝てないんだ・・・!」

 

全て話した後、マヤノは部屋から出て行った。多分、一人にしてくれたんだと思う。僕が落ち着くまで。マヤノには感謝しかないんだ。けど、僕は怖いんだ。部屋から出たら、思い出しちゃうから。

あの人の圧倒的な走りを。初めて・・・酷いこと言っちゃった時のあの目を。

 

「あんな目で・・・!見られたくないよぉ・・・っ!何で・・・あんな目で見るんだよぉ・・・!」

 

怒ってたんだと思う。自分が言われたら嫌な事を僕はあの人に言った。怒らない方がおかしいと思う。けど、あの人の目を見た時・・・怒ってるのはわかったんだ。けど・・・あの人の目はすごく・・・

 

 

 

 

真っ暗だったんだ。濁ってる目・・・って言うのかな。なにも感じてないような・・・そんな目だった。

 

と、その時だった。「コン、コン、コン」と、扉がノックされる。僕は体をビクッ!とさせた後、ゆっくりと扉に視線を向けた。

 

「だ、誰?」

 

「あ、テイオーちゃん?大丈夫なのー?」

 

「ま、マヤ?」

 

「うん♪マヤだよー!」

 

・・・良かった。同じルームメイトのマヤだった。急にいなくなったから、スピカの皆んなが探しにきたのかと思った。僕は何でかホッとした。あの人じゃなくて良かった。

 

「ぼ、僕は大丈夫だよー!無敵のテイオー様だからね!」

 

「さすがテイオーちゃんだね!それなら早く部屋から出てきてよー!せっかくお菓子持ってきたんだから!みんなで食べよう!」

 

「お菓子!?わかったー!今開け・・・・・・あれ?」

 

マヤの発言に僕は違和感を覚える。今、『みんな』って言ったよね?ここには僕と外にいるマヤだけのはず。もしかして、マヤと一緒に誰かいる?そう思った時、僕は血の気が引くような感じがする。僕は声を震わせながら、マヤに問いかける。

 

「ね、ねえ、マヤ?も、もしかして一緒に誰かいる?」

 

「え?うん!

 

 

 

 

 

ファイズさんも一緒にいるよー!ね?ファイズさん?」

 

「・・・そうだな。トウカイテイオー。さっさと出てこい。俺も少し腹が減った。」

 

その声を聞いた時、恐怖が襲ってきた。あの時の走り終わった時に僕に向けられた目を思い出してしまった。暗く濁った目で、冷めた目で僕を見下ろしていた。身長差もあるんだろうけど、見下された時、すごく怖かった。そんな目がまた向けられる。嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!

 

「・・・?テイオーちゃん?どうしたのー?お菓子食べないの?」

 

「・・・やっぱり、僕いらない。」

 

「え?テイオーちゃんの好きなお菓子とか、はちみー?だっけ?それも買ってきたんだよー?食べようよー!」

 

「いらないって言ってるの!二人で食べてればいいじゃん!」

 

体が震えてる。怖い。扉の向こうにいる人が、すごく怖い。だから、マヤについ声を荒げてしまうが、僕はいま、そんな事を気にしてる余裕は多分ない。あの人と会いたくなかった。どんな事をしても会いたくないんだ!

 

「・・・面倒だ。マヤノトップガン。少しどいていろ。」

 

「え?ふぁ、ファイズさん?なにするの?」

 

「・・・トウカイテイオー、扉の前からどけ。警告はしたぞ」

 

「・・・え?」

 

僕は嫌な予感がしたからすぐに扉の前から退いた。その瞬間だった。

 

 

 

バゴーッン!!!

 

 

扉が吹き飛んだ。いや、蹴り破られたんだ。

 

「ぴいっ!?」

 

「ふぁ、ファイズさん!そんなことしなくても、フジキセキさんに言えば、合鍵で開けてもらえた「少し黙ってろ。マヤノトップガン。」・・・っ!」

 

「俺は今・・・機嫌が悪い。」

 

左右で違う色の瞳が僕を見据える。真紅の目と黄金の目が、僕を見下している。こんな目をした人なんて見たことない。僕は怖さで涙を流しても、ファイズさんから目を離せなかった。目を背けたら、駄目だと本能的にそんな気がしたから。

 

 

 

「・・・トウカイテイオー。」

 

「ぴゃ、ぴゃい!?」

 

「俺が今、何故機嫌が悪いか。わかるか?」

 

「え、えーっとえーっと・・・ぼ、僕がいなくなったからぁ・・・おこってるでしょぉ・・・?グスッ・・・・・・!」

 

「それもある。だが、それは俺が怒ることではない。それは、お前のチームであるスピカに謝る事だ。俺が怒る理由は他にある。言ってみろ。他に何か思い当たるか?」

 

僕は必死に思考するけど、全然わかんない。いや、わからないわけじゃないけど、思い当たる節が複数あるからだ。

 

「わかんないよぉ・・・っ!」

 

「・・・マヤノトップガンが言っていた。トウカイテイオー、お前は走りたくないようだな?越えられない壁があるからと。どれだけ走っても無駄だと。お前はそう言っていたな?」

 

「ひぐっ・・・!た、確かに言ったけどぉ・・・っ!そ、それで何でファイズさんが怒るんだよぉ・・・っ!」

 

 

自分が思った事を正直に口に出したんだ。何でそれで怒られるのか訳がわからない。

 

「・・・本当にわからないのか?」

 

「だからぁ・・・!わかんないって言ってるじゃん・・・っ!」

 

僕は涙を流しながらも、ファイズさんを、見据える。その瞬間、激しく後悔した。また、あの目を向けられる!そう思った時にはもう遅かった。

 

 

 

暗く、濁った目が、僕を見据えていた。

 

 

 

「そうか。なら、もうここには用はない。スピカのメンバーには俺から話しておく。お前はそのまま怯えているといい。

 

 

だが、一言だけ言わせてもらう。」

 

そう言うと、ファイズさんがおもむろに足上げて、ダンッ!と足を地面に下ろす。足が降りた場所は、凹んでいてクレーターみたいになっていた。

 

 

 

 

「お前の言っていた言葉は、ここにいるすべてのウマ娘への冒涜になるぞ。俺を除いてな。

 

 

これ以上、俺を失望させるなよ?トウカイテイオー?」

 

 

そう言って、ファイズさんは出て行った。僕はファイズさんがいなくなったから安堵したのか、膝から崩れ落ちて、思いっきり泣いた。

ファイズさんと一緒に来たマヤは、僕が泣き止むまで、「大丈夫だよ、テイオーちゃん。大丈夫、大丈夫」と僕が泣き止むまで一緒にいてくれていた。

 

その後、トレーナー達が来てくれて、僕は必死に謝った。みんなは、すぐ許してくれたけど、シリウスの人達とお話ししたんだ。

 

「て、テイオーさん、お、お兄様に何か言われた?」

 

「ぐすっ・・・っ!俺を失望させるなって・・・僕の言ってた言葉はみんなへの冒涜だって・・・言われた」

 

「はぁ・・・?テイオーが言ってた言葉って・・・怖いから走りたくないってやつ?努力しても無駄って言ってた。あれ?」

 

「そ、それなら、お兄様が怒るのもわかっちゃうなぁ・・・」

 

「・・・?ライス、それってどう言う事?」

 

 

僕達は、この後のライスちゃんの、言葉を聞いて、ファイズさんの言葉の真意を知ったんだ。

 

 

 

 

「お、お兄様が怒ってるのは、テイオーさんが、夢を諦めてるからだと、ライスは思うよ!」

 

 

 

 

 

 




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走る意味

6話目。
短め。駄文注意。


タイシン「テイオーが夢を諦めたから?そんな事でファイズが怒る理由がわからないんだけど・・・?」

 

タイシンさんが、ジト目でライスを見てるけど。

 

ライス「ら、ライスは真剣だよ!?お、お兄様と会ってからずっと、い、一緒にトレーニングしてきたから!!」

 

マックイーン「ら、ライスさん、落ち着いてください!」

 

ブルボン「ライス、タイシンさんが言っている事は正確です。テイオーさんが夢をあきらめることによってファイズアクセルのステータス「怒り」を感じるのは理解不能です」

 

ブルボンさんの言っている事は正しいとライスも思う。けど、ライスはお兄様に聞いた事があるから。

 

ライス「え、えっとね?ライス、一回だけお兄様に夢ってあるの?って聞いた事があるんだ。そ、そしたらね?」

 

 

あの時のお兄様の表情を今でも思い出す。何気なくライスが聞いただけなのに、いつものお兄様とは違う雰囲気を感じた。

 

ファイズ『夢・・・?』

 

ライス『う、うん!ライスはダメな自分を変えたいって思うんだ。お兄様は何かある?』

 

ファイズ『・・・夢が叶う瞬間を見たい』

 

ライス『夢が叶う瞬間?』

 

ファイズ『俺には具体的な夢はない。だからこそ、誰かが夢を叶えた瞬間を見てみたい。そうすれば、夢は叶う物だと理解できる。俺も何か夢を持てると思っているんだ。だからこそ、俺は夢を持つものを尊敬している。夢を叶える為に努力している者を評価している。』

 

ライス『お兄様・・・・・・』

 

ファイズ『だが、周りにはその夢を無謀だと、笑う者や諦めろと言うものもいる。その者の努力や気持ちを知らずに。それを俺は許さない。ハルウララのトレーナーもそうだ。』

 

ライス『ウララちゃんの・・・・・・?』

 

ライス『ハルウララは走る事を何よりも楽しんでいる。そして、トレーナーの為に勝利するための意思もあった。だから、勝利をする事はできなかったが、2着と惜しいレースだった。だが、トレーナーは認めなかった。負けた事を責めた。自身のトレーニングメニューを見直さずに。だから、俺が潰した。』

 

『・・・・・・』

 

その時、ライスは何も言えなかった。言えるはずがなかった。だって、あの時のお兄様は、レースの時に感じた恐怖よりも、何倍も怖くて声も出せなかった。

 

ファイズ『努力している誰かを嘲笑い、侮蔑する者を俺は許さない。夢へ向かって努力する者は力を身につける。だから、ライス、お前の叶えたい夢への努力、決して辞めるなよ?』

 

ライス『・・・・・・うん。』

 

いつもの優しい笑顔をお兄様は私に向ける。けど、さっきの表情がライスの頭に残っちゃった。とっても怖くて、今向けてるお兄様の笑顔も、もしかしたら嘘の表情なんじゃないかって。とっても怖かった。

 

ライス「って、言ってたから・・・・・・」

 

ライスの話が終わると、みんなが少し笑ってる。わかってくれたのかな?

 

タイシン「夢に向かって努力してる人を尊重する・・・か。ま、あいつらしいか」

 

タイシンさんが嬉しそうに笑ってる。いつも怒ってるイメージがあったけど・・・

 

ブルボン「なるほど。つまり、ファイズさんがステータス『怒り』を感じていたのは、テイオーさんが自身の夢を諦めていて、走る事が無駄という言葉は他者の夢を冒涜しているから・・・という事ですか。」

 

ブルボンさんはいつもと変わらない感じで落ち着いている。

 

マックイーン「何というか・・・ファイズさんはお優しい方ですね。他者の事で怒られるのですから・・・」

 

少し戸惑いながらも、声はどこか嬉しい感じがするマックイーンさん。

 

スズカ「私の目指している夢も・・・ファイズさんは認めてくれるのかしら・・・?」

 

考え込んでいるスズカさん。みんながお兄様の行動や言葉を肯定してくれている感じがする。ライスはそれが嬉しい。

 

トレーナー「・・・あれ?そういえばその当人のファイズはどこに行ったんだろ?」

 

トレーナーさんがそう言って周囲をキョロキョロ見回している。たしかに、テイオーさんの部屋から出たお兄様は今、ここにはいない。どこに行ったんだろ?すると、スピカのトレーナーさんが来て。

 

沖野「ファイズなら、今は寮長二人のところだ。」

 

トレーナー「先輩・・・って、寮長って事は、ヒシアマゾンとフジキセキの所ですか?」

 

沖野「おう。何でもテイオーとマヤノトップガンの部屋の床、凹ませちまったみたいだからな?すげぇ音も出てたし、謝罪に行ってんだとよ」

 

 

 

 

ファイズside

 

ファイズ「・・・本当にすまなかった」

 

「まったくだよ。ポニーちゃん達がすごい音が鳴ったって駆け込んできた時は驚いたんだからね?」

 

「あたしだって驚いたさ。一体何したらあんな音がなるんだい?」

 

俺はトウカイテイオーの部屋で鳴らした音、そして凹ませてしまった床の件を、寮長の二人であるヒシアマゾン、フジキセキに説明していた。どうやら、あの音は寮の全体に響いてしまっていたらしく、多くのウマ娘達に、迷惑をかけてしまっていたらしい。

 

ファイズ「ただ・・・床を思いっきり踏んだだけだが・・・・・・」

 

ヒシアマゾン「それだけであんな音が鳴るのかい!?ものすごい脚力じゃないか!?」

 

フジキセキ「ファイズ君のパワーならそれだけの音が鳴るのはわかるけどね・・・修理が必要になるのはわかってるよね?その費用はトレセン学園から出るんだよ?わかってる?」

 

ファイズ「・・・本当にすまない。理事長や生徒会長には俺が話しておく・・・」

 

・・・流石に苛立ちすぎだったな。トウカイテイオーの言動に怒りを覚えたとはいえ、流石に愚行だったな。

 

ヒシアマゾン「まあ、私らはなんとも思ってないさ。けど、他の奴らにはちゃんと謝っておきなよ?あんたが、怖がられるのも何か言われるのも、私らは嫌だからね?」

 

フジキセキ「そうだよ?私だって君のような優しいポニーちゃんがまた、周りから苦言を言われている姿を見るのは嫌だよ?」

 

ファイズ「ヒシアマゾン・・・フジキセキ・・・そうだな。謝罪はしておく。今から回ってくる。すまない」

 

俺は寮長室を退出し、各部屋を回っていく。一人一人にしっかりと謝罪をしながら。全てのウマ娘に謝罪を終えて、玄関前まで戻ると、チームメンバーが全員揃っていた。

 

ファイズ「・・・待っていたのか?全員で。」

 

トレーナー「うん。トウカイテイオーも見つかったしみんなで待ってたよ?この後の事も言ってなかったし。」

 

ファイズ「この後・・・?」

 

何かミーティングでもあるのだろうか・・・?そんな事を考えていると、トレーナーの口からこんな言葉が出た。

 

 

 

トレーナー「うん。これからみんなの出場するレースが決まったからその報告、あ、先に言っておくけど、ファイズ、君にも走ってもらうから。そのつもりでね?」

 

 

 

チーム結成の直後の出場レースの決定。突然の報告に俺は驚愕を隠せなかった。

 

 

 




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更なる出会い 歪んだ天真爛漫

ファイズ「もうレースの日程が・・・?チームが結成した直後にか?」

 

トレーナー「うん。マックイーンとスズカとブルボン、タイシンの強さはわかってるからレースを組んだ。それに、ライスはデビュー戦をした後、GⅢレースからやってもらうつもり。

 

ファイズはもうデビューしてから色々なレース、出てるでしょ?だから、近いG1レースに出す予定だから・・・・・・大阪杯になるかな?」

 

ファイズ「大阪杯・・・」

 

芝2000メートル。中距離のレースのG1レースの一つ、大阪杯。このレースを目指すウマ娘も少なくはないほど、有名なレースの一つだ。よって、手強いウマ娘が走ることも多い。

 

ファイズ「トレーナー、お前が注意すべきと思うウマ娘は?」

 

トレーナー「そうだね・・・うーん・・・リギルからグラスワンダー・・・それと、カノープスってチームから、1人だったかな?そのぐらいかな?」

 

ファイズ「グラス、そして、カノープスから1人・・・グラスの実力は理解しているが、カノープスというチームはわからない。誰が出る?」

 

トレーナー「えーっと・・・確か、ナイスネイチャだったかな?テイオーとは同期らしいけど。」

 

ナイスネイチャ・・・彼女の事は俺も知っている。トウカイテイオーの影に隠れてしまってはいるが、彼女も実力者だ。だが、彼女はあまり勝利を手にしているイメージはない。確か・・・彼女が出たレースの着順は3位だった事は覚えている。

 

ファイズ「ナイスネイチャ・・・そして、グラスワンダーか。実力者が集っている事は間違いない。だが、俺が負ける事はない。トレーナー、練習メニューを頼む。何をすればいい?」

 

俺の言葉に、苦笑のトレーナーとみんな・・・俺は何か変な事を言っただろうか?

 

ファイズ「・・・?どうした?」

 

タイシン「・・・あんたのその自信ってどこから来るの?まだ、走ってもないのにもう勝つ気?」

 

ファイズ「逆に聞くが、レース前の練習時点で、負ける事を考えるウマ娘がいるか?考えるのはただ一つ。全てを置き去りにして、ゴールを・・・全てのレースに勝利すること。それだけだ。」

 

勝利する事だけが俺の存在の証明になった。誰にも認められていなかった昔は、全てを叩き潰した。圧倒的な走りで。全てのウマ娘に対しての絶対的な壁として。

 

トレーナー「あはは・・・・・・ファイズはそういうウマ娘・・・いや、うま男なんだね。少しだけどファイズの事、わかったよ。」

 

タイシン「ま、あんたはそういう奴だよね・・・嫌いじゃないけど」

 

ファイズ「日本全冠を舐めるなという事だ。グラスやネイチャには悪いが、今回も勝たせてもらう。」

 

トレーナー「よし!それなら、僕もちゃんとしないと!日本全冠のウマ男のトレーナーになれたんだから、それに相応しくならないとね!」

 

マックイーン「トレーナーさん、ちゃんと私たちのトレーニングも考えておいてくださいね?」

 

トレーナー「もっちろん!無理しない程度に頑張るよ!」

 

意気込むのはいいが、あまり無理はしない様にして欲しいな。トレーナーには。

 

トレーナー「よーし!ファイズのメニュー作りしなくちゃね。その為に、ファイズに色々聞きたいんだけど、いいかな?」

 

ファイズ「構わない」

 

トレーナー「ファイズの一番得意な走法は?さっきのテイオーと走った時は、えーっと・・・あれって差しでいいの?」

 

ファイズ「ああ。あの時は差しで走った。ついでに言っておくが、俺は一応、全ての走法ができる。だが、その中で一番となると・・・差しと先行、この二つだな。」

 

 

トレーナー「えーっと、差しと先行・・・距離適性と、芝とダート、どっちが得意?」

 

ファイズ「芝。距離は中距離から長距離。だが、短距離、マイル、ダートも走れる。日本全冠だからな。だが、短距離、マイル、ダートは走ることはもうないだろう。」

 

トレーナー「なるほど・・・ちなみに聞くけど、ゲート難とかは?」

 

ファイズ「ない。」

 

俺の言葉を逐一、メモするトレーナー。初めてあった時からそうだが、トレーナーは本当に俺の事をよく知らないらしい。

 

トレーナー「よし。それなら、ファイズのメニューは・・・・難しいな。それと、今後のマックイーン達の練習メニューも考えなきゃだし・・・うーん」

 

ファイズ「・・・無理に決める必要はない。今日は各々でトレーニングをすればいいと思う。トレーナーにも考える時間は必要だろう」

 

トレーナー「そう?それならそうしようかな。みんな、各自でトレーニングした後、しっかり柔軟をしてゆっくり休んで。何かあったら、すぐに言うこと。近くで見てはいるけど、僕はみんなの練習メニューに集中するから。」

 

トレーナーの指示の元、俺達は各自のトレーニングをしている。ライスとマックイーン、ブルボンは坂路を走り、タイシンとスズカは、コースを走り込んでいる。そして、俺はと言うと。

 

ファイズ「ふっ・・・!」ズルズルズル

 

タイヤを引きながらは、走り込んでいる。なんでも、チームスピカでは、よくやっている練習なのだとか。確かに、このトレーニングは、想像以上のパワーが必要になってくる。流石は沖野が考案したトレーニング方法だ。

 

「あ!?ファイズさんがタイヤひいてるよ!」

 

「え!?ほんと!?」

 

「あんなに大きいタイヤを引っ張ってるのに涼しい顔してる!あれって、確かスピカの練習で使ってたやつだよね!?」

 

・・・何やら外野が騒がしい。そんなにも俺がこのトレーニングをしていることが意外なのだろうか?まあ、気にしなければいいだけの話だが。その後、コースを一周して、このメニューを終了した。汗がすごい。それだけ、効果が出ているということではある。

 

ファイズ「ふう・・・」

 

・・・しまった。タオルを用意するのを忘れてしまっていたな・・・俺とした事が・・・っと、その時だった。俺の隣からスッとタオルが差し出される。視線を向けると、そこにいたのは。

 

「ファイズさん、はい!タオルだよー!」

 

ファイズ「ん・・・?ああ。ありがとう。ハルウララ。」

 

小柄で、桃色の髪と瞳が特徴の天真爛漫なウマ娘。ハルウララ。

いつもニコニコ笑顔で、レースを負けても楽しそうにしているウマ娘だ。

だが、つい先日のゴm・・・いや、トレーナーの件で、以前までは笑顔が暗かったイメージだ。が、今ではそんな感じはしない。いつものウララだ。

俺は、彼女からタオルを受け取る。

 

ファイズ「・・・ん?何故ここにいる?ハルウララ?さっきまではいなかっただろう」

 

ウララ「えっとねー?んーと・・・ファイズさんがいたから!走ってきたの!」

 

ファイズ「・・・そうか。」

 

眩しい笑顔で答えるハルウララ。以前のトレーナーから解放され、今まで以上に、レースや練習を楽しく、休まずに行っている彼女は、確か、仮トレーナーとのトレーニングをしている。その成果なのか、今では凄まじい活躍をしているという話だ。短距離では連勝を続けているらしい。

 

ファイズ「ふぅ・・・」

 

汗を拭き取り、一息つく。トレーナーが作ってくれたドリンクを飲みながらも、練習に対しての思考は欠かさない。

 

ファイズ(タイヤ引きはこれくらいでいいか・・・後は、コースをひたすら回るか・・・徐々にスピードを上げていく・・・そして、寝る前に他の選手の走りを頭に叩き込むか・・・・・・ここまでの対策はいらないとは思うが・・・)

 

ウララ「ねぇねぇ!ファイズさん!!」

 

思考の最中、ハルウララから声をかけられ、俺は思考を中断。そして、意識をハルウララに移す。

 

ファイズ「ん?なんだ?」

 

ウララ「あのね!あのね!私、ファイズさんと同じチームに入りたい!!私も入れるかな?」

 

ファイズ「・・・なんだと?」

 

・・・ん?ウララは仮トレーナーと契約しているはず・・・

 

ファイズ「ウララ、お前は確か、トレーナーと仮契約していたはずだろう?期間はもう終わったのか?」

 

ウララ「え?仮契約・・・?んー?ファイズさん、何のお話ー?」

 

ファイズ「いや、ウララは確かトレーナーと・・・」

 

ウララ「ファイズさん・・・何のお話?」ハイライトオフ

 

・・・何故だ、ハルウララの目の光が消えている様な・・・?気のせいか・・・?

 

ファイズ「・・・まあいい。それより、チームへの加入は俺に聞かれても困る。トレーナーに聞いてくれ・・・まあ、チームには短距離を走れるウマ娘は所属はしていないはずだ。頼めば、入れると思うぞ。」

 

ウララ「本当ー!?じゃあ、行ってきまーす!!うーららー!!」

 

ダダダッ!と凄まじい勢いの走りで、立ち去っていくハルウララ・・・

 

 

ファイズ(・・・最近、見かけなかったが、あれ程早くなっていたのか・・・成長速度が凄まじい・・・・・・)

 

 

 

・・・チーム加入の件は・・・トレーナーに任せればいいだろう・・・日が落ちたか。すると、スマートフォンへ連絡が入る。見ると、マックイーンからの連絡だった。各自の練習は終わり、皆、寮へ戻っているとの事。

 

 

・・・全員、戻っているのか・・・。門限まで時間はまだある。コースで自己練習していても問題はないだろう。日が沈み、月が空に浮かぶ時間、俺はコースに到着した。この時間は誰も走っている事はない。大抵は俺一人だ。

 

 

俺は軽くステップした後、流し程度に走り、納得するまで走る。それを繰り返す。スタミナが続く限り。だが、何度目か走り続けていた時だった。

 

ヒュンッ!

 

ファイズ「・・・?」

 

急に、風が吹く。しかも、俺のすぐ隣でだ。だが、俺以外で走っているものは誰もいない。最初は気のせいだろうと思っていた。が、そういえば、走っていた時も、少し違和感を感じていた事を思い出す。

 

 

 

・・・まるで、すぐ横で、誰かが走っているような感覚に襲われたのだ。

 

 

 

ファイズ「・・・俺には見えていないが・・・誰かいるのか?並走してるものが。」

 

ただ、独り言を言ってるだけだった。だが、その瞬間、トンッ!と俺の背中を誰かが押す。少しよろけるが体制を立て直し、後ろへ振り返ると、

 

 

 

 

その場には誰もいなかった。

 

ファイズ「・・・どういう事だ?」

 

 

 

・・・訳がわからない。だが、これだけはわかった事がある。

 

 

 

間違いなく、この場には俺には見えない何か・・・いや、何者かがいる。

そして、俺は周囲を警戒した。すると。また後ろから気配を感じた。

 

俺はすぐさま振り返る。すると、そこには一人のウマ娘がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

黒いロングヘアー、金色の瞳・・・そして、どこか、ミステリアスな雰囲気を漂わせる一人のウマ娘に。




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