幼馴染のウマ娘に時々アドバイスしてただけなんだが (沼りぴょい)
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プロローグ

 ウマ娘、という種族がいる。構造的には人とはそんなに大して変わらないのだが、彼女たちには人にはない尻尾や耳がある。まぁそれも可愛らしいので俺はなんとも思わんが。

 

 さて、どうしてこんな脈絡もない話をしているかと言うと、俺には幼馴染のウマ娘がいる。可愛らしくて、いつも同い年である俺の後ろをひょこひょこと着いてきていた妹みたいな存在の奴だ。

 

 昔からあいつは走ることが好きで、彼女が楽しそうに走っているのを、俺は近くで見ていて、気になったところがあったら、漠然的にちょっとそこら辺体勢悪かったんじゃね? 的な感じでその幼馴染にアドバイスとも言えないアドバイスを送っていただけだ。まぁ、その幼馴染も俺の適当なアドバイスを真に受けてたみたいだし、それを実践して上手くいくと、嬉しそうに俺に報告をしていた。

 

 

 そんな幼馴染の彼女の名前はサイレンススズカだ。オレンジ色の髪が眩しくて可愛らしい俺の自慢の幼馴染ウマ娘だ。

 

 そんな彼女は、人に夢を与えられるようなウマ娘になりたいという目標の元、トレセン学園とやらに入学し、向こうでも頑張っているようなのだが、最近は上手くいっていないらしい。トレーナーと上手くいっていないのか、脚質があっていないのかは知らないが、最近ではスズカはどうやら走ることが楽しくなくなっているのだと言う。

 

 スズカの今の状況を見ようと、俺もこの前スズカが走ったレースを見たのだが、確かに、調子が悪いように感じた。いや、調子が悪いと言うよりも……なんだろう、走りづらそうな。そんな感じ。

 

 彼女ならもっと早く走れる。それは昔から一緒にいた俺が一番よくわかってる。だから、スズカには次のレースはトレーナーの指示に従わないで自分が思うように走ればいい。俺がスズカにそう言った次の日…………。

 

「懇願! 君には是非トレセン学園でトレーナーとしてその腕を奮って欲しい!」

 

 と、トレセン学園で学園長をしているという人が俺が借りているマンションに乗り込んできた。

 

 …………はて、これは一体何事なのだろうか。

 

 そういえば、自己紹介がまだだったか。

 

 俺の名前は谷村永登(たにむらえいと)って言う。学校は高校中退。だって金がないから。両親は自然消滅してしまい、生息不明である。現在は、昔仲良くなったとある店の店長さんの計らいでそこで店員として働いている。まぁスズカがいるということと、店長さんに恵まれたこと以外はクソだなと思っているただただ普通の男だ。よろしゅうな。

 

「…………えっと、秋川さん……でよろしいですか?」

 

「肯定!」

 

「その、俺がトレーナーって大丈夫なんですか?」

 

 ほら、トレーナーってどういうことするかは知らないけど、練習メニューとか考えないといけないんでしょ? あと、人体についても詳しくないとダメなんじゃない? 

 

 俺はスズカがウマ娘だったからそういう本は持っているが、専門的に学んだ人には遠く及ばないだろうし。

 

「心配無用! 君の事は、サイレンススズカからよく聞いている! 色々と身元を調査したが、私が直々に大丈夫だと判断した! それに、サイレンススズカももし良ければ君に師事を願いたいと言っている!」

 

 バサリ! と『懇願!』と書かれた扇子が開かれる。

 

「懇願! もう一度言う! 君さえ良ければ、トレーナーとしてその腕を奮ってもらいたい!」

 

 拝見、クソ両親と優しい店長さん。

 

 どうやら俺、トレーナーになるようです。



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一話

お暇だったので書いちゃいました


 ぴすぴーす。どうも皆さんこんにちは。幼馴染であるサイレンススズカの要望により、トレセン学園でスズカのためだけのトレーナーとなる予定の谷村永登ちゅうもんや。以後よろしゅうな。

 

 などと、脳内でふざけねばならぬほどに、俺は緊張している。

 

 俺の現在地はあのトレセン学園の校門前にいるのだが……あれだ。俺の場違い感が半端ないな。

 

 厚意で仕事をさせてもらっていたとあるカフェの店長さんには申し訳ないとは思ったが、折角の好待遇だし、なんと俺の境遇を見かねてか、トレセン学園内に俺専用の小さな小屋なのだが、一人暮らしには丁度いい家も建ててもらった。

 

 いや、理事長先生。俺めっちゃ頑張りますわ。粉骨砕身蔵の勢いで頑張らねば、この恩は返しきれない。

 

 さてさて、校門前で待ていれば迎えをよこすといわれたので待っているが……とりあえず迎えの人早く来て。俺緊張してるんだから。

 

「へー、理事長先生のスカウト? 結構できる感じ?」

 

「いやぁ……はは、そんなでもないよ」

 

 目の前にいる超絶美人のウマ娘。俺は左程ウマ娘について詳しくはないのだが、彼女のことはさすがに知っている。

 

 ゴールドシチー。ウマ娘でもありながら、なんかモデルもやってるすんごい美人。なんだっけ? 100年に一人の美少女ウマ娘とかなんとか。

 

 校門前で待機してたら、欠伸しながらやって来ているの見かけて、なんか目が合って、気づいたらめちゃくちゃ話しかけられてた。

 

 だから早く。早く迎えの人来て。こんな美少女と話していると心臓ドキドキしてやばいから早くっ!! 

 

「新人トレーナーさーん!!」

 

 来た迎え! ビバ迎え! 

 

「こほん、それじゃ、迎えが来たからこの辺で……えっと、ゴールドシチーさん」

 

「ゴールドシチーでいいよ。ま、よろしく、トレーナー」

 

 と、片手で手を振り「じゃね」と言ってから髪をかきあげてトレセン学園に入っていった。

 

 なにあれ、すっごいかっこいい。さすがモデルと言った所か。

 

「すいません! おまたせしましたか!」

 

「いえ、全然待ってないから大丈夫ですよ」

 

 ほんとほんと。さっきのゴールドシチーとの会話が緊張しすぎて体感時間やばかったもん。

 

「既に、サイレンススズカさんも準備が終わってますので、早速あって貰えますか?」

 

「分かりました」

 

 休日とかでたまにあって一緒に遊んだりはしていたのだが、最近はそんなことも無かったもんな。

 

「そういえば、自己紹介がまだでしたね。私、駿川たづなといいます。よろしくお願いします」

 

「あ、谷村永登っていいます」

 

 ぺこりぺこりと頭を下げてからこちらですと言われ、そのままたづなさんの後を着いていく。

 

「秋川理事長に挨拶とかしなくていいんですか?」

 

「大丈夫です。理事長からは、先にサイレンススズカとあわせた方がいいだろうと言われてますので」

 

 と、ニコニコしながら歩いていくたづなさんの後をついて行くと、トレーナー室と書かれたところに連れてこられた。

 

 たづなさんはコンコンコンと三回ノックをすると、「サイレンススズカさん? いらっしゃいますか~?」と、聞くと、中から最近は聞けてなかったスズカの声が聞こえた。

 

「それでは、サイレンススズカさんのことをよろしくお願いします」

 

「分かりました。俺にできる限りの事はやります」

 

 と、たづなさんがドアの前を退いてくれたので、俺は一度深呼吸をしてから、ドアノブに手を置き、回して開ける。

 

「あっ…………」

 

「お」

 

 そしてそこには、久しぶりにあうサイレンススズカの姿があった、

 

「……久しぶり、スズカ。元気だった?」

 

「あ、はい……えっと、そう、ですね……」

 

 ふむ、言葉では元気だとは言っているが、耳も若干経たり混んでるし、しっぽの揺れも比較的小さいな。俺とあった時はもっと嬉しそうにピコピコさせるというのに……これは相当ストレスが溜まってんな? これ。

 

「おいおいスズカ。俺の前では別に嘘なんてつかなくていいんだぞ? だって、幼馴染なんだからな」

 

「いえ、その、永登さんのお顔を見て元気になったのは確かですから……」

 

 やっべ。さっきのセリフめっちゃドキッとしたんだけど。なんか今なら俺の幼馴染がこんなに可愛いわけがないとかいう小説書けそうだな。

 

「はっはっは、嬉しいこと言ってくれるなスズカは」

 

「……っ」

 

 俺は、昔のようにスズカの頭を優しく撫でる。すると、一瞬ピクっと体が反応するんだが、次第に目をつぶってからその気持ちよさに体を預ける。耳が定期的にピクピクしてるのは気持ちがいい証拠である。

 

 さてさて、大体はスズカの状態も分かったしな。後はそうだな……。

 

「スズカ。久しぶりにデートでもするか」

 

「…………はい?」




基本的にはアニメ準拠ですが、要所要所はオリジナル要素入れます。ご容赦くださいませ。


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