食の覇道 (Hira@コス)
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設定&プロローグ

あらすじ欄にも書いてありますがこの作品は作者の趣味丸出しのご都合主義のハーレムものです。
苦手だという方もたくさんおられると思います。
そういう方にはブラウザバックを強くお勧めいたします。
大丈夫という方はお進みください。


設定

主人公 平神栄翔(ヒラガミエイショウ)

15歳(92期生)

平神家次期当主で歴代最高の天才と言われているが未だに成長中。

薙切えりな、薙切アリスと幼馴染。またその関係から新戸緋沙子、黒木場リョウとも幼馴染のような関係。

料理に関しては小さいころから凄まじい才能を見せ、それを見た才波城一郎(幸平城一郎)が料理を教えた。

中学2年から3年の終わりまで薙切仙左衛門の勧めで国内、世界の店、食品関連機関等を回り料理の修行をしていた。その際遠月の卒業生の人達の店でも修行、手伝いをしていたためその人たちからはかわいがられていたり、好意を持たれてたりする。

中学1年の頃に現在の十傑メンバーやその時の高等部の人達との交流もあり仲良くしている。

その頃既に十傑入りの話が来ていたが海外での修行により長い間学園に来なくなることを理由に断った。

 

遠月には1年程しか顔を出してないため遠月での異名はないが料理界では「食聖」、また一部ではその圧倒的な才能を称し「食の覇者」「覇王」などと呼ばれる。

 

えりなを苦しめている薙切薊のことを嫌っている

 

 

平神家

代々優秀な料理人を輩出している一族で料理業界を牽引する一族の一つ。薙切家と親交がある。

また、日本を代表する料理一族の一つでもあるので国内外に色々なパイプを持っている。栄翔の修行はこれを使った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遠月に帰るのも久しぶりだな」

 

俺、平神栄翔は今成田空港にいる。なぜかというと中学2年の初めからの約二年間の料理の修行を終えて、現在俺が在籍している遠月学園に帰るために海外から飛行機で日本に戻ってきたからだ。

なぜ学校に行かずに修行してたのかというと遠月学園の総帥である薙切仙左衛門にからだ。俺は中学一年の段階で既に中等部卒業に必要な調理技術や知識などを身に着けていたらしく、腕を上げるためにも海外に出ることを勧められた。中学はまだ義務教育なので退学を心配する必要もなく、親もあっさりと海外行きを認めてくれた。

今思うと改めてこの提案を受けてよかったと思う。たくさんの先輩方にかわいがってもらい、技術も向上させることができた。いろいろな国の現場の雰囲気、大変さも知れた。この経験を生かして頑張ろう。そして遠月のてっぺんを、最終的には料理界のてっぺんをとる。そう決意しながら俺は遠月学園へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりじゃの栄翔」

 

「お久しぶりです総帥」

 

俺は今遠月学園の総帥室にいた

 

「修行の様子は聞いておったよ。頑張っていたようじゃな」

 

「はい、いい経験になったと思います」

 

「うむ、わしもおぬしにこれを勧めてよかった。えりなや他の学友に帰ってきたことは伝えたのか?」

 

「いえ、明後日の始業式の時に会おうかと思ってます」

 

「まあおぬしも疲れておるじゃろうしそれがよかろう。それと始業式の際に一言挨拶してもらうぞ」

 

「わかりました。では失礼しますね」

 

そう言い俺は総帥室を出て極星寮に向かった

 

 

 

「さて、帰ってきた巨大な才がこの学園にどんな影響をもたらすのか・・・楽しみじゃ・・・」

 




プロローグクッソ短いですがすみません。

設定に書いてあるんですが作者自身は特に薊が嫌いというわけではありません。ただ、ジャンプ作品の魅力の一つである「魅力のある敵、悪役」にならなかったのは残念だなとは感じていますが笑
声優が同じで学園長(総帥)と立場が似ている暗殺教室の浅野先生とかは好きなんですが・・・

まあ関係ないことは置いといてよろしくお願いします。


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一話

さっそく感想や評価をくださる方がいてとてもうれしいです!

今回は挑戦の意味も込めて試しに台本形式とやらで書いてみました
台本形式が嫌いだ!っていう人もできればあとがきまで読んで意見をください・・・


「ふぅ、着いた」

 

長い道のりを歩き俺は今極星寮の前に立っていた。見るからに不気味な洋館といった外観だがあの人から紹介された寮だ。門を開き意を決して中に入る。

 

「すみませーん!だれかいませんか~!」

 

「あんたが入寮希望者かい?」

 

「あ、はいそうです。平神栄翔っていいます」

 

「平神・・・あの平神家の子がうちに来たのかい」

 

「あ、俺の家のこと知ってるんですね」

 

「少なくとも日本の料理関係者なら知らない人の方が少ないとおもうけどねぇ・・・まあいい。アタシはここの寮母の大御堂ふみ緒。『極星の聖母(マリア)』ふみ緒さんと、そう呼びな」

 

「はい」

 

「それで?食材は準備で来てるのかい?」

 

「言われてたんで用意はしてますけど・・・何に使うんですか?」

 

「決まってんだろ?極星名物入寮腕試しだよ!」

 

「腕試し?料理の腕試しってことで合ってます?」

 

「ああ。入寮希望者は自分で用意した食材で一食分の料理を作りその味をアタシに認められなければ入寮は認めない。これがうちのルールだよ」

 

「なるほど・・・ちなみに不合格の場合は?」

 

「そりゃあ、野宿でもしてもらうことになるのかねぇ」

 

「うへぇ・・・了解しました。厨房はどこですか?」

 

「こっちだよ、ついてきな」

 

そうして俺とふみ緒さんは厨房まで移動した

 

_________

______

___

_

 

 

「ここだよ」

 

「へえ・・・広いし結構きれいだしいい厨房じゃないですか」

 

「調味料等は自由に使っていい。さあ始めな」

 

「よし。では大御堂ふみ緒様、少々お待ちください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせいたしました」

 

「ん?これは」

 

「豆腐とかにかまぼこのとろみ煮です」

 

 

「いいにおいで美味そうだ・・・・・・けどもっと手の込んだ、豪華な品を出すと思ったんだがね・・・正直意外だよ」

 

「もう夜も遅いし無駄に時間をとらせるのもどうかと思いまして。ふみ緒さんも女性だし無駄な夜更かしは体にもよくないでしょ?」

 

「あんた・・・ならメインを豆腐にした理由は?」

 

「ふみ緒さんはそれなりに年を取ってますしね。それに女性はカロリーを気にするでしょうしね。カロリーが少なく重くないもので手持ちにあるのが豆腐だったんで」

 

「なるほどね・・・じゃあいただこうかね」

 

「はい、ではお楽しみください」

 

パクッ

 

ふみ緒さんは料理を口にすると頬を緩めすぐに全部食べ終えてしまった

 

「うまい!豆腐とかにかま、そしてそれに絡む煮汁の優しい味!優しいが故にいくらでも食べられてしまうようじゃ!」

 

「気に入ってもらえたようでよかったです」ニコッ

 

「それに食べると体が実際に温まってくる・・・!これは・・・」

 

「ああ、それは煮汁に入った生姜ですね。鶏ガラスープと醤油、塩で作った煮汁によく合うでしょ?それに春と言っても夜はまだ少し冷えますからね」

 

「(食べる側のことを第一に考え、その上食べると幸せな気持ちになり頬が緩んでしまう程のおいしさ。食べると作り手の気遣い、優しさが見える。)」

 

「で、判定はどうですか?」

 

「うむ、平神栄翔、文句なしに合格だよ!」

 

「ふぅ、ありがとうございます」

 

「あんたの部屋は304号室だ。ほら、これが部屋のカギだよ」

 

「ありがとうございます」

 

「一応まだ春期休暇だからほかの奴らはまだいないけどすぐに帰ってくると思うよ」

 

「了解です。じゃあ失礼します」

 

そうして自分の部屋に行き荷物を置きベッドに寝転んだ

 

「あ~今日は疲れた。ほかの寮生か~いい奴らだといいんだけど」

 

そして携帯を見る

 

「うへぇもうこんな時間か。とりあえず今日は風呂入ったら寝ようかな。明日は・・・お嬢達は始業式の時に会うし先輩方も挨拶はしたし・・・あの子達にでも連絡しようかな」

 

こうして日本帰国一日目を終えた




ほぼ台詞だけの台本形式で書いてみたんですけどどうですかね・・・?
正直自分は違和感が強いと感じているのですぐに戻すかもしれませんが・・・
三人称視点か今回のような型式かそれとも他の書き方か・・・
どれがいいんだろう・・・


感想、アドバイス、誤字脱字の報告等気軽にどうぞ


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二話

なんか前話のタイトルが二話になってたので修正しました



チュンチュン

 

「ん?ふあぁ~もう朝か~よく寝た・・・」

 

鳥のさえずりを聞きながら栄翔は目を覚ます。昨日は長距離の飛行機による移動や学校から寮への移動、その後の料理など疲れることが多かった。そのためか風呂に入った後ベッドに寝転がったところですぐに眠りに落ちてしまった。

 

「そういや朝飯とかどうすんだろ?・・・ま、ふみ緒さんに聞けばいいか」

 

今まで栄翔は朝食や夕食、時にはおやつなどを自分で用意することも少なくなかった。そもそも修行をするために店や家などの施設にお世話になっていたのだ。泊めてもらう代わりにということで家事をするのは必然ともいえる。

とりあえず着替えを済ませ、洗面所で顔を洗った後食堂に向かうと厨房から魚の焼けるいい香りが漂ってきて栄翔の鼻腔をくすぐる

 

「ふみ緒さんが作ってくれてるんですね」

 

栄翔が厨房を覗くとふみ緒が朝食を作っていた。

 

「言ってなかったかい?飯は基本アタシが作ってるよ」

「あ、そうなんですね。了解です」

 

この極星寮では朝、昼、夜の三食は基本ふみ緒が作っている。だが住んでいる寮生はさすがは遠月学園の生徒というべきか、常日頃料理の研究や宴会の料理を作っているため、生徒の料理がふるまわれる機会も多い。

 

「さ、ちゃっちゃと食べちまいな」

 

そう言いながらふみ緒は出来上がった朝食を持ってくる。机には白米に味噌汁、焼き魚にお浸しなどいかにも日本らしい献立が並んでいる。

 

「いただきます。モグッ おぉ、おいしい・・・」

 

久しぶりの日本らしい朝食に栄翔は舌鼓をうつ。ふみ緒は長い間曲者が集う遠月学園の極星寮の生徒に料理をふるまってきたのだ。美味しくないわけがない。

 

「ごちそうさまでした。おいしかったです」

「あいよ」

 

そして栄翔は朝食を食べ終え、部屋に戻った

 

「とりあえず午前中は荷物の整理でもするか」

 

 

_________

______

___

_

 

大きい家具などは寮に用意されているため、荷物の整理も大体終わった。昼食も食べ終えたため、お世話になった人に久しぶりに電話をすることにした。

 

RRRRRR

 

『兄様!?』

「うお!シーラか?いきなりでかい声出すからびっくりしたよ」

 

電話に出たのはシーラという少女。15歳ながら薙切インターナショナルの研究スタッフを務める少女で、優れた大脳生理学の知識と味覚センスを買われ統括者である薙切レオノーラに直々にスカウトされた天才少女である。

 

『ご、ごめんなさい・・・でもほんとに久しぶりだったから・・・』

「あ~それは悪かったね・・・修行した時以来だから一年ぶりくらいかな?」

 

栄翔は修行をしている際に彼女が勤めている薙切インターナショナルにも世話になっていた。その際に懐かれてしまったのだ。

 

『そうだよ!連絡してって言ったのに全然してくれなかったじゃん!』

「いや、ほんとにごめん・・・あの後も世界中まわって修行してたし・・・」

 

実際、世界各地を回って修行をしながらその時世話になっている人の手伝いをし、自分で料理の研究も行っていた。その上時差があるため連絡することが難しかったのは確かだ。だが電話ではなくメールをすることはできたはずだ、それに気づかずしなかったのはまずかったと思い栄翔は謝る。

 

『それはわかってるけど・・・それでも!寂しかった・・・』

「ごめんね・・・でももう日本に帰ってきたから!」

『え!?』

 

たしかに忙しいのはわかっていた。だがそれでもやはり寂しいものは寂しいのだとシーラの声が沈むが、日本に帰ってきたと聞くと驚きの声を出す。

 

「明日からまた遠月に通うんだよ」

『ということはもうこれからはずっと日本にいるの!?』

 

シーラは栄翔の返事に喜びを隠せないような声で聞き返す。

 

「まあ今のとこはそのつもりだよ」

『やった!』シーラナニシテルノ?

 

とりあえず修行もある程度できたし、高校は義務教育ではないため在学中はここにいる予定である。そのことを伝えると奥から違う少女の声が聞こえてくる。

 

『あ、ベルタ。今兄様とでn』オニイサマ!?カワッテ!『あ、ちょっと!』

『お兄様!久しぶり!』

「お、ベルタ久しぶり。連絡できなくてごめんね」

 

シーラと変わって栄翔に話しかけてきたのはベルタ。シーラと共にレオノーラに直々にスカウトされ、研究スタッフとして働いている15歳の少女である。

 

『ほんとに寂しかったんだから・・・だから・・・またたっくさん愛でて!』

『わたしも!』

「なんか言い方が・・・」

 

こうやって栄翔に懐いていたり、一応同い年(言動などから年下に見えるが)なのに兄のように慕っているのには理由がある。

この二人と栄翔が初めて会ったのは約1年前修行の一環で薙切インターナショナルで働いてる時だったが、もちろん最初は普通に話していた。そして栄翔が話しかけたり仕事を手伝ってるうちにそれなりに仲良くなり、そこで2人に料理を作ることになったのだが・・・

 




ベルタとシーラめちゃめちゃ好きです
可愛いしスペックやらキャラやらもっと出てきてくれてもいいと思ってたんですけど

感想や誤字報告、アドバイス等気軽にお願いします


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三話

「よし、じゃあ今から作るけどリクエストとかある?」

「特にないかな~ベルタは?」

「私も特にないよシーラ。あるとしたら「おいしい料理」かな?」

 

薙切インターナショナルに来て一週間と少し。お昼を少し過ぎた頃料理の研究をしている栄翔にシーラとベルタの2人が料理を作ってほしいと言ってきた。今まであまりの忙しさと仕事のノルマはさすが薙切管轄の研究所といったところか今まで時間が合わず料理をふるまうこともできていなかった栄翔は2人の頼みを快く了承した。

 

「わかった。食材は厨房にあるの?」

 

今まで栄翔の料理を食べたことがなかったのもあり試すつもりで特にないとベルタは言ったのだが、気にした様子もなく了承する栄翔を見て少し驚く。

 

「うん。ありとあらゆる食材がそろってるよ」

「よし了解。それではシーラ様、ベルタ様、少々お待ちください」

 

腕まくりをして気合を入れながら厨房へ向かっていった

 

_________

______

___

_

 

 

「お待たせいたしました。トムヤムクンです」

「トムヤムクン、エビやパクチーが入ったタイの代表的なスープ料理で世界三大スープ料理の一つだよね、シーラ」

「そうだねベルタ。酸味と辛味が特徴的で好き嫌いが分かれるスープだね」

 

厨房に入って数十分。完成した料理をもって栄翔が戻ってくる。作った料理はトムヤムクン。ベルタの言う通り世界三大スープ料理の一つにも数えられているタイ料理の王様ともいえる品だ。

 

「それではお楽しみください」

 

皿を差し出すと2人はスプーンを手に取り口に運ぶ。

 

パクッ

 

「「からい!!けど、それ以上においしすぎるよお!!!!」」

「おお、よかった」ニコッ

 

2人はスープを口に入れた瞬間顔を赤くし、蕩けるような顔をする。

 

「プリッキーヌの圧倒的なまでの辛さとレモングラスの酸味!それが口の中、全身を刺激しながらおいしさを伝えてくる!」

「エビのうまみも強く出てる!カー(タイのショウガ)のおかげで体があったかい!」

「しかも今まで食べたことのあるトムヤムクンと比べてコクがある・・・そう思わないベルタ?」

「わかるよシーラ。これは・・・」

 

2人はそう言って栄翔の方を向く。それを見た栄翔は少し得意げな顔でネタ晴らしをする。

 

「それはほんの少し加えた甜麵醬だね。これを入れるとコクが出てくる」

 

「それにトムヤムクンは辛さや酸味、魚介の味など味がキレイにまとまりにくい料理・・・好き嫌いもはっきり分かれるクセが強い料理のはずなのに手が止まらない・・・」

「それはココナッツミルクだね。これを入れることで仕上がりが少しまろやかになって後味も優しくなる。味もまとまりやすくなってコクも出るんだよ」

 

タイ料理は乳製品との相性がよくトムヤムクンには牛乳を入れることもあるのだがそれをココナッツミルクにすることでコクを出したりまろやかにするだけでなくココナッツの風味も楽しむことができる。最近では本場タイでもココナッツミルクを使用したトムヤムクンが好まれていたりする。

 

「(暴力的な辛さと圧倒的なうまみ!)」

「(それだけで屈服させられてるのにその辛さの後にくる確かな優しさ!もう完全に虜になっちゃってる!)」

「(辛さの圧倒的なうまみとココナッツミルクのまろやかさによる優しいうまみ!片方を味わうともう片方を味わいたくなって手が止まらない!完全に調教されちゃってる!)」

「(圧倒的な中毒性に抗えない!もうわたしたち!)」

「「((この人に手懐けられちゃう・・・・・・♡))」」

 

今回栄翔は発想や独創性に優れた料理を作ったわけではない。もともと存在する料理のレシピに少し隠し味やアレンジを加えただけだ。だが栄翔は自身の持つ圧倒的な技術で一つ一つの作業を完璧に、できる限り最高の味を引き出せるように調理している。そんな圧倒的な料理の腕を持つ栄翔の料理にシーラとベルタの2人は虜になってしまった。

 

「どうしようシーラ/// なんかショー君かっこよすぎて目合わせられない///」ボソボソ

「私もだよベルタ/// 圧倒的な料理の腕、料理の時だけじゃなくて普段から私たちのことを気にかけてくれたし、ここでの仕事も完璧にこなしてくれてるし、仕事が忙しくても夜中までいろんな試作をして自分の料理を高めるために挑戦をやめない姿勢、その時の真剣な表情、そして・・・」ボソボソ

「「料理の感想を言った時に見せてくれたあの笑顔///」」ボソボソ

 

いつも自分たちを気にかけてくれる優しい一面や裏に隠された挑戦をやめることなく高みを目指す男らしい一面。ベルタとシーラの2人は栄翔の料理を食べたことをきっかけに栄翔の魅力を再認識させられた。

 

「シーラ、私ショー君に言いたいことができた」ボソボソ

「私もだよベルタ。たぶん用件は同じだろうから一緒に言おう」ボソボソ

 

2人は互いの言いたいことは一致していると確信し栄翔の方を向く。

 

「「ショー君、いや、お兄様!!」」

「おう。・・・ん?お、お兄様・・・?」

「「私たちを妹にして一生可愛がって!!」」

「・・・・・・・・・は?」

 

2人の妹にしてほしいという発言に栄翔はついていくことができずに頭の中に?マークを並べる。

その混乱している栄翔に2人は先ほどの発言のわけを説明していく。

 

「今のトムヤムクンでショー様の料理の虜になっちゃったの!圧倒的で暴力的な辛さで攻められながらもしっかりと優しさが感じられてこれがたまらなくて/// ね、ベルタ!」

「うん!もちろんそれだけじゃないの!普段から私たちのわがままにも付き合ってくれるし仕事も完璧でそれに私たちのこと手伝ってくれるし、それに///」

「「毎晩遅くまで料理の試作してるときの姿がかっこよくて///」」

 

そう、栄翔は昼間は仕事で忙しく自分の料理の研究の時間を多くとれないため毎晩夜遅くまで厨房に残って試作していたりするのだ。それが終わると調理器具や食材の整理をして、隅々まできれいに清掃をする。そんな姿を2人はこっそり見ていたのだ。

 

「全員寝てると思ってたんだけど・・・起きてたのか。なんかちょっと恥ずかしいんだけど・・・」

 

努力する姿というのは他人に見せるものではないという意見もあるが、やはり栄翔も見られていたのは恥ずかしかったようだ。その姿を褒められたのも合わさり恥ずかしく感じ少し頬を赤らめる。

 

「「これからもずっとお兄様と一緒にいたいの!」」

 

栄翔は子供っぽい面を持つ知り合いがいて妹みたいだと感じることはあるが実際に妹がいるわけではない。その影響か妹という存在に少しあこがれを抱いていた。

 

「・・・その、なついてくれるのは嬉しいし2人みたいな妹分ができるのは俺も大歓迎だよ・・・でもまだ修行期間あるからまたしばらく会えないし、ここを出たらかまってあげられなくなっちゃうよ?」

 

そのため2人のお願いに栄翔も首を縦に振る。だが栄翔はまだ修行中の身で世界を回っているため、そうしないうちに2人を構ってやれなくなってしまう。

 

「「それはわかってる!」」

「でもこの先ずっと世界中を転々して日本に帰らないわけじゃないでしょ?」

「うん。高等部進学直前には日本に帰るつもりだよ」

「だからお兄様の修行が終わるまでは私たちも我慢する!ね、シーラ!」

「うん!また兄様が落ち着いたらその時はまた私たちに構ってね!」

「ははっ、わかったよ」

 

こうして栄翔に2人のかわいらしい妹分ができたのだった。




なんか後半書きながらなんなんだこれとか自分で思ってました笑
なんか自分の分の下手さや話の面白く無さに絶望してます
なのでもしかしたら書き直すかもしれません


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四話

テスト期間なので投稿できてませんでした!すみません!テストまだ終わってないんですがとりあえず書けたので投稿します!
あといつの間にかお気に入り数が100超えて200を突破していました!
本当にうれしいです!ありがとうございます!

さて、前話は回想で今話から時系列が元に戻ります。

ベルタとシーラ原作での出番が少ないから書くのが難しい・・・
そのためキャラ崩壊と感じる人もいると思うというのをあらかじめ言っておきます。

また、少しですが今までの話で栄翔の口調などを修正しました。ストーリーにはほぼ関係ない部分ですが言っておきます。


栄翔が料理をふるまった日からベルタとシーラは栄翔を兄と慕い、栄翔も2人を可愛がるようになった。

2人は最初は栄翔について回るのが主だったが日が経つにつれ甘える回数も増え、顔を赤くする回数もどんどん増えていった。最終日近くにもなれば2人は夜に栄翔のベッドに潜り込むぐらいには懐いていた。

ここまで懐いてしまったため栄翔が次の修行場所に行く際にはここに残るよう栄翔に涙ながらに訴えてきていた。さすがにこれ以上お世話になるのは申し訳ないし急にキャンセルするのは次の場所の責任者達にも失礼なため栄翔はうなずくことはできなかったが。そのため2人と栄翔は連絡先を交換し、時間があるときは連絡をとるように約束した。だがシーラとベルタからメールを送ることはあっても忙しいことを理由に栄翔からはすることはなかった。

 

『連絡してくれなかったこと許してないからね!』

『せめて返事を返すくらいはできたよね?』

 

もちろん返事すらろくに返さなかったのは失礼であり非常識である。そのことを栄翔も分かっているため心底申し訳なく思う。

 

「いや、ほんとにごめんね・・・」

『『む~・・・』』

(まあ、そうだよね・・・兄失格だ・・・)

 

もう一度謝るとベルタとシーラは少しむくれたような声を出す。栄翔がそれを聞いて落ち込んでいると2人がもう一度口を開く。

 

『・・・まあしょうがないのかな』

「・・・・・・え」

『そうね。お兄様だしね』

(あ・・・・・・ついに呆れられて見放された・・・?)ズーン

 

栄翔は2人の言葉に見放されたのかと思い落ち込む。やはり非常識なことをしたということはわかっているが、やはり可愛い妹分から見放されるのはつらいのかさらに落ち込む。するとベルタとシーラは少し焦るように声をかける。

 

『あ、あれ!?お兄様なんかすごいへこんでない!?』

『え!?兄様!さっきのは別に兄様のことを嫌いになったって意味じゃないからね!』

「よ、よかった・・・!」

 

先ほどの発言は栄翔に呆れてしまったが故に出た言葉ではなかったようだ。2人曰く、先ほどの発言は料理関係でとても忙しい栄翔なら仕方ないという意味のものだったようだ。別れる際に忙しいために構うことができないとあらかじめ断っていたし、栄翔が薙切インターナショナル滞在していた時に2人は栄翔に本当に良くしてもらっていたのだ。そう簡単に嫌いになることはない。そもそも栄翔のことを嫌いになっていたら兄と呼ばれていない。

 

『でも今まで連絡がなかったことには変わりないんだからね!』

『前以上にたくさん可愛がってくれないと今度こそ拗ねちゃうよ!』

「うん。時間があるときはまた一緒に遊ぼう。もちろん論文も読むし、2人に料理も作るよ」

『やった!』

『楽しみにしてるから!』

 

こうして仲直りをした栄翔と2人は今まで話せなかった時間を取り戻すかのように楽しそうに話し込んだ。栄翔が薙切インターナショナルを出た後のことやベルタとシーラの研究内容、3人の思い出など。こうして話しているうちにどんどん時間は過ぎ気づけば窓の外が暗くなっていた。

 

「そろそろ夕食だから行かなきゃ」

『え~!』

『まだお兄様と話したい!』

 

まだ話を終わらせたくないのは栄翔も同じ。だが夕食を作っているのは寮母のふみ緒。呼びかけに応じなかったり食べに行かないなどして迷惑をかけるわけにはいかない。

 

「ふみ緒さんに迷惑かけるわけにもいかないから」

『『む~・・・』』

「これからは電話もできるし、会おうと思えば会えるんだからさ。今日はこの辺にしておこう?明日は始業式だし晩御飯食べて明日の準備しないといけないんだ」

 

そう言うと少しうなった後、仕方ないとでもいうかのように了承する。

 

『まあこれからは好きなだけ話せるしね!』

『そうね!だから今日はこれくらいで勘弁してあげる!』

「ありがとう」

『明日はアリスお姉ちゃんやリョウくんにも会うんでしょ?』

『その話も今度聞かせてね!』

「うん、わかった。じゃあ、またね」

『うん!またね、兄様!』

『お兄様またね!おやすみ!』

 

こうして電話を切った。ベルタ、シーラと久しぶりに話し満足していると部屋の伝声管からふみ緒の声が響いた。

 

『飯ができたよ!食いたきゃ降りてきな!』

 

ちょうどいいタイミングで夕食ができたため、栄翔は部屋を出て食堂に向かった。




今回文の見直しができておりません!そのため「ここおかしい」と思う部分があったら誤字報告や感想等で指摘してくださるとうれしいです


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五話

この小説を書き始めてから他の方達のソーマssを少し読み始めたんですけど・・・料理案がいろいろとかぶるとこがある!!

もちろん全部がかぶってるわけじゃないですけどそのおかげでめちゃめちゃ困ってます。
私が料理に詳しいわけではないから自分考案の料理をたくさん書くのも難しいしどうしたものか・・・
最初の予定ではオリ主の料理は自分で考えたり、他の作品や実在する料理を主に使って、所々難しいところは原作のものを使う予定だったんですけど・・・
もう開き直って予定通り進めてもいいのかしらん・・・?


 始業式当日の早朝。栄翔は学園に歩いて向かっていた。だがいくら極星寮が学園から離れていて到着するまでに時間がかかるとはいえこの時間からだと早く着きすぎてしまう。

 

「始業式前に来てほしいだなんてどうしたんだろ」

 

 なぜこんな早い時間から登校しているのか、それは栄翔の言葉の通りとある人物に呼び出されたからだ。

 確かに今から会う人物と栄翔は久しく会っていないため、挨拶したいのは確かだ。そもそも栄翔は近いうちに自分から会いに行く予定だった。なのに始業式があり、挨拶も頼まれているという朝から忙しい日に呼び出されてしまった。わざわざそんなときに呼び出さなくてもいいじゃないか。そんなことを考えてしまうが今現在向かっている以上何を言っても仕方ないことだ。そう自分に言い聞かせ、今日久しぶりに会う友人達や新しく出会うであろう学友、始業式の挨拶のことを考えながら栄翔は学校に向かって歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりだね」

 

 栄翔が扉を開けると椅子に座っていた人物が立ち上がりながら声をかけてくる。場所は遠月学園内の執務室。一般の生徒では所持することができないくらいに広く、置いてある机やソファなども高そうな綺麗なものが揃っている。

 

「お久しぶりです。2年ぶりくらいですかね、司さん」

 

 栄翔を呼び出したのは遠月学園3年生の司瑛士。白色に輝く髪が特徴的な静かでクールな雰囲気を持つ美青年だ。

 

「お変わりないようで。お元気そうでよかったです」

「ありがとう。平神は見ないうちに結構変わったな」

 

 2人は栄翔が海外に出る前、つまりお互いがまだ中等部生だった頃に知り合い、そこから互いに料理の腕を高めあっていた。

 

「そうですかね?」

「ああ、背だって伸びたし前は眼鏡なんてしていなかっただろ?」

 

 そう、今栄翔は眼鏡をかけている。まだ中学一年の頃は眼鏡は掛けていなかったため、司は現在の栄翔を見て少し新鮮さを感じた。

 

「ああ、これですか。暗い中でも料理本読んだりしてたからか視力が少し落ちちゃったんですよね」

 

 栄翔は昔から一回熱中して集中してしまうと周りのことを忘れてそれにのめり込んでしまうことがあった。栄翔がまだ小さいころは体力が少なく途中で寝落ちしてしまうため夜中まで続くということはなかった。だが、中学生にもなり体力もある程度着いた頃に修行先で尊敬できる人たちのレシピや技法がまとめられた資料や論文に出会ったのだ。つい熱中してしまい夜中まで本や資料を読む機会が大幅に増えた結果、視力が少し落ちてしまった。

 

「なんというか平神らしいな」

 

 昔からしっかりしてはいるがどこか危なっかしかったり、放っておけない印象を栄翔に持っていた司は栄翔らしい理由に笑ってしまう。

 

「それで尊敬できる人が眼鏡かけてたこともあって自分もかけてみたんですよ。まあいつも掛けてるわけじゃなくて気分でコンタクトにするときもあります。なんならコンタクトの方が多いくらいですかね。おしゃれの一環って感じです。その人も料理人はおしゃれも必要だって言ってましたしね」

「なるほど。いいと思うよ、似合ってる」

「てかそんなことはいいんですよ。なんでこんな始業式前とかいう時間がないときに呼び出したんですか?」

 

 似合っていると言われて喜びつつも朝ここに来る時に考えていたことを尋ねる。

 

「いやぁ、この春から平神が帰ってくるって知ったから話したいと思ってね。ほら、平神も日本に帰って来たばかりでこれからは忙しくなるだろうし、俺も立場上たくさん時間があるわけではないからさ」

「ああ、そういえば司さん達十傑入りしたんでしたね。しかも司さんは一席。さすがです、おめでとうございます」

「ありがとう。だが──」

 

 十傑──正式名称を遠月十傑評議会。これは遠月学園独自の学校内組織のことである。十傑は遠月学園において学内評価上位10名の生徒たちによって構成される委員会であり、学園の最高意思決定機関である。この遠月学園では多くの事柄が生徒の自治に委ねられているため、学園組織図的に総帥の直下にあり講師陣ですら口出しすることができない十傑があらゆる議題を合議によって決定する。また、十傑の席は学内評価一位から順に一席、二席……と割り振られていく。

 つまりその委員会の第一席に任命されているということは司は遠月学園内で一番優れた料理人ということになる。だが──

 

「平神がここに残っていたらわからなかったがな」

 

 十傑は先ほど述べた通り学内評価によって任命される。任命される基準は学校の成績、学園への貢献度、イベント等での評価などがあるが最も重要視されるのは食戟の勝敗である。

 だが栄翔は中等部二年の頃から海外に出ていて学園にはいなかったので学内評価自体は無いに等しく、食戟も行うことができなかった。つまり、いくら栄翔が中学一年の頃から司と競い合えるほど料理の腕前が非常に高かったとしても十傑に入ることは難しかった、というかできなかったのだ。だが、もし栄翔が学園に残っていた場合その料理の腕でぐんぐんと学内評価を伸ばしていっただろう。そうなると十傑の席次が今と同じかはわからなかった、栄翔のことを認めている司はそう言ったのだ。

 

「あはは、そう言ってもらえるなんて光栄です」

「まあもしもの話をしてもしょうがない。これからはまた平神がここに通うからね。また共に料理ができるのを楽しみにしてるよ」

「俺も楽しみにしてます」

「よし、再会の挨拶も済んだ。こんな時間に呼んで悪かったね」

「いえいえ、俺も久々に話せて楽しかったです。それじゃあ失礼します」

「ああ、またな」

 

 栄翔は司に頭を下げると扉を開け部屋を出た。そして始業式に向かった。




原作との違いとしてこの作品の司先輩は原作のようなエゴイストっぽさを結構抑えてあります
中等部時代に栄翔切磋琢磨で来ていたのが主な理由です



名前を出していいのか不明・・・というか出さないほうがいいと思うので出しませんが毎話誤字脱字の修正をしてくださっている方ありがとうございます!

また、感想などを送ってくださる方々、お気に入り登録をしてくださる方々も本当にありがとうございます!励みになります!


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六話

今回初めてスマホで投稿したらなぜか今話の終盤が消えてた(泣)
というわけですみません!さっき消えてた部分を思い出しながら書いて再投稿です!

・・・・・・疲れてんのかな


 辺り一面に桜が咲き、幕に囲まれた広場に紺色のブレザーを身にまとった男女が綺麗に整列して並んでいる。

 ここに集まる男女は中等部から進級試験で合格し内部進学を果たした遠月学園高等部の新入生だ。全員がこれから始まる高校生活への期待と過酷な競走への不安に険しい顔をしている。

 そんな新入生たちの前には始業式のステージがあり、そのステージ上にいる司会が女生徒の名前を呼ぶ。

 

「続いて学年章の授与にうつります。新1年生総代、薙切えりな」

「はい」

 

 薙切えりな、長く綺麗な金色の髪をなびかせ、誰もが美しいと認める美貌を兼ね備えた美少女だ。その上先程司会が言った通り内部進学試験で全科目ぶっちぎりの1位を取り首席の座を手にした才女。しかもそれだけではなく人類最高の神の味覚を持ち、『神の舌(ゴッドタン)』の異名を持つ。その味覚の鋭さは目隠しをした状態で10種類以上の塩を味見だけで見分け、産地をそれぞれ当てることが出来るほどである。

 その味覚を存分に発揮出来る程に料理の腕も超一流で、十傑評議会第十席に任命されている。

 そのためか彼女は多くの同級生から尊敬をされており、学年章を受け取っている現在も多くの生徒が尊敬の眼差しを彼女に向けている。

 授与が終わり彼女がステージから降りると次に移る。

 

「続いて式辞を頂戴致します。遠月学園総帥、薙切仙左衛門様」

 

 ステージに上がってきたのは長い髭を伸ばし、右目に大きな傷跡のある威圧的な外見をしている老人である。

 薙切仙左衛門、栄翔が帰国初日に会った人物であり、遠月学園総帥、そして先程ステージに上がっていた薙切えりなの祖父である。彼こそ日本料理界を牛耳る存在で、学園内では『食の魔王』と呼ばれ恐れられている。

 演台の前に立つ彼の迫力に生徒達が息を呑む中、彼はマイクを近づけ話し始める。

 

「諸君、高等部進学おめでとう」

 

 生徒達が予想していたよりも普通の祝福の言葉に生徒たちは強張らせていた身体から少し力が抜ける。

 

「諸君は中等部での3年間で料理の基礎技術と食材への理解を深めた。実際に調理を行う調理教練の授業と各種の座学、調理理論、栄養学、公衆衛生学、栽培概論経営学……そして今高等部の入口に立ったわけだがこれから試されるのは技巧や知識ではない。料理人としての気概そのもの」

 

 ここまで話すと仙左衛門は新入生たちの方を指差す。

 

諸君の99%は1%の玉を磨くための捨て石である

 

 瞬間新入生たちの雰囲気が、そして式会場全体の雰囲気が変わる。

 

「昨年の新1年生812名のうち、2年生に進級できたのは76名!」

「!!?」

「無能と凡夫は容赦なく切り捨てられる。千人の1年生が進級する頃には100人になり、卒業まで辿り着く者を数えるには片手を使えば足りるだろう」

 

 これが遠月茶寮学園。徹底した競争による少数精鋭教育。卒業到達率10%以下という過酷な環境だが、卒業まで漕ぎ着ければ一生料理界のスターダムを歩むことができる。たとえ退学になったとしても『在籍したことがある』というだけでも料理人としての箔が付く。それほどの英才教育を行っている。

 

「その一握りの料理人に君が、君が成るのだ!!

 

研鑽せよ

 

 最後に一言告げると仙左衛門はステージを降りていった。

 えりなはそれを見ながら舞台袖でニヤリと妖しく笑う。

 

(ふふっ、一握りの料理人に君がなるのだ、ね……私と同じ世代の君たちは気の毒だわ。もしその一握りに入ることが出来たとしても、頂点に立つことは絶対に不可能なのだから)

 

 そう考えている彼女の表情は自信で満ち溢れている。薙切家という料理に関して最高とも言える環境、己の才能、遠月十傑への史上最年少でのメンバー入り等の実績。これらが彼女の自信となり表情に表れているのだろう。

 

(せいぜい生まれた時からの2……いえ、3位争いに執念を燃やすことね……)

「次に高等部から編入する生徒を1人紹介します」

(! なるほど……私とは別の審査で合格者が出たのね)

 

 えりなが思い出すのは編入試験の日。彼女は十傑入りを果たしたことで学園の事務や運営などを任されるようになっていた。その一環として編入試験の試験官を任されたのだが、集団面接や二次審査、三次審査と何回も実技の審査をする事を面倒に感じた。そこで、お題の食材を卵とし、自分の舌を唸らせた者を合格にすると言ったのだ。さらに、受験の取り止めを認めるとも宣言した。彼女は神の舌を持ち、絶対の味覚を持っている。そんな彼女にもし才能無しの烙印を押されてしまったらその料理人は一生料理業界では生きて行けなくなってしまう。それを恐れた受験者たちは全員逃げ出してしまったのだ。

 

 

 

 ──1人を除いて

 

 

 

(幸平創真……ふん、思い出すだけで腹立たしい)

 

 幸平創真、その編入試験で唯一逃げ出さなかった男子だ。

 彼は卵そぼろと手羽先の煮こごりを使った『化けるふりかけ』を作り彼女の舌を唸らせたのだ。

 だが、今まで食の超上流階級にいた彼女は高いプライドとエリート意識から創真の品を認めることが……否、認めたくなかった。えりなから見れば大衆食堂出身の創真は庶民であり二流料理人。そんな男を超エリート校である遠月学園に編入させることが、何よりその男の料理をえりな自身が認めるということが許せなかったのだ。

 そのため、創真に不合格を言い渡し試験を終了させたのだ。

 

(まぁいいわ……もう二度と会うことは──)

 

「やー、高いとこからすんませんねー、へへ……所信表明でしたっけ? まいったなー、やんなきゃダメすかー? 壇上でとかこそばゆいっすわー」

「いいからさっさとしてくださいっ」

(!?)

 

 だが──

 

「えっと……幸平創真っていいます」

 

 壇上には不合格を言い渡した男、幸平創真が立っていた。

 

「この学園のことは正直踏み台としか思ってないです

 

 創真の言葉に生徒たちは唖然とする。

 

「思いがけず編入することになったんすけど、客の前に立ったこともない連中に負けるつもりは無いっす。まあ入ったからには──

 

てっぺん獲るんで

 

 会場から創真以外の声は聞こえない。だが、会場は異様な空気になっていた。そんな中創真は演台の横に立つ。

 

「3年間よろしくお願いしまーす」

 

 ペコリと頭を下げるが明らかに気の抜けた挨拶。その舐めたような態度と先程の発言も合わさり会場にいる生徒たちの怒りが爆発した。

 

「テメエェェこらあ!!」

「ぶっ殺すぞ編入生ェ!!」

 

 会場中の生徒から本やペットボトル等を投げられながらも、創真は気にした様子もなく舞台袖に降りる。

 

「ふー、噛まずに言えたー。ん? おー、試験の時の! 薙切……だったよな?」

「! ……」

「いやー緊張したわー。ガキの頃から表彰状とか無縁だったし。俺、どーだった? 変じゃなかった?」

「そんなことはどうでもいい!! 幸平くん! なぜ君がここに……!」

「イヤなぜってお前……合格通知が届いたからそりゃ来るだろ……」

 

 そう言いながら創真が差し出したのは遠月茶寮料理學園編入試験合格通知。紛れもない本物だ。

 

「あの時はビビったぜー、『不味い』とか言うんだもんよ。美味いなら美味いって素直に言えよなー」

「ちがっ……」

(ちがうのに! ちがうのに! 私はコイツを……蹴ったのに!)

 

 いまだにステージの方からは本やペットボトルが飛んできたり『出てこい!』や『死ね!』等の罵倒が飛んで来ているが、創真はそれが聞こえていないかのように気にした様子がなく、ケロッとしている。

 それを見ているえりなは、合格者は0人と間違いなく総帥に伝えたはずなのによりによって幸平創真が合格しているというありえない事態に軽くパニック状態だ。……まあ実際は片目に傷があるどこかの怖いおじいさんが独断で合格にしたというだけの話だが。

 そんなことは知らないえりなは髪をかき上げながら創真に言い放つ。

 

「……言っておきます。私は認めてはいないわ。君も、君の料理もね!」

「……あ?」

「手違いよ手違い! 君は手違いで遠月に来たのよっ!! てっぺんを獲るですって!? 笑わせないで!! 中等部からの内部進学者たちは皆最先端ガストロノミーの英才教育を受けてきたの! 外様の編入生なんて──」

 

キィィィィィィィィィィン

 

 突如鳴り響くハウリング音。いきなり鳴った大きな音にブーイングの嵐だった広場も、そして舞台袖も静まり返る。生徒全員が何があったんだと壇上に目を向けるとそこには一人の男子生徒が立っていた。彼は司会をしていた女子生徒の前に立っており、その女子生徒はおそらく彼のものであろう制服のブレザーを頭にかぶっている。

 

「「え!?」」

 

 えりなと創真はその男子生徒の姿を見ると驚きの声を上げる。

 その男子生徒とは

 

「……やっと静かになった」

 

 平神栄翔だった。




ちなみにですけどハウリングのシーンはかぐや様を参考にしました

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七話

遅くなってすみません!お久しぶりです!
私事ですが、第1志望内定決まりました!
これで、今まで忙しかったけど少し落ち着きそうです!

今回少し短いですが、自分が就活中にも沢山の方が読んでくださってて、続きを待ってる方もいるのでとりあえず投稿します!


「やっと静かになった……」

 

 栄翔は、そう呟くと後ろにいる女子生徒の方を向いた。

 

「大丈夫だった? 濡れたりしてない?」

「あ、はい……大丈夫です……」

 

 女子生徒が被っているブレザーは少し濡れている。先程のブーイングの際に投げられた物の中に蓋が開いていてまだ中身が残っているペットボトルがあったのだ。創真は爆弾発言をした後すぐに舞台袖にはけたが、司会である彼女はそういう訳にはいかない。そこにペットボトルが飛んできたため、栄翔は女子生徒が濡れないようにブレザーをかけたのだ。

 

「そっか、良かった…………ってあれ? 麗さんだったんだ」

「へっ!? お、覚えててくれたんですか!?」

「もちろん。またここに通うことになったからよろしくね」ニコッ

「ひゃ、ひゃい///」

 

 女子生徒……川島麗は栄翔の言葉に顔を赤くする。2人が接点を持ったのはまだ中等部一年生の頃。調理の実習でペアになった時だ。栄翔の完璧な料理技術、そしてその技術を授業後も何度も嫌な顔せず惜しげも無く教えてくれる優しさ、自分の素の姿を受け入れてくれる包容力に麗は惚れてしまったのだ。

 中等部二年から急に学園に来なくなったのには心配もしたが、彼を想う気持ちはむしろ前よりも大きくなっている。そんな相手に忘れられていなかった事が麗は嬉しかったのだ。

 そんな麗に背を向け、栄翔はマイクを持ち話し始める。

 

「とりあえず自己紹介だね。総帥からの提案で2年間海外に出ていた平神栄翔です。先日、日本に帰ってきました。よろしくね」

 

 ハウリングにより会場が静まった後、ステージ上で2人が仲良さげに会話をする。その後すぐに空気を切りかえスピーチを始める。どんどん変わっていく状況に理解が追いつかなくなっていた会場の生徒達だが、徐々にこの状況に追いつき始める。

 

「さて、さっきの幸平創真くんのスピーチ、凄かったですね。外部からの編入生がこの学園の授業を見てもいない段階で踏み台宣言。相当な事だと思います」

 

 栄翔のこの言葉に生徒たちは同意を示す。中には『そうだそうだ!』『アイツはこの学園を舐めている!』などと声を上げる者もいた。再び会場が『幸平創真を許すな』という雰囲気になり始めるが、栄翔はそこに待ったをかける。

 

「でも──

 

 

 だからといって人を傷つけていいという訳ではないでしょ」

 

 この言葉に会場中が静まり返る。

 

「あの発言に対して憤りを感じるのはいい。それはこの学園のことを誇りに思っているということだし、自分の腕を軽視されたことを許せなかったということだ。この気持ちは大事だと思う」

 

 だけどさ

 

「人を傷つけるのは違う。その腕は、手は何のためにある? 人に物を投げて傷つけるため? 違う。料理を作り、人に幸せを届けるためだ。その口は何のためにある? 人を傷つける様な言葉を発するため? 違う。自分の料理を、そして他人の料理を味わい、自分の腕を上げるために意見を交わすためだ。その頭は何のためにある? 人を貶める方法を考えるため? 違う。自分の成長のための方法を考えたり、相手を思いやり、相手が楽しめるような料理を考えるためだ」

 

 会場の生徒達、特に野次を飛ばしたり物を投げていた生徒は苦虫を噛み潰したような表情をしている。

 

「さっきここにいる女子生徒に君たちが投げたペットボトルが当たりそうになった。蓋が開いていてもう少しで身体、髪、服が濡れるところだった。こういう事が続けば今まで先生、先輩方が築き上げてきた料理界最高峰のブランド『遠月学園』の評価を落とすことになる。そうしないためにも今後こういったことは無いようにしたい」

 

 栄翔は一息置くと最後の言葉を語りかける。

 

「俺たちは料理人だ! 言いたいことは皿で語り、切磋琢磨し上を目指そう!」

 

 そう締めくくり、礼をすると舞台袖にはけていった。

 会場の生徒達、そして舞台袖の創真とえりなさえも栄翔のスピーチに圧倒され声を出すことも出来なかった。




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八話

お待たせしてしまい申し訳ありません!


 舞台袖にはけてきた栄翔は肩の力を抜く。

 

「ふぅ、ちょっと熱くなっちゃった。緊張した〜」

 

 そう呟く栄翔に先程までのような迫力はない。さっきは生徒達の料理人らしからぬ行動を見て熱くなってしまい言葉が強くなってしまったようだ。

 そんな栄翔を見ていた創真とえりなは我慢しきれず声をかける。

 

「え、えいs「ショウじゃねーか! 久しぶりだな!!」……」

 

 ──訂正

 ちゃんと声をかけることが出来たのは創真だけだった。

 

「あ、創真、久しぶりだね。急いで会場にきたら壇上でスピーチしてるんだからびっくりしたよ」

「それはこっちのセリフだわ! お前ここに通ってたんだな!」

「うん……あれ、ということは知らないでここに編入してきたの?」

「……を……ださる……?」

「いや、それがさ〜。親父が急に店閉めるとか言い出してよ。それでいきなりここの編入試験を受けろとか言い出すもんだから」

「なるほどね。まあ、創真はあんな事言ってたけど結構いい経験になると思うよ」

「わた…………をむ……で……さる……?」

「まあ少なくともショウがいるんだから退屈はしなさそうだな」

「俺以外にもすごい料理人や参考になる料理人は沢山いると思うよ。授業で会えると思うけど卒業生の方たちだってすごい人たちだからね」

「へぇ〜、ショウがそう言うならそうなんだろうな! それとさ! 久しぶりに会ったんだし一緒に料理しようぜ! お前の料理も食いたいし、俺の料理も食ってみて欲しいs「私を無視しないでくださる!?」うおっ、びっくりした」

 

 最後まで言い切ることは出来なかったが声をかけたし、すぐ近くにいたのに無視され続けたえりなは我慢できずに声を荒らげる。

 

「すみません、えりな嬢。創真と会うのはとても久しぶりで盛り上がってしまって……」

「む……私だって久しく会ってないというのに……」

 

 久しぶりの再会なのに栄翔が構ってくれないのが面白くないのかえりなは拗ねてしまった。

 えりなだって約2年間栄翔と会っていなかったのだ。それなのに栄翔は自分ではなく、ヘラヘラした態度の編入生である創真と楽しそうに話していた。その事が気に入らなかった、つまり嫉妬してしまったのである。

 

「それに、私に対して敬語は不要だと言ったはずです」

「あ、そうだった……修行中は薙切家の人に対しては敬語の方が都合がいいこと多かったから……ごめんね、エリー。これでいい?」

 

 また、無視されたことだけではなく、栄翔の話し方が敬語になっているのもえりなを不機嫌にする原因の1つだった。

 

「え、ええ///んんっ、改めて、久しぶりね、栄翔くん」

「うん、久しぶり、エリー。元気そうでよかった」

 

 えりなは久しぶりにあだ名で呼ばれたことで少し顔が赤くなる。

 自分で呼ばせておきながらいざ呼ばれると照れてしまうなど、もしここに彼女の秘書をしている女子生徒が居れば、微笑ましく思いながらも主であるえりなをフォローするために声をかけていただろう。だが、現在ここにいるのはえりなと栄翔を除けば創真だけであった。

 

「なに顔赤くしt「だ、黙りなさい!! そんなことしてなどいません!!」……あ〜、はいはい」

 

 創真発言に対しての過剰な反応。その前のあだ名で呼ばせたりするなどの栄翔に対する態度、発言。いろいろと察しがついてきた創真は確認のため、そして単純に気になっていたため2人に問いかける。

 

「にしても、ショウと薙切がそんなくだけて話すほど仲が良かったとはな〜。正直意外だわ〜」

「そうかな?」

「ああ、薙切は試験の時から思ってたけどエリート意識がめっちゃ強くて無駄にプライド高いじゃん」

「んな!?」

「あはは……」

「だけどショウはそういうの感じねぇし高飛車な感じしないんだよ。だからそんな2人が仲が良いのが意外なんだわ。2人はどうやって仲良くなったんだ?」

 

 創真が気になっていたこと。それは、なぜこの2人は仲が良いのかということだ。えりなだけでなくこの学園の生徒ほとんどに当てはまることだが、彼女らはエリート家系の出身では無い者に対して当たりが強い。だが、栄翔はそんなことはなく、創真ともとても仲良くしている。そんな価値観が違う2人がどうして親しいのか、それが気になったのだ。

 

「ああ、なるほどね。エリーと仲良くなったきっかけはね──」

 

 栄翔は昔えりなと出会った時を思い出しながら話し始める。




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