新幹線変形ロボ シンカリオン 未来への光! (ニャンコスライム)
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第1章 First Season Battle
プロローグ 始まりの事件はここから


 はじめまして、見習い投稿者のニャンコスライムと申します。
今年から「新幹線変形ロボ シンカリオンZ」が放送開始したので、大人気となった前作に私の中の永遠のヒーロー、ウルトラマンを合体させてみよう!という気持ちで書き始めました。
あと前作は放送や映画公開が終わったのにいまだに主要な舞台となったはずの大宮が聖地認定されないので何故だと思っています。
オリキャラ満載ですが、それでも良いという方は読んでくれると嬉しいです。それでは、どうぞ!


 ここは、午前3時10分を回った栃木県片岡。

何気ないこの時間、JRの多数の整備職員が、作業用車両を出して線路の保線作業にあたっていた。

そんな中、一人の若い職員が、ある気配を察知して振り返った先には、このあたりを通過する東北新幹線の高架線路があった。

 

「どうした?」

 

一緒に作業していた先輩職員に声をかけられ、その職員はこう言葉を紡いだ。

 

「前方、新幹線の線路上に何か、来ます……。」

 

「何っ?」

 

その時、その線路の上を、謎の黒い車両が猛スピードで通過して行った。

赤いラインが目立つが、何よりも禍々しいのは、全体から黒っぽい色の光の粒子が沸き立っている事。

その粒子は周りの鉄道資材にゆっくりと付着すると、触れたそれらは怪しく光る。

その車両を見送って、職員は言った。

 

「East-iじゃ、ないですよね……。まさか、ここをドクターイエローが走る訳無いですし…。」

 

「馬鹿な、今3時だぞ。架線に電気通ってないだろう」

 

その瞬間…。周りの鉄道資材が合体したかのようなフォルムの怪物がゆっくりと姿を表して、信号機の形の双眸が光った。

 

『な、何だあれはっ!』

 

整備職員達が驚愕の声を漏らす中、その怪物はそれまで静かだった夜空におぞましい声で産声かのような雄叫びを上げた。

 

『グオオオオオーーーーーーーーーーーッ!!』

 

それを、特務機関「新幹線超進化研究所」の一人の指令員が捉えた。

 

「目標、捉えました。コードネームは『レイルローダー』とします。体長推定30メートル!」

 

一番上のコマンドデスクにいた指令長らしき人物も言う。

 

「コードネーム『レイルローダー』、確認」

 

そして指令員の隣にいた一人の男性が指示を出した。

 

「撃退準備に入るぞ!」

 

「目標、線路より、最低必要感覚の300メートルに位置しました。現在、全線路上に、通常車両、工事車両はおりません!」

 

「よし、目標の座標位置、確認!」

 

指令員がターゲットスコープを操作して、怪物を捉える。

 

「目標捕捉!」

 

「捕縛フィールド、射出!」

 

地球の大気圏内に待機していた人工衛星のアンテナが光り、虹色と白色が混じった光線が放たれる。

そして敵の上空で止まると、そのまま丸く広がるフィールドの中に封じた。

 

「捕縛完了!捕縛限界まで56分です!」

 

「在来線の始発が4時37分だ。20分前までには目標撃退」

 

「新幹線総合指令室に、大宮〜那須塩原間の送電要請!シンカリオン、発車準備!」

 

その命令と共に、赤と青に光る2両の車両が、鉄道博物館車両ステーション中央の転車台に出る。

 

「シンカリオンE6(イーシックス)E7(イーセブン)、発車!」

 

指示で2両の新幹線が勢いよく飛び出していく。

その頃、怪物が突如周りの景色が変わったのに戸惑いを隠せないでいると、後ろに2体のロボが降り立つ。

そして、その2体が超スピードで距離を詰めると、怪物もその2体を敵と認識して殴りかかった。




次回からいよいよストーリー本編に入ります。
DVDで見返しながら気長に書くので、更新が遅くなるかもしれませんが、気長に待っていてくださると幸いです。


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第1話 少年は新幹線を愛でる

 お待たせいたしました。いよいよ連載開始です。


 真夜中の密かな事件から3日後。

ここは「鉄道の街」として知られる、埼玉県さいたま市大宮。

大宮駅に近いとあるマンションの一室で、一人の少年がベランダに立ち、風のように走っていくE5系はやぶさ号を見送っていた。

 

「ハヤトーッ、ご飯よーっ」

 

「はーいっ!」

 

母親らしき女性の声が聞こえ、呼ばれた少年はリビングに戻って席につくと、テーブルに置いてある「コンパス時刻表」をめくった。

 

「まず仙台まで行って、俺のE5系はやぶさデビューを飾る…。さらに大曲経由、奥羽本線で新庄まで行けば…。よしっ、E6系、E3系も合わせて、東日本新幹線トリプルデビューだ!」

 

そう、この少年こそ「速杉(はやすぎ)ハヤト」。小さい頃から()が付く程の新幹線ファンだ。

そんなハヤトを見て、母のサクラが洗い物をしながら、ハヤトの前に座る少女に言う。ハヤトの妹、ハルカだ。

 

「ねえハルカ、ハヤト何やってるの?」

 

ハルカはソーセージを刺したフォークを突き付けながら、ゆっくりとした低めの声で言う。

 

「お兄は一日中新幹線を乗り回す夢のツアーを考えていると思われ」

 

「えへへ、今日はお父さんに新幹線でどこか連れてってもらう約束してるからね」

 

ハヤトが笑顔を浮かべながらそう言うと、サクラは水道を止めてこんな発言をした。

 

「それじゃ、その()()()()()のお父さんを起こしてきてくれる?」

 

「はーい!」

 

元気な返事を返すと、ハヤトは両親の寝室に向かう。

当の父親、ホクトは大いびきをかきながら布団をかぶっていた。そこへ入ってきたハヤトは、父の横腹を軽く揺らして言う。

 

「お父さん、起きて。もう出発時間だよ!」

 

だがそれも空しく、

 

「うう、頼む、もう少し寝かせて…。」

 

「えー…。」

 

布団をさらに深くかぶってその中で丸くなってしまったホクトは、タブレット端末を渡しながら言った。

 

「あと一時間だけ、いつものゲームで遊んでていいから…。」

 

「もー、しょうがないなぁ…。」

 

そう文句を言いながら電源を入れた時、「Sinka sim」なるアプリのアイコンが目に入る。

ホクトのベッドに飛び乗り、「シミュレーター?新しいゲームかな?」と言いながら起動させるハヤト。

すると…。

 

「うおっ、何だ、凄いぞこれ、結構難しい…。」

 

ハヤトはそう言いながら、凄いスピードで飛んでくるビームアイコンをキャッチし、ポイントを稼ぎ続ける。

目と手を必死に動かして進めていくと、クリアを知らせる音声が鳴った。

 

「クリア!…やった、ハイスコア!」

 

リザルトランキングを見ていると、タブレットをずらしてハルカが言う。

 

「お兄、早くお父を起こさなければお母の怒りが爆発すると思われ…。ハウッ!」

 

顔を引き攣らせたハルカに続けてゆっくり振り返ると…。

 

「…いつまで寝てるのぉっ!?ていっ!」

 

鬼の形相と化したサクラが布団を引き剥がし、ホクトの耳元でE5系デザインの目覚まし時計のアラーム音を立てると、素っ頓狂な声を上げながらベッドから落ちたホクトは

 

「か、駆け込み乗車は、おやめくださいぃ…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、ここ「新幹線超進化研究所・東日本司令室大宮支部」では、一人の若い女性の新入指令員が着任するところだった。

 

「本日より、新幹線超進化研究所・東日本指令室に配属されました、三原(みはら)フタバです。よろしくお願いします!」

 

この三原フタバと名乗った女性は、焦げ茶色の髪の毛をポニーテールに結び、真新しい紺色の制服に身を包んでいた。

髪と同じ茶色の目には知性の光が宿り、背をピシッと伸ばして起立しているので、まさにフレッシュな新人らしいオーラだ。

そしてそんな彼女と対面しているのは、茶色の服を着ている男性で、椅子に腰掛けながら挨拶を返した。

 

「私は指令長の出水(いずみ)シンペイだ。よろしく」

 

そう、この出水シンペイなる人物こそ、この東日本指令室のトップの座に立つ者なのだ。

 

「休日にすまなかったね。3日前、2ヶ月ぶりにシンカリオンが出動してね、それで予定を早めて来てもらったんだ」

 

「はいっ!」

 

「君は、シンカリオンのオペレーション訓練は終了しているよね…。」

 

実は、フタバは指令員研修を既に終わらせ、この日は出水の言った通り休日だったが、3日前の事件を経た事で予定より前倒しで配属されたのである。

そんなフタバに対し、出水は眼鏡の真ん中を押して言う。

 

「早速だけど、見ておいてもらいたいものがあるんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話は戻り、速杉家の食卓。

無理矢理起こされたホクトは、カップを持ちながら再び睡魔に襲われていた。

食パンにバターを塗っていたサクラはそれを「こらっ、食事中に寝ないっ!」と叱り目を覚まさせると、食べ終えていたハヤトに言った。

 

「ハヤト、ゲームばかりやってないで、お父さんにちゃんと言ったの?」

 

「えっ、ううん」

 

ハヤトがそう返すとサクラは言った。

 

「もう、この子、ちゃんとあなたとの約束を守って、冬休みの宿題全部終わらせたんだから…。」

 

「おお、偉いな、ハヤト」

 

ホクトに軽い調子で褒められ、ハヤトはこう言う。

 

「まあね。俺は『時間と言った事は守る男』だからね!」

 

「約束通り、新幹線でどこか連れてってあげてよ」

 

「えっ?」

 

とぼけたホクトに、サクラの隣で食後の牛乳を飲んでいたハルカは言った。

 

「お父は、お兄が宿題全部終わらせたら、新幹線でどこか連れて行くって約束した訳で」

 

「はっ!そ、そうだったな、約束だったな!よしっ、行くか、ハヤト!」

 

「やったあ!ハルカも行くだろ?」

 

「自分は電車に乗るだけなのはパスな訳で」

 

ハルカがそう言った時、ピンポ~ン♪と玄関のチャイムが鳴り

 

「はーい、あら、おはようケント君!」

 

「おばさん、おはようございます。ハヤトとおじさんはまだいますか?」

 

サクラが出ると玄関先で立っていたのは、藍色の髪に深緑色の目を持つ、オリーブ色の上着を着た少年だ。

ここで彼の紹介をしよう。この少年の名は「(あらし)ケント」。速杉家の2つ隣に暮らす嵐家の長男で、さいたま市内の高校に通う高校2年生だ。

二つ隣とはいえ近所に住んでいる事と、自身の母とサクラが親友同士である事から付き合いが深く、ハヤトとは5歳年上の幼馴染だ。

 

「今日はハヤトとおじさんで新幹線を満喫するとか聞いたから…。」

 

「ケント君、いつもハヤトと一緒にいてくれるなんて助かるわね。まだいるからとりあえず入って待ってなさい」

 

「はい、お邪魔します」

 

幼馴染が来てくれたという事で、ホクトは少し慌てながら、ハヤトは嬉々として支度を始めたが、この時彼らは気づいていなかった。

朝にハヤトが立っていたベランダで、赤い光を放つ小さな光球が浮遊しながらケントやハヤト達を見つめていた事、そしてその隣に白い服を着た謎の少女がいた事を…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出水によって研究所の広い格納庫に連れてこられたフタバは、目の前の光景に言葉を失っていた。

そう、彼女の目の前には、一時停止状態のあの怪物、「レイルローダー」が、手足を分解された状態で調査されていたのだ。

そこへ白衣を着た女性「三島(みしま)ヒビキ」がタブレットを持ってやって来て、出水に中間報告を行った。

 

「調査の結果、毒性のある物質は検出されませんでした」

 

「動力源は?」

 

「残念ながら、まだ解明はできておりません」

 

「あのっ!あれは、一体…。」

 

フタバがそこでレイルローダーを指差しながら問うと、出水が説明を始めた。

 

「『未確認巨大怪物体(みかくにんきょだいかいぶったい)』…。その名の通り、解明不能のモンスター、とでも言えばいいかな。実は、こんな形で回収できたのは初めてなんだ」

 

出水の回想には、遮光器土偶の姿をした謎の怪物の大群が映っていた。

しかしその怪物は、右手は巨大な手、左手はドリルになっている。

 

「奴等の最初の出現は10年前…。未だ何者の手によるものなのか、全く解明されていない。分かっているのは、彼らは人間の知識では計り知れないテクノロジーを持ち合わせている事、そして未知なる脅威が迫っている事だ。そこで、次世代のテクノロジーを研究していた私達『超進化研究所』に白羽の矢が立ったんだ」

 

そう言うと出水の制服の左胸に付く新幹線超進化研究所のロゴマーク(当然新幹線をイメージしたもの)が光を放つ。

そして出水は立て続けに言った。

 

「そして、日本の最先端テクノロジーが集結する新幹線の技術を駆使し、開発されたのが『シンカリオン』だ!」

 

この時の回想には、それぞれ緑、赤、青のカラーリングを持つ3体のロボットが一斉に立つ瞬間が映っていた。

ここまで言うと、出水はフタバを笑顔で見て最後にこう言う。

 

「乗客と路線とダイヤを守ってきた超進化研究所に、未知の脅威から国土を守る使命が加わったんだ」

 

…だがしかしこの時、調査対象になっているレイルローダーの片目が怪しいオーラを放ったことに気づく者はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、東京・丸の内にある東京駅では、青い上着を着てはやぶさモチーフのリュックを背負ったハヤトがたった今手にした新幹線の切符を持ってはしゃいでいた。

 

「やったーっ!あと15分で念願の新幹線デビューだーっ!」

 

それを見ながら赤い上着を着ているホクトが頭をかきながら言う。

 

「っていうか、なんでわざわざ東京駅まで来なくちゃいけないんだ?大宮から乗ればいいじゃんか」

 

それを打ち消すようにハヤトが言い切った。

 

「始発駅から乗るのが新幹線ファンのたしなみってもんだよ!」

 

「ホント、新幹線好きだなぁ、ハヤトは…。」

 

ホクトがそう言い、ケントがうんうん頷いていると、ハヤトが衝撃の発言をする。

 

「だって!新幹線の運転士になるのが俺の夢なんだよ!」

 

「えっ!?マジか!?」

 

「新幹線の本読みまくってたのはそれが理由で…?」

 

「うん!お父さんも昔運転士だったんだよね!?」

 

「えっ!?…今は、鉄道博物館の職員だけどな…。」

 

ホクトは恥ずかしそうにそう言うと愛息子と目線を合わせ、頭を撫でながら言った。

 

「それにしてもこんな話、忙しかったせいでできなかったもんな。久々の親子水いらずで、お父さんも嬉しいよ。」

 

「うん!本当はE5系はやぶさで仙台デビューしたかったのが本音だけど、お父さんのお小遣い考えたら厳しいもんね。やまびこデビューで宇都宮行きでも最高だよ!」

 

「シビアな感想言わないでいいから…。ちょっとお父さん、コーヒーでも買ってくるから、改札のあたりで待ってろ」

 

「うん!」

 

「ハヤト、行くよ」

 

そしてハヤトはケントに連れられ、新幹線改札の前でE5系デザインのカバーを付けた自分のスマートフォンを操作し、ケントも柱に背を預けながらホクトを待っていた時だ。

 

「あら?ハヤトじゃない」

 

少女の声が聞こえた先には、丸みのあるツインテールに付けまつげをつけたピンクの目を持つ、ピンクのコートを着てキャスターバッグを持った一人の少女が立っていた。

 

「上田アズサ!?」

 

「やっほー♪」

 

彼女の名は「上田(うえだ)アズサ」。マンションでは速杉家と嵐家の間に住む上田家の長女。

年はハヤトと同い年で、卒園した幼稚園も一緒、更に同じ小学校で同じクラスに通うクラスメートなので、実質ハヤトのもう一人の幼馴染だ。

 

「なんでここにいるんだ?」

 

「決まってるでしょ?今最も注目されているYouTuberである私の目的は、ただひとつ!京都まで行って、『JSが初めて舞妓はんになってみた』って動画を撮りに行くの〜♪」

 

そう、アズサは現在動画配信サイト・YouTubeで自分の活動を配信するのが趣味であり、この日も新作動画を撮影しに行こうとしていたのだ。

自分にとって初めての事にコツコツとチャレンジする姿が話題になり、ここ最近注目度が高くなっている。

少し引きつった顔をしたハヤトに自分のスマホを突き出して言う。

 

「っていうか見た!?私の動画!昨日アップした『JSが初めておせち料理を手作りしてみた☆』の再生数がものすごい数になってるの♪ほら、分かる!?」

 

その画面には「視聴回数10.7万回」と書いてあったが、それをハヤトはこう言った。

 

「う、うん…。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って感じでしょ?分かるよ…。」

 

「新幹線で例えられても全然分かんない…。」

 

そう、ハヤトには何かにつけて人から見聞きした事を全て新幹線や駅に例えて話す悪い癖があり、それを聞いたアズサは笑顔から一転して微妙な表情になり、ケントは「僕と付き合い始めてからいつもの事だから」として宥めた。

その時ハヤトは彼女の動画の下にアップされている「ナゾの新幹線現る」というタイトルの動画に気がつく。

 

「ナゾの新幹線…?」

 

「ちょっと!なんで私の動画以外に反応してんの!?」

 

「ああ、ごめん…。」

 

その時アズサはハートのオーラを浮かばせながら甘いトーンでいう。

 

「あぁ〜♪新学期早々、クラスは私の動画の話でもちきりけってーい!って感じだろうな〜♪楽しみ〜♪じゃあ、来週学校でね〜♪」

 

「撮影頑張るんだよ」

 

ケントの見送りを受けて、アズサはバッグを引いて新幹線の改札に向かったが、先程のタイトルの動画を目にしたハヤトは表情が固まるだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

研究所の格納庫では、渡り廊下に移動した出水とフタバが調査に没頭する整備班や研究員の様子を見ながら話していた。

 

「巨大怪物体は、生命体なんですか?」

 

「残念ながら、それすら分かってなくてね…。ただ、奴等は姿形を変えて出現している。パターンが毎回違うんだ。まるで私達を試しているようにね…。」

 

「敵も進化している…。」

 

「今回の敵の力は、想像以上だった。2機のシンカリオンは損傷が激しく、しばらく出動できない。残る1機は、未だ適合する運転士が見つかってなくてね…。正直今また来られたら不味いんだ」

 

「あの、適合っていうのは…。」

 

「ッ!?」

 

「出水指令長…。」

 

フタバがそう問いかけ、前に体を向けた時だ。

なんと目の前のレイルローダーの体から黒いオーラが溢れ出している。

 

「ま、まさか…。」

 

嫌な予感を察した出水。

さらに格納庫に集っていたスタッフも、分解したパーツが同じようなオーラを纏って動いた事に驚きを隠せないでいると、次々と手足が合体し、また双眸が光ったのだ!

 

「再生しているっ!こんな事は始めてだ!」

 

「ど、どういう事ですか!?」

 

そして復活したレイルローダーは、背中についていた支えのワイヤーを馬鹿力で引き千切って振り落とすと、スタッフ達が「逃げろぉっ!」等と悲鳴を上げながら逃げ惑う中で雄叫びを上げた。

 

『グオオオオオオオーーーーーーーーッッ!!』

 

出水はそれを見ながら言う。

 

「皆合わせるんだっ!総員ただちに格納庫内に待機っ!」

 

そして「ついて来いっ!」とフタバに言い、フタバも「は、はいっ!」と返事すると出水に黙ってついていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃ようやく「やまびこ号」に乗車したハヤトとホクト、ケントの3人。

ホクトが見守る中、ハヤトは嬉々とした顔で流れ行くビル群を見送っていた。

 

「(速く走ってほしいけど、まだ到着してほしくない…。何だこの複雑な気持ち…。)」

 

その時ホクトのスマホに駅で流れるメロディーのような音が響き、画面を見てハッとしたホクトは「ごめん、ハヤト。ちょっと電話してくる。」と言って席を立った。

 

その時、ハヤトは何かを思い出したかのように「そうだっ!」と言いながらホクトの鞄からタブレットを出し、先程の動画を移した。

 

「(ナゾの新幹線…。上越の『現美新幹線』じゃなくて…?でも、形が少し違うか…。)」

 

ハヤトがそんな事を考えていると、通話を終えたホクトが戻ってきてショッキングな事を言った。

 

「ハヤト、すまんっ!緊急の仕事で戻らなきゃいけないんだっ!」

 

「ええーっ!」

 

更にそれは廊下を挟んだ隣の席に座っていたケントにも聞こえていた。

ホクトは両手を顔の前で合わせて言う。

 

「この通りだっ!次は絶対E5系はやぶさに乗せるから、今回だけは我慢してくれっ!」

 

「鉄道の仕事って、大変なんだもんね…。仕方ないよ、一緒に、大宮戻ろう」

 

そしてようやく大宮まで引き返すことができた3人。

 

「じゃあな、ハヤト。また今度乗ろうぜ。約束だっ!」

 

再びホクトが手を合わせると、ハヤトは顔を下に向けてしまった。

それを見て「何だよ、お父さんの事、信じてないのか?」と聞かれると「ううん、信じてるよ。」と返すハヤト。

ハヤトがそう言うと、ホクトはハヤトの頭を一撫でして「じゃ、行ってきます!」と言って走り去っていった。

 

「…行ってらっしゃい…。」

 

少し淋しげに言ったハヤトにケントが言う。

 

「今回は残念ながらって、おばさんとハルカちゃんには僕の方から伝えるよ。さあ、早く…。」

 

その時ハヤトは小脇に挟んでいるタブレットを見たが、そのポケットにカードらしき物が入っているのを見つける。指で押し出してみると「Sinca」の字が入っていた事から

 

「やばっ!お父さんこれが無いと鉄道博物館入れないじゃん!」

「そうなの!?ハヤト、なら急いでおじさんの後追うよ!」




 これにて1話前半は終了です。後半にウルトラマンや???な少女の描写が出ると思うのでご期待ください。それではまた次回お会いしましょう。


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第2話 少年の旅立ち

 ハヤトは父の忘れ物を届ける為、ケントの案内で大宮の地にある「鉄道博物館」に足を踏み入れた。

年間何十万人という膨大な人数が訪れるこの場所は、今日も今日とて鉄道を心の底から愛する者や、興味を持ち始めた子供とその保護者で溢れかえっており、古今東西の車両と触れ合ったり、運転シミュレーションで高評価目指して奮闘したり、そして屋上で新幹線の疾走感を体感したり等、様々な体験をする者達でごった返していた。

その賑やかな雰囲気の中に一瞬混ざりたくなった二人だが、「あっ!早くお父さんを探さなきゃ…!」というハヤトの一言で気を引き締めると、行き交う人並みの中ホクトを探し始める。

 

「ハヤトはあっち側を探せ、僕は反対側行ってみるから!何かあったらすぐ僕のスマホに知らせてくれっ!」

 

「分かった、ケント兄さんにも任せる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃のホクトは、背中側に研究所のロゴマークがあしらわれた青と白の上着をまとうと、地下階行きのエレベーターに乗っていた。

そして父を探すハヤトは、とあるドアを見つけてそれをケントに伝え、彼が戻ってくるのを待つとそのドアに近づく。

 

「ここで良いのかな…?」

 

「STOFF ONRY」と書いてあった為にケントは焦って止めかけたが、よく見るとカードリーダーらしき装置がある。

ハヤトがポケットから父のShincaを出してリーダーにかざすと、何故かドアが勝手に開いた。

 

「失礼しまーす…。」

 

ハヤトはそう小声で言って入っていってしまい、ドアを押さえていたケントはその後を追うか数秒迷ったが、後ろを振り返って見られていないか確かめると、不法侵入して申し訳ないと思いながら中に入りドアを閉める。

 

「あっ、階段…」

 

中には地下に続く階段が一つあり、二人がそれをゆっくり降りていくと…。

 

「・・・嘘でしょ?鉄博の地下にこんな所があるなんて…。」

 

「ああ…。」

 

そう、階段を降りたその先には、まるで謎の研究機関のような所があった。

戸惑いながら歩いているうちに、二人はある部屋を見つける。

 

「あっ、あそこかな…?」

 

そう言ってハヤトとケントがそっと窓から中を覗くと、父・ホクトの姿がそこにあった。

 

「あっ、お父さん…。」

 

「ああ、おじさんだね、間違いなく…。」

 

気づかれないよう小声で話し、何かの指令室のような室内をくまなく見渡すと、モニターに巨大な怪物が暴走する様子が映っているではないか。

 

「何だあれは…!?」

 

「分からない…。」

 

「出水っ!これは一体どういう事だ!」

 

中で父の声が響いた。

 

「原因が分かりませんが、再生したようです。現在格納庫に閉じ込めてますが、破壊されるのも時間の問題ですっ!」

 

その言葉通り、レイルローダーは格納庫の中を闊歩して縦横無尽に破壊の限りを尽くして暴れまわっていた。

コンテナを一つ投げ飛ばして爆破、そして渡り廊下も巨大な両腕を振り下ろして叩き壊し、また「グオオオオオーーーーーッ!」と吠えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてこの時、密かにこの様子を見ていた者がいた。

それは今朝、速杉家のベランダにいたあの白い服を着た少女だった。

背の高さとシュッと整った綺麗な顔立ちからして、人間で言えば高校生くらいだろうか。

 

美しい金髪を頭の高い位置で白いシュシュで結び、結び目から髪の先までの長さは背中の中心まである。

両目は目が覚めるほど美しい瑠璃色で、まるで青い宝石だ。

 

頭の上には虹色に光る宝石が埋め込まれた銀色のティアラが、首から胸まで同じ宝石が使われている白いペンダントが下がっており、左腕にも同じ宝石を使った白いバングルが装着され、どのアクセサリーにもついているその宝石は誰もが目を奪われる程の美しい輝きを放っていた。

 

身に付けている白いワンピースは、肩から二の腕の一部がパフスリーブで、手首部分がレースで飾られたゆるめの長袖。

肩にリボンが付く白いケープマント、右手首に小さな黒いリボンが付いた白いカフスを付けている。

スカートは見るからにふわふわの白いレースが三重に重なり、その中に柔らかいシルク布が包まれたデザインとなっているもの。

さらに後ろには腰のあたりに白い後ろリボンが付いていた。しかもその後ろリボンは翼のように大きくなり、その力でふわふわと浮遊している。

そして白いタイツと白い編み上げショートブーツを履いているというまるで天使のように清楚で可愛らしい出で立ちだ。

 

「何よあれ…!お告げ通りの世界を探して来てみれば…」

 

衝撃の光景を見て少女はそう零し、両肩に乗る小さな黒猫と小さな水色のユニコーンも声には出さないが同じ思考だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「E6と、E7は!?」

 

「メンテナンス完了してません!現在出撃できるのは、E5(イーファイブ)のみです!」

 

ホクトの左隣にいる男性指令員「本庄(ほんじょう)アカギ」が最悪な状況である事を告げる。

先に出水が述べた通り、3日前の戦いで出た「E6こまち」と「E7かがやき」の2体のシンカリオンはレイルローダーを捕獲する際に甚大なダメージを負い、残っているのは「E5はやぶさ」のみなのだが、こちらは上手に駆動できる者が一人も現れないままホームに封印されている状態なのだ。

それを盗み見していたハヤトとケントは

 

「お父さんの仕事って、鉄博の職員じゃなかったの?これって一体…。」

 

「だね、そもそも僕達にとってこんな機関自体に謎が多過ぎでしょ、おじさんもずっとごまかしていたとしたr『どちら様でございま〜す?』ぶはっ!」

 

「うわああっ!!ッ!?」

 

ケントがそう言いかけたところで二人とは違う声がかかり、二人は素っ頓狂な声でずっこけた。

 

「何だ…?ロボット…?」

 

『わたくし、車掌ロボットの『シャショット』でございま〜す♪』

 

ハヤトと体を起こしたケントの前にいたのは、丸みを帯びた白いボディに手足を生やし、緑の帽子をかぶっているようなフォルムのロボットで、ディスプレイがそのまま顔になっている。

 

「シャショ『関係者以外の無断入場確認!警報を鳴らしまーす!』うわあぁっ!しーっ、静かに、見つかっちゃうよぉ!」

 

「ぼ、僕達はスパイなんかじゃない!警戒するのはやめてすぐにこの子のお父さんを呼んでくれっ!」

 

警戒MAXで赤いアラート画面に変わったシャショットを二人は慌てて取り押さえ、ケントは無実だとばかりにホクトを呼んでと訴える。

 

「「?」」

 

わずかに漏れてくる会話にフタバとホクトが気づいた。

さらにここでシャショットは

 

『えっ、あれ!?適合率検出っ!68、74、85、あぁ〜、急激な適合率増加は、ワタクシメガマワリマス…。』

 

そう言ってブラックアウトしてしまった。

 

「誰だっ!」

 

ホクトが言えば、出水がボタンを押してドアを開ける。

そしてシャショットを抱いたハヤトとケントの姿があらわになり、二人はゆっくり顔を上げた。

 

「ッ!?ハヤト、ケント…?」 

 

「もしかして息子さんとご友人の方ですか?」

 

すぐにホクトは二人に駆け寄って「ハヤト、ケント、何でここにいるんだ?」と尋ねると

 

「ごめん。これ、忘れてったから…。」

 

「僕もその付き添いで。おじさん、ごめん。それから皆さんにも、申し訳ありません。」

 

ハヤトがポケットから出したShincaを手渡し、ケントもホクトと出水、他の指令員に向かって頭を下げて謝罪する。

 

「そうだったのか、ありがとうな。でも、今ここは危険だから、早く帰りなさい」

 

「うん…。」

 

しかし!ホクトがShincaを受け取って退出を促した矢先にそれは起きた。

 

 

 

 

 

ガシャァァァンッ!!

 

 

 

 

 

『うわああっ!』

 

「ハヤトっ!」

 

突然ガラスが割れる音がこだまして同時に悲鳴が響く。ケントも咄嗟にハヤトを抱き寄せて身を固めた。

ホクトが振り返るとレイルローダーがガラスに拳を叩きつけたようで、ガラスに大きなヒビが入っている。

 

「不味い、ここも見つかったっ!」

 

「この強化ガラスでは、10分保ちません!避難するべきですっ!」

 

『きゃあああっ!』

 

本庄がそう言う間にも、2回目のパンチをもろに食らったガラスのヒビがさらに深くなって悲鳴が上がり、ケントもハヤトの手を取って逃げようと回れ右をした。

身をかがめて衝撃を耐えた出水は苦渋の発言をする。

 

「くっ…。やっぱりE5を出すしかありませんっ!」

 

「出水も知っているだろう!適合者などいないっ!」

 

『適合者はいるのでございま〜す♪』

 

出水とホクトがすったもんだしていると、いつの間に復活したシャショットがそんなことを言い出した。

 

「シャショット、お前まで何を言っている…!」

 

ホクトが言うが、当のシャショットは

 

『そうではなくて、この少年でございま〜す♪』

 

そう言いながらハヤトの手の中で落ち着いた。

 

「えっ、俺?」

 

「ハヤトが…?」

 

「あのさ、君、言ってる事が理解不能なんだけど・・・。」

 

『手をお借りいたしま〜す♪』

 

シャショットが自分の体にハヤトの手を添わせ、ディスプレイが機能し始める。

そして計測が終わった頃には、信じられないような事が起きていた。

 

「適合率、96.5%!?どういう事だ…!」

 

「えっ、何?何の事?」

 

「何か特別な事をした兆候は無い様に見えるけど…。」

 

「いくら高い適合率の持ち主でも、シミュレーターすらやった事が無いじゃないですかっ!」

 

「シミュレーター…。あっ、もしかして…。」

 

その本庄の言葉を聞いたハヤトは何かを思い出すと、リュックを下ろして中からホクトのタブレットを出し、「SHINKARION SIM」を表示させて「このゲームの事?」と言いながら父に手渡す。

 

「いつの間に…。ハヤト、これ、やったのか?」

 

「うん…。」

 

ホクトがこのゲームの事をハヤトが知っている事に驚きながら画面を操作してランキングを見ると、1位の欄に正しくハヤトの名前と成績が刻まれていた。

 

「さ、最高成績…!?」

 

「それがどうかしたの?」

 

『これは力になってもらえる可能性、大でございまーす♪』

 

するとシャショットが時計回りに回転しながらそう言い出した為、それを聞いたフタバが反対意見を飛ばす。

 

「ちょっと待って下さい!もしかしてE5に乗せる気ですか!?彼はまだ子供ですよっ!?」

 

「しかし、このまま手をこまねいていれば、最悪のシナリオになりかねないのも事実だ!」

 

外ではレイルローダーがすでに傷だらけのガラスに向かって3度目の攻撃を仕掛けようとしていた。

 

「速杉さんっ!」

 

事件が渋滞し表情と言葉を失うホクト。

ケントはいつでも逃げられるようドアに近い場所にいるが、そこから様子を見守っている。

その時ハヤトが重い口を開く。

 

「…お、お父さん…。」

 

「?」

 

「よく分からないけど、俺、お父さんの力になれるの?」

 

「ハヤト…!」

 

「もし俺に、お父さんを助ける力が、本当にあるんだったら…俺、お父さんの役に立ちたいっ!」

 

「っ!」

 

「だから、どうやったらお父さんの力になれるか、教えてよ!」

 

真剣な顔ではっきりと「お父さんを助けたい」と言い切ったハヤトを見つめるホクト。

その時、それに心打たれたのか、ケントが無言の空気を打ち破った。

 

「…皆さん、僕も()()()()()()()()()()言わせてもらいますが・・・皆さんの頼みの綱であるロボットが、深手を負っていたり、上手く動かせる人が見つかっていなかったりで、あまり簡単に出撃させられる状況じゃない事は僕も分かりました。場に出す手札はもう使い切っています。しかし・・・苦肉の策かもしれませんが、僕はこの子の言った事に賛成します。この子の願った事はただ一つ―――『大好きなお父さんが高い壁にぶつかって困っているなら助けてあげたい』―――ただそれだけです。ここにいる、シャショット君?が計測してくれたデータと、僕も初めて見ましたが、おじさんが持っているタブレット、そこに映されている『SHINKARION SIM』とかいうゲームのランキングページもその証拠です。それだけで()()()()()()()()()()()()()0()()()()()()()だと逆に考えてもいいのでは?あくまで僕は最初から最後までこの子が一歩を踏み出せるまで後押しするだけです。この場に一つの可能性の塊が浮上してきた今、その意志を汲み取るか否かは皆さんの自由にして構いませんが、黒雲を突き破って差し込んできた一筋の希望の光に、今手を伸ばさずに、いつ手を伸ばすつもりですか?難しいかもしれませんが、そちらにいらっしゃる出水さんの言う通り、それ程の事をしない限り皆さんがあと少しであいつに襲われここで命を散らす事は明白でしょう」

 

『…………………………。』

 

「ケント兄さん…。」

 

ケントが試すように発した正論には、一同が黙ってしまうほどの重みがあり、まさに論破された出水もフタバも本庄もぐぅの音も出なかった。

 

そしてホクトは…

 

 

 

 

 

腹を決めた。

 

「朝のシミュレーターの感覚は、覚えてるか?」

 

「えっ、う、うん」

 

ホクトはハヤトの頭に手を乗せ、

 

「お父さんの事、信じてるって言ったな」

 

「…うん、もちろんだよ!」

 

ハヤトの返事を聞くと、ホクトは懐から「E5はやぶさ」の名が刻まれた1枚のShincaを取り出し、ハヤトの手に乗せて言った。

 

「よしっ、行くぞ、ハヤト!」

 

「うんっ!」

 

「やる事はやったので僕もこれで失礼します」

 

成り行きを見守って顔を綻ばせたケントはそう言うと、ハヤトのリュックを持ち一礼すると部屋を出て、ハヤトもそれに続いたが互いに別方向へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

指令室を出たケントが出口を探して歩いている途中、脳内に不思議な声が響く。

 

『ケント君、で良いかな?少しこちらに来てくれ』

 

「え?」

 

振り返ったその瞬間、ケントは白い光に包まれ、気づくと一面真っ白な空間にいた。

前に目を戻すと、チラホラと赤い光を見せる白い光球があり、それがみるみる人の形になっていくと

 

「う、ウルトラマン…?」

 

そう、目の前に、赤と銀の2色のボディに、乳白色の瞳、胸に輝く青い円形の水晶を持つ存在―――「ウルトラマン」がそこに居たのだ。

この世界じゃテレビの中の存在で、多くの子供達が憧れを抱いていた伝説のヒーローがいたのだから、ケントは内心混乱していると、その思考を読まれた。

 

「最初に少し落ち着いてほしい、ケント」

 

「あっ、うん…。」

 

「私の事を知っているそうだが、改めて名を言おう。M78星雲、光の国から来たウルトラマンだ。よろしく」

 

「僕の名前は嵐ケント。こちらこそよろしく。っていうか、何でテレビでしか見てないあなたがここに?それに何故僕を…。」

 

「最初に言うと、確かにこの世界では我々は空想上の存在に過ぎない。だがある時私は、とあるお方からこの世界の事を聞いて、宇宙の壁を超えてたどり着いた。次に、君の大勢の大人達を相手にしても怯まず、友達たる男の子を信じて発言する勇気。私はそこが素晴らしいと感じたのだ」

 

「そうなんだね、分かった。そうだな、なら・・・ウルトラマン、君の方も何か目的があるんだよね?それにさっき見たように何か大変なことになっていそうだし・・・僕もハヤトが僕の助けを必要としなくなる時まで見守るしかないか。ハヤトを助けなきゃならない時の為に君の力を貸して!」

 

「交渉成立だな。話が早い」

 

少し考えて出したケントの返事を聞くとウルトラマンはそう言って光球の姿に戻り、ゆっくりと近づくとケントの胸からスッと入り込む。

ケントがさらに右手を見ると、ウルトラマンの変身アイテム「ベーターカプセル」が握られていた。

すると一体化を終えたばかりのウルトラマンが言った。

 

『実は私の他に、私についてきていた少女が先にこの中にいるはずだ』

 

それを聞いてケントはその場からくるりと方向転換し、格納庫に向かって走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方同じ頃、ハヤトがたどり着いたホームには、美しい緑色に輝くE5系が停まっていた。

ハヤトがドアまで歩いて近づいた時、迎え入れるようにドアが開く。

 

「(すごい、本当に俺、E5系に乗れるんだ…。)」

 

運転席まで進むと、ドアから特殊な光が発せられ、それを浴びたハヤトは、エメラルドグリーンと白を基調とした「パイロットスーツ」にチェンジした。

 

「えっ、これは…。」

 

自分の姿が大きく変わった事に驚くものの、そのまま席につく。

 

「でもこれ、どうやったら運転できるんだ…?」

 

その時、『聞こえるか、ハヤト』と父の声が聞こえ、ハヤトは耳に装着されているインカムに手を当てる。

 

「大丈夫か?」

 

『う、うん…。』

 

「E5系に乗せる約束が、こんな形になるとはな…。」

 

『何言ってるの、あの約束は別だからね、ちゃんと守ってよ』

 

「ハハハ…。」

 

その軽い親子コントの後、出水とフタバも動く。

 

「三原君」

 

「はい」

 

「君もいきなりだがオペレーションの実践だ。準備いいな」

 

出水が言うと、フタバは何も言わずに空席となっていたホクトの右隣の席に飛び込み、さっと左耳にインカムをセットした。

 

「お願いします!」

 

「良いかハヤト!お父さんがこれから、順に教えていく!」

 

「うんっ!」

 

「まずはShincaを『超進化マスコン シンカギア』にタッチして、シンカリオンE5を発車させろ!」

 

ハヤトはそれに従い、中央にあるコントローラー、「超進化マスコン シンカギア」のカードリーダーにShincaをかざす。

『ピピッ!』という音と同時に『この列車は、地下格納庫行きです』と男性の声でアナウンスが鳴ると

 

「シンカリオンE5、出発進行!」

 

腕木式信号が斜め下に下がって青に変わると同時に、そう言ったハヤトはレバーを引いた。

すると、緑に光る車両はゆっくり動き出し、一気にトンネルに突入する。

 

「(凄い…。俺新幹線を動かしてる…。)」

 

「良いぞ、ハヤト。次にその『超進化マスコン シンカギア』を装着しろ!」

 

言われた通りハヤトは「超進化マスコン シンカギア」に左腕を差し入れ、ハンドルを掴むと光とともに取り外す。

それと同時に周囲が無機質な運転室から青いラインが何本もほとばしる不思議な空間に変わった。

 

「シンカギア、起動確認」

 

「よしっ、レバーを一気に下げて、超進化速度に到達させるんだ!」

 

「分かった!」

 

そう伝えられたハヤトは素早く右手をレバーにかけ、渾身の力で手前に倒した。

 

『超進化速度、加速します』

 

そのアナウンスが響くと、これまで体感したことがないようなケタ違いの速さに突入し、指令室のゲージもどんどん上がっていき、ハヤトは必死にその速度に耐えた。

そうしている間に、ゲージが1225のところで止まり緑に光った。

 

「超進化速度、到達」

 

「よし!ハヤト、スロットにShincaをセットして、シンカリオンに変形させろ!」

 

ホクトの指示通り、シンカギアの側面にはカード挿入スロットが2段あり、言われたハヤトは下部のスロットに自身が乗る機体のShincaを差し込んで軽く押すと、シンカギアの前面カバーが展開し『E5…』と鳴る。そして

 

「「チェンジ!シンカリオン!!」」

 

親子二人で息を揃えてそう叫ぶと、『シンカリオンに変形します』のアナウンス。

そして、E5はやぶさの先頭車両側面を飾る鳥のシンボルマークが眩い光を放つと、先頭と後尾の車両が連結し、先頭車は上半身に、後尾車は脚部に変形する。

そして上半身から頭が出ると、その瞳が光を放ち、刀身がピンク色に光る剣を振りかざした。

 

『シンカリオンE5はやぶさ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、格納庫でレイルローダーが中を破壊しまくる様子を見ていた少女は、暴れん坊将軍を体現するあまりの暴走ぶりについにしびれを切らし、右手を天にかざして稲妻を纏った黄色い光の玉を打ち込もうとしていた。

 

「一瞬聞こえたけど、人間達にも手を出したり、よくここまで好き放題に・・・!っ、もう許さないっ!」

 

「ちょっ、フローラ!?待って!まさかあいつを殺るつもりなの!?!」

 

「そうよ、ダイアナの言う通りよ!それなりに広いとはいえこんな室内で魔法をぶっ放しでもしたらどうなると思ってるの!?それにあんなデカブツだし少し思いとどまった方が…。」

 

「うるさいっ!ダイアナもオパールも黙ってて!!」

 

「そんなぁ」

 

「ぴえん」

 

フローラと呼ばれた少女はそれぞれダイアナと呼んだ黒猫、オパールの名を持つユニコーン、その二人の友人の制止を振り切ってついに雷の魔法を投げつけようとした。

 

「喰らいなさいっ!」

 

だが、その腕を振りかぶる事はできなかった。

よく見ると、緑色に光るロボットが颯爽と空中から舞い降り、着地を決めて立ち上がっていた。

それを見たフローラは貯めていた魔力を吹き消す。

同じタイミングでケントもこの場所にたどり着いて、その光景を見た。

 

「E5系が…ロボットになった…!…っ!」

 

ハヤトはこの姿を見て少々驚いていたが、レイルローダーが気がついて視線を向けると、E5はやぶさの瞳が光った。

 

「あの夢と同じ展開だわ…。」

 

フローラはそう呟き、ケントの中にいるウルトラマンも次のように思案しながら見守る。

 

『おそらく地球人が作り出したあのロボと我々が知る怪獣とはまるで違う敵意むき出しの怪物…、勝利を手にするのはどちらだ…!』

 

 

 

 

 

♪主題歌:進化理論




これにて記念すべき第1話は終了です。

ここでキャラ解説。

・嵐ケント CVイメージ:小林祐介
ハヤトとアズサの幼馴染の高校2年生。一人称は「僕」。
幼い頃からハヤトと付き合っている為、今では彼が考えている事を理解するのも誰より早く、例え話の通訳には少し苦労するものの、気持ちを汲んで代弁できるようになってきている。
母のナナミはハヤトの母であるサクラと親友関係にあり、フウカという名の中学生の妹もいる。
本作でウルトラマンに選ばれ彼と一体化した。

・フローラ
魔法と宝石の国「ジュエルランド」の第一王女。
作品内で触れた通り金髪碧眼の美少女で、性格は基本的に穏やかで優しく、主に白中心の服を着ている。
ジュエルランド出身なので多彩な魔法を操る事ができ、一見すると十代に見える「絶世の美女」レベルの容貌も魔法で維持しているらしい。
作品で触れた宝石は「レインボーダイヤモンド」というジュエルランドの王家の家宝で、それを使ったアクセサリーも母親であるジュエリーナ女王から第一王女の証として受け取り大切に身につけている。
「プリズムボイス」と呼ばれる美しい歌声と「ハッピーダンス」と呼ばれるダンスの才能も持っていて、この声で歌った歌を聞いた者、ダンスを見た者は誰でも幸せな気持ちになれるらしい。
その2つの才能を活かして「人間界」と呼んで度々交流の為滞在している地球では「神アイドル」として活動しており大いに人気がある。
作者考案の本作オリジナルキャラクター。

・ダイアナ CV:宍戸留美
フローラのジュエルランド時代の幼馴染。
見た目は頭の上に立っている飾り毛と足先が白く染まったマンチカンで、瞳に輝く宝石は「宝石の王者」と呼ばれるダイヤモンド。
頭の上にピンクのリボン、首にピンクの付け襟を巻き、その上からハートをかたどったネックレスを付けている。
小柄だが立派なキュートレディになる事を夢見ていて、フローラには何かと懐いており、人間界でも共に行動する仲。
ジュエルパワーは「女の子のチャームアップ」。

・オパール CV:沢城みゆき
見た目はたてがみと尻尾が紫になったミニユニコーン。
瞳に輝く宝石は名前と同じ虹色の宝石オパール。
小さな水色の翼をパステルカラーの宝石の玉で飾り立てており、ユニコーンのトレードマークである頭の上に立つ鋭い角も自慢の一つ。
純粋な心を持つ人間にしか姿が見えず、不思議な魅力を持つ女の子。
フローラとは自分の姿が見えている事から打ち解けている。
ジュエルパワーは「隠れた才能を覚醒させる」。

次回は幕間のつもりでサイドストーリーを投稿しようと思います。お楽しみいたたければ幸いです。


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SIDE STORY 1 光神の予言と光の戦士達

 初のサイドストーリー投稿です。
今回はウルトラマン達やフローラちゃんがハヤト達の地球に来る前のきっかけ話です。
ちなみに今作登場のウルトラマン達は全員自意識がある設定でお届けします。


 「ん…。うう…。」

 

不思議な空気が肌に触れ、少女―――フローラは目を覚ました。

 

「えっ?…ここ、どこ?」

 

だが周りを見渡すと、あたり一面は透き通るような水色で、よく目を凝らせば六角形の網目模様がそこかしこにある。

上空にはミラーボールに酷似したものが、下には巨大な円形ステージがあり、自分が立っているのは電車の線路とよく似た場所だ。

 

この様子に驚くフローラだったが、自分の周囲に9つの光が現れたことに気づく。

その中からは、ウルトラマン、ウルトラマンタロウ、ウルトラマンメビウス、ウルトラマンゼロ、ウルトラマンティガ、ウルトラマンコスモス、ウルトラマンギンガ、ウルトラマンエックス、ウルトラマンオーブの9人のウルトラ戦士が出てきた。

驚きつつもフローラは最年長の初代ウルトラマンに声をかける。

 

「ウルトラマンさん…、まさか皆さんまで…。一体これは何なんでしょう…。」

 

「いや、我々でも分からん」

 

どうやらウルトラマン達もこの空間の事はほとんど知らないようだ。

それを証明するのが、ウルトラマンの隣にいたタロウとメビウスの会話だ。

 

「驚いたな、こんな場所は我々も見聞きした事が無いぞ」

 

「何かの力で呼び出されているのでしょうか?」

 

メビウスの問いに、ゼロが反論する。

 

「おいおいメビウス、こんな分からねぇ事だらけの空間にオレ達を誘い出す奴なんて誰がいるんだよ。そのパターンって大抵オレ達を罠に落とす姑息な奴が仕掛ける事じゃねぇか?」

 

その時、ゼロの隣にいたオーブが何かに気がついて声を上げた。

 

「っ!?フローラ、皆さん、あれを!」

 

『!?』

 

オーブが指差したステージでは、なんと右手が巨大化し、左手にドリルを装備した遮光器土偶のような怪物と、エメラルドグリーンが特徴的な新幹線「E5系はやぶさ」が複雑に変形したかのような一体のロボットが戦っていた。

 

「な、何だあれは…!?」

 

その光景を見たエックスが言う。

土偶のような怪物は、小さな頭からレーザービームを連射してロボットを執拗に攻撃し、咆哮を上げてしきりに威嚇している。

しかしロボットの方は片時も怯まず、背中の翼のような装備をピンク色に光らせて、そのビーム砲撃を機敏にかわし、時には手にした剣で切り飛ばす事で受け流していた。

 

すると埒が明かなくなったのか、怪物は左手のドリルを射出した。

一瞬不安を覚えたフローラだが、ロボットはまたもや命中する前にそこから超スピードで離れ、フローラ達とは反対のレールに着地。

流石に怪物の方もしつこく攻撃を避けられてイライラしてきたのか「ならばコレならどうだ!」と言わんばかりに右の巨大な拳を握りしめてエネルギーを溜め、ロケットパンチの要領でそれを放った。が……。

 

怪物の最後の意地が命中して煙が上がった場所にロボットは居らず、その代わりに空間を構成する壁の一部が赤くなっていた。

その攻撃に耐えきれなかった証拠だろう。

その様子を見たフローラは震え声でつっかえながら言った。

 

「うっ、嘘、でしょ・・・」

 

そして…。攻撃をかわしていたロボットは怪物の背後を取り、そこで飛び上がると反撃に使用していた剣を前に構えた。

刃がピンク色に光るその剣の側面から緑色の光が飛び出し、怪物はその光を浴びた途端、少し動きが止まった。

その隙を突いてロボットはそのまま斬りかかり相手を怯ませると、胸の先端が展開し光が集まる。

するとそこからエメラルドグリーンの光線が発射され、直撃した怪物は爆炎を上げて消滅。

それを見ていたフローラ達の反応は

 

「な、なんて破壊力なんだよ…!」

 

「私達でも耐え切れるかどうか分からん…!」

 

「これって…、一体何なんだ…!」

 

順にそう言ったのは、ギンガ、ティガ、コスモスだ。

未知のロボットの凄まじいパワーに、大いに戦慄した彼らだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!?」

 

そこで意識が覚醒したフローラは、ガバッと体を起こすと、薄地の白いワンピースタイプのネグリジェを着てベッドで横になっていた事に気づく。

夢の世界に引き込まれていた事に気がついたものの、フローラは先程の景色が引っかかり、どうしても想像できなかった。

 

「さっきの夢は…一体何なの…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ、またこの夢…。」

 

その日の夜、この日もジュエルランドで友人との時間を過ごし、一日の疲れを癒そうと、ジュエルキャッスルにあるゴージャスな自室に戻ってベッドに潜り込み、睡魔に身を委ねたはずのフローラは、またこの空間にいた。

周りにはウルトラマン達も一緒で、目の前にはあの知らない怪物もいる。

 

ただし、そいつと対峙しているロボットが一回り違っていた。

新幹線だけでなく在来線も走れるというミニ新幹線、「E6系こまち」のような赤と白のロボだった。

昨日初めて見た緑のロボットと同じように超スピードで攻撃をかわしながら、手に持つ2丁拳銃で牽制している。

 

そして上に同時に投げると形を変形させて両肩に装着し、そこにエネルギーを溜めてビームを2発同時に放ち消し飛ばした。

やはりそれを見たウルトラマン達は自らの能力がどこまで通用するかと恐怖を抱き始める者もいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その次の日に出てきたのは、「E7系かがやき」と似ている青と白のロボで、最初はなんと高速パンチを連打して怪物をボコボコにし、右手にドリルを出現させたあと、それを超高速で回転させると、展開されたバリアをも打ち砕き、その怪物のボディーを粉々に破壊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんな奇妙な夢を見続けてから数日後。

フローラとウルトラマン達はついに緊張感あふれる光景に出くわしていた。

漆黒のオーラをまとった目の前の怪物はこれまでの2倍ほど巨大なのに対し、その怪物に対して7体のロボが対峙していた。

 

これまでに彼女達が見たのは、緑、赤、青のロボの他に、「N700Aのぞみ」という白い車両が変わったロボは格闘戦主体、「800系つばめ」が変形するロボは左手に弓矢を手にして翼を背中に生やして飛翔しており、巨大な盾を構えた「500系こだま」が姿を変えたロボはその盾からミサイルを放つ他、なんと「700系のぞみ」、「700系ひかりレールスター」、薄い水色の新幹線「N700系みずほ」を使って変形合体したロボまで見たのだ。

 

中心にいる緑のロボが指示するように剣を前に振りかざし、それに合わせて7体同時にジャンプ。

まず最初に、緑のロボがジャンプの勢いを利用して怪物の胸にキックした。

背後を赤いロボが狙撃し、怪物の左手のドリルに青いロボのドリルがぶつかり合ってスパークが散る。

更に白いロボがパンチやキックのラッシュを叩き込み、翼を使うロボがビームをかわしながら光の矢を連射する。

その最中放たれたビームは盾持ちのロボが防御して打ち返し、トドメに3体合体のロボが3つの発射口を開いて3本のビームを放ちそれを合わせた。

 

縦横無尽に飛び交う斬撃と砲弾、巨大ドリルの刺突、格闘技の応酬、連発されるたびに相殺し合うビームと光の矢、そして3色のエネルギーが渦巻く巨大ビーム…。

もはやごり押しレベルのこの怒涛の連続攻撃に、見ているだけしかできていないフローラは完全に整った顔が恐怖で青ざめ、体もガクガクブルブルと盛大に震わせながら震え声で零した。

 

「…ハイレベルすぎるわ…。こんなのとガチで戦ったら私達どうなるの…?」

 

…だがしかし、怪物の方もただではやられるはずが無い。

全身から黒いオーラを放つだけでロボ達を一気に吹き飛ばしダメージを負わせたのだ。

すると、すぐさま立ち上がった緑のロボが胸に光を集め始め、他のロボ達も必殺技の体制に入った為、これを見ていたフローラは一気に背筋がビクッと凍り、ウルトラマンやティガ達もこの様子に軽く焦った。

 

そして…。ついに7体のロボからそれぞれの技が放たれる。

緑の光線、赤い砲弾、青のロボがドリルを前に突き出して突進、武装してパワーアップした白いロボのロケットパンチ、光の矢、盾の穴から放たれる無数のミサイル、三色のビーム。

これらが合わさって一気に怪物の体を飲み込むと…黒い光のオーラが出て爆発した。

するとそのとき、恐怖していたフローラ達の脳内に威厳のある声が聞こえてきた。

 

『光の戦士達よ、今ここに私から言おう』

 

「そ、そのお声は…ウルトラマンレジェンド様っ!!」

 

動揺するような声で叫ぶフローラの言う通り、その声の主は宇宙伝説で語られる神の如き存在、ウルトラマンレジェンドだった。

 

『今のこれは全て私が予言する為の幻術だ。人間が生み出したこのロボット達が誕生する世界に赴き、その世界を共に守るのだ。フローラ、そなたにもその手助けをしてもらう』

 

「……………。」

 

『一つだけ言っておくと、今回その世界の人間達を狙っているのはお前達の知っている地球の怪獣達や宇宙からの侵略宇宙人達とは少し違い、地球の地底に潜む一族が謎の怪物を操っているという事だ。既に10年前に一度襲来を受け多くの子供達が犠牲になっている』

 

「そ、そんな事が・・・!まだ顔も実態も分からないのに、そいつらとどう戦えと言うんですか!?」

 

『フローラ、落ち着きなさい。まずはその世界を探し出してそこの地球人と心を通わせてみると良い。それからお前達とともに戦ってもらう事になる純粋な地球人も既に私が選抜済みだ。いざという時には今見たロボ達を助けて共に戦う事がこの度のお前達の使命。私の加護を受け取ればその世界では戦闘時の時間限界が軽減され、そなた達の持つ力を限界を超えて発動させ戦う事ができるのだ。それでは、この世界のある太陽系で待っている』

 

未知の脅威からこのロボ達と共にその世界を救ってほしい、その言葉で宇宙伝説の存在―――ウルトラマンレジェンドの声は途切れた。

つまりフローラが恐ろしいと感じていたロボ達と戦うのではなく、むしろ協力を呼びかける言葉だった。

その世界に迫っている敵の存在は大きく違えど、ここにいる戦士達を指定してそう命じるのならば、大宇宙の神と呼ばれるウルトラマンレジェンドが自分達に重大な使命を課したのはきっと間違いないはず―――フローラとウルトラマン達はそう悟った。

 

こうしてこの一件が、9人の光の戦士と強大な魔法を操る美しき少女、フローラがこの地球に来る大本になったのである。




 いかがでしたか?
ちなみに今作登場のウルトラマン達のボイスイメージは
・紳士的タイプ
1,ウルトラマン
2,ティガ(EXPOサマーフェスティバルやTDG The LIVE ウルトラマンティガ編で聞いて気に入ったので本編と同じ真地勇志さん)
3,タロウ
4,X(もちろん中村悠一さん)
・若々しいタイプ
1,コスモス(杉浦太陽さん)、
2,メビウス(既に五十嵐隼士さんが引退されてしまったのでギャラファイで担当された福山潤さん)、
3,ゼロ(もちろん宮野真守さん)、
4,ギンガ(無印でダークルギエルと二役で声を演じられた杉田智和さんにするか迷ったけどホクトとかぶってしまうのでギンガSからの根岸拓哉さん)、
5,オーブ(もちろん石黒英雄さん)
となっております。
あと作者オリジナルキャラのフローラちゃんですが、キャラクターボイスのイメージは綺麗めなお姉さんボイスにしたいので大橋彩香さんにしようかなと思います。
次回はいよいよ再び本編に戻りまして第2話の投稿を開始しますので、お気に入り登録と高評価と感想記入お願いします。
では、ばいばーい

次回予告

これまで誰一人操縦できなかった「シンカリオンE5はやぶさ」で、初陣にして見事に敵を倒したハヤト。
可能性の蕾が開花しかけた事に、ハヤト自身もホクト達も、そしてウルトラマンとケンゴ、フローラ達も驚きを隠せなかった。
大喜びしたシャショットはこれから一緒に頑張ろうとハヤトを誘うが、父ホクトはまだ少年たる息子を未知の戦いに巻き込んでしまえば何が起こるのかを恐れ、それを垣間見てしまったハヤトもシンカリオンに乗るのはもうこの一度だけだとシャショットを突き放そうとする。
しかしシャショットとケンゴが彼の背中を押したその時、ハヤトの秘められしパワーがついに覚醒した!
次回「親子の迷いとためらい」お楽しみに!


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第3話 親子の迷いとためらい

 いよいよ第2話の話です。
投稿主は最近企業実習関係で忙しく、更にゲーム「デレステ」のプレイし過ぎで時間をだいぶ潰してしまった為に投稿が遅くなりました。
時間が空いてしまいお待ちしていた皆様には大変申し訳ございませんが、お楽しみいただければ幸いです。


 上空で不思議な少女フローラ、そのパートナーのジュエルペット・ダイアナとオパール、近くの廊下でウルトラマンと一体化したケントが見守っている中、ハヤトが初めて乗った「シンカリオンE5はやぶさ」と怪物レイルローダーが対峙している。

 

「凄い…。新幹線がロボットになっちゃったよ…。」

 

『良いか、ハヤト!』

 

「っ!」

 

ハヤトが自分が乗ったロボを見ていると、ホクトから指示が飛んだ。

 

「そのスーツを着る事で、お前の動きにシンカリオンは連動する!」

 

『俺の動きに…?』

 

「あとはシャショットに従って、目標を撃退するんだ!」

 

「シャショット…?」

 

『よろしくな、ハヤト』

 

「えっ、よろしくって、まさか…!」

 

『ああ、私だ』

 

「さっきのシャショット!?…キャラ変わっちゃってるんじゃ…。」

 

そう、何故かE5の中にいると思しきシャショットが、先程出会ったお気楽キャラから熱血漢キャラに変貌していた。

それに苦笑したハヤトだが…。

 

『驚いている場合じゃないぞ、見ろ!』

 

「っ!」

 

シャショットの声で、ハヤトが前を向くと…。

 

『グオオオオオーーーーーッ!!』

 

破壊活動の邪魔をされた事に怒りを覚えたレイルローダーが再び吠えた。

それを聞いて、上空にいるフローラは歯を噛み締めたが、困り顔のダイアナとオパールに見られる。

 

『フローラ、今は様子見に徹するぞ。魔法を撃つのは今は抑えるんだ』

 

更にウルトラマンもケントの中からフローラをテレパシーで諭し、何とか落ち着かせた。

 

「く、来る!シャショット、どうすれば良いの!?」

 

『私のイメージを、インターロックするんだ』

 

「インターロック…?何それ!」

 

『私のイメージとハヤトのイメージを連結させる事により、シンカリオンの機能をより高めるのだ』

 

「だからどうやって…!?」

 

『説明している暇は無い、適合率96%のお前なら出来る!』

 

シャショットの言う通り、既にレイルローダーがE5に向かって前進し始めていた。

シャショットはハヤトに君なら大丈夫だと声をかける。

 

「………分かった、やるよ!」

 

『行くぞハヤト!』

 

そして…ハヤトが必死に周囲に流れる光に身を任せたその瞬間…。

E5はやぶさの瞳が光り、その場で手にした剣を突き上げると光が刀身に集まる。

そのまま顔の前で側面を向けるとストップサインが飛び出し、レイルローダーの周囲に光の自動改札が現れた。

そして直後にフラップドアを閉じる事でレイルローダーの動きが止まった。

そして、地を蹴って駆け出したE5はやぶさは剣を構えて加速する。

 

「カイサツソードッ!」

 

ハヤトが技名を叫ぶ。

ある程度距離を詰めると、シュッ!と鋭い音とともに剣が振るわれ、水平真っ二つに切断されたレイルローダーは、光の改札オーラが消えると、ものすごい炎を上げて爆発した。

それを見ていた指令員達の反応はというと…。

 

「す、凄い…。」(フタバ)

 

「目標撃退。…交戦時間、わずか10秒です…。」(本庄)

 

「これが、適合率96%の凄さか…。」(出水)

 

「…………。」(ホクト)

 

そして…。爆炎の前に佇むE5の中で、ハヤトもこう零していた。

 

「…これが、『シンカリオン』…。」

 

更にフローラとウルトラマン達もテレパシーで語り合う。

 

『見てましたか?ウルトラマンさん…。』

 

『うむ、あのような華麗な技を決めたあたり、やはりあの「シンカリオン」とやらは只者では無いようだな』

 

『そうですね…。』

 

 

 

 

 

♪オープニング主題歌:進化理論

 

 

 

 

 

その後レイルローダーを一瞬で葬り去ったシンカリオンE5はやぶさは、元の新幹線の姿に戻り、元いたホームに帰ってきた。

ドアが開いて、元の私服姿に戻ったハヤトがホームに降り立って息をついていると、『ハヤトく〜ん♪』と呼びながらシャショットが近付いてきた。

 

『素晴らしかったでございま〜す♪』

 

そう言いながらハヤトの周りを一周し、ハヤトの顔に抱きつく。

 

『流石わたくしの見込んだ運転士でございま〜す♪』

 

「シャショット、ちょっ、待っ…。」

 

ハヤトがそう言って顔からシャショットを引き剥がした時、ホーム前には出水とホクト、フタバと本庄を含めた一部の指令員と整備員、研究員のメンバーが出て拍手喝采していた。

 

「坊主、よくやった!」

 

「凄い、お疲れ!」

 

「お父さん!」

 

父の姿を見つけると、ハヤトはシャショットを連れて階段を降り、父の元に来る。

 

「よくやったな、ハヤト。…ありがとう。」

 

「へへっ、なんか恥ずかしいな…。まぁ俺は『時間と言った事は守る男』だからね」

 

感謝の言葉を述べたホクトにそう返すと、「そうだったな」と言うホクトとタッチを交わしたハヤトだった。

ちなみにこの様子を離れて見ていたフローラと、合流したケントはシュッとその場を離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ハヤトは医務室で女性医師の「久留米(くるめ)ミドリ」による検査を受けた。

 

「はい、あーん。お口を大きく開けて〜」

 

「あー…。」

 

「はーい、次は触診ねー」

 

「うあはは、止めて、くすぐった!」

 

「はーい、最後は、ちょっとチクッとするわよ」

 

ワクチンが入った注射器を見せられ、()()()()()()()なハヤトは

 

「う、う、う、う、…うえええっ!?」

 

ブスッ

 

「うわああああーーーーーーっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁー…。酷い目にあった…。」

 

待機室に入ったハヤトがそう呟いていた時

 

「ハヤト君、検査お疲れ様。無事で何よりです」

 

そう声をかけながら検査結果を書いたタブレットを持ったフタバが入ってきた。

 

「挨拶が遅くなったけど、私は三原フタバ。よろしくね」

 

「速杉ハヤトです…。」

 

敬礼しながら挨拶したフタバにハヤトが名乗り返すと、開口一番にフタバはこんな問いを投げかける。

 

「ハヤト君、急にシンカリオンに乗る事になっちゃって、怖くなかった?」

 

「うーん、そう言えば、怖いとか怖くないとか、全然考えなかったな…。」

 

「えっ、そうなの?」

 

予想外の返答が来た事にフタバは意外だという表情になったが、そこにハヤトは付け加えてこう発言した。

 

「だって、俺が適合者だとか、E5を出すとか出さないとか、急に訳分かんない事騒ぎ出したんだよ?怖いとか考える暇なんて無いよ」

 

「…大人な私達が巻き込んでしまって、ごめんね…。」

 

申し訳なく思い謝罪しようとしたフタバだったが、それに対してハヤトはこんな事を言った。

 

「なんでフタバさんが謝るの?」

 

「えっ?」

 

「俺はお父さんの力になりたかっただけだよ!それにお父さんと一緒にシンカリオンで凄い事やった気がするし、最高の気分だ!」

 

「ハヤト君…。」

 

『よく言ったでありま〜す♪』

 

話を一緒に聞いていたシャショットがフタバを遮ってそう言うとハヤトの前に出てきた。

 

『それでこそ、わたくしの相棒でございま〜す♪』

 

「相棒?」

 

『そうでございま〜す♪ハヤト君とわたくしで、E5を活躍させられるよう、邁進いたしましょう〜♪』

 

「えっ?」

 

『まずはお互いをよく知る為、わたくし、()()()()()()()()()()()()()()いたしま〜す♪』

 

敬礼ポーズでシャショットがそれを提言してきたが、驚愕したハヤトは慌ててNGを突きつけた。

 

「えぇーっ!?無理、無理無理っ!うちのお母さんが許す訳無いっ!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()E()5()()()()()()()()()()()()な事だよっ!」

 

「何、その新幹線を使った例え話…。」

 

前半は分かるものの、後半はほぼ新幹線を平気で使った例えになっていた為、呆れ気味に言ったフタバ。

外で姿はそのままで気配を完全シャットアウトする魔法を纏ったフローラとケントも呆れて聞いていたのは余談だ。

 

「と、とにかく、ハヤト君の検査結果、お父さん達に届けておくね」

 

フタバがそう言って部屋を出たあと、ハヤトはシャショットに言う。

 

「あっ、お父さんまだ帰れないのかな?」

 

『ハッ!ハヤト君、居候の件是非速杉指導長にお話ください〜!』

 

「わ、分かったよ…。」

 

滝のように涙を流す顔でそう訴えるシャショットに、引き気味に返事するハヤトだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「速杉指導長、まさか貴方のご子息がE5の適合者だったとは驚きですよ」

 

会議室のそばに来た時にこの声が聞こえてきて、フタバは足を止めると密かに窓から様子を見た。

 

「やっと、念願の運転士が見つかった訳ですな」

 

視察に来た幹部職員に言われたホクトは沈黙した。

そこに出水が待ったをかける。

 

「お待ち下さい。事はそんな単純ではありません、もっと慎重に検証すべきかと」

 

そう言う出水に対し、ドクターイエローの先頭車両をイメージした机で出水と対面している視察職員のうち、最年長らしきスキンヘッドの人物が意見を返す。

 

「しかし、あの子の出現は、超進化研究所全所員の悲願ですよ」

 

「ですがまだ子供です。そして速杉指導長はあの子の父親ですよ」

 

「じゃ何かね。未知なる脅威から人々を守るという任務を、放棄すると言うのかね!」

 

出水は折れずに言い返し、対面の職員が使命を捨てるつもりかと少し強めの口調で言うと、出水は鋭い眼差しでにらみながら発言を投下した。

 

「子供をシンカリオンに乗せるなど、本来であればあってはならない事です」

 

職員達が歯噛みしたりする中、出水は忠告するように畳み掛ける。

 

「今回の処置は、私も速杉指導長も、苦渋の末にとった特例中の特例です。安易にあの子をシンカリオンに乗せろなどというのは、速杉指導長を苦しめるだけであると、ご認識いただきたい」

 

運転士にふさわしいというだけで判断してその職に据えようとするのは謹んでほしい、という意思をここぞとばかりに突きだす出水。

その様子を外で見ていたフタバも少し顔を曇らせていると、後ろに気配が。

振り返った先には、その言葉を聞いてしまったのか、悲しげな表情を見せるハヤトがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

待機室で待っていたシャショットの元に戻ってきたハヤトだが、『ハヤト君♪居候の件、どうでございましたか?』と聞かれた瞬間、

 

「えっ?ああ、ごめん、道に迷っちゃってさ、は、あはは…。」

 

笑ってごまかすハヤトに、目をパチクリさせるシャショットだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会議室を出て歩いている途中、ホクトは出水に言った。

 

「すまない、出水」

 

「先程の話は、あのご老人達に好き勝手言わせないために釘を刺しておいただけです」

 

「そうか」

 

足を止めた出水はメガネを押してこう言う。

 

「私達には分からない事が多すぎます。未だ解明できていない奴等の正体に加え、何故ハヤト君に高い適合率があるのか、という謎まで増えてしまいました。その様々な謎を解明する事が、未来を守る事に繋がるはず…。」

 

そして出水はこの言葉で締めた。

 

「いずれ決断の時も来るかもしれません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして夕焼けの中、鉄道博物館に誘う「埼玉新都市交通ニューシャトル」をE5系が追い越す様子を「パノラマデッキ」で見ながら、帰り支度をしたハヤトとホクトが会話していた。

 

「ハヤト、ごめんな。お父さん、まだ残らなきゃいけないんだ」

 

「うん、分かった」

 

「…それで、今日の事は…。」

 

「誰にも言っちゃいけないんでしょ?分かってるよ」

 

「すまない、気をつけて帰れよ」

 

「うん、シンカリオンに乗せてくれてありがとう」

 

最後のハヤトの言葉に軽く微笑むホクトだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その様子を少し離れて見ながら、フローラとケントが遅ればせながら対面していた。

 

「そう、ウルトラマンさんに選ばれたのはあなたね。」

 

「うん、挨拶が遅くなったけど、僕は嵐ケント。よろしくね」

 

「私はフローラ、こちらこそよろしく。…あなたの正体は、しばらくの間秘密って事にしておいて、当面は情報交換と尾行だけしていきましょう。私達もここに仲間が揃うまで」

 

「だね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、出水や他のスタッフが帰って、暗くなった指令室に一人籠もりデータの整理をしていたフタバのもとにホクトがやってきた。

ホクトの姿を確認すると、フタバは立ち上がって敬礼し、ホクトも返礼する。

 

「速杉指導長、お疲れ様です!」

 

「フタバ君こそ、お疲れ様。君も配属初日に大変だったね」

 

「ハヤト君に比べれば大した事無いですよ」

 

首を横に振って爽やかに言ったフタバは続けて言った。

 

「子供をあんなロボットに乗せて、得体の知れない敵と戦わせるなんて、正直どうかしてます」

 

「確かに。こんな事に巻き込むなんて、父親失格だな」

 

「…ただ、さっき思ったんです」

 

「?」

 

フタバは背を伸ばし、思いの丈を明かす。

 

「大人が子供を守るのは当然です。でも…今は、大人と子供が、一緒に未来を守っていかなきゃいけない時なのかもしれない、って」

 

「大人と子供が…一緒に…。」

 

「私達大人には、受け入れ辛い事ですけどね。でも、ハヤト君の言葉を聞いて考えさせられました」

 

「えっ?」

 

フタバはハヤトと初めて言葉を交わした時の事を思い返す。

 

『俺はお父さんの力になりたかっただけだよ!それにお父さんと一緒にシンカリオンで凄い事やった気がするし、最高の気分だ!』

 

「ハヤトがそんな事を…。」

 

「はい。ハヤト君は巻き込まれたなんて思ってないんです。私は彼のしっかりした意思を感じましたよ」

 

笑顔でそう言ったフタバに、ホクトは何かを思ったのか表情を引き締めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハヤトとアズサの通う「大宮小学校」。

その中のハヤトとアズサのクラスでは、アズサがクラスメイトの女子達に取り巻きにされていた。

 

「アズサちゃん見たよーっ!この間アップした、JSが舞妓さんになってみた動画!」

 

「可愛かったー!」

 

「再生回数凄い事になってたね!」

 

「さすが人気JSYoutuber!」

 

「もう見てくれたの〜!?ありがとー!」

 

「うちのクラスで見てない子なんていないよー♪」

 

「えーっ、そうかな〜。…あっ」

 

女子達からチヤホヤされていた中、アズサはふと見ると、窓側の席に座っているハヤトは心ここにあらずといった様子でため息をついていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして下校時間になり、一人で門を出たハヤトはこう呟いた。

 

「はぁ〜…。この間の事を思い出しちゃうと、現実とのギャップが凄すぎて…。」

 

そう言って家路につこうとした時、思いもよらない者の声が飛んできた。

 

『お待ちしておりました〜♪』

 

「うわぁっ!シャショット、なんでここに!?」

 

そう、思いもよらない者とは、笑顔で敬礼を決めるシャショットだった。

 

『相棒のハヤト君を待っていたのでございま〜す♪』

 

手を下ろしてそう言うシャショット。

 

「どうやって来たの?っていうかやばいよ!こんな所をアズサにでも見つかったら…」

 

 

〈予想〉

 

「初めてJSがロボットを捕獲してみた♪」

 

『あばば〜…。』

 

〈予想終わり〉

 

 

アズサにシャショットがアレコレされている様子を想像してしまい、ハヤトはこの世の終わりのような顔で漏らす。

 

「全世界に動画を流されて、お父さん達の迷惑になっちゃうよ…。」

 

「あっ、ハヤトー!」

 

そこに件の彼女が声をかけてきた事で、不味いと思ったハヤトは

 

「シャショット、行くよっ!」

 

『ぉ!?』

 

急いでシャショットを抱えて駆け足で学校を後にする。それを追う形で外に出てきたアズサは「あ、あれ…?」と呟きながら、その背中を見送ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハヤトはシャショットを連れて、人気の無い路地裏まで逃げ、そこでシャショットを手放し息を整えた。

 

「危なかった…。」

 

するとシャショットは話を切り出す。

 

『わたくし、ハヤト君が研究所に入れないと思って、これを持ってきたのでございま〜す♪』

 

するとシャショットのボディにある四角い穴からカードが飛び出してきて、ハヤトがそれを受け取ると、それは無記名のShincaだった。

 

「これって、Shinca?」

 

『そうでございま〜す♪』

 

「あ、いやいやいやいや、俺は俺で学校始まったんだし、研究所には行けないよ…。」

 

『でも、E5の適合者でございま〜す♪』

 

「そうかもしれないけど・・・。」

 

手を前に出してそう伝えるとシャショットに言い返される。

頭に浮かんだのは、初めてE5に乗った日に、会議室から聞こえてしまった出水の言葉だった。

 

『安易にあの子をシンカリオンに乗せろなどというのは、速杉指導長を苦しめるだけであると、ご認識いただきたい』

 

それを重く受け止めてしまっているハヤトは、シャショットにこう言った。

 

「あの日の事は、特別だよ…。」

 

『ま、まさか、ハヤト君はE5に乗る気は無いのでございますか!?』

 

「まあ、小学生だしね」

 

そう、シンカリオンは元々未知の脅威に対する目的で開発された為、ハヤトは自分が乗るのは父を助ける為だけだとして、父が苦しむならこの先は現場にいる父をはじめあの場の皆がどうなるかを一歩引いて見るだけにしよう、つまりE5に乗るのはあの一度だけだと決めてしまったのだ。

それを言われたシャショットは悲しげな顔になり、構えていた手も下ろしてしまった。

 

「研究所まで送っていくよ、見つかると不味いでしょ?」

 

とりあえず自称相棒を居場所まで送り届けるだけして帰ろうと思い、ハヤトはそう声をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、現実は彼の思い通りにならない非情なものだった。

福島県郡山市の南、そこに「それ」は現れた。

数日前にこの高架線路を疾走してレイルローダーを生んだ元凶である、あの謎の黒い車両だ。

これが走り去って行った近くにあったのは、既に廃業してしまった遊園地だった。

そこにある古くなったアトラクションの1か所1か所に、大量の黒い光の粒が降りかかる。

 

そして…。その場所は大きく変貌した。

バサバサッと鳥達が一斉に飛び立った後、そこに姿を表したのは、遊園地のアトラクションが一つに合体したかのような巨大な怪物だった。

 

 

 

 

 

どこかの上空にいるフローラは頭に手を添え、

 

「郡山市…。東北地方の入口に、不穏な気配がする…。」

 

と意味深な言葉を呟くと、くるりと方向転換してある場所へと一直線に飛んでいった。




前書きでもお話したとおり、大変長らくお待たせしてしまいました。
第2話の後半では、ついにウルトラマンが主人公を少しサポートして活躍し始めます。


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第4話 疾風の剣士の決意、始まりの戦士の光

 お待たせしました。第2話のバトルシーン回です。ここでウルトラマンと彼に付き従ってきたフローラちゃんがついにバトルに本格参戦します。
少し設定を言うと、今作登場のオリキャラ達は一体化したウルトラマン達とは心の会話ができるようにしたので、そこは『』にしてあります。


 高校での一日を過ごして家路についたハヤトの幼馴染、ケント。

彼の通う学校の制服は白い学ランで、それなりにイケメンのケントにはピシッと合っている。

が、季節はまだ肌寒い為彼はその上に青いコートを羽織って歩いていた。

そんな彼に、先日ひょんな事から出会い一体化したウルトラマンがこう言ってきた。

 

『ケント、大変な事が起こった。少し話を聞いてくれないか?』

 

『良いけど、いきなりどうしたの?』

 

『今フローラから「郡山市の南に邪悪な気配を感じ、それが少しずつ北上している」との情報が入ったんだ』

 

『ちょっ、マジなのそれ!?この前の再来じゃないか!』

 

『私も最初は軽く疑ったが、どうやら本当の事だそうだ。ついでに君の友人だというあの少年をすぐに探してみたところ、鉄道博物館なる場所に入ろうとしているのを見つけたらしい』

 

『ハヤトが…?とにかく一度僕達も行く!?』

 

『そうだな、ひとまず様子を見に行くだけでも構わないだろう』

 

ケントとウルトラマンはそう話をまとめると、一路鉄博へと足を向けることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャショットを送り届ける為鉄道博物館に入ろうとしていたハヤトだが、そんな時エマージェンシーコールが響いた。

 

「うわぁっ!何だ…!?」

 

『大変大変大変たぁーい変でございまーす!』

 

ハヤトのリュックに収まっていたシャショットがアラート画面になり、「大変」フレーズを連呼しながら飛び出して告げた。

 

『漆黒の新幹線が出現したでございまーす!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、地下の超進化研究所指令室では…。

 

「15時35分、漆黒の新幹線の目撃情報です!」

 

「巨大怪物体捕捉、コードネーム『マッドフェリス』!体長推定50m!」

 

フタバと本庄から聞いた出水は「ついに白昼に…!」と呟いた。

被害拡大を防ぐ為、ホクトは早急に指示を下す。

 

「捕縛フィールド展開っ!捕縛完了後、直ちに光学迷彩機能作動!」

 

「「はいっ!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は戻り、博物館の入口付近では…。

 

「動画でアップされてた新幹線…?」

 

『そうでございまーす!漆黒の新幹線が現れると、必ず巨大怪物体が出現するのでございまーす!』

 

シャショットによると、その漆黒の新幹線なる謎の車両が確認された時には、必ずと言っていいほど巨大怪物体というモンスターが出現するのがお決まりの事例らしい。

 

『今こそ、ハヤト君が必要な時でございまーす!』

 

その事を教えてシャショットはそう言うが、ハヤトは口を閉ざす。

その際も彼の頭の中ではどうしても『速杉指導長を苦しめるだけであると、ご認識いただきたい』という出水の言葉と、その際父が浮かべていた重苦しい表情が再生されてしまっていた。

だから余計に辛くなったハヤトは、

 

「出来ないよ…!」

 

その言葉ひとつでシャショットが伸ばしてきた手をはたいた。

 

『な、何故でございますかっ?』

 

「何故って…。言ったでしょ?俺小学生なんだし…。」

 

しかし、出水がそのような事を言っていた所を見ていない為に知らないシャショットは厳しい表情で詰め寄ってくる。

 

『そんな事関係無いのでありまーす!わたくしは、ハヤト君が本当にやりたい事を教えてほしいのでございまーす!』

 

食い下がるシャショットに耐えきれず、ハヤトは背を背けながら言い放つ。

 

「駄目なものは駄目なんだよ!」

 

突き放されたシャショットは悲痛な表情になり、必死に訴えた。

 

『わたくしが出撃できたのは、全てハヤト君のおかげ…。一人では任務を全うできないわたくしには、相棒が…ハヤト君が必要なのでございまーす!』

 

自分はハヤトを信じて一緒に戦いたい―――。そんなハヤトに対しての渾身の想いをぶつけるようなその発言に、振り返ったハヤトは「シャショット…。」と小さく呟いて相手を見た。

その小さなロボットの顔は、はっきりと引き締まっている。

すると、その会話を後ろで聞いていたフローラが気配を消して動いた。

 

『フローラ、何をする?』

 

ケントの中からウルトラマンが声をかけるもそれを気にとめず、フローラは数歩前でハヤトの背中に向けて手をかざす。

その手から白い光を放つと、フローラはそのまま横をすり抜けて鉄博の中に入っていき、ケントもその後についていく。

 

『人は何でも最初に動き出すところで悩めるもの。でも、あなただって小さな体だけど、風に乗って一歩を踏み出せば、必ず大切なものを守れるはず。だから・・・諦めないで』

 

一度立ち止まり、その言葉を残してちらっと振り返ったフローラの目には、ハヤトの体が緑色の光のオーラに包まれているのがはっきりと見えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、捕縛フィールドと呼ばれる空間の中では、既に戦闘が始まっていたが、一方的に追い詰められていた。

マッドフェリスと命名された怪物は観覧車に相当する所から放射状にビームを打ち、現状の戦力であるE6とE7が次々に命中するそれを必死に避けていた。

2体は何とか両足でブレーキをかけて踏みとどまるが、その直後にドームのような場所からさらなる巨大ビームが放たれる。

ステージに着弾すると、一気に紫色に光る爆発が2体を飲み込み、それを見たホクトは唖然としていた。

そして煙が晴れた先には、これまで全くの無傷なマッドフェリスと、膨大な光に巻き込まれた衝撃で膝をついているE6とE7の姿があった。

 

「E6、E7、共に適合率低下!」

 

「このままでは、シンカリオンの機動に支障が出ます。戦闘継続は不可能です!」

 

「これ以上は無理だ、機体と運転士の安全を優先させるしかないっ!」

 

本庄、フタバ、ホクトの順に告げられた最悪の現状に出水は舌打ちした。

しかもそうしている間に

 

「捕縛限界まで、残り50分を切りました!」

 

敵をフィールドの中に捕らえる事ができる時間がみるみる削られている事に、指令員達の空気が変わる。

ホクトの愛息子の声が聞こえてきたのはそんな時だった。

 

『お父さん…。』

 

「っ、ハヤト君!?」

 

「ハヤト!?」

 

「メインモニターに切り替えます!」

 

フタバのコンソール操作で画面が変わり、シャショットを抱えたハヤトが立っているのが見えた。

ホクトは咄嗟に耳の小型インカムに手を当てた。

 

「ハヤト、どうしてお前がそこにいるんだ…!」

 

すると画面いっぱいになるまでシャショットが飛び出す。

 

『は、速杉指導長〜!そもそもハヤト君から言い出したのではなく、わたくしが無理矢理連れてきたのでございま〜…「シャショット、黙っててくれ!」ドア〜、閉まりま〜す…。』

 

事情をバラすような説明をして黙れと命じられたシャショットは本物の車掌のような台詞を残して再びブラックアウトして下がった。

そしてハヤトは弱々しい声で想いを吐露した。

 

「お父さん、力になれるのは俺だけなんでしょ?」

 

「っ!」

 

「だから、その、俺…、この間は、お父さんの力になろうとしたけど…今度はシャショットの…E5の力に…!」

 

精一杯の勇気を振り絞った息子の言葉を聞いて一度顔を下に向けたホクト、そしてその第一声は…。

 

「…本庄、E6、E7、両機撤退だ!」

 

「えっ、あ、はい!」

 

急にそんな発言をしたホクトに対し出水が「速杉さん」と言うが、ホクトはそれを無視しつつハヤトに向かってこう言う。

 

「今回は二度目だ!要領は分かってるな!」

 

「っ!」

 

「敵は前回より進化している!」

 

「速杉指導長…。」

 

「だが、E5の性能とシャショット、そして!…俺達を信頼しろ!」

 

はっきり力強く言い切ったホクトを見て、本庄とフタバは表情を引き締めた。

そしてハヤトも笑顔に変わり、復活したシャショットも

 

「やったでございまーす!ハヤト君、行くであります!」

 

今度はハヤトもそれを拒絶せず、「うん!」と力強く頷き、シャショットの手を取った。

 

「本当に良いんですか…?」

 

そう言う出水の問いに対しホクトは言った。

 

「心配するな、出水。大人が子供を守るだけではなく、大人と子供が共に未来を守る時代になった、という事だ」

 

そう言いつつ、ホクトは()()()()()()()()()()()()()であるフタバを見やった。

それを受けたフタバも穏やかな表情を返す。

ハヤトとホクト―――速杉父子はこのやり取りで、厳しい戦いでも信頼できる者と一緒に飛び込んでいく事、そしてその場所に大切な我が子を信じて送り出す事を決意したのだ。

 

「なるほど、そういう事なら…。」

 

外で様子を見ていたジュエルペット、オパールは、瞬間移動のように速く飛んで、自分をここへ偵察に行かせた主人であり友人でもあるフローラの元へ帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして前回同様E5に乗り込んだハヤトは、シンカギアにShincaをタッチ。

 

『この車両は、仙台行きです』

 

「シンカリオンE5、出発進行!」

 

ハヤトがレバーを引くとE5はやぶさは鉄道博物館の車両ステーションから風のように飛び出していった。

新幹線を見渡す事が出来る屋上、パノラマデッキでそれを見送るケントとフローラは

 

「あの子、ついに覚悟を決めたようだね」

 

『フローラのかけた光の力とテレパシー、あれで少しでも布石を植え付けなければ成り立たなかった事だな』

 

「ええ、オパールの伝えてくれた通りです」

 

「でヘへ♪」

 

右肩に乗せたオパールの体を撫でながらフローラがそう言うとオパールは少し嬉しそうに笑いながら右足で耳を掻いた。

そしてケントも表情を引き締めこう言った。

 

「さあ、僕達も行こう、ウルトラマン、フローラさん!」

 

「そういえばあなたはあの子を助けていきたい一心でウルトラマンさんを受け入れたのよね。なら分かった、私も出来る限りの助力を果たすわ!」

 

『よし、その意気だケント!』

 

そうしてケントはブレザーの胸ポケットからベーターカプセルを出し、空に掲げると同時にボタンを押した。

100万ワットの光が溢れ出し、そして現れるウルトラマン。

白い光を身に纏ったウルトラマンと、服の後ろリボンに力を注いで翼の如く展開したフローラは、E5はやぶさの後を追うように凄まじい速さで飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シンカギア、装着っ!」

 

前回父に教わった通り、シンカギアを左腕にはめるハヤト。

 

「シンカギア、機動確認。シンカリオンE5、制限解除!」

 

「超進化速度、突入準備!」

 

ホクトがそう言うと、通常の新幹線の線路から、水色に光る光のレールが伸びて分岐し、フィールドに通じる道となった。

そこを通過する為、ハヤトは右手でレバーを握り、手前に倒した。

 

「超進化速度、突入!」

 

『超進化速度、加速します』

 

見事E5はやぶさは光の軌道に乗り、そして…。

 

「超進化速度、到達!」

 

「チェンジ!シンカリオン!」

 

ハヤトはShincaをセットすると『E5、シンカリオンに変形します』と鳴り、またもやマークが光るのを合図に、E5はやぶさはロボットの姿に変わっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてマッドフェリスの前に、シンカリオンE5はやぶさが華麗に降り立った。

 

『行くぞハヤト!』

 

「うん!」

 

ステージを蹴って駆け出すのを見たホクトが言った。

 

『奴のビームは強力だ、距離を詰めて戦え!』

 

「うんっ!」

 

飛び上がったE5はやぶさは機敏な動きで放射状に放たれたビームを全発躱し、観覧車部分の一番上に飛び乗るとそこからジェットコースターの部分に飛び移り、その上を滑っていくと

 

「だああああぁーーーーーっ!」

 

空中で回転しながら迫り、お城の屋根めがけてカイサツソードを一閃したが、ガキィン!と鈍い音が響いた。

この屋根はレイルローダーより数段固く、それでソードが弾かれたのだ。

片膝をつく体制で着地したE5の中で、ハヤトとシャショットは

 

「剣が、効かない…!」

 

『慌てるな、このまま私の動きをインターロックし続けろ』

 

「うん…!」

 

一筋縄で行かなくてもやるしかない…そんな時だ。

 

 

ビィー!ビィー!

 

 

突如としてフィールドが赤くなり、警報音が鳴り響いた。

 

「っ、何だ!」

 

「不味い!」

 

「捕縛限界まで、あと2分です、時間がありません!」

 

指令員達に焦燥感が走った。

このフィールドが消えてしまうまでに倒しきらなければ、敵を野放しにする事になってその攻撃でさらに被害が広がってしまう。

その時だ。

 

「ダメ元でやってやるわ!アクアスラッシュ!」

 

「「(ダイヤモンド!)(オパール!)ジュエルフラーッシュ!」」

 

どこからともなく円盤ノコギリのような光のカッターと激しいジェット水流、そして白と虹色が混ざった光が飛んできて、その光が渦を巻くように飛び交う中ジェットコースターのレールと城の屋根に命中した。

何だ!?と声を上げるホクト、フタバと本庄がそれぞれ出所を解析すると、両者共に右腕を前に突き出した赤と銀の巨人と、白い服をまとう金髪碧眼の美少女、そしてその両脇にくっつく黒猫と水色のユニコーンだった。

どうやってこの中に入ってきたのか、今の技は何なのかと言いたい事は山程あるが、これを見た2人は片方に見覚えがあった。

 

「「あれは、始まりの戦士・初代ウルトラマン(だ)(じゃないですか)!!・・・あ」」(フタバ・本庄)

 

「だが、どうしてここに…。」(出水)

 

「それにあの少女達も一体何者なんだ…?」(ホクト)

 

フタバと本庄は、ずっとテレビで見ていたヒーローが現実にいる事に驚愕して、時間が迫っているにも関わらず声が重なった。

そう、実を言うとこの二人は、周囲には隠しているが生粋のウルトラシリーズファンだった。

少し話が脱線するが、ウルトラマンとフローラは地上に被害が出ないスピードで飛び、授かっていたウルトラマンレジェンドの加護の力でE5はやぶさより少し早くフィールドに入り込み、ピンチになった事と時間が迫っている事でこの行動を取った。

ウルトラマンが放った技は「ウルトラスラッシュ」別名「八つ裂き光輪」、フローラは水魔法の一つ「アクアスラッシュ」、ダイアナとオパールもジュエルフラッシュを発動させ、マッドフェリスの体のうちジェットコースターのレールとお城の屋根にかすり傷をつけた。

 

その話はハヤトにも少し聞こえたが、ハヤトはそれを切り捨ててシャショットにこう訴えかけていた。

 

「シャショット、なんか凄い必殺技とか無いの!?」

 

『あるにはあるが、しかし、訓練も無しに最大出力など無茶だ!』

 

「無茶は最初から分かってるよ、やろう、シャショット!」

 

その時前方では、マッドフェリスが前に突き出している塔のような所にエネルギーを貯め、最強技の準備をしていた。

 

「シャショット!」

 

『分かった、ならば今の私の最大限のイメージ、インターロックできるか!』

 

それに対し迷う事なくハヤトは言い切った。

 

「できる!俺は『時間と言ったことは守る男』だからね!」

 

『よぉし、私はハヤトに賭けるぞ!』

 

そう言うとシャショットは指示を出した。

 

『シンカギアのレバーを一番上まで上げて、チャージしろ!』

 

「分かった!」

 

ハヤトはそれを受けて、素早く右手でレバーを掴み、一気に上まで上げると、E5はやぶさの胸部カバーが展開してエメラルドグリーンの光が収束し始めた。

その反動に耐えていくハヤト、そしてエネルギーが風のように溜まっていく。

それを見ていたフローラも両腕を広げた瞬間全身が白く光り始め、その周囲に赤、黄色、緑、青の光の玉が現れた。

そしてその時は来た。

チャージを終えたマッドフェリスが塔から紫色のビームを放ち、それを見たハヤトとシャショットがこう叫ぶ

 

「『グランクロス!!』」

 

ハヤトがレバーを下ろすと胸に溜まったエネルギーが緑色の光線に転化され、E5から放たれた。

同じタイミングで後押ししようと

 

「シュアッ!」

 

「逝きなさい!ジュエルフラッシュ・エレメンターッ!」

 

ウルトラマンが「スペシウム光線」、フローラが火、風、土、水の4つの魔法を合体させた「ジュエルフラッシュ・エレメンター」を放った。

そのまま4つの光線がぶつかり合うが

 

「んんんん…うああぁーーーーっ!」

 

ハヤトが少し気合を込めると、光線の出力が上がってマッドフェリスのビームを相殺し、一気にマッドフェリスに殺到すると…黒い光のオーラを飛ばして大爆発を起こした。

そして、その爆炎をバックに剣を振り上げ、膝をつくポーズを決めるE5はやぶさがそこにいた。

それを見守ったウルトラマンとフローラも互いに頷き合うと、ウルトラマンは体から光を出して消えていき、フローラは背後に魔法陣を出してダイアナとオパールを引き連れ同じように消えていった。

そして同じく彼の勇姿を見届けた指令員達も歓声を上げた。

特にホクトは二度に渡って愛する息子が良い戦績を上げた事からその場にいる誰よりも表情がほころんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…マッドフェリスの体になっていた遊園地のアトラクション達は無事に元の場所に戻り、纏わり付いていた黒いオーラも白い光になって浄化され天に昇っていった。

しかしその場所に、二人の謎の男が立っていた。

片やマントで全身を覆い隠し、片や人間のそれとは異なる巨大な体を持つ異形の者。

その巨人のような者が赤い瞳を光らせながら、

 

「進化のスピードが…上がっている…。」

 

そう呟いたのは、誰も知らない…。

 

 

 

 

 

♪エンディング主題歌:Go one step ahead

 

 

 

 

 

〈おまけ〉

パノラマデッキに戻ってきて変身を解除したケントと魔法陣で転移を終えたフローラが顔を見合わせて互いに微笑んでいた時、フローラの元にそれぞれ緑とピンクの光球が現れる。

それを手に取り、フローラはダイアナと一緒に呪文を口にすると、光の中から現れた二つの宝石が踊るような軌道を描いて回り始め、小さなパンダと茶トラ猫がフローラのもとに現れる。

それを見てケントが近づいて問いかけた。

 

「うちの妹がよく話してるんだけど、僕の見間違いじゃなかったらその子、エメラルドのジュエルペットの『ラルド』君と珊瑚のジュエルペット『サンゴ』ちゃんだよね?」

 

「ええ、合ってるけど何でここに…。」

 

『恐らくレジェンド様はあのロボットを乗りこなす者達のパートナーに我々だけでなくその子達もつけると取り決められたのだろう』

 

その2匹のジュエルペットが現れた理由をウルトラマンはそう解釈したが、フローラとケントは戸惑いの気持ちで空を見上げたのだった。




 以上で第2話の分は終わりになります。
最後の方がちょっとばかり不穏なラストシーンになってしまいましたが、充分楽しんでもらえたら高評価、感想、お気に入り登録よろしくお願いします。
次回のサイドストーリーはウルトラマンとケントの二人にスポットを当てたいと思いますが、YouTubeには第2話までしか無く、これ以降はDVDをちょっとずつ見返しながら書く事になるので更に待たせてしまうかもしれませんが、こちらの都合なのでご了承ください。
それではまた次回お会いしましょう。

最後に新キャラ解説。

・ラルド CV:土屋真由美
瞳に輝く宝石はエメラルド。
見た目はご存知の人ならお察しの通りパンダ。
頭にクリーム色のラインが入ったピンクの帽子をかぶり、ピンクのチョッキを着て雫型のチャームをつけている。
普段はポヤポヤしているが楽器の演奏が得意。
ジュエルパワーは「家族愛」。

・サンゴ CV:酒井玲
瞳に輝く宝石は珊瑚。
見た目は黄色の体に茶色の縞模様が入った茶トラ猫。
左耳に白い花がついた赤いリボン、首にイチゴのチャームをつけている。
スイーツが大好物な元気っ子で、語尾に「〜ニャ」をつけて話す。
ジュエルパワーは「不幸を跳ね返す」。


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SIDE STORY 2 嵐ケントのほのかな思い出

 皆様、新年あけましておめでとうございます!
そして今まで更新を大幅に遅らせてしまい大変申し訳ございません!!
予告しておりましたケント君のサイドストーリーがようやく下書きできたのでどうぞお詫びとしてお楽しみくださいませ!


 カーテンのかかる窓から優しい日差しが差し込み、同時に部屋の中にスマホのアラーム音が響き渡る。

眠っていたベッドから体を起こし、その少年―――嵐ケントはスマホの画面をスライドして音を止めた。

洗面所での洗顔を済ませ、寝癖ではねた髪をセットすると棚にある白い制服に袖を通す。

キッチンには母親の「嵐ナナミ」、ダイニングのテーブルには3歳下の妹「嵐フウカ」がいたのでケントは二人に声をかける。

 

「おはよう、お母さん、フウカ」

 

「おはようケント。ご飯できてるから食べなさい」

 

「あっ、お兄ちゃんおはよう!」

 

母のナナミはケントと同じ藍色のロングヘアで、一方のフウカは先端が緑がかった黒い髪をツインテールにまとめ、赤いスカーフが付いた白と青のセーラー服を着ている。

また、既に出勤した為にここにはいない、ナナミの夫でケントとフウカの父親「嵐セイジ」はフウカと同じ深緑の髪色だ。

 

そんな話はさておき、ケントはフウカの隣の椅子に座り、出されていたバタートーストに齧り付く。

フウカはソーセージを添えたオムレツの味に相好を崩しており、そんな彼女も可愛いなと思いつつポテトサラダをフォークで崩し口に運ぶケント。

食後にはりんごジュースで口内を潤し、フウカと共にご馳走さまをして互いに歯磨きを済ませると、それぞれコートを羽織りバッグを背負うと母に見送られ同時に家を出たのだった。

 

「「行ってきます」」

 

すると同じタイミングでハヤトとアズサが玄関から出てきたので二人は声をかけた。

 

「おはよう、ハヤト」

 

「アズサちゃん、おはようっ!」

 

「あ、ケント兄さん、おはよう」

 

「おはよ、フウカお姉ちゃん!」

 

途中でフウカと、それからハヤト、アズサと別れ、ケントはバスで自身の学校に向かった。

そして自分のクラスで学習に励み、その後は決まった部活には所属していないのでそのまま下校し、ダイニングルームの机には母ナナミがお使いを頼むメモとそれ相当のお金を残していた。

自室で私服に着替えて上着を羽織ったあと、ケントは財布にお金を移し、エコバッグを持ち再び家を出た。

ちなみにすぐ緊急事態に対応できるようベーターカプセルを懐に隠している。

 

近所のスーパーに向かうと、母に頼まれている牛乳、食パン、そして今夜のおかずに考えたというオリーブガーリックの味付きチキンを購入し、あまりのお金で一つおやつを買ってよしと書いてあった為にその通りにした。

可愛らしいペンダントがつくチョコ菓子を買い、ペンダントはフウカにプレゼントしようと考えたケントは、マンション近くの公園に移動し、子供達が遊び回る様子を見ながらチョコに舌鼓を打つ。

 

そんな時、ウルトラマンが問いかけてきた。

 

『ケント、少し時間をいいか?』

 

『何?』

 

『この世界に来てからずっと見ていたが、あのハヤトという少年に友好的でよく面倒を見ているな。あの子に感じる事があるのかもしれないと思ったのだが、どんないきさつでそうなったのか失礼でなければ教えてほしい』

 

その問いを聞いて、少し考えてケントは返事をした。

 

『いいよ、思い出せる範囲でまとめて教えるから』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈ケント視点の回想〉

 

初めてあの子と出会ったのは、僕がまだ5歳の頃の事だった。

当時まだ幼稚園の年長さんだった僕はその日、園バスを降りてきた時にお母さんからこう言われた。

 

「今日はお父さんも早く帰ってきてるし、今から病院行くからついてきなさい」

 

最初はびっくりしたけど、僕とまだ2歳だったフウカはお父さんとお母さんに連れられて、車の中でお父さんが説明した。

 

「実はな、今日お母さんの友達が男の子を産んだんだ。可愛い子かもしれないから、その人から連絡をもらって面会の時間を予約したんだよ。せっかくの機会にこっちも挨拶しておきたいし、その時には二人とも良い子にしてるんだよ」

 

それで病院に到着したあと、僕達は看護師さんの案内でそのお母さんの友達の人がいる病室に通された。

速杉家の人達と会ったのはそれが最初なんだ。

 

「ナナミ、来てくれたのね!」

 

「久しぶりね、サクラ。ホクトさんも」

 

少し話をしたあとに、お母さんは僕達を紹介した。

 

「サクラ、紹介するわ。ケントとフウカよ」

 

「あ、こっ、こんにちは!」

 

「う〜…。」

 

少し照れながら挨拶したら、おばさんには笑顔で褒められたのを覚えてる。フウカはまだ小さいから可愛い喃語だけだったけど。

 

「ふふっ、どちらも可愛らしい子ね」

 

「ありがとう、サクラ。それで、その子があなたとホクトさんの?」

 

「ええ、昨日授かったの。名前はハヤトに決めたわ」

 

「ほんと?素敵な名前ね」

 

お母さんとおばさんはそんな感じで楽しそうにお喋りしていたけど、その中で名前が出てきたその子に僕はいつの間にか見とれてしまった。

おじさんの腕の中で、タオルに包まれて抱っこされていたその時のハヤトは、愛くるしい顔で眠っていたっけ。

気がつけば、僕はおじさんのそばに歩いていってこんな事を口にしていた。

 

「あ、あの…。」

 

「ん、ケント君、だったか。どうしたんだ?」

 

「あ、あのね、おじさん……。僕、ちょっとその子に触ってみたいんだけど、良いかな?」

 

お父さんとお母さんは少し驚いてたけど、おばさんが「じゃあ、可愛い挨拶をしてくれたあなたに特別よ」って許可を出して、おじさんも笑って身をかがめた。

おじさんと同じ目線になったところで少し前に差し出されたハヤトに、僕は恐る恐る手を伸ばして頭を一撫でしたあとタオルからちょっとはみ出してる小さな手にちょんちょん触れてみたら、ハヤトがもぞもぞ指を動かして、手を触った僕の人差し指をきゅっと握り返した。

 

…その瞬間に、僕のまわりから音という音が消え去った。

 

このあと、僕はフウカが近寄ってきた事と、お話が終わったお母さんの声、そして看護師さんの「面会時間終了です」の声で我に返る時まで、その時が止まったような感覚の中にいた。

病室を出て、帰りの車の中でも僕の手にはその温もりが残っていたし、今になって思い出しても懐かしい…。

 

その後、僕は幼稚園を卒園し小学校に入学、逆にフウカが3歳になって幼稚園に入園した頃、おじさんの仕事の都合で速杉家の人達が同じマンションに引っ越してきた。

何でもおじさんは、元は新幹線の運転士として活躍していたけど、最近大宮に開館したばかりの「鉄道博物館」への辞令が出たらしい。

その後は上田さんちのアズサちゃんや、ハヤトの妹のハルカちゃんとも会ったけど…。

 

やっぱり速杉家の皆さんが引っ越しの挨拶に来た時、その事は覚えている。

1歳になったハヤトがおばさんの腕の中にいたのを見た時、病院で会った時の感覚が再び感じられた。

 

それからというもの、僕は学校から帰ってきたあと、たまにお母さんに頼んで速杉家の部屋に遊びに行くようになったんだ。

それが日課になってから、おじさんもおばさんも僕に優しく振る舞ってくれるようになり、時折話を聞いたのかお母さんから「欠かさずハヤト君の面倒見てくれるなんて偉いわね」なんて褒められる事もあった。

おじさんに誘われ、ハヤトと一緒に鉄道博物館に行った事もあるけど、施設内はとても広くて設備も充実、僕もそれなりに電車の魅力に取り憑かれていった。

もちろん歳を重ねるごとにハヤトは僕の事をお兄ちゃんのように慕ってくれるようになり、僕も遊びに誘うなど情を感じて可愛がるようになったっけ。

 

〈ケント視点の回想終わり〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…っていう感じで今に至るんだけど、どう思ったかな?」

 

ケントから語られた一連の思い出話を聞き、少し考えてウルトラマンは答えを出した。

 

『聞いていて感心したぞ。そのような昔からあの子に想いを寄せられるとはな。君自身もあの子を気に掛けるきっかけが分かったし、きっとフローラもこれを聞いたら同じ感想を漏らすだろう』

 

『初めて会った時の感覚もこれで思い出せたしね。この気持ちの答えをいつか見つけたいとも思うけど…。これは今改めて言える』

 

そして彼の口から出たその言葉は

 

「ハヤト、君は僕の元に吹き込んできた穏やかな風だ。改めて君に会えて良かったよ」

 

夕方の空にそう呟くと、ケントは自分の部屋に舞い戻る。

母に頼まれた食品を、フウカにペンダントを渡してありがとうの言葉を聞いてから、夜空を見渡し決意を新たにした。

 

(ハヤト、君が僕の助けを必要としなくなるその時まで、ずっと君のそばにいる。今その事をここに誓うよ)




だいぶ更新を遅らせてしまい申し訳ございません。
次回の第3話からはDVDを見返す事になるので感想をバンバンお送りしてお待ちくださいませ。
あ、あと最後に次回予告

ハヤトが正式にシンカリオンE5の運転士に起用され、新たに全国各地から運転士候補の少年少女を探し出すプロジェクトが始動した。
一人目の候補が見つかったのは極寒の北の地、秋田県。
無名のその少年に会いたいと思いシャショットと共に秋田県の県庁所在地、秋田市に向かうハヤトだが、慣れない降雪で道に迷ってしまう。
更に路面に足を滑らせ転びかけたが、それを助けたのは一流スナイパーの少年とそれを見守る少年だった。
次回「新たな挑戦」お楽しみに!


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第5話 新たな挑戦

皆様、大っっっ変申し訳ございません!!!(土下座)
ここ最近DVDレンタルショップ関係の都合でゴタゴタしてたり、スマホの他のゲームで遊び放題してたりでこちらの事を忘れておりました!!
そうしてる間にもシンカリオンZが終わっちゃったり、投稿主は高校卒業して社会福祉法人入所したりしております!
最近スマホを自分でイカれさせて新しくなったので数字の書体が少し異なっているかもしれませんがご了承ください!
とりまこれでDVDの方も一件落着となったので不定期投稿を再開します!


 とある金曜日の大宮小学校。

一週間の学習を全て終え、ハヤトは大きく伸びをした。

 

「終わった終わったーっ!土日は何しよっかな~♪」

 

「何しよっかなって、どうせ新幹線三昧でしょ?」

 

「どうせって何だよ、そっちはどうせ動画の撮影だろ?」

 

「ふふーん、当然でしょ?人気YouTuberは、視聴者の期待に応えないとね~♪」

 

隣の席に座るアズサが首を突っ込んできたのに軽く反論し、舞い上がっている様子を呆れて見ていると、ハヤトのスマホが着信を知らせる。

父・ホクトからの新着メールだった。

 

『学校が終わったら超進化研究所に行きなさい。Shincaは持ってるだろ? P.S.ちなみにお父さんはお母さんと大事な話があるから行けないケド・・・・・・。』

 

「大事な話?何だろう・・・。」

 

「誰からのメール?」

 

「うわぁっ!いや、その・・・。」

 

「怪しいわね、何そんなに慌てて隠してるのよ?」

 

「隠してない隠してない、本当に何でもないから・・・。それじゃ、また来週!」

 

何とかそう誤魔化すと、帰り支度を済ませたハヤトは自分の教室を出たものの、残されたアズサは憮然とした表情で「っ、な~んか怪しい・・・。」と呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

超進化研究所では、待機室でシャショットに見られながらフタバがあのシミュレーターにチャレンジしていたが

 

「あぁ~、またダメだぁ~・・・。」

 

既に何回も失敗しているらしく、今回もクリアならずで彼女はすっかり意気消沈の様子。

「こんにちはー」とハヤトが入ってきた時には、シャショットとこんな軽い口論になっていた。

 

『何度やっても同じでございま~す。お気の毒ですが、フタバさんは適合者ではございません』

 

「分かってる事あえて言わないで良いでしょ!?」

 

「何やってるの?」

 

「あぁ、ハヤト君。これこれ」

 

ハヤトに声をかけられて気がついたフタバはすぐにタブレットを見せた。

 

「それって、前俺がやったシミュレーター?」

 

『をアップグレードしたものでございま~す。今回のものは、スコアに適合率の高さを反映するように作られているのでございま~す♪』

 

画面を見たハヤトにシャショットがそう言うと、フタバが次のように説明を引き継いだ。

 

「それに全国の人達が、自由に端末アプリやアーケードゲームで参加できて、そのデータが全てここへ集まるの。・・・もちろん秘密だけど。()()()()()()()()()()()()を、全国から、探し出す為にね」

 

「新たなシンカリオン適合者・・・!」

 

 

 

 

 

♪オープニング主題歌:進化理論

 

 

 

 

 

正式なE5運転士に認定したハヤトを指令長室に呼び、対面した出水はこう切り出した。

 

「ハヤト君のおかげで、シンカリオンの新しいデータが増えている。どうやら、大人よりも子供の方が高い適合率を持っている傾向にあるようだ」

 

「何でですか?」

 

「残念だけど、そこまでまだ分かってないんだ。それでも、その解明が進めば、大人が運転士として対応できる方法も見出せるはずだ」

 

「え?」

 

「君達を危険な目に遭わせるのは、私達も本意ではないが、まずはハヤト君のような子供を全国から見つけ出す」

 

「っ、俺みたいな子供・・・!?」

 

「そうだ、新たなシンカリオンの運転士を探すんだ。それが私達の当面の目標だ。分かるね」

 

「はい!」

 

出水の言った内容に対し、迷わず返事をする事で協力の意を示すハヤトだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続いてやってきたシミュレーションルームで、フタバがハヤトにこう言う。

 

「じゃあ、このシミュレーターを沢山やってくれるかな?適合者であるハヤト君のデータが必要なの」

 

「沢山って、どれくらいやれば良いですか?」

 

ハヤトの問いに対して出水は

 

「・・・100万回」

 

「100万回!?」

 

「と、言いたいところだけど、倒れられても困るからね。最初は100回を目標に行こうか」

 

「いや、100万回と言わず、1000万回を目指して頑張ります!」

 

いきなり無茶ぶりかと思えば、ちゃんと範囲内に修正した出水の予想に対し、むしろそれを追い越す気充分なハヤト。二人が笑みを浮かべた時、シャショットが疑問を投げかけた。

 

『ところで速杉指導長は今日はご不在、でございますか?』

 

「なんか、お母さんと大事な話があるみたい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハヤトの家のリビングで、椅子に座って向かい合っているホクトとサクラ。

 

「分かって、くれた?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・心配をかけたくなかったんだ。俺が鉄道博物館の仕事じゃなく、シンカリオンという特別な任務を持ったロボットを開発していた事を秘密にしてたのはさ・・・。」

 

「・・・そんな大変な事を任されてたなんて、全然知らなかった」

 

「ごめんなさいっ!」

 

「ハァ・・・で、そのあなたの仕事ってのに、ハヤトが必要な訳ね」

 

「・・・はい・・・!」

 

 

〈ホクトのイメージ〉

 

『そんなの許す訳無いでしょうがぁっ!このダメ亭主がぁっ!』

 

『ごめんなさぁいっ!!』

 

 

激怒した妻に踏まれるイメージをしてしまい、震えながら返事を待つホクト。

予想に反して返ってきたのは柔らかい声だった。

 

「・・・分かったわ」

 

「え?」

 

「危険を承知であなたが決めた事なんだろうし、あの子とあなたの覚悟があっての事なんでしょ?私がとやかく言うつもりはありません」

 

「サクラちゃん?」

 

席を立ったサクラはホクトの前まで来るとこう言う。

 

「その代わり、私は一切知らない事にします」

 

「えっ?」

 

「私はハヤトに普通に接してたいの。普通の小学生の息子と、普通の母親として」

 

「サクラちゃん・・・ありがとう」

 

こうして、夫婦間の秘密の会話は、何だかんだありながらホクトにハヤトを寄り添わせるという形でまとまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、シミュレーションルームでは

 

「終わりました!次、171回目行きます!」

 

「・・・ハヤト君、今日はこの辺で止めとこうか」

 

「え、俺まだ出来るよ?」

 

「続けてやるにはそれなりの体力も必要だし、スコアもちょっと落ちてきたから・・・」

 

『非番も運転士の仕事のうちでございま~す♪』

 

「分かったよ、シャショット」

 

フタバとシャショットに促されて、ハヤトはシミュレーションを切り上げると家路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ~、良かった・・・。」

 

入浴しながら妻にハヤトの手を借りる事を許可された事にホクトが安心していると、「ただいまー」と帰宅したハヤトの声が。

 

「遅い!」

 

「ごめんなさい・・・。」

 

「どうせお兄はまた大宮駅近くで新幹線を見てたと思われ」

 

テレビを見ながら煎餅を食べているハルカが言う。

 

「そ、そう!新幹線見てたんだ!」

 

「ふう、新幹線も良いけど、ちゃんと勉強しなさいよね。それと、遅くなる時は事前に電話する事。心配かけない!」

 

「うん、分かった」

 

「さ、ご飯にするよ」

 

「「はーい」」

 

サクラがキッチンに入ったところで、入浴を終えパジャマに着替えたホクトが入ってきて、無言のままハヤトと笑顔を交わしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁー、食べたーっ」

 

家族の団らんの時間である夕食が終わり、ハヤトは自分の部屋でベッドに身を投げ出すとスマホに新しい通知が来る。

なんとそこに表示されていたのは、名前は明かされていないものの物凄いポイントを叩き出し、数値も高めの人物だった。

 

「この人、俺と同じくらい高得点だ・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、指令室にいた出水と本庄も

 

「出て来たな・・・。人物の特定はできるか?」

 

「いえ、残念ながらスコアは端末ではなく、アーケードゲームなので、具体的な人物は分かりません。所在地は・・・。」

 

「秋田か・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「秋田に、俺みたいな人がいるかもしれない・・・。」

 

そんな事を考えた後、ハヤトはベッドから体を起こし

 

「会ってみたい!・・・よしっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、二部屋隣の友人ケント(と一体となっているウルトラマン)はベランダに立って、翼リボンで浮遊しているフローラとジュエルペット達から報告を聞いていた。

 

「ーーー以上が、今日ダイアナ達に調べさせて得た情報よ」

 

「ありがと」

 

『すまないな』

 

そう、彼女はこの世界に辿り着いたばかりでしばらくスタッフ達の前には顔向けできないので、ダイアナ、オパール、ラルド、サンゴの四匹を送り出して研究所とハヤトの元を隠密偵察させ、新しい運転士を探している事、明日ハヤトが秋田に向かおうとしている事、ほとんどの情報を掴んでいたのだ。

 

「どうする?」

 

「当然こっそり後を追うしか無いでしょ」

 

「せっかくの機会だし、私も人間界で行動する事もある身だから、その秋田行きの電車っていうものを知りたいわ。百聞は一見にしかずってやつよ」

 

「あ、あと秋田県って東北地方にあるから物凄く寒くて雪も積もるイメージなんだ。向かう時は防寒対策も万全にね」

 

「ええ、分かったわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曇天の朝を迎えた次の日

 

「ふぅー、今日は冷えるなぁ・・・。秋田の件はどうだ、見つかったか?」

 

「スタッフを派遣していますが、まだ情報は得られていませんね」

 

指令室に入ってきたホクトに答える出水。そんな時だ。

 

ピピッ!

 

「?」

 

『フタバさん!』

 

「っ、ぅえっ、ハヤト君!?」

 

『シンカリオンE5、出発進行お願いします!』

 

そう、何かと思えば、なんとまだ緊急事態で無いにも関わらずパイロットスーツ姿のハヤトがいたのだ。

 

「ちょっと、何やってるの!?そんな勝手に・・・!」

 

「どうした三原君?」

 

「え、いや、その・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何の説明もせず初っ端からシンカリオンを発進させようとしていたのは自分自身も自覚していたようで申し訳無さそうな表情のハヤトと、状況から理由を聞き出そうとするフタバ。

 

「どうしたのハヤト君、勝手にシンカリオンを動かそうとして」

 

「どこに行こうとしてたんだ?」

 

ホクトもそう問いかければ

 

「・・・秋田」

 

「もしかして、シミュレーターのハイスコアラーが出たから・・・!」

 

「うん、俺と同じシンカリオンの適合者かもだし、会ってみたくなったんだ!」

 

これを聞いて出水は少し考え始める。

その間にもハヤトは続けて理由を言った。

 

「それに、秋田にも行ってみたかったしね」

 

『わたくしも行きたいでございま~す♪』

 

「何にしても、いきなりシンカリオンで秋田に行くなんて無理に決まってるでしょ?」

 

「ごめんなさい・・・。盛岡~秋田間は、在来線の車体幅に合わせて作られているから、E5系で走るのは無理だもんね・・・。」

 

「そういう事じゃなくてっ!シンカリオンは適正出動時以外は走らせられないの!」

 

が、ハヤトとフタバの話に水を差すかの如く出水はこう言い出す。

 

「・・・いや、有りじゃないかな」

 

「出水指令長!?」

 

吹雪の中で秋田駅前に立つ少年のシルエットを浮かべながら出水は続ける。

 

「私の推測では、ハイスコアラーの人物は子供だ。私達大人が探すより、ハヤト君の方が良いかもしれない。『類は友を呼ぶ』と言うしね」

 

「そんな理由で一人秋田に行かせるなんて、無茶です・・・!」

 

「勿論保護者の同意は必要ですが」

 

出水はフタバにそう言うと、最後にホクトが最終確認の為言った。

 

「・・・行きたいのか?」

 

「・・・うん!」

 

一切の迷いもなく行きたいという意志を示したハヤトに、柔和な笑みを浮かべるホクトだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして次のような手段でハヤトは送り出される事になった。

 

「ハヤト君、聞こえる?」

 

「はいっ!」

 

「まずは、今乗ってるE5で仙台まで行って一旦停車します。E5は、新幹線車両基地に待機させておくから、ハヤト君は秋田新幹線に乗り換えて、秋田まで行ってね。分かった?」

 

「うおぉーっ、E6系こまちデビューだっ!めちゃくちゃアツいよ!シンカリオンE5、出発進行!」

 

フタバからの説明を聞いて、初めて乗るであろう秋田県へと誘う秋田新幹線のスター、こまち号に期待を弾ませ、ハヤトは快活な調子でE5を発車させた。

この少し後、姿が見えていても気配が目立たない認識阻害の魔法を自分にかけて様子を見ていたフローラも大宮駅でケンゴと合流し、二人揃ってこまち号で向かったのだが・・・あの福島の廃遊園地にいた謎の二人組には双方とも気がつかなかった。

その二人のうち巨体の男は少し顔を上げ、広げた手に乗った雪の粒を見据える・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

12時過ぎに秋田駅に到着したハヤトとシャショット。

 

「来たぞ初秋田ーっ!うわぁ、雪が積もってる!じゃ、まずはお昼ご飯お昼ご飯♪」

 

『秋田というときりたんぽ鍋に、稲庭うどんが名物でございま~す♪』

 

「いやいや、秋田といえば、名物鶏めし弁当でしょ!」

 

が、一人そんな話題を出しているのを周囲に見られているのに気がつくと

 

「あっ!まずは、ハイスコアラー探しを始めないとね・・・」

 

結局路線変更し、適合者ハントをする事にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・が、アーケードの中でスマホを操作している子供を見たり、ゲームセンター「GAMEジャンボ秋田」の中を覗いてみても、高スコアの人物など早々いるはずもない。

密かについてきていたケントも位置情報を合わせた地図アプリを使いながら、水色と星柄を基調としたもこもこケープマントが特徴の寒冷地用ドレスに身なりを変えたフローラも空から気配を探るも目立った収穫は無し。

結局GAMEジャンボ秋田を出たハヤトはこう呟く。

 

「はぁ・・・。やっぱり闇雲に探しても見つかる訳無いよなぁ・・・あ、降ってきた・・・!シャショット、一旦駅に戻ろう」

 

ここで曇った空からちらちらと雪が舞うように落ちてきたので、ハヤトはリュックの中に収まっているシャショットに声をかけるが

 

『それはそうとここは何処でございま~す?』

 

「え、ちょっと待ってよ、シャショットがあっち行こうって言ったから来たのに!」

 

『わたくしにナビ機能は搭載されておりません、土地勘は0なのでございま~す♪』

 

「えぇっ!?じゃあ迷子になっちゃったの!?」

 

爆弾発言をするシャショットに驚く暇もなく、ハヤトは雪で湿りかけた路面で足を滑らせ、素っ頓狂な声を上げる羽目になるが、そのまま転んで体を強く打つ事は無かった。

バランスを崩したハヤトの右腕を掴む誰かがいたから。

顔を上げた先には、長いバッグを背負っている少年が、そしてその隣にリュックを背負った少年もいた。

黒い上着を着たその少年は尖ったヘアスタイルに白い肌をしていてどこかクールな雰囲気を放っているし、隣の少年も黒い髪に青い目、これまた白い素肌が目を引く。

しかも身長が少し高い事から恐らく自分の友人の一人、ケントとほぼ同い年だろう。

 

「あ、ありがと・・・。」

 

「お前、こっちの人間じゃないな。雪をなめるな」

 

そう言いながら引っ張り上げると、隣の少年も言う。

 

「こんな道で頭を打たれても困るからね。なるべくゆっくり歩くように気をつけたらまだマシだから」

 

「あの、秋田駅はどっちですか?」

 

そう聞くと、こっちだと言うように指で示したので、「ありがと!」と礼を言いながらハヤトはその場を去る。

そしてその方向を見つめる少年、そこから少し離れたところにいるフローラはその彼に手をかざし「見つけた・・・。」と呟いたのだった。




誠に申し訳ございませんでした!
という訳でハヤト君とアキタ君のファーストコンタクト回、どうぞお詫びとしてお楽しみくださいませ!


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第6話 吹雪のフィールドで秘密がバレる!?

 ようやく第3話のバトルシーンです。どうぞ。


 降雪でぬかるんだ道で転びそうになったところを助けた二人の少年に教えられた方向をゆっくり進み、ハヤトとシャショットはようやく秋田駅に引き返す事ができた。

 

「良かった・・・。雪も止まなそうだし、お土産買って今日はもう帰ろう・・・。」

 

『残念でございま~す・・・。』

 

運悪くこの悪天候にぶつかってしまった為、二人は大宮に帰ってそれらしき人物は自分でも見つからなかったとホクトや出水達に伝える事にし、駅の中に入っていく。

そしてケントとフローラの二人も小声でこんな話をしながらその後を付けていくのだった。

 

「え、ハヤトを助けた子がそうかもしれないって?」

 

「恐らくは、ね。この後どうなるかは予想できないけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホームに停車している赤と白のコントラストが極めて目立つ新幹線、こまち号。

その乗車口に立ち、秋田から東京行きの乗車券を見ているのは、あのハヤトを助けた少年だった。

しばしそれを見つめると、同じ物を持っている同行者の少年が目線で促してきたので、その後に続いてついにその車内へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと、俺の席は・・・。ここだな」

 

売店でお土産の購入を済ませ、切符に書いてある番号の座席に腰を下ろすハヤト。

そこは通路側なので、隣の窓側の方を見ると、そこには先程の少年が座っていて、イヤホンを耳に差して音楽を聴いているところだった。

 

「あっ」

 

「?」

 

ハヤトが笑顔で「さっきはありがとう」と言えば「・・・さっきの迷子か」と返す少年。

 

「あの!」

 

「集中したいんだ。話しかけないでくれ」

 

「あ、ごめん」

 

ちなみに、同行者の少年が通路を挟んだ隣の席の窓側に、そして二人の後ろの席にフローラとケントがそれぞれ座っていた。

そしてある程度客が乗り込んでいき、いよいよ東京行きのこまち号が秋田駅を発車し、雪の中を切り裂くように走っていくと、やはりハヤトの乗り鉄が炸裂。

 

「いやぁ~、やっぱ大曲のスイッチバックといい、単線の景観といい、秋田~盛岡間は全てがクライマックスですなぁ~!」

 

「・・・っ、窓の外が見たいなら、代わるか」

 

「え、良いの!?」

 

「ずっとこのままじゃかなわん」

 

「じゃあ遠慮なく♪・・・よいしょ」

 

少しムッとした調子で少年がそう言ってきたので、ハヤトは素直に座る場所を交代した。

ちなみに後ろの窓側にいるフローラが「確かに絶景だけどいくら何でも愛が爆発しすぎじゃ・・・。」と心の中で苦笑したのはご愛敬。

ハヤトを少し呆れて見た少年はスマホを出して画面をタッチする。

シャショットがこっそり見ると、なんと彼のスマホのホーム画面に見覚えのあるアイコンが入っていた。

 

『ハヤト君』

 

「前ごめん」

 

「・・・何だ・・・!」

 

小声でシャショットが話しかけてきたので、ハヤトはリュックを抱えて乗車口の方へ行ってしまうが、少年はそれを怪訝そうに見送っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

乗車口に避難すると、ハヤトはリュックに入っているシャショットに注意するが

 

「駄目だよシャショット、声出したら気付かれるって・・・!」

 

『そうではありません、隣の少年が、シミュレーターをやっていたのでございま~す』

 

「っ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やがてこまち号は秋田を出て東北新幹線エリアに入り、トンネルに突入する。

どうにか席に戻ったハヤトはシャショットに言われた通り少年の様子を横目で見守っていたが、やっていた少年が声をかけてくる。

 

「・・・何だ?」

 

「あ、そのシミュレーター、君もやってるんだね・・・。」

 

「シミュレーター?あぁ、この新しいアプリの事か。少しやってみたが、それが何だ?」

 

「いや、スコアを知りたいな、って・・・。」

 

「見て良いから寝かせてくれ」

 

「ありがとう・・・。」

 

適当に理由を言うと、少年が自分のスマホを差し出してきたので、すぐにランキング画面を見ようとするが、そのタイミングで自分のズボンのポケットに入れているスマホから駅の発車メロディーに似た通知音が響く。

以前ホクトも聞いた研究所からのものだ。

 

「うわっ!」

 

「?」

 

「ご、ごめんっ!」

 

シャショットの入ったリュックを席に置いてハヤトはまたも乗車口に向かったが、二回目ともあって少年は苛立ち、歯をギリリと噛みしめていたのだった。

後ろに座っていたフローラとケントも音から何かを察したのか互いを見て頷くと、すぐに席を立ちハヤトが向かったのとは別の乗車口に急ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハヤト!宮城県名取市のトンネル付近に、巨大怪物体が現れた!コードネームは『フロストツリー』!ハヤトは今どこだ?」

 

「もうすぐ仙台駅」

 

『仙台駅に到着次第、E5に乗り換えて、シンカリオン出動だ!』

 

「分かった!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『仙台~』

 

仙台駅に停車すると、ホクトとの電話を終えたハヤトはリュックを取って降車した。

 

「俺、降りるから!じゃあね!」

 

「何だったんだ、全く ・・・。」

 

ハヤトが走り去っていくと少年はそう呟いて再び寝込もうとしたがそこで違和感に気がついた。

 

「俺のスマホ!」

 

そう言って少年も自分の荷物を取って急いでハヤトの後を追う為降りたが、隣の窓側に座っていた少年は追いかけるか迷ったものの、どこか嫌な予感を感じてそのまま残ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

E5は「回送」表示になって停車しており、ハヤトはさっと左右を確認してから乗り込んだが、

 

「・・・いた・・・!」

 

追いかけてきた少年がそう呟いた時に発車ベルが鳴りだし、仕方なしに少年は一番近くの乗車口をくぐって乗り込むが、そのドアが閉まって中を見ると

 

「何だ・・・?この新幹線・・・!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、先行して捕縛フィールドを探り当ててきたフローラはホームで待っているケントのもとに戻りこんな事を告げた。

 

「ケント君、不味い事になってるわ。気配の流れを探ってみたけど、今回の敵は吹雪を自由自在に操るモンスターみたい。ウルトラマンさんは寒さに弱いからそのままだと相性最悪だわ」

 

「じゃあ、そんなのどうやって・・・!」

 

「ウルトラマンさん、『フレイムシールド』を使って戦う事になるけど良いですか?」

 

『そうしてくれ』

 

「だそうよ、準備良い?」

 

「うん、分かった」

 

取り出していたベーターカプセルを構えてケントはフローラの出した案に乗る。

ちなみにフレイムシールドとは寒い場所で戦う事を想定してフローラが編み出した火炎魔法の一種だ。

さすがに氷点下の気温になると弱まってしまうという弱点があるものの彼女自身やジュエルペット達、そしてウルトラマン達もそれを使いさえすれば特殊な環境下でも本来の力を出せる代物だ。

というわけでフローラはウルトラマンと自分、そしてダイアナ達の全身にこれを纏わせてフィールドへと飛んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、少年が乗ってしまった事に気がつかないまま出撃準備を整えたハヤトにホクトが声をかける。

 

「行けるか、ハヤト?」

 

「うん!」

 

ホクトにいつでも大丈夫だと意思を伝えると、ハヤトはシンカギアにShincaをタッチする。

 

『この車両は、名取方面行きです』

 

「シンカリオンE5、出発進行!」

 

「っ、動き出した・・・!?」

 

ホームから飛び出した感覚を中にいる少年も感じ取ったが、その間もE5は雪の中をまっすぐに進み、ハヤトはシンカギアを装着する。

 

「シンカギア、起動確認!シンカリオンE5、制限解除!」

 

「超進化速度、突入準備!」

 

そしてフィールドに向かって光のレールが分岐していく。

 

「超進化速度、突入!」

 

『超進化速度、加速します』

 

「っ、何だこのスピードは・・・!」

 

いきなり味わった事が無いスピードになり、中の少年は少しイラつき気味に驚いていたがその間にも

 

「超進化速度、到達!」

 

「チェンジ!シンカリオン!」

 

『E5、シンカリオンに変形します』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンカリオンに変形し、フィールド内に降り立ったハヤトだが

 

「っ、雪・・・!?」

 

そう、フィールド内には吹雪が吹き荒れ、至る所に樹氷もそびえ立っている。

しかも目の前にいる「フロストツリー」の名を持つモンスターも突然雪に身を隠した。

 

「あっ、雪の中に隠れちゃった!慎重に行くよ、シャショット!」

 

『待てハヤト、後ろを見ろ』

 

何かの違和感を感じたのか、シャショットがハヤトに後方を見てみるように促した。

言われた通りそっと振り返ると、そこにはいつの間に乗っていたのかあの少年が立っていたのだ。

 

「うわぁっ、さっきの!?こんなとこで何してるのさ!?」

 

「お前が俺の携帯を・・・!それより、これは一体何なんだ?」

 

「えっ、あ、いや、それは・・・。」

 

『どうするハヤト?』

 

「・・・・・・・・・」

 

まさかこの形で出会ったばかりの少年に秘密がバレるとは思わず、その場で固まるハヤト。

それはフローラも研究所の面々も察知した。

 

「おかしいわ、さっき敵が消えたかと思えばあの子も動かないなんて・・・」(フローラ)

 

「?」(フタバ)

 

「様子がおかしいですね・・・。」(出水)

 

確認する為本庄がコンソール画面に目を向けて言った。

 

「ん?どうやらコクピットに、民間人が入ってしまった模様です」

 

「何だと?ハヤト、そこに誰かいるのか?」

 

「うん・・・。」

 

「先ずは民間人の安全が先だ、一度捕縛フィールドから出て、仙台駅へ向かえ!」

 

ホクトはそう言うものの、出水は確認の為フタバにこう言った。

 

「捕縛限界まであとどれくらいだ?」

 

「残り、10分を切っています!」

 

「一度戻るのは危険です!」

 

「しかし民間人を乗せての戦闘など、以ての外だ・・・!」

 

「民間人民間人うるさいな」

 

「っ!」

 

フタバと本庄の進言が入るものの判断に詰まるホクト。

そこに少年が冷たい台詞を投下してきて一同は押し黙った。

 

「よく分からんが、自分の身くらい自分で守る。お前はやるべき事をやれ」

 

「え?」

 

「いつまでも迷っていたら、また迷子になるぞ!」

 

「分かった!行こう、シャショット!」

 

『ああ!』

 

少年の一言で、ハヤトは目の前の敵に向き直る。

その時にようやくフロストツリーも雪の中から姿を現し、低い声で吠えながらE5はやぶさをめがけて拳を振り下ろした為、急いで飛び退いたのを見てフローラは咄嗟に火炎魔法「ファイアバレット」を、ウルトラマンは「スラッシュ光線」を同時に連射する。

僅かに怯んだもののフロストツリーはフローラには目もくれず左手を向けて爪を3発飛ばし、E5もそれを次々にかわして、時にその一つをカイサツソードで切り飛ばすと一気に接近し真っ二つにしようとしたが・・・

 

「うおおおおおっ!・・・ふっ!」

 

直前にまた吹雪に消え、樹氷を一つ切り倒しただけだった。

 

「あれっ!?」

 

が、見回している間にもフロストツリーが迫っていて

 

『ハヤト後ろだ!』

 

「はっ!うあっ、ああぁぁっ!」

 

気がついた時にはもう遅く、殴り飛ばされたショックでE5は樹氷に激突しダメージを追ってしまう。

 

「うぅ・・・!」

 

『大丈夫か、ハヤト!』

 

「うん・・・!」

 

そしてE5に迫るフロストツリーを見て、フローラとウルトラマンの中にいるケントは

 

「あの吹雪とか樹氷に隠れる能力が厄介だわ、これじゃ私の魔法もウルトラマンさんの光線も照準が定まらない・・・!」

 

『しかも今は中にいるらしい子を守りながらっていう最悪の状況じゃないか、どうする僕・・・!』

 

 

 

「ハヤト!」

 

「指導長!サーモグラフィーで、フロストツリーの内部に温度の違う部分を検出しました!」

 

本庄が見たサーモグラフィーのデータでは、確かにフロストツリーの胸のあたりが一番温度が高い事を示すピンク色になっているのが分かる。

それを見た出水とホクトは

 

「胸の中心が動力源なのか、どんなシステムで動いてるんだ・・・!」

 

「試してみるか・・・!ハヤト、奴の胸の真ん中が動力システムの可能性がある、そこを狙え!」

 

「うん!・・・やああああっ!」

 

なんとか立ち上がったハヤトは駆け出すと、ホクトに言われた通りフロストツリーの胸にカイサツソードを突き刺そうとジャンプしたものの、またしても吹雪になって逃げられてしまう。

 

「どこだ!?全然見えなくなった・・・!」

 

周りを見回し警戒するハヤト、するとそれまで後ろで黙って見ていた少年が口を開く。

 

「・・・見ていられんな。この程度の雪で狼狽えるとは、都会人はひ弱すぎる」

 

「この程度の雪って・・・」

 

「爺さんと入った雪山に比べれば、可愛いものだ」

 

そう言うと少年は続けてこんな事を切り出す。

 

「銃のような物はないのか?」

 

「銃?」

 

『ハヤト、銃は無いが、グランクロスがある!』

 

「よし、話は読めた!」

 

シャショットの一言に何かを感じ取ったのか少年はハヤトの隣に立ち、次のように言った。

 

「あの雪の化け物がもう一度襲ってきた瞬間を狙う。お前は真正面に撃つだけで良い。タイミングは俺が指示する」

 

「でも・・・!」

 

「心配するな、俺の専門はビームライフル競技だ。お前より命中率は遙かに高い」

 

「・・・分かった・・・!」

 

背負っているバッグを下ろしてそう言う少年に頷くと、ハヤトはシンカギアのレバーを上げてパワーチャージを始める。

隣に立った少年も、研究所のメンバーも、そして雪と来るならこいつだと最大レベルの火炎魔法の準備をしながらフローラもその時を待った。そして・・・

 

「今だ!」

 

気配を読んだ少年が叫ぶと、ハヤトは思いっきりレバーを倒した。

 

「『グランクロス!』」

 

「ファイヤースフィア!」

 

「シュアッ!」

 

グランクロス、スペシウム光線、ファイヤースフィアに飲み込まれ、フロストツリーは獣のようにうなり声を残して爆発の中に消え、E5はやぶさはその炎をバックに降り立ち、ウルトラマンとフローラはすぐにその場から消えた。

 

「目標撃退!」

 

「よくやった、ハヤト!」

 

そして少しのアシストをしてくれた少年も、もちろんハヤトも笑みをこぼした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

研究所のホームに戻ると、ハヤトは気になった事を少年に問いかけた。

 

「ねえ、昨日アーケードでシミュレーターのハイスコアを出したのって・・・」

 

「俺だが?」

 

「やっぱり!」

 

『手をお借りいたしま~す♪』

 

「何だ?」

 

少年がシャショットを咄嗟に受け止めると、早速シャショットは計測を開始し、そして・・・

 

『この民間人の適合率は、85.6%でございま~す♪』

 

「民間人じゃない!俺は『男鹿(おが)アキタ』だっ!」

 

「君が・・・新しいシンカリオンの適合者・・・!」

 

そう、この「男鹿アキタ」と名乗った少年こそ、ハイスコアラーの正体。

第二の運転士候補の登場に目を輝かせるハヤトだった。

 

 

 

 

 

♪エンディング主題歌:Go one step ahead

 

 

 

 

 

〈おまけ〉

 

その頃、鉄道博物館のパノラマデッキ。密かにハヤトとアキタの初対面の様子を見たダイアナから聞かされたフローラと変身を解除したケントは

 

「そう言えば、秋田で初めて確認した時その子にも付き添いの少年がいたような気がするわ」

 

「ウルトラマンは『レジェンド様が既に自分達の力を使う人間を指定しているぞ』って言ってたし、そうなると誰が来るんだろう・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、アキタに付き添っていたもう一人の少年はそのままこまち号で東京駅に到着し、棚から下ろした荷物を背負いホームに出ると呟いた。

 

「ふぅ、ここが東京、父さんのいた街か・・・。それにしても、アキタはスマホがどうのとか言って仙台で降りちゃったけど、何かトラブってないか・・・?まあ、隣に座ってた子の通知音から嫌な予感がしたからこのまま乗ったのも間違ってないかも・・・。さて、今夜はホテルで過ごすみたいだし、行ってみるか・・・」

 

そう言うと、この少年「火神(ひかみ)カケル」は東京駅を出て何処かへと歩き去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方これまた同じ頃、地球に顔を向けている小さな衛星、月。

至る所にクレーターがあるこの場所に紫色の光が一つ降り立ったかと思えば、その中から姿を現したのは銀色に赤と紫のボディーラインを持つ一人の巨人だ。

額には小さな菱形のクリスタルがあり、胸には逆雫の形の青い結晶が光っている。

彼は静かに立ち上がると、そこから見える地球を白く光る瞳で見据えて呟いた。

 

『・・・ようやくレジェンド様が教えてくれた地球にたどり着けたな。美しさは変わらないにしても、この世界に私が夢で見たロボット達がいるとの話だが・・・果たして私のこの手でそれを支える事が出来るのだろうか・・・?この世界に生きる人間達を・・・』

 

開いた右手を見つめてしばし沈黙すると、やがてその手をギリリと強く握り締め、巨人は再び前を向く。

 

『・・・いや、私も何があってもこの星を救ってみせる!これまでどこの星でもどんな宇宙でもそうやってきた。たとえ私達にとって未知の相手だとしても、この世界の、子供達の輝きを消させはしない!・・・ひとまず、最初にこの世界に来たウルトラマンとフローラを探して合流しよう。そして私の力を行使してくれる人間もその内見つかるはずだ。・・・ウルトラマン、待っていてください!フローラも今行く!チャァッ!』

 

翼のような金銀のプロテクターがかかる胸にその決意を宿し、巨人はその身に光を纏うと地球、正確には日本列島を目指して一直線に飛翔した。

過去にさかのぼったとはいえ、かつて自身が元いた世界で危機に瀕したところを救ってくれた偉大なる恩人の背中と、想いを寄せてくれる少女の笑顔を探し求めて・・・。




次回予告

ついに浮上した第二の運転士候補、男鹿アキタだが、彼は即答でハヤトの誘いを断った。
戦いに巻き込んでしまったお詫びをしようと、ハヤトはアキタを自宅に泊めてあげる事に。
その夜、アキタはハヤトが新幹線の運転士を夢見ている事を知り「自分はビームライフル選手権で世界一の座に立つことが夢だ」と明かす。
ハヤトはその夢のファーストステップになるかもしれない関東大会を観戦しに行く事にした。
一方超進化研究所では早くも新しい第三の可能性の蕾が芽吹きそうで・・・?
強化された敵に攻撃されて氷の中に閉じ込められてしまったハヤト、それを氷と相反する炎の力で助けようとするフローラ。
大ピンチの中、自分の姿を見届けてくれたハヤトの想いに触れたアキタは・・・!
そして極寒と化した戦場に、危機に陥ったウルトラマンを救うべく超古代の英雄戦士が華麗に降り立つ!
次回「俺の夢、アキタの夢」お楽しみに!

次回はいよいよアキタ君が運転士として覚醒、そしてカケル君のもとにも新しい光の戦士がやってきます。
ヒントはおまけストーリーでも触れた通り、昨年降誕25周年を迎え、そして今年の大投票で見事トップの栄冠を勝ち取ったあのお方です!


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第7話 俺の夢、アキタの夢

 お待たせしました、ついにアキタ君の目覚めとあのお方の降臨となる第4話でございます!
カケル君と光の戦士のファーストコンタクトシーンも是非お見逃し無く!


 ついに第二のシンカリオン適合者である事が判明した少年、男鹿アキタ。

超進化研究所の待機室でシャショットとフタバの付き添いのもと、ハヤトは彼に自己紹介する。

 

「俺は速杉ハヤト!シンカリオンE5の運転士だよ!」

 

「シンカリオン・・・?」

 

「うん、俺が操縦してたロボットだよ!」

 

『アキタ君にも、シンカリオンを運転する力があるのでございま~す♪』

 

「ん?何だその()()()()()()は」

 

『おおおおオモチャとは失敬ーっ!でございまーす!』

 

続けて『わたくしは、シンカリオンE5の為に開発された車掌ロボット、シャショットでございま~す♪』と挨拶しているシャショットを華麗にスルーしてアキタはハヤトに問いかけた。

 

「それで、そのシンカリオンてのに乗ってどうするんだ」

 

「さっきの奴みたいな危険な敵から、皆を守るんだ!」

 

「・・・そうか、話は読めた」

 

「どうかな?アキタも一緒に!」

 

「断る」

 

何の為にシンカリオンに乗るかという事は少し理解した様子のアキタだが、ハヤトからの誘いの言葉に対する返事は当然「NO」だ。

それもズバッと一秒でだ。が・・・

 

「(っ!凄い・・・!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()3()2()0()()()()()()()()()さすがシンカリオン適合者・・・!」

 

そこにハヤトお得意の東北新幹線をネタにした例えが炸裂し、フタバは呆れ顔で言った。

 

「・・・ハヤト君ってその伝わってそうで伝わってない新幹線の例え、好きだよね・・・。」

 

そう言ってるうちにアキタはそこを立ち去ろうとしていたので、ハヤトは急いで呼び止める。

 

「待ってよ!俺達には、アキタみたいな力を持った仲間が必要なんだ!それに、シンカリオンを動かしてみれば、絶対楽しいはずだよ!」

 

「フンッ。楽しいか、くだらんな。俺はそんなものに付き合っている暇は無い」

 

引き留めようとするハヤトに振り返らないままアキタは冷たく突き放すように言うとそのままその場から出て行ってしまう。

それを見送ったフタバとシャショットは、諦めたようにハヤトに声をかけた。

 

「・・・無理強いは出来ないよ」

 

『そうでございま~す。ハヤト君は父親がシンカリオンの研究者という、普通じゃないパターンなのでございま~す』

 

「普通の小学生があんな体験したら、怖いに決まってるでしょう?」

 

『あの雪の化け物がもう一度襲ってきた瞬間を狙う、お前は真正面に撃つだけで良い』

 

「(怖がってる雰囲気、全然無かったけどな・・・。)」

 

先程の戦闘で少しながらアシストした時の事を思い出して、怖がっているのは少し違うのではと考えたハヤトだった。

 

 

 

 

 

♪オープニング主題歌:進化理論

 

 

 

 

 

研究所を出て帰宅しようと大宮駅構内の「豆の木広場」の中を歩く中、ハヤトはため息をついた。

 

「はぁ・・・(せっかく仲間が見つかったと思ったのになぁ・・・。家の都合かな?案外ものすごい教育ママだったりして・・・。)?あれは・・・」

 

そんな事を考えながら歩いていると、難しい表情で案内図を見ているアキタがいる事に気がつき、ハヤトはすぐに駆け寄り声をかけた。

 

「おーい、アキタ!・・・こんなところでどうしたの?」

 

少し目をそらしてアキタは答えた。

 

「・・・ライフルチームに合流し損ねた。東京のホテルまでの行き方が分からなくてな」

 

「じゃあ、俺が案内するよ!あ、なんならウチに泊まる?ご馳走するよ!」

 

「何故そうなる!?」

 

「だって、すぐ近くだし!良いから良いから、遠慮しないで!」

 

「誰が遠慮など・・・!おい、待てっ、勝手に決めるな!」

 

突然の突拍子のない提案に慌てるアキタの背中を押して、笑顔で家路を急ぐハヤトだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

唐揚げとポテトのセット、フレッシュなサラダ、ローストビーフ、海老や貝がたっぷり詰まったパエリア・・・。

目の前に並んだ豪勢な料理を見て「何なんだ、これは・・・」と呆然としているアキタ。

 

「アキタの歓迎パーティーだよ。ほら、食べて食べて」

 

「食べろといったって、ここまでされる意味が分からん・・・」

 

「はいどうぞ」

 

これらの料理を張り切って揃えたサクラはサービスでコーンポタージュを出して言った。

 

「だってハヤトのせいで約束の時間守れなかったんでしょ?このくらい当然よ」

 

更に唐揚げを食べる手を止めてハルカも付け加えた。

 

「お兄は自分のせいで時間を守らせられなかった事を悔やんでいると思われ」

 

「さすがハルカ、その通り!なんせ俺は『時間と言った事は守る男』だからね!」

 

「・・・分かったよ、食べればいいんだろ」

 

そう、今回のシンカリオンの戦いに巻き込み、さらに仲間になってくれと誘いかけた事で時間通りにさせられなかった事のお詫びをしたいという責任感の詰まった行動だったのだ。

仕方なしに箸を取り肉を一切れ口に運び目を見開くアキタと、それを笑顔で見るサクラだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「汽笛一声新橋を~♪はや我汽車は離れたり~♪愛宕の山に入りのこる~♪月を旅路の友として~♪」

 

入浴中に「鉄道唱歌」を口ずさむのもハヤトの癖の一つで、リビングのソファーで食後のお茶を飲んでいたアキタは隣でスマホゲーム中のパジャマとアイマスク姿のハルカにたずねた。

 

「・・・何の歌だ?」

 

「鉄道唱歌、お兄の好きな歌のうちの一つなわけで」

 

「ほんとに鉄道バカなんだな」

 

饅頭が盛られた皿の近くに湯飲みを置いて呟いたアキタに、隣に座ったサクラも聞いた。

 

「あら?アキタ君も鉄道好きなんじゃないの?」

 

「全く」

 

「ハヤトが嬉しそうにしてるから、てっきり鉄道か新幹線好きの仲間なのかと思ったけど」

 

「でも今日のお兄はあまり新幹線の事を話さなかったと思われ。お兄にとって新幹線は人生の一部なわけで」

 

「人生の一部・・・」

 

「そう。なんてったってあの子の夢は、新幹線の運転士になる事だからね。その夢に向かって一直線なのよ」

 

ホームに停車しているはやぶさ号、ピシッとした運転士の制服姿で運転室に近づく姿をイメージしながらそう伝えたサクラと、その言葉に何かを得たアキタだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この頃、東北新幹線の仙台~白石蔵王間にあるトンネルの近くでは、数人の研究所スタッフ達が雪の中ライトを頼りに探知機を使い何かしらの調査を行っていたが、その近くであの怪しい二人組が見ていたのに気がつく者はいない・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、アキタはハヤトの部屋に敷いた布団に入ったが、目がさえて眠れない中ベッドで寝ているハヤトに一言切り出す。

 

「・・・悪かったな」

 

「・・・何が?」

 

「さっきの事だ」

 

『楽しいか、くだらんな。俺はそんなものに付き合っている暇は無い』

 

一切振り返らないままハヤトの誘いを断った時の事を思い出すとアキタは言う。

 

「新幹線好きが道楽でシンカリオンに乗っているのだと思っていた」

 

「?何の事?」

 

どういう意味かとハヤトが聞き返すと、アキタは一度体を起こしてサクラとハルカから聞いた事を含めてたずねた。

 

「聞いたぞ。新幹線の運転士になる事がお前の夢なんだろ?」

 

「うん、まあね」

 

机の上に置かれているE5系のオブジェを見ながらハヤトの返事を聞くと、アキタもハヤトの方に振り返り、自分の夢を明かした。

 

「俺には、ビームライフルの選手権で世界一になるという夢がある」

 

「そうだったんだ・・・」

 

「明日は大事な大会の決勝戦なんだ。だから今回の事に巻き込まれて少し苛立っていた。すまなかったな」

 

壁に立てかけてあるバッグを見てそう言い謝罪の言葉を言うと、アキタはまた布団に体を倒すがそのまま思い出した事を告げた。

 

「明日の大会で優勝できれば、来年の春、ビームライフル競技に強い、東京の中学に入学できる事になっている」

 

「わざわざ何で?」

 

優勝者はビームライフルに重きを置く中学校に推薦入学する---その事をなぜ告白したのかとハヤトが聞けば

 

「都会に住むお前には分からないだろうな」

 

最初にそう言い、アキタは自分が住む秋田の田舎町、「北秋田市阿仁地区」の事を思い出しながら自分の境遇を語った。

 

「俺の生まれ育った町は、東京とは全然違う・・・。ビームライフル競技をしている同世代などほとんどいない。ライバルと競って自分を鍛えたくても、戦う相手が見つからない環境だ」

 

更に、東京のホテルにいるであろう高2の少年、カケルの事も同じだという。

中学の半ばに突然の不幸に襲われ、東京で働いていた父親を事故で、立て続けに母親も病気で亡くしているとの事で、天涯孤独の身となりアキタのところに引き取られてきたらしい。

それ即ちお互いに孤独に耐えながらお互いを支えて今まで生きてきたそうだ。

 

「そうなんだ・・・」

 

アキタは事情を全て話すと、ハヤトに顔を向けて言った。

 

「お前にとって、新幹線は人生の一部らしいな」

 

「えっ、う、うん」

 

「俺も同じだ。東京に続くあの新幹線に乗れれば、俺の夢は始まる。逆に乗れなければ、東京に出られなければ何も始まらない・・・。」

 

「・・・・・・」

 

「だからあの新幹線に乗って、秋田を出る事を目標に今までやってきた。寄り道は出来ん。だからお前達の仲間にはなれない」

 

アキタは同じ競技をやる者が、カケルは本当の親がいない孤独を紛らわせる為に上京してきた事を理解すると、ハヤトは言った。

 

「・・・そっか、分かったよ。アキタはアキタのやりたいようにやるべきだよ」

 

「悪いな」

 

「ううん。それじゃあ明日の大会、見に行っていい?アキタが夢の第一歩を踏み出すところを見せてよ」

 

「・・・仕方ない」

 

それぞれの夢を、お互いの経験を話し合って少し近づけた二人は眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、関東大会決勝戦の会場には何人もの選手が集まっており、その中にアキタの姿もあった。

ハヤトはサクラとハルカと共に観客席から見守るが・・・。

 

「行けーっ、アキターっ!()()()()()()()()()()()()()()()ぶち抜けーっ!」

 

「お兄、その例え話はあまり噛み合ってないと思われ」

 

「頑張ってー、アキタくーん!」

 

ここでも北陸新幹線のとある地点をネタにしたエールをかけてハルカにツッコまれる。サクラは普通に応援していたが。

東京から駆けつけたカケルがフロアの一番後ろで壁に身を預けて見守っており、ケントが妹のフウカの遊び相手をしている為暇つぶしに空の散歩をしていたフローラが外からほうきに座ったまま窓を覗いて様子を見ていた。ちなみにこの日彼女が着ている「ブリティッシュブルーコーデ」は青い蝶ネクタイとゴージャスな胸のフリルがあしらわれた姫袖の白いフリルシャツ、体側にチェック模様と左胸に紋章のエンブレムが付いたベスト、チェーンと時計がデコされた後ろリボンが可愛いアシメテイルスカート、紋章がポイントの白いベルトが巻き付けられた青と黒の膝下丈のロングブーツというイギリス風な組み合わせの超クールなコーディネートだった。

 

「本射40発、競技時間30分。マッチファイアリング、スタート!」

 

審判の合図で選手達は一斉にライフルを構え、アキタは最初から最高得点の10点に当てた。

 

「ナーイス!アキターっ!」

 

その後も次々と最高得点を真剣に狙ってライフルを撃つアキタの姿を見て、ハヤトは何かを考え始める。

カケルは僅かに笑みを浮かべ、フローラは驚きと感動が混ざった表情でアキタを見守っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、超進化研究所では、フタバがこれまで集めたハヤトのデータを解析しているところに出水とホクトがやってきた。

 

「お疲れ様です、出水指令長、速杉指導長」

 

「お疲れ様、三原君。ハヤト君のデータから、何か分かった事はあるかい?」

 

「すみません、まだ・・・。」

 

「焦る事はないが、もっとデータは増えてくるぞ。スコアデータを見てごらん」

 

「え?・・・あ」

 

コンソールを操作して出水に言われたデータを映し出すと、そこには・・・

 

「新たな救世主候補だ」

 

ランキング3位のところに、新しいハイスコアラーの名前がはっきりと映し出されていた。

それはさておき、フタバはアキタの事を二人に話す。

 

「それにしても、アキタ君は残念でしたね。せっかく新しい適合者が見つかったのに」

 

「本人にその気が無い以上は、無理に乗せる事は無いさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、大会ではアキタも優秀な成績だったものの、惜しくも優勝杯を勝ち取ったのは別の選手で、アキタはその一つ下の準優勝だった。

他の観客達は皆拍手で健闘をたたえていたが、ハヤトは何ともいえない表情で、後ろで見守っていたカケルは呆気にとられ、フローラは少し困った顔でため息をつく。

当のアキタ本人も後一歩のところで優勝に手が届かず悔しげな表情だった。

サクラとハルカと一旦別れ、ハヤトは大会を終えて秋田に帰ろうとするカケルとアキタを見送る為に大宮駅の東北・山形・秋田・北海道・上越・北陸新幹線の下りホームにいた。

ちなみにアキタは昨日にあった事を少しぼかしてカケルに伝えている。

 

「・・・惜しかったね・・・。」

 

「仕方ない、勝負とはこんなものだ」

 

「そうだね、僕も改めて思い知ったし、あまり時間もゆっくり取れなかったし」

 

「ごめん、昨日俺が巻き込んじゃったからだよね・・・。」

 

「それは関係ない。気にするな、また0からやり直すだけだ」

 

負けは負けだと割り切ろうとするアキタ。

隣に立っているカケルも、少し離れて見ていたフローラも沈んだ表情をしており、フローラから一報を聞いてついてきたケントもフローラを励まそうと彼女の背中に手を添えた。

その時、アキタの発言を聞いたハヤトがベンチから立ち上がりその重い空気を崩した。

 

「0じゃないよ!」

 

「何?」

 

「あの、もう少し具体的に・・・」

 

「?」

 

その場の一同が呆気にとられた中、ハヤトは語り出した。

 

「さっき、真剣にライフルを撃ってるアキタを見て、思ったんだ。もう夢に向かって進んでるんだって。それに比べて、俺は・・・新幹線が好きで、シンカリオンに乗れる事が嬉しくて、それだけでシンカリオンに乗ってるんだ。そんなのアキタの言ってた通りだよ。・・・でも、今は分かった。俺がシンカリオンに乗って本当にやりたいのは、皆の夢を守る事だって」

 

「皆の・・・夢・・・」

 

「初めてシンカリオンに乗った時・・・きっかけは、お父さんの力になりたかっただけなんだけど、俺、鉄道博物館や、大宮の街を守れちゃったんだよ。それって、俺やお父さんの夢を守る事にもなったんだ。もっと大きく言えば・・・街を守る事って、誰かの夢を守る事なんだよね!」

 

「っ!」

 

「誰かの夢を・・・」

 

「誰かが街を守るから、誰かの夢が繋がっていく・・・!だからさっきのアキタみたいに皆が輝けるように、俺は戦いたい!それが今分かった、俺の夢だ!」

 

「・・・そうか」

 

「なるほど、ちょっと分かった気がするよ」

 

「ハヤト・・・。」

 

「ハヤト君・・・。」

 

ここでアキタは初めてハヤトに笑いかけた。

カケルも、ケントも、そしてフローラも、重かった気分から一転して笑顔を取り戻した。

最後にハヤトはこの一言。

 

「俺も頑張るから、アキタも頑張ってね!」

 

「ああ」

 

こうして、二人の間にはわずかな間、ほんの少しだけだが絆が芽生えたのだった。

が、その笑顔でいられる時間も長くは続かなかった。

研究所からの通知がハヤトのスマホに来た事で、また空気は変わってしまう。

 

「っ!漆黒の新幹線・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回コイツが現れたのは、昨夜スタッフ達が調査していた場所、仙台~白石蔵王間のトンネルだった。

トンネルを通過した後出現したのは、昨日のフロストツリーが少し大きくなったような奴だ。

近くにいたあの怪しい男達はというと

 

「昨日と同じか。芸が無い」

 

「・・・まあ見ていろ」

 

 

 

 

 

「15時45分、漆黒の新幹線出現!」(フタバ)

 

「巨大怪物体捕捉!コードネーム『フロストツリーⅡ』!」(本庄)

 

「まさか、同じ奴か・・・!」(出水)

 

「捕縛フィールド展開、捕縛完了後、直ちに光学迷彩機能作動!」(ホクト)

 

「「はい!」」(フタバと本庄)

 

 

 

 

 

「ごめん、行かなきゃ」

 

「ああ、気をつけろ」

 

アキタはそう言ってハヤトを送り出す。

そしてホームの一番向こう側には・・・

 

「っ、またこっちの方向から嫌な気配がするわ、しかも昨日の奴とほぼ一緒・・・!」

 

「今回もフレイムシールドの出番かニャ?」

 

手をかざして一発で昨日の奴と同一の気配を感じるフローラ、昨日も使った火魔法が必須だと悟るサンゴ、すぐにベーターカプセルをかざすケントがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フローラ達とハヤトがその場を去った後、残されたのはアキタとカケルだけになったが、そこに誰でもない声が聞こえてくる。

 

『・・・?おかしい、確かにこの場所にウルトラマンの気配がしたはずだ。おそらく誰か人間に宿っているかもしれないのに・・・』

 

「え、誰?アキタ、今何か聞こえ・・・」

 

「?すまん、俺にはさっぱり聞こえないが・・・」

 

どうやらその声が聞こえるのはカケルだけのようで、おかしいなと思いつつカケルは一度そこを離れて近くのエレベーターまで進むと・・・

 

「えええっ!?」

 

なんとそこには、うっすらと紫色に光る光の玉が浮遊していた。

 

『っ!き、君は・・・もしや私の声が聞こえたのか?』

 

「え、うん、そう言う君は?」

 

『・・・すまない、名乗るのが遅れたな』

 

そう言い、その声の主は次のように言った。

 

『私の名はウルトラマンティガ。敬愛する先輩と、信頼してくれている少女を追ってこの世界に飛来したのだが・・・今の私にはその二人と一緒にこの世界で支えなければならないものがある。そこでせめてもの願いなのだが、どうか私に君の体を貸してほしい。なんとしてもこの世界に起こりうる事を見逃すわけにはいかないんだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

指令室にいるホクトは小さな受話器を取ってハヤトからの通話に出た。

 

「ハヤトか、今どこにいる?」

 

『大宮駅!』

 

「昨日の奴がまた現れた。お前はそのまま、研究所の地下ホームに向かいなさい!」

 

「分かった!」

 

 

 

 

一方大宮駅では、下りの東北新幹線ホームにこまち号が到着し、アキタと合流したカケルの前で乗車ドアが開いた。

 

 

 

 

 

昨日と同じような敵を迎え撃つべく出発準備をするハヤトは・・・

 

『この車両は、仙台行きです』

 

「シンカリオンE5、出発進行!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先に乗車口へと入り振り返ったカケルの後について乗り込んだアキタだが、そこでふと立ち止まり、ハヤトと最後に交わした言葉を思い出した。

 

『街を守る事って、誰かの夢を守ることなんだよね!』

『誰かが街を守るから、誰かの夢が繋がっていく・・・!』

『それが今分かった、俺の夢だ!』

 

そして歯を噛んだアキタは発車ベルが鳴り出した中、駆け足でホームに戻った。

後を追ってカケルも降車すると、そのままドアが閉まりこまち号は定刻に大宮駅を出発。

何か言いたそうなカケルをよそに、アキタは何かを決めたように顔を引き締めていた。

 

「(俺は・・・!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

またしても降雪のフィールドに降り立ったE5はやぶさと、今回の相手であるフロストツリーⅡ。

大きさは昨日の奴より一回り大きく、両手には巨大な剣も握りしめていて、背中には二股に分かれた突起もついていた。

 

「パワーアップしてる・・・!」

 

『ハヤト、一気に決めるぞ!』

 

「うん!」

 

フロストツリーⅡが吠えるのを見て、ハヤトはシャショットの指示で急いでエネルギーを溜めてグランクロスを放つ。

 

「『グランクロス!』」

 

初代の奴と同じように胸を狙い撃ちすると、その直後に爆発が起きた。

見ていたフローラは「凄い・・・」と感嘆の声を漏らし、指令室の方では

 

「目標撃退!ハヤト君、どんどんE5を使いこなしてますね・・・」

 

フタバがホクトに向けてそう伝えると

 

「では捕縛フィールド、解除します」

 

そう言って本庄もコンソールに手を触れようとするが、ホクトが一言で止めた。

 

「いや、待てっ!」

 

吹雪が晴れた先には・・・なんと何事もなかったかのように直立しているフロストツリーⅡがいて、その目がギラリと光った。

 

「嘘っ!効いてないの!?」

 

『危ないぞハヤト!』

 

あっさり倒されたと思っていたフローラは驚愕し、シャショットが警告した瞬間フロストツリーⅡは口から強い冷気を吹きかけてきた。

 

「う、うんっ!」

 

急いでその場から逃れたハヤトだが、フロストツリーⅡは手を止めず冷気を吐き続けてくる。

当たるまいと必死で避けるE5はやぶさだが、その先でトラップにはまってしまう。

 

「足が・・・!」

 

そう、雪の中に右足の先が埋もれて身動きできなくなってしまった。

そこにフロストツリーⅡは容赦なく冷気を吐き出して・・・

スタッフ達が、ウルトラマンが、フローラが見ている前で、シンカリオンE5はやぶさは氷塊の中に閉ざされてしまい、そしてフロストツリーⅡは勝ち誇ったように高く吠えた・・・・・・。

 

『フオオオオオオッ!』




 次回、ハヤト君最大のピンチ!
その時アキタ君は、そしてカケル君はどう動く?
火魔法が弱まってしまい限界を向かえつつあるウルトラマンとフローラを救う光は・・・


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第8話 紅の狙撃手と超古代の勇者

 アキタ君とティガの本格的な登場シーン。
個人的にはティガとカケル君の絡みが超絶にかっこいいと思うのでそこを中心にお楽しみくださいませ。


 フロストツリーⅡは、初代の雪に身を隠す能力がオミットされている代わりに、強力な冷気を吐きつけてシンカリオンE5はやぶさを凍りつかせ、もう用済みだと言わんばかりに背を向けてフィールド内を闊歩し始めた。

倒したはずがまさかの効果無しで、逆に予想外の攻撃を喰らってしまったハヤトは戸惑った。

 

「嘘・・・でしょ・・・!?」

 

指令室の方でもすぐに救出の策は無いかと対処し始める。

 

「E5、機動停止!完全に凍結しています!」

 

「予備電源にてコクピット内の温度を最大値に上げろ!」

 

「駄目です!排気口が塞がって、ヒーターが作動しません!」

 

「ならば捕縛フィールド内の温度を調整しろ!外部から熱を与えれば僅かでも溶けるはずだ!」

 

「やってみます!」

 

「・・・っ!」

 

フタバ達が操作を急ぐ中、ホクトは大事な子がピンチになった事で息を詰まらせた。

ウルトラマンとフローラの方も高い位置から見守っていたが密かに行動に出た。

 

『フローラ、私が奴の動きを止めている隙にあの子を助けるんだ』

 

「分かってます。この命に代えても、炎の力であればきっと!」

 

フローラはそう言って人差し指を軽く振り、自分とウルトラマンにフレイムシールドの赤い光を纏わせるとすぐにE5はやぶさが見下ろせる位置まで飛び、両手の平を前に向けた。

 

「これで行く!ファイヤーブースト!」

 

ウルトラマンはエネルギーを大きく消耗する事を覚悟でフロストツリーⅡめがけて「ウルトラアイキャッチ」を放ち、フローラは両手の間に発生させたバレーボール大の火球から火炎放射器の如く炎を浴びせかけてハヤトを助けようと試みた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、秋田に帰るはずがこまち号を降りたアキタと、様子を気にしながら何も言わずついてくるカケルは鉄道博物館に入ろうとしたところで、青い服を着た二人の男性スタッフが走ってきた。

 

「また昨日の奴が出たらしい!」

 

「そんな!」

 

二人が足を止めて見守っているとその二人のスタッフはあるドアの前で止まり、鍵を開けるところだった。

 

「調査員を派遣したけど、何も見つからなかったって・・・!」

 

「とにかく急ぐぞ!」

 

そう短く話して、その二人の男性はドアの先に走っていった為、その様子を見ていたアキタはドアに近づくと、閉まる前にドアを押さえ中を見て、地下階行きのエレベーターがあるのを見つけた。

 

「これは・・・」

 

「アキタ、これは流石にまz」

 

恐らくSTOFF ONRYエリアだろうと思い制止しようとしたカケルを目線だけで黙らせ、アキタはそのエレベーターに乗って最下層へと辿り着く。

そしてそこには駅によくある改札口があった。

 

「なるほど、ここからはパスが無いと入れないって訳か・・・。話は読めた!」

 

「ちょっ、アキタ!」

 

改札を見て呟き、そこをめがけて駆け出したアキタをカケルが止めようとするが、タイミング虚しく彼の手を掴もうとしたその手は空を切った。

そしてアキタはバッグを背負ったまま改札の手前で床を蹴って大ジャンプし、改札口を強行突破して着地したが、当然そのタイミングで非常ベルが鳴った。

ちなみに引き留めに失敗したカケルは「逃げるが勝ちってね!」と心の中で言い捨てて、呼び出していたエレベーターに再度飛び込んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃の捕縛フィールドでは、フロストツリーⅡがまたも冷気を吐くと、フィールドの壁も一瞬で凍りついてアラームが鳴り始めた。

 

「捕縛フィールド内、摂氏マイナス80℃!更に下がっています!信じられない冷却力です!」

 

本庄がそう言う。

そしてフィールドの中も更に寒くなった状況で、ハヤトもウルトラマンもフローラもその巻き添えを喰らった。

 

「ウルトラマンさん、不味いです・・・。このまま保たないと、あと数分で、この魔法が解けちゃう・・・!」

 

『フローラ、しっかりしろ!』

 

そう、ついに氷点下まで気温が下がった為、フローラがかけたフレイムシールドの魔法力が弱くなってしまったのだ。

フローラはありったけの火力を持つ火炎魔法「ファイヤーブースト」を全力で浴びせたにも関わらず、E5はやぶさを覆う氷が大きすぎて表面しか溶けなかったのだ。

火炎属性の結界魔法の弱点が明るみになってしまったフローラは、そもそも寒さに弱いウルトラマンの手の中で、今にも意識が吹っ飛びそうな絶え絶えのか細い声で震えながらそう言った。

更にフローラが助ける事かなわなかったハヤトもあまりの寒さで体を押さえ震えている。

 

「運転士、体温・心拍数、共に低下!」

 

「ハヤト!!」

 

「くっ・・・!」

 

本庄の報告でハヤトが危ない事をすぐに悟り、声が上がるホクト。

出水ももうこれ以上何か手は無いのかと思った時、ドアが開いてその声は聞こえた。

 

「放せ!」

 

見ると、筋骨隆々な両腕が引き立つ大柄な男性整備士「山口(やまぐち)ナガト」が、エリアに侵入してきたアキタの首を掴んで立っていた。

 

「こいつが改札を無理矢理入ろうとしてたんで、お連れしたのですが」

 

「放せって言ってるだろ!」

 

「アキタ君、来てくれたの?」

 

声に気がついたフタバがそう声をかけると、ナガトから解放されたアキタは言った。

 

「俺が行く。あいつを助けられるのは俺しか行ないんだろ?」

 

それを聞くと、ホクトは出水と目線を合わせて頷き、そして言った。

 

「シンカリオンE6、発車準備!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、ダッシュで博物館エリアに逃げ込んだカケルは、パノラマデッキで呼吸を整えていた。

 

「・・・・・・うぅ、マジで怖かった。僕もあそこで捕まったらって思うとガチで寿命が縮む自信があるよ」

 

が、大宮駅で出会ったウルトラマンティガが気配を探知し、声をかけてきたのはその時だった。

 

『・・・非常に不味い。フローラも、ウルトラマンも、前に出ている子も危ない。こうなれば・・・!』

 

そう言うとカケルの胸から飛び出した金色の光が強く光り出し、あるものが現れた。

そう、金と白銀に光る音叉の形をしたティガの変身アイテム「スパークレンス」だ。

 

『カケル、頼む!これを使って私の持つ力を解放してくれ!』

 

「え?ちょっと待」

 

『これ以上は時間が無い!それに、この世界に来たばかりで私と通じ合えたのは君しかいないんだ!何としてもウルトラマンを、フローラを、そして人間の子を、この私が救わなければ・・・!』

 

ティガに説得され、カケルは少しの間迷った末

 

「そこまで言うなら仕方ないっ!物は試しだ、やってやる!」

 

ヤケクソ気味にスパークレンスを掴み取り、そのまま右手に左手を交差させると両腕を回し、そして

 

「ティガーーーーーーーーッ!!」

 

戦士の名を叫びながら一気にスパークレンスを空に掲げ、光を解き放った。

大恩ある伝説の戦士を救おうと、超古代の勇者は大宮の地から飛び立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、鉄道博物館車両ステーションにもシンカリオンE6こまちがスタンバイした。

自分が出ると申し出てパイロットスーツを纏い運転席にいるアキタにフタバが声をかける。

 

「アキタ君、聞こえますか?」

 

「ああ」

 

「まずShincaを・・・」

 

「いい。話は読めてる」

 

手順を説明しようとしたフタバを遮り、アキタはすぐにシンカギアのカードリーダーにShincaをタッチした。

 

『この車両は、仙台行きです』

 

「これで良いんだな?」

 

「そ、そうです」

 

「シンカリオンE6、出発進行!」

 

ホクトの指示が出され、アキタはE6こまちを発車させた。続いて

 

「シンカギアを装着してください!」

 

フタバからの指示が下り、アキタはシンカギアを左腕に装着して取り外した。

 

「シンカギア、起動確認!シンカリオンE6、制限解除!」

 

「超進化速度、突入準備!」

 

通常のレールから光のレールが分岐すると、アキタは指を揃えた右手でレバーを掴み、手前に倒して加速させる。

 

「超進化速度、突入!」

 

『超進化速度、加速します』

 

E6こまちが光のレールに乗り、ゲージが光ると

 

「超進化速度、到達!」

 

「チェンジ!シンカリオン!」

 

アキタは変形時の台詞を叫び、スロットにShincaをセットする。

 

『E6、シンカリオンに変形します』

 

E6こまちの車両側面を飾るのは、長い髪をなびかせる日本史上絶世の美女、小野小町の横顔をイメージしたマーク。

それが光ると、E6こまちも一瞬でシンカリオンに変形していった。

 

『シンカリオンE6こまち』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ついにシンカリオンE6こまちは、捕縛フィールドのレール上に降り立った。

カケルが初変身したウルトラマンティガも辿り着き、すぐにウルトラマンとフローラを救出した。

 

『大丈夫ですか!?』

 

『おお・・・ティガか・・・』

 

「ティガさん・・・来たんですね・・・」

 

『ご挨拶は後です。今は二人とも無理はしないで、この場は私に任せてください。かつてあなたが私を救ってくださったように、今度は私があなたを救います!』

 

そう言うとティガはウルトラマンに向けて回復技「クリスタルパワー」を発動して二人の体力を回復させた。

 

『すまない・・・』

 

「ティガさん・・・後は任せます・・・」

 

ウルトラマンとフローラはそう言い残すと光に包まれて退場し、それを見送ったティガは空中から吹雪が舞う戦場を見下ろした。

その時、E6の両手に2丁の銃が現れた。

 

「これは・・・」

 

「はい、E6専用ライフル『フミキリガン』です!」

 

すると、E6に気がついていたフロストツリーⅡが背中の突起を向け、氷の弾丸を連射してきたが、E6はすぐさまフミキリガンを発射しそれを消し飛ばす。

 

「ただしあの化け物の前に、こっちだ!」

 

すぐにE6こまちはレールから飛び降りて足のホイールでステージを滑るように走り、凍結しているE5を目指す。

そしてそこにフミキリガンを撃ち込むと、ヒビが入って氷が弾け飛び、E5はやぶさが再起動した。

 

『よしっ!』

 

「あ、あれ・・・俺・・・」

 

「いつまで寝ぼけてるんだ!?」

 

「えっ、アキタ!?」

 

寒さで気を失いかけていたハヤトは、アキタの声を聞き正気に戻った。

その時、フロストツリーⅡが復活したE5はやぶさめがけて突進し、右手に持っている剣を振り上げたが、E6こまちがフミキリガンから高速で弾丸を撃ちそれを粉砕する。

見ると、レールの上にE6こまちがおり、追撃の連射をフロストツリーⅡにお見舞いした。

更には、ステージに華麗に降下してきたティガもお馴染みの構えを取り、E6に便乗して右手から光の手裏剣「ハンドスラッシュ」を、さらに胸に溜めたエネルギーを両腕から発射する最強の切断技「ティガスライサー」を1発その巨体にぶち当てる。

フロストツリーⅡが弾幕に怯み倒れたのを見て、ハヤトはアキタに問いかけた。

 

「アキタ、何で・・・!」

 

「この化け物がいたら秋田に帰る時邪魔なんでな。さっさと終わらせるぞ。・・・指令室!奴のコアが今度はどこにあるか探してくれ!」

 

「駄目です、変化が僅かでキャッチできません!」

 

「アキタ君、E6にはスコープが搭載されている!それを使えるか!」

 

「分かった」

 

アキタはホクトの指示に従い、フロストツリーⅡが立ち上がろうとしたのを見計らって「ナマハゲゴーグル」を下ろす事で熱源を探り当てる。

それは額に赤く光っている部分だ。

 

「・・・あそこだな」

 

『よしっ、私達は奴の動きを止めるぞ!』

 

「分かった!」

 

ハヤトはシャショットの声を聞き、フロストツリーⅡを光の自動改札に閉じこめた。

 

「アキタ、今だ!」

 

「よしっ!ふんっ!」

 

E6こまちはフミキリガンを両肩に装備した「キャノンモード」に変え、砲身にエネルギーを溜め始めた。

これと平行して、ティガも腰に当てた両腕を突き出してクロスし、大きく左右に広げてエネルギーを集める。

 

「フミキリキャノン!」

 

アキタが技名を叫ぶと、E6こまちは「フミキリキャノン」を、ほぼ同じタイミングでティガは「ゼペリオン光線」を同時発射。

フミキリキャノンで額のコアをぶち抜かれ、ゼペリオン光線で全身を吹き飛ばされ、フロストツリーⅡは爆発した。

そしてE6こまちも爆炎を背に降り立つ。

 

「目標撃退!」

 

「フッ・・・」

 

「アキタ・・・」

 

ゼペリオン光線の構えを解いて、この様子を見たティガはすぐにそこを飛び去り、ウルトラマンとフローラのもとに帰還した。

ちなみに・・・こっそりティガの姿を確認したフタバが、実はテレビで放送されたウルトラシリーズの中でも大のティガ推しだというのはこの場だけの秘密である。

 

「(ウルトラマンの中でも特にイケメンなお方が来るなんて・・・。)」

 

 

 

 

 

 

 

そして・・・E5はやぶさの隣に停車したE6こまちから降りたアキタのもとにハヤトが駆け寄った。

 

「アキタ!助けてくれてありがとう」

 

「お前の為じゃない。俺の夢を守る為だ」

 

「え?」

 

「『誰かが街を守るから、誰かの夢が繋がっていく』・・・だろ?」

 

「・・・うん!」

 

そして、ハヤトは改めてアキタにこう言った。

 

「これからよろしくね、アキタ!」

 

「ああ」

 

そう言って、二人はその場で手を取り合った。

 

 

 

 

 

♪エンディング主題歌:Go one step ahead

 

 

 

 

 

〈おまけ〉

 

鉄道博物館のパノラマデッキでは、少し回復したフローラとケントやカケル、そして再会の挨拶の為一度分離したウルトラマンとティガがようやく対面していた。

 

『そうか、君もレジェンド様の声を聞いて、私を追ってこの星に飛んだんだな』

 

『ええ、合流するのが遅くなって申し訳ありません』

 

「いえ、むしろこうして危ないところを助けに来てくれただけでも私としては有り難いです」

 

「僕は火神カケル。それにしても、まさか君がウルトラマンだとはね」

 

「僕は嵐ケント。逆に君にはティガが宿ったなんて・・・」

 

「カケル君、ね。えっと、それで・・・ティガさんと一緒って事なら、可能であればしばらくあの子達を見守りたいと思うんだけど・・・・・・」

 

「ふぅ、やれやれ。寄り道できないと思ってたけど、こうなったら仕方ないね。フローラちゃん、だっけ?ティガと一緒に喜んで協力させてもらうよ」

 

「・・・ありがとう。って事は次は三人目ね。どうなるのかしら・・・。」

 

『とか言ってるがフローラ、その前にそこにいるのは、もしやルビーか?』

 

「ああ、ここに戻った時に少し魔力が回復したんですが、その時に現れたから回復した分で呼び出せたんです」

 

「礼儀正しかったり、元気いっぱいでやんちゃだったり、キャラ設定がコロコロ変わってたけど今回大丈夫?」(ボソッ)

 

「あー、スーパークールなアキタに波長合わせられるかが問題だなぁ」(ボソッ)




 次回はカケル君のサイドストーリーを投稿していこうと思います。
最後にこれだけ紹介させてください

・ルビー CV:齋藤綾夏
ジュエルペットシリーズの主役級のキャラ。
もちろん見た目は日本ウサギで、瞳に光る宝石は名前と同じルビー。
左耳に赤い星が入った桜のアクセサリー、首にさくらんぼのチャームを付けている。
今作ではセガ公式サイトの通り桜が咲き誇る春を好み、礼儀正しく人間に従順なキャラ設定。
ジュエルパワーは「ラッキー運アップ」。


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SIDE STORY 3 火神カケルの不幸な思春期

 うごご・・・・・・・・・。ずっと警戒してたのに憎きコロさんにやられた・・・・・・・・・。
鮭粥・・・ミカン・・・プリン・・・美味なり・・・。
クリスマスプレゼントやお歳暮がこのザマ・・・orz


〈カケル視点の回想〉

 僕は火神カケル。秋田生まれ秋田育ちの高校2年だ。

今日は過去に最悪な不幸に見舞われた今までの僕を明かそうと思う。

そう、アキタと出会う前に、僕に来た虫の知らせを・・・。

 

 

 

 

 

皆が知ってる通り、秋田県は冬が来るととても寒く、ちらちらと雪が舞い落ちてくる。

そんな厳しい環境になる地で生命の息を吹き入れられた僕は、皆と同じように辛い事も、楽しい事も沢山あって、それなりに幸せな日々だった。

 

まず、父さんは東京のとある企業に勤めていたバリバリのサラリーマンで、仕事はとても良くできる方だった。

知識が豊かで、手先も器用だから技術力も高くて、小さい頃にも色々なスポーツを習い事にしていたと言っていたからかなりのスポーツマン。

そして人に対しての接し方も関係をきちんとわきまえている上で積極的にトークを進める事が出来る。

そんな人が日本の一大都市で働いているんだから、すごいとしか言えないだろう。

ただ、企業勤めだからかほとんど東京にいて、たまにしか帰ってこない。

それでも子供を思う気持ちを忘れない父さんは、年休さえ取れれば秋田に新幹線一本で帰ってきて、僕に優しく接してくれた。

小さい頃の僕は、父さんがいる時はよく手を引かれて一緒に街を歩いたり、ちょっとした公園で遊んだり、買ったお菓子を分け合って食べたり、貴重な時間を過ごしたものだ。

 

 

 

 

 

そして、母さんの方はというと、街の小さな喫茶店で働く、優しく聡明な美人さんだった。

「秋田美人」と言われるだけあって、素肌は雪みたいに白くツヤツヤで、喫茶店でも晴れやかな笑顔と柔らかい物腰で接客する為、他の従業員の方々やお客様からの評判は上々。

更には、子供の頃から大の動物好きだった母さん。

昔住んでいた家の近くに、たまに小鳥やその辺りを縄張りにしている野良猫が来る事があったけど、それを一切邪険にする事なく接していて、鳥にはパン屑を、猫には柔らかめに焼いた肉や「ちゅ~○」タイプのおやつをあげて可愛がっていた様子を見た事がある。

 

あと、一度だけ母さんによく懐いていたキジトラの雌猫がうちの庭で産気づいたなんて事があったんだけど、その時なんかそれまででも一番の神対応だったと思う。

それはなんと、お腹の膨らみ具合から一発で出産だと察して、ちょうど余っていたダンボール箱で即席の産箱を作ってその中にかくまってあげた。

それから母さんに付きっきりで出産を見守られ、その猫は無事に5匹の子猫を産み落としたんだ。

母さんの優しさが分かっているからか、その猫は子猫達が乳離れする生後2ヶ月くらいまで産箱の中で過ごしていて、母さんも甲斐甲斐しく世話をする様子を暖かく見守っていた。

一番幸せそうだったのが、子猫達に離乳食を、親猫にたっぷり焼き肉を食べさせて、「よく頑張ったね」なんて微笑みながら言っていた。

後日、母さんは近所で活動している動物保護ボランティアにお願いして、その猫に避妊手術を受けさせた。

その時に5匹の子猫達もきちんと保護して里親を募集し、そのうちの4匹は新しい家族の元に旅立っていったんだけど、何故か残りの1匹が僕にやたらと懐いていたから、その子だけはそのまま僕と育てる事になり、ネットで育成の仕方をきちんと調べる事も忘れなかった。

それで、僕はその子猫に、キジトラだからと言う事で「ショコラ」と名付けた。

 

 

 

 

 

あ、そうそう、その父さんと母さんの間に生まれた僕は、今まで話した通り親が共働きで、しかも片や東京でほとんどの時間を過ごしているから、学校から帰ったら出来る限りの手伝いをやっていた。

小学校に上がる前に父さんや母さんから教えてもらって、掃除や洗濯も出来るようになったし、少しだけど簡単な料理もするようになった。

もちろん母さんから貰ったお小遣いはほとんど日々のお使いに使って、自分の好きな物に手を出した事は数える程しかなかった。

親がいない時には200円ぐらいで買えるお菓子を食べながらショコラをモフる事、逆に父さんが帰ってきた時は街でつかの間の時間を過ごす事。

それが僕にとって一番幸せな時間だった。・・・あの苦しい時が来るまでは。

 

 

 

 

 

ここまで話した通りの日々を過ごすうちに、僕は中学2年生になった。

その時も夏休みになると父さんが帰ってきて、僕を海水浴に誘った。

一番近いのは「桂浜海水浴場」。ちょうど秋田市内にあるから水着セットだけじゃなく、浜辺で拾い集めた貝を入れる袋も準備して、最寄り駅の羽越本線・桂根駅でなんとか下車したところまでは良かったんだ。

 

だけど・・・その先でこんな事が起こって辿り着けない事になるとは全く思ってなかった。

桂浜海水浴場に通じる入り口が見えてきて、車が通ってないかを慎重に確認して、秋田南バイパスを渡っていた時の事だ。

何の前触れもなく、右側から一台のトラックがやってきた。

しかもよりによって入り口までもう少しというところで、だ。

 

「カケル!逃げろ!!」

 

僕はそう叫んだ父さんに突き飛ばされて・・・それで、父さんはそのトラックにはねられた。

接触する音が聞こえた時、僕は怖くてそこに顔を向けられなかったけど・・・体中から血を滲ませて道端に倒れている父さんの姿を見た時、顔が青ざめた。

幸い中学生になる前、つまり小学6年のクリスマスの時に父さんが貯めたお金で買ってくれたスマホを持っていたから、僕は何とかそれを使って119番通報して、駆けつけた救急車で父さんは病院に搬送されたんだけど・・・

結局僕は突き飛ばされて転んだ時の膝の皿、手の平、おでこにできた擦り傷だけで済んだのと反対に、緊急手術の結果、父さんは回復の兆しを見せないで帰らぬ人となってしまった。

僕の電話を受けて仕事を休んできた母さんと一緒に手術を担当した医師から「ご家族の方にはお気の毒様ですが・・・」との一言を聞いた時、僕はその場に膝から崩れ落ちて意識を手放した記憶がある。

海水浴に行けずじまいで失意のまま帰宅した時「軽い怪我だけで済んだカケルを自分と引き替えに守ったんだから、きっと後悔はしていないはずよ」って母さんは言ってたけど、僕はそれまで父さんと過ごした楽しい思い出が全部バラバラに弾け飛んだようでとても胸が苦しかった。

 

その後日、秋田県警察の捜査で父さんをはねたトラックは飲酒運転だった事が分かり、すぐにその運転士も逮捕された事を聞くとちょっとスカッとした。

色々あって親戚一同が父さんのいた会社の方々に謝罪しまくった事もあるけど、葬式で遺影と棺を前にして泣いた日からしばらくは「自分のせいで父さんは死んだんだ」という言葉の槍で滅多刺しにされる悪夢にうなされながら日を過ごし、母さんも傷心しつつも女手一つで僕を励まし続けた。

 

 

 

 

 

けれど・・・僕を襲った不幸は止まらなかった。

今度は寒い風が吹き始めた11月の後半。

それはグループでの調べ学習の授業の時に、真っ青な顔を浮かべて教室に飛び込んできた担任の先生からのこの一言から。

 

「火神、いるか!?・・・先程喫茶○○の店長から電話があってな、お母様が職場で倒れたそうなんだ」

 

ショックを受けた僕はすぐにその先生にお見舞いに行こうと思うので早退する旨を伝えて荷物をまとめてから母さんが搬送された病院へと向かうと、案内された病室で母さんはとても衰弱してベッドに横たわっていた。

実を言うと、父さんが亡くなったショックだからか分からないけど、9月の下旬頃から母さんは体調を崩しがちになっていた。

母さんの同僚のスタッフさんがお見舞いに居合わせていたから話を聞いてみると、その時担当していたお客様に注文されていた食事や飲み物を提供して戻ろうとした矢先にいきなり激しくむせ込み、挙げ句の果てには大量の血を吐いて倒れてしまったとか。

僕に電話で知らせた店長さんは、母さんが無理をして働き続けていた事に気づいていたそうで、結局その日付けで退職させる事を決めたそう。

そこまでの話を聞いて、改めて母さんに顔を向けると

 

「カケル・・・。最後まで、幸せに・・・できなくて・・・本当に・・・ごめん・・・ね・・・?」

 

その一言が僕に向かってこぼれた、最後の母さんの声だった。

同僚の人達のエールも届かず、医師の方々も様々な手を尽くして回復させようとしたけど実を結ぶ事無く、母さんはどんどん弱っていき、やがて僕の見ている前で静かに息を引き取った。

病院の中では静かにする事って分かっているのに、僕は冷たくなった母さんの手に触れたまま声をあげて泣いた。

 

 

 

 

 

完全な孤児となってしまった僕だけど、両親の親戚の誰も彼も、僕を引き取って育てる余裕が無いと分かったのも追い打ちとなった。

トドメに大好きな場所だった家も親戚同士での話し合いの結果売りに出される事が決まり、それを聞いた僕は完全に目の前が暗闇に閉ざされる感覚に襲われた。

 

唯一の救いとなった事と言えば、母さんのお姉さん、つまり僕にとっての叔母さん夫婦が大の猫好きだった事。

その人がショコラを引き取って育ててくれる事になって、流石に僕一人では養っていけないと思っていた僕にとっては願ってもない申し出だった。

ショコラをたった一つしか無いキャリーケースに入れて叔母さんに託し、叔母さん一家の乗った車を見送る時も「さよなら、ショコラ」なんて言葉の一つも言えなかった。

 

 

 

 

 

最低限の私物をまとめて、防寒対策もして家を出た僕は、小さい頃からそれなりに利用していた秋田駅に着いた。

ここから秋田新幹線が出る事は父さんから聞いて知っているし、ショコラを引き取る見返りに「少ないだろうけどこれで何とか気分を切り替えられる事を探して頂戴ね」と言って叔母さんが渡してくれたお金は東京往復の指定席券を買えて、東京でも多少活動できるぐらいの額だった。

 

だけど・・・いざと思って券売機に手を触れようとしたところで、父さんが亡くなった時の悪夢を再び見てしまった。

自分を庇って亡くなっただの、呪われたご子息だの、忌み子は東京に来るなだの、また罵詈雑言を浴びせられた気分になって、僕は結局新幹線で東京に行く事を諦めざるを得なかった。

新幹線で一路東京に出て、ぷらっと東京を見るだけ見て、それが済めばまた新幹線で秋田に帰れば良いだろうと思っていたのに・・・。

僕はしんしんと雪が降り積もる中で駅舎の壁に身を預けて、その場でわんわんと泣き崩れた。

当然、立ち止まって声をかける人は誰もいなかった。

 

-ああ、何で今までそれなりに幸せだった僕が、いきなりこんな目に逢わなければいけないんだ!

 

-僕は何も悪くないのに、一体何をやらかしたらこんな事になるんだよ!

 

-神様、答えてくれ!ただ強力な悪魔に目を付けられたのか、僕の中の何かがお気に召さなくて天罰を下したのか!

 

-どちらだとしても何故そこで父さんと母さんを助けてくれなかったんだ!ショコラだけを助けて何故僕に手を差し伸ばす者が誰一人としていなかったんだ!

 

-こうやって完全に周囲から見捨てられたら、僕はもう一人ぼっちじゃないか!

 

-ああ、遠い未来に、いつか僕にも大切な家族が出来たら、父さんと母さんにその顔を見せてあげたいと思ってたのに・・・やり残してる事がまだいっぱい残ってるのに!

 

-このまま蔑みの眼差ししか向けられなかったら、もう行くところの当てもないし・・・もういっその事、ここで寒さに晒されて、父さんと母さんの後を追うしか道が無い・・・。

 

そう思い始めたところで、その人が通りかかった。

 

「んん?おめ、サユリんとごの子でねが?」

 

そう、顔を上げた先にいたのがモミジさん。

後に僕の養母になる人だった。

 

 

 

 

 

モミジさんは母さんとは高校の頃からの友人関係らしく、現在猟師をやっている旦那さんも少し顔見知りの知人程度だけど会った事があるらしい。

とりあえずは寒さをしのごうともう一度駅の中に入った僕はモミジさんが買ってくれた温かい飲み物を飲みながら、それまでの事を泣きながら話した。

 

「・・・っと言うわけで・・・父さんも、母さんも、僕を残して・・・ひぐっ・・・先に天国に、行っちゃったから・・・ぐすっ・・・蔑まされて、誰にも、助けて、もらえなかったら・・・ぅぐ・・・生きていける道が・・・見えないんです・・・ぐすぐすっ・・・」

 

嗚咽混じりにしゃくりながらポツポツ話すと、ガチの田舎だけど一人で生きられないよりはまだマシだから、行くところが無いならうちの子になったらどうかと声をかけられた。

 

それから僕はモミジさんに手を引かれて阿仁地区に移り住み、男鹿家の養子として受け入れてもらえるかの返事を待つ事になった。

電車の中で話を聞くと、どうやら母さんは10月のある日にモミジさんに対して「自分がもし死んだらカケルを代わりに面倒を見てほしい」と頼んでいたらしい。

そして、話し合いの席で顔を合わせたのが、モミジさんの旦那さん、後の養父となる人と、そのお父さんであるアキタのお爺さんは先祖代々の凄腕のマタギ。それからアキタがそこにいた。

モミジさんにも話した通り、両親が亡くなった事、家が売られた事、誰にも助けてもらえなかったらと言う事を話し、モミジさんと共に「こんな僕ですがどうか養子になる事を許してください」と頭を下げて必死に頼み込んだ。

その結果、少し考えてお爺さんが僕を引き取る事を認めてくれたので、僕はようやく救われた気分になった。

 

それから、お爺さんの手によって仕留められた山の生き物達で何とか命を繋ぎながら、僕はアキタと共にこれまでの日々を過ごしていった。

今でも父さんや母さんとの日々を思い出さない事はないけど、アキタと共にこうして東京に出てこられた事も忘れられない日になるはず。

その先でテレビで人気だったあのウルトラマンティガに出会う事になるとは思いもしなかったけど・・・。

これが今日明かす、これまでの僕が辿ってきた悲運の道なんだ。

 

〈カケル視点の回想終わり〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・・・・・・・。』

 

カケルの絶望まっしぐらな身の上話を聞いて、フローラも、ケントも、ウルトラマンも、ティガも、ジュエルペット達も、返す言葉がすぐに出ない。

ここは嵐家の部屋にある、ケントとフウカの兄妹が使う一室だ。

親と話をつけてしばらくカケルをここに泊める事になったケントは、フローラと顔を見合わせて何とか言葉を紡ぎ出す。

 

「・・・そんな事があったなんて・・・相当辛い日々だったよね・・・」

 

「ええ、私も分かったわ。人間にはいつ、どんな事が起こるか、それが幸か不幸のどちらに繋がるか、全く予想できないって事がね」

 

 

 

 

 

数分後、一同が落ち着くと、ケントが敷いてくれた布団に座り、カケルは疑問に思った事を問いかけた。

 

「そういえば、出会った時や変身する時に思ったんだけど、今ここにいるティガが他のウルトラマン達みたいに話せてるのは何故かな?」

 

カケルの言う通り、ティガはあちこちで開催されるステージショーの場合は変身者のマドカ・ダイゴを思わせる若々しい声だったり、声を担当した真地勇志さんのような落ち着いた声だったり色々変わっているが、今のティガは後者の声でカケルと意志疎通出来ている。

 

「それの事なら、前に何気なく調べてみた事があるんだけど・・・。」

 

ケントはそう切り出して、以前にパソコン学習の際得た情報を語った。

題が少々ズレてしまうが、実はウルトラマンの変身には地球人との関係性によってパターンが異なる場合が殆どなのだ。

特に正史のウルトラシリーズでは「憑依型」「擬態型」「授与型」「独立型」の4つのパターンが取られる事が多い。

 

一つ目の「憑依型」は分かりやすく言うと「ウルトラマンが人間の体を借りている」タイプであり、ウルトラマンファンの誰もがイメージするものだろう。

体を貸した人間は多くの場合宿ったウルトラマンから変身アイテムを授かっているが(一部のみ例外あり)、もしもウルトラマンと意志が合わない時があると希にだが変身できなくなる事がある。

このパターンを取っているウルトラ戦士をシリーズ中から抜き出すなら、昭和作品に登場したウルトラ兄弟の殆どは勿論、平成に入ってからもネオスやコスモス、マックス等がここに当てはまるだろう。

 

次の変身パターンは「擬態型」。これは正確には「ウルトラマンが人間に変化している」タイプだ。

非常時には変身というより「本来の姿に戻って活動する」と言う言い方が正しいだろう。

これをもしシリーズの中で言えば、ウルトラ兄弟を例にするとセブン、レオ、80、メビウスの4人がここに当たる。

 

3つ目のパターンである「授与型」は全パターンの中でもかなり設定が複雑で「ウルトラマンはあくまで『正義の光』と言う概念そのものであり、それが人間に宿ったもの」というタイプなのだ。

力を授かる人間自身もごく普通の者で、またはウルトラマンの力に何かしらのルーツがある者が多い。

その為作中では光の巨人としての意識は皆無で、力を宿した変身者本人も強力な力を手にした事で大きな苦悩を強いられ、どのようにしてその力を使い世界や人々を守っていくかが大きくクローズアップされていた。

このパターンは平成初期の作品、つまり「平成三部作」や「TDG」と呼ばれるティガ、ダイナ、ガイア、そしてその相方のアグル、紛らわしいと思われがちだがネクサス、そしてこの世界で放送が始まるかもしれないルーブも該当する。

 

最後に解説するのは独立型。「ウルトラマンと変身者の存在は普段は別々だが、変身した際にのみ一体化する」というタイプで、言ってしまえば憑依型と授与型のいいとこ取りのようなものだ。

特徴としてウルトラマンは変身者ではなく変身アイテムの内部に自身を宿しており、普段はその状態で変身者とコミュニケーションしているが、いざという場合に一つとなる事だ。

これは新世代(ニュージェネレーション)ヒーロー達のうち、ギンガ、ビクトリー、エックス等が相当するが、ビクトリーはギンガと違いほぼ自分から話す事は無く、エックスに至っては実体化した際も何かと大空大地と意志疎通し合っている描写が多々ある。

ケントがここまでを解説し終えると、カケルは更に言った。

 

「なるほど。じゃあ、そこで気になったんだけど、ティガはもともと授与型の代表みたいなものでしょ?だから大きな公園とかショッピングモールでやってるショーとか、僕も父さんに連れて行ってもらったけど東京で毎年やってるイベントのステージとかでしか喋ってるのを見た事ないんだよね。それが何でかな・・・?」

 

「それはウルトラマンさんからメビウスさんまで多くのヒーローが経験した『ある戦い』が関係してるのよ。私も以前に聞かされて知ったばかりだけど」

 

兄妹の使う2段ベッドに体を預けていたフローラがそう言った。

 

「「『ある戦い』?」」

 

口を揃えて二人がリピートすると、フローラは頷いてこう切り出す。

 

「まず、最初に語るべき事なんだけど・・・二人は『レイブラッド星人』って宇宙人を見た事ある?」

 

「えっと・・・確か、数年前に公開された映画のDVDをレンタルビデオで借りて見た事あるんだけど、それに出てきた悪役キャラの事かな?」

 

「ええ。そいつは恐らくだけどウルトラマンさん達のいるM78星雲がある世界の生まれよ。ただ、表舞台に顔を出す事が殆ど無くて、伝説の伝説の伝説ぐらいでしか伝え聞く者がいないの。聞いた話だと、数多の怪獣や宇宙人達を自由に操ったり、怪獣に自身の力を注ぎ込んで潜在能力を解放させる力を持っていて、その力で何万年も宇宙を支配して人々から大変怖がられていたらしいわ。ただ、現在ではその力も肉体も失ってしまって、今は精神体になってしまっている事が考えられた。それでもその精神体だけで活動してたんだけど、いつ頃からか宇宙のどこかに消えてしまったそうよ」

 

淡々とレイブラッド星人なる宇宙人の事を語るフローラ。カケルから「その精神体になってどんな悪い事をしたのか」と問われると、彼女の話は続く。

 

「それがね・・・プラズマスパークに手を出した事で光の国を追い出されたウルトラマンベリアルに自分の遺伝子を与えて『レイオニクス』に変貌させて、彼を通して一番の邪魔者になる光の国をぶち壊そうとしたそうよ。まあ、それは幸いウルトラマンキング様がベリアルを宇宙牢獄に幽閉したから失敗に終わったそうだけど。・・・あ、ちなみにレイオニクスっていうのは・・・」

 

更にフローラの話によれば、レイオニクスとはレイブラッド星人の遺伝子を持つ者達の事であり、見た目こそよく映像作品で見られた様々な宇宙人達と大差ないが、「バトルナイザー」というアイテムを駆使して怪獣を操る力を持つ事、好戦的で凶暴な性格である事だけが違うという。

具体的な時期は不明なものの、レイブラッド星人は全宇宙に自分の遺伝子をばらまいて様々な星からレイオニクスを生み出したそうだ。

 

「それで何がしたかったのかというと、そのレイオニクス同士を戦わせる『レイオニクスバトル』を繰り広げさせて、最終的に勝ち進んできた者を、本心かどうかは分からないけど自分の後継ぎにしようとしてたみたい。・・・で、ここからが本題なんだけど・・・」

 

神妙な顔になって声のトーンを落としたフローラを見て、ケントとカケルはゴクリと息を呑んだ。

その前にフローラはウルトラマンとティガにテレパシーで頼み込む。

 

『ウルトラマンさん、ティガさん。ここから先の話、協力してもらえますか?』

 

『そうだな。言われなくとも分かる』

 

『私も構わないぞ』

 

『ありがとうございます』

 

そしていの一番に切り込んだのはウルトラマンだ。

 

『これは君達地球人には一切知られていない歴史だが・・・フローラが話したレイオニクス達を誕生させて数万年後に「ギャラクシークライシス」と呼ばれる事件が起きた。それを引き起こしたのがレイブラッド星人なのだ』

 

聞いた事のない出来事なので当然二人は頭に?マークが浮かぶが、フローラ、ウルトラマン、ティガの3人は説明を続けた。

 

「主な舞台となるのは、当然ながら光の国がある世界。時間軸としてはそうね、強いて言えばメビウスさんがエンペラ星人を倒して地球を去った後の事よ」

 

『何の前触れもなく、我々の第2の故郷である地球や、宇宙の各星々に怪獣達が出現して暴れ始めたのだが・・・私達の宇宙では確認されていなかった怪獣達もその中に含まれていてな、そこで地球人達は発足したばかりの「ZAP SPACY」なるチームの戦闘艦を投入し、怪獣達を追ってきたティガをはじめとする他の戦士達とも協力して少しずつ事件を鎮圧していったわけだ。ちなみにそのチームの者達とは、私も過去に交流した事がある』

 

『その中で本来別世界の存在だった私達の事が地球人達の間で知れ渡って、そのデータが残される事になったんだが、恐らくあの世界の人間達は、私や他の皆を支えてくれた地球の仲間達とも手を携えていたのかもしれない。だが・・・』

 

「重要なのはここからよ。実はその全ての原因となるのは、レイブラッド星人が『四次元怪獣 ブルトン』の力を悪用したから。あの奇妙な奴には、その気になれば時空を歪めてしまう力があるから、それを利用してあらゆる時空界に穴を開け、他の世界と光の国の世界を強制的に繋げてしまったというのよ。そうする事で別の世界にしかいないはずの怪獣達を光の国の世界に呼び込む事も容易いから。それこそアニメ世界のデカブツも、超古代怪獣も、スフィア合成獣も、根源的破滅招来体の尖兵も、ダークマターから来るアンバランス怪獣も、カオスヘッダーが取り憑く怪獣も、スペースビーストも、空想の産物と思われていた世界からも!とにかくウルトラマンがいる世界の怪獣達は何でもありって勢いでありったけ全てよ!!」

 

「それは相当大変だな・・・それまでの怪獣災害よりスケールが広すぎでしょ」

 

「そこから先はテレビで話題になった、『ウルトラギャラクシーシリーズ』だっけ?まあ、それを見れば分かると思うけど、このギャラクシークライシスは怪獣達を全て倒して、宇宙同士の繋がりも消えた事で終焉を迎えて、光の国の宇宙は平和を取り戻したそうよ」

 

『フローラの言う通りだ。それぞれ別の世界を守った仲間の中には光の国生まれの者達もいるが、その中で私はウルトラマンキングに目をつけられた。あのお方はそれまで光の力を持つ者と言う存在に過ぎなかった私にその偉大なるお力でウルトラ戦士としての命を吹き込んでくださったんだ』

 

そう、時空の穴を通り宿敵たる超古代怪獣を追ってM78星雲世界に飛来したティガは、激闘を終えて元の世界に帰還しようとした際にウルトラマンキングに声をかけられ、ウルトラの命を吹き入れられた事で他のウルトラ戦士達と同様に宇宙に旅立つ事が出来るようになったそうだ。

 

『うむ、私も後で聞いたが、キングのご加護を得たおかげで私達と意志を伝えあえる事は勿論、ある時は人間が宿す光から具現化したり、またある時はかつて力を受け継いだ人間の姿を借りて活動したりする事も出来るようになったそうだな』

 

『ええ。栄光のウルトラ兄弟の皆様、そしてダイナやガイアの事も感じられますし、何より私とて人間に無限の可能性を感じた身です。こうしてあの無限に散らばる星々の中を飛び回る中で、今も蔓延る闇に苦しめられている人々を救う事も出来ますから。今でもあの時に私を見つけて下さったウルトラマンキングには、いくら感謝しても足りない程です』

 

かつて人間の守護者と信じて支えてくれた仲間や、最後まで諦めず心の光を送ってくれた世界の子供達と共に闇の使者と戦ってきたティガ。

そんな彼も彼なりにキングに恩義を感じているようで、フローラも敬愛する二人のウルトラ戦士の話を聞いて穏やかな微笑みを浮かべていた。

ケントとカケルも互いのパートナーの穏やかな会話でそれまで暗かった話題から少し心温まる雰囲気になってきたのを見てジュエルペット達もコソコソと盛り上がる。

 

「・・・カケル君も何だかんだあったけど元気戻ったみたいだね~」(ラルド)

 

「次からは三人目の仲間を探すみたいだし、気合い入るニャ♪」(サンゴ)

 

「っと、その前にあたしはこれだけ言わせてもらおうかな♪」(ルビー)

 

「?何をかしら?」(ダイアナ)

 

「・・・『過去を変える事は出来ないけど、未来は変える事ができるかもしれない』ってね」(ルビー)

 

「・・・それ『ウルトラマンネクサス』の主人公君の台詞なんだけど・・・。あとストーリーがやたらキツい段階でのものなのにどうやって覚えたのかしら・・・」(オパール)

 

とある世界の青年の言葉をポロッとこぼしたルビーに鋭くツッコむオパールだった。

 

 

 

 

 

翌日、カケルはケントの通う高校に転校し、ケンゴと同じクラスになった。

そして・・・出水達が特定した3人目のシンカリオン適合者との対面の日も間近に迫っていた・・・。




 YouTubeでのゆっくり解説系動画で知った設定ですが、大怪獣バトルシリーズだとティガがガタノゾーアを倒した後も消失しないで戦っているとの事だったので、そこに絡めて「ギャラクシークライシスに参戦した際にウルトラマンキングによってウルトラマンの命を吹き込まれた」という私なりのオリジナル設定を組み込んでみました。
夏と年末年始のウルトラヒーローズEXPOのステージに出た際のティガ様はフォルムや戦うお姿のみならず声までもイケメンなもので・・・
あ、ちなみにカケル君のCVイメージは真白健太郎さんです。

次回予告
石川県金沢市に第3の運転士候補が発見された。その名は大門山ツラヌキ。
だが出水によると、彼はシンカリオンの運転士になる事に乗り気ではないらしい。
そこでハヤトとアキタ、そしてフタバは出水に依頼され、一日東京観光の案内をする事になったのだが・・・。
実家が建設会社だというツラヌキはトンネルや名城、地形を好むようで、「金沢の土木王」を自称する少年だった。
ハヤトはそれに乗っ取って東京のリング状の大動脈、山手線の歴史を軽く説明する事でツラヌキと打ち解けたが、それでも仲間として受け入れるには至らない。
そんな折、謎の敵が金沢の地から奪った天下の蒸気機関車デゴイチが禍々しい姿に変貌し、出動したハヤトとアキタは捕縛フィールドすらも大破させる圧倒的なパワーの前に大ピンチに!
パワータイプにチェンジしたティガやフローラの魔法ですらも止められない中、自分が乗る予定だったシンカリオンを見たツラヌキはどう動く!?
次回「真田堀と仙台堀と山手線と」お楽しみに!


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