異世界から原初の神も来るそうですよ? (黒銀レイア)
しおりを挟む
ようこそ、箱庭の世界へ!
「はぁ……退屈~」
漆黒に広がる無限の星々、永久に停滞せし空間で呟くのは一人の少女だった。銀黒色の髪に真紅の瞳をした幼げな容姿でありながら非常に整った顔立ちでどこか神秘的な雰囲気を放つ不思議な少女。全身真っ黒な服装でありながら見事に調和した格好であった。
「つまらないなぁ~。星の一つでも壊せば神々なんかも介入してくるかな?」
普通の人が聞けば耳を疑うか、どこぞの痛い人を見るように憐れみの目を向けられそうなことを言っていた。
しかし、それは彼女が普通の存在、普通の生命であったらと言う場合である。
「穿て、神の槍」
その瞬間、光の柱が伸び直後に爆音が辺りに響き渡った。
光が晴れた後、周囲にあった星の一つが完全に消滅していた。比喩ではなくまるで何もなかったかのようにその星のみが消失していた。
「ふふっ。成功成功」
ただ一瞬の悦楽のため、欲求を満たすためだけに星の一つを消し去る、常人では決してしないような行動こそ彼女の狂気、イカれ具合が分かるだろう。
「……うん?……手紙?」
それはいきなり現れた。手紙などという物質が存在できる筈がない宇宙空間に、物理法則に反する軌道を刻みながら彼女の元にまで落ちてきた。
明らかに怪しげな手紙に興味を引かれ思わず手紙を手に取った。
【◻️◻️◻️殿へ】
そこに記されていたのは彼女の名前。
彼女が普段、下界において名乗ることもある偽名ではなく、神話に刻まれし本来の
「へぇ~。どうやってボクのことを知ったかは分からないけど、中々に愉快な事をしてくれるね」
彼女は楽しげに、自身の知らぬ未知の体験に心を躍らせながら手紙の封を切った。
『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。その
手紙を読み終えた彼女は新たなる遊戯を感じ満面の笑みを浮かべた。
次の瞬間、彼女の姿はこの世界から完全に消失した。
◆ ◆ ◆
「うわっと!?……すごっ!!」
視界を広げるとそこには想像を越えた光景が広がっていた。
そう。そこは完全無欠の異世界だった。
(すごいっ!これが“箱庭”)
「……うえっ?」
初めて見る景色に見惚れていたせいだろう。自分の状態に気付いた時には既に遅く、湖に落ちることになった。
「し、信じられないわ!まさか問答無用で引きずり込んだ挙句、空に放り出すなんて!」
湖から這い上がったら、黒髪の
「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃゲームオーバーコースだぜ、コレ。石の中に呼び出された方がまだマシだ」
「いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょう?」
「俺は問題ない」
「そう。身勝手ね」
少年を含めた四人が服を絞る。そんな中、三毛猫を抱えた少女が呟いた。
「ここ……どこだろう?」
「さあな。世界の果てっぽいものが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねえか?」
ヘッドホンを頭につけている少年が答える。
(大亀ねぇ~。さてさてどうなのかな?)
「まず間違いないだろうけど、確認しとくぞ。お前達にも変な手紙が?」
その問いに黒髪の少女は不快感を表しながら答える。
「そうだけど、まずは″オマエ″って呼び方を訂正して。私は久遠飛鳥よ。以後気を付けて。それで、そこで猫を抱きかかえてる貴女は?」
「………春日部耀。以下同文」
「そう、よろしく春日部さん。
……それで、野蛮で凶暴そうなそこの貴方は?」
「見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子揃った駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」
ヘッドホンを身につけた少年はキラッとした表情をしてそう答えた。
「で、さっきから黙りを決め込んでるオマエは?」
(さて、何て答えたものかな)
銀黒色の髪をした少女は少年の問いにどう答えたものかと悩むのだった。
評価や感想、アドバイスなど宜しくお願いします。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
黒ウサギの登場だそうですよ?
お気に入り登録が11件もあって驚きました。期待に応えられるようにがんばります!
「で、さっきから黙りを決め込んでるオマエは?」
(さてさて、何て答えたものかな?)
(う~ん。ボクの
この間、僅か1秒程度である。
「ボクは冥。
自身の偽名から本当の名にたどり着けるかな?という意味を込めながらそう名乗るのだった。
「そう。よろしく冥さん」
「ヤハハ、俺は不良じゃないぜ。」
「いえ、不良でしょう?」
心からケラケラと笑う十六夜。
傲慢そうに顔を背ける飛鳥。
我関せずと無関心を装う耀。
ニコニコと愉しげに辺りを見回す冥。
そんな彼らを物陰から見つめる怪しげな人物が一人。
(うわ~、なんだか一癖も二癖もありそうな方ばかりですねぇ。……いえ、だからこそ)
わりと失礼なことを考ているこの人物こそ、彼らを呼び出した張本人なのだが、召喚された彼らが協力する光景が想像できず憂鬱そうにため息を吐いたのだった。
「それで、呼び出されたはいいけどなんで誰もいねぇんだよ」
「そうね。説明なしじゃ動きようがないもの」
「……この状況に落ち着きすぎているのもどうかと思う」
「キミがそれを言うかい?」
(全くです!慌ててくれないと出て行けないではないですか)
物陰に隠れた(隠れているつもりの)人物はこっそりとツッコミを入れた。
(はぁ、悩んでいても仕方ないデス。これ以上不満が噴出する前に腹を括りますか)
「仕方がねぇな。そこに隠れてる奴にでも聞くとするか」
覚悟を決めて、いざ出ようと思っていた黒ウサギはビクッと震えて再び物陰に隠れた。
「あら?貴方も気づいていたの?」
「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ。そこの猫を抱えた奴も、じろじろ辺りを観察してるオマエも気づいてるんだろ?」
「……風上に立たれたら嫌でも分かる」
「あれで隠れてるつもりだったのかな?」
「へぇ、面白いなお前ら」
ビクビクと震えながら出てきた黒ウサギは皆の様子を伺いながら懇願する。
「や、やだなあ皆様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ?えぇ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいでございますヨ?」
「断る」
「却下」
「お断りします」
「なるほど、今日はウサギ鍋だね!」
「あっは、取り付くシマも無いですね♪
って、最後の方、恐すぎなのですよ!?」
黒ウサギはバンザーイと両手を上げて、降参のポーズをした。
(肝っ玉と勝ち気は及第点といったところ。この状況でNOといえるとは……まぁ、扱いにくいのは難点ですが)
黒ウサギが冷静に四人を値踏みをしているところに忍び寄る影が一人。
「えい」
「ふぎゃっ⁉︎」
黒ウサギに近づいた耀は彼女の耳を思いっきり引っ張った。
「ちょ、ちょっとお待ちを!?触るまでなら黙って受け入れますが、いきなり黒ウサギの素敵耳を引っこ抜きにかかるとはどの様な了見ですか!?」
「好奇心の為せる技」
「自由にも程があります!!」
耀は黒ウサギから離れたがそこを狙う十六夜と飛鳥。
「へえ、このウサ耳本物なのか」
「じゃあ私も」
「ちよっとお待ちを!?そこの方も助けて下さ……って、寝ている!?」
「………くぅ…くぅ……」
◆ ◆ ◆
「あ、あり得ないのですよ、まさか落ち着いて話を聞いてもらうまでに一時間もかかってしまうとは。学級崩壊とはこのようなことを言うに違いないのです」
「いいんじゃない?ボクたちは楽しめたんだし」
「あなたは寝ていただけじゃないですかー!?」
黒ウサギの嘆きが響き渡るのだった。
こんな感じでいいのでしょうか?
こうした方が良いよなど、アドバイスや感想などお待ちしております。
目次 感想へのリンク しおりを挟む