闇であるが闇でない男 (主義)
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いつもの日常

僕は何でここまで上り詰めてしまったのだろうか。最近は自分でもそんな事を考えるようになってきた。もし、あの時違う道を選んでいたらこんな未来になっていなかったと思うとやり直したいと思ってしまう。でも、そんな事は叶わない。過去をやり直す事を出来ない。それはどれだけ望んだとしても結果は変わらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君はもう少し離れてくれないかな………これでも僕は君の上司なんだけどな」

 

 

 

僕の近くから全く離れようとしない一人の女性に僕はそう口にした。これは今に始まった事ではないけど……本気でそろそろ直してほしい。

 

 

 

 

「良いじゃない。ここに居てもあなたに迷惑が掛かっているわけじゃないし」

 

 

 

「いや、僕としては君が離れてくれない事で色々と不幸を被っているんだけど」

 

 

どうせいくら僕が君に言ったとしても君は僕の言う事を全く聞いてくれないだろう。これでも僕はこのギルドのギルドマスターなんだけど………と何度思った事か。

 

 

 

「君にこれ以上言っても無駄だから…もうそんなに言わないけどこれだけは言わせてね。少しは自重してね!!!」

 

 

君のせいで僕がどれだけ面倒な事に巻き込まれているか、君は全く知らないんだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕がギルドマスターを務めているこのギルドは特殊な人間の集まりで表の世界では生きていけない人間が集まって来る。例えば、犯罪者や明日、食べる食事すらもない人、身売りのない人間などなど。

 

だが、ここは決して良いところではない。だって闇ギルドなんだから良いもののはずがない。

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、何故かこのギルドには人が絶えず出入りする。僕が結成した当時は僕だけだったのに今では僕でも把握できないほどに増えてしまっている。ギルドマスターの僕が人数を把握できていない何て普通のギルドではありえないだろう。

 

 

 

一癖も二癖もある人物だから纏めるなんて絶対に不可能だしね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フェアリーテイルという表の正式ギルドが最近ではよく話題に上がっている。問題を起こるメンツが揃っているみたいでよく出先で問題を起こしているせいでフェアリーテイルには請求書が絶えず来るという。

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、それでもフェアリーテイルというギルドが潰れる事がないのは大規模なギルドであり、良い魔導士が揃っているというところもあるだろう。あまり人の名前を覚えるのは得意な方ではないんだけど確か……S級魔導士のミストガン…S級魔導士のラクサス、S級魔導士のエルザ、S級魔導士のギルダーツ……………もう一人……ミラジェーンを加えた五人が確か今のフェアリーテイルのS級魔導士だったと記憶している。

 

どのギルドもS級魔導士はそう多くない。

 

 

 

そのS級魔導士が五人もいるなんて凄いとしか言いようがない。うちにもS急に匹敵するような魔導士はいるけど……フェアリーテイルのS級魔導士に勝てるかと問われると『勝てる』と絶対に断言が出来ないが少なくとも負ける事はないとは断言できてしまう。『勝つ』とは断言できないのに『負けない』とは断言できるのは何故かと聞かれるとそれは実に簡単だ。

 

 

 

 

 

 

彼らが膝をつく姿が想像できないから。僕がそう言うぐらいに彼らの実力は確かだ。まあ、彼らと闘ってみればそれはすぐに分かる事だと思うけどね。

 

 

 

 

いつかフェアリーテイルと闘う日が来たらその答えも分かるだろうね。

 

 

 

 

 

 

そんな事を考えながら今日も僕はギルマスとして生きている。

 



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報告会

今日は年に一度の珍しくうちのギルドに所属している者が一同に会する日だ。でも、さすがに全員を同じ場所に居させることをリスクがあるし、何よりも多すぎるから無理。だから一同に会すると言っても幹部と呼ばれている者たちが集まるだけ。まあ、その幹部だけだとしてもかなりの人数が居るから面倒なんだけどね。だからその中でも選ばれた幹部が集まって来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

僕のギルドには少なくとも幹部と呼ばれているような奴が十人は存在する。全員がそれなりの実力は保持していると僕は思っている。全員の実力をこの目で見る機会はあんまりないから確実なことは言えないが『幹部』になるには少なくとも『一人でS級クエストをクリア』が条件。闇ギルドにもS級クエストのような高難易度のクエストがあったりする。闇ギルドに回って来る仕事は命に関わる仕事がほとんどで生きて帰れない事も少なくない。

 

 

そんな中、最高難易度のクエストをクリア出来るようなら『幹部』と呼んでも差し支えのないだろうと思い、僕が決めた。

 

そして今回集まるのはその中の七人。残りの三人はどうしても予定が会わなかったために欠席という事になっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある一部屋に七人の男女が椅子に腰を下ろしている。七人は誰かを見るわけでもなく自分たちの大頭が来るのを待っている。お互いに仲が悪いわけじゃないけど仲が良いわけでもない。同じ主に仕えるようなメンバーだけどお互いの交流はほとんどないと言っても良い。

 

だが、一つだけ七人に共通している事があるとすればそれは………『主への忠誠心』。七人はそれぞれどんな形であれ主に命を救われたり、拾われたりした。自分の命を犠牲にしたとしても主を守る。それだけが七人共通の考えだった。ここに居ないギルドのメンバーも主のために死ねるのなら喜んで命を差し出すような者ばっかだ。このギルドは主に救われた人物の集まりと言っても良いかもしれない。

 

 

 

 

 

 

そして僕が七人との待ち合わせの部屋まで行くとそこには……七人全員が腰を下ろしていた。さすがにここにいる七人は早いな。いつもこういう時にはこいつらが僕より遅く来る事はない。もう少しのんびり来ても良いと言っているんだけど未だに僕より遅くなることはない。

 

 

 

「ごめんね。遅くなって」

 

 

そう口にしながら僕はいかにも一番高価そうな椅子に腰を下ろした。

 

 

 

「約束の時間ですので『主様』が謝る必要はありません。私たちが来るのが速いだけなので」

 

 

僕から見ると斜め右に座っている黒髪の女性が口にした。世間一般から見えば美女の部類に入るであろうが彼女を一般の女性だと思って近づけば痛い目にあってしまうであろう。

 

彼女の名前はウルティア・ミルコビッチ。僕と彼女が知り合ったのは偶然に偶然で僕の協力者である男から紹介されて出会った。別にあった日からこの人をスカウトしようとかウルティアから「仲間にさせてください」と言われたわけじゃない。ウルティアが僕のギルドに入ったのは色々とあってその話をすると長くなってしまうそうだからまた時間がある時にでもその話をするとしようかな。

 

 

 

「ウルの言う通り。私たちの事なんて気にしなくて良いと思います」

 

 

そう口にしたのはウルティアの右隣に座っているピンク色の髪をしている少女が言った。彼女と出会ったのはウルティアと同じ時。名前はメルディ。とても大人しい子で初対面の時は話す事はなかったと思う。知り合って一か月ぐらいが経ってから少しずつ話し始めたぐらいに人見知りな子だ。

 

 

 

 

 

「そうか。それではそれぞれ報告してくれ」

 

 

 

「じゃあまずはリチャード、君から報告してくれ」

 

 

 

「わかりました…のデスネ。六魔将軍の方はあまり大きな動きはない…のデスネ!」

 

 

この顔が角ばっている人物はリチャード・ブキャナン。六魔将軍の一人で実力はうちの『幹部』たちの中では丁度真ん中ぐらいか、少し下ぐらいだと思う。所謂。平均の男だ。語尾にデスネを付けるのが彼の特徴で

少し変なところもあるけど意外と良い奴だ。

 

 

 

「私とランディーの方もほとんど問題ないと思うよ。今のところわね」

 

 

 

「スプリガン12の方もそれほど活発的に動いてないわ」

 

 

 

この二人も本当に変わらないな。よく二人を見かけると喧嘩をしている事もあったりするがやっぱり仲が良いのだろう。この二人と出会ったのはいつだがもう忘れてしまった。この中で一番このギルドに入ったのが速かったと思う。もうかなり前の話だから憶えていないな。

 

 

この二人の名前はディマリア・イエスタ、ブランディッシュ・μ。実力だけで言うならこの二人はギルドの中でTOP5に入る事は出来ると断言できる。それほどにこの二人は実力が高い。

 

 

 

「さっきホットアイも言ったがこちらに問題はない」

 

 

 

このいかにも一番怖そうな男はゼロ……いや、ブレインと言えば良いのだろうか。どちらと言えば分からんがそんな名前の奴だ。六魔将軍のギルドマスターであり実力も高い。こいつの裏にある人格は破壊を愛するような人格だ。闘いには向いているが知能戦には向いていない。それに仮にも『幹部』と呼ばれている人物が無差別に人を殺すような事実が生まれるのは避けなければならない。だからこそ、こいつの裏が出てこないようにこいつの裏の人格には封印が掛けてある。

 

 

 

「私とメルディの方もそれなりに問題はないと思うわ」

 

 

「うん。悪魔の心臓も大きな動きはないかな」

 

この二人はさっきも紹介したがウルティアとメルディだ。さっきは紹介し忘れたがこの二人は悪魔の心臓という闇ギルドに所属している。悪魔の心臓と言えばバラム同盟の一つで闇ギルドの中ではTOP3に入るぐらいの実力を保持していると言われているほどのギルドだ。では、何でそんな二人がこちらのギルドにも所属しているのかと言うと色々理由はあったりする。

 

 

 

 

「私も問題ないと思う。聖十大魔道の中にも不審な行動をする者は今のところいない」

 

 

これが最後の幹部。ハイベリオン、聖十大魔道序列2位の人物であり冷静な判断が出来る人物。能力は『吸血』、間接的な吸血鬼も出来るためにそれなりに強い。僕が指揮できない時はハイベリオンに任せる事も多々あったりする。それぐらいは僕が信頼を寄せている人物。他の『幹部』を信用していないわけではないけど一番うまくまとめる事の出来るのはハイベリオンだと思ってたりする。

 

 

 

 

 

 

 

え……全員なにもないんだとしたら態態、集まる必要なんてないじゃん。まあ、毎度思うことなんだけどな。一年という期間で僕たちを揺るがすほどの事件が起こるような事はほとんどないと言ってしまっても良い。だけど一応、建前上報告だけはしてもらわないといけないからこの報告会を続けている。

 

 

 

 

もうこんな報告会ならこれからは本当に辞めても良いかもしれない。



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心酔

今日は珍しく休暇を貰えて僕は町へと繰り出している。でもそんな僕の隣には私服に身を包んだ…ウルティアがいる。こうなってしまった経緯の説明を始めようかな。

 

 

元々、ウルティアやメルディは僕が一人で町へと繰り出していく事をとても心配していた。僕はそれなりに年を取っているし、さすがに一人で町に出るぐらい大丈夫だと言ってもウルティアとメルディは全然「大丈夫じゃない」と言ってきた。

 

 

あの二人から見たら一体どんな風に僕は見えているのだろうか。見た目は二十代ぐらいのように見えているかもしれないけど目で見えているものが全てだとは思わない方が良い。人間は視覚から情報を得るのが一番多いがその目で見えているものが本当に正しいのかをよく考えた方が良いと僕、個人的には考えている。

 

 

 

 

そして最終的には両者の妥協点がこう収まった。僕とウルティアの二人で町に出掛ける事になった。本当は一人で町に出掛けたかったが二人が食い下がりそうにないのでどちらか一人だけなら良いと言うと二人で話し合いをしてウルティアが来ることになった。それが今の現状だ。

 

「マスターはもう少し色々と考えた方が良いと思いますよ」

 

 

「僕はそれなりに考えて行動していると思うんだけどな」

 

 

「いや、身の危険を考えてないです。私たちのギルドは表のギルドや表の連中に知られていないけど最近、よく私たちの周りを嗅ぎまわっている『ゴミ』がいるみたいですから」

 

僕のギルドは絶対に漏洩されないようにしている。下手にバレて討伐隊でも送られたら闘わなくちゃならなくなるから面倒だしね。

 

 

「これでもそれなりに長い期間の間、表にバレずに来たんだから大丈夫だとは思うけどね」

 

 

「今まで大丈夫だからと言ってこれからも大丈夫だとは限りません。マスターは少し楽観的すぎます」

 

ウルティアは少し心配性すぎるところがあると思うんだよな。会った頃はもっと大雑把な人間だと記憶しているんだけどな。ここ数年で急に心配性になったと思うんだよね。

 

 

 

「そうかな…僕は別に楽観的じゃないと思うんだけどな。君はもう少し肩の力を抜いた方が良いよ。それにそんなに気を張ってばかりじゃ疲れちゃうよ」

 

 

「私はマスターと違って自分の体は自分で管理できます」

 

痛いところを付いてくるな。僕はあまり体が良くない。体調を崩してしまう事も多々あったりして仲間たちに迷惑をかけてしまう事もあったりする。だから個人的にはなるべく体を崩さないようにしたいんだけど、どうしても体を壊してしまう事が多くある。本当に申し訳ないと思うがこればっかはどうしても直す事は出来ない。

 

 

「……それはそうだね」

 

 

「別にマスターを攻めているわけではありませんが………」

 

ギルドメンバーが居なければ…とっくにこのギルドは崩壊していたと思う。僕が倒れている間も誰かがしっかりとギルドを回してくれるから今の現状があるんだよね。

 

 

「いや、責めてくれても構わないよ。ギルドマスターなのにギルドマスターらしいことはあまり出来ていないしね」

 

 

 

「そんなことはありません!!私たちがこのギルドに席を置いている理由をマスターは知っていますか?」

 

急なそんな質問をされても僕には検討もつかないのが本音。だって正直、僕も疑問でしかない。なんでこんなギルドに皆が未だにずっと居てくれているのか。僕にはリーダーシップのようなものが壊滅的なほどにないのは自分が一番分かっているし。

 

 

「それはあなたを支えたいですからですよ」

 

 

「…?」

 

 

「私たちは知らずの内にマスターに心酔しているんですよ。確かに私たちの中には元々はこんな風に長く席を置くつもりはないという人が居たのも事実です。でもいつの間にか、このギルドはとっても心地いいものになっていたと皆が口を揃えて言っていました」

 

 

「別に僕には変わった才能があるわけではないよ」

 

 

「そんなことないです!!」

 

普段は声を荒げることなどほとんどない、ウルティアがこんな感情的になるなんて。

 

 

「…す、すいません」

 

 

「謝らないでください。ただ、私たちはあなたのことを信頼していることを知って欲しかったので…」

 

 

「うん、ありがとね。僕に付いて来てくれて」

 

なるべくウルティアを含めて…皆の期待を裏切らないように頑張らないと。



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