GATE 地球連邦軍 彼の地で 斯く戦えり (急行根府川(青い鳥))
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遭遇編
第1話 連邦軍 異界に立つ


時は宇宙世紀0082、地球連邦軍は先の一年戦争に勝利し、消失した戦力の再建の真っ只中であった。同年8月10日、Tokyoの旧銀座に突如、旧世紀の古代ローマかギリシャ風の門が出現する、連邦軍はすぐさま警戒体制を引いた。



「おい、中はどうなってる?」

 

「真っ暗だ、何も見えねぇ」

 

何人かの軍人が門を覗いている。門の中は真っ暗であり、一寸先すら見えない。

 

「それにしてもこの門…またジオンのヤローらの仕業か?」

 

「さあな………ぐはあっ!」

 

「お、おい、大丈夫かっ!!うぐっ…!」

 

「司令部、聞こえますか!こ、攻撃です!何者かに攻撃を受けてます!!くそっ!」パンッパンッ

 

博物館から飛び出してきたかのような装備を着たヒトガタの兵、ドラゴンが飛び出していく。何人かの兵士は吹っ飛ばされ、何人かは何とか隠れる。

 

「なんだァ?!こいつらァ!!」

 

「埒があかねぇぜ!!」

 

「このままだと市民にまで被害が!」

 

「くそぉっ!」

 

吹き飛ばされなかった兵士達が拳銃を放つ、たくさんの人数が飛び出したため、弾は当たるが多くのヒトガタは柵を破壊して街中へと飛び出してゆく。街中ではパニックが起きていた。一年戦争の経験から市民たちは避難をし始めていたが、旧世紀の騎士のようなものやヒトガタは問答無用にドアやガラスを破壊し建物に侵入する。

そうして殺した兵や市民を積み重ね、敵の大将であろう異界人はこう言い放った。

 

「蛮族どもよ!よく聞くが良い!我が帝国は皇帝モルト・ソル・アウグスタスの名において、この地の征服と領有を宣言する!!」

 

この話はすぐさま司令室へと通達される

 

「くそっ…俺たちの故郷をめちゃくちゃにしてクソみてぇな旗を立てやがって…!!」

 

「指揮官から許可が出た!61式戦車とジム隊は準備が整い次第直ぐに発進せよとのことだ!」

 

「了解、全戦車隊、ジム隊に通達する。各機準備が整い次第直ちにに出撃せよ、繰り返す、各機準備が整い次第直ちに出撃せよ!」

 

「故郷をめちゃくちゃにされたんだ、その代償を償ってもらわなきゃなぁ!」

 

付近の基地から続々と61式戦車とジムが出てくる。しかし、まだ旧銀座まではかかる…その頃旧銀座では…

 

「軍人さん!皇居博物館だ!皇博に避難誘導してくれ!!」

 

「だ、誰だお前は!ここは一般人立ち入り禁止だぞ!」

 

「皇博は旧世紀の中世の頃は城だったんだ!だからそこに立てこもるのがちょうどいいんだ!」

 

「…!なるほど、了解した、上官と掛け合ってみる」

 

ある男が発案した皇居博物館への誘導は大成功となった。皇居博物館は旧世紀に城として建造され使用されていたということもあり、守りに関しては十分な能力を持っていた。

 

「先行ジム隊!まもなく来ます!続いて61式戦車も!」

 

「あと少しだ!踏ん張れ!!」

 

銃撃戦が続いている二重橋についにジムが到着する。ジムは瞬く間にドラゴンを蜂の巣にし、兵士たちを倒す。続いて61式戦車が到着し兵士を打ち払う。異世界からの侵攻は夕方までには鎮圧した。生き残った兵士は捕虜としてあくまで名目上は丁重に扱われた。しかし、多くの犠牲者が軍民問わず出ており、生き残った市民は家族の死に涙を流し、怒り狂う。

その日の出来事はその日中にダカールまで届き、緊急議会が開催された。最初は門の破壊をするという意見が多数を占めたが、あるひとりの声で彼らの意見が変わる。彼はその土地には資源や、コロニー以外の人口の移動ができるのではないかと。先の1年戦争で55億人もの人が死亡したが、それでも人口は過多と言えた。宇宙世紀は人口のはけ口を宇宙へとしたが、彼らは反旗を翻した。ならば次は同じ地面の上だ。ということである、多くの人は納得し、この土地を特別地域、特地と命名。地球連邦軍を特地へと派遣するということが決められたのであった。

ヤシマ財閥やビスト財団、ルオ商会など軒を連ねる大組織もこの件に賛成し、協力するコメントする。

 

皇居博物館への立て篭りを進言したのはイタミという連邦陸軍の軍人であった。彼は生粋のオタクである。この日行われていた地球圏最大の同人即売会へと行こうとしていた。しかし、旧銀座事変が起きたため、その即売会は中止となったようだ。

彼の事を一言で言うと不真面目であり、模範の対義語とも言える存在である。だが、彼はよりにもよって今回の功績によって中尉に任命されてしまったのである。

 

その後、臨時的に門前制圧隊が結成される。これらは沢山余ったジムと今となっては旧式になってしまった61式をかき集めたものであった。そして人員は陸軍各所から集まったのは大中小の尉官や軍曹以上の階級の者達、未知の世界に一般兵などには任せられないのだ。ジムや61式戦車が門をくぐる。門の先は闇夜であった。遠くに赤い光がゆらゆらと光っているのが見える。あれが敵陣だろうか。

 

「連戦で疲れるわほんと」

 

「しょうがねえだろ、ただでさえ軍縮気味なのにこんなのがあっちゃあなぁ」

 

ジムのパイロット達はそう愚痴る。無理もない、彼らは銀座事変からそのままの参加であるからだ、侵攻は夕方には収まっていたがまたいつ来るかも分からない敵に、多くの兵士の気は休まらなかった。

 

「…しっかし技術屋は変なのを思いつく」

 

「余ったジムのバルカンを沢山つけたものを武器にするとは、ある意味恐れ入ったよ」

 

「そもそもMSは対人向けじゃないですからね…」

 

ジムはジオン軍のMSに対抗して作られた武装である、対人向けではないしザクのC型のような核武装や毒ガスなんかも南極条約で装備できない。

1番小さい武装を沢山くっつけて臨時の武装にするしか対人向けには出来ないのだ。

 

その後、敵は第1次攻撃、第2次、第3次と攻撃を仕掛けたが、連邦の圧倒的な火力には手も足も出ずに、地に伏せていった。

 

「地方都市1つ…6万人もの死体の山か…」

 

血で赤く染った丘を見て名も知らぬ兵士がそう呟いた。

この門前の戦いでは第三次攻撃だけで数えられた限りで合計約6万人(事変まで含めると12万)もの敵軍の死者が出たらしい。それも人だけであり、ヒトガタを含めればさらに増えるという。

 

…翌日、中尉となったイタミは上司の部屋へと通された。

 

「なるほど…調査ですか…いいかもしれませんね」

 

「いいかもじゃない!イタミ!君が行くんだ!」

 

イタミはあくまでオマケみたいな中尉にである。資源調査などもこの時期には真面目に行われておらず、イタミ、ましてや連邦軍自体調査という任務自体初めてである。

 

「まさか、1人で行けと?」

 

「そんなこと言うわけないだろう。イタミ、君には臨設のMS混成深部調査部隊の第03部隊の指揮を取ってもらう。担当する地域の住民と接触し状況を把握してもらう。出来れば友好的な関係も築いてもらいたい。」

 

「は、はぁ…まあそう言うことなら」

 

こうしてイタミは第03部隊の隊長にもなってしまったのである。

 

その頃、帝国皇城では、連日の敗北により多く騎士や貴族が帰らぬ者となっており、閑散と葬儀を行っていた。

 

「これまでは予定通りと言えよう、連合諸王国軍が減れば元老院議員たちも安堵するじゃろうよ」

 

「しかし、『 門』より現われた敵の動向が気になります…命からがら逃げてきた貴族によりますと鎧纏いし巨人(アーマードオーガー)がいたとか…」

 

「そなたも神経質になっているようだな、そう難しいことは無い、アルヌスの丘から帝都までの街を焼き払い、荒地にしてしまえば良い。いくら巨人(オーガー)がいようが略奪できる物がなければ撤退するしかあるまい」

 

「しばし税収が低下しそうですな」

 

皇帝もこの事を話したマルクス伯も冷淡に話す。所詮彼らにとって民衆など金を出すATMのようなものなのであろう。

 

「陛下!」

 

白絹の衣装で包み、歩み出たのはピニャ・コ・コーダ第3皇女、つまり皇帝の娘である。

彼女は安堵した表情である皇帝が連合諸王国軍の結末を存じてないようにしか見えなかった。聞くとマルクス伯は「連合諸王国軍は多くの犠牲を払ったが勝利を収めた」などという。ピニャは何を言うかと思った。連合諸王国軍だけでも6万もの兵を失ったから尚更だ。再建すると伯は言うが、そんなものを悠長に待っていたら彼らは確実に帝都へ侵攻してくるであろうと。

しかし皇帝の「お前ならどうするのだ?」という問に、彼女は何も意見を出すことは出来なかった。

 

皇帝は多少辟易とし、娘にこう提案した。

 

「ならば…アルヌスの丘の敵共の偵察をそなたが設立した『騎士団』と共に行ってくれぬか?」と。

 

ピニャは不満に思う、彼女は華々しい会戦をしたかった。しかし、これは最前線への偵察である。つまり死との隣合わせとなるわけである。実戦のない自分や部下達でやり遂げれるのだろうかとも思った。しかし、言ってしまったからにはやるしかない。

 

「どうだ。この命を受けるか?」

 

少し間が空き、彼女は思い立ったように顔を上げる。

 

「確かに承りました」

 

彼女はピシャリと言い放ち、儀式に則った礼をする。

 

「ウム、成果を期待しておるぞ」

 

「では父上、行って参ります。」

 

彼女は背を向け皇帝の間から去った…。




次回予告
第03部隊隊長になったイタミの前に現れた部下たちはどれも揃って曲者揃いであった。動き始めた03部隊は竜によって焼け落ち瓦礫と化した村で1人のエルフを救出する…。
次回 GATE 地球連邦軍 彼の地にて、斯く戦えり 「焦土とエルフ」
君は、彼の地で何を見るか?


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第2話 焦土とエルフ

初めまして、急行根府川(青い鳥)と申します。この度はGATE 地球連邦軍 彼の地にて、斯く戦えり を読んでくださったり、お気に入り登録をしてくださってありがとうございます。さて、この小説ではこの先の話にオリジナルのキャラクターが登場しますので今回のあとがきに簡単なその人達の紹介が置いてあります。よろしくお願いします。あと、誤字など見つけましたらぜひご報告を。


あの惨劇から2ヶ月ほどが経過し、アルヌスの丘には急ピッチで大型の基地が建造されている。しかし現在は簡易的なコンクリート低層ビルのようなものが建っているだけである。

イタミは第03部隊の隊長となったのは前回であったが今日はその対面と早速の偵察である。

 

「まあ…今日から君たちの隊長になったヨウジ・イタミだ、まあ普通に接してもらって構わないよ。」

 

イタミが自己紹介するとみんなそれぞれ自己紹介をする。旧日本出身者がが11人、MS担当として3人が派遣されている。

 

「で…俺たちが使える兵器はこれか?」

 

「輸送用エレカトラックが2台、ホバートラック1台、これは派遣の3人のものですがジムスナイパーカスタムが一機、ジム・コマンドが一機、ジムキャノンのカスタム仕様が一機のようです。」

 

とテツヤ・ニシナが説明する。彼はこの隊ではNo.3であり、書類仕事を担当することにされている。奥さんの尻に敷かれているらしい。

 

「ちょっと、私の分のMSがないじゃないですか!」

 

小柄な女性が文句を言う。彼女はシノ・クリバヤシ、一年戦争末期の入隊であり、初陣はア・バオア・クーである。前期ジムでゲルググを殴り倒したと本人は言っている。

 

「しょうがないですよ、上はいま残党狩りで忙しいんですし、今出せるのはライトアーマーぐらいですよ」

 

ライトアーマーはエースが乗ることを想定して装甲を犠牲にして機動力を得たジムである。が、作られた当初は良かったものの、最近だとNTの出現や、ジオン残党の武装もなぜか強力になって来たことに加え、その後に登場した総合的に高性能なジムスナイパーⅡなどに役目を追われ、最終的に多くの機体が特地へと流れ着くことになった。

なぜ特地へと来たのかは単純で

「相手の武装だとそもそも壊せないだろう」

という理由である。

 

「な、ならいいかな…」

 

前評判を聞いたことがあるのか、クリバヤシも諦めたようだ。

 

「さ、さあ、そろそろ行こうか」

 

一通りの話が終わると彼らは出発し、一同はコダ村という村に着いた。そこの村長に話を聞き、その先の森にも村があるということを聞いた。

 

「空が蒼いねぇ、さすが異世界」

 

「こんな風景なら、北海道にもありますよ」

 

真ん中を走るホバートラックに乗るイタミとクラタが話している、クラタはハコダテ基地から来ていて、獣人好きとの事。

 

「いやー、吸い込まれそうだ、僕はこういうの苦手っす」

 

ジムスナカスに乗るパイロット、ゴロウ・タカモトはそういった。彼は俗に言う宇宙軍からの引き抜きであり、エースパイロットである。彼を含むMS乗り3人はみんなコロニー出身者である。

 

「そういえばタカモトはどのくらい撃墜してるんだ?」

 

「MSだけで言うなら17っすね」

 

「おいめっちゃエースじゃん、むしろなんでこっちに来たのよ」

 

「うむむ…多分上官はNTっぽいやつは僻地に送り込みたいんだと思うっす」

 

「NT…あの伝説のアムロ・レイみたいな?」

 

「そうそう、まあ、僕は彼とは違って多少直感が鋭いだけっすよ、攻撃も当たる時は当たるし…ん、確か、この部隊には僕達が今乗っているを含めて2個小隊分のMSが配備されるはずでしたよね、クリバヤシさんは分かりますが、残りのふたりって…?」

 

「ああ、それは俺とトミタだよ。」

 

「へー、隊長もMS乗れるんですね、MS何機撃墜したんです?」

 

と、クラタが話に乗ってくる。

 

「えーっと…たしか6機だったっけな?」

 

「え、えーっ!?」

 

後ろからクリバヤシの大声が聞こえる

 

「隊長がエース!?あんなので!?」

 

「ま、まあ、そういうことになる…かな?」

 

エース・パイロットとは時代によって変化するものである。ここでは第二次世界大戦の指標を参考にして、5機以上撃墜でエース・パイロットになれるとする。ちなみにトミタは7機、クリバヤシは2機である。

 

「おいクラタ、この先しばらく行くと小さな川に出るはずだ、そしたら右折して川沿いに進め、そうしたらコダ村の村長が言っていた森が見えてくるはずだ。」

 

この隊の最年長のクワバラが地図と衛星から送られてくる地図をにらめっこしながら言う、連邦軍はこの2ヶ月の間、HLVを使い無理やり衛星を置くことに成功した。しかし数が足りないので頼りないのだ。こういう地図の仕事は隊の中でもベテランのクワバラが向いているとイタミが押し付けているのである。

 

「イタミ中尉、意見具申します。森の手前で野営にしましょう、もうじき夜が来ます。」

 

太陽は既に午後の斜陽に入ってきていた。この世界に四季があるかどうか分からないため、いつ太陽が沈むかも分からない。

クラタは後方との車間距離を確認する。

 

「あれー?イタミ中尉、一気に乗り込まないんですか?」

 

「ああ、いつ夜になるかも分からないし、夜の森の中で変な虫とか魔物やらが出たら怖いでしょ?それにこの森の中に村があるって話だし、ホバートラックはともかくエレトラが走る音なんて夜に聞いたら住民が驚いちゃうだろうからね。だからとりあえず今日はここまでにして、明日森の中へ入ろって訳」

 

一行が森に到着するとまず見たのは森を焼き尽くす炎と周りを覆う黒煙であった。

 

「燃えてますねぇ」

 

「はい、盛大に燃えてます。タカモト、そのビームライフル水ブシャーってできない?」

 

「そんなん出来たらとっくにやってますって」

 

3人が腑抜けたように言う。

 

「いやー自然の脅威っすわ」

 

「お、あれは…」

 

ゴロウはスナカスのバイザーを下げて確認する

 

「やっぱり、ドラゴンだ」

 

「え、まじ?」

 

「あっ、ほんとうだ」

 

クラタは双眼鏡でドラゴンを見つけたあと、イタミにそれを渡す

 

「イタミ中尉、どうしますか?このままボケっと突っ立ってるのもどうかとは思います。」

 

「んー、あのドラゴンさぁ、何も無い森を焼くと思う?」

 

クリバヤシは辛辣に答える

 

「ご自身で見に行ったらどうですか?」

 

「クリバヤシちゃん、おいら一人じゃ怖いからさぁ、ついてきてくれない?」

 

「私は嫌です」

 

「あっ、そう」

 

「いやー、俺の経験から進言させてもらいますに、あれには近づかない方がいいかと、火中の栗は拾わない方が吉でしょう。」

出向組の中では最年長のケリーが進言する。

「私もさんせ〜、わざわざ行く意味ないシ。」

同じく出向組のアルギニナもその意見に同調する。

「おっ、そうだな、とりあえずは隠れて様子見って言うことで」

 

「「「了解」」」

 

結局、森を焼く炎は深夜まで続いた。深夜は雨が降り、火は落ち着いた。一同は焦土となった森を進む。

 

「これで生存者がいたら奇跡ですよ」

 

スナカスの手のひらに乗っているクラタが言う。

 

「今でも森林火災は凄まじいものだからな…」

 

1時間ほどMSに揺られると木が無い開けた場所に出る、どうやらここが村だったようだ。

 

「中尉、これって…」

 

「クラタ、言うんじゃない」

 

「うぷっ…吐きそうになってきましたよ…」

 

「まるで旧世紀のポンペイの遺跡みたいだ、凄まじすぎる…」

 

見渡す限り瓦礫と死体が散らばっており、この世のものとは思えないような惨状であった。

 

「ニシナ軍曹、カツモト、トヅを連れて東側を回ってくれ、クラタ、クリバヤシ、俺たちのは西側を探すぞ、MS組は上空警戒を怠らないように…そしてクワバラ達は…」

 

イタミが割とスラスラ指示を出す。

 

「…探すって何を?」

 

「うーん、生存者かな、可能性はゼロに近いけど」

 

その後、小一時間探したが、どうやらここには今の所生存者は居ないようだ。

 

「瓦礫の計算と、死体の人数の計算をしましたがいくらなんでも少なすぎます」

 

「瓦礫の下にでも埋もれてるのだろうなぁ」

 

「ドラゴンは集落を襲うと報告しなければね」

 

「銀座事変や門の防衛戦でもドラゴンは確認しましたけどどれもあれよりも小さいものでしたし」

 

「あの大きさですら人間の重火器でも苦戦しましたからね…まあジムのビームスプレーガンでみんなお陀仏でしたけど」

 

「うーん、まあちょっとした装甲車って訳ね」

 

水が減ってきたイタミは周りを見渡す、そして偶然自分が腰掛けてた物が井戸だと気づき、紐をつけた水筒を下に向かって投げる。その水筒はボチャンとではなくカーンっと言う甲高い音を鳴らす。

 

「…あれ?おかしいなぁ、普通ならポチャンとかドボンとか言うはずなのに」

 

「なんでしょうね?」

 

とイタミとクリバヤシが糸の底を見つめる。暗くてよく見えないが、何かあるということだけはわかる。

 

「クラタ、ライト持ってる?」

 

「あ、ああっはい」

 

クラタはイタミにライトを渡す。イタミがそれを使って井戸の底を照らすと、そこには…

金髪で長耳の少女が横たわっていた。




次回予告
金髪の少女を救出したイタミ達はコダ村に炎竜のことを伝える。その後、一行はその炎竜から逃げる人々を守るためについて行くことになる。そこには長寿な賢者とその見習いの少女がいた… 次回 GATE 地球連邦軍 彼の地にて、斯く戦えり 「賢者の弟子」
君は、彼の地で何を見るか?
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おまけ、MS3人組の簡単な紹介
・ゴロウ・タカモト 2地球連邦地上軍 少尉。本作のサブ主人公的なの。
撃破MS17機のエースパイロットであり、サイド1の6バンチ「フリーダム」出身。彼は初期NTらしく、直感が鋭い。獣耳っ子が好きらしいが本人曰く「自分的には0だろうが100だろうが問題は無い」…らしい。クリバヤシはイタミ、クラタ、タカモトの3人を(オタク小隊)と呼んでいたりいなかったり。
・ソフィア・アルギニナ 同軍軍曹。
ジム・コマンドのパイロット、サイド2の2バンチ「ジュラ」出身。いつもほわほわしている不思議ちゃんであり。大の酒豪である。撃破MSは7機。
・モリス・ケリー 同軍 軍曹。
ジムキャノン(両肩にキャノン砲装備)のパイロット、サイド5 19バンチ「ニューオリンズ」出身、出向組では最年長、元61式戦車乗りであり、61式でザクを5体、ジムでMS5体倒している。豪快で、心が広い人物。
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次回の更新は5月6日の予定です。炎竜の腕が吹っ飛ぶ辺りまでは2日に1回更新を目指していきます。またお会いしましょう!


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第3話 賢者の弟子

こんばんは、本日も更新でございます。今回のオマケみたいなものはMS組のMSでございます。これもある程度進んだ時に別個出す予定です。


「よし、こっちの準備は出来た!上げてくれ!」

 

「あいよ!」

 

イタミの言葉にケリーが威勢よく返事をし、彼のジムキャノンのバックパックに着いた巻き取り機が牽引ロープを巻き取り始める。

 

「いやー、備えあれば憂いなしですな!」

 

「そうだなぁ、もし人力だったら何十分もかかってただろうし」

 

「それにしても、エルフっすよ中尉」

 

「エルフだな〜」

 

「くぅーっ!希望が湧いてきましたなぁ!」

 

「まさにファンタジーって感じだなぁ」

 

オタク小隊がオタ話で盛り上がっていた時、女性官の3人は濡れた服を脱がせてブランケットに包んであげたり、手当をしていた。

 

イタミは彼女のことを気にかけつつも、近づいたらクリバヤシに鉄拳制裁されるため、あまり不用意な事は出来ないでいた。

 

「お、ササガワ、どんな感じだった?」

 

「タカモトさんが言ったようにまるで噴火後のポンペイのような惨状です。」

 

ササガワはそう言ってカメラで撮った画像を見せる。ササガワの趣味は写真で、03部隊では記録係を押し付けられている。

 

「なるほどなぁ…いやぁ、なんか大変なことに巻き込まれた気がするなぁ」

 

「同感です」

 

しばらく話していると看護師資格を持つ黒川軍曹がやってきた。スレンダー且つ高身長なため170cm程度のイタミでは見上げる体勢となる。

 

「とりあえず体温が回復して参りましたわ。漫画みたいなおでこのコブも時期に消えるでしょう。さて、この後はどうしましょう?いつまでもここにいる訳にも行かないですし、彼女を置いてくのもどうかとは思います。」

 

「まー、ここの集落はもうダメだし、保護してとりあえずお持ち帰りしましょ」

 

「中尉ならばそう言ってくださると思っていましたわ。」

 

本来の予定ならば、このあとも2、3箇所集落を巡る予定であったが、炎竜や、彼女のことを本部に連絡すると

「ならその炎竜というのの話も聞きたいし、今日はここまででいいよ」

的な返事が来たのでイタミ達は一路基地へ戻ることになったのである。

 

「ドラゴンが来たら嫌だなぁ」

 

「言うなって、ホントになったらどうするんよ」

 

「まー、心配無用っすよ、僕のスナカスのビームライフルで蜂の巣にしてやりますから」

 

「うーん、軽いノリで大丈夫なのかぁ?それ…」

 

「んー、まあ勘が鋭いのが僕なので、来たらなにか感じますって。」

 

「まあNTってやつはそんなもんらしいしな」

 

「中尉、エルフの標準血圧ってどのぐらいでしょう?脈拍数とかは?」

 

「わかんないなぁ、エルフとかが出るゲームやら漫画とかだと人体?…エルフ体?の情報なんてどれもテキトーだったりするからねぇ」

 

「…とりあえず、呼吸は落ち着いてますし血圧や脈拍数、体温とも安定。不自然に汗をかくこともないですし…でもこれは人間の場合という訳ですから…」

 

「うーん、やっぱ現地の人に聞くしかないのかなぁ」

 

昨日通った道を同じ時間かけてコダ村へ戻り、その事を村長へと報告をする。

 

『わたしたち、森に行く、大きな鳥、いた。森焼けた。村焼けた。』

 

片言な現地語を話しながらイタミはドラゴンの絵を描く。割と上手だ。

 

『こ、これは古代竜じゃ…!それも炎竜じゃよ…!』

 

『ドラゴン、火、出す。人、沢山、焼けた』

 

『人ではなく、エルフであろう、あそこに住んでいたのはエルフじゃよ』

 

どんどん辞書へ知らない単語が増えてゆく。

話によると、エルフは昔からあの森に住んでいて、多少の交流はあったとの事、そして、人やエルフの味をしめた炎竜は人を襲い、喰らうらしい。

 

『わかった、よく教えてくれた。』

 

『あと、一人、女の子、助けた。』

 

『おおお…、痛ましいことじゃな、この娘1人を残して全滅とはのぅ…』

 

『はい…』

 

『さて、支度をしなければならぬな』

 

『どうして、ですか?』

 

『どうしてって…わしらは今からこの村から逃げ出さなければならぬ」

 

『村、捨てる?』

 

『逃げ出すのじゃよ。炎竜に襲われぬうちにのぅ、本当によく教えてくれた、お主らには感謝するぞ。』

 

村長との話が終わる。村長は村のみんなに伝えに行ったようだ。

 

「村を捨てるのかぁ」

 

「北海道の山奥でもそういうのありますよ、熊ですけど。人間の食料の味を覚えた熊は人を襲いますからね…ある老人から聞いた話があるんですけど。」

 

「…それで?」

 

「大昔にそういう事態が起こって集落ひとつが消えたとか…」

 

「うわぁ…熊ですら小型のエレカぐらいはあるからなぁ、それが装甲車サイズ以上になるならたまったもんじゃないなぁ…」

 

しばらくすると各所からたくさんの馬車が集まってきて列をなす。その列の中に、また1台、馬と馬車が合流してくる。

 

『いやー、本当に不思議じゃ、炎竜は約50年先に目覚めるはずじゃったのに…』

 

『これはこれは、カトー先生。レレイも、今回は大変なことになりましたなあ、実は荷物の積みすぎで車軸のへし折れた馬車が道を塞いでるのですよ。みんなで片付けてますがまだまだ時間はかかりそうです。』

 

カトーという老齢の男性の隣に座っていたブロンドヘアーの少女…レレイは後ろからなにやら謎の言語を話す薄茶の服を着た人たち、そしてその後ろにいる巨人について興味を引かれた。

 

「避難の支援も一応は管轄内だろ?とにかく事故を起こした荷車をどけるぞ、イタミ隊長は村長から出動の要請を引き出してくれ、トヅは後続にこの先の渋滞を知らせて他の道で聞くように説明しろ!言葉ァ?身振り手振りで何とかしろ!クロカワは事故現場でけが人がでてないか調べてくれ!」

 

クワバラの声が森へも響く、そして全員がテキパキと動き始める、さすがは鬼軍曹と言われた男と言うべきか。

その的確な支持で動く薄茶の服の人達を見てレレイはさらに興味を引かれる。

 

『師匠、様子を見てくる』

 

と師匠であるカトーに伝え、彼女は馬車を降りた。自分達の馬車の15台先にその問題の馬車があった。車軸が折れ馬車が横転している。驚いた馬が暴れたらしく、周りには散乱した荷物、倒れている男性、そして母子の姿があった。馬は泡を吹きながらもまだ起き上がろうとしてじたばたしている。そのためほかの住人たちは近づくことが出来ないようだ。

 

『君、危ない、さがって?』

 

薄茶の人達が片言に話す。どうやら助けようとしてくれるようだ。

 

『まだ生きている。でも…』

 

『レレイ!何をしている?何があった!?』

 

振り返ると村長だった。そして何人か新しい薄茶の人もいる。事故の知らせを聞いて駆けつけてきたのだろう。

 

『村長。事故。多分荷物の積みすぎと荷車の老朽化。子供が危険、母親と父親は多分大丈夫だと思われる。馬はもう助からない。』

 

『カ、カトー先生は?』

 

『後ろの馬車で焦れてる。私は様子を見に来た。』

 

黒い髪で長身の女性が子供を見ている。彼女は医学の知識があるような行動をしている。それならばもう大丈夫だろう。

 

「あ、危ないっ!」

 

その方向を見ると薄茶の人が違う場所を指さしていた。その最多方向を見ると、知らないうちに立ち上がり暴れていた馬が倒れてきてた…避けられない…!

 

「おらあっ!」

 

…誰がが私を庇って弾いてくれた。わたしは尻もちを着いてしまう。その人は30代前後の薄茶の男性だった、彼もどうやら潰されずには済んだらしい。

 

そして

 

バンバン!!

 

という破裂音とともに馬の眉間からは血飛沫が吹き出す。そして直ぐに馬は動かなくなった。

私はその出処を見つめる、1人の薄茶の人がそれを鳴らしたらしい。彼は…どこか悲しい顔をしていた。




次回予告
疎開者と共に進む03部隊は道中、謎の漆黒の少女と出会う。彼女の目的は何なのか?そして荒野を進む彼らの前に彼奴が姿を現すのであった。次回!GATE 地球連邦軍 彼の地にて、斯く戦えり 「炎竜、強襲」
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MS紹介

・ジム・スナイパーカスタム
ゴロウ・タカモト機。ア・バオア・クー攻略戦以降ずっと使い続けている機体。しかし、攻略戦時の敵エースの攻撃で右脚部が損失、左脚部も半壊状態だった為、その後装甲強化形型ジムの試作型の補修パーツが修復用に使われ、不安定ながらもホバー移動が可能となっている。
・ジム・コマンド(カスタム機)
ソフィア・アルギニナ機。ア・バオア・クー攻略戦頃に受領、宇宙戦仕様である。。特地派遣に伴い、バックパックなどを地上特化型タイプへと変更等されている。
・ジム・キャノン(両肩部キャノンタイプ)
モリス・ケリー機。本体はア・バオア・クー攻略戦での受領だが、改造は以降となっている。ジムキャノンであるが両肩部キャノンにするために胸部はパワードジムタイプのものである。バックパックに牽引用の巻き取り機とロープがつけられている。3人ともある人物からの根回しにより、ある程度いい武装が手に入っている。



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第4話 炎竜、強襲

次の次の話からは水曜と日曜更新になります。話のストックとかも貯めたいので…。あとそれ以降はオリジナルMSも増えるのでお楽しみに?


さて、前回も言ったようにアルヌスの丘では基地の建設作業が急ピッチで行われている。しかし実際に見えるのは低層ビルと滑走路ぐらいであろう。見た目からはこれだけ?と思う人もいるだろうが、そう、連邦が作っている場所は地下なのだ。現在、連邦軍のジャブローのような強固な要塞を連邦は地下に拵えている最中なのだ。

ところで、連邦軍兵士がなぜ住民の手伝いをしているのかだが、それは連邦軍がとにかく協力することで、その地での優位性を確保する為であったりする。

 

一方、イタミ達03部隊と難民達は移動を続けていた。

 

「クロちゃ〜ん。どう?女の子の様子は」

 

「イタミ中尉…意識は回復しつつありますわ、今もうっすらと開眼しています。」

 

イタミはその少女を見つめる、一流の芸術師が作り上げた傑作のように見える少女、その隙間から覗く瞳はまるでアクアマリンのように思える。

イタミは見ながらこの先の困難を思う。全て安定していることは悪いことでは無いとクロカワは言うがまだ安心はできない、そして、状況は彼女のような安定は全くしていないということであった。進まない難民の列、カンカン照りの太陽、事故、苛立つ大人、増加するけが人、病人、落伍者…。

 

「はぁ、上手くは行かないもんだねぇ…」

 

イタミはため息を着く「喰う寝る遊ぶ、その合間が人生」がモットーである彼にとってこれは苦痛なことであるからだ。しかも、それがいつまで続くかも分からない。

 

もはや荷車がぬかるみにはまるのなんて日常茶飯事になってしまっており、それが起こる度にイタミたちはすくい上げる。最初のうちはMSが行なっていたものの、燃料の観点で問題になり、今では人力で押し出している。

 

難民達は思う、なぜ薄茶の人々はここまで自分たちに優しいのかと。

 

しかし、それでも荷車が壊れた場合は別だ。彼らにその代替部品がないことが分かれば、必要な荷物以外は燃やす。そうしなければ彼らはいつまで経ってもそこから離れようとしないからだ。

 

「隊長、本部からほかの人員を引き出せないんでしょうか…」

 

「無理だってさ、だって、ここは敵の後方にある、少数ならば気づかないかもしれないが大人数になればそうとは限らないからね…」

 

「成程…」

 

「だから俺たちが手を貸すしかできないんだよ」

 

既に2台エレカトラックの人員は03部隊と疲れて動けなくなった子供やけが人でいっぱいだった、しまいには上に乗っている人もいる始末である。

 

「もっと早く動けないもんですかねぇ、こんなのエレカの教習以来ですよ」

 

「まあそうカッカすんなって、上に乗ってる子達が振り落ちちゃうよ」

 

「ホバートラックの上にも乗ってるんですね…そういえば、さっきからカラスみたいなのが飛んでますね」

 

「あ、前、人がいます」

 

先頭をゆっくり歩くスナカスに乗ったタカモトがぽつりと言う。

 

「どれどれ…ゴスロリ少女?」

 

よくアニメで見るような服装を着た少女が立っている。

 

「まるで人形みたいですね…こんなカンカン照りになんで道の真ん中で突っ立ってるんだろう?」

 

「どうします?あの子」

 

「うーん、ほっとく訳にも行かないし…、よし、カツモト、ヒガシ、2人で話しかけに言ってくれないか?」

 

「「了解」」

 

カツモトとヒガシが話しかけに行く、が、相手は何も言わないのか、困った様子が見て取れる。彼女の服装はここにいる難民のような服装ではなく、むしろ現代のレイヤーのような服装に見える。彼女の前まで来ると、その子は待ちくたびれかのように服に着いた埃を払う。そしてデカい死神か何かが持ってそうな斧を軽々と持ち上げ、ホバートラックの横を歩き始める。

 

『あなた達、どこからいらしてぇ?』

 

彼女は現地の言葉を流暢に話す。どうやら彼女は特地の住民らしい。当然、まだまだ現地語が不自由なイタミ達が答えられるわけもない、辞書を見てカタコトな現地語を話すのが精一杯だ。ヒガシもカツモトも諦めた用に肩を竦めてとりあえず歩き出す。

 

『コダ村からだよ、お姉ちゃん』

 

コミュニケーションの空白を埋めたのはホバートラックの上に座っていた7歳ぐらいの男の子だった。

 

『ふ〜ん?この変な格好の人達はぁ?』

 

『よく知らないけど、助けてくれてるんだ。いい人達だよ?』

 

『嫌々連れてかれてるわけじゃないのねぇ?』

 

『うん。炎竜が出たんだ。みんなで逃げ出してきたんだよ』

 

イタミ達は納得してる様な感じの表情しかすることが出来なかった。東達は後方の支援に向かう。少女から情報を取るのは自分でやることにした。

 

『そういえばあの巨人は誰なのぉ〜?』

 

『あれは中に人が入ってる巨人なんだ、僕の友達があの巨人の手の上にいるよ?』

 

立ち止まってるスナカスの手の上にいる子が手を振っている。

 

『へぇ〜、どんな感じかしら?』

 

その少女は軽々と飛び、なんとMSの手の上まで来る。

 

『わあ!凄いねお姉ちゃん!』

 

『それほどでもないわぁ〜』

 

タカモトはGガンダムの東方不敗みたいな動き方をする彼女に驚いて固まってたがすぐMSのハッチを開けて顔を出す

 

『あの、あなたは?』

 

『あらぁ〜、本当に中に人がいるのね、入らせてもらうわぁ〜♪』

 

「あー!おやめ下さい!!!中は精密機器ですぞ!あ!それは入らないって!だから精密機器なんだってちょっと!ねぇ!やめて!ねぇ!?!」

 

押し問答がしばし続いたあと、結局、彼女はタカモトの膝の上、彼女の持つ斧…ハルバートは手の上に置くことになった。

 

「前が…見えねェ…!」

 

そもそもMSは特殊機(ジムトレーナーなど)を除いて単座機である。避ける隙間というものは2世代後のMSを待つ他ない。なのでこうなっているのだ。

 

『あら、これはぁ〜?』

 

『触る、ダメ。』

 

『 アレはぁ〜?』

 

『ダメ』

 

『喉が乾いたわぁ〜?』

 

『……これ、のめ』

 

オプション配備の水筒用小型水冷庫からペットボトルを取り出す。フツーのレモンティーだ。

彼女はフツーに口をつけて飲む。

 

『美味しいわねぇ♪』

 

彼女はそのまま全部飲んでしまった。タカモトは渋い顔をする。

 

『また飲ませて欲しいわぁ♪』

 

「も、もう嫌だ…」

 

結局それは夜まで続いた。夜はさすがに出てもらってエレトラで寝てもらう。

 

「良かったじゃねぇか、可愛い女の子が膝の上だぜ?」

 

「嬉しくなんかありませんよ!!!大切に飲んでたレモンティー全部飲まれたんっすよ!あのブランド数が少ないから基地の店頭に出てもすぐ売れちゃうのに!!」

 

「じゃあ間接キッスって訳か!よかっ…」

 

「全然良くないよ!!!僕はもう寝るっすよ!おやすみ!」

 

「珍しくキレてるなぁ」

 

「しょうがないですよ…みんなこんな状態でストレス溜まってるから…」

 

「う、ううん、そうだな…。」

 

それから数日が経つ。相変わらず彼らは旅を続けていた。

 

「クソっ、あの竜、まさかここまで追ってくるとは!!」

 

ホバートラックはやっと本来のスピードで飛ばしていた。何故ならば目の前には…

 

 

…あの炎竜がいたからだ。

 

「軍隊が怪獣と戦うのは映画だけの話だとは思ってたがっ!まさか、ここでおっぱじめることになるとはねっ!」

 

上に乗っていた子供たちを全員中に入れたホバートラックは荒野を疾走する。

 

「くうっ…!20mmじゃあ効かへんかぁ!」

 

カツモトはホバーに備え付けられてる20mmガトリングガンを放つ、それでもそのぐらいで小さな竜を倒せたのだから、炎竜にとっては小バエ程度だ。

 

「ソフィー!この子を頼む!」

 

「ゴローさん!?…分かりました。」

 

タカモトはスナカスに乗っていた子供をソフィアに託す。

 

「よし、行ってくる…!」

 

タカモトを載せたスナカスは走り出す…炎竜に、向かって。

 




次回予告
03部隊を襲った炎龍は火を吐き、住民を食らう。誰が見ても凄惨だと思える状況に居てもたってもいられなくなったタカモトは一人走り出す。彼が思いついた作戦は?そして、03部隊は炎竜を倒すことが出来るのか?次回!GATE 地球連邦軍 彼の地にて、斯く戦えり 「死闘、炎竜対03部隊」
君は彼の地で何を見るか?


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第5話 死闘、炎竜対03部隊

というわけで水曜日からは更新速度を遅くします。あと多少抜けてるところがあるけど自分も小説書きとしてはまだまだな人なので生暖かい目で見てください()


「僕が相手だ…!炎竜!!」

 

ホバー移動に移行したスナカスが脚部から外した100mmマシンガンを撃ち始める。100mmにもなればいくら巨大な竜であろうとダメージを受ける。しかしこれはあくまでも相手の注意を引きつける為のものだ。炎竜もそれだけの痛さを感じれば気づかない訳があるまい。むしろ逆鱗に触れたようだ。

 

「よし、標的がこっちになった!ソフィー!ケリー!2人は今のうちに住民の避難を!」

 

「「了解!」」

 

一方、イタミ達もホバートラックを走らせる。

 

「隊長はん!リジーナや!これを倒すにはもはやリジーナしかあらへん!」

 

「わ、わかった!」

 

イタミは積まれた備品の中をかき分け対MS重誘導弾M-101A3を取り出す。リジーナは対MS用に一年戦争初期に開発された数少ない対抗兵器である。一年戦争後も基地防衛などで使われているが、今回の特地派遣でも基地破壊などに使えるかもしれぬと全隊に配備されている。しかし、03部隊はもう既に炎竜の行動範囲から出たと思っていた、そして子供などを載せるのもあってか外してしまっていた。

 

「走りながら付け直すのは大変や!くっそー!」

 

「よし、これで取り付け完了だ!」

 

ササガワとカツモトが突貫で取り付ける。あとは弾を装填するだけだが…

 

「ぐうっ!しっぽが邪魔で近づけない!タカモト!竜をこっち側に向けるんだ!」

 

「り、了解…!」

 

荒野をなめらかにスナカスが弧を描きながら快走する。逆鱗に触れた炎竜は炎が体から吹き出したように見え、そして何かを吐き飛ばす。

 

「か、火炎弾か!クソっ!」

 

火炎弾は避けるものの、それに気を取られてマシンガンがオバヒを起こす。その後も何発か火炎弾が飛んでくるが、持ち前のホバーを使い、器用に避ける。そしてタカモトはオバヒしたマシンガンを左足に戻し、左腕部に備え付けられたバルカンを撃つ。

 

『ono!yuniryu!ono!』

 

無線から聞いた事のない女の子の声が聞こえる。その声の主はあのエルフであった。彼女は自分の目をさしながら『ono!』と連呼する。その様子を見たイタミはその意味にすぐ気がついた。

 

「タカモト!ササガワ!目だ!目を狙え!」

 

その声はスナカスを駆るタカモト、20mmガトリングを放ち続けるササガワに届く。

 

「「了解…!」」

 

スナカスが弧を描きながらホバーの後ろを通過する。知らぬうちに左目を矢で撃たれた炎竜の顔がホバートラックの目の前に来る。

 

「一気に行きます!カツモトさんは確実に1部位をたたき落としてください!」

 

ホバーモードをやめ、炎竜の顔の真横にスナカスは足を擦りながら来る。そしてスラスターを噴かせ、空へと飛び、背中に装備されていたスナイパーライフルを手に取り炎竜の真上へと到達する。

 

「後方の安全確認!ヨシ!リジーナ!いっけぇぇえええ!!」

 

リジーナが発射される。ホバートラック自体は反動でスリップしてしまうものの、上のスナカスに気を取られていた炎竜にはリジーナが発射されたことにすら気づけなかった。そしてリジーナは炎竜の右腕の付け根へと着弾する。

 

絶叫。したのもつかの間。

 

「スナイパーライフルだ!目にでも喰らいな!」

 

スナカスのビームライフルは顔の右半分を融解させながら右目に命中、そして地面まで貫通する。しかし炎竜もタダでは堕ちない。顔を上にあげ、さっきのよりもデカい火炎弾をライフルにお見舞する。ライフルには当たらなったものの、スナカスの肩に衝突し、バランスを崩させる。

 

「ぐうっ!…右の肩関節がイカれたか!」

 

左で引き金を握っていたスナカスは射撃を辞めることが出来たが、バランスを崩し、飛び出した反対側へと落ちる。その隙を狙ったのか目の光を失った竜はどこかへと飛び去る。残ったのは叩き落とした腕のみとなった。

 

「はぁ…はぁ…」

 

スナカスは火炎弾とバランスを崩し倒れた時に右腕の関節部分を全て破損、修理しなければ右側は使えない状態になった。そしてホバー部分も長時間使用+無理なスラスター飛びのせいで破損した。幸い、タカモトには怪我はない。

 

2体の巨人に連れられた難民達の多くは炎竜が苦しそうに飛び立つのを目撃した。あの炎竜が撃退されたのだ。全員はそれを見て驚愕する。数人と一体の巨人だけで炎龍の目を潰し、片腕を叩き落とすことなど自殺行為だということを知っていたからだ。しかし彼らは見事にそれを行った。しかも被害は4分の1どころか8分の1以下だということである。もはや誰も信じないレベルまで来ているが彼らはそれを見てしまったのだ。話には脚色が着くのはよくある話だが、この頃竜を撃退したという事実もどんどん広がることになる。そして聞いた人は思う 「炎竜を撃退した物は何者なのか」と。

 

その後難民達が行く道筋は3つに別れた。ひとつは親類を頼るもの、もうひとつは知らぬ場所で避難生活を始めるということである。しかし彼らは自分たちのことよりも、お人好しすぎる彼らの方が心配になってしまうのである。

 

元コダ村の住人や一緒に移動してきた他の集落の住人達は新天地などで質問攻めにあう。その質問は皆「竜が撃退されたのは本当なのか?」ということである。

 

1人は「炎龍の真上に飛んだ巨人が魔法を出し右目を潰した」といった。

 

他の人は「普段は魔法を使っているところを見た事がないが、その時手から岩を発射する魔法で竜の右腕を落とした」といった。

 

彼らは吟遊詩人ではない。なので語彙も少ないし喋り方も下手くそ。だがこれは彼らが当目から見たものであり、見たことは事実であった。特に上の2つの話になると皆は固唾を飲んで聞いた。その事は彼らの目から伝わり、説得力になった。そして颯爽と去る彼ら。03部隊は脚部を繰り返しながらも「薄茶の服を着た英雄」という称号を気付かぬうちに得ることになった。

 

最後に、3つ目の選択肢、それは03部隊について行くことである。もちろんこれはそこまで多くは無いものの、親が亡くなった子供や、怪我人病人、彼らに心を惹かれた賢者のカトーとその弟子、そして彼らについて行けばもう盗賊などの心配はないだろうと思った家族なと…合計では50名は行かないもののまあまあの数になった。もちろん、彼らだったまだ100%03部隊を信用している訳では無い。しかし、この先の生活を思うと、今はこの人達について行く方が良いと思う人が多くなるのも必然である。圧倒的な存在があれば皆その傘の中に入りたくなる物なのだ。

 

03部隊がアルヌスへと戻ってきた。それもまあまあな人数を連れて。

 

「お、おい、お前…!誰が連れてきていいと言った?」

 

「あれ、連れてきちゃまずかったですか?」

 

ポリポリと頭を搔くイタミ、彼の直属の上司であるヒガキはしばし悩んだ後、「着いてきたまえ」と命じて執務室を出た。

 

続々と他の偵察隊も戻ってきて、アルヌスの丘は少し騒がしくなった。それを窓の外に見ながら報告会が始まる。

会議の中心「連邦軍大将」のネームボードが置かれた机、そして少し豪華な椅子にタヌキ腹の壮年の男性が座る。そしてヤナギダと彫られたネームプレートをつけた男性が報告を始める。

 

「ゴップ大将…各方面に派遣した偵察隊からの第一報告がまとまりました。」

 

「了解した…さて」

 

ゴップという名の大将は報告書を見る。彼は一年戦争を生き残った数少ない大将である。彼の主な仕事は補給面や作戦であり、現地へ赴くタイプのレビル将軍とは対象的な人物であった。しかし、彼もまたいなければ連邦軍はジオンに立ち行かなくなっていただろう。それはここにいる兵士全員が分かっていることである。

 

「さて、これだけかな?」

 

「これ以外にも二三、重要な報告がありますが如何せん資料でしかありませんので…」

 

「成程。では堅実に進めてもらおうか。」

 

ゴップ自身も現地人の重要性は嫌という程わかっていた。連邦軍でも質の悪い兵士が集落を襲ったため、報復としてMSを破壊されたという報告も一年戦争中に聞くことがあったためだ。その為、実はこの特地に派遣している人々は多少の人選をしている。悪質な兵士との小競り合いが原因で大規模な衝突が起きたら溜まったものでは無いからである。

 

「各隊ともに言葉の点でかなり苦労しているそうです。しかし、ほとんどが平穏的な接触が出来たようですね。この辺の住人はみな「人間」と言うべき種族であり、主な産業は農林業などの第一次産業でした。500人ほどの村になればこのような生活雑貨を売るお店などもあるようですが。これがその資料です。」

 

そんな説明を加えながら、ヤナギダは資料を報告書の隣に置く。商品毎にカンタンな隊員のコメントも付いていて、さながらカタログのようだという印象を受ける。しかしこれは未知の土地を知る上で重要であり、これをダカールへ送ることで連邦政府の方針を決める大事な資料にもなるのである。

 

「あと、この土地の政治形態はまだ不明となっております。各村には村長がいて、人々をまとめているようですが。」

 

「成程、その村長がどのように決まっているか、だな。」

 

「はい。それが分かれば良いのですがね…」

 

「無闇に人を連れていくわけには行かぬものだからな。」

 

「それでなんですが…、都合の良い事に03部隊がコダ村からの難民を連れてきています。」

 

「ほう、確かイタミやタカモトがいた部隊だな。竜が出たとか」

 

「ええ、そうです。それでなんですが、コダ村の難民達をここに受け入れるというのはどうでしょうか、これならば必要な措置として内外に説明可能ですし、当人たちも拉致されたとは考えないでしょう。」

 

ヤナギダは説明する。アルヌスの丘近くに難民キャンプを建ててそこに一時的に住まわせる。

そうすることで現地人との交流を増やし、色々な情報を得るのである。ダカールからも連日情報をよこせと口うるさく言われているという事情も説明する。

 

「そうだな、よし、その案で行こうじゃないか」

 

報告会では、イタミの件で議論が行われ、その後にイタミは小一時間ほど、叱られたという…




次回予告 難民達を勝手に連れてきたイタミは難民達の生活を計画しなければ行けなくなる。難民達が目にするのは中世と宇宙世紀の差であった。次回!GATE 地球連邦軍 彼の地にて、斯く戦えり 「03部隊、労働」
君は彼の地で何を見るか?

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ロウリィ「ちょっと〜?私の出番が減っているわ?どうゆうことかしら〜?」
作者「あ、あとの話で出番増やすから…」
ロウリィ「早くしなさいよ〜?」ブゥン
作者「んああぁぁぁぁぁ!!!」(魔法の被弾voice)


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第6話 03部隊、労働 前編

遅れてしまってすみません!これも全て全選択のせいなんだ…
みんなも全選択を謝ってしまった時は気をつけよう!


「イタミ、お前、わざとだろ?」

 

小一時間叱られたあと戻るために歩いていたイタミは声をかけられた、ヤナギダ中尉のようだ。

 

「何がです?」

 

年齢はイタミの方が上であるが、軍人は階級社会である。ヤナギダの方がイタミよりも中尉に早く昇進したため、序列的にはヤナギダの方が上なのである。

 

「とぼけるなって。みんなわかってんだよ。それまでは定時連絡だけは欠かさなかったお前が唐突に通信不良になって連絡出来なくなりましたって、誰が信じるんだ?大方難民達をどっかにほっぽっとけっていわれると思ったからそういうことにしたんだろ?」

 

「いやぁ、そんなことは…こっちはホラ、異世界だしぃ。電離層とか磁気嵐の都合とか、思うようにならんもんですなぁ。この世界の太陽黒点とか太陽風とかどうなってるのかなぁ…あははは…」

 

イタミは後頭部を掻きむしる。胡散臭く聞こえるが、別に信じてもらう必要は無いのだ。誰も信じなくても報告書には「通信不良で指示を受けることが出来ず、やむを得ず現場の判断で難民達を連れ帰った」となる。報告書こそが真実になり、記録として残されるのだから。

 

「ふん、全く…。ま、遅かれ早かれ地元民ととの交流は深めなきゃならんかったからな。スケジュールが前倒しになっただけで問題にもならん…が、コッチとしてはたまらんよ、段取りが狂っちまったんだからな。」

 

「いずれは俺たちが精神的にお返ししますよ。」

 

「…足りないな、大いに足りない。」

 

タバコを灰皿に押し付けうなりながら、ヤナギダは肩をすくめる。

 

「あんた、せこいですなぁ。俺に恩を着せて何をさせようと?」

 

ヤナギダは薄笑いして「ちょっと場所を変えて、話をしようか」と、腰を上げた。

 

2人は上へと向かう。もう既に日は傾いていた。ガスり切った地球圏ではもはや見ることすら叶わないような澄んだ空を太陽が紅く染めてゆく…。そんな空を見渡せる本部(仮)屋上に2人は相対していた。ヤナギダはフェンスにもたれつつ、タバコに火をつける。そして話を始めた。

 

「これまで集められた情報から見ても、この世界は宝の山だって言うことがわかった。生物のの遺伝子配列は我々の世界の生物と酷似している。恐らく姿が似ている種同士ならば、交配も可能だろう。まあそれは学者陣に任せればいいが、この世界で我々が暮らすことは十分に可能だ。現に俺たちはこの世界の大地に立ってこの世界の空気を吸っている。食い物は『門』から出しているがいずれは俺たちがここの生物を料理して食べることになるだろう。この世界には公害や環境汚染なんてものは無い。植物も多彩で豊かだ。そしてなにより、我々の世界では貴重なレアメタルやらレアアースなんてものもかなりの量が埋蔵されているとも予測されている。住民の文明レベルはもはや天と地の差で我々の方が有利だ。それが地球上に開いた事は幸運とも言えるし、厄災とも言える。」

 

「…ジオン残党のことかな?」

 

「それもある。だがさっきも言った通りこの世界の鉱物は数え切れないほどもある。今は全員が同じように賛同して物資を供給してる企業やら財団やら団体がいつ対立を起こすかもわからない。なあイタミ、この世界にはもう一度一年戦争を引き起こす程の価値があるかどうかをな」

 

「価値があったら?」

 

「物を持つものが強いのは歴史が証明してるということはお前も知っているだろう。世界大戦で物量と経済力で勝利したアメリカだってそうだし、同じく人員という物量で第三帝国を倒したソビエトだってそうだ。一年戦争だって最終的にジムの物量で押し倒した連邦だってそうだと言える。それはその国がみんなが欲しがっているものをかかえているからだ。極端な話、ここが地球上にある限り、サイド、企業、そしてジオン残党にだって量、質ともに強気に出ることが出来ると言えるんだ。」

 

イタミは肩をすくめる。

 

「ヤナギダさん、あんたがどれだけ地球連邦のことを考えているのはよくわかった。実に愛国的だね。俺も見習いたいよ。だがね、人には役割ってもんがあるでしょ?実際、今の地球圏の情勢の事を言われてもよく分からないんだよ。あくまで自分は現場の1兵士だからね。それに、今俺に重要なのは難民達の食料と寝床なんだよ、それが地球圏の情勢とどう関わるって言うんだい?」

 

「言って聞かせただろ?この世界、この土地に価値が有るのかどうを一刻も早く知りたいと。いや、違うな。どこにその価値があるのかを知りたいんだ。この世界が地球連邦管轄になるから連邦の管轄になるから分からない。だがこの土地のどこに何があるかの情報を握ってるものが圧倒的に有利になれる。お前、自分がその情報に最も近い場所にあると自覚しているのか?ほかの隊がしたのはせいぜい村でどんなものが売られているか、それに単語の語彙を増やした程度だ。だが、お前たちはこの土地の人間と信頼関係を掴んできた。どんなものがどこに埋蔵され、どこに流通しているか、その気になれば調べられる立場にあるんだぞ?」

 

「ちょっと待ってくれよ、ヤナギダさん。子供や老人に金銀財宝がどこにありますか?石油はどこにあるんですかって聞いて、答えられるとでも?俺は地理の点数は悪かったし、良い奴に聞いてもあまりあてには出来ないっていわれるわけなんだ。学校に通ってる俺たちでさえこんななんだ。教育制度のない世界の子供や老人がそんなことを知ってるわけないだろう?断言するが絶対に知らないだろうね。」

 

と思いつつも書籍を満載させた荷馬車の上に乗っていた老人と少女はどうかなと思ったイタミであった。

 

「知ってる人間を探して、情報を得ることが出来る。これは絶対的に必要な要素だ。お前が報告書を確認してるとは思わないが、既にお前の部下が面白い人を連れてきている。ホレ」

 

ヤナギダが知らないうちに持っていた物をイタミに渡す。それは03部隊の報告書のコピーだ。そこにはタカモトが先行偵察中にアルヌスへ向かう商人を見つけ自分たちに着いていかせた事が書いてあった。

 

「まあ、口頭で報告し忘れているのは部下の問題だ。今はまあそれはいい…イタミよ、近日中にあんたらは大幅な自由行動が許されることになる、それに予定の残り三体のMSも配備されるだろう。その任務がどんな名目になるかは上の能力次第だが、どんな文言が来ても最終的な目的はひとつだ。」

 

「たまらんね、全く」

 

イタミは辟易とした顔でヤナギダを見つめる。

 

「ふん…いままでは税金でのんびりさせてもらったんだ。嫌って言うなよ?せいぜい働くことだ。ちゃんとやるなら多少の融通だって効かすようにしてやる。」

 

そう言うとヤナギダはタバコを下に放り投げた。

 

数日後、『とりあえず』のテント生活をどうにかしろ(意訳)と、クロカワとクリバヤシに具申されたイタミは難民用の簡易住居を建設することを考える。いくらなんでもいつまでもテントの中で生活するのはつらいものである。最初は丘の中腹に作る予定だったが、戦闘に巻き込まれる可能性があったため、門後方2キロ地点に建設することになった。

もちろん、これはだいたいイタミが考えることになり、上のハンコを貰った時にイタミは1日寝込んだほどであった。

 

準備に時間や手間がかかるのはよくある事だが連邦軍は始めるとなったら早い。鹵獲したザクや、JrMSなどをつかって瞬く間に地をならしてコンテナ式の家が並べられていく。

 

こんな光景をレレイは口を開けて見ていることしか出来なかった。

 

「これでようやく荷車から荷物を下ろせるわい、儂はもう寝る。」

 

ほとんどやけっぱちのような口調で言い捨て、テントへ消えていく師匠にレレイは大いに同調したかった。

馬が引かないのに動く馬車。

炎竜すら撃退する魔法の杖。

アルヌスに陣どる綺麗に角張った建物、そしてその地下にあるという要塞。

光のような速度で近づいては消えてゆく巨大な鉄の怪鳥。

木を一本切り倒すのにも木こりが半日かかるというのにそれを瞬く間に倒していたり、100人でも時間がかかるのにそれを瞬間的に掘り返してしまう、更には四角い家を運んできてはどこかへ消える1つ目の巨人(モノアイ・オーガー)

はっきりいって驚き疲れていた。

知識のない子供や老人達の方が素直に驚き、感心し、受け入れている。が、自分たち賢者はそうはいかない。この理解し難い出来事にレレイの頭はもはやオーバーヒートしかけていた。

「…こんなすごい光景をを見過ごしたなんて知ったら父さんきっとガッカリするわね。後で教えてあげなきゃ…」

体調を回復したエルフの娘がこちらで貰った柔らかい布でできた上着とズボンという出で立ちで唖然と眺めている。反対側を見やれば、知らないうちにいた茶髪の商人(人間ではないと思う)が目を輝かせながら眺めていた。

とても羨ましい。レレイは見なかったことにしてベッドに潜り込みたいと思う。しかし、この道を選んだ以上、賢者として知性を持って征服しなければならないとも思った。レレイは勇気をだして前に進む。

1つ目の巨人から人が出てきて睨まれ、そしてなにか怒鳴られた。察するに「危険だから」と言っているのではないかと思えた。これほどの巨人が歩き回っているのである。もしも彼らの足元にいれば踏み潰されてしまうだろう。その危険を防ぐためにレレイに近づくことを禁じ、警告してるのだろうと。

巨人に近づくのは諦めたが、まだ違うのはあるかもしれないと、巨人から離れて辺りを見回し作業場の片隅で小さく唸りを上げ少し良い香りがする車両に近づいてみる。そしてどのような構造になっているを観察することにした。煙は上がってないが、なんとなく想像ができた。

『移動させることが出来る…竈』

それにしてもすごい発想だとレレイは思った。軍隊はもちろん、交易などでキャラバンを組み長距離の旅をする商人達も喜ぶのではないかと思うのだ。野営するにしても竈を設えるのは結構手間がかかるものだから。

 




次回予告
煙を上げない竈を見るレレイはその真実に驚く。第3部隊は様々な仕事をこなしてゆく。そして彼らは交易の為にイタリカへ向かうことになる。次回!GATE 地球連邦軍 彼の地にて、斯く戦えり 「03部隊、労働 後編」 君は彼の地で何を見るか?


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第6話 03部隊、労働 中編

レレイは炊事車の前に立っていた、すると

 

「お、君か、ちょっと待ってろよ?今作ってるからなぁ」

 

と、門の向こう側の言語で何か言われる。レレイの見るところ、彼らはこちらの言語を覚えようとしている。現に彼らはたどたどしいながらも意思疎通ができるようになってきた。しかし、相手がこちらの言語を覚えるのを待つのは現実的ではないとも思った。なぜなら、人間というのは成長期を過ぎれば新たにものを覚えるのは辛くなっていくものなのだから。彼らが使う道具、技術、そして考えていることを覚えようと思うならば、彼らの言葉を学ぶしかない。そう思いレレイはその男性に話しかけることにした。

古田兵長は、素晴らしい包丁さばきを見せながら微笑んでみせる。

地球圏でも有数の老舗高級料亭の板前を勤めていた彼は、紆余曲折を経て、連邦軍へと入軍した。

女の子が、ダンボールに山積みになっていた食材を指さしてみせる。

「ん?」

 

『uma-seu seu?』

 

その子は大根を指さして盛んに何かを言っている。同じ単語の繰り返し、しかもまだ現地語を覚えきれていない古田は少し鬱陶しく思って

「大根だよ。大根」

と返した。その直後に現地の人には優しくしろと、言われてたのを思い出し「いっけねっ」と頭をぽんと叩く。

『Dai-kon?』

 

「そう。大根」

 

古田は皮を剥いた大根を大きくいちょう切りにした。今古田が作っているのは煮物である。

あるのだったら刺身なんかを作ってあげたいところであったが、今の地球圏で新鮮な魚介(なお養殖)を食べれるのは官僚か企業の幹部クラス以上かお金持ちぐらいになってしまっている。

寒い時代だと古田は思いつつ、プラチナブロンドの少女に言葉を返していた。

 

『sou daikon』

 

「だ、い、こ、ん」

 

レレイは首を傾げつつ、daikonという単語を持ったものを持つ、souは恐らく肯定を表す言葉なのだろうとレレイは考察した。

 

「だ、い、こ、ん」

 

包丁を振るう男性『sou sonotouri』と言い、頷きながら綺麗にdaikonを4等分する。少しの寸分も違わぬように見える切れたdaikonのを見て、レレイはこの世界の男性はみんなこれほど料理が上手なのだろうか?という感想を抱いていた。

賢者の弟子である。レレイは、誤解を含めながらもハイスピードで門の先の言葉を覚えるようになる。

 

また数日が経つ、その頃になると地球圏の新聞は様々な記事を出す。例えば

「堕落した地球連邦軍、200人もの民間人被害!」

だとか

「飛び交う憶測、連邦軍の報告は本当に真実なのか?」

とか。

「ふうむ、なるほどな…」

クワバラは、日曜日の親父さんのように新聞を読んでいる。

「おやっさん、メディアなんて金さえ積めばジオンにだってしっぽを振りますから、あんま信用しちゃダメっすよ?」

スナカスを小破させて、1週間の謹慎処分になってるタカモトがプラモデルを組み上げながらいう。

「お前…本当に謹慎してるのか?」

クワバラは率直な疑問をぶつける。

「まー、ちゃんとその分の仕事はしてるし、品行は慎んでるつもりなので多分大丈夫っすよ。よし、出来ました、アリゾナ」

 

道具は何も使わずに綺麗なプラモデルが出来た。ちなみに、今は日本時間で言う10時頃、ここは本部にある03部隊用の事務室みたいなところである、今この部屋にいるのは、休憩中でネット2次小説を読んでるイタミ、新聞を読んでるクワバラ、プラモを組み立ててたタカモトの3人がいた。

そこにクリバヤシとクロカワが入ってくる。

「中尉、イタミ中尉、あ〜中尉、聞いてます?」

イタミは斜め後ろから聞こえる声を無視しようと努力した。今は休憩中だから出来ればそういうのは遠慮して欲しいという意思表示をする。

しかし、

「隊長、いくら休憩中だからといって部下の意見を聞かないというのはいささかどうかと思われます。」

と、クワバラに言われてしまう。彼の意見はごもっともであるので尚更応答しない訳には行かない出来れば自分用の執務室が欲しいなと思うイタミであった。

「中尉」

「ぐおっ!」

イタミの下腿にクリバヤシの半長靴のつま先がヒットする。振り返るとジト目でイタミを見つめるクリバヤシとクロカワがいた。

連邦軍にもよくスポーツを嗜む者がいて、時々そういう大会が開催される。クリバヤシは武道大会の女性部門で参加したもの全ての優勝をかっさらっている。しかも大会終了前最後の余興にある男子のチャンピオンと女子のチャンピオンが戦うという謎の余興を自ら提案し、男子優勝者をぶっ飛ばしているという事実すらも持っている。そのことを知っている関係者からは2代目霊長類最強なんかと呼ばれているらしい。

 

「おーこわいこわい」

 

とりあえずプラモを会議室の机に入れたタカモトが言う。めっちゃ汗をかいて。

 

「話を聞いて下さいませんか?」

 

「俺にぃ?」

 

気だるそうな口調でイタミは返答し「俺なんかに相談してもしょうがなかろうに」と呟く、今の彼の気持ちがよく現れている。

 

「で、なによ?」

 

「テュカのことです」

 

クロカワが03部隊で保護した金髪碧眼のエルフ娘、テュカ・ルナ・マルソーの事だった。

 

「テュカがどうかしたのか?」

 

「実は…彼女、なにかおかしいんです。例えば食事、支給品、居室など全てを“2人分”要求するんです。」

 

「ただ単に欲張りなだけなんじゃないの?エルフが沢山食べる種族なのかもしれないし…ホラ、彼女だってたぶん年頃女の子なわけだしぃ、服だって一つだけだとつまらないじゃん?」

 

「違います、食事が二人分というのは2人分の食料だけではなく、食器なども2人分の要求するんです。そしてその1セット分は必ず廃棄しています。それに服…彼女が余分に請求するのは必ず男物なんです。」

 

クリバヤシが記録をめくりながら言う。このことにイタミはチクッとした頭痛とともに心の奥に押し込んだはずの記憶が湧き上がろうとする感覚を覚える。

「ふ〜ん、で、理由を尋ねてみたか?」

「言葉が上手く通じないのでよく分からないのですが、1番言葉のわかるレレイちゃんに同席してもらって尋ねてみました。どうして残すのって」

「そうしたら?」

「彼女にも『わからない』『食事時に』『いない』という答えでした。」

 

沈黙の時間がながれる。イタミはその間に、『誰か』と同居しているつもりなのではと思い浮かぶ。

 

「もしかして、脳内彼氏をでも飼っているとか?」

 

茶化すようにイタミは言うが、誰も期待した反応は示さなかった。脳内彼氏、そのようなものに該当していそうなものをクロカワやクリバヤシも考えていた。救った経緯があれであるため、深刻なものであるかもしれない。

 

「そうだったらいいのですが…」

クロカワが心配そうにつぶやく

「医師には相談したか?」

 

「精神科医はこちらに来ていません。そもそもこんな状況を連邦の上層部は考えているとは思えませんし…、それに『亡くなった家族を一定期間、生きているこのように振る舞う』なんていう葬送なんて言う可能性も否定できませんわ。私達には何が正常で、何が異常かなんて、勝手に判断する訳にも参りません。」

 

「そうか…それならレレイの師匠、カトー先生にも尋ねてみたらどうだ?あの爺さんなら詳しそうだ。」

 

「もう既に尋ねていますわ。私たちの見立てと同じような見解のようです。しかし、カトー先生によると、彼女はエルフの中でもさらに希少な存在で、さすがに細かいところまでは『知らない』という答えでしたわ。」

 

「そうかぁ、タカモト、お前はどう思うんだ?NTっていうのは人の気持ちが理解るんだろ?」

 

「…無茶言わないでください、僕は万能じゃないっすよ…まあ、なんとか、感じ方を色で表すなら彼女は青黒い感じだった…としか言えないっす。」

 

タカモトはお手上げのポーズをしてみせる。

 

「なるほどなぁ、まあ、とにかく意思疎通を増やすところからだな…俺ももっと話しかけてみることにするよ」

 

「今はそうするしかありませんわね…」

 

「隊長、出発の時間です。クリバヤシ、クロカワ、タカモト、お前らも来い」

 

「はいっ」

 

休憩時間が終わり、03部隊は難民キャンプの方へ準備をして向かう…




土曜日に本当の後編とMS紹介を出します。


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第6話 03部隊、労働 後編

キャラ紹介などは今日の都合が悪いため明日投稿します。スマソ


イタミ達を乗せたホバートラックとエレトラが縦に横に隊列を変えながら難民キャンプへと向かう。

地球連邦軍が中世日本に飛ばされたり、はたまた違う銀河にある帝国の反乱軍に飛ばされるといったトリップものは今の時代ではごく当たり前になっている。最近はMSの出現もあり、より盛んに作られている気がする。

「話によると、連邦海軍なんかは『合戦よぉ〜い』とか言ってるらしいぜ?」

イタミの一言で場の空気がヘンテコになる

「それの元ネタむしろアニメの方でしょう…」

後ろから呆れられた声がする

「まっ、まあとにかく、基地を出たら危険地帯だってことになってる。それなりに気を張ってくれ。」

イタミがキャンプに到着するとレレイや子供たちが迎えてくれる。とは言ってもクロカワが出ると子供はみんなそっちに行ってしまう訳だが。

難民キャンプの現在の住人は48人である。

数値はコダ村出身者が45名、エルフの村落出身者が1名、途中から紛れ込んできた黒ゴスの神官少女と和服に似た服を着た女商人が1名である。

建物自体は前々回の通りコンテナ住居であるが、後に増加する可能性があるため70人ほどまでは入れるようにしてある。ただし一部を除いて家族や親戚の関係性はない、しかし、同じ村の出身者のためか老人や大人が子供の面倒を見ているという形になっている。ここには電気や水道は無いが、この世界では当たり前なので誰も気にしてはいない。食事は昼と夕方の2回を03部隊が供給している。朝食は前日の夕方に食材を届ければ自分たちで調理している、しかし、それでは不足するので、子供や老人が水を汲みに行っている。昼食については色々論争があり、艦内飯(クソマズプレート)もしくはハンバーガーで言い争いになり収拾がつかなくなってしまったため、最近開発されたという超長期保存できるAE社製お弁当や普通の缶系の食べ物が配給されることになった。

夕方はキャンプ内に設えた竈で古田ら隊員達と子供たちがワイワイ言い合いながら作っている。やろうと思えば3食ぜんぶ連邦軍で用意することも可能だが、彼らの自立心を損なう可能性がある。連邦軍ではもしも統治などする場合だいたいその担当の部隊があれこれ決めることになる。イタミ達はならば最初はこのくらい、そして、彼らの共同生活の運営が良好ならば、食事なども全て自炊にする。あとは何かしら職業を得て、住はとにかく衣食については自分たちでできるようにする事を理想に据えたものである。

とは言ってもそこまで無理強いをすることは出来ない。現在の年齢比率は老人が9人、働ける年代が14人、そして子供が25人である。大人でも3人は大怪我をしていて、残りの10人も何らかの怪我をしている。ここまでは多いとは思うかもしれない、しかしこの10人の半分は主婦であるし、男性でもどちらかと言うと病弱な人もいるため、実質的に労働が出来そうなのは3人程度なのだ。

ところが、1番早く意思疎通ができるようになったレレイという少女から聞き取ると、黒ゴスの神官少女とエルフの少女は子供ではないらしい。そしてレレイは間もなく成人するとのこと。

そのため実際に子供なのは23人となり、直ぐに22人になるであろうということになる。

それぞれ何歳なのか聞いてみる。まず、レレイは現在14歳であり、もうすぐ15歳になるらしい。この世界では15歳で人間は成人することになるらしい。次に黒ゴス神官少女の事をきいてみるが

「子供、違う。年上、年上の年上、そのもっと年上」という。

そして具体的な年齢を確認しようとしてみるがいつも無表情のレレイが顔を引きつらせて嫌がったのでこれ以上は詮索しない方がいいとして、黒ゴス少女の年齢は棚上げとなった。

エルフは長命種族なのはファンタジーではありがちであり、実際、この世界でも同じらしい。テュカは165という数字を自ら示してくれた。

最後に女商人(名前はリコらしい)に年齢を質問してみたが、教えてくれない。レレイに頼んで聞き出してもらおうとしても、全く言ってくれないという。そのためタカモトがテキトーに500という数字を出すと彼女は怒って381という数字を示すそしてタカモトはポコポコ殴られた。

このように見れば簡単にわかったように見えるがそうではない。レレイと03部隊がひねり出して考えた方法である。相手が指で示した数字をレレイが変換して紙に書かれた数字を示す。それでやっと分かるのだ。

その日、イタミとタカモトはレレイとテュカ、リコ、そしてMSの手の上に乗りたい子ども達を連れて戦場の跡地に向かった。現在跡地は腐りかけの小さな竜の死骸が脇に集められていた。カトー先生によると、竜の鱗は高く売れるらしい、そのことを本部に伝え、是非を聞くと、「別にあんたらが炎竜の腕持ってきてくれたから好きに扱ってえーよ」との事だったので、難民キャンプの人達の自助を促すために鱗を渡すことにしたのだ。

「…ということなんだ」

 

『ほ、本当にこんな量…全て使ってもいいの?』

 

リコが驚いた顔をして言う。商人だからその価値はよく分かっているのだろう。

 

「ああ、全て、君たちのものだ。そういえば、リコさんにはこれ売れるの?」

 

『うーん、今、わっちそこまでお金もってないから無理かなぁ』

 

『なるほどなぁ、まあとりあえず、君たちがみている間はタカモトがMSのリハビリをしながら見てくれるから、君たちは好きなようにしてていい』

 

レレイ達は本当に驚いていた、翼竜はデナリ銀貨50〜70枚で取引されるが、その銀貨が1枚あれば最大5日は生活できるのである。つまり500日から700日…それが無数…と考えるともはや途方もなくなると考えレレイは少し考えるのをやめた。その後この日と次の日で翼竜2体分、200枚もの鱗を取る。これでも状態のよいものを集めただけであり、銃撃や砲撃で傷付いたりビームで焼け焦げた部分を除いたものであり、もし全てが綺麗なものであったらそれ以上であっただろう。しかもまだまだ死骸はあるのだ。

 

地球ではもう10月の終わりの日、03部隊は再始動する。

 

着々と準備を進めるイタミ達にニシナが資料を持ってやってくる。

 

「報告します。新型MSが配備されました」

 

「ふーん、どんなのなのかな?」

 

「はい、とりあえずどこも同じタイプのものとなっています。名前は陸戦型ガンダム2型となっております。」

 

「ほーん、ガンダムねぇ、とりあえず、1度本部まで戻る必要がありそうだ。『レレイ達は、早く、乗っちゃって』」

 

鱗の交換をしにレレイ、テュカ、リコが乗り込む、そしてロウリィという名の神官少女も何が目的か分からないが乗り込んで来る。いつもの黒ゴス神官服に重そうなハルバードを持っている。

本部に着くとタカモト達MS組が既にMSに乗って待っていた。

 

「おー、遅いっすよイタミ隊長、5分遅れです。」

 

「そー怒んなって〜、それで新型はどこに?」

 

「あそこに突っ立ってるっすよ、ホラ」

 

イタミかその方角を見るとガンダムがそこにあった。

陸戦型ガンダム2型はその名の通りガンダムの陸戦仕様であり、陸戦型ガンダムの後継機とも言えるものである。しかし、見た目は似ているものの設計などに関しては部品などがいろいろ変わっていることに気づくだろう。陸戦型ガンダム2型のベースは前期ジムの中でも特に初期に生産されたものであり、粗悪品と呼ばれたものばっかりである。その粗悪品の粗悪の部分にyokohama港に保管されていたガンダムのパーツの複製品を仕込むことで粗悪度の解消と性能強化を行ったような機体である。見た目はまんま陸戦型ガンダムでありコックピットハッチも胸上から入る構造になっている。胸部のガトリングは頭部に移植され排熱ダクトがふたつになり、マルチランチャーも武装に取りつける仕様に変更された。その他の部分は大体は同じ仕様だ。

ニシナがまた話す

「隊長のMSなんですけど、隊長のだけは試製陸戦型ガンダム2型となっております。普通のとの違いは本物のガンダムのパーツが使われているか否かのようです。」

 

「つ、つまりはガンダムとジムのハイブリッドってわけねぇ」

 

「そういうことになります。」

 

イタミ、クリバヤシ、トミタの3人がMSに乗り込み、起動する。

 

「よし、なんか燃えてきた!」

 

「クリちゃん、勢い余って壊すなよ〜?」

 

「分かってますから言わないでくださいよ!」

 

「だってこの前もさあ」

 

「あーはいはいわかりましたって!」

 

「よし、レレイ、もう一度聞くけど、そのリュドーって人はどこにお店を構えてるの?」

 

レレイは自分の師匠の友人、リュドーの所在を過不足なく教えてくれる。

 

「イタリカの街。テッサリア街道を西、ロマリア山麓」

 

「ありがとう。よし、第03部隊、出発だ!」

 




次回予告

皇帝の娘、ピニャは恐怖した、瞬く間に帝国軍を蹂躙した巨人達に。騎士達は驚愕した、古竜を倒した人々を。そしてピニャはアルヌスの丘への最後の分岐点、イタリカの町へと向かう。次回! GATE 地球連邦軍 彼の地にて、斯く戦えり 「薄茶色の軌跡」

おまけ
タカモト「やっぱ君って人間じゃないよね」

リコ「い、いえ、私は人間ですよ…汗」

タカモト「君に見える感情の型が人間のものと大幅に違うんだよ、つまり君はなにかが人間の姿をしてるってところじゃないの?ほら例えば化狐とか…化け狸とか…」

リコ「な、私が化け狸なわけないじゃないですかあはは」

タカモト「自分で答え言っちゃってるじゃん」

リコ「あ」


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イタリカ出発までの人物、MS紹介

どーも、鼻血ブーして何も出来ないでいた急行根府川(青い鳥)です。
今回は結局これだけの投稿ですが、みなさんも体調管理には気をつけましょう


登場人物紹介

ヨウジ・イタミ

主人公。年齢33歳。連邦陸軍中尉でMS混成深部調査第03部隊隊長。MS撃墜数6機のエース。モットーは「食う寝る遊ぶ、その合間にほんのちょっと人生」。根っからのオタクであり、漫画やネット小説をよく読み漁っている。

本部からの評価は「不可にならない程度に可」であり、模範の対義語みたいなもの。しかし直感的な状況観察能力と咄嗟の判断力に優れ、危機察知能力と危機回避能力、逃走能力が非常に高い。そのため、上層部からはNTなのではないかと疑われているが本人はそれを知る由もない。銀座事変の英雄として中尉に昇進している。

搭乗MSは試製陸戦型ガンダム2型

 

シノ・クリバヤシ

第03部隊所属、伍長。24歳。

元々は連邦軍の体育学校生であったが、ア・バオア・クー攻略戦に必要な人員不足を補うために早期育成プログラムでMSパイロットになった。女性ながら超人的な戦闘力を持ち、生身でもMSでも殴り合いで倒してきた(シュミレーター)。本人曰く本当にゲルググ一機を殴り倒したという(連邦軍の撃墜スコアはデタラメなため真実かどうかは謎)、ものを壊す癖があり、MSに乗せると最低でも関節部やマニピュレーターを故障させて帰ってくる。武器を持たせればそれを壊して帰ってくるなど、ろくな事がない。イタミのようなオタクを毛嫌いしている。

搭乗MSは陸戦型ガンダム2型

 

アキラ・トミタ

第03部隊所属、軍曹。MS7機撃墜。一年戦争以前から連邦軍に所属し、ソロモンとア・バオア・クー攻略戦で合計7機撃墜したため原作よりも1段階階級が上がっている。逆に言えば階級が1段階しか上がってないことになり、そこは少し不遇である。階級と昇級時期で見るとNo.4となる。冷静沈着な性格で個性的な03部隊の良心。

搭乗MSは陸戦型ガンダム2型

 

タケオ・クラタ

第03部隊所属、伍長。北海道のハコダテ基地から招集されてきた。ケモナーであり、イタミやタカモトとよくオタクの話題でよく盛り上がっている。エレカやホバートラックの運転術が優れている。銀座事変の時に即売会にいたが、軍人として何も出来なかったことを気に病んでおり、イタミのことは軍人としても非常に尊敬している。

 

ヒトシ・フルタ

第03部隊所属、兵長。高級料理店の板前であったが、腐ったお金持ちの相手をし続けることに嫌気がさしたからその店をやめる。彼には高級料亭で稼いだお金で新たに店を構えるほどはあったものの、地球にはその場所はないと感じ、自分が店を構えれる場所を探して様々な所へ配属先が変わり、色々な場所を見れる連邦軍に入った。料理の腕は一級品で、「連邦軍の一兵でいるのは勿体ない」とまで言われている。

 

ソウイチロウ・クワバラ

第03部隊所属、曹長。50歳。伊丹達や他の隊からは「おやっさん」の愛称で呼ばれている曹長である。訓練教官であった時代もあり、その時の生徒だったクラタからは「鬼軍曹」ともいわれたりしているが、堅物な訳では無い。

 

マリ・クロカワ

第03部隊所属、伍長。身長190cm超で、150cm未満のクリバヤシと比べると大きな差がある。連邦軍病院日本支部から招集され、看護師資格を持っている03部隊の救助担当。

真面目で気配りができるが、理想が先行しがちでイタミを困らせていたりする。普段はお淑やかな口調であるが、多少毒が混じった発言をすることもある。

 

テツヤ・ニシナ

第03部隊所属、軍曹。階級、昇級時期ではNo.3となり、イタミが苦手とする書類仕事のサポートをしている。大企業のキャリア幹部の妻がおり、尻にしかれているらしい。

 

ハヤト・ササガワ

第03部隊所属、兵長。写真撮影が趣味であり、そのため、イタミから記録担当を任されている。本人は雑誌に特地で撮った写真を出したいと思っている。

 

ワタル・カツモト

第03部隊所属、伍長。炎竜遭遇時の時にリジーナを操作し見事炎竜の右腕を落とすことに成功した。その時に言った「後方の安全確認」が、魔法の呪文として元コダ村の住民に広まっている。

 

ダイスケ・トヅ

第03部隊所属、兵長。財テクが趣味で、難民キャンプ建設時にはイタミの財務報告の手伝いをしていたようだ。

 

ダイキ・アズマ

第03部隊所属、兵長。昇進試験の勉強中。

 

 

03部隊、MS組

ゴロウ・タカモト

第03部隊所属、准尉。サブ主人公?。撃破MS15機のエース。サイド1の6バンチ「フリーダム」出身の日系スペースノイド。彼は初期NTらしく、直感が鋭く、相手の気分の色が理解でき、相手の本質を見抜くことが出来る。オタクであり、獣耳っ子が好きらしいが本人曰く「0だろうが100だろうが問題は無い」…らしい。なお階級的にはNo.2なのではあるが、それはエースの措置からなのか、3段階も上がっていたため、本人は「実態は軍曹だし、人を率いる力はない」と言って聞かないので序列からは外されている。それからも分かるように割と頑固で、独断で行動しがちな部分がある。イタミ、クラタ、タカモトの3人を「オタク小隊」とクリバヤシは呼んでいるらしい。

搭乗MSはジム・スナイパー・カスタム

 

ソフィア・アルギニナ 第03部隊所属、軍曹。撃破MS7機のエース。サイド2の2バンチ「ジュラ」出身のロシア系スペースノイド。いつもほわほわしている不思議ちゃんであり。大の酒豪である。身長や胸の大きさはクロカワとクリバヤシの中間あたりであり、3人を並べるといい感じになる。

搭乗MSはジム・コマンド(地上改造仕様)

 

モリス・ケリー 第03部隊所属、軍曹。サイド5 19バンチ「ニューオリンズ」出身のアメリカ系スペースノイド。出向組では最年長である。元61式戦車乗りであり、61式でザクを5体、ジムでMS5体倒している。豪快で、心が広い人物。

搭乗MSはジム・ツインキャノン仕様

 

その他の連邦軍の人物。

ゴップ

地球連邦軍大将→地球連邦軍予備役→(物語開始)→地球連邦軍特地方面軍司令官。

一年戦争時の大将を務め、裏方から連邦軍を支えたすごい人物。一年戦争後は政治家になるため予備役となったが特地の出現により舞い戻ることになってしまった。本来、特地方面軍司令官はハザマダ中将が行う予定であったが、人員不足に陥っていた宇宙軍の方に持ってかれてしまったため、今のところは暫定としてゴップが司令官となっている。来年の10月で交代が予定されている。

 

アキラ・ヤナギダ

特地方面軍幕僚、中尉。

地球連邦軍の訓練学校で優秀な成績を残し、日頃の言動にエリート意識が漂い鼻につく。が、一年戦争時、彼はジャブローで内務を行っており、現場の人から見ればジャブローのモグラのだった人の1人として見られることもある。

イタミに対しては嫌味な事を言いつつも彼の実力を認め、彼に協力している。

 

特地の人々

テュカ・ルナ・マルソー

金髪碧眼のエルフの美少女。見た目は10代だが、年齢は165歳。炎竜に焼かれた村出身で父と一緒に住んでいたが、村が襲われた際、父によって井戸に放り込まれた彼女だけが助かり、伊丹達に助けられる。救助された際にTシャツとジーンズを提供され、今はそれを着ている。

 

レレイ・ラ・レレーナ

コダ村に住むカトー老師の元で魔法を学ぶ女の子。年齢は14歳であるが、もうそろそろで15歳になる。ちなみに15歳が特地での成人基準だ。銀髪のショートカットで、特地に住む人間の中でも決まった定住地を持たない流浪の民「ルルド」出身。無表情だが、未知のものに対する好奇心が旺盛。

 

ロウリィ・マーキュリー

帰還途中で出会った自称神官、見た目は12〜13ぐらいだが、レレイ曰く「めっちゃ年上」。切り揃えた腰まである漆黒の髪と赤い瞳を持つ。服装はゴスロリのような黒い神官服を着ている。まさに人外のような身軽さとスピード、ジャンプ力、そしてパワーを備え、重たいハルバードを軽々使いこなす特地版東方不敗。

 

リコ・チクマ

はるか遠くの極東からきた茶髪に黒い瞳の女商人。種族は妖狸であり、年齢は381歳。帝国語も話すが、日本語に似た言語も話すバイリンガル。人と会う時などは耳としっぽを隠した綺麗で胸が大きいお姉さんみたいな姿をしている。商才に優れていて、特地のものなら見ただけで値段を割り出すことが出来る。

 

MS紹介

RGM-79 ジム

言わずと知れた連邦軍の量産型MS、特地に派遣されたMSの大部分はここの系列にあたる。現在は基地に前期型が配属されている

RGM-79L ジム・ライトアーマー

現在基地に派遣されているMSでは多め。紙装甲だが、特地の兵が時代遅れなのでこんなのでもほとんど無傷で戦うことが出来る。しかし、前評判があまり良くないため、乗りたがる人はあんまりいない。

RGM-79SC ジム・スナイパーカスタム

ジムの総合性能向上版。スナイパーとはあくまでラグビー用語であり、『狙撃手(スナイパー)』専用というわけではない。能力的にはガンダムに匹敵する。タカモト機以外にもあと2機特地に派遣されている。

RGM-79G ジム・コマンド

ジムの後期生産型。特地には3機運び込まれていて、そのうち一機は部品取り用

RGC-80T ジム・ツインキャノン仕様

ジムキャノンの砲門を両肩部に装着した特殊仕様。排気ダクトは別個下部にあり、見た目はパワードジムに近いが、似ているのは胸部のその部分のみである。

RX-82 [G] 陸戦型ガンダム2型

陸戦型ガンダムの後継機として制作されたガンダム、見た目はほぼ陸戦型ガンダムと変わらないが、内部はむしろジムの部分が多くなっている。ガンダムの複製部品はジムと同じチタン系合金であるものの、0082時点の最新技術を導入しているため、ガンダムとほとんど性能的な差はない。陸戦型ガンダムと同等の装備とそれの改良型装備、ジム由来の高い拡張性がある。

 

 

 

 




多分炎竜編に入ったあたりで新しいMSのアンケートをすると思います。それではまた次回


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第7話 薄茶色の軌跡

なんで日曜投稿しなかったの→し忘れた
埋め合わせはしますから許して…

追記
タイトルが話の内容に合ってないという指摘を受けたため、変更しました。


03部隊があっちこっちしていた間、皇帝の娘、ピニャ・コ・ラーダは、アルヌスの丘へと向かうため、自らが隊長を務める薔薇騎士団を後方に残して少数での移動を行っていた。この時既に03部隊は炎竜を撃退した後で、いま彼女らがいる街にもそのコダ村から来た人々が来ており、炎竜の話題でもちきりだった。

 

『騎士ノーマ。どう思われますか?』

 

宮殿では侍従武官の地位を持つ女性準騎士、ハミルトン・ウノ・ローが、この場所で聞いた噂話を先輩たる同僚に論評を求めた。

この場所は酒場である。小汚く、狭く、そしてうるさい。そんな中端っこにギュウギュウに詰まってる状態で話している状態だ。

ノーマという名の騎士は忌々しそうに苦い顔をした。

普段なら宮殿で貴族の令夫人や令嬢を相手に高級な料理を口にしている身であるが、いま食べているのはと乾いた料理と濁った葡萄酒である。本来皇女殿下の騎士団は宮廷の飾り物であり、実戦とは程遠い軍隊だったはずである。任務だとしても侍従武官である自分がこんな扱いなのはふさわしくないと感じているのだ。

いくら皇帝閣下直々の命令ならばアルヌス方面の偵察というのは仕方がないだろうが、あろうことか皇女殿下は全軍で向かおうとはせず、少数での偵察としたのだ。少人数で皇女殿下を守らなければならないのも辛いが、1番辛いのは身分を隠して行くことにある。つまりそこまでお金は持参できないし、服もはっきりいって粗末とも言える。ノーマはその事にため息をついて、酒の追加を注文し、無邪気な顔をして返答を待つハミルトンに応えてやることにした。

 

『……これだけ多くの避難民が言うならば、嘘ではないだろう。全員で口裏を合わせるのも難しいだろうからな…だが、炎竜という点に対してはいくらなんでも信じられんな。』

 

『わたしは、みんなが口を揃えて言うなら信じてもいいような気になってきてますね。』

 

そこにコダ村から来たという女給がワインをドン!と置いて『ホントさ、騎士さん達。炎竜だったんだよ〜』という。

ノーマは「はははは。私は騙されないぞ」と軽く応じる。特地では一概にドラゴンと言っても、古代竜や新生竜、無肢竜、翼竜などと複数のことを総称する。なのでノーマ的にはどこかで違う種類のドラゴンに脚色が着いたのだろうと思っているのだ。

この反応には、女給もムッとしたようだが、

ハミルトンが「まぁまぁ、気を悪くしないでよ。私は信じるからさ?良かったら話を聞かせてくれない?」と破格の額のチップを渡す。

これには女給も機嫌を治して

『ありがとう、若い騎士さん。これだけして貰ったんだ、取っておきの話をしなきゃ行けないね。』

といい、話を始めた。まずはコダ村付近に炎竜が出たと言う話が来た時の話、次に旅の道中の話をする。

『どんな時でも助けてくれた人達がいたのさ。それが薄茶色の服を着た連中でね、全部で15人。女が3人いたね。』

女給の声は酒場の全体に響いていた。いつの間にか酒場は静まり返っていた。今話した事柄は今回が初めてだからみな聞き入っていたのだ。

『で、女はどんな姿だった?』

ノーマの問いに女給は鼻を鳴らした。

『男っていうのはみんなそれだねぇ。まぁ、いいわ、1人は背が高かったねぇ、日中は兜を被っているからよく見えないんだけどさぁ、ある日の夜にチラと見えたよ。馬のしっぽみたいに束ねた髪を解いた時、あたいは女ながら見惚れたねぇ、月の光で艶の入った黒髪が光るんだよ、それがとっても綺麗でさ、どうしたらあんな色艶になるか、話が出来たら聞いて見たかったもんよ、体つきもほっそりとしていてねぇ異国風の美女とはああいうのを言うんだろうね。』

女の描写に男たちは盛り上がる。

『ほう、2人目は?』

『ありゃあ、猫みたいな女だったね。小柄でさ、髪は男みたいに短くしていた。元気な娘で面倒見が良くて子供たちが懐いてたよ。あと腕っ節がすごくて男連中は結構怖がってたよ。うちの旦那が喧嘩をおっぱじめた時なんて目にも止まらぬ速さで相手を含めて2人をあっという間にダウンさせたからねぇ、大の大人2人をだよ…!」

それを聞いた男どもは一気に興味を無くす。筋肉女など彼らにとっては需要がないのだ。

「体つきが凄かったね。小柄なんだけども牛のように胸が突き出ててね。あたいははっきり言って嫉妬したよ。そのくせに腰は細く引き締まっているのが許せないね。顔は綺麗と言うよりかは可愛いかんじでさ。』

胸という言葉に反応して来た男たちに対して女給は舌打ちをする。

『さ、最後の女は?』

『三人目はねぇ、むしろ顔的には帝国を探せば居そうな感じだったねぇ、でも雪のような白さを持った肌でさあ、それに金色の髪が合わさってまるでエルフみたいだったねぇ。体型はバランス良かったよ。それにさ、彼女、騎士達の言う鎧纏いし巨人(アーマード・オーガー)を扱ってたのさ。』

驚きの声が上がる。女が巨人(オーガー)を操るなんてここでは聞いたことも見たこともない人しかいないからだ。

鎧纏いし巨人(アーマード・オーガー)…そいつはどんなものだったんだ?』

『そうだねぇ。あ、ウチの子がこんなことを言っていたねぇ。「薄茶の人は、これは大きな鎧の様なもの」って。それにね、あたい見ちゃったんだよ。巨人の鎧が外れて、なかから人間が出てきたところをさ…!』

 

その頃、ある高貴な身分を持つものが修道院に収容されているという話を聞いていたピニャは最低限の護衛2人を連れてその修道院へと向かい1人だけで修道院の中へ案内された。そこに居たのはエルベ藩王国の王、デュランであった。

『見ての通りの有様じゃ…3度目の総攻撃でな、麾下の兵と共に丘の中腹までは何とか進んだのだが、敵が置いたであろう鉄の茨に道を阻まれてな、それに難儀している中に巨人(オーガー)どもが手から光の矢を一瞬でたくさん出したのじゃ…そしてあっという間に吹き飛ばされた。』

 

『デュラン閣下、早速帝国に知らせを走らせ…』

 

『姫、申し訳ないが帝国の世話にはなろうとは思わぬ。第一、もうそんなには長くは持つまい。』

 

『なぜ…私ならば何とかすることができます。』

 

『姫…儂はな、ずっと考えていたんじゃ、なぜ皇帝は連合諸王国軍をこの戦いに集めたのかを。やっとわかったのじゃ、皇帝はわしらを罠にはめたのじゃよ。わしらの力を弱くするために、わしらの始末を敵に押し付けたのだ。』

 

デュランの声には怒りが込められていた。もはや死ぬ身なのだから言いたいことは言わせてもらう。そんな気持ちが込められているようだった。

 

『姫、知らなかったとは言わせませぬぞ。姫も帝国の皇女、帝国軍がアルヌスの敵と戦いどうなったのかを…』

 

『はい。存じ上げてはおりますが…しかし、しかしです。どんな敵が待ち受けているかも知らせずに諸侯をアルヌスに差し向けたなど、全く存じませんでした…』

 

『行かれよ姫。儂らはこの大陸を守るために最後まで戦い抜きました。だが、儂らの敵はすぐ背後におった。帝国こそ我らの敵だったのだ。もう一度言う。さあ、行かれよ姫。』

 

『陛下。最早お怒りをお鎮め下さいとは申しませぬ。しかし、せめて教えてください。敵は何者なのかを』

 

『教えてやらぬ、儂らはそれを知るために我が身を犠牲にした。知りたいのならば姫自らアルヌスへ向かうが良い。そなた達の血肉を対価とすれば敵も教えてくれるやもしれぬ。』

 

ピニャは必死だった。色々な話を聞くに、その巨人(オーガー)はあまりにも強大であり、そして多いのだ。もしもそれらが一斉に移動を始めたら瞬く間に帝都は敵の手に落ちてしまう、そんな予感がしたのだ。

しかし、脅したとしてもデュランの口は開かなかった。どんな力や権力を持ってしてでも心の壁を崩す言葉を難しい。できたとしてもそれと同時に相手の心を壊すことになるのだ。ピニャはデュランから情報を得るのは諦めた。

修道院を出ると近くの街で待っていてもらったハミルトンやノーマ達も入口にいた。

『どうだ?そっちは何か情報は?』

 

ハミルトンにアルヌスの情報がないかどうか聞く。

『大体は炎竜を、巨人(オーガー)と鉄の逸物なるものが撃退したということぐらいですね…』

 

『なるほどな…』

 

『姫様…頼みますから騎士団でアルヌスに突撃だするなんて言い出さないでくださいよ?』

 

『ハミルトン…お前、妾を馬鹿にしているのか?』

『い、いや、違いますよ。しかし今にも「妾に続け!」とか言って走り出しそうな雰囲気でしたから』

 

ピニャはむしろ帝都に駆け出したいと思った。極度の緊張が続いたためか、関係ないことしか考えられない

 

『ま、まあいい。突撃するかは別にして、まずはアルヌスへ行かねばなるまい。敵をこの目で見なければならぬからな。』

 

『あ〜姫。こんな人数で大丈夫ですか?』

 

『大丈夫じゃない。だからお前ら守ってくれよな』

ピニャはそんなことを言いつつ修道院を後にしアルヌスへ向かう。

彼女らは森の中にある開けた道を進む。

 

----???地点???----

 

「ほう、連邦が特地なるものを発見したか…」

 

「はい閣下。そこにはたくさんの鉱物資源並びに食料があるとも。」

 

「それは厄介であるな。確か日本地域にも残党勢力がいたはずだ。彼らに連絡を取れ。」

 

「了解しました。直ちに連絡を試みます。」

 

「閣下、やっと、やっと連邦に一矢報いる時が来たのですか!」

 

「いや、まだだ、まだその時ではないぞ…………今は機を待つのだ。さすれば必ず、その時が来る。」

 




次回予告
03部隊はイタリカの町の手前まで来ていた。しかし、イタリカは想像とは違った場所であった。そこで皇帝の娘、ピニャ・コ・ラーダと出会うことになる。そしてイタミ達はイタリカの防衛に参加することになるが…次回!GATE 地球連邦軍 彼の地にて、斯く戦えり 「イタリカ攻防戦 前編」 君は彼の地で何を見るか?

フォルマル伯爵家はアニメ版でザビ家みたいな姿になってたわね…はっ!


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第8話 イタリカ攻防戦

今週は忙しいので投稿が遅れるかもしれませんがご了承ください


イタリカの街に着いたピニャは、この街が何者かに攻撃されているという事を聞いてついにアルヌスを支配するものが攻めてきたのかと奮起した。しかし、実際は巨人などは一人もおらず、ただの盗賊であった。増えてくる盗賊に対し日々撃退するだけであったが、いつしかそれだけでは防ぎ切ることが出来ず、確実にイタリカの町は疲弊して言った。そんなある日…

仮眠中であった彼女に水がかけられる。

彼女はバッと起き上がり急いで鎧を身にまとい、怒鳴る。

 

『な、何があった!敵襲か!?』

 

騎士団の1人であるグレイは

 

『果たして、的なのか味方なのか…ただ…』

 

『ただ…』

 

『ともかくおいでくだされ、実際見た方が良いでしょう。』

 

城門にたどり着いてみると、戦闘準備を終えた兵士と市民たちが城門の向こう側を隠れながら見ていた。

 

『姫様。こちらからだと、良く見えます。』

 

農夫のひとりがバリケードの隙間を譲ってくれた。

覗いてみると狭い視界の向こう側に四輪の荷車が2台。車輪が見当たらないのが1台、そして

 

『あれは…まさか…巨人!?』

 

少なくとも6体の巨人がいた。それぞれ見慣れない武器のようなものを持っている。巨人がいることにも驚いたが、よくよく見ると荷車にも馬や牛が見当たらない。攻城戦とかには荷車を馬や牛ごと覆う物ある。彼女はそれの1種だとおもった。しかし、3台とも全面を鉄でおおってるようにも見える。それに天蓋に「長弩」と「大砲」の中間に当たりそうな武装を装備している。あの中には普通に兵がいるようだ。

この世界において攻城戦というのは兵器よりも兵の数で決まる。しかし彼らの他に兵はいない。それに荷車や、巨人達も攻撃する素振りを見せないのだ。それに攻撃どころか威嚇などもしない。彼らは何しにここに来たのだろうか。

 

『ノーマ!?』

 

『いえ、彼ら以外には敵影はありません。』

 

尋ねたいことがわかったようですぐに答えがあった。

鉄でできた荷車…いや、『鉄甲車』の中にいるのは薄茶色の統一された服を着た兵士だ。手には武器なのか杖なのか判別し辛いものを抱えている。その険しい表情や鋭い視線などからこのモノ達が並々ならぬ力量を持った存在であることは分かる。

 

『何者か!?敵でないなら姿を見せよ!』

 

ノーマによる誰何の声が頭上の城壁から聞こえる。どんな反応が起こるかのかとこの場にいる全員が息を飲む。

 

しばらく待つとその車の中から一人の少女が降り立つ。歳は13から15辺りだろうか?服装や持っている杖で魔道士であることは分かる。流派は…杖の材質から推測するにリンドン派の正魔導師であることは明白だ。彼らは攻撃魔法で戦闘を行うことも可能であろう。厄介だ。

先程の襲撃では的に魔導師はいなかった。だからこそ守りきれたと言えよう。しかし、相手方に魔導師臥が加わったとなるとかなり厳しい状況になるはずだ。続いて降りてきたのは見たことない衣装をまとった16歳前後の娘だった。丈が短く、男共の目に毒な服を着ている…がそれは問題ではない。なぜなら彼女が金髪碧眼のエルフだからである。なぜならエルフは例外なく優秀な精霊使いと聞く。強力なものともなれば一軍を壊滅する力があることでも知られている。リンドン派の魔導師にエルフの精霊使い、そして巨人。こんな組み合わせならば騎士団どころか帝国軍の精鋭部隊ですら戦うのを拒むだろう。しかし、次に出てきた娘を見たピニャは、絶望した。

黒髪にフリルにフリルを重ね絹糸の刺繍に彩られた漆黒の神官服を来た彼女は見覚えがあった。

 

『あ…あれは、ロ…ロウリィ・マーキュリー…!』

 

ロウリィは死と断罪と狂気、そして戦いの神エムロイに使える使徒だった。

皇帝は国事祭典に使徒を呼び出して会談を持つことがある。従って彼女にはエムロイの使徒と謁見する機会をあったのだ。

 

『彼女があの噂のロウリィ・マーキュリーですか?』

 

『あ…ああ、見た目に騙されるなよ、あれで900歳を超える化け物だ。』

 

ピニャは一刻もここから早く逃げたいと考えていた。使徒、6体の巨人、魔導師、エルフの精霊使い…彼らが敵ならば薔薇騎士団全員で立ち向かっても勝ち目はないだろう。

 

『姫様?顔色が悪いようですが…』

 

『あ、ああ、だ、大丈夫だ。そ、それよりも彼らは話す耳はあるようだな…』

 

少し遡って、イタミ達ははどうすればいいか無線などを使って話し合っていた。

 

「みたところ、街の人たちも忙しそうだし、その様子じゃあ商談とは行かないだろうねぇ。何と戦ってるから知らないけど巻き込まれるのはゴメンだし。ここは我が身とキミたちの安全安心を優先したいと思うんだけど、どうだろ?」

 

「確かに、熱烈な歓迎っぷりっすねぇ」

 

とクラタが言う。クワバラは

 

「こちらからは手を出すな。絶対に敵対的行動に繋がるようなことはよしてくれよ」

 

と緊張感を含んだ口調で話す。しかしレレイはいつものような棒読み的な口調で「その提案を却下する」と告げた。

 

「でもさ、この城門の有様じゃあ俺たち中に入れないけど?」

 

「入口なら他にもある。イタリカ町は平地の城市、東西南北全てに門がある、イタミ達は待ってて欲しい。私が話をつけてくる。」

 

レレイが腰を上げる。それを見てテュカが『ちょっと待って』と止める。冷静に考えて戦時下の街に入ることが利益になるとは思えない。むしろ巻き込まれたりと悪影響を及ぼす可能性が高いとレレイに伝える。レレイは

 

『入れるかどうかは問題ではない。この場で私たちが敵ではないことを理解させておきたい。このまま立ち去れば私たちが敵だと誤認させられる可能性がある。この先ここに訪れることがあっても、ほかの街に行くにしてもその話が広がれば今後の活動に支障が出る。』

 

『でも、それだとあたし達の都合にこの人達を巻き込むことにならない?この人達は何も求めずに私たちを助けてくれているのよ?そんな人を危険なところに巻き混む訳には行かないでしょ?』

 

『だからこそ行く。私たちはイタミ達に恩を受けている。私達の都合でここまで来て、イタミ達が敵と思われたり、評判が落ちるのは私のもとめるところではない。全てはイタミ達の為。』

 

そう言われると頷かざるを得ないテュカである。もしもの事を考え、テュカは矢よけの加護を精霊語で唱える。最終的にレレイ、テュカ、そしてロウリィの三人が車外へと降り立ったのであった。

 

イタミはそれを見てすごく心配した。何となく「大人として、男として、軍人としてどーなのよ」という文字が頭の中をぐるぐる巡る。陸ガンⅡに内蔵されている個人通話用無線(F91のアレ、別にあれぐらいならこの時代でもできるだろうから出す。)をタカモトのスナカスに繋げる

 

「なあ、俺、どうすればいいんだ…?」

 

「……んぁ?なんの話し?」

 

「タカモト…ちゃんと話を聞いていなかったのか?」

 

「すまんすまん、寝ぼけててね。うーん、なんとなくは分かるけど…行けばいいんじゃないかな?知らんけど」

 

「はぁ、まあそう言われるよな、よし、俺も行ってくるわ、むしろ行かなきゃダメだな。よし、行ってくる。」

 

そう言ってイタミはMSから静かに降りて彼女らを追いかける。

 

ピニャは決断しなければならなかった。確固たる判断材料がないままにどうすればいいかを決めなければならないのだ。

 

『グレイ、どうすればいい?』

 

数々の戦いを戦ったグレイをしてもピニャの質問に対して明確な答えを出せなかった。

兵士や農民たちは彼女の判断を待っている。彼女の言葉1つでこの街の、兵士の、そして自分の運命が決まるのだ。

まずは、彼女達が盗賊達に組みしているのか…?

それは否…と言えたらいいのだが。理由としては盗賊に関与しているならば最初から攻撃に参加していたはず。そうすればこの街は陥落していただろう。それに彼らはこちら側の声に応じて近づいてくる。今も攻撃してくる様子もない。しかし、それならばなぜ彼女らはこの街へ来たのだろうか?…追い返すという手段もあるがそれは結果的にロウリィ達を敵に回すことになるかもしれない。それは出来れば避けたい。むしろ出来れば引き入れたいものだ。使徒、巨人、魔導師、エルフが味方に着いてくれれば心強い援軍になってくれるだろう。ピニャは兵士たちに必勝を信じさせれるほどのカリスマ性に欠けていることは痛感していた。もし勝てると思わせることが出来なければきっと住民たちは逃げるだろう。ひとりが逃げれば雪崩のようにみな逃げ出そうとするはず。もはや時間はない。こうなったら当たって砕けるまでだと心を決める。ピニャはかんぬきを引き抜くと、力強く、勢いよく、そして大きく開く。

 

『よく来てくれたっ!!』

 

鈍い音と手応えにふと我に返って見る。

ロウリィも、魔導師も、エルフもドアにあたり気絶し倒れた男に視線が注がれていた。

 

『……………もしかして妾?妾なのか?』

 

白い魔導師の少女が、黒い神官少女が、そして金髪碧眼のエルフ娘が、首をウンウンと縦に振る。

 

『あ〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!』

 

ピニャは叫んだ。





(中編に続く!)

戦ってないじゃんかって?別に問題ないのさ最終的に戦えば。
ちなみにタカモトは道中自動操縦にして寝ていました。教育型コンピュータってすごいのよ?


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イタリカ攻防戦 中編

今週は忙しいため投稿が送れます。すみません。


ピニャの渾身のドア開けに当たりそのままぶっ倒れたイタミは、痛たたと、痛打した顎を擦りながら目を開ける。

 

「あらぁ、気がついたようねぇ」

 

周りを見渡すとテュカが、赤髪の子を何となく罵倒しているのが見える。他を見遣れば兵士や住民のような人達が集まっているようだ。

 

「大丈夫?ちゃんと、憶えてるかしらぁ?」

 

イタミは頷く。顎を打ったせいか、何となくだがロウリィが言っている言葉がわかるようになっていた。ある時テレビで見た頭を打ったら記憶力が超人並になった人の話を思い出す。

さっきまで罵倒していたテュカも、イタミが起きたことに気がついたようで「大丈夫?」と心配した声で言う。

 

「あはは…みっともないとこ、見られちゃったなぁ」

 

イタミはびしょ濡れになった上着を脱ぎTシャツ姿になる。とりあえず濡れた上着の水を飛ばし、着直して、レレイからヘルメットを受け取る。

無線からクワバラ曹長の声が聞こえる。

〈イタミ隊長、ご無事でしたか?心配しました。〉

 

「どーにかね。ちょっくら気を失ってたみたいだ。」

 

〈もう少し返事が遅かったら隊員を突入させるところでしたよ…〉

 

「なら良かった。やっぱり、戦闘はできるだけ避けたいからね。とりあえず状況の確認をするから、もう少し待機しておいてくれ。」

 

〈了解〉

 

「んで、誰が状況を説明してくれるのかな?」

 

全員の目がピニャに向けられる。ピニャは「私?」という顔をしてイタミを見ていた。

 

状況を確認した後、イタミはMSを急いで取りに戻る。少したってイタミとクワバラ達03部隊の残りの面々がやってきた。

6体の巨人を目にした住民達は歓喜の声を出す。なんてあの炎竜を撃退したという巨人が6体も来てくれたという事だからだ。

 

「いやー、違う意味で熱烈な歓迎っすねぇ。」

 

タカモトはスナカスを動かして手を振る。

 

「どこでもこんな感じならばいいのですがねぇ」

 

トミタはさっきの違う歓迎を思い出して言う。

 

ピニャはその巨人達を見て、尻もちを着いた。

「なんて大きさだ…!」

と。

イタリカの町の城壁はビル3階分の高さがある。ビル3階分というのはだいたい9〜10Mぐらいの高さとなる。だが、MSの平均身長は18.xMぐらいの大きさの為、足から股下の部分だけで城門の高さと同じかそれ以上になっているのだ。

さすがに歩きで入ろうとすると城壁を壊しかねないし、この状態で飛んだりするとするのは危ないので中に入ることはないが、それでも心強さを住人たちは感じただろう。

ところが、ピニャがイタミに命令したのは南門“だけ”の防衛である。

 

「あのお姫さん、軍師の才能ないね」

 

タカモトが城壁の上で愚痴る。

 

「まあまあ、戦略的にはできないことは無いからなぁ。」

 

「とりあえず東西南北に一体ずつMSを置いときゃあ盗賊だって来ねぇだろうしなぁ」

 

「予測論は外れるからさ、ま、とりあえず準備をしようじゃん?」

 

「へいへい」

 

イタミは的確な指示を出して武器やMSなどを配置していく。地平線の先に盗賊らしきものが陣を成しているのがなんとなく伺える。

さっきはタカモトにああは言ったが、イタミも彼女の考えているこの作戦はあまりいいものではないなと感じていた。

MSは背が低い建物しかないこの世界ではすごく目立つものだ。それが同じ場所に6体も居れば敵も近寄ろうとはしなくなる。そうしたら他の門に行くことになるだろう。相手方の選択肢を減らすことは相手がどこを攻撃するかわかりやすくはなるが、ピニャ達騎士団と、イタミ達03部隊以外はみんな戦闘はド素人だ。(ピニャ達も実戦経験はほとんどないらしいが…それをイタミ達は知る由もない。)そんな彼らに大群を抑えることが出来るとは考えづらい。

「そうだなぁ、とりあえず援軍呼んどくかぁ、クワバラ、無線で本部につなごう。」

「了解。」

クワバラが無線を起動し本部に繋ぐ。

 

救援のお願いを受けたアルヌス本部では上官達が怒号の会議を開いていた。

「だから!うちら61式戦車部隊が救援に向かうって言ってるだろ!」

「戦車は地面這ってんだからいつ着くかわからん!うちのファンファン改部隊で敵を一網打尽にすりゃあいいんだよ!」

「ファンファンなんか一年戦争で使えねーってわかってんだろ!あんたらはうちのジム隊のコルベットブースターを運転をしてればいいのさ!」

「何をー!」

「やんのか!」

 

「お、落ち着きたまえ君達」

ゴップはすごくあせっていた。部下たちが怒りでさらに怒る状態になっているからである。今言い争っている61式戦車部隊、航空部隊、そしてジム隊は今まで防衛と訓練しかできていなかった。そのため鬱憤が溜まっていたのだろう。

「と、とりあえずだ。こ、今回は航空部隊に頼むことにしたい。なぜなら、対人用の武装も頼まれているからね…」

「でも!」

「シーネン中佐。ジムはうちの中の虎の子だ。私の立場からしたらできるだけ手の内を見せたくないのだ。今回は、すまないが、引いてもらいたい。」

MS隊のシーネン中佐も、ゴップの言うことには従うしかない。

 

こうして無事?支援攻撃の許可を貰った航空部隊のケングン大佐はヨウガ第1航空中隊長(中佐)と音楽の話なんかをしながら格納庫へ向かった。それを見たゴップは「はぁ…」とため息をついた。

 

イタリカに届く陽の光が消えてゆく…。灯りはいらないのかと住人に言われたが彼らには必要ない。

 

「ねぇ?敵であるはずの帝国に、どうして味方しようとしているのかしらぁ?」

 

ロウリィがある意味では最もな質問をする。

 

「街の人を守るためだね。」

 

「本気で言ってるのぉ?」

 

「そういうことになっているはずだけど」

 

「お為ごかしは必要ないわ、貴方達にとって盗賊は敵の敵、ある意味では味方とも取れるわぁ?それに、あの皇女、色々偉そうじゃない」

 

「まあ…それは同意する。」

 

イタミは夜間用装備をメットにつけようとするが上手く固定ができていない。作業をしやすいよう、ロウリィにメットを持ってもらって両手でそれを装着する。

 

「エムロイは戦いの神。人を殺めることを否定しないわぁ。でも、それだけの動機は重要視されるの。偽りや欺きは魂を汚すことになるわよぉ。」

 

イタミは夜間用装備を付けたメットをロウリィから受け取りつけようとするが、ロウリィは自ら頭に載せようとした。イタミは首をくぐめてロウリィにメットを乗せてもらった。

 

「ここの住民を守る、この名目は嘘じゃない」

 

「ほんとぉ?」

 

「もちろん。ただもう一つ理由がある。…まあ、俺たちと喧嘩するより仲良くした方がいいってことをお姫さんに理解してもらう為さ。」

 

ロウリィは、この言葉をこう理解した。

お姫様の脳内に恐怖というものを刻み込む。使徒が、巨人が人を蹂躙する様を余すことなく見せることで彼女に「私達では勝てる相手ではない」と体が震え上がるまで刻み込ませる。そうすれば喧嘩するより仲良くした方がいいと思うだろうと。

 

「気に入った、気に入ったわぁ!それ!」

 

彼女は邪悪そうに微笑む。

 

「そういうことなら、是非協力したいわぁ。わたしも久々に狂えそうで楽しみぃ。」

 

ロウリィはまるでダンスの誘いを受けるかのようにお辞儀をした。

 

深夜、月が少しづつ闇に食われていく。そして紅く、紅く染まってゆく。

交代交代で仮眠を取っていたイタミは揺さぶられて夢から戻る。

 

「ん?動いたのか?相手」

 

「は、はい。そのようですが…」

 

「まー何となくわかる。こっちに来てないんでしょ」

 

「はい、と、とりあえずこちらへ!」

 

トヅに連れられて壁の上から昨日盗賊がいた場所を確認する。既に誰もいなくなっている。

 

「タカモト、お前起きてるか?」

 

「そりゃあ仮眠しましたもん昨日」

 

「ああ、寝てたな移動中、どっちに行ったか分かるか?」

 

「ええ、この門から外を見て左方面に行きましたから…多分東門に出るはずでしょう。」

 

「了解。じゃ、僕達もそっち方面に行く支度をしよう。起きてるみんなは仮眠中のみんなを起こして」

 

「「「了解」」」

 

数分も経たずに03部隊が横一列にに並ぶ。

 

「よし、みんな揃ったな。では配置決めをする。まずタカモト」

 

「はい!」

 

「お前は武装を持ってくる航空部隊と合流し、武装を受け取って航空部隊共に東門へ向かう。」

 

「了解!」

 

「俺、トミタ、クリバヤシ、アルギニナ、モリスは大通りを渡って東門に向かう。」

 

「「「了解」」」

 

「あとクラタ、君はホバートラックで、レレイ達といてくれ、いつ何かが襲ってくるか分からない。残りのみんなはここで待機していてくれ。その間ここでの指揮はクワバラ曹長が担当する。」

 

「「「「了解!」」」」

 

「みんな、健闘を祈る。」

 

紅く染った月の元、狂気と狂乱の賛美歌が始まる。

 




後編へ続く。

登場兵器紹介
ファンファン改
ファンファンを1から設計し直した機体。機体を大型化し、小型化したローターを4基下部につけている。横にスライド式ハッチを設け、そこからでも武装を発車可能にした。ホバークラフトとヘリコプターの間の子のようなデザインをしている。固定武装は5連誘導小型ミサイル、60mmバルカン砲×2


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イタリカ攻防戦 後編

お気に入り登録が100人を突破しました。ありがとうございます


赤銅色に染まり、満ち足りた月が紅く大地をボンヤリと照らす。満月は人々を狂わせる。西暦だった地球の中世ヨーロッパではそんなことがよく言われたそうだ。

不気味な静けさを火矢が切り裂く。イタミ達が見た通り、東門に兵士たちが来たようだ。東門を護衛するは正騎士 ノーマ・コ・イグル。ノーマの指揮で警備兵や民兵の反撃の弓射がおこなれる。民兵はいわゆる民間兵のことであり全員がシロウトだが、いないよりかはマシである。

射撃戦が続く。矢に体を抉られた者は盗賊だろうが民兵だろうがうめき声を上げ、倒れてゆく。弓を持った盗賊の間から円形、方形それぞれバラバラな盾を持った盗賊達が歩み出てくる。それを女性や年長の子供が石を投げ熱湯や溶けた鉛を下にぶっかける。当たらぬ矢よりもこちらの方が有効打になるのだ。

 

今ここにいる盗賊…いや、諸国連合軍の敗残兵達が見たのは異様なものだった。人が巨人が使う直線的な魔法によって消される。それは人だけでは無い。馬、人外、竜までもがそれに触れただけでその部位が消滅する。人間ぐらいの大きさなら瞬間的に消滅するのだ。そしてその消えた場所を巨人達が歩いてくるのだ。もはや理不尽を超えた何かに、連合軍は敗北した。そして全てを失った。その時から彼らは俗に言う“無敵の人”となった。もはや何も失うことは無い。何も奪われることは無い。俺たちを縛るものは何も無い。ならば何をやる?ならば戦争だ。もはやアルヌスの敵も帝国もどうでも良い。これからは俺たちだけの事だ。俺たちの戦争だと。

これこそが戦争。矢が飛び合い、剣で切り裂き、盾で防ぐ、血で血を洗い、じぶんがどうなろうと気にせずに相手を斬る、斬る、斬る。

死を恐れぬ兵士が大地を往く。城壁にハシゴをかけ、登る。1人の民兵がハシゴを斧で壊せば

「おみごとっ!」

と喝采をして腹を切り裂く。ハシゴは倒れ、そしてヒトだった物が地面に散らばる。

歓声が上がる。そして兵士達が歓呼をを述べてゆく。これこそが戦神エムロイへの賛歌。戦いの熱狂はモノを焼いてその霊魂と共に燃え上がる。そして彼らを橙に照らすのだ。

 

使徒、ロウリィ・マーキュリーはしばし耐えていた。この狂乱を前にして、オアズケにされているのだから。

 

「な、なんでぇ!?」

 

甘い声で、苦しみ、悶える。

 

「んっ、くぅ」

 

彼女達が心配で待機を命じたのは残念ながら悪影響だったようだ。

 

「大丈夫なのか?」

 

出発しようとしていたイタミがMSから降りようとするがレレイとテュカに停められる。

 

「彼女は使徒だから…」

 

よく分からないが、それがロウリィが苦しんでる理由らしい。

彼女はここにいるからこの状態だが、もしも、戦場の真っ只中にいたなら、敵とみなしたもの全てを衝動的に殺戮して回る。それは本能のようなものなのだと。

レレイの説明にイタミは慄然とした。

 

「クソっ!盗賊なら農村辺りを襲ってりゃいいんだ!城市を堕とそうとするとは生意気だ!」

 

そう言って盗賊を斬る。しかし背後から別の奴が斧で斬りかかってくる、それを剣で受け止めるが、棍棒、双剣、半月刀、長槍、などなど様々な武器を持った兵が次々と襲いかかり、ノーマはその波に飲まれてしまう。途方もないほどに湧き出てくる盗賊にイタリカの住民が抑えることは出来なかった。

 

作戦通りにはいかない。というのはピニャもよく知っている。ピニャは敵は慎重に攻めてくるだろうと考えてこの二重の防衛に決めた。しかし蓋を開けてみれば彼らに慎重のしの字もなかった。ただただ、襲ってきては斬られ、そして死ぬ。

 

「味方が脆すぎる…士気は上がっていたはずなのに…」

 

民兵も、警備兵も最初から腰が引けていた。それに来たのが死を恐れぬもの達である。その気迫に気圧され、そして戦えずに地に伏せてゆく。

ピニャは予定通り主戦力を東門内側に作り上げた防塁へと移動させる。

壁の上にいた民兵達や兵士は自分たちがどんな状況に置かれているかに気づき、絶望し、やり場のない怒りを覚えた。自分たちは捨て駒だったのだと。

最初から第1の壁は捨てることを前提として考えられていた。それを聞いた人達は最初はよくわかっていなかったが、今になったら分かる。あの皇女は最初から自分たちを捨てる気だったと。

 

ノーマは驚いた。なんと味方である警備兵から攻撃を受けたのである。その攻撃を何とか剣で受け止めるが、また別のところからの攻撃が来る。ノーマもはやここにいるのは不可能と判断して飛び降りる。もはや民兵も女性や子供は殺され、兵士でも生き残ったものは怒りをそのままに寝返ったものまでもいる。

東門を占拠した彼らは破壊した門扉を押し開けて来る。騎兵達は女、子供、男問わず、その死体を見せつけ、投げて山にする。友人、親戚、親、子の死体が山積みにされる。卑怯者だと罵声を浴びせ来いよと煽り、死体を弄ぶ。

「こんちくしょっ!!!」

1人の若者がフォークシャベルを片手に飛び出していく。そこからはもう誰も止められない。雪崩のように人が飛び出して行く。ピニャの作戦は完全に破綻したのだ。

 

イタミ達はロウリィの喘ぎ声が無線に響いている状態で出ることになってしまった。

全員が色々とすごい表情になっている。

クリバヤシが「色々と不味くないですか?これ」と声をかける。イタミは「後でこの部分の無線の記録消さなきゃなぁ」と赤くなった顔で言う。正直いってそろそろ無線を停めたいのだがそれも出来ないのだ。それに何故か異様にあの声を無線がキャッチする。

 

「と、とりあえずクロカワ、ロウリィの傍にいて欲しい、今そっちで女の子を見れるのクロカワしかいない。」

 

「了解しましたわ。ロウリィさん、もう少し、我慢できますわね?」

 

ロウリィはすっと立ち上がり、すごい速度で飛んで屋根を走り始めた。

 

「ロ、ロウリィさんが急に動き始めて…!」

 

クロカワが焦った声で言う。

 

「と、とにかく急がなきゃまずいよ!」

 

「あ、ああ、とにかく走るそ!」

 

屋根の上を走るロウリィとその横をズカズカとMS達が走る。

タカモトは合流ポイントに到着し、武装を受け取る。長い筒にジョウロみたいな先っぽ、タカモトの第一印象は「まるで害虫駆除用の農薬散布マシーンみたいだ」と。

諸君はビームスプレーガンを知っているだろう。アレは収束率が低いためビームライフルほどMSに有効打を与えずらい。しかし、それを対人戦に向けてみるとどうだろう?むしろその場合、わざと収束率を下げて周りに散布する。そうしたら人を一網打尽にできるのではないかと。

 

「人にスプレー状のビーム撒いて殺すか…ある意味非人道的だな。」

 

イタミ達が東門に向かう頃、MSとファンファンが赤さが抜けてきた月を横目に進む。

 

「ケングン大佐!あと5分で到着します。段取りとしては東側から接近して城門と門外の目標を掃討しようと思っとります。」

 

ケングンは「中佐に任せる」とだけ返す。

あと2分、となったところでその曲を流す。ワルキューレの騎行が始まる。

 

[ここからは実際にワルキューレの騎行を聞いた方が楽しめると思います。by青い鳥]

 

柵と門の間ではもはや何が敵で何が味方か分からないほどの乱闘が起きていた、

そこらにいた敵を殴り、蹴飛ばしそして斬る。そして死体を踏む。それが味方だったのか敵だったのかすら分からない。そんな状態の彼らに曲が空気を叩く音など気づくはずもない。

所が、時が、空間が全てが止まった。柵を飛び越え、彼女が降り立った瞬間に。そして巨大な何かが

その破壊力と衝撃に音が止み、戦いに関係する一切の音が途切れた。そして聞こえるはオーケストラの調べ。

 

「Ho-jo to-ho! Ho-jo to-ho! 」

 

突如現れた真っ黒な何かにみなが目を向ける。

 

「Ho-jo to-ho! Ho-jo to-ho! 」

 

それはフリルにフリルを重ねた漆黒の神官服を纏った少女。

 

「Ho-jo to-ho! Ho-jo to-ho! 」

 

更に上を見やると?

 

「Ho-jo to-ho! Ho-jo to-ho! 」

 

それは2つ目の巨人(ツインアイ・オーガー)だった。その巨人は腕の爪を赤く、赤く光らせていた。

 

「Ho-jo to-ho!!」

 

彼女は地に足をつけていた。左手を大地に置き、後ろにまわした右手は鉄塊の如きハルバードを握っていた。彼女は顔を上げ、神々しいまでの狂気を湛えた顔を正面へと向ける。彼女の黒髪は、禍々しいまでの神聖さで白銀のように輝いていた。その瞬間、ファンファーレと共に城門は爆発し、そしてピンク色の雨が降り注ぎ始める。

 

「ヒャッハーってか?」

 

タカモトは無心状態でビームのシャワーを盗賊にかける。その盗賊たちは爛れ、そして死ぬ。その間をファンファンの誘導弾がすり抜け、的確に爆発し、殺してゆく。前後、左右、様々な場所から綺麗な軌道を描いて爆発するミサイルに盗賊達は消えていった。

城門内ではロウリィが敵を蹂躙し、クリバヤシがMSの腕のシールドSクローを赤熱化させ騎兵を馬ごと切り裂き、そして地面につき刺す。月は白くなりながら沈んでゆき、太陽がまた大地を照らす。鉛玉が空を切り裂き、かべにめり込む、そしてピンク色の雨が降り、大地を歪に浄化してゆく。絶対的で一方的な攻撃。そして心のなく凶暴な攻撃。巨人と空飛ぶ何かにあらゆるもの全てが破壊されていく。死の交響曲とともに。

 

「Ho-jo to-ho! Ho-jo to-ho! Hei-a ha! Hei-a ha!!」

 

ピニャはもはや立つことしか出来なかった。正と負の感動が入り交じった無茶苦茶な感情が彼女の精神を揺さぶる。

 

「Ho-jo to-ho! Ho-jo to-ho! Hei-a ha! Hei-a ha!!」

 

ピニャの霊魂が鉄の連打とともに打ちのめされる。人はちっぽけで無意味な存在なのかを、絶対的な無力感を突きつけられていた。

 

「Hei-a ha! ーーーー Hei-a ha ! ーーーー」

 

今までの敵は等身大だった。だが、アレは違う、あまりに強大で多数で、そして進んでいる。追いかけようにも一生追い越せない「壁」。

 

ワルキューレの嘲笑とともにピニャの精神は打ちのめされた。意味のわからぬ歌詞は

なんと矮小なニンゲンよ!無力で惨めで、情けないニンゲンよ!

お前の権力、権威など何ほどのものか、お前たちが代を重ねて気づきあげたものなど、我々の力には一瞬でこうよ!

彼女にはこう聞こえた。彼女は崩れ落ち、涙を流した。

 

テンションの上がりすぎたクリバヤシはバキッという鈍い音を立てながら飛び出し、銃剣をふるう。この時代(宇宙世紀)に銃剣なんぞ必要なのかと言われそうだが、全てはもしもの備えである。MSで蹂躙などクリバヤシは満足出来ない。自分は白兵戦こそ本領を出せると言わんばかりに敵を切り裂く。猫のような俊敏さで相手を寄せつけず、離れれば銃を乱射し、近づけばナイフで突き刺す。もはや彼女には誰も手を出せない。2人ともいっちゃった顔をしている。残りのMS部隊は危ないのでどうすることも出来ない。するとファンファン達が内部の殲滅を開始するために顔を出す。イタミ達は急いでみんなに下がるように伝える。ロウリィはクリバヤシを抱えてひとっ飛びでMSの肩に着地し、クリバヤシを突っ込んでから飛び降りようとするも、イタミのMSに妨害される。そして行われたのはバルカン砲の一斉射撃。ガンダムにも使われた火器が容赦なく敵に降り注ぐ。バルカンがなり止むと、それと同じくしてオーケストラの演奏も終わる。

そしてファンファンからロープが垂れ落ち、軍人達が滑り降りてくる。

もはや軽い調子で「薄茶の人」などと声をかけられなくなっていた。窓から弓を射っていた人があんたらは何者なんだと呟く。

トミタは「地球連邦軍さ」と答える。

イタミのMSの手の上に乗ったロウリィはローターの風でスカートが巻き上がらない様に手で抑える。もう敵が動く様子もない。

 

「ロウリィ、気分は大丈夫か〜?」

 

後ろからイタミの声がする。

 

「出来れば、もうちょっとしたかったわぁ」

 

「そっか、だけど、取り逃すのはごめんだからね。」

 

「まあ、久々に狂えたし、今回はこれぐらいで許してあげるわねぇ〜」

 

「まっ、許す人間がいるのかわかんないけどね」

 

太陽が城市の中を暖かく照らす。

また、新しい朝が来たのだ。

 

続く。




次回予告。戦いを終えた彼らは条約を結ぶこととなる。ピニャは彼らの出す要求が帝国のそれと全く異なることに驚く。その後イタミ達は帰還途中に謎の女性の集団に遭遇するが…
次回!GATE 地球連邦軍 彼の地にて、斯く戦えり 「戦いの後始末」 君は彼の地で何を見るか?


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