河童は不思議な生活がしたい (マスケーヌ/東風ますけ)
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第1章 「王都クルブルク編」
第1話「13個目のライフ」


処女作です!


世界のなまえはファンタジール。

ここは不思議で平和な世界。

 

空にはマーズと呼ばれるこの世界の月がぽっかりと浮かんでいて。

 

そのマーズからのやわらかな光がファンタジールの夜をすこしだけ明るくしてくれます。

 

夜明けが近いのにまだまだ仕事に精を出す人もいれば

 

夢の中で何やら迷っている人もいるようです。

 

土を掘るか

鉄を打つか

木を伐るか

料理をつくるか

布を縫うか

家を建てるか

 

それとも…

 

魚を釣るか

動物を狩るか

剣を抜くか

精霊を呼ぶか

素材を混ぜるか

民を守るか

 

それとも…

 

河童であるか

 

夢の中で迷って迷ってごろんと寝返りをうったのは貴方ですね?

 

さあファンタジールに朝が来たようです。あなたのライフのはじまりです。

 

ヒューーーーードカン

 

「あらあらまぁまぁベットから落ちちゃったのね!上の階からすごい音がしたからびっくりしてとんできちゃったじゃない。噂のナントカ石がついにウチにも落っこちてきたのかしらって思ったわ。」

 

こう言って話しかけてきたのはメグおばさん。

俺の育て親だ。俺の名前はルーベルト。父と母は幼い頃に亡くなっている。俺は生まれた時から頭に皿のようなものが付いていてオマケにクチバシも付いている。父と母は俺の見た目について調べて回ったらしい。そしてダルスモルスの大図書館である書物が見つかった。それは、とある異世界の伝説の中で出てくる「河童」と呼ばれる生き物だった。そんな俺でも両親は俺を愛してくれた。

だが両親は病にかかった。今の技術では到底治せない難病だ。両親はメグおばさんに「息子を頼む」と言い残して死んでしまった。俺はメグおばさんに育てられ15になった。今日はライフを決めて王に謁見しに行く。

 

それにしても今朝の夢はなんだったのだろう。

 

「どうしたのポカーンとしちゃって。ひとに言えないような夢でも見ていたの?ちなみに私はあなたがベットから落っこちる夢を見たのよ。まぁでも床が抜けなくてよかったわ。ココももう古いからねぇ。それより聞いたよ!ライフが決まったんだって?よかったねぇ。」

 

そう言ってメグおばさんは部屋を出て行った。

俺も後に続くように外に出る。緑色の服を着た人が走っている。と思ったらこっちに手紙を投げてきた。ポストマンか。手紙を見るとポストに綺麗に入った。ストライク!

 

俺はポストを開き手紙を開けた。

 

ルーベルトへ

 

     ライセンスを受け取り

     謁見の間まで来ること

 

            クルブルク国王

            エリック・ストーン

 

国王様がいちいち書いているのか…大変だな。

 

「ルーベルト。ギルドに行ってライセンスを受け取ってきなさい。」

 

メグおばさんが言った。ギルドは職業を決めたり変えたりする場所だ。

 

「それじゃいってらっしゃい!」

 

メグおばさんは勢いよく手を振ってくれたので俺も振り返す。

 

「行ってきます!」

 

俺は迷うことなくライフギルドにたどり着いた。

 

「はいはい何も言わなくてもわかってるよ。アンタルーベルトだろ?」

 

ギルドマスターが言った。

 

「コレがみならいライセンスだ」

 

そう言って一枚のカードを渡す。

そうそう、俺のライフは「河童」

 

河童!?

どうなってる?俺は傭兵を選んだはずだが…

 

「ギルドマスター?コレは?」

 

何かの手違いだろうと考えた俺はギルドマスターに尋ねる。

 

「ああ、ソレは…13個目のライフだ。」

 

「13個目のライフ?」

 

「ライフは原則12個なんだが…ある偉い人が女神様からのお告げだ!とかなんとか言い出して最近追加された。と言ってもこのライフ、厄介なことになり手が居ないんだ。「適正」がないと慣れないようになってやがる。んでもし適正がある奴がいたらソイツのことを強制的に河童にしちまえってエリック王がな」

 

なんで俺に適正が?というか俺しか居ないの?河童のライフの人。

 

「マスターはどうなるんだ?」

 

そう。重要である。マスターがいなければその職業ができない。

 

「お前がマスターになるんだよ」

 

マジですか?

 

「マジだ」

 

マジだった。

 

「とりあえずエリック王が待ってるかもしれねぇから、とっとと行ってこい。」

 

そう言ってギルドマスターは俺を…

 

「きゃー!」

 

女の叫び声が聞こえた。

 

「だれかー!たすけてチョウだーい!」

 

「おいこら!ダジャレなんて言ってねぇで待ちやがれ!」

 

「逃がさないっす!」

 

「誰かー!助けてー!」

 

「ルーベルト。行ってこいよ。」

 

ギルドマスターは言う。本当は行きたくないけど気になるし、行ってみるか。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

単刀直入に言う。チョウチョが喋った。ネクタイになった。

 

説明すると……

 

チョウチョがゴロツキの2人に絡まれていた。その2人からチョウチョを守るように立つとゴロツキがリッチを寄越せと理不尽なことを言ってきた。俺は今無一文だったのでメグおばさんからもらったキャンディーを差し出したら大人しくなって帰って行った。なんだったのだろう。ともかくチョウチョを助けたりした後に王城に向かった。謁見の間に行こうとしたら兵士に止められた。なんでも正装じゃないとダメらしい。なんでもネクタイとか。俺はどうしようと難儀していたとこにチョウチョがやってきた。チョウチョが謁見したいと兵士に言うと、ダメだと言われ困っていた。そしたらチョウチョがコッチに気付いてこんなことを言った。

 

「私が「チョウ」ネクタイになります。」

 

ダジャレかよ。とツッコミたかったがこの際なんでもいい俺は

 

「できるのか?」

 

と質問し、チョウチョは

 

「勿論です!」

 

意気揚々と返答した。

そしてチョウチョがネクタイになった

何を言っているのかわからねぇと思うが俺もわからねぇ。

 

そして現在謁見の間で王の前にいる。

 

「よくきたなルーベルト!お前はこのファンタジールの中で初めて「河童」になった者だ。我が国の王として誇りに思うぞ!」

 

アンタが勝手に決めんだんだろうが

 

とは口が裂けても言えない。

 

「さてルーベルト。お前には河童のマスターをしてもらう。大変だと思うが頑張るように」

 

ええぇ(困惑)

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

王への謁見が終わり俺は帰路に着いた。

帰り道。チョウチョに居候させてくれないかとお願いされた。俺はメグおばさん次第だな。と答え家へ向かった。

 

「大歓迎よ!チョウチョちゃん!」

 

うん。予想通り。

こうして新たな家族が増えて俺の運命の1日が終わっていった。

 

 

 

 




ファンタジーライフLINK知ってる人はどれくらいいるのだろうか?


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第2話「チョウと河童のしくみ」

短めです。



喋るチョウチョと同居し始めて3日がたった。

 

「ルーベルトさん!パーテル大平原東にいきましょう!」

 

チョウチョが言ってきた。俺は今ベットと一体化している。

 

「やだよ。面倒くさいし。」

 

聡明な俺はチョウチョの誘いをキッパリと断った。

 

「どうしてですか!もう出会って3日ですけど1度たりともルーベルトさんが働いているところを見ていません!いい加減働きましょうよ!」

 

何を隠そう俺はインドア派である。そんな俺がいちいち大平原に行くわけがない。

 

「そういえばチョウチョって何処から声出してんの?」

 

話をずらすことにした。

 

「え"っ?声ですか」

 

今女の子からでちゃいけない声出てたぞ。

 

 

あれ?

 

チョウチョってメスなの?オスなの?一応声と喋り方は女の子っぽいからメスか?

 

いやでも……

 

考えたら頭がおかしくなりそうだからやめた。

 

「声は………何処から出てるんでしょうか?」

 

自分でもわからんのか。

 

「チョウチョ。こっちこい」

 

チョウチョは「なんですか?」と言いながら近寄ってきた。

 

「キャァ!?」

 

俺はチョウチョの体を色々触っている。それはもう、色々だ。触角を筆頭に羽、胴体などの部位をモミモミしている。近くで声を聞いてもどこから出てるのか分からん。なんなんだこのチョウチョ。

 

てか心なしかチョウチョが人の肌のようにプニプニしている。

 

「ルーベルトさんのエッチ!?普通人の身体を触るときは一言言いましょう?ね?」

 

チョウチョに怒られてしまった。

確かにアレはダメだったかな?

取り敢えず離してあげよう。

 

「もう…ルーベルトさんは変な所で度胸というか勇気というか妙に勢いがあるので困ります。」

 

「すまんかったな。お詫びと言ってはなんだが、パーテル大平原に行こう。

 

「本当ですか!?」

 

「俺も自分のライフを確かめたいしな」

 

前例がないせいで「河童」がどういうライフなのか分からないからな。

 

「じゃあ、パーテル大平原にレッツゴー!」

 

元気だな…このチョウチョ。

 

(チョロい……)

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■

 

 

「ルーベルトさんはどんな技を使えるんですか?」

 

技…………………か。

 

戦ってみないとわからないな。

そもそも戦うタイプのライフなのか?

まぁ試さないとわからないよな。

 

「ルーベルトさん。アレはバ・ハハですよ。」

 

バ・ハハ。羊型のモンスターで初心者でも倒せる入門用モンスター。最初の相手にはもってこいだな。

 

「アレで技を使えるか試してみる。」

 

そう言って俺はバ・ハハに近づき構えた。

 

技ってどう試せば良いんだ?

 

素手で殴るのもなぁ・・・

 

投げてみるか?

 

「メェーー」

 

バ・ハハが突進してきた。

 

 

ありったけの力を込めて、俺は突進に合わせてツノを掴み後ろに投げた。

 

バ・ハハは衝撃に耐えられず気絶した。

 

 

「すごい……スゴイですよ。ルーベルトさん。」

 

心なしかチョウチョがキラキラした目で見ているような気がする。

 

技名があった方がいいな。

そうだな、力を溜めて投げる…

 

「俺はこの技を「チャージトロウ」と呼ぶ。」

 

「チャージトロウ…安直過ぎませんか?」

 

「さて………………帰るか。」

 

途中チョウチョが「無視しないでください!」とか言っていたけど気にしない。

 

こうして「河童」と「チョウ」の仕組みが少しだけわかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




週一投稿目指してます。この回はテンションで作ったので後日加筆する可能性があります。


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第3話「5等分のメグおばさん」

珍しくたっぷりかけた!


世の中には兄弟、姉妹が居る。

 

そんな中では稀に、双子も居る。

 

ごく稀に三つ子も居る。

 

だが、居る。

 

宝くじの一等が当たるよりも。

 

バナナの皮に滑って転んで死ぬよりも。

 

河童がこの世から消えるよりも。

 

そんな出来事よりも希少な、

 

 

 

 

 

五つ子が・・・・・・

 

 

 

だが、五つ子だったとしても可能……

 

判別する事は……辛うじて。

 

焼肉定食を焼肉抜きにする男以外は…

 

だがそんなことを許してくれないのが此処。

 

ファンタジール。

 

ルーベルト(主人公)の育て親であるメグおばさん。メグおばさんは実は五つ子である。

 

そして何処かの五つ子と違い…

 

判別不可。

 

何故なら…

 

バンダナとエプロンの色以外同じだから。

 

「言い過ぎだろ?」とそう思うだろう。

 

だが、本当にバンダナとエプロンの色だけである。

 

寸分狂わず一緒…

 

顔のパーツッ!

 

まぁ本当は僅か、誤差の範囲で違うのだが……

 

このお話はそんなメグ姉妹による奇妙な出来事にとあるネクタイと河童が振り回されるお話。

 

 

 

■■■■■■■■■■

 

「チョウチョちゃん?お使い…頼めるかしら?」

 

私の住んでいる家の大家さんが言ってきた。

彼女の名前はメグ。私の恩人です。

そんなメグさんがお使いを頼めるかと言ってきました。そんなのもちろん…

 

「任せてください!」

 

断れないに決まってます!

 

「でも、、、チョウチョちゃんだけでお使い出来るかしら?」

 

うぅ、確かに。

 

私じゃあ何処にも…

 

そうだ!ルーベルトさんを誘いましょう、

さっすが私。いい考えです♪

 

「ルーベルトさんと一緒に行きます!」

 

「あらそう。なら大丈夫ね。そうだ、チョウチョちゃん。飴ちゃん欲しい?」

 

「あっ…ありがとうございます」

 

私はメグおばさんからキャンディーを受け取るとドアを開け、屋根裏にいるルーベルトさんを呼びに行った……

 

 

 

■■■■■■■■■■■

 

 

こちらルーベルト。

 

現在絶賛引きこもり中。

 

最近はチョウチョも誘ってこないし平和だ。

 

こんな日が続けば良いのになぁ…

 

バァン!ドアが開いた。

 

 

「ルーベルトさん!お使いにいきましょう!」

 

続くわけ無いんだよなぁ(哀愁)

 

■■■■■■■■

 

「なるほど。それで俺を誘って来たと。」

 

「ハイ。その通りです。」

 

俺はチョウチョから経緯を聞いた。

 

実に真っ当で断りにくい。

 

「それでルーベルトさん?行きますよね?」

 

(威圧)って付いていてもおかしくない雰囲気だ。心なしか黒いオーラが出たように見える。

 

こうなったチョウチョは説得不可。

諦めるしかない。此処は潔くついていこう。

 

「俺もついて行くよ。(そうしないと殺気収めないし…)」

 

「ありがとうございます!ルーベルトさん!

早速行きましょう!」

 

そう言って俺の手を引っ張るチョウチョ。

 

毎度思うがどうやってやってるんだ?

 

まぁ良い。

 

お使いなんて久しぶりだな…

 

俺が思い出に浸っていると、

 

ギュッとチョウチョが俺の手を引っ張った。

 

そのまま俺は外に出た。

 

■■■■■■■■■■

 

「それで最初は何処へ行く?」

 

「そうですね…まずは商店街に行きましょう。」

 

 

 

 

商店街に着いた。

 

 

 

そこにはメグおばさんがいた。

 

何故か緑のバンダナをしていたが気にしないでおこう。

 

「買ってきました!」

 

「次は何処に行く?」

 

「では郊外南で!」

 

 

 

郊外南に着いた。

 

 

 

何故かメグおばさんが黄色のバンダナをしていたが気にしないでおこう?

 

「もらってきました!ニンジン。」

 

「なんで此処なんだ?」

 

「なんでもキャロットが混ざっても気づかないほど新鮮なようで……」

 

「キャロットって…ニンジンのモンスターじゃねぇーか。本当に大丈夫か?ここで?」

 

「さぁーて次は…「無視すんな」郊外西に行きましょう」

 

 

 

郊外西に着いた。

 

何故かメグおばさんが黒色のバンダナをつけていた??

 

「もらってきました。なんでもニシキゴイという赤色の鯉がいまして…」

 

「それって食えんのか?」

 

「一応食べられるようですが……主に観賞用でしょう。」

 

「ほーん。で?次は?」

 

「次は……職人街ですね。」

 

 

 

職人街に着いた。

 

 

何故か青のバンダナをつけたメグおばさんがいたが気にしないでおこう???

 

「買ってきました。小さなシッポです。」

 

ピク……………ピク………ビクン……

 

「気持ち悪いんだが。」

 

「そうですね。余り見ないようにしましょう。」

 

「コレで終わりか?」

 

「ハイ!全てのお使いを達成しました!」

 

「変なものばっかだったな」

 

「何に使うんでしょう?」

 

「さあな。とにかく帰ろう。日が暮れちまっ

た。」

 

「というかあのメグおばさんって……」

 

「言うな。俺は何も聞きたくない。」

 

「そうですね……」

 

 

 

家に着いた。

 

 

 

「「ただいま(です)」」

 

「「「「「おかえり」」」」」

 

メグおばさんが5人居る。

 

「チョウチョ。俺は疲れてしまって幻覚を見てる。そうだろう?」

 

「その通りです。ルーベルトさん」

 

ものの見事に現実逃避を始めた俺たちを気にせずにメグおばさんは

 

「アラ。やだ、言ってなかったかしら?私って五つ子なのよ。珍しいでしょ?」

 

「いやいや珍しいってレベルじゃ無いよ…」

 

「そうですよ……あり得ませんって。」

 

「でも現にねぇ?私達が居るし…そんな珍しくは無いはずよ?」

 

「んなわけ…まぁ良い。とにかくコレ、お使いのヤツ。」

 

「アラ、ありがとう。チョウチョちゃんもありがとう。」

 

「いえいえ…」

 

「じゃ俺たち屋根裏に行くから。」

 

「本当にありがとねぇ。」

 

俺たちはメグおばさん部隊に手を振ると屋根裏に戻った。

 

「本当になんだったんですかね?」

 

「気にしたら負けだチョウチョ。」

 

「ふぁーぁ眠くなっちゃいました。」

 

ふぁーぁってかわいいな。

 

「俺も眠いし…寝るか。おやすみ。」

 

「おやすみなさいルーベルト…さ……zzz」

 

寝たか。

 

俺も寝よ。

 

出来れば今日の出来事は夢でありますように。

 

こうしてメグ部隊に精神を削られたせいでチョウチョとルーベルトは爆睡した。

 




ちなみに原作だと4人姉妹で黒いバンダナは出てません。書こうとした時に頭の中に某花嫁が浮かびまして…それで無理矢理5人にしました。すんません。反省はしてます。


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第4話「マスターさんとの顔合わせ」

投稿遅れてすいません。


「マスター集会?」

 

 

「はい。12人のマスター達が集まって集会をするようです。」

 

俺のもとにエリック王からの手紙が来た。それをチョウチョが持ってきてくれた。チョウチョってこういう所、気がきくよな。

 

「ルーベルトさん。私、偉いですよね?」

 

「ハイハイソウデスネー」

 

「意外とドライ!?」

 

まぁチョウチョはおいといて、

マスター・・・。俺、本当にマスターになったんだな・・・

みならいとかいろいろすっ飛ばして・・・

 

「ええと、今日のお昼くらいに集合だそうです。今は午前8時なので後4時間ですね。どうやって過ごしましょう?ルーベルトさん?」

 

チョウチョ。

そんなのきまってるだろ?

 

「寝るぞ。」

 

俺がそう言ってベットに潜ろうとした瞬間・・・

 

「そうはいきませんよルーベルトさん!」

 

チョウチョが俺のシャツの袖を「グッ」と引っ張ってきた。

だからどこで掴んでんだよ・・・

お前手がないだろ!触角か?触角なのか?

だがな!俺は進化する男ッそれは・・・

 

「変り身だ」

 

「ええッ!?」

 

俺はシャツを代償にベッドという楽園に潜り込んだ。正確には一瞬でシャツを脱ぎ捨て、チョウチョに掴ませた。そして高速でベッドインした。

特に意味はない。

 

そんな俺にチョウチョは、

 

「ルーベルトさんって本当に人間ですか?」

 

失礼な。

 

「人間じゃない。河童だ。」

 

自分が伝説の存在。河童であることをこれ見よがしにアピールする。

 

「ずっと思ってたんですけどルーベルトさんって何者なんですか?」

 

「だから河童だって言ってんだろ」

 

「だから河童って何なんですか!?」

 

「知らん。伝説の存在らしい」

 

俺も詳しくは知らんし。

 

「もういいです・・・ルーベルトさんが普通じゃないことがわかりました・・・」

 

チョウチョって時々人間味があるよな。

それより、

 

「寝てていい?」

 

俺がチョウチョに確認を取ると…

 

「もう・・・・・・いいです。」

 

そんな疲れる?俺との会話?

俺が軽くショックを受けているとチョウチョは、

 

「おやすみなさい」

 

ふて寝しやがった。

お前まで寝たら誰が起こすんだ!と俺はくだらないことを考えながら眠りに落ちた。

 

 

■■■■■■■■■■■

 

「ふぁぁぁあ。おはようございますルーベルトさん。」

 

「今12時だけどな?」

 

「そういえば・・・ルーベルトさんはなんで先に起きているんですか?いつも起きないのに。」

 

「お前なぁ・・・王直々の集会で遅れたら確実に罰を受けるだろ。」

 

「確かにそうですね。寝起きで頭が回っていませんでした。」

 

今は午前11時50分。そろそろ行くか。ちなみに王城までだと・・・徒歩3分くらいかな?

立地良すぎない?ここの家。

 

■■■■■■■■■

 

12時・・・・・・王城なう。

 

「彼が新しいマスターか!」

 

「ワシとどっちが強いかのぉ?」

 

「君・・・弓に興味はないかい?」

 

「かわいいマスターだね。」

 

「元気が有り余ってそうだな!」

 

「フム・・・悪くない・・・」

 

「フォッフォッフォッ!おだやかじゃな」

 

「忙しいんだ!早くしてくれ!」

 

「いい目をしているな君。」

 

「わ・・わからないことが・・あったら・・ボ・・・僕に聞いてね」

 

「きれいな手をしているのね」

 

「爆発だ!爆発的だ!期待の爆発だ!」

 

えー。上からいきます。

 

ブーメランっぽいひげを持っている王国兵士のおじさん。髭。

 

70超えてそうな元気な傭兵のおじいちゃん。強そう。

 

全身が赤い服で統一されている若い狩人のおねぇさん。可愛い。

 

魔法使いの猫。喋る。

 

タンクトップの採掘士のオッチャン。ムキムキ。

 

斧を持った静かな木こりのおじいさん。怖い。

 

100は超えているであろう釣り人のおじいちゃん。霞食ってそう。

 

メッチャ急かしてくるコック。忙しそう。

 

ハンマーとカッコいいエプロンの鍛冶屋のおじさん。身内にはデレデレそう。

 

オドオドしたテンパの大工。シスコンっぽい。

 

優しそうな印象を抱く裁縫師のおばあさん。

圧倒的母性

 

何かと爆発させようとしてくる錬金術師のボマー。早く捕まえて?

 

河童。俺。

 

おかしいだろこの空間。ねぇ?この人たちホントにマスターなん?不審者の間違いじゃない?俺含め。

 

 

「皆。よく集まってくれた。知っているとは思うが改めて紹介しよう。新ライフ「河童」のマスター。ルーベルトだ。」

 

エリック王が話し終えた瞬間みんなの視線は俺に集中した。え?俺この空気で話さなきゃいけないの?エリック王の方を見たら「はよ話せ」って顔された。は?マジで?話さんといかんの?隠キャの俺にはキツいわ・・・

 

「え、えと。13個目のライフ、「河童」のマスターに選ばれましたルーベルトです。」

 

言えた。よ"か"っ"た"。

やっぱ隠キャにとっての自己紹介って下手すると命懸けの冒険よりも辛いよな。

したことないけど。

 

「はいはいはーい!質問がありまーす。」

 

そう言って手を挙げたのは赤ピンク色の髪の女の子だった。

 

 

誰だったっけ?名前が思い出せない。

こういう時は素直に名前を聞こう。

 

「ごめん。誰だっけ?」

 

「はぁ?会ったことあるじゃない?居たでしょ。貴方が初めて来た日に。あたし自己紹介したわよね?なーんで覚えてないの?」

 

そんなこと言われてもなぁ。誰だっけなぁ。

女の子はそんな俺の様子を見てやれやれと言った素振りで、

 

「私の名前はラウラ。この国の姫よ。」

 

ああ!!

 

「居たわそんなの。」

 

「何?喧嘩売ってんの?買うわよ?」

 

おっとつい口が。話を戻そう・・・

 

「質問ってなんだ?」

 

「河童ってどんなライフなの?」

 

成る程。そう来たか。さて、どう答えようかな。

 

「多分、戦闘系のライフだと思う。」

 

まぁ、そう答えるしかないしな。

だって俺何もしてないし。

ゴロゴロしてるだけだし。

 

「いや、それは違うぞ。ルーベルトよ。」

 

エリック王よ。知っているなら何故俺に説明しなかった。というか、河童って戦闘系じゃないの?

 

「ルーベルトよ。「河童」はな、全てのライフの特徴を兼ね備えているのだ。例えば、王国兵士のように敵の攻撃を防いだり、傭兵のように重い一撃を与えられたり、狩人のように皿を遠距離へと投げたり、魔法使いの様に口から水を出したり、採掘士の様に鉱石を持ち上げたり、木こりの様に木を振り回したり、釣り人の様に魚を鷲掴みしたり、料理人の様に魚を焼いたり、鍛冶屋の様に自身で物体を曲げたり、大工の様に樽を作ったり、裁縫師のようにふんどしを縫ったり、錬金術師の様にメガネを作ったり、とまぁ何が河童ぽいことが大体できる様になるライフだ。」

 

取り敢えず一言だけ言わせてくれ。

 

 

「「「「「ふざけてんのか?」」」」」

 

この瞬間、13人のマスターの心が一つになった。

 

「そもそも河童ぽいことって何よ?」

 

ラウラがエリック王に対して質問した。

 

「それはな・・・!そうじゃ!ではこうしよう。

国民やマスターに河童について知ってもらうために本を作ろう!その為には、ルーベルト。お前の協力が不可欠だ。」

 

え?俺?

 

「さっすが、パパね!天才だわ!」

 

やばい。ラウラまで同調し始めた。

 

何かマスター達も「ふむ、アリだな。」とか言ってるし・・・

 

腹を括るかぁ。取り敢えず質問だ。

 

「具体的に何をすれば良いですか?」

 

「そうじゃな。歴史に残ることじゃ。最近、ドクロ石なる物が空から降り注いでおる。その調査、解決を依頼したい。」

 

なるほど。そうすれば話が作りやすいですね・・・ってなるか!?

 

「俺にできると思いますか?そんな大層なこと。」

 

「まぁまぁ良いじゃない。ルーベルト。それとも、パパの言うことが聞けないって言うの?」

 

ヒェッ。権力、怖い。お姫スマイル。怖い。

 

「うむ。国王直々の頼みじゃ。」

 

やるしかない。かぁ。

 

「分かりました。やらせていただきます。」

 

「うむ。では、これで第50回。マスター集会を終える。皆、大義であった。」

 

マスター達は直ぐに帰っていった。

集会が終わったと自覚した瞬間、疲れがどわっと流れ込んできた。

 

もう、、、

 

「おうちかえりたい・・・」

 

マスター集会に参加したくない・・・

 

 

 




ちなみにマスターの名前は上から
マスタング(王国兵士)
セルヴァンテス(傭兵)
イムカ(狩人)
クローネ(魔法使い)
デグダス(採掘師)
ヘイホフ(木こり)
つりせんにん(釣り人)
コンガス(料理人)
バルカン(鍛冶屋)
リック(大工)
マイム(裁縫師)
ヤーク(錬金術師)
ルーベルト(河童)

王家の人たち
エリック・ストーン(国王)
ファリア王妃(未登場)
ラウラ姫(りんご)
かんむりじいさん(でんせつ)

王城の偉い人
ヒューズ(マッドサイエンティスト)
大臣(優しいお髭)


取り敢えずこんな感じですかね?


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第5話「れべる?あっぷ?」

ちなみにルーベルトの見た目は眼鏡をかけていて常に水着姿(上半身裸)


この世界は「レベル」と言う概念がある。

レベルが上がればパラメータのポイントが手に入り、それを振ることによって強くなる。

 

そしてそのレベルを上げるには「経験値」が必要だ。経験値はライフによって獲得方法が違う。

 

戦闘ライフならばモンスターを倒し経験値を

 

採取ライフならば採取して経験値を

 

制作ライフならばモノづくりをして経験値を

 

そのライフに因んだ事をすると経験値が得られる。

 

ただ一つの例外を除いて・・・

 

 

 

■■■■■■■■■

 

パリ・・・ポリ・・・

 

「その調子ですよ!ルーベルトさん!」

 

「ほし、わほった」

 

ポリポリ・・・

 

「飲み込んでから喋って下さい。お行儀が悪いですよ。」

 

ゴクン!

 

「追加頼む。」

 

俺、ルーベルトは今レベル上げをしている。

その方法とは・・・

 

「ハイ!追加のキュウリです!」

 

キュウリの大食いだ。    

 

ポリッ。

 

「いや〜まさかキュウリを食べるだけでレベルが上がるなんて・・・」

 

「ホントですよ。何で経験値が貰えるんですか?キュウリを食べているだけなのに。」

 

何故、こんな酷い絵面になったのか。

 

時は少し遡る。

 

 

■■■■■■■■■

 

 

俺は危機感を憶えていた。

 

この世界はレベルと言う概念が存在するのだが、俺のレベルは現在「2」

 

ちなみに何故1レベル上がったかと言うと、バ・ハハを倒したからだ。

 

そして周りのマスター達全員が

 

レベル「100」である。

 

同じマスターなのに1人だけ2レベル何で知られたらみんなから馬鹿にされるに違いない。

 

例えば・・・

 

 

「えっ!あのお兄ちゃんマスターなのに2レベルなの?私より低い!今まで何をしていたの?」

 

「シッ!見ちゃいけません。」

 

 

幼女にレベル負けする・・・

なんてことになりかねない。

コレはマジで洒落にならん。

 

って事で

 

「チョウチョ。レベル上げしよう。」

 

「貴方はルーベルトさんじゃありませんね。そっくりのニセモノです!ルーベルトさんを返して下さい!」

 

ニセモノ扱いされた。

 

「ホンモノだわ。コンチクショウッ。俺は自分から動こうとするとニセモノ認定されるのか。」

 

ショボーン( ´_ゝ`)

 

「何ですか?私は騙されません・・・ッ!そのやる気の無さそうな顔!ルーベルトさんでしたか。すいません。自分から外に出ようとしたのでニセモノかと・・・」

 

「もう、泣いてもいいかな?」

 

本当にこれ以上言われたら泣くよ?

 

「でも本当にどうしたんですか?ルーベルトさんって自分から動こうとしませんよね?」

 

「チョウチョは俺が何レベルなのか知ってる?」

 

チョウチョは「そうですね~」と言いながら羽をヒラヒラさせていた。

 

「マスターですし20以上はあるかな?いやでもマスターって全員100レベルですよね?半分の50で!」

 

「2だ。」

 

「え?」

 

「2」

 

「20じゃなくて?」

 

「2」

 

「嘘ですよね?騙そうったってそうは行きません。」

 

「2」

 

「本当ですか?」

 

「本気と書いてマジだ」

 

「マジですか・・・」

 

チョウチョが嘘やろって表情してる様に見える。

実際、マスターにレベルを聞いて「2」って言われたら信じる方が難しい。

 

「でもどんな風にレベル上げするんですか?」

 

「イネムリドラゴンを倒す。」

 

「は?」

 

説明しよう。イネムリドラゴンとは、パーテル大平原東のボスだ。

 

だがイネムリドラゴンは温厚な性格で人を傷つけない。

 

普段は昼にキリタチ山から降りてきてパーテル大平原東で昼寝をしている。

 

だが、もしも昼寝を邪魔したら・・・

 

生きて帰れるとは限らない。

 

適正レベルは「35」

 

バ・ハハが「1」

 

中ボスの悪者リーダーでさえ「5」

 

この数字を見れば如何にイネムリドラゴンが強いか分かる。

 

だがイネムリドラゴンは国の守り神としても扱われている。王国兵士が隊長になる為にはイネムリドラゴンを倒さなければいけない。殺す訳ではない。あくまで腕試しだ。

 

そんな相手にルーベルトは2レベルで喧嘩を売ろうとしている。

 

それをチョウチョが止めないはずは無く・・・

 

「ルーベルトさん。疲れているんですね。休みましょう。冷静になって下さい。」

 

「俺は至って冷静だ。」

 

「冷静な人は2レベルでイネムリドラゴンに挑もうとはしません。」

 

「人じゃないし、河童だし。」

 

「屁理屈言わないで下さい!!」

 

急にチョウチョが大声で叫んだ。

 

「うるさい。俺は1人で行ってくるから!」

 

俺はドアを開けて走り去った。

 

「あっ!待って下さいまだ話はr・・・行っちゃいましたか。まぁどうせすぐにマイホームに送られて来ますよ。」

 

■■■■■■■■■

 

「すいませんでした。」

 

ハイ。マスターとは言えまだまだ未熟。イネムリドラゴンに勝てるはずがなく、一瞬でマイホーム送りにされた。

 

そう。この世界はモンスターに倒されると蘇生薬で復活するかマイホームに強制送還されるのだ。

 

そして今俺はいつもの屋根裏でチョウチョに向かって正座している。

 

「もう。人の話を聞かないで・・・コレからは気をつけて下さいね。」

 

「ハイ。すいませんでした。」

 

グゥ〜

あ、お腹すいたな。

 

「ご飯、食べましょっか。」

 

俺はその言葉に頷くとチョウチョと一緒にメグおばさんの居る一階に向かった。

 

「「「いただきます」」」

 

合掌。感謝。コレをするとしないでは天地ほどの差がある。

 

何故なら食事のありがたみがわかるから。

 

「ん?何だ?この野菜。」

 

それは緑色の見たことのない野菜。

 

「それはキュウリと言って最近仕入れた新しいお野菜よ。」

 

「へー」と言いながら俺はキュウリを食べると

 

ドゥン。

 

ルーベルトはレベルが3になった!

 

「え?」

 

「ルーベルトさん!?レベルアップしてますよ?」

 

え?何で野菜を食べただけでレベルアップしてんの?

 

「アラ、じゃぁルーベルトの為に明日キュウリをたっぷり買ってくるわね。」

 

「いや!?本当!?なんで!?」

 

「落ち着いて下さいルーベルトさん。マガジンマークが溢れてます。」

 

「マガジンマークってなんだよ!?」

 

「分かりません。頭の中に急に入ってきたので言ってしまいました。」

 

取り敢えず俺はキュウリが経験値になるらしい。

 

■■■■■■■■■

 

そして現在。

 

「う、うぷ、もう食べられない。」

 

「お疲れ様です。200本は食べましたかね?どのくらいレベルアップしましたか?」

 

俺はチョウチョに催促されながらステータスを見ると・・・

 

「レベル30!?」

 

「そんな上がりましたか。まぁレベルアップの音が鳴り続けていたのでそのくらいかと。」

 

えぇ(困惑)

 

俺、キュウリ食ってただけだよ?

 

「せっかくなので100にしちゃいましょう♪」

 

いやさ、

 

それは本当・・・・・・

 

「無理だぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁ」

 

 

緊急ミッション!

 

目標: れべる?あっぷ?

 

結果: 大成功(吐きそうになりながら)

 

 

 

もうキュウリ食べたくない。

 

こうしてルーベルトのトラウマが一つ増えた。

 

 

 

 

 

 

 

 




書いてストックしておけば良いのに。
俺は直ぐ書けたら投稿してしまうんですよね。


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第6話「木漏れ日の森と霧立つ山」

遅れてすいませんッ!!!
ユルシテオニイサン


大幅レベルアップから3日後。ルーベルトはエリック王より頼まれていた「ドクロ石」の調査にコモレビィの森とキリタチ山に向かっていた。

 

「ルーベルトさんルーベルトさん?」

 

「なんだい?チョウチョ君?」

 

チョウチョが優しい声音で聞いてきた。

 

「此処ぉ、何処なんですかぁ?」

 

「わかんない⭐︎てへぺろ⭐︎」

 

「あ"あ“あ“あ"あ"あ"あ"!!!」

 

チョウチョの咆哮が木霊した。

 

私達ッ⭐︎絶賛遭難中⭐︎

 

時は少し遡る

 

 

■■■■■■■■■

 

 

俺はチョウチョに「そう言えばドクロ石って調べなくて良いんですか?」と言われてすっかり忘れてたと言わんばかりに手を打ちパーテル大平原東へ向かった。っと、パーテル大平原に着いた。さてさて何処から調査していこうかな・・・

 

「ルーベルトさんは何処が怪しいと思いますか?」

 

クルブルクには主に3つのスポットがある。

クルブルクの上に聳え立つ「キリタチ山」

クルブルクの大森林「コモレビィの森」

クルブルクの洞窟「ハニワ洞窟」

この3つが代表的だ。

 

「俺としては「キリタチ山」か「コモレビィの森」かな?ハニワ洞窟は地味だしあんまり無さそうだな」

 

チョウチョが羽を振るたびに金色の粉塵が舞う。

チョウチョは「そうですね・・・」と一拍置いて

 

「私としてはキリタチ山が気になります」

 

そうか。なら決定だな。キリタチ山へ?

 

「「レッツゴー!!」」

 

 

■■■■■■■■■

 

 

いっ、息が苦しい。

 

「ぜぇぜぇ・・・山登りって疲れますね」

 

チョウチョもいつもよりは疲れを感じているようだ。

 

ん?

 

「オイ!ありゃぁ小屋じゃねーか?」

 

屋根が真っ赤で小さな小屋があった。おおよそ、休憩所だろう。

 

「アソコで休んでいきましょう…ルーベルトさん」

 

俺はチョウチョの言葉を肯定した。

 

コンコン。誰かいらっしゃいますか〜?

 

俺がそう尋ねると扉がギギィ〜と開いた。

 

「なんじゃ?ワシに何か用かい?」

 

小屋の中から出迎えてくれたのはパンツ一丁の白い髭が特徴的なお爺さんだった。やはりこの世界には変人しか居ないのだろうか?

 

「すいません。此処で休ませて貰えませんか?」

 

チョウチョが俺よりも先に用件を伝える。お爺さんはその言葉に「ふむふむ」と言いながら髭を弄っていた。

 

「いいよ。休んでくついでじゃがお主らが何故この様な山奥に来たのかもよければ教えてくれんか?」

 

俺たちはその言葉に大きな声で返事をした。

 

 

■■■■■■■■■

 

 

「つまりですね、私達はドクロ石と言う石を調査しにこのキリタチ山に来ました。」

 

俺はこれまでの経緯を簡潔に説明した。

 

お爺さんは少し考えた後、こう紡いだ。

 

「その、、何とかイシ?ってのは知らんがこう、マーズに大きなバッテンがあったぞ」

 

バッテン?俺はチョウチョにそんなのあったか?と問うとチョウチョは「知らないです」と答えた。

 

「バッテンですか・・・わかりました。情報提供ありがとうございます。」

 

さて、住んでいる人が見た事ないと言うことは此処にはまだドクロ石が落ちた事が無いという事だろう。では、第二候補のコモレビィの森に向かおうと思う。その前にお爺さんにお別れを言わなければ。

 

「お爺さんお元気で!」

 

「無理なさらない様お気をつけて〜」

 

「ありがとう。こう見えてワシは丈夫じゃぞ。今年で120じゃよ」

 

そんなお爺さんジョークを背に受けながら俺たちは下山した。

 

 

そこいらに丁度いい鬼が(ry

 

 

危なかった。危うくステーキになるところだった。

 

 

■■■■■■■■■

 

キリタチ山から下山した俺たちはコモレビィの森へと向かった。

 

だが、、、

 

「この道で合ってんのかチョウチョ?」

 

「恐らくは・・・」

 

近道しようとして森林を歩いていたら道に迷ってしまった。

 

 

小一時間後。冒頭へ戻る。

 

■■■■■■■■■

 

「どーするんですか!こんな森の奥深くで!」

 

チョウチョが五月蝿く羽ばたいている。

確かに森の奥で辺りも余りわからない。

 

「取り敢えず獣道を探してみよう」

 

コモレビィの森は動物が沢山いるのである程度正規のルートとして獣道が引かれていると考えた俺は辺りを散策し始めた。

 

ポキッ。

 

ん?

 

 

ポキポキ。

 

 

ん?

 

 

「GAaaaaaaaaaaaaa!!!」

 

 

しまった。パーテルベアに見つかってしまった。

パーテルベアはハチミツが好きだってメグおばさんが言っていたな。メグおばさんから貰ったハチミツキャンディーを投げてみよう。

 

「ガ?ガァァァァ」

 

ヨシッ!パーテルベアはものの見事ハチミツキャンディーに釣られていった。俺はその場から離れていった。

 

■■■■■■■■■

 

数分後。獣道に出れた俺たちは案内兵士に王都の大通りまで案内してもらった。案内のついでに「ドクロ石って知ってる?」と聞いてみたが手応えは無かった。

 

という事で

 

「見つかんなかったわ」

 

エリック王にそう告げた。

 

「もう一度探してこい」

 

「嫌だと言ったら?」

 

「ワシと同じ子供の体になる呪いを魔王にかけてもらう」

 

「喜んでやらせていただきます」

 

エリック王みたいに中身はおっさん見た目は子供はお断りだ。さてさて、ドクロ石とやらは何処にあるのやら・・・

 

取り敢えず家に帰って寝よう。

 

 

ミッション!

 

ドクロ石を探せ!

 

結果、未達成。

 

 

「ハニワ洞窟かなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




因みにラウラの声優さんはY.AOI 姉貴(推し)
もし宜しければ投票などもよろしくお願いします。


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第7話「河童の錬金術師」

どけ!俺が「お兄様」だぞ!


 

そうだ、メガネを作ろう。

 

俺、ルーベルトはハッキリ言って視力が低い。原因は恐らく幼少期にしていた

 

「虫メガネで太陽ガン見選手権」

 

のせいに違いない。

 

俺はいま、黒い縁のメガネを使っているのだが、もうそろそろ寿命だ。なのでメガネを自作しようと思う。

 

ん?何で自分で作るの?買えば良いじゃんと思っているアンタ…り、リッチが無いんや。

 

 

 

こないだな、コンガス食堂に砂糖買いに行ったらな、チョウチョがさ…

 

「る、ルーベルトさん!この砂糖!この砂糖にしましょう!是非!是非!」

 

って言ってきたから俺も「まぁ砂糖だし、そんな高く無いやろ…」って何も考えずに会計に出したんよ。そしたらさ店員がこんなこと言いやがるの…

 

「9800リッチになりまーす!」

 

は?

 

いや本当に、

 

は?

 

 

いやさぁ、だって砂糖やん?9800は無いやろ流石に…

 

ちなみにこないだのドクロ石の調査費用として貰ったのが10000リッチ。

 

分かりやすく表すんなら…リンゴ300個分くらいやで?

 

まぁ、兎に角あのアホチョウチョのせいで金…もといリッチが無いんや。

 

あ!さっきの話聞いて「戻せばよかったじゃん」と思うやろ?

 

甘い、甘すぎる。

 

あのアホチョウチョ俺がトイレに行っている間にな、こんなこと言って出て行ったんや。

 

「この砂糖代はルーベルトさんにツケておいて下さい!」

 

ってな。

 

もうな、ダッシュで追いかけて砂糖返品してもよかったんやけどあの馬鹿チョウチョはそれを読んでたのか二日間帰ってこなかったんや。

 

砂糖の中身を半分使って…な。

 

返品不可

 

この四文字に此処まで苦しめられると思わなかったわ。

 

ま、こんなことがあって俺は今絶賛金欠中なのだ。

 

ということで…

 

「メガネ作り手伝え」

 

「嫌だと言ったら?」

 

「お前の触角を売る」

 

「やらせて頂きます!」

 

脅し………優しく微笑んだら手伝ってくれた。

 

ちなみにチョウチョがこの前触角を取り外しているところを見てしまったのでコレは虐待では無い(暗黒微笑)

 

アイツ本当にチョウチョか?

 

まぁいい。

 

「ということでヤークさん。俺にメガネ作りのコツを教えてくれ」

 

ヤークさんはボマーで錬金術師のマスターという属性てんこ盛りだ。

 

「良いぞルーベルト!先ずは此処をこうして此処にミニ爆弾をくっつけて…できた!」

 

ん?メガネに要らんものまで入っている様な…?

てか、早すぎてわかんなかった。

 

「掛けてみろ。ルーベルト」

 

言われた通りにメガネを掛けると…爆発した。

 

「おい」

 

「何だね?ルーベルト」

 

「俺の知っているメガネは爆発しないはずだが?」

 

「HAHAHAHA⭐︎私に頼んで爆発しないとでも思ったか?この若造が!」

 

「クソッタレめ…」

 

と俺が野菜人の王子(笑)になっている間に、

 

「できました!」

 

どうやらチョウチョもメガネを完成させた様だ。完成したのは黄色いメガネでなんかキラキラしてる…

 

俺も作ってみるか!

 

先ずは材料だ

「グリーンジェル」

「エメラルド」

「グリーンベル」

 

の3つだ。

もうね…とことん緑に染めたらぁ(ニチャァ)

 

此処をこうしてミニ爆弾を付けてっと。

 

「できた!」

 

綺麗な緑をメインとしたメガネが完成した!掛け心地も良くて「自爆機能」も付いている。

 

 

完璧だな!(ヤークに毒された)

 

「よーしルーベルト!その凄まじい爆破魂に免じて、お前に「河童の錬金術師」の称号を……

 

あげません!(スペちゃん並感)

 

HAHAHA HA★」

 

いやくれないんか〜〜い!(魂の叫び)

 

 

 

 

 

 

 

 

 




投稿遅れてすマーーーーン(裏切り者の名を受けた(手遅れ))


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第8話「もしかしてドクロ石さんですか?」

過去最長!投稿ペースは初期にもどすぜー!


「ルーベルトさんルーベルトさん」

 

「なんだいチョウチョ?」

 

「ドクロ石探しましょうよ!」

 

「わかった。先に一階に行っててくれ」

 

「・・・?やけに素直ですね?なにか裏があるんですか?」

 

「何もねーよ」

 

その後チョウチョは「ふーん」と言いながら一階に降りていった

探りを入れてきたチョウチョは後でひん剥くとして・・・

 

・・・・・・なんだ?この手紙?

俺のポストに何故か赤いリンゴのマークが付いた手紙が入っている。

どれどれ内容は・・・っと

 

・・・?

 

ルーベルトへ

 

 青い帽子の少年の正体をバラさないように

 

               ラウラより

 

あーーーなるほどなるほど。

 

後でひん剥くかあのアホ姫。

 

ん・・・中にもう一枚入っている。

 

「クルブルク南で会おう。か」

 

ったく、今日はドクロ石の調査にハニワ洞窟に行くってのに。

まぁ、待たせてもいけねぇな

 

「ルーベルトさん⤴まーだーでーすーかー」

 

あのチョウチョを黙らせる方法のほうがドクロ石よりも興味深いわ。

 

「今行く」

 

合流しなきゃな。

 

郊外南

 

「いやーまさか候補の3つのうちの2つを外すとは思わなかったです」

 

「まぁ確かにハニワ洞窟なんて夜にムジャークが出てくるとかトパーズが取れるとか採掘師の回数系ミッションの消化に適任とか・・・?」

 

最後のはなんだ?謎の力が働いた気がするぞ?

 

俺がこのなんとも言えないような違和感と戦っているとチョウチョが

 

「ルーベルトさん、青い帽子をかぶった子が居ますよ」

 

あっ(察し)ふーん。

 

「あの感じだと男の子ですかね?胸がないですし」

 

・・・チョウチョさん?その御方女性だし俺らの国のお姫様なんだわ。

 

あーほらほらその男の子(笑)が睨んできてるよ…

 

近づいてきたわ〜青い帽子の男の子が近づいてきたわ〜

 

どうすんのチョウチョさん?

 

あっ()肯定したらどうなるのか確かめてみよう(暗黒微笑)

 

「そうだな。男の子にしか見えないよな。」

 

「え?」

 

「どうした?青い帽子の お と こ の こ ?」

 

「はぁ?私のどこが男に見えr・・・男にしか見えないよね」

 

おーー!よく耐えたなラウラ。そうだよな、お と こ だからな。

 

「君、僕に対して失礼なこと考えてないかい?(ビキビキ)」

 

「ないない。胸が小さいなんてないな「やっぱり考えてるじゃないか!」」

 

「・・・?男の子なんですから胸がないのは当然でしょう?ね!ルーベルトさん」

 

「そうだよなー。と う ぜ ん だもんな♬」

 

「ルーベルト・・・後でお話しましょ(小声)」

 

「はいすいませんでしたごめんなさいできごころだったんですゆるしてくださいどうかけんきゅうひのはらいもどしだけはかんべんしてくださいおねがいします」

 

「もしかして・・・ルーベルト?あなたって研究h「さぁーさぁー出発だ青い帽子の男の子もおいで(焦り)」」

「はぁ・・・もういいわ、許してあげる。わたs・・・僕も行っていいの?」

うん。逆についてくるなと言ったらどんな反応をするのかが気になってきたわ。

俺はラウラの質問に「勿論」とだけ返答してチョウチョに追いつこうとした。

その様子を見たラウラは駆け足で俺たちのもとまでやってきた。

 

「それじゃ、ハニワ洞窟へ?」

 

「「「レッツゴー!!」」」

 

 

■■■■■■

 

〜パーテル大平原東・ハニワ洞窟前〜

 

「立入禁止?何これ?僕こんな話聞いてないんだけど。君、知ってる?」

 

「知らん。チョウチョは知ってるか?」

 

「いいえ、私が3日前にここを通ったときはこんなダサい看板はおいていませんでした」

 

ふーむ。困ったな。立入禁止と書いている以上はいってはいけないがどうしようか。

あとチョウチョ、ダサいは言いすぎだぞ。ダサいけど・・・

 

「君たちはp・・・王様の命令を受けて調査しているんでしょ。ならきっと入っても大丈夫よ」

 

危うくパパと言いかけていたラウラはさておき、確かに俺とチョウチョはエリック王直々の調査依頼が出ているので、きっと入っても大丈夫だろう。

 

「じゃぁ行くか。――――――ここから先はもしかしたらマイルームに戻る可能性がある。引き返すなら今だぞ?準備はいいか?」

 

「「もちろん!」」

 

おっしゃー!ダサっせぇ看板ぶち壊してハニワ洞窟に突撃じゃーーー!

 

「あーーー!俺サマのカッコイイ看板をよくも壊しやがったな。しかもダサいダサい言いやがって、もう許さねぇ!」

 

「許さないッス!」

 

「お前らは確か・・・ぐるっぽぇとぽっぽか?」

 

「グルッチェと!「ハッポ ッス!」」

 

「誰だ?君の知り合いかい?河童くん」

 

そうそう知り合い・・・ってほど親しくはないんだよなぁ。コイツらとは。

 

コイツとは初めて合った時にチョウチョで揉めて、アメを渡して帰っていった謎の奴らだ。

なんでもコイツらは喋るからという理由でチョウチョを売ろうとしやがったんだ。

まぁコイツらが騒いでくれたことによってチョウチョと出会えたんだ。

そこの点では俺もコイツらには感謝して・・・

 

やめた。こういうのは柄じゃねぇな。恥ずかしいし。

 

そしてなんでチョウチョは「はてな?」みたいな顔してんだよ・・・

 

お前この二人に売られそうになってたんだからなぁ?

その様子だとあったときのことすら覚えてなさそうだな。

あぁ!チョウチョが「わかりました。やはり私は名探偵・・・」

みたいな顔してやがる。

 

「私の可愛さから私をアイドルにするためにスカウトしてきた2人だ!」

 

「何一つあってねぇよ。この迷宮入りの迷探偵が!!!」

 

 

閑話休題

 

「んで、お前らはドクロ石をヒューズの助手と偽り、このハニワ洞窟に運び出して、ペットが暴走したから逃げ帰ってきたと・・・」

 

「馬鹿なんじゃないですか?こんなのチョウチョである私ですら駄目だって分かりますよ!」

 

「これはおやつ抜きの刑三年相当の罪に当たるわ」

 

ラウラ可愛いな。え、てゆうかそんなもんでいいの?コイツらの罪って。

だってさ、ドクロ石やで?全世界から調査対象とされているものを無断に持ち出すなんて国家転覆罪もいいところだろ。あとおやつ抜きにするのはいいけどどうやって確かめるんだよ。

 

「お、おやつ三年抜きだなんて嫌だッス」

 

いやそこかよ。もっとあるだろなんかこうさぁ…

まぁ・・・ええわ

 

「ペットさんの様子はどんな感じだったんですか?」

 

「ええと…チコって名前なんですけど・・・なんかいきなり黒くなって暴れだしてアニキでも手に負えなかったッス」

 

ハッポがそう言うとラウラが、

 

「まぁ実際に見ないとよくわからないね」

 

といったのでまたみんなで降りて見に行って見ようという案に落ち着いた。

 

〜ハニワ洞窟地下〜

 

あ、あれがドクロ石の影響を受けたモンスターの姿かぁ。

なんていうんだろうか・・・黒いという事しかわからないなぁ。

近づいて試してみよう。

 

「ギヤァァァァァ!!!!」

 

おおぅ…凶暴だな。

 

ん?あれは・・・

 

「ドクロ石から黒い霧が出てるわね」

 

ラウラさん口調戻ってますよ・・・

そして何を思ったのかチョウチョが

 

「壊してみましょう」

 

「え?いいのか?盗んどいてなんだが壊しちまって」

 

「私が許可するわ。ルーベルト、あれを破壊してきて頂戴。」

 

まぁ第一王女が許可したからいっかぁ。壊そ。

そして俺がドクロ石を粉々にすると、チコについていた黒い霧が晴れて可愛いフェアリードラゴンが出てきた。

 

「ピィィ!」

 

うん。元気そうだ。壊したドクロ石はまるでダイヤモンドのようにキラキラと輝いていた。

黒い霧のかかったモンスターはドクロ石を壊すと治るようだ。

早速エリック王に報告するか。

 

〜王城〜

 

「ういーエリック王ードクロ石の調査進めたぜ〜」

 

「うむ大義であった」

 

「なんかドクロ石がモンスターに黒い霧みたいのをだして凶暴化させたりしてたわ」

 

「ご苦労。今日のことはしっかり記録しておくからな。お礼はまた後日。」

 

皆さん気になっているあの二人はしっかりヒューズさんに差し出しました。

そしたらしばらくの間助手になるらしい。知らんけど。

 

「あぁ、ラウラによろしくな」

 

「・・・・・・また抜け出していたか」

 

「おう、しっかりと叱っとけよ」

 

「うむ。今日はありがとうなルーベルト」

 

俺は王に「またな」とだけ返して手を降って城を出ていった。

 

帰り道。夕日が見えてその美しさに俺は笑みをこぼして帰路についた。

 




チョウチョ「このカトリーエイr」
ルーベルト「やめなさい」


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第9話「黒影怪物」

このペースじゃぁ完結まで三年はかかっちまうわ。


 

前回のドクロ石騒動から3日が経過した頃。ルーベルトにエリック王からの呼び出し状が届いた。

 

ルーベルトはチョウチョと共に王城に向かって出発しようとしたのだが…

 

「なぁ、そこの若者よ。ちぃと時間をくれんか?」

 

帽子を深く被り、サングラスをかけたお爺さん?が話しかけてきたのだった…

 

■■■■■■

 

「んで、爺さんは俺たちと王城へ一緒に行きたいと…」

 

おはこんばんにちわ。諸君。私、ルーベルトはエリック王からの呼び出し状に応じて王城へと向かっていたのだが…見覚えのある爺さんに絡まれた。チョウチョもそれに気づいたようだ。

 

「貴方は確かキリタチ山に住んでいた…」

 

チョウチョがうろ覚えといった様子で確認すると爺さんは大袈裟な動作で、

 

「いかにも!ワシじゃよ。今更ながらお主らに名を名乗っていなかったな…ワシの名前はかんむりじいさん。なのじゃ!」

 

それって名前か?っていうかのじゃロリかよ…性別から間違ってるけど…

 

「まぁのじゃは冗談として、(じゃぁ言うなよ)改めてワシを王城へ連れて行ってくれんか?この身分じゃ正面から入るとちょっと面倒なんじゃよ」

 

どんな身分ならこの警備ガバガバ王城に入れないなんてことがあるんだ?

まぁこの王城で1番強いの王と王妃だしどんなに警備固めてもそんな意味無いか。

ちなみに王より王妃の方が強い。王国兵士の「でんせつ」だったらしい。

階級は下から、

 

みならい

かけだし

いっぱし

うできき

たつじん

マスター

えいゆう

でんせつ

 

 

となっている。

だから俺がマスターからスタートしたのはめっちゃ階級のショートカットしていたんだよな…だからマスターなのに他ライフの「いっぱし」くらいの強さなんだよな…

 

てか王妃強すぎて絶対に逆らわない様にしとこう…勝てるビジョンが浮かばん。

 

脱線していたな。

 

閑話休題

 

「まあ断る理由はないからいいぜ。爺さんも行こうぜ」

 

俺は結局、爺さんと一緒に王城に行く選択を選んだ。

 

「じゃぁ早く行きましょう。ルーベルトさん。かんむりじいさん」

 

「ホッホッホ…チョウチョちゃんは元気があって良いのぅ…ワシももう100歳若ければな…」

 

アンタ一体何歳なんだよ…

 

■■■■■■

 

「ルーベルト。よくやって来てくれた。心より感謝するぞ」

 

「いやいいって。そういう堅苦しいの。もっと柔らかくしないと話し合いが進みにくくなるぜ」

 

俺がエリック王にそう言うとエリック王は何やら困った様子だった。その視線はどうやらかんむりじいさんに向けてのものに見えた。

 

「いやな、ルーベルトよ。その隣に居る方はもしかしなくてもかんむりじいさんだな?」

 

あれ?エリック王ってかんむりじいさん知ってんの?なんで?

俺が思考に夢中になっているとチョウチョが耳元で囁いてきた。

 

「ルーベルトさん…ルーベルトさん…もしかしてかんむりじいさんってすごい人なんじゃないですか?」

 

俺がチョウチョの囁きに「んなわけ」と返した直後、エリック王が口を開いた。

 

「何故ルーベルトたちと一緒に来たのですか……「お父様」」

 

ゑ?

 

「ゑ?」

 

よかった。チョウチョもしっかり驚いていた。お父様?おとうさま…

オトウサマ???

 

「事前に知っていたら王国総出でパレードを開きましたのに…」

 

「ホッホッホ…ソレが嫌だからこうしてルーベルトたちと一緒に来たのではないのか」

 

あぁ(察し)成る程。そう言うことね…

 

「話が違ぇ…」

 

オカシイ…俺は唯の爺さんを連れてきただけなのにこんな…こんな大物だったとは…

 

「いやー。ワシが女神様から天啓を受けて「河童」というライフを作れと言う命令を息子が果たせているかをこの目で確認しにきただけじゃよ」

 

ゑ?(2回目)

 

いやー。    じゃねぇよ!!!

 

「テメェが犯人か!!!」

 

俺の傭兵ライフを奪ったのは!

 

「ホッホッホ。如何にも」

 

「コラ!ルーベルト。先代国王に対しての無礼はワシが許さんぞ」

 

「ヒェッ…権力…パワハラ反対…」

 

あんまり逆らうとうっかりマイホーム送り(処刑)されかねないから気をつけないとな。

 

「かんむりじいさんの本当の名前って何なんですか?」

 

とチョウチョがかんむりじいさんに質問をした。

 

「うむ。ワシの本当の名前を明かそう。ワシは「クルブルク王国10代目国王ヴァルド・ストーンじゃ!」

 

まぁそうだわな。

 

「そういえばエリックよ。前にマーズに赤のバッテンが浮かんでいたぞ。アレは恐らくファンタジールの終わりを示している」

 

「なんと!すぐ調査します」

 

「ワシはコレをエリックに伝えたくてルーベルト。お主に連れてきてもらったのじゃ。ルーベルトよ。今度我が家に訪ねてくる時は「赤ずきん」と一緒に来いよ」

 

「…?あ、あぁ。わかった。「赤ずきん」と一緒にだな?」

 

「あぁ。「赤ずきん」じゃ」

 

俺に対して「赤ずきん」という謎の存在のことをチラつかせながらかんむりじいさんは帰って行った。俺たちがかんむりじいさんの背中を見つめていたらチョウチョが、

 

「そういえばすっかり忘れていましたけど今回の呼び出し状って何の為に呼び出されたんですか?私達」

 

はっ!そうだった。爺さんのインパクトが強すぎてすっかりメインを忘れていたわ。

 

「うむ。そうだったな。今回2人を呼んだのは他でもない……」

 

「「ゴクリ!!」」

 

「名前決めじゃ!」

 

「「は?」」

 

嫌なんで名前決めに俺たち?っていうか何の?

 

「前にほら…3日前のドクロ石騒動があったじゃろ。そこにいた黒く凶暴化していたモンスターの名前というか名称ぎめじゃ」

 

「黒いモンスター。とかじゃダメなんですか?」

 

「チョウチョよ。カッコ良くないからダメじゃ」

 

ええ(困惑)そんなんどうでもいいやん…

 

「ダメなんじゃよ!(心読むなよ)ワシもこう見えて魔法を使えるからな…ワシはお主の考えていることくらい分かるぞ」

 

それにしてもカッコいいのかぁ…

 

そうだ!

 

黒影怪物(シャドウモンスター)なんてどうだ?」

 

「ほう?良いな。ヨシッ!それに決定じゃ!第一発見者が名付けたならば誰も文句は言わんじゃろう」

 

「ルーベルトさんにしては珍しくセンスがありますね。珍しく」

 

「何故2回も言った!理由を言え!」

 

「理由なんてないですよー。ぜーんぜんないですよー」

 

ハラタツワーコイツハラタツワー。

 

「ヨシッ!ルーベルトとチョウチョは帰って良いぞ」

 

そう言って俺たちは王城を追い出されてしまった。

 

「なぁ?チョウチョ?俺たちって必要だったか?」

 

「さぁ?」

 

俺たちが話し合っている時、目の前からヒューズの助手となったハッポとグルッチェたちが…

 

「誰だよ黒影怪物(シャドウモンスター)だなんて名付けた奴。安直過ぎるだろ」

 

「オレもそう思うッス」

 

ブッコロ

 

 

 

ミッション!

 

「名前決め」

 

大成功???

 

 

 

 

 

 

 

 




初めてルビふったッピ。


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第10話「りんご・リンゴ・アップル?」

やっと10話だ!!長くなりすぎちゃったぜ。


『よいか?ルーベルト。「リンゴ」じゃ』

 

うーむ…

 

あっ!おはこんばんにちわ。諸君。ルーベルトだ。

 

いやーさっきから2日前のかんむりじいさんの台詞が気になってしょうがないんだよな。

「リンゴ?」ってなんだよ。アップルモンキーでも連れてきゃいいのか?

と俺が想像に浸っていると、

 

「ルーベルトさん」

 

「うわぁ!!急に話しかけんなよ。しかも珍しくマジマジなテンションで」

 

「……べたいです」

 

「ん?なんて言った?」

 

「リンゴが食べたいです!!!(大声)」

 

「だからびっくりするからヤメロォ!あと耳元で叫ぶな」

 

「リンゴが食べたいです…(小声)」

 

「それでいいんだよ」

 

で俺はとりあえずチョウチョの話を聞くことにしたんだが…

長いので要約すると

「リンゴ欲が止まらないんです!!!」

心の声に入ってくんな。

 

んで、八百屋に行くことにしたんだが八百屋は確か…

 

あぁ、繁華街だったな。

 

んじゃ繁華街へ?

 

「「レッツゴー!!」」

 

そういやあっちは緑色のメグおばさん(亜種)がいたな…

 

■■■■■■

そうして商店街に向かった俺たちは暇つぶしに俺の新しい必殺ワザを考えていた。

 

「ルーベルトさん、ルーベルトさん。最近私達って戦闘してないじゃないですか。私なりに何であんまり戦わないのか考えたんですよ。そして私は一つの結論に至りました。それはルーベルトさんには「必殺ワザ」がないことです!」

 

「…イヤでも、チャージトロウが…(カッコよくないです)……マジ?でもチョウチョ『キャールーベルトさんステキー(棒)(存在しない記憶)』って言ってたじゃん。」

 

存在しない記憶だけどな。

 

「存在しない記憶なんですけど???ルーベルトさん勝手に捏造しないでください」

 

っと、

俺たちがあーだこーだ言ってたら商店街に着いた。そして緑メグおばさん(仮)からリンゴを購入しようとしたのだが…

 

「ごめんなさいねぇ〜リンゴは今切れてるのよぉ〜」

 

どうやら品切れのようだ。チョウチョは何処か不満な様子で、

 

「何でリンゴが切れているんですか?普通、リンゴが特産のクルブルクにおいてリンゴ不足なんて程遠いモノだと思うのですが…」

 

確かにチョウチョの言うことも一理ある。クルブルクでは普段から余る様に量産されている王国アップルが何故このタイミングで不足しているのか気になるところではある。

 

「ん〜それがねぇ〜狩人さん達が買い占めちゃったのよ〜」

 

「狩人?ですか……ちなみにいくつくらい買っていきましたか?」

 

「確か〜千個くらいだったかしら〜」

 

「「千個!?」」

 

ウッソだろお前…千個はバカだわ…大体数はともかく金ッ。金はどっから出てるんだ?俺にも分けてくれねぇかな…。砂糖で無くなったんだよな…。とアホなことを考えていた俺がチョウチョの方に目をやるとそこには真っ白に燃え尽きたチョウチョが……っておい!戻ってこいチョウチョ!

 

「ハッ!一瞬気を失っていました…私のリンゴ欲はどこにぶつければいいんでしょうかルーベルトさん」

 

「いや知らんわ」

 

俺たちがいつもの様に漫才を繰り広げているとメグおばさん(亜種)が、

 

「あらあら〜そんなにリンゴを食べたかったのねぇ…狩人さん達、もしリンゴ不足でリンゴが食べたいっていう人がいたら「イムカ」のところに訪ねてって言い残して買って去っていったわよ〜」

 

お?リンゴチャンスか?

 

「リンゴチャンスキタコレ!」

 

おっとチョウチョさん。キャラ崩壊してますよ、あってない様なもんだけど。

 

「んじゃチョウチョさんや。イムカさんの所行くかい?」

 

「行きましょう!」

 

ヨシッ!確かイムカさんは……郊外東だったかな?

 

「リンゴを求めて早、十分間……長い様で短い時間でした」

 

だって十分だしな。まぁいい。

 

それじゃぁ……イムカさんの元へ?

 

「「「レッツゴー」」」

 

ん?1人多かった様な……

おい、緑メグおばさん!アンタちゃうやろ!

俺が脳内でツッコミを入れるとメグおばさん(亜種)が

 

「気をつけてねぇ〜」

 

と言ってくれた。その言葉に俺たちは「はーい」と返事をした。

 

そして俺たちはマーズが廻るよりも早く手を振り返した。

 

■■■■■■

 

〜郊外東〜

 

俺たちは郊外東へとたどり着いた……けど、

 

「郊外東って初めて来るか?」

 

「多分あってると思います。正直私、大通りと繁華街くらいでしか行き来してない様な…」

 

ビリッ!その時(ビリッ)ルーベルトに(ビリビリ)電撃が…(ビリビリビリ)

……走りすぎじゃあ!もうちょっと加減しろ。電撃さん。でないと俺が感電死するぞ(震え声)

 

「何かルーベルトさん焦げてません?」

 

かもな。電撃走りまくってるし。もうアレよ?フルマラソンくらい全力疾走してるよ?電撃さん。

 

「まぁルーベルトさんですし、いつもの事ですか」

 

「んなぁことはどうでも良くてだな…。なぁチョウチョ」

 

「何でしょう?」

 

「さっき俺たちは郊外東に来たことが無いって言ってたよな?」

 

「えぇ?それがどうかしましたか?」

 

「それは間違っている!!!」

 

「何ですってー!?(棒)」

 

そうアレは小雨が降る日だった…

 

ホワワーン…

 

「なるほど!そうやって回想シーンに持っていくんですね!

 

静かにしててくれ。頼むから。

 

■■■■■■

 

そうアレは小雨が降る日だった。

 

俺はある日「アップルフィッシュ」という希少な観賞用の魚をしるべじいさんという人からとってこい依頼を受けたんだ。

 

俺は初めは断ろうと思ったんだ。だが報酬が桁違いだった。文字通り。

 

報酬は何と5000リッチだというのだ。

 

まず5000リッチという金額について説明しよう。

 

わかりやすい比較をするのなら……

 

俺がドクロ石調査(国家問題)で「10000リッチ」

 

ただの魚採取で「5000リッチ」

 

?????????

 

何だろうか、もはや見てはいけないものを見ている様な気分だ。

なんだ?いつからウチの国は魚2匹程度の予算しか無くなったのかな?

まぁ確かに何処の馬の骨(メグおばさんの骨)かも分からない俺に「10000」という大金を出してくれたエリック王達には感謝している。

 

つまり何が言いたいかというかと……

 

「喜んでやらせていただきます!!!」

 

嗚呼悲しきかな。この男、何処かのチョウチョのせいで金欠なのだ。

 

そして俺はしるべじいさんの依頼を達成すべく郊外南のリンゴの木のなる湖の周りを泳いで「アップルフィッシュ」を探していた。

 

ここまでは順調だったのだ…

 

よく考えていれば店で「1000」リッチで購入できるアップルフィッシュを俺にとってこいと指示し、5倍も支払うわけがないのだ。

 

ただそれを気づいたのは空の旅を終えた頃だった。

 

ん?空の旅って何だよ?って思うよな。ワイトもそう思います。

 

そこの湖には「ヌシ」が居た。そう、2メートルにまでなる超巨大アップルフィッシュだったのだ。

 

ん?どうやって会ったのかって?勿論水中でだよ。

正直正面から魚を見るのは久々でそれも自分よりも大きいんだから…

ビビりすぎて危うく溺れる所だったわ。

 

そしてヌシが俺に気づくのも時間の問題で…(見つめ合っている)

 

俺はヌシに体当たりされて空高くぶっ飛んだ。

雲の上にまで行ったよ。愛は歌わない。キマリは通さない(確固たる意思)

そうして俺は空の旅を味わったのだ。

 

気がついたら家の屋根にぶつかって地面に落下した。

 

そしてその家の入り口を見ると何故か斧を持った怖いおじさんが…

俺は生まれて初めて本気で逃げたよ。

 

死ぬ。そう本能が伝えてきたんだ。

 

今思えばアレはヘイホフさんだったのかもしれない…

 

ホワワーン…

 

「成る程!そうやって回想から戻ってくるんですね!」

 

黙れ小娘。お前に河童が救えるか?

 

■■■■■■

 

「んで、アレがヘイホフさん家だ」

 

そう俺が伝えるとチョウチョが、

 

「へー、ルーベルトさんルーベルトさん」

 

ん?どうした?

 

「後ろ」

 

頭の上に?マークを浮かべたまま(物理的に)後ろを向くとそこには斧を持った怖いおじさんが…ってヘイホフさんやん。

 

「よう」

 

「こ、こ、こんにちわ…よ、良いお天気ですね(震え声)」

 

ヤバい。話題が浮かばん。どうしよう?何を話せば…

と俺が脳内であたふたしてるとヘイホフさんが、

 

「ルーベルト。お前何でこの前逃げたんだ?」

 

あ"(即死)そこに触れますか。

 

「えーと…あの怒らないで聞いていただきたいんですが」

 

「ルーベルトさんは魚に吹っ飛ばされた後に斧を持ったヘイホフさんを見て死に直面したと勘違いしたからです。まぁわかりやすく言うとビビっただけです」

 

何でお前が説明するんだYO⭐︎

 

「そういう事か…すまんな」

 

「ヘイホフさんは悪くないです。悪いのは全部ルーベルトさんです」

 

おいお前ここぞとばかりに煽ってきやがって覚悟してろよ。

砂糖水砂糖抜きにしてヘルシーにしてやるよ。

 

「それだけは勘弁して下さい。ホンマに」

 

この世界の住人は心を読むのが上手だな〜(思考放棄)

 

「所でルーベルトは何でコッチに来たんだ?」

 

「リンゴをチョウチョが食べたいって言い出しまして、買いに行ったら狩人が買い占めしちゃったって聞いたんで少し分けてもらえないかと…」

 

「ああ、そう言う事なら…ホラ、アレを見てみろよ」

 

ヘイホフさんが北の方を指さしたのでそれの指す方を見てみると…

赤い赤い山が出来てたわ。

下手すりゃあアレ二千とか行くんじゃね?

お目当てのリンゴを目にしたチョウチョさんの様子を俺が窺うと、

 

「ふぁぁ〜〜!アレ全部リンゴですか!」

 

可愛いなお前。

んじゃイムカさんのところ行くか。

 

「ヘイホフさん。次、いつ会うか分かりませんが次はゆっくりとお話ししましょう!」

 

俺がそう言うといつも無表情だと思っていたヘイホフさんがニヤッと笑った様な様子で、

 

「ああ、またな」

 

アレがイケオジって奴かぁ。カッコよかったわ(確信)

俺河童だけど惚れそう(大嘘)

 

■■■■■■

 

イムカさんの所に訪ねると何人かの狩人が同時にリンゴを頭に乗せて撃ち抜く練習をしていた。ソレを見たチョウチョが、

 

「何で頭に乗せてリンゴを撃ち抜くんですか?」

 

確かに。何で頭に乗せるんだろうな?

 

「それは…何となくだな。強いて言うならばプレッシャーによる集中力アップか?」

 

成る程。

 

「でも顔に刺さったら危なくないですか?」

 

「その点は問題無い。もし当たったらアップルパイを食べさせるからな」

 

ヤバいわこの世界。でもそういう世界だった。そうだよなぁ。

この世界はどんな大怪我でも1秒で治る世界だったわ。

てゆうかもしかして…

 

「そのためのリンゴか!(真理への到達)」

 

「ご名答。ルーベルトの想像通りだと思う。もし怪我をしたらアップルパイを食べさせて技が使えないくらいスタミナが無くなったらリンゴジュースを飲ませる狩人無限練習プランだよ」

 

「でもそのせいで私はリンゴが食べれないんです!リンゴ分けてくださいお願いします」

 

とチョウチョが懇願するとイムカさんが無造作にリンゴ山からリンゴを取ってチョウチョに投げると思ったら……俺に投げてきやがった。

 

「チョウチョ君も試してみないかい「弓」」

 

おい待て俺にリンゴを投げてきたのってまさか…

 

「成る程!私はルーベルトさんの頭の上に乗せたリンゴを撃ち抜いたら食べられると!楽しそうです!」

 

え?マジでやる感じ?

 

「さぁルーベルト。そこに立ってリンゴを頭の上に乗せてくれ。大丈夫!チョウチョ君が外さなければ安全だよ」

 

指示に従い俺は指定された位置に立ってリンゴを乗せた。

チョウチョも弓を構え始めた。お前どうやって持ってるんだよ。宙に浮かんでるぞ?

 

「行きますよー!ルーベルトさん覚悟!当たっちゃったらごめんなさーい。一応リンゴ狙いますねー」

 

当てる気だなさては貴様。リンゴを狙えリンゴを。

 

そして次の瞬間、矢が放たれた。

 

予想通り俺の目の前に矢が迫ってきた。

 

だが………!

 

今までの俺とは一味違うぜ。

 

さっき繁華街に行く時に言われて気づいたんだ!

 

「河童」は水が得意だってなぁ!!

 

見ろ!コレが新技!

『水宝石』(ウォータージェム)だ!

この技は体内にある「純水」を使ってグー一個分くらいのサイズの水の弾丸を撃つ技だ。威力は…分からんがある程度はあると信じたい。

 

「え?る、ルーベルトさんの口からとっても綺麗な水の球が!」

 

俺が撃った水の弾丸は矢と交わり…爆ぜた。

 

「ふっ、どうだチョウチョ!俺の新技は!」

 

そう言うとチョウチョは目をキラキラ輝かせて、

 

「カ、カッコいいです!!な、何ですかアレ?いつ考えたんですか?」

 

ふっ、さっきだ。

とか言うと格好がつかないので…

 

「一年前K「さっきですねわかります」……わかってんじゃねぇか」

 

俺らが漫才をしていると(2回目)

 

イムカさんが、

 

「ブラボー!流石だ、ルーベルト!このリンゴはあげよう」

 

そう言うとイムカさんは弟子達?の指導に戻っていった。

 

「ルーベルトさんルーベルトさん」

 

なんだい?

 

「試し打ちに行きましょう!コモレビィに!」

 

「いいけど何でコモレビィなんだ?」

 

「リンゴ食べ足りないのでアップルモンスター狩りに行きましょう」

 

「お前リンゴ食い過ぎじゃね?」

 

まぁ良いや(思考放棄)(2回目)

 

んじゃあコモレビィへ?

 

「「レッツゴーゴーリンゴー」」

 

よくシンクロしたね。2人とも弄ったのに。

 

■■■■■■

 

〜コモレビィ〜

 

「居ました!アレはアップルモンキーです!」

 

へーアレがアップルモンキーかぁ。

思ってた以上にアップル…いやリンゴだな。

 

まぁ良いや。

 

「チョウチョ、種明かしをしよう。さっきの技は体に溜まっている「純水」を利用する技なんだ。仕組みはまだよく分からないがな」

 

説明完了!

 

「行くぜ?チョウチョ?よく見とけよ!コレが『水宝石』(ウォータージェム)だ!」

 

「ハイッ!頑張って下さい!」

 

水の弾丸はアップルモンキーにヒットし、リンゴをドロップした。

のだが……

 

俺のレベルが下がってる!?!?

 

んなアホな…俺は前、キュウリレベリングで30まで上がったはず…それが何で28レベルに下がっているんだ?

 

待てよ?よくよく考えたら「純水」は何処から手に入れていた?

 

キュウリは90%水……まさか!

 

「そのまさかですよルーベルトさん…」

 

チョウチョ!お前…ハメやがったな…

 

「貴方の言う「純水」とは何か。私は移動中必死に考えました。そして私はある事に気が付きました。それは必殺技を使った後にルーベルトさんの筋肉が少し減ってなんだか少し弱くなったように見えました。その一部始終を見ていた私は全てを理解しました。貴方の必殺技はそう!『レベルを1下がるのを代償に』使用する技なんですよね。正確にはキュウリで溜めた「純水」を解き放つ事でレベルダウンが発生します」

 

チョウチョにしては何かやけに積極的で珍しいなぁとは思ったがお前ッ!

 

「フハハハハ!私の砂糖水を砂糖抜きにしようと考えた罪は重いのです!」

 

チキショー!まんまと一杯食わされた…

はぁ、帰る?

 

「そうしましょう夜も近いです」

 

もうそんな時間かぁ…

このリンゴどうしよ?

 

「果物屋さんに売りに行くのはどうですか?」

 

確かに今みんなリンゴに飢えているしなぁ。

 

んじゃ繁華街へ?

 

「レッツゴー⤵︎」

 

「レッツゴー⤴︎」

 

この差よ……

 

■■■■■■

 

〜繁華街〜

 

俺らは貴重なリンゴを果物屋さんに売りに行こうとする途中、青い帽子の少年を見つけた。ラウラやんけ。俺はラウラが喜ぶかと思ってリンゴを渡す事にした。

 

「ありがとう!ルーベルト!僕、リンゴ大好きなんだよ!」

 

そっかぁ外だから男口調だったね。

 

「二つ名で『リンゴ姫』って付くくらいは好きなんだよ」

 

ん?リンゴ…リンゴ………ハッ!

 

「なぁラウラ?「かんむりじいさん」って知ってるよな?」

 

ラウラは頭に?マークを浮かべて、

 

「当然知ってるわよ。だって私のおじいちゃんなんだもん」

 

まぁ当然と言えば当然だよな…

はぁ、やっとピースが埋まったわ。

 

「ラウラ、今度一緒にかんむりじいさんの所に行かないか?」

 

「良いけれど、それがどうかしたの?」

 

「いいや、何でもない。コッチの話だ」

 

いやー。本当今日はリンゴづくしな日だったなー!

 

もうお腹に入らないや。

 

さて…

 

「帰るか!」

 

こうしてリンゴの日は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




???「真の勝利への道に男の価値が必要だ」
それはリンゴじゃなくてリンゴォ。

実はネムネムおねむちゃんで書いてるから誤字脱字やねじれがあるかもしれないから気をつけて(手遅れ)
何故前書きに書かなかったのかコレガワカラナイ…


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第11話「俺はマグロ。よろしくなッ!(イケボ)」

彼は今アーチャーらしいです。
でも残念!今回は魚回だから弓は出てこないのだ。
サーバル顔おもろすぎて初投稿です(大嘘)
サーバル顔が面白いのはマジ(本気)
つべで俺はマグロって調べれば今回の元ネタがわかると思う(投げやり)

投稿遅れてごめんなさい。オンラインのサ終でショック受けてました
取り敢えずレベルファイブはスイッチでファンタジーライフ出して。はあと。

絶対に完結させます!………数年以内に……。


あ、マグロ食べたい。(唐突的な衝動的な何か)

おはおはおは。ぐっともーにんぐ。ルーベルトだ。

 

「なぁ、チョウチョ?マグロって何処でたくさん食べられるっけ?」

 

「昨日はリンゴで今日はマグロですか」

 

「いやでもそれってチョウチョが言い出したやん。俺がリンゴを食べたいと言い始めたかの様に仕立て上げやがって!」

 

「ユルシテオニイサン」

 

モチのロンで!

 

「オニイサンユルサナイヨ」

 

「ソンナー」って言いながら(;´д`)←こんな顔してるチョウチョさんは本当に今作のヒロイン何でしょうか?

何かラノベのタイトルっぽくね?

まぁそんな事はどうでも良くてだな、マグロを沢山食べれる所を教えてくれチョウチョえもん。

 

「しょうがないなぁルべ太君は。多分ポルトポルトじゃないですか?あそこは海国って言われるほど海に囲まれていますし漁業も盛んです!」

 

成る程。

ええと、ポルトポルトは確か…

 

そうだ、飛行場から行くのが1番手取り早いな!

思い立ったが吉日。早速ポルトポルトへ出発だー!

 

イクゾー!

デッデッデレレレ

カーン(33-4)

カーン(66-8)

カーン(99-12)

カーン(オーバキル)

 

「その計算方法怒られますよ」

 

ごめんなさい。反省はしている(手遅れ)

 

「本当に手遅れですよ……」

 

■■■■■■

 

さてさて、俺たちはポルトポルトへ行くために郊外西にある空港に向かったんだが……

 

「優しいお髭じゃん」

「こんにちわー!」

 

「これはこれはルーベルト殿。お久しぶりですな。チョウチョ殿もお元気そうでなによりです」

 

彼は優しいお髭こと「大臣」。

彼の政治は国民にも評価されていて、王に隠れてはいるがとても優秀で人望もある。というか王より優秀(小声)。

 

まぁ俺とは正反対な真人間だ。

 

「何で大臣さんは空港にいらっしゃるんですか?」

 

「それは丁度貴方達の手続きをしていたのですよ」

 

「「え?」」

 

ハモった。チョウチョと(倒置)

 

「私は貴方達がそろそろ何らかの理由でポルトポルトへ行くと予測したのであらかじめその手続きを行なっておりました」

 

ゆ、有能を通り越して畏怖すら覚えるわ。

 

「では、私はこれで失礼致します」

 

大臣は俺たちにペコリ。と一礼して去っていった。

 

俺たちは大臣という男の中の男の背にこの言葉を送った。

 

「「有難うございます!」」

 

本当にありがとう……それ以外にも言う言葉が見つかる(遠廻り)。

 

大臣「さん」が去った後チョウチョが、

 

「本当にあの人は何処まで読んでいるんですかね?」

 

「分からん。ただ一つ言うのならエリック王より有能と言うことかな」

 

「首が飛びますよ…二重の意味で」

 

チョウチョの心配に俺は、

 

「大丈夫大丈夫。この世界、死んでもマイルームに転送されるだけだし」

 

「あっ……そうでした。そんな世界でしたね久しぶりに思い出しました」

 

 

 

そうそう……あれ?

 

チョウチョは死んでもマイルーム送りにされるのを忘れていた?

 

数日前…リンゴ買い占め騒動の時……

 

アイツ、俺の頭を矢で狙ってきやがった……

 

ソレはきっと死んでもマイルームに戻るからと分かっていたからだと思っていたんだが…

 

チョウチョはさっき、「久しぶりに思い出しました」と言っていた。

 

「久しぶり」と言うことは……忘れていた………!

 

アイツ…本気で俺を……!

 

まぁ流石にそれは無いとは思うけど。

 

他にも引っかかる所はある。

女神像を知らなかったり、一般常識に疎い所が都度見られた……

 

もしかしてアイツはこの世界の住人じゃ……!

 

 

 

 

キラッ。

 

 

 

 

「どうしました?ルーベルトさん?」

 

あれ?何考えてたか忘れた。

何だったかな?後もうちょっとで大事なことに気づけそうだったのに…

 

ま、いっか!

 

「何でもない。行こうぜ!ポルトポルトへ!」

 

「はい。行きましょう!」

 

「じゃあ、オレ、チケット買ってくっからココで待っててな!」

 

「はーい!」

 

■■■■■■

 

ふぅ…危ない所でした。

 

ルーベルトさんは妙に察しが良いので少々、強引に思考を操作させて貰いました。

 

まさか私が妹が得意とする魅了(チャーム)を使うことになるなんて。

 

あの子は今何処で何をしているのかしら…?

 

それよりも、もっともっと、みんなの「願い事」を集めないと………。

 

■■■■■

 

飛行チケットを購入して飛行船に乗った。チョウチョはタダだったけど俺は100リッチとられた。まぁ、安いもんだよな。

 

「まもなくポルトポルトへ到着いたします」

 

おっ!もうポルトポルトかぁ。楽しみだな…!海国を存分に堪能してやるぜ!

 

 

 

 

 

 

 

〜ポルトポルト繁華街〜

 

うーむ。青い空白い雲。ってそれは何処でも同じか。流石海国と名乗る国だ。入って直ぐに海が広く広がっている。空気も心なしかしょっぱい。コモレビィの森にいる兵士に渡すキャンディーもしょっぱい。

 

俺が食レポならぬ空気レポをしているとチョウチョが話しかけてきた。

 

「ルーベルトさん。ルーベルトさん。見てください。色んな人が居ますよ!」

 

チョウチョが言う方へ向くとそこには水色の髪をした男女がいた。

 

「いやースイラン殿!このパフェ美味しいでござるよ!」

 

「やや、ハヤテ殿!このスイカも美味しいでござる!」

 

アイエー!ニンジャ!?ニンジャナンデ!?!?

いやなんで本当に忍者が居るんだ?伝説に出てきたあの忍者が!

 

チョウチョが指を刺した方には忍者がいた。

 

「河童」について書かれていた書物に載っていた忍者と言う存在。まぁつまり俺と関係がありそうな人たち。忍者はかつて東の島で発達した職業だとか。何でも潜入のスペシャリストで戦闘もできるんだとか。

 

知らんけど。

 

「いや知らないのに解説始めたんですか」

 

まぁチョウチョは無視して(無視しないでください!)

 

俺の生まれも、もしかしたら東の島と何か関係があるかも知れない。

そう考えた俺はパフェをモグモグしてる2人組に話しかけた。

 

「なぁ、アンタ達。少し聞きたいことがあるんだが」

 

俺が話しかけた瞬間。2人は目をパチクリと開けてコチラをガン見してきた。

プルプルと震えながら男の方が口を開いた。

 

「か、河童でこざる!す、スイラン殿!」

「お、お、落ち着くでござる!ハヤテ殿!」

 

うーむ。どうやら俺がよほど珍しいようだ。何で分かるかって?

そりゃぁ誰だって珍獣を見る目で見られたら気づくって。

 

「ほ、本当に河童でござるよ!ハヤテ殿!」

「凄いでごさる!初めて見たでござる」

 

「驚かせて悪かったな。俺はルーベルト。アンタたちの言う河童って奴だ」

 

「「喋ったァァァァ!!!」」

 

「いや最初からルーベルトさんは喋ってましたよ」

 

うーむ。実にカオスな現状。今すぐ家に帰ってお布団とハグしたい気分だが、今回は自分のルーツを知ることが出来るかもしれない。何とか河童について聞き出さなければ。

 

「あー。いきなりで悪いんだが河童について知っていることを話してくれないか?」

 

「いいでござるよ。このハヤテが説明するでござる。河童とは我々の故郷。「東の島」に伝わる英雄でござる。何でも大昔に塔の厄災を振り払い東の島を守ったという存在でござる」

 

「ハヤテ殿の言う通りでござる。昔は沢山の河童とギガガビトが居たらしいんでごさるが今は人だけでござる。私とハヤテ殿は島から出て色々な所を巡っている途中でござる」

 

どうやら俺はハヤテ達の故郷と関係がありそうだ。ギガガビト?とかいう謎単語が出て来たのはスルーして置こう。

 

『まもなくクルブルク行きの便が出発いたします』

 

アナウンスが流れる。アナウンスを聞いたハヤテとスイランはとても焦り出した。

 

「や、ヤバいでござるスイラン殿!」

 

「わかっているでござる!早く乗るでござる!ルーベルト殿!チョウチョ殿!また何処かで会いましょうでござる!」

 

俺たちに別れを告げると二人は飛行船に駆け込んで行った。

 

「嵐の様な時間だったな。チョウチョ」

 

「私もそう思います。というか私、ほとんど喋れませんでした」

 

「まぁ。気にすんな」

 

「マグロ。食べに行きましょうか」

 

「そうだな」

 

ということで、マグロを食いに行きます。着きました(3分クッキング感)。

ココは海賊御用達の酒場。

俺はマグロのかぶと焼き。チョウチョはうしお汁を頼んだ。

 

「ハヤテさんとスイランさん。また会えるでしょうか?」

 

「クルブルクに行くって言ってたし会えるだろ」

 

「それもそうですね」

 

俺たちが他愛無い雑談を繰り広げている内に注文した品が届いた。

手と手を合わせて………

 

「「いただきます!!」」

 

コレ。大事。

 

俺が食べようとした瞬間。

 

「俺はマグロ!ヨロシクなっ!」

 

喋った。マグロが(倒置)。

 

まぁこの世界ではよくあることだ。俺はマグロが喋っているのを気にせずにマグロを頭からかぶり付いた……!

 

■■■■■■

 

ふうー。

 

「「ごちそうさまでした!!」」

 

大変美味でした。コレで俺のマグロ欲もしばらく収まりそうだ。マグロが喋るのは初めて見たがポルトポルトではコレが普通だろうか?まぁいい。

 

「帰るか」

 

「帰りましょう」

 

 

次はどんな物を食べようかなぁ。

 

 

 

 

 

「よいか?リンゴじゃ!」

 

 

 

………あっ(察し)。

 

先代国王のこと忘れてたわ。

 

次回!先代国王の元へ!

 

タコススタンバイ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




出して欲しいキャラ。行ってほしい場所!感想に書いてくれると嬉しいっピ。by作者⭐︎

「なぁチョウチョ。作者が感想乞食になってるぞ」
「本当ですね。まぁしばらく泳がせて置きましょう」


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第12話「居眠り竜と王家の秘宝(上)」

お久しぶりです。マスケーヌです。今は東風ますけという名前でもやってます。

ファンタジールに帰ってきたぞ!



おはこんばんにちぐっどももーにんぐ。ルーベルトだ。突然だがクイズをさせてくれ。

空から女の子が降ってきたら俺はどうするでしょう?

 

・A 抱きしめる

・B 放置する

・C 下敷きになる

 

「答えはCの下敷きになるでした。ルーベルトさんは女の子を抱きかかえる筋力も、放置する神経も持ち合わせていないので強制的にCになりました。女の子の下敷きとなったルーベルトさんは気絶しました。というか死にました。幸い女の子は助かりました。まぁルーベルトさんはいい人でした。貴方のことは忘れません。晩御飯までは」

 

「どど、どうしようチョウチョ!ルーベルトが私のせいで死んじゃったっ!」

 

ラウラはオロオロとした様子で、しかし、決して覆らない事実を必死にチョウチョに伝えた。

 

「大丈夫ですよラウラさんルーベルトさんはきっと向こうで元気に暮らしています」

 

「そっかぁ。そうだよね。………ルーベルト。ありがとう」

 

 

…………………コイツらッ!!

 

 

「おいお前ら。勝手に人のことを殺すんじゃねぇ」

 

「どど、どうしようチョウチョ!ルーベルトが化けて出たよ!」

 

「落ち着いてくださいラウラさん。それは幻です」

 

ラウラはおばけを見たようなリアクションをした。それと反対でチョウチョはどこか落ち着いた様子だ。

 

「ところがどっこい!幻じゃありませんッ!現実です!」

 

おっとつい裏カジノの店長みたいな口調になってしまった。

俺は死んだ直後にマイルームに転送されたので郊外東まで走ってきた。

 

「なぁ俺の気持ちがわかるか?歩いていたら女の子が空から降ってくる感覚が。てゆうか気づけよ。押し潰された後に俺の体が無いことに」

 

「そんなことより大変なんだよルーベルト!い、イネムリドラゴンが殺されちゃう!!」

 

「「え?」」

 

シンクロした。チョウチョと(倒置)。

 

■■■■■■

ラウラ曰く、最近イネムリドラゴンが凶暴になってきているらしい。イネムリドラゴンは本来温厚な性格で普段はパーテル大平原東で居眠りしている可愛いドラゴンだ。そんなイネムリドラゴンが凶暴化するとなると只事では無い。

 

「原因の検討はつきそうですか?ラウラさん」

 

「ゴメン。チョウチョ。詳しい事は分からないの。でも多分、「ドクロ石」が落ちたんだと思うの」

 

「って事はイネムリドラゴンが黒影怪物(シャドウモンスター)化しちまうってことかよ。不味いな。ヒューズとかいうあのマッドサイエンティストの調べによると本気のイネムリドラゴンはいつもの十倍強いらしい。更にシャドウ化すると本来の1,5倍強くなるらしい」

 

「ってことはイネムリさんがドクロ石に触れた場合はいつもの十五倍強くなるんですか!?それじぁマスターが何人居ても足りませんよ!だって普通のイネムリさんでも30レベルは必須です」

 

「ああ。その通りだ。チョウチョ。きっとマスター全員でかかっても無理だ。えいゆうとでんせつを集めてやっとだろう。何としてもイネムリのシャドウ化は防ぐ。いいな?」

 

「「イエッサー!!」」

 

「よろしい」

 

ま、王妃が居れば余裕だけどな。あの人マジでやべぇ。逆らわないようにしとこう。

 

■■■■■■■■■

 

と、言うことで我々は今、キリタチ山にあるかんむりじいさんの家に来ています。何故ならイネムリドラゴンの巣がキリタチ山の山頂にあるだ。ちなみにイネムリドラゴンの幼体はフェアリードラゴンといってイチゴの被り物の様な頭をしている。ハッポとグルッチェが飼っていて、この前初めてシャドウモンスターになったのが「チコ」という名のフェアリードラゴンだ。

 

ま、そんなことはどうでも良くてだな。

本題はかんむりじいさんから山頂のカギを貰うことだ。

 

「おじいちゃん!山頂のカギを頂戴!」

 

「む。可愛い孫娘の頼みじゃが駄目じゃ」

 

「どうしてですか!?イネムリさんが危ないんですよ!」

 

「それ以上にお前さんの方が危ないぞい。チョウチョじゃイネムリドラゴンの鼻息だけで吹き飛ばされてしまうわ」

 

「おじいちゃん!もしもイネムリドラゴンがシャドウモンスターになっちゃったらどう責任を取るの!」

 

「む。そう言われるとツラいわい。しょうがない。ルーベルト。孫娘を頼んだぞ」

 

「そういうのって王国騎士の仕事で俺ではなく無いか?」

 

「リッチやるぞ〜」

 

「任せろかんむりじいさん!ラウラは絶対に俺が守るからよ!」

 

「ルーベルトさんってホント現金ですよねー(他人事)」

 

「誰のせいだと思ってんだ?チョウチョさんよぉ?………オラっ!コッチ向け!目ぇ逸らしてんじゃねぇ!」

 

「ルーベルト!遊んでる暇なんてないよ!早くイネムリドラゴンの暴走の原因を探しに行かなきゃ!」

 

ラウラの言うことに百理あるので指示通りに山頂へ向かうことにした。

 

………やがて俺たちは山頂の扉のすぐそこまでやってきた。

 

「ルーベルト?覚悟はいいかしら?」

 

「任せろ!ラウラは絶対に俺が守るぜ!」

 

「ルーベルトさん?私は?」

 

「お前は自分で何とかしろ」

 

「血も涙もないとはまさにこのことですね」

 

チョウチョがブツブツ言っているのを無視して俺たちは山頂の扉を開き、飛び込んだ!

 

俺たちを待っていたのは、辺り一面が雪だらけの氷の世界だった!

 

………続くゥ!

 

 

 

 

 



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第13話「居眠り竜と王家の秘宝(中)」

マッカーサーもまさかの3部構成。


白い空。青い地面。そう。ココはキリタチ山山頂だ。

正直、後悔してる。ん?何をって?

 

………そんなん決まっとるやろがい…。

 

「ざむいィィィィィ!!」

 

「ざむいですゥゥゥゥゥ!!」

 

「そうかしら?私は平気よ?てゆうかそんな状態で私の護衛が務まると思ってるの?ルーベルト」

 

「マジ無理。メンゴ」

 

「メンゴじゃないわよ!もしも。もしもイネムリドラゴンがシャドウモンスター化しちゃったらルーベルトに任せるからね!私、身体能力には自信があるけど、実戦は得意じゃないの!」

 

「マジ無理。メンゴ」

 

「ルーベルトさん。ルーベルトさん。リッチの為です。頑張りましょう!」

 

「お前が砂糖を勝手に買わなきゃ金欠にはならんかったんだわ」

 

チョウチョが耳を塞いでいる様な仕草をしている。おめぇの耳は何処なんだ?俺たちがふざけているとラウラは催促する様に言ってきた。

 

「少し歩くと王家のログハウスがあるからそこを目指しましょ」

 

ラウラは先頭を歩き始めた。ラウラが言った通り徒歩二分ほどで到着した。近いなぁ…オイ。

 

俺たちがログハウスに入ろうして近づくとそこには人影があった。俺はラウラとチョウチョに視線で(少し待とう)と伝えた。

 

俺は頭だけ出してログハウスの周りを見渡す。すると五つの人影があった。そのうちの一人はなんとドクロ石の研究者。ヒューズだった。

 

「…ネ………ラ…。をほ……せよ」

 

「………ルーベルトさん。ヒューズさんはなんて言ったんですか?」

 

「すまねぇ。俺もよく聞こえなかった」

 

「多分イネムリドラゴンのことだとは思うけど。ほ……。あっ!きっと『イネムリドラゴンをほかくせよ』っていってるんじゃないかしら?」

 

「仮にそうだったとして、イネムリドラゴンを捕まえて何するんだ?」

 

「そりゃあ実験とかでしょ。ムムム………ヒューズめ。もしもイネムリドラゴンを傷つけたらタダじゃおかないわよ!」

 

ラウラは爪を噛みながらヒューズの方を睨む。

 

「とにかくイネムリさんが捕まっちゃう前に私たちは先回りしましょう!」

 

「「賛成!」」

 

■■■■■■

 

山頂の扉と、キリタチ山の天辺の山。その間には少し大きな氷の広場がある。普段はユキヒョウなどが生息しているらしいがその姿は今は確認できない。

 

さて、俺たちは山頂の中間地点のその氷の広場にやって来たわけだが………非常にまずい。

 

イネムリドラゴンに見つかってしまった。

幸い、シャドウモンスター化はしていないが今はイネムリドラゴンが本気で暴れているらしい。

普段は十分の一程度の力しか出していない。そんな手加減されたイネムリドラゴンでさえ俺は前に黒焦げにされた。

 

【勝てるわけがない】

 

その言葉が脳に何度も流れてくる。その度に俺は自分の頭を振ってその考えを追い出す。

 

『グワァァァァァ!!!!!』

 

イネムリドラゴンの咆哮は、真上にあった雲が、遥か彼方までぶっ飛んでいった。文字通り、大気が揺れている。チョウチョとラウラは完全に萎縮してしまっている。

 

………俺が時間を稼いでコイツらを逃すか。

 

………死ぬのって、スゲェ痛ぇんだよなぁ。

 

ま。コイツらを逃す為ならいいか。

 

「俺だって男だ!やってやるぜ!!!」

 

ーーー俺は覚悟を決めてイネムリドラゴンに向かって走り出した!

 

 

 

 

「待てっ!ルーベルト!ココはワシに任せろ!」

 

 

 

声の方を向くとそこにはエリック王とファリア王妃とマスタング隊長が居た。

 

「パパッ!」

 

ラウラがエリック王に抱きつく。

 

「ラウラ。ここはパパとママとブーメランのひげが食い止める。お前はルーベルトと一緒にイネムリドラゴンの巣へと向かってくれ!」

 

「わかったわ!ルーベルト!」

 

「言われなくともわかってるさ!チョウチョは俺のポケットへ!早く!」

 

「ハイ!」

 

俺たち三人は………いや、二人と一匹は、イネムリドラゴンを王達に任せて、イネムリドラゴンの巣へと走り出した!

 

 

 




ちなみに原作ではラウラを王国兵士が守ろうとするんですね。腰がガクガクな状態でも、兵士としての誇りを持った三人組がイネムリドラゴンに立ち向かおうとしたときに、エリック王が駆けつけるんですね。

今回はその王国兵士の役割をルーベルトが受け持ったかたちになりました。


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第14話「居眠り竜と王家の秘宝(下)」

おひさ(星)


キリタチ山の山頂。その中でも最も高い場所がイネムリドラゴンの巣だ。そこにはイネムリドラゴンの子供であるフェアリードラゴンが住んでいる。巣に行くためにはロープで降って行く。

 

「パパがイネムリドラゴンを止めていてくれる内に早くドクロ石を探しましょ!」

 

「勿論。ま、ファリア王妃がいるから余裕だと思うけどな」

 

「あっ見てくださいルーベルトさん!ドクロ石です!」

 

チョウチョが指(?)を差す方を向くとそこには何と黒影怪物(シャドウモンスター)化したフェアリードラゴンがいた。この前のドクロ石と比べてみても今回の石は大きい。より力も増幅しているだろう。しかもソレが3体か…。

 

「「「キュアアアアア!!!」」」

 

3匹のモンスターが俺目がけて襲いかかってくる。

 

「ルーベルトッ!」

 

「俺は大丈夫だ!ラウラは早くドクロ石を壊してくれ!」

 

「任せて頂戴!」

 

「「「キュアアアアア!!!」」」

 

3体の連携に思わず俺は体制を崩してしまった。「たつじん」の王国兵士がやっと倒せる強力なモンスターがシャドウ化して襲って来られたら俺なんかに勝ち目は無い。

 

────やられる。

 

そう、覚悟した瞬間。俺の前に一筋の閃光が現れた。何処からともなく現れたその光は3匹を一瞬だが怯ませた。

 

パリィン!

 

ラウラはドクロ石を壊せたらしい。

 

「やったわ!ルーベルト!」

 

ラウラが叫ぶと同時にフェアリードラゴンが元に戻ってゆく。

 

「「「キュ〜〜」」」

 

「良かったですね!ルーベルトさん!」

 

「いやそれよりもあの光はなんだ?」

 

「そんなの気にしないで良いじゃ無いですか!あっ、私もう出ますね」

 

そう言ってチョウチョは辺りをヒラヒラし始めた。

 

 

 

──────ドスン!!!

 

「ガァァァァァ!!!」

 

「イネムリドラゴンか!」

 

「シャドウ化はしてませんね」

 

「イネムリドラゴン!見て頂戴!貴方の子供は戻ったわ!」

 

「ガァ!」

 

自分の子供が元に戻ったことを確認したイネムリドラゴンは殺気を収めた。

 

「どうやら間に合ったようじゃな」

 

声の主はエリック王。その周りにはファリア王妃やマスタング隊長。あとヒューズさんがいる。

 

「パパッ!………私、グスッ。イネムリドラゴンが殺されちゃうかと思ったわ」

 

「おおヨシヨシ。よくやったぞラウラ」

 

「俺は?」

 

「おお。よくやったぞ(棒)」

 

「おかしい………扱いがおかしい…」

 

「しょうがないですよルーベルトさん。可愛いラウラさんと貴方じゃ天と地ほどの差があります」

 

「うるせぇ!」

 

「ご無事でなによりです、姫さま」

 

ひょっこりと現れたのはマッドサイエンティストのヒューズだ。

 

「ヒューズ!アンタイネムリドラゴンを捕まえようとしてたでしょ!どのツラ下げてここにいるのよ!」

 

「違うわよラウラ」

 

「え?」

 

ラウラに話し始めたのはなんとファリア王妃だった。

 

「ヒューズにはね、私が保護してほしいって伝えたの」

 

「え?捕獲とか何とか言ってなかった?」

 

「あ、ごめん、聞き間違えたかも」

 

「ルーベルト!アンタ、アンタねぇ!」

 

「仮にも一国の姫がキレながら国民の胸ぐらを掴むのはいいのか?」

 

俺たちが茶番を繰り広げているとイネムリドラゴンが吠えた。

 

「ガァ!」

 

「え?イネムリドラゴン?うん。うん。………宝?」

 

ラウラには動物の言葉が分かる特殊能力がある。それで大体の意思疎通が可能だ。

 

「ラウラ、イネムリドラゴンはなんて言ってるんだ?」

 

「子供たちを守ってくれたお礼に宝をあげるって言ってるわ」

 

イネムリドラゴンが向いた方へ視線を移動させるとそこには大きな白色の宝箱があった。俺とラウラがそこに近づく。そして────!

 

 

 

『ヒトの子よ、ソレはマーズの宝』

 

「誰だッ!」

 

宝箱の奥の崖側から声がした。向き直るとそこには白いフードを被った美少女が宙に立っていた。キラキラとオーラを纏うその姿はかつて12のライフを作ったとされる【ライフの女神像】に近い。

 

『私は神の代行人【ユエリア】。貴方たちの世界を観測する者。ヒトの子たちよ、今、貴方たちの世界には危機が迫っている』

 

「危機…ってなんだ?」

 

『河童の子よ。貴方は運命に愛されている。………………ええと、次のセリフなんだっけ?………あ!………貴方の周りには麗しいチョウチョがいるはずてす』

 

「ん?いたかなそんなヤツ?」

 

『いますよ!!!とにかく、他の国と仲良くしてなんかマーズの宝集めて下さい!!!また空いましょう!!!!!あ、コレ!宝物の【女神の歯車】です!受け取っててください!』

 

そう言ってフードを被った白色の美しい美少女は消えていった。

 

「なんだったのかしら」

 

「さぁ?ただこの歯車ヘンにデカいな」

 

俺とラウラはあの少女の言ってる事がよくわからなかった。他のみんなもよくわかっていない様子だった。ただ一人を除いては。

 

「危機………か。バッテンとの関係………いやそれよりもお父様が受けたという天啓も関係しているのか?」

 

エリック王だけは帰路の最中でも険しい表情を崩さなかった。

 

 

 

〜王城〜

 

「ルーベルト、そしてチョウチョよ。大義であった。コレでお前たちの絵本が分厚くなったな!」

 

「アンタさっきまでシリアスな雰囲気してたのになんでそんなに機嫌がいいんだ?」

 

「ポルトポルトから手紙が来たのだ。なんでもドクロ石で困っているらしい。そこでワシがお前たちの名前を上げたら是非にといってきたからな!HAHAHA!」

 

「ん?てことは次の旅路は?」

 

「ポルトポルトじゃな!」

 

「休日をくれ!(魂の叫び)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第15話「ぽるちょぽるちょ」

20分でつくりますした。おすし。ますし。


 

 

「おはようユエリア!」

 

「おはようございますルーベルトさん!………………………あ」

 

「あれれ?どうしたんだい【ユエリア】ちゃん?」

 

「あああ」

 

「アレー?聴こえてるかなぁ?ユエリアちゃーん!」

 

「うぎゃああああ!!!!」

 

「耳イッテ!だからお前はいちいち女の子らしくない叫び方すんな!仮にもお前美少女だろが!勿体無いぞ!」

 

「そんなことはどぉぇもいぃんですよぉ!なんでバレたんですかぁ!?!?」

 

「そりゃセリフを途中で忘れるし、勢いに任せるし。幸い、他のみんなは気づいてないみたいだけどな」

 

「………そうですか。………コホン!」

 

ボン!と音が鳴るとそこには昨日現れた美少女が寸分狂わずそっくりそのまま現れた!

 

「私はかみさまと女神ステラの娘!ユエリアです!」

 

「おー(棒)パチパチ〜(棒)」

 

「やっぱりドライ!?」

 

「どぉせお前は滅びゆくこの世界を救うために無茶しに来た箱入り娘ってとこだろ?」

 

「ううう………流石に1番過ごしているだけありますねルーベルトさん」

 

「まぁな。お前のことは全てお見通しさ⭐︎」

 

「えっ(絶句)。………気持ち悪いです」

 

「ごめんなさい(土下座)」

 

俺はまだMじゃないので罵倒は普通に辛い。

 

「で?お前の目的はなんだよ?」

 

「はい。この世界を救うためには人々の想いが必要なんです。世界を愛する人が増えれば増えるほど世界の形はより強くなっていきます。近年、その力は減少傾向にあります。その解決として私が世界を巡り、人々の願いを集めることによって世界を守ろうとしているってわけです」

 

「はぇー。えらいね」

 

「それほどでも………」

 

いつものようにくねくね動いてるだけだか、美少女なせいでその動作一つ一つに華が咲いている。………俺ってこんなポエムっぽかったかなぁ?

 

「とにかく!ルーベルトさんはこのことを秘密にしてください。願いは見知らぬ誰かに語るくらいが丁度いいんです。だから私はそとでは見知らぬ蝶々としてこの世界を羽ばたきます。これからも【チョウチョ】と誰かの前では呼んでくださいね!」

 

「ん、了解。とりま、ポルトポルトいくか」

 

「了解です!」

 

「「レッゴーー」」

 

………やっぱ気が合うわ、俺ら。

 

■■■■■■

 

〜ポルトポルト郊外〜

 

「やっぱポルトポルトはいいなぁ。海があるのは羨ましいな」

 

「私たち、いっつも山いってますもんね」

 

「本来はコモレビィの森も行くんだけどな。最近通行止めでいけないんだよな。いつになったら奥地散策出来るんだよ………ま、キリタチ山で我慢しとくか」

 

「ですね〜」

 

チョウチョはいつも通りキラキラとした鱗粉を撒きながら浮いている。

 

「ようあんちゃんたち!旅人かい?案内してやろうか?」

 

声がした方へ振り抜くと、そこには青いシャツが特徴的な還暦のおじいさんが居た。

 

次回へ続く!ぽるちょぽるちょ!

 

 




ポルトポルトです…(小声)


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第2章 「海国ポルトポルト編」
第16話「お偉いさんへこんにちわ」


続編!続編!続編!続編!続編!


海国ポルトポルト。それはクルブルクの遥か西にある賑やかな国。

パーテル大平原西からキラビア海岸へ向かいその橋を渡り切るとポルトポルトがある。南にはさまざまな洞窟や島がある【マパラッパ諸島】がある。

 

政治体制は貴族と海賊の二つから作られており、非常に高潔な貴族と、豪快な海賊による正反対の政治である。

 

──────そしてそんな国で俺は今、漁師のおっちゃんとサマーネクター(フルーツジュース)を飲んでいる。

 

「事情はわかった。ま、エリックの事だ。またろくでもないことを考えてるんだろうな!ガハハハハハ!」

 

「国王を呼び捨て………しかも、そこはかとなく貶している………なかなか勇気のある漁師さんですね」

 

「ただの酔っ払いだろ、勇気と無謀を履き違えてるだけの酔っ払いだ」

 

「ルーベルトさんルーベルトさん。ルーベルトさんも自分に酔ってますね!」

 

「うぐぅ!」

 

正体を明かしてスッキリしたのか、いつもよりチョウチョが辛辣だ。お前の下ベロどくバクダンでできてんのか!?

 

「ガハハハハハ!中々いいコンビじゃねぇか!気に入った!お前らを俺のガキ共と会わせてやるよ!」

 

俺のガキ共と会わせてやるとか言ってる酔っ払いをどうするべきか、俺は悩んでいた。麦ジュース飲んでるわけじゃないのになんでこんな酔っ払いみたいなセリフが吐けるんだ?

 

「ルーベルトさんルーベルトさん。私のチョウの直感が言ってます!漁師のおじさんに従った方がいいと…!」

 

「おいおいマジで言ってんのか?この人の子供と会ってもなんも意味ねぇだろ」

 

「聞こえてんぞ。………しゃあねぇな。名乗りは最後にしようと思ってたんだが………!俺の名はエイハブ!伝説の釣り人エイハブだ!」

 

「「………誰?」」

 

エイハブが椅子から落ちた。と思ったら顔を上げた。エイハブは恐る恐ると言った様子で。

 

「………お前ら俺のこと知らないのか?」

 

「「知らない(です)」」

 

「一応、クルブルクで言うところの「せんだいこくおう」みたいなポジションなんだが…」

 

「「知らない(です)」」

 

エイハブはずっと驚いた様な表情をしていたが、やがて立ち直ったのかさっきまでの様に豪快な表情になった。

 

「ガハハハハハ!お前らみたいな奴らが女神の宝を探してるなんてこりゃきっと、話したらエリーゼも笑うぜ!ガハハハハハ!」

 

「もしかして俺たちバカにされてる?」

 

「なんだかそんな気がしますね…」

 

「とりあえず。だ、俺の息子、アンディに会ってこい。アンディは今、パーテル大平原西の大農園へ出張中だ。そこに行けば会えるだろうよ」

 

「え?俺らせっかく飛行機でショートカットしたのにクルブルク方向へ行くの?」

 

「そうみたいですね………」

 

「ちきしょう!この世界嫌いだ!」

 

■■■■■■

 

〜パーテル大平原西〜

 

【ハーベス大農園】ジュエルとハーベスの兄妹が経営しているこの農園はクルブルクでも有数の大農園だ。

 

「お兄ちゃん!お客さんだよ!」

 

金髪ロリのジュエルが兄のハーベスをわざわざ呼んでくれた。

 

「ジュエルさん!ありがとうございます!」

 

「ふふふ、感謝の気持ちは農園の野菜を買ってくれればいいよ!」

 

「中々打算的なロリだな」

 

「自慢の妹ですよ!で、ルーベルトさん。アンディさんたちならついさっき大農園を出て行きましたよ?」

 

「まぁそうだろうとは思ってましたよ。居ないし。………とりあえずキュウリ下さい。200本程。ルーベルトさんのレベルカンストの糧になってもらいます」

 

「「まいどあり!!」」

 

「仲良いな………あとチョウチョ。お前何あっかからんとキュウリ買ってんの?食わんよ?俺、食わんよ絶対。絶対ヤダからな、絶対だからな!」

 

「ルーベルトさんお会計お願いしますね!」

 

「テメェ調子乗りやがって…。………まぁでも、ずっと弱いままってのもな………」

 

………。

 

決めた!

 

「お会計頼む」

 

「え!?ルーベルトさん!?本当に買ってくれるんですか!」

 

「あぁチョウチョ。俺も強くなりたいからな」

 

「カッコいい!今のルーベルトさんカッコいいです!」

 

「フハハ、崇め奉れよチョウチョ。んじゃ改めてお会計!」

 

「「お会計6000リッチになります!」」

 

「「安い!!」」

 

俺たちはキュウリを大人買いした後、エイハブさんの息子、アンディを探しに向かった。

 

 

 




………3月あたりから週一になる。


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第17話「相棒」

おはこんはろちゃお。東風です。
そろそろ、そろそろ!週一始めます!!!
せめて!!!せめてね、ファンタジーライフの続編が出るまでには少しでも知名度を上げたい!!!
………上げたい(小声)
………じゃあ、そういうことで…。


ハーベス大農園を後にした俺たちは、エイハブさんの息子「アンディ」という人を探していた。なんでもその人は元締め代行をしているため、ポルトポルトの偉い人らしい。

 

「どんな人なんですかね?」

 

チョウチョが悠々自適に舞いながら尋ねてきた。

 

「さあな。でもポルトポルトみたいな国の偉い人なら船とか好きそうだな。船酔いとか全然しなさそうだな〜。うらやま」

 

「ルーベルトさんも練習すればいいじゃ無いですか、船」

 

「やだよ!俺河童だし、海水は好きじゃ無い!」

 

「やっぱり、河童ってなんなんですか?」

 

「知らん。聞くなら死んだ後、俺の両親に聞くんだな。あ、メグおばさんは少しくらい知ってるか…?あ!あとエリック!なんかアイツ知ってる感じだったぞ」

 

「国王を呼び捨て…!中々勇気ある人ですね」

 

「ただの酔っ払いだろ………って!!俺のことかよ!!チッ!エイハブさんの口調が移ったぜ……」

 

「ハハハ!ルーベルトさん人のこと言えないですね!」

 

「人じゃ無いし、河童だし」

 

「確かに。(グゥギュルルルルル)………ルーベルトさんルーベルトさん。お腹空きました」

 

「チョウチョの姿でも人状態の音が鳴る仕組みなんだな」

 

「人じゃ無いですけどね。マーズの子ですけどね」

 

「ダハハはっ!俺たち、似た物同士なんだな」

 

「ですね!」

 

 

 

 

 

………ずっと自分には友達がいなかった。

 

(私には友達がいませんでした)

 

………でも

 

(でも)

 

「「………今が1番楽しい。………ハハハ!(フフフ!)」」

 

やっぱり俺たちは────【似た物同士】だ。

 

■■■■■■

 

「なんだお前たち」

 

お弁当を食べる為に、大きな桜の木の下に移動した俺たちは弁当を食べようとしたんだが………なんか大きな剣持ってるやつに絡まれた。

 

「河童とチョウチョですが、なにか?」

 

「チョウチョはともかく………河童!?河童と言ったか貴様!………ジジイが言ってたことは本当なのか…?」

 

「じゃあそういうことで。俺たち人探ししてるんで。俺たち、忙しいんで」

 

「ちょっと待て!貴様ら、さっきまで談笑しながらゆっくり食べてたじゃ無いか!忙しいはずないだろ!人探しなどとくだらない嘘をつk(それは本当)(本当です)………そうか。すまない。それはそれとしてだなルーベルト!(なんで俺の名前知ってるの?)(なんで知ってるんですか?)………それはそれとしてだなルーベルト…(2回言った!)(無視されましたね…)お前に頼みがある!(なんだろう)(なんですかね)………俺の名はりゅうごろし(変わったお名前ですね)(本名なわけないだろ)………俺の名はグレン(名乗りました!)(何処かの誰かと違って本名を直ぐ明かすなんて好印象だ。プラス10000ルーベルトポイント)(え?ルーベルトさん、もしかして私ですか!?私のこと言ってます!?)………急に絡んだ俺が言うのもなんだが、………お前ら空気読めないって言われるだろ」

 

「「なんでわかった!(んですか!)」」

 

「誰だってわかる………はぁ。もういい、疲れた。今日は諦めよう。人探しをしているらしいしな。………またお前たちのところに後日、改めて訪ねよう」

 

「なんだ、俺のファンか」

 

「違う!!!」

 

「違いますよルーベルトさん。私のファンファンです」

 

「違う………致命的に違う………」

 

竜殺しとかいうかっちょいい二つ名(笑)を名乗ったセンス厨二のグレンさんは頭を抱えながら何処かへ行ってしまった。

 

「なんだったんだアイツ」

 

「さぁ?」

 

「「まぁいっか!」」

 

「「「「うわぁぁぁぁぁあああ!!!!」」」」

 

「叫び声です!?」

 

「すぐ行くぞユエリア!」

 

「ハイっ!ルーベルトさん!」

 

■■■■■■

 

「くそっ!お前たちアンディ様を護衛しろッ!」

 

「「「了解!」」」

 

「わ、私は大丈夫ですから!アナタたちは無理しないで!大切な国民を私は失いたくない!」

 

「「「「アンディ様………」」」」

 

「よし!そうだ!生きてポルトポルトへ帰ったらみんなで宴を開こう!」

 

「「「「え?」」」」

 

「七日間のフルコースに決定だ!きっと姉さんも喜ぶぞ!」

 

「グワッ!」

「ガハッ!」

「ギャッ!」

「ゴゲボォ!」

 

部下の4人は自分の行く末に不安を抱き、心が揺らいでいる隙を突かれ、コヨーテにダウンさせられた。

 

「あぁ!みんな!大丈夫か!?なんで急に倒れたんだ!?」

 

「ぜってぇおめぇのせいだろ」

 

「絶対アナタのせいだと思います」

 

「うわぁ!?なんだ君たち!まぁいい!見ての通りピンチだ!それも絶体絶命のっ!報酬は払う!助けてくれ!」

 

「しゃあねぇなぁ………チョウチョ!」

 

「アンディさんたちは任せてください!」

 

「頼んだぜ!相棒!」

 

「フフフ!任せれました!相棒!」

 

俺は4匹のコヨーテに向き直る。圧倒的人数不利。コヨーテ単体は今の俺でもワンパンだが、いかんせんすばしっこくて攻撃が当たらん。対してコヨーテ側も被弾を恐れて動こうとはしない。

 

この膠着状態を切り抜けるには………!

 

「狼どもよく見とけっ!コレが河童の「マスター」ルーベルトの必殺技ッ!『水宝石(ウォータージェム)』だ!」

 

勢いよく放たれた水の弾丸はコヨーテの眼前で停止し、

 

────美しく爆ぜた。

 

「「キャオン!」」

 

よっしゃ2体命中!2体なら群れとして機能しにくくなる!

 

「「バゥッ!」」

 

「飛びついてくると思ってたぜ!くらえっ!『チャージトロウ』」

 

俺はそれぞれのコヨーテの右手を掴み、流れを使って地面にキスさせた。

 

「「キャン!」」

 

「やりましたねルーベルトさん!」

 

「まぁ狩人の「かけだし」でも倒せるモンスターだしな。「マスター」の俺が倒せない道理はないさ」

 

「最初2レベだったのによくイキりますね」

 

「お黙り???今の俺は1レベ下がって31だからな?舐めんなよ?」

 

「わぁー(棒)」

 

「無駄に可愛いのがまた無性に腹が立つ…!」

 

「あっ、あのっ!助けて頂きありがとうございます!……私はアンディ。元締め代行をさせていただいています」

 

「知ってるよ。エイハブさんから聞いたからな」

 

「え!?!?お父上から聞いていたんですか!それなら話は早い!早速ですが宮殿へ招待させて頂きます!」

 

「ルーベルトさん良かったですね!アンディさんを見つけられて!」

 

「あぁ本当な。それな。んじゃそこの4人、立てるか?」

 

「「「「キツいです〜」」」」

 

「そうかわかった。………チョウチョ」

 

「なんですか?もしかして「アレ」ですか?」

 

「あぁ、「アレ」頼むわ。後で砂糖水奢ってやるよ」

 

砂糖水という単語に体を震わせたチョウチョは実に、欲望に忠実であった。

 

「その言葉、忘れないでくださいよ!えいっ!」

 

キラっ!

 

4人の体が輝く。その光が溢れ出してから傷が塞がるのには、10秒も要らなかった。

 

「傷が…消えていく!?」

「キュアエイドでも、ハイキュアエイドでもこんな早く治らないぞ!」

「いやしの粉か?それともいやしグレードか?鱗粉がいやしグレードのチョウチョなのか?」

「うはー!?もし本当だったら相当な価値がありますよ!マッカラン大商店に売ったら何万リッチですかね?」

 

「こらこらお前たち。不思議な気持ちはわかるがまずは感謝だよ?」

 

「「「「はっ!チョウチョ殿!ありがとうございます!」」」」

 

「いえいえ〜お気になさらず〜」

 

チョウチョはお偉いさん達に感謝されまくってた。

 

………なんか毎回オイシイ所だけ取られるよなぁ、俺。

 

ま、いっか。俺たちは【相棒】だしな。

相棒が褒められるってことはよ、俺も褒められるってことだ。

 

………そうだ!そうに決まってる!

 

………………そうに違いない(震え声)




おまけ解説
キュアエイド  HP60回復。雑貨屋で60リッチで売ってる。
ハイキュアエイド  HP100回復。雑貨で300リッチくらい。
いやしの粉  全員のHPを100くらい回復。1000リッチくらい。
いやしグレード 全員のHP300くらい回復。多分5000リッチくらい?

マッカラン大商店 ポルトポルト宮殿街にある世界有数の大商店。宝石やモンスターなどの珍しい品を多く取り扱っている。オーナーのマッカランはキャロッテを愛好している。

キャロッテ ニンジンのモンスター。

りゅうごろし りゅうごろし。ドラゴンキラー。実はあの人の弟子…!

アンディ 宴大好きマン。



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第18話「海賊に憧れて!」

10000時間の法則を信じて突き進む男…いや、河童。
どうも東風です。毎週投稿二週目!続けられるように頑張ります!
……あれ?おかしいな?………二ヶ月くらいたってるぞ?


アンディを助けた俺たちは今、ポルトポルト宮殿に居る。

 

「ポルトポルトの宮殿はキレイだなチョウチョ」

 

「そうですね。クルブルクとはまた違った美しさがあります!水色がキレイですね!」

 

俺たちが観光客みたいなセリフを吐いている中。俺たちをエスコートしてくれている執事のルチアーノさんは。

 

「いやはや何とお礼を申していいのか!ワタクシ、感動しました!」

 

めっちゃ感謝してきた。

 

「いえいえ、困っている人がいたら助け合うのが人情と言うモノですよ!」

 

「まぁルーベルトさんは人間じゃなくて河童ですけどねー」

 

「例え人でなくとも恩人は恩人。本当にありがとうございますルーベルト殿。ルーベルト殿は我々の光でございます。そんなルーベルト殿に一つご相談が………」

 

「まぁ俺にできることの範囲内なら…」

 

「ありがとうございます。………実はワタクシここのところ転職を考える程悩まされていまして…」

 

ルチアーノは髭を摘みながら俯いた。

 

「どうしてですか?こんなにも豪華な宮殿があって、国全体も活気に溢れているのに!」

 

「………それは(それは僕から話しましょう)………申し訳ありませんアンディ様」

 

「いいんだよルチアーノ。さ、ルーベルトさん達は最上階の客間までどうぞ!」

 

アンディに従い、上へ向かおうとする俺たちを呼び止める声があった。

 

「ルーベルト殿とチョウチョ殿!護衛の者とアンディ様を救ってくれたあなた達には個人的にお礼がしたいのです。………また会うときには別荘を紹介いたします。………勿論!サービス価格で!」

 

「べ、別荘ですって!ルーベルトさん!」

 

「やっべ、メッチャ心踊ってきたわ」

 

「フフフ……ありがとうねルチアーノ」

 

「いえいえ、コレも全て個人的な義理ですから」

 

「フフフ、キミは昔からいつもそうだ。素直じゃ無いね!」

 

「アンディ様こそ。………では、ルーベルト殿、チョウチョ殿。また後日、必ずお会いしましょう」

 

「はいっ!」

 

「あぁ。確かに約束したぜ!」

 

「では客間へ行きましょうか」

 

■■■■■■

 

「そうでしたか。貴方達がクルブルクからのドクロ石調査の使者だったのですね。どうりでお強い訳だ!」

 

「フフフ!私はタダのチョウチョですが…ルーベルトさんは『ライフマスター』なんですよ!」

 

「え!世界に12人しか居ないあの『ライフマスター』の方だったんですか!?」

 

「いや、確かに俺は『ライフマスター』だけどよ?…オイチョウチョ。完全にアンディさん勘違いしてるぞ」

 

「一体!?何の職業なんですか!?」

 

「本当ですね………あのですねアンディさん」

 

「はい!なんでしょうかチョウチョ殿!」

 

「ルーベルトさんは、【13人目の】ライフマスターなんです」

 

………アンディの表情筋が固まった。ガッチガチだ。どんくらい固いかっていったら、自称クルブルクの盾であるローマンさんくらい硬い。ローマンさん元気かな?またコンガス食堂で一緒に食べ比べをしたいなぁ。なんて考えているとようやくアンディの表情筋が動いた。

 

「ほ、本当に13個目のライフなんてあるんですか……?そもそも増えるんですかライフって…?」

 

「あぁ、せんだいこくおうが増やせって言ったんだとよ。なんでも「神のお告げ」とかなんだとか言って」

 

「で、でもライフは本来、女神ステラが動乱と狂気に塗れた人間たちの世を正す為に創ったもの!ライフが増えるということはそれ即ち、世界がまた乱れているということを裏付けていますよ!」

 

アンディの顔はみるみるうちに青ざめていく。

確かに言っている通り、ライフは女神ステラによって創られた世をあるべき姿へ導くもの。

俺はそんな今更な事実をやっとアンディの反応を見て理解した。

チョウチョの方を見る。どうやらチョウチョも理解したようだ。そしてチョウチョは激しく体を揺らし始めた。………鱗粉が舞うから勘弁してほしい。

 

「ルーベルトさん!も、もしかしてアンディさんって凄い人なんじゃないですか!?」

 

「いやそもそも元締め代行な時点で凄いだろ。知らんけど」

 

自分の力だけでこの世界が滅びかけていることに気がつくとは……本当に凄いな。俺なんて国王やせんだいこくおうに会って色々ドクロ石に触れても、この世界がやばいなんて気づかなかったしな。

 

「えへへ。私はそんなに凄い人じゃありませんよ。あくまで『代行』ですしね!」

 

「そういやアンディは『代行』だったな。じゃあ本当の元締めじゃないもんな」

 

「そうですね。こんなに優秀な人なのに代行だなんて…!きっと本当の元締めさんはとっても凄い人なんですね!」

 

「あはは……その、確かに元締めは凄い人なんですけど………本当に言いにくいのですが、実は元締めは私の姉なんですよ」

 

アンディは何故か申し訳なさそうな顔で言ってきた。

 

「どうしてですか?お姉さんが元締めなんて凄いじゃないですか!アンディさんも若いし、お姉さんもかなり若いんですよね?」

 

「えぇ。確かに私の姉は若いです。しかし、なんというべきでしょうか。………若さ故の過ちというか……若気の至りと言いますか……」

 

「なんでそんなに言い淀むんだ?胸を張って言えよ!お前の姉さんは凄いんだろ?」

 

「勿論!大好きな姉です。しかし………姉は今、元締めではなく、『海賊に憧れている』のです…」

 

「……なんだと?」

 

「海賊って、あの海賊ですか?この街の真ん中あたりに船を止めているあの海賊ですか?」

 

「そう、その海賊に姉はなろうとしているのです……元締めにはなるつもりがないそうで……」

 

「………アンディさん」

 

「………?なんですかチョウチョさん」

 

「………私!その人に会ってみたいです!」

 

「え!?も、もしかして説得してくれるのですか?」

 

「できるかはわかりませんが頑張ります!」

 

「ありがとうございます!!護衛を助けてもらった上にここまでしていただけるとは!成功した暁にはどうか宴を開かせて下さい!」

 

「わかりました!ルーベルトさんもいいですか?」

 

「あぁ。構わんぜ。俺も一度その人に会ってみたいしな」

 

「お二人ともありがとうございます!コチラ、少ないですがリッチです。役立てて下さい」

 

アンディさんはそう言いながらめっちゃ重い銀貨袋を渡して来た。

 

「ハハハ。この俺ならチョチョイのちょいですよ。ハッハッハ!」

 

「ルーベルトさんカッコ悪いです…!」

 

「うるせぇ!誰のせいでこんなに金がねぇと思ってんだ!」

 

「わー!きー!こー!えー!なー!いー!」

 

バトルし出した俺たちをアンディは不安そうに見つめていた。

 

 

 

 

 



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第19話「お嬢様との出会い」

どうも、東風です。毎週投稿3週目です。(2ヶ月経過)
まさかこんなにも高評価をいただけるとは思ってませんでした。

ルーベルトの見た目について補足をここでしておきます。

ルーベルトは眼鏡をかけていて白髪です。目は鋭く、普通に二足歩行です。背筋がピンとしていて、普通に立ってます。白のタンクトップを愛着しており、短パンを履いています。靴はひよこのサンダルを履いています。身長は大体150後半です。こんな感じですかね?
他の本編キャラは調べたりすれば出てくるので、見た目の説明は省かせてもらいます。

長くなっちゃってすみません!

それでは本編!どうぞ!


チョウチョを論破し、優越感たっぷりの俺はポルトポルトの中心。ポルトポルト繁華街に向かっていた。この繁華街の最大の特徴。それは街全体が海の上に作られていることだ。さすが、海国の名は伊達じゃないな。

 

ちなみにここから北に行くとさっき俺たちがいたポルトポルト宮殿街。南に行くとポルトポルト郊外が広がっていてさらに南西へ向かうとマパラッパ諸島が見えてくる。

 

そしてこの繁華街には飛行船の空港やレストラン。肉屋から鉱石屋までほぼなんでもある。

 

「ルーベルトさん。ルーベルトさん。とりあえずアンディさんのおねいさんをさがしましょうよ!」

 

「あぁ。でも闇雲に探しても簡単には見つからないだろ?まずはそこの海上レストランでゆっくり情報収集しようぜ」

 

「賛成です!」

 

海賊船の近くにある海上レストランに俺たちは寄ることにした。

俺らは以前、ここにマグロを食いに来たことがあるから店の味は知っている。

ここのかぶと焼き美味いんだよなぁ。ま、今回は何か進展があったらすぐに動けるように、特産品である『南国パパイヤ』を注文した。

 

「うまっ!」

 

「美味しいですねルーベルトさん!」

 

「いやほんとマジうめぇな。もう一個頼むか?」

 

「いえ!ここはもう一つの特産品である『港町オレンジ』にしましょう!」

 

「いいなぁそれ!いや、いつもリンゴばっかだったからうめぇなぁ。ビタミンがモロにとれてる感じあるぜ!」

 

「私たちって『王国アップル』はよく食べてますけど、『平原ぶどう』はあんまり食べてませんね」

 

「たしかにそうだな。今度パーテル大平原西に行った時に寄るか。確かダルスモルス近くの狩人の店あたりで売ってたよな?前イムカさんが言ってたぜ。そういえばアップルジュースは沢山あるのにぶどうジュースは見かけねぇよな」

 

「ですね。こっちはサマーネクターにオレンジとパパイヤが入ってますけど、ぶどうだけないですね」

 

「生産量が少ないんだろうな」

 

「商売チャンスかもしれませんねー」

 

「………アリだな」

 

「え、本当にやるつもりですか?」

 

「世界をめぐり終えてやることなくなったらやるわ」

 

「それ一生やらないやつですね、わかります」

 

「バレたか……」

 

「逆になんでバレないと思ったんですか?」

 

「んにゃ?チョウチョなら騙されるかなー。って」

 

「私のこと世間知らずだと舐めてますね!コレでもルーベルトさんの何倍も生きてますから!」

 

「何倍も生きてるくせに精神年齢が俺とおんなじじゃねぇか…」

 

「それはルーベルトさんが達観しすぎなんです!!」

 

「そうか?案外こんなもんだと思うぜ15なんて」

 

「そうですか?私が15の時はまだ赤子なのでわかんないです」

 

「人間基準だよ馬鹿野郎」

 

「でもルーベルトさんは人間じゃないじゃないですか」

 

「………さて、アンディのお姉さん探そうぜ」

 

「図星を突かれたからってすぐ話題転換するのは良くないと思います」

 

「あー、あー。聞こえない聞こえない!」

 

「聞こえてるじゃないですか!?」

 

なんて、俺たちが乳繰り合っていると。(乳繰り合ってないです)

 

「今日こそ覚悟しやがれオリビア!」

 

近くから男の怒鳴り声が聞こえて来た。しかもかなり野太い。声量も大きいし、正面から叫ばれればさぞうるさいだろう。

 

そんなことはおいておいて。

 

「なぁチョウチョ」

 

「えぇ。アンディさんのお姉さん。領主の『オリビア』さんですね?」

 

「この感じだとなんかしらの厄介ごとに巻き込まれてるだろうな」

 

「助けに行きますか?」

 

「当たり前だ。今回の俺たちの任務はドクロ石調査。それを進めるにはまず、領主に会って公式に進めないとな」

 

「了解です!援護は必要ですか?」

 

「いらねぇさ。こんな俺でも一応はマスター。一般人には負けんよ」

 

「じゃあ私はヒラヒラしてるだけでいいんですね?」

 

「あぁ。基本はそうなるな。もしも怪我人がいたら回復してやってくれ」

 

「えぇ!勿論です!回復は私の専門分野ですから!」

 

「頼もしいな。じゃ、行くか!」

 

「レッツゴーですっ!」

 

「あぁ!レッツゴーだっ!」

 

────俺たちが声のした場所に着くのは簡単だった。

 

が、問題発生だ。

 

「あぁ?テメェ、見ねぇ顔だな?観光客か?さっさと退かないと痛い目に遭うぜ?」

 

「そうだそうだ!バルトさんはな!あの海賊王とも戦ったことがあるんだぞ!」

 

「お前みたいな変な奴は相手にすらならないぜ!」

 

「ほーん…」

 

案の定というべきか、海賊3匹に絡まれた。

 

先ほど叫んでいた男はバルトというらしい。そしてこいつらは俺のことを観光客か何かだと思っているらしい。

 

「あ?テメェ、あくまで退かないつもりか?」

 

「あぁ。テメェみたいなチンピラ、こわかねぇよ」

 

「まて!危険だ!バルト自身はそこまで強くはないが、しつこい!手を出すのはやめろ!」

 

「ふふふ、オリビアさん。あの人は大丈夫ですよ」

 

「なんでアタシの名前を!?……もしかしてアンディから雇われたのか?」

 

お?さすがアンディの姉。察しがいいな。クルブルク王城のやつら(大臣を除く)に爪の垢煎じて飲ましてやりたいところだが……まぁいまは眼前の敵を始末することから考えよう。

 

「………3秒だ」

 

「あ?今なんつった?」

 

「3秒でお前ら3人片付けることにするぜ」

 

「あ”あ”?できるもんならやってみろや!」

 

「そうだそうだ!」

 

「お前みたいな弱そうなやつ、ここじゃ通用しないんだよ!」

 

「本当に大丈夫なのか…?」

 

「大丈夫ですよ。アレでも彼は──」

 

「「「うおおおおおお!」」」

 

俺は剣を持って突進してきた海賊どもの真ん中めがけて。

 

「──水宝石!」

 

「ぐはっ」

「ぼぐぅ」

「ぶばばば」

 

一応コヨーテやアップルモンスターをワンパンする技だからな。チンピラ海賊なんて一撃だ。

 

「──マスターですからね!」

 

「マ、マスター!?あんな少年がか?アタシが知るマスターの中にはあんな子はいなかったはず。………彼は一体何者なんだ?」

 

「あの人はルーベルトさん。私の相棒です!」

 

「ま、俺は人じゃなくて河童だけどな」

 

「………君たちなら。もしかしたら…………!

ルーベルトと、ええと、(チョウチョでいいですよ!)…そうか!チョウチョ!アタシの船の船長室まで来てくれないか?」

 

「元々アンタに会いにくるつもりで来たんだ。ありがてぇぜ」

 

「そう言ってくれると助かるよ!さぁこっちだ!案内するよ!」

 

倒れたバルトたちに目もくれず、オリビアは早足で歩き出した。

 

やがてオリビアは一番大きな船の前で立ち止まった。

 

「ようこそ我が船へ!……といっても君らは船員ではないけどね!」

 

「歓迎されちゃってます…!ルーベルトさん!私たち歓迎されちゃってます!」

 

「嬉しい。凄く嬉しい。すこぶる嬉しい。激しく、エキセントリックに、時にバイオレンスに嬉しい」

 

「そ、そうか。それはよかった………のかな?まぁいい。船長室はこの大きな扉の部屋だ。是非中に入ってくれ」

 

オリビアが案内してくれた部屋は、ザ・船長室といった雰囲気で、壁には世界地図が貼ってあってみてるだけでワクワクする。極め付けは大きな宝箱!でっけぇなあ!一体何が入ってるんだろう?

 

「まあその辺のイスにかけてくれ。早速本題に入るが、その前に君たちに問おう。『7つの頭』………というものを知っているか?」

 

「知らないな。チョウチョは?」

 

「聞いたことないです!」

 

「………そうか。いやなに、今から話す内容が、話した後に「知ってました」では、ただの徒労だからな。さて、ルーベルトと言ったな。君は一体どのライフのマスターなんだい?みたこともない戦い方だったよ」

 

「13個目のライフ。『河童』だ」

 

「………もう一度聞こう。君は一体どのライフのマスターなんだい?」

 

「だから河童………」

 

「なんのライフか聞いてるんだよ!!!!!」

 

「コイツ話聞かねぇな。チョウチョ。頼んだ」

 

「任されました!オリビアさん。落ち着いて聞いて欲しいんですけど、ルーベルトさんは本当に13個目のライフ『河童』のマスターなんです。………ホラ!ルーベルトさん!アレ出しましょう!アレ!」

 

「あぁ!アレか!そりゃ確かに一発だ!」

 

「………?」

 

オリビアは俺たちの話について来れないようだ。

俺はポケットから『ライセンス』を取り出す。

 

「これに書いてあるだろ?ライフは河童。ランクはマスターだ」

 

「………わかった。キミを信じよう。すまなかったな。イレギュラーすぎて取り乱してしまった。本当にすまない」

 

「しょうがないですよ。私も最初は何言ってるかわかりませんでしたから」

 

「オイ相棒。なんかお前馬鹿にしてねぇか?」

 

「気のせいですよ。………さて、オリビアさん。実は私たちはクルブルクからの使者なんですよ」

 

「使者…?」

 

「えぇ。ドクロ石というのをご存知ですか?」

 

「………!!あぁ、最近マパラッパ諸島で発見されたあの黒い石だな!!アンディが言っていたぞ!」

 

「えぇ。私たちはそのドクロ石調査と並行して、『女神の宝』と呼ばれる『国に一つしかない秘宝』を探しに来ました。ポルトポルトの領主であるオリビアさんなら知っているのではないかと思い、直接会いに来ました」

 

アレって国に一つしかないのかよ。知らんかった。言えよ…ユエリア。

 

「………女神の宝?すまない、アタシは聞いたことないな。もしかしたら父なら何か知っているかも知れないが」

 

「あー。エイハブさんか…」

 

「父も知っているのか!?」

 

「えぇ。私たちは最初にエイハブさんに会い、アンディさんを助けてからここに来ました」

 

「そうか。弟が世話になったな。感謝する。………君たちとは話していてとても楽しい。まるで大海原を駆けているような、止まらないワクワクを感じるよ。………よし。話そう。………アタシは!アタシはっ!!

 

『海賊になりたい』!!!!!」

 

本人にとっては大きな発表だったとは思うけど、俺とユエリアはこう思ってしまった。

 

「「知ってる……あっ」」

 

「………え?」

 

やべ、口が滑った!×2

 

 



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第20話「7つの頭を探せ!」


どうも東風です。みんなのファンタジーライフの愛を受けて投稿頻度が上がってます。ありがとうございます!毎週投稿4週目(今回は本当)ですね!
続けていきたいです!

それでは本編!どうぞ!


 

「………アンディから聞いていたのか?」

 

「うん」

「はい」

 

「………そうか。まあうん。とりあえず領主の権限でルーベルトとチョウチョは女装な」

 

「なんで俺だけ!?」

 

「………?いや、チョウチョも女装するぞ?」

 

いや、だって!………なぁ?

俺が抗議しようとしてると、チョウチョが話しかけてきた。

 

「………ルーベルトさん、ルーベルトさん。ちょっとお耳貸してください」

 

俺はチョウチョに耳を近づける。

 

「たぶん、オリビアさんは私のことも男だと思ってるんだと思います(ヒソヒソ)」

 

「え!?マジか…!(ヒソヒソ)」

 

「何を話してるんだ?」

 

「「なんでもないぞ?(です)」」

 

「まあいい。ルーベルトとチョウチョは今回の冒険についてきてくれたら罰は無しとしよう」

 

「ルーベルトさん、ルーベルトさん。素直に罰を受けましょうよ」

 

「絶対にヤダ」

 

お前自分が女装してもノーダメージだからって俺に女装させようとしてくんなよ!?そういうことするんだったらこっちにも考えがあるからな!

 

「………砂糖水砂糖抜きな」

 

「さ!ルーベルトさん!早速冒険に出かけましょう!オリビアさんのお手伝いを頑張るぞー!おー!」

 

よっしゃ!クリティカルヒット!!!

俺、あんま『うん』にパラメーター振ってねぇけど、クリティカル入った!!!ラッキー!

 

「………ふふふ、やる気になってくれたみたいだね。じゃあ話そうか。最初に触れた「7つの頭」について!まずアタシがコレを探すキッカケとなぅたのは──」

 

オリビアが語った内容をまとめるとこうだ。

 

まずオリビアにはエリーゼという母がいた。エリーゼはオリビアが海賊になることに大反対だった。なぜならエリーゼは貴族出身で、娘に海賊にはなってほしくなかったのだ。

 

オリビアはそれでも海賊になりたいと思った。世界に夢を見てた。

 

しかし、世界は残酷だった。

 

海賊になりたいという、その思いを認めてもらう前に、エリーゼは病によってこの世を去った。

 

だが、エリーゼは死ぬ直前、オリビアに『7つの頭を探せ』と遺言を遺した。

 

それが今回の冒険の発端らしい。

 

「──というわけだ。………チョウチョ?大丈夫か?」

 

「………ヒック………ズズズ………オ”リ”ビ”ア”ざ”ん”!!!!!!!!!!が”な”ら”ず”!!!!!!!………ズズッ。………必ず『7つの頭』を見つけましょう!!!!!!!!」

 

チョウチョは泣いていた。触覚から大粒の涙がこぼれ落ちている。

 

「………ありがとうチョウチョ。………アレ?ルーベルト…?な、泣いている…のか?」

 

「………………うっ…うっ」

 

かくゆう俺もめっちゃ男泣きしてた。

 

「………ありがとう2人とも。アタシは、2人に会えてよかったよ」

 

「俺もっ!」

「私もですっ!」

 

「フフフ………よし、善は急げだ!!早速冒険に出かけよう!!………アタシは荷物の整備をするから、ルーベルトとチョウチョは先にマパラッパ諸島への橋の前で待っていてくれ!」

 

俺とチョウチョは、目に大粒の涙を残しながら、大きく頷いた──!!

 

■■■■■■■■■

 

〜ポルトポルト郊外〜

 

ポルトポルト郊外はポルトポルトの最南端にある。

いわゆるビーチってやつだ。エイハブさんと会ったのもここだな。

 

「なあチョウチョ。お前はなんで泣いてたの?」

 

「………私、お母様とはもう随分と会ってないんです。ここ、ファンタジールに来る前から、ずっと──。だからなんだかセンチメンタルになっちゃって…」

 

「なるほどな。チョウチョ………今は周りに人がいないな。よし。ユエリアって呼ぶぞ?(はい)………ユエリアのお母さんはライフを創った、ライフの女神。『ステラ』だよな?」

 

「はい。そのステラです」

 

「よし聞けユエリア。お前は、お前が思ってるより凄いヤツだ!」

 

「凄い………ですか?」

 

「あぁ、凄い!めっちゃすげぇ!!さっきの泣いてるお前を見て俺は正直感動した!!!」

 

「なんでですか?」

 

「お前が女神様みたいだったからだよ!!!!!」

 

「────!!!」

 

「たしか女神ステラはこの世界が戦乱と狂気に塗れていたのを救った、いわば『救世主』なんだろ?」

 

「………コク」

 

「じゃあやっぱりお前はすげえヤツだ!!!胸張って生きろ!!!!!」

 

「………セクハラですか?」

 

「ち、ちゃうわ!アホっ!!」

 

「………フフフ。冗談ですよ?」

 

「………ったくオメェは初めからそうだ。俺がいいこと言ってる時に限って────(ルーベルトさん)」

 

「………なんだ?」

 

「大好きです!」

 

「………///………と、とにかくっ!!さっきのお前は女神様みたいだった!!!頑張ってくれ!!!!!ハイっ!!!!!!!終了!!!!!!!!!!」

 

「あはは〜?さてはルーベルトさん照れちゃってますぅ??」

 

「うるせぇ!」

 

「………コホン。仲がいいことはいい事だが、外でイチャイチャし過ぎではないか?」

 

「「そうでもないぞ(そうでもないと思います)」」

 

「………そういうところだよ。ま、仲がいいことはいい事だ!早速冒険に出かけようじゃないか!!!」

 

「待ってもらってたやつとは思えない偉そうな態度だな」

 

「ルーベルトさん、世の中には言っちゃいけない言葉と、言っていい言葉があります。ちなみに今回は前者ですね。ホラ、見てください。オリビアさん、拗ねて砂場遊び始めちゃいましたよ?」

 

俺は砂場遊びを始めたオリビアの肩を優しく叩いて。幼稚園児みたいに謝った。

 

「オリビアちゃんごめんね!!!」

 

「領主権限で女装な?」

 

あっ(察し)

 

■■■■■■■■■

 

〜マパラッパ諸島〜

 

危ねぇ。ユエリアに人間状態で『大好き』言われてたら鼻血出してたな。間違いない。なんとか致命傷で済んだ(致命傷)。………まあ人間じゃないんだけどな。(マーズ)の子だもんな。

 

「オリビアさん、7つの頭がありそうな場所って見当ついてるんですか?」

 

「いい質問だなチョウチョ!それを説明するにはまず、マパラッパ諸島への理解を深めようか!2人はマパラッパは初めてだよな?」

 

「おう」

「はい」

 

「そうかそうか!いや、多いに結構だ!!よーし、張り切って解説するぞー!………コホン。マパラッパ諸島には2つの洞窟がある!!」

 

「おおっ!」

「のど渇いた。キュウリ食お」

 

「1つは『貝の洞窟』。アメジストが自生した採掘師の楽園だ!」

 

「おおっ!」

「キュウリうめえ」

 

「2つ目は『海底神殿』。その名の通り、海底の中に洞窟がある!」

 

「おおお!!」

「あ、レベル上がった」

 

「………まあ今回はその2つは関係ないんだけどな」

 

「おおおおお!!!!!………ってアレ?関係ないんですか?」

 

「うん。関係ない」

 

「なんだったんだよこのやりとり。あ、またレベル上がった」

 

■■■■■■■■■

 

〜沈没船〜

 

「むむっ!私の超天才的な頭脳が、ココに7つの頭があると推理してます!!」

 

「たしかにお前、チョウチョの中では『チョウ』天才だよな。うん。チョウチョにしては……w」

 

「………( *`ω´)(ルーベルトを睨んでる)」

 

「………なんでチョウチョは怒ってるんだ?ルーベルトはチョウチョのことを純粋に褒めているじゃないか!!」

 

「………オリビアさん。貴方は純粋なままでいて下さい。私はもう、ルーベルトさんに汚されちゃいましたから…」

 

「え!?る、ルーベルト!お前チョウチョに一体なにしたんだ!!」

 

「何もしてねぇよ!!………あれ?なんか記憶にない記憶が俺の脳裏に………」

 

「ヒトはそれを記憶と呼ぶんですよルーベルトさん」

 

「ナニィ!?そうだったのかぁ!?………まあ俺、『ヒト』じゃないし、河童だし、関係ないか」

 

「ハハハ!ルーベルトとチョウチョは本当に面白いな!」

 

なんかこの雰囲気、ラウラといる時とおんなじテンションだな。

………というか俺、全く男と旅してないな。いや、華があった方がいいし、一般的に考えれば美人のお嬢様と旅してるわけだから、『お前何言ってんだぶっ飛ばすぞ』って感じだけど………なぁ?男とも旅したいなぁ。『男の友情』とか『友達』って感じが欲しい。………欲しい(渇望)

あーあ。どっかに友達募集してる奴いねぇかな。どんな立場でも、俺なら友達になってやれるのに。

 

「いつまでも他力本願だから男友達ができないんですよルーベルトさん?」

 

「人の心を丸裸にするんじゃない」

 

「ルーベルトさんの裸なんて見飽きました」

 

「えっ(ショック)」

 

「そもそもルーベルトさん人じゃないですよね」

 

「それはそう」

 

「漫才は面白いけど、そろそろ中に入らないか?」

 

「「賛成(です)」」

 

ここは沈没船。かつては海原を駆けていた大きな船だ。沈没船と言いながらも、そこまで水に浸かっているわけではない。今は体積の、たった2割程度しか浸かっていない。そのため中の積荷は案外残ってたりする。宝箱だとか、檻だとか。でも7つの頭は見つからない。もう5時間も捜索している。あたりは静まり、マーズが優しく光っている。

 

「………んー?なかなか見つからないな?アタシの読み違えか?」

 

「どうするオリビア。そろそろ帰るか?」

 

「あ!オリビアさん!ルーベルトさん!こっちです!」

 

「どうしたチョウチョ!!………って、ただの檻じゃないか?中の骸骨は何かのモンスターのものか?」

 

オリビアの言う通り中にはただのガイコツしかない。

 

「………どういうことだ?何かあるのか?チョウチョ」

 

「………ルーベルトさん、私のチョウの直感が言ってます!!ホラっ!あそこを見て下さい!骸骨のヒビの部分!中で何かが月明かりに照らされて光ってます!」

 

「よし任せろ。力関係は俺の仕事だな?」

 

俺は檻に近づいて鉄格子を握りしめる。

 

………ぐにゃり。と音を立てて鉄格子は歪んだ。

 

「………信じられないな。流石ライフマスターと言ったところだ」

 

「まあでも、俺はまだ30ちょいくらいのレベルだし、他のマスターと比べれば雑魚中の雑魚って感じだけどな。ま、そんなことより、ほれ、この本が『7つの頭』か?」

 

俺が7つの頭に枝分かれした龍が描かれた、装飾の綺麗な本を渡すと、オリビアは静かに泣き出した。

 

「………ありがとう。チョウチョ、ルーベルト。アタシ1人じゃ見つからなかった」

 

「俺らを焚き付けたのはオリビアの力だよ。なあ?チョウチョ?」

 

「えぇ!私たち!ついて来たくてついてきたんです!」

 

「………そうか。ありがとう2人とも。よし!帰って乾杯だ!!!」

 

「「おー!!」」

 

 




もうすぐポルトポルト編も完結します。ああ、でも安心して下さい。まだまだストーリーは続き続けます。お楽しみに!

ここからは少しだけ原作と違う流れになります。なぜなら本編では後半の方でユエリアが正体を明かし、最後のシーンで明確に相棒になったのですが、今作ではルーベルトがもうすでに相棒なので、伏線みたいなシリアス描写がごっそりなくなります。なので原作とはまた違う流れになりますが、でも最後らへんには上手くまとまるとおもうので楽しみにしておいてください!

エリーゼの話は本編をプレイしていて結構キツかったポイントです。めちゃくちゃオリビアに感情輸入しちゃうんですよね。

病はファンタジールの世界では治らない、ある意味一番怖いものなんですよ。キュアエイドを使おうが、そせいやくを用意しようが、病は命を唐突に、残酷に奪っていきます。
だから皆さんも是非、お身体には気をつけて過ごしてください。あ!メンタルも大切ですよ!!

さて、なんだか暗い雰囲気で終わるのもなんなので、最後に一つ楽しい雑談でも。

私、東風ますけは幼少期からこの、『ファンタジーライフ』のファンです。
そのため、ひとつ大きな勘違いをしながらしばらく生きていました。
それは『月』のことを本気でマーズだと思っていた事です。
………マジです。
しかもこれのおかしなところは、月ってムーンだよな。って知っててなお、間違えてるところです。まあつまりアレです。………アホってことです。

来週もお楽しみに!!!(誤魔化した)


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第21話「パエリオキッチン」

 

俺たちは、かの有名な『パエリオキッチン』に行こうとしたんだが。

 

「閉まってるな」

「閉まってますね」

 

閉まっていた。まあもう夜遅いからな。マーズもキラキラとバッテンを輝かせているし………な?

 

「………せんだいこくおうの言ってたことは本当だったんだな。………なぁチョウチョ?あと残された時間はどれくらいなんだ?」

 

「大きく見積もって3ヶ月………でしょうか?」

 

「もうあとそれだけか。願いのペースはどうだ?足りそうか?」

 

「えぇ。ペース自体は順調なんですが、出来れば、みなさんの願いを込める『結晶』のようなものが欲しいですね」

 

結晶というと、キリタチ山の滝の洞窟にある『風の大翼石』とかか?あるいは同じくキリタチ山の溶岩洞窟の『ドラゴンのかさぶた』とかか?まあかさぶただから、結晶は結晶でも、血小板のほうだけど。

 

「そうか。また俺も何か探しとくよ」

 

「ええ、よろしくお願いしますね」

 

「………何を言ってるのかアタシにはさっぱりなんだが?2人は何について話してるんだ?」

 

「あぁわりぃわりぃ!置いてけぼりにしちまったな!飯の時に話すよ!」

 

ぐぎゅるるるるる〜〜〜

 

「………お腹空きました」

 

「だってよオリビア?なんか他にアテはあるか?」

 

「いや、ココに決めたからな。海賊は一度決めたことは曲げないんだ」

 

オリビアは俺たちに背を向けて、扉の方へ向き直った。そして、何を思ったのか扉をガンガン叩き出した。

 

「おーい!パエリオ!開けろ!いるのはわかってるんだ!早く開けないと扉蹴ってでも入るぞ!」

 

(………なんか借金の取り立てみたいですね)

(言うな。俺も思ってたけど我慢してたんだから)

 

オリビアが10秒ほど扉を叩き、なかなか反応がないので待ちきれず、扉を蹴ろうとした瞬間──!

 

「あれ?誰かと思えばオリビア様じゃないですか!てっきりラトビスさんが「麦ジュース」寄越せってけしかけてきたかと思いましたよ」

 

「悪かったなパエリオ。いきなりで悪いんだがこの2人のためにどうか料理を作ってくれないか?その、彼らは私の大切な『友』……だからな!!」

 

「オリビア様がそこまで言うなら勿論。喜んで引き受けます。ではみなさん、中へどうぞ!」

 

「どうも」

「失礼します!」

 

中は青と白の組み合わせの、港町らしい色合いの装飾が施されている。

パエリオキッチンはポルトポルト最高の料理店。三つ星どころか10星レストランって感じだ。何がそんなにヤバいかって言ったら、とにかく『安い』んだ。しかも、それが魚料理なのにだ。肉はモンスターを倒せば手に入るから簡単なんだが、魚は1匹1匹釣らなくちゃいけないからな。まあつまりコスパが良く、味も最高とかいう文句のつけどころがない店がパエリオキッチンだ。

 

「〜〜〜♪」

 

店の厨房ではパエリオさんが鼻歌を歌いながら料理をしている。

 

「………じゃあルーベルト。さっきの話の説明を頼む」

 

「あぁ。わかった。………チョウチョ、お前のことはどう言う?」

 

「なんか美味(うま)い感じに言ってください!」

 

「それを言うなら上手いだろ?……じゃあ、話すぞ?………チョウチョはな、実はマーズから来たんだ」

 

「え!?マーズって、あの(マーズ)からか!?」

 

「そう、あの空のやつだ。でな、来たのには理由があるんだ。チョウチョが言うには、このファンタジールが、どうやら終わってしまうらしい」

 

「終わる!?」

 

「あぁ、俺もまだよくわかってないけど、このファンタジールには、確かに危機が迫っているみたいだ。これは俺も良く肌で感じてる。オリビアは黒影怪物(シャドーモンスター)は見たことないよな?えっとな、ドクロ石ってあるだろ?それに近づくとなるんだよ黒影怪物(シャドーモンスター)に」

 

「あ、ああ。アンディからよく聞いたよ。アタシはまだ見たことないけど」

 

黒影怪物(シャドーモンスター)は通常の1.5倍くらい強くなるんだ」

 

「本当か!?そんな急激にパワーアップされては勝ち目がないじゃないか!」

 

「落ち着け。奴らの弱点はドクロ石本体だ。黒影怪物(シャドーモンスター)になる条件はドクロ石に接近すること。だからその原因であるドクロ石を砕くことによって黒影(シャドー)化を防ぐことができる」

 

「な、なるほど…!一応対抗手段はあるんだな!」

 

「まぁ簡単に、ざっくりとまとめるとだな。アレだ、みんなの願いの力をあつめてファンタジールを救おうっ!……って話だったわけだよ」

 

「本当にざっくばらんとした感じにまとめたな。うん、まあでも、大体は掴めた!アタシも協力しよう!」

 

オリビアは右手を俺に差し出してきた。握手を求めてるようだ。ひとまず握り返したが………ハッ!コレは──!

 

「なんだ、俺のファンか」

「違いますよルーベルトさん。私のファンファンです」

「君ら本当に仲良いよな」

「パエリオのおまかせ料理です」

 

「「「待ってました!!!」」」

 

俺たちは無我夢中になってご馳走に、かぶりついた!!!



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第22話「お嬢様と夜の秘密の冒険譚」

「「「ごちそうさまでした!」」」

 

俺、もうポルトポルトに住もうかな?

って、思うくらいめっちゃ美味かったわ。

………あ!そういえばアンディの執事のルチアーノさんが別荘を紹介してくれるって言ってたな!ワンチャン、本当にポルトポルトにも住もうかな?うん。それがいい!そうしよう!

 

「でもリッチが足りないですよねルーベルトさん」

 

「人の心を読むんじゃあない。そして俺は人じゃない。そしてそしてリッチが足りないのはお前が砂糖に使ったせい〜」

 

「ん?リッチが足りないのかルーベルト?アタシが別荘くらい買ってやろうか?」

 

「マジっすかオリビア様」

 

「ルーベルトさん、ルーベルトさん。私は自分のお金で買って、初めて心の底から満足できると思うんですよ。だからルーベルトさんは自分で買った方がいいと思います。たたでさえヒモみたいなのに」

 

「ヒモはオメェだぞ???誰がオメェの砂糖水代出してると思ってんだ?」

 

ったくこのブーメランチョウチョは…。お前はいつから王国兵士のマスターのマスタングさんになったんだ?(正義はブーメラン!)

 

……まあでも、言っていることには一理ある。

 

「どうするルーベルト?アタシは全然買えるけど、ルーベルトはどうしたい?」

 

「……ダリィけど、金は自分で貯めるさ。………ダリィけど」

 

本当にダリィけど。………そういや、今回の報酬についてエリック王に話してなかったな。駄々こねて別荘分くらいぶんどったろ。

 

■■■■■■■■■

 

〜オリビアの船〜

 

俺たちは7つの頭の中身を読むためにオリビアの船長室に入った。

 

「ルーベルト、チョウチョ。改めてありがとう。アタシ1人じゃ見つけられなかっただろうし、コレを開ける勇気もなかったかもしれない。母さんが探せと言ったこの本が一体どんなものなのか。2人も一緒に見届けて欲しい」

 

俺たちは黙って頷いた。それを了承と受け取ったオリビアが本に手をかけ、(ページ)(めく)る。

 

著者:エイハブ・クラップ

 

【海賊の7つの教え】

 

その1

かいぞく船とはちいさなひとつの国家と思え。

 

その2

いついかなるときでもとりあえずは胸を張れ。

 

その3

ぞっとする怪物にぞっとされるくらいになれ。

 

その4

くるしくても泣くな。母の夢を見たとき以外は。

 

その5

にげたきゃにげろ。陸ガメになりたいのならば。

 

その6

なかまを守れ、じぶんを守ってくれるなかまを。

 

その7

れいぎを重んじろ。ただし海賊のやりかたでだ。

 

「………エイハブ・クラップって、エイハブさんですよね?」

 

「ああ、アタシの父さんだ」

 

「でもなんだかおかしくないですかオリビアさん?この文章、この言葉遣い。あんまりエイハブさんっぽくないですよ!」

 

チョウチョの言う通り、なんだが口調に違和感を感じる。俺が実際にエイハブさんと話していた時に感じた、あの豪胆さが見受けられない。いや、節々にエイハブさんの雰囲気を感じるには感じるけど、でもそれはその4「くるしくても泣くな。母の夢を見たとき以外は」くらいで。あとは何だが別の人が書いたみたいだ。………うーんわからん。

 

「………本人に直接聞くのが一番手っ取り早いと俺は思うんだけどよ」

 

「いや、待ってくれルーベルト。せめてもう少しだけ謎を解いてみないか?」

 

「まぁたしかに、何時間も探したしな。ここまできたんだ。自力ってのも、悪くないかもな」

 

とオリビアに賛同しつつも、俺は内心ではさっさと聴いてしまったほうが速いんじゃないかと思っていた。

 

「直接聴きに行きましょうよオリビアさん」

 

おいバカチョウチョ。俺の気遣いをなんで全部ぶち壊すんだよ!?

 

「………それもそうだな。だが、もう夜も遅い。明日の朝、父さんに真実を聞きに行こう。伝説の海賊の宝『7つの頭』とは、なんなのか………と!」

 

オリビアはニヒルに笑いながら船長帽を人差し指で突き上げた。まだ若いのに、とても様になっている。同年代であるラウラと比べてもカッコよさが歴然の差だ。………まあそもそもラウラは可愛い担当だし、タイプが違うか。ハハッ、この、俺の心の声を聞いたらラウラの奴なんて言うかな?「子ども扱いしないで頂戴!?」とか「不敬罪で斬首刑ね」とかか?できれば前者であってほしい。本当に、後者だけは勘弁してほしい。

 

「すでに宿屋は予約済みだ!ルーベルト。チョウチョ。今日は本当にありがとう!!しっかりと休んでくれ」

 

「おう!」

 

「わかりました!」

 

「あっ!そうだ!チョウチョ、キミは確か、砂糖水が好物だったよね?」

 

「はいっ!砂糖水大好きです!!」

 

「ふふふ。気に入ってもらえると嬉しいんだが………」

 

そういいながらオリビアはコートの内ポケットから小瓶を取り出した。

 

「これは海底神殿の中のマングローブでも完熟の、最高糖度の蜜を混ぜ合わせた砂糖水だ。ルーベルトにはリッチを渡すからいいんだが、チョウチョは今回よく働いてくれたからな。まさしく想像以上の活躍だったよ。そんなチョウチョに急遽用意したのがこのマングローブ砂糖水というわけだ」

 

「はわわわわ~~!!!ありがとうございます!ありがとうございますっ!!」

 

チョウチョが触角を何度も上下させてお礼を伝えている。人間状態を知っている俺からすると、なんかチョウチョ状態も割と人間状態と変わらないなって思う。

 

「おやすみ二人とも!………と、言っておいて悪いんだが、ルーベルトは少し残ってくれないか?」

 

ん?俺?

 

「おやすみなさいルーベルトさん。ふあ~ぁ~。ねむいですー」

 

チョウチョはひらひらと鱗粉をこれでもかとまき散らしながら、船長室から退出していった。宿もすぐ近くにあるし、アイツも俺よりは全然大人だ(年齢的には)。きっと一人でも大丈夫だろう。きっとそうだ。そうであってくれ。

 

チョウチョが退室したことによって、自然とこの部屋には俺とオリビアの二人っきりだ。

 

「……………で?どうしたんだよオリビア。わざわざ俺だけを残すなんて、どうしたんだよ。お前の羅針盤という名の情緒が不安定になっちまったのかァ?」

 

「いいや?アタシの進む道は常に真っすぐさ。寸分の狂いもなく、今もなお、アタシの心の羅針盤は再び、マパラッパ諸島を目指している!」

 

「それはまた、どういう風の吹き回しで?」

 

「………嫌な胸騒ぎがするんだ。なぁに、別にマパラッパ諸島の奥地まではいかなくていいさ。ううん、むしろ逆かな。入口。入口のあたりに危機が迫っている気がするんだ!これは領主としての直感だ!!もしかしたら黒影怪物(シャドウモンスター)みたいな凶暴な奴が来ているかもしれない」

 

「なるほどな。謎解き抜きのバリバリバトルってわけだ。それならたしかにチョウチョはいらないな。むしろ置いていったほうが俺も気を使わなくて済む。いい計らいだぜ!オリビア!!」

 

オリビアの直感に対して、きっと、いつもの俺だったら無視して今頃ベットの中でグッドスリープ決め込んでいるだろう。

だがしかし、今回の旅では一度もモンスターらしいモンスターに出会っていない。特に黒影怪物(シャドウモンスター)は。いつもの調子なら来てもおかしくはないはずなのに。アンディだって黒影怪物(シャドウモンスター)やドクロ石についての報告を受けていた。奴らの出現率を鑑みても、明らかに今回の旅では少ない。ココから考えられるのは、一つ。

 

つまり奴らは学習し、昼は目立たないように生活し、真夜中に動き回れるように適応したのかもしれない。

 

黒影怪物(シャドウモンスター)は通常個体の1.5倍は強い。覚悟はいいか?」

 

「海賊を志した時点で、すでに覚悟なんて、当の昔に決まり切っているよ!!」

 

いい返事だ。よし。たった今から、お嬢様との夜の秘密の冒険譚の、始まりだァァ!!!!!



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第23話「忍び寄る終焉」

 

 

俺たちがポルトポルト郊外へ向かうと、もう既にそこは戦場となっていた。

 

ポルトポルトの兵士たちが必死になって応戦してはいるものの、黒影(シャドウ)化したモンスター相手には勝てないだろう。

 

ポルトポルトの美しいビーチが次々と壊されていく。ヤシの木や、オレンジの木が薙ぎ倒され、ポルトポルトで人気な乗り物のカメは、モンスターに怯えて逃げていってしまっている。

 

兵士たちが何人も倒れ、何処からか子供の泣き声が聞こえる。

 

この景色は、そう、まるで、地獄のようだった。

 

「くそっ!嫌な予感が的中した!ルーベルト!アタシは兵士たちの援護や救助を行う!ルーベルトは最前線でモンスターを食い止めてくれ!」

 

「了解!」

 

オリビアに指示されたように、俺の役割はタンク。最前線でモンスターの進行を食い止める役割だ。厳しい役割だが、俺も歴としたライフマスターの1人だ。

 

このくらい、どうってことない。

 

「まあルーベルトさんは人じゃなくて河童なんですけどね」

 

そうそう。それな。

 

………………………走りながら俺は、声がした左の方を向く。

 

そこには見覚えのある光るチョウチョが居た。

 

「私たち!相棒ですよね!!」

 

「………そうだな。たしかに、俺たちは相棒だ。………よし、チョウチョ。帰れ」

 

「だが断ります!」

 

「だと思ったよ。ったくしゃあねぇーなぁ。………覚悟はいいか?」

 

「私はできてます!」

 

なんかコイツ、今日はやけに『スゴ味』があるな。

 

ま、そんなことはどうでもいいか。

 

「そうと決まれば行くぞ!俺たちを待っている人たちが居るんだ!」

 

「えぇ!急ぎましょう!」

 

俺たちは最前線へと全速力で向かった!

 

■■■■■■■■■

 

モンスターが大量に進行してきている桟橋に到着した。そこには何名かの兵士と、1人。恰幅のいい傭兵風の男がいた。

 

「ハンニバル兵士長!増援です!増援が来ました!」

 

「なんだと!?いや、しかし、生半可な実力ではかえって邪魔だ!今俺様は後ろを向けない!そいつらはどんな見た目だ?強い奴か?お前が判断しろ!」

 

「え、えっーとですねぇ、………全身緑色のクチバシの付いた変なやつと、キラキラしたチョウチョです」

 

「は???お前はいったい何を言っているんだ???」

 

恰幅の良い男の名はハンニバルというらしい。どうやら、会話から察するに、ハンニバルが兵士長らしい。

 

「ようハンニバル兵士長。俺はルーベルト。13個目のライフ『河童』のマスターだ」

 

「こんにちわ………あっ!今はこんばんわでしたね!………コホン!私の名前はチョウチョ!ルーベルトさんの相棒です!」

 

「河………童?13個目のライフ?………ダメだ。何言ってるのかさっぱりわからん。────ってぐおっ!!コイツ、しまガメの化け物か!?」

 

ハンニバル兵士長が戦っているのは「しまガメ」の黒影(シャドウ)化した奴だ。

 

しまガメは通常でも、「うできき」の傭兵が苦戦するレベルの強さだ。それが、黒影(シャドウ)化したんだ。ランクが「マスター」じゃないと対応できないレベルの強さだろう。

 

推定レベルは………「25」くらいか?

 

「下がってくれハンニバル兵士長。俺が仕留める」

 

「いや、しかし、コイツはとてつもなくヤバイぞ!?兵士長の俺様ですら食い止めるので精一杯だ!?」

 

そりゃそうだろう。逆にこんなヤバい奴止めれる奴がそうホイホイといてたまるか。

 

「いいから下がっててくれ。俺はオリビアから頼まれて来たんだ」

 

「オリビア様から!?………わかった。いいか?無理だったら逃げろよ?」

 

「ルーベルトさーん。出来るだけ早く倒してくださいねー」

 

温度差が酷いことになっている。まるで、キリタチ山の『溶岩の洞窟』と、キリタチ山『山頂』みたいだ。

 

マグマとスノウ。全くの対極に位置するものが共存していて、俺の頭がバグりそうだ。

 

『グラガァァァァァ!?!?!?』

 

っとと。くだらないことを考えている余裕は無さそうだ。俺は相手を分析する。

 

身長は3メートルってとこか?

チャージトロウはまず無理だな。

水宝石(ウォータージェム)も、この先の連戦を考えると、あまり使いたくない。あくまでアレは切り札だ。

 

となると、やり方は一つ。

 

「握りつぶしてやるぜ!」

 

レベルアップした俺の握力はおよそ『1.5トン』。

 

うん、なんかヤベェくらい強いな?

 

まあレベル1でも150はあったし、正当進化ってやつだな。

 

レベルが1レベル上がるごとに50キロ追加だ。そして今の俺は27レベル。ちょうど1.5トンだな。

 

どうやら、ほかの奴らはレベルが上がってもこんなに握力は上がらないらしい。つまりこれも『河童』の能力ってわけだ。そうだよな、他の奴らと違って、俺、武器ないもんな。というかなぜか武器、使えないんだよな。多分ライフの制約だろう。魔法使いが強い両手剣を持てないのと一緒だ。

 

でも、だからって、この身一つってのは、なかなかキチィもんだ。

 

『ギュラァァァァー!!!!!』

 

「お前の甲羅を握りつぶして、俺の甲羅の装飾にしてやるぜぇ!!!」

 

しまガメはその巨体を活かして体重を乗せたスタンプ攻撃をして来た。それを右にかわして、俺はしまガメの左前脚に足をかける。

 

「なかなか登りやすいいい背中してんじゃねぇか。今度また乗せてくれよな?」

 

登りきって、甲羅のてっぺんまできた俺は────甲羅に手を添えて、甲羅を割った!!!

 

『ギュルガァィィィィ!?!?………バタン』

 

気絶したな。よかった、流石に頭を握りつぶしたくはなかったからな。安心したぜ。

 

「………なあお前。俺様の目がおかしいのか?あの、ルーベルトとか言ったか?アイツが、俺たちが何人がかりでも倒せなかった奴を、たった1人で倒したように見えるんだが…?」

 

「おかしいですね、僕たち、夢でも見てるんでしょうか?」

 

「お互いにほっぺをひっぱってみようぜ?」

 

「賛成です」

 

ぎゅぅぅぅぅ。

 

「「………痛い。………ってことは現実!?」」

 

「アホなことやってないでさっさと他のモンスターを食い止めていてくれ」

 

「ルーベルトさんルーベルトさん。早くドクロ石を探しに行きましょう!」

 

「ああ!急ぐぞ!」

 

俺たちはドクロ石があるであろう、マパラッパ諸島への桟橋を渡り出した!

 

■■■■■■■■■

 

「ひぇぇぇぇ!こないでくーださーい!」

 

『がぁぁう…』

『うぅぅあ…』

 

かいぞくゾンビに追いかけられている、キグルミ族がいた。

 

「今更なんですけどルーベルトさん。ファンタジールでよく見かけるあの人?たちはなんなんですか?」

 

「あれ?俺、チョウチョにキグルミ族の説明したことなかったっけ?」

 

「無いと思います」

 

「たーすけてくーださーい!」

 

「キグルミ族っていうのはな、空から降って来た種族なんだ。世界各地にいてな、環境適応力がずば抜けて高いんだ。ほら、キリタチ山山頂とかにも居ただろ?」

 

「あぁ!たしかに!あんな寒いところでも平気そうでした!………ちなみになんですけど、キグルミ族って、『キグルミ』……なんですか?」

 

「中に綿が詰まっているただの人間だよ」

 

「それって本当に人間ですか!?………まあ全身緑色のクチバシがついた人もいますし、たしかにキグルミ族は居てもおかしくないかもしれません!」

 

「なんでもいいから、はやーくたすけーろくださーい!!」

 

『ぐるぁぉ…』

『うげぃぃ…』

 

ずっと追いかけられ続けていたキグルミの口調が荒くなって来た。

 

「ルーベルトさん!出番です!」

 

「司令塔みたいな雰囲気出せば、働かなくてもいいと思ってないか?」

 

「………そんなことないですよ」

 

オイ、こっち見ろ。

 

………とりあえず、かいぞくゾンビを倒すか。

幸い、コイツらは黒影(シャドウ)化してないみたいだしな。サイズもかいぞくゾンビってだけあって普通の人間サイズだ。コレならチャージトロウでいいな。

 

「せいっ」

 

『ぐげぼぉ!』

『ひでぶぅ!』

 

かいぞくゾンビたちはなんだか世紀末みたいな声をあげて気絶した。

 

「あ、あーりがとうござーいまーす!あなたたーちは、ファボの命の恩人でーす!」

 

とんがり帽子を被った、小さな紫色のキグルミはファボと名乗った。

 

「ファボさんは魔法使いさんですか?」

 

たしかに、とんがり帽子を被るのは総じて魔法使いの連中だ。

 

「な、なーんでファボが魔法使いだーあってわかったんでーすか?そうでーす!ファボは師匠、クローネのおつかーいをしにポルトポルトに来たんでーす!」

 

「クローネ……ってたしか、魔法使いの「マスター」のあの黒猫か!」

 

「あぁ、あの喋る猫さんですね。動物が人の言葉を喋ったので、私、とってもびっくりしました」

 

「俺はツッコまねぇからな???」

 

チョウチョがユエリア状態で舌をペロっと出してる幻影が見える見える。

 

「とりあえず、ファボ。お前はポルトポルトの街の方に戻れ。ここはとても危険だ」

 

「わかーりましーた。ファボ、いい子なのでききまーす」

 

「えらいですねファボさん。私なんてルーベルトさんのいうこと一回も聞いたことないです!」

 

「チョウチョさんすごいーでーすー!ルーベルトさんも、また会いたーいでーす!ファボは先にかえーるでーす!ばいばーいなんでーす!」

 

「おう、ばいばい」

「えぇ、ばいばいです!」

 

ファボはわっせわっせと桟橋を渡って帰っていった。

 

「可愛かったですね。わたし、キグルミ族さんのことが好きです!」

 

「そりゃあいいな。世界中にいるからいつでも会えるぜ?クルブルクに帰ったらキグルミ族が何人いるか、数えてみるか?」

 

「いいですね!やりましょう!是非!やりましょう!!」

 

ユエリアの熱量がすごい。俺、溶けちゃうよ。

 

「うわぁぁぁぁぁぉぁ!!!!!!!ぼ、ボクの聖剣アルテミカ(仮)がぁぁぁぁぁ!?!?!?」

 

「なんかうるさい奴がいるな」

 

「えぇ、近所迷惑ですよね。夜遅いのに」

 

■■■■■■■■■

 

正直嫌だったが、何かあってからでは遅いから、一応確認として、俺たちは声の主の元へと向かった。

 

「うっ………うっ、ぼ、ボクの聖剣アルテミカ(仮)が……どうしてなんだ…」

 

なんか金髪のガキンチョが泣いていた。

 

「どうしたんだよ、そんなに泣いて」

 

「………モンスター?」

 

「ちげぇよ、歴とした人間だ」

 

「ルーベルトさんは河童です!」

 

「うわぁ!?チョウチョが喋った!?!?」

 

そういやそうだよな。うん。最近は周りの奴らがその反応しなかったから忘れてたけど、普通のリアクションって、そうだよな。様式美ってやつだよな。侘び寂びってやつだよな?

 

この金髪の少年の王道なリアクションに、俺はなんだか、無性に感動した。

 

「ぼ、ボクの聖剣アルテミカ(仮)が……」

 

「ただのアイアンソードじゃねぇか」

 

なんか泣いてたけど、折れた剣は、至って普通の、ごく普通の、市販のアイアンソードだった。

 

「………ルーベルトさん、ルーベルトさん。もしかして、イタイ人って奴ですか?厨二病ってやつですか?(ヒソヒソ)」

 

「あぁ、間違いねぇ。その類の患者だ。優しい目で見守ってやろうぜ(ヒソヒソ)」

 

「おい!聞こえているぞ!ボクを馬鹿にしているな!?」

 

してないしてない(大嘘)

 

「してるじゃないか!!!」

 

「なんでお前初対面なのに俺の心の声わかるんだよ」

 

「不思議ですねルーベルトさん」

 

存在そのものが不思議な奴がなんか言ってらァ。

 

「ボクは勇者なんだ!そこにある邪悪そうな石を倒そうと試みた英雄なんだぞ!!」

 

英雄………ねぇ?

 

英雄ってのは、他の人から言われて初めて英雄なんじゃねぇの?自分で言うのはただの自称ってやつだ。

 

「ほらっ!その石を見ろっ!見るからに怪しいだろ!?」

 

金髪のちびっこ厨二病が指差した方を見ると、至って普通の、ごく普通の、禍々しい石が………

 

「────って!!!コレ!!!ドクロ石じゃねええええかああああ!?!?!?!?」

 

ドクロ石だった。

 

「おっきぃですねぇ………」

 

………。

 

「チョウチョ、もう一回言ってくれ」

 

「え?お、おっきぃですねぇ………?」

 

………。

 

「もう一回!もっと想像以上だった時みたいなリアクションで!」

 

「お、おっきぃ………おっきぃ///」

 

やっと俺の意図を汲み取ったらしい。

 

「る、ルーベルトさんのえっち!すけっち!!わんたっち!!!」

 

チョウチョが触覚でポカポカ殴ってくる。

 

「ハハハ!悪かったって!!フハハハハハ!!!」

 

「ボクはいったい何を見せられているんだ???」

 

ハハハ、聞くな。俺にもわからん(元凶)

 

「………それにしても、本当に大きいですねぇ(もう一回言って)………本当に小さいですね。そんなので恥ずかしくないんですか?(グハァ!?そ、それもまた………イイ!凄くいいッ!激ヤバかもしれないッッ!!)……もういいです」

 

「諦めんなよ。俺はどんなプレイでも大丈夫だぜ?」

 

「私がダメなんですよ………はぁ、相棒として恥ずかしいです」

 

「愛………棒?………なんで甘美な響きなんだ!俺かんd(『魅了(チャーム)』)………アレ?俺、何考えてたんだっけ?」

 

「ルーベルトさんは黙っててください」

 

「はい」

 

ユエリアの命令は絶対だ。ユエリア様、ユエリアサマ………ユエリアサマ………ダイスキ!!

 

「な、なんかボク、見てはいけないようなものを見ている気がすr(『魅了(チャーム)』)………あれ?ボク、何してたんだっけ?」

 

「あなたのお名前は?」

 

「チュリオスです」

 

「チュリオスさん。あなたは帰ってください。ここは危険です」

 

「ココハ……キケン」

 

「私はあなたのことが心配で言っています」

 

「シンパイ………ユエリアサマカナシム……ソレ…ダメ」

 

「いい子ですね。さぁ、お家に帰りましょう?」

 

「カエル……ボク…カエル」

 

キンパツガ……ユエリアサマノ……コトバヲキイテ……カエッタ。

 

「………あれだけノーラに魅了(チャーム)はダメって言ってたのに………お姉ちゃん失格かしら?」

 

「ユエリアサマ………カナシイ?」

 

「あぁルーベルトさん。ずっとこのままでいてくれたら可愛いのに………でも、それじゃあファンタジールを救えませんからね!元に戻ってください!」

 

キラッ。

 

ユエリアサマノ……光が………ん?

 

ユエリア『様』?ん?

 

え?

 

「………え?」

 

「どうしましたルーベルトさん?ぼっーとしちゃって?」

 

「え?俺意識なかった?」

 

「えぇ、なぜだかわかりませんけど?」

 

「そっか、ごめんな?」

 

「いえいえ。あ、さっきの人はもう帰りました」

 

「そっか。うん。俺、ぼっーと、していたんだな」

 

………本当にぼっーとしてたのかなぁ?

なんだか操られていたような気がするんだけど。

 

「ルーベルトさんルーベルトさん!コレ!このドクロ石!願いの『入れ物』として使えませんかね!!」

 

「たしかにな!いつものドクロ石の2倍はあるぞ?100人分くらい入るんじゃねぇのか?」

 

「そうと決まれば壊しちゃいましょう!」

 

「おうよっ!」

 

パリッ。

 

シュー……と音を立ててドクロ石から影が抜けていく。

残ったのは美しい結晶だ。

 

「騒動も収められましたし!入れ物も手に入りましたし!一石二鳥ですね!ルーベルトさん!」

 

「………」

 

「ルーベルトさん?」

 

………ドクロ石が世界の平和が終わる合図ならば、より大きなドクロ石が落ちてくると言うことは、世界の終わりが刻一刻と近づいて来ていると言うことだ。

 

「………俺たちが思っているよりも、終焉(おわり)はすぐそこまで忍び寄って来ているのかもな」

 

「そう………ですね」

 

タイムリミットはあと3ヶ月だ。



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第24話「海賊王と7つの頭の秘密」

 

 

「な、なんだ!?黒影怪物(シャドウモンスター)から影が抜けていくぞ!?」

 

兵士たちから驚きの言葉が聞こえて来た。

 

「ね、姉さん……!これって──!」

 

「──あぁ。ルーベルト達だ!ルーベルトとチョウチョがドクロ石を壊したんだ!」

 

長かった夜も、もうじき明けそうだ。

………本当に長い夜だった。

 

「母さんのお墓、守れたね」

 

「あぁ。ありがとうなアンディ」

 

「姉さんこそ。………ただ──」

 

「言うなアンディ。父さんは後悔なんてしてないさ。ほら、あの顔を見ろよ?」

 

「………うん。とっても綺麗な死に顔だね」

 

父さんは、海賊王エイハブ・クラップは、母さん、エリーゼ・クラップの墓の前で死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最愛の、エリーゼのために──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前らよくやったぞ!」

 

「「父さん!?」」

 

父さんの死体があった場所を見ると……あぁ、もう死体がなかった。

そうだよな。この世界、モンスターに殺されても生き返るもんな。

 

「とりあえずはビーチの壊されたものの片付けからだな!ガハハハハハ!!」

 

父さんは母さんのお墓から離れてビーチの方へ行った。

 

「………やっぱり、父さんは凄いね。普通は死んだ後あんな動けないはずだよ?」

 

「あぁ、アタシたちじゃまず無理だな。さすが『海賊王』だ。………まぁ、コレからは『元海賊王』になるかもしれないけどな」

 

「………姉さんそれって!」

 

「あぁ、アタシは、『海賊になる』!!!!!」

 

■■■■■■■■■

 

「あ”あ”あ”あ”あ”〜〜〜!!!っかれた!!!マジ疲れた!!!!!」

 

「お疲れ様ですルーベルトさん!サマーネクター飲みます?」

 

「のむ!……ゴキュッゴキュッゴキュッ。………生き返るわ〜」

 

「本当にお疲れ様ですルーベルトさん。ルーベルトさん1番働いてましたもんね」

 

「おん。まあ1番力が強いからな。瓦礫の除去作業はうってつけだな」

 

郊外の建物や木々を回収するのに駆り出された俺は兎に角、馬車馬のように働いた。チョウチョの言った通り1番俺が荷物を運んでいた。徹夜で5時間くらいぶっ通しだ。

 

………まぁ俺は兎でも、馬でもなくて、河童だけどな?

 

………まぁいい。

 

ソレが今、やっとひと段落ついたわけだ。

俺はサマーネクター片手にビーチサイドに座っている。

 

そんな俺に近づいてくる人影が。

 

「お疲れ様でしたルーベルトさん」

 

「あぁ、アンディか。お前もお疲れ様な」

 

「いえいえ、私はあくまで現場の指示をしていただけですから」

 

「そっか。………そういえばオリビアはどうした?」

 

「『海賊になる』そうです」

 

「そっか。アイツも気づいたみたいだな。『7つの頭』に隠されたメッセージに」

 

「えぇ、ですからその答え合わせを灯台でしたいので、呼んでこいと言われてきました」

 

「了解。いくぞチョウチョ」

 

「はいっ!」

 

■■■■■■■■■

 

俺たちが灯台に着くと、そこにはもうみんなが居た。

 

………?なんだアイツ?

 

「なぁチョウチョ。あんな奴いたっけ?」

 

「あれ?見覚えがありませんね?」

 

「バルトだよ!!お前俺と戦っただろ!?」

 

「あぁ、いたわそんなやつ」

 

「そういえばいましたね」

 

「………オイお前ら、お前らがお嬢と、エイハブさんの知り合いだから俺は我慢しているんだぞ?俺がその気になればお前らなんて……」

 

「ガハハハハハ!バルト、お前ルーベルトに3対1で負けたんだって!ガハハハハハ!こりゃエリーゼが聞いたら笑うぜ!ガハハハハハ!!」

 

「………( ゚д゚)」

 

バルトは凄い顔でこちらを見つめて来た。

こっちみんな。

 

「ガハハハハハ!バルト、テメェはやっぱり面白いな!また俺と海にでも出るか?」

 

「か、勘弁して下さい!?エイハブさんと一緒になんて、命がいくつあっても足りません!?」

 

「ガハハハハハ!命は無限なんだから気にするな!ガハハハハハ!」

 

このシュールな光景を見ていたチョウチョが唐突に。

 

「なんかエイハブさんってルーベルトさんに似てますね」

 

「は!?お前から見た俺ってこんな戦闘ジャンキーみたいに見えてるの!?」

 

マジかよ、お前俺のことこんなふうに見ていたんだな…!?

チョウチョの何気ない言葉に、俺はちょっぴりショックを受けた。

 

そしてそんな俺のフォローをしてくれる人物が入り口から入って来た。

 

「たしかにエイハブ様は戦闘ジャンキーではありますが、ルーベルト様はそうではないかと」

 

「ルチアーノさん!」

 

「ご機嫌麗しゅうございますチョウチョ様。そしてルーベルト様。(わたくし)ルチアーノ、クラップ家の執事長として馳せ参じました。………さて、チョウチョ様はルーベルト様のことを、エイハブ様と似ていると仰りましたが、一つ、大きな差異がございます」

 

「そ、ソレは一体なんですか!?」

 

俺も気になる。大きな差異ってなんだ?

 

「それはですね………ズバリ『経済力』です!!」

 

「オイ待て。ルチアーノさん、今なんて言った?」

 

「えぇ、ですからルーベルト様とエイハブ様の大きな差は『経済力』かと………」

 

「なるほどです!!私、とっても納得しました!」

 

「オイ待て。ちょっと待て。本当にま………(来てくれたか!ルーベルト!!)」

 

上からオリビアが降りて来た。まだ抗議の途中なんだが………まあここは一旦退いてやるか。後でルチアーノさんとチョウチョには、俺がいかにリッチの工面に死に物狂いかを書き綴った原稿用紙400枚を口に詰め込んでやろう。そうしよう。

 

さて、そんなくだらない思考は黙らせておく。オリビアの顔が本気の顔だからな。こちらが茶化すのは無粋だ。

 

「………ルーベルト。チョウチョ。アタシ、やっと『7つの頭』の隠されたメッセージに気づいたんだ。2人は気づいていたが?」

 

「あぁ」

 

「はいっ!」

 

「そうか、やはり2人はすごいな。流石クルブルク代表の使者なわけだ。………さて、答え合わせに行こうか!」

 

俺たちの長い長いポルトポルトの旅が、終わりに向かいした──。

 

オリビアが本を読み上げる。

 

「著者:エイハブ・クラップ

 

【海賊の7つの教え】」

 

エイハブさんは目の前で自分の本が読まれて嬉しそうだし、なんだか少し小っ恥ずかしいみたいな顔をしている。

 

「その1

 

かいぞく船とはちいさなひとつの国家と思え」

 

 

たしかに俺も自分の本を目の前で読まれたら恥ずかしいかもな。

でもいつか本を書いてみたいな。

 

「その2

 

いついかなるときでもとりあえずは胸を張れ」

 

 

ルチアーノさんは本を読み上げるオリビアを見て涙ぐんでいた。きっと小さい頃から見ていたから、成長が嬉しいんだろう。「エリーゼ様…」とルチアーノさんが呟いたところを俺は見逃さなかった。

 

「その3

 

ぞっとする怪物にぞっとされるくらいになれ」

 

 

ぞっとする怪物ってなんだろうな?ドラゴンか?精霊か?

わかんないけど、それより俺も強くならないとな。

世界の為に、チョウチョの為に。

 

「その4

 

くるしくても泣くな。母の夢を見たとき以外は」

 

 

バルトが可愛い刺繍のハンカチを取り出して鼻をかみ出した。めっちゃ泣いている。ちょっかいかけて様子を見に行くくらい、オリビアのことを気にかけていたのだろう。いいな〜オリビアは。こんなにもみんなから愛されているんだもん。

 

「その5

 

にげたきゃにげろ。陸ガメになりたいのならば」

 

 

チョウチョが「アナタも愛されていますよ」っていう目で見てきた。ははっ!そうかもな!クルブルクに帰ったらみんなに会おう!

 

「その6

 

なかまを守れ、じぶんを守ってくれるなかまを」

 

アンディも姉の成長を黙ってただ見つめるだけではないだろう。きっとアンディも、いつかはオリビアのように心躍る冒険を求めるのかもな。

 

「その7

 

れいぎを重んじろ。ただし海賊のやりかたでだ」

 

そしてオリビアは全てを読み終えて目を閉じた。

 

「………『7つの頭』の解き方は、その名前にあったんだ。【海賊の7つの教え】、その『頭』を読むんだ!………読み上げるぞ?

 

「か」いぞく船とはちいさなひとつの国家と思え

「い」ついかなるときでもとりあえずは胸を張れ

「ぞ」っとする怪物にぞっとされるくらいになれ

「く」るしくても泣くな。母の夢を見たとき以外は

「に」げたきゃにげろ。陸ガメになりたいのならば

「な」かまを守れ、じぶんを守ってくれるなかまを

「れ」いぎを重んじろ。ただし海賊のやりかたでだ

 

『海賊になれ』だ!!!!!

 

コレが、母さんのメッセージだったんだ!」

 

オリビアは大きく目を開く。

 

謎は解明された。これが、これこそが海賊王と7つの頭の真実だった。

 

「………皆さま、上へ参りましょう」

 

ルチアーノさんの指示にみんな従って、灯台の明かりが出ている展望台の所に登った。

 

「エリーゼ様は、お嬢様が海賊になることに大反対でした。あの温厚なエリーゼ様が、エイハブ様とこの灯台で何十回も言い合いをして、私はその度にエリーゼ様を慰めていました。………そしてエリーゼ様が病に伏した時、エリーゼ様は、「もし私の謎が解けたのなら、オリビアには海賊になって欲しい」と、この『7つの頭』を考えました。それをお嬢様は見事、解明したのです」

 

ルチアーノさんは、どうやら最初から知っていたらしい。

 

「母さんは、姉さんに、心のどこかでは『海賊になって欲しい』と、思っていたのかもね」

 

アンディの言う通りだ。

 

「あぁ。アタシもそう思うよ。………水平線が、綺麗だなぁ…。………母さん、見てくれてるかな?」

 

「絶対エリーゼさんは喜んでますよオリビアさん!」

 

「あぁ!間違いねぇ!ここまで準備するくらいだ!きっと喜んでるさ!」

 

「チョウチョ…!ルーベルト…!」

 

会ったこともない、顔も知らない人だけれども、暖かさだけは、ぬくもりだけは、ハッキリと伝わってくる。

 

「………水平線が、綺麗ですね。お嬢」

 

バルトが呟いた。もう、朝日が海から顔を出し始めている。

 

「あぁ。あの美しい海が明日からアタシのモノになると思うと、ワクワクが止まらないさ!」

 

もうすっかり、言動も思想も『海賊』なオリビアを見て、エイハブさんは──。

 

「………ガハハハハハ!………………エリーゼ、見てるか?………………お前のメッセージは、オリビアに伝わったぜ………」

 

エイハブさんが大粒の涙を流したと同時に、俺たちのいる灯台に、潮風が吹いて来た。

 

俺はなんだが、その瞬間。

 

天国にいるエリーゼさんが、そっと微笑んだ気がした。

 

 



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第25話「いってきます!」

 

 

俺たちは今ポルトポルトの宿屋にいる。

 

「今夜はもう遅い!明日、またあの灯台で会おう!アタシが迎えに行くまで待っていてくれ。フフフ……一応、VIP用の部屋を部屋を用意しておいた!ルーベルト!チョウチョ!おやすみ!」

 

と我らが海賊姫のお言葉だ。

 

「………にしても、お前………」

 

「………むにゃぁ………」

 

チョウチョは人間状態、つまり美少女となって1人でベットを2つ使っていやがる。ちなみにもう朝11時だ。

 

「おーい、起きろユエリア!」

 

「むにゃぁ…むにゃぁ」

 

ダメだコイツ………。

 

………というかこの状況結構マズくないか?

 

もしもオリビアが来たら────!

 

「おはようルーベルト!着替えで手間取ってな!遅くなって…す……ま………な…………」

 

誰だお前と言いたくなるようなお姫様がいた。ドレスを着たオリビアはまるでお人形さんだ。

 

そんなオリビアのギラギラと活力に満ちた瞳が、ドロドロとした濁った瞳に………。

 

「ち、ちがう!?違うんだオリビア!!」

 

「………………一体この少女は何者だ?」

 

「………うぅ………お母様に会いたい………………」

 

「!?」

 

「る、ルーベルト。見損なったぞ…!まさか誘拐するヤツだったなんて……!」

 

「!?」

 

もうマガジンマークのバーゲンセールだよ俺。

 

「おい、起きろ」

 

「いたっ!?」

 

ユエリアのプリティ(笑)なお尻をソフトビンタする。

 

「あるぇ?オリビアしゃん……どうしているんですかぁ?」

 

「その喋り方!そのふにゃふにゃ感!まさか──!」

 

「チョウチョだよ。本名はユエリア。かみさまと女神ステラの娘だ」

 

「( ゚д゚)」

 

オリビアがものすごい顔でこっち見て来た。うん、ごめん。

 

「ユエリア、顔洗ってこい」

 

「ふぁ〜い〜」

 

眠い目を擦りながら(朝11時)ユエリアは洗面所へと向かっていった。

 

「………そうか!夢か!(現実逃避)」

 

「ところがどっこい!夢じゃありません!現実です…!」

 

「わあああああああああああああああああああ!!!!!」

 

「耳いてぇよ。悪かったって。正体隠してて」

 

「本当だよ!?アタシがどんだけびっくりしてるかわかるか!?」

 

俺は初見で見破っていたからな。

 

「わからん」

 

「この分からず屋!」

 

胸ぐらを掴まれた。やめろ、お気に入りの白タンクトップなんだ。伸ばさないでくれ。

 

「………とりあえず、待たせたな。チョウチョ………いや、ユエリアが支度できたら出発だ」

 

「了解。頼んでいた手紙は出来たか?」

 

「ああ。便箋を何十枚もムダにしてしまったがな…」

 

「お疲れ様。エリックのヤツもきっと喜んでくれるさ。なんせ、『お嬢様』からのお手紙だからな!今まではむさ苦しいおっちゃんからの手紙だったし」

 

「父さんは確かに高齢だがむさ苦しいおっちゃんとはなんだ!?」

 

「わりぃ、わりぃ」

 

「そういうルーベルトはどうなんだ!お前はアタシとおんなじくらいだろ?」

 

「俺15歳」

 

「アタシは19歳………え?そんなに年下だったのか…?」

 

「やーいショタコン」

 

「さっきから五月蝿いぞルーベルト。権力で首飛ばすぞ?」

 

「すいません出来心だったんです許してくださいなんでもしますだからリッチをよこせだとかは勘弁してください僕は今チョウチョにムダ遣いされてギリギリの生活をしているんですだから本当にすみませんでした」

 

「お、おう。そうか、ルーベルト。その………ごめんな?」

 

「おう、反省しろよ」

 

また胸ぐらを掴まれた。

 

そして、3分後。

 

「おはようございますルーベルトさん!オリビアさん!今日もいい朝ですね!」

 

「「昼だよ」」

 

もう昼だった。

 

まあ、いいか。

 

「ルーベルト、ユエリア。じゃあ灯台へ行くぞ?」

 

「「おー!」」

 

俺たちは意気揚々と返事をした!

 

■■■■■■■■■

 

「ガハハハハハ!コイツがポルトポルトに遺された『女神の宝』だ!」

 

そう言ってエイハブさんは【女神の(いかり)】を俺たちに渡して来た。

 

「そしてこれがポルトポルトからの親書だ」

 

オリビアが何十回も書き直した封筒を受け取る。

 

「最後にコレがポルトポルトからの今回の礼金です!ルーベルトさん、チョウチョさん!防衛戦と、復旧作業!ありがとうございました!」

 

最後にアンディから特大の銀貨袋をもらった。中には最低でも100000リッチは入っているだろう。

 

「ガハハハハハ!困っている人が居たら助けるのは当然ですよ!ガハハハハハ、笑いが止まらないぜ!」

 

「ルーベルトさんルーベルトさん、エイハブさんの口調が感染(うつ)ってますよ」

 

「「ハハハハハハ!!」」

 

「ガハハハハハ!」

 

アンディとオリビアはまだガハガハ笑わないみたいだ。『まだ』な♪

 

「じゃあ最後にルーベルトとチョウチョに寄って欲しいところがあるんだ。着いて来てくれるか?」

 

「「勿論!!」」

 

灯台から歩いて1分もしないうちにその場所には着いた。

 

「ここは………お墓ですか?」

 

「あぁ、母さん。『エリーゼ・クラップ』の墓だ」

 

「俺たちと一緒に祈りたかったのか?」

 

「それも勿論あるけどさ………1番の目的は………………………ルーベルト、チョウチョ、アンディ、父さん。そして天国の母さん!よーく見ていてくれ!アタシは、アタシはっ──!」

 

オリビアはドレスを破いた!そして中にはいつもの海賊服が──!

 

そしてポケットにねじ込まれていた船長帽をそっと取り出して──!

 

「アタシは『海賊王』になる!!!!!」

 

帽子を深く被って、ニヒルな笑みを浮かべた!

 

「ルーベルト、チョウチョ。アタシはお前たち2人のおかげでここまで来れた。本当にありがとう!ポルトポルトは、『河童と光るチョウチョ』を語り継いでいくことを約束しよう!!困った時はいつでも言ってくれ!必ずや力になろう!!!」

 

「あぁ!ありがとうな!」

「ありがとうございますオリビアさん!」

 

「さて、じゃあ最後にみんなで母さんに挨拶をしてこの旅を終えようか!この『7つの頭の大冒険』にピリオドを撃とう!そしてコレから始まる新たな旅路に!みんなで母さんにお出かけの挨拶だ!それじゃあいくぞ?せーのっ!!」

 

「「「「「いってきます!」」」」」

 

辛いこともあるかもしれない。

 

苦しいこともあるかもしれない。

 

でも、だけども。

 

『仲間』がいる限り──!

 

河童とチョウチョ(おれたち)の旅はまだまだ続く!!!



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第26話「居眠りした方がいいんじゃない?」

 

「よくやったぞルーベルトとチョウチョよ!此度の件、この国の国王として誇りに思うぞ!いやはや、エイハブか………懐かしい名じゃ。確かあれは30年前のことだったか………ってオイ!!お前ら話が長そうだからってワシを無視して謁見の間から出て行こうとするな!!ってオイ!!ちょっと待てっ!ホントまて!!!なぁなんでそんなに無視するんじゃ?いいじゃないか、最近ワシ寂しいんじゃよ。ラウラは反抗期だし、フェリア微笑むだけだし!お前らは無視するし……ワシは国王じゃぞ………………っていうか、あいつら本当に最後まで無視しやがった!!!ワシあいつら嫌いじゃ!!!!!フン!!!!!!」

 

エリック王にポルトポルトで起きた出来事の報告を済ませた俺たちは、ヒューズさんのとこに女神の宝を持って行った。ちなみにチョウチョ……もといユエリアが渡した【女神の歯車】もヒューズさんが保管している。

 

「ふむ………なるほど。これがポルトポルトに遺された女神の宝の一つ【女神の碇】か。実に興味深いぞ!………zzz」

 

「る、ルーベルトさんっ!?ヒューズさんが立ったまま死んでます!」

 

「いや寝てるだけだろ。というか寝るならしっかり寝ろよ。立って寝るなんてこけたら危ないし、むしろ体力使うだけだろ」

 

「zzzzzz…」

 

「イネムリドラゴンより眠ってますね」

 

「眠りっつうか、コレもう気絶だろ。クルブルクの労働基準法ぶっ壊れてんじゃねぇの?この前も俺、事件解決したらポルトポルトに飛ばされたし」

 

「zzzzzzzzz………」

 

「まあまあルーベルトさん!オリビアさんたちに会えて、今度はポルトポルトに別荘がもてるかもしれないんですよ!」

 

「今思えばさ、別に別荘いらなくてね?だって俺引き篭もりだし」

 

「そういうところですよルーベルトさん」

 

「おだまり???」

 

「zzzzzzzzzzzz………はっ!………zzz」

 

「「いや寝るのかよ!(寝るんですか!)」」

 

コイツ本当に寝やがった!

クルブルクの最高研究者であり、王室お抱えの超エリート。

それがこのヒューズさん。なんか、ところどころ怪しい発言をするが、大体良いことしか言わないし、しない。雰囲気だけ見れば悪の科学者で、人造人間くらい作るんじゃねぇかとも思うが………しない。

 

裏切りそうで全く裏切らない。いい意味で俺らの期待を裏切ってくる。

 

それがこのマッドサイエンティスト、ヒューズさんだ。

 

「………ちなみにルーベルトさんはなんで唐突に語り出したんですか?」

 

「なんとなく」

 

「そうですか」

 

「………はっ!ワタシは気絶していたのか…!」

 

「そこのベッドで居眠りした方がいいんじゃないか?」

 

「そうですよ!睡眠は大切です!」

 

「ムムム………まさかチョウチョに睡眠の注意をされてしまうとは。いや、これは貴重な体験だ…!………でも、やはり眠いな。よし、3日ぶりに飲もうか!『エレクシール』を………」

 

「………は?なぁチョウチョ、ヒューズさん今なんて言った?」

 

「エレクシールを飲むだとか聞こえました………」

 

「エレクシールって伝説の薬だよな?」

 

「え、えぇ。飲めば体力とスタミナが全回復する秘薬です!このファンタジールにある中で最強の薬です!」

 

「で?それをコーヒーみたいなテンションで飲もうとしているヒューズさんは?」

 

「間違いなくマッドサイエンティストです。まさか飲み物でもマッドだったとは…!」

 

「つぅか飲み物の方が狂気に溢れてんだろ………」

 

「ゴクゴクゴクゴク………やはり美味い!これであと3日は動け………zzz」

 

「「ダメじゃねぇか(じゃないですか)」」

 

「………は!(もういいよその流れ)………まあそう堅いこと言うなルーベルト君。そうだ、君にもひとつあげるよ。いつも君はドクロ石調査において、最前線で活躍してくれているからね!」

 

そう言ってヒューズさんは机の引き出しからエレクシールを取り出して、俺にくれた。というか引き出しの中に100本くらいエレクシールが見えたんだけど…?

 

「ヒューズさんはどうしてこんなにたくさんエレクシールを持っているんですか?」

 

「ム。良い質問だなチョウチョ君!実はな、ワタシはエリック王から頂く給料を全てエレクシールにして渡してもらっているんだ。ワタシの給料が月給で100万リッチくらいだからな(100万リッチ!?!?)………それを全てエレクシールに変えてもらっている。たしか一月につき、50本かな」

 

「100万リッチ!?!?100万リッチ!?!?ひゃっ、ひゃっ100万リッチ!?!?100万リッチ!?!?ひゃっ、ひゃっ100万リッチ!?!?」

 

「ヒューズさん、あまりの衝撃でルーベルトさん壊れちゃいました」

 

「フム。どれ、縦に2回横に3回、ガンガンガン………よし、チョウチョ君。ルーベルト君は治ったぞ」

 

「あれ?俺は一体今まで何を…?」

 

「すごいですヒューズさん!さすがこの国1番の科学者ですね!ひらめきがすごいです!」

 

「あぁ、今のワタシならピカラットをほとんど失わずにクリアできるだろう」

 

「何の話ですか?」

 

「いや、なんでもないさ。ちなみにだが、ワタシは科学者であると同時に発明家でもある。この国の9割の発明は全てワタシによるものだ。残りの1割は何だと思う?チョウチョ君」

 

「えーっと。うぅーんと。…………わからないです!」

 

「フフフ、正解は………(ヤークさんだろ?)………ホウ!よくわかったなルーベルト君。ではそんなルーベルト君に質問だ。ヤーク君の発明は主に何だと思う?」

 

「「爆弾(です)」」

 

「フハハハハハ!素晴らしい!素晴らしいぞ2人とも!いやはやさすがドクロ石をぶち壊す蛮族2人組だ!」

 

「「!?」」

 

ものすごく不服なんだがその表現。

 

「フハハハハハ………zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz」

 

「寝たな」

「寝ましたね」

 

もういいや。放置しとくか。

 

「じゃあなヒューズさん」

 

「しっかり休んでくださいね?」

 

「zzz………はっ!………あ、ああ、またなルーベルト君チョウチョ君」

 

俺たちはクルブルク城を後にして、大通りに来た。チョウチョと初めて会った場所だ。

 

「懐かしいな、ここで俺たち出会ったんだよなぁ!」

 

「もう1ヶ月前くらいですねぇ……もうちょっと後に正体明かすつもりだったんですけど」

 

「まぁまぁ。………そういえば、前ポルトポルトにマグロを食いに行ったときに会った、ニンジャとサムライにまだ会ってないよな?こっちに来るって言ってたけど」

 

「そういえば言ってましたね!ハヤテさんとスイランさんでしたっけ?」

 

「あいつら東の島出身だろ?俺のルーツを辿る本は全部東の島から出土されたからな。あいつら初見で俺のことを『河童』って呼んでたし、なんか知ってそうだよな〜?」

 

「ルーベルトさんの身体の秘密に近づけそうですね!」

 

「あいつらクルブルクのどこにいるんだろうな?」

 

「東の島には『武者修行』と言う言葉があるそうです!なんでも己と向き合う地獄の鍛錬だとか…!」

 

「ほぅ!そいつはすごいな!いやぁ、サムライとニンジャだからな!きっと山とかで修行してるんだろうな〜!ストイックでかっこいいn(ハヤテ殿!このアップルパイ美味しいでござる!)(いやいやスイラン殿!こちらのりんごジュースの方が酸味が効いてて美味しいでござるよ!)」

 

………。

 

チョウチョが俺の肩に触角を添えてきた。慰めてくれてるんだな。ありがとよ…。

 

「………なんか疲れたな。長旅だったからかな?もう帰ろうぜ!」

 

「えぇ、そうしましょう!私たちは何もみていません!」

 

「………聞いてはいるけどな」

 

「しーっ!言っちゃダメですルーベルトさん!」

 

とりあえず俺たちはもう寝ようと思う。

 

昼だけど、こうなったら明日の朝まで寝ようと思う。

 

「あーあ、………朝起きたらなんか面白れぇこと起きねぇかなぁ」

 

「ルーベルトさん、それってフラグですか?」

 

「さぁな?」

 

 

 

 

 




眠れ泥のように(フラグ)


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第27話「悪夢さえも踏み台に」


どうも東風(こち)です。閲覧注意です。ホラー要素を含みます。
一度読み始めたら最後まで読んでください。中断する場合も最後まで読んでください。よろしくお願いします。

それでは本編!どうぞ!


 

「おはよう。やっぱり睡眠って大事だなユエリア………って、まだ寝てんのか」

 

「むにゃぁ………すぴぃ………」

 

「マジでコイツ本当に可愛いな。………俺が守ってやらねぇとな」

 

ドクロ石や黒影怪物(シャドウモンスター)。他にも女神の宝だとか、東の島だとか。色々と考えなきゃいけねぇことが山積みだ。

 

………この前のキリタチ山でのフェアリードラゴン戦とか、ポルトポルト防衛戦とか。結構俺ピンチだったよなぁ。

 

………そろそろ本格的に強くならねぇとダメだな。

 

「むにゃぁ………ふふふ、ルーベルトしゃん………そんなに食べられませんよぉ………わたしがたべてあげまふぅ………」

 

「もう少しだけ寝ててくれよ?」

 

俺はマイルームをそっと飛び出して、キリタチ山の溶岩の洞窟に向かった。

 

「あっつ」

 

暑かった。暑いっていうか熱い。灼熱って感じだ。ここなら3秒で干物になれる自信がある。

 

「さぁて………狩るか!」

 

今回。俺は武者修行をすることにした。

 

内容は至ってシンプル。

 

入り口から最奥まで全ての敵を狩り尽くすこと。ただそれだけだ。

 

「んじゃ始めようか!」

 

まず戦うのは、入り口付近に生息するベニイロクサだ。木の根っこみたいなコイツはとりあえず掴んで壁に叩きつけた。

 

『キュウ!?』

 

「悪りぃな。今回はユエリアが居ねえから手加減できねぇや」

 

『キュウ!?』

『キュワワ!?』

『キャァ⁉︎』

 

「次、はい次」

 

とりあえず入り口付近のベニイロクサは駆逐した。次はカエンダケだ。

 

コイツはとりあえず背が小さいからな。蹴飛ばしていく。

 

『シェ!?』

『シュア!?』

『シュシュア!?』

 

「………はい終わり」

 

次、次、次次次。

 

………そして中間地点に辿り着いた。

 

『ブルモオオオオオオ!!!』

 

ここにはマグマゴーレムが円形の土台の中央に立ち塞がっている。奥に進むには倒すしかない。

 

『ブルォォォォォ!!』

 

ヤツが地面を叩くと周りの土台は弾け飛び、5メートルは離れている俺の足場にヒビが入った。

 

「………なるほど、一筋縄じゃいかねぇな?………だけど!」

 

ヤツの攻撃によってバラバラにされた石塊が俺の足元に沢山転がっている。俺はその中の一つを無造作に拾い上げて──。

 

『ブルモオオオオオオ!!!!!………ドスン』

 

本気でぶん投げた。結果は一撃。思ってたよりも簡単な相手だったな。

 

さて、次次次次次。

 

………そして最奥に辿り着いた。

 

『キシャアアアアア!!!!!』

 

炎の精霊。そのカシラである『モエジー』。推奨レベルは『30』。しかも魔法使いであることが前提だ。

高火力な炎魔法は対策ナシだと大ダメージは勿論として、何よりコイツが意外と物理に固い。水属性で攻撃しないとなかなか倒れない。

 

「ま、俺は河童だから関係ねぇけどな。ほい、『水宝石(ウォータージェム)』」

 

『キシャアアアアア!?!?!?………バタン』

 

よし、ワンパン。

 

んじゃ、入口に戻って入り直そう。

 

そうすればモンスターが復活するからな。あとはコレを丸一日繰り返そう。

 

叩きつける蹴る投げる撃つ

叩きつける蹴る投げる撃つ

叩きつける蹴る投げる撃つ

叩きつける蹴る投げる撃つ

叩きつける蹴る投げる撃つ

 

次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次次。

 

「ほい、367周目終わりっと………ふう。レベルは………お!68か!結構上がったな!」

 

得たステータスを全て力と防御と運に割り振る。

 

「………まだ物足りないけど、帰るか」

 

ゲットしたアイテムとか、ビッグアイテムとか納品したら1200000リッチになった。

 

なんかギルドの人たちが俺のことを怪物(バケモノ)みたいな目で見ていたけど、どうしてだろう?

 

まぁいいか。とりあえずゲットしたリッチはユエリアには隠しておくことにしよう。いざという時に使いたいからな。

 

………もっと強くなりてぇ。ユエリアの為に。強く、強く強く強く。

 

強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く。

 

………さん!

 

強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く。

 

………トさん!!

 

強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強──

 

「ルーベルトさん!!!!!」

 

「………ユエリア?」

 

「ルーベルトさん大丈夫ですか!?凄くうなされていましたよ!?」

 

「………なんか、ははは。………すっげぇ怖い夢見たよ俺。俺が俺じゃなくなる夢を見たんだ。みんなから怖がられて、俺が、『怪物(バケモノ)』になっちゃう夢」

 

「………ルーベルトさん」

 

「………なぁユエリア。もしも俺が俺じゃなくなっても、お前は俺のこと────愛してくれるか?」

 

今の俺はユエリアがどんな反応をするのか。不安で不安で、仕方がなかった。

 

「………ルーベルトさん。私は相棒失格です」

 

「そんなことねぇ…」

 

俺の言葉が紡がれるよりも先に、ユエリアの言葉が。

 

「ルーベルトさんが!!」

 

聞いたこともないユエリアの、初めて聞いた怒気を孕んだユエリアの声に、俺はビクッとして、ただ黙っていることしかできなかった。

 

「私はルーベルトさんがこんなにも傷ついて居たのに!!!!!なんにも気が付かなくて!!自分勝手になんでも頼み込んで!!!ルーベルトさんに、たった15歳の子供に世界の運命を背負わせて!!!!それで自分はのうのうと過ごしていて!!!!!責任から逃げて!!!!!!

………………私は相棒失格です」

 

俺は、何も言わなかった。言えなかった。

 

………でも。

 

「ありがとうなユエリア」

 

「!」

 

この言葉だけは伝えなくちゃって思ったんだ。

 

「ユエリアは俺の『大切な』相棒だよ」

 

「………私もです!ルーベルトさんっ!!!!!!!!!!」

 

ユエリアが俺の懐に抱きついてきた。

 

そして俺たちは言葉を交わすことなく、5分間ほど抱き合った。

 

もはや俺たちの間に言葉は不要だった。

 

………そして5分後。

 

「やっぱり女の子の胸って最高だわ。癒される」

 

「ルーベルトさん!?」

 

俺のメンタルはめちゃくちゃプラスになり、俺はコレ以降、悪夢を見ることが無くなったのだった………。

 

「めでたしめでたしだな!」

 

「確かにそうですけどルーベルトさんエッチです!!!!!」

 

チョウチョと河童の絆は、この世界の誰よりも強固になったとさ。

 

「めでたしめでたし!」

 

「太もも触りながら言わないでください!というか太もも触らないでください!!」

 

「断る!!!断じてことわーーーーーる!!!!!!」

 

悪夢さえも踏み台にして、俺たちはこの世界(ファンタジール)を護るぜ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




メンタル削ってすみませんでした!!!
でも一つ言わせてください。
東風もめちゃくちゃ胃が痛いです。
なんか最初は普通に修行の話書いてたらいつのまにか悪夢になってました。なんで???
まぁとにかくハッピーエンドでよかったです。というかしました。ここは私の唯一譲れないプライドなので。

ルーベルトはメンタルつよつよな子ですから。
本文にある通り、コレ以降こう言う感じになることは絶対にないでしょう。
でも改めて見ると確かに1人に世界の命運託し過ぎな気もします。寧ろ悪夢を一回見るだけで済んだルーベルトがマジでバケモノです。いい意味で。
ここからは多分ルーベルトとチョウチョがテレパシーレベルで以心伝心してくので、旅がサクサク進むと思います。いや、今までもめっちゃ以心伝心してましたけど………。

とにかく!毎週投稿がんばるぞい!おー!


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第28話「はじまりはドッカーンと」


はじまりはドッカーンと。

はマーズ物語第1章のタイトルなので、プレイ済みの方にとってはとても懐かしいタイトルですね。

マーズ物語というのはメインストーリーなので、とどのつまりほぼチュートリアルみたいなものです。本来は物語スタート直後にアバターの家にドクロ石が降ってきます。が、しかしルーベルトの河童パワー(?)でそんなものは蹴散らしていました。結局降ったんですけど。

メインストーリーのタイトル回収が遅いですね。

ついでに投稿頻度も遅いです(自虐)グフゥ(吐血)


 

悪夢を見て、ユエリアに癒された俺は壁の時計を見る。ふむ。朝6時か。

 

「二度寝しようぜ」

 

「は………………はは…………反対です」

 

「めっちゃ悩んでるじゃん。いいじゃん?寝ようぜ?」

 

「だって今日のルーベルトさんエッチなんですもん!一緒のベットで寝るのは嫌です!」

 

「わがまま言うんじゃねぇ!!ウチはベット一つしかないんだからしょうがないだろ!?」

 

「リッチはあるんですから買いましょうよ!」

 

「買うリッチはあるけど、ユエリアの抱き心地が最高だから、俺はあえてベットを買わないっていうのはナイショだ………あ」

 

「あ!本音口走りましたねルーベルトさん!ずるいじゃないですか!そんなこと言われたら私だって買え買え言えないじゃないですか!!」

 

「可愛いなコイツ。天使かよ」

 

「女神の子です」

 

「なんか今日やけに口が滑るな?スキーでもするか?」

 

「キリタチ山山頂行きます?」

 

「さみぃからいいわ」

 

「そうですか」

 

グゥグュルルルル………さて問題です。これは誰のお腹の虫でしょう?

 

正解は──!

 

「「外行こうぜ(行きましょう)」」

 

俺ら2人でした!

 

「あっ、でもよぉユエリア。こんな朝じゃあんまり飲食店やってなくないか?」

 

「たしかにそうです!?メグさんに台所を借りて私が作りましょうか?」

 

「………いや、たまには異国の飯が食いたくないか?」

 

「ということは………!」

 

「あぁ!行こうぜ!砂漠の国!『ダルスモルス』へ!」

 

「じゃあお着替えの準備に、パスポートに………って、私、チョウチョなのでパスポート要らないですよね」

 

「なんなら俺も大臣さんがある程度手配してくれたみたいで、結構他国へ行くの楽なんだよな。こういうのはマスターならではの特権か?」

 

「そうですね。ルーベルトさんの唯一の取り柄です」

 

「ちょっ!?」

 

「冗談ですよ、フフフ、今日のルーベルトさん、なんだかいつもより子供みたいです!」

 

「………悪かったな」

 

「あー!ほっぺ膨らませてるルーベルトさん可愛い!!!!!一生そのままでいて欲しい!!!!!」

 

「………お前年いくつだっけ?」

 

「レディに年齢を聞くなんてはしたないですよ。………ちなみに100より先は数えてないです。もしかしたら1000歳………」

 

「ショタコンじゃん」

 

「────ッッッッッッ!!!!!!ち、違──!違います!!!断じて違います!!!」

 

「冗談だよ」

 

やり返し成功っと。

 

………さて、今日はダルスモルスに行くからな。しっかりと準備をして──。

 

 

 

【ドッカーーーーン!!!!!】

 

 

 

「「!?」」

 

耳をつんざくような轟音は、俺たちの頭上から聞こえてきた。

 

「まさかっ!」

 

「る、ルーベルトさん!もしかして…!」

 

「あぁ、くそっ!なんで旅行の日に限ってこうなんだ!………『ドクロ石』が()()()()()()()()!!!」

 

「まだ起きていて良かったですね。寝起き最悪でしたよ」

 

「もう既に最悪は見たんだけどな。………とにかく、何か面倒事が起きる前に、ドクロ石を破壊するぞ!」

 

「はいっ!」

 

俺たちは外に飛び出した──!

 

■■■■■■■■■

 

「思ってたよりすんなり行きましたねルーベルトさん」

 

「それな」

 

俺たちは今ダルスモルス行きの飛行船に乗っている。

 

いつも通りドクロ石を粉々にした俺たちはとりあえずヒューズさんトコに持って行った。顔見知りということもあって、事情聴取もすんなりと終わった。

知り合いになる前だったら説明がダルそうだなと思った。研究が絡んでるヒューズさんめっちゃ質問してくるだもん。

 

まあそれも今回はほとんどなしで行けたからな。万々歳というやつだ。

 

俺の家………メグおばさんの屋根裏部屋の屋根は、ドクロ石の影響で大きく穴が空いていた。でもすぐ大工さんがきて直してくれた。

 

『国民震災保険に入っといてよかったわ〜。逆にたくさんリッチが貰えちゃったわ。そうだ、今日は2人でダルスモルスに行くのよね?このリッチ、好きに使ってきていいわよ。泡銭みたいなものだしね。アハハハハハ!』

 

………らしい。

 

「ダルスモルスって魔王が統治してるんですよね?」

 

「らしいな。クルブルクが剣の国なら、ダルスモルスは魔法の国だ。クルブルクみたいにお手軽な価格な商品じゃなくて、選りすぐりの高級品が多いのもダルスモルスの特徴だってな」

 

ちなみにここだけの話だが、以前チョウチョがコンガス食堂で勝手に買いやがったあの砂糖もここ、ダルスモルスの一級品らしい。クルブルクの10倍以上の物価だな。

 

「オイチョウチョ。一応忠告しておくが、勝手な行動は──」

 

「見て下さいルーベルトさん!あれ!」

 

ダメだコイツまるで聞いてねぇ!!

 

チョウチョは窓の外を身を乗り出す勢いで眺めている。

 

「ルーベルトさん!ルーベルトさん!あれが陸路での難所!砂漠の谷ですよ!いやー!綺麗ですねー………ってうわあああ!!!!」

 

「チョウチョ!?」

 

窓ギリギリに浮いていたチョウチョは風に飛ばされそうになっている。

 

「ルーベルトさん!助けてチョーだい!………チョウだけに」

 

「笑わせんなよ力抜けるだろ………あ、やべ」

 

チョウチョを助けるために俺は気付かないうちに窓から身を乗り出しかけていて──!

 

「「うわあああああ!!!」」

 

2人とも砂漠の谷へ真っ逆様に落ちていった。

 

「キャアアアア!!!」

 

「ユエリア!俺のタンクトップん中入れ!」

 

「は、はいっ!」

 

俺はなんとかユエリアを守るようにして地上に背中からダイブした。

 

 

【ドッカーーーーン!!!!!】

 

 

「………はじまりはドッカーンって感じですねルーベルトさん」

 

「………なんで俺らの旅っていつもこうなるんだ…?」

 

 

 




最近特殊ばっか使ってます。楽しいです!

いよいよ第3章ダルスモルス編に入っていきます!

………ちなみにスイランとハヤテは第8章(仮)の冒険メンバーなので、楽しみにしておいてください。いいですねっ!(某ワ○ップ)

………このペースだと200話いくんじゃね?

………ハハハ、週一でもキツイな!!!!でも頑張ります!!!!


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第3章 「魔国ダルスモルス編」
第29話「暗黒騎士」


 

「マジで危なかったなチョウチョ」

「谷底に行かなかっただけラッキーでしたねルーベルトさん」

 

ここは『砂漠への谷』。陸路でダルスモルスに行く場合、必ずここを通らなくてはいけない。しかし、この砂漠への谷にはジャッカルやキラーホーンといったそれなりに強いモンスターが生息している。

 

そもそもの話だが、この砂漠への谷は、パーテル大平原西と繋がっている。

パー西(省略)はホラ、あれだよ。ハーベス大農園とか、りゅうごろし(笑)と会ったりとか、アンディ助けたりとか、色々あったあそこだ。

 

「さて、この状況、どう打開する?」

 

『『『『『キャオオオオオンンンンンン!!!!!』』』』』

 

「ど、どうしましょうルーベルトさん!?」

 

「落ち着け。落ち着いて考えるんだチョウチョ」

 

「落ち着けって言っても相手は待ってはくれませんよ!!」

 

「落ち着け。落ち着いて死のう」

 

「諦めないでくださいよ!?私まだ生きたいです!」

 

俺たちはジャッカルの群れに完全に包囲されていた。

周りは谷。もう落ちたくはないな。

となると………。

 

「頑張って下さいルーベルトさん!」

 

「あいよ」

 

俺は果敢に、堂々とジャッカルの群れの前に立ち向かい──!

 

「い、イテッ、ちょっ、タンマ………イテテテテテ!!!コイツ噛みやがった!!!!!」

 

「そりゃ噛みますよ。ジャッカルですからね」

 

「冷静にツッコんでないで助けてくれ!?」

 

「無理ですよ。私チョウチョですし」

 

「嘘つけ!!!!!」

 

どうしよう、1匹でも強いのに10匹以上いるんだけど。

もしかして詰んだ?

 

「危ないです!ルーベルトさん!」

 

『ギシャア!』

 

ちょっ!?死──!

 

俺が死を覚悟した、その時だった。

 

『キュワァ!?』

 

俺に噛みついてきていたはずのジャッカルはそこには居なくて。

 

「………………」

 

ふと、見上げてみると………。

 

「………………」

 

それはそれは、大きな、大きな体をした、暗黒騎士が佇んでおりました。

 

「あわわわわわ!?ルーベルトさん大丈夫でしたか!?」

 

「あ、あぁ………この人に助けてもらったおかげでな。………なぁ、アンタ………じゃなくて………、アナタは誰なんですか?なんで俺を助けてくれたんですか?」

 

「………………」

 

「ルーベルトさん無視されてますね」

「うるせぇ」

 

「………………フリフリ」

 

両手剣と見間違えるほど、大きな片手剣を持っている暗黒騎士は、俺たちの問いに対して静かに首を横に振って否定した。

 

「………とりあえず人間ではあるな」

 

「そうですね、喋れないんでしょうか?」

 

「………………フリフリ」

 

「首振ってるな」

 

「ただ無口なだけでしたか」

 

「………………クルッ」

 

「「あれ?」」

 

無口な暗黒騎士が、唐突に振り向いた。どうやら、ジャッカルと戦ってくれるようだ。

 

『チャオ!』

『シュビドゥバァ!』

『キャイオーン!』

『ブルァァァァァァァァ!』

『ピッカーン!』

『イーヤッハアアア!!』

『キョジオーン!』

『ダイナマイト!』

 

「………………」

 

無口な暗黒騎士はバッサバッサとジャッカル達を薙ぎ倒していく。

というかなんかアイツらの断末魔変なやつばっかだな。最後なんて絶対世紀末の方のジャッカルだろ。ダイナマイトって言ってたし。

 

「………すごく強いですね」

 

「………………ああ。恐ろしいくらいな」

 

「………………スタスタスタ」

 

結局、無口な暗黒騎士は一言も喋ることなく、ジャッカルを倒して去っていった。

 

「行っちゃいましたね」

 

「だな。ま、とりあえず助かったってことか?」

 

「そうみたいですね。ダルスモルスは目と鼻の先です!行きましょうルーベルトさん!」

 

「ああ!レッツゴーだ!」

 

「おー!」

 

■■■■■■■■■

 

「我は勇者なり!邪悪なる魔王を撃ち倒す勇者なり!………うーん。なんか違うなぁ………。おのれ魔王め!貴様に虐げられし民を我は救う!………これもビシッとしないなぁ。………魔王滅ぶべし!………おお!いいんじゃないかコレは!!コレで行こう!!!よし、早速魔王城へ!いざ、ゆこう!!!」

 

「ルーベルトさんルーベルトさん。あの人なんの人ですか?」

 

「しっ!見ちゃいけません!!」

 

ダルスモルスに無事辿り着いた俺たちが目にしたのは、自称勇者の変なやつだった。大体、魔王を倒すってこの国の王を殺すってことだろ?テロリストやん。国家転覆やん?

 

「とりあえずメシ、食おうぜ」

 

「賛成です。確かここで有名なのは『ピストロジル』ですよね?」

 

「ああ、魔王城に1番近い『魔王街』にあるらしいな」

 

「ポルトポルトで言うところの『宮殿街』ですね」

 

「そうそう、それそれ。………そういえばアレ、魔法陣か?」

 

「アレの上に立つと魔王街にワープ出来るって近衛兵士さんが言ってました」

 

「へぇ〜〜ワープねぇ」

 

どれ、どんな感じになんのかな?視界が揺れたりするのかな?

 

シュワン。

 

「「………早っ!!」」

 

マジでワープだった。

 

「思ってたよりつまんなかったな」

 

「そうですねー。まあ今回はご飯がメインです!観光を楽しみましょう!」

 

「ああ!今回は観光だからな!」

 

さて、どんな料理が出てくるのか………じゅるり。

 

まだなのに、今からよだれが垂れそうだ…!

 

 

 

 

 



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第30話「ダルスモルス大図書館」

 

「マジで美味かったな」

 

「チーズフォンデュが美味しかったですね」

 

「あと店長のジルさんがバリバリ美人で飯がめっちゃ美味かった」

 

「私もあのくらい美しくなりたいです…」

 

「いやお前は充分美しいよ。黙ってれば」

 

「黙ってれば!?今黙ってればって言いましたよね!?」

 

チョウチョはさておいて。とりあえず、今回の目的の片方は達成された。『異国の飯を食う』。実に有意義な目標だ。

 

「でも、重要なのはダルスモルス大図書館ですよね!」

 

「うん」

 

ということでダルスモルス大図書館に行きます。

 

着きました(3分クッキング)

 

「さあて、河童の文献探すか!」

 

「王立クルブルク図書館の5倍は広いですね!」

 

「まあアレは錬金術師のスペースがあるしな。というかサイズ云々(うんぬん)関係ない、図書館のないポルトポルトという国があってだな…」

 

「それ、オリビアさんの前で言えますか?」

 

「チョウチョが隣でそせいやく用意してくれるならまあ」

 

「割と覚悟決まってますね!わかりました!私もその時が来たらお手伝いします!!」

 

いらんところでやる気を出すな。

 

「………とりあえず俺は2階を探す。チョウチョは1階で本を探してくれ」

 

「了解です!」

 

チョウチョと別れて俺は2階に行く。………にしてもやっぱりここは広いな。本棚は10メートルは上に伸びてるぞ?流石ファンタジール最大の大図書館。河童()のことが、書いてあるかもしれない。

 

………まぁごちゃごちゃ言ってないで、とりあえず片っ端から読むか!

 

俺は目の前の棚にあった中でも1番ボロボロの本を手に取る。

 

内容は、俺にとって全く未知なるものだった。

 

「いにしえの塔?はじまりの島?ギガガビト?………ん?マジでなんのこと言ってんだコレ…?『今』のファンタジールにはこんな所ねぇぞ?」

 

書いてあるモンスターも見たことあるけどなんか違う奴らばっかりだ。

 

「星のついたドアから救世主が現れる………しかし島の者がドアを通ると『いにしえのわざわい』が降り注ぐてあろう」

 

星のついたドア…?ん?どっかで見たことあるような気がする…。

 

たしか………家の近くの物置き。(ルーベルトさん!)

 

「ルーベルトさん!こっちは収穫ゼロです!」

 

「………やべぇ、核心に迫ってたのに急に真っ白になっちまった」

 

ダメだ全然思い出せない。家の近くの………ダメだ。俺ん家の周りには雑貨屋とギルドしかねぇ。

 

「あ!この絵!ルーベルトさんにそっくりです!」

 

「──!」

 

チョウチョが指差した押し絵には、とても俺に酷似した『河童』が描かれていた。白髪でタンクトップでメガネをかけててひよこサンダル………え?俺じゃん?

 

「そういえばルーベルトさん。この図書館って図書カードがあれば2週間本の貸し出ししてくれるんですよね」

 

「この本借りてくか」

 

俺は図書館から『はじまりの本』を借りた。

 

とりあえずこの本の貸出期間中にいろんな奴らに聞いて回るか!

 

「ルーベルトさんなんだか楽しそうな顔してますね!わかりますよ!」

 

「やっぱりわかるか?ククク………まあ仕方ねぇよな。自分の起源(ルーツ)に近づけるからな!この本、ぜってぇ解き明かしてやるぜ!!!」

 

「頑張りましょう!」

 

「おう!」

 

こうして俺たちは、お腹いっぱいに美味しいご飯を詰めて、頭の中にコレから起こるワクワクを詰め込んで、ダルスモルス大図書館からクルブルクへと帰還したのだった。

 

 



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第31話「聞き込み」

 

「私、聞き込みに大切なのはあんぱんと牛乳だと思うんですよ…!」

 

「それ張り込みな」

 

クルブルクに戻った俺たちは、とりあえず聞き込みを始めた。まず手始めに王立クルブルク図書館の館長。ゲオルグさんに質問だ。

 

ゲオルグさんはいつもクルブルク大通りの女神像の近くで本の山を作って本を読んでいる。

 

「アレってどういう狙いでやってるんですか?」

 

「む?おお!チョウチョ君ではないか。あれか?アレはあれだよ。ほら、アレ。………図書館の宣伝さ。『本を読めばなんとなく賢くなるよー』………的なアレだ」

 

「頭いいのか悪いのかわかんねぇなソレ………まあいいや。ゲオルグさん、この本知ってるか?」

 

「む?コレは……ッ!」

 

「「おおっ!」」

 

俺とチョウチョの期待が高まる。

 

「コレはッ………!!!」

 

「「おおおっ!!」」

 

期待は最高潮に達した。

 

「………初めて見る本だな」

 

「「………」」

 

こんだけ勿体ぶってこれかよ。

 

「………だが、この本の雰囲気。コレは魔導書に近いね。魔法使いのマスターであるクローネさんのところに尋ねてみたらどうだい?」

 

「リカバリー上手いな」

「上げて下げて上げる。高等テクニックです!」

 

俺たちはゲオルグに礼を告げ、魔法使いのマスター。クローネのもとに向かった。

 

■■■■■■■■■

 

「にぁぁ(よく来たねルーベルト、チョウチョ)」

 

「コイツッ!直接脳内にッ!」

 

「ファミ○キとおんなじですねルーベルトさん」

 

「おう、まさか本当に脳内に話しかけてくるとは………アンタ本当に猫か?」

 

「………………にぁあ」

 

今の間はなんだ。怪しいぞ。

 

「ルーベルト君、お茶が入りました!」

 

「ありがとう81」

 

「だ か ら ! 私の名前はククです!」

 

「おう81」

 

「ルーベルトさん、人の名前で遊んではいけませんよ!」

 

「確かにな。よう湯エリア」

 

「確かに私は人じゃないですけど!!ズルイです!!」

 

「にぁあ(ところで魔導書はどこだい?)」

 

「「!?」」

 

まだ何も話してないのに何故わかるんだ!?

 

俺たちが豆鉄砲を喰らったような顔をしているのに対して、クローネは喉を鳴らして余裕そうな顔をしている。

………流石『マスター』だな。底が見えない。

 

「あ、ああ。コレなんだけどよ!」

 

俺が本を取り出すところをククがじっと見つめてきた。興味津々のようだ。

 

「ルーベルト君、コレってどこから手に入れたの?」

 

「ダルスモルス大図書館」

 

「なるほど!………あ!今日は魔法の授業を子供達にするんでした!ルーベルト君、チョウチョちゃん!失礼します!」

 

ククは外に出て行った。

 

「………」

 

その間、クローネはずっと黙っていた。

 

「クローネさん、どうかしましたか?」

 

「………にぁああ?(2人とも。本当にその本の正体が知りたいかい?)」

 

「おう!もちろん!是が非でも教えてくれ!」

 

「私もルーベルトさんのことを知りたいのでお願いします!」

 

クローネは、その黒い尻尾をうねらせて。

 

「………にぁあ(アタシはダルスモルスの魔法学園に居る。夜、魔法学園に来な)」

 

「「………!」」

 

この言い方は、まるで。

 

「………にぁあ(この子は使い魔なんだ。アタシの本体はそこにいる)」

 

「………わかった。ありがとうなクローネさん」

 

「ありがとうございました!」

 

「なぁあお♪」

 

「「いまさら猫の真似をするのか(するんですか)」」

 

本当に『マスター』ってのは色物ばっかだ。

 

………俺含め。

 

■■■■■■■■■

 

〜王城〜

 

「エリック王これ知ってる?」

 

「知らん、とりあえずヒューズに預けとけ。そんなことよりお前たち、ダルスモルスからドクロ石についての救援が欲しいと依頼が来たZo…」

 

「「いってきまーす!」」

 

「………おお。ワシ今ちょっと感動してるぞ。こいつらがこんなに素直なことがあっただろうか、いいやない!」

 

………この前の旅では食費や宿代は全て経費で落ちた。

 

………どうせダルスモルスに行くならばと、俺とチョウチョはあえてエリック王にふっかけたんだ。

 

「タダに越したことはないな」

 

「高級砂糖水飲み放題です!」

 

「………あんまり無駄遣いしないようにな?」

 

ということでまた俺たちはダルスモルスに行くことにした。

 

………ちなみに本はヒューズさんには預けず、持っていくことにした。あの人寝なさすぎだからな。寝かしといてやろう。

 



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第32話「魔法使いの矜持」

 

さて、国王公認でダルスモルスに行くことになった俺たちは、その旨をクローネさんに伝えに行ったんだが。

 

「私も連れてってルーベルト君!チョウチョちゃん!」

 

「………にゃああ(申し訳ないけれど、この子も連れてってくれないかい?)」

 

「いいぜ!」

 

「いいですよ!」

 

「やったー!」

 

ククが仲間になった!

 

「よろしくなはちじゅういt(セイッ⭐︎)──ッテエエエエエ!?何すんだユエリア!?」

 

「人の名前で遊ぶなんて最低ですルーベルトさん!」

 

「ユエリアちゃん…!」

 

チョウチョの方が正論だ。ぐぬぬ。

 

………はて?何かやらかしてしまったような…?

 

一体、この違和感の正体は──?

 

………あ。

 

「「………名前」」

 

どうやらユエリアも気がついたみたいだ。

 

「私チョウチョちゃんの名前初めて聞いたわ!だってみんなチョウチョって呼ぶんだもの。名前がないかと思ってたわ。でも、『ユエリア』って名前!可愛いわね!」

 

無邪気そうに笑うククとは対称に、ユエリアの目は死んでいる。………多分。ああ、でもわっかんねぇわ。だって今チョウチョだし。

 

■■■■■■■■■

 

クローネさんの家があった郊外東から、飛行艇がある郊外西へと俺たちは向かった。もうチケットの予約はとってある。あとは時間が来るのを待つだけだ。………と、思っていたんだが。

 

「待ってよクク姉ちゃん!オレも連れて行って!」

 

「ダメよ。ワズは師匠と一緒にいるの」

 

クローネの三番弟子。風魔法が得意ないたずらっ子。ワズが走ってやってきた。

 

ちなみに補足しておくが、ククはワズの姉ではなく、姉のように尊敬している人である。尊敬と親しみを込めてこう呼んでいるそうだ。

 

「………兄ちゃんを連れてきてくれるのか…?」

 

「………えぇ。私がネクを必ず連れて帰るわ。だからいい子でお留守番しててね?」

 

「………うん」

 

ワズの兄の名はネク。クローネさんの一番弟子らしい。ランクも「えいゆう」と素晴らしく強い、優秀な魔法使いだ。

 

………ただ、今はある任務によってワズと離れ離れになっている。だからワズは付いてきたがってるのだ。尤も、ククもそれは重々承知だろう。だが、俺たちが行く場所はこのファンタジールにおいて、 ”見つかっている場所” の中では最も危険な場所。「たつじん」レベルのククはなんら問題はないが、「いっぱし」レベルのワズには荷が重すぎる。………いや、正直言ってククでも危ないレベルだ。

 

よって、今回ククは一応「マスター」である俺たちに同伴する形で、旅を提案した。

 

「………話はついたか?」

 

「えぇ。ワズ、私はしばらくルーベルト君たちと一緒に過ごすわ。師匠のこと、魔法教室の生徒のみんなのこと、頼んだわよ?」

 

「………わかった!いってらっしゃい!クク姉ちゃん!」

 

「ふふふ、いってきます!ワズ!」

 

「あ!飛行船が来ました!」

 

「行くぞクク。目指すはダルスモルスだ」

 

「──はいっ!」

 

飛行船に乗り込んだ俺たちは、地上で手を振り続ける、紫色の髪をしたいたずらっ子の見送りに、手を窓から振り返し続けるのであった。

 

■■■■■■

 

「で、どうする?」

 

ダルスモルスへと無事到着した俺たちはどういうプランで行くかを考えていた。

 

「ルーベルトさんルーベルトさん」

 

「はいどうぞ」

 

「私は直接ネクさんの所に行けばいいと思います」

 

「なるほど」

 

「ルーベルト君ルーベルト君」

 

「はいどうぞ」

 

「私はまず武器を調達したり、薬を整えるべきだと思うわ!言っておくけれど今回の目的地、『古代遺跡』はファンタジールで最大最強の遺跡よ!?………私は仲間をもっと増やしたり、何かしら対策をしておくべきだと思うよ!」

 

「なるほど。………とりあえず一回死ぬまではノープランでいっか!」

 

俺は強行突破することにした。

 

「なんで聞いたんですか」

「なんで聞いたのよ」

 

ダルスモルスから東に広がる『サンサン砂漠』。その更に北東に進むとあるのが『古代遺跡への道』。タイラントが行く手を阻む。どうせならロケランでも持って行こうか(?)

 

ん?というかロケランってなんだ?

 

………まぁいい。

 

………んで、『古代遺跡への道』を北に進んでいくとやっと『古代遺跡』に着く。

 

なるほど。とてもとてもキツい旅路だ。俺のレベルじゃ無駄足だろう。タイラントとかめっちゃ強いし。殺されるだろうな俺。

 

と、いうことで。

 

「空飛べジュータン!」

 

「「「ひゃっほう!」」」

 

ダルスモルスではメジャーな乗り物である空飛ぶジュータンで古代遺跡まで送ってもらうことにした。流石魔導大国。技術力が違うな。

 

………まあ高度限界が低いから、そこだけが弱点かな。割と砂場スレスレだし。

 

「「ひゃっほほおおおお!」」

 

俺とチョウチョはノリノリだ。

 

「………なんだろう。なんか、魔法使いとしての矜持(プライド)がそこはかとなく痛いような…?」

 

対してククはこの王道もしきたりも何もない、我が道を行くスタイルに、開始早々、飲み込まれそうになっていた。ははは、まだはえぇよ。俺たちの冒険はコレからだ!(フラグ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 




クローネ
猫ちゃん。大魔法を使う魔法使いのマスター。しかしその正体は──。
得意魔法は炎。

クク
赤っぽいピンク髪をした魔法使いの女の子。多分17とか18とか19歳とかだろう。見た目はザ・魔法使い。黒い帽子に黒いローブ。実に魔法使いらしい服装だ。クローネの二番弟子。得意魔法は炎。

ワズ
紫髪のいたずらっ子。わんぱんな少年。クローネの三番弟子。年は12くらい?こっちも魔法使いみたいな帽子をかぶっている。兄であるネクに追いつこうと努力を日々重ねている。得意魔法は風

ネク
ローブと大杖が目立つ紫髪のイケメン。(東風目線)
クローネの一番弟子にして「えいゆう」
今は「とある任務」によって古代遺跡で苦戦中。
ワズの実の兄であり、ワズのことが心配。
得意魔法は風。

ルーベルト
河童。引きこもり。ユエリア大好きマン。
得意魔法は水

ユエリア
マーズの子。世間知らず。ルーベルト大好きロリババア。
得意魔法は光


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第33話「わざわい」

 

不味い。本当にこの状況は不味い。

 

「ハァ、ハァ」

 

息ももう途切れ途切れだ。でも、ボクの体のことなんか今はどうでもいい。

 

早く誰かにこの状況を伝えなくては。

 

ボクの知らせを聞いた師匠が来てくれればなんとか食い止めてくれるだろうか?

 

………いや、アレを止められるのは『光』だけだ。

 

「光があれば………光さえあれば…」

 

ボクはボロボロの体に鞭を打って歩き続ける。

 

ボクがこの状況を伝えなくては………。

 

さもなくば………。

 

「このファンタジールが、滅ぶぞ!!!!!」

 

クソっ。ボクに力さえあれば!ボクがもっとよく鍛えていたら!

 

いくら後悔しても、状況は好転したりなんかしない。

 

「………ただの「マスター」ではダメだ。「えいゆう」でもダメだ。本物の強者であるたった12人しかいない「ライフマスター」を。ライフマスターを全て集めなければ!」

 

………もうすぐ出口だ。まず外に出たらサンサン砂漠を渡り、ダルスモルスの魔王へこの状況を伝達し、クルブルクにいる「ライフマスター」を集めなければ。………でも、「ライフマスター」でも勝てないかもなぁ。師匠の力を1番近くで見てきたボクでも、師匠が勝てる未来視(ビジョン)が浮かばないや。

 

「………こんなの初めてだ。モンスターが黒い影に覆われて急に強くなるだなんて!きっとココが世界で初めて起きたんだろう。長年魔法使いとして鍛錬を積んできたボクでさえ初めて見た現象だ!あんなに凶暴化するなんて………まさかあの黒い石が原因か?………まぁいい。考察は後だ!一刻も早くみんなに知らせなけ…」

 

「ネク兄さん!」

 

ボクの目の前には、ボクのよく知った魔法使いの女の子が立っていた。

 

「………ハハハ。幻を見るなんて、ボクはよっぽどボロボロなんだな。………でも、諦めないぞ!!」

 

「ネク兄さん無理しないで!」

 

「ハハハ。たとえ幻でも、ククはククだな」

 

「ルーベルトさんルーベルトさん。キャラ濃い人出てきましたね」

 

「いや、普通に極限状態だからテンションおかしいだけじゃね?」

 

ハハハ。チョウチョが喋ってる。そしてなんか緑色の子がいる。たしか………名前は…。

 

「ルーベルト………だっけ?」

 

「お、よく俺のこと知ってたな」

 

「クルブルクでは有名さ。でもなんでボクたち面識がないのに幻に出てくるんだろう?もしかしてアレかな?彼ならなんとかできるんじゃないかっていう、ボクの心の表れかな?」

 

「ネクさん。ルーベルトさんのことを過大評価し過ぎです」

 

「おいチョウチョテメェちょっとこっちこい」

 

………なんかやけにリアリティある幻だな。

 

「ネク兄さん!危ない!」

 

「………え?」

 

ククにそう言われた瞬間、ボクは体勢を崩しそうになった。

それを間一髪のところでククが支えてくれた。

 

………アレ?もちもちしてる。コレは確かにククの感触だ。

 

………。

 

「…………もしかして、現実?」

 

「そうに決まってるでしょネク兄さん」

 

「てめぇ!逃げんな!」

 

「私の特技は逃げることですよルーベルトさん!捕まえられるものなら捕まえて………えっ。目の前に急に壁が……。………ルーベルトさん、私が悪かったです。悪かったですから、手をワキワキさせるのやめてくださ………ふええええん!!ルーベルトさんのエッチ!」

 

………マジかよ。

 

■■■■■■■■■

 

なんか紫髪のイケメンがボロボロになって出てきた。

 

どうやらこいつが今回俺たちが探していた人物。ネクのようだ。

 

「改めて。ボクは魔法使いクローネの一番弟子。ネクだ」

 

「河童のマスター。ルーベルトだ」

 

「チョウチョです!」

 

「河童のマスター………ってどういうことだい?ボク、もう半年もこの古代遺跡で苦戦しててね。あんまり世の中の動きを知らないんだ」

 

「ルーベルトさんは新しい13個目のライフ。『河童』のライフマスターなんですよ!」

 

「ライフマスター!!!!!それは素晴らしいな。いや、実はね、この古代遺跡で大変なことが起こってるんだ!」

 

「「「大変なこと?」」」

 

「いや、突然モンスターが黒い影に覆われてね………急に強くなったんだ!」

 

「「「あっ(察し)」」」

 

「近くにあったあの禍々しい石。あの石が原因だろう」

 

「「「………」」」

 

コレはマズイ。

 

「………ごめんネク。ちょっと3人で話していい?」

 

「ああ。構わないけど…?」

 

俺たちはネクから離れて会議を始める。

 

(どうする…!めっちゃ自信満々にドクロ石の第一発見者だと思ってるぞ!)

(ネク兄さん……昔からこういうとこあるのよね…)

(大発見は大発見ですけど、時期が悪かったですね)

(とりあえず素直に伝えるか?)

(それがいいと思います}

(ネク兄さんには私から説明してくるわね)

 

俺たちは会議を辞め、ククがネクの方へ歩いて行った。

 

「かくかくしかじか」

「かくかくしかじか!?」

 

………5分後。

 

「………とりあえず、ボクたちは一度クルブルクに戻ろうと思う」

 

「ルーベルト君!ユエリアちゃん!今日はありがとう!おかげでネク兄さんを見つけることが出来たわ!」

 

ネク達はクルブルクに帰るようだ。

 

飛行船に乗る前、ネクが俺に向かって。

 

「あぁ、そうだ。ルーベルト。『わざわい』というモンスターが古代遺跡には居る。本当に個人的な話ですまないが、アイツはボクが、ボクの手で倒したいんだ」

 

「わざわい………か」

 

「あぁ。闇の大精霊わざわい。アイツは黒影怪物(シャドウモンスター)になってなかった。ドクロ石の影響を受けない。つまりそれだけ強いってことだ」

 

「………わかった。………しかし面倒なことになったな。1番敵が強いダンジョンで、黒影怪物(シャドウモンスター)化が起きちまうなんてよ」

 

「全くだ。もしも厳しそうだったら手紙を送ってくれ。必ず、ライフマスターを連れてこよう」

 

「………ああ。じゃ、またな!」

 

「ああ!また!」

 

「ふぇーん!ユエリアちゃんと離れるなんて…!」

 

「また会いに行きますよククさん!」

 

………こうして、魔法使い達は帰って行った。

 

「………ルーベルトさん」

 

「わかってる。魔王にこのことを知らせに行くぞ」

 

「────はい!」

 

目指すは魔王城だ!

 

 

 

 




すっげぇ複雑なんで補足入れときます。

マスターは2つ種類があって、1つはただの「マスター」
2つめは「ライフマスター」。ルーベルトはコレで、他にもマスタングや、イムカとか13人(本来は12)しかいないのがこの「ライフマスター」で。

普通のマスター(傭兵だったらキスカとか)よりは圧倒的に「ライフマスター」の方が強いです。

で、ココからが複雑でして、大体の場合は「えいゆう」より、「ライフマスター」の方が強いんですけど。

例えば狩人の「えいゆう」アロ。
彼はイムカ(狩人のライフマスター)の師匠で、イムカより強いです。

と、このように「えいゆう」と「ライフマスター」の力関係はライフによって違い、ランク的には「えいゆう」の方が上だけど、強さは別だったり。

………暇ができたら強さランキング作っときますね。

ちなみにルーベルトは「ライフマスター」の中で最弱です。

100歳は超えてるであろう「つりせんにん」より弱いです。

頑張ってルーベルトちゃん!


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第34話「自称勇者」

 

なんか揉めてる。

 

「とっ、通せ!お前らは魔王と勇者の物語を知らんのか!?」

 

「はいはい。帰った帰った。魔王様は忙しいんだ。クルブルクの国王ならともかく、貴様のような素性のわからない不審者を通すことは出来ない。わかったなら早く帰れ」

 

「きっ!キサマァ!我を誰だと思っている!勇者ラグナローだぞ!」

 

「………なあ、お前知ってるか?」

 

「さぁ?聞いたことないか…」

 

「なんだと貴様ら!?」

 

魔王軍の兵士達になんかへんなヤツが突っかかっている。名前はラグナローとか言うらしい。

 

「あ、お取り込み中すみません……」

 

「「「チョウチョが喋った!?」」」

 

いつものテンプレを挟んで、チョウチョは語る。

 

「すみません、私たち、クルブルクからの正式な使者なんですが…」

 

「「「!?」」」

 

俺がエリック王から受け取っていた親書を兵士に見せる。

 

「確かにコレはクルブルク王家の紋章………わかりました。お二人はどうぞこちらへ…」

 

「ま、まてっ!なあお前たち!よく来てくれた!」

 

いきなり何を言い出すんだコイツは。

 

「良くぞ我の為に王から手紙を受け取って来てくれた!」

 

「………ルーベルトさん」

 

「………おう」

 

どうやらコイツは困っているみたいだし……。

 

「「どなたですか?」」

 

「………」

 

「………お前はこの不審者を連行してくれ。俺は客人を連れて行く」

 

「了解。さ、アンタは抵抗せずついて来てくれよ?」

 

「ぬおおおお!?お前ら!少しくらいは助けてくれてもいいじゃないかあああああ!?」

 

こうして自称勇者の不審者は連れて行かれた。

 

「いやはや、お見苦しいものをお見せしました」

 

「いえいえ。兵士さんも大変ですね。ね?ルーベルトさん!」

 

「あぁ、本当に大変だな。あんな変なヤツがいつもいつも絡んでくるなんて、俺じゃ耐えられないな」

 

「ハハハ。自分の気持ちが分かっていただけてなによりです」

 

兵士さんと談笑しながら俺たちは魔王城への道を歩く。ここから魔王城までは少しかかる。大きな一本道の細長い橋を渡って行くんだ。

 

魔王城は縦長の塔のような形になっていて、そうだな。ココから概算しても100メートルくらいはあるんじゃないか?ファンタジールの建造物の中では1番高い建物だった気がする。

 

てっぺんの方はまるでコウモリの様な羽が生えている。

 

禍々しい、紫を基調としたデザインが、魔王の強大さを物語っている。

 

………やがて、魔王城へと着いた。

 

「こちらの魔法陣が魔王の間直通になります。魔王様に、優しくしてあげて下さいね…?」

 

「「優しく…?」」

 

はて?魔王と言えば強く、恐ろしいイメージがあるんだが…?

 

そういえばこの国の人間も和気藹々としていて、魔王が恐怖で統治しているようには見えなかったな。案外穏健派なのかもしれない。もしそうなら話が進み易くて助かるなー。と俺は勝手に妄想する。

 

「自分はココまでとなります。帰りの際はまたお呼び下さい!」

 

「兵士さん!ありがとうございました!」

 

「ありがとうございました!」

 

俺たちは案内してくれた兵士に礼を告げ、遂に魔王と出会う。

 

魔法陣の中に入り、瞬きをすると、気付いたらもう魔王の間へとワープしていた。

 

まず目に映ったのはその禍々しく、強大な玉座。

魔力が込められているのだろうか。背もたれに、紫色の光がグラデーションを奏でながら光り輝いている。

 

次に目に入るのは紫色の炎が轟々とゆらめく金の燭台。玉座が真ん中にあって、その両隣に3つずつ置かれている。

 

最後に目に映ったのは俺たちの真横に立っている、大きな暗黒の鎧……

 

「「うわああああ!?」」

 

「………」

 

「こっ、殺される!?」

 

「………ルーベルトさんルーベルトさん。よく見てください」

 

「………え?」

 

よく見てみると、それは俺たちを砂漠への谷で助けてくれた暗黒騎士のものと一致している。つまり。

 

「………」

 

「あ!あの時の!」

 

「………」

 

「ルーベルトさん。まずはごめんなさいしましょ?ね?」

 

「お、おう。そうだな。すみませんでした!」

 

俺が謝ると、暗黒騎士は首を横に振った。どうやら許してくれるらしい。

 

「………スタスタスタ」

 

暗黒騎士は俺たちをリードする様に、魔王の玉座へと歩き出して行く。

 

「ルーベルトさん。魔王さんに挨拶しましょう!」

 

「あぁ。あの件も伝えないとな」

 

「………ピタッ」

 

暗黒騎士は魔王の右隣に立って、まるで石像のように動かなくなった。

 

「………あれ?魔王ってどこにいるんだ…?」

 

「姿が見えませんね?」

 

「………ここにいるぞ!」

 

玉座の色に紛れて気が付かなかったが、玉座の上に魔王が座っていた。

マントをしていて、後ろ向きに立っていたから完全に玉座と色がかぶっていた。

いや、でも、色と言うより、そもそも……

 

「あなたが魔王さんですか?」

 

「如何にも。我が名はルーザ。ルーザ・デイモン。父上に代わり今は魔王だ」

 

「………若いな」

 

歳は15くらいか?俺と同い年に見える。背も低く、目の下に不健康そうなクマがでている。お世辞にも魔王とは呼ばない。そんなイメージが俺を支配した。

 

「………オイ客人。あまり舐めていると我の強大な魔力が…」

 

っ!?マズイ!相手の反感を買いすぎたか!?

魔王はこちらを睨んで、手に紫色の魔法の玉を出している。

 

「………なんてね」

 

ボンッ。というコミカルな音に合わせて魔法の玉は消えた。

 

「堅苦しいのはやめよう。キミたち、名前は?」

 

「び、ビビったぁ……(俺の名前はルーベルト)」

 

「私はチョウチョです!あとルーベルトさん、心の声漏れてます」

 

「え?マジ?」

 

「大マジです!」

 

しまった。魔王の前でこんなふざけた態度を取ったらどうなるか──!

 

「………………あははははは!君たち面白いね!いやぁ、君たちみたいな子がクルブルクからの使者でよかったよ!」

 

「……どうも」

 

「やりましたねルーベルトさん!ファーストコンタクト成功ですよ!」

 

「そうかなぁ?」

 

「あははははははは!!!」

 

なんか俺が想像していたよりも、魔王ってのは明るいらしい。

 

「じゃあ早速だけど、君たちの今までを聞いてもいいかな?」

 

「「はいっ!」」

 

でも、中々嫌いじゃないぜ!

 



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第35話「魔王さん友達募集中」

 

金の燭台に紫色の炎が沸る中、俺たちは魔王に今までの旅路を語った。

それを聞く魔王の顔はとても輝いていて、世界に希望を持っている。そんな風に俺は見えた。

 

「なるほど……君たちがクルブルクの使者に選ばれたのは運命。それも必然のものだったんだろうね。僕は君たちの話を聞いて、1秒たりとも退屈しなかった。……本当さ?」

 

やっぱり全然、コイツは魔王っぽくなくて。

むしろまるで勇者に憧れた少年のようで。

 

「………だから。だからさ、また、3年後だ」

 

「ど、どうしてもいかなきゃいけないんですかルーザさん!」

 

「ごめんねチョウチョ。僕は正式に魔王になる為に、どうしても古代遺跡で修行を積まなければいけないんだ」

 

「でも……」

 

なんとかルーザを説得しようと試みるチョウチョを俺は射止めるように諭す。

 

「チョウチョ。俺らが悲しんでどうする。今1番辛いのは、ルーザなんだぜ?」

 

「ルーベルトさん。だって………あれ?ルーベルトさん?なんで泣いてるんですか?」

 

「………え?」

 

俺は右手で顔を触ろうとして、その前に冷たい水が頬を伝った。

 

………あぁ。泣いてんのか、俺。

 

「…………ごめんね。2人とも」

 

「ルーザさんは悪くないですよ!」

 

「あぁ、チョウチョの言う通りだ。オマエに謝る理由はねぇぜ」

 

「………君たちは優しいね。うん。………………ねぇ、君たちが、君たちがもしよければの話なんだけどさ。僕と、友達になってはくれないかい?」

 

「「………」」

 

俺とチョウチョは顔を見合わせる。

 

「い、いや!もしも!もしもの話だ!嫌だったら別にいいんだ!聞かなかったことに──」

 

「ルーザ」

「ルーザさん」

 

俺たちは、頭の上に疑問符(はてなマーク)を浮かべて。

 

「「俺(私)たち、もう友達だろ(ですよね)?」」

 

そんな、ごく当たり前のことをルーザに伝えた。

 

「…………フフフ。ハハハハハ!!!そっか! ”もう” 友達か!」

 

「……あぁ、俺たちは友達だ。なぁ?チョウチョ?」

 

「はい!ルーザさんは友達を募集してそうだったのでルーベルトさんと応募しました!」

 

「ククク……魔王さん友達募集中ってところかい?ハハハ!そう!そうだよ!僕等はもう「ひとりぼっち」なんかじゃない!そうだろ!」

 

「「あぁ!(はいっ!)」」

 

俺とチョウチョはルーザをできるだけ元気にさせられるよう意識していた。

 

だが、それももう終わりのようだ。

 

「……ルーザ。もうそろそろいいでしょう。その『オトモダチ』さんたちとは」

 

「お母様……」

 

「ロッテンマイヨーさん!もう少しだけルーザ君と話させてはくれませんか!」

 

「無理です。これでもだいぶ譲歩したのです」

 

「私たちはクルブルクからの使者なんです!なんとしてでも『女神の宝』を集めなければいけません!」

 

「無理だと言っています!!ただでさえルーザはもうすぐ魔王となる身!!それをライバル国であるクルブルクが邪魔をしに来たとしか考えられませんわ!!」

 

ロッテンマイヨーさんの後頭部のベールが噴火するように立ち上がっている。ありゃ相当怒ってるな。

 

「……ごめんね。ルーベルト、チョウチョ。……女神の宝は、魔王にしか伝わらない。今はいない父上だけが知っていたんだ。………だけど、僕は仮にも魔王になる者。ただでは済まさないつもりさ。……チョウチョ。たしかあと3ヶ月だったっけ?」

 

「あっはい!そうです!」

 

「じゃあ僕は3ヶ月以内に魔王になるよ」

 

「「「!?!?!?!?!?」」」

 

俺と、ルーザのペットのケルベロス以外のみんなが驚いた。チョウチョとオデオンさんとロッテンマイヨーさんと言った方がわかりやすいか?

 

まあ驚くのも無理はない。なにせ通常は3年かかる修行を3ヶ月で乗り越えようと言っているのだ。ということは通常の12倍のペースということになる。とても、正気の沙汰ではない………というのがみんなの見解だろう。

 

ま、俺は予想できてたけどな。

 

ルーザは俺と同い年。たった15の若造だが、仮にも王の道を志す者。覚悟が違うんだ。どんなに険しい茨の道でも止まることなく進み続けるという前進の覚悟が。

 

「あれ?ルーベルトは驚かないのかい?」

 

「俺も仮にも世界を救おうとしてる身だしな。お前みたいなカッケェやつくらい、すぐわかるさ」

 

「ルーベルトさん…!いつになく輝いてます!(おだまり?)」

 

「…………」

 

俺たちがコントを繰り広げる中、オデオンさんはじっとルーザの方を見つめ続けていた。

 

「…………ルーザ」

 

「はい、お母様」

 

「貴方にはその覚悟はあるのですか?」

 

「えぇ、『この国の為に』。そして、『友の為にも』です」

 

ルーザの覚悟を聞いたロッテンマイヨーさんの表情は、さっきまでの薄氷のような顔から一転して、暖かい太陽のように微笑んでいた。

 

「…………わかりました。私は、貴方を信じます。…………オデオン」

 

「……………はっ」

 

「「キャアアアアシャベッタアアアアア!?!?!?!?」」

 

「貴方はルーザを古代遺跡にまで送り届けてちょうだい」

 

「御意」

 

「そして貴方たち」

 

「「えっ?」」

 

「…………ルーザが修行を終えるまで、この街にいてちょうだい」

 

ああなるほど。心の支えというやつを母親なりに気をつけていたんだな。

 

「………あぁ」

 

「わかりました!」

 

「さあ!善は急げというものです!ルーザは『大切なお友達の為にも』頑張ってきてちょうだい!オデオン!ジルにルーザのお昼ご飯作ってもらってあるから受け取ってから向かってちょうだいね?そしてルーベルトさん、チョウチョさんは宿屋を取っておくから、このダルスモルスをじっくりと堪能してちょうだい!あと、ケルベロスはあとでお散歩に行くわよ?………さあみんな準備してちょうだい!」

 

「「「「はいっ!」」」」

「ワンッ!」

 

こうして、俺たちのダルスモルスでの旅が本格的に動き出した!!!!!

 

■■■■■■■■■

 

■■■■■■

 

■■■

 

 

「…………あ、アニキッー!待ってくださいっスー!」

 

「サマ………メガミサマノ……タメ………オレ……ガンバル…」

 

「えぇ、そうよグルッチェ。私のために馬車馬のように働きなさい!」

 

「ノーラさん!アニキに何したっスか!?チコも怖がってるっス!?」

 

「キュアー………」

 

「別に?ただの催眠よ。頭の中がハートマークで一杯になる催眠。私を好きで好きで堪らなくなっちゃう魔法❤️」

 

「メガミサマ……ステキ!」

 

「だーかーら!!!!!私は女神様じゃなくて!その娘だって言ってるでしょ!!!!!…………ったく、はーあぁ。………あの娘。大丈夫かしら?」

 

 

■■■

 

■■■■■■

 

■■■■■■■■■

 

「へっくしゅん!」

 

「どうした?風邪か?」

 

「いえ、ただのくしゃみれす。だれかがわちゃしのこちょ、うわしゃしてるのきゃもしれましぇん…!」

 

「滑舌赤ちゃんみたいになってるぞ」

 

「ばぶばぶー!」

 

「ロリババア赤ちゃん……新ジャンルすぎてわからんぞ。………つうか、宿屋のベットちょーきもちいな」

 

「れすね」

 

「…………寝る?」

 

「れすね」

 

「はなかんでこい」

 

「れす!」

 

「いやそうはならんやろ……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




誰だサボったやつ!

どうも東風です。言い訳が許させるならばリアルで忙しかったです。はい。

というかだいぶ本編よりいい感じに進んでますね。人間関係が。

本編だとオデオンが解雇されたり、ルーザと離れ離れになるんですけど、主人公が無口じゃなくておしゃべりモンキー(河童)なので、大きく流れが変わりましたね。みんなクリア後みたいな性格してます笑

まだプレイしたことない人でも楽しめるストーリーだと思うので応援よろしくお願いします!(流れが違うので実際のプレーでギャップを感じるかも…!)

できるだけ投稿頻度を戻します!

ファンタジーライフを盛り上げるぞー!おー!


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第36話「背水の陣」

 

「暇だな」

「暇ですね」

 

あれから3時間後。俺たちはロッテンマイヨーさんに宛てがわれたダルスモルスの宿屋に居た。

 

「俺たち、1ヶ月間ここに居るのか?」

 

「私個人としては別にいいんですけど(旅行気分ですし…)、タイムリミットを考えるとちょっとマズイですね」

 

「だよな。つっても、ルーザに伝えられることは、全部伝え……た…………し………?」

 

「どうしたんですかルーベルトさん。言葉尻がだんだんと弱くなってますよ?」

 

おかしい。何か、何か見落としている気がする。

 

「ルーベルトさん!聞こえてますか!?」

 

「あっ、ああ。わりぃ、ちょっと考え事してて」

 

「なにかありましたっけ?」

 

「………ルーザに俺ら、なんか話し忘れてないか?」

 

「………そうですかね?声に出して振り返ってみますか?」

 

「賛成だ。早速やってみようぜ」

 

ベットに寝転んでいた体を起こして俺はソファーでくつろいでいたユエリアのそばに寄る。

 

ユエリアは指を一本立てて数え始めた。

 

「えぇと、まずは私たちのことについて。ただの自己紹介ですね」

 

ああ。これはそう、俺も覚えている。大丈夫だなと思った俺は頷き、ユエリアに続きを促す。

 

その意図を汲み取ってユエリアは二本目の指を立てる。

 

「次が私たちの旅路。大体ポルトポルトまでのお話について話しました」

 

………?

 

「………あっ」

 

「何かおかしなところでもありましたか?ルーベルトさん」

 

「うん。まあおかしなところというよりは、俺らの頭がバカってことだけはわかった」

 

「ばっ──!?バカってどういうことですか!?!?」

 

「もちつけ」

 

俺がそう言うとユエリアはイメージ。つまりエアーで餅つきを始めた。

 

俺は手に水をつけるイメージで、イメージの臼のなかを、イメージで転がしていく。

 

「あそれっ!ぺったん!ぺったん!(ヨイショ!ヨイショ!)ぺったん!ぺったん!(ヨイショ!ヨイショ!)ぺったんぺったん!!(アドッコイ!ドッコイ!)私の胸は?(つるぺったん!…………あっ、つい本音が………)………ふーん、そうですか。ずっとそう思ってたんですねルーベルトさん………」

 

「あっちょっ、かっ、勘弁して──」

 

 

グガッ。ドゴッ。バキッ。ボゴォ。ゴスッ。ガスッ。びよよ〜ん。ドンガラガッシャァァァン。ブーン。バシーンッ。パァン。ドグシャァ。ボゲバァ。ぷしゃあああああ。ザシュッ。トントントン。シャカシャカシャカシャカドッカアーーーーーン!!!!!テッテレー(?)(以下略)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少女(貧乳合法ロリババア赤ちゃん)

 

制裁中(河童わからせタイム)

 

 

 

────そして、十分後。

 

「ず”び”ば”ぜ”ん”で”じ”だ”!!!!!」

 

「わかればいいんですよ?ね?ルーベルトさん?」

 

「はい……」

 

ボッコボコのフルボッコだドン…。

 

例えば、俺のHPがまあ250だとしよう。今は13くらいだ。

 

アレだ、今の俺、その辺のならずものに小突かれただけで死ぬわ。

 

「………あれ?そういえば私たち、何について話してたんでしたっけ?」

 

「ルーザに話し忘れたことについてだよ。………ってああ!こんな無駄なことに時間を割いてる場合じゃないんだよユエリア!」

 

「そんなに大事なこと忘れてましたっけ?」

 

「……古代遺跡」

 

「あっ(察し)」

 

「……じゃあ俺はルーザのところに行ってくるから」

 

「……私はいいんですか?」

 

俺はポケットに入れていたリッチを取り出して。

 

「ああ、別に頼みたいことがあってな」

 

「頼みたいこと…?」

 

「ああ、このリッチでありったけの…」

 

「夢をかき集めるんですね!」

 

「いや、そせいやくを買ってきといてくれ」

 

「わかりました。でも、なんでそせいやくなんですか?」

 

「……気になる?」

 

「……まあそれなりには」

 

「ついてこいよ。目ん玉飛び出ないようしっかり抑えとけよ?」

 

「そんな、ギャグ漫画じゃないんですから…」

 

俺たちは宿屋から出て、人気のない郊外の方へ向かった。

 

「ここらなら誰も見てないかな…?んじゃ、行くぜ!新技!」

 

「新技!いつのまに!」

 

「話は後だ!まずは見てくれ!……いくぜ!」

 

背水の陣(バックウォーター)

 

俺は背中に全水分を集中させる。倍率は……まあ、最大火力で自慢するかな!

 

俺が空中に向かってパンチを繰り出すと。

 

ビュオオオオオオオン!

 

俺の目の前に巨大な砂嵐が生まれた。

 

「す、スゴイですルーベルトさん!一体何をしたんですか────って!?ええええええ!?!?!?!?!?ルーベルトさんがミイラに!?!?!?!?!?」

 

「そ、ソセイヤク…」

 

そう言い残して、俺は死んだ。

 

〜一分後〜

 

宿屋で生き返った俺はさっきの場所に戻ってきた。

 

「と、いうわけだ」

 

「なるほど。ミイラになって相手の意表を突くというびっくり技ですね!」

 

「いや普通に超パワーだよ。ほら、筋肉って水分をたくさん含んでるだろ?それを意図的に膨張させて一瞬のパワーを跳ね上げてんの。最大10倍くらいになる代わりにミイラになる」

 

「じゃあルーベルトさんが『背水の陣(バックウォーター)』を使った時の握力って…」

 

「15トン」

 

「なんかルーベルトさんが見たって言う悪夢の時のルーベルトさんより強そうですね」

 

「まああの夢を見て思いついたしな。シンプルな肉体強化の方が格上と戦う時に役立つし」

 

「なるほど…!だからこそのそせいやくですね!」

 

「あぁ!生き返れば水分が元通りだからな!何回でも『背水の陣(バックウォーター)』できるぜ!」

 

今の俺たちに最も遠い言葉をあげるならば、それはきっと倫理観だろう。

 

「……んじゃ、ユエリアはそせいやくの購入を頼む。俺はルーザの所に行ってくるからな」

 

「わかりました!宿屋で待ってますね!」

 

「おう!」

 

………この時の俺たちは知る由もなかった。

 

このダルスモルスに未曾有の危機が訪れようとしているだなんて…。

 



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