規格外たちの間接介入『ML編』 (獅狼)
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まだMuv-Luvの要素はありません

やっぱり投稿することにしました。
前投稿していた分を上げた後の続きをどうするか悩んでいます。
長い目で見てやってください。


 

ある日の事、彼らはやはり、思い思いの事をしながら会議をしていた?

 

「えー本日の議題は、一誠が帰って出来てしまった暇についてでーす」

このメンバーのトップをやっている特徴が有るようで無いような平凡に見えるがわりと整っている?と言うゲームのキャラクターエディットの基礎パーツのみで作ったような……白とも黒とも言えない顔の青年、灰根がそう切り出す。

「いや、主殿?暇と言っていますが、研究や防衛でそれほど暇では無い気がするんですが………」

糸目笑顔の一見優男で紳士的に見える青年、草がそう返す。

「………否、そうでもない。新作組み立て弟子で十分」

表情が殆ど無く言葉数も少ないバランスの良いからだをした青年、防人がそう淡々と感情の読めない声色で告げた。

「まあ、そうよね。侵略とかもこの魔界に修行に来ている悪魔たちが経験値にしているから………厄介なのが来ない限り城下町に結界張って見学してれば良いんですものね」

腰近くまでの艶やかな光加減では赤くも見える髪を持った、ナイスバディなお嬢様と言うよりお姉さまな淑女?の朱麗が思い返すような表情で続ける。

「うむ、また『主人公』がァ何ォ処かにィ………落ちていないものかァ……」

筋骨隆々とした、身長3mオーバーなとても濃い、とても彫りの深い顔をした巨漢、阿呑はそう言う。

「流石に無いだろ」

「流石に連続は無いですね」

「ええ、流石にそんな珍しい事が立て続けには無いでしょうね」

「………迷い込む事事態珍しい、主人公となるともっとだ……」

「ぬう………いっその事拉致……」

「「「「止めろ!!」」」」

 

 

そんなこんなでだらだら会議をしていると………

 

 

 

 

突然、一人のファイターが飛び込んでくる。

「皆様!!城下町に直接、少年が転移してきました」

「あ?城下町って俺直々に結界張っておいたんだけど?」

城下町には、灰根と防人で術式を組み立て、灰根が膨大な魔力で起動させた、正規の方法以外での侵入を防ぐ結界を張っていたのだ。

「はい、結界に損傷は一切無く……空間が突然揺らいだかと思えば、少年が突如姿を現しました」

どこかで聞いたような内容……

「………確かに、微かだが……空間が歪んだ痕跡が見られる」

防人が大量のディスプレイを出現させて何かをしているかと思ったら出現ポイントを調べていたようだ。

「阿呑、あなたがあんな事を言うからですよ?」

草がからかう。

「ぬう?我のせいか!?」

「草ちゃん、それは後よ。それでその少年は?」

「その時は眠っていたので、客間に軟禁中です」

「了解、目が覚めたら教えてくれ、会いに行く」

全く……楽しくなってきたじゃないか!!

今回はどんな風に育てるかな……いやいや、まだ物語の人物とは……違っても介入させれば良いか。

「じゃあ、また明日集合って事で、解散」

 

ふう、それにしても言いタイミングで流れてきたな……

最初に発生する問題は修行に着いてこれるかだ。

一誠は、目の前に餌(オパーイ)吊るしておいたら馬車馬の如く動いたが……他のには使えそうにない。

あそこまでの反応を返すのは間違えなく少ない。

やっぱりそいつに合った鍛え方で、だな。

 

あ、そー言えば管理結界……今は他にリソース使っていたから繋がり切っていたな、繋げ直すか、そうすればなにかが不意に現れても拾える。もしかしたら、気づいてないけど流れてきたの他にも居たかもしれないな。

 

 

 

さてさて、今回のはいったいどこの誰だろな♪

 

 

 

 

「王!!例の次元漂流者ですが、面倒をみていたメイドに襲い掛かったので拘束しました!!何でも「おお、さすがテンプレ。…このメイド……先に食べちゃっても問題ないよね」と、口走ったそうです。止めに入った者に何処からか取り出した剣で斬りかかったので拘束して牢に放り込んでおきました。武器の取り出しは何らかの術だと思われます!!」

 

………大外れのようだ。

「解った、ああ、何と無くだが把握できた。一応確認する。その牢へ案内してくれ」

「はっ!!幹部の方々へは報告しますか?」

「いや、不要だ。」

パンパンと手を叩く、召し使いを呼ぶかのように。

すると最初から居たかのように背後に一人の男、草が現れる。

「はい?どうしましたか?さっき別れたばかりじゃないですか」

すでに知っているだろう彼は胡散臭い笑みを浮かべながらそう、問い掛けてくる。

「お前ならもう知っているだろうが、他の皆に報せてくれ、今回のはハズレだってな」

俺は平然と返す。

草はクックッと喉を鳴らすように笑いながら

「あ~あ、みんな、残念がるでしょうね」

続けて、

「ところで処分の方は?」

言外に私に下さいと言っているのがよくわかるが……

「お前の拷問もいいが…」

「まさか、私じゃないですよ、カリーナちゃんにあげるんです。彼女の尋問中のあの笑顔が私はとっても大好きでしてね。いい笑顔なんですよ?あと少しして、身体年齢が上がったら告白しようと考えているんです。いや~今回ので何処まで成長するか楽しみです」

何でか、唐突にのろけられた気がする。

しかし、弧を描いた糸目の奥に本気の光を見て、追求は止めた。

うんこいつは純粋に好みだからでコクるのだろうが……その、いい笑顔をするときが尋問と言う名の拷問最中なのだから、競争相手は少ないだろう。

カリーナ……銀髪美幼女。年齢は900位で、悪魔なので外見年齢はあてにならない。現在、外見年齢は11歳程、だけど成長期なのか、二週間前はもっと小さかった。と言うか10才ぐらいだった。

趣味が尋問、特技が《いつの間にか、尋問が拷問になる》で、彼女の尋問を受けた男どもは、八割新しい自分と出会い、残りの一割は尋問段階で目覚めるとか……最後の一割は……物言わぬ仏に………

尋問部門のマスコット的立ち位置だが、普段は感情の動きが少ないのかほぼ無表情。

例外は拷問……もとい尋問中か………草と一緒に居るとき。

そうだ、正直な話、やつらは相思相愛だ。

 

「だが、だめだ。奴には修羅の山に入ってもらう」

「…………え~っと………修練じゃなくてですか?」

「ああ、修羅だ。たぶん、一階で死ぬだろうな」

修行、修練、修羅、羅刹の四つの山から成る我が魔界名物の惨脈。

子供、大人、変人、廃人が日夜自分を鍛える場所。入場制限は総レベルでLv.1~、Lv.400~、Lv.10000~、Lv.50000~

とは言っても、あくまで入場制限であり、このレベルで行くと、大抵一階で終わる。

入場者には、一度だけ死ぬ寸前で帰還させるアイテムが渡されるが、使う、使わないは個人の自由。

もちろん、転移先は病院で金も取られる。

今回の漂流者にはこれを渡さない。死ぬまで頑張ってもらう。

こんな場所を公に創ってしまったせいか、今や廃人は5000を越え、

我が魔神達にレベルで追い付きそうなのが十人は最低でも居る。

「ああ、勿論、ヤツの妄想に付き合って、ん゛ん゛『あの山の魔王を倒してくださブフゥwwwwww魔王は俺だってのwwwwww」

「外道ですね」

「ハッ、この世界に正道なんて有るのか?いや、無い。言うなれば力こそ正義。衛兵が言うには、ヤツのレベルは精々50、世界が世界なら確かに英雄だろうさ」

はっきり言って、草の笑みも嘲笑だ。長い付き合いだからこそわかる、微妙な笑みの変化だが……

「それなら仕方ないですね。じゃあ私は報せてきます」

む?この反応は……

「あ~すまん内容チェンジ、反応があった、乱重力エリア『龍落とし』のRQB3794辺りだ。ファフとリオ、シャルに行かせておいてくれ。」

「はい、あのエリアを自由に飛べて背に大勢を乗せられるのはのはファフニルぐらいですからね後は……魔法剣士のシャルに格闘家のリオですか……良識的で常識人な面倒見の言い二人ですね。強くも合って、確かに外から来る者の迎えには一番正しい選択かと」

「別の場所なら他の奴でもいいんだけどな、場所が場所だけに、確保前に目覚められた場合を考えるとこの組み合わせしかなかった」

「御意に」

その一言と共に、まるで透過率を上げていくようにスーッと薄くなり、姿を消した。

結構、いろんなパターンあるよな……

 

 

さて、それじゃ俺は漂流者……否、『転生者』の見きわめと死刑宣告にいきますかね。

 

 



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主人公は出てきました。

 

 

少年…白銀(しろがね)武(たける)は混乱していた。

自分は確かに我が家で寝た筈だ。しかし…今いる場所は見知った我が家なんかではない。

まるで地獄を体現するかのような黒い空に荒れた荒野、視界には奇妙な色の天に届くほど……天辺がまったく持って想像できないほど高い並んだ四つの山、その根元には真っ赤な、遥か遠くにあるはずなのに見て解るくらいに赤いモノの流れる川……と言うよりもまるで堀に溶岩を流しているようなもの……が見える。

他には、テレビやその他の情報誌などでも見たことの無いくらい奇妙な色の沼地におかしなくらい広大な森。

そして自分の居る場所だ。

岩の上。これだけ聞けば何の問題も無いだろう。この岩が見るからに直径km単位で、宙に浮いていなければ……

うろたえて、喚いた。年相応…ともいえないがまるで子供のように。

一般人である彼がこのような状態で冷静でいられるはずが無い。

彼は精々やんちゃな悪ガキ程度でしかない。確固とした覚悟もなければ、彼の友人のように、唐突に簀巻きにされて何処かへ放り出されたのに自力で帰ってくるような技術や経験も激運もない。

これは夢だと現実逃避を試みるが容易くその思いは打ち砕かれ、今いる場所から孤独を感じ、そして死を覚悟した。

空腹で死ぬより落ちて死んだ方が楽かもしれない。だけどそれだけの度胸は無い。

あまりに広大な地面と、周囲の風景からここがどんな高さであるのかなんて理解も出来ないし、知りたくもない。

混乱が一回りして逆に冷静に成った頃、影が差した。元々暗かったが更に暗くなったのだ。

武は上を仰ぎ見て、後悔し、絶叫しそうになり、何とか飲み込んだ。

足場の岩よりは小さいそれでも自分の見たことの有るどんな建物よりも大きく見えて…とてつもない風格。自分でも解るほどの異常な力を持っているだろう黒い、ドラゴンが居た。

武は口に手を当て声が出ないように。恐怖に涙を流しながら息を潜めた。

あんなものに食われたら腹の足しにもならないだろう。

ドラゴンが高度を下げ、目の前に下りてきて、乾いた笑いしか出せなくなったところに予想もできない声が掛かった。

「あれ?ファフ、もしかして保護対象(ターゲット)起きてる?」

若い、透き通るような女性の声だ。

「うむ、下降に入った際に気付いたが近付かん事にはどうしようもないので、な。すまないが我に怯えているようなので説明は任せた。」

低く大きな、威厳の有る声。と言うか、明らかにドラゴンが喋っている。

「仕方ねえなぁ。シャル、保護対象(ターゲット)はの状況は?俺が見ても問題ないか?」

少しヤンキーのような感じだが確りとした青年の声。

「大丈夫よ、リオ。対象は少年……人間で大体……十代後半…二十の手前あたりかしら。ちゃんとした服を着ているわ。防御力は皆無に等しそうだけど。」

「オッケ、じゃあ説得して連れ帰りますか」

「うむ、では我は少し此処から離れるとしよう。怯えていては話どころじゃないからな」

「ごめんなさいね、ファフ」

「仕方ないさ。王様の話じゃあ、ドラゴンの居ないどころか魔法もない世界の住人の可能性が大だからな。まったく、あの人達はとことん規格外だな、ここまでの航路も割り出したって話じゃないか、規則があっても数が多すぎてどうしようもないからこその《龍落とし》だってのに……」

青年の台詞に女性はうふふ、と笑みをこぼし、

「今更ね、でも今はあのお方たちのことよりも彼よ」

「ああ、そうだな。

お~い、キミ保護しに来たぞ。安心してくれ、安全な場所に連れて行ってやる。詳しい説明はその後だ」

 

こうして白銀武は回収された。

 

このあと待ち受ける過酷な、今までのだらけきった生活と180°魔逆な四神一王による主人公チート化計画の被検体としての生活を知らず、緊張の糸の切れた彼は何時もどおりのラッキースケベを起こしながら龍の背中の上で眠りに付いた。

 

 

少しして……

 

 

目が覚めたら異様に豪華な天井付きのベッドに寝ていた。

ここはどこだ?確か自分は……

そこまで考えて飛び起きる。

気絶す(ねる)る前にあったことを少しだが思い出して直ぐの行動だ。

そして、目に入った窓から外を見ると……

日本では……いや、地球上で見ることのできない世界が広がっていた。

混沌としていながらも美しいと思える異様な風景。

火山と森林、果ては浮遊大陸がものの見事に調和せずに一枚の絵に成っている。

何なんだここは……俺が最後に見たのは……綺麗なお姉さんとワイルドなお兄さん、そしてジャイアントなドラゴン……

 

あああああーーーー!?

 

完全に思い出して絶叫する。

そうだ、そうだったよここは完全な異世界。あれは夢じゃなかったのか……

「起きましたか、では少年。名前を教えて頂けますか?」

いつの間にか、扉の開く音すらなく、一人の青年が部屋の中に居た。

「何時から其処にって表情ですね。たった今来ましたよ、どんな奇行を取っていたか知りませんがご安心を」

「奇行なんかしてねえよ!!」

思わず叫ぶ武。

しかし、青年は気にも留めず。再び問う

「それで?あなたの、お名前は?」

静かで優しい声だが逆らえない感じのする一言だ。

と言うよりもなんだか首に刃物を当てられた状態で聞かれている様に思えた。

なので、素直に答えるしかない白銀武。

そして、ここからが……彼の地獄の始まりだった。

 

 



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いじめではありません、修業です。

 

 

少年…いや青年、白銀武には事情が説明された。

――ここは君の知る世界ではない。

そんなことは解っている!!

――この世界には、さまざまな種族が存在する。

ドラゴンが喋るくらいだからな。

――…この世界では、基本力こそ正義だ。

物騒なトコだな。

――……俺達は君を元の世界に戻すことが出来る。

じゃあ、さっさと返してくれ!!

――……ぷつん……さっき言っただろ?力こそ正義、そしてそんな大規模儀式魔法を只で使ってやる筈が無いだろォ?タケルクゥン?

……じゃあ、如何しろって言うんだ!!

――簡単な話だ、我々の暇つぶしに付き合ってくれれば良い。なぁに、帰ったときはここに流された時の一秒後だ。そして、どんな物語かは……(知っているけど)知らんがお前はどの道何かに巻き込まれる。その前に俺達が対応できるように鍛えてやるのさ。ギブアンドテイクどころかそっちの利の方が多いな。

わかった、それで良いから早く返してくれ。

――よし、じゃあLesson1 敬意を払え、だ。

え?

 

 

☆★※1週間お待ちください※★☆

 

 

朱麗さんの一週間で紳士コース、性欲の塊を紳士的にするほどの素晴らしいビフォーアフター。

礼儀を知らないお子さまが、最低限の礼儀を覚えました。

ついでに身体も最低限引き締めました。

 

1週間ぶりに、灰根が武を呼び出した。

「さて、本日から我々の暇つぶしで貴様を鍛える、少し其処に座れ、情報を取る」

少年、白銀武はその言葉の意味がわからなかった。しかし逆らうだけ無駄だと理解しているのか一時停止したがそのまま指された椅子へ座った。

「さて、お前の世界の物語、少し、視させて貰うぞ?」

武はその直後、起きた事に驚いた。今居る場所は部屋中央の椅子。

そして床一面には辛うじて何かが書いてある、模様が有ると分かる程度の細かく緻密な何かが書いてあり、それが光り始めたのだ。光るまではその存在に気付く事など出来なかった。

陣は20m四方に及び、それは只一つの目的のためのものだ。

対象を通してその向こう側の情報を除く。そしてある魔王から奪い取った未来視能力を用いて、対象にどのような運命が待ち受けているのか、古い映像を見たときのようにノイズが酷いが、見ることが出来るというモノだ。

一誠のことが会って早急に作ったものだが、それは確かに力を発揮した。

壁に何かが映し出される。よくある、王道的なエr……ギャルゲー主人公のような人生を送る白銀武。

しかしその映像が急に乱れ、二つに分かれた。

さっきまでの物とはかけ離れた、グロテスクなバケモノ、それに対し、ロボットに乗って戦う白銀武。

しかし、バキッといった破砕音と共にその映像はノイズに飲まれて、その直後に消えた。

 

Side HAINE

さて、自分が思うことは一つだな。

余りにも断片的過ぎて、訳がわからないよ。

と言いたくなったが……それでも欲しい欲しい情報は手に入った。

要するに、パイロットとして育てればいいのだろう?

対Gは……プロの戦闘機パイロットが正気を疑うレベルまで引き上げよう。音の三倍で飛び回れるくらい……は行き過ぎか?

まあ良い限界まで伸ばすとしよう。

「とりあえず、部屋に後で使いを出す、それまでは自室待機だ。」

さて、対G訓練か……まずは小回りの利く小型のドラゴンに乗せて高速3D戦闘を体験させるか。

並行して阿呑による肉体改造に、防人による整備知識の捻り込み、草による心理学、朱麗の射撃訓練に……その他諸々。

良し、二月で何とか……1日五十時間頑張れば(※つまりは、超密度を更に倍……数日以内に過労で天に召される程度の密度)

……まあ、冗談は置いておいて、大体一年である程度まで持っていくか。

 

 

 

 

==はつふらいと==

 

 

……ぁぁぁぁぁぁぁ……

 

 

……ぁぁぁあぁぁああぁあああ……

 

 

……ギィヤァァァアァァァアァアァアアーーーー!!!

 

「ちょ、無理だって、無理無理!!おかしいって!!何?しがみ付いてろって、無理だよ!!つかむ所なんて鱗しか無いじゃん、鱗はがして殺されるとかヤダよ!?ちょ、また急降下ぁ!?」

小柄の飛竜の首に掴まり…否、しがみ付いた武が再び5000mの急降下に入る。

その更に500mほど上、まるで平地に置かれたかのように存在する机と三つの椅子。

其処に、灰根、防人、朱麗の三人が座って見学をしている。

其処に一人の男、草がまるで空中を歩くかのように近付き配膳を行う。

「上空は少々冷えるので暖かい物を持ってきました。」

「ん」

用意された物を啜り、頷く灰根。

「草ちゃんも器用よね、料理長が用意した物を直線距離で2kmぐらい?零さないどころか適温にして持って来るんだもの」

素直な感想なのだろうが、居る位置を考えるとオカシイ……でもここでは当たり前のようだ。

「あなたも、欲しい物を書いた矢文を開いた窓から器用に送りつけてくるんですからね」

それに対して草は何を今更見たいな笑みでそう返す。

「……阿呑は?」

この場に居ない阿呑について尋ねる防人。

「阿呑でしたら……ああ、今来ましたね。ほら、あそこに見えるあの龍に乗っていますね。大規模な龍と竜を使った空中戦の訓練でも行うんじゃないですか?武君がくっ付いているあの竜は他に比べて高速軌道が得意ですから……戦場を駆け抜ける体験でもさせるつもりでは?」

草の指差す先には遠近感が狂いそうなほど大きなドラゴン二匹と小から中型の飛竜の大軍。ドラゴンの片方の背に、大きな人影が見えた。

「そうか、なら巻き込まれないように障壁(かべ)作ってあと200くらい上がるか」

灰根がそういって指を鳴らし、人差し指を上に曲げる。するとまるでエレベーターが上昇するかのように彼らが動き出す。

そして皆当たり前のように動じない。

と、其処へ下方より何かが……いや、さっき急降下して行った飛竜が追いかけるように昇ってきた。

そして四人の上昇が止まった所で追いつき……ピーピーといった感じのかわいらしい鳴き声でなにかを訴えかける。その表情は何処か困り顔に見えないことも無い。

この竜はまだ若く全長も2mと少しほどしかない。

灰根はその竜に足場を創ってやる。すると…背の方を気にしながらなにかを訴えてくる……

…白目を剥いた、漫画なら口から何かが出ていそうな状態でありながら執念のような物で首にくっ付いている武が居た。

「なるほど、ちょっと早すぎたか?」

うーむ……想像以上に常識…人間の強度を忘れているな……と更に呟く灰根。

「加速病……と、高山病だな。緊急を要する」

淡々と状況を判断する防人。生死の狭間どころか、あの世に少し踏み込んで居る気がするのは……気のせいなのだろうか?

「あら、あなたよく見たら綺麗な紅色の鱗ね。この距離で見ると光の透過が綺麗だわ」

竜をなでながら話しかけている朱麗。

「では、私はこのことを阿呑に知らせてきますね」

そう告げて人蹴りで姿を消す草。

 

……白銀武が治療されたのは十分後であった。

 

 

後に白銀少年はこう述べた。

六文銭が手の中に合って驚いた。船頭のお姉さんが寝ていなかったら帰って来れなかったかもしてない。

 



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わざとじゃないです、素でやりました。

 

 

 

 

 

ゼェゼェゼェゼェ…………スゥゥゥッ!?…ゲホゲホ

 

突然で申し訳ありません、白銀武です。

なんでも体力作りとかで、日に日に装備が重たくなって来ていまして、今日は唐突にとんで、全身鎧(フルプレートアーマー)を来て、フルマラソンより長い50km走り終わるまであらゆる休息がおあずけ状態です。

今やっと、10km終わったと言われました。

 

 

もう、ゴールしても良いよね?

 

 

 

ドサッ!!っと前のめりに倒れ、地につく前に武は意識を無くしていた。

 

 

 

 

「……重度の脱水症状と酸欠、鎧のせいで体温調節が上手く出来ずに熱射病とか諸々……阿呑、こいつは人間。そこを注意しろ」

最近、医者のようなポジションを追加で持ち始めた防人が淡々と病状を告げ、対処(そせい)を行い、阿呑にそう言う。

「ぬ……ぬう………」

まるで、そんなに厳しくしていないとでも言いたげな阿呑。

「私は、流石に全身鎧はやりすぎだって言ったのよ?」

朱麗がそう言う。

そのままの意味だろうが、彼らのことを知らないと……いじめが見つかった時に、俺は止めろって言ったんだと言うのと同じように聞こえただろう……いや、おなじか?

 

止めなかった点では同じだろう。

 

こうして、武は一日の休日を得た。

まあ、布団の中での休みだが……

夢の中で再び、彼岸花の綺麗な場所へ………

運良く、今回も船頭さんが寝ていたため蘇生が問題なく行われた。

 

そして次の日……

 

武が逃げたがる己をなんとか押さえて中庭に向かった。

逃げれば、より一層酷い目に遭うと彼の勘やら本能が告げているのだ。

そして向かった先では……多くの兵士(?)が、異種格闘戦、超常的な大乱闘が行われていた。明らかに宙に浮きながら戦う者、拳で正面から斧と戦う者、弓が銃と打ち合っている者も居れば、遠くで吹っ飛ぶ大量の人……中央には巨漢、剣や斧その他で確り攻撃されているにもかかわらず、血を流していないどころか、ダメージが見えないのは何故だろうか……

「おい、たしか、白銀だったか?」

其処に格闘家のリオ、武を迎えに行った片割れが話しかける。

しかしそれは偶然見かけたからなどと言うものではなく、目的があって話しかけたのであった。

「あ、はい。そうです、先日はありがとう御座いました」

誰だお前と言いたくなるくらい、丁寧な態度で返事をする武。

「気にすんな、仕事だ、仕事。

そして今からも仕事だ。阿呑さんがやり過ぎるからって理由で監督が俺に代わった。お前にある程度の強度(レベル)ができるまではよろしく頼むぞ」

何だか、文法的におかしな点があった気がする。

レベルができる?

 

「とは言っても基本的なメニューは阿呑さんが作ったヤツだから一日中動きっぱなしだ。さあ、今すぐ始めるぞ」

さらに、まだ基礎作りの段階みたいだからな、先は長いぞ。と言われ……

どうやら俺は地獄の入り口にすら入っていなかった様だと空を仰ぐ白銀少年が居た。

 

――実際は辿り着いてすら居ない。

 

「あー…最初はこれか、一時間耐久ランニング。城のトレーニング部屋使うみたいだな。ほら、行くぞ」

リオはそんな武を無視するかのように予定表を見て歩き出す。

ああ、確かに常識は持ち合わせているんだろうけど、やっぱりドライだ。

出来ればあのおねーさんがよかった。

「オイ、テメエ今ゼッテーシャルのほうがよかったとか思ってんだろ、残念だったな、俺のほうが鍛え方を知っているから選ばれたんだ、ただこのメニューどおりならお前は明日にはまた死にかけるだろうよ」

相変らず常識から外れたメニューだなぁ、おい。

悪魔で百年くらい戦士やっているなら兎も角、まともに鍛えた事のないやつがこんなの出来る訳ねえだろ。

と、呟きながらも早く来いと促してくる。

そんなに酷いメニューなのか?

と思ったが聞く必要も無さそうだ。その表情を見れば凄くよく分かる。

ああ、この人結構苦労してるんだな……

「おい、今同情しただろ。ふざけんじゃねえぞ、テメエの方が明らかに哀れな状況なんだからな。精々死なねえことを祈っておいてやるよ」

ちょっと待って、俺ってそんなに酷い立ち位置に居るの?

ねえ教えてよ!!

「そんなことよりさっさと動け、時間は確り指定してあるんだ。もしノルマ終わらないと今後の密度が上がるぞ」

 

直ぐにトレーニング室に向かった武を待っていたのは……

傾斜角20度長さ20m幅10mのランニングマスィーン

それを見て絶句している武にリオは平然と告げる

「よくわかったな、それで一時間走り込みだそうだ。なあに、軽いランニングと変わらんペースを乱さなければなんとかなる。ほらさっさと乗れ………えーっと?35~40km/hか……で、障害物は無しっと。よし始めるぞ!!」

待ってほしい。そのペースだとフルマラソンが一時間半掛からない。

それ以前に、百メートル十秒、時速36kmの時点でオリンピック選手のレベルですよ!?

しかも傾斜付いてるじゃないですか!!

何度かは知らないけど100mで15m下がるくらいで標識には急勾配速度落とせみたいな標識立つんですよ!?

これ、明らかに心臓やぶりの坂とか越えていそうな角度ですよね!?

―白銀少年心の叫び。

「おっと、すまん角度直すの忘れていた」

そうですよね、できれば速度も間違えで!!

「10度だったな」

角度が半分くらいになった。つまりあれは20度?

しかし、傾斜角十度と言うのも十分にふざけている。

しかし、それを設定した彼は平然としているところを見るに、この設定はおかしくないらしい。

こんな常識間違っているよ!!

 

そして、やはりと言うか……一時間と持たず気を失い、回復アイテムで強制回復→再び走る→倒れる→回復→筋トレ→倒れる→回復→……のループを十時間続けて終了。

確か超回復とかで実際に筋肉がつくのは一月近く後の筈なのに、十時間で無駄な贅肉が落ちて引き締まった身体に……

 

白銀武はこの日、どんな薬を飲まされたのか不安になり、夜も眠れなかった……

 

 

 

 

 

時間は戻り、武と別れたリオはその手に持つビンを見ながら呟いた。

「しかし凄いな、防人・灰根・阿呑三名合同制作、『神酒(ソーマ)ベースの栄養ドリンク』は……瀕死だった人間を全快どころか超回復まで促すなんてな……なるほど、だから《ぶっ倒れるまで飲ませるな》か。確かに使い方間違えるとやべえな、これは」

健康な物に飲ませれば、悪魔なら栄養過多でハイになって人間なら昇天しかねないだろう。

故に、武が眠れないのはただ不安だからではない。

「だけどこれなら確かに早いところアイツを目標の強度(レベル)まで持っていけそうだな。今日だけで一割に満たないとは言え、目標の数%まで行ったんだから、あと……早くて十日遅くて二週間って所かな……あーでもこれ、足りるか?」

リオは、不安になり、ここに入っていると教えられた冷蔵庫を見に行った。

様々な冷蔵庫が所狭しと置いてある冷蔵室。その一角に明らかに他と違う物が置いてあった。

その扉の一つ、指定された番号の扉を開ける。

その中にはゲシュタルト崩壊を起こしそうなまでの栄養ドリンクが……少なくとも、五千を超えそうに見える。

つまりは、あの人達は、あの少年がそれだけの回数ぶっ倒れると判断しているのか!?

………良し、じゃあこれを使い切る心算で鍛えるとしよう。

 

 

 

 

 

幹部専用調合室

 

「そー言えば阿呑、アレどれだけ量産したんだ?」

「うむ、ざっと6666本だついつい創りすぎてしまった。

神酒(ソーマ)ベースの超回復を目的とした回復アイテムを作るといわれたら筋肉のためにも作らざるを得ないではないか!!」

「おいおい、白銀少年の為のだぞ?そんなに作って如何するんだ」

「ぬ……また誰かが流れてきた時に使えば良いのでは?」

「はぁ……それまで持つのかねぇ……」

 

うっかりと信頼が合わさった結果、武は地獄が約束された……



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