この素晴らしい世界で恋愛を! (めむみん)
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恋は突然に

これ以上シリーズ増やしたらまずいと思いつつも、書いてしまったのでここに記します。
当シリーズはカズ→めぐな作品となっています。
基本カズマ視点です。


-KOIHATOTUZENNI-

 

あの子から告白を受け、仲間以上恋人未満の関係になってからどれほど経ったであろうか?

今日俺は人生始まって以来初めての真剣なプロポーズをする。

集合場所は敢えてギルドにした。

デートの誘いは恥ずかしいから、今日の俺に託していた。

ちなみに託された俺は今、昨日の俺を恨んでいる。

こんな勇気のいること昨日のうちに終わらせておけよ。

この後の本番まで持たなかったらどうするんだ!

 

「めぐみん。ちょっといいか?」

 

少し、ぎこちない動きになっているのが自分でも分かる。

恥ずかしい。

 

「何かいいクエストでも有りましたか?」

 

クエスト?

こいつは何を言っているんだ?

そんなの俺が探すわけないのに。

まあ、昨日は今日の事で頭いっぱいだったから適当に返しちゃったのかもしれない。

ギルド集合にしたから普通に辿り着く話だったか。

しかし、何だか今日のめぐみんを見ていると違和感を覚える。

 

「そうじゃなくて二人で話がしたいんだ。爆裂にはその後付き合うからさ」

「そうなのですか?では行きましょうか」

 

何処か不安げで少し怯えているようなめぐみん。

何を恐れているのだろうか?

何時もなら喜んでついてくるのに。

 

 

 

「・・・」

「・・・あの、改まって話とは何でしょうか?」

 

不安げに俺を見つめるめぐみん。

いいムードで告白しようとしていたから困っている。

とは言えここは腹を括るしかないだろう。

俺は準備していた指輪を取り出し、徹夜して考えたセリフを言った。

 

「めぐみん。俺と結婚してくれ」

「・・・へ?」

 

唐突な告白とは言えこの反応は何だろうか?

まるで想像さえしていない事態に直面したかのような。

 

「・・・あのー、今何と言いましたか?もう一度お願いします」

 

もう一回言えってか?

さっきのも全部演技だとすると意地悪が過ぎる。

そりゃあ今まで待たせてきた俺も俺だけど。

ここで頑張らなきゃ男が廃る!

 

「めぐみん。俺と結婚してくれ」

 

これで満足してくれただろうか?

じゃないと俺のメンタルが持たない。

 

「えっと・・・あっ!もしかしてアクアに賭けで負けた罰ゲームですね!」

 

・・・え?

如何してここでアクアの名が?

それにやっぱり今日のめぐみんは何処かが違う気がする。

なんと言うか幼いような?

それにどうして罰ゲームなんて単語が出るんだ?

 

「こんな指輪まで用意して、アクアもアクアです」

 

そう言えば俺らってこんなに身長差なかったっけ?

これじゃあまるで・・・

 

「会ってすぐにプロポーズなんて驚きましたよ」

 

・・・やっぱりか。

過去に、しかも出会った頃に戻ってる。

 

「アクアにはちゃんと言ってあげますからそれはしまってください」

 

ここはめぐみんの解釈に乗るべきかな。

いやしかし、このまま引き下がるのも何だか違う気がする。

元の時間に戻れるかどうかも分からないし、いっその事めぐみんルートを最初から突っ走ってやろう。

「その必要は無いぞ。だって俺は本気だからな」

「何をそんなに頑張っているのですか?失敗したらしたで良いじゃないですか」

 

諦めが悪いとかそんな風に思っているのだろう。

アクアが何処から見ているのかをキョロキョロと見渡して探している。そんなめぐみんに俺は近付いて行き・・・

 

「・・・カズマ?あのどうしたのですか?もしかしてお酒が入ってますか?」

 

検討違いな事を言い出すめぐみん。

色々吹っ切れた俺は戸惑う事無くめぐみんの逃げ場を塞いだ。

かの有名な壁ドンを用いて。

 

「か、カズマ?本当にどうしたのですか?顔が近いと言うか、恥ずかしいのですが・・・」

 

やばいどうしよう。

照れて焦るめぐみんが可愛い過ぎる。

いつもならカウンターくらうだけで、こんな表情見れないのに。

もっと焦ってる所が見たくなってきた。

 

「めぐみん可愛いぞ。愛してる」

 

いつものめぐみん相手なら絶対言えないけどつらつらと出てくる。

 

「あ、愛してる!?か、カズマ、何か変な物食べましたよね!?」

 

紅潮させつつも冷静を装い、何とか現実から逃げようと必死なめぐみん。

紅い瞳がより輝いていて魅力的だ。

めぐみんの気持ちが分かった気がする。

これとめられないやつだ。

 

「何も食べてないし、本心だぞ?何なら今から好きな所言っていこうか?」

「わ、分かりました。分かりましたから一旦離れてください」

 

流石に嫌われると嫌だからここは素直に従った。

 

「・・・気味悪がらせて私を追い出そうとしてませんか?」

 

中々しぶといな。

確かにこの状況だとそう考えるか。

 

「してないし、お前が抜けると言っても抜けさせないから」

「ちょっ、ちょっと待ってください!一週間前は是が非でも追い出そうとしてましたよね!」

 

少し嬉しそうに微笑んだと思ったら厳しい口調で指摘された。

怒ってるめぐみんも可愛いな。

そうか出会って一週間か。

この時はめぐみんと恋するなんて思ってもみなかったな。

逆にめぐみんがこのタイミングでデレたら、俺はどんな反応してたんだろう。

・・・多分、手玉に取られて、今とは違う形でめぐみんルートまっしぐらな気がする。

 

「だから何だよ?今俺はお前の事好きなの。それでいいだろ?」

「な、な、な...よ良くありませんよ!何があったのですか?絶対何かされてますよね!」

 

全力で否定にかかり、何としても認めようとしないめぐみん。

さてとこうなったらあれするしかないな。

 

「ネタ魔法なんて言われても負けず、爆裂魔法に一途なめぐみんが好きだ」

「えっ?」

「あっさり裏切ったりもするけど、仲間想いで優しい所も好きだ」

「えっと・・・」

「クール振ってるけど、今みたく逆境に弱い所も好きだ」

「・・・」

「それに何よりめぐみんの笑ってる所が『も、もういいです!』・・・」

「か、カズマの気持ちは、分かりましたから」

 

途中から黙っていたから聴いてくれるものかと思ってたけど違ったみたいだ。

にしてもかわいいなあ。

ずっと見ていられる。

 

「そうか?なら止めるけど」

「あ、あの、ちょっと待って貰ってもいいですか?急な事で私もどうすれば良いのか分からなくて」

「急いでる訳じゃないし、ゆっくりでいいからな」

 

俺としては焦って可愛いめぐみん見られるし、いつまでも待ってられるけどな。

 

「・・・取り敢えず友達から、というのは変ですね。親友から始めませんか?」

「まあ、仲間だしな。分かったそれで行こう。その中で返事を決めてもらえればそれで良いし」

 

仲間以上恋人未満から親友へ。

これって昇格なのか降格なのかよく分からないな。

 

「じゃ、じゃあ私はこれで」

「何処行くんだ?爆裂しに行かないのか?」

「・・・」

 

 

 

 

 

「『エクスプロージョン』ッ!」

 

このように初期めぐみんと共に爆裂散歩に来た訳だが、なんと言うか慎ましさを感じる。

単純に威力がないだけだろうけど、それとは違う要因がある様に思う。

 

「うーん、今日のは爆発がイマイチだな。五十二点」

「急に何をと言いたいですが確かに点数化するとそのくらいですね。集中が持たなかったのでこの出来です」

 

やっぱりか。

でもこの時期にめぐみんが悩み事なんてしてたかな?

あっ、そう言えば。

今日一日で思い当たる出来事が一つあった。

 

「俺の所為か?」

「・・・そうですが、自分で言います?」

 

ですよね。

突然プロポーズされたら当然だ。

 

「これ大事だからな。ちゃんと意識して貰えてるってわかるし」

「・・・おんぶお願いします」

「はいよ」

 

怪訝そうにしているめぐみんに近付き杖を拾った。

そして思う。

杖が前のやつだと。

懐かしさと共にこの現実が俺に突き刺さる。

 

「カズマ?どうかしましたか?」

「いや、なんでも。ほらちょっと手に力入れてくれ」

 

こうしていつものようにめぐみんを背負った訳だが。

・・・こいつ本当に大丈夫なのか?

出会った頃は、自分の事で精一杯で気にしてなかったが、この軽さは異常だ。

あんなに凄い魔法放ってエネルギーも使い果たしてるだろうし、栄養不足とか心配だ。

脚気なんかになるかもしれない。

出会った時は三日も食べてなかったし、家は家で食料がなかっただろうし、ゆんゆんから巻き上げる弁当が生命線とかも言ってたし・・・

あっ!

こめっこも大丈夫なのか?

めぐみんが仕送りしているとはいえ、シャバシャバのお粥しか食べてなかったよな?

これは一度まとまった金をゆいゆいさんに渡すしかないか。

 

「なあ、めぐみん起きてるか?」

「ええ、何でしょうか?」

 

寝かかっていたのか、声が小さく気怠そうだ。

 

「明日お前の家行かないか?」

「・・・ちょっ、ちょっと待ってください!家に行ってどうするつもりなんですか!」

 

さっきまでと変わり手に力を込めて抗議してくる。

やばい首締められそう。

でも、可愛いから許す。

 

「どうするも何も、めぐみんがギリギリの生活の中でも仕送りする程の実家に援助しようかなって」

「そんな事しなくていいですよ!カズマ今日は本当に何があったのですか?」

 

めぐみんは俺に何かが起こったと気づいているらしい。

是非とも解明してもらいたい。

 

「強いて言うならめぐみんにプロポーズした。でも急に行くのも迷惑だよな。荷物送るか」

「それくらいならまあ。そのありがとうございます。でもプロポーズしたって手紙は書かないで下さいよ」

 

やっぱ、めぐみんは逆境に弱いな。

そこが可愛いのだけれど。

 

「書く訳ないだろ。仲間に聞かれるのも恥ずかしいのに」

「はあ・・・」

 

 

 

 

 

私は突然の出来事に困惑している。

原因は私をおぶっているこの男だ。

今朝呼び止められたと思ったら、急にプロポーズされたのである。

始めは嫌がらせか罰ゲームの類だと思っていたが、本気だと思い知らされた。

あんなに好きだと言われたのは初めてで、もう何が何だか分からなくなった。

印象に残っているのは爆裂魔法への想いを肯定してくれた事だ。

あの時は驚き半分嬉しさ半分くらい、いや、嬉しさの方が大きかったかもしれない。

徐々に恥ずかしさが溢れていったのだが、初めて認めて貰えた事は凄く嬉しい。

取り敢えずは親友からと言うよく分からない返事をしたがカズマは了承してくれた。

冷静に考えるとこれは惚れ薬の類ではないかと思う。

であるならば親友と言う関係にしておいて正解だっただろう。

解毒なり回復魔法なりで治して貰ったあとのお互いの為に。

とは言え惚れ薬を飲んだからと言って、今日の爆裂魔法に対する精密な採点など出来るのだろうか?

まだ爆裂魔法は数回しか見ていないし、ここまでの理解者になるものだろうか?

ただ言えるのは、今日ほど放ち終えた後にも快感が残っていた事はない。

 

『言う訳ないだろ。仲間にも聞かれるの恥ずかしいのに』

 

カズマはこんな事も言っていた。

あんなに好きだ好きだと言っていたカズマにも恥じらいはあるらしい。

・・・。

こうなってくると惚れ薬説の可能性が私の中で薄れていく。

普通、惚れ薬と言えばもっとこう、盲目的に好きだと言うはず。

それが、今のカズマは、普通に恥じらいを持っている。

加えて朝カズマに言った通り一週間前、なんなら昨日だって厄介者扱いだったのにこれはおかしい。

ギルドに着いたら直ぐにアクアのヒールをして貰おう。

 

「あっ、カズマ戻ったのね!この後宴会だけどどうする?」

「めぐみんが動けるようになったら参加するから、それまで椅子に座って待ってる。何かあったら声掛けろよ」

「分かった!待ってるからね」

「・・・」

 

私のバカ!

折角のチャンスが!

これだと体力が戻るまでカズマと一緒にいる訳で。

 

「どれくらいで動けそうか分かるか?」

「あと二十分程はかかると思います」

 

二十分。

この間私はカズマと二人きりだ。

どうしよう。

変に意識してしまう。

カズマはどう思っているのだろう?

 

「どうした?気分悪いのか?」

「いえ、考え事をですね」

「あまり無理はするなよ?水貰ってくるから待ってろ」

 

言ってカズマはカウンターへと向かった。

・・・カズマが優しい。

いつも雑な扱いだからそれだけでとても嬉しい。

いやいや、これではチョロインではないか。

相手は公衆の面前でパンツを盗るような男だ。

しっかりしろ私!

 

「何やってるんだ?やっぱり疲れてないか?」

「いつも通りですよ」

 

あなたの所為で悩んでいるのだと言えたらどれだけ楽だろうか。

私がこんなに悩んでいると言うのに、この男は何でもないかの如く冒険者カードいじり始め、

 

「・・・えっ!?」

 

急に素っ頓狂な声を上げた。

当然周囲の視線も集まるのだが、当の本人は全く気付かず興奮したままカード見ている。

 

「おいおいこれってまさか俺の時代がやってきたのか?」

 

何やら頭のおかしい発言をした。

今日のカズマは本当に何があったのだろうか?

そんな風に考えていると興奮気味のカズマは私に冒険者カードを見せてきた。

 

「見てくれよ!爆裂魔法覚えたぞ!」

「遂にカズマも爆裂道をあゆ・・・ちょっと待ってください!爆裂魔法を覚えたのですか!それになんですかこれは!殆どのスキルを習得しているではありませんか!」

 

どう考えてもおかしい。

もしかして数多のスキルと引き換えに頭のネジが吹っ飛んだのではなかろうか?

父ならそんなポーションを作っていても不思議ではないし。

 

「まあ安心しろ。俺の魔力だと爆裂魔法は使えないし上級魔法も一回こっきりだろうからめぐみんの役目を奪ったりはしない」

「それも大事ですけど、そこではなくて何があったらこんな事に?」

「俺だって分からない。あっ、めぐみん手貸してくれ」

「手?こうですか?」

 

私が手を差し出すとカズマは私の手を握り唱えた。

 

「『ドレインタッチ』」

 

リッチーのスキルを。

もう理解が追いつかない。

魔力供給がなされ段々身体が動けるようになってきた事しか分からない。

 

「これで宴会に参加できるな」

「は、はい」

 

この後宴会に混ざり、騒いでいる中アクアにヒールして貰ったのだがカズマは元に戻らなかった。

どうしよう。

こうなるとスキルを殆ど覚える珍現象と引き換えにおかしくなったと考える他ない。

明日、図書館で調べてよう。

 

 

 

朝起きたら元に戻っていないかと期待していたが無駄だった。

私の希望は目覚めとともに失われる。

何故ならカズマがわざわざ宿まで迎えに来たからだ。

こんな事今までなかった。

それに、迎えに来た理由を聞いたら、一秒でも早く会いたいだけときたものだ。

はっきり言ってお手上げ状態である。

 

「めぐみん?元気ないけどどうした?」

「寝起きで調子が出てないだけです」

「なら安心だ。今日はデート行く予定だからな」

 

そう。昨日の宴会の後、私はデートに誘われたのであった。

爆裂魔法を撃たせてやるとの殺し文句にイチコロだった。

自分でも思う。

私はチョロインではないかと。

だがしかし、自覚しているのだからほいほいと惚れてしまうことはないだろう。

 

「手繋いでいいか?」

「まあ、それくらいは構いませんよ」

「じゃあ、失礼して」

 

言ってカズマは私の手を握る。

その瞬間の緩んだ表情はなんだか無邪気な子供の様な可愛らしさを感じさせる。

 

「そんなに手を繋ぐのが嬉しいのですか?」

「当たり前だろ?好きな子と手を繋げるんだからな」

 

もう、カズマの価値観についていける気がしない。

いや、恋愛小説とかでこういったシチュエーションは知ってはいるが認めたくないと言った感じだろうか。

ともかく私はこんな中で恥じらうでもなく、ただただ現実逃避をしていたのである。

早くカズマが元に戻らないかと。

 

 

 

 

 

今日はめぐみんとの初デート。

時をかける前には何度かしているのだが、ここではノーカンにしておく。

昨日の宴会で、最終奥義、爆裂散歩同行を使い、何とかデートに漕ぎ着けた。

そして今、手を握りながら街を歩いている所だ。

欲を言えば恋人繋ぎをしたかったが、拒否されるのは分かってるから諦めた。

しかし、昨日のように恥ずかしがったりという素振りは一切見られない。

まさかたった一日で耐性が出来たとでも言うのか?

俺は何度繰り返してもすぐ慣れなかったってのによ。

流石魔性のめぐみんと言った所か。

 

「めぐみん、何か欲しいものはあるか?」

「マナタイト製の杖が欲しいですけど、今度貰うキャベツの収入で払えると思うので大丈夫です」

 

確かに、自分で買ってたな。

あの時のめぐみんは色々やばかった。

 

「そうか。じゃあ他になにかないか?」

「カズマです」

「・・・え?それって」

 

ここに来て、めぐみんルートの道が開かれたのか!?

いやいや、相手は魔性のめぐみん。

きっとからかってるんだ。

ここで反撃すれば、また照れみんが見られるかもしれない。

 

「いえ、カズマはカズマですけど、求婚してくる前の普通のカズマです」

「・・・俺泣いていいか?」

 

散々めぐみんにデリカシーがないと言われてきたが、デート中に言うか普通?

そりゃあめぐみんからしたら急に自分を好きになった仲間とのデートは楽しみでも何でもないだろうけど。

精神的に来るものがある。

 

「すみません。悪気はないんです」

「分かってるよ。欲しいものはやめて、行きたい店とかないか?」

「特にないです」

 

さっきのことを気にしているのか元気がなくなっている。

ちょむすけ探して、元気出してもらおう。

 

「・・・あのう、何処へ行くんですか?」

「そのうち分かる」

「隠れ名店でもあるんですか?」

 

この裏路地にそんな店があるなら俺が教えて欲しい。

迷うことなくそこへ連れて行っていた。

 

「いいや。ここだここ」

「こんな人気もなく店もない所ですか?」

「まあ、待ってろって、おっ、来た来た」

 

ふてぶてしい漆黒の魔獣が、こちら目掛けて走って来た。

やっぱり、ちょむすけは可愛い。

俺の数少ない癒しだ。

 

「何が来たんです?」

「何と言われればこの子だ」

「えっと・・・」

 

予想さえしていなかった愛猫の登場に鳩が豆鉄砲をくらったみたいな顔をしてる。

 

「どうした?猫は苦手か?」

「いえ、その、どうしてちょむすけを?」

「ちょむすけ?」

 

もちろん名前は知っているし、呼び慣れた名前だが、俺は心の底から質問した。

なぜメスなのにちょむすけなんだと言う疑問を乗せて。

 

「あっ、その子の名前です。私の使い魔なんです」

「・・・なんで、野良猫してるんだ」

「宿屋がペット禁止なので」

 

なるほど、ここで放し飼いしてた理由が分かった。

屋敷手に入ってすぐに連れてくれば良かったのに。

 

「俺とアクアが止まってる馬小屋で預かるぞ」

「いえ、この子は強い子ですから大丈夫です。それにカズマ達に押し付ける訳にはいきません」

「水臭いこと言うなよ。俺ら親友だろ?」

「親友?あっ・・・」

 

自分で言っといて忘れていたとは。

やっぱり仲間以上恋人未満よりランクダウンしたって認識が正しいかもな。

 

「ってことでこの子は預かるからな」

「あ、ありがとうございます。・・・一つ聞いてもいいですか?」

「何だ?」

「この子に餌あげてくれていたのはカズマだったのですか?」

 

確か、ゆんゆんがあげてたとか聞いたな。

でももうこの街にはいないよな?

誰が、いや、自分で調達してる可能性もあるか。

 

「いや、この前通った時に懐っこい猫がいたの思い出してめぐみんに見せようかなって」

「そうですか。ご近所さんから貰ってるのですかね?」

「これからは俺が世話するからそういうのも気にしなくていいからな」

 

なんてたって今の俺は小金持ち、一人で質素な暮らしをすれば一年は暮らせる程。

昨日所持品を確認していたら、いつも買い物時に持ち歩いてる額を持っていた。

金がなくて困る事は当分ないはずだ。

アクアが借金作らなければ。

 

「そこまで悪いですよ。エサ代は私が出します」

「いらないって、俺も猫好きだし、仕送りで大変だろ?」

「そ、それは・・・」

 

やっぱりギリギリなんだな。

結構食べてるように見えて、会計の時はちゃっかり値切ったり、クーポン使ったりして、安く抑えてる。

アクアが値切っても聞かないのに、めぐみんなら値切れる違いが未だに分からないが、多分めぐみんの財布を見て色々察してくれるのだろう。

 

「デート中なんだし、男にいいカッコさせてくれよ」

「わ、分かりました。お願いします」

 

照れみんいただきました。

ちょむすけが入ったことで、めぐみんの緊張が少しほぐれてきた気がする。

まあ、さっきのでまた戻っちゃったけど、ちょむすけ愛でてたら落ち着くはずだ。




次回更新するシリーズは未定です。
多分●●をかパラレルワールドになると思います。


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昼食は

今回はこのシリーズの更新です。
七夕なんて知りませんということで普通にお話は進みます。
二人のデートをご覧ください。


-CHUUSYOKUHA-

 

何故かプロポーズする日に過去へ戻されてしまった俺は今、めぐみんとデート中である。

めぐみんはちょむすけに夢中。というよりちょむすけに逃げている。

機嫌取りには成功したけど、これは失敗な気がする。

 

「お昼そろそろ食べるか?」

「ちょうどお腹が減ってきた所です」

「おすすめの店あるからそこに行かないか?」

 

伊達にアクアとグルメ周りしてない。

アクセルの高級料理店で美味い店は知ってるし、めぐみんが好きな料理も知ってる。

ここで、失敗するはずはない。

昨日練りに練って考えたコースの一つだ。

 

「おすすめのお店ですか。楽しみです」

「今すぐ行こうって言いたいんだが、ちょっとトイレ行ってきていいか?」

「どうぞ。そこのアクセサリー店で待ってます」

 

トイレと言うのは嘘で一足先にレストランへと向かう俺であった。

 

「いらっしゃいませ」

「今日予約してたサトウですけど、質問いいですか?」

「はい。サトウ様。ご要件はなんでしょうか」

「猫を連れて来ても大丈夫ですか?」

 

ちょむすけがいた方がめぐみんも落ち着くだろうから確認を取った。

 

「少々お待ちください。サトウ様のご予約はVIPルームですね。はい。問題ありません。ご質問は以上ですか?」

「はい。ありがとうございます。また来ますね」

「本日の御来店お待ちしております」

 

よし、これで準備完了。

ちょむすけを置いて来ることなく昼食が取れる。

あの言い方だと、通常席だったらペット不可だったかもしれない。

ちょっと値は張ったけれど、VIPにしておいて良かった。

 

「お待たせ」

「やっと来ましたか。随分大きかったようですね」

「女の子がそういう話するんじゃありません」

 

これから品位を問われる店に行くというのに、これでは困る。

まあ、いつも通りと言えばいつも通りなのだが。

 

「パンツ盗るような人に言われたくないです」

「・・・それは事故だって話したろ?悪かったって、頼むから嫌いにならないでくれ」

「いや、別にそこまで言ってませんよ?」

 

そんなこと分かってはいるが、確認せずにはいられない。

にしても、パンツ盗られてなお、パーティーに残ってるし、ベルディア倒した後には、俺について来て魔王を倒すとか言ってた気がする。

・・・やっぱりめぐみんは大物なのかもしれない。

 

「分かってるって、よし、着いたぞ」

「・・・ちょっ、ちょっと待ってください。本当にここなんですか?」

 

店の前でそんなこと言い出した。

この店は貴族御用達の高級料理店で、ベルディア討伐後のアクセルの冒険者も少し通っていたお店だ。

恐ろしいほどに額が高いわけではないし、今の所持金で言うと大した出費でもない。

固まるめぐみんの手を引きながら俺は言った。

 

「中入るぞ」

 

手を引かれためぐみんは不安そうな面持ちでついてきた。

馬小屋暮らししてるやつがこんな店来れるはずないとか思って会計の心配をしているのだろうが、いらぬ心配だ。

 

「いらっしゃいませ、サトウ様。こちらへどうぞ」

「今日はよろしくお願いします」

「・・・」

 

案内されて、VIPルームに入るとちゃんとちょむすけ用のご飯皿まで用意してあった。

さすが、先払いのVIPルームは違うな。

めぐみんは何が起きてるのか理解出来ておらず、無言のまま、席に着いた。

 

「料理が出来上がるまで、ごゆっくりどうぞ」

「ありがとうございます」

 

スタッフが出ていくと同時にめぐみんが口を開いた。

 

「か、カズマ。お金は大丈夫なのですか?それと予約してたんですか?」

「初デートだからな。ちゃんと計画したし奮発もした。お金のことは気にするな。もう払ってあるから」

 

まさか予約してあるとは思いもしなかったのだろう。

この驚く顔が見たかった。

 

「あの、こう言う店初めてですし、食事作法なんて知りませんよ?」

「大丈夫。その為に個室にして貰ったんだからさ」

 

恥をかかせることがないように配慮している。

普段のめぐみんの食べ方を見ているとガツガツ食べる時は野生児みたいな食べ方になっているものの、落ち着いて食べてたらそれなりに整った食べ方をしているから心配はしていない。

 

「・・・何だか、それはそれで馬鹿にされてる気がして嫌ですね」

「俺だって作法をちょっと齧った程度にしか知らないからな。お互いに恥をかかないようにしただけだ」

「ならいいです。でもこんなお店どうして知ってるのですか?」

 

昨日からめぐみんの疑問は増えるばかりだろうと思う。

その原因である俺が自覚しているのだから本人は凄く悩んでいるだろうが答えは単純。

未来から来た。

こっちの俺はどうなったのかとか気になる所ではあるが、デート中に面倒なことは考えないでおこう。

 

「それは、昨日調べて選んだんだ。ここで食べるのは初めてだし」

「そ、そうなのですか?名前を覚えて貰ってましたよね?」

「昨日飛び入りで来た冒険者なのにVIPルーム頼んだ客ってのは印象に残ると思う」

 

初めに入った時、間違って冒険者が入って来たなみたいなノリで、軽く退店させられ、予約したいと言ったがそれでも追い出そうとするので金を見せて黙らせた。

こんな事を言うとめぐみんが店員に何するか分かったもんじゃないから言わない。

 

「えっ!?ここVIPルームなんですか!?本当に大丈夫なんですか?大丈夫以前に私が気が気じゃないですよ」

「大丈夫だって、この前賭けに勝って、誰にも言ってないけど数百万持ってるから」

「そ、そうだったのですか。安心しました。カズマが全財産をここに注ぎ込んだのかと思ってました」

 

流石にそこまでバカじゃないし、好きだからと言ってそんな無茶しないぞ俺は。

だって、めぐみん家に仕送りもしなきゃいけないのに。

 

「そっちの方が嬉しかったか?」

「嬉しいとかそういう話ではなくてですね。私はカズマが心配なんです」

「心配?」

 

何の心配か分からないけど、めぐみんに心配されるのは嬉しい。

嬉しいの水準が下がってる気がするけど、過去に飛ばされた今はそうせざるを得ない。

 

「その、カズマは昨日からおかしいと言うとあれですけど、私への態度が変わりましたよね?」

「そうなるな」

「その原因も分かってませんし、こうやっていつもとは違う行動ばかりだと、心配になります」

 

ふむふむ。

めぐみんは俺の身に起こってることを解明しようとしているのか。

是非とも答えを見つけて欲しいものだ。

でも普段と違うと言われても、デート中とか、プロポーズとかって、いつも通りなはずがないと俺は主張する。

 

「うーん、いつもとは違うって言うけど、デートを平時と一緒にされると困るぞ」

「・・・それはそうかもしれませんね。でも心配なのはスキルを覚えていたとかそういった現象も含めて全部です」

 

そこは間違いなく俺が未来の俺だからだろう。

これに関してはそこまで心配してなかったが、確かに、めぐみんからすれば、数多のスキルを覚えて急に自分のことが好きだと言い出したってなるのか。

客観的に見るとおかしくなってるのは間違いないな。

 

「心配してくれるのは嬉しいけど、多分大丈夫。もし、俺がめぐみんの言う元の俺に戻ったらめぐみんのこと、妹分くらいにしか思ってないから」

 

正しくは出来の悪い妹ではあるが、めぐみんを怒らせる必要も無いので、言わないでおく。

とは言え、めぐみんと二歳差と気付いてからは出来の悪い後輩に認識が変わって妹枠ではなくなったのだが、混浴してないからこれであってる。

 

「・・・何故断言出来るのか分かりませんが、分かりました。こうなる前は私のことそう思ってたのですね」

「まあな。そろそろ出来るだろうから一応それっぽい動きとかで頼むぞ。分からなかったら俺の動き見て真似てくれ」

「分かりました」

 

沈黙が数分続いた後、ノックの音が聞こえる。

 

「お待たせしました。こちら、霜降り赤蟹と霜降り赤蟹を使ったグラタンになります」

 

思ってたよりもデカい霜降り赤蟹に少し驚いている。

前来た時よりも大きいし、VIPと通常で差別化を図ってるのかもしれない。

 

「そして、こちらは長期熟成させたシャトーブリアンになります」

 

匂いだけで分かる。

絶対に美味いやつだ。

蟹と肉って組み合わせ中々ないだろうけど、敢えてこの注文にした。

この方がめぐみんは喜ぶだろうから。

 

「ありがとうございます」

 

特に紹介はされていないが、野菜もみずみずしい物が多く、お米も日本のお米に近いふっくらしたもので、グラタンについているクロワッサンもまた美味そうだ。

そして、忘れては行けないのはちょむすけに出されている料理だが、何と、フカヒレである。

VIPってすごいな。

猫がフカヒレ食べられるんだから。

 

「はわわわ。霜降り赤蟹に熟成ステーキ!一生食べることはないと思ってた物が目の前に!いただきます」

「味わって食べろよ。ギルドみたいな食い方はなしだからな」

 

言ったしりからステーキをフォークで刺し、そのまま食らいつこうとしていた。

ギルドでもちゃんと肉は切って食べてたろうに。

 

「あと、乾杯しようぜ。これ、ジュースだけど」

「そ、そうですね」

「初デートを記念して乾杯!」

「乾杯!」

 

めぐみんとしては、もう料理に夢中でデートとか気にしてないかもしれない。

でも、幸せそうな顔が見られるし、俺は満足だ。

それに蟹もお肉も美味いし、最高だ。

ただ一つ悔やまれるのは、蟹を食べてる時って話さなくなるってことだ。

ひたすら黙々と食べ続けて、旨いとか美味しいとかの感想しか言ってなかった。

二人とも食べ終わり、あとはデザートが来るのを待つのみ。

 

「どうだった?」

「凄く美味しかったです。アクアやダクネスにも食べさせたかったですね」

 

こんな時に仲間のことを出すとは何事だとめぐみんなら言ってそう。

まあ、状況が状況だから仕方ないけれど。

 

「それじゃあデートじゃなくなるだろうが」

「それもそうですけど、それ程に美味しかったという事です」

「何にせよ満足して貰えて良かった」

 

と話しているとまたノックされた。

遂にデザートがやってきた。

 

「こちら食後のデザートになります」

 

テーブルに置かれたのはティラミスとプリン。

めぐみんの目が紅く輝き、スタッフは少し怯えながら出ていった。

違うんです。

この子、喜んでるんです。

 

「カズマカズマ!デザート二個ですよ!二個!」

 

子供みたいに喜ぶな。

めぐみんからすれば相当貴重な体験か。

まあ、斯く言う俺も日本にいた時に家族旅行で一回あったくらいのレベルだし、大して変わらないけど。

 

「とろけるような舌触りが最高ですよ!カズマも食べてみてください!」

「そんなに美味いのか?」

 

これぞレストランデートって感じの会話ができてる気がする。

めぐみんの言う通り、口の中でプリンがとろけていく。

濃厚で、口溶けがいいとか最強だろ。

 

「こっちのも、甘くて美味しいです」

 

全部めぐみんの口に合ってよかった。

デザートだけはどうなるか分からないからな。

ショートケーキ嫌いな人とか偶に見るし、なんだかんだで難しい所だと思う。

デザートはおまかせにしたから不安要素ではあったが、並べられた時にめぐみんが好きな物だったから安心した。

 

「ご馳走様でした。カズマ、今日はありがとうございました」

「どういたしまして。でも、デートはまだまだ続くから期待してろよ」

「・・・その、もう、高級なものが出てくるとかはないですよね?」

 

敢えて何も答えずに店を出た。

やはり額のことを気にしているようだ。

この後の予定は大してお金は使わないから気を遣わせることにはならないと思う。

何も答えないでいるとめぐみんは諦めたのか手を握って来た。

少しでも俺を喜ばせようとしてくれてるのが分かる。

・・・もっと自然な形でイチャイチャしたいな。

 

「めぐみんの好みのタイプってどんな人なんだ?」

「えっと、私の好みですか?」

「そう。イケメンがいいとかそういう話」

 

何気にめぐみんの好みを聞くのは初めてだ。

恋愛に興味がなかったと聞いてたし、気にしてなかった。

 

「うーん、里で友人と話したことありますけど、正直に言って恋愛に興味なかったですからね」

「その友達に話した内容でいいから教えてくれよ」

 

恐らく、ゆんゆんが恋バナしようと誘ったのだろう。

じゃないと出会った頃のツンケンしてるめぐみんが恋バナするとは思えない。

 

「ざっくり言うと誠実な人ですね。甲斐性があって、借金なんてしない、向上思考で、勤勉で、気が多くなくて浮気なんてしない人でしょうか」

「・・・そんな奴存在するのか?」

 

イケメンって単語が出なかっただけマシだけども、全部当てはまらないぞこれ。

いや、借金と甲斐性に関しては、俺から借金したことないし、商才もあったから大丈夫なはず・・・

それに浮気はしたことないしな。

誰だ今嘘つけって言ったやつ!

 

「じゃあカズマのタイプは何ですか?」

「俺の好みはめぐみんに決まってるだろ?」

 

言わずとも分かるだろうに。

昔の好みは違うけど、それとこれとは話が別だ。

 

「聞いた私が馬鹿でしたよ。はぁ、じゃあさっきみたいにこうなる前ならどうですか?」

「それはロングのストレートで、巨乳な俺を甘やかしてくれる優しいお姉さんだな」

「・・・そんな人存在するんですか?」

 

さっきの俺と同じ返しだった。

まあ、そうなるよな。

 

「いや、見たことない」

「って、そんな理想像でどうして私なんですか?自分で言うのも何ですけど真逆ですよ?」

 

それ言ったらお前も真逆なやつに惚れてたろうがって、今のめぐみんに言ってもしょうがないか。

それに、一般論的な回答だし、本気でこう言う人が好みって訳じゃなさそうだし。

 

「いいか?人を好きになるってのはな。タイプかどうかじゃないんだ。その人その者が好きになるんだ」

「すごくいいこと言ってる筈なのに、カズマが言うとしっくり来ませんね」

「おい」

 

なんてこと言ってくれるんだと抗議しようと思ったが、クスッと笑うめぐみんに見惚れて出来なかった。

めぐみんさんの適応能力高すぎやしないか?

どうなってんだ。

この時点で俺を翻弄させるとか魔性過ぎる。

 

「どうかしましたか?」

「いいや、何も。それより、目的の場所に着いだぞ」

「劇場ですか」

「デートの定番だろ?」

 

日本だったら映画見に行くとか、一度はやってみたかったな。

めぐみんと行く映画ってアニメとかアクション系なイメージがある。

因みにここの劇場はペット可だからちょむすけも入れる。

 

「定番過ぎて候補に浮かばなかったです。何を見るんですか?」

「デストロイヤーを暴走させた男の話」

 

謳い文句が、何故男は叛逆したのか。

科学大国の闇に迫るとかあって、軽く笑ってしまった。

本当はただ暴走しただけだって教えたい。

 

「恋愛ものじゃないんですね」

「恋愛ものの方が良かったか?」

「いえ、デストロイヤーの方が見たいです」

 

めぐみんなりに気を遣ってくれてるのが、分かるが、今日はめぐみんを喜ばせる為に俺が企画してるんだから心置き無く楽しんでくれたらいいんだけど、そうはいかないものか。

 

「今日はめぐみんの好みに合わせてるから、デートっぽさとか気にしなくていいぞ?」

「・・・何故私の好みがわかるのか疑問ですが、分かりました」

 

この世で、血の繋がりがない中では誰よりもめぐみんのことを知ってると自負している。

 

「チケット買わないんですか?」

「俺を誰だと、思ってるんだ?チケットは買ってあるから、中入るぞ」

「・・・カズマって、案外しっかりしてるんですね」

「一言余計だ。てかさっきのレストランで予約してたんだから当然だろ」

 

なるほどと、手を打つめぐみん。

この頃のめぐみんは俺をどう評価してたのだろうか。

 

「めぐみんの中で俺ってどんな人なんだ?」

「昨日以前のことですよね?そうですね。包み隠さず言うと変な人ですかね。服装も変ですし、ちょっと常識が抜けてますし、口撃力の高い人だなあと。それでいて勤勉な一面もあるなと」

 

ボロカスに言われてるじゃん俺。

勤勉以外にいい所ないし、勤勉なのはお金ない間だけだと思うから直ぐに消える印象だ。

 

「一応言っておくけど、金を手にしたら俺は引きこもるタイプの人間だからな」

「自分から言うあたり、誠実なのか怠惰なのか分かりませんね。あっ、そろそろ始まりますよ」

 

照明が消え、辺りが暗くなる。

さて、どれだけ史実と乖離した物語が見れるのか楽しみだ。




次回の更新作品は未定ですが、このまま週一投稿を継続していきたいと思っています。
よろしくお願いします。


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存在意義

先週もまた投稿が止まりすみません。
今日二話上げるつもりでしたが、間に合わなかったので、出来ていたこちらだけ先に投稿します。


-SONZAIIGI-

 

初期めぐみんとの劇場デート中。

デストロイヤーを作りし男とか言う、史実とは異なり過ぎる劇を見終えた。

ストーリー構成はバッチリで、普通に見れば楽しめるんだろうけど、事情を知ってる俺は終始笑っていた。

上演が終わったら他のお客さんに凄く睨まれたけど、しょうがねえじゃん。

だって、ひとり悲しく死んだおっさん開発者を、超若いイケメンが演じてるし、スパイがいるとか言って研究員なのに戦ってるし笑

つか最後に国を崩壊させたお前が一番のスパイだろうが。

 

「カズマ?何故ずっと笑ってたんです?」

「めちゃくちゃ面白かったから」

「・・・笑いのツボ浅すぎませんか?」

 

笑い続けるとは何事かと指摘しないのは、俺がおかしくなってるから仕方ないとか思われてるのだろうか?

 

「いや、そんなことないぞ。めぐみんは面白くなかったか?」

「カズマが何故笑っているのか、気になってそれ所じゃなかったですよ」

「つまり劇を見ずにずっと俺の事見てたのか」

 

好きな子からずっと見られてるのは、悪い気はしないな。

でも、その理由はあまり好ましいものじゃないと思うが……

 

「そうですよ。カズマには何か変な物が見えてるんじゃないかと心配でした」

 

予測は当たっていた。

やはり、俺はめぐみんから可哀想なやつ認定されてるようだ。

 

「見えてないって、人それぞれの見え方があるんだって」

「・・・そう言うものでしょうか?」

 

ここは納得してもらうしかない。

デストロイヤーの真実を知ってるからとか言えないしな。

 

「だって、こんなにも可愛いめぐみんが、カッコよく見える時もあるし、子供っぽく見える時もあるし、色っぽく見える時もあるし、やっぱりなんと言っても美少女だし、俺に色んな姿を見せてくれてありがとうございます」

「きゅっ、急に何言ってるんですか!やっぱり変な物食べて幻覚症状とか起こってませんか?」

 

照れみんいただきました。

帽子深く被って顔隠してもバレバレ。

その動作が照れてる証拠だ。

 

「本心言ってるだけなんだけどなあ」

「ううっ、今日のカズマは変です」

「つうことは昨日は普通だったと」

「いえ、今日も変です!」

 

この状況が変なのは俺も自覚してるから、早く解明したい。

でも解明したら、こんなにも照れまくるめぐみんとお別れしなければならないかもしれないって思うとまだいいかなと思ってしまう。

 

「まあ、そうだよな。そろそろ爆裂しに行こう」

「とりあえず爆裂させとけばいいと思ってませんか?」

 

この頃の俺は間違いなくそう思ってただろうな。

今日はそもそも劇の後に爆裂散歩の予定だったから、思ってもないけど。

 

「爆破シーンみて、爆裂魔法を見たくなったんだよ。めぐみんの爆裂魔法見るのも好きだし」

「そ、そうですか。では行きましょうか」

 

赤くなった顔を見せまいと、速度を上げて正門の方向へとめぐみんは駆けて行った。

 

 

 

お手ごろな岩を見つけて、爆裂の準備をしているのだが、めぐみんが詠唱を中々始めない。

 

「なあめぐみん。やる気出す為にキスとかしてみるか?」

「い、いりませんよ!昨日みたいな出来にならないように、今集中してるんですよ!それに、普通親友同士でキスしないですよ!」

 

言われてみればそうか。

顔真っ赤にして照れてる所がまたかわいい。

爆裂魔法を放ってる時はカッコイイめぐみんだけど照れながら打ったらかわいいもつくとか、めぐみん最強じゃん。

 

「あのう。カズマ?そんなに見られると恥ずかしいのですが」

「お構いなく」

「構いますよ!カズマは爆裂魔法を見たいんですよね?」

 

間違ってはないけど、完全回答ではない。

爆裂散歩の時、初期の頃でも魔法がどうなってるのか気になって、結構めぐみんのこと見てたんだけどな?

まあ、恋愛感情なんて一切乗せてない、ただの興味心だけど。

 

「おう。めぐみんが爆裂魔法を放つのを見たい。俺はめぐみんの動きに無駄がないかも含めて採点してるから見ないでとか言われたら精度落ちるぞ?」

「・・・分かりました。頑張って慣れます」

「ごめんな」

 

自分ばっかりで色んなことめぐみんに押し付けてるよな。

急に告白されたりとか、高級料理店に連れてこられたりだとか。

もうちょっとめぐみんのタイミングとか考えて動かないと。

 

「謝らないで下さいよ。私が悪いみたいじゃないですか」

「俺が爆裂道の妨げになってないか心配になってきたから」

「そ、そんなことないですよ。カズマの採点は必要ですよ。何故採点できるようになったかは謎ですけど、凄く精確な点数ですから励みになってます」

「そうか。それはよかった」

 

嬉しさのあまり、深く考えずにめぐみんを抱きしめた。

・・・俺は何やってるんだ?

今のめぐみんにこんなことしたらまずい。

それこそ蹴飛ばされてもおかしくは・・・

あれ?

めぐみんがなんか大人しい。

下を見ると力んで、表情が硬くなってるめぐみんが見えた。

 

「も、もういいんですか?」

「無理やりハグとか嬉しくもなんともないからな?嫌なら突き放していいんだぞ?俺も無意識に抱きしめたのは悪いけど」

「無意識であんなことできるんですか?少しでもカズマに喜んで貰おうと思ってですね」

「昼食のこととか気にしてるのか?」

 

こくりと頷き、不思議そうにこちらを見ている。

めぐみんも何だかんだで恋愛経験ゼロだもんな。

しかもまだ俺を意識してない頃合だし。

 

「いいか?俺はめぐみんと一緒にいたいし、ハグとかキスとか、この際だから包み隠さず言うけど将来的には夜の営みとかもしたい」

「そ、そうですか」

 

じゃあ何故止めたんだと言わんばかりに、少し怯えながら凝視している。

 

「でもな。それはめぐみんもしたいとかそれでも構わないって思ってくれてるのが大前提。心の底ではやりたくないとか嫌だとかって気持ちがあるなら断ってくれた方が嬉しい。俺が原因でめぐみんが傷付くのいやだから」

「・・・カズマは優しいですね」

「今更だな。俺は元々優しいぞ?」

「私をパーティーに入れないと必死だったの誰でしたか?」

 

もちろん俺だが、アクアという問題児がいる中に中二病一発屋魔法使いなんて言う、クセが強すぎる子は追い出したくなるだろう。

 

「あれは優しさの問題じゃない。死活問題だからだ」

「私にとっても死活問題でしたよ。あの時は私が行って取り合ってくれるパーティーはもうなかったですから」

「みんな生きるのに精一杯ってことだな」

 

死活問題の度合いで言えばめぐみんの方がやばかっただろう。

俺らはというかアクアが土木関係で才能開花してたからある程度重要な位置にいたけど、めぐみんはバイトとかお客相手にキレてクビになってそう。

 

「・・・今何か失礼なこと考えてますよね?」

「そんなことより早く爆裂魔法を見せてくれよ」

「・・・はあ、いいでしょう。緊張もほぐれました」

 

言って詠唱を始めた。

ここに来てから何分たっただろうか。

まあ、これで援助交際感が拭えた気がする。

自然体でいて欲しい。

 

「いきます!『エクスプロージョン』ッッ!!」

「おお。今日のは迷いもなく、音圧が整ってていいぞ。八十六点だ」

「ホントに納得のいく採点でびっくりですよ。ありがとうございます」

 

何年お前の魔法を見てきたと思ってるんだとか言っても意味ないよな。

何年とか言いつつ期間は二年程で、サボってた期間もあるけど、そこはカウントする方向で。

 

「爆裂の美しさとか、爆風の魅せ方とかが足りなかった」

「そうですね。明日こそは九十点超えてみせます」

「おう。満点の爆裂が見られるの楽しみにしてるぞ」

「はい!」

「ナイス爆裂!」

「ナイス爆裂!」

 

これだよ。これ。

やっぱり俺たちのデートは爆裂散歩なのかもしれない。

今度からは変にレストランとか予約するのやめとこう。

めぐみんの笑顔も取り繕ったものじゃなく、満面の笑み。

こうじゃないとな。

 

「カズマ、おんぶお願いします」

「もちろん」

 

さて、数少ないめぐみんに触れられるチャンス。

ここでめぐみん成分を補充しないと、ハグとかが出来ないからめぐみん成分不足になってしまう。

 

「セクハラしたらアクアかダクネスに言いますからね?」

「親友同士ならセクハラは受け流すものだと思う」

「そんな訳ないでしょう!カズマに優しいと言ったの取り消します」

 

ゆんゆんの胸をモイでやると言って、握り潰そうとしたり、ひっぱたいていたりしたのはセクハラじゃないと言うのだろうか。

・・・いや、あれはただの暴行か。

 

「別に好きだって言われた訳じゃないし、その撤回は全く効かん」

「では、今後デートはしません」

「めぐみんさま。お加減はいかがでしょう?」

 

デート無しだけは避けなければ。

現状、唯一めぐみんと一緒にいられる口実なのだから。

 

「・・・このままでお願いします」

「おう」

 

急に改まったせいか、めぐみんが黙り込んでしまった。

体勢としては今のが一番いいらしい。

昨日よりも緊張しているのか、手に力が入っている。

落ち着く背中と思ってもらいたいけど、難しいか。

「カズマ」

「どうした?」

「カズマは、このままずっと親友のままだったらどうしますか?」

 

唐突にめぐみんがそんなことを言い出した。

これは暗に諦めろと言われてるんじゃあ……

 

「どうって言うと?」

「その、さっきキスとかの話があったじゃないですか」

 

何となく話が見えてきた。

他意は無さそうで、安心した。

 

「それで、その。デートしか出来ないのはどうなのかなあと思いまして」

「爆裂魔法でいい爆裂できない日が続いて好きじゃなくなるか?」

「そんなことないですよ!」

「それと一緒だ。俺としてはめぐみんと一緒にいるだけで楽しいし、一緒にいる時間も好きなんだ」

 

振り返ると顔を真っ赤にしためぐみんが俯いて、帽子を深く被った。

いやはや、攻める側ってこんなにも心地いいんだな。

魔性のめぐみんとか言ってたけど、今ならめぐみんの気持ちが分かる。

これやめられないやつだ。

 

「・・・そ、そうですか」

「だからデートも無しってなるのは結構効くし、多分数日引きこもる」

「そ、そんなにですか?」

「めぐみんにこれからはデート無しって言われるのは、ここで終わりって言われてるのと同じだからな?」

 

単なる親友止まりが確定してしまう。

それだけは避けなければならない。

こっちでもめぐみんが俺の事を好いてくれるとは限らない。

だから最大限できることをして行こう。

 

「じゃあ、私にもし好きな人が出来たらどうしますか?」

 

やっぱりめぐみんって俺の考え読めるんじゃないのか?

こうもピンポイントな質問が来るとは。

 

「その時は親友として応援するけど、振り向かせようとはするかな」

「恋人が出来たらどうしますか?」

「それは、って言うかさっきから何で嫌な質問ばっかりするんだよ。仮の話でも想像するのメンタルやらるし、考えたくない」

 

好きな人が出来たとしたらってのも中々堪えたけど、恋人ができるとかはもう想像したくない。

さっきから意地悪な質問ばかりだな。

 

「ご、ごめんなさい。そんなつもりは、ただ、カズマのことを知りたくてですね」

 

俺のことを知りたいか。

めぐみんが抱いてる俺への興味心は多分、研究対象のそれだろうな。

 

「ほう。所でめぐみんって好きな人いるのか?」

「いませんよ。安心してください、恋愛なんて興味ないですし、仮に告白とかされてもカズマの名前だしますから」

 

俺を口実に断るって、外堀が埋まっていくよな?

俺としては全然構わないけど、めぐみんとしてはそれでいいのだろうか?

めぐみんに告白するやつと言えば、めぐみんとの初デート思い出すな。

偽装デートだったし、ストーカーだと思ってたら単に爆裂魔法気に入ってただけの男の子だったけども。

 

「そっか。でもめぐみんに告白するやつなんているのか?」

「あなたがそれを言いますか!」

 

俺は俺として、他には居ないだろう。

ギルドの連中は間違いなくめぐみんに興味無いし、セシリーくらいじゃなかろうか。

 

「だって、中二病だし、短気だし、爆裂爆裂言ってるし」

「よし、喧嘩を売ってるなら買おうじゃないか!」

「喧嘩売ってないって事実を言ってるだけだから」

「いいでしょう。カズマがその気なら私にだって考えがありますよ!」

「だから喧嘩する気はないって、いいか?俺はお前のそう言うところ含めて好きだから、そこが事実じゃない訳ないだろ?」

 

かつてめぐみんが言ってたのを使わせて貰った。

いざ言う側になると恥ずい。

でも、事実だからな。

好きな気持ちをぶつけられて俺はめぐみんのこと好きになった訳だし、逆にその戦法を使っていくしかない。

 

「・・・それはズルいです」

「何が?」

「はぁ、もういいです」

 

言ってから数分後めぐみんは眠りに落ちた。

今日のデートも終わったことだし、あの人に話聞きに行くか。

多分この状況を一番知ってるはずだから。

 

 

 

めぐみんを宿屋に連れて行き、寝かせた後、俺はギルドである人を待っていた。

 

「カズマ、一緒に飲まないの?」

「いや、まだ用事があるから」

「ふーん。終わったらすぐ来なさいよ?ダクネスと二人じゃ寂しいから」

 

二人と言いつつ、最後は食堂のみんなとワイワイしてるだろうが。

それこそダクネスの方が寂しい状況になりそう。

 

「今日も賑やかだねえ。カズマくん久しぶり」

「久しぶり。アクアが宴会芸やってるからな。後輩のクリスも何かできないのかな」

「あれは先輩だからできるんだよ」

 

やっぱり、アクアは宴会芸の神様なのか。

 

「そうか。アクアを先輩って呼んだのかについて話す為に場所変えようぜ」

「・・・」

「どうかしたか?」

「いや、何でもないよ。あたしおすすめのカフェに行こう」

「俺が行こうとしてたのもそこだったりする」

 

盗賊団の密会場所へ向かうこととなった。

こっちじゃまだ結成されてないけども。

 

 

 

「話が早くて助かる所か、先に動かれてびっくりだよ」

「やっぱり今の俺の状況を知ってるのな」

「あたしの正体知ってるんだよね?」

 

この反応から察するに、このクリスさまもこっちの時間にいるんだろうな。

こうやって動いてくれてるってことは帰れる可能性はあるか。

 

「もちろん。俺のメインヒロインことエリスさま」

「ちょっ、ちょっと待ってください。あなたの好きな人ってめぐみんさんですよね?」

「そうですけど?急にエリス様口調でどうしました?」

「ええっと、ほら、普通に考えてキミのメインヒロインってめぐみんじゃないのかなあって」

 

さては、俺とめぐみんのデート見てたな?

それか、未来で俺がプロポーズしようとしてたのを知ってるとかそこら辺か。

 

「あいつはあいつ。エリスさまはエリスさまなんで」

「言ってる意味が全く分からないよ」

 

めぐみんのことは好きだし、エリスさまはメインヒロイン。

これは変わらない。

 

「そんなことより状況説明して欲しい」

「あたし的にはこっちの方が気になるんだけど、えっと、まず初めに謝っておかないといけないことがあって、キミは元の世界には戻れないよ」

「・・・じゃあ、めぐみんルートまっしぐらにして正解だったのか?」

 

まさかの戻れない宣告。

それにしても何故クリスが謝る必要があるのだろうか。

謝る理由が気になる。

 

「戻れないと言うかそもそもキミ自体は元の世界に存在しているんだけどね」

「ごめん。ちょっと何言ってるか分からない」

「今ここにいるカズマくんは、めぐみんにプロポーズする前日のカズマくんをコピーした者なんだよ」

「・・・はい?」

 

コピーとかなんの事だ?

俺は俺だよな?

 

「実はここはカズマくんが転生しない並行世界なんだよ」

「・・・はあ」

 

もしかしたら駄女神の勧誘が下手すぎて日本での転生を選んだのかもしれない。

多分、これだ。

 

「それで、この世界はもうダメだと未来観測の結果言われていたんだけど」

「言われてたけど?」

「神々のビンゴ大会で見事一番にビンゴになって、何でも好きな願いを叶えられたんだよ」

 

流石は幸運の女神。

何でも願いを叶えられるか。

俺なら紅魔族として、めぐみんの幼馴染とかになりたいな。

 

「それで、あたしは他の世界で魔王を倒せた者をこの世界にって願ったら、単に魔王を倒せる見込みのある人よりも倒した人の方が良いだろうって話になって、魔王を討伐した後のカズマくんの記憶と能力がコピーされて、こっちの世界で日本で生存しているカズマくんの体をコピーして生成されたのが、今のキミだよ」

「・・・え?俺こっちでは死んでないの?」

 

俺ってばそんなにキーパーソンだった訳か。

てか、俺が居ないと滅びる世界とか、俺完全に主人公じゃん。

 

「ええ、今も日本で暮らしていますよ」

「引きこもってゲーム三昧か」

 

羨ましいな。

結局新作では遊べてないし、そこは唯一の心残りだ。

でもまあ、死んでなかったら彼女が出来たりしてないからな。

てかまたエリス口調になってる。

 

「いえ、彼女とデート三昧です」

「・・・は?」

 

ちょっと待て、彼女?

まさかあいつが、不良と付き合ってない世界線か?

 

「周りからバカップルと呼ばれても、ところ構わずキスしてるような」

「・・・相手は?」

 

いくらなんでもそこまではないだろうと主張したいが、めぐみんとしてたし、反論できない・・・

 

「めぐみさんです」

「・・・誰?」

 

恵?

学年にいたかもしれないけど、顔は知らない。

 

「めぐみんさんですよ。名前が日本人らしくなっただけで」

「どういうことだ?」

「実はここはめぐみんさんの希望で創られたものなんです」

 

ますます理解が及ばなくなってきた。

え?

あいつが世界の滅びを望んだってのか?

 

「日本でカズマさんと共に暮らしたいと言う願いを叶えるために創られた世界。本来それだけで良かったのですが、先輩がわざわざ大世界として創ってしまって今私が苦労してます」

 

まあ、そりゃ、そうだよな。

めぐみんがそんなこと願うわけないよな。

うん。

 

「大世界って言うと天界とか含めて全部創造したってことですか?」

「はい」

「・・・でも、それだとこの世界にめぐみんは居ないんじゃないか?」

「いえ、向こうのめぐみんさんは転生者。こちらは本来の時間軸で存在してますから」

「なるほど」

 

わからん。

これはあれだ。

深く考えたらキリがないやつだ。

 

「因みにダクネス達は逆に向こうの世界にコピーされてたりします」

「・・・おい、まさかその為だけにこっちを創ったのかあいつは」

「まあ、そうなりますね」

「なんてはた迷惑なことしてんだ」

 

無駄に能力のあるバカ程怖いものはない。

 

「でもまあ、こうしてカズマさんが来てくれましたからね。何とかなりますよ」

「それは楽観視し過ぎじゃないですか?」

「滅ぶしか無かった世界に救いの希望が持てた。それだけで十分ですよ」

 

改めて、滅ぶとか言われるとゾッとする。

魔王軍の進行を止められなかったってことだよな。

いや、そもそもアクアがいないから、デストロイヤーが討伐されてないのか。

 

「カズマさんがいなければ、先輩はずっと日本担当のままです。めぐみんさんとダクネスは戦死していましたから」

「そ、それは未来観測ってやつか?」

 

戦死。

何だかんだで、知り合いの誰かが死ぬってことを経験をしてこなかった。

死んでもアクアが蘇生してたし、戦死なんて言葉聞く機会がなかった。

 

「いえ、他の世界で起こった記録です」

「・・・他に最悪な世界線はあるのか?」

「パラレルワールドと言う概念をご存知ですよね?」

「・・・ああ、分かった」

 

そりゃあそうだよな。

無数に存在してるんだろうな。

中には俺がアクアと恋仲になんて世界があったり、エリスとなんてのもあるやもしれない。

・・・前者は流石にないと思いたいが、あるんだろうな。

 

「俺が魔王を倒したらどうなるんですか?」

「願い事を一つではなく、二つ聞く事になってます」

「だったら、一つはこっちの世界に戻ること、二つ目は歳で死んだらめぐみんと幼馴染で産まれる世界に転生でお願いします」

「幼馴染ですか?」

 

現在の状況を危惧してるらしい。

そこは大丈夫だ。

俺は日本に戻るつもりはない。

 

「ああ、紅魔族として、俺は冒険者になるようにすればその世界も安泰でしょう?」

「ふふっ、そうですね。分かりました。コホン。あたしから以上だよ」

「俺からはまだある。こっちでも義賊の活動してるのか?」

「まあね。手伝ってくれる?」

 

知ってて言ってるな。

こっちだと、前よりも招集がかかりそうだ。

 

「時と場合による。逆に俺とめぐみんの関係で何かあったら助けてくれよ?」

「わかったよ。義賊の話はまた今度で、今日はお開きにしない?もう外真っ暗だよ?」

 

という訳でお開きとなった。

店を出て、ギルドへ向かうために路地裏に入るとそこにめぐみんが居た。

そう。

眼を紅く輝かせためぐみんが。

 

「クリスと楽しそうに話してましたね?」

「そうだけど、何をそんなに興奮してんだ?」

「何をって!私とデートしてそのすぐ後にクリスともデートっておかしいじゃないですか!」

 

デートと勘違いしたのか。

お茶しただけで浮気だって言われるとはこっちのめぐみんも随分と嫉妬深いみたいだな。

 

「クリスとめぐみんの話してただけだぞ?」

「・・・え?」

「周りに秘密にするって話だけど、流石に誰にも言ってないと困るだろうと思ってさ。フォロー入れて貰えるように相談してたんだ。もしかして妬いてくれてたのか?」

「ち、違わい!ただ、節操のなさに苛立っただけです!」

 

それを嫉妬と言うんだが、まあいいや。

 

「そういや何でここに居たんだ?」

「目覚めてギルドへ向かって夕飯を食べてたらカズマがまだ戻ってないとダクネスから聞いいたので、心配になって探してたんですよ」

「それで、俺がクリスと話してるの見つけたと」

「はい。勘違いで怒ってすみませんでした」

 

めぐみんが謝罪してくるけど、俺としては嬉しさの方が勝っている。

 

「気にしてないって、それよりも明日のデート何したい?」

「デートですか?えっと、明日はクエストですよね?」

 

デートのことしか考えてなかった。

そうだよな。

この頃はクエスト行かない日の方が少なかった。

 

「忘れてた。じゃあ今度のデートでしたいこととかあるか?」

「そもそもデートで何をするのか知らないです」

 

俺ら二人とも恋愛経験ゼロなのも忘れてた。

 

「今度は適当に商店街で食べ歩きってのはどうだ?」

「それにしましょう。楽しそうです」

 

よし、デートの約束もできたし、明日のクエストを乗り切って楽しもう。

めぐみんを振り向かせるためにも!




来週か明日に今日分の投稿を予定してます。更新するのは●●を!です。


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クエスト成功?

ギリギリ間に合いました!
ギリギリ間に合ったので、字数も中身もいつも以上に期待なさらぬようお願いします。


-QUESTSEIKOU-

 

人生二度目の初デートを昨日したのだが、自分でも何を言ってるのか分からないけど、これが事実なのだ。

そして、明日もまためぐみんとデート。

今日のクエストを乗り越えればまた癒しの時が・・・

 

「かじゅまさああああああん!!」

「食われてんじゃねえええええ!!」

 

いつも通り俺たちのクエストは上手くいかない。

何故だ。

一度くらい誰も補食されずに帰ることはできないのか?

 

「こ、こっちにも来てます!ダクネス助けてください!」

「ここは私に任せろ!さあカエルめ。私を補食・・・」

 

ダクネスがいつになく頼りがいがある。

しかし、やつがただ単に興奮してるだけなのも事実。

食われたアクアを助けるとまた感謝の抱擁をしようとしてきたから、即座にその場を離れて、ダクネスに加勢しようと近付くも、ジャイアントトードは一瞬ダクネスの前で止まるも、直ぐにめぐみんへと進路を変更した。

やはりダクネスのような硬いのは食べないらしい。

 

「カズマカズマ!ダメです!ダクネスを素通りしてこっち来てます!助けてください!」

「任せろ!めぐみんは俺が守る!」

 

めぐみんを追うことに夢中だったおかげで避けられずに何とか討伐出来た。

これで帰りにヌメヌメのめぐみんを背負わずに帰れる。

 

「助かりました。もうダメかと思ってました」

「何とか間に合って良かった」

 

今日の目標はジャイアントトード五匹の討伐。

あと二匹を探さなければならない。

それまでめぐみんを守り抜けるだろうか?

 

「おーい!ダクネス!いつまでもぼぉーっとしてないでこっち来い!」

「めぐみんと私の何が違うのだ?なあ、カズマ!」

「知るか!お前より柔らかそうなめぐみんの方が食べやすいって思ったんじゃねえのか?」

「お、おい!それでは私が硬いように聞こえるではないか!」

 

実際、硬いと思う。

鎧もそうだし、頭も堅いし、腹筋も割れてるし。

 

「カズマあんた何言ってんの?キモイんですけど」

「お前がいつも一番に狙われるし、カエル業界だと一番美味しそうに見えてるんじゃねえか?」

 

無言で拳をこちらに向けてくるアクアを回避スキルで難なく避ける。

アクアは攻撃対象がなくなり、そのままの勢いで後ろにあった木に激突して手を痛めている。

 

「何やってるんですか?揉めてないで次の獲物を探しましょう」

「だそうだぞ。自分でヒールしたら治るだろ?」

「帰ったら覚えてなさいよ」

 

帰る頃には酒で忘れてるだろうし、気にしない気にしない。

あと二匹は出来れば爆裂魔法でまとめて手っ取り早く終わらせたい。

 

「あそこに五匹もいるぞ!行って『待てって!』」

「ここはめぐみんに任せる。お前が行ったら爆裂魔法が使えないだろう」

 

何とかドMクルセイダーの特攻だけは止められた。

カエルと戦うよりダクネス抑える方が疲れる。

 

「私ごと爆裂してくれても構わないぞ!」

 

などと言いながら暴れるダクネスを何とか抑えつつ、めぐみんに早くしてくれと視線を送る。

 

「私がやりたくないですよ。『エクスプロージョン』ッ!!」

 

何とかダクネスの暴走と言う惨事は避けられた。

当の本人は、落ち込んでいるがこれで後は帰るだけ。

ダクネスを抑えるのをやめてめぐみんの方へて向かう。

 

「今日の出来も中々だな。ナイス爆裂」

「ナイス爆裂!おんぶ頼みます」

 

めぐみんをおぶって帰るだけ。

今日はアクア一人の被害で済んだしうちのパーティーとしては成功した方じゃないかと思う。

 

「お前ら、凹んでないで早く帰るぞ」

「カズマ、私もおぶって帰りなさい」

 

アクアがめぐみんを羨ましそうに見ながら言った。

さっき俺に対して報復するとか言ってたのは何処へ行ったのだろうか。

 

「ヌメヌメしてるし嫌だ。てかもうめぐみんがいるから無理だ。ダクネスに頼めよ」

「だってダクネス硬いじゃない」

 

それもそうか。

いや、そもそも自分で歩けよって話なんだけども。

 

「ちょっと待って欲しい、確かに鎧は固いと思うが私はそこまで固くないと思うのだが」

 

思わぬ口撃にダクネスが訂正を入れるけど、ここのメンバーは全員理解してるし、大丈夫だと思う。

 

「私がカズマにおんぶを頼む理由もダクネスの硬さにあります」

「めぐみんまで言うか!」

 

鎧が固くて痛いのはしょうがないけど、めぐみんにまで硬いと言われて相当ショックを受けている模様。

・・・ダクネスの基準がよく分からない。

 

「じゃあ私にはどうして頼まないの?」

「アクアはいつも補食されてぬめぬめしてるので、消去法でカズマしかいないのですよ」

 

俺って消去法で選ばれてたのか。

てっきりロリっ子に懐かれたのかと思ってた。

あの頃は。

 

「まあ、カズマが手慣れてきたから、心地よいと言うのもありますが」

「そうなのか?」

「ええ、変に力が入ってないと言いますか、リラックス出来ます」

 

伊達にめぐみんおぶってないってわけか。

人体工学とかそんな名前のあれに合ってるのかもしれない。

 

「ふーん。カズマやっぱり私をおぶりなさい」

「なんでだよ。さっき話しはついただろうが」

「だってめぐみんが心地いいとかリラックス出来るとか言ってるから気になるじゃない!」

 

めんどくせえ。

こうなったらやるまで言い続けるだろうなあ。

強権的に黙らせるのもありだが、ここで使ってアクアが泣きだしたら、めぐみんかダクネスにそれくらい許してやれとか何とか言われて、結局やるはめになってしまいそうだ。

 

「知るか!俺の背中はめぐみん専用だから、お前の席はない!」

「意味分からないこと言ってないでちょっとくらい乗せなさいよ!」

 

ダメか。

ここじゃめぐみんが話に合わせて助けてくれる事もなく、不発に終わった。

アクアへの対抗策にめぐみんを巻き込む作戦が通用しないとなると打つ手なしか。

ここは大人しく引き下がるか。

 

「はあ、風呂入ったあとならおぶってやる」

「ちょっと待ってください」

「どうしたの?」

 

アクアの言う通り急にどうしたのだろうか。

まさか魔物を見つけたとかじゃないよな?

 

「この背中は私専用なので、私が却下します!」

「だそうだ。諦めろ」

 

期待してなかっためぐみんからの支援だ!

親友パワーで何とかなった感じだろうか?

それとも本当に専用だから使わせないとか思ってたり?

 

「めぐみんさまお願いします!カズマのおんぶを確かめさせてください。何でもするから!」

「と言う事でカズマ。帰ったらアクアをおぶってください」

「おい」

 

めぐみんの独占欲が出たのかと思ったらこういうことかよ。

利用されただけじゃん。

 

「何ですか?」

「・・・いや、何でも」

 

何もせずに何でもさせられる権利を手に入れるってチートだろ。

めぐみんじゃなかったらキレてる所だ。

 

「め、めぐみん、私も何でも言うことを聞くからカズマのおんぶをそ、の」

「いいですよ。その代わり二人ともカズマの指示を明日から厳守してもらいます」

「「「・・・え?」」」

 

てっきり爆裂散歩についてこいとか、良い杖買ってくれとか頼むと思ってた。

俺としたことが、めぐみんを疑ってしまっていた。

 

「私がおんぶする訳じゃないですからね。カズマがいつもみんな話を聞かないと愚痴ってるので、カズマ的にはこれがいいですよね?」

「ちゃんと指示通りに動いてくれたら楽だな」

「で二人ともどうしますか?」

 

あからさまに嫌な顔をする二人。

ダクネスは魔物に突っ込めなくなるから、アクアは単純に嫌だって理由で断りそう。

 

「・・・私はやめておこう」

「私もやめておくわ。カズマのことだから変な指示出すかもしれないもの」

「おいこら言いたい放題だな」

 

これで帰って風呂入って飯食って寝るだけだな。

・・・アクアの話を聞いてダクネスがやりたそうにしてるけど、そうはさせない。

 

「はい。これでこの話終わりだ。次のクエストはいつにする?」

「明日で良くない?私バイトしたくないの」

「私は明日でも構わないぞ」

 

カエルに食われるのよりバイトの方がアクア的には嫌なことらしい。

俺なら絶対バイトをとるけどな。

って不味い。

このままだと明日のデートが・・・

でもなんて言って断ろうか。

 

「すみません。明日は用事があるので行けません。明後日なら大丈夫です」

 

めぐみんが断ってくれるとは思わなかった。

俺ならクエストに行く流れに乗って、また今度と言いつつ時間稼ぎして、状況整理に時間かけるけどな。

 

「ならクエストは明後日ね。それでめぐみんは何処に行くの?」

 

さて、めぐみんがどう逃れるのか。

最も可能性としてあるのは買い物かな。

てか俺への確認はなしかよ。

まあ、予定なんてないけども。

 

「露店巡りです。友達と一緒に行く約束をしてるんですよ」

「そっか。露店巡り楽しそうね。今度やってみようかしら?」

 

なるほど。

親友との露店巡りって面においては嘘は言ってないな。

さすがめぐみんだ。

 

「その前にお前は金を貯めろ」

「カズマが奢ってくれてもいいのよ?」

「寝言は寝て言え。じゃあまた後でな」

 

話してる間に浴場に着いていた。

ここから先はいつもダクネスと二人でギルドに帰ってたな。

俺は運、ダクネスは鎧を装着しているからって理由で粘液まみれになってないからな。

 

「今日は私だけなのね。ダクネスも偶には一緒に入らない?」

「うむ。私も入るとしよう」

「そうか。俺らはギルドで待ってるからな」

「ああ、また後で」

 

これまでになかった組み合わせで帰ることとなった。

俺としてはめぐみんと二人きりで帰れる最高のシチュエーションだけども。

 

「これでよかったですよね?」

「ああ、クエスト行くことになってデート中止になる所だった」

「私としても約束を破るのは嫌ですから」

 

約束か。

魔王討伐後の約束果たせてないな。

オリジナルの俺が約束の履行はするだろうけど。

ちゃんとプロポーズ成功したのだろうか?

はあ、プロポーズを成功させるにはめぐみん攻略をゼロからしなきゃいけないのか俺は。

 

「カズマの背中は私専用と言うのはどうかと思いますよ?」

「別にいいだろ?アクアの我儘から逃れるためならプロポーズする前の俺でも逃げ口上に使ってるだろうし」

「・・・言われてみればそうですね。あの、今日は守ってくれてありがとうございました」

 

おっ、背中越しに分かる。

照れみんいただきました。

今日のクエストがプラスに働いたみたいだ。

 

「惚れた女も守れなきゃ男が廃るってやつだ」

「カズマのクセに粋なこと言いますね」

「クセにってなんだよ。まあ、俺らしくないってのは分からなくもないけど」

 

らしくないのは分かってるけど、自分で思ってるのと言われるのはやっぱり違うな。

ちょっとショックだ。

 

「認めるのですね」

「らしくないのは事実だからな。でもちょっと傷ついた」

「以後気をつけます。あの、明日のことですけど、お金は全部私が出します」

「そこまで傷ついてる訳じゃないし気にしなくてもいいぞ?」

 

昨日のデートからめぐみんが丸くなった気がする。

いや、俺に気を使ってるって言う方が正しいかも。

 

「そのこともですけど、昨日はカズマの奢りだったので、次は私が払います」

「何でだ?」

「私はその、お付き合いするとしても対等な関係がいいです」

 

めぐみんの気にすることも分からなくはないけど、めぐみんのあの財布を見ると奢ってもらうのは忍びない。

 

「その気持ちは分かるけど、めぐみんの事情を考えると今はな」

「今はですか?」

「俺らがもっと報酬のいいクエストを受けられるようになって、めぐみんの財布が潤ったらな」

 

何も今すぐ貸し借りなしにする必要はない。

将来的にチャラにしてくれればそれでいい。

 

「そんなのいつのことか分からないじゃないですか。私の奢りじゃなきゃ明日のデートは行きません」

「うっ、分かった。今度からは割り勘にするか」

「それなら構いませんよ」

 

何とか了解を得られた。

実質的に今後のデートの約束を取り付けられた。

 

「あの、カズマ。今更ですけど、ドレインタッチを使えば私をおんぶする必要なくないですか?」

「よーく考えろ。ウチにはアクアが居るんだ。リッチーのスキル使ってる所なんて見せたらうるさいだろ?」

 

最もらしい言い訳を思いついた。

おんぶ出来ないのは嫌だからな。

 

「確かに。騒ぎそうですね。となると爆裂散歩の時しか使えませんね」

「待て待て、爆裂して帰ってる最中に歩いてるめぐみんを見たらバレるって」

「・・・結局カズマにおんぶしてもらう他ないと言うことですか」

 

と気だるそうにめぐみんは言った。

俺におんぶされるの初めの方は嫌だったのか?

クエストの時にも消去法で俺だって言ってたし。

 

「おんぶ嫌なのか?」

「いえ、少しでもカズマの負担を減らせればと思いまして」

「俺はめぐみんをおんぶするの好きだぞ?」

 

確かに初めの方は何故俺ばっかりがおんぶしなきゃいけないんだとか思ってたけども、今じゃあ数少ない楽しみだ。

今回のめぐみん攻略で重要なのは俺への要らぬ気遣いをしないようにすることからしないとだな。

初デートの高級料理がこんな形で枷になるとは・・・

 

「・・・カズマは本当に私のこと好きなんですね」

「一昨日からそう言ってるんだけど?」

「・・・カズマのバカ」

「バカってなんだよ。あれか?ツンデレか?」

 

今回はツンデレめぐみんか。

・・・ゆんゆんがいつも困ってたの思い出すとこのままだと不味い気がする。

 

「別に私はカズマのこと何とも思ってないので、ただのツンです」

「・・・俺泣いていい?」

「デレになるように頑張ることですね」

 

自分で言うか普通。

めぐみんらしいけども。

はあ、魔性のめぐみんを舐めすぎてた。

この数日で完全に慣れてるし、どうしたら振り向いて貰えるのやら。

先が思いやられる。




来週はアイリス聖誕祭の前略部分を更新します。


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攻めの気持ち

何とか間に合いました。
今日はカズマさんがめぐみんを攻略する話です。


-SEMENOKIMOCHI-

 

「カズマ、見てください。私達の子供ですよ」

「めぐみんに似て可愛いな」

 

目の前には髪が伸びて、一部以外は俺の好みどストライクなめぐみんと、めぐみんによく似た女の子がいる。

どっちも凄く可愛い。

そうか。

俺はめぐみんと結婚して、子供が……

 

『誰がめぐみんに似てるって言うのよ?』

「誰って・・・アクア?」

 

いい夢だったのに、またコイツに邪魔されるとは。

ちくしょう。めぐみんとの結婚生活が!

 

「あんたどんな夢見てたの?」

「えっと、昨日めぐみんが妹がいるって話してたからめぐみんを小さくした子を夢で見てさ」

 

実際に聞いてないけど、こめっこがいるのは事実だ。しかし、実際はこめっことはまた違うめぐみんによく似た子だった。

めぐみんと違う点をあげるとすれば俺の癖毛を一部引き継いでるような感じだ。

 

「なるほどね。でめぐみんの妹ってどんなの子だったの?」

「・・・夢は夢だし、説明しても意味ないと思うんだが」

「それもそうね。めぐみんと言えば最近カズマに変わったことがあればすぐに教えて欲しいって私とダクネスに聞いてたんだけど、何かあったの?」

 

あいつ分かりやすく動いてるな。

何かはあったけど教える訳にはいかないよな。

 

「いや、特には」

「そうよね。カズマが最近変わったこと言えば夜ゴソゴソしなくなったことくらいだものね。ダクネスもめぐみんが何を気にしているのか不思議がってたわ」

 

めぐみんを如何に攻略するかを考えている内に寝てしまう毎日だったからなあ。

ゴソゴソしてる暇はなかった。

ともかく二人が気付いてないみたいで助かった。

 

「・・・静かで寝やすかったろ?それは置いといて飯に行こう」

「分かったわ」

 

今日はめぐみんとの二度目のデート。

昨日はめぐみんから直々に惚れさせてみせろと言われたばかりだから、どうしようか悩んでいる。

 

「カズマは今日何する予定なの?」

「めぐみんと一緒、で商店街巡りでもしようかなって」

 

危うくめぐみんと一緒に商店街巡りと言うところだった。

寝起きだからと言って気が緩み過ぎてる。

気をつけないと。

 

「じゃあ私もついて行ってもいい?」

「却下だ」

「この麗しいアクアさまがあんたとデートしてあげるのよ?」

 

コイツはあれか?

俺とめぐみんの恋路邪魔しないと生きていけないのか?

 

「お前、俺に全部奢らせたいだけだろ」

「・・・割り勘でいいから」

「どっちにしろ俺は一人で行く」

 

あの時みたくピクニックになってたまるか。

今日は絶対にめぐみんとデートするんだ!

間違ってもこの駄女神ではない。

 

「一人より二人の方が楽しいと思うの」

「俺は一人の方が楽しめるタイプなんだよ」

「だからヒキニートだったのね」

 

コイツは後で絞める。

どっちかと言えば友達はいたし、引きこもってその関係が無くなったわけでもない。

学校に行かなくなったのは人間関係が原因だけど、友人関係ではない。

 

「ち、ちがわい!ともかく、俺は一人で行くからな」

「そこまで言われちゃしょうがないわね。ダクネス誘って行く」

「初めからそうしろよ」

 

俺が必死になる必要なかったじゃん。

ダクネスいたじゃん。

 

「だって、ダクネスにはそこまで奢らせたくないもの」

「おいこら、それはどういう意味だ?」

 

俺なら貢がせてOKってやっぱりコイツの認識では従者なのか。

 

「朝っぱらから喧嘩とは二人とも仲がいいな」

「「誰が!!」」

 

ダクネスの発言に猛抗議する俺らであったが逆効果だったのか、ダクネスがニヤリと笑って続けた。

 

「息までピッタリではないか」

「「・・・」」

 

ああ、この沈黙ですらダクネスから見れば息がピッタリと言うのに含まれるのだろう。

終始ニヤニヤしてやがる。

ほっぺ引っ張ってやろうか。

 

「何してるのですか?」

「何でもねえよ。それより飯食おうぜ」

「そうよ。早く食べて商店街巡りしましょう!」

「商店街巡りですか?」

 

めぐみんが俺を見る。

このタイミングでアクアがこんなこと言い出すのは宜しくない。

俺らと鉢合わせする可能性もある。

そこの所どうする気だとかそういうことを訴えてる目だ。

 

「商店街巡りか。楽しそうだな。めぐみんは友人との約束があると言っていたし、今日は三人で回ることになるのか」

「それがね。カズマってばめぐみんと一緒みたいよ」

「ふむ。と言うことはめぐみんの言う友人はカズマだったのか?」

 

ホントに余計なこと喋らないと死ぬ病気なのか?この駄女神は。

めぐみんから何バラしてんだって凄い睨まれてる。

睨んでてもめぐみんはかわいい。

 

「そうじゃなくて、私達とは別行動なの」

「そうか。では私とアクアの二人だな」

 

アクアが訂正してくれたおかげで、ダクネスから疑いをかけられずに済んだ。

そして、めぐみんからの睨みが終わって、今度は勘違いで睨んだことに罪悪感を覚えたのか気付かれないように頭を下げてからめぐみんは言った。

 

「・・・カズマは何処に行くのですか?」

「隣町の商店街に行こうかと思ってる」

 

グッジョブめぐみん!

これで俺たちがデートに行くとはこの二人は思いもしないだろう。

 

「そうですか。では食べ終わったら一緒に行きましょう。目的地が同じですから」

「分かった」

 

これで道中も堂々と一緒にいられるな。

初めは後から再集合案だったけど、その必要がなくなった。

 

「私たちはこの街の商店街行きましょう」

「ああ、私もまだ知らない店があるかもしれないから楽しみだ」

 

とまあ、こんな感じで俺たちのスケジュールが確定した。

今日は何をしようか。

 

 

 

「カズマ、朝はヒヤヒヤしましたよ」

「俺だって一瞬アクアにバレたのかと焦った。つかお前こそアクアとダクネスに俺の事聞いてたろ?」

「だって心配だったんですよ。何か原因が分かればと聞いてみたのですが、周りの人に聞けば聞くほどカズマはいつも通りだと言う回答が返ってきて、何が何だか分からなくなってきました」

 

確かにめぐみんは俺の異変に気付ける立ち位置いるけど、アクアやダクネスと話す時はいつも通りの会話だからな。

逆に俺の事聞き回ってるめぐみんの方が変に映ってるだろうな。

 

「スキルにしろ、めぐみんのことにせよ。俺はお前とクリス以外に話してないから、気付くわけないだろ」

「・・・そういうものでしょうか?」

「俺が仮にアクアと裏で付き合ってて宿屋ではイチャイチャしてても分からないだろ。そんなこと絶対ないけど」

 

二人きりの時間が目に見えて増えてる訳では無い。

まあ、このまま過ごしていたら俺がめぐみんの話ばっかりし始めてバレる恐れはあるけど、それはそれだ。

 

「多分気付かないと思います。確かに想像できません」

「そういうこった。俺は二人きりの時にしかめぐみんへの態度変えてないぞ?昨日のクエストはちょっと特別対応しちまったけど」

「・・・あれは嬉しかったです。えっとカズマは隣町に行くの初めてですよね?」

 

昨日のクエストは結構プラスに働いてるみたいだ。

めぐみんが帽子を深く被ってこっちを見ようとしない。

 

「ああ、そこら辺はめぐみんに任せる」

「まずは駅に向かいましょう馬車で移動です」

 

馬車での移動はあまりいい印象がない。

何かと問題に巻き込まれてるからな。

 

「テレポート屋はダメか?」

「それは高いですよ?夜行便で朝帰りの方がいいと思うのですが」

 

めぐみんは往復料金を想定してるだろうけど、実際は片道切符で行ける。

帰りは転移魔法で帰れるのだから、そこまでお金はかからないし、往復の馬車代と変わらないだろう。

ただ、テレポートが使えるの忘れてそうなめぐみんを驚かせるの楽しそうだ。

 

「実はまた賭博で儲けてな」

「・・・カズマの幸運値の高さは折り紙付きということですか。分かりました」

 

かくして俺達はテレポート屋へと向かい、隣町へと転移した。

 

 

 

「カズマカズマ!クレープ食べたいです!」

「はいはい。ってか確認しなくて今日はめぐみんの奢りだろ?好きなの食べれば良くないか?」

 

テレポート屋代は俺が払ったとは言え、今日はめぐみんが全てをお金を払っている。

でもこのように毎度俺に確認を求めてくる。

 

「そうですけど、カズマも食べたいものか確認しているのですよ」

「なんでだ?」

「何故って、カズマはこの前私が好きな物を用意してくれましたよね?」

「ああ、そうだな。それで?」

 

話が見えてこない。

俺がこの前のデートの用意した事となんの関係があるんだ?

 

「私もカズマに喜んで貰いたいのですよ。ですが、カズマと違って私はあなたの好みを知りませんからね」

「そうかそうか」

 

納得だ。

めぐみんなりに俺のこと考えてくてるってことか。

ちょっと鈍感過ぎたな。

でもこの気遣いは嬉しい。

 

「・・・何ですかその反応?」

「嬉しいんだよ」

「はあ?」

 

ピンと来てないみたいだ。

めぐみんとしてはこの前のお返しだから当然のことしてるだけって感覚なのかもしれない。

 

「分からないならそれでもいいって、それよりも早くクレープ食べないか?」

「そうですね。カズマは何味にしますか?」

「バナナチョコかな」

「私も同じのにします」

 

同じのか。

めぐみんが好きなのっていちごチョコだった気がするんだけどな。

・・・あっ、そうか。

めぐみんってクレープとか食べる機会なかったのか。

初めてだから俺が選んだやつをってことか。

 

「それなら最高の食べ方教えようか?」

「最高の食べ方ですか?」

「ああ、半分食べたらある店に寄るぞ」

「分かりました。期待してますからね?」

 

この食べ方で不評を貰ったことは一度たりともない。

加えてめぐみんが一時期この食べ方にハマってたのも含めると確実だろう。

 

「クレープ買ってきましたよ!」

「ありがとう。ってもう半分食べてるじゃねえか」

「えっと、これは、その・・・」

 

最高の食べ方が楽しみだったのか、初めて食べるのを待ちきれなかったのか、はたまたその両方か。

食べ歩きデートのつもりが半分なくなったな。

 

「それだけ楽しみってことか。じゃあアイス屋でバニラ味買ってきてくれ、カップで頼むぞ。俺はその間に食べとくから」

「バニラアイスをカップでですか?わかりました買ってきます」

 

アイスを買いに行くめぐみんを見ながら、クレープを食べる。

このクレープ上手いな。

出来上がる所見てたら食べたくなるのもわかる気がする。

そして、食べ出したら止まらなくなるのも。

 

「カズマ買ってきましたよ」

「じゃあ、このクレープの中に入れて食べるぞ」

「こうですか?」

 

特に指示してないのにクレープを広げて、アイスを乗せようとしていた。

流石は紅魔族随一の天才だ。

 

「そうそう。ちょっと開いてその中にアイスを入れて包み直す。それでパクッと食べてみて」

「こ、これは!?この組み合わせ!最高です!」

「だろ?」

 

予想以上の喜び方で、子供みたいにはしゃいでるのが可愛い。

この笑顔をタダで見られるとか最高だな。

クレープとアイス作った人に改めて感謝しないと。

 

「これを商品化すれば絶対売れますよ!天才ですね!」

「天才は言い過ぎだろ。気に入ってもらえてよかった」

「カズマを喜ばせるつもりが私が楽しんでますね」

 

バツが悪そうにしてる。

気にしなくていいのにな。

 

「お前が楽しんでたら、俺は嬉しいから大丈夫だ」

「・・・ズルいですよそれは」

「何がズルいって?」

 

言わんとすることはよく分かるけど、めぐみんから直接聞きたい。

多分答えてくれないだろうけど。

 

「そんなことより早く次のお店行きましょう!」

「へいへい。次は何処に行く?」

「カズマはどんな店に行きたいですか?」

「俺はめぐみんと一緒に居れたらそれでいいから好きに決めてくれ」

 

前回は俺が計画してたし、今回はめぐみんが行きたい所でいいんだよな。

この街のことは詳しくないし、俺は特に行きたい店とかないし。

 

「もう!そう言うの無しでちゃんと答えてください!」

「なしとか言われても聞かれた質問に答えてるだけだぞ?」

「分かってますよ!でも反応に困ると言いますかその、恥ずかしいです」

 

恥ずかしいか。

いつも俺がやられてたことだからなこれ。

気持ちは分かる。

そして、今はこれを狙ってやってないから止めようがないって言うあの時のめぐみんの気持ちも分かる。

 

「分かった。善処する」

「はぁ、でどんなお店に行きますか?」

「カフェとかどうだ?」

「それいいですね。あそこのお店入りましょう」

 

めぐみんが言ったカフェに入る。

そして、俺達に気付いた店員さんが声をかける。

 

「いらっしゃいませ」

「二人席お願いします」

「はい。こっちよ。仲のいい兄妹で羨ましいわ」

「そう見えますか?」

 

俺らいつも兄妹って言われてめぐみんがキレてたな。

俺はこれはこれで嬉しいんだけど。

 

「違うのかしら?」

「ええ、私たちはデートする仲ですから」

「あらあら、それはごめんなさいね。お詫びにデザート一つずつサービスしてあげるわ」

 

まさかめぐみんがデートと言い出すとは思ってなかった。

 

「ありがとうございます。カズマ良かったですね」

「ああ、めぐみんがデートだって言ってくれたのが嬉しい」

「そこじゃなくてですね。ああ、その顔やめてください。イライラします」

 

さっきから俺が経験したことをめぐみんが味わってる気がする。

そんでもって俺はめぐみんがやってたことやってるよな。

真似てる訳じゃないけど、なぜめぐみんがあんなことで来たのかよく分かった。

 

「やめたくてもやめられないんだよなこれ。無意識だし、慣れてくれ。で何で訂正したんだ?」

「はぁ、カズマは兄妹でもいいのですか?」

 

やっぱりめぐみんとしては兄妹に見られるのは嫌なのかな?

それとも単純に俺を立ててくれたのか。

 

「俺は兄妹と思われるくらいに親密見えたってのが嬉しい」

「そうですか?」

「そうだよ。めぐみんはどう思った?」

「私もその、ちょっと嬉しく思いましたけど」

 

嬉しくは思うのか、仲間と兄妹のようって言われるのはやっぱり嬉しいよな。

それだけ親しく見えるってことだし。

 

「カズマは良く思ってないのではないかと思って訂正したのですが必要はなかったようですね」

「いや、訂正してくれてよかった。カップルとして接客されるの心地よかったし」

「もうこの話は終わりにしましょう」

「分かった」

 

めぐみんとのお茶会がどうなるのか楽しみだ。




来週は恐らくカズエリになると思います。


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兄妹と言われて

昨日あげるつもりが遅くなりました。
何とか目覚めて良かったです。


-KYOUDAITOIWARETE-

 

めぐみんと隣町のカフェにてデートなう。

とネットがあれば呟きたいと思いつつ、今を過ごしている。

まあ、俺がネットで繋がってた連中に言っても、信じないだろうけど。

ギルドの運営はどうなってんだろう。

いつインしてもいるカズマさんが音沙汰もなく消えたとしたら、やっぱり死亡したと思うのだろうか?

それとも現実に引き戻されたと考えるのだろうか?

いや、ないか。

死亡説で終わりだな。

実際突然いなくなったギルド幹部は事故死とかだったし。

・・・俺も一応、事故死だよな?

 

「カズマ?」

「悪い。ちょっと考え込んでた」

「これだけメニューが豊富だと悩みますよね。デザート何にしましょうか。飲み物はカフェオレにしておきます」

 

いい感じに勘違いして貰えたようで、良かった。

デート中に関係の無いこと考えてたからな。

追及されたら面倒だった。

カフェオレか。

めぐみんならカッコつけてブラック頼むかと思ってた。

俺も一緒にしておこうか。

 

「俺はショートケーキにしようかな」

「そうですか。う〜ん。私はチーズケーキにします」

「すみませ〜ん!ショートケーキとチーズケーキをお願いします!飲み物はカフェオレ二つで!」

 

さてとここからはゆっくり、雑談でもしてデートぽく行こう。

 

「俺らって何で兄妹に見えるんだろうな?」

「髪の色じゃないですか?黒と茶は近いと言いますか、兄妹だとよくある程度の差だと思います」

「でもさ。めぐみんの眼の色からして紅魔族だろ?その兄も紅魔族じゃないとおかしいじゃん」

 

何度も言われてきたけど、俺が一番気になってたのはここだ。

紅魔族の特徴と俺の特徴は明らかに違うし、兄妹とは思わないはずだ。

 

「それはそうですけど、異母兄妹とか色々可能性はありますよ」

「そうか。てことは養子とかも入れれば有り得るってことか」

 

めぐみんの意見には納得だ。

そう言えばこっちの貴族って金髪碧眼なのに、俺が没落貴族かとか聞かれたこともあったか。

 

「ええ、それに相手が紅魔族かどうかなんて事を一般の人はあまり気にしてないと思いますよ」

「冒険者だから気にするってことか?」

「そうだと思います。こう言うお店だと接客途中で、あなたもしかして紅魔族?と言った反応があとから気付いて言われる事も多いので」

 

めぐみんがいたからってのも俺が紅魔族かどうかを気にする要因かもしれない。

確かに普通の暮らししてたら相手がどんな人かなんて気にしないか。

 

「なるほどな。そういやこっちで茶髪に茶色目とか黒髪黒目って珍しいのか?」

「その特徴は珍しいというか、その特徴の人達に珍しい人が多いと言いますか」

「と言うと?」

「端的に言うとカズマみたいな変わった名前ですね。あっ、紅魔族もだろうとか言うのは聞きたくないですからね」

 

ツッコもうと思ってたのに、釘を刺された。

しかも変わった名前なのに、俺の名前は紅魔族的にはカッコイイらしい。

基準が分からん。

紅魔族的にはミツルギキョウヤはどんな名前なんだろうか。

日本だとカッコイイ名前の部類だよな。

 

「へいへい」

「それに加えて大抵の場合は何らかの平均をはるかに上回る能力や武器を手にしてますね。カズマはド平均ですけど」

「一言余計だ。でも俺らみたいな名前じゃない人もいるんだろ?」

 

痛いとこ突かれたな。

他の奴らがチートを得ているのに比べて俺は駄女神一人だからな。

その事情を話せないとなるとただ単に名前が変な人か。

 

「ええ、この国では少数ですけど、そう言う特徴の人が多く住む国家はありますよ」

「そうなのか。まあ、この話はここまでにしておいて、めぐみんは何か気になることとかないのか?」

 

あまりこの話をし過ぎると俺がどこからやって来たのかとかそう言うややこしい話に繋がってくるから、ここら辺で切り上げよう。

 

「気になることですか?そうですね。私としては好きな人と兄妹と思われるよりちゃんとカップルだと思われたいのですが、カズマは違うのですか?」

 

やはりめぐみんはこう考えてるのか。

俺としては兄妹って言われてもそれはそれで嬉しいからなあ。

 

「なんて言うかどっちも嬉しいって話だな」

「どっちもですか」

「そう。どっちにしろめぐみんと仲が良いって思われてるってことだからな」

「つまりお兄ちゃんは私が妹でも彼女でも良いってことですか」

 

めぐみんが俺をお兄ちゃん呼びだと!?

意中の相手にお兄ちゃん呼びさせるなんて、いくら払えばいいんだ!

 

「なあ、めぐみん」

「お兄ちゃんどうかしましたか?」

 

なんだろうこの可愛い生物は。

無自覚に俺の急所を的確に突いてくるんですけど。

 

「俺を殺すつもりか?」

「ちょっと何言ってるかわからないです」

「分からないならそれでいいけど、めぐみんが妹でも彼女でもいいってのは違うからな。最適なのはめぐみんが彼女で妹なポジションにいることだ」

 

めぐみんと二歳差って知ってからめぐみんを妹ポジションで見なくなったけど、これこれでアリだな。

もうちょっと心の準備出来てる二人きりの時にお兄ちゃんって呼ばれたい。

 

「・・・やっぱりお兄ちゃんが何言ってるかさっぱりですよ」

「とりあえずお兄ちゃん呼びやめようか。俺が持たない」

 

全く耐性のない中、俺の精神はギリギリである。

例のサービスがなければ数日中に自分を抑えられなくなってるであろう。

 

「はあ?私としては恋人よりも兄妹として接する方が楽なのですが、カズマはその逆なのですね」

「考え方は人それぞれってことだ。おっ、ケーキ出来たみたいだぞ」

 

運ばれてきたケーキを受け取ろうと思って店員を見ると凄ーく身に覚えのある顔がそこにはあった。

 

「何でクリスがここにいるんだ?」

「・・・宿が空いてなくてここで働いたら泊めてもらえるって話だったからね」

 

この街で神器回収中なのか。

まあ、今はデート中だし、日帰りだから抜け出して手伝うって話にもならないだろう。

 

「でもクリスで良かったですよ。私たちのこと知ってるのですよね?」

「うん。まあね。まさか二人のデート中に接客することになるなんて思わなかったけど」

「それはこっちもだ。この前、事情話しておいて良かった」

 

状況確認を素早く済ませておいて良かった。

まあ、事情を話してなくても俺の事情を知ってるから変に驚くとかはないだろうけども、めぐみんが不思議がることがなく、話を進められる。

 

「確かに、知らなかったら驚いてたね。それじゃ邪魔者は去るとするよ。ごゆっくり」

 

こうしてまた、二人きりになる。

ケーキを食べようとフォークを取ったけど、すぐには食べられなかった。

めぐみんからの質問があったからだ。

 

「所でどうしてクリスには話したんですか?」

「どうしてって言うと?」

「カズマとクリスの関係がよく分からないと言いますか。私の記憶だとパンツを盗った盗られたの関係以降そこまで交流ないですよね?」

 

時系列的にそうだよな。

何かいい言い訳ないか?

えっと、クリスとは盗賊スキルの師弟関係で、ダクネスを知る共通点がある。

あっ、これだ!

後で口裏併せしなきゃだが、ここはこれで乗り切ろう。

 

「実はお前らに内緒で何回かあってたんだ」

「内緒ですか?」

「まあ、ダクネスにバレないためにってのが一番だけどな」

「ダクネスの話をしていたと」

 

この頭のキレの良さをクエストでも発揮してくれたら苦労しないのに。

 

「理解が早くて助かる。ダクネスはその、ほら、アレだろ?」

「ダクネスの扱い方を親友であるクリスに聞いていたのですね。内緒にするのも納得です」

 

よし、これで大丈夫だ。

丁度クリスが新しく入店したお客さんを誘導して後ろを通った時に話していたから、口裏合わせもそこまで必要ないかな。

 

「そういうこった。で、まあお互い苦労話してる間に打ち解けて、クリスが一人じゃできないようなクエストとかがあったら手伝うのを条件に今回のフォローを頼んだんだ」

 

クリスがめぐみんの後ろで待機し、サムズアップしてバックヤードへと帰っていく。

仕事が出来る人は違うな。

 

「私も何か出来ませんか?」

「めぐみんは何もしなくていいぞ。行くのはダンジョンとかだから」

「荷物持ちとかあるじゃないですか」

 

そう言えばパーティーに入る時にもダンジョンの話したら荷物持ちでも何でもするって言ってたな。

まあ、今とあの時じゃあ言ってることが一緒でも思いは全然違うだろうけど。

 

「なんて言うか、こそ泥みたいに宝だけ盗って帰る戦法だからそこまで荷物ないし、待ちぼうけは嫌だろ?」

「分かりました。じゃあカズマ達が活動した日の夕飯は私が払いますよ」

 

めぐみんの財布事情を考えると頼みにくい。

でも、これもしなくていいと言うと他に妥当な手伝いがないって言うか、それこそ荷物持ちとかになってしまうから、仕方ないか。

 

「うーん。そんなことしなくてもって言いたいけど、一番現実的なのはそれか」

「料理にはそこそこ自信あるので任せてください!」

「さっき払うって言ってなかったか?」

「外食の方がいいですか?」

 

財布の入ったポケットの方を見ながら恐る恐る聞いてくる。

やっぱり仕送りしながらだとキツイよな。

意地悪言わなきゃ良かった。

 

「いや、めぐみんのお財布事情的にはそっちの方がいいとは思うし、俺的にはめぐみんの手料理の方が食べたい」

「そうですかそうですか。いいでしょう今日の夕飯作ってあげますよ」

 

めぐみんってこんなにもチョロインだったけか?

もっとこう、苦戦させられてた気がするんだが・・・

まあ、めぐみんルートをゼロから攻略してる俺としては助かる条件なんだけども。

 

「作るって何処で?」

「宿屋でですよ?」

「めぐみんの宿屋ってキッチン付きなのか?」

 

そう言えばめぐみんの泊まってた宿屋には行ったことないな。

呼びに行く程度はあったけど中に入るのは初めてだ。

 

「ええ、そう言えばカズマは馬小屋でしたよね。今日は私の部屋に泊まって行けばいいですよ」

「いいのか?」

「ベッドが二つありますから問題はないと思うのですが」

 

やっぱり、めぐみんもお子ちゃまだな。

一つ屋根の下って時点で危ないってのに。

 

「そこじゃなくて、ほら、男を部屋にあげて大丈夫なのか?」

「と自分で言ってくるような人なので、そこは信用してます。後は爆裂散歩のおんぶでも何もしてないですからね?」

「そりゃどうも」

 

良かった。

初めの頃はまだセクハラ始めてないからな。

これがもうちょっとあとだと不味かったかもしれない。

 

「外聞に関しても、私たちは隣町に行ったと思っていれば普通は日帰りにならないと思いますからね」

「問題は何も無いってことか。一応フード付きのローブ買っておくか」

「そのくらいの備えはした方がいいかもですね」

「夕飯宿屋って事はデートはそれまでだな。食材の事考えると早く帰った方がいいだろうし」

 

暗くなるまでは商店街巡りする予定だったけど、夕飯をめぐみんに作ってもらう以上長居は出来ないな。

生鮮食品の店は閉まるの早いから、昼間に入手しないといけないし、鮮度の問題もある。

 

「宿屋でボードゲームとかして遊ぶのはどうですか?」

「その手があったか。所謂お家デートだな」

「お家デートですか?初めて聞きますが確かにそうですね。ボードゲームは得意な方ですし、カードゲームもいくつかありますからね。今日は寝かせませんよ?」

 

無自覚にこの子は俺を攻めてくるよな本当に。

クリスが近くに来たから話を降って、落ち着かせよう。

 

「・・・クリス、聞いたか?めぐみんが今夜は寝かせないってさ」

「惚気の報告は要らないから早くケーキ食べてよ。お店、混んできてるからね」

 

言われて辺りを見ると満席で入口には数組の待ってる人がいた。

これは早く出ないとお店に悪い、

このケーキタダで貰ってるものだしな、

 

「・・・悪ぃ」

「あのう。そう言う意味じゃないですからね?」

「もちろん分かってるっての。クリスが早く食べてくれって言ってるからさっさと食べて食材買いに行こうぜ」

「はい!」

 

ケーキを食べ終えると、すぐにカフェを後にした。

めぐみんは料理を振る舞うのが楽しみらしい。

これこそウィンウィンの関係だな。

俺はめぐみんの料理が食べたいし、めぐみんは料理を振る舞いたい。

この前のデートみたいなやつじゃない。

これは進展したと言っていいんじゃないか?

 

「カズマ、何食べたいですか?」

「めぐみんが得意なやつで」

「では、肉じゃがとかどうですか?」

「じゃあそれで頼む」

 

と料理も決まり、食材も買い集めが始まった。

食材選びは分担して、早く済ませた。

そして、待ちに待った転移魔法の使い所がやってきた。

 

「結構買いましたね。やっぱり私も少しは持ちますよ?テレポート屋までは距離ありますし」

「いや、大丈夫だ。めぐみん、止まってこっち来てくれ」

 

不思議そうにこちらへ近づいてくるめぐみん。

この前冒険者カード見た時に気付いてなかったのか。

 

「何するんですか?」

「動くなよ?『テレポート』!!」

「えっ!?」

 

と言ってる間にアクセルに到着するのであった。

めぐみんがさぞ驚いてるだろうと思って、顔を見てみる固まっていた。

 

「おーい。めぐみん?どうしたんだ?」

「か、カズマ?今のは何ですか?」

「テレポートだけど?」

 

魔法に関してはめぐみんの方が詳しいと思うんだけどなあ。

 

「分かってますよ!私の仕事を奪わないでくださいよ!」

「おいおい、騒ぐなって、目立つだろうが。俺はお前の仕事奪うつもりはないぞ?」

「・・・」

 

怪訝な目で睨まれても困る。

しかし、どうしようか。

睨まれてるのにかわいいと思えて、もっと見てたいって思えてくる。

 

「いいか?テレポートは一日一回しか俺は使えないし、しかも他に何も魔力使ってないのが条件だ。めぐみんが気にすることなんてないし、前にも言ったけど俺はめぐみんをパーティーから抜けさせる気は無い」

「・・・そんなことも言ってましたね」

 

やっと落ち着いて貰えた。

マイトモドキ作った時の反応を考えれば当然の反応だったのに、俺としたことが見誤ったな。

 

「不安にさせてごめんな。デート中にこんなじゃまだまだダメだな俺は」

「いえ、そんなことはないですよ」

「そうか?」

「私が勝手に危機感と言うか焦燥感に駆られてしまっただけですから」

「そうさせたのがダメだと思ってるんだけども」

 

俺が言ってるのはまさしく、危機感を抱かせたことなんだよなあ。

自分の行動で、不安にさせるのはよくない。

まあ、めぐみんはあまり気にしてないみたいだから、このことはここまでにして、次に繋げよう。

 

「カズマは優しいですね」

「前にも言ったが俺はずっと優しいぞ?」

「・・・ともかく、帰って支度しましょう」

「おう」

 

めぐみんの手料理は何度も食べてるけど、めぐみんの宿屋でという新鮮な体験に思いを馳せながら、俺たちは帰路に着くのであった。




次は何をあげるか未定です。


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料理に魅入られて

成人式があったので、投稿遅くなりました。すみません。
成人らしく行動してたら、取材班と思われたのは私です。


-RYOURINIMIIRARETE-

 

めぐみんお手製肉じゃがを食べるためにめぐみんが泊まっている宿へと俺はやってきた。

彼女の家で食べる料理ってシチュエーションは今までなかった。

まだ付き合えてないけど、こんな日が来ようとは。

 

「ちょっと、待っててくださいね?部屋片付けて来ますから」

「玄関で扉の方向いてるのじゃダメか?ここだと誰かに会う可能性があるし」

「確かにその通りです。絶対振り返ったらダメですからね!」

 

めちゃくちゃ必死だ。

絶対隠したい何かがある。

探りたい所ではあるが、変に詮索して警戒されたくないし、やめておこう。

 

「ああ。てかそんなに散らかってるのか?」

「違いますよ!人を上げるなら部屋を片付けるのは最低限のマナーです」

 

最低限のマナーか。

そういうことにしておこう。

 

 

 

「お待たせしました」

 

待つこと数分で呼ばれた。

本当に片付けをしていたのだろうかと思うほどに、余りゴトゴト音がしていなかった。

何かを動かしてる音は確かにしてたけど、散らかってる感じではなかった。

やはり、何か見られたくないものを簡単に隠してみたとかだろうか。

 

「何ボォーっとしてるんですか?見回しても変なものとか散らかってた痕跡とかはありませんよ。そもそも散らかってなどなかったのですから」

「それはこの速さから分かるけど、女の子の宿に入るの初めてだし、それも好きな子の家だし、緊張してんだよ」

 

めぐみんの部屋には屋敷と里の方で何度も入ってるのに、凄く新鮮でドキドキする。

 

「カズマも緊張するのですね」

「お前は俺をなんだと思ってんだ」

 

少なくとも直ぐに耐性ついちゃうめぐみんよりは、緊張する人間だと思う。

 

「突然プロポーズして、壁ドンしてくる人です」

「それはそれ、これはこれだ」

 

あの時は色々吹っ切れてたからなあ。

やけくそな所もあったし、仕方ない。

まあ、あの時の快感が忘れなくて、積極的に責めるのも悪くないって気付いたっていうか、無意識下でめぐみんに迫るようになっちゃってるんだけども。

 

「はぁ、今から作るので、そこに座って待っててください」

「いや、食材切るのとかは手伝うぞ?」

「今日は私がカズマにデートを提供するのですよ。だから待っててください」

 

と言われると何も出来なくなり、料理を作るめぐみんの後ろ姿を見て待つことにした。

これがとても心地いい。

エプロン姿のめぐみんは屋敷で何度も見てるけど、小さい部屋に二人きりでってのがいい。

同棲してるカップルみたい。

 

「もう少しでできますよ。味見しますか?」

「いや、出来てからのお楽しみで待っとく」

「ではもう少しお待ちを」

 

めぐみんの作る肉じゃがか。

いつぶりだろうか。

魔王討伐後はその他の和食やら洋食やら中華やらを教えていたから食べてなかったな。

 

「出来ましたよ。あの、そんなに見られると恥ずかしいのですが」

「エプロン姿のめぐみんが可愛いからつい」

「なな、何言ってるんですか!」

 

照れみんは可愛いな。

もっと見てたい。

 

「思った事だけども」

「もういいです!早く食べましょう!」

「へいへい」

 

何故だ。

何故めぐみんはこうも直ぐに吹っ切れるんだ?

俺は中々慣れなかったのに。

 

「「いただきます」」

 

ああ、めぐみんの作る肉じゃがの味だ。

久しぶりだ。

みんなで食べてたのを思い出す。

こっちでも早く屋敷を手に入れたいな。

 

「どうですか?」

「・・・めぐみん」

「はい」

 

ここに来るまでの間に手料理を家族以外に振る舞うのは初めてだと言ってたし、緊張してるらしい。

 

「毎日食べたい味だ」

「そ、そうですか。私の料理くらいなら何時でも作ってあげますよ?」

「じゃあ、毎日食べたい」

 

現状は毎日なんて無理だろうし、俺とめぐみんが隠れて会ってるのが見られると色々厄介だし、不都合の生じる可能性がある以上やるべきじゃない。

とは言え、聞かれたことには素直に答えた。

 

「あの、流石に毎日は難しいと思いますよ?毎日私の宿に来ていたら怪しまれますし」

「それは一緒に住めば問題解決だ」

 

また屋敷を手に入れれば、周りの目など気にせずにめぐみんの手料理を食べられる。

でも、前回みたいに簡単に屋敷が手に入るのだろうか?

過去に戻ったわけじゃないし、もしかしたらこの世界のアクセルは共同墓地もしっかり管理されてるかもしれない。

 

「なな何言ってるんですか!?私はまだ付き合うとかプロポーズ受けるとか言ってませんよ!」

「そりゃあめぐみんと二人で暮らす家ってのも憧れるけど、うちのパーティー全員で暮らせる家が先だな。それなら俺らの関係怪しまれないだろ?」

「えっと、四人で暮らせる家となると相当な額ですよ?」

 

やっぱり結構な額になるよな。

屋敷買い取った時は手続き全部ダクネスに丸投げしてたし、よく分からない。

あの屋敷は四人で暮らすにはデカ過ぎるけど。

 

「まあ、普通ならそうなんだが、俺らパーティーの第一目標が拠点の入手ってのはいいと思わないか?」

「良いですねそれ!アジトはカッコイイ秘密基地風にしましょう!」

「断固拒否する」

 

紅魔族の感性に任せて家なんて作ったらやばい事になる。

でも、これまでに行った紅魔族の家って何処も日本家屋と変わらない普通の家だったよな?

 

「何故ですか!」

「あのなあ。お前のこの部屋だってリラックスしやすいようにしてるだろ?」

 

恐らくこれだろう。

何だかんだ言って実用性が取られるはずだ。

 

「ええ」

「戦い疲れて帰ってきた拠点が秘密基地風の無機質だったり、荒廃した感じのする場所だったら嫌だろうが」

「全然問題ないですよ?」

 

そうだ。

こいつはロマンの為にネタ魔法と呼ばれる爆裂魔法を極める茨の道を選ぶやつだった。

多分ぶっころりーとかなら普通にリラックスできる環境を選ぶはずだ。

・・・そうだよな?

 

「ともかく普通の家な。多数決取ったら俺の勝ちは確定だろうからな」

「ズルいですよ!数の暴力は反対です!」

「世の中の理不尽を味わえフハハハハ」

 

バニルの真似をして高笑いしてみた。

悪感情がどうとか分からないけど、心地良い。

 

「何だかカズマが悪魔みたいに見えます。と言うかそれが好きな人に対する態度なんですか?」

「こう言う軽口も叩ける気の置けない仲の方が、一緒に居て楽しいだろ?」

「またらしくない粋なことを」

 

自分でもらしくないとは思うけど、実際に言われると腹立たしい。

 

「うっせえ」

「ふふっ、確かにこの方が楽しいですね」

「お前なあ」

 

この感じだよ。

いつも通りの会話ができて、なんてことのないことで笑い合うことができる幸せ。

 

「カズマ、おかわりはいりますか?」

「まだあるのか。もちろんおかわりだ!」

「まだありますから満足するまで食べてください」

「ありがとう。今度、ウチの味の肉じゃが作ってやるよ」

 

俺にしか分からないお袋の味ってやつを作る。

こっち来る前は全員から大好評だったから今回も行けると思う。

 

「カズマの料理ですか。楽しみです。明日の夕食にお願いします!」

「え?明日は不味くないか?」

「みんなを呼べば問題ないですよ」

 

考えは悪くないけど、なんの脈絡も無さすぎやしないだろうか。

俺が料理する話にどうやって辿り着く?

 

「でも急過ぎないか?俺と料理の話する機会なんてないだろ普通」

「私とカズマの料理バトルなんてのはどうです?肉じゃがの作り方は家庭によって変わりますから何かしら火種くらい探せばありますよ」

「じゃあ、人参の切り方が違ったからそれでいこう」

 

実際にこれで初めて肉じゃがを振る舞う時にアクアと揉めたからな。

アレはめぐみんとダクネスが止めてくれなかったら夕飯が無くなるところだったよな。

 

「人参ですか。ではそういうことにしましょう」

「俺はめぐみんの肉じゃが明日も食べられて嬉しい」

「そんなに気に入ってくれましたか?」

 

気に入ったというより、そもそもお気に入りだった。

めぐみんの家庭的な一面を初めて見た時は随分驚かされたものだ。

てっきりこやつは料理出来ないと思ってたからな。

完全に偏見だが。

 

「美味いものは毎日食べたいだろ?」

「カズマ、私決めました」

「何を?」

 

突然立ち上がるめぐみんに俺は疑問を投げかける。

何を決めたんだ?

このタイミングで何を?

 

「拠点を一日も早く手に入れましょう!」

「お、おう?」

 

決意した内容は分かったけど、決意した理由が何の脈絡も無さすぎやしないだろうか。

めぐみんってこんなに思い付きで行動する子だったか?

爆裂関係は抜きにさせてもらうけど。

 

「察しが悪いですね。カズマに毎日料理を作るためですよ」

「えっと、そんなことのために決意したのか?いや、俺としては嬉しいんだけども」

「みんなと夕食を食べない日はずっと一人で食べてたので、ただ食事するだけでしたが、やはり、ご飯は誰かと食べるのが一番です!それに料理も食べてもらう相手がいる方が楽しいですから」

「なるほど、じゃあ、拠点獲得目指して頑張るか!」

 

俺と料理食べるのが楽しいからとかならもっと嬉しかったけど、欲を言っても仕方ないか。

 

「ええ!」

「その為には明日俺たちは喧嘩してないとだな」

「昨日の商店街で再開してから続いてると言うので、会っても話さないとかでいいんじゃないですか?嘘でも喧嘩はしたくないですよ」

 

俺だってやりたくは無い。

でもこれも明日の夕飯のためだ。

俺はめぐみんの肉じゃがのためならゼル帝をチキンにすることだってできる男だ。

・・・やっぱり、後でアクアが面倒だからそこまではやらないか。

 

「それだと話が肉じゃが対決に行かないだろ?明日が現場の方が良いって」

「なるほど。では朝食を二人で食べましょう。人参の入ってるメニューです」

「それで、その人参が火種になるんだな」

 

何度も言ってるが、この機転の良さをクエスト中にも発揮して貰いたい。

正直な話、めぐみんの洞察力なら俺と変わらない指揮能力あるはずなんだよな。

実際にゆんゆんとかアイリスを従えて盗賊団やってたみたいだし。

 

「はい。後は言い合いからの本題です」

「よし、作戦は決まった。今日はもう寝るか」

「ですね。この部屋シャワールーム付きなので、そこで汗とか流しといてください。・・・他意はないですからね?」

 

ここで確認するってことは、やっぱりめぐみんはむっつりだな。

ゆんゆんにむっつりとか言いながら自分も大概だと言うことに気付くべきだ。

 

「分かってるってと言いたい所なんだが、俺の着替えどうすんの?」

「そんなことだろうと思ってカズマのパジャマ買っておきました」

「それいくらだ?今渡すから」

 

この世界の服の中でも上等な服だ。

結構なお値段だと思う。

まあ、普通の冒険者でも難なく買える額ではあるんだが、めぐみんのお財布事情を勘案すると非常に厳しいと思う。

 

「いりませんよ!プレゼントなんですから受け取ってください」

「悪い。プレゼントなら受け取らないとだな。ありがとう」

「この前の高級料理と比べたら大したことじゃないですよ」

 

と言われると何も言い返せない。

 

「前にも言いましたが、対等な関係じゃなきゃいやです」

「でも俺は何もプレゼントしてないぞ?」

「ちょむすけのこととか、仕送りの増額とか色々してもらってます」

「それは俺が勝手に」

「なら、私がカズマにプレゼントするのも私の勝手でしょう?」

 

やっぱ、めぐみんには敵わないな。

 

「分かった。じゃあシャワー浴びてくる」

「ゆっくりどうぞ」

 

 

 

翌日、何か手に感触があるなと思うと俺はめぐみんの手を握っていた。

・・・あれ?

別々のベッドで寝たはずなのに?

不思議に思って目を開けると何と時計が昼を告げ、めぐみんが椅子に座ってこちらに手を向けながら寝ているではありませんか。

・・・これどういう状況?

考えられるのは、俺を起こそうとしためぐみんの手を俺が握ってしまって、そのままめぐみんが動かずに椅子に座って寝た。

でもそんなことめぐみんがするだろうか?

 

「ん、カズマ?起きましたか?」

「おはよう。悪いな」

「別に構いませんよ。それによく考えたら私たちが朝食の時にいるのは不自然でしたので、昼寝をと思ってましたから」

 

確かに、夜の最終便と始発の時間から考えるとこの場にいるのはおかしい。

昨日は浮かれ過ぎてそこまで頭回ってなかったからな。

 

「そうか。でも手は俺が勝手にだろ?」

「ええ、急に何かと思いましたが、私の名前を呼んでいたのと、離そうとすると悲しそうな表情してたので、このままにしてました」

 

心地良い夢を見てた気がしてたけど、めぐみんが手を繋いでくれてたからか。

もっと長く寝れば良かったのか、もっと早く起きれば良かったのか判断に悩む。

 

「ありがとう。そろそろ行くか?」

「それなんですけど」

「どうした?」

 

起き上がろうとする俺を引き止めて、ベッドへと戻された。

この展開はベッドイン?

なんてことはないだろうけど、ちょっと緊張する。

 

「隣町に行くのは二日かかるものなのですよ」

 

ほら、こんなもん。

でもそうか。

俺らがもう帰ってるのはおかしいのか。

仮にテレポートで行ったのなら、昨日の夜に帰ったと言ってないとおかしい。

 

「つまり俺らはどうすればいいんだ?」

「少なくとも今日はこの部屋で大人しくしないとですね」

 

三日間の缶詰を想定してたけど、何とかなりそうだ。

確かに帰りに奮発したとかなら何とかなるだろう。

 

「帰りはテレポートってことにできるのか」

「ええ、なので今日はゲームして遊びましょう」

 

斯くして、俺とめぐみんの仁義なき戦いが始まるのであった。




次の更新は明日の予定ですが、課題の都合上遅くなる可能性大です。


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中には何が?

ゆんゆんお誕生日おめでとう!
おめでたい日ですが、今日はゆんゆんは会話の中で出てくるだけです。
ごめんなさい。


-NAKANIWANANIGA?-

 

めぐみんと俺は友人と隣町で遊んでいることとなっているが、実際はアクセルの宿屋で缶詰である。

好きな子の泊まる宿屋で夕飯をご馳走になったり、一日ぐーたらするとかいくら払えばいいんだろうとアホなことを考えながら、今はこの世界のチェスみたいなボードゲームをやってる。

 

「ここでカズマをジョブチェンジして、アークウィザードにします」

「冒険者を俺の名で呼ぶな。はぁ、じゃあ、俺はめぐみんでめぐみんを取る」

「カズマも言ってるじゃないですか。私同士で戦わせないでくださいよ」

「じゃあめぐみんでゆんゆんを取る」

「・・・ゆんゆん?ゆんゆんのこと知ってるんですか?」

 

げっ、こっちだとまだ俺はゆんゆんと会ってないんだった。

何かいい方法はなかろうか?

とりあえず、時間稼ぎに質問返ししておこう。

 

「友達なのか?」

「私が聞いてるのですが、まあいいです。同郷で自称私のライバルです」

 

自称の所を凄く強調してきたな。

ツンデレみんは伊達じゃない。

ここは爆裂散歩の帰りの寝言ってことにしよう。

 

「直接は知らない。めぐみんがおんぶして寝てる時に、寝言で勝負はゆんゆんの負けって言ってたから多分紅魔族だろうなって」

「その寝言にあるようによく勝負をしていてほぼ私の全勝なので、ライバル視されてるんですよ」

「負けた時はどんな戦いなんだ?」

 

ほぼ、と言うことは何度か負けてるはず。

めぐみんなら不得意なことでも裏の手使って勝つだろうし、どんな勝負か気になる。

俺が見てるやつはめぐみんが全部勝ってたし。

 

「・・・カズマには関係の無いことです」

 

言って俯き、自身の胸を見て肩を落とすめぐみん。

なるほど、胸囲で勝負したのか。

ゆんゆんと出会ってすぐの頃に、発育勝負がどうのとゆんゆんが言ってた気がする。

そんでもってめぐみんが俺と風呂入ったこと持ち出して勝ったんだよな確か。

ゆんゆんが話を広めるような子じゃなくて良かった。

・・・そもそも広める相手が居ないとか可哀想なことは言ってやるなよ?

 

「分かった。発育勝負だろ」

「・・・カズマ、爆裂魔法の標的になる覚悟はありますか?」

「ちょっ、ちょっと待て!お前が言った後に胸の方見たから推察しただけでだな」

 

めぐみんの事だから発育で負けたとかって言う思考なら標的にされても文句は言えないけど、これはめぐみんが自分で答えを所作で表してしまっただけだから納得いかない。

 

「それがイラッとするんですよ!こうなったらこっちのカズマをアクアにチェンジですよ!」

「おい、その言い方何か嫌だから止めろ」

 

アクアに女神チェンジとか言ってたけど、言われたら結構嫌だなこれ。

こっちじゃ言わないようにしよう。

と言うか死なないようにしよう。

流石に冬将軍は二回目だからやられないと思う。

無知が原因で死んでたのもあるからそれは回避出来るかもな。

 

「さっきのもそういうことですよ」

「・・・悪かった。埋め合わせとして昨日こっそり買ってたプリンをあげよう。えっと、俺のターンだよな。めぐみんでアイリス取るわ。大手」

 

めぐみんには内緒で今日の昼にでも一人で食べるつもりだったけど、ここはこれで機嫌を収めてもらおう。

 

「分かればいいのですよ。あっ、そのプリンなら朝食べました。美味しかったですよ。あと、王女様を呼び捨てにするのは外じゃダメですよって・・・ちょっと待ってください!何ですかその動きは!」

 

アイリスは妹だから呼び捨てにしていいと言い返したかったがこっちじゃまだ会ってすらないから諦めた。

プリンはあげると言ったから既に俺のじゃないし、どっちが先かの問題だけど、もう食べられてたとは……

ちゃんと隠しといたのになぜバレた?

昨日片付ける時に見られてたのか?

 

「お前が俺をアクアにチェンジさせるために動かしたから出来た」

「ぐぬぬ。こうなったら王様をテレポートで移動…出来ないじゃないですか!」

「ふふふ、俺は爆裂魔法とテレポート対策に魔女狩りを先にやってたんだなこれが」

 

めぐみんの手の内はゆんゆんと遊んでるのを見てたから知ってる。

アークウィザードさえ封じればこっちのもんだ。

まあ、それやってもゆんゆんは前に負けてたから、普通にこいつはこのゲーム強いけれども、めぐみんのパターン知ってる俺が負けるとは思わない。

 

「カズマを侮ってました…こうなったらダクネスで私を取り押さえます」

「んじゃ俺はクリスでアクア取ってまた大手な」

 

どんどんめぐみんの詰みに近付いてる。

これはめぐみんの降参も有り得るな。

 

「なっ、カズマ本当に今日が初めてですか?」

「おう。やるのは初めてだ」

「このゲーム自体のクリア方法は熟知してるみたいですね。まあ、次のターン私が勝つのですけどね。カズマを私にジョブチェンジです!」

 

この手はめぐみんが取れる現状最善の手だ。

とは言え、そこに来るように俺が誘導したんだけども。

 

「・・・めぐみんって、詰めが甘いよな」

「はい?」

「ダクネスで、そのめぐみんを取る」

 

これでめぐみんは冒険者の駒が無くなった。

爆裂魔法はもう使えないし盤外テレポートの出来ない。

常套手段は封じた。

あとは、勝つだけだ。

 

「・・・あ!?待ってください今のはなしで!とでも言うと思いましたか?アクアでクリスを取ります!」

「えっ、アクアいたのか?そっかダクネスがいたから動けなかったのか。完全に忘れてたぞ。こうなったらアレやるしかねえか」

 

ずっと動いて無い駒だったから考慮してなかった。

とは言え、俺の勝ちは確定しているんだけども。

 

「アレとは?」

「ふっ、決まってんだろ?めぐみん、やっておしまい!エクスプロージョン!」

 

言って俺は盤をひっくり返した。

これ一度やってみたかったんだよな。

 

「あっ!?」

「いやあ、盤面ひっくり返すの楽しいな」

「カズマ」

 

何故か負けたのにめぐみんが笑顔で俺の名前を呼んだ。

顔は笑ってるのに恐怖を感じるのは何故だろう。

こいつ負けず嫌いだからいつもなら再選を悔しがりながらと言ってくるはずなのに。

 

「なんだ?」

「負けたましたが、嬉しいです」

「どうしてだ?」

「散らかしたのは全部片付けといてくださいね。次はトランプしますからね」

 

めぐみんは満面の笑みで言った。

えっ、これ俺一人で片付けるのか?

それならひっくり返さないで、終わらせたのに。

 

「・・・」

「私はゆっくり紅茶でも飲んで待ってますからどうぞ」

 

してやられた。

試合には勝ったけど勝負に負けた。

そんな感じがする。

 

 

 

駒が散らかって回収に手間取っているとめぐみんは紅茶を飲み終わったのか、キッチンに行ったきり戻って来なくなった。

何とか片付けも終わってめぐみんを呼びに向かうも、俺の足は扉の前で止まった。

 

「今はダメですよ。と言うかあなたは当分の間戻らないと言ってませんでしたか?」

 

誰かが訪ねて来てるらしい。

戻って来ないのもよく分かる。

と言うか、この宿の防音性の高さに俺は今驚いてる。

扉明けるまで声全然聞こえなかったし。

 

「クエストの都合でアクセルに来ただけだから」

 

男の声だ。

てっきりゆんゆんが一時的に戻って来たのかと思ってたのに。

誰だろう。

何処かで聞いた事あるような声ではあるけど。

 

「じゃあ、一々私の所に来なくてもいいじゃないですか?そもそも何故ここが分かったんです?」

「この街に来て会いたくなったんだ。ここは盗賊の知り合いに聞いた」

 

・・・これは出て行って、彼氏面した方がいいのだろうか?

ここを知ってる盗賊って言えばクリスか?

いやでも、クリスは今隣町で活動中か。

 

「・・・で、本音は何ですか?」

「お見通しか。実はさっき言ってたクエスト手伝って貰いたくてな。パーティーを代表して俺がやってきた訳だ」

 

出ていかなくて良かった。

でもめぐみんに協力依頼って珍しいな。

ギルドから偶に破壊して欲しい物があるとか言って呼ばれてるのしか見たことない。

 

「さっきも言いましたが今はダメです」

「一日中宿屋にいる時もあるって聞いたぞ?暇なんだろ?」

「暇ではありませんよ。その時は勉強してたんですよ。ちょっと待っててください。暇じゃない証明しますから」

「証明?」

 

仰る通り証明って何だ?

こっち来てるし、まさか俺を呼びに来たのか?

一旦、戻った方がいいか?

でも今からじゃ間に合わない……

ってあれ?

引き返してる。

手には鍋を持ってるし、どういうことだ?

 

「これを見てください」

「何だ?料理か?」

「一人分じゃないですよね?あと、ほら、ここに靴がもう一つ」

 

俺がいることの証明を料理でやったわけか。

流石めぐみん、考え方が違うな。

 

「ああ。もしかして客人がいるのか?それなら先に言ってくれれば諦めたのに」

「だからダメだと言ってたじゃないですか」

「ゆっくりしたいから断ってるのかと思ってたんだ。で誰が居るんだ?」

 

俺だったらその理由で断るだろうけど、爆裂魔法放てるって話をそんな理由でめぐみんが断るはずない。

と言うか、現状でも喜んでついていかないのが不思議なくらいだ。

紹介は多分、仲間だって言うよなこの場合。

 

「私にプロポーズした人です」

「・・・は?」

 

同じく心の中で俺は『は?』と言った。

今来てるやつがめぐみん的にはクリス枠ってことか?

相当親しいってことだよな?

そうなると何処かでめぐみんに紹介されてるはずだよな。

顔を見れば分かるかもしれない。

潜伏スキルや消音スキルを駆使して、さっきまでよりも扉を開けて顔を確認する。

あっ、王都でめぐみんが知り合いだと紹介してくれた冒険者の人だ。

めぐみんが買収した人だと思ってたけど、本当に知り合いだったのか。

確か名前はレックスだったっけ?

 

「という事なので、帰ってもらいますよ」

「いやいや、待て。めぐみんにプロポーズ?誰が?」

「おい、私にプロポーズする人がいるとおかしいみたいな反応はやめてもらおう」

 

俺もめぐみんにプロポーズする人がいるのかと聴きたくなる気持ちはよく分かる。

俺自身、めぐみんにストーカーがいるから恋人のフリして欲しいとか言われた時はそんなモノ好き何処にいるんだと思ったし、実際、ストーカーじゃなくて、爆裂魔法の追っかけだったし。

 

「別にそういうつもりはないからな?俺らの知ってるやつか?」

「ならいいです。レックスは知らないと思います」

 

やっぱりレックスだった。

こっちも詳しくは知らないから向こうは全く知らないだろうな。

 

「そうか。でも、あのめぐみんに婚約者か」

「婚約者ではありませんよ?親友です」

 

うぐっ。

レックスに婚約者と言われてちょっと嬉しくなったのに、即座に否定されると事実だけどダメージが……

 

「親友?」

「私が返事するまでの間の私達の関係です」

「よくそれで待ってくれてるな」

 

逆に待てないとか何様だよって言いたい。

好きな子に認めて貰うのには時間かけてでも頑張るしかねえ!

本当に好きならいつまでも待てるはずだ。

それに、何だかんだ言ってめぐみんの方から一緒にいる時間増やしてくれてるからな。

 

「仲間ですから、一緒にいるのは変わらないと言ってました」

「仲間か。それで、そいつのことどう思ってんだ?」

 

レックス様ありがとうございます。

めぐみんからの現状の認識を知れる良いチャンスだ。

 

「いい人だなとは思ってますけど、それは仲間としてですし、よく分からない状態で何とも」

「明日はここに滞在予定だから俺らで良ければ相談乗るぞ?ギルドにいると思うから声掛けてくれ」

「お言葉に甘えましょうかね。ソフィに相談したいですね」

 

ここで相談して俺に筒抜けって状態でやってくれれば良かったのに。

明日俺がギルド行ったら、めぐみんが相談する機会無くすから良くないし、わざわざ尾行して盗み聞きするのも気が引けるし、ここは諦めるか。

 

「女同士の方が早いかもな。分かった。アイツも恋バナ好きだから上機嫌で話聞いてくれるだろうよ」

「それは助かります。ではまた明日会いましょう。テリーにもよろしく言っといてください」

「おう。また明日な」

 

やっとレックスが帰ったと言うべきか、帰ってしまったと言うべきか。

長居されると二人きりのお家デート時間が短くなるとも言えるし、帰られるとめぐみんの俺に対する考えが聞けなくなったし……

不自然じゃないようにトランプ探すか。

めぐみんがボードゲームを出てきた棚を開けると手帳とトランプが入ってた。

両方出して、夕飯持ってくるの待ってる間の楽しみにと思ったのも束の間、めぐみんが戻って来た。

 

「お待たせしてます。ちょっと知り合いが来てたので、遅くなりました。ちゃんと私がいることは内緒にと言っておきましたから安心してください。本当は飲み終わったら手伝うつもりだったのですけどね」

「気にするなって、それよりこの手帳何が」

 

書いてあるのかと聞く前に手帳を奪い取られた。

凄い怖い顔してる。

顔真っ赤なんだけど、あの手帳何が書いてあるんだろうか。

気になる。

 

「よ、読んでませんよね?」

「人様のを勝手に見たりしないって」

「本当ですか?」

 

めぐみんがここまで隠す物とか見たことないからすげえ気になる。

それにあの手帳見たことないし。

 

「本当だって、そんなに見られたくないなら俺が開けることになる場所に片付けるなよ」

「迂闊でした」

 

めぐみんが部屋片付けるって言ってたの多分この手帳隠す為だな。

片付けた場所が悪かったから見つかったけど。

 

「それよりトランプ何して遊ぶ?」

「トランプタワー作りましょう。先に三段作れた方の勝ちです」

 

トランプタワーと言えばゆんゆんがいつもギルドの机で作ってたっけ。

その影響でめぐみんも上手かったりするのだろうか?

だったら有利な戦い挑まれてるな。

 

「じゃあそれで行こう。机揺らしたり何かで固定したりするのは禁止だよな?」

「当たり前です。あと、息を吹きかけるのもなしですよ。始め!」

 

とトランプタワー対決が始まったのだが、俺は手帳の事が気になり過ぎて、集中が持たずに、負けてしまった。

 

「カズマ、本気でやってましたか?」

「いや、手帳が気になってさ」

「・・・次勝ったら見せてあげてもいいですよ」

「よし乗った。始め」

「あっ、ズルいですよ!先に始めるなんて!」

「お前もさっきやったろうが、俺は文句言わなかったのにな」

「・・・」

「よし勝った」

「どんだけ読みたいんですか。ここの見開きだけなら見せてあげます」

「全部じゃないのか?」

「誰も全部なんて言ってませんよ」

「分かった」

 

内容は中二病的な表現があることを覗いては至って普通の日記帳だった。

めぐみんがこの文体を黒歴史だとか恥ずかしいとか思ってるはずもないから、隠す理由がそこまでよく分からない。

このページはパーティー入りした時の話が書いてあるな。

 

○月✕日

我が禁断の力を欲する者が現れた。活動地の移転さえなければ、誘いに乗っていただろう。しかし、我はこの地に留まり、新たな邂逅をする。この街で幾度となく視界に入りし、男女二人が我が同胞となった。彼らと魔王討伐を目指す旅が今始まる。

 

めぐみんの力を欲する者ってもしかしてレックスか?

活動地の移転は多分王都に拠点移したって話だろうしな。

 

「気がすみましたか?」

「めぐみんが隠したい所読みたい」

「それはダメです。今勝手に見たら金輪際デートはしませんし、ここにもあげませんからね」

「分かったって、そんな事しなくても俺は見ないから」

 

俺が絶対に言うこと聞くフレーズ使ってまで読ませたくないのか。

益々めぐみんの隠す内容が気になってきた。

 

「返して貰いますよ。今から夕飯持ってきますね」

「俺も手伝う。今日は何作ったんだ?」

「クリームシチューです」

 

昨日勝った食材と冷蔵庫の中身から作るなら無難な所か。

肉が少ないのは寂しいけど、美味しいのは絶対だ。

 

「それは楽しみだ」

「お昼は昨日のあまりでしたからね」

「余りでも凄く美味しかったから問題ないぞ」

「ありがとうございます」

 

この後、美味しくシチューを頂いて、シャワーを浴びて、眠りにつこうとしている所。

また、めぐみんの料理毎日食べたいって言ったら、昨日以上に顔を赤くしてた。

多分、レックスが婚約者って単語使ったからプロポーズとしてちゃんと認識されてたみたいだな。

明日、めぐみんが相談してどうなるのか気になる。




次週もカズめぐしてるシリーズのどれかを投稿予定です。


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自分のポジション

とても遅くなり、申し訳ありません。
ちょっと就活で忙しくなってきまして、五月末まで不定期投稿になると思います。
改めてお願いします。
今回は短いですがお許しください。


-JIBUNNOPOSITION-

 

昨日は夕飯の後、トランプで遊び時間を潰し、テレポートで隣町にあった爆裂スポットに行き、マナタイトを使って宿屋に戻った。

そして、今は何をしているかと言うとめぐみんが起きるのを待っている。

好きな人の寝顔を眺めるのはとても健康にいい。

目がスッキリするし、表情筋は緩むし、とにかく最高である。

 

「・・・おはようございます。当たり前のように寝顔見るのやめてもらっていいですか?」

「ありがたいと思いながらめぐみんのご尊顔を見てたから当たり前だとは思ってない」

 

起きてすぐはジト目だったのに、今はもう視線があちこちに行って焦ってるのがよく分かる。

やっぱり焦ってる所見るの楽しいな。

 

「な、何がご尊顔ですか!当たり前のようにというのはそう言う意味じゃないですよ全く!」

「寝顔見るくらい許してくれよ。めぐみんが早起きした時に俺の寝顔みててもいいからさ」

「今日で同じ部屋で寝るのは終わりですよ?」

 

あまりにも幸せな時間を過ごしすぎて忘れてた。

そうだよな。

まずは拠点を手に入れなきゃだよな。

 

「めぐみんが朝早起きして馬小屋に来れば見られるだろ?」

「何故私がそこまでしなきゃいけないんですか。私はカズマの寝顔に興味ないですよ」

 

やっぱりゼロからって難しいな。

興味ないって一番傷付く言葉だ。

寝顔か。

そう言えば昨日はめぐみんの方が早くに起きてたよな?

 

「よく考えたら昨日俺の寝顔見てたよな?」

「カズマみたいにマジマジ見たりしてませんよ。直ぐに私も眠りに落ちましたし」

「で、俺の寝顔見た感想は?」

「案外可愛いねがって何言わせてるんですか!」

 

無関心はなかったようで良かった。

怒って詰めて来てるけど、俺かしたらご褒美でしかないとめぐみんは気付いてない。

 

「自分で言ったろうが」

「カズマはどんな感想を抱いたんですか!」

 

カウンターだとばかりに質問してきた。

これ、めぐみんが紅くなるの想像に固くない。

だって、俺もこれやってめちゃくちゃ恥ずかしい思いしたし。

 

「超可愛くて、食べちゃいたい位の可愛さだと思って、癒し効果抜群で、後は魔道カメラ欲しいなって、そうそうこの寝顔で飯三杯は...」

「もういいです!それ以上何か言ったら引っぱたきますよ!」

「自分から聞いといて酷くないか?」

 

理不尽過ぎる。

寝顔見た感想まだまだあるのになあ。

まあ、言われる側の気持ちも分かるし、これくらいにしておこう。

 

「カズマが恥ずかしいこと言うからですよ!」

「俺だって恥ずかしいわ!お前が聞いたから答えたんだろうが」

「逆ギレ!?恥ずかしいなら言わなきゃいいんですよ!」

 

・・・めぐみんに言われると釈然としないな。

ゆんゆんに勝つ為、俺と一緒に風呂に入ったとか言ってたし、あの時凄く恥ずかしがってたからな。

 

「言わなきゃ伝わらないだろう?」

「・・・もうどうでもいいです。ギルドに向かいましょう」

 

このまま不機嫌なめぐみんだと困る。

何か言って場を和ませるか。

 

「めぐみん」

「何です?」

「愛してる」

「えいや!」

「ぎゃあああああ!?」

 

見事なストレートパンチが俺の腹部に入った。

いきなり何をと思ったけど、そう言えばさっきこれ以上言ったら引っぱたくって言ってたな。

でもこれ引っぱたくではなく、殴る何だよな。

そんなことより、マジで痛い。

折れてないよな?

 

 

 

「あれ?カズマとめぐみんじゃない?どうしているの?」

「隣町に行ったのではなかったか?あと、カズマは何があったのだ?」

 

まあ、当然の反応だよな。

本来は昨日着いた頃合だからなあ

 

「テレポートで帰ってきた。これは、めぐみんに後ろから近付いて驚かせようとしたら、痴漢か何かだと思われてやられた」

「それでこの早さというわけか。カズマ、イタズラは程々にな」

「そういうこった。お前らは何やってたんだ?」

 

めぐみんはまだお怒りのようで、そっぽ向いて話に入る気は無さそうだ。

ダクネスの言う通り、からかうの控えようかな。

でも、そうするとアワアワしてるめぐみんが見られなくなる・・・

くっ、なんと言うジレンマ!

 

「二人でクエストは厳しいからな。私はトレーニングをしていた」

「私はバイトよ。土木工事の仕事手伝いに行ってたのよ」

「なるほど」

 

大方予想通りな返事だった。

他のパーティーに飛び入り参加とか出来る二人じゃないからな。

 

「ところでお土産は?」

 

めぐみんの手料理に浮かれて忘れてた。

どうしよう。

アクアのキラキラした目が向けられてるけど、どうしたものか。

 

「・・・忘れてた」

「・・・めぐみんは何かあるわよね?」

「すみません。私も忘れてました」

 

ですよね。

あの状況でお土産とか、考えになかった。

行く時は考えてたけど、帰りに買えばいいと思っていたら、夕飯が決まって、それが楽しみ過ぎて食材のことしか頭になかった。

 

「・・・」

「代わりにって言うとなんだけども俺とめぐみんが料理振舞うってのはどうだ?」

 

これはめぐみんと喧嘩するフリしなくてもいいかもしれない。

めぐみんがさっきから指をポキポキ鳴らして、やる気満々だったから喧嘩は回避しなくては。

 

「料理?二人が料理出来るなんて思えないんだけど」

「料理スキル持ちを舐めるなよ?」

「私は家で料理していたので、それなりに自身ありますよ?」

 

めぐみんからの圧がアクアに移った。

料理が出来ないと思われていたのが、癪に障ったらしい。

アクアは少し考えてから言った。

 

「じゃあ、それで許してあげる。ダクネスもそれでいいわよね?」

「うむ」

 

何とか怪しまれることなく二人で肉じゃが作る流れになった。

ただ、昨日建前として料理対決をと言ってたのが、本音で料理対決になりつつある。

何を作るかは秘密という事で、二人で買い物に来てるのだが、俺が当初予定してたデートっぽさのある買い物ではなくなってしまった。

 

「私は負けませんよ?」

「俺だって負ける気はない」

「勝ちを譲ってくださいよ。私の事愛してるんでしょう?」

 

やっぱりめぐみんの適応能力高すぎないか?

まあ、俺がこんな返ししたら逆に俺が手玉に取られるから変に仕掛けなかったってのもあるけども。

 

「それとこれとは話が別だ」

「カズマのいけず。そんなだからモテないんですよ」

「モテなくても結構。俺の攻略対象は一人だけだからな」

 

モテる?

モテた所で好きな子が自分のこと何とも思ってなかったら意味は無い。

多少は意識してくれてるとは思うけど、まだ無関心な所があるから、ちゃんと振り向かせないと。

 

「・・・ふん!絶対カズマを負かせてやります!」

 

勝負するなら本気が一番だ。

それに、本気の料理を食べられるってことで、俺的には結果オーライだ。

 

「私はこれから寄るところがあるので、これ持って帰ってください」

「おい、これ全部一人で持って帰れってか?」

 

袋いっぱいに入った物が四つ。

確かに持って帰れないことは無い。

自分から言うのと言われてやるのは全然意味合いが違う。

 

「無理ではないでしょう?これ鍵です」

「・・・はぁ、まあ、俺が持つって言うつもりだったからいいけどさ」

「ではお願いします」

 

レックス達の所に相談だよな。

ここは止めない方がいいか。

それにしても、このツンケンした感じ、いつもゆんゆんはこんな思いだったのだろうか。

 

 

 

宿屋に到着。

食材は冷蔵庫に片付けた。

そう冷蔵庫に。

この世界はよく分からん。

何でも魔力で冷気を保つらしい。

冷蔵庫があるなら炬燵とか、クーラーはなんでなかったのかと未だに謎だ。

他にも焼きそばパンはあるけど、焼きそばはないとか。

考え出したらキリがない。

やることもないし、めぐみんの相談とやらを盗み聞きしに行こうかな。

などと邪な事を考えていると扉をノックする音が聞こえた。

 

「すみません」

「はーい」

「あれ?部屋間違えました。すみません」

 

配達の人か。

多分、実家からの手紙とかなんだろうな。

 

「ってあれ?やっぱりここで合ってるじゃん」

 

号室を確認して部屋間違いじゃないと気付いたらしい。

俺まだ目の前なのに、普通に話し出したな。

 

「めぐみんさん部屋移ったのかなあ。オーナーに聞きに行くの面倒なんだよなあ」

 

おっと、いけない。

このままオーナーの所まで行かせたらダメだよな。

 

「いや、めぐみんの部屋で合ってますよ。郵便なら俺が預かっときます」

「・・・めぐみんさんのお兄さん?」

「仲間ですよ。俺紅魔族じゃないですから」

 

やっぱり兄妹だと思われるのは嬉しい。

めぐみんが怒る理由はさっぱり分からん。

 

「もしかしてめぐみんさんの彼氏さん?」

「だったらいいんですけどね」

「違いましたか。えっと、これがめぐみんさんへの届けものです」

 

うん。

彼氏と思われるのも、兄だと思われるのもどっちも同じくらいに嬉しいな。

 

「ありがとうございます」

「あと、これはお仲間のカズマさんと言う方にとゆいゆいさんとひょいざぶろーさん。あっ、めぐみんさんのご両親から預かってるものです。カズマさんに渡して貰えますか?」

 

あの二人から俺に?

こんな時期に手紙なんて貰ったことないよな?

 

「カズマは俺です」

「あれ?カズマさんですか?でも確かあのお二人未来の息子に届けてくれと」

 

あっ、仕送り増額の件か。

二人ってひょいざぶろーさんまで噛んでるのか。

俺のことは伝えなくていいって言ったのにちゃんと手紙送ったんだな。

 

「もしかしてそれで彼氏か聞いたんですか?」

「ええ、まあ。仲間の男性で宿屋にも入ってると言う状況から推測すると」

「あははは、ちゃんと受け取ったんで、よろしく伝えといてください」

「承りました。またのご利用お待ちしてます」

 

さてと、手紙にはなんて書いてあるかな。

なんて考えているとまた扉が叩かれた。

 

「カズマくん!手紙読む前にあたしとデートしない?」

「丁重にお断りします」

 

扉を開けると共にクリスの誘いを断った。

一周目なら普通についてっただろう。

 

「なんでさ!」

 

あんたが一番理由を知ってるだろうと言いたいが、面倒だしやめておこう。

断る理由はめぐみんがいるってこともだし、加えて、今は手紙とかめぐみんの相談がどうなってるのかとか気になることが多いからそんなことしてる場合じゃないのも大きい。

 

「で、何しに来たんだ?」

「めぐみんがどんな相談してるか気になるでしょ?」

「そりゃまあ」

「あたしのせいでこんなことになってるから、ちょっとは手助けしようかなあっと」

 

罪の意識はあるらしい。

そりゃあそうだ。

もし、こっちにコピーされるのがプロポーズ二日前の俺とかなら、めぐみんに怪しまれずに、めぐみん攻略に移れただろうし、逆にプロポーズ後でも、周りの状況とかから、違和感に気付けばくっつかなければいいだけ。

よりにもよってアクションを起こす日だったのが何よりも問題だ。

 

「で具体的にはどうするんだ?」

「めぐみんがお茶してるお店の天井上に隠れ家があって、お店での会話も聞けるんだけど、どう?お店は敬虔なエリス教徒が経営してるから安心してね」

 

いくらエリス教徒経営でも、覗きを許す訳ないだろう。

と言うか、敬虔なエリス教徒ならそんな犯罪紛いな行為認めないはずだ。

アクシズ教徒なら分からなくもないけど、怪しいなこれ。

 

「それ本当にエリス教徒か?天界の天使とかじゃないよな?」

「・・・キミのような勘のいい転生者は嫌いじゃないよ」

「嫌いじゃないのかよ」

 

あの有名作品のワンフレーズをいじって言ってくるとは。

やっぱりクリス、と言うか、エリスは日本のマンガアニメに親しんでるのな。

 

「あたしがどうしてキミを協力者にしたのか分かる気がする」

「へいへい。てかどうして手伝ってくれるんだ?」

「会った時にも言ったけどここに呼んじゃったこと悪いと思ってるからだよ」

 

等と供述しているが、怪しい。

神器回収させられるよな絶対。

 

「本当にそれだけか?」

「何を疑ってるのか知らないけど、裏なんてないからね?」

「嘘だったら怒るからな。案内頼む」

 

めぐみんが俺をどう思っているのかを聞ける数少ないチャンスを逃す訳にはいかない。

仮に要求があっても、この情報には見合ってるかもしれない。

 

「それじゃあ、潜入行ってみよう!」

「行ってみよう!」

 

この人覗きの趣味があるんじゃなかろうと思うくらいにノリノリなお頭が俺の手を引いて、めぐみんのいるお店へ向かうのであった。




次回もこのシリーズの更新だと思います。


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関係改善

お久しぶりです。
就職活動とか、頑張った先に労働が待ってるよく分からない活動したくないです。
不定期更新一回目です。


-KANKEIKAIZEN-

 

クリスに連れられてめぐみんの居るカフェに到着。

何故ここの店が分かったのか疑問になり、移動中に聞いてみたら、あのパーティーの一人と知り合いで、以前落ち着いた話をするならここのカフェだと勧めたらしい。

店の裏口から入り、店の人とは一切会わずに屋根裏部屋にきた。

ここに来て俺は罪悪感に駆られ始めてる。

 

「ねえ、ここまで来て止めるの?」

「だって、こんなことバレたら嫌われるだろ?」

「バレないバレない。ほら、開けるよ」

「ちょっ、クリス!」

 

クリスが床にある木版をはがすとめぐみんの声が聞こえてきた。

話の内容が入る前に降りようとしたら掴まれて逃げられなくなった。

 

『―して、カズマが突然プロポーズしてきた訳です』

『ほう。それは確かに妙だな』

『他にも爆裂魔法も含めて数多のスキルを覚えていて、私に優しく接するようになって、もう何が何だか分からないんですよ!』

 

・・・罪悪感が凄い。

もう何も言ってこないから気にしてないのかと思ったら、まだまだ混乱してる最中だったらしい。

 

『優しくなったのはいいんじゃない?』

『嬉しいと思うこともありますけど、カズマが心配なんです。明らかに異常ですよ。この変化は』

『俺らが何とかできる話じゃなさそうだな。まあ、話は聞くけどな』

 

テリーの言う通りだ。

神様のイタズラで、めぐみん的に言う正常な俺には戻ることがない。

誰にも解決出来ない問題だった。

 

『それで、めぐみんはその、カズマだっけ?その人のことどう思ってるの?』

『どうと言われましても。仲間としか』

『じゃあ、仮に私がその子に告白して付き合ったらどう思う』

『全く想像がつかないので、何とも。私が言うのもなんですけど、カズマはぞっこんですよ?』

 

俺のアプローチはある種成功してるらしい。

めぐみんは俺を浮気しない男と捉えてくれているらしい。

前だったら絶対こんな評価はされてないと思う。

 

『そんなに惚れ込んでるんだ』

『ええ、これが急な事じゃなくて、もっとこう、手順と言うか、色々あってのことなら、私も手を取ってると思います』

 

マジか・・・

最初からめぐみんルート突っ走らずに、ゆっくりじっくりやれば良かったのか・・・

選択肢ミスったなこれは。

 

『ふーん。今はどんな関係なの?』

『親友です』

 

三人とも驚いた顔をしていた。

有り得ないって言いたそうな顔をしてる。

 

『親友?それで納得したのか?』

『はい。返事はいつでもいいから、ゆっくり決めて欲しいと』

『そんないい男がこの街に居たのね。滅多にいないわよ?ちゃんとキープした方がいいよ』

 

キープって何か嫌な言葉だな。

まあ、俺からの一方的な好意だから、そうなんだけども。

 

『カズマに好きな人が出来た時に、そう言った対応を取るのでしょうね』

『それがめぐみんなんだろう?』

 

おう。

テリーさんもっと言ってやれ!

俺がめぐみんのこと大好きだって。

 

『そうでしょうか?私はカズマに起こった異変の一つだと思っています。だから、あれは全部、カズマが好きになる人に向けられるべきなんです。私なんかじゃなくて』

『私なんかってめぐみんは凄く可愛いから全然おかしくないよ』

 

ソフィさんも、もっと言ってやってくれ!

めぐみんは超絶美少女で、どちらかと言うと俺が不釣り合いな人間だ。

まあ、人に言われたらキレるけども。

 

『でも、カズマが言ってたタイプの女性像と私は真逆なんですよ』

『女性像?』

『髪はロングのストレート、胸が大きくて自分を甘やかしてくれるお姉さんですよ』

 

男性陣は頷いてるけど、ソフィさんがやっぱり所詮男はそんなものかとか呟いてるんですけど!

俺の好きなタイプ明かすとかプライバシーの侵害だと言いたい。

覗きやってた罪悪感がなくなってきた。

 

『男の願望が詰まってる気がするな。まあ、好みは人それぞれだけどよ』

『ともかく!カズマが私を好きになったのがおかしいのです!』

『ねえ、めぐみん。その人はどんな所が好きなんだって?』

『えっと、爆裂魔法に一途な所がとか、仲間思いな所がとか、しっかりしてる所とかです』

 

俺の言ったやつの一部抜粋になってるし、全部プラス要素かき集めたやつじゃねえか。

そう言えば、こっち来る前もめぐみんが俺の言葉を拡大解釈とか、捏造とかしてたの思い出した。

まあ、嘘は言ってないか。

 

『他には、クールな所が好きとか、何よりも私の笑顔が好きだそうです』

 

遂に捏造しやがった。

めぐみんがクールならば、大半のやつがクールになると思う。

最後のだけが百パーセントのと言いたかったけど、これをいい切る前に止められたから実際に言ったことをちゃんと伝えてないと言える。

 

『・・・めぐみんをクールだと思ってるなら、何か盛られてるな』

『それはどういう意味か聞こうじゃないか!』

 

そういうとこだぞ、自称クールな魔法使いさんや。

クールどころか瞬間湯沸かし器だからな。

レックスの言う通りだ。

 

『落ち着いて落ち着いて。多分、惚れ薬じゃないと思うわ』

『・・・やっぱりそう思いますか』

『前にこのバカが私に飲ませようとして、間違って自分で飲んだ時の私へのアプローチはそんなしっかりした物じゃなくて、好きだ好きだって、言うだけだったからね』

『ほうほう。レックスはそんなことしてたんですね』

『違う!アレは誰かに嵌められたんだ!そうだよなテリー!』

 

頼みの綱であるテリーはそっぽを向いた。

・・・多分、本当はテリーが用意した物だなこれ。

それを知らずに飲んだって所か。

 

『レックスの話なんかどうでもいいのよ。めぐみんの相談なんだから』

『・・・』

黙らせられるレックスが可哀想ではあるけれど、私も相談に乗ってもらってる側だからレックスには悪いがこのまま話を続けさせて貰おう。

 

『あの、私はカズマとどう向き合うのが正しいのでしょうか?』

『それは私がどうこう言う話じゃないと思うけど、私なら手を取ると思う』

『で、でも、カズマの本当の気持ちじゃないかもしれないんですよ?そんな状態で・・・』

 

これ以上は聞いていられなかった。

俺はまだまだだな。

めぐみんがここまで俺の事を心配して、悩んでいたなんて。

アクアやダクネスに聞き回っていた話は聞いたのに、嬉しいとしか思ってなかった。

 

「ちょっ、ちょっとカズマくん!聞かなくていいの?」

「アイツがこんなに悩んでるなんて思いもしなかったんだよ!元に戻ったフリすれば問題は解決するだろ?」

「・・・カズマくん。キミ、バカなの?」

「そうだよ!俺はバカだよ!プロポーズした相手の気持ちにも気付けない間抜けだよ!」

「いや、そうじゃなくて・・・」

他にどんな意味があるんだと抗議しようと振り返ったら、下を指差すクリスが苦笑いしていた。

そして、下を見ると慌てふためくめぐみん達がいた。

 

『か、カズマっ!?』

『え?今の声が?でも何で上から声がするんだ?』

 

皆が慌てて周りを見回している。

さすが諜報用の穴だけあって、下からは分からないらしい。

 

「・・・ほらね?」

「・・・とりあえず俺は下へ行く」

「言い訳はどうするのさ?」

「それはクリスがやってくれ」

「え?」

 

クリスがぼおっとしてる間に下に降りる。

気付いたクリスが追いついて来た時にはもう、俺は土下座をして謝罪していた。

 

「めぐみん、ごめん。クリスに誘われて覗きをしてしまった」

「ほう。そうなんですか?」

 

めぐみんは遅れてやってきたクリスに確認をとった。

 

「えっと、はい」

 

納得がいかないといった顔をしてたが、俺は嘘を言ってない。

初めは乗り気だったけども、最後は思い留まった。

でも、板を開けられたら、音が漏れるから動けなくなった。

そうこれは仕方ないこと。

 

 

レックス達は帰り、今は俺とクリスがめぐみんの前で正座してる。

数分俺とクリスが土下座したまま、誰も話さずにいるとめぐみんがレックス達を帰した、

そして、今、めぐみんの尋問が始まろうとしている。

 

「・・・何処から聞いてたんですか?」

「めぐみんが俺のこと心配してくれてるのがよく分かった。何でもするんで許してください」

「・・・で、クリスは何してるんですか?」

「えっと、カズマくんにクエスト協力してもらうのと、二人のことフォローするのって見合ってないと思って、知り合いの経営してる店に他所の冒険者達とめぐみんが入っていったから、引き抜きなんじゃないかと思って、これはカズマくんに聞かせないとってね。あははははは」

 

なるほど、悪くない線だなこれ。

たまたまめぐみんが相談している内容が俺の話だったと。

 

「全く、要らぬことをしてくれましたね。・・・カズマ、その、元に戻ったフリとかしなくてもいいですからね?」

「・・・」

 

聞かれてて当然か。

もうこの案も使えないのか・・・

どうすればめぐみんを悩みから解放してあげられるだろうか。

 

「カズマくんのことなんだけど、あたしの持ってる情報だと。確実に元に戻らないよ」

「ど、どうしてですか!それに何故分かるんですか!」

「カズマくんがこうなったのあたしのせいだからね」

「はい?」

 

俺も心の中で疑問に思う。

何でこのタイミングで、バラしてんの?

自分の正体明かす気はなさそうだけど何を考えてんだ?

それとめぐみんの顔が怖い。

知ってたなら話せと言わんばかりに睨んで来てるけど、俺だってクリスが何言おうとしてるのか知らない。

とりあえず首を横に振るとため息をついてクリスの方へ視線が移った。

 

「カズマくんは前後の記憶がないと思うけど、ダンジョンで転移系の特殊魔法を使って、その人の望む世界に人を閉じこめる悪魔と戦ったんだけど、その中で数年過ごしたみたいでさ」

「どういうことだ?」

「私も分かりませんよ」

 

演技でも何でもなく、俺も意味が分かってない。

そういう設定は先に教えて欲しい。

もしこの前に会った時に教わっていれば俺たちは今こんな状況にはなってないのだから。

 

「それで、その中でカズマくんは魔王を倒した英雄になって、めぐみんにプロポーズをするって時に、あたしが悪魔を倒しちゃったからこっちの世界に戻って来た訳さ」

「・・・本気で言ってんのか?」

 

めぐみんもいるのに、普通に問うてしまった。

まあ、単に理解が追いついてないだけだと思ってるだろうなめぐみんは。

 

「ここで嘘をつく必要が無いのですから、事実なのでしょうね」

「という訳で、めぐみんは何も気にせずカズマくんのこと好きになっていいんだよ」

 

この人は何を呑気なことを言ってるのだろうか。

俺とめぐみんは顔を見合わせた。

 

「カズマ・・・」

「めぐみん・・・」

 

互いに名前を呼び合い、思いを共有した。

俺たちはやることがある。

クリスは俺たちの動作を微笑ましいシーンだと思ったのだろう、ニヤニヤしている。

 

「このまま二人が付き合えば、お姉さんは祝福するよ。って、えっと、二人とも?どうして無言で近付いて来るのかな?」

「「それを先に言えええ!!」」

 

俺はその設定を教えて貰えていればめぐみんにそもそも心配させることは無かったと言う思い、めぐみんは教えて貰えていれば悩む必要がなかったと言う別々の思いからだが、言いたいことは完全に一致していた。

俺たちはクリスにくすぐりの刑を施して、店を去った。

 

 

 

帰り道、お互い何も話さず宿屋へと俺たちは帰った。

到着後も静かにしていたのだが、長い沈黙を破ったのはめぐみんだった。

 

「カズマ、その、モンスターに連れて行かれた世界ではどちらが先に好きになったのですか?」

「めぐみんだ。まあ、俺にとって都合のいい世界だったからかもしれないけどな」

 

めぐみんに惚れさせられたとか言うのは止めとこう。

丁度いい設定をクリスが作ってくれた訳だし、ここは乗っておこう。

 

「カズマにとって都合のいい世界ならタイプの女性が現れてると思うのですが」

「言われてみればそうか。俺が気付いてないだけで好きだったのかもな」

 

そんなことは無い。

全くめぐみんなんて眼中になかったのだから。

俺が望んだ世界ではなく、ただ単にその世界で暮らしていただけだ。

とは言え、この状況下ではこう言う他ない。

 

「か、カズマ」

「どうした?」

「明日、その、デートしましょう」

「俺としては凄く嬉しいお誘いだけども何でだ?」

 

デートに誘われる流れにどうしてなったのかが全く分からない。

めぐみんにまた何か気を遣わせてるのかもと考えてしまう。

でも、それと同時に嬉しくも思う。

 

「昨日までは楽しんでた所もありますけど、カズマに異変がないか観察するのがメインでしたからね」

「お互いフルに楽しもうって訳だな?」

 

確かに劇場とかでも終始俺の事見てたらしいしな。

次こそはめぐみんに心の底から楽しんでもらわなければ。

 

「はい。何故私がカズマなんかを好きになったのかも、興味深いですし」

「おいこら、それはどういう意味だ?」

「そのまんまの意味です。逆にカズマが私なんかを好きになった理由も凄く気になってますよ?」

「・・・お互い様ってか」

 

そう言えばさっきもこんな話してたな。

めぐみんがちゃんと恋愛的な意味で、興味を抱いてくれて良かった。

 

「あと、カズマはカズマの望む世界に居て私を好きになったのなら、好きな所が私に無いかもしれませんよ?私はクールで冷静に判断できてますからね」

 

コイツの自分はクールだって言う根拠の無い自身は何処から来るんだろう。

家のパーティーで間違いなく一番沸点低いのに。

 

「よし、じゃあ俺の理想世界と現実の違い試してみるか」

「試す?」

 

説明するよりも話した方が早そうだなこれ。

 

「めぐみんには妹がいて、めぐみんに似て超可愛い」

「ええまあ、妹は可愛いですよ」

「その妹の名前はこめっこ」

「合ってます」

 

ゆんゆんの時みたく、何処かのタイミングで話しているのを聞いたとかそう言うレベルだと思ってるみたいだな。

一応、めぐみんからは聞いたこと無かった情報言ったんだけどな。

ここからは現状めぐみんしか知らない話にしよう。

 

「あとは、めぐみんの幼馴染の名前はぶっころりーで、里随一の靴屋のせがれ」

「それも合ってます」

「他にめぐみんの話で大事なことと言えば、爆裂魔法教わった巨乳のお姉さんが居て、それに憧れて爆裂道を目指した」

「・・・何故そこまで悪魔が知ってるのですか?」

 

めぐみんの疑問もご最も。

都合のいい世界を作るとして、普通思いつくのは被術者の記憶を参照するなんてのがあるけど、それだと俺の知識にない事象までもが網羅されているのはおかしい。

話に整合性を持たせるため、バニルに力を借りよう。

 

「未来を見通せる力も持ってたんじゃないか?」

「見通す悪魔ですか、里の図書館で読んだことあります。腑に落ちました」

 

バニルって図書館の本に載ってるのか。

まあ、指名手配されてるから可笑しくはないけど、多分、めぐみんが言ってる本はまた別の図鑑的なやつなんだろうな。

 

「という事で、俺はめぐみんを心底愛してるからよろしく頼む」

「だからそう言うのは恥ずかしいからやめてください!・・・カズマに取って都合がいいと言うのは私から告白したことくらいなのでしょうかね?」

「そうなんじゃないか?俺トラウマがあったから自分からはあまり行動しなかったろうし」

 

プロポーズする時、めぐみんがずっと好きだって言ってくれてる事が何よりも勇気に繋がってた。

だって告白して振られるとか嫌だからな。

 

「トラウマですか?告白して振られたんですか?」

「振られただけなら良かったんだけどな」

「ふむふむ。二度と近付くなと彼氏が出てきましたか?」

「それならまだ良かったんだけどな」

 

確かにトラウマになり得る話だけど、両方ともまだマシだと思う。

 

「・・・何があったんです?」

「幼少期に結婚の約束してた子が、学校でも有名なヤンキーと一緒に帰ってるの見た」

「やんきーとやらが何か分かりませんが、何となく言いたいことが分かりました。それは辛かったでしょう・・・」

 

近付いてめぐみんは抱きしめてくれた。

うっ、めぐみんの優しさに泣けてきた。

 

「ヤンキーってのはチンピラと同じ意味だ。その出来事が引きこもるようになった原因の一つだ。まあ、人のせいにしてるみたいでこの言い方は好きじゃないけど」

「なるほど。好きな子を取られたのですね」

 

めぐみんに言われて俺の中で疑問が生まれた。

俺はアイツの事好きだったんだろうか?

確かにショックは受けた。

でも、好きだったのかは分からない。

 

「・・・どうなんだろうな」

「どうって好きだったからトラウマなのでしょう?」

「なんて言うかめぐみんのこと好きになってから、俺はアイツのこと好きだったのかなあって思ってさ」

「はい?」

 

俺自身よく分かってないから、めぐみんが首を傾げるのも理解出来る。

支離滅裂と言われても仕方ないと思う話の展開だもんな。

 

「だってめぐみんとは何があっても離れたくないって思ってるけど、あいつとは学校行くようになってからはあまり話さなくなってたし根本的に違うような気がするんだよなあ」

「・・・」

「どうした?」

 

凄く不服そうな顔をしてる。

質問したらしたで、呆れた顔に変わった。

・・・最近は表情見てたら考えてる事わかると思ってたけど、まだ分からんこともあるな。

 

「無自覚ですか」

「なんの事だ?」

「分からないならもういいです。慣れます」

 

慣れるって何?

めぐみんが何考えてるか全く分からん。

呆れられてることだけは分かるけどな。

 

「そろそろ夕飯の準備しないと不味いですよ」

「じゃあ、さっさと帰って作るか」

 

こうして微妙な空気感の中、めぐみんとの料理対決が始まろうとしていた。




次回も当シリーズの更新です。
勢いで書いてたら一万二千字になって、区切りもいいし、分割しちゃえとなったので、次の更新は来週の火曜日と確実性をもって言えます。
最近の悩みはTwitterでとある方が開催するスペースに行くとどうしても特定のカップリングのお話書きたくなる洗脳を施されるので、カズめぐのお話が進まないことです。


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おもてなし料理

前回、火曜日に確実性をもってとか言いながら自動投稿したつもりになって投稿していなかった怠惰な執筆者ことめむみんです。すみませんでした。

爆焔とこのすば三期決定おめでたいですよね!
もっとこのすばを盛り上げていきましょう!
あとこのファンコラボしてるので、佐天さん推しであるとめむみんは謎の宣言をします。


-OMOTENASHIRYOURI-

 

「そこの醤油差し取ってくれ」

「はい。代わりに砂糖ください」

 

現在は工程が同じ所を協力して作ってる。

と言っても食材を切るとかはもう終わって、味付けに入ってるのだけれども、まだ二人がやってこない。

 

「アクアとダクネス遅いですね」

「時間は特に言ってなかったからな。時期にやってくるだろ。所でなんだけど、机の上に置いてた封筒知らないか?」

「それは金庫に入れました」

 

金庫?

俺宛への手紙と気付かずに隠したのか?

 

「アレ俺宛のやつなんだが?戻ったら読もうと思ってたのに」

「あの封筒の中身を読んだら、デートはなしです」

「俺が返事書かないと失礼だろ?」

 

分かってて隠してたか。

デートなしも困るけど、手紙も返さないやつだとひょいざぶろーさんやゆいゆいさん思われるのも困る。

一応読む方向でお願いしよう。

 

「私が読ませなかったと手紙書くので安心してください」

「分かったけど、めぐみんの両親は俺を未来の息子とか言ってたらしいぞ配達の人曰く。お前何か書いただろ?」

「・・・私は単に仲間が家に資金援助してくれるから今までよりも額が増えると伝えたんですよ」

 

これだけだと未来の息子なんて話には繋がらないな。

もっと何か情報があるはずだ。

 

「それで?」

「どんな人なのかと次の手紙で返ってきたので、ウチのリーダーだと答えたら、パーティー入りした時にリーダーは男の子だと伝えてたので、そこからはもう、絶対に気があるからちゃんと捕まえなさいとか、押し倒すタイミングはこうとか、男の人はこういう仕草に弱いとかの恋愛指南しか送ってこなくなりまして」

 

さすがゆいゆいさんと言うかなんと言うか。

こっちのめぐみんはそもそも俺に恋愛感情抱いてないのに、指南するとは。

 

「気があるのは大正解だけどな」

「そこはいいんですよ。ともかく、私への内容が悲惨ですから、カズマの方もこれに準じた、家の娘をよろしくとか何とか書いてるのは想像に固くないので読ませませんよ」

 

軽く流された。

めぐみんの順応能力高すぎやしないだろうか。

まあ、めぐみんが言ってることは十中八九当たってるだろうけど。

 

「あっ、カズマ。買ってきたみりんを持ってきてこの下に入れといてください。見ときますから」

「それならもう入れてあるぞ。調味料の並びはめぐみん仕様に合わせてたからな。と言っても俺もアクアもダクネスも特に気にしてなかったから基準が必然的にめぐみん仕様になってただけだが」

「・・・本当になんでも知ってるのですね」

 

とても不思議そうに俺を見てる。

若干引かれてる気もするが、ここは我慢して、めぐみんをからかってやろう。

 

「めぐみんのバーコードの刺青が何処にあるのかも知ってる」

「な、何故そこまで知ってるんですか!ま、まさか私はカズマに裸を!?」

 

刺青と聞いて瞬時に該当箇所を隠した。

位置は前と同じらしい。

ここまで分かりやすい反応が帰ってくるとは。

 

「一緒に風呂に入ってたりするからな」

「そ、そうですか」

「まあ、あの時はお互い何とも思ってなかったけど」

「何とも思ってなかったのに混浴?ちょっと何言ってるかわからないです」

 

ジト目されても困る。

あれはめぐみんから仕掛けて来たことだし、俺も軽率な行動だったとは理解してる。

 

「えっと、ジャアントトードにめぐみんがぱっくりいかれて、その後めぐみんが俺に抱き着いて来たから俺も粘液まみれにされて、二人でどっちが先に風呂に入るか揉めてたら、お前がいっその事一緒に入ろうって言って、そのままお互い異性として意識してないなら大丈夫だろうって話になって入った」

「余計に意味がわかりませんよ!カズマとその時の私は馬鹿ですよ!」

 

何も言い返せない。

アクアが帰って来て二人で凄い焦ってたし、冷静になってから凄く恥ずかしかったし。

ロリコン認定がとか口走ったせいでめぐみんにボコられそうになるわ。アクアにロリニート呼ばわりされるわで大変だった。

 

「まあ、でもそこら辺からめぐみんが二歳差だって分かって、妹分から後輩みたいな認識になって、守備範囲内に入ったからなあ。あれは必要なイベントだった」

「妹分から後輩ですか。あれ?でもこの前妹みたいな彼女という位置付けがどうのと言ってませんでしたか」

「それはそれ。これはこれ」

「お兄ちゃんの考えは全く分かりませんね。ちょっとこれ味見お願いします」

 

エプロン姿のめぐみんにお兄ちゃん呼びされて、味見であーんして貰えると言うとても嬉しい状況になってるけど、このままパクッと行くと、そのままめぐみんまでパクッとしかねないので、自制しよう。

 

「めぐみん、それ以上はやめろよ。押し倒すぞ」

「へ!?わ、わかりました。・・・味見はして欲しいので、頼みます。何か足りない気がするのですが、それが分からなくて」

 

味見用のスプーンを渡されたので、ちょっと掬って味見をしてみる。

まだ完全に適応した訳ではないようで、とても顔を赤くして、目を合わせようとしない。

 

「砂糖かな。俺の方は完成って意味で味見して欲しい」

「なるほど。ではこれでいいですかね。スプーン返してください。味見しますから」

「ああ、ってめぐみんそのスプーンでさっきから味見してたのか?」

 

俺知らぬ間に関節キスしてたのか?

めぐみんの適応力の高さには脱帽する。

 

「そうですよ?洗う物は少ない方がいいでしょう?ふむふむ。家とはまた違う味付けですけど、美味しいです」

「そりゃどうも。所でめぐみん、関節キスって知ってるか?」

「ええ、知ってますよ?それがどうかしました、か・・・」

 

自分の持ってるスプーンを見てようやく気づいたらしい。

適応力が高いのではなく、気付いてなかっただけか。

 

「こ、これは、ち、違いますからね!」

「何がどう違うのか分からんが、事故なのは分かってるから安心しろ」

「分かってたなら止めてくださいよ!」

 

一応、止めようとはしたんだけどな。

まあ、俺としては嬉しいけども。

 

「いや、だって初めに渡された時は味見用のスプーンが渡されたのかと思ってたし、その後にめぐみんがした味見は止めようと思って気付かせたかったけど、遅かった」

「・・・カズマ、このことは」

「俺の記憶の中で大切に鍵閉めて保管しとくから忘れろってのは聞けないぞ」

「保管せずに忘れてください!」

 

顔真っ赤にして可愛いなあ。

と考えてると扉が開く音がした。

 

「めぐみん?カズマと喧嘩してるの?」

「騒がしいな。またカズマが至らないことをしたのか?」

「俺は何もしてない。めぐみんが味見と称して俺と関節キスを」

 

最後まで言い切る前にめぐみんに口を塞がれた。

ちょっとした冗談で言ったのに結構本格的に絞められてるから、あまり二人の前でいじるのは良くないかもしれない。

 

「あれは事故だとさっきカズマも言ってたでは無いですか!違いますからね!アクアもダクネスも勘違いしないでください!」

「何があったかは何となく分かったのだが、アクアが・・・」

「めぐみんがカズマのこと好きで関節キスしたってみんなに広めなきゃ、広めなきゃ」

 

アクアって本当に広めるの好きだよな。

広められるととても困る内容の時にばかりこいつはやって来る。

 

「ち、違いますって!私はカズマなんか何とも思ってませんよ!」

「めぐみんはツンデレってことも広めなきゃ!」

 

アクアが話を広めても俺にとってはむしろプラスなことがあるとは。

俺もちょっと小芝居するか。

 

「カズマも何か言ってくださいよ。・・・カズマ?」

「俺なんか何とも思ってない・・・」

「えっと、その、今のは言葉の綾といいますか、別にカズマを悪くいうつもりはないですよ」

 

俺はめぐみんを見ずに、アクアの方を見た。

思った通りアクアはニヤニヤしてるし、ダクネスも釣られて微笑んでる。

 

「やっぱりめぐみんはツンデレだな」

「だから違いますよ!ダクネスまで言いますか」

「何でもいいから飯食おうぜ」

 

めぐみんの焦る所満足するくらい見られたし、今日はこの位にしておくか。

 

「よくありません!と言うかカズマはこの状況楽しんでますね!」

「痛い痛い悪かったって、まあ、そのなんだ。めぐみんの言う通り事故だから広めたら、アクアの小遣い減るからな」

 

嫌われるのは嫌だからフォローしておこう。

それと首を絞められるのはキツイ。

 

「えっと、めぐみんとカズマの肉じゃが美味しそうね」

「そうだな。二人の料理が楽しみだ」

 

まあ、こういう騒がしいのが俺ららしくていいのかもしれない。

 

 

 

「カズマ!おかわり!早く!おかわり!」

「さっきからおかわりおかわりうるせえ!俺が食えねえだろうが!」

「何怒ってるのよ!これはお土産の代わりなんでしょう?だったら私たちにちゃんとおもてなしして!」

「それは分かるけどなんでさっきから俺ばっかりなんだよ!」

 

俺しか給仕やってない。

飯食ったの二、三口だけだ。

アクアが爆速で平らげてくれたおかげで、まだお腹が空いてる。

そこから先は時差式に、めぐみん、アクア、ダクネス、アクア、めぐみん、アクア、ダクネスとこのローテーションでおかわりが続いてる。

アクアが飲むように食べてるのが、一番問題なんだけども。

美味しいと言いながら食べてくれてるのは凄く嬉しいけど、自分が食べられないのはまた別の話だ。

 

「だってめぐみんに頼むのは忍びないだもん」

「おいこら、それはどう言う意味だ?」

「二人とも落ち着け、私はもう食べ終わったからカズマは食べているといい。私が用意しよう」

「じゃあ、俺はめぐみんのやつを頼む」

「さっきカズマのだったから、私もめぐみんのをお願いね」

「ああ、待っていろ」

 

これでようやくめぐみんの作った肉じゃがを食べられる。

最初にみんなで俺のやつから食べようとなって、そこからずっとおかわり係にされてたからな。

 

「悪い知らせなのだが、各種一人分しか残ってない」

「俺まだめぐみんの肉じゃが食べてないから、俺が貰う」

「私は招待されたんだから、カズマが譲るべきじゃないかしら?」

「・・・はぁ、しょうがねえなあ。土産買ってくるの忘れた分ってことで」

「殊勝な心がけね」

 

くっ、土産を忘れさえしていなければ……

ドヤ顔が鬱陶しいけど、ここは我慢。

と堪えているとめぐみんが耳元で小さな声で言った。

 

「カズマ、今度のデートの時にまた作ってあげますから、元気だしてください」

「・・・昼飯と夕飯」

「分かりました。お昼はお弁当にしましょう」

「二人で何コソコソ話してるの?」

「変に疑われるの嫌だから先に言っとくと、明日二人でピクニック行く話」

 

まだ何するかなんて決めてないけど、弁当をめぐみんが作ってくれるならピクニックが最適かな。

アクアに感謝だ。

めぐみんは俺が隠さなかった事に驚いてるみたいだけど、ピクニックくらい仲間とだって行くし、問題はないだろう。

 

「私も誘いなさいよ。それこそ二人で行くなんて怪しいわよ?」

「アクアはバイトだろ?ダクネスは実家に用があるんだよな?だから俺たち暇なんだよ」

「カズマとめぐみんがまさかテレポートで帰ってくるとは思っていなかったからな。その間家の仕事を手伝うために帰るから二人でゆっくり休むといい」

 

ダクネスの言う通り、最短で後二日はこっちに居ないはずだもんな。

テレポートで戻って正解だったな。

 

「また今度みんなで行きませんか?」

「そうだな。一度仲間でゆっくり過ごすのもいいかもしれないな」

「カズマ、私とバイト代わってくれないかしら?」

「断固拒否する」

 

デートを邪魔されてたまるか。

自然な流れで二人で行動することになる機会はあまりないのだから。

爆裂散歩を除いて。

 

「私が誘ったピクニックですから、カズマが居なくなると困りますよ」

「ふーん。めぐみんがね」

 

アクアは言ってニヤついてる。

 

「なんですかその顔は?」

「いや、何でもないわよ。めぐみんがカズマのこと最近気にしてるから関係あるのかなあなんて、思ってないから」

 

ダクネスも合わせてニヤニヤしながら、めぐみんと俺を見る。

プロポーズやらなんやらやってるの俺なのに、好いてると言われてるのがめぐみんだって言うこの状況はなんなのだろう。

俺としては面白いからこれでいいけど、めぐみんは顔と瞳を真っ赤にして抗議した。

 

「絶対思ってますよねそれ!ダクネスもなるほどとばかりに手を打たないでください!私から見てカズマの様子が変だと感じたから聞いてただけですよ!今は勘違いだったと理解してます。カズマのことが気になってるとかそんなことはないです!」

「分かったわ。めぐみんがツンデレだって事が」

「違いますって!カズマも何か言ってくださいよ!」

 

何かねえ。

多分、アクアもダクネスもからかってるだけだよな。

よしここは悪ノリといこう。

 

「いいか?めぐみんはな、ツンデレじゃないぞ」

「カズマの言う通りです」

「めぐみんはツンツンデレデレだ!」

「「確かに」」

 

二人ともやっぱりからかってるだけだな。

言った後に腹抱えて笑ってるし。

 

「確かにではありませんよ!何ですか!三人で私を怒らせたいんですか?だったら私にも考えがありますよ!」

「落ち着けって、誰も本気でめぐみんが俺の事好きだなんて思ってないから」

「・・・本当ですか?」

 

めぐみんとしては、実際に俺がプロポーズした事実があるから、現実として捉えちゃったんだろうな。

 

「まあ、カズマなんかを好きになる物好き居ないわよね」

「めぐみんならばカズマよりもいい相手がいるはずだ」

「よしお前ら表出ろ!折檻してやる!」

 

アクアの方が喧嘩売ってるけど、ダクネスの発言の方が腹立たしいな。

俺とめぐみんが釣り合わないってのは俺自身がよく分かってるから余計にイライラする。

 

「気持ちは分かりますが抑えてください!じゃなきゃ明日お昼無しですよ」

「・・・お前らめぐみんに感謝しろよ。めぐみんの顔に免じて許してやる」

「折檻が・・・」

 

ダクネスはいつだってブレない。

出会った頃なら軌道修正出来たかもなんて思ってたけど、十分手遅れだなこれ。

 

「料理食べ終わりましたし、今日はもう解散にしましょう。片付けは私とカズマでしますから」

「今日はありがとね。二人の料理最高に美味しかったわ。今度はダクネスと私で料理作りましょう」

「そうだな。こう見えて、知り合いの一流シェフに料理を教わっていたからな。期待してくれ」

 

一流シェフが仕込んでも普通に美味しい味を越えられないのがダクネスなんだよな。

アニメなんかでよく出てくる毒飯キャラなんてのが異世界にも居なくて良かった。

 

「それは楽しみですね。ではまた明日会いましょう」

「カズマは今日ここに泊まるの?」

「ええ、今から片付けると夜遅くなりますからね」

 

俺は普通に帰るつもりだったからまさかめぐみんが泊めてくれるとは思ってもみなかった。

このあともゆっくり二人きりで話せると思うと楽しみで仕方ない。

 

「なるほどね。カズマ、めぐみんに変なことしたら承知しないわよ?」

「する訳ねえだろ。お前こそ一人だからってはしゃいで隣の人に迷惑かけんなよ?」

「そんなことしないわよ」

「別れの時ぐらい穏やかにできないのかお前たちは」

「まあ、私たちらしくていいじゃないですか」

 

とワイワイ騒いでると隣からうるさいと怒られて、アクアとダクネスは逃げるように帰って行った。

 

 

 

「カズマ、今日はすみませんでした」

「何のことだ?」

「私が途中で交代すれば良かったのに、カズマの肉じゃががとても美味しくてその、食べるのに夢中になってしまいました」

 

そう言えばめぐみんは俺のばっかり食ってたな。

対照的にダクネスはめぐみんのばかりだったな。

めぐみんからすれば自分の味は何時でも食べられるだろうし、ダクネスは俺のよりめぐみんの味付けの方が気に入ってたのだろう。

 

「嬉しいこと言ってくれるな。俺としては明日ピクニックデートして、昼食と夕飯食べられるし、今日もまたここに泊まれるし、どっちかって言うとプラスの感情の方が多いから気にするな」

「・・・」

 

コップを洗う手が止まり、水が流れる音だけがしている。

気になってめぐみんを見るも何を考えてるかよく分からない。

 

「何黙り込んでんだ?」

「何でもないです。ほら手が止まってますよ!」

「へいへい」

「「・・・」」

 

どうしよう。

二人きりで仲良く話そうって思ってたのに、会話が続かない。

会話してない二人きりの時間も好きだけど、今日は色々話したい気分だったからなあ。

と考えていると自分の作業が終わっためぐみんが肩を軽く叩いてきたから、作業を止めて、めぐみんの方を見た。

 

「あの」

「なんだ?」

「明日の夕飯も肉じゃががいいのですか?」

「うーん、今日食べられなかったのは残念だけど、他のも食べてみたい」

 

何だかんだ言って一昨日食べてるから、他の料理食べたい気持ちの方がでかかった。

 

「そうですか。じゃあ、明日はオムライスです」

「明日の夕飯が楽しみだ。もちろんお昼に食べるお弁当もな」

「私の料理気に入って貰えて嬉しいです」

「まあ、味については知ってて、元々好きだけどな」

 

気に入ってるのは事実だけど、味については元々分かっていた事だ。

まあ、好きな子の泊まる宿で料理をご馳走になると言うこのシチュエーションにはドキドキワクワクさせられてるけども。

 

「・・・カズマ、私達はこういう時何をしてましたか?」

「と言うと?」

「二人で宿とかに泊まる時のことです。話をするとか今やってることは除いて」

「それで行くと、俺らが同室になる時は大抵布団が一つしかなかったから添い寝してたな」

 

特に何かをしていたことは無い。

遊ぶなんて言ってもめぐみんの家に遊ぶ物がなかったからな。

とは言え、めぐみんとの関係がその度に進展してたし、何か重要な話を持ちかけられたりもしてたよな。

 

「では今日は添い寝しましょうか」

「無理してないか?この時期は俺たちそんなことしてないぞ?」

 

紅魔の里に着いてからだって、ゆいゆいさんの策略にのせられただけだし、こっちでの初めてのデートの時見たく気を使わかせしまってるな。

 

「無理なんかしてませんよ?添い寝って一緒に布団に入って寝るだけでしょう?それくらいなら構いません」

「・・・やっぱりお前は魔性のめぐみんだよ」

 

一緒に寝るだけってなんだよ。

俺がいつもどれだけ辛いことになってると思ってんだコイツは。

でもまあ、添い寝出来るだけでも十分嬉しいけども。

今日は多分眠れないな。

近々あの店行くか。

 

「どうして今の話で魔性と呼ばれるんですか!カズマ以外に頼まれたって添い寝なんてしませんからね!」

「自覚してないところとか正しく!あと俺以外がって話を詳しく!」

 

今日のツンデレ騒動やら何やらで、言い合いに疲れたのか、深くため息をついてから、めぐみんは言った。

 

「で、添い寝するんですか?」

「お願いします」

「変なことしたらアクアに言いつけますからね?」

「する訳ないだろ。あわよくばめぐみんも添い寝するの気に入って、毎日添い寝出来たらって考えてるのに」

 

・・・どうしよう。

ナチュラルに心の声が出てしまった。

まあ、今は問題ないんだけども。

これがアクア達のいる状況だと困るから気を付けないとな。

 

「・・・それはないので、諦めてください」

「ですよね」

 

現状めぐみんが添い寝をしないかと誘ってくれたこと自体が奇跡的だ。

めぐみんとしては手を繋ぐくらいの感覚なのかもしれない。

 

「そんなことよりも、食材の片付け手伝ってください。急いでたので、とりあえず突っ込んだ形ですし」

「それならお代わりラッシュの時にどうせここから動いてもまた呼ばれると思って待機中にやっておいた」

 

数分単位で頼まれていたからその合間に片付けを行っていた。

 

「カズマって案外頼りになりますね」

「もっと頼ってくれてもいいんだぞ?」

 

一言余計だと突っ込みたかったけど、ここは抑えておこう。

また言い合いのするの面倒だし。

 

「買い出しとかお願いすることが増えるかもですね」

「家事以外でも頼ってくれても」

「力勝負なら私の方が上です」

「・・・」

 

何も言い返せない自分が不甲斐ない。

魔法使いに筋力の劣る冒険者って一体……。

しかも、転生前の能力値引き継いでる今でも多分互角くらいだろうし。

悲しくなってきた。

 

「でも、そうですね。クエスト中は頼りにしてますよ。また何かあったら助けてくださいね?」

「おう。任せとけ」

 

一応頼りにされてるみたいで良かった。

色々と頼れる存在になれるように頑張らないとな。

と、そんなことよりも俺はめぐみんとの添い寝に思いを馳せるのであった。




次回は投稿日、投稿シリーズ共に未定です。
多分カズめぐしてるやつです。


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認識の違い

今週中の投稿何とか間に合いました。
朗読劇のカズめぐ成分高めで良かったですね!
関西でもやって欲しいです。
今回は短めですが、よろしくお願いします。


アクアとダクネスが帰った後、俺とめぐみんは食器を洗ったり、動かした机などの移動などの作業をしていた。

今はあらかた作業が終わり、めぐみんが一旦廊下で待っていて欲しいと言ってきたので、待機してる所。

何かを書いてる音がするから日記だろうと思いながら待っている。

 

「片付け終わりましたよ。そろそろ寝ましょうか。カズマ、着替えてきてください」

「めぐみん、覗くなよ?」

「誰がカズマの裸なんかに興味あるんですか?」

「・・・むっつりめぐみん」

 

首を絞められる前に、部屋に入り鍵を閉める。

これで安全は確保された。

 

「だ、誰がむっつりですか!おい!逃げるな!」

「ほら!今着替えてるのに、全力で扉開けようとしてんじゃん!やっぱり見たいんだろ!」

 

めぐみんはドアノブをガチャガチャ言わせたり、扉バンバン叩いたりして、このままほっといたら海外の刑事ドラマ見たく蹴破って入ってくるんじゃないかってくらいに荒ぶってる。

流石に宿屋でそんなことしないよな?

 

「ち、違いますよ!私がむっつりだとか根拠の無いことを言うからですよ」

「その根拠を身をもって示してくれてるわけだな」

「だから違いますって!」

「分かってる。分かってる。めぐみんもそういうお年頃だってことは」

「分かってません!全然分かってませんよ!カズマ!今日カフェで言ってたことはなんだったんですか!」

 

めぐみんの気持ちを考えられてなかったと言ってた話とこれは意味が違う。

だって、分かっててやってるし。

こう言うことも出来る関係が好きだからな。

 

「あれはあれ、これはこれ」

「そうですか。ならば添い寝はなしです!私は優しいカズマとなら添い寝をしてもいいと思ってましたが、意地悪なカズマとは嫌です!」

「すみませんでした!めぐみん様!」

 

あの言い方をされると流石に心に来るものがあった。

ここは日本人として最大級の詫びとして土下座をして謝意を示した。

 

「全く、謝るくらいなら・・・な、何で着替えてる最中に出てくるんですか!?」

「いち早く謝らないとって思って」

「分かりましたから早く服を着てください」

 

と言いつつチラチラこちらを見てるあたり、やっぱりめぐみんはむっつりだと思う。

これで今日の添い寝は流れただろうけど、次の機会のために全身全霊の土下座をした。

「・・・カズマ、覗いたら明日爆裂しますからね?」

「めぐみんは見たのに?」

「あなたが勝手に出てきただけでしょう!」

「・・・冗談はこの位にして、俺は先に寝てるぞ」

 

これ以上めぐみんをいじると今度はデートしないとか言われそうだし、このくらいで止めておこう。

添い寝もダメになったし、デートに備えて早く寝よう、

 

「先に寝てしまうのですか?」

「おう。明日寝過ごすの嫌だからな」

「添い寝しないんですか?」

「・・・え?さっき嫌だって言ってたろ?」

 

俺はめぐみんを攻めてたはずなのに、いつの間にか動揺させられてる?

なんでこの子こんなに恋愛強い訳?

今回はめぐみんをリードしてって思ってたのに……

 

「意地悪なカズマとはと言いましたよ。ちゃんと反省して一人で寝ようとしてるカズマとなら大丈夫です」

「そうか」

 

添い寝できないなら出来ないで、理性との戦いをしなくて済むと考えてただけで、反省してる訳では無いなんて言えない。

とは言え、添い寝が出来るならできるで嬉しい。

このままだと狭すぎるから二つのベッド連結した方がいいよな。

 

「カズマ?何やってるんですか?」

「ベッドを繋げようと思ってな。間にあるものを動かしてたんだ」

「何故そんなことしてるんですか?」

 

めぐみんは訳が分からないと言った感じで首を傾げてる。

シングルベッドで添い寝の距離感理解してるのか?

そんなことになったら俺の理性が持つか怪しいんだが。

てかめぐみん恋愛強者過ぎる。

 

「・・・シングルで添い寝って普通じゃないぞ?」

「そうなのですか?」

 

あっ、分かった。

めぐみんが恋愛強いんじゃなくて、恋愛に関して興味無いんだ。

だから深く考えてないんだろうな。

うん。

俺にとっては超困る。

 

「ダブルベッドって知ってるか?」

「言われてみればそうですね。ですが面倒なので、このまま寝ましょう」

「・・・は?」

 

この状況でベッド連結しないのは普通じゃない。

興味無いとかってレベルで済ませていいのか?

何かもっと別の原因もある気がしてきた。

 

「妹と寝ていた時もこれくらいの布団で一緒に寝てましたし、問題ないでしょう」

 

俺、こめっこと同列視されてたのか。

それならめぐみんがグイグイくる理由も……納得できるか!

男との同衾を妹との就寝と同じように考えるってどんなだよ!

・・・俺、めぐみんから男として意識されてないのか?

 

「それって敷布団だろ?今回はベッドだから落ちないようにしようと思ったら結構引っ付かなきゃだし、妹と俺じゃあ大きさが違いすぎるし、そもそも男女が添い寝するってのはだな」

 

添い寝はしたいけど、何だか引き止める説得してるみたいになってるが、全く事態を把握してないめぐみんに説いて見るが響いてる様子はない。

 

「とりあえず、やってみてから決めましょう」

「・・・恥ずかしくなって蹴飛ばしたりするなよ?」

「しませんって、先に入ってください」

 

さっきからめぐみんにリードされっぱなしで、情けない。

おかしいな。

めぐみんをリードして、カッコイイとこ見せようとか考えてたけど、無理な気がしてきた。

でもまあ、めぐみんのこう言う魔性な所も好きなんだけども。

 

「これでいいか?」

「では失礼します」

 

何の躊躇もなく入って来やがった。

何なのこの子?

耐性と言うか適応力と言うか色々強過ぎないか?

超かわいいけど、末恐ろしい魔性度合いに驚きを隠せない。

一応数センチは間があるけど、大丈夫だろうか?

お互い仰向けで顔は見ていない。

 

「・・・カズマの言う通り結構近付かないと入れませんね」

「俺は別にいいけど、これは近過ぎるだろ?寝返りも出来ないしやっぱりベッド繋げよう」

「このままで問題ないです

隣にカズマがいると言うのは不思議な感覚になりますけど、悪くはないですね」

 

・・・この感じ、確か、めぐみんから罰ゲームと称して壁ドンとかした時もこんな反応が返って来たような。

恋愛小説の追体験が楽しいみたいな感じなのか?

だったら少しは納得がいく。

魔性のめぐみんではなかったのかもしれない。

 

「そうか。めぐみんがいいなら、これでいこうか。俺ちょっと枕取ってくる」

「私のを使ってください。その代わり腕枕お願いします」

「・・・無理してないか?」

「無理ですか?こめっことしてたことの逆をカズマにして貰うだけですよ?」

 

恋愛小説の追体験とかじゃなくて、終始俺の事こめっこと同じように、つまり、兄妹で寝てるくらいにしか考えてないと。

にしてもなんの照れもないの男として悲しい。

自分に魅力があるとは全く思ってないけど、それでも多少は反応してくれてもいいのに。

 

「・・・分かった。じゃあこれでいいか?」

「カズマの腕枕、寝心地いいですね」

「そりゃよかった。毎日してもいいぞ」

「そうですか。明日もお願いします」

「・・・今なんて?」

 

俺、さっきから全敗してるんだけども。

おかしいな。

めぐみんが照れて顔真っ赤にする所を想像してたのに、そんなことちっとも起こらない。

俺が驚かされるばかりだ。

 

「明日もお願いします。ピクニックの後、昼寝したいなあと思ってたのですよ」

「そ、そうか」

 

な、何故だ……

何故めぐみんはこんなにも添い寝に恥じらいがないんだ!?

おかしい、絶対におかしい。

紅魔の里ではあんなに動揺してたんだ。

いくらめぐみんとはいえ、これは変だ。

認めたくないのもあるけど俺が全く意識されてないのも違う気がしてきた。

何かからくりがあるはずだ。

「なあ、めぐみん」

 

言って俺はめぐみんの方へ顔を動かす。

めぐみんの綺麗な横顔が見える。

何か答えを導けないかとめぐみんを観察してみる。

 

「どうかしましたか?」

 

俺の方は見ようともせず、目を瞑ったままずっと仰向けでいる。

・・・もしかして、今の俺たちの距離感を理解してないだけなんじゃないか?

こめっこと一緒に寝てた時基準でさっきから話してるから十分に有り得るな。

 

「ちょっとこっち見てみ」

「いいですよ。何のようで……」

 

めぐみんが首を動かし、こちらを見る。

そして、俺とめぐみんはあと少しでキスが可能な距離になった。

俺がさっきから何を気にしていたのかようやく理解したらしく、眼と顔が同じくらい紅く染まっていく。

 

「お前この状況理解してなかっただけなのな」

「・・・な、何のことでしょう。わ、私は別に動揺なんて、しししてませんよ」

「思いっきり動揺してるだろうが、耳まで赤くしてるし」

 

これだよこれ。

こういう反応を待ってたんだ!

添い寝してた時からのモヤモヤがスカッとした。

やっぱり照れてるめぐみんは超かわいい。

 

「う、うるさいですよ。もう電気消します!こっち見たらシバキますからね!」

「お前、妹にそんなことされてたのか」

「されてませんよ!あの子がそんなことするわけないじゃないですか!添い寝なしにしないだけ有難いと思ってください!」

「うん。好きな子の使ってる枕で寝ながら、好きな子に腕枕させて添い寝できるの凄く有難いし、凄く幸せ」

 

最大限めぐみんが俺を意識する言い方をしてみたら、めぐみんは跳ね起きて、布団で顔を隠しながら言った。

 

「やっぱり枕持ってきてください。今の聞いたら恥ずかしくなってきました」

「へいへい。何なら添い寝なしでもいいぞ?めぐみんが眠れないなら俺は」

「添い寝は問題ないです。密着度が問題です。妹との添い寝とカズマの添い寝を同様に考えてた私がバカだったと気付いただけです」

 

俺がめぐみんだったら絶対にこの提案に乗ると思うけど、密着度だけが問題らしい。

めぐみんの基準は分からないけど、とりあえず、こめっこと同じ扱いじゃなくなって、意識されてるのは分かったし、上出来か。

まあ、俺からすれば今更感も否めないけども。

 

「始める前から俺は指摘してたぞ」

「そうですね。えっと、ベッド繋げましょう。これは近過ぎて、恥ずかしくて寝られません」

「それも俺が最初にやろうとしてた」

 

めぐみんが凄くバツが悪そうにペコペコと頭を下げてくる。

 

「カズマの気遣いに乗っておけばと思ってます。すみません」

「謝ることないって、それより、早く運ぶぞ」

 

ベッドを繋げて各々ベッドに横たわる。

さっきの距離感を覚えてるから物足りない感じもするけど、まあ、一応、これも添い寝だし、めぐみんが明日寝不足でデート出来ないとかって言う最悪の事態が避けられるならいいか。

と、そんな事を考えてるとめぐみんがこっちに寄ってきた。

 

「二台分となるとちょっと遠いですね。どのくらい近い方がいいですか?」

「めぐみんの基準で近付いてくれたらそれでいい。添い寝出来れば距離なんて関係ないし」

「じゃあ、このくらいで」

 

めぐみんの裁量でと言ったのにさっきと一センチくらいしか変わらない距離にいる。

また気を遣わせてしまったのかなと思ってしまう。

 

「もうちょっと離れてもいいんだぞ?」

「カズマは優しいですね。私はこのくらいがいいんです。シングル一つの時と違って、後ろに余裕がありますし」

「そうか?ならいいんだけど」

 

めぐみんはこの状況をどう考えてるんだろう?

ふと、今までの行動を振り返ってみると、俺は単に楽しんでたけどめぐみんはここ数日、相当心配してくれたんだよな。

そんでもって、クリスから聞いた話で心配の必要がないと分かったわけだけども、めぐみんからしたら突然自分に求婚してきた相手って所は変えようがない事実だし、そんな中で添い寝だろ?

俺だったら本人がしなくていいって言ってるならやめるだろうしな。

それなのに自分から提案してるんだよな。

 

「カズマ?難しい顔してますね。悩み事ですか?」

「めぐみんが今俺の事どう思ってるのか気になって」

「まだ気にしてるのですか?カズマのことが好きとは思ってませんが、一緒に居ると何だか落ち着きますし、この状況どちらかと言うと好きですよ?」

 

下げるか上げるかどっちかにして欲しい。

でも、まあ、めぐみんなりに気持ちを伝えてくれたんだから言い返すのは野暮だよな。

どちらかと言うと好きと言う表現でもちょっと嬉しい。

 

「ありがとう。また嫌なことさせてたらと思って心配で」

「カズマは心配性ですね。私はカズマといる時間が好きですから安心してください」

「・・・え?」

「もちろん、仲間としてですけどです」

 

下げて上げるの止めてとは思ったけども、上げて落とすのも止めて欲しい。

まあ、予測はしてたけどな!

悔しい……

 

「ですよね。でもまあ、安心した。苦労かけるな」

「今更ですよ。水臭いこと言わないでください。そんな心配してる暇があったら私を惚れさせる努力をすべきだと思いますよ」

「言ったな?明日覚えとけよ?」

 

とは言ったものの、相手を惚れさせる方法なんて知らないから、とにかくめぐみんが恥ずかしがるようなことしとこう。

多分、惚れると言うよりも、俺の事意識せざるを得なくなるだろうし。

 

「それは楽しみですね。眠くなってきたので寝ますね」

「おやすみ」

「おやすみなさい」




次回の更新時期シリーズ共に未定です。幼馴染ちゃんが出るやつをそろそろ書きたいとは思ってますが、投稿出来るかどうかは分かりません……


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攻守転々

お久しぶりです。
映画を期にワンピース熱が再燃し、時間が取れなかったです......


目が覚めると私の目の前にはカズマの寝顔があった。

今更ながら私は何しているのだろうと思う。

いくら仲間とはいえ男と同じベッドで寝るなんて・・・

と恐らくめぐみんは考えていることだろう。

起きてからずっと薄目を開けてめぐみんの寝顔を見てたらついさっき目を開けてからずっと悶えてる。

昨日は気丈に振舞ってたけど、やっぱり気にしてるのな。

 

「カズマ、まだ寝てますよね?」

 

言ってめぐみんは俺の頬を突く。

もちろん俺は起きてるがまだ寝てる振りを続行する。

 

「はぁ、どうしてカズマは私なんかを好きになったのでしょう」

 

めぐみんは今も尚、俺の頬を突きながらそんなことを言った。

すぐさま答えてあげたいけどもう少し話を聞いておこう。

 

「私なんかよりもアクアやダクネスの方がいいでしょうに」

 

ん?

何かしんみりした雰囲気になってきたような、これあんまり聞かない方がいいような……

 

「それにどうして私もカズマなんかを好きになって、口説き落としてるんでしょう?それが一番解せません」

 

・・・いや、これはやっぱり聞いておこう。

何が解せないのかじっくり聞きたい所だ。

 

「そりゃあぶっころりーみたいなヒキニートに比べればカズマの方が断然いい人なのは分かりますけど……」

 

比較対象が幼馴染のヒキニートと言うのは大して嬉しい話じゃないな。

 

「はぁ、私もこの男を好きになっちゃうのでしょうねきっと」

 

なっちゃうとか随分な言い草だな。

そんな感じで好きになられるならいらないんだけども。

ちゃんとこう、手順?ってのは違う気がするけど、とにかくちゃんとめぐみんを振り向かせなきゃ意味が無い。

 

「私が何としても我が者にしようとした男ですから」

 

・・・自己分析しっかりしてんなこいつ。

めぐみんが何としても手に入れようとした男か。

言われてみればそうだよな。凄く嬉しい。

 

「幸せそうな寝顔でかわいいのが腹立ちますね」

 

訳の分からないことを言ってめぐみんはさっきまで突っついていた俺の頬を抓った。

流石に抓られて起きない、否、叫ばずには居られなかった。

 

「いったああああああ!!」

「・・・カズマ、おはようございます」

「何してくれとんじゃ!」

 

涼しい顔してさも何も無かったかのように笑顔で朝の挨拶をするめぐみんに対して睨みつけるとぷいっと顔を反らせてめぐみんは言った。

 

「カズマの寝顔を見ていたらイライラしてきたので」

「そんな理由で頬っぺた抓るな!」

「添い寝出来たことの代償です」

「ふざけんな!俺はどっちかと言うと止めてた側だ!」

 

俺が誘って、俺がさせたならまだしも、めぐみんから持ちかけた話でこの仕打ちはどうかと思う。

 

「う、うるさいですよ!これ以上言うならデートなしです!」

「それを言ったら俺が毎回止まると思ったら大間違いだぞ!」

「うっ、ごめんなさい」

 

デートを持ち出せば何でも許されるとか思われては困る。

そんなことになれば俺はめぐみんにとって都合のいい男にしかならないのだから。

 

「反省してるならそれでいい。それより朝食にしよう」

「はい」

「フレンチトーストにするか。昨日食パン買ってたし」

「あの、それはお昼のサンドイッチ用なので、ドーナッツと牛乳が朝食です」

 

言われてみればサンドイッチは弁当向きだよな。

てなると野菜系は全部使うことになるだろうし、ウインナーとかも無理だよな。

ドーナッツに牛乳か、ピクニックデートするにしては軽過ぎる気がする。

 

「それだけだと寂しいから目玉焼き作るから待ってろ」

「あの、卵もお昼用の分しか買ってないので」

「・・・ポテトはどうだ?」

「じゃがいもは大丈夫ですよ。で何すればいいですか?」

 

めぐみんは、手伝うつもりらしい。

とは言ってもポテト作るの二人でやるのも時間が勿体ない気がする。

 

「こっちは俺がやっとくから弁当の準備しといてくれ」

「分かりました」

「なあ、めぐみん」

 

ピクニックデートのことを考えていると昨日めぐみんが言ってたことを思い出した。

多分この話はなかったことになるだろうと思いながら聞いてみる。

 

「昼寝の時にも添い寝するって話どうする?」

「どうするも何もしますよ?」

「また代償とか言って何かしないよな?」

 

今朝だって寝顔がムカつくとか言うよく分からない理由で頬を抓られたわけだし、何かやられるくらいなら、添い寝なしの方がマシだ。

 

「しませんよ。さっきのは悪かったと思ってます。カズマは添い寝したくないんですか?」

「したいけど、お前は大丈夫なのか?」

「大丈夫ですよ。野原なら窮屈じゃないでしょう?」

 

どうして添い寝を望んでたはずの俺が止めてるのに、大して望んでもないめぐみんの方がこんなにも積極的なんだろうか。

めぐみんは俺の事何とも思ってないってのに、攻守逆転してるのなんでだ?

 

「まあ、そうだな」

「つまりそういうことです」

 

やっぱりコイツの耐性強過ぎだろ。

この調子だと一回照れたことは次には照れなくなるんだろうな……

このままだとまた俺がめぐみんにからかわれる日常が戻ってきそうな予感が……

でも、あの俺をからかってる時のニヤケ顔もみたいって思っちまうんだよな……

どっちの可愛さがいいかって言われるとどっちも取りたいけど、両立できないんだよなこの二つは……

悩ましい……

 

「カズマ?どうしました?」

「めぐみんがどんな状況でも可愛いからどうしたらいいか考えてた」

「な、なっ!?」

 

完全に調理がストップして、顔を真っ赤にさせて固まるめぐみん。

やっぱりてれみんも良いよな。

 

「こうやって照れてるめぐみんの可愛さも捨て難い」

「何の話してるんですかあなたは!」

「怒ってるめぐみんもまた可愛いし」

「もう!急に何なんですか!」

 

調理をほっぽり出して、俺に掴みかかってくるめぐみん。

距離が近くなって俺的には嬉しい状況だからニヤニヤしてしまう。

そしてめぐみんは恐らくそれにも苛立ってると思う。

 

「お前が可愛いからしょうがないじゃん」

「私はカッコイイと言われる方がいいんです!」

「俺はカッコイイめぐみんも好きだぞ?」

 

もちろんめぐみんがカッコイイのは知ってるし、めぐみんはかっこかわいいのだ。

異論は認めん!やがてめぐみんの夫とならんとする者として!

 

「あの、カズマは、私をどうしたいんですか?」

「どうって、そんなの決まってるだろ?嫁にしたい」

「えっ、えっと、そうでしたね。ぷっプロポーズしてましたもんね」

 

今日はとても慌ててるめぐみんが見れて満足だ。

めぐみんがまだまだ慣れてないのも確認出来たし、より今日のピクニックデートが楽しみになってきた。

 

「そういうこった。さてと、俺の方は完成したぞ。何か手伝うことあるか?」

「・・・座って待っててください。今カズマといると失敗しそうなので」

「でもこのまま一人でやってたらポテト冷めるぞ?」

 

まだ出来ては居ないけど、俺の方が先に終わるのは明らかだった。

出来たてが一番だから少しでも早く食べてもらいたい。

 

「そ、そうですね。じゃあ、揚げてる間にウィンナー焼くのと、パンの耳食べる用のディップするやつ作ってください」

「任された」

 

めぐみんが俺の事気にしなくていいように、出来るだけ距離を取って作業を始めた。

ずっと黙ってるのもなんだから陽気に鼻歌を歌ってるとめぐみんがまたもや騒ぎ出した。

 

「どうしてカズマがその曲知ってるんですか!あれですか?私が歌ってる所覗いたんですか!あれは今創ってる所だから聴かれたくないのに!!」

「俺は完成版知ってるだけだ」

「・・・そうですか」

 

俺が未来の情報を持っているのを思い出したみたいだ。

まだあの曲出来てなかったのか、初めて聴いた時はなんだ変な曲だなあって、ちゃんと聴いてなかったら怒られたっけ。

 

「歌と言えば俺とめぐみんでちょむころりんなるコンビ組んでデュエットもしてたな」

「それは楽しそうですね。私もやってみたいです」

「めぐみんがどうしても俺と二人でデュエットしたいって言って来たから結成されたんだ」

 

今になってはいい思い出だな。

二人の歌ってのがいいよなあ。

また二人でユニット組みたい。

今度は恋人ユニットとしてだ!

 

「私がですか?」

「俺はそもそも人前に出るようなことは極力したくないからな」

「作曲も私ですか?」

「いや、そこは本業の人に頼んだ。俺たちのことを歌にしてもらった感じだな」

 

アクセルハーツにはそういやまだ会ってないな。

この時期はアイツら何処で活動してたんだろう。

今度はめぐみんが爆裂して借金背負わないように気を付けよう。

 

「なるほど。こっちは終わったので、カズマはウィンナー焼くのに専念してください」

「了解」

「にしても、本当に色んなこと知ってるんですね。この調味料と量も我が家秘伝の味ですし」

 

言われて見ればめぐみんから教わったんだったなこれ。

日常的に作ってたから全く気にかけていなかった。

 

「俺はお前のことなら大半知ってると思う。まあ、俺のいた未来の世界は所詮作られたもんだから多少違うこともあると思うけど」

「私の初恋も知ってる訳ですからね」

「・・・え?」

 

めぐみんの初恋?

初耳なんだけども。

てっきり俺が初めてだと、いや、ここは平行世界だからこっちのめぐみんは相手が居たのかもしれない。

 

「カズマなんですよね?」

「ややこしいこと言うな」

「ややこしいとは?」

 

全く考えにもないらしい。

これだからめぐみんは……

 

「こっちでは俺より先に好きな人いたのかと思ったぞ」

「以前恋愛に興味なかったって言いましたたよね?でもまあ、確かに紛らわしい言い方でしたね」

「心臓に悪いから止めてくれて」

 

仮に初恋相手がいたとしてしも、それは問題じゃないけどその話題が突然出てくるのは、さすがにメンタルがやられる。

 

「かく言うカズマの初恋も私なんですか?」

「いや、幼馴染と幼少期に結婚の約束してた」

「・・・よく人のこと言えましたね」

 

おっと、ジト目が返ってきた。

俺なんかおかしなこと言っただろうか?

聞かれたことにちゃんと答えたよな?

あれか?俺の初恋は自分だと思ってたからびっくりしてるのか?

 

「自分から聞いときながらそれは無いだろ。俺は突然言われたんだぞ?」

「それを言うなら私もですよ。結婚の約束した相手がいるって何ですか?情報のインパクトがデカすぎますよ」

 

ドラマとかアニメとかとにかくよくある幼馴染同士の約束だと思うんだけどな。

何処がインパクトあるのか分からない。

 

「いやいや、結婚の約束って言ってもよくある小さい頃にやる約束で」

「私はそんなことしてませんし、結婚したいとか思ったことないですよ」

「そうか」

「と言うことなので、私と結婚したかったら頑張ってください」

 

こいつ、さっき嫁にしたいって言われて照れてためぐみんと同じ中身か?

未来のめぐみん入ってないよな?

はぁ、めぐみんの男気溢れる所にはこっちでも振り回されそうだな。

だがしかし!俺はもうある程度耐性はついてるからな!

俺を照れさそうとか考えてないめぐみんに負ける気はしない!

 

「分かった。愛してるぞめぐみん」

 

言って俺はめぐみんを優しく抱きしめる。

めぐみんはと言うと何が起こってるのか分からず、硬直している。

頭を撫でながらめぐみんを愛でること約数分、ようやくめぐみんの思考が追い付いたのだろう顔を赤くしてアワアワしだした。

 

「慌ててるめぐみんもかわいいな」

 

気付いたら本音が口から出てた。

実際照れてるめぐみんはめちゃくちゃかわいいからしょうがないよな。

 

「ぁあの、さっきのは謝るので、そのぉ・・・」

「めぐみんが謝ることなんてあったか?」

「へ?」

「あっ、ウインナー焼けたし、飯にするか」

「ひゃ、ひゃい...」

 

何このかわいい生物。

一生見ていられる。

めぐみん、魔性のめぐみんとか言って悪かった。

お前が俺にしてたのは、ただのアタックだったんだな。

今なら分かる。

好きな人が照れてるところ見るの凄く楽しい。

今のめぐみんはと言うと、俯いたまま黙々とひたすらポテトを食している。

 

「味はどうだ?」

「美味しいです...」

「そりゃ良かった」

 

またも沈黙が訪れる。

まあ俺的には、しおらしいめぐみん見られて楽しいから全然この状況嫌じゃないけど。

 

「あの、ずっと見られてると恥ずかしいのですが」

「お構いなく」

「・・・」

 

おっと、めぐみんが照れ顔からジト目に変わりました。

これはそろそろやめた方がいいかな。

 

「はぁ、過去に戻れるなら惚れさせてみせろだの、結婚できるように頑張れだの言ってた自分をシバキたいです」

「俺は勝気なめぐみんも好きだから、歴史修正なんてさせねえぞ」

「・・・実質的に過去に戻ってるカズマの言うセリフですか?」

 

言われてみれば初っ端からめぐみんルートを全力で進むって歴史修正以外の何者でもないな。

まあ、ここは平行世界だし、関係ないけども。

 

「しょうがねえだろ。クリスのせいでこうなってんだから」

「・・・ちょっとクリスに慰謝料請求してきます」

「俺も行く。俺だって被害者だからな。あと、めぐみんの新たなかわいい所見させてくれた事の感謝も伝えないとだしな」

 

最初はなんてタイミングで呼んでくれたんだって思ってたけど、今となっては凄い感謝してる。

 

「・・・やっぱりやめます。何となくクリスからもからかわれるような気がしてきたので」

「じゃあ、飯も食い終わったしデート行くか。先に確認するけど手繋いでいいか?」

「・・・街から出てある程度たったらいいですよ」

「もとからそのつもりだぞ」

 

ダメって言われると思ってたから良かった。

めぐみんが拗ねないレベルで攻めることを意識して頑張ろう。




次回の更新時期とシリーズは未定ですが、極力来週中にあげるつもりです。
次回についてはカズめぐしてるかどうかさえ分かりません。


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相互理解

お久しぶりです。
就活の次は、卒論におわれております。
出来上がったら文字数7777でびっくりしました。


めぐみんに俺を観察する目的が全くなく、普通にデートをするだけの日がついにやってきた。

朝からめぐみんが照れる所を見て来たけれども、まだまだ今日は始まったばかり、街を出て約三十分。

そろそろ手を繋ぎたいと思いつつも、まだ人とすれ違うことがあるからできてない。

加えて後続の冒険者も数組いる以上、まだ出来ない。

 

「一つ聞きたいことがあるのですが、カズマの、その、初恋の人はタイプの女性像に近いのですか?」

「いいや。年上のお姉さんって時点で、同級生のあいつは違うって」

「そうですか」

 

めぐみんに伝えたタイプ像の人を好きになったことない気がする。

エリス様くらいか?

あの人は神様だけども。

 

「俺としてはあまり思い出したくない話だから、聞きたいことあるなら今のうち全部済ませてくれ」

「思い出したくない話なら大丈夫です。そんなに聞くつもりもなかったので」

「そうか」

 

考えてみたら、別にめぐみんって俺に興味ないんだもんな。

そんなやつの幼馴染の話なんてどうでもいいだろう。

思ってたよりも難しいな。好きになってもらうのは。

 

「でも、あと一つだけ聞いてもいいですか?」

「なんだ?」

「もし、またその人が現れて、カズマのことをまだ『絶対ない』いや、あの、仮定の話で」

 

どちらかと言うと会いたくない人だから、そう簡単に心が動くとは思えない。

めぐみんが言いたいのは、またアイツが現れて約束を果たそうとか言ってきたらどうするって話だろうな。

今はめぐみんに惚れ込んでるし、揺らぎようがない。

 

「だからその仮定の話があったとして、復縁なんてねえよ。めぐみんの方が大事だ」

「・・・もし、カズマの勘違いで、ずっとカズマのこと想っていたとしてもですか?」

「それでもない。俺ってばめぐみんと結婚一歩手前まで行ってんだぞ?今更言われても申し訳ない気持ちにはなってもどうしようもねえよ。クリスについてってなかったら、思いっきり動揺するだろうけど、すぐさま付き合うなんてのはないだろう」

 

紅魔の里に初めて行った時くらいの状態だったら、少なくともウチの三馬鹿よりもしっかりしてるアイツの方がいいって判断になって、揺らぐかもしれない。

でも、それをそのまま信じられるかは、別の話だ。

身寄りのない状況で知り合いで、かつ、幼少期に結婚の約束をしていた相手。

ともすれば利用しない手は無い。

本当にめぐみんの言ってる仮の話の通りだとして、この考えが過ぎる以上はどうしようもないだろう。

 

「・・・どんな人だったんですか?」

 

一つだけと言ってたけど、具体的な所聞いてきたな。

逆の立場なら聴きたくなるだろうし、気持ちは分かるけども。

即答で否定される人ってどんな人物か聴きたくなる。

単純に思い出したくないだけなんだけどな。

 

「俺の知ってるアイツは、そうだな。何考えてるのか分かるようで、全く分からん不思議なやつだった」

 

ババ抜きとかしてる時に、ジョーカー取ったら直ぐにわかるくらいには分かりやすいけど、急に泣き出したりする情緒不安定な所もあって、そうなるともう何考えてるのか分からなくなって、困り果ててたな。

一言で説明するならこんなもんだろう。

幼馴染だけあって、説明しようと思えばいくらでも出来るけど、そんなことしたくないし、思い出したくもない。

 

「カズマの周りって変わった人しか集まらないように出来てるんですか?」

「お前が言うなって、言いたいけど、何かそんな気がしてきた」

「それはどう言う意味か聞こうじゃないか」

 

そのまんまの意味だよって言いたいけど、そろそろ偶然じゃ済まなくなってきたか。

ここまでクエストでは来るのはほぼ有り得ない。

それくらい街から離れたが、まだ後ろに一人いる。

 

「なあ、めぐみん」

「なんです?話によっては絞め上げますよ?」

「鏡持ってるか?」

「言いたいことはそれだけのようですね」

 

しまった。

皮肉ったみたいに思われた。

現状、これ以上言っても焼け石に水だしから、行動に移すか。

 

「いや、鏡見ろってそう意味じゃなくて、こういう意味だって、『クリエイト・ウォーター』ッ!」

「うわあああああ」

「な、何ですか!?」

 

予想通り、水をかけた方向から男の悲鳴がした。

思った通りの人物だな。

めぐみんは、俺が魔法を放った所から状況の理解が追いついてないようだった。

 

「やっぱり誰かいたか。誰だ?」

「バレちまったらしょうがねえ」

「レックス?何故ここに居るんですか?え?」

 

めぐみんはパニック継続中で、あわあわしてる。

こんなに焦ってるめぐみんは、謎施設にアクアと三人で入った時以来だろうか。

出てきたレックスはと言うと、バツが悪そうに頭をかきながら言った。

 

「俺たち昼には王都に帰るからそれを伝えようと思ってな」

「街出てからつけてたのそれだけが理由か?」

「正門周辺を歩いてたら二人で歩いてるの見かけてな。それで、ほら、めぐみんを好きになった奴がどんなのか気になって」

「その気持ちはよく分かる。コイツに惚れるやつとか想像つかないしな」

 

だって誰でもないめぐみんだからな。

年がら年中爆裂爆裂言ってる頭のおかしな魔法使い。

そんなやつを好きになる頭のおかしい男は俺だけでいい。

 

「だよな!俺もそれが疑問でって、あんたがそれ言うのか?」

「惚れたってより、堕とされたからな」

 

めぐみんから好きだ好きだって言われてなかったら多分、一緒に居て落ち着く相手止まりで気付かなかっただろうな。

自分の気持ちに。

いや、と言うかそれ自体がめぐみんからアプローチによるものか?

うん?

俺どのタイミングでめぐみんのこと好きになったんだ?

初めて紅魔の里に行った時か?

それとも里から帰って甘やかされてからか?

わからん・・・

 

「あれ?めぐみんからだったのか?」

「話すと長くなるので割愛しますが、私であって私じゃない私に猛アタック受けたらしいです」

「・・・二重人格とか言うやつか?」

 

そこだけ聞くとそうなるよな。

それにめぐみんが言うとただの中二病発言にしか聞こえないのは、何故だろうか。

 

「違いますよ!と言うか二人して私に惚れる男がいたらおかしいとか失礼過ぎます!」

「だって、めぐみんだからなあ?」

「だよな」

 

さすが、一時期めぐみんとパーティ組んでたことがあって、王都入りに際してめぐみんをパーティに誘っただけはあるな。

よくわかってる。

 

「レックスはまだしも、カズマまで言いますか!もういいです!デートなんてもうしません!帰ります!カズマのバカ!」

「おい待て待て、俺たちはあくまで一般論をしたまでで、怒らせるつもりは無いからデート取りやめはやめてやれって、ある意味初デートだろうがお前ら」

 

言われてみれば、めぐみんが憂うことなくするデートって意味なら初デートだよなこれ。

フォロー助かるから、レックスにまた会ったら何か奢っとこう。

 

「何が一般論ですか!私を何だと思ってるんですか!」

「「爆裂狂」」

 

うんうん。

レックスとは仲良くやってけそうな気がする。

 

「分かりました。私が如何に爆裂狂か今ここで証明して見せましょう」

「お、落ち着け!早まるなって、話をしよう」

「その結果がこの判断なのですが?」

「うん。やっぱり怒ってるめぐみんも可愛いな」

「なっ!?あなたはこんな時に何言ってるんですか!調子が狂うのでやめてください!」

 

調子が狂うか。

俺はいつもめぐみんに狂わされて来たからな。

これでお互い様とは言わないけど、これくらいは許して欲しい。

 

「しょうがねえだろ!お前のことになると、頭と口が同期しちまうんだから!」

「知りませんよ!頭の中で止めといてください!それと、レックスはニヤニヤするのをやめろ!引っぱたきますよ!」

「いや、なんつーか。お似合いだなお前ら」

「そりゃどうも」

 

お似合いか。

仲間以上恋人未満の間はよく言われたけど、親友になってからは初めて言われた。

こう言うのは当人が意識しやすくなるから良いって、ネットか何かで見た気がする。

 

「ああああああ、もういいです!二人とは話しません、さっき言った通り帰ります」

「爆裂はどうすんだ?」

 

アクアとダクネスに頼むと言う手があるにはあるけども、今からだと難しいような気がする。

アクアはおそらくバイトしてるだろうし、ダクネスは家の用事片付けようとするだろう。

 

「他の人に頼みます」

 

やっぱり言ってきた。

とは言え、ここで黙って返す俺では無い。

 

「そっか、俺以外の奴と爆裂するのか・・・」

「浮気は良くないぞめぐみん。カズマが可哀想だ」

 

レックスのナイスフォロー。

やっぱりレックスとは仲良くやって行けそうな気がする。

 

「違いますよ!なんなんですか二人して!カズマ早く行きましょう!こんな人ほっといて行きますよ!」

「ほっといていいのか?一応別れを言いに来たんだろ?」

「・・・みんなに、よろしく言っといてください。あと、ソフィにこれを渡しといてください。相談に乗ってもらったお礼です」

「おう。任された。仲良くやれよ。またな」

 

と、ここでレックスとは別れることになり、ついに二人きりの時間ができる。

と思ってたけど、まだそれは早いようだ。

それはとりあえず置いといて、いい出会いだったな。

 

「レックスって気のいいやつだな」

「ふん!知りません!」

「そんな怒るなよ。悪かったって」

 

予想以上にご機嫌ななめになってしまった。

ここはとにかく謝り倒すしかないか。

 

「次やったら二度とデートしません。と言うかどうして、ほぼ初対面のくせにあんなに息ぴったりなんですか?本当は知り合いだったりしませんか?」

「昨日が初めましてだぞ。神に誓って」

 

とは言っても俺は無宗教だけどな。

一時期、レジーナ教に入ったり、名誉アクシズ教徒にさせられたりと色々あったが、今は特に何も無い。

 

「・・・カズマって何教なんですか?」

「無宗教」

「ム・シュウ教?」

「いや、無宗教」

「あっ、無宗教ですか。と言うかそれなのに神に誓うって全く宣誓になってませんよ?」

 

言われてみれば、無宗教の人間が神に誓ったとて何の意味もないな。

まあ、神を信じてない訳じゃないと言うか、実際に三人も会ってたら疑いようがないからな。

 

「いいか?日本には八百万の神って言う考え方があってだな。その結果と言うか、なんと言うか色んな宗教の行事を自分達が楽しめる形で楽しんでんだ。だから一応何かあったらとりあえず神頼みしたり、神に誓ったりする」

「カズマの国が変な国だってことはよく分かりました」

 

伊達に変態の国とは言われてない。

って、それとこれとは話が別か。

いや、でも、神社擬人化しようとして、止められたとか言う話もあったよな。

と言うか普通に考えて、戦艦やら戦車を萌えキャラ化してる時点でどうかしてるな。

そのコンテンツを漏れなく嗜んでた俺が言うのも変な話ではあるけど……

 

「日本が変な国ってのは自他ともに認める話だからな。いい意味でも悪い意味でも」

「・・・で、カズマは神を信じてるんですか?」

「まあ、実際に会ったことあると信じるしかなくなるよな」

「神を見たことがあるんですか?」

 

おっと、アクアを見る目ですねこれ。

そりゃまあ、神に会ったとか言うやつ信じられない気持ちはよく分かるけども。

 

「お前も会ったことあると思う」

 

クリスに会ってる以上一応会ってるし、ある意味エリス祭りで見てるだろうからな。

まさか知らぬ間に女神エリスに会ってたと知ったらめぐみんはどんな反応するんだろうな。

・・・向こうのめぐみんが知ったら、天界行けること話さないと怒られそう。

 

「・・・まさかアクアですか?」

「そうだと言ったらどうする?」

「カズマがアクアに買収されたと思います」

「・・・俺が思い浮かべてたのは違うけど」

 

流石にまだ信じるとか、アクアはアクアだとかそう言う話にはならないか。

あまりにも身近過ぎて、頭数には入ってたけど、認識が足りてなかった……

確かに俺が何かしらの理由で、アクアの言うこと聞いてるだけってのが一番信じられる筋か。

 

「じゃあ誰ですか?」

「俺のメインヒロインこと、エリス様」

「・・・エリス教徒に怒られてください。と言うか普通メインヒロインは私じゃないんですか!」

 

エリス教徒には怒られるだろうけど、エリス本人は恥ずかしがるだけからな。

うん。

メインヒロインが自分じゃないのかって言う主張には、俺は異を唱えないけど、そう言う話では無い。

 

「それはそれ、これはこれだ。嫉妬してくれてありがとう」

「何がありがとうですか、全く。女神をメインヒロインとか言ったらバチ当たりますよ」

「それは無い。だってエリス様だからな!」

 

もしバチを当てられたら神器回収をストライキしてやる。

そんなことにはならないだろうけど。

とまあ、馬鹿みたいな話してたらクリスも居なくなったし、手を繋いでも大丈夫だろう。

 

「そこまで言うならエリス教徒になればいいじゃないですか」

「めぐみんは分かってないな」

 

信者になってしまったら、より扱き使われるのが目に見えてるから絶対やだ。

聞いた話だとセシリーがアクセルに来たのは、アクアのお金をくださいって言うお告げを聞いたからだって言ってたからな。

 

「・・・所で何処で会ったんですか?」

「死んだ時に」

「・・・もういいです。こんな話に付き合った私が馬鹿でした」

 

おっと、アクアが女神だって初めて言った時に見せた目だこれは。

確かに俺はまだこっちで死んでないな……

と言うかこっちでは死にたくないな。

でも、死なないとエリスに会えないのは、いや待てよ?

テレポートで天界行けるよな?

だったら死ななくても問題ないな。

 

「待てって、本当だって、冬将軍に殺された時からの仲なんだって」

「・・・あっ、もしかして向こうの世界でですか」

「そうそう。そう言うこと」

 

冬将軍・・・

ハッキリ死んだことを自覚しながら死んだ初めての経験だ。

・・・死んだ初めての経験って何言ってるかよく分からないけど、とりあえず、冬将軍だけはダメだ。

今回は何としても雪精以外の方法で冬を越せるようにしとかないといけない。

 

「なるほど、理解しました。こっちでは冬将軍に殺られないようにしないとですね」

「だな。でもあの時の俺とは違うからな」

「とか言ってると殺られますよ。気を付けてくださいね」

「分かってるって」

 

コボルドの時に痛い目見てるからな。

調子に乗って殺られるなんてことは無いだろう。

さっきまでと違ってめぐみんが大人しくなった。

エリスをメインヒロインと言った事とか、レックスと二人でからかったことはもう大丈夫かもと考えたのが悪かったのか、めぐみんはそんなことを許してくれるような雰囲気ではなく、こちらを怪訝そうに見ながら言った。

 

「あの、今日ここまで来てすごーく疑問に思ったんですけど、本当に私と結婚したいんですか?」

「当たり前だろ?」

 

急にどうしたのだろうか?

なんでそんなことを?

 

「・・・私のことを守ってくれない所か、一緒になって馬鹿にしてきますし、メインヒロインは国教である女神だとか言い出しますし、そんなの見せられたら分からなくなりますよ」

「・・・」

 

うん。

ごもっともです。

自分の浅はかさに穴があったら入りたい。

 

「どうなんですか?」

「ごめん。めぐみんからの誘われたデートだから、変にテンションあがって、向こうでやってたノリで話してしまった」

「・・・そういうことなら良しとします」

 

渋々と言った感じで、ため息をついてから言われると心が痛む。

やっぱり、めぐみんに負担かけてるよな俺。

 

「なあ、めぐみん」

「何ですか?」

「これからも色々迷惑かけると思うから、何か至らないことがあったら言ってくれ治すから、めぐみんに無理させたくない」

「そこまで言われると信じるしか無くなるじゃないですか。いいですよ。治さなくて。それがカズマの素なら、それでいいです」

 

何だろうかこの天使は。

こんなにも俺の事肯定してくれる天使を、どうして俺は一度でも追い出そうとしたのだろうか。

・・・いや、アレは正当な判断だ。

うん。

って、そんなこと考えてる場合じゃない。

 

「でもなあ」

「カズマは私の事全部認めてくれてるんですから、その逆が出来ないのは対等じゃないでしょう」

「それ、俺からの押し付けになってないか?無理はして欲しくないからな?」

 

なんと言うかめぐみんの優しさにつけ込んでる気がして、罪悪感がある。

そう言えばプレゼントとかしたら、ちゃんとお礼の品渡して貰ってたか。

 

「そんなの気にしなくていいんですよ。私がしたくてしてるんですから、ほっといてください」

「・・・」

「カズマが思ってるより、私はカズマのこと考えてますよ?」

「えっ?」

 

俺のこと考えてるって、どういう意味?

いやいや、めぐみんのことだから思わせぶりなこと言ってるだけだろ。

俺は騙されないぞ。

これで浮かれてたら、全然意味違うとかあったからな。

 

「昨日覗いてたのならある程度分かるでしょう?」

「何が?」

「どうしてこういう所は鈍いんですか?カズマに変な所がなければその手を取ると言ってましたよね?」

「そうだったな」

 

俺が段階踏んでアプローチしてたら、問題なかったって言う話だよな?

それが今の話とどう繋がるのだろうか。

めぐみんは俺がまだ理解してないと分かったのか、ため息をついてから俺の目を真っ直ぐ見て言った。

 

「つまり、それくらいカズマとの結婚に魅力を感じてるのですよ!」

「そうなのか?」

「・・・はぁ、じゃなかったらデートに私から誘いませんよ」

「?」

 

急なこと過ぎて頭の整理がついてない。

めぐみんが俺との結婚に魅力感じてて、そうじゃなかったらデートに誘わない?

いやいや、あまりにも話が俺にとって都合良過ぎるよな。

多分、俺の耳がおかしくなったに違いない。

・・・何か、難聴系主人公みたいなこと考えてる気もするが、それは置いとこう。

 

「まだ混乱してる所もありますし、カズマが単に都合のいい存在だからって面も否めないので、色々確かめたいのですよ。今カズマのことが好きかと問われたら違うと答えますから」

「そういう事か」

 

良かった良かった。

俺が爆裂道歩む上で必要な人材だからって言う意味なら納得だ。

自分の生き様を支えてくれる人との結婚は魅力的に決まってる。

 

「ここで納得されるとそれはそれで違うような気がしますが、ともかく、これまで無理してカズマに喜んでもらおうとかしてたこともありましたけど、今は本気でカズマに喜んでもらいたいと思って動いてるので、そこだけは勘違いしないで欲しいです」

「分かった。現状のめぐみんの俺への気持ちは」

「全く、これではどちらが告白した側か分からないですよ」

 

実際、周りからはめぐみんの方が俺に気があるんじゃないかと疑われてる時もあったしな。

俺が自己肯定感低いのもあるかもしれない。

前はそこまでじゃなかったはずなんだけどなあ。

 

「めぐみんって、やっぱり恋愛強者だわ」

「私は基本的に強者ですよ?」

「・・・やっぱりめぐみんは大物だわ」

「はあ?」

 

自信に満ち溢れてる所がめぐみんは凄いよな。

尊敬してたりする。

 

「そういう所が大好き」

「そ、そうですか・・・」

 

照れみんもやっぱりまだ見れるから、まだ手玉に取られることは無いだろうと思う。

手玉に取ってくるめぐみんも好きだし、恥ずかしがってるめぐみんも好きだから、どっちに転んでも問題は無い。

いや、やっぱり前者は俺が我慢すること増えるから後者の方が……

いやいや、でもめぐみんに手玉に取られてる時のあのドキドキも良いし……

などと考えてると無言の時間が長くなり、お互いしばらく話さなくなってしまった。




幼馴染ちゃんが出るとか言っときながらカズマさんの回想だけですみません。
幼馴染ちゃんの話はエネルギー必要で、体調不良が続く今は向いてないので、お許しください。
次回もカズめぐのシリーズだと思います。


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木陰の休息

週一維持できなくて悔しいです。
眠気に勝てずここまで来てしまいました。


沈黙が続き、明らかにクエストでも人が来ないような場所まで来た。

後はめぐみんの希望にあった対象を見つけるだけなのだが、まだ手を繋ぐに至って居ない。

めぐみんから誘われたデートだからと、浮かれてたら喧嘩しちまったあとだからだ。

いやまあ、さっきまでは割といい感じの雰囲気ではあったけども。

と言うかそれで何となく照れくさくなってお互い話さなくなったのが主要因だけども。

このままだといけないと思い声を掛けてみる。

 

「めぐみん」

「な、なんですか?」

 

やっぱり、余裕なくて、テンパってるめぐみんは可愛いな。

名前呼んだだけでこれだろ?

めぐみんが名前だけ呼んで何も無いって言う意味がよくわかる。

 

「そろそろ手繋いでいいか」

「ど、どうぞ」

 

こういう所はまだまだ俺の方がリード出来てるか。

いくらめぐみんと言えども、恋愛耐性が最初から備わってる訳じゃないってことか。

 

「・・・カズマ」

「なんだ?」

「また誰かに付けられてませんか?」

「そうか?感知スキルに反応無いけど?」

 

レックス、クリスと二人に追跡されていたのに気付かなかっためぐみんが感じてるのに俺が気付いてないのは不思議だ。

千里眼を使って周りを見てみるも、やはりと言うべきか人影所か、魔物も見当たらない。

キョロキョロとめぐみんも辺りを見回しているが、不安そうではなく、不思議そうにしている。

 

「さっきから何かの視線を感じるのですよ。どこからか覗かれているような感じで。それも近くから。でも不思議と嫌な心地はしないのですよね。これなんですかね?」

「覗かれてる?ちょっと待ってろよ。もうちょっと探知系のスキルを・・・あっ、分かった」

 

めぐみんは近くからと言っていた。

俺たち二人を俯瞰的に覗き見ている人物が確実に一人いることに今更気付いた。

尾行を気にして、確認しているやつがここに。

 

「分かりましたか?」

「これでどうだ?視線もう感じないだろ?」

「え?・・・あれ?本当に視線をもう感じないです」

 

思った通りの結果で良かった。

でも、感知スキルって気付くものなのか?

これまでにもクエストとかで、敵感知スキルは常時使ってるし、でもめぐみんはこれまで視線なんて感じてなかったよな?

まさかこっちの世界だと感知スキルの逆探知とか出来るのか?

 

「やっぱり犯人俺だったか」

「はい?」

「感知スキルで周囲確認し続けてたから、それを視線に感じたんだと思う」

「なるほど。つまりもう尾行はないってことですか」

 

キョロキョロするのを止めためぐみんはこっちを見てニコッと笑った。

可愛すぎるだろこの生物。

 

「まあ、そうなるな」

「なら、恋人繋ぎしましょう」

「え?」

「したくないんですか?」

「いや、したいけども、いいのか?」

「私から提案してるんですから、当然です」

 

あれえ?

おかしいな。

さっき普通の手繋ぎで恥ずかしがってたよなコイツ?

どう言う心境の変化だ?

極めてめぐみんらしい行動だけども、こっちでは普通じゃない。

 

「誰からも見られてないなら恥ずかしくないですからね。この前の添い寝に比べたらこれくらいはなんてことないです」

「そう言う問題か?」

「そう言う問題です」

 

やっぱりめぐみんは一度経験したら耐性出来るタイプの人間か?

それは困る。

だって、このままのスピードでいくと、そのうちめぐみんに手玉に取られる前回と同じ道が直ぐに・・・

 

「あの、そんなに恋人繋ぎ嫌ですか?」

「そうじゃない!そうじゃなくて、このまま照れてるめぐみん見られなくなるの悲しいなって」

「そんな私は見なくていいです。私はクールな魔法使いですから」

「・・・めぐみんがクールなら俺はもう凍結してるな」

 

めぐみんをクールと言ったらゆんゆんなんて、絶対零度だろうと思う。

俺は、まあ、クールとは言わないまでもそんなに怒りっぽくはない。

パーティーメンバーに怒るのは、変なことするからだしな。

 

「どう言う意味ですかそれは!」

「ほら、短気じゃん」

「・・・どう言う意味か聞きましょうか」

「今更言い直しても遅い。てか前にも言ったけど、そう言う所も好きなんだって」

 

さてとこれでめぐみんへのアピールも完璧と。

このデート始めて喧嘩してばかりな気もするけど、とりあえず喧嘩のベクトル変えとこう。

多分、こんなこと言うのやめろとかそう言う話だよな。

 

「もう何なんですか!ソレ!ズルいので禁止です!」

「断固拒否する」

「ムカつくニヤケ顔もやめてください!」

 

これも俺言ってたもんな。

ニヤニヤしてるの見てたら腹立つし、ほっぺた引っ張りたくなってたな。

 

「やめろと言われて止めるやつがどこにいるってんだ。めぐみんがそうやって怒ってるの見るのも楽しいし」

「・・・カズマって悪魔だったりしません?」

「失礼な。俺だってめぐみんに同じことされてんだ。今度は俺のターンだ!」

 

とすると、めぐみんがその内俺の頬っぺ引っ張りに来ることになったりするか?

それはそれでかわいいと思うから見てみたい。

でも、めぐみんの力強いから痛すぎてそれ所じゃない可能性もあるけど……。

 

「何ですかその理屈は!それ私の気持ちわかってるんですよね!だったらやめてくださいよ!」

「お前もめぐみんなら分かるはずだ。これ、抑えるとか不可能だって」

「分かりませんよそんなの。全く、クリスの、いや、悪魔のせいでこんなことになるなんて」

 

よし、いい感じにヘイトが俺以外に向いてくれた。

しかも、このタイミングで、めぐみんが好きそうな岩が見つかった。

無機物に感謝する日が来ようとは……

 

「おい、めぐみん見ろよ。いい感じの岩あるぞ」

「・・・はぁ、本当私の好みよく分かってますね。準備するので、下がって見ててください」

「任せとけ」

 

今日はどんな感じだろうな。

デートって事で緊張して、点数が落ちるのか、緊張がプラスに働いて出来が良くなるのか。

気になる所ではある。

 

「カズマ、これだけは言わせてください」

「なんだ?」

「私は私です。悪魔に見せられた私とは違うのでそこのとこ忘れないでください!」

 

何ともめぐみんらしい発言。

自分は自分だと。

ここが平行世界と聞いた時点で、全くの同一人物だとは思わないようにしてたから、俺としては何の問題もない。

まあ、俺が攻める事で、照れまくってるめぐみんとか向こうじゃ見られなかったし、その時点で別のめぐみんって認識は形成されつつあったけど。

 

「言われなくても分かってるぞ?押されて焦るめぐみんとか向こうじゃ見られなかったし、でも、まあ、どっちのめぐみんも好きだから安心して爆裂してくれ、最高のを頼むぞ」

「・・・『エクスプロージョン』ッ!」

 

なんだろう。

今までにないくらい出来が良くない。

音圧もいまいちだし、爆煙も不揃いだし、何より岩の破片がパラパラ落ちてるのが良くないな。

 

「これは四十八点かな」

 

言いながらめぐみんを背負う。

こっちではおんぶする時もめぐみんがちょっと照れてるの新鮮でいい。

おんぶする時絶対にそっぽ向いてるもんな。

でも、そのくせおんぶ中はほぼゼロ距離で喋ってんだよな。

距離感バグってると思う。

俺としては何の問題もないけど。

 

「最後の一言で安心所かドキドキでしたよ!何してくれるんですか!」

「いやあ、俺の見てきためぐみんなら気分が乗って、より良い点数稼いでくれるかなあって思ったけど、やっぱりめぐみんでも違うところはあるなって、より実感した」

 

俺としては多少違う所があってもめぐみんはめぐみんだからな。

流石に爆裂爆裂言ってないめぐみんだったら困るけどな。

だって、そんなことになったらめぐみんただの短気なで暴力気質があるだけのエリートだし、俺なんか目に入らない程に引く手数多だろうし……

そうだよな。

めぐみんが爆裂魔法に惹かれてなかったら、そもそも俺達と出会うよりも前にどっかのパーティー入ってるだろうな。

・・・なんか悲しくなってきた。

考えるのやめて、アワアワしてるめぐみん見て楽しもう。

 

「そりゃあ、一番最後のは昂るものもありましたよ?ありましたけど、どっちの私も好きだとかそんな話なくていいんですよ!アレです。爆裂散歩で次から放つ前に話すの禁止です!」

「分かった分かった。俺もめぐみんが綺麗に爆裂してる所見たいしからな。百点取れるくらいに」

 

まだまだ百点には遠いけど、爆裂魔法の上達を傍で、前回よりもじっくりと見届けてあげよう。

これが結婚の誘いを受けるにあたって魅力的な所とめぐみんも言ってたし、ここをより極めなければならない。

 

「・・・一つ聞きたいんですけどいいですか?」

「何だ?」

「魔王軍と本格的に戦うくらいの私基準だったら百点なんてまだまだ取れないと思うですが」

「そんな訳ないだろ?今のめぐみんが出せるパフォーマンスの範疇でつけてるっての。そんなこと言い出したら、今日のなんて、十未満だぞ?」

 

変な話だけど、めぐみんが爆裂魔法放つ時の魔力の感じで出せるはずの大きさとか威力が分かるようになった。

そのおかげか、初めてこっちで採点した時めぐみんも自分でつけるならそれくらいの感覚と言っていたし。

 

「そ、そうですか。精進します。しかし、十点にも満たない訳ですか……」

「そんだけめぐみんが成長したってことだ。しかもそこまで行ってもまだまだ可能性はあったぞ。俺はその先を見たい。あと、お金に余裕出てきたらマナタイト買って、偶に一緒に爆裂してお互いに採点とかしたい。何気に向こうでもやってなかったしなこれ、やりたいとはずっと思ってたけど、ゴタゴタしててそれ所じゃなかったんだよな」

「・・・」

 

めぐみんのやる気を上げてやろうと思って言ってみたけど、めぐみんは何も話さなくなった。

まさか寝たのかと思い振り返ると目は開いていた。

そして、涙が伝っていた。

え?

俺なんか変なこと言ったか?

まさか、めぐみん的に一緒に爆裂は、ダイナマイトもどきみたいな感覚なのだろうか?

それだったら相当な地雷踏んでる……

 

「えっと、どうした?俺何か」

「いえ、カズマが何かしたとかじゃなくて、その、嬉し泣きです。魔法見てくれるだけでも初めてで嬉しいのに、一緒に爆裂しようなんて言ってくれる人が現れるなんてこと考えもしてなかったので……」

 

俺のフォローがぶっ刺さってただけだったか。

だけとか言ったけど、こういう時なんて声掛けたらいいんだ?

泣かせてしまうとか思ってないし、その後の対応とか分かんねえよ!

このままだとどうしたらいいか分からないから一旦、めぐみんを木陰に置いて、ピクニックの準備を始める。

 

「カズマ、これからもよろしくお願いします」

「お、おう」

 

よろしくと言っためぐみんは、涙を拭い笑っていた。

と、とりあえず泣き止んでくれて良かった。

 

「あの、一つ忘れてたことがあります」

「何だ?」

 

何か申し訳なさそうにしてる。

さっきからめぐみんの情緒がおかしい。

不安定って訳じゃないけど、コロコロ変わってる。

 

「私もう動けないじゃないですか」

「そうだな」

 

故に俺が一人で、水筒とかお弁当とかその他諸々を準備してるんだけどな。

今更そんなこと気にしてるのか?

 

「お弁当まだ食べてないじゃないですか」

「そうだな」

 

これから弁当だってのに何の確認だろう?

さてと、設置も完了したし、後はおれ

 

「お弁当食べられないじゃないですか!」

「いや、それは違うぞ。ちゃんとめぐみんも弁当食えるからな」

「意味分からないですよ」

 

不思議がってるめぐみんを少し抱き起こして木から離す。

そして、めぐみんと木の間に入り込む。

 

「あ、あの、カズマ?何してるんですか?」

「二人とも昼食食べる為の工夫。ちゃんと食わせてやるから待ってろ」

 

めぐみんを両足の間に入るように座る。

これで弁当食べられるな。

 

「えっと、カズマ?この体勢は一体……これでどうやってお弁当を?それに近くて恥ずかしいのですが」

「まあ、待ってろ。はい、あ〜ん」

「・・・カズマ正気ですか!こんなの恥ずかし過ぎてどうにかなりそうですよ!」

 

正気を疑われてるけど、めぐみんが体力戻るまで待つのなしにしたら、これ以外に方法はない。

恥ずかしいとかは我慢してもらうしかない。

 

「じゃあ、どうやって食べんだよ」

「・・・わかりました!わかりましたよ。食べますよ」

「じゃ、改めて、あ〜ん」

「あ、あーん。美味しいです」

 

めぐみんは照れてこっちを向こうとしないけど、こんなに近くで照れてる所見られるとか、いかにもデートって感じでいいなこれ。

めぐみんとしては早く終わって欲しい状況だろうけど。

 

「めぐみんの作ってくれたサンドイッチ、ホント美味しい。やっぱりめぐみんの料理は毎日食べたいくらいに美味しい。はい、あ〜ん」

「・・・あーん。あの、これ言わないとくれないのですか?」

 

別にもう一つくださいでも渡してるけど、なんか勝手に勘違いしてくれてるからそれに乗っかっておこう。

めぐみんがあーんって言って欲しがってる所をもっと見たいからな。

 

「だってその方がデートっぽいだろ?」

「・・・そうですか。もうなんでもいいです。あーん」

「あ〜ん。なあ、照れなくなるの早過ぎないか?」

「照れてないわけないじゃないですか。一々反応してたら食べ終わるのに時間かかるからですよ」

 

言ってることは最もなんだけど、そんなに割り切れる物なのだろうか。

俺そんなこと出来てなかったのに……

 

「そうなのか?」

「脈測れば分かりますよ。カズマのせいでドキドキしっぱなしですからね!他のことも慣れたとか思ってるなら大間違いですからね!こんなこと言わせないでください恥ずかしい……」

「そうか。それなら良かった。まだ食べるか?」

「・・・あーん」

 

照れながら言ってるのやっぱりいいな。

これまでにされてきたあーんは、めぐみんが挑発的な笑みを浮かべながら煽ってきて、心休まることは無かった。

いや、あのめぐみんも可愛かったけども。

って俺は何自分の中で張り合ってんだ?

 

「あ〜ん」

「カズマ」

「なんだ?」

「今度逆させてください」

 

唐突な要求。

しかも俺が得しかしないような要求。

このタイミングでめぐみんがこれを切り出す理由は何だ?

 

「いいけど、どうしてだ?」

「同じ気持ちにさせないと気がすみません」

「俺からしたら単なるご褒美だぞそれ」

「・・・あああああ!もう!イライラしてきました!一発殴らせてください」

 

めぐみんの負けず嫌いが発動してるだけだったのか。

まあ、なんと言うか、ここで諦めてたのが俺なんだろうな。

そして、それを今しがた暴力で解決しようとしてるのがコイツなわけか。

 

「嫌だ!」

「だったらどう発散しろと言うんですか!爆裂はもうした後ですよ!」

「めぐみんもこの状況楽しんだらいい」

「・・・聞いた私が馬鹿でした」

 

俺は間違ったこと言ってないはずなのに呆れられた。

なんかイタズラしたくなってきたな。

 

「あーん」

「あ〜、あ〜、あ〜」

「早く口に入れてくださいよ!焦らさないでください、あーん!」

 

ツンツンしてるめぐみんも中々いいな。

ずっとゆんゆんに対してみたいにツンツンだと困るけど……

 

「だって恒例の行事じゃんこれ。はい、あ〜ん」

「あーん。知りませんよそんなの。もう絶対、お弁当食べる前に爆裂しません!」

「分かった。でもめぐみんがまたこれしたくなったら俺は何時でもするからな」

 

添い寝は何故か知らないけど、めぐみんの方から誘ってくれてるくらいだから、こうやって、あ〜んするのもハマってくれないかなと淡い期待をしてしまう。

今はまだ無理だろうけど。

 

「ふん!その時は逆もやってカズマの顔真っ赤にしてやりますよ」

「そりゃ楽しみだな。弁当食べ終わったし、そろそろ昼寝するか」

「まだです」

「え?」

 

まさか、なんだかんだでこの状況気に入ってたりするのか?

全くそんな風には見えないけど、もしそうならツンデレが過ぎる。

 

「疲れたので普通にベッドで寝たいです」

 

おっと、めぐみん怒らせただけだった。

添い寝もしたくないって感じか?

からかい過ぎたなこれは。

自重しないと……

 

「ベッドくっ付けたままだけどいいのか?」

「最初から添い寝すると言ってたじゃないですか。何心配してるんですか?」

「いや、なんて言うかさっき口論してたし」

 

添い寝が嫌になったから帰るんじゃないのか?

めぐみんの基準がいまいち掴めてない。

色々とめぐみんが慣れたら、どう攻めていいか分からなくなりそう……

 

「この前言い合いできる関係もいいと言ってたじゃないですか。私もそうなんですよ。今気付きましたけど、ともかくさっきので気分を害した訳じゃないです」

「分かった。じゃあそろそろ行くか」

「まだこのままでいいですよ。なんと言うか、この体勢落ち着くので、動けるようになるまで待ちましょう」

「お前がそれでいいなら」

 

これが落ち着く?

始めた時めちゃくちゃ抵抗してたのに?

まさか抵抗してたのあーんの方だけだとか言わないよな?

・・・ちょっと試してみるか。

 

「どうしました?」

「抱きしめていいか?」

「それくらないなら別に、いや、やっぱりダメです!」

 

一瞬させてくれそうだったのに、拒否された。

この一瞬で何があったんだ?

 

「どうした?」

「カズマがわざわざ確認するということは、恥ずかしい思いを私がすると学んだのですよ!」

「・・・それにしては許可しようとしてたけどな」

「油断してただけです」

「油断か。それを言うとだな。俺もちょっと油断してた」

「何をですか?」

「ほら、アレ」

「アレ?・・・あっ」

 

視線の先には、前にもすれ違ったことのある冒険者達。

体の汚れ具合からクエスト帰りだろう。

完全に目が合ってしまった。

ダストと。

 

「あっ!俺様がこんなに働いてんのに何だお前ら!昼間からイチャつきやがって!許さ、痛っ!?何すんだリーン!」

「止めなさい!二人きりの時間楽しんでるんだから邪魔するなんて無粋な真似させないわよ。ごめんね。このバカは私達が連れてくから気にしないでね」

「離せ!キース!お前もムカつくだろ!」

 

キースに同意を求めるも、好感触とはいかなそうだ。

俺としてもその方が助かる。

あまりめぐみんを刺激するようなことは言って欲しくないからな。

適度にめぐみんが照れるレベルで頼む。

 

「ムカつかねえって言ったら嘘だけど、お前は感情的になり過ぎだ!」

「さっさと行くぞ。女の子の方顔真っ赤にして、手で顔隠してるし、これ以上見てやるな。悪いな二人とも。せっかくクエストも殆どない場所でゆっくりしてたのに」

 

テイラーのフォローが逆にめぐみんを沈めた。

前屈姿勢になって、顔隠そうとしてるし……

俺ができるのは、早く立ち去ってもらうように話を進めることだけ。

 

「えっと、その、頼む。コイツもう限界だし……」

「ほんとごめんね!冒険者よね?また今度ギルドで会ったらお詫びに奢ってあげるよ」

「はあ!?こんな野郎に奢るくらいなら俺に奢れよ!」

「うっさい!あんたは黙ってて!」

 

キースとテイラー二人がかりで黙らせられたダストは連れていかれた。

まさかこんな所でコイツらと会うことになるとは……

めぐみんは前屈姿勢のままぷるぷる震えて動かなくなった。

見られること想定してない行動だったのな。

背中を撫でて落ち着くのを待つこと、数分、ようやく落ち着いたのかめぐみんは体を起こした。

 

「・・・か、かずま」

「何だ?」

「見られましたね」

「見られたな」

 

落ち着いた声色ではあるけど、顔は耳まで赤くなったままだし、目も十分紅い、

めぐみんをこれ以上からかうのはなしだな。

それに今は落ち着かせないと。

 

「ギルドで広まりますよね?」

「それはアイツら次第だな」

「・・・もうギルド行きたくないです」

「金を積む。この前あの騒いでた男が借金がどうのって揉めてる所見たし、まとまった金渡せばいいだろ」

 

どうせダストは万年金欠だし、金の力には逆らわねえやつだからな。

自称俺の親友なだけあって付き合いは長い。

この手の事はちゃんと守るタイプだからな。、

 

「・・・えっと、そんなことで」

「まあ、見てろって、『狙撃』っ!」

「ちょっ!?何やってるんですか!」

「金袋に話すなって書いた紙入れて飛ばしたし、これで大丈夫だろ」

 

俺の命中率を疑っているのか、お金の持ち逃げを心配しているのか分からないけど、どちらにせよ俺の事信用して欲しい。

と言っても会ってさほど経ってないこの状況じゃ、厳しいけども。

 

「・・・それ、大丈夫なんですか?」

「千里眼でちゃんとアイツの頭に命中して、当たったことにブチ切れて、そこから中身みて大人しくなったのもちゃんと見えてるから安心しろ」

「千里眼ですか。それなら、大丈夫ですかね」

 

まあ、何とか納得してもらえてよかった。

話してる内に照れも無くなったみたいだし、このままデート続けても問題ないかもな。

いや、街ついてデート本格的に始める時には照れてる時見たいけど。




次回、カズマとめぐみんが本格的にデートします。今回も十分デートしてますけど……
来週こそは週一やってやります!


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目撃情報

完成してたのに投稿忘れて週一投稿崩した大馬鹿者ことめむみんです。
次の更新分を急いで作らなきゃと開いたら投稿前のやつがありました……


カズマとのデートを冒険者に目撃されてしまった私は今とても取り乱している。

カズマが買収したから大丈夫と言っているが、冒険者は噂話をするのが大好きな人達。

街帰ったら冷やかされるのが目に浮かぶ。

そして、カズマもそれをニヤニヤして見てくるに違いない。

展開が分かっていると言うのに何も出来ないなんて……

 

「心配しすぎだって、結構な額入れたから山分けしても一人が一日豪遊できる額だから」

「それはそれで心配ですよ!なんでそんなにお金渡してるんですか!」

「なんでってめぐみんのためだけど?町中に俺との噂流れちゃってからかわれるのは嫌だろ?」

 

・・・そう言えば前に、人に知られるのは恥ずかしいと話していたような。

カズマにも恥じらいがまだ少しあってよかった。

これで、俺達の関係が知れ渡る方がいいとか、めぐみんの男だと周知したいとか言われていたら私は引きこもるしか無かっただろう。

 

「そ、それはそうですけど」

「お金のことは気にするな。何故か悪魔に見せられてた世界で持ってた分の金を今持ってるから」

「ちょっ、ちょっと待ってください!いつものお金は賭けに勝ったんじゃないんですか!?」

「ああ、なんか、手持ちの分は持ってた」

 

悪魔の力でそんなことが出来るなんて……

これまでは話しちゃいけないと思ってたから賭けに勝ったことにカズマはしていたらしい。

 

「俺の幸運値ならほぼ勝ち続けられるだろうけど!そういうことすると後で良くないことが起こると思うからやってない」

「分かりました」

 

カズマは案外しっかりしているらしい。

多少は頼りになるとは思っていたけれども、ここまで考えていたとは。

 

 

 

所は変わって商店街に私達はいた。

いつものように買い物を済ませようとしていると八百屋のおばちゃんに絡まれてしまった……

 

「あらあら、めぐみんちゃん、今日は彼氏さんと一緒なのね」

「え、えっと、この人はその、仲間で、彼氏じゃなくて、親友です」

 

これじゃ、怪しさ満点な気がする程に動揺してしまった。

カズマは何も言わずに野菜を見ているし、助けてくれそうにない。

どうしよう。

このままだと商店街で広まってしまう。

私が彼氏を連れてやって来たと言う噂が……

 

「そうなのかい?それで今日は親友さんと何を買いに来たんだい?」

「人参とじゃがいも、玉ねぎに……」

「玉ねぎなら昨日のがまだ残ってたし、二人分なら余裕で足りると思うぞ」

「そうでしたっけ?じゃあ、人参とじゃがいもときのこをお願いします」

 

カズマが居てくれて良かった。

無駄な食材を買う所だった。

毎日夕食を二人で食べる訳ではないのだから、多くなり過ぎると消費しきれなくなる。

 

「はいよ。二人とも一緒に暮らしてるのかい?」

「いえ、夕飯食べたらその後は別々の宿です。カズマの宿にはキッチンがないので」

「夕飯を一緒に食べるくらい仲がいいなら同じ宿に泊まればいいんじゃないかい?」

 

こんな話をしてくるあたり絶対にカズマのこと彼氏だと思ってる。

何とかして誤解をとかなければ……

 

「親友とは言え、男女が同じ屋根の下ってのは不味いですからね。別々に泊まってます。これお代です。めぐみん、俺向こうで買いたい物あるからここで待っててくれ」

「はい、待ってますね」

 

カズマもちゃんとフォロー入れてくれたから大丈夫かもしれない。

良かった。

これで噂が広まることもないだろう

 

「めぐみんちゃん、大事にされてるわね」

「あの、そもそも友達なので大事にとかそう言う次元じゃないのですけど」

「隠しても無駄だよ。プロポーズされてる所見てたからね」

「・・・え?」

 

プロポーズされてた所を目撃されてたなんて!?

でも商店街で広がってないということは黙っていてくれてるみたいで良かった。

知っているなら彼氏かどうかみたいな茶化しはなしにして欲しかったけれども、少し安心した。

 

「見た感じ、まだ応えてないんじゃないかい?」

「・・・はい。待ってもらってます」

「あまり待たせすぎるのも良くないし、他の女に言い寄られたらコロッと言っちゃうのが男なんだから、気になってるなら早目に返事した方が後悔しなくて済むわよ」

 

・・・確かにカズマが他の人に取られると考えたら、モヤモヤする。

仮にアクアかダクネスがカズマに告白して・・・

あれ?カズマが私の名前出して直ぐに断る姿が目に浮かぶ。

知らない女の人でも多分同じだろう。

 

「カズマが私以外にと言うのが今の所実感が持てないのですが、わかりました」

「そんなにゾッコンなのかい彼は?」

「はい。それはもう。私が言うのもなんですけど、疑う余地もないですよ」

 

自分でももったいないと思う程に想いを直接ぶつけられているから、他の人に靡く所が想像出来ない。

そう思う一番の理由としては、ダクネスのことをジロジロと見なくなったことが大きい。

傍から見ても分かるくらいにカズマは胸元をよく見ていた。

でもそれが無くなった以上、他の女性への興味関心が失われたとまでは言わないにしても、以前程の興味が無くなったのは間違いない。

 

「で、彼の事どうも思ってるんだい?」

「・・・好きかと聞かれたら違いますけど、でも他の人に取られるのは嫌ですね。私の事ここまで見てくれるのはカズマくらいですから」

「じゃあ、早いこと伝えてあげなさい。あまり待たせすぎるのも気の毒だからね」

「それは伝えてますよ?これが急なことでなければ手を取っていたと」

 

カズマが前に言っているのを聞いたことがある。

選択を失敗したと。

多分、私の勘違いに乗って様子見して、ゆっくりアプローチする選択をしていればと、カズマは思っていたのだろう。

私としてもその場合は多分、迷わずに手を取っていたと思う。

それこそ、自然な流れで好きになっていたかもしれない。

とそんなことは置いておいて、早くカズマに返事をしなければならないのに変わりは無い。

さっきカズマが他の人と付き合ってることを考えた時のモヤモヤのことを考えると私の中で、カズマが特別な存在になってるんだと気付かされた。

仮にこれがぶっころりーだったら、お幸せにとしか思わない。

間違いない。

 

「あら?そうだったの?余計なお世話だったみたいね」

「いえ、自分でカズマのことどう思ってるのかちょっと分かった気がするので、助かりました」

 

この気持ちが異性としての好きなのかはまだ分からない。

でも、カズマに抱いたのが初めてなのもまた事実。

今日は私の方から色々とやってみよう。

確か、好きな人にハグをすると心地いいと小説で読んだことがあるから、それを試してみよう。

 

「そう言って貰えると嬉しいねえ。話し終わった頃に丁度彼戻って来たわよ」

「めぐみん、お待たせ。思ったより時間がかかって・・・めぐみん?どうしたんだ?」

「何でもないです。デートだからそれっぽいことをですね」

 

・・・やっぱりカズマは無反応だったか。

私が恥ずかしいだけで、いつもと何も変わらない。

そう思ったけれども、カズマに抱きしめ返されると心地よく感じた。

・・・あれ?

恥ずかしさよりも安らぎの方が上回っているような?

・・・ハグするのもありかもしれない。

そんなことを思っていると私たち以外の声が聞こえた。

 

「お前達付き合っていたのか?」

「・・・え?」

「いや、違うぞ。コイツがデートがどんなものか試してみたいって言い出しただけだからな。な、めぐみん?」

 

カズマも焦っている。

前に人に知られるのは恥ずかしいと言っていたのは、嘘じゃなかったらしい。

クリスが良くてダクネスがダメという基準はあまり理解出来ていないけど。

 

「・・・カズマが言った通りですけど、どうしてダクネスがここに?」

「そうか。私はここを通りかかっただけだ。この書類を運んでいたら、カズマにめぐみんが飛びつく所を」

「あああああ、もう言わないでください!アクアには絶対言わないでくださいね!」

 

最初から全部見られていたとは・・・

慣れないことはすべきじゃない。

そう思う私だった。

 

「わかった。このことは誰にも言わないでおこう。しかし、こういう事は隣町のような知り合いに見つからない場所の方がいいと思うぞ。こうして見つかると誤解を受けることになるし」

「・・・はい」

「カズマには後で話がある」

「えっ?俺?何かしたか?」

 

カズマが確認するのもご最も。

カズマは何もしていない。

私の方から一方的に仕掛けたのだから。

 

「この件についてな」

「夕飯の後でいいか?今日はこの前食べられなかっためぐみんの肉じゃが食べる予定だからさ」

「うむ。終わり次第ギルドに来てくれ」

 

言い終えるとダクネスは去っていった。

ダクネスはカズマと何を話すつもりなのだろう?

 

「はぁ、絶対これ説教される奴だよな・・・」

「どうしてですか?」

「めぐみんが知的探究心でデート始めたのなら、俺が止めるべき立場だからかな」

 

確かに私はまだ未成年だからあまりよろしくないと言うのは分かる。

でももう少しで成人なのだからそこまで気にされることじゃないと主張したい。

それと同時にこの状況を作り出したのは誰でもないカズマだった。

 

「・・・そういう設定にしたカズマの自業自得では?」

「誰のせいでこんな嘘の説明することになったと思ってんだ?」

「・・・すみません」

 

私の不注意でダクネスに見られたの忘れていた……

というか仲間に見られたと思うと急激に恥ずかしさが増してきた。

どうしよう。

これからカズマといる時にダクネスと会ったらどんな顔をしていればいいのだろう。

少なくともカズマに抱き着いた時の私の表情筋は緩んでいたと思う。

ダクネスの位置からして、それは見られている。

それにダクネス以前に、今カズマと会話出来そうにないし、顔を見られない。

 

「いや、まあ、めぐみんの方から来てくれたのは嬉しかったけどさ。その、周りを見てからにしよう」

「・・・はい」

 

 

 

 

 

さっきのハグで恥ずかしくなったのか夕飯が終わってもめぐみんはずっと黙ったままだった。

俺が美味しかったと言っても、コクリと頷いてそのまま食器を片付けて、沈黙を続けていた。

ダクネスとの約束もあるから俺は帰ることにした。

それをめぐみんに伝えると玄関まで着いてきて、手を振って送ってくれたけど、やはり声は出ていなかった。

・・・めちゃくちゃかわいい。

と見惚れているとめぐみんに扉を閉められた。

やってしまった。

はぁ、ダクネスになんて説明しようかな。

と、対策を色々と考えてる間にギルドに着いてしまった。

 

「カズマ、来たか。とりあえずここに座ってくれ」

「・・・で話って何だ?」

 

まずは何か分かってない風にいこう。

これで様子見して怒られた潔く謝ろう。

それくらいしか、事実を打ち明ける以外の方法が分からない。

 

「めぐみんのことだが、本当に分かってないのか?」

「・・・?何を?」

「・・・いや、何でもない。呼び出してすまなかった」

 

あれ?

未成年との付き合い方で叱られると思ってたのに、全然そんなことはなかった。

しかも、何故かあきれられている。

 

「ちょっと待ってくれ、何だったんだよ。気になるだろ?」

「言っても分からないと思ったから止めた」

「言ってみてからでも遅くないって」

「言ってからでは遅いと思うぞ?」

 

俺が気付いてない場合に俺に伝えると不味いことか。

なんだろう?

今回の件で思い当たることはあまりない。

思い付くことはめぐみんが俺の事好きってことくらいだろうか。

 

「もしかして、めぐみんがお試しと称して実践してるとか言いたいのか?」

「・・・分かっていたのか?」

「分かってはないけど、ダクネスがわざわざ呼び出してきた理由とか考えるとそれしか無かった」

 

抱き着いて来たのはめぐみんの意思だったとは言え、実際は俺がデートに誘ったからめぐみんもちょっとそういうことしてみようと思っただけだろうし、八百屋のおばちゃんに何か吹き込まれた感じだったからな。

多分、俺としてはプラスな背中を押してくれたパターンなんだろうけども。

 

「そうか。カズマはめぐみんをどう思っているのだ?」

「妹みたいに思ってるかな。ここ最近は良好な関係築けてるし、悪くは無いと思う」

「妹か。この前めぐみんが、カズマのことを聞いていたのは、自分の中でカズマの見え方が変わったからじゃないかと今日目撃してから私は考えていたのだが、どうだろう?」

 

今日、と言うことはあの時は単純にからかっていただけなのか?

となると、めぐみんが俺の事聞き回ってたことについてフォロー入れておくか。

口裏合わせのためにこの話、めぐみんに伝えないとだけど。

 

「いや、アレは俺が色々と馬鹿なことしたからだ。その馬鹿なことは聞かないでくれると助かる」

「そうか。では私の考えは間違っているかもしれないな」

「それはめぐみんにしか分からないからな」

 

現状めぐみんが俺の事を好きとかと言う話はないと思う。

好きだとしたらそれは仲間としてだろう。

はぁ、最初にめぐみんルートまっしぐらしてやるとか思わなければこんなことにならなかったのにな。

 

「もし、めぐみんが好意を寄せていたらどうするつもりなのだ?」

「受け入れるつもりだけども。俺なんかのこと好きになってくれたんだから応えたい」

「ふむ。ならば問題はないのかもしれないな」

「と言うと?」

「私もめぐみんがカズマをどう思っているかはあまり分からないが、もしもの時に仲間として続けられなくなると困るからな」

 

ダクネスの懸念事項は俺とめぐみんの関係がギスギスしてしまうことだったか。

確かに仲間内で振った振られたの関係の二人がいると困る。

話しずらいだろうし、何より気を使う。

 

「そういうことなら問題は無いはず、他になにかあるか?」

「強いて言うならめぐみんはまだ成人していないということくらいだろうか。まあ、カズマから行くことは無いと思うが」

「俺だって男の子だからな。めぐみんに夜這いでもされたら断れねえぞ。その時はちゃんと責任取るけどさ」

 

と、ここぞとばかりに自分はめぐみんのこと意識してないアピールをしておこう。

これでとりあえず俺とめぐみんの関係が疑われにくく出来ただろう。

少なくとも俺の方からはと言う意味においては。

 

「めぐみんとの関係をどうしたいのだ?」

「どうって、そりゃあ、良好な関係を築いて極力俺の指示聞いてもらえるようにはしたいよな。お前ら三人とも勝手に動くし」

「・・・」

「今の所俺からめぐみんとの今の関係を変えようとかする気はねえよ。めぐみんが小説で読んだこと追体験する協力する代わりにクエストで指示に従うって言い出したからその条件を飲んだだけだし」

 

何一つ嘘は言ってない。

もうボールはめぐみんに渡っている。

俺はもう、めぐみんがこのままお付き合いに発展するか、しないかの選択するのを待つしかないのだから。

 

「どういう経緯でそういう話になったのだ?」

「ああ、それが馬鹿なことしたに繋がるんだけども……はぁ、分かった説明する。酔っ払った勢いで、めぐみんにナンパして、壁ドンとかしてたらしい」

 

もうこの際、一部の事実を開示するしかない。

嘘には少しの真実を混ぜるのがいいと何かで聞いたことがある。

酔ってないしナンパもしてないけど、多分、これだったら怪しまれないだろう。

自分のやらかしをわざわざ言ってるのに、それが嘘だとは思わないはず。

 

「らしいと言うと、後からめぐみんに聞いたのだな?」

「そうそう。でめぐみんに何でもするから許してって言ったら、さっきの条件付けて提案してきたんだよ。何でも壁ドンを初めて受けた時に小説のワンシーンを思い出してうんたらかんたらだって言ってた」

「最初に聞かないでくれと言った意味がよくわかった。カズマ、酒の飲みすぎには気をつけるんだぞ?」

 

俺が叱られて話が終わるならめぐみんに負担かけることもないだろう。

俺はあまり慌てることなく返答できるけど、多分、今のめぐみんがダクネスに、俺の事どう思ってるかとか聞かれたら確実にテンパるだろう。

そうなるとダクネスに疑われる所かほぼ確定的になっちまうよな。

ダクネスの心象としては。

 

「皆に迷惑かけないように気を付ける」

「私の勘違いだったようだったな。すまない。わざわざ時間を取らせてしまって」

「いや、俺も話せてよかった。めぐみんにはこの話しないでやってくれ、ダクネスに見られた後、何も喋らなくなってたし、多分、相当こたえてると思うから。」

「分かった。また何かあったら私にだけでも話しておいて欲しい。カズマについて、確認に来ていためぐみんのことを心配していたのだからな?」

 

アクアはめぐみんがまた変なことしてるくらいにしか思ってなかったから、あまり気にしてなかったけど、そりゃそうか。

特に普段と変わらない仲間のことで、変な所がないかと聞きに来るもう一人の仲間がいると心配するのも頷ける。

 

「それは、すまん。出来れば話したくなかったから」

「酔った勢いで仲間にナンパして迫るというのはいただけないな」

「本当に、面目ない」

「しかし、酔った勢いでめぐみんにナンパしたということは、めぐみんがタイプの女性なのか?」

「そうかもしれないな」

 

よく耐えた俺。

一瞬動揺して、言葉に詰まりそうになったけど、何とか冷静に返せた。

 

「・・・否定しないのだな」

「しょうがねえだろ?酔った時のことなんだから記憶もないしさ」

「それもそうか」

「俺のタイプは、美人で髪の長い巨乳なお姉さんだったハズなんだけどな・・・」

 

あれは酒の席でのことってことにして話を流そう。

あまりここを深堀されるとボロが出てしまいそうだ。

めぐみん語り始めてしまったら終わりだからな。

 

「・・・美人を除いて、何一つ合ってないな」

「めぐみんに聞かれたら事だぞ?」

 

巨乳の所だけとは言え、めぐみんにはクリティカルヒットだ。

俺はもう、巨乳とかどうかよりもめぐみんのかどうかって所がデカい。

・・・ダクネスのワガママボディ相手だと、視線がふと向いてしまう時があるのは、不可抗力だから許して欲しい。

 

「・・・コホン。ではまたな」

「おう、また明日」

 

とりあえずダクネスからの疑いは晴れたようだ。

どちらかと言うと明日めぐみんがどんな感じになってるのかの方が気になる。

明日、めぐみんが引きこもる可能性は十分にある。

そうなると俺が言っても逆効果だろうから、クリスに頼んで何とかしてもらう他ない。




次回、てれみんが沢山見られることでしょう。
次の更新は●●ですが、時期は未定です。
前書きで書いてた次の更新分はこれの次話でした(おい)
今度こそはまた継続させます!


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