提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 (ものかき)
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1部 1章 輝きに手を伸ばし続ける者達 
1話 午後の昼下がり


午後の食堂

ガヤガヤと食事を楽しんでいる一角でのお話。

 

「テートク! 明後日は私の着任記念ネ!」

 

テンション高そうに向かい側に座った金剛が身を乗り出しながらそう言った。可愛いなあ....。

 

「そーだなー…。何して欲しいか決まったのか?ギリギリで決めるのははやめてほしいと、あれだけ言ったのだが」

 

この鎮守府では年1回の着任記念日を提督が祝うことになっている

大体は 何かが欲しい、アレしたいコレしてほしいと言う個人の要望を予め聞いて叶えている、、、というものである。

電のお菓子作りを一緒にしてほしいから、那珂の1日ライブに観客としてサイリウムをもって付き合う等様々である。

 

「提督、ちなみに来週の鳳翔さんは、、ショッピングと夕飯に同行してほしいそうですよ」

と、秘書艦の大淀が言い…その隣で鳳翔さんが照れっとしている。

可愛いなあもうっ!!

 

「ウーン、それもgoodですガ やっぱり特別な何かにしたいネ...!!

あっ!!!テートク!熱いバーニング・ラブを受け止めて欲しいでス私とケッコンというのは!!!!!」

 

ガタッ

周囲からの視線が集まる。おや?目からハイライト消えてない? 

エアコンの温度下げた?なんか寒くない?

 

「熱いラブコールはありがたいがそれはちょっとな、、、」

 

「むー!記念日ですヨ?!私の細やかなドリーム、叶えて欲しいネー」

 

記念日と言っても金剛の着任記念日な?もじもじしながら言うな!そしてケッコンが細やかなものか!!一生モノだぞ!

とは言いつつ嬉しいものである。

叶えられるなら全員とケッコンカッコカリをしたいものだと思っているが…何せ給料がね....うん、全員分自腹となるとなかなかね?

 

「そーだなあ、、、、ケッコンは無理だが......」

 

と思いつきの軽い気持ちで言ったこの言葉が後に波乱を呼ぶことをまだこの時の俺は知らなかった。

 

「1日ではあるが朝から次の日の朝まで夫婦として過ごすというのはどうだ…?」

 

「!?!?!!」ガタッ 

 

「!? それ!それにするネー!!!!夫婦!夫婦!!テンション上がってきたー!!!!!うひょおおお!」

 

目を輝かせて金剛が要望を紙に書いている…外人さんキャラはどこに消えた?

 

その瞬間

 

ビリィ!!!!

「!?」

 

なんと鳳翔さんが提出していた要望書を引き裂いていた。

 

「あら....,破れてしまいましたね?書き直しますね.....ウフフ」

 

「内容なら私が記憶していますよ?確かショッピ「書き直します」

 

「え」

 

「書き直します....1日夫婦です」

にこやかに訂正しているが、目が笑っていない

 

「あっ…はい」

 

鳳翔さんの有無を言わさない表情を見たであろう大淀からそれ以上の言葉が発せられることはなかった。

 

「「うふふふ」 」

金剛と鳳翔さんが黒い笑みを浮かべながらよろしくお願いしますと要望書を提出している……身の危険を感じるのはなぜか?

 

 

「まあ夫婦といっても常識の範囲内でな?出来る限りは良い夫でいるように努めるが、なんせ結婚なぞしたことないからな…上手いこと出来るかは不安だがな」

 

「いいんデース!あなたの!初めての!夫婦相手は私デース!そのまま結婚しても.....いいんデスヨ?というか1日は夫婦なんですよネ?その…キスくらいなら いいんでス?///」

 

「答弁は差し控えさせていただきます」

 

そんなやりとりをしていると…

 

ビリィ! 

ビリィ!! 

「私も....」

「僕も」

と食堂内では今まで書いていたものを破り捨てている者何かをブツブツと言う艦娘が散見された。

 

フフフ、怖いな…。

 

 

さて  

どうなることかな?

 

思い返せばこの鎮守府に着任して2年が経とうとしている。

俺が20歳の頃の話だ…確か?

 

しかしながら俺の所謂、転生とやらをしたらしい。

もともとはしがないサラリーマンで死んでこちらへと言うものだ

 

 

その時のことをふと、思い返してみる…。

 

 

 




はじめまして!初投稿となります!
不慣れなので おかしなところがあったら フフフと笑ってもらえたら幸いです(๑╹ω╹๑ )

次回は 提督の着任からのお話になります
よろしくお願いします(๑╹ω╹๑ )


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2話 提督 艦これノ世界ニ着任ス!

読んでいただいてありがとうございます(๑╹ω╹๑ )
拙いものですが頑張って更新したいとおもいます!よろしくお願いします!


私の前世はしがないサラリーマンだ

本名 神崎 救

救と書いて「マモル」と読む。あだ名はきゅうちゃんだった。

大学を卒業した後商社に勤めていたが…俗に言うブラック企業でね?

 

早朝出勤〜社内に泊まり込みなんか普通で休みもよく潰れる。

 

みんなも経験があるかもしれないが…稀にもらえる休みに街に出歩くと

涙が出てくる。

それでも頑張ろうと思っていたのは、いつも助けてくれる先輩が居たからだ。

彼女はハツラツとした性格で私の手助けを色々と省みずしてくれた。

 

 

仕事終わりにラーメンを食べたり、たまに飲みに行ったり…

付き合っているわけではないが彼女の存在に安心していた。

明日も同じような日が続くそう思っていた。

 

 

そんな先輩はある日     

 

 

 

 

 

 

 

 

先輩は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自殺した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつものように早朝に出勤した時に発見したがすでに遅し…だった。

 

心が死んでいるのか涙も出なかった 。

受け入れられなかった。

 

ただ呆然と聴取と葬式に参加していた記憶がある。

 

 

 

 

自殺は上司からのパワハラが原因だったが揉み消された。

周りは自分も被害に遭いたくないと沈黙を貫いた私は上層部に直訴した

…何ヶ月にも及んでずっと....。

 

「先輩は部長のパワハラが原因で....!」

 

「貴様は....神崎か....しつこいぞ 証拠は?ふざけるな。

こっちは逆に迷惑しているんだ!!あんな時に自殺なんてするから....全く....役員への昇格もパーになったんだぞ」

 

何言っているんだ?こいつは?何故認めない。

 

成績のことで、私生活のことで、先輩にぐちぐちとパワハラにセクハラに....しつこく言っていたことを。

私が指摘しても

「馬鹿だな、スキンシップと成績に対する指摘だ」

と流される。

 

先輩の方も

「気にするな!少年!こんなものに負けるもんか!」

と笑顔で言った........。

 

それを真に受けていた私が馬鹿だった。

 

なんで目の前にいる原因がノウノウト生キテいる?

お前が…お前が!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気付いたら、部長を殴り抜いていた。

周りから悲鳴が聞こえる。貴様ッと部長が言う。周りが私を羽交い締めにして止める。知るか!知るか!!!

「貴様が何で生きてるんだよォ!!何であの人が死ななきゃいけねえんだ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのあとはトントンとクビになった。まあ当然のことか。

訴えられる事はなかったのは....どうでもいいことだ。

先輩の死後からずっと言い続けてたんだ、社内でも邪魔者扱いだったから放逐できて会社としてもよかったんだろう。

      

 

 

帰りの駅のホームで電車を待つ。

先輩の墓に部長を殴ってやったwと酒をもって報告に行こう。

 

 

 

なんて事を思っていたら背中に衝撃が走った。

 

誰かに後ろから突き落とされた事だけはなんとなくわかった。

 

犯人?  

知らん…。

 

 

 

 

 

もうどうだっていい…社畜人生から解放されたんだ....。

先輩に報告行けないじゃ無いか…。

 

 

 

 

電車が自分に近付くまでに 走馬灯とやらが見えた。

生まれてから今までの人生。

あぁ、先輩と艦これやったなあ会社のパソコンでログインして減給処分食らったなぁ。

 

よくラーメン食べに行ったな。クヨクヨしてる時は慰めてくれたなあ。

 

意外と冷静な自分がいた。

でももうすぐそれも終わる…静かに目を閉じる。

 

暗い中にとある日の先輩が立っていた。

そして先輩は一言呟いた。

「君に私は救われたんだ 救に救われwwたんだwww」

 

笑ってんじゃねーよwwくそっ!最後の走馬灯が飲みの席での話かよww

電車きてんだぞ? もっと他に....(ry

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もっと他にあんだろーが!!...........?ん?」

どこだここ? 

電車は? 

電車にタックルされたはずでは?

 

 

 

死んでないの?あの走馬灯は?アレ?

 

頭の中が…めちゃくちゃであるが、とりあえず状況確認だ!

 

 

 

 

 

 

 

ここは?     

海だね。

詳しくは海の上だね。

ついでに言うと私は…イカダのようなものに乗っているね。

 

 

 

 

「三途の川にしては広いなあ」

 

 

 

 

なんせ周りは 海 海! 海!! 

陸地なんてないぞー?

 

 

 

 

社畜人生から解放されたと思ったらコレ!ナンテコッタイ!

色々あり過ぎて辛い。

 

 

寝よう…。

としたけど波の揺れでヤヴァイ。

お腹ん中何もないけど出ちゃう。

 

誰か助けてと叫びたいが....無駄だろう 波風の音しか聞こえねえ。

 

 

 

……

 

何時間経ったのかわからないけど。

ただただ波に揺られていた。

 

「このまま死ぬんかな 」

死んだと思ったら生きていたけど結局死ぬ!

なんだそれはww草生えるww

 

海で草もないけどねw

 

 

 

ツンツン と誰かに突かれた気がした。

 

「なんだ?鳥か?やめとけ!私は美味しくないぞうw」

と、振り返ってみた。

 

 

 

 

そこには....何か、あの…小さい妖精がいた。

ゲームの艦これでよく見たな。

特に羅針盤の妖精には手を焼かされた。

アイツは恐らくラスボスなんだろうな、とか考えていると…

 

「アッチ」 

と言いながら指を刺す

 

????どうしろと?

 

「マモル、あっちいく!みんなまってる」

 

え?何で私の名前を知ってるの?てか君は?ん?んん????

あっちに行ったらいいの? 

でもね、あっち行くってもね?オールもないからどうしようもないよwww今も流されてるだけwwww

なんて思っていると…

 

 

「大丈夫、私が連れて行くよ」

 

 

と誰かが言った。

 

 

 

その声は私のよく知っている先輩のような気がした

 

するとどうだ?イカダがいきなり勝手に動き始める。

「まじか!?動きはじめたぞ? まさかこれは君の力かい?」

 

そう妖精さんに聞いてみるが 当の妖精さんもびっくりしている!

 

お前の力じゃないんかいww

 

 

と言っても…俺にはどうする事も出来んし…文字通り流れに身を任せてみますか!

 

 

 

 

 

 

 

 

イカダは進んで行く。

更に何時間揺られたのか?

 

目の前に何か見えてきた。

アレは船か?にしてはでかい。

軍艦か?

 

なんて思っていると…

 

「そこの密猟者!手を上げろ!無駄な抵抗はするな!」

と銃を構えた軍人さんらしき人がいた。

 

軍艦に気を取られていたからか接近する小舟に気付かなかったようだ…。

 

というか密猟者? おいおい

こちとらイカダですよ?

なにを密猟するって? 

 

「密猟者ではないです 遭難してます」

 

 

 

 

「....確かにイカダでオールも持たずに密猟は無理か」

と憐んだ目で見てくる軍人さんらしき人…その目をやめないか!!!

 

「とりあえずこちらへ来い! 下手な真似はするなよ 」

 

 

 

 

下手な真似もw拳くらいしかありませんぞw

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして俺は今 軍艦内の牢屋の中に居る。

 

 

 

 

うーーん…どうするかな?

死ななかっただけマシと思うか…?

 

 

 



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3話 提督 海軍ニ着任ス!

閲覧ありがとうございます!
お気に入りもありがとうございます(´;ω;`)嬉しさのあまり白ごはんだけの夕飯に沢庵が追加されました 

過去編が続きます(๑╹ω╹๑ )
何番煎じやねん!と思われるかもしれませんが生暖かく見守ってください(๑╹ω╹๑ )



牢屋では特にすることがない!

 

妖精さんとお話しても「みんなまってる」としか言わない

お前は壊れかけのラジオか?

 

なんてやりとりをしていると…

「気でも狂ったか?独り言をブツブツと」と軍人さんが話しかけてきた

 

「あー 暇だったんで....」

先生!妖精さんとお話ししてました〜なんて言ったらどうなることか

想像もしたくない!

 

「まあいい、到着した。着いてこい。元帥閣下が貴様に直々に聞きたいことがあるそうだ」

 

「あっはい」

 

言われるがままに牢屋から出され、戦艦から港らしき場所降りると目の前にはでっかい建物があった…。要塞か?これ

 

「おい!早く来い!」

 

くそっ!着いていきゃあいいんだろい!

私は軍人さんの後ろを小走りに追いかけて行った。

 

 

門を潜り…更に門を潜り建物内に入ったところで

「お疲れ様でした此処からは私が引き継ぎます」

 

と女性が軍人に話しかけてきた

 

「お疲れ様です。件の男はこいつです。よろしくお願いします....おい!貴様!此処から先はこの人が案内してくれる!元帥閣下の前でもくれぐれも粗相のないよう...「大淀....?」

 

思わず声に出してしまった。

大淀…ゲーム艦隊これくしょんでの登場キャラクターだ。

ある意味思い入れのあるキャラだが…まさか目の前に本当にそっくりさんがいるなんて.... なんて考え慌てていると…

 

「なんだ大淀さん、こいつのこと知ってるんですか?」

 

「いえ.....初対面のはずですが」

 

やばい!怪しまれている.... !

「やだなあ!さっき名前をいってたじゃないですか!お疲れ様です大淀殿!って そんなことより元帥さんとやらを待たせてるんじゃないんですか?!」

社畜時代の必殺はぐらかして話題を変える!

これで数々の難局を超えてきた…数あるうちの技能である。

 

........だって上司怖いんだもん…。

 

 

「そうでしたっけ?あぁ!そうですね では行きましょう」

 

2人に不審がられているがセーーーーフ!

というより人を待たせたままなのはいただけない。

社会人として当然のことだよ!

 

 

 

 

一際厳かな扉の前に立つ。

 

「失礼します!大淀です」

 

「うむ。入りたまえ」

 

「し、失礼いたします、、、」

 

 

とある一角の部屋に通された。

映画で見たことのありそうな部屋に…60代と思しき人が真正面の大きな机にいた。

 

「君かね?イカダで海を漂っていたというモノ好きは」

ゲラゲラと笑いながら尋ねてくる

 

「はい…なかなか優雅な船旅でしたよ ?その後の牢屋は人生初体験でしたけど」

 

「ふむ…すまないね。ここら辺は色々危険なところであるからね、誰かも分からない者に関してはそうするしかなかったのだよ………して君 ここはどこかわかるかな?」

 

「 神崎 救 と言います。えぇと…見たところ軍施設かなにかでしょうか?」

 

「ふむ…正解だ。私は御蔵 源治 (みくら げんじ)と言う

海軍元帥をしておる。しがないジジイじゃよ」

 

海軍?!元帥?!めっちゃ上の人じゃん!

でも今のところ特に問題になりそうなことはないなと楽観した瞬間であった。

「........して君は一体何者なんだね?そして何をしていて、なにが目的なんだね?」

一瞬にして部屋の空気はガラリと変わった

静かに、しかし鋭い眼光が私を睨みつける。

 

なんなんだよこの感じ。

今まで仕事柄色んな人を相手にしてきた。

重役、社長、その他オエライサン それぞれ独特な威圧感やオーラを感じる人もいたが、この人はそんな生優しいもんじゃない。

たった一言で私の生死が決まるかも…。

 

とさえ思えるくらいの重圧であった。

 

「それは....」

答えられるはずがない。

だって本当に気がついたらそこに居ただけなのだから。

 

「ふむ…答えられないか?なら聞き方を変えよう周辺を監視していた者が言うには君は突然簡素なイカダと共に現れたそうじゃないか。そして時折誰かと喋っていたそうじゃないか?イカダの上だけでなく牢屋の中でも....な」

「率直に言う。君は私らの敵.... 深海棲艦の関係者ではないのかね?」

 

 

どうする俺、どう切り抜ける!

ん?深海棲艦?艦これの敵の名前じゃないか

とすると何か…俺のいる世界は艦これの世界ってやつか?

 

「深海棲艦の関係者....ですか?」

「そうじゃ…。海から突然現れる奴らじゃよ。この世界の海を地獄に変えた憎らしき奴じゃ」

 

妖精と大淀が居た時点で何となく察してはいたが、ここでようやく

現実なんだと、自分に落とし込めた気がする。

 

 

敵かもと思われているなら、取り繕って話してもしょうがない。

ええい!ままよ!後のことは…後の俺に任せた!

 

「深海棲艦ではないです 信じろと言っても無駄でしょうけど

私は別の世界からや....「君は別の世界からやって来た転生者じゃな?」

 

「....ッツ」

何故わかった? それすら発せない…。

「はい」 

やっと絞り出せた言葉がその2文字だけだった。

 

「ぷっ....ハーッハッハ 」

どうした?このジジイいきなり笑い始めたぞ

なんだこれ? どゆこと?

 

「ヒーッ アハハハハハハ あー…すまん…怖がらせたかな?

大丈夫じゃ!君が今のところ敵でないことも分かっておる」

 

「なぜ?!え?! えと、すみません 頭が追いつかなくて....」

 

「あんな危険海域でオールもないイカダに手ぶらで乗っていて、妖精とやりとりしてりゃあ、そりゃの。監視係の瑞鶴も笑っておったわ、それにお前が深海棲艦なら今頃沈められておるわ」

 

 

なんじゃそりゃぁぁぁぁぁ?!!?

 

返せー!私の緊張感! 

あんな威圧感いらねえじゃん!パワハラはんたーい!

 

「さあ、お前の話を聞かせんか」

 

元帥はいつの間にかフランクなおじいちゃんにジョブ変更してた。

 

 

 

カクカクシカジカ マルマルクマクマ

 

 

 

 

ひとまず自分の状況を包み隠さず話したつもりではある。

 

この世界に来た原因?妖精がここに連れて来てくれたこと、この世界に似たゲーム…その他を諸々話した。

 

妖精? 元帥の圧にビビって私の後ろにずーっと隠れてる!

でてこい!隠れたいのは私だ!

 

「ふむ....難儀な人生じゃったな、そしてこの世界についても知っていると来たか」

大淀と何やらゴニョゴニョと話している

 

不安なんですけど! やっぱウッソー 君深海棲艦ねー!

死刑だヨ!なんてことにならないよね?

あーー死ぬ前に…それでもステーキで肉食いたかったよー

 

そしてこの後、元帥である源治さんの言葉で私の人生は大きく変わって行く

 

 

「君、海軍にはいらない?」

 

「は?」

 

「だから海軍に、入隊しない?」

 

 

何でよww

何故そうなるww

 

 

「こちらへご署名を!」

おい大淀よ?久しぶりの台詞がそれかい?てかめっちゃ笑顔やん!!そんな顔できんの?

 

「今なら中佐ってことにしてあげるよ! ゴホン

特例で特秘任務明けの帰還した中佐という事にしよう」

 

おい!キャラぶれてんぞジジイ!ニコニコしたいのか威厳保ちたいのかどっちだ!

 

「ちなみに断った場合は?」

途端に2人の表情が曇る

 

「その場合はとあるところに逝ってもらうことになりますね」

「逝くというか還るというかのう」

 

字!字!! 

「 要は消されるってことじゃん!YES or DIE じゃないですか!」

 

「そうdeathね 」

 

 

 

 

........ええ サインしましたとも!

第二の社畜時代の始まりだぜぃ!公務員だぜ!

先輩!見てる? 

 

俺ぇ…結局社畜から抜け出せ無さそうだ!

 

「さて…救よ、晴れて君は救中佐になったわけだが」

 

「はい」

 

「早速、君に逝っ行ってほしいところがあるんだ」

 

「おいジジイ」

 

(はっ!どこへなりと!)

我ながら鍛え上げられた社畜っぷりだな!

 

「建前と本音が逆なんじゃなが…?」

 

 

 

「まぁいい。とある所で 艦娘を…助けてやってほしい。詳細は現地に行けばわかるだろう」

 

「ざっくりですね!?尽力してみます!して元帥閣下!一つ質問があります」

 

「何かな?」

 

当然の質問をする…私が何者かと聞かれたとき、このジジイは私を転生者と分かっていたからだ。

何故私が転生してきたとおわかりに?

 

 

「ふむ…それか。いや、なに…

  ワシも転生してきたからな50年前に

ニヤリとジジイは笑った。

 

 

は?どういう事ですか?と聞く前に私の意識は途絶えた。

 

「....な.....に」

薄れゆく意識の中 頼んだぞと言うジジイの言葉が聞こえたような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

「神崎 救か………奴が現れたのには何か意味があるのかもしれん もしかすると本当に艦娘を…世界を救うのかもしれんな」

クククと大淀と救に着いてきた妖精にしゃべりかける。

 

「深海から奴らがやってきてから約8年ほどか......幾多の犠牲がでた8年だったな 我々はまだ諦めなくて良いのかも知れんな  妖精よ どうか救を助けてやってくれ」

 

「わかった!マモルをみんながまっているから!今回こそは大丈夫!」

 

 

「そうか 頼んだぞ」

ゴソゴソと元帥の部下に運ばれて行く救について行きながら妖精は頷いた。

 

 

 

 

救は船で何処かへ運ばれていった。

その様子を部屋から見つめながら御蔵は言う。

 

「ちと…荒い扱いかの。すまん 許せ」

 

「いいんですか?閣下 彼の行く鎮守府は」

 

御蔵の手には書類が持たれていた 1枚は復職に関する書類

救がサインを強制されたものだ

そしてもう一枚 大淀すらその存在を知らない一枚の紙

特級秘匿事項と書かれた紙を見ながら

「奴ならきっとやってくれる」

 

そう呟いた。




誤字脱字等ありましたらすみません
文字の区切り 段落等は試行錯誤中です
見やすいようにしていきたいと思います(๑╹ω╹๑ )


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4話 提督 鎮守府ニ着任ス!

閲覧、お気に入りありがとうございます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
良かったらコメント等頂けると嬉しかったりします!


え? 投稿時間?

だって 夜勤なんです(´;ω;`)


誤字報告等ありがとうございます(๑╹ω╹๑ )
13:41分 訂正箇所を加筆


「うっ....ここは?」

 

何かとデジャブを感じる。なんて日だろうか?

 

 

確か元帥の話を聞いてる時に、後ろから恐らく誰かでは見逃してしまう手刀を喰らって気絶したらしい。

その間に着替えを済まされ…訳のわからんところまで運ばれたと........

 

納得いくかよおおおおおおおおお!てかあんのジジイも転生者かよぉ!!!てか何回後ろから闇討ちされんだよ!チクショーメー!!

 

 

 

叫んだら少しスッキリした気がする。

 

ツンツン

   ツンツン

妖精さんが呼んでいるみたいだ…。

 

「なんだい?」

とさっきの絶叫を無かったことにするスマイルで答えた。

 

「ここ!まもるのくるべきところ!」

あん?ここ?  

妖精の指差す先には…

 

   西波島鎮守府

と書かれた木の看板とぼろっちい門があった。

 

んー?この感じどこかで、、

 あぁ やっぱり…艦これか! 

俺の遊んでいたサーバーか! 

 

さいはとう鎮守府!

 

ログイン人数が少なく……最果て鎮守府と言われることの方が多かった所だ5年かけて鎮守府を大きくしたなあ。

ケッコンカッコカリも色んな艦娘としたなあ

仕事の都合でほぼ3年くらいはほとんど遊べれてなかったけどなあ。

 

 

などと感傷に浸っていると…

「まもる!!はやくいく!」

と急かされるのでとりあえず門を潜ることにした。

 

 

 

 

 

廃屋ってあんじゃん? 

第一印象はソレ。

活気もクソもない

花は枯れ草木に囲まれてボロボロの建物が目立つ。

ここでなにをしろと?と辺りを見回してみると…

 

トボトボと歩く人影が!

 

 

おっ第一艦娘発見!早速コンタクトを取ってみるよ!

「こんにちはー」

 

 

その人は怯えた様子で答えた。

「ヒッ....誰デスかー?提督の新しい部下デスかー?お願いしまス…殴るなら私だけにして欲しいデース。妹には手出しをしないで欲しいデース」

涙目になりながら訴えてくる。

彼女は…そう、金剛4姉妹の長女の金剛だ。

 

「は…?」

 

本来なら「テートクー!バーニング ラァブ!」と飛びついてくる勢いのキャラのはずなんだが…。

なんて言っている場合ではない。

 

「大丈夫だ金剛!落ち着け!私は君に暴力を振るったりしない!約束する!」

 

「そう言いながらやるんでショ?みんなそーだったヨ」

 

「そんなことはない 私も来たばかりだし…その提督とやらの部下になったわけでもない!何があったんだ?私にできることはあるか?」

 

「ホントですカ?嘘じゃない? ........うっ…ぐすっ、うわぁぁぁぁん」

なんと金剛が号泣し始めた。

 

おおおおおおちつけ!俺よ!とりあえずどうしよう!

妖精に助けを求めるために妖精の方を見るが妖精はただただ頷いてこっちを見るだけだった!ちくしょう!

 

女性と交際経験もないばかりにィィィ!!

こんな時どうすればいいのかわからないの…

 

なんて言わせない!!

 

 

動け!私の脳内スーパーコンピュータ!!

 

リサーチ! 

女の子を慰める方法!

 

リサーチ結果 : 優しく受け止める 抱きしめる等

(※イケメンに限り有効)

 

 

くっそおおおおおお!!レベル高えんだよ!イケメン限定かよおおおお!

何だよ抱きしめるって?

 

こちとら…まともなやりとりしたのは、社会人の先輩だけなんだぞおおお! 

 

 

「すみまセーン....すぐに泣き止みますカラ....まともな人に会ったのが久しぶり…すぎて」

無理に笑顔を作り言う金剛。

 

 

 

 

 

馬鹿か私…いや、俺は。

 

 

 

 

 

 

目の前にいるのは金剛…あの金剛なのだ。

 

俺が一番最初に建造し出会った艦娘で、初期艦の吹雪と共に我が第一艦隊の旗艦を務めたんだ。

ケッコンカッコカリも申し込んだ。

その金剛が目の前で赤子のように顔を腫らしながら泣いている。

 

ゲームの中とはいえケッコンした相手が…だ。

 

女性経験がない?イケメンに限る?だから何だそんなのクソくらえ!

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

覚悟を決めた俺は震えながらも…そっと金剛を抱きしめて頭を撫でてみる。

「あっ....軍人さん服が汚れてしまいマス!ダメデス」

 

「そんなこと!どうでもいい!何があったんだ?話してみてくれないか?君の力になりたいんだ」

 

「実は....」

 

 

 

 

金剛から聞かされた内容はゲームの中では考えられない内容だった。

 

提督、部下の日常的な暴力。

艦娘同士を貶める嘘の流布。

補給、入渠をさせない、食事を与えない。

大破進軍なんか当たり前。

駆逐艦は弾除け。

夜戦では空母が弾除け。

逃げることなぞ許されない…。

 

どれだけ補給が入渠が間に合ってなくても遠征任務の繰り返し。

 

命令違反者はペナルティ…それも姉妹艦や仲のいい艦娘も連帯責任で…。

最悪は解体される

 

出てくる出てくる …

 

「もう、限界デシタ 」

だからあんなに虚無の表情で空を眺めていたのか。

はらはらとなく金剛。

 

「なんて奴」

と言いかけたその時…

 

「誰ですか?!金剛を虐めるのは!やめてください!」 

 

ドン!!!!

 

と、金剛を抱きしめていた俺は、飛び出してきた艦娘に突き飛ばされた。

 

考えてもみてください!

相手は艦娘ですよ?力の差は歴然ですよ?

そんな相手が金剛を守るためとはいえマジで突き飛ばしてくるんですよ?

 

そりやあ…

 

吹っ飛びますよね?

 

ズシャァァァァア!!!!

 

 

おろされる大根の気持ちを味わうように地面に擦られながら4mほど進んだところで停止。

摩擦で体が痛えよ…

なんなんだよう…泣きそうだよお…やっぱりイケメンに限るのかよお…。

 

 

「鳳翔サン?!」

 

「大丈夫でしたか?金剛!あとは私に任せてください!」

 

「アノ…その人は…違うんデス....って聞いてないデスネ」

 

 

その人はこちらは近づいてきて…

むくりと起き上がる私の前で…

 

 

 

 

土下座をしてきた。

 

「お怪我をさせて本当に申し訳ありませんでした。全ての罰は私が受けます 解体でも慰みものにでもお好きなようにしてください…。ですから皆さんには…皆さんには....」

 

彼女は自分が悪役になることで全てを背負い込もうと考えたようだ。

美しい仲間思いと考えればそうであるが…連帯責任を申しつけられたらどう答えるつもりなのか。

 

ガタガタと震えながら地面に額を擦りつけ土下座を続ける鳳翔さん。

 

彼女もまた俺の初めての空母だった。

彼女にもケッコンを申し込んでいた。

彼女の朗らかな感じが好きだった。一緒にお店をなんて言われた日にはホントにそこまで想像したものだ。

小さく震える彼女を見るのは辛い。

 

「鳳翔さん…顔をあげてください。大丈夫です。そんなことしませんから」

 

「え?でも私は」

 

「大丈夫です、あと誤解を解いておくと…金剛をいじめていたわけではありませんよ。泣く彼女から話を聞いていたんです。すみません。

抱きしめていたから誤解をさせてしまって…あなたに土下座までさせてしまってこちらこそすみません」

そう言いながら彼女を起こし砂を払ってゆく。

 

「鳳翔サン!その人の言うことは本当デース!」

 

それでも半信半疑の鳳翔さんを2人で囲い説明する俺達。

 

 

「……すみません....でした」

 

いいんですよ…これくらいあなた方の受けたキズに比べたら。

 

 

 

しかし何だ?知れば知るほど腹が立ってくる。

あの部長(クソ野郎)を見ているかのようだ。

どんどんとドス黒い何かが内側から溢れてくる。

 

 

 

 

その時だった…。

 

 

俺は見てしまった…。

 

 

 

「ごめんなさい!次は上手くやるから…許してください!もう痛いのは嫌だよ」

 

「ごめんなさいっぽい!許してくださいっぽい!」

 

「煩いぞクズめが 出来ない貴様が悪いんだろうが!痛いのが嫌だだとぉ?コレは教育だ!というか今文句を言ったな?痛いのは嫌だと…?上官に対する礼儀もしらんのか?!貴様は」

 

「ご....すみませんでした!」

 

 

「遅いな、ペナルティだ!貴様らはもう3回めのペナルティだったな

なら貴様と....仲のいい夕立と…同じ艦隊の加賀、愛宕、電も同じく解体してやる。まずは貴様からだ!来い!」

と乱暴に時雨の髪を掴みながら引きずって行く様子が見えてしまった。

 

見ている周囲の艦娘も辛そうな表情を浮かべていた。

 

「....ッ!」

そこへ行こうとする俺を2人が止める。

 

「ダメデース!今行ったら貴方も殺されマース!」

 

「そうです!優しい貴方が殺されるなんて私は耐えられません」

 

思わず2人を見てしまう。

 

 

しかし…

 

 

「痛いです。すみませんでした!許してください!せめて解体するなら僕だけにしてください!!夕立や皆は助けてください!」

 

時雨が提督に縋って…土下座して言う。

 

「すみませんなのです。解体なら私だけにしてくださいです」

電も出てきて言う。

 

「私が1人解体されますから この子たちは許してくださいお願いします」

加賀が…

 

「夕立が悪いっぽい!だから時雨を許してくださいぽい」

夕立が…

 

「お願いします!提督!私はどうなっても構いませんので どうか....」

愛宕が…

 

 

 

見ている周囲の艦娘は泣いていた…

皆泣いてた…。

 

 

 

何だこの光景は?

泣きながら引きずられ …

泣きながら許しを懇願して土下座し…

代わりに自分を解体してください、好きにしてくださいと艦娘が言う。

 

…本来守るべき相手に対して。

 

 

身を粉にして訓練し命をかけて深海棲艦と闘う彼女達があんな仕打ちを受けていいはずがない。

 

「フン!なんだ貴様らは」

と提督とやらが時雨を夕立に向かって放った。

 

 

「あうっ!」

 

「貴様らの馴れ合いはうんざりする…いいか?貴様らは兵器なんだ!兵器は黙って私の言うことを大人しく聞い....」

 

 

 

 

ブチン…と、何かが自分の中で切れる音がした。

 

 

 

 

 

俺は2人を振り切ってその悪の元へ走っていた…。

 

 

「あっ!ダメ!」

 

 

 

 

 

そして…

 

 

バキィ!!

と今まで聞いたことがない音が周囲に響いた。

奴を殴った時と同じだ。

人を怒りに身を任せて本気で殴るとこんな音がするのかと思った。

 

 

 

 

 

「何やってんだ貴様ぁぁぁぁあ!!!!!」

 

 

「「「「?!?!?!?!」」」

 

 

「ぐあっ!!!ななななんだきさまは!?この私が誰だ...と」

 

バキィ !

と、もう1発殴る。

 

「何あの人?!」

と艦娘が言うが誰も動けない。

救の形相に驚いて、ただ見るしか出来ないでいた。

 

 

いきなり出てきた男は叫んだ

 

「何なんだよ!!この有り様は!何故彼女達が泣いている!!土下座をして許しを乞うている!解体と命に怯えながら暮らしている!?」

 

「彼女達は深海棲艦と命を掛けて闘ってるんだぞ?!戦争を!やってんだぞ?!力ない我々に代わって!!!!それを何だ貴様はァ!無駄に大破させ轟沈させ、彼女達をなんだと思ってやがるんだッ!!!!」

 

 

「な、何なんだ貴様は?!私を誰だと思っている?!提督だぞ?少佐だぞ?私の兵器をどう扱おうと私の勝手だろう!勝つためなんだ!

厳しいくらいじゃないと…このカスどもはついてこないんだろうが!轟沈なんぞ当たり前だろ戦争なんだぞ!!」

 

 

 

戦争…だから死ぬ…そうだ

確かにそうだ…

だけどな…

 

 

 

 

「ふざけんな!!何が兵器か!兵器が…泣いて…許しを乞うて!仲間の為に自分を犠牲に!土下座をすんのかぁぁぁぁあ!!!!!」

 

 

「彼女達はな…本当は守られるべき立場だろうが!!守る立場なのは俺らだろうが!無力な俺らに代わって戦ってくれてんだろうが!」

 

 

「煩いぞクソガキ!私は提督なんだ!この鎮守府のボスなんだよ!

何度も殴りやがって ぶっ殺してやる........おい時雨!コイツを殺せ!そうすれば全て許してやろう!」

 

 

「え....」

時雨がちらりとこちらを見る。

 

しかし、俺はそんなこと知らない。目の前のコイツを何とかするそれだけを頭に俺はクソ野郎の元へ歩みを進める。

「このゲス野郎が....」

 

 

「何とでも言え!私がルールなんだ!私が提督である以上!コレは揺るがん!!さあ時雨!皆の命の為に…コイツを殺せえええ!」

 

「嫌です..もう痛いのも誰かを見送るのも嫌なんです....うわぁぁん..」

 

「このクズがぁ!くそっ!誰かコイツを....」

 

 

俺は基本ビビリプレイだったからね。

体力が1減っても即入渠!

大破進軍なんか絶対にさせない!

 

それが俺のプレイスタイルだった。

おかげで誰1人なく轟沈する事なく進んで来れた。

 

そこまでビビリプレイしろ!ってわけではないが到底…奴の考えは理解できん…。

 

涙が何故か今もとまらない…。

何でこんなに怒っているのか?俺は?

 

 

 

あぁ…先輩に重ねているのかな?もう失いたくないもんな。

そうだな…見送るのはもう嫌だもんな。

 

 

「あの人.....泣いてくれているの?私達のために」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

泣いている。

 

 

 

 

 

 

あの子達が泣いている....。

 

 

 

 

 

 

辛い時もホーム画面で、提督〜!と呼んでくれたあの子達が…

 

 

 

 

 

 

 

泣いている!!!

 

 

 

 

 

 

 

もしかしたら…助かるのか?

 

いや…無理だろう。

 

と複雑な気持ちで泣きながらこっちを見ている!!

 

 

 

 

 

 

奴を殴りに行く理由なんか…それで充分過ぎるだろう!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冷静に考えるんだ...。

 

少佐殿だったな コイツは確か

やってやるよ…精一杯俺ん中の覚悟をぶつけてやろうじゃないか。

 

御蔵のタヌキジーさんはコレをさせたかったのだろ?

 

 

 

少佐…。

 

なら俺のが上ではないか

「お前がルールってなら…お前が居なくなれば良いだけの話だろう!特任中佐の権限を持って発言させてもらうぞ!

 

食事も皆んなあったかい飯を食う!大破進軍?以ての他だ!誰も沈めてたまるか!守りたいなら強くなるなるしかないだろう!しかし誰かの犠牲の上に成り立つことなんぞ許さん!自分を殺すこともさせない!私がこの鎮守府を今から変えてやる!皆でこの海に勝利を刻みもたらすんだ!

 

 

たった今を以て私、神崎 救が提督としてこの西波島鎮守府に着任する!皆と共に命を掛けて一緒に歩んで生きて行く!!

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ....この人が私達の....」

 

 

 

   ー提督が鎮守府に着任しましたー

 

どこからともなく聞こえたその声は懐かしい声な気がした。

 

 

 

「なにぃ?!そんな勝手は私が許さ「貴様の勝手は私が許さん」

 

 

周りには死んだ目でなく…確かに意思を持った目を持った艦娘がいつのまにか新しい提督の周りに集まっていた。

 

さっきまで泣きじゃくっていた時雨もそうだ。敵を見る目で旧提督(クソ野郎)を捉えていた。

 

 

「ぐっ..くそ!こんな事して上層部が黙ってると思うのか!?!乗っ取りだ!クーデターだ!軍規違反だぞ!」

 

「安心しろ!元帥閣下の許可は得ている!貴様とその部下の方こそ身の心配でもしてろ....」

 

「ぐうう!貴様さえいなければ!せめて!せめて貴様だけは殺してやる!おおおおお!」

 

旧提督がどこから出したのかナイフを構えて走ってくる。

 

「死ねぇえええええ!!」

 

 

「時雨...!掴まれた…髪のお礼を....女の命だったんだろ?」

俺は強く新しい仲間の名前を呼んだ。

 

「わかったよ提督!」

にこやかに時雨は俺の前に立つ。

 

犠牲になる為でも盾になる為でもない。

 

 

 

提督を外敵から守る為に…だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

結果として…

 

旧提督とその部下は艦娘達に半殺しにされ連行されて行った。

 

 

 

元帥閣下が裏で手を回りていたらしくすんなりと事は進んだ。

 

あんのタヌキジジイめええ!!!

 

 

 

 

連行が済んだ後も艦娘達は…もといた広場に一糸乱れぬ整列で立っていた。

その前には少し高い台の上に救とその後ろに金剛、鳳翔、時雨が佇んでいた。

 

「テートクを信じて良かったデース!でもまだ傷が癒えてないからまた抱きしめて欲しいデース!」

 

「え?!なにそれ羨ましい!提督!僕も髪引っ張られて乱暴されて痛いし提督を暴漢から守ったんだから優しく抱きしめてほしいな?」

 

前では皆が、整列しているのに後ろではこれだよ....。というか時雨、君は守るを通り越して過剰防衛だったよね?うでが蛇のおもちゃみたいになってたよ?あの人…。

 

「ねえー!提督ー!痛いよーお願いだよー!」

 

「また後でな」

こんな時こそ!社畜時代の超絶技能!スルースキルを発動する!

そして話題転換!

 

 

「改めて、新しく提督となった…神崎 救だ! よろしく頼む!

そして!さっき言ったことは紛れもない皆との約束だ

戦果も勲章褒賞も物資獲得も敵を倒すことも…二の次三の次だ」

 

「とにかく…沈むな」

 

「それだけだ…私の事を信用出来ん奴もいるだろう。だが今からの私を見てほしい。信用足る提督になって見せる」

 

 

 

わぁぁ!と歓声がわ聞こえた。

敬礼を向ける艦娘。

泣き崩れおちる艦娘

よくわかってないであろう艦娘がいた。

 

これでいい。

 

「さて早速だが.この嫌な思い出の詰まった鎮守府を綺麗にして新しいスタートを切るぞ!...」

 

「おー!」

 

 

こうして俺の提督生活が始まったり

 

 

 

「提督ー♡ えへへー♡」

時雨の甘える姿は破壊力がやばかった

そのあと私もー!と金剛にひたすら追い回されたのは別の話。

 




さて 提督の過去編が少し終わりました
胸糞悪いシーンもありました 書きながら胸糞悪いとか思ってました

さて次回からは日常パートに戻ります(๑╹ω╹๑ )


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5話 提督 金剛ノ着任記念ヲ祝.....?

閲覧!お気に入り!しおり!誤字報告!
ありがとうございます!(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

よろしければコメント等頂けると嬉しいです!

甘酸っぱい 前夜のお話です


さて…聡明な視聴者の方はお気付きだろう。

着任記念日ってもー!アンタこの鎮守府乗っ取った時にはすでに艦娘いるじゃん?なら記念日って皆同じ日じゃね?

 

そーだよ…だから困ってんだよ。

今まではさ…何か物送ったり、外にランチや買い物とかで済んでたの。

 

なのに今年からは1日夫婦ですって〜?そんなおバカ発言をしたのは〜どこのどいつだーーい?先生怒らないから手をあげなさい?!

 

    アタイだよ!!

 

 

体がいくつあってもたんねーよ!

 

「何をさっきからブツブツと喋ってるんデス?そこは壁ネ」

 

「いや、画面の向こう側の同士諸君にね」

 

「???」

 

「昔のことを思い出していたんだ…着任した日のことをね」

 

「アレは一生わすれられまセーン!あの抱きしめられた感触は今も....えへへへ」

相変わらずキャラが飛んでますよ?金剛さん。

 

「まあ…あの後に悪しき鎮守府が気に食わない!と言って全員に砲撃させた後鎮守府の妖精と皆で鎮守府を建て直したのもいい思い出デース!」

 

そう! あの悪趣味な部屋の肖像画も銅像もシャンデリアも

艦娘が着せられていたメイド服も全て す・べ・て!

一斉掃射で吹き飛ばした後に建て直しました。

妖精さん達が一晩でやってくれました♡

「ぶらっくです!」

「おうぼうだー」

と、苦情が半端なかったけど金剛のお茶菓子で許してもらえた。

 

 

え?その日はどーしたかって?

 

全員で野宿デス!

 

 

 

というよりも金剛さん?

あなたは何で私の私室に居るのかな?夫婦は明日からじゃ?

 

「何言ってるんデスカー!?朝からここに来て、はい!今日から一日中夫婦です!よろしくお願いしますね!ってのもおかしなものデース

ちゃんと朝起きた時点でからおはようのキ、きききキス////で挨拶してから始めないといけません!もちろん!夜まででなく次の日の朝まで一緒にいます! え?なんでかって?それはもちろん夜からお別れすると寂しすぎて寝れませんから次の日の朝に行ってらっしゃいのキスをしてもらわないとやる気がでません!金剛、大丈夫じゃないです

え?やる気よりキスする事が目的じゃないか?デスカ? 

私は提ト....ダーリンに撫で撫でしてもらって抱きしめてもらえるだけでも幸せですがそれだけだと…いつもと、他の人と同じですよ?

1日とは言え夫婦なんですから、それなりに特別感がないといけません!その為には今まで以上に踏み込む必要がありますよね?

しかもそれは他の誰でもない私が一番最初なんですから!特に!特に!!ここは譲れません!!!あわよくばその先も.......そして最終的には私のバーニング ラブを受け止めて本当に結婚まで行けたら.....ダーリン?子供は何人ほしいですか?私は1人だと寂しいかな?と思うので2人は欲しいかな、なんて思ってたりします。あ!でもダーリンと2人の生活も楽しんでみたいのでしばらくは2人で暮らしたいなーなんて そんなーーーーーー」

 

「こ、、金剛さん? おーい かえってこーい 」

いかん 笑顔なのに目からハイライトが消えてるし キャラ崩れてるし

 

「〜〜そのために今の瞬間から夫婦である必要性を感じここにいます!金剛、気合入れて、いきます!」

 

 

うん、なんかよくわかんないけど断れそうにないや。

 

そして赤らめた顔をしたまま上目遣いで金剛が…

「ダーリン....不束者ですがよろしくお願いしマース」

なんて言うものだから…。 

「ぐふうっ!!!」

「ダーリン!?どうしたデース?!いきなり吐血して!?嫌デース!!死なないで下サーーーーイ!!」

 

くそっ!何で不意打ちなんだ!!可愛すぎる!これが金剛....

試合前から....燃え尽きちまいそうだよ   ガクッ

 

 

「ダーリン!? ちょっ ダーーーーリーーーーーーーン!!!」

 

提督の私室に金剛の叫びが響いた。

 

 

 

 

 

その頃私室の外では.....

 

「お、お姉さまと......何と羨ましいッッひえええぇっ!!!!」

「榛名は大丈夫じゃないです」ハイライトオフ

「ぐぎぎぎぎ 提督....僕だって僕だって....」ハイライトオフ

「来週まで待ちきれる気がしませんね」ハイライトオフ

「オリョクル行ってくるでち.....」

「この気持ち!深海棲艦を何隻沈めて落ち着かせようか」

 

 

羨ましがるもの、悶えるもの、何かをブツブツと呟くもの、修羅に入ろうとするもので地獄絵図と化していたのを2人は知らない

鎮守府強奪以来金剛をはじめとして鳳翔、時雨はオープンに提督にアプローチを掛けるようになっていた、しかし他の艦娘もこの2年と言う歳月で徐々に提督を好きになっていたのだ。

そして、今回金剛があそこまでして良いなら自分達も許されるだろう密かに考えているようだ

 

 

「何やってるデース??」

 

修羅以上の般若がそこに居た ドアの隙間から顔を覗かせドスのきいた声で言う金剛には誰もそれ以上もの言うことは出来なかった。

 

「「「「すんませんしたーーーー!!!!」」」」

 

ぞろぞろと引き上げるメンバーを見送った後…。

 

「さーてダーリン?紅茶にする?お風呂にする?それとも....ワタシにしますカ?///」

と180度違ったテンションで私に話しかけてきた 金剛、君は芸達者なんだねぇ....

「紅茶はさっきから5杯はもらったよ、風呂も終わっている、なら...」

 

「なら////?」

 

「寝るか」

 

「ひどいーー!ダーリン!ここまで期待させて、私は悲しいデース」

およよよと泣く金剛 

だってもう夜中の24:30だぜ?夜更かししてると明日に響きそうだし

 

「ならダーリン一つお願いが有りマース」

 

「ん?何だい?」

 

「この指輪を夫婦の間だけで良いデース、つけてくだサーイ」

 

と シルバーリングを渡してくる。

「まずは形からデース」

 

金剛....あんた乙女だねなどと考えながら左手の薬指に指輪を付けてみる

 

 

ぴったりなんですけど? え?指のサイズなんか教えましたか?

 

「あの、金剛さん?」

 

「はい!ぴったりでショー?ちゃんと測りまシタ!」

 

いつだよ!!怖え!凄えけど怖え 恐るべし!金剛!

 

「気になるところではあるが ほれ、着けたぞ?」

 

「えへへへ ありがとうございマース えへへへ お揃いのリング....」

 

あかんこれ 悦に入ってますわ、キマッてますわ

 

「まあいい、そろそろ寝よう金剛」.

と用意されているベッドとは別に布団を敷く準備をする

 

「金剛はいつもベッドだろ?なら今日はベッドを使ってくれ、私は床に布団を敷いてね.....」

その言葉が終わるまでに私の腕を金剛が掴む

 

「何してるデース?一緒にベッドで、寝ればいいんデス....夫婦なんですカラ」

 

「え?!」

正直そこまで想像してなかったから私はポカンとした

 

「え?ダーリンは私と一緒は嫌デス?」

 

「えっ あの いや 」

 

そうゲームの中でケッコンカッコカリしてたとして

1日夫婦をするとして それでも女性とデートすらさた事なかった私にすれば戸惑うのは当然であった

 

「一緒に寝るんでス!これだけは!譲れません!」

 

お前はどこの正規空母だ?

 

 

 

 

 

 

結局押し切られる形で 2人でベッドに入った

10月も半ばで寒くなってきたからある意味ちょうどいいのかもしれない

そも、誰かと一緒に寝るなんて小さな時以来か............

と、考えているうちに私の意識は少しずつ落ちて行った

「おやすみ、金剛....」

 

「はい!」.

 

 

 

 

 

 

 

寝ましたね?寝ましたよね? 

ツンツンとダーリンの頬を突いてみる…よし起きない。

 

まさからここまでうまくいくとは思ってはいなかった。

でも、それでもあなたと一緒にいたかったんです。

私より魅力のある艦娘はたくさん居ます。

でも、私はそれでも貴方を愛しています。

 

あの日、私は貴方に救われたんです。

 

だから、私は何があっても貴方を守ります、

でもこの時だけは誰よりも側に居させてください、甘えさせてください、特別で居させてください。

 

ちらっと、左手の薬指の、リングを見る、

今までもらったことのなかった給料をコツコツ貯めて買ったリングだ。

決して高いものではないがそれでも金剛にすれば一生懸命に選んで買ったものだ。そしてそれを提督は着けてくれている。

執務中に居眠りした提督の指からサイズを測ったのは内緒だ…。

 

「ダーリン、愛していマス....おやすみなさい」

 

金剛はそっと愛する人の頬に口付けをして目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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6話 あなたと居られるだけで  提督 金剛ト1日夫婦 ①

お気に入り50超えありがとうございます(´;ω;`)
コツコツ頑張って行きますね!

コメント、評価等お待ちしています(๑╹ω╹๑ )
このキャラを!とかありましたらぜひお願いします(๑╹ω╹๑ )


朝…今日から1日は金剛の旦那になる。

 

 

 

「ダーリン!good morning!」

目と鼻の先に金剛がニコニコとこちらを見つめていた。

 

「うおおおおおっ!?」

今年一驚いた気がする  

「お、おはよう」

 

「ダーリンの寝顔はとーってもキュートでシタ ご馳走様デース!」

「さて、ダーリン?顔を洗ってきてくだサーイ 一緒に朝ご飯を食べまショー!」

 

「ん、あぁ…わかったよ」

 

用意を済ませると机には焼きサバ、味噌汁、卵焼きが用意されていた。 私の好きな和食メニューだ。

 

「すごいな!私の好きなものばかりじゃないか.....いつの間に?」

 

「ふふん!すごいでショー!もっと褒めて下サーイ! 早めに起きて作りまシタ!そのあとにまた布団に入ってダーリンを眺めていました。寝顔がとてもcuteでしたヨ//」

 

「何かすまないな金剛」

私のためにわざわざ早起きしたと言うのか、なんか申し訳ないな…。

いつも訓練や遠征でしんどいだろうに。

 

「何言ってるデース?私が好きでやってまス!no problemネ!

それより早く食べましョーー」

と言いながらご飯をよそいでくれる。

 

いつも以上にデレデレしながら幸せそうな表情を見た気がする。

自分の左手の薬指には、金剛からもらったリングがキラリと光っている

「はい!ドーゾ ダーリ....ってどうしまシタ?私の顔に何か付いてマスか?そんなに見つめられると恥ずかしいネー!////」

 

「あ、あぁすまん!金剛が幸せそうだからついな…こういうのも悪くないなって思ってな」

 

「あう....なら私と本当に結婚してほしいデス....」

 

「ケッコンカッコカリか?」

 

「何ですか?それは?」

 

「ん?いや なんでもない 」

どういうことだ?ケッコンカッコカリは実装されていないのか?

 

「む- ダーリンが選んでくれるの楽しみに待つネ さて食べまショウ」

 

「「いただきます」」

 

 

「........美味い 完全に俺好みの味だ」

 

「えへへ 良かったデース//それにダーリンが砕けてくれましター」

 

「ん?どゆことだ?」

 

「私でなく俺になってるのネ 今くらい仕事モードはお休みヨ!」

 

「ふふっ…そういうことか。おかわりもらっていいか?」

 

「はい!どうぞ」

 

これが幸せというものなんだろう…。こっちが落ちそうだ。

 

実の所、金剛は料理がめちゃくちゃ上手い。間宮さん達料理人にも引けを取らないと言ってもお世辞じゃないくらいだ。

しかし彼女は普段あまり料理をしない。

何故なら皆に料理を振る舞ったところ、あまり馴染みのない料理だったらしくあまり食べられなかったた事がショックだったと言う....

しかしながらティータイムのスコーン、パンケーキは殆どが彼女の手作りである。

これも美味いもので時折駆逐艦にも振る舞ったり、お菓子作りを教えたりしているそうなのだ。

 

 

「ご馳走様でした」

 

「お粗末様で した 食後のteaをいれますネー」

 

「ありがとう」

 

 

 

さて…?

 

「今日はなにをする?」

 

「特にないですヨ?」

 

「え?!あれだけ楽しみにしてたんだろ? 何も無いってのは?!」

 

「2人でゆっくりできたらそれでいいデス ダーリンは毎日頑張ってマス 今日くらいは2人でのんびり過ごしませんカ?」

 

ズキリと心が痛む。

どうしてそこまで私を優先させるのか?

金剛の事だ。あそこに行って、ここに行ってと小刻みにデートの設計をしただろう?比叡から少し聞いていたから知っている。

しかしどうだ…?

そんな事は微塵も出さずにあくまで私に尽くそうとする。

泣けるくらいに一途なんだろう。

 

だがそれじゃあダメだ…

 

君の記念日なんだから。

 

 

「金剛!デートに行こう!行きたいところがあるんだ!」

 

「え?ゆっくりしないのですか?!」

 

「いいから行くぞ 」

 

「え!あの…はい!どこにでもついて行きマス!」

 

思い立ったら即行動だ!

俺は金剛の手を取り鎮守府の外へと出て行くのだった。

 

 

 

「キャーーー提督が手を繋いでるわ!」

「あれ?!指輪してない?2人とも」

「提督の私服初めて見た 売れる!! 」パシャパシャ

「ぬぁぁぁあ!提督うううう 私も連れて行ってよおおお」

 

鎮守府内は相変わらずであった…。

 

 

「行ってきます!!!」

笑顔で皆に言ってみる。

 

 

「「「「「「「行ってらっしゃい 」」」」」」

 

いってらっしゃいに混じって何か聞こえた気がしたが気にしない…

振り返ってはダメだ!

きっと修羅がいるに違いない。

 

 



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7話 あなたと居られるだけで  提督 金剛ト1日夫婦 ②

俺は今金剛と本土に渡る船の上にいる

え? 自分で行った方が早いヨーって? 

馬鹿者!この時間が愛しいんだろう?恥ずかしい…言わせるな。

 

「何か新鮮デス。でも潮風の感じ方も景色もいつもよりいいデス」

「それで どこに連れて行ってくれるんデスカー?」

 

「それはついてみてのお楽しみだ」

ぶっちゃけ少し不安であるが、まあ大丈夫だろう…。

 

「ダーリンはいじわるネー!ーーあっ、ちょっと失礼するネ 」

 

お花を摘みに行くらしい。

最近の船は花も売っているのか?ついて行こうか?と聞くと

ステイ!と一喝された…フフフ恥ずかしがり屋さんめ。

 

 

 

ポケットに手を入れてみる

ーーそこにはスマホがある。何故か執務室の机の引き出しに入っていた俺のスマホ。一応使えるには使えるが殆どのデータは消えているようだ。

ふと、艦これの画面をあけてみると…何と画面は開くらしい。

 

映し出されたのは秘書艦の居ない西波島鎮守府執務室。

「何だ....これは、どういう事なんだ」

編成画面をみても以前の私の艦隊も誰も表示されていない

 

金剛を旗艦に加賀、武蔵、時雨、天龍、でち公、の

第一艦隊 チーム 青龍 (見敵必殺

 

吹雪を旗艦に赤城、響、榛名、長門、島風、の

第二艦隊 チーム 玄武 (ボーキサイトでぶん殴る

 

大和を旗艦に龍田、瑞鶴、鳳翔、陸奥、雷

第三艦隊 チーム 朱雀 (建造に散った資材ぶん殴る

 

ぬいぬいを旗艦に川内、夕立、夕張、青葉、千代田の

第四艦隊 チーム 白虎 (水雷艦隊(すいらいかんたん)

 

当時は好きもので組んだ艦隊であったが 他にも色々とチームは組んでいた。

資材の数も上限まであるし、アイテムも装備もある。

建造等は出来ないようだが…。

 

うーーん…何か意味があるのか?

 

他は何かないかとスマホをいじってみると写真の中に数枚の写真が保存されていた。

 

 

 

走る島風、青葉を追いかける不知火と楽しそうに笑う艦娘、食堂で食事する正規空母、夜景を背中に笑う金剛、清霜と武蔵、私と金剛のツーショット、今は出番がなかなかない妖精さん、その他色々ある中で一際きになったのが鎮守府前で全員で撮ったであろう写真だった。

 

これは俺か?何故かボロボロの鎮守府前でボロボロの俺を中心にボロボロの皆が笑顔や泣き笑いで写されていた。

 

無論そんな記憶はこの2年の間にはない。

どういう事なんだ?

と思案していたその時…

ピトッと、頬にあったかい感触が!

 

「うおっ!?」

 

どうやら金剛が缶コーヒーを買ってくれていたらしい。

 

「何してるデース?」

 

「んー?何もー?」

と、スマホをポケットにいれる。

 

「もうそろそろ着くみたいデス!」

 

 

 

 

 

 

 

俺が金剛を連れてきたのは珍しいであろう山の上にある水族館だ。

振り返れば大海原が見える。

 

「OH....ビューテフォー 早く行きまショウ!ダーリン!」

金剛が腕を組んで引っ張って行く

 

「キャーーー 何でス?これは 可愛いデース」

「クリオネだね」

「コレは?」

「チンアナゴ」

「この子は??凄いデス 空気の輪っかを出してマース!」

「シロイルカだったかな 幸運のバブルリングらしいぞ」

 

「ペンギンさんの散歩デーース!よちよちと可愛いネー」

金剛がペンギンに手を伸ばすとペシっとペンギンに叩かれた。

「.....」 

落ち込むなよ金剛。

 

 

「ダーリン!お腹空きまセン?あそこのレストランに行きませんカ?」

 

「そーだな そろそろお昼にするか 混む前に行きたいしな」

 

「お昼からはイルカショーを見たいデース!」

 

 

 

水族館カレーなるものをふたりで食べた。

 

水族館でシーフドカレーってのはどうなの?

海の色に近づけるためか少し青みがかっている気がする。

味はいいんだが見た目が…ね。

 

 

「ダーリン…はい、あーーん♡」

 

恥ずかしい!!!!

「あーん」

くっそ!恥ずかしい!!

ん?一瞬青葉が見えたような気がしてが気のせいだろう?

 

「……私にはしてくれないんデスカ?」

ぷくーっと頬を膨らませら金剛。

 

「はいはい…金剛? あーん」

 

「あーーーん♡ んー!何倍も美味しいネー」

周りの目が、周りの目がぁぁ!!そしてやっぱり青葉の気配を感じる。

というか目があった!

オイ!なに親指立ててんだ!帰ったらカメラはボッシュートだぞ!と逆にブーイングで答える。ギルティ!

 

 

「「ご馳走様でした」」

 

さてイルカショーだ!!

 

俺も初めてみたが芸達者なものだ。

ジャンプしてリングを潜ったり…

え!?何なことまで出来んの?イルカって逆立ち出来んの?

 

「ダーリン!イルカって寿司握れるんですね!」

 

そうらしい。

 

そのあともイルカの合図で飼育員がリングを潜ったりと大盛況の内にショーは終了した。

 

 

そのあとは海の化石コーナー。お土産コーナーを回った。

 

「コレください」

 

「キュッキュッ(深海ダイヤの髪飾りは18000円です)」

 

「キュー(プレゼントかい? やるね兄ちゃん)」

 

「キュキュ(お釣りだ!頑張りなよ!兄ちゃん!)

 

 

 

 

 

「絶対にツッコまんぞおおおおおおお!!!!!!」

ここは何なんだ?なんでイルカが店員やってんだよ!そして一々カッケーんだよ!腹立つわ!!

 

 

 

 

 

 

外に出ると夕暮れであった…。

10月も末の方になると暗くなるのも早い。

 

「海の夕焼けが綺麗デスネ、あーー太陽がお休みしまシタ」

 

ああ…綺麗だったな…。

 

「金剛、こっちにきてくれ」

金剛を水族館の反対側に連れて行く。

 

「........oh」

 

反対側は広い街並みが 夜景と共に広がっていた

生活の証である電気が遠くに見下せ キラキラと輝いている。

 

走る車は流れ星のようにすら感じる。

 

「綺麗.....ダーリンはこれを見せにここに?」

 

「そうだ。この夜景も、綺麗な海も、水族館で生きているような海の生き物も…金剛が守っているものの一つなんだ」

 

深海棲艦という非日常。

日々訓練をして深海棲艦と戦うのは平和のためである。

ここがこうして日常を守られているのは彼女達のおかげなのである。

普段は彼女達も見ることがない景色…。

それを金剛に見せたかった。

 

「テートクも一緒に戦ってマース」

 

「俺は作戦立てて見送って待つしか出来ん 現場は君らだ」

 

 

「綺麗....ダーリン!ありがとうネー」

 

ドォン! ドォン!!轟音と共に周囲がほんの少し明るくなった

「!?襲撃!?!?」

 

違う、花火だった。

 

「ワーーオ!ダーリン!すごいデース!!」

本当に綺麗だ…。

君のその笑顔が見れて良かった。

おもむろにポケットからスマホを取り出してカメラで金剛を撮る

 

「む?写真デスカ?油断してる時はダメヨーー!//」

 

 

「金剛、これ…着任のお祝い」

 

「え?!あ、ありがとうございマース...開けるヨー?WAO 髪飾りデース ありがとうございマス。早速着けます…………似合いまスカ?」

 

「とても!凄く綺麗だよ」

 

「一生の宝物にします…えへへ…嬉しくて」

どうやら涙をこぼしているようだ。

そっと金剛を抱き寄せる。

 

「あっ…えへへ」

俺の肩に顔を寄せてくる金剛。

 

花火綺麗だな…

 

 

「キュ(写真撮りますよ兄ちゃん)」

 

「なっ!なんであんたがここに」

 

「キューキュ(野暮なこと聞くなよ)」

俺からスマホをひったくりイルカの兄貴が俺たちを撮る。

 

 

その画面をみせてもらう。

 

「わー!サンキュー! 現像しなくちゃ!デスネ」

 

?どこかで見たような写真、、のような まあいいか…。

 

 

「キュー(気をつけて帰んなよ兄ちゃん)」

 

くそっカッコ良かったと認めるしかない。

なんだあの渋い声は 伝説の傭兵とか毎回ハイジャックされるコックさんみたいな声だったぞ。

 

 

 

帰ろうか?

 

ーーはい!

 

 

 

 

帰りの船では金剛はウトウトと俺にもたれかかって寝ていた。

港についた頃には、しまったーーー!とショックを受けていた…

鎮守府についた頃にはすっかり遅い時間になっていた。

門のところにいた門番の龍田は…

「あらあら〜朝帰りじゃなかったのね〜」なんて言う。

「今度は私ともデートしてね〜」

 

やめろ!金剛!俺をジト目でみるな!

 

 

 

 

そろそろ寝る時間だ。時が経つのは早いもので…。

布団の中で向かい合いポツポツと喋る。

 

「今日は1日ありがとうございましタ!最高の1日デシタ」

 

「こちらこそだ。ありがとうな金剛」

現像した写真も渡してある。部屋に飾るらしい。

 

 

「金剛、指輪は返さないからな?ネックレスにするか、机に飾るつもりだからな」

 

 

 

「ダーリン…私はダーリンが大好きデース。ダーリンは皆大好きだぞって言いますけど…やっぱり一番になりたいデス」

 

ゲームの中なら君が最初にケッコンした相手なんだがな。

 

明日の朝には終わってしまう。

俺も少し寂しいと感じてしまう。

金剛は楽しかったのか?幸せだったか?と

 

「だからダーリン!私は絶対貴方から離れまセーン!轟沈もしないデース しても、這い上がって帰ってきまーす!…だからダーリンも私を置いて居なくならないでネー」

 

 

 

「他の艦娘とデート行ったりこーやって夫婦体験するですよネ、でもこの最初のデートだけは私のものデース!私が最初に奥サン(仮)になったらデース」

 

 

 

 

 

だから…

 

 

 

 

チュッ

 

 

「!?」

 

 

 

 

 

この最初も貰います。

私だって初めてなんですよ?

 

 

 

 

「こ!金剛!?」

 

 

「えへへ…ご馳走様です」

 

 

「お、お粗末様でした?」

 

 

 

 

「………私にはしてくれないんですカ?」

 

 

あーんの感覚じゃないんだぞ!

 

「…はいはい……初めてだったんだぞ」

 

 

「え?!ダーリンの、初め....[愛してる…金剛…チュッ]」

 

「//////\/\/>////」金剛め 悶えてやがる。

初めてが終わればなあ!なんとかなるもんなんだよおお。

 

 

「幸せデース…この世の終わりデース」

終わりかい!始まれよ!

 

 

お互いの存在と温もりを確かめ合うよう抱き合って1秒1秒を感じながら2人は眠りに落ちた。

 

 

 

 

朝 

 

 

1日夫婦も終わり

金剛は「嫌でーす!延長を所望しまーす」と泣きながら黒装束のマスク部隊に連行されていった。

多分榛名あたりだろうな…

根掘り葉掘り聞かれるんだろうな…。

 

 

さーて…

今日からも頑張りますか!

 

指輪の跡をなぞりながら呟く。

あるものに慣れてしまったからないのは少し寂しい。

 

 

救の胸元にはリングのネックレスがあり、部屋には2人の写真が朝日に光っていた。

 

 

 

 

 

 

「で?どこまで進んだんです?!どこまでなら許可されるんです?」

 

「ひ、、秘密デーース!!黙秘しまス!」

 

「ほう… ならアレを」

パチンと指を鳴らすと、比叡がとあるものを持ってきた。

 

「お姉様!朝ご飯はまだですよね?比叡が、気合い!いれて!作りました!カレーです」

 

「〜ッ!コレは条約違反ねー!」

 

「おや?愛しの妹のカレーは食べられないと?」

 

「そんな!お姉様… およよ」

 

「ぐっ… 比叡!そんなことありまセン!いただきます!」

 

パクッ…

 

 

バタッ

 

 

 

「気絶したか…ふむ、尋問は中止だ!解散!」

 

 

 

 

 

 

この日なぜか朝から金剛は大破報告が上がったそうだ。

 

あと何故かすんごいいい声のイルカが鎮守府の船着場に居座るようになったらしい…。




金剛編 完です!
いかがでしたでしょうか?

初めてだったので至らないとこも多いと思いますが

この先も楽しんで書いていこうと思います!

お気に入り、しおり 誤字訂正
評価にコメントありがとうございます(´;ω;`)
気合を入れてがんばれます!!
次回ネタ作成中なのでしばらくお待ちください

鎮守府強奪編に関してはそのうちは内容を増やして書き足そうかなとおもってたりします


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8話 西波島鎮守府 小咄編   作戦名 青葉ヲ捕獲セヨ

作戦名: 青葉捕獲命令

対象の状態は問わず 対象の持つ危険物の回収を目的とする
危険物は検閲後 処分の検討に入る 

旗艦 不知火  以下 電、時雨、響

状況により対象からの反撃が予想されるので模擬弾の使用を一部許可ふる



提督は激走した。かの青葉(パパラッチ)を成敗せねばと思ったからだ。

 

青葉も激走した。修羅を超える形相で提督が追いかけてくるからだ。

 

「待てやゴルァァァァァァア!!!」

 

「待ったら命の危険を感じますうううううう」

 

 

理由は簡単だ。

 

デートの写真に関して調べていたところ…

俺の隠し撮りの写真を取り扱ってたことが判明した。

更にはデート中のこともアレコレ流布していたようで…

 

許すまじ!青葉ぁぁぁぁあ!!!!!

 

その青葉を追いかける私の後ろを艦娘が追いかける。

 

「どーいうことだー!説明しろー!」

「青葉を逃せー!商売の弾圧に反対だー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーっ!はーーーっ!お、追い…詰め……たぞ!このパパラッチ…はーっ」

 

「な…何で…ハーッ…艦…娘…に追いつけるんですか!はーっはーっ」

 

 

舐めんなよ?こっちも鍛えてんだわ!!

さぁて…どーしてくれようか!フハハハハーーーはっ?

 

気がついたら私は宙を待っていた。

 

 

 

 

「ぬ、ぬいぬい…なんで?」

 

 

「やめてください、不知火とお呼びください!それより提督、艦娘に襲いかかるの頂けません、本日の秘書艦として…止めさせて頂きました」

 

「ありがとー!不知火!提督!あでゅーーー!」

 

 

悪が勝った瞬間であった。

「ぬいぬい…」

「不知火です」

「ぬいぬい!」

「提督っ!」

「ぬいぬいぃぃ!!!」

「なっ、何ですか!?」

 

「あのパパラッチに逃げられてしまったではないか」

 

「提督が邪な道に踏み外す前に止めたのです。私に落ち度は有りません!」

落ち度さんェ…

 

 

私は理由を説明した。なぜあのパパラッチを追いかけていたかを。

 

 

「す、すみません、これは私の落ち度ですね…。でも言ってくれない提督にも落ち度が.... 「いう前に投げられたからね」 ぐっ… すみません」

 

 

まあいい 

君には青葉の捕獲を手伝ってもらおう!

生死は問わん!

 

 

「は、はあ」

 

「どうしたのです?」

と電と響が喋りかけてきた。

 

「電、一緒に青葉を捕まえて欲しい。提督の明日を守るために」

 

「よくわかりませんが、わかりましたのです!」

「実におもしろそーだ はらしょーだ」

「僕も手伝うよ 写真は没収しないとね ジュルリ」

 

1人ダークサイドに堕ちている奴がいるがスルーだ。

 

 

「では、目標!青葉の捕獲!作戦を開始します!水雷艦たん!出陣!」

 

「噛んだのです」

「かわいいね」

「はらしょーだよー」

 

やめたげて!何事もなかったのように振る舞ってるんだから!

ああっ!、ぬいぬいの顔が!赤くなって震えているわ!

 

「提督!何ですかその目は!  皆さん!行きますよ!」

 

「私は食堂に!」

「私は寮に!」

「僕は工廠周辺にいくよ!」

「私は外回りを探すのです!」

 

さて、どうなることか…

 

 

 

 

 

 

「捕まってたまるものですか!私には報道という名の正義がまっているのです。ーーーー!?あなたは!?」

 

「………」

と、何やら密談をする青葉。

 

「なるほど いいですね その話乗りましょう」

 

にやあ....と笑う青葉。

 

 

 

 

 

 

「いないね」

「よし!次はあっちに行ってみるよ!」

と、時雨が言う。

「了解なのです!」

 

 

 

 

 

 

 

「見つからないね…僕は青葉の部屋に行ってみるよ!」

「わかったよー 気をつけて」

 

「……」

 

 

くひひ 惑なさい!私には協力者が居るんです。

4人いても捕まりませんよ! 

 

 

 

 

 

 

「居ないね」

「ちょっと休憩…」

流石に少し疲れたのか、ベンチに座り休むメンバー。

 

「しかしうまく隠れたもんだね、びっくりだよ」

 

「青葉の隠密には、はらしょーを送りたい」

 

 

「提督、もう諦めたら?コレは誰かが青葉をサポートしてるよ…じゃなかったら今頃僕達が捕まえているはずだから」

 

うーん…。

そういってもなープライバシー関しては今回はしっかりと注意する必要があるし、そもそも変な情報の流布を止めないといけないからなあ。

 

 

「ははは…でも少し疲れたよ」

 

「電も頑張るです!でも少し休みたいです」

 

「提督、あとでアイス奢ってね」

 

 

むーみんな疲労が限界か?

そりゃ何時間も鎮守府を駆け回っていたらそうなるか。

 

 

 

 

「ねえ…」

ここに来てぬいぬいが口を開く。

 

「どしたの?不知火。どこか思い当たるところあった?」

 

 

「茶番はそろそろやめにしましょう………時雨」

 

「え?」

 

「あなたでしょう?青葉の協力者は」

 

 

ぬいぬい改め不知火は静かに時雨をその言葉と共に睨みつけた。

 

 

 

 




読んでいただいてありがとうございます(๑╹ω╹๑ )
提督がメインでない以外の小咄編です

構想はあったので
リクエストにお応えして
少し不知火を登場させてみました

全てにお応えできるかはわかりませんが こーやって話を作って行けたらなと思います
多少の? キャラ崩壊等はお許しください

感想等あれば、よろしくお願いします!(๑╹ω╹๑ )


さて続きはまた次回!



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9話 西波島鎮守府 小咄編 続・青葉ヲ捕獲セヨ

何と 協力者は時雨だった?!


時雨…貴方が青葉の協力者でしょう?

 

 

「何を言っているんだい?不知火、僕はずっと青葉を探して回ってたじゃないか」

 

「貴方はきっと最初に青葉を見つけたんでしょう。そこで取引きをもちかけたんじゃない?」

 

「仮にそうだとして…僕が探した場所は後で皆もさがしたでしょ?なら隠すのは無理なはずだよ」

 

「貴方が次に行く場所に行くように伝えたのでしょう?貴方は自分が次に行く場所は誰よりも最初に決めていたはず 。そして何より提督に心酔している貴方が提督に諦めを提言するのはおかしいんです!」

 

 

「…時雨?本当なのか?」

 

「あーあ、焦りすぎちゃったかな…そうだよ?僕が協力者だよ」

 

なんで…?

 

「理由は知りませんが、まずは貴方を確保します。響!電!時雨を拘束してください」

 

 

 

 

 

しかし2人は動かない

 

「どうしたのです?!いくら仲が良いと言っても彼女は青葉の……まさか!」

 

 

「アハハハハハ!!ぬいぬい、君は勘違いをしている!ひとつ、協力は僕から持ちかけたこと。そしてふたつ、響も電も僕の仲間だってことだよ」

 

「はらしょー、はらしょー、はらしょーだよー」

「なのですーなのですー!」

 

「なっ…なんだってー?!」

まあ…なんとなくらそーじゃないかなとは思っていたけどさ…。

時雨ってこんな感じだったっけ?てか残りの2人はそれは笑い方なのか?おかしくね?

 

「まあバレたところで仕方ないけど!結局は青葉さえ捕まらなければこちらの勝ちなのさ! 悪いけど2人には眠ってもらうよ!」

ジャコンと艤装を向けてくる。 

あーー訓練用の模擬弾の使用を認めてたっけ ?

 

 

「くっ…ここまでとは… 完全に私の落ち度です 3人相手に提督を守りながらというのは…… 時雨!貴方はなんで?!」

 

「写真だよ」

 

「「は?」」 思わずぬいぬいと声がハモる

 

「上手く青葉を流せたら提督の隠し写真が貰えるんだ!そのためなら僕は何だってやれる!だってだよ?隠し撮りの写真だよ?意識していないふとしたときの写真なんかどれだけ貴重なことか!!!

もしかしたらご飯を食べるときの綻んだ表情かもしれない、ラッキースケベにニヤけてる顔かもしれない。あ、でも相手とはお話ししなくちゃね?もしかしたら提督の、その//着替えなのかもしれないし。寝顔かもしれないし。とにかく僕の知らない一面を知る機会になるかもしれないでしよ?そんな機会をみすみす逃すわけにはいかないんだ。ぬいぬいにはわからないかもしれないけど、これは僕にとって何より大切なことなんだよ。ただでさえ金剛と濃密な時間を過ごしたらしいし?羨ましいことこの上ないんだよ!それにその間1日も提督に会えなかったんだよ?それだけで僕はこんなに不安になるんだ。だから こうやっ....」

 

バン! 

「うっ」 ドサリ

 

ぬいぬいが時雨の、話を遮って時雨の額に模擬弾を撃ち込んだのだ、

ピクピクと時雨は倒れて気絶しているようだ…。

 

「なっ  うっ」

「なので  うっ」 残る2人も同じように処理するぬいぬい。

 

 

「話が長いのよ、貴方は」

 

不知火!恐ろしい子!!

 

「提督、不知火は何だか疲れましたので帰投します」

 

「!?でも、まだ青葉が…」

 

ドォン!! 

不知火はノールックで近くの茂みに模擬弾を撃ち込む。

バタリと倒れてきたのは青葉だった。

 

 

「任務完了です」

あっはい アリガトゴザイマス、

 

去ってゆくぬいぬいと、転がったまま放置された犯人たち。

 

作戦はあっけなく終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 

「ぐすっ…うええ…カメラをかえしてくださぁい」

 

しばらくは返さんぞ…。

 

「そんな殺生なあ ふえええん」

自業自得だよ青葉…。

青葉は罰としてカメラ没収の上2週間鎮守府の掃除などの雑務を命令した…泣きながらでも真面目にこなしていたけど。

 

あほか!泣きたいのはこっちだわ!

ずっと金剛との事を聞くために追いかけられてるんだ…。

執務している時間より逃げ回る方が多い気がするぞ!

 

 

 

そして響達三人は…

 

「はーい あーんして下サーイ♡」

 

比叡カレーの刑に処されていた…。

 

「んぐっ… んんんんんん」 ガクッ

 

「は、、はらしょーんぐっ!?」 ガクガク… シーン

 

「あはは…金剛?やめないかい?それは条約違反なんじゃないかい?」

 

「コレはカレーデース!熱々のおでんじゃないので条約違反にはなりマセーン!何ですか?比叡のカレーが食べられないト?」

 

 

「あはは… これは、どうしようもな…むぐっ!うっ!」 ドサッ

 

「比叡〜良かったですネー。3人は昇天しマシター!」

 

「ひえええ!比叡感激ですーー!」

 

 

青葉が真面目に雑務をする理由が分かった気がした。

 

「にしても、ぬいぬい。今回はありがとうな」

 

「だからぬいぬいはやめてくださいって… いえ、そもそも不知火の落ち度だったので挽回できたなら良かったです」

 

ちなみに罰を考えたのもぬいぬいである。

すぐさま比叡カレーが候補に出てくるあたりさすがと言うか…

あまり怒らせない方が良いのかもしれないなと感じた私であった。

 

「提督?何か失礼な事を考えていませんか?」

 

「そんなことないぞ?さ、さあ!仕事仕事!」

 

「何か納得行きませんが、まあいいです。ではこの書類からお願いします」

 

 

 

 

うわぁぁあん!かめらぁぁ!!

カレーは嫌だー!提督う!助けてよおおおお。

 

鎮守府では泣き声とうめき声がこだましている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい! 短編はこれで一区切りです

お気に入りが60人超え、、ありがとうございます(´;ω;`)
評価もありがとうございます!!
比叡カレーでも何でも食べられます!


電と響は今回はある意味被害者なので どこかで良い思いをしてもらいましょう
時雨はヤンデレ街道爆進中ですね

さてさて 今後どうなることか


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10話 西波島鎮守府 始動ス

閲覧ありがとうございます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
お気に入り70人突破 ありがとうございます(´;ω;`)こんなに嬉しいことはありません(´;ω;`)

今回は大淀目線のお話です 

コメント、要望等、お待ちしております(๑╹ω╹๑ )よろしくお願いします!


提督が新しくなってから少し後のお話。

 

「はあ…」

秘書艦代表の大淀は頭を抱えていた。

現在の鎮守府は資材も資金も雀の涙ほどしかないのである。

 

前提督が私服を肥やす為に使っていたのだ。

資材は横流し、資金は着服…故にだ。

 

 

新提督着任に伴い建て替えとなった鎮守府への充当分を差し引くとそれ程しか残らなかったのだ。

何も全部一斉掃射して壊さなくてもいいじゃないですか。

その分の補給で余計に資材の消費に拍車がかかった。……嫌な思い出の詰まる鎮守府を粉々にできたのはスッキリしましたけど…。

 

あの日は本当に野宿だった。お腹も減っていたし、なかなか寝れなかった。でも何故か嫌ではなかった。

提督はずっと起きていた 一人一人に「ごめんなあ」と声を掛けながら…魘されている娘が居ればそっと、手をとってあげていた。

 

翌朝には鎮守府の宿舎部分が完成していた。馬鹿な!と、みんなが思った。今後に増えるであろう艦娘のことも考え、結構大きな作りになっていた

最低限の家具も備え付けられていた。もう皆で冷たい床で身を寄せ合って寝なくても大丈夫なんだ…。

 

「お布団で寝れるっぽい? 嬉しいっぽいー!!」

 

「嬉しいな!龍田!ありがとよ!提督」

「ええ〜本当にそうねえ〜」

 

 

新設された入渠施設では大破の艦娘から優先して入渠させてくれたうえに、バケツも惜しげもなく使ってくれた。小破にも満たない艦娘にですら…。

「提督!もったいないです!そんな事しなくても私達は…:」

 

「構わん!一秒でも早くそんな傷は癒して欲しいんだ」

早く嫌なことは忘れよう…だとか。

 

 

艦娘の毎食のご飯代が新たに帳簿に加わった。

これに関しては素直に嬉しい。補給のみしか許されていなかったのだから…。

 

「何んだと?!まともに飯も食ったことはない?じゃあ何だコレ?」

提督は普段皆にだされるボーキサイトバーをかじった…。

「…うえええ…!!これじゃあダメだわ…間宮さんと伊良胡はいないのか?」

 

よくボーキサイトなんかかじりましたね…。

 

 

おずおずと2人が出てくる。

 

「2人には台所を任せる!新しく建設されたキッチンを確認しといてくれ。食品配送は船便になるから在庫と納期に注意してくれ。月の食費もきっちり管理して大淀に報告を!毎食以外の料理の注文への価格設定は任せる!そして人員が足りない場合は遠慮せずに言ってくれ。当番制の中に組み込むから」

 

「良いんですか?料理をつくっても」

2人は泣いていた。

当たり前の事だった。

 

今までのこの鎮守府では一切の料理を禁じられていた。

そんな暇があるなら訓練に参加しろと言うことだ。

兵器は補給で十分だと…。それでもと2人が内緒で試行錯誤をしてボーキサイトをバーに改良していたのだ。

 

「何を言う!2人の料理には人を元気にする力がある!最悪のケースに備えた訓練は必要になるかもしれないが君たちの戦場はここだ!君たちの料理がその日と明日の活力となるんだ!大変かもしれないが、期待しているぞ!みんなであったかい飯を食おう!」

 

みんなが入渠している間に提督がカレーを作ってくれていたらしい。

新設された食堂で泣きながら皆で食べた。これが手作りの温かい料理の味なんだ…。

寝ずに起きていてくれていた上にこんなことまで…。

 

「ごめんなあ…材料がそれしか残ってなかったんだ」

 

「ぐすっ… 美味しいです。塩っぱいけど美味しいです!」

 

「泣きながら食べるからですよ赤城さん… ぐすっ。…おかわりを所望します」

 

「これは…幸せですわあ…ぐすっ」

 

「……ぐすっ」

「こんな幸せを知ってしまったらテートクから離れられなくなるネー」

 

「このクソ提督…美味しいじゃない…うぅ」

「私は大人のれでぃーだから泣かないわ 」ぽろぽろ

 

「ひゃあ!べっこうあめだあ!!これでまたがんばれるー」

 

 

あの不知火や長門ですら涙を流しながら食事をしている。

私達はこの味をずっと忘れないだろう。

 

 

 

そして艦娘への給料の項目。

給料とはなにっぽい? 

え?お金って?食べれんの?

と、言う声が聞こえた時は提督は膝から崩れ落ちていた。

今は財政が厳しいのでほんの少ししか渡せないが許して欲しいと、1人ずつに渡して行った。間宮、伊良胡のとこで使って欲しい、街に出て買い物に使ってもいいと。

 

その前にお金について教育しないとね…。

 

翌日には鎮守府全体が完成をした。

工廠施設を見た妖精と明石が抱き合って喜んだいた

「提督!ありがとうございます!これで頑張れます!これでなんでも作れます!ーーーえ?ガ○ダム?なんですかそれ?」

 

 

執務室も完成した。前みたいにクマの毛皮絨毯や不気味な肖像画もない。提督がデスクに座り引き出し周りを見ている?一瞬表情が変わったような?

 

「どうかしましたか?」

 

「いや…なんでも」

 

 

 

 

それから2週間ほどたった。半数以上が鎮守府内で迷子になることが減って行った。最初は泣きながら自分の部屋を探す駆逐艦や潜水艦が絶えず、長門やら金剛達が見回っていたそうだ。

 

各部屋もそれなりに生活感が出るようになってきたらしい。

個人に必要なものを聞いて周り、リストを作り私に発注を依頼してきた。

こんな稟議書が通るはずがありません!と私は言ったが…

提督が上手く上に掛け合ってくれていたそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

そして今、私は驚きで言葉が出ない。

秘書艦の当番である天龍と提督についてきた妖精と一緒に提督の私室にまだ起きていないであろう提督を起こしにきたのだが。

 

 

うっかりドアを開けてしまったのだ…。

あまり立ち入らないでくれと言われていたのに。

 

 

 

「何だよコレは…何で」

 

「まるで物置じゃないですか…」

 

「まもる…」

 

 

 

 

 

 

何もないのだ。

 

 

 

 

そう、布団とミニ机の代わりらしき段ボールとボロいスタンドライト。

数着の服と制服とゴミ袋に隠すように入れられた簡易食糧の袋以外…何もないのだ。

 

上に掛け合って予算取りをしたなら何かしらの家具はあるはずだ。

それが何もない。

 

「何だこの紙は?」

「まさか…」

 

そこには…

 

特別赴任ニアタリ、特別給金、簡易型食糧ヲ支給スル。

 

と、元帥の名前で指令書があった。

 

「何だったんだ??」

 

結果として提督が言っていた手回しをしたとされる予算なんかははなかった。

提督は上に手回しなぞして無かったのだ。提督が支給された給金から出していたと言うことになる。

 

そうだった。カレーを食べた日も提督は見るだけで食べていなかった。

次の日からも、皆が気を遣うからと食堂には姿を現さなかった。

 

提督は1人でここで隠れるようにコソコソとこの簡易食糧を食べていたのだろうか?

 

私たちに少しでも多く食べてもらうために?

 

提督がいたら見栄を張って食べない娘がいるから?

 

 

 

 

 

「…っ!!!!クソッタレ!!」

 

2人は走り出した。

 

 

 

「天龍ちゃん〜?提督なら起きて食堂にいるわよ〜って あらぁ〜?どうしたの2人とも………走って行っちゃってーー?」

 

 

 

 

バァン!!と食堂のドアを勢いよく開ける天龍…でなく私だ。

ガヤガヤとしていた食堂内は一気にシンと静まり返った。

 

「ん?大淀と天龍か?まってくれ。献立表を貼り替えたら執務しつ…「どう言うことですか!!!!」

 

私は提督の肩を掴み大声を張り上げていた。

 

「え?!?すまん!遅刻か?!すまん!時間をよく見ていなかった」

 

 

違います!

あなたは…。

 

「なぜ言ってくれなかったのですか!資金の出所も食事のことも!!」

 

 

 

 

 

 

 

「なっ?何のことだ?!」

 

 

 

 

 

 

 

「この紙です…今までの家具等の資金は提督の私財じゃないですか!」

 

「えっ? 」

「な…に?」

 

「…うっ、お前たち、私の私室に………」

 

「どうしてなんですか!提督!答えてください!!」

 

「お、おい大淀…」

あまりの私の形相に天龍が止めてくるが私は止まらない。

私は思いの丈を提督にぶつけた。

 

「何で、そこまで私達に…出会ったばかりの私達にそこまでするの?

自分を犠牲にしてまで!寝る時間も削って食べるものも我慢して!

気丈に振る舞って…なぜ!なぜ!!なぜ頼ってくれないんですか… 」と。

 

「一緒に歩もうって言ってくれたじゃないですか!!なのに何で!そんなに私達は頼りないですか?」

 

思わず泣いてしまう。

 

 

 

彼が執務の後も私室で1人書類を眺めながら寂しく1人でご飯を食べるのを想像してしまう.から..。

 

 

 

 

「……すまん、そう言うつもりでは…ないんだが」

 

「ではなんなんです?!……見てくださいよ提督」

 

提督が周りを見渡すと申し訳なさそうにする艦娘がほとんどだった。

「提督…ごめんなさい」

「提督に我慢させてたの?」

 

「いや!そういうつもりじゃ……やめてくれ!」

 

 

 

「提督… みんな同じなんです、提督一緒に頑張ろうって言ってくれたから、財政が…物資が厳しくても頑張れるんです…だって…こんなに心が暖かい生活ができてるのだから…だから1人で抱え込まないでくださいよ…」

 

 

 

「大淀…皆… すまない」

 

……

提督はしこたま怒られた。

でも、仕方ないでしょう?

 

 

それ以来提督はちゃんと秘書艦を頼り、食堂でご飯を食べるようになった。

間宮さんにも簡易食糧の方がいいのですかー?としっかりと正座で怒られていた。間宮さん怖い。

そして何故か私も怒らせてはいけない認定をくらったのは納得がいかない。

 

 

その後、艦娘たちからコレ使ってください!といくつかの家具を無理やり押し付けられ提督の部屋が乙女チックになってしまったのは別の話…。

 

 

 

 

そして、

「資材確保のため、北東海域に遠征を行う!」

本格的に鎮守府が始動し始めた。

 




……憎い 艦娘たちが あの、クソガキが憎イ
男は1人復讐心を燃やしながら独房の中に居た…


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11話 心地良い重み  提督 鳳翔ト1日夫婦 ①

鳳翔編です
(๑╹ω╹๑ )お楽しみいただけたら幸いです!


「おはよう御座います、あなた」

 

目覚めるとベッドの横には鳳翔さんが正座をして俺の顔を覗き込んでいた。

 

「おはようございます、鳳翔さん」

 

「今日1日よろしくお願いね あ・な・た」

 

「いつからそこに?」

 

「3じか…ゴホン 3分ほど前からですよ?ふふふ」

 

夜中の3時から居たの?鍵閉め忘れたかなー?あはは…。

 

「朝ご飯、出来てますよ。用意してきてくださいね?」

 

「ありがとうございます、すぐに用意します」

 

鳳翔がムスッとしている

「あ・な・た?」

 

「はい、どうしましたか?」

 

「もう… 私達は夫婦なんですよ?言葉遣いと呼び方、堅苦しいのは嫌ですよ」

 

「あ…あぁ!そういう事か!わかったよ、ほ…鳳翔//」

なんかものすごく照れ臭い。

 

「はい!あちらでお待ちしていますね」

 

 

部屋にあるちゃぶ台に座る。

割烹着姿の鳳翔が朝食を運んでくる。

「お待たせしました」

 

鯵の塩焼きに青菜のおひたし、卵焼き、すまし汁、麦ご飯

 

これも、俺の好きなthe 和食

「いただきます」

「はい!いただきます」

 

あぁ…胃に染み渡る優しい味付けだ。薄すぎず濃すぎず。

秘書艦の時に何度か作ってくれたが、体調等に合わせて色々と考えてくれる、これに落ちない奴はいないだろう。

「やっぱり美味しいなあ …幸せだよ」

 

「そう言っていただけると嬉しいですよ」

 

「こうやって君の料理を毎日食べられる人は本当に幸せ者だろう、味付けにしても色々と考えてくれているしな… あ、おかわりいいか?」

 

「まあ 煽ても何もでませんよ?/////それにその幸せ者はあなたじゃないですか」

すごく照れているんだろうな、ご飯が赤城が食べるの?ってくらい山盛りにされている。

 

「ご馳走様でした。とっても美味しかった!」

 

「うふふ。お粗末様でした、食器を片付けてお茶をお持ちしますね?」

 

「あぁ…ありがとう、手伝うよ」

 

しかしなんだこの圧倒的な良妻感は!安心感は!!

結婚なぞよくわからんが…これは 金剛の初々しさとはまた違ったずっと連れ沿ってきていた感…。

 

「むっ あなた?今別の娘の事を考えていませんか?」

むーっと少し膨れている様子の鳳翔が手を止めてこっちを見る。

 

コイツっ…!?エスパーか!?

「んん!?いや…アレだ、長年連れ添ったような安心感がするなと思っていただけだ」

 

「そういうことにしておきますね?でも嬉しいです。あなたさえ良ければこの先もずっと私はそうしていたいですよ?」

 

「ははは…ありがとうな、そうなると嬉しいな」

 

「…本気なんですけどね、私は」 ボソリ

 

 

 

さて…

「今日は何をするんだ?」

 

「一緒に買い物に行って欲しいです。そして夕方から……その一緒にお店に立って欲しいんです」

 

お店というのは鎮守府にある居酒屋である。

カウンター数席と座敷が2つ程のこじんまりしたものだ。

食堂とは違ったお酒と料理を等を楽しめる空間を趣味でやりたいという声を聞き、やってみたらいいじゃないか!と始めたものだ。

 

 

「よし、わかった。なら早速買い物にいくか」

 

はい準備してきますねと、暫し待つことに。

 

 

 

「お待たせいたしました」

そこにはやはりいつもの同じ感じの鳳翔さんがいた。

和装は本当によく似合う。

きっとそうだろうと思い俺も長い黒の外套を羽織っている。

 

 

さて行くか、と声を掛けると鳳翔が待ってくださいと言い俺の目の前に来る、そして外套を脱がせシャツのボタンを外す。

 

「ほっほほ鳳翔!?!?」

朝から!?なんと え!?え!?とパニクっていると

 

「やっぱり… あなた?今日は私があなたの妻なんです、別の日ならいいですが今日くらいは私以外の人のものは外してください」

と金剛に貰った指輪のネックレスを外し、しまっておいてください?と渡してくる。

 

失念していた。確かにこれは失礼だった…。

「すまん、鳳翔……」

 

「いいんですよ これで許してあげます」と口づけをしてきた

 

「!?!?」

 

「うふふ」 

さあ行きましょう!と言う鳳翔にあぁと気の抜けた返事をする事しか出来なかった。

 

 

これで今日は私だけを意識してくれるかな?なんて考える。

何となく金剛さんと提督を見ているとキスくらいはしたのかな?なんて思えた。女の勘ってやつですね!

私…意外と負けず嫌いなんですよ?

初めて出会った時に怪我をさせた私を許してくださり、戦力としては弱い私に鳳翔さんには鳳翔さんしか出来ないことがある。強さだけじゃないんですと言ってくれた。

 

夜中からずっと寝顔を撫でながら見ていました

普段見せない寝顔が愛おしくてずっと…

私だってずっとあなたのことを…

 

だから今日は精一杯頑張ります!あなた♡



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12話 心地良い重み  提督 鳳翔ト1日夫婦 ②

パート2です
すみません今回は少し短めですが 続きます!
早めに続きはあげます!(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)


鎮守府玄関は騒然としていた!

今まさに出かけようとする提督と鳳翔の姿にだ

 

「くっ…何という強キャラ感…!!」

 

「あれが良妻キャラ…余裕すら感じるわ」

 

 

提督は鳳翔から指輪でなくマフラーを受け取っていた……2人用の!

それを2人で巻き鳳翔は提督に腕組みして寄り添って歩いているのだ!!!!!

 

「とっ尊すぎる…」

 

「ダメだ!あまりの純粋な刺激に!天龍と大和が息をしていない!!」

 

「バケツもってこおおおおおおい!」

 

「こっちでは夕雲が大量出血を!!!」

 

「いつものだ!放っておけ!」

 

「あんな方法があったネー…さすが鳳翔ネ」

 

 

「…毎回こうなるのか?」

ため息まじりに俺は呟いた、賑やかな鎮守府だ

 

「これくらい見せつけておかないと…さあ 行きましょう?あなた」

この鳳翔は策士なんだろうか?

 

「あ…あなたぁぁぁぁあ?! 良妻にしか許されない呼び方っ!間宮さんくらいしか出来ないと思っていたが くそおおお」

 

駆逐艦はあれが大人のレディ…と羨み

 

足柄が吐血して羽黒がおろおろしている

 

 

 

「…行ってきます!」

 

「「「「「「「「行ってらっしゃい」」」」」」」

そこは全員で言うんかい!!!!

 

鎮守府から旅立つ提督と鳳翔

 

この世から旅立ち逝ってらっしゃいしそうな数名の艦娘

 

地獄はここにあった

 

 

 

「さて、マフラーを一旦外そうか」

 

「ダメです!このままでいます!」

 

船の上でもずっとその状態だった

 

「海風は寒くない??鳳翔…」

「暖くて幸せですよ?///」 なら良かった

 

船から降り移動、もちろんバスの中でもマフラー装備!

周りの目が恥ずかしい!、、

そして所謂、百貨店に到着した

どうやらお店で使うお皿等を見たかったらしい

「あなた?どれがいいかしら」

 

「俺はセンスないからなあ…」

「違います!あなたが選んでくれるから意味があるのです」

…なら これは?と何枚かのお皿を指定する、なるべく鳳翔の店の雰囲気に合ったものを選んだつもりだ

 

「うふふ さすがです ありがとうございます」

 

 

そして店の一角で鳳翔が足を止める

  「…」 目の前には夫婦湯呑みが展示されていた

シンプルだが茶色を基調として異なる色合いのの2つの湯呑みは仲睦まじそうな湯呑みに見えた

 

「どうした?」

 

「えっ?… あっ いや 何でもありませんよ? ふふ」

 

流石の俺でも脳内スーパーコンピュータを使わずともわかる

フフフ 日々成長しているのサ!

 

「いいな」

 

「えっ?」

 

「その夫婦湯呑みいいな…」

 

「可愛いですよね!寄り添っているみたいで…」

 

「買おうか」

 

「え?…あの!いいのですか?」

 

「俺たち夫婦でしょう? なら いいと思う!鳳翔が気に入ってそうだし…私室で使おうかな いや、お店に置いてもらおうか」

 

「……はい …ありがとうございます」

思わず涙が出そうになる こんなに幸せでいいのだろうか?

ぎゅっと提督を抱きしめる腕を強くする

 

 

 

鳳翔…ご飯の時くらいはマフラー置いて座ろう?

ほら周りがクスクス笑ってるよ?

 

あ…青葉ァァ!!貴様ッ性懲りもなく!え?

今回は尊すぎて?普通に?撮影?  ならよし!

 

 

 

 

2人で帰り道をゆっくり歩く この一瞬が愛おしい

隣を見ればあの人がいる それが堪らなく愛おしいのだ…

私の持つ袋の中にはあの人が買ってくれた湯呑み

あの人の持つ袋の中にはあの人が選んでくれた食器

重いから両方持つよ?と言われたが断った

だって

このほんの少しの重みをいつまでも感じていたいから…

 

その湯呑みを出し、2人でゆっくりするところが目に浮かぶ

自然と頬が緩む

 

どうした?とあなたが聞く

何でもありませんよ 幸せなんです と答えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて…この救 料理は一人暮らしが長かったのでそれなりには出来る

が 鳳翔や間宮さん達に敵うわけ?ないだろう!!ふざけろ!

 

 

 

なのに

 

「はい 熱燗お待たせ致しました、隼鷹さん?飲み過ぎはダメですよ?」

 

「…はい、ご注文ありがとうございます     あなた!だし巻き卵1つ追加ですー」

 

 

鳳翔?

 

「なぜ俺は居酒屋 鳳翔の台所に立っているんだ?」

 



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13話 心地良い重み  提督 鳳凰ト1日夫婦 ③

…… このメニューを仕込むの?

 

「はい お願いしますね あなた♡

夢だったんです!私が接客で旦那様が台所に立って…

○○お願いします!と私が言うと あなたは少し無愛想に おう

と言うんです…そしてお客さんに、熱々だね!とか、こんな無愛想な旦那のどこがいいんだよー?奥さんー?とか言われて私が全てです!って答えるんです。あっでも提督はそんなキャラではないですね…え?落ち込んでませんよ?でも出来るなら少し味わってみたいなーって…。

で!ですね 仕事が終わった後は2人で座敷で賄いの料理を食べるんです!暖簾もしまって少し暗めの座敷で、少しの会話をしながら食べるんです!そしてお酒を少し楽しんで…その後は2人で…フフフ フフフフフフ」

 

カムバック!鳳翔!ダメだ!悦にはいってやがる。

 

 

わかったことがある、俺は女の笑顔に弱い。

その結果がこれ…

 

 

 

「あら、いらっしゃい!赤城に加賀、カウンターでいいかしら?」

 

「提督の料理が食べられると聞いて…なかなか似合ってますよ?旦那様?」

 

来やがったか!ラスボス共め!(……らっしゃい)

 

「はいどうぞ おしぼりとお茶です注文は?…はい!いつものね?」

 

「あなた!肉丼の天盛り2つ!お願いね」

 

「……おう」

いくぞ!正規空母!冷蔵庫の貯蔵は充分か?!

 

加減な表情をこちらへ向ける正規空母(舎弟達)やめろ!

 

「ねーー鳳翔ちやーーん、この無愛想な旦那のどこがいいのー?」

 

青葉ァァァァ!!!きっさま! 絶許!!!

「フフフ 全て…ですよ?可愛いところもあるんですよ?」

と チラッとこっちを見る…やりゃあいいんでしょ?

やるよ?でも舎弟が黙ってるかなー?

 

「うるさい…早くこの料理をお出ししろ…」

 

 

ガタッ!! 

ほらーなんかすごい表情だよー?舎弟その1 その2。

番長とかそんな風格を漂わせてるぞう?

 

「提督…? 鳳翔さんに何て態度を…」

「いくら夫婦と言えども…ねえ?」

ほらー威嚇モードだもんー…。

 

「こおら 」 ゴン!と2人の頭を小突く鳳翔。

小突くといっても今一瞬揺れましたよ?お店。

 

「〜ッぅーー」

「なんで?鳳翔さん…」

 

 

「そー言うキャラで行こうっていう鳳翔の注文なんだよ…」

 

「えっ…」

「あっ…(察し)」

 

はいよ!肉丼!おまち!

 

 

 

… おいしいですよ!これ! 提督って意外と料理得意なんですね?

ははは!ありがとう!

これは正直嬉しい!こんな事ないと思っていた人生だが 本当人生って何があるかわからねえな!

 

 

「来たわよ!提督!」

暁、雷、電、響が来た

 

「おー いらっしゃい 奥の座敷に行きな  ただ飲み物はソフトドリンクな」

 

「あら?私達立派なレディなのよ?」

嘘つけ!どう見ても小学生の団体だわ!

 

「この夫婦の///_オススメを4つ頂くわ!//」

 

「お子様セットね?

鳳翔…とどめ差しやがった…

 

 

 

 

 

「てーとくさん!わたしゃーはね 芋じゃないれすよ!」

吹雪さん そう言いながら飲むなら芋焼酎なのよ?

「夜戦ーーー!!!」「ーーっぽいーー!!!!」

こいつらは平常運転だわ

 

 

 

その時

ガラリと来店したのは…

間宮と伊良胡だった

 

「いらっしゃい!2人とも、カウンターでいいかしら?すぐに準備するから待ってね」

 

とサムズアップしながら帰った正規空母の席を片付けている

 

「提督の料理が食べられると聞いて…」

もはや誰だこの2人は

「「提督のオススメを…」」

「オススメは味噌汁と卵焼きセットだがそれでいいな?」

 

 

卵焼きを作る

俺は卵を溶いた後にマヨネーズと少しの鶏ガラだし醤油を加えて焼くタイプだマヨネーズは焼いた後につけて食べても行けるが

混ぜて焼くとまろやかさが増す気がする

 

「へえ…そんな焼き方があったんですね メニューにいれますね」

「鳳翔 味見してくれ あーん」

「あーん /////うふふ美味しいわ あなた」と鳳翔が抱きついてくる

 

「…ご馳走様です」.(羨ましいわぁぁぁ!!!私たちも絶対!)

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませー!」

この日は大盛況であった

 

 

 

「お疲れ様でした あなた ってまあ!本当にご飯を作ってくれてたんですね/./」 お互いお風呂に入った後での遅めの夕飯

 

「いただきます …美味しいです」

良かった このメニューは君のためだけの料理だからねと言う提督

 

嬉しいな…本当に明日なんか来なければいいのに

 

「ねえ?あなた…その最初に出会った時突き飛ばしてごめんなさい…土下座をする私を起こして砂を払ってくれて…みんなを守ってくれてありがとうございました」

 

「懐かしいな…あんなに吹き飛んだのは初めてだった…でもアレは金剛を守ろうとした君の優しさだ それに自分勝手に動いただけでなアレは」

 

それでも私は救われたんです

あぁ!本当に時間が止まればいいのに と

買ってもらった湯呑みを見る あったかいお茶も冷めるように

楽しい時間もいつか終わりが来る

でもいつまでもずっと寄り添っていたい…そう思う

あなたは沢山の艦娘から好かれるんでしょう

きっと応えていくんでしょう? きっとあなたにとって1番の娘が居るはず それは私であって欲しいけど あなたが選んでくれるなららそばに居させてくれるなら2番目それでもいいと 思う

思っていた 

でもダメだ やっぱりあなたの1番でいたい!

 

 

「あなた…愛しています…」

提督は俺も愛してると私に口づけをしてくれた …

 

「ありがとうございます…あなた…コレは2番目なんですよね?」

 

「え?」

 

「キスですよ 金剛さんともしてますよね?」

 

「え?!何で」

 

「女の勘です… よ? 」

 

「うう…あの」

 

「負けませんからね? 私…負けませんからね?j

とキスで返す 離したくない とずっと強く抱きしめる

 

「ぷはっ…えへへ そろそろ寝ましょうか あなた」

 

 

 

布団の中でもずっと抱きついていた

明日が来るのが怖いと震える私を強く抱きしめ頭を撫でてくれるあなた… それに返すように強く抱きしめ返す

あぁ…この感じが幸せなのですね

私はその幸せを噛みしめ、体に染み込ませるように眠りに落ちた

 

 

おはようございます!あなた!

昨日みたいにできないのは寂しいけど私、ほかの艦娘に負けませんからね?

今日からも不束者な私をよろしくお願いしますね

といってらっしゃいのキスをした

 

 

 

 

慣れない長距離のデート

提督はプラス料理で

そして抱き合ったまま寝ていたからか

2人は筋肉痛になったらしい

 

 

「夜明けに筋肉痛?…まさか!!!!///ひゃぁぁあ//」

それがあらぬ勘違いを生んだのは別の話

 




はい!閲覧ありがとうございます(๑╹ω╹๑ )
これにて鳳翔編は終了です
甘い話になりましたね もう少し変なキャラを出してもいいかな?たか思ってます

次回からは遠征編です
多分戦闘もあるかなと
初心者ですが頑張って書きます!

感想やコメント等お待ちしています
(๑╹ω╹๑ )よろしくお願いします!
 


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14話 西波島鎮守府 遠征ス

遠征編です(๑╹ω╹๑ )



10話の続き的な

 

「遠征を行う! 目的は①目標海域に存在する資源確保 ②鎮守府の制海権の拡大および深海棲艦の排除 ③お前達の実戦力を向上させる だ」

金剛を旗艦に加賀、武蔵、時雨、天龍、でち公、

第一艦隊 チーム 青龍

 

吹雪を旗艦に赤城、響、榛名、長門、島風、

第二艦隊 チーム 玄武 

 

大和を旗艦に龍田、瑞鶴、鳳翔、陸奥、雷

第三艦隊 チーム 朱雀 

 

ぬいぬいを旗艦に川内、夕立、夕張、青葉、千代田の

第四艦隊 チーム 白虎 

 

そして第五艦隊 加古を旗艦に電、暁、睦月、羽黒、望月を補給部隊

とする

 

なお遠征に参加しない艦娘たちは逆方向の近海にて遠征とまではいかないが演習を行ってもらう

 

敵兵力を発見次第すぐに報告をすること

止む追えず奇襲にあった場合も含めてだ、勝手な殲滅行動は避けろ

戦闘になった場合 改 状態への移行は戦況を見極め行うこと

そして…沈むな 、大破をした艦隊は他隊と合流の上旗艦判断による部隊再編成の上 護衛を付けて直ちに帰還、入渠行うように

 

作戦開始は14:00 以上!解散!

 

「「「「「「「了解!!」」」」」」

一矢乱れぬ敬礼の後 各自は準備に入った

 

 

 

 

出発し特に何の問題もなく資材の回収も行えているらしい。

女の子にドラム缶を背負わすなんて!と通信が入っていたらしいが…。

 

 

 

 

 

「妖精さんよ…これでよかったんだよな?」

 

「うん。だいじょーぶ」

お前出番少なかったもんなぁ…。

「それはいわないやくそくだよ」

 

「もうすこしさきだけどね、おおきいのがくるの…おおきいのはつよくて、こわいの、みんなきずつくの、しずんじゃうの。だからね…」

 

 

「早く思い出して帰ってきて欲しいの」

 

大きいの?皆が傷ついて沈む?

どう言うことだ?それに一瞬、妖精さんの雰囲気が変わったと思ったが、そちらを見ると…

えー?なにー?と、首を傾げていた、気のせいか?

しかし思えばこの妖精には謎な点が多い気がする…いったい何者なのか…。

「そのうちわかるよ」

 

 

 

 

「提督!通信です!第一艦隊!敵機に攻撃を受け応戦中です!」

 

「敵兵力は!?」

 

「ヲ級1体、タ級2体…ロ級6体です!増援の可能性もあります!加賀が他を牽制しながらヲ級と、金剛、武蔵でタ級と、時雨と天龍がロ級を相手取っています!58は中破状態で離脱します……っ!鬼クラスが接近中の模様!」

 

 

 

「何!?近辺の戦力にしては…大きすぎる」

まずい、このままでは日が沈む…。

 

「くっ……ここは…譲れません!」

加賀改は戦況を見極めていた。早期の決着をつけないと夜戦になれば自分は何もできない。

 

金剛と武蔵も肉薄した闘いを繰り広げている。

 

「バァァニン…ラァァヴ!!!!!」

「そこだ!!」

2人の砲撃がタ級を削る

 

 

「魚雷発射…当たれ!!」

ドォンという音と共にロ級が沈む。

 

時雨、天龍は改状態になりながら2体のロ級を沈めた。

しかし思った以上に出力が出ない気がする。

どうして?

 

「はぁ…はぁ… まずいな… 夜が来ちまう」

 

「うん、それと悪い知らせ… 敵機増援だよ!」

更に増えるロ級タ級…そして鬼級が来ていると。

 

 

僕も天龍も中破状態…。

「ハッハー!楽しくなってきたじゃねえか!俺を止めてみろぉぉ!!」

そりゃあ!とロ級を真っ二つに切り裂いた。

 

うん、この人はいつも通りだね…。

 

 

しかし、

「くらいなさい!」

ヲ級を爆撃して行く加賀。

[ヲヲヲ……!!」

 

「っ!?」

ヲ級の、死際の1発が加賀に命中していた。

 

「くうっ…っ」

 

「…何とかヲ級は倒しましたけど…私が鎧袖一触ね…情けないわ」

 

「加賀っ!?そっちにタ級が行ったぞ!」

タ級がこっちに来ている?

 

「っ!?…そんな…」

足に力が入らない。

 

「ヘイ!カガ! ムーーブ!動くデーース!」

中破の、金剛改が叫ぶ!

 

「わかっているわ!」

 

「負けてなるものか!提督と約束したのだ!誰も沈めないと!待っていろ!すぐに行く」

と、言う武蔵ですら中破状態だった。

 

私は心ではがむしゃらに動けと、自分に言いつけた早この状況から脱しないと、と…しかし頭では分かっていた…間に合わないと。

 

タ級が私の目の前に迫っている…もう無理ね…後ろには鬼級もいるもの…はあ、哀れだわ…。

 

「ごめんなさい…」

笑顔でこちらに走るスピード狂と夜戦馬鹿が見える…こんな景色が最後なのも…と…私は静かに目を閉じた…。

 

 

 

え?夜戦馬鹿?!

 

 

「ヒャッハーーーーーーー!!!どけどけどけどけー!川内様の登場の時間だよおおおおおお!!!!」

 

「川内のせいで重ーーーい!」

 

「「目標!あのタ級!!発射ーーーっ」

 

ドカカカカン!

タ級が吹き飛んだ。

 

「加賀さん!諦めるのは榛名が、許しません!」

 

何故この子たちがここに?!

 

「つかまるっぽいー」

「安全なところまで運びますね」

 

 

 

 

すこし戻って大淀と提督の会話。

 

「第一部隊!損壊状況、段階2!」

 

「くっ…近い部隊は?!」

 

「第二艦隊、第四艦隊です!といっても結構な距離が」

 

「なら直ちに合流!旗艦を榛名とし夕張、島風、川内、夕立、不知火

(改行ミス?)は直ぐに!高速で!第一艦隊の援護に回れ!!!」

 

「島風!お前は特に急ぎ迎え! かけっこは得意だろ?」

 

「舐めないでよ! 見ててよー?」

 

「川内!夜戦だぞ!!」.

 

「それは腕がなるなあ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ちに待った夜戦…さあ行くよ!!夜戦の……時間…」

 

「敵戦力、撤退して行きます…」

 

「えええええええええええええええええええ!!そんな…」

 

「なんとか…なったのね…」

 

「何でだよおおおお せっかくの夜戦の機会がぁ…」

涙目の川内

「傷に響くわ…」

 

 

 

 

 

「敵戦力、撤退した模様です 増援が間に合ったおかげでしょう!」

と大淀が言う。

 

…本当にそうか もしこれが何かの統率の下こちらの戦力の調査が目的としたら…? 

しかし今は無事だった皆の帰還を待とう…。

何だかモヤモヤが残る遠征だった。




戦闘描写はもう少し上手く書けるように頑張ります(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

第一部大詰めの話も並行してちまちま書いていますが
頑張って行きます(๑╹ω╹๑ )

投稿ペースは少し落ちますが次回から
日常パートに戻ります
この艦娘での話をみたい
こんなやり取りを見たい等ありましたらぜひ教えてください(๑╹ω╹๑ )
今回もありがとうございました!


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15話 鎮守府ノ日常 ①

ここは西波島鎮守府、別名最果て鎮守府。

ゲームでもサーバープレイ人数が著しく少なく、仕方なくここから始める人しか居ないと言われるような所だ。

 

「いい天気だなぁ…」

この男は神崎 救 この鎮守府の提督である。

この男の日常を見てみよう…。

 

 

05:00 提督私室

男の朝は早いー

ベッドから起き上がり伸びを……できない!そもそも起き上がれない!なぜなら夜な夜な忍び込んだ艦娘に抱きつかれて身動きが取れないからだッ!

 

「またお前らか… 何度言えばわかるんだ?」 ギリギリ

 

「あ"っ" 痛いよ?!アイアンクローで持ち上げないで提督!? 扉が開いてたから入っただけだよ!あだだだだだ!!僕浮いてるよ?! 」

 

「痛いデーーース!!耐久には自信ありマスが…これは…いや!これも愛情と思えば…いだだだだだだだだ!!」

 

「何…?確かに鍵は閉めたはずなんだが…」

 

ドアのない入り口 「 ハ ァイ 」

 

「開いてるどころかドアごとねえじゃあねえかぁぁぁぁ!!!!」

 

「「ぎゃぁぁあ!!あっ一周回って……」」

 

ポイっと外へ放り出す 艦娘を片手で持ち上げられるなんて人間やめてる? おいおい、冗談だろ?これくらいできないとこの先生き残れないぜ?

 

「ふう… さて…… 次はお前らかぁぁあ!」

とベッドの下!タンスの中ァ!テーブルの下もォ!屋根裏!床下!

 

お前らは忍者か!!!!

 

 

「ぎゃぁぁぁぁあ!ごめんなさいいいいいい」

と朝から叫び声が鎮守府にこだまする…。

 

 

 

 

 

06:00 食堂

 

「…間宮さん 朝からこんなに食べられないよ?」.

 

「何言っているんですか!朝ご飯は1日の力になるんですよ?赤城さん達を見てください!」

と、赤城と加賀を指差す。

 

「はい!提督!このくらい食べないとダメですよ!」

 

おいおい見間違いか?ご飯茶碗が炊飯器に見えるんだが…遠近法かな?きっとそうだ…。

 

ピリリリー

「加賀さんおかわりが炊けたようですよ」

 

「……」

 

「そんなに見て…提督も食べたいんですか?」

 

「吉○家行ってきます…」

ヒュッ!! ーーーードスッ!!

と明らかに間宮さんの方から俺の隣の壁に包丁が飛んできた。

 

「あらすみません…手が滑りまして……あはは…」

 

「おっちょこちょいだなあ…間宮さんは」と笑う

 

「あはは!すみません…次は当てます」

 

「すみませんでしたぁぁぁあ!!!」

提督の90°謝罪! リーマン時代に培われてきた角度!背筋共に完璧とも言える謝罪!

 

「提督?(料理係として伊良胡と、鳳翔さんと)私と言う者が居ながら(ご飯を外で食べるなんて)浮気ですか?私…悲しいです…ぐすっ」

 

おい!何だその言葉の間は!勘違いを生むようなコトを言うとだな…。

 

 

「フムフム…提督は浮気性…と、」

 

ほら、言わんこっちゃない!!こーなりますよ、

 

んで〜ここから…

 

「号外ーーー!提督はーーーー!!!モゴゴゴ」

「青葉ちゃぁぁん?少し黙ろうかー?」

「んーーーー?!?! んふふふふふー!(襲われるー!)」

「カメラ返さないよ?」

 

「…すみませんでした」

 

 

 

 

 

 

やっと飯が食える……。

 

 

ジーー

そんなに見られると食べれんぞ。

 

 

 

 

 

08:00 執務室

提督は基本執務室で書類仕事、作戦の立案を行う。

大淀を執務担当艦とし、その補佐を他の艦娘でローテさせる。

コミュニケーションも取れるし仕事も覚えてもらえる、一石二鳥だ。

 

今日の秘書艦は…霞か。

コイツは口が悪いんだよな…ふとした時と素直な時は可愛いのになあ。

 

「フン!何で私がこのクソ提督の仕事の手伝いなんて…」

 

「嫌なら演習か遠征を組み込むぞ?」

 

「ばっ、馬鹿じゃないの?アンタは私が居なけりゃ仕事もできないでしょうが!」

 

「大淀いるし…」

 

「あっ… ふ、ふん!2人より3人のが早く終わるでしょ?それくらい考えなさい!!」

 

可愛いなあこいつはと提督が、頭を撫でる

「はぅ…ってこのクソ提督!セクハラよ!」

 

 

「早く執務を始めませんか?」

と、むすーっとした大淀が立っていた。

 

「ちょっと!クソ提督!書類はまだなの?!」

「ああ、すまん」

 

「ちょっと!ここ間違えてるわよ! これだからクソ提督は…」

 

「あぁ…すまん」

 

「何よ 文句あんの? こっちは嫌々やってやってんのよ?」

 

「ちょっと霞さん!!!」

 

「な、何よ…」

 

「大淀、」

「しかし…!!」

 

「いいんだ… 霞」

 

「何よ」

 

「嫌なら辞めてもいいんだぞ?嫌いな奴やつと部屋で仕事、どれだけ辛いかはよく分かる… だから」

本当に気持ちはよく分かるのだ、これ以上は霞に悪い気がしての本音なのだ。本当は上手くやりたいしたまに見せる仕草はは可愛い。

でも本質的には私の事は嫌いなのだろう。

 

 

「あっ…」

霞は本当はそんなつもりじゃなかった。

照れ隠しのつもりだったのだ。本当は一緒に仕事ができて嬉しいのだが上手く表現できない…もどかしさが募り余計に言葉がキツくなる。

 

嫌いな訳無いのに… どうして私は。

 

「はん!なら丁度いいわ!私が居なくて後で泣きつかないでよね!」

 

バタン!と霞は出て行ってしまった。

 

なんで私はこんなコトを…。

 

 

ガタッ…

「大淀?!」

 

「一息入れましょう…昼食を食べてきてください」

 

 

 

 

 

 

「霞さん…」

 

「あら大淀じゃない 仕事は?あなたもクソ提督が嫌になって飛び出してきたの?」

 

「……」

 

「そーよね! だって、あいつはノロマでグズで…それで…私だってアイツなんか嫌ーーー……」

 

パァン 

と、乾いた音が響く。大淀が霞にビンタしたのだ。

 

 

「ーーーーっ!!何すんのよ!」

 

「あなたがですよ、霞さん」

 

「は?!意味分かん「そんなに自分に嘘をついて楽しいですか?」」

 

「嫌いなら近づかなければいいじゃないですか、あんなに時々にこやかに接しなくても いいじゃないですか自己嫌悪で余計に態度が悪くなるなんて子供じゃないですか!!いい加減になさい!!」

 

「それは…」

 

「いいですか?私達は艦娘です。明日も明後日も皆と会えるとは限らないんです!それが戦争なんです!」

 

「っ!!」

 

「提督はいつも皆を沈めまいと作戦立案から何まで考えています。それしかできないからと」

「その沈めたく無い中にはあなたも含まれているんですよ?霞さん」

 

「…うっ…でも私…」

 

「少しくらい素直になってください.、金剛さん達みたいにまでとはいいませんが……後悔したくないでしょう?

ぶってごめんなさい。私は仕事に戻ります…そうだ、霞さん?」

 

 

「な…なによぉう ぐすっ」

 

 

「待っていますよ、提督は怒ってなんか無いですから」

 

「うううう…うあぁ」

 

 

ひとしきり泣いた。

もう会えなくなることも想像したら余計に泣けてきた。

 

「うっ… 馬鹿なのは私の方ね…」

謝らなくちゃ…

霞は執務室へと向かった。

 

 

コンコン

 

「失礼する…します」

 

「おかえり、霞」

提督は笑顔だった

 

「っ!その さっきは、、いや 今までごめんなさい…」

 

「なんだ、そんなことか」

 

「そんなことって、、アンタね」

 

「気にしてない」

 

「えっ」

 

「ほら!早く座る!仕事はまだ残ってるんだぞ!終わったら間宮さんのところで甘味を食べるんだから!!」

 

 

呆気にとられて大淀を見る。

 

 

ふふふ、ねっ?言ったでしょう?と笑ったような気がした。

 

 

 

で間宮の甘味を食べているのだが…。

 

「提督〜♡あーんしてほしいなあ?」

 

なんだこの霞の代わりようは?大淀お前は何かをしたのか?

 

「素直になるように言っただけです。ね?霞さん」

 

「うんー!提督〜はやくーあーんしなさいよー!」

 

なんでこうなった!!!!!

 

 

 

 

 




霞がデレるようになりました

また1人 やべーやつが増えそうな予感(๑╹ω╹๑ )



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16話 鎮守府ノ日常 ②

日常の続き!(๑╹ω╹๑ )


16:00 鎮守府内

夕食まで散歩でもしようか…

「てーーとーくーーーーさーーーーん!」

夕立の ロケット 頭突き  こうかはばつぐんだ!!

 

時が見えるわ…。

 

「提督さん!夕立達と遊ぶっぽい!かくれんぼっぽい!時雨が鬼だから早く隠れるっぽい!」

 

あー…時雨は手強そうだなあ…?

 

 

よし、ここなら大丈夫だろう

執務室の収納スペースの中に隠れる。

…ガチャ

むっ?執務室に誰か来たようだな…。

 

「…〜〜」

うん?よく聞こえないな誰だろう?

 

 

「うーん!提督のいい匂いがするなあ」スンスン

 

時雨だったーー!!!何か言ってる気がするがスルーだよネ!

 

「コレは!?提督の上着…… 少しくらいなら…えへへ」

 

はい!アウトおおおおおお!!

「時雨ぇぇ!!まだ間に合う!やめ…」

 

「はい!自分から出てきてくれたね!みーーっけ!!」

と抱きついてくる。見つけるだけなのにね?抱きつく必要あるの?

「えへへ…」

 

ちなみにそのあとは私が鬼になったが。

「よし!長門みっ…」

 

「…残像だっ!!!!」

 

「不知火みっけ!!捕まえたぞ!!残像だなんて言わせない!」

 

「質量を持った残像です」

 

「ダミーバルーンなのです!」

 

「ホログラムネー」

 

 

捕まえられるかよおお!!!!

何だよ!よしんばダミーバルーンは良いとしても…残像って…残像って!!

 

「提督さんはまだまだっぽいねー」

 

「俺は万国びっくり艦娘かくれんぼ大会にでも出ているのか?」

 

 

終始走り回って、結局それを見かねた羽黒が代わってくれた。

羽黒マジ天使…本当にマジで。

 

17:30 食堂

 

今日のメニューはカルボナーラセットかオムライスセットかハンバーグセットがオススメか…。

間宮と伊良胡が奥から出てくる。

「あら提督さん♪今日のおすすめは和定食ですよ?」

 

「オムラ 「和定食」

ん?

俺の和食好きが広がってからか激推しされる和食。

ここ数週間和食以外食べてないよ?

「オム「和定食ですね?」

 

「オ「和定食はいりまーーす!!」 「はーーい!」

 

「オムライスェ…ぐすっ」

 

ちくしょおおおお!美味しんだけどオムラァァイスううう

 

「提督?内緒で一口どうぞ?」

陸奥うう!お前は天使だったのか?

「はい、あーーん♡」

 

ちがぁあう!! コイツも策士だったかっ!!!

 

 

19:00 提督用入浴施設

   検閲が入りました あまりに過激な内容のため放映出来ません

 

「お前ら!やめろおおおおお!目!目!!目がイッてる奴の目だからぁ!!!」

 

ただ一つ言えるのは 周りには数多の艦娘が入浴中の提督をガン見していたとか…

 

20:30 談話室

おっ そこで寝ているのは青葉じゃないか

…いたずらしてみようか いつもの仕返しになァ…

落書きでもしてやんよぉ〜

 

頭の中の悪魔が囁いてくる

「いつもの仕返しだゼェ? やっちまえヨォ!」

 

頭の中の天使も囁く

「やっておしまいなさい!」

ふむ!どっちも悪魔だった!!!

 

キュッ キュッ   満足

 

 

 

 

「ぶふっ キャハハハハハ あんたそれww」

「え?」

「鏡見てきなさい? ブフーーww」

「ギャハハ!何だお前ソレ」

 

 

「キャァァ 誰が一体こんなことをおおあ」

私恨まれるようなことなんて………うん、してたわ、主に報道と称して

 

思い当たる節があり過ぎて犯人がわからない!!!

 

21:00 金剛姉妹私室

「はいダーリン!おやすみ前のミルクティーネー」

 

はあ…やっと落ち着ける(?)

「にしても提督は本当に人気よね」

 

「そうか?身体がもたんぞ」

 

「でも楽しそうですよ?榛名もかくれんぼ楽しかったです」

お前はすごいよ 終始ずっと後ろに居た らしい

ピOルに会いに行く烈○王かな?

潜入任務でもやってもらおうか…本当

 

「ご馳走様!ありがとうな」

 

「あれ?もう帰るんですか? 泊まっていけば良いのに」

 

「また今度な!!」

 

「聞きましたか?霧島!」

 

「お姉様!録音できております!言質とりました!」

 

「んーー!よく出来た妹デース!」

 

比叡→榛名→霧島 と何という連携プレーだろうか

お姉様ぁ!!と抱き合う四姉妹をよそに俺は部屋から出る

 

22:00

22:05 共に鎮守府内

 

「夜戦!」

「今日はないよ…ってそんな顔するな川内…」

 

 

 

22:30 提督私室

 

コンコン   

ん?誰だ?

 

「提督ー!寝れないでしょうー?!や、せ、んしよ?」

 

バタン!とドアを閉める

 

ぶーぶーーー!と川内が言っている

 

 

 

 

そこからはノックと夜戦しよーのコールの連続だった

ホラーだよ!こんなの!

 

執務室から電話をする 神通が川内を回収にきてくれるらしい…

 

 

23:00 私室

就寝しよう……

 

タタタタっ

コンコンコン

「ちくしょう!川内だな!  おい!夜戦は…って霞?」

 

「…はい これ…その…お菓子作ったから食べて?」

そう言えば霞は遊びにも来ていなかったな…ずっとお菓子作りをしていたのか?初めて作ったのだろうそれは可愛らしいクッキーだった。

 

「ああ!ありがとう」 撫で撫で

 

「あぅ… じゃあ寝るわ!あなたも早く寝なさいね」

 

「おやすみ」

 

 

「……ふふ なかなか美味しいじゃないか」

 

さて歯を磨いて着替えて…

 

 

さて寝よう…パチンと電気を消して布団に入る…

 

 

 

 

 

「夜戦しよ?」

 

いやぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!!!!!!!!

提督が語るには下手なホラーより怖かったとか。




お気に入りが80を突破していた…
ありがとうございます(´;ω;`)ありがとうございますうううつ


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17話 消エタ指輪

指輪とプチ波乱


鳳翔との夫婦生活から2日後ー

 

これは…ついにきたか!

ケッコンカッコカリの指輪…。

黒い箱に入ったそれは大本営から届いたものだ。

なぜ指輪型なのか?なぜ名称がケッコンカッコカリなのかは謎であるが

提督との絆がなんやかんやして…

指輪の力でなんやかんやで艦娘の力が上がるとか言う代物らしい。

 

まっ、ゲームでは毎月の生活費を削りケッコンカッコカリしまくったなあ…。

 

最初は金剛、そして鳳翔、秘所艦の吹雪、加賀、時雨、榛名、…他にも居るが割愛しよう。

 

そして今、ここに画面の向こうのものでないモノホンの指輪がある。

 

 

渡す相手は決めてある。

     

 

 

 

コンコン

「失礼します…今日の執務ですが…」

 

「あっ…」

 

「…」

ニヤニヤ キラキラ

 

よりによって…パパラッチに見つかってしまったとは。

 

「それはもしや…生きる乙女の夢の夢の!指輪では?!まさか相手が!?…いや もしかしてこの私に?」

 

「違う!これは大本営からの任務で…カクカクシカジカ」

 

「つまり、渡す相手がいるわけですよね?誰ですか?」

 

うっ…それは…

 

 

「「「ちょっと待った!」」」

ドアからゾロゾロと入ってくる艦娘達。

 

この際、執務室の広さは考えないで欲しい。

 

提督の手を煩わせるまでもない!受け取りに来た!

馬鹿を言うな…私に決まっている!

違います!司令官は私にくれるんです!

ちょっと!何でしゃばってんのよ!芋!!

誰が芋だって?!

ノーノーノー!私に決まってマース!!

気合!入れて!もらいます!

榛名は貰えないと大丈夫じゃないです!

貰ってあげてもいいのよ?

貰いにきたのじゃ!

 

 

 

何故こんなに情報が早い…??

 

 

「あー…内線をオンにしてました」

 

青葉はどこまでも青葉だった。

 

 

 

 

 

おおおお落ち着いてくれ!

これはな!大本営からの通達でたまたま!たまたま!指輪の形をしている君達の強化アイテムなんだ!

今はひとつしかないが… いずれは…だな!

 

 

「指輪なんですよね?」

 

はい…。

 

「薬指ですよね?左手の…」

 

 

ええ、はい…。

 

 

「ひとつしかないんですよね?」

 

 

はい…。

 

 

 

「なら…」

 

「「「「「「「「私に!!」」」」」」」」

 

 

提督は逃げた!恐らく五輪選手も

「ハハハ!あれは無理だ勝てない!」

と褒めてくれるであろう速さで窓から飛び降り敷地内を逃げた。

 

 

「「逃すなっ」」

 

 

 

「いたぞ!! ちっ!そっちに行った!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

こ    指     けとって  い

 

 

「!?」

金剛、榛名、加賀は提督を追い詰めたときに何かが頭に流れた。

 

 

何今のは?

 

 

長門、吹雪達他の艦娘も同じように何かを感じたらしい。

 

 

 

お    と   絶対    ないから   な

 

 

 

 

わからない…

何この感じ…

何かが自分の中から消えているかのような…

 

 

 

「…何だか気分が優れない…すまないが部屋に戻る」

と何故か艦娘達は部屋に戻っていった。

 

 

 

その後皆に声をかけて回ったが普通そうだった。

ただ。何かモヤモヤすると言っていた。何だろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして夜

とある部屋の前に俺は立っている。

コンコンとノックをする。同居人は今は居ないことを確認している。

 

 

「はい」

「テートク?どうしたの ?私ならもう大丈夫ネー?」

 

 

あー…いや、違わないけど違うんだ。

 

 

「?」

 

 

これを受け取って欲しい…。

また君に渡したい…… 金剛。

 

 

「……!?!?いいんですか!?」

皆にも渡したいが最初は君にあげたい。

ずっとそばにいる事を誓う!どうか受け取って欲しい!!

 

 

「はい…よろこんデ!」泣きながら左手を出してくる。

 

 

俺も震えながら指に入れて行く。こう言う感じなのかと思いながら。

 

 

 

指輪は最後まで入ることはなかったーー。

 

 

何故なら指輪は消えてしまったからだ。

 

 

「アレ?テートク?指輪は?」

 

 

「あれ?!消えた…何で」

 

「むーーーー!!!何でデスカ?!うわーん!せっかくの指輪がぁあ」

 

ちょっ!大声出すと皆が…!!

 

 

 

 

「指輪が何ですか?」

 

あぁ!窓に!窓に!!

だけでなく至る所に!! 

 

いやぁぁぁあ !!!

提督はまた逃げ回るのだった…。

 

 

指輪消えたネーなんでだろうネー。

でも指に少しだけ感覚が残ってるのが嬉しいネー。

 

 

ゆ      これで    金    

 

 

 

 

んーまたコレネー何なんでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故指輪は消えたのか?

 



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18話 鉄底海峡ニ沈ム ①

今回は
鎮守府再始動編の最終となります
いつもよりは長いです(๑╹ω╹๑ )


指輪事件から更に2日後ー

 

次の夫婦役は雷…か。

なんとなく想像がしにくいな…。

と、笑う提督がいる執務室。

 

次の瞬間…

 

砲撃を受け爆発を起こし、そこで彼の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今、俺の目の前には…

あの日ぶん殴った提督がいる。何故コイツは深海棲艦と一緒にいるんだ?

そして何で姿形が深海棲艦のようになっているんだ?

 

「くくく…ご機嫌よう提督さんよ?」

 

「この姿が気になるか?」

「思う通りだ…深海棲艦の力をもらったのだよ」

 

「お前らには今日…沈んでもらう…」

 

 

数刻前、西波島鎮守府は敵襲を突如受け。

執務室は壊滅、提督が連れ去られ、秘所艦の大淀と鈴谷は大破していた

 

「提督が、何者かに拉致されました!」

「わかっている!映像解析は!?」

 

「今!!……これは、深海棲艦です!姫級が提督を拉致しました!」

 

「何だと!?レーダーは正常だと…なぜ何にも感知されなかったのか…」

 

「長門さん!何者かからの通信です!繋ぎます!」

 

そこには忘れもしない声が聞こえてきた。

 

「ご機嫌よう、元私の指揮下の艦娘達… 指揮官は預かった…。

来ないという選択肢は無いだろうが、提督を死なせたくなければ

アイアンボトムサウンドまで揃って来るが良い。そうすればコイツの命だけは助けてやろう」

 

アイアンボトムサウンド…

 

「貴様!そちら側に寝返るとは…軍人としての誇りは捨てたのか!」

 

「んー?利害が一致しただけだが?私は提督とお前らを殺したい。彼女達はお前達を沈めたい…それだけだ」

 

 

「行くわよ」

 

「ほう…決断が早いじゃ無いか」

 

「行ってアンタをぶちのめしてあの人を取り返すだけよ」

 

「待っているぞ…ハハハハハ」

 

ムカつく声だ…あの頃を思い出す。

でも行かないという選択肢は無い。

 

「全機、集合!これより作戦会議に入る!」

 

 

 

 

 

 

「…揃ったな」

 

「提督は無事なの?!」

「前の提督が深海側に寝返ったって!?」

「早く出撃させなさい!」

ガヤガヤと騒ぎ立てる艦娘達。

 

 

「シャーーーラーーップー!!!静かにするネ」

「気持ちはわかるけど まずは作戦会議ヨ」

 

「ありがとう、金剛。ではこれより作戦会議をはじめる!指揮はこの長門が行う」

 

「先程、大本営にも協力を仰いだが、元帥閣下が言うには提督が人質である以上、公に大本営等からの援軍は難しいとの事だ…」

 

「じゃあ 私達は…」

 

「代わりにこの鎮守府の留守を預かってもらうことになった」

 

「全機、出撃準備だ。恐らくは艦隊等は意味をなさないかもしれない

乱戦が予想される。正直相手の数も不明なわけだ…何人か轟沈するのも覚悟しなくてはならないかもしれない」

 

「しかし!我々は提督との約束通り轟沈する事なく提督を無傷で奪還する!」

「しかし、戦闘に自信のないもの来たくないものは、鎮守府の守りを頼みたい…」

 

 

「ふん!馬鹿じゃないの?」

と霞が言う。

「そんな奴ここには居ないわよ!皆提督のことが好きなんだから命だって何だって賭けてやるわよ!!!!!」

 

そうだ! 

はい!

そうです!

と、声が上がる。

 

「お前達… フッ 心配して損したな

    よし!なら行こう!暁の水平線に勝利を刻むぞ!

        全機!!出撃だぁぁっ!!!」

 

 

 

こっち!と提督の妖精が先行してくれる。

おおきいのあっち!と。

 

 

 

出撃しながら、また、航路にて…各々は考えた…もし沈んだら?

 

怖い…。

怖い……!

 

でも…提督や仲間が沈む方がもっと怖い。

皆、虚勢と勇気を振り絞り前へと足を進める。

 

 

「改状態での出力がどうも安定しないのが気になるところではあるな」

「no problemデース!余裕で戦えマース!」

「しかし何か原因があるはずだが…」

 

「そー言われましてもネー」

 

「わすれてるからだよ?」

 

「よ、妖精…どういうことだ?!」

 

「みんなはわすれてるよ!はやくおもいだして」

 

 

 

 

 

 

 

……ごう   かもしれなが 俺 ケッ  てくれ

 

 

「?」

 

「どうした?金剛」

 

「いや、何か提督が今頭の中に見えたような…気のせいデース!」

 

「大丈夫なのか?!」

 

「…はい!大丈夫デース!」

 

「あ、それ私も見たことあるかもしれません…誰かが何かを喋りかけてくるんです 誰で何を言っているかわからないんですけど…」

 

「俺もあるぜ!なんかわけわかんねーけどたまにあるな!」

 

何人もの艦娘がそう言う。実はこの長門も経験がある。考えても何が何かわからないが…。

 

 

 

 

そろそろ作戦海域だ!長かったが大丈夫か?

少しばかり小休止を行う! 

 

 

 

目の前にはアイアンボトムサウンドが広がっている。

 

空は血に染まったように赤く…水面も同じく赤い。

 

「ここには沢山の艦が沈んでるんだよね」

 

「あぁ…墓場らしい」

 

「……」

妖精は黙って向こうをみている。

 

 

「おねがい、ていとくをたすけて」

「そしてはやくみんなおもいだして!」

 

 

相変わらず思い出すってのがどんなのかわからないが。

とにかく大切なのは提督の奪還だ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

…ふう、と元帥の御蔵が息を漏らす。

「西波島鎮守府への遠征、完了しています。もう直に着くと思われます」

 

「おお、大淀か。ご苦労だ…」

 

「閣下…彼は、彼女達は…」

 

「天のみぞ知るじゃ」

御蔵が持つ秘匿書類

その中にはとある文章があった?

西波島鎮守府

 着任 神崎 救 初期艦 吹雪

初、建造ニテ金剛型ノ建造ヲ確認

とある。

日付は10年も前の日付だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前には夥しい深海棲艦がいる。

忌々しい奴もいる。

 

全員が固まる。

 

「ようこそ!墓場へ…君たちの墓場へ……」

ニヤリと男が笑った。

 

「お前のその姿は…軍人としての誇りだけで無く人であることも捨てたか」

 

 

「来たぞ!提督を離してもらおうか!」

 

「俺は解放してもいいんだが奴らがそれを許してくれなくてなぁ…力尽くで取り返しに来いとさ!!」

 

 

「サア カカッテキナサイ ソシテ シズミナサイ!」

 

 

「各員!戦闘態勢に入れ!!」

 

その距離約500m

 

進め!全てを薙ぎ倒し!提督を取り戻せ!

 

 

「空は任せて!」 加賀と赤城が言う。

「私たちだって居るんだから!!」

と翔鶴、瑞鶴が言い空母勢が一気に艦載機を放つ。

 

 

「行くヨー妹達ー!」

「「「「はい!」」」

 

「六駆!行くわよ!」

 

「大和…三式弾発射します!」

ドォォオン!!  

敵機多数轟沈!

「やるなぁ! 続くぜ!龍田ァ!!」

「ええ〜 沈みたい娘はどこかしら〜?」

 

 

「沈め…沈め!!!!」

「おお…怖いねえ…不知火は……ーー行くよ!古鷹!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「伊勢が被弾した!誰か援護を!」

 

 

 

「クライナサイ」

放った砲弾が榛名に掠る。

「きゃあっ!!」

 

「コノ…退くデース!!!」

と金剛が戦艦棲姫を弾き飛ばす 。

 

「榛名!OK?」

 

「はい!榛名は大丈夫です!まだ行けます!」

 

「まずいですね…」

 

少しは提督まで近付けたものの…

相手の戦力は圧倒的であった。

徐々にこちらは押されるのは見えていた。

 

時が経つほどに皆の傷は増えていった…。

 

「あいつらは無限に湧くのかよ…」

 

「弱音を吐く暇があるなら一機でも倒せ!」

 

 

 

 

 

 

「ぐうっ……このっ」

駆逐水鬼の攻撃により、陸奥が中破に陥る。

 

「…くそっ……どうにか、あそこ迄…」

大勢が傷を負っている。

 

しかし何故かそれ以上に被害になることはなかったのは幸いであった

轟沈も出ておらず、まだ戦える状態ではあったのだ。

 

 

 

「一方的じゃないか?」

 

「エエソウネ」 

南方戦艦新棲姫が言う。

「アトハ任セルワ…」

と深海提督に言葉を残し南方戦艦新姫は海へ帰って行く。

 

 

「くそっ皆… 皆…」

 

 

「ハハハ!無力だろう?無様だろう?何もできんのは。さあ、お前の育てた艦娘らが散るのを見ようじゃないか」

 

 

皆…

 

 

 

大和の砲弾が深海提督を狙う!

 

「チッ!!」

と深海提督は砲撃を撃ち返すーーーー

 

 

ーーーその瞬間を彼女達は見落とさなかった。 

「そこだよーー!」

タービンを2個積みした高速の島風と川内だ。

 

「少し我慢してね!提督!」

川内が提督を抱えて走る。

島風が敵を撹乱しながら撃つ放つ。

 

あっという間に提督は取り返されたのである。

 

 

「ちっ… ーやられた!!! ーーーーと言うとでも???」

「そこまで想定済みなんだよ!面白いくらい想定通りに行くものだな

笑いが止まらないなぁ」

 

不敵に笑う深海提督ーーー

 

 

 

 

 

 

「やった!」

「提督!おかえり!」

「もう離さないよ!」

皆が喜んでいるのがわかる…こんなにボロボロになってまでお前達は…震えている奴もいるじゃないか…。

こんな俺のために…ありがとう、本当にありがとう。

 

「泣くなよ?提督〜」

「ここからが踏ん張りだからですよ!」

 

帰ろう!絶対に生きてここから!

 

 

「さあ!全軍撤退戦だ!!!!」

 

「「「「おう!」」」」

 

 

 

 

しかし…

 

「やれ」

 

 

男は笑いながら指示を下した。

 

 

 

 

「ダーリン……ッ!?」

 

「なっ!コレは…!?」

 

「遅イノヨ…アナタタチハ」

 

空を覆い尽くす黒い影ーーーーー…敵の砲撃である。

 

敵は雲の上に爆撃機を隠しておいたのだ。

「迎撃…回避…… 」

 

「くっ…大和ォォォ!!」

 

「ダメッ!数が…多すぎるわ!!」

 

 

「アイアンボトムサウンド二沈メエエエエエエエエッ」

 

「皆!逃げろォォォ」

提督が叫ぶ!!

 

 

「提督っ!!!」

と金剛 加賀、響、加古、大井が俺に覆いかぶさる。

 

 

 

悪魔のような爆音と共に…

辺り一面が火の海に景色を変えた。

 

 

 

 

 

「ごめんダーリ…ン」

 

「ごめ……提 守れ  な…」

 

 

「北 … なさ  い」

「……」

 

お……前達…

 

燃える海とは逆に冷たくなる体温。

ずるっと6人は海に沈んでゆく。

 

 

 

 

 

 

 

誰1人として、水面に西波島のメンバーはいなかった。

 

 

 

 

「ククク ハハハハハ!!ヤッテヤッタゾ!!ハハハハハ!ハハハハハ!!!轟沈ダ!全テ沈ンダ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体が冷たい。

ここは海の中でしょうか?

 

…テートクテートク ごめんナサイ

約束…守れなくて……ヴァルハラから……

ーー「乙女のLOVEってのはそんなものですか?お姉様」ーー

 

ここで沈むなんて… 嘘…一航戦の誇りが…

ーー「哀れね…一航戦の誇りなんか大切?もっと大切なものがあるんじゃない?」ーー

 

動けよ、沈むなよ!誰がアイツを…守るんだよ…!!

ーー「負けないで下さい!先輩! 世界水準が泣きますよ!」ーー

 

提督についていた※※がみんなの前に浮かんでいる…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前が真っ暗だ。

「俺は死んだのか?確か沈んで……」

救が呟く、周りは闇にそまっている。

アイツは?みんなは?

 

「まだよ!」

 

お前は…妖精…?じゃない…?

 

お前は…誰だ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたは誰?

 

「…私達はここに眠る艦娘、あり得たかもしれないあなた達(艦娘)の姿…そしてあなた達はあり得たかもしれない私達(艦娘)の姿!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

艦娘?が俺に問いかける

 

「救? この世界がゲームの中の世界だと思う?…違うよ。この世界は私達にとっての現実なの…今のあなたにとってもね…確かにあなたの遊ぶ “艦隊これくしょん"はゲームよ。でも艦娘はずーーっと戦ってきたわ

……ゲームを通して貴方達、提督の指揮の下ね」

 

「沢山の提督が数多の艦娘を建造し、時にドロップで迎え入れ戦場に送り出し、生還させ、時に轟沈させ…勝利し、敗北していったわ…でも艦娘は喜んで戦ったわ!世界と…提督の為に…ね」

 

「でも年月が経つと 遊ばなくなる(指揮をしなくなる)辞めてしまう(放棄してしまう)提督(プレイヤー)が増えたわ… 指揮を失った艦娘の行先は……言わなくてもわかるでしょ? …でも、たまにね あっちの世界からこっちにやってくる提督がいたわ! 私達は喜んだ!あの人に会えたんだ!きっとコレから始まるんだって………でも現実はゲームほど甘くないの

艦娘にうつつを抜かしてダメになる提督、ブラックそのものになる鎮守府、見当違いの指揮で艦娘を轟沈させる、戦死してしまう提督....こっちの軍人上がりの提督と違うからね ゲームは現実ではないから」

 

「ここ、アイアンボトムサウンドはそんな艦娘魂が多く眠る場所。あの人の艦娘、私達もここに眠っているの だからお願いあの人は確かに悪いコトをしたわ!でも、もう止めてほしいの、これ以上見ていられないの…だから」

 

 

「そして、あなたはどうなの? 神崎 救 あなたも同じ?…沢山の艦娘に好かれて幸せそうなのは良いけど もう沈んじゃうの?アナタモコチラヘクルノ?もう一度失うの?」

 

艦娘は提督の指揮の下でその力を発揮する。

詰まるところ提督が鎮守府に居ないと艦娘は力を発揮できない

何故鎮守府に着任(ログイン)してない間にも資源は貯まるのか?

艦娘が戦って集めているからである

故に着任してなくても資材が貯まるのだ。

では?一切の着任がなくなれば?

資材は限界値から変わることなく、それでも艦娘は資材を捨てながらでも戦うのだ 提督の帰還(ログイン)を迎えるために。

 

それでも…帰還もなければ、

艦娘は指揮を失い、力を失い、倒され 沈んで行くのだ。

もしくは記憶を封印するか、大本営からの通達で他に飛ばされるか…

他から提督が来るかである。

 

 

 

 

絆が強くなければ"改" "改二"の力は発揮できない。

この鎮守府に着任して2年以上になる救と艦娘に絆が無いわけではない。

 

ではなぜか?

元からこの鎮守府の提督は救だったのだ

ログインもない上に艦娘は消耗しきり、リセットされ、代わりの提督が来たことでリンクが外れているのだ。

 

しかしケッコンカッコカリは金剛と、しているので

指輪は効果をなさず消えたのだ。

 

 

そして改にしても力を発揮できないのも同じ理由である…

その先にも行けないのも…。

 

 

「そう言うことか 俺が仕事で死んでいる間もアイツらは戦って、待っててくれたのか…」

 

「…変わらん!俺らは負けん!俺はアイツらを信じる! アイツらは俺のずっと昔から見てきた艦娘なんだろう?! 俺が建造しゲットし育ててきた艦娘達なんだろう?なら大丈夫だ!同じお前らならわかるだろう」

 

「本当に?」

「あぁ…俺たちは…負けん」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー「諦めないでよ!!!」ーー

 

…お迎えなんだろう?

諦めんなっても無理デース…

榛名も…

 

ーー「貴方達…思い出しなさい!提督を…置き去りにしていいの? 今までも何度も諦めることなく ここまできたじゃない! 貴方達は ずーーっと昔からあの人の提督の艦娘だったじゃない! 」ーー

 

何をいっているの?出会ったのは*年前のはず…

 

?違う…

 

私は頭の片隅に…何かの記憶がある……

 

 

(金剛!金剛だ!はじめての建造は金剛だ俺は救!これからよろしくな!)

 

何この記憶は?

 

(うわっ!もう少しでボスなのに…でも轟沈させたくない!撤退だ!)

 

(吹雪!改造!おおー!これでつよくなる!)

 

 

(大和ォォォ!ついに出たぞうううう!)

 

(イベントクリア!みんなのおかげだ!ありがとう!)

 

(金剛!弱い提督かもしれないが俺と結婚してくれ!)

 

(龍田〜給料日になったら指輪買うからなー)

 

(資源が!!!大和と武蔵と陸奥を組むとヤバいな)

 

 

コレは……あの人との記憶?

 

「そうよ 途中あの人が居なくなった間はあの深海提督になったけど

それでも貴方達の提督は…ずーーっとあの人だったのよ!」

 

 

 

…思い出した……どんな時でも毎日居てくれたこと。

それが画面の向こう側の世界で会えなくても幸せだったこと。

あの人が居なくなって辛かったこと。

それでも頑張ったこと。

全て忘れてしまったこと。

深海提督が来てから地獄だったこと。

戻ってきてくれて…会えて、触れてもらえて幸せだったこと。

 

目の前にいる娘は深海提督の艦娘だったんだろう…何故かそれがわかる。

 

ーー「なら!守るために立ち上がりなさいよ!!!!」ーー

ーー「あんたらじゃなきゃ!誰が提督を、この世界を守るのよ!!!!お願い…私達にはもうできないから…お願い!!代わりにあの人を深海提督を解放してあげて…」ーー

 

アイツを助けて…か、大切なんだね深海提督が…。

 

 

 

「ヘーイ 恋する乙女なめんじゃないヨー…!!」

暗闇の中で立ち上がろうとする金剛の肩を加賀が支えた。

 

「一航戦の、誇りよりもっと大切なものを思い出しました、ここは譲れません!!」

「ヘーイ カガー!その意気よー!」

 

「僕だって…まだ…!」

「ここでたたなきゃ、レディーとは言えないわ…」

「フッ…ビッグセブンを舐めるなよ…」

 

ーー「お願い!出来なかった、私たちの分まで…」ーー

 

「sorryだけどあなた達の気持ちを背負って立つわけじゃ ナッシングね!」

 

 

ーー「…!?どうして?!」ーー

 

「私達には重すぎるのよ 私達には愛する提督がいて…憎たらしいけど大好きな仲間がいて…それを守るので手一杯なのよ!だから深海提督をあなた達の代わりに解放するなんて無理よ」

だから…

見てなさい!

私たちが……勝つ所を!!!!

愛するものを守る様を!!!

 

ーーー「あなた達…ありがとう」ーーー

 

立て! 

立つんだ!! 

立ち上がれぇぇ!!!!!

 

沈んでたまるか! 

私は!   妾は   俺は!!!

  僕は!  ワシは 

      私達は

もう…失いたくない!忘れたくない!離したくない!!

 

 

 

 

 

俺はもう二度とお前達を離さない!

命を掛けてもう一度誓う!

お前達とずっと歩み続ける!

俺の命はーーーお前達と共にある!

 

俺は この暗闇を打ち破って

アイツらの所へもう一度!本当に帰るんだ!!

 

 

 

 

  

「行くヨ!皆!!フォローミーーー!!!」

 

私達は、この暗い海を突き破って…

あの人の元へもう一度行くんだ!!!!!

 

 

ーー「提督さん少しだけ力を貸してあげる」ーーー

 

「うおおおおおおおおお」

 

 

 「「「「「「「ヴァァァニング ルァァァヴ!!!!!」」」」」」

 

     ーー  改! 発動!まだ行けます!

     ーー 改二! 発動!こっちも、行けるぜ!

        

  その先へでも!! 行くよ!

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

さっきまで何も無かった燃えるだけの海に (提督)が立っている

 

 

何故生きている?そもそも何故海で立っていられる…

ゆらっと奴の後ろに何かが見えた気がした。

 

 

 

 

 

「何故貴様が生きている!?何故?何故何故何故貴様が」

 

 

「俺もアイツらも負けてない!」

 

 

「強がりを抜かすなぁぁぁあ!!!!」

 

 

 

 

 

海が光る!

大爆発のような水柱を天まで突き上げ…彼女達は戻ってきた。

 

 

「ダーーーリンー!!お待たせしてsorryねー!」

 

「ただいま!戻りました!」

 

 

 

「なっ!なぜ沈んでない!!それにあの姿…」

 

改も改二も…!?だと?

 

提督との絆で強さを増す"改"だと? 

そんなの!アルハズガナイ!!

 

 

提督の後ろに艦娘が集まる。もう目は死んでない。

まるで最初の頃のように…あの時のように。

 

 

「ダーリン?この指輪覚えてル?」 あぁ…!!

「司令官!初期艦の吹雪です!」 あぁ!

「司令官!もう一度共に行こう!」 もちろん!

 

もう離さないからな!!

 

 

「西波島鎮守府 総艦隊 全員集結したヨー!!」

「おう…!皆!改めて俺に力を貸してくれ!!」

 

「「「「「「「はい!あなたと共に!!!!」」」」」」

もう!怖くない!

さあ…深海提督さん…?

二回戦の始まりとしようか。

 

 

 

ーーーー西波島鎮守府 再集合ーーーー

 ーーー  提督 神崎 救  ーーー

 

ーーこれより艦隊の指揮に入る!!!ーー

 

 

 




お気に入りが100…出すと?
(๑╹ω╹๑ )うひょおおおっ
嬉しさのあまり爆発しました(´;ω;`)


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18.5話 とある男の話

その男は少佐で鎮守府に着任した

初期艦は電だった

 

なんだこの小さいのは…

こんなのが世界を救うのか と思っていた

 

 

建造とやらも行った

艦娘が増えて艦隊は強くなった

 

戦果を上げていくと同時に傷付き、それでも笑顔で帰ってくる奴らが可愛く、申し訳なく思った

 

 

ーー司令官!今日もお疲れ様なのです!ーー

 

ーー大本営に褒められたのですね?おめでとうございます!お祝いをするのですーーー

 

ーはわわ!改なんてでありがとうございます!ぐすんー

 

 

私は彼女達とどんどんと親密になっていった

この戦争が終わったら おっさんだけど一緒に居ようと

電と約束した

 

ーはい!電は幸せです!ー

 

いつのまにか大佐まで登り詰めていた

 

 

そんなある日

この作戦の成功の暁には少将に昇格らしい

ー本当なのですか?みなさん!頑張りましょうなのです!ー

ーーおーー!!ーー

 

よーしその時にはお祝いをしよう!

 

 

 

 

 

ぜ…全艦轟沈?だと?

大破し、ボロボロになった電が帰ってきた

もう持たないだろう と誰が見てもわかる状態だった

 

喋るな!電 今!バケツを

 

ー電が助からないのはわかってるのですー

ーていと  お祝 できなくて ごめ ーー

 

おい!電? 嘘だろ? 一緒生きるんだろう?

なあ!なあ!

 

静かに電は息を引き取った 

何故だ? どうしてこうなった?

 

大本営は私を少将とした

こんなもの欲しくはない

 

 

 

それから私は変わった 

死なない軍を作るべく 鬼のように変わった

当然艦娘からは反感を買ったが戦果はあげた

馴れ合う艦娘が嫌いになった 情を持てばまた辛くなる

そうして私は仮面を何枚も何枚も被った

 

いつのまにか大将と呼ばれるようになった

胸の階級を示すものはずっとあのころの大佐のままだった

 

 

ある時からとある艦隊を預かった

躾けても躾けても艦娘同士の馴れ合いをやめない

腹が立った

 

何故こいつらが生きていて 電が死んだのか

 

電? 

電とは誰だったか?

 

 

 

ある日変な奴が来て俺を殴り飛ばし

中佐権限とかで俺をクビにした

ふん 本当は大将なんだぞ…と思ったが

 

なんだか心がざわざわしている

奴と艦娘を見るのが腹立たしい!壊してしまいたい

 

俺は逮捕、拘留された

ふん このまま死ぬのでもいい

ただ!奴には仕返しをしたい 何故奴の艦娘は笑っているのに?

 

む? なぜ俺は艦娘が嫌いになった?

確か俺は…

何か大切な奴が…

 

 

 

 

そんな時に南方戦艦新棲姫とやらが拘留先に攻め入ってきた

 

殺すなら殺せ!お前の仲間はたくさん沈めた

 

 

ーソウネ、デモ、アナタノソノ復讐心、ホシイワー

ーツブシタイ奴ガイルンデショウ?テツダウワ!彼女達モソレヲノゾンデイルワーー

 

彼女?誰だ?

しかしこの深海棲姫の言う通りだ、復讐したい

全てを壊したい

 

 

 

俺は その手を取った

 

 



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19話 鉄底海峡ニ沈ム ②

鉄底海峡決戦の続きです
(๑╹ω╹๑ )


「何度でも沈めてやる!!!!」

 

「そうはいかないわ!」

 

何故死に体の奴らが立ち上がってきた?

何故数が圧倒的に有利なこちらがやられている?

 

「テイトクトヤラ!マズイゾ!」

わかっている!ならば!

こうなればせめて奴も道連れにしてやる!この手で!!!!

 

深海提督が救に近付き…剛腕で殴ろうとする。

 

が、その拳は届く事はなかった。

 

 

「hay 何、人の旦那を殴ろうとしてるデース?」

「お前の相手はミーだヨ」

 

 

 

 

金剛改ニ丙と深海提督が殴り合う。

「貴様!沈めよ!死に体だったくせに!!」

と金剛を殴る。

 

「おー良いPunchね!でも愛の前にはそんなの意味はナッシングネー!!!!」

金剛が殴り返す。

吹き飛ばされる深海提督。

 

何故だ?何故この俺が押されている?

 

周りは?奴らを総動員して……!?

「なっ……」

 

 

「ぽいー!ソロモンの悪魔の力!見せるっぽいー!!」

 

「これが飢えた狼の力よ!!」

 

 

「皆行くで!ついて来るんや!!」

 

「夜戦じゃないけど、暴れるのは楽しい!!」

 

「駆逐艦の水雷魂を見せてやるわ!」

 

「あそこは金剛さんに譲ります…でもここは譲れません」

 

「あなた…私だって戦えるんですからね」

「提督に近寄るのは僕が許さないよ!沈め!」

 

 

殆どの深海棲艦がやられた…だと?

 

 

 

何故?負けるのか? また負けるのか?

また沈めてしまうのか?アレ?誰を沈めたっけ?

 

ノーガードになる深海提督を金剛は見逃さない!

 

「ダーリン!!見ててヨ!!これが私の!全力の…」

「バーーーニング!!ラーーブ!!!!!!」

 

ドコォっと金剛の拳は深海提督に打ち当たり…

吹き飛び、水面に膝をつく。

 

「金剛さん!やったのです!!」

と電が叫んでいる。

 

 

アイツは…電?そうか電が帰ってくるんだ…!

奴らを殺せば電は電は…

俺の電は帰って……くる!!!

 

なら殺そう…全てを…

もう一度取り戻せるなら…

 

アイツだけが特別じゃない!

俺だってテ…

ぬ?足が動かん?体も動かん?

でモ…諦めタラ電は…

 

せめて死ヌ前に奴ダケハ殺さなイと…

 

 

ぬおおおおおおおっ!!

艤装が崩れながらも…立ち上がろうとする深海提督。

 

 

ーーもういいのです 司令官さんーーー

 

 

 

 

 

電?電ナのか?

 

 

そこには電が居た。

 

電!俺ハお前ー

電はそっと提督を抱きしめて言った。

 

ーーもう休んでいいんのです司令官さんーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前が帰ってこないと俺は!

 

ーー司令官さんーー

 

 

俺はお前たちをむざむざ殺してしまった。

恨んでくれていい。 

なんならこの俺の命をやるから!もう一度!

 

 

ーー恨んでなんかないのです!司令官さんと過ごしは日々はみんなの宝物なのです!!

電は司令官さんの艦娘で幸せだったのです!

 

 確かに司令官さんは他の人達には酷いことをしていましたけど

きっと謝ったら許してくれるのです!ーー

だからもう自分を責めて…艦娘を嫌いと言って苦しまないでください。

 

 

 

 

 

 

「これは…」

提督だった男に、海から光が集まる。

光は艦娘の形を作って行き…提督を囲む。

 

ーー提督、もういいんだーー

ーー私達はあなたのために散れて本望だったんだーー

ーー逆に最後まで居れなくてすまないーー

 

 

「アレは、深海提督の沈んだ艦娘達…?」

 

 

 

 

ああ…ああ…これからはずっと居るから……

 

ーーどこにもいかないさ、行ってなかったんだぞ、ずっとあなたと共にいたんだーー

 

気づかなかった、すまん…

 

 

ー司令官さん、遅くなったけどお祝いなのです!ー

 

電…これは…

ー電の手作りのブローチなのです!ー

 

ああ… ありがとう…

やっと俺も…みんなのところへ…

ああ、生まれ変わるまで、生まれ変わっても共に居よう。

 

 

 

 

 

 

あ…あ…ぁ

西波島のお前たち…

 

 

「っ!!」

救は身構える。

 

「大丈夫ネーダーリン 」

 

 

すまなかった… 本当にすまなかった。

 

 

それと救とやら…

 

「何だ?」

 

俺は大将だ…お前は上司をぶん殴ったんだぞ

ふん…まあ許してやる…

お前のおかげで皆に会えた。それでロハだ…

 

 

ありがとう…

 

 

 

「え?服を見る限り少佐だったはず!!」

 

ふん…相手をよく見る事だな…

 

 

 

 

 

 

 

 

提督だった男が沈んでゆく…笑顔で。

艦娘は光に姿を変え一緒に海に帰って行く。

 

 

こっちの電が今更言った。

「私と同じなのです!?」

ーはい!そうなのです!ー

 

ーみなさん、ごめんなさい、そしてありがとうなのですー

 

「no problemよー!おかげで思い出せたし!指輪も帰ってきたヨー!!」

 

 

 

 

ーーさようならーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…終わった……。

「ダーリン!!! ダーリン!ダーリン……」

「提督!」

「司令官!!!ぐすっ」

「あなた…」

「変態さん…」

おい誰だ変態さんと言ったのは!

 

 

あなたに触れられる。

当たり前のことだったけど…全部思い出したら。

それがとてつもなく嬉しくて、嬉しくて。

 

彼女達はしばらく提督から離れようとしなかった。

 

 

帰ろう…

ポツリと俺はそう言った。




連続投稿しました!

更新頻度が落ちる詐欺はここまでです きっと

書きたかった話なので書けて満足です
至らない点が多かったと思いますが…

オラ少し休むだよ…

UAが1万
お気に入りが100 ありがとうございます(´;ω;`)頑張れる励みになります
コメント、リクエスト、評価等ありましたらお気軽にお願いします(๑╹ω╹๑ )

次回は後日談と夫婦リターン 艦娘達との日常
を続けていきます(๑╹ω╹๑ )

小噺のリクエスト等お待ちしています!


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20話 提督 鎮守府ニ帰還スル

鎮守府への帰り道です

閲覧、お気に入り登録、評価、しおり等ありがとうございます(´;ω;`)


……アレが普通じゃなかったんだ。

当たり前のように思っていた…だから…。

 

 

 

ブクブクブクブク

「キャーー!!提督が沈んでしまうよおおおお」

 

当たり前の話だよね!人が海の上に立てないなんて!

謎の力がアレでなんやかんやで…実は俺もよくわからないけど。

「うわっ!俺海の上に立ってる!俺って何かに目覚めたの!?」

って思ってたくらいだし。

 

このまま帰れるな!とか思ってさ…

皆に帰ろうと言い、振り返り一歩進んだ瞬間から俺は海の上に立つ事なくゆっくりと沈んでいったのだ。

 

「……」

 

「まあまあ…そう気を落とさずに…ね?」

 

大和の艤装に乗せてもらっている俺だ…。

 

気を落とす?違う!恥ずかしいんだよおおお!

 

 

 

 

 

 

 

 

誰かが言った…

「そーいえば記憶を取り戻してからさ言うのはアレだけどあの指輪はどうなったの?何人かケッコンカッコカリしてるからライバル減ったと思うんだよね」

 

 

「あっ…」

 

「提督!今回!この長門の撃墜スコアを見てほしい」

「私も頑張ったよー!?」

 

やべえ…

誰だ地雷をセットしたバカは!

「夕立もがんばったっぽい!」

 

 

大和もチラチラとこっちを見ている。

 

…あー……

「すまん…その 金剛に渡したら…消えたんだ…その、何だ…金剛とはすでにケッコンカッコカリしてたからな…それが理由だろう」

 

 

「見損ないました…」

 

「まてまて!!艤装を傾けるな!大和!話せばわかる!大海原に提督を放り出してはいけない!元帥に色々きいてみるからあ!!!」

 

ハハハと皆が笑う。一部は目は笑ってないが…。

疲れたよぉ…。

 

 

 

 

そして、ぽつりと誰かが言った。

 

「ねぇ…提督は元の世界に帰っちゃうの?」

 

皆の表情が一気に凍りつく。

きっと誰もが考えた事だろう、でも言葉に出さなかっただけだ。

そうだ俺はそもそもプレイヤー(我慢の向こう側)なのだから。

 

「帰っちゃうの?」

「司令官がそれを望むなら」

「せっかく会えたのにそんなの嫌すぎます…」

「ホンマ…嫌やわ…」

 

 

「帰らんぞ?てか帰れんぞ?」

 

 

「「「「えっ?」」」」

 

「俺は向こうの世界で死んだからなあ…帰る場所なんかないんだよね」

ケラケラと笑いながら言う。

 

提督は向こうの世界で何があって、どうしてこの世界に来たのかを語ってくれた。

 

「〜と言うわけだ… すまんな。湿っぽくて」

 

「…司令官!向こうの世界に行き全てを薙ぎ払う許可を!許せない!司令官をそんな目に合わせた世界なぞ!滅べばいい!!」

 

そんなことをしたらこの世界も滅ぶぞ…多分。

 

 

 

 

 

「ということは、もしかしてその先輩さんもこちらの世界にきてたりしてーっぽい??」

 

 

あ… 確かに…考えたことがなかった。

でも、彼女も艦これをプレイしていたから…もしかしたら…。

 

 

「提督?いいえ、あなた?私達の前で他の女の子のことを考えるのはよろしくありませんよ?」

 

「わかってるって!俺にはお前らがいるからな!

ただ会って上司は殴っといた!と言いたいだけだ 会えたらな 」

 

 

 

「で?誰に指輪を渡すのですか?」

ラウンド トゥー ファイッ!!

 

 

「まあまあ 落ち着くネー!ダーリンもお疲れヨー? 」

ナイス!金剛!やっぱりお前は助け舟を出してくれるんだな!!

 

「あなたは余裕ですよねえ…??ケッコンカッコカリしてるから?」

 

「私は索敵してきマース!!!!」

やはり泥舟だった…。

 

 

ケッコンカッコカリ

金剛、鳳翔、吹雪、加賀、時雨、榛名、龍田、武蔵、58、が今のところ 結んでいるケッコンカッコカリである

 

他の艦娘もとなる…あれ?こっちでは指輪はおいくらなの?

お高いんでしょうー?

 

ふええ お小遣いなくなっちゃうよぉ…

 

 

「はっ!!そうか! 提督!提督の手を煩わせるまでもない!このまま大本営に行き指輪を強だ…貰えばいいだけではないか!」

 

「確かに…」

 

確かにじゃねえよ!? 強奪と言いかけたな?

テロだからね?それ

 

 

 

 

 

 

 

平和な海路の旅も終わり 鎮守府に帰ってきた

数時間ぶりなのになんかすごく懐かしい

 

 

「お帰りなさい…提督!」

「うわぁあん! でーどぐぅ!!いぎででよがったあ」

 

2人とも大破した状態で瓦礫の中から助けられたらしい

 

2人こそ無事でよかった

 

間宮達も出てきて帰還を喜んでくれた

 

 

 

「なあ皆…」

こんな俺を提督として認めてくれてありがとう

支えてくれてありがとう

辛い思いをさせてごめん

好きと言ってくれて…ありがとう

生き残ってくれてありがとう

 

 

自然と涙が出た 恥ずかしいとか思える余裕もないくらい涙が止まらなかった 死ぬ事より失ってしまうかもしれないのが怖かった

皆で帰れたのが嬉しかった

自分を認めてくれる人が、好きで居てくれることが居ることがこんなにも幸せだったんだと改めて気付いた

 

 

「提督もギャグ以外で泣けるんですね」

 

「茶化したらダメよ!」

「でも、そんなあなただから私たちはついて行くんだ」

「というか離さないよ」

「いまさら帰るって言っても、ハンモックで縛りつけてでも帰さない!」

 

ありがとうな皆…

 

 

 

「そうだ 皆で写真を撮ろう…ここに集まってくれ!」

皆で居た証を残したいんだ

 

 

 

ぞろぞろと艦娘が集まる

 

「撮りますよー!はい!タイマー起動!!」と青葉 

 

「ダーーーリン!ダーリンの隣はワタシヨー!!」

「譲れま!!」 「私だって!」

 

「おい!ヤメロ!こんな時くらい…っ!」

パシャリ

 

「ああああ!!!」

 

 

 

 

 

「ふう、ここでよし…と」

写真を額縁に入れて執務室と食堂とに飾る

希望があった艦娘にも渡した

 

写真の出来はお察しである

 

しかしどこかで見たような写真だなあ…どこだっけ?

夢だったかな

 

まあいいか!!

 

 

写真の中にはボロボロの提督に抱き付くボロボロの笑顔と泣き顔の混じった艦娘がボロボロの鎮守府を背景に 写っていた



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21話 提督 大本営ニ行ク

…大本営かー

あまり、行きたくないよねーーーー。

本社に呼び出されるようなもの!てかそのもの!

 

うーーん…。

まあそりゃそーだよね!

提督が拉致られて全艦での交戦…とありゃあ。

しかもね…

アイアンボトムサウンド…攻略ってことになったからねぇ…。

 

何言われる事か… ぐちぐちと詰められるんだろなあ

ジジイは助けてくれるかなあ…

 

 

   西波島鎮守府 提督   神崎中佐 

コノ度ノ事件ニツイテ、貴官ニハ報告ノ場ヲ用意ス

故ニ大本営マデ来ラレタリ

マタ、貴官ダケデナク艦娘カラモ事情ヲ聞キタク思フ

当作戦ノ指揮ニ当タッタ艦娘モ同行サレタシ 

 

               元帥 御蔵 源治

 

えーと あの時は確か長門か…。

 

 

 

「提督!お呼びだろうか!」

入室から敬礼まで本当に綺麗な所作だ。

 

「ああ、実は大本営に行くことになってな…」

 

「む?まさか出世か!?なるほど!おめでたい事だ!さすがは提督た!アイアンボトムサウンドを攻略したとなれば大本営も黙っているはずがない!これは正当な出世だ!この長門提督の下にある事を誇りに思う!……はっ!?しかし!提督のその手腕を欲しがり大本営は提督を別の所に配置するつもりじゃ… こんな果ての鎮守府よりもっと要となるところがあるからな……くっ、大本営めぇ…この長門!声を大にして言うぞ!私の提督は!大本営なぞに渡すものか!…と」

 

面白そうだから黙ってたらこうなったw

聞かれたら確実に懲罰もののセリフだよw

 

「あー…長門?」

 

「しかしっ!それが提督の為なら…涙を飲むしかないのか…でもせめてこの長門はお供させていただきたい!

だって私は提督の事が…!別に陸奥だけケッコンカッコカリしてるのが寂しいとか悔しいってわけではないんだぞ!

…え? 事後報告に行くだけ?? 私も指揮の当事者として同行を?

2人で?大本営に?…実質デートというわけだな!!」

 

 

どうやらウチのビッグセブンは色々とビッグらしい。

 

 

「ボク達はお留守番かい?」

「あはは!気をつけて行くんだよ?」

 

「任せろ!この長門がいる限り!提督には指一本触れさせん!」

 

「おぉー」

と駆逐艦達が拍手し目を輝かせている

 

「あんたといる方が不安だよ」

と誰かが漏らした。

 

 

 

 

長門と2人で何かをするというのは多分初めてだろう。

ゲーム内でも陸奥の方が来るのが早かった。

 

長門は悪く言えば堅物、良く言えば公正な奴だった。

確かにそうだろう…ぱっと出の提督なぞ信用できんだろう。

根っからの軍人気質なんだろうな。

 

ある日のことだった…か。

長門が大破、俺が帰投を命令して作戦を中断させた。

あと一歩だったんだと、長門はおれに抗議をした。

「なぜ止める!あと少しで奴らを倒せた!」

 

「気持ちはわかるがお前が沈んでしまう可能性もあるわけだ。それは承認できない。私は言ったはずだ大破進軍、轟沈はさせないと」

 

 

「それは理想論だ!理想だけで戦争に勝てると提督はお思いか!?」「例え、私が沈もうと 意志を継ぐ他の艦娘が…」

 

「何だと?」

提督は静かにキレた。その圧は他の艦娘ですら 

「ひっ」と声を漏らす程だった。

 

「もう一度言ってみろ」

 

「…事実だろう!戦争に犠牲は付き物だ!甘ったるい考えなぞ…」

 

 

「残されたものはどうなる!陸奥は?他の皆は?貴様は残された者が背負う悲しみの重さを知っているのか?」

 

長門は見た。

怒りの表情でなく、提督の悲しげな…今にも崩れそうな表情を。

 

 

「確かにお前が轟沈しても他の皆がいる。建造でまたお前に会えるやも知れん。でもそれはお前ではないんだ。俺は今目の前にいる長門と共に戦い、勝ち、思い出を刻んでいきたいんだ…確かに理想だろう。

甘ったるい理想論だろう!それでもその理想を叶えたいからこそ戦えない俺は作戦を立てるんだ」

「頼む…長門。そんな悲しいこと言わないでくれ…俺はお前が大破しないように、もっと良い戦法を考えるから…すまなかった」

 

提督は頭を下げたのだ。この長門に、すまないと…。

皆が居るだろうに、そんなのも気にせず。この鎮守府の頭が、反発しているこの1人に頭を下げているのだ。自分の作戦が悪かったんだと…。

 

「て…提督」

言葉にならなかった。

 

 

長門は自分を恥じた。

そこまで艦娘を思ってくれる提督が居るのかと。

ならば私はそれに応えなくて…何がビッグセブンかと。

 

 

「て…提督!顔を上げてくれ!違う!私の方こそすまなかった!やめてくれ!何があっても沈まないと約束するから」

 

 

 

 

 

 

「画面の向こう側の提督も、あの時の提督も変わらないんだな」

「提督は残される悲しみを知っているから真剣に私に向き合ってくれたんだろう?」

 

「んー? どうだったかな?」

 

「むっ…」

 

とにかく今の長門は俺にデレている、かつ過保護気味になっている。

俺が蚊に喰われたと痒がれば…

「この私の提督に何たる事を!」と言いながら部屋を焼き払い、

「提督の負傷はこの長門の責任!」と懲罰を求めるだろう

そして…それを嗜めると、

「ならこの長門が命を掛けて提督をお守りする!」

と、俺を抱きしめて寝るか夜通しで寝ずの番をするだろう。

 

蚊が相手としても…

 

 

 

 

 

長門がそっと近付いてきて俺の肩に頭を寄り掛かる。

今は結構2人の時にはデレるもので、そこが結構可愛い…。

「提督…何があっても傍に居るからな」

 

 

 

「だから陸奥だけでなく私ともケッコンカッコカリしてくれ!!」

それが本音だった…

 

 

 

 

 

大本営に到着

 

 

大本営とやらは来るのは2回目となる。

大本営の大淀が出迎えてくれる。

「長旅お疲れ様でした!」

と敬礼してくれる。

 

「わざわざ出迎えありがとうございます!」

とこちらも敬礼で返す。

挨拶は大事!古事記にもそう書かれてあるらしい?

 

「閣下がお待ちです、こちらへどうぞ」

 

 

「お久しぶりです!神崎、到着しました!!」

 

「久しぶりだな。神崎君…あぁ楽にしたまえ、君と私は同じ境遇の者だ、そう畏まらなくても良い」

 

「そーですか…今回は強制連行や投獄やドナドナはないですよね?」

 

「むっ」

おーい長門!おちつけ!相手は元帥だぞーーと目配せをする。

 

 

「う…根に持っていたか」

「冗談ですよ」

 

「むう…年寄りを揶揄うもんじゃない……してこの度の報告を頼む」

 

 

「はっ」

俺は今回前任提督の行った襲撃事件

自分が拉致されたこと、艦娘が全艦出撃しての鉄底海峡での総力戦になったこと…。

深海提督との闘い

艦娘との全てを思い出したことを語った。

 

「ふむ…長門から支援を要請されてな…留守の間はこちらから派兵して鎮守府近海の防衛には努めたが… まさかそんなことがな」

 

「奴は…どうなった?」

 

「大将殿は沈んだ昔の艦娘に看取られながら海に還って行きました」

 

「そうか…大石は逝ったか…。奴も優秀な提督だったがな、自分の艦体を轟沈させてからは人が変わってな…ワシもそれを止めることができなんだ……すまない」

 

「彼のしたことは最低でしたが…戦争です。戦争は人を変えてしまうのだと思います、それに今は安らかに皆と眠っていることでしょう」

 

「うむ…で長門よ 提督不在の間は君が指揮を行ったそうだが、それについて教えてほしい」

 

「はっ! 全機での出撃は相手からの条件だったのでやむなしと判断しました!大破した大淀と鈴谷、工廠にて2人を看護する明石、夕張と補給艦の2人、を残し出撃しました!私が指揮を取ったのは…すみません?私がせねばならないと思ったからであります!」

 

「いや、責めているわけではない。逆に良くやってくれた」

 

 

 

 

して…と元帥は言う。

「君達は図らずも、この海軍から出た深海提督が他に被害を生む前にそれを阻止、長い期間往生していた立つ底海峡の攻略を行ってくれた…軍としてはそれを静観するわけには行かん」

故に

「本日を以て 神崎 救を昇進させる。いや元に戻すと言ったほうが早いかな?昔の君は大将だったな? 」

 

「確か…ゲーム内では…そうだったと」

 

「大石と同じ大将に再任命する」

 

「え…え!はっ!この神崎!謹んでお受けする所存であります!」

 

制服が大淀から手渡され隣の部屋で着替えた。

 

「ふふふ やはり良く似合っているぞ!おめでとう!これからもこの長門は提督に命を掛けてついて行こう!」

 

「ほっほっ 良い関係を築いておるようじゃな 

 

 

さて…これで終わりじゃ。昼食にでもしよう。ここまで何か気になることは有るか?」

 

 

「あっ!一つあります!」

 

「あるか?よし言ってみろ」

 

「支給された指輪が消えましたのでもう一つ…いや結構な個数が欲しいのですが」

 

「な…何じゃと!?なくしたのか!?」

 

「いえ…金剛に渡したのですが 皆が記憶を取り戻す前だったので彼女は元々私が渡していたのを気付かずに渡したら…その…指輪が消えちゃって」

 

「そんなことがあるのか…ならもう一つ支給しよう…ーん?いくつかと言ったか?」

 

「ええ、出来るならどんどん重婚をしたいと。すでに何人かとはケッコンカッコカリをしてますし…」

 

ポカンとする元帥と大淀…

そんな顔すんのねあんたら。

 

「ま…まあ他の鎮守府で指輪の争奪戦になったり、提督に良いところを見せようとして鬼神の如く戦う艦娘に怖がった深海静観艦が形を潜めているなんてのもあるくらいだしな…艦娘の士気も上がるんだろう」

 

「装備の形とネーミングがダメですよね」

 

「それ以上はいけません!大将殿」

 

「まあ…一つは約束通り支給する。それ以降は自腹で買ってもらうぞ。結構制作費用かかるんじゃよ…」

こんくらい…とコソコソと耳打ちしてくれる

 

「そっ…そんなにするんですか…」

 

「ご利用は計画的に…じゃ」

 

今日からもやし生活かな…。

ゲームの課金は本当に優しい金額だったんだなあ…。

 

 

「ついに!ついに!私もっ」

渡すなんて一言も言ってないのに隣で長門がキラキラした目でこちらを見ていた。




大本営出頭編でした
やや、長門回ですね 
アニメのあのデレた長門に私は轟沈しました


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22話 あなたに頼られたくて  提督 雷ト1日夫婦 ①

雷ちゃん嫁回


「もっと私に頼ってくれてもいいのよ!」

 

「ん…あぁ」

 

 

 

今日は、雷と夫婦体験となった。

記憶を取り戻してもコレは続ける。

金剛と鳳翔はすでにケッコンカッコカリしてんじゃん!ずるいよ!なんて声も上がったが… ねえ…そんなことになるなんて思ってないからさ

仕方ないよねえー。

 

 

んで…雷が目の前にいるわけなんだが。

 

 

犯罪臭が半端ない!

見た目完ッッ全に小学生!それで夫婦?

おまわりさん!ここです!私です!

 

駆逐艦の中にも多少大人びた奴もいるが大概はthe 小学生!

「提督さん…ロリコンだったの?」

なんて言われた日には…。

 

しかし!逆に考えるんだ… 夫婦体験なんだ。

だから、仕方ない!

やめてくださいこちらに砲身を向けないで下さい!霞さん!!

 

まあ避けて通れないのは想定済み…なら!

 

「妹とかじゃ…ダメ?」

精一杯の抵抗を試みる!

 

 

「提督は私じゃダメなの?でも提督がどうしてもお兄ちゃんの方がいいなら私は我慢するわ…お兄ちゃん?」うるっ

 

大本営!大本営!!こちら提督!

精一杯の抵抗も虚しく、これ以上の抵抗は無駄と判断し投降する所存であります!!

 

「いや!夫婦で行こうか!雷」

提督は艦娘に甘かった。

 

 

で、冒頭に戻り。

 

「あ…あなた……も、もっと私を頼ってくれてもいいのよ?」

 

「なら、朝ごはんをお願いできるか?」

 

「ええ!もちろんよ!待っててね!」

 

 

待つこと 30分

 

 

「…ぐすっ…ごめんなさい…」

目の前には、暗黒物質がならんでいる。

ご飯と卵焼きと味噌汁を作ろうとしたらしい。

卵焼きはわかる…何故ご飯も暗黒物質化している?

味噌汁は…うん、何も言うまい。

 

「ごめんなさい…いいとこ見せたかったのに、うまくいかなくてごめんなさい…捨ててくるわ」

 

馬鹿野郎!初めて嫁が作ってくれたものを捨てさせてたまるか!!

「食べるぞ!」 もぐもぐ

 

ぐうううっ!なんだコレは!?胃が焼けている…だと?!

 

ちらっと雷を見る。

無理しないで?と涙目で言う。

 

ははは!大丈夫だよレディ!と、食べる!

ジャリジャリだけではない新食感と攻撃力が俺を襲う。

一生懸命作ってくれたところを想像すると…これも無駄にはしたくない

 

「ご馳走様でした!」ばたり

 

「提督〜!?提督ううううう!!ごめんなさいいい誰かお医者さんはーーーー!?!?」

泣くな…そなたは笑顔の方が美しい……。

 

 

「食あたりですね…でも男の生き様!しっかり見届けたわ!立派だったわよ!司令官!」

と胃薬と水を置いていく愛宕と高雄。

 

「そういえば雷…お前のご飯は?」

「あっ…忘れていたわ…」

 

「一緒に作るか?」

 

「ええ!?いいの?嬉しい!はじめてのきょーどーさぎょー!ね?!」

 

 

間違ってないんだが。

ヤメロその言葉は…。

 

「提督はロリコンなのねー?」

ほらきた!青葉ぁぁぁぁあ!!!!!メモってんじゃねーやーー

 

食あたりとは別に胃が痛んだ…。



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23話 あなたに頼られたくて  提督 雷ト1日夫婦 ②

お昼ご飯を一緒に作る。

なんだか嬉しい!私は金剛さん達みたいに魅力は…自信ないけど…それでも提督の事が…。

 

私は比較的早い段階でドロップした艦娘だ。

電と見分けがつきにくく苦労したらしい、それでもちゃんと育ててくれた。

提督は任務や遠征の帰りには、ありがとう!お疲れ様!と声を画面の向こうの私たちに掛けてくれた。

 

でも提督が居なくなってからは本当に地獄だった…。

痛いのも、辛いのも怖いのも暗いのも嫌だ…。

毎日、ボロボロになるまで使われて…

いっそ沈んでしまおうかと、考えたこともあった。

 

でも提督がきてからは変わったわ…。

 

でも…最初は怖かった…この人もそうなるんじゃないかなって…

だから、私は提督を避けた。

 

「おはよう雷!」

「任務お疲れ様!ありがとうな!」

と話しかけてくれて…頭を撫でてくれて、夜に魘される時はそばにいてくれて……。

 

提督が拐われた時は本当に怖かった。

いなくなるの?って…。

戦いでも頑張ったけどすぐに中破して… そして私は確かに沈んだ…あの爆撃で。

怖かった…それ以上に提督を守れなかったのが悔しかった。

守りたい!絶対に帰るんだ!って思ったら体が動いていた。

金剛さんの掛け声でもう一度皆で暗闇から飛び出たらそこに提督は立っていた。

良かった… 次こそは負けない!

そう思った…。

 

 

 

 

きっと今こうやって居られるのは奇跡なんだろう。

 

 

 

「よし雷、包丁はな…こう持ってな」

「火加減はな… これは強すぎるんだ」

「味見してみてくれ」

 

「…提督」

ジワリと何かが込み上げてくる。

 

「どうした!?辛かったか!?」

 

「いいえ!とても幸せなのよ!」

提督と一緒に作ったお味噌汁は涙で少し塩っぱかった。

 

 

 

 

 

午後からは街へ出掛けたわ!

 

相変わらず次は私を!!とか殺伐とした出発だったけど…

「「「「「いってらっしゃい!」」」」」

これだけは変わらなかった。

 

 

街はいいわね!色々なものがあって…

でも何故だろう?兄妹にしかみられないのは?

「お嬢ちゃん、お兄ちゃんとお買い物かい?手まで繋いで仲のいい兄妹なんだねえ」

と言われて思わず…

「私はこの人のつ、つつつつ妻です!」

と言ったら何故か憲兵が来たわ 

提督は「えっ!?え!?」と今までにみたことのないくらい焦っていたと思う。

ロリコン?とか言うのはダメらしい。

 

失礼しちゃうわ!!

 

 

「この街の憲兵は早いな…さすが…」

 

 

 

 

 

ショッピングもたまに皆と来るけど今日は違うの。

何だかドキドキするわ。

 

「あっ…これ」

可愛い写真立て付きの小物入れだった。

「プレゼントするよ?」

と提督が言ってくれた。

「ダメよ?提督はお金を貯めて指輪を買うのよ?」

と言ったら提督は、ハハ…頑張ると言ってたわ。頑張ってね♡

 

お花を摘んで戻ってきたらその写真立ては売り切れていた…。

「売り切れちゃった…」

 

「申し訳ありません。そこに置いてたのが最後の一つだったんです」

と店員さんが言った。

「仕方ないわ!こういうのは運だから、そういうこともあるわ!」

と私は返した。…ーーー欲しかったなあ…。

 

 

 

夕飯は焼肉というものだった。

昔本で見てから行ってみたかったのだが暁が

「服を汚すのはレディではないわ!」

となかなか行けなかったのだ。

じゅー というお肉の焼ける匂い…。

タレとご飯がよく合うって本当だったのね!

 

「雷、焼けたぞ?」

「ありがとう!ーーって!私も焼くわ!もっと頼って!!」

……

焼く練習しときます… お肉は何枚か暗黒面へと堕ちちゃった…。

 

 

2人で向かい合ってご飯なんてなかなか無いから、それでも凄く幸せだった。

 

 

 

 

 

「今日はありがとうございました!提督!」

寝る前に提督にお礼を言う。

「こちらこそだよ」

 

「おやすみなさい」

ぎゅっと提督にしがみつく。提督はそっと返してくれる。

色々と思い出して、ぽろぽろと涙が出てくる。

「うっ…ぐすっ…提督ぅ。どこにもいかないで、強くなるから…ぐすっ…私達を……私を1人にしないで」

 

提督は頭を優しく無言で撫でてくれて…私が寝た後もずっと抱きしめていてくれた。

こんなに気持ちよく寝られたのはいつぶりだろう?ってくらいスッキリ

した目覚めだった。

 

少し寂しいけど…

 

そうだわ!昨日教わった朝ごはんを作るわ!

 

 

 

「ん…おはよう雷」

「さあ、あなた朝ごはんが…できたわ!」

 

歪な卵焼き…具材もあまり上手く大きさが切れなかった味噌汁。

ご飯はうまく炊けたわ!

 

提督が、ご飯を口に運んで食べる。   ドキドキするわ

提督はニコッとと笑って言った。

「美味しいよ、雷」

 

嬉しかった。

「当たり前よ!練習したんだから!私も頂くわ!」

 

やっぱり味噌汁は少し塩っぱかった。

 

 

 

 

さてもうすぐこの夫婦体験も終わりね

「提督!ありがとうございました!正直夫婦ってのがよく分からないけどすごく幸せだったわ!…指輪まってるね!」

 

「こちらこそ!指輪か…頑張るよ!そうだ指輪じゃないけどこれ…雷にプレゼントだ」

 

「コレは?開けるわね」

 

 あの日欲しかった写真立てだった…いつの間に?

 

「コレ… いいの?」

 

「ああ!俺からの気持ちだ」

 

卑怯だよこんなの…。

 

 

「提督?」

 

「うん?」

 

ありがとう!!     チュッ …

と頬に口付けした。

 

 

 

 

「この続きはケッコンカッコカリしてからね!」

と1番の笑顔で提督に笑いかけた。

 

 

 

 

「提督はロリコン提督はロリコン提督はロリコン提督はロリコン提督はロリコン提督はロリコン」

青葉さんが居たが提督にアイアンクローを食らっている。

あら!?艦娘って片手で上がるの!?

 

 

「雷さん……で でーとの取…材を…」

それでも記者魂は不滅なのね…尊敬しちゃうわ。

 

 

「秘密よ! とても幸せだったわ!提督!楽しかったわ!ありがとうございました!」

 

と部屋を後にした…。

後ろからは青葉の悲鳴が聞こえる気がする。




雷電の、改ニ こないかなあ
(๑╹ω╹๑ )

お気に入り120ありがとうございます(´;ω;`)評価もありがとうございます! 
いつの間にか20話し越してました
話分けなかったらもっと少なく済んだのですが…何か分けてしまうんですよね…


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24話 提督 建造ス

何となくやってみたかったネタ(๑╹ω╹๑ )


「やあ神崎君!遊びに来たぞい」

と散歩感覚で遊びに来た元帥と共にひょっこりと工廠にいってみた俺は…とある2人に捕まっていた。

 

「やっと来てくれたわ!提督ったら1度も…一度も!建造させてくれないんだもの!!」

「やっと やっとその時がきたのね!?」

ガクガク はあはあと 興奮した状態の明石と夕張。

禁断症状まで出ていたのか!

 

 

んー…ああ、そうだな本当に建造したことなかったし…そろそろやってみるかな!

 

 

「は、、早く!早く(建造)してよー!焦らさないでええ//」

「ここに…ここに!(資材を)入れてくださぁぁあい//」

 

「神崎君…君ってやつは…」

 

おい!やめろ!!洒落にならん!!!

えーとこいつらは無視だ…。資材は、と。

「男なら夢の9999!オールインでしょう」

おい!

「ひゃーー!さすが提督様だ!スケールが違えよ!」

 

「ダメだー!資材の数量を決めるボタンが止まらねえええ!」

「ひゃーーっ!9がこんなに綺麗にならんでやがるぜー!!!」

 

「お前達なあ…7000までじゃないのか?」

 

「さあ旦那!!この建造開始ボタンを押してくれえええ」

 

押さなければ命が危ない気がした。

ええい!ままよ!

 

 

ぽちっ

 

 

 

建造時間 100時間だと??

 

「あぶっちまおうぜーーー!!!!ひゃほーーー!」

 

「良いぞ!もっとやるんじゃーーー!!」

 

あ、おい!勝手にするなー!

ジジイもノリノリじゃねーか!!

 

ゴオオオオオオオオ!!

 

だめだカオスだ…俺には何もできん。

てか100時間なんて見たことないぞ…。

 

 

「出てきますよお!カーーモーーーン」

 

 

「あの…えと……あのr 」

 

そこに居たのは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アノ…ココハ…」

深海棲艦だった。

深海地中海棲姫だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「えええええええええええ!?」」」

 

ちょちょちょちょ!!

ピンチです!

姫級にこのメンバーでは勝てない。

どうする!?!?

 

 

(この先カタカナでなく平仮名で台詞は表記します)

 

「アノ…構エナイデ… 戦ウ意思ハナイワ」

「えっ」

 

 

 

「またお前さんは… え?資材を限界量投資したら?深海地中棲姫か建造された?何じゃとおおおおおおおおおお!?!?? ーーあとは任せてワシは帰ろうかの…」

 

「逃がしませんよ」 ガシィッ

 

 

「ヘーイ!ダーリン!叫び声が聞こえたネー!他の女の子に現を抜かしたらノー……」

 

「あっ…」

 

「 敵襲デェェェェス!!!!!」

 

ウウウウウウウーーー!!!と警報が鳴り艦娘が集まる!

 

「敵襲だと…どこにーーーーって深海棲艦んんん!?!?」

 

 

「提督うう!離れてえええ!元帥閣下も離れてください!」

「主砲構えてください!!」

 

わーきゃーと阿鼻叫喚のようだ。

 

 

 

 

「あの…話を聞いてください…敵対の意思はありません」

 

「「「「えっ」」」」

 

 

 

この深海地中海棲姫…略して姫ちゃんは、なんか呼び声が聞こえて応えたらこの場にいたらしい。

自分がどんな存在かはわかっているらしく…それでもなお敵対の意思はないそうだ。

 

というか

 

「あの?姫ちゃん?…そろそろ離れない?」

「皆が…怖いから…」

 

 

「ぐぎぎぎいいいいいっ!!あんなに密着してぇぇぇぇ!!」

 

「提督さん…私を解体しないで?お願い…」

「ああ、敵対しないなら 大丈夫だよ」

「本当?ありがとう!提督さん大好きよ!」

 

「アバーーーーーーーっ!!!!あの姫策士よおおおおおお!」

「そこは私の場所なのにいいいいいっ!」

 

 

 

「ワシのこと忘れてない?」

元帥は忘れ去られていた。

 

とりあえず要観察、情報秘匿との事で元帥は大本営に帰っていった。

帰り際にそっと頭痛薬を渡しといた。えっ?雑?

なんのことかな?

 

 

 

 

「と言うわけで、仲間入りした深海地中海棲姫…姫ちゃんだ…建造されたと言うことで味方だから…そのみんな仲良くしてくれ…で姫ちゃんはそろそろ俺から離れようか」

 

「あう… 皆さん、私は敵ではないです。どうかよろしくお願いします」

 

「うむ…よろしく頼む!しかし提督に引っ付き過ぎだ…羨ましすぎる…」

 

「皆も救さんのことが好きなの?」

 

「しれっと名前呼び…デース。なんて奴デース!!そりゃ大好きデース!愛してマース!てかケッコンカッコカリもキスもしてます!因みに私が一番最初にケッコンカッコカリもキスもしました!」

 

「えっ?キス??」

「えっ、初めてだった?」

「私もしてますよー!」

別の地雷が発動しました。

 

「そうなの?私は一目惚れって奴なのかな…ケッコンカッコカリ?結婚しているの?私もしたいわ」

 

 

 

「……まじか」

すこしどきっとした。

 

「ちょっとドキッとしてんじゃねーーーですよおおおお!」

「僕だって提督とケッコンカッコカリしたいんだよー!!」

 

 

 

 

 

 

 

所変わって執務室

…鍵のかかった引き出しの中の隠しスペースには支給された指輪とは別の指輪が何個かある。

お給料…いなくなっちゃった…。

 

そっと引き出しを閉じ…支給された指輪を眺める

「これが指輪なの?」

 

「うおおおおっ!?!?」

「ふふ!取らないよ?救さんからくれるの待ってるから」

 

「あ、それと…もう一機の建造が終わったらしいよ」

 

 

空母棲鬼「ヤア!」

 

鬼ちゃんが、仲間になりました…。

 

 

「いやぁぁぁあ!また何か増えたよおおおおおおおお」

「提督は…たらしだぁぁぁあ!」

 

 

誰か…胃薬を持ってきてください…!!




事実は小説よりも奇なり 
もしもあり得たら?という話です


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25話 提督 演習ヲ行ウ ①出迎エ編

蒙武鎮守府(モブ鎮守府)と演習?

 

演習の申し込みが入った。

 

ああ…あそこって何かめちゃくちゃ強い艦隊がいるらしーな。

 

拳での方が強い!海が割れる!艤装を展開した方がまだ弱い!

など、とにかく殴り合いを上等!としているところらしい。

提督もガチムチのヤベーヤツだとか…。

 

「鉄底海峡を攻略したその手腕を見たいらしいぞ」

 

大石提督の件は秘匿事項とされ、あくまで神崎大将率いる西波島鎮守府連合艦隊が何年にも及ぶ綿密な作戦指揮の元アイアンボトムサウンドを攻略した…とだけ伝えられているらしい。

 

まあーそうなるわなあ…。

 

「で…いつが希望ー?」

 

「3日後だそうです」

と大淀。

 

 

 

うーーん…メンバー選定しなくっちゃなあ。

 

 

 

旗艦 長門  大和、加古、島風、天龍、金剛、加賀

旗艦 吹雪  川内、赤城、でち公、最上、榛名、不知火

 

この二部隊をメインに支援艦隊として他にも

響、電、扶桑、北上、大井、龍田、等が出撃する

 

多部隊による、全力戦となるらしい。

 

 

「今回の演習は、結構な乱戦となるだろう。しかし君達ならば大丈夫だと信じている!」

 

「てーとくーー!」

 

「何だ?」

 

「MVPのご褒美は?あったら頑張れるよー!」

 

うーーむ…考えてなかったな…。

 

「今回は優秀者には提督との1日デート、最優秀のMVPには指輪の贈呈もあり得ます、ケッコンカッコカリをしてある方がMVPの場合は一泊二日の旅行に招待もあり得ます」

 

「「「「「「おおおおおおおおお!!」」」」」

 

勝手に決めないでよお……大淀さん。

 

 

その日からの訓練はいつものメニューの5倍をこなしたそうだ…。

 

 

 

 

 

 

「提督…緊張するのか?」

明日に演習を控え…前日入りする蒙武鎮守府のメンバーを迎える為に

船着場で待っている所だ。

 

「まあなあ…噂によるとガチムチのヤベーヤツだろ?とにかく粗相のないようにせんとな…」

 

「大丈夫だ!この長門がいる!見ていろ!今回のMVPも私がもらう… む?来たようだぞ」

 

 

どうやらお相手さんが到着したよう……だ?

 

「この度は演習を受けてくれてありがとう…秘書艦、指揮艦娘の武蔵だ!よろしく」

 

「あ…あぁ…長門だ… よろしくお願い…しま…す」

 

何だこの武蔵。

体格が1.5倍くらいないか?オーラが違うぞ?

長門も押されている気がするぞ?

 

ぞろぞろやってくる艦娘は同じような奴が多く…

素手で敵を屠るのも、頷ける…。

 

「あの」

 

「明日は…よろしくお願いします」

 

普通の女の子が立っていた

「えっ?」

「えっ??」

 

「あの、君は?」

 

「あ…あのっ、蒙武鎮守府の提督 里中 麗(れい)と申します…階級は大佐です…よ、よろしくお願いします…」

 

「あなたは?」

 

「提督の神崎 救です…階級は大将です。何というか…その」

 

「イメージと違いましたか?」

 

「…すまないけど…そうだな」

 

「よく言われます。ガチムチの男提督じゃないのか!?って。逆に私も鉄底海峡を攻略した提督さんはガチムチの感じだと想像してました」

 

「お互いに勘違いしてたんですね!」

 

ははは…と談笑する2人。緊張はすこし溶けたようだ。

 

 

「何あの雰囲気は?」

「またライバルの出現?しかも人間かーー!!」

 

あのー…皆、ハイライト消えてませんか?

 

 

 

 

「むっ?麗と向こうの提督が何か良い感じだな… 少しヒョロイ気がするが… 麗もお年頃だ…ああ言うのが好みなのか… ん?電じゃないか

こっちの電はちっこくて可愛いなあ…」

 

「ひっ… 雷ちゃ…雷さんなのです!?」

 

「おいおい雷さんなんて… 雷ちゃんでいいんだぞ?ハハハ!」

想像してほしい。

武蔵を少しゴツくしたような駆逐艦 雷を…

雷帝の間違いじゃないか?

 

「雷ちゃん?艤装は?」

フルフル

「あー…豆鉄砲くらいなんだよねアレ。殴ったほうが早いんだよなあ…」

 

 

ゴリラだ!この鎮守府はゴリラしかいねえ!

なにがモブだ!伍離羅鎮守府とかにしとけよ!

 

 

 

「おい あそこで武蔵と手四つしていい線いってんのは?」

 

「あれか?...睦月だぞ」

 

 

おいコレは演習か?蹂躙の間違いではないのか?

確かに駆逐艦が戦艦に勝る時もある。戦術や戦況によってだが…

しかし基本的なスペックや火力では戦艦にはるかに勝る。

 

のが常識だった…

 

はずなのに…

目の前では、

「いやー!強いな!流石戦艦は強い!」

と武蔵が言っているが、それあんた駆逐艦やで…?

 

駆逐艦は戦艦にはなれない!とか言ってたなアンタ。

戦艦並みの体格とパワーを手に入れた駆逐艦が目の前に居ますよ!?

 

 

 

もうやだあ…棄権したい…。

 

「…やるからには…勝つぞお……↓↓」

「相手さ…ほら、戦艦なのかなあの人…某漫画のキャラみたいな身長だもん…」

「てことは、戦いが終わったら縮む奴だよね?!」

「それ以上はいけない!」

 

「長門以上のゴリラが存在するとは…世の中はミステリアスデース」

 

 

あー志気も駄々下がりだわなあ…。

んー……

 

「おい皆」

 

「勝ったら大本営に掛け合って連休をやる」

 

 

「負けても長期入渠だろーから一緒一緒!」

 

「連休は南の島でバカンスだ」

 

 

「作戦はどうする!?提督!」

 

扱いやすいなこいつら…

 

 

 

 

 

 

明日が怖いなあ。



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26話 提督 演習ヲ行ウ ②交流編

合同で夕飯を食べて交流を行う…

が!……飯の量がおかしい。

 

お互いの鎮守府の間宮、伊良胡、鳳翔が6人体制で料理をするが

「いつもこんなのですかー!?」

 

「まだ遠慮してる方だと思いますー!」

 

マジか…。

間宮と伊良胡は普通なのに…鳳翔さんたら…

アメコミとかに出てきそうな感じなのね…?

多分何かの暗殺拳の使い手だろう…。

 

と横目に見ながら手伝う俺。

 

だってさ?見てらんないんだよね。何?向こうの赤城さん!

料理を消失マジックみたいに食べてんだよね。

わんこ料理なの?飲み物なの?

 

「私もお手伝いしますよ」と麗さんが皿を拭くのを手伝ってくれる。

「ありがとう」と洗い終わった食器を渡す。

 

「おやーー?いい感じじゃないかあの2人」

と北上が茶化す。

 

「演習を機に2人は出会い… その後も演習で…ああ!静かに恋の炎はもえあがるんだよ!そして…2人は…」

「そうですわ!北上さん!提督さんもそろそろいい年ですし!恋人の1人や2人いてもおかしくありませんわ!」

「少し寂しくなるけどねえ〜」

「そうですね」

 

「あってはならんぞ!そんなことは!私は認めんぞおおおお」

「明日の演習!必ずや勝利し!ぱっと出の小娘より!私達の方が良いことを証明するんだ!!!」

 

「僕は…大丈夫だと思うけどなあ」

 

「何!?時雨は不安ではないのか!?」

 

「いやあ…すぐにそんな関係にはならないかなと… 僕達のが一緒にいる時間が長い訳だし。でも億分が一にでも、もしそうなったら地下にでも監禁するか…明石に頼んで記憶を…いやあの女を…」ブツブツ

 

 

「提督さんは皆さんとかなり親しいのですね?」

 

「ああ、長い付き合いにもなるからなあ。本当にいつも支えてもらってるよ」

 

「ケッコンカッコカリもされたのですか?」

 

「うん、何人かとね。少しずつ増えていくと思うけど…やっぱり皆と共に歩いて行くわけだから 強化の意味合いもあるけどいてくれてありがとうって渡したいんだ」

 

「…そうなんですか…絆なんですねあの指輪は神崎さんと皆にとっての……私のとこも 誰にするか決めかねてるんです、だから神崎さんにも聞いてみようかなと思ってたんです」

 

大丈夫!ケッコンカッコカリしなくても強そうだし!

なんて言葉はは口からでなかったよ。

 

 

 

「ここの提督さんが神崎さんみないな人で良かったです!不安だったので…。明日よろしくお願いしますね?明日に備えて寝ますね、おやすみなさいです」

 

「ごめんね手伝ってもらって、明日はよろしくね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ!最果ての提督よ!」

 

「ん?蒙武鎮守府の長門か…?」

 

「ああ!今回はありがとう!」

 

「?何がだ?」

 

「演習を受けてくれて…だ」

 

「そんなことか。何、ウチにもいい刺激になるしな」

相手がこんなゴリラ共和国でなければな!!!

 

「温いな…やはり」

 

 

「正直、あまり良い戦果も聞かない僻地の鎮守府だったから 本当にあのアイアンボトムサウンドを攻略したのか?と思っていたんだ。見たところ艦娘も随分と平和ボケしているように見えるしな…提督殿…いや、大将閣下も同じように腑抜けて見えるものだな」

 

 

 

「…」

 

 

 

文句を言おうと飛び出そうとするウチの長門を金剛と不知火が止める。

他にも何人かが同じようにしていた。

「離すんだ!!アイツっ」

「ダメです!提督の顔に泥を塗るのですか!!」

 

 

それをチラッとみながらモブ長門は言う。

「コレなら私らでも容易に出来たのでは?と思う。そして今回はな演習のMVPには提督から指輪という強化アイテムを貰える訳だ…。お前達には私達の踏み台になってもらうぞ 」 

 

「何やらウチの提督といい感じになってるみたいだけど…自惚れないでね?ウチの提督は優しいからよ?僻地の提督と艦娘はは大人しく隅っこにいなさい?」

 

「陸奥ぅ…。言うじゃないか!彼も年頃なのだぞ?まあ変な期待はしない方が良いがな。まあ…僻地の芋な艦娘と比較するのも可愛そうか.大人しく馴れ合いでもしていろ?まあ明日はそんなことも思えなかならくらい差を見せつけてやろう。雑魚過ぎて話にならんのは勘弁だぞ?  あぁ…棄権するならそれでも構わん!その時は腰抜けと呼んでやろう」

 

「あなた達もそんな芋提督よりウチにこない?強くなれるわよ?ああ 来ないか…こんな芋が好きな物好きの田舎娘だしねー?」

 

 

皆堪えていた。

ここでキレたら提督の顔に泥を塗るから。

 

提督はすでにキレていた。

自分の事よりこの鎮守府と艦娘を馬鹿にされたからだ。

 

蒙武鎮守府のメンバーは超えてはいけないラインを超えてしまったのだ。

 

ピシッ…と言う音がした。

 

「むっ?この感じは…すごいプレッシャーを放つ奴もいるもんだな…」

 

「おい…さっきからゲストだからと黙って聞いてりゃ…よく喋る口だなぁ…御託は並べんでいいから…明日を待っとけ」

提督の目付きはかつてないほどに鋭く。もはや殺気を隠すことなく放っていた。

 

提督だと!?この芋から?

このプレッシャーを感じるのか?… 何だこいつは?!

この長門が怖気付いていると言うのか!?

 

陸奥は感じた。

恐怖している自分を。

この最弱の存在に恐怖している自分を。

 

 

 

「ッツ!!」

皆感じていた。この提督は怒っている。

ヤバいやつを怒らせた…と。

「ふ…ふん!強がるな!明日は可愛がってやろう」

これが精一杯捻り出せた言葉だった。

と蒙武鎮守府勢はゲストルームへとぞろぞろと退散した。

 

 

 

「皆すまんな…。俺が不甲斐ないばかりに悔しい思いをさせて我慢させた…」

 

「私らこそごめんなさい…提督が馬鹿にされてるのに…」

 

「いや、よく耐えてくれた…だから明日は存分に返してやろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございます!神崎さん!今日はよろしくお願いしますね」

「ああ、麗さん!よろしくね!」

 

と挨拶を交わし、それぞれの指揮する場へ移動した。

 

恐らくこの件は麗さんは知らないのだろう。

しかし、悪いが今回は全力で行かせてもらう…。

 

 

 

 

 

 

「お前達…昨日は悔しかったろう!腹が立ったろう!!私達の提督を…仲間を!鎮守府を!!!コケにし踏み台と言った奴らを……ぶちのめしてやろう」

 

「提督に勝利を…やるぞおお!奴らを叩き潰せえええええええ!!」

「「「「おおおおおおおお!!」」」」

 

 

 

 

演習が始まった。

 




嫌なキャラを登場させました

麗ちゃんはいい子なんです


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27話 提督 演習ヲ行ウ ③ 艦娘 全力デ叩キ潰ス編

同型の艦娘の登場時は
鎮守府の名前等を入れてみます (๑╹ω╹๑ )


「さあ!やってやろう!くくく…」

と蒙武側は笑っていた。

軽く捻ってやろうと。

 

あの提督は少しヤバい圧を放っていたが…まあ艦娘はザコだろう…あの状況でも黙っていたからな。

 

 

 

 

ん?こちらに向かってくるのは…金剛か?幾ら改ニだといってもあんなのに負けるはずがない、と蒙大和は思う

他の皆も笑っていた。

 

軽く遊んでやる…

はずだった。

 

 

ドン!!と音がした。

砲撃? 

いや違う。

魚雷?

違う。

 

殴ったのだ。金剛は全力で蒙大和の腹を殴り抜いたのだ

蒙大和は演習場の壁まで吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。

「がっ……!な…に?!」

 

 

「ヘーイ!!fuckin艦娘共… 私らを本気で怒らせましたネー…全力でお前らを叩き潰すから覚悟決めろヨ」

 

 

 

 

不知火如きをこの赤城が捕らえられない??

駆逐艦如きにこの私がやられる?あり得ない!

 

「お前達は…絶対に許さない」

不知火が蒙赤城を蹴り上げる!空中に浮いた赤城に更に蹴りで追撃する

「ぐうううっ!!」

蒙赤城は数メートル蹴り飛ばされ水面に叩き付けられる。

 

 

武蔵と武蔵が四つ手で組み合う。

「ふん!駆逐艦にも勝てなかったナマクラが!この私に勝てると思っているのか?!」

 

「負けるわけが無いだろう?私は今怒っている…そして!今は提督の気持ちを背負っているのだ!「負けるな!」とな!貴様らなんぞな負ける道理があるわけが…ないだろう!!おおおおおっ!!!」

 

「この私が押されているだと!?…ありえな…痛い!痛い!ぎゃあっ」

いつの間にか押し負けていた…ありえない!!

 

「金剛に負けるわけにはいかないからな…私も見せてやろう!!」

と武蔵が頭突きを喰らわせた。

ふらつく蒙武蔵。そこへ容赦なく金剛と同じように拳を叩き込む。

 

吹き飛ぶ蒙武蔵。 

立ち上がろうとするが立ち上がれない。

動揺する蒙武メンバー。

「すごい…」と、感嘆する麗。

 

 

「チッ…なぜ勝てん!」

長門と陸奥は蒙長門と蒙陸奥を相手に善戦していた。

 

「何故だ!?」

 

 

「提督がいるから!」

艦娘は感じるのだ… 提督との、強い繋がりを。

提督から力を貰っているような感覚を。

信じてくれているから、絶対負けない。私達が勝つ…と。

なら私達はそれに応えるだけ!

 

許さない提督(愛する人)仲間(家族)鎮守府(私達の家)を馬鹿にした事を!

 

 

 

 

総崩れだった…

駆逐艦、軽巡には殴り飛ばされることはなかったが、素早く動かれ膝を崩される。

そこに重巡や他の戦艦に拳を叩き込まれる。

 

砲撃をしても当たらない。こちらが蜂の巣にされるだけだった。

 

 

 

追い詰められる蒙長門

追い詰められた者の取る行動…

それは…

「クソッがぁァア」

 

主砲を展開して…砲撃した。

 

 

反則では無い。

何故ならこれは実戦を想定した演習であるからだら。

西波島の艦娘は相手に合わせて素手で戦っていただけなのだ。

恐らく砲撃戦なら…ものの数分で西波島の勝ちが確定していたであろう。しかし、相手と同じ土俵で勝負して叩き潰してこそ意味があるのだと、だから蒙武勢が砲撃戦に転じても何の落ち度も無いのだ。

 

 

 

しかしこの蒙長門は やってはならない事を犯していた。

 

一つは 実弾を打ち込んだ事。

もう一つは 西波島の提督に向かって打ち込んだ事。

 

 

悔しかったのだ。馬鹿にした相手にここまでやられるのが。

ビッグセブンが負けるわけにはいかないのだ!

負けるわけには行かないのだ!

あの提督に向かってワザと主砲を放った。

恐怖で棄権するだろうと…。

 

なのに…

 

「なぜ逃げないっ!?死ぬぞ!?」

 

 

救は逃げない。

怖い、死ぬほど怖い。

しかし、艦娘と共に自分も戦っているから。

 

 

そして、何より…

 

「フンッ!!!!」

ドォン!!と長門が砲撃を殴り落とす

 

 

艦娘を信頼しているから。

 

 

 

「危なかったな!提督!しかし!この長門がいる限り!「指一本触れさせないんだろう?」

 

「む…むう…そうだが……」

 

「ありがとう長門!信じていたぞ」

 

 

「よくも提督を狙ったな…?」

「お前らは…絶対に…絶対に許さないデース!!」

 

もう容赦も何もないと砲撃が蒙長門を襲う!

模擬弾と言ってもその威力は凄まじい。それが何発も何発も容赦なく浴びせられた。

 

そして

 

「誇り高き長門の名を…ビッグセブンの名を…汚すんじゃないっっ!!!!」

と長門鉄拳が顔面に浴びせられる。

「ぐ…うっ」

 

 

 

負けるわけにはいかない、こんな…芋共に負けるわけには…

私達こそが最強なのだ!

指輪を貰いさらなる強みに…高みに行くのだ!

例え手を汚そうと、何と言われようと!

 

 

 

 

里中 麗は 大人しく平和な娘だった。

資質を見いだされてから提督として着任した。

当然、周りの提督からは女だからと馬鹿にされ、セクハラを受けた。

それでも艦娘の前では気丈に振る舞う優しい提督だった。

 

しかし1人で泣いているのを艦娘は知っていた。

悔しさを隠し努力する姿を知っていた。

 

だから応えるように艦娘も努力した。

血を吐くほど努力し、練度を上げた。

明石に頼み薬を作ってもらいこの屈強な体も作った!

近付く提督共は(ウジ虫共は)徹底的に排除した!

強くなって負けなくなった。

誰も文句を言わなくなってきた…。

 

当然アイアンボトムサウンドを攻略するのは私達だと思っていた。

 

だからこの僻地の提督を倒せば私達が更に強いと認められると思った。

だから提督に掛け合い演習の約束を取り付けた。

 

だが想定外だった…

提督も艦娘も強そうには見えなかった。

しかもこの提督は麗に言い寄ってもこなかった。

更にはこの提督は艦娘と重婚しているらしい。

 

信じられなかった。

こんな奴らが攻略したなんて信じられない!

コイツも結局は皆と一緒だと証明してやろう、化けの皮を剥がしてやろうと思った。

 

しかし煽っても艦娘は怒らなかった。

提督は怒っていたが、叫ぶわけでもなかった。

しかし、あんなに恐怖を味わったのは初めてだった。

 

そして煽りすぎたらしい…

奴らは瞬く間に私らを蹂躙した。

しかも私らと同じ格闘というテーブルで…だ。

 

 

脅しのために装填していた実弾もカッとなって撃ってしまった。

しかし塞がれた。ああ…コイツらは本物だった。

 

 

 

虎の尾…なんて生温い。

私らは悪魔の尾を踏んでしまったらしい。

 

「「覚悟しろ」」

長門と陸奥の全力の鉄拳が腹に突き刺さる。

吹き飛ばされ、薄れ行く意識の中驚いている麗が遠くに見えた。

 

麗は驚いていた。その強さに!圧倒的な強さに!!

そして、何よりで

「どういうことなの!?実弾でしかも提督を狙うなんて!!」

と麗は秘所艦の大淀に詰め寄る。

「実は…」と大淀が説明する…

 

「中止です!!!即刻!中止!!!!!」

演習は中止になった。

 

 

 

 

「神崎大将閣下!この度は本当に申し訳ありませんでした!!

提督である私の責任です!軍法会議にでもこの場で処刑でも何でも罰を受けます!なので…なので、この娘達は…許してください」

 

麗は泣きながら土下座をした。

悪いのは艦娘だが…知らなかったとはいえ、自分の責任だと。

 

麗も知っていた。自分の為に艦娘が努力をしたこと。

それを止められなかった自分がいる事を…。

 

 

 

「お願いします… 私を好きにしてくださっても構いません、どんな命令にでも従います 」

 

「何を言っている!悪いのは私らだ!私らを解体でも何でもしてくれ!…いや、してください」

艦娘も土下座をした。  

敬愛する上司が自分達を守ろうと泣きながら額を地面に擦り付けて

汚れるのも厭わず土下座をしているのを見て…

艦娘達は己の愚かさを知り、悔いた。

 

「どうしマスか?ダーリン…」

 

「正直、まだ腹の虫は収まらない…沈めてやりたいとすら思う…しかし提督の判断に任せる 」

 

「顔をあげてください…」

 

「うぐっ…ぐすっ」

と皆が顔を上げる。

どんな処分でも甘んじて受けようと覚悟を決めた。

 

「蒙武の長門…」

 

「はっ…はいっ!!」

 

「私らは…僻地のザコい芋だったか?」

 

「そんなことは…ありませんでした…訂正します。申し訳ありませんでした…っ」

 

「ならウチのメンバーに謝ってくれ…アイツらは私の…俺の大事な艦娘なんだ。俺の甘い理想に一緒についてきてくれる大切な…大好きな奴らなんだ」

 

 

「はいっ… 。西波島鎮守府の皆さん…本当に申し訳なかった…この命で済むなら…どうしてくれても構わない。だから…だから!許して欲しい!!」

と再度土下座をした。

 

ゆっくりと金剛が近付いて来る。

そして 顔をあげた蒙長門にデコピンを喰らわせた。

「なっ…!?」

 

「何を言ってるデース 提督さんがくれた命を無駄にするノ?

 

「やめろ!やめてください!提督には手を…」

 

「いやだから 出さないヨー」

「ダーリンはそんなことしないネー 」

 

「いや!しかし!」

 

「しないっつーの!いいか?お前らの命なんぞいらん!それ程に命を賭けれるなら、二度と麗さんに恥をかかせる行動は取らないことだ」

 

「しかしっ」

 

「見ろ!お前達のために頭を下げ続けるこの人を 確かに私を狙ったのも何もかも許せない!しかし私はお前らを罰さない。…同じ仲間を失うのは嫌だからな!だから…今後は気をつけるように…以上だ!!!」

 

 

「しかし!閣下!それでは…あまりにも甘すぎます」

 

「麗さん…私達は甘いのですよ」

 

 

「いいな!皆!思うところは有るだろうが…水に流せ!俺も無事だった!演習にも勝った!だから良いだろう?!」

 

「提督に従うわ!」

「いいよ!次があっても私らが勝つから!」

 

 

 

 

 

「ね?」

と神崎閣下は私を優しく起こしてくれた。

普通なら処刑されてもおかしくないのに…この人は私だけでなく皆を許してくれた…。

 

 

 

 

 

 

さあ…夕飯の準備にしよう!とケロッとした神崎が言った。

「各自、入渠してから…食堂へくるように!解散!」

 

 

 

 

 

 

 

長い1日も終わりに向かっていた。

 

 

 

 

 




続!演習編です

嫌なキャラも立ち位置によっては
信念みたいなものを持っていると言いたかった回でした

あと1話 あります!お楽しみに(๑╹ω╹๑ )!!


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28話 提督 演習ヲ行ウ ④ 1日ノ終ワリ編

麗は動揺していた。

何故あれだけの事をして、許されたのかがわからなかった、

 

結論から言うと本当にお咎め無しだった。

「砲撃?当たらなかったし 事故事故!え?実弾?見落としでしょ? それに長門が凌いだからねー!」

演習の記録も良いように書き換え、報告をしたらしい。

 

 

「それでは私達の立場が…」

 

「お互いさ…どれだけ想い、想われてるかわかったから良かったってことでいいじゃん!」

 

「でも…」

 

「はい!!!この話題終わり!しゅーーりょーーーー!…君もよく頑張った。皆を庇う君を俺は尊敬した。素晴らしい絆だと思う」

と大将閣下は私の頭を撫でながら言った

 

 

「あっ…」

 

「すまん!セクハラではないからな!あのっ」

 

 

初めてだった。馬鹿にされたことはあっても、勲章を貰えども 誰かに褒められたとなんて無かった。

今までの頑張りが少し無駄じゃなかった気さえした。

「ありがとう…ございます…うわぁぁあん」

 

 

「うおおあ!すまない!セクハラではない!嫌だったか!?本当にすまない!!ほら!殴ってもいいから」

 

と大将閣下は慌てている。

 

 

「違いますよお…ぐすっ…何だか安心して…それで」

麗は救に抱きついた。救は慌てながらでも頭を撫でてくれる。

 

 

あたふたと慌てるこの大将閣下に出会えて良かった。

と思う麗であった。

 

もやもやしながら…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何これ?」

入渠から蒙武勢が戻ってきた… が、普通サイズに戻っていたらしい。 

 

「あの…その… お待たせしました」

誰だお前は?長門…そんな気弱なキャラだったの?

「あ…あまり見ないでください…久しぶりで恥ずかしいので…」

 

「…」

何だ?ウチのメンバーの目がヤバいんだが。

「何あのキャラ……ギャップはずるいわよ」

 

 

「お待たせしました!救さん!」

階級は違うけど年齢も近いしラフに行こうよ!と言ったのは俺だ。

 

 

 

 

「なっ……!?」

更にコッチを睨むメンバー様。

おいおい…

 

「旦那様?浮気ですかぁあ??」

「あの小娘えええ!いつの間にあんなに仲良くなってんのよ」

「これは譲れません…」

 

 

蒙武側も

「あの2人いい感じよね」

「きっと麗は惚れているわ」

 

やめてください…。

長生きしたいんですううう。

 

 

 

いきなり抱きついて来る金剛、鳳翔、時雨、龍田(いつものメンバー)

袖を引っ張る加賀…仁王立ちする武蔵。

集まる艦娘達

 

「私達がいるんだからね?よそ見はダメよ?」

 

 

 

 

麗さんの元に集まる艦娘達

「いやーウチの提督もいいと思うんだけどなあ〜」

「体型も良いし性格もいいし、いいお嫁さんになると思うんだけどなあ」

 

「こらっ!もう!」と言う麗さん。

あれ?少し顔が赤くないか?

 

「てか私らも提督さんの事気に入っちゃったし」

 

「えっ?」

 

 

 

 

 

 

 

「何いいいいいいいい!?!?それはダメですううう」

 

バチバチと、火花を散らす両陣営。

 

 

 

 

 

こんな時どうするかって?

任せろ…先輩から受け継いだ。とっておきがある!

 

 

逃げるんだよォォォ!!!

 

俺はたまらず逃げ出した。

 

 

 

 

 

 

 

食堂から少し離れたベンチにてふう…と、一息つく。

長門は今日の事を振り返っていた、正直怖かった…

戦いが…でないもしあの砲撃を防げていなかったら…

何が指一本触れさせん…だ。そもそもあの状況を作り出してしまったのは隙を与えた自分なのだ…と。

 

 

「…提督…」

と呟く。

私はあなたが好きだ。提督として1人の男として…。

指輪を欲しいと言ったがこんな無骨な女は嫌がるだろう…。

しかしそれでも私はあなたを支えたい…。

 

「呼んだ?」

 

「@_&jvmmvG_tw.!?!?」

 

思わず飛び上がった!

「てててててて提督!?!?」

 

「はは…色々あって逃げてきた… それとな」

 

「??」

 

「コレを」

 

「……!!!!」

 

指輪(ずっと欲しかった物)だった

 

「なっ!今回のMVPは金剛だったはずだ!!」

 

そうだ今回のMVPは撃墜スコアが他の追随を許さない程を記録した金剛であった。

 

 

「MVPだから渡すわけではない…今日長門が守ってくれなかったら俺は死んでいただろう…ありがとう長門」

 

「だから… これからも助けて欲しいだから受け取って欲しい。好きだぞ…長門」

 

 

「はい…喜んでお受けします…」

泣いた。泣いて泣いて泣いた

久しく陸奥にも見せていない涙。

提督は指輪をつけてくれて…優しくキスをしてくれて…優しく抱き締めてくれた。

 

一生を懸けて 命を賭けてこの人を守ろう。

何があっても守り抜こうと…長門は強く心に誓った。

 

 

 

「むーーー!今回だけは譲りマース 」

「いいじゃないですか 提督の命を守ったのは事実ですし、MVPのご褒美はまたくれますよ」

 

 

「むっ… ああっ!お前達!見るなぁあ!!」

と長門が皆に向かって走って行く。

 

 

「みーちゃった!!みちゃったーーーー!」

逃げる覗き見犯達

 

 

 

 

「いいなあ」

と麗が影から見て呟く。

「大丈夫さ!きっとチャンスはありますよ」

と蒙大淀が言った

 

 

 

 

 

飯の時間は初めて見る様子だった。

皆がよく食べ、救の席の近くを取り合い、蒙武側は自分も座ろうと、そして麗を近くに座らせようとした。

 

「隣を譲りなサーーイー!MVPは私ヨー!?」

 

「お姉様!いくらお姉様でもここは!譲れません!!」

「俺が座る!!」

「でちー!」

 

「負けるかー!」

「この争奪戦こそ!」

 

 

皆〜飯は平和に食おうよー…

 

 

 

1日の終わりは遅くまで続いた。

皆間宮達に怒られ正座させられていた。

俺も正座させられた。

 

 

 

 

 

別れの朝はそれでもやってくる…

 

 

「2日間ありがとうございました」

「こちらこそ!色々ありがとうな!」

 

ジト目で見送るウチのメンバー。

「マタキテネ」

「ツギハワタシタチガイクワ」

 

わーい!棒読みー!

 

 

「はい!こっちも待ってますね!」

くっ!こいつ天然か!恐ろしい子!!

 

 

さて、帰ろうと促される。

「救さん!また来ます!私…私っ!!」

 

「うん?」

 

「あなたが好きです…」ボソリ

 

「ごめん!聞こえなかったよ!」

 

「負けませんからね! 見ててくださいね!」

 

「ん?あぁ!わかったよ!」

と手を振って見送る

 

 

 

「うわーー。ありゃ完全に惚れたな…」

「ええ、負けませんて…私達にってことよね」

「上等じゃない」

 

「「「「私達だって負けないから!」」」

どうした?お前達そんなに俺にしがみつきながら叫んで?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「麗ちゃん 惚れたね?」

「さあ 秘密です あなた達もでしょ?」

とにこやかに彼女は笑った。

 

 

 

 

その後彼女達の部隊は美人の多い鎮守府として有名になり

ゴリラの頃よりさらに強くなったとか。

 

 

 

 

モヤモヤする。

 

好きとは言った。確かに好きだ…でも…

出会い方が違ってたらもっと好きだっただろう…。

私は本当は楽になりたかったのだから…。

 




お気に入りが……ありがとうございます(´;ω;`)

角度を変えると悪役にも信念があると言う話を少しだけ入れてみてました
まあどう見ても悪役だったのですが…


あと人の恋路のライバルも出しておきたかったので…


あと夫婦ネタ キャラのアンケートを置いておきます
良かったらご協力お願いします


ゴリラは都合上元に戻って貰いました




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29話 冷たい氷が解けるまで

アンケートご協力ありがとうございました(๑╹ω╹๑ )


馬鹿な…
馬鹿なっ!!!
予想を覆し この子が出て来るとは
想定外だよおお!!


ネタ考案の間のお話


……何故こうなった?

 

 

何人か着任記念日が被るからとくじ引きをしてみた…結果…。

フフフ…何と言いますか…そのね?

 

 

里中 麗と書かれていたのさ!

 

 

 

 

「あのお…」

と麗さんが言う。

 

 

グッと蒙大和が親指を立てる!

お前ら…仕込んだな?その親指を曲げてやりてえ…。

 

「頑張りますね?」

何あんたも順応してんのさ…。

 

 

 

「…僕の番は!?ねえ!提督!何で!?何でなの!?」

「いや…俺も分からんが…」

「無効だよ!ノーカン!ノーカン!!」

 

「おや?時雨は随分と余裕がなさそうだな?この1日で時雨が負けてしまうとでも思ってるのかなー?」

蒙武蔵よ…煽るな煽るな!

 

 

「むっ… わかったよ!大丈夫だよ!そうだね!クジの結果だもんね!仕方ないもんね!… うぅっ」

 

時雨… だけじゃないな。

他のみんなもジト目を辞めなさい。

まあ確かにぱっと出の娘にね…うん。大丈夫だよ。

わかってるって…。

 

 

 

 

 

 

「改めて当日はよろしくお願いしますね?えと… あの… 救…君?」

 

破壊力は凄まじかった…。

 

 

「メーデー!メーデー!!提督が中破していますううう」

「傷が深いぞおおおお」

 

 

しかーし!お互いの事をよく知らずに!夫婦は難しい!

というわけで今日1日デートしてみよう!

1日夫婦は後日…ということで納得してもらった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう!今日のデートよろしくね?救君」

 

「あ…おはようございます…。わかったよ。支度する」

 

思うんだが何故皆早起きなのか?

 

 

 

 

朝食を終え出掛ける準備をした。

 

さあもう直ぐ門だぞ?  

今回は…?

 

 

 

「提督ウウウ …手なんか繋いでー!もおおおお!」

「くそおおお!少しお似合いかも?、とか思う自分が悔しい」

「蒙武の提督さんんんん 変わってくださいよおお!」

「提督!頑張ってこいよ!」

 

相変わらずの阿鼻叫喚だった。

中には壁に頭突きしまくるのも居た…。 

 

「えろえむえっさい… 我望み乞い願ううう」

やめろ!何かを召喚しようとするな!

 

 

 

「.……行って来るよ!!」

 

 

「「「「行ってらっしゃい」」」」

 

これもお約束になってきたな…。

「いつもこんな感じなの?」

 

そーだよお…面白い奴らだろー?

 

 

 

 

 

 

 

もやもやする。

 

 

私は10年前以上前から妖精が見えていた。

それが何なのか分からなかったし、周りも次第に気味悪く言うようになってからは…ひた隠しにした。

深海棲艦が攻めてきて海の大半を人から奪った。

 

人の兵器は全くと言っていいほど役に立たなかった

ある日どこで聞いたか家に軍の人が来て、私は適性があると軍に連れて行かれた。

そこからはずっと訓練の日々だった。

戦略の練り方、武器資材その他諸々、遊ぶ余裕も無ければ恋愛なんて…

でも…

昔はいたはずだった… ありふれた名前の男の子だった気がする。

それも日々の記憶に押しつぶされて擦り切れて消えた。

 

言い寄って来る人は多かった。でもそれが嫌だった!

それに軍て女はダメだと言われるのが悔しかった!

 

鎮守府に提督として着任してからもがむしゃらに頑張ってきた…。

 

戦果も上がった。少しずつ馬鹿にされなくなった…セクハラも少し減った。

私はこのままずっとこうして生きると思っていた。

でも…正直疲れていた。

 

彼に出会うまでは…

 

 

最低な出会い方だったと思う。

知らなかったとはいえ彼らを貶め、結果として…命まで狙ってしまった。

 

なのに彼は許してくれた。

何で?どうして?

そして「よく頑張ったね。艦娘を想う態度に尊敬した」とさえ。

 

 

誰かに褒めて欲しかった。認めて欲しかった。

青春を国のために人の為に…

自分を犠牲にして我慢して我慢して耐えて耐えて…

心を砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて…

それでも耐えてきた。ずっとずっと!!

あの時罰として命を奪ってくれたら…楽になれただろう。これは少し本心だ。

 

なのに彼は私が1番欲しかったものをくれたのだ。

嫌な思いをした彼が…私に……。

そして優しく撫でてくれたのだ。

 

分からなかった

 

あの日、私は泣いた。彼の胸の中で泣いた…。

今まで抑えていた全てが溢れて溢れて溢れて溢れて溢れて溢れて溢れて溢れて溢れて溢れて溢れて溢れて溢れて溢れて溢れて止まらない。

止めたくても止まらないし止めたくない。

 

彼は私が嫌がっているからだと勘違いしていた。

違う!違うの!!嬉しいの!こんな出会い方じゃなければと本当に後悔する程に…。

 

でもそれ以上に…楽になりたかった。

庇って死ねば…いい奴で終われた。もう苦しい苦労をしなくて良いと思った。

 

何故許してくれるのかと聞いても、死ぬのは嫌だとしか言わない。

  

何故?

 

 

もっと強くなろうと思えた。

この人と肩を並べるくらいに…   

 

何故?

 

好きだなあ…。

 

何故?     

 

でもこれは尊敬なのかな?

 

負けませんからね    

 

何故? 

 

 

次はもっと強くなりますからね?

 

何故?

 

何故こんな風に思うの?私は…。

 

 

もやもやする…

 

帰りの航路で気付いた。もっとあの人の隣に居たいと。 

 

何故だろう?

 

 

鎮守府に戻ってからもずっと彼のことを考えて居た。

朝も夜も昼も。寝る時も…。

 

何故?

 

きっと尊敬なのだろうと思った。

 

でも、なぜかもやもやが止まらない…。

 

 

 

何故死なせてくれなかったのか?

楽にしてくれなかったのか…?

何故認めてくれたのか?

この感情は何なのか…わからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

私の知る街へと案内した。

初めて来たらしい。

 

「隣町とはまた違った感じなんだなあ…」

「へえ… これが…パンケーキ」

 

2人で手を繋ぎ歩く。

「そこのカップルさん!これ!いかが?美味しいよ!」

と試食の団子を食べる。

 

 

 

 

 

もやもやする…

 

 

 

許してくれたのが認めてくれたのが嬉しい。

なのに…

何故この人は許してくれたのか気になって仕方がない。

なぜ怒らないのか?なぜ受け止めてくれるのか?

なぜ普通に接することができるのか?

 

この感情は何なのか…?

 

なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ?

 

 

 

 

私は耐えきれなくなり手を振り解いて、彼に問い詰めた!

 

「何でなんですか!?何故私と普通にいられるんですか!?」

 

「えっ?それは…」

 

「何故殺さなかったのですか」

 

「…………うーん…生きていて欲しいから…かな」

 

「意味がわかりません!答えになってません!」

 

彼は困ったように笑った。

それが物凄く腹立たしかった!

 

「っ!!!少し用があるので、失礼します!」

 

「…うん…待ってる」

私は走ってこの場から逃げた。

 

 

 

 

私は1人離れたところの公園でベンチに座っていた。

「…わからない」

 

 

「…何故あの人があなたを許したのか?でしょう?」

 

「!? 加賀…さん?」

西波島の加賀と赤城だった。

 

「っ!……そうです、というかついて来てたんですね。やっぱりそんなに私達はあなた達から信用されていないのね 」

 

「…」

答えない2人

「このデートとやらも終わりよ…何の答えも得られなかった 生きていて欲しい?意味がわからないわ!…楽になれると思ったのに…嬉しい自分もいて意味がわからないの」

 

「哀れね…本当に…あなたを見ているとイライラするわ」

と加賀に言われた。

 

哀れ?何よ…何なのよッ!

 

「なら答えてよ!何故あの「彼は命の重さを知っているからです」

 

命の重さ?何それ?意味わからないとイライラしてきた…

気まぐれなの?ああだめだ…思考がまとまらない。

 

睨み付けるように2人を見た。

 

 

 

 

 

加賀は言った。

この話は…秘匿事項なんだけど…と

独り言だから…あとはあなた次第ね、と

彼の事を話してくれた。

 

 

 

 

 

 

甘いわね加賀さんー

 

いいえ 私は彼を…知って欲しかっただけなんですー赤城さんー

 

ふふふ…加賀さん本当に彼のことが好きなのね?

私も早く指輪ほしいな。

 

赤城さんっー!もう…。

 

 




矛盾した考え、もやもやした感情
自分でも何を思っているかわからない
そんな時って無いですか?

明確な答えが欲しいのにもらえない


そんなお話


分割します!
後編の後!夫婦話を書きます!

そのあとのネタも少しまたアンケートにご協力ください(๑╹ω╹๑ )
大体2〜3日くらい 募集します


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30話 氷が解けた後に

私は走っていた…あの人の元に。

泣きながら走った?

 

 

知らなかったのだ。

彼がこの世界とは別の世界から来たこと…。

尊敬する人が目の前で死んだこと。

戦ったこと…殺されたこと。たった1人の知り合いもいないこの世界でいきなり戦いに巻き込まれたこと。

深海提督のこと…。

 

 

殺気のような威圧感を放っても悲しい顔をしたのは…あの人にとって 艦娘しかこの世界に拠り所がないから。

 

あの人が死んで欲しくないと言ったのは、敬愛する人を失って…自分の命すら失ったから。 

 

あの人が認めてくれたのは命を懸けて守るってことがどういう事か…命の重さを知っているから。

 

それでも戦うのは…艦娘と何の恩義もないゲームとやらの中の世界の為。

 

何も話してくれないのは…話してはいけないから。

 

それでも優しいのは……受け止めてくれるのは…すり潰されるのも、心を殺すことも…死ぬことも、失うことも知っていたからだ…。

 

謝らなくっちゃ!

さっきのことも、本当は自分がわからなかったことも何もかも!! 

 

わかった。私は…私は…この感情は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さっき居たはずの場所に彼は居なかった。

…そうだよね……いないよね。

 

「……そうだよね」

 

 

「あれ?用事終わったの?」

彼は居た。手に2つ飲み物を持って…

「はいどーぞ!寒くてさ… 麗ちゃんも1つどうぞ」

 

「ごめんなさい!!!!!!」

私は彼に抱きついた…抑えられなかった?

 

「おおう?!どうした!?」

私は言った…泣いた…。

聞いた事、私の考えていたこと、訳がわからないこと…楽になりたかった事。

何もかも喋った。乱暴な言葉もあっただろう…。

それでも…彼は何も言わず聴いてくれた…。

 

 

 

「死なせたくないんだよ。俺らは命を守る為に戦うんだから…それにね?」

「君の考えもなんとなく分かるよ、わからなくなることも…偉そうな事は言えないけどね… でも本当に君の事は尊敬してるよ!すごいと思うんだ、小さな頃からたくさん我慢したんだろうって…俺にはできないな…うん」

 

またそーやって欲しい言葉を掛けてくれる…。

 

「ねえ…寂しくないの?この世界で…帰りたくないの??昔の世界に」

 

 

「皆が居るから… 彼女達も…君も居るから」

 

「私も…?」

「そうだよ!人と艦娘とって区別は俺にはないけど…俺にとって君ははこの世界で大切な人だよ」

 

「わかりました…」

きっとこれが彼の普通なんだろうな…。

ダメだ…こんな 私…じゃダメなのに…資格もないけど。

 

 

 

 

 

「さあ!デートの続きだ続きだ!」

 

「場所わかるの?ここら辺の」

 

「わかんねーや!!」

 

 

 

 

麗ちゃんにゲームセンターに連れて来てもらった。

 

エアホッケーでボコボコにされた!

小太鼓の名人でも負けた!

ガンシュートでも負けた!

この娘には容赦という言葉がないのだろうなあ…。

 

でもクレーンゲームだけは苦手らしい!!

「はい!このぬいぐるみとれたよ!」

俺が少し得意げにできた瞬間だった…店員に取れやすくしてもらったのは内緒だ!

 

 

 

救君がアザラシのぬいぐるみをとってくれた。

何回か両替に行ってたのも、店員にお願いしてたのも知っている。

 

でも…嬉しいな…。

きゅっとそのぬいぐるみを抱きしめた。

「えへへ」

 

 

プリクラも撮った…

と言うより写真に近いんだね。

でも印刷されたのを見て笑みが溢れる。

 

 

 

手を繋いで歩く。

さっきとは違う繋ぎ方で、指を絡めて。

 

たくさん迷惑を掛けた…好きになる資格なんてあるのだろうか?

でも、ああ…好きなんだなって思った。

 

私もあの輪の中に入りたかったのだ。

わがままな話だが…言い寄らない、馬鹿にしない他の人とは違うこの人に惹かれていたんだと思う。

私を罰しない特別な理由が欲しかったのかもしれない。

 

私は最低だろう…

こんな感情をぶつけて、掻き回して…。

知ろうとせずに感情的にぶつけて、逃げて、他の人に教えられて、戻って泣いて…甘えて。

 

 

でも、それでも優しく受け止めてくれて大切な人と言ってくれるんだもの…もっと隣に居たくなっちゃったよ。

 

もうすぐ帰らなきゃいけない。

次は夫婦で1日居られるけど、それも楽しみだけど…。

今この時がとてつもなく愛おしい。

 

 

帰りの船を待つ港で私は言った。

 

 

「救君」

 

「うん?」

 

「私、あなたが好き」

「こんな私だけどね それでも好き。あなたの周りには沢山の艦娘が居るけど…重婚してるけど… 私負けたくないな」

 

次の1日夫婦の時はもっと楽しく幸せに一緒に居たいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えへへ」

自室でぬいぐるみと写真を見つめる麗。

写真は綺麗に写真たてに入れられている。

「好きって言っちゃったなあ…」

 

負けられなあなぁ… 頑張らなくちゃ!

 

この頑張りは嫌じゃない…そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

世話の焼ける人ねーー

 

ライバルを増やしただけでは?加賀さんーー

 

私は負けません 提督の隣は譲れませんーーー

 

ふふふ 私もその1人なんだけどなあーー

 

 

 




なんとなく 考えにドロドロとした何かを持たせたかったのですが
思考もなにもかもぐちゃぐちゃな麗というキャラ付けで行きました

本心で庇ったのに 楽になりたかった
認められて嬉しいのに 理由がわからない

そんな彼女の考えことを吹き飛ばすような 救の優しさの理由


ややこしくなりましたが  
結果として彼女も堕ちました

次回 はその麗ちゃんが1日嫁になります

大丈夫か(๑╹ω╹๑ )鎮守府!!




アンケートのご協力をお願いします(๑╹ω╹๑ )
5/19くらいまで募集します たぶん


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31話 紫陽花の咲いた日に

少し仕事が立て込んでいるので間話で投稿
少し湿っぽい話


この季節がやってきた…。

 

 

梅雨時期でジメジメして中々寝付けないもんで、門番をする川内と話をしていると…

ドンドンドンと鎮守府の門を叩く者が居た。

 

「ただいま遠征から戻ったであります!あきつ丸であります!」

 

初夏の前のそんな話だ。

 

 

 

 

 

 

 

「いやー…今回の遠征も大変でありました!資材はこちらに置いておくでありますね!」

 

「う…うん、お疲れ様…」

 

「あれ?もしや提督殿…このあきつ丸の事をお忘れでありますか?

南南東鎮守府より何年も前にこちらに配属になったじゃないですか!遠征ばかりでお忘れでありますか?」

 

「いや…そんな事はないぞ? 遠征任務ご苦労だった!傷もあるだろう!入渠して補給するように!」

 

「はっ!」

 

 

 

 

 

……俺の艦隊にあきつ丸は…居ない…。

ゲームをしていた時もこの世界でも。

 

 

そして何より…南南東鎮守府なんてものは無い。

そんな名前の鎮守府は存在しないのだ…。

 

なら彼女は…?

 

 

 

「あの、提督…」

と大淀が喋りかけてくる。

 

「何だお「只今戻ったであります!」

 

「「え?」」

 

「戻ったであります… 入渠はすぐ終わったでありますよ?」

 

いやいやいやいや!

どう見ても中破以上だったろ?高速修復剤は使ってないはずだ…。

 

「わかった、あきつ丸は補給を行い、部屋で休むよう……。部屋割が変わったからな…大淀、案内してやれ」

 

「えっ…あっ、はいっ!」

 

俺は明石のところへ向かった。

 

「あきつ丸の事…よね?」

 

「ああ 入渠が一瞬で終わったのは本当か?」

 

「ええ…でも、厳密に言うと0だったのよ」

 

「時間がか?どう見ても中破だろう!そんなことがあるはずが…」

 

「でも事実なのよ…」

 

うーんと唸る2人…そこに大淀がやってくる。

「提督…」

 

「彼女ははぐれ艦娘かもしれません」

 

 

鎮守府の崩壊、任務で帰投できなかった艦娘。

 

どこかにドロップし、どこの鎮守府にも属さない艦娘。

 

深海棲艦に倒されるか、

人への報復を恐れ雷撃の処分を受けるか、

拾われるか…

そんな存在が居るらしい。

 

 

入渠0の原因は長い間中破でいた事らしい。

もう傷は治らない…どころか、恐らく彼女はすでに限界なんだろうとのことだった。

 

 

 

 

彼女はその1人なのか?

 

 

 

 

 

恐らく彼女の言う鎮守府は想像上の鎮守府なんだろう。

彼女は提督に会いたくて会いたくて旅を続けたんだろう。

深海棲艦に襲われ 今日みたいに門を叩き追い返され、ボロボロになりながらここに辿り着いたんだろう…。

 

 

 

 

「あきつ丸をこの鎮守府のメンバーとして扱う」

それが俺にしてやれる事だった。

 

 

「金剛殿は相変わらず提督殿がお好きですな!」

「イェース!とーってもラブラブネー!」

 

 

「相変わらず鳳翔殿のご飯も、間宮殿のご飯も美味しいであります!」

「本当?嬉しいわ」

 

「し…島風殿…早いです 」

「あきつ丸おっそーーい!置いて行くよー!」

 

 

「はあ…立派な紫陽花の花ですな」

「すごいでしょう?僕らで育てたんだよ?」

 

 

そんな日があり…

 

 

「あきつ丸部隊!戦闘を開始するであります!」

以前からやっていたとのことで旗艦を務めてもらった。

無論 海域的にはそこまで危険で無い轟沈の可能性が低い所でだ

しかし、被弾しても沈む事はなかった。

 

 

 

「勝利であります!提督殿!」

「おおー!よくやってくれた」よしよし

 

「照れるであります…///」

 

 

「おいしーなー!あきつ丸ー!」

「でありますな!提督〜提督殿は昔からこのわらび餅が好きだったでありますなあ…」

 

 

艦娘達も最初はぎこちなかったが受け入れてくれて行った。

 

徐々に慣れ親しみ、俺の中でもあきつ丸が居るのが当たり前になっていた。

 

 

 

 

そんな日が続いたある日の夜

 

俺は目が覚めるとあきつ丸が窓際に立っていた。

 

「提督殿?起きたでありますか?」

「ん…寝れないのか?あきつ丸」

 

「はい…良かったら少し散歩をご一緒に…」

 

「あぁ…」

 

月明かりに映る彼女はいつもより白く儚げだった、

 

 

 

 

紫陽花の咲く道を歩く。

時雨達がお世話をする花がたくさん咲いていた。

 

 

「ありがとうございます提督殿」

 

「ん?何がだ?」

 

「あきつ丸は思い出したであります 自分がどんな存在か…。

ある日気づいたら海の上に居たであります。

深海棲艦に襲われ戦い…資材のある所で資材をかじり生きていたであります。何度か鎮守府の門を叩いたでありますが門前払いか…雷撃の処分から逃げるしかありませんでした…それでも私は提督に…自分の提督に会いたかったのであります」

 

「いつからだったか…私の心は壊れたであります…遠征中なんだ!配置転換の途中なんだ!と言い聞かせたであります…でも傷つけど傷つけど

現実は変わらなかったであります」

 

「寂しかった…辛かった…なんで私だけこうなの?と思ったであります。岩陰から…演習を、遠くから鎮守府を見るたびにそう思ったであります…皆輝いて見えたであります」

 

 

「あきつ丸…お前」

 

あきつ丸が涙を流していた。

 

体が淡く光っていた。

淡く…儚げに。

 

 

「提督殿…しってるでありますか?紫陽花の花は梅雨の時期だけしか咲かないらしいであります。雨が途切れると枯れてしまうとか…時雨殿が教えてくれました」

 

 

「あきつ丸!」

耐えきれなかった。

彼女に触れようと…抱きしめようとした。

 

そんなに辛い思いをして、それでもここまで来たじゃないか!

人を嫌いにならず…ずっとずっと探して来たじゃないか!

 

 

 

なのに…その手は彼女に触れる事なく彼女を透き通った。

 

「なっ…!?」

 

「確かに私の艦生は嫌なことばかりだったであります。人を恨んでないか?と言われたら…少し悩むところもあります。皆が輝いて見えて羨ましくて、寂しくて… 辛い旅だったであります」

 

ああ…彼女は…

 

 

「でもここ数日で艦娘としての生き方を謳歌できたと…思うで…あり…ますよ!」

 

 

「まだ大丈夫だろ!?!行くな!くそっ!このバケツで」

 

バケツを使ったが…高速修復剤は虚空を舞い地面に散らばるだけだった。

 

「高速修復剤がもったいないでありますよぉ」

 

 

「なら改造は!?」

ダメだ…触れる事すらできない!

これでは工廠に連れて行くことも…。

 

「レベルが少し足りないでありますよ…」

 

 

何故だ!何故何もできない?

何故彼女は消えなくては…と考えて思い出した。

 

中破…が続き体は限界だった。

相手の攻撃で轟沈しなかった。

入渠でも何も意味がない。

 

彼女はもう既に何もかも限界で…心だけで彷徨っていたのだ。

 

「あきつ丸ッ…お前は…」

 

「ありがとうございました提督殿!このあきつ丸!最後にとても幸せな瞬間を味わえましたであります!」

 

「提督殿と食べたわらび餅、一緒に育てた紫陽花の花、優しい皆さん…。 皆さんもありがとうございました!こんなわけの分からない奴を仲間と認めて…最後に良い思い出をくれて…本…当に…ぐすっ」

 

「行くなよ!お前はもうウチのメンバーなんだよ!頼む!行かないでくれよ!なあ!」

 

「それは無理であります……でも…そこまで言ってもらえて幸せ者であります!それだけで今まで生きて来て良かったと思えるであります!

だから最後にもう一つわがままを聞いて欲しいであります」

 

「何だ?」

 

 

「笑顔で見送って欲しいであります、そしてこんな艦娘が居たことをたまに…思い出して欲しいです 紫陽花の花の咲く季節にだけでいいであります」

「うっ…うあっ…」

 

 

 

行くのか?

俺は…どうしたら……

俺にできる事はないか!?このまま終わらせたくない!

 

 

 

「あきつ丸ッ!!!」

俺は涙を堪えず、彼女の名前を呼んだ 。

 

 

「はっ!!何でありましょうか!」

あきつ丸は綺麗な敬礼で返事をした。

 

「只今より!お前にもう一度、遠征の任務を言い渡す!!」

こんな言葉しか出ない…それでも!!彼女を本物にする!!偽物なんかで終わらせたりはしない!

 

「…提督殿……」

 

「長い長い遠征になるぞ!だが!お前にしか出来ない任務だ!!!

危険だろう。きついだろう。だが…それでも必ず…必ずっっ…戻ってこい!!俺は…信じて待っている!!!いつまでも…待っている!」

 

 

 

「…提督殿は…… 本当に… 」

「はっ!!!!確かに!あきつ丸!その任務承りました!!!必ずや!あなたの元に帰ってくるであります!どれだけ掛かろうと…必ずやあなたの元に!!!」

 

 

「       ありがとうございます…提督殿……」

 

 

お互い敬礼をしながらぐちゃぐちゃになった笑顔で言い合った。

そして…

 

 

彼女は光となって消えた。

 

「あきつ丸っ!!」

光を掴みにかかった。

でも手の中には何も残らなかった。

その手をぎゅっと握りしめて…。

 

泣いた!

 

ここ数日での思い出しかないのに…

泣いた。膝から崩れて泣いた。

救えなかった…何もしてやれなかった!

くそっ!くそおおおおおおっ!!

 

 

「提督…提督はよくやったよ…最後に偽物を本物に変えたんだ…幸せだったと思うよ?彼女は」

時雨だった。

いつの間にか皆が居た…。

 

「提督…」

と時雨が抱きしめてくれた。

俺は泣いた、子供のように泣いた… 。

誰も皆黙ってそばにいてくれた、誰も何も言わなかった。

 

 

彼女の育てた紫陽花が風に少し揺られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから時月日が経ち、またいつもの鎮守府に戻った。

執務室の一角には一緒にいつかに撮った写真が飾られてある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相変わらず…ジメジメするなあ梅雨時期は…。

 

 

紫陽花の花が今年も咲いたよ!と時雨から報告を受けた。

 

窓から見える紫陽花は綺麗だった。

 

ふと、1人のメンバーを思い出し写真を見る。

写真に写る彼女は長い長い遠征に出ているメンバーだ…。

ボロボロの姿なのに満面の笑みを浮かべて敬礼する彼女だ…。

俺は今も帰りを待っている…

 

 

さてと、執務だな!

と大淀と書類作業を始める。

 

 

すると

 

 

コンコンと執務室の扉がノックされる。

 

「どうぞ」と大淀が言う

哨戒組の帰投報告の時間だろう。

 

「失礼します」

と扉を開けて彼女は入ってきた。

 

入ってきた彼女は何も言わなかった。

 

「て…提督ッ」

と、大淀は驚いていた。

 

何だ?と、俺も視線を大淀が向ける先に向けた…。

 

 

 

 

ああ… あぁ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督殿!お待たせしました!!!!お約束通り!このあきつ丸!遠征から戻って参りましたであります!!!!!」

 

「いえ違うでありますな…ただいま遠征から戻ったであります!あきつ丸であります!!」

 

 

とどこかで聞いた台詞が聞こえてきた。

そこには、涙目で綺麗な敬礼をしながらあきつ丸が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

今年の梅雨のジメジメは嫌いじゃないな

と俺は梅雨の時期が少し好きになった

 




麗ちゃん編は現在作成中です!
間が空きそうな気がしてので投稿!

この話はストックからの解放となります
時系列的には少し先の話


ほぼ他の艦娘がそんなに出ない話でした
初期の頃から構想がありました

あきつ丸帰ってきたけど… 寂しのはいやだもの!

気付いたら30話超えてた…
お気に入りの数がっっ!!
ありがとうございます!
本当にありがとうございます!
これからも頑張れます!


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32話 この幸せが永遠であるように  提督 提督ト1日夫婦 ①

麗ちゃん回
今回も二回に分けられます(๑╹ω╹๑ )


「ねえ…何で前日から居るの?」

「武蔵が行きなさいって言ったから」

 

「ねえ…何で布団を用意しているのに俺の布団の中にいるの?」

「武蔵がそれくらいやりなさいって言ったから」

 

「ねえ…何で抱きついてるの?」

「武蔵は関係なく私がしたいから」

 

え?!羨ましい?

あのね?アナタねぇ…目の前数センチの所にかーわいらしー顔があってさ?いい匂いがしてさ?何か…柔らかいのがさ…!

毎回続いてみ?やべえから!

何がって?わかんだろ?

 

フフフ、俺だって男なんだよー?ドキドキするよー?

艦娘が入り込んでくる時からそうだけどこの子たちは襲われるかもしれない…なんて考えてるのだろうか?

 

うーん、、どうしようか…

まあ…寝るしか選択肢ないけどね

とりあえず撫でとこう。    よしよし

 

「えへへ…幸せ」

ならよかったよ!

 

「寝ないの?」

「救君が寝るまでは寝ないよ?」

「負けないぞ?」

 

即落ちした…眠かったのだ…無理もないさ!

 

「寝顔…かわいーなあ」

ぎゅっ…

 

 

 

「おはよう!救君!もう少しで朝ごはん出来るからね?」

 

「おはよう…ふあっ…」

いつも通り朝の支度をする…。

 

 

朝食は定食だった。

卵焼きと、味噌汁と焼鮭とサラダ。

 

「美味い… 特にこのドレッシングが…」

 

「手作りしてきたんだよ」

 

「美味え…美味ぇ…これ欲しいわ」

 

「ほんと?嬉しいなあ…毎日でも作るよ?」

 

褒められて嬉しい。

今日はこのまま2人でゆーっくりしていたい。

 

「今日はどうする?」

と救君が聞いてきた。

「そうねえ…救君映画観たいっていってなかったっけ?それ行かない?」

 

「いいの!?観たかったんだ!弩ジラ」

 

「弩ジラ…?」

 

ごめんよ…麗ちゃん…。恋愛映画とかあまりみないんだ…。

 

「ううん!それ観に行こうよ!」

麗ちゃんは天使だった。

 

 

 

「今日はどちらまで?え!?映画!?暗がりで一体何を…」

「寂しいよおおおお提督うううう」

「何度目かしら!提督が他の女と手を繋いで…ううっ」

「別に羨ましくなんかないわ!」

「もう今日は提督のベッドで過ごそう」

 

1人なんかやべー奴いるけど

スルーしますわ… 程々にな?

 

 

「「行ってきます!」」

 

 

「「「「「「行ってらっしゃい」」」」」」

 

 

この瞬間は笑顔で見送ってくれるんだよなあ…。

 

「あの空気の変わりようはなんですか?」

と麗ちゃんは笑っていた。

 

 

船の上は少し風が強かった。

「きゃっ」

突風が吹き、私はふらついた。

「っと! 大丈夫??」

救君が抱きとめてくれた…

「あ、ありがとう////」

 

船の上で2人でベンチに座りコーヒーを飲む。

あったかいのはきっとコーヒーのお陰だけではない。

 

 

 

 

映画館

 

 

弩ジラ…

核実験によって生まれたやべー生物が破壊の限りを尽くす作品。

めっちゃ口からブレス吐くらしい。

お城も壊すらしい。

 

女の子と見る映画としては…うーん…。

私としては恋愛映画で2人できゅーんとしたかった。

でも救君の観たい映画だし…相当楽しみそうだし。

 

 

 

 

 

「意外に面白かった……」

悔しいが意外にも面白かった…。

可愛らしくも強いキャラだった…。

 

でもなにより映画に夢中になる救君が可愛かった…そして何より映画を見る時もずっと手を繋いでくれてたのが嬉しかった。

 

 

「ありがとうね!観れて良かったよおー!次どうする?フラフラする?そろそろお昼にする?」

 

「んー少し2人で歩きたいかなあ…いい?」

 

「うん!行こう」

 

 

2人あてもなく歩く。

繋ぐ手の力を少し強めてみる…彼は応えるように握り返してくれる

この感じる温かみと手の感触が好きだ。

 

 

「ふふっ…」

 

「どしたの?」

 

「今がとても幸せなの」

 

 

この前のデートで歩くより足取りは軽く心の余裕も違う。

好きな人と歩くのがこんなに幸せなんだなあ…。

 

「お昼何が食べたい?」

 

「救君…あなたとなら何でもいいよ??」

 

「君の食べたいものが食べたいんだ」

 

「うーん、悩むなあ…」

 

とワザとらしく悩み少しでもこの時間を長く楽しみたかった。

少しくらいならいいよね?



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33話 この幸せが永遠であるように  提督 提督ト1日夫婦 ②

結局 

お昼は悩んで悩んでパスタランチになった。

救君はどうやらカルボナーラが好きらしい。

 

美味しそうだねと言うと一口どうぞとお皿をこっちに回してくれた。

 

違うんだよ…そうじゃないんだよお…。

私はあーーん…と口を開けた。

 

 

彼は。えっ!あっ!?

と少し慌てて、恥ずかしそうに私にカルボナーラを一口くれた。   とても美味しい幸せな味だった!

 

彼はあーーんはしてくれた。なら私もそれで返していいよね?

「はい!救君!あーーん」

 

「まじか…」

と言いながらも食べてくれた。えへへ…嬉しいな。

周りも微笑ましくカップルを見るようだった…

 

「でね?麗ちゃん?このジュースなんだけどね?」

「うん」

「何かのストローは?」

「カップル専用のストローだけど?」

 

 

この女…やりおる!ストローの飲み口は2つ…しかし伸びる先は1つ…つまりっ!アレだ!2人で顔を近づけて飲まなきゃならないアレ!そう!あれ!

 

「漫画でしか見たことなかったよ」

「ふふふ、こういうのもいいでしょ?夫婦なんだからっ!」

 

なんやかんや言いながらでもしっかりと合わせてくれる救君…。

幸せだなあ…。

 

 

 

いろんな意味で満腹になった。

午後からは大きなデパートに来た。

屋上に観覧車もあるような大きなデパートだ。

 

服屋さんを見ると流行であろう可愛らしい服が並んでいる。

 

…私の今着てる服は大丈夫かな?変に思われてないかなと不安に思いながら並ぶ服を見る…。

 

「すごいねこの服… まじか!こんな値段するんだ…」

「こういう服の方が好き?」

 

「うーんあまりよく分からないかな…でも今麗ちゃんが来てる服、似合ってて好きだなあ」

 

そう言うところだよ!救君!もう…嬉しい…な。

と 思いながら両手で救君の頬を優しくつまみ引っ張る。

 

「うへえ?なにひれんの??」

 

「ありがとうね?」

 

 

 

 

「わあ…このお店すごいよ!このブローチのデザイン好きー!」

「へえー…これ2人でつけれるんだね。2つに分かれるんだ…」

 

「2人を繋ぐ気持ちーーがコンセプトなんだね」

とそのブローチを見る。見るだけだ。

 

「買う?2人に」

 

「え?」

 

「夫婦なんだから少しくらい甘えても良いんだよ?麗ちゃん」

 

「いいの?一緒につけてくれるの?」

 

「いいよ!」

 

 

さっきよりもっと幸せだった。

胸元につけたブローチが余計にそれを感じさせてくれる。

不安になるくらい幸せだよ…。

また握る手に力を込めてみる、彼は優しく握り返してくれる。

 

夢じゃないんだ。

手を繋ぐのをやめて彼の腕に抱きつき歩く。

「どうしたの?」

と彼が聞く。

幸せなの!と私は答えた。

 

 

 

2人で観覧車に乗る。夕焼けの街並みが綺麗で思わず息を呑んだ。

それと同時に今日の終わりが来るんだなと現実が押し寄せて寂しくなった。

「今日はありがとうね?救君」

「こちらこそだよ!」

「私貰ったのに何も返せてないよ」

「その為に送ったわけじゃないよ?」

 

わかってる…でも…

「ねえ?私のこと…好き…だったりする?」

「もちろん!じゃなかったら今日来ないよ…誰でもいいわけではないんだ。まあ…たくさん好きな人が居るけど」

と笑いながら彼はコーヒーを飲んだ。

 

 

よし なら

「救君!!」

 

「うんーーーーーー!?」

 

私は彼にキスをした。

何秒か?何分か?わからないけど彼に抱きつき…キスをし続けた。

 

 

「ぷはあっ……救君!大好き! 私のファーストキスなんだからね?」

 

初めてのキスはコーヒーの味がした。

 

彼の顔が紅く見えたのは夕焼けのせいだけではないのかもしれない。

 

 

帰り道も同じように腕を組んで歩く。

残念ながら私は彼とは別の道で帰るのだ。

何日も鎮守府を空けられないから…ね。

 

せめて彼の乗る船が出るまではいいよね?と迎えに来てくれた武蔵にお願いをした。

 

「楽しかった…お泊まりできないのは残念だなあ」

「また行こうね…次はそっちに行くよ!」

と彼は言ってくれた。

うん!次はもっともっと一緒にいたいな…。

 

 

「行くね」

と言った彼を見送る。

 

その彼が足を止めてこっちに引き返してきた?

「どうしたーーーー」

 

 

私の時間が止まった…。

 

「おぉ…閣下は中々…大胆だな」

と武蔵の声が聞こえた。

 

「またね」

と彼がまた船に戻ってゆく。

 

私は唇に残る感触に…ただ、ドキドキして嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てーとくーー?キスしたって?」

 

「私らは?」

「浮気者おおおお」

 

帰ってから艦娘にキスをせがまれ追いかけられる提督が居たとか?

 

 




うそっ…
おふざけのアズレンがまさか…

ご協力感謝いたします!!

というわけで次回、アズレンからキャラ出します
(๑╹ω╹๑ )


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34話 異世界からの来訪者

UA20000 お気に入り175 ありがとうございます
……夢じゃないのか?
と思うくらい嬉しいです!いつもありがとうございます(๑╹ω╹๑ )

まさかのアンケートの結果がアズレンだったので
修羅場回?
ヤベーヤツが出てきます?


とある午後…

 

 

姫ちゃんと鬼ちゃんとご飯を食べた後。

 

非番の大淀の代わりに執務にあたる赤城と秘書艦である大鳳を呼んだ時だった。

 

 

「赤城ー! 大鳳ー!」

 

 

「「「「はーーい!」」」」

 

え?

 

 

「あ…赤城?」

 

「はい!何でしょう?」

 

『どうされましたか?指揮官様?』

 

「大鳳?」

 

「はい?」

 

『どうしましたか?』

 

 

 

返事が多い!!!!!!

一体誰が……。

 

 

 

 

 

 

 

「やっとお会いできましたわ〜!指揮官様あ〜」

とアズレンの赤城が抱きついて来る。

 

「赤城イイイイイイイイ!?!?え!?大鳳もお!?!?エエエエエエエエ!?!?!?」

 

 

「指揮官様にお会いしたくてお会いしたくて…来ちゃいました」

とアズレンの大鳳が言う

 

何?来れるもんなの?まじで?

 

 

「ご主人様…私も居ります」

お前は…ベルファスト……!?

 

[重桜赤城は桜赤城、重桜大鳳は桜大鳳、ベルファストはそのままの表記とします]

 

 

 

あ…やばい。

この流れは…。

 

 

 

「ヘーイ!ダーリン!!!その女は誰ヨおおおおっ!」

「どこで引っ掛けてきたんだい?」

「提督さーん!お話がありますわあ」

「そこの女!早く離れなさいよ!!!」

 

 

ふっ… ナンテコッタイ!!

 

 

 

 

赤城、大鳳、ベルファスト。

今のところ姿を確認出来た彼女達は、アズールレーンというゲームのキャラである。 

 

え?プレイ??             

 

 

 

 

 

 してました…

だってさ?なんかね?キャラがね?…ごにょごにょ

 

 

まあ、この世界があるくらいだからアズレンの世界があっても驚かないけど… 来ましたあ!と言われるとね…うん…やばい。

 

 

 

 

「事情はわかりました… しかし提督、私たちだけでなく他のカンセン…ですか?……にも手を出していたとは…他のゲームとやらからも来ないでしょうね…」

 

うーん自信ないなあ……ブルーオースとウマ…やめとこ。

やめてっ!そんな目で見ないでって!!

 

 

「んで本当に会いに来ただけ?」

 

重桜の赤城大鳳と言えばやばーいKAN_SENとして有名だ…まさか連れ去りにきてたりして…?

 

桜赤城が言う。

「それも考えましたけど…指揮官様…幸せそうですから、壊してしまうのは…ちょっと…あのお方の指示でもありますし……それに私には!この指輪がありますからあ!」

と右手の薬指の指輪を見せびらかす桜赤城。

 

「私もよー!」

と桜大鳳。

ベルファストも静かに同じ動作をする。

 

 

やめてくれええええ!!

ごめんなさい!!!あれ!?みんなの目からハイライトが消えて…うわあ…。

 

 

 

「ぐぬぬぬ…ダーリンは本当に……指輪なら私も…ってアレ?右手なノー?」

 

ニヤリ…と左手の薬指の指輪を見せる金剛。

 

凍りつく3人(アズレン勢)

「なななななななな、しししし指揮官様!?どういうことかしら!?」

 

「いや、これはな…」

 

「私達のことは!!遊びだったと!?」

「ご主人様…この仕打ちは余りに酷すぎます」

 

 

 

とジリジリと寄ってくるヤベー奴とメイド。

 

 

「いや!それは…その」

 

 

 

「え!?なら提督は私らをそっちのけであの人達と?契りを?」

と赤城がハイライトの消えた目で迫ってくる

 

 

 

やめてくれえええええ!

ゲームのゲームの仕様なんですうううううううううううううう

 

 

 

何とか周りを落ち着かせ…られていないが…

ともかく、

「会いたくてきたわけなんだな?」

 

「はい!」

 

「どーやって?」

 

「さあ!会いたいわあと思っていたら ゲートが開いたので…あぁ!この先に指揮官様が居るわ!と思い通ってきましたわ」

 

「私は赤城が指揮官様ー!今行きますわー!って言ったからついてきたの」

 

「ベルファストは?」

 

「ご主人様のお世話はメイドの仕事ですので…」

 

「会いたかったくせにい〜」

「大鳳様…おやめください」

 

 

「へえー… 何日くらい居るの?」

 

 

「わかりませんわあ だって帰る方法も分からないですもの」

「とりあえずはここでお世話になっても?」

「ご主人様の身の回りのお世話は…(ry」

 

顔を赤らめる3人。

青ざめる俺と艦娘数人。

 

 

「では指揮官様…私をぜひ…今日は離さないでくださいね?この赤城…全てを指揮官様に捧げますわあ」

 

「全て…?」

 

 

「ええっ!この赤城の全てを好きにしてください」

 

 

脳内の危険メーターは一気にdangerまで振り切った!

 

逃げるんだよォォォ!!

何度目かの逃亡!恥?知らん!

この場に留まる方が危険なんだよおお!!!!

 

 

ああああ!胃が!胃が痛むよおおおっ!!

 

とある部屋に逃げ込む!

羽黒が居た…、

 

「提督?大丈夫ですか」

 

「はあっ…はあっ!追われてるから隠れさせて…」

 

「?どうぞ…胃薬とお水です…」

羽黒ぉ…お前は天使だよお……。

 

「ここに隠れるから誰か来ても居ないと言って!!」

と部屋の隅のロッカーに隠れる。

 

「は…はいぃ」

 

 

 

誰か来た…。

 

「提督!! …羽黒!ここに提督が来なかった?!」

 

「指揮官さまあ!!」

 

 

「えっと…あの、あのぉ」

羽黒…頑張れ…!!

 

「こ、ここには居ません…どうしたのですか?」

 

「提督がこの女と寝るらしいの!!」

 

「えっ…?」

 

 

 

 

 

 

「そこに隠れています」

 

裏切り者おおおおおおお!!!

 

ならば、このロッカーに作った隠し扉を使ってだなあ…

 

 

 

「提督ー?どういうことですか……って居ない…」

 

へへへへ!逃げてやるよぉ〜どこまでもなあ!

 

 

「よっ!提督ぅー!」

川内(夜戦馬鹿)だった、あえなく俺は捕まった。

 

 

 

「どーいうことなんですか?」

と詰め寄られる俺。

誰も桜赤城と寝るなんていってないよぉ…。

 

「夜の相手は私じゃないの?」

「私に決まってますわあ」

「ぼ、僕がいいなあ」

「2番目でもいいよーーー?」

 

 

やめてくれえええ!

 

 

と言うか… と、誰かが言った、

 

「提督は…そーいう経験あるの?」

 

 

「あーーー」

 

 

「初めてなの?初めてなの?」

じゅるり…という音が聞こえた。

 

「初めてでないなら…その女を…消さなきゃ」

 

 

 

 

またもや俺に注がれる視線という視線。

 

フフフ、脳内の危険メーターがぶっ壊れやがったぜ…。

 

 

二度目の逃亡劇が始まってしまった。

 

 

しばらくは提督の人間離れしたスピードと叫び声が鎮守府内を駆け巡ったとか。

 

 

提督ー! ダーリン!!!

 あなたー? ご主人様ー!

てーーーとーくー! くずーー!

指揮官様あーー!

 

「「「「「「「逃がさない!!」」」」」」

 

 

 

 

 




提督は基本的には貞操の危機には逃げます

興味がないわけではないんです
雰囲気とか気にしてるんです
あと作者に圧倒的に勇気がないんです

アンケートへのご協力、お気に入りの登録等ありがとうございます!
毎日ニヘラニヘラしながら書いております
ご意見や感想などお待ちしております(๑╹ω╹๑ )


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35話 叶わぬ夢を追い求む

清霜と武蔵
戦艦になりたい少女のお話


私!戦艦になりたいんです!!!

 

執務室に入るなり清霜は言った。

 

「戦艦に?なんでまた」

 

「強くてかっこいいからです!!!武蔵さんのようになりたいんです!」

 

 

「だとよ、武蔵ィ」

 

「ん?ああ… 清霜…駆逐艦は戦艦にはなれない」

 

「なんでですか!?水上空母が軽空母になることもあるじゃないですか!戦艦が航空戦艦になることもあるじゃないですか!」

 

「それは… 開発での関係とかでな…」

 

「ならなれてもおかしくない訳ですよね?」

 

「そもそも運用の目的等が違う。駆逐艦に大型の主砲が載せられんだろう? 」

 

「それでも…もしかしたらもあるかもしれないじゃないですか!」

 

まあ…実際不可能だろう。

戦艦が駆逐艦のサイズでの小回りと速さを持ち、駆逐艦サイズなのに装備と威力は戦艦… 戦況は恐らく変わるだろうが無理だろう。

戦艦だからこそ積める装備がある。

駆逐艦だからこそ出来る戦法がある。

駆逐艦には駆逐艦の強みがある、雷撃戦では戦艦すら沈める可能性の強さすら持っているのに。

 

 

 

 

 

 

 

彼女は日々努力していた。

持てない装備を持とうとしてみたり…

戦艦と同じ訓練メニューを行おうとしたり…

最初は皆可愛いものだと思っていたが、その内に狂気すら感じるようになったと言う。

 

「清霜…」

「提督…今日も頑張ります!努力すればきっと!」

 

誰も止められなかった。それが彼女の支えだと言わんばかりの努力だったからだ。しかし、演習や遠征でも戦艦の様な戦いをしようとする。

 

俺の作戦を無視してだ…。

他の艦を庇う。後ろから砲撃する、魚雷を使わない、装備出来ない艤装を持ち出す…。

 

結果として隊列はボロボロ、負わなくていい破損を負った艦娘もいた…

 

「清霜… そろそろやめないか」

やめてください…止めないでください。

 

「何でですか? 次は上手くいきますから!」

 

「清霜ッ…!!いい加減にしろっ!!!!」

武蔵だった。

 

「いいか!お前はな…」

やめてください!聞きたくない!!

 

 

「戦艦にはなれない!駆逐艦は戦艦には絶対になれない!」

聞きたくない!!!!

 

「お前の努力は知っている!だが無理なものは無理だ!見ろ!今日の作戦を…お前は味方を危険に晒したんだぞ!!」

 

「やめてください!何で…何で!否定するんですか!」

 

「話を聞け…」

「嫌です!! 皆…嫌いです!!!」

 

清霜は執務室から飛び出しそのまま帰ってこなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「私のせいだ…」

武蔵は自分を責めた。もっと配慮するべきだったと。

言葉を選ぶべきだったと…。

 

「お前に落ち度はない…止められなかった俺に責任がある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

清霜はいつも隠れて訓練する場所に居た。

 

 

何で誰も分かってくれないんだろう…。

いや、分かってるのは自分だ…でも認めたくなかった…。

 

 

「隣…座るぞ」

提督だった…。

 

「何しにきたんですか?笑いにきたんですか?!怒りに来たんですか!?」

 

「違う」

 

「なら何ですか!!」

 

「お前にはお前の良さがある…」

 

何それ?意味がわからない…。

「私は戦艦になりたいんです!」

 

「今のままでも強いじゃないか…攻撃を避ける速さ 小回りの効く旋回性能、強力な魚雷に対空戦術…潜水艦が敵の時なんか…」

 

「何ですかそれ!だから諦めろっていうんですか!? …提督はいいですよね!椅子に座って「こう動け!」って言うだけなんですから…そんなアナタに私の気持ちなんか分かるわけない…分かる訳ないのよ!!」

 

 

「………」

 

言ってしまった…最低な事を。

なのに言葉が止まらなかった。

 

「何とか言いなさいよ… アンタに…何が」 ぽろぽろ

 

 

「俺はな…」

 

と提督が口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただの一発の砲弾すら撃てない」

 

 

 

 

 

 

「魚雷も、副砲も撃てない。艦載機を飛ばすこともできない。それどころか海の上じゃあ…立つこともできないし、お前達のパンチ1発ですら即病院送りだろう」

 

 

 

 

 

 

 

「俺も何にもなれないんだ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ」

 

 

 

 

 

「俺は作戦を立てて、戦場へ行くお前らを見送り…祈り、帰りを待つことしかできない」

 

「一緒に戦場に行けたら!一緒に武装で戦えたら!!!守ってやれたら!!!!ずっとそう思う しかし俺は一発の弾丸すら受け止めることも出来ない…どう努力しても弱い人間のままなんだ…何が提督だ、司令官だ!と思う…」

 

「それがどれだけ悔しいか…お前達が帰ってこなかったら…俺の作戦が間違っていたら…毎日毎日そう思って怖くて仕方ないんだ…命を賭けてお前達と歩むとお前達に言ったのに戦場で命を賭けることが俺にはできない…」

 

 

 

 

「…提督」

 

 

 

 

私が初めてみた…提督の涙だった。

 

 

 

「提督…」

 

「すまんな…話を聞きに来たのに俺の話になってしまった…皆心配してるから、早く戻るようにな」

 

 

提督は私に謝るとトボトボと寂しそうに歩いて行った。

その背中は今にも崩れそうなほど弱々しかった。

 

私は…何もできなかった。

 

 

 

提督は私たちを支えてくれる。どんな時でも何があっても。

真摯に正面から…。

 

 

 

 

でも提督の事を誰が支えるのだろう?

 

私たちのはずなのに……。

 

提督はいつ泣いた?

いつ弱音を吐いた?

その弱音を…誰が聞くのか?

 

 

「提督だって同じだったんだ………いや、それ以上に…。ダメよ…私 このままじゃ!!!だめ!」

 

私は提督を追いかけた!待って!待って!!

 

提督も苦しんでたんだ!自分の為にだけじゃなく!私達の為に…。

 

「提督っ!ごめんなさい…ごめんなさい」

提督に追いつき、前に出て頭を下げた。

私は何と言う愚かな事を言ったのか…何故あんなことを…。

 

ごめんなさい!と精一杯謝った。

 

 

提督は儚い笑顔で言った。

 

「清霜…俺に出来るのはな

お前達を誰1人として欠ける事なくこの鎮守府に帰還させるための作戦を考える事だけなんだ」

 

「それでお前達がまた明日笑って過ごせるなら、俺は喜んでそれに取り組もうと決めたんだ」

 

「だから、だから…それを何においても俺の仕事をやり遂げるんだ」

 

 

 

 

 

 

2人で泣いた。

私の前で泣く提督と提督の前でなく私。

2人でどれだけだろうか…とにかく泣いた。

 

 

 

提督…私が間違っていたよ。

私は…駆逐艦として戦艦が羨むような駆逐艦になるよ。

だから見ていて!私が証明するから!!

提督の作戦がうまくいくってことを…あなたが私を認めてくれるように…。

 

 

 

「む…武蔵さん」

 

「清霜か!?私が強くい「負けません!私!」

 

「戦艦にも負けない!引けを取らない!そんな駆逐艦になります!なってみせますからッ!!」

 

 

 

「…そうか、何があったかは聞くまい… ふふっ私も負けないさ!一緒に頑張ろう!」

 

わしゃわしゃと武蔵さんが私の頭を撫でてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

ぼーっとベンチに座る俺は…。

 

「ダーリン?どーしたノー?」

「あなた?大丈夫?」

金剛と鳳翔だった…ほんとにいいタイミングで来てくれる。

 

色々あってな…と答えた。

 

 

抱きしめられた…。

2人とも撫でてくれた。

「ありがとう…」

すごく心地よかった…12月も近いのに寒くなかった。

 

 




いかがだったでしょうか?

自分の苦しみも 実は他の人も同じように、もしくはそれ以上に抱えるものだったり…的なお話しでした


楽しんでもるえたなら幸いです(๑╹ω╹๑ )


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36話 内に秘める 提督 加賀ト1日夫婦 ①

甘さ補給の夫婦話

いつとの分割です!


「おはようございます提督、朝食ができています」

 

「おはよう加賀、今すぐ準備するよ」

 

今までの娘達とは違う真面目な表情から始まる夫婦生活だった

 

「いただきます」

 

 

 

「…………」

 

「そんなに見つめてどうした? ご飯うまいよ?」

 

 

「いえ 美味しいならよかったです」

 

「食べないの?」

 

「私は先に食べたので…」

 

 

 

加賀は所謂表情の硬い娘だ。

不知火に並ぶクールさと鋭い眼光を持つ。

 

しかし…俺の中には一つの不安が…。

実は俺の事そんなに好きでは無いのでは?

 

でもケッコンカッコカリ受けてくれたしな…ゲームの時だけど…。

 

「なあ?加賀?」

 

「何ですか?」

 

「好き…だよ?」

 

「……そうですか…ありがとうございます」

 

 

反応薄っっっ!!

あぁ…なんか自信なくなる…。

 

 

 

 

 

…いきなり好きって何?

思わずニヤけてしまいかけました…。

あーっ!私も大好きですよ?でも恥ずかしくて言えません。

 

 

 

ー加賀は不器用だったー

 

 

加賀は赤城が来る前からウチにいた。

ツンとした感じだ時々見せる優しい所も知っている。

 

こっちの世界に来てもそれは変わらない。

俺は加賀の事も大好きだ。

 

 

でも…

 

「という訳なんですよ…赤城さん…姫ちゃん」

 

 

食器の返却に来た折に食事をしていた赤城と姫ちゃんに思わずポロリと相談した。

 

「それを私らに相談するのはどうかと…」

と姫ちゃん。

 

「全くですよ提督…私達だって提督のことお慕いしてるんですから…他の女の子の相談は…もう……あっ、 おかわりをください」

 

 

 

 

「うーんでも変ですね。加賀さんは…かなーり提督のこと好きなはずなんですが」

「提督が深海提督に拐われた時なんか真っ先に今すぐに出ます!追いかけます!って涙目で言ってたくらいですからねえ… あっ、おかわりを」

 

「不器用な娘なのねえ ……今日だってかなり早起きしてたみたいどけどね。ところで!私にはいつ指輪がもらえるのかしら?」

 

「それはまだ待っておくれよー」

 

「早くしてね?待たされすぎると溶けちゃうよ?」

溶けるの?艦娘て、深海棲艦て…。

 

 

「でも、妬いちゃいますね…あの加賀さんをあそこまで夢中にさせた提督にも、指輪を貰っている加賀さんにも」

 

「そうよねえ」

 

「そうなのか?」

 

「そうですよ」

フフフと笑う赤城。

 

 

 

 

 

釈然としない答えだったが…

 

 

 

 

今日は加賀と夫婦だ。ケッコンカッコカリしてるから夫婦なんだけど…

そーいや…このパターンは初めてだな。

金剛、鳳翔は記憶を取り戻す前だしな…。

 

 

 

「加賀!お待たせ!行こうか」

 

「はい」

 

珍しく門のところに集まる艦娘達は修羅場になる事なく終始にこやかだった。

いつものやつは?ねえ!いつものは??

と少し寂しくなったけど…

 

 

「行って来るわ」

加賀さん!?!?

 

 

「「「「「行ってらっしゃい」」」」」

 

俺のお約束がっっっ!!!!

 

「加賀さん、相当嬉しそうですね?」

「何だろう…すごく微笑ましいわ」

「頑張ってね!先輩!」

「応援…しマーース!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に今日はこれで良いのか?」

 

「はい」

 

加賀と俺とは所謂ピクニックという奴に来た。

 

加賀は俺の後ろを歩いて着いて来る。

さりげなく手を出してみたけど、その手が取られる事はなかった。

 

公園と言うのだろうか?

芝生の丘にやってきた。

丘の下は湖になっていて意外と散歩や遊びに来る人も多かった。

 

軽くシートを敷き、2人で座る。

 

 

退屈じゃないかな?と少し不安になっていると…

 

「…こうやってのんびりと自然を見るのが好きなんです」

と加賀が言った。

 

「そっか…たまにはいいな…」

 

と、俺は横に座り一緒にぼーっとする。

久しぶりかもなあ…こうやってぼけーっとするのは…。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

誰かが呼び掛けている。

優しい声だ…。

 

頭を撫でられて……

俺はいつの間にか寝ていたようだ。

 

 

 

 

 

 

隣に座る彼はさっきからウトウトとしている。

最近忙しかったのもあるのだろう、眠いんだろう。

せっかくのデートなのに半分、こう言う時くらいゆっくりしてほしい半分。

 

彼が限界だったのか私に寄りかかってきた。

仕方がないわね…と膝枕をした。

本当にぐっすり寝ているのね。

 

「提督?いつもありがとう…私たちのために」

と話しかけ頭を撫でる。

「あなたが居てくれるから頑張れるのよ…」

 

 

暖かな日差しが私達に降り注ぐ中。

私もいつの間にか寝てしまったようだった。

 




お気に入りが180…ありがとうございます(´;ω;`)

少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです(๑╹ω╹๑ )


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37話 内に秘める  提督 加賀ト1日夫婦

加賀編 その2
です!(๑╹ω╹๑ )


はっ!と目覚めた。

いつの間にか寝てたらしい。まずい!

時間は!?お昼を過ぎている!?怒ってるだろう、落胆してるだろう。

 

「加賀!ごめ…」

 

俺は改めて自分の置かれている状況を目にした

 

加賀に膝枕をされていたのだ…。

その加賀も眠ってはいるがその手は俺の頭にあった。

 

ずっと撫でてくれていたのだろう…。

 

ふと横を見るとお重があった。昼のお弁当か?

 

 

ここで朝のことが頭を過ぎる。

 

加賀は朝早くから起きていた。

…弁当を作る為なんだろう

 

ご飯も先に食べていた。

…味見を繰り返していたんだろう。

 

自然を見るのが好きなんです。

ゆっくりする時間を俺にあげたいと…そして自分の好きなものを俺に知って欲しかったのだろう。

 

 

俺が拐われた時なんか泣いてくれたらしい…。

だが俺はそんな一面をよく知らない。

 

 

きっと彼女は不器用なのだろう…。

なぜ俺は好かれてないのかと思ってしまったのか…。

 

こんなにも…こんなにも愛されているじゃあないか。

 

 

 

「加賀…」

 

 

「っ!提督?すみません…私も寝ていたようです」

 

「加賀… …加賀っ」

 

「な…何ですか 」

 

「おはよう…ありがとう……やっぱり大好きだ…」

 

「っ!………どうしたのですか」

 

「俺は君と出会えて…ケッコンカッコカリだけどケッコンできて良かったと思う… 」

 

「…」

どうしたと言うのか?寝てる間に何かあったのだろうか?

と内心慌てる私に…

 

 

「君は?」

と聞く提督。

 

 

ああ…言ってくれた。

心から待っていたその言葉…。

ご飯が美味しいとか、いつもの挨拶も嬉しいけど…

あなたの寝顔を見ながら頭を撫でられるのも嬉しいけど…

 

あなたがくれるこの言葉に勝るものなんてないわ…。

 

あなたはきっと私を堅物だと思っているでしょう。

 

私より愛想のいい娘はたくさんいるでしょう。

私よりお似合いの娘も居るでしょう。

指輪をもらった娘も…これからも増えるでしょう。

 

 

でもこの人は…今、私に向けて、私だけに…その言葉をくれた。

 

 

 

「っ!私も…です。あなたが…大好きで…愛しています」

 

それが嬉しくて、嬉しくて… 。

私はきっと今誰にも見せた事のない顔をしているでしょう。

でもいいんです。

だってあなただけに見せる顔なんですから。

 

 

 

 

 

加賀が愛してると言ってくれた。

ありがとう… ごめんな…気づかなくて。

 

と起き上がり加賀を抱きしめる。

えっ!?と涙目で顔を赤くしてる加賀と目が合う。

俺はそのまま加賀の唇に触れ強く抱きしめた。

 

 

 

「提督…このままじゃ…ずっとこうして居たくなるわ…お昼過ぎてるから…お弁当…食べましょう?」

 

 

いただきます!とお弁当を食べる。

 

ああ…美味しいよ。

君がたまに作ってくれる料理の中で1番美味しいよ。

俺は…幸せだ。

 

 

 

彼が美味しい美味しいと食べてくれる。

なんて嬉しいのだろうか。

もっと長くこの人を独り占めして居たい…。

でも、何より… さっきの……キスが忘れられません。

 

 

それからもずっと2人でのんびりした…。

ただ寄り添って座ってあの鳥は…とか雲の形が…と、他愛もない会話をしながら過ごした…。

 

時々、提督が肩に手を回して抱き寄せてくれる。それに私は甘えるのだ

 

 

そろそろ帰らなきゃな…と提督が言う。

 

 

なるべくゆっくりゆっくり歩いた。

一歩一歩を噛みしめるように2人で歩いた。

 

鎮守府の門が見えてきてしまった。

皆が出迎えてくれている…ああ今日が終わっちゃうな…なんて思う。

 

 

だから…

 

門をくぐり皆に冷やかされながら入る。

 

「提督?」

と私は繋いだ手を解き少し前に出て振り返る。

 

 

「ん?」

と提督は優しい顔で私を見る。

 

 

私は自分にできる…とびきりの笑顔でこう言った。

 

「愛しています!ずっと!あなたを!」

 

 

 

「加賀さんが… 笑った?」

「あんな笑顔見たことがない…」

「きゃーーっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……忘れていました。

今晩は一緒に寝るということを…。

 

恥ずかしいっ!!今日はアレで終わりだと思ってたので締めはと思いあの笑顔だったのですが。

今は恥ずかしくてまともに提督の顔が見れません…!!

 

しかも…

 

今私は提督に膝枕をしてもらい頭を撫でて貰っています…。

 

「今日は1日ありがとうな…加賀」ナデナデ

 

「うっ…こちらこそ…です」

 

 

「なあ」

 

「なんですか?」

 

「もう一回愛してると言って欲しい」

 

「〜ッ!!!だだだだただめです!」

 

「そう言わずにさー…ね?加賀!お願い」

 

「なら…提督が先に言ってください」

 

「えっ…恥ずかしいよ」

 

「私だって恥ずかしいですよ!」

 

 

「んーー加賀… 愛してるよ?」

「それだけですか?」

 

「わかってるよ」

とキスをしてくれる

 

「ふふふ…提督…愛してます」

 

 

あなたの温もりがこんなにも私を幸せにしてくれる。

ずっと…ずっとあなたのそばにいます、あなたをこの戦いから守り抜きます… でも今くらいはこのままで居させてください。

 

 

 

 




とある加賀の同人本で私は完璧に堕ちました
物凄く可愛かったんですよ 絵柄もドストライクなんですが加賀キャラが本当にね…やばくてね可愛くてね
もうね 悶えながら読みましたよ 

ある意味作者の妄想が全開となって生まれたこの回
後悔はしていない


ちょこちょことタイトルだったりを編集しています
カタカナ過ぎると見にくいかな?とか思ったりしています
どうぞ今後もよろしくお願いします(๑╹ω╹๑ )



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38話 正義の在りどころ ①

少し、胸糞悪い話が出てきます




「女の子に戦わせるな! 艦娘にも自由を!!」

 

「提督はー!今すぐに!艦娘を自由にするべきだー!」

 

 

 

 

「いいや!彼女達は兵器だ!提督はその地位を使って武力を独占している!徹底的な管理が必要だ」

「そーよ!いつ反乱が起きるかわからないわ!」

 

 

また来てるよ…

 

この西波島鎮守府には、鎮守府以外のものは無い。

 

彼らはご苦労なことで毎回呉越同舟のように同じ船でやってきた。

鎮守府の目の前でこのようにデモを行い、また同じ船で帰る。

 

 

大淀が帰るように促すが、帰らない。

時給制なのか?と言うくらいしっかりと17時まで居る。

 

何度目なんだよー…この集まりは…。

 

 

 

俺達は仕方なく話の為に門外へと出て行った。

遠征帰りのメンバーも合流したのでそれなりの人数での会合となった。

 

 

「我々はこの世界を守る為に…海を取り戻す為に戦っています」

 

「だからって女の子を戦場に送るのか!保護対象だろ!」

 

「いいや!兵器は確実な管理の元で運用されるべきだ!感情を持った兵器は危険だ!」

 

 

うーん…いつにも増して面倒なパターンだ…。

「おいクソガキ… お前はコイツらが絶対安全と言えんのか!?え?!」

「ワシの息子はな…お前達と同じ事を言ってな…深海何ちゃらに殺されたんだ…」

 

松さんと呼ばれるリーダー格のこの男の息子は深海棲艦との戦いで死んだらしい。

恐らく…鎮守府に攻め込まれた際に亡くなったんだろう。

 

俺の家族も!友人も!恋人が!!と、色んな声が聞こえている

 

 

はてまた

「しかし!年端もいかない女を戦場に送り出すなんてあまりに外道だ!」

 

 

「見ろ!こんなにボロボロで…彼女も軍人に毒されているんだ!この悪魔!」

 

と石が飛んできて頭にあたり少し血が出た。

 

 

「このっ!!」

と足柄が怒っている。

やめろ…平気だと言う。

 

足柄のファンであろう男が言う。

「足柄ちゃん?そんな男なんて捨ててこっちにおいでよ!君達は戦わなくていいんだ!そんな悪魔の手先にならなくても」

 

「いいえ、行かないわ…戦うのが私達の使命なの。そして私達にしかできないことなの」

 

 

「分からず屋だなあ…なら!その男でなくても良いじゃないか!」

 

「この人でないとダメなんです…あなたじゃダメ」

 

 

「何言ってんだ!奴らこそ!悪魔の手先だ!人間の敵だ!」

「俺たちの家族を返せ!」

と1人2人が艦娘に石を投げる。

 

 

「やめろ!」

と両勢力が小競り合いになる。

 

 

「やめてください!」

と大淀が言うが聞かない。

 

 

どんどんヒートアップするご一行様…

 

 

兵器だ化け物だ、いいや!保護対象だ!

 

「くだらん…やめて欲しいものだ…」

と俺はボソリと言った、俺はこの手の話題が嫌いだった…。

 

 

実力行使でも、大きな声で文句を言うことも可能だが、それは火に油を注ぐ事になるのであまり出来ない。

 

また同じようなやり取りをして、小競り合いをして帰るのだと思っていた。

 

 

 

 

 

 

だが

 

 

「うぁあああああ!!!兵器が!!俺達の家族を返せ!!!」

 

と1人の男が走ってくる。流石にこれは見逃せないと思い。

足柄…下がれ…と言い足柄の前に出た。

 

「危ないっ!」

と誰かの聞こえた。

 

 

 

男は俺に体当たりをして来たようだ。

 

 

腹部に焼けるような痛みが走った。

いいのを貰ってしまったようだった。

 

 

 

男は

「…お前が…お前が悪いんだ」

と言う。

 

何だ?

 

腹部に違和感があるな…

 

 

どうやら俺の腹に包丁を刺したらしい。

男の手に血だらけの包丁があった。

 

 

「おいおい…マジかよ」

何て日なんだ…。

 

 

 

 

 

 

「きっ…貴様らぁあぁあ!!!!!」

と艤装を展開させる…足柄。その目は完全に血走っていた。

 

「そら見たことか!それが本性だろうが」

「ひっ!ほら!やっぱり悪魔なのよ!敵なのよ!」

 

「違う!お前らが…余計なことを…!目を覚ましてくれ!お嬢ちゃん達…」

 

 

「やめろっ…」

と艦娘達を止める。

 

「しかしっ!提督…」

 

「この人たちは守るべき対象なんだ…今お前達が手を出してしまったら…」

 

「人を撃とうとしてるわ!やっぱり化け物なんだ!!」

 

「いや!洗脳されてるんだ!」

 

「よくも!提督を」

 

「化け物の指揮官も血は赤いんだな」

 

「なあ…やりすぎじゃないのか?」

「いいんだ!正義はこちらにあるんだ」

 

 

ワイワイと言いたい放題を言う奴ら…

 

 

正義と言ったか?

正義?これが?

ふざけるな

 

 うるせええぇえええ!!

 

 

と本気で叫んだ。

ピタッと音が止んだ…。

 

 

「提督…?傷が…」

腹から血が余計に流れる…

が、そんなこと知るかと俺は言う。

 

 

 

「なあ…あんたら… これがあんたらの正義か?

 

正義の名の下なら殺しも厭わないのが正義なのか?

と問うた。

 

正義はその人によって違う。

だが見る角度によっては正義は悪になり得るし悪もまた正義となり得る。

 

俺は今の仕事を正義と振りかざすつもりはない。

 

確かに女の子を戦場に送り、戦わせるのは見方を変えたら悪だろう…だがな、俺だって辛い…。

 

ただな…お前らだってそのお陰で安全に暮らせてるんだ。

 

お前らが寝ている間も…夜の海に出て戦い、お前らが普段通りの生活をしている中戦っているんだ!」

 

 

1人を指差して言う。

「お前!お前は武器を持って深海棲艦に対峙できるか?!」

 

「いや…」

とその艦娘反対派の男は言った。

 

別の人を指差し

「お前は!海の上で敵の砲弾魚雷を躱し立ち回れるか?!」

 

「…無理だわ」

と艦娘擁護派の女が言った。

 

 

「誰にも!出来ないんだよ!!!!

そして…それは、俺が1番わかってるんだ!!!!そんなこと!!!いかに自分が無力かと言うことも!

 

彼女達にしかできないんだ!

 

お前らは

口では"艦娘に自由を!"と言う

"兵器だ化け物"だと言う。

 

自分達が危なくなったら、なぜ守ってくれない!そのための存在だろう?と言って、平気で艦娘に石を投げる。

 

彼女達が何をしたんだ!!

戦ってるんだよ!平和の為に!!

 

なぜ…代わりに戦ってくれたありがとう、お疲れ様…と、誰1人として言えないんだ!

 

ならお前らが戦ってみろよ!

 

深海棲艦と戦えるから化け物なのか?兵器だ?人間だ?

そんなくだらない話なんぞ しなくていい!!

彼女達は彼女達だ!!!兵器でも化け物でもない!!

 

見ろ!この子達を!

こんなにボロボロになっても…戦ってるんだ!

涙を流そうと!お前らと同じ赤い血を流そうと!

 

こんな馬鹿げた俺達のために命を張って戦ってるんだ!

 

 

それは否定させない…。

 

俺も今、お前らが憎いよ…。

だって守るべき者に殺されかけてるんだからな

 

お前達の方が化け物じゃないか!!

 

でもな…憎む…それじゃあ意味がないんだ。

 

 

彼女達は誰かに感謝される為にやっているんじゃない…。

 

感謝されるのは海軍でも執務室に座る俺でも…上でふんぞり返ってるお偉いさん(ジジイ共)でもないんだ!

 

本来なら1番感謝されるべきは彼女達なんだッ!

非難される事なんかひとつもないんだッ!!!

 

 

今すぐ分かって帰ってくれとは言わない。

でもな…

少しでいい…少しでいいんだ…

彼女達と言う存在を分かって欲しい」

 

 

 

と俺は頭を下げた 血が止まらない。

 

「小僧…」

と松さんとやらが言った。

 

 

「俺はこの子達が大好きだ…心から愛している…だから私は…俺は、命を張って彼女達を守る。一緒に世界を平和にする!その為にここに居る

なあ見てくれよ…お前らが化け物と言う彼女達を…本当に化け物か?

 

 

 

頼む… 少しでいい…

わかって… く      れ… 」

    

ドサリと提督は自らの血溜まりへ倒れ込んだ。

 

 

「提督!?」

「提督!提督!!!」

 

 

「まずいわ!血を流しすぎている…このままじゃあ!」

「嫌よ!死なないで!お願い!置いていかないで!」

 

 

 

 

 

艦娘達が泣いていた。

たった1人の小僧の為に涙を流していた。

松さんこと、松田にはそれが不思議だった。

息子は深海棲艦との戦いで死んだ…それ以来艦娘がそう言う存在だと決め付けてきた。嫌いだった。所詮は兵器なんだと…

しかしどうだ、目の前のそれらは、ワシらの無礼に耐え、提督の心配をし涙しておる……提督兵器は涙を流すのか?

本当の化け物はどちらなのか…?

 

 

艦娘が人間か兵器か?と言う話題は尽きなかった。

松田は艦娘は危険な兵器と思っていた。感情を持った兵器なぞ危険極まりないからだ。なら今のワシらはどうだろうか?感情のままに動き剰え人を殺そうとしている。

 

 

 

 

提督の叫びはは彼の心を少し動かした。

 

 

 

 

「ワシが診る」

と松田が言った。

「こんなに人の為に涙を流せる彼女達が兵器なわけが無いかも知れん…」

 

「しかし!松さん…」

「やかましいっ!!どっちが化け物か?ワシらじゃろうが!!平気で人の領地に土足で踏み込み、荒らし…それでも彼女達は耐えておる!本当に化け物なら今頃ワシらも殺されておるわ」

 

「お嬢さん方…謝罪はあとでさせてくれい。今はこの小僧…いやこの男を救う事に協力させてくれ」

 

 

「お願いします…!お願いします!!」

と頭を下げる艦娘達

 

「おいっ!手の空いているものは手伝わんか!医務室はあるんじゃろ!運ぶぞ!!」

 

 

 

 

……

 

鎮守府の一角で手術は行われた。

幸い、軍設備故に機器類等は充実していた為に素早く取り掛かることが出来た。

 

松さんと呼ばれる医師と、助手であろう青年。

明石と夕張がサポートに入った。

 

 

 

傷は予想以上に深く難航を極めた。

 

 

 

そして、数時間後のとある大部屋にて…。

 

 

 

「出来ることはやったわい.、後はコイツの生命力次第かの…いかんせん血を流しすぎたわい」

 

 

 

 

「ありがとう…ございました」

と艦娘達はずっと頭を下げていた。

だが、全員のいる大部屋は通夜状態に静まり返っていた。

 

そうだろう。デモのつもりがこんな結果になったのだから…。

 

重い空気が漂う。

 

 

 

 

そこに間宮達が入って来た。

 

「皆さん…軽食をお持ちしました お召し上がりください」

とおにぎりと味噌汁を持ってきて、1人ずつに配って行った。

 

住民達はわからなかった。

ここまで私達がめちゃくちゃにしているのに何故彼女達はこうもできるのか?

 

「提督ならきっとそうすると思いまして」

 

さっきまで睨みをきかせていた艦娘ですら…どうぞ、と差し入れを渡している。

そればかりか

「提督を助けようとしてくれてありがとうございます」

と頭まで下げている。

 

さぞ悔しいだろう、さぞ憎いだろう。

でも、この提督と呼ばれる奴は、きっとそう言う男なのだろう。

私たちが憎くても…それじゃダメだから…と、少しでも良いから理解して欲しいと言った。

 

だから艦娘達は付いて行くのだろう。

だから艦娘達は守ろうとするのだろう…。

 

 

おにぎりも味噌汁も温かった、美味しかった。

自分達が作り、食べるのと変わらなかった…。

 

 

「私達が…間違っていたのだろうな…お嬢さん達は化け物なんかじゃない…私達と変わらない人だ」

と1人の住民が言った。

「そうだ…すまなかった…」

と松田が頭を下げた。

 

頭を下げる人も…少し難しい顔をする人もいた。

 

「…正直、あなた達が死ぬほど憎いです。今すぐ消してやりたいと思うところもあります…ですが、私たちは皆さんを守る為に戦っています。

提督も言いましたが…少しで良いんです…少しでもいいので私達を認めてください」

と艦娘も頭を下げた。

 

 

 

 

住民達は何度も謝りながら帰って行った。

後日改めて謝罪に来るらしい。

提督を刺した人は憲兵に連行されるとのことで、夜なので見送りに数名が護衛に回った。

 

 

 

 

 

 

 

これで少しは変わるといいな…と思ったその時だった。

 

 

青ざめた明石が飛び込んできた。

 

 

「て…提督が!提督が!!」

 

 

「目覚めたの?そんなに慌てなくても…」

 

 

「違うの!心肺…停止したのよっっ!」

 

「え…」

 

 

 

皆が駆けつけると夕張が泣きながら心肺蘇生を行っているところだった。

 

提督ッ!提督ッッ!!ダメ!行かないで!!

 

心電図は蘇生によって一瞬動くが、無機質なピーという音が室内に響いていた。

 

 

 

 

 




正義の定義とは何なのでしょうか?

正しい事とは何なのでしょうか?
正義と言う大義名分は人の箍を外すようです

そんなお話を書きたかったです


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39話 正義の在りどころ ②

2話目の投稿です(๑╹ω╹๑ )
もー40話 はやいですねー(๑╹ω╹๑ )


無線で連絡を貰い慌てて引き返してきた見送り組と松田達

 

「小僧!死ぬんじゃねえよ!何で…!」

 

「提督!ねえ!起きてよ!!!ねえ!!!」

 

しかし…救は目を覚さない

 

「提督ぅ…」

 

 

 

「俺はそんなつもりじゃ… ああ…すまねえ」

と刺した男は絶望していた。人を殺してしまったと。

 

 

 

 

 

 

「…提督…せっかく会えたのにこんなのって…」

その時

 

 

 

 

 

「敵襲です!!!」

 

 

無情にも悲しむ暇さえ与えてくれない敵襲だった。

 

 

 

 

「何だよッくそおおお!」

 

「嫌だ!離れたくないよ!」

「立ちなさい!あなたは提督の守ろうとしたものを無にするつもり!?」

「…行きましょう…ここを…皆さんをお守りしなくては」

 

「提督ウウウ…」

 

「お姉様…行きましょう」

「ダーリン!ダーリン!!起きてよ!起きてよおお」

 

 

 

「皆…出撃だ」

と長門が言った。

 

 

 

「うわぁぁぁぁ!!!」

「沈めッ沈めえええええええ!!」」

と一心不乱に戦う艦娘。

最早憎しみを深海棲艦にぶつけるように…

 

だが、押されている。   

 

何故か?

 

提督が着任していない鎮守府の艦娘のパワーは落ちる。

 

それが余計に見たくもない現実を艦娘に叩きつける事となる。

 

「提督ぅ…うわぁぁぁあ!」

 

「ここを通せばあの人達が…絶対に通さないわ!…きゃあっ!!」

「足柄!下がって!!ーーうわあっ!」

 

 

故に普段負けない相手にも苦戦する。

戦況は絶望的だった。

 

 

 

それを目の当たりにする住民達。

 

「アレが…艦娘の戦い…」

「ああやって守ってもらってたのに…俺たちは」

 

「あんなにボロボロになって…」

 

松田が救に話しかける…

「なあ…小僧、いや…兄いちゃん…勝手な事言って悪いが…起きてくれよ… 。アイツらを指揮できるのはお前だけなんだろう?息子が言ってたけど提督ってのが居ねえと艦娘は弱くなるんだろ?俺達が言えた事じゃねえけど…アイツらを助けてやってくれよ…」

 

「頼む…起きてくれよ」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ん?何だここは?

ちゃぶ台と…テレビ?

 

それに…

 

 

「やあ!後輩君」

 

死んだはずの先輩が居た!

 

「先輩!?!?アレ!?ここは」

「死んだんだよ…後輩君は…まさか2度目…いや3度目かなあ?死ぬのは」

テレビには艦娘の様子が映し出されていた。

 

「俺は確か刺されて……ダメだ!戻らなきゃ!」

 

「どうやって?死んだのに…もぉいいじゃないか休んでも(他に任せても)

 

「え?」

 

「君は十分頑張ったさ!元の世界でも殺され…あっちの世界に行き頑張って殺されて、生き残って殺されて…しかも今回は敵じゃなく守るべき人達にだ」

 

「…」

 

「だからさ、もう辞めよう?私とここで居よう?」

 

「それもいい提案ですね」

 

「なら!座りなよ…楽にしよう」

 

「昔の俺なら」

 

「!?どういう事だい?」

 

「今の俺は提督だから…諦められません!」

 

「また死ぬよ」

 

「それでも!」

 

「ダメだ!」

 

「帰りたいんです!俺が!行かなきゃいけないんです!」

 

「あーーーっ!もう!本当に君は…君って奴は…どこまでも優しいな」

「本当はこんな事先輩として止めるべきなのにな…私は悪い先輩だ」

 

 

「え…先輩?」

 

少し話をしようか…と先輩は言った。

 

「知ってたんだ、私が死んでからの君の事、見てたからさ」

「ありがとうね。葬式までしてもらって…あの上司を殴ってくれて」

 

「私はね…先輩だから本当は君を止めるべきなんだ。君がこれ以上苦しむ事のないようにって…でもダメだ!頑張ろうとする君を私はとめられないや」

 

「…先輩…」

 

「私はね君にお礼を言いたかったんだ!クソみたいな人生で死んだけどさ…君が陰で泣いてくれて戦ってくれて… 。あぁ私の為にこんなにしてくれる人が居たんだって思えたんだ…。後輩君、ありがとう。君のおかげで私は救われたんだ」

 

「そんな…先輩」

 

「でね?話は変わるけど何で君があの世界に転生したと思う?」

 

「いや…死ぬ前に考えたのが艦これのことだから?」

 

「うーん半分正解?あのね…人生って貯金の切り崩しみたいなものなんだよ 私が思うにだけとね?だから君の人生の残りを使って君の願った世界に行ったのさ、君は」

「でもね 貯金をそのまま!って訳にはいかないから残っていた人生を残機として君は生き返った訳だ。ただ、この前の深海提督との戦いでも同じだよ アレだけの爆風の中生きられるわけが無いだろう?だからまた残機が減った。そして今回で君の貯金は無くなったしまった訳だ」

 

 

「あの…少し意味がよく…」

 

「もう残機も無くなってコンテニューも出来ないって事だよ」

 

「なら!あいつ達は!」

 

「また同じように死ぬんだよ、艦娘として」

 

「そんな…」

 

 

 

 

 

「戻りたいかい?」

「あの、辛い世界にまた戻りたいかい?理不尽極まる弾雨の世界に!灰色の絶望しかない世界に!君は!」

 

「もちろんですよ」

 

「何故?」

 

「俺の…なすべき事が有りますから…それに愛するみんなが待ってますから!」

 

 

「なすべき事?」

 

「皆と共に暁の水平線に勝利を刻み、海を取り戻す事です!」

 

君の目は何時も真っすぐだ…僕とは違ってね。

 

 

「ハハハ!…本当に君は…莫迦だなあ……なら!先輩として最後の仕事をしようかな、細やかなプレゼントだ!君をあの世界に帰してあげよう〜」

 

 

「え!?どーやって!?!?出来ないんじゃないんですか?」

と素っ頓狂な顔をする後輩君。

 

 

「言ったろう?貯金の切り崩しの残機だって…」

「僕の残りの人生だったはずの…所謂、残機をあげるよ!だってその為にずっと見て、待っていたからね」

 

 

「え!?先輩の人生でしょう?!なら先輩がーー」

 

「僕はね…一応転生者なんだよ?」

 

「はあっ!??」

 

「まあ…現代社会というのも地獄だったのだけどね…それと」

と言うと…

「君には感謝してるから…さ… 僕は」

 

「僕!?えっ!?せ、先輩…その姿は??」

 

女だったはずの先輩は男になっていた。

「僕はね… 一度死んで転生して君のいた現代に生まれた訳だ…女としてね」

 

 

「それにね もう一つ頼みたい事が出来たんだ」

 

「頼みたい事?」

 

 

 

 

「親父に伝えてほしい。僕、松田 祐樹は艦娘を恨んじゃいないと」

 

 

 

「……えっ!?!?」

 

「ふふ…この世界で死んだのが7年前位かな?」

と女の姿に戻る先輩

 

「でも先輩は30代…じゃ」

 

「女性に年齢の話は失礼だぞ?!まあ…転生なんてそんなもんさ…

まあ!その話は置いておいて、伝えて欲しい親父…松田 祐司に

君はまだ親父のフルネームを知らないだろう?だから教えておいてあげる」

 

 

 

 

「先輩…頭がおかしくなりそうです 。それに!寿命を渡したら先輩は?」

 

 

 

「大丈夫だ!もうコンテニューはできないけど…君の中からもう一度あの世界を見せてもらうよ、君の中で生き続けるんだ…」

 

「半分っことか…「甘い事言うなよ」

 

 

「待っている人が…待たせてる人が居るんだろ?行けよ。足りない分は私が補ってやるよ… だから行け!立て!!何度でも何度でも!!!現実でもこの世界でも先輩である私の命をやるんだ!胸張って行けよ」

 

 

 

「先輩!!」

 

 

先輩が光になって俺に重なって行く…

 

「ほら…行こう…忘れんなよ?私はいつだってお前と居るから…」

 

 

ずっと言いたかった言葉を言わなくちゃ。

「加奈江先輩!俺!加奈江先輩が先輩で良かったです! だから頑張れたんです!!だから!だから後悔させませんから!!!!」

 

 

ーーーありがとうー楽しみにしてるよー

さあ共に行こうーー君の守る世界の暁の水平線に勝利を刻みに!ーーーー

 

 

 

 

 




先輩登場回
少し強引に出てきてもらいました

名前の如く 
主人公が色んなものを救い物語をめざしています
救いの形は色々ありますが…
ただ主人公も色んな形で救われ、支えられています


お気に入りが195……
本当にありがとうございます(´;ω;`)
グダグタな話ですが読んだ頂けて嬉しいです
少しでも楽しんでもらえたら幸いです




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40話 正義の在りどころ ③

3本目の投稿(๑╹ω╹๑ )


……皆が呼んでいる

 

 

俺を呼んでいる 

 

 

 

絶望感的な戦況の中…

 

むくり…と、その男は起き上がった。

有り得ない、絶対に有り得るはずがない蘇生。

 

 

「なっ…」

と驚く住民達

 

「て…提督?」

と、大淀は未だに現実を受け入れられてない。

 

 

砲撃の音が聞こえる…戦闘中か?

「待たせた…今の状況は?」

 

「……あっ…」

 

「大淀ッ!状況を!」

 

「…ッ!はっ!鎮守府近海に深海棲艦の侵攻があり!全艦で防衛に当たっています!」

 

「戦況は?」

 

「提督が不在だったので…その、押されています…」

 

「よし…なら…ここから反撃だろう?」

 

 

 

「全員に通信を繋げ!!」

 

「はいっ!!」

と、大淀が涙を拭い準備に入る。

 

 

 

「小僧…良かった…生き返ってくれたんだな」

 

「祐司さん…少し待っててくれ」

 

「!?お前… 名前…いや今はいい。行ってこい!提督とやらを見せてくれ!」

 

 

「おお!任せとけ!!」

 

大淀から知らせが入る。

「繋ぎました!どうぞ!!」

 

「全員にに告ぐ…」

 

 

 

 

通信から聞こえたのは二度と聞こえないと思ったあの声だった。

 

「て…提督なの?」

「提督は…でも」

 

「どうした?俺はここに居るぞ…生きているぞ!約束したからな!お前らと共に在ると!言いたいことはわかるな?行くぞ!反撃開始だ!!」

 

 

あぁ…良かった…。

良かった…本当に。

 

なら私達も応えなくっちゃね!

 

「「「「「「「「「よっしゃーー!!!反撃だ!!」」」」」」」

 

 

 

 

提督の存在とはこうも戦況を変えるものなのか?

息を吹き返したように…艦娘達は深海棲艦を退けて行く。

何て生き生きした顔をして居るのか…。

 

 

「川内!夕立!吹雪!六駆隊と共に魚雷を斉射!潜水艦を蹴散らせ!」

 

「はいっ!ぽい!」

 

 

「戦艦部隊!弾幕を張れ!」

 

「OKヨー!ダーリン!!任せて!」

 

「大和!武蔵!一気に決めろ!」

 

「了解!!!」

 

 

「空母部隊!全機発艦!敵の動きを封じろ!重巡部隊は兎に角攻めろ!反撃の隙を与えるな!」

 

 

「「「「「「はいっ!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

嘘のように… 手を抜いていたのか?と言うくらい…戦況はひっくり返った。

 

 

 

 

 

 

 

「最後の敵は俺のモンだ!オラァ!!沈め!!」

と天龍が最後の一機を轟沈させ。防衛戦は終了した。

 

 

 

すげえ…

これが鎮守府…

提督と艦娘…

こんな中俺たちは守られていたのか…

 

 

 

 

 

 

 

 

この日、提督と艦娘は人の心を変えたのだ。

艦娘を化け物と呼び兵器と呼ぶ反対派…

提督や海軍を悪魔という擁護派 …

それぞれが提督、艦娘の在り方の考えを改めるきっかけとなった。

 

 

 

 

 

松田は言った

 

「お前…何で俺の名前を知っている?」

「祐樹君から…俺の先輩からの伝言です」

「『これが僕の命を懸けて守ろうとした世界だよ、皆を守るために戦ったんだ…後悔はしてないよ親父』…と」

 

「祐樹に会った事が!?いや、そんな筈は…」

 

「彼は…俺の中で今もこの世界を見ています」

「どういうことだ?」

 

俺はありのままを説明した。

 

 

「何じゃ… 祐樹の奴…面倒ごとをお前に押し付けたのか…」

「お陰で戻ってこれました」

「なら胸を張って生きてくれ… そして祐樹に見せてやってくれ。平和な世界を…頼む」

と泣きながら松さんは言った。

 

 

 

とまあ…上手く行ったように見えるが…

 

痛い…腹の傷がめっちゃ痛い。

 

「そりゃ…この傷では動いたらダメでしょー」

 

 

痛いってことは生きてるってことだ…。

 

 

 

「提督ううううう!うわぁぁん生きててよがっだよおおお」

「バカバカバカ!!死んだと思ったんだからあ」

 

 

「ううう…お帰りなさい」

ありがとうな皆…。

 

 

 

「絶対安静です」

にこやかに明石は言った。

 

暫くは安静に過ごせとの事だ…。

さあ…帰ろう。

 

 

地獄の病室へな!

俺は連行されて行った




胸糞からシリアスから

次回から日常パートに戻ります(๑╹ω╹๑ )多分


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41話 戻ってきた日常…?

後日談的な…


うー!やばいやばい!

 

俺の名前は神崎 救!

どこにでもいる、ごくごく普通の鎮守府提督!

強いて違う所があるとするなら…転生したってことかな!あと3回くらい死んだ。てかこの前刺された…いやマジで!

 

只今、逃げ場を求めて全力疾走中さ♡

何故かって?

 

 

 

 

艦娘に追いかけられてるからだよオオオオオ!!

くそっ!病室で何も出来んのは暇なんだ!

食事もあーんのみ!俺はな…間宮のパフェが食いたいんだ!

というわけで脱走!

…したまではよかった。

 

え?女の子に追いかけられて文句言うな?

傷口開いて、くたばれ?

HAHAHA!

 

 

そんなこと言っちゃう君達はこの状況をよく見よう!

 

 

 

「ご主人様!お待ち下さい!怪我人が外を出歩くなんて…いけません!お説教です!」

ベルファストさん?目のハイライトが消えてますよ?

あとお説教は正座3時間コースだからマジ無理…。

 

 

「待ってくださいよー!看病の時間ですよー?」

愛宕よ…君の抱えている1mはありそうな注射器を置いてから言おうね?

 

 

「待ちなさい… もう動けないように…ベッドに縛り付けて」

不知火…君の場合は息の根を止めにかかる勢いだよね?んで?何持ってんの?メス?

 

「提督〜何で逃げるのかしら〜?」

やだぁ〜龍田… その槍…看病に必要ですか〜?

 

「あなた!何故逃げるんですか?」

空母組もベッドに潜り込んで来るからです。あと赤城が怖いので…あと加賀!矢を撃たないで!!

 

「ダーーーリン!」

…以下略!!くそっ!榛名も居たか!

 

 

「こら!救君!待ちなさいー!」

麗ちゃんと姫ちゃん鬼ちゃんもその手のロープはしまってください。

 

「フフフ!甘いなッ提督!!!」

曲がり角で長門とエンカウント…だと!?

 

長門と手四つで取っ組み合いになる。

「フフフ…提督よ大人しく投降してもらおうか…力なら私のが…」

 

「部屋のぬいぐるみ… かわいいでちゅね〜」ボソッ

 

「なぁぁぁあっ!!」

と長門は顔を赤らめた。!

普段はクールに振る舞ってるけど意外と可愛いところあんだよねえ…。

 

「隙ありイイイイ!!」

と長門を投げ飛ばし逃げ去る。

 

「くっ!卑怯だぞ!提督!」

と長門が言うが知るか!

 

「きゃっ!長門さんがやられていますうううう!」」

 

 

 

 

 

 

ハァ ハァ…

へへ…見たか?諸君!逃げることに関してはこの俺の方が上なんだよおお。

 

「何してるんですか?司令」

 

ゲェッ!!羽黒!

呂布や関羽にも匹敵する猛者に出会ってしまった…。

まずいぞ!羽黒は一見、気弱そうな女の子ではあるが…ダークサイドに堕ちたら平気で俺の隠れ場所をバラしちゃう悪い子…。

 

何でも無いぞー?とその場を去ろうとするが…

ガシッ

と俺は羽黒に捕まれた。

 

「司令?ダメじゃないですか…抜け出しちゃ…」

あら?あなた…目のハイライトがお出掛け中かしら?

 

デスヨネーー!!!

 

「はははは羽黒さん?」

ミシミシいってるよ!?折れちゃうよ!?

 

「さあ…還りましょうね」

どこに? 

土に?

 

「さあ!病室にもどりましょうね?♡」

 

 

いやぁぁぁぁぁああああ!!

帰りたくないのおおおお!!!!

 

 

無駄な抵抗と脱走劇は終わったのだった…。

ああ…間宮のパフェ…。

 

結果として

「……四六時中…見張らなくても…」

「いいえ!また提督が逃げたら困るから」

 

 

じーーっとこっちを見る足柄。

 

かれこれずっとコレだよ。

 

「なあ…足柄はどうしたのさ」

ヒソヒソと瑞鶴に聞いてみた。

 

「提督が足柄を庇って刺されたでしょう?だから気に病んでるのよ…私を庇ったから…提督は……って」

 

あー…そう言うやつか…

 

数分して演習があるから後は任せたわよ!と瑞鶴は部屋を出て行き足柄と2人きりの部屋になってしまった。

 

ベッドの隣に座る足柄に話しかけた。

「足柄?」

 

「何かしら?外出は許さないわよ」

 

 

「違うよ、その…ごめんな」

 

「何が…?」

 

「お前を守りたかったんだ…でもそのせいでお前に要らない気持ちを持たせてしまったようだ…ごめん」

 

「そ、そんな事ないわ! 本当なら私があなたを守らなければならないのに…私…あなたが死んだと聞いた時…本当に本当に…」

と俺の膝に顔を突っ伏し泣く足柄を俺はただ、優しく撫でた。

 

大切な人を失う怖さ。

ましてや自分が原因なんて…残りの人生…耐えられないだろう。

 

「ありがとう…帰ってきただろう?」

 

「もう無茶はしないで頂戴…」

 

「善処する…」

 

 

 

 

 

 

「ヨオオオオ!息子よー!生きてるかー!?」

と松田祐司が豪快にエントリーして来た。

 

あれ以来、中に息子が居るならお前はワシの息子だ!となんやかんや世話を焼いてくれる親父と化した。

 

「ありゃ!不味かったかの…」

 

俺は人差し指を口に当て"しーっ"とジェスチャーをした。

足柄が泣き疲れて寝たのだ、無理もないずっと気を張って起きていたのだから…剰え…俺が逃げ出したのだから。

 

「そうかそうか… お前をな刺したやつなんだが…お前のおかげで執行猶予付きになった…本当にありがとう…」

 

「いいんだ、代わりに艦娘の事をよく知ってほしい…彼女達は」

 

「わかっとる…だがなあ…」

 

 

鎮守府 正門

 

「榛名ちゃぁぁぁん!こっち見てええええ!!」

「電ちゃんだわ!可愛いわぁぁぁぁあ!!!!!」

「霞様ぁぁあ!曙様あ!罵ってくださいいいい」

 

 

間違った方向に進むような気がしている…

 

そして、そろそろ…

 

来たわ…。

 

「艦隊のアイドル〜那珂ちゃんだよー!!」

とテンション駄々下がりの神通と川内、ノリノリの駆逐艦を従え那珂が登場した。

 

 

「「「「那珂ちゃぁぁぁぁぁぁん!!」」」」

「俺だー!結婚してくれええええ」

「CDデビューはいつかしらーーー!?」

 

 

 

信じられないけどこれが現実

 

あれから住民の態度は一変した。

ありがたいことに食糧とか分けてくれるので助かってる。

怪我の功名ってやつか?

 

でも、

「何よあんた!キモいから視界に入らないでくれる?」

 

「ブヒイイイイイ、ありがとうございますううう」

 

全く!この世は地獄だぜ!!

 

 

 

 

うーん…でもベッドから動けないのは前に熱出した時以来かな。

 

にしても…暇だなあ…。

 

 

 

コンコン

「ダーリン?」

 

おお金剛か…。

 

「ダーリン…もう無茶はしないで下サイ…私は… 私は」

金剛が泣いていた。

金剛は空気を読んで暫くは面会を控えてくれていた。

今日はめっちゃ追いかけてきたけど。

 

「わかってるよ」

 

「わかって無いでス!ダーリンが死んだなんてもう嫌なんです…

お願いしマス…もう少し自分を大切にして下サーイ…うっ…うっ」

 

「死んで生き返るなんて当たり前じゃないデース…提督の代わりは海軍の中にも他に居ます…でもダーリンの代わりなんて何処にも居ないデース」

 

 

「わかったよ…ごめんな… 。おいで 金剛」

 

 

「言われなくても行きマース!足柄だけズルイデース!私も愛して下さサーイ」

 

金剛も俺の膝に頭をもたれ掛けさせた。

よしよし… ありがとうな…。

 

 

 

「指揮官様?許してよかったのですか?今からでもこの赤城…御命令とあらば… 世界を焼く覚悟もございます」

「私もですよ? 全てを灰塵に帰す覚悟です」

と言うのは重桜のヤベーヤツ…。

やめろお前達は物騒なのよ?

桜赤城も桜大鳳も俺が刺されて死にかけたと聞いた瞬間に目のハイライトどころか、表情が真っ暗になって…

「全て…全て灰にしてしまいましょう」とか言ってたらしい。

それぞれ、10人掛かりで止めたらしいよ。

んで…

私達が側に居なかったのがダメでしたのね?と今はここに居る。

 

ベルファストは何か脱走したのをずっと怒っていた。

正座させられたよ…この年で…4時間…

 

んで、

 

いつの間にか足柄、金剛だけでなく他にもぞろぞろ増えていったんだが?

霞やら川内やら榛名やら… まったく。

おい加賀…んだその目はお前も来たいのか?うん?

可愛いな…顔が赤いぞ?

やめてください弓を向けないで下さい!!

 

 

「幸せそうでありますな、提督殿は」

お前もちゃっかり居るじゃないか…あきつ丸よ…。

 

「幸せかなあ…」

 

まあ、悪くないかな…こんなベッドの上も…

 

 

 

 

「「「那珂ちゃんんんんんんん!」」」

 

「霞様あ!もっとお願いしますうううううう」

 

 

これが無ければな!!!

 




お気に入り200…ありがとうございます(´;ω;`)
朝起きてビビりました
本当にありがとうございます
少しでも楽しんで頂けるようこれからも頑張ります!
よろしくお願いします(๑╹ω╹๑ )


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42話 吹雪と鎮守府風紀委員会

さて…吹雪?何故あなたはこの場にいるかわかるね?

 

はい…

 

私の目の前には風紀委員会の面々が居る…

重々しい空気が流れる…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めたら…見知らぬ部屋にいた。

まあ海の上よりマシかと考える俺も中々クレイジーなのだろう。

 

それよりも俺に抱きついたまま無言の吹雪がいる。

 

「吹雪?」

と吹雪に話しかける

 

「10年です…」

「え?」

「あなたの初期艦であなたに出会ってから10年なんですよ?!」

「私は指揮官に選んで頂いたあの日を今も昨日のように覚えています

"私と一緒に頑張ろう"画面の向こうからあなたは私に言ってくれましたよね。その時から私はあなたに…あなただけに尽くす事を誓いました。

一目惚れだったんです!1-1は苦戦しましたよね。 何度も挑んでクリアしましたよね!あなたは本当に喜んで、褒めてくれましたよね。でもそのあとの建造で金剛さんが出て鳳翔さんが出てから私は影が薄くなりましたよね。改造してくれたのも覚えています…嬉しかった。

でもケッコンカッコカリは私は遅かったですよね 寂しかったんですよ?他の皆より私の方が長く指揮官と居るのに!って…第二艦隊の旗艦も務めましたね…でも第一艦隊で指揮官の隣でいたかった…秘書艦で居たかったんです…」

 

「ここに来てまた出会えたのに私にはちっとも構ってくれないじゃないですか! あなたの初期艦は私なのに…私だけのものなのに…。

他の魅力的な艦娘も増えました。 深海棲艦やら別世界の人やら!どこかの提督さんまで!!!! 心が広いんですか?たらしなんですか? 

なら私にも構ってください!好きなんです大好きなんです!愛してるんです!」

 

「吹雪…」

 

「最近は危ない事だらけで!指揮官が…死んじゃったら…私」

 

「だから…ここに監禁しました…。 眠ってる指揮官の部屋に入りここに運びました ここは私しか知りません…掃除しててたまたま見つけた所なんですから… 」

 

「今日だけでもいいんです… 見つかったら私は処罰されるでしょう…でも!私は…!!!」

 

と吹雪がキスをしてくる…

舌を絡めて 時間をかけて…。

 

 

「ぷはっ…今の指揮官は私だけのものなんです!誰にも邪魔させない…私だけの…私だけのものなんです!!」

チュッ はむ 

頬を、首を耳を舐められる。

必死に抱きつき体を擦り付け赤くなっている吹雪は、泣きながらそれを続けた。

 

吹雪が震える 息遣いが荒かった。

「ふっ くううっー!!ーーーー… はぁ……はぁっ」

 

 

「なあ吹雪…」

 

 

 

 

「既成事実さえあれば…指揮官は、ずっと私を見てくれますか?」

 

 

赤みを増した吹雪の表情は…いつもの吹雪ではなかった。

 

 

 

 

「吹雪?既成事実って!…」

 

「私はこんなにも好きなのに…他の娘ほど魅力はありませんが…」

と俺の服を少しずつ脱がせて行く。抵抗するも艦娘の力は強く…なされるがままだった。

 

何を言っても聞く様子はない吹雪。

 

 

「ごめんなあ吹雪… そこまで思ってくれてるなんて知らなかったんだ…でも…吹雪は一番最初から俺を支え続けてきてくれたもんなあ…

それに俺は吹雪に魅力がないなんて思ってないぞ?俺は好きだよ」

 

「……」

 

「指輪の順番とか…確かにあるよ。でもお前は俺の中でも何があっても一番最初に出会った初期艦だ…それは忘れてなんかいないよ…」

 

 

 

「だから、既成事実とかでなく…その…時がきたらな?」

 

 

「それはいつですか?私は何番目なんですか?誰が最初なんですか?」

 

「いや… それは…」

 

「きっと、金剛さんですよね?」

 

「わからんよ!そんなのは…」

 

きっと金剛さんなのだろうなあ…。

「意地悪な質問でした……これからは…たまには私にも構ってくれますか?」

 

「ああ!約束する!」

 

と提督は私ににキスをしてくれた… 今はこれくらいしか出来ん…と

優しいなあ…私を傷つけないようにしようとしてくれる…

 

でも…

 

 

「でも!!私は!」

やっぱり一番が良いんです…

ごめんなさい提督…

 

 

フーッ!フーッ!と息を荒げ吹雪が自分の服を脱いでいく。

「吹雪!やめろ!」

と、その時

 

ワーワーと外から声が聞こえてきた…?

なんでここが!?

 

ーー見つからないはずがないか…

艦娘達が提督と秘書艦が居ないと大騒ぎしているんだもんね…

 

そしてここも探し出され、突き止められたのだろう…

ドアをドンドンと叩く音が聞こえる。

 

 

 

ごめんなさい…と震える私。

なのに指揮官は私を押し除ける訳でもなく私に服をちゃんと着せてくれて抱きしめてくれた。

ごめんな…と、そして愛してると言って皆が入ってくる中もう一度キスをしてくれた。

 

 

 

 

 

そこに入ってくる艦娘………え?なにこの集団は?

 

そこにはどこの宗教団体だ?みたいな集団が居た…

黒い装束に仮面… 一目でヤバい集団てのは分かった。

 

 

「我ら!鎮守府風紀委員会!…なっ!目の前でイチャイチャしてる…だと!?」

「抱きついてキスしてたであります!!!」

「うらや…けしからん!」 

 

「提督を拉致監禁した罪は重い!確保おおお!」

 

 

吹雪は風紀委員会(提督大好き倶楽部)に連行されて行った。

 

 

「ご主人様…?」

「…はい」

ついでに救もベルファストに連行されて行った。

 

 

 

吹雪は仮面の団体に囲まれて査問に掛けられていた…。

 

 

「ブッキー…あのキスシーンは…効いたヨー…」

「何人かがショックで中破したからな…」

 

提督を拉致監禁というある意味で前代未聞の事件に艦娘は震えた…羨ましい!と 

そして突入時のあのキスシーンは余りにも大きな衝撃をあたえた!羨ましすぎると!

 

 

 

 

「吹雪…?」

 

「はい」

と吹雪が言う。

 

 

「吹雪の気持ちは分かっていますよ?でもね? まだケッコンカッコカリもしていない私達はどうなるの?」

と仮面のAがポツリと言う。

 

「あ…」

と吹雪が漏らす。

 

「そうよ〜?ケッコンカッコカリしてる私達だって不安な時はあるわあ〜?」

と仮面の艦娘Tが言った。

 

 

「指揮官様を困らせたことは…おいたが過ぎますが… 愛が欲しい…その気持ちは分かります…」

と異世界の仮面Aは肩をすくめ。

 

「私たちに至っては立場で言うと敵だもの」

と仮面の艦娘Hが言う

 

 

「皆…ごめんなさい…私…」

 

 

 

「はい!ごめんなさいを聞きました!この話は終わり!しゆうーーーりょーーーー!」

と査問は唐突に切り上げられた。

 

 

吹雪は拍子抜けした え?怒ってないの?と

怒ってないと皆は言う。

皆ライバルだけど…大好きな仲間だから 家族だから…。

でも、無理矢理の拉致監禁はダメだよ?と吹雪の頭を撫でながら言う。

 

 

 

「はい…!ありがとうございます、ごめんなさい」ポロポロ

 

 

 

 

「提督に感謝しなくちゃね?」

とボソリと耳元で誰かが言った

「あの時提督があの行動を皆に見せつけてなかったらあなただけが悪者になってたのよ?提督は本心でやっただろうから、そのつもりはないかもだけど…………妬いちゃう…ね」

 

え?!と振り返っても近くには誰もいなかった。

 

 

 

 

「さあ!切り替えていくわよ!吹雪!」

と仮面を外した艦娘達が笑顔で私を見ていた。

「もう昼休みよ!ご飯行きましょ?」

 

 

 

 

 

きっと皆も色々我慢してるのに…

なのに黙って…すぐ許してくれて…

気持ちもわかるぞって…

皆も優しいなあ…ごめんね…ありがとう…。

 

 

 

 

「で!で!で!!! 」

「そんなことより!提督は誰が一番て!?」

「最初の相手は…誰にしたいと!?」

「次のケッコンカッコカリの相手は!?」

 

 

 

 

質問責めだった…。

 

あ…こいつら最初から私の行動わかった上で泳がせたな?

でも思いの外暴走したから焦って突入してきたな?

一番知りたいのはソレかーー!!

 

 

皆…

私の今の気持ち返して…

 

 

 

「秘密です」

 

 

 

「なっ!?吹雪!教えてくれよ!」

 

 

 

 

本当に知らないけど…皆への仕返しです

 

「秘密です♡」

 

 

「「「「そんな! 教えてくれえええ」」」」」

 

 

 

「でも吹雪…夫婦体験の時に…今日のこと思い出して恥ずかしくて気まずくなるんじゃないかしら…」

 

「あっ…」

 

 

 

 

 

 

 

ーその頃の救は?ー

 

「提督う〜 無事でよかったよおー?」スリスリ

 

「時雨… 顔を擦り付けない」

と提督は時雨を優しく引き離そうとしていた。

 

ベルファストの説教から解放された後の救…。

 

執務室の椅子に座る救を横から抱きしめ、頬に頬を擦り付けて甘えている時雨の姿があった。

時雨は…吹雪の査問に参加せずに抜け駆けをしていたのであった。

 

「僕だって…提督のことこんなに…好き ん? アレ? 白露姉さん!? 」

 

「……」

白露が立っていた…笑顔で。

 

救ですらその姿に戦慄を覚えた。あぁ…この人を怒らせちゃいけないなと。時雨はガクガク震えていた。

 

 

「アハハ… いや!これはね!?提督が1人だから!護衛も兼ねて!側に居なくちゃと思ってさ! ね? ね?何かあったらダメでしょう?!」

 

 

「何かって今がそうでしょ?何かあった(時雨が抜け駆けしてる)じゃない…」

クイッと親指で表に出ろや…とジェスチャーをする白露。

 

「は…はい」

あんなに素直に従う時雨も珍しい…どれだけ白露は怖いのか…

 

 

 

「抜け駆けする悪い娘はいねーかーー?」

そこにさっきの団体がやってきた。

 

「あ…」

時雨がこの世の終わりみたいな顔してるわ…

 

「「「時雨…お前の事だぁぁぁ!!!」」」

 

と団体様は時雨を縛り上げる!

 

「え?!嘘!? 姉さん!? 提督!?助けて!?嫌だぁぁぁぁぁ」

 

 

時雨は強制連行されて行った…。

団体の中に吹雪らしき人が居たような気がしたが気のせいだろう…。

 

 

今日も鎮守府は平和です!




勢いでちょっと…アレなシーンをと思ったらいつもの路線だったでござる


さーせん!毎日更新が多分止まります!
何卒!よろしくお願いします(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)


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43話 居酒屋 鳳翔  小話 妹の心姉知らず

「由々しき事態よ」

 

「全くですね」

 

居酒屋 鳳翔 

今宵も色んなお客さんが来られます。

今日のお客さんは比叡さんと山城さんです。

…少し荒れているようですね。

 

 

「扶桑お姉様はあの男に夢中なんです!!」

 

「金剛お姉様と榛名はケッコンカッコカリ…しかも、ききききキスまで…」

 

 

「「はあ 不幸だ」」

 

 

「山城さんなんかまだマシですよ… 榛名お姉様も霧島お姉様も提督にゾッコンなんですから… ううっ」

 

「人数を言われると…アレなんだけど たった1人の姉の心を奪われるのもキツいわよ ヒック」

 

「あまり飲み過ぎないようにね?」

と、私は促しておく。

 

「ほーーしょーさんは提督の事好きだもんねーー…あんなののどこがいいのよー」

 

「あんなの…?」ピキィ…

 

「ひええっ!すみません!提督のどこがいいのかなと」

 

「全てです」

 

「全て…ですか」

 

「でもね鳳翔さん…私達の気持ちも少しはわかって欲しいわ」

 

「あなた達は提督の事が嫌いなの?」

 

「き…嫌いというわけではないわ!でも…姉を取られることと他の艦娘といちゃいちゃしてるのを見ると…なんだかね」

 

「あなた達はその中に入りたくはないの?」

 

「… きっと提督は私たちを好いてくれているわ… でも、私達に時間を割くくらいならお姉様にその時間を使ってあげてほしいよ」

 

「でも、そうするとお姉様や妹との時間も減っちゃうんだよね」

 

「この戦いが終わったら…提督はどうするのでしょうか」

 

倫理や道徳で言うと重婚は日本では認められていない。

今のケッコンカッコカリというものだから成り立つものなのだ。

 

であるなら、誰かを最終的には1人選ばなくてはならないのか…?

うーーーん考えたくもない…。

 

 

 

 

正直、提督に選ばれたら嬉しい、

ただ、何より姉と離れるのだけが辛いのだ…。

 

 

 

 

 

「ふーっ…お腹すいた…まだやってる?」

 

あっ…あなた… いらっしゃいませ!

大丈夫ですよ? ただ…

 

 

「提督さーーんが見えるろー?酔い過ぎて幻が見えるですよー」

「おーーい!こっち座れー」

 

「え? あぁ…」

入店と同時にそれだと… まあ…。

そうなりますよね…。

 

「失礼するぞ」

 

「お前はよー?結局誰が一番…すきなんだよー」

「ほーれす!扶桑おねーはまには気持ちはないんれすか?」

 

一番…?私も気になりますね…!

 

「いや…あのな…」

 

「モテモテだもんなー…他の娘とイチャコラしやがってよー」

 

「夫婦とかよー…。他の娘ともしやがつてよー」

 

「お姉様なんかまだ指輪もらってないーって泣いたんらろ」

 

「なのによー!いつも無茶ばかりしやがってよー」

 

「てーとくが死んだ時…お姉様と榛名は本当に大変らったんだぞお」

 

「そーよー?扶桑お姉様も…取り乱してたんらよ」

 

 

 

「すまん…としか」

 

 

 

「私らにはなあ…自慢の姉妹なんらよ… テートクには勿体ないくらいらよ」

 

「あぁ…」

 

「そーれすよ!…私らもてーとくがほーんの少しは好きれすけど」

 

「お姉様はねえ…てーとくが一番大好きなんれすならね」

 

 

 

 

「「だから…」」

 

 

 

 

「「お姉様達を泣かせたら…許さないですよ」」

 

 

 

 

 

「はやく扶桑おねーさまに…指輪あげてくらさいね」

 

 

「あぁ…わかってるさ…お前達は姉思いの優しい奴だなあ」

と提督さんは2人を撫でている。

 

「むー…撫でないれくらさーい」

「えへー…ほんの少しらけうれしーれすー」

 

 

「私の事も大切にしてくださいね?あなた」

 

わかってるよ。と私も撫でてくれるあなた。

 

 

2人は安心したのかな?寝てしまいました。

あら…もうこんな時間…?

「あなた…ごめんなさい!この2人をお部屋に運びますから…その15分後にまたいらしてください」

 

「え!?手伝おうか?」

 

「いえ…金剛さん達にも声を掛けておきますから」

 

 

ごめんなさい、と見送る私…。

 

 

 

熟睡する2人。良かったですね?提督に伝えれて…。

 

 

「との事ですよ?みなさん?」

 

奥の座敷席をチラッと見ながら言う私。

そこには金剛と榛名、扶桑が居た。

 

「sorryね!鳳翔… でも比叡がそんな事を…嬉しいデスネ」

「比叡お姉様もなんだかんだで提督の事が好きなんですね」

 

「あぁ…山城…私は幸せです…」

 

 

と3人は、それぞれの姉妹を背負って部屋に戻って行く。

心なしか嬉しそうに見える。

いいなあ…ああいうのもと思いながら私はあの人のご飯を作りあの人の帰りを待つ。

 

 

あの人が帰って来た。

「もう大丈夫?」

 

「あなた!お待たせ致しました」

 

 

「あ… 鳳翔」

 

「はい?なんでしょうか?」

 

「ただいま!」

 

「……はい!お帰りなさい!あなた!」

 

2人での幸せなご飯の時間の開始…のはずなのに…

 

 

「スターーップ!! 私達も混ぜるネー」

「榛名も混ぜて欲しいです」

「その…私も」

 

 

「鳳翔…?」

とあの人が言う

 

「抜け駆けはダメですか…ふふっ、皆で夜食にしましょうか」

 

 

ライバル達と 最愛の人と囲む食卓も悪くなかった。

 

 

 

 

 

 




居酒屋 鳳翔でのお客さんとのやり取り編です
提督成分は少し薄めの回

姉思いの妹を描きたかった……


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44話 居酒屋 鳳翔 小話 姉の心妹知らず

居酒屋 鳳翔 小話の姉編です


居酒屋 鳳翔

今日も色んなお客さんが来ます。

 

これは比叡さんと山城さんが来る少し前の話…。

 

「ヘーイ 鳳翔サン!いつもの下サーイ!」

遠征で少し遅くなったからか金剛さんと榛名さんが小腹を空かせてやってきたようですね。

 

「はい。卵焼きとおにぎりと味噌汁ですね?」

 

YESとカウンターに座る金剛さん。

「今日もお疲れ様です。はい、おしぼりとお茶です…あら?いらっしゃいませ!扶桑さん」

 

扶桑さんが来たようですね。

 

 

「空いてる…?あら、金剛さん…榛名さん 、隣りいいかしら?」

 

「オフコースね!どーぞ!一緒に食べましョー」

「はい!榛名も大丈夫です!」

 

「扶桑さんは何にします?メニューは」

 

「なら…金剛さんと同じのを下さいな」

 

 

「はい 少しお待ちくださいね?」

とおしぼりとお茶を渡して、私は料理に取り掛かります。

 

 

 

「「はあーーー」」

と2人から溜息が聞こえます。

 

「金剛さん、扶桑さん、何かお悩みが?」

 

「イェース…比叡の事で…」

「私は山城の事で…」

 

お2人の事で…?

遠征や哨戒任務でも特に問題もないお2人なのに…?と聞くと意外な答えが返ってきた。

 

「比叡はダーリンに冷たいんデース…こう…ダーリンに敵意みたいなのを向けるというか…」

 

「同じ悩みですね …山城もなんですよ…」

 

「あー…」

何となく想像がつきます。

 

「私としては仲良くして欲しいのですが…」

と榛名さんが言う…。

 

「まあ…あのお2人はかなりお姉さん達の事が大切みたいですからね

提督に取られた!って思ってるのかも知れませんね」

 

 

「私としては…ダーリンと皆と末長く一緒に居たいネー。でも比叡の人生だから無理強いはしたくないヨ… あの子にはあの子で幸せになって欲しいヨ」

 

「私もです… 私も提督が好きですが……まだ指輪もらってませんけど… 」

 

お2人は意外と妹の事を心配していたようですね

 

 

「お待たせしました」

と出来立ての料理をお出しします

 

「「いただきます!」」

うーん!美味しー!

幸せですー!

 

と言ってくれる2人…ありがとうございます

 

「まあ…必ずしも…提督と一緒になろうって考えてる艦娘ばかりじゃないのはわかります… それぞれの生き方ですから…」

 

「そうね…でも提督を邪険に扱うのは悲しいわ」

 

「わかってくれとは言わないケド…ねー」

 

 

 

 

 

そういえば…入荷したお酒を表に置きっぱなしでした。

と取りに外に出ると奥からなんと話題の比叡さんと山城さんが来るではないですか!

私は急いで中に戻り 3人に奥の部屋に入るように促しました。

 

 

 

 

3人は真剣にやりとりを聞いてるようでした。

 

あの子達はあの子たちで私達のことを考えてくれているんだ…と思っているようですね。

 

あら…提督が来ちゃった…。

 

 

 

「ダーリンに向かってお前…って」

「抑えてください!酔ってるだけですから!バレちゃいます」

 

「すごい荒れようね… 提督も黙ってすわってるわ」

 

 

そして

 

「そーれすよ!…私らもてーとくがほーんの少しは好きれすけど」

 

 

「お姉様達はねえ〜。てーとくが一番大好きなんれすならね」

 

 

「「お姉様達を泣かせたら…許さないですよ」」

 

 

 

「はやく扶桑おねーさまに…指輪あげてくらさいね」

 

と…比叡さんと山城さんが提督とやり取りをしている頃。

 

 

 

「なるほど…そう言うことでしたか…比叡お姉様…」

 

 

「ダーリンが来たのはビックリでしたが…やっぱりいい妹を持ちました。あんな事を言ってくれるなんてとてもhappyね」

 

「山城達も提督の事を嫌いでなくて…好きで良かったわ」

 

「ライバルが増えそうですネー…負けませんヨー」

 

と嬉しそうなやり取りをする3人が奥に居ました。

妹が、そんな事を思って言ってくれたのが何より嬉しかったのでしょうか…3人はニコニコしながら妹を背負い。

「大きくなりましたね」とその重みを感じながら部屋に連れて帰りました

 

 

 

さて…そろそろ 一旦退出してもらった提督が帰ってきますね。

金剛さん達が奥にいると分かると気まずいので少し時間を潰してもらいました…ごめんなさい…あなた。

 

あの人が帰って来た!

「もう大丈夫?」

 

「あなた!お待たせ致しました」

 

 

「あ… 鳳翔」

 

「はい?なんでしょうか?」

 

「ただいま!」

 

 

嬉しい言葉…本当に。

 

「はい お帰りなさい!あなた!」

 

2人でのご飯の時間です!

と、そこに

 

「スターーップ!! 私達も混ぜるネー」

「榛名も混ぜて欲しいです」

「その…私も」

 

 

「鳳翔…?」

むーっ…帰ってきましたか…。

 

「抜け駆けはダメですか…ふふっ、皆で夜食にしましょうか」

 

 

と楽しい食事を取りました!

私としては…2人きりの方が良かったのですが…仕方ありません!

 

 

 

帰り際に提督に

「鳳翔は優しいな…」と言われました。

まさか気付いていたのですか?

 

何のことですか?と問う私にに提督は ニヤリと笑うだけでした。




姉思いの妹回の…つもりでした(๑╹ω╹๑ )

あの2人組はゲームでも姉一筋な感じなので…


でも提督の事を嫌ってるわけではないのです
そこらへんの葛藤もその内書けたらなと思います


居酒屋 鳳翔編は 割と気に入りそうなのでちまちまネタとしてかけたらと思います


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45話 鎮守府の12月 ①

え?季節外れ…?

ちょっと何言ってるか分かんないです…


提督は悩んでいた…

 

やゔぁい…。

もうすぐでクリスマスだ…。

 

毎年毎年毎年毎年、提督をプレゼントしてください!

だとか…

私がプレゼントです!と私室の前にリボン包装された艦娘が居るからね。

 

 

そういう類の奴らにプレゼントを渡すのは難しい…

指輪を渡してもいいのだが…なんかね?

雰囲気とかあるじゃん?

 

 

 

まあ…ここにね、プレゼントの要望が届いてるんだが…85%は提督を下さいなのでスルー。

 

あのねえ…

クマのぬいぐるみとかさ…アクセサリーとか無いの?

 

 

お?コレは…桜大鳳の要望か?

 

「広めの個室が欲しいです」

 

おや…可愛いじゃんか…。

 

備考 

   提督との二人暮らしが出来るのが望ましい

   というか提督を備え付けてください

 

 

……次

 

 

 

 

ベルファスト

金剛

 

    紅茶セット 

    紅茶の入れ方教室の開催のお願い

 

おおーいいね!こういうのが欲しかった!

 

 

 

ベルファスト 

 備考   

     言うことを聞かないご主人様がメイドの言うことを聞くようにして欲しい 

 

 

…切実…

 

 

 

 

長門

クマのぬいぐるみ… 1mくらいある奴!

 

 

可愛いな長門は?

 

備考

    バラしたら…サンタさんの命はない

    受け渡しは一番最後でお願いします

 

脅迫かな?

 

 

比叡

お姉様の等身大銅像を設置して欲しい

 

アホか…。

 

 

那珂

24時間ライブをやりたい

超満員で!ドームで!!

 

 

 

お一人でお願いします。

 

 

吹雪

提督との2人の時間が欲しいです

 

可愛いなあ…採用かなあ。

 

 

霞、曙

首輪       提督サイズの

 

よし、アイツらはアシュラバスターの刑だな!

 

 

名前を間違える輩を叩きのめしてほしい

特に雷と間違えたりするのはなぜでしょう?

せっかく"なのです!"とキャラ付けしてるのに…

あんまりではないでしょうか?

それとも何ですか?もっと私に頼っていいのです!ってやればいいのですか?

 

…人生相談かな?

 

 

山城

藁 提督の髪の毛 五寸釘

 

殺る気まんまんじゃねーか!

 

大鳳

提督にお料理を食べてほしいです

 

嬉しいねこういうのは…こっちがもらう側になってるけど。

 

 

赤城

お腹いっぱいのご飯

 

 

…いつものな?

 

 

備考

ゆーりんち 唐揚げ

ビビンバ うどん

和牛のステーキ

栗ご飯

大根のソテー

ささみのふらい らーめん

イカリング いかやき

 

メニュー多いなー…

 

ん!? 縦読み…だと

ゆびわください … まさかな!

 

 

58 ごーや

冬でも寒くない水着

 

…もはやウエットスーツになります…。

 

 

提督とお揃いの帽子

 

おーーこういうのいいね…泣けてきたよ。

本当癒し。

 

 

大淀

仕事以外で提督に会うことがないので、寂しいです

 

 

 

大淀…。

 

 

 

伊良胡

提督の食事管理を1週間

間宮

提督の奥さんになりたい

鳳翔

あなたとの時間

 

 

……うるっ

 

伊良胡はやばそうだけど…。

 

 

 

川内

  や  「どうせ夜戦だろ!?」

 

 

姫ちゃん、鬼ちゃん

 

出番が切実に欲しいです

メインが無いので…

 

 

ごめんなさい…。

 

 

 

 

…やべえよ…本当にどしよ。

 

クリスマスパーティーはするんだけど…。

ハードル高すぎて……用意できないものばかりだよ…。

 

 

 

 

 

 

 

艦娘も悩んでいた…。

 

「自分をプレゼントする以外のプレゼントを思い浮かばないわ」

「ええ…そうね…どうしようかしら」

 

「提督さん…無欲っぽい」

 

「男の人が貰ったら嬉しいもの」

 

「女の子をプレゼントされて嬉しく無い男が居るのか?」

「むっ?そこに気づくとはやはり天才…」

 

「すみませーん。この流れ…5回目ですーしかも毎年ですー」

 

 

 

「というか…自分をプレゼントして受け取ってくれないのって結構…ショックよね」

「露出が足りないのかも-」

「この前…あの…裸にリボンで行ったら…その…寒いぞ?って優しく毛布掛けられたわ… あれは完全敗北よ…」

 

「逆に施されてんじゃん…」

 

「提督は何でも喜んでくれると思うのだけれど…」

 

 

 

 

 

「「「「「「うーーーん」」」」」」

 

 

今年もまたクリスマスがやって来る…!!!

 




はい
クリスマス、正月編です
(๑╹ω╹๑ )

え? 毎日の投稿は厳しいと何度も詐欺だ?
…サーセン
休憩中とかにちまちま書いてます






お気に入りとか感想とか評価とかしおりとか
毎日色々な反応があるのが本当に嬉しいです!ありがとうございます!
ご覧の通り メタクソなお話が多いですが 少しでもお楽しみ頂けたら嬉しいです(๑╹ω╹๑ )
ぜひぜひ コメント等お気軽に頂けたら幸いです


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46話 鎮守府の12月 ②

クリスマス(๑╹ω╹๑ )クリスマス(๑╹ω╹๑ )


わーお……。

 

私室の外には沢山のプレゼントがあった…

 

 

 

 

…人が入りそうなサイズのがな!!

 

 

 

そのうちの一つをコンコンとノックして聞く。

「暑くない?」

 

「そう思うなら早く開けて?」

 

 

「楽しみは最後まで取っておくものだから…」

と放置した。

 

 

 

何だこの袋…でっかいな…てか動いてるし

「…苦しいのです」

「痛い!踏まないで!」

 

あっ袋が転んだ

「痛いよおお!提督ー!早く開けてよおお」

 

 

断腸の思いでスルーします。

 

「パンパカパーンー!…プレゼント…です」

愛宕…お前…… 等身大のチョコレートだと?

ふむ…

細部にこだわったディテールは最早プロ仕様!

何と服も…… oh…

 

 

「提督?ケーキ作ってきたのだけど」

比叡、山城コンビが…来たな。

 

あれ?見た目は美味しそうなのに…目が痛いぞ?…原因はそのケーキかな?

 

「美味しそーだクマ 一口もらうクマ」

 

はい、犠牲者が来たぞ?

 

「うぼぁーーーー!!!!」

球磨さんは3mほど吹き飛んだ… 痙攣してるよ…。

バケツ…置いておくな…。

 

 

「あれ…? おかしいな…レシピ通りに作ったのに…」

と涙目になる2人。

「隠し味のアレがダメだったのでしょうか…」

 

何入れたんだ?

 

「*** ******(規制済)ですよ?」

 

「SAN値が減ったわ…」

 

 

 

 

 

 

「て…提督?」

おお… 霞か…。

「はい!コレ…受け取って!」

 

首輪じゃん… 。

「コレは…流石に」 ガチャっ…

 

なん…だと?

 

「今日だけでいいから!今日だけでいいから!!」

 

それはアレかな?先っぽだけだから!って感じのやつだろ?

結局なーなーになってらペット扱いされる奴だ…!

 

「えへへ♡さあ!お散歩にいくわよ!!」

と霞は首輪を引っ張って行く。

「いやぁぁぁぁつ!!!」

 

「アレ…提督ってそんな趣味あったの?」

違うよ…夕立!助けてよ!

 

「動かないでください…目に焼き付けるので」

秋雲さん…ネタにしないでね?

 

「……」

無言で首輪をもってこないで…?

 

その後

 

「新薬の実け…ゲフンゲフン疲れの取れる薬をプレゼントします」

とか

ーー検閲済ーー

とか

沢山あった…

 

イブでコレだぜ?

 

 

 

 

 

 

さて…夕飯の時間は食堂でのパーリータイムだ!

間宮、伊良胡、鳳翔、麗ちゃんが頑張った!

 

チキンを始め、定番ものから和風ものまで幅広く豪華な料理のオンパレード!!最高だぜ!

さっそくステーキから……

「提督?お野菜から食べましょうね?」

 

伊良胡のエントリーだった

「クリスマスだし…「お野菜を」」

 

「後で食べ「先ず食べましょうね」

 

「わか「私が一生懸命作ったんですよ?」

 

わかったよって言おうとしたのに…。

 

伊良胡は意外と強い子だった…

 

 

伊良胡が満足する頃には…野菜の食い過ぎで お肉が食べられないよう(´;ω;`)

 

 

「たまには私のだけ食べてくださいね?」

策士であった…

 

 

 

 

特大ケーキは4人で作った特製ケーキだった。

 

間宮が一緒に切りましょう?と言ったところで「待った!」が入った。

 

そのケーキはウエディングケーキに見えるんだけど…と。

「そんな事ないわよ?」

と4人は目線を泳がせて反応した。

 

 

ケーキは美味しかった…。

 

 

 

 

んで、皆が寝静まった頃に俺は動き出す。

皆の部屋にプレゼントを置きに行くためだ…

 

駆逐艦達はサンタクロースが来る!と息巻いて起きてたが…ほぼ全滅した

不知火とかは注意しないとやられるからね。 

去年は死にかけたよ…マジで…。

 

プレゼントを置いた瞬間に、その手をガッと掴まれて組み倒されたよ

その後めっちゃ謝られたけどね。

 

 

川内は言わずもがな…。

「おほー!プレゼントも嬉しいけど今から夜戦いかない?」

とめっちゃイケボで言ってくる…新手のナンパか?と言いたくなる。

 

金剛達は紅茶でお出迎えしてくれる。

金剛だけが起きてる事の方がが多いが…。

2人でゆったりティータイム… そしてその後の配達に少しだけ付いてきてくれる。

 

間宮と伊良胡はそれぞれの台所に置いておく。

あの人ら早いからね…朝…だから起こしちゃダメだからね。

 

 

そして、

プレゼントを配り終える頃に仕込みをする鳳翔の元へプレゼントを届けに行く。

ここ最近のクリスマスはこの時間に仕込みをしている。

年末は忙しいんですよ?と言うが…本当は2人きりになりたいのを知っている

 

「今年も遅めにサンタクロースが来ましたね」

「起きてる悪い子にはないよー」

「まあ……ならサンタさんへのこのお夜食は無しですね」

 

なんてやり取りをして2人でゆったりする

 

「メリークリスマス!鳳翔」

「メリークリスマス、あなた」

 

 

 

 

来年も、こう続いていけばいいのにな…

 

 

 

 




比叡と山城は本気で提督を喜ばせたくてケーキを作りました
ただ、材料に深淵の何かを入れたので ああなった訳ですな


当分は日常パートが続く予定です
嫁話も入れます(๑╹ω╹๑ )

Siri明日は少し先に


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47話 鎮守府の12月 ③

クリスマスの朝…

それは皆が少し幸せになる日

 

 

でも、実は俺はクリスマスが嫌いだ

 

俺の誕生日は12月25日 つまりクリスマスだ

 

俺はサンタからプレゼントを貰ったことはない

誕生日を祝ってもらった記憶もない

 

親が居なかったからな

 

12月になると街の空気がクリスマス一色に変わり、皆が浮かれ出す

賑わう玩具屋に、外食店 

懸命に物を選ぶ親達、サンタクロースに○○をお願いしたという子供達

 

ケーキを買って帰る家族

家の中から聞こえる楽しそうな声

 

それらが嫌いだった

 

ひとつだけ良いところがあるとすれば

皆が休みたがるからバイトがしやすかったことか…

 

 

それでも

自分だけが取り残されて 忘れ去られてる様で 嫌だった

 

 

 

 

 

 

電「わぁぁ!!見てください!プレゼントなのです!」

響「はらしょー これははらしょーだ」

 

睦月「わー!かわいい服だー!」

 

 

 

 

 

川内「夜戦一回券の12枚綴り…だと……提督…」ジーン

 

桜大鳳「さすがに部屋は無理ですか…でもこの写真たては嬉しいですわ」

 

桜赤城「櫛ですか? 指揮官様は私の髪と尾が好きなのですねー?」

 

加賀「気になっていた髪留め… 」

赤城「食べ放題ご招待… ありがとうございます!」

 

 

不知火「マフラー… 嬉しいです」

間宮「まあ!新しい包丁?」

伊良胡「私も包丁… 感謝しますね」

 

天龍「何でエプロンなんだ?! なあ天龍保育園って何だ?おい!提督!!!え?!眼帯もある!?    ならいいんだけどよ」

 

時雨「…チ○ルチョコ一個?…だと…?マトリョーシカみたいに箱の中に箱があって…最終的にこれだけ?!    あー!スカーフだ!良かった!完全なネタじゃなくてよかった!!」

 

 

 

 

姫ちゃん「出番作ります…ですって」

鬼ちゃん「のほほん系でお願いします」

 

 

 

球磨「びっくり箱だったクマーーー!!」

 

霞「ジュ○ンジって何かしらこれ?」

曙「○スーラって何よこれ」

 

 

明石「 snap_○nの工具…だと… いええい!」

夕張「……メロン…?」

 

 

三者三様の喜び様で良かったよ

なんて思ってると

 

「提督」

 

「ん?加賀 どうした?髪留めは気に入ったか?」

 

「ええ…でも」

 

「ん?」

 

「あなたが本来くれるはずだったものを貰いに来たの」

 

「え?!何のことだ?!」

 

「髪留め…手作りしてくれてたんでしょう?」

 

「あー」

実は加賀へのプレゼントは急拵えだった

本当は髪留めを手作りしてプレゼントしようとした

 

 

 

「いやな!これは…出来が悪くてな…とても渡せる状態ではないんだ」

「いえ!これは、譲れません…欲しいのです!どうしても」

 

「……コレ…何だけど…」

受け取った髪留めは

恐らくレジンで作ったのだろう ミニチュアの艦載機と航空甲板と山

全体的なカラーリングは青色の 施された髪留めだった

 

貰った既製品と比べるとお世辞にも上手くできているもは言い難い

 

でも

 

「私にとっては…コレが何より嬉しいのですよ」

「加賀…」

「ほら…似合ってますか?」

 

「あぁ…! ありがとうな…加賀 嬉しいよ  メリークリスマス」

「ええ 提督…メリークリスマス」

 

 

「てててて提督!?!?こここここれはー!!」

 

「青葉か 気に入ったか?」.

「はい!はい!もちろん! はあう…」

 

青葉の目の前には

写真部と書かれた小さな部屋があった もちろん写真暗室もあるぞ

 

「ありがとうございます!早速!皆の写真をとって!この部屋を使いますううううう」

 

 

 

 

 

さて…今日はオフだし…部屋に戻るかな

 

 

「……ヘーイ!ダーリン!こっち!こっち!」

「ん?どうした!金剛?」

「えーと 霧島と比叡が!喧嘩してるネ!止めてほしーよ!」

 

「何!?どこだ!?すぐに行く!」

「食堂ネー」

 

あの仲良し姉妹が喧嘩だと…

俺は急ぎ食堂へ向かった

 

 

ドン!と食堂のドアを開けてダイナミックエントリー

「おい!きり…し……ま?」

俺の目に飛び込んできたのは

 

「「「「「「提督!メリークリスマス!」」」」」」

そして

「誕生日…おめでとうございます!」

 

 

「!?!?なんで…それを」

 

「ごめんなさい…提督…ずっと気づかなくて…」

たまたま大本営の御蔵元帥と報告の連絡を取っていた大淀が

「そういえば彼はそろそろ誕生日だな」と聞いてから初めて知ったらしい

 

 

「自分達の提督なのに…祝ってもらってるのに…知らなくてごめんなさい」

「あの…コレ……」

 

と目の前にはケーキが有った…

         誕生日ケーキだった

 

「後ね…コレも…皆から…」

コートに、写真の額縁、鞄に……沢山あった

 

「どうしたの? 驚いて声も出ない?」

「って提督?!?!」

 

 

涙が出た  

何年ぶりなのだろうか…

メルマガやアプリ以外の他の人からおめでとうと言われたのは

おめでとうクーポン、葉書じゃあない

心からのおめでとう…

 

 

「そんなに!嬉しかったんだね!提督!この鞄はね!僕が選んだんだ!」

 

「あっずるい! この額縁はねーー…」

 

 

 

 

 

「こらこら… さあ提督?ろうそく…消してね」

 

ハピバースデートゥーユー dear 救

と歌ってくれる

一息でろうそくの火を消した

 

皆が拍手してくれたがそれも聞こえない

 

はいどうぞ?とケーキを切り分けてくれた

 

 

皆が食べようとする俺をニコニコと見ている

 

 

 

 

 

ケーキは甘くて塩っぱい味だったーー

 

 

 

 

 

後日、命辛々とゲームからクリアした

霞達に怒られたのは別の話

 




救君の過去話は また そのうちに


ジュマンジ
はロック様の新しい方も
旧作も好きです


次回!お正月編!


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48話 鎮守府の12月〜1月 ④

お正月前からお正月(๑╹ω╹๑ )


年の瀬…

大晦日

私室ではなくエントランスのソファでゆったりと過ごす

 

 

 

「今年もお世話になりました!来年もよろしくお願いしますね?」

と出会う艦娘に言われる

と言うよりそう言い合う為にここに座っているんだけどね

 

「提督?お年玉…楽しみにしてるわね?」

が殆どなんだけどね

 

 

 

 

 

実は執務室でソレは準備してある

 

お年玉ねえ… ボーナス的な意味でお年玉は支給されるけど

ボーナスはボーナスですからね…艦娘には通用しない訳で

 

…私の1年のボーナスが…給料が…

 

でも皆の為だ…痛くないさ!

財布は痛いけどな…

 

「提督…毎年無理しなくても良いんですよ?」

と大淀と長門が言う

 

「そんなことないぞー?」

 

「すごい棒読みですが…」

 

 

 

 

うわあ…すごい厚みだーー(棒)

 

 

 

 

 

 

さて…

今年は…

 

「提督さーん! こっちっぽーい!」

「こっちですよーー!」

 

「おー!提督ー!」

駆逐艦チームと軽巡チームで年越し蕎麦を食べる

最近は年越しのうどんもあったりするらしいよね

 

「提督さんと過ごすの幸せです〜」

と睦月が言う 如月や葉月達もうんうんと頷く

 

 

 

「ええ〜そうねえ〜」

と龍田

「ケッコンしてるんだからもう少し構ってくれないと寂しいわあ〜」

と耳元でボソリと言ってくる

 

ごめんねえ?と言うと

「今年は今日で終わりなのに… だからね〜?」

と唇を奪われた…

 

「今年最後にもらっておくわ〜」

 

 

「あ"あ"あ"あ"あ"っ"?!?!?!」

「ズルイ!ズルイーー!!!」

 

「うふふ〜 」

はい!年内最後の爆弾投下!

 

「私は…?」

吹雪…そんな涙目で見ないで?

 

「僕らもーー!!!」

 

とりあえず目に映ったのは時雨、吹雪、大井、羽黒に、足柄?

まだ後ろにいるな!?

 

 

 

 

 

 

 

揉みくちゃにされました…

 

 

 

 

 

「ううっ…酷い目に遭ったぜ…」

 

 

 

「あら提督じゃない」

「提督、こんばんは」

「提督さん 大丈夫ですか?」

「提督…どうしたのですか?」

 

 

 

翔鶴、瑞鶴、赤城、加賀だった

 

「駆逐艦達と楽しくやってたそーやで」

「…たくさんイイコトされてましたね…あなた」

 

龍驤と…鳳翔まで… 怖いよおお

 

千代田や千歳、大鳳達も交えて忘年会をやっていたらしい

 

「なあ…提督さん?ウチらにも…構ってくれへんと…寂しーんやで?」

 

「俺は笑ったらあかんやつ見なくち「行くで〜ウチらの部屋でも見れるやろ?」

 

あぁん…

カウントダウンまでしっかりと揉みくちゃにされました

 

 

 

 

 

 

新年!あけまして!おめでとうございます!!!

 

解放されたのは…いつだったかな

そのあとに戦艦組に拉致られて…

部屋に帰ったら海防と潜水組が部屋で寝てて…

 

 

 

 

 

 

 

 

新年…

お年玉はお餅を食べながら渡している

 

 

しかして

皆さんは餅の殺傷能力をしっているだろうか?

これはマジな話1700人 (1月で)

 

皆も気をつけよう

 

 

「はい!あけましておめでとうね 今年もよろしくな!」

とお年玉を手渡しする

約1時間かけて渡して行くのは中々に大変だけどね 

 

 

「何に使うんだ?神通は」

 

「私ですか?…えと…お菓子を買います」

 

「はえーどんなお菓子?」

 

「いえ…姉の……ね お詫びの菓子折がそろそろ必要かなあと」

 

「あー…最近 夜戦コールやばいもんね…」

 

 

 

 

「千歳と千代田は?」

 

「長期の休みで旅行に行こうかと思ってます」

「温泉巡りをしてみたくて」

 

いいじゃないか! 1番まともだよ うっ…涙が

 

 

「桜赤城は?」

 

「指揮官様との生活の為の貯金ですよ?そろそろマイホームを買おうかなと思っています 2人の部屋の大きさはどれくらいがいいですか?

クローゼットは広めにウォークインにしようかなと思います!

もちろん和室も用意しますからね?

あと

子供部屋は…子供は何人欲しいですか? 私としては暫くは2人でゆっくり暮らしたいのですが、指揮官様が望むのであればいつでも大丈夫ですよ? 私と指揮官様の子…どんな子が生まれるか楽しみですわ」

 

 

この落差やで…

 

 

 

いやいや…

さあ… 皆に挨拶回りという名の散策をするか

今年はどんな感じかな…

 

 




私の実家は年越しうどんでした
(๑╹ω╹๑ )


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49話 ミヤコワスレと私 ①  提督 曙ト1日夫婦

「ねえ…提督?ごめんなさい」

 

 

彼女との1日はそんな始まりだった。

 

朝目覚めると丁度、曙がやってきた。

 

「おはよう提督、今日はよろしくね?」

 

 

「その…私ご飯作るの苦手だから食堂に行きましょ?」

 

「ああ!行こうか!」

 

曙は兎に角口が悪かった。

出会った瞬間から"クソ提督" "クズ"その他いろいろ…

改造の時なんか…裸が見たいだけとか言われたし…

 

この世界に来てからもそれはお約束だった

曙は大好きなんだけどね!

もうね、大淀の胃に穴が開くかなと思って秘書艦はあまり任せてなかった。

前の霞みたいに大淀に怒られたら可愛そうだし。

 

 

 

「いただきます」

 

「今日はうどんなの?」

 

「あぁ、なんか無性にうどんが食べたくてな」

 

「そう…なの」

 

 

どしたのか?元気ないな?

覇気がない曙は珍しいな…。

 

 

「今日はどうする?行きたいところある?」

 

「え、そりゃ!……いや、あなたの行きたいところに行きましょう?」

 

 

 

私に付いてきなさい!このクソ提督!とか言われると思ったのに…

え?本当にどうしたの?!

うわ…他のメンバーも大丈夫なのか?的な目で見てるわ…。

 

 

「曙ーー!!いいなー!!」

「羨ましいぞーーーー!!!!」

「あぁ 私の順番はいつに…」

 

 

「いってきまーーす!」

 

 

「「「「「行ってらっしゃい!!」」」」」

この様式美は変わらないのねぇ…

 

「いざ送られる立場になると…何かすごいわね」

 

 

 

さて…何故曙が大人しくしているか…。

 

曙の口の悪さは艦娘の中でも指折りである

可愛いところもあるが…

見た目はカフェオレなのに中身は超ブラックコーヒー的な奴!

 

まあ中には、曙ちゃん!罵って!って人も居ますけど?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曙は不安だった。

曙は兎に角口が悪い…それは自分の前世に由来するもの。

この、提督にはなんの落ち度も無いことも分かっている…。

 

でも止まらない、それが私。 

口を開けば クソ バカ その他いろいろ…

霞は大淀に怒られた…。

 

でも提督は1度も怒ったことはない…。

 

料理が特別出来るわけでもない。

愛想が特別良い訳でもない。

提督はいつだって優しかった…。

 

なのに私は…

 

 

でも…もし、あなたに見捨てられたら…私は…

 

 

船の海風はそんな私な気持ちなんて知らないと言うふうに

ずっと止むことはなかった。

 

はい!と提督が飲み物をくれた

あたかかった––

そっと寄り掛かってみたかったが…私らしくないだろうな…

喋ると口が悪いからあまり喋らないようにしてる。

 

 

 

 

買い物に来た!

いつものショッピングモールだ!

 

 

「見たいものはある?」

 

「ううん?あまり」

 

「この服屋良さげだよ?」

 

「ええ、そうね…でもいいわ」

あぁ…せっかくの誘いなのに…

 

「ゲームセンター行く?」

「…ええ、良いわよ」

なんで私は…

 

「映画見る?色々あるよ?」

「見たいのはないかな」

どうしてそう冷たくなるの?

 

「このショップ、見ていく?」

「別にいいわ」

 

 

「早いけどお昼に…しようか」

沢山提案してくれた…

沢山一緒に歩いてくれた…でも私は…私は!

 

「ええそうしましょうか」

どうしてこうしかできないのか–––

 

 

「はい!メニュー!何にするかなー」

 

「…」

 

「俺は…チャーハンセットにしようかな、曙は?決まった?」

 

「あなたと同じのでいいわ」

 

 

 

「どうしたの?何かあった?」

 

「何もないわよ?」

 

 

 

「……何?」

 

突然提督が私の手を取り引っ張った

驚く店員に ごめんなさい!と言いながら提督は私をどこかへと連れて行く。

モールを出てタクシーに乗せられた。

 

鎮守府に帰るのかな…当然よね?こんな艦娘と居たって…

 

 

 

 

 

つまらないもの…

 

 

着いた先は…

 

 

 




いつもありがとうございます(๑╹ω╹๑ )
お気に入りやらコメントやら…嬉しいです!

もうすぐ50話…早いものですね

こんなに続くと思ってなかったですw
見てくださる皆様のお陰です

え?なに?何か違くない?とか
何だよーこの扱いはよーとかあるやも知れません

でも少しでも楽しんで頂けたら幸いです


例の如く2分割です(๑╹ω╹๑ )
完成自体はしてるんですが…なんか気分で…

ご意見やご感想、お待ちしています(๑╹ω╹๑ )



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50話 ミヤコワスレと私 ②  提督 曙ト1日夫婦

はい! 続きです(๑╹ω╹๑ )


「何よ?ここは…」

 

景色がよく見える丘だった。

誰も居ない…静かな丘。

 

 

「曙…どうしたの?」

 

「…何もないわよ…」

 

「…聞きたいな…待つよ」

 

 

提督は何十分も待ってくれた。

 

何よ何よ何よ!!

「何で…」

 

「何であんたはそんなに優しいのよっ…」

 

私はっ…アンタに出会った時からクソ提督だとか…

あんたは何も悪くないのに…ずっと悪態をついてたのよ?!

ずっとずっと

あなたも傷付いたでしょ?!嫌だったでしょ?!

 

秘書艦の時だって…ずっと口悪く言って!

だから秘書艦からも外したでしょう?

 

嫌いだったでしょ?

なのに何で…私はアンタにこのお願いをしたのかしら?

アンタはなんでOKをしたの

 

これ以上!優しくしないでよ!!

辛いのよ!

 

口は悪いわ…愛想はないわ…

皆は料理するのに私は…できないし…

 

 

わ…わたしは…私は

アンタと…本当は… 本当はっ!!

 

 

 

 

「なぁ…曙?」

 

「何よッ!!」

 

「俺はお前を嫌いだと思ったことなんかないぞ?」

 

「…え?……う、嘘よッー!!」

 

「いや、本当に 」

「確かに口は悪いけど…同じ艦隊のメンバーに対する思いやりを知らないわけではないぞ? それにな?秘書艦になかなか入れないのは…ああいう業務は苦痛だったのかな?と思って…ってのと、大淀に反発して喧嘩になって欲しくなかったからなんだ。

 

愛想は大切かもなな?でも何で曙が態度が悪いか…わかるぞ」

 

 

「やめて」

 

 

「辛かったよな… 何もかも押し付けられるのは お前は必死に頑張ってたのにな…」

 

前世のことなんてやめてよ!

 

「やめてよッ!!!」

 

「でも…それでも人を…世界を嫌いにならないでくれて…ありがとうな」

 

提督はそっと私を抱き締めて…撫で撫でとしてくれた。

 

「や…やめてよっ…やめてよおおおっ」

 

 

「ありがとうな…曙。でも俺は怒ってもいないし…嫌ってもないぞ?」

 

「何でよおっ!!!!!ううっ」

 

「嫌う理由がないだろう?」

 

 

「うるさい!偽善者!!」

また言ってしまう!こんな自分が嫌いなのに!!

 

 

「それじゃ…だめなのか…なら…曙は…俺の為に料理を練習してくれてたんだろ?」

 

 

手の傷をみたらわかる。

 

料理を練習していたが納得のいく所まで上達しなかったのを見ていたから知っている。

 

悪口を言わないように極力喋らないの知っている。

 

本当はいつもこっちを見ていたことを知っている。

 

勇気を出して…私も夫婦を…と、俺に申し込んできたのも知っている。

 

仲間を気遣う姿を知っている。

 

 

人一倍頑張るのを知っている。

 

それも十分魅力じゃないか。

誰がお前に魅力も、愛想もないと言ったんだ?

 

なら俺がお前に伝えよう!

君は十分良い女の子だよ!!

 

俺は大好きだぞ?

 

だから…それが理由じゃダメか?

 

 

 

「提督…」

嫌われてると思った

こんな嫌な奴

避けられてると思った

もう捨てられると

こんな…

 

 

「いいの…?」

絞り出せた言葉がそれだった…

提督のその言葉に縋り付くように…。

 

 

 

「あぁ… 霞も偶には口悪いぞ?態度は丸くなったけどな」

「お前もそんなんで良いんじゃないのか?有り体でいてもさ、不自然に取り繕うよりいいと思うんだ…逆に気を遣わせてごめんな」

 

 

「嫌って言っても…離れないわよ?」

 

「むしろ…離れるなよ」

 

「たまに口悪くなるわよ」

 

「酷すぎなければ…」

 

 

 

 

「この…バカァっ」

バカバカバカバカ!!

アンタは!何で!そんなに優しいのよっ!!

もっと冷たくしてくれたら…私は!!

バカ提督!クソ提督!クズ!クズ!

うわぁぁん…うっ うわぁぁぁあん!!

 

 

ごめんなさい提督!ごめんなさい!

 

ごめんなさい せっかく楽しくしてくれようとしたのに…

ずっと笑顔で接してくれていたのに…ごめんなさい。

私の変な意地のせいでごめんなさい。

嫌わないでくれて…ありがとう…。

ありがとう…本当に本当にありがとう。

 

提督は何も言わず側にいてくれた。

 

何十分も…何時間も…

 

 

「ううっ…泣いてたら時間が過ぎちゃったじゃない…」

 

「今からでも一緒に出掛けれるよ」

 

「えっ?!ちょっ!!」

提督はまた私の手を引っ張ってモールへと戻っていく。

 

「ちょっ…このバカぁ…! 強引なのよ!」

「どこに連れて行くのよっ!!」

 

 

そこは、モールの隅の方にあるアクセサリーショップだった。

提督は待ってて!と言って

 

 

…買ってきたよ!

と私に髪留めをつけてくれた。

 

「何のやつ?」

「帰ってから鏡で見てみてね?似合うと思ってたんだ!ひと目見た時から… ………君が…少しでも寂しくないように」

 

 

「何よ…ソレ?まあ、…ありがとう…」

 

 

 

 

 

帰り道の船は…

少し勇気を出してひっついてみた。

彼はそっと私を抱き寄せてくれた。

「もう少し強く…しなさいよ」

と言うと少し力を入れて抱き寄せてくれた。

 

 

 

 

「お帰りなさい…どうだったの?」

朧だった。

 

「ううん、言わなくてもわかるわ。良かったわね」

 

「何で?」

 

「だって…すごい笑顔だもの…それにその髪の…」

 

え?あ、そう言えば…と鏡を見る。

 

フジの花の髪留めだった…

 

提督はフジの花言葉を知ってるの?

 

ミヤコワスレの花言葉は…別れ

 

この花はーーー…

 

「あ…コレ」

と朧が言う

 

髪留めに指輪がついていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バァン!と私室の扉が開く

…壊れてないよね?

 

 

「このっ!!!クソ提督!!!!!」

 

「んあっ?!曙!?」

 

「アンタには…雰囲気とか!そんなのはないの!?」

「来てくれるって思ってたから…」

 

「…〜っ!なら…ちゃんと渡しなさいよ!クソ提督!」

 

「はいはい」

 

 

「ケッコンカッコカリ…受けてくれる?」

 

「…仕方がないわね…後悔しても…知らないわよ?」

涙ながらに彼女は返事をする。

 

 

彼女に指輪を渡し…キスをした。

 

 

「提督…!!バカ… 好きよ…」

「大好きなんだからっ!!」

 

 

彼女はずっと俺の側から朝まで離れなかった。

 

 

フジの花の花言葉

–––歓迎–––

もう一つ

––決して離れない––

 

 

1日夫婦が終わり

お気に入りのアクセサリーのミヤコワスレとフジを見つめながらニヤニヤとする曙が居たとか?

 

ミヤコワスレの別れの逆を行く花言葉。

シャランとした髪留めをつけた曙は今日も言う。

 

「このバーカ 」

その表情から取れる言葉はもう罵りではなかった。

 




(๑╹ω╹๑ )さあ…
次回から…少しシリアスですわ
土日で一気にやろうかしら…


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51話 鎮守府の1月 ⑤

49話の続きです

現在この話は52話です……
ミヤコワスレと私 ②は 前にあります
飛んじゃった!と言う人
お気に入りの新着から来られた方は 51話が飛んでいるかも知れませんので…目次から確認して読んで頂けたら…
すみません(´;ω;`)

順番を間違えたなんて…口が裂けても言えない


さすがに正月は休みですよ?

 

 

何だ…この穴は…

地面には直径数センチの無数の穴が深く掘られていた。

 

おい…説明を…

 

「どりゃぁぁぁあっ!!」

金剛の叫びだ。

 

 

 

シュゴゴゴゴゴ!!!!

壮絶に砂煙を巻き上げる地面!

 

 

 

「さすがお姉様!これは新記録狙えますよ!」

 

「何してんの?」

 

 

 

「コマ回しですが?」

と榛名。

 

コマ回しって地面掘る遊びだっけ?

 

「遊びでも!気合い!入れて!やります!」

「さあ!提督もご一緒に!」

 

「そぉい!」

とコマを回してみる。なかなか良いスタート。

 

「甘いですよ!回転が…足りません!」

 

霧島が眼鏡をクイッとしながら言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

なあ皆…コマってさ…ぶつけて遊ぶじゃん?

風圧で飛ばされるコマって何で言うの?

アニメのベイ○レードか?

 

 

地面掘る競技でもねえよ…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アレは…凧あげか? 

デカくね?なんか

 

神通、川内だけでなく…伊勢達まで凧引っ張ってるな?

あんな顔するんだ… 皆。

そんなに凄い凧上げ…… あん!?

 

視線をロープから辿っていくと凧には那珂が張り付いていた。

しかも…気持ちよさそうに歌ってらぁ…

さっきからのBGMはお前ダタノカ…

 

ちびっ子達が観客なのね?

 

「提督ーーー!盛り上がってるううう!?」

 

「那珂ちゃぁぁあん!!サイコーだせーー!」

 

アンタのアイドル魂には敬意を表するぜ!いやマジで!

落ちないようにね?

 

 

 

さて移動しよう。

 

 

 

「ふん!」

「ふっ!」

「ええい!」

 

長門と陸奥は…何してんの?動かずに声だけ出して

 

「羽子板ですよ?」

と大和と武蔵

 

早すぎて見えないだけ…だと?

「そこだぁぁっ!!」

 

長門のスマッシュヒットらしきものが炸裂

陸奥は取れなかったのだろう、空振りしている…らしい。

羽は…木を数本貫通していった…。

 

わあ…綺麗な丸い跡がのこってるよー?

 

 

「提督もやる?手加減するから!」

 

「なら少し……ぬぁぁっ!?」

羽子板が持てない…だと!?

木じゃないぞ!?これは…!?

 

「それ120kgあるよ?」.

そうだよね!木製だと一振りで折れるよね!

 

 

「おおっ!なかなかやるじゃない!でも力加減が難しいわ」

 

「 そこぉぉっ!!」

よーし!1Pゲット!!!

 

「さあ…陸奥よ…お顔をだしなさい?」」

 

「楽しそうね?」

 

「そりゃ…ねえ〜へっへっ」

と陸奥の頬に○を描く!罰ゲームだから仕方ないね?

 

 

「そう… なら提督?強いから少し本気出すわね?」

 

「え?」

 

一瞬だった。

陸奥のスマッシュは俺の手の羽子板を弾き飛ばして地面に減り込んでいた 

「いってええええええ!!」

手がもげるッ!!

 

 

 

「はーい♪少し本気出しちゃった!…さあ提督?いらっしゃい?」

 

くっ… まあ、洗えば落ちるしいいか…

さらさらさらさら

 

「ウフフフ♪これでいいわ?」

 

「何描いたのさ?」

 

「秘密よー?」

 

 

「さあ…提督!次はわた…… 陸奥うううう!!!」

 

「やだ!長門顔真っ赤よー?」

 

「え?何?何なの?」

 

「まあまあ」と笑う大和。

「コレは…提督…鏡だ…プッ…クク」

と笑う武蔵。

 

鏡で見た自分には

「陸奥専用♡」と描かれていた

 

 

「なんじゃ こりゃぁぁぁぁぁあ」

クソッ!とれない!!おのれぇ陸奥うううう!!

 

 

「いーじゃない!私達ケッコンカッコカリしてるのよ?」

 

 

いや!この流れは不味いのよ…

 

 

「あらあら指揮官様〜」

「あれー?何かなその文字は…」

「見逃せませんね…それは」

「……フフフ」

 

ぞろぞろとヤベーヤツらが編隊を組んで来やがった!

 

「私達も…描いていいのよね?」

「文字通り上書きしてあげるよー?」 

 

上手くねえ!!

 

いやね?皆よ!羽子板の罰ゲームなんだよ?コレ

何で皆先に筆持ってんのかなあ?

 

 

 

 

逃げるんだよオオオオオ!!!

大丈夫!羽黒はさっきの集団の中!

大丈夫!大丈夫!!できるできる!俺は逃げられるー!!!

諦めんな!どーしてそこで諦めるんだ!もっと!!熱くなれよおおおおおおお!!!!

 

 

「はーい捕まえた!」

「川内イイイイイ!?おまっ!凧は!? 」

 

「落ちたんだよねぇ…」

 

「ええ… それより逃して欲しい! 頼む!」

 

「えーー」

 

「夜戦…したげるからあ…」

 

「提督?」

 

「2回までなら!」

 

「だーめ」

 

「足りない!?!?!?」

 

「ううん。私も…私も川内専用って書きたいから」

 

 

あっーーーー…

 

 

アララ ミナサンオソロイデ…

セメテ ハゴイタデ…

 

イヤァァァァァァアアア…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

落ちねえよお… 落ちねえよお…

と風呂場で泣く真っ黒い提督らしき人物が

居たとか居なかったとか。

 




ぶっちゃけ 投稿したつもりになっていました!
ごめんなさい(´;ω;`)

51話投稿済みです…orz



と言う訳で連投デス(๑╹ω╹๑ )

次回より 少しシリアス?
一応、活動報告に少し載せてますのでよかったらそちらをチェックください(๑╹ω╹๑ )

 


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52話 誰が為に鐘は鳴る ①

お気に入り等の最新話53話からのリンクで来られた方は
ご注意ください(๑╹ω╹๑ )
2話程更新してますので数話飛ばしてる可能性がございます
目次から確認ください


はい(๑╹ω╹๑ )

今回からシリアス回スタートです




金剛です。

ピンチです!え?帰国子女のキャラは?って?

そんなこと言ってる場合じゃありませんよ!

 

だって…

ダーリンがお見合いをするらしいのDeath

 

委員会…通称…提督大好きクラブ(TDK)

 

 

 

「さて…集まりましたネー」

「何なんだ?KG(金剛)よ…緊急の議題なんて…」

「そうよ!ロクでもない話なら泣くわよ」

 

 

「ダー…ゴホン テートクが…お見合いをするそうです」

 

「ほー…そうか…お見合いかあ」

「やるじゃん…提督…」

 

 

「「「って!!!お見合いイイイイイイイイ!?!?!?!?」」」」

 

「馬鹿な…」と狼狽るNG(長門)

「あんまりよ…そんな!」と絶望するOO(大井)

「嘘です、嘘なのです」と呟くIN()

中には大破までした委員までいる程の地獄と化した!!

 

 

「どどどどどどーーしましょう…」

「まずは…深呼吸を!!!!」 ヒッヒッフーー

 

「大変よおおおお!! 桜のAK(桜赤城)が息をしていないわぁあ!」

「お隣さんも泡を吹いてるわぁぁぁあ!!」

 

 

「そこで議題ヨー…このお見合い…どうするか」

①提督の幸せの為 笑顔で見送る

②行かせないッ絶対にだッ!!

③提督の記憶を消す

④お見合いをセッティングした奴を…フフフ

 

「どれにするか!投票ヨー」

 

〜10分後〜

 

①提督の幸せの為 笑顔で見送る  0票

②行かせないッ絶対にだッ!!  2票

③提督の記憶を消す         1票

④お見合いをセッティングした奴を…フフフ  10票

 

⑤ 相手を消す。大本営共々           48票

⑥ 全てを灰にしますわ         2票

 

無効投票          5票

入渠のため不参加(自沈       10人

 

 

 

 

 

「ハーイ…何か項目増えてる気がするケド……とりあえず大本営にカチコミって事でOK?」

 

「「「「YES」」」

 

 

「んなわけあるかーーーーい!!!!!」

とツッコミを入れたのは……麗ちゃんだった

 

「ダメですよ!そんなことしちゃ!」

 

「でも…」

 

「でもじゃないです!元帥からの直々のお願いなので仕方ないんですよ!救君も乗り気ではなさそうですし」

 

「もしものことがあったら?」

 

「……消します…大本営!!!」

 

「麗ちゃんもこっち側の人じゃんー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?お見合い…? お前らどこで聞いてたのさ…まあいいか、本当の事だ…断りまくったんだがなあ…お偉いさんの娘さんらしくてな…ジジイにも頼む頼むと言われたから……断る前提で受けるしかなかった…」

 

 

「今すぐにでもその鎮守府を攻め落としましょうか?」

 

「物騒な事を!!! だめだかんな!?」

 

 

「相手はどこの人ですか?」

 

「……呉…」

 

「やだー 戦績No. 1の化け物集団じゃないですか…」

 

「この前に大本営で報告したろ?鉄底海峡の件を…それでなあ、先方さんが偉く気に入ったらしくてなあ…」

 

 

〜〜〜

 

 

 

「なんてやり取りが…懐かしい…」

「おい救…きき緊張してるのか?漢が情け無いぞぞ??」

 

「おおおお親父こそそそそ」

 

松田祐司は父役として付いてきてくれた。

「息子の為なら行くぜ!」なんて意気込んでたクセに…2人揃って待ち合わせの料亭前で震えてら

 

「あの…?」

と不意に声を掛けられる

 

「神崎 救様ですか?」

 

「ええ…あなたは?」

 

「私は今回のお見合い相手の 時成 夏子と言います」ペコリ

 

「美人さんじゃねえか…救」ヒソヒソ

「バカやめろって… こちらこそお招きいただきありがとうございます…本日はよろしくお願いします」

 

 

「フフッ 奥で父が待っています。さあこちらへ」

 

 

奥には…めっちゃゴッツイおじさんが座っていた。

隣には…お母さんらしきめっちゃ美人さん… でもなんかみたことあるような…。

 

 

「失礼します」

 

 

「久しぶり…いやはじめましてか?神崎…」

 

「はじめまして!この度は…「堅苦しいのはいい座れ」

せっかちな人なんだな…

 

「は…はあ。では失礼します」

 

「私はこの神崎の「知っている…親を名乗っているらしいな」

 

「…」

固まる親父…

なんだこの人…失礼だな…。

 

 

「単刀直入に言うぞ?娘と結婚して呉鎮守府を継げ」

 

「え?」

 

 

俺は…耳を疑った。

 

 

 

 

 

(えええええ!これは…やばい)

と隠密していた川内も驚くしかなかった…。



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53話 誰が為に鐘は鳴る ②

本日は少し多めに投稿してます!
お気に入り等の最新話54話からのリンクで来られた場合
何話か飛んでいる可能性がありますので
目次のページから確認してみてください!(๑╹ω╹๑ )



はい
二話目の投稿です(๑╹ω╹๑ )



「結婚して…呉の提督を継ぐ…ですか?」

 

 

 

「まあ、最初は雑務からだがな…数年は呉で補佐として頑張ってもらうぞ 」

 

いやいやいや!

そんなの聞いてない!お見合い…だろ?

無論俺は今の鎮守府から離れたくない。

 

 

「あの…鎮守府移動の事なんですが…」

 

「もし断ったら… なんだがな?…俺の力でお前達への補給等の締め付けを強めるつもりだ… 」

 

「なっ!?」

 

「考えてもみろ?今の僻地のちっぽけなとこで一生を終えるか、出世のレールに乗るか、どちらが幸せなんかなんてすぐわかるだろう」

 

「…受けたとしてても今のメンバーは?」

 

「あん?まあ新しい提督が着任するが…お前に懐いている奴は全員除隊だな…新しい提督に馴染まんだろうしな」

 

「いや!今のメンバーごとの異動とか…」

 

「は?お前は呉を弱くするつもりか?何より娘と結婚するなら…お気に入りが居たら…娘がかわいそうだろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

「あの…救様?」

 

「あっ!はい!すみません…ぼーっとしてて…」

 

今俺は2人で庭を歩いている…

ぶっちゃけ頭に何も入ってこない。

 

「あの…本当にすみません…父があんなので…私も止めたのですが…お前にもそれが幸せなんだと聞いてくれなくて…」

 

「救様は…艦娘の方とご結婚されてるんですよね?それを引き離して結婚して…誰が幸せになれるのでしょうか…」

 

「きっと父は…救様の艦隊と勝負をしてでもこの話をつけようとするはずです…完膚なきまでに勝って諦めさせる…お前らは俺には勝てないんだ…と、今までも同じような方法で色んな提督を潰してこられました…」

 

「お願いします…父を…止めてください!私がこんな事を言ってはいけませんが…救様なら出来る気がして…」

 

「私も結婚相手は自分で決めたいのです…敷かれたレールだけなんて耐えられません」

 

「……」

 

 

 

 

どうすればいいのか?

 

 

 

 

「おう、話し合いは終わったか?」

 

ん?親父が震えている…?

 

「お前もなあ…こんな庶民より俺が親の方がいいだろ?」

「この人にはな、それなりに包むもん包むからよ…な?」

 

何故こんなことを言うのか?

 

「それによぉ…艦娘と結婚なんてバカなことは辞めとけ、アイツらはな…戦争の兵器なんだからよ」

 

 

「大将殿ッ!!流石に酷すぎます!」

 

「んー?答えは出ただろう?」

 

「……いえ…」

出ない…出せない。

 

答えが出ねえか?ならコレを受けとれ…。

背中を後押ししてやろう…。

 

コレは演習の申し込みだ!

わかるな?元帥閣下の正式な押印もされてある…

 

逃げてもいいぞ?だが逃げれば…わかっているな?

お前は人生に汚点を残すだろう… 軍に居られなくなるだろうなぁ。

そうすりゃお前の大切な艦娘は… わかるな?

 

なら受けるしかねえよな?

 

そして…お前が負ければこの話を受ける。

お前が勝てば話は無しだ…まあ…お前の鎮守府は苦しくなるだろうがな

 

演習は1vs1 艦隊なんぞ出さんでいい!

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その一言は容易に俺の心を握りつぶした。

艦娘に自分の人生の左右を押し付けるなんて…

 

 

 

 

その先は覚えていない。

いつの間にか鎮守府へと、帰ってきた…

自分を…艦娘を…親父をバカにされた……

なのに、何もできなかった。

 

あの一言のために…。

 

 

親父は…気にするなと言っていたが…。

悔しかった…何も言い返せなかった自分が。

 

自分を支配したのは…

アイツを許せない気持ちと

どうしよう…と思う気持ちだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

救が帰った後の話ー

 

 

「お父様…」

 

「ふん…何だ、腑抜けかと思ったぞ」

「ヘコヘコと話を受けていたら縊り殺してやろうと思ったが…フフフ面白い事になりそうだ…」

 

「あなた? 余り年下の子を虐めちゃだめですよ?」

 

「お義母様…」

夏子の視線の先には先ほどの美人…大和が居た。

()()()()()()()()()()()

 

「おお!大和、いや… 色んな噂がある奴だからな……だがあの程度で折れるようじゃこの先はないな」

 

 

 

「でもお父様!失礼でしたよ?救様…は…」

「なぁに…こっちも奴を一眼見てな…血が滾っておるんだ…奴は中にとんでもない獣を飼ってるぞ…」

 

「御蔵のオヤジから頼まれたから…お前は自分を見つめ直せって言っても気付かねえ事ってあんだろ?アイツはよ……トコトン追い込まれて気付くことってあんのさ……奴は今、今までで一番追い込まれてる…嫌なもんから目ぇ逸らさずに見詰めるしかねえんだよ…ぶつかり合うしかねえ時もあるんだよ…まあ…逃げたらそれまでだけどな」

 

「戦うのは私達ですけどね」

 

「うっ…すまんて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し前…

 

 

「松田さん…いきなりの無礼…許して欲しい」

目の前には頭を下げている時成が居る。

 

「時成さん!?」

 

「そしてどうかこのまま…無礼な役を続けさせて欲しい…」

海軍元帥から、救を頼まれた事。

巌自身が彼に興味を持っている事、縁談なぞ理由付けでしかなく、彼を真に見定めたいと。

 

コレからの戦争の将来を担う役割はアイツが背負うかもしれない。

実際に神崎の戦果は目を見張るものがある…

ただ、それだけなんだ。

アイツは自分の存在が何かをわかってない、、

アイツは自分を信じてない…艦娘との絆を信じてない。

アイツらは特別な奴らなんだ。

他の奴らとは違う…!

だから知らなくてはならない!

本当の自分を…

 

このままでは…奴は死んでしまう。

だからそうさせない為に、間違ったやり方で奴を追い込む…と。

 

「汚れ役じゃないですか」

と言う松田に巌は答えた。

 

それは同じ男で先輩の俺の役目だ…と。

 

そしてそれは可愛い後輩には内緒にして欲しいと伝えてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督…聞いたよ」

川内から事の内容を聞いた艦娘。

 

「呉と言えば…蒙武さえも赤子のように感じる強さの所らしい」

 

 

「そんな訳の分からない条件なんか!飲まなくていいだろう?!」

 

「…演習を申し込まれた…もう逃げられない…」

勝っても皆を苦労させ…負けたら…逃げたら…。

 

 

「コレは…元帥の押印… 正式な演習…」

 

 

軍人として逃げはご法度である。

例え演習でも負ける事よりも逃げる事の方が重いのだ。

つまり、巌は初めから救に選択肢など与えていない。

 

己の無力を噛み締めながら敗北し望まないレールに乗るか。

万が一…億が一勝てたとして…厳しい逆風の中で生きるか。

 

 

 

 

「大丈夫よ!誰だって!全力で戦うから!」

「私達は提督についていくから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「作戦を立てるよ…」

それだけしか言葉が出てこなかった。

そう言って俺は部屋に篭った。

 

 

 

 

 

 

「提督…」

部屋の前で立ち尽くす艦娘。

 

「待ちましょう…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうしよう…何で俺がこんな目に…?

俺が何をしたんだ?

どうして居場所が奪われなくちゃならないんだ?

誰かに責任を押し付けなきゃいけないんだ?

 

どんどん…ネガティヴになってしまう。

 

そもそも俺は…この世に必要なのか?

何故俺が…ここにいるのか?

本来…死んだのなら…俺は……

 

本当は誰にも必要となんてされてないんじゃないか?

俺は…?

 

 

 

寒い…

誰か…

 

 




主人公は意外に闇が深い(๑╹ω╹๑ )


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54話 誰が為に鐘は鳴る ③

(๑╹ω╹๑ )おはようございます!

今回も1日で数話投稿します
よろしくお願いします!


3話目です(๑╹ω╹๑ )!


救は本当の家族の温もりを知らない。

故に与えられることに慣れていない。

 

艦娘を愛するのも…見捨てられたくない…

愛が欲しい… と言うのもある

実際、彼は無意識に行動をしている

例え弾雨の中でも 消えゆく命を前にしても …それが自分だと考えていた

艦娘と共に それが自分の存在意義だと

 

本当は不安で仕方ないのだ

自分に…命をくれた先輩

ひたすらに愛を向けてくれる艦娘達

 

自分にどれ程の価値があるのか?

 

彼はずっとその答えを探していた

誰にも言えないままに

 

信用してない訳ではない

愛してない訳ではない

 

ただ怖いのだ 向き合うのが…

もし必要とされてなかったらと思うと今のままでもいいかなと思うしかないのだから

 

 

 

 

 

 

 

日にちが経つほどに現実は目の前に迫ってくる

俺らを…親父を馬鹿にしたアイツを許せない

 

なのに

なのに

 

俺は決めかねていた… 戦う艦娘を選ぶのを…

 

 

 

 

そして当日の朝

 

やばい…

当日が来てしまった

誰に戦ってもらおう…

誰にこの重責を背負わさなければならないのか

 

 

逃げ出したかった…

消え入りたかった

 

うっ  うええっ

 

思わず吐いてしまった

 

 

…信じてないわけではない

それでも…

 

きっと逃げて生きられたら楽だろう

全てを忘れられる覚悟があるなら

 

でもその覚悟もない

皆の笑顔が頭からきっと離れない

 

なら1人を選ぶ覚悟は?

それもない…

 

 

 

 

歯を磨いてから 外へ出る

皆の顔を観れるだろうか

 

艦娘達もこの数日は何も言わなかった

俺を信じてくれているのだろう

 

 

 

 

「珍しいじゃない…酷い顔よ?…提督」

霞…

 

 

「今までも同じような状況もあったたでしょ?」

陸奥…

 

 

「気にすることないわ」

麻耶…

 

「私達が負けるって思ってる?」

最上…

 

「蒙武をコテンパンにしたからって…」

 

「ねえ…それとも私達じゃ あなた1人も受け止められないと思ってるの?」

 

「負けることより…そう思われてる方が…辛いわ」

 

 

 

 

「あなたは…もう1人じゃないのよ?」

 

 

 

 

 

「私達は提督を知りたいな」

 

 

 

 

なあ…

……己と向き合う…か……

俺は…受け入れられるだろうか…

 

「両親も居小さな時に死んで居なくて孤児院でさ…中学からバイトしてさ… そのお金も親戚に毟り取られてさ… それでも頑張って高校、大学とさ…出てさ 大手に就職出来たんだ…

すげえブラックな会社だったけど…初めて会社から頼られてるって思って必死で何もかも削って働いて…やっと孤児院にも恩返しできるって思ってさ

休みも無くして体も壊して…でもそれでも頑張った

なのに先輩は死んでさ…

全力で生きてきたんだ… なのに…俺も死んでさ…

 

こっちでお前達に出会って… 必要とされる事が嬉しかった、好きになってくれるのが嬉しかった

でも、それ以上に怖かった 失うのが怖かった

 

ゲームで無く現実だから…

 

お前達に嫌われたらどうしようかと

俺が不要になったらどうしようかと

だって代わりなんて幾らでも居るんだから…

 

何でこんな俺を好きになってくれた?

俺は何もできない 夫婦だとか指輪だとか…俺が安心する為でもあるんだ…本当はお前達に俺は何も返せてない

 

毎日が怖い また皆が居なくなるんじゃないかと…

俺が居られなくなるんじゃないかと

 

こんな無価値な人間が…

他にももっと上手くできる奴もいただろうよ なのに…

 

いつもお前達は何で優しくしてくれるんだ

何でなんだ?俺に一体どんな価値があるんだ?

 

なんで俺なんだ?どうして?なぜ?

 

 

 

 

でも…

 

 

お前達を失いたくない…

 

 

なあ…

寒いんだ…

寒くてしょうがないんだ……

必要とされたいんだ…温もりが…ほしいんだ 

…1人に…しないでくれ…

 

でも…誰かに俺の人生を決めさせるのも…

そんな重責を背負わせるのなんて…」

 

 

思いの丈を吐いた めちゃくちゃな言葉で

めちゃくちゃな感情を吐いてしまった…

 

 

 

 

 

 

「なぜって…提督からたくさんもらってるからデース」

 

「私達が提督を不要に思ったことなんかないよ?」

 

「例え提督が提督で無くても私達はきっと好きになっているわ」

 

「せやせや、アンタの気苦労や」

 

「でも…私たちも知りたかったのです あなたがどう思っているか」

 

「ここに居る皆…全てがあなたの味方です」

 

「たとえ全てを敵に回しても…私は指揮官様のお側にいますわ」

 

「あ!それ言おうとしたのに!」

 

 

お前達…?

お前達は…

 

でも俺は…

 

 

「このバカァっ!!!!!バカ提督ッ!!」

霞だった

 

「か…霞?」

 

「あんた…そんなに私たちが信じられないの?」

 

そんなことはない

 

 

「なら…アタシらにあんたの人生!!賭けてみろッ!!」

「あんたは私らを背負って命かけてくれてんだ!…私らを信用してるってんなら!…信用してるなら!その命!預けるくらいしてみろよぉ…」

「私は…あんたと…バカ提督と離れるのは辛い」

「あんたは…いつもどんな時も前向いて諦めなかった…私らを絶望の暗闇から救い上げてくれた…。そのあんたが心の底から…バカになって逃げる意気地なしになる方が嫌なのよ」

 

霞は泣いていた。

 

 

……お前…たち

 

 

 

「ダーリン?」

 

「うん?何だ?」

 

 

「愛してまス」

と金剛が俺を抱き締めてくれ…そっとキスをしてくる

その表情は…悲しみでも哀れみでもない

本当に愛おしい者を見る慈愛の表情だった

 

そして金剛は門の方へと歩き始めた

 

お…おい!?と思ってると…

鳳翔がやって来た…同じようにキスして……

 

そして次へ次へと

1人ずつハグをしながら…キスをしながら

頭を撫でてくれながら 俺の胸に拳をトンと当てながら

時に肩をポンと叩きながら

1人ずつ…俺を通り過ぎて行く

誰も嫌な顔一つせず

 

霞は 

「負けんなよ…()()!」

と胸にパンチをしてきた

 

 

皆が俺を通り過ぎた後 俺は振り返った

 

皆が笑顔でそこに居た

 

 

提督ー…

提督1人くらい余裕で背負って歩けます

…いえ、背負わせてください

あなたの小さな背中はいつだって私達を背負ってくれてるのですから…

だから… ありのままで私達の隣に居て下さい

笑って、甘えて、泣いて、頼ってくれるのがこれ以上無く幸せなのです

どんなあなたも…愛しているのですから

 

あなたが不安で霧の中に迷うならならば私達が霧を払ってみせます

あなたが道を踏み外し、間違えたなら私達が引っ張って正してみせます

あなたが幸せと感じるならなら私達も幸せなのです

あなたが悲しいなら夜通しでも一緒に泣きます

 

 

だって それはあなたが私達にしてくれた事だから

 

 

物資がこないなら取りに遠征します

食糧がないなら取って来ます!育てます!

それでもないなら共に耐えます

 

私達は食べられない事より

あなたと離れてしまう方が嫌なのです

 

 

あなたの進む道が私達の進む道なのですから…

 

この世界で、私達に出会ってくれて…ありがとう

あなたが提督で、本当によかったーーー

 

だから…

 

「あなたはどっかりと座って…胸張って…ただ一言、こう言えば良いんだ」

ニヤリと笑って長門が言った

 

 

「勝ってこい…とね」

 

 

 

 

そうだ…艦娘は

誰1人だって 諦めましょう?なんて言ってない

誰1人だって勝つことを諦めてない

1番…格好悪いのは…俺じゃないか

 

そして…

 

ここにあったんだ…

俺の求めていた…温もりは

ここにあったんだ

必要とされることは命を削る事じゃないんだ

愛されるってこんなに暖かいものなんだ… 

この世界に…あったのか

いや…初めから俺の手元(すぐ近く)にあったんだ…

 

涙を拭う…

 

俺はここに居ていいんだな?

 

 

 

 

ーーもう寒くない

震えも止まった…

覚悟も何もかも決まった

 

 

 

「なあ…皆…俺と一緒に地獄に行ってくれ」

 

 

「「「「「喜んで行きましょう」」」」」

 

 

もう迷わない…

 

俺は…俺達は出発した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

呉鎮守府

さすが…デカいな…

ウチとは大違いだ……

 

 

 

「来ました…」

と時成に挨拶をした

 

「来たか!」

クソジジイとの邂逅1発目に腹にボディーブローをもらった

痛え

 

「んー?チトは良い面構えになったか?      

というか…勢揃いとは…まったく暇なもんなのか?僻地は」

と皮肉るクソジジイ

 

 

「まあいい…とっとと始めようか」

クククと笑う巌

 

 

「おい、大和…」

と巌は大和を呼んだ

 

「はい」

呉大和が前に出てくる

 

「この国最強とさえ言われる大和の力見せてやろう…」

 

 

「そちらは誰が?」

と呉大和が問うてくる

 

「それは…」

 

西波島も恐らく大和か武蔵だろうと予想していた呉側の奴ら

 

しかし、こちらの大和と武蔵は首を横に振る

 

「私ではないわ…とっておきの娘がいるもの」

 

「ここは譲ります…悔しいけど」

 

「…そうですね…まだ負けてませんけど」

 

「いっけーーー!お姉様!!!」

 

「ね 金剛」

 

皆の視線の先には彼女が居た

 

「私デース!!!!」

 

そうーーー金剛だ

 

 

 

あからさまに何故?と思っているだろうな

 

 

「御託は良いから始めまショー」

 

さあ始めましょうか…と

金剛と大和がフィールドに立つ

今回は海の上じゃない

 

 

俺達は観戦席へと移動した

しかし…俺が居るべきはここでない

 

そして俺は行ってくる…と皆を残して動いた

 

 

時成 巌  アンタのおかげで自分を見つめ直せた

自分ってのを知れたんだ…

悩めた…もう 迷わずに済みそうだ…

 

お礼しなくちゃな

やられっぱなしじゃないってこと、示さないとな

 

 

と巌の目の前に立った

 

「あん?何だ?ルール変更か?それとも今から降参…」

と巌が立った時に

 

 

ドスッと俺は無言てクソジジイにボディーブローを返した

 

「なっ お前…」

と巌と全ての者が驚いた

 

 

「提督…やりやがった!それでこそだ!!」

 

 

「…」

 

そのまま俺は金剛の隣まで歩いて行った

 

「だ…ダーリン?」

「ええ…あなた…一体何を?」

 

そして時成 巌を睨みつけ

 

「おいクソガキ…まさか」

 

騒つく観衆

 

 

 

そうだよ… その通りだ!!

「…来いよ」

と手招きをした

 

 

前代未聞だろう

提督同士が戦うなんて

 

 

 

面白えじゃねえか!どれだけコイツは俺の期待を超えて行くのか…

 

目の前にクソジジイが来た

でけえ ゴツい!改めて…デカい

 

 

だからなんだ

失う怖さや辛さに比べたら…

 

 

お前なんか怖くない…!!

 



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55話誰が為に鐘は鳴る ④ 届かぬ手を伸ばす

はい お昼の投稿です
(๑╹ω╹๑ )
話数にご注意ください(๑╹ω╹๑ )






「さあこっちよ」

 

「ッ!!」

私は大和に牽制の副砲を発射した

 

「当たらないわ」

ひらりと余裕で躱す大和

 

しかし

本命はこっち… 予測射撃

金剛の主砲から発射された砲弾は大和に

 

当たることなく地面に到達した

 

 

「なっ…修正しマース」

 

「そんな暇ないわ!」

と大和が発射した弾は 数発躱せたが被弾してしまう

 

「shit…まだまだ!」.

この程度!小破にも満たない!

 

こちらも反撃に出る…が当たらない

「どこを狙ってるのかしら?…そこよ!」

 

「くううっ!」

ギリギリでも躱せない

小破……

 

焦る金剛 何故?何故当たらない?

 

 

 

「なら!」

と一気に距離を詰め インファイトに持ち込む

 

これなら!!!

 

「…なんて思ったでしょう?」.

全ては予測済みと言わんばかりに大和に打撃は全て弾かれ

逆に叩き込まれる

重い 一撃一撃が重い…!!

 

「金剛…!!」

仲間の声が聞こえる…大丈夫ヨ!

 

 

金剛も負けじとフルパワーで大和の顔面に叩き込む

「よし!直撃…!!」

 

 

 

 

「そんな……」

 

 

映し出されるモニターの大和の体力数値は全く減ってなかった

 

 

 

 

「そんな…バカな…」

 

 

 

「ね?言ったでしょう?甘いのよって」

大和の右ストレートが私の腹を捉えた

 

「ぐっ …あああっ!!!」

 

私はそのまま殴り抜かれ 後ろに吹き飛んだ

「ぐっ! ぐぁっ   うっ」

地面にバウンドしながら吹き飛ばされた

 

すぐに体勢を立て直さないと!…

「え…?」

目の前には無数の砲弾が迫って…

 

「きゃぁぁあっ!!」

モロに直撃した

 

金剛…大破判定…

 

 

 

金剛は同じ鎮守府の大和達のデータを基に戦っていた

 

 

それが間違いだった

ここの大和は他の大和を大きく凌駕する艦娘だった

 

だから攻撃が当たらない 速いから

だから攻撃をもらってしまう  速いから

だなら攻撃が効かない  硬いから

 

 

 

「YOUは本当に大和? 宇宙規模とかじゃないよネ〜」

 

「何言ってるからわからないけど…私は大和よ」

 

 

やばい…このままじゃ…負けてしまう

でもそんなの絶対に嫌だ!

諦められるから 提督を! 皆を!

絶対に、諦めない 例えここで死んでも 勝ちは絶対に貰って行く!!

 

 

「あなた…弱いわ 諦めなさい?」

 

 

「無理な話ネー」

 

「なら現実ってのを教えてあげるわ!!」

 

言葉の通り

大和から発される砲弾は少しずつ私の体力を削って行った

その度に私に少しずつ現実が背中に迫っていた

すぐそこまで!私の肩に手を置こうとしていた

 

そしてその現実は砲弾に乗って目の前に迫ってきた

 

「そんなの…嫌よッ!!!」

 

「!?」

大和は驚いた

 

一瞬の爆発力なのか 金剛は大和の弾雨を躱して

そればかりでなく ゼロ距離での反撃を仕掛けてきた

 

 

「ファイヤーーッ!!!」

大和の顔面に渾身の主砲が直撃した

 

仰反る大和 上がる煙幕

 

 

 

「やったぞ!金剛」

「お姉様ぁぁ!!!頑張れー!!行けます!いけますよ!!」

皆の声が 期待と喜びに満ちていた

 

 

「み…皆…アレ…」

雷が震えながら指差した

 

「なっ…そんな!!!」

 

 

 

「…痛いじゃない」

 

大和の体力数値は2しか減ってなかった

 

 

「そんな…」

 

「まあ…よく頑張ったと… 言ってあげるわ…でも足りなかったわね」

 

大和の主砲が私を向いた

同じゼロ距離…回避なぞ出来ない

 

 

「だ…ダーリン…」

金剛は救の方を見た

 

ドォンと発射された主砲

砲撃は無情に金剛に勝てないと言う現実を叩きつけた

 

「……」

倒れ込む金剛

ーーー金剛!轟沈判定ーーー

 

 

 

「お姉様ぁぁぁあ!!!!いやぁぁああ!!!」

 



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56話 誰が為に鐘は鳴る ⑤ 鈍色の中に輝く

はい!!
続きです(๑╹ω╹๑ )
最新から来られた方は 現在の話数にご注意下さい!






演習における轟沈判定ー即ち体力数値は0を指し

試合の終了を告げる 判定であった

 

 

 

「お姉様ぁあ!!いやっ! 立ってください…」

「こんごぉおおおおお!!」

 

叫ぶ西波島の面々。

 

 

 

無駄よ…

「終わり…ね」

 

 

巌と救の方を見る。

こっちには見向きもしないのね…?

あの子には可哀想だけど…止めに行こうかし…

 

そこで大和は疑問に思った?

 

そういえば

演習終了の鐘が鳴らないわね…

 

 

 

 

「!?」

大和は振り返った!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんとそこには…

金剛が立っていた…。

 

 

 

「あなた…?」

 

 

 

 

 

「ま……まだ……よぉ…」

 

 

金剛は気力で立っていた 

 

 

血反吐を吐きながら…

 

 

今すぐ膝をついて負けたら楽だろう。

倒れたら…楽だろう。

 

 

 

 

 

 

でもそんな事思わなかった。

 

 

 

兎に角負けたくなかった!

ダーリンを奪わせなんてしない!

何が海軍最強な大和だ!

 

 

金剛の中はそれでいっぱいだった

 

 

だが現実は気持ちでは埋まらないものもあると

私に容赦なくソレを叩きつける

 

だから何だ!

 

 

強い…強すぎて泣きそうになりマース…

金剛の攻撃は一度もかすることすらなく空を切り

相手の攻撃は 何コレ?ってくらい当たる

何発貰ったか分かってない…

 

それがどうした!

 

 

「それで今まで来られたの?」

フラフラとする金剛に言う

 

 

悔しい…でも事実だ

 

このままじゃ…提督が…とられてしまう

そんなの…死ぬより嫌だ!!!!!!!

 

 

と金剛は艤装を外して殴りかかる

がヒョイと躱される

 

 

「あらあら少し早くなったーー!?ーーでもまだダメ」

 

軽く金剛をいなし蹴りを喰らわせる

 

地面に倒れ…それでも立ち上がろうとする金剛

 

 

「… …あっち、あの人本当に楽しそう…よっぽど救君が気に入ったのね」

 

「……??」

 

「あの人…不器用だからね 仕方ないわ」

 

 

「あなたはどう? 早く諦めなさい!」

立ち上がった金剛にドカッと大和の拳が腹に突き刺さる

 

 

ぐっと 膝を地面に着く

ーーが、またすぐに立ち上がる

 

 

 

「あなたの気力は本当に凄いわ…でもこの程度も乗り越えられないようじゃ…ダメよ、提督さん…諦めたら?」

「明日とも言えない命じゃない…諦めて退役した方が幸せよ?私みたいに…それに強い方にいる方が提督も幸せよ?」

 

「これ以上続けたらあなた…本当に沈むわよ」

 

 

 

「はあ?何言ってるネー…」

膝が笑っている…

 

明日とも言えないこの命だからこそ

本来は交わらない運命だからこそこの人を命懸けであなたを守ると決めたんだ

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

この愛だけは…気持ちは誰にも負けない!負けられない!

 

 

 

 

例えダーリンとこの世界で出会ってなくったって振り向いてくれなくても好きと思い続ける…そう思っていた

 

「つまらないわね…その考えは」

 

はん! ダーリンがシワシワのオールドガイになって…死ぬ、その時に

あぁ 金剛って居たなと少しでも思ってくれたならそれで良いって

そらくらい思えるくらいに好き!

 

 

でも…今はあの人が近くに居る!!

 

YOUは確かに他の艦娘と違う大和なんでショウ

指輪が見えましたー 結婚してマースね…

 

「5年前からよ」

 

こちとら

10年前に建造された時から(生まれた瞬間から)…一目あった時から

私はダーリンに一目惚れしてバーニング・ラブなのよネ!!!

年季が違うのヨ

恋する乙女を舐めんじゃねーよ

 

だから!負けられない!あなたも…超えてみせる…

絶対に渡さないんだ!!

 

ダーリンの泣き言だろうが弱音だろうが何だろうが!受け止めてみせるネ!! 海の上だろうと!陸の上だろうと!強くなかろうと!

1人で行かせはしない!

辛いのも一緒に背負う…だから幸せは2人で…皆で分け合う…!

 

絶対に…ダーリンと一緒に添え遂げる!!!!

だから!!ダーリンは渡さないー!!!

 

 

これ以上したら?沈むかも知れない?本当に死ぬかもしれない?

 

だから?!

だから諦めろって?

 

 

知るか!

そんなの知らないネー!!!

 

こんな傷も 入渠したら治る!!

でも!

 

あの人を失う傷は

 

何をやっても無くならない!

死ぬより怖い傷になるの!!!

 

だから…

負けない!!!ダーリンが…皆が私に任せてくれたんだ

絶対に 負けるかぁぁあっ!!!

 

 

 

「熱いね あなた」

 

 

そうよ 金剛…その気持ちなの あなた達は特別なのよ…?

絶対に出会うことのない提督と出会えたのだから…

なら何に齧り付いてでも…その人を守りなさい

何があっても渡さないと言う気持ちで来なさい

 

艦娘が提督を好きになるなんてよく聞く話だけど…その先なの

 

例え…世界を敵に回してでも… 何を捨ててでも

1人になっても

この人を愛する…守るってくらいの気持ちを持ちなさい

 

本当…悪役は慣れないわね…

 

 

男はきっと馬鹿だから 私達には言えない弱みもあるんでしょう

でもね私達だからこそ分かることができる事ってあるの

私達だって海の上でも陸の上でも負けちゃいけないの

 

私も本気で行ってるの

私だって提督と鎮守府の思いを背負ってるの!

 

来なさい あなたの…全てを見せて頂戴

立ち上がりなさい

何度でも何度でも…立ち上がって、這い上がって

泥臭くても…進みなさい

 

轟沈なんて覆しなさい!!!

 

 

じゃないと 寝転んでいたって、膝をついていたって

敵は待ってくれないの!

それじゃあ

あなたの最愛の人は守れないのだから!!!

 

 

 

「…大和サン…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ暗な世界から 呼ばれた気がして生まれたら(目を覚ましたら)

届かない画面の向こうにあなたが居た

 

「金剛!俺は救!よろしくな!」

 

はいーー

 

「こんな俺だけど…ケッコンカッコカリしてくれ」

 

はいー喜んでーー

 

 

「愛してるよ…金剛 」

「初めてのキス…なんだぞ」

 

はい 私も…デスーーー

愛してますーーー

 

声も手も届かないのが悔しかった

 

でも今なら

 

 

 

「ダーーーーリーーーン!!!」

力の限り叫ぶ

届け 届け!!

 

 

「金剛ーーーーー!!!!」

…ダーリン?

 

 

 「「あい らぁぶ ゆううううぅ!!!!!」」

 

今なら

届くから…私の声が!手が!!

 

 

 

「よし!元気出たネー」

 

まだやれる!!

 

 

 

 

とにかくこの大和は今まで対峙してきたどの相手よりも何倍も強い

わかる

提督との絆がすごいのだろう

話に聞くより…あの人は艦娘と……

 

でもそんなのは今はどうでもいい

 

さてどうしよう

 

 

 

「お姉様ぁぁぁぁあ!!!!負けないでください!!!」

「負けは!榛名が!許しません!!!」

「金剛ー!!いつでも代わるわよ!!」

「しれっと!!!正妻ポジ取ろうとするなーーー!!」

「か・わ・れ!か・わ・れ!か・わ・れ!」

 

「でも」

「「「負けないで!金剛!!!」」」」

 

皆…?

 

へっ 誰が代わりますカー

このまま正妻ポジは私のものネー

それにしても

何この感じは

何だろう…離れてるのにダーリンが…皆が一緒にいる感じ

後ろから肩をもって… 行くぞって言ってくれてるような…

 

 

提督との絆 仲間との絆は艦娘をより強くする 

想いが全てを凌駕する事だってあるーー

限界まで力を振り絞っていた金剛に皆の気持ちが背中を押した

 

金剛はまさに 己の限界の先へ行こうとしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…金剛ーー改二丙 超高揚状態 

 

 

 

 

金剛は輝いていた

 

金色に 強い光を放っていた

 

 

あの鉄底海峡の戦いの時よりも更に強く!

 

 

 

 

 

 

 

行ける気がする!

「行っきマーーーッス!!!」

と金剛が攻める

 

目にも留まらぬ速さだった

大和は金剛の攻撃を歴戦の経験から偶然防げたものの

その身体は大きく後ろに動かされた

ジンジンとした痛さだけじゃない

何か熱い物が腕から込み上げて来る

 

 

「あなたーー熱いわ!ー最高よーー」

 

「でもまだ足りない!」

 

大和は一気に距離を詰めラッシュを浴びせる

撹乱の乱打から

本命のストレート、ハイキック

 

他の鎮守府の艦娘もあなたも砕いて来た…

常勝な、パターンだった

 

はずだった

 

放った両の拳は受け止められている…

ウデが…ピクリとも動かない…!?

 

 

「あーーい がーーーっちゅーー さあおありゃぁぁ!!!!」

 

頭部に走る鈍痛!

視界が一瞬揺らいだ

…金剛の頭突きだ

 

「は?」

 

ぬるりと血が額からでているようだ

クラクラしてきたわ…

ペロリと舐めて言う

「ぐうっ…あなためちゃくちゃよ…」

 

「ラブ ぱわー デース! 笑ってますヨー?大和」

同じく額からの血を舐める金剛

 

「ええ!楽しくて仕方ないわ!もう! 見せつけてくれちゃって…

 

 

「さあ! 行くわよ…!!!」

私も全力で応えるわ…

 

大和が動く…

それは戦艦にしても何にしても早すぎる動きだった

 

 

 

大和は全力の更に向こう側に到達した もはや艤装も悲鳴を上げる速さだっただろう パシッと髪を結んでいた紐が切れたのだから…

 

今までにないほどに全力だった

 

 

 

ーーーはずだった

 

なのに

金剛の拳が目前に迫っていた

 

なぜ?

と大和は思考した

でもわからなかった

 

 

単純な話だった

 

 

金剛がそれ以上の速さだったのだーーーー

 

ゾクッとした

私がこの娘に恐怖しているの?

ありえない…

 

 

「ダーリンは渡さない…絶対に!絶対に!!!」

 

金剛は艤装を装備し直していた

全ての砲撃を自分の後方へ撃ち出していた

たかが知れた推進力にしかならないだろう

しかし

その刹那の速さが 更に加速を金剛に与えた

 

背中が熱い   知るか!

破片が痛い   知るか!

もう限界だ   知るか!

 

 

 

「バーーーニングゥゥ…」

 

砂煙も声も音も軋む艤装もまるで全てを置いて先に行くような 

そんな速さだった

 

「くうううっ!!!」

金剛の拳が大和顎に当たる

 

 

「ラァァァァァァァァァアブ!!!!」

金剛の拳は大和の顎を捉え打ち上げていく

 

回避など出来るはずがなかった

反撃に回る時間も

何より…体が動かなかった

 

 

 

 

私の顎への衝撃と共に視線は金剛から青い空へと移った

ちらっと横に視線を移す

 

あら…あの人ったら……

 

 

そのまま地面に背中から落ちた大和が

 

 

「あなた…負けたわ…全力で、負けたわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フーッ…フーッ… ッハァ!!! 勝った…?」

最後の動きはよく分かってないけど

自分が自分じゃない感じだったけど

 

お願い…立たないでと願う

 

 

ヒラヒラと大和が 手を振る もう無理よと

 

勝った…

「勝ったよおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

ジンジンと痛む拳を天に掲げて金剛は叫んだ

 

 

 

 




お気に入り250ありがとうございます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
もう嬉しくて嬉しくて
気分が高揚します
こんな稚拙なのにお付き合い頂きましてありがとうございます(´;ω;`)

お気付きだと思いますが
作者は狂気とカオスで話を作成しております




金剛超メイン回でした 
超ヒロイン 提督大好き勢としては金剛かなあ…と


もちろん他の艦娘にも活躍の機会は来ますとも!(๑╹ω╹๑ )


夜には次回更新します!

少しでもお楽しみ頂ければ(๑╹ω╹๑ )!幸いです!


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57話 誰が為に鐘は鳴る ⑥ それでもなお立ち上がる

はい!
6まで来ました…

本日は複数投稿しておりますので!
現在では話数にご注意下さい(๑╹ω╹๑ )


アンタの言うレールなんぞいらん!

僻地の提督で結構!!

俺にはアイツらが居ればそれでいい!!

親父を馬鹿にしたことも許さん!

 

夏子さんの事も考えてやれよ

自分の事ばかり考えてんじゃねーよ…

 

だから 頭冷やせ…このクソ親父ィ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダーリン!」

「あなたの相手はこっちよ」

 

 

 

 

 

 

「クッ…ハッハッハハハハ!!!レールなぞいらねえってか!バカだ大バカだ… 良いぞお前! ならこっちは拳でケリつけようじゃねえか!!」

 

「望むところだ…クソジジイ!!」

 

良い眼ぇしてんじゃねえか

 

 

拳骨と拳骨がぶつかり合う

渾身の右ストレートが巌の顔面にクリーンヒットした!

 

「どうだ…… なっ!?」

 

「あん?きかんぞ?そんなちっぽけなんじゃあなあ!!」

ニヤリと笑う巌…虚勢じゃない!

 

「手本を見せてやろう…こう殴るんだぞ?クソガキ」

 

と右ストレートが俺の顔面に打ち当たる

バキッと嫌な音がする

「ぐっ!!」

クッソ痛ええええ 重い!

 

ペッと血を吐き出す

 

「ああクソジジイ…やんじゃねーか」

「おいクソガキ……まだまだだなあ」

 

「「来いやぁぁ!!!」」

 

ひたすらに殴り合う蹴り合う

ガードなんか忘れてぶつかり合った

 

殴られる、投げ飛ばされる!

 

本当に人間なのか?コイツは

そう思えるくらい巌は強かった

 

「甘えんだよおおお!クソガキイイイイ」

思い切り投げ飛ばされた

 

「くそっ… こんなクソジジイに…」

足に力が入らねえ 立ち上がらないと

くそっ

 

 

 

「おい…クソガキ…そんなもんか? 海の上なら艦娘に任せるしかねえ

ならよ… テメェは陸の上じゃあ 誰にも負けちゃいけねえんだよ」

「背負って立つとほざいたんだろう? なら膝付いて怠けてんじゃねええええっ!!」

 

ドコッと音を立てて蹴り飛ばされる

「良いかクソガキ! 甘ったれた理想はな…テメェで実現するしかねえんだよ… ならよぉ 陸の上では誰にも前を走らしちゃならねえ…

例え俺だろうと御蔵のじーさんでも…誰でもな!お前が走って艦娘達を引っ張って行かなきゃなんねえんだよ…誰も沈めねえ…死なせねえってことはそー言うことなんだよ」

「その覚悟もねえのに…理想語ってんじゃねえよ」

 

「向こうで大和と戦ってる金剛もお前にとってはただの艦娘だろう?」

 

なんだこの人…前と言ってることが違うような…

なんで…

 

 

 

「よく喋るじゃないか…本当は俺が好きなんじゃないのかよ?ええ?ジジイよ」

 

「あーーファンとやらになりそーだ!

甘ったれてなければなあっ」

 

負けねえよ

 

 

 

 

 

そうだ…それでいい

立ち上がれ 俺はな、お前の居た世界がどんなもんかは余り知らねえよ

…でもなこの世界だって理不尽なんだよ

だからよ…負けんなよ

お前さ…娘と同じ歳くらいだけどよ…色んなところ見てきたんだろ?

殺されたんだろ?この世界でも沢山嫌な思いしたんだろ?

 

溢れそうになるよな いっぱいいっぱいだよな

艦娘にゃあ 言えねえよな…

わかるぜ

俺だってそうだ…

 

ならよ

全部…ありったけをよ 俺にぶつけてこいや

怒ったんだろ?

それでもいいんだ最初はよ

 

御蔵のオヤジに頼まれたから…じゃねえ

お前を見た時からお前に惚れてんだ

 

だからよお…

先輩として…男として やり方は間違っててもレクチャーしてやるからよ

立て… 来いよ

 

 

 

何だよあのクソジジイ…

まるで俺のことを…心配してるような…何だよ…

 

 

「来いやぁぁぁあ!!神崎 救ううううう!!!」

 

「行くぞ 時成 巌おおおおおお!!」

 

本当に楽しい時間だぜ

本気で殴り合うってのもなあ

 

 

救は何度も倒れ込む

その度に歯を食いしばり立ち上がる

「諦めろや」

殴られる

 

立ち上がる…

 

蹴り倒される

 

まだ立ち上がる

 

 

「諦めろやァァクソガキいいいい」

渾身の背負い投げで投げ飛ばされた

背中が割れそうだ

立ち上がろうとして脇腹を蹴り飛ばされた

呻きながら転がってゆく…

 

何だこいつ…何でこんなに…

いくらコイツの為の作戦といっても俺は本気で潰すつもりで戦っている

手を抜いて負けても意味がないし、ここで倒れるなら其れまでの男と思っていた…

まさかこんな事になるとは思っていなかったが…

 

 

 

「提督ー!!立ってよおお!!」

「負けないで」

「信じてるよおおおおお」

 

誰ももう頑張らなくていいなんて言わない

 

其れでも尚立ち上がろうとする救に問いかける

 

「何でお前も艦娘も勝てもしない戦いに臨んだんた?

ましてやお前は戦う必要なんぞないだろう?

自分も戦えば責任を押し付けた自責の念を消すためか??

艦娘が負けても言い訳ができるからか?」

 

 

「戦わなきゃ負けるからだ」

 

「は?」

 

「その「負け」は戦って打ち負かされる事より重い」

 

「確かに…逃げたかったさ…

いっぱい嫌な事思い出して最悪だったさ 誰に責任を…って潰されそうだったさ」

 

 

 

 

 

 

「今俺の為に戦ってくれてる金剛はなぁ…最初に建造した時の艦娘でな…欲しかったキャラが一発で来たんだ…運命感じるだろ? 指輪を最初に渡したのも…この世界でのデートもキスも初めてはアイツなんだ…」

 

「10年以上も前からずっと好きだったんだ…ゲームの中だけどな

でもこの世界で…本当に本当に好きになった」

 

 

「勿論他の皆も愛してる…ケッコンカッコカリしまくるくらいだしな

…皆同じくらい愛してる!でもいつ!何時でも!隣で居てくれたのはあいつなんだ…

 

 

潰れそうだと言う、1人にしないでくれと言う皆に俺の気持ちに皆は…言ってくれた

 

提督1人くらい余裕で背負って歩けます

だから… ありのままで私達の隣に居て下さい

甘えて、泣いて、頼ってくれるのがこれ以上無く幸せなのです

出会ってくれて…ありがとう

あなたが提督で、本当によかったーーー

 

 

俺は約束したから

お前らと共に有ると…行くと

…なら俺も一緒に戦う

 

ここで俺が戦う事に意味は無いのだろう

自己満足なのだろう

でも俺が俺で有るために…

 

なぜなら 信じているから

なぜなら 受け止めてくれたから

なぜなら それをコイツに認めさせたかったから

 

 

ここで倒れられたら楽だろうさ

気絶でも出来たら楽だろうさ!

でもそれじゃーダメだ!

艦娘が頑張ってんのに…提督が負けちゃ行けねえんだよ!!

 

なら立たなきゃいけねーだろ!

 

 

だから…俺は…お前に…勝つッ」

 

 

フラフラと立ち上がる救

 

けっ!熱い熱い…

向こうも向こうで盛り上がってんな…

 

あん?何だ?あの小娘がこっち向いてんな

 

 

 

金剛…ありがとう…

画面の向こう側だったお前に会えるのが…

その手に触れられる事が出来るのが…

その笑顔を見る事が出来るのが…

俺に頑張れと言ってくれるのが!

俺の側に居てくれることが!!

俺を好きと言ってくれることが!!!

 

俺を何度でも立ち上がらせてくれるんだ!!

 

 

「ダーーーーリーーーン!!!」

 

でっけえ声だな…

 

「金剛ーーーーー!!」

 

 

 

 

 

 

「「 あい らぁぶ ゆうううッ!!!!」」

 

 

ふん!恥ずかしげも無く…

 

コイツら…凄え絆だな…

俺なんか要らなかったかもな…

でも負けてやる気はねぇ

俺だって呉鎮守府の提督だ!

コレは俺の戦いだッ!!

 

 

 

 

「よおし…やる気再チャージだ」

 

 

やるじゃねえか クソガキ

進めたなら後は示せや お前らってやつをよ

 

 

「負けるなーーー!!!クソ提督ーー!!!!」

「お姉様を泣かせたら…!!許さないぞー!負けるなー」

「提督ーー!!!愛してますーーー!!!

「私らも居るんだぞーー!忘れんなー!!」

「「「「「I Love Youーーーーー!!!!!」」」」」

「「「勝って下さい!!!!」」」

 

 

 

 

何笑ってやがる…

 

 

 

 

「ふん…負けんなよ 俺達に勝ったんだから」

「提督さん…素直に応援してあげましょうなのです…」

 

「さあ…後輩君…やっちまえ!!」

 

救には皆の隣に懐かしい顔が見えた気がしたーー

 

 

「よおおおっしゃぁぁぁあァァァァァァァア」

 

 

 

何だよ…イキイキしたら目しやがってよ

 

 

走ってくる救

 

 

救の蹴りが巌を襲う

腕でガードしたが重い  さっきまでと動きが違う

 

そのまま攻めて来るだと!?

何だ!? くそっ、さっきより攻撃が重いじゃねーか

 

巌の拳が救の顔面を捉えた

…が倒れない!

救は流血しながら拳を頭で押し返している

 

なに!?

笑ってやがる…だと?

 

 

「オラァァッ!!」

救の拳が巌の左頬を殴り抜く

 

「まだまだァッ」

そのまま左ボディーを殴り抜く

 

 

 

コイツの眼…

なんてまっすぐな…

 

あん? 

ああ そうか

 

その眼は  アイツに似てんのか…

死んだ…嫁になあ…

 

軍人だった嫁 皆を守る為に最後まで残って深海棲艦と戦った嫁

真っ直ぐで 頑固で…それでも、優しくてーー

 

あぁ だから俺はアイツが気に入ったのか?

 

 

ふと考えた瞬間ーーー

目の前から救は消えていた

 

どこだ!?  どこーーーー

下か!!

 

しかし一瞬、遅かった

なぜ俺は戦いの最中に嫁のことを思い出したー!?

 

その一瞬が…全てを変えた

 

 

「そこだぁぁぁあっ!!」

と救の右拳が巌の顎を殴り抜いた

渾身のアッパーは見事に巌の背を地面につけた

 

 

巌は倒れ行く中 大和の方を見る

おいおい 夫婦揃って…同じようにやられんのか…

 

大和も同じように金剛に打ち負かされていたーーー

 

 

 

 

 

 

けっ  夫婦揃ってよお…いい負け方だなァ

 

夏枝よお…見てるか…?

俺は初めて負けたぜ…

 

 

「………」

 

 

 

俺を見下ろす若えクソガキ

 

 

あなた…と大和が金剛に肩を借りてやってきた

 

 

死にたくなかった でも死んだからこの世界に来れた

帰る場所なんてどこにもないし

辛い事だらけだったけど

皆が居て…それだけが支えだから…

 

改めて… 分かったんだ

俺は…この世界で生きて行くんだって

 

皆としっかり向き合えた…

 

 

でも…俺は結婚はしない!

例え細々とでも頑張って生きて行く

 

 

「ダーリン…」

 

 

「あ? ありゃ嘘だ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「は?」」

と俺と金剛は聞き直した

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁあっ!?なっ なっ どういうことですか!!」

 

 

「ごめんなさいね?主人のやり方は乱暴だったけど初めからそんな話じゃなかったの」

と大和は困ったように笑っていった

 

「え? え?!?てか主人? え?!?」

 

「けっ… なあおい」

 

「何でしょう?」

 

「敬語はやめろ…それと、手を貸せ…立たせてくれ…お前の拳…効いたぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

詰まりは…俺の為にこんな訳のわからん事を計画したと?

 

「ああ知らんのはお前と艦娘だけだ…」

 

親父は知ってたのかよおお!

てか本当に負けてたら!?

 

「それまでの男だったという事だ…でもどうだ?」

 

今まで以上に艦娘との絆を感じる

そして自分の中の迷いも何もかもが無い

それは確かだった

 

「ならそれでいいじゃねーか…」

 

 

 

 

「提督…よがっだぁ"」

「ぶええええ…」

「ごんなにボロボロになづで…」

 

ありがとうな皆…

 

「あんな告白して…私達の事忘れてましたよね?」

 

あ…

 

「私達だって居るんですからね!?」

「指揮官様あ?ダメですわあ」

 

地雷ダタヨ

 

 

「でも…」

「今日くらいは…許してあげる」

「ね?金剛?」

 

 

そこには…本当にボロボロだけど笑顔に泣く金剛が居た

 

 

「ダーリン!」

金剛が飛び込んで来た!

「ダーリン…ダーリン!ダーリン!!」

金剛は俺の存在を確かめるように力強く抱きしめてきた

 

俺は「金剛…ありがとう…ありがとう」と

それより強く金剛を抱きしめた

 

 

 

「「「私達もっ!!」」」

結局皆飛び込んで来た

 

 

いでででで!

痛い!痛い!

 

…皆泣いていた…

「良かった…提督が何処にも行かなくて…」

 

お前達… あぁ 俺は何処にも行かないよ…絶対に

力の込められた抱擁の痛さが何か心地よかった…

 

 

 

 

 




次回はエピローグ 後日談と続きます
明日から少し更新が遅いかなと 電波が多分届かないw



バトル描写はやはり少し苦手…

以前にも書きましたが
主人公が救い救われる物語なので
救が救われたお話にしたかったのです

出発前や金剛の戦いは書きたい事書けたので良かった…
少しでも熱くなって貰えたなら…と思います


相変わらず!コメントや要望、評価等お待ちしてます(๑╹ω╹๑ )
こんな話ない?とか早くあのキャラだしてくれよ でも深海棲艦とええ加減戦えや でも
お気軽にどうぞ!(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`) ネタは仕事中に考えますので(๑╹ω╹๑ )


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58話 鐘の鳴った後に

エピローグ?小話?



…救です

ただ今…医務室で療養中です

全身打撲…捻挫… 右手…他にヒビ…

 

まあそりゃそーだわなーーー

 

 

金剛も同じく入渠…を終え

目の前に居る

 

「ダーリン♡はい!あーーん!」

 

「ぁ…あーん」

りんごを剥いでくれるのは嬉しい…でもね

口の中ズタズタで痛いのよ…

 

「嬉しそうだな金剛は」

とお茶を飲みながら話す

 

「えぇー? だって… I Love Youって言ってくれたでショー?

両想いだから…嬉しくて…それにね?」

 

「こっちのテートクから聞いたヨ 私の事どう思ってるかって!」

 

 

ブーーーッ

「ゴホッ ゲホッ…な、何だって?!?!?」

 

「えへへー! 私幸せヨーーー」

 

 

 

 

「おー…お熱いこって」

と、巌と大和が入ってくる

 

「あー…」

 

「なんで俺が1番重傷なんですか?」

 

「そりゃ…なあ 俺らと比べたらいかんだろう…」

「あなたもでしょう?」

と大和が巌を突っつく 

 

「ぐおおおおっ」

と悶える巌

愉快なおじさんに変身したな…

 

 

「フフフ…あなた達…凄かったわよ?本当に」

 

「この人ね?あなたのこと大好きなのよ?」

「は!?」

「お、おい!」

 

「ふふふ あなたが特別な提督だって

でも今のままじゃ…その先に行けないからって

でも…ちゃんと導けない不器用な人だから…ごめんなさいね?こんな形をとっちゃって…ね?」

 

「その先…ですか?」

 

「わかってるくせに 心から提督と艦娘が繋がることよ

あの時の金剛さん…強かったわ」

 

「……」

 

「私はね? 建造されてからずっと戦ってきたの…鬼や姫ともね

いつの間にか最強格なんて言われてたわ

蒙武の武蔵も… ブインの長門にも…陸奥にも他の大和にも…負けなかったわ… もちろんあなたにも負けるつもりもなかったわ?

応援はしてたけどね?

 

でも その私が…金剛さん…あなたに恐怖したの」

 

 

「Why?」

 

「あなたの気迫よ… あなたは轟沈判定…体力は無かったはずなの

なのに何度も立ち上がって… 私を追い詰めたの

提督を守りたい!渡さないっていう心…かな

それに 震えたわ」

 

「金剛…」

 

 

「そりゃ…お前もだよ 何度も叩き潰した なのによ

ずっとずっと立ち上がってきてよぉ…ゾンビ映画よりヤベェと思ったわ…」

 

 

 

 

「結婚の話も…」

 

 

「娘を渡す訳ねえだろーーー!?一人娘だぞー??」

「やっと大和を義母さんと認めてくれたんだからよ」

 

 

「え?」

 

「あー 夏子は 前の嫁の子なんだ…

夏枝は…軍人でな…深海棲艦との戦いで死んだんだわ」

 

悲しんでいても敵はやってくる

だからずっと堪えて戦い続けてきた…と

大和はその頃からの艦娘らしい

巌をずっと支え続けてきたと…

夏子さんは それを見てきたらしい

 

 

箱入りな訳だ…大切にされてるのねえ

 

 

 

「お父様!お母様!!」

噂をすれば…

 

「あっ!救様! ありがとうございます…嘘とは言え私の為に…父を止めようとしてくれて」

 

まあ…一部は事実である

 

 

「確かに夏子さんの事も考えろって言ってたなあ……夏子……そうか 救…ありがとうな」

 

 

 

 

 

 

 

「お父様…お義母様!私決めました!」

 

 

「ん?」

「何を?」

 

 

 

「私!救様と結婚したいです!!!」

 

 

 

「「「「はぁぁぁぁっ!?」」」」

 

「いやいやいやいや!聞いてたか?!夏!!コイツは金剛達と…」

 

「でもお父様達みたいに本当に結婚した訳じゃないですよね?」

 

「えぇ…」

 

「なら私にもチャンスはあるかなあって」

「私!あなたに惚れました!!」

 

 

「…おい救…俺は認めんぞ!」

「あらあら まあまあ」

 

「俺だって状況が飲み込めてないよ…」

 

金剛…頼むそんな顔しないで

 

「だ…ダーリンは渡さないデース!!」

 

「認めんぞおおおおおお!」

 

 

 

 

 

早く…帰りたい…

 

 

 

艦娘が余計に離れなくなりました…

 




閲覧ありがとうございます(๑╹ω╹๑ )


今後ともよろしくお願いします!


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59話 西波島鎮守府のバカンス ①

馬鹿ンス編です


もう…60話…だと?

 

たまには慰労を兼ねてバカンスに繰り出したい

 

行こうぜ…

vacances…

 

 

 

 

「お前達イィ! バカンスに行きたいかぁぁあ!!」

と提督がヤバめのテンションで叫んでマース

 

 

「「「「「うおおおお!!」」」」

それに負けないヤバめの艦娘達…

 

 

「ヒャッハーぃ 行くぜえええ!!」

 

 

 

 

 

準備!

 

 

出発!!徒歩30分!

 

 

現地到着!!!

 

 

暗い海!

灰色の砂浜!!

照りつけない太陽!!!

 

そう!

 

 

 

ザァァァァアアアア!!

大雨でした

 

「ぬぁぁああああああっ」

「…雨かよおお」

「誰かさんの日頃の行いかしら〜?」

 

…聞こえなーい

 

 

「やる事ないよねー」

 

 

もそもそとテンションダウンで夕飯を食べる面々

 

何名かの艦娘が晴れの儀式をしていた…

明日は晴れるといいね…

 

 

 

 

翌日

 

 

 

 

 

まあ 晴れた

「やったわ!儀式の成功よ!生贄が良かったのかも!」

 

天気予報でも言ってたしね 今日から晴れって

あとね?この鶏肉1kg? 経費で出ないからね?

給料から引いとくからね?

 

俺知ってんだかんな?お前らが儀式の後食べてたの…

 

 

まあいいか

さあ

泳ごうか!

 

「あら、さすが金剛!大胆な水着ね!」

「鈴谷はちょっと露出多くない?」

 

 

「あら吹雪、可愛い水着ね〜?」

「龍田さん… うっ…うわぁぁん!」

龍田のどことは、言わないが

とにかく龍田を見て泣き出す吹雪…

 

そこに近付く大和…

「どうしたの? 大丈夫?」

 

おい!大和!お前は…

「大和さん… うわぁぁん!びええええん!!」

…吹雪にトドメさしたぁぁぁあ!!!

 

 

「ゴーヤはいつもと同じなのね?」

 

「機能美にあふれる提督指定の水着ですから!」

 

「……え?」

 

「提督指定の水着ですから」

 

 

「てーーとくさんー??」

「少しお話がーー」

 

「仕様なの! 仕様なの!!」

入手時からそうなんだもん!!

 

「提督…ゴーヤの水着似合わない?」

はいー!!!

俺!死亡コース!

 

 

しかぁし!ここで 逃げたらゴーヤを傷つける

しかし!答えたら…俺がthe endだろう

 

答えは…ひとつ

 

「バッチリ似合ってるよ!いつもの…いいよな!」

 

「ありがとうーー!!!」

と喜ぶゴーヤと

その言葉と同時に俺に向かってくる艦娘達…

 

 

来てしまったか…

 

さよなら…皆さん

こんなー提督が居たことをーー

覚えていてーほしいーー

なぜなら僕は…提督だからー(森○レオ風)

 

 

「「「「私達のも褒めてください!!」」」」

 

あぁ…そういう奴ですか…

 

「お前達〜サイコーだぜ〜〜〜」

 

「うおーー!」

どこぞのウミガメみたいな返しをしておく

 

 

 

 

 

 

ん?ビーチバレーしてるな?

戦艦勢のビーチバレーは目のやりどころに困るからいけない…

 

「しーきーーかーーん?ダメですよ?」

おお!吹雪…あれ?目隠し?

目は潰さないでね?

 

ていうかね?

スパイクで音の壁が見えたり

レシーブで地面に足がめり込んだりってビーチバレーって言えるのか?

 

 

「提督!一緒にどうだ?!」

と長門がめちゃくちゃいい笑顔で聞いてくる

 

 

 

「遠慮します…」

アレだ…死ぬ未来しか見えないのはスポーツとは言わん

正月と同じ間に合うのが見え見えだ

 

 

ビーチフラッグは…島風の独断島だった

 

「うわー…愛宕が悔しそう… 愛宕ー!頑張れ〜!」

 

「提督?…お願いがあるの… 頭の中撫でてくれない?」

おっ?いいぞー?

よしよし…頑張れよー

 

「提督…!ええ! やるわ!私!」

何か愛宕が光り輝いてた…

提督の応援ってのは凄いらしい

高揚状態の愛宕は島風より速かった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて…ふらりと

1人で釣りに勤しむ

結構釣り好きなんだよね…

 

 

「あら?」

「提督さん」

鬼ちゃんと姫ちゃんだ

 

 

「釣りしてるの? 釣れる?」

 

「微妙かなあ…」

 

「2人は?」

 

「提督に会いたくて…」

 

あら意外…

「側にいるのも…結構好きよ?」

 

 

 

おっ!?アタリがきたー!

ぐぐーっと竿がしなる!

これは大物の予感!!

 

「ああお?!やばい!!持ってかれる!!」

「手伝うわ!」

「いくわよー!」

 

3人寄らば何とやら!

「「「そおおおお……おおおおお!?!?」

 

なんと あーくろいやるを つりあげた

 

 

「初じゃないですか?海外艦は…」

「そうだな…てか大丈夫か? おーい?」

 

 

「う…ゲホッゲホッ!」

 

「お…気がついた?」

 

「…ありがと…って!?深海棲艦!?

あなた!離れなさい!!!!」

 

「いや…私達は…」

 

「問答無用! 人質とは… 待ってなさい!きっと助けますから!」

 

緊迫する3人

焦る俺

 

 

「なあ… アークロイヤルさん? 大丈夫だよ?この子達は敵じゃないよ?」

 

 

「な…何を言ってる… まさか洗脳!?」

 

 

「いや 敵なら今頃殺されてるでしょ?」

「大丈夫?とか声かけないよ?」

 

 

「ぐっ…」

 

「ね?とりあえず艤装をおろして…ね?」

 

「……あなたは何者なんだ?」

 

 

 

 

 

「俺か?俺は…  神崎 救だ」

 

「深海地中海棲姫です」

「空母棲鬼です」

「重桜の赤城です」

「同じく大鳳です」

「ロイヤルのベルファストでございます」

 

増えとるがな…

 

「あ…どうも…え?赤城?大鳳?…データと違う…… ベルファスト!?」

あーくろいやるは こんらん している!

 

「アークロイヤルだ…大本営から着任先へ移動中に敵に遭遇…その結果がコレだ… 情け無い」

 

「…大変だったんだなあ まあ生きてて良かったよ」

 

「で、あなたはどこに行こうとしてたの?」

 

「 あぁ… えとな 確かな…… 最果ての…なんだったっけ」

 

 

おい まさか…

 

 

「西波島?」

 

 

「そうだ!それだ!」

 

 

 

…聞いてねえええええええ!

やっべーー聞いてねえよそんなの!

てか!留守中に着任してたらと考えるとゾッとするわ…

ある意味深海棲艦に感謝しなくては…巡り合わせにな

 

「あなたがたはどこの所属だ?よかったら連絡を取りたいのだが…」

 

 

「ここにいるわ…」

「えぇ…あなたの隣に…」

 

「なに? この人が?」

 

 

「西波島の提督…デス」

ごめんなさいごめんなさい本当になにも聞いてなかったんです

わざとじゃないんです本当に許してください

 

「…そ…そうなのか  色々と思うところはあるが… 結果としてあなたに助けられた訳だ… 感謝する」

 

「このまま合流と言うことにさせてもらっても?」

 

「ああ このアークロイヤルがあなたの剣となろう」

 

 

 

 

「と言うことがありまして…アークロイヤルさんです」

 

「よろしく頼む」

 

意外と堂々としたアークロイヤルに感心しつつ

夕食を一緒用意する

 

 

夕飯の後は…そう アレだ

 

 

 




早いもので…もう60話なんですね
これからもちまちま頑張りますので、どうぞよろしくお願い致します(๑╹ω╹๑ )


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60話 西波島鎮守府のバカンス ②

(๑╹ω╹๑ )!!
馬鹿ンス は続くよ


夕飯は皆でカレーを作る

え?

…比叡?

 

………長生きしたいだろう?

彼女には野菜を切る係をお願いしたよ

姉妹達がな!

 

 

何でかな

飯盒で炊いたご飯はすごくうまい

炭火で焼いた肉はうまい

カレーもひとしおに美味しい

 

皆と囲む飯がさらに旨い

 

 

そんなほっこりした…

空気の中で青葉が言う

 

 

 

「この鎮守府の怖い話って知ってる?」

 

あー あるよねーそんな話

……え?この鎮守府?

 

ワクワクする艦娘 怯える艦娘

しかし 生き物ってのは…恐怖を欲しがるもので

ついつい聞いてしまうのだよ…

 

 

「小さな子供が××××に居る」

「夜な夜な食堂から物音がする」

「誰かが屋上から見下ろしている」

「夜の船着場に誰かがいる」

「執務室には隠し部屋がある」

「夜中に聞こえる呻き声」

「トイレから聞こえる声」

 

 

所謂、七不思議ってやつか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おいおい… なんでこうなった?

怖い話で盛り上がろー!から 鎮守府の怖い話になって

なら真相を確かめるっぽい!と

暴いてやろうぜ!と

 

 

 

俺は内心焦っている…ちなみに余談であるが

執務室の隠し部屋…これは知っている

 

確かに怖いぞ?

 

 

何故なら大量のエロ本があるからな…

決して俺のではない!! 結構古いのもあるんだよ!?

 

でもね 捨てる機会逃してたらさ…ね

てか コレが見つかった時のことが想像してみなよ…

 

怪談より怖いよ!!!!

 

 

 

 

 

その時 ポンと俺の肩に誰かの手が!!!

 

「!?」

 

「提督…? 大丈夫 例のブツは処分してるからね?」

 

「し…時雨…アレは俺のじゃあ…」

 

「知ってるよ? 流石に提督が####とか##とか###が好きなんて信じられないから…ね?」

 

「ありがとなー時雨ー 本当にありがとうなあ」

 

「ご褒美に抱きしめて欲しいな?」

 

「おおー!いいぞー!好きだわー」

と抱きしめ合う2人

 

「こらこら…お2人とも あまりしてると…ね?」

と周りから止められて離れる

 

 

さあ これで安心だ 行こうか

 

えーと?

まず?夜な夜な食堂から物音が?

 

「たまにね?聞こえるの…」

と間宮達

 

食堂に近付くメンバー達…

すると

 

ぴちゃ… ぴちゃと 何かが聞こえる!!!

「!?!?」

 

悲しいことに俺は男なんだな…

皆の逝って来いの合図で恐る恐るとその音の方へと進んでゆく

 

 

 

そこには

 

 

 

「トマト…トマト…」

と冷蔵庫からトマトを取り出して食べる桜赤城と赤城の姿が…

 

「お前らかーーーい!!!」

と2人の脳天にチョップしといた

 

「いっ! 指揮官様!?」

「いったあ! 提督!?」

 

2人曰く 乙女は食べたくても食べられない時があると

 

その結果が夜な夜な冷蔵庫を漁ると…

ため息をつく、俺…

 

 

 

瞬間…物凄い寒気がした

その方角を見ると…

 

 

 

 

間宮達が鬼の形相をしていました

 

連行される2人…

怪談よりも恐ろしいものを見た……

 

 

 

 

 

 

「何か拍子抜けっぽーい!次々!」

 

 

 

「次は…執務室の隠し部屋だね」

「噂によると拷問器具や人体標本…とにかくヤバいものが置かれてるらしいよー!」

 

あー そういうグッズ(器具)やエロ本(標本)ねー…あったわー

まあ 時雨のおかげで助かりそうだけど…

 

 

 

「提督は何か知らないのデス?」

 

うーん…知らないなあ…

 

 

 

と言いながら執務室を探る面々…

「なんか夜の執務室って新鮮だよねー」

「ええ そうね」

俺はあんまり生きた心地しないよ…

 

 

 

「あ」

と時雨が隠し部屋の仕掛けを起動させた…

さすが!時雨!演技派だね!

 

 

「おー!ここねー!」

「何な…えっ!?」

「きゃぁあ!」

 

と何故か聞こえる悲鳴

どしたの?

 

「てててて提督!」

 

「何だよ…って本当に何だこれは!?」

と恐る恐る覗いた先には…

 

 

 

 

 

 

 

部屋一面の時雨の写真…

ご丁寧にコラで作られた2人のツーショット…

お風呂の盗撮写真…etc

「ぬぁぁああぁぁぁあああ!?!?」

と時雨の方を見る

 

 

「て…提督…そんなに僕のことを?////」

おい!照れるな!お前だろおおおお犯人はーー!!

 

(いいのかな?…僕の工作とバレたら…この宝物達が火を吹くよ!)

 

くう!コイツ脳内に直接ッ!

てかエロ本俺のじゃねーし

つっても誰も信用しないか

 

 

「そういえばさっき提督は時雨に抱きついて好きーって言ってたしね」

 

「提督さん…やっぱり時雨の事を…そんな目で」

 

 

この話の最初の方にやったわー 時雨に抱きしめてと言われてやったわー

…時雨…貴様ッ ここまで計算してッ

 

 

「さあ 説明してくだサーイ」

「…提督!」

 

 

…くっ…殺せ!という台詞はこんな時のためにあるんたろうなと

考えながら 鎮守府を逃げ回る

 

そして男子トイレの個室に逃げ込む俺

 

息を整えて静かに待つ…

パタパタパタと足音は向こうへ行ったようだ…

「ふう…」と一息ついた

 

 

 

「ここに居たのね?」

 

とそこにはトイレの個室の上からこちらを見下ろす

艦娘達が…びっしりと

 

よくホラー映画とかでそんなシチュエーションってあんじゃん?

でもそれって大体1人じゃん?見てくるの

 

それがたくさん 

ほら個室ってさ?四角じゃん?上の吹き抜け?てやつ?

そこからさ覗いてんの

しかも無表情で笑ってんの

はい もう怖くて怖くて

 

ドアを蹴り破って我も忘れて逃げましたよ!

 

 

そんでね 私室に逃げ込んだんですけど

 

椅子に座って とりあえずどうしようかと考えていた訳だけど

その時にね ふと聞こえてきたんですよ…後ろから

 

 

 

 

「 ネエ アソボ?」

 

 

そして

コンコン

「提督 大丈夫ですか もう誰も怒ってないよ」

と時雨の声だったんですね

 

助かった! 

 

そう思ったんですよ

 

ドアの鍵を開けようとした時 思ったんですね

 

俺はトイレのドアを蹴り破って出てきた訳で

その時艦娘は個室の上四方から覗いてたわけで

なら

蹴り破った時に誰ともぶつかってないのはおかしいわけで…

 

 

 

「ねえ 提督 ドウシタノ アケテ」

 

時雨はこんなに抑揚のない声じゃない訳で

 

 

 

 

「ネェ アソンデクレナイノ?」

 

と後ろから聞こえる訳で

 

 

 

 

ドンドンドン ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ

 

「アケテ アケテアケテアケテアケテアケテアケテアケテアケテアケテアケテアケテアケテアケテ アケテヨ」

 

 

「アソボアソボアソボアソボアソボアソボアソボアソボアソボ」

 

 

「キャハハハハハ 」

 

そして俺の肩に 手が置かれた

 

「ツーーカマエタ」

 

 

「アソボ?」

 

 




ホラー……


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61話 西波島鎮守府 バカンス ③

馬鹿ンス…?


俺の肩に手が触れた

 

「アソボ」

 

俺の恐怖メーターはレッドゾーンを遥かに超えた

 

 

 

これは経験上だが 生き物ってのは恐怖のレベルが、ある一定値を振り切ると とんでもない行動に出たりするものだ

 

火事場の何とか…と言うしな

 

何が言いたいかって?

 

 

 

 

「そりゃぁぁあ!!」

俺はその手を掴んで背負い投げをした

「ヴッ」

 

「耳元でアソボアソボうるせえええええ!」

 

 

 

そして

ひたすらにガチャガチャと音を立てる執務室のドアを…

 

 

またまた蹴り破り

「テメェゴルァ  ガチャガチャうっさいんじゃぁぁぁ!!」

「後なァァ 時雨はよおおお そんな声じゃねえええんだよおおおっ」

「どうせだったら 愛してるとか何か言ってみろやぁぁぁあ!!」

 

「……エエ…」

 

我ながら意味がわからない事を言っている

きっと相手もドン引きだろう てか引いていた

 

 

それ以上にその様子を震えながら見ていた艦娘も引いていた

 

しかし知らん

 

「お前ら全員正座しろやぁぁぁあ」

 

 

 

 

と、正座させられる 艦娘と幽霊

 

 

「大体な…時雨…お前が変な事をするからなぁ…」

 

「いや あの  それは僕が悪かったケド…あの」

 

「何だ?!」

 

「いや…あの 幽霊にも説教って」

 

「何言ってんだ? あんなにドアをガチャガチャしたら壊れるだろ?怒られるのは当たり前だ…てか2人でであれだけのことを出来たのがすげえ、」

 

「いやーー…よーく思い出してよお…トイレも執務室もドア壊したのは提督だよ」

 

ウンウンと頷く幽霊さん

 

「……ふむ」

 

 

「で?お前は何なの?」

と幽霊に話かけてみる

 

「えっ…ドアの件は流すの?」

「提督は勢いで流すつもりよ」

 

 

 

 

 

「私達は…この世を彷徨う艦娘の残滓… 」

 

「もう何も覚えていない…どこに行けば良いのかも思い出せない…」

 

「ただ、艦娘で…何故かこの鎮守府に行けば何か思い出せるかと思ったの…ならあなたが居て…」

 

「楽しそうなあなた達か羨ましくて…」

 

「確かにやり過ぎたわ…ごめんなさい…出て行くから…」

 

 

 

 

 

「何言ってんだ?」

 

 

 

 

 

「ここに居るってならお前達2人はウチの艦娘だろう?」

 

 

 

 

 

「「「「「え?」」」」」

なんだ?その理論は

 

 

「だってそーだろ? ここは西波島鎮守府だ そこに居るならウチの艦娘だろ 思い出せないなら思い出を作れば良い な?あきつ丸」

 

「そーでありますな…しかし…幽霊までとは…その…さすが提督殿と申しますか…」

 

 

「な!」

と、笑顔を、こちらに負ける提督らしき人

さっきまでのドアを破壊して この子を背負い投げしたとは思えない

優しそうな人…

 

 

「えっ」

 

提督さんが揺らいで見えた

別の人が見える

 

この人は…

 

あぁ…この感じ…

何故か懐かしい…

 

あの人は元気かしら

 

あの人…が誰かも思い出せないが こんな暖かい人だった気がする

もう少しで…思い出せそうなのに…

不思議な人…

 

思い出したい…

 

「あの…手を握っても…?」

 

「ん?手か? ほい」

と手を差し出してくれる提督さん

私はその手をそっと握った…

 

暖かい…のかな ふふ 感覚なんか無いはずなのに…

 

「…ああ…そうか…」

 

思い出した…

 

 

この人は…

本当に不思議な人…

でもお陰で… 行けるわ…

 

 

「ん?お前……………」

 

 

「ええ…残念だけど…お別れみたい…ふふ 」

 

艦娘はどんどんと透けて黄色い光に変わって行く

 

「……探し物は見たかったのか?」

 

「ええ、ありがとう、ここの提督さん…ほんの少しだったけど本当にありがとう」

 

「生まれ変わったら…また会いに来てくれ」

 

 

ええ…そうするかも…

 

 

 

この人にあの人が見える…

ずっと探していた…私の…大切な人…

 

あぁ………

そこに居たのですね……提督…

 

ずっと…探してました 優しい提督さんのおかげでまたあなたに会えました…提督……あぁ…提督…

とても…暖かいです

 

 

ーーーごめんね…***

 探してくれて…ありがとうーーーーーー

 

 

 

艦娘だった名も無き者は光となって消えて行った…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次はお前か?」

 

「…あなたは……一体…」

 

「お前は分かってんだろ?…もうその鎮守府が無いことを…」

 

「ええ…あなた、いつから分かってたの?どこで?」

 

 

「その胸のワッペンかな… 少し前にな…資料で読んだんだ…」

 

独特なマークのワッペンだった

 

 

 

「仲間の為だったんだろ?ワザと忘れたフリをして…ずっと一緒にいたんだろ?…じゃないとアイツはずっと成仏出来ず1人ぼっちだったもんな…優しいなお前は…」

 

「仲間だからね…それにあなたこそよ…こんな奇跡が起こるなんて…本当にありがとう…」

 

「え?どゆこと?」

とウチのメンバーは分かっていない様子だった

それでも俺は話を続けた

 

「みんな待ってんだろ? そろそろ行けよ」

 

「ええ」

 

と名も無き艦娘が言う

 

「提督程じゃないけど…あなたも素敵な人よ…もし生まれ変われたら…あなたと一緒に戦っても良いわ…」

と手を握ってきた

 

「いつでも待ってるよ」

 

 

「ありがとう…私も…ようやく会えたわ… やっと触れられた…提督」

 

 

 

 

彼女達のいた場所には

何も残らなかった

 

 

 

彼女達は…きっと笑えたんだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督…?」

 

「怪談話から…こうなるなんて…何かしんみりしちゃったな!」

「あの子達、提督に会えたかな?」

 

「会えたんじゃないか?…いや会えたさ」

 

「何でわかるの?」

 

「何でダーリンに触って やっと触れられた って言ったノー?」

 

「さあな!」

 

「教えてよ!」

 

「その前にドアの修理だな」

 

 

 「えええーーー」

 

 

 

 

 

 

 

約8年も前の話

ある鎮守府が深海棲艦の大侵攻を受け崩落した

しかし

その鎮守府艦隊は住民や街を守り切った

 

 

提督や艦娘達の命と引き換えに

その街では提督、軍人、艦娘は街の英雄として語られていた

若年ながら街を守り抜いた誇り高き英雄と

 

 

その誇り高い提督は………

 

 

 

 

「ありがとう」

そう聞こえた気がして

心の奥が少し暖かく感じた…

 

 

そんなある日の夜だった

 




救に重なる提督とは?



次回は少しだけ逸れます


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61.5話 閑話 過ぎ去りし日の話 西波島鎮守府のバカンス ④ 

あなた(読者)普段通り生活していたはず

しかし急に目の前が真っ暗になります

そして

 

今 あなたの目の前にはある人物が居ます

「君…そうだ いつも画面の向こうに居る君だ、少し話に付き合ってくれないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

獣は死して皮を残す

人は死して名を残す

名を残すとて

しかしそれは極々一握りの存在

 

 

歴史の中には影に隠れ歴史に埋もれてしまった故人というものが多く存在する

世界を動かす訳でもなく

日本を救った訳でもなく

小さな輪の中で語り継がれる話もある

 

 

 

 

 

これはあまり知られていない

 

しかし知る人は知る

 

英雄と呼ばれた鎮守府の話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前…怖くないのかい?」

 

「僕には守るものがありますから」

 

 

迫りくる敵影

 

傷ついた艦娘

 

砲撃で穴だらけの鎮守府

 

ボロボロな仲間たち

 

背後には護るべき街、人

 

 

「なら立ちな!アタシが支えてやるよ」

「少将殿は…厳しいですね」

 

「弱音は禁止だよ!」

 

 

震える手で、声で指揮を採る

「何が何でも…守り抜くッ」

 

 

 

 

 

 

防衛戦は熾烈を極めた

 

止め処なく攻め入る深海棲艦

 

聞こえる砲音

 

切り裂くような悲鳴

 

傷付き倒れる仲間達(艦娘や仲間)

 

鬼神の如き戦う艦娘達

 

爆音と共に沈む深海棲艦

 

 

皮肉な事に

この日の戦闘は1番艦娘との繋がりを強く感じた日だった

 

 

皆の思いは唯一つ

 この後ろに何があっても深海棲艦を進めないこと

 

 

 

 

 

約半日にも及ぶ戦線の終わりには

 

 

海は残骸で溢れ

 

誰一人として そこに立つも者は居なかった

 

 

 

 

 

 

 

「提督…無…事です……か?」

と聞いてくる***

 

「ああ… どうだろう…」

力無く提督は答える

××提督の腹からは血が流れていた

被弾したのだろうか…

しかし彼は

最後の最後まで執務室から離れなかった

 

 

「生き残りは…私だけですが…私…も、もう…ダメです……」

と力無く言う**

 

「すまない…皆も…死なせてしまった…」

涙声なのか…余力のないかすれ声なのか…

提督は震える声で言った

 

 

「いえ…皆あなたと共に戦えて…幸せでした……」

 

 

「誇れ…チビ助…達 街も…住民…も無事らしい…ぞ」

と執務室へ現れた少将殿が言う

 

 

 

「あぁ…良かっ…た…流石提督…私の大好 な………ーー」

そのまま艦娘は静かに息を引き取った

 

 

 

 

 

 

 

「おい…***……くそっ …皆… ごめんな…俺も 

 

すぐそっちに行くから…」

 

 

 

 

 

「チビ助…田舎の親父さんは…お別れも出来ず…悲しむだろな…医者だっけか?」

 

 

 

 

「ええ… 少将殿の旦那さんも提督でしょう? 娘さんも家で待ってるんじゃ…」

 

 

「そうさねえ…でもコレは仕方ないさ…戦争だからね…でもアタシ達は……勝ったんだ…」

 

 

 

「ええ…でも…守り抜けたから…良かったです…ね…少将殿?」

 

「………」

 

「時成少将?」

 

 

「あ…ぁ 聞こえてるよ… チビ…助…」

 

「もう…チビ助はやめてくださいよ…」

 

 

「そう…さな…松田…提督……良くやっ…た…よ…………」

 

 

「ありがとう…ございます… ごめん…親父…でも僕は…頑張った………よ 悔いは…ないと言うと嘘になるけど……頑張った……ー僕は守り切ったんだ……誇りに…思って欲しいな…ーーーー」

 

 

「…夏子……ごめんね 成人までの約束…守れなくて

アンタ…後は…頼んだよ…ーーー」

 

 

 

 

 

 

とある日…

とある鎮守府所属が崩壊した

 

提督 1名

指導役1名

軍人 12名

艦娘 52名

 

誰一人として生き残った者は居ない

 

 

「生き残りはいないか!?誰か…」

 

援軍の到着した時には既に戦闘は終わっていた

 

「ここは…執務室か?なんて有り様だ…」

 

数時間にも及ぶ砲撃を受け続けた鎮守府の執務室に

提督と指導役と艦娘が静かに眠っていた

 

「夏枝……お前…まで…くそ…」

 

 

しかし…

彼らの犠牲のお陰で守られたものは多い

彼らは鎮守府より後方へ一切の砲撃も侵入も許さなかったのだ

たった1発の流れ弾も 瓦礫も 深海棲艦も

 

その凄惨さは街の壁となった鎮守府の跡地が物語っていた

 

この出来事を機に

大本営は各鎮守府の更なる増強を進めた

 

 

あまり大々的には知られていないが

軍関係者とその街の人は知っている

街では彼らの偉大さを…誇り高き英雄と感謝した

 

反面に

 

残された者の心に大きな傷を残して

「祐樹……」

 

 

「お母さん……」

 

 

 

 

 

 

 

その誇りは受け継がれる

 

 

 

 

その誇りある鎮守府の名は 猛武鎮守府 猛る武神の如き鎮守府

今なおその跡地は住民達の感謝の印となっている

 

 

 

そして…

場所は少し変わったが猛武鎮守府は存在している

蒙武鎮守府と通称される鎮守府には里中 麗が提督として居る

彼女もまたその鎮守府と街を守る提督である

 

 

 

 

複雑な運命の流れは時を経て

とある男へと続いて行く

 

世界を超えてやって来た

 

その誇り高き提督の命を受け継いだ男へと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やあ 君

そうだ!私だ加奈江先輩だ! いや祐樹先輩か?

 

何で話かけてるかって?

うーん

君達には知って欲しかったからさ

 

ほら 資料だけだと

攻められて 鎮守府崩壊しか載ってないだろう?

 

人はね本当に忘れ去られた時こそ

人生の終わりなんだ

…だから知って欲しかったんだ

 

まあ私の命は彼の中に有るから

消える事はないんだがね

 

それに…僕も皆に会えたから嬉しいんだ

わかるかい?!

この奇跡が!

 

全く、彼には驚かされてばかりだ…

 

おっと

話が逸れたかな?

 

まあ これからも可愛い後輩君を一緒に見守ってくれたら嬉しいな

 

 

 

また話しかける事もあるかもしれないね

 

じゃあ、またね

 

 

 

とその人はあなたの前からずっと消えて

あなたは現実に戻される

 




先輩が、皆さんに話かけていたようですね?




松田先輩は実は提督だったと言うお話でした

だから艦娘は懐かしく思い 思い出せたと…
きっと艦娘は 生まれ変わったら…の約束を守ってまた来るでしょう

救の中に居る提督ともう一度一緒に戦う為に

後は巌の奥さんですね
共通するのは共に軍人で死んだと言う事

松田に関しては 親は軍人としか言ってませんでしたが
正義の在りどころ で息子に聴いたが…提督が鎮守府に居ないと艦娘が弱くなるんだろ?
ってのが ほんの小さな伏線?のつもり?でした?

救は資料で松田がいかに凄い先輩だったかを知ります



実は この2人は
構想段階から こうなる予定でした

巌と言うよりは
夏子と救ですかね まあ そんなに絡みはまだ無いですが

ちなみに夏子と麗にも関係があったりします

ノリでホラー書いてたらこんなしんみりした話になっちゃった!


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62話 西波島鎮守府のバカンス ⑤

各タイトルに 話数の設定をしました
途中で挟む話で 0.5話もありますので
実際の数字と少し離れますが…


「どうかしたの?提督」

 

「ん 加賀か… いや 戦争真っ只中と言うのに…平和だなあと」

 

「この束の間の日々はあなたが勝ち取ったものですよ」

 

「いや そんな事はない…前にも言ったが称賛されるべきはお前達だ」

 

「でも…」

 

「お前達だけがそう言ってくれるだけで俺は報われているんだ」

 

 

そうだ

提督は目立つ事はない 

執務室から戦略を立て 指揮を行い

 

前線に立つ私達が 皆から見られる、

椅子に座る上層部、海軍が褒められる

 

でも私達は知っている

いかにこの人が私達を沈めまいと日夜、色んな資料を漁り、戦略を立て 一人一人に指揮を取っているか

 

 

 

 

 

 

 

「さあ 残りのバカンスを楽しもう」

 

 

残りは皆でひたすら楽しんだ

 

 

 

この時間がただ、ひたすらに愛おしかった

皆や大好きな提督とのこの時間

 

 

 

バーベキューで黒焦げになった肉や野菜でさえ

美味しく感じ…………やっぱり苦い

 

 

 

私達もきっと沈んだら…あなたを探すでしょう

何年経っても 絶対にあなたの元に帰って(還って)くるでしょう

 

でも沈むつもりもない

 

あなたが命を全うするその瞬間まで傍に居ます

 

 

 

 

 

 

 

みんなーー!ー!花火しよー!!

 

提督が言い出した

 

何年振りかなあ…花火なんて とか言いながら準備する提督

 

 

 

「わぁ…綺麗…」

「うひょーーい!!」

「二本持ちっぽーーい!」

 

「危ないぞー」

 

「線香花火は最後よね?」

 

「打ち上げ花火やろうぜ!」

 

「誰だ!煙玉に火をつけたの!!」

 

「ネズミ花火が追いかけてくるよおー」

 

「ロケット…5連射!!!」

 

「スイカを切って来ましたよ〜」

 

 

 

「……」

提督が皆を儚げな表情で見つめていた

 

 

「どうなされたのですか? ご主人様」

 

「ベルファスト… いや…少し感傷に浸っていただけさ」

 

「そうですか…」

 

するとご主人様が立ち上がって言った

「みんなーー」

 

 

「んー?」

「なに?」

「どしたの?」

 

 

「いつもありがとうな お前達のおかげでこうやって俺はここに居られるんだ…本当にありがとう  大好きだ」

 

 

「どうなされたのですか?指揮官様〜?」

 

「いや…何となく伝えたくて」

 

「なら…言葉なんかいりません…ずっとお側に居させてください」

「ええ!それが私達の幸せですから」

 

 

 

幸せとは 今目の前にあるんだろう

このひと時…一瞬の積み重ねこそ何にも替えがたい幸せなのだ

 

 

「次は…常夏の島…連れて行ってくださいね?」

 

 

そうだなー…

 

 

花火の続きをやった

 

花火で花火に点火するのが好きだ

何か別の人と楽しみを共有してるみたいで嬉しくなる

 

打ち上げ花火の豪快さが好きだ

ヒュルルルと登るにつれて高揚する気持ちと

一瞬に全てを濃縮したような空に弾ける輝きは思わず見惚れてしまう

 

綺麗なものは…やはり心を奪う

 

線香花火の儚さが好きだ

蛍の光の如く小さな光は ちょっとしたことで落ちてしまうのも

楽しい時の終わりのようで少しもの寂しいが

また、したいなと俺の中に残る

 

 

 

最後にどでかい打ち上げ花火を上げる

と 武蔵が山賊おむすびみたいなのを何個か持ってきた

何尺玉?…それ

 

それに火をつけ 

「そおおおおい!」と投げた

飛ぶねーとか思ってると

 

 

ドォン と 

それは綺麗な華が闇夜に咲いた

 

「アイツらにも届くといいな…提督」

 

「届いてるさ」

 

 

 

 

 

海で遊び終わった後の まだ足に波がぶつかる感覚

 

花火の後の 火薬の匂い

 

暗闇から聞こえる虫の音

 

皆の 終わったねーと言う声

 

 

寂しいけど意外と嫌いじゃない

またやればいいんだから

 

 

 

 

よーし バカンスの終わりだ

明日からも頑張ろう!

 

 

「おー!」

 

 

 

 

 

 

テンションの高い隼鷹をはじめとした

酒盛りをする班を残して俺は私室に帰った…

まだまだ余韻は俺の中に残っている

 

このバカンスも

色んなことがあったなあ…としみじみ思う

だからその余韻に浸りながら寝たい

 

さあ寝るか…

 

 

 

 

 

 

「ネエ…」

おいおい

誰かのいたずらか?

 

「おい …誰が…」

また肩に手が置かれた

 

 

 

「夜戦しよ!!」

川内(夜戦狂)だった!!

夜戦馬鹿(川内)このパターンは…2度目だよ

 

「むっ ケチー!」

 

「いやいや また今度な?」

 

「嫌だー!テンションあがってんのー!」

「提督ともっと遊びたいのー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アソボ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい川内…もういいって」

「いや…私何にも言ってないよ?」

 

「ネェネェ コッチミテ?」

 

いや

怪談はまだ残っていた…

 

しかもご丁寧にそっちを見てしまう2人

 

目があった…

「ヨカッタ…ミエテルノネェ?アソビマショォ…?」

にったぁぁ と笑った笑顔がそこにあった

 

 

 

「「いやぁぁぁぁああぁぁぁぁぁあ!!!!!」」

 

 

 

 




ホラーのオチってこんな感じでしょう?


いつの間にかお気に入りが280になっていたことにビックリしました

メッセージも頂いたり…
メッセージ機能…初めて知りました…
本当に…ありがとうございます(´;ω;`)


実は当初では50話くらいかなーとか思ってたら
楽しくなってる自分が居まして 1ヵ月経たない間にこうなりました
こうなりゃ 行けるとこまで行ってみようかなと

皆さんの貴重な人生の数分を奪うことに注力しようかなと!
もう1時間くらいは奪えたかしら?

皆さんにとってのお気に入りの話とか気になるところですね



はい!
いつも通りです!
お気軽にコメント等お待ちしています!



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人物 図鑑

神崎 救

主人公 転生前30手前 転生後20代

 

 

受け継いだ人

 

守り守られ救い救われる

 

この世界の重要なピースの1つ

 

イカダ一つでこの世界に放り出された主人公

 

 

博愛主義と言えばそうなのだろう

とにかく皆大好き!な奴

 

泣いたり笑ったり大変な奴

ぶっちゃけ自分より艦娘が大切なので、すぐに痛い目に合う

 

 

転生前はある意味心が死んでたので周りが距離を置いていた

 

諦める事をしない人物でとにかく進む事を考える

恋愛に関してはなかなか気ままで 周りからのアプローチを嬉しく思うが 1人に絞るとは無理な様子

艦娘の前でも泣いたりするあたりかなり素直

 

 

現代世界も含め3度の死を経験し

先輩から命を貰い再び立ち上がる

 

何故彼は再び立ち上がれたのか…??

 

 

 

 

 

 

 

 

加奈江先輩

 

 

松田祐樹 は鎮守府崩壊と共に死亡

加奈江となり神崎の世界に転生

 

何故彼女は自殺をしたのか?

 

艦これの世界にまた行きたかったからか

現代世界に耐えられなかったか

 

 

 

 

救との出会いが彼女の人生を大きく変えた

 

 

 

救に最初に 私が連れて行くよ 等話しかけたのも彼女であり

生死の狭間の世界では彼をこれ以上頑張らなくて良いと止める

しかしそれでも変わらない彼に自らの本当の姿を見せ

命を渡し姿や肉体こそ無いが彼と共に世界を守る為にまたこの世界に戻ってきた

 

実は…彼、彼女にはもう一つの秘密がある

 

それはーーーーー(秘匿されている)

 

 

 

 

 

 

大石 深海提督

言うなれば救や祐樹の反対を行った男

 

他者に受け継がなかった男

 

とある事件を機に闇へと落ちた

 

二度と艦娘を沈めないという思いから

艦娘が大切だからこそ沈めないために強い軍を作るという

背反した考えに至った

 

救に強い復讐心を抱き

深海棲艦に魂を売り払い深海提督として彼の前に立ち塞がる

 

最終的に電や仲間との再会で我を取り戻す

 

仲間の仇である深海棲艦を倒すために道を違え

本来は仲間であるはずの救逹を倒す為に

仇である深海棲艦側に着く

また皮肉なことにそれを止めたのが本来の仲間や救達であった

 

 

 

 

 

 

御蔵 源治

 

多くは語らない人物

 

何十年も前にこの世界に転生した

先見の明があるらしく いち早く軍の上層部に成り上がり

深海棲艦の襲来に備えた

 

つまり…

 

 

 

神崎の事を迎えに行ったのも彼の行動である

 

何故彼は救に関する書類を持っていたのか?

何故彼は妖精に 頼んだぞと言ったのか?

 

何気に彼の存在は大きく世界の根幹に関わってくる

 

 

 

 

 

里中 麗

 

彼女の運命もまた奇妙なもので

とある鎮守府が守った街の出身の人である

 

鎮守府への着任は御蔵の指示である

 

 

彼女の周りは英雄を知っており

期待を背負い奮闘する

 

 

内側からは女だからと奇怪な目で見られる

救に恋心を抱く1人

 

 

 

時成 巌

呉鎮守府の提督

 

夏枝は嫁にあたる

祐樹や夏枝を援護しに行ったが間に合わず

第一発見者となった

 

その後某鎮守府への転進を志願したが認められず

当初は麗に対しては冷たく当たった

演習でボコボコにしたのもそれがある

 

しかし最近は考えを改め 彼女を認めつつある

 

 

本来は気さくで優しい人物だが

娘のことになると…

 

大和には支えられて夏枝の死を乗り越えた

夏子にそろそろ良いんじゃ無いんと言われ再婚を決意

実は誰よりも艦娘擁護派である

 

 

 

時成 夏枝

松田祐樹の指導役として鎮守府に着任していた

厳しい姉御肌な性格だが、誰でも分け隔てる事のない人物

実は麗を訓練校に推薦したのは彼女だったりする

 

鎮守府防衛線で命を落としたが

きっとその魂は誰かに受け継がれているはず

 

 

 

時成 夏子

巌と夏枝の娘

所謂、お嬢様気質な彼女は自分に忠実である

麗とは付き合いがあるが長年会ってはいない

救に惚れたと言ったが…艦娘が居てもチャンスはあると思っている

 

 

 

 

 

????

 

????はこの世界がーーーーーーーた

故にーーーーーーーをーーーーる

 

そのーーーーーは

このーーーーーーーーーーーーーー

 

 

??

海から生まれるソレ

いずれは世界を覆う存在

其れはーーー事能わず

故にーーー

 

 

 

 




人物少しまとめ?

ぶっ込んだ話は少し後に…
シリアス展開で…


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63話 鎮守府 料理対決 ① 押された起爆スイッチ

うひょおおお
1ヶ月だーー!


ーーーーーーっ!!

終わった〜〜!!!!

 

「お疲れ様でした提督」

 

「あぁ 大淀も夕立もお疲れ様」

 

「今日は書類が少なかったですね 後の確認は私の方でやっておきますよ?」

 

「いやいや 俺もやるから」

 

 

「そうだよー!最後までやるっぽい」

 

 

というやりとりをしながら

作業が本当に終わりを迎え…

 

 

「はーい!お疲れ様!2人とも…」

 

「「はい お疲れ様でした」」

 

「腹減ったなあ」

 

 

「あ!そうだ!提督さん!今日は夕立がお昼を作るっぽい!」

 

「え?」

 

「ふふふ!まあ 食堂でまっててっぽい!大淀もまってて!」

 

「私まで良いのですか?」

 

「ぽいー!」

 

なんて事を言うから

大淀と諸々の片付けをやってから食堂に行く

 

 

「あら お疲れ様です いま夕立ちゃんと吹雪ちゃんが奥で頑張ってますよ」

と間宮と伊良胡が微笑ましそうに言う

 

厨房を覗こうかと考えたが…野暮な事はやめようと

椅子に腰掛ける

 

 

 

そう経たない間に2人が料理を完成させて持ってきた

 

「「「お待たせしました!!」」

 

「おおー!オムライス!」

 

「「いただきます!」

 

 

 

 

「ん〜 2人とも!これはかなり美味しいですよ!」

と大淀が褒める かなり上機嫌だ

 

 

「提督さんは…美味しいっぽい?」

 

俺は今、夕立と吹雪が作ってくれたオムライスを食べている

コレが結構美味しい

「美味いよ!ありがとうな」 と2人を撫でてみる

 

「ぽい〜嬉しいっぽい!」

「ありがとうございます!司令!」

 

 

無事完食! たまにこうやって料理やお菓子を振る舞ってくれる艦娘は多く 幸せな日々を感じている

 

 

 

そう あんなことになるまでは

 

 

 

「で 提督さん!」

 

「誰の料理が1番美味しいっぽい?」

 

バカヤロウそのワードはなあ…

 

 

ピタッと皆が手を止めこちらをみる……

 

大淀が石化した

 

 

「えっ?」

 

「だからあ 誰がこの鎮守府で1番料理が美味しいっぽい?」

 

「いやー難しいな! 皆美味しいからなあ」

 

コイツ!目の前でニコニコと手榴弾のピンを外そうとしてやがる!

 

 

…どうする!?俺?!進むも退くも地獄確定よ!

 

「こらこらーブッキーにユウダーチ いけませんヨー?!」

 

金剛ぉぉおおおおおお!!

まさしく助け舟ならぬ助け戦艦か!

 

「私のに決まってるネー、何でもダーリンのイチバンは私ヨー//」

 

畜生!!泥舟だったZE!!

 

 

「いいえ!私です!」と間宮さんに鳳翔

その他がずらずらと挙手をして行く…

 

 

 

 

「お前達!良い加減にしないか!!」

お前は長門!?さすがビッグセブン!頼りになるぜ

 

「ここは!料理対決で決めようじゃないか!!!!ちなみに私が1番だからな!私も出るぞ」

 

おいいいいいい!!面倒事を増やしやがった!てかお前も出るんかい!

 

「いいな?」

 

「いや…あの 「いいな?」

 

 

「はい…」.(๑╹ω╹๑ )もう好きにして…

 

 

 

 

 

ーー鎮守府料理コンテスト!〜未来の真の嫁は私だ〜ーー

テーマに沿った料理を作り提督の胃袋を握りしめろ!

そして嫁ポジを奪い取れ!

 

1〜4人でチームを組んで参加して良し!

優勝者には食堂でのメニュー化と

1週間の秘書艦任命!!!と提督の食事の際のあーんの権利獲得

 

 

また勝手に決めてから…

 

 

さあ!やってまいりました!

料理対決ううう!

実況は この青葉と 解説に提督をお迎えしての進行です!

 

では!あの厳しい予選を勝ち抜いた猛者どもを紹介するぜええええ!

 

 

 

意外に料理はうまい!優勝なるか!?

金剛四姉妹! 

「1人には大いに不安を感じてます」

 

 

 

負けません!譲れません!

チーム一航戦!五航戦!

「赤城は何故食器をスタン張ってるのでしょうか?」

 

 

ダークホースなるか!?あなたの胃を深海まで連れて行くわ

姫ちゃん鬼ちゃん!

「深海組の料理は興味ありますね」

 

 

 

いつの間に仲良くなった?!

チーム 麗&長門!!

「おい長門…お前…呼んだな?」

 

 

馴染みすぎてもはや初期メンバー?

チーム アズレン

「多分優勝はこのチームでしょう」

 

「おい」

「おい」

 

 

「正直な感想です…」

 

 

 

 

 

 

 

 

えー、、ちなみに

六駆チーム 吹雪チーム 足柄チームは 調理場の爆発に巻き込まれてリタイアとなってます   なぜ調理場が爆発するのでしょうか?

「入渠施設がフル稼働してるらしいですね」

 

 

 

 

では各選手意気込みを!

「ダーリンの胃袋を掴むのは私ネー!」

「榛名も頑張ります!」

「お姉様の為に!気合い!入れて!頑張ります!」ニヤリ

「私の計算によると…」

 

はい!姉妹での参加ですね!かなりイイチームワークが見られるのでは!?   頑張ってくださいね!

 

 

 

 

 

 

「頑張りますねー!」

「瑞鶴… 今日はやるわよ! 絶対に勝ちます」

「先輩の足を引っ張らないよう頑張ります」

「ええ!やるわよ!加賀!!」

 

凄そうな団結力ですね! 明日は槍が降るでしょう!

また、

予選の時に審査員を差し置いて料理をを食い尽くしたと言われる赤城さんをどこまで止められるでしょうか?

 

 

 

「負けないわ…」

「ええ!勝つのは私達」

 

深海組も決勝登場だーー!地味に人気なこの2人!

予選の料理は赤城に食べられてしまった!調理場が爆発したので自動的に繰り上げで進みましたが… その腕は未知数!

 

 

「長門さん!頑張りましょう!」

「ああ!勝利を!我らに!」

 

うーん!堅実そうなチームです!

というか長門は料理できたのでしょうか?

やめてください睨まないでください

 

 

 

「指揮官様あー 見ててくださいねえー?」

「必ずや最高の御馳走を作りますね?」

「ご主人様…このチームで必ずや…」

 

うーん イチバン真面に見えるのは何故か?

しかし何だこの安心感は!!

 

 

 

 

 

さて!今回のテーマはオムライス!!

 

では皆さん!料理を始めてください!!!

 

 

 

 

 

 

 




提督は胃薬を装備した



投稿を始めて1ヶ月になりました!
早いものですねえ

少しは楽しめる作品となっておりますでしょうか?

少しでもお楽しみ頂けたら幸いです


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64話 鎮守府 料理対決 ② お約束…でしょう?

1ヶ月記念
1ヶ月ー!


sudden death

所謂突然やってくる死

 

決して300%から始まる殴り合いではない!

 

 

 

「ハーイ!ダーリン!待っててネー!!」

 

と手を振る金剛お姉様

提督も振り返している

 

 

 

「いいなぁ…榛名もダーリンって呼びたいなあ」

と羨ましそうに金剛をみる榛名

「大丈夫です!この料理対決に勝って!ダーリンと呼びましょう!」

 

 

「そもそも榛名もケッコンカッコカリしてるからダーリンでもいいと思うんだけど…」

「oh 榛名もダーリンと呼ぶのですネー?ふふ お揃いデース」

 

「いや!えと!あの…恥ずかしいです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さーて!ダーリンの胃袋と諸々をゲットするヨー!」

 

「榛名も…提督の…事!」

「オー 榛名もー? なら一緒に頑張りましョーーー!」

 

「霧島はグレートなご飯をお願いしマース!」

 

「はい!お姉様!」

 

「比叡と榛名は材料をgreatにカットしてくだサーイ!」

 

「「はいお姉様!」」

 

「私は命のデミグラスソースを作りマース」

 

 

『おお意外にも比叡は包丁さばきがお上手ですね』

『毎回そればかりを任されるから…らしいよ』

 

本当、あのダークマター…兵器を作るとは思えない比叡…

実は料理はそこそこできる方だ

食材を切ったりと下ごしらえは完璧にできる

そう…余計な事をしなければの話だ

何度かまともな料理を作ってくれたこともある…本人は不満気だが

恐らくプラスアルファを入れたいのだろう

ただ、その選択肢が非常にヤバい

○○○とか***♪とか… うっ…

 

 

隠し味…とか そんなチャチなレベルを超える

そう… 隠し味ならぬ隠し兵器

 

 

 

『さすが!金剛と榛名!一矢乱れぬチームワークです!

更に霧島の完璧な分量計算!時間計算!温度管理!比叡さんのスピードも中々ですね』

 

 

 

 

「当たり前です! 私達金剛四姉妹は負けません!」

 

 

今回は割とまともな料理になりそうで安心だなと

救は安堵した…

 

 

 

 

「お姉様の為に…私も!気合い!入れて!頑張ります!」

 

「通販サイトの厭世で買った…コレを少し入れて…」

 

 

 

 

「「「「完成でーーす!」」」」

 

『目の前に見えますは金剛チームのオムライス!』

 

『なんと!綺麗なタンポポオムライスでしょうか!   おーーっと!ナイフを入れた瞬間 卵がふわっと広がるうううう!そこに

デミグラスソースだーーー!!!……

 

 

 

……あれ? 湯気が、ドクロマークに

 

まあ気のせいでしょう

 

じ、じじじ実に美味しそうですね!』

 

 

 

 

『…コレは幻覚…コレは幻覚…コレは幻覚』

 

『何やら提督がブツブツ言ってますが!!実食です」

 

 

はむっ  もぐもぐ

 

『おおっ!コレは…美味しい…』

 

『おお!提督の評価は高そ『おおっ!? うぐぁっ! 』

 

『提督!?!?』

 

『だけじゃない!!!』

 

「ぬぁぁぁあ!!!」

「あ!? 見える!!時が!!!見えるわぁあ!!」

 

バタッ

 

 

 

『提督と審査員がだうううううん!』

 

駆け寄ってくる金剛

 

「そんなはず無いネー…このオム ぐぼぁ!!!」

 

一口食べた金剛もだうううううううん!

 

「そんな…榛名の料理…は大丈夫…じゃ…ないで ぐふっ」

 

榛名もダウーーーン!

 

「…まさか!!比叡お姉様!!」

 

「え? アレ? そんなまさか… あむっ  ひえ…がはぁっ!」

 

比叡もダウーーーン!!

 

「…私も食べなきゃ…ですよね…… おぅ…」

 

 

霧島も自ら死にに行ったー!!だーーーーううううん!!!!

 

 

全滅です!

審査員も選手もKOです!

 

この場合は……

それでも暫定1位ですうううう!後ろ向きではありますが1位です!

 

 

 

少々お待ち下さい

  少々お待ち下さい

 

 

 

また来たのかい?後輩君www

ちょっw料理で死にかけるなんてwww

僕も経験あるけどw能代のwwwダメだ腹痛いwww

 

「三途の川が…見えたよ…」

 

 

 

提督が復活したようなので

次のオムライス参ります!

 




UAの数字も…4.5万がもうすぐ…
お気に入りも…

ありがとうございます!
貴重な人生の数分…頂きます(๑╹ω╹๑ )



厭世とは楽天の対義語ですね


さあ… まあ
お約束デスヨね…この展開は




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65話 鎮守府 料理対決 ③ 殴り合い料理

はっ!!!

 

生きてる…生きてるよーー!!!

 

 

 

 

 

「さあ!頑張って勝ちましょうね!瑞鶴!先輩!」

 

「やる気ね 翔鶴姉は」

 

「私も…かまって欲しいもの…提督に そのチャンスだもの!」

 

「一航戦の誇りに賭けて負けないわ!」

「おいしいの…作りましょうね!」

 

『意外と翔鶴が乙女な感じですが! 料理の上では大切な要素ですね』

 

「提督に美味しいオムライスを作って、食べてもらって…翔鶴美味しいよって言ってもらうわ! それで優勝を手に入れるわ!

食堂には私の!優勝オムライスがメニューに追加されて、皆は「こ、コレが翔鶴の提督のハートを射抜いたオムライス…さすが」と言われるのよ!そして1週間のあーんの権利と秘書艦の中で2人はどんどんと接近して… そして最終日には…うふふ あはは!あはははははは! 待っててくださいね…提督!」

 

『愛とは時に劇薬になり得ましたね』

 

『翔鶴はあんな感じだったっけ?』

 

 

さあ!開始です!!

 

 

 

『さて…空母チームですが大丈夫でしょうか?』

 

 

 

「五航戦…玉ねぎを切りなさい」

 

「命令しないでよね!て言うかなんでアンタがやらないのよ!先輩」

 

「目に染みるわ…」

 

「ゴーグルでもつけなさいよ!」

 

『はい、平常運行でした』

 

 

 

「赤城先輩 ソースはこれでどうでしょうか?」

 

「…コレは…おいしい…もっと頂戴!」

 

「ダメですよ!」

 

『こちらもでした』

 

 

 

「ちょっと!瑞鶴!砂糖と塩まちがえてるわよ!」

 

「あっ ごめんなさい」

 

「卵も…殻がのこっているわ」

 

「ごめんなさい」

 

 

『瑞鶴は割と料理が苦手なのでしょうか?』

 

 

『瑞鶴は…今日は張り切ってるのだと思うのですが…あなたに料理を作れるんだって…空回りしてるだけだと、思います』

 

『成る程…鳳翔さんならではの情報ですねーーー!って』

 

 

『ああっと!乱闘です!加賀さんと瑞鶴の乱闘が始まりました!キッチンは女の戦場とは言いますが文字通り戦場と化しています!』

 

『うわー いつもの…と言ってもTPOは弁えてほしいですねー』

 

 

 

『ああー! 赤城さん!食材を食べないでくださいー!』

 

『ブレませんねぇ…彼女は』

 

 

『………』

 

鳳翔かピクついている…

 

 

『最早1人で黙々と翔鶴が料理をしているだけか…』

 

『違いますね…提督…よく聞いてください』

 

「提督の秘書艦提督の秘書艦提督の秘書艦提督の秘書艦提督の秘書艦提督の秘書艦提督の秘書艦提督の秘書艦提督の秘書艦提督の秘書艦提督の秘書艦提督の秘書艦提督の秘書艦提督の秘書艦提督の秘書艦提督の秘書艦提督の秘書艦提督の秘書艦」

 

『うわあ…周りが見えてないだけか…』

 

 

 

 

 

 

 

 

『瑞鶴はともかく…あの加賀さんが…うわあ』

 

ギャーギャーとくんずほぐれつの取っ組み合いをしてらぁ…

加賀もあんな表情するのね…?

 

 

 

「キーーーっ! アンタ!ムカつくのよっ!」

「何よ!あなたこそ!ムカつくわ!」

 

 

 

「むしゃむしゃ」

 

「提督の秘書艦提督の秘書艦提督の秘書艦提督の秘書艦」

 

 

「ここで決着つけてやるわ! 指輪もらってるからって調子に乗らないで!!」

 

「望むところよ!!」

と発艦姿勢に入る

 

 

 

 

ついに彼女がキレた

 

「おい…」 ピリッ

一瞬にして会場は

シンーーとした

 

龍驤……さすがじゃないか…

ん?

え?

龍驤もびっくりしてる!?

 

え?!

 

龍驤の視線の先には…

 

 

ほ…鳳翔…?

 

 

「ダメでしょう…?3人とも…」

え!?鳳翔ってあんな声出すの?!

うわ! 普段はあんなにフワフワした声なのに…

ブラック ○グーンの バラ○イカみたいな声に…

 

 

「でも!加賀さんが先「ダメでしょう?」

 

 

「しかし!鳳翔さん! こい「ね?」

 

 

 

「もぐもぐもぐもぐ 「…赤城?」

 

 

「翔鶴は…怒るに怒れないですね…」

 

 

 

「あなた達は…この企画をめちゃくちゃにしたいの?

()()()()()に恥をかかせたいの?…少し裏に来なさい」

 

おーっと

連行される3人

その間も黙々と作業する翔鶴

 

 

〜5分後〜

 

 

「「「すみませんでした」」」

 

3人共のそれはそれは見事な

DO⭐︎GE⭐︎ZA から料理は再開されましたとさ

 

 

 

 

 

「さあ!瑞鶴ちゃん! 行きますよお!」

「ええ!加賀ちゃん!やりますわよお!」

 

「ごくん!! わ!私もやります」

 

 

よっぽど怖いんだろなあ…

もうキャラがブレッブレだもんよ…

 

「あ…食材が…そんなに余ってない…」

 

 

 

完成したオムライスは1人前しかなかった

 

 

「皆で!仲良く作りました!提督!」

「はい!提督!みなさん!お召し上がりください!」

「…美味しそう…なくらい!美味しいです!」

 

「提督…提督」

 

 

『一応完成なので、よしとしましょう…では実食です』

 

 

『1つのオムライスを分けて食べるってのも中々新鮮ですね…ん?コレはおいしいです! さっきのオムライスは…まあ控えめに言って兵器でしかないですが コレはおいしい』

 

ほかの審査員、提督からも称賛のコメントが寄せられる

 

『うん 美味しい…ほぼ翔鶴の頑張りだけどね』

 

「提督…ありがとうございます」

翔鶴は満足そうだった…

 

 

 

以上!一航戦 五航戦チームでした!

 

次はー深海チームだーー!!

 




はい
続きでございます!(๑╹ω╹๑ )
お楽しみ頂けたなら嬉しいです!


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66話 鎮守府 料理対決 ④ 深い海より召し上がれ

やっと出番が…


さあ!深海チームは

 

「フフフ…やっと私達メインの回よ!」

「この準備期間…料理を勉強しまくったわ」

 

 

「さあ!艦娘共!」

「私たちの活躍…指を加えて見ていなさい!」

 

バックで爆発が起こる

特撮ヒーローかよ

 

『台詞は悪役口調なのに可愛いのはどうしてでしょうか?』

 

『それ以前にフラグなような気がして…』

 

 

「さあ!行くわよ!空母棲鬼!」

「ええ!深海地中海棲姫!」

 

 

『あんな名前でしたっけ?』

『長いので鬼ちゃん 姫ちゃんと呼ばれているからね』

 

ぶっちゃけ2人の強さはそこそこ強い

たまに戦果がトップの時もある

まあ そこそこ他の鎮守府と離れている…1番近くが麗ちゃんのとこだからセーフな訳で…

 

まあ…元帥も いいんじゃない?って言ってるし何でか…

 

『わりかし普通に作ってますね 開かれた おむらいすの作り方本が可愛さを引き立てますね』

 

「ちょっ!ヤメテ 映さないで!」

 

「企業秘密よ!」

 

『まあレシピというのは最適化されたものですからまず間違いないでしょう… それを片手に参加というのも健気なものですね』

 

『出番というのはそれほどに魅力的だったのかな』

 

 

「具材を…切って…」

 

 

 

『包丁さばき等の少し不安なところはありますが 今のところ順調に進んでいますね』

 

 

その後も割と堅実に料理を行う2人

何が凄いって 楽しそうに料理をするのだ

 

普段から「深海棲艦って何食べてるのかしら?こんな良いものがあるのに…可哀想…」なんて言いながら料理を食べてるしね

作る楽しさに目覚めたのかな?

 

いや

単純に出番が欲しかったんだろうなあ…

 

 

 

そして

 

 

 

「フフフ…この味…この出来は!!!」

 

「やったわね!…やばいわね!!」

 

 

「ふふふ あははははは!!」

 

 

「あはははははははっ!!」

 

 

 

 

 

 

「「絶望的にマズイわ…」」

 

 

 

「どうしよう!一から作り直すなんて…無理よ」

「下手に味を修正したらアホみたいに量が増えるしね…」

 

 

「やっぱり…無理だったのかなあ…」

「…出番ほしかったねえ」

 

 

「はっ…!!待ちなさい!鬼ちゃん! 誰かが私に囁いているわ……」

 

 

「それはヤベーヤツじゃ…」

 

「しっ!!」

「ええ! そう… えっ!でも…それは… そうね…」

 

と奇妙なやり取りをする姫ちゃん

 

「どうしたの?」

 

 

「天啓…よ…コレを使うわ…」

 

 

「コレは…まさかっ!!!」

 

 

「そう……科学調味料よ……!!」

 

 

「まさか!!!」

 

 

「そう!どんなものも…これで…美味しくなるわあ…」

 

見た目の保証は別として…ボソリ

 

 

 

 

 

 

 

『提督が逃げておりますが…まあ逃しませんが…』

 

『くそっ!何だ!この警備システム!オムライスなんだよね?ねぇ!

…俺は明日から2週間くらい有給とるからな!!』

 

笑顔の大淀が腕で×マークを作る

ちくしょーーめええぇ!

 

とかやっている間に軌道修正完了(間違った修正)

 

 

「さあ…提督…食べて頂戴?」

 

『何だこの…色彩豊かなオムライスは…』

 

「ケミカルオムライス…」

 

『確かに…見た目はアレだけど…美味い…目を閉じれば』

 

 

「やったわ!」

 

 

しかしながらコレを認めるわけにはいかない…

 

『でも…違うな』

 

「!?」

「なんで!?」

 

 

提督はスタスタと歩いて行く…胃薬を装備して

 

「それは!?」

 

『おーーっと! 提督が修正前の料理へと歩いていき……よそって…食べたぁぁぁぁあ!!!』

 

 

『うっ…』

何だコレは…

何かが 蠢く感じがッ!

 

「無理しないで!」

「それは失敗作なの!」

 

違う…確かにコレはお世辞にお世辞を足しても美味しい完成品とは言えないだろう

『それでも…一生懸命作ってくれたこっちの方が嬉しいんだ』

 

例え美味しくなかろうと

見た目が変でも…愛情を持って 食べてくれる人の為に作る料理は…

本当に嬉しい

 

 

 

 

「…提督さん」

「…うっ……ありがとう…」ポロポロ

 

 

 

『良い話ですが…提督からはオムライスとは思えない音が聞こえますがね』

 

 

嬉しい…これは本心だ…

だが…体がついてこない場合もある…

 

バタッ…

提督は2度目の昏倒

 

 

 

「…レシピ通りに作ったのになあ」

「ねー」




後悔はしていないッ!!(๑╹ω╹๑ )


いつもありがとうございます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
作者は毎日にまにましながらマイページを見ております
皆様のおかげです(๑╹ω╹๑ )



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67話 鎮守府 料理対決 ⑤ 誰1人として

うわぁぁぁぁぁぁあ(´;ω;`)
お気に入りが300… ありがとうございます(´;ω;`)

大丈夫ですか?お気に入りページ圧迫してませんか?
押し間違い… はそのままでお願いします


お礼を兼ねまして次の話の投下です

0時にも投下しています
話数にご注意ください


さて

次のチームは…

 

麗と長門!!!

 

『あーーこれは…長門が料理をあまり得意じゃないから…と言って陸奥には言えないからと…麗ちゃんにお願いしたパターンですね』

 

『しかも優勝しても麗ちゃんが秘書艦になる事はないので実質独り占めというやつですね…策士ですね』

 

 

 

『いや…陸奥に恥ずかしくて言えないのは事実だったらしいが…声をかけたのは麗ちゃんらしい…』

 

 

 

 

 

「提督! 今日の為に私は修行を積んだ!楽しみにしててほりい」

『噛みましたね』

『噛んだね』

『凄い表情してますね』

 

 

実は俺は知っていた

長門の料理に対する真剣さは凄まじかった

確かに彼女の手元を見るとかなり練習したのか絆創膏だらけだった

それを隠すようにしっかりと抗菌ゴム手袋をするあたり

本当に真面目さを伺える

 

「提督に…普段は何もできないから…闘うことしかできないから…せめて何かひとつ…したい」

 

それが彼女の動力源だった

 

そんな彼女の事を知った麗が自ら声を掛けたらしい

 

 

麗も優勝のご褒美が欲しかった

まあ 1週間鎮守府を空けるのはまずいが1日でもあの人と居られるなら…と思っていた

故に全力だった この準備期間も長門に厳しく指導していたのだ

 

「長門さん! もう少し小さく」

 

「ああ」

 

「長門さん!卵は殻に気をつけて」

 

「こ…こうか」

 

「いつものを忘れないでくださいね?」

 

 

 

ゆっくりと…指摘を受けながら料理をする長門

普段の彼女か見せない姿に 周囲は、冷やかす事もなくただ自然と見守った…

 

「っつ!!」

長門が指を切ったらしい 長門は指を加えて少し悔しそうにする

 

気を取り直して料理をするが

 

ガシャーン…と

料理中のものを落としてしまう…

 

「…くっ…くそぉ…」

 

「長門さん…まだ…時間は」

と麗が駆け寄る

 

「すまない! 私が…私がっ…不甲斐ないばかりに…」

「やはり…私が料理なぞ乙女な事…は…無理な話だったのか…」

 

「長門さん…」

 

(提督…何も言わなくて良いんですか?)

 

(青葉…それは逆に長門のプライドを折ることになる…これはアイツが超えるべき壁なんだ…それに…大丈夫だ心配するな)

 

(そんな!…大丈夫って…)

青葉がしかしこのままでは…と思った時だった

 

 

「頑張れー!長門さん!」

駆逐艦の誰かがそう言った

 

 

『え?』

 

 

 

「諦めんなー!」

「ビッグセブンの名前は飾りかー!?」

 

「乙女でもいいじゃねーか!」

 

「諦めないのが長門さんでしょう? ならその背中を見せてよ!」

 

 

声援だった

誰もが笑う訳でも 蔑む訳でもなく

叱咤もあるだろうが 長門に向けられたのは

応援の声だった

 

「青葉…びっくりしたか?」

とマイクを介さずに話しかける

 

「正直…」

 

「これが仲間だ…絆だ… この鎮守府に…頑張る仲間を笑う奴は居ない…」

 

「……そうでしたね

と、青葉は笑った

 

「途中で諦める方が…恥ずかしいわよ!」

「陸奥…」

 

「立ちなさいな…長門…ライバルがそれでは興が削がれますわ」

 

 

「それに…お…お前達…」

 

 

「長門さんはいつだって諦めない強い人なのです!」

 

 

「そうだな…ここで折れていたら…ビッグセブンの名が泣くな!麗提督!!もう一度…私に力を貸してくれないか!?」

 

 

「もちろんです!2人で勝ちにいきましょう!」

 

 

そこからの追い上げは凄まじかった

一切のミス無くこなす長門と麗

 

最早プロ並みの動きであった

 

 

さあ!実食です!!

 

『………』

もぐもぐと噛み締めて食べる提督

そして手を止めてコッチを見つめる…

 

『…長門、麗ちゃん』

優しい声だった…

 

「はい!」

「な…何だろうか? 自信はあるんだ」

 

 

 

提督はにっこりと笑って言った

 

 

 

 

『ソースの砂糖と塩間違えてるよ…』

提督は静かに崩れ去った

 

「なっ…なんだとおおおおお!?」

 

 

「なんじゃそりゃぁぁぁぁぁ?!!?」

「テメーこのやろー!」

会場に雪崩れ込む艦娘…

 

『おーっと!長門さん!リンチにあっています!』

 

「おい やめっ 誰か助けっ うわぁぁぁ!!」

 

長門も崩れ去った…

 

しかし皆の表情は…楽しげであった…

 

 

 

『料理対決ですよね!?』

 

 

「私あまり出番なかった…」

 

 




長門…ごめん
お堅いイメージの長門をギャグ世界に引きずり込みたかった…

はい!
いつも通りです!(๑╹ω╹๑ )
ご感想等々 いつでも!お待ちしています!


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68話 鎮守府 料理対決 ⑥ 愛情キッチン(狂)

いつもありがとうございます(๑╹ω╹๑ )¡!


Q まともな艦娘は居ないのですか?

A ここではまともじゃ居られないのです…

Q 何故!?

A 作者が普通じゃないからです


さて まあ…本命でしょうね

アズールレーンの世界からこんにちは

重桜 赤城!大鳳! ロイヤル ベルファスト!!

 

「うふふ 指揮官様あー見ててくださいねー」

「私達は 変なものも入れませんし 殴り合いも しませんからね」

「今回は3人の目的は一致してますので…」

 

『目的??』

 

すっと 右手の甲を見せる3人…

 

『あっ…』

と目を伏せる提督…

 

 

「「「左手に!指輪をください!!!!」」」

 

『うーーん 大会趣旨と違う! そしてご褒美の中にもありません!』

 

『提督の判断に任せます』

 

 

 

「指揮官様?私は愛故に世界を超えてやってきました!

そう!どんな絶望にも負けない愛でございます…例え何が来ようと私と指揮官様の間を引き裂くなんて出来ません…

あぁ指揮官様…指揮官様は誰よりも最初に私に指輪を下さいましたね?

それは私が1番…とお認めくださるということですよね?

でしたら!この赤城は…一生を…いえ!その次もその次も!指揮官様のお側に居ますことをお約束します! でも!でもですね…他の小娘達は左手の薬指… ええ ええ!その意味は分かっております 重々に分かっております…ですから私にも是非…左手のこの薬指に…あなた様の愛の証が欲しいのです…」

 

 

「指揮官様ああ ああ…この大鳳も同じでございます

順番なんか関係ありませんよね?私の事が好きだから…この指輪をお与えになってくださったのですよね?

あなたに会えない時がどれほど私を…切なくさせたか……

でもご安心ください…私、大鳳はもう2度とあなた様から離れません

朝も昼も夜も…ずっとお側におりますので…

それでですね?内容が同じなのですが私も左手の薬指にあなた様の愛の……契りが欲しいのです 是非!是非!私にあなた様をもう一度まあ感じさせてくださいませ」

 

 

「ご主人様…私はメイドでございます…

ご主人様の身の回りのお世話はこのメイドのベルファストが完璧にやってみせます…そのつもりでした…しかしあなた様は私に…この指輪をお渡しくださいました…本来、メイドがご主人様にご寵愛頂くなぞもってのほかでございます… しかし!私は…とてもとても嬉しく思いました いつの間にか敬愛は…愛に変わりました…そしてあなた様からの指輪…コレはつまり…そういう事でございますよね?

でしたら私は一生を賭してご主人様に尽くして参る所存でございます

朝も昼も夜も…私が!ご主人様のお世話をさせて頂きます

ですが…やはり私は卑しいメイド… 願いが叶うのであれば…左手の薬指に…ご主人様のものという証を頂きたく思います」

 

 

 

『提督は逃げた方がいい』

 

(そんな気がしてきた…)

 

「「「指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪結婚指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪指輪結婚指輪指輪」」」

 

 

『連帯感強い3人ですね!』

 

『これはホラーというやつですか? お盆前ですからでしょうか?』

『中に変な言葉も混じってますね』

 

 

一見禍々しいオーラの漂うキッチンだが

その動きは完璧かつ丁寧であった…いや本当に

 

しかし…

テーマはオムライスのはず…

 

何故フライパンから炎が舞い上がり

牛肉のステーキらしきものが焼かれているのか?

 

大鳳はパフェ使ってない?

 

 

……完成♡

 

 

『あのーテーマはオムライスなのですが』

『何ですか?このフルコースは』

 

 

「だって指揮官様…まともに料理食べた方が少なくありませんか?

私達で最期ですし…しっかりと食べていただきたくて…」

 

そういや…翔鶴のオムライス以外は……うっ…頭が

 

んで

このメニュー

 

 

オムライス〜デミソース〜

和牛のステーキ〜岩塩仕立て〜

 

パフェ〜キャラメルラテ仕立て〜

 

 

『…普通に美味い…』

 

『美味しいですね… 全てが…』

 

5組の内2組しかまともに食べられてない…なんて

何だか涙が出ちゃう…

 

でも、あくまでオムライスに関しての評価しかしない!

 

 

 

さて…審査しますか…

 

 

 





次回!結果発表!!!
と見せかけて…?

その次からは……
割とシリアス回
この前投下した図鑑の…






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69話 鎮守府 料理対決 ⑦ 勝負の行方 審議編

お昼に投下します

はい!
是非ですね
料理対決①or ②〜⑥まで見て頂いて
審議に入って頂けたらと思います(宣伝)

その為にね分割投稿してたので…





鎮守府料理対決は現チームを持ちまして

全てのチームが料理を出し終えました!

 

「いやー 中々のチームでしたね」

 

「まあ…まともに終わると思ってなかったのである意味安心かなと」

 

 

『第1回の割に…

5組のうち3組なので…約60%の確率で提督が倒れました

 

他…料理を食べた金剛チーム

ボコスカにされた長門さん 

予選での搬送者を見るに…ある意味深海棲艦との戦いよりも

味方への被害が甚大です!

 

と言うより提督が撃沈してる時点で負けですね』

 

『そうですね』

と冷静に返す提督

 

 

愛情というスパイスは恐ろしい

 

 

 

さあ…どうしようか?

 

 

 

よし……

 

 

皆!オラに票を分かてくれ!

 

1番票を獲得したチームの優勝だ!

ご褒美は…多分!話、秘書艦として話の主役にするぞ!

 

 

① 金剛四姉妹チーム 金剛 比叡 榛名 霧島

 比叡オムライスは提督だけでなく!姉妹も含めて撃沈まで追い詰めました!

…ちなみに!入れたモノは…一応!一応!!毒物等でないのでギリギリセーフとします!

 

 

② 空母チーム 赤城 加賀 翔鶴 瑞鶴

  料理としてはまとまなオムライスでした!

 しかしながら ほぼ翔鶴の料理ですね

 赤城 加賀 瑞鶴は隅っこで正座しておりますね

 

③ 深海棲艦チーム 姫ちゃん 鬼ちゃん

 ケミカルなオムライスは美味しかったそうですが…体には悪そうだとの事で… 実際…最初に作った方のオムライスはレシピ通りに作ったはずなのに…提督を絶望の淵へ叩き落としました

 

④ 長門 麗チーム

 会場を巻き込んだ応援はかなりアツかったのですが!

 ソースの砂糖と塩を間違えると言う 使い潰したオチで提督を撃沈させました! 麗ちゃんはほぼ出番ありました?

 

⑤ アズレンチーム 桜赤城 桜大鳳 ベルファスト

 1番美味しかったそうです…

 今でも横で指輪と呟いています…怖いです

オラ!ゾクゾクするぞ!

 

⑥死ななかった提督

 

 

 

このチームから投票をお願いします

え?料理対決だろうって?

こまけーーこたぁ いいんだようー!

 

あなたの好きなチームでも

後日談見てみたいー!ってチームでも

いやいや!コイツらの料理が優勝だろ!でも

ばっちこいです

 

 

そのチームには

食堂のメニュー化は無理としても!

秘書艦なり…何なりで 主役?ヒロイン?を務めてもらいます

 

アンケートは次回のパート途中くらいまでしばらく解放してますのでよろしくお願いします!

 

 

 

次回から数回はまたまたまたシリアス回の予定です

例に漏れず 作者の脳内全開なので皆様にとって

え? と思う表現や設定が出てくると思われますので

生暖かく見守ってください

 

 

え?何で同じ事書くの?って?!

最低投稿文字数が1000文字だからですよう

 

 

 

 



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70話 西波島大決戦 ① 裏表の世界

Q また 戦闘ですか?

A はい

Q 艦娘と殴り合いですか?

A 50話以上ぶりに深海棲艦と…?


黒いコールタールの様な闇…

押し寄せる波

それは黒く暗く 海の底よりやってくる

 

かつて沈んだ艦があった

共に沈んだ人が居た

 

半ばで打ち落とされた艦載機があった

共に沈んだ人が居た

 

最初は其れだった

 

 

 

戦いの中で沈んだ艦娘が居た

 

戦いの中で沈んだ深海棲艦が居た

 

海に生まれ海で死んだ生き物が居た

 

 

 

様々な想いはいつしか深い海溝の底で暗く燃え上がった

 

 

海の底の 光も届かない深い底に 其れは居る

 

光が欲しい…

 暗いのは嫌だ…

   孤独は嫌だ…

どうして?

どうして?

この悲しみは…絶望は如何すれば無くなるのだろうか?

この孤独はどうすれば消え去るのだろうか?

 

なぜ光の当たる場所は…

アイツらは

アンナにモ…暖かソウなのカ?

 

許さない… 許せなイ

 

 

其れはついに海の底から這い上がってきた

触れるものを深海棲艦に変え

海の底の怨嗟を従え深海棲艦に変え

 

海の怨念は 世界を覆う為に闇と共に ある場所を目指す

 

其処は輝いて見えるから

其処は眩しくて邪魔だから

 

其処は…救ってくれそうな気がするから

其処は…

 

 

 

「…来るね……でも今回は違う? まさか」

 

 

 

 

 

 

 

 

某地方鎮守府遠海偵察部隊

 

「深海棲艦の進軍を確認!この数なら行けます!」

 

「ええ!行くわよ!   え?何?あの…後ろの…」

 

「ええい!やむを得ません!!攻撃開始!」

 

ドォンと鳴り響く砲音

深海棲艦自体は大した戦力ではない

 

簡単に退けられる

 

「目標深海棲艦!轟沈を確認!」

 

しかし

 

 

 

「何…あの黒いの…に攻撃が効かないなんて…」

 

「こちらに…来る?」

 

「来るッーーー! きゃぁぁあ」

 

「雷!!」

 

黒い何かが雷を覆う

 

そして…

「雷…?何で?」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「アア…」

 

「きゃぁぁぁあ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最近…妙な胸騒ぎがする…

俺の中から…来ているのか?

 

「どうしたの?ダーリン…」

「いや…何か変な感じが…」

 

「大丈夫?あなた…」

 

「あぁ…疲れてるのかな?」

 

「無理せず休んだら?」

 

 

「そうしようかなあ…」

 

 

 

 

日に日に増す 何とも言えない不安感…

これは…もしかして先輩の…??

 

 

 

コンコン

「提督!元帥閣下がお見えです」

 

 

「え?」

 

 

 

 

「おお 元気そうだな 救」

と御蔵が執務室に入ってくる

 

 

「いやいや いきなりすまんな」

 

 

 

 

 

 

「どうしたのですか?急に」

 

「ふーむ…久しぶりに会ったのに…まあ良い…急だが…救よ、最近何か感じぬか?」

 

「仰ってる意味が…」

 

「…何でも良い」

 

「まあ…変な胸騒ぎはありますね」

 

「…そうか…」

 

「どうしたのですか?」

 

「……お前さんには話さなければならない事がある」

 

「お前さんは海の怨念というモノを知っておるか?…あと言葉は丁寧出なくて良い」

 

「はい… あの 恨みとかそう言った念…?」

 

「そうじゃ…」

「今から話すことはお前が受け止められるかは分からん…しかし…

 

今から起こることはお前にも関係があることだ」

 

 

「… 救 今お前達に…いや、この世界にとてつもない危機が迫っている…」

 

「其れを止められるのはお前たちしか居ない…とワシは思っておる」

 

 

 

 

 

〜〜

 

 

 

 

「先行した偵察部隊は連絡が取れない!」

 

「まさか…やられたか」

 

「いや!敵機撃墜の連絡がはいっている」

 

「敵前逃亡なぞ…ありえないが…」

 

 

「!… 敵機と思しき部隊発見しました!」

 

 

 

「な…何だあれは…」

「深海棲艦だけじゃない…??」

 

 

 

黒…いや 漆黒のコールタールのようなモノが深海棲艦の後ろからゆっくりと迫っている

「臨戦態勢! 通信班はすぐに大本営元帥閣下に連絡を!」

 

 

 

 

 

 

 

「お話中失礼します!閣下…大本営から連絡です!」

と大淀から電話を受け取る御蔵

 

「む…連絡か?」

と電話に出る御蔵

 

うむ…そうか……ついにか

あぁ… そうだな

 

例の作戦を開始せよ…

今度こそ…

 

電話を終え救に目を向ける御蔵

 

その時!

 

「提督!!入電です!!!!」

「深海棲艦の大規模侵攻を確認との事!!」

 

 

「何…こんな時に…! 数は!?位置は!?」

 

「提督…その…真っ直ぐと、敵はこの鎮守府へ向いて来ています…ありえない数です…およそ到着まで約2時間!!」

 

「何だと……総員!戦闘準備をするように伝えろ!…」

 

「はっ!!!」

と大淀が駆けて行く

 

「さっきの話と関係があるんですね?」

 

「ついに来たか…」

 

 

「何ですか!?よくわからないのですが!」

 

 

「今から…最悪この世は地獄と化するぞ…それをワシらは止めないばならぬ」

 

 

「あの!理解が追いつかない…」

 

 

「まあ そうじゃろな… まあ 聞け」

 

 

「ワシは50年以上も前にこちらに来たと言ったな」

 

「ええ」

 

「アレは…ある意味で嘘じゃ」

「ワシは最初は…12年前にここに来た…しかしな…数年で死んだ」

 

「え?あの…」

 

「深海棲艦の侵攻でな」

 

「それでな…海は奪われ…人々は死に絶えた」

 

「今でも生きてるじゃないですか…一体何の」

 

「…お前は自分の裏の存在を知っているか?」

 

「え?裏の…存在?」

 

「そうじゃ… この世界と現代の世界は裏と表…即ち…自分と同じ存在がこちらにもいるということじゃのう…」

「ワシもお前さんと同じじゃよ…ワシは裏の自分の命を貰って…、そして世界の理の手助けで」

 

「俺と同じ?どう言う事ですか!?」

 

救は考える

頭がこんがらがる…裏の存在?もう1人の存在?

俺と同じ?

其処である一つの考えに辿り着く…

…まさか

 

「そう…松田 祐樹はお前の対…裏の存在にあたる奴じゃな…」

 

 

 

「そしてもう一つ伝える事がある……ワシは何度もこの世界を繰り返してておる」




さて…

この話は何話か続きます

少しでもお楽しみ頂けたら幸いです

基本0時更新 予定です!


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71話 西波島大決戦 ② 裏と表

続き!!


この世界は…お前さんの言うゲームとやらの世界ではない

ここはここで現実なのだ…

まあ艦これの世界というのであれば…

ワシらのいた世界からすると裏の世界となるだろうな…

 

現代世界と艦これ世界(表と裏)

 

 

深海棲艦と艦娘の関係もわかっておるじゃろ?

つまり…

深海棲艦と艦娘(裏と表)

 

 

ワシと…もう1人の裏のワシ

救と祐樹(表と裏)

切っても切れないこの理

 

「なんとなく…なんとなくですが、理解しました…俺と同じなんだと…でも、世界の理…とは?」

 

 

「うむ…説明する…と言っても難しいのだがな」

 

 

とある鎮守府崩壊と共に世界は深海棲艦に奪われた

 

 

 

 

 

 

深海棲艦 

 

海から現れたモノ

 

艦娘と表裏一体のもの

 

かつて世界は深海棲艦に奪われた

 

()()()()()()()()()()()()()

 

世界の理は

人の世の理… 故に

最初は既に死んでいた裏のワシの協力の下、その状況から脱する為に少し過去へと戻された

何回か繰り返し…深海棲艦からある程度の海を取り戻すまでは上手くようになった

 

しかし、とある所でそれは止まる

 

 

そう

ある時から敵は深海棲艦だけでは無くなった…

 

其れは 海の怨念…とでも呼ぶべきかの?それが 迫ってくるようになった

 

それはあろう事かループする毎に強さを増したのだ

 

何故なら戦争が激化するからだ

故に怨念も増え続けたからじゃな

 

そして、其れはいずれ、世界が怨念で溢れる事を意味した

ゆっくり…しかし確実に広がって蝕んで行った

 

怨念は人を変える 

自然を変える

人の世を壊す

 

コップに水を注ぎすぎると溢れるように

 

消える事のない怨念はやがて世界から溢れ出す

 

なら その溢れる怨念はどこへ行くのか

 

そう

現代()

 

いつしか怨念は世界の理すら飲み込もうとし、

世界の壁すら超え

 

現代に流れ込んだ

その怨念はあらゆる形で現代世界を蝕んだ

大災害、飢饉、…その他諸々

 

 

しかし

世界の理はそれを許さなかった

 

 

世界の理…

 

それは事象…というかな

うーん目にも見えんしのう

ああ きっとそうなんだろうな というくらいしかワシにもわからん

 

続けるぞ

 

そこで

世界の理は

ワシと松田を送る過去を分けてワシだけを更に過去へと送った

 

 

 

そのおかげでワシは元帥の地位に上り詰めるまでになり…数度の失敗を基に鎮守府の配備

軍備の拡大を成し遂げられた

 

深海棲艦と艦娘が現れた時から戦える準備をな

 

じゃから海をある程度取り戻せた…

 

 

そして

遅く生まれた松田は鎮守府へ着任

 

そう…猛武鎮守府こそが 世界の崩壊のきっかけとなった深海棲艦の大侵攻の標的だったのだ

 

 

 

いつもそこで失敗…してな 

 

 

しかし今回は違った

奴はその侵攻を食い止めたのだ 命を賭してな

今回はもしかしたら…今回はその怨念の侵攻も止められるのかもしれないと、思っておる

しかしこの先がどうなるかがわからん

 

 

そして、この未来の鍵がお前だと…

 

 

 

 

 

 

 

話は変わるが

 

やがて現代世界へと転生した

松田は救…お前と出会う

 

彼女の直感は彼をもう1人の自分だと確信させた

 

そこで彼は自分の役割を初めて考えた

この世界に怨念を送るわけにはいかない!と

 

 

だからこの世界を守る為に 自らの命を絶ち

また艦これの世界に戻ろうとした

 

覚えておるか?

松田は、女に転生してあったな?

彼女は松田としての魂の状態で帰ってこようとした

…転生しようとしたが出来なかった

奇しくも…すぐに

救も艦これの世界にやってきてしまうからじゃの、

 

 

彼は驚いた

何故お前さんがここに居るのかと

そして、お前入る事によって何故お前さんここに来たのかを知った

 

そして…とあるタイミングを待った…

 

そう

お前さんが命を落とし 生死の狭間の世界に来るのを…

 

その間に

松田は一つの選択をする…いや自分の本当の役割を知る

 

 

 

そして松田はお前さんに託したのだ

自らの命を…本当の使命のために

 

お前さんの優しさが世界を…変えると確信してな

 

 

 

 

 

 

そう、今回はお前さんがおって

そして…奴らの狙いも…ここだと言うことは

 

お前さんが奴らにとっての脅威じゃないかとワシは考える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう 普通に考えて、命の譲渡なぞあり得るはずがない

 

救=祐樹だから 成し遂げられたのだ

表と裏が一体となりもう一度世界に立ち上がれたのだ

 

覚えているだろうか?

幽霊の艦娘が救に出会い 触れ 記憶を取り戻したことを

 

 

彷徨う艦娘は救に触れて理解したのだ

救=祐樹であると

 

 

そして

救がこの世界へ来たあの日

御蔵は牢屋から連れてこられた救を一目見て感じた

 

彼が松田の表の存在で

 

この輪を閉じるのは彼だと

 

 

 

 




まだ続きます(๑╹ω╹๑ )

戦闘は…まあそこそこに

続きをお楽しみ頂けたらと思います(๑╹ω╹๑ )


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72話 西波島大決戦 ③ 月は星と共に闇夜を照らす

いつもの数倍の文字量となりました(๑╹ω╹๑ )

戦闘描写よりは
どっちかというとお話メインのシリアスになりつつあるかもでふ


あそコに…

光るもノガあるノカ

 

 

 

 

 もう視界に入るくらいに敵が来ている

 

「敵機!その数…数え切れません!」

 

 

「とにかく!何としてもここを守る!!!」

 

 

 

 

 

水平線を埋め尽くすかのような深海棲艦

 

 

 

「明石と夕張、間宮、伊良胡は入渠、補給として残ってもらう」

 

「空母班は…長期戦に縺れ込むと夜になると思われる…その場合は…入渠者の運搬や補給物資の輸送を頼む…」

 

「いつも通りですね!」

 

 

「あと黒いもや…コールタールのようなものが居たら注意だ…

それは海の怨念らしい 攻撃が通用しないと思われるらしい…更には…遭遇した艦隊は誰も行方不明らしい…」

 

「今までの敵とは違うって事ですね?」

 

「そうだ」

 

 

 

「ここを守らなければ…俺達は…また離れ離れになってしまう…

世界も終わるだろう……だから…勝つしかない!

俺も大淀と…方法も考える!だから…お前らも……」

 

「いつも通りでしょ?…生きて帰ってこいでしょ?」

 

「大丈夫…僕達は負けないよ!」

 

 

 

 

「そうだな……よし!ここが正念場だ!

西波島大決戦といこうじゃないか!!

 

 作戦目標!深海棲艦及び!怨念とやらの排除!!!  

 

全機……抜錨!!!!!」

 

 

「「「「はい!!!」」」」

 

 

「司令官様?此度も私達…出ますわ?」

桜赤城達だった

 

「お前達…」

 

「ウフフ…何となくですが…私達が必要な気がするんです」

 

 

 

「私達も出る」

鬼ちゃん…姫ちゃん

 

「ええ…恐らく…私達も同じ気がするから…」

 

 

「無理するなよ…いいな!」

 

 

「はっ!!」

 

 

皆を見送る…

皆の背中が遠ざかるのが見える…

 

 

「提督!出るんでしょう?」

大淀だった

 

「執務室には元帥と大本営の大淀が居ます!提督は私の背中の艤装に乗ってください!」

 

 

「大淀…」

 

いつもなら執務室から指揮を!と言う大淀が 一緒に海へ!と言う

どういう風の吹き回しだ?

 

「なんとなく…必要に感じるので」

 

 

 

俺は大淀の艤装に乗り直接指揮のために海へと出た

 

 

「救聞こえるか?」

元帥だった

「ええ!」

 

「すまん…海の怨念に関しては殆どの情報が無い…故に攻略法もない…しかし…一度だけ攻撃が通用した事があるらしい…しかし今となってはその艦娘もおらん…何かしらの条件があるやも知れん…」

 

 

「…大丈夫です!今回も乗り切りますよ!」

 

強くハッキリとした口調だった

さも、当然のようにーー

 

「お前は怖くないのか?この状況が」

 

「怖いですよ?」

 

「なっ…」

 

「俺は先輩とは違うから…裏とか表とか同じとかわかんないです…

今もどうしたら良いかわかんなくて…怖いです」

 

「ですが怖がってばかりでは…進めない……俺はそれよりアイツらとの明日が無い方が怖くて仕方ないです

アイツらとバカやる毎日が好きなんです

アイツらのいるこの世界が大好きなんです」

 

 

コイツは…バカなのだろう

きっと大バカなのだろう

 

しかし…この愚直でまっすぐなバカが…何かを動かすのだろうな…

 

 

「野暮なことを聞いたか…

援軍は要請してある!到着まで何とか凌ぎ切れ!

 

 

頼んだぞ」

 

 

 

 

「頼まれました!」

 

 

 

 

 

「発艦します!」

空母が空から攻める

 

「行きマース!!主砲…撃てーー!!!」

 

戦艦が主砲を放つ

複数の深海棲艦が海へと散る

 

 

そう 正直なところ、相手の勢力自体はさほどでもない

ただ、数があまりにも多いのだ

 

 

「ひーー! 数が多すぎるよ!」

「と…とにかく!一体でも減らさなきゃ!」

 

 

「天龍隊!右方向から攻めるぞ!」

天龍を旗艦とした水雷隊が発進した

 

「神通隊…左へ出ます!」

妙高隊、足柄隊…と 続々と出てゆく

 

 

羽黒や磯風達

後発隊は補給時の入れ替わりとして待機している

 

 

 

 

 

 

 

「何だよ!!一向に減らねえじゃねえか… オラァ!!」

 

天龍、木曽、麻耶は暴れ回る

「とにかく!押せえええ!!」

 

「うおおおおおおおっ!」

 

 

「ファイヤーー!」

 

「第二次攻撃隊…発艦!!!!」

 

 

 

 

 

「アドミ…いやテートク……初陣がこれって……」

とアークロイヤルは愚痴を零す

「活躍したら…ほめられるよ…はらしょーって」

 

 

 

 

長期戦とは消耗戦であり

たった少しのヒビから崩壊して行くものだ

そのヒビを入れない為に彼女達は奮闘する

 

 

 

数時間に渡る砲雷撃戦

 

 

 

 

 

 

 

天龍はあるものを目にした

 

海の上に黒い何かが有る

それが深海棲艦に変容したのだ

 

 

「何だありゃ…深海棲艦が…生まれた?」

 

その時

天龍は別の深海棲艦に組みつかれた

「このっ! ……」

 

引き剥がそうとする天龍に何かが流れ込んでくる

 

 

「うわぁあ!!…っの!どけぇ!!!!」

天龍は深海棲艦を跳ね除けて斬り倒す

 

「だ、大丈夫〜?天龍ちゃん…」

龍田が心配そうに駆け寄る

 

「…はぁ…はぁ…大丈夫だ」

何だ今のは… 悲しみ?憎しみ?…すげえマイナスの感情が流れ込んできやがった…

怖い…なんてもんじゃねえ

アレは…憎しみそのものみてえじゃねえか…

 

 

 

「……まさか… コイツらは本物の深海棲艦じゃない…?」

 

 

 

 

 

そして

ついに 其れ はやってくる

 

「アの 場所二…居るンダナ… 光…ガ」

 

 

 

 

 

姿を現した

 深い海からやってきた海の怨念

 

「アレが…例の…」

 

 

 

 

 

海の怨念に砲撃するが

擦り抜けるのか…全く効果がない

 

「何で…当たらないの!?」

と焦る如月

 

そこに深海棲艦がまとわりつく

 

一気に負の感情が流れ込み

動けなくなる如月

「ゔっ ぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

「如月ちゃん!ダメーーー!」

如月は自分に近付く黒い闇にどうすることもできなかった

 

如月が闇に飲まれてしまう!

「させないっ!!」

体半分の所で睦月が深海棲艦を弾き飛ばし如月の手を引き 引きずり出した

 

「ああ…如月ちゃん!如月ちゃん!」

 

 

徐々に蝕まれる如月

「ウウウ…」

そして…半分が深海棲艦状態となり睦月に襲いかかる

「ゥァァッ」

 

「如月ちゃん…」

 

 

「やっぱり…あのモヤから深海棲艦モドキが生まれるのか…オイ!あのモヤに触れるな! ヤバイぞ!」

と天龍が叫ぶ

 

 

「睦月チャン…一緒ニ行こうよ…苦しイの…ーーーー嫌だ!何これ!私じゃないのが…」

 

「ダメ!如月ちゃん…負けないで!」

と声を掛ける睦月

しかし

 

「ウワァアアア」

如月とは思えない力で

容赦なく浴びせられる攻撃に

傷つく睦月

 

「ぐっ……如月…ちゃん…待っててね…今…助けるから」

 

 

「アァ 睦月ちゃん…ゴメンなさい…お願い…私を……殺して…」

身体が思うように動かない

どんどんと頭の中が…怨嗟で埋まって行く中で絞りでた懇願だった

 

これ以上 *好きな*月ちゃ  アレ?**ちゃん…て誰?

 

(ーソウ 忘れチャエ…)

何コノ声

 

「おい!睦月! ダメだ! もう…如月は!」

と加古が言う

 

 

「ダメです!如月ちゃんは…如月ちゃんは!!…きゃあ!!」

 

また如月からの攻撃…

 

「**チャン…ネェ……お願イ…私…を沈メテ…」

 

如月の精一杯の声だった

これ以上意志に反して大好きな*****を傷付けたく*○

そう***○*****

 

誰?コノコ…

ァァ 敵ナノネ?

 

(ーソウ 私ノ邪魔ヲスル…悪い奴ヨ)

何かが語リカケテクル

 

 

 

嫌だよ…そんなの!嫌だっ!!

 

ナゼ泣いテイルの?

 

 

「如月ちゃん!負けないで!お願い!

今日も帰っておいしい間宮さん達のご飯食べるんだよ!

それで…それで!明日も笑って…大好きな提督さん達と…みんなと楽しく過ごすんだよぉ」

 

私…は…キサラ…ギ?

 

(チガウ…アナタハ)

 

 

「私は諦めない!だって!如月ちゃんが!!大好きだから!!死ぬなんて!!言わせないからぁっ!!!!」

 

パシン…

 

ビンタ…

何故ビンタしたかも睦月には分かっていない

精一杯の睦月の愛情の籠もった 弱々しいビンタ

何故自分もそうしたかわからない

 

でも昔 ヤケになっていた自分の目を覚まさせたのは

如月の優しい右手だったから

痛い頬より 涙する如月の顔が私を………

 

「お願いだよお…帰ってきてよお」

 

(無駄ダ…コイツに声は…届かナ…)

 

(!?!な二?!)

 

 

あア… ****ん  

 

  **ちゃん

 

        む**ちゃん

 

 

 

「如月ちゃん!!!!!」

涙する**ちゃん

それは… コれは アノ時と逆の…

 

如月にはハッキリと伝わった

 

     睦月…ちゃン

 

「睦月…チャン… 睦月ちゃん! 睦月ちゃん!!!」

 

(バカな!! 取り憑イテ居らレナイ!?)

 

 

 

 

 

 

目の前には元に戻った如月が居た

 

 

何故?なのか分からない

分からなくていい

だって…そこに大好きな彼女が居るから

 

「うわぁあん!如月ちゃん」

「睦月ちゃん うわぁぁん!!」

 

「何で…こんな… それより! 退け!!」

 

と2人を前線から下げる

 

 

 

「全機に通信だ!!」

 

 

「提督!報告です!!あの黒いモヤには攻撃は 何かしらの条件が無ければ通用しないみたいてす! あと…それに呑まれたら…深海棲艦化するみたいで… 」

 

「何!?…ならこの数の深海棲艦は…アレから生まれているのか?」

 

「提督?」

 

「何だ…?」

 

「もう一つ報告が…如月さんが…呑まれたようです…半分…」

 

「何!?」

「聞いてください!!」

 

「半分深海棲艦化したけど 元に戻ったみたいなんです…その…睦月さんのビンタで」

 

 

「何?ビンタで…?」

「はい、詳しい理由はわからないのですが…取り憑かれて深海棲艦化した時はそれでいけたみたいです…あと数件撃破したら艦娘になったという報告も…」

 

「さっきの俺たちで撃破した奴は海に消えたな……なら…考えられるのは…

 

とある攻撃or撃沈で深海棲艦化した艦娘を元に戻せる

 

それが通用するのは取り憑かれた者のみで

 思念から生まれたものには元に戻らず消失する

 

そして 何かしらの条件の下なら奴らにダメージを与えられる

 

黒い怨念を退けられたら…この大侵攻は止まる…ということか」

 

 

 

 

 

しかし…まずいな…夜が…来る

辺りは暗くなってきていた…

 

いや!そんなはずはない

 

 

夜?違う…まだそんな時間じゃないはず…

 

そんなに浸食が……?

 

 

 

 

 

俺は気付かなかった

すぐそこまで 暗闇が迫っていたことに

 

「くっ!!」

 

「アハハは 遅カッタね!マサか…深海カガ解かれルとは思わなカッタけど… 」

 

「お前ガ光カ…目障りな光ダナ…沈メヨ」

 

黒い闇…海の怨念が救迫る

 

 

「ダーリンは私が守ります!」

榛名が遠距離から俺に迫る海の怨念に砲撃した!

 

「ムダ…グァ!?」

まさかの攻撃に驚いたのかゆっくりと後ずさってゆく

 

 

「な…に?榛名さん!!今のはどーやって!?」

と俺と大淀は驚いた

 

 

「わかりません…もう必死で必死で」

 

 

「提督さん!のいて!!」

と姫ちゃんと鬼ちゃんの追撃が 闇にヒットする

 

「グウウ クソ」

 

「私達は深海棲艦だからね」

「流石に2人はキツいけど」

2人の攻撃は通用するみたいだ

 

 

 

謎は残るが兎に角

攻撃が全く通じないわけではない

条件はわからんが…

 

 

「提督!深海棲艦がそっちに!!」

 

 

深海棲艦が迫るーーー!

 

 

しかし!

 

ドン…と放たれた砲撃で俺は助けられた

 

 

 

「大丈夫ですか?」

呉の大和だった

 

通信が入る

「未来の婿…………いや!絶対に認めんが!!!!!!!後輩をを見殺しには出来ん…」

 

「うげっ! 巌提督…」

 

「なんだ!その反応は!!」

 

援軍って…この人かぁ……

 

 

 

「救君!私達も戦うよ」

 

「麗ちゃん!助かる」

 

これマジ本心…

 

 

「俺との反応の違いは何だ!!!!このやろう」

 

 

少しホッとするやりとりだった…

 

 

 

 

 

「指揮官様!危ないですわ!」

また怨念の闇がきていたのか!?

 

桜赤城の爆撃が怨念の塊に当たる

怯み後退する怨念達

 

姫ちゃん達以外で……桜赤城の攻撃が…効いた?

 

「え?」

姫達は深海棲艦だ つまりは海の怨念から生まれた存在だから

攻撃が通る道理は分かる

しかし何故…彼女の攻撃が…

 

 

てか夜なのに?

「夜だからなんだと仰るのですか?」

 

「そんなの…愛でどうとでもなりますわ?50cm主砲を装備しろと言われましたなら…愛で装備しますし……」

 

「いや…なんつーか…めちゃくちゃやな…自分」

 

「あら酷い…」

 

 

 

「まあて…やはり世界の外側の物は多少効くようですね?」

「それに…愛ですわ!指揮官様!」

 

「は?あい?」

 

「ウフフ…仰られたではありませんか アレは海の怨念そのものだと…この世界の闇なのですよね? であれば其れを上回る愛や希望といったものは通じるんですよ…きっと」

 

「それに私達はこの世界の外側のKAN-SEN …世界を超える愛に勝てるものはありませんもの…」

 

 

 

海の怨念は救の存在が

自分達にとって

危険だと理解していた

あの輝きは…目障りだと…

 

故に執拗に狙おうとする

 

 

しかし

 

「ご主人様に!近付くなッ!!」

ベルファストが砲撃する

いつもの冷静さを少し欠いた珍しい彼女だった

 

「指揮官様には触れさせませんわあ」

「指揮官様は守ります!あとで大鳳を褒めてくださいね?」

 

 

 

 

「チッ…お前達…ウラギリモノメ…深海棲艦のクセに」

 

「違うわ!気づいたのよ!自分たちの…幸せに!」

 

5人が奮闘する!

 

しかして5人が奮闘しても数では負ける

少なくとも…あと10倍の人数が必要である

しかしそんなことは無理だ

 

 

 

 

 

 

じりじりと

 

 

その時は来てしまった

 

 

 

「捕まエタ!!!!」

 

「提督!!」

大淀が救を引っ張ろうとするが…

「邪魔ダっ!」

と弾き飛ばされてしまう

 

 

 

俺は怨念に引き摺り込まれた

 

「提督!!!!!」

「指揮官様ぁあ!!!このっ!!!」

 

「だめです!赤城様!今攻撃するとご主人様が」

 

「くっ…指揮官様!!」

 

下手に攻撃出来ない…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい…冗談キツいぜ…」

天龍が言う

 

「…あなた達…」

鳳翔が言う

 

「くっ…そんな……何故!!」

不知火が言う

 

「皆さん…お姉様まで…」

榛名が言う

 

 

天龍の前には 龍田達を始めとした…

鳳翔の前には 赤城達を始めとした

不知火の前には 川内達を始めとした

榛名の前には 金剛達を始めとした

 

闇に呑まれた深海棲艦化した

西波島の仲間が立ちはだかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

闇に飲まれる救は考えた

逆に好都合かも知れん

何か手掛かりを……

 

 

 

「うっ…頭に何か入ってくるッ?」

暗い…寒い

何で?どうして?

そう聞こえる

これは…全ての恨み… 海の怨 

 

 

まずい!

ここから出なくては

ーと、もがくが暗闇は暗闇

意味がない…

 

それどころか

 

 

「ああぁああああっ!!」

もっと頭の中に入ってくる!

 

「ぐぐっ…ぐあ やめてくれええう」

 

海の

沈んだ船の 戦艦の 戦闘キの

艦むスの

深海棲 ンの

スベテのイキモノの

怨念恨み辛み憎しみ 

 

死の冷たさ

 

 

その全てが俺に!

 

ヤメテくれ 無リだ

 

うわァァァァァァァアさなあ、まはまわあは

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声が聞こえる

 

救いは…ドコダ…… 我らに救いを… この手に

 

 

 

 

世界は…知らなくてはならない…海に眠る怨念を怨嗟を

受け止めて…欲しい

 

 

 

 

 

初進水で沈んだ艦がある

仲間の雷撃で沈んだ艦がある

その姿を世に見せることなく一生を終えた艦がある

敵機を撃墜し、敵機に撃墜された機体がある

艦と共に命を落とした者がいる

 

海に沈んだ艦娘がいる

深海棲艦がいる

死んだ生き物がいる

 

それらの…捻じ曲がった感情が!!

 

 

そして突然ビジョンが目の前に浮かぶ

 

「これは!?」

 

目の前には  沈んだ ウチの艦隊の様子が映されていた

「提督…なんで?」

「なんで助けてくれなかったの??」

 

 

 

サア お前も!絶望シロおおおおお!

 

 

「ありえない!!!! 」

救はキッパリと言い切った

 

 

ナッ!?

 

クソッ…頭が割れそうだ…

「約束した!もう二度と!離れないと!

そんなチンケな幻で!俺を騙せると思うなぁぁあ!!!」

 

真っ直ぐな目で…泰然と言い切った

 

「ぐうつ 負けるか!俺は…まだ絶望しちゃいない!」

 

 

 

ナラ聞けエ!

我らが海の怨嗟を…!!!

 

 

悲しい    怒りが

  切ない     寒い 苦しい

              暗い

怖い  冷たい 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い

寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い苦しい苦しい苦しい苦しい辛い辛い辛い辛い悲しい悲しい悲しい

沈め!沈め!!沈め!!!ドコダ?沈めぇええええええ!!!!!!!

受け止めてくれよおおお

見捨てないで ドコ? 

提督

いやだ!

 

替わってよ…暖かそうな場所にいる君

ねえ?

いいでしょう?

羨ましいんだ!輝いて見えるんだ!

妬ましいんだ!悔しいんだ!!腹が立つんだ!**達もそうなりたいんだ!そうなるはずだったんだ!!!!!!!!

 

 

「戦いを全うした艦娘も居る」

 

莫迦か!そんなモノありはしない

絶望しながら沈んダ!!

私を見捨てた提督を恨んデ

 

 

 

「全艦がではない!!」

 

それでも奴はまっすぐコッチを見る

 

 

 

 

それは詭弁ダ

 

 

ぉまえも ソウなるんだ!

絶望シロ! 絶望して沈メ!!!!

奇跡デモ起こらぬ限リ…止めらレヌ!!!

諦メロ!!!!!

 

 

「なら何故彼女達は何度でも帰ってくる…何故俺達は何度でも立ち上がる?」

 

 

……

 

 

「こんな俺達を…この世界を守ろうと戦う?」

 

 

 

「全てに絶望しているわけではないからだッ!!!」

俺には皆が居る

 

俺は…諦めない

怨念だろうと…跳ね除けてみせる

 

お前なんぞに

明日を…俺の…皆の居場所を奪われてたまるか!

 

 

 

奇跡しかないだろう?

なら…起こそうじゃねえか…奇跡を

俺達がここから勝つって…

 

 

絶望や憎しみだけが…この世界じゃあないんだ…

楽しいことも幸せなこともあるんだ

 

 

諦めるわけにはいかない!

 

 

 

何ダコイツは

この世の全ての怨嗟を注ぎ込まれて

何故 何故何故   

 

 

ぁぁぁぁぁ!

その輝きが眩しい!

その…全てが……!!!

 

ウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイ

お前モ 沈め!絶望シテ沈めええ!!!!

 

一層 怨嗟が強くなる

 

潰レテ…消えてしまエエエエエエエエ

 

 

 

「ぐうつううっ!!こんな事で!こんなところで!!」

流石にやばい…

頭が…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜

 

 

 

 

かつての仲間ほどやり難い相手は居ない…

数の差も相まって 限界まで痛めつけられる

 

「くそっ…やりにくいな…」

思うように狙いを定められない

 

それもそうだ…目の前に居るのは仲間なのだから…

 

 

「へっ!龍田ァ!一度お前と本気でやり合いたかったから!丁度いいぜ! お前だけ…ゆ…ゆび  貰いやがってよおおお!!」

 

天龍は別だったが…

 

 

 

「くっ…夜でさえなければ…」

と鳳翔が言う 無理矢理攻撃するも… あたるはずもない

 

「くううっ… 皆さん…目を覚まして!!」

手も足も出せない自分が情け無いと不知火は思う

 

 

 

「前々カラお前ラガ憎かった、嫌いだった」

金剛の鉄拳が榛名を襲う

 

 

「ぐううっ………」

こんなにお姉様の攻撃は重かったのか…

「お姉様…?」

 

 

「ソウダ…お前モ好きジャナイ…あの提督モ」

 

…有り得ない

お姉様は絶対にそんな事を言わない…

 

「お姉様は…そんな事言いません…!!だってお姉様は…いつだってみんなの事が…提督…いや…ダーリンの事が!!好きなハズです!」

 

「イヤ…嫌いダ」

 

もちろんこれは金剛の意思ではない

怨念の囁きである

 

 

「…そうですか…ならダーリンは私が…幸せにします!

そんな…弱っちいお姉様には任せていられません!私が!あの人の隣に居ます!」

 

 

ズキッ

何ダ コノ痛みハ

 

 

「赤城…一航戦の誇りは…? あの人から指輪…貰えなくていいの?翔鶴も…いいの?」

 

 

ズキッ…

何ダ コイツらの中カラ…?

 

 

 

「龍田ァ…いいのかー?提督を俺が貰っちゃってもよ」

 

ズキッ

何だコノ湧き上がるモノハ

 

 

「大好きな夜戦も…提督も何もかも…没収でいいのですね?」

ズキッ…ズキッ

コノ…ッ そんなハズはない!

 

 

「諦めロ!!!!… お前達ハ…勝てナイ アノ提督も……もうジキ死ぬ」

「絶望…怒り…憎シミ… お前モアルだろう?私達が憎いダロう?… サア 勝ツには撃つシカナイゾ…ヤッテミろよ…こんな私…嫌いダロ?ナア…ナア!!」.」

 

 

 

 

 

 

 

 

「何を言っているの?」

天龍、鳳翔、不知火、榛名が言う

 

 

 

 

「ナニ?」

深海龍田 深海赤城 深海川内 深海金剛が言う

 

 

「馬鹿じゃねーの? 嫌い?憎い? んなわきゃねーよ」

 

「あなた達は…大事な仲間なんですよ?」

 

「むしろ…何もできない自分が情け無いです」

 

「お姉様達こそ…悔しくないのですか?」

 

「大好きな提督から引き離されて…大好きな仲間から引き離されて…好き放題されて…黙ってるんですか?」

 

 

その言葉に

揺さぶられる…

 

「「何だ!何ナンダ?」」

さっきから内から湧き上がる感情…?ナンダコレは

完全に乗っ取ったハズだ

ナノに…何だ!!

 

 

 

 

「恥ずかしいからよ…あんまり言わねえけどさ」

 

ズキン

何ダ

 

「いつだって私達は…」

 

ズキン

ヤメロ

 

「どんなに喧嘩しようと」

 

ズキッ

この感情は…

 

「皆のことが」

 

私達トは逆ノ  ヤメロ!

ズキンと痛みが増す

 

 

艦娘は叫ぶ…

 

「「「「大好きなん(だよ!)ですよ!」」」」

 

愛…絆…

私の内側から…この声に答エルとイウのか?

この状況カラ…

 

「「「「だから…早く帰って来い!いつまで寝てるつもりだ!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭が割れそうなほど

心が張り裂けそうなほど

流れ込むこの…悪意

 

負けたくない

奪われたくない

 

 

 

 

『大丈夫 』

誰かが俺の肩に手を置いた




(๑╹ω╹๑ )
文字数多かった…

土日はもう少し早く投稿するかも?


少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!(๑╹ω╹๑ )


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73話 西波島大決戦 ④ 昼夜を征く輝きは

投下します(๑╹ω╹๑ )

土曜日なので少し早めに投稿します!
0時にも投稿しているので ③を未視聴の方はご注意下さいね!

いつもより文字数多いですね
よろしくお願いします(*´∀`*)


バカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカな

アリエナイ 理解不可能

たった1つの言葉が 我らを退けるだと?

 

「あらあ〜何かしら〜?あなた…」

 

「勝手に…好き放題してくれて」

 

「好きな仲間を傷つけて」

 

「…覚悟はできてマスカ?」

 

 

 

完全に乗っ取ったハズだ

さっきの小娘(如月)と違って 完璧に入り込んだ

ありったけの怨嗟を流し込んで有無を言わさずに

深海化もさせた!

コイツらの意識は()()()()()()()バスなのに

 

なのに

今ここに(我らの中に)何故…お前達が

 

何だ…何故お前らも光る

眩しい ヤメロ…ヤメロ!!!

 

「「「「出て行け!!私は…私のものだ!!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あらあら…天龍ちゃん…嬉しいこと言うじゃない〜」

 

「鳳翔…さん…私達……!もう大丈夫です!!」

 

「不知火ちゃん…ありがとう…夜戦も渡さない!」

 

「ヘーーイ!榛名ー!LOVEは嬉しいケドー!ダーリンは渡さないんだからネー!!」

 

 

バチンとそれぞれの身体から弾き出される

海の怨念達…

 

馬鹿な ソンナことが…有るはずが!!!

 

 

 

 

単純なものだった

彼女達の想いが

大切な者を思う感情が

其れを上回った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰かが肩に触れた

 

『君は…君達は…本当に奇跡を起こす人だ…どうやら、僕も出番だ…一緒に行こう』

 

誰だ?…金剛か? 時雨か?鳳翔か?!

 

 

ブワッと

コールタールの闇のモヤが晴れる

 

 

俺を含め皆が見た

 

 

「アレは……」

 

 

それは…奇跡としか言いようが無かった

決して起こり得ない奇跡

 

しかし この世界は知っている

奇跡は既に1度起こっている

 

 

そう

 

神崎 救 がこの世界に来た事だ

 

鉄底海峡を突き破り

幾多の困難を打ち壊してきた

 

 

ならその男が1度とて奇跡を起こさない筈があるだろうか?

 

 

 

いや

 

 

奇跡は起こる

 

 

 

 

 

ボヤけた彼が言う

 

 

 

 

『僕は…その奇跡を信じて…その為に僕も君と一緒にこの世界に戻って来たんだ!』

 

 

 

 

そこには一言で言うなら…肉体のない松田 祐樹《裏の…俺》が俺の目の前に背を向けて居た

 

それだけじゃない

 

英雄と呼ばれた者達がそこに居た

 

かつて 命を賭して守り切り

英雄と称された…

 

 

そう…資料でしか見た事のない

 

 

猛武鎮守府の英雄達がそこに並んで居た

 

「先輩…?」

 

先輩はいつもの口調で言った

『後輩君! いくよー?…なんてね…さあ!立った!』

 

 

祐樹にとっても奇跡だった

 

そう、早く祐樹の姿で転生できていればまた別の展開があった…

しかし、出来なかった

 

 

何故なら…表と裏は同時に存在できない

 

 

そう同じ存在としては

加奈江と言う存在は…祐樹が転生した別の姿故にそれを可能とした

しかし救は救のまま転生してきた

故に加奈江は祐樹として転生し艦これの世界に戻っても別の存在に書き換えられてしまうのだ

故に転生先で姿も性別も変わるのだ…

 

 

故に待つしか無かった

救を見定めるしか無かったのだ

 

生死の狭間の世界で救に会うまで 彼は揺れていた

救に退場してもらって自分がこの世界で指揮を取るか…

しかし 世界の為…艦娘の為に戦おうとする彼に賭けた

 

故に彼は 全てを救に託した

 

 

「僕の賭けは…間違ってなかった!」

 

 

 

『司令官!猛武鎮守府…全艦隊…集合しています!』

 

救にはどこかで聞いた声が聞こえた

 

『うん!行くよ…能代!皆!!』

 

『はい!司令官!』

 

『お久しぶりですね 救さん 覚えてますか?幽霊の阿賀野ですよ

戻ってくるって約束したでしょ?』と笑う2人

 

そう…彷徨う幽霊として出た2人の艦娘は

阿賀野と能代だったのだ

 

 

「はは…遅かったじゃないか…」

これは幻か?それとも…

 

『さあ行こう()!今度こそ……僕の最後の役目を!!』

 

 

「あぁ…先輩()が居るなら心強い!!」

 

 

「西波島鎮守府…全艦!!集合してます!」

 

「もー!いつもそーやってピンチになるんですから…」

「帰ったらハグしてくださいね?」

 

 

「いくらでもするさ!!」

 

 

『さあ!後輩君!一緒に指揮をとって』

 

「「西波島及び猛武連合艦隊…出撃!!!!」」

 

「あの黒いのは…僕に任せて!同じ念の僕達なら攻撃できる!!』

と祐樹が言った

 

 

 

 

 

『あなた達には…たっぷりお返しさせて貰うよ!』

 

 

『『『『『行きます!!』』』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

帰ってきたじゃないか

愛しい提督の元へ…

深海棲艦化しながらも 仲間の声に応え

もう一度戻ってきた艦娘達も…それを支えた艦娘も

 

 

 

提督の元へと集まる

 

 

「ダーリン!!!」

と金剛

「行こうぜ!提督!」

と天龍

 

 

「さあ……行くぞ!!!!皆!!まずは深海棲艦だ!奴らを倒せば…艦娘は戻ってくる!数を増やせ!!」

 

「「「「はい!!!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって

西波島鎮守府にて

呉艦隊を指揮する巌

 

 

「くっ…数が多いな… なんて数だ…」

巌達は圧倒的な数に苦戦を強いられていた

「このまま…なんてな」

 

『諦めるんじゃないよ!この!バカ亭主!!!』

 

 

「は?」

巌はポカンとした

懐かしい声が自分を叱責したからだ

 

『は?じゃないよ!何だい!その間の抜けた返事は!!』

疑問は確信に変わった

…居る

 

視線を向ける…声の方に

 

そこには…時成 夏枝がいた

 

「な…夏枝か?」

『それ以外誰が居るんだい! シャキッとしな!』

 

 

『久しぶりに…アンタのケツ叩いてやるよ』

 

 

『深海棲艦をとにかく叩くんだよ!』

 

 

 

 

 

入渠ドックはフル回転

補給部隊もフル回転

キャパを超えても資材をフル導入で奮闘する明石達

 

「入渠が多くて私たちの手じゃで足りないわ…」

 

 

その時

 

『私達が手伝います!』

 

 

見知らぬ人だった

呉の人か…大本営のひと?

しかし明石達はその声の主を見て驚く

 

「あの…あなたは?…その助けは嬉しいのですが…それにあなた…」

明石が言う そう…彼女には肉体がないのだ

 

「私達は…**鎮守府の所属でした! こんな体ですが!いけます!手伝わせてください!」

私も! 僕も!と後ろから現れる人達…

 

そう彼らもまた とある男の 諦めないという声に応えた…かつての同士なのだ

 

「あなた達…」

 

 

明石は言う

「ありがとうございます!なら指示を出します!よろしくお願いします!!」

 

 

 

『『『『はい!!』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「武蔵!どう?!大丈夫?」

 

「コレは…多いな…」

 

苦戦する蒙武鎮守府

少しでも救の役に立ちたい麗は武蔵達と共に

深海棲艦を引き受けていた

 

「武蔵!危ない! 魚雷よ!避けて!」

 

「くっ! 避けーー!」

 

麗だけでも助けられるか?

最悪…自分ーをーーーいや ーー間に合わない

 

 

 

 

『危ないのです!!』

 

 

 

しかし

武蔵に当たるはずの魚雷は 魚雷によって防がれたーー

 

 

 

『ぼーっとしてんじゃねえぞ…小娘』

 

 

海の上に浮く男は気怠そうに言った

 

『もう!提督さん!そんな言い方はいけないのです!!…とにかく無事で良かったのです』

 

『ちっ… おい立て小娘…!アイツの仲間なんだろ?…なら根性みせろ』

 

「だ… いえ ありがとうございます!  その あなたは?」

 

 

『あん? 俺は…誰でもいいだろう?』

 

 

「素直じゃない提督さんなのです』

 

『いいから!行くぞ!!』

 

 

 

 

 

 

それだけではない

他にも…かつて 海を取り戻そうと

愛するものを守ろうと戦った者たちが

海の上に居る

 

名も無き英霊達は

もう一度戦うために

 

守るために

 

 

その魂を奮わせた

 

『懐かしいでち』

『感傷に浸るのもいいけど…やるわよ』

 

『五航戦…あなた…鈍ってないでしょうね?』

『一航戦…アンタこそ!』

 

 

 

死せる者は…眠る者は

本来は起きる事はない

 

しかし何故か

声が聞こえたのだ

何故か心が動いたのだ

 

応えねばならないと思ったのだ

 

たった1人の男の

輝きは

 

生死すらを超えて 再び

かの者達をこの世に 導いたのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聞いテない!知ラナイ!

コンな話…有るはずがナイ!

死んだ者が 肉体のナイ状態で我らの前に立ち塞ガルナド

 

 

アノ男か

アノ男が!!!!

 

 

お前ノ輝キが そうサセルのか!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『えええええい!!!』

阿賀野隊の砲雷撃が繰り出される

『しつこいと嫌われますよ!』

 

『阿賀野姉!そっちに行きました!』

 

『ええ!矢矧!!お願い!』

 

『はい!   よーし! 行くわよ!!!』

 

彼らは謂わば思念体

この世を守るために

もう一度…一緒に戦うために

 

 

 

 

「おお…祐樹……何という奇跡か…2人が表裏の2人が背中合わせで戦っておる…」

 

 

 

 

「今までこんな事はなかった…」

通常…裏と表が交わる事はない

お腹と背中がくっつかないのと同じ様に…

 

しかし

目の前には 背中合わせのはずが…それらも覆した

2人が肩を並べ…指揮をとっている

 

「先輩!!そっちに!!!」

 

『わかったよ! 矢矧!頼んだ』

 

 

『了解!!』

 

 

『後輩君!!後ろ!』

 

「武蔵!!!」

 

「もう 撃っているぞ!提督!」

 

 

 

 

 

『さあ……能代…一気に行くよ!!!』

と何年ぶりに愛しい人が私の肩を持ってくれる

もう!彷徨う時みたいに絶望していない!諦めていない!

こんなに!こんなに!幸せなのだから!

「はい!提督!!」

 

『『いっけえええええええええ!!』』

 

 

そう、怨念とは怨みの念なのだ

マイナスの感情の塊

つまり裏の感情

表は

プラスの感情

 

実際、桜赤城の言うことは間違っていなかったのだ

 

榛名の砲撃が一瞬効いたのも

提督を守りたいという「愛」故に

 

「愛」のために世界を超えてきた桜赤城達の存在も…

 

そして同じ存在の姫ちゃん達、同じ幽体である猛武艦隊の攻撃も通用するのだ

 

 

 

そう

絶対が…怨念が相手なら

それを上回る 希望や愛情や幸せこそ

例え1発の弾丸だろうと 一握りの拳だろうと

それらを打ち砕く 武器となる!!

 

 

「クラエえええええ!!」

 

『押し返せ!!負けるかぁあぁぁ!!』

 

「ヌアアア!!」

 

しかし怨念も負けていない

積年の怨嗟は余りにも強かった…

徐々にではあるが…向こうが押し勝っている

 

『マズい!能代も…押される…ッ』

 

 

このままじゃ…また…負けーーー

 

 

そんな僕の肩を誰かが触れた

 

 

 

「まだだっ!先輩!まだ!まだだッ!!!」

救が祐樹の肩を押していた

 

『救…』

 

「そうですよ!!能代さん!!まだ終わってないです!!」

 

『大淀…さん…』

 

 

 

『そうだな…あぁ!そうだ!』

 

 

 

「無駄ナ足掻きヲオオオオ!」

「こんな世界!辛クテ苦しイだけの世界二イイイイイイイイ」

「能代!お前モ志半バで死んで悔しかッタろう?!」

 

 

 

『この世は…確かに…辛いことばかりだろう

でも…美しい世界でもあるんだ!!! 僕達は…全てに絶望していない!何度失敗もした!

でも!今回こそ!お前達を押し返して

皆を…この世界を…今度こそ!守ってみせるんだぁぁッ!!!!!』

 

 

『悔しいの…分かるよ!私達も辛かったもの!!でも!最後までこの人と戦えて!!!幸せだったのよ!!!!』

 

 

「グウウウウ!オノレエエエッナントデモ!ウマレルのだ!コノ怨念は!!深海棲艦ト艦娘の戦いが有る限り!!」

 

 

 

「それ以上に幸せな世界を…平和な世界を!作ってやるさ!艦娘も沈めない!!!負けるかァァ!!!!」

救が吠える

 

 

 

『後輩君! そうだ!その意気だ!!!』

 

 

「いっけええええ!!!!」

「バーニング!ラァブ!!!!」

 

ドゴオオン!

ズドン!と味方の魚雷が!砲弾が!

怨念に当たる!

 

 

「ヌウウウ」

「ナゼ?何故?コイツらの攻撃までアタル?」

 

 

 

提督が鎮守府に着任している事 が艦娘を本来の強さにする

仲間との繋がりが 練度が 艦娘を更に強くする

提督との絆が 想いが 艦娘を更に向こう側へと後押しする

 

 

幾多の困難を乗り越えて

幾多の悲しみを乗り越えて

幾多の別れを乗り越えて

 

 

提督と艦娘の絆は

更なる希望に変わる

 

 

 

「提督トヤラ!貴様にも届かヌモノがアルだろウ!全てを救エルハズなどナイ!!」

 

あなたのその手が届かないなら…

私が手を伸ばしましょう

 

 

「イズレは前に進メヌ時が来ル!」

 

あなたの足が動かないなら…

私が肩を貸しましょう

 

 

「…絶望シカナイ!!希望ハ続かナイ!」

 

あなたの心が挫けそうなら…

私が支えましょう

 

それが…私達です!

 

 

 

「ヤメロ!愛だ希望のダト…マヤカシが!!」

 

 

何故…

そんな目をする

お前達は…前へ進める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

取り込んだ艦娘は全て引き剥がされ

戦局は大きく傾いた

他へ散っていた怨念が1つに集まる

 

それは

艦娘らしき姿を形どった黒い人型になった

 

 

 

「私達は…お前達が居る限り何度でも…生まれ続けるんだ、何度でもだ

深海棲艦と艦娘が戦えば…人が争えば… 何度でも我らは

安らぎを求めて…生まれるのだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『だからそれに負けない良い世界を』

 

「俺らが…作ってみせるさ」

 

『だから安心して海の底へかえりなさい!』

 

「そうよ!」

 

 

全艦…一斉射 用意ーーーーーーーー

 

 

『「撃ーーーーーー!(てーーーーーー!)」!!!!!!』

 

 

それは

一直線にこちらに向かう

 

何故

何故 こうなった

 

 

 

 

浴びる砲撃は

何故か痛くない

寧ろ…暖かさすら感じる…?

 

 

「ヴァァァ ナゼ…」

 

 

アノ提督…だ

 

アイツの輝きが…目障りだ

あの真っ直ぐな目が目障りだ

魂の輝きが…痛い程に染みる

暖かさが

周りの艦娘が

 

 

 

 

 

 

羨ましい

 

 

 

 

 

 

救われたい…

愛されたい

忘れられたく無い

 

それだけのはずだった

 

 

 

 

受け止めてくれる人が欲しかった

仲間が欲しかった

 

深海棲艦は海から生まれる

人を憎む存在…

 

でも幾ら思念や艦娘を深海棲艦(仲間)に変えて増やしても それは誰も受け止めてくれなかった

かつての仲間も…居場所も…何もかも

 

それは世界が変わっても…変わらなかった

 

愛とやらに負けるのか?

我らの憎しみは…

 

「憎い…憎しミが止マラナい」

 

ズルズルと武蔵に乗る救に近づく

そして…

救に掴みかかる

 

「憎い!憎い!!!愛なぞ…愛なんぞ…」

 

ナア その輝きで我らの渇きを(悲しみを)……

 

 

 

 

 

「自分達が愛して、愛されていたことは忘れたのか?」

 

 

 

…ア…ーーー…

 

 

 

かつて沈んだ艦があった

共に沈んだ人が居た

 

半ばで打ち落とされた艦載機があった

共に沈んだ人が居た

 

 

 

 

 

戦いの中で沈んだ艦娘が居た

 

戦いの中で沈んだ深海棲艦が居た

 

海に生まれ海で死んだ生き物が居た

 

 

 

 

 

建造され期待された艦かあった

かつて**と呼ばれた艦があった

「いいじゃねえか…コレ」

「大破したのか!?直してやるからな!!」

 

艦と共に戦った人がいた

「死ぬときは…一緒だ…」

「この艦は…負けない!必ず勝利を!」

 

 

空を駆け回った艦載機があった

「この空は…俺達の空だぞ」

「この愛機は…最高なんだ」

 

共に飛んだ人が居た

「この中で死ねるなら…本望だな」

「完成だ……俺の夢を積んで飛んでくれよ…***」

 

 

 

人々の為に生きた艦娘が居た

「提督…愛しています」

「…私の事を…好きと言ってくれるのですか?…嬉しい…」

 

海が好きな深海棲艦が居た

「海が好き…」

「ふふ…イルカサン…私ガ怖くナイノ?」

 

愛された海の生き物が居た

 

 

憎しみばかりで無かった

何故忘れていたのか

  愛されていた事

 愛していた事

 

想い想われていた事

 

 

あぁ…

 

 

 

認めてしまった…

思い出してしまった…

 

 

…この男の…たった一言で

 

 

 

 

 

****は両手を救の頬にあて

涙を零しながら言う

 

 

 

 

「そうだなあ… あったなあ……そんなことが…」

 

 

「やっと…我らは……」

 

穏やかな表情だった…

先程まで殺し合いをしていたとは到底感じない程に…

 

「我ら以外にも…海の底には…憎しみを抱えた奴はいる

お前達が戦う程にそれは大きくなるだろう…

 

仮に艦娘と深海棲艦との戦いが終わっても…人は強欲だから…人と人の争いになるだろうな…

それもまた…同じ事になるだろう

また現れるだろう…でも

…まあ…お前達なら…乗り越えるんだろうなあ…」

 

 

あぁ…見える…

 

愛しい…あの人

いつも見送ってくれた…あの人

俺の…乗った愛機…

…提督

 

我らの…ーーーーーーー愛したーー

我らをー愛してくれた

 

 

……ありがとう

 

 

 

そして****は光は海の底へと…還って行く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寂しかったんだよな…

誰も受け止めてくれないってのは悲しいな

でも…それでも 誰かを傷つけちゃダメなんだ

 

また別の奴らが来るってなら…

また俺らが…どうにかするよ

 

だから

安心して眠ってくれ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勝った…… やったんだ」

 

『……守れた…の?』

 

うおおおおお!やったぁぁぁぁぁ!

と歓声が上がる

 

 

「閣下!入電です!  怨念の侵攻止まりました!」

 

「おおっ!…よくやった…よくやってくれた」

 

 

 

 

「勝ったの?…ほんとに?」

「やーっと終わった〜!」

「良かった……良かった!」

 

入渠、補給組もヘナヘナと崩れ落ちる

 

 

『やりましたね!』

『勝ったんだ!!』

皆が泣き 抱き合いながら其れを噛み締める

 

 

 

 

 

生ける者 死せる者

言葉では説明出来ない奇妙な共闘

 

死せる者は残した者の為に

生ける者は明日の為に

西波島鎮守府の目前の大海原で

戦い抜いた

 

 

 

 

 

空は白みがかり

夜はまさに明けようとしていた

 

 

 

 




『』は一応あの世組のセリフに使ってます
見落としがあったらごめんなさい!

祐樹達の外見のイメージは
ゼルダのBOTWの英傑のような青い炎をイメージして頂けたら…



少しでもいいなと
思ってもらえたら嬉しいです




アンケートの結果がまさかの⑥になったので
主人公が提督さんになりました

次作に同行する艦娘を1人選びたいと思います
またまたまたまたアンケートお願いします!



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74話 西波島大決戦 ⑤ エピローグ 月は星と共に還り、陽は昇る

エピローグです(๑╹ω╹๑ )




夜は明けようとしている

月は沈み また太陽が登ろうとする

 

 

祐樹が言う

「まあ…僕は君にたくさん嘘をついていた訳だ…すまない」

 

「怒る理由はないですよ」

「まあ…君ならそう言ってくれると思ってたよ」

 

握手を交わす

触れられるのが不思議だが…

ありがとう…

 

 

「さあ…僕達は還るよ」

 

「僕達は過去の者だからね…未来は…君達のものなんだから」

 

「先輩…」

 

「はは!君は最後まで先輩と、呼んでくれるだね」

「君は君…僕は僕…か…ありがとうね」

 

 

 

 

「少し寂しいですけど…」

「一緒に戦えて良かったです」

 

 

「阿賀野…矢矧…」

 

「まあ!祐樹提督の方がいい男ですけどね!」

「こら…能代…」

「もう離れませんからね?」

 

 

「能代はまあ…提督とずっと離れないでしょうから…でも!私達はもしかしたら、また生まれ変わって本当にあなたの元に行くかもよ?」

 

「おいおい 自分の提督の前でそれはダメだろう」

と笑う(表の僕)

 

「いや…その時は頼むよ…このじゃじゃ馬達をね」

 

 

「あっ!ひどい!!」

「抗議します!」

 

 

 

「「ハハハ」」

 

 

「もうこうやって出てくる事は無いかな…本当に君の中で…世界を見させてもらうよ…たまに暇になったら話しかけるかもだけど!」

 

「怨念は自然なものだから…また来ると思う…でも 君達なら…」

 

 

 

 

何故僕達が今日勝てたかわかるかい?

 

絶望していなかったからさ

怨念以上に…希望に満ちていたからさ、幸せだからさ

そして…きっと愛情なんだ

 

わかるかい?

君達のの力なんだよ… 表の僕

 

 

 

君の周りには沢山の人が居る…

君は…沢山の人を助けて…救って

助けられて 救われて 様々な縁を作るんだ

 

それがいつしか…世界を救う鍵になるはずなんだ

 

 

 

だから君は幸せな鎮守府を作って欲しい

怨念が深海棲艦を作るなら

それ以上に幸せな艦娘を…

 

そして艦娘を沈めないように…

 

 

 

それはきっと広がって行くはずなんだ

 

僕には出来なかったけど…

 

ガシッと肩を組む2人

「できるね?後輩君」

といつもの先輩で言う

 

「もちろん!先輩!」

 

 

またね…ーーーー

コレからの君達に武運長久をーーー

 

 

さよなら!提督さんー!

また会う日までー!

 

 

 

…御蔵の方へ向き敬礼をする

短くて…長い付き合いだった…

 

 

御蔵も同じく敬礼をしていた

「…ありがとう、そしてご苦労様…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて… 私達も還りますね?明石さん!夕張さん!」

 

「もう帰っちゃうの?」

 

「はい!戦場ではありませんでしたが 一緒に戦えて…良かったです!悔いもありません!清々しい気持ちです!ありがとうございました!」

と笑顔で敬礼をする者達

 

「いえいえ こちらこそ!助かりました!ありがーーーーー」

明石と夕張がお礼を言おうとする

 

しかしそこには最初から誰もいなかったかのように

2人だけが敬礼した姿で立っていた

 

「お礼くらい言わせてよ…せっかちさん達」

 

「ありがとう…あなた達のおかげで…」

 

 

 

 

 

 

海の艦娘達も続々と還って行く

もしやも… 何処かで出会えたなら…

また一緒に戦いましょう…と

 

 

 

 

 

「全く…アンタは…再婚が早いさね!まーーーったく!」

 

「いや…そのな…」

 

「ふん! なんてね とっとと前を向いて歩んでおくれ」

 

「夏枝…」

「アホみたいに!浴びるように酒は呑まない事だよ!!!」

 

「大和…このバカ亭主を頼んだよ」

 

「はい…」

 

「こら 萎縮すんじゃないよ」

「このバカを面倒見切れるのはアンタくらいだよ」

 

「はい!頑張ります!!」

 

 

「肩の力抜いてね…やりな」

 

 

 

 

 

 

 

「お…お母さん?」

 

「夏子…」

 

お母さんお母さんお母さん!!

うわぁぁん!お母さん!

娘は母に抱きつく 強く強く強く

「夏子…ごめんね…約束守れなくて…」

 

「ううん! でも今日こうやって会いに来てくれた!!」

 

「はは…コレからは…お父さんとお義母さんの言う事をよく聞くんだよ」

 

 

「うん!うん!!」

 

「後ね…」

 

「うん」

 

 

「私の娘なんだ! 負けんじゃないよ!好きな奴が居るなら絶対に負けんじゃないよ… アンタは強い子だ…まずは…料理から覚えな」

 

 

「うっ…頑張るよ…」

 

 

 

 

「アンタ…」

 

「あぁ」

 

「後は頼んだよ」

 

 

「ああ!」

 

女は3人を抱きしめる

愛おしそうに…涙を浮かべ

 

 

湿っぽいのは嫌いだからね

アタシゃ 行くよ

 

ぐっと 親指を立て女は言う

 

ゆーーっくり ジジババになってからこっちに来な!

ずっと待ってるからね

早く来たら…承知しないよ!!

 

 

まあ大丈夫さね

アンタ達ならーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は最後まで彼女らしかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思い出す…鉄提督海峡…

あの時の敵が目の前に居る…味方として

 

「ありがとうございました」

と麗が言う

何でも…麗のピンチに駆けつけてくれたとか

 

 

「大将殿…ありがとうございました」

とお礼を言う

 

「ふん! 電が行こう行こうと言うから…お盆だしな…

それに… お前達には…借りを返したかったからな!」

 

「意外と良い人なんですね?」

と茶化す

 

「うるっさい!!」

 

「まあまあ 提督さん… 笑顔で帰るのです!」

「うっ………はあ…仕方ない…」

 

 

「またな…」

「そうだ……たまにで良い…墓参りでもしてくれや」

 

「島の1番良いとこに墓建てておきますよ」

 

 

「おう」

 

 

 

 

「あの!」

 

と麗が言う

 

 

「何だ?」

 

 

「見ててください!私!ひよっこから!立派な提督になりますから!」

 

 

 

 

 

「…頑張りな…お嬢ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「親父…」

数年ぶりに呼ぶ声が聞こえた

振り返る

そこには… 夢にまで見た

もう一度会いたかった 息子がいた

 

「祐樹!!!お前なのか?お前…生きてたのか?」

信じられなかった

これは…夢か?

 

 

「違うよ… お別れを言いに来たんだ」

 

その言葉が…嘘ではないと

分かる

 

「…ッ!  そ、そうか…仕方ねえな…最後に会いにきたってか!」

 

 

「うん!そうだ!聞いてよ!僕…世界を…救えたんだ!

彼と一緒にね!…」

 

「そ そうなのか?…お前は…… 彼ってのは…救か?」

 

「うん! 今度は本当に彼の中に帰るから…もう会えないけど」

 

「どうしても伝えたい事があって」

「なあ…親父」

 

「何だ?」

と涙を溜めた祐司が言う

 

「本当にありがとう… 体に気をつけてね…コレ…」

と祐樹は自分の勲章を父親に渡した

 

 

「…ああ!いい勲章じゃねえか!」

それは…少し焼けていて  傷だらけの勲章だった

 

「僕が…生きた証…提督として 皆を命がけで守った証」

 

生きた証ー

それは死んだと言うことを再び目の当たりにするという意味

もう、こうやって会える事はないと言う意味

 

たくさんバカをやった

たくさん喧嘩もした

 

もっとたくさん……したかった

 

 

 

堪えきれ無かった

うっ…うっ…と声にならない声を上げて

涙をポタポタと勲章に落としながら

それを強く握りしめ

父親は言う

 

 

「ありがとなあ……お前もな…元気でな…

 

 

お前は…お前は!!!大好きな自慢の息子だ…!!!!」

 

と父親は息子を抱きしめる

ずっと…こうしたかった

分かっている…もう時間はないと 離したくないと

でも…あぁ

この…瞬間が…… 来てくれたことに

感謝しないと…

 

 

 

 

 

 

僕もずっとこうされたかった

ずっと…聞きたかった言葉だった

 

こめんね親父 先に行ってしまって 置いて行ってごめんね

ずっと言いたかった!

 

ありがとう…

僕も…ずっとこうしていたい

お酒も一緒に飲みたいし…

 

そうだ…

結婚相手も紹介したかった

能代っていうね艦娘なんだ…

 

 

「…その子か?」

 

視線の先にはその子がいた

 

「あの!はじめまして…私は…彼の部下の…」

と能代が挨拶をする…

 

 

「能代さん? べっぴんさんじゃないか!  こいつはな…俺の自慢の息子なんだ…頼む… 向こうで…1人は寂しいと思う…だから…頼む…いや!よろしくお願いします…よろしくお願いします…」

男はは泣きながら頭を下げる

 

 

「そんな!私こそ…不束者ですが!!」

能代も祐樹も涙を堪えられない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛する父から…愛する息子と義娘へ

愛する息子から…愛する父へ

 

 

 

 

 

 

そろそろ…行くね

本当にありがとうーー

親父… こんな僕を誇りに思ってくれて嬉しいなーー

大好きだよ 親父ーーー

 

 

 

2人は…笑顔で旅立った

 

 

 

 

「祐樹! 祐樹いい!!」

 

男は泣いた

 

軍へと見送った日の事を何度後悔したことか

何度自分を責めた事か

 

男は全てを知るわけでは無い

それでも…分かる…

自分が彼を軍へと送り出した時 見送った時の息子とは

ひとまわりも…ふたまわりも…それ以上に

大きな彼を見て きっと本当に大した事を成し遂げたのだと

 

最期は 幸せだったんだ とー

何故なら…男は 松田祐司は

松田祐樹の父親だからだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本当に…まあ最後はいい人生だった

君が羨ましいよ…救

何度も思ったよ…そこが僕ならなあって…

 

でも違うんだ

君だから…君だからそう在る事ができたんだ

 

いくつも君に嘘を混ぜて話した

でも君は…

 

一緒に闘いたかった

もっと一緒に飲みたかった

もっと愚痴りあって…

もっと…仲良くしたかった

 

でも 最期に君と肩を並べて戦えて

それだけで…嬉しかった

 

君は僕を 1人の先輩とずっと言ってくれた

それだけで…嬉しかった

 

ありがとう…

 

「能代…いこうか」

 

「はい…どこへでも…あなたとなら」

 

「彼の中に戻るのさ …きっと楽しいぞお だって…救だからね!」

 

「阿賀野達がまた生まれ変わってでも会いに行くって言って、すぐに皆を連れて帰りましたからね」

「すこし妬けちゃうけど…僕には君がいるからね」

 

「そうですよ? 離しません …行きましょう」

 

 

 

 

 

今日を生きる者は明日へ

昨日を生きた者は思い出へ

在るべき処へと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあーー!! 帰って朝ごはんにしよう…!!」

 

日は昇り…明るい世界を照らす

大きな海に 声が響いた

 

 

 

 

 

 




太陽と月
昼と夜で主人公を分けた…つもりでした


少しでもお楽しみ頂けたなら嬉しいです

感想、評価、メッセージ等等頂けると
嬉しくなります(๑╹ω╹๑ )!
早くこの、艦娘出して! こんな話を!!
などありましたらお気軽にどうぞ!




あ!完結じゃないですよ!



次回から日常パート(๑╹ω╹๑ )

夫婦話も作成中です


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75話 頑張れ!羽黒ちゃん

こ、こんにちは 私は妙高型重巡洋艦の4番艦羽黒です

 

私は…その…普段からあまり…うう

お喋りとかが苦手で… その…提督さんとお話する勇気があまり無いので…それを克服したいと思っています…ごめんなさい

 

 

 

皆さんは、提督さんと親しげに話したり…デートしたりとか

羨ましいです

私なんか…喋りかけられるだけでテンパって…ううう

 

 

 

 

「でー?俺らのとこに来たと?」

と天龍、木曽、麻耶

「はいぃ…ごめんなさい」

 

ガッと肩を組んでくる天龍さん  怖いよお

「任せな…お前を立派なレディにしてやるよ」

「「「フフフ」」」

 

 

 

1週間後

 

 

 

「今日の秘書艦は…天龍に代わって羽黒か」

 

ドォン!と執務室のドアが開かれる

「!?!?」

 

「ちーーっす! おざーーす! 提督サン!今日一日…よろしくっす!」

とめっちゃファンキーな羽黒が現れた

「は…ぐろ?」

 

羽黒?らしき奴が肩を組んでくる

「うぃ! どーしたっすか?! テンション低いっすよ?」

「そんなんじゃ…仕事乗り切れねえっすよ!」

 

 

いや誰だよ本当…

 

…ん?あそこから覗いてるのは天龍達か…

アイツらぁぁあ!!!

 

 

 

「羽黒!」

 

「ん?何?」

 

「今日は…休めッ…」

 

「はい…」

恐らく羽黒も限界だったのだろうなあ…

 

 

 

 

その1週間後

 

「パンパカパーン!」

と羽黒のダイナミックエントリー part2

 

「ブフッ」とお茶を吐き出してしまった

 

「今日はぁ〜 提督さんとぉ お仕事っ 頑張りまぁす!」

「だって!それがぁ アイドルだから!」

 

 

はい 愛宕と那珂という組み合わせだな?

 

 

「さぁて! ………」

顔を真っ赤にプルプル震える羽黒

 

 

「無理…すんなよ?」

 

「はい…」

 

 

 

 

 

更に…以下略

 

 

「ヘーイ 提督さーーん!」

 

「!?!?」

 

「羽黒、一生懸命、秘書艦!頑張ります!」

 

「お、おう…」

 

 

 

 

「提督さん?そろそろ休憩しませんか?」

 

「あと少しで…区切りがつきそうだから…先に休憩してて大丈夫だぞ?」

 

 

「一緒に休憩しないと…羽黒は大丈夫じゃないです」

 

といつの間にか装備しているメガネをクイクイやっている

 

 

羽黒ぉ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はあ…上手くいきません…

 

何がダメなのでしょうか…?

 

気弱な性格だから…うう

自分に自信があればなあ…

 

もっと…提督さんとお喋り出来るのになあ…

 

 

 

 

 

「羽黒…聞いたぞ」

 

那智だった

 

「那智姉さん…私…」

 

「言わなくてもわかるぞ…。 なあ羽黒…他の艦娘の真似をしなきゃ…提督とは話もできないか?」

 

「うっ…でも…」

 

「お前にはお前の良さがあるだろう?」

 

「良さですか?」

 

「あぁ… 提督は言ってたぞ?

羽黒はいつも細かいとこまで気が効くから助かる…とな」

 

「そっと胃薬を渡したりしてるんだろ?そういうところも提督はしっかりと見てるようだぞ?」

 

 

「誰かの真似をして接したところで、それは本来の羽黒のものではないだろう?羽黒は羽黒のまま…有り体で接したらいいんだ」

 

「でも…提督を前にしたら…恥ずかしくて」

 

「ゆっくりでもいいじゃないか! それで嫌味を言ったり嫌う人じゃないって事くらい分かってるだろ?」

 

 

確かにそうだ

…そのくらいであの人は愛想を尽かしたりしない

…そうですね

 

「はい…ありがとうございます 那智姉さん」

「わたし…もう少し頑張ってみますね」

 

「あぁ…」

…と言ったものの那智は内心少し不安だった

羽黒は…その…何というか

ヤンデレの気質があるからだ

 

普段は気弱な女の子だが…

極たまに他の女の子絡むと 目のハイライトを消してしまうからなあ

 

聞いた話だと隠れた提督の居場所をすんなりとバラしたりするらしい

 

 

 

 

「失礼します」

 

「おお羽黒か 調子は…戻ったみたいだな」

 

「は…はい! ご迷惑をお掛けしました…その…すみませんでした」

 

と頭を下げる私に

「疲れてたのかー?あまり無理はするなよ?」

 

 

「わっ 私ッ もっと…て提督さんとお喋りとかしたかったんですけど…その…あの」

 

「うん…」

待ってくれる提督さん

 

「あの」

 

「恥ずかしくて…」

 

 

「ゆっくりで良いよ 俺はちゃんと待つからさ」

と優しい言葉と…優しい手で頭を撫でてくれました

 

「うう…ありがとうございます//.」

「提督…提督…エヘヘヘ」

 

 

 

 

私!頑張れそうです!!

少しずつ頑張ります!!

 

 

 

ガチャ…

「提督さーーーん!!」

と抱きついてくる艦娘が…

 

「おーーどうしたーー?」

 

あれ?提督さん?

私が居るのに他の子を…むう

 

…ぎゅっ

 

「んー?!羽黒まで!どうしたー?」

 

 

 

提督から見えない水面下では

女の戦いが勃発してるとかしてないとか

 

 




ごめんなさい…羽黒ちゃん…


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76話 その一言が聞きたくて 提督 間宮ト一日夫婦 ①

間宮編!(๑╹ω╹๑ )!
相変わらずの分割でお送りします


間宮…鎮守府でも指折りの料理人

 

 

特に甘味に関しては恐らくトップに入るであろう腕前は

鎮守府内外を問わずの人気だ

 

史実でも、ものっそい数の食糧を生産可能だったとか…

 

 

優しく穏やかな彼女

 

 

そんな彼女が……目を覚ますと横で寝ていた

「………」

 

「ん…おはようございます…救さん」

 

意外だった

間宮の事だから料理関係の事だと思っていた

この調理器具が欲しいとか

この料理を食べにいきたいとか

新作料理を一緒に考えて欲しいとか

 

 

だと思っていたが

その彼女が目の前に居る

 

呼び方も…さん付けに変わっている

 

「おはよう、間宮」

 

「今日一日よろしくお願いしますね?」

 

「こちらこそ!」

いい1日のスタートになりそうだな…

 

 

「…で……アレは何でしょうか?」

と指差す先には昨日食べたカップ麺の残骸が…

 

「げっ」

スタート直後に転んでしまった訳だ

 

 

 

そうである

食生活にうるさい…厳しい間宮は そう言った類の物を俺が嬉々として食べるのをあまり好まない

以前、忙しさのあまりカップ麺生活をしていた際は…それはもう…ね

こってりこってり怒られましたよ…

 

 

「いやぁ…夜中まで仕事しててさ……小腹が空いちゃって…」

嘘は言っていない

ただ…たまにあるじゃん?夜中にカップ麺とか焼きそばとか食べたくなる時…ソレだったんだよおおおお

 

「なら起こしてくれたら何か作りましたのに」

 

「いや!かなり夜中だったしさ!」

 

「………」

 

「夜中にカップ麺とおにぎり…ポテチにコーラも…そしてアイスクリームまでですか?…それで小腹ですか?」

 

「あっ……」

 

 

「まったく!夜中に食べたくなる気持ちは分かります!でもこれは食べ過ぎです!これじゃあ…健康に悪いですよ! いいですか?寝る前は………くどくど」

 

間宮のスイッチが入ったようだ…

そのまま正座させられてお説教だよう

 

「大変申し訳ございませんでした」

と三つ指ついて綺麗な土下座で謝罪を試みる

 

 

「何度目でしたっけ?」

 

「10から先は覚えてない…です」

 

「……」ニコリ

 

 

あっ… 死んだ

マジギレした鳳翔と間宮はマジでヤバイ

最強空母勢や戦艦勢を一瞬にして黙らせ

駆逐艦勢は恐怖で震え泣き……

 

食堂メニューはもれなく全て

ご飯とたくあんだけに変わる

 

「…まったく……そうならないように頑張ってメニュー考えてるんですよ?」

 

あれ?

 

「お腹が空いたなら言ってください… あなたの為なら…少しくらい遅い時間でも…何か作りますから」

 

「怒らないの?」

 

「お腹が空くのは仕方ありません。カップ麺を食べたくなるのもわかります…でも私達が居るんです、カップ麺に負けたと思うと少し寂しいんです」

と間宮は悲しそうに笑ったのだ

 

怒られるより悲しまれる方が心に刺さる

 

 

あぁ…そうか

間宮は他の艦娘と違って 飯時や甘味時くらいしか会う時がない

秘書艦業務があれば専属といて1日一緒に仕事だが、間宮や伊良胡は食事処を任せられる性質上、皆のために日々働いてる訳で…

鳳翔みたくある程度の自由が効く訳ではない…

 

 

実質で言えば本当に会える時間は短い

ある程度の遅い時間なら鳳翔が食事処をやって居る

そこは仕方ないと自分を納得させても

夜食等でカップ麺にその機会まで奪われたら間宮にとっては

悔しい事この上ないだろう

 

そこまで考えてなかった

彼女はずっとそう言いたかったはずだが、言わなかった

俺の思慮不足だ…

 

 

「…ごめん 間宮…」

 

 

「気をつけてくださいね?」

 

 

 

「さあ!お出掛けしますか? 朝ごはん食べてからですけど」

 

 

準備をして部屋に戻ると

おじや らしきものが用意されていた

「昨晩は食べ過ぎなので優しめにしましょう?」

 

「ありがとう」

「いただきます!」

 

と2人で食べ始める

「君も同じものなのかい?」

 

「はい?そうですけど?」

 

「何でまた…君は普通通りで…」

 

「それが夫婦じゃないですか? あなただけおじやなのに私だけ普通のものは食べられませんよ」

 

 

きっと彼女は夜にカップ麺の存在に気付いたのだろう

だから急遽メニューを変更したのだ

……彼女には彼女のプランがあったはずだ

なのに俺のこう言ったデリカシーの欠片もない行動が、きっと彼女を傷つけたはずだ

 

…俺は間宮に対する考えや行動を変えようと思った

彼女は本当に彼女にできる最大限で俺の事を考えてくれているようだ

これ以上の思慮不足があっては…罰当たりだ

 

 

俺はカップ麺を貯蔵庫へと寄贈する事を決めた

 

 

 

門は相変わらずの盛況だった

 

 

「間宮さぁぁぁあん!今日の甘味処はお休みですかぁぁあ」

「うわぁぁぁあ! 提督うううう!」

「ご飯がぁぁぁあ!!」

「行かないでえええええええ」

 

今回は本当に阿鼻叫喚だった

俺が居なくて寂しがる艦娘

甘味を食べられない事を改めて知る艦娘

 

聞こえる声の70%が行かないでだった

特に赤城と駆逐艦勢が虚無の表情をしている

いつも楽しみにしてるからなあ…

 

「行ってきますね?」

間宮、容赦ない

 

 

「「「「「ぐすん…行ってらっしゃい!!  ううう」」」」

 

珍しく泣き言が入ってら

それでも見送ってくれるのはありがたい

 

 

 

「救さん?腕を組んでもいいですか?」

 

「ん?いいよ?」

 

えへへと腕を組んでくる間宮

 

横には笑顔の間宮

後ろには泣き叫ぶ留守番組

 

 

 

天国と地獄が一度に体験できるのも なかなか…ねぇ

 

 

 

こうして1日夫婦のデートが始まった

 

 




いつも見て頂いてありがとうございます!

梅雨時期でテンション下がりますね
少しでも楽しんで頂けたら幸いです!

間宮も伊良胡ももったいなくて
一回も使ってないなあ…


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77話 その一言が聞きたくて 提督 間宮ト1日夫婦 ②

皆が羨ましい

 

提督の周りにはいつも誰かが居る

 

秘書艦は一日中提督さんと一緒に仕事が出来る

ご飯も一緒に食べて…休憩してお茶して

 

私は提督さんが食べに来てくれる時くらいしかお話が出来ない

 

朝昼夜とご飯の献立を伊良胡ちゃんと考えて

仕入れから仕込みまでやって

昼からは甘味処をやって…

 

提督さんは忙しいからか

なかなか来てくれない時もある

鳳翔さんが羨ましい

居酒屋鳳翔は私も時々行くけど…カウンター席の人とお話しながら仕事ができる

秘書艦もできる

 

いいなあ…

 

 

あの人が傷付いても

倒れても

その場に私は居ない

戦場で彼を守ることも…支える事もできない

 

 

だから皆が羨ましい

 

 

今日は朝から嫌味だったかな?

でも…唯一の仕事もカップ麺に奪われたら私は…

 

 

 

だから、今日くらいは…ずっと側に居させて下さい

 

 

 

 

ランチのメニューや様式を取り入れたいとの事で

間宮が行ってみたいと言っていた場所でのランチ

 

 

 

 

「最近はワンプレートのランチが流行りなんですね」

肉or魚 サラダ お惣菜 ごはんのワンプレート

スープ付きだ

確かに魚か肉を選べて かつそれ以外の中身が同じなら

コスト面や手間も楽になるだろう

 

 

「そうみたいだなあ…俺的にはもう少し量が欲しいところだけど」

 

「まあ 救さんには少し足りないかもですね」

と笑う間宮

 

 

 

午後からは中華街を歩いてみた

「普段なら…ダメなんですよ?」という間宮を引っ張り歩く

出来立ての肉まんが美味しい…

なんて間宮は言っていた

時に店員に作り方を効く姿は 間宮らしい…

 

 

その後は ショッピング!

甘味処で使う食器や飾る小物を探すらしい

 

「この…器…いいね」

真っ黒の中に金色での流れるようなデザインのお皿

珍しく俺が一目惚れw

「救さんはこういうデザインがすきなのですね?」

 

なら置かなくっちゃ と買う間宮

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば夕飯はどこにいきますか?行きたいところはありますか?」

と幾つか候補を挙げてくれる間宮

 

「せっかく外に2人で初めて出たので美味しいところで…って救さん?」

 

「ん?! ど、どうした?」

 

「考え込んじゃって…ぼーっとしてますよ?」

 

 

「す、すまん!夕飯の話だよな!」

 

「はい! ここは麺系がオススメで……ここは……で」

とかなりリサーチしてくれたのだろう

幾つも幾つも…きっと

 

 

「君の手料理が食べたいな」

 

「え?」

 

「君の手料理が食べたいんだ」

 

「が…外食じゃなくて?何でです?」

と複雑な表情を見せる間宮

 

「あー…外食も美味しいさ!でもさ…誰かを思って作ってくれる君のご飯に勝てるものなんて無いよ」

 

 

「………」

 

この世界で一番食べているのは君の料理だからさ

君がいつも皆の事を思って作ってくれてるのを知ってるよ

 

君達にしか出来ない事なんだ

戦えなくたっていいじゃないか

間宮達の料理が1日の初めと終わりを彩ってくれるんだから

 

 

だからさ

えと 朝はごめんね?

君には心配もかけたし…嫌な思いもさせたね…

 

改めてなんだけど

 

今日は俺の為だけに夕飯を作ってくれないか?

もちろん手伝うから!2人で食べよう?

 

 

 

 

嬉しかった…

私なぞ…料理するだけの艦娘だと思われてると思っていた

 

気付かなかった…そして嬉しかった

この世界で一番食べてるのが私達の料理だと

外食よりも君の料理が良いと言ってくれて

俺の為だけに料理してくれなんて…

 

 

 

ズルイですよ…

たくさん調べてきたのに…

そんなこと言われたら……もう…あなたのために作るしかないじゃないですか

 

嬉しくなっちゃうじゃないですか

 

「…むう なら一緒にお買い物に行きましょう?」

「何が食べたいですか?私、一生懸命作ります!」

 

 

 

一緒に買い物へ行った

一緒に食材を選んで

一緒に帰ってからキッチンへ

 

鎮守府の調理場を使って料理する

周りはまだ阿鼻叫喚の地獄絵図ですが

今日だけ…今日だけは許してください

 

 

 

好きな人とこうやって料理するのがこんなにも幸せだなんて

好きな人とこうやって隣にいるだけで幸せ…なんて

 

 

結局…肉じゃがと焼き魚とお味噌汁とご飯…

いつもと変わらないじゃないですか

 

「良いんですか?いつもので…」

 

「そのいつものが嬉しいんだよ」

「ごめんね…当たり前になってたから…その…カップ麺とかさ…食べたくなってさ… でもさ、今日わかったんだ。間宮が…その…どれだけ楽しみにしてくれてて、俺のこと考えてくれてるかって事を」

 

「だから…その当たり前が本当に幸せなんだなって」

 

 

 

 

 

「美味しいよ 間宮、いつもありがとう」

 

この一言がどんなに辛いことがあっても

それだけで幸せになれるなんて

 

 

普段の料理は補給艦組で作って皆が食べるから

美味しいは私だけのものじゃないけど

 

うん

今日の、この美味しいの一言は

私だけのものだ

 

 

 

 

 

 

食事の片付けをして2人でのんびりする

 

 

すると彼は真剣にこちらを見て言う

「間宮?」

 

「はい、なんですか?」

 

「コレ…受け取ってもらえないか?」

 

「……」

私達は貰うことはないモノがそこにあった

憧れて夢見たものがそこにあった

金剛さんが、加賀さんが羨ましかった

もしかしたら…なんて期待した事もあった

でも、有り得ないと思い諦めていたものがそこにあった

 

 

「私は戦闘向きじゃないですよ?」

 

それでも!と彼は言う

 

 

 

 

 

左手がその小さなモノの分重くなった

でもそれが嬉しい

 

 

 

 

「大好きです!…救さん!」

 

 

「あぁ…俺もだ」

 

 

 

本当に一番聞きたかった言葉…

 ありがとう…提督さん

 

 

 

 

 

私も…負けませんからね?

 

 

あと…カップ麺はもう許しません!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっと間宮さんの甘味が食べられるっぽい〜!」

 

「お帰りなさい!間宮さん!」

「パフェ下さい!」

 

 

「はーい!少し待ってね?」

 

と大盛況な甘味処間宮

 

 

「あーーー!!!」

と1人の艦娘が叫ぶ

 

「それ!左手の!!!あーーー!!」

 

 

「コレ?  うふふ 貰ったの」

騒ぎ出す皆に 幸せそうな笑顔を負ける間宮が居た

 

 

 

 

 




アンケート!ありがとうございました(๑╹ω╹๑ )
金剛…ですね?


ではそれを踏まえてネタ造りしますので!
お楽しみにー!


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78話 鎮守府のキャラ変わり ①

なんの脈絡もなく始まるバカ話


こんにちは 皆さん

俺です…

 

鎮守府は……崩壊するかもしれません

 

 

 

 

 

 

「お〜い!天龍ゥ〜」

コイコイと手招きする艦娘が居る

 

 

「な…何だよ…電」

呼ばれた天龍は渋々と応じた

 

 

「あぁーん?誰に口聞いてんだ?、この駄肉はァァ!!」

「いだだだだ!もげる!もげる!!」

どこをとは言わないが、あからさまに悪意を持って掴んでるな…アレは

 

 

「フーーー でよぉ…」

 

「ゲホッゲホッ! ここは禁煙だぞ…」

 

「細けぇことは良いんだよォ〜」

「何時になったら…提督はアタイを…貰ってくれるんだろなあ…」

 

「知らないっすよ…」

胸を押さえながら正座する天龍…

 

「電ちゃん〜?あまり調子に乗ってると痛い目に…」

龍田のエントリー

結構怒ってますね!?

コレは電のピンチでは…?

 

しかし電は余裕の表情だ

それどころか…

「…クローゼット……下から2段目の奥……の奥…て」

「すみませんでした」

 

0.2秒で土下座した

 

天龍は驚いた…

あの龍田が土下座してやがる…だと?

一体どんな…秘密を…

 

 

 

 

 

ところ変わって…

 

 

「赤城さん〜これ…お願いしてたパンじゃ無いですよねぇ?」

「ぽーーい」

 

「吹雪さん…夕立さん…メロンパンは売り切れで…」

 

「なら別んとこで買ってこいやぁ!!」

「この飛行甲板は飾りかァァア っぽいイイイイ??!」

 

「別んとこって 島渡らないと…痛い!痛いです!!!飛行甲板がっ

…いやぁぁあ!!」

 

 

アレか…駆逐艦は胸に恨みがあるらしい

 

 

 

 

 

 

さらにところ変わって…

 

 

 

「提督ううぅ!しゅき!しゅき!!だーーいすきぃ!!」

 

か…加賀ぁ……

お前…キャラが…

「だめー!提督は私のぉ〜」

…那智ぃ……

 

「私のだぞぉうー!?はぁー提督うう」

 

長門おおおおお!!!

 

「いだだ 引っ張るなよ…痛いから」

 

 

「オラッ!那智ィ!何やってんだッ…帰るぞッ…!」

「あとよぉ…提督は私のだッつってんだろぉお?」

 

「ひいい 羽黒ちゃん怖いよぉお…提督助けてええ」

 

 

 

「オイ…私の提督に何してくれてんだ?」

長門さん!?

 

「あん? やんのか…コラ?艦載機発艦すっぞ?」

と加賀

 

「やってみろや…那智隊が黙っとらんぞ?」

那智…

 

「めんどくせぇ…纏めて相手してやんよぉ?」

羽黒おお…

 

『提督!待っててね?今この害虫を駆除するからね♡』

 

 

唐突に始まる大乱闘…

俺は逃げ出した

 

 

 

 

執務室に何とか到着すると

ベルファストが出迎えてくれた

良かった!ベルはまとも…

 

「ご主人さまぁあ!ベルは!お仕事完璧に出来ましたよ!褒めてください〜 主に撫で撫でを!主に!!撫で撫でを所望しますうう」

 

抱きついてきてめっちゃ顔をスリスリしてくるベルファスト

 

まとも

じゃなかった!!!

 

 

 

 

 

「なあ!桜赤城…桜大鳳……」

 

「指揮官…近寄らないでもらえます?」

 

うわーーーー 傷つくーーー

 

トボトボと立ち去る提督…

 

こう言うキャラの変わり方もあるんだなあ…ぐすっ

 

 

「危なかったわね…これ以上近すぎると…襲いかねないわ」

 

「危うく…拉致監禁するところでした…」

彼女達もまた…ギリギリで耐えている人たちだった

 

 

 

 

「あはははははは!!!提督ぅぅ!僕と一緒に**************」

 

「げえっ!時雨!!」

 

いっちばん ヤベェ奴が来た!!

急いで逃げる

 

 

「逃さないよおおおおおおお」

 

 

その時!手招きする艦娘が!

 

「提督!こちらへ!」

 

地獄に仏とはこのことか!

ありがたい…と榛名の手招きする方へ行く救

 

「危なかったですね!提督…大丈夫ですか?」

 

「榛名!助かった…ありがとう…」

「お前は平気なのか?」

 

「何がですか?」ガチャッ

 

「え みんな変だろう?…てか… あれ?」

何故そんなに詰り寄ってくる? おい!

服!服ううう!!

 

「変ですか?私は普通ですよ?ダーリン♡ さあ…ここなら邪魔は入りません…榛名とゴールイン…しましょう?」

 

見えてる!見えてるよおおおお!!

 

「ダーリン…さんになら…」

 

「お前的にはゴールインだけど俺的には色々とスタートラインになってしまうんだよおおおお!」

 

とドアを打ち破り脱出!!!

が 回り込まれてしまった!

 

「高速戦艦…舐めちゃいかんぜお」

 

いやお前誰やねん

 

「こ…金剛おおおお!」

 

「はい」

 

「早っ!!」

 

「私は提督の為なら…何時でもお側に…じゃない!

榛名ァァ 何してるノー!?」

 

「おねえさまぁっ!榛名は!榛名はもう我慢できませんんんん」

 

ガシッと取っ組合になる榛名と金剛

 

「させるカー!! ダーリン…今のうちに逃げて!」

 

「そんな!金剛!」

 

「私も… 正気を保って居られるのが……うっ あっでもこのまま襲っても…バレない?」

 

 

速攻逃げた 

 

 

 

 

 

逃げ回ること数十分…

 

「はあ…はあっ  結局無事なのは…瑞鶴と扶桑…か…あと道端で回収した金剛……」

 

金剛は半分くらい浸食されてると思う

時々キャラ変わるし

 

 

 

扶桑は……

 

「えぇ…提督さん…言わなくてもわかります… 其れにも忘れられる程なのですね… あぁ…!不幸だわ…空はこんなにも青いのに」

 

「Oh ここに窓はないデーース」

 

「……空はこんなにも青いのに」

 

扶桑…強く生きてくれ…!

 

 

 

瑞鶴は幸運艦と呼ばれるくらいだから 運が良かったのかな…

 

 

 

 

多分今頃翔鶴が

 

 

 

「しぃぃいいぃぃいぃきぃぃぃいかぁぁぁぁあんんんん」

 

ほら

「どこですか!?どこですか!?どこですか!?どこですか!?どこですか!?どこですか!?どこですか!?どこですか!?

ここ!!! 居ない!   ここ!?!  居ない」

 

「どこですかどこですかどこですかどこですか!出てきてください提督!私はあなたが居ないとこんなにも寂しくて切なくて…会いたくて会いたくて会いたくて震えていると言うのに…どこにいらっしゃるのでしょうか!? はっ! これはまさか…提督さんの試練ですか!?

『この程度の試練…乗り越えられなければ嫁になど出来んな』と言う事ですね!? わかりました!この翔鶴!必ずやあなた様の試練を乗り越えて見せます! うふふふふふふふふふふふ」

 

 

「「「「うわぁぁあ…」」」」

 

絶対に見つかったらアカンやつや…

 

 

 

 

 



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79話 鎮守府のキャラ変わり ②

一時のテンションに身を任せたやつ
オチ?



何故こうなった?

 

思い返してみても…わからん

 

まあ…十中八九、明石達の仕業だろうなあ…

 

 

 

バキィ…と ドアが破られた……その…拳で

破れた箇所から顔を覗かせるのは……

伊勢だった

 

「てぇいとくぅー みぃーーっけ」

 

そのまま手を突っ込み鍵を開ける

 

「ココにいたんだね?」

「さあ…提督…私と…「待ちなさい」

 

「誰よ…」

ドスの効いた声で声を遮った艦娘の方を見る伊勢

 

「貴方が相手なら…私が出るわ……」

 

「扶桑!」

 

「あらぁ…不幸…いえ、扶桑先輩……邪魔するなら……容赦しませんよ?」

 

「こっちこそよ… 先輩に対する態度…教え込んでやらァ!」

 

お?

「何が不幸艦だァ?バカにしやがって……ぶっ潰してやんよぉ…」

 

あー手遅れだー…扶桑…もかあ

 

 

「前々から思ってたんですが航空戦艦って中途半端ですよねえええ!」

 

「上等だコラァ!!!」

 

弩級戦艦の殴り合いが始まった

怪獣バトルじゃないか…

 

もうココは安全じゃない…

 

 

「は、早く逃げましょう…」

と瑞鶴が言う

「そ、そうだな…」

金剛を連れて3人で逃げる

 

 

色んなところから

怒号や悲鳴が聞こえる

 

 

 

 

「待ちなさい」

加賀だった…

「貴方…提督を独り占めなんて許されないわ…瑞鶴…」

「貴方には前々からヤキを入れなきゃと思ってたから都合が良いわ…」

 

 

「何だって?」

「こっちだって!アンタにはムカついてたのよ!」

 

瑞鶴が振り返って俺に言う

 

「提督…どうやら…避けられないみたい!相手は私をご指名だしね!」

「提督…私やってくるわ!」

 

 

「来いやぁぁあ!!」

 

「舐めんな!やってやらぁぁあ!!!」

と言いながら加賀の方へ走って行く瑞鶴…

 

少し瑞鶴がカッコよく見えた

 

 

 

 

 

ん?

踵を返して来たぞ?

 

 

 

「無理無理無理無理無理無理無理無理!アレは無理だって」

 

諦め早くね!?

一体何がどうしたと…

 

瑞鶴の向こうのソレを俺は見てしまった…

 

「おおぅ…」

「アレは私でも自殺か逃げマース…」

 

加賀の横に

赤城、鳳翔、龍驤を筆頭に

完全に目がイッてる翔鶴が居た

 

「指揮官ー!!」

「提督ううう!!」

「愛の試練!乗り越えましたわぁぁあ!次は妹ねえ?!!」

 

「あなたー?浮気ですかぁ? そこの小娘ぇ?何人の旦那誑かしてるのー?」

 

 

 

「提督ー!無理!アレは本当無理!」

「めっちゃ後ろから爆撃機飛んできてマース!」

「助けてえええええ!」

 

 

とにかく逃げるしかない

 

 

「きゃぁっ!」

転ぶ瑞鶴

 

「瑞鶴!!」

俺は瑞鶴の手を取りに戻った

 

「提督…私なんか放っておけばいいのに」

 

「そんなことできるか!!」

 

 

「提督……ありがとう…」

 

「よし!立ったな!? 早く……あれ?」

ガッシリと掴んだ手を離さない瑞鶴……

「瑞鶴!ふざけてないで……」

 

「ふざけてないわ!うふふ」

 

「あっ…」

 

「ずっと離さないわ!…提督…好き…好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き」

 

「まじかよおおおおお!」

 

ちょっ!動…かねぇ!何だ?!この握力は…

 

「凄いパワーデース!瑞鶴…離しな…」

「げっ!!後ろから空母組がっ!」

「いやぁぁぁあ!!早く離すデース!!」

 

「無理よ…だって私と提督は運命の赤…」

ドコォン…

 

どうやら誰かの艦爆が瑞鶴にヒットしたようだ…

 

 

「誰じゃい…コラァ…」

 

「瑞鶴よぉ…ワレ何勝手に提督のおてて握ってんのじゃ?オオン?」

 

「痛えだろうがよお…先輩共よぉ…」

 

「姉とはいえ…許さんぞ?一航戦諸共…ボコしてやんよぉ…」

 

「五航戦が…言うじゃない……返り討ちよ」

「「「「うらぁぁぁあ!!」」」」

 

 

 

 

鎮守府壊れちゃう!壊れるからぁ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミツケタ…」

「提督ぅ…」

 

次は霧島と比叡か!!

「あははははは!!」

 

2人は狂ったように笑いながら走ってくる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金剛に向かって

 

「「お姉様ぁぁぁぁぁ!!」」

 

 

 

「えっ!?ちょっ!わたしデスカーー!?!?」

 

 

「ノーーー!!!!」

突然のアメフト並みの飛び込みに金剛はなす術なく捕まってしまう…

 

「えへへへ 捕まえましたぁ」

 

「比叡?やめまショウ?」

 

「お姉様お姉様お姉様お姉様」

「もう離しません!お姉様ぁ」

 

「霧島……?」

 

「さぁ…姉妹の愛の巣へ帰りましょう?」

 

ゾクッ…

「ダーリン!助けて!本当にマズい気がするの!助けてダーリン!」

キャラも忘れてガチ叫びする金剛

 

「霧島!比叡!金剛を離せ!」

 

 

「チッ…提督…邪魔するのですね?」

「なら…提督には…」ニヤリ

 

「時雨さん?提督は差し上げます…どうぞ…」ニタァ

 

 

「ありがとうね?2人ともぉ」ニタァ…

「さあ…提督?愛しあおう?2人で誰も邪魔な入らないところで……ね?」

 

コイツら…悪魔を呼びやがったか…

 

 

「ダーリンの貞操がピンチデース…」

「ダーリン…逃げて!私に構わず…逃げ延びてくだサーイ」

「感動的ですねお姉様…でも…」

「お姉様はこちらでーす!」

 

「いやぁぁぁぁぁぁあ!!」

 

金剛は拉致られて行った…

 

 

 

「面白いものを見たね!提督…さて僕ら……も…あれ?逃げた?」

 

そこに救の姿はなかった

 

「……あはは…!仕方ないなあ…足でも折るべきなのかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は逃げた…あそこなら!

あそこなら…!

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ!はぁ… ここなら…多分大丈夫か…」

 

とある部屋から通じる隠し部屋…

俺しか知らない隠れ部屋

ここなら安心だろう…

 

外には艦娘の声と戦闘音が聞こえるが ほとぼりが覚めるまではここに居た方が安全だろう…

 

 

しかし、皆は元に戻るのだろうか?

恐らくは 性格の変わる薬ー!とか言ったのを明石が開発してしまったのだろう…

とはいえ、その本人も薬の影響か…工場で「エOァ作るんじゃあ!」って燃え上がってるらしいしなあ……あれ?平常運転じゃね?

 

 

金剛は…まああの姉妹なら何かされるってことは…あるだろうが命までは取られないだろう…

 

 

「困ったなあ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

コンコン…

「救君?大丈夫?私だよ…麗だよ」

 

「…ッ!麗ちゃん」

 

「何か鎮守府の中が凄いことになってるって通信もらって来たよ」

「ウチの皆んなが鎮静化させてるからもう大丈夫だよ!」

 

良かった…

俺はドアの鍵を開けて外へ

「ありがとう…麗ちゃん…助かっーー」

 

 

 

 

 

 

待て!

 

誰が通信した?!

 

まともな奴なんか居ないはず

 

 

その前に麗ちゃんもーーーーーー

その前に何故ここを知っている!?!?

 

 

 

 

「捕まえた…」

俺が隠しドアを閉めるより早く麗はドアの内側へ入ってきた

そして

「えへへ…捕まえました」

抱き付き…押し倒してくる

 

うわーいい匂い…じゃない!!!

何つー力よ…君そこまで強かったっけ?!

 

「麗ちゃん…君まで?」

 

「おかしくなってるって? 違いますよ?正直に生きてるだけです」

 

「皆も提督を探してたんですからね?」

部屋にはいつの間にか艦娘達が…雪崩れ込み

赤い顔で俺を見下ろしている

 

ああマズい!

 

 

「麗ちゃんが1番かあ…」

「ダメデース…1番は私デース」

「いや…僕が…」

「私が…」

 

「じゃあ皆で行きましょう……皆で仲良く…いただきます…」

 

 

 

 

うおおおおおおお!?!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どわぉぁ!!!」

目覚めた俺は… アレ?

ここは…私室?  あれ? アレは夢?

 

確か俺は皆に……うっ…頭が

 

 

「あれ?提督どうしたの?うなされてたよ?」

 

「うおっ!?時雨」

とっさに身構える…

 

「どうしたのさあ…提督? 怖い夢でも見たの?」

 

 

普通の時雨のようだ…

 

「いやな、変な夢を見たらしい」

 

「へぇ…珍しいね!どんな夢?」

 

それはな……

と話す俺を笑う時雨。

 

「そんなことあるはずないよww面白い夢だね!提督!」

「そんなことより朝ごはん行こう?皆待ってるよ」

 

「おっ!そうだな…」

 

「僕は先に行ってるね?」と先に食堂に向かう時雨

 

 

何だ…夢なのか…

やたらリアルだったけど…

 

「まあ 夢ならよかった!!」

 

と一安心する俺

 

 

 

「夢ならね……」ニタァ

後ろを向く時雨が何かあった気がするが聞こえなかった…

 

 

「アイシテルヨ…提督…ふふふ」

 

 

 

 

 

 

あれ?皆の俺を見る目が違う気がする…

あれ? 瑞鶴…その傷……あれ?

 

 

 

俺は何も知らないフリをした




意味深な終わり方…ですね

オチなぞない!


提督お金剛のお話はまだ50%くらいの出来なのでお待ち下さい…


たまにはこんな話もありかなあと…
あとは…バレンタインとかハロウィンとか…
色んな話がありますが…(๑╹ω╹๑ )

少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです


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80話 私とカレーと愛情と

金曜日はカレーの日!!


私は提督が好きだけど好きじゃない。

 

提督は私達姉妹から金剛お姉様と榛名を取ったから…

でも、霧島も…結構提督の事を好いている。

 

これは八つ当たりなんだろう…

寂しいから…

 

 

 

 

私は姉妹の作る料理が…好きだ。

提督のたまに作ってくれる料理も…好きだ。

 

 

私も…料理が好きだ。

でも…私は料理が下手だ…。

 

一生懸命にカレーを作っても…誰も食べてくれない。

 

食べると…倒れるから。

 

 

嫌々でも食べてくれるのは提督だけだったりする。

 

 

「何で…提督は食べてくれるんですか…。皆、嫌がるのに」

 

「ん?一生懸命作ったんだろう?なら食べるさ。それに最近は少しずつ良くなってるぞ?」

 

提督も最初は胃薬を装備して居たが最近は手ぶらで食べてくれる。

 

それが少し嬉しい…

 

 

 

 

間宮さんと金剛お姉様は、

"相手の事を思って作る事が一番の隠し味"

と教えてくれた。

 

 

よくわからない…。

好き!って気持ちとか…大切って気持ちで美味しくなるの?

愛情がスパイスの代わりになるの?

って思ってると…

 

「そのうち比叡にもわかりますよ」

と言われた。

 

 

 

今日も試食をお願いした。

美味しいものに美味しいものを足したら美味しくなる訳ではないと言われた…。

 

 

今日も試食をお願いした。

コゲがひどくジャリジャリ言うらしい…

火加減を覚えろとの事。

 

 

今日も試食会お願いした。

野菜のえぐみがうまく消えてないらしい…

下処理を覚えなおそうとの事。

 

 

 

今日も試食をお願いした。

少しはマシになったらしい!!

何か足りないらしいけど…。

 

 

 

 

今日は試食をお願いされた。

2つのカレーを食べ比べて欲しいとのことで…

 

1つ目…美味しい… うん、美味しい

 

2つ目…何これ…すごく美味しい…!!

 

こっちの方が美味しい…です。

 

 

「それさ…全く同じ作り方してるんだぞ…使ってるものも同じだしな」

 

 

え?

そんなはずはない!この2つ目の皿の方が…遥かに美味い!!

なんで?

どうして?

 

提督は1つ目の皿を指差して言った。

「コッチは淡々と作った」

そして2つ目の皿を指差して言った。

「こっちはお前に美味しいと言ってもらいたくて作った」

 

 

こんなにも…違うのですか?

 

 

 

今日も試食をお願いした。

めっちゃ辛いけど具材の大きさはよくなったと褒められた。

あとは余計なものを入れないようにと。

 

 

 

今日も試食をお願いした。

冒険は控えようね?

と、優しく言われた。

 

 

 

 

提督…提督は何でそれでも食べてくれるのですか?

 

 

「お前の料理の腕が少しずつ上がって行くのが…最近の楽しみの一つなんだ。お前の最高のカレーを食べたいんだ」

 

ドキッとした…

いや!私は…お姉様一筋……のはず。

 

 

 

 

提督…に美味しいって言って欲しい…。

いや!

コレはお姉様達を喜ばせる為!!

 

でもその前に提督に…

うーっ!!!

 

 

 

今日も試食を…

 

 

 

「ん? 何かこの前より数段美味しくなってるぞ?」

 

「え…」

 

「まだまだ…荒削りな感じはあるが…楽しみもそう遠くなさそうだな」

 

 

 

少し…いや…嬉しかった!

 

「任せてよ!提督!比叡、頑張ります!」

 

 

 

 

さて今日も…お願いを…

誰かと話してるのかな?

提督と…金剛お姉様?

 

「比叡……の    レー」

 

「ダメだな…ありゃ…」

 

「………ですネー」

 

 

「無駄…………やめる……言う」

 

 

 

え?

私の…カレーはダメだったの?

もう…ダメなの?これ以上は…

もう無駄だから…やめろって言うの?

 

悔しかった。

あんなに少しずつ褒めてくれたクセに…裏では…

 

提督なんか!お姉様なんか!嫌いだッ

 

私は走って部屋に戻った。

 

 

 

 

 

次の日

提督が話しかけて来た。

「よ!比叡!今日のカレーの出来は?っておい!何で捨ててるんだ!」

 

「…失敗作です!どうせ私には無理なんです!」

 

「おいおい!比叡!どうしたんだよ!」

 

 

「チッ…放っておいて下さい!どうせ私には無理なんです!!馬鹿にして楽しかったですか!?提督なんか!大嫌いです!!」

 

 

 

言ってしまった

…でも提督が悪いんだ…提督が…

 

私は部屋に帰りますと言い帰った、

 

 

 

 

コンコンと部屋に誰かが来た。

 

 

お姉様…。

 

「比叡…ダーリンに聞きました…何故そんな事を?」

 

「お姉様も…提督の味方なんですね!もういいじゃないですか!

どうせ私なんか料理も上手くならないですよ!みんなして…陰で悪口言って…皆!大嫌いです!!アイツも陰で言うも!馬鹿にしてさぞ!楽しかったんでしょう!!」

 

パァン…

 

一瞬何が起こったかわからなかった。

少しして頬に痛みがやってきた。

 

え?なんで?と思っていると…

 

目の前には、

涙を流しながら怒るお姉様が居た。

 

「お、お姉様…?」

「っ!結局は暴力ですか!?お姉様!結局お姉様も同じじゃないですか!!!!!」

 

 

「何ですカ!比叡…提督は…提督は!」

「誰もアナタの事を悪くいってまセーン…」

 

「…知りません!陰で私は無理だとか!料理するのが無駄だとか!!!!お姉様も嫌いです!!!」

 

 

「比叡…」

 

 

 

 

私は逃げ出した…

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

「比叡お姉様?入りますね?」

 

榛名…

 

 

「聞きましたよ…」

 

「榛名も馬鹿にしにきたの?」

 

「いいえ?私はお姉様が頑張ってるのを知ってます…それは提督や金剛お姉様も同じですよ?」

 

「嘘よ!だって!もう比叡のカレーはダメだから!無駄だからやめるように言うって提督と!お姉様は話してたじゃない!!」

 

 

「……?比叡お姉様??」

 

「何よ!!!」

 

「お姉様は…その勘違いなさってますよ?」

 

「は??何よそれ!」

 

「聞いてください…私、その場に居ましたから…」

 

 

「お姉様とダーリンは…

 

「ダーリン、比叡の作るカレーの野菜なのですが…」

 

「傷んでるな…ありゃ ダメだな使うのは」

 

「もったいないから無駄にしたくないが コレを使うのはやめるように言うかー…」

 

「デスね」

 

と言う話をしてたのですよ?」

 

 

 

 

「え?」

野菜の話?

 

なら私は… 勘違いで?

 

 

金剛お姉様が扉を開けて入ってくる

「勘違いさせてごめんなさいデース…」

 

「お姉様!?…ごめんなさい…お姉様…ごめんなさい!!!!」

 

 

「…いいんデース ごめんね比叡…提督は……比叡の料理の成長を1番楽しみにしてマース…比叡のどんな料理も…ちゃんと食べてマース」

 

 

 

提督が残したことはなかった。

どれだけ倒れようと…美味しくなかろうと絶対に食べきるのだ。

下手すりゃ鍋の残りまで…

 

 

 

そうだ…提督さんは!?

 

部屋に来た霧島に提督の居場所を聞く。

「お姉様!提督なら…その……」

 

「言いなさい!!」

 

「比叡…お姉様の作ったカレーを食べてます…」

 

 

 

は?

有り得ない!だって…カレーは

捨てたのだから!!!!

 

走った。

提督のところへ。

 

 

 

「て!提督さん!」

 

 

「んお? 比叡…どうした?」

提督は…カレーを食べていた!私が…捨てたカレーを!!!!

 

 

「なんで?捨てたのを食べてるんですか!!!」

 

 

「だって…お前が一生懸命作ったカレーじゃないか」

 

あろうことか…提督は

捨てたカレーをよそって食べていたのだ。

 

「バカじゃないんですか!!!」

 

 

「バカはお前だッ!!」

 

 

「お前が一生懸命作ったんだろう!?いかなる理由が有るとはいえ、それを捨てるなぞ……その方がバカだ!!例え出来が悪かろうと…お前が一生懸命作ったものに変わりはない!!お前の頑張りを!お前が否定してどうするッ!!」

 

 

初めて提督に怒られた…

そして彼は真顔で言った。

さも当たり前だと言わんばかりに…

 

 

この人だけだった…。

いつも多く作るカレーを食べきってくれるのも、周りに食べよう!と勧めるのも…。

私に寄り添って、味付けとか…下処理とか…教えてくれたのは提督さんだ?

お姉様以上に…この人が…。

 

あぁ…ああああああ!!!

「ごめんなさい!提督さん!ごめんなさい!うわぁぁぁん」

 

「…よしよし」

 

「わだしの…がんちがいで…ひどい事をいっでごめんなざいーでいどぐうううううう!」

 

 

「あー…嫌いかあ… 大丈夫だ!気にしてないぞ?」

 

訳を話した。ひたすらに謝った…

提督はただ、良いよと、慰めてくれた。

 

「また…カレー…食べてくれますか?」

 

「何いってんだ…当たり前だろう?」

 

提督の笑顔の返事が…嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日こそは…絶対に!!

色々と思いを巡らせながら作る。

日頃の感謝と…………少しだけ…の愛の気持ち…込めて…

 

美味しいって言って欲しい。

私のカレーで元気に頑張って欲しい。

 

 

認めたくないけど…好きなんだろなあ…。

 

もちろん…お姉様や榛名、霧島の次にだけど!

お姉様を…妹達を泣かしたら許さないってのは変わらないけど!

 

 

ううん。

やっぱり誤魔化すのはやめよう…。

 

私は…提督さんが好きだ!

 

毒づく私を笑顔で支えてくれて。

捨てた料理まで…食べてくれるような人を…嫌えるはずが…ないじゃない…。

 

 

あの人の笑顔を見たい!

あの人と笑う姉妹が見たい!

皆の隣で私も笑いたい!

 

 

だから…その想いを込めて作ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督さん!カレー…食べます?」

 

「おお!へへ…待ってたぜ!」

「おっ!?いつもと違う感じだな?」

 

 

「よくわかりますね!?」

 

「お前の表情か…なんか違うからな……いただきます!」

 

パクッ…

もぐもぐ…

 

「比叡…」

 

何だろう…

ドキドキする…

 

提督の手は止まったままだった。

 

「よく…頑張ったな!とっても…美味しい!幸せな味だ」

 

 

「………」

その言葉が…こんなに嬉しいものだとは思わなかった。

自然と涙が溢れてきた。

 

「おい!?比叡!?」

 

違うの…嬉しくて…嬉しくて…。

うわぁぁん…!

 

 

「おおい!泣くなよ…」

 

喜びの涙を少し流した。

 

 

提督はちゃんと食べきってくれた。

 

そして…よし!と提督は立ち上がった。

そして…。

 

「おおおおおい!皆ァァ!!!!比叡のカレーが!!めちゃくちゃ美味いぞおおおおおお!!!!」

と鎮守府内を走り回った。

 

「美味いぞ!食べてくれえええ!」

 

ひえええええ!

「恥ずかしいですって…ていと…」

 

提督さんは泣いていた。

泣きながら皆にカレーを勧めてくれていた!

 

「恥ずかしい!?違う!胸を張れ!お前はやりきったんだ!」

 

 

その姿と言葉にまた泣いた。

2人で泣きながら皆にカレーを勧めた。

 

しかし、皆…なかなか前に出てくれない…戸惑っているのだ。

 

そんな時

 

「頂こうかしら」

 

赤城だった。

 

「勧めといてですが…ぐすっ…いいんですか?」

 

「ええ…だって 凄く幸せそうな匂いがするもの」

 

 

どうぞと、よそって渡す。

 

赤城は無言でカレーを一口食べた

 

 

「うっ…どうですか?」

 

 

 

「とっても…美味しいわ…凄く幸せな味です」

 

「……!!」

 

全て食べきり

頑張ったのね…と頭を撫でてくれた

 

「おかわりは…あるかしら?」

 

「……!!」

余計に涙が出た。

「ばい…ありばずぅ!!」

 

「よかったな!ひええええ!!」

「よがっだでずううう」

 

 

 

「ハーイ!」

「私達もー!」

「頂きます!」

 

 

………

「比叡…!やっぱりアナタは自慢の妹デース…」

「美味しいです!お姉様!」

「……」(無言で泣いている)

 

「お姉様…!皆…」

姉妹で抱き合う。

 

 

そして。赤城さんと姉妹と私達を見たからなのか…

 

 

「…私も!」

「ウチも!」

と沢山の人が食べてくれた。

 

赤城さんがこちらを見てニコッと笑いかけてくれた。

 

 

皆は口々に美味しい!すごい!

また食べたいと言ってくれた。

 

こんなにも嬉しいのか…?

 

 

「提督、間宮さん!金剛お姉様!ありがとうございました」

「料理に大切なもの…分かった気がします…食べてくれる人への愛情ですね!」

 

 

「よくわかったネー」

 

「はい!私も…気付きました!私…提督さんに食べて欲しくて頑張りました! 私……提督さんが好きです」

 

 

「!?!?!-」

あのお姉様ファーストの比叡…が!?

と、皆は驚いた。

 

しかし、

「ライバル…ね 私達も負けないわ」

「ヘーイ!ダーリンは渡さないネー!!」

 

誰も比叡を笑う人なぞ居なかった。

皆笑顔だった。

 

 

「むっ!負けません!!私、恋も、戦いも!気合い!入れて!頑張ります!」

 

 

 

 

 

 

 

 

それから…月に一回、月曜日と金曜日に食堂メニューに

私のカレーが追加された作るのは大変だけど… 凄く嬉しい。

 

 

幾度となく研鑽され続けたカレー。

その時出されるカレーは諦めずに直向きに頑張った彼女の努力の結果の結晶であると…皆は知っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご馳走様でした」

 

「提督さん!ありがとうございました!」

 

「比叡の頑張りの成果だろ?」

 

いいえ…アナタのおかげなんですよ?

あなたはきっと否定するでしょうけど…

 

「提督!!」

 

「んー? ーーーっ!!!??」

 

「えへへ… 言ったでしょ?恋も、気合い、入れて!頑張ります!って」

 

 

 

「提督さん…大好きです」

 

 

提督は 口に手を当て、ポカンとしたまま動かなかった

 

 

 

 




記念すべき?80話目は、比叡…のデレ回
ドラマCDやらアニメやら見た時から描きたかったネタ

努力は決して裏切らない…訳ではないが
報われる時はやってくる
ってのと
料理は愛情!がテーマでした


お楽しみ頂けたでしょうか?



比叡は四姉妹の中で最後に来たので、ある意味思い入れがあったりします(๑╹ω╹๑ )


まさかもう80話越したとは…
色々好き放題書きましたが…皆さんのお好きなエピソードありますか?
あったら嬉しいです 是非聞きたいです


いつも通りです!
お気軽にコメントや評価等お待ちしています(๑╹ω╹๑ )よろしくお願いします!




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81話 鎮守府 料理対決 ⑧ 決着〜提督のプチ旅行 ①

全3話程?


想定外なんですよ!!!!!

まさか提督選ぶ人が多いなんて!

 

 

 

 

さて…

結果発見の時間です

 

 

青葉から渡された紙に優勝チームの名前が書かれていて

俺が発表するようだ

 

 

 

「では…発表します

 

優勝は…

 

 

 

 

え?

 

 

俺…??」

 

 

 

 

 

「俺エエエエエエエエ!?!?」

 

 

「はい! 3度も凄い料理を食べながら…死ななかったあなたです」

まあそうだわな…と拍手が送られる…

 

納得がいかない…と言う顔をするが

…これ以上の抵抗は意味がないことを悟る

 

 

賞状とトロフィーを受け取り

拍手で見送られ

 

それを…執務室に飾る

 

ちなみに料理もしていないのでメニュー化は無し

秘書艦もそもそも俺ができるものではないので

 

副賞として

3日間の完全休暇をもらった

 

ぶらりと…旅行でも行ってみては?

との事だ

 

ただし 1人だけ護衛を兼ねて艦娘を連れて行ってください

ということで最近の活躍が素晴らしい

金剛が選ばれた

 

「ooh ハネムーンですネー!」

の一言で皆が修羅に入りかけたがな!

 

 

 

 

「何処に行くデース?」

 

「あぁ…1日は決めてるんだ…」

 

 

実は行きたかった場所がある

 

 

 

 

 

 

俺の故郷だ

と言ってもこちら側の世界の…が前に来るが…

 

俺は孤児院の出だ

両親は幼い時に死んだらしい

 

教会の孤児院だった

質素で…細々とやっているところだった

 

院長先生は寡黙で厳しいおばあさんだった

シスターは少し優しい綺麗な人だった

 

 

社会人になってからは給料から少しずつお金を送ったっけなあ…

…そーいや俺の保険金…孤児院に入るようになってるから

少しは恩返しできたかな…?

 

今までとは違い

船だけでなく、珍しく電車やバスを乗り継いで目的地へと向かう為

結構な長旅になる

 

「すまんな…暇だろう?」

 

「ダーリンと一緒ならどこでも楽しいネー」

 

「鎮守府並みに田舎へ行くんだぞー?」

 

と笑いながら道中を行く

 

「コレが…駅弁ってやつデスカー?」

「そーそー ごめんなあ弁当で…」

 

「ノー! てダーリンと一緒なら何でも美味しいネー」

 

「金剛…ありがとうな」

 

 

「さあ…ここからは歩きだぞー」

 

「ハーイ!」

 

金剛と手を繋ぎ歩く

「Oh … えへへ 幸せデース」

金剛は手を繋いだまま腕を組んできた

 

 

 

景色はやはり向こうの世界とほぼ同じらしい

店の名前とかは少し違うが… 何となく慣れた場所に感じる

 

そーそー

高校生の時かな… 良くここにバイトに来たなとか

思い出すと何だか懐かしい

 

 

 

程なくして

それらしき場所に到着する

 

あった…

やはり、少しほどの違いがあるが 

ここがそうなのだろう…

 

 

 

 

「ココは教会デース?」

 

「あぁ…向こうの世界とは名前は違うが…な」

 

 

 

「おや? お祈りですか?」

 

どこかデジャブを覚える人が俺に話しかける

どうやらシスターらしい

 

「いえ…何というか 何だか懐かしくて」

 

「そうなんですか?」

 

その後ろから…

 

 

「お兄ちゃんはだあれ?」

「お客さんだーー」

 

わらわらとちびっ子達が集まる

「こらこら」

と追いかけてきた女の人にもデジャブを感じる

 

 

 

「あら?お客さんですか?」

 

 

「あーーいえ 何と言いますか…」

 

 

「ふふ 何もありませんが…ゆっくりしていってくださいね?」

 

子供達は仲良く遊んでいる

それを微笑ましそうに見守るシスター達

 

 

 

「ふふっ…」

思わず吹き出してしまった

 

「泣いているのかい?」

 

笑ったはずなのに泣いて居たらしい

 

「いや…何だか懐かしくて…」

 

「???」

 

「俺もね孤児院の出なんですよ。丁度ココみたいな感じのね」

 

「まあ!そうなのですね?」

 

「その事を思い出して…ね」

 

 

 

 

俺は昔は孤児院での暮らしが嫌だった

周りには親が居るのに…

この人達も親じゃないのにって

 

お祈りが嫌だった

 

どれだけ祈っても……待ち望んだ人は来ないから

 

 

小さい子のお世話が嫌だった

 

甘える人が欲しかった

 

クリスマスも嫌いだった

俺は皆みたいに願ったものは届かなかったから

 

夜になる度にそう思った

 

明日はお父さん、お母さんがきっと迎えに来てくれるって

結局そんなことはなかったけど

 

 

ずっと嫌だった

 

 

 

 

 

 

でも、今ならわかる

今の俺が居るのは…あの人達のおかげなんだって

 

そして

ごめんね …もう恩返し出来なくて…

と思っている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また来てくださいね」

 

「次は遊んでね!お兄ちゃん!お姉ちゃん!」

 

 

 

 

孤児院を後にし バス停まで歩く

 

 

 

 

 

「ダーリンは元の世界に帰りたい?」

唐突に金剛が言った

 

「どうした?何で今そんなことを」

 

「無理してないデス?皆…思ってマス。本当は帰りたい…戦いたくないって、思ってるんじゃないかって」

 

「金剛…」

 

「ごめんなさい…ダーリン」

 

「確かに戦いたくないさ」

 

「…っ」

 

「お前達が傷付くのを見たくないからな」

「だから早くこの世界を平和にしたい……それで皆とのんびり暮らしたいな…って思う 一応な?俺は人生をお前達にあげたつもりなんだぞ?」

 

 

「ダーリン…」

 

「だからお前達のそばに…死ぬまで居るさ」

 

「死なせまセン…守りマース… 私達も死にまセン!ダーリンを1人にしないデーース」

 

金剛が飛びついてくる

不安だったのか?

大丈夫…大丈夫と、頭を撫でる

 

 

 

 

俺達はあの子達を…皆を守るために戦っている…

俺は… あの子達に自分を重ねてしまう

 

せっかく出会ったのに…

何か出来ないのか…

寂しそうなあの顔が頭から離れない

 

 

「なあ…金剛」

 

「わかってマース!ダーリン…!行きまショー!ダーリンのやりたい事は私のやりたい事デース!!」

 

 

俺達は街でありったけの物を買って 教会へと帰った

おもちゃにぬいぐるみ

お菓子に…ごはんに…服に…

 

軽トラも借りたぜ!

 

 

「あら?忘れ物…ですか?  って!コレは」

 

「わぁあ!!すごおい!」

 

「いいのかい?こんなに…」

 

 

「ええ!    さあ!皆!遊ぼうぜ!!!」

 

「「やったぁぁあ!」」

 

「お姉ちゃんも…?」

 

「ハーイ!遊びまショー!!」

 

喜ぶ皆

 

 

思いっきり遊んだ

 

一緒にご飯も食べた

普段はないプレゼントも!お菓子も!今日くらいは!

 

 

 

 

俺のやってることは

偽善だ

気持ちの押し付けだ

 

でも…俺は……

 

 

「ありがとうございます!こんな笑顔を見たのは…久しぶりです」

「あの…どうして初対面の私達にここまで?」

シスターが聞く…当たり前の事だ

 

 

「俺ね 変なこと言うけどね 別の世界からやってきたんですよ

別の世界のココから…この孤児院から 」

 

「…」

 

「恩返しもまだ満足に出来ないまま死んでこっちに来ちゃったから……偽善なんですけど…ここに恩返ししたかったんですよ」

 

 

「信じますよ」

 

 

「え?」

 

「だって…あんなに楽しそうにする皆を見てたら嘘だなんて思えないんです」

「偽善だなんて仰らないでください 私達はとても幸せですよ?」

 

ありがとうございましたと

シスターは頭を下げた

その笑顔にドキッとしたのは…内緒……

ごめん金剛 睨まないで…

 

 

 

 

 

 

あんなに仕事の時は時間がなかなか過ぎないのに

楽しい事はあっという間に過ぎ去ってくれる

 

別れの時は

早くやってくるもので…

 

 

「帰らないでよー!」

「もっと遊んでよー!お兄ちゃん!」

 

寂しがる子供達

泣く子も居る

 

こっちも少し寂しい

 

「ごめんなー!また来るからなあ…」

「また遊びまショー!」

 

「また来てねええ!!」

 

 

またね!と歩き始める

 

 

 

 

 

「軍人さん!貴方の今日に幸あらんことを…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダーリンは寂しそうに車へと歩みを進めた

私はその寂しそうな腕にしがみついた

私が居るヨー

 

 

ダーリンは

ニコッと笑いかけてくれた

あぁ 金剛がいるからな

 

 

 

さあ!金剛…帰るよ!宿へ

 

 

 

 

俺のやったことは気持ちの押し付けだ

偽善だ 自己満足だ

それでも…少しは恩返し…出来たかなあ

 

 

 

まるで大丈夫だよと言ってるかのように

ヒュウと優しい風が一つ 運転席の俺の頬を撫でたような気がした

 

 

 

 

 

 

なあ…金剛

レンタカー返さなきゃな…

 

…デース

 

…延長料金…かかるなあ

 

…デース…

 




救の少しの過去編?

次回はほんのり回(๑╹ω╹๑ )


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82話 提督のプチ旅行 ②

投稿です!

予約投稿ミスりました!すみません…


今日からは金剛と旅行だ!

 

あの後…レンタカーを返し、延長料金を支払い

ホテルへと移動した。

 

1つのベッドで寝るのは何だか恥ずかしいけど、暖かった。

目を覚ますと君がいるのがものすごく嬉しかった。

 

 

泊まりの時の朝食ってやたら美味しく感じない?

バイキングだといつもよりたくさん食べてしまう…とかない?

 

 

今日は行きたい所がありマースと金剛が言うので、俺はついて行く事にしている。

 

 

「……デスティニーらんど…?」

 

「恋人のテーマパークデース!!あっ!みっきーネ!」

 

「まじか…!?この世界にもあのネズミキャラが?」

 

「ヤァ ボクはミッキーキャット!」

 

キャット…猫?

え…何それ…?

 

「ハハッ!今日は楽しんで行ってね!」

 

声もそっくりじゃねーか!

 

 

「大丈夫なの?ねえ?大丈夫なの?」

俺はミッキーキャットに詰め寄った。

相手が相手だからな…アイツらやべえんだぞ?!

 

「ど、どうしたデース?!」

戸惑う金剛

 

「お兄さん…それ以上はいけない…気にしない事だよ」

うぐっ……

 

 

胃が痛くなりそうな テーマパークだなあ…

どこかパチモンみたいな感じが…

まあ…気にしないようにしようか…

 

 

 

「ダーリン!ジェットコースターに乗りたいデース!」

 

「おお!いいね!乗ろうか!」

 

 

何々?………雷神?

アレ?これもどっかになかった?

 

 

「ねえ?金剛? 本当にここってーーーーーーーーーーー!!」

 

と、話終わる前に急降下。

何でも時速は100kmを超えるそうで…

「キャハーーーーーー!!!!!」

 

さすが高速戦艦…余裕で楽しんでやがる!

 

 

「うおお… コレはすごごごご」

 

 

「ダーリン!バンジージャンプが有りマース!」

 

「……高いところは…」

 

「ダーリンの良いとこミターイ!ミターイ!」

 

 

 

 

 

 

「ちくしょおおおおおおお!うわぁぁぁぁあ!!!」

落ちる感覚がダメなの!ジェットコースターとかは好きだけど…あう…気分悪くなりそう…。

 

「カッコ良かったデース!」,

 

 

絶対…仕返ししてやる…。

俺はそう心に決めた。

 

 

 

そしてそのチャンスは意外と早く来たりする。

 

金剛はある場所を避けて通っている。

そう、お化け屋敷だ。

 

 

 

ホラーハウスだって?

行こうじゃないか…と金剛の手を引く。

 

「アー…ダーリン?他のも…行きたいナーなんて…」

 

「これの後行こうぜ?」

 

「…あぅ」

 

「怖いの?」

 

「…そんなはずナイネー!余裕ですよ!いやまじで!」

「………嘘です、本当は怖いです」

 

「俺が居るだろ?」

 

「絶対…手を離さないでくだサーイ」

 

 

ホラーハウスは初めて来るなあ…

てか…暗いなあ…

 

「ダーリン?居ますよね?この手はダーリンデスよね?」

 

「……」

 

「ちょっ!ダーリン!?ダーリン!?幽霊はノーデース!!」

 

「俺だよ」

 

「ほっ…よかったデスー」

 

 

 

 

「ぬぁぁぁぁあ!!!!」

といきなり後ろからお化けが…

 

 

「ノオオオオオオオオゥ!!」

叫び逃げようとするが 手をガッチリ繋いでいるのでそれも叶わない

「いやぁぁ!!!ダーリン!逃げられないデース!いやぁあ!!!こないで下サーーイ!!」

 

 

可愛いなあ…

 

 

「ダーリンは怖くないデス!?」

 

「んー…割と平気かなあ?」

 

まあ…毎日艦娘が鍵を閉めたはずなのに部屋にいたりするし

最初は驚きばかりだったけど

慣れたからか…驚く事が減ったからなあ……

 

「変な耐性ついてるじゃないデスカ」

 

その後も…

 

井戸から人が!

「にゃぁぁぁぁぁぁああ!!」

 

後ろからミイラ男が!!

「うびゃぁぁぁぁぁあ!!」

 

幽霊の挟み撃ちだ!!!

「ギブアップ…デーース!!!!」

 

「ダメ♡言っただろう?手を離さないって…」ニヤリ

 

「ダーリンの方が怖いデース!ダーリンは鬼デース!」

 

 

 

真っ白に燃え尽きた金剛をレストランへと連れて行く。

こういう遊園地は飯も楽しみなんだよねえ……高いけど…。

 

 

2人で食べるなら何でも美味しいが、今日は特にそう感じる。

 

「幸せデース♡」

 

「俺もだよ」

 

ちなみに食べたのはデスティニーランチ。

オムライスとハンバーグ等の入ったプレートである。

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方になるとパレードが始まった。

…パレードの名前はやめておこう…。

 

シ○デレラ風のドレスを着た人が前を通ると金剛が手を振る。

「良いなあ…ドレス…まあ、私には似合わないデース」

とボソッと言ったのを俺は聞いていた。

 

俺は見たいけどなあ…金剛のドレス姿…。

 

 

煌びやかなパレードはなお続く。

今ここが現実と言うことを忘れさせてくれるような…

なるほど…コレが夢の世界か…と、納得できた。

 

次第に音が遠のいて行く。

周りの人たちも、さあ帰るかとポツポツと帰って行く。

 

この寂しさと言ったら…ね。

 

 

 

「終わりましたネー!ダーリン…」

 

「そうだなあ…」

 

「最後に観覧車のりまショー」

 

 

 

2人を乗せた丸い箱は重力に逆らってゆっくりと上がって行く。

帰りたくないと言わんばかりに。

 

 

「ダーリン?私は幸せデス」

 

「ん?俺もだぞ?」

 

「ダーリンが居るから私は…頑張れマス。前の演習の時も…戦いの時も…。ダーリンが居てくれて、皆が居てくれるからデース。

ずっと…ずっと!ダーリンの横に居たいと思いマース」

 

 

「金剛……いつも一緒に居てくれて、ありがとう。

俺はお前を…愛してるぞ。もちろん皆もだけど…それでも…最初にケッコンカッコカリをしたのが金剛で良かったと、ずっと思っているからな」

 

「ダーリン!!」

金剛が飛びついてくる。

 

俺は強く受け止めた。

 

 

周りから見れば、バカップル丸出しでしかないだろう。

それでも…良いと思えた。

唇を重ねて…お互いを確かめ合う。

 

 

 

「えへへ…ありがとうデース!ダーリン!」

 

 

 

 

 

この笑顔が…周りは夜で真っ暗なのに、眩しく俺の目に焼き付いた。

 




次回へ続きます!!


色々とご指摘等ありがとうございます。
拙いところばかりですが、何卒よろしくお願いします。


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83話 提督のプチ旅行 ③

あまぁぁあい!


ステンドグラスを背景に見えるその純白は…余りにも綺麗で、眩しくて、愛おしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこのお兄さん!」

 

「あ!ナンパじゃないです!お2人は…ご結婚なさってますか?」

 

「あー…」

お互いに指輪もしている。

ケッコンカッコカリもしている。

俺らの中では夫婦なのだろうけど…世間で見るとなあ…。

 

「夫婦デース!」

 

「結婚式はあげましたか?」

 

「まだデース!でも幸せデース!」

 

「あげたくないですか?」

 

「そりゃ…そうですケド…」

 

 

「今!キャンペーンをしてまして!ドレスを着て教会でお写真を撮るプランがあるんです!どうですか!?良かったらお話だけでも!!」

 

「あう…だ、ダーリン?」

 

「旦那様も…!是非!いい思い出になりますよ!」

 

金剛も戸惑っているが…

少し期待に満ちた目をしている…。

 

「いいですよ 行こうか!金剛」

 

「え?いいんデース?」

 

「ああ 君のドレス姿…見てみたいな」

 

 

「ありがとうございます!ではこちらへ!!」

 

 

「えーと…アンケートの記入をお願いします」

と、言われて記入する。

金剛は生年月日等でどう書けば良いの?と悩んでいた。

 

 

「アノー…私、艦娘なのですガ…」

 

「え!?そうなんですか!?…初めて見ました。」

と驚く店員さん。

「…いつも私達の安全を守ってくれてありがとうございます」

と、深々と頭を下げた。

 

「そんな!逆にありがとうございマース」

 

 

 

 

 

「2人の結婚はいつなんですか?」

「お互いの良いところは?」

「…お子様は?ご予定は?」と、随分と聞かれた。

 

結構照れるよね!こー言う話題って!

 

「奥様は可愛い人ですね」

 

「奥様…だなんて…」

 

 

 

 

 

 

「今回のプランは衣装を着ていただいて、向かいの教会でお写真を撮るプランです」

 

「さて…ではお2人には衣装を選んでもらいますね」

指輪も撮影で使うので外してくださいと言われたので、外して渡した。

 

そして、2人ともが別々の部屋に案内された。

 

 

 

 

 

「うわー…タキシードがいっぱいですね」

 

「はい!神崎様のサイズですと…大体がお選び頂けますね」

 

「悩むなあ……」

 

少し悩んだ結果、赤いネクタイと金の刺繍の入ったものを選んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Oh〜 ビューテフォーなドレスがたくさんネー!!」

 

「ありがとうございます!お好みのドレス等あれば申し付け下さい」

 

 

「あ」

 

一つのドレスに一目惚れした。

純白のソレは、まるで御伽噺に出てくるような…。

昨日見たような…。

 

自分が想像する花嫁衣装と同じな…ドレス。

思わずそのドレスの前で固まってしまう。

 

「お決まりのようですね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コレが…教会のチャペル…かあ…。

野郎の準備は早いもので…今は教会の中で金剛を待っています。

 

何だか緊張するなァ…。

 

「もう少しですよ」とスタッフさんが言ってくれた。

 

少しして、スタッフさんがこっちにぐっと親指を立てて向けた。

 

ギィ…と扉が開く。

 

 

外の光と、ドレスの白が眩しかった。

段々と目が慣れると…そこには真っ白なドレスに身を包んだ金剛が立っていた。

一歩ずつ、一歩ずつこちらへと歩んで来る。

照れて、はにかみながら少しずつ…。

 

 

「ダーリン…あの「似合ってる…綺麗だ…」

 

金剛は似合いますか?と訊こうとしたのだろう。

でも俺の方が先に言ってしまった。思わず声が出てしまった。

 

「え!?あう…あの…ありがとうデース」

「ダーリンの衣装もカッコ良いデース」

 

 

「写真の前に…お2人には…」

と神父らしき人が現れる。

 

状況が飲み込めないでいる中

「新郎は…健やかなる時も……」とお決まりのセリフを言い始める神父さん。

 

「え?!あのっ」

 

「誓いマスカ?」

 

「…ち、誓います」

 

「新婦は…」と金剛にも同じく投げかける。

「誓いマスカ?」

 

「誓い…マス」

 

 

「デハー、コノ指輪をー交換シテクダサーイ」

と、先程預けた指輪が磨かれた状態で渡される。

 

 

俺は金剛の左手の薬指に…

金剛は俺の左手の薬指に…

 

 

 

「では…誓いノキスヲ…」

 

金剛のベールをあげる。

笑顔で…泣く金剛が居た。

 

「金剛…?」

 

「ダーリン…私は…幸せデース。幸せ過ぎて…泣いちゃいマス」

 

「きっと幸せにするから…」

 

「ハイ!私も…あなたを守りマース」

と唇を重ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真撮影を終えて

スタッフさんにお礼を言う。

 

「そんなプランだったのですか!?」

 

「アレはサービスですよ!」と、スタッフさんが言った。

 

「街でお2人を見た瞬間から…何か…こうなる気がして…。それに、良いもの見れました!こちらこそありがとうございました!写真届くの…楽しみにしててくださいね?」

だそうだ。

 

 

 

 

 

ドキドキするのが止まらない。

さっきよりも口数が減ったけど…2人の距離は、さっきよりもずっと近い。

 

 

鎮守府への帰路も少しずつ、ゆっくりと帰った。

「結婚式…しちゃいましたネー」

 

「そうだなあ…」

 

「幸せにしてくださいネ?」

 

「もちろんさ」

 

 

この3日間は、本当に幸せでス。

こんなに幸せで良いのでしょうカ?

憧れに憧れて、夢に見たドレスも着れて…ダーリンと結婚式まで。

私は今日を絶対に忘れないデース。この先も、ずっとダーリンのそばに居まス。

何があっても…離れないヨー!

 

もう一度左手の薬指を確かめる。

…ちゃんとある。夢じゃない。

この胸の高鳴りも、幸せな気持ちも…本物だ。

 

「ダーリン!愛してマース」

 

 

 

 

 

 

 

「「ただいまーー!」」

 

「「「「「お帰りなさい!」」」」」

 

なんか幸せそうな帰宅ですなー?

何やってきたのー?

と、質問攻めに遭う。

 

「秘密デース」と言った時だった。

 

 

 

「青葉は見ました!結婚式してましたね」

と、非番だった青葉が爆弾を投下しやがった…。

 

 

「は?」

一気に氷河期くらいの体感温度になる鎮守府

「どう言うこと?」

と青葉を詰問する艦娘達。

 

「そのまんまですよー!教会でー指輪交換してーキスしてー…きゃあ!羨ましいですー!!」

 

 

「どう言うことかしら?金剛」

表情がまるで悪役の艦娘達。

 

 

 

「いや、アレは…サービスデース…」

 

「サービスで結婚式が挙げられるわけないでしょ!」

 

 

「……逃げマース!!!」

 

 

「こらっ!待ちなさい!!」

 

と、チェイスが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに写真が届いた時の事は…語るのはやめておこう…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




早いもので…もう83話?
いつも閲覧ありがとうございます!

とりあえず100話を目指して頑張ります!


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84話 手紙から始まるお話

馬鹿話(๑╹ω╹๑ )


今や西波島鎮守府はそこそこの知名度があり住民からもある程度の人気を得ている。

 

ファンレターも届くし、プレゼントも差し入れも届く、

何なら住民達がこの離れた島まで来てくれて色々と手伝ってくれる。

 

 

大淀と届いた手紙を選別し艦娘に渡す。

…霞宛かあ……。

大体、霞や曙宛は……「霞しゃまぁぁぁあ!」とか言う内容だろうな。

 

一時期、俺に嫉妬した奴がカミソリ入りの手紙を寄越して来て、怪我をした俺を見た霞がマジでその相手を半殺しに行ったときは大変だった。

主に霞が…。

 

 

 

 

『このっ!クソ豚!死ねッ死ねッッ!よくも!提督を!』

 

『ぶひいい!霞しゃまあ!ありがとうございますううう』

 

『違うわよ!本気で…死になさいッ…ちょっ!ニタニタしながら近付かないで!』

 

 

訓練されたドマゾはドSを追い詰めるらしい。

 

 

 

 

天龍や木曽達は…

 

 

「舎弟にしてください!」

「姉御って呼びたいです」

 

……そう言う立ち位置らしい。

 

本人らはラブレターかと思って実はワクワクしながらそれを見て落ち込むらしい…。

意外とウブなのね?

 

 

 

金剛は

極々たまに紅茶教室を開いているので

紅茶の入れ方がうまくなりました!

とか

乙女的テクニックを知りたいとか

あの人のハートを射止めたいとか…

バーニングラブレターの書き方とか…

あれ?紅茶の話は?

 

 

 

ーどうやったら提督になれますか?

 

…妖精が見えたら適性はあるらしいよ。

 

ー毎日税金使って艦娘といちゃこらするのは楽しいですか?

 

……税金はともかく、幸せです。

 

ー霞様に気に入られたいです。

 

…無理でしょう。

 

ー深海棲艦も可愛いと思います。

 

…時と場合によります。

 

ーー提督は…童貞ですか?

 

…ノーコメントで。

 

 

 

 

 

「あれ?これは提督宛ですよ?」

と大淀が俺に一通の手紙を渡す。

 

「中身も恐らく変なのは入ってなさげですよ?良かったじゃないですか!提督の認知度も上がって来たのですよ!きっと!  私は皆さんに手紙を配って来ますね」

 

「おー 頼んだ」

 

 

 

 

 

 

 

ぶっちゃけた話、

内心は怖い…たまにではあるが、脅迫めいたものとか届くんだよなあ…

 

 

えーと何々?

 

 

[ 神崎様

 日々のお仕事お疲れ様です

 いつも私達の安全を守ってくれてありがとうございます

 

今回は勇気を出してお手紙を出しました

 

一目見た時から あなたの事を好きになりました

 

よろしければ…一度デートをして欲しいな、なんて

思っています いきなりでごめんなさい

 

 

お返事お待ちしております     美冬]

 

 

 

ほー…

 

えええええええええ!?!?

俺は驚いた!

 

「「「「ええええええっ!?!」」」」

執務室に隠れていた艦娘も驚いた!!

 

 

「ええええええ!?」

驚いた艦娘に俺が驚いた!!!

 

 

「「「「「えええええええ!?マジでかよ」」」」」

皆でもう一度手紙を見返して驚いた

 

 

「どどどどどどーーするんですか!提督!」

 

「どうって言われてもさ!!」

 

「う 浮気ですか? 」

「私達以外の女と?」

「そんな!行くんですか?!」

「嫌よ!そんなの!」

と口々に不満を並べる彼女達。

 

「やめなさいあなた達…」

「落ち着きなさい?情け無いわよ……それでも提督の艦娘なの??」

 

加賀だった。

 

「加賀さん…………足震えてますよ?」

 

加賀も動揺していた

めっちゃ落ち着きないぞ!この人

 

 

 

 

「まあ… このまま無視は出来んから返事は書くよ…」

 

 

 

なんて事を言っていると

 

 

「提督!門にお客さんが来てますよ!何でも…お手紙の返事を貰いに来たとか…」

 

 

ガタッ

ガタッ

チャキッ

 

 

おい、立つな立つな。

艤装を展開するな。

目のハイライトを消すな。

 

 

「わ わかった  とにかく行くよ」

 

 

 

 

 

門に行くと…。

まーーーそれは、ものっそい美人さんが居た。

 

あのねヤバイくらい美人。

どれくらいかって言うと…

「アレは…何?モデル?芸能人?」てレベル。

 

「…もう、マヂムリ…オリョクル行こ」

「バシクル…行くでち」

「暫く実家に帰ろうかしら…」

「あー嫉妬で深海化しそうだわー」

 

ってくらい。

 

 

「あの…お手紙をくれた…美冬さんですか?」

 

「はい…」

 

 

おいマジか…。

マジか…。

 

 

 

 

「出てらっしゃい? 神崎さんよ?」

 

 

ん?

美冬さんの後ろから… 女の子が…?

え?

 

「こ…こんにちは……み ふゆ   です」

 

 

「…お子さんですか?」

 

「はい! 」

 

「えーーと」

 

「あまり上手く書けないって言ってたので私が代わりに書きました」

 

「おっ お母さん!!」

 

 

 

「あーー なるほど」

ちらっと横を見る。

 

茂みにはゴOゴがいた…13の人がいる…。

めっちゃ睨んでるわー。

 

「もう!あなたったら!…その…旦那です…その…娘大好きなので……ごめんなさい」

 

 

「美冬の父です!!!!」

 

 

 

 

 

「あの!」

と美冬ちゃんが言う。恐らく小学生かなあ?

 

 

「デート…してください」

 

 

あらあら、とお母さんは微笑む。

あらあら、とお父さんは血涙を流してこちらを睨む。

 

 

 

艦娘はさっきまでのテンションはどこへ?とばかりに茶化してくる。

 

「ひゅーひゅー!」

「いいじゃーーん!」

「こんな可愛い子のお誘い…断っちゃダメよー」

 

 

 

 

そうだなあ…。

「ありがとうね!ならこの鎮守府の中を一緒にデートする?間宮のおーいしーいパフェをご馳走するよー?」

 

「いいの?やったあ」

喜ぶ美冬ちゃん。

 

崩れ落ちるお父さん。

天龍がお父さんの肩をポンと叩き首を横に振っていた。

諦めろ…と。

 

 

 

 

小さい子の手を引きゆっくり歩くんだけど…さ

コレ犯罪じゃないから!同意の上だから!

てかね!聞いたら中学生だって!!見た目は小学生っぽいけど。

 

 

 

 

 

俺を一目見た間宮達がどんな顔をしたのかは書かなくてもわかるでしょう?

マジなドン引きだった。

鳳翔が目のハイライトを消して言う。

「…どこの女との子供ですか?」

 

「え?」

 

「私と言うものがありながら…あなた…」

 

「いや!俺の子じゃないよ?!その…デート中なんだよ」

 

「でででデート!?!? 」

と鳳翔がビックリする…。

吐血してらぁ…。

 

「提督さん…もはや見境がないクマ…?」

 

くまさんェ…

 

これ以上、大人のドロリッチな場面を見せる訳にはいかないので事情を説明する。

 

 

 

「そう言う事なのですね 可愛らしいですね」

とニコニコで言う鳳翔。

どうやら子供の遊びだと安心したらしい。

 

 

「私ね 将来この人と結婚したい!!」

と美冬ちゃんが抱きついて来た。

 

 

おーーーっと!!??

 

 

「……あらあら」

と鳳翔が目を見開いて言う 。

鳳翔さん?そんなに目開くのね?

目が笑ってないよ。

 

「なっ… ま…まあ…そういうお年頃なのですね、可愛らしいじゃないですか」

 

「そうそう…子供なんだからね?」

 

「むう」

 

 

「……」ニヤリ

と美冬は鳳翔に向けて笑みを浮かべた。

 

「!?!?」

鳳翔は戦慄した。

この子供…わかってやっているわ!

でも…子供相手とて容赦はしないわ。

私はね!指輪…もらってるのよ!

と大人気なくマウントを取るためにチラリと左手を見せる。

 

 

「!?」

アレは…結婚指輪という奴…。

この人… むう。

 

と救に抱きつく力を強くする。

 

 

バチバチと火花を散らす2人……に気付かない間宮と救。

 

 

 

 

(うわぁ…)

と球磨だけは気付いていた…。

 

 

(めっちゃ面白いクマwww)

そして結構楽しんでいた。

 

 

 

 

 

 




いつのまにか、お気に入りが340…ありがとうございます(๑╹ω╹๑ )!
少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!


そろそろ投稿ペースが落ちそうな気がしますが…
いつもそう言ってる気がしますね (´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

ちまちま書いておりますが、無理なく頑張ります!



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85話 大規模作戦214 発令! ① 死神を紐解く

西波島鎮守府  大規模作戦214

 

 

アークロイヤルはただならぬ緊張感の中に居た。

提督を除く全艦が大会議室に揃っているからだ。

 

「全艦…揃ったようだな…」

と、長門が声を発した。

何か前回以上に大規模な作戦が実施されるのか?

 

「皆もわかっていると思うが…」

 

 

 

 

 

 

 

 

一体何なの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「明後日は年に1度のバレンタインだッ」

 

「「「「ウオオオオオオ!!」」」」

 

「え?」

 

「む?アークロイヤル?どうした?」

 

「よく、わからないんですけど…」

 

「何!?ならもう一度言おう…」

 

「明後日は年に1度のバレンタインだッッ!!!」

 

「「「「うぉぉぉぉおおおお!!!」」」」

 

ばれん…たいん?

アレですか?チョコを男性から貰うやつでしょ?

誰が貰えるか…とかの話かしら?

浮かれすぎじゃない?全く…兵器としての弁えを持たないのかしら?

馬鹿馬鹿しい。

 

 

 

「これより!特別に借りたキッチンを解放する!各自用意したチョコを使って…提督にチョコをつくるように!それと、毎年言ってるが…変なものは入れないように!」

 

「「「「はいっ!!」」」」

 

「え?」

 

「む?どうした?アークロイヤル」

 

「チョコを作る?……逆じゃないの?」

 

「oh 日本では、レディからチョコを送りマース」

 

「マジですか」

 

「しかし、なぜそのようなことを?」

アークロイヤルは言う。

 

「何故って…私達が送りたいからだが…」

 

「この前のバカンスと言い…今は、戦争中だぞ!?私達は兵器だ!戦う兵器だ!…なのに何故…お前達はこうも…腑抜けているのだ!先の戦いもそうだが、愛がどうとか!そんなもので世界を取り戻せるのか!?」

 

「…私にはわからない!お前達の考えが分からない!……失礼するッ!」

 

「ちょっ!アークロイヤル!どこへ行く?」

 

「秘書艦任務だ!」

そう言って、アークロイヤルは執務室へと行ってしまった。

 

「…大丈夫かしら?」

 

「彼女は…実は、前の鎮守府で相当酷い扱いを受けていたらしいです」と、大淀が言う。

 

「そんなに?」

 

「…彼女は死神と呼ばれていたそうですよ」

 

「あーー何か聞いたことあンな、それ」

と、天龍が言う。

「何だったかなー……無機質で感情の無い艦娘がそう呼ばれたたらしいな……何でも死神以外は皆沈んじゃったとか…」

 

「それで…死神…だなんて…」

 

「生き残っても…そんな扱いだなんて」

 

 

 

 

 

 

「まあ…大丈夫だろう…アイツはきっと提督に聞くだろうな……私達は兵器なんだから…と」

 

「想像できるねえ」

 

「その先もねえ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

秘書艦としての仕事…。

書類、連絡、発注…。

時たまのティータイム…。

 

何だコレは…

この人は…いつ作戦を立てるのだ。

何故ここまでのうのうとできる?

 

 

 

 

 

「指揮官…」

 

「ん?何?もう粗方の仕事は終わったよ?」

 

「違う…」

 

「私達は兵器だ…戦うために生まれた。私も…あなたとの出会いや初陣は微妙なものだったが…戦うためにここに居る。なのに何だ?!あなたにしろ、あの艦娘にしろ…この体たらくは。愛だの…なんだのと…そんなので、勝てるわけがないだろう?」

 

 

私達は、深海棲艦と戦える存在…

唯一の理由

ただ、それの為に生きて、戦っている。

 

前の場所でもそうだった。

 

『お前は兵器だ!』

『敵を一機でも多く屠ってこい、貴様の命と引き換えでも構わない』

『今回も生き残ったのか?』

『仲間もあの世で待ってるぞ』

『作戦成功?当たり前だろうが』

『兵器は兵器らしく口答えせず、遂行すれば良い。余計な感情は持つな』

 

お前達の価値は…戦う点にある… と。

日々、沈み逝く友を見送り、己の無力さに打ちひしがれて…。

 

愛だ、感情だは、必要無いと思いながら生きてきた。

 

 

いつからか沈んだ仲間の幻覚が見えるようになった。

戦えなくなった私を役立たずと、大本営にあの提督は返した。

 

この鎮守府に釣り上げられた時は驚いた。

何故そんなに和気藹々とできる?

 

この鎮守府での初陣でも私は…深海棲艦が仲間に見えた。

とにかくがむしゃらに戦った。

 

いつからだろう?笑えなくなったのは。

仲間といても…愛想笑いしかできない。

そしていつからか本当に笑顔が消えた…私は無機質な奴と言われるようになった。

 

いつからだろうか?涙すら流れなくなったのは。

大切な仲間だった。さぞ生きたかっただろう。

泣いた…何度も泣いた。

彼女達を見送る度に。

そしていつからか涙すら流れなくなった…私は血も涙もない奴と言われるようになった。

 

 

愛で戦いに勝てるのか?

それよりも鍛錬を積むべきではないのか?

 

お前達を見ていると……私は… 私は

 

「私達の生きる価値はそこにしかないんだ!!それが!兵器としての価値だ!!!」

 

 

 

 

 

「何で?」

 

 

 

 

 

 

 

「は?…何で…?」

 

 

「なんでそう思う?」

 

「何でって…深海棲艦と戦えるのは私達しか…」

 

「アークロイヤル…君にとっての幸せとは?」

 

「幸せ…ですと…?」

 

戦うことしかしてこなかった。

来る日も来る日も、訓練に明け暮れ…

平和な世界を目指して……

 

「…この世に平和を…もたらすこと…」

 

「…君自身の幸せは?」

 

「知らない!そんなの…知りません!。ずっと戦ってきた!何人もの仲間を見送って…自分が生き残ってしまった……そんな私は!戦うしか…出来ない!

幸せとか…そう言うなことを考える資格なんて…」

 

「あるよ」

 

「は?」

 

「何故…生き残った者が幸せになる資格はない?」

 

「皆…生きたかったはずだから…仲間が!恨めしそうな顔でコッチを見るんだ!…なのに私は生きている!」

「知っているか!?私が何と呼ばれていたか!…ーー…死神だ」

「自分だけが生き残ってしまう奴に…価値なぞ…」

 

「なら…俺も含めて皆不幸でなければならないじゃないか」

 

「…ッ!」

 

「お前は…兵器じゃない」

 

 

「…」

 

「俺は…兵器だとか人間だとかそんな議論は好きじゃない」

「少なくとも感情を持つ時点でモノでない」

 

「死神…?上等じゃないか……。なら俺らがお前が死神でないと言う事を証明してやる」

 

「…ッ」

初めてそんな事を言われた。

 

 

「価値がない?!そんな事はない…お前がここに居る…それだけでも俺にとっては大切な事だ」

「幸せになる資格がない!?…俺は…お前に幸せになって欲しいと思う。幸せになって…逝った者に教えてやって欲しい」

 

『皆が命懸けで守った世界は…こんなにも幸せに溢れている…』と。

 

「……!!!」

 

この提督は真っ直ぐな目で言う。

 

 

「前の鎮守府では…さぞ辛かったのだろう…。でもここでは…お前への命令は一つ……死ぬな…だ」

 

「…!?」

 

「お前は…俺の艦娘だ。なら…絶対に沈んで欲しくない…怪我もささせたくないし……悲しむませることもしたくない。お前が誰かを見送っり…誰もお前を見送ったりしない…。その為なら、俺はどんな努力もしよう」

 

「お前は…生きてくれ…生きて…生き抜いて、皆が守った世界を見て欲しい」

 

 

"死ぬな"

そんなこと言われたことはなかった。

お前が頑張らないからー…

お前が強ければー…

兵器としての自覚を持てー…

余計な感情は捨てろー…

 

なのに…この人は真逆な事を言う。

私が本当はかけてほしかった言葉を…私から目を逸らさずに、真っ直ぐに見つめて言ってくれる…。

 

 

「良いんですか?」

か細い声でアークロイヤルは言った。

 

「私も…幸せに生きてみて…いいんですか?死神じゃなく」

「皆みたいにお洒落して…恋して…普通に居ても良いんですか?」

 

この人は…今までの私を打ち砕いてくれると思った。

縋るように…聞いた

 

「当たり前だろう…ここにお前を死神と呼ぶ奴何か居ないぞ」

 

「私に出来ますか?」

 

「もちろんじゃないか」

 

 

ーーー何かが壊れる音がした。

それは、きっと私の…抑えてきた…堰。

 

 

「あ…ありがとう…ございます」

「何を言っている?」

「え……」

「こちらこそ…お前が来てくれて嬉しい。一緒に歩んで行こう」

 

「うぐっ…ううっ はい」

指揮官がよしよしと頭を撫でてくれる。

 

「ぐううっ ひぐっ ううっ」

なく私を優しく包んでくれる指揮官。

何て…暖かいのか…。

コレが…優しさなの?

 

 

 

「わ、私っ…皆程強くないけど…頑張ります!あ、貴方の剣となってあなたを守ります」

 

「…俺はお前達に守られてないと…すぐに死んでしまうからな。よろしく頼むよ」

 

 

 

この温もりを知ってしまったら…私は、もう…

 

 

「解決したみたい」

「そうねえ…良かったわあ〜」

「羨ましいなあ…」

 

「…我慢できないっぽいー!提督さんー!私もおお」

 

 

 

「え!?夕立!?皆!?」

わらわらとなだれ込んでくる艦娘。

 

 

「おーおー…仕方ない!皆まとめてこーーい」

 

なんて笑顔だ…ここの艦娘は、こんなにも幸せそうなのか?

……私もこの輪に…入りたい。

私も…きっと、皆の分まで…。




ネーミング詐欺!

アークロイヤルがメインでした。
金剛と絡ませてイギリスチームもやりたいなあ






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86話 大規模作戦214  発令! ②

「さあ!明日はヴァレンタイン…デイだ…皆…提督を射抜くチョコを作ろうではないか!!」

 

 

「「「うおおおおおお!!」」」

昨日よりテンションの高い艦娘達…。

一つ違う所があるとすれば、アークロイヤルもその中に居るということか。

 

 

各自が思い思いのチョコを作る。

チョコを作らない者はサポートに回る。

「提督の血糖値がヤバいことになるからチョコ以外をプレゼントするよ」との事だ。

 

「え〜…では、青葉が皆さんの様子を見て行きたいと思います」

 

 

「珍しいですね。2人での作業なんて。」

対するは 重桜所属の赤城と大鳳。

「艦娘が多いですからね。指揮官様の胃の事を考えて…仕方なくよ…」

 

「何入れてるんです?」

 

「メンタルキューブよ?」

 

「何作るつもりですか!それはいけない」

未知の物質はNGらしい。

 

 

「さあ…ここで決めましょうか」

 

「ええ!望むところですわあ…先輩…」

 

2人はカッと目を見開いて言う。

「「どっちの、等身大チョコを作るか!!」」

 

 

「はい。次行きましょうか…」

青葉はスルースキルを身につけていた。

 

 

 

 

「ここは駆逐艦チームですね。頑張ってますね」

 

「あっ!青葉さんなのです!こんにちはなのです!」

 

「はい。こんにちは!出来具合はどう?」

 

「うー…なかなか難しいわね…」

 

ハート型のチョコを作っているらしいが…形は少し歪である。

包装にしても手作りなのだろう、慣れないながらも一生懸命に作った事が窺える。

 

「きっと、提督に皆さんの気持ちは伝わりますよ」

 

「だと良いんだけど…」

 

「お手紙書いて添えるのです!」

 

和気藹々と彼女達らしくやっているようで安心した。

 

 

「微笑ましいなあ…。次!行きましょうか!」

 

 

 

「うわぁ……」

 

長門、陸奥、大和、武蔵チームだ。

全員、腕を組んで唸っている。

 

「どうしたのですか?」

 

 

「む?青葉か…いやな……その………」

 

「上手くできすぎたのよ……」

 

そこにはきっとプロ顔負けであろうチョコが置かれていた。

色の鮮やかさ、装飾…どれをとっても凄いの一言に尽きる。

むしろ、キラキラして見えるのは気のせい?

 

「凄いじゃないですか!!これは凄いですよ!?」

 

 

「いや…何と言うかな…」

と、武蔵が歯切れ悪そうに言う。

 

「私達が作ったと信じてくれなさそうなレベルだから…悩んでるのよ」

大和が目線を外しながら言う。

 

「あぁ…」

妙に納得してしまう。

 

「…塩でも入れておこうかしら…いや…唐辛子…」

あの陸奥ですらそう言うレベルだ。

 

「そのままでいいじゃないですか…」

 

 

 

 

「提督…えへへ…待っててね…僕が1番美味しいチョコを作るからね。えへへ…あはははははは!」

 

「指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官」

 

「ぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽい」

 

「落ち度のないチョコを…落ち度のないチョコを…」

 

 

 

 

 

「ここはスルーしましょうか…」

触らぬ神に何とやらですよ。

 

「味見ですか?喜んで!あっ!そのチョコもう使わないのですね?食べますよ?」

 

「赤城さんが…キラキラ状態に…」

「てか作れや」

 

 

 

「ちょっと!愛宕さん?自分にチョコ塗るのはNGですよ!」

 

「ダメかしら…」

衛生上…ね?

 

 

 

 

「お!明石さんと夕張さん!」

 

「おー青葉じゃん!これ見てー?」

 

そこには可愛らしいチョコがあった。

「あーっ!魚雷型のチョコですね?凄い可愛いですねー!」

 

「名付けて!ロシアンチョコレート!」

 

「おー!なかなかいいですね!一個は激辛なんですか?」

 

「「一個は本物です♡」」

 

「は?」

 

「え?」

 

「ほん…もの?」

 

「本物!」

 

「いやー!このサイズで作るのって難しかったよねー!」

「はいー!威力はそのままってのが特に難しかったですね」

 

「コレなら…スリルを愉しめつつ、一撃必殺!提督を落とせるわ!」

 

「スリルってレベルじゃないですよ!そりゃ!一撃でしょうよ!提督死にますよ!ダメです!」

 

「ダメかぁ…」

 

「逆に何でOKになると思ったのですか?」

 

 

 

 

「加賀先輩って意外とお菓子作り得意なんですね…可愛いチョコですよ」 ゲシッ

「瑞鶴…ありがとう…」 ゲシッ

 

「おやおや珍しいですね。あの2人が…微笑ましくお菓子作りとは」

 

実はこの時、青葉には見えないキッチンの足元では…両者による足の踏み合いが行われていた。

 

 

「でも、こんな可愛くて甘いもの作るなんて…意外と乙女なところあるんですね!………作ってる本人はカカオ100%より苦い人ですけどねええ?」

 

「……何も作れない貴方よりマシよ…。作れないから助けてええ!って泣きついてきたのは誰だったかしら?」

 

「ぐっ…翔鶴姉さえ…正気ならアンタに頼る事なんてなかったわよ!」

 

「なら、大人しくしてなさいな!!喧しい鶴なのね」

 

 

「何よ!」

 

「やるの?」

 

「上等じゃない」

 

「表に出なさい」

 

 

 

 

 

 

「…………いってらっしゃい…私は疲れたわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや?アークロイヤルさん…」

 

「あぁ青葉じゃない」

昨日とは違う、笑顔で答えるアークロイヤル。

 

「いい笑顔で作ってるんですね」

 

「ええ、お菓子作りとかやった事ないけど…金剛が手伝ってくれてるから」

 

「ヘーイ!アオバー!」

と、金剛が出てくる。

 

「珍しいですねー!姉妹で作らないのは」

 

「アー…榛名や比叡はライバルですからネー… 。てのと、同じイギリスの艦として一緒に頑張りたいからデース」

 

 

「なるほど…」

 

確かにアークロイヤルさんからすれば…同郷の艦娘はここにはいない。

ベルヌーイこと、響は「私は響です、はらしょー。」と言い張って聞かないし。金剛さんはイギリス生まれだから…まあ。

それでもアークロイヤルさんにとっては嬉しいだろうなあ。

 

 

だって、あんなに楽しそうだもの..。

 

 

 

 

 

一部の艦娘を除いて…皆笑顔でチョコを作る。

あの人を想って…それ想いをチョコに乗せて形を作る。

 

 

 

放送事故級のチョコもあるだろうが…

それぞれ気持ちのこもった物を作っている。

 

上手とか、下手とかでなく…あの人への感謝を一心に。

 

ーいつも、ありがとうー

ー大好きですー

ーずっと…側に居させてー

ー貴方の艦娘で良かったー

 

 

 

きっとあの人は喜んでくれるだろう。

私の作ったチョコを私のことを考えながら食べてくれるだろう。

 

お返しに悩んでくれるだろう。

その時は…あの人の頭の中は私だけになるのだから…私を喜ばせようと…。それ以上に幸せな事はない。

 

 

一つ心配なのは…

このたくさんの愛を食べ切れるかな(受け止め切れるかな)??

 

 

 

 

 

 




提督は金欠間違い無いでしょう…。



350…お気に入りありがとうございます!ありがとうございます!


少しでも、お楽しみ頂けたなら…幸いです!
コメント等いつでもお待ちしています(๑╹ω╹๑ )お気軽にお願いします!


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87話 大規模作戦214 発令 ③

バレンタイン…。

海外では男から送るらしいね。

 

部屋に並ぶチョコやお菓子やプレゼントの数々。

ありがたいねえ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございますご主人様。」

 

「…おはよう」

 

「今日はバレンタインでございます。たくさんの方々がご主人様にお渡しすると思います」

 

 

「コレは私から…です」

と、小さな箱に入ったチョコをくれた。

「たくさん食べられると思いますので小さなものにしました。……公私混同はメイドとしては失格ですが、今日ばかりは、ご主人様に1番に渡す栄誉は私に下さい」

 

「そんなの気にしないよ!その気持ちが嬉しい。ありがとう」

 

速攻で身支度を整えて、さっそく食べる…。

ビターな甘すぎないチョコ。ベルファストらしく整った綺麗な四角いチョコ。

「美味しいよ。ベルファスト」

 

「あ、ありがとうございます」

珍しく赤面する彼女。こうやって面と向かって見つめられると照れるんだろう。

 

 

こうして、朝のひと時をベルファストと過ごしてから部屋を後にする。

 

 

「ではご主人様…ファイトです」

 

「??……あぁ、そういうことね」

 

 

「指揮官様〜」

と重桜組が抱えてやってくるのは……そう、等身大チョコである。

「愛を込めて作りました…///私を…是非食べてください」

 

「私も愛を全て込めて作りましたわあ…。私を先に残さずお召し上がり下さいね?」

 

改めて見ると…すんごいリアル。身長や体重、スリーサイズまで網羅してるらしい…。

流石の器用さであるが……多すぎるわ…。

 

とりあえずで着物の一部を取って食べる。服飾は柔らかめのチョコなのね?

「あぁ!指揮官様が私の着物からお召し上がりくださってますわ!少しずつ…脱がしながらというのも…イイですわ!」

 

「そんな…指揮官様ぁ…先輩のを先に食べるなんて…大鳳は…悲しいですわぁ」

 

「当たり前でしょう?小娘ッ。貴女よりも私の方が…お付き合いが長いのですから……ね?指揮官様?」

 

「え?う、うん?」

ヤベェよ…1番近いとこにあったのが桜赤城だったとは言えないな…許せ…桜大鳳…。

 

 

 

 

 

戦艦組が次にやってくる…。

 

「提督!ハッピーバレンタインだ!」

「私達で作りました」

「食べてくださいね」

「ふふっ、出来が良すぎて…ね」

 

「おほーー!凄い出来だな…」

 

パクリ…

……

…おっ!甘……?

 

「ぐふっ…」

辛っ! 辛!からぁぁぁぁぁあい!!!!

 

「お前達ぃぃい!お前達は巫山戯ないと思っていたのに…」

 

「いやな…コレはだな…」

と戸惑う長門。

 

「提督?このチョコ見てなんて思った?」

 

「…まるでパティシエが作ったかのような…」

 

「でしょ?私達が作ったのよ?」

と陸奥が遠い目で言う。

 

「だからね?手作りアピールをする為に…デスソース…入れちゃいました」

 

「入れちゃいましたじゃねえよ!何だよ!甘さと辛さがチークダンス踊ってるわ!水!水!」

 

「強炭酸水ならあるぞ?」

にこやかに言う武蔵。

 

「武蔵いいいい!それはトドメになってしまうだろう!!!」

と、ツッコミを入れる長門にレモンを持ってきてくれる大和。

 

甘さと辛さと酸っぱさと…

味覚粉砕のチョコだった。

 

 

 

 

 

 

 

「提督?僕のチョコも食べて欲しいな」

 

「おっ!時雨じゃないか…ありがたく頂くよ」

 

「早く食べてね?溶けるから」

 

「…で?どこにあるんだ?」

 

「目の前にあるでしょ?」

 

「どこに………え!?ま、まさか…時雨…?」

 

「そう…それだよ?」

 

 

時雨は確かにチョコを持っていた。

服がチョコになっていた。

場所によっては溶け掛けで……アウトだろコレ。

 

 

「いや…これはだな…」

 

「早く食べてよおお!チョコの後は…僕も食べていいからあ!」

「お願いだよお!一生懸命作ったんだから!」

 

「方向性はどうにかならなかったのか?」

 

「ならないね」

 

言いきりやがった…。

しかし、せっかく作ったから…食べないわけにはいかないからなあ…決して!決して!!やましい思いがあるわけではないぞ?

 

と、一部をとって口へ運ぶ

「ん//.」

 

おい 変な声上げんな。

 

「提督が僕を脱がせながら食べてるよおおお」

 

「おい!やめ……」

 

 

 

 

「提督は…そんなプレイが好きクマ?」

「うわー…提督ぅ…言ってくれたらそうしたのに」

 

 

 

「ちがっ、コレは…とにかく違う!」

 

「提督うう!溶けてヌルヌルするから早くうううう!」

 

「ヌルヌルプレイが好きクマ?」

 

 

 

 

俺は二階から飛び降りた。

 

 

 

「ああっ!提督ぅ……むう」

 

「うわー…逃げるためとは言え、二階から飛び降りるとは…クマ」

 

 

 

 

ふぃー…危なかった…。

アレ以上は……検閲の対象になりかねん!

 

でも、あのチョコ…いい匂いしたんだよなあ……

 

「提督も…大変クマ」

といつの間にか隣に居る球磨…。

 

「提督〜!」

 

時雨…諦めてなか…ーーーー!?!!

 

時雨だったものは走る中でチョコが溶けたのだろう…

全身ドロドロのチョコまみれとなった激ヤバの何かがこっちへ走ってきてる。まるで、ものの○姫の…あの猪みたいだった。

 

 

「ゔおおおおおお!?!?」

 

「何じゃありゃぁぁあ!!!!」

 

 

いきなり始まる追いかけっこ。

捕まったら…死あるのみ(主に服と尊厳が)

 

今や時雨には怖いものはない。全裸手前でも全力疾走で俺を追い詰める。

 

 

「ハーっ…ハァッ…提督ぅー行き止まりだねぇ? そろそろ…はぁ、はぁっ…観念…しなよ」

 

 

「なぁ…はぁっ…はぁ…時雨?これは…バレンタインだよな?はぁ…」

 

手四つの均衡した状態で鬩ぎ合う2人…。

側から見なくてもヤバいやつには違いない。

 

「優しく…食べてね?と言うか舐めてね?大丈夫!お風呂も入ってるから!」

 

 

「自ら食べに来られるチョコなんかあるもんか!」

 

「残念だけど居るんだよ……僕だよ!」

 

ガバッ…

時雨のル○ンダイブが炸裂!提督は…

 

まぁ…捕まったんですけどね。

 

熱烈!チョコハグ…。 美味しかった…ちくしょう。

でもそれ以上に舐められてキスされた…。

 

 

チョコで服もダメになったし全身ねっとりだよ…。

ふと、顔を上げると、いやらしい程にニンマリした球磨がいた。

お前…逃げてたはずやん?

 

ダメダメとジェスチャーをする俺。

 

うんうんと頷いた球磨。

話せばわかるらしい。

どこかの青葉と違って真っ当なジャーナリズムに目覚めたなら、良いことだ。

今度ご褒美をあげよう…。

 

 

 

「スクープだクマ!!!!提督はチョコまみれプレイが好きらしいですよおおおおおお!!!!」

 

 

前言撤回だッ!!

ギルティ!ギルティイイイイイイイイ!

 

 

「待てや球磨ァァ!ゴルァァァァァァア!!」

 

「ヒィィ!!提督がチョコまみれで追いかけてくるクマァァ!」

 

 

 

 

 

「追い込んだぜェ…球磨ァ……」

 

「もはや台詞が悪役クマ!!」

 

「つーかーまえたぁぁ!!」

 

 

 

「ゔおおおおおおおおあああああ!!」

鎮守府に盛大に響く声…。

 

 

 

 

「ひぃん…酷い目に合いましたくま…汚されちゃったよお…もうお嫁に行けませんくま…」

提督に抱き付かれ…嬉しい半分、羞恥心半分…。

 

 

 

俺に追いつかれ、抱き付かれ…全身真っ茶色になった球磨がそこには居た。

 

ぐすん…とチョコまみれの球磨が泣いているが、そんな事は知ったこっちゃない!スキンシップだっ!!!

 

 

「入渠してきますクマ…」

 

 

 

「俺も風呂入ろ…」

こうして午前中は終わりを告げた。

 




続きはまた次回(๑╹ω╹๑ )

お待ち頂けたらと思います!
何卒、よろしくお願いします!(๑╹ω╹๑ )


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88話 大規模作戦214 発令! ④

世の中にはいろんなチョコがあるよね。

ビター、ホワイト、オレンジやストロベリー…。

 

 

しかしね?

 

 

魚雷のロシアンルーレットなんて初めて見たよ。

え?モノホン?

 

「さあ!提督!選んで食べてね?」

「死にはしませんから!」

 

パクッ…

!?!?

 

パチパチ!!と口の中で何かが弾けた。

昔あったでしょ? 口の中でパチパチ弾ける飴みたいなの。

アレ…の強化版。

「んんんんんー!?!?」

口の中が爆撃状態やでぇ…。

 

「おーー!ある意味アタリですよー!」

「はーーい!罰ゲームですうう!」

 

この上罰ゲームを受けろと?

 

 

え?何この液体?

これを飲め…と?

 

 

…酸っぱッッッ!

うごぉおぉおおおおおお!めっちゃ酸っぱい!

 

のたうちまわる提督。

「一応甘いものの後だから余計にダメージがあると…」

「提督…楽しそうで何よりです」

 

 

悪魔じゃ…此奴らは悪魔じゃ…。

俺は這って逃げ出した。

 

 

 

 

 

酷い目にしかあってない気がする…

 

 

「ダーリン?」

「…何をしているのですか?提督…?」

「金剛に、アークロイヤル…」

 

 

「そうだ…提督にチョコを渡したくて……良いですか?」

 

「もちろん」

 

どうぞ、と差し出してくれる。可愛らしい包装を解くと…そこにはトリュフが数個入っていた。ほんのりとお酒の匂いがする。

 

……美味しい。

 

「金剛に教えてもらって作ったんだ…初めてだから…その、色々加減が分からなくて…美味しくなかったらごめんなさい」

 

「美味しいよ…アークロイヤル…」

 

「本当ですか?」

 

「あぁ!美味しい…」

「ありがとう!アークロイヤル」

 

 

ありがとう…なんて言葉、かけられたのはいつだったかな。

もう、思い出せないくらい昔だけど…。

嫌な思い出しかない艦生だけど…それも一瞬で塗り替えられるくらい嬉しい言葉。

 

 

 

 

まあ、良いことの後には悪いこともあるもんで…

 

「どっちのチョコが美味しい!?」

「私のよね?提督?!」

 

加賀えんど瑞鶴ぅ…。

 

 

「私のよ!!!」

とエントリーしてくる姉翔鶴(バーサーカー)

 

「いいえ!私です!!」

と、更にくる不知火(戦艦級の目つき)

 

 

「私っぽぉぉい!!」

……夕立(ぽ犬)

 

 

ズイズイとにじり寄る悪魔達。

チョコは美味しいんだけどね?圧がね?

 

「「「「「さあ!誰のが1番!?」」」」」

 

「アークロイヤルかなぁ…」

 

「「「「「なっ…なん…だとっ」」」」」

 

艦娘達は塵となって消え去った!

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのっ…提督さん…チョコ…受け取ってくださいです」

 

駆逐艦の娘たちのチョコ、

1番手作り感があって好きだけど…

今年は、綺麗すぎない?

 

じっと駆逐艦組を、見つめると…

「ごめんなさい!それ…買ったのです…」

 

「上手くいかなさすぎて…でもチョコ渡したくて…ごめんなさい」

 

「お前たちのくれるものなら…どんなものでも幸せだぞ」

 

と、失敗チョコも貰って食べる…。

あの子達なりに一生懸命作ったんだろうなあ…

「美味しいぞ?もっと自信持ってな?」

 

…魚雷だとか…辛いのはNGだけどな!!

こういう、健気なのは…いいよね。

 

「提督さんー!」と飛び付いてくる面々を受け止めながら少し癒される。

 

 

 

 

 

おや?麗ちゃんじゃないか…

「今日はね…どうしてもってわがまま言って来ちゃった!」

「救君!はい!どうぞ!」

 

麗ちゃん…ありがとう…。

すんごい美味しいよぉ…。

 

「本命だからね?」

目が笑ってないよぉ?

 

本当に本命なんだよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヘーイ!ダーリン!…私の本命!バーニングラブチョコ…受け取ってネー」

ミニサイズの金剛チョコレートか… 頭から…くってやるよおおお!

 

 

 

「はい!特製チョコパフェ…! 提督さんだけの特別な間宮裏メニューよ!」

こういう嗜好も好きだわあ…チョコアイスうまいよおー!

 

 

 

 

今年も、思い思いのチョコを受け取った。

重い重いのチョコもあったけど。

 

 

 

 

 

 

「あなた、お疲れ様でした」

 

今は、居酒屋鳳翔でのんびりしている。

無論…鳳翔からの本命チョコも貰ったよ?

「はい!あなた♡私からの本命チョコです」

だって!お酒チョコは大好きです!

可愛いんだから…もう。

 

 

 

部屋に帰りながら思う。

お返しも考えなきゃな……大変だろなあ…財布が…。

 

なんて事を考えながら…私室へ。

「チョコあげる!あと夜戦しよ?」

チョコはありがたく受け取り、夜戦のお誘いを華麗にかわし、優雅に着席。

「なっ…そんな…」と、驚く川内。

もう慣れたじゃろ?

 

「夜戦はまた今度な?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰が1番ですかぁ??」

真っ暗な部屋に響く声…。

 

誰だよと電気をつけたことを後悔した…?

だって…皆居るんだもの…。

あ…桜赤城に桜大鳳…他多数………忘れていたわ…これまだ引きずるやつ?

 

「そろそろ聞かせてくださいよおおお」

 

 

夜は提督の悲鳴とともに深くなって行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜に思う。

ほぼ手伝ってもらった手作りチョコ。

きっと来年は…1人で作ってみせる。

 

誰かにありがとうと言ってもらえた事が嬉しくて。

金剛にありがとうと伝えられたのが嬉しくて。

 

やっと見つかった私の居場所…。

 

現実はチョコ程に甘くはなかったけど…

今は、甘さを感じる余裕が出来た。

 

ありがとう…。

提督…本当にありがとう…。

 

 

きっと私はあなたを後悔させないわ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




梅雨モードの加古…かわえかった…。(๑╹ω╹๑ )

投稿数がもう少しで100…早い…。

皆様が少しでも楽しめる作品になっておりますでしょうか?
そうなっていたなら幸いです。


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89話 ベルファストのメイド教育 武蔵のメイド修行

…ご機嫌麗しゅうございます。ベルファストでございます。

 

今日からご新人メイドと主人様の身の回りの世話をお任せ頂いております。

 

 

メイドの朝は早いです。

 

 

 

「ご主人様ァ!!起床の時間だァ!」

 

「……!?…!?」

突然、ご主人様は布団をまくり上げられベッドから落とされました。

 

「ストーーーーップ!!!」

私は慌てて武蔵様に声を掛けました。

「武蔵?!何ですか!その豪快な起こし方は…」

 

「え!?何!?何なの??」

ごもっともな発言です。ご主人様。

 

「申し訳ありません、ご主人様。実は、この度武蔵様のメイド教育をする事になりまして…」

 

「うむ!そう言う事だな。よろしく頼むぞ!ご主人様!」

いつもの服でなくメイド服でにこやかに言う武蔵様…。

 

 

「武蔵!言葉遣い!」

 

「しまった!!」

 

 

 

 

「何この状況…」

 

 

 

 

遡る事数日

 

「メイド業を体験したいと?」

 

「あぁ!他の艦娘もやってるんだろ?なら私もやってみたいんだ」

 

「私としてもメイド隊が増えるのは嬉しい事ですので…是非」

 

 

等と思ったあの頃の私を殴りたい。

とにかく再教育か必要です。

 

 

 

「いいですか?武蔵様、メイドとはもっとお淑やかなものでございます。武蔵様のは無骨すぎます。」

 

「むう…しかしだな」

 

「あんなテーブルクロス引きみたいな起こし方をするメイドは居ません」

 

 

 

「いいですか?武蔵…今は私が上司になります。言うことを聞いてくれないと困ります」

 

「はい…」

 

 

 

武蔵の猛特訓が始まった。

 

「紅茶やコーヒーをお出しする時は?」

 

「漢は黙ってストレート!」

「砂糖とミルクを確認してください」

 

 

 

 

「軽食を望まれた場合は?」

 

「兵糧丸!」

「何時代の人ですか?」

 

「最近寝付けなくて…」

 

「任せろ!優しいハグで10秒で寝れるぞ!」

「チョークスリーパーですね?寝るでなく落ちるですよ」

 

 

 

脳筋なの?

それとも…まさかのドジっ子属性って奴?

ベルファストは頭が痛くなってきた。

 

 

 

「大和様…」

 

「苦労してるようですね…ベルファストさん」

 

大和に相談してみるベルファスト。

 

「武蔵は…こう…脳筋なところがあって…悪気は無いんですよ?」

 

「ですよね」

どうしたものか…。

 

 

 

「ご主人様ァ!お茶の時間にしましょう!!!」

 

「…青汁…じゃないか…」

 

「ご主人様の健康に気を遣ってみた!」

 

「この、お茶請けは?」

 

「プロテイン饅頭だッ!…です!!」

 

「提督は細すぎますぞ!もっと…強くなるようにトレーニングメニューも考案してある!」

 

 

「え?」

 

「さあ!お茶が終わったら…レッツ、トレーニングだッ!」

 

「いや…それは…遠慮…」

 

「さぁ!行きましょう!ご主人様ァァ!!」

 

ズルズルと引きずられて行くご主人様…。

 

 

 

「……マズい方向に向かってますね」

 

「…止めて来ますッッ!!!」

猛ダッシュで部屋を出るベルファスト。

 

 

 

「あと腹筋を3セットだッ!!」

 

「ぐうううううっ」

腹筋をさせられる救…。

 

 

「ご主人さ……うわぁああ!……武蔵イイイイイイイイ!」

 

ベルファストか物凄い形相で武蔵に掴みかかった。

 

「むっ?ベルファ…ぐえっ!く!苦しい!離せえええ」.

 

胸ぐらを掴みブンブンと振るベルファスト。

 

「メイドがトレーニングを強要してどうするのですかぁぁあ!!」

 

「ちょっ…ベルファスト…離…し」

ガクッ…

 

武蔵は落ちた。

 

 

 

「べ…ベルファストさん?」

ご主人様が恐る恐る声をかけて来ます。

 

「あっ…」

やっちゃいました…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!!私はっ!?」

武蔵が目覚めた…。

 

「目覚めましたか…武蔵」

 

「…むう……間違っていたか…」

 

「もう少し…勉強ですね」

 

「すまない…」

 

「焦っても仕方ないですから…ゆっくりやりましょう」

 

「あぁ!完璧なメイドを目指すぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日

 

 

「ご主人様…紅茶が入りました」

 

「珍しい味だな…武蔵。コレは?」

 

「紅茶にプロテインを入れてみました」

ブフーー!!!

なんだってえええええ!?!?

 

 

「武蔵はいい加減にプロテインから離れて下さい!!!」

 

 

 

メイドの苦労は続くみたいだ。

 

 

 





いつもありがとうございます(๑╹ω╹๑ )
お気に入りや評価、メッセージ等ありがとうございます!
いつでも、お気軽によろしくお願いします!

お楽しみ頂けたなら嬉しいです!

仕事が立て込んでまして…。
ボチボチやっていきますので
次回もよろしくお願いします(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)




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90話 居酒屋鳳翔 小話 メニューにない注文

ここは居酒屋鳳翔…。

夜から開くこの店は、食堂とは違った空気のお店。

今日も色んなお客さんがやって来ます。

 

「いらっしゃい」

「いらっしゃいませ」

 

「え!?救君!?」

「提督!?」

 

驚く長門と麗。

無理もない…なぜなら提督が割烹着で立ってるからだ。

 

(似合いすぎるだろおおおお!)

(かっこいいよおおおお)

 

「カウンター…どうぞ」

 

先客に隣に失礼します、と声をかけ座る。

 

 

「はい、おしぼりとお茶です」コトッ

「注文が決まったら教えて下さいね?」

 

 

「オススメは?」

 

「あなた、オススメは?」

 

(あなただとおおおおお!…あっ、いつものことだ)

 

「んー、明太入りの卵焼き、焼き鳥の盛り合わせかなあ」

 

 

「「それください!!」」

 

「はい、少しお待ち下さいね?」

 

 

「はいよー」

と、提督は裏に焼き鳥を取りに行く。

 

 

 

ふと、長門が横を見ると血の涙を流すアズレン組が居た。

 

「まるで…本物の夫婦みたいじゃない…!!!」

「羨ま…妬ましいわぁぁあ!!」

「鳳翔様もキャラ付けが凄まじいですね」

 

 

うん。すごいわかる。

 

「確かに…鳳翔…羨ましすぎるぞ」

 

 

「ふふふ、実は私も驚いてるの」

と、鳳翔が言う。

 

「あの人がね?料理が上手くなりたいし、皆ともっと触れ合いたいからって…ね。人が多いとココも大変だし……2人でお店をするのが夢だったし…私も少し甘えてるの」

と、鳳翔が顔を赤らめて言う。

 

 

「「「「「ぬぁぁぁぁぁぁあん!!!」」」」

 

羨ましい!

羨ましすぎるぞおお!!

 

 

「いいじゃないですかー…皆さんは毎日会えるんだから…」

「私だって毎日会いたいし…指輪も欲しいのに…」

 

 

 

うっ…

 

全員が固まる。

「で、でも!麗さんも大切にされてるじゃない?」

鳳翔さんがあんなに焦ってフォローしてるの初めて見た…。

 

「そうよお?麗ちゃんが来るって時はあの人も楽しみにしてるみたいよお?」

桜赤城まで…。

 

 

「皆…指輪貰ってますよね」

 

「「「私達は右手だから…」」」

「というか、麗が指輪を貰ったら…完全な夫婦じゃないか…」

 

「ペアリングでもいいんです」

 

 

 

そこに戻って来る提督。

 

 

「おー?皆仲良さげで何よりだ!今から作るからな!待っててな!」

爽やかな笑顔で言う提督。

 

違うの、もっとドロリッチなお話なの。

 

 

 

卵焼きを出してくれた後に焼き鳥を焼く。

 

ジュウジュウと炭火焼きで焼いてくれる。

 

焼き鳥を焼く…姿…あぁ…いいわあ!

袖から見える筋肉質な腕…焼き鳥よりもそっちにかぶりつきたいですよお…。

 

 

「はいー!おまちどうさん!」

料理が並ぶ…。

 

 

「美味しいですわあ!指揮官様ぁ!!」

 

「……メイドとして…いや、KAN_SENとして最高の幸せです」

 

 

 

「ねぇ…救君?」

 

「ん、なに?追加?」

 

「うん、欲しいものがあるの」

 

「いいよ!なんでも言って!」

 

「指輪が欲しいな…」

 

「「「「「「?!?!?」」」」」」

 

 

「メニューにないよ…?」

 

 

「う、ううう麗ちゃん!?」

と、鳳翔が目を丸くして言う。

 

「あはは!酔ったのかな?!麗は〜」

長門も焦っている。

 

「酔ってないですよ!お茶しか飲んでません!…ココにいる皆は全員指輪貰ってますよね。私貰ってないです」

 

「他の艦娘も貰ってない娘もまだ…」

 

「ここ最近増えてますよね!…救君…だめ?」

 

 

「……えと、あの…」

 

「……待ってるね?」

 

 

「ちょっと!小娘ッー!!私達だって左手に貰ってないのよ!私達の方が先に左手に欲しいわよ!ーーと言うわけで下さい!」

「あと焼き鳥のぼんじり追加で」

「ご主人様…私も左手に頂きたく存じます」

 

 

「長門と鳳翔はいいですわねぇ〜余裕そうで…」

桜赤城がチラリと2人を見る。

 

「いや、あの…何だ…アハハ」

 

 

「救君!?」

「「指揮官様!?」」

「ご主人様!?」

 

 

 

「はっ、はぃぃ」

「頑張りますぅ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言質取りました…からね?

 

 

「恐ろしき執念だな…なぁ…鳳翔…」

「そうですね…」

 

でも、そこまで皆に想われている人が私に指輪をくれたのなら…こんなに嬉しい事はあるだろうか?

「ふふふ」

と、左手の指輪を見る。

 

ジトーっとした周りの目は気にしない。

 

 

 

その時…

 

 

 

 

「指輪と聞いて!!!!!」

赤城と夕立………天龍も!?

 

他にもわらわらと雪崩れ込んで来る艦娘達…。

 

「僕はもう貰ってるから…」

自慢げに左手を見せる時雨…。

 

 

 

「「「「「提督さん!!!!!!!今すぐ!欲しいです!」」」」」

 

 

「指輪はメニューにはないですううう!!!」

 

 

 

より一層騒がしくなった居酒屋鳳翔だったとか。




雨が…嫌ですねえ(´;ω;`)

少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!


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91話 焦がれる背中に ① あの背中を追って

アンタが居ないと…あの人が皆が本気で笑ってくれないのよおっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

バレンタインよりも前のお話…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

加賀達は哨戒作戦で敵艦隊と交戦していた。

 

 

空母棲姫と加賀が対峙する。

そこまではいつもと同じだった。

 

が、相手の様子がおかしい。

「ン?オマエ…ソウカ…オマエモイズレ此方ニクル」

 

 

「何…?どういうこと?」

「オ前モイズレ深海棲艦ニナル」

 

「フフフ、仲間ニ手ヲカケル日ガヤッテクル」

 

「そんなことはないわ!」

 

「アハハハハハ!楽シミネ」

と、深海棲艦はその言葉を残して撤退して行った。

 

 

ー深海棲艦になるーー

その言葉は私に大きな影を落とした。

 

 

 

 

そこからしばらく経って…

 

 

 

戦いの中でも弓を持つ手が震えるようになった。

「ちょっと!加賀!大丈夫?」

 

「え、ええ」

 

何かドス黒いものが私の中にあるような気がした。

 

そんな日が何日も続いた。

周りは当然加賀を心配した。

 

それでも大丈夫と自分に言い聞かせた。

 

 

 

どんどんと戦果が落ちてくる…。

 

 

「どうしちゃったのよ…加賀」

瑞鶴だった。

 

「別に…なんでも無いわ」

 

「でも…アンタ…」

 

「気にしないでよッ……ごめんなさい。放っておいて頂戴…。」

 

「ッ!…わかったわよ…」

 

 

 

ある日…いつも通り支度をしていると。

「ふぅ……!?」

鏡に深海化した私が映っていた。

 

「…ッ!?」

 

もう一度見るとその姿は元に戻っていた…。

 

もう……限界だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「解体…してほしい?」

加賀の突然の進言に俺は驚いた。

 

「ええ…」

 

前回の戦いで深海化したことが原因らしい。

またそうなってしまったら…また愛する人に敵意と武器を向けたら…。

そんなのは耐えられないとの事らしい。

 

 

「どうか…お願いします」

 

 

 

以前、私は深海化し大好きな仲間や提督に銃口を向けた。

 

確かに戻ってこれた。

しかし、私の中には不安の種が根を張っていた。

 

もし、また同じようになったら?

また…あの人達に敵意を向けたら?

 

それは、日に日に大きくなって行った。

故の…解体を進言した。

 

 

 

 

「受け入れられないな…」

当然、この人はそう言う。

 

来る日も来る日も進言し続けた。

 

その度に提督を含め皆に止められた。

 

 

 

しかし、私は…もう限界なんです…すみません…と。

 

あの提督の顔が頭から離れない。

 

 

 

救は悩んだ…。

彼女の人生だから縛りつけるわけにはいかない。

しかし、解体となると…。

 

 

 

「なら…退役という事でどうか?」

苦肉の策と言わんばかりの提案。

 

退役…即ち艦娘という立場を退き、一般人として生きると言うことだ。

 

「お前を…失いたくない…頼む。これで妥協して欲しい。」

深々と頭を下げる救。

 

提督の涙を見たような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

艤装も外し、指輪も返した。

あの時のあの人の顔が忘れられない。

 

「俺は…待ってるからな」

その一言が…ずっと突き刺さった。

 

 

 

 

「逃げないでよ!先輩!」

 

瑞鶴だった。

 

 

 

「ごめんなさいね…瑞鶴…後は頼んだわ…」

それしか、言葉が出てこなかった…。

 

 

「加賀さん…」

「加賀…」

赤城さんに鳳翔さん…ごめんなさい。

 

 

 

後ろから聞こえる声を無視して私は門へ一礼して船へ乗った。

 

 

 

こうして彼女は鎮守府から去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「納得がいきません!」

「提督も…何故許可したのですか!?」

瑞鶴は言う。彼女にしたら当たり前のことか…。彼女にとって加賀という存在は小さなものではない。

憧れであり、目指す目標であり、先輩であり、ライバルだ。

いつでも凛としていて、弱々しい所なんか見せない。

だからあの加賀に納得がいかないのだ。

 

 

 

「加賀の選んだ道だから…」

そう言うしかなかった。

 

 

「ッ!! 」

ずいはそれ以上何も言えなかった。

分かっているのである。己の無力を悔い、1番辛いのは提督であると。

コレ以上は八つ当たりになってしまう事も。

 

 

 

 

 

加賀の居ない鎮守府は、ポッカリと穴の空いた様に感じた。

……いや、穴が空いてしまったのだ。

皆、口にこそしないがそれを感じていた。

 

自分を責める赤城、鳳翔。

 

持ち主不在の指輪を見つめる救。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

加賀はひっそりと暮らしていた。

後悔は…している…でも誰かを傷つけるよりマシだと言い聞かせた。

 

 

 

 

 

 

「報告デス。加賀ハ、アノ鎮守府カラ消エタヨウデス」

 

「フム…ヤハリ、アノ空母ハ解体カ……ククク、ココマデ上手ク行クトハナ!!」

 

「士気ガナイノガヨクワカル」

 

「ナラ、責メルナラ今ネ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三ヶ所にて深海棲艦の出現を確認した鎮守府はすぐに艦隊を出動させた。

 

 

「遠いわりに敵が弱くない?」

同時多発の割に戦力は然程ではなかった?

 

「他の場所も同じようですよ」

 

妙だ…

 

「まるで…囮…まさか!!」

 

その時、伝令が陸奥に入る。

『鎮守府に敵艦隊襲来!!!!』

 

そう、それは罠であり本命は鎮守府にあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「敵襲!敵襲!!!」

「残存している艦娘はすぐに迎撃に当たってください!」

 

赤城、翔鶴、瑞鶴、金剛、長門、不知火、響、58、天龍、吹雪、睦月がそれにあたった。

 

 

空母棲姫を筆頭に押し寄せる深海棲艦。

 

予期せぬ敵襲に苦戦する艦娘。

 

「ぐううう!耐えろ!味方も此方へ向かっている!」

 

「何としてでも…勝ってみせる!!」

 

 

 

 

 

「ハハハハハ!何ト脆イ!タッタ1隻ノ艦娘ニ、コウモ左右サレルトハナ!」

 

長門と空母棲姫が対峙する。

「お前…加賀に何かやったのか!?」

 

「ンー?言葉ヲ掛ケタダケダ」ケラケラ

 

 

 

 

 

実の所、本当に言葉を掛けただけだった。

 

重要なのは…相手だった。

特に責任感の強い加賀にその種を植え付けるとどうなるかを空母棲姫は知っていた。

たった一言の種…。

それはやがて膨らみ、根を張った。

精神は肉体に大きな影響を及ぼす。

実際に加賀は、幻覚や震え等に悩まされることとなった。

 

その作戦は見事にうまく行った。

 

更には、鎮守府内の士気が下がり、見事に鎮守府の統率は崩れ、普段ならありもしない苦戦を強いられた。

 

そう、たった1隻の為に。

 

しかし、その1隻が彼らにとってどれだけ大切か…が分かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ!はあっ」

丘に上がり走り続ける。

ある場所を目指して。

 

 

『瑞鶴…まだまだね』

『落ち着きなさい。挑発に乗らない』

『五航戦の子と一緒にしないで』

 

『瑞鶴…今日はよくやったわ』

 

 

 

「加賀……」

艦娘は走る。

あの人のところへ…。

 

一縷の望みを胸に…。

ひた走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…」

加賀はリビングで一休みしていた。

この生活にもだいぶ慣れた頃だった。

心の底ではもやもやが残っていたが……。

 

 

これでよかったんだ…。

 

 

 

そこに…

ドンドンドン!とドアを叩く音が聞こえた。

誰かしら…と、ドアを開けると…

 

 

「加賀!!」

何と瑞鶴が立っていた。

 

息を切らせながら瑞鶴が言う。

 

「助けて!皆のピンチなの!」

 

 

 

 




雨が止みません…。

続きます(๑╹ω╹๑ )!
次回をお待ち下さい!


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92話 焦がれる背中 ② 瑞鶴と加賀

夜勤なので投下します!


「ねえ!戻ってきてよ!お願いよ…」

 

「無理よ…わたしはもう…」

 

「アンタはそんなに弱く無いでしょう!」

 

「あなたに何が分かるのよ!もし…もしまた皆に矛先を向けるなんて事…私は耐えられないわ!」

 

 

 

「…ッ…それでも………お願いします…」

「勝ち逃げなんてしないでよ…。私はアンタが憎たらしく思うわ…でも!いつでも冷静で仲間思いな先輩が………ッ」

 

「アンタが居ないと…あの人が!!…皆が!心の底から笑えないのよォッ」

 

 

「皆を助けたいの…一緒に戦って下さい」

 

あのプライドの塊の瑞鶴が…地に頭をつけている。

 

 

「お願いよ……アンタに憧れてんのよ…死ぬまで…憧れさせてよ!こんな形でアンタに追いつきたくないわよ!」

 

 

 

 

 

 

「頭を上げて…瑞鶴…」

 

期待を込めた顔で瑞鶴がこちらを見る。

 

 

 

「ごめんなさい…瑞鶴…無理よ…帰って頂戴」

 

瑞鶴の表情は一瞬で絶望に変わった。

 

 

俯いたまま瑞鶴は言う。

「……わかったわ…ごめんなさい…」

 

「……………………この!意気地なしッ!アンタが居なくても…私が!あの人達を守ってみせるわよ!!」

 

 

瑞鶴は走って行った。

 

 

 

 

 

 

加賀は思い返す。

 

 

ーー加賀…よろしくな。

 

ー空母はカッコいいな

ーお前の艦載機発艦は…本当に綺麗だ

 

ー俺に見せてくれるその笑顔が好きだな

 

 

ー加賀さん!さぁ、行きましょう?

 

ー先輩!今日こそ負けないわ!

 

ーあら?加賀?どうしたの?ふふふ

 

ーヘーイ!加賀!ダーリンは渡さないヨー!

 

 

ーそうか…なら退役でも仕方ないが…俺は…待ってるからな。お前との約束…忘れないからな。

 

 

ーアンタに憧れてんのよ

 

ー意気地なし!

 

 

 

 

…て、提督…。

皆…。

 

 

ズキッと痛む…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせッ!」

と、瑞鶴が戦地に戻ってきた。

 

「戦況は!?」

「芳しくないわ…加賀さんは?」

首を横に振る瑞鶴。

 

「仕方ないわ…」

 

「大丈夫!私が頑張るからッ!」

「瑞鶴…」

 

 

 

 

「くっ…大淀!各方面からの帰投は?!」

 

「まだ時間が必要です!」

 

「皆…耐えてくれ…」

 

「加賀……」

提督は飾られた写真に写る艦娘を見る。

 

 

 

 

 

 

 

無意識に足が向かう。

だって…痛いから。

 

 

 

 

 

「皆…」

私は来てしまった。

遠巻きとは言え、なんの資格があって来たのか…。

皆が押されている…。

 

わたしは…私は…。

 

 

「きゃぁあ!」

赤城か被弾する。

 

赤城さん!!!

 

助けなくちゃ…!!

 

 

水面に立とうとする。

 

 

しかし、浮かない…

水に入ってしまう……膝まで波が来る。

 

何で!?どうしてーーーー。

 

 

そうだ…私は…

艦娘を辞めたんだった…。

 

 

 

 

今更…よね。

 

なのに…何でこんなに胸が痛むの…。

 

 

 

 

ひゅっと風が吹いた。

 

 

はっと前を向く。

 

 

幻影が見える。

艦娘としての私。

 

凛として…向こうをじっと見つめていた。

 

その(加賀)が振り返って言う

加賀()…」

 

 

 

 

いきなり周りが暗くなる。

 

 

 

 

…え?

 

「情け無いわ…哀れ過ぎるわ…加賀()

 

私?

 

「そうよ…あなたが置いて行った加賀としての自分(艤装)…艦娘としてのあなた()

 

艦娘としての…私?

 

「何度…挫けようと立つのが私じゃないの?」

 

でも…。

 

「あの人への愛も…それに負けるくらいなんだ…。ならその身体…頂戴?私がうまくやってあげるわ?」

 

 

それは…嫌よ。

 

 

「何で?いいじゃない…思い出も何もかも受け継いで戦ってあげるわ」

 

 

この思い出は…私だけのものなの。

 

 

あなただけの(私達の)思い出…そうよ?他の加賀には無いもの…この思い出は世界中の加賀を集めても存在しないわ!そしてね、あの人は例え他の加賀を迎え入れたとしても…笑わないわ。あの人にとっての加賀は…貴方しか…私しか居ないもの」

 

……そんなの…わかってるわ。

 

「待ってるのよ艤装()を磨きながら…指輪を眺めながら。…あの人は…凄いでしょ?私が来るだけで戦局が変わるとあの人も皆も信じてるのだから…」

 

「そこまで信頼されてるのよ?今も昔も…」

 

 

だって…私は!!

 

 

「その程度で負けるものなの?加賀の名は(私達は)…。行きなさい…守ると…ずっと添い遂げると約束したなら…どんな運命も、困難も打ち壊して進みなさいッ!!!それが貴方の、私の誇りでしょうッ!!貴方が外した指輪と艤装と…その胸の中の思い出が…、一航戦の誇りよりも大切な…大切な!加賀の(私達の)の誇りでしょう!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだー…。

約束してたんだ、私…。

愛してますと。

あの人を側で守ると、添い遂げると。

 

何をやってるんだ私は…ッ

自分の心の弱さに負けて…大切なものを見落として…。

弱さを棚に上げて…理由を取り繕って…逃げた!!

約束からも…皆からも。

 

あの人に…解体してとお願いして…。

 

 

どれ程、苦痛だったろうか。

どれ程悩み、自分を責めただろうか。

あの小さな背中で…どれ程の…。

 

 

 

 

私は…艤装を外した(艦娘である事をやめた)人間…。

 

 

いいえ

私は…正規空母 加賀…。

 

例え、艤装がなくとも…。

心は…。

 

こんなのに負けない…誇り高き一航戦…。

 

いや!

 

誇り高き西波島鎮守府の航空戦隊の加賀!

 

 

 

行かなきゃ!

私の在るべき所へ!

 

 

 

「……遅いのよ…全く…でも、分かったようね。なら、私はまた貴方と一緒に戦えるわ…」

 

「いい?加賀()コレだけは覚えておいて…いつも私はあなたと共にあるから」

 

 

 

 

目の前が晴れた。

私の足は…海の上にあった。

 

慣れた艤装が私に装備されている。

 

あなたも…泣いていたのね…。ごめんなさい。

もう、離さないから。

 

行かなくちゃ…。

 

 

 

 

 

「来ると思ってたけど…。遅かったじゃないか…」

あの人の声が後ろから聞こえた。

 

 

 

提督…

「貴方は本気で私1人が帰ってきたら…この戦局が覆ると思っているの?」

 

「当たり前だろう」

 

「私より優れた加賀を建造すればいいのに」

 

 

「それはお前じゃない…。俺が好きで…ケッコンカッコカリして…時間を共にしているのは…お前じゃないか。お前以外の加賀は…俺にとっては意味がない。」

 

「約束守らなかったのよ?」

 

「誰だって同じさ。逃げたくなる時もあるさ…ここから取り返そう」

 

 

責めないのね。

本当に…甘いんだから。

 

だから私は今度こそ…貴方の気持ちに応えるわ。

 

 

 

 

「…ごめんなさい…私!行くわ!」

 

「忘れ物だぞ?」

と、私を呼び止める。

艤装はついてる…わよ?

 

 

左手を取り…私の穴を埋めるように…また証をつけてくれる。

軽くなったはずの左手が…またその重さを実感した。

 

「待ってるぞ…ここで」

行ってきますと…キスをする。

 

あぁ、これで頑張れる。

 

 

待ってて…今度こそ、あなたの声に…全力で応えるから!!!

 

艤装がキラリと光ったような気がしたー。

いや、気のせいじゃない。

 

 

 

加賀…改二 護ーー

 

 

「…いいじゃないか、行ってらっしゃい…加賀」

 

「行ってくるわ!提督!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くううっ…」

血が滴る…。

こんなにも奴との差があるの?私には…。

 

 

あぁ…死の足音が近付いてくる…。

 

ドロリと流れる血は其れを強く感じさせる…。

 

 

 

 

 

 

 

「アノコシヌケガ居ナイダケデナ…」

 

 

「コシヌケ…ですって…?」

 

 

「おい…!」

瑞鶴が空母棲姫を睨みつける。

 

ふざけるな…あの人は…腰抜けなんかじゃない!

いつだって私達を引っ張ってくれた艦娘なんだ!!

 

「あの人を馬鹿にしていいのは…後輩の…私だけだッ!お前が…あの人を語るなァァ!!」

 

「全ク…挑発ニノリヤスイ奴ダナ」

 

「しまっ…!!!」

 

ドオオオオン

「きゃぁぁあ!!」

 

敵の一撃が瑞鶴を襲う。

 

「フフフ…ブザマネ」

 

 

 

 

 

 

 

あぁ…

体が海に溶けてゆく。

 

 

敵に乗せられるなってよく加賀に言われたなぁ…。

やってやるわ!って言ったけど…私じゃ…先輩の替わりには…なれるわけないか。

 

悔しいなあ…。

沈められるより…私、あなたを馬鹿にされて…何も出来なかった事が…悔しくて仕方ないよ。

 

先輩……。

 

 

 

瑞鶴ー!と呼ぶ声が聞こえる。

 

 

 

「サア…逝キナサイ」

 

 

加賀も、悩んでたよね…苦しんでたよね。

 

ごめんね…意気地なしって言って…。

私…本当は……。

 

本当は…。

 

 

届かぬ水面に手を伸ばすーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音が聞こえる。

ズドドドド…

ドゴォン!!!! 

 

「ヌウウウ!?」

「ナンダ!?」

 

と、退く空母棲姫。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「立ちなさい…瑞鶴」

 

 

誰かの手がが沈み行く私の手をを掴んだ。

水の中でもわかるその温かな手は、私をもう一度水面に引き上げた。

 

 

その人が私の前背を向けて立つー。

 

「ゴホッ…ゼェ…ゼェ」

 

前を見る。

ーこの背中は…?

 

 

…ッ!

この背中だ…。

私が、ずっと追い続けている背中は…。

私が超えなきゃならない背中は…。

もう、弱々しい…情け無い姿でないー

 

そこにあったのは…誇り高い一航戦の背中だったー

 

 

「遅い…のよぉ…」

 

 

 

 

「加賀!」 瑞鶴が

「加賀さん」赤城が

「先輩…」 翔鶴が

 

 

「oh加賀ー!」金剛が

「加賀さん!」58が

「加賀ッ」 長門や皆が

 

 

その名を呼ぶ…待ち望んだ、なくてはならないその艦娘の名前を。

 

 

 

「後で…たくさん謝るから…。まずは行くわよ…やられた分…取り返すわ!!」

 

 

「コトバデ操ラレル雑魚ガ…今更ァァ!!」

 

 

 

 

「全機構え!」

 

「「はい!!」」

赤城と翔鶴、が構える。

 

 

 

風向きが変わったーーー。

 

 

本当に…戦局をひっくり返すのよ!ここから。

 

 

 

「第二次攻撃隊…発艦ー!!!」

 

一矢乱れぬ発艦。

提督が綺麗だと褒めてくれた…私…加賀の自慢。

 

 

 

 

 

 

「よーーし!皆ー!やるヨー!!」

金剛が叫ぶ。

 

 

「加賀に続けええええ!!」

「行くぞおおおおおおおお!!!!!」

長門が吠える。

 

 

 

じわじわと…攻め返す。

 

「バーーニング!ラァブ!!」

「一斉射!!」

 

長門と金剛の砲撃が敵を屠る。

 

「水中は任せるでちー!」

 

 

「私達も…まだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「バカナ…」

たかが正規空母1隻…。

 

そう!たかが正規空母が1隻、増えただけだ。

 

それが、死に体の艦隊が…その1隻でここまで変わるのか?!

目の色が…変わるのか?

 

ありえないー。

 

 

 

 

「私の自慢の皆をめちゃくちゃにしてくれちゃって…」

「覚悟はできてるんでしょうね?」

 

「こ、コノッ!!ーーーーー」

!?ダメダ!サガレ!」

 

ドドドドと、スレスレのところを攻撃される。

 

この空母…早すぎる……!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一撃…せめて…、一撃…。

あの人を馬鹿にしたアイツに…せめて!!

例え…ここで散ってもいい!

 

弓を持つ手が、矢を張る手が震える。

「このっ…」

視界が…。

 

 

それすら…叶わないの?

 

瑞鶴…と手が添えられる。

 

「翔鶴…姉!?」

 

 

ーーーじゃない。加賀だった。

「加賀…」

「私が支えるわ…行くわよ」

 

暖かい…加賀の体温が手から伝わる。

 

 

ー2人で行くわよーー

 

この言葉が…こんなにも心強いなんて!

負ける気がしないわ。

 

 

私も…応えなくちゃ…この人に…提督に…皆の声に…。

 

お願い…提督…!私に力を…

もう一度…立ち上がる力を貸して!!

 

 

 

「瑞鶴…?」

 

瑞鶴…改ニ甲

 

「あなた…」

 

「先輩だけにいい格好はさせないわ!」

 

2人で弓をなお構える。

ギリギリと張る弓は二人の想いを乗せる。

 

「見せてやりましょう…西波島航空戦隊の実力を」

 

 

 

 

「遠かったって…当てる!……ーーー今よ!!」

 

 

弓から射られた1本の矢。

音すら置き去りにする程に空を切り、雷光の如く敵に向かう。

 

 

 

 

空母棲姫はゾクリとした。

まさか…アレ(一本の矢)が私を沈め得るのか?

 

「サセルカ!撃チ落トセ!!!」

 

周囲の深海棲艦と共に対空射撃の弾幕が展開される。

 

「…まずい!次を!!」

と、瑞鶴は加賀を見るーーーーが、加賀の目は真っ直ぐに矢を見据えていた。

そして、一言。

「瑞鶴…貴方の腕を…私を……あの子を信じなさい」

 

 

 

矢は燃え上がり、爆撃機に姿を変えて空を飛ぶ。

 

 

 

ーー堕ちないーーー

 

 

 

迎撃を躱す爆撃機。

 

 

何故?何故堕ちない!!

何故何故何故何故何故!!

 

 

「バカナ!モット展開シロオオ!」

 

更に増す対空射撃。

 

 

それでも尚、針に糸を通すかのように掻い潜る爆撃機。

 

どれほどの熟練された艦載機でもあり得ない動きだろう。

 

それは…

 

優雅に舞うように

 

勇ましく突き進むように

 

閃光の如く

 

ただ、1つの敵に向かって…風を…空を切り駆け抜ける!

 

 

 

何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故?

 

空母棲姫は戦慄した。

その光景が恐怖でしかなかった。

弾幕という弾幕を掻い潜り、死神が空を切る音と共に自分に迫っている!!

 

「クルナァァァァァァァア!!!」

 

豪雷の如き一矢が空母棲姫を捕らえる。

 

 

2人が吠える。

「「いっけえええええええええ!!」」

 

2人の矢が届く…

反撃の一撃が喰らわされる。

 

ドゴォォォォオオオン!!!

 

確実に当たった。間違いない…。

 

 

 

煙の中から現れた轟沈寸前、大破状態の敵。

周囲の深海棲艦を盾にして。

 

「…マサカ、ココマデトハ…シカシ…マダ、死ンデナイ……」

 

撤退……。

 

 

「まだよ!退かせない!」

赤城達だった。

いや、それだけではない。

駆逐艦も、巡洋艦も、戦艦も…

全機がこちらに構えて発射していた。

 

 

「クソ………上手ク行ッタトオモッタノニナ」

 

 

本当に…たった一隻に………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆…ごめんなさい…」

 

深々と頭を下げる加賀。

 

 

「……」

 

許してくれとは言えない。

私は一度逃げたから。

今回のでチャラになるとは思ってない…。

私にできる償いはやるつもり。

 

 

 

「間宮のスイーツでいいですよ」

「…え?」

「あら!瑞鶴!いいわねソレ!先輩!ご馳走様です」 翔鶴?

 

「私は大盛りを所望します!」 赤城さん?

「私もネー!」 金剛?

「俺もそうしようかな」 提督…?

 

「何で?なんで責めないの?逃げたのよ?!私は」

 

 

「だから何?」

「戻って来たじゃない…私達を助けに…」

 

「それでも!」

 

「だから間宮のスイーツで勘弁してあげるのよ…」

 

「「「お帰りなさい」」」

皆が笑顔で言う。

 

 

 

瑞鶴が抱きついて来た。

 

「こっちこそごめんね…加賀ぁ…。辛かったよね、苦しかったよね…なのに私ッ…私…意気地なしって言って……ごめんね。助けてくれて…ありがとう…ううっ…一緒に弓を引いてくれて…ありがとぉ…うわぁあん……私ッ…あの時言えなかったけど……優しいアンタが大好きなのッ」

 

 

「…いいのよ…。ありがとう…瑞鶴」

 

泣きじゃくる瑞鶴を加賀はいつまでも優しく抱きしめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…提督?」

 

「ん?どした?」

 

「私…もう一度約束するわ…」

「二度とあなたから離れない。ずっとずっと守り続けるから。私はもう負けない、挫けない…だから」

 

「負けそうなら…挫けそうなら俺を頼ってくれ」

 

「…ッ!?」

 

「その為に俺はいるんだ…愛する人に頼られないのは寂しいかな」

 

「…ええ、わかったわ。ありがとう…提督」

ぎゅっと抱きしめてもらう…。

 

暖かい……。あぁ…何て幸せなんだろう…。

ごめんなさい…。

でも、これからは…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が帰投した時…。

 

「瑞鶴!!」

 

「提督?」

 

「無事か!?…良かった…」

 

 

「提督…その…ありがとう」

 

「どした?」

 

「沈みかけた時…お願い…提督、私に力を貸してと祈ったら…この姿になったから……」

 

「少しは力になれたか?」

と、笑いながら言う提督…。

 

「ええ、いつだってあなたは…私を支えてくれるわ」

 

「ありがとうな…瑞鶴…今日は…本当にありがとう」

「お前が沈まなくて良かった…本当に良かった…すまない、そんな時に近くに居られなくて。」

 

と、私を抱きしめてくれる。

 

「提督…その……大好きよ?」

 

「あぁ…俺もだよ」

 

「指輪…翔鶴姉と待ってるからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう少し…遠慮して食べてくれると嬉しいのだけれど」

 

財布の中身がもちそうに無いわね…。

「おかわり!」

「俺も!」

 

…容赦ないのね。

 

でも…皆の笑顔が……幸せだな。

 

 

「加賀?アンタも一緒に食べるのよ!」

「当たり前よ!私も食べるわ!」

 

 

 

 

 

 

「優しいアンタが大好きなのよお…」ボソッ

 

「なっ!まっ!ちょっ!」

 

「私も大好きよおー?瑞鶴うう?」

 

「うがーーー!!!」

 

 

「ふふふ」

と、間宮が笑う。

 

「何かしら?」

「何!?」

 

取っ組み合いをする2人が聞く。

 

「仲良さそうで何よりよ」

 

 

「「そんなことないわよお!!」」

 

 

甘味処は今日も賑やかです。

 

 




長くなりましたが…瑞鶴と加賀は終わりです。
お楽しみいただけましたでしょつか?

少しずつでもお楽しみ頂けたなら幸いです!



相変わらず戦闘描写は……



感想等お待ちしています(๑╹ω╹๑ )!!


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93話 提督 時雨ト1日夫婦 ①

「むふー♡」

 

現在時刻はまだ、20:00

 

夕飯の後からずーーーっと離れない時雨。

 

 

「時雨?気が早くない?」

 

「だって…少しでも提督と居たいんだもの…」

 

 

白露型は何かヤンデレ気質が多い気がする。

 

「提督ぅー」

と、擦り寄ってくる。

よしよしと頭を撫でると嬉しそうにする。

 

 

時雨は金剛並み…時にそれ以上に俺にべったりだ。

愛されているのだろうが…。

 

 

 

とにかく離れない。

ベッドの中でも離れない。

 

 

 

目が覚めても目の前に時雨が居る…めっちゃ笑顔で。

「提督〜おはよー」

「おはよう時雨」

 

「ご飯…食べよ?」

 

朝の準備をする…。

…時雨は隣から離れない。

 

準備を終えて部屋に戻る。

「あれ…ご飯は?」

と、時雨に問いかける。

 

 

「?」

時雨が首を傾げる。

 

「作ってないよ?」

「なんで!?」

 

「だって…その間、提督と離れ離れになっちゃうじゃん!」

 

 

重症だった。

まあ、毎回料理が出てくるのが当たり前だと思ってる俺も俺だけど…。

 

 

「なら俺が作ろ「や!!」

 

「…離れ離れになるから?」

 

うんうんと頷く時雨。

 

 

結局2人で備蓄していたカップ麺を食べることになるので、仕方なくベルファストにご飯を運んでもらった。

 

 

「今日は何する?」

 

「何も!ずっと…こーやって引っ付いていたいな」

 

「暇じゃない?」

 

「ううん!大丈夫!」

 

 

 

なんて事が有り…はやお昼だ…。

 

時雨は俺の隣から離れない。

 

「時雨?」

 

時雨は泣きながら俺にしがみつく。

 

 

不安だから。

提督が、何処かへ行くんじゃないか。

 

夢に見る事がある。

あなたが死んでしまう夢…。

 

あと少しってところで助けられない。

あなたは暗闇に消えて行く…。

僕はその暗闇にあなたの名前を叫ぶ。

名前をいくら呼んでも…帰ってこない返事。

 

絶望にうちひしがれる…。

 

目を覚ます度に夢であることを祈りあなたに会いに行く。

 

 

 

前世?の事はよくわからないけど…鉄底海峡で、この鎮守府で、提督は命を落とした。

夢が本当になってしまった…って思った。

 

この先も、もっと辛い事があるだろう。

それでも戦い続けるの?って僕は聞いた。

 

 

提督は「あぁ…お前達と平和な海を取り戻すんだ。俺は1人じゃない…お前達となら出来る気がするんだ!」って言ったよね。

 

 

僕は…世界よりも、あなたの為だから命を賭けられるんだ。

 

例え世界が滅びようとも…提督さえ居れば。

でも、それじゃあ悲しいから…皆で。

 

 

 

 

 

 

本来なら出会うはずのない…人だからこそ…

全てが愛おしい。

 

画面の向こうは触れられなくて…。

皆も同じ気持ちだったろうけど…会えた時は嬉しかったなあ。

 

夢なんじゃないか?

こんな奇跡あるのか?って。

 

 

出来ればずっと離れたくない…。

 

 

 

 

だから、僕はそうならないために戦うんだ。

僕との、皆との時間を奪わせない為に…。

 

 

 

 

 

 

 

 

ねえ、提督?

 

提督の優しい目が好き。

透き通った綺麗な目で見られると照れちゃうんだ。

 

提督の暖かい背中が好き。

引っ付いても「こらこら」くらいしか言わず居させてくれるから。

 

提督の大きくて暖かな手が好き。

提督に撫でられると、どんな辛い事も平気なんだ。

 

提督の匂いが好き。

「やめろ」と言われるけど…提督の匂いが落ち着くんだ…。

 

「時雨」って呼んでくれるのが好き。

どんな暗闇だって…どんな場所だって…その声が聞こえてくれば提督を見つけられる。

 

抱きしめられるのが好き。

あなたがくれたこの指輪が好き。

 

 

ー…あなたの全てが…大好き。

 

本当は料理…出来るんだよ?

でも、それ以上に一緒に居たいんだ。

今日だけは姉妹にも金剛にも扶桑にも譲れないんだ。

 

 

 

よしよしと、頭を撫でてくれる提督。

 

「提督…ありがとう」

 

「何が?」

 

「こっちの話♡」

 

 

「出掛けよっか…」

 

「お?心変わりか?」

 

「うん」

 

 

明日の朝まで…。

残りの時間は…有意義に使わなくちゃね。

 

 

 




続きます(๑╹ω╹๑ )

お気に入り370…ありがとうございます(´;ω;`)
早いもので、このペースでいくと来週とかには100話?

お付き合い頂き本当にありがとうございます。
少しでも楽しいと思って頂けたなら幸いです。


ただ今、1話からちまちまと文章構成を直しています。
今更ですみません。
これからも見守って頂ければ幸いです。


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94話 提督 時雨ト1日夫婦 ②

さあ…。

出発の時間だね。

 

相変わらずの修羅場…ではなく、いつもと違う感じがする。

 

「提督!甘い誘惑には負けないのよ!」

 

「夜には帰るのよ!」

「朝帰りはダメだからね?」

 

 

 

「…僕はそんなに信用ない?」

「普段の行動の結果じゃないか?」

「愛故に…なのに…」

 

 

 

 

「皆ー!行ってくるねー!!!」

 

「「「「いってらっしゃい!!」」」」

 

そこは変わらんのよね…。

 

 

 

 

 

 

 

救は驚愕した。

 

行きたいところがあるー。

と、言われたからついて来た。

 

 

 

 

 

が…そこがーーーー。

 

[恋人限定!恋人の為のカフェ]

 

なる所だったからー。

 

 

いやーー!ここは無いだろう…と自分に言い聞かせていたが、ドンドンとその場所に俺の腕引っ張り近付く時雨。

 

 

周りは…

バカップル

カップル、カップル、バカップル…。

見てるだけで口の中が甘くなりそうなのが列を成している。

 

 

「アレ?提督ゥゥ?何で抵抗してるのかなぁ?」グイグイ

 

「………」

 

「もしかして…恥ずかしいのかなぁ?」

 

「別のとこにしよーず」ギギギ

 

 

「いや?」

 

「ああ言った雰囲気は苦手なんだよ…」

 

「うぅ…救さん…約束したのにいい」

「酷いよおお…ぐすん…ぐすっ」

 

「はっ!?」

え?何?何で泣いてんの?

救さんて?何?え?

 

「そんなに私とデートするのが嫌なの!?うええん」

 

「え…?何あのカップル…」ヒソヒソ

「酷い彼氏だなあ」ヒソヒソ

 

「え…ちょ…ええ?時雨?」

 

「えへへ」 ボソッ

 

 

この野郎おおおおおおお!

やりやがった!周りを味方につけようとしてやがる!!

 

「お願いだよおー!行きたいんだよおおお」

 

「だぁぁ!!分かった!わかったから!!」

 

「本当?…ぐすん」

 

「よーし行こう!並ぼう!」

 

「……うん!」ニタァ

 

 

 

針の筵の状態で並ぶ事約10分…。

ぶっちゃけ2時間くらいに感じた。

 

 

 

「イラッシャイマセー」

 

「ねぇ〜何食べるー?」

 

「俺こんな所来た事ないから時雨のオススメを貰うよ」

 

「ん!分かった。まかせて!」

 

店員を呼び、これとこれと、と注文する時雨。

さっきまでの演技が嘘のように明るい…まじ時雨恐ろしい子!

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーで?

 

 

まず、来た飲み物がね…

 

 

何コレ?

 

 

『ラブラブ♡いちごオーレでございます』

『甘酸っぱい…恋の味をラブラブな2人に楽しんでもらう飲み物です!

もちろん…ストローはこちらですぅ』

 

 

あー…アレな。

2人で使うストローね?

 

 

「わー!救さんー!すごいねー!コレ!早速いただこうよぉ」

 

「……お先にどうぞ…」

 

「2人で…飲も?」

 

「いや、これは…さすがに…」

 

マンガとかドラマでしか見た事のないヤツ…。

恥ずかしすぎるよ…。

 

「…え?一緒に飲んでくれないの?」ウルウル

 

時雨の目がウルウルしている…。

泣くのか!?泣く気か!?!?

この流れはまずいッ!!

「よし!飲もう!2人でラブラブ飲もう!」

 

 

ダレカ…コロシテクレ…

 

無論…その後のご飯も、デザートもそんな感じ…。

 

お腹いっぱい…胸もいっぱい……。

とにかく恥ずかしかった…。

 

「美味しかったね?提督!」

 

「ウン、ソウダネ」

 

「えへへ…ありがとうね?一度でいいから、ああいう事したかったんだ」

 

 

あぁ、そうか…時雨も女の子だもんな。

そういうことに憧れていたのか……。

恥ずかしがってごめんな…。

 

 

「まあ!提督の恥ずかしがる顔が見られて…あーんまでできたから尚のこと幸せなんだ」

 

 

はい!前言撤回!!

ごめんなんて微塵も思わないッ!!

 

 

 

 

 

 

 

「もー!機嫌直してよー!アハハ」

 

「怒ってないもん!悔しいだけなんだもん!」

 

「提督…可愛いね」

 

「うっせー!」

 

 

なんて笑いながら2人で歩く。

 

あーあ

時間が過ぎるのって何でこんなに早いんだろう?

もっとゆっくりして行ってくれてもいいのに。

 

寂しいなぁ…。

 

 

 

 

 

「ねえ…提督?」

 

「ん?」

 

「これあげる」

 

時雨がくれたのは懐中時計だった。

 

「僕からの…プレゼント」

 

「いいのか!?ありがとう…!大切にするよ」

 

こんな嬉しそうな顔してくれるんだ…。

コツコツ貯めた甲斐があったよ。

 

「ねえ…お願いがあるの」

時雨は弱々しく言う。

「居なくならないで…。提督が居ないと…僕…いや、僕だけじゃなくて皆が…。もう死なないで…。居なくならないで」

 

「時雨…」

 

「もうね、提督の温もりなしじゃあ生きていけないんだ…」

「僕だけじゃない…皆…そうなんだ、提督の為に死ねるなら…提督を守る為なら命だって惜しくないんだ。」

 

「だから」

時雨がその先を言う前に口が開かれる。

 

「ダメだ」

 

「え?」

 

「俺は…お前らの内誰1人が欠けようと…嫌だ」

「俺の中ではお前達はもう俺の一部なんだ。そんなこと考えたくもない!だから…生きてくれ…俺だってお前達無しでは生きていけないくらい暖かさを貰ってるんだ」

 

「提督…」

 

嬉しいなあ…。

そうやって言ってくれるなんて…。

 

「だから、出来る限り最大限の作戦を立てるから…現場では思う通りにいかない場面もあるだろうが…とにかく、生きて帰ってくれ」

 

 

「しょうがないなあ…わかったよ」

 

本当にどうしようもない時は…きっと体が勝手に動くだろう。

でも…そうならない為に、頑張るね。

 

 

 

時計をあげる意味ー。

"あなたと時を共にしたい"

 

戦場で命果てるまで…叶うならば一生を共にしたい。

 

 

「…ずっと共に居ような」

 

もう…。

欲しい返事くれるんだから…。

 

 

 

「愛してるよ!提督!」

キス…をする。

 

好きーー。

この気持ちはずっと変わらないだろう。

例え…この身が無くなろうと、この想いはあなたを守り続ける。

 

 

 

「えへへ。帰ろうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「時雨になにかされなかった!?」

「貞操は無事かっぽいー??!」

 

「皆…酷くない?」

 

「日頃の行いっぽい」

 

「むむむ」

どうやら私はそう言う扱いらしい…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある日

 

 

 

 

「もう直ぐお昼か…」

と、時間を確認する救。

使っているのは…あの懐中時計だ。

 

 

「むふふーー!ありがとうね?提督」

 

「ん?」

 

「その時計使ってくれて…」

 

「気に入ってるんだぞ?」

 

「えへへ…」

 

 

そんなやり取りがあったとか。

 

 

 

 




時雨は策士なとことポンコツなところがあるといいな…!


最初に投稿した数話を訂正しています!
と、言っても内容は変わっていません(๑╹ω╹๑ )



少しでもお楽しみ頂けたら幸いです!


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95話 西波島鎮守府 裁判編

あと…5話で100話…毎日更新頑張りたい…。


皆様こんにちは。

私金剛は、今…正座させられています。

 

「被告人……コレは…何だクマ?」

球磨の手には先日届いたウエディングドレス姿の金剛との写真アルバムが…。

 

 

「コレは…罪深いわね」

「抜け駆けですか?抜け駆けですか?」

「本物の結婚式場じゃない!!」

 

「あの…それは…ですね」

 

「街で偶然声を掛けられ?写真撮りプランで行ったら?結婚式も挙げさせてくれた?」

「ありえないですね」

「ありえないでありますなあ」

「嘘は良くないわ」

 

「本当デース…」

被告人の金剛が言う。

 

「…裁判長!ウラが取れました…残念ながら…被告人の言うことは事実ですッ…」

青葉が何やら手に持って大会議室に入ってきた。

 

「本当かクマ…」

裁判長である球磨が反応を示す。

「はい!たまたまお似合いのカップルに見えたので声を掛けたそうです!」

「一応、式の様子の映像も入手しました!提督の給料から天引きします!」

「DVDで5万円でした!!」

 

 

「異議ありイイイイ!」

と、俺は唱えた。

「弁護人の意見を却下するクマ…」

 

「ぬうううん!!」

崩れ落ちる弁護人…さらば5万円。

 

 

その場で観賞会が行われる。

やめて!恥ずかしいから!恥ずかしいからあ!!

 

「コレは…」

「羨まし…けしからん!」

「ズルイです!」

 

 

 

「指輪交換までしてるわぁぁぁあ!!!」

 

「きききききキスまでえええええ!!!!!」

「メーデー!メーデー!」

 

法廷という名の大会議室は地獄と化した。

 

「…浮気ですか?あなた」

そもそも重婚の時点で……あっ、睨まないで鳳翔。

 

「…僕知らなかったなあ」

言ってなかったからなあ…時雨さん。

 

「指揮官…様?」

「ご主人様」

……そんな目で見ないで??

 

「うははは!最高!」

隼鷹はいつも通りだな。

 

「…司令官?…私は…」

あかん!吹雪!それ、提督やない!観葉植物や!

 

 

 

 

 

 

 

 

「只今より…審議に入ります…」

 

 

 

 

 

 

 

 

誰かが言った。

「これ…提督の方が被告人じゃね?」

 

 

「「「「「「確かに!!」」」」」

 

 

 

 

は?

 

 

ーー異例の弁護人と被告人の交代ーー

 

 

 

「で?」

 

「で?じゃないクマ…この結婚式は何だという事だ!…くま!」

 

「いや…だからな?狙ってやったわけではないんだよ」

 

「実に羨ま…けしからんクマ…確かに金剛は最近の戦績でいい結果を上げているけど…こんなの…こんなの!ズルイよおおおおお」

 

「キャラ変わってるぞ?」

 

「どーでもいいわ!!大体ね!結婚式ってのは…ウエディングドレスってのは…乙女の憧れよ!?ただでさえ…この鎮守府は競争率が激し過ぎるのに…!!朝イチに提督に挨拶しようと思っても、既に他の艦娘が居るし…。てか、ベルファストがメイドでずっと居るもん!誰かしらは周りにいるから、中々話しかけられないし…ご飯の時なんか戦争みたいになるし…やっと秘書艦だー!って思ってもなかなか2人きりになれないし!ーーーって!大淀はいつも一緒に居るよね!アレ?大淀も罪深くない?毎日一緒に居るよね!?大淀とベルファストが居るから秘書艦も必要無いんじゃない?って話が出たらどうしよう…なんて毎日戦々恐々としてるんだよおおおお!!アレ?大淀だけじゃなくてベルファストも罪深くない? 皆もどう思う?」

 

「「「「正直羨ましい!!」」」」

キランと皆の目が2人を捉える。

 

「え!?み、皆さん!?目が血走ってますよ?」

 

「皆様…?どうか落ち着い… そんな、詰め寄らなくても…」

 

 

「捕えろおおお!!」

 

 

「「きゃぁぁあ!!!」」

 

 

俺の横に大淀とベルファストが簀巻にされて運ばれてくる。

「巻き添えです…」

 

「皆様?落ち着いて下さい」

 

 

 

 

もはや裁判ではないじゃないか…。

 

 

 

 

 

球磨が言う。

 

「まぁ…2人は置いておいて…提督…。提督は…その時に一緒に居たのが球磨でも…多摩でも他の艦娘でも同じ事になっていたと思うクマ?」

 

 

 

 

「なっていたと思うよ。」

これは本心だ…。

確かに金剛には色々と、特別なところがあるのは否ない。

しかし、誰であろうと愛する艦娘には変わりない。

故に…あの時の艦娘が誰であれ、同じだっただろう。

 

 

「そうかクマ。わかったクマ」

 

 

 

おお、わかってくれたか…と、安心したその時。

 

 

「なら初めては誰に捧げるクマ?」

 

 

 

「は?」

 

「初キスは金剛クマ。初キスと言うことは…その先はまだクマ。

…で?誰に手を出すクマ?」

 

 

「「「「「「「「「………」」」」」」」」」

 

え?皆の目が怖い…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は逃げた。

とにかく逃げた。

 

奴らの目は最早、深海棲艦すら逃げ出す目だろう。

とにかく逃げる。

 

 

 

「「「こそーっ」」」

この機に乗じて逃げる金剛、大淀、ベルファスト。

 

 

ごめん…提督…。

 

だって…初めての人…その話!気になるからッ!!

 

 

 

「お前らもかよおおおおおおお!!」

 

 

 

「「「「「「「待てえええええええ!!」」」」」」」

 

 

 

その日は、

艦娘の叫び声と提督の悲鳴がずっと響いていたそうな…。




R_18には…できない!!

少しでもお楽しみ頂けたら幸いです!!






100話の後はどうしましょう…。
のんびり続けてもいいですか?


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96話 ベルファストのメイド教育 電のメイド修行

「……電様が今回はメイドに?」

 

「はいなのです!頑張るのです!」

 

「可愛らしいメイドさんの誕生ですね!今日から頑張りましょう」

 

先日の武蔵は中々凄かった。

豪放磊落…と言えば聞こえがいいが

「ご主人様ァ!起床時間だァ!」と、言いながら布団を奪い取る。

トレーニングで締め上げる…。

 

…ヤバかった…。

 

今回は電様…。

可愛らしさのある、礼儀も正しい方です。

 

 

この子なら大丈夫…

 

 

 

………だと思った私を張り倒したい。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございますなのです!今日はよろしくお願いしますなのです!」

 

「はい、おはようございます。電様…いえ、電。頑張りましょう!分からないことや難しい事はサポートします」

 

「では、早速…ご主人様の起床時間なので起こして差し上げてください」

 

「はいなのです!」

可愛らしく敬礼をして走って行く。

それを呼び止めて注意する。

 

「電、メイドはお淑やかに…上品にです。敬礼はいりません。そして、廊下も走ったりしないように…ね?」

 

「あぅ……はいなのです!!」

 

なのです! は彼女のキャラだろうから…特別に、許可しましょう…。

 

 

 

 

 

 

 

 

ご主人様を起こしに行った電が中々帰って来ませんね。

と、私室に様子を見に行く。

 

「んなっ…」

 

そこには、提督によしよしされながら寝る電の姿が……。

 

てか、ご主人様は起きてるんかい。

 

 

「電…?あなたが寝てどうするのですか」

 

「あっ…寝てしまったのです…」

 

 

「おはよう…」

 

「おはよう御座います、ご主人様」

「おはようございますなのです!ご提督様!」

 

ご提督様…??

 

「今日は電が朝食をご用意したのです」

 

 

 

 

 

 

「……これは?なんのメニューかな?」

目の前には黒いダークマターらしきものが…。

 

「フレンチトースト…なのです…」

目をそらしながら言う電。

 

ベルファスト…?と、ご主人様が目線を向けますが……申し訳ありません…と私は目をそらします。

 

 

色々と腹を括ったのだろう…ご主人様はフレンチトーストだったものを口に運びました。

「う、うん!香ばしくて美味しいよ!」

 

ご主人様……お優しいのですね…。

 

「ご提督様、紅茶をお持ち…はわわわっ!!」

 

バシャッ…

あっ!ご主人様のズボンが!!!

 

「はわわわ!ごめんなさい!ごめんなさい!なのです!」

 

「ご主人様ァァ!!!大丈夫ですか!?!?!?」

 

急いでお茶を拭く。

 

「おおおおお!大丈夫!大丈夫だよ!」

 

 

 

慌てる電が棚にぶつかった……。

 

あっ!提督お気に入りのコップが!!!!

 

「うわぁぁぁあッ!!」 ズシャァァァァア!!

 

間一髪のところで滑り込みキャッチするベルファスト。

普段ここまで慌てるベルファストを見られる事は無いだろう…。

 

「ご、ご主人様…コップは…お守り…しました」

 

 

「なんかごめんよ…」

いえ…ご主人様の笑顔をお守りできたのなら本望でございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はわわわ」  ガシャァァン

「ご、ごめんなさいなのです〜」

 

 

「大丈夫ですよ。誰にでも失敗はあります」

 

「うぅ…次は頑張るのです」

 

 

 

ガシャァァン

「はわわ」

 

「大丈夫ですよ」

 

ガシャン

「はううう」

 

「大丈…いえ、お皿関係でなく、お洗濯物を畳んでください」

 

「はいなのです!」

 

数分後…

 

「ベルファストさんー助けてくださいなのですうう」

 

 

畳むのに苦労しているのですかね…ふふふ。

 

「んなっ…」

 

電は見事に洗濯物に飲まれていた。

どうやったらそうなるのかしら…。

 

 

 

 

 

 

 

とにかく電の「はわわわ」からの突撃コンボはヤバイと言うことがわかった。

 

どのくらいヤバイかと言うと…

「はわわわ!」

と、床掃除をしていて滑る電。

 

「む?電か、受け止めてやろう!」

と、両手を広げる武蔵に…ドスッ…っと突き刺さる電。

 

「ごふううぅ!!!」

 

と、ぶつかった武蔵様がぶっ倒れるくらいヤバイ。

 

ご主人様曰く、数隻の深海棲艦を頭突きで沈めているらしい…。

 

 

 

ドジっ娘メイドならロイヤルで物足りているのに…。

 

ただ、本人は真面目に一生懸命なので怒れない。

というか、何ですか?ご提督様って…。

 

 

 

しかし、流石提督大好き勢なのか…私の気が付かないとこにまで気が付く事がある。

「あっ…ご提督様!肩叩きますね」

「あっ…そのお菓子はシナモン入りなので苦手なのですよね」

 

 

 

だけでなく

「メイド長も休憩してくださいなのです」

「このチョコ好きなんですよね?一緒にたべるのです」

と、私にさえ気を遣ってくれるのだ。

嬉しくもあり…

私もまだまだと言う事か…。

 

 

 

まあ…それ以上に破壊した物の方が多いが…。

 

 

 

「ハワワ」 ドスン

「グハーー」 キャーー

 

コレで大破が…えと…

武蔵様と比叡様と…足柄様と……愛宕様と…扶桑様に今回が山城様…。

 

………頭が痛くなりそう…。

 

 

 

深海棲艦が居なくても鎮守府は攻略されそうです。

 

 

 

 




ドジっ娘+メイド…
給料だけでなく備品にも金が掛かると。

失敗してても一生懸命な子は応援したくなりますよね(๑╹ω╹๑ )

お楽しみいただけたでしょうか?
少しでもお楽しみいただけたなら幸いです!



引き続き、初期投稿を訂正しています。
読みにくかった!がほんの少しマシになっているかと思います!
ぜひよろしくお願いします!


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97話 頑張れ翔鶴!

翔鶴です!

 

今日は私が秘書艦の日です!

ここで!提督に!アピール頑張ります!

 

 

「おはようございます!今日は私が秘書艦です!よろしくお願いします!」

「ああ よろしくな!翔鶴」

 

「はい!では朝食をとりながら軽いミーティングを行いましょう」

 

 

と間宮さんの所で朝ご飯を食べる。

提督が和食好きと言う事で私も同じメニューを食べる。

 

 

はぁーー!

提督さんーーー好きですううう!!

 

「し、翔鶴?」

 

「はい?」

 

「そんなに見つめられると…恥ずかしいな」

 

「お気になさらず!お召し上がりください!」

 

「いや…気にするよ」

 

 

(私的には)満足な朝食を終え、執務室へ向かいます。

 

実の所…ここ最近は秘書艦の順番がうまく回ってこなかったのです。

変なのが襲来したり…

先輩が居なくなってしまったり…

その時に限って私が秘書艦の時だったので、出撃せざるを得なかったのよね…。

し、か、も、!

何か瑞鶴はいい雰囲気になってるし?

私だって…。

 

 

 

 

でも…

 

 

居るんだよなあ…

大淀とベルファスト…

 

 

あの2人が居るから、仕事も早く終わるし…。

 

 

 

でも、仕事は仕事だから頑張らなくちゃね。

今日はお菓子も用意してるんですよ!休憩の際は…えへへ。

 

 

「大淀、私コレやるわ!」

 

「はい!お願いします。翔鶴さん」

 

「コレは?」

 

「終わってます…」

「そっちは?」

「終わってますね」

 

うっ…

テキパキと仕事をこなす。

必要最低限の言葉のみで進む仕事…。

 

チラッと提督を見る。

真剣なその顔が…たまらないわ。

 

 

「どうした?翔鶴…顔が赤いぞ?」

うひゃい!目があってしまったわ!

「い、いいいいえ!だ、た、大丈夫ですわ?」

 

「熱でもあるのか?」

と、手を額に当ててくる。

 

うっひょおおおおお!!

デコじゃないのが残念だけど…提督の手…しゅき…。

 

「余計熱くなってないか!?」

 

 

その様子を見つめる大淀とベルファスト。

 

2人と目が合う…恥ずかしいよぉ…。

「提督?大丈夫ですからね?」

 

「本当?無理しないでね?」

 

 

「でしたら休憩がてら…お茶にしますか?」

と、ベルファスト。

これはお菓子を出すチャンス!

「だったら私がお菓…「ティータイムネー!!」

まさかの金剛がエントリー。

 

一瞬目を見開いたベルファストだが、流石はメイド。一瞬で元の表情に戻ったわね。

「あら…金剛様、いいですね。金剛様が淹れてくださるのですか?」

 

「モチロンヨー」

 

「ではお手伝いさせていただきますね」

 

 

「翔鶴様?何か言おうとなさってましたよね?」

 

「いえ、何でもないのよ」

 

「………」

 

 

 

次はお前かよおおお!

提督大好き勢筆頭…更には正妻に1番近い女…。

 

提督との時間がぁ……うぅっ。

私の作ったお菓子は…出さないでおこう……紅茶も入れる練習したのになぁ…。

 

 

「………」

大淀…そんな目で見ないで…なんでもないから。

 

「ヘーイ!ミルクティーだヨー」

 

「こちらはスコーンでございます」

 

 

悔しいけど…美味しいなあ…。

 

「うん!美味しいな!」

 

和気藹々と話しているように見える。

楽しいけど…羨ましいなあ…。

 

流石金剛だなあ…。

 

 

 

お茶会が終わり午後の執務に取り掛かる。

あぁ…仕事量的にはもう終わるなあ…。

 

 

「提督…」

大淀が言った。

「もう直ぐ執務は終わります」

 

そうよね…。

 

「ですが、備品の納入確認がありますので…船着場に向かってもらえませんか?」

 

「ん?納入か…わかった」

 

「でしたら、翔鶴様。ご主人様にご同行頂けますか?」

 

「え?」

 

「あとはこちらでやっておきますので、確認はダブルチェックも大事ですから…」

 

提督に見えないように人差し指を口に当て(内緒ですよ)と合図する2人。

 

 

 

「は、はい!任せてください!」

 

「よし、翔鶴行こうか!」

 

「はい!」

 

と、2人は船着場に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

「…乙女ですね」

 

「ベルファストさんも優しいじゃないですか」

 

「ええ…あの方が今日をどれだけ楽しみしていたか知っていますから」

 

「そうですね。紅茶も勉強して、お菓子まで作って…」

 

「努力する人は報われるべきなんです」

 

「ふふふ。なら私達は仕事を進めましょうか」

 

「そうですね」

 

頑張ってくださいね、翔鶴さんーーー。

 

 

 

 

 

 

「こうやって翔鶴と仕事は…初めてか?」

 

「そうですね」

 

「何かと秘書艦の仕事が飛ばされたからな…すまんな。でも、感謝してるからな」

 

「そ、そんな!…私はお役に立ててますか?」

 

「翔鶴が居ないと…ダメだなあ…」

 

「あ、あのっ…提督」

 

「ん?何?」

 

「わっ…わ、私……私ッ」

 

提督は黙って聞いてくれる。

 

「私………今日がやっと回ってきた秘書艦の日なんです………今日まで沢山がんばってきました!だから…だから!ほんの少しだけ…ほんの少しだけでいいんです」

 

「うん」

 

「大好きな…提督に甘えてもいいですか?」

涙目で提督を見る。

 

「当たり前じゃないか」

 

「手を繋いでも?」

 

「ああ」

 

「抱きついても?」

 

「もちろん」

 

「私の作ったお菓子…食べてくれますか?」

 

「え?!作ってるの?!食べる!!食べる!!!」

 

「…愛してくれませんか…?今だけでも」

 

「…」

「それはできないなあ…」

 

「そ、そうですよね…すみません」

そうよね…だってあなたには…もう。

 

「今だけは無理だなあ…。だってずっと好きだからなあ…」

 

「…ッ!!ほ、本当ですか??」

 

「ああ、本当だよ」

 

嬉しいー。

心の底から嬉しい。

思わず提督に飛びつく。

嬉しくて、嬉しくて…。

 

 

 

 

 

 

 

船着場で船を待つ…。

私の作ったお菓子を食べてくれる。

 

この時間が…少しでも長く続くといいなあ…。

 

 

2人で寄り添い、しばらく待ってたら船が来た。

荷物の数チェックを行いハンコを押す…。

 

それが終わった後…。

「こっそり食べよう」

と、通信で間宮さんにお願いして届けて貰った甘味を食べる。

 

「もー!あんまりダメですよ!」

なんて笑いながら間宮さんは言っていた。

 

「美味しいな!」

 

「はい!」

あなたとだから余計に美味しいんですよ?

 

「…ん?翔鶴ーーーー?」

 

隣に座る提督に口を近づける。

提督は甘いクリームの味がしたーー。

 

「翔鶴…」

 

「幸せです」

 

 

きっとあの2人は早めに行くように言ってくれたのだろう。

私の為に…私が少しでも長く提督と2人で居られるように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大淀、ベルファスト…」

 

「「はい?」」

「今日はありがとうございました」

 

「何のことですか?」

 

「今日…気を遣ってくれて…」

 

「?何のことでしょう?努力した娘が報われただけですよ?」

 

「…楽しかったですか?翔鶴様?」

 

 

「はい!!」

翔鶴は答えた。

 

「では…」

「残った仕事…片しますよ!」

 

「はい!!」

翔鶴は満面の笑みで答えたのだった。

 

 




実質100話目ですが…97話です!97話です!!

お気に入り…380…ありがとうございます!!
ありがとうございます!
400が見えてきた…。
2ヶ月で約100話になるとは思いませんでした。

これからも頑張ります!


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98話 提督の居ない執務室に

提督はただいま夫婦としてお出かけしています。

なら私がその間の執務を頑張らなくては…!

 

さらさらとペンを走らせる。

 

「提督!ここにハンコを…」

 

そう言えば居ないのだった…。

 

…寂しいな、いつも隣にいる人が居ないのは。

 

 

 

提督との付き合いは提督が最初に吹雪さんと着任してからだった

こんな僻地に来るもの好きも居るんだなと当時は思った。

サーバーの空いているのがここしかない?なんですかそれは?

 

正直、私は影が薄い。

戦闘に参加することはほぼ無いし、鉄底海峡戦は冒頭から大破していたので…。

 

執務担当艦として居るからか周りの艦娘からは羨ましいと言われる。

しかし、私からすれば皆の方が羨ましい。

遠征や哨戒で任務から帰った皆を優しく迎えてくれるー

よしよしと頭を撫でてくれるー

傷ついて汚れている状態で抱きついてくる艦娘を何も言わずに受け止めてくれるーー

 

執務担当艦にはそんなことはないのだから。

 

ベルファストが本来やっていた業務のメイドをやり始めてからは、朝に起こすのも彼女の役割となったし、休憩時のオヤツや紅茶も彼女の役割だ。たまに金剛さんや間宮さん達が用意する時もあるけど…。

 

 

執務担当艦、メイド、秘書艦…。

あの人の周りには…人が多いなあと思います。

 

 

「…」

 

「どうしましたか?大淀様。先程からすごく難しい顔をなされていますが」

 

「いえ、何でもないのです」

 

「お悩みなら…聞きますよ?」

 

「悩み…ですか…」

 

「でしたら、仕事も一区切りつきそうなのでお茶がてら少し…」

 

「ええ、かしこまりました」

 

 

相変わらず、ベルファストの紅茶は美味しい…

お菓子も…美味しい。

 

「実はですね」

と、話す。

私にも寂しさがあると…。

羨ましがられるけど、羨ましいのだ…と。

少しは…進みたいのに…と。

 

「フフフ」

 

「何が可笑しいのですか?!」

 

「いえ、大淀様は真面目な…堅物なイメージがあったもので、乙女な一面が見えたので少し安心しました」

 

「か、堅物…」

 

「ええ、長門様と大淀様はかなりの堅物かと…」

 

「マジですか…」

 

「そう言う言葉も使われるのですね!?」

 

「そういうベルファストさんも…武蔵さんがメイドをした時に…

 

『何やってるんですかァァ』

とか

『ご主人様ァァ』

とか、叫んでますよ。」

 

 

「そ、そうですね…」

 

「ぷっ」

「クスッ」

 

「「フフフフ」」

 

「ベルファストさんは…ケッコンしてますが…提督と、より親密になりたくないのですか?」

 

「…メイドの立場としては…ご主人様に恋慕の感情を抱くのはよろしくありません…。しかし、私もご主人様から愛の証を貰った身なので」

 

「大淀様はもっと自分を出してもよろしいかと…」

 

「自分を…?」

 

「あの方がそれを拒むはずがないと…よく分かってらっしゃるでしょう?」

 

確かにそうだ。

提督は私達(の、よっぽどヤバいお願いじゃない限り)を拒まない。

愛してくれる。

私が愛してますと言えば…俺もだよと返してくれる。

きっと抱きついても…。

 

「それを止めて居るのは他ならない大淀様自身でございます」

 

「でも…何か私らしくないと言いますか…」

 

「見てください、この鎮守府を」

外を示され、つられて見る。

 

「指揮官様ぁぁ!寂しいですわぁぁあ」

「ダーリン〜早く帰ってきてよおおお」

 

「提督提督提督提督提督提督提督提督提督提督提督」

 

人選ミスですね…。

 

「ここはオープンばっかりなので手本にならなすぎますね…」

 

 

 

 

 

 

 

「でしたら……大淀様!メイドをしてみませんか?!」

 

「でも!メイドはご主人様には恋慕は…禁止と」

 

「自分の殻を破るためです!」ズイズイ

「朝から夜まで…ご主人様の為に尽くす…。少しくらい甘えても…きっと大丈夫ですよ!」

 

突然のメイドの誘いだったー。

 




ひょっ!390目前…ありがとうございます(๑╹ω╹๑ )!!

あと2話!
え?流れ?ギャグ回じゃないだろって?


(๑╹ω╹๑ )えぇ…???
少ししんみり…かな?


6日はローソンコラボの先行ティザーアナウンス…
夏コラボの情報何か出ますかね!?


なので余裕あったら昼と夜で100話まで投稿するかもですね。
余裕あれば!!



どこかで大淀がメイドやります!



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99話 あなたに逢いたくて ① 消えた提督

ジャスト2ヶ月とローソンコラボの情報発表が7/6と言うことで
投稿します!

いつもの0時にも98話を投稿してあるので、まだそちらを見ていない方はご注意ください!



3月13日

 

深夜23時…。

 

提督の姿はキッチンにあった。

 

ホワイトデーのお返しを作る真っ最中だった。

 

 

ーー"ありがとう"ーー

ただ、この一言に捧ぐ。

 

出会ってくれて…

待っていてくれて…

俺を認めてくれて

愛してくれて…

守ってくれて…

怒ってくれて…

ついてきてくれて…

 

ありがとう

 

思えば、色んなことがあった。

出会っては別れ…

守っては守られ…

傷ついて…それでも立ち上がった。

 

到底、俺1人じゃ出来なかっただろう。

皆が居てくれたから…ここまで来れた。

 

 

あなた1人くらい背負わせてください。

愛しています。

私達が居ます。

 

この言葉にどれ程救われただろうか。

 

 

俺にできる事は…そんなにない。

もっと上手く作戦を立案する者も、人付き合いがうまい者も居る。

秀でてイケメン!て訳でもなく、金持ちな訳でもなく……。

そんな俺を彼女達は受け入れてくれる。

 

 

 

一人一人にメッセージカード入りのチョコレート。

忘れてる奴は居ないよな?

居ないなら…多分大丈夫。

 

本当は…指輪も渡したいけど…やっぱ直接渡したいよねー!

 

ちなみにこのチョコ…2回目です。

 

1回目はね…味見!と称した台風に飲まれてしまったよ…。

おのれぇ…正規空母……ッ

奴の胃袋はブラックホールか!?

 

 

食べられたものは仕方ない…人選ミスだ…。

と、急いで作った。

 

 

ホワイトデーのお返しを作り終え部屋に戻る救。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3月14日

いつもより楽しみな朝…。

ご主人様からチョコが貰える…。思わずにやけそうになる表情を整える。

そして、いつも通りに起こしに来たベルファストが見たものは…。

 

「どこ?どこ?」

と、泣きながら表情で部屋を探し回る桜大鳳だった。

余程焦っているのか…桜大鳳らしくないほどに提督私室はごちゃごちゃにされていた。

 

「桜大鳳様…?」

 

「指揮官様ッ!?ーーーーベルファスト…ね」

一瞬輝きに満ちた表情をするが、私だと分かると、また落ち込んだ表情に戻った。

 

ーおかしい。

あの、桜大鳳様が私とご主人様を間違えるなぞありえない。

 

「…ないのよ…」

 

「探し物…ですか?何か没収されましたか?…にしてもこんなに部屋を散らかしたら…」

 

 

「違うわよッ!…夜は……居たのに…居ないの…指揮官様が…居ないの」

 

「は?」

 

「指揮官様がどこにも居ないのよぉ」

桜大鳳は泣きながら誰も居ない部屋を探していた。

 

 

 

 

 

「誰か!!指揮官様を見ませんでしたか!!」

道行く艦娘にも問い掛ける。

 

「見てないよ…」

どことなく艦娘の方達も元気が無さそうだった。

 

 

「おはようございます長門様。ご主人様をお見かけしていませんか?」

 

「見てないが…やはり…か」

と、長門が険しい表情を見せる。

 

 

「やはり?」

「何か知ってるのですか!?言いなさいッ!さもないと…」

目が血走る桜大鳳。

無理もない…今まで当たり前にあったものが突然喪失したのだから。

 

 

「落ち着け!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだ」

 

「…ッ!!」

そう、艦娘は提督が鎮守府に着任していないと…力の真価を発揮できない。

 

「恐らく…この世界から消えた…のかもしれない」

 

 

 

 

「ヘーイ!!長門!ダーリンが!ダーリンがぁ…」

「長門ッ…提督は…?」

長門が首を横に振る。

 

 

「そんな…どこに…約束したのに…ずっと居るって約束したのにぃ…」

「うわぁぁあ…」

 

 

 

「来たよ〜今日はホワイトデーだねえ…アレ?皆さん?」

 

「麗……実は…」

 

 

 

「嘘ッ…そんな!そんなはず!!」

 

「元の世界に戻っちゃったの?」

 

「もう居てくれないの?」

 

悲しみにくれる艦娘達。

 

 

 

 

救は鎮守府…この世界から姿を消した。

残された手作りのチョコレートが、より現実味を与えてくれた。

 




お気に入り390…ですと!?
ありがとうございます!!!!


主人公行方不明
元の世界に帰ったのか?

続きは…また夜に!


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100話 あなたに逢いたくて ② ありがとうを…あなたに

ローソンコラボ…20日?クジにアイテムに…買わねば!!!

100話です!
98.99話も投稿してますので未読の方はご注意下さい!
99話からの続きとなってます!





「困ってるみたいね」

「仕方ないね…いい男ですからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

は?

 

俺は私室に居たはずなのに…何ここ?

 

早く戻らないと…。

 

「救君!何してるの?」

シスター…?

 

「救?会いたかったぞ…」

「大きくなって…まぁ…本当に…」

 

…父さん?母さん?かな?

 

「そうだぞ…やっと会えたな…」

 

「これからは一緒に居られるからね」

 

…会いたかったよ…俺だって!!

2人に抱きつく。ずっと…ずっと会いたかった。

 

ん?でも2人は亡くなってて…でも俺は2人を見たこともないはずなのに…あれ?

 

でも、シスターは生きてるはず…。

 

 

 

 

 

いやいや!でも、俺は戻らないと…。

 

 

「どこに戻るって言うの?」

 

 

え?どこって………アレ?どこだっけ…

 

「フフフ!おかしな人ね、救君は」

 

あれ?何だっけ?シスターに言われると…あれ?

俺は…僕は大事な何かを…。

 

「……」

「ねぇ…こっちにおいで?」

 

と、手を引っ張るシスター。

 

「救はシスターさんが大好きなんだなあ…」

 

恥ずかしいからやめてよ…。

でも何だろう…何か心の奥に引っかかって…。

 

 

手を引っ張られるままに付いて行く。

 

「泣いてるの?救君?」

 

アレ…なんで僕泣いてるんだろ?

 

 

「寂しかった?でも、もう大丈夫。ここでずっと私が…守ってあげるから」

 

 

うん…ありがとう。

 

 

…好きなシスター…姉さんと一緒に居られるなら良いかなあ…。

 

 

あれ…ポケットに何か…。

「ダメよっ」

シスターが言う。

 

でも…と、それを見る。

 

チョコだった…。

手作りの……メッセージカードが入ってる…誰のだろう?

 

 

「ダメよ!救君」

シスター…。

ごめん!

 

 

 

 

「ダメってば!救君!!」

 

ダメと言われても気になるんだ…。

 

 

『金剛 いつもありがとう。愛してる。末長く一緒に居よう』

 

何だろう…金剛…こんごう…?

何だ?

僕の心が…痛い。

 

 

「ダメよッッ!!」

シスターが乱暴に其れを取り上げる。

 

 

「ダメッ!行かせない!!救君…ダメなのぉッ」

 

 

しかしその言葉は…僕にはもう届いていない。

こんごう…誰?

ありがとう…あいしてる…何だろう…僕は…。

 

 

 

「救君ッ!!あなたは…私とここに居るの」

 

シスターが僕を揺さぶる。

 

 

 

 

『…く』

『提督』

 

誰かの呼ぶ声が聞こえる…。

その時、左手が痛くなった。

 

 

 

何だ…。

左手が…心が痛くて熱いんだ!

熱くて熱くて仕方ないんだ!!

 

 

左手を見ようとする。

 

 

「ダメ…見ないで!思い出さないで!行かないで!!」

左手をシスターが包み込み涙声で言う。

 

「おねがい!これ以上辛い思いをしないで!!お願い…お願い…私が守るから!」

 

左手が気になるのにシスターの一言でふと、そんな気持ちも消えてしまった。

そうだよね…ダメだよね…。

ごめんね?

 

 

「救君…そうよ。それでいいの…」

 

 

 

その時だった。

 

『世話が焼けますねえ…』

『はい、思い出して?』

 

「あなた達は!!」

シスターは驚いた。

何故ここに…他の人が!?

 

『あなたの気持ちも分かるけど…それはダメよ?』

女性2人が現れシスターの手を払った。

 

「ダメッ…ダメええええ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

左手には–––

 

 

 

約束の証(輝く指輪)があった––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダーリン!!」

 

 

 

「あなた?…愛してます」

 

 

 

 

「提督ー!夜戦しよー!!」

 

 

「指揮官様ぁ…♡」

 

「何処までも…いつまでもそばにいるからね」

 

「離れちゃ…ノーなんだからね!」

 

 

誰?この人達…分からないはずなのに…。

 

 

 

 

 

 

カチッ…

 

 

『ダーリン♡』

 

こん… う    そんな人いたっけ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『バーニング ラブデース』

 

カチッ…

 

何かが埋まるように…

 

 

こ……ん……ごう     ボヤける何かが見える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ずっと隣に居るデース』

 

 

カチッ…

 

 

こ…ん剛……? 何とか…わかるかも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ダーリン!あいらびゅーー!!』

 

『忘れるなんてノーなんだからー!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カチッ…

パズルが全て埋まるように…!!

 

 

 

 

 

 

金剛!!!  

  あの笑顔が見える!!

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の…大切な…大切な!!

 

皆…!!     

 

 

 

 

 

あっーー。

 

2人を見上げる。

 

 

『折角会いに来たんだから…行っちゃダメですよ』

 

『こっちだよー!』

 

手を引っ張られ、そちらへ行く。

 

 

「救…行くのか?」

「救ちゃん…」

ごめん。父さん、母さん、僕…いや、俺は。

 

うん。行くよ。

会えて良かった…。ありがとう、例えシスターの作った幻でも会えて良かった。

 

「気をつけてな…」

と、言葉を残し2人は消えた。

 

 

「あぁっ…そんな…」

用意した…切り札が…。

 

「…守ってあげなくちゃいけないの…!私が…私が…」

 

 

 

「ごめんね…シスター…。俺は…大丈夫だよ。ほら、呼んでる。ありがとうシスター…心配かけてごめんね。何も返せなくてごめんね。……俺行くよ」

 

「行かないでよぉっ!私が…私が…泣き虫のあなたを守らなきゃ…」

 

 

「俺は…」

 

「俺は…もう、泣き虫じゃないよ。もう大丈夫だから」

 

 

「…………」

 

悲しそうな顔をするシスター。

 

 

彼女は現実の世界で生きていたシスターだった。

救は手のかかった子だった。しかし、その分可愛かった。

彼が死んだと聞いたときはショックだった。

だって…ずっと守ってあげなくちゃと思っていた。

 

それは彼女が病気で死んでも変わらなかった。

 

ずっと…ずっと変わらなかった。

 

救が艦これ世界の孤児院を訪れた帰りに、彼に吹いた風は彼女だったのかもしれない。

 

 

 

 

しかし、重桜の赤城や大鳳が世界の壁を超えたように…

この世には理屈では証明できないことも存在する。

 

 

 

「もう、大丈夫。今は皆が居るから…皆に…会えて良かった。例え幻でも……」

 

「もう、守らなきゃいけない…救君は居ないんだね」

 

「会いに来てくれて…ありがとう…秋姉さん…」

 

「そうみたいね。安心したわ。…ありがとうね、お金やらお花やら…色々ありがとうね……死んでからも…ずっと守らなくちゃって思ってたから…。でも、私も行かなくちゃね……。行ってらっしゃい…救君。あなたの人生が沢山の幸せで溢れますように…。」

 

 

 

 

年齢は10くらいしか離れてなかった。

第一印象は弱々しい子だった。すぐ泣くし……。

気分的には弟だった。

でも、成長するにつれて…彼の事を…。

頑張って高校に行く、大学に行く彼を応援した。

何度か行ったご飯は…私にとってはデートだった。

 

社会人になった彼は、色々と差し入れをしてくれた。

憧れの先輩が居るとか…少しヤキモチを妬いた。

ご飯も…連れて行ってくれたね。

プレゼントもくれたね。

 

でも…何で簡単に人は死ぬのだろう?

私から大切なものを奪って行くのだろう…

大切な彼も…私の人生も…。

 

 

ふと、何処かの世界の彼が見えた。

何だか…辛い思いをしてるようだった。

彼をそんな所から救いたかった。

守らなくちゃ…私が!!

 

 

 

でも…彼は…そんな小さな時の弱々しい彼じゃなかった。

私が居なくても…周りには沢山彼を慕う人が居る。

 

 

そこに私が居ないのは…寂しいけれど…。

 

 

 

 

 

「また…生まれ変わっても、あなたに…会えたら…いいなあ…」

 

「私の事忘れないで居てくれて…ありがとう。」

 

シスター…秋姉さんはそう言い残して…消えた。

 

 

俺は2人の女の子の方へ歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

懐かしい…夢なのか?

それに、あの声は…

 

 

目を開けると見慣れた景色があった。

 

ここは…戻ってきたのか?

鎮守府の食堂…?

 

食堂の席には…皆へのチョコが置いてある。

 

「ごめん、金剛…」

と、もう一度チョコに封をして金剛の席に置く。

 

 

 

「ふぅ…」

 

 

 

「「お帰りなさい!!」」

と、後ろから声がかかる。

 

「モテる男は大変だねえ?!」

「色々大変ですね」

 

 

「ありがとうな……えと…」

 

「あれあれ?提督さん〜」

「もしかして私らのこと…忘れた?」

 

「約束したでしょ?」

「生まれ変わったら会いに来るって」

 

 

「…ハハハ!…嘘だよ。早いな…俺がジジイになったくらいだと思ってたよ」

 

フフフと笑う2人

 

 

 

 

 

 

 

「ダーリン…!ダーリン!!」

「提督!」

「指揮官様ッ」

 

 

 

 

 

足音が聞こえる。

艦娘がここに向かっている。

 

 

 

 

分かる…提督が…居るッ!

そう確信があった。

 

…戻って来てくれたんだ!!

 

馬鹿馬鹿!

 

一刻も早く会いたい!愛するあの人に…!!!!

 

その一心で彼女達はひた走った。

 

 

 

 

 

 

バタン!!!

と、食堂のドアが開かれる。

 

「おっ?」

「来ましたね」

 

 

 

 

 

「………ダー…リン?」

 

「ごめんな…ただいま」

 

 

「ダーーーーリーーーン!!!!!!!」

 

「指揮官様ぁぁぁ!!!!!」

 

「「「「「「「どこ行ってたのよおおおおッ」」」」」」」」

 

ぐしゃぐしゃに泣き、顔を歪ませ…

それでも笑顔でなだれ込んでくる艦娘達。

例え数時間とは言え、すべてに絶望したのは間違いない。

 

寂しかった!

 

もうどこにも行かないって約束したじゃない!!

 

うわぁぁぁあん!!!でーどぐううううつ!!

 

本物よね!?本当に本物よね?

 

この温もりが…

例え数時間でも…失うだけでこんなに心が痛いなんてー

もう…離さない…絶対に!

 

 

 

……戻ってきたんだなあ。

 

「よかったですね提督」

「本当に」

 

 

「お前達のおかげだよ」

 

 

 

 

「お前達って…?えええ!?!あっ!あの時の!!」

「また増えた!!ライバルが!!」

 

「どこで引っ掛けてきたのですか!?!?」

 

 

 

 

 

 

えへへと笑う2人は敬礼して言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「阿賀野、矢矧…たった今…この鎮守府に着任しました!この命尽きるまで…貴方と共に!」」

 

 

 

 

「先輩方!よろしくお願いします!」

「私も!お願いします!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よろしく…って!チョコ食べてるし!!!!」

 

「私らもーー!!あっ!机の上にある!!」

「うひょおおおおおおお!!!」

「新入り!?そんなことよりチョコだ!」

 

「メッセージカード…?」

 

 

「愛してる…って?!」

「私も愛してるよおおおお!!」

 

皆が飛びついてくる。

冬なのに…寒くないな。

 

 

皆に伝えたい。

今まで、ありがとう…。

これからもよろしくお願いします。

 

大丈夫。

ずっと隣に居るから…。

 

 

「大好きだぞーお前たちーーー」

 

 

「「「「「大好きです!もう何処にも行かせません!!!」」」」

 

 

 

 

見てる?

これが俺の今…。

こんなにも想ってくれる皆が居て…。

思い出は…多くないけれど、たくさん姉さんには貰った。

それでも…守ろうとしてくれてありがとう。

姉さんにも…次の人生で幸せが訪れますように…。

また…会えたら…いいなあ。

 

 

 

 

 

 

皆…。

言葉を紡げば幾らでも出てくると思う。

でも…心から思う事を皆に伝えたい。

  

 ありがとう

 愛してる

 

 

俺は一生を掛けてそれを皆に伝えて行くんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




100話でした!
ちゃっかりと2人にも合流してもらいました。



2ヶ月で100話まで投稿できるとは思ってませんでした。
ほぼ毎日更新…でした。
ぶっちゃけ…お気に入りも50とか行けば良いかなぁとか思ってました。
当初は50話で終わるかな?と思い、始めたのですが…途中から100話目指そうかな?と、思ったり。
少しずつ増えるコメントやお気に入りが嬉しくて、今は行けるとこまで行ってみようと思ってます!


長ったらしい話ですみません。
ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございます!

流石にこれからも毎日更新…という訳にはいかないですが
更新は続けていきますよ!(๑╹ω╹๑ )
まだまだ甘ったるい話やらアホな話やら…。

少しでもお楽しみ頂けるなら幸いです。


このキャラは?こんなネタは?等…
感想や評価、コメントやメッセージ等お待ちしています(๑╹ω╹๑ )!
いつでもお気軽にお願いします!


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100.5話 閑話 とある初恋の話

10.0.5話です。
98〜100話は6日に投稿してますので、未読の方はそちらから読んでいただきますようにお願いします!


とある女の子の話

会話方式ではないです。
一人称での話です。

何処かの話とリンクするので
少し読みにくい…かもです。


 

 

 

 

あなたの居ない世界は色のない世界

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が言ったらダメだろうけど…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もし本当に神様がいるなら…

 

どうか…私の大切なものを奪って行かないで下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初めになくしたのは…両親だった。

私は…孤児になった。

 

 

孤児院の生活は貧しくとも、それなりに楽しかった?

 

 

 

 

 

 

「今日から家族の一員だ…えーと…神崎 救君だ」

 

泣いてばかりの子だった。

いつも私の後ろをついて回る子だった。

 

「ほら!笑顔だよ!」

ずっと彼に言ってきた。

笑顔じゃないと幸せが逃げるよって。

 

 

 

彼は大きくなるに連れて、捻る事なく真面目になった。

 

高校に行きたいと言い、バイトを頑張ってコソコソとやり通った。

無論、他の子の相手も家でしてくれた。優しい子だった。

 

 

 

 

ある日、買い物をしている時に男性に絡まれた。

所謂、ナンパだった。

その時は既に教会で働くシスターだった。

 

「やめてください!」

 

「いいじゃないか!」

 

そんな時、無理矢理連れて行こうとする私を、彼は助けてくれた。

 

「やめろ、秋姉さんに何をしているんだ!」

 

「あぁん!?」

 

彼はボコボコにされた。

完膚なきまでにボコボコだった。

 

 

でも…嬉しかった。

 

その日からだったかな…意識し始めたのは…。

歳の差はあるけど…。

それが初恋たった。

 

 

彼が卒業を機に大学進学で一人暮らしを始めた。

寂しかった。

たまに帰ってきてくれる時には一緒にご飯を食べたり、出掛けるのが好きだった。

 

誕生日にプレゼントを貰った…ペンダントはずっと身につけていた。

 

 

 

 

彼が就職した。

余計に会えなくなった。寂しかった。

帰ってきても憧れの先輩の話と会社の話…寂しいなあ…。

 

 

彼が来る代わりに毎月送られてくるお金や物は凄く助かった。

でも…私はそれよりも…あなたに会いたいなあ…。

 

 

彼の話の先輩が亡くなったらしい。

自殺だったとか…落ち込む彼は見たくない。

やっぱり…守ってあげないと…。

 

 

 

 

 

 

最近…体の調子が悪い…。

 

病院に行って分かったことはどうやら治らない病気らしい。

彼には負担になって欲しくないから内緒にしよう。

 

私が死んだら…彼は泣いてくれるかな?

 

 

 

 

 

 

 

そんな中、唐突に私の初恋は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

彼が死んだらしい…。

電車に跳ねられたらしい…自殺な訳がない!きっと彼は…。

泣いた。

 

遺体にすら会えなかった。

葬儀すらも…。

 

 

ひたすら泣いた。

 

そんな事が…あっていいはずかない

何故…私の大切な人を奪うの?

何故私は…彼と結ばれなくとも…そばに居られるだけでよかったのに…それすらも奪ってしまうの?

 

何故?何故なの?

 

 

 

彼が残した物は保険金と悲しい気持ちだった。

悲しい…寂しいなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

病状は悪くなる一方だった。

でも…もう、生きる気力もない。

 

だって私の人生の中にもう彼が居ないから。

彼の居ない世界は……色はない。

 

 

 

 

 

 

そして、私は病気の進行で死んだ。

 

 

 

 

 

沢山の兄弟や家族が泣いてくれた。

 

でもあの人は居ない…。

私の為に泣いてくれない。

 

会いたかったなあ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故か…彼が見えた。

 

話しかけられないけど……彼は彼なりにやってるんだね。

沢山の女の子に囲まれて…妬けちゃうなぁ…。

何で私はその中に居ないのだろう…、

 

でも…そんな悲しい世界なの?

 

 

やっぱり…守らなくちゃ…。そばに…居たい。

 

 

 

 

 

 

 

そう強く願い続けると…

彼が来た。

 

会えた…。

 

 

帰って欲しくない。

だから幻でも良い…彼の両親を見せた。

 

そう、忘れて良いの…嫌なことも…

そして、私と…2人で…。

 

全て忘れて…?

 

 

ダメ!

見ないで!

ポケットの中の物…。

 

きっとあなたが一生懸命作ったんだろうね。

でも、私も欲しかったなあ…。

 

 

 

見ないで!

あなたの左手…

 

 

私が夢見た……何度も夢見た

あなたに貰いたかった…ソレを見ないで!

 

 

 

彼の手を覆う。

思い出さないで!

お願い…私を1人にしないで!!

お願い…。

 

 

 

呼んでもない艦娘が現れた。

 

 

お願い!艦娘さん!

邪魔しないで!

私から…また彼を奪わないで!!!

 

これ以上…私から…奪わないで…お願い…。

 

 

しかし、艦娘さんに私の手は払われてしまい、彼はソレを見てしまう。

 

 

残酷なのね…。

あーあ…おもいだしちゃった…かぁ…。

 

 

 

 

 

 

 

行くの…ね。

もう泣き虫なあなたは居ないのね。

私を守ってくれるあなたも…。

 

そうよね…。だってあなたの周りには、あなたを愛してくれる人が沢山いるもの…。

私も…行かなきゃね。

 

あなたの人生に幸せが溢れることを祈ります。

 

 

 

 

 

私は消えて、彼は行った。

 

死する者は生ける者を見送り…私の初恋は…終わった。

 

思いを伝える事なく…終わった。

 

 

でも…もし、叶うなら…

また生まれ変わっても…あなたに会って、あなたに恋したい。

 

あなたを守れるように…そばに居られるように…。

 

 

 

 

 

私の魂は溶けて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前が…明るい?

あれ?…私……アレ?

 

 

 

 

 

 

 

あ……私…は**

 

 

 

あぁ…運命って…変だね。

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたを前に私は言う。

 

 

提督、貴方に会えて……良かった。 一緒に頑張っていきましょう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

良かった…私の初恋は…まだ終わってなかったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神様は…居るのかも…。

 

 

 

 

 

これはまた別のお話で…。

 

 

 

 




最後のセリフはどう言う意味でしょうか?





少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。


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101話 提督 霞ト1日夫婦 ① 愛の詰まった罵り

めっちゃ口の悪い艦娘……以上。

 

…本来は…であるが。

 

 

 

これでも外に行けば、

「霞しゃまぁぁあ!!罵って下さい!!」

とか

「踏んでください!」

とか言われるドSキャラなのに…。

 

ファンからカミソリレターが届いたくらいなのに…

 

 

 

 

 

 

「起きなさいよぉ〜♡このクズぅ♡」

 

「あと5分…」

 

「仕方ないわね…なら、私も一緒に寝るわよ?くずぅ♡…」

と、布団に潜り込んでくる。

 

「提督…あったかいわぁ…」

 

霞は以前の一件以来、口調を悪くしているデレっ娘と化していた。

 

 

普段も鎮守府内で会えば…

「提督〜♡今日頑張ったから頭を撫でて?」

「はい!お菓子作ったから食べて?あーん」

 

「もークズぅ………好き…」

 

 

周りがブラックコーヒーを飲み始めるくらい甘いらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい!今日一日はあなたのお嫁さんよ?よろしくね?あなた」

 

「よろしくお願いします」

 

「そんなに畏まらなくても…」

 

 

 

あなたぁ(クズぅ)♡一緒に朝ごはんたべましょー?」

あれ?クズって聞こえるぞ?

 

 

おー…相変わらず俺の大好きな和食だ。

 

 

横に座る霞が食べさせてくれる…。

あーーん

この魚は私が焼いたのよ?美味しくて当然でしょ〜?

 

あら?口のまわりにご飯粒が… はい!とれたわよ?

ぱくっとそのご飯粒を食べる霞。

 

 

 

「あまぁぁぁぁあい!!」

 

「何だ…アイツは!!…あんなキャラだったか?」

「さぁ…でも本人は幸せそうよ?」

「甘いでち…糖尿病になりそうなくらい甘いでち」

「見てるこっちが恥ずかしいわっ!!」

 

 

 

 

 

「めっちゃ見られてるで…霞さぁん」

 

「今は私以外見たらだめよ?」

と、顔を霞の方へ向けさせられる。

 

 

「ぬうううううううん!!」

「ぐふうううううっ!!!」

 

数名が大破したぞ?

 

 

 

 

 

 

「ご飯が終わったらデートしましょ?」

 

 

 

「「「「…い…いってらっしゃい…」」」」

いつもより見送りが少ないのは…数名が入渠中だったから…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなた?」

 

道行く船の中で霞が話しかける。

 

 

「ん?なに?」

 

「私…幸せよ?」

 

「よかった…俺もだよ…」

 

えへへと笑う霞。

 

 

 

 

「あまぁ…」

陰で撮影する青葉ですらブラックコーヒーをがぶ飲みするくらいだった。

 

 

 

 

街で2人で歩いている時のことだった。

 

数人の男が近付いて来た。

あぁ…霞のファンね…。

 

「霞様ぁあ!今日も罵っ…って霞様?その男は…?」

 

ゲッとした顔をする霞。

俺とその男を交互に見た後…。

 

「ーッ!!ーーーこの豚ッ!馴れ馴れしくしないっ!」

 

俺えええ?!

霞は俺に向かって罵りを吐いた。

 

あぁ…霞は霞なりにキャラがあるんだろなあ…仕方ない…

ここは合わせるか

 

「も、申し訳ありませんんんん」

 

 

「おいおい!せっかく霞様が罵って下さってるんだぞ?ちゃんと頭を下げてだな…」

 

 

 

 

艦娘の人気と言うのは地味に大切だ。

贈り物や手伝いはありがたく、温かく迎え入れてくれるだけでも士気は高まる。

故に霞のようなタイプはキャラを大切にする。

 

特に霞や曙のファンは、グッズなぞ出そうものなら即買い!買い占め!を平気で行うような人ばかりだ。

 

 

霞の表情は…言わずもがな、イキイキしていない。

 

当たり前だ。

好きな人を罵って楽しい訳がない。

 

 

「ううっ…どうしよう…提督に罵倒なんかしたくないよ…。でも、この人達も…ファンだし……」

 

しかし、引いては鎮守府の為になる…と思えば、との葛藤が彼女の中にはある。

 

 

 

目にしてしまった。

 

「はやく頭を下げてお礼を…」

と、男が私の大切な人の頭を持ち頭を下げさせようとしたのを。

 

 

霞はキレた。

 

 

「このクズッッ!!何アンタは…軽々しくその人に触れてんのよッ!」

と、その男の手を叩き払った。

 

「!?」

男は驚いて言う

「か…霞様…?」

 

「その人はね…私にとって何よりも大切な人なのッ!アンタが軽々しく触って良い人じゃないの!」

 

 

「え?…そんなキャラ…霞様じゃ…」

 

「だったら何よ!私にだって好きな人も居るの!キャラとかそんなの知らないわ!好きな人を罵倒なんか出来ないわ!!」

 

「霞…」

 

「ごめんなさい…提督…私の勝手に付き合ってもらって…でも、私は提督に本気で罵倒なんか出来ない…」

 

 

 

「そんなの霞様じゃない!霞様は!霞様はぁぁ!!」

 

「モブ助…やめろ!!」

と、1人の男が言った。

「そうだ…推しの恋路をも応援する…それが真のファンだ…」

それに続く別の男。

 

「うぐうっ…ゔぁぁぁぁあ!!!」

大の男は泣いた。

ついでに他の男も泣いた。

 

「泣くな!同志よ!」

「飲もう!今日は飲もう!!」

 

 

男達はペコリと一礼して帰って行った。

 

「何よッ!…このッ!茶番はッ…?」 ゴッ ゴッ ゴッ

陰の青葉は壁に頭を打ち付けていた。

 

 

 

え?何この茶番?

救は混乱していた。

霞も混乱していた。

 

 

 

2人で街中に取り残され…気まずい雰囲気が漂った。

 

「気を取り直して…行こうか…霞」

「そうね…あなた…」

 

 

 




霞編
この鎮守府の霞は…超デレます!

続きます!デレも…


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102話 提督 霞ト1日夫婦 ② 愛の詰まった罵り

「あなたー!ランチはパスタにしたいんだけど?」

 

 

最近の流行りなのかな?パスタランチ。

 

「へぇ…あなたは、ボンゴレビアンコが好きなの?」

 

「うん、塩味とあさりが大好きなんだ」

 

「なら今度作ってあげるわ」

 

「本当かー?嬉しいな!」

「霞は…ナポリタンか」

 

「あ…甘いのが好きなの!悪い?」

 

「いや?良いと思うよ。俺もお礼に練習しておくよ」

 

「本当?ありがとうね?あなた」

 

 

 

等とやり取りを行う。

午後からはショッピング。

 

「この服どう思う?」

無難な服を提督に見せてみる。

 

「…こっちのが似合いそうだな」

本当は買いたい服を持ってくる提督…。

ちゃんと見てくれてるんだ…。

 

 

 

「なら、そっちを買う!」

 

 

 

 

「この服…あなたに似合いそう…」

と、一生懸命選んでみた服を勧める。

 

「霞のオススメなら買う!」

私のおすすめなら…か…ふふ…嬉しいじゃない。

 

 

「あら!たぴおかとか言うものがあるわね!2人で分けましょう?」

 

 

「期間限定…お化け屋敷…?」

 

「霞ィ…行こうぜぇ……」ニタァ

 

「…べべ別に!怖い訳…無いわよ!!逝ってやるわよ」

 

 

 

 

 

「ばぁぁあー!」

と、お化けが出てくる。

「きゃぁぁぁぁあ!!!クズうううう!」

 

 

やべぇ…面白えw

…隠れてみるか…。

 

 

「あれ!?あなた!?提督!?どこ!?あの野郎…私を置いて…ちょっ!!きやぁぁぁぁあ!!出たぁぁあ!クズううう!!助けなさいよおおおおおお!!!」

 

霞の叫び声は止まなかった。

「いぃぃやぁぁぁぁぁぁぁあ!ごめんなさいいいいい!!」

 

 

 

「…大したこと無かったわね!」

ガックガク脚を震わせながらドヤ顔で言う霞。

 

「てか!アンタ!ひどいじゃない!奥さんを放って隠れるとか!別に怖くなかったからいいんだけど!?別にいいんだけど!?」

 

 

「ごめんて」ブフゥ

思わず思い出し笑いをする。

 

「ちょっ!笑うなぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

夕焼けを見ながら2人で歩く。

 

霞に俺は1つの質問をぶつける。

「なあ霞?」

 

 

「なあに?あなた♡」

 

「無理して無いか?」

 

「…何が?」

 

「そのキャラ…大淀との一件以来だろ?」

 

霞は黙り込んでしまった。

不安だった。自分を押し殺してそのキャラを作っていたなら、いつか爆発してしまう。

霞が壊れてしまう。

 

だから…はっきりさせよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛情の裏返し…と言えば聞こえはいいかな。

 

距離感が掴めない。

この人はどこまで無茶を聞いてくれるのか?

どこまで…どんな私までなら大切にしてくれるだろう?

 

期待をすればする程に…裏切られた時のダメージは大きい。

勝手に裏切られたと思う場合も同じ。

 

この提督はどこまで信用出来るのだろうか?

口では大切にする…と愛する…と、いくらでも言える。

 

なら…ここからはダメという境界線はどこからなのか?

 

 

罵倒してもヘラヘラとしてくれる。

ダメだぞ?と注意してくれる。

だから安心感を得られた。

 

いつしかそれが当たり前になった。

 

しかし、大淀に叱られた。

それ以来…素を出すようにしてみた。

そういう意味では、確かに大淀との一件は今の私に大きな影響を与えていた。

 

 

そして…今の私…コレが素なのだ。

 

「少し?口が悪くて…、甘えん坊で…、独占欲が強くて…、一途な…」

 

「あなたとバカを言ったり、手を繋いで歩いたり…一緒にご飯食べたり、甘ったるくイチャコラしたり…こうやって夕焼けを見ながら歩くのも好き」

 

 

「コレが素の私よ?」

 

「周りは甘ったるいと言うわね。引く艦娘も居たわ。でも…私がそうしたいから…そうしたの。あなたは…ううん、提督は…1日夫婦じゃなくても…受け止めてくれる?」

 

きっと私は震えてるだろう…泣きそうだろう。

 

 

 

提督は黙った。

 

 

 

 

 

…嫌だったのかな?

合わせてくれてたのかな……。

罵倒キャラの方が…いいの?

 

 

 

 

 

 

 

提督はポケットから小箱を取り出したー。

 

それは皆が夢見る、欲しがるもの。

生きる中で絶対に手に入るとは限らない物…。

 

それは…提督の無言のOKだった。

 

 

 

「ならよかった…霞。コレを受け取って欲しい」

 

 

「……ムードとか無いの?もっと……このクズぅ…」

 

「受け止めるってことよね?離さないでよ?絶対に」

 

「離さないさ…」

 

 

「つけてよ……」

左手の薬指にソレは通される。

 

あなたの真剣な眼差しが…なんとも嬉しい。

 

 

その証が私にコレは現実だよと教えてくれる。

 

たった数グラムだけど…左手が少し重くなった…幸せな重さ。

 

「それだけ?」

 

 

「え?!」

 

「女の子から言わせるの?」

 

「……いいんだな?」

 

「ええ!もちろん」

 

唇が重なり合ったー。

 

幸せ…本当に幸せ。

 

 

 

「恥ずかしいな…」

 

「慣れてるくせに!でも…幸せ!ありがとう。あなた?」

 

「帰りましょう?」

 

 

2人で歩く。足取りは重く無い。

不思議なものね。

帰りは寂しいはずなのに…逆にドキドキするから。

私は愛する人を見て笑顔を見せる。

 

「また行くわよ?」

 

「ああ!行こうな」

 

 

 

 

 

 

 

 

「お化け屋敷の件は許してないからね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…って感じだったのよ!」

 

「霞ちゃん……」

「自慢じゃないですか!!ズルイ!ズルイ!」

 

「別にいいでしょ!夫婦なんだから!!」

 

「さー!今から2人きりのディナーよ!」

と、幸せそうに笑う霞。

 

うぎーーー! ずるいいいい!

うがーー!! 早く順番こーーい!!

 

駆逐艦の部屋近くはいつまでも騒がしかった。

 

 

 




投稿です!

今回もよろしくお願いします!

少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!


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103話 そして引き裂かれる 〜もしくは予想されていた未来〜

この世に永遠など存在しようか?

そんなものは存在しない。

理屈では分かっていても…人はそれを在るものと信じてしまう。

 

 

 

 

 

いつも一緒だと思った…今日も…明日も一緒だと思った。

 

しかし、その時は突然やって来た。

 

 

残酷にも…引き裂かれた俺達…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやなのっ!提督…!提督!!」

 

 

 

「いやぁぁ!!!行かないでよおお!私を1人にしないでええ!!!」

 

 

 

 

泣きながら叫ぶ艦娘…ゴーヤ。

しかし、その声は届くことはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「小学生の誘拐犯確保〜。はい、話は署で聞きますからね〜」

 

「無実ですって!!」

 

 

 

 

 

 

 

「お嬢さん?こちらへ…怖かったでしょう?」

 

「提督さんんんんんん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんにちは!提督です。

 

 

 

ただ今…。

所謂、パトカーの中です。

提督インザぱとかーです。

 

…誘拐犯に間違われて警察署と言いますか…えへへ、そこへ連行中です。

 

 

 

 

 

 

取調室…。

 

「で?君は?」

いかにも、ベテランなおっさんが話しかけてくる。

 

「西波島鎮守府の提督です」

 

「さいはとう…あぁ、あそこね?……で?そこを拠点に人身売買でもしてんの?」

 

「は?!」

軍人ですけど!?

 

 

「まあ…君ねえ…目撃証言が多いのよ

 

喧嘩別れする

通行人を殴る

女を泣かす

公共の場でキスする

別の女と歩く

少女とも歩く

 

今回は街中でスクール水着?……アウトだろ……」

 

スクール水着は知らんわ〜58のあれだし…。

 

でも、事実だわー

言い逃れできないわー。

 

 

「まあ…特定の人となら痴話喧嘩?となるだろうが…なぁ」

「さっきの子はどう見ても小学生だろ?そういうプレイなのかもしれねえし…あとは、誘拐か人身売買しかねえよ」

 

「な?最近流行ってんだわ…そういう事件…。な?吐いて楽になれよ…な?な?カツ丼…やるからよ」

 

 

 

 

 

いやいやいやいやいやいやいやいやいやいや

守る側です!どちらかと言うと守る側です!!

カツ丼はもらいますけど!!

 

 

 

弁護士を…!知り合いに居ないけど!

 

「元帥に!御蔵元帥に連絡してくれええ!なら俺の素性がわかるから」

 

 

 

 

ふむ…と刑事が、電話をしに行く。

 

お?戻って来たな…にこやかだな!大丈夫そうだな…。

 

「…『元帥閣下は只今旅行中です』だそうだ」

 

 

 

「ジジイイイイイイ!!」

 

「おまっ!本当にお前が海軍の所属だとして…元帥閣下にジジイはダメだろ?やっぱり黒だな!海軍の人間が閣下をジジイ呼ばわりするはずがない!」

 

 

「うぐぐ…」

まあ…そうだよね…。

 

 

 

 

ちなみに呉の時成さんも実家に帰省中だった。

麗ちゃんもだった…。

 

 

58はカウンセリングを受けてるらしく話がでしない。

というか、させてもらえない。

 

鎮守府の艦娘に頼もうものならここら一帯は塵すら残らないだろうし……。

 

詰んだわ…。

 

 

 

 

おーおー!

もう好きにしてくれや!!

 

 

 

「救君…何してるの?」

 

 

 

「麗ちゃんこそ…」

 

 

 

「救君の身元引き受け人として…」

 

大本営の大淀から連絡を貰い来てくれたらしい。

 

「女神が居た…」

 

「泣くほど!?!?」

 

 

 

「えーと?あなたは…?」

 

「里仲 麗です。蒙武鎮守府提督をしています」

 

「で?そこの人との関係は?」

 

「同僚であり…上司であり……(未来の)旦那です」

 

「おい!?麗ちゃん!?」

 

「何!?アンタ結婚してるのに…他の女を取っ替え引っ替えしてんのか!?」

 

「アレは全て部下の方で…艦娘の方です」

麗が目線で合わせろとウィンクしてくる。

お前そんなキャラだったか!?

 

 

 

「あ…提督ってのは本当だったのか…」

 

「何度もそう言ったじゃないですか…」

 

「とは言え…アンタも悪いよ…」

 

「というかさ、そんな綺麗な奥さん居るならさ…過度なスキンシップは辞めた方がいいだろう」

 

「いや!だから「強く言って聞かせますね!紛らわしくてすみませんでした!()()()()()()()

 

 

麗…ちゃん…

 

 

 

「提督うううう!よかったのお!」

58が部屋に入ってきた…。

カウンセリングから解放されたか…よしよし。

 

 

「誤解があったようで…すみませんでした。艦娘の方で奥様だそうで…」

と、婦警の人が言う。

 

「え?」刑事さん

「え?」麗ちゃん

 

2人が俺を見る。

 

「何言ってんだ!この人がその人の奥さんだ」

 

「え?」 58ちゃん

「え?」 婦警さん

 

2人が俺を見る。

 

 

 

 

 

 

4人ともが俺を見て言う。

 

「「「「え?」」」」

 

 

俺…知りません……。

 

 

 

 

結局、婦警さんに「女の敵です!死刑です!」って言われただけだった…。

 

 

 

 

つ…疲れた…

「提督さん…大丈夫なの?ごめんね…街中で水着になったから…」

 

そう…おニューの水着をみてほしい!といきなり街で水着になったらそりゃ警察も呼ばれるて…。

 

「いいんだぞー?でも…今度からは外ではダメだからな」

 

「提督さんの前だけにするね?」

 

その言い方はなぁ……。

麗ちゃんの視線が痛い!いたたたたた!

 

 

 

「そこのご家族さん!今ならオープン記念で安く料理が食えるよ!どうだい?お嬢ちゃん!お腹空いてないかい?」

 

「空いてる…かも」

 

最近オープンした寿司屋らしい。…家族ねえ。

 

「私が…奥さんで、58ちゃんが私達の子供ってこと?」

なんかめっちゃ上機嫌な麗ちゃんに微妙な表情の58。

 

 

 

 

後にロリ娘の集合会議が行われるきっかけとなった事件だった…らしい。

 

 

 

 

 

寿司はうまかった。

58は早く大人になりたいと言っていた。

わさびは…まだまだダメらしい。

 

麗ちゃんは超上機嫌だった。

 

 

 

 

 

 

「おかえり!……プッ…ダメだ…アハハハハ!」

 

「…ちょっと…笑ったら…プッ…失礼で…プククク」

 

「どした?皆」

何やら皆は笑いを堪えてるらしい。

何か楽しいことでもあったか?

 

「あーーー!」

と、夕立がこちらを指さす。

 

「誘拐犯さんがいるっぽいー!釈放されたっぽいー!?」

 

「「「…ブフーーーッ アハハハハハハ」」」

崩れ落ちて、腹を抱えて笑う艦娘達。

 

 

ドォン!

「夕立…?どういうことだ?」

夕立に壁ドンをして問い詰める俺。

 

「はぅ///…じゃなくて…あの…」

 

「早く言うんだ…よぉ…」

 

「ぽぃぃ〜…アレを見るっぽぃぃ」

 

 

指差す先には…

青葉の新聞で…俺が街中でパトカーで連行される瞬間の写真と記事があった…。

 

[提督は誘拐犯だった!?逮捕の瞬間!]

本日、街中で西波島の提督が逮捕されるという……。

 

 

インタビュー記事

「いつかはやると思ってました」

「悪は滅びます」 取材協力…青葉さん

 

 

 

「ふーん♪ふーん♪今日は最高の記事が書けたわ!インタビューは私の捏造だけど……あれ?…提督??」

 

 

鼻歌を歌いながらこちらへ来る青葉と目があった。

 

 

「青葉ァァァア!!!!」

ビリィと新聞を破りたかったが…青葉の苦労の作品なので、それはせず…代わりに…

とりあえず青葉にキャメルクラッチからアイアンクローをお見舞いした。

 

「提督…?話せばわかるよ!娯楽だよ娯楽」

 

「この手が光って…以下略!シャイニングううう」

 

「フィンガァァァァア!!!!」

 

「ぎゃぁぉあ!!!!ギブギブ!いたたたたたた!!!」

 

 

1週間は提督でなく誘拐犯と呼ばれた…。

 

罰として夕立はベルファストにメイドにさせた。

 

 

 

「ご…ご主人様ぁ…青葉…アレが欲しいの…黒くて硬い…」

 

 

「あん?」

 

「一眼レフの…カメラ…返して欲しいのぉ…」

 

「言葉遣いッ!!」

 

「くっ…甘える作戦はダメか…」

 

「……武蔵…」

パンパンと手を叩くと武蔵が来た。

 

「承った…戦艦コースだな…」

 

「え?」

青ざめる青葉。

ガシィと捕まれた青葉が連行される。

「いや!あのトレーニングはもう嫌ッ!ごめんなさい!ごめんなさいいいいいいい!!!!」

 

悪は去った…コレで鎮守府も平和に…。

 

 

 

 

吹雪がノックをして執務室に入ってくる。

「誘拐犯さん!遠征資料を持ってきました!!」

 

 

「ブフッ…」

大淀ですら吹き出してしまった。

 

 

 

 

 

 

……空はこんなにも青いのに。

 




シリアス?
はい、シリアスですね(提督の人生的には)


お気に入り400…
ありがとうございます(´;ω;`)ありがとうございます

ふざけた小説ですが…これからもよろしくお願いします!

感想等お待ちしています!
ぜひせひ、よろしくお願いします!


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104話 ベルファストのメイド教育 大淀(メイド) 抜錨します! ①

シリーズ ベルファストのメイド教育


「金剛様? 桜赤城様?……榛名様に……ここには…霞様…」

どうやって入ったのか…

 

そして布団の中に…

「桜大鳳様…」

 

「きゃっ!…寒いじゃない…」

 

「きゃっ!じゃありません」

 

「いいじゃない!あと…少しだけ…ね?」

 

「だめです」

 

「…あなたも反対側に行っていいから」

とご主人様の右側をポンポンと叩く。

 

「だめでございます。もう起床時間です」

(くううううう!行きたいですよおおお)

 

葛藤する大淀平静を装っているが、その目付きは大鳳を指揮官から遠ざけるには十分であった。

 

「わ、わかったわよお…退くわよ… またね指揮官様」

と、大鳳は指揮官の頬にキスをして出て行った。

 

 

一通り皆を追い出すと救の隣に行き、

「ご主人様…朝でございます」

と、声を掛ける。

(はぁぁあ!ご主人様ぁ〜私もキスしても良いですか)

 

「…ん、ベルと大淀?おはよう…」

 

(ぬぁあぁあ!!せっかくのチャンスが!!…はっ!!私はダメなメイドでございます)

 

「おはよう御座います。ご主人様」

 

「どうしたの?ベル…顔赤いよ?」

 

「いえ…(自分と)格闘してたもので…」

 

「大丈夫…?」

 

「はい、ご心配痛み入ります」

 

 

 

 

 

「と…こんな感じの毎朝です。」

 

「…あの方にプライバシーというものはないのでしょうか?」

 

「…これでも減ったのですよ…」

 

 

 

 

 

 

「メイドをやってみたいと思う艦娘……」

ベルファストの前にはメイドをやりたいと言う艦娘の名前が並んでいる。

金剛、榛名、電、雪風、赤城、鳳翔、羽黒、足柄、武蔵、潮…

またまだいるわね…。

 

電様、羽黒様、潮様はドジっ子属性がありそうで、ご主人様の貞操が心配ですね。ラッキースケベは許さない。

 

金剛様と榛名様は正統派過ぎて…

 

清霜様と霞様と…曙様は…ツンデレメイドは…受けそうなので却下します。

 

しかし、今回は……

 

 

大淀様です。

私から声を掛けて研修中の大淀様です。

 

 

きっとしっくりくると思うのですが…。

自分の殻を破ってもらう為…

そして、メイド部隊を立ち上げる為!!

 

やりましょう!!

 

 

 

 

 

研修は基本的にはマンツーマンでの活動だった。

言葉遣い…は最初から問題なかった。

ご主人様と呼ぶのに恥じらいがあるくらいだった。

 

「はい、大淀様。もし、ご主人様に迫られたら…どうしますか?」

 

「地下倉庫にブチ込みます(建前)」

 

「はい、鼻血を拭いてから言ってくださいね」

 

 

「ご主人様がスカートをめくってきたら?」

 

「それはマズいですね…履いてませんから…」

 

「履きなさい…絶対履きなさい!!」

 

「冗談です」

 

「冗談も大切ですが…ご主人様の前でそれを言わないように…」

 

 

 

 

 

 

研修も終わり…ついにメイド服に袖を通す日が来た。

 

 

 

 

「………ビューテフォー…」

 

思わず普段のキャラを忘れるベルファスト。

 

それほどに…彼女はのメイド姿は…メイドだった。

ロングヘア…メガネ…スレンダーボディ

丁寧口調…気遣い…。

 

 

この娘ッ!この娘こそっ!メイドにすべき人材よおおおお!

 

「あの…何か恥ずかしいのですが…」

 

恥じらい…ですと?!

この娘…心得ているッ!

そう!メイドと言えば…ご主人様とのムフフなアクシデント…。

 

必ずや…最強のメイドとしてこのベルファストの前に立ちはだかる日が来るでしょう。

 

 

 

 

「では、今日から独り立ちでございます。ご主人様を起こして来てください。いいですか?ご主人様です。ご提督様でもありませんし、ご主人様ァ!と布団を剥ぎ取るのもNGでございます」

 

「何のことですか?」

 

「偉大な先人達の教えでございます」

 

「あと、私の事はメイド長と呼ぶように…」

 

 

 

 

 

 

 

 

ご主人様の部屋に入り、一礼する。

 

「ご…ご主…人 さま…お目覚めの…」

 

一礼から顔を上げると…

 

「ニヤニヤ」

そこには血走った目でニヤニヤする提督が居た。

 

「うわ!怖っ!ホラーです!!!!」

思わず失礼なことを言ってしまいました…。

 

「…って!!起きてるじゃないですか!!!」

 

いつもなら寝ている提督が起きていた。

 

「…正直大淀のメイド姿が楽しみすぎて寝ていない!」

 

「ドヤ顔でいうことですか?」

嬉しい反面恥ずかしい反面…この執念が怖い。

 

 

「さて…では、改めまして。おはようございます、ご主人様。メイドの大淀でございます」

 

こうして私のメイドデビューが始まった。

 

 




続きます!


1日夫婦シリーズ
居酒屋 鳳翔シリーズ
ベルファストのメイド教育シリーズ
青葉の取材!シリーズ
明石と夕張の工廠シリーズ

が、存在してます。
青葉にしても明石にしてもまだ出来てませんけど…


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105話 ベルファストのメイド教育 大淀(メイド) 抜錨します! ②

「ご主人様?」

 

「んー?」

 

「そのニヤケ顔をやめませんか?」

 

「無理♪だって似合ってるもん!ウッヒョオオオ!」

 

「徹夜明けのテンションで…高いですね。顔面は蒼白ですけど…」

 

「3徹してるからね」

 

「そこまで楽しみだったのですか!?」

 

「当たり前だろ!メイドだぞ!?メイド!あの…あの大淀がメイドをするんだぞ!?寝るまま惜しんで見たいわ!!クッッソ真面目な権化と言っても過言ではない大淀が…メイドデビューだなんて…あぁ!俺はもう死んでもいい!」

 

「過大評価な気がしますが…」

 

「かつて…2人の艦娘がメイドにチャレンジした…」

 

「武蔵さんと電さんのことですか?」

 

「武蔵はツンデレメイド…ではなく、スパルタメイドだった…アレはガチンコで300の世界のスパルタだ…。毎朝布団から引き摺り出され…。朝食からプロテイン…飲み物もプロテイン…プロテイン、筋トレ、プロテイン、筋トレ、プロテイン、筋トレ…。あのベルファストですら…

「武蔵ぃぃ!何やってるんですかァァ!!!!」と叫び、全力ダッシュで来るくらいだぞ?」

 

「えぇ…」

 

「電は…「はわわ」のセリフから何人の艦娘を大破入渠に追い込んだことか…。ちなみに俺の密かな楽しみの雑誌の懸賞で当たったコップ3つと、ようやく完成させたジグゾーパズルがあるんだがな」

 

「部屋から消えてますね」

 

「あぁ…全滅だからな…」

 

「おいたわしや…ご主人様…」プフッ

 

「笑った?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ…私としても…日々の業務に+α増えるくらいなので…。ま、まぁ…この姿をそこまで喜んでもらえるなら…嬉しい…で…す」

 

「デレがキタぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「やかましいです、ご主人様」

 

「ツンデレ!?」

 

「まあ、冗談は置いておいて…何かご要望等はありますか?j

 

「膝枕…」

 

「は?」

 

「眠いんだ…膝枕で寝させて…」

 

「……ひざ…まくら」

 

 

 

 

 

 

こうして私は提督に膝枕をしている。

 

 

「てーとくー!漫画の続き…貸し……て」

 

「シーーーッ  ただ今ご主人様は寝ています」

 

「お…わかりました……。てか…大淀さん…お似合いです」

 

「好きで膝枕やってるわけではないです!この人がしてと言うから……!!」

 

「起きますよ?」

 

「む…むぅ…。まあ…似合ってると言ってもらえたのはありがとうございます」

 

「ちゃっかり頭撫で撫でしてますしね」

 

「〜〜〜ッ!////」

 

 

 

 

 

古鷹がいなくなった後…

提督の頭を撫でながら寝顔を見る。

 

実は今のこの状況、そこまで嫌いじゃない…いや、好きだ。

「平和そうに寝てますね…」

 

私がメイドをやると言った時から一眼見ようと寝ていない…。

バカですよ…。なのに嬉しい。

私の為に3日も寝る時間を割いてくれたと思うと…嬉しい。

 

「私だって…頭撫でられたり…もっとご主人様との時間が欲しいのですよ?」

 

「普段は…面と向かって言えませんが……お慕いしております……いえ、大好きです…」

 

そっと…起こさないように体をかがめて膝枕のまま軽く抱き着いてみる。そのまま…頬に…唇を…。

 

 

「私は…何をしているのでしょうか…」

 

 

「頬だけ?」

 

 

「!!!!!?!?!!」

起きてやがった!コイツッ起きてやがったッ!!!!!

 

 

あたふたとする私にご主人様は笑いかけます。

 

「少し休憩がてら一緒に横にならない?」

散々寝てたでしょうに…。

 

「し、仕事中ですから」

 

「なら…ご主人様からのお願い」

 

「む…ご主人様のお願いなら仕方ない…です」

 

失礼します、と横に入る。

 

「で?続きは?」

 

「…ご主人様…」

 

「面と向かって…聞きたい」

恥ずかしいですよ…。でも…今の私なら…。

 

「…好きです…」

と、口へ…唇を…。

 

 

「ありがとうな」

そして…提督はガサガサと何かを取り出して私の左手に………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大淀?ご主人様……って2人で寝てます…ね」

「おや?」

「……いいもの貰ってるじゃないですか…むぅ…羨ましい」

 

2人は手を繋いで寝ていた。

その左手にはキラリと光るモノがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大淀?コレ受け取ってくれる?」

 

「今言いますか?普通」

 

「大淀からの逆プロポーズに乗らせてもらう!」

 

「プ!プロポーズですか!?違いますよ!!」

 

「あら…違うのか…」

 

「あ!いや!違わないですけど……うーー。受け取ります!ご主人様からの贈り物…喜んで受け取ります」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良かったですね大淀」

 

「仕事中にすみません…」

 

「でもどうでしたか?」

 

「……またやりたいです」

 

「はい。やりましょうね。…でも」

 

「でも?」

 

「あなたが寝てる間に仕事を肩代わりしたので…まだメイドの仕事が終わってませんので……ねぇ…」

 

ヤバい!そうだったぁぁ!!

 

 

「はいっ!今から!お手伝いします!!やります!」

 

 

 

 

メイドはーー大変だった。

 

 

 

 

「私も…左手に欲しいのに…ご主人様…」

 

 

 

 

 



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106話 今更の鎮守府紹介という名のサボり

この西波島鎮守府は物凄い僻地にある。もう僻地も僻地!

左遷なの?コレ?ってくらい僻地!!

 

 

んで…島には鎮守府以外何もない。本当…自然しかないよ。

 

テレビもラジオもあるけど車は走ってない。

 

 

軍からの物資何日かおきに来る。

食糧とかは注文した次の日とか。

渡船もあるけど…しゃーなしでやったるわのレベルでの運航…だったのが最近では地元住民の好意もあり増えた。

 

深海棲艦もあまり重要視してないんだろねってくらい来ない…。

たまに強いの来るけど…。

 

 

砂浜もあるよ?キレーだよ?

白い砂浜!蒼い海! 

たまに流れ着く艦娘… ホラ、アークロイヤル釣ったくらいだし?

 

 

 

娯楽?ある程度は鎮守府にあるけど島から出るしかないよね。

マジ本土はあんなに発展してるのにね…。

鎮守府内でも一応生活には事足りるけどショッピングとかデートはやっぱり出かけないとダメ。

 

 

住民?俺1人だけど?後艦娘だけ…。

 

誰か来てよ本当。

 

 

 

良いとこないねえ…。

 

そんなわけで…。

 

 

はい!まずは執務室。俺の戦場ね♡

執務時間中は執務担当艦の大淀、秘書艦が常駐。大淀の非番の日は秘書艦が2人になる。メイドのベルファストも居る。

といっても、ベルファストは妖精さんや駆逐艦、メイド(仮)と掃除や洗濯を行ったりもする。

 

 

提督用大机と秘書用机が3つ。

応接用のテーブルとソファーに作戦用のボード!

ティータイム用のテーブル等…実は色々と揃ってたりするよ。

 

隠し部屋もあるぞ!

もうエロ本は無い!ここに何を置こうかと思案中。

 

 

んでここ!食堂 

間宮がメインと思われがちだが、ピークの時のヘルプくらいで実は伊良胡がメインだったりする。

でも、当の本人は恥ずかしがり屋なので…あんまり出てこない。

100人を超える収容人数で、かつ料理はそんなに待たせないのがモットー!

 

でも食生活には厳しいから…

カップ麺とかばかり食べてると伊良胡に怒られる…てか間宮に泣かれた。

 

 

間宮は、甘味処 間宮の方がメイン。

甘味処だからスイーツがメイン。マジ艦娘に大人気!

あんみつからパフェから…それはもうたくさん。

俺も甘いの好きだからよく行くぞ!療養中も脱走して行くくらいにな!

 

だから伊良胡にクッソ怒られる…。

 

 

 

艦娘寮

特段の事情のない限りは 2〜4人での相部屋生活だ。

部屋もなかなかに広く、個性豊かなインテリアになっている…はず?

何名かは絶対に中を見せてくれないor見ない方がいいのも居る。

 

ポスターがどうのこうの…私物がどうのとか…聞こえたな。

最近、よく物がなくなるんだよね…。

 

 

ちなみに旧設に比べて増設した所には、深海メンバーと アズレンメンバーの部屋もある。

あと何故か麗ちゃんの部屋もある…何故?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はい…俺の私室…。プライベートレスルーム

マジね…よくみんな入ってくるけどさ?何が怖いって?

鍵かけてるんだけどって事…下手すら週に一回は鍵を変えたりする。

変えても変えても無駄!だいたい誰かしらは居る…。

 

ちなみにこれは鎮守府内での話なんだけど…どこに居ても夜に「夜戦」とどれだけ小さく囁いても奴が来る…気を付けろ!

くっ!聞こえやがったか!  来るぞ!!

 

「夜戦って聞こえたよー!!やっせん!やっせん!」

 

神通さん…ええ…はい、お姉さんを引き取りに来てください。

 

 

 

 

 

 

家具は色んな艦娘がくれた家具やらが沢山ある。

ぬいぐるみとか置物とかが多いよ!

大体はカメラが盗聴器がついてるらしいよ!

 

たまにゼク◯ィとかたまご◯ラブとかおかれてるよ!

既成事実は無いはず!………無いはず…。

 

 

…なのに今日は…ひよ○クラブ…だと……?

 

…有給取ろ……。

 

 

 

工廠…はスルーかな…

 

「ちょちょい待ちー!」

「スルーは許されません」

 

しかしまわりこまれてしまった!!

 

「嫌だよ…」

 

「「何故ですか?」」

 

「だってお前ら…目がイッてるもん…」

 

「大丈夫ですって…82時間ほど寝てないだけですから…」

 

「はい…全然…余裕ですよ? さあ提督?建造しますか?建造しますか?それとも…建造しますか?」

 

「建造しましょう?…艦娘建造して…更なる修羅場を迎えましょう?」

 

「嫌ですけどッ!そんなの嫌だよッ」

 

「……チッ」

 

「つまんね…」

 

「おい」

 

「冗談ですって!ならこの薬とかどうですか?」

 

①惚れ薬

②提督の記憶を消す薬

③性格改変薬

④世紀末な薬

 

「捨ててこい…今すぐ…捨ててこい」

「④は何なんだよ…」

 

「北斗○拳みたいな見た目になります」

 

「蒙武の奴らみてーになるのかよ」

 

 

 

 

 

「いつでも待ってますからね?」

俺は逃げるように工廠を後にした。

 

そろそろ何か作らせないと…奴らは危険だな…。

 

 

 

 

…あれ?鎮守府内に落ち着ける場所がなくね?

…食事処の鳳翔が開いたら行こう……。




さて…誰の贈り物が危ないのでしょうか?

工廠関係のネタや
薬のネタはそのうち出ます…多分。


仕事がッ立て込み始めてッ
少しだけお休みを下さいッ…


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107話 提督 不知火ト1日夫婦 ① 夢の私に

「…………」

 

「………」

 

「…不知火?」

 

「…只今より、よろしくお願い致します。」

 

「うん、よろしくね?」

 

 

 

 

「おはようございます。良いお目覚めですか?」

 

「朝食の用意が出来ています。簡素なものですが、お召し上がりください」

 

「衣服の用意も出来ております。こちらをお使い下さい」

 

 

 

実に淡々としているように思える。

ーーが、実の所はそうではない。

 

 

 

 

 

「おはようございます。良いお目覚めですか?」

実に、3時間前からベッドの横に居るのだ。

不知火にしては珍しい、優しい…慈しむような表情で愛しい人を見ている。

 

 

「朝食の用意が出来ています。簡素なものですが、お召し上がり下さい」

この日の為に伊良胡に頼み込み、料理の練習をしていた。

下処理や準備も念入りに行い作った自信作である。

 

 

「衣服の用意も出来ております。こちらをお使い下さい」

今日のデートの為に提督に用意した服である。

なぜサイズまでバッチリ知っているかは謎だが…彼女の着る系統に近しいデザインとなっている。

 

 

 

 

 

 

「んー!俺の好きな和食メニューだ…!」

ほっけの塩焼きに、青菜の卵とじ…味噌汁…。

素晴らしいじゃないか!!

 

 

「そうですか?まぁ、喜んで貰えたなら作った甲斐があります」

少し、ほんの少し顔を赤らめた不知火が居た。

 

「いただきます!!!」

 

「お召し上がりください」

 

 

「今日は何する?」

 

「提督のしたい事を…」

 

「不知火のしたい事は?」

 

「私は…提督と居られるだけで幸せです」

 

これも事実。

ただ、ゆっくりとこの人の隣で居たい。

座ってるだけでもいい。一緒にうたた寝するだけでもいい。

普段から大変な提督にしんどい思いをさせたく無い…どちらかというと少しでも休んでリラックスして貰えたら…。

ただ、この人と時間を共に出来れば…それ以上の幸せは無いのだ。

 

 

……

んー!間が持たん!

 

 

 

「提督?」

 

「不知火!出掛けよう」

 

私の手を引く提督。

 

 

「おっ!今日は不知火かぁ」

「不知火〜楽しんでおいでよー!」

 

「提督も頑張ってね〜」

 

「「「「行ってらっしゃい」」」」

 

いつもよりスムーズだね。

不知火は…大丈夫な艦娘認定されてるんだろなあ…。

 

 

 

 

「何だか不思議な気分ですね」

と、甲板に立った不知火が言う。

「そう?」

 

「普段は自分で海に立ちますからね…。その、自分のペースで無い動きに身を任せるのは…慣れてないと言いますか」

 

と、ベンチに座るので俺も横に座る。

 

「…ッ!」

 

難しい顔をする不知火。

 

「あ、嫌だった?ごめんよ」

と、距離を空ける。

 

 

 

「あ…」

思わず提督の袖をキュッと握る。

 

違うんです。

離れないでください。

恥ずかしいのです。

 

 

私は目つきも悪いですし、皆さんみたいに愛嬌がある訳ではありません。

提督にあまり好かれてないのではないかと思ってしまうのです。

 

 

「ん?どした?」

 

「い…いえ…何でも…」

 

 

本当ならば…手を繋いだり…抱きついたりしたい。

でも…。

怖い。

 

好きになればなる程…もし、離れた時が…辛い。

 

 

 

船から降りる。

提督の後ろをついて歩く。

 

「手…繋がないの?」

提督が聞く。

 

「え、あの……」

 

「甘えてもいいんだぞ?今日…だけでなくてもな」

 

「すみません…やっぱり不知火は…!!」

 

不知火は走って行ってしまった。

 

 

 

 

「不知火ー!どこだー!!」

 

不知火を探す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やってしまった…。

提督の好意も無駄にして…私は…。

 

 

そんな時、1人の男に声をかけられた。

「お前…艦娘か?」

 

 

「でしたら何か?」

 

そうであると認めた瞬間、男の表情は一変した!

 

「お前らのせいで…俺の家族は!!!!」

ナイフを取り出す男。

ひらりと躱す不知火。

「このっ!!」

 

この程度…造作もない!

 

しかし…。

「くっ…」

しまった…艤装は装備していない…。

脅しにもならない。

 

何より…民間人に手を出しては、提督が困る。

 

 

 

「あ…」

しまった…袋小路か…。

壁まで追い詰められる。

 

「逃さねえよ!!!」

男が迫る。

 

 

大丈夫…死なない程度なら…入渠したら直る…。

 

あぁ…きっとバチが当たったのね。

大事な提督にあんなことしたから…。

そう、これは天罰…素直になれない私に与えられるー。

 

ごめんなさい…提督。

 

ちゃんと言えばよかった。

甘えたいですと。

握ればよかった…。

あなたの手を。

 

 

 

ごめんなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キュッと目を閉じる。 

 

痛く…ない?

え?私は…?

 

 

「ーッ!?」

 

 

「提督…?」

 

そこには左手でナイフを受け止める彼が居た。

 

「貴ッ様ぁぁッ!!」

 

1発

提督は右手で男の顔面を殴り抜いていた。

「へぶっ」

 

「俺の…俺の!大切な嫁に何してくれてんだッ!!」

 

「クソッ…お前何だよ!?」

 

「不知火の旦那だよ」

 

「は!?艦娘の旦那!?こんなバケモ…」

 

さらにもう1発

 

「ぶへぇ!!!」

 

男の胸ぐらを掴み提督は言う。

「お前らの方が化け物だろうが…貴様が深海棲艦と戦うか!?できるか!?…できないだろッ!お前等の代わりに戦ってるのが彼女なんだよ!!!いいか!?俺の事は構わん!しかし二度と…二度と彼女達を…不知火を穢す言葉を吐くんじゃないッ。俺の大切な人を…侮辱するなッッ!!」 

 

 

純然たる殺意。

男は震えていた。

提督のあんな目…言葉遣いは…あの演習以来だ。

「…ぁ…あ…わ、わかったよッ…お前も変人かよ!くそっ!」

と、男は逃げて行った。

 

くるりとこちらを向いて笑顔を見せる。

「大丈夫か?不知火ー」

「すまないッ」

 

「え?」

 

「怖かったろう…辛かったろう…危険な目に遭わせて…ごめん!」

 

ポタポタと血が垂れる左手を後ろに回し頭を下げる提督

 

 

「そんなことより!傷…早く手当てを!!」

 

「舐めときゃ治るだろ…」 ダバー

 

 

 

無理ですね。

 

無理だね。

 

 

 

 

 

病院から出てくる提督。

 

「思ったより深かった」

と、ヘラヘラ笑う提督。

 

 

「何故です?私の傷は入渠で直せます。でも、あなたの傷は…」

 

「痛いのには変わらないだろう?」

「すまなかった…怖い思いをさせた」

 

 

「何故ですか!!!何故あなたが謝るのですか!」

何故…あなたは…そんなに。

 

 

「俺がお前を危険な目に遭わせたからだ」

 

「それは私が勝手に……あなたから逃げたからッ…これは私の落ち度なのです!」

「あなたの左手こそ…痛いでしょう…?」ポロポロ

 

「こんなの…治る。お前が無事ならそれで良い!」

 

「何故ですか?…ひぐっ…私は逃げたんですよ…あなたの優しさから…うっ…」

 

「…追いかけるさ…待つさ…」

 

優しく右手で頭を撫でてくれる。

 

「うっ…うううっ…うわぁぁぁぁあ」

 

ごめんなさい!

私は目付きも態度も可愛くないから…

素直じゃないから…

怖いんです…あなたが…また居なくなったらって。

 

本当は…死ぬ程に大好きなんです。

 

 

 

 

提督が来てくれて良かった。

嫁を!って前で守ってくれたのが嬉しかった。

ごめんなさい…怪我をさせて。

 

 

 

「続き…行こうか」

 

「…はい!」

 

「手は繋げないから…腕組む?」

 

「……はい!喜んで!」




金剛のティータイムセット欲しかった…予約出来なかったのが悔やまれる……。

え?
休むんじゃなかったのか…?

何か…悲しくて…(´;ω;`)




感想やコメント等々お待ちしております(๑╹ω╹๑ )
ぜひよろしくお願いします!




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108話 提督 不知火ト1日夫婦 ② 夢の私に

時々夢に見る。

もしかしたら…あり得たかも知れない私。

たまに見かける学生を見て思う。

もしかしたら…私もあそこにいたかも知れない…と。

 

 

 

 

 

 

提督と歩く。

さっきまでと違うのは…腕を組んでること。

 

 

 

 

 

 

これが……パンケーキ…ですか?

ふわっふわじゃないですか…。

え?食べても…良いんですか?

 

 

メープルシロップ…

そんなにかけていいんですか?

 

甘くて…美味しいです…。

 

 

え?すごい笑顔…ですか?

恥ずかしいので見ないでください!!

 

 

 

 

 

幸せだと思えばこそ…

好きになればなる程に…その別れは辛く残酷なものになる。

 

私達は明日とも言えない命だ。

特に…戦争中な訳で

 

 

でも…死ぬつもりはない。

そして提督を死なせるつもりもない。

 

 

 

 

「可愛い…服にアクセサリーですね」

同い年くらい(?)の女の子が買い物をしている。

 

私は流行には疎い…というかおしゃれってのがよくわからない…。

 

「いらっしゃいませ!何かお探しですか?ーーこちらなんかおすすめで」

店員に話しかけられて戸惑う私。

「えと…あの…て、提督?」

 

 

提督はニヤニヤと笑っている。

「いいじゃないか!着てみなよ」

 

私が…ワンピース……

 

 

言われるがままに試着室に入り試着してみる。

 

 

試着室の鏡には…新しい私が居た。

「あ……」

 

そう、夢で見た私。

 

きっとこんな人生もあったかも知れない…。

友達と共学の学校に通い…帰りに買い物をして…恋愛もして…卒業して…。

 

もしそこに提督が居たら…恋してるかしら。

 

この鏡に映る姿の私は…そんな夢が叶った私…。

 

 

普通に生きた…。

普通ってなんだろう?私にとってはこれが普通。

 

何故あなたは…鏡の中の私(夢の私)は浮かないかおをしているの?

 

いまのわた「似合ってるじゃないか」

 

「ててててて提督!?試着室を覗くなんて!!」

 

「15分も待ったから…待ってるのかな?と思って」

 

「そんなにですか!?すみません…」

 

「良いんだよ…」 フフフと笑う提督。

 

 

 

「その分…俺がお前の夢を叶えるさ」

 

 

 

「え」

 

「お前は…お前達は俺の夢を叶えようとしてくれる…。だからお前達の夢は俺が叶えるよ」

 

 

きっと独り言が口に出ていたのだろうか?

 

でも…でも…どうしてこんなに心が温かくなるのだろう。

この人に言われると…不安も安心に変わる。

 

 

 

いいえ…提督。

夢は…私も叶えてもらってるんです。

 

鏡の姿の夢は……夢…。

その人生の楽しみは…夢のあなた(不知火)に預けます。

だって…今の私には…あなたがきっと一生…どこを探しても出会えないであろう…最愛の人(提督)が居るのだから。

 

 

 

「フフ…ありがとうございます。あなた。」

「でも…私は今が幸せ…だってあなたがそばにいるから」

 

 

「そう?何でも言ってね?できる範囲でやるから」

 

「なら…私を離さないでください」

 

「お安い御用です」

 

 

なんて2人で笑う。

 

 

 

 

「あの……お買い上げなさいますか?」

店員も気まずそうに話しかけてきた。

 

「「……すみません!買います!むしろこのまま会計で!!」」

 

 

試着室を出る時に鏡を見る。

そこには夢でもない、現実の私が笑顔で立っていた。

 

 

 

 

 

「…愛しています」

 

「恥ずかしいな…俺も愛してるぞ?」

 

「ありがとうございます…あなた」

 

 

 

「不知火」

 

「何ですか?」

 

「ーーーコレを君に」

 

「今日は服も貰いました。私にはーーーーー!?」

 

ーー紺色の箱

言わなくてもわかる。コレが何かわかる。

 

その箱が開かれると…

今までのどんなものよりも輝いて見える小さなプレゼントがあった。

 

「まぶ…しいですね」

 

「そうか?」

 

「君に受け取って欲しい…」

 

眩しいです。だって…ずっと羨ましかったから。

貰ってる人の手を見るのが…私もそうなりたいと思ったから。

 

「はい…喜んでお受けします!!」

 

「…ありがとう」

 

 

提督に飛びつく。

ありがとうございます。本当にありがとう。

抱き返す提督の温もりが嬉しくて、左手の薬指の変な感覚が嬉しくて…。私は提督を離さなかった。

 

 

 

 

 

 

寝てしまった不知火を部屋に運ぶ。

ベッドに寝かせて頭を撫でる。

おやすみ…と声を掛けて部屋を出ようとする。

 

「そのまま帰るのですか?」

と、声を掛けられーーキスをされる。

 

「まだ夫婦なんですよ?」

 

「一緒に寝る?」

 

「当たり前です」

 

「仕方ないなあ…不知火は甘えん坊だな」

 

「それが夫婦の特権です」

 

「なら…うん、俺の部屋に行くか」

 

 

 

 

 

 

夜はまだ長い。

まだまだあなたとの時間…楽しみたいですから。

 

 

 

 

夢は夢…

夢であるから…美しい。

これは現実。

戦いの火の粉も、楽しい毎日も…。

悲しかった日も、苦しかった日も。

 

でも…大丈夫。

今の私は…こんなにも幸せだから。

きっと頑張っていける、あなたも…皆も隣にいるから。

 

 

 

 

 

 




夢は夢


少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!

何度目かのアンケートあります。
ネタ探しの一つなのでぜひよろしくお願いします!


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109話 鎮守府のハロウィン ①

いつかのハロウィンでのこと

 

「トリックorトリート」

 

「はい、お菓子」

と、飴玉を渡す。

 

 

しかし、ペシッ…と手を払われる。

 

「え?」

 

「…飴玉ひとつで満足するとでも?」

 

「ぐぬぬ…」

 

「時代はクッキーよ?」

 

俺は悪戯されるままだった…。

 

 

 

 

 

 

翌年、クッキーを用意した俺は…

 

「時代はチョコレートよ!?」

の一言で苦汁を飲まされた。

 

 

 

 

そんな訳で。翌年はチロルなチョコレートを詰め合わせで用意してみたら…

 

「ゴデ○バでも持ってきてくださいな!」

 

と、あしらわれ…

俺は悪戯されるがままだった……。

 

しかしっ!今年は違う…。

とあるルートから仕入れたゴ○ィバのチョコ…

good-bye…お小遣い…貯金…。

 

しかし!今回こそは大丈夫!占いも1位だった!!

 

来れるもんなら…来てみろやぁぁあ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフフ…このまま行けば…来年は…めっちゃ高いチョコを用意してもらえそうね…」

千代田…がニヤリと笑う。

 

「くくく…お主も…悪よのぉ…ぽいぽいー」

と、夕立が笑う。

 

「お代官様程では…おーほっほっほ……って!提督!?」

 

「ほほう?」

聞いちゃったな…今の話…さすが、占い1位だなぁ…。

 

「コレは…ちがッ…えと」

 

提督は修羅のようなニンマリとした表情で言った。

トリック(death)orトリック(die)?」

 

「選択肢が1つしかない!?」

 

「優しい方で…ぽい」

 

 

「48時間目隠しで解体の時のカンカン音をヘッドホンで聴く刑」

「すんませんでした」

 

 

「あの…私は…?」

「ここに比叡のカレー(初期)を完全再現…ポンプで口に流し込みます…」

「ごめんなさい!!」

 

 

 

 

 

そんなことがあり…2人にパ○スペシャルからのアイアンクローを喰らわせて執務室へ戻る。

 

お帰りなさいと大淀とベルファスト、大和が迎えてくれる。

「trick or treat?」

大淀がベルファストの格好を、ベルファストが大淀の格好をしていた。

……可愛いじゃないか、ほら、チョコレートをあげよう…

 

「ありがとうございます!」

「え?そんなに?」

「ご主人様?もういいですよ?」

「あの!多すぎます!多すぎます!!」

「ご主人様ァァァ」

「提督!?!?!?」

 

 

 

「…とりっくおあとりーと…///」

大和は宇宙戦艦のコスプレをしていた……恥ずかしそうに。

戦艦のパーツをパージすると武蔵の格好になった…。

どういう構造だ??

 

まあ…まともなコスプレなんで大和にも大量のチョコを贈呈。

 

「ここここんなに!?いいのですか!?」

大和はコレでも足りないだろうな…。

 

 

 

 

 

 

さて、執務の続きかな?と思っていた。

すると、扉がバァンと開かれた。

 

「とりっくおあとりーとだ!相棒!!見てくれ!この仮装を!」

 

「…!?ぶふっ」

大淀は撃沈した。

 

「む武蔵様…?」

ベルファストは混乱している。

 

「武蔵!?!?」

姉は恐怖すらした。

 

「武蔵……お前…それは…」

 

……

武蔵は確かに仮装していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

島風の…コスプレを。

 

 

 

 

おまっ…ぎっちぎちやん…色々と。

 

 

 

「さあ!トリックおあトリートだっ!」

 

「この状況が既にトリックだわ……お前…姉を見てみろ…」

 

 

「武蔵が痴女に…武蔵が痴女に武蔵が痴女に武蔵が痴女に武蔵が痴女に…」

大和は目を閉じてブツブツと言っていた。

 

「大和おお!?いたのか!?!?」

 

「ダメよ大和…しっかりさなさい私……そうよ…コレはきっと夢…そう夢なの…目を開ければそこには…あんな企画モノでも無ければ着たりしない服を着た武蔵がいるわけが…」

 

「企画もんて…それは島風に失礼だぞ」

 

「大和!しっかりしろおおお!」

 

おまっ!そんな目の前で肩なんか持ったら…

 

「目を開けれ…ば……」ブクブク

 

武蔵が目の前に居るわけで…。

大和の精神は気絶を選ぶわけで……。

 

「ヤマトおおおおおおおおお!何故だぁぁぁぁぁぁあ!!!」

と、叫ぶ武蔵。

「お前のせいだわ!」

と、取り敢えずハリセンで武蔵をしばく。

 

「何!?この私のせいだと!?何故だ!?何故だ!」

 

「自分の格好見てから言えやぁあ!!大体だな…おま」

その時。ガチャリ…と扉が開き…

 

「提督!トリックorトリートだ!」

 

「長門……?」

 

長門が堂々と執務室へエントリー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

58のコスプレで。

 

 

「う…ん…私は…ーーーーーー!!!!うっ…」

起きたはずの大和が再び撃沈ッ!!

 

 

 

 

 

「おお!長門!お前コスプレか!ゴーヤだな!完成度高いな…」

 

「おお!武蔵もか!島風のか!良い出来じゃないか…」

 

 

「大淀…ベルファスト…あとは頼んだ……俺は午後から有給を使いたい」

 

「却下です」

 

「くっ…この地獄を見てもかッ」

 

「まあ…この場を離れるのなら大和さんを部屋か入渠に連れて行ってあげてください…」

 

「そーするよ…」

 

俺は大和を背負い、この地獄を後にした…。

 

 

 

 

道中では…

瑞鶴のコスプレを嫌々している加賀と嫌々で加賀のコスプレをしている瑞鶴が居た。

 

ん??言ってて頭が…。

 

更には…

金剛のコスプレをした榛名と霧島のコスプレをした比叡と榛名のコスプレをした霧島と比叡のコスプレをした金剛に出会った…あれ?なんか…

 

もう脳が追いつかねえや…。

 

 

 

とにかくハロウィンは賑やかでした。

……他の奴らがそろそろ動き出しそうだな…。

 

 

 




長門は基本的には変人です。


続きます(๑╹ω╹๑ )!!
早めに投稿できるように頑張ります!

お楽しみ頂けたなら幸いです(๑╹ω╹๑ )


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110話 鎮守府のハロウィン ②

trick(夜戦)? or treat(夜戦)?」

 

おや?耳が悪くなったようだな……?

「夜戦にしか聞こえないんだが…?」

 

「そう言ってるもの!」

 

「結局夜戦じゃねえか」

 

 

「違うよ!trickは提督も現場に出るんだよ!」

 

「戦闘要員かよ!!……treatの夜戦とは!?」

 

「……えへへ」

 

あ…コイツ酔ってるな?これ以上は危険と判断して速やかに脱出する。

 

 

「む……意気地なし…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「明石と夕張は…」

と、工廠の扉を開き、覗きながら中を窺う。

 

「提督!見てください!!フランケンシュタイン…」

 

「おっ!コスプレか?」

 

「ーーーを作り出しました!!」

 

ゔぉーーとうめくフランケンさん…。

 

俺は工廠の扉をそっと閉じた…。

 

「「見てくれないんですか!?!?」」

 

ばかやろー…それ以上は手に負えねえよお…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前にいるのは……

 

「……」

 

「アイドル!」

アイドルと言い張る那珂ちゃん。

 

 

「あいどる…」

 

「アイドルの仮装よ?」

 

「ハロウィン関係なく毎日アイドルやん…」

 

「まあね♪わたしってば…永遠のアイドルだからね⭐︎」

 

「いえーい↓那珂ちゃん⭐︎↓いえーーい」

と、おひねりならぬ…お菓子を渡す。

 

「テンション低くない?棒読みじゃん………てか、無駄にチョコ豪華だね!やっぱりアイドルへの貢物はこうでなくっちゃー!」

 

満面の笑みで言う。

「提督…ありがとうね!」

 

 

那珂に正直少しドキッとした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

可愛いから?

違うッ!この後「お礼に歌うよー!」って2時間くらい歌いそうだからだよっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はやくもらってください…」

 

花嫁衣装は反則だろ…赤城?てか俺が貰う側かよ…

ん?合ってるっちゃ合ってるな…。あれ?何だっけ?

 

 

「私との式はまだですか?」

やめろ!加賀っ!

 

……後ろに似たようなのがたくさん並んでるのが見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督さーん!お菓子ちょーだい!」

サキュバス的な暁…かわいい!

 

「ちゃんとtrick or treatって言わなきゃダメなのです」

ナース服の電…いいね…!!…その血糊はなにかな?

 

「…はらしょー」

狼男?の響…にあってるぞ?でもそれ…うさ耳じゃね?

 

「とりっくおあとりーと!!」

キョンシーかな?雷…お札で前が見えないのか?そっちは壁だぞ?

 

 

 

「はい!チョコレートどうぞ!」

 

 

「何これ…高級チョコじゃない…提督…お財布は大丈夫なの?」

「ははははらしょーー!もったいなくて食べれない…。」

「やったのですー!こんなにいいのですか?」

「何かあったの?提督?大丈夫?」

 

何か…逆に心配されてるんだけど…。

 

 

で、そのまま、目線を移し替えて言う。

 

「……で、お前はアレか?島風コスから死体にジョブチェンジか?」

 

「…幸せだ…天使達の姿を見られただけで…未練はない」

そこには血みどろの長門がいた。コスプレではない。自前の血だ…鼻血だけなく口からも目からも出てる。

天使の姿を見たと言う悪魔が目の前にいるんだが…お前のコスプレの元の島風も駆逐艦だからな…?

その天使の服が血に染まっているぞ?

 

 

 

 

「長門さん!?!?」

 

「ひっ…血みどろの島風さんなのです!?」

 

「怖いッ…」

 

「きゃぁぁあ!!」

 

天使達は恐怖に慄いてるぞ?

 

 

長門がそんな格好をしているからか?

長門が血まみれで泣いているからか?

 

天使達は逃げていった。

 

 

「ま、待ってくれ!マイエンジェル達ッ!お菓子…用意…したのに………提督うううう!!」

 

 

「自爆だろ……って、待て!血と涙まみれで抱きつくなー!!    あーー!もう仕方ないな…」   よしよし

 

「提督はやさしいなあ……チョコあげる…」

 

やめい!怖いわ!

もはやホラーじゃねえか…。

 

 

 

「あ……………」

 

声のする方を見ると青葉が棒立ちしていた。

 

 

「青葉…?」

 

「…………」

 

島風コスの長門が血と涙まみれで、提督に抱きつき、なでなでされながらチョコを提督にあーんしているこの状況…。

 

 

「………」 スチャ…。(カメラ構え)

 

パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ!

 

 

「おおおおおい!?青葉ッ!ヤメロッ」

 

「どういった嗜好のプレイですか!?ハロウィンプレイですか!?!?」

 

「ちげーーって!!オイ!長門も…離せって!!」

 

「もう…(天使達にあんな姿を見られたら) 私は…(恥ずかしくて、悲しくて、それを慰めてくれる) 提督無しでは生きていけない…」

 

「おおおおい!?勘違いさせること言うなよ!!!」

 

 

「提督ううううう!?一体どんなプレイをおお!」

パシャパシャパシャパシャ!!

 

 

「ちょっと!!待ちなさい」

 

この声は陸奥か!……助かった…。

 

 

 

「あなたッ!!私と言うものが有りながら…姉に手を出すなんて!酷いじゃない!     そーいうのは私だけにって言ったのに…」

 

「陸奥ううう!?」

 

陸奥も島風コスして来やがった…。

コイツッ…完全にわかってやってんな…。

 

 

「あらーーー!姉妹でドロドロな感じですね!?!?提督!見損ないました!最低です!」

パシャパシャ!

 

笑顔で辛辣なこと言うなし…。

 

「ちなみに陸奥さん!どんなプレイをされましたか!?」

 

「******とか*****とか…伝えきれないわ」

 

「ひゃーーー!クズです!この提督は鬼畜ですううう!」

パシャパシャパシャパシャパシャパシャ

 

 

 

 

カッチーーン…⭐︎

青葉ァ……。

 

 

「おい…3人とも…??おいたが過ぎますわよ?」

と、提督ゲンコツを3人の頭に叩き込む

 

「あ…」

「うっ」

「いだいっ!」

 

 

「陸奥…」

 

「は、はい?」

 

「本当にやる?○○○○○を」

 

「え!?あっ!え? えと 」

 

「やるの?」

と、言いながら近付く。本当に目と鼻の先まで…。

 

「あ…う……えと……提督がしたいなら…」

 

デコピンしとこ…とりあえず。

「うっ! もお…提督の意地悪…」

 

 

 

「青葉ぁ…?」

 

「すみません!悪ノリが過ぎました…」

 

「写真…消そうか?」

 

「嫌です!」

 

「あぁん!?」

 

「消しませんー!最近で1番大事な新聞ネタなんですううう」

逃げようとする青葉。

 

いかん!ここで逃したら…いけない気がする!!

 

が!!!

 

「ねえ…置いていかないで?」 ガシッ…

「私を置いて他の女を追いかけるなんて嫌よ…」

 

陸奥うううう!!

柔らか…じゃねえ!!抱きつくな!

離せ!俺は青葉を…!!奴をおおおおお!!

 

「提督うう!離さないでえええ!」

 

長門おお!!!

お前もかよおおお!!

 

 

 

巨悪は逃げ去った…

 

 

 

 

詰んだ…。

新聞発行で詰んだ……。

 

 

暫くは…鬼畜プレイの大好きな提督さん…略して、鬼督さんと呼ばれるようになってしまった……無実なのに。

 

後日…青葉狩りを行う修羅の提督が居たとか。

 

 

「青葉ぁぁぁぁぁぁあ!!!」

 

「痛いッ!ひいっ!!お尻は叩かないでえええ!!」

 

「お前のせいだろうが!!!!」

 

 

 

 

 

「やっぱり提督は変態だった!?」

 

 

 

 

今日も鎮守府は平和です。




出てないキャラはそのうち続編で出そうかなと思います!


お楽しみ頂けたなら嬉しいです!

アンケートありがとうございました!
深海組ネタ…つくります!お楽しみに…。



感想等おまちしています!ぜひ!よろしくお願いします!


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111話 青い海に燃える ① 運命を超えて


オリジナル要素が少し出ます。



もし、本当に神様が居るなら……

 

 

私の願いを聞いてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

久しぶりの建造さ!

 

「てててて提督!」

「はははやく!早くうううう!」

 

目がラリった明石と夕張(アホ2人)をスルーして建造開始…

からのバーナーじゃぁぁあい!!!

 

「炙れゃぁぁあああ!!!!」

 

「ひゃっほおおおおおお!」

おっ!妖精さんも久しぶりの登場だな!忘れてたわけではないよ?うん!色々とね…大人の事情ってのがね…うん。

 

 

建造完了…さて…さて?

 

 

 

バァン!

「指揮官様ッ!女の子をまた増やすのですかぁ!!」

 

 

おや?桜大鳳に阿賀野じゃないか。

もうすぐ出てくるから待っててね?

 

 

 

 

「誰が出るかな!誰が出るかな!!」

 

 

 

「提督、貴方に会えて……良かった。 一緒に頑張っていきましょう!」

 

 

 

「………」

 

 

 

迅鯨…のはずなんだが…何だろう?この感じは…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなた…」

と阿賀野がこっそりと迅鯨に話しかける。

 

「内緒にしてください…今は…」

迅鯨はそう答えた。

 

「あなたがそう言うなら…黙るけど…」

 

 

 

「……?」

 

 

 

 

 

私は迅鯨………秋穂だったもの。

その記憶を持っている。

艦娘でありながら前世の記憶を深く…強く持っている。

 

 

かつては多くを奪われた。

大切な人も命も…。

 

私は願った。

もし、神様が居るのなら…生まれ変わってもあなたに会いたいと。

 

そして、目が覚めたら私は艦娘になっていた。

またあなたに会えて嬉しい…。

でも私の存在は………これは心の奥に閉じ込めておきましょう…。

 

 

 

 

 

 

 

迅鯨が鎮守府に馴染むまでにそこまで時間は掛からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたは…何だろう、中身が……」

 

「桜赤城さん…」

「ええ、その通りよ…本来の私は人間…」

 

私は身の上話を桜赤城にした。

自分は元は救と同じ世界でいた事、ホワイトデーの事件は私の関わりだという事、気がついたら艦娘として建造された事。

 

「…素敵な話じゃない。指揮官様を連れ込もうとしたのは頂けないけど…ロマンあふれる話だわ」

「指揮官様には言わないの…?」

 

「ええ…今はその時でないと…いえ、私が言うと彼が混乱しそうで…」

 

「まあ…私は何も言わないわ…」

 

大丈夫…うまくやれるわ。

 

 

 

 

 

 

 

何日かして、私が秘書艦になる日が来た。

 

「提督…よろしくお願いします」

 

「うん、よろしくね」

 

 

「……迅鯨?」

 

「…!はいっ!」

 

「どうかした?」

 

「いえ!ごめんね?…ぼーっとしてたから…いえ!すみません!ぼーっとしてたもので…」

 

「お?おう…」

 

 

何だろう…?今の感じ…懐かしかったような…

 

 

 

 

 

 

迅鯨は面倒見が良く、すぐに皆の輪の中に入った。

料理にしても裁縫にしても得意らしく、特に駆逐艦や潜水艦組に人気だった。

 

子供の面倒は見慣れてると言わんばかりに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、初の旗艦としての戦いのことだった。

 

 

 

さすがと言うべきか…指揮はしっかりしていた。

 

ある時までは…

 

 

 

「アナタハ…ニセモノヨ」

 

「なっ…」

 

「ソノ魂ハ…ニセモノ…艦娘ニナリキレナイニセモノ」

 

「そんな事…ないっ!私は…私はッ!」

 

「ナラ、ナンナノ?」

 

「ーッ!」

 

答えられない…。

私は…秋穂なのか…迅鯨なのか…

偽物なの?私は……どちらにもなりきれないの?

 

 

「クク…シズメッ」

敵からの砲撃ー

 

「迅鯨さん!!!」

吹雪が叫ぶ

ーーーが、回避は間に合わない。

 

「はっ… きゃぁぁあ!!」

被弾…大破…。

「くっ…まだまだ……うぐっ」

 

 

乱れる艦隊、傷を負う仲間達…。

 

ダメ…。

私のせいだ…。

私が…こんなのだから…。

 

 

 

 

…戦果は最悪だった。

 

旗艦の私をはじめ…吹雪、比叡、天龍、川内が大破。

他の艦娘も中破や小破となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫…ですか…?」

と、同じく入渠する吹雪が問いかける。

 

「ええ…大丈夫よ」

 

「なにかあったのですか?」

 

「いえ…なかったわ…私の力不足よ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫か!?迅鯨!」

 

「提督…すみません…」

 

「気にするな…生きて帰ってくれて良かった」

 

 

 

揺らぎそうになる…艦娘としてあなたを守ると決めたのに…

ニセモノだから…

でも…秋穂としては?

…ダメだろうな…どちらにしてもニセモノ…。

 

 

「何かあったのか…?」

 

「いえ…」

 

 

 

 

助けて…と言いたい…。

きっとあなたはどうにかしようとしてくれるでしょう…。

でもそれじゃあ…。

 

どうしたら…いいの?

ねえ…私は…。

 

思えば思うほどに…自分が歯痒い。

 

 

 

 

 

「あなた…大丈夫かしら?」

 

「桜赤城さん…ええ…」

 

「指揮官様は受け入れてくれると思うけど…後悔しないの?」

 

「大丈夫…守って散れるならそれでもいい…決めたことだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平和な日…

提督とご飯を食べる…。

 

 

「一緒に飯を食べるのは初めてだなー」

 

残念でした、初めてではないよ?

何年ぶりかな?

思わず笑みが溢れる。

 

 

「ん?どした?迅鯨」

 

「いいえ…何だか楽しくて」

 

「そう?なら良かった」

彼は好きなものを最後まで少し残すクセがあった。

 

「卵焼き…食べないんですか?」

どんな返事が返ってくるかは分かっている。

そう…

「好きだから後のお楽しみに……」

 

やっぱり変わってないね

 

「可愛らしいですね」

 

うーーん…と彼が唸る。

 

「昔からの癖でさ…よく言われたよ…」

 

知ってますよ?私ですから。

 

「その味がさ…好きでさ……また食べたかったなあ…」

 

「誰かの卵焼きですか?」

 

「あー…うん。卵焼きに限らず…姉さんの作る料理が食べたかったんだ」

 

「………そのお姉さんは?」

 

「…少し前に会ったんだけどね。料理お願いするの忘れてた」

と、笑う提督。

 

 

ごめんね…目の前に居るのに………。

 

 

ダメだ…言いたい…私だよっ!て。

それで…手料理でも何でもしてあげたい。

この手で…抱きしめたい。

 

 

 

でも…できない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日の事だった。

激しい戦闘を中破で終えた私たちは入渠していた…。

その時…

ウーーーと警報のサイレンが鳴り響いた

他の艦娘が遠征中の侵攻…

残存兵力の少ない中での戦闘を行わなければならない。

 

 

 

 

 

「出撃するよっ!!!」

 

「くっ!ここは通さないよ!!」

中破の川内が水雷戦隊で出撃する。

 

 

「私と踊りましょう?」

小破の夕立も逆方面を迎撃に出撃した。

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ…こんな時に!!!」

 

 

 

 

 

 

私も…出なくちゃ。……私は守る為に居るんだ。

この時のために生まれたんだ…。

決めたじゃない…命を犠牲にでも守るからと…。

 

「私も出ます!」

 

「しかし迅鯨!お前はまだ…入渠時間が短いじゃないか」

 

 

 

「私に早さで勝てる?」

と、夕立が海を滑るように走りながら敵を撃ち倒して行く。

 

 

 

 

「くらうっぽいー!!」

 

夕立が敵を魚雷で薙ぎ倒して行く。

川内が、響が敵を進めさせない為に奮闘するー

 

 

 

 

 

数体がすり抜けて鎮守府へと向かう。

「フン…」

 

 

 

「ごめん!そっちに何体か流れたっぽい!!お願い!!」

 

 

 

 

その夕立の声を聞いて…。

頭にイメージが浮かんだ…。

 

崩れ行く鎮守府に………彼の亡骸。

泣き崩れる艦娘達…。

立ち尽くす私。

 

ダメ…

 

 

「救君ッ…!私が今度こそ守るからッ!!」

 

「え?」

 

私は執務室の窓から飛び出して戦場に向かった。 

 

「迅鯨…?いや…今の感じは…」

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁあっ!!」

守るんだ…。

私が守るんだ!!!

 

 

ガムシャラに突っ込む。

彼に…この鎮守府に傷一つ負わせてたまるか!!

 

 

 

 

「……迅鯨さん…あなた!!」

 

 

執務室へ残る桜赤城に通信を飛ばす。

「桜赤城さん、19ちゃん!…後は…お願いします!!」

 

 

 

 

 

命と引き換えでも彼女は戦うつもりだ。

でも…そんなの…

 

「桜赤城…アイツは…迅鯨は…?」

 

 

指揮官様…。

……ッ!

 

 

 

「指揮官様…一緒に来てください!19ちゃんも!」

桜赤城が言った。

 

私らしくない……でも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とにかくガムシャラに戦った。

守るんだ!

 

敵を沈めた!ヨシ!これで……!

 

ドォン!!と遠くから聞こえた。

 

 

 

「きゃあ!!」

体が痛い…っ。

痛いよ…。

 

 

 

いつのまにか…囲まれてた?! …ッ!これ以上の損害は……

 

 

……くそっ…なら…少しでも道連れに!!

 

「ええええええい!!」

命を削って戦うーーー。

 

空から攻め……くっ!!

艦載機が……撃ち落とされて…くそっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本当は正体を明かしたかった。

またあの頃みたいに…一緒に居られると思った。

 

 

でも、このまま救君を守ると決めたから…

 

私は…ニセモノだから。

 

あの人を守って逝けるなら‥

 

例えあなたが私の事をわからないままでも…それでもいいや。

 

 

 

そう思っていた。そう自分に言い聞かせて来た。

 

 

 

ごめんね…さよなら…。

 

 

 

 

 

 

「ここは通さないッ…一緒に…沈みましょう?」

敵をガシッと掴む。

 

「バカナッ!コイツ!ハナセ!!」

 

離すわけないじゃない…。

 

 

既に飛んでいる機体に命令を下し、

自分もろとも私は周囲を爆撃し、何隻もの深海棲艦を巻き込み…

 

 

「迅鯨!!」

と、川内が叫ぶ。

「ダメだぁぁぁあ!!!!」

その声は…爆音に掻き消されて…。

 

 

 

 

 

 

私は沈んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「迅鯨が…秋姉さん…?」

 

「そうです…その秋何とかさんかはわかりませんが…少なくともあなたを知る人だったはずです。」

 

「あのバカは命を犠牲にでも貴方を守ろうとしています…正体を隠したまま!」

 

「そんな!」

 

「ですから…指揮官様…行きましょう!死に急ぎの所へ!この鎮守府の艦娘のあり方を教えに参りましょう!!」

 

 

私は指揮官様の手を取った。




どこかで見た話の続き…。



少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです(๑╹ω╹๑ )


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112話 青い海に燃える ② 本物の想い

夜勤なんで…あげますね(๑╹ω╹๑ )

①の方もよろしくお願いします。


指揮官様を連れて海へ出る。

 

 

 

 

 

 

離れたところに見えたのは…

自らを敵もろとも爆撃する彼女の姿だった。

 

 

 

「まだッ…間に合えッ!!」

 

 

 

「桜赤城さん…どうしたの?向こう…何か…」

と、イクが聞く。

「ごめんなさいね…でも…彼女にも必要なことだから…」

 

 

その時肩に痛みが走った。

「!?ーーーッきゃあ!!」

流れ弾だろうか? 違う!後ろから来ていたのね…。

 

私は被弾した。

 

 

「桜赤城ッ!大丈夫か!?!?」

 

 

 

こんな時まで…心配してくれるのね。

本当に優しい…指揮官様。

 

「ええ……心配痛み入ります。…でも、早くあの子の所へ行ってください指揮官様!19ちゃん!お願いッ」

赤城が言う。

 

「なぜ?お前は!?」

 

「私は大丈夫…。 それが必要なことだからです」

 

「しかし…」

 

嬉しい…。でも…!!

 

 

「…ッ!!!     行きなさいッ!!」

見たこともない桜赤城だった。

 

 

心を鬼にして叫んだ。

そうよ…私だって指揮官様から離れたくないわ。

ライバルは少ない方がいいわ?

でもね…指揮官様が、悲しむ事が1番嫌なの。

 

あの娘だってそう。

 

「生まれ変わってもあなたを守りたいと…艦娘になってでもあなたを守りたいと思ったあの娘……。自分の正体を隠してでもあなたを守り続けたいと…命懸けで守るといった彼女……」

「私が指揮官様への愛で負けるはずはありませんが……そんな素敵な方(面白い人)を蔑ろにする指揮官様ならば……私の愛する指揮官様じゃありませんわ」

 

「いいですか!?私達が死ぬ訳ではないです…この程度余裕です!だから…行ってあげてください」

 

「あなたの声を…届けてください」

桜赤城はニコリと笑った。

 

「イクちゃん…お願いね」

 

「……はい!任せて欲しいの!」

 

 

 

 

 

待ってるからな…桜赤城…ーー

 

 

はい…指揮官様…すぐに参りますーー

 

 

 

 

 

大好きな人の背中を見送る…。私らしくないかしら?

とは言え、敵は押し寄せてくる。

 

 

「さて……はぁ…こんなのはキャラに合わないんですが…」

 

大きく溜息を吐き、桜赤城は敵の前に立つ。

 

 

ここは…通しません…。

 

「重桜一航戦…赤城!推して参ります!!ここは…愛する指揮官様の為、誇り高き一航戦の名にかけて通しません!!邪魔する奴らは…ソウジします!」

 

 

爆撃機を飛ばす。

 

 

 

後ろから矢が私の横を通り過ぎる。それは、爆撃機に変わり私の子達に追いつこうと空を飛ぶ。

 

 

 

 

「奇遇ですね…私も誇り高き一航戦なんですよ」

 

赤城だった。

遠征任務を終えて帰還中に私に合流してくれたのだろう…。

 

「あなたは…」

 

 

「別の世界の赤城さん…私もご一緒しますね」

 

 

「物好きなのね」

ありがたいわ。

 

「ふふっ…後輩を守るのも…私達先輩の役目ですしね。それに…仲間ですから。」

 

 

 

「「西波島航空戦隊の赤城の力…見せてやりますわ!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…!!迅鯨さんが!!沈んじゃう!!!」

 

 

 

 

 

あの感じ…やっぱりそうだったんだ…。

あの懐かしさも…姉さんだったんだ…。

 

人が艦娘として生まれてくるなんてあり得ないだろう。

 

俺には想像も出来ない気持ちがあっただろうな。

きっと悩んだろう…苦しんだだろう。

 

気付けなくてごめん。

ずっと守ってくれようとしてくれて…ありがとう。

 

 

俺は…提督だ、指揮官だ!

誰であろうと…沈めさせはしない。

この鎮守府にいる誰も…!

 

 

世界の平和もそうだけど…

戦う艦娘を…誰1人として死なせない。

その為に居るんだから!!

 

 

 

 

俺はイクの背中から海へ飛び込んだ。

 

 

「提督!?何してるの!?」

イクが言う。

 

 

 

水中で叫ぶ。

迅鯨……秋姉!

負けるなぁぁぁッ!!

 

ガボガボとしか聞こえないだろう。

それでも…姉さんと同じ土俵で…あなたに届けたい言葉。

「生きて帰ってこい」

 

ただ…それを伝えたくて。

 

 

「もうっ!!仕方ないの!!」

イクは沈みゆく迅鯨の下へ俺を引っ張って行った。

 

 

 

 

 

「…危ナカッタ……私ノカチダ!貴様ハ犬死ニナンダ」

 

 

くそっ……

ダメだったの?

あぁ…悔しい。

 

 

 

沈みゆく私。

手を伸ばしても…届かない水面は…まるで私の人生を見ているみたいで…。

 

何もかも奪われて…小さな幸せすらも手を伸ばしても掴むことが出来なくて…。

 

私らしい最期…ね。

 

 

 

 

 

 

誰かが私の腕を引っ張った。

 

 

 

誰?

私…眠いんだけど……寝かせてくれないかな…。

 

お迎え…かな?

 

違う…。

 

 

 

 

 

私は見た。

目の前に誰かが…居る。

 

 

いや

私はその人を知っているー。

 

 

提督(最愛の人)人が海の中で叫んでいる。

 

 

 

彼は今、私だけの為に危険を顧みず敵だらけの大海原に飛び込んで…沈み行く私の肩を持ち叫んでいる。

 

 

 

救君?

優しいね…。…分かるよ……なんて言ってるか。

だって…血は繋がってなくても…大好きな弟。

ううん、大好きな人。

 

 

沈むな!沈ませない…負けるな…!

生きて帰ってこい!!!

 

お前は…俺の艦娘だろう?

 

姉さんは強い人だろう?

 

諦めるな!

 

 

 

 

 

まだ諦めるな…と言うの?

 

 

 

 

 

諦めたら…守れない。

 

 

 

 

 

諦めたら…もう手を伸ばせない。

掴めるかもしれないものも…こぼしちゃう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大事なものは…皆奪われてきた。

家族も…大好きな人も…生きることも…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神様…

 

もし居るのなら…私の願いを聞いてください。

 

 

 

 

 

 

もう一度…立ち上がる力を下さい…。

 

 

 

 

もう…大切なものを理不尽に奪われない為に、なくさないために…。

……理不尽な運命に抗い、立ち向かう勇気を……あの人や皆を守る力を…私に下さい!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体が…光ってる?

え?なにこれ…私… 

 

 

うん、と頷く提督。

あなたなの?救君?

背中を押してくれるの?

力が…漲ってくるのがわかる…。

 

 

うん…私…やるわ!!

 

 

 

 

 

ーーー迅鯨ーーー改ー

 

 

 

 

 

 

一度は…いや、二度諦めたけど…

 

もう諦めない! 

 

 

私はあなたを愛する事(守る事)を諦めない!!

 

 

 

(秋穂)としても(迅鯨)としても…負けない…!

 

 

例え偽物の記憶だと言われたとしても…

昔の秋穂でないと言われても…

本物の艦娘でないと言われようとも…

 

この心だけは…この気持ちだけは…

本物だから!!!!

 

 

 

 

 

 

 

私はもう一度…海に立つ!!

大切なものを守る為に…私は…諦めない!!

 

 

 

 

「ニセモノガァア」

 

 

深海棲艦…

 

「何とでも言いなさい!私は…迅鯨…秋穂の魂を持った艦娘よ!!アナタ達なんかに…負けません!!」

 

 

 

「…いこう!」

 

 

 

「ええ!提督!行ってくるわ!!待ってて!」

 

 

 

 

「シズメ!シズメエエエエエエエエ!」

 

 

「迅鯨!!回避からの反撃だぁッ」

 

「了解!!  回避成功ッ! 私の番よ!当たれぇえ!!」

 

ー着弾観測射撃ー!!!

 

渾身の射撃が敵にぶち当たる!

「ヌウウ!!この程度デ……!!」

 

 

「まだまだよ!皆!行くわよッ!力を貸して!!」

19や58達に声をかける。

「「「了解!!」」」

 

「私もいるわ!」

と168達も声を上げる。

 

 

「潜水艦隊攻撃…撃てーーーッ!!!」

 

 

「グウウウ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官様…っ」

 

俺は水面から桜赤城に抱き上げられた。

 

「見てください…あれが…彼女です」

 

「…すごいわね…彼女…一体…」

 

 

「わかってる…凄いな…」

 

 

 

 

 

 

敵の砲撃が頬を掠るーーー当たるかッ!

 

「もう一度ッ…」

 

観測着弾射撃…!

 

 

「マモレ!ワタシヲマモレ!」

ワラワラと雑魚が深海棲艦の前に集まる。

 

 

 

でも…今ならやれる気がする。

「丸ごとブチ抜いてやる」

 

「私は…私の心は…本物だぁぁぁぁあ!!!」

 

 

ズドォォン

放たれる砲撃ー。

それは…思いを貫くように全てを貫いて水平線へと消えていった。

 

「ワタ…シガ………シズ…ム」

ガシャ…と音を立てて敵は海に沈んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「帰って来たよ…提督…ううん…救君!」

 

「お帰りなさい」

 

飛びついて行く…あったかい…。

やっと感じられたこの温もり…もう離さない。諦めない。

絶対に…守るから!!

 

 

 

「今日だけですわよ…全く…」

 

「まあまあ…仕方ないのー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は遠征帰りの皆に全てを話した。

私の今後は皆に決めてもらおうと思った…。

 

 

「事情はわかったけど…ホワイトデーの事は別よ…」

 

「そうね…罰を受けてもらわないと」

 

 

「ええ、どんな罰でも受けるわ…」

 

少し不安な私をよそに皆は笑っている…逆に怖い。

 

 

「間宮さんの新作デザートが出るのよ…」

 

「え?」

 

「それで勘弁するわ」

 

「そんなのでいいの?」

 

「そんなの!?あなたね!スイーツよ!スイーツ!私達の楽しみの一つなの!」

 

「そうっぽい!売り切れもあるから予約できないから食べられない時もあるっぽいー!」

 

「ま…特別枠の提督さんはこっそり食べてるみたいだけど?」

ジロリと目線を向けられる提督。

 

「……おいしかった…」

満面の笑みの提督。

 

「特別枠の噂は本当だったのね!?」

「きゃーー!ずるいわ!ギルティよー!!」

 

 

 

 

 

「わかったわ!皆にそのスイーツをご馳走させてください」

 

「ええ!楽しみにしてるわ…それと…」

 

「?」

 

「あなたのことや向こうでの提督のこと…いっぱい教えてね?」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「桜赤城…さん?」

 

「もう少しだけ…こうさせてください…」

俺は今桜赤城のモフモフに包まれ…後ろから桜赤城を抱き締めている。

 

「…私が指揮官様を譲ったのですよ?お陰で彼女は沈まずにすんだ。ファインプレーだったでしょう?だから私にもご褒美を下さい」

 

「……確かにお前らしくなかったな、叫んでたしな」

 

「うう…あんな態度とりたくないのですよ?…ライバルは少ない方が良いですけど……指揮官様を悲しませる方が…許せませんから……この世界で唯一の…向こうの世界の知っている人でしょうし」

 

ギュッと力を強めて抱き締める。

「ありがとうな…」

 

「はい…でも私は譲りませんよ?指揮官様を…」

 

 

 

 

 

 

「私も頑張ったのですが?」

赤城…!

「イムヤ達も…」

「イクも…」

 

「私も抱きしめて欲しい…」

迅鯨…いや秋姉さん…。

 

 

 

おーおー

みんなおいで…。

 

 

 

 

皆飛びついて来た。

 

というより、タックルだった…。

 




迅鯨は…ヤンデレ筆頭だと思っています(๑╹ω╹๑ )

だめだ
甘さが足りない…


少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです(๑╹ω╹๑ )!


コメント等お待ちしています(๑╹ω╹๑ )
お気軽によろしくお願いします!


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113話 深い海よりあなたへ

アンケート結果の2人組

また夜勤なんで投下しますね(๑╹ω╹๑ )!


きっと私達にもそんな時があったのかも…知れない。

 

 

艦娘としてこの世に生を受けて…提督と共に戦ったのかもしれない。

 

別の世界で人として生まれて一生を終えたのかもしれない。

 

 

でも…ひとつだけわかっているのは…

私達…深海棲艦の存在はこの世の人類には…"悪"だということ…。

 

 

 

 

 

建造でこの鎮守府に来たとしても…

私達が提督の下で艦娘と肩を並べて存在するなんて…烏滸がましいにも程があるだろう。

 

そう思っていた。

 

 

皆は…提督は言った。

分かり合えて、手を取り合えるなら敵じゃない…と。

 

 

目が覚めた時に…私達の中にはあった。

 

この人について行こうと思える"何か"が。

 

誰かの記憶なのかもわからない。

誰のどんな気持ちなのかもわからない。

 

だけど…この人の為なら…同胞に裏切り者と言われても胸を張って言える。

私は…彼の為に戦う深海棲艦なんだと。

彼の艦娘だと言えたら嬉しいんだけど…それはありえない。

 

 

 

「……」

生まれてすぐは、どこか距離感がある気がした…。

いや、私達が勝手にそう思ってるのかも…。

 

でも、あなた達は何でそんなに優しくできるの?

私達…敵だよ?

 

あなた達の敵になるかも…なんだよ?

なのに何で?何で普通に居られるの?

 

 

 

「提督の為に…世界の為に戦ってくれたじゃない」

 

「同じ飯を食べただろう?」

 

「一緒に泣いて、一緒に笑っただろ?」

 

 

私達は歪な存在のはず…。

なのに…なのに…何でこんなに幸せなんだろう?

いいのかしら?こんなに幸せで。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…残すの?いただきっぽーい!」

 

「あっ!コラ!夕立ッ!それは最後の楽しみに取っておいた……ああああ!!!」

 

「…ごめん姫ちゃん…たべちゃったぽい」

 

「酷いよう…ううう…」

 

「泣くなよ…俺のやるから…」

 

「ありがとううう!愛してるよおおおお」

 

「こらー!姫ちゃん!どさくさに紛れて告白はダメだよ!」

 

 

…今はこの通りなんですけどね。

 

 

 

 

なにせ…

「2人って…美人だよなあ…」

 

この一言でオチたのだから…。

普通深海棲艦に向かってそんなこと言う!?

化け物!が普通でしょ?

なのによ?なのによ?美人だよなあ…ですって!?

 

あぁん…しゅき…♡ってなるに決まってるでしょ?!

なるわよね!?え?ならない? あっそ。

 

という訳で今日も今日とて指輪を貰うために奮闘中。

 

花嫁修行…?ってやつ?

 

味覚も独特だから…料理は……まあ置いておきましょう。

 

掃除は……艤装さえ外せば…うん…艤装があるとね…周りのものが破壊されて行くから…。

 

え?ベッドに潜り込む時?外すに決まってるでしょ!

 

 

編み物とかもするわよ?桜大鳳さんが器用だから教えてもらってるの。

 

でもね…何故かデザインが禍々しくなるのよねぇ…。

 

 

 

 

残念な事に外に出て遊べないのが悲しいわ…。

出るな!と言われた訳じゃないけどこんな見た目じゃ…仕方ないけどね…周りが混乱したらダメだし。

周りの娘が夫婦体験と言って出て行くのを見送るのは少し羨ましくて寂しいかな…。

 

 

 

「ならメイクしたらいじゃない…てか、あきつ丸とかめっちゃ肌白いけど普通に出かけてるわよ?」

 

「その手があったか…!」

やはり明石は天才か?!いや!天才だ…。

 

「メイクなら愛宕や足柄に聞けばいいわ」

 

そこまで教えてくれるとは…天才…いや!神か!!

 

 

 

「「という訳で私達にメイクやオシャレを教えてください」」

と、三つ指ついて土下座する2人の深海組。

 

「あらあら…そんなに畏まらなくても教えるわよ?」

「まあ…恋する乙女の気持ちはわかるわ…いいわ!任せなさい」

 

「「お…」」

 

「「お?」」

 

「「お姉様方ッ」」

 

「お姉様って…」

「むず痒いわ…」クスクス

 

 

 

 

先ずは自分でやってみろとの事で…。

雑誌で勉強した腕を見てもらおうかしら!!

 

 

……

 

「あら?お笑い芸人かしら??」

と姫ちゃんが言われる。

 

「コッチは…現代アートかしら?」

と鬼ちゃんが言われる。

 

 

「「……くっ……いっそ殺してください」」

 

「ふふっ…そもそもね?2人は」

「素体がいいのだから…コテコテのメイクはいらないわよ」

 

「提督と外を歩きたいのよね?」

「ライバル…だけど…やっぱりフェアじゃないとね」

 

「ここをね?こうやって…」

「可愛くなってきたでしよ?」

 

 

「はい、完成」

「お待たせ」

 

 

 

「「行ってらっしゃい♪あの人のところへ」」

 

 

 

 

 

すれ違う皆が 

うわー!かわいー!

と言ってくれる。 本当?

 

嬉しいね鬼ちゃん。

 

うん、そうね姫ちゃん。

 

 

 

執務室のドアの前に立つ。

緊張する。

 

でも…勇気を出してみてもらおう。

私達とも…お出かけして欲しいから。

 

 

「提督さん!」

「見てくださ……」

コレであなたの視線は釘付け……?

 

 

「…!〜!〜〜!!」

そこには…目隠しと猿轡をされた提督が椅子に縛られていた。

 

視線もくそもなかった。

 

「「ええ…」」

提督の視線を釘付けにしようと意気込んでいたら…椅子に張り付けられた提督に私達が釘付けになった…あれ?なんか意味がわかんない。

 

驚く私達…。

しばらくの間、静寂の中に提督のんーんー声が響いた。

 

 

とりあえず…解放しましょう…。

 

 

「ぷはーー!!酷い目にあった……ありがとう…一体誰が…」

「あれ?どしたの?2人とも可愛い化粧して?いいね!美人が増してるよ!」

 

切り替え速くないですか?縛られてたのよ?

そして、…恥ずかしくないのかしら?この人は…。

 

 

「またどーしていきなり化粧を?」

 

「あなたと…外を歩きたいから」

「そう、私たちも…」

 

「何で?」

 

「何でって…」

 

「そのためのメイク…?」

 

「「はい」」

 

「メイクしなくても…歩くよ?」

 

「「は?」」

 

「メイクしなくても…2人は俺の艦娘だから…一緒にデートするし、夫婦もするよ?」

 

「いや!私達は艦娘ではないわ!」

「そうよ!深海…「何故?」

 

「ここに居て味方で居てくれるんだから…艦娘だろ?」

 

提督は壁を指差す。

艦娘一覧のボードには…駆逐艦や軽巡等のグループ分けが行われており。深海組 艦娘として私達の名前があった。

 

 

 

 

「「……」」

 

 

「無理矢理すぎたか?…でも…お前達はお前達だからな」

「俺のためにオシャレしてくれてありがとうな」

ペンを走らせる手を止めて笑顔で言ってくれた。

 

 

 

「しゅき…♡」

「ずっと着いていく…♡」

 

 

「お!?おう!ありがとう?」

 

 

「他所でやって下さい…」

大淀が笑いながら言う。

 

「ご主人様…ロイヤル組の名前が私しかないので寂しいのですが…」

ちょっと何言ってるかわかんないですね。

 

 

「なら…今度デートしてくださいね?提督」

 

「行こう行こう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私のが先ね?建造されたのは私の方が早いから…」

 

「くっ…年功序列ッ……なら姫ちゃんよりも凄いプランで上書きするしかないわね…」

 

「なっ!!ならデートプランは秘密でいくわ!」

 

「あー!ズルイ!!」

 

 

 

「楽しそうね」

と、笑う愛宕。

 

「そうね…さっきよりも笑ってるから…良かったわ」

と、足柄。

 

 

「さあ!料理の練習の続き…やるわよ!キッチンへ行くわよ!」

 

「「はあい!!」」

 

「いい?私達の指導には「イエス!マム」と答えなさい!良いかしら?」

 

 

「「イエス!マム!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ともあれ、朝ご飯くらいは作れるようにならなくちゃね。

 

 

 

 

 

 

「…料理はまだまだで………ね」ガクリ

 

足柄が白目を剥いてぶっ倒れた…。

 

「足柄さぁぁぁぁあん!!カムバック!!!」

「入渠手続きしてくるうううう!!」

 

 

まだまだ修行が必要みたいです。

 




どんどんキャラが崩れて行く……!!

それもありでしょうか?



お楽しみ頂けたなら幸いです(๑╹ω╹๑ )


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114話 武蔵ト1日夫婦 ① 不器用な…

「…あなたよ。今日明日とよろしくお願いします」

 

「え?頭でも打った?」

 

「失敬な!!私とてな…女なんだぞ!そりゃ…夫婦の時くらい…だな…」

 

「メイドの時はあんな扱いだったのに?」

 

「主人たるもの、強くなくてはと…おもってな…」

 

「てか、ケッコンカッコカリしてるよね?」

 

「うぅ…責めないでくれ…」

 

「まぁ…不器用な武蔵も好きなんだけどさ」

 

「…!!ありがとう!あなたよ!」ギュウウウウ

 

「抱き締めるのは良いが…痛くね?力強くね?強めてね?」

ミシミシミシ

「いだだだ!折れる!折れるうう」

 

「この強さは愛の強さだ!まだまだ行けるぞ!」

 

「行けねえよ!いや!逝っちまううううう」

 

 

「…朝からハッスルしてしまったな…まぁ…なんだ…その、朝食を用意してあるから…一緒に食べよう、あいぼ…あなたよ」

 

「…死ぬかと思ったわ…」

 

朝食はごはん、味噌汁、焼き魚にほうれん草の巣ごもり卵。

 

「無骨な私にしては意外か?」

 

「正直…」

 

「わ、私だってな!あ…あ、あ…好きな人の為なら…頑張るんだぞ」

 

「……」

 

「何だその顔は!うぅ…」

 

お前こそ何だよおお!顔赤らめてさ!

あ、あ?愛してると言いたかった感じか?恥じらいか?

何だよそのギャップは!可愛いじゃねえか!

頑張って朝飯作った?最高じゃねえか!!!!

 

 

「いただきます…………美味いな…」

 

「本当か!?……いや、コホン、当たり前だろう?この武蔵が作る朝食だぞ?美味くないはずがない」

 

「いつもの朝食は?」

 

「シリアルだが?ーーーはっ!違うぞ!?たまにだぞ?」

 

「…………」

 

「うう…美味しいと言ってくれてありがとう」

 

 

 

 

武蔵の行きたい所に今日は行く……。

 

 

蕎麦屋にて…

 

「あなたよ!負けるなぁあ!!!気合だッ!気合だぁぁぁあ!!」

 

「無理……」

 

「後少しで100だぞー!!」

 

「ギ…ブ」

 

「97杯か…まだまだ未熟だな」

 

「お前は?」

 

「250だが?まだいけるが?」

 

「…わんこそばって何だっけ?」

 

 

 

 

 

 

とあるバッティングセンターにて…

 

「はっはー!提督!もっと踏み込まないと打てないぞ?」

 

「バッティングなんかやったことないぞ…」

 

「どれ…手本を見せてやろう…」

 

『おっ?お嬢さんがやんのかい?』

と店のおっちゃんが言う。

 

「ふっ…見ていろ!」

 

マシンからボール(150km/h)が放たれる。

武蔵が全力でフルスイング…!!

 

ギンッという音が聞こえた後…

 

ポテッ…コロコロ…

 

『あー!お嬢さんおしかったな!でも、当たるだけでもすげえや』

 

「むっ…手応えはあったのにな…」

 

「………」

 

俺は見た…。

あの転がって来たボールは…隣の隣のボックスの人が打ったボールであり…実際の武蔵の打球は、バッティングセンターの金網をブチ破り…場外へと飛んで行ったのを……。

 

 

 

 

 

眼鏡屋にて…

 

「ふむ……このフレームも…なかなかだな…」

「なあ…あなたよ…メガネのフレームは太めが好きか?細めが好きか?」

 

 

「…考えたことないな…まあ少し太めかな?」

 

「ならコレをもらおう…」

 

武蔵が…俺の好みに合わせるのも何か新鮮だな…。

 

「あなたよ…失礼なことを考えてないか?」

 

「え!?そんなことないぞ?」

 

「む…そうか」

 

 

 

 

「よし…武蔵…勝負といこうじゃないか!」

 

「勝負…ほう…随分な自信だな!」

武蔵は勝負という言葉に弱い…というより、めっちゃ反応する。

 

エアホッケー…バスケ…ワニ叩き…全てにおいて負けて来たが今日は違う!!

卓球…だ…。

本気の武蔵のスマッシュなら球が割れてしまう…!

つまり!それなりに力を抑えなくてはならないッ!!

 

 

パァン!!

「むっ?!球が…粉々に…」

 

「むっ!?!?まだ強いか…」

 

「ほうほう…こういう感じか!」

 

 

しかも覚えが早いのよね…。

 

 

結果だけ言おう。

ボッコボコにされた。

 

最初は押していたんだがな?恐ろしい成長スピードで追いついてくるのよ…。

途中で「武蔵…愛してる」と情緒を揺さぶる作戦に出たが…。

「私もだぁッ!!!」と、返された。

 

「…私の勝ちだな!あなたよ!」

 

「悔しいっっ!!」

 

「ははは!まだ負けんよ!……しかしなんだ…その…アレだ」

「楽しむあなたの顔は輝いていて…好きだ」

 

あら…しおらしいじゃないか。

可愛いなと思った。

 

 

 

 

 

 

 

15時か…少し一休みしよう。

という事で、コーヒーを片手にベンチへ座ることにした。

 

 




もうすぐ4連休ですね!
まあ…休みじゃないんですけど…。


続きます!!
お楽しみ頂けたなら幸いです!


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115話 武蔵ト1日夫婦 ② 不器用な…

他愛のない雑談の後、またまたデートの続きに繰り出した。

 

「夕飯前ではあるが…すいーつなるものを食べてみたいのだが…」

 

「何が食べたい?」

 

「…マカロン」

 

「何ダース?」

 

その質問に顔を赤らめて反応する。

「そんなに食べない!!私をなんだと思っているんだ…まったく…」

「雑誌で見てな…可愛らしくて食べてみたくなったんだ…」

 

 

そんな訳でスイーツ屋にレッツゴー!

実は俺も…マカロンは食べた事がないのさ…。

 

ガチガチに緊張しながら入店!

 

注文を終わらせて待つのみ!

 

 

 

「早く来ないかな…みたいな顔をしているな?」

 

「楽しみなんだ…仕方ないだろう」

 

運ばれてきたのは……んまー…可愛らしいマカロンだった。

 

「…これがマカロンとやらか…」

と、言う俺。

 

「クッキーや最中を想像してたが…違うな!甘くて…美味しいな…」

と、食べる武蔵。

 

「まだまだいけるな!追加をください!」

 

「美味しい!おれもください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、結局調子に乗って食べてから夕飯が入らなくなった…。

 

「キャラメルラテすら甘く感じない…」

 

「ブラックでも飲める…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…鎮守府で2人で夜食にするか…」

 

「はい…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰りの船で…。

甲板のベンチに座る俺の横にちょこんと座る武蔵。

心なしかいつもの武蔵よりも一回り小さく見えてしまう。

 

「誰だお前は?」の言葉を喉に押し込める。

 

「今日は…いや、いつもか…。私の我儘に付き合ってくれて…ありがとう」

 

「その…なんだ、私は…別段他の艦娘のように可愛い訳でも…愛想が良い訳でも無い…。素晴らしく頭が良い訳でも無いし、燃費が良い訳でも無い。…それどころか、男は強くないと!と、あなたをトレーニングで追い込むこともある…。」

 

「この指輪を貰っていることすら…夢でないか?大和と間違ってないか?なんて思うこともある」

 

「正直間違えた…」

 

「む!?……そ、そうだろうな」

 

「嘘だ」

 

「なっ!?」

 

「お前だから渡したんだ…」

「確かにゲームの中では大型建造で初めて来てくれたのが武蔵だった。相棒と呼んでくれるお前のその感じが好きだったんだ。姉御肌みたいでな。そして……この世界でのお前は…どんな時も叱咤激励してくれて…行く末を見守ってくれ、時に…いや、いつも助けてくれるお前だからこそだ。」

 

「提督…」

 

「時々やりすぎだがな…」

例えば…メイドの時とかバレンタインとか……数え切れないな…

 

「それは…すまない」

 

 

 

「あなたよ…提督…いや、救…さん」

 

「ん?何だ?」

 

「わ、私も…あなたと……口づけを…したいんだが」

 

「いつでもいいぞ?」

 

「む、む!そうか!そうか!では…遠慮なく…頂くぞ!」

 

ガシッと俺の肩を掴む武蔵。

緊張してるのか、その手には力が篭っており、息遣いも少し荒い状態で真っ直ぐと俺を見つめている。

 

「頂くぞって…俺は食べられるのか?」

 

「あながち間違ってないな」

 

「え?」

 

「頂くぞ!!」

 

キス…された。

抱き締める腕にめっちゃ力込められてるううう!

めっちゃ痛いッ!!

 

けど…

震えてるのか?武蔵…?

 

不安だったんだろうな…。

思った以上に武蔵は繊細なんだろう。

普段の立ち振る舞いも…異色を放つところがあるが、その豪快さは他の艦娘の指標になっているのは間違いない。

 

ただ…ケッコンカッコカリにしても…恋愛にしても…戦とは違う。

愛嬌や可愛らしさでは他の艦娘には及ばないと思っているのだろう。

 

そんなことはないはずだ。

お前は十分魅力的だと思う。

 

 

 

 

…スパルタだけど。

 

 

そっとその頭を撫でる。

震えが止まったみたいだ…。

 

 

 

「ありがとう…あなた」

 

「柔らかかった…」

唇も…胸もな…

 

 

 

 

 

 

2人で夜食を食べながら話す。

伊良胡には健康に悪いですよ!なんて言われたが…。

 

 

さっきのアレのせいか武蔵がぎこちない。

 

 

 

「飾らなくていいんだぞ」

 

 

「ん?」

 

 

「戦艦だからとか…艦娘だから…とかじゃなく、ありのままのお前で居てほしい。スパルタな所も、少し強引な所も、実は可愛いもの好きで甘えたがりな所も含めてお前なんだから」

 

「俺はそんなお前が大好きだ」

 

 

 

胸がきゅうっとなる…。

私は戦艦武蔵の名を冠する艦娘だ。

常に先陣に立ち、戦い…その背中を見せるのが私だと思っていた。

 

その私が…わがままを言って甘えて…。

落胆する人も居るだろうか?

 

でもこの人は違う。

どんな私でも受け止めてくれる…。

飾らなくていいと言ってくれる。

それがたまらなく嬉しい。

 

 

この人と食べる料理がさらに美味しく感じる。

この時がずっと続くようにと思う。

 

 

「ありがとう…」

本当にありがとう。

 

 

「こちらこそ」

と、提督は笑顔で答えてくれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寝る時もずっと引っ付いていた。

この人が寝てしまうまで、私が寝てしまうまで…。

ずっとこの人の体温と鼓動を感じていた。

私の鼓動は早かっただろう。

 

それでも…この熱さは、幸せな…熱さだった。

 

 

 

 

え?メイド?

またやるぞ?やるからな?

 




金剛のぬいぐるみはLoppi予約じゃなかったのね…店頭販売だったのね…
くじは引きましたよ!



お気に入りが420ということで…
ありがとうございます(´;ω;`)
本当にありがとうございます!





どんどんとキャラが崩壊してブッ飛んだキャラになってますが…ご愛嬌ということで……



お楽しみ頂けたなら幸いです(๑╹ω╹๑ )!

感想や評価お待ちしております!
お気軽によろしくお願いします!


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116話 青葉の取材! 盗撮編

盗撮編?
むしろそれしかない気がする。


究極のジャーナリズム…

それは、どんな危険をも省みず行き…真実を伝えること。

 

 

でも…提督の周りは…修羅場すぎる…。

 

 

 

 

「というわけで提督に取材にきました」

 

「何が…というわけでだよ」

 

「まぁまぁ…直接、聞きたいこともたくさんありますしね」

 

「ほう?例えば?」

 

「蒼藍のちか……もがっ!!…」

「ウマむ……もごご!!」

 

「何故言わせてくれないのですか!?」ゼーハーゼーハー

 

「世界の破滅を招くからだッ!!てか!どこ情報!?」

 

「秘密です♪」

 

 

 

 

「聞きましたよ〜提督ぅ…浮気は…よくないですよぉ?」

扉の向こうから聞こえてくる誰かの声…。

 

 

「ひっ!!」 ガクブル

 

 

 

「こ、この話題はやめておきますね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて…今日は、次のケッコンカッコカリの相手の調査をしましょうか…」

 

 

「私だッ!!」

「私よっ!!!」

「ウチや!!」

「ケッコンと聞いて!!」

 

 

「ひっ!」

取材どころではない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ヤセン」 ボソリ

 

「夜戦ー!?♡どこー!?いつ!?!?うひょおおい!」

 

……発言には気を付けよう…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……本当にやるんですか?」

 

「…うむ…頼む、お前しかいない」

 

「まあ…報酬と身の安全を保証してくれるならやりますけど…」

 

「頼んだ…!」

 

 

 

 

 

 

 

「…とりあえず脱衣所で……ふむ…ここなら場所的には完璧な位置取り…後は待つだけ…ジャーナリズムは…忍耐…」

 

「しかし…長門さんも…意外とヤベーヤツなんですねぇ…駆逐艦の風呂シーンの写真が欲しいなんて…バレたら軍法会議ものですよ…私も」

 

 

「お!?六駆組ですね…。何でしょうか…この犯罪感は…」

 

「おや?19ちゃんも…うわぁ…アレは凄いものをお持ちで…」

 

「……売れるわ…コレ」

 

 

 

 

 

 

「長門さん…どうぞ…」

 

「こ、コレはァ!?」

 

「長門さん!鼻血が!!」

 

「う、うむ…実に素晴らしい…。コレは報酬だ…」

 

「こ…こんなに!?いいんですか!?」

 

「あぁ…次も頼むぞ……む?血を流しすぎたか…クラクラするな」

 

 

 

こんなにもらっていいの?

頑張れば…新しいカメラが買える…。

脱衣所の写真だけでも破壊力がヤバい。

なら風呂の中なら…?

 

「……ゴクリ…」

これはジャーナリズムです。探究心です!

欲しいものもあります……えへへ。

 

 

 

「…隠しカメラヨーシ」

バレたらカメラは没収されるだろう…もしものために隠しカメラをつけておこう…。

 

 

「さあー!お風呂よー!」

「はらしょー」

「しっかり洗うのです」

 

「おー…コレは…コレは…」

 

「あー生き返るでち…」

「お風呂いいのー」

 

パシャリ…パシャリ…

 

「コレなら…カメラはすぐに買えそうですね」

くすくすと笑う青葉。

 

 

パシャリ…

 

「何してるのです?」

「あらあら〜?何してるのかしら…?」

 

 

「!?」

バレた!?

 

「カメラの音が聞こえたのよ…」

 

「盗撮ですか…」

 

逃げ……

ガシャン…と艤装を突きつけられてしまったら手を挙げるしかない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電が長門の部屋に行く。

 

「長門さん!青葉さんが…盗撮を………!?」

 

「この部屋は…」

 

 

そこには……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?何で盗撮なんだ?」

と、提督に取り調べを受ける。

 

「………」

 

「黙秘か…」

 

言えるわけないでしょう!あの長門さんからの依頼だって……。

 

 

「……アレでも?」

 

「え?」

 

磔にされた長門が運ばれてくる…。

 

「ちょっ!長門さんんんん!?!?」

 

「コイツはねぇ…部屋に私らの隠し撮り写真を置いてたんだよお」

「ゆるせねーです」

「レディ失格…ね」

「……なのです」

 

磔にされた長門はポコポコと柔らかい棒で叩かれている。

その後ろでは龍田達が槍や武器を構えている。

 

 

 

 

 

「くううう!まさかバレるとはぁぁ!!」

 

「ご丁寧にアルバムにしてたらバレるわよ!」

 

 

「…長門さんは……酷い人なのです?」ぐすん

 

電が泣いてる…。ぶっちゃけ怒られるよりも…泣かれる方が精神的にキツいものがあるよね。

 

「ぐはぁぁあ!!…い、電!私が悪かったぁあ!!私はただ、天使達のありのままの姿をだな…」

 

 

「ギルティーーー!!!!」

 

またポコポコと叩かれる長門…。

 

 

めっちゃ…血ィ吐いてますやん…長門さん…?

最早そこにビッグセブンの輝きはなかった。

 

 

 

「まだ言い逃れする?」

 

………諦めよ…

 

 

「……すみませんでしたァァ!!」

とにかく土下座した。

 

その後は、私も同じく磔にされてポコポコと叩かれた。

 

 

しばらく2人で磔のまま鎮守府の入り口に晒された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

痛い目にあった…

 

あれ?私の部屋から…提督達が…?

 

え?ちょっ!

カメラを持ち出さないで?

ダメ!メル○リに出品しないで!?ごめんなさい!ごめんなさいいいい!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ううー。

何とか取り返せた…。

 

 

 

私は諦めない!

 

鎮守府を席巻する大スクープを手に入れるまで!

 

 

 





コロナも早く落ち着いたら良いのになあ…。

ご心配等ありがとうございます(´;ω;`)
無理のない投稿ペースで頑張ります!


少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです(๑╹ω╹๑ )!


感想や評価等お待ちしています!モチベーションめっちゃ上がります!夕飯が豪華になります!
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117話 その気持ちに偽りなく ①

甘めのバカ話編


「お願いします!」

 

麗は頭を下げている。

 

 

「あーー…つまり…あれね?」

 

「親に結婚を前提に付き合ってる人がいると言ってたら…連れてこいと言われたと」

 

「うん」

 

「それで俺に行って欲しいと」

 

「うん」

 

「展開的にベタ過ぎない?今時の漫画でも…ないだろ」

 

 

「だって仕方ないじゃん!本当の事なんだから…」

 

 

 

 

 

 

 

「ヘーイ!ラブコメにありがちな展開のにおいを嗅ぎつけてやって来ましたヨー」

 

「今時ですか?ネタに困ったのですか?」

 

 

「違うもん!本当なんだよお」

 

「なら、なんでダーリン何ですカー?」

 

「う…それは……好きな人ですし…?夫婦しましたし…?」

 

「あわよくばそのまま結婚はダメですよ?」

 

「うぐっ…わかってますよ」

 

「まあ…お付き合いしてるのも事実だし行くよ」

 

「「「え?」」」

 

「まぁ…結婚となると、重婚だけど……いや、別にお前達とのケッコンも仮のものだとは思ってない。…ただ、金剛達は挨拶する人が居ないだろ」

「所謂、事実婚なんだけどなあ……麗ちゃんは艦娘でない訳で…ご両親になんて言おうか…」

 

 

「まあ普通に考えたら…バレたら殴られるよネー」

 

「提督殴られるの?」

 

「覚悟はしといた方が…いいかなあ」

 

「そんなことあったら…地図から消しますわあ…」

 

「だめです!!それに!お付き合いしてまーすって言うだけの顔見せだから大丈夫なはずよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で…そんな訳で君の地元に来た訳で…」

 

来たのはかなり田舎の小さな家。

「帰ってくるのはかなり久しぶりなんだけどなあ」

 

「何だか…緊張するなあ…」

 

 

ピンポンと鳴らすと…お母さんらしき人が出迎えてくれる。

 

「まあ…麗…よく帰ったわね!お帰りなさい!」

 

「おお…その人が…救さんか」

奥から父も出てきたらしい。

てか名前知ってる時点でご指名確定じゃん!

 

 

 

 

 

「はじめまして…私、麗さんとお付き合いさせて頂いています、神崎 救と申します。こちら…つまらないものですが…」

 

「畏まらないで下さい!さあ、どうぞどうぞ!」

 

 

「お父さんたらね!頑固親父で行くんだ!とか張り切ってたけど…救さんを見た途端に素に戻っちゃって あははは」

 

「お、おい!言うなよ」

 

 

「軍人さん同士かー…しかも大将さんなんだって?」

 

「そうよ!お母さん」

 

 

「職場での麗の様子は?」

 

「戦績も、日頃の執務に関しても優れていますよ」

 

 

 

「何か…マッチョを引き連れて歩いていたと聞いたことがあったのですが…」

 

「見間違いじゃないでしょうか?」

 

「いや…この写真が…」

昔の武蔵や電達だ…相変わらずこの見た目は…。

 

 

「よくできていますね!合成でしょう!!

 

「え…でも」

 

「合成でしょう!!」

 

 

 

 

 

 

他愛もない話を続ける。

 

年端も行かない頃から軍で訓練漬けだったんだ…。

久方ぶりの帰省は嬉しいだろう。

 

明日の命ともわからない…。

普通ならあり得る恋愛話や…学校の話とも縁遠かっただろう。

 

ましてや…恋人を連れて来る…か。

 

ご両親の喜びも…ひとしおだろうな。

 

 

 

 

 

「お腹すいてるでしょう?お昼にしましょう!」

 

「え?!あ、はい!頂きます」

 

 

 

 

お昼までご馳走になって…。

 

味付けは…麗ちゃんのに似ている…。

 

 

こちらを見てニコッとする麗。

笑顔で俺も返す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やばい…完全に俺の状況を説明できない。

 

 

ん?普通に考えたら…許さんだろうな…。

俺が親でも許さんわ…。

 

でも艦娘の事を黙って、騙す形になったら…それはそれで不誠実だ。

ご両親を傷つけてしまう…。

 

艦娘、人間という括りなら

世間的には本命が麗で、作戦上艦娘とケッコンしたと言うだろう。

 

艦娘が退役して人として暮らしたら…うーん…、この場合は…麗と結婚しているから、重ねては結婚できない。

 

 

…でも、麗ちゃんが俺にとって大切な人には変わりない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「救さん?男同士で散歩でもどうですか?」

 

 

「え?!あぁ!はい!!」

 

 

 

さて…どうする…どうする。

 

 

 

 

 

 

お父さんが口を開いた。

 

「救さんは…麗のどこが好きになられたのですか?」

 

 

…まあ当然の質もだな。

 

「まっすぐなところですね…。耐えて耐えて我慢の連続だったと思います。挫けそうになったり、違えた所もあったと思います。」

「それでも今は前を向いて真っ直ぐに進んでいる所です。彼女の明るさやひたむきさに私は何度も元気をもらいました」

 

 

 

これは本音だ。

いつの間にか隣に来て、同僚、部下として、個人として支えてくれる。

時々ダークな面もあるけど…。

心から信頼している人物だ。

 

 

「麗はですね…あなたが眩しいそうです」

 

「眩しい?」

 

「どんな暗闇の中でも…あなたの輝きが私を照らしてくれる。だから私も迷わずに真っ直ぐ歩める…と」

 

「私も…あの人の支えになりたい…と、彼が私を守ってくれるように、私も大好きな彼を守り切りたい…と」

 

 

 

そしてお父さんは…言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「救さん…あなたは…艦娘とも結婚なさってるんでしょう?」

 

 

 




続きます!

少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです(๑╹ω╹๑ )


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118話 その気持ちに偽りなく ②

「あなたは…艦娘ともケッコンなさっているんでしょう?」

 

 

 

「え?!あ!?」

面食らってしまった。

 

 

 

 

 

「あの街にも知り合いが居ましてね…アナタの噂は知っていたんです。麗とも一緒にいる事も…」

 

 

 

 

知っていたのか!?

なら何故平気で居られる?

何故…この人は…?

 

 

 

 

俺は殴られる覚悟を決めた…。

 

 

「あぁ…怒ってる訳ではないのですよ?」

 

「え?」

 

「そりゃ…最初は…何だ!?この野郎と思いましたよ」

「でも…私にあなたの事を話す麗は…いつも幸せそうで…」

 

 

 

「麗も部下とケッコンしているとも…ね。まあ…あなたは本気で艦娘の方とされているようですが…」

 

 

お父さんが動いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうか…麗を幸せにしてやってくれませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お父さんは…頭を下げていた。

 

 

 

 

「あの子は青春も何もかも犠牲にして平和を守ってくれてます。私らは親として何も出来てません。逆に貰ってるものの方が多いんです。だから、…あなたの事を話すあの子のあんな幸せそうな顔を見れるのが嬉しいのです」

 

 

お父さんは頭を下げたままだ。

 

「私は…艦娘とかはわかりません。側から見たら何て親だ!と言われるでしょう…。」

 

「…でも、あの子が選んだ人ですから」

 

「あの子を守り切って幸せにしてくれるなら、私はあなたに任せたいと思います」

 

 

 

 

 

 

 

葛藤もあっただろう。

 

俺みたいな奴に娘を送り出そうと決意するなんて。

 

でも、決して投げやりではない。妥協でもない。

 

 

自分達の思いよりも、彼女の幸せを優先したんだろうか。

 

 

 

 

 

なら…俺もしっかり応えなくては…。

 

 

 

お父さんが顔を上げた先には…

 

救君も頭を下げた。

「お父さん…世間的には私はクズでしょう…。わかっています。それでも…あの人の幸せの為なら何でもします。命懸けで幸せにします。守り切ってみせます!!!」

 

一度顔を上げ、はっきりと言った。

 

「なので、お嬢さんの命を私に任せてください」

 

「泣かしたら…ダメですからね?それに」

 

「それに?」

 

 

 

 

 

「あの子は可愛いですから!きっと1番になりますよ、あなたの」

 

ん?

 

「性格も良いですし…料理もできる!まさに嫁として文句なし!」

 

あれ?なんか流れが…?

 

 

「ウチの娘は可愛いですからね!他の娘には負けませんよ!」

ほら見てください!と写真やら新聞のスクラップやらを見せてくる。

 

 

あぁ…

葛藤じゃねえな…

娘への絶対的な自信だな…。

 

 

「アーハイソウデスネ」

 

「この写真はですね!!!」

 

「ウオースゲー」

 

「聞いてますか!?」

 

「アッハイ」

 

 

 

 

 

「結婚の挨拶みたいなものねぇ」

と、お母さんが笑いながら私の横に来た。

 

 

「…いい?麗。艦娘さんにも他の人にも負けちゃダメよ?」

「私も…他の娘達に打ち勝ってお父さんと結婚したんだから」

 

 

 

 

 

 

 

「あの人と一緒になりたいって言って…怒らないんだ?」

 

「麗が本気で好きになって、一緒にいたいんでしょ?なら…反対しないわ…だから負けちゃダメ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「にしても…ウチの娘も含めてハーレムですねぇ…」

 

「うっ……」

 

「……どこまでやったんです?」

 

「え?」

 

「恋人らしい事はしてるのですか?」

 

「と、言いますと?」

 

「……やっちゃったんですか?誰かと…」

 

救君が吹き出した。

「いやいやいやいや!まだ……あーキスくらいでしょうか?」

 

「その後の予定は?子供とか…最初の相手は娘で…」

 

 

 

「お父さん!!!!!」

思わず飛び出してしまった。

 

 

「れ、麗!お母さんまで!!!!」

 

「お父さん?お話があります〜」

お父さんはお母さんに捕まった。

 

「麗達も忙しいんだからそろそろ帰らなきゃいけないんだしね」

 

「あ…うん!また…帰ってくるね?」

 

 

 

「次は…孫の顔をみせてねえ〜救君ー、麗〜」

 

 

「え!?え!?!」

 

 

ウフフと笑いながらお父さんはお母さんに引き摺られて行ってしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「殴られるかと思ったのに」

 

「こんな感じだって思わなかった…私も…何か、ごめんね?」

 

「ううん…凄い親御さんだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰りの道すがら

 

まあ…お父さんとのやり取りを聞かれた訳だしなと思い…麗を見る。

照れ臭そうに、微笑みかけてくれる彼女。

 

色々としてやられた感はあるが……。

 

「麗ちゃん」

と、繋ぐ手を解き呼びかける。

 

「なに?」

と、答える麗。

 

今更ながら彼女に差し出した。

 

「これ……」

 

「え?」

 

「…皆と同じものだけどさ……君をこの戦いが終わるまで守り切る。終わっても…幸せにする。だから受け取ってくれないか?」

 

「順番…違うくない?」

涙目で笑う彼女。

 

「うっ……想定外すぎたから…」

 

「救君…ムードとか…もう…」

「それに?…皆にも同じ事言ったんでしょ??」

 

 

 

 

「…きっと…ぐすっ…一番になるからね?何があっても…ぐすっ、離さないで居てくれる?」

 

 

「約束するよ」

 

ぐすっ…ぐすっと彼女が泣く中でハッキリと聞こえた…

「はい!喜んでお受けします」

 

 

彼女の顔は涙でぐしゃぐしゃだった。

 

 

 

 

 

私は飛びついた。

 

…キス。

抱き締めながら、長く感じるほどのキス。

 

 

嬉しい…から。

あなたが必要としてくれて…居させてくれて…

手を取ってくれるから。

 

 

私…負けないからね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出会いは良くなかったと思う。

その後も…嫌な思いをさせたかな…。

 

でも…私はあなたに惹かれました。

あなたの笑顔が、言葉が、私を照らしてくれるから迷わずに真っ直ぐ歩めるんです。

 

だから少しでも私もあなたの力になりたいと思います…ずっと隣で。

 

 

私も約束します。

ずっと離れません。

私もあなたを…守ります。

 

 

 

 

 

 

 

 

鎮守府に帰った2人を出迎えた艦娘がどうなったかは…言うまでもない。

 

 




ご都合展開とはこう言う事だろうな…

お気に入りが430…
ありがとうございます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
これからも…何卒!何卒!!



少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです(๑╹ω╹๑ )


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119話 私の初恋をあなたに捧ぐ

伝えたい言葉は

彼に届くことなく…私の中に。

 

彼の居た部屋で

何もない空に

彼の眠っていない墓に 

 

私は呟いた。

 

 

「愛してるよ」

 

 

伝える事なく

私の胸の中にあるまま…

私も旅立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……私は待つ。

彼がここに来るのを。

 

 

 

 

「お待たせ…えと」

 

「今の私は迅鯨よ?」

 

「………お待たせ、迅鯨…いや、秋姉さん」

 

「…むう…。来てくれてありがとうね。なかなか2人で積もる話ができないから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

 

「……」

無言が続く。

 

 

 

決して話す事がない訳ではない。

 

話したいことがありすぎるのだ。

2人を割いた時間は…現実にしては長くないが、私からすれば何十年と孤独に感じた。

 

 

 

 

 

だから

 

 

 

 

「ん?!うわっ!」

 

私は…彼に抱きついた。

「……やっと触れられた…ぐすっ」

 

 

 

「ずっと…ずっとこうしたかった…。ぐすっ…」

 

声にならない…。

 

「君が進学や就職で居なくなって寂しかったけど…たまに会えるのか嬉しかった。先輩の話ばかりでヤキモチ妬いてたんだよ?」

 

 

あなたに伝えたい。

 

 

孤児院での家族という形だったからこそ、伝えられなかった想い。

もし、壊れてしまったら…元に戻れない気がして。

 

 

でも…

あなたは逝ってしまった…私を置いて。

 

「…救君が亡くなった時は…本当に辛かったんだよ?生きる気力も湧かなくて……まあ私も病気で死んじゃったけど…ね」

「今まで当たり前にあったものが突然無くなるなんて…もう嫌だよ」

 

「俺は生きているよ…秋姉さんも」

彼は私を撫でてくれる。

暖かいなあ…。

 

 

 

「救君が私の名前を呼んでくれなきゃ…諦めてた」

 

私は沈みかけていた。

彼が諦めるなと言ってくれたから私は…立ち上がれたんだ。

 

 

 

やっと願いが通じた。

「立ち上がれる力をください」と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ?救君」

 

 

「なに?」

 

 

 

 

 

彼女は言った。

弱々しい声で…縋るように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「抱き締めて?壊れるくらいに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は私を力一杯抱き締めてくれた。

痛いと私は言う。

そして、もっと強くと言う。

 

私も強く抱き締め返すーー痛い。

 

でもこの痛みが私が生きているという…彼が居ると言う実感ならば…私は嬉しく思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の大切なものはずっと奪われてきた。

理不尽に、無慈悲に、突然に。

 

何もかも諦めていた。

幸せも、将来も、生きることも。

 

 

あなたの居ない色の無い世界は何も感じなくて…

あなたは会えても離れて行ったけれども…

 

 

罪滅ぼしでもあるけど、あなたを守って沈めるならそれで良いとも思ったのに、あなたは私に諦めるなと言った。

 

 

 

私の世界に色が溢れた。

 

目の前に、心の中にあなたを感じた。

 

だから…今ここに居られる。

 

 

 

 

 

 

どれだけ伝えたくても伝えられなかった私の初恋の想い。

 

私の中にあるら伝えられなかった想いは…もう

 

あなたの居たい空の部屋で言わなくて良い。

 

何も無い空に呟かなくて良い。

 

あなたの眠っていない墓に縋って言わなくて良い。

 

 

 

 

 

だって…

目の前にあなたが居るから。

 

やっと…言えるから。

 

 

 

 

 

「やっと…言える…………好き…あなたが好き…大好きなの。ずっと前から……ずっとずーーっと前から、あなたが私を助けてくれた時から!」

 

やっと…言えた。

やっと言えたんだ。

 

 

「例え一時の泡沫の夢でも…いいの。あなたのそばに居させて?」

 

涙が頬を伝う…止まらなくて、止められなくて…。

 

 

「泡沫じゃなくて、ずっと居てよ」

彼は言った。

「ずっと隣に居てよ。もう離さないからさ」

 

 

 

「俺も好きだからさ…愛してるから」

 

 

 

 

生前にどれだけ…何を犠牲にしても得られなかったもの(言葉)

この世でたった1人、大好きな人からの…「愛してる」の言葉。

 

 

報われた気がした、

全てが…救われた気がした。

 

 

 

 

 

私は泣いた。

 

あなたが死んだことも、出会えたことも、愛してると言ってくれたことも…何もかもひっくるめて。

 

すべて…込めて

「ありがどぉ…愛じでるよお」

と、精一杯彼に抱き着いて言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嬉しかった…。

抱き締める腕を離して彼を見つめる。

 

 

 

照れくさいけど…これが今からのスタートだ。

 

 

 

私は負けない…どんな理不尽にも。

 

だって隣にはあなたが居るから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ?愛してるって本当?」

 

「本当」

 

「どこにも行かない?」

 

「行かないよ」

 

「四六時中一緒に居ていい?」

 

「それは…」

 

「好きって言ったよね?」

 

「え?」

 

「好きって言いましたよね?」

 

「……うん」

 

「なら!!!」

ガバっと私は襲いかかった。

「んむ!?んんん!!!??!?!?」

 

唇を奪うのみッ!

私のファーストキス…ッ。刻めッ!その身に刻め!

 

 

「ぷはっ…!シスターがこんな方して良いのかよ!?」

 

「シスターでなくて艦娘です♡」

 

「都合のいい…」

 

「でも好きと言いましたよね?」

 

「……」

 

 

遠慮もしません。

もう離れたくないから、愛する提督と…ずっとどこまでも一緒に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある日。

 

 

 

あきつ丸と2人で休憩がてらもらったチョコを食べる。

 

「あー…この甘さ…好きだわあ…」

 

「そーでありますなあ…」

 

 

 

「好きっていいました?!」

 

「このチョコレートがな!!」

 

「む…浮気かと思いました」

 

「何で手に包丁持ってんの?」

 

「たまたまです」

 

 

 

「……」

そそくさと逃げようとするあきつ丸。

 

「逃げるなよぉーあきつ丸ぅ」ガシッ

 

「離してください!無理無理無理無理!耐えられません!こんな空気の中居られるか!!」

 

「俺だってこうなるって思ってなかったんだもの!」

 

「提督殿の旧知の方でしょ!?責任持ってください…でありますよ!!」

 

「無理無理!俺にも止められんもの!」

 

 

「仲良さげ…ですね…。妬けますわあ」

 

 

「「ひいいいいいい!!!」」

2人で逃げた。

 

「待ってくださいー!」

笑顔で追いかけてくる迅鯨。

 

 

手には包丁があるけど…。

 

 

 

こうして鎮守府にヤベーヤツがもう1人降臨なされた。

 

 

 

 





迅鯨…(ヤベーヤツ)が加わった!
バリバリ武闘派な感じで登場。

鎮守府ヤンデレオリンピックがあったら優勝候補間違いなしな気がする…そんな彼女。

迅鯨の登場時のセリフが妙に頭に残っていたので
こういう登場になりました。



少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!


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120話 指揮官と重桜の赤城

迅鯨が建造される少し前の話

 

 

 

今日は完全なオフの日…。

1人でたまには出掛けるかな…。

 

やって来たのは全国展開中の

 

"ムーンバックス"

 

どこかで聞いたような名前だけど…

女神のマークで無くて屈強なヘラクレス的な人のマーク。

 

 

大人の事情デス!

 

え?もう少しヒネることは出来なかったのか?って?

無茶を言っちゃあダメだよ。

 

優雅にモーニングコーヒー…キャラメルマキアートを飲んで一息。

あぁ…いいなコレ……と外を見ると…

 

 

 

ニコリと微笑みながらガラス越しにこちらを見る女性が1人。

 

街中の誰もが振り返る美人だ。

 

 

 

 

 

 

長身にさらさらストレートのロングヘア。

整った着物に日焼けの和傘…。

 

 

 

 

 

 

フサフサの尻尾に狐耳

 

 

 

 

多分…何かしらの不思議な力がアレして、ご都合主義的に尻尾とか耳は周りには見えない的な感じだろ?多分。

考えるのは…やめておこう。

 

 

 

そのまま店に入り、スマートに注文を済ませてこちらへ来た。

 

 

 

「…あら?指揮官様はお一人ですか?」

 

「ん?桜赤城か…1人だよ」

 

「まぁ!コレは運命かも知れませんね」

 

「お前さんもオフの日か?」

 

「ええ、ウチの大鳳が替わって欲しいと言って来まして…予定もなかったのでフラついていましたら…フフ、大鳳…コレを知ったら泣くでしょうね」

 

「あー…想像つくなあ…」

きっと血の涙を流して引きこもるだろうなあ…。

 

 

「……」

桜赤城はモジモジとしている。

トイレか?我慢しなくても…

 

なんて

 

そんな訳ないのは知っている。

彼女は待っているのだ。隣に座るか?どこか出掛けるか?と言われるのを。

彼女は無理矢理を好まない。自ら言えば俺が断らないのを知っているから。

そこは桜大鳳も同じではあるが…。

 

 

「隣…空いてるからおいでよ」

 

「…はい!」

 

パァッと表情が明るくなり、隣に座る桜赤城。

 

 

「……一緒に出掛けるか?」

 

その一言に待ってました!と言わんばかりに更に表情が明るくなる。

 

「折角のお誘い、本当に嬉しいのですが…折角のお一人のオフでしょう?」

 

そう、ここで一旦引くのが桜赤城である。

まぁ…声掛けた時点で、こう返って来ても俺の次の言葉は決まっている。

 

「何かの縁だよ。いいじゃないか」

 

「でしたら喜んでお供させていただきます」

 

 

 

 

 

 

 

今日街にいるのには理由がある!

スイーツ…だッ!

移動販売のクレープ屋さん。

1日に限定10個の特製クレープ…!!むしろそれしかメニューがないのだが…。

 

 

 

それをゲットする為にいる訳で…。

 

と言うわけで店前に並ぶ…が…マズイ。

俺でギリギリ10人目な訳で。

 

「私の事は気になさらずに…。指揮官様の一緒にいられるだけで幸せですわ」

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特製クレープは買えた……ひとつだけ。

 

 

 

ベンチでそれを眺める。

 

「どうしたのですか?お召し上がらないのですか?出来立てが1番美味しいのでは?」

 

 

「一緒に食べよう」

 

「なりません!指揮官様の楽しみでしたのでしょう?私は指揮官様の幸せそうな顔でお腹いっぱいでございますから」

 

 

 

「ならその幸せをお裾分けさせてくれ」

 

 

 

 

「…よろしいのですか?」

 

「ああ」

 

 

 

 

「…私…普段は和菓子しか食べませんが…コレは…美味しいですね。特にあなたと食べるなら尚更です…幸せ…しかも間接キス……うふふ」

 

「だろ?食べてよかったろ?あぁーー美味い!」

 

「フフ…間宮に怒られますわね?」

 

「だから…2人の秘密な?」

 

「…はい。2人だけの秘密…ですね♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後の予定は特にない訳で…

 

ショッピングにしても場所によったら桜赤城が入れない…。

尻尾で商品を薙ぎ倒してしまうからな…。

 

 

しかし、尻尾…尻尾。

 

 

 

 

モフりたい…!

このふわっふわの尻尾をモフりたい。

しかし…私は指揮官という立場……くっ…。

 

あぁ!でも触り心地は最高だろうな…。

アレにくるまれて眠りたい…。

 

 

俺の中の悪魔が囁く…。

「欲望のままにレッツトライ!最悪躓いたと言えばいいさ」

 

はっ!!悪魔が俺を唆す…!!

 

 

 

天使が囁いてくれる。

「堕天してでも触りたい」

 

ぬううん!!悪魔しかいねえ!!

 

「し、指揮官様?さっきから表情が凄いことに…」

 

「いやな…まあ…隠してもアレだし言うけど…」

 

「はい」

 

「その桜赤城の尻尾…昔からずっと触りたかったんだ…モフらせて欲しい」

 

「…モフらせて…ですか?…」

 

私は驚いていた。

指揮官様がそんな事を言うとは考えてなかったのだ。

前が見えにくいとか…邪魔じゃないかな?とすら思っていた…。

 

しかし、思えばこの世界では私くらいなのだ。

ここには、加賀も天城姉様も居ない。

 

そう、尻尾があるのは私だけ…。

 

つまり…この私だけが…この尻尾で指揮官様を独占できるッ!

 

「……どうぞ」

 

「では…同意の上という事で…」

 

モフリ…

 

何だッ!?この多幸感ッ…。

 

圧倒的ッ…モフモフ…!いや!フワフワなのだ!

 

あー…めっちゃいい匂いするぅ…。

寝れそう…。

 

 

もふもふもふもふもふもふもふもふもふもふ

 

 

「指揮官様?くすぐったいですわ?」

 

「たまんねぇぜええええ!!!」

 

「あの?」

 

 

「耳も気になっていた…」

 

「え!?そこは!…ひゃぁうううい」

 

「し、しし指揮官様ぁ…ひゃうう」

 

 

 

そこからひたすらモフりまくった。

 

 

「ゼェ…ゼェ…ご、ご満足…頂けたようで」

 

 

「ありがとう…桜赤城…」

 

 

「そんな笑顔の指揮官様は久しぶりに見ましたわ?」

「いつでも…どうぞ?」

 

「え?いいの?」

目を輝かせて言う指揮官様。

 

「はい、この身は指揮官様の為にございますので」

 

「………今日は冷えるよな?」

 

「はい」

 

「寒いのは苦手だよな?」

 

「ええ、まぁ」

まさか…このまま尻尾の中で移動したいというのかしら?

 

 

「……尻尾に包まれて…今日は寝たいなぁ」

 

「何時にお伺いすればよろしいでしょうか!?」

まさかの…一緒に寝られるという事?!

そうよね!?そうよね!?!?

尻尾に包まるという事は…私に抱きついて寝るのと同意義な訳で…つまりは…一緒のベッドで寝るという事…。

であるならは…この夜はどんな害虫も寄せ付けない口実と…私が指揮官様を独占できると言うこと…!!!今日だけとは言わず毎日でも構いませんわ?……でも、夏場は…暑苦しいと嫌がられるのでしょうか?うう…それはそれで寂しいですが…いえ!指揮官様はそんなこと言うはずありません!それに!エアコンで冷えすぎたら体に悪いですから…薄い毛布の代わりです…♪でどうでしょうか!?

もうこれは実質…夫婦ではないでしょうか!?

 

 

「あーダメだな…今日の夜から桜赤城は夜警だもんな…」

 

「のおおおおおおおおおおおおおう!!!」

「嫌だ!嫌ですッ!!」

 

「いやぁぁぁあ!!!!!!」

桜赤城の叫びが響いた。

 

 

残念だが…仕方ない…。

続きは…夫婦の時にな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夜は冷えますわね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「………指揮官様?」

 

「もう少しだけ…」

もふもふ…寒いから離れられないや…。

 

 

そこには尻尾に包まれる救の姿があった。

 

「ずっとそうして居てもいいのですよ?」

 

 

やけに嬉しそうな桜赤城であった。

 

 




尻尾いいなあ…




少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです(๑╹ω╹๑ )
コメントや、メッセージや評価ありがとうございます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
がんばります!
よろしくお願いします(๑╹ω╹๑ )


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121話 明石と夕張の工廠話 好感度ゴーグル

「できてしまった…」

 

「そうね!ついに出来てしまったわ!」

 

相手の好感度を可視化するゴーグルッ(眼鏡型名称未決定)

 

「コレさえあれば…あの人の自分に対する思いの強さを知れます…まずは試しに私がかけて、夕張を……」

 

「どうですか?明石さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………25…だと?」

 

 

「え?」

 

「こんなに毎日一緒に作業してるのに…25…だと!?」

 

「いや…あの…明石さんは恋愛対象ではないですよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で…コレがそれ?」

 

「是非試してくださいよお」

 

「すごい発明なんですよー?」

 

 

 

 

「まったく……ギャルゲーじゃないんだから…」

と、ゴーグルを掛ける…

 

だってこういうの好きだもん…。

 

 

 

 

 

 

とりあえず大淀を見るか…。

 

「提督…眼鏡姿も素敵ですね」ニコリ

 

ほー…120……更に…数値が上がって……ん?

バカな…どんどん上がるだと!?化け物かッ…こいつは?

 

 

 

ピーピーピー!!

「警告音が!?」

 

ボン!!

 

「うおっ!?」

 

ゴーグルは爆発四散した。

 

「スカウターじゃねえかこれ!?」

 

 

 

 

 

「提督!大丈夫ですか!?」

と、大淀が駆け寄ってくる。

 

 

「まさか…大淀の提督への愛がゴーグル(私達の発明)に勝ったと言うの…?」

明石はわなわなと震えている…。

 

「その前に謝れよ…怪我ないから良かったけどさ…」

 

「ごめんなさい提督…」

 

「うん…まぁ、失敗はだr「皆のあなたへの愛を舐めていたわ!」

 

「うん?!」

 

「より深い愛に耐えられるよう…調整が必要ね…」

 

「そこ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出来たわ!可視化ゴーグル…ver21.1……試行錯誤を重ねて完成した珠玉の一品…」

 

「何回も俺が犠牲になったけどね…あだ名がボンバーマンになったからね?」

 

「あと…この資材は…経費はみとめませんからね?」

 

 

「…提督も大淀も……そんなに完成が嬉しいのね?」

 

 

「何ですか?その無駄なポジティブシンキングは」

 

「ダメだ…ラリってやがる……………で?このゴーグルはどう違うの?」

 

「よくぞ聞いてくれました!!」

ふんす!と得意げに言う明石、夕張。

 

 

「紫外線カットやブルーライトカットはもちろんのこと!溶接光すらも完全カット!さらに春先の花粉やその他もカットする優れもの…!」

 

 

「ただの便利メガネじゃねえか!最初の設定はどこに行ったんだよ」

 

「かーーらーーの!提督への愛の深さを更に測定可能にした上に……困った時の相談AIを搭載しました!選択肢に悩んだ時は是非…使ってみたくださいね!」

 

 

「…その努力をもっと別の方角に…だな」

 

 

「ひゅーひゅーーふーーー」

 

口笛吹くなッ!

 

「まぁまぁ…さーさー!使ってみてくださいよ!」

と、無理矢理に装着させられる…。

 

 

 

……えと、まあいいや…

 

 

「えーと……明石は……」

 

ピー…ジジジ…。

 

「860……ってのがどんなものかわからんが…」

ん?何か文字が画面に…

 

[明石さんまじ最高!超天才!と言ってみましょう]

 

「……アカシサンマジサイコウ…チョーテンサイ」

 

「提督…ッ♡」

ピーピー!!

「数値が1500まで上がっただとッ」

 

[ここで指輪を出しましょう]

 

 

「お前の願望じゃねえかぁ!!!」

 

 

「うへぇ!た、たしかに願望はありますけど…本当に相手の表情や脳波から読み取った最適解の行動を提示できるんですよぉ…」

 

「脳波っ…て、サイコメトリーじゃねえか最早…」

 

 

気を取り直して…。

 

「……大淀は…1500か…明石より上じゃねえか」

 

[眼鏡…素敵だよ…]

 

「大淀、眼鏡素敵だな」

 

「あ、ありがとうございます////」

 

ピーピー!

「2600まで上がった…だと?!」

 

[今夜は…お前を寝かせないぜ…⭐︎]

 

「今夜は…ってアウトぉぉぉぉおお!!」

 

「て、提督!?」

と、驚く大淀…。

 

「明石ぃ!!」

 

「どうしましたか?…もしかして…エロいセリフでしたか?」

「いいんですよ?そのまま攻略して………あとは…ね?」

 

ゴチンと明石の頭をごつく。

「あうっ!…冗談ですよぉ…てか脳は読み取ってるんで…大淀の方が言われたい………はい、すみません、調子こいてました」

 

 

 

 

 

 

「まあ…周りの反応は気になるから……鎮守府ん中をふらついてみるか…」

決してやましい気持ちは無い…決して!!!

 

 

 

 

 

「ダーリン!!眼鏡デス?眼鏡姿も素敵ネー♡」

 

「金剛!…9800…だと…?もはや上限がわからない…」

 

「提督〜あっ!眼鏡なんだねー?」

 

「時雨は…9600」

 

「加賀は9750」

 

「桜赤城も9750」

 

皆口々にお似合いだと褒めてくれる。

 

[お前も素敵だぞ…と言ってください]

 

 

「お前も素敵だぞ」

 

 

 

 

「「「「誰がです?」」」」

 

ん?

 

「私に言ったデスヨネー!?」

 

「僕だよね?」

 

「私でしょう…」

 

「指揮官様…?」

 

 

「「「「ね!?」」」」

 

 

 

しまった…。

この展開は想像してなかった…。

 

[修羅場に陥る雰囲気を察知しました。演算中、修羅場回避の演算中]

 

チーーン…完了…。

[逃亡をオススメします]

 

 

おおおおい!?!?

打つ手無しですか!?

 

 

 

「あのー…そのお…」

 

 

「「「「お聞かせください?」」」」

 

 

 

ははっ…

逃げるんだよォォォ!!

 

 

「「「「逃がさないッ」」」」

 

やっぱり…機械に頼りすぎは良くないね…。

 

この後のことは思い出したくない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もし…私達がこのゴーグルをかけて提督を見たら…どうなるのかな…。

 

 




工廠シリーズ…。
そのうちとんでもないモノを作ってくれると思います!

少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!

感想やコメントお待ちしています(๑╹ω╹๑ )
お気軽によろしくお願いします!


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122話 鎮守府の日常?

秘所艦の雷は突然言った。

 

 

「提督!私がママよ」

 

「は?」

救はキョトンとしている。

 

「ママをもっと頼ってもいいのよ?」

 

「な、何言ってんだ!?お前は…」

 

 

 

「何って…全艦連の雷の集いでね?」

 

「ちょちょちょ!何それ?!」

 

「全艦連…よ?」

 

「何それ初耳…」

 

「全国艦娘連盟…雷の部よ?全国の雷と通信やオフ会で交流できるの」

 

「……おう」

ツッコミはしないぞ!!

 

「そこで何名かの雷が言ってたのよ…(提督からママと呼ばれてる)と」

 

「「え!?」」

大淀とベルファストも目を見開いてコッチを見る。

 

いや、知らん知らんと首を横に振る。

 

「頼られたい雷からすれば…最高なんでしょうね…」

 

 

「と言うわけで…提督!私をママと呼んで頼ってちょうだい!」

ふんす!と意気込む雷。

 

「……犯罪だろ」

 

「合意の上よ?」

 

「俺の心がフルブレーキをかけるんだよ」

 

「…私じゃダメなのかしら……」

 

ウルウルした目で見るな!

大淀とベルファストはジト目で見るな!!

 

…てかなんだこの構図は。

涙目でママと呼んで頼ってと言う(ロリ娘)と、俺をジト目で見る大淀とベルファスト(大人たち)

 

俺の脳みそがバグったのか?

 

そもそも2人のジト目は俺に向けられるモノではないはず。

そして、ここで雷に「ママ!」なんて呼んだら「うわっ、コイツ本当に呼びやがった」の間に変わるだろう…。

 

 

断ったら断ったで可哀想〜って目に変わるんだろうけど…。

 

 

 

詰んでるなこりゃ。

 

 

 

 

 

 

手を繋いで食堂へと向かう。

 

 

 

 

「はい提督〜。あーーん」

 

「…あーん」

 

「美味しい?」

 

「お、美味しいよ………雷ママ……」

 

 

 

 

「ママだってよ…プッ…クスクス」

 

 

 

「天龍…出撃停止と減給な…」

 

「嘘おお!!?ごめん!ごめんて!」

 

「こらこら、喧嘩はダメよ?めっ!」

 

「…はぁい…」

 

「すんませんした」

 

 

 

 

「さあ…おいで!提督!」

 

「……」

雷に抱きつく…クッソ恥ずかしいッ!殺してくれ!

 

「…愛宕さん達みたいに胸なくてごめんね……」

 

「いや…落ち着くよ?」

やめろよおお。何で返したらいいか分かんねえよお…。

くっそー!いい匂いなんだよなー。

 

 

なんて思ってたらいつの間にか寝てしまったらしい。

 

 

「よく寝てるわね」

 

雷の膝には膝枕をされた救の姿が。

「いいこーいいこー」

と、頭を撫でる雷。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

を見つめる艦娘達。

「う、羨ましすぎるッ」

 

「私だって…いや、私の方が…」

 

「桜赤城さん?目から血涙が出てますよ」

「我慢…我慢」

メキィ…と柱を握る彼女ら。

 

 

 

 

「長門さん?」

「天使が…尊い…。愛する提督の姿も…尊い……ここが天国か?」

「目からも鼻からも血が…」

 

「ふむ、ああいうのも面白そうだな」

「武蔵さん?目が輝いてます…」

 

 

 

 

 

 

 

「でも…やっぱり私は…ママより…あなたの奥さんで居たいわ」

と、救にキスをした。

 

 

 

 

 

「ぬううううううう!!!!」

「あんにゃろおおおおおおお!!」

「ぐはぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督!今日はありがとう!楽しかったわ!」

 

「恥ずかしかった……」

 

「ごめんね?でもやっぱり私は…」

 

「だからコレ…」

 

「……何で?」

 

「……奥さんで居たいって言ってたから」

 

「起きてたの?」

 

「あ…………」

 

顔を真っ赤にする雷。

「ヒドイじゃない!!」

 

まあまあ…とソレを差し出す。

「受けてくれる?」

 

「もちろんよ?」

 

 

「これが…指輪なのね…」

と左手を見る。うん、嬉しい。

 

そして目を閉じて待つー。

 

「好きよ、提督」

 

「ありがとう、俺もです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雷が幸せそうな顔をしてるのです」

 

「あ!!ソレ!指輪じゃない!」

「え!?は、はらしょお」

 

「えへへー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で…何してる?愛宕…」

 

「ぱんぱかぱーん!愛宕ママよ〜?」

 

「おいおいおいおいおい」

 

 

「私も居るわよ〜?」

「指揮官様あ〜」

 

龍田に桜あか……他にもいらっしゃるうううう!!

 

 

 

 

俺は逃げた!!

恐ろしい速さで逃げた!!

 

 

そして、とある部屋に隠れようとした。

 

「いらっしゃーい」

「あら?提督?どうしたの?」

 

「提督…?」

 

おや、姫ちゃん、鬼ちゃん、羽黒…。

「追われてるのですか?相変わらず大変ですね」

 

「そーなんだよ…」

はいどうぞと渡された水を……!?

 

こ、コレは…哺乳瓶…だとッ!?!?

 

ハッと3人を見る。

 

 

 

ニタァ…と笑ったその顔はこちらをじーっとみている。

 

 

 

 

 

ドアを蹴り破り逃げ出す俺!!

 

「待ってください!!!」

 

「待つか!!!」

 

 

「居たぞッ!!!そこだー!!」

 

 

「ひいいいい!!!!」

 

マジな顔でガラガラやおしゃぶりを持って迫ってくる艦娘を想像して欲しい。

恐怖だッ!!!

 

 

 

 

 

相変わらず提督の悲鳴が鎮守府には響いた。

 

 

 

 





勢いとは恐ろしい…。

少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです(๑╹ω╹๑ )


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123話 指揮官と重桜大鳳

ムーンバックス…

最近御用達のカフェ

キャラメルラッテが美味しい…。

 

 

ふむ、視線を感じるな……。

その視線の主を見てみると…

 

 

「ひききゃんひゃま…」

ガラスに張り付く桜大鳳が居た…。

 

 

「ブフーーーーッ!! ゲホッゲホッ!!」

コーヒー吹き出した。

 

慌てた桜大鳳が店に入ってくる。

「いらっしゃいませ!ご注文は?」

 

「え?!注文!?そんな場合ではありません!………指揮官様!?大丈夫ですか!?」

涙目で寄ってくる彼女に大丈夫だと告げる。

あうあうと慌てる彼女の頭を撫でて落ち着かせる。

 

立場逆じゃね?

 

「指揮官様…お優しいのですね。私の変な登場のせいなのに…私の気遣いまで…」

あぁ…変な自覚はあったのね?

 

 

「ところで指揮官様はここで何を?」

コーヒーの注文を終えて隣へやってくる桜大鳳。

 

「オフだからね。優雅にコーヒータイムだよ」

 

「鎮守府ではお茶か紅茶がメインですからね」

フフフと笑う彼女。

 

「桜大鳳は?」

 

「私もオフなんですよ!まさか指揮官様にお会いできるなんて…」

 

「前の時は、赤…」

しまった…

 

「…知ってますよ?赤城先輩とデートしたんですよね?」

「少し悔しいですが、仕方ありませんわ。運とはそう言うものです…ですが私は今日お会いできて嬉しかったです。このコーヒーを飲み終わったら失礼しますね」

 

ありゃ?

てっきり…『ずるいです!私も…デートしたいです』なんて言うものと思っていた。

 

「用事でもあるのか?」

 

「いえ、ありませんわ?でも、自分の欲に駆られてせっかくのお一人の時間を邪魔する程幼稚ではありませんのよ?」

 

あら?少し意外…本当に意外。

なら…まあて大鳳にも…聞いてみるか。

 

「一緒に来「もちろん!喜んで!」

 

クッソ喰い気味に答えるやん…自分…。

 

 

 

 

にしても周囲の目を引く事引く事。

 

まぁ…そりゃそーか…和服のこんな美人が歩いてたらそーなるわな。

俺だって見てしまうだろうさ。

 

 

『おっ?!お姉さん!俺らとお茶しない?』

 

「結構です。私にはこの人が居ますので…」

 

『何?彼氏?こんな芋より俺らの方……がっ』

 

芋……ねえ… あっ…!

 

遅かった…。

 

 

「この口ですか…?指揮官様を"芋“と言うのは…」

桜大鳳がチャラ男の口元を掴んだ。

 

 

 

桜大鳳は基本的には大人しい。

黙々と正確に何かをこなすタイプである。

…まあ……合鍵作ったりとか…犯罪感も否めないけど。

 

例え馬鹿にされようと「何か?」と流すタイプであるーーそれは自分のことに限りであり、指揮官の事になると180度変わる。振り切って540度くらい変わる。

 

今がまさにその時であり、チャラ男は最早、余命宣告されたのと同じな訳で…。

 

 

「お、おい!桜大鳳!ダメだ!」

 

「誰が芋だッ!!」

許さない…許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さないッ!私の大切な方を侮辱したッ!殺す!殺してやるッ!

 

ダメだな…声が届いてない…。

 

「ひ…ッぐ……うう」

このままだと…コイツは死ぬな…。

 

「桜大鳳ッ!!」

声を張り上げる。

 

ハッとしたように桜大鳳はチャラ男を落としてこちらを向く。

「す、すみません…つい…カッとなって…」

 

「すみませんでした!すみませんでしたぁあ!!」

チャラ男は泣きながら謝り逃げて行った。

 

 

 

 

「あそこまでする必要はないだろう?」

 

「…嫌ですもの。私の愛する人を侮辱されるのは……耐えられません」

 

「それでもだ。怪我させたら大変なんだぞ?…ーーーーー…まぁ、ありがとうな、俺の為に怒ってくれて…」

 

「はい…♡」

 

 

 

 

腕を組んで身を寄せてくる。

 

やわらけえよお…良い匂いだし…。

「当ててます!」

 

「…だろうな!」

 

「お腹空きませんか?」

 

「ん…そうだな…何か食べるか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

「桜大鳳…」

 

「はい?」

 

「店員さんを睨むのはやめなさい」

 

「あの小娘…指揮官様に色目を使いましたわ!」

 

「ねえから!!やめろっ!気まずくて何軒店変えたと思ってるんだ…」

 

「5軒ですわ!でも…指揮官様に色目を使う方が…」

 

「大丈夫だって…」

 

 

 

 

 

6軒目を探して移動中…。

 

 

「…ここも不安ですわ…」

 

「大丈夫だって…お前しか見てないから…俺は」

 

「…!?!?はぁう…」バタリ…

 

「!?お!?桜大鳳!?おい!おい!?」

 

嬉しさのあまり気絶したと言うのか…。

 

 

…飯は食えなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ん…あれ?私は…」

 

 

「起きた?大丈夫?」

 

 

「…指揮官様…?私は…」

と、ここで私は気絶した事を思い出した。

「い、今何時ですか!?」

 

「夕方の17時だな」

 

私は飛び起きて謝った。

膝枕をされていたことすら頭にない。

「も、申し訳ありません!指揮官様…せっかくのお休みを…私…私なぞ放っておいても構いませんのに…」

ぽろぽろと涙をこぼす桜大鳳。

 

本当に…俺の事に関してはそんな感じだからなあ…桜大鳳は。

 

「気にしてないよ。俺もうたた寝してたし…可愛い寝顔見れたしな」

 

「…指揮官様……」

 

 

「今からさ…夕飯一緒に行くか?」

 

「でも…私…またヤキモチ妬きますよ?」

 

「お前だけを見てるようにするから」

 

 

…涙が……止まらない。

何と優しいことか…。

 

 

 

「…はい。大鳳は幸せ者です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このパスタなるものは慣れませんねえ」

「でも…指揮官様と2人で食べられるなら…何でも美味しいですわ」

 

 

 

 

 

めっちゃ可愛いんだよなあ…。

ウチの中でも随一のヤキモチ妬きだけど…。

でも…たまには悪くない。

俺の為に怒ってくれたり……色々気を回してくれたり。

 

「ありがとうな、桜大鳳」

 

「??」

 

「また来ような」

 

「…!!  はい!是非」

 

頬が緩んでしまう。

慣れないパスタが少し甘く感じた。

 




実在の建物とは何の関係も……


甘いのはお好きですか?
私は大好きです。

塩分??
準備中です。

430のお気に入りありがとうございます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
少しでもお楽しみ頂けましたか?
お楽しみ頂けたなら幸いです。


コメントやメッセージもありがとうございます!
いつでもお待ちしておりますのでお気軽によろしくお願いします。


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124話 ご主人様とロイヤルのベルファスト

清々しい朝のムーンバックス…略してムンバ。

相変わらずの甘いキャラメルラテを堪能中。

今日は贅沢にチョコのチャンククッキーまでついてくる!

 

 

 

……

………分かるよ?この流れなら………

そろそろ外にはベルファストが来るだろう。

 

 

と、外を見てみる。

 

 

「あれ?居ないな…」

 

「甘いですねご主人様。すでに中に居ますが…」

 

「…居るんかい!!」

 

「フフ…完璧なメイドとは、ご主人様の全てを把握しているものですよ?」

 

「一般世間ではそれをストーカーと呼ぶ」

 

「でも、放っておいたら直ぐにトラブルに巻き込まれるじゃないですか?」

 

「否定はできない…」

 

「と言っても…私も今日はオフなので仕事モードではありませんけどね」

 

「ふーん」

ここまでのテンションのベルファストは珍しい気がする。

 

「え?ご一緒に?!宜しいのですか!?ありがとうございます!ご一緒させて頂きます!」

 

「え…まだ何も…」

 

「その流れでしょう?」

 

「否定はできない」

 

 

普段のパリッとしたクールなメイド姿とは違う一面、女の子っぽい洒落た感じのベルファスト。

最近は「ご主人様ぁぁあ!!」とか感情的に叫んだりしてるけど…。

 

 

 

「コーヒーも飲まれるのですね?」

 

「ん?あぁ、飲むよ?鎮守府の中では紅茶が殆どだけどね」

 

「金剛様ですね?」

 

「あぁ、そうなんだよ」

 

「コレを見られたら怒られるのでは?」

クスリと笑うベルファスト。

 

「いや…アイツ意外とコーヒー飲むからな…皆の前では飲まないけど」

 

「意外ですね?!」

 

 

 

 

まあ…例に漏れずベルファストを連れて街へ行く訳なのだけれども…

 

「ご主人様」

 

「ご主人様!見てください!」

 

「ご主人様!!!あのお店行きましょう!!」

 

 

 

奇怪な目で見られるんだよなぁ〜。

白色ワンピースを着た美女にご主人様と呼ばせる青年の姿。

 

ほら…めっちゃヒソヒソ話してんじゃん?あそこの奥様…

あっ!目を逸らしやがった!

 

 

「なあ…?ベルファスト?」

 

「何でございましょう?」

 

「ご主人様呼びはやめよう?恥ずかしい」

 

「お断り致します」

 

「WHY!?!?」

思わず英語になるよ!

 

「例えオフの日でもご主人様はご主人様…。そこの弁えは心得ております」

 

ダメだ…通じねえや…

「なら…ご主人様からのお願いだ。このデート中は名前で呼んでくれ」

 

 

 

 

「………」

ベルファストは黙った。

 

 

で、ででででデートですか!?デートだったのですか!?!?

もっとオシャレして来れば良かったです!!

本来、メイドが主人へ恋慕の感情を抱くなど…もってのほかでございます!

しかも、名前で呼んで…と。

命令ならば仕方ありません!従いますとも!

ご命令とあらば!

 

ま…救さん……あぁ!!!心臓がバクバクしてはち切れそうです!

 

私はダメなメイドでございます!!

 

ダメでいいや!

大好きでございます!ご主人様!!

 

 

 

 

 

めっちゃ無表情で居るがそんな事を考えている。

彼女の掲げるメイド像とは完璧なものであるから…。

だいぶその路線からははみ出し掛けているけども。

 

 

 

「わかりました…。救さん」

 

「ありがとう」

 

 

 

 

「!?!?」

ご主人様が手を繋いで……くれました。

すべすべぇ!あったかいいいい!

 

 

 

「………ト」

 

「おい?ベルファスト?!」

 

「申し訳ありません。景色に見とれて…」

いけません!ぼーっとしていたようです!

どうやら目的地に着いた……ようです?

 

 

アクセサリーショップでしょうか?

…着任記念のプレゼント選び…みたいですね。

夫婦をするのにもプレゼントを渡す…何とお優しい。

少し寂しいですが…全力てサポートさせて頂きます!

 

…真剣に選ぶ姿も…いいですね。

時折り此方を見てニコリと笑う姿は…たまりません。

 

おや?

決まったようですね。

お会計へ行き…購入……。

 

 

え!?こんな値段のするものを……うわぁ…。

何の躊躇いもなく、いつも買ってるのでしょうか…ご主人様…救さんのお財布事情が心配です。

 

…やっぱり、私が居るのに他の方へのプレゼントは少し……。

 

 

お次は…どこへ?

フフフ…わかります!スイーツ…ですよね?

 

「パフェが、食べたくてね…」

 

知ってますとも…

いちごパフェかキャラメルパフェ…どちらにするか悩むところまで存じております…。

 

 

「…いちごパフェください」

 

フフフ…選ぶのに5分以上悩まれる姿も…いいですね。

 

「私はキャラメルパフェを…」

 

 

 

「救さん?いちごパフェも気になるので半分ずつ…しませんか?」

 

「まじか!!ありがてえ!」

 

 

 

 

 

 

 

「うまぁ……最高!!」

 

「半分っこもいいものですね」

 

 

 

「ありがとうな、ベルファスト。わざわざ頼んでくれて…」

 

「何のことでしょう?私は両方食べてみたかったので…」

 

「そうか…でも俺は幸せだ。ありがとう」

 

「そうですか?」

「でも、そのプレゼントを渡される着任祝いの艦娘の方も幸せだと思います」

 

「あぁ…コレね?」

 

「救さん…ご主人様はデート中に他の艦娘の方へのプレゼント選びは少し寂しいですよ?」

 

「コレはお前へのものだぞ?」

 

「私としては…やっぱり置き去…え?…私…ですか?」

.

「いいのですか?」

 

はい、とそのネックレスを差し出すご主人様。

 

 

そういえば…私の方を何回も見ていましたね。

なるほど…だから、あんなに私とアクセサリーを見ていたのですね。

 

 

「はい、私が…幸せ者でした」

 

「いつも、身の回りの世話や、仕事の手伝い…本当にありがとう」

 

 

「愛するご主人様の為ですから…喜んでやります」

 

「それでもだよ…本当に助かっている」

 

 

指輪をください…と言うのはナンセンスだろう。

だから…

「つけてもらえますか?」

 

「おう」

 

ご主人様が後ろから手を回して着けてくれる。その手に触れると…温かい。

 

コレが幸せ…です。

もちろん、物をもらう為に頑張るわけではありませんが…形としてありがとう…や、愛してるを伝えられるのも嬉しいものですね。

 

 

 

 

 

 

「うん、似合ってる」

ご主人様が言います。

 

だから私はこう返します。

「当然です…。ご主人様がお選びになったものですから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あらぁ?今日は随分とご機嫌じゃない?ロイヤルさん」

 

「フフフ…いい事があったので…」

 

「あらあ…何……ん?何その首のネックレスは」

 

「プレゼントされまして」

 

「まさか!指揮官様から!?」

「ズルイ!!私も欲しい!!」

 

「貸して!見せて?!」

 

「ダメでございます」

 

むきーーっと重桜組は言う。

 

 

 

「ありがとうございます。愛しています…ご主人様」

 

にこやかに笑うベルファストの首にはキララと輝く蒼い宝石のネックレスがあったとか。

 

 

 

 

 




440…だと…。
ありがとうございますうううう。

お楽しみいただけましたか?
少しでもお楽しみいただけたなら幸いです。


暑い日が続きますが皆さん、体にはお気をつけください!

水分塩分を補給してくださいね!



コメントや感想等お待ちしています!


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125話  星に手を伸ばす者へ ① 私はあなたを提督とは呼ばない

ただ、あの頃を取り戻したかった。

笑顔に溢れ、仲良く過ごせたあの日に…。

 

なのに…いつしかこの手は血に染まり汚れた。

 

もう手を伸ばしても届かないあの日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は鬼怒。

 

数日前に大本営からこの鎮守府に所属となった

 

「よろしくお願いします神崎さん」

 

「もっと気楽に提督とかで良いよ?」

 

「……はぁ…しかし…私は死神と呼ばれていますので」

 

「私もそう呼ばれていたわ?」

秘書艦のアークロイヤルが答えた。

 

「戦争だしなあ…生き死には仕方ないと言えば仕方ないが…。死神と言われてると言っても俺はそうは思わないよ」

 

 

何だこの人は…?

 

「前の鎮守府の事とか…まあやり難いとこもあると思うけど遠慮なく言ってよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日から鬼怒が仲間入りだー皆、仲良くするように」

 

「「「「「はーい!」」」」

 

 

何だこの鎮守府は…?

腑抜けすぎでしょう…。

 

 

艦娘もえらくフランクで…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分たちの置かれている状況も分かってないくせに…

 

 

 

 

 

 

 

私はこの人を提督とは呼ばない。

 

 

 

 

 

 

 

 

私の提督は既に死んだ。

私が…姉が…この手で…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の目的は監視。

 

 

 

 

敵、深海棲艦ト内通ノ恐レ有リ

軍旗違反ノ恐レ有リ

上記ヲ確認次第、処分ス。

 

 

 

 

とある元帥補佐達が言い始めた事だ。

 

 

 

鉄底海峡を攻略し、前例のない大侵攻を食い止め、海軍トップクラスの

鎮守府に対しても勝利を収めた鎮守府が己らの脅威となりないはずがない。

 

ましてや…元帥閣下の()()()()()とあらば目をつけられない筈がない。

 

 

そう、全てはデタラメ。

出る杭を打つように…彼らはこの神崎さんを潰すのだ。

普通なら懐柔しようとするだろう。

しかし、元帥閣下の息がかかっているとあらば話は別なのだ。

 

 

 

 

私には関係ないが…死にたくないから仕事はやる。

私が言うことを聞かないとお姉ちゃんは処分されてしまう。

 

私はそうやって幾つもの鎮守府の提督を…。

 

 

お姉ちゃん…由良はナントカ計画ってのに連れて行かれてからおかしくなった。

笑わなくなった、泣かなくなった、

 

私の事も忘れてしまった。

私の事を欠陥品と呼ぶ…。

 

 

私がしっかりと仕事をすればお姉ちゃんは戻ってくるらしい。

あの頃のお姉ちゃんと生活を取り戻したい。

 

 

 

だからやり遂げる…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある報告書

 

西波島鎮守府についての報告

今の所特に問題となる行動はない。

地元民にも歓迎されており、良好な関係を築けている様子。

神崎と艦娘の関係も良好な様子

 

 

 

一部住民が、駆逐艦の霞、曙に対して

霞様ぁぁあ!

曙様ァァ!!罵ってくださいと叫んでおり、地元民に対する何かしらの懐柔…もしくは洗脳の可能性も否定できないので引き続き調査を行う。

 

 

 

 

 

 

 

 

そう

…何も出てこない。

怪しいところも…。

 

 

 

 

色仕掛けも軽くあしらわれてしまう。

と言うか周りの艦娘が邪魔をする。

 

そんなに魅力ないのかしら…。

今まではコレで上手くいったのに……。

 

 

それどころか…皆の雰囲気からしても…居心地が良いとすら感じてしまう。

 

 

 

 

 

焦る

 

 

 

 

 

 

が、焦れば焦るほどにコイツらの良いところが浮き上がってくる。

 

 

 

「鬼怒!出掛けようぜ!美味しいスイーツの店案内するよ!」

 

「ヘーイ!鬼怒〜!ティータイムしませんカー?」

 

「…一緒に出撃、はらしょー」

 

「女子会トークするわよ!レディの嗜みよ!」

 

 

秘書艦をすれば色々と話もしてくれる。

金剛やベルファスト…?が淹れた紅茶は美味しい。

大淀も真面目だと思っていたが割と砕けた艦娘だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええ…はい…もう少し…はい…いえ!そんなわけでは…はい」

 

クソッ…時間が…

 

 

「おーい!鬼怒どうかしたかー?」

 

まずい!!

 

「あっ!神崎さん!いえ!考え事をしてました!」

 

「…神崎さんか……そう?神妙な顔だったよ?」

この人は少し寂しそうに言った。

 

 

「……」

言いたい。

助けて欲しい。

こんな事やりたくない…。

何故だか…きっとこの人なら助けてくれるだろう…そんな気がする。

 

でもダメだ!

私だけが助かるなんてダメだ。

私はお姉ちゃんを助けるんだ。

私も死にたくない。

 

「…実は最近ご飯が美味しくて2kg程太ってしまったんです」

作り笑いの嘘…

 

 

 

 

 

 

「嘘だなッ!!」

 

 

 

 

 

 

「!?」

馬鹿な…私はどこで間違いを…

 

「俺は知っている…」

 

…覚悟を決めるしかないか……。

殺すしか…ないのかな…最悪、お姉ちゃんだけでも助かるなら…。

 

 

 

 

「よく…わかりましたね…。一体いつから?」

 

「先週だな…」

 

 

上の人達の存在がバレるわけにはいかない…殺すしかない……。

やるしかない。

後ろを向いている今がチャンス!!

 

 

 

 

「夜食にカップ麺を食べて居たな!!」

救はクルリと振り向いて言う。

 

 

 

「!?」

 

 

そっちですか!!!!!!

 

危なかった!殺すところだった!

 

 

ポカンとする私に笑う神崎さん。

 

「バレましたか…内緒でお願いしますね?」

 

なんて馬鹿なことをやって居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてついに見つけた。

深海棲艦

姫、鬼クラスの2人が鎮守府を歩いて居た。

 

「深海棲艦!?」

 

「あー!紹介するよ!鬼ちゃんと姫ちゃん!2人とも敵じゃないよ。仲良くしてね」

 

「あら?新入りさん?可愛いわね。よろしくね?」

 

「よろしくねえ〜」

 

 

本当だったのか…?

深海棲艦と繋がりがあるなんて…

これは大問題だ…。

即刻処分すべき……なのか?

 

 

わからない。

 

何故ならその深海棲艦とティータイムをしている。

 

話した感じではフツーーの女の子…。

むしろ…提督大好きッ♡とか言ってる…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悩むな…私。

失敗したら私は解体され…お姉ちゃんも…処分される。

 

決めたんだ!どんなに汚れても…私は生きると。

幸せになれなくても……生きるんだ。

 

 

 

 

そもそも、大本営でも管理していないベルファストとか赤城とか言う艦娘?が居る時点でアウトなんだから…。

 

 

 

 

 

 

連絡を入れる。

相手はもちろんあの人。

 

 

 

「ええ…はい…お願いします」

 

『よくやった…明日にはソイツを捕らえるぞ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

 

 

 




お気に入りが…450…??ですと?
ありがとうございます(´;ω;`)



夏の塩分補給!
甘い話から少し離れて…ね。


この先の話は胸糞悪い展開等あります。



お楽しみいただけたなら幸いです。


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126話 星に手を伸ばす者へ ② 鉄の心

胸糞悪い回 注意


その日は朝からどんよりとした空だった。

 

その時は突然やってきた。

 

「神崎 救!敵深海棲艦との共謀で我が国への転覆を行う容疑がかけられている!大本営まで来てもらおう」

 

バタバタと大本営兵士が鎮守府へとやって来た。

 

「は?」

 

「…神崎さん……来てもらいます…」

 

「鬼怒…?」

 

令状を見せられる。

そこには敵深海棲艦との内通、国家転覆思想なんたらと書かれてあった。

 

 

「ふん!鎮守府提督とあろうものが敵と通じているなぞ…死刑もあり得るぞ!!」

「登録もされていない艦娘も従えている…とか」

 

アズレン組の事か…。

 

 

連行しろ!と言われる救。

 

 

「ふざけるな!やめろ!」

「提督はそんな事してない!」

と、口々に艦娘達は言うが誰も耳を貸さない。

 

 

「指揮官様ッ!!」

桜大鳳をはじめ、皆が艤装を展開する。

 

 

「待ってくれ!」

救が言う。

 

「提督…」

 

「何だ…」

 

「皆…艤装を収めろ!手を出すな!…大丈夫だから」

と救は言う。

 

 

「少し時間をください」

救は兵士に向かい言った。

 

「大和…コレを……着任記念の…渡せてなかったらから…」

 

「何を今更…まあいい、早くしろッ」

 

救は大和にメガネを掛けてやる。

「武蔵みたいだな…。すまん、今のタイミングで…。俺の居ない間…頼んだ」

 

「……」

大和は無言だった。

 

 

そして

大和は表情を変え…

 

グシャリとメガネを握りつぶしたのだ。

 

「なっ…大和?」

驚く救。

 

 

「お話しすることは…ありません」

大和はそれ以上何も言わなかった。

 

 

 

 

「ふん…無能な提督に愛想を尽かしたか…ククク。まあいい…さあ行くぞ!!」

 

 

と、提督は鬼怒と共に去って言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

その事件は瞬く間に拡がった。

 

「…鬼怒が裏切ったの!?」

「鬼怒は…大本営の手先だったの?!」

 

「それに…大和も……向こう側の艦娘なの?」

 

その矛先が鬼怒に向いてしまうのは突然のことだった。

そして大和への疑念も深まった。

 

「今すぐに大本営に乗り込みを!」

 

「待て!一歩間違えたら提督との無事が保証されかねるかもしれない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

誰も居ない執務室に立つ大和。

 

乱雑になった部屋は、日常から非日常へと変わった事を教えてくれる。

 

 

 

 

そこに突然ドアが開かれて艦娘が入ってきた。

「提督殿はいますか!?」

 

「…っ!遅かったですか…」

 

「あなたは…蒙武の大淀…」

 

「大和さん!」

 

大淀からの情報によると

 

御蔵元帥が謎の失踪

真壁元帥補佐が代理で元帥に就任。

途端に圧政を開始し、周囲は刷新。

元々から黒い噂の絶えない人物だったらしい。

過去には艦娘に関する実験に関わっていたとの噂も。

 

かねてから邪魔だった神崎を監視、処罰対象として指示

鬼怒は真壁の管理下にある艦娘だった。

 

 

深く親交のある麗や巌も監視下に置かれ、大本営に召集されてしまったと。

 

深海棲艦との関わりだけでなく所属不明の艦娘を所属させたとしての証拠として挙げられたので…解任だけでなく、反逆罪として処罰される可能性があると。

 

「……大淀さん」

 

「はい!」

 

「この話は他の誰かには?」

 

「まだですが…誰にも会ってないので」

 

「そう、なら都合がいいわ」

 

「何を…?」

 

 

 

 

 

 

 

蒙大淀の意識はそこで途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして次の日には大本営からの査察が入った。

 

土足で上られて

思い出の写真も調べ上げられ全てを荒らされた。

 

 

私たちはそれをただ眺めることしかできなかった。

 

「何だよ!!大和と言い大本営と言い…」

「提督…大丈夫よね!?」

.

 

 

「おい!お前ら…揃っているか!?」

と大本営の兵士から言われる。

 

 

「あれ?大和達は?」

 

 

 

 

 

 

「金剛達も居な……」

と、その時だった。

 

 

ドオオオオオン…と轟音が響いた。

大和の主砲の音だった。

 

 

「何だ!?この音は!?」

と兵士は驚く。

 

「大和主砲の音!?まさか!!」

 

 

 

どこかで期待した。

大和が、大本営相手に戦うのだと。

 

でも…

 

 

 

駆けつけた彼女達が見たのは…

 

 

 

 

 

 

 

 

「や…ま…ト…ぉ」

 

「………さよなら」

 

水面で大和の足にしがみ付く金剛を海へ蹴落とした大和。

水面から海へと沈む金剛。

 

大破した鳳翔に吹雪と電だった。

 

大和はその手を取る事なく…ただ静かに沈むかつての戦友を眺めるだけだった。

 

 

「お姉様ーーーーー!!!!」

榛名が飛びかかる。

 

 

「大和ォ!テメエエエエエ!」

天龍が激昂し、背後から殴りかかる。

 

が… 裏拳一発。

「がっ!!!」

 

天龍は海へと弾き飛ばされた。

榛名は顔面を掴まれ海へと薙ぎ倒される。

 

「大和…あなた…」

と、龍田が天龍を抱えて大和を睨む。

 

 

 

「お姉様…!お姉様ッ!!」

比叡は海に叫び

 

「榛名を離しなさい!!」

霧島は敵意を大和に向けている。

 

 

 

しかし大和は言う。

「鎮守府の為です。勝手な行動をすることは許しません。金剛や他の艦娘は…大本営に危害を加えるつもりだったので……処分しました。鳳翔及び吹雪、電…天龍と榛名は牢にて謹慎とします。他に…他に前に出る人は居ますか?!」

 

十分過ぎた。

目の前で味方が沈み、実力者達が大破に追い込まれる姿は…

彼女達から反抗の意思を削ぐのには。

 

 

誰も何も言わなかった。

逆らえなかった。

 

 

「大和…裏切るのか」

 

「…私達の目的は…世界の平和よ」

 

大和の目はどこまでも暗く冷たかった。

 

 

 

 

「…もういい」

「おい、帰るぞ…」

 

大本営の兵士は言った。

 

「お前達の処遇は追って通知する。くれぐれも変な気は起こさないように…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後…。

鎮守府には兵士が滞在するようになり、雰囲気は最悪と言えた。

 

 

何より…

 

 

 

 

 

 

「伊良胡さん、地下牢へ食糧は私が持って行くわ」

 

「…はい」

 

大和だった。

その実力は並ぶ者が居ないほどとされる艦娘で、武蔵ですら大和に文句を言えないようだ。

 

 

 

 

「おい大和、俺らも地下牢へ行くぞ」

 

「何故ですか?」

 

「俺らもよ…溜まるんだわ」

「楽しませて欲しいしな…くひひ」

 

「この…お前らッ」

 

「うるせえよ…死にてえのか?」

と、兵士に武器を向けられる。

 

「くっ…そお」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

大和の目はドス黒く濁っていた。

 

「良いですけど……知りませんよ?」

 

「あ?」

 

 

「や、大和!!」

「やめてください!大和さん!」

 

 

 

 

「逆らう気を無くす為に…腕も…目も足も……ね。修復剤で元に戻るとは言え…苦痛だったと思いますよ…?何度も何度もそんな状態でも…いいですか?」

 

 

 

「ひっ…」

 

「なっ…大和…嘘だろ?」

麻耶が青ざめて言う。

 

「大和…さん?」

 

 

 

「……」

大和はただ気味悪くニヤリと笑った。

 

「うっ…気分が……トイレに行ってくる」

 

「もういい!殺すなよ…利用価値はあるんだ!」

 

 

 

 

 

大和は1人地下牢へと降りて行く。

ニヤリと笑いながら。

 

 

そして、牢の前に立ち言う。

牢の中の彼女達と目が合う。

「さあ………初めてましょうか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええ…はい、金剛は処理、他の反抗する艦娘は地下牢へ……はい」

「例の深海棲艦、艦船と呼ばれる者も同じく地下牢へ…反抗的ではありますが…大丈夫です」

 

 

『そうか……奴の処刑の準備は進んでいる…。しかし、まさかお前から連絡があるとはな…大和。お前は提督の事を慕っていると思っていたのだがな…』

 

「…鎮守府と艦娘の為ですから…」

 

 

『ふっ……おい、決まったぞ。奴の処刑は3日後だ』

 

 

「はい」

 





毎日茹だるような暑さが続いていますが…いかがお過ごしでしょうか?
車のエアコンが壊れまして…地獄のような日々を送っております。


お楽しみいただけましたか?
ドス黒い回なので楽しめるかは分かりませんが…次回へと続きます


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127話 星に手を伸ばす者へ ③ 零れ落ちる星屑

まだガキじゃないか…。

 

 

そう言い放つのは真壁と呼ばれる現提督代理であった。

 

 

数日の投獄生活は快適なものではない。

自白を強要する暴力や、精神への暴力が与えられていた。

 

 

慣れて…はいないが、苦痛だ。

心配事もある…。

 

 

 

 

 

 

「まったく嘆かわしいな。敵と通じているとは…まあ、だから鉄底海峡も攻略できたんだろうがな」

 

「そんなことはない!アイツらは建造で!」

 

「そんな記録はどこにもないぞ?」

 

 

そうだ。

姫ちゃん達の建造の件は秘匿事項だった。

故に公式としての記録が無い。

 

「あのデータのない艦娘は何だ?」

 

 

 

……説明のしようがない

別の世界から俺を求めて来ました!

 

ー事実だけど…アカンな…

 

…戦闘力がなまら高い嫁達です!

 

ー国家転覆まで言われてるからアウトやな…

寧ろ外部勢力の誘引で極刑の決定が早まるかも…?

 

 

 

「……メイドだ…身の回りの世話をさせている」

 

「見たこともない容姿だが?」

 

「俺の…趣味だ」

 

「ほー…狐にメイドに…和服がか!お前はよっぽどの色好きらしいな!!」

 

「あははは…」

殴る!絶対コイツはぶん殴る!!!

 

 

 

「御蔵元帥を呼んでください」

 

「居らんよ…。数日前から姿を消していてね…私が代わりというわけだ」

 

 

 

 

「その件にも君が関与していると思っている」

 

 

 

「馬鹿な!そんな事があるはずが!」

 

「もしくは共謀している…とね」

 

「お前らの目的は何だ…」

 

 

コイツは…最初から俺を潰し、ジーさんを潰すつもりだったのか?

 

 

いや、なら何故攻め込まない?

 

…違う、攻め込めないんだ。

 

 

 

「全てさ…」

「まあ…君はソレを見る前に処刑される訳だけれども…」

 

「は?」

 

「当たり前だろう…?艦娘や鎮守府を利用して国家転覆を目論むテロの主犯として…貴様の人生は幕を閉じる」

 

 

見せしめか…?

有力な鎮守府はいくつもある。

 

新政権にはこのような力があると見せつけるためか?

 

 

真壁が近付きコソリと言う。

「邪魔者には消えてもらわないとね…私や彼女達の為に」

 

 

彼女達?

 

「そうだ!!」

真壁が救を殴る。

 

「この海は強い者が全て!!」 ドゴッ

「貴様は邪魔なんだ」 ドカッ

 

殴る殴る殴る殴る

蹴る蹴る殴る蹴る

 

「俺はやるぞ!大石にも出来なかった事を!全て俺のものだ!!」

 

血に濡れた手を拭きながら真壁は鬼怒に言う。

 

「まさか…お前が奴らと通じてるんじゃ…」

 

「はて…?何のことかなッ!!」ドコォ!!

 

「ぐっ…」

 

「明後日には君の公開処刑を行うよ…鬼怒、それまで死なせるな…」

 

「そうだ…お前のとこの大和は優秀だな」

 

「……?」

 

「反乱する金剛を沈めて…他の奴は地下牢へ監禁して拷問してるらしいぞ」

ニタァと笑いながら言う真壁。

 

「嘘だ!!大和は…大和がそんなことするはずない!!」

 

「実際にその現場を見た奴らが言っているぞ?それに大和が通信で言ってきた…鎮守府と艦娘の為だと」

 

「嘘だ……嘘だ…」

 

 

 

 

 

 

 

暫く呆然とする救。

 

興味を無くした真壁は去ってゆく。

 

 

 

 

「…鬼怒」

 

「……馬鹿よね」

 

「助けてくんない?」

 

「…無理ね」

 

「提督命令でも?」

 

「あなたは…私の提督じゃない」

 

「…ウチの所属なのに?」

 

「それでもよ…。私の提督は……」

 

「手にかけたって訳?」

 

「…ッ!!そ、そうよアンタもそうなるの」

「さあ、お喋りは終わりよ」

 

ぎこちなく彼女はそう言った。

そう話しているうちに俺の意識は落ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日だった。

 

「鬼怒、そいつを痛めつけろ」

 

「え?」

 

「やれ」

 

「そ、そんな」

鬼怒は躊躇っている。

 

「できんのか?」

真壁は鬼怒を睨んで言う。

 

「あ、あの…もう十分痛めつけられているので…」

 

その回答に真壁はため息をついて言った。

「なら…由…「はん!!舐めんな!そんなガキ艦娘にやられたってどーーってことはねえよ」

真壁の言葉を遮り、救は叫んだ。

 

「提督殺しの卑怯モンで腰抜けに捕まったのは俺に…」

言葉が紡がれる前に鬼怒の拳が頬に突き刺さった。

 

「何よ!何よ!アンタなんか!!」

鬼怒は馬乗りになってひたすら殴った。

 

 

それは真壁達が居なくなっても続いていた。

「死ね!死ね!死ね!!」

「のうのうと幸せに生きやがって!」

「不幸を味わえ!」

「アンタに何がわかんのよ!!!」

 

 

「……」

 

 

「アンタに…」

 

 

 

救は何も答えない。

「……そろそろ退いてくれないか?」

 

「なっ!」

 

「殴れただろう?命令違反にならずに済んだだろ?」

 

「何を…」

 

「それがお前の仕事なんだろ?なら仕方ねえよ」

「いててて」

 

「アンタまさか…わざと…?」

 

「………」

 

 

 

その時だった。

「救君!?!?」

懐かしい声が聞こえたのは。

 

 

「そんな…傷だらけで……救君…」

 

「よく生きてるな…」

 

 

「お客が多いな…今日は」

 

麗と巌だった。

 

 

「兄ちゃん…明日なんだってな…」

「救君…」

 

巌と麗だ。

2人もまた、聴取と処刑の立ち合いで大本営に呼ばれたそうだ。

 

 

「どーにかなんないかな?」

 

巌は鬼怒を少し見てから言う。

「無理だな…俺らにも監視が付けられてら」

 

「俺の仲間と疑われてるのね」

 

「そうらしい…」

 

 

 

「逃げないの?!ねえ!死んじゃうんだよ?」

「こら!小娘!滅多な事を言うな!お前も捕らえられるぞ」

 

「でも!おかしいです!一生懸命…頑張ってる救君がこんな…」

 

「ダメだよ麗ちゃん…それに俺が逃げたら皆が捕まるよ」

 

 

「でも…」

と、麗は言う。

そして鬼怒の手を見て……

 

「あなたッ!!何でこんな事が平気でできるの!?」

「救君の艦娘でしょう!?」

 

「麗ちゃん」

 

「無実なのに殺されちゃうんだよ!!その手を見てよ!彼を見てよ!何とも思わないの!?」

 

「ぅ………」

鬼怒は少したじろいでいる。

 

「麗ちゃん!!」

 

 

 

 

大丈夫…と彼は言った。

 

「……ごめんなさい」

麗はか細く言った。

 

 

 

「……絶対どうにかするから」

そう言い残して麗達は帰って行った。

 

 

 

 

私には理解できない。

自らの死は確定している訳で…なのに何故神崎はそんなに平静を装っていられるのか…?

本当にどうにかなると思って居るのか…?

 

 

 

 

 

 

 

(大和…お前は…)

(いや、今は考えても仕方ない。どうにか…する方法を見つけないと)

 

しかし、残酷な事に1日とは早いもので…

顔も口も痛いままに次の日を迎える事となる。

 

 

 

くそ…朝か…,

 

 

「さあ…その時がきたぞ」

 

笑う顔がムカつく…。

絶対にぶん殴ってやる…。

 

「貴様のその犯行的な目も…もうすぐ絶望に変わる」

 

 

 

俺は広場へと連れて行かれた。




暑い次は台風ですか!!やめておくれ!


お楽しみ…頂けてますでしょうか?
少しでもお楽しみいただけたなら幸いです!


メッセージ等で
投稿ペース落ちないじゃん!と良く頂きます。
今回みたいな続きものはストック分は基本毎日投稿してます。

他の?
割と新鮮ネタなのでその日に書いて投稿とかしてます。
仕事でキツイ時は次の日に…とか。

ぽちぽち書きだめしてみたり。



お気軽にコメントやメッセージお待ちしています!
質問やこんな話を…何でもどうぞ!


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128話 星に手を伸ばす者へ ④ 手を伸ばす事を諦める者へ

登場する武蔵は蒙武鎮守府の武蔵です。


真壁という男は、真面目な人間…ではなかった。

自らの邪魔になる人間は自らの手を汚さずどんな手段を以ってしても排除する…そんな人間だった。 

 

 

 

実際に御蔵を何処かに隠したのも彼である。

 

彼は明かさない、信用しない。

彼にとっては部下も駒であり、踏み台である。

 

元帥の居場所、安否はこの場では彼しか知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

観衆という者は時として残酷なものを奇喜なる目で見る。

特に自分に関係のない…他人の不幸、自らの安全を保障された恐怖。

 

大本営の外部にある…野球場か?くらいの場所に俺は連れてこられた。

外周は高い壁に囲まれ、その外は海…つまり、逃げることはできないと俺に現実を突きつける。

 

 

そして何より…結構集まってんな…

盛り上がってるのは…ほぼ、真壁の息のかかった連中だろうな。

 

 

 

真壁は盛大にマイクを通して言った。

「諸君…悲しい悲しいお知らせがある。コイツは…軍人失格だ!!戦場で死ぬべき奴が敵と内通しており、国家転覆を目論んでいた!!」

「また御蔵元帥閣下の失踪にも関わっているッ!!」

 

「所属不明の艦娘や兵器を所持して居ることも分かっている!このまま野放しにしておくと…必ずや、この国の大きな障害となるだろう!奴はその為に、鎮守府や艦娘を利用したのだ!!!」

 

 

 

 

「諸君…どうするね?」

 

 

殺せ!

殺せ!!と真壁の問いに沸き立つ場内。

 

 

「…そうだ、この男の所業は許されるものでない!この国の兵士達も言っている訳だ……故に…処刑とする!!」

 

 

「ふん…茶番だな」

 

 

 

 

 

 

 

「……彼女達は兵器なんかでは無い。感情を持ち、血も涙も流す…。それはここに居る皆がわかって居る事だろう!」

 

「俺は艦娘を…所持したつもりもないし、この国に仇なすつもりもない!」

 

「俺は無実だッ!!!!」

 

「黙れ!!!」

と、思いっきり殴られる。

 

 

 

 

 

「……鬼怒!そいつをここへ!!」

 

鬼怒が俺のところに駆け寄り腕を掴む。

 

「ごめん、こうしないと…私もお姉ちゃんも死んじゃうんだ」

 

やっと最後に言えた少しの本音。

ごめんてのも本当、殺されるのも本当…。

 

 

 

「知ってる」

 

 

 

は?今なんて?知ってる……って?

 

「!?…何で?なら何でこうしてここに居るの?!」

 

「お前は…ウチの所属だろ?だから助けたかった」

 

 

「え?」

助けたかった……?

 

 

 

「…その為に来た」

 

知ってて…黙ってたの?

わざと捕まって?

私に殴らせた…。

 

やっぱりコイツは私の罰を避けさせるために?

わざと私を煽って殴らせたの…。

 

「ご苦労なことね」

 

バカだ…大バカだ…

その結果が…処刑だと言うのに…

「一つ聞いていい?」

 

「ん?何だ?」

 

「なんでアンタは絶望しないの?諦めないの?この状態で!状況で!」

 

「まだ生きているしな…死ぬまでは諦めない」

「大丈夫だから…お前達も助けるから」

 

「何でよッ!!なんでアンタはそこまで!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君が…泣いていたから……」

 

 

 

「え………」

 

カップ麺食べてたのも見てたけど…

君が毎日泣いているのを見ていた。

時々、切なそうにする表情を見ていた。

焦ってるのも…

姉が囚われになってる事も。

あの鎮守府のメンバーが少しずつ好きになっていることも…。

 

 

 

 

 

 

 

大事な艦娘が泣いている…。

それだけで動く理由は十分だ。

 

この世界に来て…どれだけ君らの存在に助けられたか。

安心と温もりを与えてもらったか。

今でも覚えている…

その時の感情を。

 

 

 

「俺は提督だ。お前達が泣かないよう、沈まないようにするのが俺だ。いや、例え提督じゃなくてもそうした」

 

 

 

「あなた……」

 

 

「モタモタするな!!」

真壁の一声でハッとする…そうだこれは仕事なんだ。

 

最後の…仕事。

 

本当に最後なの?

お姉ちゃんは帰ってくるの?

 

でも、私はこれに縋るしかないんだ。

 

 

 

 

 

 

 

「麗ちゃん」

 

「救君…」

 

「えへへ、すまんね…こうなっちった」

 

そのままでは彼は連れて行かれ…殺される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前には救君が居る。

 

 

懐の銃に手を伸ばす。

 

「っー!!」

例えどうなろうと…彼の処刑の妨げになるなら…。

兵士を人質にでもすれば時間は稼げる筈だ。

 

クビになっても…逃げながらでも2人で生活するのも悪くないかな…?

ううん…もし私が…死んだとしても…

 

やる!!

やるしかない!!

 

 

 

 

 

 

「うご…」

動かないで!とは言えなかった。

 

 

 

「…このっ!!」

 

パァン…と乾いた音がした。

 

「え?」

 

武蔵が私をぶったと気付くのに少し時間が掛かった。

 

「何だ!?」

一斉に注目を浴びた。

コレでは…何もできない!

 

 

「む、武蔵…?」

 

「提督…ふざけたマネはするな…」

 

なんで!?なんで!なんで!!

詰め寄る私を武蔵は押さえつける。

 

暴れても暴れても…艦娘には勝てない。

 

「すまない…西波島の提督とは恋仲にあるようでな…大人しくさせる」

 

「フン、艦娘の方が利口と見えるな…大人しくしてろ」

 

 

武蔵…!!

どうして!?

目の前に救君が居るのにッ!

このままじゃ!!

そのまま私は引きずられて元の席へと戻された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「言い残す事は?」

 

「……やるなら徹底的に殺せよ?じゃないと確実に俺は戻ってくるぞ!!」

 

「ふん!口だけは達者だな……。やれ…由良…。おい、鬼怒!見てろ!お前の最後の仕事だ…お前の提督はお前達が殺すんだ!!!」

私は汚れたく無いからな…とその場を離れる真壁。

 

「特等席から見ないのな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「由〜良ちゃん?」

と、話しかけてみる。

 

「・…」

 

「中止できない?」

 

「不可能です」

 

「どうしても?」

「鬼怒も居るよ?ウチに来ない?」

 

「だから何だというのです?そこの出来損ないは私には関係のない事です」

 

「ウチは楽しいよ?」

 

「国家転覆を企むことが?」

 

「そんなことしてないよ…」

 

 

「負けるな由良…絶対お前も…鬼怒も助ける」

 

「…助ける……?」

 

 

反応した?

よし!

会話が続くと思った矢先の事だった。

 

 

「首を切り落とせ!!その首は門へ飾ってやる!!」

 

 

「……」

 

由良は一瞬、表情を変えて……それから

 

 

 

「はい…」

と言った?

 

 

本来の由良の感じはなく…ただ、命令を遂行する機械のような艦娘。

自らの提督や他の提督を手にかけても何の感情も動かない。

と思っていたが…もしかしたら…

 

 

 

 

由良は分厚い刀を高く振り上げた。

 

 

「……」

彼はまっすぐと前を見つめていた

その目には絶望感も無かった。

ただ、静かに一度私やお姉ちゃんの方を見て言った。

 

「鬼怒、由良、ごめん…そんな思いをさせて…」

と。

そして…

 

 

「…でも、俺は死なんぞ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやっ!いやぁぁああ!!救君!!」

どこかの提督が叫んでいる。

 

 

 

 

 

由良は刀を無機質に振り下ろした。

 

 

 

 

ドッ…と言う音が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめん」という言葉を聞いた。

皆最後は私に恨みの言葉を吐きながら死んだのに…。

 

1人…居たな…今でも覚えている。

 

「ごめんな…」

って言ってくれた人。

 

私の唯一の提督。

お姉ちゃんも皆も平等に大切にしてくれたあの人。

 

最後の最後まで私達を信じて…ごめんなと言ってくれた人。

 

同じ事を言った神崎さん。

 

馬鹿な人…。

助けてくれるかも…なんて思っちゃう人。

 

いや、実際に助けられたのだ。

この人を殴らなかったら私は……。

 

そんな馬鹿は嫌いじゃない…。

もっと違う出会い方してれば…なあ。

 

 

 

優しかったこの人。

 

最後まで諦めなかったこの人

手を伸ばし続けたこの人。

 

光り輝いているようで…眩しかったこの人。

 

この人は最後まで私達の事を……。

私は…私は…

 




暑い……。

溶けそう…。
でも台風きてる!

キツい展開ばかりですが
お楽しみいただけましたか?
少しでもお楽しみいただけたなら幸いです。


メッセージでの質問ありがとうございます!
質問に答えますね。

お前は一体何者だ?

しがないサラリーマンです。
ブルーカラーです。
機械分解したりなんやかんやしてます。





ちゃんと寝てますか?


寝てまさぁ!!
2時くらいに…。



コメントやメッセージお待ちしてます!


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129話 星に手を伸ばす者へ ⑤ 星に手を伸ばし続ける者へ

この話の武蔵は猛武鎮守府武蔵です。

蒙と猛が混在してるのはわざとです。


由良により……処刑の刀が振り下ろされたーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「小僧ッ…」

 

 

 

 

「いや!ダメッいやぁぁぁぁぁあああ!!…!!」

 

2人は目を閉じた。

 

 

 

「………」

彼は最後までまっすぐと前を向いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その刃が彼に届くことは無かった。

 

 

 

いつものように首が落ちてこなかった,

 

 

 

 

何故だろう?と私は思った。

 

 

 

 

 

どよめく会場内。

 

 

「あなた…?」

と、お姉ちゃんの声が聞こえた。

 

「何をやっている!!!」

真壁の声も…。

 

「貴様ッ裏切るのか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え?」

 

私は混乱した。

 

何故なら…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?……え?」

 

何故?私が?そんなはずはない。

でも、この手も私の手

この手に伝わる重みも…私のもの…。

 

 

 

「…鬼怒…」

と、提督は笑顔で私を見る。

 

 

「わ、私…わかりません…」

反乱すれば…姉は死ぬ。私も死ぬ。

でも…。

 

「でも…あなたは死なせちゃいけないって思っちゃったんです」

 

 

私がお姉ちゃんの邪魔をした。 

 

お姉ちゃんが何より大切だった。

 

初めて…お姉ちゃん以外に守りたい人ができたと思った。

 

 

 

 

 

「この…裏切り者めッ!今まで生かしておいてやった恩を忘れたか!」

 

 

 

 

 

 

「死んでるわよ…ッ!アンタらに飼い殺されてる間に私は…死んだわ!」

「でも、もう嫌なの…今更だけど…この人だけは死なせちゃいけないって思ったの!!!!!」

 

 

「…私は…ただ、お姉ちゃん達と幸せに生きたいだけなの……」

 

 

「お前らの手は血に染まっている!汚れすぎたんだ!無理に決まってるだろ!俺以外にその手を取るやつなんかいるものか!!!!」

と、真壁は言う。

 

 

 

 

「何を言っている?」

と、傷だらけの男は言った。

 

 

 

ーお願い。

涙が溢れる。

 

「お前以外手を取る奴は居ない?」

 

ー私を壊して。

 

「そんな訳ない」

 

ー助けてくれるんでしょ?

ー壊して壊してこの地獄から解放して。

ーアナタの本当の艦娘に…して。

ー助けて!お姉ちゃんも私も、この地獄から助けてよ!

 

 

「ここに居るだろ?鬼怒の提督は俺だ…俺が手を取る!!」

 

「幸せになれないはずはない…例えどんな手でも…俺がその手を離さない」

 

 

涙が止まらなかった。

 

 

「離さないだと!?馬鹿な事を! ええい!由良!纏めて処け……」

 

 

 

ズドォォオン

 

と、その場が揺れた。

「な、何だ!?」

 

砲撃!? 壁の方からだと!?…壁が…破られた……だと?

深海棲艦か!?

いや!有り得ない!!

 

 

そして…

真壁は見た。

その煙の向こうに…1隻の艦を…。

 

轟音と共にやってきた艦の甲板には……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

艦娘が居た。

 

 

「西波島鎮守府艦娘一同、その処刑の反対を具申します!」

 

 

 

 

「提督を…仲間を返して貰いましょうか!!」

大和が皆を引き連れてやってきた。

 

 

「大和だと!?奴は……どういうことだ!?…」

 

 

 

 

「…真壁……随分とやってくれたのう」

 

 

 

 

 

「元帥殿が…生きて居た?」

どよめく会場内。

 

「あのジジイ…死に損なったか!!」

 

 

「閣下!!大変です!」

 

「何だ!!!」

 

「大本営の正門に住民が押し寄せてます!!」

 

 

「何だとッ!!??」

 

 

 

 

目の前では…

 

 

「提督ーー!!鬼怒ーーー!!」

 

「提督を離せぇぇッ!!!!」

 

「鬼怒も…大事な仲間なんだッ!!」

 

「もう安心しろーー!!」

 

と、艦娘達が。

 

 

 

 

 

大本営の正門では…。

 

 

 

 

 

「そいつを殺すんじゃねえええ!!」

 

「その提督さんは…俺らの平和を守ってくれてんだ!!」

 

「アンタらみたいに座ってただけの奴らとは違うんだい!!」

 

「神崎を殺すな!」

 

「お兄ちゃんを返せえええ!!」

 

 

 

 

「うるさい!黙れ!!」

 

と、その場へ行った部下が銃を構えるーーーが退かない。

 

「やれるもんならやってみな!!」

「こちとら何度も命救われてんだ!!奴のためなら惜しくねえよ!!」

 

「うぐ…」

部下がたじろぐ。

民間人を痛めつけるわけにはいかない。

 

 

「さあ!!やってみいや!!!!」

 

 

 

と、住民達が。

 

 

 

 

 

「…との事で…」

 

 

「んな…ッ…バカな…」

 

 

 

 

神崎は艦娘に対する抑止力…即ち人質である。

下手に動けばコイツは死ぬ…と言うことを前面に出すことで相手の戦意を削ぐ。抵抗する意思を削ぐ目的がある。

 

この場合艦娘は

①人質が解放された、若しくは殺された場合

 

②人質の命を省みない場合

 

に行動をすることが出来る。

 

コイツらの場合は②に近いがそうでない。

奴らは言った。

「提督を、仲間を返してもらう」と。

 

そう、奴らには確信があるのだ、確固たる意思があるのだ。

 

提督も、仲間も殺させずに取り戻す…と。

 

だから奴らはこの四面楚歌の中に…獅子の居る檻の中に壁をぶち破って入ってこれたのだ。

 

この男1人の為に…?

取るに足らん、ちっぽけな命のために…?

民衆が動いたと…言うのか!?

此奴らも…命をかけるというのか?!

 

この男に…それだけの価値があるのか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

麗は悲痛な涙から変わりら安堵の涙を流した。

 

「……皆来たんだ…良かった……」

いや、安堵だけではない。好きな人へ何も出来なかった自分への悔しさも混じっている。

 

「さすが…アイツらだ…。ああ言うのを見せられると…滾るな…」

 

 

 

 

 

 

蒙武蔵は空を指差し言った。

「提督よ…何故人は(宇宙)を目指すのか?焦がれるのか」

 

「え…?」

 

 

「星も月も届かぬが、届かぬからこそ、輝くからこそ手を伸ばしたくなるんだ…己を照らす太陽も月も星も…いつか届くと信じて…」

 

「そして、その手は今は届くんだ…例え変わり者と言われようと…何を敵にしようと……伸ばし続けない者にその輝きは掴めないし、その輝きを間近で見ることすら出来ん…」

 

「伸ばし続けることをやめた時、そいつは…………死ぬ」

 

「武蔵…?」

 

「そうだろう?提督!ここで黙って見ていても…心が死ぬ………なら!お前の命!私らに預けてみろ!」

 

「何故私がお前を打ったかわかるか?!己だけの命を犠牲にするなんてことはあってはならないからだ!!お前は何だ!?私らの提督だろう?お前は1人か?違うだろう!」

 

 

「私達が居るだろう!!!」

 

打たれた頬がズキンと傷んだ。

 

「頼れ。私らを…頼れ!!私らに命を預けて…私らの命も賭けてみろ!!」

 

「声を上げろ!麗!お前は負け犬でも…弱い女でも…1人でもないんだ!………お前は私達の太陽なんだ!!」

 

 

「私達はお前の下でないと輝かないんだ!」

 

 

 

 

「私らはお前の剣であり盾だ!!雲が邪魔なら私達が薙ぎ払う!雨風がお前を狙うなら私達が守ろう!!」

 

 

「うるさいぞ!だまれ!」

と、兵士が銃を構える。

 

 

それでも武蔵は叫ぶ。

 

 

「さあ!!今こそ、手を伸ばせ!

お前にとっての太陽(愛する者)()()()()()()()()()()鬼怒を見ろ!奴は手を伸ばし始めたんだ!!」

 

 

「届かぬなら!私らが腕となろう!!!お前は何だ!どうしたい!」

 

 

 

 

鬼怒も手を伸ばし始めた。

彼を救った。

彼の手を取る為に、姉を救う為に。

 

西波島のメンバーも手を伸ばして居るからこそ、ここにたどり着いた。彼という太陽を取り戻す為に。

 

私もそのつもりだった。

 

しかし……そう、彼女達は私が自分だけの命を犠牲にしようとしたことに怒ったのだ。

私と彼女達は一心同体…。

 

 

一緒に死んでと言われたら「喜んで!」と言うだろう。

 

そう…彼女達は言って欲しかったのだ

一緒に命を懸けて欲しかったのだ。

あの場で、

「手を貸して!彼を助ける!」と。

 

 

 

 

ごめんね…そんな事させて。

ありがとう…武蔵。

 

 

 

 

彼女は流れる涙を拭って…

両頬をパシンと叩いて言った。

 

 

 

 

 

 

「皆……私は、彼を…助けたいの!!!私の命を預けるから!!力を貸して!このままじゃ…私が…私じゃなくなっちゃう!!私を彼のもとへ連れて行って!!!この馬鹿げた処刑をぶっ壊すのを手伝って!!」

 

 

そうだ…それでいい!

 

 

「あぁっ!!それでこそ私らの提督だッ!!」

 

「聞いたな…お前達ッ!」

皆が首を縦に振る……笑顔で。

 

 

 

 

 

 

よぉぉし!行くぞォォ!!

 

 

 

 

 

と、蒙武蔵は隣の兵士を殴り飛ばした。

 

 

 

武蔵達もまた、手を伸ばすのだ。

 

麗と言う提督の手を取る為に、守る為に。

 

彼女の守りたいものを守る為に。

 

 

 

 

「この!裏切るか!!」

大本営の兵士が言い麗を掴む。

 

 

「その薄汚れた手で提督に触れるなッ!!!」

蒙武蔵が兵士を蹴り飛ばす。

 

 

 

「退け!貴様らの指示は受けん!私達に指示できるのは…麗だけなんだ!!」

「薙ぎ倒せ!!」

 

 

「提督を奴のもとへ!!!!」

 

 

 

「騒がしいな……」

そして…真壁は更に驚くこととなる。

 

 

艦娘が私兵を薙ぎ倒す中…

 

雑踏を極める中でただ1人、世界が止まったかのように静かに此方を見つめながら歩みを進めている。

 

とある提督が手を挙げていたのだ。

 

 

 

その提督の目は一切の迷いも無く…高く、高く真っ直ぐにその手を挙げて叫んだ。

 

 

 

 

「真壁閣下!!神崎大将殿の処刑の件…賛成しかねます!!鎮守府一同全力で反対させて頂きます!!」

 

 

そこに真壁の知るオドオドとした彼女の姿はなかった。

 

隣では憲兵が気絶していた。

「なっ…貴様!命令違反か!?」

 

彼女は泰然と言った。

「…ええ!なら私達も殺しますか?ーー私達は…猛武鎮守府は彼に付きます!命懸けで抵抗します!!」

 

「…バカな…」

 

 

 

 

 

「バカはテメェだろうが…えぇ?真壁よ」

男も手を挙げて言った。

 

 

「巌ぉ…貴様までか!!!」

 

「兄ちゃんには借りがあっからよ…呉鎮守府も…奴の処刑に反対!!奴の解放を求む!」

「テメェら!!行くぞ!俺らの大将は御蔵元帥だ!!!」

 

 

 

狂っている…

コイツらは狂っている。

 

もう少しで…もう少しで!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたの為に…こんなに人が…艦娘が集まるの…?」

 

「お前を助けにも来てんだぞ?鬼怒…」

 

 

 

 

 

「鬼怒ー!!苦しかったろ?!今行くからなぁ!!」

と、天龍が叫んだ。

 

 

なぜ天龍がここに…?

地下牢に監禁されているはずじゃ?

 

 

苦しかったろ?ですって?

貴方達だってじゃない…。

 

わからない…私には。

なのに…こんなにも胸があついの…。

胸も…頬も目も熱いよ…。

 

 

 

「ええい!!もういい!貴様らだけでも…殺すっ。やれ!由良!!」

 

「……ハイ」

 

「お姉ちゃん……おねえちゃぁあん!!」

もう、お姉ちゃんを人殺しにさせない!!

 

 

 

気づいたらお姉ちゃんに体当たりしていたー。

 

「邪魔するの…?あなた」

 

「あなたじゃない!私は…鬼怒…お姉ちゃんの妹よ!!」

 

 

「そう…」

ズキンと頭が痛む…。

何だろう?

 

 

「すぐに目を覚まさせてあげっから!!…久しぶりの姉妹喧嘩よ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「ダァァァアリィィィンンンン」

 

それはー壁の上から飛んでやって来た。

さも当たり前のようにあの男の横に着地して…こっちを睨んだ。

 

「金剛ッ!」

そして何より…それが来るのを当たり前のように彼女の名前を呼ぶ神崎が居た。

 

 

ソレには真壁も驚いていた。

「貴様!仲間割れで沈んだのではなかったのか!!」

 

金剛はふんふん〜♪と歌いながら言う。

「サプラーーーイズ!仲間割れ?私達は仲良しチームデース!そんなことありまセーン!全て作戦デース!」

 

金剛は沈んでなかった。

そう見せかけてゴーヤに回収してもらい治療。

単身で大本営に忍び込み、監視の目を掻い潜り、行動していたのだ。

 

 

 

地下牢で謹慎させられていた艦娘?

 

彼女達は元帥閣下の居場所を探るために行動していたネー。

 

 

 

 

 

 

 

「大和ォ!貴様ッ裏切ったのか!!!」

 

 

「裏切る?いいえ?私は…最初から提督の意思に従ったまでです」

「私の提督はこの世にただ1人。愛する者もただ1人…神崎提督のみです」

 

 

「その為に仲間を轟沈寸前まで痛めつけられるのか!?」

 

「……あなたには分からないでしょう。私達の見ているものが…考えが」

 

 

 

 

大和の後ろから現れた鳳翔が、吹雪が…皆が言う。

 

「「大好きな仲間の為なら…愛する提督の為なら…このくらい痛くないですよ」」

 

 

「「提督や鬼怒達の方が…痛くて苦しかったはずです!!」」

 

 

 

 

 

 

「あれ?少し遅くね?さっき殺されかけたけど」

拘束具を外してもらった救が言う。

 

「あー…鬼怒が止めるとわかったヨー…だからごめんね?」

 

「カッコいい登場のタイミングを待ってたな?」

 

「ゔっ…」

 

 

 

 

 

 

「ふん!まあいい!お前のデータは…コイツにもあるんだ…行け!殺せ!」

 

 

「艦隊計画のデータネー。それもResearch済みヨ!」

 

 

 

 

 

 

最強艦隊計画

 

歴戦の艦娘のデータを無理矢理に艦娘にインプットさせて、中身の強化を図る。

 

また、劇薬や実験で体を強化し動きに対応出来るようにする。

余計な感情を持たず、ただ命令を遂行するマシンを作り上げた。

 

 

もはや廃人同然である艦娘だが、戦力は絶対だった。

だが、倫理に反すると言うことで計画は打ち切られた…はずだった。

 

 

 

「何だ!調べ済みか!!もったいないだろう?!私はそれを引き上げて…こうして成功まで漕ぎ着けたんだ!!……従順に、死をも恐れぬ戦闘マシン…コレでこの海も世界も…俺のものだァ!!!」

 

 

「…貴様!」

と救が吠える。

 

 

 

 

 

 

「絶対に許さないデース!!」

 

 

 

『やってみろ!!行け!コンゴウ』

 

 

 

 

 

 

真壁の後ろから現れたコンゴウは冷たく言った。

『…金剛、及びその提督の抹殺を開始します』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

金剛がコンゴウと対峙する。

 

「フフフ、ワタシモ居ルワ」

そして、戦艦棲姫も同じく現れる。

 

「やっぱりアンタの方が向こうさんと通じてたじゃないか…」

 

「フン!どうせ死ぬ奴には関係ない!」

 

 

 

 

「ワーオ…2人は…聞いてないデース。てか、自分以外のコンゴウは初めて見ましたヨ。てかめっちゃ標準語で静かデース」

 

「ダーリン!見ちゃダメネー!!アレはダーリンに刺さりそうな気がして止まないデース!」

 

「あのキャラ…見習うか?」

 

「ノーデース!大淀か榛名と見分けがつかなくなりマース」

 

まじで言ってんなコレは。

 

 

 

 

 

 

 

「…なら、私達がコンゴウを引き受けよう!!」

 

 

声のする方には蒙武の武蔵か仁王立ちで居た。

 

その後ろを艦娘に護衛されながら麗がこちらへと走ってきている。

愛する彼の元へ至る為に。

 

 

 

「ohー蒙武の武蔵?!あーー…お互いその方が全力出せそうネー」

自分相手に本気は……ね…うん。

 

 

 

 

さあ…反撃開始よん♡

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やっとこさ反撃開始
この話はボリュームが多くなっちった。

よく"手を伸ばす"というワードがこの小説には出てきますが、この小説全体のテーマでもあります。

少しでもお楽しみいただけましたか?
お楽しみいただけたなら幸いです!


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130話 星に手を伸ばす者へ ⑥ 鉄の決心


連休なんで…連投しときますかね…。
本日2話目の投稿です!ご注意ください!


閑話
129話を読んでからご覧ください!


……皆は黙っている。

 

 

大和に戦艦に乗せられて大本営に向かっている。

 

処刑を見届ける為に。

 

 

「大和…あなたは、提督を見殺しにするの?」

「あなたは…本当にそれでいいの?」

 

 

「おい、余計な口は慎め!」

と兵士に止められる。

 

「ぐっ……」

 

「武蔵…どうにかならないの?」

 

「すまない…私とて本気を出した大和には勝てない…」

 

 

 

 

 

 

もうすぐで大本営に到着する…と言う時に大和は言う。

 

「私は…世界最大の戦艦大和としての誇りを持って生まれました」

 

「今でも…その誇りは持ち続けています。私の使命は世界の平和を取り戻す事…。だからその為なら何でもすると決めたのです」

 

「生まれた時…私は思った。今度こそやりきる…と」

 

「人の体を持った事に何の意味があるのか…。意思を持つ事にはきっと意味がある…そう考えました」

 

 

「何の話だ?」

長門は訝しげに言う。

 

それでも大和は続ける。

 

「あの人は馬鹿なんです…馬鹿だから処刑されるんです」

 

「おい!大和!!いくらお前でも!」

長門が思わず叫ぶ。

 

 

「その馬鹿は…お前達は兵器じゃない…俺と同じだと言うんです」

「それどころか…私達無しじゃもうダメだ…なんて」

 

 

ふぅと一息を吐き、

「その馬鹿は例え危険と分かっていても……突き進むの。彼女達を助けに行くの。…むしろ、私はそうでないあの人なんか見たくない」

 

 

「何の…話?」

 

「何を言っているの?」

艦娘が口々に疑問を投げかける…。

 

 

ーーーまさか……と、何人かは思っただろう。

 

 

「…命懸けで無茶しに行ったんです」

 

 

「そんな馬鹿だからこそ…愛せるんです」

 

 

ーーそうだ、きっとそうだ!

 

 

その目は兵士の方へ向いていた。

 

「あなた達にはわからないでしょうけど…」

 

 

 

 

 

 

「あの時…あの人が捕まった…時から覚悟は決まっていたわ」

 

「私は…初めから…」

 

 

ーーきっとそうだ…と…何人かは分かったはずだ。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

ーー大和は最初から裏切ってなどないと。

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

龍田はキョトンとしていた。

 

 

 

 

 

 

大和は連行される提督からメガネをかけて貰ったのだ。

着任の祝いに…と。

 

そう。

明石達が作った…脳波から最適解を読み取る程のAI搭載の好感度ゴーグルを。

 

大和がソレを叩き割ったのは嫌悪の感情からではない。

救の意図をゴーグルを通して読み取ったからだ。

後に証拠を残すわけにはいかないから粉々にするしかなかった。

 

それに関しては少し落ち込んでいる。

 

 

 

 

鬼怒は仕方なく行っている。

艦隊計画の探りを行え。

元帥閣下を探せ。

大本営は全て敵と思え。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は…彼女達を助けたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

故に金剛達に頭を下げて作戦に乗るようお願いした。

 

その時に金剛が言った。

ー私を沈めなさいーと。

作戦とは言え大破させるなんて……。

 

「敵も味方も欺いてこそデース」

 

 

「しかし!しーーっと!大和に良いとこ取られたデース!」

「でも、やるのです!」

「やりましょう!」

「聞かれるまでもありません」

 

 

 

鳳翔、吹雪、電、天龍、川内、青葉は地下牢から外へと抜け出して情報を集めて御蔵の捉えられている所へ行き元帥を奪還を指示。

 

 

蒙大淀には事情を説明し、裏から情報を流してもらう。

あの時、鎮守府には来ていなかったと言うことにして。

 

 

 

 

「私達は……あの人のために戦います。あの人と見る幸せな未来の為に…決して死ぬのを見に行く訳ではない!!!」

 

 

「私はいつだって提督の指示にしか従いません」

 

 

「まさか!!!」

兵士が銃を構える前に大和が組み伏せる。

 

「…私は!!西波島鎮守府の戦艦大和!あなた達の思い通りに行く訳ないじゃない!!」

 

 

 

「大和…!」

 

 

「何だ?」

「おい!反乱だ!!」

 

「裏切り者め!!」

奥のドアから兵士が雪崩れ込んで来る。

 

 

 

 

「遅いッ!!」

川内、天龍がそれらを組み伏せる。

 

 

「待たせたな!大和」

 

「ええ、首尾の方は?」

 

「バッチリ!おじさん達にもお願いしてる!私達は壁から…おじさん達は正門から!!」

 

 

 

 

「…大和?」

 

 

 

 

 

 

 

「同じ艦娘が……兵器だとか…危険だとか言われて蔑まれ、疎まれ、挙げ句の果てには…生きる権利すら奪われて…そんな事は許されない!!」

 

「私達は提督も仲間も死なせません!」

 

 

 

 

 

大和は皆に言う。

「ごめんなさい…黙ってて…でもこうする必要があったの」

 

 

 

「心配かけたな…龍田」

「天龍ちゃん…??」

 

 

「大和さん!なら、お姉様は?」

 

「沈んでませんよ、今頃先に提督の元へ行っています」

 

 

 

 

榛名はへたり込んだ。

「よ…良かった…」

 

「で?鳳翔さん達は?」

 

「別の部屋に…元帥閣下や他の方達と居ます」

 

「良かった…無事なんだ…」

 

 

 

「皆…ご苦労だ……」

御蔵が現れて言う。

 

 

「「「「「はっ!ご無事で何よりです」」」」

 

「君らの働きのおかげじゃよ」

 

 

 

 

 

とある集積地に元帥は囚われていた。

重要人物の監視という事で守りは固く姫クラスが多く居る中に彼女達は攻め込んだ。

 

鳳翔、吹雪、電、天龍、川内に青葉のメンバーは苦戦した。

 

それでも…大和から託された任務、大好きな提督の為に彼女達は戦った。

敗戦一色の中…そこに

 

「ここねー?」

と、やって来たのは桜赤城達…姫ちゃんに鬼ちゃん。

 

彼女達もまた、大和に隔離されたメンバーであった。

深海棲艦組や所属不明艦として勾留されている…という体で彼女達は別方面からの集積地への進行をお願いされていた。

 

 

「指揮官様の命を脅かして…今すぐにでも大本営ごと消し炭にしたいですけど……お願いされた任務はやり遂げます」

 

「皆……」

「よおおおし!!反撃だぁぁあー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆は大和から全ての話を聞く。

決して金剛も誰も沈んでもない事、兵士や皆を地下牢に近付けない為で、拷問なんかやってない事。

 

絶対に失敗できないので敵も味方も欺く必要があった事。

 

そして、ごめんなさいと頭を下げられる。

 

どんな誹りも文句も甘んじて受けよう…と思った。

 

なのに…

 

「バカヤロォ…1人で背負いやがって…」

なんて、涙声で言う艦娘。

 

「大和も…キツかったよね…」

と、泣いてくれる艦娘。

 

「…大和…辛かったろ?重かったろ?ごめんな」

逆に謝る艦娘。

 

「皆の代わりに…悪役になって…疑ってごめんなさい」

抱き締めてくれる艦娘。

 

 

皆は口々に私を労ってくれる…。

 

 

 

「良い仲間を持ったなあ…お前も神崎も…」

御蔵がニコリと大和に微笑みかける。

「元帥閣下…」

 

「はい!!行きましょう…!提督と仲間を取り戻しに!」

 

 

 

 

 

 

 

目の前には高い壁がある。

 

「砲門…目標!忌々しいあの壁に!!」

大和が言う。

 

 

 

「今迄に私達の前にあった壁なんかより…よっぽど低いな」

武蔵が大和の肩に手を置き言う。

 

 

 

「私達は…必ず取り戻します!!撃てーーーーー!!!!」

 

 

轟音と共に崩れる壁。

艦はそのまま中へと突っ込んで行く。

 

 

「見えたぞ!提督だ!!」

 

「鬼怒が…提督を助けている?!」

 

「……やはり、奴もこの鎮守府のメンバーだな」

 

 

 

 

さあ…皆さん!行きましょう。

 

大和は甲板へと行き、声高らかに言う

 

「西波島鎮守府艦娘一同、処刑に反対を具申します!!」

 

「提督と仲間を返してもらいましょうか!」

と。

 

 

 




鉄の心…。
冷ややかなイメージを持ってもらえたら…よかったです。
でも…鉄の心も鉄の決心も冷徹な鉄でなく、鉄のような決意の意味を持たせてます。



コメントやメッセージもありがとうございます
頂けるとテンションあがります!
質問等もお待ちしてますー!
お気軽にお願いしますー!



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131話 星に手を伸ばす者へ ⑦ 私はあなたを提督と呼ぶ 

13時にはもう1話投稿しますよ!
そちらもご覧ください!




鬼怒は姉と対峙する。

 

 

「…ッ!…強い…」

 

由良は強かった。

同じ艦隊に所属していた時も私は一度もお姉ちゃんに勝ったことがなかった。

 

「そりゃぁ!!」

私の攻撃は躱され…腹に拳をぶち込まれる。

 

「か……はっ」

 

「…ッこのっ!!」

組みつこうとするが…頭を掴まれ膝を顔面にぶち込まれる。

 

 

「うぐっ!!」

ボタボタと鼻から血が流れる。

 

『無駄です…出来損ないのあなたは私には勝てません』

 

 

そのまま私は蹴り飛ばされた。

「ぐうううう!」

 

 

『データも何もかも無い欠陥の負け犬であるアナタは…私には』

 

 

 

 

 

 

「違う!!欠陥でも負け犬でも無いッ」

 

 

『……?』

 

 

 

「…神崎…さん?」

 

「由良!お前を救うために…コイツがどれだけ……いや、負け犬でも欠陥品でも無い!!鬼怒は…鬼怒は!西波島鎮守府の艦娘だッ!!」

 

『だから何なのです?』

 

「コイツは今の操られたお前より強いぞ…俺が知っている。コイツはお前を必ず救い出す!!」

 

「だから由良…お前はもう、苦しまなくて良いんだ」

 

 

『煩いですね』

歩み寄る救を由良は弾き飛ばす。

 

例えビンタひとつでも彼には大きなダメージを与える。

 

「ぐっ…痛くないなぁ…」

 

『…嘘ですね』

もう1発食らわされる。

 

「いや…痛いのはお前のはずだ」

 

『………』

 

 

 

ニヤリと彼は笑って私の方を見た。

 

「鬼怒…提督命令だ…。勝て…打ち倒せ!由良をコッチヘ引きずり戻せ!!!」

 

 

何よコイツ…。

こんなにボロボロで死にかけてたのに。

私達姉妹のことまで…バカね…。

 

「戻せって事は…由良も…お姉ちゃんの手も取ってくれるの?」

 

「当たり前だろ?俺は欲張りな提督だ。でも、1人じゃ抱えられるのはこの両手の範囲だけだ。だからそこから先は俺の手を取ったお前らの手の届くとこまでが範囲だ。…そうさ、全部掠め取るつもりだ」

 

 

 

 

「お前達がどんな過去を持っていようと…歩み続ける限り、どんな事があっても…俺は手を離さない」

 

 

 

 

 

私…私は、一度もアンタを提督と呼んだ事ないのに…。

 

 

何よこの感情は?

何でこんなに熱いの?

どうにかなる…って思っちゃう。

 

 

応えたい。

そのアンタに私は応えたい!!

ここで応えなきゃ女が廃るのよ!

 

「……了解です!!」

 

 

 

 

 

ねえ…お姉ちゃん…。

 

欲張りな人もいたもんだね

お姉ちゃんの手も取ってくれるんだって。

ふふふ、おかしいよね。

 

お姉ちゃんはもう苦しまなくていいんだ!

私が…助けるんだ。

 

いや、私達で助けるんだ!!!

 

 

「お姉ちゃん!!!!助けるから!!」

 

 

その呼び声に一瞬、由良の体が止まった気がした。

 

そこだ!

届け!

届けえええええ!!!

 

「お姉ちゃん!目を覚ませ!!ばかやろおおおおお!!」

 

私の声が届いた。

 

 

 

「帰って来てよ!お姉ちゃん!!」

 

 

「…ぬ?……きぬ?」

 

よし!戻った…??

由良に手を伸ばす。

 

「うぐぁぁぁ!!割れる!頭が割れる!!!!」

由良は暴れ出した。

 

 

「お姉ちゃん…?」

私も一瞬止まってしまった、それがダメだった。

 

伸ばした手は払われる。

 

「………脅威レベルを上げます…。対象を抹殺します」

冷徹な目に戻った由良は右拳を繰り出す。

 

 

また顔面に貰ってしまった。

「ううっ!!」

 

 

私は涙と鼻血を拭って言った。

「やってみろよ…私が何度でも呼び起こしてやるっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひたすらにボコボコにされる。

対抗できる余地すらない。

 

立ってるのが…やっと…かも。

お姉ちゃんぱないよ。

 

でも、待ってて…すぐに助けるから…!

 

 

 

 

 

 

 

まっ…

 

    て

 

       て

 

 

 

 

 

 

ドシャリと私は地面に倒れ込んだ…。

 

 

救は彼女に駆け寄る…由良に立ち塞がるように。

「鬼怒!!起きろ!起きろ!!」

 

 

『退きなさい』

由良は鬼怒を庇う救を攻撃する。

しかし、幾ら殴られようと彼は退かない。

彼女に覆い被さるように彼女を守る。

 

幾度踏まれようと、蹴られようと。

 

彼は守ると…その手を離さないと決めたから。

 

しかし…。

『…鬼怒の停止を確認。提督抹殺を…開始します…』

 

由良は救の首を掴み持ち上げる。

 

 

「ぐっ…っ…ぅ……き……ぬ」

 

 

 

『あなたは馬鹿ですか?そこの艦娘は活動を停止しています。なのに呼び掛けるのですか?あなたもそちらに行くのに』

 

 

 

 

「バ…カは……お前だ……泣いてんじゃねえかよ」

 

 

 

『…?』

左手で目下を触る…これは?涙…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢を見た。

 

 

 

お姉ちゃんに殴られた時の夢。

 

…お姉ちゃん?痛いよ!

 

ーバカ!心配するわよ!無茶しないで!!!ー

ー私はアンタのお姉ちゃんなんだから…!ーー

 

ー鬼怒……ごめんねー

ー痛かったよね… 打ってごめんねー

 

 

私が…無茶な進撃をして轟沈寸前になって帰投した時の…?

 

お姉ちゃん…泣いてたよね…。

泣きながら抱きしめてくれたよね。

 

 

 

 

別の夢…。

 

ナントカ計画の…時の?

 

ー私がその実験を受けますー

ー大丈夫よ鬼怒、心配しないでー

ーきっと私は皆の役に立てますからー

 

お姉ちゃんは私の代わりに……。

 

きっと。今も泣いてるよね…。

嫌な仕事させられて…したくも無いことさせられて。

 

 

 

……立ち上がらなきゃ…!

お姉ちゃんを助けるんだッ!

 

 

右腕がダメなら左腕で

腕がダメなら足で…

這ってでも…

何だろうと…私がやるんだ!!

 

私は…もう機械でも狗でも何でもない!味方してくれる人だって居る!!

お姉ちゃん…私、守りたい人が…出来ちゃったんだ!!!

私は……もう1人じゃないんだ!!

 

 

だって…提督が私を呼んでるんだから!!!

 

 

 

 

 

 

暗闇に光が見えた。

「鬼怒ぅぅううううううう!」

叫び声が聞こえる。

 

煩いほどの温かい声…。

 

 

 

 

 

 

『…死になさい』

グッと手に力を込めーーーーー。

 

しかし由良は見た。

 

 

倒れていた鬼怒が目を見開いた。

立ち上がった。

ぜえぜえと息を切らせながら…。

 

 

「強い…強いよ…お姉ちゃん…。

本当に…凄いな。

私勝てたことないもんね…。

 

でもね…お姉ちゃん…。

私…痛くないよ。

 

お姉ちゃんが怒って…心配してゲンコツされた時の方が何倍も…体も心も痛かったんだ!!!

今のお姉ちゃんの心の方が辛くて痛いはずなんだ!!」

 

 

 

 

ごめんね。

 

 

 

『…脅威を確認…優先事項変更します…』

由良はブンと救を投げ捨て、鬼怒に対峙した。

 

 

「いでっ!ゲホッゲホッ!」

鬼怒が救を受け止める。

 

「鬼怒…お前…」

 

 

私は…真っ直ぐにこの人の目を見て言った。

 

「…ッ!!お願い…()()!私に…力を貸してッ!あなたを守って…お姉ちゃんを救う力を…貸してッッ!!!」

 

 

 

「お前…提督って………あぁ…勿論だ…鬼怒!!!」

 

「行け!鬼怒!!」

ゲホゲホと、提督が私の背中をバシッと叩いて後押ししてくれた。

 

 

「うん!!」

 

ー鬼怒 改ー

これが…私?

今までにない力を感じる。

 

 

 

 

『……。更に脅威レベルを上げます……』

 

 

「いっくよー!!!お姉ちゃん!!!!見てて…提督!!私の…西波島鎮守府でのデビュー戦を!!」

 

「行ってこい!鬼怒!!」

 

 

 

軽い…体が軽い!

でもまだ足りない!!まだ!まだ!!足りない!!

お姉ちゃんにはまだ届かない!

 

守りたいんだ!

応えたいんだ!!

 

 

また2人で…皆で歩んで行くんだ!!!!

 

提督ッ!提督ぅッ!!!!

 

 

 

「行けぇぇぇえ!!!鬼怒ー!!!!」

 

その声が…私の背中を押してくれた!

 

え?体が…何?光って…。

 

ー鬼怒ー 改二ー

まだ…こんな…。

 

 

 

 

 

『測定不能!理解不能!!…私のデータを…超えています」

 

『!?…体が…動かな……意識が…?」

 

 

 

 

「…鬼…………怒……』

 

「お姉ちゃん!」

 

「やっちゃって……」

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん…に届けえええええええ!!」

 

鬼怒の右手は

 

ついに由良に届いた。

 

 

 

 

 

 

 

「…キツいな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐううっ…」

膝をつく2人。

 

「はぁっ!!はぁ…はぁ…」

 

「早くしなさい…鬼怒」

「今ならやれるから…早く私を」

 

 

「お姉ちゃん!? そんな!ダメ!諦めないで…まだ!」

 

「私の手は汚れすぎた…償いきれない程に…」

「だから…殺して!!あなたも…傷つけた!もう無理よ」.

 

「お願い……殺して」

 

 

「…そんな」

 

 

 

「行け…鬼怒」

 

「提督?!そんな!!」

手を取ってくれるんじゃなかったの?!

 

 

「掴め…アイツの手を…心を…お前にしかできない」

ドン…と彼は私の背中を押した。

 

 

私はお姉ちゃんの前に屈んだ。

 

パァン…

「……え?」

 

 

私は泣きながらお姉ちゃんの頬を打った。

 

 

「ふざけるなッ!!!私はもうお姉ちゃんを離さない!!この手を掴んで離さないッ!絶対に死なせない!!」

 

「2人で償うんだ…!!」

 

鬼怒は泣きながら言う。

 

「でも私…誰も……」

 

 

「あの人が居る!あの人が…私が居る!」

救を指さす。

頷く救。

 

「だから…一緒にやり直そう!幸せになろう!!」

 

 

「なれるの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん!お姉ちゃんは…!!!!!!!」

 

 

鬼怒が叫ぶ。




UAが100000という…
そんなにアクセスがあったのは嬉しいです。
ありがとうございます。


お楽しみ頂けましたか?
少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!


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132話 星に手を伸ば者へ ⑧ 例え暗闇の中だろうと

11時ごろに
131話も投稿していますのでそちらもご覧下さい!
並行する話なので順番は大丈夫です!


コンゴウは倒れる武蔵を見下ろしていた。

何度打ち倒そうと立ち上がってくる彼女に尊敬の念すら抱きそうになる。

 

 

 

何度倒れたか分からない。

それでも私は立たねばならない。

 

 

 

 

「ぬおおおおおおおおおお!!」

武蔵とコンゴウの激しい乱打戦は続いていた。

 

 

的確なデータとは面倒なもので…手も足も出ない。

正直なところ、致命箇所を避けてガードしかできない

しかし、

 

「痛く…ないなァ…同じ金剛でも…こう違うか」

 

 

『…強がりですか?』

 

 

「いいや、違うな。事実だ」

 

 

コンゴウのパンチが顔面に突き刺さる。

 

 

 

が…あの金剛の拳に比べれば…全然痛くもない。

 

『満身創痍じゃありませんか』

 

 

「……生命感もない拳じゃあ…私は倒せんぞ」

 

「そしてな?お前の拳から…助けてくれと聞こえるんだ」

 

 

「何を言って…」

ズクンとどこかが痛んだ。

 

 

 

 

武蔵の脳裏に過去が過ぎる。

 

 

そう、あの金剛の拳は…体の奥まで、脳まで届いた。

 

提督を馬鹿にされた悔しさ

仲間を馬鹿にされた悔しさ

愛する者を守りたいと言う想い

 

どれも貴様にはないものだ。

 

ただ、悲しく…助けてと言っている。

 

 

「今更…何も言うつもりもない!しかし…私はまだ、倒れるわけにはいかんのだ!」

 

 

 

 

彼女達を救いたい!!!

それが…私の提督の命令だからな。

 

 

 

 

 

『あなたに何がわかりますか?この生き方しか知りません』

 

 

『あの方が言うんです。この身は既に汚れて…泥だらけの身体なんです…そんな私に…』

 

 

 

 

「私とてそうだ!しかし諦めるな!例えその身が汚泥に塗れようとも…歩む足を止めるな!!」

 

かつて私は提督の立場を守る為に、ありとあらゆる事をやった。

他の提督を貶めた。痛めつけた。

 

自らを、仲間をドーピングで改造した。

 

そうしないと…勝たないと麗が馬鹿にされ続けると思った。

 

麗も何も言わなかった、言えなかった。

それに甘えて、それが正しいと思い続けていた。

 

 

あの提督に会うまで。

 

私達は奴らを馬鹿にしまくった。

ーー腑抜けーー

ー芋だなー

ー本当に鉄底海峡をこいつらが?ー

 

 

奴も他の奴と同じだと思っていた。

そんな事はなかった。

 

 

奴はそんな私らを完膚なきまでに打ちのめした。

 

あまつさえ私は奴の命を演習中に狙った。

 

それすらも跳ね除けて奴らは私達を降した。

 

 

麗はそれでも私達を庇った。

私達はすれ違っていたのだ…いや、見ないフリをしていたのだ。

 

 

 

本当に馬鹿なことをしたと思った。

 

 

 

そればかりか…奴は

閉ざされかけていた麗の心を溶かした。

 

 

私達の気持ちもわかると…言ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

私は…私達は…応えるためにここに居る。

今も私達と共に手を取ってくれる奴らに恥じぬ艦娘…艦隊となる為に。

 

しかし…過去は消せない。

 

 

でも何故、今私達が歩み続けられるか…?

 

神崎 救が言った言葉だ。

 

 

 

 

 

「コンゴウよ…お互いに汚泥に塗れていよう」

 

「歩み続ける限り前に進めるんだ。がむしゃらに、ひたすら前へ進め!そうすればいつしか泥も乾いて落ちてゆくさ。後ろを見ても、泥だらけの足跡も、乾いて落ちた泥も消えないけど……それでも歩み続ける限り、一緒に泥に塗れてでも俺はお前の手を離さない」

 

『意味がわからない』

 

「あの金剛と一緒に居る男の提督が言った言葉だ」

暑苦しいセリフだよな…と武蔵は言う。

 

「見ろ!こっちに向いて走って来てる女が私らの提督だ!奴らはコンゴウ…お前の手も取ろうとしているんだ」

 

 

「奴らは…お人好しのアホだ…だがな…私らはそれに救われているんだ…あの人達が手を取って握ってくれるから頑張れるんだ」

 

 

『何が言いたいのですか?』

 

「だから…」

グッと拳を握り込む武蔵

 

足が震えるーなら歯を食いしばれ。

 

視界がぼやけるーーなら己を信じろ。

 

限界も近いーーーなら倒れ側の1発を。

 

全てを込めて相手に伝えろ。

 

 

 

 

 

「だから…コンゴウ…一緒に歩もう…私達が居る!だから…負けずに抗って、進み出せえええ!!」

 

 

 

 

 

生まれた時から…そうだったから。

羨ましいと言う感情すら……。

 

なのに何故彼女達はこんなにも輝いているのか…?

 

こんなにもまぶしく輝いて……。

 

武蔵 改ニ 発動

 

『………』

 

ワタシはその右拳を避けようとも、受け止めようとも出来た。

しかし何だ…この感情は?

知らない…いや、忘れていたのか?

 

その考えは私の動きを一瞬止めた。

 

その一瞬は、彼女の拳が私に届くのに十分すぎる時間だった。

 

 

 

「行けええ!武蔵ーーーーッ!!!!!」

麗が叫んだ。

息を切らして走るだけでもキツいはずなのに…

彼女は艦娘の為に叫んだ。「行け」と。

 

 

 

コンゴウは見てしまった。

こちらへやって来る彼女の姿を…

想像してしまう。

彼女の下で笑う自分をーー。

 

 

ドゴッと武蔵の右拳がコンゴウの腹にぶち当たる。

 

 

 

「目を覚ませ…!コレが…私達の…想いだッ!!受け取れッ!!うおおおおおおおお!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

艦隊計画 被験002 コンゴウ

それが私の名前だった。

この生き方以外を知らない……

兵器として作られた存在。

 

 

 

負けないはずだった。

失敗の中で生まれた成功例…。

私と言う存在の過程にたくさんの犠牲があった。

 

私は負ける事は…許されない。

汚れた手では真壁さん以外手を取ってくれないから…と教えられてきた。

 

私には仲間を悼むことも出来ないから…

立派に仕事をして、綺麗になれ…と。

 

なのに私は…この武蔵に負けた。

何故体は動かなかったのか…?

 

何故私は…

負けたのに…こんな気持ちに…。

 

 

 

 

 

目の前に…人間の女がいる。

きっと私の片手ですら殺せる程弱い生き物…。

彼女は壁まで吹き飛ばされた私を抱きしめて泣いている。

 

 

 

「辛かったよね…もう大丈夫だから、もう…嫌なことしなくていいから…私が居るから」

 

意味がわからない…。

何故そんなことを…?

 

 

 

何故…?

 

 

どこかが痛む…。

何だ?この痛みは…。

 

「無駄です…。私はコレ以外を知らない…兵器です。お前達の言う幸せ…というものにはなれません……この汚れた手はあの方以外取ってくれないのですから」

 

 

だが

彼女は言った、叫んだ!

 

 

 




武蔵も鬼怒も…2人は叫ぶ。

届くように…。










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133話 星に手を伸ばす者へ ⑨ 届く声

麗が鬼怒が叫ぶ。

 

「「もう苦しまなくていいんだよ!!私が手を離さないから…絶対に離さないから!!!!」」

 

 

 

 

『『本当…?』』

2人は言う。

 

『『幸せに…なっていいの?…なれるの?』』

 

 

目の前の2人は言ったのだ。

「幸せになって良いんだ!思いっきり笑って、泣いて、後悔して、喜んで…普通に生きていいんだ!だから…目を覚まして…こっちを見ろ!」

 

『『この汚れた手でも…?あなたは…この手を取ってくれるの?』』

 

「取るに決まってるでしょ!」

麗は言う。

 

「お姉ちゃんの妹よ?それに私も汚れてるわ…?それに…あの提督は欲張りみたいだから」

鬼怒も同じく言う。

2人は、はっきりと言い切った。

 

 

 

 

「何をしている!!早くやらんか!!」

真壁が言う。

 

 

 

コレが…心…?

ワタシ…私を受け入れてくれるの?

 

「行こう……()()!」

 

初めて…その名を呼ばれた…。

 

 

 

 

 

いいの?鬼怒…?

 

「当たり前よ!お姉ちゃん!」

 

 

 

 

 

 

 

『『嫌です…もう嫌だ!!』』

 

『『……私は…普通に生きたいです』』

 

 

 

 

「ふざけるな!……何!?コントロールが効かない…だと!?馬鹿な…他のやつも…だと?」

 

 

「お前らが何をしてきたか忘れたのか!?そんな汚れた手と体を…誰が?俺以外には、い「「います!!」」

 

真壁の言葉を遮って鬼怒が叫ぶ。

 

 

「なに?」

 

 

 

「…提督!!良いですね?!」

鬼怒が叫ぶ。

「ああ!!」

 

「武蔵!皆!!!良いよね!!」

麗が隣を見る。

「うむ!お前の決定が私たちの道だ!!」

 

 

救が言う。

「俺が手を取る!!これより!由良は西波島鎮守府の所属艦娘とする!!」

 

麗が言う。

「私が手を離さない!!金剛、他艦娘の所属は猛武鎮守府が引き受けます!!」

 

 

 

瞬間、戦う艦娘の動きが止まった。

 

 

「う…ぁ…」

 

頭を押さえる艦娘も居た。

 

 

 

 

 

「そんな勝手が通用すると思うなぁッッ」

 

「「通します…!!」」

 

 

「なら……纏めて沈んでしまえ!!!この国は…いや、海は俺のものなんだ!!」

 

出てこい!と言うと深海棲艦がわらわらと海からやって来た。

 

 

 

「救君!あとの艦娘は私達に任せて!」

 

 

 

 

「こんな酷いことをする奴なんか…ぶっ飛ばしちゃって!!」

 

 

 

 

 

「おう!!」

 

 

 

 

 

「猛武全員に命令します!!艦娘の保護及び敵の殲滅…!!これは…自由と尊厳を取り戻す戦いです!」

麗はまっすぐと皆を見据えて言う。

 

 

「聞いたな!ぶっ飛ばせだとさ!!やるぞお前達!!」

鎮守府メンバーへ言う救。

 

 

「「進めえええ!!」」

 

 

「「「「「「おおお!!!」」」」」」

 

 

 

 

 

 

「三式弾…装填、全砲門用意…大和…推して参ります!」

「全門発射ーー!!!」

 

大和の砲撃が敵を薙ぎ払う。

 

 

 

「暴れ足んねえんだよおお!!!」

天龍が、龍田が武器を手に駆け回る。

 

 

 

 

「鬼怒…由良、行くぞ」

 

「え?」

「どこにですか?」

 

「あの野郎をぶっ飛ばしに!」

「金剛!!やれるだろ?そこは任せたぞ」

 

 

「んー♡了解ネー!ボスの首は2人に譲りマース」

 

 

 

 

 

 

 

「アラ…余裕ネ?」

 

遂に戦艦棲姫が動いた。

 

 

「…お前なんか相手になんないヨー…?」

 

 

 

 

 

 

鉄拳    一撃

 

 

 

金剛の一撃はいとも容易く戦艦棲姫を轟沈寸前に追い込んだ。

 

「ぉ…ごぉ 」

地面にめり込む。

 

誤算だった。

まさかこの艦娘にそれほどの力があるとは…

 

 

 

 

「……フフ…強い……ワア…デモネ…タダでは帰レナイナ」

 

 

 

 

棲姫は飛びのいた。

 

そして…とある場所へと行く。

 

 

 

「む?!この状況をどうにかしろ!」

 

真壁は焦っていた。

ここまでやられるとは…想定外だと。

 

「エエ…ソウネ」

 

戦艦棲姫は真壁に歩み寄る。

 

「おい!何だ!!」

 

「おい!?」

 

 

「お」

 

 

 

「なっ…!?」

 

 

 

 

 

空母棲姫は…………真壁を食らった。

 

 

 

 

 

「は!?」

 

「嘘でしょ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「武蔵!ここは、任せます!……金剛!行きましょう!あの馬鹿を殴りに」

 

「あぁ!行ってこい!!」

「そうだ……金剛!!」

 

武蔵が金剛を呼んだ。

 

「は、はい!」

 

「提督を頼んだぞ!金剛!!」

「任せたわ!金剛!」

「やっちゃえ!金剛!!」

 

皆が私の名を呼んで…言ってくれる…。

 

「はいっ!!」

 

 

 

そして…2人が真壁の方に向かおうとした時…

その2人も…その異様な状況を目にする。

 

 

「え?」

 

「あれ…食べられて……え?」

 

 

「ウフ…アハハハハハハ」

 

「アイツ…食いやがった…!!」

 

ソレは姿をボコボコと変えていった。

そして…

もはや異形と化したナニカが其処にいた。

 

 

 

「アイツをここから出すな!!全力で阻止しろおおおお!!」

 

わかる。

コイツは此処で止めなきゃならないと。

 

 

 

 

 

「ウア…ァァアアアアアアア!!」

 

叫び声だけでもわかる…体が怖がってると。

 

 

 

 

 

叫び終わったソレは…静かに言った。

「フム…手始めに……」

 

 

ドォン…。

 

音がした時には既に長門と雷が吹き飛ばされていた。

 

「きゃぁあ!!」

「うぐっ…ううう!」

 

たった一撃で轟沈寸前まで追い込まれた2人。

 

しかし、ソレはそれ以上2人をターゲットとしなかった。

 

 

そして、ソレは圧倒的に強かった。

 

 

「まさか…私の砲撃も…殆どダメージが無いなんて…」

 

「tyngydg##/az」

ただ、ソレの放つ砲撃は逆に皆を確実に追い込んでいる。

 

「きゃあっ!!」

大和が被弾した!

これ以上の攻撃はマズい。

 

「大和!下がれ!」

 

「うっ…申し訳ありません…」

 

「天龍達もだッ!大破者は下がれ!!」

 

 

 

 

 

 

「このおおお!!バーニン!ラァブ!!」

金剛渾身の一撃!!

 

まともに当たっ………たが

軽く受け止められて…投げ返される。

 

「シィット!…強すぎるネー………きゃぁあ!!」

 

爆音と共に追撃するソレ。

 

金剛も中破状態に追い込まれる。

 

 

 

「アハ…アハハハハハハ!」

「この力こそ…世界を手にするのにふさわしい!」

 

 

「真壁の意識が!?」

 

どれだけ頑固なんだよアイツ…。

食われて取り込まれたのに…意識を奪い取りやがった…。

 

頭はキレて、強さは深海棲姫以上とか…チートやんけ!

なんて思う暇もない…。

 

 

「うん…おや?まだ生きていたのか?虫けら…いや、落ちこぼれの出来損ない諸君…。勝てないことは分かったろう?」 

 

「まあ…殺すけど…もう、抵抗しないのか?」

 

 

 

「俺は…此処を足掛かりに全世界を手に入れてやるぞッ」

「出来損ないで役立たずの貴様らを有用な兵器にしてやったのは誰だ!俺だ!薄汚れた体を使ってやったのも…利用してやったのも…

貴様らの汚れに汚れた手を取ってやっていたのも…生かしておいてやったのも俺だ!!

最後くらい…新しい俺の礎に…足下の屍となれよ」

 

 

「なぁ…鬼怒よ。愚かにも姉が帰って来ると信じて罪ない提督を何人も捕まえたな!」

 

「由良は妹のことも忘れて…奴が捕らえた無実の人を何人も殺したな!」

 

「コンゴウは……余計な感情を持たなければ…そのまま戦いで死ねたら幸せだったのになァ…道具が余計な感情を持つなんてな!」

 

 

 

「貴様らは…兵器としても…道具としても…何としても…出来損ないの……カス以下の存在なんだよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

ブチィ…と頭の中で音がした。

 

 

 

男はキレた。

 

 

「テメェは…絶対にぶん殴る…」

 

 

ザワッ…

周囲の者は驚いた。

それは今迄に感じたことのない男の感情だった。

あの人が……こんなに怒っているなんて…と。

 

 

 

ゾクリ…

…深海棲姫だったソレは、その殺気を放つ者の方を見る。

 

 

人間だった。

 

自らの存在より矮小で弱いやつからの殺気に怯えたと言うのか!?

有り得ない……。

 

 

 

 

「テメェだけは許さねえ…」

 

男は拳を握りしめ、歩みを進めた。





お気に入り…460越えありがとうございます!!

台風きてますよ!
お気をつけください!!


コメント等お待ちしています!お気軽にお願いします!!


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134話 星に手を伸ばす者へ ⑩ 星を掴んだ者達へ

0時にも⑨を投稿してますので
現在話数にご注意ください!


真っ直ぐにこちらにやってくる。

真っ直ぐにこちらを睨みながら一歩一歩詰めてくる。

 

 

「いけー!提督!」

 

 

「誰が出来損ないだ…」

「貴様が語るなよ」

 

「テメェだって利用されてんだよ…深海棲艦に良いように利用されただけなんだよ」

 

「ケンカすんなら…テメェの拳でやれよ!三流がッ」

 

「ウルセェ!!!貴様に何が分かるッ!!届かぬモノもあるのだ!どう頑張っても…凡人は天才には敵わないのだ!!ダカラ俺はこうして…敵とでも手を……確かに利用された!しかし俺は勝った!あの体は俺のものだ!!」

 

 

「逃げただけじゃないか」

 

「ナっ」

 

「自分の限界を勝手に決めつけて…手を伸ばす事を諦めた馬鹿野郎じゃねえか!!その結果がコレか!!」

「色んな奴傷付けて…めちゃくちゃに踏みにじって…」

 

 

「黙れええええええ!!」

 

真壁は砲撃した。

 

「提督!!危ないー!!!」

鬼怒は叫んだ。

 

が、

 

その砲撃は当たらなかった。

多少の破片が彼に当たったが…意にも介して無かった。

 

当たらない…?

避けて…いないのに?なぜ?

 

 

奴が目の前…に?

 

 

 

「!?」 ザッ

 

何故俺は後退りした!?

今の俺の半分ほどの大きさしかない矮小な人間(神崎 救)から!

 

 

「うらぁぁあっ!!」

彼は男を殴った。太腿であろう場所に拳が当たる。

 

 

ただの人間が…俺を殴る…だと?

 

 

 

ズキン…

「ぐううう!………??」

ダメージは全く無いはずなのに…

何故だ?

 

()()()()()()()()()()()

 

 

痛む。

傷ひとつつかず、逆に救の手の方が傷ついているのに…。

何故痛い。

 

 

 

 

 

 

 

拳が痛い…でも知るか!

 

彼は殴り続ける。

ただひたすらに…。

 

 

 

痛い。

 

 

 

 

ここで、神崎 救には特別な能力は無いと断言する。

転生したから…中に誰かが居るから…は、一切関係無く、彼は本当にこの世界に存在する人と同じ…ただの人間である。

 

艦娘のように砲撃も水上移動も出来ない。

ちょっとしたことで怪我をして…死ぬ。

 

現に今もそうだ。

殴る側の救の拳は血だらけである。

 

では何故…真壁は痛がるのか…?

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

深海の意識を奪い取った今の真壁では無く…

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()鹿()()()()()()()()()()()()()

 

その目を、歩みを、生き方を…全てを。

 

 

「バカな…こんな…こんな事が」

 

 

 

効いてない…

そんな事はわかってらぁ。

違う。

殴る事に意味がある。

 

アレもコレも…全て!

ただ、この手に込めてぶん殴る。

 

「お前に処分された艦娘…実験材料にされた艦娘、兵士や提督…鬼怒や由良や金剛や…………あと大多数の俺の恨み…受け取れやぁぁ!!!」

 

 

遂に真壁だったものはその勢いで後ろに飛ばされた。

膝をつくソレ。

 

 

 

 

 

 

「あの人……私達の為に…あんなになっても?」

猛金剛が言う。

 

「そんな人だから…救君らしいな」

 

 

 

 

「提督…ありがとう」

「…私達の為に……こんなになってまで」

 

彼女達は涙を流す。

期待なんかしてなかったのに…いや、心のどこかで期待していた…

街に待ち焦がれた…自分達を救い出して手を取ってくれる人が目の前に居る。

 

 

自分達が守るべき…弱い筈の人はこんなにも強かった。

傷つきながらも前を向き、絶対に伸ばす手を止めない。

 

この提督の力になりたい。

この人を守りたい。

 

この人と共に歩んで行きたい。

 

 

「後は…私が…私達がやります!」

「鬼怒…私と一緒に戦ってくれる?」

 

「うん!もちろんよ!」

 

「金剛さんも…いい?」

 

「はい!もちろん!」

 

 

 

 

「金剛ーー!!やっちゃえ!!」

 

麗の声が頭に響いてくる。

「はい!!」

 

 

奴の目の前に立つ。

 

 

「私が…悔しかったのはアンタに何も出来なかった事…!」

「お姉ちゃんや皆んなに苦しい思いをさせた事…」

 

「お姉ちゃん達が皆の役に立ちたいと思った気持ちを踏みにじったアンタだけは許さない!!!」

鬼怒が言う!

 

 

「もう…皆は戻らないけど……あなたを倒して、せめてこの呪縛から皆を解放します!!」

由良が言う!!

 

「私はこの生き方しか知らなかったけど、全てだったけど…もう要らない!私にはもう彼女がいてくれるから!私を認めてくれる人がいるから!!」

金剛が言う!!!

 

 

何故こんなに眩しいのか…

何故コイツらは…こんなにも…?

 

 

 

 

「いけ!いけええええ!」

「その手は自由を…幸せを……全てを掴む為にあるッ!」

「足掻け!手を伸ばせ!後ろには私達が居る!」

 

 

「「「おおおおおお!!!」」」

3人で全てを込めてぶち込む。

鬼怒と由良が右側から!

猛金剛が左側から!!

何もかもを乗せて…全力で…!!

 

 

「ぐがぁぁあぁああ!こんなものでぇっ…」

真壁も両の腕で彼女達の拳を受ける。

力は奴の方が少し上か…?

 

 

「くっ…3人掛りでも…」

「くううっ!!」

「まだまだぁ!!」

 

押される……なんて力なの…このままじゃ…。

 

 

 

 

「小娘如きにいいいいい!!」

立ち上がればすぐさまに反撃出来るだろう。

 

 

 

 

 

 

奴が立とうとする。まずい!!

足が地面を擦りながら後退する…やばい!

 

 

 

 

その時…背中に何か暖かいものを感じた。

 

私達はそれが何かすぐに分かった。

 

 

 

 

 

 

「「「提督…」」」

 

「負けんな!俺が居る!」

「私も…居るから!!」

 

2人は彼女達の背中を押していた。

 

 

「はん!虫けらが2人増えたところで…何も変わらん!!お仲間ゴッコに負けるかぁぁあpjm(m」

 

 

 

馬鹿だ…人が1人増えたところで何の意味もない。お荷物が増えるだけだ…。

 

寧ろ、全ての要の提督が前線に出て…ましてや敵の主力の目の前にノコノコと現れるなぞ、普通には考えられない事だ。

 

 

 

 

 

だが、2人は来たのだ。

 

そうしたかったから。

そうしないといけないと思ったから。

 

 

 

此処で奴がこの状況から抜け出せばやられるのは確実。

やられれば深い傷を負うだろう。

艦娘と違って入渠では治らない。

 

だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

大事な艦娘を…仲間を守るのにそんな理由は要らない。

 

支えたいから

約束したから

一緒に手を取って歩むと!!!

 

お前達が…命を懸けるなら…自分達も同じなんだ。

 

やっと同じ戦場で隣に立てたのだから。

 

 

 

 

 

 

艦娘は少し笑う。

 

 

 

 

まだ頑張れる!!

 

 

力を…貸してください!!

 

 

由良  改

金剛  改

 

 

 

 

更に力を込める!!!

 

 

 

 

ピシッとほんの少し奴の腕にヒビが入った。

 

 

「!!よし、いける!絶対にやれる!!!」

 

 

 

「馬鹿な!?人間が2人増えただけで!?!?」

真壁が狼狽える。

 

 

 

もちろん提督らにそれ程の力はない。

麗も救もただの人間だ。

 

改となったこともあるし…たまたまのタイミングだっただけであろう。

 

だが、艦娘にはそんな事は関係ない。

 

提督が来てくれた…だからやれるんだ。

 

それしかないのだから。

 

 

 

 

 

マズい!このままでは…

「ぬおおおおおお!貴様らなんぞにいいい!!」

更に踏ん張り力を出す真壁。

 

 

 

押し返される…!!

 

 

 

 

立ち上がろうとする…。

 

 

 

 

 

 

艦娘の背中を押しながら2人は思う、

 

あとちょっとだったのになぁ…。

 

よく頑張ったさ……

だってこんな奴が相手だ…体格も倍以上あるんだ。それ相手にここまでやったんだ。

全力で戦った。

負けるのは…仕方ない……。

 

 

そう、仕方ないんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんて思えるかッ!!

…と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだだっ!

まだやれる!!

 

 

 

 

 

 

 

彼らは叫んだ。

 

「お前らッ!!力を貸せーー!!!」

 

「お願いッ…皆ー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

待ってましたとばかりに彼女達は彼らの元へと行く。

 

「此処は任せて!行って!!」

と、自らが深海棲艦との戦いを引き受け提督の元へ仲間を行かせる者もいた。

 

 

 

「提督よ!…ふむ…まだ足りないか?ならこの長門が共に支えよう!!!!」

隣に長門がやってきた…大和も…金剛も居る。

「ヘーイ!まっかせてー!」

 

 

 

 

「麗提督!!待ってたぞ…嬉しいぞ!その言葉!!」

猛武蔵が、長門が雷が。

 

 

 

 

彼女達は何も言われなくても来ただろう。

 

 

 

ただ、その言葉が…何よりも嬉しかった。

 

 

ある者は彼女達に手を添えて

ある者は共に拳を伸ばして

ある者は共に背中を押して

ある者は真壁を砲撃して

 

 

龍田が、鳳翔が、加賀が、大鳳が、阿賀野が、電が、ゴーヤが、吹雪が、響が、暁が、日向が、山城が、迅鯨が、白露が、霞が、夕立が、赤城が、矢矧が、金剛が、榛名が、不知火が、霧島が、姫ちゃんが、天龍が、大和が、武蔵が、如月が、羽黒が、足柄が、睦月が、桜赤城が、ベルファストが、大淀が、明石が、夕張が、鬼ちゃんが、陸奥が、時雨が、比叡が、雷が、扶桑が、島風が、鳥海が、加古が、川内が、那珂が、神通が、球磨が、鈴谷が……皆が!

 

 

大破だろうが中破だろうが…

今やらないでどうする!

此処で奴を沈めないでどうする!

 

 

此処でやらなきゃ…行かなきゃ

どっちにしろやられる。

 

 

 

行かずに沈むより

行って提督の隣で……

 

 

いや!

 

 

 

行って共に勝利を掴み取るんだ!!

この手はその為にあるッ!!!!

 

 

 

 

 

 

「お願い…勝って!負けないで!!!」

洗脳から解かれた艦娘も声を送る。

中には新しい提督を応援に共に押しに行く者も居た。

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「負けるものかーーーー!!!」」」」」

 

 

「テメーはしつけーんだよおおお!」

天龍が真壁を砲撃する。

何人もそれに続く。

 

 

赤城が指揮を取る。

「足を獲ります!!!発艦します!!狙いは敵深海棲艦!!」

 

バラバラバラと的確に機銃掃射して行く。

 

 

足を狙い立たせまいとする。

 

ピシピシ…と少しヒビが広かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

救が麗が叫ぶ。

「「行け…ぶちかませ…!!コレがお前達の…仲間の力だ」」

 

 

 

 

「「「いけええ!負けるもんかぁぁあ!!」」」

 

 

 

 

 

仲間の力って…こんなに暖かいの?

熱い!!心が…熱い!

 

まだ先へ…もっと前へ!

限界の…その先へ…!!!!

届け…

届け!!!!

 

 

 

 

 

  由良 改ニ 発動

「妹だけに…良い格好はさせませんよ!私は…私は!鬼怒のお姉ちゃんですから!!」

「提督…私…を見てください!これが…私ですッ!!」

 

 

  金剛 改ニ 発動

「これが…私?さっきよりも…あったかくて…力が溢れて……ありがとう提督…私ッまだ行けます!」

 

 

 

「「「良い加減…倒れろおおおおお!!!」」」

 

 

 

 

 

ビシィッ…と真壁の腕に更にヒビがはいる。

「な…体のヒビ…が?!嘘だ!嘘だッ!あり得ない!」

 

「こんなところで…!こんなところ……!!!」

 

 

 

 

「逝けよ…お前を待ってる奴が居るぞ」

 

 

その言葉に、真壁は後ろを振り返った。

 

そして見た。見てしまった。

「お、お前達…!何だ!やめろ!やめろおおおお!!!」

 

 

 

それは思い。

残された思い。

 

彼に潰された者達の思い。

形はなけれども…きっと真壁には見えたのだろう。

 

 

 

バキン…。

 

 

真壁の体のヒビは広がり…腕から体へ……

そして

 

 

バキャン…と

割れた。

 

 

 

「ぬがぁぁああ!!まだ…まだぁぁあ!!!」

 

攻撃が止んだ!?

馬鹿め!!この程度…すぐに………再生…して

 

違う…。

まさか

 

 

 

 

「救君!」

 

「麗ちゃん」

 

2人が手を取り合う。

 

 

「「全員……用意!!!!」」

 

2人が並んで指示を出す。

 

全員がコチラに砲門を向けている…。

撃てない者は撃てる者を支え…共に手を取り。

 

 

「釣りはいらん!とっとけ!!」

 

「これで…終わりです」

 

 

「「撃てーーーー!!!!!!」」

 

 

轟音

轟音と共に放たれた攻撃は一切逸れる事なく…その男だった者へと向かう。

 

 

 

……誤算だな。

ここまでとは…

 

此処まで成り上がったと思ったのに…。

 

 

俺も……………ーーーーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サラサラと灰になる 同じ志を抱いたはずの人()

その灰はヒュッと風に飛ばされ海へと還って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やった」

 

「やったんだぁぁぁぁあ!!!!!」

 

 

 

 

うおおおお!!!

と歓声が上がる。

 

 

 

 

「救君ッッ!!!!!」

彼女は彼を抱き締める。

本当はずっと前からこうしたかった。

 

でも…

それ以上に横で一緒に戦えた、勝てた。

 

「生きててよかった!!死ななくてよかった!!!」

泣きながら言う。

 

 

「ありがとう…ごめんね?心配かけて」

彼もまた抱き締め返す。

生きてるよ…此処にいるぞと意味を込めて。

 

「ズルイ!私らも頑張ったさ!!」

「そーだそーだ!」

 

「いたたたた…大破であるけないなーーー撫で撫でしてほしーーなーーー」

 

 

「こらこら…」

 

 

 

 

「でも…良かった!」

 

 

「「「「提督…鬼怒……由良…お帰りなさい!!」」」」

 

「ただいま!」

 

「えと…私裏切ってたんだけど」

「私は…そもそも所属してなかったのですが」

 

 

「ヘーイ!2人ともッ」

 

「「はい!」」

ビクッとする2人。

 

「ただいまで…良いんデース。2人は私達と共に戦いました…。西波島鎮守府のメンバーなんデース!!」

 

「良いんですか…?」

「本当に?」

 

「そうでないと困りマース…具体的にはダーリンが泣きマース」

 

「そうだぞ!俺1人だけただいまとか寂しいわ!!」

と、2人の肩に手を置いて言う。

 

「ほら、3人で言うぞ」

2人はぐすっと言いながら言う。

 

「「「ただいま!!!!」」」

 

「「「「お帰りなさい!」」」」

 

 

 

 

「金剛…皆…他の解放された艦娘な皆もお疲れ様!!帰って休みましょう」

 

金剛が…武蔵が抱きついてくる。

「強っ!少し痛いよおー」

 

「我慢してくれッ!麗!生きてるぞ!」

「命懸けの中でやり切ったんだ!!」

 

 

「提督…ありがとうございます!私に生きる意味をくれて」

 

 

私も思いっきり抱き締め返す。

うん。

本当にありがとう…皆。

 

「私らもーー!!」

と、皆が雪崩れ込んでくる。

「押すな!」

「かわれーー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっちの皆を見ろ!」

「くーー!いいなぁ」

「僕らも…」

 

「提督ーー!!愛してるーー!!」

「抱きしめてーー!!」

「指輪ちょうだーい!」

「お嫁さんにしてーーーーー!!!!」

 

 

「ぬおおおっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

「あのー…取り込み中のとこ悪いんだけど……」

と、誰かが声を掛けてきた。

 

「巌っさん!」

「誰がいわおっさんじゃい!!」

 

 

「元帥閣下!?」

「絶対忘れてたじゃろなあ…」

 

 

 

「真壁派の奴らは捕らえた。深海棲艦も一通り片付けた」

 

「…巌もだが……2人とも…よくやってくれた」

 

「「はっ!!ありがとうございます!!」」

 

 

「思いも歪めばこうなる…お前達には…今のまま、真っ直ぐな思いを持っていて欲しいものだと願うぞ」

 

「ここも滅茶苦茶じゃのーー…片付けは後日として…まあ、お前さん達を休ませないとな」

 

 

 

「皆の者ッ…ご苦労であった!!!!!此度の戦は勝利だ!!本当に良くやった!!!」

 

 

おおおおおお!!と声が上がる。

 

 

 

「ゆっくり休む事!以上!」」

 

 

 

 

 

 

「「「「「「はっ!」」」」」」

 

 

 

 

戦いは…終わったのだ。

 

 




台風大丈夫ですか?
雨風すごいっすね…。


そんな憂鬱な気分をどーにかできるシリアスパートになれば幸いでした。

パート10までの長いお付き合いありがとうございました。
次回はエピローグをお送りします。


はやく…はやく
いつも通りの真面目なほのぼの系日常話に戻らなくては……。

え?糖分不足?
え?ほのぼの系日常話ですよ!?



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135話 星に手を伸ばす者へ ①① 鎮守府へ帰ろう


後日談…的な?

現在の話数にご注意下さい!



ただ今…元帥執務室の前…。

 

神崎 救は扉の前に立って居た…。

 

 

立つ事約15分…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう…

 

 

 

 

両手は傷だらけで…骨も折れてるので…ノックもできません。ドアも開けられません…。

 

 

「誰か…助けて……」

 

 

 

 

 

 

 

「ダーリンさん……無理なら言ってください」

榛名が助けてくれました…。

 

 

 

 

 

元帥からこの度のお礼と辞令、勲章の授与が行われた。

 

「手がこんな状態なので物理的に受け取れないので…」

と言うと…

我こそがと手を上げる艦娘が絶えなかったとか。

 

理由は勲章を胸につけてあげる仕草が嫁っぽい…からだとかで。

 

 

 

 

 

「由良、鬼怒の2人を正式に西波島鎮守府の艦娘とする」

 

「お前達は…多くの事をやった。まさか戦死と報告されていた裏で真壁がそこまでやっていたとは…。それを見抜けずにここまで大事になったのにはこちらにも責任がある」

 

 

「だが…お前達のやったことの責任は取ってもらう」

 

閣下は言った。

 

「そこの愚直な提督を支えなさい。彼程に真っ直ぐで艦娘大好き提督はいないだろう。ただ、今回のを見てわかるように無茶をする。その彼を支え続けるのがお前達に与える任務だ」

 

 

「そんな…「そんな事でいいのか?とは言わせんぞ?」

と、由良達の言葉を遮る御蔵。

 

 

「提督を支えるのは簡単な事ではないぞ?其奴の周りといい…どんな星の下に生まれたのかは分からんがトラブルだらけだ…特に女性関係でなあ……きっと苦労するぞ?良いんだな?」

 

 

 

「「はっ!!謹んでお受けします」」

と、2人は言った。

 

 

 

 

 

 

 

今回の功績にあたり、勲章やら何やらをたくさんもらった。

俺はこってりと叱られた。

 

「全く無茶をするッ!もう少し考えてから慎重に作戦をだな…何?!体が勝手に動いた…?馬鹿者!それではいくつ命が有っても足りんぞ!!」

 

「何?仲間を信用していた……じゃと?」

 

「ククク…ハァーーッハッハハハハ!!!」

閣下は笑い出す。

 

「全くお前は大馬鹿だ…。 しかし、良き仲間を持ったものだ」

 

と。

 

 

両鎮守府のメンバーには報奨金、特別休暇と勲章。

作戦立案の大和、金剛

元帥奪還チームにはそれにプラスして楯を貰えたとか。

 

 

呉?

辞退したらしいよ。

「俺は何もしてねえよ…若えのがやったのを手伝っただけだ。

麗…の奴の方が先に動いてたんだからな」

とのことで。

 

 

 

麗達は…

金剛は本日付けで、雪風、島風、霧島、龍田に天龍、飛龍が治療後から

猛武鎮守府に合流するらしい。

 

 

それと…

この度の活躍の報酬のひとつとして

鎮守府の名前が、かつての英雄の居た猛武鎮守府としての名称を継ぐ事が決まったそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「救君!!」

 

「麗ちゃん」

 

「隣…良い?」

 

「どうぞ」

 

 

麗が隣へと座る。

 

沈黙が続く。

 

 

「武蔵から聞いたよ。俺のために命懸けで動いてくれたんだってね」

 

「う…最初は武蔵に怒られたけどね…」

と、頬を撫でながら言う。

「大好きなあなたを死なせたくなかったから必死だったの」 

 

「一緒に戦えて嬉しかった」

 

 

救君は立ち上がって私へ頭を下げた、

「ありがとう…君のおかげで俺はここに居られる」

 

「そんな、私は……。最初にあなたを救ったのは…鬼怒なのに」

 

「でも、君が金剛を連れて来なければ…俺と共に戦ってくれなければ俺はここに居ない」

 

 

「本当にありがとう」

 

 

 

「ううん…良かった。あなたが無事で良かった…」

 

それにね?と麗は言う。

 

「まだ幸せにして貰ってないからねえ〜」

 

「うっ…」

 

 

「嘘、幸せ…だけとね。本当にお嫁さんにしてね?」

「ねえ…救君」

 

「ん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麗は優しい笑顔で言う。

 

 

「お帰りなさい」

 

 

「ただいま!」

 

 

「君も無事でよかった…」

と、彼は彼女を抱き締める。

 

はーーーーっ!!嘘おお!

救君が!!はうう。

 

「頭…撫でて?」

 

「手が折れてるから…アレだけど…」

 

あーーーーーっ!幸せええええ!!

嬉しいよおおおお!

感触は手じゃないけどねえええ。

 

 

「ねえ?……その…キスして?」

 

彼はそのまま…麗にキスする。

 

あぁーーーーーっ!!

生きててよかったぁぁあ!!!!!!

このまま時が止まれば良いのにいいいい!!!!

 

 

 

 

 

「そろそろ戻ろっ……か?」

麗は離れない。

 

「離れません!」

 

「何故!?」

 

「寂しかったんですよ!その分が埋まるまでは離れません!」

 

 

 

 

 

「あーーー!!!抜け駆けだぁぁあ!!!」

 

「麗ちゃん!ずるいよーー!」

 

「キスしてたの見たよ!!」

「私もして欲しいー!!」

 

「そこは譲れません…」

 

 

 

あっという間に囲まれる救。

手!手はダメだかんな!折れてるからな!!!と叫ぶ。

 

 

 

 

 

「麗ちゃん…後日埋め合わせでもいい?」

 

 

「はい!お待ちして居ますね?」

 

 

 

 

 

 

あと少し引っ付いて居たかったなあ…むう。

 

 

「おーい!麗提督ー!帰るぞー」

と猛武蔵が麗を呼ぶ。

 

「あっ、武蔵が呼んでる…私も帰るね?」

 

「うん、またね」

 

と、麗は帰って行く。

猛武蔵に手を軽く振ると…ニッコリとして親指をグッと立てた。

 

 

 

 

 

 

 

「よーーし…帰るぞー俺らも…」

 

 

 

「帰ったら間宮さんのアイスが食べたい!」

 

「あー…はいはい。1人一つな」

 

「ケチー!お金いっぱい貰ってたでしょー!」

 

「お前らもな!!」

 

 

 

なんて笑いながら帰る

来た時より…仲間が1人増えた…笑顔は2つ増えた。

 

誰一人欠けることはなかった。

それだけでも大勝利だ。

 

 

 

 

「「お帰りなさい」」

留守番組も迎えに出てきてくれた。

鎮守府の守りも文句ひとつ言わずやってくれたのだろう。

 

俺は帰ってきたんだ。

仲間と共に。

 

 

 

 

 

「皆…俺のわがままを聞いてくれて…ありがとう!」

 

あぁ…本当にありがとう…お前達。

本当に…本当にありがとう。

 

「ただいま!」

 

皆が微笑んでくれる。

 

 

「お前らに改めて紹介するぞ!鬼怒と由良だ!仲良くするように!」

 

「「「「はい!」」」」

 

 

また…日常が戻ってきたーー。

 

 

 

 

ちなみにアイスは1人4つ食べられたッ!!

おのれぇ大和めえええええ!!!!!

 

 




11まで来るとは思ってなかった…

ここまでご覧いただき、本当にありがとうございました。

星に手を伸ばす者へ
この小説のシリアス部分のテーマでもあるのですが諦めない…前へ進み続ける事を出したつもりです。

副題も、話と話で対比させたり…的な。
私はー提督とは呼ばないから、〜提督と呼ぶ。

手を伸ばす〜諦める〜伸ばし続ける〜掴むとか







武蔵の129話(133)で言っていた〜何故人は〜からのセリフが核となります。

いつもはヒロインなはずですが
もう1人の主人公が麗でした。
かなり成長したキャラだと思います。

推してあげて欲しい…。




キャラの崩壊もありますし、ひどい目にあうキャラも居ますので…
お好きなキャラの受け入れられ難い場面は出てくると思います。

構成もなにぶん、素人なので稚拙で何番煎じな所もありますが

少しでもこのシリーズを好きになって頂けたならこの上なく嬉しいです。


次回からはほのぼの系日常パート…のはず!


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頂けると物凄く嬉しいです!!
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136話 暑さもナントカまで

ほのぼの日常パートです

ほのぼの日常パートですッ!!


「…あちいよお……」

 

その日は記録的な猛暑に見舞われた。

 

 

だけならまだいいよ?

 

エアコンがね…動かんのよ。

 

電力の供給システムが暑さでダウンなの。

 

え?冷蔵庫とか?

そこら辺はね?食べないと死ぬじゃん?大丈夫!ご都合良く供給システムは別稼働だから。

え?そっちは無事なのかって?

 

 

 

君のような勘のいい奴は…嫌いじゃないよ。

 

 

 

 

 

 

 

「……暑くないですか?提督」

 

と言うのは大淀。

 

「あぢい…」

 

「制服も脱いだら如何ですか?見てるこっちも暑いです」

 

「でもさ…制服だし…」

 

「憲兵も誰も居ない島ですよ…?」

 

「せやな!!」

 

「てかね?ベルファスト…君はすごいな…そんな服装で顔色ひとつ変えてないじゃないか」

 

「完璧なメイドですので」

と誇らしげに言うのはメイドのベルファスト。

このクソ暑い中でも顔色ひとつ変えず、汗ひとつかかずに仕事をしている。

 

「フフフ…ご主人様もまだまだですn…」

ポトリ…

 

彼女のスカートから何かが落ちた。

 

「あん?」

「それは…」

 

氷嚢…的なやつ…?

 

「ご主人様ッ伏せてください!曲者おおおおお!!!」

ベルファストは俺を地面に伏せると言う名の叩きつけを行った後にソレを掴み取り窓から外へと放り投げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい」

 

 

「曲者でした。ご主人様のお命が危のうございました…まぁ!おでこをやられましたか!!申し訳ありません!私が居ながら…」

 

「おいゴルァ!この傷はお前のせいじゃい!!」

 

「まだどこに潜んでいるか分かりません!私はパトロールに参ります」

 

「その必要はない!お前自体が危険物だ。違法物所持の疑いで身体検査だ」

 

俺はベルファストの服を摘みバサバサと振ってやる。

 

「ちょっ!セクハラです!ご主人様ぁ!」

 

隙間から漏れる空気がめっちゃ冷たい。

ちくしょう…しかもいい匂いがっ!!!

 

ボトボトと落ちてくるアイスノン的な奴たち。

 

 

「………」

 

「おい、ベルファスト?言い訳は?」

 

「…黙秘権を使います。」

 

「治外法権なんだわ…」

 

「弁護士を呼んでください」

 

「島だから居ねえよ」

「おい…駄メイド!!」

 

「メイド服暑いですもん」

 

「俺のお前への評価を返せッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

というわけで俺も着替える。

 

気分だけでも涼しく…アロハシャツを羽織り…海パンにサンダル!

 

サングラスに麦わら帽子!

 

大淀とベルファストか見惚れてる気がするが気にしない。

 

 

 

その直後に…

「ダーリンさん……あづいですう…榛名は大丈夫じゃな…」

と、入ってきた榛名が

 

「ふおおお!!大丈夫です!いや、榛名は大丈夫じゃありませんんんん!!!!」

と抱きついて来たのには驚いたな…。

 

「腹筋が…アロハシャツからこんにちはしてる腹筋があああ」

暑さでおかしくなってしまったらしい。

 

 

「なんだと!?!?」

「提督の腹筋!?」

 

「提督の裸!?」

 

「提督の生まれたままの姿!?」

 

どんどん酷くなってないか??

 

 

 

 

「提督!?はだけたアロハシャツ…?その下は何も着ていない…ですって!?」

「チラリと見える筋肉がセクシーよおおお!!」

 

「榛名ぁぁあ!!何抜け駆けしてるデース!!」

 

 

 

「集まるな!暑い!!」

 

叫んだりしたらダメだ…暑い…死ぬ。

 

 

 

 

 

 

「暑さでヤバいよお…」

 

「なんかないかなあ…提督…?」

 

 

 

 

「暑いし…部屋暗くしてから怪談話するかー」

 

 

阿賀野「え?」

矢矧 「怖い!」

桜赤城「本気ですか!?指揮官様」

迅鯨 「本物出たらどうするの!?」 

 

「お前らが言うなッ!!」

 

龍驤 「呪いとか…怖いやん?」

 

「お前の発艦方法も割とオカルトじゃね?」

 

「一緒にしないで!」

 

 

「それに提督も似たようなものでしょ…」

なんて冷静に突っ込まれる!!

 

「…確かに」

 

だよねえ…。

俺も死んだら生き返ったり、変な世界に行ったり…。

アレ?俺って怪談?

なら…

俺って能力者!?!?

 

今ならいける気がするッ!!

 

 

 

救は叫んだ!!

「波紋疾走!!!」

 

 

 

 

何も起こらなかった…。

 

「いでよ!星の白金!!ザ・世界!!!」

 

……

 

 

まあ…何も起こらんわね。

 

 

 

いや…厳密には起こった。

 

 

 

 

艦娘が引いたのだ。

確かに場の空気的な意味で時は止まったようだ…。

更に言えば…場の空気を冷やす能力はあったらしい……悲しみ。

 

迅鯨が言う。

「救君…?マンガの技を叫ぶくらい暑さにやられたの?」

 

そうだったああ!!

この子知ってたわぁあ!!!

 

「好きだったよね、その漫画」

言わないでええ。

 

 

「もしかして、暑さにやられたの!?大丈夫!?死なないで!提督!」

 

違ううう!ごめん!ごめんなさいいい!!!

 

 

  

 

 

 

 

「提督さん?緑茶飲みますか?」

 

コトリとコップにストローを挿してくれる。

 

「おお!由良か、ありがとう…どうだ?大分調子は良くなったか?」

 

 

「私…私の提督さんの為に頑張りますね♡」

 

ん?会話成り立ってる?

 

 

「「「「ん?」」」」」

 

「提督ー!!暑いよー!ぱないよー!!」

 

「鬼怒…お前そんなキャラだったか?」

 

「まあ…今は楽にしようかな〜なんて思ってて」

 

「そうか」

.

まあ、素で居られるのは良い事だ。

 

「私達2人は…提督の為に頑張ります!」

 

「ホント、だいぶ馴染んで来たよなあ…」

と、摩耶が言う。

「あん時は焦ったよねえ…」

足柄が言う。

 

「でも…あの時の提督はカッコ良かったなあ…私達の為にあんなデカいのに立ち向かって行って……惚れました!」

 

 

緑茶を吹き出す俺。

「鬼怒ぅ!?」

 

「大丈夫ですか?!私の提督さん!!大丈夫です!私も惚れています!!」

と、優しく拭く由良。

 

「あっ!お姉ちゃん近い!ずるい!」

 

 

 

「「「「ん?」」」」

 

 

「提督…?」

「救君?」

「ご主人様?」

「提督さん?」

 

「「「お話が…」」」

 

この後の提督の姿は言うまでもない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなた…?随分と幸せそうですね?」

 

「いや、鳳翔…これはだな?」

 

「はぁい…提督さん?あーーん」

 

「………美味しいよ!鳳翔!」

 

「……嬉しいのですが…見せつけられると妬きます」

 

「だって手使えないのに…」

 

そう、両手は骨も折れて使い物にならない。

つまり、自分では何もできない。。

 

ぶっちゃけ鬼怒と由良が手伝ってくれている訳で…。

 

特に由良がすんごいべったりしてる。

 

 

 

 

 

「なら私が食べさせてあげますよ!!」

 

その時!

 

 

ガラッと戸が開かれる。

「「「「待った!!」」」」

「私達も」

「提督に」

「あーんしたい!」

 

「着替えも」

「お風呂も」

「トイレも…」

「お任せください!」

 

 

「いや…そこまでは…」

 

 

「さあさあさあ!!」

 

 

「プライバシー!プライバシー!!!!」

 

 

カイ◯キーになりたいとここまで思ったことはない。

あっ、通信交換してくれる友達居ねえや…。

 

 

また楽しい日常が戻ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督?」

 

「大和…今回は君のおかげで本当に助かった」

 

「メガネ壊して怒られちゃいましたね」

 

「せやな…。でも、本当にありがとう」

 

「そう言ってもらえたら…幸せです」

 

 

 

「大和…コレを……」

 

「コレは……」

 

 

 

君の信頼と…誠実さに応えた…指輪。

 

「ねぇ…提督?」

「その手でどうやって着けてもらえるの?」

 

 

「あ…」

 

「…気合!」

 

「こ、今度でも!いいですよ!?」

 

「今じゃなきゃダメなんだ!!」

「大和…今からの事は目を瞑ってくれ」

 

と、彼は痛みを堪えながら包帯を取り箱を開けて指輪を取り…。

 

大和の左手の薬指へ…。

 

「……ありがとうございます」

 

 

そして…誓いの……

 

「提督の唇…意外と柔らかいのですね」

 

「茶化すなッ」

 

「ありがとうございます!コレからもよろしくお願いしますね?あなた♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無論…包帯を取り替えに行った際には…

めっちゃ怒られた。

鳳翔って、あんなにキレるの?

 

 

 

 

 

「大和…?どうした?嬉しそうな……あっ!!それは!」

 

「武蔵…ウフフ。やっと私もよ…凄く幸せな気分」

 

「いや、どうやって着けて……まさか自分で!?今回の功績を掲げて奪い取り…自分で着けたのか!?」

 

「そんな訳ないわよ!」

 

「秘密よ」

 

「足か…口か…」

 

「もう辞めなさい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

何故私を選ばれたのですか?金剛さんも居たのに…

 

 

ん?

お前が一番よく分かってくれそうな気がしたから。

 

 

勘…ですか?

 

んーー

確信…かな。

この作戦…になってないけどて…作戦!

君に任せたいと…必ずやってくれると言う確信。

こうしてうまく行った訳だ!

 

提督らしいですね

…で、どれだけ期待に添えられましたか?

 

ニコッと笑って…

俺の想像を超えるくらい完璧に!

 

 

 

「確信……完璧…かぁ」

 

大和は自室の窓辺で温和にはにかんだ顔でずっとその左手を眺めていたそうな。

 

 

 

 




今日知ったのですが…きりたんかゆかりさんでの読み上げ機能ってのがあるんですね。

何か…嬉しいような恥ずかしいような


画才が有れば挿入絵も描くのですが……

画才も文才も…どこかに置いてきたので……


オラァ!日常パートだッ!
糖分!修羅場!糖分んん!!


主人公の療養は続くよ!
両手が使えない状況って美味しくない?!

さて、
お楽しみいただけましたか?

投稿ペースは…まあ、触れないでおきましょう。


少しでもお楽しみいただけたなら幸いです。


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137話 新たな戦いの始まり

「はい!今日からここで一緒に暮らします!金剛ちゃんです!」

 

「ちなみに他の艦娘は治療中で着任はまだ先になりそうです」

 

 

「あの…高速戦艦…金剛型1番艦の金剛です。よろしくお願いします!」

 

「…」

「……」

 

「あの?皆さん?」

え?私何か間違えたかな。

何か失礼な事言ったかな…?

 

高速戦艦とか言わない方がよかったのかなあ…。

 

 

「何だろう…この違和感…」

 

「?何ですか?」

うるっとした目で問う金剛。

 

 

「ああああっ!!」

 

「!?」びくっ!!

 

「言葉だ!喋り方だ!!」

と、長門が言う。

 

 

「「「「あ〜!!」」」

 

 

「え?え?」

金剛は混乱していた。

 

「あのね…金剛は帰国子女(キャラ)だから何か…それっぽい言葉遣いなの」

「何とかネーとか、何とかデース!とか」

 

 

「…私もその方が良いでしょうか?」

 

「そんなことないよ!そのままでいいよ!」

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって西波島鎮守府。

 

 

 

 

 

「と言う訳でね?」

と、麗が金剛を連れてきての挨拶をしてくれた。

 

「おー!YOUがあの時の金剛ネー?」

 

「あっ…はい」

(この口調が…金剛…特有の…)

 

武金剛はやや緊張気味に答えた。

 

「んーーやっぱり、何か新鮮だねぇ…めちゃくちゃ標準語で、大人しい金剛を見るのは」

 

「そ、そうですか?」

 

「……」

 

「ん?どした?金剛…黙ってしまって…」

 

「何デースかこの美少女は…ヤバくない?何このキャラ…ピンチの予感がしマース…なんか全体的に……大人しオーラでてますしアホ毛も立ってないし…やはり大淀か榛名か分かりまセーン!」

 

「やっぱり提督に刺さりマース!でも負けまセン」

 

「何に!?」

 

 

 

 

 

 

「あの提督さんが…麗提督の好きな方…ですか?」

 

「一応、お付き合いはしてるんだけどね?」

 

「あの人が……」

 

「あれ?金剛ももしかして…?」

 

「いえ、そんな訳ではないと思うのですが…暖かそうな人だなあ…と」

 

 

その時…

 

「あっ…」

足を滑らせる猛武金剛。

 

「危ない!」

と手を出す救さん。

 

 

転ぶ猛武金剛を受け止める形になった……が、彼の手は多分ヤバいだろう…。

 

「……大丈夫?(俺の手!!大丈夫か!?何!?大丈夫じゃない!?)」

 

 

「あ………はい」

ぽ〜っとする猛金剛。

「ご、ごめんなさい!」

と、飛び退く。

 

 

「嘘ヨオオオ!!そんな!ドジっ子属性まで持ってるデース!?」

 

金剛が絶望的な表情を浮かべている。

 

 

「大丈夫!?救君!?」

 

「ん………大丈夫だよ!一応…明石んとこに行ってくる…」

「でも…猛金剛が無事で何よりだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダーリンは…あんな感じに大人しい金剛が好きデース?」

 

「…ヤキモチ?」

 

「…正直妬いてマース…あの金剛もダーリンを好きになりそうで…てか、絶対オチてマース。正妻は私デース…」

 

 

「金剛?」

 

「ハイ…」

 

「愛してるよ」

 

「え…な!何ですカー!?憐れみデース?」

 

「君は…俺の最初のケッコン相手なんだぞ?数多くいる中で君を一番最初に選んだんだから…自信持って欲しいな」

 

「他の子にも似たような事言ってマース…」

 

ゔっ…今日は厳しいな!!

 

「…なら……」

と、目を閉じる金剛。

 

 

「はいよ」

 

 

 

 

 

 

「コレで頑張れマース!!」

 

 

「ねえ…お2人さん?…私が居るのに…堂々とキスなんて…お熱いのねえ?」

 

「オー…明石」

 

「私も…してほしいなあ…」ジーー

 

「ワタシモイマス…」ジー

夕張…も居たか。

 

「はいよーー」

 

 

 

 

 

「はぁい!提督!どうしましたか!!??」

 

「え?!ギャルゲー(?)みたいなドジっ子ハプニングで更に手が痛い!?」

 

「ありがちな展開だよねー!」

「それを助けるために…手を……提督の手を…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はんっ!!何じゃあそりゃ…ペッ……ここは現実なんですよ……」

「提督の手を……許せない…」

 

 

「さっきのキス返せや……よし、なら街の病院に行こう。あそこは美人で有名らしい」

 

「ままままま待ってください!!」

「ダメですよ!冗談ですよ!……半分(ボソッ)…ね?ね?私達で良いじゃないですか!」

 

 

「ヤキモチですよお〜」

「美人の医者のどこが良いんですか…?私達が居るじゃないですか…不満なんですか?足りないんですか?」

 

 

「私達…提督の事大好きなんですから…」

「その病院…潰しておかなくちゃ…ウフフ…跡形もなく…」

 

 

「ちゃんと治療しますよ!」

「もう…これ以上傷つかない様に…提督を地下に監禁するしかないですね…」

 

 

 

「怖いよッ!怖えよ!!!!え!?何?!まじ怖え!怖えしか言葉が出て来ねえ!!」

 

 

 

「冗談です!」

「怪我してるんですから…無茶をしないでくださいね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

治療後に彼女達が何やらぶつぶつと「あぁ…この病院ですね?」とか言ってたのは聞いてないフリをしておこう…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「金剛ちゃん…もしかして本当に惚れた?」

 

「そそそそんなことは…でも」

 

「でも?」

 

「カッコ良かった…です」

 

「む…ライバル……」

 

 

 

 

 

 

 

 

……

 

…朝。

静かではなく…騒がしい朝だった。

 

恐らく誰かが喧嘩でもしてんのか?

 

 

 

 

 

おっ?

静かになったな。

 

 

………。

 

 

ギィ…と俺の私室のドアが開く…。

 

 

 

鍵かけてるはずなんだけどなあ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

「……てい…と…」

ドシャリと扉が開くと共に手をこちらに伸ばしながら倒れ込んでくる時雨…。

 

「時雨…?どうした!?」

敵襲か!?

 

 

その時雨がズルズルと俺の視界外へと引きずられて…行く。

 

「ええ…?」

 

 

 

そして…代わりに…。

 

「…勝ちまし……た」

 

ボロッボロの高雄のエントリー。

 

 

「え?何してんの?」

 

「提督の…お世話の権利を私は勝ち取ったのです」

 

 

 

「え?」

と、ドアの外を覗く…。

 

 

 

あっ

アカンやつやこれ…。

 

外にはここに続く程に艦娘の倒れる列が出来ていた。

 

金剛や大和を含め大勢の艦娘が転がっていた。

 

 

 

 

 

「さあ…お着替えしましょう♪♪」

 

「え?お前ってそんなキャラだっけ?」

 

 

 

そう

提督は両手が使えない。

 

治療中に何かやったらしく…悪化してまだ治らない。

故に、自ら着替えやご飯の類が出来ない。

 

恥ずかしいけど仕方ない。

 

 

 

 

 

 

「…皆、ぶっちゃけ今の俺は着替えも何もできん…その、恥を忍んで言うが…誰か…手伝って」

 

と、言ったそばから大乱闘。

その日は大淀が叫んでいた!

 

「「「「負けられるかぁぁぁぁあ!」」」」

 

水着に着替えさせてもらうときも……

 

「私達夫婦ですけど……既成事実ってあると思うんですよ…」

 

なんて言ってたくらいだし。

 

 

 

 

 

 

 

 

なので毎朝大乱闘

ただ1人の勝者が蜜にありつけるらしい。

 

 

何が怖いって…大和とかが負けてる事なんだよなあ…。

 

 

 

高雄はにこやかに言う。

 

「では、さっそくパンツから…」

 

「ないから!」

 

 

これが後に語り継がれる

提督のお世話争奪戦争……だとか……。

 

 





思わせぶりな事書きました!
サーーセン!
提督争奪戦……。
どうなるか…




お楽しみいただけましたでしょうか?

少しでもお楽しみいただけたなら幸いです!


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138話 麗と武蔵 最強の名の下に ① 崩れ落ちる音

100人中100人が諦めると言う状況があるとしよう。

この世は大多数の意見が尊重される世の中だ。

 

そこで1人が諦めないと言えば…そいつは変わり者と揶揄されるだろう。

 

 

仮に99.99%どうにもならない状況だと言われた時に

「諦めない!」と言える人はどのくらいいるだろうか?

 

ましてや、自分の命、財産が賭けられた時としよう。

 

 

そう

 

居ないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

一部の…ほんの一握りの手の上に残った砂を…更に手を両手流水で払って払って手に残った砂ほどの奴を除いて…。

 

 

 

 

 

 

 

 

神崎 救の処刑騒動から月日が経った頃のお話…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は今…とある島に居る。

簡単に言うと拉致された……情け無いけど。

 

 

私を拉致した彼女は言った。

「一番強い奴ヲ…アノ島へ…ソコニ居る!提督ハそれまで預カル!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日も上機嫌で帰ってきた武蔵。

 

 

「提督〜帰ったぞー!資材がたくさ…」

 

ここでいつもならお帰り〜と麗の声が聞こえるはずなのに…今日は静かだ…。

 

辺りを見回す…。

 

 

武蔵は愕然とした。

 

「お前達!?!!」

 

目の前には打ち込めされた仲間

割れた提督の机

散乱した書類

 

 

どこにも居ない相棒。

 

 

「おい!提督は!?麗は!?」

 

近くにいた長門に喋りかける武蔵。

 

「姉さん……ごめんなさい…私達…」

隣の伊勢が答えた。

 

 

「何があった!?敵襲か!?」

 

 

「…提督は連れて行かれちゃったよ…」

 

「どこにだ!?生きてるんだな!?」

 

「多分…気を失ってただけだと思う…」

「場所は……」

 

と、壁の地図を指さす。

 

 

そこには乱暴に、とある島に丸がつけられていた…。

 

 

 

「ここは…」

そこは武蔵には嫌な思い出がある島だった…。

 

 

 

「一番強い奴を出せ…だって」ううっ

「私達…全く歯が立たなかったよ」 ぐすっ

 

 

「ごめんなさい…」

皆が消え入りそうな声で言う。

彼女達は体だけでなくプライドもズタズタだった。

 

 

 

 

奴は鎮守府に単身殴り込みに来て鎮守府をめちゃくちゃにした。

 

 

 

 

その日は遠征ということもあり、鎮守府には余り艦娘が居なかった事もあるが…それでも精鋭揃いのはずだった。

 

 

 

なのに

 

練度も高いはずなのに…負けた。

手も足も出なかった。

 

 

 

為されるがまま壊される艦娘。

 

 

 

提督が人質に…?

違う。

提督が連れ去られたのは最後の最後だった。

 

全員がボコボコにされた後…ソイツはため息をついて言った。

 

「…アイツがイルノに…この程度カ」

「燃えナイナラ燃やシテヤロウ」

と、麗を連れ去ったのだ。

 

 

 

 

 

悔しさと…不甲斐なさで泣く艦娘達。

 

 

 

 

「分かった…私が行こう」

と、武蔵は言う。

 

「武蔵姐さん!」

声を掛けてきたのは電だった。

 

 

「電!休んでろ…お前…ボロボロじゃないか…」

 

 

 

「このくらい平気です……私…嫌な予感がするのです…武蔵姐さんを行かせちゃいけない気がするんです」

 

少し困った顔をしながら武蔵は言った。

 

「ハハハ…大丈夫だ。すぐに戻ってくる…その頃には皆の入渠も終わってるだろ?そしたら…皆で飯にしよう」

 

 

「でも……」

 

「心配するな!私に任せろ!!」

 

ポン…と電の頭を撫でる。

 

分かっている…。

コレをやったのは相当な手練れだと。

私も無事では済まないと…。

 

 

 

 

 

 

 

 

地図にも載っていない小さな島…

無論、人は居ないし今は私と彼女だけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたは何?私を…どうするの?」

 

「…べつに?タダ、強イ奴をぶっ殺シタイ」

 

 

「それで単身…乗り込んできたの?!」

 

「ソレ以外アルカ?手っ取り早イダロ?」

 

 

「……あなたの目的は…?」

 

「時期ニ分かル」

「マァ…来なかっタラ…お前と、残りヲ殺スダケ…」  

 

 

冷たくて…どこまでも深い闇に染まる目

本気の目だ…。

 

それだけはわかる…。

 

 

 

「フン…怖がリもシナイか…」

 

 

 

 

 

 

 

暫くたった後、艦娘が1人やってきた。

 

当然やってきたのは…武蔵だった。

 

 

「…来たぞ」

 

「来たナ!?」

「ヤハリお前カ!武蔵ィ待っタゾ!!」

「サァヤロウ!!」

 

 

目の前に居るのは戦艦仏棲姫ー。

 

 

自分でもわかる

コイツは…今迄のどんな敵よりも強い。

 

 

 

 

麗にも…異様な強さがわかる。

 

だが…武蔵が負けるはずないという確信はある。

 

武蔵とはずっと……一緒に居たから分かる。

きっと勝つ…と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「仲間と提督の借りは…返させてもらう!!」

 

武蔵は砲撃した。

ズドドドォ!と轟音が鳴り響く。

 

「む…?」

砂煙に紛れて姿を見失う。

 

「……」

 

砂煙が晴れても棲姫の姿が見えない…。

 

 

「後ろッ!?」

バキィ!!と振り向きざまに裏拳を叩き込む!!

 

 

「グッ…」

見事に顔面にクリーンヒットした!

 

 

 

 

「少しハ…ヤルね?ソウデナイとね」

 

ガシャン…ガシャンと艤装を外す戦艦仏棲姫。

 

 

 

武蔵はニヤリと笑うと同様に艤装を外す。

 

 

 

 

 

「ヤットだ…ヤット本気を出セル相手ガ…!!!」

 

「ふはははははは!!!!」

 

 

 

と、いきなりのパンチを繰り出す武蔵。

 

「フン…」

と、尻尾らしきものであしらい、武蔵を弾く。

 

その尻尾を掴みぶん投げる!!

 

 

「ヌオ!?」

 

が棲姫も負けてない。

近くの壁を蹴りその反動で武蔵へと飛び蹴りをお見舞いする。

 

「ぐうつっ!!…やるな…!!」

 

 

 

「モットアソビましよ??」

 

 

「楽しいなッ」

「昔を思い出してしまうな!!」

 

顔面に拳が当たる。

額が切れ出血する。

 

 

 

 

 

 

しかし、どうという事もない。

 

 

相手に拳が突き刺さる。

 

相手の拳が腹に突き刺さる。

 

ひたすら打ち合う。

時を忘れる勢いで…。

 

 

 

 

 

 

 

体が熱い…。

 

 

 

 

 

この島は…昔に少しの間、謹慎場所に連れてこられた島だ。

 

そう…

私は昔は荒れていた。

 

とある提督を殴ってここに飛ばされた…

当時はここは深海棲艦の溜まり場になっていて…そこの掃討作戦も兼ねてのことだった。

 

敵にやられても…まぁ仕方ないで済ませられるしな…。

 

 

 

 

だが、当然皆殺しにした。

向かって来る者も全て…。

逃げられたやつなんか居ない…誰1人として。

 

 

 

 

 

 

 

あの頃の私は…鬼と呼ばれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ククク…アハハハハハハ!!!」

武蔵は声高らかに嗤う。

 

 

 

 

「強イゾ!滾る…滾ル!」

 

 

「俺もだぁぁぁあ!!!」

 

 

 

体が熱いんだ!!

 

 

 

打ち合う打ち合う打ち合う打ち合う打ち合う打ち合う。

 

「グッ…ガッ!グフ」

 

「もっと()()楽しませろおおおおお!!」

 

 

ラッシュの後に殴り抜く武蔵。

 

 

「ガ…ハァ…」

 

「返すゾ?」

 

同じようにラッシュを決められる…」

 

「グッ!うっ!ぐうっ…ガッ…グハァ……!!」

 

「もう1発!!」

 

と、良いのを貰ってしまう…。

 

 

「ぬうう…ぐうっ……」

 

「イイぞ?そのママ呑まレロ…お前ハその方ガお前ラシイ!」

「アノ時ノヨウナ!猛ル鬼ノヨウニ!!」

 

 

「殺すッ!!!!」

 

 

 

 

武蔵の様子がおかしい…!!

あれじゃまるで……

 

「武蔵の目が…口調か昔に戻ってる…あの時のような」

 

「武蔵!!ダメだよ!武蔵ー!!」

 

 

 

 

 

声が聞こえてハッとした。

私は…?

 

「マズい…呑まれかけた…」

 

武蔵の目は…いつの間にか元に戻って…

武蔵は平常心へと、戻った…

 

 

ホッと一安心する麗…。

 

 

 

しかし、それを気に食わないと言う奴がいた。

 

「貴様ッ!」

棲姫は麗の方へ物凄い形相で迫り…

「余計ナ事ヲ!!」

バチィ!!と、棲姫は麗を叩き飛ばす。

 

 

「キャっ!!」

打たれて転がる麗…。

 

「貴様っ!貴様の相手は私だろう!!」

 

麗の口元からは血が出る。

「武蔵!!大丈夫…だから!!」

 

 

 

 

「貴様ァァア!!」

相棒のそんな姿を見て激昂する武蔵。

 

 

 

「ダメ…武蔵!ダメーー!!」

逆に麗は武蔵を宥めた…

 

 

 

 

 

その声は届かない。

武蔵は怒りで我を忘れて棲姫に攻撃を続ける。

 

 

 

何より…2人が奇妙な笑顔で殴り合いをするのが怖かった。

 

 

 

 

 

 

 

「小娘…コイツハナ…コレが本性ナンダヨ…」

 

「忘レもしなイ…あの時…この場所デ!奴ハナッ、私ラノ仲間ヲ皆殺シニシタ!!」

 

「私ハ…怖クテ…何もできナカッタケド…覚えテイル」

 

「アノ強サハ…惚れルくらいニナ…」

 

 

 

 

 

「そろそろ…終わりにしようか…?」

 

「ソウダナ…」

 

お互いに血飛沫を上げて殴り合う。

 

 

 

 

 

「ム?」

棲姫は見た。

泥のように濁った目でなく…。

 

輝く武蔵の目を。

 

 

「麗!!私は大丈夫だ!!安心しろ!私は…呑まれていない!!」

 

武蔵は怒りをコントロールしていた。

一度は怒りに身を任せたが、何度も呼びかける麗に何とか答えたようだった。

 

 

 

「武蔵!良かった…」

また安堵する麗。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……つまらナイ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全てに始まりがあるように

 

全てには終わりがある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドシュッ…

 

 

 

 

「う…?」

「コレは…」

 

 

 

 

「終ワリ…強かっタけど…オワリ……あの顔を…目をしナイ貴様ハワタシには勝てナイ……」

 

 

 

 

 

麗は見た

 

 

 

 

敵の手が…腕が

 

 

武蔵の体を貫いたのを

 

 

「嘘……」

 

 

腕が抜かれた途端に

真っ赤な鮮血が武蔵の体から…口から…出たのを

 

「ぐっ…ゴボッ……」

 

 

「……れ…ぃ」

 

勝利を信じて疑わない…最強の武蔵が

膝から崩れ落ち…倒れたのを

 

 

 

 

「モウ…立てナイノカ?」

 

「私の勝チだ……ツマラナイけど!」

棲姫は手につく血をペロリと舐めて言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全てが崩れ行く音が私達の肩を叩いた。

 

 

 

 




武蔵…。


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139話 麗と武蔵 最強の名の下に ❷ ありし日の子供と鬼神

本日も2話投稿!!
138話も投稿してますのでご注意下さい!






鬼がいる…。

鬼神がいる。

 

そう言われ続けて来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麗の初期艦は武蔵だった。

 

か弱い乙女には強い戦艦を……と言うわけではなかった。

 

武蔵は所謂、問題児だった。

 

 

『強者にのみ従う』

 

これを信条としていた武蔵

 

 

「骨がないなッ貴様!そんなので俺の提督が務まるのか!?」

上官を殴り大本営へと返された。

 

 

「その程度で泣くな!!…チッ…」

激を入れたつもりなのに…また返された。

 

「…俺は貴様らの飾りじゃない!!」

説教したら、また返された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

片っ端から提督に殴りかかっては負傷させ

尖った性格から、受け入れられる訳がなく…

 

 

 

 

その日の武蔵は、また同じだろう…くらいにしか考えてなかった。

 

兵器として…

都合の良い女として…

威厳を借りる為…

 

そんな奴ばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その娘は、まだ若かった…いや、幼かった。

 

屈託のない笑顔で言った。

「あなたが武蔵さん?カッコイイ!私は里仲 麗と言います。よろしくお願いします」

 

世間では…中学生にもなっていないだろう。

 

こんな小さな子にも戦いに身を投じろと言うのか?

 

と憤りさえ感じるのに…

 

この子は笑顔をやめない。

 

 

()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

同情だった。

俺が守って導いてやらねば…と思った。

 

打算だった。

こいつを強くして…俺を舐めた奴らを…。

 

 

 

 

予想は当たり前に当たり、周囲の目や態度は麗にお世辞にも良いとは言えない……いや、正直に言おう。

反吐が出る程に最悪だった。

 

幼き子…

そういう趣味の奴も居たのだろう。

 

涙を堪える子

そういう趣味のやつも居たのだろう。

 

私から見ても可愛い

そういう趣味のやつも居たのだろう。

 

 

私を押し付けた時点で

コイツは期待されていない。

 

ましてや、私らの赴任先は…

かつては英雄が居た……とされる残りカスの

蒙武鎮守府…

 

決して主役(英雄)にはなれないモブ(捨て駒)…。

 

 

 

 

 

悔しかった。

 

私は誇り高き大和型弐番艦の武蔵だ。

皆が憧れる、恐怖する。

最強の一角の艦娘のはず。

 

 

 

だから…強くしてやろうと思った。

 

 

 

 

 

私は知っていた。

 

麗が何年もずっと…毎日泣いているのを

 

私は見ていた。

 

窓から見える外の人間の普通の生活を羨ましそうに見ているのを

 

私は気付いていた。

 

麗が今迄の日常を捨てるために苦悩しているのを

 

私は聞いていた。

彼女がどれほど罵られようと努力を辞めなかったことを

 

私は見ないフリをしていた。

全ては…最強の名の為に

 

私は信じていた。

それが…麗と私達の為になると。

 

 

 

 

 

 

 

ある日の事だった。

 

他の鎮守府の提督に麗がバカにされた。

麗はいつも通り…笑いながらすみませんと言っていた。

 

 

俺は…何故かカチンと来て相手に文句を言った。

 

 

すると…相手は激昂して、提督に歯向かうとは!…と俺を殴ろうとした。

丁度いいぶん殴ってやる!!

と思って俺は相手を殴った…。

 

 

 

 

 

 

 

「だめえ!!!」

 

 

そこに麗が割り込んできたのだ。

俺の拳をまともに受けた麗は飛んで行った。

 

「うっ!あうっ!……」

 

 

 

 

 

 

「おい!バカ!何してんだ!!」

俺はすぐさま駆け寄った。

 

 

「だ、だめだよお…武蔵」

麗は痛いとも言わずに笑いながら俺に言った。

 

 

それに何故か腹が立ってしまった。

 

「いいんだよ!!あんな奴」

「テメェは悔しくねえのかよ!!あんなに言われて…舐められて…悔しくねえのか!!!」

 

 

 

 

麗は笑わずに言った。

頬は紅く腫れて口元からは血が出ていた。

各所は擦り傷。

怖かったのだろう、足も震えていた。

 

 

「悔しいよ…」

 

 

でも…と麗は続けた。

 

 

 

「でもね?武蔵のこの手は…あんな人達を殴るための手じゃないよ」

 

 

 

 

「笑顔を守るための手なんだよ」

 

 

 

 

 

「だって…」

 

 

 

麗は思い出していた。

 

ある日の事を…。

 

 

 

『よくやったぞ…麗』

と、頭を撫でてくれた武蔵の手を。

その時の武蔵の微笑みを。

 

 

両親と離れてこんな世界に放り込まれ…嫌な事しかなかった生活の中で

初めて私を褒めてくれたことを。

 

 

麗は震える手で武蔵の手を握りながら本物の笑顔で言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたの手はこんなにも優しくて…温かいのだから」

 

「あなたの手は…皆を幸せに出来る手だから」

 

 

 

 

 

 

 

 

ぽろぽろと涙と血を流しながら言う麗。

 

 

 

初めて言われた。

鬼だとか、クズだとか…たくさん言われて来た。

何を思ったかこの小娘は…俺の手をあったかいと言いやがった。

 

何故だろう…

 

何故だろう?

 

何故こんなにも…心が痛いのか

 

痛いだろうに、辛いだろうに

なのに…自分よりも俺達の事を心配して…。

 

 

 

 

鬼の目には温かい涙が流れていた。

 

()()…お前を守ると誓う」

 

それ以来、私は提督に忠義を尽くす事を決めた。

 

 

 

 

 

 

私は強くなる為に…仲間にドーピングした。

皆…

「姐さん達の為!私達の為に!」

 

「提督をバカにされない為に!」

 

と、協力してくれた。

 

 

 

そう…ズレていたのだ

より良い鎮守府…というのは

 

 

麗は皆が笑えるような鎮守府を作りたいと思っていた。

 

武蔵達は提督を誰にもバカにされない鎮守府を作り上げると誓った。

 

 

 

 

 

 

 

そこからは…皆も知る通りだ。

 

 

あの提督との出会いが私達を大きく変えた。

笑顔も増えた。

 

麗が笑うようになった。

 

悔しいし、ヤキモチも妬くけど…私達も、奴を気に入っている。

 

 

 

大本営の時も…やっと心から頼ってくれた…。

 

それが本当に本当に嬉しかった。

 

 

 

 

 

いずれ、世界が平和になれば私らは不要になるだろう。

その後のことはわからないが…

 

今はこの時が…たまらなく愛おしい。

 

 

いつもありがとう。

私達はお前が大好きだぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

腹を貫かれたらしい

 

麗の驚く表情が見えた…。

 

 

 

まだまだこれからなのに…

やっと命を預け合う仲になったのに

やっとスタートラインに立てたのに…

 

 

 

力が入らない。

 

血が溢れて止まらない。

 

 

これは助からない。

 

 

 

 

 

 

すまん…麗…。

 

 

 

 

 

心優しい鬼は

静かに眠った。

 

 

 




登場する艦娘は必ずしも原作とキャラが一致していない場合もあります
。標準語の金剛や浜風…的な?



オラオラ系艦娘…。


え?甘いお話は…?
ほら、お盆だから……
え?意味がわからんて?

廊下に立っていなさい!!



お気に入りが470超えましたね…。
ありがとうございます!!

今日の夕飯はカレーよ!!
少し豪華にカツカレーよ!!

評価や感想や応援メッセージも頂いて…嬉しいです!
もっと下さい!
夕飯が更に豪華になります!…私の!!!

目指せ焼肉…。



えー…
あとは質問に答えますね

うぬが好きなシリアスな話は…何だ!?
我は…迅鯨ちゃんのトコ♡ (原文ママ)


うむ…
次回までに考えておきましょうぞ…

神様お願いのシーンは知人に 元聖職者にそんなこと言わすなよ…と冷静に言われました!

皆さんのも気になりますね
どの話が好きでしたか?







いつもの!!

お楽しみいただけましたか!?

少しでもお楽しみいただけたなら幸いです!


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140話 麗と武蔵 最強の名の下に ③ 提督と鎮守府最強の艦娘

140話だよー!!
昨日は2話投稿してるので
話数に注意してくださいー!


血溜まりの中に倒れる武蔵。

腹を貫かれ…大量に血を流す。

 

 

辛うじて息をしている…が、それも段々と弱くなっている。

 

誰でもわかる

助からないと。

 

 

 

 

 

敵すら勝ったと思う。

 

 

100人いれば100人が助からないと言うだろう…。

 

 

いや…

99人が助からないと言うだろう。

たった1人を除いて…。

 

 

なら…その1人は?

 

 

 

奴か?

いや、救はこの100人の中には居ない。

 

 

 

なら

このような状況で助かると言うバカはどこにいる?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのバカは…里仲 麗 …提督だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうやらバカは感染るらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死なせないッ!!!

 

私にとって怖いのは…私が死ぬ事じゃない

 

 

私の前から…救君が居なくなる事。

 

私の毎日から彼女達が消えてしまう事。

 

彼女達の笑顔が見られなくなってしまう事。

 

彼女達と共に夢を叶えることが出来なくなる事。

 

その方が嫌だ!!

 

 

 

走る 

 

走る

 

ひた走る

 

 

 

足がもつれて転ぶ。

「あうっ!!」

痛い…

 

 

 

 

こんな時…

救君が来てくれたら……

きっとこんな状況をどうにかしてくれるに違いない。

来て欲しい

助けて欲しい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

じゃない!!

 

 

いつだって誰かに頼ってばかりじゃダメだ!

 

やり切って…乗り切って

 

また笑顔で皆と過ごすんだ!

 

 

 

 

 

 

救君なら…きっとこうする。

 

"誰よりも彼女達の近くへ行くはず"だ

 

 

そして"こう言う"はずだ

 

「武蔵ーーーー!!起きろーー!!!」

         「ま」

  「け」

    「る」

       「な」

    「あ」

       「ぁ」

「ぁ」

立て!!!!

「あの子に負けないでッ!あなたは…お前は!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

あの世へと続く微睡の中で声を聞いた。

懐かしくて優しくて大好きなあの声。

 

幾度となく私を支えてくれた提督(相棒)の声。

 

あぁ…

と、応えなければ……ならない

 

 

 

が…

 

 

 

 

 

 

すまない。

 

腹を貫かれて…

 

もう、体は動きそうにないんだ。

 

すまない…。

 

 

このまま…眠りに…。

 

 

 

 

 

 

 

思い出す走馬灯。

 

 

『提督、俺がもし沈んだら…どうする?』

 

ーーこれは…昔の私か?

 

『寂しいこと言わないで…?』

 

 

 

ー寂しい思いをさせてしまうな…

 

 

 

 

 

『提督、私がもし…沈んだらどうする?』

 

ーー今の私か?

 

 

真面目に聞いた質問に提督は笑顔で答えた。

 

ーー以前までの彼女なら、きっと寂しいよ!そんなこと言わないで!なんて言ってただろう…。

 

しかし、今は……

 

『ーううん、武蔵は沈まないよ。沈ませない…だってあなたは…ーーーー』

 

 

 

ーー提督が次に言うことがわかる…

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()() 

  

だろ?

 

 

 

 

 

 

 

ハッとする。

 

そうだ。

私は…負けられないんだ、寝てられないんだ。

私が死ぬのは…平和な世で……皆の腕の中で…だ。

 

負けるか

負けるものか

負けてたまるかぁぁああぁ!!!

 

 

ただ…体に穴が空いただけだ!

 

血をたくさん流しただけだ!!

 

 

麗が流して来た涙や…傷

 

皆で流して来た涙や受けた傷に比べたら…!

 

 

 

 

私がこのまま倒れて沈む理由になぞ…なり得るものかッ!!

 

 

 

 

ぬるり

と、立ち上がった武蔵。

 

 

息も絶え絶え…死にそうな顔。

震える足と体。

 

 

 

 

 

 

「武蔵!!」

 

 

 

 

「……闇の中で」

 

「?」

 

「ひどくうるさい声が聞こえてな…寝てられなかった。」

 

「ひどい!!」

 

「その声はな…暖かくて…安心できて…でも、か弱くて…それでも力強い優しい声なんだ」

 

「あぁ…そうだ、私はここのエースだからな。期待には応えなくてはな」

限界の中で武蔵はニヤリとしながら言う。

 

 

「例え…ここで散ろうと……提督を敗将にはしない」

「……相棒!私と最後まで…一緒に戦ってくれるか?」

 

 

 

「もちろん!その為にここに来たの」

 

「…ふっ……愚問だったな」

 

 

 

 

麗は感じた…なんだかムズムズする。

だから

「……武蔵…」

 

「何だ?」

 

バシィン!!!

 

「うおっ!?」

 

麗が武蔵の背中を思い切り叩いた。

 

「な、なにを!?」

 

「気合い」

 

「なっ!?」

 

「私が最後まで戦うってのは…この戦いじゃないよ…平和になるその時まで……あなたは…こんなところでは死なない!だから…気合い!!」

 

 

 

「気合いって……あの提督に似てきてしまったなあ…麗…私は死にかけなのに……」

 

 

不可能なのだよ…麗

もう…感覚もないんだ……。

目も霞んで…お前の表情もよく見えない。

 

 

 

 

「死なない…死なせない!!!」

 

麗は強く言った。

 

 

なんの確証があるのか…死なせない…などと。

 

 

それでも…麗の言葉には力が宿った。

 

 

 

限界の武蔵にはもう見えていないだろう。

麗の体が…淡く光るのを…

 

 

棲姫はソレを見た。

 

「………?」

 

 

 

でも…体が軽くなった?

 

武蔵は気付かない。

彼女の体も淡く光っていることに…!

 

 

 

 

 

「待たせたな…」

 

「イエ?面白い…貴方達…最高…。ソノ最高を潰したイ!」

 

「死ぬ間際ノ…花火ノ様な…一瞬ダケ輝く命の炎…見セテ!!」

 

 

 

私の…輝く姿……

じっくりと見て行け!!!

 

 

 

 

 

「私の名は…武蔵!大和型弐番艦にして猛武鎮守府最強の戦艦だッ」

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

クイクイと顔を私の方へ向ける武蔵。

 

「え!?私も!?!?」

 

「当たり前だろう!!あの提督もやってたろ!?一緒に戦うんだ!やってくれ!!」

 

「えぇ…」

 

「すまない!もう一度…いいか!?」

 

「エ、エエ…イイケド…」

 

いいんですか……。

 

 

 

 

「私の名は…武蔵!大和型弐番艦にして猛武鎮守府最強の戦艦だッ」

 

わ、わわわた、私は「恥ずかしがらない!」

 

いやぁあ……

 

「私は里仲 麗!英雄の名を継ぐ猛武鎮守府の提督!!」

 

 

 

そして…

 

そして…!!

 

 

「そして…最強の武蔵が率いる艦隊の提督ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

…救君が居なくて良かった……。

 

 

 

 

 

最強…か…。

提督よ…お前がそう言って、願ってくれるなら…私は全力で応えよう!!

 

「全てを絞り出す……!!推して…参る!!いくぞおおおおお!!」

 

「いっけえええええ!!!!!」

 

 

 

 

武蔵は敵へと向かう。

 

足は鉛のように重く、体は鎖で繋がれたように重い

 

 

 

と、思っていた。

 

 

 

 

 

アレ?何だ?

体が…自分のようじゃない感覚……これは

 

 

ー麗にとっては…くっ殺不可避な恥ずかしい掛け合い。

しかし

艦娘と提督の絆…それは深ければ深い程、強ければ強い程に艦娘を強くする。

大本営でのあの時よりも…それを経てなお、強くなった鎮守府の絆。

 

負けないでと言う麗の気持ちに艦娘が応えた。

頼れ!と言う武蔵の気持ちに麗が応えた。

 

その思いが武蔵を体の奥の記憶の奥から全てを突き上げる。

 

 

 

 

 

武蔵は混乱していた。

 

世界がゆっくりと動いているような…

 

意識だけが先にいく感覚。

何だ?これは…。

 

暖かい…?

 

 

光…?

提督の暖かさ………?

麗から…光が………

彼女から出た光が私に流れ込んで来る?

 

それは、全身にまわり…私を満たす。

 

 

 

 

死の淵にて…それでも尚、敗将にすまいと…

提督の声に応えようとした艦娘。

 

彼女の強さを信じ…寄り添い

彼女を死なせまいと…願う提督。

 

 

 

確かに一度掛け違えた道にいた。

 

しかし、それでも…彼女達の絆は…

死の淵にて…それでもまだ更に強く輝いた。

 

 

 

 

私はそのまま光と共に……前へ…前へと

 

 

 

 

 

 

 

その輝きは…武蔵を包み込む。

 

 

 

泥だらけの過去も

消したい思い出も

続く茨の道も

楽しい今この時も

 

全ては…麗や皆の為に

 

誰か一つ欠けても…今の私は無い

 

どれか一つ順番が狂っても今の私は無い

 

 

 

 

そうだ…

私は…私達は空っぽなモブ(捨て駒)なんかじゃない…私達は…誇り高き…英雄の鎮守府の艦娘(猛武鎮守府の艦娘)なんだ!!

 

 

 

ありがとう…提督()

 

 

今こそ…

今こそ!!

 

 

私は…今までの私を超えて行くッ!!

 

 

 

 

武蔵は輝きの光(提督との絆)に身を任せて…共に光に溶け込んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武蔵は……いや、武蔵達は

 

限界の先の限界を…ぶち抜いた!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武蔵 改 発動

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや…まだ先へ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武蔵 改ニ 発動

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや…更に…まだ限界の先へ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武蔵 改ニ  超 高揚状態

 

 

 

 

 

武蔵が輝く(キラ付けされる)!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

信じられない光景だった。

 

 

死に際の…線香花火なんてものじゃなかった…。

 

流れ星のような…閃光…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナッ…!?」

 

「うおおおおおおッ」

 

棲姫には閃光が見えた。

 

 

いや閃光の跡しか見えなかった。

 

 

さっきまで、ほんの一瞬前まで遠くにいたはずの武蔵が

 

 

()()()()()()()

 

違う!

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

違う!!

 

  ()()()()()()()()()()()()()()()   

 

 

「このまま…吹き飛べえええええ!!!」

 

 

「アグ…グァあああああ!!!」

 

棲姫はドン!と言う音の壁と共に後方へと殴り飛ばされる。

 

ドッ ドッと言う音と共に海に叩きつけられながら遥か彼方まで吹き飛ばされた。

 

 

「ガッ……?……?」

 

何が起こった?

 

 

仰向けに海に浮かぶ…。砂浜が…遠い…太陽が嫌と言うほどに眩しい。

「ゴフ…何ダト…言ウノ?…あ…のチカラ…ハ……」

 

早く体勢を立て直さない…と?

 

待て

 

太陽が眩しく…ない。

 

 

まさか!!

 

 

 

「るぉおおおおおおお!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武蔵だ

背中に提督を乗せて飛んで来やがった。

 

 

 

「行こう…麗…共に!どこまでも!」

 

「うん!行こう!武蔵!!」

 

 

 

 

 

守るはずの提督…。

こんなにも…暖かくて…心強いのか。

 

 

 

 

最強の言葉なぞくれてやる。

現に私は負けたのだから…。

 

最強の言葉なぞなくても……私には皆が居る!!

皆を守る為に…私は

 

 

麗が温かい…と言ってくれたこの手で

 

 

お前の願いを…私達の願いを

 

 

 

 

叶えてみせる!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コレが…私達の…全身全霊!本気の…一撃だぁぁあああ!!!」

 

 

立て……立った!!

体が動かないッ!

ガード……!

 

 

体が諦めている…

恐怖している。

 

奴に、奴の提督に…。

 

 

だがッ!!

こんなにも心が震える!!

 

「アハ…」

 

 

 

 

武蔵の拳を腕でガードするーー

 

ズドオオオン!!

 

「ッ……mdt@m)w@ga」

 

最早、声にならない。

 

弩級戦艦の砲撃すら生ぬるく感じる一撃…!?

 

 

 

 

 

命尽きる前の一瞬の花火…?

飛んだ間違いだ

生命感溢れまくる火山だった。

 

 

ドバッ…と、足元から轟々と立ち登る水柱。

 

 

「ありがとう…戦艦仏棲姫!お前のおかげで…私は更に強く立ち上がれた……だから見せてやる…私達の全てを…鬼神と呼ばれた艦娘の力を!!」

 

 

 

「うおおおおぉおおおああぁぁああああ!!」

 

その拳はガードを突き破り棲姫の顔面に…頬に突き刺さる。

 

 

武蔵は腕を振り抜いた!!!!

 

 

ドパァアン!!

 

棲姫は海に叩きつけられ…反動で宙へと浮いた。

 

 

 

まるでおもちゃのように回転する棲姫。

 

回る景色の中で見えたのは…

拳を構える武蔵と真っ直ぐにこちらを見る提督の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の…」

 

 

「いや、()()の勝ちだぁああ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武蔵の拳は回る私の腹に……

 

 

その熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い拳を叩き込んだ!!

 

 

 

熱い何かが流れ込んでくるようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

負けたーー

 

 

ーー完敗だ

 

 

 

私は…また遠くへと吹き飛ばされた!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悔し…くない。

 

何だこの感情は……。

 

これは……

 

 

あの日見た鬼神の如き艦娘に勝つ。

それだけの為に生きてきた。

 

 

確かに勝った…

なのに、奴は這い上がってきた。

 

 

鬼神よりも輝く艦娘となって…

奴は…

 

 

カッコよく…強かった。

 

 

「フッ……完…ぱい…ダ。敵に負ケタノニ…こんなにも清々シイノだな」

 

 

 

「……」

 

次の瞬間棲姫は素っ頓狂な顔をする事になる。

 

 

 

「おいでよ」

 

「え?」

 

 

「ぬ?」

武蔵も素っ頓狂な顔だ。

 

 

「生まれ変わったらさ…艦娘になっておいでよ、ウチに」

 

 

 

 

 

「もっと楽しいからさ…」

 

 

 

 

 

 

「提督ッ?楽しい…だと!?」

 

「強い娘と戦いたかったんでしょ?最強を目指したんでしょ?」

「だって…あなた…一度も街も私も狙わなかったから」

 

 

「!?」

武蔵は振り返る。

そう、奴は出来たはずだった。

街を攻撃する事も麗を殺す事も…。

しかし、しなかった。

 

それは彼女が純粋に私と本気で戦いたかったからではないか?

 

 

「アハハハハハハ!!敵ニ気付かレルとは…私もマダマダ…」

 

 

「ありがとう…」

 

「エ?」

 

「私の…大切な相棒、武蔵を強いって認めてくれて…ありがとう」

 

 

そして麗は棲姫に近づき…手を取り言った。

 

 

「あなたの手は…きっと多くの人を救えるから」

 

「ね?武蔵」

 

 

「…そうだな」

 

 

お前は変わらないんだな…麗。

 

 

 

 

 

 

 

「………」

棲姫はフッと笑った気がした。

 

 

 

「…強かった。お前は本当に強かった……そうだな…提督の言うとおりだ。生まれ変わってやって来い。私より強い奴が居る鎮守府を紹介してやろう…そして」

 

「次は仲間として共に戦おう」

 

と、手を差し出した。

 

 

 

彼女はその手を……

取った。

 

 

 

「お前ヨリ強い奴…か…いいね……ソリャ」

 

 

「フッ…でも…バカだナ…敵に…そんなこと言うナンテ…。 

デモ…そんな馬鹿は…嫌イじゃ…

 

 

 

 

イナ

 

 

…」

 

 

 

笑顔の中棲姫は光となって消えていった。

 

 

「救君みたいな事言っちゃった。……来てくれるかな?」

 

 

「前々からだろう?全く無茶をするようになった!」

「あぁ…きっと来てくれるさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人でお茶しながらその話をした。

 

 

「そうか…」

「でも麗ちゃん」

「君は俺が褒めるまでもなく…立派で強い提督だよ」

 

 

 

 

 

「まだ…転んで足が痛いから…」

 

「お姫様抱っこ…必要だった?」

 

「うん!とても必要!!」

 

あなたに甘えるのだけは別腹なの!

 

 

 

 

 

何故救君が居たか?

 

 

 

大淀から連絡を受けてきてくれたらしいの

 

丁度、深海棲艦が現れたらしいの。

 

皆は…麗ちゃんのところへ!と言ったらしいけど

 

でも…武蔵が居るから大丈夫だ…お前らは…信じて待て…と言ってらしい。

 

だから…アイツらが帰ってくる為に全力でこの鎮守府を守ろう!

 

と艦娘を奮い立たせて近海の警備に当たってくれたらしい。

 

 

武蔵が改ニになった時…皆も光って改になったみたい。

皆が…驚いてたけど

「提督の暖かさが私を包んでくれた!」って言ってた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからどれだけ期間が経ったかな?

ある日…

 

 

「たのもーー!!」

門を叩く者がいたと報告を受けて麗と武蔵が向かう。

 

 

そして、こちらと目が合うと…ニコリと笑って言った。

 

 

 

「提督!武蔵!久しぶりだな!」

 

 

 

 

「む…お前は…」

「あなたは…」

 

 

 

わかる。

姿は違えど…少しとは言え拳を交えた2人にはわかる。

 

彼女はーーー

 

「私はーーー最強戦艦ーリシュリュー!」

 

 

あなた達との約束を果たしにきた!ーーーと。

 

 




麗と武蔵の更なる成長回

構想段階から武蔵をはマジで退場させるか悩んだのですが…アツいキャラを失いたくなかったので続投!

エフェクトを多用してアツい話にしたかったのですが…
熱量はあがったでしょうか?



手を伸ばすだけでなく


受け継ぐ というのも裏テーマなので
麗は猛武というものを受け継いでいます

あと、救の生き方、考え方も受け継いでいます。





少しでもお楽しみいただけたでしようか??
少しでもお楽しみいただけたなら幸いです!



コメントやメッセージありがとうございますううう!!
いつでもお待ちしています!!



あ…お盆休みください…


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戯れのアンケート(๑╹ω╹๑ )!!

こんにちは(๑╹ω╹๑ )!!

 

いつも…ご覧頂いてありがとうございます!

 

武蔵と麗編どうだったですか?

 

 

 

 

 

 

ちょくちょく聞かれるのですが…

どのシリアスが人気でしたか? と。

 

正直なところ…私も気になるので

戯れのアンケートをお願いします!

 

リメイクは…わかんないですけど…

 

 

1〜11まであるので選んでくださいー

 

コメント等くれても嬉しいです!

てか、欲しいです

コメントとかメッセージくると本当に嬉しくて嬉しくて!

 

 

 

え?ねだるな?

 

仕方ねえじゃん…本当にテンション上がるんだもの

 

 

 

 

コレを機に良かったら昔の話も見てみてくださいー!

 

 

 

 

 

 

 

作品へのコメントは…

あまりあてにしないでください!

 

 

 

 

 

 

①鉄底海峡ニ沈ム

+ある男の話

 

艦娘と提督の関係とこの世界での提督の意義、意味を少し書きました。

 

 

敵の過去にも触れていたので、いかにして壊れていったかを書いたつもりでした。

 

救と艦娘が全てを思い出す話

主人公…2度目の死!!

艦娘は物理で殴る。

 

テーマは再スタート。

 

 

 

 

 

皆が復活するとこと…

電のもういいのです。からが好き

 

 

 

 

 

②提督 演習ヲ行ウ

 

艦娘が本気出す

メインは殴り合い

 

 

当初は蒙武のキャラはずっと世紀末の予定でしたが…変更。

逆に準レギュラーになった武蔵。

 

殴り合い…いいね!

 

テーマは…やられたらやり返す…倍以上でな!!

 

 

 

 

③紫陽花の咲いた日に

 

あきつ丸!あきつ丸ううう!!!

 

 

テーマは…偽物が本物になる…と、約束 

 

 

 

 

 

④正義の在りどころ

 

やっぱり主人公は死ぬ

先輩登場回

 

多分戦闘は殴り合いじゃない。

 

 

見る側面によって正義も変わる…をテーマにしたつもりでした。

 

 

 

⑤誰が為に鐘は鳴る

 

巌は実は陶芸が趣味

やっぱりバトルは殴り合いだった。

金剛がマジでヒロインだった。

 

 

テーマは、諦めない心

 

 

 

 

 

⑥西波様大決戦

 

先輩登場回!!

大集合での大乱闘

 

 

最後の最後は泣けたって声があった。

 

 

テーマは…心の繋がり

 

 

 

 

 

⑦焦がれる背中に

 

航空戦隊がマジカッコいい

2人で弓引くシーンはお気に入り。

 

 

テーマは挫けても尚、立ち上がる

 

 

 

⑧あなたに逢いたくて

+とある初恋の話

 

主人公は好かれてるな…本当に

 

 

テーマは 恋心と巣立ち

 

 

 

⑨青い海に燃える

 

⑧の続きにもなる話。

 

神様…もし本当にいるのなら…願いを聞いてください

割と気に入っているフレーズ

 

 

テーマは祈りが届く

 

 

 

⑩星に手を伸ばす者へ

 

シリアスパートのテーマをぶっ込んだ感じ。

 

麗の成長と鬼怒が無意識に救を助けた所

皆が集まる所

めっちゃ艦娘の名前を羅列した所は…お気に入り

 

最後は殴り合い

 

 

テーマは 手を伸ばし続ける

 

 

 

 

①①麗と武蔵 最強の名の下に

 

どの艦娘よりも武蔵がマジで目立ったかも

改 改ニへの突破は本当に好き

 

結局殴り合い

 

 

テーマは、死が別つ、2人の絆は砕けない

 

 

 

多分…リメイクしたら

それなりに変わりそう…特に初期の方のは…。

 

一回、戯れでやってみたら

文字量が増えまくった…

 

 

 

 

 

 

あ!!!

 

お盆休みを貰いますけど…

 

これで終わりとかではないです!

まだ連載は続きますからね!!

 

 

 

 

 



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141話 提督 電ト1日夫婦 ① なのです!!

さて、目の前に居るのはデストロイヤー()…。

ドジっ子属性で全てを破壊し尽くす超魔人。

 

はわわ…!からの確定8割コンボは触れるものを奇跡的に軽傷でも…中破…最悪では三途の川を見せるまでに及ぶ、ある意味深海棲艦よりも被害を味方に与えているかも知れない今、俺の中で話題の駆逐艦である。

あの長門や武蔵ですら、大破状態で赤子のように震える訳なので…。

 

俺の中では艦娘ブレイカーのロリっこ…略してブロリーと呼ぶときもある。

 

 

 

しかしながら、意外や意外に家事は優秀であり、以前に比べたら料理も美味くなった。

 

 

 

 

 

 

 

「提督さん!今日からよろしくお願いします!」

 

「なのです!は?」

 

「…雷と間違われるので…」

 

「立ち振る舞いが違うから大丈夫だよ」

 

「それもキャラ付けです」

 

「…普通でいいよ」

 

「わかりました」

と、タバコに火をつける電。

 

「え?」

 

「フーーーッ」

「やっぱり…我慢してると…キツいっすわ」

 

「え?え?」

 

「本当マジで皆雷と間違えっから…せっかくキャラ付けしてんのによぉ…やってらん…

 

 

 

 

 

 

「電んんんんんん!!!おおおおおおお!?!?!?」

 

目が覚めた。

 

 

どうやら夢のようだった…マジでよかった…。

この前のアレ…引きずってんのかなあ…。

 

恐る恐る隣を見ると…、

隣で電はぐっすり眠っているようだ…。

 

 

 

 

 

「おはようございます!提督さん!」

 

「お、おはよう…」

 

「どうかしましたか?顔色が…」

 

「なあ…電はタバコ吸ったりするの?」

 

「吸わないわ?」

 

「ならよかった…」

 

「??朝ごはんにしましょう!」

 

 

本当によかったです…。

 

「いただきます!」

 

電の作るのはサンドイッチ。

そして、淹れ方を覚えた紅茶とコーヒー。

 

野菜は六駆組の畑で栽培されたもの、卵も新鮮とれたて、パンもこだわったものである。

 

たまには洋食も悪くない、というか和食が好きと言うから皆がこぞって和食を出してくれる訳で。

 

「美味しいよ!電。好きな味だ」

 

「提督さんさえ良ければ毎日でも…作るわ!///」

 

なんだかんだで少し積極的になってきてる気もする。

 

電はコーヒーを飲んでいたが…なんとブラックだった!

 

「電!ブラックなんか飲めるのか?」

 

「電は…大人なのです!」

 

「……?」

 

「マスタードもたっぷりつけるわ!」

 

なんか…違和感が…。

 

 

 

 

 

 

「通報されないようにね?」

「もう連行されないようにね?」

 

「電ちゃん?防犯ブザー持ってく?」

 

ガチトーンで心配してるな…これは。

 

 

「……」

「皆が心配そうにしてるのです…」

 

「行ってきます」

 

 

「「「「「行ってらっしゃい」」」」」

 

「電!知らない人にはついて行かないのよ!」

「夕方には帰るのよ!」

 

 

「子供じゃないのですわ!!!!」

電がプリプリ怒っていた…かわいい。

 

 

 

何だか大人びたファッションだ。

歩くペースが少しぎこちないのはヒールを履いているからか。

化粧もしてるっぽいな。

 

可愛いじゃないか。

 

 

 

 

 

「船の上も気持ちいいものですわ!」

 

「そか、電は初めてか…いいだろう?」

 

「ええ!そうね」

 

 

「電?何か違和感が」

 

「どこに…かしら?」

 

「口調…?」

 

「?気にするとこはないわよ?」

「あ!着くみたい!行くので…行きましょう!」

 

「…?」

 

 

 

 

 

 

 

電とデートの時は…いや、電に限らず駆逐艦勢とのデートの時は注意が必要だ。

警察?憲兵?通報?

 

そんなのは慣れているッ!

 

違うのだよ…。

 

 

うっかり妹ですなんて言ったら…ね。

その後は不機嫌になられるので注意しなくてはならない。

 

とは言え、妻ですと言っても通報されかねんがな…。

 

 

 

パパ!とか言われた日にゃ…確実に牢屋の中だけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

んで…

「可愛いねぇ〜妹ちゃんかいー?」

と、聞いてくるおばちゃん。

 

葛藤する俺

葛藤する電

 

 

「ち、違うのです!私達は夫婦…な…んです!」

 

「え?」

と、通報態勢にはいりそうなおばちゃん。携帯に手を伸ばさないでッ。

 

「ほ、本当ですわ!この指輪も見て欲しいのです!」

と、指輪を見せて言う。

 

「…おもちゃじゃないわね。なら奥さん…若いのねえ…小学生か中学生かと思ったわ…」

 

「よ、よく言われるのです…」

 

「背伸びしたくなるお年頃じゃないのよね?」

 

「違ういます…」

 

こうかは ばつくんだ!

電の精神がゴリゴリ削られたようだ。

 

「よく言われますが…夫婦ですよ!俺も指輪してますしね!」

 

「そうかい…」

 

訝しげな目で俺を見るなッ

キリキリと胃が痛むううう!!!!羽黒!?羽黒はどこだ!?胃薬をくれえええええ。

 

 

 

 

 

 

 

「提督さん…私はやっぱり…妹なのですか?」

 

電はホロリと泣いていた。

 

 




アンケートご協力ありがとうございます〜!

何日か置いておきますのでよろしくお願いします!


電…嫁編…!!
続きます!

逮捕?多分されませんよ!…多分!!



少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!
続きます!!


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閑話 夏の日に想う

お盆休みをくれと言ったな?
アレは本当だ。


 

 

未来を生きる君へ

 

 

どうか忘れないで欲しい。

 

彼女達はこの国を守る為に生まれて来た事を。

 

かつての絶望的な…死しか生まない海を、世界を救う為に…彼女達はもう一度この世界に帰って来た事を。

 

 

 

 

 

 

どうか忘れないで欲しい。

 

彼女達は…命懸けで戦って来たことを。

 

例え傷付こうとも…死の淵に在ろうと、彼女達は戦い抜いた。

数多の弾雨を…仲間の死を超えて…

 

ただひたすらに (未来)を生きる君の為に彼女達が戦った事を。

 

 

 

どうか忘れないで欲しい。

 

その彼女達と共に数多の人が戦った事を。

 

決して表に出ない…影の中には、英雄とも呼ばれない人が居る。

 

しかし、彼らは…例え日向に無くとも、それでも明日の為にその命を捧げた事を。

 

 

 

 

 

きっと…もっと別の生き方も有ったはずだ。

 

きっと…もっと幸せな生き方が出来たはずだ。

 

きっと…もっと辛い別れをしなくて良かったはずだ。

 

きっと…もっと生きたかった者が居たはずだ。

 

 

 

 

 

しかし…

 

それでも

 

 

別れも、涙も、悲しみも、憎しみも、怒りも、喜びも、幸せも、何もかもを糧にして皆は歩み続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうか忘れないで欲しい。

 

 

 

俺達は絶望の世界に居た。

それでも…諦めず…前を向いて、手を取って、歩み続けて…その生を全うした事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は…特別な日。

 

 

 

とある…いや

 

過去に生きた皆が…その生を駆け抜けた…果ての日。

 

様々な生き方が其処には在った。

 

志半ばで…その生涯を終えた者。

その果てを見届けた者。

全てを見送った者。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

多くの命の上に俺達は立っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

例え、今その姿を変えようとも、彼女達の誇りは変わらない。

例え、今その記憶が薄れて行こうとも、彼女達の"生きた"という事は決して変わらない。

 

 

 

 

 

 

未来となっては

語る人の方が少ない。

 

 

未来となっては

其れを知る方法が少ない。

 

 

俺達の戦いもいつかは"過去のモノ"となる。

俺の事も…彼女達のことも忘れ去られる日がくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今年もやるのー?」

 

「おー…やるぞ」

 

 

 

「……律儀ねえ」

「片隅にしか記憶がないかも知れないのに」

 

 

「まっ、そんな所も…好きなんだけどね」

 

 

 

 

俺達は燈を海へと見送る。

灯籠流しと…呼ばれるものだ。

 

 

 

 

 

「綺麗だよねえ……」

 

 

 

あの燈は、かの者達を見送る光。

 

 

「うーーん、慣れないなあ…今の私が居て…艦の時の私を……うーーーん!!!」

 

 

「…ちゃんと帰れるかなあ?」

 

 

「帰れるとも…」

 

 

 

 

その燈は…旅立って行く。

俺達はそれを見送る。

 

 

 

「全員…」

 

「敬礼ッ!!黙祷ッ!!」

 

 

「…………」

 

遠くへ…小さくなって行く燈に想いを馳せる。

 

 

 

静寂が周囲を包むgう

 

 

「よし!」

 

 

 

「毎年、しんみりするよねえ〜」

 

「そうよねえ…」

 

「今年も…間宮あい…「…寂しいのは俺には合わん!!」

 

 

突然提督が叫んだ。

 

 

「!?!?」

 

「て、提督…?」

 

少女達は戸惑っている。

しかし、その提督はニヤリと笑った。

 

 

 

「やれぇ!!天龍ーー!!!!!!」

 

提督の叫びがこだまする。

 

 

「おっしゃァァア!!待ってたゼえええ!!!!」

 

天龍がそれに応える。

 

 

「??」

「提督?いった…きゃぁあ!!」

 

ズドオオオン!!

 

轟音と共に地面が明るくなった!

 

「あ…」

 

皆が闇夜を見上げる。

 

その光は……どこまでもどこまでも空に昇る。

 

今を必死に生きるように

 

 

そして

轟音と共に

暗闇の空に…大輪の華を咲かせた。

 

 

 

 

 

そして…また暗闇に戻る空。

 

 

 

 

 

ーそう

 

ーだから忘れないで欲しい。

 

ー確かにそこにはあったのだ。

 

ー 君の目に写らなくとも…長い歴史から見れば一瞬のものとは言えども…確かにそこにあったのだ。

 

 

 

 

 

「今のは…花…火…?」

 

「凄い…きれえ…」

 

 

 

 

 

「あはは……いいぞ!!もっとやれーー!!」

 

 

 

「よっしゃー!!やるぞ!やるぞおおお!!」

 

 

 

 

 

 

 

ー見上げればある空や月のようにに…いつでも見える歴史でないけれど。

 

ー花火のように一瞬しか輝かなくとも…

 

ー皆の目に一瞬しか写らなくとも…

 

ー長い歴史の一欠片でしか無くとも

 

ーもう、誰も覚えていなくとも…

 

ー知って欲しい…そして忘れないで欲しい。

 

 

ー彼女達が…俺達が、暗闇の海で未来を切り開く為に駆け昇る花火のように生きて輝いた事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーどうか君も忘れないで欲しい。

 

ー"君達が居る"という……皆が居た…(未来)を…。

 

 

 

 

 

 

 

 

何発も何発も

夜空に大輪の花が咲く。

 

 

心を奪われる美しさ。

 

この時は…全てを忘れて、ただ…その美しさに息を呑む。

 

 

 

 

 

「提督…さん?」

 

「俺は覚えているからな」

「お前達と共に歩む…この今を」

 

 

 

「指揮官様?」

 

「何言ってんのさ!」

 

「私達だって…忘れるわけないですよ!」

 

「愛する人と…歩む今を絶対に忘れません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『綺麗な花火…なのです!特等席なのです!』

 

『そうだな……おっ?よもぎ餅か…こしあんの方が好きなんだけどなァ』

 

『粒も美味しいのです!』

 

『歯茎とかに引っ付くんだよ…』

 

『もー!せっかくのお供え物なんですから…』

 

『てか!あの野郎!精霊馬が…瑞雲じゃねえか!』

 

『凄いクオリティ…なのです』

 

 

 

 

 

 

 

 

『親父が…手を合わせてくれてるみたいだな』

 

『私の名前も呼んでくれています…』

 

『ありがとう…親父』

 

『提督の好きな…メロン…ありますよ!』

 

『あ!親父が食ってる!待って!お供えして!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

『かーー!夏子ー!やっと大和をお母さん呼び出来たねえ!』

 

『バカ亭主も…酒はこの日だけにしたんだねえ…』

 

『笑顔で…何よりさ!しみったれたままなら…化けて出てやるつもりだったんだ!!』

 

 

 

 

 

 

『いいんだ…』

 

『あの人達が僕達を覚えて居てくれるなら』

 

 

 

『それだけで…アタシらの人生に意味があったってコトさね』

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

「どうしたの?」

 

「いや…今何か…」

 

「?何もないよ?」

 

「……そうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また来年も花火見たい!」

 

「また…来年…な」

 

願わくば…来年も…その先も

皆と共にありますように。

 

 

これは君がもしかしたら知るかも知れない…

まだ彼女達しか知らない一夏の記憶。




人が本当に死ぬ時は忘れられた時…なんて言葉がありますね。
本やネットを開けば日向に居る人にはその称賛の光が当たりますが…
名前も残らない…誰かの記憶にしか残っていない人も称賛されるべきだと思います。


お気に入りが490ですと!!
今日は…ハンバーグよお!!
チーズものせちゃうわ!!

ありがとうございます!(´;ω;`)

皆さんのおかげで成り立ってます…本当に。






え?お盆休みくれって言ってただろう?ってメッセージをくれた方…。

違うんだマイケル
聞いて欲しい…いや、聞いてくれ

俺は休むつもりだったんだ…。

なのに…だ

あれー?おかしーな…

手が…勝手に…

ダメだ!ダメだ!って思ったんですけどね?

気付いたら…投稿ボタンが…押されてたんだ…。



感想やメッセージお待ちしています!
少しずつ…メッセージでもカオスなメッセージや、やり取りが増えましたが…嬉しいです!


明日の天気は晴れですとか言うメッセージをくれた君…そう君だ。





雨だったじゃないか……。







いつでもお気軽にどうぞ!



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142話 電ト1日夫婦 ② なのです!!

奥さんらしいことをしなくては。

 

 

恋人らしく見られたい。

 

子供に見られたくない。

 

提督さんを困らせたくない。

 

 

 

電は強く思っていた。

 

だから

 

 

 

「…喋り方をレディらしくするといいわ!」

 

「…なので……わかったわ!」

 

 

 

 

 

 

「メイク…?ファッション…?電?あなたはそのままでも充分可愛いわよ?それに…あの人ならそんなの気にしないと思うけど…」

 

「そこを何とか…お願いします…」

 

「……わかったわ!任せなさい?」

 

 

 

 

 

 

 

「提督さん!電はコーヒーはブラックで飲むのです」

 

「え!?大丈夫なの?!」

 

「だ、大丈夫なのです!」

うう…苦いのです…でも…。

 

 

 

 

 

 

 

暁型の性なのか…?

 

いや…違うな。

 

俺の為か。

 

 

自分が子供に見られるのも嫌だろう。

それ以上に好きな俺といるのに…1日とはいえ夫婦として居るのだ。

隣に立っているように見られないのが嫌なのだろう。

 

 

 

「電…?」

 

「どうしたのです?」

 

「やめよう」

 

「…え?」

 

「もうやめよう」

「無理する事はないんだ」

 

「なにが…ですか?」

 

「口調も…振る舞いも…」

 

「…無理なんかしてないですよ!このファッションもお化粧も…いつも」

 

「この前、暁達と出る時は普通だったろう?」

 

「……ッ!!電は…ちゃんと夫婦に見られたいのです!子供扱いされて…提督さんも変な目で見られるのは嫌なのです!…なのに…提督さんまでそんな事を言うのですか?」

 

「電…そう言うわけじゃ…」

 

 

「提督さんなら分かってくれると思ったのに!!」

 

 

この場から走って逃げる電

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

の手を掴んで離さなかった。

 

 

「離してください!」

 

「嫌だ」

 

「何でですか!!」

 

「離したくないから…。それに電も本気出したら抜け出せるだろう?」

 

 

艦娘は艤装がなくても力は強い。

俺なんかひとたまりもないくらいに。

 

なのに電は…無理に俺を振り払おうとはしなかった。

 

 

何故か?

 

 

 

「そんな事したら提督さんが怪我しちゃうのです」

ぽろぽろと泣く電。

 

 

 

そう考えているのも分かっていた。

我ながら卑怯である…が、俺は離しちゃいけないと思った。

 

 

 

ふと…電の力が少し抜けたのを感じたので

彼女を抱き寄せて電の頬に両手を添える。

 

 

 

 

 

「電?背伸びなんかしなくていい、普段通りのお前でいいんだ」

「いや…普段通りのお前が好きだ」

 

「確かに…嬉しい。俺の為に慣れないファッションなり、化粧なりをしてくれて…大人の?口調まで頑張ってくれて」

 

「でもな?お前はお前のままでいいんだ」

 

「……」

 

「周りの目がなんだ、俺は気にしない」

 

「大切なのは俺達2人がどうあるか…じゃないか?」

 

「俺は今のままの電が好きだぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ドジですよ?」

 

「可愛いじゃないか」

 

「たくさん壊しましたよ?」

 

「形あるものはいつかはそうなる」涙)

 

「提督の大切なものも」

 

「…その分他で思い出を作るさ」 血涙)

 

「体も…小さいです…他の人みたいではないのです」

 

「特に気にしてないぞ?」

 

「ぼんきゅっぼーんではないのです」

 

「手を繋いで隣を歩くのには関係ないな」

 

「こんなのでも愛してくれますか?」

 

「お前だから愛するんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

他の艦娘…特に軽巡以上の!!を見る度に溜息が出た。

 

何度か鳳翔さんのところで駆逐艦の集いで(ソフトドリンクで)飲み倒した。

初月とか…潮とか…あそこら辺の駆逐艦は…恐らく駆逐艦の皮を被った巡洋艦に違いない。

改ニさえ来れば…!と(ソフトドリンクを)飲み明かした。

 

 

 

 

ーお前だから愛するんだー

提督さんは…

いつも欲しい言葉を掛けてくれる。

 

 

 

 

 

 

 

「うっ…ぐずっ…」

 

「提督さぁあん!!」

電は飛びついてきた。

 

彼は優しく受け止める…。

例え涙やメイクで服が汚れようと…彼には些細な事。

服ひとつより…彼女達の笑顔の方が大切だから。

 

 

 

 

 

 

ひとしきり泣いた後に着替え等を済ませた。

電はメイクも落としたらしい。

着替え?

ATSに頼んだ!

 

 

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俺も着替えたさ!

服がね!うん!仕方ないね!顔面プリントアートみたいになってたからね。

 

 

 

 

 

 

今も絶賛抱きつかれてます。

「…電?」

と、俺は本物の指輪を彼女に差し出した。

 

「……同情じゃないのです?」

 

首を縦に振る。

 

「私でいいのです?」

 

「君に受け取って欲しい」

 

 

「…嬉しいのです!ありがとうございます」

「あぁ…また涙が…」

 

 

電はえへへ〜泣き笑いでとつけてもらった指輪を見ている。

 

そして

「…もう一つ欲しいのです」

 

「なに?」

 

「子供が…」

 

「うそん!?」

 

「嘘です…ちゅーして欲しいのです」

 

「ちゅーでは子供できないからね?」

 

「それくらい知ってるのです!!」ぷりぷり

 

 

 

 

 

 

電が背伸びをして、俺が屈んでキスをする。

 

 

どちらかが無理をする恋愛や夫婦生活…は、ありえない。

 

苦労も分かち合うからこそなのだ

だからコレが丁度いい。

 

 

 

 

 

 

「あら!!アンタ!そんな小さい子に手を出して!犯罪よ!!」

と、幸せな時間は引き裂かれた。

 

「大丈夫かい!?無理やりされたのかい!?今すぐ警察に…」

 

ご都合良く…厄介なのが来たか…?

また、電がしょげ…

 

いや、それはないだろう。

 

 

「違うのですッッ!!!!」

「私はこの人の…奥さんなのですッ!!電が小さいからと言って想像で物を言わないで下さいッ!!!」

 

 

電は堂々と言った。

 

 

「え、あっ…でも…」

しかし、訝しげに俺を見るご婦人さんに電は言った。

 

「私の旦那さんを…そんな目で見ないでください」

「とても失礼です!!」

 

 

「……あら…間違いならいいわ」

 

「謝ってください!」

 

「え?」

 

「提督さんは…どんな時も優しくて…無茶して……ヒヤヒヤするけど…私達の事を何よりも1番に考えてくれる人なのです!!」

 

「私の優しくて大切な…自慢の旦那さんに謝ってください!!」

また涙目で言う電。

 

「……ごめんなさい」

と、言うとそそくさと行くご婦人。

 

 

「ちゃんと謝れない人こそ…子供なのですよ」

と追い討ちをかける電。オーバーキル気味に。

 

 

 

「ありがとうな電」

きっと怖かったろう。

 

怖いと言うと語弊があるかな?

人が怖い訳ではない。

怒り慣れてないから、怒るのが怖かったのだろう。

 

それでも彼女は……

やはり俺の為に言ってくれたらしい。

 

「少しスッキリしたのです!」

ニコリと笑う電。

 

 

「電…」

思わず抱き締める。

ありがとう…と頭を撫でながら。

 

「ありがとう…本当にありがとう」

 

「えへへ…提督さんの匂いは…落ち着くのです」

 

 

 

その後のデートではずっと手を繋いでいた。

 

ただ…

パフェを食べに入った店で

「う……○学生なら…無料……なのです」

と、自尊心と葛藤していた電は面白かった。

 

「嫁なんでしょう?」って悪魔の囁きをしてみた所

「そうなのでした!!」と正気に戻っていたが…注文の時に店員さんに○学生さん今なら無料ですよ?と言われた時の、苦虫を噛み潰したような顔で言った「大人なのです…」は忘れられないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寝る間際に電に言われた。

「今日は一緒に寝ても良いですか?」

 

「ん、いいよ?」

 

「えへへ…嬉しいのです」

「やっぱり…提督さんの隣は落ち着くのです」

と、引っ付いてくる電。

電とか駆逐艦勢はあったかいのよねえ…。

 

 

「コレからも…ずっと隣に居させて欲しいのです」

 

「おう、ずっと居て…な」

 

「提督さん、大好きなのです!愛しています!」

 

「俺も…愛しー!?」

言葉を遮るように唇を奪われる。

 

 

「提督さんの驚いた顔…可愛いのです」

電は小悪魔のようにニコリと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明けの鎮守府…。

電は今日も頑張る。

時々左手を見てニヤリとしているようだが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はわわ!!」

 

 

ドゴォオン……

 

 

 

 

 

 

 

「…陸奥…?…向こうに……楽園が…見える…」

 

「長門ッ!?行かないで!?長門オオオオ!ダメだッ帰ってこい!!!!」

 

 

 

「………」 シーン

 

「ちょっ!武蔵さん!?」

 

「武蔵が大破だと!?敵襲か!?!?」

 

 

 

 

ケッコンカッコカリしてから…パワーアップしたからか…被害の度合いが増えたらしい。

確実に中破以上削るようになったとか……。

 

 

 

 

 

 

今日も鎮守府は平和です。

 

 

 

 

 





電は…ドジっ子でもいいじゃない!



お楽しみ頂けましたか?
少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!!


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143話 海軍最強のブイン基地 ①

新キャラ登場会


ここはパプアニューギニア。

ブイン基地に俺と麗ちゃんは来た。

 

何でもこの前の大本営での件で是非お会いしたい!!とかで呼ばれた…らしい。

 

 

何か…めっちゃ変わり者らしい。

 

 

 

ぶっちゃけ…その話を持ってきた御蔵じーさんも

「あぁ…京極かあ……」

とか言ってたくらい。

 

どんな人なんだよ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どういう訳かココはそれなりに栄えている。

俺の記憶だと…ブインはもっと閑散としたとこのはずなのに…。

 

 

 

 

 

というのもブイン基地は日本の勢力の中でもトップの戦力を誇るらしい。特に長門がヤバいらしい。

1人で100機からなる深海棲艦を全滅させたとか…

無傷で。

 

 

 

 

そんな訳でやってきての冒頭に戻る…と。

 

 

メインストリートには店が並び…人々で賑わっている。

そして、

「ヤア、コンニチハ!」

と普通に日本語で話しかけてくる。

 

「大ちゃんの部下かい?」

なんて声も。誰よ?大ちゃんて?

 

 

 

 

そんな時だった。

「君が神崎君と里仲君か!!!」

 

と大きな声で喋りかけて来た人がいた。

 

 

 

「俺はブインの京極と言う!」

 

 

体育会系の感じか…

笑顔が眩しい好青年らしき人が現れた。

 

アレだ…ノリが松岡○造さんが立っていた。

 

「あ、あぁどうも…」

 

「こんにちは」

麗もお辞儀をする。

 

 

「お、大ちゃん!今日はいい魚が取れたんだ!持っていきな」

「お野菜もあげるわ」

 

と、人だかりができる。

 

 

あっはっはっはーー!!

と大ちゃんこと京極さんは地元住民と触れ合っている。

 

……

この地域が活気があって人が多くて

日本人の俺が簡単に受け入れられた理由が少し分かった気がする。

 

 

 

 

「待たせたね!」

と両手どころか前も後ろまで一杯に荷物のある京極さんが話しかけて来た。

と言うか荷物そのものが喋りかけて来た感じか。

 

…その荷物や差し入れは部下の人が運んでくれるらしい。

 

 

 

 

 

 

「さっそくだけど…自己紹介等は鎮守府でやろう…というわけで!鎮守府まで走るトレーニングだっ!!」

 

「え!?」

 

「熱くなろうぜ! ヨーイドン!!」

 

京極は猛ダッシュで行ってしまった…。

 

 

 

 

 

「はやっ!!!」

 

 

 

「あの…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺…鎮守府の場所…知らない…」

 

「私も…知らないよう」

 

 

 

異国の地で2人は早くも置いてきぼりを食らってしまったようだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅かったじやないか!!」

 

「アンタ…先に行くんだもの……こちとら…はぁ…はじめての土地なんだよお」

 

「ひどいですよ〜…はぁ…はあ」

 

 

「あ…」

 

 

「あーっはっはっは!!すまない!そこは考慮してなかった!!」

 

「笑い事じゃないですよ!京極さん!」

 

「地元民が居なかったらヤバかったですよ!」

 

「人がいなかったら一日中歩き回ってたかも…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

置き去りにされる事数分。

 

 

途方に暮れる2人であったが…

地元民が鎮守府の場所を教えてくれた…

 

ので

 

ちゃんと走って来た2人。

 

 

 

 

 

 

 

「それでも律儀に走ってくるのには好感が持てたぞ!そういう奴は好きだなあ!!」

 

「はぁ…」

 

「…少し後悔してるよお…」

 

 

 

「改めて…俺は京極 将大 (きょうごく まさひろ)」

「何故か大ちゃん(だいちゃん)と呼ばれているッ!!好きなように呼んでくれて構わない」

 

「なら…将ちゃん(しょうちゃん)で…」

 

「将ちゃんかー!!また呼び名が増えたぞ!!はははは!!」

 

「なら俺は…救ちゃん(きゅうちゃん)と呼ぶよ」

 

「あら懐かしい」

 

「ちなみに年齢は28だが…できたら普通に接して欲しい!なあ!兄弟!!」

 

「あー…年上の…??ん?年下??…兄弟?」

そもそも…俺は今いくつだ?

実年齢で行くと…30代半ばか?ん?

25くらいでいこうかな?

 

「君は…麗さんでいくよ!どうやら彼が君の旦那さんらしいし…ちゃん付けは辞めておくよ」

「まあ!仲良くしてくれると嬉しいな!!」

 

 

 

「え、あ、えと…はい、妻です」

「よよよよろしくお願いします!」

 

麗は混乱していた。

 

 

 

 

「失礼する…」

と、長門が入室してきた。

 

 

「見ての通り…暑苦しい奴だろう?悪い奴ではないんだが…代わりと言っては何だが…冷たいお茶をどうぞ」

と、長門がお茶を出してくれた。

 

 

「あ、それはわかります!住民の方の反応を見れば…」

麗が返す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし…

と京極は言う。

 

「君達は丸腰で…護衛もつけずに俺の鎮守府まで来た訳だが…」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「……え?」

 

 

 

 

 

 

…周りを囲まれてるな……。

 

 

 

空気が張り詰める。




新キャラを登場させたかった…。

野郎も大事かな…と。



少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!


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144話 海軍最強のブイン基地 ②

京極は睨みを効かせて一気にトーンダウンして言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

「え…あ…」

と、麗は固まってしまう

 

 

 

 

 

 

 

 

事は無かった。

 

 

 

「あんなに慕ってくれている住民に被害を及ぼすかも知れないのに戦闘をするメリットがないでしょう?」

 

 

「演技かもよ?」

 

「私にはそうは見えなかったですけど…」

「…それに本当にそうなら…島に着く前に沈めると思うのですが…」

 

 

「皆でなぶり殺しにするのかも?」

 

 

 

救君…と困った顔でこちらを見る麗。

 

「そーだったら……」

と、救は言う。

 

 

「うん」

 

 

「俺らの見る目がなかった…と諦めるしかないかなあ…」

 

「え?」

京極は驚いている。

 

 

「あ…でも、律儀な奴は好きだとか言ってくれたから……せめて麗ちゃんだけは助けて欲しいなあ…」

 

ふむ…と一呼吸置いて京極は言う。

 

「仮に命を助けたとしても…島にはたくさん飢えた男も居るよ?無事な保証は無いよ」

 

 

 

「それに君の艦娘も……」

「可愛い娘ばかりだろうから……ね」

「俺達は…海軍最強と呼ばれてるから…そのくらいならできるよ?」

 

ニタァ…と笑う京極。

長門もクスッと笑う。

 

 

なるほど…

麗ちゃんもウチのメンバーも慰みものか奴隷にでもすると…ねえ…。

 

 

 

 

その話が本当ならその時は……

 

 

 ()()()()()()()()()()()()() 

と、本来なら思う所だろうけど…

 

「それはないな」

 

 

 

「……何でだ?」

目を丸くする京極。

 

 

 

 

「将ちゃん…やるならさ…ちゃんと指輪隠さないと」

 

 

「え?」

驚く麗。

 

「あッ!?」

それ以上に驚く京極。

 

 

 

「ぷっ…」

長門が吹き出した。

「すまん!提督!ククク…アハハハハハハ!!将大!お前の負けだ!アハハハハハハ」

 

 

「指輪…外し忘れていた!」

 

そう、彼の左手には長門と同じ指輪があったのだ。

 

 

 

 

 

「ヒー…腹が痛い!!お前は…詰めが甘い…。まぁ……普通の奴なら…皆殺しくらい言うと思ったのだが…」

 

 

 

「まあ…本当に有り得たなら…ウチの連中がこの島を消すでしょうね…止める俺も死んでたら…」

 

 

 

「それに…長門もお茶に薬くらい入れるはず」

 

 

「む…そこまではリアリティを求めてなかったからな…」

 

 

 

 

「まあ…そうだよね…救君のところなら…」

 

 

 

と、言ったところで京極が頭を下げた。

 

 

「ごめんよ救ちゃんに麗さん。試すような事を言って」

 

空気が一瞬にして緩む。

 

 

 

 

 

「…敵じゃないんですよね?」

と、麗が尋ねる。

 

 

「すまない!京極 将大…命を懸けて君達の味方である事を誓うよ」

 

 

 

 

 

 

 

長門が京極の肩に手を置く。

「俺達は…本当に結婚している」

「俺も…長門や皆と…幸せな明日の為に戦っている…だから君達のことをよく知っておきたかったんだ」

 

 

「なるほど……。あ…でもしっかりと麗ちゃんには謝ってね?冗談とは言え…俺の嫁なんですから…」

 

「この国はいつから一夫多妻制になったのかな?」

 

「さあ?金剛も麗ちゃんも…みーーんな嫁です!」

 

 

また皆が吹き出す。

 

 

「まあ…うん。俺が悪かったな」

「麗さん、本当に申し訳ない」

再び頭を下げる京極。

 

 

「…あ!いえ!大丈夫ですよ!」

 

 

 

「俺はあの日にあの場所に居た……と言っても…厳重警戒の中でだけどね。 俺は一応…この海軍で最強と言われてるから、まあ当然の扱いなんだけどさ」

 

「そこで噂の神崎君を見た訳だよ」

 

「突如として現れて…鉄底海峡を攻略し、敵側に寝返った彼を打ち破り」

「大侵攻を阻止して」

 

「自らは囚われの身の中で艦娘を動かして閣下を救い…艦娘を救い」

 

「まあ…俺達は何も知らなかったのか?と言われると痛いところであるんだが」

 

 

「正直なところ…今回の件に関しては動けなかった…の方があるんだ」

 

 

 

「まあ…戦力的に1番警戒される鎮守府ですから…」

「でも、私達が立ち上がった後…深海棲艦や私兵相手に戦ってくれてむしたよね?」

 

「ありゃ…見てたの?」

 

「あちゃー…初めから…ドキッ!敵かも作戦は失敗する予定だったのかー…」

 

「甘かったな…将大」

 

 

 

「何かね…君達を見ていたら…何もしなかった自分が情けなくてさ…。だから少しだけ…やっちゃった」

 

京極はニコリと笑った。

 

 

 

「うん!君達の人となりは分かったよ」

 

「仲良くして欲しい!!!」

 

がっしりと握手とハグをされる…。

絶対…松○修造さんだわ…。

 

 

 

「さて…以上な訳だが…」

 

 

 

 

「え!?終わり?」

 

「あぁ!俺の目的は達成された訳だ」

 

「え?本当にコレだけ?」

 

「そうだぞ?」

 

「……マジか……」

 

「行き帰りより…滞在時間が短いね」

 

あー…ジーさんが言っていた意味が分かった気がする…。

とにかくまっすぐなんだ、この人は。

 

 

 

 

 

「今度は俺が……桜と遊びに行くよ」

 

「桜?」

 

「舞鶴の提督だ。女性の提督だぞ!麗さんにとっては嬉しいんじゃないか?」

 

「確かに…あまり他の女性の提督とは接点がないので嬉しいです」

 

「まあ…ライバル登場かも…だけどね」

 

「え?!」

 

「救ちゃんは…誰からでも好かれそうだからね」

 

「ちょっ!!」

麗ちゃんが焦っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰り道で愚痴る。

 

「……なんか疲れた」

 

「良い人だったけどね…」

「私はここから乗り換えだから……またね救君」

 

「ああ!またね」

 

「…意地悪…」

 

「え?」

 

「む…」

麗は救にキスをする。

 

「他の人が来ても振り向いたらダメだよ?」

 

「桜って人が心配なんだ」

救が笑いながら言う。

 

「やっぱり意地悪ー!!」

 

なんて言いながら彼女は帰って行った。

 

 

 

 

 

「さて…俺も…電車に乗るか…」

 

 

「麗さんは…積極的な人なんだね!」

 

「そーなんで……うおっ!?」

そこには松岡修造と長門が居た。

 

 

「やあ!!着いてきた!!」

 

「やあ!長門もいるぞ!?」

 

「今から鎮守府にお邪魔しちゃうぞ!」

 

 

 

 

「嘘ですやん…」

 

 

 

 

ははは!と笑いながら電車船旅を…3人?で楽しみながら提督は帰宅した…とか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




新キャラとそのうち出したい新キャラをのぞかせるだけの会でした。

アンケートご協力ありがとうございました(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)


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145話 再 鳳翔と1日夫婦 ① あなたに贈る"愛してる"

「提督…」

執務室に艦娘達が集まった。

「ん?」

「あのね?僕達って記憶戻ってから…夫婦したでしょう?」

「うん」

「金剛さんとは…お泊まりしたよね?」血涙)

「は…はい」

「鳳翔さんは…提督との記憶が戻る前なんだよ」

「そうだな…しかし…順番が…」

「だから…はい!」
皆は休暇届を2枚出してきた。

「…もう一度…2人の時間を過ごして」

「お前達…?」

「鳳翔さん…て1番頑張ってる人だと思うの」
「だから…」


「お前達はそれでいいのか?」


「うん、私達からも…お願い」

















 

 

 

あの日から…私の気持ちは、ずーっとあなたにあります。

どれだけ世が移り変わろうと…決して変わらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

もっと呼んでください…私の名前を。

 

 

もっと呼ばせてください…あなたと。

 

 

もっと隣に…ずっと隣に居させて下さい。

 

 

 

 

 

 

 

この愛だけは…例え駆逐艦にも…巡洋艦にも正規空母にも、弩級戦艦にも…

 

 

決して負けはしませんから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「〜♪〜〜♪」

「今日のメニューは何にしよ〜?」

「あの人〜のため〜〜に愛情込めて〜」

 

 

なんて歌いながら料理をしていると…

 

ガラッ!!!

 

「鳳翔!!!!」

 

とあの人がダイナミックエントリー。

 

「ひゃわっ!!」

「あ、あなた!?どうしたのですか?」

 

本当に驚きました。変な声出ちゃいました…。

 

息を切らしてハーハー言うあの人。

とりあえず水をお出しします。

「お腹空いたのですか?まだ何も…「休暇を取ろう!2人で」

 

「え?」

 

 

 

 

 

「もう一回…1日俺に君の時間をくれないか??」

 

 

「えと…時間…ですか?」

「いきなりのことで頭が…ついていかないのですが…」

 

 

 

 

 

 

 

 

提督は落ち着いて話をしてくれました。

 

事情を聞きました…。

皆さんが…気を回してくれた…のですね?

 

 

 

 

「いいのですか?」

 

「お願いしたい」

 

涙が出そうになる程嬉しい。

「…はい、喜んで!」

 

 

待ってましたとばかりに艦娘が入ってくる。

 

 

「聞いたか!?よっし!準備は!?」

 

「バッチリやで!ほい!鳳翔!」

 

「え!?コレ…龍驤ちゃん!?」

龍驤から荷物を受け取る鳳翔。

 

「ご主人様!」

同様に荷物を受け取る救。

 

 

「皆で…プレゼントするよ!2人の旅行!!」

 

 

「み…皆さん?順番がまだの人も…」

 

 

「そんなこと気にすんな!平等じゃないとあかんやろ!」

 

「そうそう、鳳翔さんも…あの時と今とじゃ違うでしょう?提督への気持ちが」

 

「演習に…戦闘に…皆のご飯に、皆の為に毎日頑張ってる鳳翔さんに特別休暇をプレゼントします!」

 

「少しだけお節介させてくださいよ!」

 

「ま……私も負けませんけどね?」

 

 

 

 

 

こそりと、鳳翔に誰かが耳打ちする。

「一泊二日の温泉旅行ですよ」

 

「え!?」

と、赤くなる鳳翔。

 

 

 

 

「そうと決まったら急げー!!」

 

「さあさあさあさあさあ!!」

 

半ば追い出されるように皆に船着場から船に乗せられる。

 

「「「「「行ってらっしゃい」」」」」

 

 

皆は笑顔で見送る。

心の底から…楽しんで欲しいから…。

 

 

軽空母として、後輩の指導にあたる鳳翔。

航空戦隊として戦場に出る鳳翔。

居酒屋鳳翔…皆の憩いの場や美味しい料理を提供してくれる鳳翔。

秘書艦として…提督を支える鳳翔。

 

 

鳳翔さんは頑張り屋さんだから…。

ほんの少しだけのお節介よ…。

 

 

 

 

 

船から降りて電車に乗る。

旅のしおり曰く、到着予定地はとある温泉旅館。

 

 

「えと……温泉の一泊2日旅行…?」

 

 

「あなたはいいのですか?私と…その…温泉旅行なんて」

 

「…鳳翔は?」

 

「わ、私はせひ、あなたと過ごしたいです」

 

 

「俺も…鳳翔と居たい」

 

 

 

 

嬉しい。

本当に嬉しい。

 

 

 

 

船と電車に揺られて…目的地まで着きました。

 

「思ったより早く着いたね」

 

「そうですね」

 

チェックインまでかなり時間があるので周辺を散策します。

 

 

人…多いな…。

 

手…繋ぎたいな…。

なんて思っていたら…。

 

 

「はぐれないように」

 

「あ…」

 

彼が…私の手を取ってくれた。

 

 

私も指を絡めます。

恋人繋ぎで…。

 

 

 

さすがは温泉街…。

色々なお店がありますね。

 

 

「何を見て……あ!!」

 

「あ!いや…たまたま!たまたまだ!!」

 

「あなたは…私が居るのに…ああ言うお店に興味があるのですね?」

 

提督の目の先には……ピンク街の路地が…

まあ…これも土地柄仕方ないのでしょうけど…少し意地悪しておきます!

 

「そんなことない!たまたまだって…。俺には鳳翔が居るから」

 

 

 

 

 

 

「…したいのなら……いいですよ?」

 

 

 

 

 

「え?」

 

「…さあ!!行きましょう?そろそろお昼にしましょう?」

 

「ちょ!鳳翔!?」

 

 

 

 

 

 

 

「ん〜♡美味しい〜」

満足そうな鳳翔の顔。

 

名物の牛タン味噌焼きを食べる。

 

「うん!うまい!」

 

「今度居酒屋でも出してみましょうか」

 

「そうだな!皆喜ぶぞー?俺も喜ぶそー」

 

「なら…ださなくちゃですね」

 

 

「あなた?」

 

「ん?」

 

「はい、あーん」

 

「は…恥ずかしいな…あーん」

もぐもぐ

 

「どうですか?」

 

「…数倍美味しく感じるよ」

 

「まあ//」

 

 

「新婚さんですか?仲が良いのですね」

と、店員さんが話し掛けてくる。

 

「はい!新婚旅行なんです」

照れ臭そうに…それでも嬉しそうに答える鳳翔。

 

「あら!綺麗な指輪ですね〜」

 

 

「はい…私の宝物なんです」

 

「……」

 

「良かったですね!旦那さん!」

 

「はい…本当に…」

 

 

「?あなた?どうかしましたか?」

 

「…いや!なんでもない」

 

 

 

 

宝物…か。

画面越しの…贈り物でも宝物と言ってくれるのか。

 

 

 

少しだけ自分の中で何かが、もやもやした。

 

 

 

 

 

 

 

また2人で歩く。

 

 

「お兄さん!やってかない?!」

 

商品は…ぬいぐるみ?置物?

 

 

「柴犬のぬいぐるみかわいいな」

 

射的…あぁ…スコアを競うのね?

うん?弓もあるのか?

 

 

鳳翔の方をチラッと見る。

「私…やってみてもいいですか?」

目が輝いてらっしゃる。

 

 

 

 

「おっ!奥さん!やるかい?弓は難しいよ?!」

 

「少しだけ経験がありますので…」

ニコリと微笑む鳳翔。

 

嘘つけッ!毎日構えてるだろうッ!!

とは言えなかった。

 

 

「ほー…やってみなよ」

こちらもニヤける店主。……俺、しーーらね!!

 

 

 

「あなた?アレ取ってみせますから!」

 

「おっ!期待してるよ!」

 

 

 

 

「……」

シン…と集中する鳳翔。

鳳翔の周りがピリピリする中でも鳳翔は微動だにしない。

 

 

そして…

 

シュッと放たれた矢は…的のど真ん中を射抜く。

 

「あー!当たりました♪」

などとわざとらしく言う彼女。

 

 

「ひゃーー!すげえ!真ん中だ!このぬいぐるみでいいのか?」

 

「はい!主人が欲しがったものなので」

 

「ほいよ!旦那さんは…幸せものだねえ!こんな美人な上にすげえ奥さんなんだからよ!」

 

 

「…はい。本当にもったいないくらいの…最高の嫁ですよ」

 

 

「……あなた…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなた…どうかしたの?」

 

彼は答えない。

 

「…あなた?」

 

私は不安になって呼ぶ。

 

 

 

 

 

「鳳翔」

 

「指輪…貸してくれないか?」

 

「え…いいですけど…」

 

 

 

鳳翔から指輪を受け取る。

他の指輪と…どこも変わらない指輪。

 

もっと高い指輪を贈ることもできる。

もっと煌びやかな指輪を渡すこともできる。

 

なのに彼女は…彼女達は、画面の向こう側からのプレゼントを…宝物と言ってくれた。

 

俺は知っている。

皆…時折、指輪を眺めてその頬を緩ませてるのを。

 

 

俺は…鳳翔に背を向けてゴソゴソとする。

 

「あの…あなた?返してくださいね?」

 

 

「わかってるよ」

 

 

……

「鳳翔」

 

「はい」

 

彼は振り返り…

小さな箱を彼女の前に差し出す。

 

 

 

誰にでもわかる…。

指輪の入った箱。

 

もちろん中身はさっき預かったものだ。

決して新しいものではない。

 

新しい方が綺麗だろう…。

しかしそれでは意味がないのだ。

鳳翔にとっては…()()()()()()()()()()()()()()()()意味があるのだ。

 

 

 

 

「もう一度…しっかりと君に贈らせて欲しい」

「君が宝物と呼んでくれた…コレを」

 

 

そう。

俺の自己満足だ。

 

しかし…

画面の向こう側とは違う。

 

今は目の前にいるんだ。

 

だから…贈らせて欲しい。

この手で

直接君に。

 

 

 

 

「………」

鳳翔は口元に手を当てている。

目が潤んでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は…色々君に心配をかける。苦労をかける。…強い人間でもなければ…賢い人でもない」

「それでも…君と歩む明日のために精一杯頑張る」

「君を1人にはしない。きっと君を幸せにしてみせる」

 

「だから…改めて受け取って欲しい!直接、渡させて欲しい」

 

 

「俺と…ケッコンしてほしい」

 

 

「…は……い」

彼女はポロポロと涙を流す。

 

 

 

他の人が指輪を受け取るのを見て羨ましいと思っていた。

 

既にもらっている自分としては…そんな贅沢も言えないな…と思っていた。

そんな一泡の夢が…叶ったのだ。

 

彼女はすっと…左手を差し出した。

 

 

彼の温かい手が…彼女にそっと触れて…

左手の薬指に…また重さが戻ってきた。

 

 

「ありがとう……ございま…す」

 

 

彼女は彼に飛び付きます。

 

「良かった」

彼は言いました。

 

「あなた…もっと強く抱きしめて下さい」

 

「わかった」

彼は力強く抱き締めます。

彼女の華奢そうな体を…愛おしそうに…それでも強く。

 

 

 

 

「指輪だけ…ですか?」

と、私は目を閉じる。

 

 

「…鳳翔…愛してる」

 

あの人と唇が重なる…。

 

キスが終わると…私も言います。

「私も愛しています」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ良い時間ですね」

 

そんなことをしてる間に…チェックインの時間になったので宿へと向かう。

 

 

 

 




鳳翔編…
全投稿では150話行ってました。
早いもんで……



やっぱり…ね
記憶戻ってからの…方がいいかなと…。


あまあいお話。
お楽しみ頂けましたか?
少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!


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146話 再 鳳翔と1日夫婦 ② あなたに贈る"愛してる'"

「いらっしゃいませ…神崎御夫妻様でございますね?本日はご来館ありがとうございます」

 

「あ…どうも」

 

「…はい」

神崎御夫妻…だなんて////

 

 

 

 

部屋は広い!綺麗!

部屋の奥には…露天風呂付き…!

 

あー残念だ!この素晴らしさを伝えきれないのが残念だ!語彙力が足りねえ。

 

そのくらいいい部屋。

 

そのくらいいい部屋!!!

 

 

 

 

「お部屋にも露天風呂がございますのでお楽しみください。その間に御夕飯の準備をしておきます」

 

 

 

 

まあ…温泉旅館といえば…?

 

 

そう…

 

 

 

露天風呂

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「…お背中…流しますね?…」

 

「あ…あぁ」

 

「力加減は…?大丈夫ですか?」

 

「ちょうど良いよ」

 

「前は…」

 

「自分でやるよ!」

 

 

 

 

 

部屋の方では夕飯を運んでくれているのかパタパタと音が聞こえる。

 

 

 

 

 

 

むぎゅ

鳳翔が背後から抱き付いてくる。

 

「……!?!?ほ、鳳翔!?」ボソボソ

 

「……少しだけ…このまま…」ボソリ

 

 

 

 

背中ッ!!

せなかぁぁぁぁぁあ!!!!

 

やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい!!

背中に…感触がッ!!

鳳翔の……つつま…「あなた?」キュッ

 

「ゔっ!?」

 

 

首ッ!!首はマズイですよ!

 

くるりと振り返る。

 

 

 

「あ」

 

「あ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人ともの顔が紅いのは…のぼせたからでは無いだろう。

 

 

 

 

 

「地元で取れた鯛のお造りと……」

と、説明が入る。

 

 

「「いただきます」」

 

 

「…うまっ!!」

 

「美味しい…!!」

 

 

「ありがとうございます。心ゆくまでお楽しみくださいませ」

と女将さんは去って行く。

 

「美味い」

 

「む…少し悔しいですね」

「でも…美味しい」

 

 

「鳳翔と2人きりで温泉入って…食べるから余計に美味しいんだよ」

 

「私…とだから?」

 

「うん…愛する人と食べるから美味しい」

 

「……////」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほい、飲むでしょ?お酒」

 

「はい、頂きますね」

 

「何か新鮮ですね、あなたにお酌してもらうなんて」

「ぷはぁ…美味しい…です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたあ〜〜もっろ飲みましよおお」

 

「鳳翔…?もう…」

 

「まだ飲みます!!」

「あなたも飲むの!」

 

「え!?」

 

 

「美味しい〜れす」

鳳翔…?コレ…そんなに強いの?

 

 

 

 

「えへーあなたあ〜だいしゅきーー!!」

 

「うおおおお!?!?」

 

「あなたあ♡しゅきー…らびゅーー」

ちゅっ ちゅっ

 

 

「逃しませんよ?」シュルシュル

 

 

「ほ、ほうしょおおおおおお!!ちょっ!帯!俺のも!?アカンて!!鳳翔さんんんんん?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ…ふぁあ……おはようございます、あなた」

 

 

 

「……おはよう…鳳翔…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

乱れた服装の提督。

 

 

 

 

首元とかには……キスマーク…。

 

 

 

同じく乱れた服装の私…。

 

 

 

 

「…あ、あなた?私…もしかして…」

 

「…無理矢理…(酒を飲ませようと…)…(お酒の強要とスキンシップが)激しかった…」

 

「んなっ!!わ、私ッ」

 

 

ええええ!?わ、私…やってしまったの!?

ついに!?ついに!?

提督を…押し倒して…襲ってしまったの?!

 

 

「あ…あなた?その…責任とります」

 

「…大切に育てるので幸せな家庭築きましょうね?」

 

 

「え!?」

 

「え?」

 

「お酒の話…だよね?」

 

 

「……え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございます、お楽しみ頂けましたか?」

 

「はい!!」

「ええ、もちろんです!お料理も美味しくて…」

 

「うふふ、良かったです。またお越しくださいね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰り道を…歩く。

この時間が…終わってほしく無い。

永遠に続けばいいと思う。

 

 

このまま…2人で逃げ出せたなら……なんては思わないけど…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたにこの世界で会った時…

あの時は…無我夢中だった。

 

いいえ…生きる事に疲れて…諦めていた。

あの子をいじめるあなたを突き飛ばせば…

ああすれば…私はこの苦から解放(解体処分)されると思っていました。

 

 

なのにあなたは…

私に謝って…泥も払ってくれて…

 

 

 

あなたは…私を建造してくれた(呼んでくれた)時…喜んでくれましたね。

 

決して強いとは言えない軽空母の私を…あなたはコツコツと育ててくれました。

 

 

こちらから見えるあなたは…

画面越しにでも暖かくて…。

着任(ログイン)を毎日楽しみにしていました。

 

 

他の空母が来てからは…会える時間が少し減りましたね。

少し寂しかったですけど…仲間も増えて嬉しかった。

 

遠征…出撃…演習…あなたは私に色んな居場所をくれました。

 

 

私は幸せでした。

 

周りが改ニが増えて行く中でも…

私は改のままでした…もっとお役に立ちたいのに…。

 

それでもあなたは…私を見捨てないでいてくれましたね。

 

 

ある日…

あなたは私に指輪をくれました。

その日から…私の左手は少し重くなりました。

幸せな…重みです。

 

 

 

 

 

あなたのいない

あの日々は…思い出したくもない。

 

 

あの時も…今も

 

 

 

やっぱり…私を救ってくれるのは…あなたなのですね。

 

 

 

 

 

もう…あなたのいない世界なんか考えられない。

 

 

 

 

 

 

 

私の愛は…

きっと…駆逐艦にも、巡洋艦にも…正規空母にも、弩級戦艦にも負けません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつか本当に…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっという間だったなあ」

 

「そうですね…でも私は……とても幸せでした」

「また連れてきて下さいね?」

 

「もちろん!」

 

 

 

恋人繋ぎする手を…ぎゅっと握り言う。

 

 

 

「あなた?」

 

「何だ?鳳翔?」

 

 

「…もっと呼んでください…私の名前を」

 

「鳳翔」

彼はその名前を呼ぶ。

 

 

「はい」

笑顔で答えます。

 

「鳳翔」

もっと…慈しみを含んだ声で彼は呼ぶ。

 

 

 

「はい!」

それを噛み締めるように…私は答えます。

 

 

 

もっと呼ばせてください。

愛しい…愛しい…あなたを。

 

「あなた」

 

「なに?」

 

「あなた!」

 

 

「なんだい?」

 

 

 

 

 

彼女は最高の笑顔で言う。

 

「愛しています…」

「心の底から…私はあなたを愛しています!!」

 

 

ありがとう…提督。

愛をくれて…ありがとう。

この温もりを…ありがとう。

 

 

 

 

 

 

 

「お酒は程々にね?」

 

「う……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆…ありがとうね?」

 

 

「楽しかったなら良かったよー」

 

「せやなー次はアタシらの番やけどな」

 

「……で?どこまでやったんや?」

 

「え?」

 

「2人で温泉旅行でしょ?!…やっちゃった?」

 

「……秘密です♡」

 

「ノーデース!!意味深な発言はノーデース」

 

 

 

「お腹空いたよー鳳翔ー」

 

「あ!!ダーリン!!」

 

「ねえ!!やったの!?やったの!?」

 

「え!?何が!?」

 

「営み」

 

「営み言うな!」

「ノーコメントで」

と、笑いながら彼は言う。

 

 

 

 

「ああああ!!!」

「だーーりーーーん!何!その首元おおお!!!」

 

 

 

 

「鳳翔さんも意外と…積極的な……!あ?!?」

 

 

 

「鳳翔さん…首元…」

 

 

「え…?」

 

 

「あああああ!!!」

「ダーリン!?!?」

「ご主人様ぁぁあ!!!!」

 

 

「大丈夫!!それだけだから!!」

 

 

「「「「「うがーーー!!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

ほんの少しの…朧げな記憶。

「鳳翔…?俺だって…我慢してんだぞー」

「今は…これまで」 チュウー

 

 

「うふふ…」

 

 

「あなた!逃げましょう?」

「え!?あ?!」

 

彼の手を引っ張り逃げる。

 

 

 

「待てええええ!」

「「「にがすかあ」」」

 

居酒屋も鎮守府もいつにも増して賑やかになりました。

 

 

 

 

いつか本当に…2人でお店をやるのを楽しみにしてますね。

 

 




お気に入りが……500…だ…と?

夢…なのか?

焼肉…いいすか?
焼肉…食べたくて…。


この作品は皆さんのお陰で支えられております。

本当にありがとうございます。
他にも良作がたくさんある中で…お時間を頂いて見て頂けるだけで幸せです。


これからも…暖かく…暖かく!!見守って頂けたらと思っています。








部屋の説明…は
俺の語彙力が足りませんでして…さーせんした。


旅館とかにある謎のスペースってあるじゃないですか?
窓際の…机と椅子置いてあるやつ
アレって何なんでしょう?





R-18にはできません(๑╹ω╹๑ )
主人公はきっと人間離れした理性の持ち主なんだと思います!!


甘すぎる話でした。後悔はしていない!むしろ
そっちの方がいい!


お楽しみ頂けましたか?
少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!


コメントやメッセージ、評価、感想等お待ちしています!
お気軽にお願いします!


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147話 提督 赤城ト1日夫婦 ① 幸せの…あの味

「おはようございます!どうぞ!朝ごはんです」

 

 

そんな朝から始まる一日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の目覚めは…いい匂いからスタートした。

 

提督…との呼び声で目覚めた俺は、部屋のちゃぶ台の上に並べられたご飯と、横でしゃもじと茶碗を持って正座している赤城が目に入った。

 

 

ニコニコと笑顔で

「(ボソッ)朝ご飯ですよ。さあさ、洗顔等終わらせてきてください!あったか出来立てのご飯が待ってますよぉ」

 

 

 

 

 

「…さすが赤城だ……。結構早い時間……ん?」

 

 

そこで俺は気付く。

「え?外まだ…暗い……」

 

 

そう、外はまだ真っ暗だった。

 

「…?え?」

時計を見ると……3時半だった。

 

 

 

 

 

「赤城いいいいい!!!」

 

「あら!お早いですね♪さあ…「時間ッ!!今の時間は…」

 

「ええ…3時半ですね。(早)朝ごはん…ですが?」

 

「夜中だよッ!!」

 

「ちょっと何言ってるかわかんないですね…」

 

 

 

 

人生初の早朝ご飯……てか夜食じゃね?

 

 

 

目の前には普段使いの茶碗でなく、赤城の茶碗(提督用)

一杯で3合のご飯が入るぞ!

 

うどん用のどんぶり?

味噌汁用だぞ!

 

焼き魚…

何の魚?ねえ?コレ何の魚?

鯛?60cmはあるよ?

 

 

 

 

 

 

赤城の方はそれの倍くらいあるけど…

 

 

「………死ねる」

 

 

 

 

「何を言ってますか!朝ごはんは1日の活力を作るんですよ!?食べなきゃもちませんよ!」

 

「これ食う方が…体もたねえよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに…その3時間後には

 

 

 

 

 

 

 

「提督?(本当の)朝ご飯ですよー!」

 

 

「……はい」

 

 

 

 

「…朝カレー?」

 

 

「はい!私カレー大好きなんです!」

 

「そーいや比叡のカレーもめっちゃ食べてるよなあ…」

 

「比叡さんの成長は凄かったです」

 

「赤城のカレーも美味しいけどな?」

 

「…でも、私の作るカレーは最高ではないです」

「あの味に比べたら……まだまだ…同じレシピで作っても…」

 

「?」

 

「さあさ!食べましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「行ってらっしゃい」」」

と見送られる俺達。

もうお約束になった。

 

 

 

 

 

食べ歩き…かと思いきやショッピング。

 

何でも茶碗をオーダーメイドしたとか…でそれを取りに行きたいとか。

 

 

「…ッ!!」

世間は俺には広すぎた。

茶碗…とは?と言いたくなる赤城印のご飯茶碗。

もはや…小型の炊飯器?とすら言えるほどのそれ。

味噌汁の碗のはずなのに…俺にはラーメン用の丼にしか見えない。

 

「これも赤城のか?」

 

「いいえ?提督」

 

と、差し示されたのは俺用の食器…らしい。

 

…3合は入るであろう茶碗に

小型の丼のような汁用の碗。

デザインは赤城のとお揃いのだ。

 

 

「お揃いですよ♪」

 

 

「わ、わぁい…ありがとう」

 

「これで沢山食べられますよ!」

 

「……せやな…」

 

 

 

 

 

 

「あ…」

赤城が言う目線の先には…。

 

箸と箸置きがあった。

シンプルながら…上品さを感じるそのセットは俺も思わず良いなと思う程だった。

 

「どうかしたか?」

 

「あ、いえ、何でも…」

 

「お揃いで買う?」

 

 

「…ッ!?何故わかったのですか?!」

 

「いや…何となく…だ。俺たち夫婦だろう?それくらいいいよ」

 

「あ…ありがとうございます//.」

 

決して優しい値段ではないが、赤城の笑顔の為なら安いものだ…

本当に下手な飯屋よりマジで安い。

 

 

 

「はい…!直接手渡ししたかったので…」

と、さっきのセットを差し出してくれる。

「いつも…ありがとうございます!いつものお礼です」

 

 

その笑顔に俺の心はキュッとなった。

嬉しいんだ。

 

 

「ありがとう…。なら俺も贈るものがある」

 

「え?指輪で「そうだ」

 

「え…」

 

「受け取って欲しい…」

私の目の前に差し出されたのは…ずっと…ずーっと欲しかったもの

 

「いいのですか?」

 

提督は何も言いません。

 

「提督?」

 

「いいのですか?と言う意味がよく分からなくてな…。贈りたいから…受け取って欲しいから贈る…ではダメか?」

 

「いいえ!いいえ!!喜んで!謹んで!!お受けします」

 

 

提督が私の左手の…薬指に指輪をはめてくれる。

 

この幸福感…

皆もこんな気持ちだったのですか??

……あぁ…温かい…。

 

 

「赤城…いいか?」

 

「え?」

 

「もし…いいなら目を閉じて欲しい」

その意味は…よく分かった。

でも

 

「目を開けてちゃ…だめでしょうか?」

 

「いいけど…どして?」

 

「見逃したくないんです…私の初めての…キスを受け取ってくれるあなたの顔を…」

 

「そう言われると…照れるな。うんいいよ」

 

 

 

 

 

 

唇が…触れて…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……幸せです」

 

「ならよかった…めちゃくちゃ恥ずかしいけど」

 

「私もです…うふふ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?はやかったのね?」

と、陸奥が出迎えてくれた。

確かに早い。まだ昼の15時とかだ。

 

起きたのが3時半なので…感覚がおかしくなっていた。

 

 

 

 

少しきてください…陸奥さんも…と、赤城は言った。

 

「ん?」

と…ついて行く俺。

連れてこられたのは食堂。

 

 

「あら?早い帰り…だね」

ちょうどおやつタイムだったのか…珍しく間宮達もお茶をしていた。

 

赤城は皆の前に俺を立たせるようにして…俺の前に立った。

 

どうした?と皆もコチラに注目する。

話を聞いた全員が集まってきているようだ。

 

 

 

「どうしたんだ?赤城」

 

 

 

 

 

 

「私は…お願いがあります」

赤城は少し俯き加減で言った。

 

「お願い…?」

 

「はい、お願いです。きっと優しいあなたは断らないだろうと思いますけど…」

 

 

 

「でも、これは私1人が…独り占めしたくないものなので…皆さんの前で言おうと思いました」

 

一体…何だ?

 

「私には…ずっと忘れられないものがあるんです」

 

 

 

赤城が言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督…私に…私達にカレーを食べさせて下さい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




赤城印の丼持ってます!
てか使ってます!

提督用の食器セットも持ってます!現役です!


赤き魔のエンゲル係数は…高いです。
簡単に奢るよ!なんて言った日にはギャンブルで負けた人みたいになる事は必至です。


続きますよ(๑╹ω╹๑ )!!


少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!


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148話 提督 赤城ト1日夫婦 ② 幸せの…あの味

あの日…私を救ってくれた…あの…カレー。


どれだけのカレーを食べようと…それには敵わなかった…。
























「…カレー?」 

 

どんな料理がお願いされるのかと思いきや…カレーだった。

 

 

 

 

「はい」

「カレーが食べたいのです」

 

「なんでまた…?」

「そうか…今日は金曜日ではないからか?」

「メニューの変更をお願い…か?」

 

 

「少し違います」

 

「どう言う意味だ?」

 

「それは…私は…間宮さんや…鳳翔さんの料理もとてもとても大好きなのですが…。カレーは…皆の料理より私に深く刻まれている料理なんです」

 

「赤城の…心に……?」

 

「はい。私は…料理は活力となるもの…楽しみ…色々な捉え方をしてきましたが……"料理に救われる"…そう思えた料理があったのです」

 

「料理に…救われる?」

一体なんだ…?なんでカレーが赤城を救ったと言うのか?

 

 

「それは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの日に提督の作ってくれた…カレーです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?!?」

 

 

「提督は…余り思うところは無いと思いますが…私にとっては…闇の中に射したひとすじの光のように感じました」

 

「ご存知の通り…あの日までの私達は、暗闇の中を悲しみに耐えて生きてきました」

 

「あなたが来てから…全てが変わりました。まるでヒーローがピンチの仲間を助けにくる映画のワンシーンの様に…」

 

「初めての日は…皆で野宿しましたね」

「その次の日に…」

 

そうだ。

旧舎をぶち壊して…野宿したなあ…。

 

 

 

「ずっと…ここにいるメンバーは覚えているでしょう?知らない方に関しては置いてきぼりですみません………それでも想像できるはずです」

 

「あの日…新しい提督が来て…野宿をした次の日に…この食堂が出来たばかりの日に…久しぶりの入渠が終わった時に…鼻から頭に駆け抜けたカレーの匂いを…」

 

「お帰り…と笑顔で一人一人に、その温かいものをよそってくれたことを…」

 

「震える手でお皿とスプーンを持ったことを…」

 

「味と匂いと…なんとも言えない気持ちが…自分をめちゃくちゃにしたことを…」

 

「初めての味は…涙でしょっぱかったこと…」

 

 

 

「皆で泣きながら食べたことを…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「物凄く…生きててよかった…幸せだと思えたこと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督が作ってくれたカレー…涙で塩っぱかったですけど…今迄の艦生の中で…あのカレーを超える温かみに溢れた…私を救ってくれた料理はありません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ…あの時の…俺が作ったカレー…。

 

 

 

たまたま…カレーだったのだ。

たまたま材料があったから…。

何か特別なことを考えて作った訳でも無い。

 

 

 

ただ、そこにあったのは…

 

 

 

君達の力になりたい…。

どうにか…あの地獄を少しでも忘れられる、安らぎを…。

守りたい…と言った気持ちだったのだ。

 

 

 

 

なのに彼女は…それが私を救ってくれた…と言う。

間宮や鳳翔や伊良胡を差し置いて…それ以上に出会ったことがない…とまで言う。

 

 

 

「赤城…」

 

 

「だから…あなたのカレーを…食べさせてくれませんか?」

 

 

 

 

 

 

皆も…儚げな表情で俺を見つめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…食べたいっぽい」

 

 

 

 

 

 

誰かが…ポツリと言った。

 

 

 

その声に続くように…

 

 

「食べたいです…提督のカレー」

その日を思い出すように…潤んだ目で言う。

 

「食べたい…」

「私も…」

「ウチも…」

「俺も…」

 

 

 

 

 

 

「食べてみたいですわ…指揮官様のカレー…」

 

その時を知らない組も…言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「救君…そっか…カレーは得意だったもんね」

 

「迅鯨…?」

 

「私も覚えているわ。あなたが…孤児院の家族皆の為に作ってくれた…カレー」

「そのカレーは…ここでも皆を幸せにしていたのね」

 

迅鯨(秋姉さん)はニコリと笑っていた。

 

 

 

 

いつの間にか…赤城を先頭に、艦娘がコチラを見るようになっていた。

間宮や伊良胡まで…

 

「たまには…お仕事休みでも…いいかなあ」

「そういえばカレーの材料が…あまってたような」

 

「…確かにあのカレーを超える料理は…作れる気がしません」

「あのカレーになら負けても…いいです」

 

鳳翔が言う。

「あなたのカレー…忘れられないんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…作るよ!」

 

「久しぶりに…下手かもだけど…作るよ!」

 

 

皆の表情が明るくなる。

 

 

 

 

 

 

 

ご飯は…水を吸わせる。

 

野菜は一口サイズに……あの時と同じように。

 

隠し味は………チョコレート。

 

 

 

 

 

何故だろう…こんなに嬉しいのは。

 

 

カレーを混ぜる手が…幸せだ。

 

 

 

ただ違うのは…あの時は……皆は入渠していた。

 

今は…皆が…まるで子供のような表情で俺を見つめている。

そこには…昔を知る艦娘も…そうでない艦娘もなかった。

ただただ、その幸福(カレー)を今か今かと待ち望んでいた。

 

 

 

 

 

段々とあの匂いが漂ってくる。

 

頭の底から呼び起こされるあの光景。

 

 

 

 

 

 

「…でき…た」

 

 

 

 

 

 

「あぁ……あの時と同じ…」

 

 

 

赤城には…いや、皆には見えた。

 

ボロボロのまま居た彼女達にどんな傷でも高速修復剤を手渡して入渠へ行かせてくれた…あの人。

 

実は…罠じゃないのか…?と思いながら入渠し…

出てきた時に食堂から漂った…カレーの匂い。

皆が自然と…足を運んだ。

 

 

見える…。

 

あの時の自分が見える…。

 

色んなことがありすぎて…ただでさえ情報過多で頭がパンクしそうな時だった。

提督から皿を受け取り…座って…。

 

 

その過去(幻影)が…見える。

 

 

 

 

「あぁ…」

吹雪達もきっと見てるのだろう

 

 

「…これは…」

桜大鳳達も…きっと。

 

 

何名かが配膳を手伝ってくれる。

 

 

 

 

 

 

皆は…その幻に着いて行くように…あの時と同じ席へ行く。

 

 

 

違うのは…記憶があること

違うのは…仲間が増えたこと

同じなのは…変わってないのは…今も昔も変わらない愛情を向けてくれる…あの人。

 

 

 

 

 

––––頂きます–––

 

私は…目を閉じてそう言った。

スプーンにひと掬いした…金色に輝く幸せ(提督のカレー)

 

この匂い…。

 

やっぱりスプーンを持つ手が震えてる。

 

 

それを口へと運ぶ。

 

口の中に広がるのは……これもまた…幸せな思い出の味(あの時と同じ…味)

 

 

涙が…自然に流れる。

 

どんな宝石も…金銀財宝も…このカレーの前では無意味なもの…と言ってもいい。

 

 

 

 

思い起こされるのは…暗闇から差し伸ばされた温かい手。

もう…これ無しじゃ生きていられない程の…温もり。

 

 

「やっぱり…美味しいなあ…これ」

「う、うん…わがるよお…」

 

 

 

「あの味だぁ……」

 

 

「…ううっ…ぐすっ」

 

 

 

 

「…ッ?」

違う世界の…ベルファスト達が

 

「…」

海外艦のアークロイヤルが

 

「…うん」

彼を知る…迅鯨が

 

「………」

何故だかいつの間にか居る麗や武蔵までもが

 

 

 

言っていないソレを感じ取るように涙を流す。

 

 

 

 

 

ふと…周りを見る。

 

 

『美味しいね』

あの日の私達が…語りかけてきた。

 

 

その顔は…とても優しくて…笑顔だった。

あの加賀も、霞も…金剛も…。

 

 

「はい!とても…美味しいです」

私達は…そう答えた。

 

 

 

その過去とも言える幻は…笑みを浮かべながら…消えた。

 

 

 

「ありがとう…提督。私は…もう一度救われました」

 

 

違うんだ赤城…皆。

救われているのは…俺なんだ。

 

 

俺は今日…またお前達に教えてもらった…。

俺にも…もっとできることがあると。

 

 

ありがとう。

 

 

 

 

 

「おかわり…ありますか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もちろん…

あr「「「「「「おかわり!!!」」」」」」

 

 

 

 

「大盛りでッ!!」

 

「私もっ!!!」

 

目の色を変えてカレーを食べる艦娘。

 

 

 

え?さっきまでの気品?

…知らない子ですね。

 

提督カレーは一瞬にして無くなった。

 

「うわぁぁあ!!カレーが!!カレーがぁあ!!」

膝から崩れ落ちるのは葉月、文月。

 

「私のを分けて…あ」

私のを分けてあげようと言ってしまった長門カレーは一瞬で消え去った。

 

 

「…天使の笑顔を…見られたなら…」ギリッ…

 

 

 

鍋は空になり…

むしろピカピカになるほどに取り尽くされた鍋。

 

響く阿鼻叫喚。

 

 

 

 

 

 

 

 

その時だった。

 

 

「追加のカレー…もってき……」

全視線が提督の手元に集まる。

「どうした?足りんだろうと思って…」

 

 

「「「「神!私らを救う神!!」」」」

 

 

「大袈裟だなあ……」

と言いながら周りを見る。

 

膝から崩れ落ちていた長門やその他を見る。

希望の眼差しでコチラを見る夕立(犬)、時雨(犬)

響き渡る熱狂の提督カレーコール。

「……間違ってないかもしれない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後片付けを赤城と行う。

 

 

 

「フフ…ありがとうございました」

 

「いえいえ…こちらこそ」

 

 

「提督?」

 

「ん?」

 

「愛しています」

 

「俺もだ…」

 

赤城が…隣へ寄ってくる。

「…えへへ」

 

「いいものだな」

 

 

赤城が…ちゅっ と俺の唇に触れる。

 

 

「愛しています!」

 

 

 

 

 

 

 

片付けを終えた…。

 

 

 

「さて……」

 

 

「どうしたのですか?」

 

「俺も自分の分のカレーを実はおかわりで取ってあるんだ…それを食べようと思ってな」

 

「なるほど…なら私もお茶をお出ししますね」

 

 

ブーーンとレンジの音が聞こえる。

私はお茶を注いでテーブルに座っています。

 

一口くらいなら…くれるかな?とか思ったり。

 

 

 

そして提督が持ってきたカレーは2皿だった。

 

「え?これ…は…あ…お皿も」

今日買ったお皿だった。

 

「ん?後で夫婦2人水入らずで食べようと思ってな」

「箸は使えないけど…お皿は使えるだろ?お腹いっぱいか?」

 

 

「いいえ!そんな事はありません!頂きます!」

 

 

「えへへ…さっきより美味しいです」

 

「提督」

 

「ん?」

 

「あーんして下さい…食べさせて下さい」

 

 

「あーーん」

 

 

「あーん……ん、おいひぃです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督?」

 

「ん?また、あーんか?」

 

 

 

 

 

「愛しています!!」

 

 

 

 

赤城の幸せそうな顔がそこにはあった。

 

 

 

「あーー!2人ともずるい!!」

「本当だ!!」

 

「赤城…さん?そのカレーは…」

加賀が愕然としていた。

 

 

 

「これは譲れません!」

赤城は笑いながら言った。

 

夜の食堂は少しだけ騒がしくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後全員が来てめっちゃ騒がしくなったけど…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

片隅からあの日の影が…のぞいた。

笑顔溢れる未来の自分達を見つめていた。

 

幸せ…。

ありがとう…提督。

 

またそれは…ふっと消えた。

 

食堂の風鈴が…チリンと鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




少し消えてたとこがあったので修正してますー、



思い出の味ってありますか?
昔よく行ってた…閉店したお店の味とか。
親の料理の味とか。


少ししんみり…するはずだったんですが
だったんですが…
耐えられなかった…すまねえ赤城さん…
俺ぁ…少しでもクスッとしてもらえたなら幸せだあ…。

良かったらお気に入りに登録お願いします!


メッセージとか…感想とか…評価とか…お待ちしてます(๑╹ω╹๑ )


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149話 提督のプライバシー(笑)

今回はかなり短めです!

アンケートあります!
またまたまたまたよろしくお願いします!


 

 

 

 

「ぽーーい!お邪魔しますっぽーーーい!」

 

とワンコが布団に潜り込んで来る。

 

 

 

 

もはや、セキュリティ(笑) プライバシー(爆笑)な俺の部屋。

6回…6回だ…鍵を交換したのは…。

 

今月でな!!まだ10日だぞ!!

 

 

 

 

 

一時は12桁くらいのパスワードを要求した鍵も導入した!

 

 

 

 

「あれ?…確か…………78じゃなかったっけ?開かねえや」

 

「違うわよー提督〜。…………18だよー?間違えやすいですからねえ…7と1は」

 

「おっ、そうだな!ありがとう!」

 

「いえい…ふぐっ?!」

「へ…へいほふ?」俺に顔を掴まれているのは…常習犯の一員と化した艦娘。

 

「何故知ってる?」

 

「…ふ…ふぁんふぁふぁふぁーーん」

 

ダメだ…頭がパンパカパーンだった。

 

 

 

 

酷い時なんか…鍵交換の業者を見送って部屋に入ったら…既に艦娘が居たッ!!なんて事があったよ!!

その鍵は一回も使う事なく…業者にカムバック願ったよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別の日は…

 

「…僕が先なんだけど…?」

 

「…後輩に譲るつもりはないの?」

 

と、艦娘が言い争い。

 

 

とある日は2人で艦娘が共にやってくる…とか。

 

 

 

最近はあの大人しかった艦娘ですら…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「プライバシいいいいいい!!!」

 

 

 

その日は提督の叫びが鎮守府にこだました。

 

 

「大丈夫…ですか?」

 

「指揮官は…大変みたいだねえ…」

 

そう言うのはその日の秘書艦。

 

「お前達もそう言いながら入るんでしょ!?私わかるわッ!!」

 

「うわあ…余りの出来事に提督がこわれとるねえ…」

「おいで…」

 

「ダレモシンジラレナイ」

 

「野生化した!?」

 

「ほら…怖くないよ」ぎゅっ…

 

「うぐッ!!!」

 

「ほーらよしよし」

 

「ありがてえ…ありがてぇ!!」

 

「ちょっ!提督!そんなに暴れたら…」

 

チリン

 

「……?あ…何か落とした………あ」

 

「「あっ」」

 

「何処かでこの鍵…見たことあるなあ…」

 

「そ、そうかなあ?」

 

「俺の部屋の鍵…だねぇ…」

 

 

「バレたなら仕方ない…やるよ!相棒!!」

 

「よしきた!!」

 

 

 

………

 

……

 

 

「はっ!!ここは?俺は?アイツとあいつが!!ッ!!」

 

 

 

「何言ってんの?」

 

「私達が何か?」

 

 

俺は夢の内容を話した。

 

 

「提督は疲れてるんですよ」

 

「お休みになられた方が良いのでは?」

 

「まあ…その休めるところが無いからヤバいんだけどね」

 

 

「というか…この鎮守府にヤバくない艦娘居ます?」

 

「居ないだろねえ…私らも我慢できるかどうか…」

 

「………」

 

 

 

 

「艦娘の部屋なら大丈夫じゃないですか?」

 

「毒をもって毒をなんとやらだねえ」

 

お前らは自分のことを毒と言ってるのはわかってんのかな?

 

 

 

どうにかしないと…

皆の前でガチ泣きしてお願いする提督を披露しなくちゃなんねえや…。

 

 

 

「一番…安全な艦娘……」

 

 

 

さて…誰のところに行こうか?

 

いや…俺には思い浮かんだ艦娘が居た。

 

 

 

 

 

 




はい…またご協力を…お願いします。



提督は誰かの部屋に泊めてもらいに行きます。

誰なら…提督を安心と癒しに導いてくれるでしょうか?

その艦娘によってストーリーが変わると……思います。

もしかしたら…甘い話かも知れませんし…
としかしたら…提督が……ね……


上位何名かのストーリーを書こうと思いますのでお時間を貰えたらと思います。

何卒…ご協力の程、よろしくお願いします(๑╹ω╹๑ )


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150話 面倒なヤツら

え?
投稿?
するよ!!!


ご機嫌よう…皆様…。

重桜…赤城でございます。

 

本日は…ソウジをして居ます。

 

指揮官様には変な虫がよくつきますので…。

ではなく、普通にお掃除です。

 

 

「そろそろお茶にしませんか?」

 

「おっ…いいね、桜赤城が好きって言ってた大福を買ってるんだ」

よいしょ…と指揮官様が取り出すのは

銘菓中の銘菓と言えるでしょう。

 

幸心堂(こうしんどう)のお大福…。

生塩大福というもので

外のお餅はもっちり…ほんの少し散らした岩塩が…たまりません。

中の小豆も最高級…クリームもしつこくなくて…。

 

「嬉しそうだな」

 

「え?わ、わかりますか?」 ブンブン

 

「尻尾がね」

 

お恥ずかしい……

 

「まあ…さらに君は喜ぶ事になるんだが…」

 

「?」

 

「なんと新発売、苺大福、わらび餅、キャラメル大福」

 

「……指揮官様…赤城は…赤城は!幸せものです!」

 

 

 

 

お茶を…準備して…えへへ。

ベルファストと桜大鳳も居ますけど…まあいいでしょう。

目の前の指揮官様を眺めながら…これを食べられるなら…些細な事です。

 

 

「では…頂きま……」

 

 

 

 

 

 

 

「……この感じは…」

 

「どした?桜赤城…」

 

 

うにょん…とゲートが開いてから奴らは現れた…。

 

 

 

其処から顔が出てきた

 

 

「オサナナジミー!!!」

 

「む!ここが指揮官のいるところか!」

 

 

 

「んなっ!?」

 

「あ…」

「あら…」

 

 

「くっ!よりによって!お大福の近くに…!帰りなさい!帰りなさい!ハウス!!!」

桜赤城が見たこともない表情で2人…隼鷹とエンタープライズをゲートに押し戻している。

 

 

「来なくて良いわ!特にエンタープライズ!!」

 

「むっ!赤城!………あっ!指揮官!指揮官だろう?!やっとあえ…いたたたたた!赤城!押すな!押すな!!」

 

「オサナナジミ〜どこに行ってたの?〜いたたたたた!!押さないでよ!折角の再会の邪魔をしないでよ!」

 

「大鳳!!手伝いなさい!!」

 

「……赤城先輩ごと押せば先輩も帰りますか?」

ニマリと桜大鳳は笑って言う。

 

「ならその大鳳様を私が押しましょう」

その後ろからベルファストが笑いながら言う。

 

 

「2人ともおおお!真面目に!」

 

 

「おっ?!ベルファスト?!ベルファスト!私だ!エンタープライズだ!」

 

「あら?大鳳もいるの?ずるいわ?私も混ぜて?」

 

 

「あぁ…指揮官様ぁ…助けて下さい…」

 

 

「……俺さ、10日くらい特別休暇溜まってるから休むわ」

 

 

 

「「「「「えええええ!?!?」」」」」

 

「いや…何かもう収集つかんし…」

 

 

 

 

「指揮官様は私が居れば…他はいらないのよ!」

 

「アルバコア…呼ぶかなあ…」

 

「じょ、冗談ですよね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…指揮官!私も今日からお世話になってもいいか?

 

 

 

 

 

むしろ帰れない!!」

 

 

 

 

 

 

 

「出てくるならそこはダメです!と言いますか、お大福がありますから、もう少しズレてください!!」

 

そう、彼女達はそのまま出てくると桜赤城の楽しみのお大福に直撃してしまうのだ。

 

故に…せめて寄って下さい!と桜赤城はマジで懇願していた。

 

 

桜赤城を押し込もうとふざける2人に

負けるものか!と、出てこようとする2人。

 

桜赤城は必死でお大福を守ろうとする。

 

当然バランスを崩すわけでね?

 

わあーーと

彼女たちが雪崩れ込んだ!

 

うにゅんとゲートは閉じられて…咲夜赤城の願いは虚しく彼女達はここに残ることに…なってしまった。

 

 

 

 

 

「ああああああ!!!!!」

 

 

 

 

ま…まあ、お大福が…

私の…お楽しみ…の…?

 

え?

 

騒ぎで大福達は……

 

 

「あ…あぁ…」

 

 

 

 

「え?…あ…大福?」

 

「あちゃあ…ごめん…」

「お大福はまた買ってくるから許して?」

 

皆がオロオロしている。

 

「貴様らぁぁあああああ!!!!」

「殺すッ…指揮官様から頂いた…お大福を…ッ!!」

 

 

「ぶッッッ殺すッ!!」

 

 

好きなお大福だけではないのだ。

俺から一緒に食べようと言われた…特別なお大福だったのだ。

 

故に桜赤城はマジでキレた。

 

 

 

 

 

 

その後は大変だった。

執務室は半壊。全員漏れなく大破で入渠…。

 

 

 

 

 

桜赤城?

無傷も無傷。

まさか皆もあの場でドンパチやるとは思ってないだろうから…

そりゃ…やられるよね。

 

 

 

 

そして…その桜赤城は炭と化したお大福の前で泣いていた。

「ぐすっ…ううっ…指揮官様から頂いたお大福があ…」

 

「…桜赤城……お大福を消し炭にしたのはお前だけどな

 

 

 

桜赤城は俺に気付いて言う。

 

「うっ…あ、指揮官様…申し訳ありませんでした……我を忘れて指揮官様も危ない目にあわせてしまって…どんな罰でもお受けします…」

 

「…なら、部屋で待機だ」

 

「……はい」

 

 

 

 

 

 

桜赤城は部屋に戻る…。

 

そして、へたりと座り込んで泣いた。

 

「きっと指揮官様は私に失望したでしょう…」

「私みたいなKAN_SENは…要らないでしょうか…。そうですよね、仲間を傷つけて…執務室も…あぁして…」

 

 

 

 

 

 

「入るぞ」

 

 

指揮官様?きっと私に罰を言いに来たのね。

「…はい」

 

 

 

 

「食うか?」

 

 

「え?」

 

 

それは…お大福…?

「私が消し炭にしたはずでは…」

 

「あん?これはな…俺の夜の楽しみのための分だ」

 

「そんな!なら私は頂けません!」

 

「2人の方が美味しい」

 

「…ッ!!」

 

「そこまで大切に思ってくれてありがとうな」

 

そう、他の人のものならあそこまではならない。

他ならぬ俺の贈り物だったから…だ。

 

 

「罰を言いに来たのでは…?」

 

 

「んー…アイツらも赤城は怒って当然と言ってたしなあ…。まあ、大淀に謝ってから執務室の片付けを手伝ってくれたら良いかな」

 

 

 

「…皆来てるぞ」

 

 

「はい…」

 

 

 

 

おずおずアズレン組は桜赤城の部屋に集まった。

 

「悪ふざけが過ぎました…ごめんなさい」

と、4人が言う。

 

 

桜赤城は答える。

 

「私も…やりすぎました…ごめんなさい」

 

 

 

 

基本的には彼女は優しいのだ。鬼ではない。

ただ、さっきも言ったが俺絡みになると人が変わるのだ。

 

 

 

 

 

 

桜赤城は言う。

「あの…指揮官様……?」

 

「大丈夫だよ、ひとつずつなら皆で分けられるよ」

 

 

「なら…せっかくなんで…皆さんでいいですか?」

 

 

 

 

 

あぁっ!お大福…♪美味しいです。

 

「幸せですわあ…」

 

やっとありつけたお大福に桜赤城は幸せそうな表情を浮かべていた。

 

 

 

「桜赤城…これ…半分…食べてくれ」

エンタープライズが言う。

 

 

「わ、私も…」

桜隼鷹も言う。

 

 

 

「あなた達…」

 

 

 

 

大福を分け合いながら食べるアズレン組…。

 

 

 

 

「一件落着かな?」

 

 

違えた道を行っても…ここでなら…また手を取り合えるのかもな。

 

 

 

 

ん?

 

 

ここでは?

 

 

 

 

 

「あ!でも、ここでお世話にはなるぞ?」

 

「オサナナジミと一緒に居られるね」

 

 

 

 

 

 

 

「……休暇取ります」

俺は部屋を後にした。




150話!!!
早いもので!
いつもありがとうございます!!


アンケートは前回の話分です!
ぜひご協力ください!



今回から2人程アズレン組が増えました。
1人は…ヤベーヤツ代表。

1人は…真面目担当、兼、ヤベーヤツ


桜赤城は和菓子大好き。
というか指揮官がくれる物ならなんねも大好き!





少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。


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151話 異世界から個性的なメンバーが増えました(遠い目)

前回のあらすじ


ヤベエ奴らが世界を超えてこんにちは

お大福潰されて桜赤城がブチギレ


仲直りッ!!



居着く事になる桜隼鷹とエンプラ


提督の運命や如何に!!!



















「ヨークタウン級2番艦のエンタープライズだ。桜赤城達と同じ世界からやって来た…よろしく頼む」

 

 

クソ真面目の権化とも言えるエンタープライズ。

戦いに対する考えや戦果は凄まじい。

 

 

ただ…たまに抜けているけど…。

 

 

 

 

 

 

「同じく…隼鷹よ。指揮官とはオサナナジミなの。やっと再会できたね」

 

 

「「「「え?」」」」

 

皆が固まる。

 

「救君?」

 

「ああ…秋姉さんとは違うんだ。そういう奴なんだよ」

 

「あぁ…」

 

何故か桜隼鷹は俺を初めて会った時からオサナナジミと言う。

無論、こいつは転生して来たわけでも、生まれ変わって来たわけでもない。

 

()()()()()()()()

 

グレイゴースト…エンタープライズのような戦闘娘(クソ真面目)や、

加賀みたいな純粋な戦闘狂(バーサーカー)とは違う

 

 

てか、そういや…重桜はヤバくないやつの方が…うんやめとこ。

 

 

 

 

 

 

 

「ひゃーー!自分と同じ名前の艦娘…?KAN_SENかー!」

 

「あなたが此方の隼鷹?やっぱりまったく違うのね?」

 

 

彼女達には一通りの説明を終えてはいるが…ある意味すんなりと受け入れてもらえたのはありがたい。

 

 

「と言うわけで…よろしく頼むぞ、皆」

 

「「「「はーい」」」」

 

 

 

 

 

 

 

解散した後エンタープライズが話しかけて来た。

 

桜隼鷹?…居るよ…。

 

「…指揮官…」

 

 

「ん?」

 

「その…何だ…本当に指揮官か?」

 

「……それはどう言う意味だ?」

 

「私はわかるわよ?あなたがオサナナジミだって」

 

はは…君は、うん、いつも通りだね。

 

 

「いや…私も…向こう側にしか指揮官が見えなかったが…その…姿が少し違うというか……本当にあなたなのか?とか…」

 

「ベルファスト達が指揮官様!って言ってますけどね」

と、桜隼鷹が言う。

 

 

「そうではあるが…夢ではないのかとで思うんだ」

 

きっと言葉にはできないのだろう。

画面の向こう側の人が…指揮官で…会えなくなって…。

違う世界に居て…やっと会えたとしても…複雑な心境だろう。

 

 

 

 

 

「ハハ…まあそうだなあ…」

「少し若くなったかな…。うん、でも…俺は俺だ。お前達の指揮官…だ」

「色々あってここに居るけど…2人に会えて嬉しいよ…」

救はニコリと笑う。

 

 

この笑顔だ…。

私が出会った…あの指揮官は…。

 

何故か…全てを捧げても良いとすら思えた…指揮官。

 

 

 

「……うん。納得した。今の笑顔は…私の記憶にある…指揮官そのものだ」

 

「私はずっと前から知ってるから」

 

少し大人しくしようか…桜隼鷹さん。

 

 

 

エンタープライズは敬礼して言った。

 

「ヨークタウン2番艦、エンタープライズ!この命、指揮官と共に…よろしく頼む」

 

「ああ!こちらこそ、よろしく頼む!」

 

ガシッと握手を交わす。

 

 

エンタープライズは思った。

……この人なら…全てを預けられる気がする…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は言わなくてもわかるよね?」

 

「あー…飛鷹型2番艦の隼鷹サン…ヨロシクオネガイシマス」

 

「誰への説明ですか?」

 

「一応…言っとかないと……」

 

「…忘れたなら…早く思い出してね?」

 

「皆と仲良くするんだぞ?色んな仲間が居るから…わかったな?」

 

「わかってますよ?」

 

本当か?本当にか?

 

 

 

 

 

    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「む?」

 

「指揮官!その左手のは……まさか!!」

 

 

「……オサナナジミ?それって…」

 

 

 

 

「「指輪…??」」

 

 

 

 

 

…まぁ……いつかはわかるもんだから…言っておくか…。

 

 

「コレは…「私にはないのか!!!?」 」

 

めっちゃ食い気味に言うやん…。

桜隼鷹なんかボーゼンとしてるし…。

 

 

「…時が来れば……「あらあーー!!グレイゴーストも…これは貰えてないのね!!」

と、ニヤリと笑うアズレン3人組(三馬鹿トリオ)

 

右手を見せながら笑う。

 

 

 

「あっ……え…なっ……くっ…!!クソおおおお!!」

 

膝から崩れ落ちるエンタープライズ。

漫画でしか見た事ねえぞ…そんな崩れ方。

 

 

 

こんな愉快な奴だったか?

 

「指揮官……勲章より…それが欲しい…」

 

ショボくれるエンプラが可愛い。

 

 

が…

 

「ん?というか…指輪は左手じゃないのか?普通」

 

言ってしまった…。

3人が最も気にしている事をサラリと。

 

 

「「「………」」」

ピシッと何か音がした。

 

 

 

 

「指輪を贈って貰ってたとは聞いていたが…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか…指揮官の伴侶としてはまだ半人前と言う意味か?」

 

と言う意味か?(エコー)

   と言う意味か?(エコー)

     と言う意味か?(エコー) 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はい、オーバーキル入りましたよ。

 

 

 

 

「「「ああああっ!!」」」

岩石のように崩れ落ちる3人。

 

やべえ…愉快だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私も!私も!オサナナジミとは婚約もしてたはずよ」

 

「え?そんな事実は…知らない…」

 

「え……忘れたの?私とオサナナジミはずっと前から一緒に居たのに?思い出さしてあげなくちゃ」

 

「桜隼鷹…」

「思い出は…今から作るものだろ?(意味不明)」

 

「……なら、指輪待ってるね?」

 

「ああ…待っててくれ…時が来t「明日?明後日?」 」

 

「そう意味じゃねええええ」

 

 

 

 

 

 

「指揮官様ぁぁあ!!」

 

「指揮官さまあ!ーー!!!」

 

「ご主人様あ!!」

 

「「「半人前なんですか?!」」」

 

 

 

「指揮官!!指輪を…」

 

「オサナナジミーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゆ」

 

 

 

「「「「「ゆ?」」」」」

 

 

 

「有給取得しますッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私達も…負けてられないわね…」

 

 

 

 

 

 

 

……さらば…平和な日常よ…。

いらっしゃい…刺激的な毎日…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今日も投稿ですよ!


お気に入り…ありがとうございますううう!



今の所…龍田がトップなので作成中。
扶桑とベルファスト…が同率ですね。
票が多く入ってればその分書きます。

25日のお昼までアンケートあけておきますので…よろしくお願いします!



なるたけ…皆出してあげたい…。

お楽しみ頂けましたか?
少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。





質問ありがとうございます。
答えますね!




休め





休んでますよッ!!









メッセージしましたよ!
コレがええのんか?ええんか?


PS 今日は雨らしいですよ


あざっす!!!
めっちゃ嬉しいっす!



晴れてましたけど!!
傘要らなかったよっ!!





色々とお待ちしています(๑╹ω╹๑ )
お気軽によろしくお願いします!!


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152話 第X次 提督争奪戦

時系列は前後しますよ!

救君は両手がバキバキですよ!


提督が両手を使えず…生活の助けを求めている。

 

艦娘にすればコレほどに独占お世話できるチャンスは無いッ

 

 

 

朝イチからバトルだった。

 

 

 

己の欲望剥き出しで戦う姿は壮絶だった。

 

「金剛さんは…正妻ポジだから…別に今日じゃなくてもいいですよねええ!?」

 

「そーんな事無いデース!いつでも隣に居たいデース!!」

「それならオーヨドとベルファストも真っ先に退場させるべきデース!」

 

 

 

「私は執務担当艦ですよ?提督の執務を……アレコレ支えるのが仕事ですから!退場できません!」

 

「私はメイドでございます!絶対に必要です!」

 

 

「なら私がメイドをするっぽい!」

 

「私もできるのー!」

 

 

 

 

 

 

「…ここの娘に…提督の事に関して…譲り合いの精神を持つ者は…居ないわね」

 

「ケースがケースだからね…」

 

 

 

「なら…かくなる上は…」

 

 

「「「「「「実力行使!!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高雄は強かだった。

 

並み居る強豪を薙ぎ倒しつつ

勝てない相手には…提督秘蔵コレクションで買収する…。

 

 

「金剛さん?コレ…提督さんの……」

 

「オー!コレなら仕方ないデース…」

 

「バカめッ!」ドスッ

 

「うッ…」 ドサッ…

 

 

 

「加賀さん?コレでは?」

 

「くっ……ここは譲りますッ」

 

「バカめッもう1発ッ!」ドスッ!!

 

「くッ……」 ドサッ…

 

 

 

 

 

 

 

 

「待った!僕には…そう言うのは聞かな…「時雨ちゃんは速攻で落とす!」

 

時雨に関しては速攻を挑む高雄。

 

 

「デ…デンOシーロール…だ…と!?!」

 

 

 

 

 

 

「チィッ!!高雄オオオオオ!!」

 

「時雨ええええ!!!」

 

 

 

「ぐあぁ」

「ぐあぁ」(エコー

「ぐあぁ…あぁ」(エコー

 

 

 

 

 

「…決着ぅぅぅぅぅ!!!」

と、ガッツポーズを決める高雄。

 

 

「あ、危なかった……」

そして一息つく高雄。

 

 

 

 

「さて…提督の部屋を…」

高雄が見たものは…

 

 

 

 

 

 

 

「くひひ…コレが我が逃走経路だッ」

と、提督私室のドアを開けた時雨の姿だった。

 

「このッ!!」 ドンッ!!

背中から当て身をしに行く高雄…

 

 

「・…」ドサッ…

時雨は倒れた。

高雄はその倒れた戦友を引きずってドアから遠ざける。

 

 

 

 

「さて…入りますか」

 

 

 

 

 

 

 

「わ、私が勝ちましたッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高雄はさすが愛宕の姉妹だけはある。

 

思ったよりも積極的だった。

 

事あるごとに密着してくるんだよねえ…。

 

 

何とかパンツは守り切った。

 

 

 

「はい…歯磨き…しますね?」

膝枕の状態で…歯を磨かれる。

 

ちなみに…高雄がどんな表情をしてるかは分からん。

目を閉じてるんだ…。

愛宕とかもそうだが…

大きいもの…。胸が。

 

 

 

 

「はい!洗顔も終わりましたよ…!」

 

 

「ありがとう…すまん…情け無い」

誰かの手を借りないと何も出来ない…執務すら…。

我ながら本当に情け無い。

 

 

 

ムニッ…

 

「そんなこと言わないで…提督」

高雄に抱き締められる。

 

 

待て!コレはな!抵抗できないぞ?

だって手が使えないしな!仕方ないな!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別の日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は俺の顔に両手を添えて言う。

「さあ……提督…僕に全てを任せて」

 

「お、おう…任せる…」

艶っぽい表情に思わずドキッとしてしまう。

 

 

 

君がが…そんなこと言うものだからさ…

 

 

 

 

 

 

「んもおおおおお!!何!?僕っ子!?キャラが被ってるんだなあ!!」

「しかもさー!駆逐艦なのに…あのボデー!!ダメだ!何かドス黒いのに目覚めそうだ!!」

時雨が血涙を流していた。

 

 

 

 

救は両手が…以下略

なので日頃のお世話…以下略

 

 

 

 

誰か来たかって?

 

 

 

 

「奴は……バケモ……」

 

今日ドアにたどり着いて倒れたのは長門。

 

それを引き摺り出した後出てきた彼女。

 

 

「き、今日は…僕の勝ち…だ!!」

 

なんて鍵の掛かっているはずの部屋に当たり前のように入ってくるのは初月。

 

 

後に他の艦娘に聞いたところ

「奴は…鬼じゃ…」

とか

「オーラが戦艦級」

とか言われていた。

 

 

 

 

「さあ、着替えようじゃないか」

 

「はいよ」

 

と、何事もなく着替えさせてもらったのだが…。

 

「…これは洗濯に出しておくね」

 

「何してんの?」

 

「提督の温もりがまだ……残ってるから」

「あぁ…提督の匂いだ〜」

 

 

「よしんば本人が居ないとこでやってくんない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「てかさ…初月は暑くないの?」

 

「え?」

 

「全身…タイツは」

 

「えっち」

 

「うーーん!なんか違う!」

 

「提督なら…獣の様に破って……いいよ?」

「できたら…子供は…うん、1人じゃ寂しいから…それ以上は…欲しいな」

 

「まだ朝の時間だからな!?」

 

 

 

 

「…まあ…暑くはないよ…そんなに」

 

「へぇ…そーなんだ」

 

「朝ごはん…食べよう?」

 

 

 

 

「はい…あーーん」

 

「あーん…」

 

 

「皆が…羨ましそうに見てるね、提督」

 

「……羨ましいって目か?」

 

 

「「「「じーーー」」」」

 

皆さん?ハイライト…どこかに…落としてますよ?

 

 

 

…早く…腕治さなくちゃ…と思う救であった。

 




なんと…羨ま…けしからん……。



アンケートは明日のお昼までですのでよろしくお願いします!
そこから書いて行きますね!

一応現状トップの龍田は執筆中です!



少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!


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153話 龍田の部屋の場合

ノックをして了解が出たので部屋に入る。

 

「龍田…?」

 

「何かしらあ?」

 

「一晩でいい…泊めてくんない?」

 

「あら〜急ねぇ?どうしてかしら?」

「急だなあ!!」

 

 

「実は…何度鍵を変えようと…どれだけ対策を取ろうと…ダメなんだ…。だから最近寝れてなくて…」

 

 

少しだけ龍田がムッとしたような気がした。

 

「……」

 

「…無理にとは言わない…」

 

「……」

 

龍田は無言だ。

 

 

天龍だけはわかった。

(おっ?龍田の奴…めっちゃ嬉しそうだなあ…)

 

「俺はよ、今日は門番の日だから…提督の世話頼んだぜ!」

 

「あらあ?天龍ちゃんは今日は…」

 

「ん?神通とかわったんだよ」

(てか、代わってもらうんだよ)

 

 

「わかったわ〜提督〜いいわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コソコソと話をする。

「怒ってない?龍田」

 

「……提督…。龍田嬉しそうだから…頼んだぞ」

 

「マジ?…すまねえ…コレでパフェでも食べてくれ…」(間宮チケット)

 

「…ニブチン…、お主も…悪よのう…」

 

「ニブチン!?…ふふふ、怖いな」

 

 

 

 

 

 

「?2人とも?」

 

 

「ん、じゃあ…お言葉に甘えて…部屋に居させてもらうよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「ねえ?あなた?〜何で無言なのかしら?」

 

「すまん!気が抜けていた」

「ここまで静かなのも久しぶりでなあ」

 

 

 

 

 

 

その頃の天龍。

 

「あーだめだぞ!今日は提督は龍田の部屋で寝るから」

 

「…龍田なら…やめとこう…」

 

「その方が良いぜ。今の龍田は…幸せで無敵だろうからなあ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え?…」

 

「…龍田は…本当に優しいよな」

 

「な…何故?」

 

「ん…いつも思うぞ?秘所艦の時とか…」

「軽食作ったりとか…寝るときにホットミルク作ってくれたり」

 

「そ、それくらい当たり前じゃないかしら〜?」

 

「いつでも…俺の事見てくれてるだろう?」

 

「……」

 

「そりゃ…そうよ〜?だって…私は……」

 

「あなたの…ケッコン相手ですもの」

 

「龍田…」

 

「意外と…ケッコン相手の中では影が薄いけれどね〜」

 

「さーせん…」

 

 

 

 

 

龍田がこちらへ視線を向けてくる。

 

「お腹空いてない?」

 

「…空いてる」

「龍田の…おにぎりと卵焼きが食べたいな…」

 

「ふふっ…わかったわ〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……天龍ちゃん?」

 

外に出た龍田は天龍と鉢合わせする。

 

「何してるのかしら〜」

 

「……見張り?」

 

「なんで?」

 

「龍田の嬉しそうな顔見てたらさ、2人で過ごして欲しくてよ」

 

「……そうかしら?」

 

「今も顔がニヤけてるぜ〜?てか、どこに行くんだ?」

 

「食堂よ〜。提督がおにぎりと卵焼きが食べたいって言ってたから〜」

 

「…そうかそうか」

天龍はニヤリと笑った。

 

「??なあに?」

 

「いや…大体、龍田の秘書艦の次の日が俺だろ?提督はいつも言ってるんだぜ?

『昨日も龍田がおにぎりと卵焼きを作ってくれたんだ。俺はあれが大好きなんだ』

ってな?もー満面の笑みで言うんだよ」

 

「おにぎりと卵焼きだろ?って言うんだけどさ…

『体調とか季節によって塩分調整してくれたり…お茶の温度とか…色々気を遣ってくれてるみたいなんだ…それが、食べるものから伝わるんだ…だから、たまらなく嬉しいんだ』

だってよ」

 

 

 

「………」

 

「惚気だよなーー!本人に直接言や良いのによーー」

「お前も愛されてんだな、少し妬けるぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふふ」

 

 

 

 

 

龍田は…笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天龍は驚いた。

 

「何だ!?今のその表情!!見たことねえ!!」

 

それ程に…龍田は喜んでいたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

ええと…

卵焼き…卵焼き…

疲れてるなら…薄めかなあ。

 

おにぎりは……特別にわかめと鮭も握っちゃおう。

お味噌汁は…インスタントだけれど…熱すぎず…冷ましすぎず。

 

 

 

「は〜い。おまた……せ」

 

提督は寝ていた…。

 

 

「…起きないと冷めちゃうわよ〜?」

龍田は少し寂しそうに言った。

 

 

 

「ん…良い匂い…」

 

あ…起きた…。

 

 

 

「あらぁ〜起きたのね?できましたよ」

 

コトリ…と料理を机の上に置く

 

「お味噌汁は…インスタントですけどね〜」

 

「ありがたい。いただきます!!!」

「…んまい!あーーコレコレ。これが大好きなんだよ」

 

提督は満面の笑みで食べている。

 

さっき天龍ちゃんから話を聞いたから…意識して、こっちが恥ずかしくなる…。

 

 

 

本当に…幸せそうに食べるのねぇ。

私より料理好きなんか…たくさんいるのに。

 

 

 

「ご馳走様!いつもありがとう…龍田」

 

 

「旦那さんが困ってたら助けるのは…あたりまえよ?」

 

「何か俺に出来ることはあるか?」

 

「なら…今度夫婦でお出掛けの時に…お願いしようかしら」

 

「何を?」

 

「フフフ…考えておくわねぇ〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

隣に座って…一緒に映画を観てたはずなのに…いつの間にか提督は私の肩で寝ていた…。

 

「全く…」

と言いながら…膝枕をしてあげてみる。

優しく頭を撫でて…呟く…。

 

 

「旦那さん〜?私のとこに来てくれて…ありがとう…」

「好きよ〜…本当に…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

温かい…。

何だか安心するような……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気づいた時には…私はベッドで寝ていた。

あの人が運んでくれたのかしら?

 

そして彼が隣に居ないことに少し不安を覚えて起き上がる。

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう!龍田」

 

彼は居た。

「昨日はゆっくり休めたよ!ありがとう!!」

 

「ほ、本当に?ごめんなさい…私も寝てしまって…」

 

「ううん…俺も寝れたから」

 

と言いながら何かを持ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

それはおにぎりと卵焼きだった。

なんなら味噌汁も付いている。

 

 

 

「??提督が作ったの?」

 

「ごめん、材料なくてさ…同じものだけど…昨日のお礼。食べて?」

 

 

 

準備を済ませて…食べる。

 

 

あの時のカレー程じゃなくても……

 

 

彼が…私をベッドに運んだ後に…ソファで寝て、早起きして作ってくれたと思うと……心が温かくなる。

 

「…美味しいわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督は執務に戻った。

行ってらっしゃいと声を掛けたら…笑顔で行ってきます!と答えてくれた。

 

入れ替わりの様に天龍ちゃんが帰ってきた。

 

「幸せそうだったなあ!!」

と、バシバシ叩いてくる。

 

「……でも提督をソファで寝させてしまったわ〜。私はベッドだったのに…」

 

 

「……え?」

天龍は驚いていた。

 

 

「え?」

私も驚いた…天龍ちゃんの反応に。

 

 

 

「気づいてなかったのかよ?提督も龍田の隣で寝てたのに」

「俺は見たからよ〜。羨ましかったぜ」

 

 

 

 

 

 

 

「え……あ」

 

顔が熱くなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

温かく感じたのは…隣に居たから…

だから彼が隣に居ないのが不安に思ったのか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それなら言ってくれてもいいのに……。

それを見て感じられなかったのが残念…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

龍田は少し寂しそうに…呟いた。

 

「ばか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督おはようございます!ゆっくりお休み出来ましたか?」

と、大淀が挨拶してくる。

 

 

 

あぁ…うん。

次に彼女が何を言うかも想像出来ている…と言うか見えてる。

 

 

 

 

 

 

「彼女達…昨日からその状態です」

 

 

 

 

 

「提督ぅ…」

 

「指揮官……」

 

 

 

 

「……まあ…予想通りだなあ…」

 

 

執務室の中には艦娘が…寂しそうに待ち構えていたとか…。

 

 






正直…龍田が1番に選ばれると思っていたッ!!
え?ほ、本当ですよー!!





ウチの龍田は…デレるぞ…?
2人きりの時は…旦那さんとかあなたとか呼びになるぞ!


ベルファスト君…おめでとう。
まさか…巻き返してくるとはな…。


扶桑とゴーヤが同率だと……馬鹿な…
書くしかないじゃないか……
想定外だよ…フフフ…いやマジで。


お気に入りが520…
お気に入りの登録と
評価に推薦…ありがとうございます(´;ω;`)
嬉しくて…今日はカルビ丼食べます。
豚じゃなくて牛よー!!


その日の貴重な時間をこの小説?に割いてもらって…ありがとうございます。
少しでも…笑らえるなり、泣けるなり、共感できるなり、甘さに悶えるなり、楽しみになって貰える作品にできたらな…と思います。



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154話 ベルファストの場合

「私の部屋も有りますよ?」

 

 

 

てな事でベルファストのお部屋にGO

 

「…あれ」

 

「?どうかなさいましたか?」

 

「…いや…何というか」

 

「想像と違ってましたか?」

 

その通りだ。

 

 

ベッドとドレッサー

机に…大きなものはそのくらい。

 

小さなものは細々とはあるが…圧倒的に他の人より少ない。

 

整いすぎて逆に質素すぎるくらいだ。

 

壁に大切そうに飾られている写真と紅茶セットだけが温かみを感じるのは何故か。

 

 

 

 

あまり…物欲というか…物に執着しないので…と

彼女は言うが…。

 

 

「結構楽なものですよ?」

 

 

 

「どうぞ、お掛けください、今紅茶を淹れますので」

 

「今は仕事終わりなんだし…気さくに接してくれても良いんだぞ?」

 

「いえ…私はご主人様のメイドでございますので」

 

「なら、そのご主人様からのお願い。今日だけは…ラフに」

 

 

「畏ま…わかったわ」

「いつも通りのミルクティーでいい?」

 

「うん」

 

 

「慣れません…」

 

「頑張れ…」

 

 

 

 

「…はい、ミルクティーよ…お菓子は…マフィンでいい?」

 

 

「ありがたい」

 

 

 

「落ち着くなあ……」

 

「そう?私は何だか落ち着かないわ」

 

「……ねえ?救さん?」

 

「ん?」

 

「今日は…その…本当に2人きり?」

 

「あぁ」

 

「誰も呼ばない?」

 

「もちろん」

 

「そう…」

 

 

「なら……」

 

 

「どれ見る!?映画!!」

 

「え?」

 

ベルファストは壁の隠ボタンを押す。

 

するとどうだ!

スクリーンやら…

ベルファストが集めたDVDやらが出てくる。

 

 

 

「物欲ないんじゃないの!?」

 

「建前よ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぉーーーー!!!やっぱりサメとゾンビ映画にハズレはねえぜえええ!!!」

 

 

「わかる!?わかる!?一見B級のクソ映画でも楽しいのはあるのよ!」

 

 

 

 

 

ベルファストはB級映画が好きだった。

特にサメとゾンビ。

 

 

何本見たかな…?

 

「次はどれ見る?」

 

と、俺の方がノリノリになっていたその時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カプッ…

 

 

 

え…?

ゾンビ…サメ?

 

 

俺は…ここは…いつのまにかその世界に…??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベルファストが首元に噛み付いてきたらしかった。

 

「私の事も…見てくれなきゃ…ダメよ?」

 

 

 

誰だお前はぁぁぁぁぁぁ!!!

 

うぅッ…心臓がッ!!ぬあああああ!!!

救は悶えた、悶えまくった。

 

 

「ま…救さん!?」

 

 

「癒しを求めていったら…浄化された…もう、思い残す事はない…」

 

 

 

 

待て…考えるんだ…

俺は…ゾンビに噛まれた訳だ…。

 

って事は…ゾンビのお仲間になる訳で…。

 

てことは…俺は今ゾンビな訳で…

 

 

合法的にベルファストに噛み付くチャンスじゃないか?

 

その流れで…ムフフな事が…?

 

 

 

 

 

 

 

––––頂きますッ!!

 

 

ぬいっとベルファストの前へ行き…

 

 

「え?」

 

 

カプッ…と首元へ甘噛みする。

くっ…いい匂いじゃないか!!

 

「ひゃう//」

 

 

「「あ……」」

 

 

はい、都合良くバランス崩すよ!

 

 

どーなる?

 

 

そうだね!

覆い被さることになるね!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベルファストがな!!!

 

 

野郎…映画スター並みの身のこなしでなんやかんやして、上下の位置を変えやがった!

 

くそっ

 

 

 

長い髪を俺に垂らして言う。

 

「……えっち」

 

 

やめろおおおお!

おまっ…お前ええ!何だよ今日のお前!!

可愛すぎんだよおおおお!!

 

 

「…その気なら…こっちから行くね」

 

 

 

 

 

目を閉じたベルファストは…唇を……

 

ちぅ…

 

 

柔らかい……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

!?!?

 

 

こちょこちょこちょ

 

「うひゃ…!ベルファスト!?やめ…や…あ」

 

ニヤリと笑うベルファスト(白い悪魔)

 

 

 

 

 

うひゃひゃー!アハハハハハハハハハ!

やめっ…やめ…アハハハハ!!

ひーーー!!

 

 

 

 

くすぐりって…拷問なんだぜ??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まいった?」

 

「まいった…デス」

 

 

 

 

ぎゅっと抱き着いてくる。

 

「好きよ…」

 

 

何だよそのオンオフのスイッチは…

 

 

「俺も…だ…よ?」

 

「……」

 

「?ベルファスト?」

「まさかベタな漫画じゃあるめぇ!寝た訳じゃ……」

 

 

 

ちくしょう!寝てやがる……俺に乗っかったまま…。

 

 

 

やれやれ…とベルファストを横に落として布団をかける。

さて…俺は…と移動しようとした時…

 

 

服の端を持ったままのベルファストが言った。

「行かないで……一緒に居て」

 

 

 

 

コイツ……可愛さの権化か?

 

俺はそのままベルファストの横に…

 

 

 

 

 

 

 

結局一緒に寝た!

めっちゃ幸せだった!!

以上ッ!!!

 

 

次の日もお!

気まずそうに、嬉しそうにしてるベルファストがあ…

可愛かったー!!

 

「…おはようございます……ご主人様…」

 

「おはよう」

 

「え、えらく幸せそうなお顔を…」

 

 

「そりゃねえ…」

 

 

 

 

 

 

「離れないで…」

「好きです…」

と、頬を擦り寄せてくるベルファストは可愛くてさ…

 

 

 

「い、言わないでくださいッ!!」

 

 

「ありがとうな!ベル!」

 

 

「………」

 

「ありゃ?この呼び方嫌い?」

 

「…いいですよ?ベルでも」

.

 

なんか幸せそうに執務室に入ってくる2人を大淀はジトーとした目で出迎えたそうだ。




書いてて思った…ベルファスト可愛くね?って。
R-18みたいな流れよな…あれ。




扶桑とゴーヤは只今制作中…
ええ!
予想がが外れたのさ!!


もしかしたら…
シリアスパートの投稿のが早いかも…?
その場合は、シリアス終わってからのゴーヤと扶桑になります!


可愛さに悶えてもらえたなら幸いです…じゃない!
少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!




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155話 己であるが故に ① 運命

–––それが運命と言うなら…超えてみせよう


––例え…不可能と言われようと…



もう私達は1人じゃない

お前に見せてやる…思い出させてやる

温かな…光を–––












–––力を貸して

––あなたの想いは…私が引き継いだから

私が…止めてみせる…

あの子に…夜明けを–––



ご注意

 

今回の話はほーーんの少しだけ重めです。

 

史実通りではない話。

 

オリジナルな解釈、

オリジナルなキャラ展開

 

胸糞話。

 

過度な表現等が出る場合がございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沈みゆく艦娘を見下ろして彼女は言う。

 

「お前達デモダメカ…」

「イツニナレバ…私らヲ救ッテクレル奴ラハ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「ドシタ?シラツユ…」

 

「ウウン…なんデモナイ」

 

シラツユと呼ばれた彼女も同じく沈みゆく艦娘を儚げな表情で見る。

 

何だろう……私は…何か…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何度生まれ変わっても…

やり直しても

姿が変わっても…同じ事を繰り返すだろう。

 

 

 

だって…それが運命…私の在り方だから…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

––––––––––––––––

 

 

 

 

 

「……」

膝を着き、動かない長門。

 

 

 

「ああぁぁああああ!!!!!!!!」

水面に向かって泣き叫ぶ夕立。

 

 

 

 

 

 

 

 

「旗艦長門…大破!!意識不明!轟沈寸前!!!」

 

 

 

 

 

「夕立も大破!精神が錯乱状態です!!」

 

 

 

 

 

 

 

「直ぐに救助、撤退を優先しろっ!!」

 

 

「敵は!!」

 

「依然、健在!1人は負傷してる模様………ー!?引き上げます!撤退しています!!」

 

 

 

 

「………次ハ…殺ス」

 

 

「…長門……オマエナラバ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢を見る。

 

 

 

 

 

 

ここは…海?

 

 

ん?酒匂…?いや…他にも…アメリカ…?

 

どうした?

 

 

どうした?

 

 

 

 

 

ん?何だあの光は…

 

 

 

 

あれは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……何だ…

 

あれ?

 

お、お前達…

 

何故こちらに武器を向ける?

 

 

やめろ

 

 

やめろ!!

 

 

私は…

 

今度こそ…役に立てる筈なんだ!!

 

 

 

 

裏切らない––––––で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚める。

 

 

 

 

酷く魘されたのか寝汗が凄い、

 

…知っている。

あの光が何か…何なのか。

 

 

過去は常に自分の背中に居る。

 

それはどう足掻いても背中から落ちない。

 

 

その後の…夢は……

 

 

 

誰かが私に声を掛ける…

 

 

「長門!!」

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日は哨戒任務にあたっていた。

とは言え、最近では海はそこそこ平和である…が慢心すれば、もしもの時に対応出来ないので欠かさずやるのが大切。

 

 

 

 

 

 

「ぽーいぽーい」

 

 

長門が夕立に問う。

「夕立…何か見えるか?」

 

 

「何も…居ないっぽーい!」

 

「こっちも…特にないわ」

と、大鳳も答える。

 

 

「…静かな海ですね」

神通が言う。

 

 

 

「そうですねえ…」

比叡がキョロキョロと見ながら言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

 

 

 

 

「あれは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3体の正体不明勢力を発見。

 

 

 

 

深海棲艦か?

 

 

 

 

 

 

「当たリだけド…違ウ…」

 

 

長門と夕立は何か嫌なものを感じ取った。

 

 

1人が口を開く…。

 

 

 

「私ハ…ナガト…カツテ…艦娘ノ長門ト呼ばレタ…成れの果テ…」

眼帯をした奴はナガトと名乗った。

 

 

「私ハ…ユウダチ…」

目つきの悪い…ユウダチという奴だった。

 

 

 

「私はシラツユ…」

真っ赤な…綺麗な程の紅い目をした奴だった。

 

 

 

 

 

「コノ2人ニハ…艦娘ノコロの記憶ハナイが…艦娘ガニクイ事だケハ確カダ」

 

 

長門はハッとした。

 

「…戦闘配備!!」

長門が叫ぶ。

 

「…長門と夕立以外の相手ハ…奴ラニヤラセル…」

 

 

大鳳達の前に深海棲艦が現れる。

 

 

 

 

 

「私達に…用だと?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナガトと名乗ったモノは急接近を行い

長門の首を掴む。

 

 

 

 

 

「は、早いッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「離せ…ぽい」

 

シラツユが夕立の首を掴む

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ…くうっ」

 

 

「弱イ!!」

「コンナ奴ラノ為に…私…達ハ……」

2人の首を持つ手に力が篭る。

 

 

 

 

 

ぐにゅん…と何かが頭に流れてきた…

何だ…コレは。

 

 

 

 

「何の…事…だ」

 

 

 

「知らンカ…まァ…ダロウナ!!!私ラハ…」

 

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()  

 

 

 

「な…に?」

 

 

 

「この前に…真壁から助け出したはず…なのに」

 

「真壁…?シラン奴ダ…」

 

「なにっ!?」

 

 

 

 

「初期ノコロの被験体ハ…ソノ存在を秘匿サレタ…」

「ツマリは口封じサレタ訳だ…。私ラは…沈み行ク中デ深海化スルコトデ生きなガラエタ!!」

 

 

 

「……あの時ト同ジダ!!」

 

「アノ光の中ト同ジ…結局ハ人ニ…仲間ニ殺さレル…」

 

「お前ニモ記憶ガアルダロウ!!」

 

 

 

 

 

 

「…サア!!私ト一緒に…死合オウ…ソレコソ運命ナノダ!!」

 

 

「……誇りも失ったか……今楽にしてやる!」

 

「うおおおおお!!!」

 

長門が突っ込む!!

 

 

 

 

躱す  躱す躱す。

 

躱すだけでなく、的確にカウンターを決めてくる。

 

 

長門が、あの長門が押されている。

 

 

「このっ!!」

繰り出したストレートをいなされ…肘打ちのカウンターを貰う。

 

「ぐううっ…ならっ!!」

急降下でしゃがみ、足払いを仕掛けるが…飛んで躱されて蹴りを貰う。

 

 

「うぐっ!!」

 

 

 

ハァ…とナガトが溜息を吐く。

 

 

「…マァ……強インダロウガ……所詮ハ…ソノ程度ッ!!」

 

ナガトの拳がマトモに腹に決まる。

「ぐぶっ…!!」

口から血が出る…。

 

 

呼吸が整わない。

 

 

「……ココがお前ト私ノ死ニ場所ナンダ……」

ナガトは長門の髪を掴み…頬につく血を舐める。

 

「やめろッ!!」

振り払おうとするが…蹴り飛ばされる。

 

 

「……ぐっ…」

 

「ナァ…助ケテクレヨ!!」

「同ジ長門ジャナイト…救エナインダ!!一度目ハ仲間や敵と共に葬ラレ…2度目ハ…ヤット役に立テルと思ッタノに!実験材料デ…仲間ニ裏切ラレ…」

 

 

 

わかるか?この悲しみが…

何を成すこともなく…沈んだ気持ちが…

 

 

 

純粋に…世界の為だった。

 

あの時…私は戦って死ぬ事が出来なかったから…。

今度こそ…誰かの役に立って死ぬんだと…思った。

 

 

 

 

 

だが…それは想像を絶する苦痛だった。

 

 

頭に…強い艦隊のデータを流し込まれる。

 

頭が追いつかず…パンクしそうになる!!

気分が悪い…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なっ!!まだやれる!!私は…まだ…役に立てるんだ!!

頼む!

私の死に場所は此処じゃない!!

頼むッ…

 

 

 

まて…

 

何故お前達が…其処に立っている?

 

 

なあ…

 

何故なんだ?

 

 

 

オイ…待て…何故こっちに砲門を向ける…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故

 

どうして…私…は

沈んでいる…。

 

 

仲間の…砲撃で…人間に沈められる……?

 

 

 

 

 

 

 

二度も…

お前達は…私ヲ…

 

悔しイ…ニクイ…!!!

 

 

 

 

 

 

「っ…あ……」

コレは…ナガトの過去のイメージか?

 

くっ…頭にモヤがかかったような…

 

同じ長門型故の…?

 

 

「お前ナラ…ワカルダロ?!サアワタシニ意味ヲクレ!!」

 

 

そうだな…同じ私しか…お前の苦しみは…わかってやれない…

2度も裏切られた…のなら…尚更だな。

 

わかったよ…ナガト…。

 

 

    

例え…ここで刺し違えても…お前を解放してやる!!

 

 

 

 

その時だった……

 

 

 

 

 

「!!!!!」

深海棲艦が放った弾が長門に直撃した。

 

 

仰反る長門。

マトモに腹部を貫通していた。

 

「ゴフッ……」

 

 

 

長門は吐血し…

ドシャリ…と水面に膝を着く。

 

 

 

 

「バカナ……クッ…何故!!!〜〜〜〜ッ!!!!」

 

 

長門は息も絶え絶えに動かない。

 

「ダメダ………だメダ…私ガ殺サレ…殺さナイト…」

 

 

 

 

くるりと…夕立の方を見る。

 

 

 

「向コウハ……フム…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シラツユは夕立の首を掴んだままじっと夕立を見つめていた。

 

 

「ドウシタ?シラツユ」

 

「何デモ…」

と、シラツユは夕立を蹴り飛ばす。

 

 

 

 

「うあっ」

 

「このぉ!!」

起きあがろうとするがユウダチに踏みつけられる。

 

 

 

 

 

「シラツユがオカシイ…?オマエ………死ネヨ…夕立…」

ユウダチが笑いながら夕立を踏みつける。

 

ガッ!ドコッ

「うっ…あ!!」

 

 

何これ…何か…変なのが頭に流れ込んでくる…。

 

 

ニクイ……

ただニクイ。

 

あぁ…そうか…

艦隊計画で…仲間に沈められた……から…?

 

それに…あなたは…

 

 

 

 

 

「……」

シラツユが夕立の首を掴み持ち上げ投げ飛ばす。

 

 

 

 

「ぐっ…がっ……」

水面に叩きつけられる夕立。

 

 

 

「…マア…ワタシは…艦娘ガ…人ガニクインダ……トイウカ…ナンダカお前ガメザワリだッ……死ネ」

 

ユウダチは夕立に砲門を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

何か引っかかる…。

シラツユは夕立に何かを感じている。

 

深海棲艦の記憶しかないのに…

 

何だ

何が引っかかるんだ?

 

 

 

 

夕立…

 

ユウダチと同じ名前…?

 

何か意味が…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドォン…という音と共に…砲撃が夕立に向かって…放たれた。

 

 

 

 

 

 

「夕立!避けろ!!」

救が叫ぶ。

「夕立!!」

白露も叫ぶ。

 

 

 

「……無理っぽい…」

 

 

体が動かない…。

…ユウダチとシラツユと同じように…私も…。

 

 

 

 

 

「提督……白露お姉…」

夕立は鎮守府に居る姉の名前を呼んだ…。

 

ごめん…と諦めた言葉を言いたかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白露…?

 

「……夕立…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体に衝撃が走る。

 

あぁ…ここが…夕立の最後…

 

 

 

 

じゃない…砲撃の衝撃じゃない!!

 

 

 

 

その衝撃は–––

 

 

 

 

 

 

「危なイ!!夕立チャン!!」

 

 

 

 

 

夕立はシラツユに突き飛ばされたから–––

 

 

 

なんと…敵であるはずの…シラツユが夕立を庇ったのだ。

 

 

「え…??」

 

 

「伏せテ!!」

 

 

シラツユが砲撃から夕立を庇う。

 

 

 

 

驚いたのは夕立だけではなかった。

 

 

「ナッ…!?」

 

「シラツユ……?!裏切ルノカ!!」

 

有り得ない!

私達は…生まれた時から深海棲艦で…

3人で生きてきた…

まさか…シラツユが…?

何で?!何で!?

何故裏切る!?

 

 

 

「ヤメテ!ユウダチ!!」

 

 

 

 

「ヤハリオカシクナッタノカ!!…裏切るナラ……お前モ!!シズメッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ユウダチは容赦なくシラツユに向けて弾を撃ち込む。

 

 

 

「ガッ…グウ…ッ」

 

 

彼女は耐えた。

 

 

 

 

 

ガクン…

撃たれた足が挫けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

耐えた

 

 

 

 

 

腹にねじ込まれる感覚…痛い

 

 

 

耐えた

 

 

 

 

 

左腕が吹き飛んだ

 

 

 

 

耐えた

 

 

 

右眼近くに銃弾が…目がやられた

 

 

 

 

 

 

 

 

耐えた

 

 

 

 

もう感覚もない

 

 

 

 

それでも…

 

 

 

何発も耐えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

例え足が挫けようと

 

例え片腕が吹き飛ぼうと

 

顔面にブチ込まれようと…

 

綺麗と言ってくれた目を失おうと…

 

 

 

それでも

 

 

 

「死ネヨオオオオォォ!!!」

更に更に撃ち込むユウダチ。

 

 

 

「アアァァァア!!させナイッ!!」

歯を食いしばって耐えるシラツユ。

 

 

何故なら後ろに…夕立が居るから。

 

 

暴風雨のように撃ち込まれる弾丸。

 

それでも…

 

 

 

 

 

彼女は夕立()の前から

 

 

 

決して退かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

覚えているのは…冷たい海にナガトとユウダチと生まれたこと。

ナガトが…私をシラツユ、もう1人をユウダチと呼んだからシラツユと名乗っている。

 

ソレより前の事は覚えてない。

何か大切なことを忘れてる気がするのに…

 

頭にもやがかかってわからない。

 

でも…何故か思い浮かぶのは…

私を守ろうとした誰か…

 

 

ユウダチは私の目を紅くて綺麗と褒めてくれた。

ナガトは深海化の影響か?と言っていた。

よくわからない。

 

 

 

 

艦娘を沈めるたびに…あの悲壮な顔を見るたびに何故か頭と胸が痛んだ…

 

そのことを聞くと

 

「カナシイダケダ…」

とナガトは言った。

 

 

 

ナガトは何故か殺し合える艦娘を探しているらしい。

 

 

 

 

今日夕立と言う艦娘に会った。

敵…憎い。

でもユウダチと同じ名前…なんだろう?

何かが引っかかる…。

 

でもわからない。

 

 

 

 

でも…

 

 

白露…の言葉…

あの声と顔で思い出した…。

 

 

 

 

私は…白露…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このッ!!!」

深海棲艦を退けた比叡がユウダチを捉えるて砲撃する!!

 

 

 

「当タルモノカ!!」

 

 

 

「ソコ…」

 

シラツユもユウダチの砲撃が止まるのを見逃さなかった。

 

命を振り絞って放った攻撃は…ユウダチの右眼を抉り穿った。

 

 

 

シラツユも反動で脚が砕け散る。

「ウウッ」

 

 

 

 

 

「ギィァァア!!!…クソ!邪魔シテ…クソ!!…クソオオオオオオ」

右目を押さえたユウダチが叫ぶ。

 

 

 

 

 

「ゴメン…ネ」

 

 

 

バシャ…と海面に崩れ落ちるシラツユ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な…何で……」

 

体を何とか起こしてシラツユの元へ行く夕立。

 

「何で敵の私を助けたっぽい!!?」

 

彼女は砕けて…ボロボロのシラツユを抱えて問いかける。

 

理解できない。

敵なのに……何で?何で?

 

 

 

 

 

 

 

 

シラツユは…その綺麗な紅い目を夕立に向けて…

 

残った右手で夕立の顔に触れて答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『夕立チゃん…?…泣かナイで…?お姉……ャン…が…イモートを守ルノ二…理由ハ要ら…ナイ……デショ……??』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

微かに…記憶の底に眠る

 

 

姉妹の記憶

 

 

 

暖かくて……

甘くて…

 

 

 

もう…もっと昔の事は思い出せないけど…

 

 

アナタの言葉で……思い出せたの……

 

 

ユウダチは…あの時…仲間の砲撃から私を庇って沈んだ…

本当は私が守らなきゃいけないのに…

 

ごめんね

 

深海棲艦化して…わすれちゃって…

 

 

 

ごめんね…ユウダチ…

アナタを裏切る形になって……

 

でも…

私にとって…ゆうだち は……妹だから

 

アナタを…なか…し…にさせたく……

 

 

お願い…夕立ちゃん…

 

この気持ちも今…あなたに流れてると思うけど…

 

 

 

 

憎しみなんかに…負けずに…

 

ユウダチを… …

 

 

 

 

 

 

『生きテ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕立に触れる手から力が抜けて…パチャリ…と海に落ちた。

 

 

そしてそのまま彼女は……砕けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!!」

 

 

 

 

 

 

艦娘に本当の姉妹…と言う概念があるかはわからない。

同一艦も複数存在する。

 

鎮守府に居る白露は夕立の姉だ。

 

 

 

 

 

ユウダチにとってもシラツユは姉であったはずだ。

 

 

 

シラツユも…また同じくどこかの片隅に白露としての意思を少なからず持っていた。だから…ソレを思い出した彼女は…敵なのに最後に白露()として夕立()を守ろうとした。

 

 

 

 

 

夕立は叫んだ。

 

 

 

 

頭に色んなものがモヤと一緒に流れ込んでくる。

 

理解が追いつかない。

でも…わかることがひとつだけあった。

 

 

 

 

 

 

シラツユは私を守って死んだこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナガトはその光景に驚いた…

何だ今のは…一体…。

 

馬鹿な…そんなはずは……

 

 

 

いや、ユウダチも傷がある…

ここは一旦引こう。

 

 

 

 

「ユウダチ…退クゾ」

 

「ウウ…目が……アレ…シラツユは何デユウダチじゃナクテ夕立を庇ッタノ……?」

 

 

「ウッ!!」

暗闇の右目にシラツユが映る。

 

彼女は…泣いていた。

ごめんね…と。

 

 

 

何故泣いている…?

 

裏切ったんだろう?

なのに…何故?

 

「…毒サレタンダネ…奴等ニ…大丈夫…絶対二沈メルカラ」

 

ユウダチはナガトと退散して行った。

 

 

 

 

響くのは夕立の叫び声だけだった。

 

 

 

 




加賀が来ると思ってたんだ!!

今書いてるんだ…。
そーだよ!!保存忘れもしたんだよ!!
本当にごめんなさいッッッ



というわけで突然のシリアスパート開始


終わるまでには書いておきますので…





質問に答えます。

もっと…甘い生活を…送りたいんじゃあ…。






今月は皆勤賞ですか?スタンプあげますね?

ラジオ体操かな?
多分皆勤賞…?




Twitterやってませんの?


何かデフォが毎日?更新してるんで…
お知らせの意味がないかな…と。



休んでよ!!

休むよ!どこかで!!






色々なメッセージありがとうございます♪
いつでもお気軽に頂けたら嬉しいです!





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156話 己であるが故に ② 想い濁流となりて

「帰還しました!!!」

 

 

副旗艦の比叡と神通が長門を抱えて帰投した。

 

 

 

長門は重症…即高速修復剤を使用しての入渠及び工廠での入院。

 

 

夕立も……特に夕立は目の前でシラツユが沈んだ。

入渠後も精神的に不安定だった。

 

 

とにかく錯乱していた。

 

暴れる夕立を抑えるのには苦労した。

 

俺も突き飛ばされた。

 

 

 

 

 

日が明けても、それは変わらなかった。

 

救は頭を抱えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「許せないッ!」

暴れる夕立。

 

「夕立!」

 

 

「何であの人達は!!!」

 

 

 

 

 

 

「シラツユや夕立をあんなにした奴らを…許せない」

…頭の中に浮かぶ…シラツユの最期

 

いや…仲間に沈められる瞬間

妹が姉を庇って沈んだ瞬間

 

 

艦隊計画の…末路。

 

「あんなことする人が…許せないッ!!」

…命を弄んで……何で!

私達は…皆の為に戦って居るのに!!!

 

 

 

 

「人が…そんな酷いことするんだ!!奴らの方が敵じゃないのか!!」

 

 

 

 

 

 

 

夕立は禁断の言葉を口にする。

 

「人なんて…皆ごろ…「すまん!」

 

 

提督が頭を下げて居る。

 

 

 

 

「それは俺たち軍人だ……すまない夕立」

 

 

 

「…提督?」

 

 

「頼む……その先の言葉は……言わないでくれ…お前に…その言葉を言わせたくない…」

 

 

 

 

 

 

 

"人を皆殺し……"

 

夕立にそんな言葉…言わせたくない。

言わせちゃいけない…。

 

 

 

「提督は何もしてない!悪くない!!!」

 

 

 

「いや……俺もその組織に属した奴だ…」

 

 

 

「でも…コンゴウ達を助けたっぽい!!」

 

 

「それは結果論だ…」

 

 

 

夕立は言葉にできなかった。

許せない…。人が正直憎い。

でも…麗や提督みたいな人も居る…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユウダチを救わなきゃ…倒さなきゃ…例え命を賭けたとしても…。

 

 

じゃないと…シラツユが助けてくれた意味がない。

そうじゃないと助けられる価値なんか無いんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督!長門さんが目覚めました!」

 

「…う………私…は」

 

「長門!!」

 

 

 

「良かった!!」

 

「…!!!」

が、長門は救の胸ぐらを掴んで言った。

 

「提督!!人はどうしてそこまで残酷になれる!?」

「私達の誇りすら踏み躙ることが出来る!?」

 

長門の目は怒っていた。

 

「長門…?」

 

「私が…私が奴を沈めてやらなければ…運命に……」

 

 

「出るぞ!提督!私はッ!」

 

「ダメだ…」

「今行っても…無駄死にするだけだ」

 

「ならソレで良い!!同じ長門を救えるなら!!」

 

「何故お前が沈むことが…奴を救う事なのか?」

 

「奴を沈めてやらねば…せめて……この手で沈めてやらねばならないんだ!!」

 

 

 

 

「待て…とにかくお前達は今は待機だ…治療が完全に終わるまで待機だ!コレは提督命令だッ」

 

 

 

「…お前も…わかってはくれないのか…」

長門は呟いたが…俺はソレを無視した。

 

 

 

 

 

あの2人は…何かおかしい。

そう思いながら執務室へと向かう時だった。

 

 

 

 

 

 

 

「提督!!鎮守府…正面海域の左右に…2体の反応が!!」

 

「…左側にユウダチ。離れて右側にナガト…ナガトは深海棲艦を引き連れています!!」

 

 

「何ッ!!」

 

「…両方とも出れる状態にない」

 

 

「両者…正門に近付いています」

 

 

 

 

 

だが…他の奴に出撃させても意味はない…いやむしろ…余計に事態が悪化しそうな気がした。

 

何故だろう…?わからないが…

胸騒ぎがした。

 

 

「俺が行く」

 

「ダメだ!提督!殺される!!」

時雨が制止する。

 

 

 

「いや…多分大丈夫だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は正門へ1人で向かった。

 

護衛を!と言っていたが、意味はないだろう。

逆に交渉しに行くんだから…1人の方が良い。

 

 

 

 

「む?提督ミズカラお出迎エカ?」

 

「…あぁそうだ」

 

「ヨクキタナ」

 

 

 

「サア!奴ラヲ出せ!!」

 

「無理だ…」

 

「何!?」

 

 

「戦える状況じゃない。特に長門はまだ回復しきってない」

 

「…戻ルマデ待つ…トイエバ?」

 

 

 

「その時は…万全のコンディションのアイツらが…お前らを明日へと導いてくれるだろう」

 

 

「明日?……フム?」

ナガトは考え込んだ。

 

 

「ククク……ハーッハハハハハハ!面白イ事ヲ言う!!アレダケヤラレテカ?!」

馬鹿にするユウダチ。

 

実際にボコボコにされているから…事実なのだが…

 

「そうだ」

彼はその表情を一つとして変えない。

 

 

 

 

 

 

「… 面倒ダロ!…ココデお前ヲ殺セバ……簡単ニオワルダロ?」

「夕立がシラツユを裏切ルヨウニシムケタ…イヤ、オマエカ!?人間!!」

 

ユウダチが武器を構えてくる…。

 

 

「……俺達は何もしていない…」

 

 

「…それと、俺を殺すのか?…提督が死んで弱体化した奴らを嬲り殺すのが趣味ならば…そうしろ…」

 

 

「何ダト!?ドウイウ意味ダ?」

 

本当にコイツは…艦娘としての記憶が無いのか…

 

 

 

 

「フム…ソレも一理アルナ……ワカッタ…待とウ…奴でナケレバ意味ハ無いカラナ…」

 

よし…やはりナガトが乗ってくれたか…。

 

 

 

 

「イクゾ…ユウダチ」

 

「何故ダ!?」

反論するユウダチ。

 

「……」

ナガトが、無言で睨む。

 

「……ワカッタ…」

 

引き下がる2人。

 

 

 

 

「待て…」

 

 

「何ダ?」

 

「お前達…アイツらに何かしたか?」

 

 

「……サア」

とナガトは笑いながら言う。

 

 

「オマエコソ…イヤ…オマエはシラツユの行動ノ意味が分カルか?」

 

「多分な…」

 

「……」

 

 

 

その言葉と共に2人は退がった。

ーとはいえ、鎮守府からほんの少し離れたところに移動しただけだが…。

 

 

 

 

「フーーーーー」

救は大きく息を吐いた。

 

 

 

ヤバい…緊張した!!

 

 

賭けだった。

 

艦娘の記憶を持ち…

更に…"長門"なら…堂々でないものを嫌う筈だから…。

やたらと運命と言うので…そこを突くしかない。

 

時間稼ぎとしてはそれに賭けるしかなかったのだ。

 

 

 

ある意味成功したが、問題は未だ残っている。

 

 

 

 

 

 

 

……まあどっちにしろ、今のままでは奴らには出撃許可を出せない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恐らく…同型艦のパスが繋がったのか…強い想いの引力に惹かれたのか…

何かされたのか…

 

思考が定まってないみたいだ。

 

夕立や長門発言を考えると…何かを見せられたのかもしれない。

頭にモヤが…とか言ってたな。

 

だからあんなに感情的に…?

己の命すら投げ出して良いとさえ考えて…か?

 

 

 

いや…

自分も同じ立場ならそう考えるかもしれない…。

 

 

 

 

だが、俺が思うに2人は根本的に分かっていない。

 

今の夕立は分かっていない。

奴が守られた意味を…。

 

 

 

今の長門は分かっていない。

ナガトを救うと言う本当の意味を…。

 

 

 

 

だが…押し付けだが、自分が死んでも良いなんて思いは持たないで欲しい。

 

 

 

 

 

だが、あの調子じゃあ…夕立とも長門とも平行線を辿るだろう…。

 

アレ以上の想いを…奴らにぶつけないとダメなのかも知れない。

 

……痛いかなあ…特に長門は。

 

 

 

 

 

 

艦隊計画…

 

本当に許さないのは

そんな馬鹿げた計画を進めた奴だ。

 

真壁は言った。データをサルベージしたもの…と。

 

以前のデータは破棄された筈。

 

 

いや…そもそも……

誰が始めた?

 

戦争初期の頃から…と言っていたな?

 

 

何故このタイミングで出てきた…?

もし、それが誰かの狙いだとしたら…?

 

 

 

まだ…真壁だけでこの件は終わってないのかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

……

 

 

「提督!!」

 

執務室に夕立が飛び込んできた。

 

 

「夕立…?」

 

 

「私!行くっぽい!!」

 




はい!

引き続き…シリアスです!(๑╹ω╹๑ )


質問にお答えしますね!

好きな艦船擬人化は…?とのことで…。

艦これなら

金剛、鳳翔、加賀、時雨、不知火がほぼスタメンなくらいです!
勿論…旗艦は金剛…


アズレンなら
???、ベルファスト、赤城、オイゲン、大鳳
期間は…???ですね!



あと…別ゲーですがブルーオースでは
オークランド、金剛、オイゲン…サンファン……


…ぶっちゃけ…一部です。
好みに突き刺さったら基本的には弱くても育てて…何かしらの編成には組み込みますね!

ヤンデレ勢とか提督LOVE勢大好きです!



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157話 己であるが…故に ③ 深紅の瞳に光る

本日2話目の投稿です!

156話も投下してるのでご注意下さい!


頭の中が霧がかかって…る。

 

行かなくちゃ…とにかく…ユウダチを…シラツユの無念を…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夕立…」

 

「夕立は頑張るっぽい…」

「夕立は…夕立はッ!!」

 

「まだ……まだ!!戦えるっぽい!ユウダチを倒すっぽい!!」

 

 

「夕立ッ!!」

 

シン…と静まり返る。

 

 

「お前は……何故戦う?」

 

「シラツユの無念を…ユウダチを助けるっぽい!」

「助けられたから…返すっぽい!」

 

 

 

「その為に…恩を返す為に沈めるのか?死んでもいいのか?」

 

「沈めるっぽい!死んでも大丈夫っぽい!だって…それが救われた私の責任だから!!」

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿野郎!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「え…」

 

 

 

「ダメだ…」

 

「何で!!」

 

夕立の顔はあからさまに苛立っていた。

 

 

 

「このままじゃユウダチが…シラツユが可哀想だ!!

助けられた命だから…その為に使うんだ!!」

 

 

夕立は叫んだ…

言ってはならない言葉…を。

 

 

 

 

 

 

 

頭が痛い。

 

 

 

「別に私1人居なくても!明日はやってくるっぽい!」

 

 

 

夕立は泣きながら言う。

 

 

 

そうだ

明日は必ずやってくる。

 

 

当たり前のようにやってくる。

 

そこに大切な人が居ようが居まいが‥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「要らねえよ!!そんな明日ァ!!」

 

 

 

 

 

救も叫んだ。

 

 

 

 

「やってくる明日にお前が居ないなら…俺もお前を守ったシラツユも…此処にいる皆も…きっと思うはずだ……そんな明日は要らない…と。」

 

 

 

「…提督…?」

夕立は提督の言葉に飲まれている。

 

 

「俺達の望む明日には…誰も欠けちゃあいけないんだ…。死んでも…沈んでも良い奴なんか…居ない!!」

 

 

「どんなに不器用な奴でも、バカな奴でも、抜けてる奴でも、ヤベーヤツでも、無愛想な奴でも、デレデレな奴でも…どんな奴でも…俺には大切な奴なんだ!!」

 

 

 

 

「でもッ!あの子はッ!私を…!」

そうだ…助けたのだから…私には……。

 

 

「なら!尚更その為に沈むんじゃねえ!!!」

 

 

「ッ!!」

 

 

 

 

「ソイツは…もう1人の白露はテメェに最後の最後に…なんて言った!!」

「思い出せッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんて言ってたっけ…?

 

 

 

そうだ

 

 

そうじゃないか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

夕立は思い返す。

 

 

 

 

たった一瞬…。

 

 

 

たった一瞬だけ…でも最期に…彼女を守る為に姉となった…シラツユの言葉を…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『夕立チゃん…?…泣かナイで…?お姉……ャン…が…イモートを守ルノ二…理由ハ要ラナ…イ……デ…ショ??』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『生きテ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕立の頭の中の霧に風が吹いた。

 

 

 

 

 

「…生きて……って言ったっぽい……」

 

 

 

 

 

 

夕立の肩を掴む。

 

 

 

 

「……ここにも居る白露でも時雨でも…同じ事をしただろうさ」

「なら…お前はそれでも…その想いを知っても沈みに行くのか?」

 

 

 

「……」

 

 

 

 

「夕立…お前は託されたんだ!!」

 

「え…」

 

 

 

「明日だ…!お前の…ユウダチの明日だ!!!」

 

 

 

 

「明日…?」

 

 

「ユウダチはずっと止まってるんだ……過去に雁字搦めにされて…時計なんか進んじゃいない」

 

 

「本当はあのシラツユがそうしてやりたかったはずなんだ!姉として…。でも…お前も死なせたくなかったからお前に託したんだ!だから…お前が解き放ってやれ!奴を…夕立に戻してやれ!!」

 

「あのユウダチを助けられるのはお前しかいない!深海棲艦のまま死なせるな!!!」

 

「背負え…沈んだアイツ(もう1人の姉)の言葉も想いも何もかもも…!!お前には…姉が2人も居たんだぞ!!!」

 

 

「………」

…私なんかが……後押し…?

 

 

 

「まだ理由が足りねえか?」

 

 

「え?」

 

「なら……俺も理由になってやる…夕立…コレを…受け取ってくれ」

 

 

「………指輪?」

 

 

 

 

頭の中の風が強くなる。

 

 

 

 

 

 

「誓い…だ。俺はお前を離さない…。だからお前も…絶対に帰ってくるんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

「…お前が帰ってくる理由に…ならんか?」

「同情だとか…そんな為じゃない!俺は…お前にも俺の明日の1人で居て欲しいんだ」

 

 

 

 

 

「そして…この馬鹿げた事を始めた奴らをぶっ飛ばしてやろうぜ」

 

 

 

「……ムードもないっぽい…」

 

「うるせぇ」

 

「提督は私を…好きっぽい?」

 

「あぁ…愛してる」

 

「私が居ないと…困る?」

 

 

「あの世の果てまで追いかけるくらいにな」

 

 

 

 

提督が近づいてきてー…

 

 

唇に…感触が……。

 

 

 

「これでどうだ?」

 

 

「…ちゅう…されちゃった…ぽい」

 

 

 

 

 

 

 

夕立の頭の中の霧が…晴れた。

 

 

 

 

 

 

そうだ…。

私は…シラツユの意思を任されたんだ…。

 

 

 

 

「……わかったっぽい」

『生きて…明日を迎える為に戦ってくるっぽい!そんで…ユウダチを…解放して……このツケを馬鹿野郎に払わせてやるっぽい!!」

 

救には夕立にシラツユが重なって見えた。

 

 

 

 

 

「……夕立」

白露が話しかける。

 

 

「白露お姉…」

 

「夕立は大丈夫っぽい!!行ってくるっぽい!あのユウダチにシラツユの気持ちを伝えてくるっぽい!!」

 

 

「うん…あの子をお願いね?」

 

 

 

その目は…もう…下じゃない。

真っ直ぐに向いていた。

 

 

 

 

「白露型……夕立…改…行くっぽい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

夕立がドックから出撃する為にゲートへ向かう。

白露にはその背中が何だか少し大きく見えた。

 

 

 

 

 

 

出撃ゲートで準備をしてる時だった。

 

 

 

 

『夕立ちゃン』

そう声が聞こえた気がした。

 

 

 

シラツユ……うん…居てくれるんだね。

 

 

 

「…私には2人の白露お姉が居るっぽい!!アナタもお姉っぽい!!」

 

 

 

そのシラツユは…

 

シラツユは…ニコリと笑い…夕立に溶けて行く。

 

 

「うん!私が一緒に戦うよ!!シラツユも提督も…」

 

 

 

 

 

心が燃える!!

 

アツい…体が熱い!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぽぽぽいーー!?」

 

 

「体が…本当に熱いっぽいーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白露は焦った。

「夕立が光ってます!提督!?って提督もおおお!?」

 

 

 

 

救は目を閉じて…そのまま言う。

 

「行け!夕立ッ!お前なら…行けるッ!!為すべきを成せ!!」

 

「ぽーーーーい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

–––夕立  改二–––

 

 

 

「夕立が……あの姿は!時雨みたいに……」

 

 

 

 

その姿は…時雨のように…白露のように…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの目…は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……シラツユ…力貸してくれるんだね」

 

 

うん…と、聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 

「2人でユウダチを助けるっぽい!!!」

 

 

 

 

 

 

 

出撃ゲートから夕立が出る!!

 

 

 

 

「夕立 改ニ!出るよ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワカラナイ、ワカラナイ、ワカラナイ、ワカラナイ。

何故シラツユは…夕立を助けた!

私を撃った!裏切った!!

 

奴か!?夕立が何かしたのか?!

 

 

 

右目に映ったシラツユは泣いていた…

今は見えないけども…きっとそうなんだ…そうに違いない。

 

 

 

 

なら

殺さなければ…

奴を殺して…シラツユを…

 

 

 

 

 

 

#####を解放……?

 

 

 

 

何だ?

 

 

 

 

 

 

 

 

#####ってなんだ?

 

 

 

 

 

 

 

ユウダチは頭に何かが過ったが…ソレが何かわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこに夕立が現れた。

 

 

 

その目は……まるで……

 

 

 

 

 

「何ダ…お前…ソノ目ハァァァア!!!」

 

 

 

「……シズメ…その目ガ気に入ラナイッ!!」

 

 

 

 

そう…

夕立の目は…

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()() 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さあ…()()と…踊りましょう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユウダチ…今解放してあげるっぽい!!」

 

 

 

 

「シラツユは…何故アイツの味方ヲ……!!!」

 

 

 

「ええええい!!」

夕立が突っ込む!

 

 

 

 

「フン!!」

ユウダチが夕立を蹴り飛ばそうとする。

 

 

「うっそ……ガッ!!」

受け止める…が、一撃が…重い…。

 

 

 

改二でも…こんなに差が!?

 

 

 

 

 

射撃にしても…

格闘にしてもユウダチは強かった。

 

 

 

 

 

ユウダチは艦隊計画と深海化で強化されている。

 

改二になったとは言え、夕立よりも遥かに強い。

 

 

 

 

1VS1なら尚更だ。

 

 

 

 

 

 

 

「ユウダチは…強いね…でもッ!」

 

 

 

 

 

「ハン!1人デ、何ガ出来ンダ!!何故…シラツユはお前ナンカヲ……」

 

 

 

 

 

違う。

 

 

 

 

 

夕立には…居るんだ!!

 

シラツユが居る。

 

尚更…帰る理由になった提督が

帰りを待つ姉妹が

皆が居るんだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シラツユにとっては…夕立は妹なのだ。

 

だから

最後に彼女の艦娘としての記憶が…本来の夕立の姿を映して

夕立を守ろうとさせたのだ。

 

 

あのまま行けば彼女は間違いなく夕立の敵であり、ユウダチの概念的なアネだった。

 

だが、運命は時として別の歯車と噛み合う。

 

夕立の「お姉…」の声が…シラツユに届いてしまったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

またもや彼女を導くのは数奇な運命の歯車。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「夕立ーーー!!負けるなー!!」」」

白露が後方から叫ぶ。

 

白露は夕立が心配で近くまで出て来ていたのだ。

 

 

 

 

当然その声は…西波島の夕立に向けて出された声…。

 

 

 

 

なのに

ユウダチに届いてしまった。

ユウダチは反応してしまった。

 

 

無意識か

己の砂粒程度に残された夕立としての記憶からか…

 

 

 

特に…焦がれた

白露#####の声に…

 

 

「?シラツユ?」

 

 

 

 

夕立はその一瞬を見逃さなかった!!

 

「今だッ!そこぉォオッ!!!!」

 

夕立が懐に飛び込む!

 

 

 

「ッ!?」

ユウダチは驚く。

 

しかし、遅れたのは一瞬だ、何の問題も……

 

 

 

 

 

––いや

 

 

 

 

 

–––夕立が消えた!?

 

「ドコ二!!?」

 

 

 

 

––違う!!

 

 

 

 

 

 

シラツユに潰された目で出来た死角だ…!!!

 

 

また…コイツは…シラツユに導かれた…のか!?

何故…アイツを導くの!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

懐に身を沈めながら肉薄する夕立。

 

 

 

聞こえる…。

 

響くんだ!

 

聞こえるんだ!!

 

ユウダチを…

 

イモートを助けてってお姉の声が!頭の中で響くんだ!!

 

 

 

 

提督は私にしか出来ないって言ってくれた!

 

 

 

–––だから、私は夕立としてその声に応えるんだ–––

 

ユウダチに…届けるんだッ!!

 

 

夕立は叫ぶ。

 

「ユウダチイイイイイイイ!!!」

 

 

 

 

酷くその声が頭に響く…。

 

 

 

 

「夕立いいいい!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

交差する2人…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユウダチは見た。

 

 

 

–––左目に映った獣の様に低く接近した夕立は…此処でのシラツユによく似た紅い眼だった。

 

目障りなほどに綺麗な……紅い目。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うああああああっ!!くらええええ!!!」

 

 

 

 

また一瞬遅れた!!

反撃…にィィ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユウダチは見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無いはずの目は…####を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

右視界に映る暗闇にかつての…シラツユ#####を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お姉ちゃんと一緒に帰ろう?ユウダチちゃん」

 

笑顔で呼びかけるの在りし日の幻影(白露お姉ちゃん)の姿が––

 

 

 

 

 

 

 

 

「オ……ネエ…チ…」

 

 

 

笑って……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ……シラツユお姉ちゃん(思い出した)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、シラツユは…ユウダチを本当の妹と知っていた…いや、分かった。

 

そして、彼女は選択した。

 

艦娘の白露として–夕立を守ることを

 

ユウダチの姉として…彼女を守るために、彼女に…これ以上仲間を傷つけさせない為に…艦娘として彼女に対峙する事を。

 

 

彼女は夕立に託していったのだ

声にこそ出していないが…

ユウダチを…頼むと。

 

 

 

妹を守るのに理由は要らないー

あの言葉は…

彼女(ユウダチ)に仲間殺しをこれ以上させない為に。

もう1人の妹(夕立)を死なせない為に。

 

 

彼女が白露であるが故に…

姉は命を賭したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お姉ちゃんが笑ってる……

 

あぁ…そうか…

お姉ちゃんが泣いてたのは……

 

姉として…

私を…自分で助けられなかったから…か…

私の事を…(夕立)に任せなくちゃいけなかったから……。

 

そして…

私がお姉ちゃんを庇ったことを

ずっとごめんて言ってたんだ…

 

 

 

 

 

ごめんね…お姉ちゃん…。

 

 

 

 

 

 

 

「同じ夕立として…妹として…あなたの全てを背負って行くっぽい!!」

 

 

 

 

シラツユが言ってる…。

あの子を…壊してと聞こえる。

 

 

 

違う!

そうじゃない!

 

あなたも…妹殺しにさせない!!

 

 

 

だから…

 

ごめんシラツユ…

やっぱり夕立は…撃てないっぽい

 

だから…夕立なりにぶつけるっぽい!!

 

 

 

 

 

夕立は…ユウダチの持つ武器を自らの武器で殴り落として

 

 

 

 

想いを込めて脚を繰り出す。

 

 

 

  

 

 

 

 

夕立のゼロ距離での蹴りは––

ユウダチを…ユウダチの心を貫いた。

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思い…出した…

 

お姉ちゃんは来てくれた。

 

最後の最後に

思い出の中にあった…

見たかった…あの笑顔で……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ネエ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     

 

 

 

 

 

 

「…何?」  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何でアナタハ私ノ手ヲ…?敵ナノニ」

 

 

夕立はユウダチの手を取っている。

あの時の自分とシラツユのように。

 

 

「私の中にはシラツユお姉が居るっぽい」

 

 

「だからユウダチも…私の姉妹…ぽい」

 

「私も…姉妹…?」

 

 

 

 

姉妹–何故だろう

その言葉で…涙が溢れる。

 

 

 

 

 

「…お姉チャン…が…帰ロ…ウって……」

 

「うん…」

 

 

ユウダチは左手で夕立の顔に触れる。

 

 

ポロポロと崩れる親指で彼女の目元に触れる…。

 

 

「その目……おネエちゃんにソックリデ……綺麗」

 

 

 

そう…私が言ったんだ…

紅くて綺麗だねって…。

 

あの時のシラツユお姉ちゃんは…嬉しそうだったなあ…

 

 

 

 

 

「ありがとう…」

夕立はその手に手を重ねて…

 

 

 

ユウダチを抱き締める

壊れてしまわないように…そっと

 

 

 

「ア………お姉チャン…?迎えに来て…くれたン…ダネ」

 

 

 

「…」

その姿は………私には見えて……いや、見えた。

私から出て行く…彼女の姉が。

 

 

「ウン…行く…ヨ」

 

 

 

 

「今を生きる…もう1人の…私……あなたは特別…な夕立…。」

 

「お願い…もう…こんな…辛い思いをする…艦…娘が居なくなるように…」

 

 

 

 

「約束するっぽい!!」

 

「だから…シラツユお姉と一緒に私の中で…見てて」

 

 

 

 

……優しいんだね…

 

 

 

「あ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー行こう?夕立

 とシラツユ(白露)が言う。

 

 

 

––お姉ちゃん!!痛かったよね?ごめんね?

 ぽろぽろと泣くユウダチ(夕立)

 

 

 

 

 

––夕立…大丈夫…私こそ…目ごめんね?

 

 

 

ーううん!大丈夫!

 

 

 

ー良かった。さあ、行きましょ?置いて行くよ?

 

 

 

 

––待ってよ!一緒に行くっぽい

 

 

 

 

––うんうん。一緒に…行こうか

 

 

 

 

––ねぇ!今日の夕飯はー……

 

 

 

 

 

 

その2つの光は…重なり合うように還って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユウダチは還った。

姉と自分に見送られながら…

姉に手を取ってもらって

 

 

 

「っはーーーーー!!!」

 

「終わったっぽい」

 

 

 

「ううん…始まり…。もうあなた達みたいな艦娘を増やさない為に」

 

 

夕立は海に寝転がり言った。

 

それは自分に向けて

姉妹に

 

もう一つの姉妹に

 

提督に

 

 

 

 

 

 

もし、艦隊計画に巻き込まれてなかったら…

こんな悲劇は無かっただろう。

 

 

 

 

 

もし、シラツユが夕立を助けなければ…夕立は改二になる事もできなかった。

そもそも、今は海の底に沈んでいただろう。

そしてユウダチは夕立を沈めた艦娘になっていた。

 

もし、シラツユがユウダチの目を撃ってなければ…死角に入ることも…

ユウダチがシラツユを見ることも無かった。

 

 

運命とは小さな歯車か変わるだけで大きく変わる。

 

 

 

もう1人の姉によって生まれた運命。

 

 

 

 

 

 

 

誰も知らない…

きっと知ることはない姉妹の物語。

 

 

 

 

悲壮な運命を辿りながら…

辿り着いた海で…

 

 

 

姉は…最後まで2人の妹守ったのだ。

 

 

 

夕立は泣いた。

とかく泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

寝転がる妹を姉が迎えに行く。

 

姉は…あのシラツユとユウダチの分まで夕立を抱きしめる。

 

「お帰り…夕立……」

 

「…ただいま」

 

2人で…泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて…次はアイツかなあ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「長門……」

 

「提督ッ!!出撃許可を!!」

 

 

「ダメだ…」

 

 

 

 

 

俺は長門と喧嘩しに来た。

 




ユウダチ編です。



少しでも良いなッ!と思って頂けたら幸いです(๑╹ω╹๑ )




いくつかですね
最終回近いんですか?
終わっちゃうんですか?続けてくださいというメッセージを頂いております。


やめませんよ!!

ほぼ!ほぼ!毎日の投下もやれる限りは…

ただ、投稿の為に薄くしてしまうと本末転倒なので
まあ…できる範囲で早めに投稿しますよー!

応援していただけるとありがたいです!


コメントやメッセージお待ちしています!
お気軽にお願いします(๑╹ω╹๑ )!


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158話 己であるが故に ④ 運命を超えて行け

「行かせてくれッ!私は…あそこで!!例え沈もうとも!」

 

「ざけんなッ!!」

 

「お前に何が判るッ!提督!この悔しさが!2度も裏切られて!!」

 

 

 

「誰の悔しさだ!?今のお前か?昔のお前か?…ナガトか!?」

「判るかッ!!」

「テメェが奴と沈んだら…その誇りが満足すんのか!」

「前にも言ったが…お前だけ沈んだって何にもなりゃしねえんだ!!」

 

 

「どけっ!いくら提督で愛する人と言えど…」

 

長門は脅すように言う。

 

 

 

 

しかし、奴は退かなかった。

 

「やれや…」

 

 

「!?」

 

「死にたがりの攻撃なんぞ…効くか!」

 

 

「このっ!!」

カチンと来てしまった。

 

 

 

 

バシイイン!!

提督にビンタしてしまった。

上官に危害を加えるなぞ…やってはならない事なのに

 

頭が…

ナガトの無念を晴らす事でいっぱいになるんだ。

 

 

 

 

「ぐっ…」

 

ヨロっとしたが提督はそれでも退かない。

 

「退いてくれ…これ以上は……!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っだらァァ!!」

右ストレートだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は…お前と喧嘩をしに来たんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐうっ!?て、提督?!本気で…?」

油断をした!まさか殴ってくるとは…。

 

 

「…沈みに行くなら…俺を殺してから俺の死体担いで行け…そして沈め!!俺もあの世へ一緒に行ってやる」

 

 

 

「馬鹿か!!そんな事出来るわけ…」

 

 

 

 

「その覚悟もねえなら…簡単に俺の前で死ぬなんて言ってんじゃねえ!!」

 

また渾身の右ストレート。

 

私はそれを受け止める。

「何がビッグセブンだ…何が…出られなかった者だ」

 

「テメェの気持ちなんか分かんねえよ!」

 

「でもな、今の俺らの気持ち…テメェに分かんのか!![

「テメェは沈んだら…はい終わり!誇りに死にました〜だろうけどよ」

 

 

「貴様ッ!バカにするのか!」

バキイ…と鈍い音がした。

長門の拳が…提督に…。

 

 

「…ッ!!」

やってしまった…。

もう引けない…。

 

 

 

「…ビッグセブンの戦艦長門様の拳ってのは…そんなもんか」

 

 

 

 

長門はゾクリとした。

 

 

 

 

「…長門!提督!もうやめて!!」

陸奥が叫ぶ。

 

 

それでも2人は止まらなかった。

 

 

 

私は今、恐怖している。

提督に…この人の目に。

 

 

 

「残される…俺らの気持ち…考えてんのか!!この死にたがりがぁあ!!」

提督は手を塞がれたまま…頭突きした。

 

「ぐっ…うっ!」

鼻血が…。

 

 

 

 

このっ!!

2人は取っ組み合いから殴り合う。

無論、提督へのダメージはデカい。

 

だが彼は一歩たりとして引かない。

逆に長門が気圧され始める。

 

 

 

 

 

 

そして…

 

 

「お前は…戦艦…長門だろう!!」

救は叫んだ。

 

 

「……!?」

 

 

 

CR作戦(核実験)では…

 

 

2度も爆撃に…耐えた。

 

 

"不屈の…戦艦"

 

 

アメリカの軍人をして…海の古強者は…死せずって言われたんだろ?!

 

激動の時代の中で…

幾万の命を奪ったあの光にも…お前は沈まなかった。

 

まるで…今のこの国のように!!

俺は資料でしか見てねえけど…お前はすげえと思ったよ!!

 

 

2度目の後に…

その最期の姿を誰にも見せないように…逝ったんだろう?

 

 

 

決して納得の行く最期ではなかっただろう。

 

でも…俺はお前の最期は…

 

 

 

あの悪魔の光にお前が勝ったんだと思ったんだ!!!

お前の意地を!誇りを!!

未来にお前が示したんだと思ったんだ!!!

 

 

この国…そのものだと…。

 

 

お前は…

 

 

 

この国の誇りであり続けた…戦艦長門なんだろう?」

 

 

「俺の中でも…お前はカッコいい奴だったんだよ!その姿とお前の在り方がカッコいいって!!」

 

 

 

–––頭に声が響く。

 

 

 

 

 

「だから…弱い事言うなよ…なぁ…。こんな中でも…不敵に笑って…"暁の水平線に勝利を刻むぞ"って言うのが…ビッグセブンの戦艦長門なんじゃないのか?」

 

 

 

 

 

 

–––私の頭の霧を突き抜けて…響く。

 

 

 

 

「………」

 

提督か光って見えた。

彼の背に光源があったからかはわからない。

しかし…私には

彼が輝いて見えた。

 

 

「それが…そんなナヨナヨした姿が…ビッグセブンの戦艦長門なのか!!その指輪も…誇りも…ただの飾りか!!!!」

 

 

 

 

 

「奴を沈めるのがゴールじゃない…お前ならわかるだろう?」

 

 

 

 

 

 

–––––何処にこんな不器用な奴が居ようか。

 

 

 

 

『提督、暁の水平線に勝利を刻むぞ!』

 

『おう!長門!抜錨だッ!!帰ったら間宮のパフェご馳走してやる!』

 

『大盛り…でな』

 

『いいだろう!』

 

 

『…貯金をおろしておくんだな!』

 

 

 

 

提督も…ボロボロなのだろう…。

 

ポス…ポス…と私に力ない拳を当ててくる。

 

なのに…痛い。

心が……痛いんだ。

 

 

 

 

 

 

 

–––艦娘相手に…正面から殴り合いの喧嘩をしてくれる提督(バカ)が…。

 

 

 

眩しくて…表情が見えない。

 

 

 

「長門の悲しい運命だ?クソ喰らえだっ!!」

 

 

 

 

 

 

「そんな運命ぶち曲げて…ぶっ壊せ」

 

 

 

「さあどうする!長門ッ選べ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

「俺を殺してから行くか?それとも…俺と共に暁の水平線に勝利を刻む(運命に抗って進む)か?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有り得たかも知れない…。

私が…あの大戦を…駆け回り…活躍するのが。

 

私の最期は…決して納得の行くものではなかった。

 

この生を受けてからも……そう思っていた。

死に場所を…探していたんだ。

 

 

なのに…提督は…この私をカッコいい…誇りだと言った。

 

 

この国そのものだと。

 

 

 

 

こんな…

ちっぽけな人が…

弱い…人が

私を愛してくれる人が…

私が愛する人が

 

色ボケで

不器用で

優しくて

厳しくて

無茶苦茶で

私より危なっかしくて

暖かくて

寂しがりやで

ワガママで

 

私の愛する人が…

 

 

 

その小さな体で…私に全てをぶつけて来てくれる。

 

その大きな心で…私の全てを受け止めて…受け止めようとしてくれている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

–––あぁ…今なら分かる。

 

何故私が艦娘の長門として…今ここに居るか…。

 

 

 

 

 

 

私は…この時の為に…。

 

 

この提督は私達の艦旗…。

私達の希望の光…。

神崎 救と言う提督(未来のその先)を守る為…

このバカと…明日を歩む為に…。

これから多くを救う為に……。

 

 

ならば、ここで応えねば…なるまい。

 

 

このバカに報いる為に…。

 

 

そして、

ナガト…を救う為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

もう私の頭はハッキリしていた–––

 

 

 

 

 

 

 

 

「バカ…だな」

 

「あん?!」

 

「私相手に殴り合いの喧嘩を挑むなど…歴史的に見ても居ないだろ」

 

 

「それが…お前を愛してると言うことなんだよ」

「前にも言ったが、俺は戦えない。それがどれだけ悔しいかわかるか?」

「俺が死んだら終わりじゃない…お前達が死んだ時点で…俺は戦場に立つこともなく椅子の上で死ぬんだ」

 

 

 

「……」

 

 

 

「そうだな……」

 

 

 

「ふっ……私の負けだ」

 

「いつも…提督には助けられる」

 

 

長門は頭を下げる。

 

「すまん…提督…処分なら後でいくらでも…」

 

「あん?ただの夫婦喧嘩(スキンシップ)だろ?処分も何もねえよ」

 

「な…?!」

 

 

本当に…提督は喧嘩をしに来たのだ。

そこには…

上官も…提督も

部下も…艦娘も無く

 

ただ神崎 救と長門(指輪を持つ夫婦)として喧嘩しに来たのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「……そうか…本当にバカだ…」

 

 

 

––私達は心身を削って戦う。

 

 

––それは彼も同じだ。

 

 

––彼も同じ戦場に立っているんだ。

そして私は…私達はその想いを背負って戦場に征くんだ!!

 

––暁の水平線に勝利を刻みに(輝く明日を…掴む為に)––

 

 

 

 

 

「…その目つきなら…もう迷わないな?」

 

「あぁ…見ていてくれ」

 

 

 

「長門!」

 

「何だ?」

 

 

救は彼女の鼻血を拭く。

 

「笑えてくるからな…」

 

「これは提督が……!?」

塞ぐように唇を重ねられる。

 

「見送りはこれでいいか?帰ったらお前からしてくれ。そして…帰ってきたら間宮のパフェだ」

 

 

「特盛でいいか?」

 

「良いだろう!好きなだけ食わせてやる!だから、あの死にたがりに明日を見せてやれ!!()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

「忘れて………そうか…!!」

 

 

 

 

 

「長門さん!いつでも行けます!!」

大淀が言う。

 

 

 

 

長門が…立つ。

 

 

戦艦…長門

 

艤装…展開ッ!!

 

 

抜錨ッ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

長門…

戦艦…長門。

 

 

その誇りは…決して沈まないッ!!!

 

 

決して

 

 

 

沈ませないッッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

長門は見る

己の体から発される光を…。

 

む?何だ?この…線は…?

 

 

その線は…白露や大淀……皆へと続き、提督へと伸びている。

 

「…コレは…提督との…想いの絆…?」

 

伝わる。

 

「長門…行けッ」

 

体が更に光る

伸びた線が大きくなり、強く光る

 

 

「行けええええええ!!!」

 

 

「あぁ…見ていてくれッ––––この長門は…二度と沈まないッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何だ…あの光景は…

何だあの光は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

––感じる。

目障りな光。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒカリガァア!!」

「消エナイ!消えナイイイッ」

 

 

お前達の光が…目障りだ!

 

 

ナガトから夕立と白露に向けて砲撃が放たれる。

 

 

 

 

 

 

が…

 

 

 

「うおおおああああッ!!!!」

 

 

 

砲弾は何者かに防がれた…どころか弾き返された!!!

 

 

「ヌウウウ!…長門ォ!!……」

 

 

 

「待たせた…ナガトよ…」

 

「長門…改ニ……抜錨したッ!!」

 

 

 

目の前には…長門 改よりも

凛々しく輝く長門 改二の姿があった。

 

 

 

 

 

「お前を明日へ導きに来た!!」

 

「アシタ…ナンカ無い!!」

 

 

 

長門が輝いている…?

 

 

「ヒカリ…ヒカリガ!!!」

「お前ナラ分かルダロウ!!同じ長門ナラ!!」

「消エナインダ!同じトコロ…目に浮カブンダ!」

 

 

ナガトは眼帯を外した。

ドス黒いほどの真っ赤な目がそこにあった。

 

 

 

 

 

「だからお前を…私を救いにきた」

 

「助ケテ……助けテみろオオオオ」

 

 

 

 

 

ナガトが長門へ飛びかかる。

 

 

 

 

長門はヒラリと躱して反撃する。

 

鮮やかな正拳突き。

 

 

「ガッ…ヤルヨウニナッタナ!!」

口元から血を滲ませてナガトが言う。

 

 

 

 

 

 

しかし

その後も

 

 

躱す     蹴る

 

躱す    殴る

 

 

躱す   投げ飛ばす

 

 

を長門は繰り返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ…長門のハズ…

 

同じ気持ちを抱いたまま生まれた…ハズ

 

なのに、なのに、どうして?

 

 

 

 

 

 

どうしてこうも違う。

 

 

 

 

何故、この長門の拳は…こんなにも重い?

 

熱いのだ?

 

 

 

 

 

長門から攻めてくる。

 

 

 

 

 

「お前のその無念も…私が背負って歩もう!」

 

 

 

 

ナガトは見た。

 

 

 

 

 

長門の姿を…

そこに夢見た理想の自分を…。

 

 

 

 

ドゴッ…

 

長門のストレートがナガトの顔面に突き刺さる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人はその体制のまま時が止まったように…静止した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナガトは分かっている。

自分の中で何が1番憎いか。

 

 

 

 

 

ユウダチとシラツユが夕立に救われたことか?

 

ー違う。

 

 

艦隊計画が頓挫したことか?

 

––違う。

 

 

仲間に…人に裏切られた事か?

 

––少し当たりだが違う。

 

 

深海化して人に牙を剥くのが?

 

––違う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()2()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナガトは……自分だけの世界で思う。

 

 

 

「何度生まれ変わっても…

何度やり直しても

姿が変わっても…同じ事を繰り返すだろう。

 

 

 

だって…それが運命…私達の在り方だから…」

 

私がいつも自分を納得させる言葉…。

深海化してもそれは………

 

 

 

 

「違うッッ!!!!」

 

 

 

 

「!?」

 

 

 

誰だ?

 

 

 

 

 

 

 

「だから抗うんだ…!!

その運命だろうと…超えて行く…!!

 

 

 

お前が忘れたものを…大切なものを…お前に見せてやろう!!」

 

 

 

 

長門だ…と?!

 

コイツは…私のこの世界に(こころの中に)まで入ってきたのか…!?

 

 

 

 

 

 

 

「私達はここで沈むのが運命なのだッ!私は!お前の運命なのだ!!!!」

 

 

 

 

 

–否定してくれ

 頼む、(運命)否定して(乗り越えて)みせてくれ!!

 

 

ナガトは機銃を撃ち放った。

 

 

 

 

 

「…あぁ!見てろ!ここで私が死ぬと言うのが運命なら…お前が私の運命と言うのであれば!!」

 

長門はナガトへ向かい地を蹴る。

 

 

 

 

 

 

 

艤装を捨てて

 

 

 

 

 

「今ここで!それを乗り越えてやる!!」

 

 

 

 

 

 

 

弾は長門に掠るが…長門は怯む事も避けるそぶりも無くナガト(運命)へと走る。

 

 

 

 

 

 

–そうだ……頼む!!

–お前は…

 

 

「コレでも…抗うかッ!?」

ナガトは主砲を向け–––––

 

 

 

 

 

 

 

 

––お前は!

 

 

 

 

 

 

 

 

長門はもう居た。

 

 

私の勝ちだ!!(運命を乗り越えたぞ!!)

 

 

 

 

 

––誇り高い長門なのだから!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ…それでいい!さあ」私を殺せ(運命を壊せ)

 

 

 

「……」

 

 

 

そして長門は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何をする!!やめろ!長門!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナガトが何も成さず……仲間に…人の手で沈むのが運命というのなら…

 

 

 

その本来の温かさを忘れたらと言うのならば…

 

 

 

その運命を…超えて、私に出来るのは…

 

 

 

 

夕立のようにシラツユの意思を継いで倒してやる事ではない。

 

長門としての誇りを無理矢理ぶつけてやることでも無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もういいんだ…」

 

 

 

 

「お前を待つのは……悲しい運命だけじゃない…」

 

 

 

 

 

「分かるか?私の温かさが」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この…光を……この温かさを…伝える事。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長門は…ナガトを優しく抱き締めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ…あぁ!!!!」

 

 

 

 

ナガトを包み込むのは…自分への憎しみでも殺意でもない。

長門の温もりだった。

 

 

 

 

 

 

 

期待された戦艦だった。

それが誇りだった。

 

沢山の仲間に愛された…

憧れられた…

それも誇りだった。

 

 

2度目の生こそ…皆と同じように

戦さ場で…最後を迎えたかった…。

 

人の温かさに触れながら…その為に命を散らせたかった。

 

 

 

だから…艦隊計画なぞにも協力した。

 

 

なのに…

なのに…

私の尊厳も誇りも…踏み躙られるような最後…

 

 

 

 

憎かった

 

ただ

ただ

憎かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう…泣かなくて良い……ナガト(私と同じ長門)この温かな(提督の暖かさ)の中で…逝け」

 

 

「……間違っていたの??……私は…」

 

「いや……知らなかった…いや、迷っていただけだ」

 

 

 

 

 

そう、彼女は艦娘になってから忘れていたのだ、知らなかったのだ。

 

人の温かさを…優しさを。

 

 

 

いや…

自分を…自分の在り方を信じ続けようとしたからこそ…

2度目に沈んだ時に裏切られた!…と、閉ざしてしまったのだ

 

 

優しさを、温もりを全てを…。

 

人や仲間のそんな所は無いはずだ…

コレは運命なんだ–––と、自分を納得させて。

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、皆が待ってるぞ」

 

 

あぁ……陸奥…酒匂……………

 

 

 

「…皆……暖か……光が………」

 

 

 

「後は任せろ…私が…この海の平和を取り戻し新しい明日をお前達に届けよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……期待していいんだな?」

 

 

「もちろん…何故だかわかるだろう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人は言う。

 

 

「「誇り高きビッグセブンの戦艦長門だから」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現実世界では…ナガトが光に変わっていった。

 

「…ソウカ……お前は…私の中にまで来たか…」

 

 

「……同じ長門だからな」

 

 

 

こんな終わり方も…あるのか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………ナガトは見た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

艦娘達が…提督が…

自分に向かって敬礼をしている姿を…。

 

 

 

現実か…夢幻か…

もはや彼女にはわからないが…

 

 

 

 

 

それでも…

 

 

 

彼女も震える手で最後に敬礼をした。

 

 

 

 

 

 

 

「……礼を言うぞ…」

「そして…お前を見守っている…」

 

 

 

 

 

 

さらばだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

ナガトは光になって消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 




長門は真面目な時は…強い




安心してください!扶桑とゴーヤは出来つつありますから!


少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!


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159話 己であるが故に ⑤ 帰還…そして

「帰還した」

 

3人は帰ってきた。

 

 

 

夕立と長門は、

改ニになっただけでなく

何か覚悟が決まったような顔は…ひとまわり成長したような…?

 

 

「さあ!!馬鹿野郎をブチのめすっぽい!!」

 

「どこにいるんだ!馬鹿野郎は!!」

 

 

 

やる気は空回りしていた…。

まだ犯人もわかってねえよ…。

 

 

 

てか…俺が動けねえよ…。

全身包帯だよ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光を恨み、仲間に沈められたナガトは…温かみを忘れて、己の在り方と死に場所を求めて迷い続けた。

 

 

 

 

艦娘としての夕立は姉を守ろうとした。

棲姫としてのユウダチは人を憎み、殺そうとし…姉に焦がれた。

 

 

 

 

 

シラツユは…

彼女はその生命を賭して夕立を守り抜いたのだ。

そして、妹をこれ以上艦娘殺しにさせない為に…

 

 

 

 

 

 

 

西波島の夕立は妹であるからこそ

もう1人の姉の想いを背負って歩く。

 

 

西波島の長門は…温かさを知るからそこ…誇りを胸にナガトを背負い歩き続ける。

 

 

 

 

 

己であるが故に

その生き方に従った。

 

 

歩んだ道が違うから…

その生き方は変わった。

 

 

 

 

交わる事のないはずの生き方は数奇な運命に導かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死とは生きること。

 

例え、何を残せずとも、為せずとも…其れを継ぐ者が居る限り…

背負う者が居る限り…

決してその燈は消えない。

 

 

 

 

彼女達は伝えられたのだ、受け継いだのだ。

3人の意思を…想いを…その燈を。

 

 

そしてそれを背負って明日へと進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

鎮守府には御蔵が来ていた。

 

久しぶりに来たら提督が艦娘と殴り合いの末、包帯ぐるぐる巻きって…ねえ…と言っていた。

 

 

「敵旗艦はナガトで…艦隊計画破棄後に深海化した模様です…我らの方で彼女達を呪縛から解放しました」 

と、かいつまんで説明するのは救…。

 

「長門に夕立に…白露か…奴らも…浮かばれるだろう」

そう話すのは御蔵だった。

 

 

「……はい」

 

 

 

 

「…じーさん…誰が何の為に艦隊計画を進めたんだろうか?」

 

「…わからん……」

 

「……そも…そんな短期間であれほどのデータが集まるのかな」

 

「かなり秘匿されたものじゃったようじゃ。今となっては…大石や真壁もおらんしのう」

 

 

「………ですよね」

 

 

 

 

 

 

「それより…この空気なんじゃが……」

 

 

 

「………」布団に潜る救。

 

 

 

 

 

 

「……で?言い訳は?」

 

 

「……無い」

布団の中から返事する救。

 

 

「この前と言い今回と言い!ダーリンは馬鹿野郎デース!!」

 

「艦娘…もといゴリラ娘相手に殴り合いの喧嘩を仕掛けるなんて…一歩間違ったら死ぬんですよ!!」

 

「そうだよ!!そんな…事…」

 

「ゴリラは言い過ぎじゃないか?」

と、長門が苦言を呈する。

 

「「うるせーわ!本気で提督殴りやがって!」」

 

「ぐっ……事実だ…」

長門は磔にされて、駆逐艦勢に柔らかい棒でポコポコ叩かれている。

 

 

 

 

 

 

「や、やめるんだ…天使達ッ」

 

 

 

 

 

 

「あれ?」

 

「喜んでね?」

 

「寧ろ…ご褒美じゃない?」

 

 

 

 

 

 

 

「意味ないけえ…本気でやるんよ?」

 

と浦風達が本気で叩く。

 

スッパァァン!!!

 

そのしなりは…ムチのようだった…。

 

 

「っー!ッー!!!!」

声にならない悲鳴をあげる長門。

 

 

「はーーい」

と、駆逐艦勢(幼)と駆逐艦勢(大人)勢が叩いて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

それを見た救…。

 

 

包帯だからやらないだろう…は通用しなさそうな事を理解した。

 

 

 

 

 

「座って口を…言葉を並べるだけが伴侶か?」

「違うだろう?俺は…伝えたかった…長門に…」

「例え相手がお前らでも同じ事してたよ」

 

 

 

 

「…提督…」

「そうだよね…」

 

 

 

と、艦娘は言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「––––なんて納得すると思ったか!!ばっきゃろう!」

 

 

 

「不器用人!」

「バーカバーカ!!」

「とーへんぼく!!」

「変態!!」

 

 

「言いたい放題だな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全身包帯に言われてもねえ……」

 

「…せやな…」

 

「敵じゃないもんねえ…長門さんは…味方のはずなのに…」

 

 

 

 

 

 

「もはや才能ですねご主人様。何かある度にお怪我をされるのは…」

 

「言い方よ、言い方」

 

 

 

 

 

「ねえ…提督?」

 

「どした?夕立」

 

「目が…戻らないのですが…」

 

「……にんじん食べる?」

 

「ウサギじゃねーよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

後日、また

島の端の方に小さな石碑を建てた。

 

 

彼女達は、それでも、この国と人の為に戦ったのだ

戦おうとしたのだ。

それだけは忘れてはならない。

 

例え皆が分からなくとも…俺達は覚えている。

 

 

だから彼女達の死が無駄にならないよう…

平和の礎となったことを証明する為に…

俺達は進み続ける。

 

 

 

花束を海へ流し…

 

「敬礼ッ!」

 

 

ビシッと敬礼をする…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ…収穫が無かったわけではない…。

解決…できるかは不安だが…これ以上あの子達を増やさない為に…頑張ろう。

 

 

 

 

傷を治すのもね…

 

 

 本当、最近怪我ばっかり…




こんにちは?

今回は裏テーマとして 死 がありました。

この作品では轟沈=死…ではない捉え方もしております。
生まれ変わったりしますしね。


生傷が絶えない提督ですが
まあ…大丈夫でしょう。


謎は残りましたが…
果たしてクソ野郎をぶちのめすことはできるのか?



次からは扶桑とゴーヤ編です(๑╹ω╹๑ )!




少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!




ユウダチやシラツユの立ち位置
夕立や長門の想いはいずれも死を厭わないものでした。
引かれ合うものがあるのかも知れません。


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160話 扶桑の場合

お待たせしました…。


「でしたら…私の部屋など如何ですか?」

 

 

「扶桑…?」

 

「私も…余り提督とはお話が出来ませんので…良い機会ではありませんが…よろしければ」

「山城は遠征で明日まで帰って来ませんし…」

 

 

「扶桑が良いなら…」

 

 

(ええええええ!!!私…今帰ったんだけど……!!)

(え?お姉様、私のこと…忘れて…いや、ナイナイナイナイそれはない…はず…。…いいなあ…私も…提督と…)

 

 

(いやいやいや!何を考えているんだ!私ッ!!これはお姉様からのサイン!提督と久しぶり中の久しぶりに2人で自分をアピールしたいと言うサイン!!任せてください!お姉様ッ!!)

 

 

さっき帰ってきた山城は燃えていた。

 

 

 

「お茶が入りましたよ」

 

「ありがとう」

 

「…初めてじゃないですか?こうやって2人で居るのは」

 

「そう…だなあ」

 

 

「提督と一緒にいる間は不幸にならないんですよ?」

 

「え?」

 

「いや本当に」

 

「本当だッ!!扶桑のお茶の中に茶柱が3本も立ってる!!」

 

「あら…小さな幸せですわ、いい事がありそう」

 

「と言うより…あなたと一緒に居られる時点で…いい事は起こってますね」

 

 

え?

本当に扶桑か?

 

顔色も…めっちゃ良いし…

 

扶桑って…なんかほら…

「寝れなくて天井の木目を数えてたら…朝になりました…不幸ですわ」

的な奴じゃ無かったか?

 

 

だって…本人が言ってたんだもん。

 

 

 

 

 

 

「…あ、お茶菓子が無いんでした」

 

 

「あ!俺のがあるから取ってくるよ」

 

「あ……ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………の間に何があったの?」

 

 

と、俺はタンスに下敷きになっている扶桑に声を掛けた。

 

 

 

 

「提督こお茶がなかったので足そうと思ったのですが…」

 

うん…。

 

 

「不幸なことにお茶が無くて…継ぎ足そうとしたところ…」

 

うん…。

 

「ポットのお湯が急須からズレて私の手にかかって…熱さのあまり落とした急須が私の足の上に落ちまして、そのまま痛みでバランスを崩して後方のちゃぶ台の方にフラついて…転んで…ちゃぶ台の上のお茶が溢れてきて、悶える私の顔にかかってしまいまして…。目にお茶がはいったので更に悶え転がったところ…タンスにぶつかりまして…倒れてきて今に至ります……あぁ…不幸だわ…」

 

 

 

 

この間約3分。

 

「あ…でも…提督が戻ってきてくださいましたから…痛みが消えて……」

 

 

「それアウトな奴じゃ無いよね!?!?」

 

必死でタンスを起こして何とか助け出した。

 

 

「あの…今日はずっと隣に居させて下さい」

 

「あぁ…良いよ…」

もしや…山城がいない分なのか?

 

 

ドキっとする…。

何だよ…色っぽい言い方して……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お茶まみれじゃなければな…

あと、言葉の後ろに

提督が2〜3分離れただけでこれなのでマジで離れたく無い!

がるからなあ…。

頼りにされてるのか…俺がすげえのか…

扶桑がやべえのか…。

 

 

 

 

 

 

色々試したところ…半径3m以上離れるとダメみたいだ…。

 

演習組の模擬弾が流れ弾で直撃した話と、

天井の一部が落ちてきた話と…

彼女のパンが鷹に奪われた話は…割愛させてもらおう。

 

 

 

そのわけか…マジで離れない。

抱き着いて離れない。

 

飯、風呂、トイレ……ほぼ近くに居る。

 

まあ……扶桑がふとした時に幸せそうな顔をするのは嬉しいんだけどね。

 

 

 

 

 

 

ただね…

めっちゃ抱き締める力強いんよ…。

 

今ね?2人で…まあ寝てる訳なんだけどさ?

俺…抱き枕よ…コレ。

 

 

 

 

「提督…好き…好きです」ちぅ ちゅっ

 

 

あ…コレ寝言ね?

 

 

「置いていかないでください…見捨てないでください…」

「伊勢や日向にも負けない戦果をあげますから…お願い…」

 

と、ホロリと涙を流していた。

 

 

 

 

 

 

伊勢や日向に負けたく無い

 

これは日頃から言っている言葉だ。

性能や…生き方…

全てにおいて勝てないと思い込んでいる様だが…。

 

 

違うんだよ扶桑。

 

 

確かにお前達も納得の行く最後でなかっただろう。

 

スリガオ海峡…

お前は…未だにそこを見ているのだろう?

 

 

 

大丈夫だ。

いずれ…其れを越えなければならない時が来る。

 

 

例えそこに幾千の敵が居ようとも…

俺達がお前をその向こう側に連れて行ってやるから。

 

 

決して…お前を…1人にしないから。

 

その時は…伊勢達に負けたく無いなんて言わなくなるさ。

 

 

 

 

 

 

 

俺は…何とか腕を抜け出させて

扶桑を抱きしめて頭を撫でた。

 

「大丈夫だ…そんなことしない」

 

 

 

俺はそのまま眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

「本当ですか?提督」

 

「本当に私みたいな不幸の塊でも…お側に居させてくれるのですね?」

 

「なら…私はどんなことでも頑張れます…どんな不幸でも乗り越えられます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝ッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督と離れるなんて…不幸です」

 

 

「まあまあ!良かったじゃん!提督とゆっくりできて!」

 

「山城…あなたは昨日はどこで…?」

 

 

「鳳翔さんと飲み明かしてたよ」

 

 

 

 

「ごめんなさいね…妹にそんなことさせて…」

 

「良いよー!楽しかったし、お姉様が幸せそうなら」

 

 

「ええ…本当に幸せだったわ」

 

 

 

 

 

いつもより少し…幸せな朝だった扶桑だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え?

見るの?

 

ここで閉じたらハッピーだよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本当に?

 

しょーがない人だなあ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ今正座中…。

 

 

抱き締められすぎて全身痛い…

胸元とかキスマークついてるんだ…まあ扶桑しかいないんだけどさ…

 

 

 

 

 

はい

 

正座させられてます…。

そんな状態で出勤…とは?……と。

 

 

 

山城から聞いていた鳳翔から朝一から尋問を受けています。

 

大淀は呆れ気味に寂しそう。

 

ベルは苦笑い。

 

 

 

 

 

鳳翔…お酒臭い…。

昨晩ヤケ酒してたらしい…山城と。

 

 

山城がごめんねってガチ謝りしてきたもん…。

 

 

 

「何かいいましたか!?」

 

「いえ…」

 

 

 

 

 

…不幸よ?




お気に入り530越え…。
ありがとうございます!
幸せが……ありがてえ、ありがてえ…




扶桑……
ある意味闇が深そうに思う…。


恐らく瑞鶴と一緒に組んだら………

やめておこう。






少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!(๑╹ω╹๑ )




質問答えときます。


鎮守府の中でどの艦娘が最強ですか?



純粋な火力等で行くと大和や武蔵等…に軍配があがりますが
その時その時で変わります。

提督絡みになると高雄達も金剛達に勝つこともありますし……
電とか雷も普通に強かったりします。





でもきっと鳳翔が一番怖いです






コメントやメッセージ等お待ちしています(๑╹ω╹๑ )お気軽にお願いします!


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161話 ゴーヤの部屋の場合

「私が最後の刺客でち」

 

「チェンジで」

 

「何故でち!?!?」

 

「ロリコンとか犯罪者って言われたく無いので」

 

「そんな要素ないでしょ…?」

 

「鏡で自分の姿を見てみようか!!スク水の小さな子のお部屋に泊まった時点でやべえよ」

 

「脱ごうか?」

 

「……もっとやべえよ!」

 

「一瞬考えたでち…」

 

 

「好きにしても…いいんだよ?」

 

なにを?

 

 

「ねえ…?ゴーヤはそんなに魅力ないかなあ…?」

 

「破壊力はあるよね」

 

「魚雷?」

 

「服装」

 

「……まあ…イクには勝てないけどね…」

 

「…ノーコメントで」

 

「でも…ゴーヤも提督のこと大好きなのになあ…」

「水着も…提督指定の水着をちゃんと着てるのに…」

 

 

よしよし…と頭を撫でる。

 

 

だがな!

そのスク水着は俺の指定じゃない!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論から言おう。

俺は次の日はグロッキー状態で仕事へ向かうことになる。

 

 

 

なぜなら…

 

 

潜水艦が集まったからねえ……

19とか401とか…おい、なんで迅鯨が居るんだ?

 

「あなたの為ならマリアナ海溝でも潜るわ!」

 

主役はゴーヤだぞ?

 

 

 

 

 

「ゴーヤはみんなで遊びたいな」

「でも…提督の隣は今日はゴーヤのもの!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

君達はぁ…艦スマと言うものを知っているかな?

 

艦隊大激闘 スマッシュガールズ………

 

艦隊堂とか言う企業が制作したゲーム。

 

アレだよ…ヒゲとゴリラと緑の剣士が、蹴落とし合いをするアレだよ。

 

 

3作目になる今作では…戦闘中に改ニになることもできるらしい。

 

 

 

 

 

ええ!やってますとも!!

プレイ済みだよ!!

意外かもしれないけど…

金剛、間宮、川内、陸奥、大淀はゲーム好き。

桜赤城とか迅鯨もゲームが好きらしい。

 

最近は鬼怒と阿賀野と由良と麗もやりにくるよ。

 

猛武の運営はどうなってるんかねえ…?

 

 

 

 

え?天龍、麻耶…?見たまんまじゃね?

 

 

 

 

 

 

 

俺は無論…大魔王大和を使う。

コイツはとんでもねぇ重量級のパワーファイターだぜ…

 

スマッシュ2回で敵を撃沈させるんだ…。

島風や電達なら下手すりゃあ一撃な時もある。

 

 

 

でもね?

砲撃より殴った方が強いんだこのゲーム…何故だ?

 

 

 

え?

ここの艦娘も殴り合いメインだろって?

 

 

…せやな。

 

 

 

 

 

「フハハハハハ!誰か!誰か私を倒せる奴は居ないのか!!」

 

あ…これ大和勝利時のセリフね?

 

 

「…提督さん大人気ないの〜」

「強い…でち」

「こーなったら3人で組みましょう!!」

 

 

 

 

 

………

 

 

 

 

 

 

 

 

「迅鯨さん!?ズルイ!!」

 

「私は…救君の味方だから…」

 

 

 

 

 

 

迅鯨はどこまで行っても迅鯨だった。

むしろ俺が要らないくらいに彼女達をフルボッコにした。

コイツ…強すぎるだろ…ゲームが。

 

 

 

 

 

「…むむ…」

 

「提督……!もし勝てたら…ちゅうしてほしい!」

 

 

「!?!?」

 

 

「え?ああ…良いよ」

 

まあ…この状況から勝つのは難しいだろうから

まあ良いだろう…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1VS4…?

 

 

 

 

 

 

「…さあ!皆さん頑張りましょう!!」

 

 

 

 

 

迅鯨…

裏切りやがったぁぁぁぁあ!!!

 

 

 

ゴーヤは言う。

 

想定通り……ッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後はフルボッコにされた。

 

 

負ける度にチューさせられる…

ご褒美…?

ふざけんなー!

 

 

 

 

んで俺よスイッチがオンになり…熱が入ってずっとゲームをやってたんだけど…

 

 

気がついたら…もう朝だよね…。

 

 

朝の5時前に…なっててさ…

 

 

「さあ…そろそろ寝るでち」

 

 

「え?仕事は?」

俺は言う。

 

 

 

 

 

 

 

「今日は休みでち」

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

 

私も〜と他の奴らも言う。

 

 

 

 

 

 

 

嘘やん…お前ッ…ええ?

俺は仕事やぞ…?

 

今から少しでも…

あ…寝れねえわ…無理だわ…

 

 

 

 

「提督…休みじゃないの?」

 

ガチトーンで心配してるであろうゴーヤ。青ざめてるわ…。

「ご、ごめんなさい…休みだと思ってて…」

ふるふると震えるゴーヤ。楽しかった分…今が怖いのだろう。

 

本来なら、癒しを求めて泊めてもらう予定だったからだ

ゲームをしようと言わなければ…

皆で遊ぼうと連れてこなければ…

提督はまだゆっくり出来たかもしれないのにで

 

 

「大丈夫だよゴーヤ」

 

「久しぶりに楽しかったよ、ありがとう」

と、ゴーヤの頭を撫でる。

 

「逆に…俺こそ熱くなって…最後まで付き合ってくれてありがとな?」

 

 

 

「…次は絶対に提督さんを癒してあげるからね!!」

 

多分次も同じになると思うな…。

せめて…と抱き着いてくるゴーヤ。

 

「少しでもパワーを提督さんに送るんだ」

 

 

お前…可愛いなあ…

 

窓から血涙流しながらこっちを見る長門を無視したらの話にはなるけとも、…この状況はある意味微笑ましいものだった。

 

 

「ありがとうな?ゴーヤ!俺は元気になったぞー!!」

 

「良かった…お仕事…がんばってね」

 

と、ゴーヤはオレを見送る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後?

わかるだろ…?

今の大淀の顔見たら……

 

 

居眠りしかけて…怒られて…

 

原因を長門に密告されて…余計に怒られた。

 

 

 

長門は俺を売りやがった…

長門はすれ違いざまに…仕留めなきゃな…。

 

 

「提督!聞いてますか!?」

その前にこの説教に耐えなくちゃねぇ…

あと3時間くらいかなあ…

 

 

 

 

 

 

「寝るなッ!!!!」

大淀に怒られる

 

 

 

 

 

つまり…何が言いたいのかと言うとだな…

 

 

 

ゲームのやりすぎはアカンで!!

お兄さんとのお約束や!!









今、あなたの前に……とある艦娘だった者が喋りかけます。



「ねえ…」

「え?私…?私は……うーん…艦娘だけど……えーーと、見守る人…?」



「私のことはいいですから…ねえ…聞かせて?」



目の前には…門があるの
それは…別の所に続いていて……

まあ…そこは重要じゃないわ?
重要なのはその先…




聞きたいの


色んな壁を超えてきた…あなた達に


その門の先には…待つ人が居る。
あなた達もその人を求めている。

でも…絶望が待ってるかもしれない…
とてつもない…絶望が…。

でもその門を愛する人の為なら
…潜って行くかしら?その覚悟は…ある?




→ 覚悟は…ない。門を潜らない


→ 覚悟はとっくにある。門を潜る



教えて…?


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162話 舞鶴の虎 ①

「悩んでるようですね」

「え…?あの質問の意味が分からないって?」

「と言うか君は誰だって?」




「もう…質問が多いですねえ」


「いずれわかる時が来ます…」

「私は…あなた達に会うのは初めてではないですよ?」















「…今日は早く終わったな……」

 

 

 

「そうですね。はい、紅茶です」

 

「ありがとう」

 

「大淀様もどうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

 

 

 

「えへへへへ」

不気味な程の笑みを浮かべる主人公。

 

 

「ふふっ…嬉しそうですね♪ご主人様」

 

「当たり前だ!ずっと楽しみにしてたからなあ…ふわとろたまごプリン(商品名)」

 

 

ずっと食べたかったんだあ〜と笑顔で言う救。

 

 

キラキラと輝くプリンは

魅惑的で…官能的で……ああ…生きててよかった…。

 

 

 

「大袈裟すぎませんか?」

 

「それくらい…楽しみだったのさ」

「皆にも一口わけるからねえ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジリリリリ!と電話が鳴る。

 

 

出るしかないよねえ…。

 

「は「救ちゃんか!?!?逃げろ!!います––」

ガチャと電話が切れた。

 

 

京極であろう人からの電話の約二秒後

スモークグレネードを投げ込まれたらしく執務室は煙で満たされた。

 

 

 

 

「ゲホッ…な、何だこれは!!」

 

 

「敵襲ですか!!」

「…ッ!!妨害電波まで!?」

 

 

バァン!

ドアが蹴破られたらしい。

 

 

 

俺の方へやって来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

が…皆さんならもうお分かりだろう…

 

 

ふわとろたまご

プリンの辿る運命を。

 

 

 

はい、その通りです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

くそッ!!何だよ!!

 

 

 

 

ああああ!!

俺の…俺のッ

 

 

 

 

 

ふわとろ…たまごプリン(1日限定20個のみ、予約不可商品)が!!

 

 

 

あああああああああ!!!!

 

 

 

 

 

俺のプリン…やりやがったな!!

 

テメェ…やったらいや!!!

 

 

 

 

野郎、ぶっ殺してやる!!

 

 

 

 

 

試合開始ですッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

そりゃぁぁあ!!

死ねやぁああああッ!!!!

 

 

掴み掛かって来た奴を背負い投げる!

 

 

 

 

「え?!うぁっ!!」

地面に叩きつけられるテロリスト!

 

 

からの…

 

すでに俺の頭の中はプロレスラー。

 

 

頭の中で歓声が上がる!

 

まもる!ボンバイェッ!まもる!ボンバイェッ!!

 

やっちまえ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

必殺ドロップエルボー!!!

 

 

 

説明しよう!!

ドロップエルボーとは!?

 

倒れながら…その勢いでエルボーするだけよ!!

 

つまり!?

 

相手は死ぬッ

 

 

 

 

 

 

 

「ぐぁっ…!!」

奴さんの声が聞こえるぜ…

 

 

 

このまま締め落としてや…る

馬乗りになり腕を首に当てがう。

 

ムニッ…

 

 

 

 

え?

 

 

腕にある感触は

 

 

「んっ…」

 

 

え?何この声

 

 

 

「お、女!?」

 

 

 

 

そんな場合じゃ無いッ!!

これは事故だ!仕方ないッ!!

 

 

 

 

馬乗りになり腕で絞め落とす。

 

 

かなり暴れるが…知らん!!

 

プリンの恨みは海より深いと知れッ

 

 

約…10秒!!

 

ガクリ…と

俺にかかるその手が落ちた。

 

 

カンカンカン!!と頭の中でなるゴング!

 

試合終了です!!

 

 

 

買っても与えられたのは…

悲しい勝利でした!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベルファスト達が窓やらを開けて煙を流す。

 

ようやく晴れてきた頃にはマスク姿のテロリストがこんにちはした。

 

 

マスクなんざしやがって……

と、マスクを剥ぎ取る。

 

 

 

 

 

 

あら…なかなかの美人…

 

 

 

 

 

 

 

 

「救君!!」

 

「救ちゃん!!」

 

 

そこへ麗と京極が執務室へ走り込んできた。

 

 

「舞鶴の桜が乗り込んで……ー」

 

 

 

 

「え?」

 

 

「え?」

「え?」

 

 

 

そこには女の人に馬乗りになる救。

下敷きなのはもちろん話に出た桜とやら。

 

 

 

「「「え?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……ここは…?」

 

桜と呼ばれた人が気が付いたらしい。

 

 

「…確か……私は………」

 

 

「この…ッ!大馬鹿者!!」

京極は桜にゲンコツを食らわせる。

 

「あだっ!!き、京極!!いてえだろ!!」

 

「お前は…一歩間違えてたら殺される所だったんだぞ!!」

 

 

「…あ」

 

「そうだ…私は…西波島の提督を……」

 

襲撃してみたら返り討ちに遭ったと…

 

 

 

 

 

途端に少し怖くなった。

 

手は抜いて無かった。

なのに…あっさりと…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…完敗だ…俺がまさかあの状況から負け––」

そう言いながら救の方を見る桜。

 

 

 

 

 

 

 

「大淀先生ッ!ふわとろプリンは!ふわとろたまごプリンはッ!!」

 

「……」

首を横に振る大淀。

 

 

うわぁぁぁ!!1日限定20個のみ、予約不可商品即完売のふわとろたまごプリンンンンンンン!!

 

 

「…ご主人様……おいたわしや…」

 

「2ヶ月だ…ッ」

 

「ご、ご主人様?」

 

「これを手にするのに2ヶ月掛かったのにいいい!」

 

 

大和と武蔵もうんうんと頷いている。

 

 

 

え?私はこんなのに負けたの?

 

桜は困惑していた。

 

 

 

 

 

「救君…そろそろ話進めてもいいかな?」

 

「はい…」

 

 

 

 

「まさか返り討ちに遭ってるとは思わなかったが…彼女は…京極桜…」

 

「………俺の姉だ…」

 

「…俺は京極桜だ!愚弟がいつも世話になっている!」

「少しお前を試すつもりが…返り討ちに遭い、胸をやられて…落とされるとはな…」

 

 

「「「「「え?」」」」」

 

「あ、姉貴…オトされたのか?」(恋愛的な意味で)

 

「ああ…落ちたな…」(首絞め的な意味で)

 

 

 

 

「胸で堕とされた…のですか?」(揉みテクニック的な意味で)

 

「あぁ…アレは凄かった」(気道とか胸部圧迫的な意味のテクニックな意味で)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…救君…見境ないの?揉みたいなら……いつでも言ってくれたら」

 

「ごめん、本当に何の話?麗ちゃん目がハイライト落としてますよ??」

 

 

「赤飯…赤飯炊かなきゃ赤飯炊かなきゃ赤飯炊かなきゃ」

 

「将ちゃん?」

 

 

「姉に…姉に想い人が出来たッ!!俺は嬉しい」

「ゴリラに育てられた32歳と言われた…あの長門にすら素手で勝てるゴリゴリなゲリラ…略してゴリラと言われた姉が…」

 

 

 

「おい」

 

 

「一人称も俺で男は皆舎弟で恋愛経験もゼロな姉が…ぁぁぁあ!!」

 

 

「おい」

 

 

「料理?んなもん肉焼いとけ!みたいな姉が…ついに結婚か…祝いだ!今日は祝いだ!!」

 

「救ちゃんが義兄になるのか!!!」

 

 

 

「義兄さん!!」

 

「「「おい」」」

 

 

意外と弟はポンコツ気味だった

 

 




8月は皆勤賞だったと思う!
褒めてください!!なんてのは冗談で…。

あ…そんな顔しないで!




はい、どっかで名前の出た桜とは京極の姉でした。

姉御でした。



突如現れたアンケート?

突然ですよね
時に分岐点、岐路にぶち当たる時がやってくると思います。
その時の…指標…と言うことで…。



少しでもお楽しみ頂けたら幸いです!


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163話 舞鶴の虎 2.........

続きです!!

少しでもお楽しみ頂けたら幸いです!


コメント等お待ちしております!!


「………」

 

「ぷりん?」

「それで怒った?…え?プリンだけで?」

 

 

「あぁん!?」

 

「オイ!ヤメロ!姉貴!まじで洒落になんねえ!!」

 

 

 

 

「桜さん…だっけ?」

「ガキみたいな事言うけどさ…めちゃくちゃ楽しみにしてた訳ですよ。それをめちゃくちゃにされてさ…プリンだけ?って言われると…腹立つんですけど」

 

「てか…ドア蹴り破ったらあかんでしょ?」

 

 

「それはご主人様も言えますね」

 

「今は置いておけベルファスト」

 

「畏まりました」

 

 

 

 

 

 

「まあ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶっちゃけ…将ちゃんから電話なくて本当にテロリスなら…かち割ってました」

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ…本気なんだなコイツは…。

そんなにプリンが好きなのか?

 

 

というか…

 

 

 

「いや…そうではなくてな…そのプリンなら……手土産に持ってきてるんだが…」

 

 

「お体は痛くありませんでしたか??お嬢さん」

 

 

「え!?」

 

 

 

「ベルファスト!!早く紅茶をお出ししてッ!!」

 

「既にご用意が済んでおります」

 

 

「「「「おい!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あああああああッ!!!

幸せだぁぁぁぁぁあ!!!

 

この食感…風味…

卵の濃厚な味わいなのにクセは強すぎない…

バニラビーンズか!?

くううっ!!見た目と口に入れるまでは硬めのプリンなのにッ

口に入れた瞬間にとろける…

 

カラメルの甘さの向こう側にある…ほろ苦さ……

 

 

 

これこそ究極のプリンじゃあ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そ、そこまで褒められると…嬉しいな」

 

 

「最高でした」

 

 

「良かったな姉貴」

 

「本当に美味しい。思いの籠ったプリンだ…これは食べる人を幸せにするスイーツだな」

 

「……//」

 

 

「ご、ご主人様がそこまで褒めちぎるなんて…」

 

「う、うん…救君はスイーツには本当にガチな人だけど…そこまで褒めるのを見たことがないよ」

 

 

 

「皆も食べなよ。本当、皆でこれ食べたら戦争なんてくだらなく感じるくらい美味しい」

 

 

 

パクリ……

 

「……美味しい…」

 

「…これは…救君がキレるのもわかるかも…」

 

「すごい…美味しい…」

 

 

 

「何だか、俺まで嬉しいな」

 

 

「あん?何で?」

 

 

 

「おい!愚弟!やめッ」

「いいだろ?姉貴…」

 

「〜ッ!!!」

 

 

 

 

 

 

「その店…姉貴の店なんだ」

 

 

 

 

「ほーー………」

 

 

「……」

 

 

 

 

「え!?」

 

 

 

「「「えええええ!?!?」

 

 

 

「その反応…だろうねえ〜」

 

 

 

 

 

 

「そ、そうだ…俺が作っている……す、すまんな…もっと可愛い奴でなくて」

 

 

 

「……何故謝る?」

 

 

「…え?…それは…俺が…こんな無骨だから」

 

「今の言葉は訂正して欲しいな」

 

「何で?」

 

 

「自分の頑張りや努力やその結果を…自分が否定してどーすんのさ」

 

「並の人間にはできないよ…これほどのプリンを作るのは……俺はコレが大好きだからねえ…それも否定されたくないんだよねぇ」

「ああ…おいしい」

 

 

「それに…桜さん……かなり美人だよね、言葉遣いが男っぽいってだけじゃん」

 

 

「なっ!?」

 

 

 

 

「むっ」

「むっ」

何名かがムッとした、麗ちゃん?睨まないで?

 

 

 

 

 

獣のように強いと思えば

全く掴めない男だし…

そ、それにわ、わ私が美人…だと!?

 

 

 

 

 

「……あ…ぁ…ありがとう…////プリンの事も…」

桜は顔が真っ赤になっていたそうな。

 

 

 

 

京極 桜は

男勝りだった…てか負けたことがない。

 

家訓は

"強くあれ"

それに従って生きてきた。

 

 

本当は可愛いものも好きだった。

でも軟弱と言われるから…それを隠して生きてきた。将大は知ってたけど…。

 

口調も荒くなった。

 

 

色恋には興味があるのに…

強くあろうとすればする程に…なぜか舎弟が増えた。

 

 

 

父は言う。

お前の結婚相手は…お前より…俺より強い奴じゃないとダメだ。

 

故にお付き合いを申し込んできた者を片っぱしからボコボコにした。

 

 

 

主に父が…

 

 

 

あのイケメンも御曹司もetc…

「顔で娘が守れるのか!?」ボコォ!

 

「金持ちが何だ!」 バキイ

 

今思えば…ただの八つ当たりもあったなあ…。

 

 

 

結果として誰も寄り付かなくなった…

 

 

 

 

いつの間にか…舞鶴の虎とか言う異名もついた。

個人的には猫の方が好きなのに…

 

 

 

 

周囲の友人から結婚も出産もする中で置いていかれる…。

 

背中にのしかかる婚期の2文字。

 

 

 

 

 

 

この国の平和の為と…言い聞かせる毎日。

 

せめて…と内緒で始めたスイーツ屋さん…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし…彼女には…免疫が無さすぎた。

 

 

故に…

 

「わ…わた、俺も!お前が気に入ったぞ!!よ、よく見ればお前も中々いけてるし…強い男はき、嫌いじゃない!!」

 

こんな反応しかできない。

 

「わ、私に勝ったと言う事は…次はお父様に挑んでもらうぞ!!勝ったら晴れて…おおお、お前はわ、わたっ私の夫となる!!」

 

 

「どゆことよ…将ちゃん?」

 

 

「姉貴…恋愛経験0だから…」

 

 

「う…仕方がないだろう…」

 

 

 

「救君…?」

 

 

麗ちゃん!?…他の娘までッ!?

 

 

 

ちょっ…やめっ…いやぁぁあ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ将大…お前の言っていた情報…艦隊計画たったか?」

「あまり残ってないな…」

 

 

「まあ…実際に研究に着手されたのは…艦娘と言う存在が現れて約2ヶ月後らしいぞ」

 

「そんなに早いの!?」

 

「ん…あぁ…あとは…魂…とか艦データとか…そんなワードだけだったな」

 

 

「ありがとう姉貴」

 

「いいんだ…私も真壁閣下の件で少し気になってたからな」

 

「神崎…お前のこともな」

 

 

「……俺?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何かね…この状況は……」

 

麗や艦娘に首根っこ掴まれてる救

 

それをスルーして世間話してる京極姉弟。

 

 

 

 

 

「…ッ!!閣下!!」

「ご無沙汰しております」

 

すぐさま敬礼する皆

 

 

 

 

「ねぇ!救君ッ!どういうこと!?何があったの!ねえ!」

 

「ちょ…麗ちゃん…ッ死ぬって」

 

 

 

 

「ああ…いいよ楽にして」

 

今すぐにでも楽にされそうな主人公も居ますが…。

 

 

 

 

「あれ?じーさんどうしたのさ?」

 

「ん…近くまで用があったもんでな…って!コレはアレか!ふわとろたまごプリンじゃないか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ…皆で食べるよねえ〜。

 

 

 

 

 

 

「じーさん…コレアレだよね…俺らの世界の、あの有名な明報堂のプリンに近いよね」

 

「…ん…そうじゃな!ワシも若い頃からよー食べたわい」

 

「……」

 

 

目の前では弟に絶対喋るなよ!喋ったら殺すからなと合図する姉。

 

 

 

 

…本当美人なんだけどなあ…。

 

 

踏まないで?麗ちゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当にプリン食べに来ただけなのね…」

 

「まあ…お前さんの傷の状態を見にきたと言うのもあるんじゃがな」

 

「お優しい…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うまいのー…コレは。ワシかて…なかなかお取り寄せ出来んしなあ…アレ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ…そうだ…閣下!聞きたいことがあるんですよ!」

 

 

「何じゃ…?改まって」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「艦隊計画から今日までの騒動の黒幕って…じーさんですよね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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164話                 

………想定外という言葉がある。

 

自分の予測や想定を超えていること…。

 

 

 

 

 

例えば…自分が外の世界から来たこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの日に見たのは…化け物…怪物だった。

 

その怪物は……

 

私の愛する人を目の前で……殺した。

 

 

 

 

そんなの認めない。

 

 

 

元に戻さなきゃ…

 

 

 

必要だったから

 

 

 

例え何度やり直そうと…

 

 

何を犠牲にしようと…

例えそれが…1つの世界だろうと…

幾万の魂や記憶だろうと…。

 

 

 

そこに救いたいものがあったから…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…じーさんが艦隊計画の黒幕ですよね」

 

 

 

 

楽しいスイーツタイムが終わった後の余韻すら吹き飛ばす救の言葉。

 

 

 

 

「救君!?」

 

「いくらなんでも…それは」

 

 

 

 

「ほ…??何故そうなる?元帥じゃからか?」

「ワシは…艦隊計画の事は知らんのじゃが…」

 

 

 

 

「以前にナガトと長門交戦の話をしたときに…俺はナガトの話しかしていないのにユウダチとシラツユの名前が出てきた事は何故ですか?」

 

「名前をお前が出しておったろう?」

 

「夕立の目の件があったので彼女達のことは伏せていましたよ」

 

「……」

 

 

 

 

 

 

「艦隊計画の話の時に……閣下は言ったですよね。真壁も大石も居ない…と。何故彼の名前が出たのか?」

 

 

 

「何故艦隊計画の事を知らない大石さんの名前が?」

 

「聞き間違いだろう」

御蔵は言う。

 

「いいえ…ご主人様。私も聞いておりました」

 

 

 

 

「そして…艦隊計画の実施の早さ」

 

「桜さんの情報によると…艦娘の存在が分かってから…約2ヶ月も掛からずに始まったそうですね」

 

「……世界をやり直したあなただからこそ出来るからじゃないですか?」

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

広い海で

何故元帥が海に出ていたのか?

 

真壁に囚われた時も…何故殺されなかったのか?

 

何故…何もしなかったのか…?

 

 

疑問は尽きないが…1番気になる事は…

 

 

 

 

 

 

 

「アンタの目的は…何だ?」

 

 

 

 

 

 

「何を…言っている?ワシは…ずっとこの世界と元の世界の為に!」

 

 

 

「元の世界ってのは俺達の世界…とは違いますよね」

 

 

「…何故そう思う?同じ日本じゃぞ……」

 

 

 

 

「明報堂と言うお菓子屋はねえよ…あるのは明治堂だね」

 

「…間違え「昔から愛用してるところを間違えるかなあ?」

 

 

 

 

 

 

「考えたくないんですけどね」

 

俺をあの鎮守府に飛ばしたのも…大石さんを俺が…引き剥がすと分かってたからじゃないですか?

 

この鎮守府から追い出された大石は…深海棲艦と手を組んで深海提督と化した。

 

つまり…理由ができるんですよね。

深海化する。

 

怨念が広がる時も

あなたは鎮守府に居た。

 

 

そして真壁の時も…

深海化しても何の驚きもなかった。

 

 

「俺はその相手として実験台にされてたんじゃないかな?いや、もしくは…俺たちに負けたのは想定外だった……と」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふ……まあ…そこまで考えられるなら…もういいか」

 

 

途端に無表情になる御蔵。

 

 

「いかにも……」

 

 

「艦隊計画も私が立案した」

 

 

 

「データ入力も秘匿と称して彼女達を沈めての深海化も…全て私がな」

 

そう御蔵は冷たく言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

「何でそんな事を!!」

麗が問い詰める。

 

しかし彼は…平然と言った。

「私には…為すべきことがある…」

 

 

 

 

 

 

「なすべき事…?色んな人を犠牲にしてでもか!?」

 

 

フン…と鼻で笑う、お前にはわかるまい…とでも言わんばかりに

 

 

「少し…昔話をしてやろう」

 

 

 

私の居た世界は日本とそう変わらない所だった。

 

俺には…愛する人がいた。

決して裕福ではないが…幸せな生活を送っていたんだ。

 

 

だが…

 

 

ある日…怪物が現れた。

その怪物は…全てを奪っていった!!!!

 

「私の大切な家族も……友人も…全てだ!!」

 

 

「守ろうとした!!でも…何も出来なかった…出来る筈もなかった。」

 

それどころか…私も殺されたよ…。

 

そしてこの世界に転生した…。

 

 

 

無気力に生きたさ。

 

 

そして深海棲艦と怨念によって世界は巻き戻された。

 

 

だが…そこが私の分岐点だった!!

 

 

 

そう…そこで時が戻る事を知った…。

 

負の魂は…世界を渡ることもな!!

 

チャンスだと思った…

そして…誓ったんだ…

 

俺だって…過去に戻って…戻って…

あの怪物をブチ殺して…絶対に過去を変えて…助けると!!

 

 

 

 

だから…作り上げるしかない!

戦う…軍勢を!

私が戦う為の力を…。

 

例えこの世界を犠牲にしても!!

私には守りたいものがあるのだッ!!

 

私の居た世界をッ!!!

 

 

 

そして…何度も何度も繰り返したさ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誤算は1つ…

 

お前だ…神崎 救ッ!!

 

貴様が来てからが厄介だった!!

どんな困難も乗り越えやがって…

貴様らが一番邪魔だから…何かをけしかけるのに…いつも…。

 

真壁も…大石も……計画に必要な布石だったのに!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

艦隊計画

 

表向きは…艦娘の強化育成––

だが、

艦隊計画は強化ではない

最終目的は深海化にあった。

より凶暴さや非情さがある故に、兵器として重宝出来る……

というものが狙いだった。

 

 

 

 

そして…

その真髄は……

 

 

 

 

 

 

「そんな為に…?」

 

「お前に分かるか!!!」

 

「夢の中で…目の前で何度も何度も…殺されるんだ!!」

 

 

「それはこちらの世界も同じだろう!!何人も沈んだんだ!!」

 

「だからそれも役に立ててやろうと言うのだッ!!」

 

 

 

御蔵は何かを取り出した、

 

 

 

「何です?それ?」

 

 

 

「艦や艦娘…深海棲艦の想い…思い出…感情、記憶…それの…集まりだ所謂…魂だ!!見ろ…黒く…暗く…哀れな結晶だ」

 

「世界を何巡もして集めた…彼女達の実験の成果だ!!」

 

「海の記憶…全てとも言えるかな?コレがあれば…私は悲願を叶えられるのだ」

 

 

 

 

 

お前は海の怨念を覚えているか?

 

 

 

 

 

 

 

怨念は溢れると世界を超える。

 

そう…多すぎる負の気持ちは…世界すらも超えることを可能にするらしい!!

 

即ち、これがあれば…同じく世界を跨ぐことができる。

そう、過去の世界へも…。

俺は!!世界の理すら変える事ができる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

深海化をする上でも

轟沈のような終わり方は…凄まじくその魂を、負の力で覆う。

 

竣工したての艦が沈んだとしても同様だ。

 

 

御蔵は集めに集めた。

沈んだ艦の"想い"も艦娘の"想い"も深海棲艦の"想い"も

恨みも魂も全て!!!

 

 

 

 

 

 

奴は…それだけの為に

艦娘をそうしてきたと言う。

どうすれば純度の濃い悪意を悲壮を得られるか…

 

 

「ふざけるな!!」

 

 

「まあ…バレては仕方ない…時期が少し早まっただけだ」

 

御蔵は…その魂の一部を取り込んだ。

 

そしてほんの少しを地面に撒いた…のか?

 

 

「ジジイ!何やっ…」

 

 

だが

御蔵の体に変化はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「私に馴染むまで時間がかかるか…」

 

 

 

撒いた所からは深海棲艦が現れる。

 

 

 

 

 

 

「くくく…なんという力か…コレなら…絶対に勝てる…負けぬ」

 

「頼むから邪魔をしてくれるな…」

 

 

 

彼はゲートを開いた。

 

「くく…頭の中で恨み辛みを吐く負け犬どもが煩いが…素晴らしい力だ!!こうも簡単に世界を渡れるのか!!!」

 

 

 

「おい!それ置いて行けよ…!それは彼女達の誇りや尊厳だろう!!お前がそうやって使って良いものじゃないだろう!!」

 

 

「…貴様は諦めるな…と言うらしいが…」

「藁にも縋らねばならぬ時だって有るのだ!!何かを犠牲にしなければ…叶えられぬ願いも有るのだッ」

 

「尊厳?バカを言え…負け犬どもをこうやって役に立ててるんだ…それが使い方と言うものなんだ!!」

 

 

 

「…もうこの世界に用はない」

 

「貴様らの相手はそいつらだ…」

 

 

 

 

御蔵はゲートを潜った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前には少しずつ閉じるゲートがある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やあ…後輩君!

 

君の前には

 

目の前にはゲートがある……。

 

 

さあ…選ぶといい

 

 

全ては君の選択次第だ…。

 

 

 

どうする?

 

 

行けば…

残酷な運命が待ってるかも知れない…

生きて帰れないかも知れない…

 

 

それでも…行くかい?

 

 

 

 

 

 

 

→ …世界を壊してでも守りたいもの…その彼を止めることは俺達には出来ない…。彼女達もいつかは…帰ってくるだろう…

      御蔵を見逃す

 

 

 

 

 

→ …例え何の為でも…彼女達の魂を犠牲になんかしてたまるものか……俺達なら…超えて行けるかも知れない。

  御蔵を止めに…彼女達の魂を取り戻しに行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

それが…君の答えか!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タイトル

 

 

164話 ?????????????? ① 世界を超えて

 

 

 

 

 

 

 

ある程度重いと思います。

舞台が異世界に変わります。

ご注意下さい。




はい。

艦隊計画編 終章

いつもとは、少し違う感じですね。
タイトルが無題なのは少しでも不気味さが欲しかったので。



少しでもお楽しみ頂けたらと思います。















お気に入り540ありがとうございます!!
雰囲気重視したいけど…これだけは……!!


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165話                ②

2話更新!
0時に164話も更新されてます!ご注意下さい(๑╹ω╹๑ )!



…その魂は

あの世界(艦これの世界)のものなんだ!!

 

 

自分勝手に使って…使い潰して良いものじゃない!

彼女達のものなんだ!!!

 

 

 

 

「お下がりください!京極様方!…ご主人様!!ここは私が!!」

ベルファストが深海棲艦と対峙する。

 

 

 

 

「ああ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待てッ!!」

 

救はゲートに飛び込んだ。

 

 

「ダーリン!?……そうすると思ってたデース!!」

 

「提督っ!!」

 

「救君!!」

 

「麗!!準備もなしに……ったく!」

 

 

 

そこでゲートは閉じてしまった。

 

 

 

「なっ……閉じてしまった…だと!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲートのその先は…

ゲートから見えてはいたが…

現代日本ともそんなに変わらない所だった。

 

 

「……閉じちゃった」

 

麗、猛武蔵…

大和と阿賀野がそこには居た。

 

 

「阿賀野!?お前いつの間に!」

 

「いや…プリンおいしそうだなあ…って思ってたら…流れで…」

 

 

 

 

 

 

「ダーリン!アレ!」

 

 

金剛の指さす先には…恐らく御蔵らしき人が見えた。

 

 

「追うぞ!!」

 

 

 

「む?…やはり来たか……仕方ない…」

 

 

御蔵は深海棲艦を生み出す。

 

 

「行け!!」

 

 

「水もないのに湧いたデース!!卑劣デース!」

 

 

「手品みたいにポコポコと…」

と、武蔵が言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

「てりゃぁぁあ!!」

金剛の砲撃が敵を砕く。

 

一撃で沈む深海棲艦。

 

「…」

浮かない顔をする金剛。

 

「あれ…?生まれたてだからか…脆い?」

阿賀野が言う。

 

 

「………いや、違うな」

猛武蔵が言う。

 

 

「感じないか?お前達は…」

 

 

「…認めたくないケド…言いたい事はわかりマース」

 

 

 

「どうしたの?皆…」

麗が心配そうに聞く。

 

 

「……力が出ないんだろう?」

救が言った。

 

 

「この世界は俺らの居る世界とは違う。

だから()()()()()()

つまりは…()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「奴らも…海じゃないから力が出ないんだろう…」

 

「無理やりに肉体を持たされた弊害…って事?」

 

「多分…マイナスのエネルギーだけで動いてるんだろう」

 

 

 

 

 

 

そういえば、深海棲艦として倒された奴の魂は…?

 

 

 

 

 

深海棲艦か黒い光へ変わる。

 

「あ…アレが魂…想い…なの?」

 

どうやって連れて帰る?

方法がないと…この世界で彷徨ってしまう…。

 

 

 

 

 

その光は…金剛に吸い寄せられる。

 

 

 

 

 

ん?金剛に集まってる!?

 

何で!?

 

 

「アー…ダーリンがくれたダイヤの髪飾り入ったデース!?」

 

「何で…髪飾りに…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなことより…アレ!」

 

 

「アレは…武蔵型!?」

阿賀野が言う。

 

漆黒…見るからに禍々しさ漂う武蔵がこちらへ向いてやって来る。

遠くからでもわかるくらいに…他のやつとは違う。

 

 

 

 

「あれは…強そうだな…よし!陣形を組も「…行って」

 

「え?」

 

突然の麗の言葉に驚く救達。

 

「でも!!」

 

「お願い…ここでどうにかしなきゃ…皆の魂が……閣下を止められない!!それに…私達の世界もめちゃくちゃになっちゃうかも知れない!!!」

 

「行って!救君」

 

「麗ちゃん…」

 

 

 

 

 

 

「行け!!神崎救!!!」

武蔵が叫ぶ。

 

 

 

「貴様は麗を…伴侶を信じられんか!?」

 

「こいつがどれだけ努力していると思う!!貴様の隣に居る為に…貴様の背中を預かる為に…麗がどれだけ成長したか!!」

 

 

「だから信じろ…貴様の背中…我らに預けろッ!! 2人だろうと…舐めるな!!!」

 

 

 

 

「わかった…!」

 

 

 

 

 

「頼んだ、麗、武蔵!!」

 

 

 

 

彼は行く。

そう、それこそあなたらしいの。

 

 

 

 

「……行っちゃったね…」

 

「…寂しくなったか?」

 

「…ううん………ごめん、やっぱり少し寂しいかな。でも、良いの…あの人も…私達の世界も守れるなら…私は…」

 

「それに…武蔵も居るしね」

 

 

 

「…ふっ…」

 

 

「2人だけ…だがな」

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……行ってください!提督!!」

 

「大和…!?阿賀野!?」

 

「私達がここで…今のうちに!!」

 

 

「私…夢を見たんです。こんな感じの夢を…。あの子達が来てくれるはずですから!!!」

 

「あの子達?」

 

「心配なさらないでください」

 

「…ほんとだな?」

 

「はい」

 

 

 

「…先に行ってるぞ」

 

「はい!」

「頑張れ!提督!!!」

 

 

 

 

 

 

「……阿賀野…わかる?」

 

 

「…あぁ…わかります」

 

「アレは…本物の大和ですね」

 

「うん」

 

「…大和と愉快な仲間たち…か…相手にとって不足なしですね!」

 

 

相対するは

艦としての戦艦大和の魂が周りの想いや魂を取り込んだ

大和型深海棲艦のヤマト

 

戦艦大和の魂は…

黒く…暗く…悲しみ深く…。

 

ヤマトは何も言わない。

ただ…輝く光が邪魔なのだ。

 

生けるモノが邪魔なのだ。

 

「…頼りにしていますよ??阿賀野さん?」

 

「はい!こちらも、大和と愉快な仲間です!頑張ります!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって麗と武蔵。

 

 

当たりはするが…ダメージが通りにくい…みたいなところだ。

 

 

 

「武蔵!!右ッ!!」

 

「心得た!!」

武蔵は右へと躱す。

 

(何このムサシは……こんなに冷ややかな…目は…)

 

麗と猛武蔵に相対するは…同じく戦艦としての武蔵の魂。

 

 

「…不安か!?麗!!」

 

「…ほんの少し!!」

 

「……私もだッ!!…だが、そこっ!!!」

 

 

武蔵の回し蹴りがムサシの腹にヒットした!

 

「…ヨシッ!!」

麗がガッツポーズをする。

 

「…いや…ダメだッ!掴まれた!!!」

 

ムサシは武蔵を持ち上げて地面に叩きつける!

 

 

「グッ」

 

 

叩きつける

 

 

「ガッ」

 

 

叩きつける

 

 

「……クソッ」

 

 

 

何度も何度も何度も何度も。

 

 

 

 

 

 

 

自分でもイライラする。

 

いや…それ以上に不安だ。

麗が居るのに…提督が居ない…この感じ…。

 

あるべきものが…無い感じ。

 

 

「……」

ムサシは乱暴に武蔵を投げ飛ばした。

 

 

「ぐうううぅぅ!!」

 

 

 

 

 

倒れる猛武蔵に近寄るムサシ。

 

武蔵の首を掴み…力を入れて行く。

 

 

 

 

麗は考えるー

 

改ニ、ケッコンカッコカリ。

その状態でも補えないほどの弱体化。

 

相手はある意味武蔵よりも武蔵。

 

 

 

何も…できないの?

 

 このままじゃ…武蔵が…  

 

 

 

 

 

 

嫌!そんなの嫌!!

 

 

 

ムサシが武蔵にトドメを刺そうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドン…。

 

 

 

 

 

 

「…?」

 

ムサシは理解できなかった。

人間が…戦艦に体当たりしてきたのだ。

 

必死でムサシの手にしがみつく1人の人間

 

「させない!!」

 

武蔵から手を離させようとする。

 

 

 

 

 

 

「やめろ!麗」

 

「やめない!!」

 

 

ムサシは麗を振り払った。

 

 

「きゃあ!!」

 

それでも彼女はまた立ち向かう。

 

 

「…理解不能」

 

 

またも振り払われる麗。

「あうっ…」

 

 

「やめるんだ!麗!!」

猛武蔵は叫んだ。

 

 

 

 

 

…痛い。何度もはじかれた…。

服も破けて……擦り傷だらけだ。

 

鼻血もでちゃったよ…。

 

 

でも…

だから何だ

 

 

彼女は血を拭ってまたムサシへと立ち向かう。

 

 

 

 

 

 

「やめろって言ってるんだ!!麗!!殺されるぞ!!」

  

 

 

 

 

 

 

 

「うるっさいのよッ!!!!」

麗は叫んだ。

 

 

 

 

「!?……麗…?」

 

 

 

 

 

「…うるさい!うるさい!!私は…あなたの提督なのよ!私には…あなた達を守る責任があるの!私の仕事…いや仕事じゃなくとも!!私だってあなたを守るんだ!!」

 

 

「麗…」

 

 

 

「まだ2人で…いっぱい色んなことするの!!!救君のとこに行ったり!演習したり!旅行したり!!」

 

「こんなところで…諦める程私達は浅い関係じゃないの!!!」

 

 

 

また振り払われる。

 

起き上がりながら麗は言う。

 

「ねえ!ムサシ…あなたも悔しく無いの!?」

「あの大和の妹が…いいように利用されて…悔しく無いの!?」

また掴みかかる。

 

「……」

 

また麗は吹き飛ばされる。

 

 

でも彼女は決して諦めない。

 

 

 

 

 

 

そうだ…何故私は…こんなところで

捕まったままなのか?

 

 

 

麗にだけ…あんなに傷を負わせて…何が旗艦か!!

 

 

「!?」

 

ムサシは見た。

2人の間に…光の線が有るのを。

その線は自分を貫いているのを…。

 

それは…暖かく…ムサシの頭の中の憎しみにスッと入って行く。

 

 

 

 

 

「鎮守府が無かったって…私がこの世界で着任してないからといっても…変わらない」

 

 

「私は猛武鎮守府の提督で…武蔵の……提督なのよ!家族なのよ!大親友なのよ!!!!」

 

 

 

 

 

 

武蔵は衝撃を受けた。

 

相棒…と武蔵型はよく提督を呼ぶらしい。

だが…それは魂に刻まれた呼び方…とでも言うか。

 

麗と武蔵は呼んでいる。

その方が何だか安心するのだ。

 

上司と部下、提督と艦娘…。

どこまで行ってもそれは変わらない。

 

 

なのに

彼女は…私を家族だと…大親友だと言った。

 

毛頭ないが、沈む時は沈むのだ。

呆気なく簡単に死ぬのだ。

 

 

口で退けとも、進めとも簡単に指示はできる。

だが…

彼女は…その家族の為に、大親友の為に勝てるはずもない…動かせるはずもない相手に…振り払われても振り払われても立ち向かう。

 

 

馬鹿としか言いようのないその光景は…

武蔵に涙をもたらした。

 

「麗…ッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

想いが…現実を凌駕するなら…それはきっと今なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麗は願った。

あの人の背中を預かれるくらいになりたいと。武蔵を守りたいと

強く思った。

例えこの世界に鎮守府がなくとも…私は提督だ…武蔵の大親友だと。

 

 

武蔵は願った。

麗の望みの為に…2度とは負けないと。

強く思った。

この自分を大親友だと言う提督の為に…応えなければと。

 

 

 

 

武蔵の力が強まって行く。

もう少し…で!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

いくら振り払おうとも彼女は立ち向かってくる。

目が死んでいない。

 

いや…それどころか…

 

輝く星のような…

 

 

美しいとさえ言える…麗と武蔵2人のの在り方に…

 

いつか自分も夢見た光景だった。

 

兵器としてでなく…

希望の艦てして…

1人の艦娘として…

共に平和を夢見る者として…

 

誰かの隣に居たかった

 

 

––羨ましい--

 

 

そう思った時…ムサシは手の力を緩めていた。

 

 

「今だッ!!!」

 

 

武蔵は…全力で応えた。

 

 

そう

それは諦めない麗が作り出した

奇跡のような一瞬…。

 

 

生きることに…

何かを成すことに…

艦娘として提督との在り方に…

羨んだムサシが作った隙だった。

 

 

 

武蔵がムサシの手を振り解く!

 

「……!?」

 

「遅いッ!!!」

 

 

 

 

武蔵は…ムサシを殴り抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソジジイは深海化したな!早え!!』

 

「見えたデス!!あの家ネー!!」

 

「覚悟はいいな!!」

 

「大丈夫!任せて!!」

 

 

 

 

 

 

 

「俺らがジジイとその化け物とやらをどうにかできたら…ジジイも魂を返してくれるかも知れん!」

 

「イエス!」

 

「入ったら速攻てのは無しだぞ」

 

「了解!!」

 

 

 

 

 

御蔵の家らしきものに入り込む。

 

 

 

 

 

 

 

タイトル

 ??????????????? ② 超えて…超えて

 




タイトルは次回出ます!多分!
そういう試行なだけで、無題ではないですよ!




内地の場合海がないので海という概念を失う

そもそも世界が違うので、鎮守府という概念がないので


両者ともに力が出ないという感じですね。


ただ、負の魂はその質に沿ってパワーを発揮しますので
ムサシやヤマトみたいに弱い魂を取り込んで強くなる…的な感じでの設定です。



金剛の髪飾りはかなり久しぶりに出てきました。
7話で出たやつです。
オリジナルな名前の髪飾りでしたが、設定的な理由はあるので、何故魂が集まるかは…もう少し先で


いきなりにまたシリアスかよ!!と、思いの方もおられると思いますが…お付き合い頂けたらと思います。



少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。


コメントやメッセージ等お待ちしていますー!
ぜひぜひ頂けると嬉しいです!


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166話 例え世界を越えようとも…その想いは ③

平和に暮らしていた筈だった。

 

彼女と出会って…結婚して…

普通に幸せだった筈だった。

 

 

あの時までは…。

 

 

 

化け物は…突然やってきた。

 

彼女の「化け物!!」という声を聞いて急いで部屋に行くと…奴がいた。

 

奴は彼女を…殺して…私も…殺した。

 

 

怨んだ、恨んだ。

転生し…私は誓った。

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

力を手に入れた…

 

守る力を……

 

 

 

 

周りにも深海棲艦を置いた!!

何が来ようと負ける戦いではない!!

 

 

 

忌々しい怪物を…殺して…彼女を守る…幸せな未来の為に…

 

 

 

 

 

 

 

あの…家に行く。

2人で結婚して買った家に…

 

もうすぐ奴が来るハズだ

忌々しい…あの化け物が…!

 

 

 

 

 

 

 

 

着いた!!!!

 

 

 

 

 

 

 

「きゃあ!化け物!!」

 

 

彼女の声だ!!

 

今助けるからな!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バカな……何故お前がここに居る…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故 御蔵 源治(あの日の私)がそこに居る!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深海棲艦が初めて現れた時…

人々は何と言っただろうか?

 

 

 

怪物

 

化け物

 

だろう。

 

 

御伽噺や小説、漫画にしか出てこないような

異形を総称する言葉を使うだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

待て…

ここに居る化け物とは…まさか…

 

 

 

 

まさか…

俺が見た…化け物は…俺自身だったのか?

 

いや…そんなはずは…

 

 

 

御蔵は鏡を見た。

 

 

 

 

 

 

 

そこには…忌々しいとさえ言った化け物が映っていた。

 

 

 

 

 

 

………なんだと…

そんな…馬鹿なことがあるはずがない!!

 

 

 

私は…過去を取り戻す為に!

世界を超えて…あらゆるものを犠牲にしてきてんだぞ!!

 

 

何かの間違いだ!!

でなければ…私は何のために…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前で守りたかった者が震えている

その横で守るように立ちはだかる…かつての自分…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今の御蔵こそ

この世界にとって怪物であった。

 

 

 

 

 

最終的に御蔵の世界を危機に瀕させたのは

御蔵自身だった。

 

 

あの日見た怪物とは…未来の御蔵自身だったのだ。

 

 

必死に何度も何度も何十年…いや、それ以上に世界を繰り返して帰って来た御蔵の成れの果て…

 

 

深海棲艦を周りに置いたところで…

中身は負の魂が積もった存在。

 

この世に未練と恨みを抱えた者達だ。

それが世を助ける存在になるだろうか?

 

いや、ならない。

 

 

自衛手段も持たない

艦娘も存在しないこの世界は…ただ死ぬのを待つだけの地獄と化するだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

艦の魂を犠牲にし始めた時から…御蔵は詰んでいたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

守りたいものがあった。

なのに…それを誰も受け入れてくれない。

 

助けに来たハズなのに…化け物と愛するものに拒絶された。

故に愛する者を殺した。

 

 

御蔵の事も…もちろん殺したハズだった

自分があんなに苦労したのにお前は悠々とそこに居たのか…と。

 

 

 

しかし、奇跡的に生還した彼は…転生した先で復讐と歴史の修正を望んだ。

 

 

 

その若い御蔵は…とある世界で…何度も何度も繰り返してその方法へと近付いてゆく。

 

 

 

 

 

そしてその度に御蔵は殺すことになる。

その結果に絶望し…愛する者を。

 

これが何度目なのか…?はたまた起源なのかはわからない。

 

ただ真実は目の前にある。

 

 

 

この世界の禍は…俺だ。

 

 

 

それが運命…いや、呪いと言うべきか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

運命とは…そういうものか………

 

 

なら…せめて殺そう…。両方…いや、せめて…私を殺そう…。

そして…俺が元に戻れば…入れ替われるだろう…か?

 

 

 

しかし、御蔵には見えた。

 

 

 

自分を殺しても怪物は現れる…

 

 

 

 

 

 

愛する者が(守りたかった人が)怪物になって現れる

 

 

 

 

たまたま今回は自分だったのだ…

 

 

 

運命は繰り返される…逃げられないのか?

 

なら俺は何のために……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なら全てを壊そう…。

 

こんな世界も…。

私が居た世界も…何もかもッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや……やはり…ここでも想定外が居る。

 

 

数多の死の淵を超えて

やって来たイレギュラーが…

 

 

 

 

 

目の前に…!!

 

「…神崎……笑うがいい」

「これが世界…魂を売った愚か者の末路だ」

 

 

「じーさん……もうやめよう」

 

 

「…ならば…俺を止めてみろ!!俺は…全てを壊す!!俺を否定した、拒絶した世界なぞ要らぬ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タイトル

 

 

例え世界を越えようとも…この想いは ③ 全てを犠牲にしようとした男の終着点

 

 

 

 




例え世界を越えようとも…その想いは

がタイトルです。

割と残酷ですけどね。展開的には…御蔵さんにとっては。



奥さん!夜にも更新するかもですよ!



色々と背景等の考察をメッセージでくださる方も居まして
嬉しいです、ありがとうございます!

こんな脳内で申し訳ないです、笑


感想とかコメントとかいただけると嬉しいです(๑╹ω╹๑ )
お待ちしていますー!


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167話 例え世界を越えようとも…この想いは ④ 想い越える時

本日も2話更新!
お昼に166話も更新してるのでご注意下さい!



信じられるだろうか?

 

 

 

幾多を犠牲にして

築き上げたものが…

 

それが全て…意味のない連鎖の一因だったなら

 

 

面倒な話だが

殺されたのが源治なら…

 

艦これの世界で救に会ったのは嫁で…結局は同じことをしていた…だけなのだ。

 

 

 

一言で言うなら

…呪い

 

 

 

 

 

 

深淵を見下ろす時深淵は自分を見上げているように

 

 

 

 

 

それが…

世界を売ろうとした男の運命

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁいやーー!!」

金剛の砲撃が御蔵に直撃する。

 

 

 

辞めよう…だと…?

貴様に何が分かるッ!!

幸せそうな暮らしをする貴様らに…

 

 

「うるさいっ……!!!!」

 

 

「効いてないデース!?」

 

 

 

 

絆…力…

貴様らの言う馴れ合いも…

 

小賢しいわッ!!

 

「運命に、世界に裏切られた俺の気持ちが…分かるかっ!!」

 

 

「避けろ!!」

 

「手が大きく…!?」

 

 

 

 

 

 

 

ゴシャッ…

 

 

金剛に大きな手が振り下ろされる。

 

 

「ガ……ハッ」

 

金剛は地面に叩きつけられる!

 

 

 

強い。

圧倒的に強い。

 

 

「しねえええ!!!」

 

更に一撃を加えようとする御蔵。

 

「金剛ッ!!」

救は金剛に飛びかかる。

 

 

「無駄だぁぁあ!!!」

 

 

直撃は免れたが、救と金剛は吹き飛ばされる。

 

 

 

 

 

 

「ぐふっ…」

 

 

「うっ!!」

 

 

 

 

 

 

ズキッ…

起きあがろうとしたら腹が痛い…

 

 

 

 

 

腹部に…鋼材が刺さって……さっきの衝撃で?……くそっ

 

 

 

 

 

 

「おやぁ?…死にかけじゃないか?神崎くぅん…」

ニタリと笑う御蔵。

 

 

「ダーリン!?そんな…ごめんなさい、私のせいで…」

金剛は青ざめる。

 

「大丈夫だ!このくらい!お前が無事なら…良かった」

 

 

 

 

 

このままじゃ…

 

 

どうする…。

 

 

 

ここには鎮守府は無い

 

俺は着任すらできていない……まずい。

 

 

金剛も…ぼろぼろじゃないか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、頭に声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『何故関係ない魂を助けようとするのです?』

『こんな世界まで追いかけてきて…死にかけて…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それは…彼女達の魂の尊厳を守るために決まってんだろ…」

 

『何の利にもなりませんよ?』

 

 

 

「そんなのどうでも良い!!」

 

 

「こんな事…彼女達は望んでないはずだから!!」

 

そうだ。

彼女達の真の願いは…

 

 

「だって…彼女達は」

 

 

「あの世界を守る為に生まれ…戦ったのだから!!」

 

 

世界の…平和な海を取り戻すことなんだから!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くううう!!」

 

金剛がまた吹き飛ばされた。

 

 

 

カラリ…と

髪飾りが落ちた。

 

 

「あ…」

 

髪飾り…

深海ダイヤの髪飾り…。

 

 

 

深海ダイヤは…海の底で作られるらしい。

海底から海流で巻き上げられたのが…たまたま世に出回るらしいが。

 

1日夫婦をした時に救が買ってくれたものだった。

 

 

 

 

「大切なものか?…」

御蔵はそれを踏み潰そうとする。

 

 

 

これだけ……は

大切な……もの……デス

 

 

金剛はそれを庇うように…ぎゅっと握りしめた。

金剛の手を踏む御蔵。

 

 

「そらそら!手が潰れるぞ!」

 

 

「これだけはやらせまセン!!私の…宝物なんデス!!」

 

 

何度も何度と…踏まれようと蹴られようと金剛はそれを離さなかった。

 

 

「ならそれごと…手を潰してやるッ!!」

 

御蔵は足を上げる。

 

 

 

 

 

深海ダイヤ

 

 

 

海の無い場所

 

 

 

海から来る魂は…海を求める。

しかし、ここに海はない。

 

 

 

 

 

 

故に近しいダイヤに集まる。

深海の中で生まれたダイヤは…海の記憶を持つ。

 

引き寄せられるように集められた魂は…

 

 

 

深海棲艦を倒した時に魂は髪飾りに集まった。

海を求めて…

 

 

大和や阿賀野が対峙し、倒した深海棲艦、武蔵が倒したムサシ…

それらは髪飾りから…

 

 

 

金剛に話しかけた。

 

 

 

 

『金剛…力が必要?』

 

(この声は……?)

 

 

 

『私達は彼を恨んでる…この力は…君を傷つけるかもしれない…』

 

『それでも…恨みを晴らしてくれるなら…力を貸す…負の…とてつもないエネルギーを…』

 

 

 

彼女達は金剛に力を流し込む。

頭に流れてくる負の感情。

 

 

悔しかったろう

悲しかったろう

冷たかったろう

寂しかったろう

無念だっただろう

 

殺したいくらいに

 

奴が

奴らが憎かったろう

 

 

 

「何!?」

御蔵が飛び退く!!

何かとてつもないモノを感じたからだ。

 

 

 

 

 

 

「…恨み晴らしではないデース…あなた達の誇りを取り戻すんデス!!」

 

 

 

 

ぬるりと金剛が立ち上がる…、

 

金剛から紫色のオーラが漂う。

 

 

 

「金剛!どうしたんだ…?」

禍々しいオーラに救いが尋ねる。

 

 

「すこし…イメチェンデース」

 

「金剛!!」

 

「……」

 

「大丈夫デース!!」

 

 

 

 

 

 

頭に声が響く…!!

『行け……やれ!!』と!

 

 

「行きマス!!!」

 

 

 

 

 

「コレは……皆の恨みだッ!!」

 

 

 

 

「皆…だと?…フン……死に損な…」

ドコッ!!!

 

 

 

 

 

 

「!ゴフッ………!??!な、なんだと!?」

ダメージが…通っただと!?何故だ!?

 

 

ゾクリとするほどの敵意が金剛の拳から伝わる。

 

 

まさか

 

 

まさか!

 

 

コイツは…魂の力を…使っているのか!?

 

「貴様…まさか」

 

「お前は…許さない…!!皆がお前を許さない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭の中の声は救に優しい声を向けた。

 

『わかったよ……見知らぬ提督さん』

 

『そんな人も居たんだね……』

 

『…そんな人に出会いたかったんだ………ありがとう』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『うん…いいよ』

 

『ほ、ほんとですか?!』

 

 

 

『うん……凄く興味のある人に出会ったから……私達は私達で…やるから…あなたも…能代もOKだって』

 

 

『はい…その力…受け取りました!!必ず…取り戻しますから』

 

 

とある艦娘の魂と艦の魂がやりとりをしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さあ…やりましょうか…!!』

 

その艦娘は…顔をパシンと叩いて言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって麗、武蔵。

 

 

「くっ…多いな……」

 

 

「負けないッ!負けないッ!!」

 

 

 

ムサシを倒したと思ったのに…どんどんと…湧いてくる…。

これじゃあ…私達は…、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よく耐えた!」

…聞いた声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって大和、阿賀野。

 

 

 

「大和さん!」

 

「阿賀野さん!!!まだやれますか?」

 

「は…はい!なんとか!」

 

 

「…ヤマトだけでなく…他のも…これじゃあジリ貧ですね」

 

「負けません!!」

 

「阿賀野さん…?」

阿賀野の目は死んでいない。

 

 

「絶対に…私達は!!諦めません!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それでこそ…阿賀野よね』

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「き、京極さん!?」

 

夢か…幻か……。

 

 

 

 

 

「ああ!里仲さん!!説明は頭の中で受けた!!西波島のメンバーも一緒だ!!」

 

 

京極とブイン大和…そして

いつも見るメンバーがそこには居た。

 

 

「お待たせ!来たよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「能代!?」

「それに…提督!?」

 

 

能代と…松田提督がそこにはいた。

 

 

 

『……僕はショックだなあ…阿賀野も矢矧も乗り換え早くて…』

 

 

『え?私がいるじゃ無いですか…』ぎゅうううっ

能代、脅威の鯖おり抱きつき!!

 

 

『痛い!痛いよ!!』

 

 

 

 

『お!?阿賀野に矢矧じゃねえか!』

 

「天龍サン!?」

懐かしいメンバー…まで…

 

 

 

「なんで皆が!?」

 

 

『それはねえ…』

 

 

 

 

 

御蔵が使ったのは…

 

何順もした世界で集めた艦娘の魂や心…思い出も何もかも。

 

 

 

 

 

それが深海棲艦を作り出せるなら…。

 

 

彼女達はそれを利用した。

 

能代の艦の魂と会話をして…

彼女達はその魂を説き伏せて…取り込んで…作り出したのだ

 

一時の…仮初の体を。

 

 

『ご都合てやつかな?』

少しはぐらかすように能代は言う。

 

 

『さあ!やろうか!!』

松田が言う。

 

「え…でも…」

 

『皆で…乗り切るんだろ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでも足りぬか?麗に…武蔵…」

「なら……この長門達が力を貸そう!!!」

 

 

 

「私達もいるっぽい!!」

 

「海が無かったって…やります!?」

 

 

 

 

 

 

「行くよ!シラツユ!ユウダチ!!」

 

「さあ!ナガト!出番だ!!」

 

 

 

 

 

 

ズドドドドオン!!!!

 

 

耳をつんざく様な轟音と共に放たれた

一斉射!!!

 

 

 

「……ふっ…西波島には負けんぞ!!」

武蔵の士気が上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆…来たんだな……」

 

 

 

 

 

向こうは…安心かな…

 

こっちは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金剛が奮闘する中に…

くそっ!深海棲艦が沸きやがった!!

 

 

 

こっちにくるッ…。逃げ…ないと。

 

 

しけし、金剛は御蔵と…対峙し、交戦中。

 

 

俺は…血が出過ぎたのか?

フラフラする…

やばい逃げらんねえ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時だった。

 

 

 

 

 

「指揮官…汝は…逃げずとも良い!前だけを見なさい」

 

「そうだ!後ろには我らが居る!」

 

 

誰かの声が後ろから聞こえた。

 

 

 

 

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現れた

 

 

声と共に…俺に寄り添い…肩に手を置いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「此度は…妾も見るだけではない。指揮官…汝に今こそ…勝利を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「各員!奮励努力せよ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ…アレは…?」

金剛は見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は

金剛にとっても大先輩に当たる人だった。

 

 

 

英国は、ヴィッカース社より生まれ

 

敷島型4番艦にして

当時

世界最新、最強と言わしめた前弩級型戦艦

 

 

 

 

 

 

日露戦争にて

あの艦隊を破り

日本国を勝利へと導いた旗艦

 

今なお…軍神と語られる…

 

 

 

 

 

重桜所属

 

戦艦  三笠

 

 

 

 

 

 

「指揮官!!我が来たからには…そんな顔はさせぬぞ!」

 

 

 

「赤城!隼鷹!大鳳!そして…ベルファスト、エンタープライズ!!」

 

「すべての艦の魂の興廃…この一戦にあり!!全てがかかっている!!」

「全力を以って…金剛を援護しに行くぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…

 

「まさか…アレは…夢で見た……あの子は…信濃?」

大和が言う。

 

 

 

 

大和の妹…別世界の……ではあるが…。

 

大和型3番艦

第二次世界大戦時、世界最大の空母と言われた。

その生涯はあまりにも短かったが…

今なお知られている大和、武蔵の姉妹。

 

その分彼女は…心だけで世界を渡り…見ることができた。

傍観者で在った。

 

だが…彼女は来た。

 

何の運命か

何の因果か…

 

 

 

 

 

 

「み…三笠!?信濃!?お前…え?何で!!」

 

「指揮官が望んだのだろう?フフフ…いつだって私は…指揮官の旗艦だったからね!それに…ショウワ生まればかりに良い格好はさせられないだろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

信濃の世界渡りはこの世界を捉えた。

 

傷つく指揮官が見えた。

その後の結末も……。

 

彼女は…傍観者であることをやめたいと願った。

「叶うなら…指揮官のお役に立ちたい」

 

 

 

そこに…ある艦の魂が反応した。

名も無き彼女は…あろうことか……本体の彼女と近くにいた三笠…桜赤城達を呼び寄せたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう

それは信濃

艦としての信濃の魂だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

10日ばかりの生であった…悲しみも大きかった。

 

しかし、見てしまった。

絶望に…悲しみに染まる魂は…見てしまった。

 

自分達と全く接点もない…1人の人間が…私達の尊厳や誇りを守る為に世界すらも超えて来た事を。

 

彼女は思った。

 

私も…役に立ちたい…と。

 

そして彼女は…桜信濃に託したのだ。

この世界と繋がった…信濃達が起こした奇跡だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…好かれてるんですねえ…あの人は』

 

 

 

 

 

祈り、願い、

それは

 

 

 

信じ、願い続ける者へ

 

 

 

 

 

 

「ああ…この世界の…お姉様…お会いしたく思っていました」

「しかし今は…汝にかかる…雨雲を祓いましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…阿賀野型…砲撃を見せてやりましょう!!!」

阿賀野が言う!

 

 

 

『おー!久しぶりにやりますか!!』

皆が…ニヤリと笑う。

 

 

 

「目標…ヤマト及び、深海棲艦!!……主砲、用意……」

阿賀野が号令をかける!

 

 

 

 

「矢矧!完了です!」

 

『能代…角度調整…完了!!』

 

『酒匂…完了済みです!!』

 

 

 

 

「目標…撃てーーー!!!!」

 

 

 

ドォン!ドォン!!と矢矧や能代、酒匂と共に放たれる砲撃。

 

 

 

「オラァ!!天龍様も行くぜ!!!お前らも続けッ!!」

 

天龍を始め、英雄達全員での総攻撃!

 

 

 

ズダドドド!!!

ドォン!!

 

それは敵を容易く打ち破る業火だった!

 

 

「…!!」

ヤマトが体勢を崩した。

 

 

「はあぁあああ!!」

大和は飛び上がり……ヤマトに踵落としをお見舞いした!

 

 

「…グ!!」

 

「…同じ大和の名を冠する…あなた!」

「知っているはずです!この世は…憎しみだけじゃないことを!」

 

「通してください!私達の進む道は…ここなのですから!!」

 

大和はそのまま身体を捻り、回転を乗せて…アッパーでヤマトを砕く!!!

 

「…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……見せられてばかりではないぞ!行くぞ!大和!!」

京極が大和に指示を出す。

 

「はい!!」

大和は三式弾で敵を蹴散らして行く。

 

 

 

「麗ちゃん!休んでて!」

吹雪が声をかける。

 

 

「ううん!まだやれる!行こう!武蔵!!」

 

「ああ!」

 

 

「ならば…皆の物!!提督でないから癪ではあるだろうが…俺に続け!!」

京極が言う。

 

 

「全員…主砲用意!!!」

 

 

「…しゃーなしですよ!!」

「ぶーぶーー!!」

 

 

「こら!島風ちゃん!!」

 

 

 

ぶつくさ言いながらでも皆は主砲を用意する。

 

 

「「「完了です!!」」」

 

 

「てぇーーーーーーーーーーー!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

ズドオオオン!!

 

空を裂く程の轟音!!!

それは星となって敵に降り注ぐ。

 

 

数多の敵を薙ぎ倒して行く!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官!!どうだ?我の力は!!」

 

「妾も居ますよ?」

 

 

 

 

「指揮官様に近づく悪い娘は……こうですわ!!」

 

桜赤城達が敵を焼き払う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

押されているものの金剛は、御蔵に食らい付いていった。

 

今の金剛の頭の中はめちゃくちゃだろう。

 

それでも彼女は戦う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その彼女の元へ…皆が集まってくる。

 

「金剛ーー!!いけーー!」

 

「負けるなーー!!!」

 

 

 

 

 

 

「…もう…奴らを倒したのか……」

 

「……やはり…神崎よ…貴様が一番の障害になるのだな!」

 

 

 

 

 

「やはり…小賢しいわ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドン…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何が起こったかわからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一つ言えたのは…御蔵の放った何かは…

私達を簡単に吹き飛ばしたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

「……あぐっ…」

 

 

「ご、ご主人様…大丈夫で……か…?」

「…指……」 

 

 

「指揮…様は…私……守りするはずなのに……」

 

 

 

 

「ハハハハハ!!!」

馴れ合いなぞするからだ!結局は皆死ぬ!

 

「やはり!運命なぞどうにでもできる!」

「貴様らの魂も回収し……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうなる筈だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし実際には…()1()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金剛が先頭に立ち…其れを塞いだのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「何故だ?」

「今見えた現実は…貴様らは沈んだ筈だ。死んだ筈だ!貴様…何をした!金剛!!!!」

 

 

 

 

「……よくわかりませン」

 

 

 

 

「でも一つだけわかるのは」

 

 

 

「頭の中で…お前に無念を晴らせと叫ぶ魂達(艦達)の声が聞こえるんデス」

 

「見えるんデス!あなたが…何をしたか!」

 

「皆…怒って泣いてマース!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倒された深海の魂が…

金剛の元へ集う。

 

 

 

 

「……アアアア!!」

更なる負のエネルギーが金剛に与えられる代わりに…

禍々しいオーラに身を包み…

彼女の中は…もはや金剛なのか?と言えるレベルでめちゃくちゃになっていた。

 

 

 

恨み…悲しみ

それらの感情を他人の分まで背負えるはずなどない。

 

 

 

だが…

 

 

 

 

その深海ダイヤ()は温かかった。

あの日から…ずっと肌身離さず着けているそれは…

彼女達の温かさで…輝いていた。

 

 

 

 

付喪神…ではないが

物には…神が、想いが宿るなんて言葉がある。

 

 

その温かい想いは

金剛の正気を寸前のところで守っていた。

 

 

 

「こ、金剛…」

 

 

 

「な、何とか…大丈夫デース…」

 

 

 

 

そうか!

 

御蔵は気付いた。

艦の魂…奴らが金剛に力を貸しているというのか!?

 

 

帰ってくる魂が多いほどに金剛は強くなる。

 

 

故に金剛は無意識のうちに…

現実を無かったことにしたのか?

 

 

どうやって制御しているのだ?!

 

 

 

 

 

 

金剛が動くッ!!

 

 

 

 

「声を聞け!!私達は…私達は!!!!」

 

 

「お前の道具でも…オモチャでも…無いッ!全て…返せえええええええええ!」

 

金剛…いや、艦達の思いが…黒炎を纏った拳で

 御蔵に突き刺さる

 

 

 

 

 

「ぐううううっ!!!」

 

 

今まで味わったどんな痛みよりも痛かった。

 

 

「まだだっ!!」

 

片膝を着く御蔵に金剛の左フックが炸裂する。

 

「ゴフッ…!!」

 

 

決して…地面に寝かせるか…と言わんばかりのラッシュ攻撃。

 

 

 

 

「ガッ……グッ…ガハッ…ぐあ……」

 

 

 

 

そして御蔵は感じ取る。

 

一撃毎に…自分から取り込んだ魂が剥がれていることを。

 

一撃毎に金剛の攻撃の威力が上がっていることを。

 

 

 

「ぬううううああああ!!!」

 

御蔵は全力で殴りかかった。

金剛の頬に拳が………。

 

 

 

 

 

しかし、金剛は微動だにしない。

全くノーダメージ…とでも言わんばかりに。

 

 

 

「効きません!!!」

 

 

 

金剛が構える!!!

 

 

 

怨念…喪失感、絶望感…悲壮感

全てを乗せた拳。

 

 

 

 

 

「返してもらうぞ!!おおおおお!!」

 

 

ドッゴオオオオ!!

 

パンチが炸裂した

 

 

––なあ、教えてくれ

 

 

 

–俺はどこで間違えた

 

 

 

––助けたかっただけなんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

この世界を焼き尽くして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今の私こそ

本当の怪物じゃないか

 

 

 

 

 

 

 

 

「これでッ……」

 

金剛は思い切り身体を捻る。

そのまま…振りかぶり……

 

 

 

 

ドォォォォオオオオオン!!!!!

一撃ッ!!!

 

 

 

 

 

 

金剛の一撃は彼の顔面部を殴り抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……怪物を倒す為に怪物となった

 

私は…

 

 

 

 

 

神崎 救!!貴様ならどうしていた!!

それでも諦めないと…抜かしていたか!!!

 

 

 

 

「そうならない為に努力した」

 

 

「そうできるなら…他の人の悲しみを糧にして得られるものなんか要らない」

 

 

 

「だって彼女達は…きっと力を貸してくれるはずだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰も信用していなかったと言う御蔵。

 

 

 

大石、真壁、大淀…

この3人も所詮…礎だったと言う御蔵。

 

 

いや…

 

 

それでも彼は

元帥の御蔵 源治だった。

 

 

 

 

焼き尽くすには

 

彼はあの世界で思い出や後輩部下を作りすぎた。

 

 

 

 

 

 

 

例え…世界を越えようとも…

助けたい思いも…

大切な仲間だったことも…

この想いは変わらない

 

 

 

 

 

 

 

艦これの世界も…自分の世界も…破壊するつもりはないのだ。

 

 

 

 

 

「化け物……」

とある人が言った。

 

 

「やめてくださいッ!!」

救が叫ぶ。

「やめてください…」

 

「あなた達には…決してわからないでしょう…」

 

 

 

「彼が…奴が如何に…全てを犠牲にする覚悟があったか…。」

 

 

絶望の中で…見出した光

 

 

 

その光を求めて求めて…もがいたが…

ガラスの天井から見える…空だったから。

 

 

 

 

 

「……何の形とは言え……あんたを…化け物のままで終わらせたりはしない」

 

「イェース…」

 

「せめて…誇り高き元帥として……」

 

 

 

未だにそんな事を言う。

バカだ…

 

私には何もないのに

 

 

魂すら奴らに奪われて

怨嗟すら…金剛に負けた。

 

 

……

それでも尚…誇り高く…と言うのか

 

 

バカめ…

飛んだ甘ちゃんじゃないか…

 

 

 

奴は…一度たりとも奴らの前で私の名前を呼ばなかった。

 

私が御蔵 源治と知られるのを防いでくれた…

 

 

なら…

私はこの世界に現れた怪物として…最後を迎えるしかないのだ!

 

 

 

いいか神崎 救。

 

非情にならねばならぬ時が来る。

甘い考えを捨てなければならない時が来る。

思い描いた通りに進まぬこともあるッ。

 

良いか?

 

悪には…悪なりの散り方が有る。

矜持があるッ

 

 

 

 

 

 

 

 

何せ…化け物を倒す為に化け物になったんだ。

化け物は…化け物らしく倒されないといけないだろう?

 

 

 

 

 

 

貴様には貴様の正義(目的)があるように…

私には私の正義(役割)がある!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「るぁあぁぁぁぁぁあ!!!!!」

 

 

真壁はその役割を貫いた。

 

 

その攻撃は……金剛や救へ向く

 

 

 

彼等は避けられない…

 

 

 

何故なら…後ろの方角には…御蔵が全てを失っても守ろうとした……守るべき人達が居るから!

 

 

 

「閣下……いや…じーさん?」

 

 

「避ければ…守るべきモノが死ぬぞ!!!」

 

 

 

 

「くそっ………!!」

 

「金剛ッ!!!!」

 

 

 

 

「うりゃぁぁぁあああああ!!!!」

 

 

御蔵渾身の砲撃は金剛によって弾かれる。

 

 

 

 

 

そして金剛は…笑みを浮かべる御蔵を殴り抜く!!

 

 

「眠れデース…。うおおおおおおお!!」

 

ズドォォォォオオオオオン

 

 

瞬間…御蔵は力を抜いた。

そのまま彼は吹き飛ばされ…

 

瓦礫と共に空中へと投げ出された。

 

 

 

 

金剛が弾いた弾は教会の鐘にあたり…その鐘は一際大きな音を鳴らす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ…君と……結婚式を挙げた…教会が見える…。

鐘が…なっているのか……?

 

 

 

はは…

この街の景色は…こうも…美しかったか…

 

 

何十年…いや…もっとか?

 

死ぬなら…この場所がよかったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

何故俺は…転生なんかしたのか…。

 

 

 

 

 

 

ちらりと2人が見えた。

 

 

 

 

 

 

あぁ…

そういうことか…。

 

()()()()()()()()()()()()()()()

俺が…あんなことをしなければ…怪物は現れなかった…からか?

 

神崎の言う通り…

最初から正しく道を歩んでいたら…もしかしたら運命は変わっていたのかもな…

 

 

もう遅いが…

 

 

 

 

……まあ

愛する人を2度も…殺さなくて済んで良かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ありがとう…

いや…違うな…

 

 

らしくいかないとな……

 

 

「神崎ィィ!!!!」

お前なら…お前となら…できたのかもな

 

 

「貴様は甘いッ!!」

優しい…からな…前を見てるからな…

 

 

「いずれ…その優しさも貴様らを傷つける事になるッ!!」

ありがとう…

 

 

「忘れるなッ!世界は……悪で溢れているッ!!!」

お前が…世界を照らせ

 

 

「世界を…全てを犠牲にしようとする奴すら当たり前にいるんだ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男は…砕けて光となった。

 

 

 

光は魂に戻り…金剛の元へ。

 

 

ズモモモモモモモ…と

金剛の体から魂達が抜けて…

復讐を終えた魂は金剛から…また髪飾りへと戻って行く。

 

 

 

 

 

そして…彼のいた場所には…最後の彼の良心か

ゲートが現れた。

 

 

 

 

 

青年は見た。

 

化け物を…打ち倒す人を。

 

何故かはわからないが…女の人が戦っていた。

 

 

 

そして

「どうか…化け物なんて言わないでやって欲しい」

と言った。

 

 

「何故ですか?」

と、青年は聞いた。

 

「……それでも彼は…救いたいものがあったんです」

 

 

 

 

 

例え世界を超えても…何を犠牲に…礎にしようと

男には取り戻したいモノがあった。

強い思いがあった。

 

 

だか…それは報われる事もなく、叶う事もない悲しい物語。

鐘の音と共に終わりを告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…サンキュー…皆……ゆっくり休んでネ」

 

金剛はキュッと髪飾りを握りしめて…髪に留めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やったね!能代…!みん…な?」

 

 

 

阿賀野や矢矧が振り返ったときには

既に彼女達はそこには居なかった。

 

 

ただ、早く行きなさい…と声が響いた。

 

 

 

「せっかちだねえ…」

矢矧が言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「救君!!」

「救ちゃん!!」

「提督!」

と皆が集まってくる。

 

 

「感動の再会だけど…」

 

「早く!!ゲートから元の世界に!」

 

 

誰かの声だ。

 

向こうにゲートがある。

 

「お前達は早く戻れ!、俺も行く!!」

 

 

 

 

 

 

 

皆がそこを目指して走る。

 

天龍達を頭にどんどんと潜ってゆく。

 

「お前達も早く!!」

と天龍が叫ぶ。

 

 

 

 

全員…行ったか?

 

魂も…ここに残ることなく連れてるか?

 

 

 

「イエス!いきましョー」

 

 

 

 

帰ろう…

ゲートが閉じる。

 

金剛に抱えられながら走る。

 

 

 

腹が…痛い。

腹が…出血が……。

 

 

 

…このままじゃ……コイツまで……

 

 

 

じっと…金剛を見つめる。

 

 

「ダーリン!もうすぐネー!」

金剛が笑顔を向けてくる。

 

 

「ああ…」

 

 

 

 

 

金剛…お前…は本当によくやった。

 

あの日に最初に出会ったのが…お前で本当によかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「榛名!!」

 

 

 

彼は叫んだ!!

 

 

「はい!榛名はここに居ます!!」

 

 

 

と、榛名がゲートの向こうから手を伸ばす。

 

よし…居るな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドン…

 

 

 

 

 

 

彼は愛する人を押した。

 

 

 

 

 

「え?」

 

意表を突いたそれに金剛は対応できず…前に押し出され…金剛は榛名に受け止められた。

 

 

 

 

 

 

そのまま彼はどしゃりとへたり込んだ。

 

 

彼は笑顔で言った。

「すまん、あとは頼んだ」

 

 

 

 

 

 

だめ

ダメ!!

 

「そんな…ダメデース!!」

 

「お姉様ッ!ゲートが閉じます!危ない!!」

 

「離して!!榛名!!」

 

「ダメです!お姉様が危ないです!ダーリンも早く」

 

 

 

「提督!!」

皆も口々にそう言う。

 

頼む!来てくれ!!

戻ってきてくれ!!と。

 

 

 

 

 

 

しかし、彼は動けない。

へたりこんで…腹を押さえている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……すま…ん、愛してるぞ…皆」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…ゆっくりとゲートが閉じる。

 

 

 

ダーーリン!!

 

 

 

 

 

ブツン…とゲートが閉じた。

 




めっちゃ文字量が多い…ですけど
場面転換もありまくりますが…お楽しみ頂けたでしょうか?



この流れは連載開始当初から予定していました。
信濃の話が感想で出た時はビビりました。
まさかピンポイントでくるとは…と。


前に書いた好きなアズレンキャラの??が三笠でした。




当初は小分けのつもりでしたが
シリアスは一話あたりを太くしようかなと思い増やしてみました。


残すところは数話ですが…最後までお付き合い頂きたく思います。




感想等お待ちしています!
めっちゃ嬉しいので…ぜひお待ちしていますー!





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168話 例え世界を超えようとも…この想いは ⑤ そんなものなんか

「ダーーリン!!」

 

 

 

目の前で閉じられた…ゲート。

 

 

 

夢ならば…

これが夢ならば…

 

 

 

 

 

 

 

 

伸ばした手の先には…

 

 

 

そこには何も最初からなかったかのように…

その跡形すら残ってなかった。

 

 

あぁ…

 

そんな…

 

 

 

目に焼き付いた光景は

彼が力ない笑顔で私達を見送ったこと。

 

 

 

 

 

 

 

「お前達!無事か!!」

そこにやって来たのは桜だった。

 

彼女は留守の鎮守府を舞長門と共に留守を預かっていたのだ。

 

 

 

「皆!帰ってきたのね!!」

間宮達が迎えに出てくる…が、その異様な雰囲気を察したらしく表情を強張らせた。

 

 

 

 

そして口にする…

 

「て…提督は?」

 

 

首を横に振る艦娘。

 

 

「嘘でしょ…?」

 

 

 

 

「……間に合わなかった」

 

 

 

 

 

誰かが叫んだ?

 

あああああああああぁぁぁぁぁああ!!!!!

 

嘘だッ!!

うわぁぁぁぁぁぁああああ!!!

 

 

私がもっとちゃんとしていれば!!

 

 

いや!私が戻っていれば!!

 

 

私が代わりに後ろから追いかけていたら!!

 

 

いや、わたしが…

僕が!!

 

 

 

混乱する艦娘達。

嘘だ!と声が響く。

 

 

 

 

 

「お姉様…」

榛名も泣きながら金剛に寄り添う。

 

 

 

 

 

「榛名…私は…私のせいで…」

ぽろぽろと泣く金剛

 

「お姉様…お姉様は悪くありません…」

つられて…榛名も…

 

 

 

 

 

艦の魂を取り戻す…

その代償は大きく…

彼女達の心は大きな穴が空いた状態になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とにかく…入渠をして傷を癒さないと……

 

もし今攻められたら…せっかく守ったのに…やられちゃうから…。

 

 

明石達がその場で応急手当てを始めた。

 

 

 

 

 

ある者は泣き崩れる仲間に

ある者は怪我した仲間に

 

寄り添っていた

 

 

 

 

 

 

 

その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バキッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな音が響いた。

 

 

 

 

 

 

ある艦娘が自分の額を殴った。

 

「何してるの!!!」

 

「やめろ!!…」

 

「お前は悪くねえよ…な?責めるなよ…ぐすっ」

 

 

 

 

 

 

そう

彼女は自分を責めている……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや違う!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は…

 

 

 

 

 

 

たった1人だけのバカだった。

 

 

 

諦めの悪いバカだった。

 

 

 

 

頭を働かせ続けるバカだった。

 

 

 

 

 

そいつは神崎 救(1番の馬鹿)からバカが伝染った大馬鹿艦娘だったから。

 

 

 

 

 

 

 

考えろ!

 

考えるデース!

 

考える事をやめるな!!!

 

皆が来たなら…開くはずデース!!

 

 

金剛(その馬鹿)は考えていた。

 

 

 

 

 

そうだ…

 

どんな時も彼は

 

諦めろなんて言わなかった

 

諦めなかった!!

 

 

 

 

今諦めたら…

あの人が築いていったものを…無駄にしてしまうから!

 

 

 

 

 

 

 

カラリ…と何かが音を立てて転げ落ちた。

 

 

 

 

彼がくれた…髪飾りだった。

 

 

自分を殴った衝撃で落ちてしまったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ…魂を解放してあげないといけないデース…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや待て…まだ…集まった魂は中にある。

 

 

 

 

 

彼女に力を貸した艦達の負の魂が!!

 

 

 

 

 

「こ、金剛?」

「お姉様?」

 

 

 

 

 

 

賭け…だった。

…マイナスの力……とてつもなく苦しいけど…。

 

 

でも

そんな事…知らないッ!!!

 

例え少しでも可能性が有るなら!!私だって…例え全てを投げ出しても……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

髪飾りを握りしめ…彼女達に話し掛ける。

 

 

お願いデース…

少しで良い…力を貸してくだサーイ!!

 

 

 

 

 

 

『確かに可能性はあるけど…』

 

 

 

『目的は果たされたから…今の君にとっては…とんでもない苦痛になるだけよ?』

 

 

『耐えられる?私らも正気じゃなくなるから…キミの体…モラウカモよ?』

 

 

「そんなもの承知デース!!私に…力を貸してーーー!!!」

 

『体…乗っ取られるかもよ?』

 

 

「あの人は…あなた達の尊厳を…無くさせない為に戦いに行ったデス!恨み言や、弱音なんか吐かずに力を貸して下サーイ」

 

 

『…諦めないんだなあ…』

 

 

フーッ…フーッと息を整える。

 

 

「諦められない」

 

 

パスを繋ぐ

膨大な負の感情が流れ込む。

 

 

 

でも知るか!!

 

 

『恨み言ばかりいってないで…力を貸して!」

 

 

 

 

 

イメージする。

世界を跨ぐ…門を開く……

 

少しずつ見えてくるのに…ゲートを……開こうとするが…

ダメだ…1人じゃ…足りない…

 

 

 

私1人じゃ…

 

 

その光景を皆は見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

夕立は言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「シラツユお姉!ユウダチ!もっかい力を貸してっぽい!!」

 

 

長門が言った。

「ナガト!!今こそ!今こそだ!!今こそ2人で輝く時だ!全ては今!この為に!!!」

 

 

 

 

「私も…やります!!」

「猛武の金剛!?」

 

 

「私もあの人が気になって……あの…そ、それに提督の旦那さんですし…」

 

 

金剛が反応した!!

「やっぱりダメデーース!!……なんて言いまセーン!!やっぱり同じ金剛デース!見る目有りマース!でも正妻ポジはワタシでーす!」

 

 

同じ金剛故の共鳴なのか?

 

 

私達もッ!!

鬼怒が、由良が

 

阿賀野が、矢矧が…迅鯨が。

「能代……お願い…」

 

傷ついていても…それでもパスを繋ぐ。

 

「私達も…」

姫ちゃんや鬼ちゃんも

 

「妾達も…力をお貸しします!」

アズレン組も…続く。

 

 

 

 

 

 

何も出来ない…他の艦娘達…はただ見るだけしか…

 

 

 

 

 

 

 

その時頭に声が響く。

 

 

 

 

––できますよ

 

 

心から願うのならば

怨嗟に負けないならば…

多少でも無理できるなら…

 

覚悟があるならッ!!

 

 

 

 

 

 

多少の無理?

精神への影響?

 

 

知らん!

 

 

後のことなんか知らない

今は…出来ることをやるんだ!もがくんだ!!

私達のこのバカはあの提督譲りなんだ

 

 

 

 

 

提督の馬鹿が伝染したんだ!!

 

 

 

 

 

皆が魂とのパスを繋ぐ

 

 

 

「ぬぁあっ!!」

苦痛…悲痛、憎しみ、悲しみ、怒り

それらが一気に流れてくる。

 

 

確かに力が溢れるけど……こんな…

 

よく金剛は…平気な顔を…

 

 

 

いや!そんなこと言ってる場合じゃない!!

 

 

 

 

 

 

 

 

念じる。

開け…

開け!!

届け!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バキッ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲートが……少し…ほんの少し開いた!!

 

 

 

 

 

 

 

あぁ…見える!見えるッ!!

裂け目から…見える!!

 

 

 

 

 

しかし、少ししか開いてないゲートは、また閉じようとする。

 

 

させるか!

 

させるもんか!!!!

 

 

金剛達はゲートをこじ開けようと手をかける。

 

「うおぁぁぁぁぁあッ!!!」

 

 

 

 

 

 

救は驚いた…

 

またゲートが現れたからだ。

しかも…金剛達がこじ開けようとしている。

 

またパスを繋いだからだというのはすぐに分かった。

 

「やめろ!お前達がもたない!!」

 

「それに…金剛!手が…手が!!」

 

救は言う。

 

金剛の手は今回の戦いでボロボロだった。

特に御蔵に踏まれまくったのだ…

 

いや…限界そのものだった。

 

 

皆も…同じように…

 

 

「俺だって……もう……」

出血も酷い…体も動かない。

救が弱気を吐こうとした時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うるせえええ!!!」

金剛が叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふざけんな!!!立て!クソ提督!クソダーリン!!絶対に皆から離れないと約束したデース!!」」

 

 

 

 

「こんなものおおおおおお!!」

 

 

 

 

 

バチバチと艤装が火花を散らす

体が悲鳴をあげる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから何だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人には散々死ぬな!諦めるな!と押し付けといて…ダーリンは守らないデスカーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ!我と…まだ一緒に戦ってもらわねば困る!まだ…諦めるな!!」

 

「汝の道は…まだ閉ざされていない。妾達が…絶対に」

 

 

長門や吹雪達が金剛の元へ向かい同じく手をかける

 

 

 

麗達は…涙を流しながら祈った。

 

 

 

 

 

 

 

そんなの

そんなの

 

 

納得できるか!

 

 

 

するもんか!!

 

 

「男なら…死んでも守りやがれデーース!黙って助けられろデース!」

 

 

バキバキと悲鳴をあげながら皆でゲートをこじ開けようとする。

 

 

 

そうだ

アンタ以外を提督かんて呼べるか!

 

 

例え生まれ変わっても提督が大好きだ!

 

 

更に何人もがゲートをこじ開けにやって来る。

 

 

ゲートが少し開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女達は弓を…札を…構える。

 

 

「これは…これだけは」

 

「「「「「「あの人だけはッ…何があったとしても」」」」」」

 

 

 

「「「「「絶対に譲れるものですか!!」」」」」

 

 

艦載機を飛ばす。

 

 

 

 

 

爆撃する為ではない。

 

 

門を潜った矢は艦載機へと変わる。

 

 

 

救を引っ掛けてこちらへ…寄せられないかと考えた。

 

 

 

引っかかる事はできるが…上手くいかない。

 

 

 

ほんの少しずつしか…寄らない。

 

 

撃つことは出来るのに…

 

 

何で……

 

 

あと少しなのにッ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時…頭の中に響く…

 

『諦めたっていいじゃない』

『間に合わない』

 

『死ぬ』

 

 

『生きたい、身体を寄越せ』

 

 

間に合わなかったら…

 

 

『ほら…閉じてるよ』

 

 

ゲートが閉じてしまったら…

 

 

 

彼が居なくなったら…

 

 

 

 

 

『もう…諦めろ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『たかだか…提督との思い出なんて…時間が解決してくれるって』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間が解決してくれる?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『諦めて…体クレヨ』

 

 

 

 

頭の中の…奴らが……

 

 

 

 

 

 

 

そう、復讐は終わった…だから

光り輝く彼女達を乗っ取ろうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

精神世界で…恨みの魂達へ放たれる光。

 

 

 

砲撃が負の感情を吹き飛ばす……

 

 

何か……輝く何かが彼女達を邪魔した。

 

 

『ナンダ…?!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『退きなさい…させないわ』

 

 

 

「キサマは!?!」

 

 

 

 

とある艦娘と…男だった。

 

 

その2人は…姉について帰ってきてずっと見ていた。

あの世界では彼女達を導いた…ある艦娘。

 

 

 

 

 

 

 

 

『阿賀野や…矢矧が諦める訳ないでしょう?』

 

 

 

 

『私の姉妹の…自慢の姉妹の仲間達の愛を舐めないで下さい!』

 

『そうだね!…さあ!行け!!…後輩達!!』

 

 

 

 

 

『……お前達モ…同ジ癖に邪魔ヲスルナ!!』

 

 

 

 

 

 

『一緒にしないで下さい!!』

 

『私達は…恨みだけでここに居ないの!!!』

 

 

能代は彼女達に向かって砲撃する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金剛達は目を見開いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間が…解決…?

 

 

 

そんな訳ないッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何年経とうと、何十年経とうと…時間なんぞに解決されるほどの愛じゃない!!

 

 

 

 

何年居ようと…何十年居ようと…生まれ変わろうとも…足りないッ!……それ以上に愛し続けられる程の愛だから!!

 

 

だから

 

私達はこの手を伸ばすのを…もがくのを何があっても諦めない!!

 

 

心の中がどんどんクリアになって行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ま…眩しい!!熱い!!』

 

それは金剛達の魂の輝き。

 

そして

 

頭の中の恨み辛みを吹き飛ばして行く能代の輝き

 

そして

 

彼女の横で負の魂達に向かう者達が居た。

 

それは…能代達と同じ。

 

誰かの為に沈んだ者達。

誰かの為に命を散らした……艦生を全うした者達。

 

 

誰かに希望を託して逝った者達。

 

 

 

恨みの中で…沈んだ者は…この世に禍をもたらす。

 

なら逆も然り。

 

そう…彼女達はまた、戻って来る。

大好きな世界の為に。

 

大好きな人が夢見た平和の為に!!

 

 

悲しみだけじゃない。

楽しかった事も幸せだった事もある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが

奇跡か必然か…

 

艦娘が御蔵の世界でなく…艦これの世界側に居るからこそ…

 

こちらの世界で…魂とのパスを繋いでいるからこそ…

 

 

 

 

 

鉄底海峡の決戦で

 

西波島鎮守府での夏で

 

西波島の近海での決戦で

 

遠征先で…

 

過去も何もかも…

 

 

 

 

数多くの艦娘達に出会ったからこそ…

 

 

 

彼女達の心の中に縁が生まれていたからこそ…

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

この世界に希望に満ちた魂が残されていたからこそ

 

 

 

海に眠った彼女達の魂は…必死にゲート(運命)をこじ開けようとする彼女達の声にもう一度目覚めたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

『行けーお前達ー!!!こんなもの!お前達なら超えて行けるとも!!!!!』

 

 

 

 

 

恨みが塗り潰されて行く。

 

思い出す。

 

幸せだった瞬間を…自分が…何故生まれたのかを

 

生まれた時に抱いていた気持ちを…。

 

 

 

 

 

 

 

『ね?言ったでしょう?』

 

 

 

 

 

 

 

 

マイナスの力は…正しい力に…変わる。

 

 

『頑張れ!!』

『諦めるな!!』

 

 

 

そしてそれは…

 

正しい力として…

更に艦娘に力を貸した。

 

 

 

 

 

 

「力が…溢れる!」

 

「頭の声が止んだ!!」

 

 

 

「能代……まったく……ありがとうね」

阿賀野はクスリと笑った。

 

 

 

 

能代は見る…泥臭く…それでも必死に今を生きる彼女達を…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの時…提督さんを認めた信濃さんや…艦である能代から託された力で

私は…西波島のメンバーを呼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

その時…

 

 

 

 

 

 

私はあなた達に聞きましたね?

 

 

 

 

ちょっと意地悪な言い方だったけど…

門を潜るか?……って

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

そうだ。

殆どの艦娘は答えた。

もちろん…行く!と。

 

 

 

そして…

間宮や伊良胡…大淀や明石達は答えた。

私達は皆が帰ってくる場所を守ります…。

きっと傷ついて帰ってくるから…お腹を空かせて帰ってくるから

用意して待っていますね?…と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから…私達はあなた達をあの世界へ呼んだの。

こんな…恨みの声であの子達が折れるわけないわ!!

 

 

 

「諦めるもんか!!!」

と、もがく彼女達を。

 

 

 

––そして能代は言う。

 

西波島の彼女達は言う。

 

 

 

 

 

––だから

 

「だから」

 

 

 

 

 

 

––あなた達の前にある

 

ゲートなんか!(こんなものなんか)

 

 

 

 

 

––そんな隔たりなんか

 

こんな障害なんか!!(こんなものなんか)

 

 

 

 

 

––あなた達の愛の前なら

 

こんな運命なんか!!!(こんなものなんか)

 

 

 

 

 

 

––ただの壁でしかないのだから

 

「例え…世界を越えようとも…この想いは…変わらないから!!」

 

 

 

 

 

––進みなさいッ!!

 

「乗り越えてやるッ!!」

 

 

 

––––超えて行きなさい!!

 

「ブッ壊してやるッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼に…手を伸ばした

 

 

 

「「「「ッだらぁぁああああ!!」」」」

 

「ばぁぁぁあにんぐ……らぁぁあぶ!!」

 

ゲートをこじ開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バキバキッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲートが開いたッ!!!

 

 

 

「行けッ金剛!!!!」

提督(バカ)の手を取ってこいッ!!!」

 

彼女達は金剛をゲートに再び押し戻した。

 

 

 

 

 

ゲートから金剛の体がこちら側へ

その体を猛金剛が持って…

その金剛を…皆が…

 

 

 

 

 

「だぁぁありん!!!」

 

 

目の前に…来た。

彼女が…俺に手を伸ばしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダーリン…。

最初は…ダーリンが私に手を伸ばしてくれたんデス。

だから……

私が…あなたが暗闇に居るなら…絶対に引き摺り出してやりマース!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は……

お前達の居ない明日なんか考えたくない。

 

だから生きていてほしい。

 

 

 

 

 

ただ、こう言う時に、自分が勘定に入ってなかった。

 

 

 

 

 

 

 

それは彼女達も同じ思いだった。

 

 

 

 

 

 

 

救の居ない明日なんか要らない!!

 

だから今日を必死に生きるんだ。

明日の為に!明日もあなたと笑って泣いて生きる為に!!

 

 

 

提督…お前が言ったんだ!!

諦めるなと!!

 

 

 

 

 

 

「…だから…諦めんなよ!!ダーリンが諦めたら…自分が…自分を…今まで諦めなかった皆を否定することになるネー!!!!」

ボロボロと涙を流しながらありったけを叫ぶ金剛。

 

 

 

「私達だって!!ダーリンの犠牲の上の平和なんか欲しくない!!」

金剛が言う。

 

「あなたの居ない明日なんか要らない」

加賀や日向達が

 

「指揮官様の居ない世界なんか要らない」

桜赤城やアークロイヤル達が。

 

「提督の居ない鎮守府なんか…嫌だ」

電や雷達が

 

「あなたじゃない提督は…提督じゃない」

川内や吹雪達が

 

「この愛を捧げるのは…あなただけなの」

鳳翔や明石達が

 

「この温もりを知ったなら…」

桜信濃と桜三笠が

 

「隣に居るのが」

大鳳や隼鷹達が

 

「ウチらを怒ってくれるのが」

龍驤やシオイ達が

 

「私達を受け止めてくれるのも」

大鯨や島風達が

 

「この手を握ってくれるのが」

龍田や天龍達が

 

「愛を伝えてくれるのが」

扶桑や伊勢達が

 

「頭を撫でてくれるのが」

霞や曙達が

 

「一緒にご飯を食べるのが」

赤城や初月達が

 

「一緒にデートするのが」

浜風や浦風が

 

「一緒に朝を迎えるのが」

矢矧や阿賀野達が

 

「一緒に1日を終えるのも」

由良や鬼怒が

 

「一緒に笑うのが」

大和や長門が

 

「一緒に悪戯するのも」

夕張や睦月達が

 

「何かを祝うのも…」

明石や陸奥達が

 

「一緒に泣くのだって」

ゴーヤやイク達が

 

「一緒に平和の為に戦うのが」

迅鯨や姫ちゃん達が

 

「一緒に味わう勝利の喜びも」

あきつ丸や大淀達が

 

「一緒に味わう敗北の苦い味さえ」

麗や猛金剛達が

 

「一緒に平和になった世界を過ごすのが」

間宮や伊良胡が

 

 

 

 

 

 

「この命も全てを捧げるのは…」

 

 

 

 

 

 

あなたじゃないと…あなたしかダメなの!!

 

 

 

 

例えゲートに世界を隔てられても(例えどんなに世界を越えようとも)

彼女達の想いは…

 

 

真っ直ぐに…

誠実に…

愚直に…

はっきりと

 

 

涙すら堪えず

嗚咽を伴おうとも…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから諦めない!!

 

私達は手を伸ばす事を(あなたと生きる事を)諦めない(止めはしない)!!!

 

 

同じだったのだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆ダーリンを愛してるから………ダーリンも約束守って…居てくれるなら…愛してるならッ…手を伸ばして…please take my hand!ダーーーーリイイイイィィン!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

愛してるとも…

 

 

 

……愛してるさ!!!!

 

どんな言葉を並べても……伝えられないくらいに!!!

 

 

 

腹を押さえながら

手を伸ばす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…彼女達の(諦めない心)は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の手に温かさが伝わる。

 

この温かさ…

 

掴んだッ!!

 

 

 

 

 

 

 

今度も…離さない

何があっても…絶対に離さない!!

 

 

 

「引け!離すな!!後の奴は踏ん張れ!!!」

 

 

 

 

「無茶…するなあ…」

 

引っ張られながら彼は言う。

 

 

「食らいついたら離さないって…言ったよネー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パァン!!

 

「バカヤロォーー!!」

 

ビンタだった。

 

 

 

初めて…

 

 

彼女は震えながら俺に…

 

 

 

 

「生きてて…良かった…」

 

 

 

 

目の前にいるのは

そんな……俺の艦娘達。

 

 

初めはゲームだった。

スマホの向こうの彼女達の事すら知らなかった。

 

それはある時、それは俺の現実になり…

生きる事も、死ぬ事も、喜びも悲しみも全てを共にする事になった。

 

 

そう

目の前に居る皆は…

現実なのだ。

 

 

 

触れられる

想いあえる…現実なのだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまん…」

 

 

怪我をしている腹よりも

打たれた頬よりも…

 

 

 

胸の奥が痛んだ。

 

 

 

 

 

生きている…

 

 

 

生かされている。

 

 

 

 

 

それが…

 

 

 

 

 

こんなにも嬉しいなんて。

 

 

 

 

 

待っててくれる人が居ることが

愛されることが

 

 

こんなにも…幸せだなんて

 

 

 

 

 

ぽろぽろと涙が流れ落ちる。

 

 

 

 

 

 

ギュッ…

 

皆が駆け寄ってくる。

 

 

 

 

 

…うわぁぁぁあ!!!

良かった…良かったぁぁあ

 

 

 

 

 

皆で泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それを見つめるのは…京極や……

 

彼女達に力を貸した者達。

 

 

 

「良かった…」

 

 

 

『……良いですね。本当に…あの人達は…』

 

 

『そうだね。…本当に美しい愛なんだね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『沈んだ娘達の尊厳を守る…為……か』

『彼等は明日ばかり追いかけてると思ってたのに…過去すら…追い求めてるんだね』

 

『知らず知らずのうちに…私達も救われていたんですね』

 

『本当に…不思議な人…』

 

『惚れた?』

 

『私はあなた一筋ですから!』

 

 

 

 

ある者が傷つく仲間を超えて行くなら

 

 

救達は…その仲間の肩を抱いて共に進もうとする。

 

 

 

ある者が仲間の屍を超えて行くなら

 

 

救達は…手を合わせ…彼等の意志を継いで進むだろう。

 

 

 

 

想いは世界を越えた。

 

 

「治療準備!!」

 

「はいー!!」

 

 

 

 

 

 

 




アニメなら最終回のノリ…だよね。
伏線もどきを回収しまくるシリアスパート


以前のアンケートはここに繋がる訳ですね。

シナリオ分岐的にはAルート。
B、C、Dまで用意してました。





タイトルの
例え世界を越えようとも…その想いは



とは、多方面の思いがあります。


御蔵の過去への思い
艦の魂を取り戻すため世界を越える救の思い
麗の救に対する思い
深海化したヤマトやムサシ達…艦の思い
力を貸し、信濃を呼んだ信濃達の思い
彼女を助けようとする救の思い 
救を助けたいと思った艦娘の思い

シナリオ進行に応じて対象とする人物が変わるようにしたつもりでした





というわけで後少しで終わります!
あと…もう少しだけお付き合いくださいませ!

連載がでは無いですよ!
大パートが終わる予定です!



感想等お待ちしてます(๑╹ω╹๑ )!
お気軽にお願いします!



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169話 例え世界を越えようとも…この想いは ⑥ その後のお話

ある程度の治療を終えた俺は大本営に居る。

 

 

大本営の大淀が目の前に居る。

 

「……そうですか…」

 

「大淀は知っていたんだろう?」

 

「……」

「こちらを…」

 

「??何これ」

大淀からノートを受け取る。   

「何故俺に?」

 

「…閣下は、この計画は…よっぽどの事が無い限りは成功すると仰られておりました。…ただ」

 

 

「ただ?」

 

 

 

 

 

「神崎がイレギュラーになるだろうと…この計画を止めるなら…それはきっと彼だろう…と」

 

 

 

手記をペラペラと見る。

 

何故、彼がそうなるに至ったか。

何回ものやり直しをやったか。

 

それをツラツラと書いてあった。

 

 

そして…

 

この手記を私以外に見るとしたら…神崎、君だろう?

私は…成功したか?それとも…ダメだったか?

まあ…どちらにせよ…だ。

 

 

私は…私のやるべき事を貫いたのだ。

 

 

とある。

 

 

結果としては……

報われることは無かった。

待っているのは…悲しい結末だった。

悪役としての役割を果たした…けれども…。

 

 

 

あとは白紙だ。

 

 

 

 

ん?

最後の方に…栞…?これは?

 

 

 

 

神崎。

君は知りたいのだろう?

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

それを教えることは出来ないが…て

ひとつだけ…これに辿り着いたご褒美に一言だけ教えよう。

 

 

 

 

 

 

 

「カミは…実在する…?」

 

 

「………」

 

 

 

「カミ…かあ」

パタン…と手記を閉じる。

 

.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……あの後は色々と大変だった。

 

なんせ海軍元帥が突然の失踪。

御蔵の手記からではあるが、魂を使った世界を変える旨の内容も見つかり…内々ではあるが処理された。

 

 

 

「…閣下は広義的には……失踪という形になりました…」

 

大淀は少し暗い口調でそう言う。

 

「…まあ…そうなるよねえ」

 

「私も…まあ完全に無関係というわけじゃ無いので…処罰は受けます…解体されると思います」

 

「その必要は無いと思うけど…」

 

「何故?」

 

「その重さが分かってるなら…生きて背負うしかないよ」

「死んだら…そこで終わりだし…艦娘である君にしか出来ないこともあると思う」

 

「………例えば?」

 

「同じ悲劇を繰り返さない事とか」

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰り際の事だった。

 

 

「あの」

大淀が話しかけてきた。

 

「閣下の世界は…どうなりましたか?」

 

 

 

 

 

「分からない…」

 

 

 

あの世界はどうなったのか…

 

もうそれを知る術はないけれども…。

 

御蔵の進む方向が間違わないように祈るしか無い。

 

 

「ただ…もう、悲しいことにはならないとは思う」

 

 

大淀は俺たちの姿が見えなくなるまで頭を下げて居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ…金剛…?」

 

 

「……」

 

 

「機嫌なおしてくれないかなあ…?」

 

「………つーん」

「…ダーリンなんか…知りません」

 

 

 

アレからずっとこんな感じ…。

「……そか」

「………」

俺は黙った。

 

 

 

 

「……」

「ちょっと!ダーリン!?そこはモット来るところでショー!!??」

 

 

「ええ……」

 

 

 

 

「……ダーリン……死ぬなら…どうしても死ぬなら……私も一緒に逝きたいんデス…」

 

「金剛…?」

 

「私達に…諦めるな、生きろと押し付けるなら…ダーリンも諦めないで…生きて欲しいデース」

 

「ごめん…」

 

 

 

 

ぎゅう…と金剛が抱き着いて来る。

 

 

「こ、金剛…?」

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金剛はさめざめと泣いている。

「この温もりデース…この心臓の音デース…この匂い…にこの手触りに…」

「ああ……ダーリンが生きてマス……良かった…」

 

「……うん…ごめんね」

 

金剛の頭を…愛おしそうに撫でる。

 

 

「……キスしてくれないと…許さない」

 

「キスでいいの?」

 

「…その先は…平和になってから……ネ」

 

 

 

 

でな事があった後にね?

 

 

「……」

 

「じーー」

 

「は…榛名…?」

 

「じーーーーっ…ダーリンサン…」

 

「…何で榛名には何も言ってくれないんですか!?榛名は…榛名は悲しいです!!あの時にダーリンは榛名の名前を呼んでくれましたよね!?

榛名はとっても嬉しかったです!!なのに、なのに!!ダーリンは金剛お姉様をこっちに押して榛名に預けただけでしたよね!なーーんで榛名にそんな役を押し付けたのですか!!!ダーリンは向こう側にのこっちゃいますし…金剛お姉様は泣きじゃくりますし戻ろうとするから抑えるのに……気まずいですし……本当に悲しかったんですよおおお!!」

 

「ご、ごめん」

.

「榛名は、大丈夫じゃないですううう」

 

 

「…榛名はハグとキスを所望します!!」

「所望します!!!」

 

その後30分拘束された…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の残した手記を見ながら思う。

 

 

艦隊計画に関しては…ある程度の解決ができただろう。

代わりに他の謎が…出来たけど。

 

 

後味は良くない…ものだったけど…

それでも進むしか無い。

 

 

艦や艦娘達に本当に助けられたと思う。

彼女達には感謝しても仕切れない。

 

 

 

もちろん、彼女達の魂は最大限労いながら世界に還って貰った。

 

 

「ありがとう…」

 

「また…会えるならば…一緒に戦えるならば…」

「俺は待っているから」

 

「私も…私達も…待ってマス」

 

 

 

髪飾りから…

海へと還る魂は…

笑いかけてくれた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1人では何も出来ないが…ウチのメンバーなら…何でも超えて行けそうな気がする。

 

 

 

これが…目指す平和の為の一歩なのかは…未来が教えてくれるから…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………でね?

 

「阿賀野〜?矢矧〜?」

「もっと積極的にアプローチしないと!!」

 

 

 

「……何で…帰ったんじゃなかったの?!」

「あの感動を返してよ!!」

 

 

「えへへ…」

 

「先輩もいるんだよねえ?」

 

「いるともー!」

 

「親父さん…も、あの時の気持ち返せ!って言うと思う」

 

 

 

何故か能代が阿賀野の中に移ったそうだ…

 

 

 

また騒がしい日常が戻ってくる…。

 




お付き合い頂きありがとうございました!

ここまでは
投稿開始からある程度大筋が出来てました!
書きたい事を書けたので…
拙い小説でしたが、皆様のおかげで続けられました!
本当にありがとうございました!
第一部…としましょうか!

第二部っても
まあ…そんなに変わんないんですけどね!

大筋も出来ては居るのですが…
ネタ考案等があるので…まあ
投稿ペースは落ちるかも…ですが
変わらず見守っていただけたらと思います!

感想等お待ちしております!
ぜひぜひ!頂けると嬉しいです!(๑╹ω╹๑ )!本当に!







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1部 2章 鏡の海と想いの航路を行く者達
170話 アズールレーン


「おはよう御座います、提督」

 

 

「おはよう…大淀」

 

 

「お、おはようございます!!ご主人様」

 

「おはよう…ベルファスト。どした?寝不足か?」

 

「いえ…」

 

「お、おはようございます!指揮官!」

 

「お?早いね桜赤城に、桜隼鷹に桜大鳳…てかどしたの?」

 

いやあ…と固くなる3人

どしたのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう、指揮官」

 

 

「ん…ああ」

「おはよう…………()()()()()

 

 

 

「あ……」

自分で返事して思い出した…

彼女達の存在を…。

 

「うむ!重桜艦隊旗艦・前弩級戦艦三笠、過ぎた栄光を再び手にするまで、勇往邁進を止めぬ為にやって来た!!と言うか!忘れていただろう!?」

 

 

「妾も居ます…お忘れとは…悲しい」

 

 

「……ごめん(๑╹ω╹๑ )…」

 

 

 

 

 

 

「…てか、帰ったんじゃなかったの?」

 

「…ずっと居るが?」

 

「え?皆知ってたの?大淀」

 

 

 

 

「はい、先の作戦の後からずっと居られますよ」

 

 

「まじか…バタバタしててスルーしてた…すまん」

 

 

戦艦三笠

 

明治時代に活躍した超先輩

露国との戦では旗艦を務めた…今なお軍神として知られる。

 

 

空母信濃

大和型三番艦として建造されたかの空母。

 

 

 

 

見ろよ!

重桜組が廊下に立たされた生徒みたいに直立不動だ!

 

 

まあ…重桜の中でも大物だもんなあ…そーなるよねえ…

 

 

 

 

 

「ヘーイ…ダーリン!!」

 

都合良く来てくれた金剛。

 

 

「…誰デース??」

 

 

 

「む?我は戦艦三笠だ」

 

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

「三笠!?!?!?really!?!?」

 

「あ、あぁ…」

 

「英国の大先輩ネー!!!」

 

 

「?」

桜三笠が不思議そうな顔をする

 

「戦艦の金剛もヴィッカース社で生まれたんだ」

 

 

「なんと!!ここに来て後輩ができたか!!会えて嬉しいぞ!!」

 

2人は話に華を咲かせている。

 

 

 

「やはり…信濃なのですね」

 

「…別世界の…信濃…か」

 

 

「はい、妾は…別世界の信濃のKAN_SENです。ですが…世界は違えども…信濃の名前を持つ事に変わりはありませぬ。宜しければ…お姉様達の下で…お役に立ちたく存じます」

 

「…せっかく大和型が揃ったんだ!!これからは心強いぞ!なあ!相棒よ!」

 

 

「そうだな…力を貸してもらえるなら…ありがたい」

 

 

 

 

 

さて…

 

 

 

アズールレーン組が揃っている時に話せる事を話そうと思う。

 

先の作戦……

作戦?違うな

先の戦いでは…御蔵のじーさんが艦の魂を使った事が発端だった。

 

ならば…

 

 

 

その技術は誰が与えたのか…?

 

 

 

「……」

 

 

 

じーさんの手記の中に「カミは実在する」とだけ有った。

 

まあ…じーさんにしたら…俺も神そのものと捉えると思ったのだろう。

 

 

 

だが…

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

姿なく介入し…

技術を与え…

崩壊する様や新たな可能性を見る

カミと呼ばれる存在…

 

 

 

 

 

「神…ですか?」

大和が言う。

 

「ああ…」

 

 

 

「し、指揮官様…まさか」

 

 

そう…

 

 

 

「……今回の…元凶となる敵は……俺の予想が正しければ…セイレーンだろうな。」

 

 

 

「「「……」」」

アズレン組が黙る。

 

 

 

セイレーン

 

アズールレーンの世界では世界の7割が海という中で…人類から約9割の海を奪い、陸地へと追いやった侵略者達。

 

その戦いの中で

 

唯一対抗できたのは…メンタルキューブから生まれた桜赤城達…KAN_SENと呼ばれる存在。

 

セイレーンに対抗する為に各国は連合を組む。

ユニオン ロイヤル 鉄血 重桜 という陣営が対セイレーンの為に組んだ軍事同盟がアズールレーンである。

彼女達の戦いによって…人類圏からの追いやりには成功した。

 

 

 

 

ただ、今はその後の在り方について意見が割れ、鉄血及び重桜はアズールレーンから離脱。

レッドアクシズを旗揚げし、セイレーン、アズールレーンと交戦を続けている…。

 

 

セイレーンを倒す事を目標にしているのはどの陣営も同じであるが…。

 

 

 

 

故に…本来なら…ベルファスト、エンタープライズと桜赤城達は対立関係にある。

本来なら…というのにはまた意味があるが…それは後ほどに。

 

 

 

 

そして…

レッドアクシズはセイレーンの力や技術を取り入れており、とりわけ重桜の中ではカミと呼ばれていたりする。

まあ…その技術もセイレーンが流入させたとされているが…

 

 

 

故に…セイレーンの目的や、介入の理由ははっきりとはわかっていない。

 

ただ…

 

俺が恐れているのは…

 

彼女達の対立、俺達との対立だ。

 

 

 

 

ましてや相手がセイレーンとなれば…

確実にこちらの内部分裂を起こす為に動いてくるだろう。

 

鉄血達が離反したのはセイレーンの介入によるものでもある。

 

 

 

 

 

 

「私達は…指揮官様の味方ですわ?」

 

「あ…桜赤城!?」

 

 

「なるほど…カミ…技術…確かにセイレーンが手を出してそうですわね」

 

「指揮官様はご心配なのでしょう?私達が……敵対する事になるのでは…?と」

 

「いや、戦いにくいのではないか…と」

 

 

「……指揮官様?」

「私達は…指揮官様に忠を尽くします。それが例え…今の敵同士で手を組むことになろうとも…神を相手にする事になろうとも…例え…世界を敵に回す自分を相手にしようとも…この愛も何もかも全ては貴方様に…」

 

「例え…信濃様や三笠大先輩に咎められようと…私は」

 

 

「妾達は反対しませんよ?」

 

「信濃様!?」

 

「…やっとお会いできたのですから。それに…セイレーンは確実に汝に目を付けているでしょう…皆で守らないと…。」

 

 

「……ありがとうございます」

 

 

「そして……ベルファスト、エンタープライズ」

「同じ指揮官の下で指揮を受ける身として…互いに協力しましょう」

 

「…私達はご主人様のKAN_SENでございます。ご主人様の敵でない限り…私達は敵対する事はございません」

 

 

 

 

アズールレーンの世界でも奴らを全て排除することは…できなかたったそうだ。

どこからともなく現れる奴らに対応するしかないのがあの世界の現状だとすれば…

この世界でも…完全に撤退させるのは現状不可能だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おいおいにその作戦を立てるとして…

今は…皆に休んでもらわねば…

 

 

 

奴らの目的がわからない以上

そして接触方法がわからない以上…

周知して注意喚起するしかない。

 

 

 

 

そして

 

 

 

 

 

そんな事より間宮でパフェ食おうぜ!!

 

 

 

 

 

 

そんな流れになって俺の財布は氷河期を迎えそうだ。

 

 

 

 

カミがスッとやって来てお金を……くれないよねえ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キャラの棲み分けの為に

桜赤城や赤城と表記分けしておりますが…

呼び方としては 同じく あかぎ と呼んでる…と言う事でお願いします(๑╹ω╹๑ )!今更ですけどね

 

 

 

 

 

 

 

艦こレーンのタグの通り…

2部からはアズールレーンの敵対組織が物語に関わってきますが…

 

未だに設定的にも明かされていない謎が多いので

アズールレーン本編とは食い違い等も多く出てくると思います。

ストーリー上は…結構オリジナルな要素を多く含むと思います。

所謂…自分に都合のいいところを選んで使う所もあると思います。

 

アズールレーンを知らない方も居られるとは思いますので置いてきぼりにならないストーリー展開を目指しますのでよろしくお願いします。

 

 

 

 

 

 




第二部…スタートという事で
お気に入りも550とね…ありがとうございます(´;ω;`)
本当にありがとうございます!


タイトルのない導入ですとか
主人公が死にかけるとか
シリアスからのシリアス続きで本当は終わるんじゃないの?的な心配メッセージを頂きましたが、私は元気です。

タイトルのない164話は本当にビビったという声も少し頂きまして…
ちょっとした不気味さ、怖さ演出になれば…と思っていました。






大筋はできています。
ただ…肉付けなり、独自解釈の設定等は完全ではないので…
わかりやすさとか…ストーリーへの親しみやすさとか重視したいので


伏線になりきってないかも知れない伏線も有ります!
これからも出すかも知れません。




あと多分…殴り合いはあんまり変わらないかと…
さーせん…。





ストーリーのネタバレ等は出来ませんが…
色々とお話をメッセージで送ってきて頂けるのも嬉しいです、ありがとうございます!

評価や感想コメントもとても嬉しいです。

いつでもお待ちしておりますので…ぜひ!ぜひ!お気軽にお願いします!


少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。


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171話 明石と夕張の工廠話 ① 友達

久しぶり?の
まともな日常回!!

うん
多分まとも…


「おいーっす!差っし入れだよー!」

と、ドーナツを工廠に持ってくるのは鈴谷だ。

 

彼女は時たま差し入れを持って工廠に遊びにくる。

 

 

「あぁ…鈴谷ね?ありがとう!。私は自分の才能が恐ろしい…!!」

 

「何がー?」

 

「すんごい発明ですよー」

 

「ふーーん?てかてか!ドーナツ食べよ?新作出てたんだ〜」

 

 

「はい!手を洗ってきますね!」

 

 

 

脳を使った後の甘いものは美味しいですよねえ〜。

なんて言いながら食べる。

 

「いつも、ありがとうね?鈴谷」

 

「いいのよー!友達でしょーー?」

 

 

 

 

 

「そいや、前は執務室によく持って行ってましたよね?鈴谷さんは」

と、夕張が言う。

 

「まあねえ…今はほら、お客さんが多いしね」

 

「そうですか…」

 

 

 

「あ、この新作美味しい」

 

「でしょでしょ!?良かったー!気に入ってくれて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご馳走様でした、いつもありがとうね!鈴谷」

 

「良いのよ。友達と食べるお菓子は格別だよ!…というか変なものばかり作ってちゃダメだよー?提督さんに怒られるよ?明石も夕張も」

 

「はーい!」

 

 

「じゃ…行くね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とは、言ったものの……さあ、夕張!試しましょ…う!…!!(提督だけを)子供にする薬ッ」

 

「ええ、明石さん!早速…提督にィ」

 

 

「飲むわけねえだろう…」 ジョボジョボ

 

 

「のォォォォオオオオオう!!!」

崩れ落ちる明石エンド夕張。

 

「研究の成果を…どないしてくれるんですか!?おおぅ?」

 

誰やねんお前は…

 

 

「私達はですねえ!提督の小さい頃の姿と修羅場が見たかったんですよおおん!?」

 

悪意80%じゃねえか!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全く…と言いながら救は帰って行く。

 

最近の危機管理能力は高いらしい。

 

 

 

 

 

だが…諦めませんよ…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日…。

 

 

 

 

 

 

ふぁあ…

 

ん……

 

 

あれ?

 

 

 

 

こんなに服大きかったっけ?

 

 

 

 

 

ん?

 

 

ん?

 

 

 

 

 

 

 

お?

おおおおおお!?

 

 

 

 

 

 

 

「ちっくしょおおおおお!!!!」

「あんのクソバカ共めぇえええええ!!!」

 

 

 

 

 

野郎…昨日のデザートに入れやがったなぁああああ!!

 

 

私室のドアを蹴り開けて走る

目標は工廠…

馬鹿共に天誅を……ッ!!

 

 

 

 

 

 

「野郎…ぶっ殺してや……」

ぼふっ!!!

 

 

「?」

 

 

「ご、ごめん」

誰かにぶつかったようだ…。

 

 

「はい、榛名は…大丈夫で………」

「きゃわいいいいいいいい!」

 

「ダーリンそっくりです〜!……はっ!!この子はきっと天からの授かりものです!」

 

榛名?

 

 

「……てことは…ダーリンと榛名の…子供?」

 

 

「ちょ…榛名…?」

 

「確かによく見れば…私に似てるところもあるかも知れません…」

「はーーい!お母さんですよー!」むぎゅーー!!

 

 

 

あ…

提督が抱き締められてますねえ…

あの胸ですからねえ…窒息しますよねえ

ほら…足ばたつかせて……あっ…だらんってなったww

 

とゲラゲラ笑う明石達。

別室からモニターで閲覧中。

 

 

 

 

 

 

 

あ!!

隙をついて逃げましたよ!!

 

 

 

「榛名め…アイツやべえ奴認定しなきゃいけねえや…」

 

 

ドン!!

 

「うわっ!!」

 

「きゃっ…危ないわね…!」

「…って…ん?誰?この子…」

 

 

 

その様子をカメラで見る馬鹿2人。

ああっ!アレは…今時JKと噂の鈴谷さん!

これはアレですね…完全に犯罪臭のする絵面ですね!

薄いのが厚くなる奴ですね!

 

 

 

「まあ…かわいいわあ!僕は?だあれ?どこから来たの?……どこかで見たことあるよーな…?」

 

 

「む?鈴谷よ…何を……って誰だ?その子は」

 

 

 

 

 

ロリには男は含まれないぞおお!?

いや、長門さんなら…今の提督も十分範囲内か!?

 

 

 

「ヘーイ!ダーリンセンサーに反応してやってき……」

「誰その子!?」

 

 

 

おーおー集まってきますねえ〜

コレは…修羅場の予感……♡

 

 

 

 

 

じりじりと追い詰められる俺。

まあそうだよね?得体の知れない子供が…孤島の鎮守府にいきなりいたらねえ…。

 

 

「待ってくれ!俺だ!お前らの…「あーー!こんな所にいたんですねえ!」

 

 

 

うひょおう!!

榛名(やべえ奴)のエントリーだッ!!

キターーーーー!(゚∀゚)

明石達はその展開にスタンディングオーベーション!!

 

 

 

「うわぁぁあ…嫌な予感しかしない!!」

 

「だから俺h…むぐっ!?」

榛名に抱き抱えられる形で口を押さえられる。

 

 

 

 

 

こ…コイツ気付いてやがるな!?!?

榛名!!!絶対わかってるだろ?

 

 

 

 

 

榛名はこちらにニコリと笑いかけた。

任せてください♡

 

よしよし…と頭を撫でる榛名。

 

 

 

…榛名!お前………ありがとう…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…で?榛名?誰なんデス?その子は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい!この子は…ダーリンさん」

 

おおお!榛名ぁぁ!

お前…って奴は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………と、榛名との愛の結晶です♡」

 

 

 

 

 

 

 

は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「は?」」」

 

は?

 

 

そして…めっちゃ悪魔みたいな笑みを俺だけに向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そーですよ?

わかってますよ?ダーリンさんだってことはァ…。

でもですね?これもダーリンさんが悪いんですよ?

私だって…指輪もらってるのに…なかなか影の薄いグループですし…主役とか張らせて貰ってないですし……

なんかいつのまにかヤベーヤツ認定されてますし…

 

なので…今日は私が…ウフフ…うふふふふふふ

名前も考えてあるんですよお?

はるなとまもる…で…はるま君です…

よく出来てるでしょう?

 

 

 

 

 

 

「「「はぁぁああ!?」」」

 

 

 

 

 

「ち、ちょっと!そんな嘘が…」

 

「本当です!見てくださいこの目元…そっくりじゃないですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「榛名ー?!どういう事デース?!」

 

榛名の頬を両手でつねる金剛。

 

「い…いひゃいれひゅ」

 

榛名も負けじとやり返す!

 

 

「ひゃ…ひゃりゅにゃーーー!」

 

 

 

 

「フーッ!フー!…榛名ァ…こーなったら戦争しかないデース」

 

「夫婦の平和は脅かせません!」

 

 

勃発する姉妹戦争

茫然と立ち尽くす長門

 

 

 

 

 

 

 

 

「危ないから行きましょ?」

 

と手を引いてくれる鈴谷。

 

 

……大変な事になりましたwwww

 

 

 

……「あんたさ…誰だかわかんないけど…榛名さんの子じゃ無いんでしょ?」

 

「違う!!だから俺…」

 

「良かった…」

「そっくりだったからねえ…」

 

 

「へ?」

 

 

「私ね?提督さんの事…ずっと前から大好きなんだ…」

「秘書艦の時とかね?あっ!秘書艦ってのはね?提督さんのお手伝い係って言ったらわかるかなあ?」

 

 

鈴谷がここまでよく喋るのは珍しい気がする…

 

 

「よくね?仕事の後…間宮さんのところに2人でスイーツ食べに行ったんだよ?私はね…それがずーーっとの楽しみだったんだ」

 

「でもねえ…メイドとか現れてさあ…。あ!別に嫌いとかじゃないんだよ?皆の事も好きなんだけど…提督さんとの時間とか…お茶タイムとか…2人でパフェ食べたりする時間が減って…少し寂しいんだあ…」

 

 

 

 

 

 

 

鈴谷さん…

だから…お客さんが多いって言ってたんだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私ってね?こんなんだから…メイドとか似合わないし…」

 

「年に一回ね?提督さんがお願いを聞いてくれる日があるの!君達で言う…誕生日かなあ?それも結構先なんだあ…」

 

 

 

鈴谷はハツラツとした女子だ。JKだ。

軽い軽いと言われることもあるが…超真面目な部類に入る奴だ。

 

 

 

「何でかな…誰にも言わないでね?何でか君には言えちゃうんだ」

 

 

「あは…アレ?何でだろ?あはは…目にゴミが…」

 

 

「鈴谷…」

 

 

鈴谷は涙を拭い…ニコリと笑う

 

「こらー!年上のお姉さんを呼び捨てしたらダメなんだぞ〜?」

 

と頬を両手で優しくつねる。

 

 

………鈴谷さんなら…この子は提督だってわかっててやる小悪魔的なキャラじゃないんですか?って思ってましたけど…

 

……ガチな奴ですねえ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……明石さん?

…ええ…夕張さん……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…てか何で私の名前……」

 

 

 

ボン…!!

 

 

 

 

「「「「あっ」」」」

 

 

 

なんと…救の姿は元に戻ったのだった。

 

 

 

 

あ…

ほとんど捨てられたから…摂取した量が少ないから…

数時間で戻ってしまったーー!(棒)

 

 

 

「え?…あ…え?!」

 

「……」

 

 

そこにやってくる金剛(バーサーカー)

「ダーリン…?」

 

「何で裸なんですかーーー!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そして…あの子は本当に榛名とのベイビーですカー?」

 

 

 

 

 

 

 

その後ろには…青ざめた榛名達が横たわっていた。

というか金剛が引きずってきてた。

長門?巻き込まれたんだろ?

 

 

 

 

逃げるしかねえ!!!

 

「話はまだ終わってないdeath!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後の事?

 

 

 

軽くホラーだったよ!!

榛名に誤解を解かせるのに苦労しました…。

 

 

鈴谷は顔を赤らめて

わかった…とだけ言った

 

 

 

 

 

 

 




……1発目は鈴谷!
ちょっぴり切ない感じの…鈴谷回


金剛?
5人がかりで何とか抑えたらしいよ!!


少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!

続きます!



感想等お待ちしています(๑╹ω╹๑ )お気軽によろしくお願いします!


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172話 明石と夕張の工廠話 ② だってそれが…

つ…続き…です


今日は久しぶりの…秘書艦…

昨日の事があるから…少し恥ずかしいけど…頑張れ鈴谷!負けるな鈴谷!!

 

「お…おはようございます…提督」

 

「おはよう」

 

「おはようございます」

大淀が言う。

 

「おはようございます、鈴谷様」

ベルファストが言う。

 

「おはよう…」

 

 

「さて今日は何からやるの?」

と、提督の隣の秘書艦席に座ろうとした時だった。

 

 

 

「鈴谷様?お願いがございます」

ベルファストが言う。

 

 

「え?何?」

 

「街のショップに…備品のお紅茶が手違いで届いてしまったようなので…取りに行って頂けませんか?」

 

「え……?」

 

…久しぶりの秘書艦の時間なのにまた提督さんとの時間が減るじゃない………うう…

 

……

「わかったわ、行ってくるね?」

 

 

店の場所を聞き私は準備して向かう。

お昼のランチは…間に合わないかも…下手したら…お茶会も…

 

 

 

 

港で船を待つ。

 

「…ちぇっ……寂しいなあ」

鈴谷はポツリといった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて…ご主人様?…街へ女性1人で行かせるのは…やや不安が残ります」

 

 

「ベルファスト…?」

 

「これは仕事でございます!早く行ってくださいませ」

 

「え?」

 

「くれぐれも…寄り道などしないように…誘惑も多いので見守り役としてお願いします」

 

「ここはお任せください!鈴谷さんが迷子になったりお店を間違えたら大変です」

と、大淀も言う。

 

「わ、わかった!任せたぞ?」

 

 

???と救は思いながら鈴谷を追いかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鈴谷ー!」

 

「え?」

 

提督さんだ。

忘れ物かな?それとも…

おつかいの追加?

 

「て…提督さん?!見送り?」

追加の仕事だけは勘弁して!

寂しすぎるよぉ…。

 

 

「いや、俺も行くよ」

 

 

「え?」

どう言う事?!

 

「そりゃ…嬉しいけど」

ううん!とても嬉しい…。

 

 

「…よし、決まり!」

 

「え…あの、えと…仕事はいいの?」

 

「ん?ああ…ベルファストが心配だから行けって…皆優秀だしね」

 

「…何かあったの?」

 

「いーや?仕事だから寄り道するなよーーだってさ」

「ただ…確かに昨日…鈴谷の話を聞いて申し訳ないとは思った。ごめんな…鈴谷がそんな思いをしてるとは思わなかったから」

 

「…同情…?」

 

「…心が痛んだかなあ…」

「だから今からプチデートだ!」

 

 

ぎゅっと手を繋いでくれた。

 

「あ……」

 

 

 

 

 

「久しぶりに2人きりだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

久しぶりに2人で過ごす…。

 

船を待つ時間も…船の上も…

1人で買い物に行く時みたいに退屈じゃ無い。

 

だって…

隣にあなたがいるから。

 

初めて2人で外にデート…。

ちょっとズルイかもだけど……たまには良いよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ…お2人とも…みっちり働いてもらいますよ?」

 

「「はい!」」

 

ベルファストの目の前には…

救達と入れ替わりに入ってきた明石と夕張の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昨日の夜のことだった。

 

『…コレは一体?何でございますか?明石様、夕張様』

 

 

目の前には土下座の姿勢の二人組

何か企んでるか…もしくは何かやらかしたか?

 

 

 

しかし…彼女達が発した言葉は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『どんな仕事でもやります!』

『なので…どんな理由でも良いです!!』

 

『『鈴谷に…提督との2人の時間をあげてください』』

 

 

『何故でございますか?』

 

『理由は聞かないでください』

だって…あなた達が負い目を感じたらダメだから…

 

『理由が言えない…とは』

 

『『お願いします!!』』

 

 

 

『…しかし…』

 

『『お願いします!!どんなキツイ仕事でも…汚れる仕事でも喜んでやります!イタズラとか悪ふざけなんかじゃ有りません!ただ…友達に…少しでも時間をあげたいんです』』

 

 

『友達…?鈴谷様ですか?』

 

 

 

 

 

 

『正直に言ってくれるなら…』

大淀が言う。

 

『え?』

 

『正直に言ってくれるなら…ベルファストさん…いいじゃないですか?』

 

『大淀様!?』

 

パァーッと2人の表情が明るくなる。

そして2人は

なかなか人が来ない工廠にいつも差し入れをしてくれること

例え油まみれだろうと…それでも変わらず来てくれること

2人きりの時間が中々なくて鈴谷が寂しそうにしてること

それをポツリと言ったことを正直に話した。

 

『お2人が悪いとかそんなんでは無いんです!』

『でも…私達には物を作ったり直したり…しか何もできないので、秘書艦をやる事も役割柄…あまり無いので……これくらいしかできないので…』

 

 

『『お願いします!!』』

2人はずっと頭を擦り付けてお願いしている。

 

 

『……友達想いの2人じゃないですか』

 

 

『大淀さん…』

 

 

 

『畏まりました…仕方がありません……お顔を上げてください……そのかわり…みっちり働いてもらいますからね』

 

 

『『あ…ありがとうございます!!』』

 

 

 

 

 

 

 

(わかっておりますとも……薬の件は…別ですけどね)

 

 

工廠組は…満足そうに出発する2人を執務室から見送る。

 

「…少しでも楽しんできてね…鈴谷」

 

 

 

 

「さあ!どんな仕事でも…任せてください!!」

明石が言う。

 

 

「…お優しいのですね」

 

「そうでしょうか?」

 

 

だって…

いつも貰ってばかりだと…

あんな顔見せられたら…

 

友達として…何かしたいって思うじゃん!!

 

 

「友達の為です!ばっちこい!!!」

 

「……では」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…腕組んで良い?」

 

 

「良いよ」

 

「えへへ…ありがとー」

 

「なあ?鈴谷?」

 

「何?」

 

「2人でパフェ…食べに行かないか?」

 

「え?でも…」

 

「少しくらい…な?」

 

 

前は…当たり前だった仕事終わりのパフェ…。

2人きりのあの時間が…いつも楽しみだった。

 

ニコニコ笑いながら…のあの感じが大好きだった。

 

皆で笑いながら…お茶会するのも好きだけど

 

 

 

 

 

 

 

やっぱり

 

 

 

 

2人で向かい合って食べる

このひと時が……

 

 

 

たまらなく愛おしい。

 

 

 

「うん!!」

「でも…怒られる時は2人でね?」

 

 

 

 

「美味しいね」

だって…あなたが居るから。

 

 

 

「そだなあ!この店気になってたんだ…鈴谷と来れて良かったよ」

 

「私も…嬉しいな」

 

 

 

 

 

ねえ?

今日は…もう一つだけ…わがまま…いいかなあ?

 

 

 

「ついでに…来て?」

 

 

 

と提督さんを呼んで行く先は…

ゲーセンのプリクラコーナー。

 

 

パシャリ…と

少しの思い出を撮る。

 

自分でもわかるくらいの…笑顔。

えへへ…宝ものだなあ…。

 

 

 

 

 

 

束の間の2人きりの時間…。

悪戯っぽく2人で寄り道できたのが嬉しかった。

 

 

 

 

紅茶を買って帰り道のことだった。

 

 

「ねえ?提督さん?」

 

「ん?」

 

「昨日のことなんだけどね?」

 

「ああ」

 

「〜〜き……だから」

 

「ん?」

 

「私ね!提督さんの事…大好きだから!!」

 

そう言って…鈴谷は

「…大好きだから……」

と顔を近づけて……そして…

 

 

 

「今の…私の初めて…なんだからね?……私も皆に負けないから!!」

 

だから…

次の記念日…楽しみに待つから…たくさん2人で思い出作ろうね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえりなさいませご主人様、鈴谷様」

 

「寄り道は楽しかったですか?」

 

「「えっ!?!?」」

 

「…全く……目撃情報がございましたよ」

「お2人でパフェを楽しんでいらっしゃったとか……」

 

 

「……あぁ…すまん…俺が誘惑に勝てなかったんだ」

 

「ううん!私も…行こうって言ったから!ごめんなさい!」

 

「……よろしいです。今日は業務は終わっておりますので…ご安心ください。束の間の休息になったのなら…幸いです」

 

 

 

 

 

 

 

 

ほんの少しだけ仕事のまとめを行う。

その帰りの事だった。

 

「……鈴谷様?」

 

「何?」

 

 

「良いお友達をお持ちで…」

ベルファストはニコリと笑う。

 

 

「??」

 

 

「紅茶菓子の差し入れはいつでも歓迎でございます…ぜひ、私ともお話しましょう?」

 

 

「……?わかった」

???

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ベルファストさん…役に徹するんですね?」

 

「ああでも言っておかないと…ある意味示しがつかないですから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして数日後…

 

 

「聞いて聞いて!!明石、夕張!!」

「この前のね!秘書艦の時にね!!」

 

小走りで工廠にやって来た鈴谷が喋る。

 

 

「デートできたんだあ!…寄り道して2人で怒られたけどね」

 

と、満面の笑みで話す鈴谷。

 

 

「本当ですか!?」

 

「へえ!それは良かったじゃん!!」

 

でね?でね?

と幸せそうな表情で話す彼女。

 

 

 

 

 

 

 

 

その笑顔だけで…

報われる。

 

ても…

彼女達は言わない。

無論ベルファストも大淀も言わない。

 

だって

 

友達ってそういうもんでしょ?

 

 

 

よいしょ…と立ち上がる鈴谷。

その手にはお菓子がまだあった。

 

「ん?どこかいくの?」

 

「ええ!お菓子を持って執務室に行くの!提督さんやベルファスト達とお茶会するんだ」

 

 

「そうか〜良かった!行ってらっしゃい」

「楽しんできてね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴谷が戻ってきた。

 

 

「ベルファストが2人も来て!だってさ!」

 

「…わかった!」

「行くね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜

 

 

 

 

 

『何の仕事を……?』

 

『私達のお茶会の相手をしてください』

 

『仕事は…?』

『『え?』』

 

『理由が理由なので…そんな事させられる程鬼じゃ有りませんよ?』

 

 

『そして…私も…その友達に加えて頂きたく思いますので』

ベルファストが言い、大淀がクスリと笑う。

 

『私は…前の世界から行っている私の役割を全うしているので……確かにズルいと言われてしまえば…そうなんですが…私も…皆と上手くやって行きたいのでございます』

 

『なので…時々、メイド教育とかをやってるのですよ?』

 

 

 

『あなた方の友達を思う気持ち…物凄く羨ましいく思います。なので…ぜひ私とも……』

 

 

 

『でも…私達…こんな…油まみれで…みなさんとは……』

 

ベルファストは2人の手を握る。

 

『汚れますよ!!』

『ああ!』

 

 

 

『手袋は換えれば良いのでございます、床は仰る通り掃除をすれば良いのでございます』

『あなた方のこの手は…お友達思いの優しさは…換えの効かないものでございます』

 

 

『あなた方のお陰で工廠は成り立っております。私達にはそんな技術はありません。お2人にしか出来ません。そんな凄い手を……そして…友達の為にここまで出来るお2人を……どうしてこの尽くす手を油で汚れているからという理由で…握る事を拒みましょうか?そして…友達のためにという、その輝かしいお願いをどうして無碍にできましょうか?』

 

 

『そこまで言われる鈴谷様が羨ましいです…なので私も加えて頂きたく思うのです』

 

 

『どうでしょうか?』

ニコリと…ベルファストは言う。

 

 

 

『『…は、はい!!』』

明石と夕張はうるうるしながら返事をする…。

 

 

 

『あ…でも薬の件は別ですからね?』

『反省文です』

 

『『喜んで書きます!!』』

 

『喜ぶことでは無いですよ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

()()()()()()!私達まで呼んでもらって…ありがとう!」

と明石が言う。

 

「ふふ…始めましょうか」

 

 

3人を加えた午後休憩のお茶会は…一際賑やかだったそうな…。

 

 

 

 

 

 

 

「あ!!2人とも!薬の事なんだがなあ!!!」

 

「「あっ!!」」

青ざめる2人、ニコリと笑う救。

 

そこに…

「ご主人様?」

 

「え?」

 

「反省文を書かせてありますので…何卒…2人をご容赦頂けませんか?」

そこには何枚にも及ぶ反省文が。

そして頭を下げるベルファスト…。

 

「……わかったよ…。」

 

 

2人は明るい表情でベルファストを見る。

 

ベルファストはニコリと笑い…人差し指を口に持っていった後……口パクで言う。

 

[だってそれが友達…でしょ?]

 

 

 

 

 

 

「ダーリン?マダ話は終わってないデース…」

 

 

「ダーリン?あの子は…榛名とダーリンの愛の結晶ですよね?」

 

「げっ!金剛!榛名!」

 

 

 

始まる逃走劇

姉妹戦争…第二次は勃発していた

 

 

 

そして笑う艦娘達。

 

 

 

「今回俺は被害者だよおおおお!!」

 

響く提督の悲鳴

 

 

 

そして…

 

「こっちよ!提督さん!」

と、手を引く鈴谷。

 

 

「SU ZU YAaaaaa!!!」

 

 

「あああああ!鈴谷さあん!!」

 

 

今日の逃走劇は少し…鈴谷が生き生きしてたとか…。




主役は…誰でしょうか?
工廠シリーズなので明石達がメインのはずが…
視点がコロコロ変わるのも…この小説の…何か…特色とでも言ってもらえたら…うん…。



少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!



感想などお待ちしております!
よろしくお願いします!


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173話 提督 桜赤城と1日夫婦 ①

何気に桜赤城がソワソワしている気がする。

 

 

 

「あ…そういや…」

 

「明日から…私と1日…夫婦ですね」

 

「はぁっ!?どういう事ですか!?」

桜大鳳が言う。

 

「…日付的には…私も着任記念日なので…ウフフ」

 

 

「ちょっ…狡いですわ!!」

 

「ちなみに私も…申請済みで御座います」

 

「ベルファストまで!?」

 

 

キャーキャー言い合う3人。

 

 

 

 

「?何の話だ?」

アズレン組の皆を代表してエンタープライズが俺に尋ねる。

 

 

 

「ん…あぁ…毎年…着任記念日にな、色々と各個人に俺が何かしてるんだけど…」

 

「何か最近はもっぱら…俺と1日夫婦をやってみるってのが流行してて」

 

「「「「ほう?」」」」

新規参入組が反応する。

 

 

「私と指揮官が…」

 

「…汝と妾が……夫婦…」

 

「…我と………えへへ」

 

「…まあオサナナジミとは結婚する約束もしてるしね?予行演習だよね〜」

 

約1名は通常運行だった。フルスロットルだった。

 

 

 

「明日が楽しみですわあ〜」

 

「…桜赤城よ…我と変わるつもりは無いか?」

「ありません」

 

「おおう…」

 

「桜赤城?」

 

「はい」

 

「楽しんでいらっしゃい?」

 

「は、はい!」

 

 

 

さて…どうなるかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

夜から部屋に来ているが…

さっきからずーーーっと黙ったままな桜赤城。

 

 

 

実の所、彼女は…かなりシャイである。

他の誰かが居る時は…しっかりせねばスイッチがONになるので…わりとしっかりしているが…

 

本当に2人きりの時は

「…あ、あの…し、指揮官様?」

みたいな感じになる時もある。

 

 

 

「……」

 

モフッ…

 

 

 

「ひゃぁう!?」

「し、ししし指揮官様!?」

 

彼女の尻尾に埋もれてみる。

 

 

「……」

 

「…指揮官様?」

 

「心配をかけた…」

 

「…私も…かなり辛かったのですよ?」

 

「コピーといえど…」

 

 

 

KAN_SENはメンタルキューブが「リュウコツ」と呼ばれる艦船の中枢の元となり…そこに艦船の頃の記憶…「カンレキ」を持って生まれる存在である。

ただ全てがそうでなく…

過ごす環境等でも性格等は変わるらしい。

 

 

そして

彼女達KAN_SENは同一個体が存在する。

 

それは…メンタルキューブから生まれる存在だからである。

 

詰まるところ…

桜赤城には素体となる赤城が存在する。

 

その赤城は…

かの大戦に参加して…その記憶を有している というものだ。

 

桜赤城も情報としては有しているが…

例えば…"運命の5分間"等についてはよくわかっていないとか…個体差があったりする。

 

覚醒…なるものをすれば…パワーにしろ記憶にしろオリジナルに何の引けも取らないようになるらしいが…。

 

 

正直なところ

メンタルキューブに関しても謎な点が多く…

セイレーンもそれに無関係では無いので不安な要素もある。

 

 

 

そして以前

陣営の分裂により…敵対関係があると言ったと思う。

ベルファストやエンタープライズと桜赤城達は敵対関係にある。

 

 

 

 

 

俺の着任したゲームの母港でメンタルキューブから生まれた彼女達は

その性質上、俺の先の下と言う形なので敵対関係には無い。

苦手意識等はあるようだけど…。

 

 

 

 

 

「桜赤城は桜赤城だよ」

「コピーとか…そんなの関係ない…」

 

「俺との思い出は…お前だけのものだろ?その俺へ向けてくれる愛情も…お前のものだろう?」

 

 

 

「はい…」

 

 

ぎゅっと彼女を抱き締める。

 

「……ありがとうございます」

 

そしてそのまま…

初めて…かな?彼女にキスをする。

 

「んむ…!!し、指揮官様ぁ!? …はう!/////」

 

 

…気絶してしまったじゃないか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ!!私は……寝て…いや、気絶…でしょうか」

 

少し惜しい事をしました。

 

でも…指揮官様から…口付けをしてもらえるなんて……

ダメよ!思い出しただけでも…

 

 

私はある意味覚醒しているので…

セイレーンの戦力にも対応できるでしょう。

 

例え素体との戦いとなっても……

 

 

きっと…大変で辛い戦いになるでしょう

 

それでもあなたは…進むのでしょうけど…

 

 

 

ひとつだけ確かなのは…

私は何があっても…あなた様の傍から離れません…という事です。

 

それだけは…

それだけは…信じてください

 

 

指揮官様の頭を撫でながら…そっと唇を…。

 

 

本当に不思議な方…。

 

こんなに小さな存在で…

何の力もない…ただのヒトなのに…その光は…

何よりも暖かくて…

本当にあなた無しでは…ダメね

 

 

ふふっ…本当に愛してますわ?

 

 

 

さて…

指揮官様の為に…朝ごはん…作ろうかしら?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう御座います?指揮官様?」

 

 

 

「おはよう…」

 

「朝食のご準備ができてますわ?」

 

「ありがとう」

 

「おお〜豪華」

 

ご飯に卵焼き…

これは…筑前煮…かな?

揚げ出し豆腐に

あと油揚げ入りの味噌汁

 

桜赤城のは大量の油揚げが入っている。

 

……狐だから?

 

 

 

 

 

「…やっぱり美味しい」

 

「うふふ♡褒めても何も出ませんよ?」

 

 

 

 

朝食を済ませてから出発の準備をする。

 

 

 

 

 

「「「いってらっしゃーーー!」」」

桜大鳳達はぶーぶー言ってたがそれでも見送りはしっかりとやる。

 

「…何だか新鮮な気分ですわ。見送られる側というのは」

 

 

 

 

 

「さて…今日は私の艦で行きましょう」

 

「あーー…そうか」

 

 

桜赤城達の艤装

実はメンタルモデル化…つまり、艦船化させることができる。

その質量はどこから?なんて質問はやめよう。

 

故に戦闘時は艦船か艤装かを切り替えることができるという艦娘達にはない手法が取れる。

 

 

「2人きりですわあ♡」

 

「そだねえ…」

 

 

空母でデートねえ

なんか新鮮だねえ…

 

 

ほら…なんか見られてるし…

見ないでぇ……。

 

 

「この前の休み以来かな?2人でデートするのは」

 

「違いますよ?」

 

「え?」

 

「初めてですよ?」

 

「うそぉ!?!?」

 

「夫婦としては…初めてですわ?」

 

「なるほど…ね」

 

 

 

「……」

 

この桜赤城は一歩後ろを歩いてくる。

 

曰く…目の前から何かが来ても対応できる。

後ろから来たら直ぐに盾になれる…から

 

あと後ろ姿を見られるから♡らしい。

 

 

 

「…隣来ないの?」

 

「…ここで大丈夫ですよ?」

 

「夫婦なんだから…ほら」

 

と…手を差し出してみる。

 

「…はい」

 

と言いながらめっちゃ腕組んでくる。

「隣から見る指揮官様も……いいですわ♡」

 

「この距離で見る桜赤城も素敵ですわよ?」

とイタズラっぽく言い返してみる。

 

 

「え、え!?あ、あの」

と、テンパる彼女…可愛いなあ。

 

 

 

 

「……もう…指揮官様ったら」

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ…街に着いたら…

騒ぎになってたけどね

「でっけえ平な船がいたんだって!!」とか…

 

 

俺…しーーらない!!

 

 




2部入りしたのでカタカナ表記がひらがな表記になりました!
だからといってどーもないです!

アズールレーンのキャラの説明…とかも入れるのでいつもよりは少し文字数が多いですわ!



少しでもお楽しみ頂けたら幸いです!

感想などおまちしてまーーす!(๑╹ω╹๑ )


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174話 提督 桜赤城と1日夫婦 ②

「あんみつ…」

ポツリと桜赤城が言った。

 

あんみつは…彼女がめっちゃ好きなデザートの一つだ。

ならば…いいとこ見せなくてはなッ!!

 

「いいね!買ってくる!!少し待ってて」

 

「いえ!指揮官様?私が……」

 

「いいから!行ってくるよ!待ってて!」

 

 

と、指揮官様は行ってしまいます。

……暑いから日陰で待っててなんて…優しいのですね。

 

 

 

 

 

はぁ…ただひたすらに好きですわあ…

ただ…ひたすらに愛していますわあ…

 

 

 

「お姉さん?1人?」

 

「?」

(なんぱ…とか言うものかしら?)

 

「良かったらさ…俺らと遊ばない?」

 

 

「(面倒ですわ)結構です…目障りなので消えてくれません?」

 

「ひゅー!クールだねえ!相手いないんでしょ?」

 

「結婚しています」

と指輪を見せる。

 

「ププー!ダメだよ〜?嘘は…?」

「結婚指輪は左手だものー!!」

 

 

「……」

あぁ…そうか…右手の結婚指輪は…意味がないのよね…

 

「……」

 

 

「ん?どしたの?結婚とかしてないでしょ?え?彼氏居るの?」

「そんなのより…俺らと」

 

 

は?

ソンナノ?

私の愛する指揮官様を…ソンナノ?

 

 

桜赤城の中で黒い感情が渦巻いた時だった。

 

 

「なんだよ反応悪いな…ツマンネえ女だなあ」

「そんなこと言うなって!いいから行こうぜ!!楽しいからよー!!!」

 

 

と彼女に手を伸ばした手を誰かが掴む。

 

「いでっ!!」

 

 

「俺の嫁に何か用で?」

 

 

「し、指揮官様…?」

 

 

「あ」

 

「え?」

 

 

 

「だから俺の嫁に何か用か?つってんの」

ギリギリと彼は力を込めて言う。

 

「え…でも…このひと指輪も…」

 

「あん?指輪してなかったら独り身か?仕事柄できないとかも考えないのか?」

 

「あ…いや…」

 

「右手に…でもあんた…も右手かよ……」

 

「!?」

指揮官様…?

 

 

「誰がつまんねえ女だ?」

救の目は殺意に満ちていた。

 

「俺の大切な人を侮辱するな…俺の愛する人を…バカにするなッ!!!」

 

 

 

「は、はい!すみません!!」

 

馬鹿どもは蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「申し訳ありません…指揮官様…私が…不甲斐ないばかりに」

 

 

ぽんぽん…と頭を撫でられる。

 

「怖かったな」

 

 

怖かった…?

何がですか?

あんなゴミ共…何の恐怖もありませんわ?

私が否定されるのもそうですが

あなたを…バカにされるのが…そして嫁と言い切れない自分が…悔しかった。

 

でも…

指揮官様は…私をただ1人の普通の女性として見てくれているのだ。

 

 

 

 

「もう一つ…ごめん…順番待ち抜け出してきたから…もう一回並ぶね」

 

「良いのです!あんみつが無くとも…私は…こんなにも嬉しいのですから」

 

 

その時だった。

「お兄さん!カッコ良かったッス!」

「いきなり走って行ったからびっくりしたけど…奥さんを助ける為だったのですね。奥さんも災難でしたね。」

 

どうやら近くに並んでいた人達らしい。

 

「何か…感動したっす!」

「今から並ぶのも大変でしょうから…コレ…買っておきましたよ!」

 

 

とあんみつを差し出される。

 

「え?…良いんですか?」

 

「ええ!もちろんっす!心があったかくなったす!受け取って欲しいっす!」

 

「ありがとうございます」

あんみつを受け取る桜赤城。

 

 

 

「じゃ…お幸せに!お二人さん!」

 

 

 

 

 

 

 

「こんなこともあるんだねぇ」

 

「ご厚意に甘えましょう」

 

 

「…甘くて…ひんやりして…美味ひいですわあ」

 

「本当に桜赤城は和スイーツ大好きだよねえ」

 

 

「最近はコーヒーも飲めるようになってきましたのよ?」

 

そう…本当は嫌いなコーヒーも俺に合わせて飲むようになってきた。

そういう健気なところ…本当に可愛いんだよなあ…。

 

「ほい!コレあげるよ白玉」

 

「いいのですか?ふふふ…嬉しい」

 

「はい、あーーん」

 

「…あーん♡」

 

……幸せだ。

他人から貰う小さな事も幸せに感じる。

 

 

 

 

 

何より…指揮官様が…並ぶ事も投げ捨てて来てくださったことが嬉しかったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰り道すら…

一歩一歩が愛おしい。

 

 

 

なので帰りの私の艦もゆーーーっくり進ませます♡

 

 

 

ならば…この幸せを伝えなくては…

「私は…指揮官様を愛していますわ」

 

 

 

「俺もだぞ?」

 

 

 

「だからさ…コレを君に」

 

と差し出されるのは……私も持つ…

でも…皆とは違う…約束の証。

そして…他の艦娘の方とも少し違う形…のようですが。

 

 

「え…指揮官様…?」

でもこれをもらうと言うことは…この右手のは……?

あなた様から貰った…この指輪は…

 

 

「その指輪少し借りるね」

指揮官様が私の右手を握って指輪を外そうとします。

 

いや…嫌…

 

 

「お願いです!指揮官様!この右手の指輪だけは…」

 

「ん?」

 

「お願いします!これだけは…他なら何でもいいので…これだけは…」

 

 

「これやるから…それは外せなんて言わないよ?」

 

「え?」

 

「この指輪を合わせて左手につけてもらう…だけ」

「お前がコレを大切にしてくれてるのは知ってるから」

 

 

前に桜赤城の部屋に行った時

ちょうど彼女がおにぎり作って来ますね?

と言ってくれた事があった。

 

その時彼女は指輪を外して

写真立てのついた指輪ケースの中に大切そうにしまったのを見た。

 

聞けば

時折り、それを眺めてニコニコしてるとか…。

 

 

 

 

 

 

 

彼は…それを私の右手から外して…

用意したリングと合わせて

 

私の左手の薬指に付け直してくれた…。

 

「んー…どう?向こうの指輪と合うように作り直したのを合わせてみたんだけど」

 

「……」

 

「良いのでしょうか?」

 

 

「え?」

 

「こんなに幸せで良いのでしょうか?」

 

 

 

 

確かに左手に欲しいと言った。

でもこの右手のも…本当に結婚指輪だから

この世界に来て皆が羨ましいと思ったけれども…一度とて外して左手につけようと思った事は無かった。

 

なぜなら

指揮官様がくれた…この世に一つの宝物だから。

 

私は怖い。

この幸せが…もし偽物だったら

長く見てる夢だったら…と。

 

 

 

「いいと思う!」

 

指揮官様は強く言います。

 

そして

 

 

「愛している!桜赤城…君を愛してる」

 

そう笑顔で言ってくれた。

そして…私はこう答える。

 

 

「私も…です」

 

 

「あ…つけ直さなくちゃ…」

と指揮官様は右手につけた指輪を外します。

 

「…私の為に…わざわざ右手につけたのですか?」

 

「桜赤城が馬鹿にされるの嫌だったからさ…馬鹿にされるなら2人で…って思ってね」

 

「……その指輪貸してくださりますか?」

 

「ん?いいよ?」

 

 

私は…その指輪を受け取りキュッと握りしめる

ありがとうございます…指揮官様。

 

本当に…ありがとうございます。

こんな私を愛してくれて…

作り物の私ですが…この命尽きるまで…あなた様と…

 

 

そして

指揮官様の左手を取り…そっと指輪を…。

 

 

 

「桜赤城?」

 

「はい」

 

「お前はお前だ…メンタルキューブから生まれたとて…俺にとって桜赤城はお前だけだ。…そして…コレは夢なんかじゃ無い」

「それだけは確かだ…」

 

「だから…愛してる」

 

 

 

 

「……」

「愛してます!!!」

ぎゅっと抱きつきキスの嵐!

 

「え?!ちょ!さっきまでのお淑やかさは!?あの空気は!?」

 

「好き!好きですわ!!」

「あと半日もせず終わるので…今ここで!愛を!!」

 

「邪魔する虫も居ませんわ!!!!|

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら?皆さん…お揃いで…」

 

「楽しかったか………何だ?その幸せそうな顔は…」

 

「はあう!?」

桜大鳳が驚く

 

「どうした!?」

 

「な、無いッ!み、みみ…右手の…指輪がッ…」

「そ、そそそそその左手は…!?まさかッ」

 

 

「はい…」

「頂戴いたしました♡」

 

 

 

 

「指揮官様ぁぁぁああ!!!!!」






好き好き!と言いながら狂人ではない桜赤城。
…あれ?
どこからが狂人なのかな?
わかんねえ…



えーと…次回は
えーと……スルーしてた問題を解決します。
さーせん…甘い話したかったのでスルーしてたの…



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175話 大本営にて…

「なんか言う事はあるか?小僧」

 

「……nothing…」

救は答えた。

 

「お前は?小僧…パート2」

 

「ありません!!」

京極も答えた。

 

 

「小娘ッ!!」

 

「あ、ありません!!」

麗は目を逸らしながら答える。

 

「小娘ッパート2うう!!」

 

「俺も無い!!!」

京極姉もハツラツと答えた。

 

 

「ふざけんなよおおお!!!」

 

 

 

「この場合…テメェだろうがー!!功績的にもヨォ!俺も全然納得なのによおおおお!!!!」

 

 

「いや…俺…堅苦しいのは苦手なので…」

 

「嘘つけェェ!!」

 

「はい、嫁達から離れたくないんです!!!」

 

「私も寂しいなあ…救君になかなか会えないのは…」

 

「このバカップルめ……ん?嫁達…って艦娘達もか…」

 

「……俺も寂しいな…救に簡単に会えないのは…」

 

「え?」

 

「姉貴…やっぱり姉貴は…救ちゃんの事を……」

「救ちゃん…姉貴を幸せにしてやってくれえええ!!!」

「宴じゃあ〜!今日は宴じゃあ!!!」

 

 

「やかましいわ!!!このシスコンめがッ!!」

 

 

 

「ダメだ…まともな奴が居ねえ……」

ボソリと救が言う。

 

「テメェが言うな!クソガキッ!このサイコパスめ」

 

 

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時は少し遡り

 

 

 

 

 

「で?新しい元帥さんは誰になる予定よ?」

と、巌が大本営の大淀に聞く。

 

 

「功績等を考えても…当たり前ですが神崎さんの名前が上がってますね」

大淀がチラリと救の方を見ながら言う。

 

 

「…まあ…今回の件で…上層部は軒並み刷新予定…入れ替わりを考えても…」

 

「戦果やその他の貢献…前回の大本営の殴り込みのインパクトや住民の反応から見ても…」

 

 

「「「そーーなるよねえー」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嫌です!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

「絶対に嫌です」

「てか、こんな新参者がなっていいものでは無いでしょ」

 

 

「…でも…ねえ…」

 

 

 

「大出世ですよ!?」

 

「結構ですわ…」

 

「給料も上がりますしモテますよ?」

 

「え"?」

麗が反応する。

 

「責任も増えるし…彼女らに殺されるわ…ほら…麗ちゃんが殺意の波動に目覚めそうよ?」

 

 

「鎮守府を大本営にしてくれる?それか全員異動でもいい?」

 

「提督さんだけですね」

 

「攻めてくる勢力が増えるよ?」

主に艦娘だけど…

 

「ですよねえ…1日ともたないですねえ…さすが…最果てのハーレム提督…」

 

「え?そんな呼び方されてんの?」

 

「そりゃもー…外に出るたびに女性を取っ替え引っ替えしてると…重婚もされてますからねえ…」

 

 

 

 

 

「自分で言うのも何だけど…そんなんが元帥になっていいはずがないっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし……なら…巌さんしかいねえな…」

 

「は!?」

驚く巌さん。

 

 

「推薦ですね?呉はどうなるのですか!?」

大淀が言う。

 

「おい!!いやいやいやいや!」

 

 

「なら俺が行こう!……呉に!」

と、京極弟が挙手をする。

 

「は!?…ちょっ…」

 

「ブインは部下に任せることが決まってはいたんだ、丁度いい。呉の者達も…顔馴染みではあるしな」

 

 

「ねえ?話を聞いてくれない?誰か」

 

 

 

「巌さんなら安心だな!!」

 

「おい小娘…聞けよ」

 

 

「あ…安心感ありますしね…。べ…ベテランで」

 

「おい、無理して合わせるな里仲…というか聞いてください」

 

 

 

 

 

 

「…出来すぎてません?この流れ」

「出来レース…茶番…だねえ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふざけんなよおお!!!」

巌は救の胸ぐらを掴んでブンブンと揺らす。

 

「ちょ…巌新元帥閣下…パワハラですか」

 

「…ああ……すまん…ってアホかッ!!」

 

「認めた!この人認めたよ!返事したよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

……御蔵さん…

本当帰ってきてくれませんか…

 

 

「…中学生の集まりですか?」

この人達に任せてこの国の未来は大丈夫なのかな…と思う大淀…であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

んで…就任式の日…

 

 

 

 

 

 

「新しく元帥となりました…巌です。…新体制……」

 

 

 

 

「…本当になっちまうもんなんだねえ…」

 

「そ、そうだね。何か罪悪感が…」

 

 

 

 

 

「皆さん…ここで…新設した役職を発表します」

と、大淀が言う。

 

「あぁ、何かと不安だからな…サポートが欲しくてな…」

 

「神崎大将…前へ…」

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソジジイいいいいい!!!てめええええ!!!やりやがったなぁぁぁぁ!!!」

 

 

「ブワーーーッハッハッハハハハ!!クソガキがぁぁあ!!!やってやったわ!コンチクショウ!!」

 

 

「よろしくなぁぁああ!?新ポスト…副元帥よおおお!!」

 

「…そんな役職…デタラメだろ!!…」

 

「設立してやったわ!!!権力舐めんなよ!!」

 

「職権濫用だッ!!」

 

「数の暴力で俺を元帥にしたお前らに言われたくねえよ」

「…まあ…今の鎮守府から動かなくていいからよ」

 

「当たり前ですよ!!」

「そんな事したら…滅びますよ!大本営が!!」

 

「だからだよ…」

 

 

「まあ…実質No.2なんだ…割と自由も効くだろ?」

 

「…まあそうですね」

 

「娘はやらんが…まあ…程々にな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー…」

 

「あ!お帰りー!提督〜♪」

 

「おー…川内!」

 

「どーだった?出来レースの就任式は」

 

「やられたわ…副元帥だってよー…」

 

「え…?」

 

「笑えるよなーあのクソじj「提督居なくなるの?」

 

「え?」

 

「ダメだよ…そんなの…許さない」

 

「せ…川内?」

 

「嫌だ!行かないで!!…ううん…行かせない」

「……提督が離れるなんて絶対にありえない…許せない…何で何で何で何で何で何で何で……提督は優秀だから…うん、それはわかるけど…私達は提督無しじゃ生きていけないのに……まさか!提督を狙う人が上層部に!?それなら許せない…今すぐ大本営に行って…」

 

「川内さーん!!行かないから!!ここに居るからー!!!」

 

「本当…?ならよかったの」

 

「何?キャラチェン?」

 

「たまには…夜戦以外に目立つようにしよーかなーと…居なくなったら生きていけないのと行くのは許せないのは本音だけどねえ!…あと大本営に殴り込むってのも」

 

 

「全部じゃねえか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーーい!」

「そんな訳で…そーなったのですが…変わらずここに居るので…安心してね」

 

 

「「「はーーい!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「救君!おめでとう」

 

「麗ちゃんも中将就任おめでとう」

 

「少しは…救君に近づけたかなあ…頼りになれるかなあ」

 

「…ずっと前から…頼りにしてるんだけどね」

 

「…本当?」

 

「本当だよ」

 

「……これからも…ずっとそばに居て…いい?」

 

「居てくれないと…もうダメかなあ…」

「支えて欲しいよ」

 

「うん!私…ずっと一緒に居るよ!!」

 

 

 

 

「さあーー!!皆で昇進祝いだー!!」

 

 

 

嬉しく無い…よお…




お気に入りが560になってる…だとッ
ありがとうございます!!

嬉しくて……
今日は…夜食にラーメン食べます。



決して忘れていたわけでは無いッ!!


さあ…巌のキャラがどんどん変わって来てますけど…
そういうポジなので…

そんな役職あるのかすらわかんねえもん…
適当に考えたんです…。


少しでもお楽しみ頂けたらと思います(๑╹ω╹๑ )!


感想等お待ちしています!


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177話 虚を映す鏡の中で ① 邂逅と悪意と絶望と

アズールレーン原作とは違った設定の感じになります。
そこだけご了承ください。


鏡面海域…
セイレーンが再現する
とある戦いの記録…の海域。
駒はその、役割に順じて動く。


セイレーン
何かを目的として…世界に介入する勢力
人間とKAN-SENの共通の敵…らしい。



話的には……重めですね。



KAN-SEN
桜赤城達のような存在。 艦これで言う艦娘。
救達と行動を共にしているアズールレーンの世界からのKAN-SEN達はオリジナルの素体でなく…メンタルキューブと記憶等から生まれた存在。所謂コピー…駒となる。


と言う感じですね。





これは…苦い…

とても…とても…

苦くて苦しくて

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「通信が遮断される海域」

とやらの調査に来た俺は…信じられない光景を見た…

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

…桜赤城と…金剛も驚く

 

「だ、ダーリン?」

 

 

「指揮官様…これは…」

 

 

 

あの時の…戦線。

深海提督との戦いが……行われていた。

 

 

「……鏡面海域…?」

 

 

「正解だ」

 

 

「!?」

 

お前は…

 

「セイレーン…テスターだったか」

 

「ふむ…やはり君か…画面の向こうの…人間」

 

 

「お前か!!御蔵のジーサンを唆したのは!!」

 

「違うな…可能性を与えてやっただけだ…彼は失敗したけどね」

 

「次は俺達ってか?」

 

「……さあね…まあ…君達にはで痛い目にあわされたからね…今回は

仕返しも含んでるよ」

 

 

 

 

「さあ…初めよう…見せてくれ…敗北を」

 

その言葉と共に…視界が歪む…

意識が……遠くに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「気がつきましたか?指揮官様」

 

 

「ダーリン!!」

 

金剛と桜赤城…

 

 

「…ここは…」

 

「鉄底海峡の再現なのは変わってないか……」

 

 

ん?、お前ら…指輪は?

 

 

 

「オー…無い…え…何で無いデスカ!?」

 

「……右手には……」

 

 

 

……そこまで状況を再現されてるのか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひとまず自分でわかってること…

 

ここは鏡面海域…

セイレーンが…恐らく鉄底海峡戦線を再現したとされる

特殊海域だ。

 

 

そして…金剛と桜赤城以外は…

セイレーンが用意した駒…だと推定する。

 

 

 

そして…奴らが見るのは

俺たちの敗北らしい。

 

しかし…謎だ…俺達は勝ったのだから。

…わからん。

 

 

 

 

 

 

 

 

とにかく準備だ。

 

 

「ダーリン…やっぱり不安?」

 

 

「…銃はいつでもあるけどな……」

と、弾を込める…あまり意味はないけどね

 

「ダーリン?ダーリンは1番はこれを使わない事デース」

金剛はチュッ…と弾丸にキスをした

「……祝福デース!なんちって…」

 

「ズルイですわ!私もーー!」

 

 

 

…こんな緊張してやばい時は…2人には癒される。

すこしでも緊張がほぐれた…。

 

 

 

 

「はは…とにかく!この状況からの脱出と…ウチのメンバーを助けにに行こう」

 

 

 

 

 

 

 

 

「本来なら死ぬはずだった指揮官…艦娘…」

「試験者として見たい…。さあ…君はどうする?」

 

 

 

 

 

「おい!吹雪!状況は!?」

桜赤城の背中から話しかける。

 

「……」

 

「…おい!大井!加賀!」

 

「……敵を殲滅します」

 

 

と、味方は敵へと突っ込んで行く。

 

 

ドォン!!と敵の深海棲艦の攻撃が行われる。

 

 

 

このまま立ち止まっては…やられる!

とにかく…味方は…味方らしいから…まずは敵を退けるしかない!

 

 

 

 

「金剛!桜赤城!とにかく敵を攻撃するッ!!」

 

「はい!」

 

 

しかし…テスターの言うことが気になる。

本来は死ぬはずだった…?

どう言うことだ…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

が…

「違う…俺の記憶と違うッ!!」

 

 

目の前に広がる光景は…

 

 

 

 

 

 

 

敵に弾丸を打ち込む吹雪。

 

が…横から胴体に噛みつかれる。

「……」

敵の口内へと魚雷を放ち…共に沈む吹雪。

 

敵魚雷の総攻撃を受けて轟沈させられる加賀。

 

他にもどんどんと仲間が死んで行く。

 

 

 

 

 

 

ありえない…こんな結果…俺は知らない。

 

 

 

敵と相討ちになる加古。

 

 

空母爆撃により…沈む電。

散ったところを各個撃破されて行く響達。

 

 

 

 

 

 

これが本来の戦いの流れだった…?

ありえない!!

 

 

 

 

 

 

 

「ほらほら…早くしないと……」

 

「…上だよ?」

 

 

 

 

 

 

直上…!?

 

 

「くそっ!!」

 

 

「指揮官様ッ!!」

桜赤城が、俺を投げる。

 

「ぐっ…回避いいい!!」

 

 

「良い判断だけど…そこもダメ…」

 

 

ここも…か!!

 

 

「……」

 

艦娘が俺を庇う。

 

 

 

「やめろ!!今のまま食らえば…お前達は…」

 

 

無表情の大井達がニコリと笑った。

 

 

 

「やめろおおおおおお!!」

 

 

 

ズドオオオン!!

 

 

 

轟音と共に投げ飛ばされた俺。

 

目の前には…

 

 

 

「………」

 

無言のまま沈みゆく艦娘達。

 

「やめろ!やめろおおお!!!」

 

大破の艦娘に容赦なく攻撃する深海棲艦。

 

そこまで泳いで行くが…沈む彼女達に手を伸ばすが……

 

 

届かない…。

 

目の前で大井や不知火達が沈んだ。

 

 

 

「嘘だっ!!行くな!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ…」

 

 

 

 

……

 

 

「指揮官様!お乗りください!!」

 

メンタルモデル化した桜赤城の艤装に乗せられる。

 

 

「…あ…あぁ…皆が…」

 

「お気を確かに!!アレは本物ではありません!」

 

 

「敵!退いて行きマース!!」

 

 

 

茫然とする俺の前で…

2人を除く全員が死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とにかく…避難をということで近くの島へと運ばれる。

 

「皆が…皆が」

 

「ダーリン!」

 

「金剛…桜赤城?」

 

「大丈夫です!どうにかここを抜け出せば…皆が居ますから」

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

「…本来ならね?君達は死ぬ運命なんだ…でも生きている…それは何故か…気になるんだよ」

ふと現れたテスターが言う。

 

「さっきも…駒に庇われた様だけど……ふーーむ…君に…何かあるのかな?」

 

 

「ならば…試すしかないか…」

 

 

 

 

 

 

 

「何を言って…」

 

 

 

 

 

 

 

 

金剛が俺を突き飛ばす!

 

「ぐっ!!」

 

「金剛!?」

 

 

俺が目の当たりにしたのは…

 

 

 

 

 

 

間一髪の所で桜赤城の蹴りを躱した所だった。

 

 

 

「指揮官様…死んでください…」

 

 

桜赤城の声だった。

 

 

「桜赤城…!何故デース!?」

 

「…私は…!!セイレーンの駒!!……あなた達を…殺します」

 

 

 

「どう?このシナリオは…?さあ…味方を撃てるかな、」

 

 

「指揮官様…申し訳ありません!!」

桜赤城が艤装を展開する。

 

 

「させないデース!!」

 

 

 

 

「そら!」

桜赤城が爆撃機を出して金剛を攻撃する。

 

 

「くっ!!」

金剛も艤装を展開して応戦する。

 

 

「やめろ!桜赤城!やめるんだ!!」

 

「申し訳…ありません!」

こちらへ…艦載機を…向けてきただと!

 

 

 

「ダーリン!!しっかり!!桜赤城は敵デース!」

…金剛が艦載機を撃ち落とす。

 

「でも…あいつは…操られてるだけじゃ…」

 

 

 

ズドオオオン!!

 

近くが爆撃された。

 

 

「ダーリン!!」

 

 

 

 

 

「指揮官様ッ!!私を…討って下さい!」

桜赤城が金剛を攻撃する。

桜赤城が蹴りのラッシュを浴びせる。

 

 

 

 

「でもッ!!」

 

金剛が腕で蹴りを捌きながら…

掌底を当てる。

 

 

「ぐっ!!」

 

 

 

「正気を…保ってるうちに……あなたを…」

 

 

「うあああッ!!」

桜赤城が金剛に蹴りを加える。

 

 

「くっ…!!」

 

「嫌ッ!私は…私はッ!!」

 

「桜赤城…!!」

金剛が応戦する。

蹴り返し距離を空ける。

 

「だ…ダーリン!」

 

「金剛…」

桜赤城が目配せをする……。

 

 

「こめんなさい…ダーリン…桜赤城…」

 

 

 

「指揮官様…ッ……!!!」

 

 

 

 

 

「こ……」

 

金剛は俺か何かを言う前に動いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドン…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の砲撃は…桜赤城を討ち取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官様……お手を煩わせて……申し訳ありません…」

 

「金剛さんも…ごめんなさい…」

ぽろぽろと目には涙が流れていた。

 

「ごめんなさいデース…」

金剛も涙をながす。

 

 

「なあ…嘘だろ…?桜赤城…」

「元に…戻るんだろ?なあ!!」

 

 

「…申し訳ありません…指揮官様…私は…ここまでのようです…」

 

 

 

 

「…羨ましいわ…指揮官様と居られるあなた達が…なった…桜が……なんて………羨まし…いのでし……天城……様…エン…ー…ズに…いたかっ…」

 

 

「そんな顔をなさらないで…指揮官様………私が貴方様を傷つけなくて……良かった…」

 

 

「指揮…様…一つだけお願いが…」

 

「何だ!?」

 

「手を…握って貰……ませんか?」

 

「ああ!!」

 

桜赤城の手を握る…。

 

「温かい…ですね……指…官様…私の指揮官様は…あ…だけ…例え…ピーでも…お慕い…申し……」

 

 

桜赤城はそのまま

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

砕けたキューブに戻った。

 

 

 

 

 

 

 

「赤城いいいい!!!」

 

「嘘だろ!なあ!!金剛ッ!頼む!嘘だと言ってくれ!!」

 

 

「ダーリン…ごめんなさい…」

やめろ…きっと夢だ…そんな目をするな!!

そんなはずは無い!コレは夢なんだ…絶対にあり得ない…。

 

 

 

 

「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこに響くのは…

救の悲痛な叫び声だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜になってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…くそ…俺が…俺がもっとしっかり…」

 

「ダーリン…」

 

「すまん…お前に嫌な思いを…判断できず…味方を討つ事をさせた…俺は…」

 

「…提督失格なんかじゃありまセン」

 

「え?」

 

「ダーリンが皆を思う気持ちはわかりマース。でも…あのまま…にしてたら…桜赤城の自我が消える方が…残酷でシタ…」

 

 

 

「すまん…」

 

「…頑張ってこの海域から脱出しまショウ!」

ぎゅっ…

金剛が俺を抱き締める。

「今日は…このまま少しでも休んで下サーイ…」

 

……

俺はそのまま…眠りに…。

 

 

 

 

 

ダーリン…

絶対にダーリンは私が守りますカラ…。

ちゅっ…。

 

 

 

ぎゅう…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「good morning!ダーリン♡」

 

 

「……うん…おはよう…」

 

 

 

……残念なことに…夢じゃ無い…。

 

やはり…現実というのは……どんよりとするものだな。

 

とにかく…この状況からどうにか脱出しないと…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………つまんないなあ…」

テスターがそこに居た。

 

 

 

「テメェ…」

 

 

「…特に進展なしか〜」

 

 

一気に昨日の事が思い出される。

…寝てた自分に嫌悪感すら覚えるくらいに!!

 

「テメェは…」

 

「許さない…??」

 

 

 

 

 

 

 

「……言ったでしょう?」

「君への…仕返しも兼ねてるって…本当に絶望しろ」

 

 

 

 

 

「金剛…奴をやるぞ」

 

 

()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『死んでください』

 

金剛の攻撃!!

 

間一髪で躱す。

 

 

 

『……逃げて…ダーリン』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこまで考えてなかった

 

 

 

 

 

まさか金剛が…操られているなんて

 

いつからだ?

 

 

 

 

 

『…ダーリン…』

 

「さあ!殺せ!!」

「どうだい!?最愛の人に裏切られる気分は…」

 

 

 

 

 

 

「皆死んだ!だってそれが…本来あるべき姿!!」

「お前は…以前は私達を破った!!痛かったぞ?!」

 

 

 

 

 

金剛に投げ飛ばされる。

 

「ぐぁっ!!」

 

 

「くっ…誰か居ないのか!?」

 

 

「居ないさ…沈んだからねえ!!」

 

 

「金剛ッ!!頼む!目を覚ませ!!」

 

お前を撃つことなんて…出来ないッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「操ってないさ」

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「人が願うからヒトの形になるんだ…だから私達が作っても人型になるよ…艦娘とやらのデータもあるしね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()

 

 

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最初から…?

 

そうか…

 

最初から俺1人だったのか?

 

 

 

だからか…

 

 

鉄底海峡の戦線のデータだから

その時点では向こうの世界の桜赤城は右手に…金剛は何もつけてない外見データだったのか

 

 

 

 

「まあ…桜赤城は本物かもだけど…?」

 

「何ッ!?」

 

一瞬金剛から目を離した時だった。

 

「ぐふっ…!!!」

 

金剛の蹴りが…腹に…

 

後ろに蹴飛ばされる。

 

 

「ゴホッ…ガハッ…こ…金剛」

 

 

 

『ダーリン……』

 

 

 

 

「さあさあ!死ぬよ!死んじゃうよ!!…何故君たちが生き残ったのか…淘汰を打ち破ったか……新しい進化か…覚醒か…さあ!それを見せてくれ!!」

 

 

 

 

 

 

「さあ!!!」

 

「やれ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『出来まセン』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なに?」

 

 






また始まるシリアスパート
何卒応援していただけたら嬉しいです!

わかりやすい…溶け込みやすい話作りができたらと思います!
色々と試行錯誤やって行きますのでよろしくお願いします。

少しでも楽しんで頂けたなら幸いです!


感想等おまちしております!
お気軽によろしくお願いします!




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178話 虚を映す鏡の中で ② 悲痛と喪失と憎悪

『出来まセン…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私は…彼を…ダーリンを…愛していマス」

 

 

 

「バカめ!偽物の記憶なんだぞ!?それに流されたか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぽろぽろと涙を流す金剛。

 

 

『うっ…それでも…ひぐっ…それでも……私には…ダーリンを撃つことはできまセン……ううっ』

 

 

 

 

だって…私は

金剛だから…

 

 

金剛は泣いていた。

頭の中で必死に抗っていた。

 

 

 

己の出自も…記憶も全てが偽物だと気付かされた。

愛する者を殺せと命じられた。

 

 

それは即ち…

 

 

神崎 救の艦娘としての金剛の終わりを意味し

セイレーンによって艦これの金剛の情報と記憶を元に造られた敵…KAN_SENの金剛…としての意味というものを理解したからだ。

 

 

 

しかし彼女は涙を拭う。

 

 

そして…彼女はテスターへと攻撃する。

 

 

 

セイレーンは驚いた。

予想外な事が起きたからだ。

 

駒という支配からの脱却…。

 

 

赤城の自我の残りよりも…もっと深い…!!

面白い…その可能性は面白い!!

そうだ…もっと見せてくれ!!

 

 

 

「なら…諸共…死ねえええ!!!」

ついにテスターが攻撃を開始した。

 

 

『させません!!』

 

 

金剛は艤装をメンタルモデル化(艦船状態化)して盾にする。

 

 

 

艦船に弾幕が撃ち込まれる…。

 

 

 

 

 

 

「ダーリン…大丈夫デスからね?」

 

絶対に守ります…カラ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コレで少しは…ダーリンを逃がす時間稼ぎで耐えら………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドシュ……

 

 

「甘かったね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひとつの凶弾は…金剛の胸を貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………う…………そ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドサッ…と倒れる金剛。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「金剛ッ!!!!」

 

彼女の元へ駆け寄る救。

 

 

 

 

 

近寄るセイレーン。

 

 

 

 

「来るなッ」

パァン…と銃を発砲する救。

 

 

 

「ぐぎゃぁぁああ!!目がッ!!!」

悶えるテスター。

しかし…声とは裏腹にニヤける様子は救には見えない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お…おい……金剛?大丈夫か!?すぐに…」

 

「…偽物なのに…金剛と……呼んでくれるんデス……ね」

 

 

「そんなこと!今はそれより!!」

 

 

 

「泣かないで…だーりん…」

 

 

 

 

 

「偽物が……死ぬだけだから…」

 

 

 

「でも…お前は…!!」

 

 

 

 

 

『優しイのデスね』

 

『愛していマス』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この想いは本物…

偽物の記憶だとしても…

 

忘れないで…

あなたと過ごした…

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思い出…方…幸せ………かな?

 

ううん

 

 

でも…あなたを

 

って

 

るのは…

私だ……けの思い…

 

本物の金剛……

無い…

 

 

私……けの…

 

 

あぁ…

 

あなた…の

 

 

 

 

…優し…さ

 

 

ずっ

 

 

たかっ

 

 

 

なあ

 

 

 

 

 

宝…

 

 

 

 

 

 

勝っ…た

 

 

 

 

 

 

…愛……て…

 

 

 

 

 

 

 

ちゅっ…と触れられた唇は…

冷たくて

 

 

 

 

 

 

 

 

まるで氷のように…

氷に入ったヒビのように俺の心に傷を残す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パキィン…と

彼女がキューブに…なって行く…

 

 

そのキューブは…ピシピシと…

音を立てて…

 

 

割れた。

 

 

砕け割れ…足元に散らばった。

 

 

 

 

「嘘だろ…なあ…」

 

 

 

 

 

 

 

「おい…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「泣くな!指揮官よ!また作ってやるぞ?」

「まあ…それは金剛では無いがなあ?まさか…貴様側につくとは…想定外だが…それも面白かった!!欠陥品は欠陥品らしく処分しないとな?」

 

 

 

 

 

 

「もう黙れ…」

 

 

 

 

 

 

 

最期の言葉…

俺にははっきりと聞こえた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思い出さない方が…わからないままだったなら…幸せだったのかな?

 

でも…本物(オリジナル)には敵わない…よね?

 

 

ううん

 

でも…ごめんなさい…本物の金剛()

 

ダーリンを守って散るのは私だけ…

 

今日だけの思い出は…本物の金剛にも無い…私だけの…役割(誇り)

 

嫌な思い出になるけど…あなたの記憶に…残る…それだけは……唯一…残るであろう…私の宝物………あなたと私だけの……記憶…(生きた証)よね?

 

あぁ

 

 

でも…

 

 

あなたの優しさに

ずっと触れて居たかったなあ…

 

 

 

ううん…

 

泣かないで…?

私は…今…とても幸せなの

 

だってそうでしょう?

 

 

この命をあなたのためだけに使えたのだから…

私は…勝ったんデス

 

セイレーンに…

セイレーンの呪縛に…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

愛してる…ダーリン。

 

 

 

お願い……金剛…ダーリンを……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言ったのだ

 

わかる

 

 

例えコピーだろうと

 

どうしても

 

こんなにも

 

 

辛いんだ

 

腹が立つんだ

 

 

不知火達や桜赤城…金剛も……

俺が死なせてしまった!!

 

 

 

 

憎い!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

無力な自分が憎い!!

 

何も出来ない自分が憎い!!

 

 

 

 

「ウフフ」

 

テスターが近付き…唇を奪ってくる。

 

「〜〜ッ!!!んむ!!」

 

「…ぷは……いいよ……人間…」

 

 

「この…」

 

「アハハ…振り解けないよね」

ぺろりと涙すら舐めてくる。

 

 

「私の物にならないか?ずっと…ずっと…愛してやるぞ」

 

…コイツは何を言って……。

 

 

「ハハハ…その表情だ!!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()理想論が崩れた…その絶望した顔だ!!」

「さあ…ここからどうする?」

 

 

「黙れええ!!!!!クソおおおお!!!!」

渾身の力で振り解き銃で奴を撃つ。

 

 

 

カン!キィン!と音がする。

 

「効かないよ?人のモノなんか」

 

んなこたぁ知ってるよ!

 

 

でも…!!

 

 

鉄パイプで殴る。

 

「だから…効かないって」

 

 

 

 

 

 

でも

 

 

 

 

 

 

 

生きられたかも知れないのだ

彼女にも…奴らからの支配から抜け出せたのだから…

 

初めて

目の前で誰かが死んだ。

 

 

金剛じゃないとしても…

 

コピーだとしても…

 

 

それでも…

 

 

 

誰かが死んだ!!!

 

「あ"あ"あ"あ"あ"!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

銃を構える…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てめえらは…絶対に許さねえ…ぶっこr「ダメデース」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

撃とうと構える銃に手が置かれる。

 

「!?」

 

「その先は…言っちゃダメデース。それに…ダーリンの手は…銃を撃つ(こんな事の)為にあるものではないデス」

 

「この手は…多くを救い…温める手なんデース」

 

「"戦いも…その言葉も"私達がやりマス」

 

 

 

 

 

「金…剛…桜赤城…?」

 

 

「はい…赤城…でございます…」

 

 

「桜赤城サン…ダーリンをお願いしマース」

 

「はい…この命に代えても」

桜赤城はぎゅっと俺を抱きしめる。

 

 

「ダーリン…ありがとう…私を…私達を(コピーの金剛や皆)愛してくれて」

 

彼女は笑顔を向ける。

 

 

 

笑顔…

 

 

 

しかし

 

心でわかる…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は本気で怒っている

 

 

 

 

 

 

 

敵だ!

 

奴は敵だ!!

 

倒せ!!!

 

薙ぎ倒せ!!!!

 

許すな!!!!!

 

決して…許さないッ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私達に偽物であろうとダーリンの死に直面させた事…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金剛(私のコピー)にコピーであろうとも桜赤城(大切な仲間)を討たせた事を…

 

ダーリンに銃を撃たせた事を

 

私たちを弄んだ事を

 

提督を傷つけた事を絶対に許さない

 

 

 

 

 

 

 

ここまで…誰かを憎いと

思ったことは無い

 

誰かをここまで殺してやりたいと

思ったことは無い!!

 

 

自分の中の全てが叫んでいる!!

 

 

[カケラ一つも…この世に残すなッ!!!]

と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金剛や赤城も救達と同じ場面に立たされていた。

偽物の提督、仲間の死…

 

 

 

金剛や桜赤城は…それを乗り越えて…怒りと共にやって来た。

 

救の無事を見て安堵するはずが……その時見たのは…

コピーの自分を目の前で失ったダーリンだった。

 

そして…唇を奪い…楽しそうに笑うテスター。

 

 

ダーリンはその後に鉄の棒や銃を構え半狂乱になりながら敵を攻撃した。

 

その表情は今までのどの記憶を探っても出てこない表情だった。

 

 

 

許せない…

絶対に

絶対に…

 

 

 

 

 

 

 

「ああ…来ちゃったか……邪魔だなあ……死ねえ!!」

 

 

テスターが偽装の砲台を向けて…撃つ。

 

 

 

 

 

ガギン!!

 

…!?動かない…!?

 

砲台の隙間に……?!

 

 

 

それは1発の弾丸だった。

 

 

 

救が撃った弾丸が艤装の隙間に入り可動を邪魔していた。

 

 

 

もしそれを奇跡と呼ぶなら…

散る運命にあった

 

 

 

しかし…もしそれを必然と言うのなら…

散った金剛の……想いは…彼の手を通して放たれた弾丸として…本物の自分と愛する者を守ったのだ。

 

 

 

彼女(金剛)が残した…祝福された弾丸が…。

 

 

 

 

 

「バカな!!あの…人間の撃った弾丸が!?そんな事が!?」

 

 

あの偽物…創りモノは…ここに来て………くそ

「あの紛い物めえええええ!!!」

 

 

 

 

 

 

「もう…黙れえええええ!!!!」

 

 

 

ゴシャッ…

金剛の本気のストレートが顔面に突き刺さる。

 

 

「ぐ…r「終わらねえよ」

 

 

 

 

 

ゴシャリ…

 

左ストレート

 

 

 

「ぶへ…ッ」

 

 

ぽとり…と足元に弾丸が転がってくる…。

それを拾い上げてぎゅっと握りしめる。

「行け…!やれ!金剛ーー!!」

 

––もちろん…

 

 

 

右ストレート

 

「ガッ」

 

 

「ぶっ壊せ!!!そんな奴…ぶっ壊せえええええ!!!!」

 

––もちろんッ!!!!

 

 

 

左ストレート

 

消えろ!

 

 

 

「おぶ…」

 

右ボディー

 

 

くたばれ

 

 

「ぐあ」

 

左ストレート

 

「…っ」

 

左手で奴を掴む

 

 

右拳で殴る

 

 

死ね…!!

 

 

 

 

「ぐへ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る何度も…何度も!!

消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ!消えてしまえッ!!!

 

「うおあああぁあああっ!!」

 

殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る

何度も…何度も何度も何度も!!

死ねッ死ねッ死ねッ死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!

 

 

 

「お前なんか…消えてしまえええええ!!!」

渾身の力で殴りぬく。

 

 

 

 

 

「……ヒューー…ヒューー…」

敵は虫の息なのに…それでも…まだ…足りない!憎い!

 

 

「……」

 

金剛はずっと敵を睨みつけている。

 

「おまe「喋るなァァァァァァァア!!!」

 

 

奴を地面へと殴りつける。

 

地面にめり込む仇。

 

 

 

ガポッ…と…顔面から手を引く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

許さないッ!!

 

 

 

 

「お前だけを…戦わせたりしないッ!!」

桜赤城に支えられた救が金剛の肩に手を置く。

 

 

 

「例え…替えのボディだろうと……塵ひとつこの世に残すなッ!!!」

金剛に手を添える…。

 

 

「イエスッ!!!!」

 

金剛がソレに向かい一斉掃射を行う!!

 

 

 

ドォン!!

「……!」

ドォン!ドォン!!!

「……!!」

 

 

 

 

 

「「「消えろ…消えてしまええええええええ!!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには残骸しか残らなかった。

 

しかし…救は空を睨み言う。

 

 

 

「例え……どこにいても…貴様らは絶対に許さん」

 

「見てろ…絶対に潰してやる…ッ!替えがあるなら…無くなるまで!潰し続けてやるッ!!!」

 

 

セイレーン本体では無い。

今回のテスターも…他のセイレーンも…人格プログラムが無事であれば実行プログラム…所謂ボディを取り替えれば何度でも現れる。

 

 

 

 

 

しかし…いくら叫んでも…空は何も答えてはくれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

救は膝から崩れ落ちる。

 

涙が溢れて…溢れて止まらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「手酷くやられたようじゃないか?」

 

「正直舐めていた…奴の可能性を…」

「神崎…救!!面白い!!あはは!!」

 

 

 

「ふむ…やはり…覚醒…が鍵か…」

 

「覚醒した者は駒として変質するみたいだな…」

 

「あの人間は…それに強く関わるみたいだな…」

 

「…だが……今回は奴にとっても…苦い経験となったろう」

 

 

 

 

 

「次の再現は……堂々とやろうじゃないか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

執務室。

 

 

アレから鏡面海域は消え去り、無事に本隊と合流できたが…。

艦娘にとっても

その内容は受け入れ難く…。

 

 

 

特に救は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

執務室に来たのは…金剛と桜赤城だった。

 

「…ダーリン…」

金剛が差し出したのは…

かつて…桜赤城だったモノ…金剛だったモノ…メンタルキューブのカケラ…。

 

「…たしかに……あのコンゴーは…コンゴーだけの誇りを胸に逝きマシタ……」

 

 

やはりダメだ…

例えどんな存在でも…お前達が目の前で消えたのは……

誰かを失う痛み…は

耐えられない程に辛い。

 

俺はあの時の弾丸とそのカケラを…瓶へと入れて握りしめた。

 

 

 

 

 

 

 

彼は俯いたまま…瓶を握りしめていた。

 

 

 

「お…俺がもっと上手くやれていたら……こんな思いはしなくて済んだのに……」

 

「俺が…俺に力があれば……あんな事にならなかったのに」

 

 

 

 

ポタポタと…流れ出る彼の(優しさ)

例え偽物と言えども…そこまで思ってくれる。

それは彼が彼である所以なのだろう。

 

 

……

 

 

 

 

「ダーリン…」

 

「指揮官様……」

 

 

 

2人はぎゅっと…彼を抱きしめる。

壊れそうなほどに強く。

 

私達は…ここに居るよ…と教えるように。

 

 

 

 

 

 

皆も何も言えない。

戦果だけで見れば…自陣の轟沈も0

 

相手のボディを壊したのだから…対して甚大なダメージを与えたはず…なのだ。

 

 

 

戦いには勝った…

しかし…彼はそうは思わない。

 

 

 

何故なら…彼女が死んだから。

例え…偽物だろうと何だろうと…

 

 

 

これは初めて彼が味わう敗北だった。

 

 

 

 

 

その傷は…深く彼に刻みつけられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日からだった…彼の顔から笑顔が消えたのは…。

 




戦いに勝って勝負で負ける。

原作の設定との細かな違いはご了承ください!




少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。
感想等お待ちしてます!


投稿時間がバラけてるのはすみません!
統一しようとは思うのですが…
どの時間がいいか悩んでます すみません!


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179話 虚を映す鏡の中で ③ 艦娘とKAN-SENと提督

アレから何日も過ぎた。

 

 

あれから…彼は笑わなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日々、執務に加えて身体を鍛えるためにトレーニングをし、

工廠に赴き、人間でも扱える対セイレーン用の武器の製作に注力している。

 

 

それほどまでに傷は深いのだろう…

 

 

 

ずっと真剣な表情をしている。

思い詰めた表情をしている。

 

 

 

 

 

バカ話をしなくなった。

 

ティータイムもしなくなった。

 

ご飯中も喋らなくなった。

 

 

 

 

部屋で1人で泣いている時があった。

 

 

 

 

弱音を言わなくなった。

 

 

 

 

 

前よりも…誰かが傷つく事を恐れて

より守りに入り…小破すら即入渠…と厳しくなった。

 

 

 

 

 

 

 

フラフラとする彼が痛ましい。

 

 

 

 

 

 

しかし誰も彼に何も言えない。

 

鬼気迫る表情を見れば…誰も…何も。

 

言わなきゃいけないと分かっていても…。

 

 

 

 

 

 

 

そんなある日だった。

 

 

 

 

 

「提督…もう…やめましょう?」

夕張が涙ぐみながら言った。両手を胸の前で握りしめ…震えながら言う。

 

 

 

 

 

 

「何故だ?」

 

「無茶…しすぎですよ…」

 

「これくらい平気さ!」

 

「……でもッこれ以上無理をしたら体が…」

 

 

 

 

 

「じゃないとお前達を守れない!!」

救は怒鳴った…。

 

 

「ぁ……」

 

夕張達は一歩後ずさる。

 

「……すまん…」

救はハッとして言う…。

 

 

が…夕張はまた前に出る。

 

「1人で背負い込まないで下さいッ!!」

 

夕張は言った。

 

 

どれほどに勇気が要るか…

どれほどに震えるか…

それでも彼女は言わねばならなかった。

 

 

「弱かったって…提督は私達を守ってくれてます!」

「あなたが…私達の帰る場所なんですから!」

 

 

「夕張…」

 

「戦うのは私達の仕事なんです!!!」

 

「提督は……笑って…怒って…泣いて……私達を迎えて…それで…それで…いつもの愛情を向けてくれたらそれでいいんです!」

 

「一緒に戦うってのは…あなたまで前線で武器を手に取って戦うことじゃないんです!あなたの心は私達が背負って連れて行きますから!」

 

 

 

 

「でも…俺は…もう…あんな思いを」

 

 

 

「私達も一緒に強くなりますから!」

 

 

「……!」

 

「あなたも…あなたの大切なものも守れるように…これ以上あなたに辛い思いをさせないように…強くなりますから!」

 

 

「これ以上…自分を責めて…自分をすり減らさないで下さい!!」

 

 

 

 

 

 

副元帥とか言うめちゃくちゃな役職についてから…

余計に忙しくなった彼…。

 

鎮守府でも所謂

外相、通商、その他を引き受け

住民との交流、全てを担い

大本営からの仕事も増えた。

誰よりも艦娘達の近くで一緒に戦い

誰よりも…彼女達を…守ろうとする

 

なのに…

 

休まずに働いて

トレーニングして

研究開発をして…

 

 

 

 

心の傷は深いのだろう

消えないのだろう

夢でうなされる程に

 

何かをやってないとダメなんだろう

 

 

 

でも…

私達が居るんです

 

言いましたよね

あなた1人くらい背負えるんだって

 

なら

あなたの悲しみも…背負います

 

 

 

 

あなたが悲しいなら

私達も悲しいのです

 

戦争だから仕方ないなんて言いません!

 

忘れろなんて言いません

思い出すななんて言いません

 

 

でも

 

これ以上辛い思いをしない為に

皆で強くなりましょう?

 

 

あなたまで…遠くへ…遠くへと離れて行きそうで…

 

 

怖いんです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手に残る感覚も

唇に残る感覚も

頭に残る映像も

心に残る感情も

 

 

全てを乗り越えて…

強くなるんです。

強くなるしかないんです!!

 

超えて行かなきゃ…ダメなんです!!

 

でもそれは…

あなた1人だけで…なんかじゃないんです!!

 

 

 

 

 

 

 

「見てください!」

 

「周りの艦娘の悲しそうな表情を…」

「皆…私と同じ気持ちなんです!」

 

「頼ってくださいよ!私達を…」

 

「折れそうなら…折れてもいいんです!私達が繋ぎ止めますから!」

 

「不安なら甘えていいんです!私達が受け止めますから!」

 

ボロボロ涙を流しながら…ぎゅっと目を閉じて叫ぶ夕張。

 

 

 

「その…苦い敗北も…辛い思いでも…」

 

「私達も一緒に背負いますからッ!お願いします!!元の提督に戻ってください!ふざけて笑って…皆の拠り所で…バカで…真っ直ぐで優しくて、カッコよくて、大好きな提督さんに戻ってください…」

 

 

 

 

「私達じゃ…足りませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつからだろう…彼女達の笑顔を見なくなったのは…

 

 

いつからだろう…

日課のティータイムすらやらなくなったのは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バカだ…

 

憎いだけに囚われて…

 

もう何日になるか

笑う艦娘を見なかったのは…

鏡に映る自分の…目は…まるで別人で…

 

 

俺は誓ったはずだ

 

彼女達の笑顔の為に…ここに居ると。

 

 

 

悲しくて憎くて…見落としちゃいけないものまで見落としていた。

彼女達まで…失いたくない。

俺は…俺にはまだ…

 

 

 

 

「…皆ごめん」

 

「……どこかに自信があった。負けないっていう…。でも今回でわかった…こんな負け方もあるんだなって…。お前達とは違う存在だと心でわかっていても……辛かった。例えコピーだろうと…その存在に変わりはなかったんだ。俺がもっと上手くやれてたら…強ければアイツらが死ぬことはなかったんだって思って…。」

 

「…俺は何もできない…こんな無力な自分が憎い…もう…あんな思いはしたくない…させたくないって思ってた。なのに…大切なお前達を見ずに自分勝手に走ってた……すまない」

 

 

救は頭を下げた。

 

 

 

 

 

「頼む……俺に力を貸してくれ…俺にできることは何でもやる」

 

 

 

「……私達を見てください」

 

「え?」

夕張の声に顔を上げる。

 

 

そこには居た。

皆が居た。

 

見落としてたものが

大切なものが

そこにあった…。

 

 

 

 

「私達は…あなたと共に在ります。例え地獄のような戦火の中でも…苦境でも…どんな時でも」

 

「ですから…忘れないで下さい」

 

 

 

 

「ああ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……久しぶりに一緒にご飯食べませんか?」

 

「ああ…食べる」

 

 

 

 

 

 

 

「隣…前の席は私が…」

その一言を皮切りに始まる闘争。

しかし…心なしか笑顔で行われていた。

それすら懐かしく感じた。

 

 

 

和気藹々と食べるご飯は美味しかった。

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夕張」

 

「はい」

 

「ありがとう」

「本当にありがとう」

 

 

「……私だって…あなたのことを見てます」

 

「分かりますか?どれだけ私が嬉しいか」

 

「この手を……」

「この手を握ってくれたのは提督なんです」

 

 

「何を…「当たり前のことですか?」

 

「ベルファストさんも…この手を…油と煤だらけの手を握ってくれましたけど…」

「最初にそうしてくれたのはあなたですよ」

 

 

 

よろしくな…と握手をしてくれた。

 

私は…汚れますよ!と言った。

 

だから何だ?と返した。

提督は…そう言うものだろ?

椅子に座ってふんぞりかえるだけじゃない。

お前達と苦楽を共にするんだ。

だから…お前と同じ煤に塗れることが出来るなら…喜んで塗れるさ。

服が汚れたなら替えればいい。

手が汚れたなら洗えばいい。

そこに煩わしさも無い。

一緒に笑いながら手を洗おう

一緒に洗濯しよう。

 

 

でも…軍服が…と私はは言った。

 

 

 

軍服が汚れた?

だから何だ。

誇りは服で決まるものでは無い。

 

己の心が軍人として…そうあるからこそ誇りと言うものは生まれるんだ

 

綺麗な軍服よりもな…

戦場で傷んだ服…体の傷の方が誇りだろうよ。

 

もし…この服を見てだらしない!と言われたら…

それが皆と共に在るという事です…と言うさ

 

 

 

と言ってくれましたね。

 

 

 

「それで私は救われました」

 

「だから…今回は私が助ける番だったんです」

 

「ありがとう…夕張…」

 

「私も…提督のこと好きなんですからね?」

 

「ああ…俺もさ」

 

「えへへ…少しでも役に立てたなら良かったです」

 

そう言いながら夕張は部屋に帰っていった。

 

 

 

 

 

俺の心には…

今回の件で種が撒かれた。

不安とか…憎悪とか…敗北…色んな種だ。

 

この先も…同じように苦しむだろう…もしかしたら…また…

 

しかし前に進むしか無い…

もう…彼女達みたいな者を増やさない為に…。

奴らの企みを

 

 

叩く。

 

 

俺も強くなる…

皆と一緒に…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……今回の件で甘味処間宮の売り上げがものすごいことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





最初の…ね。


大石と重ねると言うか…対比になってると言うか…
本当に少し違ったらそうなっていた可能性はあるんですよね。

何のきっかけでそうなるかはわかりませんし
今までに対峙してきた人達と同じ道を辿る可能性は十分に在る訳です。

この挫折と再スタートがどうなるか…

それが今後にどうなるか…はお楽しみ…で。


テスターがめちゃくちゃ嫌なキャラで言ってもらったら
思った以上に嫌なキャラ化しました。
何名かの方から…辛すぎる!あのキャラ…やべえとお声をいただきまして…嬉しい限りです。

チュートリアルというかデモ的な感じなので
こんな感じでちまちまやって行きますよ!



感想やメッセージなどお待ちしています!
ぜひお気軽にお願いします(๑╹ω╹๑ )!


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180話 榛名と1日夫婦 ① 榛名は大丈夫じゃないです

 

「榛名は…榛名は自分が許せないのです!!!」

 

横に座った榛名が泣きながら言う。

 

 

 

 

 

 

明日から始まる榛名との1日夫婦生活はそんな榛名の言葉から始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰ってきたダーリンさんは…

今迄に見たことのない表情で

触れば壊れてしまいそうな…

 

でも…

どんどんと怖い方へ向かって行きました。

 

 

夕張さんの言葉や皆の言葉で…ダーリンさんは…

また元に戻った…。

 

 

でも

 

 

私は…榛名は…何もできてません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お…榛名、いらっしゃい」

 

 

 

「ダーリンさん!!」

 

 

「…榛名は…!榛名は自分が許せません!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「事あるごとに…ピンチになるダーリンさんの側にはいつも榛名は居ません!榛名は…指輪を貰っていたのに…」

 

 

「このダーリンさんへの気持ちは…お姉様達にも霧島にも負けないのに!」

 

「榛名は自分が許せないんです!!」

 

「あんなにボロボロなダーリンさんに何も出来ませんでした!!」

 

 

 

 

 

 

「何が嫁ですか!」

「何が…ダーリンさんですか」

 

「榛名は…何のお役にも立ててないのに…」

 

「何が……うっ…うわぁぁあん」

 

 

榛名が泣いた。

 

 

なりふり構わず…泣いた。

 

 

 

「…榛名…ごめんな」

 

 

「少しでも……ひぐっ…目を離したら…ダーリンさんが…うっ…遠くに行っちゃいそうで…ぐすっ」

「そんなの嫌で…ぐすっ…怖くて…怖くて」

 

 

タオルを渡そうと立ち上がろうとして気づいた。

榛名は…俺の服の裾にしがみついて離れない。

 

「行かないでください…1人にしないでぇ」

 

 

 

「こんな重くてダメダメな艦娘は……いけないでしょうけど……私は」

「榛名は…ダーリンさんに…ずっとそばに居て欲しいんです…」

 

 

「どこにも行かないで!」

 

 

「榛名…」

 

 

 

 

 

確かにバーサーカーじみた行動もする。

しかし…

実は榛名はいつでも一生懸命俺の横に居ようとする。

 

 

秘書艦の日は頑張るアピールをしつつ

テキパキと仕事をこなして俺との暇な時間を少しでも作ろうとする。

その時のティータイムにら絶対にお菓子を作ってきて食べさせてくれる。

 

食堂では近くへ座ろうとするし

軽食はいりますかー?とほぼ毎日声を掛けてくれる。

 

欲しいー!って言うと

「榛名が愛情込めて作ります!」

と作ってくれる。

 

他の子が作ってると

「わかりましたー!またお腹が減ったら言ってください」

とほんの少し寂しそうにする。

 

少しでも疲れた感じの雰囲気を察すると

「お肩をマッサージしますよ!」

と言い…

 

何もない時でも

「何かお手伝いできる事はありますか?」

と言うんだ。

 

そのくせ

何かあった時は

「榛名は大丈夫です!」

と…弱いところを見せないのだ。

 

 

 

 

 

いつもどんな時でも、笑顔で少しでも俺を元気にしてくれようとする榛名が…

 

 

 

 

その榛名が…泣いている。

胸の内にある不安を…吐露している。

 

 

 

ダーリンさんと呼ぶ榛名が

 

泣いている。

 

 

 

 

 

 

 

 

「榛名…」

 

 

「…ごめんなさい…榛名はもう大丈「…榛名」

 

 

抱き締める…それ以外に思い浮かばなかった。

我ながら情け無い。

 

 

 

「ダーリンさん…?泣いてるので服が濡れます」

 

「そのくらい…いい。…お前の方が大切だから…もっとその…不安は俺に言ってくれよ」

 

「ダーリンさんの負担に…」

 

「いいじゃないか」

「我慢して潰れる榛名は見たくないな」

「それ「…好きな人には…甘えて欲しい」

 

 

 

 

 

 

 

「……夢に見るんです」

 

「ダーリンさんが…また遠くに行くんです。……榛名は頑張って、行かないで…と手を伸ばすんですけど…いつも…悲しい表情のダーリンに…いつも届かなくて…。その後に現れた…遠くに見えるダーリンさんは、私達が居なくても…笑顔で…」

 

「きっと、役に立たないから…離れちゃったんだなあ……ダーリンさんの幸せには榛名は無くてもいいんだって」

「それがいつか現実になりそうで怖いんです」

 

「榛名…」

 

 

榛名は…小さく…カタカタと震えていた。

 

「…どこにも行かないさ」

俺はそのまま…頭を撫でる。

 

「そんなのわからないじゃないですか!」

 

 

「……そうだなあ」

「でも…お前達が居なくならないか…俺も不安なんだ」

 

「あ…」

 

「毎日…出撃するお前達を見送るのが怖い。作戦途中に通信が入るのが怖い…この世界が夢だった…なんて毎朝目覚めるのが怖い」

 

 

明日とも言えぬ命…だからこそ

ただ…ひたすら願う。

1日も早い平和と…安らかな未来を

 

 

あの日見た…例え偽物のお前達でも…

ずっと心に影を作るくらい辛かった。

 

でも…決めたんだ。

強くなるって…何があってもお前達と…生き抜くと。

 

 

だから戦う…。

お前達と明日を生きるために。

 

 

ごめんな…そんな辛い思いをさせて…。

 

「よく…言ってくれたな、榛名」

 

「ダーリン…さん」

 

 

榛名の左手から…あるものを外す。

 

「あ…」

落ち着かない。

それが無いだけで…心が騒つく。

 

それが私とあなたを繋ぐ…約束の証だから。

 

 

それを…優しく磨いて

もう一度あるべきところへ

 

 

「…俺の幸せには…君が居ないとダメだ。君がいつも俺の為に何かをしようとしてくれているのが嬉しい。いつも感謝している…。ごめんな…そんな思いをさせて…そんな顔をさせて」

 

 

「榛名…誓うよ。俺はどこにも行かない。ずっと…ずっとこの命尽きるまで…お前達の側に居るよ」

 

榛名は…それでも…泣きながら言う。

 

 

「今日は…今だけは…榛名のそばにいるよ…と言ってください……」

 

「…ずっと…この命尽きるまで…榛名のそばに居るよ」

 

「ぐすっ……誓いますか?」

 

「お…!?あ…あぁ、誓うよ」

 

「なら…誓いのちゅーを……ぐすっ」

 

 

 

「可愛いなあ…お前は…」

 

ちゅっ…と交わした口付けは…涙の味がした。

 

 

 

 

「うわぉぁあん!!ダーリンざぁぁん!!」

むぎゅううう!!

 

 

 

彼女も1人の女の子なのだ。

世が世なら…今頃普通の生活を送ってるのかもしれない。

それは自分も一緒なのだが…

 

でも…こんな世の中じゃなかったら

きっと出会ってなかったのも事実…。

 

 

ならば

せめて…少しでも彼女達が流す涙を無くすのが俺の役割だ。

 

違え掛けた道は彼女達のお陰でまた同じ道に戻れたから。

 

 

「よしよし……」

 

「うう…うー…っ」.

暫くの間…ずっとこうして過ごしたのだった。

 




榛名は割と常識人枠です。
……環境によって常識とは変わるものですが……。
健気な子だと思ってくれたら…。

本当健気な子なんです。



180話ですねえ…
早いもんで……

少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!!

感想などおまちしてますー!


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181話 榛名と1日夫婦 ② 榛名は大丈夫です

「榛名はもう大丈夫です!」

 

 

 

 

「…今日…明日は…ダーリンさんを独り占めさせてください」

 

「おう」

 

「目一杯泣いたら…お腹空きました…。ダーリンさんはお腹減ってませんか?」

 

「ん…減ったな…。いつも悪いなあ…聞いてくれて」

「何かもらおうかなあ」

 

「待っててくださいね」

 

 

 

「今日は少し贅沢ですよ!」

 

「おおー!即席ラーメンに…たまごとほうれん草入りか!」

 

「榛名のおにぎりもついてます!」

 

「確かに…夜食の組み合わせは…禁断の組み合わせだな」

 

「間宮さんや鳳翔さんが見たら怒るやつですね」

 

「なら…2人で食べるか」

 

「はい♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう…榛名」

 

「おはよう御座います」

 

「……」

 

「……」

 

 

「「お腹空かない……」」

 

と言うのも…夜食に満足したが…

その後に見た映画がマズかった。

 

ホラー映画を見てひたすら怖がった後にコメディーを見たのが失敗だった。

コレが…お菓子とジュースにアイスがよく合うんだ…。

 

「…なんかイケナイことしてるみたいですね」

まあ〜健康的ではないからねえ…

怒られるだろうけど…まあ今日くらいいいじゃん?

 

横に寄り添いながら2人で過ごすのは…なかなか良い。

 

 

『ダーリンさん……』

 

『ん?』

 

『……』

え?何?目を閉じて…あーーーキスしろ的な?

 

え?

殺人鬼がキャラを追い回してる時に?

ピンクシーンじゃ無くて…スプラッタシーンでそれを求めちゃう?

 

『こ、怖いので…お願いします…』

 

『なるほどね』

 

軽くキスをする。

 

笑顔で画面に視線を戻して先には…びっくりシーンが!!

『コレで榛名は大丈b…きゃぁぁあ!!』

『は、榛名は大丈夫じゃありませんんんんん』

 

 

結構可愛いな…とか思いながら…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……コーヒーでいいですか?」

 

「そうしよう…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…言い残すことはありますか?」

 

「「え"!?」」

 

やべえよ…間宮と伊良胡の奥に修羅のオーラが見えるッ

 

「………は、榛名が作りました!」

「俺が作ってくれとお願いしました!!」

 

「……まったく…」

「…少しは健康に気を遣ってくださいね!」

 

 

「「はい!!」」

 

 

 

 

 

「「「「「「行ってらっしゃい!」」」」」

 

「たくさんダーリンに甘えてくるデース!」

「ダーリン!帰ったら甘えさせてネー」

 

 

「ダメです!今日は榛名が奥さんなんですからね!」

 

「む…ムウ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてさて

榛名と来る場所…

四越…

 

四越!!

 

 

1多い?

 

 

君のような勘のいいガキは…嫌いだよ……

察しなさいよ…大人の事情だよ。

 

何かね…来なきゃいけない気がして…。

 

 

 

「し、自然と足がここに向かうんですよね…」

 

多分それは魂に刻まれた…記憶(コラボ)だよ。

グラスとか…5万円以上するちゃぶ台とか…。

 

 

 

 

「あー!!スイーツ展ですよ!ダーリンさん!」

 

「…ダーリンさんか…」

聞いてて慣れてけど…何か笑えてくるw

 

「あ…なんか変ですよね…。なら…今はあなた…でも良いですか?」

 

「あぁ…」

 

「あなた!」

 

「榛名!」

 

「えへへ…」

 

 

 

 

 

 

「ぐぎぎぎいいい!榛名…何いい雰囲気になってるデース!」

 

「こ…金剛お姉様…」

2人を覗くのは金剛と霧島。

 

「最近…マジで正妻ポジを奪いに来てマース…」

 

「観察を続け………あ?」

 

 

「はーい…帰りましょうねー…」

 

「ちょっ!比叡!?霧島!?」

 

「邪魔はダメですよー…」

 

「頑張る妹を応援しましょねー」

 

「シーーット!!正妻ポジは譲らないデースううう」

と引きずられて行く金剛…。

 

「何にですか…」

 

 

 

 

 

「お…お姉様…」

 

「金剛…」

 

 

 

「さあ…気を取り直して…」

 

「…榛名は何にするの?」

 

「…実は…あまりスイーツには詳しくなくて…あなたのオススメで…」

 

「なら…やはり…この平和堂のシュークリームか…」

 

 

なんと言っても…カスタードがぎっちり詰まっている。

シューは薄めなのだが…しっかりした生地である。

ずっしりとしたソレ見た目にはわからないが…一口食べれば分かる。

 

甘いのだが…あっさりしてて…

ぶっちゃけ何個でもいける。

 

 

「ん…美味しい!!幸せですーー」

 

「このチョコシューもおいしーぞ!」

 

「はう……美味しすぎます…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「観覧車…ですね」

 

「乗る?」

 

「はい!!」

 

 

「行ってらっしゃいませー!」

と、店員に見送られながら観覧車に乗る。

 

ゆっくりと景色が高くなってくる。

見える夕焼けに染まる街並みは…黄昏時に相応しい哀愁すら感じる。

 

「綺麗…」

榛名が言う。

 

その感嘆の気持ちと共に…

 

「もう夕方ですね」

 

振り返れば1日の終わりが夜とともに近付いて来る寂しさも押し寄せてくる。

 

こちらに振り返る榛名は夕陽が輝いて影になっているが…

少し寂しそうな表情をする。

 

 

「明日の朝まで…あるぞ?」

 

「そうですね」

 

「今日も一緒に寝て良いですか?」

 

「いいよ?」

 

 

 

 

 

「もうすぐ頂上ですよ!!」

 

 

 

 

 

「あなた…」

 

「ん?」

 

「榛名は…あなたを愛しています!」

榛名は少し涙ぐんで…でも笑顔でそう言った。

 

夕陽に映える彼女が…物凄く…儚く…綺麗に見えた。

 

「俺も…愛してるさ!」

 

「はい!!」

榛名はスッと隣に座って…肩に顔を寄せてくる。

「あなた…」

 

「ん……」

 

と…キスを………

 

 

 

「えへへ…榛名は幸せです」

 

 

「……!?」

「あ、ああああなた!!!」

 

榛名が指さす…。

 

 

その先…隣のブースに乗ってたのは…

 

 

「…………榛名…」

 

 

 

「お姉様ッ!!!!」

 

 

 

金剛でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「金剛お姉様!?」

 

「榛名…」

 

 

「……幸せそうで安心デース」

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

榛名が1番憤慨したのは

救がテスターに汚された話をした時だった。

大好きな人の唇を奪われ、トラウマを植え付けられ…

 

泣きながら聞いていた榛名だった。

あの時の榛名は…怒りのぶつける矛先が無くただただ泣いていた。

 

自分が何も出来ていないという無力感と…やるせなさ

ましてや…あの変わったダーリンを見ていたなら…余計に

 

 

 

しかし今は違う。

私の目の前に居るのは

絶対にダーリンさんをそれ以上に幸せにしますと誓った榛名だった。

 

 

 

 

 

「…榛名がダーリンを愛してるのは知ってマース。色々と悩んでるのも…ネ。物凄く心配でしたケド…心配いらないみたいデスネ」

 

さっきまでの表情とは違う…妹への慈愛に満ちた表情で榛名を見つめながら頭を撫でる金剛。

 

 

「………はい!金剛お姉様!榛名は…大丈夫です!!」

 

榛名は…はっきりと答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手を繋いで歩く帰り道。

 

鼻歌混じりで歩く榛名は…幸せそうで…。

 

「そうだ…榛名」

 

「はい!何でしょう?」

 

「これ…を君に」

と…ダーリンさんが差し出したのは……お姉様とは違う髪飾り。

 

「…榛名に…ですか?」

 

「うん…つけていいかな」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

「似合いますか?」

 

「とても」

 

 

 

榛名は2、3歩先へ行き振り返る。

 

 

 

「榛名は…幸せです!」

夜の街灯に反射してキラリと光った髪飾りと榛名の笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思い出す。

画面越しのあなたが…くれた指輪を…。

 

 

輝かしい今の日々を…。

 

 

 

「ダーリンさん…愛してます…。昔も今も…この先も…ずっと…ずーーーっと愛してます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「い〜〜〜や〜〜です〜〜!」

 

「榛名!もう終わりだから!終わりだから!」

「榛名ー!行くデース!」

「榛名お姉様!……何ですか!この力は!」

 

3人がかりで私室から引きずり出そうとする姉妹としがみつく榛名。

 

 

「何で3人がかりで微動だにしないデース!?」

 

「愛の力ですー!榛名はダーリンさんから離れたくありませんーー!」

 

「子供じゃないんだからー!!」

 

「子供でいいですー!!」

 

 

そんなやりとりが…あったとか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お気に入りか570ですね!
ありがとうございます!

もうすぐで全投稿だと200話行きますね!
今月中には行くんじゃないかな?と思います!多分!!
応援…よろしくお願いします!





榛名会!どーでしたか?!



次回は…うん
友情?そんなお話…多分。





質問…答えますね!

コロナ禍ですが大丈夫ですか?

大丈夫…ではないですねー!
色々大変でーーす!!
恐怖ですね!



休まないんですか!?

休みますよ!
うん…休みますよ!



オマエ…ナニモノ…



シガナイ…シャカイノハグルマ…








感想、コメント、評価お待ちしています!
メッセージもお待ちしています!質問でも雑談でもOKです!
お気軽に…お願いします!




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182話 思い駆ける赫の彗星 ①

親友…
そんな2人が少し奮闘する話。
ほのぼの…日常話です!
2度言います!


ほのぼの日常話ですッ!!!





















少し胸糞表現ありマス


「あ?何だテメェ…」

 

「今日から暫くよろしくな」

 

「ケッ…馴れ馴れしい」

 

 

とある鎮守府の天龍と加古を預かることになった。

 

この2人…相当な問題児らしく

かと言って改ニなので…戦力的も期待できる。

なので解体や退役にも出来ない…。

 

今後の方針を考えてくれないか?何なら無茶を押し付けられた。

…かといって彼女を受け入れてくれるような鎮守府はない。

 

 

『ケッ…お偉いさんだか知らねえけど…調子に乗ってんじゃねえぞ?誰だろうと…気に入らねえ奴は殴る!それが俺だ』

 

「………」

 

『何だ?ビビってンのか?』

 

「……仕事中だ…」

 

『あん!?』

 

「すまん!本当に忙しいんだ」

「適当にくつろいでくれ。腹が減ったら食堂に行ってくれ」

 

 

天龍が胸ぐらを掴んでくる。

 

「なっ…おい!何するんだ」

 

『何だって…?テメェ!!』

 

「天龍さんッ」

大淀が叫ぶ。

ベルファストは今は備品を取りに行ってるし…秘書艦の夕張も…

 

 

 

「…提督ー!開発が完了しまし…」

 

 

 

「おお、夕張か!お疲れ様…お、鈴谷も」

 

 

「あの…何をしてるんですか…天龍さん」

 

『あ?何だ…実験感触の夕張か…』

 

「…その手を離してください」

天龍の腕を掴む夕張。

 

 

『仲良しごっこかよ』

ペシペシと救の顔を叩く加古。

 

「離しなよ…その手」

「違います」

 

『…センノーかよ。お前達も可哀想だよなあ…』

と天龍が言う。

 

『 アレか?毎日…夜のお世話か?こー言う奴は大体そうなんだよなァ…。雑魚のくせに権力にモノ言わせてよぉ…』

加古がゲラゲラ笑いながら言う。

 

 

「提督はそんなことないですよ」

 

『あン?どれも一緒なんだよ!コイツも所詮!クズで外道なクソ野郎なんだよ!』

 

『んでテメェらはそのカスに媚び諂って従う同じカスなんだよ』

 

 

 

 

 

 

 

「あ?」

 

「何て言いました…?」

 

大淀はギョッとした。

2人が…キレた。

 

 

 

 

 

『あ?聞こえなかったか?』

 

『どっちもクズで外道でカスなクソ野郎って言ったんだよォ!!』

 

 

 

 

 

 

「おい…天龍………」

 

『何だよ…』

 

「今の言葉取り消せ」

 

『やだね』

『どーしてもってんなら…この天龍様…と加古様改ニを倒してみな』

 

何でそーなるんだよ…。

 

 

「お前な…「「わかったわ…」」

 

「夕張!?鈴谷!?」

救は驚いた。

 

「ごめんなさい…提督。でも私…許せないです」

 

「…夕張……」

 

2人の目は本気だった。

 

 

「……はあ…。わかった。夕張…鈴谷…3人で戦おうか」

 

「「…はい」」

 

『早速やろうじゃねえか』

 

 

 

 

 

 

 

演習場にて……

 

 

「天龍…夕張からの伝言だ…。お前は武装して構わん。実弾で良いッ!!コッチは…模擬「やっぱり素手で良いです」

 

救の言葉を遮った鈴谷。

 

「え?…す、鈴谷さん?」

 

「素手で十分です…こんなハンパな跳ねっ返り…素手で十分よッ」

 

『ほー!言うじゃねえか!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

……

 

『どーしたよ!?さっきまでの威勢はよおおお!!』

 

 

夕張も鈴谷も天龍と加古に追い詰められ、ボコボコにされてた。

 

『おらよ!!』

 

「きゃあ!!」

 

「夕張!」

 

『余所見してる暇あんのか!?」

 

バキィ!!

「ぐはっ!!」

 

 

 

 

 

 

分かってる…

改ニ相手に私が…相手にならない事くらい

 

なんで素手とか言っちゃったのかな…

ううん……これは意地だ

 

私は……負けられないんだ!!

 

 

夕張が攻撃を繰り出すが天龍は笑いながら避ける。

 

『ほらよ』

ゴスッ

 

『どこ見てんだバァカ」

ドコッ

 

『オラァ!!』

バキッ

 

「くぅ……」

 

 

 

なのに…頑張ってるのに……

届かない…なんて悔しい…!!

 

『雑魚が調子に乗るな!!蜂の巣にしてやんよ!!クソ艦娘!』

『あのクソ提督も…お前も!ぶち壊してやる』

 

 

 

天龍が離れて掃射してくる。

 

 

逃げるな…私ッ!!

決めたんだろ!

強くなるって!!

 

 

「訓練もまともにやって無いバカの弾なんか…当たるかッ!!」

 

夕張はその弾雨の中に突っ込んでいった!!

 

 

 

強くなるって決めたんだ…

こんな奴に…負けるものか!!!

 

砲撃の合間を潜り抜けて一気に距離を詰める。

 

「ちょこまかと!!!」

と、天龍が右腕を大きく振りかぶり…殴ろうとしてくる。

 

 

 

 

「勝手に…カスだの何だのと決めつけてッ」

 

 

 

 

 

その右腕を左手で受け流し…

胸ぐらを掴んで

 

背負い投げを喰らわせる。

 

 

ドスン!!

 

「ぐっ!!」

天龍が地面に叩きつけられる。

 

 

「私達の大好きな提督を虚仮にしてッ」

 

 

 

起き上がった天龍の腹に回し蹴りをブチ込む!!

 

 

 

「ごほっ……」

「ガハッ…ゲホッ……このクソッ!ぶっ殺してやるッ」

 

 

天龍が刀を構えて突っ込んでくる。

 

 

「しねええええ!!!!」

天龍が刀を横に払う…横一文字斬りを繰り出す。

 

飛ぼうと思っても無駄だぜ!

俺の剣戟は…早えぞ

 

 

夕張は天龍の思惑通り飛ぼうとしている…

が、刀は既に夕張の肩の近くに有る。

 

確実に捉えたッ!!

 

飛べ…!

そうすりゃ…胴から真っ二つだッ!!

 

 

 

 

 

 

「あの人が…どれだけ優しいか!どれだけ私達の為に涙を流してるかも知らないくせに…ッ!何も知らないくせに!!」

 

 

 

 

 

 

()()()()()

 

 

手応え…有りッ!!

天龍は確信した…斬った!!と。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「どりゃぁぁあ!!!」

 

 

 

 

 

 

刀を振り抜いた天龍が見たのは…

 

 

 

 

 

遥か数メートル上空にいる夕張だった。

「嘘だ…間違いなく斬った!!なのに何でそこにお前が居るンだよ!!」

 

 

 

 

 

 

「お前がッ…あの人を語るなァァァア!!」

 

 

 

自由落下をしながら前方に一回転しながら勢いをつける。

 

そしてそのまま…何度も何度も何度も何度も回転する。

回りながら…奴を確実に捉える。

 

 

そして…

溜められた速度を持った状態で踵落としを天龍の脳天に突き落とす!

 

 

 

バカァン!!!!

 

 

「ぐっ…は」

天龍が膝をつく…

額には血が流れてきたらしい

 

何だよ…あのデタラメな動きは…

 

 

 

 

 

「立て…立ちやがれッ!クソやろう!!!お前が馬鹿にした…提督の艦娘の力…見せてやるっ!改ニだから何だ!!」

 

「ぶっ殺す…絶テェぶっ殺してやるッ!!俺は天龍様だぞ!!」

 

 

 

『死ねェェ!!』

 

夕張はその砲撃を躱す。

 

が天龍は見逃さなかった。

砲撃が地面に炸裂し…跳ねた石が当たるのを…。

 

「…ッ!!」

 

それを見てニヤリと笑う天龍。

 

 

 

 

 

そして……天龍は距離を詰めバッと手を夕張の前にかざす。

その手には砂が握られていた。

 

 

 

「うぅ!」

目に砂がッ…!!

 

夕張の動きが止まる。

 

 

「余所見とは余裕だなッ!!」

 

ドスッ!!

 

天龍の前蹴りが腹に突き刺さる。

 

「うっ!!」

そのままラッシュを打ち込まれる!!

 

 

「チョーシに乗んなよ!このクソがッ!!何が艦娘の力だぁァ?!やられてんじゃねーか!!オラッ」

 

「ぐっ…うあっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴谷も同様に加古と対峙していた。

割とすばしっこいらしく加古を翻弄しながら戦っていた。

 

 

『オラよ!!』

 

「当たんないわよ!」

加古のパンチを回転して躱しながら肘打ちを見舞う。

 

『んぐ!!』

 

フラつく加古に足払いを仕掛けて転倒させる。

『いで!!』

 

そこに腹めがけて拳を振り下ろす。

 

 

『ぐうっ!!…てめぇえ!!!』

 

 

鈴谷は戦闘のセンスがあった。

特に動体視力が良いのか、加古の攻撃をよく躱していた。

 

 

 

 

『このクソビッチがぁあ!!!』

 

「絶対に後悔させるから…」

「あの人のことを馬鹿にしたことをッ!!」

 

 

鈴谷は距離を取る。

 

 

『舐めんなァァ!!』

加古が鈴谷に向かって乱射する。

 

 

 

 

 

 

地面を蹴って前に飛ぶ。

 

 

 

更に蹴って前へ飛ぶ!!

 

 

どんどんと速さを増して距離を詰める!

 

 

 

乱射…?余裕ないのね…でも…

当たんないわよ…そんなの

 

 

 

 

「あんたらには絶対に負けない!!大切なものを踏み躙られる痛み…何倍にしても返してやる!!」

 

 

 

 

「くらええええ!!!」

 

 

 

 

 

ドスッ!!!!!!

 

 

 

加古の腹に鉄拳が突き刺さる!!

 

吹き飛ばされた加古は苦痛の表情を浮かべる。

『ぐぼっ…がは……』

 

『この…クソビッチめ…俺は…加古様だぞ!改ニの……ガハッ…チクショ…もう…いい』

 

 

更に距離を詰めてきた鈴谷にニヤリとする加古

 

 

 

 

加古は何かを投げた。

 

 

「爆弾…?いや…コレは!!」

そして鈴谷はそれを見てしまった。

 

 

 

 

 

 

パァン!!!

ソレは爆ぜた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凄まじい音と光を撒き散らして

 

 

 

 

 

閃光手榴弾…だった。

 

 

 

「うっああああ!!!」

 

鈴谷は視力と聴力を奪われた。

 

 

何も見えないッ!!

気配も…音も……

 

 

 

 

『オラァ!!仕返しだッ!!』

鈴谷の腹を殴る。

 

「ぐっ……このっ!!」

 

『おーっと…当たるかよ!!』

バキイ!!

 

「ぐあっ」

 

転んだ鈴谷を踏みつける。

『オラ!オラァ!!死ね!死ね!!』

 

 

 

「うっ!」

 

「ぐぅっ!」

 

 

 

 

 

………

……

 

 

 

 

 

 

 

夕張の髪を引っ張り上げて…いる天龍

 

そこに同じく加古も鈴谷を連れてくる。

 

 

 

 

「す、鈴谷……」

 

 

 

天龍がコソコソと加古と話をしている。

加古は…話を聞いてニヤリと笑った。

 

 

 

加古が2人の髪を掴み顔を持ち上げる。

 

そして天龍が言う。

「おいカスども…参りました天龍様…加古様…私はカス提督の雑魚の艦娘ですって言ったら許してやるよ」

 

 

「……」

 

 

ボコッ

天龍がそのまま夕張の顔を殴る。

 

 

「……言えよ」

 

それでも夕張は何も言わない。

 

ボコッ!

 

ボコォ!

 

『意地張ってんなよ!言えよ……』

 

ボコォ!!!

 

『そーいや…あのクソ提督…言ってたなァ…。負けたら俺の言いなりになるってヨオ!!どんだけお前のような雑魚を信じて…いや…お前レベルの雑魚しか居ねえってことか!!』

 

『あははははは!!!面白えよ!!』

 

バキッ

 

ドコッ

 

 

 

『早く認めろよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……〜〜」

 

鈴谷と夕張がボソリと何か言った。

2人は嬉々として耳を近づけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人は大声で叫んだ

「「クソ喰らえ!!誰がお前なんかに負けるか」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブチィ!!

天龍はキレた。

『コノオオオ!!』

 

力任せに思い切り2人を殴りつける。

 

バキィッ!!

 

「ガハッ…」

 

 

 

 

 

殴り飛ばされる…

 

 

 

 

 

 

「もう良いよ…死ねよ」

天龍は刀を手に取った。

 

 

 

 

 

 

「……」

 

負けたくない!!

私は…負けられない!!

 

だって!!

だって!!!!

 

 

 

 

「夕張!!鈴谷!!」

立ち上がる夕張と鈴谷に救が声を掛ける。

 

 

 

「て…提督…」

私は…弱いよね…ごめんなさい…

提督の顔に泥…塗っちゃう…。

負けたら……

 

 

 

 

 

 

 

「忘れるな……お前達は1人じゃ無いッ!!()()()()()()()()()()()()()()()俺の心も…連れて行ってくれてるんだろ?」

 

 

 

 

実の所

救は、負けたら同じカス扱いで構わないとしか言ってない

 

だが…天龍の言い方では…まさに下僕にされるとしか思えなかったようだ。

 

そして何より2人はキレていた。

そして…忘れていたのだ。

 

 

 

 

 

 

自分が何を言って…戦うするのかを…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだった…

私が忘れてた…。

 

 

 

私が言ったんだ。

 

 

 

 

「そうだ…ごめんなさい…提督…私、1人で戦ってちゃいました……」

 

「鈴谷も…忘れちゃってた…」

 

「忘れられると寂しいぞ」

 

呼吸を整える。

うん…大丈夫!!

 

 

 

「鈴谷…いける?」

 

「もちろん…夕張は?」

 

「余裕…よ!」

 

「なら…親友同士で…提督も一緒に行きましょう!!」

 

 

 

「行くよ…!見てて…力を貸して!!」.

 

「行きます…提督…力を…勇気を…踏み出す心を私に貸してくださいッ!!」

 

 

 

 

夕張と鈴谷は駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




親友コンビの戦…成長物語!

天龍も加古も…別の存在ですからね!

シリアスではありません!
日常系ほのぼの話です…!

会話が拳で行われてるだけなんです!
肉体言語って奴ですね!



少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!

感想などお待ちしていますー!


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183話 思い駆ける赫の彗星 ②

ほのぼの日常パート
続いております!


私達は駆け出した!!!

 

 

 

 

 

 

 

好きなんだ!

大好きなんだ!!

私はいくら馬鹿にされても構わない!

 

でも…例え生み出されたコピーの私だろうと

沈んだら涙を流してくれるような…絶対に他に居ないような提督を…私の大好きな人を馬鹿にする事だけは許さないッ!!

 

 

言ったんだ

あなたの心も背負って連れて行くと。

 

私は今…自分の戦場に立ってるんだ!

1人じゃなく…一緒に戦おうと言ってくれた提督の心を背負っているんだ!!

 

 

 

 

 

「天龍…加古…訂正するわ…」

 

 

 

 

 

『あん?降参か!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴谷が言う。

「お前が馬鹿にしたカス提督とカス艦娘の…絆の力見せてやるわ!!」

 

 

夕張が言う。

「お前達が到達できない…心の領域ってのを味わせてあげる!!」

 

 

 

「カスどもが…調子に乗るなっ!!!」

 

 

 

「負けるものかッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?私…天龍と戦ってたはずなのに…あれ?

なんであそこに私と天龍……提督が見える…の?

あれ?鈴谷も…

 

え?夕張も…?

 

 

 

 

『夕張…』

『鈴谷…』

 

提督が話しかけてくる。

もう1人の…提督?

その提督も穏やかに…優しそうな表情で私達に頷く。

 

わかる

偽物じゃない…本物だ。

 

 

あぁ…そうか

これは…提督…。

私達と一緒に来てくれた()()()()なんだ

 

ここは……心の世界なんだ。

 

 

『はい!!提督!!』

私は答える。

 

 

 

『いつだって…私達は…一緒です!!』

鈴谷も笑顔で答える。

 

 

 

『『一緒に…行きましょう!!』』

 

 

 

 

 

 

 

提督の心が私に溶けて……

その私が……私に戻って………

 

 

 

 

 

「「行きますよおおおお!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

心が燃える!

 

 

 

 

1人じゃない

だって…親友も…提督(大好きな人)も一緒に居てくれるから!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

–––夕張 改–––

 

 

–––鈴谷 改–––

 

 

 

 

 

 

まだ…こんなもんじゃない!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

––夕張 改ニ––

 

––鈴谷 改ニ––

 

 

 

まだ……!!!

って思うのに…ダメ…

力が…これ以上上がらない…

 

 

 

 

ケッコンカッコカリしてないから…ダメなの?

 

 

ううん…

例え指輪を貰ってなくても…

もう…心はずっと側に在るから…

このままでも…やる!!

 

 

 

 

と覚悟を決めた時だった…。

 

 

 

 

 

 

 

「夕張…鈴谷…」

祈る男が居た。

自分の為に…戦ってくれる

自分の心を連れて行ってくれた彼女に男は思った。

 

両の手には……あるものが強く握られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また…心の世界?

 

 

『鈴谷…』

 

『なあに?』

 

『君にコレを…渡したい』

 

『ウソ…本当に?てか今!?ムードとか…夜景の見えるレストランとか…』

 

『––なんて嘘!冗談!!……うん…ありがとう…』

 

『えへへ……もらっちゃったー♡これでやれるわ!!』

『……?………!?!?!?』

 

 

『え?え?い、いまの…キス?』

 

『ああ』

 

『も、もう一回!』

 

『帰ったらな』

 

『よ、よーーーし!頑張るぞー!鈴谷ーー!ファイトおお!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『夕張…』

 

 

『はい!』

 

『君にこれを……』

指輪……

 

 

 

『今ですか!?……ふふ…こんな時に…もう…』

 

『すまん』

ニコリと笑う提督。

 

『はい!喜んでお受けします』

 

 

指に伝わる感触。

そして唇に伝わる感触。

 

 

『行ってきます……いえ!もっと……一緒に行きましょう!!』

 

『ああ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

現実世界に引き戻される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人で顔を見合わせる…

 

 

 

 

左手に指輪(絆の証)が光っていた。

 

…お前もかよとか思いつつ…

「行こう…親友!!」

「ええ!親友!!!」1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだよ!!!

まだ私は……あなた達と一緒に…先へ行くわ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

––夕張 改ニ 特––

 

––鈴谷航 改ニ––

 

 

 

 

凄い…

力があふれるッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガクン

 

 

 

 

 

 

夕張のダッシュはスピードが落ちた。

 

 

『姿が変わった…って?遅くなってんじゃねえか』

 

 

 

そう

夕張 改ニ特は…低速艦となる。

タービンを積めば高速になるが…今回は武器の装備はない。

 

 

 

 

 

『ケッ!虚仮威しかよ!!そんなんでやれるかぁあ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なら…より高く飛ぶわ」

 

 

 

 

 

「夕張ッ!!!」

 

鈴谷が構える!

「飛びな!!」

 

 

 

「鈴谷……」

 

 

「鈴谷達の…友情パワー見せてやりましょう!」

 

「ええ!」

 

 

 

夕張は飛び、鈴谷の構える手に足を乗せる。

「いけええええええ!!!」

 

ドン!!

鈴谷が腕を振り上げて…夕張が飛ぶ。

 

 

『なっ!!』

 

 

さっきよりも高く……夕張は飛んだ。

 

 

 

 

 

『高え…』

 

 

じゃねえ!

『だからなんだクソがあああ!!!』

 

天龍が乱射する。

 

が…当たらない。

 

「運は高いのよね…私」

「それに言ったはずよ!訓練もまともにして奴の弾が当たるかってね!!」

 

 

 

 

回る…回る回る回る回る

何度も何度も何度も何度も何度も何度も!!

 

 

 

「くらいなさい!!!」

夕張が回転を増す。

 

足の艤装が摩擦熱で朱く……紅く…赤く…赫く…なって行く。

 

そして…

 

 

その赫は

回転を止めて

 

 

一直線に地上を目指して落ちて行く!!!

 

 

 

 

まるで流星…いや彗星のように!

 

 

 

 

 

 

加古はただ見ていた。

真っ赤に光り…加速する…天から地へと落ちる流星を…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『うるせえええええ!!』

『俺様が負けるかッ!!実験野郎に…負けるかよおおおお』

 

『空中で躱せる訳ねえ!!!』

天龍は居合の体勢を取った。

 

 

 

この天龍の真骨頂は居合にあった。

その体勢を取った瞬間から天龍は恐ろしい程の落ち着きと集中力を発揮する。

 

–未だ嘗て…外す事…無し

其れ…躱す事能わず–

 

 

 

 

 

 

夕張(彗星)がどんどんと近付く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そこだッ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

天龍は脱力から一気に全神経と力を手に伝える!!!

 

天龍が鞘から刀を滑らせながら抜刀する。

加速する刀は目に写ることもできない速さで抜かれて夕張を両断する為に…ただ、ただ振われる。

 

 

 

 

 

躱せない。

 

蹴る地面も無ければ

ゲームのようなブースターもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

斬った……

 

 

 

 

 

 

 

なのに…提督も夕張も目の色ひとつ変えない。

全てを確信するように。

 

 

 

 

 

 

 

 

天龍の刀が…夕張の足が……触れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パキン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天龍の刀が折られた。

折れた刀が夕張の頬を掠める。

 

「おおおおおおお!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天龍は見た。

真っ直ぐにこちらを見る…夕張と

彼女に寄り添う提督を…。

 

俺が馬鹿にした2人は…自慢の刀(天龍のプライド)を砕き…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……クソ」

 

 

夕張の足は…2人の彗星(想い)は天龍の刀ごと天龍を打ち砕いた!!!

 

 

 

 

ドカァァッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『て…天龍…?』

加古が見たのは倒れ行く天龍だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やるじゃん…夕張…!よし!!鈴谷も…行くよォォォ!!」

 

蹴る。いや…穿つ?

 

前に飛ぶ度に更に地面を蹴る蹴る蹴る

 

どんどんと間隔が大きくなる鈴谷が蹴ってえぐられた地面。

 

 

 

 

「鈴谷ッ!!」

夕張が合図を送る。

 

「えへへ…いいね!それ!!」

 

 

 

鈴谷は夕張へと更に加速して行く。

 

 

 

 

『何なんだよ…て、天龍が…』

『じゃねえ!アイツ…あのメロンも居る!どんどんコッチにきてるじゃねえか!!クソ!!』

 

 

 

『やってやるよ…こっちはな…爆弾から何から沢山あるんだ…また閃光ちゃんで目を潰してやるよ……そんで…このナイフで……切り刻んでやるよ』

 

 

 

加古も構える。

卑怯なことに関しては加古はピカイチだった。

 

加古は地雷を自分と鈴谷の間に設置していた。

そこを踏むと思う場所…4箇所に。

 

『来い!来い!!』

 

まて…何故あのメロンは俺と奴の間に居る?

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

 

いや!そんなことより!来るぞ…あの腐れビッチが……

 

 

 

 

 

 

 

『!?』

 

 

加古は信じられないものを見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鈴谷ッーー!!」

 

 

「夕張ッお願い!!!!」

 

 

「鈴谷も…飛べぇえええええええ!」

 

 

何と…夕張は

地面を蹴った瞬間に上がった足を…蹴ったのだ。

 

鈴谷は蹴りに併せて更に飛んだ…更に加速した…!

くるっと回転し…蹴りの体勢に入る。

 

 

 

鈴谷の足の艤装もまた、度重なる地面や空気との摩擦…

赤い夕張の蹴りで…赫く輝いた。

 

 

 

「地雷原…意味ないから!!」

 

 

『バレ…くそ!!なら!!』

 

と閃光手榴弾を投げる。

 

 

 

「遅いよ」

 

 

手榴弾は鈴谷の足に弾かれる。

 

『あ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

『……』

 

薄れゆく意識の中に天龍は見た。

テレビで見た彗星が宇宙を駆けるような…

横一文字に駆ける真っ赤な彗星を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「喰らえやぁアァァァアアア!!」

 

 

 

 

そして…そのまま…加速した鈴谷の蹴りが加古の腹に突き刺さった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

入渠を済ませた後…

 

「謝って下さい…」

 

『……すまねえ…いや…すみません…でした』

『すみません…でした』

 

 

 

「俺は良いよ…」

 

『すげえ…本当に凄かった…』

『俺は確実に殺ったと思ったんだ…でも…』

 

『俺もそうなりてえ!!頼む!いや…お願いします!!』

『俺も!お願いします!』

 

「…うーん…お前の場合はまずは…信頼関係とかからになりそうなんだよな…」

 

『お願いします!』

 

 

 

 

 

 

 

「面白そうなのがいるな」

 

 

皆が振り返ると…。

 

 

 

そこに居たのは…麗と猛武蔵だった。

 

『あんたらは…?』

 

「猛武鎮守府の武蔵だ…こっちは提督の麗だ」

「強さを欲するか……」

「ならウチヘ来い…厳しいが…お前のいう強さも、手に入るやもしれん」

 

 

『え…』

 

「女だからと甘くみない方がいいぞ、加古、天龍。麗ちゃんは…強いぞ」

 

『…望むところだ!!ぜひお願いしたい!!』

 

「よろしくね?2人とも!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夕張…」

 

「提督…指輪…心…ありがとうございました」

 

「…夕張の頑張りだろう?」

なんて提督は言うけれど…。

 

「あ…あのね?指輪…やっぱり…直接ちゃんと貰いたいなぁって…」

 

「OK」

 

私の指から…指輪が取られて…。

面と向かって提督は言う。

 

「…コレを君に……受け取って欲しい」

 

「…はい!喜んで…お受けします」

 

 

するっと…指におさまる。

うん!

もう…これなしじゃダメ…ね。

 

「あと……」

と、キス…予想外だけど嬉しい…。

 

 

 

 

 

「ずっと一緒に…居ますからね!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ〜提督?約束…覚えてる?」

 

「指輪も外して…準備万端じゃないか」

鈴谷から差し出された指輪を受け取って…。

 

 

はい!と差し出された左手に…はめる。

 

「からのー??」

と目を瞑る鈴谷。

 

「顔赤いよ?」

 

「…恥ずかしいのに」

 

 

 

口付けを交わす。

 

 

「えへへ…嬉しいな」

「もう…前からだけど…離さないからね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴谷と夕張が2人で笑いハイタッチした。

 

「友情の勝利を祝して…間宮さんのとこにいこー!!」

 

「いつの間に親友に…」

 

「えへへーー!」

 

「てか!提督も行こ?3人の勝利だから」

 

 

「………おう…行く」

 

 

 

「「やったーー!!」」

 

 

 

 

 

 

 

「1人800円までな」

 

 

「え?もう一超え!!」

「お願いします!!間宮デラックスがいいです!」

 

 

「1400円じゃねえか!!」

 

 

「え!?本当!?ありがとうー!提督!大好き!!あーんしてあげるね♡」

 

「待て!まだ良いとは言ってない!!」

 

「やったーーー!!」

 

 

 

 

悲しい顔をする提督と満面の笑みの艦娘が間宮に居たとか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お!麗ちゃん…どう?あの跳ね返り天龍は」

 

「毎日しごかれてるよ!でも根を上げたりしないね」

「…きっと強くなると思う」

 

「真面目ならそれでいいんだ」

 

「次は負けないから!って言ってたよ?」

 

「はは…楽しみだな…」

 

 

 

 

この天龍と加古…。

後に猛武の中核を担う存在になるのだが…

それはまた別のお話…

 

 

 

 

 

 




友情回…になったのかな?
夕張と鈴谷の活躍回でした。


ちまちま続いております
今月もほぼ毎日を目指したいのですが…
頑張って更新を続けますので応援させて頂ければと思います!



少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!


感想などありましたら
ぜひ!お気軽にお願いします(๑╹ω╹๑ )





質問にお答えします!


Q どこがほのぼの日常ですか!?!?


A どこからどう見てもほのぼの日常パートですよ!?


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184話 三笠と1日夫婦 ①

三笠は日露戦争で活躍した艦である…。

 

つまり明治時期な訳で…。

敷島や朝日と言ったメンツが居ない訳で…。

 

 

大正時期や昭和生まれからしても…

超大先輩な訳で…。

 

いつの間にか

ウチの重役ポジになった。

 

 

当時は最強、最先端な戦艦だったが、時代と共にそれは変わる。

正直、三笠は強いとは言えない。

が…記念艦として現代にも唯一残る戦艦三笠は…ずっと見てきた。

この国の全てを見てきた。

 

 

彼女の演習訓練は的確に実力を伸ばす。

かなり厳しいトレーニングだが…根を上げるものや逃げ出す者はいなかった。

 

あの桜赤城でさえ震え上がり大人しくなる程だ。

 

 

 

「勇猛精進!」

 

「甘いぞォ!そんなので指揮官が守れるのかッ」

 

 

旗艦を務めて勝利へ導いたのもあってか

演習における指示等は抜き出るものがある…。

 

 

 

「第一次攻撃隊…正面…「待て!瑞鶴」

 

「え?」

 

「瑞鶴、榛名は右側から、大鳳とベルファストは左側から攻めろ!合図と共に艦爆を放て」

「なるべく高高度を維持して大きく円を描いて回り込むように…だそ!」

 

 

「初月は我と共に…正面から行くぞ!!」

 

 

 

とかね。

 

 

 

 

演習先には

「あんな艦娘見たことがない!」

「三笠?え?何それ」

 

「流石…ハーレム閣下…」

と言われるけど…

 

 

 

 

 

 

ちなみに「なるほど…おばあちゃんか」と言った長門は天に召された。

 

「生きてるぞ」

 

早く成仏して欲しい。

 

 

「だから生きてるって」

 

 

 

 

「我の今日の仕事は…お主の手伝いだな?」

 

 

「何だ!?音が鳴ったぞ!?」

電話です…。

 

 

 

「は、箱の中に人が!?」

テレビです…

 

 

「って…三笠は今も在るだろ!?」

 

「冗談だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と言う感じの少し…あの…昔の人だけど

 

「……なあ…あなた?…疲れたなら…私が膝枕くらいしてあげるよ?」

「ほら…おいで?」

 

「いつも頑張る君を…少しくらいなら甘やかしてあげる」

 

 

ニコリと笑う三笠。

 

ってくらい2人きりの時は緩かったりする。

 

 

 

 

 

んで…何でこーなったかと言うと……

 

 

 

 

全員からお願いされた。

もはや懇願だった。

 

 

あの桜信濃までお願いして来た。

 

 

何でも…あの人を差し置いて若輩者の私達が…そんな真似できないと。

 

艦これ勢も…その名前の偉大さは知ってるらしく…

ぶんぶんぶんと首を縦に振っていた。

 

当の三笠は…

「順番とか、そういうしきたりは守るべきだぞ?」

と言ってたけど…結局周りに圧倒されていたな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

てな訳で前日から始まる…2人の生活。

 

「えへへー」

そのスタートは三笠の膝枕に戻る…と。

 

 

「ん〜指揮官〜♡可愛いなあ…好きだぞー?好き好き♡」

「三笠はそんなキャラだったっけ!?」

 

「し、仕方ないだろう?!私も寂しかったんだからな!?」

「それに…周りの目もある…ゴニョゴニョ」

 

 

 

 

 

「す、すまない…あなた…」

「どうも…料理は苦手で…その……なんだ…」

 

「明日は俺が作ろうか?」

 

「い、いいのか!?しかし…男子たるもの…」

 

「時代よ時代」

 

「じだッ…我が時代遅れとでも言うのか!?」

ほほを両手でむにゅーーーとしてくる三笠。

 

「ひがいまひゅーー」

 

 

 

 

 

 

 

「おはよーー三笠〜」

 

目を覚ますと…指揮官の顔が目の前にあった。

「…ん……おはよ…う」

 

「ごはん出来てるよ」

 

 

「………ハッ」

わ、我とした事が…

料理を教えてもらうと言う体で一緒にご飯を作る作戦がぁぁあ!!!

 

「くううううっ!我とした事がぁぁぁあ!!」

 

「ええ…」

 

 

 

「うう…頂きます…」

 

メニューは…

ごはんと、味噌汁…ほっけの塩焼きに卵焼き…

ほうれん草のおひたし…。

私も大好きな品目……指揮官とお揃いの大好きな和食♡

 

 

「美味いぞぉ…指揮官〜」

涙を流しながら食べる三笠。そんなに美味しいのか?

 

「我も作れるようになりたいが……同じに毎日作って貰うのも幸せかも知れない…いや、幸せだな」

 

 

「今度は三笠が作ったのを食べたいなあ」

 

「が、頑張ってみる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「行ってらっしゃいませっ!!」」」」」」

 

 

整列するアズレン組、微笑む信濃。

 

 

 

「さ、さあ!行こうか!指揮官!!」

 

三笠に手を引かれて歩み始める。

 

 

 

 

 

「………もう力抜いて大丈夫だぞ?」

 

 

「はふううぅう〜〜」

「ほんとか?もういいか?」

 

アニメで真面目なキャラがデフォルメキャラに変わるように一気に脱力する三笠。

 

「あなた〜♡腕組もう!」

 

 

……そりゃこんなキャラ見せられないわなあ〜

…信濃は気づいてそうだけど…

黙っとこ……

 

 

 

 

「えへへ〜」

 

ニコニコしながら歩く三笠と共に歩いた。

 

 




さーせん!
三笠…ねじ込ませてください…


すみません
体調があまり良くないので更新が送れたら申し訳ないです。


少しでもお楽しみ頂けたら幸いです。

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185話 三笠と1日夫婦 ②

「はい♡あなた、あーん」

 

今は三笠とランチタイム。

たまには…とオムライスを食べている。

 

「デミソース派です」

 

「我もだ…とは言え、この…えーと…どりあ?と言うのも気になるんだが…オムライスも捨てがたい」

 

「なら俺がドリアを頼むから半分に分けるか?」

 

「ほ、本当!?」

明らかに嬉しそうな顔をする三笠。

可愛いなあ…。

 

 

「…夢みたいだ…あなたとこうやって過ごせるなんて…」

「…早く…他にの皆にもあなたを会わせたいな」

 

「ビスマルクに…グラーフ・ツェッペリン…翔鶴に、瑞鶴、シリアスに…クイーンエリザベス…長門やウォースパイトもあなたに会いたがっていた」

 

 

「そうだなあ…」

 

「……少し申し訳ないと思う…皆に」

 

「……皆はどうしてるかな」

 

「…あなたを心配していたよ。もし、また世界を渡れるなら…ぜひ会って貰いたい」

彼女は真っ直ぐに俺を見つめて言う。

 

「ああ」

 

「フフ…あなたならそう言うと思った」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ランチを終えて街を歩いていると兄と妹が…迷子なのか?途方に暮れる2人に遭遇した。兄は泣いており、妹はただ不安そうにしていた。

 

 

「アレは……」

と、三笠が駆け寄る。

 

「お主達…どうした?」

 

兄は泣くばかりで何も答えない。

 

「あ、あのね…お母さんとはぐれちゃって……それで…それでお兄ちゃんも泣いてるし…わたしね…うぐっ…うっ…ぐすん」

 

「ふむ…兄とやら、妹が不安がっているぞ?泣きやめ」

 

「うわぁぁん!お母さん!お母さん!!」

 

兄は泣いていて話にならない。

 

「お兄ちゃん…泣かないでよぉ…うわぁぁん」

 

 

 

三笠は兄の肩を掴んで言った

「泣くなッ!!!」

 

一喝。

シンプルな一言だった。

 

「あ…あぅ…あ」

男の子は驚きと怖さからか泣き止んだ。

 

周りは微妙な表情を彼女に向けている。

 

「奇異な目を向けるのも構わない…しかし!お主達は何もしていない!」

 

「何たる事だ!道行くお主達は見て見ぬふり…こうも腑抜けてしまうのか?互助精神というのはないのか!?」

 

 

わかっている。

三笠は…怒っているのではない。

奮い立たせようとしているのだ。

 

 

 

三笠は、さて…と男の子に向き合う。

 

「お主は男だろう?」

 

「う、うん……」

 

 

「良いか?男子たるもの…皆の前で泣いてはならない。なぜかわかるか?…それは、護らねばならぬからだ…お主は妹を守る為に兄と言う大役を任されているのだ」

 

「辛い事もあるだろう、我慢せねばならない時もあるだろう…しかし、お前は妹よりも…一歩も二歩も大人に近いのだ!今は母と離れたか?ならば…2人の中で大人に近いのはお前なのだ」

 

「妹も不安なのだ!頼れるのはお前だけなのだぞ?」

 

「……」

男の子は黙って聞いている。

 

「嘘でも良い、背筋を伸ばせ。何かができるのはお前だけなのだ」

 

「でも…僕…」

と兄は弱々しく言う

 

 

三笠はニコリと言った。

「であるなら…笑え、"大丈夫だ!"と、微笑みかけてやれ」

 

 

 

「苦しい時に、辛い時に泣いても…何にもならぬ。ならばそう言う時こそ…真っ直ぐに立つのだ。そして笑え…それな人を強くする」

 

「このお兄ちゃんも強いの?」

男の子は俺の方を見た。

 

 

「もちろんだ!わ…私の自慢の旦那様だ。どんな時も諦めない…自慢の旦那様だ」

 

 

 

「うん…わかったよ…お姉ちゃん!」

そして、男の子は妹に向かって笑顔で言う。

「大丈夫!お兄ちゃんがついてるから!」

 

女の子はニコッと笑って

「うん!」

と答えた。

 

三笠は2人の頭を撫でて…

「良い子だ…ほら、2人に飴をあげよう。お食べ」

 

「わあい!」

「ありがとうお姉ちゃん」

 

少しして親が見つかった。

何度も何度もお礼を言っていた。

 

2人もバイバイ!と手を振っていた。

 

 

 

 

 

「厳しい大先輩も…優しいところあんのね」

 

「むっ…誰にでも厳しいわけではないぞ?お主も分かっておるだろう?!」

 

 

「子供は宝だ…いつの時代も…。私達の善行を継ぐのも、私達の愚行を正すのも、彼ら…次の時代なのだ」

 

「ならその為に頑張らないとな」

 

 

 

 

 

「ん!」

 

 

「ん?」

 

「頑張ったのだ…頭を撫でて欲しい…」

 

「はいよ…お疲れ様。よしよし」

 

「〜〜〜ッ!♡幸せ…えへへ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後は…

「時代とは…こうも変わるものなんだな」

と言う技術革新に驚く三笠を楽しみながらデートをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「楽しかったぞ…今日は…うん。本当に楽しかった」

 

「三笠…!」

 

「ん?どうした?」

 

 

「三笠に…コレを渡したい…」

 

「…指輪か……」

 

 

 

 

 

「指輪!?!?まさか、けけけけけけケッコン指輪か!?」

 

「うん」

 

「え?!え?え?こ、コレは夢か!?………痛い!夢じゃない!」

 

 

「俺は君に2度も助けられている…どの世界でもj

「俺もお前を守れるくらい強くなりたい。だから…ずっとそばにいて欲しい…」

 

 

「……そう必死にならなくていいよ。私が隣にいてて…偶にはあまやかしてあげる」

 

「不束者ですが…喜んでお受けします…」

 

 

 

アズールレーンの世界とは違う指輪だけど…左手につける。

 

そして……

 

「いい?」

 

「い、いいぞ!私は…三笠だぞぅ?!」

 

 

「ん…」

チュッ…

 

 

「………言葉にできない…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰り道に話す。

 

「あなた…ひとつだけ言える事がある。黙っていたのだが…」

 

「ん?」

 

「我と信濃は…気づいたらこの世界に居た」

 

「桜赤城達とは違うと言うことか?」

 

「奴らは現れたゲートを潜ったのだが…我らは…一瞬だったのだ」

「もしかしたら…直前まで一緒にいた赤ビスマルク達もこちらにいるかもしれない」

 

「それだけ頭に入れておいて欲しい」

 

 

「わかった…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……我らはお主について行くぞ」

 

「あなたの居るところが…我らの居る所だ。だから……我らの事も見捨てないで欲しい!我らの事も…忘れず…愛して欲しい」

 

「三笠…」

 

「頼む…」

 

 

 

 

 

「当たり前じゃないか…お前達の居た世界も俺が居た世界に変わらないんだ。他の艦娘もきっと力になってくれる」

 

 

「本当か?本当なんだな?」

 

「それに俺は…お前達の手を離したりしない」

 

 

 

 

ぎゅっと三笠が抱きついてくる。

少しだけこうしていてほしいと言い

うっ…うっと震える三笠の頭を撫でて…抱き締めて…

その涙を隠した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「楽しめましたか?」

 

「む…信濃か…。……ああ楽しめたぞ」

 

「大先輩は…指揮官に首ったけですからね…」

 

「!?!?」

 

「妾含め皆…気づいております故…」

 

 

「ななななななな!!?!?」

 

「赤城なぞ…微笑ましそうに見送ってまして…」

 

 

 

 

 

 

「あ、赤城ィィィイイイイイ!」

 

 

「あら、大先輩、どうしま……?え?何ですか?そのお顔は…え?え?え?」

 

 

 

翌日からの訓練メニューが倍になったとか。





甘いのが良い。
私の作品のキャラは相当崩れきってると思います。

色々とネタを仕入れてぶち込んでますが…。
こうあったらいいなあ…とか、そう言う想像も混ぜてます。
なのでベルファストもシーーット!とか言うんですけど…。


第二部はある意味ダークな話ではある予定なのですが
第一部が大方170話くらいだったので…

第二部で終わらないでくださいと言うお声をいただきまして…
ありがたい限りです。
頑張って行きたいですね!


構想的には三部も存在してたり…


少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!



感想などありましたらお気軽にお願いします!


質問にお答えします!

扉絵や挿絵のご予定はありますか?


私は…絵心が何処かに行方不明なので…

誰か……是非…描いて頂けませんか……。
という他人任せを…えへ…えへへ…。





私事で大変申し訳ありません。
先週から職場のクラスターで濃厚接触者認定されまして
自宅待機をしていたのですが、ずーーっと微熱や症状が続いてまして…
PCR検査は何回も陰性なのですが…。
体調が良くありません…。
更新が滞ったら申し訳ありません。



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186話 虚映す鏡の海域 ① それぞれの思い

彼女は諦めていた。

彼女は…こんな世界も滅んでしまえば楽なのに…と思った。

 

 

 

 

彼女は見た。

 

()()()()()()()()()()()

 

 

ああ…あの人も抗うんだな…。

 

あの時と同じように…。

 

といっても…彼も結局は奴らの運命の駒にすぎない可哀想な人。

結局は…朽ち果てる運命なら…いっそのこと…。

 

 

 

 

彼女は目を閉じる。

彼女が居る鏡は……

 

 

 

何も見なければ…感じなければ…

期待することもなければ……傷付かずに、落胆せずに済む。

 

 

 

 

『…グ………リン…よろしくな』

 

 

頭の中に浮かぶのは…微かな記憶。

 

 

 

フッ…とニヤリと笑い彼女は静かに眠る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはとある鏡の海域。

KAN- SENのコピーと艦娘、またセイレーン所属であろう艦船も並べられている。

 

 

 

 

レッドアクシズの

赤ティルピッツと赤ビスマルクはそこに居た。

 

 

「ふむ…コレが…見たこともない奴もいるが…」

 

 

「指揮官……お前もここにいるのか?」

赤ビスマルクは空を見上げて言った。

 

 

 

 

彼女達はビスマルクとティルピッツ。

救の母港に所属していたKAN-SENである。

行方不明の仲間をを探していた所…気が付いたらここに居た…というものである、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…また奴らか……」

 

 

 

正体不明の艦船と敵性反応があると報告を受けた。

別鎮守府の艦娘も目撃されているらしく…

艦娘の保護と敵勢力の殲滅を申し付けられた。

 

 

「ありゃ…艦娘じゃねえと哨戒組は言ってたぞ…不気味な…何かだそうだ」

 

「先行組も帰ってこないらしい…神崎よ…。お前が前に言っていた敵なら俺達にら対応できん」

 

 

などと言われたら対応するしかない。

…少し嫌な気分になるが…奴らを止めないと…と思うとやるしかない。

 

 

「……」

桜信濃や三笠はじっと指揮官を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鏡面作戦は明日の早朝より開始する!」

 

主力メンバーは…

「榛名に旗艦を命ずる!不知火、吹雪、赤城、川内!千歳!」

 

「「「「「「はい!!」」」」」」

 

「また、加賀、夕立、長門、初月、翔鶴、大和も同じく出撃だ」

 

 

 

「三笠を主軸に、桜赤城、桜大鳳、ベルファスト、桜隼鷹、」

「後方にエンタープライズ、桜信濃で援護だ」

 

 

「また…卑劣で厳しい戦場になると予想される…」

 

 

 

「作戦開始まで各自徹底して準備を行うように!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

解散後にアズレン組は集まってコソコソと話し合う。

 

 

「……またか…」

 

「ついに艦娘さん達にも影響が…」

 

「はい」

 

「……出来るだけオサナナジミや艦娘さん達にはご迷惑をお掛けしたくないですね」

 

「……」

 

「私達の世界の問題ですし…私達だけで…」

 

「そんな!せっかく指揮官様と会えたのに…置いていくんですか?」

桜赤城は皆を問い詰める。

 

 

「仕方ないだろう?私達だって…そんな事したくない、でも…」

三笠が言う。

 

 

「私達だけで行こう」

エンタープライズは言った。

 

 

 

 

離れてしまうのは寂しい。

しかし、あんな指揮官は見たくない。

 

なら…答えは一つしかない。

私達の世界の面倒ごとは…私達で解決すると言うことだ。

 

 

 

 

 

 

これは裏切り…背信行為だ。

もう…戻れない事も覚悟の上だ。

だが…それでも守りたいのだ…。

 

 

 

 

 

 

「皆……指揮官は寝ているだろう…別れ前に寝顔を見るなら見ておけ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

桜赤城は寝ている救の横に立つ。

 

 

 

 

 

私が指揮官様に会える確率は確率は1%とか言ってたかしら?

 

 

それでも…

 

 

 

 

 

あなたは…幾多の困難も…

確率という可能性も超えて私の手を取ってくれましたね。

 

あなたがくれた指輪……

一生以上の宝物…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご主人様……お慕い申しております…」

ベルファストが言う。

 

「指揮官様…」

桜大鳳が…。

 

 

 

 

「愛しています」

桜赤城はしゃがみ込んで救の顔の側に近付き涙目で言う。

 

「例え生まれ変わっても……世界が変わっても…きっとあなた様を…」

 

 

「私は……ッ 愛す…る……でしょう」

溢れる想いは…良い思い出ばかりで…

今すぐ起きて欲しいと思う自分と…

やはりあなたを傷つけたくないと思う自分とがいて…。

 

 

 

 

「指揮官様」

ちゅっ…と彼女はキスをする。

 

別れのキスを…。

 

 

例え刺し違えても…奴らを……

このお方を…この世界を守らなくちゃ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アレ?皆揃ってどこに行くの?」

夜警の那珂ちゃんだ。

 

「作戦開始なので」

 

「朝からでしょ?」

むーー!と那珂ちゃんは言う。

 

「……極秘裏な任務なので…」

ベルファストが答える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ?……私達仲間だよね?今もこの先も…」

 

 

 

 

 

 

 

「はい」

 

 

 

 

桜信濃が答える。コレは本心だ。

短い時間とは言え、苦楽を共にしたのだ。それが仲間でないなら何であろうか?

 

 

「なら…ちゃんと帰ってきてね…」

珍しく那珂ちゃんが緩く笑った。

 

 

はい!と、皆はできない約束をしてしまった。

ズキンと心が痛んだけど…これも決めた事だから

 

 

 

出撃ゲートから海へと出る。

 

 

 

振り返れば…思い出の詰まった鎮守府がそこにある。

私達の居た母港とは違った楽しいところ。

 

 

あんな優しい人達を苦しめて良いはずがない!

 

 

 

だから…

「皆さん…行きましょう」

桜信濃が皆を扇動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか…」

 

 

 

 

 

 

 

出撃ゲートの先に彼は居た。

 

 

 

 

 

 

 

居ないはずの人が在った。

 

 

「指揮官…様!?」

 

 

 

 

 

その後ろに

ずらりと並ぶ出撃メンバー。

 

 

 

 

「なんで…?」

驚く桜赤城達。

 

 

 

 

 

「……そんなに俺らが信じらんない?」

 

 

「いえ!そういう訳では…」

 

「バレていました…か…」

 

「信濃様…三笠先輩…」

 

「指揮官様…何で……?」

 

 

 

「…俺もお前達と同じ立場なら…同じ事するかもしれないから」

「でも寂しいなあ…」

 

 

 

「…ッ!!」

 

「…言ったはずだ誰1人としても失わないと!それはお前達とて同じなんだ!!」

 

 

 

 

「那珂が聞いたろう?仲間なんだよね?と」

 

「ええ…」

 

「お前達は…はいと答えたのだろ?」

 

 

「はい」

 

 

「仲間とは…その程度のものか?」

 

 

「違いますッ!!」

「指揮官様ッ!!私は…私達は!皆様に傷ついて欲しくないのです!」

 

 

これも本心だ。

彼女達は見た。

傷ついた彼を。

傷心した彼を…荒れた彼を…。

 

 

 

 

 

しかし彼は…

いつもと変わらない指揮官がそこに居た。

 

 

 

彼はもう完全に前を向いているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は言う。

 

 

「ならばもう一度聞く!!お前達の指揮官は誰だッ!!!」

 

 

「………ッ」

 

「あなたです…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺が折れかけて…いや、折れた時にそっと寄り添ってくれたのはお前達だろう?……ならお前達の時に俺達は寄り添わせてくれないのか!?」

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 

「桜隼鷹ッ!!」

 

「は、はい!!」

 

「お前の言うオサナナジミは…そんな頼りない奴なのか!?」

 

「い、いえ…オサナナジミは…いつでも…どんな時でも…私達の側から離れずいてくれるわ」

 

 

「桜信濃!三笠ッ!!」

 

「お前らが助けた指揮官とはその程度の人か?」

 

「「いえ…」」

 

 

 

 

 

 

 

「信濃……俺は誰だ?」

 

「……し、指揮官です」

信濃が答える。

 

そして…救は尋ねる。

「指揮官とは何する者ぞ」

 

 

 

「艦隊の…指揮を執る者です」

 

「お前達の居るところには俺も居る…言ったはずだ。俺の欲しい明日はお前達も居る明日なんだと」

 

 

 

 

ダメだと言いたいのに…

 

何故この人は…前を向いて…

桜赤城は桜信濃を見る。

 

 

 

 

 

 

 

ふうと息を吐く皆。

 

「我らの負けだな」

 

「………参りました…」

 

 

 

 

しゅんとするアズレン組。

 

 

 

 

 

 

「大和…」

 

 

「はい」

と、指示を出して大和の艤装から全員の頭にチョップして行く救。

 

 

 

「いっ"」

 

「だぁっ」

 

「あぅ!!」

 

「ぬぅ!」

「いたぁ」

 

「痛し」

 

「もっと♡」

 

 

「……俺の手も痛い」

「お前らが俺を思って苦渋の決断を下したと思うが…俺にとってもこの先苦い記憶になるんだぞ」

 

 

「…はい」

 

 

「…一緒に行ってもいいか?」

 

 

 

 

「…わかりました」

 

「はい!絶対に指揮官様は守ります!」

 

 

 

 

 

 

 

「しかして、何故…汝は妾達の行動に気付いたのです?」

 

「……愛かなあ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きてましたよね?提督?」

 

「おい大和」

 

 

 

「え?起きてたのですか?」

焦る桜赤城。

 

「生まれ変わってもあなたを愛します…だよね?」

にやにやと艦娘が茶化してくる。

 

 

「あああああっ!!!」

「や、やっぱり…指揮官様達は鎮守府へ帰ってください!!」

 

「無理〜生まれ変わる前に…今、愛してもらうから〜」

 

「悪魔…悪夢よ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1人精神的に大破している桜赤城を加えて、彼等は海を征く。

 

 

 

 

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

目の前には暗い海がった…。





さて…2回目の対セイレーン作戦です。

少しずつ…少しずつ
物語の奥に奥に迫ってくる……と思います。


少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!


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187話 虚写す鏡の海域 ② 話しましょう♡




キャラが違う!
と言うのがあるかもですが…ご了承下さい!




「くっ……数が多いな…いけるか!?ティルピッツ…」

 

「何とか!!」

 

 

「フム…粘るなあ…」

気まぐれと手違いで来てしまった2人

まあ…あの指揮官のKAN-SENだから潰すんだけど…

 

 

 

 

テスターはニンマリと嗤う。

「あぁ…早く会いたい…愛たい!あの指揮官に…♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

「何かが戦闘中…か?」

 

「ビスマルク……?指揮官様!アレは…鉄血のビスマルクさんです!」

桜大鳳が叫ぶ。

 

「よし!合流して敵性を確認、必要に応じて援護しろッ!!」

皆に指示を出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

「来た♡」

 

そこにテスターが現れる。

 

 

 

 

 

「君はこっち…」

ガシッと救に抱きつくテスター。

 

 

 

「指揮官がテスターに攫われるッ!!」

 

 

「提督ッ!!」

 

「構わん!!お前らは赤ビスマルク達と合流し、敵を……ッ」

 

その言葉と共に連れ去られる指揮官。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大和さんは提督を追ってください!!私達は…早くあの人達と合流しましょう!!」

榛名は皆に指示を出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって…

 

 

 

「あはぁ…指揮官クン…♡会えたねえ」

 

「…てめぇ!」

 

「まあまあ…今日は君と話をしにきたんだ。それに戦おうにも1人の君に君に勝ち目はないだろう?大和だっけ?艦娘が来るまで時間もあるしね?お話しよ?」

 

 

 

「……何が目的だ」

 

おや?意外と冷静だね。

 

まあ…その表情が曇るのも時間の問題なんだけどね…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…君は駒に過ぎない」

 

「せいぜい…足掻け…可能性を見せてみろ」

 

 

 

 

「は!?いきなり何だ!!」

 

 

「私はお前を愛しているようだ…うん…コレは愛だな…」

 

「何だと…?意味がわからん」

 

 

「私達が人を愛するのは当たり前だが?」

 

 

 

 

「人間が創り出した

セイレーンと言う存在。

 

 

 

否…。

私達は未来を取り戻す者…。

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

私達の世界を滅ぼしに来た…何か

 

裁定者は人間にKAN-SENを生み出す技術を与えた。

……が、遅過ぎた。」

 

「君も知ってるだろう?」

 

 

 

「人々は死に絶え…

KAN-SENも絶滅しかけた。

 

 

 

生き残った裁定者は言った。

 

「人類は弱過ぎた…」と

 

故に必要になるのは…進化。

人間にしてもKAN-SENにしても、進化し、覚醒しなければ同じ事を繰り返すのみだ。

 

 

 

私達は平行世界の過去へ送られた…。

 

 

 

そこで与えたのだ…

K()A()N()-()S()E()N()()()()()()()()()()の…あの世界(アズールレーンの世界)の人間に!

 

 

 

そして私達は敵として現れる。

私達は記録する…。

お前達の可能性を!!

進化の可能性を!!!

 

 

 

お前達は…いつでも私達の手の上なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

そして…この世界(艦これの世界)に目を付けた。

たまたまだったがな…

 

自分達と似て非なる者達の居る世界に居た反応。

もしやと思った。

 

 

 

 

まず、在る男に目を付けた

彼も未来からやって来たらしい…

過去をやり直したいと言った奴だ。

 

 

気まぐれに…彼に"あるもの"を渡した。

 

 

思惑通り…奴は有能だったぞ?

 

彼は魂を…艦娘の魂を集めた…

それどころか…いかに上手く力を搾り出すかを実践し始めた!

 

 

()()()()()()彼は独自の軍隊を作り上げた…

 

 

 

 

その後だったか…面白いものを見つけた…

…そうお前だ。

 

「俺?」

 

 

あぁ…まさかお前がこの世界の人間だとは思わなかった……故に適当なタイミングでゲートを開いた…

お前の元にの元に…お前のKAN-SENを送ったのだ。

 

 

「何!?お前達が…アイツらを?」

 

 

そうだ…

 

 

お前と御蔵は対極に居たからな…

これも実験だった。

お前なら…別の方法で運命を超えて行けるかもと思ってね。

 

 

 

 

 

 

 

貴様は幾度となく壁を破ったし、御蔵と言う奴は素晴らしい記録を残したッ!!そう……奴は違う世界…時間すら超えて扉を開いた。

 

まあ彼は君に敗れたけどね。

 

 

 

 

 

 

 

なぜか金剛とやらが黒の…キューブを持っていたのは意外だったがな…

 

 

 

 

 

 

「お前が利用したんだろ!!御蔵のジーサンを!」

 

利用?違う、チャンスを与えてやっただけさ…

 

まあ負けた奴なぞ今となってはどうでも良いがな

 

 

 

 

 

 

やはり貴様ら人間は素晴らしい…

欲望のままに全てを変えられる。

 

 

私達に必要な結果を必ずもたらしてくれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが…お前は私達を止めに来るだろう…?

 

愛しくも…そして最高に邪魔な存在…

 

 

 

 

 

 

 

お前達は…最後の踏み台なんだ」

 

 

「全く意味が…話が飛びすぎてわからん!」

 

 

 

「わざとだよ♡ まあいい…お前との最後の決戦の舞台は用意するよ。それは…あの再現だ」

「記録名は……ふむ…西波島近海決戦か…」

 

 

「何故そこに…?お前らは"あの大戦"の再現をするんじゃなかったのか!?」

 

 

 

 

「…思わぬ収穫だったのだよ。御蔵の残した記録というのはな…。だから私達も利用する。御蔵と同じように…あそこで負の魂を利用させて貰うだけさ」

 

フフフ…。

 

 

 

 

 

「…なら俺達はお前を倒して…止めるさ」

 

 

「うん」

 

 

 

「は?!」

意外な返事に戸惑う救。

 

 

「言ったろう?君を愛してると…頑張って私達を止めてみてくれ」

 

 

「意味が……」

 

 

 

 

 

「さあ…話は終わりだ」

「帰ってもらおう……」

 

 

 

「ちょ…おま!!」

訳のわからないまま海へと帰される救

 

 

テスターはニヤニヤしながら帰って行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと、テスターがこぼした。

 

「……あの金剛の髪飾りがもしも…御蔵に渡したアレと一緒なら………まさかね」

 

 

 

そして神崎…愛する指揮官よ…

お前は乗り越えられるか?

この国も…アズールレーン内部と同じ道を辿るかも知れないぞ?

 

 

 

 

 

 

 

 

「バイバイ…親愛なる指揮官」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの野郎ッ!海ん中に放り出しやがった!」

 

 

「提督!!」

 

海に浮かぶ救と合流した大和は進路を引き返し、榛名達の元へと戻る。

 

「大丈夫でしたか!?」

 

「あぁ……」

 

「急ぎ、榛名さん達の下に向かいます」

 

 

 

 

そして……

 

 

 

 

 




少しずつ…明らかになる話も出てくるかと…



ある意味セイレーンの説明会



今回は戦闘は少ないです







少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!



ぜひ、感想等ありましたら!
よろしくお願いします!


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188話 虚写す鏡の海 ③ 覚悟

本日2話目ノ投稿デス
ゴ注意下サイ


独自展開有リ

胸糞注意



「汝達は指揮官様を…!!」

と、桜信濃が言う。

 

 

しかし、榛名達の目は一切の揺るぎは無く…

「いいえ…私達は提督を信じていますッ!任せられた任務を遂行します!」

 

 

 

 

「榛名さん!ここは私達が…!榛名さんはあの人達の元へ!!」

赤城達に提案されて榛名はビスマルクの方へと向かう。

 

「はい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦闘中の赤ビスマルク達。

 

「む?」

 

 

別の勢力がセイレーンの艦船を攻撃している?

ええい、もう訳がわからん…。

 

 

と、その時

「ビスマルクさんですか!?」

と声を掛けられた…が見知らぬ奴だった。

 

「知り合いか!?」

 

「いや……新手かッ!?…いや、なぜ私の名前を知っているッ!?」

 

「ダーリン…いえ、提督にあなた方と合流するように言われて来ました!」

 

「ダーリン…?提督…?誰だそれは!」

 

「神崎 救と言う人ですが…」

 

 

 

その名前は…!

「指揮官の名前…」

ティルピッツが反応する。

 

「貴様ッ!指揮官の居場所を知っているのか?!さてはセイレーンの手先か」

 

 

この状況では怪しまれるのも仕方ない…

赤ビスマルク達は榛名に砲身を向ける。

 

 

「聞いてください!」

榛名は説得を試みる。

 

 

「お前達のような奴が何名もいた!でも敵だった!」

 

 

 

 

敵…?

どういう事?

 

でも今は…それよりも…

 

榛名は艤装を解いた。

 

「敵意はありません!どうか信じてください!」

榛名は必死に呼びかける。

 

 

「…奴の言うように…味方なのか…!?」

「まて!罠かもしれん…」

 

懐疑的になる2人。

 

 

お互いに膠着状態が続く。

 

 

 

 

 

 

「お待ちなさい…2人とも!榛名さんは味方です!」

 

 

 

 

桜赤城だった。

 

「桜赤城……」

 

 

 

 

………

……

 

 

 

「なるほど……」

 

大まかにではあるが桜赤城から説明を受ける2人。

 

 

そこに

 

「すまん!遅れ…た」

大和に連れられてずぶ濡れの救が合流した。

 

 

「……指揮官…」

 

「あなたが…」

 

「お…画面で見た通りか…ビスマルクとティルピッツだな?」

「大変だったろう…よくここまで耐えてくれた」

 

 

 

 

 

 

 

 

何気な一言だろう…。

しかし、何故かその言葉にグッと来るものが胸から込み上げて来た。

 

「いや…指揮官と合流できて…幸運だ」

貴方は本物の…私達の指揮官か?

何故ここに?

その者達は?

 

もっと聞きたい事もあったが、今はその言葉で十分だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「して…指揮官よ。私達が偽物だと思わないのか?」

 

 

 

 

「その時はその時さ」

 

むう…と言う赤ビスマルクだが…

 

 

 

 

 

 

「……なあ指揮官」

赤ビスマルクが言う。

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

その言葉にハッとする救。

 

 

「どういう事だ?!」

救の目が変わった。

 

 

「コイツらも…鬼みたいになるのか?」

 

 

「鬼…?どういう…「ダーリンさん!!アレを」

言葉は榛名に遮られた。

榛名の指差す方には他鎮守府の神通らしき後ろ姿があった。

「きっと神通さんです!!」

 

「お!居たな!保護を……」

 

艦娘達が其方へと行く。

 

 

 

赤ビスマルクも、ふとそちらを見る。

「…アイツは……!!やめろ!!指揮官!」

 

指揮官の方へ走り出す赤ビスマルク。

 

 

 

「神通さん!もう大丈夫で……」

 

 

 

「ア…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

振り返った神通は……神通だったものは…

 

 

 

「!?!?」

ばっと後ろに飛び退く榛名と救。

 

 

 

「指揮官!もうここに居るカンムスとやらは……もう!アレは…」

追いついた赤ビスマルクが言う。

 

 

 

 

そこには…深海化…

今までにも見たことがない様な艦娘だった者が佇んでいた。

 

 

 

「…キューブで何かされたのかもしれない」

赤ビスマルクが言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

KAN-SENを創るのは…

 

 

 

リュウコツとなるメンタルキューブと

"艦としての記憶" "情報"

 

奴らは…

そこを利用したのか?

 

深海棲艦の情報、艦娘の情報を軸に

無理矢理組み替えたのか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時…神通だったモノが言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「助け…て…あァ…西波島ノ…提督……?…お願イ…助けテ」

 

 

「おお!今保護して……」

 

 

その神通であろう艦娘は笑顔で言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「殺しテ…」

 

 

 

「!?!?」

 

 

 

「少シずツ…意識が無くなルノ…嫌…化け物ニなって死ヌのも…皆ト戦うノモ嫌なノ……」

 

「お願イ…」

 

 

 

 

 

 

「私ヲ…まダ…艦娘だカラ……今ノ内に…艦娘のママ沈めテ……」

 

 

 

 

悍ましい光景だった。

艦船に…駒として艦娘が利用されていた。

半分深海化し…微かに残った自我で助けを求めていた。

 

 

そこら中から響く声。

 

見れば…無数の艦娘だった者達がこちらを見ていた。

 

 

 

 

 

「諦めない…で下さ……」

榛名が言葉をかけようとした時だった。

 

他のカンムスだった者が叫んだ。

 

「諦めないでナンテ言わナイデ!!自分の事は自分ガヨク分かる!自分が…自分で無クナるのが分カルの!」

 

「なら…セメテ…せめテ…温かい思い出ノ中デ眠りたい」

 

 

 

 

 

 

「どうする!?指揮官!」

赤ビスマルクが指示を仰ぐ。

 

皆の注目が救に集まる。

 

 

 

 

 

「・……」

 

何故…こうなる……?

 

どうすれば良い?

 

また答えが出せない自分が居る。

苛まれる自分の心。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アぁ…」

 

神##?は思った。この提督は優しいんだ…と。

ギリギリまで私達の事を考えてくれて……

でもそれじゃあ…遅い。

私達も…限界だから

 

ならせめて…

その優しさの中で…眠りたい(沈みたい)

 

 

 

 

 

–––ごめんなさい––優しいあなた––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウグァァァア!!」

彼女は駆け出した。

一直線に救の元へ向かう。

 

 

「くっ!」

 

判断が……!!

 

 

こちらへ来る神通

間に立ち塞がる大和

 

 

 

 

 

 

「提督ッ!!!危ないッ!」

大和が神通だった艦娘に砲撃する。

 

 

 

ドォン!

 

 

 

 

その艦娘は…

砲撃と共に半身が…吹き飛び

 

 

 

 

 

 

 

「……ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう…ごめんなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

笑顔とその言葉と共に彼女は…砕けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘だろ…お前…わざと…」 

救を含め皆にはその言葉と表情が見て聞こえた。

 

「そんな……」

 

 

 

 

 

 

 

「ぅぁああ!!!」

「ガァア!!」

 

それを真似してか…

奇声を上げてコチラヘとやってくるかつての艦娘達。

 

ある者は涙を浮かべて

ある者は助けを求めて…

 

沈めテ…と。

 

 

 

 

 

 

「ヤメロ!お前達ッ!!やめてくれえええ!!」

 

 

その言葉は届かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『貴様は甘すぎるッ!!』

『非情にならねばならない時が来るのだ!』

 

とある男の声が脳裏に浮かぶ。

 

 

 

 

 

 

 

彼女達は選んだのだ。

艦娘として雷撃処分で味方を沈めたと言う意識を持たさない為に

 

敵として倒されることを…

 

彼女達なりの優しさ…が

最後の気持ちがそこにあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

「ダーリンさん!…榛名が代わりに指示を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…全員構え!!!」

 

 

 

 

 

榛名が代わりに指示を出そうとするのを遮って救が指示を出す。

 

 

 

「「「「!?」」」」」

 

 

 

 

「指揮官…様?」

 

 

 

 

 

 

「彼女達を…せめて艦娘のまま…眠らせて欲しいッ。すまない…俺に力が無い為に…」

 

 

無力な俺を許せ…

背負う。

お前達の無念も…その誇りも全てッ!!

お前達の轟沈を…無駄にはしないッ!!

 

 

「……撃てぇええええええええええ!!」

 

 

 

 

 

 

轟音と共に沈み行くかつての同志達。 

 

パキンと砕ける者。

沈む者。

 

 

 

 

だが誰1人として恨む顔をしなかった。

こんな決断をさせて申し訳ないと言う顔とありがとうと言う者達だけたった。

 

 

 

 

「あああああぁッ!何がありがとうだよお…!ちくしょおおお!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

割れた鏡は消え行こうとも…

 

残された者は…傷は深く。

 

 

 

 

 

 

 

「ダーリンさん…」

榛名は泣きながら彼を抱きしめる。

 

 

「……ありがとう…榛名。大丈夫…だから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…敵性侵食を確認、元に戻す術もなく…彼女達の意向に沿って…雷撃処分としました……」

「うちのメンバーに確認させてる艦娘のリストは送ってあります…」

 

 

「そうか……それは辛い役割をさせた」

「当該鎮守府へは俺から説明しておく…からお前は休め神崎…」

 

 

 

 

 

 

電話を切り一息つく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…しかし…神崎…お前にはもっと辛い現実が待っているかもしれん…」

巌はポツリとつぶやいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さて!今日からもがんばるか!!」

救が伸びをしながら言う。

 

 

「もう大丈夫なのですか……その…お心の方は」

桜赤城が話し掛ける。

 

「まあ…キツいけどさ…アレで彼女らが救えたなら…と思うしかないよ」

 

 

「さあ!飯行こう!」

 

 

「…絶対に!」

 

「ん?」

 

「何があっても…お隣で貴方様をお守りします」

 

「ああ…ありがとう」

 

 

 

どこか小さく見える背中は……儚げで…

 




闇が深い話となりました。

非情になるというより
腹括ると言うか何というか…。

オリジナル展開ですがお楽しみ頂けたなら幸いです。


感想などおまちしています!
ぜひぜひお願いします!


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189話 桜大鳳と……1日夫婦

 

 

「えー…桜大鳳?」

 

 

 

 

 

 

 

執務も終わり、部屋には桜大鳳がいる中で…

 

 

 

 

 

 

「はい?なんでしょう?」

 

 

「問題です。この合鍵は…何本目でしょうか?」

 

「……えと…確か…今月では3本目…トータルですと…180本目くらいでしょうか?」

 

「うーーん!正解ッ!!」

 

「ほら…これ君の合鍵コレクションね?今日で記念すべき180本目だ」

 

「……ちょっと何言ってるかわからないですね」

 

「わかんだろ!分かるだろ!メイドイン桜大鳳だろうが!!」

 

「愛故にです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…指揮官様……お辛くないですか?」

 

 

「…辛いとこはあるけど……非情にならなければならないのかな…とか考えたりするよ」

 

 

「指揮官様はそのままでいいのですよ」

 

「ありがとうな」

 

「…私こそ…お役に立てるなら何でもします」

 

「うーーん…」

 

 

「明日から何したい?」

 

 

 

「あなた様のお側で…2人きりで過ごしたいのですが…」

 

「そんなんで良いの?」

 

 

 

 

 

「…あなた様の…お側で少しでも心の支えになれたらと…」

 

「…ありがとう」

「でも、折角なんだから君のしたい事を教えて欲しいな」

 

 

 

「でしたら…あの……また、デートに…」

 

 

「ん!行こうか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう御座います、指揮官様」

「朝ごはんのご用意が出来ていますよ」

 

 

 

おずおずと朝食を出してくれる桜大鳳。

 

メニューは慣れないであろうサンドイッチだった。

曰く、少しでも気分が変われば…との事だった。

 

 

俺が落ち込んで…また前みたいならないか心配で

きっと気を遣ってくれてるんだな…

 

 

「ありがとうな…桜大鳳」

 

「い、いえ!指揮官様が喜んでくれるなら私は何でも…」

 

 

 

 

「「「行ってらっしゃい!!」」」

 

皆に見送られて鎮守府を出る。

桜赤城先輩からも指揮官様の事…お願いねと言われた。

 

 

 

 

前のデート以来の2人きり。

 

パスタを食べながら気絶した事は覚えている。

 

「どこに行く?」

 

「ホームセンター…に…」

 

「合鍵の道具仕入れか?」

 

「‥……違いますよ?」

 

「今の間は何だ!?」

 

「ペットコーナーでも見られては如何ですか?」

 

「……あからさますぎだろ?」

 

「……」ひゅー ひゅー

 

「口笛吹けてねえし!てか何買う予定さ?r

 

「……アルミ板…?」

 

「電子ロックの鍵に変えるか」

 

 

「そんな!?!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

桜大鳳はぎこちなくついてくる。

 

ごめんな。

理由は分かってるんだ。

 

 

 

「ごめんな…」

 

「え?何がですか?」

焦ったように取り乱す桜大鳳。

 

「ずっと昨日から…いや、その前から俺に気を遣ってくれているのに…表情も硬くて」

 

「…」

オロオロとする彼女。

 

「…お前達にあの判断を下させる訳にはいかなかった。俺がしないとダメだったんだ…でも、あれで良かったのか?もう少し何か出来たんじゃないか?俺にもっと力があれば!あの娘達を救えたんじゃないのかと考えてな…」

 

 

「今まで色んな困難も乗り越えられたのに…弱いんだなあって。しっかり在ろうとするんだけどなあ…」

 

 

 

 

 

 

「し、指揮官様!!」

「御無礼な言葉…お許しください」

意を決したように涙目の桜大鳳は言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全てを救えるなど…傲慢な考えです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな事はあり得ません…無理です!救えない事もあります!」

 

「閣下も…元帥代理閣下も…です。あの方々は悪だから救わなくて良かった…のですか?」

 

「深海棲艦だって……そうじゃないですか!!」

 

「今この瞬間も…戦う艦娘や傷つく艦娘は居ます…私達の世界でも…」

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()() 。それは指揮官様が1番分かってらっしゃる事じゃないですか」

 

 

「………」

図星だ。

確かにそうだ。

 

深海棲艦…御蔵のジーサン達…今も戦う艦娘達…

全てを救える訳じゃない。

 

 

 

 

 

 

「私も…指揮官様も…ちっぽけな存在なのです。この両手の届く範囲でしか…力の及ぶ範囲でしか救うことは出来ないのですから」

 

 

「だから全てあなたの手だけでは掬えきれないんです!!ですから私達が居ます!あなた様の手のその先に手を伸ばせるように!でも…それでも届かないものも有るのです!!ならば…その時は一緒に泣きます!悔しがります!強くなろうと思います!」

 

「だから!!」

 

 

「1人で全部全部抱え込まないで下さい!その小さな体に…心に載せ切れないだけの重荷を詰め込まないで下さい!載せるのなら…私達にも分けてください!!!」

 

 

「あなたのために戦うのはそう言う事なんです!私もきっとお役に立ちますから!」

 

 

 

 

 

 

「それに…あのまま…彼女達を見捨てるよりも…指揮官様の判断で彼女達は…艦娘のまま逝く事が出来たのです」

 

「どうかそれだけは忘れないで下さい!悔いないで下さい!」

 

 

 

恨みの言葉でなかった。

ありがとうございます

ごめんなさいだった。

 

彼女達は…艦娘のまま行く事ができたのだから…

 

 

 

 

「不躾な態度…申し訳ありません…罰ならば何なりとお受けします」

頭を下げる桜大鳳。

相当な勇気が必要な言葉だったろう。

肩は震えてポタポタと涙を流しているようだ。

 

 

 

 

 

 

「罰する訳ないだろう。逆だ。ありがとう…そうだな…うん。君の言う通りだ」

 

「ありがとう…一緒に考えてくれて…どこかで俺は全てどうにかなると思っていた。でも無理だった…前の金剛達や、今回の神通達で痛感したよ…。俺は無力だ…うん…何もできやしない…ありがとう…何度もすまない…」

 

 

 

 

何故か涙が溢れてきた…いや、理由は分かる。

 

 

 

彼女の暖かさだ。

俺が指揮官なんだ…提督なんだと思ってた。

その責任すら…思いすら一緒に背負うと言ってくれた彼女の暖かさに。

 

 

 

 

 

 

2人で泣いた。

ぐすっ…と泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひとしきり泣いたらお腹が空いてきた。

 

「泣いたらお腹空いたなあ…」

 

 

「…あのパンケーキというものを食べてみたいのですが…」

 

「ん?いいね!行こうか」

 

 

パンケーキ屋に行き、注文する。

店員か「あ?何こいつら喧嘩明け?」みたいな顔で見てきたがスルー。

 

到着したのは…焼きたてふわふわのパンケーキ

桜大鳳にとっては未知との遭遇である。

 

 

 

これが…パンケーキ…一口……はむ。

 

んー!?甘くて…幸せで…

思わず顔がほころびます…。

 

 

 

え…?指揮官様のも一口…いいのですか?

 

あーんですか!?

 

あ…ぁーーん…

……おいひいです。

 

え?コレも食べてみたい…ですか?

 

 

はい…あーんしてください…。

 

美味しいですか?

うふふ、良かったです。

 

 

 

なにより…あなた様とこうやって過ごせる事が何よりも嬉しくて…

 

 

 

 

 

 

「美味しいな!うん!パンケーキで良かった!」

 

「うふふ、こんな私ですか、お役に立てたなら嬉しいです」

 

 

 

 

 

 




重い話が続きましたので
少しずつ…伏線になりきってない伏線は回収して参ります。



彼は極々普通の人間です。
全てどうにかできるわけではありません。

ただ、少し違うのは彼の側には…艦娘やKAN-SENと言った存在が居るという事です。



少しでもお楽しみ頂けたなら嬉しいです!


感想等頂けると嬉しいですー!





微熱は続いてますー。
陰性しかでませんー何なんだろう…


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190話 桜大鳳と1日夫婦 ②

こんな私…

 

お役に立つ…

 

 

その言葉を桜大鳳はよく使う。

よし…今度は…俺の番か…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コレなんか如何ですか?」

 

「ん?いいねそれ」

「てか……あーーなんでもない」

 

よく俺の好みわかったな…って言葉は無意味だもんよ。

やめておこう。

 

「それどーするの?」

 

「指揮官様がお部屋に来て下さる時にお出しするお茶用です」

 

「そのお箸は?」

 

「その時にお料理をお出しする時のお箸です」

 

 

 

 

 

 

「その枕は?」

 

「指揮官様がお泊まりするときのため用です♡」

 

 

「布団とかは?」

 

「一緒の布団で寝ますので…」

 

「狭くない?シングルでしょ?」

 

「その方が…一緒にいられるので…」

 

「なら、他にも服とか必要だよなー」

と笑いながら冗談を言ってみる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら?もう有りますわよ?」

予想通りというか…当たってはいけない予想が当たった。

うーーん平常運行!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんやかんやで買いまくった桜大鳳。

 

「沢山買ったなあ…俺関係のやつ」

 

「ええ!貴方のお役に立てるなら!」

 

「……ふむ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ショッピングを済ませた帰り道

 

 

「…うふふ……」

 

桜大鳳は思い出したように笑う。

 

「ん?」

 

「私の作った合鍵…コレクションしてくれてたんですよね?」

 

「ん…まあね」

 

「それは…私の事を意識してくれてる…んですよね?」

 

 

「まあ…好きだから作ったんだろう?」

「最初はマジかーーって思ってたけど…懸命に作るお前の姿を思うとなあ…捨てられなくてなあ」

 

ぶっちゃけ…

最近はクオリティもあがってきて少し…少しだけ!

楽しみなところもある。

 

 

「それに……愛してるからなあ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…こんなカンレキでもですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カンレキとは…艦歴…つまり、彼女達が艦として辿ってきた道だ。

 

…空母としての大鳳…。

 

僅か3ヶ月での轟沈…初の戦場での事だった。

 

 

これが結構重要視されてたりする。

着任拒否も珍しくはないのだ。

故にコンプレックスに感じる者も少なくない。

 

即ち、桜大鳳のカンレキは良いものでは無い…と言われてる。

彼女もその1人だ。

 

だから言う。

 

お役に立ちます。

––だから見捨てないで。

 

 

貴方のために…

––だから私を見て。

 

 

 

と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?」

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

 

「だから?」

 

「え…いや…嫌にならないんですか?」

 

指揮官様は指輪を磨きながら言います。

「なら嫌と言ったら好きを諦めて…出て行くのか?仕事上だけで一緒に悩んだりしてくれるのか?」

 

「いえ!そんな事はありませ…ん」

 

「お前から見て俺はそう言う奴か?」

 

「いえ…」

 

 

「なら答えは出てるじゃ無いか」

「それに…俺は言った筈だぞ?」

 

 

「例え…ここ数年で180本の合鍵を勝手に作るバーサーカーだろうと、君を愛していると」

「…でもぉ〜?そんなこと気にしちゃう…悪い子には…指輪は返してあげませーーーん!」

 

 

「!?!?!?!?」

「し……しきかんさまぁ!?」

「い、嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です!!ください!返してください!」

 

それ無しでは生きていけません!

それ無しだと…もう足りないんです

1人の時でもあなたを感じられるものだから

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「何でもしますから!」

 

 

 

 

「違う」

 

 

 

 

 

 

「…え?」

 

「役に立つとか立たないとかじゃ無い」

 

 

「それなら…俺の事を愛してくれる他の強い空母の子の方が良いか?」

 

「………ッ」

 

 

 

「違うな」

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「他の桜大鳳でもダメだ」

 

「俺の為に…世界を超えてくるくらい愛してくれる…バカなKAN-SENの桜大鳳じゃないとダメなんだ」

 

他の大鳳も…まあそのくらいするか…?

いや…ないだろう。

君だから…来たんじゃないのか?

 

 

「泣きながら一緒に悩みましょう?私達も背負いますと言ってくれる暖かさをくれる君じゃないとダメだ。…そんな君が好きだ…愛している」

 

「…しき…かんさ…ま?」

 

 

「役に立つとか…立たないとかじゃない…ありのままの君で居てくれるなら…コレを今一度受け取って欲しい」

 

 

カチリと合わせた指輪を台にはめて差し出してくれた。

 

 

 

「はい……私は……居ます!ありのままで……あなた様のそばに…居させてください!!」

右手を差し出す桜大鳳。

 

 

「左手を……」

 

「え……はい!!」

 

 

赤城先輩と同じ…

左手の指輪…

 

 

ちう……

 

 

 

え?

あの…指輪に夢中で…

一瞬過ぎて!!!ああ!!私の馬鹿あ!!

 

 

 

「しししししし指揮官様ぁ!!…あの……もう一回……お願いします」

 

「ん…」

ぎゅっと彼を抱き締めた。

意地でも唇を離さなかった。

 

涙が溢れてくる。

ありがとう…ございます指揮官様…。

 

 

 

 

 

 

 

 

物凄い力で抱き締められた。

キスをする口も離してくれなかった。

 

彼女から流れる温かいものが…きらりと見えた。

涙だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぷは…指揮官様…もっと…もっと…ぐす…壊れるくらいに抱き締めてください。壊れてしまうくらい愛してください」

 

 

 

 

私を愛してください–

その言葉に全てが篭っていた。

 

 

カンレキを重要視する世界だからこそ…

 

 

 

 

 

 

まあ、俺はそんなもの気にしては居ないのだが…

彼女にとっては大きいのだろう

でも…そんな思いはしないで欲しい。

大切なのはお前自身なのだから…

 

 

 

わかったよ…と

 

 

それに応えるように強く強く抱き締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体と…口が少し痛い…

本気でやって来たな…桜大鳳め…

 

 

 

 

 

 

「…もう……離しませんからね?」

 

目の前に居るのはキラ付けされた桜大鳳

 

 

 

「離れてくれるな」

 

「はい」

 

 

 

 

「あ!でも鍵は変えるからね!虹彩認証にするわ」

 

「そんな!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

181本目の鍵を作りながら思います。

 

私も指揮官様に救われたんだ……と…。

私が力になるつもりだったのに…。

こんな(カンレキ)……いえ

空母 大鳳()を愛して下さる指揮官様…。

 

 

きっとお守りします。

ずっとおそばに居ます…。

離しませんから…。

 

 

 

 

 

 

え?

あの!?

 

指揮官様ぁ!?

 

それは……えへへへへ

 

あ"ーーー!!!没収だけは!!没収だけはーー!!!

 

 

え!?もう鍵変えたのですか!?

虹彩認証…!?!?

 

 

 

 

 

むむむ

 

指揮官様…?片目…………ですよね!

無理ですよねえー……はう…。

 

 

 

え?

たまにならお茶に呼んでくれたら?

こちらから行くよ…ですか?

 

は、はははははい!!

お待ちしています!

 

お待ちしています!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなやりとりがあったとか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……鍵が変わってますぅぅ!?」

 

「くっ!!コレじゃあ……くそう!!」

 

 

 

 





ぎこちない話ですが…
どうでしょうか?

彼を彼女が支えて彼女を彼が支えて…。
そんなお話にしたかった…。

少しでもお楽しみ頂けたなら幸いでーす!


感想などお待ちしていますー!!


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191話 狼と提督と…

〜♪

 

〜〜♪

 

 

足柄です。

 

 

 

姉妹には結婚したいランキング1位の羽黒がいます。

私?

 

結婚して欲しいランキング1位だそうよ…。

 

 

……必死なんだけどなあ…。

 

 

 

 

 

 

今日…私はとある男性に告白されました。

 

街に住む男性の方…。

 

何度も何度もデートのお誘いをもらったりしています。

 

誕生日…?には何か貰ったり…。

 

 

 

「僕と…付き合……いや、結婚して下さい!!」

 

 

そう告白されました。

 

 

 

 

 

「……えと…あの」

 

 

 

 

と言うのを…ベルファストと提督に見られてたのよね…。

 

その時…俺が居るだろと言って欲しかった自分が居た。

なぜ何も言ってくれないの?という自分が居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……受けるの?その話」

妙高姉さんが言う。

 

「あの人は悪く無い人だけど……」

 

「あなたが決めることよ?」

 

 

 

 

 

なんて言われて提督と話をしてみる。

 

「……ねぇ…聞いてたのよね?あの話…」

 

「あぁ…モテモテじゃないか」

 

「茶化さないで!」

 

「おぉ…すまん」

 

 

 

「ど、どうしよう?」

 

 

 

 

 

 

 

「どう…って足柄はどうしたいんだ?君が幸せになれるなら…それがいいと言うなら俺は応援するが?」

 

 

 

期待した返事とは違う返事だった。

 

 

え?

 

 

 

 

引き止めてくれないの?

ねえ?なんで?

 

 

あなたにとって私って……

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう…わかったわ…」

 

 

 

 

部屋を後にする足柄。

 

 

 

 

馬鹿みたいだ…私…。

 

そうよね

彼を慕う娘はたくさん居るし…

別に私が居なくても…ね

 

私のせいで一回酷い目に遭わせてしまったしね…

 

 

 

 

 

 

「どうした?足柄……」

泣きながら部屋に帰って来た足柄が那智に話をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その数分後に那智が鬼の形相で執務室にカチ込んで来た。

俺の胸ぐらを掴むなり、殴りかかって来た。

「…ッ!!」

 

「ご主人様ッ!!」

憤るベルファストを手で止まれとサインを送る。

 

「提督ッ!貴様!見損なったぞ!!足柄は…あの話を受けようかと言っているんだぞ!!」

 

 

「貴様は…奴の気持ちも知ってるくせに…!!」

 

「奴がどれだけ…貴様の事を」

 

 

「…那智様…暴力もそうですが…上官に対して貴様という言葉遣いは不適切かと…」

 

「黙れッ!!今はコイツと話をしているッ!それに!姉妹が泣いているんだぞ!!黙ってられ…」

 

 

「那智…」

「お前は何が言いたいんだ?」

 

 

その言葉にカチンとくる那智。

 

「提督…貴様ァ」

また殴る那智。

 

 

「俺が行くなと言えば良いのか?そんな奴を放っておいて俺と一緒になろうと…言えと言うのか?」

 

「足柄はそう言って欲しいと言ったのか?」

 

「…ぐっ……でも奴の気持ちもくらい!奴は…自分のせいで貴様を傷つけてしまった事も…その負い目を…」

 

「足柄がそれを望むならそうするさ…でも…俺はアイツの意思を尊重したいんだ」

 

 

「でも…足柄は…足柄は!お前のことが好きなんだぞ!」

「いつだってお前の事を好きなんだぞ!私以上に!!」

 

 

 

 

「存じております…」

ベルファストが割り込んで来る。

 

「何だお前は!!」

 

「お黙りなさい!!」

スパァン!!

那智の右手を叩くベルファスト。

 

そして…ベルファストが凄みを持って言う。

那智も驚いたのかピタリと言葉を止める。

 

 

「那智様の今の行為は…足柄様にとってマイナスでしかありませんよ」

 

 

「…ご主人様は悔しがっておりました。足柄は受けるのかな?と私に聞いて来たくらいですから。…ええそうでしょうとも…大好きな方が他の方に告白されたから…」

 

「べ…ベルファスト?」

 

「ご主人様もお静かに…」

 

「はい」

 

 

 

「良いですか?那智様…。お付き合いと結婚の話を申し出をされたのは誰ですか?」

 

「足柄…だが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「那智…飛び出していったけど……」

恐る恐る執務室に近付く…。

 

声が聞こえてくる。

私の…話?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええ、そうでしょう。では…最後にその決定を下すのは?」

 

「…足柄だ」

 

「ええ、そうでございます。でしたらそこにご主人様が自分の意思を挟むと言うことは…足柄様の決定に影響を与えます」

「そもそも…足柄様がご主人様を愛しているなら…足柄様は断るでしょう…恐らく引き止めて欲しかった…というのはあると思いますが」

 

 

 

「しかしながら…それならばそうと足柄様はハッキリ言うべきです」

 

 

 

 

そうだ。

うん、そうだった。

 

 

言うべきだったんだ…私は…あなたが良いと。

 

 

「それに……まあ…ご主人様も今、気が気でないでしょう」

 

「ですが…足柄様の1番の幸せが何かを選ぶのは足柄様なのです。ご主人様は言いました。足柄様が幸せになれるなら…お前の意思を尊重すると」

 

「本当はご主人様だって…断って欲しいと思っていたはずです」

 

「ですが…その自分本位の気持ちでは、かえって彼女を傷つけるかも知れないと思ったのも事実です。ご主人様のお怪我の件も知っております…。さぞ、足柄様は気に病んでるでしょう…。ですが、其れを話題として出すと足柄様が縮こまることもご主人様は分かってらっしゃいます」

 

 

「那智様…あなたにご主人様を殴る資格はおありですか?」

「ただ、感情に任せて暴力に訴えるのは…品を下げます」

 

 

「………」

 

「…許せなかったのですよね?」

 

「え?」

 

「那智様も…ご主人様を好いていて…足柄様の事も大切で…だから…そうなったのですよね」

 

「……」

 

「那智…」

 

 

 

 

 

言おう!

言おう!

 

 

 

「てい…と…」

意を決して執務室に入った足柄が見たもの…

 

①提督の胸ぐらを掴む那智

 

②左頬が赤く腫れてる提督

 

③そのあいなかに居るベルファスト

 

 

 

「どう言う状況!?!?」

 

しかしわかる…

那智のことだ…きっと…提督を殴ったのだろう。

 

 

 

「やめてよ那智!!提督に何してんのよ!!」

 

「足柄…これは…」

 

「やめてよぉ…私が悪いんだから…」

「ごめんなさい…止めて欲しかったの…私っ…提督が好きなの…ごめんなさい!振り向いて欲しくて…期待した答えじゃなかったから…勝手に自暴自棄になっていただけだからあ」

 

「那智ぃ…何でこんな…」

 

 

 

 

「足柄…那智は悪く無い、君を思っての行動だ」

 

「提督…お前……」

 

「ごめんなさい…皆…私が……」

 

 

 

「提督!ちゃんと言わせて…私の気持ちを…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「確かに…プロポーズを受けたのは嬉しい…でも!私は…私は、あなたが好きなの!」

 

 

 

 

 

 

「あなたから離れるなんて考えられないの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の旦那さんになって下さい!幸せにしてみせるからあ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「逆プロポーズ…!?」

驚く那智

 

「まぁ…」

クスリと笑うベルファスト

 

「……!!」

驚く俺と置いてきぼりの大淀

 

 

 

「…私には……あなたしかいないから…」

 

 

 

 

 

 

「…ご主人様…」

「提督…」

那智とベルファストと大淀がこちらを見る。

 

 

 

 

「……なら、どこにも行くな。ずっと居て欲しい」

 

「うん」

 

 

「こ、こちらこそ…よろしくお願いします…」

 

 

 

「きっと私があなたを幸せにするからぁ」

ぽろぽろ泣きながら何度も何度も繰り返す足柄がそこに居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい…私…あなたのプロポーズはお受けできません」

 

「え…」

 

「好きな人が居ます。ずっと好きな人が」

 

「僕より…幸せにしてくれる人?」

 

「…どうかしら?」

 

「そんな奴に何故!?」

 

「でもね?私が幸せなの。その人と居られるだけで。勝手に幸せに感じるんだもの…彼にその上幸せにして?なんて言えないわ」

 

「…そうか………」

 

 

「なんて言えるか!!俺は贈り物もしたんだ!色々やったんだ!受け取っておいてハイさよなら!なんて許せるか!!こうなったら無理矢理にでも…」

彼が私の肩を掴む。

 

「民間人に手出しできないのは知ってるぞ!俺のものにならないなら…力尽くで!!」

 

 

 

 

 

 

 

「…おい」

その手を…提督が掴む。

 

 

 

「俺の大切な人に何してんだ…」

 

「お、お前が最低クズ野郎か!!」

「なら返せよ!これまでにこのクズ女にやったプレゼント代から返せよ」

 

 

「………いくらだ?」

 

「50…いや、200万円だ!」

 

 

 

「ふむ……わかった。イロをつけて払おう」

 

 

「ちょ…提督?」

 

提督は懐から茶封筒を取り出して男の顔面に投げつけた!

「うぐ!?」

 

「テメーみたいなのに…俺の大切な…足柄をクズ呼ばわりされたくねえええ!!」

そしてその茶封筒ごと男を殴りつけた!!

 

「ぐあっ!!!」

 

 

 

 

「行くぞ!!足柄!」

提督は私の手を取って走り出す。

「逃げるぞ!」

 

 

 

「な…何であなたが殴るのよ!私がやらなきゃいけないでしょ?

それにお金…」

 

「ん?お前の手はそんな手じゃ無い!これくらい俺がやる!……お金?アレ?あぁ…銀行からおろしてきた!ベルファストに渡す予定のお金だけど…かまわん!謝ってからポケットマネーで賄う」

 

 

「無茶苦茶よ!!それに私達…訴えられるわよ!?あの男に」

 

 

「大丈夫だよ」

 

 

別にあんな奴は怖くなかった。

でも一瞬…私の前に立ったあの人が…また刺されるんじゃないかって思った。

 

 

大丈夫だよ…の言葉がこんなにも安心するなんて…

 

手を引いて走ってくれるあなたが…

こんなにも……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ってえ!!あの野郎…絶対にぶっ殺す!!」

「それから…攫ってから…ブチおか…………ん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……貴様……」

 

 

「覆面…?誰だよお前は!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひいいいいい!!!やめてくれえええええ!!!」

 

「悪かった!!俺が悪かったから!!」

 

 

 

「奴らに2度と近付くな!!次は命は無いぞッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督…すまなかった!!私を殴ってくれ!」

 

「なんで?」

 

「いや…提督を殴ったし…言葉遣いも…」

 

「特に罰するつもりもないよ」

 

「何故だ?!」

 

「さあ?色々やってくれたし?」

 

「さあ?って……提督…」

 

「まあ…強いて言うなら…代わりに料理の配膳を手伝ってくれたらそれで良い」

 

 

 

……わかった。と、那智はテーブルを拭きに行く。

 

 

 

 

…那智は見たのだ。

彼が鬼のような形相で足柄の為に走って向かい男の手を掴み…殴り飛ばしたのを。

 

 

カッコいい…と思うと同時に足柄を羨ましいと思った。

俺の大切な人を馬鹿にするな…か。

 

 

 

そんな2人を馬鹿にする男が許せ無かった。

 

 

 

 

「羨ましいぞ…足柄」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その先には…カツを嬉しそうに揚げる足柄の姿があった。

 

足柄に逆プロポーズを受けた提督は急いで指輪の準備をしてるみたいだ。

とは言えすぐには用意出来ないみたいだけど…

それでもいいと言う足柄の顔は幸せそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

というか…カツ……揚げすぎじゃないか?

 

 

 

 

 

 

 

「お!?カレーですね?!提督のカレーですね!?しかも足柄さんのカツ…カツカレーですね!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出来たわよー!」

 

 

幸せそうに提督の隣でカツを揚げる足柄がそこに居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お気に入りが580になりました(´;ω;`)
ありがとうございます!
頑張って更新して行きますのでこれからも応援をよろしくお願いします!



だいぶ体調は良くなった…

たまにはこう言う流れも…有りじゃないですか?
足柄はかなり純な艦娘だと思う!

ぜひ幸せになって欲しい。



少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです(๑╹ω╹๑ )!


感想など頂けたら嬉しいです(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)


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192話 無題

思い出とは面倒なものだ。

 

 

 

 

 

長ければ長い程に深く

 

深ければ深い程に愛おしく

 

愛おしければ愛おしい程に忘れ難く

 

忘れ難ければ忘れ難い程に…憎しみが強くなる。

 

 

 

 

 

 

 

最初はただの部下だった。

 

彼女達の、存在はよくわからない。

なぜ女の子なのか…?

 

あの大戦の名前を冠した彼女達は…

何故戦うのか?

 

 

突然海からやって来た、深海棲艦と戦う彼女達。

 

いくら傷つこうとも、倒れようとも。

 

 

 

 

 

不器用ながらも直向きに頑張る彼女が目に留まる。

 

いつしか…

 

 

 

 

朝の挨拶も

その日の仕事の説明も

時間ごとのちょっとした話も

 

昼ごはんも

 

 

 

 

休憩中の姉妹の話も

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女達を見送った。

行ってらっしゃい…と。

 

 

哨戒作戦だった。

他の鎮守府からも何名か参加しているらしい。

 

最近は正体不明、所属不明の敵性勢力も確認されているらしい。

 

戦争とは言え…今以上に敵が増えるのは面倒だなと思う。

 

 

まあ…あいつらなら…何の問題も無く終わらせて帰ってくるだろう…。

 

 

 

夜食でも作って待ってるかな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから彼女達は戻ってこなかった。

 

 

 

敵性化したので

元に戻す方法も無く…仕方なく…?

艦娘のまま沈めて…か…。

 

 

とある男が頭を下げに来た。

最近、副元帥になったとか言う…奴だったかな?

 

 

 

彼から…指輪が返ってきた。

 

本当に申し訳ありませんと涙ながらに謝ってくれた。

 

 

 

 

いや…

彼女が敵になって誰かを傷つけるなら…そうなってほしくないから。

 

ありがとうございました…と彼に礼を言う。

 

 

 

 

 

 

戦争だから仕方ない…

 

その悲しみを無くすために僕たちは戦っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

執務室が広く感じる。

 

未だに思う。

 

 

「ただいま!帰りましたよ!提督!」

 

と、その扉を開けて帰ってくるのじゃないか?と思う。

 

 

目が覚めたら

「おはようございます!」

 

と、起こしに来てくれた彼女が居るんじゃ無いか?と思う。

 

 

 

 

しかし

 

 

その扉を開けるのはいつでも…別の艦娘だった。

 

 

わかっている…これが現実なんだと

わかっている…これが戦争なんだと

 

でもあんまりじゃないか!!

 

 

彼女に渡したはずの、持ち主の居ない指輪は… 手元にあって…それでも今も輝きを放っている。

 

 

私なんかで…いいのですか?と震える手で受け取り…

あんなに嬉しそうに泣いてくれた彼女はもう居ない!!

 

 

 

 

あの笑顔も!

あの怒った顔も!

あの寂しそうな顔も!

あの2人だけの時に見せてくれる顔も!!

 

 

もう見られない!!

 

 

 

 

あぁ…

寂しい…。

会いたい。

 

彼女に会いたい!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ…

悪魔が囁いてくる…。

 

 

 

 

え?

 

彼女に会える?

 

 

 

 

ほ、本当か?

 

 

 

 

本当に会えるのか?

 

 

 

 

 

 

 

会わせてくれるのか?

 

 

 

お前は何だ?

 

 

 

 

 

 

 

神様…なのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悪魔が囁く

くすくすと笑いながら…囁く。

 

 

 

 

 

「悪いのは…誰?」

 

 

 





 


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193話 浜辺の1ページ

セイレーン作戦を立案する中でも

深海棲艦との戦いも継続している。

 

 

何度か鏡の海域で交戦した。

 

特にセイレーンの駒に改造された艦娘と戦うのが精神的に堪える。

 

 

 

 

とはいえ…

たまのココロの休みは必要な訳で…

 

 

 

 

 

と…今回は気分を変えて別の小島にアウトドアにやってきた訳なんですけれども……

 

 

 

 

 

「嘘だろオイ…」

 

 

そこには深海棲艦が居た。

占拠していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バカンスしてた。

 

 

 

 

 

 

 

「何してんの?」

 

 

「エ…タマノ…休ミデ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「エ…アノ……何カゴメンナサイ」

 

そこには水着姿の…バカンスモードの深海棲艦が居たとか

「バカンスモード!?馬鹿ンスですか!?」

 

 

「待ッテネ…」

いそいそと片付けをする深海夏姫達。

パラソルをしまい、シートをたたみ…

 

 

ムーッ!とかあからさまに寂しそうにするホッポちゃん…。

 

 

「サァ!戦イマショウ!」

 

 

 

「出来るかぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「エ?」

 

「この状態で戦えと?」

「………無理無理無理無理無理」

完全に俺ら悪役じゃん!!

 

 

 

 

 

「提督さん!どーするのコレ!せっかく水着なのに!」

 

 

「……フッ」

港湾ちゃんが笑った…

 

「おい待て!アイツ私みて笑ったわ!!」

 

「待ちなさい五航戦(まな板)…落ち着きなさい」

 

「お前も待て!まな板つったか!?まな板!?」

 

「まぁまぁ…瑞鶴落ち着きなさい?ちなみに私はまな板じゃないわ!」

 

「翔鶴姉!裏切るのね!!」

 

 

 

「………休戦しないか?」

 

 

 

「エ?」

 

「え?!」

 

「デモ…戦ワナイト…上司ニ…報告ガ…」

 

バカンスしてて大丈夫なの?

 

 

 

「ならばッ!!」

長門が出てきました…。

 

 

「ビーチバレーにスイカ割り、水鉄砲サバゲー…コレで勝負ということでどうだろうか?」

 

……片手にボールやら何やらを持った長門が言う。

テメー…休む気しかねえな?

 

 

 

「ム…ソウナラ仕方ナイナ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一回ッ!!

鎮守府 対 深海棲艦!!

 

浜辺の戦いー!!

 

「はい!またまた実況はわたくし青葉と!」

 

「はーい…提督でーす」

「えー…深海棲艦は基本カタナカですけど……ご都合に合わせまして

『』で喋ってもらいます」

 

「え?」

 

「iPhoneだとね…カタカナ表記が…とか資料にはありますが…俺には意味がわかりません」

 

 

 

『ご都合主義…ハッ!スラスラと喋られるッ』

 

 

 

 

 

 

「まずは…ビーチバレーだッ!!」

 

 

始まるビーチバレー…。

 

『あの…コレは有りですか?』

戦艦棲姫の…あのデッカい手が目立つ。

ブロックとか最強じゃないか?

 

 

あとはさ…触手とかさ……

うん

 

艦娘勝てる要素無くね?

 

 

「………艤装は無しの方向で」

 

 

 

 

『そこっ!』

深海側の強烈なスパイクだー!!

 

 

「速いのです!!」

ひっ!と青ざめる電

 

そこに颯爽と現れる馬鹿ん娘が1人…

「天使は守ってみせるぞぉお!!」」

 

 

「はいー…長門の顔面レシーブ炸裂です」

 

「あれ?青葉さん?」

 

「…提督…飛ぶ度に…揺れるアレ…もいできてもいいですか?」

 

 

 

「やめなさい、青葉も十分魅力的だぞ?」

 

「本当ですか?本当に?」

 

「本当に」

 

「…ならここでだい……じゃないキスしてください」

「んー……あだっ!?」

 

キスをせがむ青葉にボールが直撃した。

 

「ごめんなさい…何かイラっとして…」

 

「加賀…さ……」ガクッ

 

 

 

 

 

 

 

『行くわよ!電!』

 

「はいなのです!!」

 

 

 

 

『を!』

 

「…はらしょー」

 

『をー♪』

 

「はらしょー♪」

 

 

「何故会話が成立してる…?」

 

 

 

なんやかんやで楽しそうにやっているみたいで良かった。

 

 

 

 

 

 

深海夏姫曰くどうやら鏡の海域には手を焼いていたようだ。

何名かの仲間も連れ去られたようであり…

その愚痴で盛り上がっていた。

 

 

 

 

 

「……」

 

『提督さん?』

とある深海棲艦に話し掛けられた。

 

「ん?何?」

 

 

 

『…鏡はあと1枚』

『…人形はあと一1つ……頑張って…』

 

「ん?どういう事?」

 

『悲しみも越えて行けるなら…例え地獄が待っていても進めるなら…あなたはこの困難に打ち勝てる』

 

 

 

「どういう意味…鏡…まさか!セイレーンの事か!?お前は何を知って…」

その時ビュウ!!と風が吹いた

 

 

 

「っ!………あれ?……居ない?オイ!おい!!」

…居なくなっている…?

 

あんな深海棲艦いたっけ?

 

あと1…つまり次が最後…ということか?

 

「ダーーーリン!!何してるデース!?バーベキューやるヨー」

 

 

 

 

『私達も…いいの?』

 

「うん!せっかくだから楽しみましょう?」

 

『やったあ!』

 

 

 

 

 

楽しそうに肉を焼く皆

 

 

 

てか深海棲艦って肉食えるのね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まるで戦争を忘れるようなひと時。

笑顔で接し合う彼女達を見ると…嘘みたいに思える中でもしかしたら分かり合える日が来るのでは?と思えてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『また…会う時は敵かもだけど…楽しかった』

「まあ…私達は所謂穏健派だからね』

 

 

「また、バーベキューしましょう!」

 

『……ええ』

『を!!』

『ぐおーーん』

 

「お前も喋るんかい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「楽しかったね…」

 

「ああ…」

 

「戦争中なんだよね?」

 

「そうなんだけど…やはり、中にはああいう奴らも居るんだろう」

 

「いつか分かり合える時もくるかなあ?」

 

「きっとあるさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな日を夢見て俺達は戦う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………頑張ってね、指揮官さん』

 

 

 

 

 

 






この話はまたその内に別の形で書きます(๑╹ω╹๑ )

少しでもお楽しみ頂けたなら嬉しいです。 



感想など頂けたら嬉しいですー!
お気軽にお願いします!!


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194話 龍田ト1日夫婦 ①

コンコン…とドアがノックされる。

 

「どうぞ?」

と、答える。

 

ガチャとドアが開いて入ってきたのは…

 

「はーい!あなた〜?影の薄い奥さんよ〜?夜から失礼するわあ〜」

 

ポジティブなのか…ネガティブなのか…。

 

 

「今日は冷えるから…一緒に寝ない?」

 

 

「…いいけど、その物騒な獲物はしまってね?」

 

「はーい!」

どこに消えた?その槍は…

 

 

 

ちょこんと横に座る龍田。

風呂上がりなのか…いい匂いがするんだよなあ。

 

「シャンプー変えたのよ〜?」

 

ぐっ…バレてました…。

 

「…ごめん…いい匂いで…」

 

「……/////」

龍田が顔真っ赤でオロオロとしている。

 

 

「ね、ねえ〜?たまには提督の…お夜食がたべたいんだけれど」

 

 

「おー!何か食べたいものはあるか?」

 

「……提督の作ってくれたものなら何でも嬉しいわ〜」

 

「なら…龍田にうへへ…スペシャルで背徳的でクセになる提督夜食をご馳走してやるぜぇ…うへへへ」

 

「それは楽しみねぇ〜」

 

 

 

 

 

「レディ…こちらです」

 

「似合わないわぁ〜」

 

「ぐうっ…」

 

「冗談よ〜?あなたはいつでも…その…素敵よ」

 

「嬉しいなあ……って、完成したよ…お待たせさん!」

 

 

 

○ちゃんラーメンであろう即席麺に

ごま油とほうれん草、卵、ウインナーが入った豪華版だ。

提督さんはこの状態のラーメンを深夜の最強飯とか言ってたっけー?

 

そそる醤油とごま油の匂いが……

 

そしてコレは…おにぎりだろうか?

さすが…男の人の手ね。おにぎりが私の作るのより大きいのねえ〜。

梅…かしら?こっちはアッサリにしたのね。

 

 

 

救がゴソゴソと戸棚を漁っている。

あった!と持ってきたのは…玉露と書かれたお茶っ葉だった。

 

コポコポとお茶を入れてくれる旦那様。

 

嬉しくて心がキュンてしてきたわぁ〜。

 

まあ

それを伝えられるほど素直なら苦労しないのよねぇ。

 

 

 

というか…とても美味しそう…

…そりゃ間宮さん達に怒られるわねえ…

 

時々間宮さん達にも振る舞ってるらしいけど…。

 

 

 

カレーもそうだけど…提督の料理って美味しいのに余り作ってくれないのよねえ…

一度、作るよ!なんて言ったら…まあ想像つくかしら。

 

 

 

 

 

 

そんで…

美味しいのよねええええ

 

 

クセになるわぁー!こんなの食べたら…!

…何人の胃袋を掴んだのかしら〜

 

なんだかもやっとするわぁ〜

 

 

「何人の胃袋を掴んだのかしら〜」

 

!?!?思わず声に出てしまってた…ですって!?

 

 

「いや、そんな事ないよ」

 

「今日明日ははあなたを独り占めなんだからね〜?」

 

「どうした龍田?……可愛いなあ…」

よしよしと頭を撫でられる…。

 

 

「そう言うところよぉ〜提督〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご馳走様〜美味しかったわぁ…」

 

「お粗末様でした」

 

 

 

隣にピッタリと引っ付く龍田はじっとこちらを見つめている。

 

「ん?どした?」

 

「いえ〜?」

本当は一緒に寝て欲しいと言えない自分が居る。

素直になれない自分が居る。

 

 

 

少ししたら眠くなってきた。

 

 

 

 

うとうとしてたら…

「寝るか?俺は少し仕事を片付けてから寝るよ」

と、デスクに向かう提督。

 

 

隣に居たいな。

と、提督の隣に座る私。

 

 

「……」

この真剣な横顔が好きなのになあ。

 

時折、こちらを見て微笑んでくれる提督。

 

だめ…

眠…

 

 

 

あ…服かけてくれるの?

…あったかい……あなたの匂い…落ち着くなあ…

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…また寝てしまったわぁ〜」

 

 

 

 

 

あーー!

またベッドだし……

隣にあなたは居るケド…

むーーー!と彼の頬を軽くつねる。

 

彼は悪く無いんだけど…

もう少し素直になりたい。

 

 

 

朝食を済ませてから出かける準備をした。

 

 

「「「行ってらっしゃい」」」

楽しんでこいよ!龍田!なんて天龍ちゃんが言ってくれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

街に着いて色々と見回ってみる。

 

 

「………」

あの服…可愛いな…

 

 

「あの服君に似合いそうだよなあ」

 

「!?」

エスパーかしら?!

 

「着てみない?」

 

「…そうね、せっかくだし…」

ばか!私!もっと喜びなさいよ!

 

 

「あら!お似合いですよ?どうですか?彼女さんにプレゼントで…」

 

「…いいの?」

 

「うん、いいよー!嫁にプレゼントで」

 

「あら!奥様でしたか!申し訳ありません!」

 

奥様かあ……

 

 

 

あのね

…すごく嬉しいのよ?

 

 

 




艦娘達の落差が激しい今日この頃…。

続きます!


少しずつでもお楽しみ頂けたら幸いです!!


感想などお待ちしていますーー!!!


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195話 龍田と1日夫婦 ②

ひゃっほーーい!!
トータルが200話なので記念に投下します!!
0時にも投稿してますのでご注意下さい!


提督は甘党と聞いてたけども…

 

よくもここまで隠れた店も網羅してるわね…凄いわ…。

 

 

 

後から聞いた話なんだけど…

皆の好みを覚えていて、その子が喜びそうなお店を調べて連れて行ってくれてるみたい…。

 

私がマカロンを食べたいと言ったから…提督の中で1番美味しいところに連れて行ってくれたのよね。

 

 

 

 

 

 

「指輪…貸して?」

 

「…………いいわよ〜?」

龍田は一瞬、訝しげな表情をしたが…俺に渡してくれた。

 

 

龍田へも…もう一度渡したい。

 

「?」

 

 

 

「……ちょうど今くらいの時だったかな」

「ボーナスが入ってさ、君にこの指輪を送ったのは…」

 

「…そうだったかしら〜?」

 

「自己満足かも知れないが…もう一度…今度は直接渡させて欲しい」

 

 

 

 

「あの時…俺を庇ってくれてありがとう」

 

 

あの時というのは…鉄底海峡の事だ。

彼女は…いの一番に俺に覆い被さってくれた…。

笑顔で…「大丈夫…私が守るわ」と言ってくれたんだ。

 

「でも…痛かったでしょう」

「ごめんなさい…守りきれなくて…」

 

「ううん…ずっと言わなきゃって思ってて…言えなくて」

 

「あなたは生きてる…ここに居る…」

龍田が俺の顔に手を当ててくる。

優しく撫でるように…。

 

「ここもねえ…」

お腹を…ここは刺された傷…だね。

 

 

「何度も…何度も危ない目に遭ってるのに…本当にバカなんだから」

 

違う…本当に言いたいことはそうじゃない!

 

 

「…いつか本当に死んじゃうわよぉ」

 

 

違う!違う!!

いつもありがとうって

素直じゃなくてゴメンナサイって……

 

あなたが居ないと寂しいんだって伝えたいのに!

 

 

 

動きなさい私ッ!

言いなさいッ!!龍田ッ!!

 

今この時に伝えないと!

後悔したくないから!!

 

動いてよ!!

何で意地張ってんのよ!

天龍ちゃんなら…金剛さん達なら…言えてる言葉なのにッ

 

 

 

 

 

 

 

龍田は噛み締めた表情のまま俯いている。

 

きっと言いたいことがあるのだろうか…

うん

待つよ。

 

 

 

 

 

 

 

「……ッ!」

提督の顔を見ると…本当に優しい表情をしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いつも、支えてくれてありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ッ!…ッ!!」

ズルいのよ!!

 

 

 

 

 

 

「私こそいつも…ありがとう」

 

言えた…。

 

 

「素直じゃなくてごめんなさい」

 

 

「…前に泊まりに来てくれた時…聞いたの」

 

「私のご飯が好きと言ってくれてありがとう」

 

止まらない。

 

 

「あなたが朝いなくて寂しかった」

 

言葉が止まらない!

 

 

「もっと隣であなたを感じていたかった!!」

 

 

「ずっと隣に居たい!」

 

 

 

 

 

 

「あなたが潰れちゃわないか不安なの!」

 

「私達も頼ってよ!居なくならないでよ!」

 

「辛い思いも…何もかも私達も背負うわよ!!」

 

 

 

 

 

 

「私ッ…私は…ッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたを愛しているの!!」

 

 

 

言った…

言い切った……。

 

はぁ…はぁと息を切らせながら俯く龍田

 

 

 

 

 

 

 

 

「龍田…」

 

 

 

 

 

 

「ありがとう」

 

「ごめんな…」

 

「俺は君の作るご飯が好きだ。また作って欲しい」

 

「君の笑顔が好きだ、君の…素直じゃないところも、寂しがりやなところも好きだ」

 

「コレからも支えて欲しい…」

 

「ずっと隣に居て欲しい」

 

 

「愛してる…」

 

 

 

「……改めて受け取ってくれないか?」

 

 

その箱が開くと…

ええ

もちろん知ってるモノがそこにキラっと光っていた。

 

 

 

「ええ…ええ!!喜んでうけとるわぁ〜!!」

 

私の手を持つあなたの手が暖かい…

指についた指輪の痕の上に戻ってきた指輪。

 

 

「返せっても、返さないから」

 

「言わないよ」

 

 

 

 

 

「……終わり?」

 

「ん?」

 

「言わせるの?」

悪戯っぽく微笑む。

 

 

 

「…目閉じて?」

 

 

 

「嫌よ?あなたの顔をずっと見ていたいから」

 

 

 

少し赤くなった提督の顔が近付いてくる。

 

 

 

 

触れると…あったかいね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ?」

 

「うん?」

 

「今夜はずっとあなたと過ごしたい」

 

「喜んで」

 

 

夢みたいな光景。

寝転んでもあなたが目の前にいる。

願わくば…この光景がこの先も見られますように。

 

あなたと過ごすひと時が…

こんなにも幸せなのだから。

 

 

ニコリと自然な笑顔で微笑みかける。

 

「可愛いなあ!龍田の笑顔は」

と、抱き締められる。

 

「そう?二人きりの時なら見せられるかも」

 

「独り占めさせてもらうよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よお!龍田!朝帰りかー」

 

「そうね〜朝帰りよ」

 

「幸せそうな顔してるな!」

 

「そうかしら?」

 

「あぁ…とても幸せそうな顔だ」

天龍は笑った。

 

その時に笑い返した妹の笑顔を天龍はずっと覚えているだろう。

 

 

 




総投稿で200話になりました!
本編はまだですけど…

いつも読んでくださる皆様のおかげです
本当にありがとうございます!
セイレーン編も次話から最終パートに入ります!
シリアスパートでございます!
加筆修正中にはなりますが毎日更新を頑張りますので
糖分補給だけお願いします。






少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!


感想などお待ちしています!
ぜひぜひよろしくお願いします!



追記…
お気に入りが590越している…だと!?
ありがとうございますううう!
お礼は改めて明日の更新で合わせてください!


17時ごろ更新予定です!


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196話 碧い航路の果てへと ① 明日へ向かう為に

…愛する指揮官よ…

私と愛し合おう…。

 

 

……この再現で私が敗れたら…もうストックはない。

 

この少ない時間とて愛おしい…。

 

だが、今回は奴等に軍配が上がることはない。

死者が現れて一緒に戦うような何度も奇跡は起こらない。

 

 

…コードGの関与の可能性がある訳だが…

いくら奴とて死者をどうにかすることはできないだろう。

 

 

 

奴は本当に面倒だ。

私達と同じ存在の筈なのに…私達とは違った方向へ動く存在…。

 

しかし、奴の存在をこの世界では確認していない…。

 

 

 

いや…私は私の役割を果たすだけ…。

 

神崎…救。

KAN-SEN、艦娘達…。

見せてくれ。お前達の予想外を…私達を退け…滅び行く運命を変えられるなら!

 

 

 

 

そして…もしもの場合に備えて…

しっかりと布石は用意してある…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きてください…指揮官」

 

 

 

「…起きてください!!」

 

 

 

 

スマホがけたたましく叫んだ。

 

 

 

 

「え!?誰!?誰!?」

 

「こちらです」

 

「スマホさん!?」

 

「違います」

 

「……誰?」

 

「……お忘れですか?補助電子アイデンティティインターフェイス…通称…TBを…」

 

 

「……え?」

 

 

「マジですか?」

 

「マジです」

 

 

 

アズールレーンのゲーム内においてのセイレーン作戦をサポートする為に上層部から派遣された補助…えとナントカインターフェイス…略してTBちゃん。説明キャラ……あ、失礼?ごめんね。

 

すんごい謎な娘だけど…見た目もセイレーンっぽいし

でも、支持は的確であるし、イルカとか見たら喜ぶあたり人間臭い所もたまに見えるので…うん謎。

 

 

 

 

「上層部からの指示…?」

 

「いえ…詳しくは…伝えにくいと言いますか…」

 

「まあ…手助けしてくれるならありがたいが……どうしてこのタイミングなの?」

 

「指揮官?もうすぐ…そこに鏡の海域が現れます。そのサポートの為に来ました。訳あって体がコチラにないので…通信端末から失礼します」

 

 

 

「もしかして前に教えてくれた?奴について…海で」

 

 

「海…?いえ?私は何も。やっと繋がることができたくらいなので…」

 

 

…少し疑問が残ったが…まあいいや。

味方が増えるのは嬉しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さあ…始めよう!!』

テスターβは最奥に構える。

 

 

 

 

「……さあ!行こう!!」

救は島から指示を出す。

 

 

 

 

 

 

「『最後の決戦(実験)だ」』

 

 

 

 

 

 

 

目の前に広がる…いや

鎮守府の周辺に巡らされた鏡の海域。

 

 

並び来るのは…深海棲艦、怨念と化した者達、セイレーンの駒、そして…やはり艦娘。

 

 

 

 

 

「これ以上に…あの悲しい人達を生み出す訳には行かない!」

「奴のストックも…もう最後との情報もある…」

 

 

「絶対に勝たなければ…この世界にも…あの世界にも未来は無い!!」

 

 

 

 

恐ろしむべきは…情報に他ならない。

「向こうの世界で艦娘達を作り始めたら…人に勝ち目がさらになくなる!」

 

「…勝つしかありません」

TBが言った。

 

「現状…セイレーンには艦娘や深海棲艦を変異させて従わせる技術がありますが…しかし、彼女達にはメンタルキューブから艦娘を作り出す技術はありません…」

 

「なんだと!?なら俺が出会った金剛達は!?」

 

「鹵獲した艦娘を利用したのだと思います。桜赤城さんに関しては建造可能なので、そのまま利用したのだと思いますが」

 

「なら…無理矢理に偽物の記憶を植え付けられて…?」

 

「もしくは…建造したての艦娘を攫い…利用したか」

 

 

 

「どちらにせよ、テスターβはあなたにしか興味を持ってません。あなたを打ち壊し…あなたの技術も艦娘も全てを持ち帰る算段をとっているのではないでしょうか…?」

 

「故に、何があっても今回は負けられません。どちらの世界の為にも…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「左側から山城、扶桑!!時雨!龍驤!大井!最上!武蔵!夕立!吹雪!不知火!ベルファスト!榛名!日向!伊勢!イク!」

 

 

「右側から比叡!赤城!加賀!暁!蒼龍!飛龍!長門!大和!霧島!川内!鈴谷!桜赤城!天龍!大淀!ゴーヤ!白露!翔鶴!」

 

 

 

「中央から総旗艦の三笠!金剛!桜信濃!桜大鳳!桜隼鷹!アークロイヤル!鳳翔!龍田!北上!雷!響!瑞鶴!」

 

「明石!間宮に伊良胡夕張は艦隊のサポート!!」

 

「残りは交代、入渠の支援及び!近海での戦闘に!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…扶桑姉様!」

 

「ええ!行きましょう!伊勢と日向には負けないわ!」

 

「私達も!頑張ります!」

 

 

 

 

 

「赤城さん…久しぶりですね」

 

「ええ!加賀さん!やりましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出撃準備ッ!!!」

 

 

 

 

…もうこんな思いを誰かにさせる訳にはいかない。

 

 

負けたくない!

 

各々が色んな思いを抱えて…

最後の戦が始まった。

 

 

 

 

 

 

『む?……ほうほう?これは…』

『旗艦は…山城か…?』

 

 

 

 

 

「扶桑姉様!霧が目の前に!!」

 

「索敵を優先!輪陣形に変更して抜けるわよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『こちらは…?ふむ…赤城…か』

 

 

「赤城さん!こちらも霧が!!」

 

「こちらも輪陣形に変更!索敵を強化して!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『タスケ…テよ』

 

「敵さんが見えた!!!」

と、周辺戦闘隊の加古が言う。

 

 

 

作戦総旗艦の三笠が言う。

「……こちらも…敵機!確認!砲雷撃戦…用意!!」

 

 

 

 

 

 

「この世の興廃…この一戦に有り!!!」

 

 

「各員!一層奮励努力せよッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官…この作戦の成功率は20%です」

 

「何!?俺達は負けるのか…?てか!今言う!?それ」

 

「…セイレーン…彼女達の方が全てにおいて上です」

 

「…どうすれば…」

 

 

「しかし…不可能ではないと言っているのです」

 

「どういう…」

 

「20%もあるんです」

 

「……」

 

2()0()()()()()()()()()指揮官?他の人間なら0%なのですよ?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「あなた達は絶対に逃げない。幾度となく超えてきたんでしょう?あなた達なら出来るはずなんです」

 

 

「まて…お前は何故知っている?」

「俺たちの歩みを何故知っている!?」

 

「…見ていましたから」

「そして…ある方からの伝言です」

 

 

 

 

 

 

「明日を切り開く道はあなたの中にある…ですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 




お気に入りが…増えまくってて驚きまして…
アクセス数がいつもの倍くらいあったので何があった!?と狂喜乱舞してます。いや本当に。
ありがとうございます(´;ω;`)
590ありがとうございます!と同時に…これからも是非ともよろしくお願いします!



さてさて
今回からシリアスパートです。
200話目前なので生暖かい目で見守って下さい。

え?また殴り合いでしょ?って?
あはははは!! 


少しでもお楽しみ頂ける話になれば幸と思います!


感想や評価やメッセージなどお待ちしています!
ぜひに!よろしくお願いします!


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197話 碧い航路の果てへと ② Surigao in the fog

「厄介な霧ね」

 

「……索敵状況は!?」

 

「艦載機は出せないわね…目視しか…」

 

 

 

「ん?アレは……」

 

 

時雨が言う。

「敵機発見!!」

 

 

目の前にはセイレーンの艦船が2隻コチラヘ向かっていた

 

 

「ひー!やっぱり大きいね!」

と、夕立が言う。

「そうだねえ…すごい…」

と、吹雪が答える。

 

「呑気なこと言ってる場合じゃないよ!」

 

 

「大井と吹雪と日向は左側の艦船話を!」

「私と時雨とベルファストで右側を!他は全方位警戒!」

と、武蔵が指示を出す。

 

 

「「「はい!」」」

 

 

 

「任せろ…!!主砲展開!吹雪と大井は魚雷を!」

 

 

「「はい!」」

 

 

艦船からの砲撃を躱しながら魚雷を放つ。

 

バゴンと水面下から音が聞こえて艦船が大きく傾きかける。

 

「そこだッ!!」

ドォン!!と日向の主砲から砲撃が放たれる。

 

艦船は側面から大きく被弾して火煙を上げながら倒れて行く。

 

 

 

 

 

「……」

扶桑はそれを見て少し悔しがる。

 

"伊勢や日向には負けたくない"

それが彼女達の強い思いだった。

 

何故だかはわからない。

それでも、負けたくない気持ちが強かった。

 

 

 

 

 

「ふむ…さすがは日向!私も負けてられないな!」

と、武蔵が主砲を放つ。

さすがは大和型の主砲。

艦船を一撃で大破、轟沈に追い込んだ。

 

「あらあら、私の出番がありませんでしたね」

 

 

 

 

 

 

扶桑は思う。

これだけの強さがあれば…あの海峡も越えられたのではないだろうか…。

 

山城達西村艦隊のスリガオ海峡での彼女達…厳密にはその艦隊の最期を知る人は少なくないだろう。

 

今の私達なら…あるいは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、先頭に居る最上から報告が上がる。

 

「霧…抜けます!!」

 

 

 

「艦載機…発艦準備!」

扶桑が指示を出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

晴れた霧の中で…待ち構えていたのは……

敵の大群だった。

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

『名付けるなら…そうだなぁ…ここはスリガオと同じかなあ…』

 

テスターβはその一画に罠を張っていた。

 

 

 

『西村艦隊の諸君……今回もここを越えて辿り着けることなく…沈め!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ…あの時と…同じ…光景…ッ」

 

 

扶桑…山城は震え始めた。

脳裏に甦る…かつての記憶。

 

 

 

期待された超弩級戦艦。

だが…その期待に応える事なく…スリガオ海峡を越える事なく…。

 

ここはスリガオ海峡ではない。

だが、目の前に映る…景色は敵味方を含めてあまりにも……。

 

 

 

 

「不幸…だわ……」

思わず口から出ていた言葉…

 

 

「扶桑ッ!!」

時雨が扶桑の肩を掴む。

 

 

 

「大丈夫だよ!!きっと今の僕達ならやれる!!」

時雨は真っ直ぐとこちらを見て言う。

 

「時雨…」

 

「そうね!やりましょう!」

 

 

 

 

 

とはいえ、多勢に無勢。

 

 

『まずは…お前から!!』

 

 

 

 

「最上ッ!!」

 

日向の声に最上が反応する。

寸前の所で敵の砲撃を躱す。

「くっ!」

 

「このぉ!!」

敵に砲口を向ける…。

 

 

 

 

 

 

 

『タスケ…テ……』

 

 

 

 

 

 

 

「み…三隈…」

 

 

 

 

 

 

 

一瞬止まった最上。

妹の姿を見てしまった彼女は止まるのだ。

 

「そいつは…違う!!最上ッ!!」

 

 

 

一瞬…だが、その時間は…全てが崩れるのに十分な時間だった。

 

 

三隈がニヤリと笑い砲撃をする。

三隈だけじゃない、他からもどんどんと飛んでくる。

 

「きゃぁぁぁああ!!!」

 

 

 

 

 

最上は燃え上がる炎の中に姿を消した。

 

 

 

 

 

 

「…最上が…!最上!最上!!…嘘よ…また…繰り返すの…?」

 

 

カチカチと震える扶桑。

 

 

「扶桑!山城!危ない!!」

伊勢と日向に助けられる2人。

 

被弾する伊勢と日向。

大丈夫か?とこちらの心配をしてくる。

 

「あなた達…」

ギリっと歯を食いしばる扶桑。

 

 

 

「負けたくないのよ!あなた達だけにはッ!!」

 

「扶桑!」

制止を無視して前へ出る。

 

 

 

 

 

「扶桑姉様!!ダメ!!」

そんな声は届かなかった。

 

認めさせたかった。

私達が…できることを。

不幸なんか…拭ってやると。

 

 

 

 

 

 

「直上おおおお!!」

 

 

誰かの声が聞こえた。

 

 

 

「うえ?」

 

 

 

 

 

あぁ……

そんな…

 

 

 

 

 

 

 

「お姉様ぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

出過ぎた…。

 

 

 

 

 

 

薄れ行く意識の中見たのは…

 

 

 

 

膝をつく武蔵。

血だらけの不知火。

敵に掴まれた龍驤?

 

他の皆も…

 

 

 

 

 

 

 

ニヤニヤ笑う敵方の伊勢と日向が見えた気がした。

「くそおおおお!!!」

 

踏ん張って倒れながらそちらへ砲撃を行う。

 

顔面を掴まれて海へと叩きつけられる。

 

『無理ダ…お前ニハ…無理ダ!!』

 

 

「うわぁぁあ!!!!」

主砲を鏡日向の方へ向ける!

 

 

 

 

 

 

が…

 

 

 

 

 

遅かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドン…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前が真っ暗になった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなの…嫌なの……提督…て…」

 

 

 

 

 

 

 

 

超えられなかった海峡…

 

自分の運命…。

 

 

繰り返す…運命。

 

 

逃れられない…運命(さだめ)

 

 

 

 

 

 

「くっ……そ…」

 

「…私の索敵落ち度…」

 

「……提督…」

 

 

 

 

 

「…逃げて…時雨」

 

 

「皆…!!許さないッ!!うあああぁ!!」

「また僕だけが生き残るなんて……嫌だッ!!僕は逃げない!!」

 

時雨が応戦する。

 

 

 

 

 

白露が近付いてくる。

 

 

「…くっ!白露の姿まで……」

白露は攻撃せずに時雨に抱きついて来た。

 

「!?!?」

 

『ゴメン』

 

 

動けな……まさか!!!

 

 

 

時雨は白露ごと爆風で吹き飛ばされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督が見えた。

 

 

魂の繋がり…

心の繋がり…

 

例え離れていても…心を連れているから…?

 

 

 

 

「ごめんなさい…」

 

 

と、謝る皆。

 

ねえ…超えられないの?

 

私達も…時代の駒でしかないの?

 

 

 

ねえ…提督…

 

教えて…

 

 

私達は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆」

提督が口を開く。

 

 

私はもう一度聞いた。

 

「ねえ…運命には…勝てないの…?」

 

 

「運命とは何だ?」

 

 

「決まっている事よ!…私達は結局…こうなる"サダメ"なの!」

 

 

提督は黙っている。

やはりそうなのね…

 

 

 

 

「俺もな…死んだ人間だ。運命とやらがそうなら…俺はお前達の前に居ない筈だ」

 

「でも…俺はここに居る!。今もお前達の目の前に居る」

 

世界を渡ると言う現実の世界でなら…有り得ない邂逅…。

 

それも…運命を超えた何かと言えるなら

 

そうであるならば…

 

 

 

 

 

俺達は…こんな運命なんか超えて行ける

 

こうなるのが運命?

 

違うッ!!

 

俺は1人じゃない!お前達が居る!!

 

お前達も1人じゃない!皆も俺も居る!!

 

 

 

 

 

「提督…?」

 

「扶桑…山城…」

 

 

 

「ここが…スリガオ海峡線だと言うのなら…今こそ超えるぞ!西村艦隊じゃあない…!俺達…西波島艦隊で越えるんだッ!!」

 

 

 

そうだ

 

 

かつての西村艦隊はもう無い。

 

 

私は…私達はー…

 

 

西波島の艦隊。

そう…私は……この艦隊の旗艦!

山城じゃなくて…伊勢でも…日向じゃなくて私が!!!

 

 

 

 

そうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思った瞬間に目の前が海の中だと言うことがわかった。

 

 

 

 

 

「扶桑ッ…手を…手をッ!」

 

 

海中に手を伸ばすのは…

ある意味姉妹であり仲間(負けたく無い相手)だった。

 

 

 

 

日向…。

皮肉なものね…

負けたく無いあなたに…手を差し伸べられるなんて…

 

 

 

 

そうだ

日向達に負けたく無いと言ったのは…

 

 

 

 

過去の悔しさ…

あなた達の方が完成された……艦だから

 

私達の…姉妹に当たるのに

私は羨ましい妬む事しかできなかった!

 

…山城にも正直妬いていた。

彼女はあの時の旗艦だった…当然…だけど

不幸しかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも…

 

 

不幸って何?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幸せじゃあないか…

 

 

再びここで皆と集い…

背中を預けて戦えて…。

 

 

 

 

 

妹が居て…。

 

仲間が…ライバルが…。

 

 

大好きな人が…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんなに恵まれた…幸せはあるか?

 

 

ーいや、無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

死の中に居ても必死に手を伸ばしてくれる人が居て…。

 

 

 

 

 

 

私はこんなにも…幸せ者じゃあないか

 

 

 

 

 

 

 

 

不幸だと嫌なことから目を背けて居たんだ…。

 

 

 

 

 

不幸なんて言葉で片付ける私が悔しい…

あなたのその手を取らない私が…嫌いッ!!

 

 

 

 

 

私は…あなた達と…ここを…過去を超えたい!!

 

 

 

 

 

 

 

 

扶桑はその手を掴む。

 

 

「掴んだな…!!」

 

 

ぐん!と引き上げられる手は…暖かくて…

 

 

 

 

 

 

 

 

山城も伊勢の手を掴んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……えぇ」

 

 

 

 

「扶桑……山城…皆!!」

 

「…もう一度…行きましょう…!!皆さん!!」

 

「そうだね…」

 

 

「あぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

それぞれが

仲間を起こし、奮い立たせる。

 

 

 

 

 

 

 

『…扶桑…お前デハ私…イヤ、旗艦ノ山城ニスラ及バナイノニ…』

 

 

 

 

 

「舐めるなよ」

 

 

日向が鏡日向を睨む。

 

 

山城が言う。

「お姉様を…私達の旗艦…扶桑を私達を……舐めるなぁッ!!!」

 

 

 

 

 

 

『扶桑だと!?』

テスターβは驚いた。

 

 

奴らの旗艦は山城だったはず

 

 

 

 

生き残りは時雨だけだったはず…

 

いや!そもそも…

 

ここにくる奴らに…武蔵や不知火達は居なかったはず!、

 

まさか…

ズレている?

 

私達の想定…いや!決定していたはずの未来が…ズレているのか!?

 

 

 

 

 

 

 

 

待て…()()()()()()()()()()()()()()()()

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

奴は…コイツらが全てを乗り越えると…

あえて…この艦隊でここへ…?

 

 

 

何と言う事だ。

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……提督………力を貸してください」

 

 

「私は…もう不幸艦なんかじゃありません!」

 

「西波島艦隊…セイレーン作戦第3部隊」

 

 

 

 

「旗艦!私は…超弩級戦艦扶桑!今一度参ります!!皆さん…共に行きましょう!」

 

 

 

 

 

『これが…予想外(進化…)か!!』

 

 

 

海に浮かぶ皆の体が光る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

扶桑 改ニ

 

山城 改ニ

 

最上 改ニ

 

伊勢 改ニ

 

日向 改ニ

 

時雨 改ニ

 

武蔵 改ニ

 

川内 改ニ

 

不知火 改ニ

 

吹雪 改ニ

 

武蔵 改ニ

 

榛名 改ニ

 

イク 改

 

大井 改ニ

 

龍驤 改ニ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アナタ達……』

鏡日向達が目を見開いた。

 

 

 

 

 

 

「…負けないッ!!超えてみせるッ!!」

 

 

 

 

 

そう意気込んだ時だった…

 

 

 

 

 

……あれ?

 

目の前…の黒い光…

 

 

アレは……

 

 

 




彼女達に何があったのか?


少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!


感想などお待ちしてます!
よろしくお願いします!


明日で9月も毎日…完了です。

休むんだ…俺……



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198話 碧い航路の果てへと ③ 5 minutes of fate

 

 

 

 

「敵機!多数こちらに接近!更に右側の霧から迂回して抜けて来ます!!」

 

 

 

「相手も…二手に?」

 

 

「多すぎる!」

 

「霧の中では戦えない…この数が…私達の後ろに向かったら…皆の前に突然現れたら…鎮守府も…近海域で戦闘中の皆も…無事じゃ済まない」

赤城は覚悟を決める。

 

「皆さん!聞いてください!戦闘可能範囲が広いのは霧を抜けたこちら側です!ここで食い止めます!!」

赤城が皆に伝達する。

 

「…大淀さん!情報伝達と援軍要請を!…そして奴らをここに全て引きつけて戦闘します!合図と同時に砲撃で敵の視線をこちらに向けます!!」

 

 

「大淀さん!援軍の到着…奴らの鎮守府近海までの到着時間は!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「およそ…5分です!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テスターβはニヤリと笑う。

『そうだなあ…運命の5分間…てとこかしら?』

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ…」

「まるで運命の5分間って訳ね…」

 

 

深呼吸をする……。

 

 

 

 

赤城は前を向く。

 

加賀が赤城に言う。

「赤城さん!私達なら絶対やり遂げれます!!」

 

頷く飛龍達。

 

 

 

「皆さん…共に勝ちましょう!乗り越えましょう!」

 

 

「開始します!!」

 

 

「蒼龍、飛龍、長門、天龍、ゴーヤ、翔鶴、比叡、川内はこのまま此処で!他は私と共に右側の侵攻する敵を食い止めます!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やるよ!」

 

「飛龍!あれ!」

蒼龍の指さす先には……

 

 

 

「……赤城さんに加賀さん……あとは…」

 

 

『シズメテ…助けテ…』

 

『貴方達モ…沈むノヨ…』

 

『…同じ飛龍でも……容赦しません』

重桜鏡の飛龍がそこに居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤城に対するのは

「こっちは………」

 

 

『赤城サン……』

 

「加賀…さん…に鳳翔さん…まるで予想されてたみたいね…」

「それに…」

 

 

「桜赤城さんまで…」

 

『……』

鏡の桜赤城はニヤリと笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……加賀…天城姉様…」

 

『…桜赤城…お前はここを超えられない』

 

『…沈んでちょうだい』

桜赤城の前には…桜加賀と桜天城が居た。

 

あなた達は私の知る2人じゃない…。

でも…その強さは知っている。

 

「…赤城先輩……しゃきっとして下さい?」

 

「桜大鳳…?」

 

「先輩が弱気だと…私達も不安になりますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「退いて!赤城さん!お願い!!」

 

 

『無理ヨ!!体…ウアア!!』

 

蒼龍と赤城が対峙する。

制空権争いは激しさを増して一分の隙もない。

 

「きゃあ!!……さすが…前で引っ張ってきた一航戦…。でも!私達だって!!」

 

 

全てに極限まで集中する。

 

 

 

「…ッ!!」

 

『どうした?まだまだですよ?』

 

飛龍同士の戦いも熾烈を極めている。

 

 

 

 

矢を掴む手が痛い。

 

 

でも…負けられない!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「長門さんッ!!」

 

「うむ!!」

翔鶴と長門が連携する。

 

 

 

 

 

 

 

 

が…

 

攻撃は激しさを増す。

 

艦娘達だけじゃない。

ほかの艦船や深海棲艦も相手にしなくてはならない。

 

援軍が来るまで…

絶対に後ろに行かせない!

 

私達は!

守るんだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁッ…ハァっ…」

頬に汗が伝う。

ぴちゃんとその滴が海に落ちる音すら耳に入る程の集中。

 

 

「さすが……鳳翔さん…ハァッ……」

 

 

『…赤城……お願イ……モウ…立たナイデ…』

 

 

『一航戦の誇り…私達の方が上なんですよ』

 

 

 

 

 

「無理ですよ…絶対に…行かせやしないッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あっちハ、モウ…沈んデルのニ……?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

 

ちらりと左側の視界に炎が映った。

 

 

 

「炎…?まさか!?」

 

 

運命の5分間…。

 

 

本当に…運命の5分間…だとしたら?

 

 

 

「飛龍ッ!蒼龍ッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤城が見たのは…

炎に飲み込まれた2人と

膝から崩れ落ちている翔鶴…。

その翔鶴を攻撃から庇う長門。

 

 

 

 

傷ついた比叡達だった。

 

 

 

多少の違いはあれど…

 

 

 

 

あの時と同じー…

 

 

 

 

 

「嘘…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嫌な予感がして皆の方を見る…。

 

 

ズキン…

 

 

頭が痛いッ…これは…

これは?

桜赤城がハッとする。

()()()()()()()()()()()()()

 

運命の5分間…

そんなワードが頭を過ぎる。

 

 

「まさか…まさか!!」

 

『そうだ!全て繰り返されるッ!お前も…ここで沈むんだッ!!!』

 

 

 

 

 

 

運命の歯車は…

 

 

「そんな……」

ダメなの…?

 

 

 

再現する海域

即ち…運命すらも……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや!!

 

 

 

 

 

 

 

そんな運命…覆してやる!!

 

今迄もそうだった!!

 

 

ずっとそうだった!!

何度も何度も抗った!!

 

 

 

 

 

 

踏ん張って相手を睨み弓を構える。

 

 

 

 

「負けられないッ!!!」

 

 

 

 

 

 

前を向いた時だった…。

 

 

 

 

 

「赤城さぁぁぁぁぁあん!!!」

 

加賀の叫びだった…。

 

 

 

 

 

嘘ッ!?

 

直…上……?

 

 

 

 

 

全てがスローに見える。

 

 

 

こちらに叫ぶ加賀さんも

 

飛龍も蒼龍も…

 

 

 

 

 

まるで運命に引き寄せられるように…

 

 

いや…どう足掻いても

私達の命はそちらに流れるの…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドオオオン!!!

 

 

 

 

 

 

わた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嘘よ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「赤城……!?」

 

 

『余所見をする余裕はあるのか!?』

爆風で吹き飛ばされる桜赤城。

 

「ぐうっ…!!」

 

 

 

「加賀!天城姉様!!」

「わかっているでしょう!?おやめなさい!あなた達は利用されてるの!だから…」

 

 

『これが私の正義だッ!!』

桜加賀が言う。

 

 

「そんな事ないわ!」

 

『弱ければ死ぬッ!常に正しいのは勝者だ!』

『お前が正しいと示したいなら…私達に勝て!』

 

 

 

『赤城ちゃん…一思いに…沈めてあげる』

 

 

 

『それが…運命なのだ!』

 

 

 

「違うッ!」

 

「私は…私達は…!!」

「幸せな明日の為にこの運命を!!」

 

 

 

『私達を殺して…でもか?』

と、桜加賀が言う。

 

ズシンとその言葉が心に突き刺さる。

 

 

 

 

「……うわよ」

 

 

『何かしら?赤城ちゃん?』

 

 

「背負うわよ…あなた達の思いも…命も…。でも見てなさい!!絶対に後悔させないッ!私達の見る明日があなた達の思い描いた世界にして見せる」

 

 

 

 

 

 

 

 

『………勝てねば所詮戯言…お前も所詮はコピーなのだ!!』

 

 

 

 

 

 

爆撃機が桜赤城を捉えて爆撃する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

直撃…。

 

ガクリと膝から崩れる。

ドロリと額から血が……。

 

 

 

 

 

「指揮官様…」

 

桜赤城が手を伸ばす…。

 

 

 

赤城は…私は知っておりますとも…。

私が…素体のコピーである赤城である事くらい。

 

 

 

あの日…あなたは言ってくれました。

 

お前はお前だと…私だから良いんだと。

 

 

 

私は…

 

私は…

 

 

私は耐えながら歯を食いしばった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは…?

赤城が目を覚ます…。

 

 

 

「赤城…加賀…皆…」

提督……。

 

 

 

「…慢心してませんでした……いや…私達なら大丈夫と言うのが慢心でした…」

 

「赤城…」

 

「…繰り返すのですか?私達という存在は!逃れられない中にあるのですか?!私達は負け–––「赤城…」

 

救がその言葉を塞いだ。

 

 

 

「はい…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()() 」

 

「は?」

 

思わず加賀や大和達全員で聞き返した。

 

救は続ける。

「六駆組達が育てた米が収穫されたからな…足柄にカツも揚げてもらって…炊き立てのご飯でカレーを食べよう」

 

 

「提督…何を言って…」

 

 

「俺が皆のおかわりも満足行くまで作るからさ」

 

 

 

「何を言っているんですか!こんな時に」

思わず睨んで言ってしまう。こんな時なのにッ!!と…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから皆で鎮守府(俺達の家)に帰るんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「…ッ!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に帰る…。

 

 

 

 

 

皆で帰るんだ…。

 

その言葉が私達の心に突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

帰る…

 

そうだ…あそこは…

私達の生まれた家。

沢山の思い出の詰まった…

 

 

 

 

 

 

 

 

愛する人の待つ…

 

私達の帰る場所ー…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沈んだら帰れない。

 

 

 

 

 

 

あの人のカレーも笑顔も…

楽しい時間も何もかも!

 

 

 

 

 

そして何より…

 

 

 

 

 

 

提督(この人)()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

提督が信じてくれてるのに…私達が応えなくてどうする!

 

 

このまま終わる…そんなの嫌だ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チャプリ…

水面に浮かぶ私達の心はは現実に戻ってきた…

 

 

 

「…カレーか…」

誰かがポツリと呟いた…。

 

「ふふっ…」

「ククク…」

「「「ハハハハハ!」」」

 

 

大爆笑だった。

こっちは運命だとか何だとか重たい話をしているのに…私達の愛する提督は…カレー食うから帰って来いなんてさ!

 

 

帰るんだ…だなんて…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから負けられない…

 

 

 

「皆さん…行きませんか?」

 

「提督に…もう嫌だってくらいカレーを作ってもらいましょう?」

 

「…それは…譲れませんね…!!」

 

 

 

 

 

行きましょう…ー!!

 

…どうか

少しでいいです…。

提督…。

あなたの力を貸して下さい。

 

あなたの温かい力があれば…また立ち上がれます!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤城 改ニ 戌

 

比叡 改ニ

 

暁 改ニ

 

蒼龍 改ニ

 

飛龍 改ニ

 

長門 改ニ

 

大和 改

 

霧島 改ニ

 

川内 改ニ

 

天龍 改ニ

 

大淀 改

 

ゴーヤ 改

 

白露 改ニ

 

翔鶴 改ニ

 

 

 

 

 

 

「…皆……」

ホッとする桜赤城…。

 

 

「さあ!桜赤城さん…行きましょう…」

 

 

『馬鹿な…お前達は…確かに沈んだはず…!!』

桜加賀達が狼狽える。

 

 

 

 

『何度でも沈めてや…

 

 

 

ズドン!!!

 

『!!』

砲撃が横から飛んできた。

誰だッ!?

 

 

 

 

「外したッ!!角度調整!!」

 

「了解!!」

 

 

 

 

 

「赤城さん!!遅くなりましたであります!!!」

 

「あきつ丸、千代田、矢矧、鬼怒、古鷹、シオイ、響、秋月、熊野到着しました!」

 

 

 

 

「桜赤城殿…こんなにボロボロになって…よく耐えてくださいました!もう大丈夫であります!」

 

 

乗り切った…!!

 

 

 

「ありがとう…」

 

 

 

 

「これが仲間の絆です」

 

 

 

『…!!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

パキン…

 

 

 

 

一瞬何が起きたか赤城達には分からなかった。

 

 

桜赤城を含めた…KAN-SEN達が消えたのだ。

 

 

 

「…桜赤城殿……?」

肩を貸していたはずの肩が軽くなった。

あきつ丸はキョロキョロと周りを見渡す。

 

 

 

 

そしてー…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰も居なくなった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわ!?」

突然海に投げ出された救。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい!陸奥!?どした??」

陸奥に何かあったのか?と声を掛けるが返事はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

通信も何も聞こえない…。

 

 

 

 





体調は良くなりましたー!
コロナは陽性になりませんでした…何だったんだ…あの症状は…。


毎日投稿…完了……!!
2ヶ月連続…ッ!褒めて…褒めて…。
まだこのパートおわってないけど…













少しでもお楽しみ頂けたら幸いです!


感想などお待ちしてまぁぁす!!!


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199話 碧い航路の果てへと ④ 強くその想い、紡いで

都合良く利用した設定があります!
ご注意下さい。


……生まれた時からこうだった。

 

 

 

何の為に戦うのか…?

 

何の為に死ぬのか?

 

 

暗い海には希望なんてない。

 

 

 

青い海の先に…

戦いの果てに…答えは見つかるのか?

 

 

 

 

分からないけど…

それは…分からないけども…

ひとつだけ分かることがある…

 

 

夜明けの光のようなあなた…。

 

 

 

私は…私達はこの為に…

 

この道があなたに通じているのなら…あなたの為に参りましょう…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「金剛!!いくら怨念とやらが見かけだけでも抜かるなよ!」

 

 

「はい!」

 

『……』

 

 

 

 

「む?我が…もう1人…」

 

『…時代遅れの艦は……我と共に沈め…この旗の下に!』

 

「それは…Z旗…」

 

「時代遅れとて…出来る事はあるッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなた?誰か来たみたいよ?」

俺を乗せる陸奥が言う。

 

 

「ああ…アレは、鉄血のグラーフ・ツェッペリン…」

 

 

 

「指揮官!!」

鉄ビスマルク達が後ろからやって来た。

 

 

 

「お前!指揮官を離れて…なぜ奴側につく!?」

鉄ビスマルクは彼女に問う。

 

「…」

 

鉄グラーフ…彼女は指揮官に問う。

「指揮官よ…何故お前は戦うのか?こんなに傷ついて…勝ち目のない戦に」

 

「鉄グラーフ…」

 

「…変わらぬ運命なら…滅びた方がいいのだ…お前も…私達も」

 

 

「俺が戦う理由はー…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ふむ…そろそろか?』

絶望に染まる者達…。

 

絶望から立ち上がり更なる力を得た者達。

 

 

ある者は沈み、ある者は傷つき…

分かる…どんどん濁るのが分かる。

 

濁り切った…ドス黒い程の負の力に溢れた魂達を…

あの男のように…集めさせてもらうぞ!!

 

 

 

『全て!!悉くッ私の下へ!!」』

 

 

 

 

一瞬の事だった。

 

 

 

 

テスターβの持つ

黒のメンタルキューブから御蔵が作り出したモノが黒い光を放ったかと思えば…全ての者が吸い込まれた。

 

 

 

 

 

鏡の海域ではセイレーンが大きな力を持つ。

 

弱り切った者から刈り取るなど、造作もない程に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「理由はー…!?!?」

 

 

 

ジャパン…!!

いきなり水面に落とされる。

「陸奥!?おい!?」

 

 

 

 

 

「嘘だろ…?皆…?」

 

 

シンとする水面

 

セイレーンの艦船の崩れた甲板だろうか?流れてきたそれにしがみつく。

とにかく海から上がって周りを見る。

 

 

やはり…何もいない…。

 

 

立ち上がった皆も

後ろにいたはずの皆も…

俺を乗せていた陸奥も…

 

 

 

シンー…と静まり返った海は、自分の鼓動すら聞こえてくるような程で…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遠くの方に見えたテスターがニヤリと笑った気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

途端に一気に不安になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冷や汗が頬から水面に落ちるー…

その後にすらビクッとしてしまう。

 

 

 

 

 

 

ダメだ…

 

 

 

 

 

何だ…?

 

 

 

 

 

どうしよう…

 

 

 

 

 

「こ…金剛?」

「陸奥…?赤城?!扶桑!?誰か!!三笠!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰か…返事を…してくれ…何が…

 

 

 

「指…揮官様」

スマホから声がする。

 

「指揮官…大丈夫です」

 

「TB…?」

ホッとした…良かった…。

 

「皆は?」

 

「…存在を確認できません」

 

「は!?さっきまで居たんだぞ!?」

 

「…恐らく…回収されたのでしょう…」

 

「…今までにそんな事は無かった!!」

「どうすれば…」

「そうだ!また魂の、皆に力を!…」

 

 

「不可能でしょう」

 

「…麗ちゃん達に…」

 

「この海域から出られる可能性は0%です」

 

「大本営に…!」

 

「どうやってここから抜け出すのですか?」

 

 

 

 

「なら…どうしたら!!」

語気が荒くなる。

 

 

 

 

 

 

「ごめん…」

…TBちゃんに当たっても仕方がない。

 

 

「……指揮官…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

「知識に無くとも…その心とあなたの魂には刻まれているはずです。艦娘…やKAN-SENと幾重にも紡いで来た絆をお持ちのあなたなら」

 

「…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「な、何を……?」

 

 

あなたの心です

 

 

「その絆は…あなたと彼女達の繋がりは…こうも簡単に掻き消されるものなのですか?」

 

 

「諦めないで下さい!」

 

 

 

 

 

 

 

頭に過ぎる…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『俺はお前達と共にある…俺は1人じゃないしお前達も1人じゃない!』

 

 

 

『愛してるヨー♡ダーリン!!』

 

『これだけは…貴方だけは何があっても譲れませんッ!!』

 

 

『あなたのいない世界は…要らない』

 

『勝利も…敗北も…あなたとなら…』

 

 

『この命もあなたと共に…』

 

『『『『ずっと…愛しています!』』』』

 

 

 

 

 

 

あぁ…俺が…信じないでどうする?

 

すまない…俺が不安になって。

 

俺が1番信じているんだ…アイツらを信じているはずなんだ!!

 

 

 

 

 

 

「指揮官…あなたの中に…いつでも道はあります」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆっくりとテスターがこちらへやってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この発明品は素晴らしい…確かに強い力を感じる。

かくも人の欲望や願望とはこれ程に…。

 

 

 

…だが…これで世界を根底から覆す程の力を得られるのか?

 

………

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

『何故お前は…そこに居る?絶望…していない?』

 

 

 

 

 

『神崎 救』

 

 

 

 

俺は…目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは……?

 

 

 

皆がここに居る……。

敵も味方も……

 

何故?

 

 

 

…確か私達は………

 

 

 

 

改ニや改へとパワーアップしたのに…

 

 

ここは…?

 

 

体が…ない?!

 

 

 

 

 

嘘よッ

 

 

 

運命を乗り越えられなかった?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぐっ…」

涙が溢れてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『何故泣く?扶桑』

『どうせ…私達は運命に流され続けるだけの存在なんだ』

 

 

 

『そうだ…桜赤城姉様…お前達も…私達は負けたのだ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

ここに指揮官…提督が居ない。

 

置いて来てしまったのだ。

 

愛する人を…守りたい人を置いて来てしまったのだ。

 

 

 

『そんなにそいつが全てなのか?』

『私達は駒なんだ』

 

 

『私達も提督のところにはもう帰れない』

『皆同じなんだよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「諦められる訳無いじゃない!!」

 

 

 

 

 

桜赤城が叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 

 

 

『愛する指揮官…………こんな状況なのに何故?君は眉ひとつ動かさない?』

 

 

 

「………」

救は目を開く。

 

 

「出てこい…俺達は負けてない…ッ」

 

 

 

 

 

『…は?』

 

「…そんな事で…俺達の全ては無にはならない」

 

『何を言っているのか?ここは鏡面海域だぞ?この中の彼女達はもう君の艦達じゃないんだぞ?声なんか届くはずもない』

 

 

 

 

 

 

確かにそうかも知れない…

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()() ()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来い!!!」

 

「例え…どんな方法を使おうと…俺達を引き裂くことなんか…出来ないッ!させない!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実体を持たない姿(魂だけの姿)のお前達に何が出来る』

 

 

 

 

 

 

 

「諦めない事…」

 

 

『何を言い出すかと思えばッ!!!』

 

『単なる慰め…傷を自ら舐めることか?!馬鹿馬鹿しいッ!』

 

 

『生み出され…戦いの中に生死を見出しすしかない私達だぞ?』

 

 

無意味に生み出され…

無価値に…戦い

無様に死ぬだけなのだッ!

 

 

『そこには何も無いッ!!』

鏡の桜加賀が吠える。

 

 

 

 

『私達も…もう帰れない…』

『幾多の艦娘が…こうして囚われ…死んで行く…あの人に会うことも、仲間に会う事もできない…自分で死ぬ事も…』

 

 

 

 

 

 

「…その通りだ……」

 

鉄グラーフが言う。

「指揮官ですら…奴らの駒にすぎない…」

 

 

「グラーフ…」

鉄ビスマルクが言う。

 

 

「あの世界でもそうだった!見えるんだ!奴の後ろに…奴の運命の糸を引く何かが!!」

 

「ただ…苦しいだけの世界ならッ!!いっその事滅んでしまえば良いんだ!!」

 

 

 

 

 

「それなら…誰も傷付かずに済むんだ!」

 

 

「理想を…夢を追い続けても…こんな絶望しか…暗い未来しか待っていない…誰かの掌の上の生き方しかできないなら…」

 

 

「…私は…ッ!全てを諦めたいッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鏡の艦娘とKAN-SENが言う。

 

 

 

『造られた私達に…ッ』

 

『…利用された私達に…』

 

 

 

『誰も…セイレーン以外に…もうこの手を取る人なんて…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「居るさ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

『は?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官…!何故ここに居るッ!?」

鉄グラーフが叫んだ。

 

 

馬鹿な…有り得ない!

人間が…この魂だけが囚われる空間に入ってこられる筈がない!

 

 

 

「…言ったんだ…。皆と共にあるって」

 

「たったそれだけで…?それだけのために?!」

 

「お前も…その1人なんだけどな」

 

 

「……馬鹿だ…お前は馬鹿だ!何故わからん!賢くやらない!逃げても…命乞いをしてでもお前は生き残るべきなのに!!!!」

 

 

 

 

「馬鹿で良い」

 

 

「!?」

 

 

 

「諦めて俺1人逃げるのが賢いってなら…俺は馬鹿で良い」

 

 

「共にあるってのは…どんな時でもって事だ!例え死中だろうと…俺は約束したんだ!!!!」

 

 

 

 

「…!!」

皆が息を呑む。

 

 

 

 

 

「それに…生き残るべきと言って心配してくれるんだな…ありがとう鉄グラーフ…」

 

 

 

「…いや…それは…………そうか…馬鹿で…いいか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『話中にすまんな…貴様…先程…居るといったな?!誰が手を取るんだ?」

 

「鏡の桜加賀…か」

 

 

 

「居るじゃ無いか!目の前に」

 

 

 

『は?』

 

 

 

 

「目の前に居る艦娘もKAN-SENも…俺も含めて俺の仲間はお前達の手を取るさ」

 

 

『何故…?敵だぞ?お前を…お前達を斃さんとする敵だぞ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お前達は…何の為に戦って居るんだ…?』

誰かが聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなのずっと変わらないわ…愛する人と共に夢見る明日の為」

 

 

「…愛する人と共に歩む明日の為デース!!」

 

 

ずっと超えて来た。

不可能と言われようと…どんな絶望的な場面だろうと…。

 

 

 

 

 

『綺麗事だ!空想だ!!口でなら何とでも…』

 

 

 

 

 

赤城と扶桑が答える。

「私達は1人で戦ってないわ…あの人の思いも全て一緒に背負って戦場に立っているの…だから提督はここに来てくれた」

 

 

 

 

 

『とは言え…今更何も………!?』

 

 

 

 

 

 

鉄グラーフは見る。

艦娘やKAN-SENに繋がる光を…。

 

 

それは指揮官から伸びていた。

 

 

一際輝く魂。

それは…特別すごい魂ではない。

 

()()()()()()()()()()()()

 

()()()()()()()()()()()

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

彼女達には眩しすぎるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

信じ合うからこそ…?

 

「お前もな」

 

鉄グラーフは見る。

 

自分へも伸びるその光を。

 

 

指揮官…お前は…私まで…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…俺はやはり1人じゃ何もできん。今も海で1人だ。TBちゃんは話し相手だけだし…アイツ居るし…」

 

「俺がここに居られるのも…今、生きていられるのも皆のおかげなんだ…」

 

「だから俺は全てを懸けてお前達の隣に居たい!この鏡をぶち破って…」

 

 

「俺の見る明日は……お前達が笑顔で過ごせる明日だ。」

 

「艦娘だろうがKAN-SENだろうが…普通に笑って…戦いで傷つく事なく、好きな生き方のできる…そんな明日が欲しい」

 

 

「だから…俺達が頑張る」

「だからこんな所で立ち止まれない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時微かに

何かが光った気がした。

 

 

それは…

 

 

 

何故かそこにあった。

 

 

 

 

 

『何だそれは…まさか…』

鏡の桜加賀が言う。

 

 

 

 

 

 

「ダーリンがくれた…髪飾り…」

 

 

『いや…それは…やはり…。黒いメンタルキューブ…』

『何故この世界にないものをお前達が…』

 

 

 

 

 

 

暗いそれは…温かな光を放っていた。

 

そして…

そこから何かが飛び出して来てくる。

 

 

 

それは…金剛の魂と桜赤城のメンタルキューブ()にふよふよと何かが漂って来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、かつて####、###であった者。

 

 

 

それは

 

 

 

 

 

 

 

 

例え偽物と言われても最期まで足掻いた2人…。

 

 

 

 

 

 

 

 

今はただのカケラとなって静かに眠る彼女達。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒビだらけのキューブに魂に彼女達が寄り添うように…

埋めるように…

 

 

 

 

 

 

『……何だ…お前は…まさか…』

鏡の桜加賀が言う。

 

 

 

『この感じ……まさか』

鏡の比叡が言う。

 

 

 

 

 

 

「Oh!!!あなた達…まさか!!」

 

 

『2度も…あの人のお役に立てるなら…ネ』

ボヤリと姿を見せたのは……あの金剛だった。

 

 

 

「……あなた!」

 

 

『任せますね…もう1人の赤城…』

続いて…やはりあの時の桜赤城。

 

 

 

 

 

 

 

『……』

 

 

 

彼女達は見た。

私達と同じ存在であった筈の者が…奴らの力となろうとして居るのを…。

 

 

 

彼女達は見た。

その魂が…まるで欠けた部分を補うように彼女達に寄り添い溶け込むのを…。

 

 

 

 

 

 

 

『……バカな…』

魂が溶け込む…だと?

ヒビだらけで今にも壊れそうな魂が…直るだと!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「OK・受け取りました……この愛は…本物デース!」

 

 

 

「ええ!ありがとう…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金剛の髪飾りが…もっと輝いた。

 

 

温かい光…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故諦めない?

 

 

「明日が待ってるから」

 

 

 

何だその答えは…

でも何でだ?何故その言葉にこんなに心が躍るんだ?

 

 

 

 

 

いや…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

髪飾りから出てきた魂が形を変える。

それは神通…。

あの時の神通が前に一歩踏み出した。

『私も…連れて行って』

 

 

 

「君は……」

 

 

彼女は…救に助けを求めた神通であった。

彼女は敵として倒される道を選んだ艦娘であった。

 

 

 

『私も…あなた達の言う明日へ連れていってください』

 

『あの人の所に帰れる気がするの…』

『今度は…あなた達の力になりたい…お願い』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それに続いて何人もが踏み出す。

 

 

 

 

 

皆の前には…セイレーンの駒達の姿もあった。

 

 

 

セイレーンに利用された者達の…魂が…語りかけてくる。

 

 

 

 

 

 

私達も見たい…その明日を

 

…ごめんね。こうなっちゃって…

 

 

羨ましいな…

 

 

 

私達はもう…戦えないけど…

 

この想いと…心を一緒に明日に連れて行って欲しいの…

 

 

アイツに…キツい1発!お見舞いしてくれ!

 

 

 

 

 

 

 

『赤城…』

 

『扶桑…』

 

 

[あなた達なら超えて行ける!]

 

『超えて見せて!私達に…その向こう側をみせて!!』

 

 

 

「あなた達ならできる!」

 

「…勝って!お願い!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女達が手を差し出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

差し出された艦娘の手をとる西波島のメンバー…

 

 

 

 

「金剛…やっとお礼を言えマス…。ダーリンを守ってくれて…ありがとう」

 

 

『ううん…私の心は…あの人の中に生きてるカラ』

『そして…あなた()の中にも…』

 

 

手から…力が伝わる。

 

 

力が…溢れてくる!!

 

 

 

 

 

これは……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……フッ』

 

 

「……桜加賀?」

 

 

『……何をボサッとしている?』

桜加賀の声だ。

 

 

 

 

『…私も…連れて行って?……』

桜天城が言う。

 

「あなた達……いいの?」

 

 

『…お前の言う明日に賭けてみたくなった』

 

「それでいいの?」

 

 

 

 

 

「赤城姉様…今、何を成すべきか…それは私が決める!そして…()()()()()()()()()()

 

 

 

 

「さあ…立て!!……私の力…受け取れ!!」

 

 

『赤城…頼んだわよ…』

 

「ええ!」

 

 

 

 

スッと体に入ってくる…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには…艦娘もKAN-SENも無く…

出された手を掴む西波島のメンバーが居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女達は勝ったのだ。

セイレーンの呪縛に勝ったのだ。

 

肉体を失おうと…その誇りは気高く…

彼女達は…明日へと進む者に力を与える。

 

彼女達は皆の中に入って行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聞いたことがある。

 

彼女達自身から力を受け継ぐ方法…。

 

 

 

彼女達の魂や誇りや…全てを受け継ぐ強化を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近代化改修(力を受け継ぐ)

 

 

 

 

 

 

 

 

強化(想いを受け継ぐ)

 

 

 

 

 

 

 

すごい…改化とは違う感じ…。

内側から…力が…湧き上がる。

 

これが受け継ぐって事…?

 

 

 

 

 

 

 

 

艦娘達だからこそKAN-SEN達だからこそできる事。

 

 

想い紡いで行く事。

 

彼女達の生きた想いも力も魂も全て…

本当の意味で受け継いで背負い…心を共にする

 

継承強化。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鏡の三笠が言った。

『もう1人の我よ…受け取れ……我が…時代遅れあっても出来る事はあると言ってくれたな?』

 

『ならば…示してくれッ!!もう一度…この御旗を…勝利の風で!!』

 

 

「コレは…Z旗……。…確かに受け取った…!!お前達の力…我の体に!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて…いつも通り…行こうか」

救が言う。

 

 

 

「いつも通り…?」

三笠達が疑問に問う。

 

 

 

「桜赤城ー!今回は譲りマース!掛け声するデース!」

 

 

「え?私?」

 

 

 

 

「ええそうね!やっちゃって!桜赤城さん!」

 

「ダーリンの本体も待ってるでしょうし…」

 

 

「掛け声…?」

三笠は頭にハテナが浮かんでいる。

 

 

 

 

 

 

 

彼女達は立ち上がる。

何度も

何度も

 

例え艤装が悲鳴を上げようと

 

例え悲しみが待っていようと

 

例え…

強大な相手が居たとしても

 

 

 

 

 

目指す明日の為に

夢見る明日の為に

 

 

 

その愛は…想いは

世界すらも越えるのだから!!

 

「もちろん…この愛は…指揮官様と共に…魂の全てを愛に変えて炎になります!」

 

 

燃え上がる炎は…カミをも焼き尽くしますッ!!

 

 

 ばぁにんぐ…!! 

 

 ラァブ!!! 

 

 

 

 

彼女達はさらに行く!!

皆の思いも魂も全てを…共に!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…恥ずかしい……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビシッ…

 

 

 

『なっ!?』

 

 

キューブにヒビが…!?

熱い!!とても持っていられないくらいに熱く!

 

 

 

 

 

 

「来い……来い!!!」

 

 

 

 

 

 

バキン!!!

『砕けてしまうッ!!』

やめろ!!これが砕けたら…!!全てが!

 

 

 

 

 

『指揮官ッ!!何をしたッ!!!!!させるな!!』

 

 

命令と共にル級が救に飛びかかる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドン!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ル級は吹き飛ばされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

周囲が光る。

黄金に輝く水飛沫は…柱となって天に向かう。

 

 

そこから現れる…彼女達。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総旗艦が旗を煌めかせ…水面に立つ。

 

立ち上がる度に更に更に強くなる彼女達の絆!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

姿は変わらぬが…

そこ知れぬ力を感じる…。

 

 

 

 

『…予想外も過ぎてしまえば邪魔なだけだ…!!』

 

 

もういい…

もうここからは意地だ…。

キューブから艦船達を召喚する。

 

ビキンと…黒のキューブが砕けた。

 

もういい…。

全力でお前らを消してやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『復活おめでとう!!』

だが!!圧倒的な数の差は変わらないッ!!

 

 

 

ずらずらずらと生み出される駒、駒、駒、駒、!!!

 

 

「例え少し強くなった所で…何も変わらない!不可能だ!!!!愚かな…駒なんだ…指揮官!!お前の無力さを知るがいいッ!!」

 

 

 

圧倒的物量…いくら強かろうと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この何千年と

未だに破られてない戦法がある。

 

 

 

簡単だ。

数で囲んでボコボコにする。

 

かの有名な戦術家も如何に敵を囲むかを考える程に。

 

 

 

『今のお前達がまさにそれ!!絶対に勝ち目はない!不可能だ!!貴様らは包囲されて居るッ!もう意地だ!貴様だけは殺してでも私の物にしてやるッ!!!!』

 

『お前の周りを…目の前で殺して…お前を私の奴隷にしてやるッ!!この虫ケラがぁぁあ!!!!』

 

 

 

「…指揮官…」

 

「TBちゃん…?」

 

「大丈夫です」

 

「あなたは負けない!」

 

「何故なら…私達が居るから!!」

 

ブツッ…とスマホの画面が真っ暗になる。

 

「TBちゃん!?」

 

 

『…あははは!!結局は…失敗するんだ!いい加減理解しろ』

 

『貴様には不可能だ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「不可能?………?違いますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『なに?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セイレーンは見た。

()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

「馬鹿な!!!」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせ致しました…。よく…耐えられました…さすがです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…誇らしきご主人様」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




改や改ニはあるのに近代化回収や強化が出てこないのはこういう使い方をしたかったのです。
実際は雷装値等の強化ですが…似たようだものだと捉えて設定に組み込んでます。


さて…物語も終盤に入りました!
明日には200話になります!
土曜日なのでね、早めに投稿します!






タイトルと副題は…うん
これに関しては…ピンと来た方も居られるのでは?




でも聴いて見て欲しい曲です。



少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!

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200話 碧い航路の果てへと ⑤ 羅針盤さえ示さない明日へ

200話!!


 

 

 

 

「お待たせ致しました…誇らしきご主人様」

 

ヒラリとスカートを両手で持ち上げて言う。

 

その後ろから爆音、轟音が響いて敵を薙ぎ倒して行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光が…

夜明けとともに…やってくるように…

 

 

その声は…

彼らの耳にスッと入ってきた。

 

聞き慣れた声…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後ろから…

 

彼女達が姿を現した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…この程度じゃ…足りないわ…もっと…もっとよ!!!全艦…火力全開!!Feuer!!!!」

 

 

 

 

 

 

「ちょっと!鉄血の!!ソレは私の役目でしょう!!!」

「って!下僕ー?庶民ー!!無事かしらー!?」

 

 

 

号令と共に撃ち出される砲撃は…

絶望的な数の敵の一画を削いで行く。

 

 

 

 

 

 

「殿様〜!!」

桜扶桑が…

 

「指揮官!!!」

鉄アドミラル・グラーフ・シュペーが…

 

「初期艦……鬼神の力…みせてやるのです」

桜綾波が

 

 

「指揮官!」

聖座ダンケルクが

 

「やほー!」

ニュージャージーが…

 

「ふっ…行くか」

桜霧島が…

 

「あれが……指揮官…」

桜長門が…

 

 

それだけじゃない…

他にも……他にも!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貴様らは交わることのない運命に在るはずだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鉄ツェッペリンと鉄ビスマルク…桜赤城、そしてエンタープライズは息を呑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

元は1つだった。

 

 

 

アズールレーンと言う組織の中で…

 

 

己の正義を追うために枝分かれした彼女達。

アズールレーンから脱退し…… レッドアクシズ…別の組織に分かれた。

 

 

 

()()()()()()()()

 

 

 

メンタルキューブから生まれた救の艦隊である彼女達は…

素体ではない。

 

()から解き放たれた彼女達は…。

この海でまた出会う。

 

 

 

 

 

 

 

運命に縛られない…彼の隣に集い…

 

 

 

 

また1つとなる…。

 

 

 

 

 

「下僕!!私達が来たわよ!!」

 

「ベルファスト!ご苦労だったわね!もう安心するがいいわ!」

 

ベルファストは涙を浮かべる。

……女王の名を冠する者がそこに腕を組んで踏ん張り返ってる。

あの姿が…どれだけ嬉しい事か…。

 

 

 

 

 

 

「あなた…達?」

 

「どうした?赤城姉様」

「あら?泣いちゃって……嬉しかったのかしら?」

 

 

加賀…天城姉様…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官…予想してたのか!?この…この状況を!」

 

「鉄ツェッペリン…」

 

「全く予想してない」

 

 

 

 

 

 

「もう一度聞かせてくれ…お前も駒の一つ…なのになぜ抗う?滅びの運命は変わらぬ筈なのに…指揮官は何故苦しみながらも抗うと言うのか?」

 

 

 

 

 

「抗うさ…例え可能性が低くとも…皆との幸せな明日が見たいから」

 

 

 

 

 

「……」

 

 

ツェッペリンは指揮官を見る。

本当は感じていた、救の後ろに見える…運命を操る何か…

 

 

救すらも…その世界の駒でしかないはずだった。

 

 

それはあくまでアズールレーンの世界での指揮官としてだ

 

彼は…

 

現実世界からやってきたのだ。

 

それは誰もが予想しなかった。

想像なんかできただろうか?

 

 

 

壊れるなら…この悲しい世界ごと壊れてしまえば良いと…思ったのに

 

奴は…同じくらい絶望して来たはずだ…

 

 

幾多の困難を

幾多の死を

幾多の悲しみを

幾多の犠牲を

 

 

それでも…抗うのか?

 

 

 

明日…と言うものには

全てを塗り替えるほどの希望があるのか?

 

 

ただ、彼女の見つめる彼は…真っ直ぐな目をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セイレーンの想定外…想定外の想定外。

テスターβは狼狽した。

駒の役割から抜け出した指揮官

…いや!

駒だと思い込んでいた!!

 

 

 

 

 

『ツェッペリン!!貴様ッ!…!!』

 

 

 

 

「…見たい!指揮官の言う明日が見たくなった」

 

『何…!?』

 

「駒…そう…駒でも…私は…指揮官の駒だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大型艦船が轟沈し波が救の乗る鉄板を揺らす。

 

ヨロめいた彼を受け止める彼女。

「鉄オイゲン…」

「というか!お前達…何で!」

 

 

「指揮官…何故って?」

 

 

彼女…鉄血に属するプリンツ・オイゲンは彼の顔に両手を当てて言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたが私に笑顔をくれたからよ…」

愛おしそうに…慈しみをもって彼女は言う。

 

「あなたは…私達にも優しい光をくれたのよ?あなたに会えるのが桜赤城達だけなんて…ずるいじゃない」

 

「孤独から私を救ってくれたあなたを…1人になんてさせない」

 

 

 

「そうです。指揮官」

 

「TBちゃん…」

 

「言ったでしょう?私達が居るからと」

 

 

 

「誇らしきご主人様…」

 

「シリアス…」

 

「私達はご主人様の力になれる日をずっと待っていました。今がその時なのです」

 

 

 

 

 

 

 

「ダーリン!!」

 

「提督ッ!!」

艦娘達も集まって来る。

 

 

指揮官の周りにこんなにも…。

 

 

 

 

 

 

もうそこに言葉も…何も必要無かった。

 

 

フンッと、あるKAN-SENが笑う。

彼女達は…指揮官の下に集った。

 

アズールレーンの彼女達は彼の前に立つ。

 

「ロイヤル…クイーン・エリザベス…以下………いえ…」

エリザベスは皆を見る。

もう…ロイヤルだとか…鉄血だとか

そんなの関係ない。

 

 

「……あなたの…KAN-SEN一同……」

 

 

 

「これより…指揮官の指揮の下で艦娘と一緒に戦うわ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

鉄ビスマルクは立ち尽くした。

 

 

 

素体のビスマルクは何故…

レッドアクシズを立ち上げたのか?

 

 

 

 

運命を変えたかったから

 

 

 

 

 

フッドを沈めたことにより

彼女達はロイヤル陣営に追われることとなった

彼女は…変わらない未来

ロイヤルによって皆が消される未来を変えたかったのだ

 

 

力を誇示できれば…

レッドアクシズを認めさせれば…

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は……」

情報としてある"駒"のビスマルクの末路…。

 

 

 

 

 

 

 

「お前は…お前だろうが」

 

指揮官が言う。

 

 

「…コピー?だから何だ」

「俺にはお前はお前にしか映らない」

「ならお前にしか出来ない未来の作り方が出来る」

 

「それでも苦しいか?」

 

 

「なら…俺もその苦しみを一緒に背負う!」

 

 

鉄ビスマルクは周りを見る。

 

フッドもいた。

氷解した妹も…

赤城達も…

あの女王も…

 

 

 

「いや……この光景だ……」

 

(素体)が欲しかったのは…夢見たのは…!」

 

「きっと…この光景だ!!」

 

 

「なら…今度こそ守ろう…この光景を!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前達ッ!!これが…ここが!最後の戦線だ!!」

指揮官が叫ぶ!

 

 

 

 

 

 

…彼女達は見た。

 

 

 

 

 

世界も

 

 

 

 

所属も

 

 

 

 

国も

 

 

 

怒りも憎しみも

 

 

全て超えた今、彼の下に集った者達を。

 

 

その背中は…

その背中は……

 

 

自分達が…が目指した夢見た光景

 

 

 

 

命という楔から解き放たれた私達は…

この海で、世界でまた一つになれた。

 

「指揮官…お前と言う奴は…本当に……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「生きて…共に生きて勝つ!!!」

 

 

 

 

 

 

「行くぞおおお!!!」

 

 

 

 

 

「「「「「「はい!!!!」」」」」

 

 

 

 

 

「「「「「「「「おおお!!!」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くヨー!!妹達ーー!!」

 

「「「はい!!」」」

金剛達が砲撃を構える。

 

 

「私達も!」

「行くぞ!」

「「はい!」」

桜金剛達も隣で構える。

 

 

「おーー!?金剛デース!?」

 

「そちらの霧島は…忍者みたいですね」

 

 

 

 

「なら…金剛型の力見せてやりまショー!!」

 

「金剛型8人…全砲門構えッ!!」

 

 

「霧島ッ!!」

比叡が指示を出す。

 

「はい!角度……ヨシ!」

 

 

「合図は…私達で!」

桜赤城金剛が言い、金剛が頷く。

 

 

 

「「…撃てええええええ!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここも!譲れません!!」

 

「…む?お前も加賀…か。なんだか話が合いそうな奴だな」

 

「あなたも…加賀?…って2人いるの!?」

目の前には桜加賀が2人居た。

 

「私も加賀だ…戦艦のな」

「私は空母の加賀…」

「妹の土佐もあちらで暴れまわってるぞ」

 

 

「………」

 

 

 

「連携しましょう!!」

 

「ああ!」

 

 

「「鎧袖一触だ!!」」

 

2人の加賀が放つ艦攻機ー…の後ろから戦艦加賀が砲撃を行う。

 

 

 

 

 

 

 

「…長門…?私もそこまで大きくなれるのか?」

 

「……同じ長門…だと?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

運命が…こうあるべき形が崩れた時点で…

それはもはや運命ではない…。

 

…そうか

 

 

 

世界を超えるほどの愛…だと?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…残念だったな……』

何かがテスターβに語りかける。

 

 

 

 

『コードGッ!?まさか…』

『貴様かぁぁあ!!!!』

 

私達にも……アズールレーン達にも属さない与しない…

 

あの小娘の持っていた黒のメンタルキューブ…

指揮官の端末にいるアイツ…

 

現れたKAN-SEN達…

 

裏で奴が手引きしていたとしたら…?

 

 

『くそっ!クソッ!!貴様ァァア!!』

 

 

 

 

 

いや…それだけでは無い。

 

そうか…

奴は運命なんぞに縛られないのか…。

 

別の世界からの来訪者。

 

だから奴は…世界の運命の流れに流されないのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……指揮官…命の楔という運命に縛られない指揮官……また会おう』

コードGと呼ばれた何かはスッと姿を消す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

エリザベスは、じっとテスターの方を見つめた。

そして…桜赤城と鉄オイゲンを見る。

 

 

そして叫んだ。

「シリアス!ベルファスト!ウォースパイト!ウェールズ!!命令よ!!あのムカつくセイレーンまでの道を開けなさい」

 

ビシッとテスターに向けて指を差して…。

 

 

 

「はっ!!畏まりました!」

 

 

 

 

 

「ヒッパー!ツェッペリン!シュペー!…皆!!私達も続きます!」

鉄ビスマルクが言い放つ!

 

「はい!」

 

「…鉄オイゲン!!あなたも…行ってきなさい!!」

 

「…ビスマルク……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……重桜の者達ッ!!我らも…続け!」

三笠が…。

 

「はい!!」

 

 

 

「…私達も…続けえええ!!行くぞお!!ニュージャージーも力を貸して!」

エンタープライズも。

 

「はいよー!」

 

 

 

 

 

桜赤城を…鉄オイゲンを…指揮官の下へ…セイレーンの所へ行かせろッ!!!

 

 

 

 

 

 

「あーー!シーーット!」

金剛が叫ぶ。

 

「あのバカをぶちのめしたいのですが…榛名達はここから動けません」

 

 

「桜赤城さん…行ってください!!」

桜赤城金剛が言う。

 

 

 

「皆さん…」

 

 

 

「アンタねえ!この私が譲ってやるって言ってんの!失敗なんか許さないわよ!」

エリザベスが言う。

 

「桜赤城様…お進みください!!」

シリアス達が言う。

 

 

「行け!オイゲンも早く!」

「早く行かねば…私達が行くぞ!!」

 

「私が…行ってもいい…」

シュペーが言う。

 

 

 

「行けッ!!赤城!!」

三笠や桜信濃も言う。

 

 

「桜赤城…オイゲン!!行けッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「桜赤城さん…!行ってください!!」

赤城や加賀まで…

「仕方なく譲ります」

 

 

「行け!赤城姉様ッ!!」

 

 

 

 

「「「「「手一杯だから…しゃーなしであの人の隣を任せるから…お願い!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…行くのだ…桜赤城…鉄オイゲン…」

桜信濃はにこやかに走る桜赤城達を見送る。

 

 

あなたも…生まれた(ドロップした)時から…いえ?もしかしたらその前から…長き時の中…指揮官様の事を想い続けた…

 

ええ

汝の愛はそれ程に大きいのでしょう。

 

 

 

それは世界を越えようとも

時代を越えようとも変わらないモノなのでしょう…。

 

 

世界を隔てても追い続けたオイゲンも…

きっと大きな決断だったのでしょう…。

 

 

 

 

だからお行きなさい!

 

今こそ…あなたは…指揮官様の隣で輝く時よ

 

 

 

 

 

 

 

 

「行きます!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督!捕まっててね!」

陸奥が動き回る!

 

が!やはり相手の数が多い!

 

「くっ!!囲まれて…」

 

救達を取り囲むセイレーンの駒達。

 

 

 

 

 

『死ねええええ!!』

 

 

 

 

 

 

ズドン!

ズドオン!!

 

 

『あ……?』

 

 

 

 

沈み行く駒達。

 

後ろからは桜赤城たちが来ているはずだが…

確か…奴らの後ろには…味方は居ないはずなのに…誰が?!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

敵の駒の後方に居たのは…

 

 

 

 

 

 

 

「バーベキュート楽シイ時間ノ…仮ハ返スワヨ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テスターは狼狽した!

 

『なっ……!?奴らは敵同士のはず!何故奴らに加勢する!?』

 

 

「……サア?私達カラシテモ…アナタ達ガ邪魔ナノヨ…」

 

「ホッポ!スイカノ借リヲ返ス!」

 

 

 

 

 

「…ダカラ行キナサイ!違ウ赤城ト謎ノ奴!!」

 

「アノ目障リナ奴ヲ…潰セ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官様ッ!!桜赤城…鉄オイゲンがお供致します!」

 

 

「ふふっ…来たのね?」

陸奥もニコリと笑う。

 

 

「行け!2人とも!」

 

 

 

『この女狐達め…愛する指揮官との時間を邪魔するな!』

テスターが吠える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…お前は…絶対に逃さない」

鉄オイゲンがテスターβに迫る。

 

 

 

同じく続く桜赤城。

 

彼女の頭に過ぎるのは

傷付けられたもう1人の自分と…救。

 

何があってもこの手でぶちのめすと決めた。

 

 

「お前だけは何があっても絶対に許さないッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鉄オイゲンが言う。

「お前は愛だとか言ったわよね…」

 

桜赤城が言う。

「愛というモノ自体は否定しません」

「でも…」

 

 

「「貴様が愛を語るなッ!!」」

2人が叫ぶ。

 

 

「傷付けて傷付けて全てを壊して手に入れるのが愛なはずが無いッ!!!!そんなの…ありえない!」

 

 

「それでも愛だと言い張るなら…」

 

 

 

「「私の愛で…あなたの愛を超えて行くわ!」」

 

 

 

 

桜赤城が爆撃機を飛ばしながらテスターβに蹴りかかる。

 

空中から何度も蹴りを浴びせながら叫ぶ。

 

 

「指揮官様ッ!!」

 

「何だ!?」

 

「愛していますッ」

 

 

「え!?」

『何!?』

 

 

 

「あなた様のことを…」

 

 

ドカッ!!

『ぐ!?』

 

「誰よりも」

 

 

バキッ!

『ぐう!』

 

 

 

「何よりも」

バキィ!!

 

 

 

 

「愛しています」

ドコォ!!

 

 

 

『くっ!!……このっ!』

 

 

 

 

「私だって…好きよ!!指揮官!!」

 

飛び退く桜赤城と入れ替わりにやって来た鉄オイゲンがテスターのアゴにサマーソルトで蹴りを喰らわせる!

 

 

『がっ!!!」

 

フラついた所を何度も殴る殴る。

「…消えなさいッ!!」

 

 

 

 

 

「桜赤城ッ!鉄オイゲン!!」

 

「はい!何でしょう!!」

 

 

「愛しているっ!!俺も…愛している!!」

 

 

 

「…ええ!はい!ありがとうございます!私…その言葉で…カミすらも超えてみせます!!」

 

「…ウフフ…その言葉…聞きたかった」

 

 

 

私達が生まれた理由…。

それは愛するもの(大切な人もの)を守るため…!

全てを焼き尽くしても尚…燃え盛る愛ですから…!!

 

 

「この炎は…あなたなんかに消せる()ではありません!!」

 

 

膝蹴りを叩き込む。

 

「あなたを焼き尽くす…炎です!」

 

『ぶふっ!』

 

 

渾身の力でアッパーを喰らわせるッ!!

 

 

『がは…』

 

 

 

テスターβが後ろにのけぞり揺らいだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある情報提供者から指揮官の事は聞いていた。

桜赤城が…羨ましかった。

 

だって…直接愛してると言えるし、ありがとうだって言える!

 

私に笑う事を教えてくれたあなたに伝えたいのに…。

 

 

 

隼鷹が行ったのは…セイレーンの仕業なのは正直ムカついた。

 

イレギュラーで三笠さん達が行ったのは予想外だった。

なんで私じゃないの?

 

でも…突然その日は来たの。

 

 

 

 

 

 

「指揮官に危機が訪れるかもしれない。」

 

ある人のくれた世界を渡る方法が使えるのはあと一回。

 

本当は皆がこっち側に戻るために使う予定の方法。

最悪は指揮官だけでも助ける…もしも…に備えた最終方法だった。

 

 

 

 

 

 

 

何もできない…。

そう思った。祈るしか無い。

 

 

 

 

「行けばいいじゃない、皆で」

 

 

エリザベスがそう言った。

 

あっけからんとしている皆に続けて言った。

 

 

「私達は…指揮官のKAN-SENよ?指揮官は母港に居るものよ」

「まあ…あの人は別の世界に居るけれども…」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「無責任な言い方するけど…あの人が所属を変えてもついて行くわ?」

 

「この私も…あの人のKAN-SENなんですから…」

 

「だから…最後の一回は…行くために使いましょう」

「この世界に居たい子は残って構わないわ」

 

 

 

「行くわ!!」

私は一番最初に名乗り出た。

 

 

「ええ、あなたならそう言うと思っていたわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの人に触れられた…

愛してると伝えられた。

 

今日は…本当に良い日ッ!!!

 

 

 

 

 

「これで…終わりよッ!!」

 

 

鉄オイゲンがテスターの腹を蹴り抜く!

 

『ごふ!!』

後ろに飛ばされるテスターβ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、同時に桜赤城が発艦しテスターβに攻撃を浴びせる。

同時に鉄オイゲンも砲撃を繰り出す。

 

ズドドドドド!!と、掃射をぶち込んで行く。

『ぐっ!がっ!がっ!!』

 

そしてー…

 

「終わりよ……」

 

 

 

 

 

 

 

終わりを告げる風切り音

上空から一気に直下して来るソレは…

確実に奴を捉えている。

 

 

「悔いなさい!!私達を…馬鹿にしたことをッ!!」

 

『……バカな……ここまで…』

 

 

 

 

ズドォン!

ズドォン!!

ズドオオオオオオン!!!

 

 

 

 

 

 

 

『ぐぁぁあああ!!体が…もたないッ!!』

 

 

 

 

 

体が崩れて行くッ!!

 

 

 

 

 

負けた…のか?

 

 

そうか……

 

 

 

 

私はこの世界か…ら…

消え去るだろう…

しかし…

 

 

もう種は撒かれて居る!

 

 

 

根を張り…立派な棘を備えた花が咲く…!!

 

 

くくくっ

あはははは!

あははははははは!!

 

 

 

おめでとう…諸君!

君達は勝った!

 

 

また会おう…

 

 

 

私が居なくとも君達には敵はたくさん居るのさ…

 

 

 

 

私の物にならないなら…

いなくなればいいのさ…

 

 

…是非とも頑張って欲しい。

君の行く末が…見たい…なあ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バキバキと音を立てて崩れ行く海域。

 

 

 

崩れ行くテスターβと鏡の海域を見た指揮官達は胸を撫で下ろした。

 

 

 

 

 

……終わった。

 

 

 

 

 

やっと終わった。

 

 

 

 




と言うわけで200話になりました。

ゴールデンウィーク明けくらいから連載させて頂きまして…
半年と経ってませんが皆様のおかげでここまで続けて来られました。
本当にありがとうございます。

書きたい事を稚拙に書いてある作品になりますので…ご都合主義的な話も多くあったかと思いますが少しでもお楽しみ頂けているでしょうか?




アズールレーンキャラもだいぶ増えましたが呼び方表記は少し考え中です。もしかしたら…統一するかもですね。みんなまとめて桜○○とかにしよつかなとか…



キャラも結構増えはしましたが登場比率は今まで通りくらいかと思いますが、色んな絡みを書けたらなと思います。



一部がめちゃくちゃ長かったのでアレですが
今パートは主人公にはキツい思いをして貰いました。

次話から締め…3部…導入予定?ですが
投稿ペースは毎日ではなくなりそうです。

長々と書きましたが…今後ともこの作品を何卒よろしくお願いします。




少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。



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1部 3章 正義を征く者達
201話 碧い航路の果ての彼方は


「……皆…よく頑張った…」

 

 

「お疲れ様…指揮官…」

 

 

 

 

 

 

 

ズラッと皆が並ぶ。

傷ついた者に肩を貸す仲間達。

 

「…ふーん?画面で見るより…いい男?」

と、エリザベスが言う。

 

「当たり前よ…」

桜赤城が言う。

 

 

「…お前達はこれから…どうする?」

 

「…我らはもう帰れない」

 

「そうそう!私達はこの世界に居るしかないし?会いたかったし?!たくさん話したいこともあるのよ…」

 

 

「指揮官が居るところが…私達の母港だから…」

 

 

 

そか…なら鎮守府も拡張しなければな…

さて…帰ろ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドカァァァアン

 

 

 

「は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()西()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

ザッ…ザーと通信が入る。

 

麗ちゃんからだった。

 

[逃げて!!皆狙われてる!!]

 

「早く逃げてッ!!きゃああ!]

 

 

住み慣れた鎮守府が崩れ行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘だ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「神崎イイ!!」

大艦隊を引き連れてやって来たのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前は…神通の提督…!?何で!!」

 

 

 

 

「全て貴様のせいだっ!!」

 

 

「貴様さえ居なければ…神通も死ななかった!!」

 

 

 

 

悪魔は囁いたのだ…。

 

 

悪魔の布石…。

人と人との争い…。

 

 

 

『神崎 救は他世界からの転生者である』

 

『神崎 救が深海棲艦、とは異なった敵セイレーンを呼び込んだ。

罪のない艦娘を沈めた原因を作った…』

 

 

 

 

 

 

お前がooを殺したんだ!!

お前が…お前が…お前がお前が

 

艦隊の中にいるのはそんな提督達らしい。

 

 

 

 

「何言ってんだ!お前達…!」

「そんな事…大本営が…!!」

 

 

 

「大本営…?()()()()()()()()()()()!」

 

 

 

 

「現刻をもって…新帝国海軍の設立を行う。旧海軍元帥並びに副元帥、舞鶴、呉、猛武鎮守府の解任…他、神崎に与する者を…」

 

「我ら…帝国海軍は貴様らを海軍とは認めないッ!!」

 

「即刻…鎮守府から出て行ってもらおうッ!!」

 

 

 

 

「復讐…これは復讐だ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思い出の詰まった鎮守府が…崩れ落ちる。

 

 

 

「嘘よッ!!あいつらッ!!殺してやるッ!!!!」

桜赤城達が向かおうとする。

 

「やめろ!!下手に手を出すと…巌さん達の情報がない今…何が起こるかわからない!!」

 

 

「でも…アレ!!」

 

皆で食事した食堂も

入渠するお風呂も

思い出たくさんの部屋も…全て

 

瓦礫と炎の中に…沈んで行く。

 

 

 

なのにそれでも彼らは砲撃を止めない。

 

 

「…やめてくれえええ!!」

その声は届かず……。

 

 

「さて…」

と、こちらに砲門を向ける。

 

 

[救君…間宮さん達は無事だから…今から言うポイントまで来て!]

 

[提督!あなた!私達は無事です!だから…どうか皆生きて…来てください!]

 

「麗ちゃん…!?間宮!?」

 

 

 

 

「……皆!撤退だッ!明石!夕張ッ!ありったけの…煙幕弾と油と火撒きながら行くぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

涙が出るのは…

煙幕の煙が滲みるからじゃない。

 

 

あの大切なものも全て…全て壊されている気がして……

 

私達は逃げながら鎮守府が…思い出が潰れて行くのを横目にただ航路を進むしかなかった…

 

 

 

 

「!提督!海上が燃えており、また、煙幕で視界も悪く…これ以上の追跡は困難です!」

 

 

「……仕方ないだろう」

「まあ…鎮守府も無い、大本営からの支援もない奴らは野垂れ死ぬしか無い……だが!奴はこの手で殺す」

 

「帰るぞ……あの鎮守府は徹底的に爆撃しておけ!」

 

「他の奴らは?!」

 

「同じく逃亡を許しております…申し訳ありません…」

 

「…無能どもめ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地図にない島

 

 

その周辺は広く海流が年中荒れており大昔から誰も近寄らない海域となっていた。

 

 

 

指定のポイントに向かっていたところを深海夏姫達に案内された。

 

とある航路だけがその島に辿り着けるらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

辿り着いた島は…

西波島と同じくらいの島だった。

 

 

 

麗ちゃんが手招きする。

 

 

「何で麗ちゃんが…?」

 

 

「私がお呼びしました…」

大本営の大淀だった。

 

 

 

 

「…クーデターです」

 

「…聞いてしまったんです。あの神通の提督…林提督は…あなたが全ての元凶だと閣下に訴えに来ました」

 

「…もちろん閣下は否定しました」

 

「でも…彼は言ったのです」

 

「しかし奴が神通を殺したのは事実だ…と」

 

「そして…絶対に潰す…と宣言して帰って行きました…そして彼が周囲と不穏な動きを見せていたと報告があり…麗さんや京極さんにも伝達をしたのです」

 

「その…神崎さんは…作戦中だったので連絡がつかず、間宮さん達に伝達しました。鎮守府には猛武鎮守府のメンバーが向かうとの事で…」

 

 

その時…背後から声がした。

 

「京極だ!元帥閣下と姉貴も居る!無事だ!」

「…何名かは犠牲になったが……くそっ…」

 

 

 

 

 

 

 

「…俺のせいか…」

 

「俺がこの世界に来なければ…。奴らが来なければ…あの時神通達を助けて居られれば…こんな事には…」

「大ちゃん達の艦娘達も死なずに…済んだのに」

 

 

「……俺は…間違っていたのかなあ…」

 

 

 

 

「提督…」

 

「指揮官様…」

 

 

 

 

 

「馬鹿野郎!!」

 

 

京極に殴られた救。

 

「救ちゃん…いや!神崎 救ッ!!お前は大馬鹿者だッ!!」

 

「奴等のどこに正義がある!?お前はお前のできる全てを出して来ただろう!転生して来た?だから何だ!お前達がこの国の平和にどれだけ貢献して来たと思っている!」

 

「確かに奴らも含めて仲間が何名か犠牲になった…でもお前はいつだって…何かの為に頑張って来たじゃないか!なのに…自分を否定したら…奴らが浮かばれないじゃないか」

 

 

「だから…自分を否定するな…前を向け!お前には仲間も俺達もいるだろう」

 

 

 

 

「…ごめん」

 

 

「それに…クーデター及び仲間への砲撃を敢行した奴等こそ…今後…人の敵になる可能性もある…」

桜が言う。

 

 

「しっかりここで体制を立て直す必要もあるよ」

麗も言う。

 

 

 

 

「安心しろ…ここにいる皆はお前の味方だ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆の心の傷は思ったよりも深かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝国海軍発足の話は瞬く間に全土に広がった。

 

 

新体制の中心として林が据えられるようになった。

 

この日を境に海軍の在り方が大きく変わろうとしていた。

 





深海棲艦との戦い
異世界のセイレーンとの戦い

次なるは
人との戦いとなります。


ありがちな流れかと思いますが…何卒よろしくお願いします。



そんな中でも甘い話は続けますよー!






林というキャラクターは何話か前に名前無しで出て来てますね。

彼には彼なりの正義がありますが
どう転ぶか…


少しでもお楽しみ頂けたら幸いと思います!


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202話 だれでもできるけんせつ

神無島…かんなじま

 

かつて…大昔は神在島(かみありじま)と呼ばれた島であるが、今となっては船すらも座礁する魔の海域として人々の記憶から忘れ去られた島である。

 

海域周辺には…座礁した船の怨念が流れ着いているとはれており、濃霧に満ちており、またその海流は凄まじく…深海棲艦ですら近寄らない…というか見かけない程であり、艦砲射撃でも制圧は不可能と推察できる

 

 

何とか猛武鎮守府の子達が持ち出してくれた資材で仮設建築を行い最低限の生活を送る。

 

 

少しとはいえ大本営からや地元住民からの助けがあった頃とは一転しており、その貧しさは極めた。

ましてや…アズールレーンの子たちや他鎮守府からの子達も居る…。

 

 

 

 

「……」

 

 

「すまん…神崎…俺がどうにかできていたら…」

 

「そんな事はないですよ」

 

「…私が……」

 

「俺が…」

 

「俺もだ…」

 

 

 

「「「「「はあ…」」」」」

 

恐らくテスターの仕業だろうなあ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえずの所…

疲労困憊の彼女達を休ませる為の何かが必要になる。

 

……

どしよ?

 

 

 

 

何とか持ち出した備蓄でテントを貼り野宿する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「妖精さん達や…」

明石達がごにょごにょと話している。

 

「なに?」

 

「ひさしぶりのとうじょうだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝には鎮守府建屋が完成していた。

といっても簡素なものではあるが…

 

 

「嘘おおおお!?!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ!私がお願いしました!」

と、明石が手を挙げて得意げに言う。

 

 

①妖精さんを呼びます

 

「ひさしぶりのでばんだー!」

「わすれていただろこのやろー」

 

 

②お菓子を沢山献上します

 

「ひゃぁあ!ごうかだー!」

 

③ひたすらお願いします

 

「ちんじゅふさいけん?おおきいの?」

「あと…おかしがもうすこしほしい」

 

「あとかんせいしたらもうすこしほしい」

 

 

④その日は野宿します

 

 

 

 

 

⑤完成…「んな訳あるかぁぁあいい!!」

 

朝から俺を除いた全員からの総ツッコミが入る…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って…なっとるがな……」

全員が驚愕した…

 

あり得ねえ……

 

「え?何?休む暇もなく働かせてるの?ってレベルじゃねえ…」

 

「早すぎん?」

 

「かんたんだよー」

 

と木材を用意する妖精さん。

「つくえつくるよー」

 

 

「お、おう…」

 

「まず、ざいりょうをよういするよー」

 

「はい」

 

「かんせいだよー」

 

目の前には煌びやかな意匠が施された机があった。

こんな外で作ってどーすんだという気持ちは…留めておこう。

 

「は!?!?」

 

手品か?手品を見てるのか?

 

 

 

 

 

 

 

曰く、妖精さんとは願いの結晶らしい。

詳しくは秘密と言われたが…何やねん。

 

 

 

 

 

 

 

「でも…資材は!?」

 

「みながあつめてくれたよー」

 

皆を見ると昨日よりも傷付いた皆が居た。

 

 

「お、お前達!!」

 

「少しは役に立てたかな?」

 

荒波に飲まれかけ、敵とも遭遇して…

海域外に出るのにもそれなりに大変だった筈だ…

 

「…こんなにボロボロなのに…何で…」

 

 

「このくらい平気さ!えへへ」

 

彼女達を1人1人1人撫でたり抱きしめながらありがとうと言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新鎮守府の建屋を見ながら皆に言う。

 

「……皆入渠しておいで」

 

 

「はーーい!!」

どの鎮守府の娘も酷く疲れて傷ついているだろう。

 

 

 

初めてあの鎮守府を立て直した時を思い出す。

 

あの時と…同じだなと思う。

俺ららしいと言うか…うん…。

 

 

 

 

 

 

 

 

……カレー作るか…。

 

 

 

 

 

 

 

入渠や俺達の入浴が終わってから食堂に皆を集めて話をする。

 

 

 

「まず…皆…本当にお疲れ様。セイレーン作戦は…作戦自体は成功と言える。まさかこんな事態になるとは思っても居なかったが…」

 

「情報等が入ってこない以上、当面はここを拠点として生活する事になる。我慢が必要な時が多いが許して欲しい」

 

「資源は一応、島の裏側の入江が集積地になっている箇所もあるからそこでもある程度確保は可能かと思う」

 

「食料は…まあ色々考えよう」

 

 

「今日はカレーだから食べて少しでも疲れを癒して欲しい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……取り戻す。

 

あの島と鎮守府は…思い出の詰まった大切な所だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

島の端で手を合わせる。

岩で墓に見立てて花を添える。

 

 

 

彼女達は皆を逃すために轟沈寸前で殿を務めたらしい。

 

 

呉 比叡

 

大本営 利根 島風

 

猛武 電 響

 

舞鶴 大淀

 

 

 

 

 

「あの…」

と話しかけられる。

 

沈んだ艦娘の同僚達だ。

 

 

誹りを受けるのも…

恨まれるのも覚悟している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…彼女達の犠牲は…報われますか?」

 

 

「彼女達の死は…将来の平和の礎になりますか?」

 

 

涙を流しながら質問する彼女達。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……恨んでないのか?」

 

 

「思うところはあります…でも、私達は知っています。あなた達がどんな人なのか」

 

「あなたが悪くないことも知っています」

 

 

 

「せめて…彼女達の死が無駄にならないようにしたいんです」

 

 

 

「約束する…」

 

「でしたら…私達は何があってもあなたの味方です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

形として鎮守府に着任した提督で居ないと皆の力が出ないので

神無島母港として始動した。

 

 

 

 

 

 

 






いつもありがとうございます!

拠点が移りましてここからスタートになります。



ちまちまやっていきますので
どうぞよろしくお願いします!




少しでもお楽しみ頂けたらと幸いです!


感想などお待ちおります!お気軽にお願いします!


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203話 夜が好きな理由

アズールレーン組の名前の前の漢字を桜で統一してみては?とご意見を頂いたのでそうしてみます!

たしかに聖座とかね鉄血とか
略すのが難しいのもありますからね…

よろしくお願いします!


 

 

 

 

 

 

「…本当ならさ……私とデートする予定だったのにね」

 

「そうだな…ごめんな」

 

目の前に居る不貞腐れた艦娘は川内である。

そう、本来なら川内と1日夫婦をする予定だったが…今は神無母港に居るためにそれも出来ない。

 

 

島巡りぐらいなら出来ないこともないが……

正直なところ2人きりでとなると難しい。

 

せめてもの…でも無いが昼からは休みにして川内と2人で自室に居る。

 

 

「お前の事だから夜戦のお願いを申し込んでくると思ったんだけどなぁ…」

 

「まあ…それも魅力的なんだけどさ?やっぱり…その…アレだよ…す…すす好きな人と一緒に夜を過ごすのも悪くないかなぁ…って」

 

「あら!意外と乙女なのね!」

と、茶化してみる。

 

「酷っ!!私だって女子なんだからね!?」

 

 

とは言え…

 

「ほら!提督!おいで〜?」

と、ベッドに座る川内が膝をポンポンと叩いている。

どうやら膝枕をしてくれるらしい。

 

 

「ん?特段眠くもないぞ?」

 

「いーからいーから!」

と、半ば無理矢理に膝枕に寝かされる。

 

「すべすべでしょ?欲情したらダメだからね?r

 

「ペロペロしてやろうか 」

 

「……お手柔らかに…」

 

おい、顔を赤らめて逸らすな!

こっちが恥ずかしくなる…。

 

 

 

 

 

私ってさ…夜戦好きでしょ?

夜は最高だよ!

 

 

まあ…資材とかの関係で中々夜戦訓練は難しいけどね!

 

でも…夜が好きだから夜警の仕事を任せてもらってたよね。

 

 

 

 

でもね?

 

本当は…

()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

寂しくてさ…何か切なくて…

 

 

このまま目を閉じたら…明日が来なかったらどうしよう

 

今のこれが夢で…覚めちゃったら…

皆全てが幻だったら…って考えたら嫌で嫌で…

 

 

特にね

皆が寝静まった後の部屋も廊下も全てが怖くてさ。

 

 

 

 

でもね

 

 

執務室のドアから漏れる光が見えたら安心できたんだ。

 

あの光だけは…いつも寂しいって気持ちをかき消してくれるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だって…

そのドアの向こうにはいつも提督が居るから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え?

俺じゃないかもよ?

 

ううん…。

何でか分かるの。

 

このドアの向こうには…あなたが居るって。

 

 

 

 

 

『寝れないのか?』

 

『うん…えへへ、何だか目が冴えてさ』

 

『眠くなるまでそこに居たら良いよ』

『ホットミルクでも飲むか?』

 

 

そうやって仕事の合間でも私に気をかけてくれたね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこから夜警の仕事にチャレンジする事になったでしょ?

 

最初は心細くて…怖かったけど…。

 

 

ある日さ、缶コーヒー持った提督がお喋りに来てくれたでしょ?

いつもの缶コーヒーより温かかったなあ…。

 

 

 

 

 

 

 

私ね…?

夜警中に提督が来てくれて…

お喋りしてくれるのが好きだったんだ。

 

 

あの時間だけは2人きりでさ…

 

 

星も空も海も…鎮守府も…何もかもが静かで…

その中で2人で居る…静かな夜が好き!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから…夜が好きになったんだよ?

 

 

 

 

 

 

 

怖かった…嫌いだった夜が

あんなに良いものだと教えてくれた提督が大好きだよ。

 

 

 

 

 

 

 

…キャラじゃないかな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……俺もその時間が好きだった」

 

 

 

「おおお起きてたの!?」

 

「ごめん…」

「いや…好きだったじゃないな」

 

 

「え…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今も大好きだ」

 

「寂しげな夜も…君と居るこの時間も…君も大好きだ」

 

 

「うん」

 

 

 

 

「愛してるよ…」

 

 

「…なら……ね?」

 

「ああ…今でいいのか?」

 

「うん、今がいい…ほら…触って?こんなにドキドキしてるんだ」

と、川内が胸に手をあてさせてくる。

 

「……本当だ」

 

「……えっちなこと考えたらダメだよ?」

 

「不可抗力じゃないか?」

 

「まあ…提督ならいいよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は立ち上がり、机の引き出しからあるものを取り出してー…

 

「…受け取ってくれる?」

 

「うん…いや、はい…!喜んで受けるよ」

 

「泣いたり笑ったり…照れたり忙しい奴だな」

クスリと笑う。

だって…目の前の川内はポロポロと泣いているから。

 

 

 

 

左手の薬指に指輪を添える。

 

「へぇ…これが……提督との愛の繋がりなんだね?」

 

 

「…その先もいい?」

 

一瞬固まった川内がボッ!と顔を赤くする。

本当に忙しい奴だな…。

 

 

「へぁ!?おぅっ!?よ、よよよよよーし!バッチこい!」

 

「どんな気合の入れ方?!」

 

 

顔を近づける…。

 

「まま待って!……お願い」

 

「ん?」

 

 

 

 

「手を握って………この瞬間も…あなたを感じていたいから」

 

 

「ん」

 

 

 

 

川内の手を握る…。

微かに震える手は……ぎゅっと強く俺の手を握った。

 

キスをすると…その手の震えは止まって…

また、ポロポロと涙をながす川内が居た。

 

 

 

 

「う、嬉しいなあ…」

「だから…ずっとそばにいてね?」

 

 

「約束するよ」

 

 

 

「私もそばに居るから」

 

 

「愛してるよ…提督」

 

「俺も愛してるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう御座います。誇らしきご主じ……」

固まるシリアス。

 

「シリアス?どうしましー…」

 

 

「もう少しだけお寝坊をさせてあげましょう……」

 

 

 

 

そっと外へ出てドアを静かに閉める。

 

「そうですね……羨ましい」

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには肩を寄せ合い寝息を立てる2人が幸せそうに眠っていたとか…。

 

 

 




お気に入りが…600になりました。
お気に入り登録ありがとうございます!

本当に本当にありがとうございます!

少しでもお楽しみ頂けてますか?



今回は川内の少し甘めのお話でした!
割と素直に可愛い感じになったかと……








少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!

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204話 足掛かりを求めて…

「まだ見つからんのか?奴らは…」

 

「…申し訳ありません…」

 

 

「チッ…使えねえ奴等だな」

 

 

 

目線を移して話しかける。

「で?お前らは協力する気になったのか?」

その先には何名かの艦娘が居た。

 

「は…はい……」

1人の艦娘が答える。

 

 

 

「私達は平和の為に…」

1人はそう答える…が

 

「うるせえ!!」

「てめーらは黙って俺の言う事を聞けば良い!無駄な事は考えるな!」

 

 

「それとも…またアレ…されたいか?」

林が艦娘を脅す。

 

「ひっ…い、いいえ!従います!従います!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し前の話…

 

 

「これだけのしざいがあれば…ちんじゅふがつくれるよ」

 

「ほかのちんじゅふのこもてつだってくれるから」

 

 

 

「……でもこの島の資材だけじゃ…」

「食べ物も…」

 

 

 

「…行こう!資材を探しに!」

 

「でも…補給もギリギリラインだよ?!危ないよ」

 

「こんな時だからこそ…私達が提督を支えないと!」

「あの人は今、自分を責めてる…表面には出さなくてもいつか限界が来る。だから少しでも私達が支えなくちゃ」

 

「うん…ならやろう!提督も皆も守り抜かなくちゃ!」

 

 

 

 

「よし!比較的に損傷の少ないメンバーで海域の調査並びに資材の確保!あわよくば…魚が手に入ると良いな」

 

「その他のメンバーで島の探索…つまり、水や食料の確保だ。浜の方で何か流れ着いてたり、食料があるといいが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…おお!?島の裏側は…資材だまりじゃねえか!……多いとは言えないが有難いな…」

 

「浜辺は…うん、ここら辺なら釣りとかできるかな?」

 

「…あさりとか出てくるかなあ…」

 

「芋と……うーん…山菜くらいかなあ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「荒波だからな!予定航路から外れたら流される可能性もあるから気をつけろ!」

 

 

「深海棲艦すらいねえなあ…」

 

 

 

「ん?アレは…?」

 

 

『アナタ達…何シテルノ?』

 

「おお!深海夏姫達か!先日は助かった、ありがとう」

 

『アナタ達ニオ礼ヲ言ワレルト…ナンダカムズガユイワ」

『…デ?何シテルノ?』

 

 

 

 

「実はな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…なるほどね。人も愚かなものね…。あなた達は海軍の所属じゃないのでしょう?なら戦う理由は無いわ…』

『そんな余裕もないしね』

 

 

『ここら辺には手を出さないでしょうけど…気をつけなさい。奴らは今、大きく軍拡を進めているわ…多くの仲間が狩られているもの…』

『アナタ達を探しているのもあるでしょうけど…狂気じみた軍政を行なっているそうよ…』

 

 

「…完全に私らが悪者の扱いだろうからなあ…」

「住める環境にはして行くが…お前達も危なくなったら…あの島に来ると良い」

 

 

『あの島ならある程度は安心よ…そうね、助かるわ。私達も危なくなったら避難させてね』

『なら、お礼に…近海の情報や食料…資材だまりの場所の情報を提供するわ…』

 

「何故そこまでしてくれる?」

 

『敵意はなくてもね…この姿だと何処でも歓迎されないのよ…でもアナタ達は…私達と普通に接してくれたの。アナタ達には普通の事かもしれないけど…私達にしたら返しきれない程の喜びなのよ」

 

 

 

 

 

「なら…ウチの所属になれば良いじゃないか?ウチにも深海棲艦は居るぞ?」

 

 

 

夏姫達は嬉しそうな…でも少し寂しそうな顔をした。

 

『それも良いかもな…考えておくわ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『嬉しかったわね…』

『本当に…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

完成した新しい鎮守府は大きかった。

 

 

お風呂も広くて…

部屋も広くて…仲間も増えたけど…やっぱりあの場所が少し恋しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたの?」

ボケーっとする俺に麗ちゃんが話しかけて来た。

 

「ん…なんか眠れなくて」

 

「新しい所は慣れない?」

 

「うん」

 

「ねえ…?」

 

「うん?」

 

「もっと…頼ってよ」

 

「え…」

 

「この指輪は飾りじゃないんでしょ?」

「なら…頼ってよ?あなたの全てを受け止めるから…」

「どんな敵でも…どんな場所でも…絶対に駆けつけるから!支えるから!」

 

「ありがとう」

 

 

「今後のことも含めて考えないとなあ…」

 

「情報が必要だよねえ…」

 

 

 

 

 

 

「私達が居るじゃないか」

話しかけて来たのは桜霧島だ。

 

「私達なら顔も割れてないし…役に立つと思う」

 

「危険だぞ?」

 

「任せろ…」

桜霧島はニヤリと笑った。

 

 

 




少しシリアスでは無いですけど
そんなパートも続きます!

気長にお付き合い頂ければと思います。


少しでもお楽しみ頂けたら幸いです!

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205話 最初の一歩

桜霧島と桜加賀が街へと行く。

 

 

「おい!お前達…神崎 救を見てないのか?隠してもいいことはないぞ?」

 

「本当に知りませんて…居たら言いますから…」

 

 

厄介だな…と思いながら歩く。

やはり、彼が行き慣れた街だからか…手配書も貼られており…

 

神崎 救

 

国防の立場に在りながら

敵と内通、味方の轟沈に携わる等の悪逆行為。

現在逃亡中につき……

 

 

 

「嘘っぱちだな…」

桜加賀はため息をつく。

 

 

 

 

「む?お前達!!」

と、声を掛けられる。

 

「何でしょう?」

平然を装い対応する。

 

「その男…知っているか?」

 

 

「……」

 

「ん?まさか仲間か?」

 

「…以前…海の上で怪物から助けて頂きまして…どこの誰かも分からなかったのですが…こちらで鎮守府で働かれてると聞きましてお礼に来たのですが……」

 

「あぁ…奴なら裏切り行為で指名手配中だ、残念だったな」

 

「どういうことですか?」

 

「手配書の通りだ。もし見かけたら言えよ」

 

兵士は去って行く。

まるで憲兵じゃないか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんたらも…救に助けられたのかい?」

彼女達に話しかけて来たのは松田だった。

 

 

「ええ…あなたは?」

 

「俺は松田…うーーん…奴の父親……のかわり?みたいなものかな」

 

「なるほど…神崎さんは…本当に裏切り者なのですか?」

 

「いや…あいつがそんなはずはない!何かの間違いだ…少なくともこの街のやつはあいつの味方だ…何も出来ねえが…くそっ」

 

「頼む…信じて欲しい、奴はいきなり仲間殺しや敵の誘引をしたりする奴じゃない!」

 

 

「あぁ…信じるさ」

「…それは私達もよく知っているからな…」

 

「そうだぞ。そういう人が居て少し安心した」

 

「あ、あんたらは…まさか?」

 

 

 

「あぁ…指揮官のKAN-SENだ」

 

「艦娘とは…違うのか?まあいい、アイツは生きてるんだよな?」

 

「生きてるとも」

 

「…どこにってのは聞かねえほうがいいな…まあ安心した」

「…辛かったろうな…アイツは」

松田は心底嬉しそうにしていた。

 

…軍関係以外でもこういう温かい人との関係があって良かったと思う桜霧島であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後の聞き込み等の調査で分かったこと…。

 

 

今回のクーデター(対外的には反乱分子の排除)の指揮は林が主導である。

 

当初は反対派も居たが、今はほぼ9割が林の指揮下に着く。

噂によると、脅迫や拷問も辞さないらしい。

 

現在の海軍最高指揮官は林である。

 

憲兵すらも取り込み、もはや海軍の域を出かねない状況である。

 

 

神崎 救を含む旧海軍の追放者は

仲間殺しや国家転覆を目論むテロリストとして指名手配されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…たいそうな言われようだな?指揮官」

桜加賀が報告しながら笑いかける。

 

 

「泣けるわ…」

 

「引き続き頼む」

 

 

 

 

 

 

アズレン組の諜報活動と物資運搬で多少の進展があった時のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大変だあああ!!!軍隊が攻めてくるぞおおお!!!」

 

 

「何!?」

 

 

 

轟音。

砲撃はいとも容易く生活を吹き飛ばす。

 

 

 

 

 

「なっ…」

「住民に攻撃…だと?」

 

 

 

 

軍人らしき人達と艦娘とが街へと攻撃を加える。

 

 

 

「桜加賀!桜霧島!!」

と、三笠が指示を出す。

 

この街…小々波の街は…人は指揮官にとって…かけがえの無いものだから!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大変だ!!」

 

 

「街が…攻撃されてる!!」

通信で連絡を受けた救達。

 

 

「何…!?」

「出撃準備!!!早く!親父達を助けないと!!」

 

 

こうなったら後先は考えられない。

全力で小々波街へと向かう。

 

 

何故街が攻撃されなくちゃいけない?

 

なぜ?

何故?!

 

 

 

 

 

 

 

遠くに逃げた弊害はここでやってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ッ!」

 

見るに耐えない状態だった

 

建物は破壊され、めちゃくちゃに荒らされ…

怪我をした人々でいっぱいだった。

 

 

「救…ちゃん」

「あんたは無事だったのかい?」

 

「おばちゃん…何が」

 

「…帝国海軍てのかい?アレが私らも反乱分子の1つだって…」

「アンタのとこの若いのが守ってくれたけどサ…3人じゃあ…」

 

桜加賀と桜霧島と桜三笠の姿がない。

 

「ごめんねぇ…私らの代わりに…連れてかれちまったよお」

「あの子ら…凄かったよ…」

「見てご覧…ここから後ろ…一切攻撃されてないだろう?あの子達が守ってくれたんだ」

 

 

 

 

ある所から後ろには一切の傷がなかった。

その手前には夥しい弾痕と血と……

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん!」

子供が話しかけて来た。

 

「お姉ちゃん達を助けてあげてよお」

 

「僕達を庇って…怪我したんだあ」

「うえええん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督!これ!」

島風が持ってきた一枚の紙切れ。

 

 

逆賊 神崎 救一派に告ぐ

 

これは正義の鉄槌であり、正義は我らに有り

 

預かり物を返して欲しくば…

鎮守府跡地へ来るべし

 

従わない場合、預かり物は永久に失せるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海軍とは何だ…?

こうまでするのが…正義なのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドス黒い感情が湧いてくる。

わかってる。そんなのはダメなのに…

 

殺意が止まらない。

 

 

 

 

 

 

 

「皆さん…俺のせいで…すみませんじゃ済まないでしょうが……本当にすみませんでした」

頭を下げる。

土下座だ。

 

 

俺のせいでこうなったんだ…。

 

 

 

「…生きてるから大丈夫だ」

 

「俺らは知ってるからよ!お前が悪くねえって事をよ!」

 

「建て直しゃあ…また住めるからよ!」

 

「逆に守ってもらったんだ…何も出来なくてすまねえ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんなのは正義なんかじゃない!!!

 

 

「皆……すまん。俺は正義の味方でもない。こんなに悔しくて腹立たしくて…憎いのは初めてだ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

非情にならねばならない時は…

今なのか?

 

 

 

「指揮官…」

 

 

「TBちゃん」

 

「私にはこの世界のことはよく分かりませんが……あの方達が間違っている事はわかります」

 

「あなたの進む道が私達の進む道です。間違えた時は私達が元に殴ってでも戻します」

 

 

 

 

「……皆を集めてくれ」

 

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……俺は正義の味方でもなんでもない。だが!こんな事は間違ってる…。奴らの真意がどういうものかはわからんが…これ以上好き勝手を許す訳にはいかない!」

 

 

 

 

「踏み躙られた尊厳もプライドも、思い出も!仲間も!取り戻すッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「西波島鎮守府を…3人を取り返すッ!!」

 

 

「作戦はあるの?」

桜エリザベスが言う。

 

「…裏から回るか……」

 

「…もう……今回は私に任せなさい?」

桜エリザベスが自慢げに言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

バキッ!

「ぐっ!」

 

 

「早く言うんだよ」

「奴が何処に居るかをさ!」

 

 

ドコッ!

「……」

桜加賀は恨めしそうに新堂を睨む。

 

 

「黙秘しちゃう?」

「うーん……君達さあ…何者なの?」

 

 

「…」

 

 

 

「黙ったままなんだね?」

「仕方ない…殴るのも飽きたしさ…君達可愛いし…楽しませて貰おうかな」

 

 

かちゃかちゃとズボンに手をかける男

新堂と呼ばれる男はにやにやと気味悪い笑みを浮かべながら3人に近付く。

 

 

「辞めておいた方が良いぞ」

「この身も心も指揮官のものだ…貴様らなんぞが好きにしていい…

 

 

バキッ…

「うるせえよ…」

桜加賀の顔面に蹴りが入る。

 

 

 

 

「黙って…やられろよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新堂が桜加賀の袴に手を掛けた時だった。

 

 

 

 

 

 

「新堂殿ッ!!大変です!」

 

 

 

「何だ!!楽しみの手前なんだぞ!」

 

 

 

 

 

「そ、それが…神崎が…来ました!」

 

 

 

 

 

 

「1人で船着場から歩いてきますッ!!」

 

 

 

「なにいい?!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

 

「………」

 

 

救は艦から旧船着場に降り立った。

 

奪還作戦において彼が目的とするのは

まずは囚われた仲間と鎮守府を取り戻すこと

 

麗達は神無島母港を拠点としてもらう。

即ち、全ての攻撃や強襲を西波島で受けるつもりである。

 

 

 

 

 

 

 

「か…神崎…提督…なぜ来たのですか?」

 

戸惑う艦娘や兵士に救が答える。

 

 

 

「お前達は何故罪もない街やヒトを襲った?」

 

「…め、命令で…」

 

オドオドとしてきたはずの2人がニヤリと笑う。

「お前を殺せば将来が安泰するからだッ!!」

 

 

飛びかかる兵士に艤装をこちらに向ける帝筑摩。

 

 

「させるかッ!!」

 

川内達が2人を組み伏せる。

 

 

 

「くそ!!罠ですか!!」

 

「仲間を助けに来たのか!?馬鹿だな!今頃…3人とも犯されて狂ってるところだろうよ」

 

 

 

 

救は無視して進む。

 

本心は殺してやりたい気持ちでいっぱいではあるが黙って進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たか!!…来いよ!もっと来いよ!」

望遠鏡で救の姿を確認した新堂がさけぶ。

 

 

 

 

 

ズンズンと突き進む救に誰1人として襲い掛かる者はいなかった。

 

気迫。

 

悍ましい程の殺気…。

 

 

 

彼女達は知らない。

 

優しい彼の姿しか聞いたことが無い。

 

 

 

故に知らない。

 

何故彼がここまで殺意を放ったまま歩くかを。

 

 

 

とは言え実の所そこまでの考えはない救。

 

 

 

 

 

 

 

少し前…

 

 

 

『…堂々と行きなさいな』

と桜エリザベスが言う。

 

 

『ん?どゆこと?』

 

それ作戦なの?とジト目を?向けてる面々。

 

『作戦よ!!あなたの家でしょう?家主がコソコソと裏口から入る必要がどこにあるのかしら?』

『簡単よ…出来る限りの殺気を放ちながら歩きなさい。当然相手は「コイツはバカか?!」と襲いに来るわ』

 

『ダメじゃん!』

 

『最後まで聞きなさい!そこを隠れた私達が潰して行くの』

『襲えども襲えども指揮官は歩むのをやめない…それは恐怖になるわ』

 

『いい?どんな物からも私達があなたを絶対に守り切るわ…擦り傷1つとて負わせない…あなたが信じるなら……いえ、私達を信じて歩みなさい」

 

 

 

故に彼は歩む。

 

 

道すがらに襲い掛かられようとも…彼に触れることすら出来ない。

 

1発の弾丸とて、彼には届かない。

 

 

 

 

 

 

いつしか彼の歩む道を誰も邪魔しなくなった。

 

 

何故かはわからない

だが…心の底から何かが告げる。

 

 

ー奴に手を出してはいけないー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…ー

 

 

「……3人とも…遅くなった」

 

 

「指揮官…馬鹿者…待ってたぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…返してもらうぞ……俺達の家を…」

 

 

彼は新堂の目の前に立った。

 

 

 

 

「…といってもここまで無傷で来たんだ。俺の勝ちみたいなもんだろ?」

 

「…はっ!馬鹿じゃねえの?」

「俺の部下は既にここを包囲してんだよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰一人として出てこない。

 

 

 

 

 

 

 

「…何…「わからないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前の部下は全員…消したよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉と同時に神崎の部下達が周りを取り囲む。

全員が冷徹な目をしている。

その目はジッと自分を捉えて離さない。

 

 

 

新堂はゾクリとした。

優男そうな奴としか印象が無かった奴だった。

林が何故奴を殺そうとするかはわからないが…とにかくわかる事は一つ…

俺達が奴を…

 

涙を流しながら雷撃処分の命令を下す優男を

俺達が…鉄血に変えてしまったのだ…と。

 

 

 

 

 

しかしこんな所で死んでたまるかと思う新堂は銃を桜霧島に突きつける。

「こ、これが見えねえのか!!」

 

「………」

 

 

 

 

「オラ…道をあけ「全員…奴に照準を合わせ…」

 

「!?!?」

 

 

バカな…何故だ?奴にとって女達はなによりも大切なものなんだろう!?

 

「ふっ…新堂とやら…目論見が外れたな?私達に人質としての価値はないそうだ」

「撃つがいい。誰かは死ぬかもしれないが…お前も確実に死ぬ」

 

 

 

彼女達も構えたまま動くつもりはない。

何より…下手すりゃあ「私ごと撃ちなさい」と言いかねない状況だ。

 

 

 

「お、おい!神崎!!お前…コイツらが何よりも大切なんじゃないのか!!」

 

「…大切だ」

 

「なら俺の言う通りにしたほうが賢いだろ!!」

 

「…だからお前がもし…彼女達を撃つなら確実に惨たらしく殺してやる。」

 

 

 

 

 

 

 

動けない。

新堂は詰んだのだ。

 

 

 

人質の意味は自分がその場で狙われない為にある。

 

 

人質とは盾ではない。

人質を取る側は…あくまで人質に命を守られているのだ。

しかし…それは人質を殺すまでの間であり、殺した瞬間に俺は終わる。

 

死にたくない気持ちが強い新堂は人質を殺さない。

かと言って救達も退く気は無く、隙間のない囲み方で新堂を包囲している。

 

 

奴の目は本気だ。

本気で俺を殺そうとしている。

 

 

 

 

何でだ?

 

奴が悪なんだろ?

 

林が言ったんだぞ?

 

待て…

俺は奴が涙を流しながら雷撃処分を下した事を知っている。

 

なのに何故…

 

奴が裏では仲間殺しを平然と行っていると信じた?

 

 

 

いや…その前に…

何故俺は…

嫌いな林に従ったんだ…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「降参…する…命までは………」

 

 

 

 

 

 

 

彼の意識はそこで途切れた。

 

 

 

 





もう少しなので…
もう少しだけ…


少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。

感想等ありましたらお気軽にお願いします(๑╹ω╹๑ )!


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206話 西波島鎮守府の再建

目が覚めた新堂達は自分達の姿がどうなっているのかを知る。

 

 

 

「覚悟は出来ているんだろ?」

神崎 救の声が聞こえる。どうやら後ろにいるらしい。

縛られてなければ…その姿も見れるのに。

 

 

 

「……お前達は踏み込んではならない領分に土足で踏み込んだんだ」

 

 

「お前が悪いんだろう!!」

「お前がウチの千歳を雷撃処分したから!!」

 

 

「…だが、それが守るべき人達の命を脅かす理由になるのか?」

 

「…ッ」

 

「同じ鎮守府を…艦娘を…攻撃して!挙げ句の果てに何の罪も関係もない住民を攻撃する理由になるのかッ!!!」

 

 

「説明ならいくらでもしよう!文句もあるだろう…俺だって嫌だったさ!まだ、意識もあった彼女達を沈めるなんか…」

「だが…俺がやらなきゃいけなかったんだ!!敵として誰かを傷つけるくらいなら…そんな姿見たくもないんだよ!」

 

「……でも…」

 

 

 

「そんなの知るかと言うだろう…。だが…お前らには責任を取ってもらう」

「艦娘も含めて…クーデターを起こして人々を殺めかけたんだ」

 

 

 

「な!?や、やめろよ!処刑なんてやめろよ!」

 

「…いえ、提督…私達は大人しくここで逝きましょう」

抵抗する新堂に扶桑が言った。

 

「……私達は…道を違えたのですから」

 

 

 

 

「お前がそんなことをしなければこんな事にはならなかったんじゃないのかよ!」

 

 

 

「ならお前は…敵になった元の仲間を殺せるか!!?」

 

「誰かがやらなきゃならなくなるんだ…耐えられるか!?共に過ごした…想いあった仲間が守るべき人を殺すのを見て耐えられるか!?」

 

「彼女達はこの世界を…生きる命を…死んだ者の誇りを守る為に戦ってるんだ!!だから俺にできる事は…あれしか無かったんだ!」

 

「彼女達を彼女達のまま…逝かせてやることくらいしか出来ないんだ!!お前にわかるか!俺の無力がどれたけ自分を苦しめるか!」

 

「お前にわかるか!!どれほどに悔しくて辛いか!」

「わかるか!?仲間と思ってた奴らに住む家を…命を奪われる気持ちを」

 

 

 

「俺は正義の味方でもねえ…守れるもんなんか知れてる…。だからいつでも全力でやるんだよ!いつだって…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「新堂…首を狙うと言う事は…死んでも良い覚悟があった訳だな?」

 

「…」

 

そうだ…その覚悟もないのに命のやり取りをしてはいけないなあ…

 

 

 

 

「……」

 

「…神崎……千歳は何て言ってた?最後に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう…ごめんなさい…だ」

 

 

 

 

 

 

『一緒に平和を取り戻しましょう!』

 

『あーーー!!私のお菓子食べましたね!?』

 

『提督さん!大好きです』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

確かにアイツなら…自分が自分じゃなくなる前にどうにかしてと言うだろう…。

 

 

欲と怨みに駆られて…俺は…

 

 

 

 

「そか……あの世であいつに謝らなくちゃな」

 

 

 

 

「そうだな」

 

 

 

 

「…すまねえ神崎…許される事は無いだろうが…俺の命でコイツらは助けてやってくれねえか?」

 

「そんな!提督!ダメです!」

 

「私達の命で…お願いします!提督を失うのは軍にとっても痛手なはずです!」

 

 

 

 

 

 

「……構え…」

 

チャキ…と音が聞こえる。

 

 

「……遅かったな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…?」

 

 

 

 

 

「撃たないさ…」

 

 

「「え?」」

 

「だってお前達は…彼女達が守りたかった人達なんだから…」

「彼女達が命を賭してでも…守り抜きたかった人なんだ。俺はあの命令を下した時に決めたんだ。皆の命を背負うって…」

 

「だからお前達を撃たない」

 

 

 

 

「神崎…」

 

 

 

「俺はな…」

俺は…彼らの目の前に座って自分達の歩んできた道のりを話せる限りで話した。

 

 

 

元の世界での事

この世界での事

出会って別れた人達

元帥閣下との戦い

鏡の海域での事

 

 

 

信じてもらえないと分かっていても…

せめて分かろうとしてくれたら歩み寄れるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

新堂達は黙り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「だからさ…せめて…恥じぬ生き方をしてほしい。俺が言えた義理ではないが…」

 

「結局のところ林達との争いは避けられないなら俺は此処で全てを受けるつもりだし、場合によってはこちらから行く」

 

「神通達の件以外にも何か隠れてそうだし…関係のない人達が傷つくところなんて見たくない」

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前達を解放する」

「帰るなりして欲しい」

 

 

 

 

そう言って救は仮設した部屋に戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

色々…色々あり過ぎた。

 

セイレーンの登場から本当にキツかった。

 

嫌な事は少なからずあったけど…ここまで精神的にキツイことが続いた事は無かった。

 

 

 

 

 

 

「……当面の事は…」

 

鎮守府と街の再建…

 

海軍との……

 

 

皆のケア…

 

 

 

 

皆も大分参っている筈だ。

 

 

 

いくら入渠しようともメンタル面はどうにもならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

それは俺も同じ訳で…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつの間にか寝てたらしい

 

 

 

「ハーイ♡ダーリンお目覚めデス?」

 

金剛が目の前に居た。

どうやら彼女に膝枕をしてもらっていたようだ。

 

 

何だろうか…いつぶりかに良く寝れたかも知れない。

 

 

 

「ダーリン?」

 

 

 

「ん?」

 

 

 

 

 

「逃げてもいいんデスヨ?」

「2人でも…皆とでも逃げて平和を探しても良いんデス」

 

「今のダーリンは…潰れかけの…本当に火が消える前の蝋燭と同じデース」

 

 

「逃げないさ…そう決めたから」

 

 

「なら…たまには泣いてください」

 

 

 

金剛は髪を解いて俺に顔を近付ける。

長い髪は周りから見たら俺の顔を隠しているだろう。

 

…今までの事を思い出すと涙が出てきた。

 

 

頑張った筈なんだ。

だけど…その度に救えない命が出てくる。

 

分かってるんだ。

救えないものもあるって…。

 

でも…でも考えてしまうんだ。

俺にもっと力があれば…って。

 

 

 

金剛はうん、うん、と聞いてくれている。

 

今回だって同じだ。

俺は…俺…は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダーリンは凄いデス」

 

 

 

 

 

 

「私が普通の人なら逃げマス。でもあなたは逃げない。ずっとずっと…今までもこれからも頑張るんですよね。だから凄いデス…。さすが…私の愛するダーリンデース」

「でも…」

 

 

 

「折角なら…皆でその気持ちも分かち合いたいデース」

 

 

「わかって「でもあなたはずっと1人で苦しんでマス」

 

「…ッ」

 

 

「女の子には苦労かけられない…デスか?」

「言っときますケド…ダーリンとずっと居るんです!分かりマース!そして…私達も強いんデスヨ」

 

 

ぽたぽたと顔に涙が落ちてくる。

 

 

 

「私は…この世で1番あなたを愛しています。愛だけじゃなくて…あなたの苦しみも…悔しさも辛さも…幸せも…全部下さい」

 

 

「……辛い戦いになるぞ?」

 

「…覚悟してマス…皆も出来てます」

 

「…逃げ場は無いぞ?」

 

「いざとなったら世界を超えてにげまショ」

 

「……金剛?」

 

「はい?」

 

 

「その……キスしてくんない?」

 

「…喜んで」

 

 

 

涙のせいか塩っぱい…。

 

 

 

「えへへ…ダーリンから求められまシタ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は立ち上がって顔を叩きました。

 

「よし!」

 

 

 

 

 

「…西波島鎮守府再建だ!!」

 




後…2話くらいで明るい話に戻りますから!



少しでもお楽しみ頂けたら嬉しいです!

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207話 西波島鎮守府の再建と誰も知らない物語


残酷描写があります


元通り…なのか…

 

少し煤けた鎮守府の表札が不釣り合いに感じる。

 

 

 

帰ってきた…

数日とは言え…離れたのが長く感じる。

 

 

 

とりあえず間宮達にご飯を拵えてもらおう。

 

「…私達もいいの?救君」

 

「すまねえ…」

 

 

 

 

「指揮官…奴らはどうするんだ?」

 

「奴ら?」

 

そこには新堂達がぎこちなく居た。

 

 

「帰ってなかったの!?!?」

 

これは本気で言っている。

 

ええ…と皆がこちらを見る。

 

「いや!いや!俺はアレで終わりだったからさ!」

 

だが周りはそうはいかない。

自分勝手に俺は殺さなかったが…

自分の艦娘を沈められた皆はコイツらを許すかはわからない。

 

 

「…救君……」

 

「…麗ちゃん…」

 

「皆に土下座して回ったんだよ…この人達は…」

「街の復興でも何でもやるって…艤装も外して…殺すなら殺してくれって」

 

「…私達も憎いよ…何であなたはこの人達を同じ目に合わせないの?って思うよ…私たちにとって大切な時間を共にした家族なのにッ!!」

 

「でも…ここでこの人達を殺しても皆は帰ってこないから……」

 

 

 

巌や京極達も苦い顔をしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そのかわり…次は無いよ」

 

 

 

 

 

 

彼女なりの決断…

周りも艦娘もきっと爆発寸前だろう

でも…彼女達は選んだ。

 

憎しみを憎しみで返しても…

また繰り返されるだけだと彼女は言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

……

 

 

 

 

迫る追っ手。

突然の強襲は…味方のはずの人達だった。

 

 

ぼろぼろになりながらも逃げる私達。

 

 

 

 

分かる…このままじゃ…助からない。

 

 

 

 

 

 

 

『ねえ…響ちゃん…』

電が言う。

 

『わかってる…』

響は答える。

 

 

 

 

2人は頷きあい…

武蔵にアイコンタクトを取る。

 

 

 

 

 

 

そして2人は立ち止まり…振り返る。

 

 

 

『え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『麗ちゃん…!行ってなのです!!』

 

『武蔵さん…後はお願いします!』

 

押し迫る追っ手に対峙する2人

 

 

 

『だめよ!皆で行くの!!』

『武蔵ッ!!戻って!2人も!』

 

 

電は武蔵達に向けて発砲する…。

 

『危ないのですよ』

 

『……』

 

 

 

 

『お前達ッ!!!』

 

 

 

 

『カッコつけさせて下さい』

 

『そうなのです』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『麗ちゃんが生きてる限り…私達は負けてないのです』

 

『無駄死にじゃない…大きな一歩なんだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『きっと…また生まれ変わっても会えるのです』ぽろぽろ

 

『はらしょー…』

 

 

 

2人が笑う…

 

 

 

 

 

 

 

『すまないッ…』

 

『嫌よ!武蔵ッ!!命令よ!戻りなさいッ!!』

 

『聞けないッ!!!!!』

武蔵も泣きながら更にスピードを上げる。

 

 

『いやっ…いやぁぁぁぁあ!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここからは誰も知らない物語

小さくとも…気高く…

仲間の為に命を散らせた2人の物語

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ…行っちゃったのです

 

うん…

 

 

本当は…もっとあなたと一緒に居たかったよ

 

 

そうなのです

 

 

 

 

もっと…もっと

 

麗ちゃんの…ウエディング姿…見たかったな

 

 

もっとたくさんお話したかったな…

 

 

 

 

怖いなあ…

 

 

 

逃げたいなあ……

 

 

 

 

でも…

 

将来のあなたの笑顔を守るためなら…

私達は…ここで!!!

喜んであなたの為に行きましょう。

 

 

 

 

震える足を叩いて構える。

 

 

 

 

 

 

 

 

『電…改…発動!!!』

 

『響…改ニ発動…』

 

 

 

 

 

見せた事もない改発動。

 

 

 

今ここで感じる、彼女との絆の深さ。

 

それが彼女達の背中をぐんと押した。

 

 

 

 

 

 

 

『させない…ここから先は…』

 

 

 

 

 

 

 

『『絶対に通さないッッ!!!』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……

 

 

『何だよアイツら…本当に電と響かよ…』

『ええい!奴らを駆逐艦と思うなッ!!』

 

 

 

 

『当然なのです…私達は…猛武の雷と響なのですッ!!』

 

『武蔵さん達だけが強い訳じゃないッ!!』

 

 

 

 

電の放つ魚雷が艦娘に当たる。

『うわぁぁぁぁッ!!』

 

 

 

 

 

激しい砲雷撃戦。

電が被弾する。

 

 

横をすり抜けようとする艦娘。

 

『うっ…この…行かせないのです!!!』

 

通り過ぎようとする艦娘にしがみつく。

 

揉み合いになる。

 

 

 

『離せッ!!』

ズドン…と腹を撃たれた。

 

 

『あ……』

 

 

 

 

 

 

 

『電!?』

 

 

『しつこい………がっ!?!?』

 

響が電にトドメを刺そうとする艦娘を吹き飛ばす。

 

 

 

『響…ちゃん』

 

『もう喋るな…!!』

 

 

 

 

『麗ちゃん……逃げ…ら…れた…かなあ』

 

 

 

 

 

 

 

 

『…私ね?響…ちゃんが…残ってくれ……て嬉しか……ったんだよ』

 

 

 

 

 

『喋るな…電……私達は姉妹だろう?当たり前じゃないか…』

『最後まで…最期まで一緒だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………』

電はニコリと笑いー……。

 

 

 

 

 

『…ッ!!!』

 

 

 

響は電の目を閉じさせ…

 

 

水中へと逝く彼女を見送る。

 

 

『電…先に休んでて…』

『借りるよ……艤装』

 

 

響は電の艤装を背負う。

 

 

 

『……旗艦は……アイツか』

 

響は全速力で駆け抜ける。

 

 

 

砲撃が飛んでくる。

 

 

 

 

 

痛い   知らん

 

 

 

苦しい   知らない

 

 

 

 

 

辛い   辛い

 

 

 

 

『うおおおおおお!!!』

 

例え腕が飛ぼうと何だろうと

魚雷を飛ばしながら、砲撃しながら走った。

 

 

 

 

 

 

 

ズドン…

 

ガクンと膝から崩れる。

『足…』

 

 

ズドン…

右胸……

 

 

 

わかる…

もうだめだ…

 

 

ここが…私の……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『まだ…ッ…終われるかあぁぁぁぁあああッ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

『これでも…くらええええええええッ!!』

 

 

 

 

 

 

最期の力を振り絞って

電から受け取った魚雷を全力で投げた。

 

 

『!?!?』

相手は驚く。魚雷が自分めがけて投げられたから!

 

 

 

 

 

ズドォォン!!

 

魚雷が直撃した艦娘はそのまま後ろに倒れた。

 

 

 

 

『…ざま…み……ろ』

 

 

 

 

 

 

 

響は力尽きて海へと落ちる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…後は…頼んだよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沈み行く響を電の手が掴む

 

お疲れ様、響ちゃん。

 

 

電もはらしょー…

 

 

 

私達…頑張ったよね?勝ったよね?

 

うん…勝ちなのです。

 

 

 

 

 

 

 

ほら…光が見えるのです。

 

 

アレは……

 

 

あぁ…

 

 

 

麗ちゃん…

 

 

その姿は……

 

見られて嬉しいよ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寒いね…

 

暗いな…

 

 

でも…2人なら…怖くないよ

 

 

 

 

きっとまた生まれ変わって…会いに行くから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰も知ることは無い…

敵からも恐れられた駆逐艦

 

 

彼女達は決して相手を沈めることなく

6割以上の追手を大破に追い込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ううっ…うあぁ……大事な家族だったのにッ!!ごめんの一言で…ズルいよッ!!ズルすぎるよおおっ!!!」

「電!!響ぃ…」

 

 

「…麗ちゃん…ごめん」

 

「うううッ…わ、私にも…力が有れば…」

 

「…俺にもっと…」

 

 

「……私達にもっと力が有れば…よかったのかなあ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「泣かせて…今は……お願いッ…」

 

 

抱き締めることしか出来なかった。

それでいいと彼女は言った。

 

とにかく抱きしめてと彼女は言った。

 

 

麗はひたすらに泣いた。

ここ数日も気を張っていた事も有り、堰を切ったようにずっと泣き続けた。

 

 

 

「ありがどお…2人やみんなのだめに…手をあわせてくれて…ぐすっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だって…彼女達は麗ちゃんを守ってくれたんだよ」

 

「うん」

 

 

 

どれだけ目を閉じようと目の奥に浮かぶのは彼女達の笑顔。

彼女達が命を終えた時…

「あ…」って分かるくらいに…大好きだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイツらは許さない…でも!これ以上辛い思いをする人を増やしちゃいけないッ!!2人に顔向けできるように…私…」

 

「私も…戦う」

涙目からは止めどなく涙が溢れて止まらない。

だが…彼女は前を向く。

 

 

 

 

 

「俺もキミをずっと支えるから」

 

「私も…ずっとあなたを支える」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私達は…あなた達を許せない…でも、電や響があなた達を攻撃したから私は生きていられる」

 

 

「…だから…もう…こんなことはしないで…守るべき人を…戦う相手を見誤らないで」

 

 

 

「…はい!本当にすみません…でした!」

頭を下げる新堂達。

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ…」

麗は1人の艦娘に話しかけた。

 

「はい!!」

その艦娘は愛宕。

顔からきっと腹にかけてだろう。

痛々しい傷が残っていた。

 

 

 

 

 

「電も…響も強かったでしょ?」

 

 

 

「…はい…今まで戦った中で…1番…」

「とても…駆逐艦とは思えないくらいに……」

 

 

 

「でしょ?…私の自慢の皆んなだから」

「施設ができたら…入渠して治してね」

「そして…街の復興とか……たくさん手伝ってね」

 

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は…ずっとそばに居て…」

 

「一緒に寝る?」

 

「うん…」

 

「麗ちゃんは強いね」

 

「そんな事ないよ…」

 

ぎゅっと彼女を抱きしめる。

「ん…落ち着く…」

忘れる事なんて出来ないだろう…

でも…あの子達の生きた証を…覚悟を私は絶対に忘れない。

ずっと背負って歩んで行く。

この人と…仲間と…。

 

 

見てて2人とも…

生まれ変わっても…私の所に来てね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『……よかった』

 

『私達の勝ちだな』

 

 

 

 

『お願いするのです…西波島の提督さん』

 





閲覧ありがとうございます。
やはりこういう描写は…心が痛い…

彼女達に少しでもぐっときてもらえたら幸いです。

感想等お待ちしていますー!


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208話 新しい一歩を

あれから新堂達は艤装を解除して

街へ土下座まわりをして…街の復興の手伝いとその他諸々を約束して…頑張っているらしい。

 

 

 

麗ちゃん達も同じくウチにいる事になった。

 

京極達と元帥さんは神無島に戻って行った。

麗のそばに居てやってくれと言って。

 

 

 

 

 

再建された…3代目の鎮守府もそれなりに大きく

増えたメンバーや麗達にも問題なく部屋割りができた。

 

 

 

私室も少し広くなり、家具も新調された。

 

もちろん…鍵は既に変えた。

おのれ…桜大鳳めッ…。

 

部屋に帰ったら

「お帰りなさい♪指揮官様」ですわよ?!

ビビったわ…。

 

 

 

隠れた奴らも含めて外へ放り出して椅子に座る。

 

 

やっぱり我が家はいいなあ…と心から思う。

神無島組には申し訳ないけど…いや本当に

 

 

 

んでんで

執務室も少し変わった。

 

 

 

大淀が執務担当長…そして秘書艦。

 

桜ベルファストがメイド長、桜シリアスがメイド…あと、たまに艦娘達…

 

 

桜明石と桜不知火は工廠、新設された売店へと配属。

 

 

 

俺たちは猛武組と共同や交代で小々波市の街の警護と、復興支援…新堂達の監視と神無島への物資運搬等もこなしている。

 

 

 

 

 

 

個性豊かすぎる面々がどうなる事か…。

 

 

 

 

 

 

 

 

なんて心配をしたりしなかったりしながらぼーーっとしながら伊良胡の新作最中を食べる。

これがなかなか美味しくて…。

 

「どうですか?」

ニコニコと聞いてくる伊良胡

今作のいちご餅最中は相当の自信作らしい。

 

最中生地は少し厚めであるが外はさっくり…中はもっちりとしており

 

餡と苺の相性も良い…

 

つまり…?

 

 

 

 

「うーん…うまい…」

 

「どうぞ、お茶です」

 

「うーーーん…合う…」

 

 

 

「喜んでもらえて何よりです」

 

 

横にちょこんと座る伊良胡。

 

「そーいや…初めてかな?2人きりって」

 

「そうですね。提督さんは人気者ですから…」

 

「……」

 

沈黙が流れる。

 

 

 

 

 

「あの…提督さん?」

 

伊良胡の方から話しかけてきた。沈黙にしびれを切らしたか?

 

 

 

「…私はできることはそんなにありません」

 

「食堂や入渠のお手伝いくらいで…」

「…間宮さんや鳳翔さん達に対抗してみて最中をつくったり…そこから始まったんですけどね」

 

 

 

そういえば伊良胡の最中は突然メニューに増えたな…。

 

 

「…ん?対抗?」

 

 

「提督さんは甘いものが好きだと聞いたので…食べにきてくれたら嬉しいなあ…と」

「私もお会いできる時間が少ないので…」

 

 

「………」

 

そうだった。

間宮や鳳翔達以上に伊良胡と接する時間は少なかった。

盲点すぎた…申し訳ない。

 

「ごめん」

 

「い、いえ!責めてる訳じゃないんですよ?!」

「いや…うーん…少し拗ねて…ます」

 

 

少し考え込むように言う彼女。

 

 

 

 

 

 

「私だって…あなたの事が好きなんですよ?」

 

 

ちゅっと唇に触れる伊良胡。

 

 

「…次はたくさん時間下さいね?」

 

はい、と差し出された最中。

「麗さんの所に持って行ってあげて下さい」

 

「あの2人もよく食べてたものなんで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

西波島の端の方

そこに墓がある。

 

 

麗はそこに居た。

 

 

 

目を閉じて手を合わせている。

 

「…?救君?」

 

「ごめん…邪魔した?」

 

「ううん、鎮守府の再建と…色々な報告」

「救君は?」

 

「コレを…」

 

彼が差し出したのは最中。

あの2人が好きで私とよく食べた…

うるっとしてしまう。

 

「伊良胡さんから?ありがとう…お礼いわなくっちゃね」

 

 

「ここで食べていかない?」

 

「え…」

 

 

いくつかの最中をお墓に供えて手を合わしてから

すとん…と近くに腰を下ろす。

私も同じようにする。

 

もぐもぐと最中を食べる。

 

 

「美味しい」

 

「うん」

 

 

 

 

 

 

彼の横顔は…儚げな顔だった。

でも…

しっかりとした目だった。

 

こっちを見てニコリと笑いかけてくれる。

 

 

私もニコリと笑い返す。

 

 

 

本当に彼も強いなと思う。

 

 

 

 

彼が居なければ…私は崩れ落ちて、起き上がれないだろう。

それほどに彼の存在は大きい。

心から愛している…うん。愛している。

 

 

大好きだよ…救君。

 

 

2人のおかげで…私は今もここに居るよ…

見ててね…

私は頑張るから!!

 

 

大好きだよ!電!響!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーーー!!!ズルイッ!!」

 

「ん?」

 

「むっ!!麗よ!2人だけでズルくないか!?」

 

「指揮官様ぁ…私達をお忘れですか?」

 

 

武蔵や桜赤城や皆が居た。

 

わいわいと皆がやってくる。

 

 

 

皆の手には…

酒やら飲み物やらお弁当やら。

 

 

「間宮さん達が作ってくれたんですよー!」

 

 

 

 

 

 

 

しんみりとした雰囲気は…

とある2人を囲んでの昼食となった。

 

 

 

 

 

お供えしながら皆で楽しく食べる。

 

こんな日がまた来てくれて嬉しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ありがとう…おいしいよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう風に乗って聞こえて気がした。

 

「!!今のは」

 

私は立ち上がって周りを見回す。

 

 

 

 

でも居ない。

 

 

 

 

 

「どうした?麗…」

皆が心配そうな顔でこちらを見てくる。

 

 

「今…2人の声が…」

 

 

 

「…楽しそうで見に来たのかもよ?」

 

と、救君が言う。

 

 

 

 

うん

きっと居るんだね。

 

 

 

 

見てて?

2人が帰ってきた時に…またお腹いっぱいご馳走できるくらい平和な所にして見せるから!!

 

 

 

 

 

優しく風が私の頬を撫でた気がした。

 

 




湿っぽいお話…?

誰もが少しずつ前に向かうお話。


人は忘れるから生きていられる
苦しいことや悲しいことを全部覚えてたんじゃ
辛くて仕方ない

というセリフがとあるゲームのバッドエンドの中にありまして…。
主人公を慰めるセリフなんですが物凄く突き刺さったんですよね。


聞いたことある人居ますかね?

全年齢対象のゲームなんですけど
めちゃくちゃ黒いんですよ。一部のエンディングが…




でも…覚えてなきゃいかないものもあるわけで…

覚えてるからこそ生きて行けるってのもあるわけで









少しでもお楽しみ頂けたら幸いです。




感想などお待ちしています。
お気軽にお願いします!




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209話 川内と1日夫婦 ①

朝もまだ来ていない時間のキッチン。

 

 

そこに彼女の姿はあった。

 

 

 

「痛っ…」

 

川内が人差し指を咥える。

彼女の手にはいくつもの絆創膏が貼られてあった。

 

はぁ…とため息を吐きながら、それでも自分に頑張れと言い聞かせてから野菜を切る。

 

 

 

 

 

 

「えと…確か…猫の手だったよね」

 

 

 

「………綺麗にはいかないなあ…」

 

 

 

 

「ひゃっ!?焦げちゃう!どしよ!どうしよ!!」

 

 

「あちゃあ……少し焦げた」

 

 

 

 

「せめて目玉焼きくら……うそお!!」

 

「…卵焼きに……うう」

 

 

『良いですか?川内さん、料理はとにかく基本に忠実に…ですよ?』

 

『うう…苦手』

 

『あとは…とっておきの調味料があります』

 

 

『え?なになに?』

 

 

『愛情です♡』

 

『あいじょう…』

 

『本当ですよ?食べてくれる人に…愛情を加えるか加えないかで全然かわりますよ?』

 

 

『ほんとー?』

 

 

 

 

 

 

 

妹達は…凄い表情で……まぁまぁ…って言っていた料理…。

正直自信はない。

 

でも…あの人には美味しいって言って欲しい。

 

頑張るあの人の力になって欲しいと思う。

 

 

 

 

 

 

 

完成した料理は…とてもじゃないけど自分でも良いとは言えなかった。

 

野菜の切り方はバラバラで豆腐もボロボロな味噌汁。

 

目玉焼きを失敗して…スクランブルエッグになりかけた卵焼き

 

焼けた…焦げた魚。

 

 

炊飯器は完璧だ。

ご飯だけは綺麗…。

 

 

 

 

 

うう…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてさて…

 

 

「夜だよッ!!!」

 

と、いつもなら来るはずの川内が珍しく来ない。

 

とは言え、明日からは川内とお出掛けなので…

奴は下手すると駆逐艦勢よりも体力があるから…。

 

 

寝よう…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝ッ!!

 

自然と目が覚める。

…隣を見ても誰も居ない。

 

 

ガチャとドアが開く。

 

 

「おはよう提督…朝だよ」

 

何だかいつもと雰囲気が違う大人びた川内にドキッとする。

 

 

 

「…マジで来なかったのか…夜」

 

「え?あ…うん」

 

意外すぎるッ!

 

 

「ご飯できてるよ」

なんて川内が言うからとりあえず支度をする。

 

 

 

 

ごはん、具材の大きさがバラバラな味噌汁

少し焦げた魚

恐らく目玉焼きを作ろう足して崩したのであろう卵焼き。

 

チラリと川内の方を見ると、少し涙目の川内が居た。

 

 

「ごめん…苦手で…あはは…魚なんか焦げちゃって…サ」

「ダメだな!下げるよ!間宮さんのとこに「頂きます」

 

「え…」

川内を遮り、ご飯を食べる。

 

 

 

 

 

「……美味しいよ」

 

 

「嘘だよ」

 

「本当だよ」

 

 

「……ごめんなさい……わ、わたしさ!料理下手でさ…似合わないよね」

…ぽろぽろと少しの涙を流す川内。

 

 

 

 

 

 

涙を拭う手には……ベタだが、絆創膏が見えた。

 

 

 

 

あぁ…だからか…。

 

「…あはは…少しでも提督を元気付けられないかな?と思ったんだけど……あはは」

 

 

 

 

「…幸せだぞ?」

 

「……」

 

「…俺のために苦手な料理を頑張ってくれたんだろ?」

 

「……」

 

「言わない方が良いかもしれないけど…言われせてくれ」

「…お前は…俺と居る時間を我慢してでも料理の練習をしたんだろ?」

 

「慣れない包丁の扱い…下処理に…料理」

「一生懸命頑張ってくれたんだろう?」

 

 

 

「……うん」

そうだ、私はここ数日の夜に、鳳翔さんに教えてもらいながら料理を頑張った。

皆は…神通や那珂も料理はできる。

私は苦手だ…。

でも、私も提督を元気付けたかった。

 

だから頑張って見たけど…不恰好な料理しか出来なかった。

鳳翔さんは頑張りましたよ!と言ってくれたけど…理想には程遠すぎた。

 

 

悔しかった。

いつも夜戦に付き合ってくれて…

こんなに大好きな人に何か出来ないかなと考えても…

私には取り柄はない。

 

 

 

 

でもこの人は

美味しいと言いながら食べてくれる。

 

 

 

 

「一生懸命作ってくれたんだなあ…。本当に嬉しいよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の手にすら気づく。

 

何なのさ…本当に

 

 

 

「ご馳走様でした!」

 

「…お粗末様でした……」

 

 

 

よしよしと頭を撫でられる。

そしてそのまま抱き締められた。

「ひゃっ!?」

 

「川内が夜来なくてさ…意外だったんだ。絶対来るって思ってたから…」

 

「だから少し…寂しかったり…?」

と、イタズラっぽく聞いてみる。

 

 

「そだなあ…寂しかったかな」

「だから少しだけこうさせて…」

 

「わ、私も…料理に夢中だったからアレだけど…今思うと寂しいな…。私が夜に……うん…好きなだけ抱き締めて…?」

 

 

 

 

朝のひと時は少しずつ…過ぎて行った。





サバサバしてるようで繊細で
割とデレデレな…だといいなあ!!



少しでも いいっすわー!
も思って頂けたら幸いです!


感想などお待ちしています!(๑╹ω╹๑ )


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210話 川内と1日夫婦 ②

時間は有限であり、殊更…好きな時間というのは彗星の如く過ぎてゆくものである。

 

「…出掛ける?」

 

「ずっとこうしていたいけど…勿体ないよね!」

 

 

 

 

門前に集まる。

私服姿の川内は珍しい気もする。

といってもいつもと雰囲気はそんなに変わらない。

 

 

「「「「いってらっしゃーい!」」」」

 

 

 

現状が現状なので行先は小々波市。

復興中の街巡りである。

 

 

「…夫婦になったんだよね?指輪も貰ってるし…」

 

「うん、そーだよ?」

 

「あのね?…その…手繋いでも良い?」

 

「もちろん!」

 

ぎゅっと恋人繋ぎと言うものをやってみる。

そんで…腕を組んで…。

 

ちらっと彼を見上げてみる。

 

 

この流れは…以前、聖書(男をオトス100の方法〜これで無理なら諦めろ〜)で身に付けたスキルである。

 

上目遣いの威力を喰らうが良いッ!!

 

 

 

「ん?どした?」

「なんか…小動物みたいで可愛いな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダメだ…

こっちが恥ずかしかった…。

 

 

 

 

 

 

 

提督の他の子のデートは大体が買い物とかスイーツとか。

まあ…今は中々外に出られないけど…

私も髪飾りとか欲しいって言ったら買ってくれるかなあ?

 

提督が選んでくれたりするかなあ?

 

 

 

 

 

 

「あー!神崎君!ちょっといいかい?!」

 

「!?…え、ええ!」

 

「実は……ごにょごにょ」

 

「えぇ…本当ですか…ごにょごにょ」

 

 

 

私を置き去りにしておじさんとお喋りするなんて…。

 

 

 

 

ん?

何か受け取った?

 

 

「何貰ったのー?」

 

「ん?何でもないぞ?」

あからさまに焦ってますねぇ…?

おや?小箱だったねえ?

 

私といる時に他の女の子へのプレゼントなんて…感心しませんねえ!

 

 

「それっ!!」

 

隙を見てその小箱を奪い取る。

 

 

「あっ!やめろ!川内ッ!!」

 

 

「ダメだよッ!!私とデート中に他の子へのプレゼントを買っちゃ…」

 

「…う…それはだな…」

 

「そんな酷い人は許さないよ!」

と、言いながら小箱を開ける。

いいじゃんね?これくらい…

 

 

 

「やめろって川内…それは」

 

 

 

 

 

 

 

むすっとした川内が箱を開けるー…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

川内へ

と書かれたメッセージカードと髪飾りだった。

 

髪飾りはきっと崩落に巻き込まれたせいか傷が入っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「あ……え?」

 

 

 

 

 

「……傷ものになっちゃったからさ……持って帰ろうと思ったんだよ…」

 

 

 

 

 

 

 

「な、何で…」

 

 

 

 

「…初挑戦だったんだよ…そういう銀細工って奴は…」

 

 

「え」

 

 

「……な、なんで?」

 

 

「前にいいなぁとか言ってたからさ…何か…料理頑張るお前を見てたら……俺も何か作ろうかなって思ってさ」

「でも…ごめん。傷入ったからまた作るよ」

 

 

 

 

 

 

「次はもっと上手に…「嫌だ」

 

 

川内がその箱をぎゅっと胸の前で握りしめている。

 

「わ、私はこれが良い…これが良いの」

 

「何でだよ…失敗し「そんなの関係ないッ」

 

「あなたが一生懸命作ってくれたものは…コレなんだよ…」

 

「ごめんなさい…そうとは知らずに…ヤキモチ妬いてこんなことして…」

 

「川内…」

 

 

 

「あなたが何と言おうと私はこれがいいの」

 

 

「私の料理と同じだよッ」

「提督の…愛情も気持ちもたっぷり篭ったこの髪飾りがいいの」

 

 

 

「…わかった。こう言う形になってごめんな…」

 

「ううん…」

川内は髪飾りをつけてニコリと笑う。

 

「どう?」

 

 

「うん、似合ってる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰りの船で

「……提督?」

 

 

「ん?」

 

 

 

 

「ありがとう…本当に…幸せ」

 

「本当?良かった」

 

 

 

 

 

 

「あのね…えと」

 

 

「大好き……いや…愛してるよ!!」

 

 

「夜戦より?」

 

「うん、夜戦よりあなたを愛してるよ!」

 

飛びかかって抱き着く。

「……して?」

 

 

「…ん」

 

 

 

 

 

「……キス…好きかも…」

 

「やめい、照れる」

 

 

「え!?恥ずかしいの!?」

「うわー!提督顔赤いよー!」

 

「お、お前もだろー!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夜戦!」

 

「やるか?夜戦」

 

 

夜はひたすら夜戦(ゲーム)した。

 

眠さが……Zzz

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜警中に敵と遭遇した川内。

 

マフラーで鼻まで隠れた彼女は宛ら忍者のよう。

 

ズドンズドンとこちらへと砲撃が繰り出される。

ヒラリと避ける。

 

 

「チィ!」

照明弾…を敵が放つ。

 

 

 

「姉さん!!」

 

 

「大丈夫!!」

川内は光から闇へと…溶け込む。

 

 

 

「ナ!?」

闇からぬるりと現れる川内

 

「ほいさ!!」

敵の腹を撃ち抜く。

 

 

「ギイイ!!」

ズドン!!

 

 

敵の砲撃をいとも容易く躱しながら攻撃をする。

 

「それっ!」

投げた魚雷は見事に敵に命中する。

 

「姉さん…魚雷は投げるものでは……」

 

 

「いいのいいのー!勝ったんだしー!」

 

「もう…姉さんたら…」

 

 

 

ニコリと笑う川内の髪には…きらりと光る髪飾りが…

 

 

「姉さん?自慢ですか?髪飾り」

 

「良いなー…」

 

 

「神通も妙高も…ヤキモチはダメだよー!」

「んー?那智も欲しそうだなーー?」

 

 

「う、うるさい!」

 

「那智も神通も妙高も提督大好きだもんねー!!」

 

 

 

ケラケラと笑い回る集団が夜の海にいたとか…

 

 

 




川内…
お前ってやつは……




さて
ニンジャ…
シンカイスレイヤーのセン=ダイサンではありませんけれども
こーいう川内もありかなあと…




川内可愛いやん!ってなって貰えたなら幸いです!




感想などお待ちしてますー!
お気軽にお願いしますー!!


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211話 再会の… ①

人には踏み込んではならない領分がある。

 

土足でそこに踏み入る場合は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前には来客が居る。

 

男女の大人だ。

 

 

2人は言う。

 

 

「やっと会えたね…救」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

松田の親父からお前に会いたいと言う人がいると言う話は聞いていた。

 

誰だろう?そんな人居るのか?

またテロか?と思いながら仕事を進める。

 

 

 

 

シリアスがニコニコと俺に言う。

 

「誇らしきご主人様…ご両親がお見えになられております」

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

 

 

 

桜大鳳やベルファスト…麗ちゃんに迅鯨も同じ反応をした。

 

 

 

桜オイゲン、桜ビスマルクは

「へぇ…良かったじゃない」

と言った歓迎ムードな感じ。

 

 

 

 

 

 

「…いや、俺両親居ないんだけど……死んでて」

 

 

シリアスを含めてニコニコムードの3人は一気に固まった。

 

 

 

両親を名乗る者なので既に通してしまったらしい。

事情を知らないシリアスは涙目で謝ってきた。

 

 

 

「も、申し訳ありません…誇らしきご主人様。ご両親との事で…ご主人様のお姿を見て頂きたく…お通ししてしまいました…」

 

 

「んにゃ…大丈夫だよ、ありがとうなシリアス」

 

 

「…救君…大丈夫?」

麗ちゃんや迅鯨…秋姉さんは言う。

 

 

「もしかしたら…転生してきたのかもよ?秋姉さんみたいに!」

救がニヤリと期待混じりに言う。

 

そして、シリアスの頭をポンポンと叩いてから応接室へと行く。

 

 

 

 

 

自分も秋姉さんも…転生して来た類の人物だ。

やっと…しっかりと会えるんだ…。

 

少し嬉しくて…早る気持ちを抑えながらドアを開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ…救か…」

男の方が言う。

 

「救…なのね?」

女の方が言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

「えと…お父さん…お母さん……ですか?」

 

「そうだよ」

 

 

 

嬉しかった。

前に狭間の世界であった時とは姿は違うけど…

嬉しかった。

 

 

 

ベルファストか紅茶を出してくれて飲みながら話をする。

 

 

 

「…会えないと思ってた」

 

「ああ…」

 

 

「…よく俺ってわかったね」

 

「家族だからね」

 

 

 

 

 

 

 

「いつ…こっちに来たの?」

 

 

 

「…ん……最近だな」

 

「そうなの…探したわ…やっと会えた」

「立派になって…」

 

よしよし…と母親の方に頭を撫でられる…。

何とも言えない気持ちになる。

 

 

 

「ここを案内してくれないか?お前が働いてるところを見たい」

 

 

「わかった!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「救君…どうだった?」

迅鯨と麗ちゃん達が聞いてくる。

 

 

「本物みたい!最近こっちに来たらしいよ!ここを案内してほしいらしいから…案内するよ!」

 

「そう…」

 

 

 

 

 

 

 

…私、迅鯨は以前に彼の両親の魂を呼んで利用した。

 

彼を…戦いの世界から遠くに行かせたかったから…。

 

そこに負い目を感じてるし、申し訳ないとも思う…。

 

 

 

 

でも…会いに来てくれたなら…救君にとっても喜ばしい事よね。

 

 

 

 

 

彼は嬉しそうに2人を案内していた。

 

私達にも大切な仲間で家族で…嫁だとも話してくれた。

 

 

ニコニコと2人は話を聞いていた。

 

 

 

「ここが…俺の部屋で……」

 

「ここが執務室で…」

 

「ここが…食堂!なんか食べてく?」

 

 

 

 

「にしても…救…女の子に囲まれて幸せだろ?」

 

「幸せだよ…皆本当にいい子だから」

 

「…そうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで救…私達と一緒に暮らす気はない?」

 

 

 

母親が俺にそう言った。

 

「え…俺には皆が居るから……」

と、詰まる救。

 

 

「俺達もこっちに来て浅いから色々と不安なんだよ」

と、父親が言う。

 

 

「…うーーん…でもなあ……うーん」

 

「救が居てくれると安心なんだけどなあ…」

 

「仕事もまだ決まってないし…」

 

 

 

「あー…そうだよねえ…。仕送りとかじゃダメかなあ?」

 

 

「…仕送り……いいのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督…せっかくなんで…ご両親と暮らした方が…」

皆は言う。

 

「…でも…お前達……」

 

と、救は言う。

 

「…今まで出来なかった事…甘えたりとか…親孝行とかできるチャンスですよ」

「寂しいですけど…ここで会えますから」

 

と言う。

 

 

 

 

 

 

「………皆…」

 

 

 

 

「好かれてるんだな…救は…」

 

「そうね…うん。救がさっき言ってくれたように…仕送りしてくれるのでも…いいのよ?皆さん…離れるのが寂しそうだし…」

 

 

「そ、そう?…なら…うん。俺も皆から離れるのは寂しいから…仕送りにするね!会いに行く時に渡すよ」

 

 

「ごめんね…」

 

「ううん…いくらくらい送ればいいかなあ…」

 

 

「そうねえ…」

「お前の給金はいくらなんだ?」

 

「いつもなら…〜〜くらいかなあ」

と、額を言う救。

 

 

 

「貰ってるなあ」

 

「なら…**万くらいでどう?」

 

 

 

「う…。厳しいけど…2人の為なら頑張るよ!」

 

「ありがとうね救」

 

 

 

確かにその額は苦しいと思う。

でも…それでも力になりたくてOKを出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前達は……誰ですか…」

 

そこには桜赤城と桜大鳳が凄い剣幕で立っていた。

 






少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。


感想などお待ちしております!


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212話 再会… ②

「お前達は…誰ですか?」

 

そこに居たのは…憤慨する桜赤城と桜大鳳…。

 

「こら!お前達…指揮官のご両親だぞ!」

と、桜三笠が2人を叱る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……偽物ですわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聞きたくない言葉が聞こえて来た。

 

 

 

「……迅鯨さん…あなたなら分かるでしょう?」

 

「え……」

 

「お二人の魂に会ったあなたなら…」

 

 

 

 

「あ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…2人とも…彼をお前なんて呼んでない…それに!お母さんは…救ちゃんって呼んでた…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母親を名乗る方がぎくっとする。

 

 

 

 

 

 

 

「あなた……指揮官様の名前の漢字書けますか?」

「誕生日は?」

 

「何故あなた達は…彼の前から姿を消したのですか?」

 

 

 

 

「…ま、まもるは……守衛の…守……。だってそう名付けたから…」

 

「誕生日は…記憶が…ごめんなさい…曖昧で…」

 

「…色々事情があったのよ…」

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()

桜赤城が言う。

 

 

「そ、そうよ!あなたを危険な目に合わせる訳には行かなくて…」

 

 

 

迅鯨が俯いて言う。

 

()2()()()()()()()()()()()()()()

 

「あと…誕生日はクリスマス…雪の降る日に生まれたそうです」

 

「救君の字は救済の救です…」

 

 

「そう!神にちなんで……「いえ…」

 

「たすく…と読ませようとしたそうです…。でも…誰かを守れる存在でいて欲しいから"まもる"と読ませたそうです。彼に最初に救われたのはご両親だからその字を使いたかったそうです」

 

 

 

「………」

ギリッと2人はしている。

 

 

 

「……」

救は黙っている。

 

 

 

 

 

 

 

「…最低な嘘で…指揮官様を傷つけるなッ!!この羽虫共ッ」

 

 

桜赤城がブチギレた。

 

「…本当にご両親なら……3人で暮らして貰うのも良いと思いました。しかし…違和感を感じて…」

 

「指揮官様を見送ったお2人が…お金を…なんて言うはずがないッ!別れて寂しかったはずの…お2人が…名前の呼び方も全て…忘れるはずが無いッ!!!」

 

桜大鳳が続く。

 

「それに…戦争のない世界から来たなら…軍属することに何かしら言うはずだ!」

 

 

 

 

 

 

「良いだろうがッ!!どーせたんまり金持ってんだろ!?少しくらいいいじゃねえか!!親ってことで親孝行代もらって悪いのかよ!お前だって喜んで馬鹿みたいに信じてただろうが!?」

 

「嘘でも良い思いできたんだからよお!!」

 

 

 

 

 

 

「…この……」

金剛が睨みつける。

 

 

 

「……誇らしきご主人様を…侮辱するなッ!!」

シリアスが叫ぶ。

 

 

 

「…ご主人様が… どれだけ辛い思いをして来たか…知りもしないくせに…」

ベルファストが見たこともない表情で言う。

 

 

 

「…アンタ達…覚悟は出来てるんでしょうね……」

 

 

 

「脅しか!?」

 

「おー!?やって見ろや!民間人には手出しできねえんだろ?艦娘ってのはよー!!」

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

パァン!!

 

ドカッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

迅鯨が父親と名乗る方を殴り

麗が母親を名乗る方を思いっきりビンタした。

 

 

 

 

「な…な…」

ワナワナと震える2人に彼女達は言う。

 

 

 

 

 

「私の大切な…この世に1人しかいない…掛け替えのない人をこれ以上侮辱しないでッ!!」.

 

「お前達が最低だと言うことは十分わかった!!これ以上は…許せない!どうにかなりそうなの……」

 

 

全員が麗に気圧される。

今にも殺しかねない程の殺気を放ちながら言う。

 

 

「きっと嬉しかったはず…。会いたくても会えない人に会えたのは…。

でも…それを利用して…救君の気持ちを踏み躙るようなことをしに来た貴様らが許せないッー!」

 

「…お前…民間「これ以上喋らないで!!!」

 

 

「本気であなた達を消したくなる…」

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…林のとこから来たんでしょ」

救が言う。

 

 

 

 

「……ならどうした?殺すか?」

 

 

 

 

「うんにゃ?」

「帰って良いよ」

 

 

 

「「「「「「は?」」」」」」

 

全員が驚く。

 

 

 

「て、提督…?」

「救君?」

 

 

 

「え?だって機密なものもないし…そもそも親じゃないって何となく感じてたから…」

 

 

「えぇ…」

 

「いや〜…うん…でもめっちゃ腹立つから早く帰った方が良い」

 

「テメェらは…踏み込んじゃいけないとこに…土足で踏み入ったんだ」

 

 

 

 

 

「……ひっ」

 

「……わ、わかったわ!ごごごめんなさい」ガクガク

 

 

 

「あの林ってのも…金髪の若いくせによく考えついたなあ…」

 

「…?違うぞ…俺達が頼まれたのは…スキンヘッドの林だぞ」

「アイツをもう一度殺す…って言ってたくらいアンタを恨んでたぞ」

 

 

2人は怯えながら帰る。

まあ…特に問題はないだろう…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

「……あなた…」

 

「……ん?鳳翔か…どした?」

 

「落ち込んでないか心配で…」

 

 

 

 

「んー…親については全然ショックじゃないけど……」

 

 

つまるところ…林は2人いた。

実際にクーデターをやったのは林Bとして

林Aは…

 

もう一度俺を殺す……

転生者として知っている

両親が居ないことも知っている…となると……

 

 

奴は…俺がぶん殴った上司…の可能性がある。

 

 

そうなると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

物凄くやりやすい…。

全部まとめてブチ返してやる…ッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督ッ!!!!」

ドアを開けて血相を変えた艦娘達が入ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうした?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま…ママよッ!!甘えてもいいのよ!」

 

「待て!私の方がママだ!!」

 

「否…妾の方が…いろんな意味で包容力が有り…」

 

 

…雷…武蔵……桜信濃……。

 

 

「落ち込んでるのを慰めるのも…ママの役割よ!」

 

 

 

「いや…あの…俺は全然…」

 

 

「強がらないで…」ぎゅっ…

「頼って欲しいの…弱ってる時は…」

 

 

「むぐ…むぐぐっ!」

ちゃうねん!弱ってないねん

今…お前達の柔らかな…体で窒息しかけてんねん…。

 

 

 

「暴れないで…落ち着いて…落ち着いて……」

 

ちゃうんや…落ちそうなんや…

 

 

あ…

 

 

 

 

 

父さん母さんが見える…

 

 

 

 

 

 

 

 

がくん

 

 

 

 

 

 

「あら…よっぽど嬉しかったのか!寝てしまったぞ」

 

 

 

 

「あー…あなたぁ!?!?」

鳳翔が悲鳴を上げた。

 

 

 

ある日の来客の話だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢を見た…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢に見た…夢を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

父さんが居て…母さんが居て……子供の姿の俺が居て……

 

テーブルを囲んでご飯を食べる。

 

 

「ほら!今日は救ちゃんの好きなホッケの塩焼きよー」

 

「おー!良かったな!救!学校はどうだった?」

 

 

 

「学校はねぇ…麗ちゃんて子が友達になったよ」

 

「女の子かー!!いいじゃねえか」

 

「あらあら…モテるのねえ」

 

 

 

 

 

 

味も感じるし…匂いも感じる…素敵な夢だ。

 

 

 

…どれだけ求めても

どれだけ足掻いても手に入れられない…

 

記憶の中をいくら探ろうと

どれだけお金を積もうと

どれだけの戦果をあげようと

 

叶うことのない夢。

 

 

 

この光景は

本当の夢でしか見られない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どした?」

父さんが聞く。

 

 

 

「…行かなくちゃ……」

いつの間にか今の姿に変わった俺が居る。

 

 

 

 

 

「そう…」

 

「気を付けて行くんだぞ」

 

「私達は…ずっとあなたのそばに居るからね…」

「こうやって…でしか会えなくてごめんね」

 

「何の思い出も作ってやれなくて…すまん…」

俯く父親に母親…。

 

 

「大丈夫さ!一生モノのプレゼントを貰ってるから」

 

 

「…え」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この命と……神崎 救…2人がくれた名前があるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母さんは泣き崩れた。

父さんも涙目だ。

 

「また…会いにくるよ」

 

 

「ご馳走様…!行ってくるよ!」

 

 

 

 

 

「「…いってらっしゃい」」

 

 

2人は赤い顔で笑顔で見送ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「目が覚めた?」

 

「…秋姉さん…」

 

「凄いね…胸で窒息ってするんだね」

 

 

「…ソウダネ……」

 

 

「良い夢見られた?」

 

 

「うん」

 

「良かった…」

「……ありがとう」

 

 

「え?」

 

「あの時…秋姉さんが父さん母さんを連れて来てくれたから…顔を見られたし話もできた」

 

 

周りには心配してくれているであろう皆が居る。

 

 

 

 

 

何も無いわけじゃない…。

ただ…少し足りなかっただけなんだ。

 

でも…それを補って余りあるくらい愛してくれる皆が居る。

 

 

 

 

 

「皆!俺はもう大丈夫!」

 

 

 

 

 

「さあ…今日も頑張ろう!!」

 

 

 

 

迅鯨には一瞬、彼が少し大人に見えた…。




お気に入りが610に!
ありがとうございます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)




夢は覚めない限り夢はなので


メンタルへの攻撃は基本戦法です。




少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。




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213話 桜オイゲンと1日夫婦 ①

孤独…

 

それは誰しも抱えるものだろう

ふとした時に感じるもの…ずっと後ろから離れないもの…

 

誰にも知られない孤独…というのもある。

 

 

 

 

 

 

私は…生き残った。

 

過酷な戦場でも

 

 

 

 

大戦の終わりまで生き残った。

 

いや…()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

数多の敵味方が沈み行く中で…私は生き残ってしまった…

 

 

 

らしい。

私のカンレキはそうなってる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幸運だとか…素晴らしいだとか皆は言っただろう。

 

 

しかし、それは私には皮肉でしかない。

 

 

 

どうせなら…プリンツ・オイゲン()は沈んでいた方が気が楽だっただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

皆の気持ちがわからない。

 

 

 

それが孤独感を強めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画面の向こうに彼が居た。

私の役目は新米の指揮官の下に着くこと。

そして…彼を勝利へと導くこと…。

 

 

 

 

なんか違和感…と彼は言った。

笑顔が何かぎこちないとか…

 

 

 

「笑顔…?…私を笑わせてみる?」

 

会話になんかならない筈なのに…彼はいつも私に話しかけてきた。

 

シャカイジン…ってのは大変らしい。

 

いつもヘトヘトになって帰ってくる彼は…それでもなお、私達に会いに来てくれた。

 

 

何だか可愛いこの人をからかいたくなった。

 

 

 

 

「好きよ…」

 

彼は…笑った。

本心からそう言われたら嬉しいなあ…ですって?

 

 

 

それからも毎日毎日話しかけてくれたわ。

 

赤城達は不貞腐れてたけどね。

 

 

 

私の何が良いのかしら?

 

 

 

 

少しずつ笑うようになったらしい。

ヒッパーやビスマルクもそう言っていた。

 

 

 

 

 

 

 

それでも彼はずっと画面の奥の私達に話し掛けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

いつしか…

私の中によく分からない感情が芽生え始めた。

 

 

 

 

 

 

「Ich liebe dich」

 

からかいの言葉の筈なのに…ドキドキする自分がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…誓いの指輪……君に」

彼はニヤニヤしながら何かを差し出して来た。

 

 

 

何の服かしら……

 

 

 

 

え?指輪と…ドレス?

 

 

 

彼が…結婚指輪をくれた。

私が…初めてらしい。

 

赤城達は絶望していた…。

 

 

 

 

 

 

その時に赤城が言ったわ。

「あなたのその感情も…愛情よ。ちゃんと言ったら?好きって」

 

 

 

いつしか私の心は溶けていたらしい。

鋼鉄の心は…温かさを知った。

 

 

 

 

しばらくして何人も指輪を貰っていたけども…最初は私だから!

 

と、指輪を見るたびに思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼が来なくなった。

 

それでも私は待ち続けられた。

…好きだから。

心の底から…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

久しぶりに彼が来た……けど、何かおかしい。

 

大切な人が亡くなったらしい。

 

…こういう時…なんて言えばいいのかしら…

でも…置いて行かれる気持ちは…何故だか痛いほど分かるわ…。

 

私は…そんな事経験した事ない筈なのに…

あの人の顔が…表情が…何故かよくわかった。

 

 

 

 

でも…私でも何かできる方があるかもしれない…。

と思ったが…

 

 

 

 

 

 

 

 

私達の声は彼には届かない––

 

画面と言うのが…これ程に邪魔だと思ったことは無かった。

 

そりゃ…

会いたいけれども…画面越しでも嬉しかったし…

それが今は恨めしい。

 

 

 

何もできない。

 

 

 

 

何でこんな時にそばに居て…何か一つでも言葉をかける事すら叶わないのか?

何故…彼が画面の向こうにいる時は思うように…メッセージが彼に届かないのか…

 

 

 

悔しくて悲しくて泣いた。

でもきっとこんな私達を彼は知らない…

いや、知ることはないだろう。

 

 

 

 

そう思いながら私達は今日も画面の向こうのあなたを待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、しばらくして…彼はずっと来なくなった。

 

 

 

 

 

待った……来なかった。

 

 

待った…来なかった。

 

 

 

 

彼が別の世界に生きていると聞いた時は辛かったけど嬉しかった。

 

 

 

 

 

桜赤城達が向こうへと行ってしまったのは…

運であるが…嫉妬した。

 

 

 

 

 

 

会えないのかとずっと思った。

もしかしたら…明日は…と思いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな彼が…目の前に居た。

 

よく見た顔と敵と見たこともない指揮官の味方。

 

 

セイレーンを相手に……ムカつくけど桜赤城達を引き連れて…彼は必死で戦っていた。

一目見て分かった。

彼が…指揮官なんだって。

 

 

 

 

改めて思った。私のこの気持ちは…"愛してる"なんだって。

そして、やっと…面と向かって伝えられるんだ…

 

 

 

ただ……

あの時のシリアスにはいい所を持ってかれた感は否めない…。

 

何よ!「大変お待たせ致しました」って!

だから…エリザベスの仕事とってやったわ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1日夫婦の仲で生活できるらしく…

今は指揮官が作ってくれた朝食を食べている。

 

 

 

 

 

「…ねえ?指揮官?」

 

 

「どうした?桜オイゲン」

 

 

ドキドキしながら…声に出す。

「Ich liebe dich」

 

「この意味は分かったかしら?」

 

 

「その笑顔見たら分かるよ」

「でも…よく笑うようになって嬉しいよ」

 

 

 

「何故笑うようになったかって…?」

「必死に頑張るあなたを見ていたら…何だか…胸がいっぱいになるの」

 

 

「会えなくてごめんな」

 

 

「寂しかったけど…耐えられたわ。だって…」

 

 

 

 

 

「あなたがくれた…この指輪があったから」

「あなたとの思い出があったから…」

 

 

 

ぎゅっと側に寄りかかる。

 

 

 

「ならよかった」

 

 

「でも…」

 

「でも?」

 

「あなたは大きなミスを…計算間違いをしたわ?」

 

 

「え!?なに?!」

焦る指揮官…いいわね。

 

 

「もう…画面の向こうじゃ…耐えられない」

 

「この世界で本物のあなたに触れたの…その温かさに。だから私はもう離れられないわ………離れる気持ちもないけれどもね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝食後もずっと向かい合って座っている。

 

 

 

 

 

「出掛けないのか?」

 

 

「ん?私はあなたをこうやってずっと見てるだけでも幸せよ?」

彼女はいたずらに笑う。

 

 

彼女はずっと俺を見ていた。

目線を俺から離さずにニコリとしながら…。

 

 

我ながら思う…飽きないの?と。

 

時々「指揮官?」と呼んでは

「呼んだだけよ…」と言ってみる。

 

このやりとりも愛おしい。

ああ…あなたが居るから…。

 

 

 

 

「でも…指揮官と2人きりで出掛けるのも…素敵でしょうね」

 

 

 

明るい日差しの中をあなたと歩きたい…。

 

なら行こうかとなって準備する。

 

 

 

 

 

途中で桜加賀と出会した。

あの女狐は居ないのか?と周りを見まして見る。

 

…居ない。

 

 

指揮官に桜加賀が耳打ちをする。

 

「…指揮官…桜赤城姉様も街に出てるから…遭遇したらうまく切り抜けろ」

桜加賀が物騒な事を言うけど…まあ大丈夫だろう。

 

 

 

 

「「「「行ってらっしゃい」」」」

と、見送られて2人で船着場へと向かった。




甘いというか…
何というか…

ログインで貰えるのでどうしても思い入れは深くなるキャラ…


少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!


コメントなどお待ちしています!
お気軽にお願いします!


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214話 桜オイゲンと1日夫婦 ②

「桜オイゲンと指揮官…」

 

「あらー?指揮官様に虫がついてますねえ…」

桜赤城か…

大方…指揮官様成分が枯渇して補給に来たのだろうが…

私の邪魔はさせないわ…

 

「お!桜赤城に桜ビスマルク」

 

 

 

「はい!あなた様の桜赤城でございます」

 

「えぇ、街に視察に行って…昼食帰りなの」

 

 

むっ…と

指揮官の腕を掴む力を少し強めてみる。

 

「俺達は今着いたところだから…昼飯に行くよ」

 

 

「……次の私の秘書艦の時には2人で一緒に食べましょう」

 

「ん?おぉ」

 

「さあ、桜赤城…行きますよ」

 

「え!?ちょ…」

ズルズルと桜赤城は引き摺られていった。

 

……グッジョブよ!桜ビスマルク!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう…寂しくはないか?」

 

 

 

昼食を食べながら指揮官が聞く。

 

 

「え?何のことかしら?」

 

 

 

「…本当の孤独ってのは、誰からも理解されない…理解しようとすらされないことだと思う」

「そして…自分も理解されようとも…しようとも思わない事」

 

「……」

 

「俺は…うん、お前達の気持ちは分からないこともあるけど…少しでも歩み寄り合えたらなと思うよ」

「…桜オイゲンが1人にしないわと言ってくれたように…俺も君を1人にはしないし…ここには皆が居るから」

 

「ええ…そうね」

……

ありがとう…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ?何で私に最初の指輪をくれたの?」

 

 

 

 

私は…ずっと聞きたかった事を聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ…え?」

指揮官の顔が赤くなる。

 

 

「……」

私は驚いた。

きっと中々見ることは出来ない貌なのだろう。

 

 

 

「……秘密」

 

「言ってよ」

 

「どうしても?」

 

「ええどうしても…私も食らいついたら離さないタイプだから…」

 

 

「…………から」

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

「…一目見てさ…可愛かったしさあ……好きよって冗談でも言われてさ…」

「何か…ね……それが嬉しくてさ」

 

 

 

「……」

あぁ…

きっと今の私は凄く変な顔をしているだろう。

 

 

「……… Vielen Dank」

 

「……」

 

 

「…恥ずかしいわ」

 

「俺もだよ…」

 

 

 

 

 

 

 

「指輪…借りていいか」

 

「……いいわよ」

 

「お…拒否らない」

 

「…指揮官の事を信じてるからね」

 

「ん…」

 

 

 

 

これは…

初めて渡した指輪。

 

母港で駆け出しの指揮官を始めたあの時も

彼女には本当に助けられた。

高レア…だけでなく火力面でも。

 

 

 

 

 

そしてあの状況で…君たちが来てくれた事…。

 

その感謝も…しっかり伝えたい。

 

 

「ありがとう…」

 

 

「……何のことかしら?」

 

いたずらに笑う桜オイゲン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まって…指揮官」

 

 

指輪を渡そうとする俺を止めた桜オイゲン。

 

「ん?お?お?」

 

 

「……あなたが居るから…もう寂しくはないわ。仲間も…たくさん。

指揮官もきっと色んな辛いことがあったはずよ…。でも、これからは私達もそれを一緒に背負うわ」

 

「…前にも言ったけど…あなたのいる所が…私達にとって母港であり…居場所なの」

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛してるわ…指揮官…」

 

 

「だから……あなたのそばに…ずっといてもいいかしら?」

 

 

「いいなら…その指輪を…ちょうだい?」

と右手を差し出す桜オイゲン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

指揮官は……優しく私の手を持って

 

 

 

 

 

 

私の右手を下げさせた。

 

 

 

 

 

 

「……あ…」

 

 

 

 

 

そう……

もう…いい人が出来たのかしら?

 

私…より頼りになって…強い娘がいるのね?

 

 

 

ううん

諦めろっても…無理だけど…

きっとまた…あなたを振り向かせ………

 

 

 

 

 

彼は私の左手を取った。

 

 

 

 

 

「…え?」

 

 

そして…

私の左手の薬指へと……その指輪を…

 

 

 

 

「し、指揮官!?」

 

「…好きな娘にはてやっぱりここにつけて欲しいな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

景色が歪む…。

目頭が熱い。

頭が沸騰しそうだ…。

 

涙…そう、これは涙。

 

嬉しくて…嬉しくて。

 

 

 

「……その先も……期待していいのかしら?」

ぽろぽろと涙を流しながら聞いてみる。

いつものように…からかうように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……愛してる」

 

 

その言葉と共に…私の唇にー…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ぁ…」

 

 

「おっ…やっとそんな顔見れた」

 

指揮官が笑う。

 

涙で濡れて…恥ずかしくて嬉しくて…

今の私はどんな顔をしてるのだろうか?

 

 

 

 

 

でも…そんなこと

そんな些細なこと…今はいいの…

 

 

 

 

「…あ…愛してる…わ…ぐすっ…指揮官」

精一杯の頑張りで伝えたい本当の気持ちを伝える。

どんな顔をしてようと

どんな返事が返ってこようと

どんな明日になろうと…

今伝えなくてはならない言葉…気持ち。

 

明日じゃダメなの

今じゃなきゃ…ダメなの。

 

 

「私に…居場所をくれて…ぐずっ…生きる意味(あなたと歩む事)をくれてありがとお」

 

 

「…あなたが居てくれたから…今も生きていられる」

 

「もう…あなた無しでは…生きて行けないから……どうか……ずっとこの手を離さないで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「離すもんか…俺も愛してる…一緒に歩んで行こう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…他の娘にも負けないからね」

 

 

 

きっと私は…今

心の底から…笑ってるのだろう。

 

氷のような心も

鉄のような心も…あなたに溶かされたから。

その温かさ無しでは…もう…

 

だから…ずっとその温かさを頂戴?

かわりに…あなたが冷めてしまわないように…ずっと隣にいるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クレープを食べながら帰る。

指揮官は甘いものが大好きらしい。

 

今度…チョコでも作ろうかしら?

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は…隣で寝ていい?」

 

「いいよ」

 

「おかげで安眠できそうだわ」

 

 

 

 

 

 

ウトウトとする彼を見る。

……きっと彼は安心してくれてるのだろう。

寝る彼の頬を撫でる。

 

「う…ん」と言う彼。

 

あぁ…幸せよ…指揮官。

怖いくらいに幸せ。

 

 

目が覚めたら…夢だった…なんて事になるんじゃ無いかと思う程に…

 

 

…それが少し怖くて……

思い切り彼に包まれながら……彼を感じる。

 

うん

耳に伝わる鼓動も…吐息も

頬に伝わる彼の体温も…

匂いも…感触も…

 

本物……

 

 

 

 

…愛してる……わ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

眠って朝目が覚めた……。

 

 

 

 

 

 

 

目の前に…

 

指揮官は居なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ごめんなさい。

正確には私の後ろに居たわ…。

私を抱きしめるように…

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたが居ることがこんなにも幸せだなんて…。

 

ありがとう…指揮官。

 

 

 

愛してるわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おはようの挨拶から1日が始まる。

 

ええ。

分かってる…

いつもに戻るのよね?

 

 

でも…幸せだから…

また来年も…同じように2人でいられるように…

精一杯今を生きるわ!

 

 

 

 

 

「…愛してるわ…指揮官?今日も頑張りましょう?」

 

 

ニコリと微笑む彼女はトントンと彼の肩を叩いた。

 





間に合った…?
ツンデレもなぁ…
デレが多いのもええもんやあ…


少しでも
ええわあ…と思って頂けたなら幸いです!
思ってほすぃ…。



感想などありましたらぜひぜひお願いします!(๑╹ω╹๑ )


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215話 呉鎮守府奪還作戦 ①

思い出すのは…

いつも姉の背中を追っていたあの日の自分。

 

厳しい父に厳しい姉。

 

2人とも憧れだった。

今もそれは変わらない。

2人に追いつきたくて追いつきたくて…俺は頑張っている。

 

 

 

姉の桜は強かった。

 

 

『やられっぱなしで終わるなッ!!』

 

『泣くな!将大ッ!』

 

 

俺はそんな姉に認められたかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

立地や今後を考えても

中四国地方の要とも言える呉鎮守府の奪還を作戦として立てることになった。

 

 

 

 

 

「しかし、守りは強固だろう。…作戦はあるのか?」

 

「…正面からかなあ…」

 

「作戦と言うほどではないが…策は弄してあるぞ!」

京極将大は言う。

 

「来るべき日に備えてはある…だが…うん、基本は正面からやりあうしかないだろうな」

 

 

「何の備えなんだ?」

救ちゃんが聞いてくる。

 

「それは…うん、秘密だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の作戦指揮も救ちゃんだ。

 

「……」

 

「救ちゃん…協力してくれるか?」

 

「もちろん!任せろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………俺の力が必要か?」

 

桜が言う。

 

 

「いいや…大丈夫」

 

 

 

本当は…姉貴が来てくれたら心強い。

でも…それじゃダメなんだ。

 

このくらい乗り越えられないと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作戦としては

救ちゃん達が2方向から鎮守府を攻める。

 

穴が空いたところへ俺達が攻める…と言うものだ。

 

 

 

籠城を決め込むなら補給断絶や交代射撃等方法はたくさんあるが…

住民達もそんなに離れていない所にいる事や、相手の全軍総数を考えたら…そこまでの長期の時間はかけられない。

 

 

 

そして、事前情報だと…鎮守府に居座るのは金谷という奴らしい。

これもエリートだと。

というかアイツは昔から俺達を目の敵にしているからな…。

 

つまるところ新堂達と違って…最後まで抵抗する可能性もあるという事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全員!大破以上の攻撃はしないように!目的は奪還であってで…殲滅ではない!」

「降伏してきた者は艤装解除の上、輸送部隊に引き渡すように」

 

 

 

「「「「「「「はい!!」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

「将ちゃん…焦るなよ。きっと上手くいくし、将ちゃんの秘策、頼りにしてるから」

 

「うん、任せろ!」

「俺は…姉貴達に認められたいんだ」

 

「……」

救ちゃんは何かを言おうとしたが…やめたようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー…あー……聞こえるか!?呉の金谷とやら!」

 

めちゃくちゃデカいスピーカーで話し始める救ちゃん。

 

 

 

 

「金谷提督!敵の演説が…」

 

「ふむ…まあ聞いて見るか…」

 

 

 

 

 

「我々は………………」

クルリとこちらを向く救ちゃん。

 

「何だっけ?」

「名前…考えてない!」

「ノリと勢いでいい?」

 

 

 

「あー!我々は海軍及び鎮守府解放部隊であるッ!」

 

 

 

 

「何だあのアホ集団は…新堂達はあんなのに負けたのか…?」

 

 

 

 

 

 

「大人しく…可及的速やかに鎮守府を明け渡しなさーい」

 

 

「拒否や抵抗をする場合はやむなく[ズドォン!]

 

 

 

 

 

「え?」

 

 

「あっ……」

 

 

 

 

「え?」

横を見ると口をあんぐり開けて青ざめる武蔵の姿。

 

 

 

 

 

 

ドカァァァアン

 

 

砲撃は見事に鎮守府に着弾。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおおお!撃ってきやがった!?」

「アイツら何なんだ!?戦闘態勢に入れーー!!」

 

 

 

 

 

「うおおおおい!?!?」

 

「降伏勧告の意味は!?バリバリの武闘派じゃん!!」

 

「ご…ごめんなさい…くしゃみと同時に…」

西波島の武蔵がしょぼくれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さ……さぁ……奪還作戦開始だ…!!」

 

 

 

 

 

 

 

西波島の武蔵の砲撃と共に戦闘が開始された。

 

 

 

 

「あんなカスどもに負けるかァァ!!」

金谷は伝令を出す。

「…あんな馬鹿どもに……俺の方が…優れてる事を証明してやる」

 

 

 

 

 

 

「行けええ!!」

 

 

 

「貴様らのような…カスは居なくなるべきなんだッ!!」

「俺たちのようなエリートが正しく引っ張るべきだ」

 

 

 

 

「転生したお荷物のお前も…桜さんのお荷物のお前もッ!!ぶっ潰してやる」

「そして…桜さん!俺がお迎えに行きますからね」

 

 

「「「「え?」」」」

 

提督勢全員が驚いた。

「さ、桜ちゃん……?」

 

「……わ、わわ私だとォ!?!?」

 

 

 

「姉貴だとォ!?」

 

 

「………」

 

 

 

 

 

 

「あー……金谷とか言ったかな?」

 

 

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お断りするッ!」

「俺は…そこに居る神崎に惚れているからな」

「君のその声には答えられない」

 

 

 

「……えぇ…」

麗がジトーと桜を見る。

 

 

 

 

 

 

 

「…奴を潰せば良いんですね!?わかりました!!」

金谷が全力で救ちゃんにヘイトを向ける。

 

 

 

 

 

 

「やってみろォ!!」

桜三笠がコンチクショウ!と言いながら砲撃する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

将大はその戦いに圧倒された。

 

 

 

さすがは元帥に推薦された男の率いる艦隊。

的確な指示と連携で敵艦娘を次から次へと撤退、降伏へと…。

 

 

 

何より艦娘やKAN-SEN達の練度が高い…。

 

 

「バックは…任せたネー!ぶっきー!!」

 

「はい!任せてください!」

 

 

 

「陸奥さん!射撃角度…15度訂正してください!」

 

「了解〜」

 

 

 

 

 

「オラオラァ!天龍様のお通りだァ!!」

 

あの大破で有名な天龍は傷一つ負う事なく敵陣に刀を持って突っ込んでいる。

 

その後ろには…うん

龍田を始め…ナントカ組とか呼ばれてそうな奴らが……

ん?いや…アレは駆逐艦達!?

うそぉ……ヤクザやん…アレ…

 

「オラァ!退くのです!」

 

「今日はレディじゃないわ!女…姐御と呼びな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「危ねえ!」

その一言にハッとする。

 

気を取られていた…。

こちらに砲撃が–––!!

 

 

 

「ベルファスト!シリアスッ!!」

救ちゃんが叫ぶ。

 

「「お任せくださいッ」」

 

2人が砲撃を撃ち落とす。

どうやったらそんな芸当が出来るんだ…。

 

 

 

 

 

焦る…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「将ちゃん!」

「ただいま…して来い!!」

 

 

 

 

いや…俺のやるべき事をやらねば…

 

 

「呉長門!行こう!」

 

「ああ!」

 




鎮守府奪還編。
柱島とか…他にも要所あるやん……ですって?!

………

裏でお話しようか…。





シリアスなはずなんですけど
ネタを挟んでみまして……
真剣な方が良いのかな…うーん…






少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!



感想などお待ちしています!
ぜひぜひよろしくお願いします!





質問にお答えします!
蒼藍の誓いとか…蒼き鋼の…とか…ブラサジ…とか…そこらのキャラは出ないんですか?


ブルーオースはお気に入りのキャラも居ますねえ…
話は書いたりしたのですが…
何せ、広がりすぎるとアレなので…
うーーーん…






主人公はそろそろ限界じゃないですか?(貞操的な意味で)


普通なら死んでますね。
R-18はまずいでしょう……。
あと私にそこまでの勇気と文章力が無いッ


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216話 呉鎮守府奪還作戦 ②

優勢にも思える戦況…

しかし…

それでも相手の物量は多い。

 

当然として援軍もやってくる。

 

 

 

「…くそ…やっぱり大阪方面から来たか…」

 

「鳳翔!そっち方面は任せたぞ!!」

 

「はい!あなた!」

鳳翔が島風達を連れてそちらの迎撃に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

物量が…多い!

「くそ…姉貴ならこんな時…」

焦る将大。

 

 

 

 

 

俺には特別な能力がある訳ではない。

凡人だ。

 

 

 

たまたま妖精が見えて…姉の後ろをついて行っただけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

認められるように…

 

救ちゃんのような力もない…

どうしたら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「将ちゃん……いや」

 

 

 

 

 

将大ォォ!!

 

 

 

 

 

 

「救ちゃん!?」

 

 

 

 

大きな声だった。

彼は敵陣の中…目立つのも厭わず大きな声で俺に話しかけた。

 

 

「追いついたら…憧れは終わるのか?」

 

 

「憧れ…じゃ追い越せない!!」

「憧れている限り…追い越せない!!」

 

「肩を並べたいのなら…超えたいのなら……」

 

「もっと貪欲に…桜を超えて進めッ」

 

「後ろには俺も居るッ!!」

「背中は任せて…行ってこいッ」

 

 

 

 

 

 

 

ハッとした。

憧れたまま…

そう、ずっと後ろを着いて歩くのか?

 

 

違う。

 

姉貴には…戦いの世界じゃないとこで

フツーに幸せになって欲しい。

 

 

いつまでも頼ってちゃ…それはできない…

 

 

なら…

俺が進まなくちゃならないだろう!

 

俺が…

姉貴の住む…平和な世界を守らなければならないだろうッ!

 

 

 

憧れじゃあ…超えられない。

 

もう

背中を追いかけて行く時間は終わったんだ。

 

 

 

 

もう…

背中を預けあって…

 

いや!

 

 

俺が姉貴を引っ張って守って行くんだッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………敵わねえなあ…」

 

そうだ…。

 

俺は………俺には

我慢して待ってくれている仲間がいるじゃないか…。

 

 

今だろう?

 

越えるのも…何もかも今じゃないか!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…今だッ!!!」

 

号令をかける。

 

 

 

「全員…よく耐えた!!今だぁッ」

呉長門が言う。

 

 

 

ズドォン!!!

号令と同時に起こった爆発。

 

–––––それは轟音。

()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

彼女達は待っていた。

 

 

自分達の帰る家を奪われ

思い出を踏み躙られながら…

 

それでも

 

 

じっと地下で耐えながらその時を待っていた。

 

 

 

「何ぃ!?」

 

 

 

 

彼女達…主力部隊は地下に隠れていた。

 

それは彼女達だからこそ知る強さ故の弱さ。

 

 

 

 

西波島のように四方を海に囲まれていない瀬戸内海という特性上

陸路からなら住民が気付く。

深海棲艦は陸からは来ない。

海でも入り口は2箇所、故に守りやすい。

 

 

なれど内側からは脆い。

 

攻められる側は

外側の攻撃を守るからこそ強い。

 

が…内側から壊してやれば…外と内に挟まれる。

 

 

 

 

 

 

「報告しますッ!!」

「出撃ゲート地下!…鎮守府地下!…工廠地下!全てから…呉の艦娘が強襲してきました!!」

 

 

「何だと!?」

「急ぎ、応戦しろッ!!」

 

 

 

 

「私達の家を…土足で踏み荒らした覚悟は出来ているなッ」

 

 

 

 

 

呉メンバーはそもそも強かった。

大和を含めて何名かは大本営へと行った。

 

ブインから長門を含めて何名かがやってきた。

元から旧知の仲とはいえ将大は分け隔てなく彼女達と接した。

 

彼女達が彼を信頼するのに時間はかからなかった。

 

 

 

そして彼女達はある意味の敗北を喫した。

海軍のクーデターである。

 

 

その借りを今返す時だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおおおお!!!」

 

ぶつかり合う艦娘達…

 

 

 

 

「…くそっ……」

 

 

 

 

 

 

鎮守府から桜と麗が見守る。

 

 

「俺…いや、私は今まで将大が虐められようとも甘い言葉をかけた事など無かった。むしろ、厳しい言葉を投げかけていた」

 

「でも…それは、決して奴のことが嫌いだとかそんなのではない」

 

 

「私は知っている…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「–––––なぜなら…アイツは……強いから」

クスリと…桜は笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……将大?」

「私を忘れたのか?…この世で一番お前に近くて…頼りになる嫁を」

 

 

 

 

 

 

 

「…力を貸してくれるか?」

 

「だから嫁になったんだ」

 

 

 

 

 

 

ブインからここに来た。

皆は暖かく迎えてくれた。

今は俺の家だ。

 

 

 

鎮守府に到着し、金谷達を目指す将大達。

 

「呉長門…呉鳥海……恐らくは…金谷をぶちのめしたら此処の艦娘は抵抗しない」

 

「む?何故だ?」

 

「…投降する艦娘も多い。昔からキツいやつなんだ。自分勝手で…艦娘達も辟易してるはずだ」

 

 

 

「なるべく…投稿を勧めながら進んでくれるように皆に通達してくれ」

 

 

「わかりました!!」

鳥海は伝達を行いながら進む彼らを見送る。

 

 

「…ここからは私が相手です!提督の邪魔はさせませんよ!」

 

 

 

 

 

 

息を切らせながら執務室へと辿り着いた将大。

 

 

そこには…金谷と…金谷の秘書艦であろう陸奥がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「金谷…返してもらうぞ!俺の…俺達の家を!」

 

 

「返すかよッ!!お前も…奴も潰してやる!」

 

 

 

 

「…こんな意味のないことは止めろ!見ろよ!皆も疲弊して…それでもお前の命令に従って…」

将大が言う。

 

 

「陸奥…提督の無茶を止めるのも秘書艦としての仕事じゃないか?」

呉長門が陸奥に向けて言う。

 

 

「…うるせえよ!コイツらは…俺の道具だ!持ち主の指示に従うのが道具だろう」

 

 

「…ごめんなさい……長門さん…。これしか…私達にはなくて」

 

 

 

 

 

 

 

 

金谷手袋を将大に投げつけた。

「…お、俺と決闘しろおおお!!」

 

「は?」

 

 

 

フーフー言いながらコチラを睨む金谷。

状況を必死で理解しようとする将大。

唖然とする相手の艦娘達。

 

 

「……決闘…?」

 




うーーん。
金谷君は初期構想よりマイルドなクズになりました。
もう少しクズでもよかったのかな…



お気に入り620…
ありがとうございます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
今後ともぜひぜひよろしくお願いします!


少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。

感想などありましたらぜひお願いします(๑╹ω╹๑ )


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217話 呉鎮守府奪還作戦 ③

胸糞表現あります。


「提督…もうやめましょう!」

「皆も疲弊して…傷ついて…これ以上はやめましょう」

 

金谷に縋るように懇願する陸奥。

 

 

 

「うるさいッ!!」

「俺は認めない…。こんな奴が…こんな奴らが俺より評価されるのも!あの人に好かれるのも…!納得しないッ」

 

縋る金陸奥を払い除けて叫ぶ金谷。

 

 

 

「金陸奥ッ!!」

呉長門が金陸奥の所へ駆け寄る。

 

「…ごめんなさい…ごめんなさい…」

 

 

 

 

「金谷…お前…」

 

「うるせえ…受けろッ!決闘を受けろ!」

 

「俺達は同期じゃないか!!」

 

「だから気に入らねえんだよ!」

「お前達は何かと昔から優遇されてよ…。お前は桜さんに助けてもらってばかりで…気に入らねえ」

「なのに…お前も適正があるからって海軍入りして」

 

「ヨーイドンが提督かよ!」

「俺ですら何年も掛かってたってのに!」

 

「俺の方が昔から優れていたはずなんだ!!」

 

「お前が居るから桜さんは……」

 

 

「そしてお前ェ!!神崎!!」

「別の世界から来たくせに…俺より目立ちやがって…」

「桜さんに気に入られた…?」

 

 

「お前らが邪魔なんだよ!!」

 

 

 

「金陸奥ゥ!!何故戦わない!!奴らを…艦娘どもを殺せえええ」

 

「提督…もう…お願いします…。やめてください」

 

「うるさいッ!お前らは道具なんだッ!!」

「俺の為に…奴らを殺せええええええ」

 

 

 

 

「……」

 

ゴシャッ…

 

殴られてぶっ飛ばされる金谷。

 

 

 

 

「…ぐへっ」

「何しやがるッ」

ギロッと殴った人を見る金谷。

 

 

「………れ」

彼は怒っていた。

 

 

 

 

「な、何だよ」

 

 

「彼女達に謝れえええええ!!」

 

 

 

将大がキレた。

 

「くだらない理由で戦いに出てんじゃねえよ」

 

 

「彼女達はお前の道具でも何でもないッ!!見てわからないのか?彼女達がそれでもお前に寄り添おうとしている事を」

 

「姉貴がお前に見向きもしない?当たり前だッ!!」

「貴様みたいな奴を…姉貴が…認めるものかッ」

 

「下らねえ!!そんなことの為に俺達は住む家を奪われて…」

「ふざけんなッ!!」

 

 

 

 

「謝れ…ッ!!身を挺してこの世界を…守ってくれてるあの娘達に…!めちゃくちゃなお前に…それでも付いてきてくれる彼女達に…!間違えるお前を必死で止めてくれる彼女達に謝れッ!!」

 

「道具…が…」

狼狽える金谷。

 

「周りを見てみろよッ!見えねえのか!?彼女達の流す涙が…!」

「道具が涙を流すのかッ!!」

 

 

「そんな奴に…提督を名乗る資格もねえ!姉貴を好きだとか言われたくねえ」

 

 

 

 

 

「……決闘だったな…受けてやるよッ」

言葉と共に蹴りを入れる将大。

 

 

 

 

 

「ぐっ……!?」

 

 

 

 

 

 

が…金陸奥に受け止められる。

 

 

「お前……」

 

金陸奥は言う。

「…ごめんなさい…それでも…クズでも…私達にとっては…かけがえのない提督なんです」

 

 

「…よくやった!金陸奥!!ソイツを…殺せッ!!」

 

 

「提督ッ!!もうやめましょう!!」

ドスッ…と金陸奥が金谷に拳を叩き込む。

 

 

「あぐ…」

ダラリと倒れ込む金谷を抱える金陸奥。

 

 

「……!?!?」

脳内処理が追いつかない将大と呉長門。

 

 

 

 

 

「…我々の負けです………」

「自分勝手とは承知してますが…見逃してもらえませんか」

 

 

「でも…ソイツは…」

 

「ええ…それでも…やはり私達の提督ですから……」

「…間違ってるとわかってても……止められない私達にも責任はあります」

 

 

 

「…無理なら……私の命でどう?」

 

 

 

 

 

「…卑怯だぞ」

 

「ええ…でも…やっぱり大切だから…」

「…次に会う時は……演習相手であったらいいわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぞろぞろと引き上げて行く艦娘達。

 

 

 

 

 

結果として…旗艦と提督の敗走という事で鎮守府を取り返しはできたものの…

 

 

……負けだなぁ。

………複雑な気分だ。

 

 

根本的な解決にはなってない…

ピンチは凌げたんだけど……

 

 

 

 

 

疲れた…。

気合も入れたのに……空回り感が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え?何これ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…どうやらまだまだ生きてるみたいだよ?」

 

「…大丈夫だ!絶対に俺たちは負けない」

「にしても…兄さんはすげえな!何で奴が転生者だってわかったんだ?」

林の前には兄と呼ばれる人物が居る。

 

 

「んー?知ってる奴に似てたんだ…」

 

 

 

 

 

 

「…俺の人生を壊した奴になあ」

男は左頬を摩りながら言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼します!」

 

「ん?何だ?」

 

 

「西波島が奪還されたようです!」

「他の者の所在、新堂の所在も掴めてません…」

 

 

「そう…新堂は裏切ったか…殺されたと見るべきだね」

 

 

「あと…」

 

「ん?」

 

 

「…申し訳ありません。税収が高いと住民から不満が…」

 

 

 

 

 

 

 

「なかなかうまくいかねえよなあ…」

弟…孝が言う。

 

 

 

「それをどうにかするのがテメェの仕事だろう?」

兄は弟の顔を掴んで言う。

 

「…いいか?帝国海軍はな?お前達を守ってやってるんだぞ?たった一食の飯が食えないくらいで安全が買えるんだ…」

 

 

「いいか!貴様は今やこの軍…いや、国のトップと言っても過言じゃない…わかるな?」

「貴様の言うことが

「俺は…奴をこの世界から消したい…」

 

 

「だから表は貴様にくれてやるんだ…これ以上俺を怒らせるな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…すみません……負け…ました」

 

そこには別室からモニターに向けて林に平謝りする金谷と艦娘達の姿が…

 

 

 

「あぁ……うん、いいよ」

そっけなく返事を返す林兄。

 

 

「あ、ありがとうございます!!すぐに態勢を整えて…」

 

「いや……疲れただろう…休むといい」

 

「え?」

 

「いえ!閣下!私達は…」

 

 

 

金陸奥は察した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生かす気は無いと。

あの目は…奴らとは違う…ゴミを見るまでも無い。

まるで…何も無いところを見る目だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おやすみ…」

 

 

 

 

 

 

「提督ッ!!」

必死に彼を庇おうとする艦娘達。

 

なんとか守ってみせ………

 

 

 

 

 

パチュン…

 

1発の弾丸は容易に守るべき人の頭を撃ち抜いた。

 

 

「……」

ダラリと力なく倒れる金谷。

 

 

「う…あ……うぁぁぁぁあ!!!」

「貴様ァァアッ」

 

 

 

ガラス越しに見えた…奴に砲身を向ける…が

そこに艤装はなかった。

 

 

 

 

そうだ…

ここに入る前に解除しろと言われたんだ…

 

 

 

そこまで計算…

ああ……クソ…

 

 

 

 

ごめんなさい……

ごめんなさい…

 

 

 

 

 

次々と倒れて行く仲間達。

 

 

 

 

クソ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんな…軍…滅ん…で–––––…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…やりすぎじゃ無いか?…宮川よ」

 

 

「えー?負けて帰ってきたんですよ?当たり前じゃない…」

「雑魚はねえ…死ぬべきなんですよ」

 

 

「コイツらも…アイツらも…新しい時代には邪魔なんですよ」

亡骸を蹴りながらケラケラと笑う宮川と呼ばれた女。

 

 

「…帰るよ……」

ぞろぞろと隊を引き連れて帰って行く彼女達。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

「…お前達もああなりたくなかったら…頑張ることだな」

 

 

 

「は、はいいい!!」

 

 

 

 

「に、兄ちゃん…コイツらは……?」

 

 

「いつも通りだ…海へと返しとけ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海の中に沈む。

 

意識はもう途切れかけている。

 

 

あぁ…

悔しい…

誰か…この無念を……

 

 

 

 

 

 

 





割とカスみたいなキャラも出てきます…。



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218話 波に消ゆる ① 死が2人を別つ迄

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたは運命を信じますか?

 

 

もしも…叶うなら…。

この願いが叶うなら…

 

 

あなたの側に…この命が尽きるまで…

死が2人を別つ…その時まで、お側にいても良いですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付いたら…私はそこに居た。

 

冷ややかな風が顔を撫でる。

ほぼ…水に浸かった体。

 

そう、私は海に浮かんでいる。

 

 

 

 

目をキョロキョロと動かしても何も見えない。

海しか見えない。

本当に静かな海…。

 

 

 

すっぽりと抜けたような記憶…でなく

自分は産まれたばかりだと理解している。

 

 

 

 

「…ぅ………ぁ…」

 

 

身体を動かそうとして見る。

 

うん

動く。

 

 

 

 

 

 

パシャリと…立ち上がる。

酷く体が重い。

視界はぼやけるし、思考は上手く定まらない。

頭の中にコールタールを詰め込まれたような気分だ…。

フラフラしながら何とか立ち上がる。

そう、体は覚えているようだ。

 

 

足を踏み出して…転ぶ。

「あうっ」

 

 

「…いたたた」

 

 

 

誰かが手を差し伸べてくれたような気がした…。

存在しないはずの記憶の中で…

 

 

 

 

「………1人…ですか」

まあ当然だろう。

なんせ…産まれた(ドロップした)ばかりだし。

 

 

……私は…

誰だろう…

何の為に…ここに居るの?

 

 

 

 

 

少しの間歩く練習をした。

体が覚えてるはずなのに…思うように動かない。

 

 

少ししてやっと動けるようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「###」

 

 

一陣の風が私の身体を撫でた。

その風と共に…聞こえた"確かな声"…。

 

そう…私を呼んだ声。

 

 

「…て………く?」

 

 

何だ?

この言葉は?

今…頭に浮かんだ言葉。

懐かしいような…そうで無いような。

愛しいような……馴染むような…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督殿?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故かすぐに分かった。

 

こっちだ……こっちに…提督が居る。

私の…私の守るべき運命の人が居るッ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「島?」

かなり小さな島だった。

建物も何も無い…島。

 

 

 

その砂浜に…打ち上げられたであろう人が居た。

 

 

…私の運命の人(提督)は死にかけで漂流してた人なんて…

ロマンのかけらも……って!

そんなことを言ってる場合では無いですね。

 

 

重っ!?

でも私には…もう一つの腕みたいなものかあるから…。

 

 

何とか浜辺まで引きずった。

 

もしもし…

おーーい?

 

あれ?

 

…息してない!?

 

 

じ…人工呼吸…?!

 

え?!いいんですか?!生まれたばかりで…初キッス……。

 

 

ダメ!これは人命救助!人命救助!!

 

 

 

すぅーーー

  すーーー

 

 

 

 

ゲホッ…ガハッ…

 

 

あ!よかった……です。

 

 

ほっとして…とりあえず…と

近くの川へ水を汲みに行く。

 

 

 

 

ふふん♪

助けてくれてありがとう…

君は…命の恩人だ…。

 

 

とか

結婚して欲しい…運命の人…とかなるのかなあ?

 

にへらと笑いながら川に着く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

が…

 

 

見てしまった。

 

 

 

 

 

 

水面に映る私は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深海棲艦だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ…

だめでした。

私は……あの人の敵なんだ。

 

 

 

 

 

 

水を運んで来たけれども…

この人は…私を見てなんと言うのだろうか…

 

 

「深海棲艦!?げほっ…マジか」

 

 

『お水…どうぞ…塩水で口の中とか凄いと思いますから…』

 

彼はキョトンとした…。

 

 

 

 

 

「……ん」

「…深海棲艦?君が助けてくれたのか?」

 

 

 

 

 

『あ……ハイ…そうですね』

 

 

彼の表情は少し崩れて…

 

「…ありがとう……」

と言ってくれた。

 

 

 

何故この人はお礼を言うのだろうか?

敵である私に……この人は…。

 

 

 

 

 

『あ、お水です…』

 

貝殻に入れた水を渡す。

 

グビグビと呑み干す彼。

 

「ありがとう…本当にありがとう」

 

 

 

 

 

一息つきながら話をする。

この人は…西波島の提督さんらしい。

波にさらわれてここに流されたらしい。

艦娘も居たけれど…流れが早すぎて…とか

あきつ丸さんと最上さんて人達らしい。

 

 

 

 

 

その名前を聞いたとき…ズキンと頭が痛くなった。

 

「大丈夫?!」

と、心配してくれる提督。

 

『大丈夫です』

と、返す私。

 

 

 

「君は…?」

と、提督殿が聞きます。

 

でも…

『…よくわからないんです』

としか答えられなくて…。

 

 

そっか…と答えると提督殿。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お魚獲れましたよ』

艤装の砲撃で獲れた魚を焼いて食べます。

 

 

人よりも力もあるので…

シェルター作りもなんのそのです。

 

 

 

初めて迎える夜は…少し怖くて……

自然と提督殿に近寄ってしまいます。

 

 

『すみません!何だか…心細くて…』

 

「ん…いいよ…おいで」

 

寒さも…平気になりました。

 

 

 

 

『あの…なんで平気なんですか?』

 

「ウチのね鎮守府にも深海棲艦の娘がいるのよ」

 

ほ、本当ですか!?

俄には信じ難いが…きっと嘘では無いだろう…。

 

 

 

 

 

 

 

 

『あのッ…」

 

「うん?」

 

『運命って…ありえますか?』

『私は…貴方に出会うために生まれてきたのだと思うんです』

 

「……」

 

『…って…馬鹿ですよね。私は敵なのに……』

 

 

「あると思うよ」

彼は言いました。

 

 

 

「君がそうだと思ってくれるなら…俺は運命に助けられた訳だし」

 

「…そうなら…俺はとても嬉しいし…君さえ良ければウチに来て欲しい」

 

 

 

 

 

『良いんですか?』

 

 

もちろん…と頷く提督殿。

こんなに嬉しいことはあるのだろうか?

こんなに嬉しい事が…うまれたばかりで味わえるものなのか?

 

生まれたばかりでも分かった。

私は人類の敵だと。

 

 

きっと…この感情は…異常なのだろう…

それもわかる…。

 

だけども…

私はこれも運命だと信じたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

握手をしようとした…

 

その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『よくやったわね…さぁ…ソイツを殺しましょう』





私は誰でしょう?


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219話 波に消ゆる ② 死が2人を別つとも…

思わず提督殿と深海棲姫の間に割って入る。

 

『…?何かしら…』

『ソイツをこっちによこしなさい…』

 

 

 

頭に何かが問いかける。

私は敵なんだ…

 

別の何かが問いかける。

私は…##なんだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ダメです!この人は…私の運命の人…私の提督…』

 

『何言ってるの?深海棲艦でしょ…アナタ。艦娘にでもなったつもり?』

 

 

 

 

『…嫌な思想ね…。なら…その運命とやらから解放してあげるわ…』

 

 

 

 

 

 

 

「おい…お前……」

 

 

 

振り返り…彼に言う。

『大丈夫です!あなたは…テートク殿は私が守ります』

 

 

 

 

 

 

始まる深海棲艦同士の砲雷撃戦。

瞬く間に島は戦場と化す。

 

 

海風の匂いは…硝煙の匂いに変わり…

心地よいはずの海風は…炎の熱さに変わった。

 

 

守る側は不利である。

当たり前な話だが…。

 

 

 

慣れない戦闘の中で必死に運命の人を守ろうとする彼女。

傷だらけになろうとも…必死に抗う彼女。

 

『ううっ…負けない…やらせません!!」

 

必死で撃った砲撃が棲姫に直撃する。

 

ズガン!!

その攻撃は戦艦棲姫の片目を抉り取った。

 

 

 

 

 

 

『グッ…目が……貴様ァァア!!気の迷いだと…助けてやろうと思ったがもういい!その男ごと…死ねええええ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

一斉掃射…。

ありとあらゆる攻撃が棲姫から繰り出される。

 

『あぐっ……ああ!負けるものですか』

 

「やめろ!お前がもたないッ!」

 

『そんなもの……そのくらいいいい!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆音。

それが聞こえたのは…小さな島の方からだった。

 

「も、最上殿ッ!!アレは…」

 

「うん、誰かが交戦してるっぽいね!行こう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

そこに見えてきたのは…

深海棲艦同士の衝突だった。

 

何故?と思ったが…

片方が守ろうとしているのが提督だと分かった瞬間に私達のやるべき事は決まった。

 

 

 

 

 

「提督殿おおおお!」

 

「良かった!無事で!!遅くなってごめん!」

 

 

 

 

「提督殿を守ってくれてありがとうであります!…あきつ丸、最上、力をお貸しします!!」

ボロボロの彼女に語りかけるあきつ丸。

 

『あきつ丸…最上……』

ズキリと頭がいたんだが…そんなことはどうでも良い。

良かった…。私1人だと………もう限界だから……。

 

 

 

 

 

 

 

『…くっ…増えたか…』

チラリと自分に敵対した深海棲艦の彼女を見る。

退き際……かしら…。

 

正直負ける気はしないが…無事では済まないだろうし。

援軍が来られても生存率はグンと下がる。

こちらも援軍を呼んで決戦をしても良いが…

…疲弊したところをあのムカツク小僧どもに襲われても厄介だ…。

 

 

『……』

棲姫は足元を砲撃して煙幕を生み出した。

 

 

「なっ!!?」

「とりあえず提督殿を確保するであります」

提督の周囲に集まり警戒する彼女達…。

 

 

しかし、煙が晴れて見えたのは…何も無かったように静かな海と島だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう…良かった…」

 

 

「遅くなって申し訳ありません!」

 

 

「で…彼女は…」

気になる点はそこだ。

何故、深海棲艦が提督殿を守ったのか?

 

「あれ?」

 

彼女を探して周りを見渡す救達。

 

 

「!!!!」

 

 

そこには…瀕死になったであろう彼女の姿があった。

 

「おい!!」

救が駆け寄る。

 

「大丈夫でありますか!?」

 

「…意識が…落ちかけてる…」

 

 

 

「2人とも!鎮守府まで運べないか!?」

 

 

『…無理…ですよ……わかりま…す…もう…ダメだっ…て』

 

 

 

 

「そんな……俺の為に………」

 

 

 

 

『死が2人…を……別つ…ま……思ったよ…早く……きてしま』

 

 

「しゃべるな…な…苦しいんだろう…」

 

 

「あ……あ」

 

名前…呼んで欲しかったなあ……自分の名前も分からないけれども……

 

私の名前…何だっけ…

深海棲艦じゃなくて…

 

 

きっとあったで あろ…う

 

 

私の

 

艦娘…と

しての

 

 

名前…。

 

 

運命の人に…あなたに呼んでもらいたかった名前

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……る」

 

 

え?

と、皆が提督の方を見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故だかわかった。

自分でも説明出来ないが…

 

 

 

何故かこの娘が###と分かった。

 

咄嗟に口から出ていた。

 

その娘は…ハッと目を丸くして…

あぁ…そうだと言わんばかりに頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「神州丸……お前は……神州丸」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだ…何故忘れていた…。

 

 

 

 

こいつは…

君は……俺の神州丸じゃないか…

 

一緒に居た…神州丸じゃないか!

 

 

俺がこの世界に来た時には…既に居なかった。

記憶からもすっぽりと抜けていたように…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ…思い出しました…。

私は…あなたが来る前の…あの日…大石提督に…連帯責任を被って解体処分された…んだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう

彼女は…救の着任前に大石によって最上達を庇って解体処分された神州丸だった。

 

 

彼女は救に会うことも叶わずに海の中を彷徨っていた。

なんの因果か…目覚めた時には深海棲艦になっていた。

 

しかし、彼女の魂は覚えていた。

自分の運命の人を…

自分の守るべき人を…。

 

彼女の魂は…堕ちることなく、高貴なままで戻ってきた。

…彼を守る為に。

 

 

 

 

 

 

 

「なっ…ほ、本当でありますか!?」

 

 

 

「神州丸……」

彼女はその名前を噛み締めるように繰り返す。

 

あぁ…

今わかった。

そうだ…私は…神州丸…。

 

陸軍所属の…私は……

 

 

『今度は…助けてくれて…ありがとう…最上…さん』

 

「…あの時はごめん!私…私はっ!何で気づかなかったの!!忘れちゃってたの!ごめん!」

 

『…いいのです…こうして…会えたのだから…』

 

『あきつ丸…一緒に…戦え…て…』

 

 

「ここに居るでありますよ!」

 

『…うん…わかります』

 

.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『提督殿…』

 

「何だ?」

 

少しでも…この世界…で…お側で戦えて…本官は…幸せです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聞いてもいいですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたは運命を信じますか?

 

 

もしも…叶うなら…。

この願いが叶うなら…

また…もう一度…あなたの神州丸としてあなたに会えるのなら…

 

あなたの側に…この命が尽きるまで…

死が2人を別つ…最後の…最期の…その時まで…あなたのお側にいても良いですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

私の手を握るその人は…優しく頷いてくれた。

 

 

 

 

「…ごめんな…寂しい思いをさせた……俺は…待ってる」

「…また君に会う運命を信じている」

 

 

 

 

 

 

 

『…はい…運命…ですから……それ…は……楽し………み』

 

 

   

 

 

 

役目を終えた彼女は彼女は光になって消えた。

 

互いに最後に思い出す…皮肉な話ではあるが…

彼女は満足だった。

何故なら…最愛の人を守ることができたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あきつ丸の方を見る。

彼女の事を少し重ねて思い出す。

彼女もまた…同じく自分の前で消えた艦娘だった。

 

だが…彼女もまた、帰ってきたのだ。

約束を果たして帰ってきたのだ。

だから待てる…幾らでも…。

 

 

そして帰ってきたら…思いっきり抱きしめて言おう。

「ありがとう」と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰りの足は…少し重くて。

あきつ丸にとっても、最上にとっても、複雑な帰路だった。

 

「うぅ…忘れちゃってて…ごめんね」

 

「俺も…何でだろう…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっと!」

突然の向かい風にバランスを崩すあきつ丸。

あきつ丸に乗る俺は…当然落ちかけるわけで…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「危ないですよ」

 

 

 

 

その背中をスッと支えてくれる人が居た。

 

「最上殿ぉ〜すみませんんん」

と、あきつ丸が言う…

 

 

 

 

 

 

が、俺は何故か……感じた。

 

「……早かったな…」

 

 

 

 

 

 

その手の主は…言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい…。2度も溺れるのは…いけまけんから」

「それに…まだ運命は2人を別つ事はないようです」

 

 

 

 

 

 

「私はここだよー!」

と、最上が言う。

 

「え?」

目を丸くするあきつ丸。

 

 

 

「……しっかりしてくださいね。あきつ丸」

 

 

 

 

 

 

「あ…」

 

「あぁ…」

 

 

 

彼女達が抱き合って喜んだのは…言うまでも無いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死が2人を別つまで…その最後の最期まで…お側に居させてくださいね」

ニコリと微笑む彼女。

 

 

「おう」

よろしくな…と言う彼。

 

「神州丸」

 

「はい」

 

 

「…やっと名前を呼べた」

 

「はい…提督殿」

 

 

 

 

 

「ありがとう」

彼は抱き締めて言う。

きっと泣いてるのだろう。

自分に悔しくて…でもそれ以上に嬉しくて!!

 

「はい!神州丸…あなたの神州丸…。ただ今…帰りました!再着任しむした!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オーーウ…ライバルが戻ったデース…」

 

 

「何故忘れて居たのでショウ?」

 

「妖精さんの…かなあ」

寂しくないように…

また帰った時に思い出せるように…

現時点では何も分からないけど…

 

でも…これだけは言える。

私達はもう仲間を離さない。

 

 

 

 

 

「てか…運命の人…ですって……」

 

 

「あ!!アイツ!提督にキスしやがった!!」

「乗り込めッ!!」

 

「ズルイぞおおおおお!!!」

 

 

 

 

 

 

「え?!あ!?!」

 

「ええ!?み、皆さん!?」

 

ズルイぞおお!

私達もおおお!!

 

 

さらに賑やかになった鎮守府であった。

 

 

 

 

 

「また会えてよかったああああ!!!」

 

「また一緒に居られるうう!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人を…死が別つまで…。

それは戦火の中での別れじゃありません。

 

静かで…幸せな木漏れ日の中で迎える…あなたとの別れ。

 

私の見る運命は…

皆と共にあなたの最期の笑顔の手を取って…

優しくて、暖かな光の中で見送る最期。

 

ええ…

きっと守ってみせます。

何度でも…何度でも…。

 

 

 






てな訳で神州丸の登場でした。
かなり遅くなったのですが…ごめんなさい神州丸。



戦闘シーンはかなり少ないシリアスでした。

試しにかなり少なくしてみたんですがどうでしょうか?




少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!


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220話 龍驤と1日夫婦 ①

「てな訳でウチやで」

 

「せやな!」

 

 

 

 

 

 

ちょこんと隣に座る龍驤。

 

 

 

「…なあ……龍驤……君ってさ本当はいくt…」

 

 

「君ィ…ウチ、子供とちゃうで…」

ニコリと…しかしながらありえない強さで肩を掴む龍驤。

 

 

「……ほんとぉ?」

 

 

「本当に…」

 

 

 

 

 

「…子供みたいな見た目やけど……でも…ウチは…君の事好いてるんやで…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「おおう…」

ズキュウウン…!!

 

上目遣いで、うるうる目で見られたら…可愛くて仕方ない……。

 

 

 

「なあなあ♪ゲームしよーや!」

 

「夜更かしして大丈夫〜?」

 

「やから子供ちゃうて…」

「君とそんなに変わらないかも知れんで?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ…君ぃ?」

 

「んー?」

 

「ううん…何でもない」

 

 

 

ちらっと…君と呼んだ彼を見る。

……好きやなあ…。

子供扱いはアレやけどなあ!!

これてまもウチは大人やもん…

 

 

ちゃんと言うんやで…ウチ!

…好き…愛してるってちゃんと言うんやでぇ…。

 

 

 

 

 

てか…君ぃ…

ゲームうまいなあ…。

 

も、もう少し手加減してくれても……あぁっ!?

嘘ォ!?

 

無敵はズル……い!!

 

アカーーーーーーン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

ボロ負けやあ……ぐすん。

 

 

 

 

 

 

スマシス…

一応…ウチ空母やん?

 

オイ、誰や!今駆逐艦とか言った奴ぅ!?

シバくぞ…ウチは軽空母やっちゅーに!!

 

 

 

でもなあ…

提督は…普通に戦艦とか使うねん…。

これは蹂躙や…

 

「何でや!」

と、ポカポカと提督を叩く龍驤。

アハハと笑う救。

 

ふぅと一息つく。

隣に座っている2人。

ついつい熱くなったせいか、ほぼ密着と言ってもいい。

 

 

 

 

 

 

 

「え!?もうこんな時間?」

 

「早いよねえ…」

 

「…寝る?」

 

「龍驤が起きてたいなら起きてる」

 

「…ならもう少しだけ…隣に座っててええ?」

 

「ん……」

「お菓子食べる?」

 

「ええな!もらおか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君ぃ…朝やで…起きて!」

 

「…年下の幼馴染が起こしに来た感じ…あだだだだだ!!」

 

「やから…ウチは子供じゃないー!!!」

 

それはそれは見事なキャメルクラッチだったとか…

 

「いてて!!そんなに密着したら…」

 

「……何や…悪かったな…当たるもん無くて…」

 

「いやそう言う意味じゃ無くて!!息が耳に掛かって!」

 

「ほーーーん……」

 

 

 

 

 

カプッ…

「ふぁら…ほーひふぁふは」

(なら、こーしたるわ)

 

 

耳を甘噛みする龍驤。

はむはむ…

 

 

 

 

 

「あ!!ダメ!くすぐった…うひいいいい!!!」

 

 

「「ひゃへんへぇ…」

(やめんでぇ…)

 

 

何の声だとやってきた浦風が

「あっ…」

と言いながら優しくドアを閉めたのは言うまでもなく…。

その後に青葉と秋雲がドアをクッソ程ノックしてきたのも言うまでもないだろう!

 

ドンドン!

「開けてくださいよおおおおお」

 

「ぜひ!後学の為に!後学の為に!!」

 

 

ドアに耳を当てる2人…。

 

 

「うひゃぁああああ!」

 

 

 

「「あげてくださいいいいいいい!!」」

 

「その光景を写真に!」

「いや!瞼の裏に焼き付けさせてくださいいいいいい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……もう…お嫁に行けない…」びくんびくん

 

「そんなに!?」

 

「うぅ……」

 

「…大丈夫!貰い手が無ければ…ウチが貰うよ!」

…まあ…貰い手がないなんて絶対にないだろうけどねえ…。

 

 

 

「って!こんなことしてる場合やない!朝ご飯できたよ!」

 

 

 

よく見ればエプロン姿の龍驤。

どうやら気合を入れて朝ご飯を作ってくれたらしい。

 

 

 

「ほ、鳳翔にも聞きながらね…」

「卵焼きは…だし巻きが作り慣れてるから…だし巻きや」

 

堪忍ね…と言う龍驤。

 

 

いや…

「めっちゃ美味しそうだぞ!?」

 

 

わかめたっぷり味噌汁、焼き鯖、だし巻き玉子に、漬物に、なめことほうれん草達のサラダ…

 

あと…

 

 

「…た、試しに作って余った…から……」

と、目を逸らし真っ赤な顔でプリンを出してくれる龍驤。

 

「一生幸せにします」

 

 

「そんなにプリンが嬉しいん!?」

えへへ…と言いながら「桜ちゃんとかには勝てんで?」なんて言うが…

 

「ううん…ありがとう…嬉しい」

と、素直に感謝を伝える救。

 

 

ニコニコしながら食べる俺を見ている龍驤。

 

「どんな?」

 

「ん…美味しいよ」

 

「本当?ありがとう♡」

 

何かめっちゃ可愛いなと思ったので…頭を撫でながら抱き締めてみた。

 

「こ、こら!子供扱い…………え!?抱き締め…え!?どしたの?!君!?」

プシューーと煙が出る龍驤を満喫した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





駆逐艦…ではなく、軽空母の龍驤さん。
はじめてのメイン回。



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221話 龍驤と1日夫婦 ②

朝ご飯を済ませてからお出掛けの準備を行う。

 

うーーん…やっぱりいつも通りの服でええかなあ?

 

「ん?鳳翔か?」

 

「龍驤ちゃん…あの人とデートよね」

そこにはにこやかに佇む鳳翔が居た。

 

「あーー…そーなんやけどなあ…やっぱりウチって…こんな見た目やん?」

「やからさあ…街に出ても…()()見られんのと違うかなあ…と」

 

「夫婦として…カップルとして見られるか?って事?」

 

「うんー…」

 

 

 

 

 

 

 

「周りなんか別にいいじゃないですか」

 

 

「周りが何と言おうと…どんな目で見ようと…龍驤ちゃんとあの人は1日夫婦なのですから」

 

 

「自信持って行ってくださいね?」

 

 

「せやなあ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「龍驤さん!行ってらっしゃいー!」

「楽しんでくるんじゃぞー!」

 

 

「「「「いってらっしゃーい!」」」」

 

 

皆に見送られて街へと行く。

 

この人は何も言わずに手を繋いでくれた。

それに応えるように手を握り返す。

その手をまた提督がぎゅっと握るので…またぎゅっと握り返す。

 

「あはは」

2人で顔を見合わせて笑う。

 

 

 

何や…幸せやん…。

 

 

 

 

 

 

 

 

街に出たものの…所謂のーぷらん!って奴やから…ふらふらと街を歩く。

意外とそれも楽しい!

 

 

 

まぁ…声かけられる度に

「お!お兄ちゃんと仲良いな!」

とか

「え?娘さん?」

とか

「親戚の子?」

とか

「え?誘拐…?ロリコン…?」

とか…

 

 

あー…アレや…

勢いで波動拳とか撃てそうやわ…本当…

 

 

 

しかし、その度に

「違いますよ!彼女は私の嫁ですよ!大人ですよ」

と、律儀に言い直してくれる。面倒やないんか?

 

さすがに多くなったので面倒やないか?と聞いてみると…

「…本当の事じゃないか!俺達は夫婦なんだからさ…?面倒だからって適当には流したくないなあ…」

 

「素敵な嫁なんだぜ?ちゃんと知ってもらいたいよ」

なんて言うんや…………アホ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

んで…

 

 

「あーー?お前かー?ちびっ子を嫁とか言って連れてるのは?」

 

「ロリコン?ロリコン?」

 

「どー見てもガキじゃねえか」

ゲラゲラと笑う馬鹿ども…腹立つ…。

 

「行こう」

と、手を引く提督を奴等が引き止める。

 

「おいおい!無視すんなよォ…」

 

「な?」

と、ウチに触れようとしたクソガキに提督がキレた。

 

 

「オイ!龍驤に触れるな…」

 

 

「ああん!?カッコつけんなや!!!」

態度が気に食わないんだろう。1人が提督を殴りつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それにウチはブチ切れた。

 

「オイ…クソガキ共…誰に何したんやッ!!!」

 

 

 

「あ?」

 

いきなりの怒声に一瞬びっくりするも、その声の出どころがウチとわかった途端に笑い出す。

「おーおー!少しビビったぞ?チビ助が!ギャハハハ」

 

 

ウチは…艤装を展開した。

コイツら……ちと痛い目に遭わせたるッ!!!

 

 

艦載機で馬鹿共の周りをブチ抜いた。

 

 

「ギャハハ………は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには鬼がいた。

 

 

 

軽空母と侮る勿れ。

 

彼女は戦場にては鬼のように駆け巡る空の覇者。

かの一航戦すらも…彼女達に師事を仰ぐ程に。

 

 

 

例え体が小さくとも…

そこには歴戦の思いや力が備わっている。

艦載機を操らせたら鎮守府でもトップクラスの実力の持ち主…

名の通りにその姿は龍が昇るかの如くの動きと味方に言わしめた。

 

 

 

それが先代は明治のコルベット龍驤から名を受け継いだ軽空母の龍驤である。

 

 

 

 

 

 

彼女の目は本気そのものだった。

一歩でも動けば撃ち抜かれる…。誰もがそう思っていた。

 

が、1人の男が両者の間に立った。

それは彼女の旦那である救だった。

 

彼は言う。

 

「龍驤は凄えんだぞ…」

「色んな戦いに出て……今でもそれは変わらないけど…思いやりもあって…厳しさもあって……」

 

「確かに見た目は小さい…」

「でもその体で!とてつも無い大きなものを守って来たんだ!」

 

「舐めるなッ!チビ助と呼ぶな!俺の嫁だ!!」

 

「そう言っていいのは…俺だけだ!!!」

 

1人の胸ぐらを掴んで言う。

「謝れッ!!彼女に謝れ」

 

「この!離せっ!」

殴りかかって来た他のメンバーをいとも簡単に殴り返す救。

 

 

ギラリと睨む救。怖気付くガキ共。

そりゃそうか…相手にしてるもんが違うもんなあ…。

 

 

 

 

素直に謝って来たので一言言った。

「人は見かけだけやないで」と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんな龍驤」

の、一言にウチは耐えてたものが切れてしもうた。

ずっとそーなんや…

ウチがこんなやから…君に嫌な思いさせたんや

 

「なんで君が謝るんや…」

「ウチのせいであんな目にも遭ったんやで!?」

「ずっと言われて…恥ずかしかったやろ」

 

「でも龍驤は俺の為に怒ってくれた」

 

「何アホな事抜かしてんのや!そんなの当たり前やッ!!君はウチが1番大好きな人なんや!その人が傷付くとこなんて見たないっ!!」

 

 

 

 

 

「それは俺も同じだよ」

 

 

 

 

「あ……」

 

「大切な人が傷付くとこなんて見たくないよ」

「ニヘラと笑ってても…気にしてるのは知ってるし…それを肯定なんてしたく無い」

 

「だから、誰にでも何度でも言うさ」

 

「龍驤は俺の嫁ですよ…ってね」

 

 

 

 

 

「…バカや…君はホンマにバカやあ…」

嬉しかった。

 

 

 

「あと……コレを渡したくて…もっと早く渡しておけば良かったかな」

 

 

「…?」

 

 

差し出された箱は…ええ、わかるよ。

ウチが欲しくて欲しくて仕方ないもんや。

 

世界中の誰もが…いつかは欲しいと思うやろな。

特に…好きな人から貰いたいもんや。

 

 

ウチは幸せ者やなあ…

 

 

 

やって…

ホンマに好きな人から貰えたんやから…。

 

 

 

 

「……受け取ってくれるかな」

 

「当たり前や!もう返せ言っても返さへんで!」

 

「ウチを…1人の女として見てくれるんやな?」

 

 

彼は無言で彼女の左手を取り…薬指へとその証を贈る。

 

 

 

「それが返事なんやな?君の」

嬉し涙も止まらない。

 

「もちろん」

 

 

「愛しとるで…提督ぅ」

 

龍驤は目を閉じる。

彼女の言いたいことはわかる。

 

だから…

そっと抱きしめてキスをする。

 

 

 

 

「……さすがスイーツ好き…甘いなぁ…キスも」

 

「ええ?!そうかなあ?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あとこれを…」

 

「ん?」

「冬に向けてのマフラー…?」

 

 

「…ありがとう……ホンマにありがとう…」

 

まだ季節には早いけど…それでも

巻いてみたら…こんなにも暖かい。

 

 

「ならね?ウチも君にあげたいものがあんねん」

 

「?」

 

「まあ…ウチも少し早いけど…コートや」

 

「わお…!!ありがとう!!着てみるよ」

 

 

 

少し早いけど…嬉しかった。

ウチが選んだ服を好きな人が着てくれてる…

 

 

 

 

 

 

2人で帰った。

片方はマフラー、片方はコート。

 

 

例え季節外れと言われようとも

例え笑われようとも

関係ない。

大切なのは2人の時間と気持ちだから

 

 

 

 

 

 

 

「あら!お似合いですよ!2人とも」

鳳翔達が出迎えてくれる

 

彼女達は何があっても笑わない、蔑まない。

何故なら彼女達は知っているから。

今のこの2人がとても幸せだと言うことを…。

 

そんな2人を見て幸せな気持ちになれることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「幸せや…ウチは幸せやわ」

 

「これからもずっとそうだよ」

 

「せやね!…愛しとるで!提督」

 

 

今日も仲良しな2人が鎮守府に居たらしい。

騒がしいけれども…楽しそうな2人が…

 

 

 

 





少しでも良いなと思っていただけたなら幸いです!(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)


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222話 私だッ!!

 

はいどうも…

神崎 救です。

ひょんな事からこの世界にこんにちはしてから…数年。

死んだり色々しながらも元気に過ごしています。

 

あ、西波島の鎮守府兼母港で提督兼指揮官をやってます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんにちは…。

里仲 麗です。

猛武鎮守府で提督やってます。

あ!救君の…奥さんも…やってます。

婚姻届は出してませんが…新婚さんですよぉ〜♡

ライバルだらけですけど…1人や2人じゃなくて…軍隊並みに…

うん、てか海軍だから軍隊だね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で…今2人で全力で走ってます。

何で走ってるかって?

 

 

 

 

 

気になります?

 

 

 

 

 

はい、それでは…

後ろを見てください……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督ーーー!!!」

「指揮官ー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「私がNo1アイドルですよねえええ」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイドルという名の修羅がマイクを片手に全力で追いかけてくるからです。

 

 

 

 

 

ゾンビとかってさ…ゆっくり来るからいいけどさ。

最近のゾンビって全力で走ってくるでしょ?

 

そんな感じ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「……」

 

艦隊のアイドル…

その称号だけなら那珂ちゃんか桜サンディエゴだろう。

実際…自称してるしね…。

 

 

彼女達はそれぞれ暇な時にアイドル活動と称して歌や踊りを披露している。

その際に誰かが観客や踊り子として犠牲になっているが

 

 

 

以前は那珂ちゃんだけだったので、被害自体はそこまで大きくなく、最悪は遠征任務等で凌げた事もあったんだ。

 

 

 

 

 

奴が来るまではな…

 

 

 

 

 

 

奴はヤベェ

鎮守府の近くのグラウンドに特設ステージを建てやがった。

電気とかどっから引いた?

てか!許可してねえし!

 

紙吹雪からサーチライトから花火から…

少し本格的過ぎませんか!?のレベルでの感じ。

 

 

 

 

 

 

 

そりゃあ…

それを目の当たりにした遠征帰りの那珂ちゃんは泣きついてくるよね……神通と川内に。

 

俺ぁ…初めて艦娘に胃薬を持っていったね、いや本当に。

神通が…あの戦闘狂のめっちゃ大人しい、戦闘時以外は常識人な神通がだよ!?膝から崩れてたもの…腹押さえて。

 

 

 

 

 

んで、結局は那珂ちゃんもステージ組んじゃってさ…

小遣いというか、給料で甘いもの買いまくって妖精さんに頼み込んだらしい。

 

 

 

 

 

 

24時間ライブとかもしてたなあ…

深海棲艦との戦いよりもげっそりしてた皆。

あの川内に…「夜…コワイ…朝がいい」とまで言わしめたもんなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰かが言った。

本当!いっつも余計な事言う奴居るよね!!

 

 

「アイドル系も増えたけど…センターは誰だろう?」

 

 

 

 

その一言はアイドルをデーモンに変えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「私だよ!」」

2人がバチバチと睨み合う。

 

 

「ね?!指揮官!私だよね!?」

 

「提督!!私だよね〜?」

 

 

 

 

 

うーん……

 

 

 

 

「………」

 

「あれ?無視?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ〜麗ちゃん〜?」

 

 

「……」

 

「あれ?…聞こえてないのかなあ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こうなったら…」

 

「どっちが一番か…」

 

「白黒つけるしか無いねッ!」

 

こうして地獄のイベント(2人の総選挙)が始まったのだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「歌うよー!!」

 

 

 

 

「ライブだよー!」

 

 

 

 

 

鎮守府のグラウンドの両端にそれぞれが陣取ってライブを始めやがった。

 

 

 

桜アトランタ…桜リノ…

 

 

うわ…神通がこの世の終わりみたいな顔をしておるわ…。

川内…?嘘ん…川内が笑って…いや!泣いてる!!?

 

 

 

 

 

 

「おい…金剛おおお!?おまっ…何してんの!?」

 

「ヘーイ!ダーリンの永遠のセンター(正妻ポジ)は譲れないネー」

 

「榛名も譲りません!」

 

「私も!」

 

「もちろん私も」

 

 

 

馬鹿四姉妹(ユニット)で来やがった……だとぅ!!

 

 

 

 

「そんなんじゃないから!!」

 

 

 

 

「歌いますッ!!"悠久のカタ「やめろおおお!」

 

お前らは"進め!!"の方だろうがッ!!

 

 

 

「呼びましたか?指揮官様♡」

桜赤城……あぁμ兵装はないからね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それを皮切りに各地でゲリラライブが始まり…グラウンドは混沌を極めた。

 

 

 

 

 

 

 

「文化祭かよ」

「いや…何とかフェスとか…かな?」

 

まあ本人達が楽しそうだから良いんだけどさ…

 

 

 

おい、桜明石…誰が露店出して良いと言った?

 

 

「ありゃあ……だめかにゃあ?」

 

「…いいよ……」

 

どこぞの「指揮官くぅーん」とか言う朝日よりはマシか…

奴は…三笠クラスに古参だから誰も止められないんだよ…

 

 

 

 

 

恐らく、2人の目論みとしては…

どちらが多くのファンを動員できるか?みたいな感じだったのだろうけれども…

 

W明石やその他の者達の手によって文化祭状態になったので結局は…まあ楽しい感じにしかならなかった。

 

 

んでんで…

「ぱんぱかぱーーん!2人とも楽しんでるー?」

 

「もぐもぐもぐもぐ」

 

「…愛宕さん…に、赤城さん…」

 

「え…何この状況……」

 

 

 

 

「今気づいたの?」

 

どうやら2人はマジでライブに集中してたらしく…今の状況について来られないみたいだった。

 

 

 

「挫けないもん!」

 

「まだ行けるわ!」

 

 

 




さーせん…
あげたつもりになっていたでござる…



お楽しみ頂けたなら幸いです(๑╹ω╹๑ )!
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223話 私だよ!!

       〜第二ラウンド〜

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイドルたるものどんな時でも…笑顔でなくっちゃね⭐︎」

ふふん!と桜サンディエゴが高らかに言う。

 

 

「那珂ちゃん、負ける気がしないよッ!」

負けじと那珂ちゃんが言い返す。

 

 

 

 

 

 

ほう…?

なら…これをどうぞ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、比叡カレー(限定復刻版)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すんませんでした」

 

マッハ土下座が決まったぁぁぁぁぁ!

しかぁし!!めっちゃ笑顔じゃねえ!あれは本気の顔だッ!!

 

ガタガタ震えてやがるッ!!

 

 

 

「え?!ちょっ…どうしたの?!那珂ちゃん?辛いの苦手なの?!ねえ!?マジで震えてない!?」

 

違うんだよ…桜サンディエゴ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…え?何これ?カレーなの?」

 

「カレーDEATH」

 

「あれ?ですが違うデスに聞こえましたけど…」

 

 

「食え」

 

 

「え?あの…えと」

 

 

「食え」

 

 

 

 

 

 

「え……えへへへあ、ああアイドルだもん…これくらい」

ドサリ…

はい、桜サンディエゴちゃんダウン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひっ…!?」

んでその姿を見た那珂ちゃんがメンタルブレイクで倒れる。

 

起きがけにカレーを食べさせたところ…やはりダウン…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はい、戦闘不能が2人でした。

ドローですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひどく無いですか!?」

ぶー垂れる比叡。

 

 

 

 

「私の勝ちですね!!!」

勝者…赤城、金剛

気合いで乗り切る奴ら。

 

 

 

ガクリと倒れ込む金剛

「ヒエー!?お姉様ッ!!」

 

「比叡…妹を守るのは…オネーちゃんの…役目よー…」

 

 

おい、どっかで聞いたぞ?!そのセリフ!

 

 

 

 

「お姉様……比叡は嬉し……あれ?お姉様?息してないッ!?」

「お姉様ッー?お姉様ぁぁぁぁあああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       〜第三ラウンド〜

 

「…あ……あい…どるたるもの…料理ができないと……ミ⭐︎」

 

 

「……まか…せ…て…よお」

 

 

 

何が彼女達をそうさせるのか?

息も絶え絶えの満身創痍で這い上がる2人。

料理が原因で半日以上ダウンしてたのに…その上で料理対決とは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

して…

 

もし…もしだ。

この目の前の物体Xを料理と呼称するなら…俺は真の料理を求めて修行に行こう。

もし、これが兵器と呼称できるなら…直ちに何かしらの条約で禁止にするべきだ。

 

 

 

なぜかって?

 

 

 

 

 

料理で鍋が溶けるなんて見た事ねえからだよ…。

 

 

 

 

 

特殊金属製のお玉でお皿に盛ったんだが…

ジュワァァァア!!

って音立てながら皿と机と地面が溶け落ちてゆく様は…いとおかし。

 

いや…洒落にならんけど。

 

 

 

 

 

2人とも目を逸らしてるし…

 

 

桜サンディエゴに至っては…。

 

「馬鹿には見えない…料理です…」

とか言ってるし。

 

まあ…害がないだけこっちのがマシだろうけど…

すげえよな!

料理対決で空気が勝つなんて…あってはならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ましてや審査員が俺となると…。

100000000歩くらい譲って桜サンディエゴのを食べたとして…それは最早おままごとの領域であるし…。

那珂ちゃんのにいたっては…死ぬ未来しか見えない。

かくなる上はドロー……?

 

「ご主人様…」

桜ベルファストが語りかけてくる。

なんて優しい表情だ…

 

「骨は拾いますね」

「いや…溶けそうですね…」

 

「おい」

 

 

 

 

「誇らしきご主人様…」

「私がおつぎしますね?」

 

やめろ!

お前のドジっ子属性は今回は洒落にならんッ!!

 

「そして私も一緒に食べます…!!」

 

「…桜シリアス……」

 

がっくがく小刻みに震えても笑顔だけは崩さない彼女こそ、本物のアイドルになれるんじゃないか?なんて思った。

 

「食べないから大丈夫だよ…」

 

 

 

 

 

 

 

その後の対決も対決(笑)だったので割愛。

 

今は2人は清掃中。

ローション障害物競走とかやりやがったから大変な事になったわ…

 

 

 

「ただでさえお金に困るのに要らん経費を使うなッ!!」

なんて大淀がこの世では見られないであろう表情で2人をアイアンクローしていた。

頭からあんな音するんだね…いや、本当に…

 

 

 

 

 

 

「うう…私がセンター…なのに」

 

「私も…」

 

 

 

「そんなに気張る必要あるか?」

 

「「え??」」

 

「2人が明るいと皆が楽しいんだ。どっちがセンターだとか、誰が1番だとかは必要ないだろ?」

「俺にとったら2人とも大切な人だし…街のみんなもお前達を応援して、ファンもいるわけなんだからさ」

 

 

なんて少し良い言葉で終わらせる。

少し無理矢理だけど…本心だし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………こうなるとは思っていた」

 

目の前には那珂ちゃん達をはじめ沢山の娘達が…

 

 

 

「「「「正妻ポジ(センター)だけは譲れません」」」」

 

 

 

この日だけは海に沈みたいと思った。

 

 




アイドルって何だっけ?

那珂ちゃんはバラエティアイドル…




少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!


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224話 響と1日夫婦 ① 思いの結晶

響…。

今の響は改ニの状態である。

 

 

 

改ニ……そう"響"のまま(不完全な改ニ)である。

ヴェールヌイではないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ、提督。私だよ」

コンコンとノックをして入ってきてのは帽子を被った駆逐艦の響。

青い髪が可愛らしい娘である。

 

 

「いらっしゃい」

 

どうぞと部屋へと通す救。

 

「…電と雷はこういう感じだったのか…ドキドキするね」

ちょこんと座ってニコリと微笑む彼女。

 

「コーヒーと紅茶どっちにする?」

 

「んー…ココアで」

悪戯に笑う響。

 

「だろうと思ってココアを用意してるぜ!」

 

「ありゃ!やられた」

と、言いながら笑い合う。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…まもるー」

そこに妖精さんが入ってくる。

 

「……やあ」

響が声をかける。

 

「……やあ」

妖精さんが返事をする。

 

 

「?」

少し不思議に思いながらも救は妖精に尋ねる。

「どしたの?」

 

 

「あ…資材の件で……」

どうやら工廠の資材関係の報告らしい。

武器建造では瑞雲と彗星が出来たらしいが…日向が瑞雲をとっていったとか!!

 

日向は後で反省文だね!と笑う響。

 

 

 

 

妖精さんを見送った後に響に聞いてみる。

「…なんかあったの?妖精さんと」

 

「んー……なんというか…少し難しいんだよね」

 

「まあ、深くは聞かないでおくよ」

 

「…いずれは言うから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は変わって…朝になる。

 

 

「起きて?」

と言う割には布団に潜り込んできて引っ付いてくるあたり…

ほんとに可愛い…

「あと少し…」

と、響を抱き締めて眠気に素直になってみるが…

 

 

「せっかく作ったご飯が冷めるよう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きますッ!!」

 

 

 

 

響が…作ってくれたご飯を冷ませるわけにはいかない!!

閃光の如き速さで支度をして食卓へと向かう。

きっと今のは島風ですら「はっやーーい!」って言うレベルだろう!世界すら狙えるレベルでしょうさ!

 

 

「…はやいね。提督」

 

「そりゃ…当たり前だよ」

 

「ありがとう♡」

 

 

 

響の作ってくれたのは

ベーコン、スクランブルドエッグ、サラダにトースト。そしてコーンポタージュ。

意外と洋食派なのねえ?

 

「たまには洋食もいいものだよ」

 

 

 

 

 

 

響の料理は少し薄めの優しい味だ。

その分ポタージュが少しだけ濃いめ。手作りなのだが、これがうまい。

今年は冷えるのが早いのか…少し寒めなので…あったまるよおおお…。

 

 

 

 

今日は響の希望に従い、街を歩く。

姉妹みたいだなと言われるけれども…この街の人もそろそろ理解し始める。

あぁ…奥さんね…と。

全部が全部好意的に捉えてる訳ではないが、大半の人は応援してくれている。

 

 

 

 

今回のお目当ては、冬用のコートである。

響としては

「やっぱり好きな人に選んでもらえると嬉しい」

との事で、数軒は店を探したが…なかなかグッと来るものがない。

「なかなかこだわってくれるんだね」

 

「当たり前だろう?!響に頼まれたってのもあるし、使い捨てじゃないんだからしっかり選ぶよ!」

 

 

 

 

 

私は…この提督の真剣な表情が好きだ。

普段は脱力しきったような感じの人が、スイッチが入った瞬間に凛々しく変わる。

ギャップ…というのかはさて置いて、手を顎近くに持っていって考える姿は大好きなんだ。

 

 

おお!これにしよう!

と、彼が選んでくれたのは濃紺カラーのロングコート。

凄くあったかそうで…カッコいい!はらしょーだ。

 

「俺からのプレゼントにさせてもらってもいいか?」

 

「はらしょー…それは一生大切にする」

 

「いいなあ…」

いつの間にか昨晩の妖精さんもいたようで驚いた。

 

「おお…君は…」

 

「だいじょーぶ!じゃまはしないよ」

とだけ言っていた。

 

 

 

 

 

 

 

お昼を食べてから一休みする。

響はコートの入った紙袋を大事そうに抱えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ…」

響が話しかけてくる。

うん?と返すと彼女は少し俯きながら話しはじめた。

 

 

 

「気付いてると思うけど…私の改ニの事なんだけど」

 

「うん」

 

「受け入れられるかが怖いんだ…」

彼女はポツリと言った。

 

 

「受け入れられるかが…?」

 

 

 

 

「アレはね…」

と、会話を紡ごうとした時だった。

ウーーーーー!!と警報が鳴る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深海棲艦のはぐれ艦隊が近海に接近したらしい。

 

「行こう!提督」

響は言う。

確かに鎮守府からの到着を待っている間も勿体ない…

が、響は1人だ。

 

 

 

 

 

 

それでも…彼女には「待つ」と言う選択肢はない。

大好きな彼の守りたいものは彼女の守りたいものだったから。

 

「提督ッ!!先に海に行きます!」

 

 

俺はすぐさま大淀達に連絡を入れる。

鎮守府近海にも珍しく侵攻してきているらしく、何とかそっちに回すから少しだけ響には頑張って欲しいとのことだった。

 

 

 

「あっちにいるよ!」

妖精さんに連れられて響の元へ行き、指揮を行う。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひびき……」

 

「響ッ!!」

 

多勢に無勢とは言ったもので、善戦はしているもののすぐにジリ貧になってきた。

 

「ぐっ…」

少しずつ傷つく響。

 

 

波止場近くに帰ってきた響に話しかける。

 

 

「響…やっぱり、改ニが不完全なのか!?」

 

「…そ、うだね…」

 

「どうすれば!」

 

「これは私の問題なんだ」

「…………怖いんだ」

 

 

「怖い?」

 

 

「私だけ違うようになってしまうんだ」

 

名前のことだろう…か。

 

「大鯨達だって…」

改で艦型が変わったり、名前が少し変わるのは全くない訳ではない。

 

 

 

「違うッ」

 

「私は…国すらも変わるんだ!!」

 

「ひび…」

 

「不安なんだ!皆にどう思われるか…避けられるんじゃないか!提督にも嫌われるんじゃないかって!!」

 

「もちろん、提督はそんなこと言う人じゃないと思ってる!でも…心の片隅で…私は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

その時だった。

1発の砲撃がこちらに飛んできた。

 

 

 

体が勝手に動いた。

体が勝手に響と妖精さんを抱えて飛んでいた。

 

俺達は吹き飛ばされてしまった。



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225話 響と1日夫婦 ② 抜錨

オリジナルな設定があります。


『……響?ウチの響は改ニだぞ?』

 

『響?ヴェールヌイでなくて?』

 

『何だそりゃ?響は響だろ?救ちゃん』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督ッ!!」

 

「ていとく!!」

響と妖精さんが呼びかける。

頭を少し切ったらしい救が大丈夫だよと言う。

 

「そんな…私のせいだ…ごめんなさい…やっぱり…私は……」

 

「…響」

 

 

「ひびき、やろう!いましかないよ」

 

 

「こんなので…本当の改ニになったら……私は…私は余計に嫌われちゃうよ!!」

 

「ひびき…」

 

 

「私は私のままでいたいよ!あの名前は…私は嫌なんだ!!」

「きっと提督にも、皆にも見捨てられちゃうよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「響じゃない私なんて……」

 

「今のままでもいいじゃないか!!…ね?皆が来るまで待とう?」

弱気になる響。

 

「でも…もうそこまでてきはきてる!」

 

「いやだよ…私は…嫌われたく…」

 

 

 

 

 

 

 

「そんな事ないッ!!」

 

「え??」

 

 

 

 

 

 

「例え…お前がどんなだろうと…お前には変わらない」

 

「名前が、国籍が変わろうとも俺はお前から離れないッ!!」

 

 

 

 

 

「あ……」

 

 

 

 

 

あの真剣な眼差しだった。

私の大好きなあの表情が私に向いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

敵が少しずつ近付いてくる。

 

 

 

 

 

 

私は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひびき…」

 

 

ふわりと近付いてきたのは妖精さん。

 

 

「妖精さん!!!」

救が焦ったように言う。

妖精さんは鎮守府運営の要なんだ。ここで怪我させるわけにも、失う訳にもいかない!

 

 

 

「…きいて、てーとく」

妖精さんは真剣に俺に問いかけた。

 

 

 

「ほんとに…てーとくはきにしない?なにがかわっても…」

 

 

いきなりの質問に戸惑いながらも、俺は真剣に返した。

 

「当たり前だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひびき……きっとだいじょーぶだよ」

妖精さんは彼女に話しかけた。何のことか俺にはわからないけれども…彼女は立ち上がって「うん」と言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わたしはあなた…あなたはわたし」

 

 

「どういう…」

どうやら話について行けてないのは俺だけらしい。

 

 

「そのままの意味だよ提督…。妖精さんは私なんだ」

「私達が願った…結晶なんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精さんとは…"願いの結晶"である。

 

 

 

 

 

 

 

人の願いか?

海の願いか?

世界の願いか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「艦」の願いである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かく在りたいと言う願い。

 

終われども…それでも尚力になりたいという願い。

 

 

もう一度…この世に生まれたいと言う願い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その形が妖精の姿なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女達は表に出ない。心許した…資格を持つ者にしか見えない。

 

 

 

それは

艦の声を聞く者。

海の声を…命の声を聞く者。

 

 

良くも悪くも…彼女達は選べない…その者が善なる者かどうかまでは…。

 

だが、彼女達は力を貸す。

来る未来が明るいものと信じて。

 

 

 

 

 

 

「ねえ…もういちどきかせて?てーとく?わたしたちをしんじられる?」

「たとえぜつぼうのなかでも……わたしがわたしじゃなくなっても」

 

 

 

 

 

 

 

「最後の最後まで信じるさ」

 

 

 

「なら…うん…わかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひびき…今だよ」

 

「…うん」

響はその声に答える。

 

 

「わたしたちは…2人でひとつ」

「わたしは…たいせんごのきおく」

 

「私は大戦時の記憶」

 

 

妖精さんは言う。

「…わたしたちはね?あまり…このなまえはすきじゃないけれども……大好きなあなたの為なら…喜んでこの名前をあなたに捧げる!!」

 

 

 

 

 

 

「行こう…響」 妖精さんは言う。

「行こう…ヴェールヌイ」 響は言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

2人の体が光りあう。

敵もたじろぐほどの眩しさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴェールヌイ

 

 

 

 

 

響が大戦後に露国に接収された際の彼の国での名前。

信頼できるもの…と言う意味らしい。

 

 

彼女は新しい名前で新たな艦生を歩むことになる…。

 

 

 

が…彼女はついに祖国に帰ることなく彼の国で…最期を迎える。

 

響として…終えることのできなかった命。

 

人の手によって冷たい海に眠った彼女。

 

 

 

 

帰りたい…。

 

姉妹や仲間に受け入れられなかったらどうしよう……

ましてや大好きな提督に…となると……。

 

その気持ちは彼女の心に大きな影を生んだ。

故に彼女の魂は自分自身を2つに分けた。

 

 

 

 

響としての艦娘…。そして、ヴェールヌイとしての妖精。

だが…ヴェールヌイとしての彼女も…もう一度人の役に立ちたいと願う。

その願いは妖精となってずっと彼女…いや、自分自身を見守ってきた。

 

 

 

 

 

ー響 改ニー

そう、これは不完全なのだ。

 

 

 

この世界では救の下でも響は改ニ状態でしかなかったのだ。

本来はあり得ない。

ただ、この世界ではその先がヴェールヌイなのだ。

 

 

 

だが、彼女達が真に認めた者でないとその姿は見せられない。

 

 

自分達の願いを託せる提督でないと…。

信頼できる人にでないと…。

 

 

 

この名前だと嫌われてしまう。

 

それは杞憂だった。

なぜなら…彼女は彼女だから。

 

その言葉を受け取った彼女達。今の2人の願いは…

大好きな人の為に…大好きな世界の為に戦いたい…だ。

 

名前にしがみつくプライドなんかより…

この人の方が何倍も大事だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女達は覚悟を決めて受け入れた。

もう、響としては居られなくなる。

 

 

だから何だ。

それがどうした!私は…響だッ!

 

 

 

そんなことを彼は気にするような人ではない。

それは私達が1番よく分かっている。

 

 

きっと…あの人は私を響と呼んでくれる。ヴェールヌイと呼んでくれる!

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は一歩踏み出す。

彼女は一歩寄り添う。

 

 

 

2人は目を閉じる。

 

暖かい光が…私の中に…

提督との強い絆の暖かさと……優しさと…

仲間との強い絆…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……何?』

深海棲艦は目を見開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

響  –– 真 改ニ 発動 ––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

名称変更

 

新真名 ヴェールヌイ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヴェールヌイ…抜錨」

 

ガラガラと碇が上がる。

 

 

 

 

 

 

ヴェールヌイ…。

 

 

 

 

 

彼女は深く帽子を被り…新しい姿で敵と対峙する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「例え…名前が変わろうと…お前はお前だよ…響…」

 

「うん」

 

ありがとう…提督。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと!響!!何1人で抜け駆けしてんのよ!」」

 

 

 

 

突如響く声。

聞き慣れた声。

 

 

 

 

 

 

 

そこには姉妹の姿があった。

騒ぎに駆けつけた彼女達は…響を見つけた。

「…え…」

サッと帽子を深く被るヴェールヌイ。

彼女は不安だった。

見た目は響なのに名前が違う…もし、認められなかったら…と思うと…。

 

 

 

 

 

「何よ!名前がカッコよくなったからって!レディなの?!」

 

「!?」

響は驚いた。

 

 

「いくら名前が変わろうと…あなたはあなたよ!」

 

「私達の姉妹…六駆の駆逐艦…響よ」

 

 

 

暁が先頭で言う。

 

 

「行くわよ!!ついてらっしゃい!!」

「その前に…」

 

「ほ、ほら!提督?この子に渡すものあるでしょう?」

「ま、待ってるから…早く渡してちょうだい!!」

 

 

 

初めてのケースだわ…そんなの

コホンと咳払いを軽くして響に向き合う。

 

 

「…お前は響であり、ヴェールヌイである」

「…響……これからもずっと…俺と共に居てくれ」

 

「…うん…居るよ」

「提督が好きだから…認めてくれるあなたが好きだから!!」

 

指輪を渡して抱き寄せる。

 

 

キスは…甘い味がした。

 

 

 

「……私も早くちょうだいね?」

と、暁が言う。

 

 

 

 

「行ってくるよ!提督!!」

 

 

4人は海を駆ける。

 

 

 

 

例え…

死に場所が違おうと、名前が違おうと…

彼女達の姉妹である絆は誰にも別つ事はできない。

 

 

 

 

 

響は見違えるほどにその力を発揮した。

 

「…左……撃つッ!右は当てるッ!」

敵を寄せ付けない牽制と砲撃の使い分けに魚雷の予測発射。

 

 

「その方向には…魚雷がいるよ!」

 

ズドォン…

ズドォン!!

 

「暁!!左から来るよ!!」

 

「任せてッ!!」

 

 

 

並の駆逐艦では全くと届かない言っていいほどの領域に彼女は居た。

今の彼女達は恐らく最強に近いと言っても過言ではない。

 

「デートの邪魔をしてくれたね!でも…私は分かり合えた!自分と向き合えたッ!!」

 

 

 

「私は私だっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「少し時間が短くなったのが寂しいなあ…」

 

「でも今日はお疲れ様…よくやってくれた」

 

「……うん」

 

 

「…響?」

 

「ん」

 

「ヴェールヌイ?」

 

「ん?」

 

「………響」

ぎゅっと彼女を抱きしめる。

「……ん」

 

「この分の埋め合わせと褒賞はまたさせてくれ」

 

「待ってる…」

 

2人は仕事前のギリギリまでずっと隣に居たとか…。

 

 

 

 




メッセージで響の改ニはヴェールヌイじゃないですか?と質問してくださった方が居ました。
こういう使い方でした…。ネタバレになるんで曖昧な言い方ですみませんでした!


さて
今回は特殊なパターンでした。
長門達とは違った最後の迎え方をした…ということで今回のような話にしてみてます。
少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。

感想などお待ちしてます!
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226話 猛武鎮守府奪還作戦 ① 作戦開始

響く轟音……戦闘音だ。

 

ここは猛武鎮守府、里仲 麗が提督を務めていた鎮守府。

例のクーデターにより、組織は壊滅…鎮守府は宮川達に乗っ取られていた。

 

住民達への当たりも強く、不満は溜まるがそこは軍人達である。

しかし、力で捩じ伏せられて声を上げることすら出来ない。

 

 

 

 

世間の声は上がる。

"軍は必要なのか?"

"本当に私達を守ってくれるのか?"

 

 

だが、彼女達は耳を貸さない。

強大な力を持つ者達にとっては…小鳥の囀り以下にしかならない声だから。

 

 

 

 

 

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

宮川 真希の目の前には敵がいる。

手も足も出ない…敗北。

たった1人の深海棲艦相手に部隊は壊滅においやられる。

 

 

奴は突然やってきた。

鎮守府に居座る彼女達の所へ。

 

 

 

たかが駆逐艦棲姫1人…と、彼女達は笑った。

次の瞬間だった。

加古と古鷹が吹き飛ばされた。

 

駆逐艦と侮ったやつの砲撃で…だ。

 

 

『か、かかれええええ!!奴を生かしておくンじゃねええ!!』

真希の号令の下に艦娘達が飛びかかる…が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…何なのよッ!!あンたはァ!!」

舌打ちをしながら相手を睨みつける宮川。

山城は隣で肩で息をしている。

 

 

『………』

投げかけられた言葉に彼女は答えない。

ただ一言だけ発した。

『…チガウ』

 

 

 

「…くっ…山城ォ!全員!一旦捨てて立て直すわよッ!」

 

「ハイッ!!」

 

 

 

宮川達は猛武鎮守府を後に敗走した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

駆逐艦棲姫が猛武鎮守府を占拠した。

 

 

 

そう密偵から連絡が来てから数日。

 

 

 

 

 

街の人も麗を心配する声も多く、ウチのような前例があるので

猛武鎮守府奪還作戦を立てることとなった。

 

 

 

 

 

麗は妙な胸騒ぎを感じていた…。

何だろう…言葉にできないけど…でも、確かな胸騒ぎ。

 

 

「不安か?」

 

少し肌寒い夜風の中に佇む私に…あったかいコーヒーを差し入れてくれたのは桜さんだった。

…最近は一緒に行動することも増えたから割と仲良くなった。

ミルク多めと砂糖…の代わりにチョコ?

 

「甘いものは落ち着くらしいから」

 

男勝りな所もほんの少しずつ…ほんの少しずつ直ってきてる……ような気がする?

 

「……ありがとうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして何よりライバルである…。

 

 

『おーーい!救ー!!買い物行くから行こーぜ!!』

 

『ん?桜姉…いいよ!』

 

『おーい…手ぇ繋ごうぜ』

 

 

 

悩みの種は…多いよう…。

 

 

 

 

 

「ここにずっと居るのも幸せ…なんだろうけど…やっぱり鎮守府は私の家だからね…」

「あの2人のためにも…取り戻さなきゃ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今回の作戦は…麗ちゃんと桜姉で遂行してもらう」

 

「補佐として将ちゃんにも遠海域まで同行してもらい、場合によっては戦闘に参加してもらおうかな」

 

「「「はい!」」」

 

「俺と巌さんは鎮守府海域と呉海域を警護するよ」

 

「え?俺も?」

 

「当たり前です」

 

 

 

 

 

 

 

「総指揮は…麗に任せる」

救は初めて麗を呼び捨てに呼んだ。

 

 

「……はい」

 

それは彼女を信頼しての言葉。

海軍大将としての麗への指名。

 

 

「…大丈夫、麗ちゃんならやれる」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明朝、作戦は開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうすぐ近海域に入る……うん?…アレは……」

 

 

猛武鎮守府海域近くで…誰かがこっちへ向かってる?

敵…か?と身構えるメンバー…。

 

 

 

 

 

 

が…

 

 

 

 

「敵じゃありませえん!!」

眼鏡をかけた女の子と数名の艦娘が涙目で手を振っていた。

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「た、助けてくださいいい!!」

 

「あなた達は…?」

 

「ば、僕は織田 静と言います!僕達は……宮川の圧政に耐えかねて逃げ出したんです!お願いします!撃たないで!!」

 

 

 

話を聞くと…宮川はかなりの強硬派らしく、味方の人間ですらも使えなければ処分する…らしい。

 

「私は…今から鎮守府を取り返しに行くんです。あなた達は…えと……」

 

「な、なら!僕達も…行きます!たくさんやられたんで…少しでも仕返ししたいんです!あなた達の力になれると思います」

 

「……えと…」

 

「……俺達はお前達のことを知らない。だからお前達を庇う、守る余裕は無いぞ」

 

 

「え、ええ!大丈夫です!奴等から鎮守府を取り戻しましょう!」

 

 

 

「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

猛武鎮守府近くは何とも異様な雰囲気にあった。

 

 

 




少しでもお店頂けたら幸いです!


コメント等お待ちしてますー!
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227話 猛武鎮守府奪還作戦 ② それが彼女の選ぶ道

目の前には鎮守府を囲おうとする宮川達と阻もうとする深海棲艦達。

三つ巴の戦い。

 

 

 

 

「あン?クソッ…タイミング悪ィな…」

 

「って…おーおー!あン時のお嬢ちゃんか!ギャハハ!」

()()()()()()()()()()

 

 

 

「フン!嫌味な奴だな…」

 

 

「そっちは…ああ!桜さンかァ!最強も見る影ねぇなァ」

 

 

 

「んでお前は………ふん」

静を一瞥して笑う真希。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ…不出来にしちゃあ良くやったよ」

 

 

「何?」

 

まさか!と桜達が振り返る。

 

 

 

「ごめんなさい…」

 

 

 

 

 

 

 

「…ぅ……ごめんなさい…ごめんなさいごめんなさい」

 

泣きながらこちらに銃を向ける静達、

 

 

 

「家族が人質にされてるんです!ごめんなさい!こうするしかなかったんです!!」

 

 

「宮川ッ!貴様ッ!!」

 

 

「あン?使えるもんは…何でも使わないェと損だろぉ?」

ケタケタと笑う真希。

 

 

「あなたはそんな人じゃなかった筈だよ!真希ちゃん!!」

 

「……ハァ?何知ったような口を叩いてンだよォ…?」

「前々からテメェは気に入らなかったンだよ!今度こそ死んどけや!」

 

 

 

 

 

 

迫り来る2つの勢力。

 

 

 

桜の判断は早かった。

 

 

 

 

 

 

 

「麗…俺が道を切り開くッ!!行って将大と合流して外側から攻めて来い!深海棲艦と三つ巴の戦況なんだ…。奴等も深追いはできまい」

 

「桜さんは!?」

 

 

「……大丈夫だ」

 

 

麗はその意図を察した。

 

「そんな!嫌ですよ!一緒に乗り切りましょう!!」

 

 

そう言うのは分かっていた…だから…

 

 

「やかましいッ!!」

桜は怒鳴った。

 

 

 

「いいか?麗…時には下したくもない決断を下さなければならない時があるッ!」

「貴様のその甘さが…時には仲間を危険に晒すんだぞ!!」

 

 

 

 

そして優しく麗の肩に手をおいて言う。

 

 

 

 

 

 

 

「…私達にとって大切なのは未来なんだ。私達の仕事は…その未来を潰えさせない事だろう?」

「お前もその未来の中の一つなんだ」

 

 

でも…と泣きじゃくる麗の頭を撫でる。

 

 

 

 

「猛武蔵…リシュリュー!分かってるな?」

桜は艦娘に問いかける。

 

 

「わかってる…」

と返す2人。

 

 

 

 

 

「……行け!!」

 

 

 

 

 

「桜さあん!!待ってて!絶対…絶対!!」

 

 

 

 

 

 

 

お前は…優しすぎる。

 

 

だが…その優しさは…今の世になくてはならないものなんだ。

だからお前の行くべき正しいと信じる道を行けー…

乙女なら…何が何でも生きて大切なものは守って見せろ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は…舞鶴の虎ッ!!」

 

 

 

 

 

 

ふと、ある男の姿が頭を過った。

 

 

彼女はフッと笑う。

彼女にとって守りたい者は1人の男。

自分を認めてくれた…年下の男。

 

 

「……この気持ちが…好きだと言う気持ちなら…喜んでそれに従おう…」

 

 

「愚弟よ…奴を頼むぞ」

 

「神崎よ!!自信を持てッ!!貴様は…この私が惚れた男なのだ!!」

 

 

「麗よ!!お前は…私が惚れた男が惚れた女なんだ!!、負けるな」

 

 

 

 

 

「さあ……いざ!参るッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆…一緒に死んでくれるな?」

 

 

 

「もちろん!なんてたって…」

「最強の艦隊ですから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

虎の異名は伊達じゃなかった。

近付く者は深海棲艦だろうと、艦娘だろうと薙ぎ払った。

 

 

 

 

「くらいなさいっ!!」

 

ズドォォンと大和から主砲が放たれる。

 

「「ぐううう!!!」」

 

舞大和の砲撃は一度放てば最低でも2人を大破においこんだ。

 

 

 

「そらそら!!おっそおおおい!!!」

「よそ見はダメだよ!」

 

 

誰一人として舞島風を捉える事すら出来ない。

 

 

 

 

 

 

静達の艦隊はそもそも、交戦の意思が少ないのか…

割とすぐに攻略できそうだった。

人質があるとはいえ…敵対してる以上、仕方ないと言い聞かせた。

 

 

 

 

絶対に…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「救ちゃん!!姉貴が!!くそっ!こっちもひでえ!!多い!!」

通信で将大は救に話しかける。

 

 

 

 

 

「なんとなくこうなる事は分かっていた。」

 

 

 

「は?」

将大は叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「救ちゃん!?何故だ!!それじゃ姉貴はッ!!」

「クソッ!!今から姉貴達の方へ行くッ」

 

 

「ダメだ!!そこの戦線も崩すわけにはいかない!!」

 

 

「何でだッ!!救ちゃん…お前は……」

 

「……諦めてるわけではない」

 

 

「なに?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

響く轟音。

馬鹿げたもんだ…。

 

守り合う同士が傷つけあって…。

 

 

 

いくら強かろうとも四方を囲まれればジリ貧になる。

少しずつ押される舞鶴チーム。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐうううう!!」

旗艦の舞長門が被弾した。

 

「くそっ!負けるかぁぁ!!」

 

 

 

「しつけーンだよ!早く沈めやぁあ!!!」

止まる事のない猛攻に押される。

 

 

 

 

 

 

「あぐっ!!」

桜を乗せた伊勢が被弾して桜は海へと弾き飛ばされた。

 

 

 

「桜ッ!?」

急いで桜を乗せ直す伊勢。

 

「ま、まだ大丈夫だ…」

その頭からは血が流れている。

 

 

 

 

 

 

 

 

思い出す。

 

 

戯れに膝枕をしてもらった…。

 

 

どうか少しで良い…

このまま…このままで居させて欲しい。

 

君の温かな膝が…肩が好きだった。

 

君の明るい表情か好きだった。

 

君の人を思いやるとこが好きだった。

 

君の…全てがいつの間にか好きだった。

 

 

 

ありがとう…

 

 

感謝する…

虎と恐れられた私に…楽しい時間をくれて…。

 

 

 

こんな状況でなければ…もっと生きていられたのか?

恋…愛だの…

 

 

 

 

「……いや、大丈夫だ!まだ、まだやれる!!」

 

 

 

 

「うおおおお!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう退場しとけやァァ!!!」

 

 

 

 

 

 

宮川と山城宮陽炎、宮比叡が桜に襲いかかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「諦めてるって訳ではないとは?どう言う意味だ!」

「…麗ちゃんと合流した後だと助からない!!」

 

 

「……いや……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドドドドド!!!

襲い掛かる3名の艦娘の前に艦載機からの掃射がばら撒かれる。

 

 

「あン?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿者ぉ!!何故行かないッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜は狼狽した。

 

何故なら麗が来たから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…決めたんですッ!!もう…誰も…誰一人として…死なせないって!!」

 

「私は私の信じる道を…行きますッ!」

 

「これが私の…選ぶ道なんですッ」

 

「命令違反というなら罰してください!また皆で笑い合って居られるなら…罰くらい受けます!」

 

「麗……」

 

 

 

 

「との事だ!桜さんよ!」

リシュリューが言う。

 

「ウチの麗も我儘になったんだ」

武蔵が笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『戻るよ…武蔵』

 

 

『なっ!?麗?!』

 

 

『戻るの!!後悔したくない!死なせたくない!!なら!!私達がやるしかないの!』

 

 

『私達ならできるッ!!明日を守るなら…今ここでやらなきゃ!!』

 

 

『……麗がそう言うなら』

 

『武蔵!?』

リシュリューは武蔵に言う。

 

『…いや、私達の鎮守府だ』

『…それに……あの本気の目の麗は…神崎でも動かすのには苦労するだろう…。そして………それでこそ私らの提督だッ!!』

 

 

『皆!!私に力を貸してッ!!桜さん達を助けて…作戦を遂行します!!』

 

 

『命令違反だぞ?』

 

 

『皆を救えるなら…いい!!私が全部責任を負います!!』

 

 

『…いや、全員でだ!!行くぞ!!皆ァ!!反転だぁぁあ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが彼女の決断。

甘いと言われようと…戯言だと言われようと…。

死なせたくない。

 

何故なら…彼女の役割もまた

明日を守る事だから。

 

その明日の中に…桜達も含まれているから。

だから麗は戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「麗ちゃんは…アイツらは強いから!」

「麗ちゃんは…桜姉を置いて行かない」

 

 

「…なっ……」

 

「将ちゃん!早めにその戦線を終わらせてから合流に向かってくれ」

 

 

「…早くそう言ってくれよう!心臓に悪い……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

疲弊した桜の前に立つように…

麗達は静や真希、深海棲艦達の前に立ちはだかる。

 

その背中は…

いつかの英雄達のように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時だった。

 

 

『オマエ』

 

 

駆逐艦棲鬼が麗に飛びかかる!

 

「きゃあ!?」

 

 




630…お気に入りありがとうございます(´;ω;`)



はい、麗が主人公ですね。
彼女も色々経験して少しずつ良い意味で我儘になってきました。
ある意味成長が凄い子です。



明日は…お休みをもらいますうう



少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!


感想等お待ちしてますっ!!
ぜひ!よろしくお願いします!


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228話 猛武鎮守府奪還作戦 ③ 里仲 麗

静は驚いた。

彼女達は悪い人達じゃないのは知っていた。

でも、大切な家族が半ば人質のようにされていて…逆らえなかった。

代わりに彼女は艦隊に「1発たりとも弾丸を当てないで」と命令を下していた。

 

 

 

麗が戻ってくるなんて思わなかった。

 

 

援軍を呼ぶ頃には…あの虎ですら、狩られて居るだろうと思っていた。

 

なのに彼女は戻ってきた。

2度と誰も死なせないと言う意味はよくわからなかったが…

真剣な目で…泣かずに帰ってきて私達の前に居る。

 

それに比べて…私は……。

 

 

 

 

 

 

『オマエ…オマエエエエエエエエエ』

 

棲鬼が麗に組みついて叫んだ。

 

 

「このッ離れろ!!」

武蔵に弾き飛ばされる棲鬼。

『ミツケタ…』と、笑いながら彼女達を見つめる棲鬼は皆を見ながら

『邪魔ダナ…』

と、呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『オマエハユルサナイ』

 

「はァ?意味分かンねぇ」

 

 

 

 

 

 

「まぁいいやァ…纏めて…皆殺しだァァア!!」

 

「桜さん!後方から支援お願いします!」

 

「え…あ、あぁ!」

 

 

 

 

桜には一瞬彼女がとてつもなく大きく見えた。

 

猛武鎮守府ー…。

英雄の居る鎮守府の名を継いだ鎮守府。

 

それは重荷だったろう。

とてつもない重圧だっただろう。

しかしー…

 

 

守りたいものの為に戦う。

理屈だとか命令だとかじゃない。

 

届く範囲で守れるものは全て守りたい。

 

 

 

今の彼女の…いや、彼女達の背中は…

紛れもなく英雄の名を冠するに相応しい姿になりつつある。

 

 

「武蔵!要注意は深海棲鬼と棲姫!そして…宮川さん達だよ!」

 

「了解ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…さて……あなたは…どうするのかな」

 

 

「静ちゃん」

 

 

「…里仲…さん…」

 

「立ち上がらないの?」

 

「…自分が間違っているのは分かってます」

「でも…しょうがないじゃないですか!!両親や兄弟を人質にされて…逆らえる訳ないじゃないですか!」

 

「うん…そうだね」

 

「…ッ!!なら!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたが胸を張って家族に戦ったと言えるならね」

 

 

ズガン…と言葉が胸に刺さる。

 

「私にも…家族が居るよ…。花嫁姿を早く見せろって言う両親が…ね。それに…愛する人も居るよ!……うん、今の私も命令違反をした…部下としては最低な奴だけど……もう私の大切な人を誰も死なせたくないから!!」

 

 

「だから、もしも私がここで死んでも胸を張って言えるんだ!!」

 

「私はッ…自分の進むべき正しいと思う選択を精一杯生き抜いたんだ!!って!!!!」

 

 

 

 

でも負けられない…

私には…好きな人がいて…愛する人がいて!

私を愛してくれる皆がいるから!!!

 

 

「あなたが…その道を行くなら…私は!あなたを超えて行く!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだ…

私は…幼い弟や妹…両親を守る為にここに来たんだ…。

なのに…顔向けできる事をしていない!

 

ここで失敗しても…責任を取らせるって形で殺されるだろう…

そうなったら家族はどうなる?一緒じゃあないか!!

 

 

なら…せめて…

あの人に逆らうとしても…私は私の成すべき事をした!って胸を張って言える軍人でなくっちゃ!!

 

 

 

「…ぁ…」

 

言え!!

言うんだッ!!

 

「ぼ…僕…は」

 

言ええええええ!!!

 

「…里仲さんと共に…胸を張れるように戦うよ!!」

 

 

 

 

「うん!よーし!心強いよ!」

「なら…まずは…桜さん達を安全な所へ!誘導と護衛とをお願い!将大さんが来たら状況を伝えて!」

 

 

「さ、里仲さんは?」

 

 

「私は…私の家を取り返してくるね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

迫り来る深海棲艦と真希の艦隊と戦う猛武勢。

やはり、武蔵とリシュリューが中でも群を抜いて戦果を上げる。

 

 

 

乱戦の中真希は思った。

勝ちたい…いや、負けたくないと。

何があってもこいつらには負けたくない…と。

 

特にこの姫クラス、鬼クラスには負けられない。

 

 

 

ならば…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

纏めてやればいいだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真希は命令を下した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

味方諸共掃射せよ––––––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当然。

誰が想像できようか?

 

味方艦ごと沈めようと…いや殺そうとするなんて。

 

 

離れたところから列をなした戦艦、重巡組が砲撃を放つ。

空からは爆撃がー。

 

 

 

 

 

 

「うぐううう!!」

「提督!?そんな!?」

 

『グァッ…』

『バ、バカナ』

 

「嘘っ!?」

 

 

 

 

戦況は一気に傾いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘だよね?里仲さん!?」

 

「麗ッ!?返事をしろッ!!麗っ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

死を覚悟した。

 

 

 

 

 

 

 

が…私は生きていた。




はっぴーはろうぃん!
お気に入りの数が634…武蔵
はい…さーせん…。



少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!

感想などお待ちしてまーす!
ぜひぜひーよろしくお願いします!


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229話 猛武鎮守府奪還作戦 ④ 不死鳥は電撃と共に

今日は午前2時くらいに投稿されてますぜ!
2話目なんだぜ!!
まだって方は…228話も見てほしいぜ…



ハッピーハロウィン!
とりっくおあとりーと!!

飴ちゃんならぬ投稿…。




「…何で私は生きて…」

 

 

 

わからなかった。

だが、一つ言えるのは近くに…真希が居て、その主砲の向きの先は私だと言うこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ナンデ…ワタシタチハ?…』

 

 

 

 

『ヤツヲカバッタ?…』

 

 

 

 

 

 

 

 

『…マモルンダ』

 

 

『……マモレ…』

そう思ったから…。

 

 

 

何とも言えない感情。

奴だけは死なせてはならない…と体が勝手に動いてしまった。

 

2人して轟沈寸前になる程に…

何故だ?

 

彼女達からパラパラと何かが剥がれ落ちていた。

 

 

 

 

 

 

体が崩れている。

彼女を庇ったから。

 

 

 

 

 

 

 

たくさんの仲間を屠ったあの女を許すな。

 

あの邪悪を許すな。

 

傷付く仲間をも掻き分けて彼女達は宮川を目指す。

 

 

 

 

 

 

 

いや……

違う…。

 

 

ワタシタチハ…。

 

 

 

「何で生きてンのか分かンないけど…邪魔なのよ…麗…アンタ達はッ!!!山城!やってしまえ!!」

 

 

 

山城の砲撃が麗に向かう。

武蔵が踏ん張るが…これは躱せないー…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソウダ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バチィッ!!!!!

 

何かが山城の砲撃を弾いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドォォン!!!

「がっ!!?」

 

何かが山城を蹴り飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…山城!!…チッ…まだ戦艦クラスを隠してたか!!」

 

 

 

麗と武蔵は驚く。

周りに戦艦クラスなぞいない。

 

 

 

 

 

 

もやから現れた艦娘を見る。

 

 

 

 

 

 

『………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまなのです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はらしょー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…!…ッ!!!…!!!!!」

麗は目を疑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ナニヲボーットヤッテル!!』

 

 

 

『シンデシマウゾ!!!』

 

 

目の前に居たのは駆逐艦棲姫と棲鬼だった。

 

 

 

 

 

 

「あなた達…?」

 

 

 

 

 

 

幻……

 

私が見たのは…幻……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ッ!頭ガ…』

 

 

『ココガザワツク…』

心臓あたりを抑える棲鬼。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの提督を見た時から頭が痛くなった。

何だろう?

思わず飛びついた。

何でだろう?

 

痛いんだ。

 

 

 

 

とても…とても…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ココロガイタインダ。

 

 

 

 

 

ココロ…?って何?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『思いやる気持ちが…あなた……はあるから。で…あるじゃない。だからあなた達は……と同じだよ』

 

 

『あなた達は自分達…引き金を……ことも…引かないこともできるんだから』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宮川が憎いのは…

…※を泣かせたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だよ…深海棲艦が味方…?はン!やっぱり皆の敵じゃない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

例えガクガクに震えながらでも…

 

例えふらふらになりながらでも…

 

例え姿を変えようとも彼女達には守りたいものがあった。

 

 

 

 

思ってしまった。

悔しい…

帰りたい…と。

 

 

少なからず思ってしまった。

 

憎い…と。

 

そのマイナスの感情は彼女達を海の魔物に変えてしまう。

 

 

 

帰りたい

憎い

帰りたい

憎い

 

 

憎い帰りたい憎い帰りたい憎い帰りたい憎い帰りたい憎い帰りたい憎い帰りたい憎い帰りたい憎い帰りたい憎い帰りたい…

寒い…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何が憎いのか?

 

 

どこへ帰りたいのか?

 

 

どうすれば寒くなくなるのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

頭の片隅にあったのは…

何かはわからないが…温かい記憶。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは………

 

 

 

 

「違うわよッ!!」

海に浮かぶ破片に飛び移った麗は彼女達を抱き締めながら言う。

 

 

 

 

 

 

 

「この子達は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

2人の体のヒビがどんどん大きくなる。

 

 

 

 

 

 

 

「私のかけがえのない家族なのッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ!?意味不明なんですけど!」

 

「てか敵が家族だって言うンなら…尚更極刑処分っしょ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

家族…

知らない…言葉。

冷たい海の中で憎しみを抱いて生まれた私達。

 

 

いや

忘れていただけなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

ハッとした彼女が言う。

『……アリガトウ…』

 

 

 

 

 

 

『テートクサン…レイチャン』

 

 

 

「…ッ!やっぱり!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ニコリと笑った2人の体が崩れて……消えた。

 

彼女はぎゅっと…その光を両の手に掴んで握りしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?は?意味わかんない…マジでわかんない…!」

「アハハハハ!何よ!消えたじゃないッ!!何?アンタの家族とやらは…限界超えて死んじゃったわよおー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

彼女は涙を拭う。

拭って武蔵の艤装に立ち上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンタこそバカよ……私には分かる…心の底から通じ合った私達だからわかる」

 

 

「はァ?あのバケモン共がオマエの家族だってェ?」

 

「あァ…逃げン時に沈んだ2人ってかァ?数は合うわなァ…」

「でもよォ…夢見過ぎなンじゃねえの?」

 

 

「死んだ奴は戻って来ねえよ!!」

 

 

「いや…戻ってくる」

 

 

 

「何強がり言ってンのよ!!死ぬのが少し延びただけじゃン!今すぐ送ってやンよォ!!」

 

 

宮山城が構える。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの子達は帰ってくる!!信じてるから!!」

 

「仲間の帰りを信じてる?!馬鹿じゃねェのか!?」

「もう一度言ってやる!馬鹿女ァ!!死んだ奴は…もう戻らねえンだよォ!!」

 

 

 

「うるさいッ!!」

麗が叫ぶ。

武蔵もリシュリューも皆が麗の方を見た。

真希や桜、静ですら…。

 

 

 

 

 

「信じて何が悪い!待って何が悪い?!」

「私は…馬鹿で良いッ!!」

 

 

 

 

 

彼女が思い重ねるのは…救の姿。

彼が言った言葉を…今借りよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それが私の進む道なんだぁぁぁあ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

思わず武蔵はもう一度彼女を見る。圧倒された。

確かに麗は変わった。

前向きに…恐らく彼の影響を受けたのだろう。

だが…今の麗は……眩しくて…何よりも確固たる決意と強さを感じる。

 

なんだろう

今の麗なら不可能すら可能にしてしまいそうな……そんな…。

 

 

 

 

そして、まるでそれに呼応するかのように…

 

 

 

 

 

ゴロゴロ…

と雷鳴がなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な…何よ」

「いいやあ…山城ォ!ヤレェェ!!!」

 

宮山城から砲撃が放たれようとした…その時だった。

 

 

 

 

ズドオオオオオオン!!!!!

 

 

 

 

 

宮山城に落雷が直撃した。

 

 

「ぎゃぁぁあ!!目がッ」

突然の雷光に目と耳を抑える真希。

 

 

 

 

「……!!!!」

白目を剥いて倒れ込む宮山城。

 

 

「や、山城ッ!?な、何だよッ!?こんな雲一つない空に…」

 

 

 

 

 

 

 

 

雲一つない晴れ渡る空に轟く雷鳴。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは奇跡の雷。

 

 

 

 

 

武蔵やリシュリュー達には麗が引き起こしたと思ってしまう程の…

その雷鳴は…本当に意思を持ったように敵を薙ぎ払った。

 

 

 

 

 

 

 

決して起こることのない奇跡を…彼女達は起こした。

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし

それは奇跡ではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なにが憎いか思い出した。

 

 

 

 

私達の大切な…大好きな提督()を…

大好きな麗(大切な家族)を…

泣かせたからだッ!!!

 

 

 

 

 

だから…ワタシタチハ…私達は…奴から鎮守府を…私達の帰る場所を取り返したいと思ったんだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雷撃の音が原因か…周りが音すら聞こえない中で…

雷鳴の光が原因か…視界すらぼやけてしまう中で…

 

酷く静かな世界の中でも…彼女にははっきりと聞こえた。

酷く揺らぐ世界の中でも…彼女にははっきりと分かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「知らないの?不死鳥は…何度でも甦るんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……雷鳴と共に…約束を守る為に戻って来たのです!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま…なのです」

 

 

「待たせたかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全然…ッ!!時間通りだよ!2人ともぉ」

 

涙で滲むその先には…欠けた家族が居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女達の絆が手繰り寄せた…必然である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え?

 

宮川は困惑した。

ぼやけながらでも徐々に視界が戻ってきた。

 

 

 

 

 

「オマエ達は…死ンだ筈だろォ…」

 

 

 

 

 

 

 

違う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの2人は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

違うッ!!

 

この目の前の光景は…

 

 

 

 

 

 

 

 

本物だ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「揃ったなぁ…」

リシュリューは言う。

 

 

「「指示を…麗ちゃん…」」

2人は言う。

 

 

 

 

 

ニヤリと彼女は笑って…真面目な顔で言う。

 

「…猛武鎮守府!砲雷撃戦用意…ッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

今の彼女達に…敵うものは居ない。

 

 

 

 

 

 

 

 





ハロウィン!
ハロウィン!!

マンソンverあの曲を聞くんだ…
え?ハロウィンネタは?
やりますよ?

時期は過ぎるがなッ!!



麗はどんどんと主人公に近くなってます。
この小説の中では人気キャラではあるのでありがたいのですが(๑╹ω╹๑ )


少しでもええやん…!と思って頂けたなら幸いです。

感想や評価、メッセージなどお待ちしてます!
頂けると嬉しいです!


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230話 猛武鎮守府奪還作戦 ⑤ ただいまとおかえりと

真希は知らない。

ひれ伏す側になった事はない。

男にも女にも…

その態度ですら問題にならなかった…何故なら強かったから。

しかし…桜は別だった。

コイツは…何か別の強さを持っている…だから近付かなかった。

 

麗は…歯牙にもかけなかったのに…

どんどんと頭角を出してきたのが気に食わなかった。

 

私が負けるなら…桜だろうと思っていた。

 

 

 

なのにどうだ?

目の前の雑魚と思っていた泣き虫は…

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

海に振り落とされた私と偽装の上に立っている麗…

 

気に食わねえ!!

テメェみたいな…カスに負けるわけにゃあいかねえンだよッ!

 

ザバン…と艤装に上がる。

びしょ濡れなところも…クソッ…

 

「テメェは絶対ェにぶっ殺すッ!!」

 

 

「させると思ってるの?」

響…いや…

 

 

死の先に…

その先の先に再び彼女と歩む事を願って

彼女に涙を流させないと誓った彼女は

ヴェールヌイとなって戦艦の前に立ちはだかる。

 

「なンだよ…その姿はァ?!」

 

 

「…響……?」

「いや……ヴェールヌイ…?」

 

 

「うん。響でいいよ」

 

 

 

 

 

 

「さあ…準備運動もできたし…やろうか!」

 

「……ぐ…舐めるな!」

宮山城が真希を降ろしてから襲い掛かる。

 

「駆逐艦如きが…戦艦にかてると思ってンじゃねェぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「駆逐艦…ごとき?」

武蔵とリシュリューが笑う。

 

 

 

 

「…ははははは!!!」

「ごとき…だってよぉ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「響と電のコンビネーションは…私でも勝てないんだからな」

 

 

 

 

「な?」

 

 

 

 

 

 

何故彼女達が残ったか?

 

弱いから足手纏いになってしまうから…時間稼ぎの為ではない。

 

 

 

 

 

武蔵は猛武鎮守府のなかでも最強の艦娘である。

 

 

 

 

 

ー…が、それは単騎での場合だ。

 

 

 

電と響…この2人のコンビネーションは…鎮守府の中でも最強だからだ。

 

 

その強さは比肩するものはなく、鎮守府最強である。

 

 

 

少しでも多く削るために

少しでも生き残ってもらう可能性を上げるために…

彼女達は残ったのだ。

 

 

 

 

 

 

「いくのです!響!」

 

「うん!行こう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

単身で響がこちらに突っ込んでくる。

 

 

 

「…それで最強…?」

宮山城が照準を合わせる…。

もちろん避けることも想定して…。

 

 

 

ニヤリと響が笑いながら左に重心を傾ける。

 

 

 

「ほらね!!」

砲身を左に少しずらした……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時…響が2人に分かれたように見えた。

 

 

 

 

 

 

いや違う。

 

電とか言うチビか!

電がピタリと響の後ろについていたのか!!

それが二手に分かれたのか!!

 

 

宮山城は目線を泳がせてしまった…

 

「そこだよッ!!」

 

「そこです!!」

 

2人が魚雷を放ちながら動きながら主砲を構える。

 

 

宮山城は電と響と2人の発射した魚雷と……処理しなくてはならない情報が一気に増えてしまった。

 

 

こうなればできる事は一つ…

防御姿勢でなるべく回避に徹する…。

 

が、判断を鈍った!

 

ズゴォン!!ドゴォン!!

「ぐおっ……」

 

……?威力が低い…?

 

「まさか!これは」

 

 

 

ズドドドン!!

背中を撃たれ…振り向こうとすると左側を撃たれ。

「ぐっ!?」

 

二つの目があろうとも…対角に居て別に動く2人を捉える事は出来ない。

 

 

 

「ぐぁあ!!」

 

なら…せめてどちらかでもぶち殺す!

腕の一つで足りるだろうか?しかし、そうなればコンビネーションは意味を成さない。やれる!やれる!!!

 

なら改ニですらない電から…

 

 

真正面に電を見据えて…拳を繰り出す宮山城。

それをスッと躱す電と響…。

 

「なぜまたコイツ()が!?」

 

また判断が鈍った!!

 

 

その隙を突いて2人は拳を躱しながら顔面に膝を食らわせる!

「ぐっ!こ、このおおおお!!!」

 

 

ガクン

バランスを崩す宮山城。

響が後方から膝を蹴ったのだ。

 

 

 

「ちょうど良い…高さなのです」

電が回し蹴りを顔面にぶち込む。

 

ドゴォ!!

「…ぐっ…あっ!」

 

 

 

 

「「これで…」」

 

 

「返してもらうぞ!私達の家を!」

 

「返すのです!!やられた借りを!!」

 

 

2人が拳を構える。

 

 

「「終わりだぁぁぁあ!!!」」

 

その想いを顔面にぶち込んだ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

宮山城は…

馬鹿にした駆逐艦に一度すら触れる事なくたおされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…馬鹿な…」

こんなはずはない!

有り得ない!!

 

 

「…全員…殺せ…!!自爆しようと…何だろうと!」

砲撃が電と響を狙う!

 

 

が…その砲弾は2人に届くことなく撃ち落とされた。

 

 

 

 

 

 

「……やりました!やりましたよ!麻耶!!」

 

「当たり前だ!任せろ!」

 

 

 

「静ちゃん…?」

 

「…静……テメェ…!!家族の命が惜しくねぇのか!!」

 

 

 

「僕は…ッ!守る為に軍人になりました!!」

「麗さんに言われて目が覚めました…僕も胸張って軍人だと言える人間になりたかった…!!その為に居るんです!!」

 

「あなたに屈したら…それは達成できないッ!」

「例えここで私が死のうと…僕は…やり切ったと言えるようになる為にここに私の意思で立つんだ!!」

 

 

 

「……」

 

囲まれた。

こんな奴にすら…アタシは…負けるのか?

 

 

 

 

クソッ……

 

 

 

 

軍人として…胸張って…か。

アタシは…邪魔なものは全部屠ってきた。

物凄い数の仲間と死体の上に今のアタシは在る。

 

……それが正しいと思ったのに

 

何だよ…奴が少しカッコよく見えちまったじゃねぇか…

 

 

チラリと山城を見る。

ハッと目を覚ました彼女は涙を浮かべながら立ち上がろうとする。

ガクガクと震える膝を叩いて立ち上がろうとする。

 

思えば…彼女もずっとアタシについてきてくれたなァ…。

 

 

 

「もういい…山城…」

 

ハッとした宮山城が真希を見る。

「…でも!!」

 

 

「……いい、アタシ達の負けだ」

 

 

 

 

 

 

馬鹿にした泣き虫に

舐めた駆逐艦に

利用していた陰キャに

 

ここまでされたんだ…負けでいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……強えよ…オマエ達は…アタシに勝ったンだ…最強だぜ…」

 

 

 

「最強だとかそんなのはどうでもいいんです」

 

「守りたいものを守るだけの強さが在れば…それでいいんです」

 

 

「フッ…馬鹿だなァ……あぁ…馬鹿で良いって言ってたンだっけ…」

 

「うん、馬鹿でいいの」

 

「そうか…」

ニコリと笑った彼女の顔は…先程までの顔とは違っていた。

 

 

 

 

「静ちゃん…」

「ありがとうね」

 

「ぼ、僕は何もやってないよ!」

 

「ううん…あなたの言葉は…心は届いたよ」

 

「ありがとう…助けてくれて」

 

 

ありがとう…

僕は…裏切ったんですよ?

なのに…そんな言葉を…

 

あぁ…そうだ

感謝される人になりたかったんだ…

戦える…指揮できる力があるからこそ…正しく在らなければいけないんだ。僕はそれを忘れていたんだ…。

 

ぽろぽろと涙が流れる。

感謝をしなきゃいけないのはこちらなんだ。

なのに嬉しくて情けなくて涙が止まらないんだ。

 

 

彼女に抱き着いて泣いた。

優しく慰めてくれる麗ちゃんに誓った。

もう間違わないと。

 

 

「間違ってもいいんだよ…それを正すのも私達仲間の役割だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お帰りなさい…2人とも…」

ぽろぽろと泣きながら2人を迎える麗。

 

 

「…うん、ただいまあ」

「麗ちゃん…」

 

「ごめんね!寂しい思いをさせて…!!ごめんね」

 

「こっちも…心配かけてごめんね」

 

泣いた。

誰に見られようと構わない。

笑われようと…何だろうと構わない。

 

この喜びは…私達にしかわからないから

この涙は…私達はだけのものだから

 

 

「さあ…久しぶりに帰ろう」

 

 

 

 

 

 

 

うーーん…ぼろぼろだけど

やっと帰ってきた…

 

「ただいま…」

誰も居ない執務室に呟く麗。

お帰りなさいと何処からともなく聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 

振り返ると…皆が立っていた。

 

 

「「「「「おかえりなさい」」」」」」

 

 

「「「ただいま!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰る家を…

家族を失って…それでも彼女達は進み続けた。

よく出来た程の戦果。

家も家族も取り戻した。

2度と失ってたまるか…と、皆が思う。

彼女達はより強い絆で結ばれた。

 

彼女は今日の日を忘れないだろう。




久しぶりのマトモな戦闘シーン?



少しでも良いぜぇ…と思って頂けたなら嬉しいです!


感想など頂けると嬉しいです(๑╹ω╹๑ )


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231話 不思議のハロウィン ① 発熱とハロウィン

多分3話くらいのハロウィン。

次回は突拍子もないネタが出たりするのでご注意下さい。



「……という訳だよ、救君」

 

「ん…無事で良かった…麗ちゃんも…」

 

「うん…」

「もう少し…ひっついてもいい?」

 

「いいよ、おいで」

 

「……幸せ……て?何だか熱くない?救君」

 

「そう?」

 

 

 

 

 

無理しないで休みなよ?と言いながら帰る彼女を見送り執務に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うーーむ…

確かに言われると何だか体調が優れない…

 

「提督??大丈夫ですか??」

と大淀が聞いてくれるが…頭に入らない、ダメだ。

頭がぼーっとして…

 

そのまま俺の意識は途切れた。

 

 

「?!?提督!!うわっ!熱!誰か!誰かー!!!」

 

 

 

 

 

「う…」

 

40.0度…

しばらく執務はお休みね…と大淀らが話している。

 

「執務は私が、秘書艦の方も予定通り、執務のサポートをお願いします!残ったメンバーで提督の看病を行います」

 

 

 

 

 

「パンパカパーン…(超小声) 提督?大丈夫?」

「お見舞いに来ました」

私高雄と愛宕がやってきました

 

「お…おお… ありがとう……」ゼェゼェ

提督は目は虚で焦点が定まってなく、とても辛そうだった。

 

「熱は…下がってないどころか上がってますね…」

私達はそういう病気に罹らない…私にうつして治ってと言えないのが悲しい…。

 

「ははっ… 不甲斐ない…。すまんな、時間を割かせて…今日は非番なんだろ?ゆっくりしてくるといい」

 

と間宮チケットのつもりで差し出したのはスーパーのクーポンたった。

こんな状況でも私たちの事を…あなたって人は…

例え朦朧とする中でもそう気遣ってくれる優しさにジーンとした。

 

 

「長居しても、提督がしんどいだけね、提督…何かあったら呼んでね?」

 

「ああ…ありがとう…うう」

 

 

 

ああ… こんなにひどい熱は久しぶりだ…。

 

 

 

 

「大丈夫ですか?提督?」

羽黒…か?

 

「うわあ…熱やば… おでこの熱さまし変えるわね」

と足柄と那智。

 

すまんな…

「はい、水分は摂ってくださいね?」

と水をくれる羽黒…ありがとう(結婚しよう)

 

「「「え?」」」

 

いつでも呼んでくださいと、妙高が言って部屋を出て行った…

 

 

寒い…とにかく寒い…

熱が高いと何故か寒くなるよね ガタガタと震えていた

 

「大丈夫デース?ダーリン…」

「あなた…」

 

「提督…」

金剛、鳳翔、加賀の3人らしい。

 

 

 

さ…寒いんだ…

 

「えっ 熱が40.8度もあるヨー!?」

「寒いのね?」

と加賀が布団に入り抱きしめてくれる

「少しはあったかいでしょ?」

2人もも入ってきたらしい 

ガチガチ震える俺を抱きしめ…大丈夫…大丈夫と言ってくれた。

 

 

 

「そろそろ遠征だから行くわねー」と帰って行った

 

…金剛?

「……あと少し…」

 

「何してるのかしら?行くわよ?」

と、ズルズルと引きずられて行く金剛。

 

 

 

 

「大丈夫ですか?指揮官…」

「吹雪…?」

 

「はい!あなたの吹雪です」

 

「…ひえぴた替えますね」

 

「う…ありがとう…」

 

 

ぎゅっと吹雪が抱きついてくる。

 

「……早く良くなって下さいね…心配です…」

 

「なに、すぐ良くなるよ」

 

 

 

 

「私の提督さん!」

涙目の由良と鬼怒がエントリー!

姫ちゃんと鬼ちゃんもオロオロとしている。

 

「大丈夫ですか!?出来ることありますから!死なないでください!」

 

いや、どんな情報が出回ってたのさ…?

「多分風邪だよ…寝てれば治るさ…」

 

 

「うー…心配ですよ…」

 

「何かあったら言ってくださいね?」

 

 

 

 

 

 

 

皆…優しいなあ……

早く治さなきゃなあ……

 

 

 

 

 

 

 

もーすぐハロウィンだなあ…

あれか…あの世とこの世の境目が…とか…

 

 

 

 

ぼやける頭で考えながら意識は落ちてゆく。

 

 

 

 

 




ハロウィンハロウィンハロウィンハロウィン

ハロウィンはあの世とこの世の境目が曖昧になる時でもあるとかで
そんなことでのネタを…
別世界のネタを…


少しでもお楽しみ頂けたらうれしいです!

感想などありましたらよろしくお願いします(๑╹ω╹๑ )


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232話 不思議なハロウィン ② とある空の下で


別ゲームキャラがメインで出ます。
ご注意下さい。



目が覚める…。

体が軽い…熱が下がったのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

「……は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは…

 

 

 

 

 

 

 

見知った所だった。

 

 

 

死ぬ前の…駅のホーム。

 

 

 

 

無人の駅のホームは…肌寒くて……。

 

 

 

アレ?俺は…どこから来たっけ?

…家に帰らなくちゃ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

–––ん

 

 

 

 

 

 

 

–––きかん

 

 

 

–––指揮官!!

 

 

 

 

 

 

待ってて…必ず助けに行くから!

 

 

 

「?声?……気のせいか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人が居ない…。

…色々と不安になる。

 

 

見慣れたはずの街中も

懐かしいはずの場所も

人が居ないだけで…こんなにも…

いや、人が居ないのだ…それは異様な事であり、余計に不安を大きくする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………金剛……皆…」

 

?誰だ今の名前は…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「む…?何だアイツらは」

 

陰から見ると…そこにはどこかで見たような…奴らが…ダメだ思い出せない。

 

 

「おい!ここにブルースフィアの指揮官が来ているらしいぞ!」

「見つけ次第抹殺との事だ!」

 

 

 

 

 

 

 

「居たぞっ!!奴だぁ!!」

うちの一体に見つかり…砲撃された!

 

「な、何だ?!映画の撮影…じゃねえよな!?」

 

ドゴンと撃たれたビルが抉られるのを見てそんな馬鹿な話では無いと理解した俺は逃げ出した。

何故狙われるかなんて分からないままに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隠れながら様子を伺う。

 

 

その時、ポンと肩を叩かれる。

びっくりしながら振り返る…と同時に抱き締められた。

近接戦闘かッ!?!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マイネリーベ!!マイネリーベ!!!」

 

「ほえ?」

 

 

 

 

 

 

「あぁ!やっぱりマイネリーベよ!オイゲンの予想通りね!」

 

 

 

「オイゲン…!?って?ええと?そんな声出したら…」

 

 

 

「居たぞッ!!!」

 

ほら見つかったぁぁあ!!!

 

 

 

 

「大丈夫よ!オイゲンか守るから…」

 

 

オイゲンと名乗る女性は黒い兵器を使って敵を殲滅した。

 

 

「か、殺したのか?」

 

「?どうしたの?マイネリーベ?何だか…変よ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やほー…オークランドだよ……」

オークランドと名乗る帽子を被った女性が

 

「指揮官様…あぁ…私の祈りが通じたのですね」

ベルファストと名乗る修道女のやうな女性が…

 

「………」

 

 

 

わからない。

 

 

 

 

 

 

 

ズキンと頭が痛んで…ぐるぐると頭の中がかき混ぜられるような感覚になった。

 

 

「大丈夫?指揮官…」

 

「あぁ…大丈夫だ()()()()()()

 

ん?…あれ?分かるぞ?

 

 

 

 

 

「…!!思い出した?!?」

 

「ん、…あぁ」

 

 

歓びに溢れる3名。

 

彼女達は……ブルーオースというスマホゲーのキャラ達だ。

彼女達もまた…艦と同じ名前を冠して戦う戦姫(せんき)と呼ばれる者達なのだ。

 

さっき俺を襲ったのはムーバーという世界からこちらに侵略をしてきた戦鬼という奴だ。

 

オークランドは1番最初にソロモン基地が強襲された時に出会った戦姫であり…苦楽を共にした存在である。

彼女達が生まれる際は"誓い"が必要であり…

そこは恥ずかしいから省略するが……強い想いと絆で結ばれている。

 

 

 

プリンツ・オイゲンは……

ヤバイ桜赤城。

傷付こうが瞬く間に回復する。

俺の事を赤い糸で結ばれてるの♡と言ってくれる……ヤベーヤツ。

でも、グイグイ行くと照れる可愛いところもある。

 

ベルファストは…

お淑やかな修道女。

いつも、祈りを捧げている…俺のために。

お淑やかな修道女ではあるが、ロックが好きと言うギャップを持ってたりする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そーいや…指揮官!びっくりしたでしょ?!私達が居て!?」

 

 

 

 

「……うんにゃ?」

 

 

 

 

「「「「えええええ!?!?」」」

 

 

「い、いや!もっと驚くとこでしょう?!マイネリーベ?!」

 

「いや…何つーか…慣れた」

 

「慣れるようなことですか?!」

 

「うん…艦これとか…アズレンとか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……詳しく説明してくれるかな?」

 

 

 

かくかくしかじか…

まるまる…うまうま

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?つまりは…?」

「指揮官殿は…すでに別の世界の女と邂逅したた訳で…?」

 

「そだねえ…」

 

「許せねえっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあいいや…これも夢だしね」

オークランドが言う。

 

 

「夢?」

 

 

「はい、指揮官様の見てる夢です」

ベルファストが言う。

 

 

 

 

 

そう言われると少し寂しくなる。

 

 

「マイネリーベはまだ熱でうなされてるのよ」

「世界の境目が曖昧なこの時だから…心がきちゃったのよ」

 

 

 

 

「…あなたの魂は輝いて眩しいくらいだもの…。放っておいたら…狙われちゃうから」

 

 

 

 

 

「ただ…その為に?」

「ただその為に…俺の為に来てくれたのか?」

 

 

 

「当たり前だよ!指揮官!」

オークランドが言う。

「誓ったでしょう?どんなことがあっても守り切ってみせるって」

「あの戦いが終わろうとも…死が2人を別つまでって」

 

 

 

 

ちぅ…と唇が触れられた。

ムスッとした2人も続く。

 

 

 

「……」

体が浮いてくる。

「なんだこれ?」

 

 

彼女達に触れた手が……透けてしまった。

 

「お、オークランド!?これは?」

 

「…指揮官の世界に帰るんだよ」

ポスっ…と彼女自慢の帽子を俺に被せた。

 

 

「お守りがわりだよ!次会ったら返してね?」

 

 

どんどんと体が浮いて…浮いて。

 

 

「一緒に来てくれないのか!?」

 

 

 

「行きたいけど…まだ無理なんです」

ベルファストが寂しそうに返した。

 

 

「…あなた様は…為さるべき事を為して下さい」

「私の指揮官様…武運長久をお祈り申しております」

 

 

 

 

 

 

 

体が地上から離れながら…彼女達を見つめながら…

ありがとうと必死に叫んだ。

 

 

 

 

 

 

「いい?指揮官…」

 

「私達も…いつでも隣に居るから…ピンチになったら叫んで?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どれだけ離れていても…どれだけ遠くに居ても…すぐに駆けつけてみせるから!」

 

目に涙を浮かべる彼女達が…オークランドは笑顔で言った。

 

「そうよ?マイネリーベの敵は…壁はぜーーんぶオイゲンが取っ払ってあげるから♡」

 

 

 

「さあ…私の指揮官様…お目覚めの時ですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハッと目覚めた景色は…俺の私室。

隣では…ずっと居てくれたのか…麗ちゃんが手を握って寝ていた。

 

 

 

枕元には……彼女の帽子があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ん……救君…?まだ寝てなきゃ…ってその帽子は?」

 

「……これは…大切な人がくれた帽子なんだ」

 

「…泣いてるの?悪い夢を見たの?」

 

「……ううん、夢じゃ無いんだ…それが嬉しくて…」

 

「そっか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行っちゃったね」

 

「そうね…少し寂しいけど…会えたからよかったわ」

 

「…祈ります。あの方の無事と…輝かしい明日を…そしていつかその隣に私達が居られるように……」

 

 

 

 

 

「おーい、みんなぁ〜」

 

「朝日さん!」

 

「指揮官クン…帰れたんだね」

そう呼ばれたのは朝日。

敷島型の超超大先輩。

 

 

「また会えるわよ、きっとね」

 

 

 

 

 

 




ホラー…よりは少し不思議な体験。

熱で死にかけた彼を助けに来たとある戦姫達のお話。



以前、熱中症でぶっ倒れた時に見た光景なんですけど

川に居たんですね。
向こうから呼ばれたんでそっち向いて行ってた訳なんですけど

後ろから、バカヤロォ!こっちだろうが!!と、来いよ!と言われて
ハイハイと言いながら引き返したら目が覚めた事がありました。


そんな事を思い出しての話。
美少女は出てこなかったし帽子も貰えなかったけどな!


少しでもお楽しみ頂けたら嬉しいです!


感想などありましたらよろしくお願いします!
お待ちしていますっ!!


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233話 不思議のハロウィン ③ 逃げる提督

「女の子の帽子…?」

「…本当救君て……もう…」

 

「でも…無事でよかった…心配したよ」

ぎゅっと抱き着いてくる麗ちゃん。

 

どうやら熱は引いたらしい。

…彼女達のおかげだろうか?

 

 

 

「………」

俺は帽子を被る。

 

「意外と似合ってるよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やあ!聡明なる読者諸君…私だ…神崎だ。

明日はハロウィンだ…。

毎年毎年この季節になると俺はお菓子を買いだめする。

ハロウィンで配る為だ…。

 

 

 

だが…

 

見てコレ

 

 

隠したお菓子が無いんですけど…

 

まあ…考えられるのは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、容疑者しかいねえわ…この鎮守府…。

 

 

 

 

しかしまずい…

 

このままだと…ッ!されてしまう!悪魔的trick(悪戯)

避けねばなるまい!それだけは!

 

特に時……駆逐艦Sや練習艦K達にトリックオアトリート?と聞かれて

「え?お菓子?無いよ!」

なんて言った日にゃあ……

 

『仕方ないなあ…提督は…』

 

『なら悪戯するしかないですねぇ…』

 

 

 

あれ?それはそれで………

 

 

 

 

アカン!

他が控えとる!アカン!生きねば!

全員ラスボスやないか!

 

 

 

 

かと言って専守防衛に勤めてこっちからお菓子をねだりまくっても仕方ない…。

 

 

 

かくなる上は……

隠れるか…。

 

 

 

 

まあ…金剛なら匿ってくれるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんて甘く考えていた時期が私にもありました。

 

 

 

 

 

「他の女の娘の匂いがするネーー!!!」

 

「具体的には…そう!生まれた時から誓い合って…苦楽を共にした匂いがするヨー!浮気ヨー!」

 

おいマジか!

そこまで分かるんか?!

 

 

 

 

 

「あ…」

 

ん?

どうした金剛?

 

 

 

「ダーリン?」

 

 

「ん?」

 

 

 

「trick?」

比叡が

 

 

「or?」

榛名が

 

 

「treat?」

霧島が

 

 

 

 

 

 

 

 

『trick or treat??』ニタァ…

と、金剛が…

 

本当にニタァという表現が正しいと思う笑み。

 

 

「…なんも無いんだよ…」

 

 

 

 

 

「なら仕方ないデース…」

 

 

 

何を言わんとするか分かったので全力で逃げ出した。

 

 

「「「「待てえええ!!!」」」」

 

「ダーリン!!病み上がりでの無理はイケナイヨー?!」

 

「なら追いかけないで!そっとしておいて!トリックorトリートしないで!!!」

 

 

「ならその帽子は何か説明してくださいー!」

 

 

 

 

 

 

病み上がりにはちとキツい運動になった。

 

 

 

 

 

とは言え?逃げ切るのが俺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「緊急打電!緊急打電!!」

 

提督はお菓子を持っていない模様!

 

逃走中なり!!

 

 

 

 

 

PS…女の子からもらった帽子を被ってる模様!尋問の必要あり!

 

 

 

 

 

 

 

 

「PSが本文じゃねえかぁあ!!」

 

 

 

「あ…」

俺の馬鹿ッ!そんな声で叫んだら…

 

 

 

「…指揮官様?聞きたいことがあります」

桜赤城に桜隼鷹…?

後ろには…時雨だとぅぅぅ!?

 

 

 

逃げろおおおお!!!

 

 

 

 

 

 

緊急事態ッ!!

艦娘もKAN-SENも危険度合いが上昇ッ!!

 

頼れるやつは……居ねえ!!

TBちゃんとかもヤベーヤツだし…桜信濃……ならギリいけるか?でも周りの奴がヤベーヤツらだしなあ!

 

 

桜姉か麗ちゃん……

ダメだわ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは執務室の隠し部屋のさらに隠し部屋。

この前作ったんだ。

 

え?都合良いなだって?

じゃないと…安全なところはこの鎮守府はねえんだよ。

 

 

 

 

「か〜むい〜〜ん」

ベキベキと隠し部屋①のドアを斧で破って賊が侵入した。

シャイニングも真っ青間違いなしだ。

 

「ここがあの提督のハウスね」

 

「んー…提督の匂いがするよぉ…」

 

 

 

 

 

 

「………ここが怪しい…」

 

 

時雨が隠し部屋の隠し部屋を見る。

 

 

「……居ない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって…地下営倉。

 

真希、および静が入ってる。

特段処刑等があるわけでは無いが……

一応…形上で入ってもらっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ン?誰だ?」

 

「ぼ、僕達の処分が決まったのですか?」

 

 

「そんな事はどうでもいいから隠れさせて!!」

 

「そ、そんな事!?」

「「あっ…神崎…(さん)」」

 

「ってお前はバカか!?この前まで戦争してた敵の営倉に隠れに来るってどーいう思考回路してンの?!お前ェ!?」

 

「シーーッ!!お願い!本当にお願い!病み上がりで死にそーなの!」

 

 

 

 

 

カツカツと足音が聞こえてくる。

ヤベェ!と奴はアタシらの後ろの奥に隠れやがった。

 

 

 

「ねえ?救君ここに来なかった?」

「あぁ…そうだ奴がここに来なかったか?」

 

 

「ンぁ?何だァ…?………って!?」

 

「ヒッ!?」

 

そこには…仮装ですか?と言いたくなる程の形相のお二人が居たとか。

 

彼女達は思った。

なんて奴らを敵に回したのか…と。

同時に思った…

 

 

 

 

 

生きててよかった…と。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「後ろに居ます」」

 

 

サレンダーした。だって命は惜しいもの…。

 

 

「裏切り者おおおお」なんて声を聞きながら奴らを見送る。

神崎よ…何があったかは知らないが……ふぁいと!

 

え?ハロウィンの?トリック?

……あそこまでやる?普通?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






もうちっとだけ続きまする。

少しでもお楽しみ頂けたら嬉しいです!

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234話 不思議のハロウィン ④ 不思議なハロウィン

ズルズルと引きずられてゆく俺。

 

このか弱そうな2人のどこにこんな力が?

 

「…あの……お2人さん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゆっくり休んでください」

 

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…熱…まだ上がってるでしょ?」

知ってますよ?

 

あなたがずっと走り回ってる事…

周りの人達に協力や、お願いや説明に回ってる事。

私達に少しでも苦労かけさせまいとしてる事…。

 

「…桜さんが1人残ると言った時、誰よりも先に出撃しようとした事も…」

 

「麗ちゃんを信じているからこそ…留まったことも」

 

 

 

 

 

 

「……その帽子が…何なのかも」

 

 

「え…わかるの?」

 

「…別の世界の…艦娘みたいな存在からですよね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの…何だ…その…お、私を心配してくれて…信じてくれてありがとう」

 

「…お前のことがな…頭に浮かんだんだ…」

「…その中でな…思ったんだ」

 

私は君の事が本当に好きらしい。

例え君の周りに幾らの者がいようとも…この気持ちは変わらない。

 

 

「聞こえてたよ」

 

 

 

 

 

「な"っ"!?」

「ほほほ本当か!?」

 

「ばっちり…」

 

「……殺せ…殺してくれえええ!!!」

桜はドアを突き破って帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…救君…やっぱり、救君がいつも助けてくれるね」

 

「そう?今回は麗ちゃんの頑張りだよ」

 

「ううん…私ね?こんなに胸張って進もう!って思えた事なかったから…救君との出会いが…色んなことが私を変えてくれたんだ」

 

無論、俺にこの子を変えたつもりも…変えようとした事もない。

それはこの子が自分で自分を変えたのだ。

この子の力なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

窓際に歩いて行く彼女が少し振り返って言う。

 

 

 

 

「救君?」

 

「うん?」

 

「私、やっぱりあなたが好き」

 

「こんな私だけどね それでも好き。あなたの周りには沢山の艦娘が居るけど…重婚してるけど… 私負けたくないな」

 

 

あの時と同じ言葉……

初めてデートに行った時と同じ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

出会った時は…うん。色々あったけれども

少しずつ…少しずつあなたが好きになって…。

いつの間にか私の中で1番大きくなって…。

不思議だね。

あなた無しなんて考えられない毎日なんだもの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大好きなんて言葉じゃ…この気持ちは伝えきれないけれど…」

「あなたがピンチなら何が何でも駆けつけるし…」

「辛い事も…嬉しい事も分かち合いたいなって思うんだ」

 

「…だから…これからも、ずっと隣に居させて欲しいな」

 

 

 

 

 

 

夕陽を背に笑う彼女は…

儚くて…綺麗で。

 

そこまでの「何」が俺にあるのか?と思いたくなる程に真っ直ぐな愛の感情を向けてくれるのは…とても嬉しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんか言って欲しいな…恥ずかしいから!」

 

「ん…あぁ、ごめん!その」

「綺麗で見惚れてしまって…」

 

「え?!」

「えと…私が?」

 

「うん」

 

「…そっか…えへへ…嬉しいな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

熱がぶり返した俺はまたベッドで寝ていた。

艦娘やKAN-SEN達も代わる代わるやって来ては看病をしてくれた。

 

 

そして…体調も戻った日の朝。

 

 

 

 

 

「……げっ!!」

ドアを開けた先には…全員が居た。

詰んだ……。

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「 trick 」」」」」」

 

「「「「「「 or 」」」」」」」

 

「「「「「「 treat ?」」」」」」

 

 

 

 

「お菓子はないよ……」

 

 

 

「ならトリック…いたずらですね」

 

 

 

「提督…」

ニヤリとした皆が言う。

 

 

 

「「「「「大好きだよー!」」」」

 

皆が引っ付いてくる。

 

「熱がある時は甘えてよ!」

「そうでなくても甘えてよ」

 

「無理はしないでね」

「撫で撫でしてあげる!」

「愛していますわ」

揉みくちゃにされながら…その悪戯を受ける俺。

 

「…ぐすっ」

「どこにも行かないでね」

 

「心配したよお」

 

彼女達は…

お菓子を隠したのだ。

 

きっとこの人はどんなことがあってもイベントをやるだろう。

 

だから…隠したのだ。

 

提督にはtrick…悪戯は寝てくださいね!

と言いたかったのに…逃げるから…。

 

 

 

 

 

無事お菓子を返してもらって…皆に配る救。

愛してるよと言いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?その帽子の子はどんな子?」

 

どうやら…まだ無事ではないらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

尋問を終えてお菓子も配り終えて自室に帰る救。

 

ベッドの小脇に小さな袋があった。

 

 

 

中には…手作りのクッキーと手紙があった。

 

 

 

 

やほー!指揮官!

一生懸命作ったよ!

ちゃんと食べてほしーなー!

 

あ!安心してね!

ポートランドさんの監修じゃないからね!

ちゃんとお茶会組に聞いたからね!

 

エリザベスも…神通も会いたがってたよ、

 

約束…忘れないからね。

大好きな指揮官へ

 

 

オークランドより。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……塩っぱいよ。

砂糖と塩間違えてら…。

 

 

誰も居ない部屋に響く声と

食べる音。

 

明日の朝にはこの手紙とクッキーが原因で提督は更なる尋問を受ける事になるのだが…そんなこと今の彼は知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 




ハロウィン編の終わりです。

明日からね出張なので更新が微妙なところ…。
まあ、ちまちま行きますよ!

さて…
彼女達からの贈り物は誰がおいたのでしょう?

いつか登場するかもしれません。



少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!

感想などありましたらぜひ!よろしくお願いします!


こんなキャラのエピソードが見たい。
OOの甘いお話を…どうありましたらメッセージ等でどうぞ!

私のページの
上の方のその他からメッセージ送信で送れますので…
ぜひぜひよろしくお願いします!



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閑話 届いたお菓子のお話

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ!赤い私…お願いがあるの!」

 

 

赤…と呼ばれた者は

オークランドの中に居るもう1人のオークランド。

厄災と呼ばれる程の戦闘力を持ち、1人で何人もの戦姫を相手取れるほどの者。

 

オークランドと入れ替わる事で顕現できるが…今はオークランドの中でその時を待っていた。

 

 

 

 

「…藪から棒だな?……いや待て、言わんとしている事はわかる…」

「だがダメだ」

 

 

「え!?何で!?」

 

オークランドは赤に頼もうとしたのだ。

彼の元に…作ったお菓子を届けて欲しいと。

 

赤なら出来る。

そう思ったから。

 

 

 

「私に利がないだろう?それにだ…都合良く呼び出されて遣われるのも癪だ…」

「全てを灰に帰して構わないのなら…やろう」

 

フン…と鼻で笑う赤。

 

ぐぬぬ…と歯を食いしばるオークランド。

 

 

 

だがこのオークランド…タダでは引かない。

 

「まあそうよね…アンタって奥手だもんね」

 

「は?」

 

「アンタも指揮官の事好いてるのに…何も出来ないもんね」

 

「お前…喧嘩を売っているのか?」

 

「だってそうでしょ?出来るのにやらないんだもの…」

 

「ぐっ」

 

「あいつも…中々悪くない…とか言いながらー?夜中に替わってお菓子作ったりしてたくせにー!?」

 

「ぐぬぬぬぬ」

 

 

「そのお菓子…渡さなくて良いの?」

 

「……」

 

「…私は指揮官が大好き。だから一生懸命作ったよ!皆だってそう!あなたもでしょう?…私」

 

「悔しいけど…私にはそれを渡す力はないの…あなたにしか出来ない」

「だからお願い…」

 

「……ッ…ハァーッ」

「わかった…私の負けだ!オークランド。いいさ、行ってやるさ」

「ただし!奴には会わずに置いてくるだけだ」

 

「会えば…離したくなくなるからだよねぇ〜」

そこに現れたのは朝日だった。

 

「……お前か…」

 

「そうよ〜?私のお菓子も届けてねぇ〜?」

 

 

 

 

 

 

「結局…それなりの量になってしまったな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが……指揮官の部屋か…」

 

「む?あそこに見えるのは…指揮官……か」

私室の窓からは皆に囲まれる指揮官の姿が見えた。

 

『あ!指揮官…私の帽子を被ってくれてる……嬉しい…』

 

「…泣くほどか…」

「会わなくて良いのか?お前は」

赤は意地悪な質問をする。

 

 

『うん、約束したから…会う時は…あの人が絶対のピンチの時だって』

『会ったら…離れたくなくなるから』

 

『だって…私を生み出して…誓ってくれた人だから』

 

壊れ行くソロモン基地であの人は私を助けてくれた。

沈むだけだった私を…生み出すことで助けてくれた。

そして誓ってくれた…楽しい毎日を私に…って。

 

戦力が揃えば私の役割はなくなるけれども…

それでも彼は私をずっと大切にしてくれた。

おかげで私はどんな辛い戦況も乗り越えて来れた。

 

 

 

 

「甘くて脳が腐りそうだな」

 

『羨ましいくせに…』

 

「うるさいっ!!置いて帰るぞ!!」

 

『ありがとうね!』

 

 

 

 

その時だった。

ガチャリとドアが開いた。

 

「…?物音がしたような気がしマース…」

 

「む!??コレは…」

 

 

「オー…敵デス?」

 

 

金剛は彼女の手元をみて何となく理解した。

 

 

「・…ダーリンは愛されてマスネ」

 

 

 

「…体には気をつけろと伝えてくれ」

「いや…内緒にしてくれ……」

 

 

「帰るデース?お茶出しマスヨ?」

「あの人に会っていかないのですか?」

 

 

「…約束したんだ」

「会う時は…奴がピンチの時…その時はどれだけ離れていてもきっと駆けつける…とな」

 

「今回はその約束の印を置きに来ただけだ」

そう言って赤はオークランドに代わる。

 

 

「不思議な人ねあなたは…あの帽子はあなたのですね?」

加賀が言う。

 

「わかるの?」

 

「直感よ…」

 

 

 

 

「うん、そうなんだ、アレは私の帽子…あの人は私にとってとっても…とーっても大切な人…私に生きる意味を…生まれた意味をくれた大切な人」

 

「…ならコレをあげるわ…」

 

「加賀!それハー!!」

 

「提督の写真よ…しかも…笑顔のね!!」

 

 

「良いの?」

 

「ええ…あの人がピンチにならないようにするのが私達だけど…」

 

「いつか…ちゃんと会える事を楽しみにしてマース」

 

 

 

 

 

 

『時間だッ』

と、赤はオークランドからかわる。

 

 

「…すまない…そろそろ時間なんだ。行かなくては…」

 

「またな…」

 

 

 

「ええ…また」

「いつでも…来てネー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言いながら帰る2人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は見た。

あぁ…来たんだ…と。

 

 

急いで部屋に向かうが誰もいなかった。

 

 

そして部屋でお菓子を見つける。

 

手紙を添えられたそのお菓子は…少し前まで握られていたのか…少し暖かかった。

 

 

食べたお菓子は…甘かった。

 

 

 

だから言う。

塩っぱいよ…と。

 

それは味付けを間違えた訳ではない。

彼の涙の味。

 

甘くて…幸せで……ほろ苦い。

 

 

 

「ありがとう」

また会えるさと…言い聞かせて

彼は食べながら空へと呟いた。

 

 

 




ほんの少し切ないお話。

彼女達かもしかしたら…また来るかも…

ブルーオースのオークランドは健気。
ステマじゃないよ!


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235話 霧島と1日夫婦 ①

さあ!皆さん…やって参りました!

金剛型四姉妹の…末っ子の刺客!

 

 

 

「さあ!提督…!私の出番ですよ」

ドアを勢いよく開けて入室したのは霧島。

 

 

「おー!霧島ー!よろしくなあ」

窓の外を見ていた顔を霧島の方に向けて声を掛ける。

 

 

 

 

「ふふふ…全て私にお任せ下さいッ!」

彼女は腕組みをして、フンス!と…そして眼鏡をキラリと光らせて言った。

 

 

「かなりの自信だなあ!」

 

 

もちろんッ!!

この霧島…全てをリサーチしております!

 

朝の目覚め、朝ご飯から、出発…

その後のショッピングから…お昼ご飯…その後のデートプランから夜まで……全て…綿密なるリサーチの下で構成されております!

 

 

ニヤニヤが治らない霧島。

霧島らしいと言えば霧島らしい。

 

 

 

 

 

 

そういえば…と思い出す。

 

 

『ヘーイ!ダーリン♡霧島もかなり楽しみにしてるヨー』

 

『頑張って色々と調べてるみたいですよ、霧島らしいですね』

金剛と榛名だ。

 

 

 

霧島は姉妹の中では論理的な方だ…………………姉妹の中ではね。

データや数字にこだわる面も少なからずあるタイプ。

 

故に計算能力は鎮守府の中でも上位である。

特に着弾観測射撃に関してはトップクラスの実力を誇る。

少なくとも…彼女の射撃は確実に当たるのだ。

 

だが、補正…だろうか?

金剛四姉妹の中からは抜け出せない!

姉妹絡みとなると途端にポンコツチックな一面を見せる。可愛いところではあるんだけどね。

 

一例を挙げると…

とある駆逐艦を探し出す時に罠を仕掛けたんだケド…。

 

その罠が

金剛のグラビア本だった。

 

ザルに棒と紐で作った罠だった…。

 

 

え?その駆逐艦はかかったのか?って?

 

かかったよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

比叡って馬鹿がね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後も色々あるけれども…少しツンデレな所も含めて可愛いんだ。

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

その霧島が目の前で複雑そうな顔をしている。

 

その霧島と俺に挟まれるように…朝食が並べられていた。

トーストにハムエッグに紅茶…ミルクティー。

 

「……美味しいぞ?」

 

いや、普通にうまい。

紅茶に関しては言うことなし!

 

何が不満なのか?

その時の俺はその理由を知らなかった。

 

 

「あ、ありがとうございます…」

「私的には納得のいくものではなかったので……」

 

「そうか…」

 

 

 

やはり、少し気恥ずかしそうな…というよりは悔しそうな表情をする霧島に俺はそれ以上の言葉をかける事をやめておいた。

 

 

 

 

 

と、それでも美味しい朝食を堪能した。

 

 

 

 

 

実は…霧島は和食を作りたかった。

だが、上手くいかなかったのだ。

少しでも健康的にとこだわる分失敗…そうする内に時間が来てしまい…

仕方なく洋食モーニングにしたのだ。

 

出来は完璧なのだが…それでは納得がいかない。

紅茶も…金剛には及ばないと思っており…複雑な表情なのはそれが原因だったりする。

 

 

だがそれでは挫けない。

何故なら彼女にはあるから!

何日もかけて練りに練り上げたプランが!!

 

 

 

金剛お姉様をはじめとして、皆に見送られる。

「「「「行ってらっしゃい」」」」

 

霧島なら完璧よねぇ…と恐らく1番安心して見送られたのではないだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

船が来ない。

時間を20分過ぎた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街に着く頃には…35分の遅れがでていた。

 

 

 

 

 

 

そして…朝一に考えていたショッピングでの事だった…

 

 

 

 

「…改装の臨時休業……??」




お気に入りが640!ありがとうございます(´;ω;`)
少しでもお楽しみいただける作品になるように頑張ります!


出張はホテル暮らし…




少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!



感想などお待ちしています!ぜひぜひよろしくお願いします!


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236話 霧島と1日夫婦 ②

「……え?」

 

「あ」

 

 

そこには…改装の為臨時休業と書かれた看板があった。

 

 

「ははは!やられたな!」

 

「そんな…」

 

 

 

焦る。

「そ、そうです!別のプランの店に行きましょう!!」

そう言いながら俺の手を引く霧島。

 

「そんなに焦らなくても良いんだぞ〜」

 

「だ、大丈夫ですから!!」

 

 

予定より遠いところでのショッピング…

 

少し焦る霧島。

 

 

 

 

 

 

お昼ご飯も当初行く予定のモールの近くだったので…

時計を見たらお昼過ぎ…

 

幸い、この付近にもピックアップした洋食屋さんがある!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…定休日……」

そうだった…ここは今日は定休日だった…。

 

 

ふふっと笑う提督…だが、霧島はそれどころでは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

最終的には…1番最後の候補の店しか空いていなく…そこでのランチとなった…

 

 

「……すみません」

 

「ん?気にして無いぞ?楽しいじゃないか。君とこうやって歩くのは楽しい」

「それに飯もうまい」

 

 

どういう訳か…その後も霧島のプランに反したデートとなった。

 

パフェを食べに行った店は売り切れ。

コーヒーとケーキのお店は大行列。

少し時間を潰して戻ったら人が増えていた。

 

 

その後の

ショッピングは…言わずもがな…

 

 

 

あっという間に夕方になろうとしていた。

 

 

 

 

帰りがてらに散歩していると…隣に居たはずの霧島が視界から消えた。

 

振り返ると…。

 

 

 

 

 

「…ふっ……ぐっ…」

スカートを握りしめて俯く彼女はぽたぽたと涙を眼鏡と地面に落とした。

俺は本当に気にしていないのだが…彼女には許せないのだろう。

 

「も、申し訳ありません…完璧にリサーチしたつもりなんですが…いえ、言い訳ですね」

「完璧だと慢心していました…」

「ただ無駄に歩かせて大切な時間を浪費させたのです…」

 

「わ、私は…今日を…大好きなあなたに楽しんで欲しくて…うっ…ぐすっ…ぐすっ」

 

はらり…と霧島からメモ紙が落ちた。

俺はそれを拾い上げる。

涙で滲んだそれには…

 

 

朝一からのスケジュールが書かれていた。

 

 

 

 

朝ごはんは手作りの和食。

前日のメニューも調査しており飽きさせない工夫。

 

 

だから…納得のいかない朝食だったのか…。

 

 

 

 

船の上ではこの時期にもしかしたらイルカが見られるかもしれない。

 

ショッピングでは最近オープンしたスイーツと2人で見たいお店をピックアップ。

 

昼食は前に姉妹で行った…イタリアンランチ。

 

オヤツはコーヒーとケーキで…。

 

夕焼けを見ながら…早めに帰って2人で夕食、のんびりする。

 

 

 

 

 

細かな時間や店の名前も明記されており、如何に今日の為に計画を立てていたかが分かる。

余程楽しみにしてたのだろう。

定休日や改装工事はリサーチが出来ていなかった。

臨時休業は仕方ない。

 

 

 

 

 

その中に…消したであろう言葉が…微かに見えた。

これは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金剛も言っていた。

かなり力を入れて計画している…と。

寝る間すら惜しんで。

 

 

霧島は金剛型四姉妹の中でもブレイン的ポジションである。

弾道の調整計算、その他頭脳派で戦場を駆ける。

それは戦場以外でも…であり、秘書艦の時には確実に時間内…いや、時間を余らせる勢いで仕事を終わらせる。

曰く

「時間が余ればゆっくりお話もティータイムもできます」

とのことで…。

 

 

 

 

 

その霧島が、目の前で泣いている。

必死に泣かまいと…唇を噛み締めて俯いて…スカートを強く強く握りしめて…小さく声を漏らしながら泣いている。

 

 

 

 

何と声をかけるべきだろうか?

今の彼女に俺ができる事は?

どんな言葉が…彼女への労いと慰めになるだろうか…。

 

……あのメモの……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は…今日の為に…

提督の為に……なのに…全部裏目に出て…提督を引っ張り回して…

結局…何も良いところが無かった…

 

お姉様達に負けたく無い。

私だって…提督の事を好いてます。

だから…だから…少しでも…あの中で私が霞まないように…

精一杯やったつもりだったのに…

 

 

 

私は–––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

抱き締められていた。

抱き締められながら…頭を撫でられていた。

 

やめてください…

私にそんな資格…無いです。

 

 

 

しかし彼は辞めなかった。

服が濡れようと…その体も手も温かいままで…

優しく私を…

 

 

 

 

「…ありがとうな霧島」

 

「感謝されるような事は……何も」

 

事実そうだ。

楽しみにしといてください!と言ったのに私は…

 

 

 

 

「見てご覧」

 

 

「–––––え?」

 

提督の胸から顔を上げて提督の見る先を見た–––。

 

 

 

「–––––––––ッ」

私は言葉を失った。

 

 

その先には…

 

 

 

 

 

 

夕焼けに染まる海。

どこまでも続く広い海は…とても綺麗で…遠くに見える島も…建物も小さくぼやけて。

 

寒い季節だからか…空気は澄んで…遠くまで見える。

 

遠くの水平線の彼方に向かう夕陽は…あたりをオレンジ色に染める。

 

涙で滲むその景色は…綺麗で…儚くて…。

今の私には眩しすぎる程に…。

 

 

自然と言葉が出ていた。

「……綺麗」

 

 

 

 

 

「…コレを見せてくれるつもりだったんだろう?」

 

 

そんな事は無い。

決してそんな予定では無かった。

なのに…

なのにー…

この人は…この人はそれすらも私がそうしようとした事にしてくれている。

 

君の事全てが失敗じゃないよと…

言っている。

 

 

「…失敗しても良いじゃないか」

 

「俺は…君との今日が楽しかった。君に手を引かれて着いて行くのが幸せだと思った」

 

「こんなに良い景色も見られた」

「ありがとう…霧島」

 

「……バカですよ…提督は…」

「そ、そんなこと言われたら…私ッ…私はッ」

 

 

「ああ…バカだ」

「だからこそ君が必要なんだ」

 

 

 

「だから君にコレを…この素晴らしい景色の中で送りたい」

 

「あ––」

 

銀色が…夕陽色に反射するそれは…。

予定メモに書いて…消したイベント。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼が見たそのメモには…

消されてはいたが…薄っすらと…本当に薄っすらと読み取れるかも知れない文字があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕焼けが綺麗な海の見えるところで2人で過ごす。

そして…愛していると伝える。

 

指輪を……貰う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは彼女が伝えたかった言葉と

何より欲しかったもの…。

 

どんな言葉よりも…

どんな贈り物よりも欲しくて…欲しくてたまらないもの。

 

2人の永遠の愛の証。

シルバーに輝く小さな指輪。

 

 

でも、それを決めるのは私では無いから。

書かなかった、書けなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ…あぁ…!!」

 

何一つ予定通りに叶わなかったのに…

コレだけは叶えられてしまった。

叶ってしまった。

 

 

「い、良いんですか?提督…こんな……私に……」

 

 

「君だからこそ渡したいんだ。受け取ってくれるか?」

 

 

 

同情もない。

哀れみでもない。

たた…そこには…私に向けた

私だけに向けた笑顔でその贈り物を差し出す彼がそこに居た。

 

 

 

 

 

 

 

「はい、喜んで…!!」

きっと…ちゃんと言えてなかったであろう。

溢れて…止どまることを知らない涙であなたの顔もまともに見ることが出来てはいないだろう。

 

でも…伝えるんだ。

こんな私でも…しっかりと…伝えるんだ。

 

 

 

 

「喜んでお受けします」

「私も…愛しています!!」

 

と…。

 

 

 

 

 

左手が熱い。

左手の薬指が熱い。

 

触れられた唇が熱い。

 

 

 

 

私は今日を忘れない。

死ぬ時も…その後も…カッコ悪い私に…彼が笑顔で送ってくれた愛の証を。

 

 

「言葉が見つかりませんね…嬉しくて」

 

 

 

 

「良いじゃ無いか…計算通りです!…で」

 

 

 

 

 

 

私は涙を流しながらニヤリと笑って言った。

 

 

 

「えへへ…計算通りです」

 

 

 

 

 

 

 

キスされた。

抱き締められて…少し長く。

 

「・…」

 

「可愛くてつい…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰り道は…手を繋いで。

お姉様や他の方もこうやって一歩一歩をゆっくりと踏みしめながら帰ったのかな?と思いながら…彼女は彼と共に帰路を歩む。

泣いた後の頬が少し風で冷たいけれども…

繋いだ手はそれ以上に温かくて…。

 

 

 

「愛しています」

何度も言った。

 

 

「俺もだよ…愛してる」

何度も返してくれた。

 

 

 

 

 

「楽しかったみたいネー」

 

「幸せそうで良かった!」

 

「私も…その時は!頑張ります!」

 

「全てうまく行かなかったですよ…」

「でも…一つは叶ったんです…失敗をかき消すほどに幸せな願いが叶ったんです」

 

 

「あっ!…ついに霧島も!?」

 

「あっ!羨ましい!!」

 

 

金剛姉妹の部屋からはワイワイと霧島が救の部屋に戻るまで声がずっと響いていたとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後…

 

 

「…提督!?この書類は締め切りが明後日ですよ!」

 

「明日じゃダメ?」

 

「今やってください!」

 

「予定通りに行かないことも……」

 

「ダメです…!」

 

「うぅ……」

渋々と執務をこなす。

こんな時でもやらなきゃならないことは多いのだ。

 

あの一件以来…霧島の計算には磨きがかかったようだ。

というか…厳しい…。

 

 

 

 

 

「そのかわり…」

「終わったら2人で間宮さんのパフェ食べに行きましょう?」

 

霧島はニコリと内緒のポーズでコソリと言った。

 

「ね?ダーリンさん」

 

その左手にはキラリと光る指輪が…。

 

 

 

 





全て計算通りに上手くいくとは限らない…
だけれども一生懸命に頑張った人は何かで報われる…と言ったお話でした。

少しでもグッときて貰えたなら幸いです!


感想などお待ちしてます!
ぜひぜひよろしくお願いします!


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237話 季節外れの彼岸花

季節外れの彼岸花が咲いていた。

 

たった一輪の…ポツンと咲いた紅い花。

 

花言葉は…悲しい思い出…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは…西波島鎮守府。

彼女は…トボトボと門を潜る。

 

 

そこの先に居たのは…軍服に白黒の丸めの帽子を被った人。

 

 

「ん…君は…?」

 

 

 

 

 

「…あ……提督…?」

 

 

 

 

 

 

「ただいま…」

何故かこの言葉が出た。

今になっても何でかわからない。

でも…自然と出た言葉。

 

 

 

 

 

一瞬目の色を変えた気がしたが…彼は言った。

 

「ん?おう…お帰り」

 

「あ……」

 

「おっ…瑞鶴」

 

 

そこに来たのは……瑞鶴と言うらしい。

妙に親近感が湧いた。

 

 

 

「…アンタは……」

一瞬、殺気にも似たオーラが出たような気がした。

…が、それはすぐに解かれた。

 

 

2人の間に沈黙が流れる。

 

 

「…まあいいか…雨が降るらしいから早く行くわよ…2人とも」

と、言われて私は着いて行く。

 

 

その時に目に映った彼岸花がとても綺麗で…

 

「アレは……」

 

「ん?あぁ…季節外れの彼岸花だな」

 

「彼岸…花…」

なぜかその花に親近感が湧いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督ッ!あの子は…ッ」

 

「わかってる…でも今のところ害もない」

「俺が責任を取るから…普通に接してくれ」

 

「…わかった…皆にも伝えておくわ」

 

 

 

 

 

?何のことだろう?

 

 

 

 

 

チンジュフ…?での生活は…真新しかった。

最初はビックリした顔をされたけど…今は皆と仲良しだ。

「鶴ちゃん」

と皆は呼んでくれた。

 

特に姫ちゃんと鬼ちゃんが仲良くしてくれた。

何となく私に似ていた。

 

 

瑞鶴とはいつも一緒に行動した。

瑞鶴は少し私に厳しいと言うか…つっけんどんというか…

ずっとひっついて回っても…はぁ…と言うだけ。

 

でも…何故か惹かれてついて行ってしまう。

 

 

 

 

 

この子は提督とやらが大好きらしい。

お揃いの指輪をしている。

「それはなあに?」と聞いても愛の証よ!としか答えてくれない。

他の人もしてるね!愛の証って言ったら…無視された。

 

 

 

 

 

提督さんはいつも笑顔を私にも向けてくれる。

色んなことを教えてくれて…

一緒にご飯食べて…

 

 

そんなあなたに何かできないかと考えていた。

 

 

 

 

 

ある日の事だった。

「♪〜♪」

 

夜に瑞鶴がキッチンで何かを作っていた。

 

「何を…しているの?」

 

「わっ!?……って、あなた…びっくりさせないでよ!」

 

「ごめん…で…何を?」

と、私が尋ねたところ…

 

 

 

 

 

 

「提督にね…夜食を作ってるのよ。今日残業だから…おにぎりと…卵焼き」

楽しそうにおにぎりを握る瑞鶴。

 

 

私は勇気を出して言った。

「わ、私もやってみていい?」

 

「どうしたの?急に…」

瑞鶴は目を丸くして言った。

 

「私もあの人のために何かしたいの…いつも笑顔を向けてくれるあの人に…」

 

「……」

 

「なんでかわかんないけど…あの人の事を考えると…こう…胸が苦しいの」

 

「…あんた……」

「そう…あなたも…あの人の事が好きなのね」

 

「好き…?」

 

「ええ…そうよ"好き"」

 

「えと…」

 

「ずっと一緒に居たいだとか…もっと…触れ合いたいとか…」

 

「…そう…それが……好き」

 

 

 

 

 

「作ってみる?卵焼き…」

 

「ええ!」

 

 

 

なかなか上手くはいかない。

瑞鶴や鳳翔さんみたいには上手くできない。

 

 

 

「甘めなのね?」

 

 

なんとなく作った味付けは甘かったらしい。

2人で提督のところへ持ってゆく。

 

 

 

「…この卵焼きは鶴ちゃんが作ったのよ」

瑞鶴はそう言ってくれた。

 

「…形は失敗しちゃったけど……」

ここで瑞鶴に教えて貰った言葉を出す。

 

『アイジョウは込めたから』

 

 

「ん…頂きます」

「…甘めの卵焼きか」

じゃりっとした音は…殻の音だろう。

それでも提督は笑顔で食べてくれた。

 

 

 

 

「ありがとう」

私は瑞鶴にお礼を言った。

 

瑞鶴は

ふぅ…とため息をついて………笑った。

 

「友達でしょ?お礼なんかいいわ」

それからは瑞鶴と仲良しになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからというもの…

2人で卵焼きの練習をした。

 

 

 

鳳翔さんや金剛さんも混ざって教えてくれるようになった。

 

 

 

 

その度に提督さんは食べてくれて…頭を撫でてくれる。

 

 

 

 

 

 

 

そして今日。

何日にも渡って練習したお陰か…渾身の出来の卵焼きができた。

 

それをお弁当に詰めて…完成。

 

 

 

「出来た!」

 

「凄いじゃない!綺麗な卵焼きよ!」

 

「ええ!完璧デース!」

「鶴ちゃんもダーリンが大好きなのですネー?」

 

「…うん、好き。あの笑顔を見ると幸せになる。私も皆と同じ指輪っていうの貰えるかなあ?」

 

鳳翔さんが言う。

「時間を掛けて…お互いをもっと知って…付き合って行けばきっと貰えるわ」

 

「がんばります!」

 

「まずはそのベントーで!胃袋をキャッチしマース!」

 

 

 

 

だが…そのお弁当は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街へ行く。

提督に届けに。

 

 

 

 

「提督…!食べて!」

と言うことはできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

敵対?している軍人が銃を撃ったらしい。

街の人が撃たれた。

提督も腕を撃たれたらしい。

 

 

響く悲鳴に…

滴る血。

 

 

 

 

その瞬間、私の中で何かが弾けた。

 

 

 

アレ?

なんだろう…コノ感情ハ…

 

 

 

ズグン!!

 

頭が割れそうだ。

 

 

「鶴ちゃん?!」

提督と瑞鶴が私の方を見る。

 

 

「アァ…!ああああ!!」

ワタシは手に持ったお弁当を地面にぶち撒けて…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつくと…ワタシは自分の記憶の中で1番古い場所にいた。

 

鎮守府の桟橋だ。

 

 

 

 

 

 

騒ぎを落ち着かせた提督達がやって来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来ないでッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうよ…私は…深海鶴棲姫……」

 

 

人への恨みを思い出した。

冷たい海の底の寂しさを思い出した。

私が何をすべきかも…

 

 

 

 

 

 

「鶴ちゃん……」

 

 

瑞鶴が複雑そうな顔でワタシを見る。

 

「ああ…瑞鶴(ワタシ)……あなたが羨ましい」

 

「だって…海の底はあんなにも暗くて冷たいのに…ここは…海の上はこんなにも明るくて暖かい…」

 

「…ずっと…ずっと求めて求めて進んだ先で…逝く寸前にこんな…温かなものに触れて…私はッ」

 

 

 

 

……こんな暖かさを私に教えた提督が…この人が…憎い(愛おしい)

 

だって…

だって……

 

知っちゃったから…この気持ちを…

コレが

好きだって事を…。

 

 

 

 

 

 

 

ダメだ…

皆に撃たせちゃダメだ…

でも…

頭が…

 

 

悲しみと憎しみで…孤独で埋まる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから壊すんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワタシは気持ち(自分)を撃ち抜いたー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ!?」

 

「あっ!!」

 

 

 

彼女は自分を撃ち抜いたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう

これが正解。

 

 

 

ワタシは…この世界に仇なす存在。

微かに残った理性よりも大きな反応が告げている。

 

この世界を…

人を

艦娘を

 

 

 

 

 

     殺せ(壊せ)と…

 

 

 

 

 

 

 

だからこれで良い…

 

 

皆が目を見開いている。

 

 

 

 

 

 

「何を不思議そうなカオヲしているノ?」

 

 

 

 

仕方ないじゃない…。

 

 

 

ダメでしょ?

 

 

 

 

好きなもの(提督も仲間)を傷つけちゃ

 

ワタシの1番の歓び(仲間と言ってくれた事)を…思い出を壊すわけには行かないから…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だからワタシは何度も撃った!

 

ズドン!

 

ズドン!!

 

ズドン!!!

 

仲間を…仲間と呼んでくれた人達の手は…綺麗なままで居て欲しいからッ!!!

 

 

 

1発撃つたびに…ここでの思い出が頭をよぎる。

 

 

なのに…私は死んでない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「鶴ちゃん……!!!」

 

 

 

 

瑞鶴は構えた。

慣れない副砲を手に持って。

 

 

「瑞鶴……?ヤメテ…ワタシは自分で」

 

 

 

「嫌よッ!!」

「あなた1人にそんな辛い想いはさせないわ!!私も背負うッ!!」

 

 

 

 

「ごめんね…ツンツンした態度をとって…」

「やっぱり自分に重ねてしまったから…でもあなたはずっと私に近寄って…歩み寄ってくれた!!一緒に卵焼きを作って…それで…」

 

 

 

「だから今度は私から歩み寄るッ!!」

 

「あなたを…あなたの命も背負って生きて行くッ!!」

 

 

 

 

 

瑞鶴は分かっていた。

鶴ちゃん…彼女が…もう限界だと言うことを。

残された理性と思い出と…皆を想う気持ちで自分を突き動かしていると言うことを。

 

それすらも無くなれば…

私達の敵になる。

なら、彼女を彼女のまま眠らせてあげたい。

 

彼女は自分で自分に決着をつけようとしている。

 

そんな寂しいことさせない!

 

 

だって

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私達…友達でしょう?」

 

 

 

 

 

 

深海鶴棲姫は言葉を失った。

瑞鶴が涙を流しているからではない。

武器をこちらに向けているからではない。

 

 

 

一緒に背負うと言ってくれたから。

その優しさは…初めて知った優しさ。

 

 

 

 

 

 

「…お願イ…瑞鶴……」

深海……いや、鶴ちゃんは両手を広げて…

笑顔をこちらに向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瑞鶴は叫びながらその引き金を……

その手に…重ねる手があった。

 

「なら…俺も背負う」

艤装に手を添えたのは…救。

 

武蔵も…ベルファストも…大淀も…目に涙を浮かべながら構えた。

 

「提督…皆…ワタシ…幸せ者だナァ…」

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁああああああ!!!!!」

瑞鶴は…その艤装から…放つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆の優しさは…私を貫き…魂を憎しみから解き放った。

 

 

 

 

 

 

 

痛く無かった。

でもわかる…もう……。

 

でも良かった。

こう言う終わり方ができて幸せだ。

 

 

 

 

「鶴ちゃん!鶴ちゃんッ!!」

瑞鶴は泣いていた。

 

そんな顔しないで…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ…提督…さん。

ありがとう…あなたも背負うと言ってくれて嬉しかったわ…

 

 

本当…に……

 

 

 

 

 

 

「…また来たら良い」

彼は私の手を取って言った。

 

 

「…え?」

 

 

 

 

 

 

 

「また来たら良いさ…生まれ変わって…その時はまたこの港に来ると良い」

 

 

 

「俺が待っている。いなかったら…呼んでくれ。急いで執務室から走ってくるから」

 

 

 

 

 

 

やめて…やめてよ

想像しちゃうじゃない!

 

 

そんな嬉しい言葉……

 

 

 

 

 

 

 

 

「……素敵な話ね…夢みたい。遠いよ?ここまで」

 

「ああ…全力で走るさ」

 

「そう……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鶴ちゃん!鶴ちゃん!!」

 

「瑞鶴……私達…友達だよね…」

 

「うん!友達よ!親友よッ!!」

 

 

「良かった……ごめんね……」

ぎゅっと瑞鶴に抱き締められた。

 

 

 

「……光…が…」

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ…好きよって伝えられなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

眩しい光の中に見た。

 

風が心地よい海の桟橋で…佇む私。

 

あなたの名前を呼んだ。

 

 

あなたったら…息を切らせて走って……

それがたまらなく嬉しかった。

 

『大好きです!提督』

 

この幻想の中でしか伝えられない想い…。

 

 

そのあとに…親友が……

おかえりと私を迎えてくれた…。

 

 

 

 

 

 

ありがとう…

 

 

 

この温かな幻想の中で眠ることが出来るなら…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

季節外れの彼岸花は…散った。

 

 

 

 

 

 

 

彼岸花の花言葉は

想うのは…あなた1人

 

そして

また会う日を楽しみにしている

 

 

 

 

 

 

 

 

泣きじゃくる瑞鶴に寄り添う救。

 

 

瑞鶴は言う。

 

「…アレは…私よ…提督」

 

「…そうだな」

 

「私も…ああなるのかな」

 

「そうならない為に日々を頑張ってるんだろ?」

 

「うん…そうだけど…ねえ?私がああなっても…提督は私の事を…」

 

「変わらず愛してるさ」

 

「……本当?」

 

「本当さ」

「まあ…あいつは…瑞鶴だけでは無い気もするけどな」

 

「……そうね」

きっとアレは……幾多の想いが重なった海の魂。

 

 

「あの子は…あなたの事が好きだったの…だから…」

 

「……次は…また来て言ってくれると嬉しいなあ」

 

「きっと来るわよ…あなたの艦娘ですもの」

 

 

 

 

 

一時の夢を見た…季節外れに咲いた花。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は走った。

約束した場所へ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え!?建造が失敗!?」

 

「ええ…そうなんですよ…おかしいなあ…」

 

艦娘の建造の後に残されたのはペンギン人形だった。

「……うーーーん」

 

 

 

 

ハッとした彼は工廠から飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは西波島鎮守府の港。

そこに…ポツンと立つ。

紅く綺麗な花を一輪(季節外れの彼岸花)を挿した1人の艦娘。

 

 

 

 

彼女は工廠から抜け出してきた。

 

何故ならそのままだと約束が果たせないから。

 

 

 

 

 

 

彼女は叫んだ。

大好きな人の名前を

自分に…愛を教えてくれた人の名前を…

 

生まれたての…その存在を知ってもらう為に…

約束を果たして…

守ってもらう為に!!

 

 

 

 

「…無理か……」

と呟いた彼女には聞こえた

おおいと呼ぶ声が。

 

彼女は見た。

 

 

 

その声の主は…アリンコのように小さかしか見えないが…

必死で走っているようだった。

 

息も続かないだろう。

体力も持たないだろう。

 

それでも彼は必死に走った。

約束を果たす為に。

 

 

 

 

ぜぇぜぇ…ひゅーひゅーと息を切らして今にも死にそうな顔と声で彼は言った。

 

 

「…お、おかえ…り……」

 

「…来たよ」

 

「う…うん……」

 

「鶴ちゃん?」

 

 

「いまは瑞鳳だけどね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたのようになりたいと願った。

もう一度…あなた達のところで…と。

 

 

 私の中の瑞鳳の魂が力を貸してくれた。

 

親友と同じ文字…

鶴じゃないけど…鳳という文字…

嬉しい。

 

 

 

 

 

「卵焼き…たべりゅ?」

嬉しくて…ぽろぽろと涙を流しながら言うから噛んじゃった。

 

 

「甘いやつ?」

 

 

 

「とびきり甘いの!!」

 

 

私は…2人の胸に飛び込んだ。

 

 

 

 

『大好きッ!!』

 

やっと伝えられた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには笑顔でキッチンに向かう2人の姿があったそうな。

 

 

 

 

 

 

 

鎮守府の外の季節外れの彼岸花は…何輪か咲いていた。

もう寂しくないな。

 

だって君は…既にウチの一員だから。




出張業務で更新ペースが遅くなると思います…




少しでも…ええやんと思って頂けたら幸いです!



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238話 提督の夜遊び計画

そーーいや…

1人で街へ夜遊びに行ったことがないな…

映画のレイトショーに漫画喫茶でのオール…

買い食い…

 

本を読もうにも…ここじゃあ量にも限界かある…。

 

明日の夜から漫画喫茶に篭って

明後日は…オフを利用して 逃げた喜びは帰らないって映画を見に行くか…

 

 

 

 

 

 

 

「…?」

 

 

『…ない…な』

 

『限界…』

 

『オフ…利用……街……逃げ……帰らない』

 

「!?!?」

提督が…逃げるの?もう提督辞めちゃうの!?

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな勘違いから始まるお話…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故か妙に皆が優しい。

 

「提督…?良いことあったの?」

 

「ん?少しな?」

(今日の夜から遊ぶぜ〜なんては言えないけどな)

 

 

「そう?」

(…今日で辞めるからなんだ……ね)

 

 

「ねえ…提督?」

 

「ん?」

 

「提督の仕事って…辛い?」

 

「そりゃなあ…死ぬ思いもする事もあれば…見たく無いものも見なくちゃならないしな」

 

「辞めたいって思う?」

 

「どうしたんだ?急に」

 

彼女はううん…と言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして夜。

執務を終わらせて…風呂に入り、夕飯を済ませて…着替えて門から港へと向かう。

自然と誰にも会わなかった。

皆疲れてるのかな?

 

 

 

 

 

 

 

「どこへ?」

初月と浦風

 

「え?街に」

 

「もう夜ですよ?」

 

「夜だから…」

 

「だめ…行かせない!!」

 

「何で!?」

 

「取り返しのつかない事になるから!」

(提督が居なくなる的な意味で)

 

「俺も行かなきゃならないんだ」

(予約的な意味で)

 

 

「そう……なら仕方ないねぇ…」

 

「僕達が…全力で阻止するよ」

 

「え!?何で!?」

「たまにはいいだろう!?危険はないだろう!?」

 

「たまに…って…ずっと考えとったんか…」

(逃亡的な意味で)

 

「ん…まあ…そうだなあ」

(休日の過ごし方的な意味で)

 

「なら尚更…行かせる訳にはいかんわ!」

(何がそんなに…提督を苦しめていたの?)

 

「何で……」

(涙を浮かべてまで…そんなに夜外出が心配なのか!?)

 

 

くっ…

まあ…こう言う状況だ…。

心配されるのも仕方ない。

かくなる上は…。

 

「仕方ない…お前達も来るか?」

…席の空き数的には少し離れるが…まあ大丈夫だろう。

「……楽しいからわからんが…」

 

 

「…なっ!ほ、、本気か!?提督」

 

「ん、…あぁ…仕方ないだろう?」

1人で楽しむのはまずかったか…?

 

 

 

「こ、金剛さん達は!?加賀さんや鳳翔さん…皆は!?」

 

「そこまでの人数は連れて行けないよ!!」

席数が足んねえし…外泊できねえよ…。

 

 

 

2人の中で複雑な感情が巡る。

誘ってくれているのは嬉しい。

でも裏切っていいのか?

私達だけいいのか?

 

何より…仕方ないから連れて行ってくれるようなものではないのか?

 

と。

 

 

 

 

「……見損なったよ…提督…愛してたのに」

初月が暗い表情で言う。

 

「ずっと一緒だって言ってたのにッ!!」

カチリ…と何かのスイッチを押した初月。

 

 

 

 

 

ビーッ!!

ビーッビーッビーッ!!

 

鎮守府内に響き渡る警告音。

 

「な、何だこりゃ!?!?」

焦る救。

 

 

「…提督が悪いんだッ!!」

光の無い眼で言う初月。

 

 

 

いつの間にか全員に包囲される俺。

 

「やっぱり…逃げようとしたのは本当だったんデスネー…?」

 

ん?

 

「私達の何がダメなんですか!?」

 

ええ!?

 

皆が泣きながら行かないで…と言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「明日の夜には帰ってくるよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「えっ!?」」」」

 

 

 

 

目を丸くするメンバー達。

だが、騙されないッ!!と切り返してくる。

 

「う、うそだ!!そう言って帰ってこないんだ!!」

「だから僕達には来るか!?って言ったんだ!!」

 

 

 

「いや……」

と、時計を見て、あぁ…と溢した救。

「……映画を観に行くつもりだったんだ」

「そんで…飯食って風呂入って…漫画喫茶で夜更かしして…明日も休みを満喫するつもりだったんだ」

 

 

 

「……」

 

「でも無理だなあ…今から行っても上映時間に間に合わねえや」

 

「…俺が逃げ出すと思ったのか?誤解を与えるような事をしてすまない。内緒にしててすまない」

 

「2人に来るか?って言ったのは席の空きがあるから映画を観るくらいなら…と思ったからだ」

 

 

艦娘達はたじろいだ。

何が本当か、わからなくなったから。

 

 

 

そこにベルファストが休暇から帰ってきた。

「あら、皆様お揃いで…。あら?ご主人様?今日はレイトショーの映画をご覧に行くのでは?」

 

「その予定だったんだが……」

 

「?」

首を傾げるベルファスト。

 

 

「…!?ち、ちょっと!ベルファスト!?」

「それは本当の事かい?!」

 

 

「え、ええ。レイトショーを観て…漫画喫茶で夜更かしをして…明日のオフを満喫する…とずっと仰られておりましたので…」

「と、いいますか…皆に囲まれて…どうかなさないましたか?ご主人様」

 

 

 

 

 

事情を説明する。

 

 

 

「ふふふ……あはははははは」

「そ、それはご主人様…はははは」

 

「皆様?皆様が1番ご存じのはずですよ?」

 

 

「何があろうと…ご主人様が逃げ出す人では無い事を…ましてや…皆様を放って1人で黙って消え行くなんて事は無いですよ」

 

 

「いいじゃないですか?たまには…1人の時間もあっては良いのでは?」

 

 

 

 

 

 

 

と言うわけで特別休暇を貰いました。

なんか思ってたのと違うけど…まあいいか。

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、提督の休日(1人とは言ってない)
提督は無事に1人で満喫できるのか!?



少しでも、お楽しみ頂けたなら幸いです!


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239話 提督のお出かけ

さて…今日から休暇だー!

 

「行ってらっしゃい!」

 

見送りは…ベルファストだけ?

 

「皆様…寂しいようなので…」

 

 

「お気を付けて…後ほど!」

 

 

ん?

 

 

どゆこと?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

船の中でコーヒーのサービスを受けて………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……よ!」

 

 

「着きましたよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん…あぁ…すみません…寝てしまってました」

昨日から興奮して寝れなかったせいか…船の中で寝てしまったようだ。

 

 

 

さあ!1人の休暇を……

 

 

 

 

 

 

 

 

  リゾート西波島ランド

ぱんぱかぱーん(ふぁんふぁーれ)

 

 

 

 

振り返る。

 

 

 

 

「船は……行ってしまったか……」

 

 

……マジか…。

 

 

 

 

 

 

 

「やあ!いらっしゃい!マイダーリン!」

と…意気揚々と飛び出してきたのは……猫耳つけた吹雪だった。

 

「私はブッキー!あなたの嫁のうちの1人だよ!あはっ」

 

「……チェンジで」

怒られたくないもん…

 

「不可です」

 

「街に行きたい」

 

「不可です」

 

 

 

 

 

 

「奥でキラキラ光ってるのは?」

 

「ここは夢の国なので…」

と、園内マップを渡される。

すげぇ…乗り物やら…レストランやら……

お?映画館も……?

 

 

 

「あそこでヘトヘトで死にかけてる妖精さんは?」

 

「影の象徴ですね…夢の裏にはブラックがありますから」

 

「徹夜で作らせたのか!?これ!?」

 

 

「……しぬ…」

 

「うまれかわったら…かいになりたい」

 

「てんしょくさいとにとうろくして…けいじばんにわるぐちかきこんでやる…」

 

 

 

 

 

 

 

やりやがった…

奴ら…俺が外に出ないようにする為に…

島の裏側にリゾート施設作りやがった…

 

 

「てか…嫁の1人て?」

 

「全員…ダーリンの嫁!各コーナーに!嫁、居る!オマエ、周る。嫁、オマエ、癒す。ミンナ…幸せ」

吹雪が言う。

え?ブッキー?

 

はい、ブッキーが言いました。

 

 

 

 

キャラブレブレじゃねえか

 

 

 

 

ああ…ベルファストの後ほどってのはそー言う意味か…

あの野郎…知ってて黙ってやがったな…

ちくしょおおめええええ!

 

 

ボッチ映画と…漫画喫茶は!?

てか…1人休暇じゃねえじゃん!

 

 

と…叫んでいると…

吹雪が

ハイライトを消した目でニタリと笑って言う。

 

私達を置き去りにして行ける訳ないじゃないですかあ……絶対に逃がしませんからぁ…たぁくさん楽しんで…私達の良さを実感して下さいねぇ…私達が居ないとダメなくらいになって下さい…ねぇ…はぁと

 

「言動と表情と行動が一致してないんだが?」

 

「全ては愛です」

 

「重すぎん?」

 

「まぁ…そんな訳で…ね?諦めて私達に癒されてください」

 

「まあ…なら行くか…」

諦める以外のコマンドがねえんだもの…

 

「はい!お帰りなさいのちゅーを…」

 

「え!?」

 

「入場券代わりです!ここは旦那様ほ癒しの場ですから。本当の指揮官が確かめておく必要があるので…」

 

ブッキーが飛びついてきた。

 

「おい!?やめっ……dgwpjgtgmp.pmpj」

 

 

 

 

 

 

 

「ぷはっ…旦那様♡お帰りなさい」

 

「た…ただいま…」

 

 

 

「いかがわしいお店じゃないよね?」

 

「R-15ですので」

 

おぉ、メタい…。

 

 

「あ…でも陰では何されてるかは分かりませんよね?」

 

「やっぱり帰ります」

 

「ここが旦那様の家ですよ?」

 

「反対側だけどな」

 

 

 

「因みに私は犬カフェに居ますので…いつでもどうぞ!」

 

「よし、そこは避けようか」

 

「ひどいっ!」

「まあ…来なかったら地の果てまで追いかけ回しますけど…」

 

「地の果てっつーか…島の果てっつーか…」

 

 

 

 

 

 

 

……まあ彼女達なりの優しさと寂しさと…愛情…だろう

 

 

うん

そう信じよう。

 

 

寒気がしたのは何でだろうか?

 

 

 








まあ…普通にお出かけなんかできる訳ぁ…ないさ!


さて…どこに行かせようか…


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240話 提督と…皆と ①

「…お帰りなさい…」

「最初に私達を選ぶとは…流石ね」

 

ボスっと飛び込んできたのは加賀。

ぞろぞろと空母組が奥から顔を出してくる。

 

 

 

いや…分からんわ

園内マップの殆どが行ってのお楽しみ♡とか…

 

 

とりあえずわかるのは…ここは…飯を食う所か…

 

 

 

 

 

 

 

 

「お箸止まってますよ?」

……

 

多いよう…

 

「私達…一生懸命作ったんですよ!」

 

 

わかるよ?

とっても嬉しいんだ…

 

でもね?

 

 

 

 

 

 

 

 

君達の人数を考えようか…

 

 

全員で作ってみなさい?

量がね?半端ないのよおおお!?

1人一品だとしても…

 

考えるのをやめよう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続いて…犬カフェ…

 

 

ちっこい豆柴とか居るのかな…?

と、期待に胸を膨らませていざ入店。

 

 

居たよ!ワンコが!!

 

 

「さあ…撫でるんだ…可愛いでしょ?」

と、初月が言う。

 

 

「……よしよし」

言われた通りに撫でる。

 

 

「癒されるでしょう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前がなッ!!」

 

 

俺は初月(犬)を撫でていた。

 

 

あぁ…だいたい想像できてたさ!

こーなるだろうってさ!?

でもね?少しは期待したんだぞう?本物の犬が居るって…

 

 

 

「こっちも撫でて欲しいっぽいー」

 

「わ、私もー!」

 

 

犬の格好をした艦娘達と触れ合うカフェなのね…

 

 

「司令官…♡」

吹雪が撫でる指に噛み付く。

「はむはむ」

 

 

正直可愛い…。

もう片方の手でよしよし…とする。

 

「えへへ〜」

 

 

 

 

 

 

一瞬…変な感情を抱いたが…やばかった。

 

 

「…司令官?」

 

「狼さんになるっぽい?」

ギクリ…

 

「そ、それはそれで…」

吹雪と初月達が顔を赤らめる。

 

 

顔を赤らめるなッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

 

「お兄ちゃん!お帰りなさいっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お帰りなさいッ!ママよッ!」

 

雷……愛宕ぉ……桜三笠までッ……。

 

 

 

「お姉さんよぉ〜」

桜加賀…桜隼鷹……迅鯨…

 

 

 

 

「殿様ぁ〜」

山城……不知火ッ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嫁成分どこっ!?!?」

 

 

さっきから嫁出てきてねえよッ!

 

 

 

 

「……」

 

 

 

いや、わかってる。

皆必死なのだ。

 

 

 

数多くのメンバーが居て、埋もれないように…。

といっても、誰かを蔑ろにする事はないと分かっていても…不安になるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつか神崎 救が元の世界に帰ってしまわないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや

 

 

本来あるべき姿…

 

 

 

 

 

 

 

 

死後の世界に戻る事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アズレンメンバーは不安がっている。

 

いつか自分達の世界に帰らなければならないのではないかと。

 

 

 

口に出したくても出せない不安。

 

 

少し離れただけでも…ザワツク心。

幾度となく…この世界から離れた俺への不安。

 

 

 

だからせめぎ合う。

 

俺を少しでも自由にしようと言う気持ち。

 

皆との時間を大切にしようと言う気持ち。

 

 

 

 

 

明日とも知れない命だから…。

 

 

 

 

何となく分かる。

 

 

 

 

 

 

次の…大きな敵との戦いは…ある意味最後の戦いだろう。

俺にとっても…皆にとっても…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その先の事はわからない。

あるべき姿に戻るかも知れない。

 

この幸せがずつ続くかも分からない。

 

 

 

そう…

 

今しかないのだ。

 

 

今、精一杯生きて…もがいて…

その先にあるのが何なのかは、その時にしかわからないのだから…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は入り口に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

え?帰っちゃうの?司令官!

 

待ってくださいッ!

私達…ふざけてないんです!必死に考えたんです!!

 

そりゃあ…

自由にしてますけど…

皆…少しでもあなたと一緒に居たいんです!

 

私達には…あなたしか居ないんです!

 

 

他の所にまで嫉妬するのは…よくないと思いますけど…それでも!私達は…例え一秒でも…あなたと…

 

 

 

 

 

慌てて吹雪が走ってくる。

 

「し、司令官?!…気に入らなかったですか?」

不安そうに彼女は尋ねてくる。

 

 

「……」

 

「司令官……?」

 

 

 

 

「……何だ!?ここはッ!?昨日まで何も無かった筈の島にテーマパークらしきものが!!!!」

 

 

「…!?」

 

「ん?君は?」

 

 

「……はっ」

「やあ!私はブッキーだよお!旦那様ッ!」

「ここは…あなたを……癒…す…」ぽろぽろ

 

 

「うん」

 

「たくさんの嫁が…居ます」

ぽろぽろ…と涙を流す吹雪。

 

「うん」

 

「きっと後悔させませんから!きっとここが良いって思いますからッ!」

 

「ぜひ……楽しんで………欲しいです」

 

 

「…ブッキー…」

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

「んむっ!?」

 

吹雪の唇は涙の味がした。

 

 

「し、ししし司令官!?」

 

「…ただいまのキスなんだろう?入場券代わりの」

 

「あ……」

「も、もう一回いいですか?」

 

「おうよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて…

心から楽しんで周るか…






さらっと…ね
どこまでいくかな?






少しでもお楽しみ頂ければ幸いです!



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241話 提督と…皆と ②

ぶっ壊れてます…主人公が


骨抜きにされた吹雪をそっとベンチに寝かせていざ出陣。

 

 

まずは…空母組じゃい!

 

「ただいまッ!!」

 

 

「あら…?どうしたの?」

 

「…皆の愛情たっぷりの飯を食いに来たッ!!」

 

ぱぁあッと明るくなる加賀達。

「はいッ!ただいまっ」

 

 

 

「赤城さん!皆!提督が…戻ってきてくれました!」

 

 

 

 

「どうして…?」

 

「…お前達の愛を…受け止めたくて」

 

 

 

 

皆が涙目で喜びながら料理を運んでくる。

 

 

うん…うまい。

メニューも俺の好きなもので…

味付けも…くそう…最高だ…。

 

 

「うまい…美味しいよっ」

 

「良かった…提督さん♡」

 

 

 

 

 

「私の分が…提督…全て食べちゃった……すごい」

赤城だけが少し残念そうにしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よ〜〜しよしよしよしよし」

ムツ○ロウさんばりに可愛がる。

 

「えへへ…」

時雨や初月達がトロンとした表示で喜んでる。

 

「よーしよしよしよしよしよ」

 

「ちょっ…提督?嬉しいケド…恥ずかしい……」

 

 

むぎゅうう。

撫で撫で。

 

 

「はうっ……」

 

「あっ!だめっ」

 

 

 

……なんかビクンビクンしてますけど放っておきましょう…

 

「……愛してるよ」イケボ

 

「はぁうううっ」

 

「ずっと…一緒に…」

 

「うひょおおお!」

 

 

 

 

 

くるりと顔が別の艦娘達に向く。

 

「ぽ…ぽぃぃ…お手柔らかに…」

 

「……お願いするよ…」

 

 

 

 

わしゃしゃしゃしゃ!

俺はありったけの愛をぶつけた。

「ぽぽぽーー!?!?」

 

余程嬉しかったのだろう…

夕立達は立つことすらできないようだ…。

 

 

 

 

 

 

 

「姉ッ!」

「ままッ!!」

「妹ッッ」

 

 

「纏めてかかってこいやぁぁあ!!」

 

 

 

提督は全てをこなした。

例え哺乳瓶やガラガラを渡されようとも嫌な顔一つせず甘えた。

 

「ばっ…馬鹿なッ」

 

「どうしたぁ…?雷ママ…」

 

「いや……えっと…」

今の救は雷に膝枕をされて哺乳瓶でカルピスを飲まされながらガラガラをされているという状況だ。

普段の彼なら逃げるだろうが…そう

彼は覚悟を決めた提督だッ!

 

その彼に死角はない。

ついでに言うと…その後のことも考えてない。

 

 

 

「ママ」

 

「雷ちゃん!代わるぞ!!」

 

「三笠さんッッ」

 

「ほう…三笠ママか…」

 

「ぱんばかぱーん!おいで〜救ちゃ〜ん」

 

おまっ…それは愛宕やんけ…。

 

「うふふ…可愛いなあ…指揮官は……」

 

「うん?どうした?指揮官…」

「トイレに行きたい?」

 

「……オムツはないなあ……」

 

「そうねぇ…ないわねえ…」

 

 

提督のオムツをかえる……

ハッ……開いてはいけない扉が…開い………

 

 

ママは鼻血を出して倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…お姉ちゃんッ!!」

 

「救…君?」

 

「具体的な要求はッ!?」

 

「えと……あの…普通に居てくれたら…」

 

「ここ!数学教えて!」

 

「あっ…うん……」

 

「…お菓子食べる?」

 

「食べる!ありがとうお姉ちゃん!」

 

「え、あ、うん」

迅鯨は思った。

ここは禁断の愛の設定で行こうと皆と話していたのに…

普通の感じじゃん!と。

まあでも…これはこれで居心地がいいからまあ良いかと思うメンバーであった。

 

「ねぇ?救君?小さい頃は大きくなったらお姉ちゃんと結婚するって言ってくれてなかった?」

 

 

(た、高雄ッ…コイツ…よくある話を張りやがったッ…!!)

 

迅鯨は焦った。先手を打たれた…と!

 

 

 

(ふっ…バカめ!…見てなさい!私の姉力を…さあ!提督!恥ずかしそうに…え?!そうだったっけ!?と返しなさい)

 

 

「今でも結婚したいよ」

 

ズシャァァアン!!

 

「………」

 

(ちょっと…高雄?どうしたの?)

慌てる迅鯨。

 

 

「ゴフッ…」

高雄は吐血した。

あまりのどストレートな返しに脳が考えるのを辞めてしまった結果…なんやかんやで尊さが爆発して吐血した。

 

(高雄おおおぉぉおお)

 

 

その後全員同じ感じで爆発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「妹達よおおおお!!」

「遊ぶぞおおおお!!」

 

「お兄ちゃん!高い高いして!」

 

「よおおおし!」

提督が駆逐艦を高い高いしている。

 

こうかは ばつぐんだ!

 

 

「はらしよー!はらしょー!!」

 

スク水の潜水艦達を肩車してるのは…うん、きっと事案だろう。

 

「大きくなったら…お兄ちゃんと結婚するー!」

 

 

「おー…今すぐでも良いんだよー?!」

 

「え…本当?」

 

「あっ!ずるいわー!?」

 

「こらこらー!お兄ちゃんは逃げないから喧嘩しちゃダメだぞっ⭐︎」

 

 

 

 

 

そこに現れる艦娘。

 

「お兄ちゃん!私も…高い高いお願いします」

 

「おう、おまえ…………榛名ッ!?」

 

そこには榛名が駆逐艦用のセーラー服を着て立っていた。

 

「お兄ちゃん♡榛名もお願いします!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男に二言はなぁぁあし!!

や、やるぞぉ〜ぅ

やってやるぞーー!!

 

 

 

 

「そらッ」

お?意外といけるか?

 

恐らく通報案件だろう光景が目の前にあった。

 

 

 

 

 

高い高いしたつもりなのだが…そこまで上がらず…

提督の顔に、榛名の胸が……ね。

 

「…きゃあ!?ダーリンさん!?そこは!!」

 

「…むっぐ……」

そのまま窒息して倒れた提督。

だがその表情は…安らかだったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




続きます。

こんな開き直った主人公はありですか?





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242話 提督と…皆と ③

バカなッ…

そんなバカな…

 

 

数々の精鋭(笑)達が…手も足も出ない…だと?

 

そんなバカなはずがないッ

 

そんなバカなはずががががが…

「オサナナジミぃ〜」

 

「桜隼鷹〜将来はケッコンしようなぁ〜」

 

「…」

 

桜隼鷹さんが息をしていませんッ!!

 

「あの桜隼鷹が…だと?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…この…く……くそ…提督…」

 

「ば…ばぁか…別にあんたのためじゃないんだから…」

 

「ふん!」

 

 

ここは手強いぞ!提督よ!

なんせ…ツンデレ部門だからな…。

 

 

 

「…そうか……悲しいな…」 しょぼん…

 

 

「あ…ごめんなさい…提督…」ぐすん

 

あ…霞が堕ちました。

 

「霞…いいのか?(キャラブレ的な意味で)」

 

「いいのよ!提督ぅぅ」むぎゅうううう

 

 

あ…曙と桜時雨が…

 

(出遅れた…ッ!やられた)

 

(てか…あのしょんぼり顔はズルいわ…)

 

 

「本当はみんな優しいもんな」

 

 

青葉はゲラゲラと遠くから笑いながら見ていた。

 

 

ズルいですねえ…あの感じは……ウズッ

私も…優しくされたいなあ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お?

アレはツン…

ツンツンの桜加賀(×2)

 

 

 

「…指揮官…」

 

「ん?おお、服装を2人で交換したのか?ある意味新鮮だな」

 

「!?」

「!?」

 

 

分かるかッ!!

見分けつきませんよ!

 

 

「…何を言っている?指揮官は私もわからないのか…」

 

「ん?わかるぞ?」

「似合ってるぞ?」

 

 

 

うわぁ…何でわかるんですかぁ…

2人の慌てようが……うわぁ…

 

 

「な、何で分かるんだ?」

 

「いや…分かるだろう…」

 

「いや…自分で言うのもなんだが…わからんだろう」

と言う戦艦加賀(桜加賀)

 

うんと頷く桜加賀(戦艦加賀)

 

うんうんと陰から頷く青葉。

 

 

「いや…わかるさ。たとえ髪の色変えようとも何をしようともわかるさ」

 

 

「お前達の事が好きだからな」

 

「なっ……くっ……ずるいぞぅ…」

 

「…負けた…」

 

 

2人をよしよしと撫でる提督。

 

 

 

うわー…耳まで真っ赤……

やめてください。こちらを睨まないでください。

笑ってません。本当です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

快進撃を続ける提督ですが…

おおっと!その歩みが止まったァ!!

というか…後退りしたぞッ!?

 

 

提督の目の前には…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メイド喫茶 武蔵の文字。

 

 

 

「くっ…体が勝手に後退りしてしまうゼ…!!」

 

全神経やら何やらが叫んでいる。

ココはアカンと。

え?ママもヤバいだろう?

アホか…看板を見てみろ。

 

 

武蔵

あなたをガッチリホールドします♡

 

物理特化のホールドは骨をも砕くだろう。

 

 

桜大鳳

逃がさない

 

何?俺死ぬの?

 

 

ベルファスト

今日はメイド長辞めます。自由にします。

 

メイドからは離れられないのね。

 

由良

全ては私(と私の提督さん)の為に!

 

本音がダダ漏れだぁぁ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャリ…

 

 

「むっ?ご主人様よ!遅かったなッ!さぁ!入るがいい!」

 

がっしりと腕を掴まれた。

 

 

コマンド?

 戦う

 アイテム

 作戦

→ 逃げる

 

 

 

 

 

しかしまわりこまれた!

 

 

「逃がさんぞ」

 

「新手の押し売りですか?新手のキャッチですか?」

 

「大丈夫だ!高価な壺も売らないし、法外な金も請求しない」

 

 

「ほっ…」

 

 

 

 

 

 

「ただ…相棒…いや、(極上の癒しに)ご主人様の体がもつかなぁ?」

 

走る悪寒、脳内アラートは鳴り止まない。

「嫌だッ!まだ死にたくないッ!」

必死で抵抗するご主人様。

 

「…据え膳食わぬは?」

 

「武士じゃなくていいもん!」

 

 

「彼女達も待ってるぞ?」

 

 

 

 

ちらりと扉の方を見ると

 

 

「イラッシャイ…」

「ハヤク…オイデ」

「シキカンサマァァ」

 

 

 

 

「地獄への入り口かな?」

 

「失礼な!天国への入り口だッ!」

 

 

 

 

そのまま…ズルズルと引きずられて行った提督…。

彼の行方を知る者は……もう…。

 

 

 

「はぁい!ご主人様ぁ♡あ〜ん」

 

「ご主人様あ!こっちもぉ〜」

 

 

 

 

 

 

 

「武蔵…」

 

「む?」

 

「何故俺があーんをしている?」

 

「斬新だろう?」

「メイドへの触れ合い喫茶だ」

「厳密に言うとメイドを甘やかせて堕落させる喫茶だ」

 

「あかんやん…」

あぁ…表のメンバーのキャッチコピーの意味が分かったわ…

 

 

「ご主人様ぁ!なでなでしてください!!」

 

「おぉ…」よしよし

そりゃ体が持つかわからんわな…

 

 

 

 

「もう行くんですか!?」

「まだ甘やかされ足りませんッ!!」

「もっと自堕落させてくださいいい!!」

 

阿鼻叫喚の叫びを無視して次へ行く。

 

 

 

 

 

 

なんやかんやで楽しそうな救である。

 

「あとは………うわぁ」

 

 

次のパンフにはこう書かれてあった。

 

 

 

 

家族体験ゾーン




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243話提督と…皆と ④



全ては…かけがえのない一瞬とも言える幸せの為に…

俺は…歩むことをやめない。



 

 

 

 

…家族体験…だとう?

 

 

パンフレットにはこうある。

 

あなたの未来の姿かも?

温かな家族があなたの帰りを待っています♡

 

 

 

 

目の前には一軒家が2つ…つまり、2回は体験できる…とね?

 

 

 

 

 

 

とりあえず手前の家から入る。

 

 

 

形が大切だからね?

 

 

「ただいまー」

と、エントリー!

 

 

 

パタパタと奥から誰かがやってくる。

 

 

 

 

 

 

「…あら?あなた。おかえりなさい」

と、出迎えてくれたのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やはり、ラスボスの榛名だった。

 

 

 

 

 

 

「お…おう…」

 

漂う緊張感。

 

 

 

 

 

 

近くの部屋からがちゃりと出て来たのは…

 

 

 

 

 

「ダディ………」

 

 

「金剛…」

血涙を流す金剛(長女)

 

「納得いかないデース!私が正妻のハズデース!なのにッ!なのにッ…番犬ワンワンで負けたばっかりに……ッ」

 

「あー…あの骨を取るやつね?割と平和的な決め方だったんだなぁ…」

 

 

「だぁぁりんんんんん!」

ひしっと提督に抱きついて泣く金剛(JK)

 

 

「こら!金剛おね…じゃない。こら!金剛!ダメでしょ?お父さんは疲れてるんだから…!あと、ダーリンじゃないでしょう?」

 

 

「うぐはぁぁうう!!榛名…」

 

「お母さんを呼び捨てしちゃあ…だめでしょ!そんな言葉遣いは…めっ!です」

 

榛名から…めっ!てされる金剛。

 

 

「ご、ごめんなさいて…お、おおおおお母さ…ん」

 

「うぐううっ!堪えろッ…堪えるデース……ううっ」

 

ヘソどころか全身のどこでも茶が沸かせそうな金剛…。

 

 

 

 

 

別の部屋からヌッと顔を出した娘が居た。

 

「チッ…なんだ……親父かよ」

 

タバコ…ではなくてキャンディを咥えた娘のエントリー。

 

 

「お前はチョロそうだな」

 

「あん!?」

「俺はなぁ!高校シメてる番格だゾ?」

反抗期設定の天龍(次女)

 

 

「こら!普段はパパのこと凄く心配して寂しそうにしてるクセに…会ったときには照れ隠しするのやめなさい?」

 

「…んなッ……ちょっ…」

みるみる顔が赤くなって行く天龍。

 

「あぁ…そういう……」

ニヤリと笑う提督。

 

「ええ〜そうなんですよ?」

ニタリと笑う榛名。

 

「…泣いて良いか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パパー!おかえりー!」

 

「予想通りッ!、山風ぇぇ!!」

ノリノリの山風(三女)

 

「……別の女の匂いがするよ?」

 

「………は?」

驚く俺。

 

「…え?」

包丁を取り出す榛名。

 

待て、それは仕舞おうぜ?

 

「ウフフ…きっと疲れてるのね?あなた?お休みします?」

 

それは永眠かな?

お休みというよりは君から逃げたいな。

 

 

 

 

 

「ねえ?あなた?」

榛名が上目遣いで問いかけてくる。

ヤバいスイッチが入ってない榛名は本当に可愛いのになぁ…

 

 

「ん?」

 

 

「子供…もう1人…欲しくないですか?」

 

「え」

 

はい!入ったままでした!ヤバいスイッチ!!

 

 

「「あん?!」」

明らかに表情が変わるお姉ちゃんズ。

 

 

「本当?!お父さんか妹できるの?やったあ!」

お前は平常運転なのか役者魂の塊なのか……?

 

 

「待てコラ…まだ昼間だし…小さい子も居るんだぞッ」

そこか?大切なのは?

 

「教育上よろしくねぇだろうが!」

さすがは天龍保育園の先生だな…。

 

 

「ノー!そーじゃナーイ!ダメ!ダーリンは渡さないネー!」

 

 

「ダメですぅー!ダーリンさを…いえ!旦那様は榛名の旦那様なんでふぅー!」

 

「あぁん!?」

 

 

 

「喧嘩しないでよお…ぐすん」

 

 

 

 

以下省略

え?わかるでしょ?

 

大戦争ですよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

崩壊待ったなしな家庭を飛び出して、新天地であるもう一軒へと行く。

 

 

 

 

 

 

 

「お帰りなさい!あなた♡」

 

おー…安心と信頼の鳳翔さん。

 

 

青葉はホッとしている。

ちなみに…私、鳳翔さん達の嫁決めUNO対決見てましたけど…

鳳翔にほぼドローカードとか集まってましたね…

対戦相手泣いてましたもん…

 

 

 

「あ!おかえり!父さん」

 

「あきつ丸…語尾まで変えてからに…」

 

「……言わないで」

 

あきつ丸(長男)

 

 

 

「……おかえり」

 

「ただいま」

 

神州丸…(長女)

 

 

 

 

 

「ほら…赤ちゃんと4歳児が来るよ…パパ」

 

 

 

「ほーら…2人とも〜ぱぱが帰ってきたわよー?」

 

 

 

「ほ〜…そこまで凝ってる……の………」

 

 

俺は固まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ぱーぱ」(虚な涙目)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まるゆうううううううううう!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまっ……最初の登場シーンがコレって……コレって!!

 

 

 

 

 

 

「えへへ…えぇ…私のキャラで…こういう役回りなのは…何となく想像つきますけど……実際にやるとコレ…結構きます…ね………………………………主に心…に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう片方の鳳翔の腕の中にいる娘を見た。

 

 

「ぱ…………ぱ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「妖精さぁぁあん!?」

 

 

虚な目をしたまるゆがあきつ丸に、妖精さんが鳳翔に抱えられていた。

 

 

「ホラーや…ホラーやでぇ…」

 

 

 

 

「…いくさよりもきずはふかい」

 

 

「えへへ……ま〜るゆだよぉ〜保育園行きたくないょぉ…」

 

 

 

 

 

 

 

俺はそっと飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんやかんや楽しかった。

ぞろぞろと集まってくる皆。

楽しそうな顔や…絶望の底に染まる顔や…

 

 

「皆…ありがとうな」

「俺の為に(?)…俺は幸せ者だ」

 

「今度は皆で出掛けような」

 

 

「約束ですよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして今…

 

俺の目の前には……俺がこの世に来る原因となったであろう奴がいる。

 

林…部長。

 

 

 

 

吹雪、天龍、山城、武蔵、桜三笠はそれぞれ、仲間を率いて別鎮守府へ。

 

俺はて金剛、桜赤城達を筆頭に鎮守府で奴らを迎え撃っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

圧政とも言える軍体制は国民を確かに守っていた。

金と服従を条件に。

 

不満すら握りつぶす奴らをこれ以上野放しにはできない。

 

 

 

その時にある情報を入手した。

 

 

2日後に大規模掃討作戦を行う…と。

 

 

 

つまり…コレを逆手に打ち倒す必要がある訳だ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やるか…

 

例えどうなろうとも…世界を守ると言うことは…

奴等ともやり合わなくてはならない!

全てを取り戻して…俺と奴の浅くはない縁を断ち切らなくては…。

これが…きっと………だとしても

 

 

 

皆と明日も笑顔で歩む為に!





次回からシリアス回
胸糞表現や…色んな展開が待ってます。
少し長いかなと思いますがお付き合い頂けたらと思います。




まるゆ…ごめん…



少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!


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244話 想い願いの果てに ① 悪の華が咲く時に

この物語は…
想いの果てに起きる最初で最後の本当の奇跡。
とある男が死を境に…とある世界に転生したお話。

彼が、救い救われるお話。







「待って…今立つからッ!やめて!」

「…大丈夫、俺が絶対に守るから」



「指揮官ッ!!」














数日前の事だった。

鎮守府に地元の漁師さんが網にかかったと届けてくれたものがあった。

 

 

 

金谷の陸奥だった。

全体的に損傷が激しく…生きてるのが不思議な程だった。

 

 

彼女は言った。

「…お願い…仇を取って…敵であるあなたに頼むのは…違うけど…縋れるなら…鬼でも悪魔でも敵でも!!」

 

 

 

「奴はあんたを狙ってるわ…あんたに人生を狂わされたってね」

「あんたの知り合いなんでしょう?」

 

 

 

 

 

 

 

「…あなた…」

 

「不思議?わかってるわよ…金谷提督はクズだって…」

 

でも…と彼女は言う。

 

「例えクズの提督でもね?それなりに思い出も…好意も…あるのよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

やはり…林…林 優か。

 

 

 

「私こう見えても…彼の事…ーすー………

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ…死に損ないはここに居たか」

 

チュン…と言う音と共に彼女はぐったりと動かなくなった。

 

 

 

 

「なっ……」

 

目を上げた先には……

 

 

 

 

「久しぶりだねえ…神崎君」

 

 

 

奴が居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後ろには大勢の艦娘達がこちらを睨んでいた。

 

「兄貴ぃ!やっちまおうぜ!」

後ろから林が捲し立てていた。

 

 

 

 

待て…

何でお前は海の上に立っている?

 

それを平然と周りは何で見ていられる?

 

 

 

「…疑問かな?私が…いや…俺が立ってるのがよ」

ニタリと嗤う優は言う。

 

「全員を掌握できたからな」

 

…と。

 

 

 

 

「まあ…今日は挨拶だ。時期にここも…貴様の大切なものを全てを踏み潰す」

 

「変な残り虫が…好ましく無い行動をとると面倒だからね」

 

 

「とりあえず処分させて貰ったよ」

 

 

 

 

 

 

 

では…と奴は俺らに背を向けて歩いて行く。

 

 

コレほどの屈辱があろうか?

 

敵に背を向けられて…見送るしかできない今を。

 

やろうと思えば攻撃もできる。

しかし…こちらの戦闘態勢が整ってない。

 

今は…耐えるしか…

 

 

「あぁ…そうだ」

と、彼は言う。

 

 

「…そのゴミは…すまないがそちらで処分しておいてくれ」

 

「き…貴様ッ」

思わず…金陸奥の方を見る。

彼女は死んだ、もう動くことはない。

その彼女は…光となって消えた。

 

 

「あぁ…その必要はなかったか…クリーンなゴミでよかったな」

 

 

 

「貴様ぁぁ!!絶対許さん…ッ!!絶対に叩き潰してやるッ」

酷い憎悪を覚えた。

口からどんどんと言葉が溢れて来た。

 

 

ケラケラと笑いながら挨拶を済ませて奴は行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうすぐ奴が来る……皆準備はいいか?熾烈な戦いとなるだろう」

「でも…皆で生き残ろう!勝ち取ろう!」

「もう…これ以上奴らに好き勝手させて…犠牲となる艦娘や人をなくすんだ!!」

 

 

 

 

吹雪、赤城を遠海域に。

 

天龍と龍田を猛武鎮守府に

 

呉には桜三笠を

 

舞鶴に武蔵と清霜を

 

大本営付近には山城と時雨を

 

 

そして…残りのメンバーで奴を迎え撃つ。

 

 

「…大丈夫!やれるよ!」

通信から時雨の声が聞こえる。

 

「深海棲艦との戦いもあるんだ…人と人がこんな争いを続けてちゃダメだ!それに…提督を殺させなんてしない!提督の大切なものを奪わせたりしない!!」

 

 

 

 

 

 

 

度重なる襲撃や戦いを経て、鎮守府を取り戻して行く救達。

 

だが、国民は違う。

新、帝国海軍と旧海軍を明確に混同しない人は少ない。

故に言う。

 

「海軍は必要ない」

「結局奴らの好き勝手にされるだけ…と」

 

 

このまま行けば…俺達も敵の扱いを受けてしまう…

この機会に…やるしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前に林が立っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ここが君の新しい家だろう?」 

 

男は尋ねた。

 

 

 

 

 

 

海の上から。

 

 

 

海の上と言っても船ではない。

自力で海の上にいるのだ。

 

 

 

 

 

「…神崎よ……何故お前は生きている?」

「毎夜思い出すんだ…貴様に殴られた事をッ!」

 

「後悔しているんだ…一瞬で死なせてしまった事をッ!!」

 

「だからこの世界で殺す」

 

「艦娘も他のも含めて…そして最後に貴様を殺してやるッ」

 

 

「見てみろ!正義は脆く崩れ去り…かつてはこの国の守りの要とされた海軍ですら…この有様だ!」

「民意は問う!この世界に軍は必要か?」

 

「その声すら捩じ伏せたッ!今やこの国は…我らのものだッ」

「民の安全も金を払えば…従えば保証する!」

 

 

「そんなの…間違ってるだろう!お前の勝手が通っていいはずはない!」

 

 

 

「ふん!貴様は良く抵抗してくれている…しかし、もうその必要はないのだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様についた奴らを除いて全員…私のナカマとなったからな…」

 

 

「俺の手の中には…全てある!データも力も…全てだ」

 

奴の後ろに居るのは……虚な目をした艦娘達。

「ありとあらゆるものが俺の味方だ!」

 

「お前…弟までも…?」

 

「ああ、そうさ!この気分を晴らす為…貴様をもう一度殺す為に!全てを踏み躙る為にッ!!」

 

 

 

「貴様が派兵した先にもちゃぁんと送ってある…」

「貴様の仲間も…裏切り者も全てッ!悉くこの国と共に沈めッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…守り切れるか?貴様に…」

 

 

「…全員!戦闘態勢に入れッ!!」

救は全員に号令を出した。

 

「無力に崩される様を眺めるがいいさ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督ッ!別海域吹雪さん達を含め…遠征先の部隊全員…戦闘に入りましたッ!」

大淀から連絡が入る。

 

 

「……ただ…」

 

「ただ?」

 

「相手は…全て同型艦、もしくは姉妹艦の模様です」

 

 

 

「ん〜?厳密には違うなァ?」

「お前達そのものであり…仲間そのものだぞぅ?」

 

「なに?」

 

「お前達が守ろうとするものは全て壊す。裏をかいて俺達に合わせて派兵したようだが…違うな…」

「俺達がお前の派兵に合わせて送り込んでやったのさ」

 

「もう1人の…自分が相手なんだからなぁ…」

 

 

 

 

「…全ては貴様を葬る為…」

 

「御蔵だろうと…鏡のナントカってのも…全てを利用した!」

 

 

「てことは…お前の味方ってのは…」

 

 

「いいだろう?従順な…駒は…」

 

 

林 優は自分本位な人間だった。

気に入らないものは排除してでも…のしあがる。

 

何故なら…自分の王国を作りたかったから。

 

 

綺麗な奴が居た。

セクハラとパワハラを続けていたら自殺しやがった。

 

 

そしたらソイツのお気に入りが俺を殴った。

格好がつかなくなった。

 

クソ上司に言われた…俺の出世はこれ以上無いと。

庇いきれない…と。

 

 

だからすぐに奴を追いかけた。

奴の安心し切った表情を見て…無性に腹が立った。

だから…押した。

 

 

奴は呆気なく死んだ。

 

 

 

俺は捕まった。

 

嫌だった。

プライドが許さなかった。

 

 

 

 

だから自殺した。

 

 

 

なら…訳の分からない世界に来た。

弟とやらが居て……。

だから決めた。

 

 

ここで俺の王国を作ろうと。

 

 

 

なのに…ムカつく奴が居た!俺より上に居た!許せねえ…。

だから決めた…

奴を惨たらしく殺そうと…。

 

だから敵に全て情報は売った。

深海棲艦とやらにも、真壁とやらにも…別の世界から来た顔色の悪い奴らにも…。

しかし、奴は全て乗り切った。

 

 

鎮守府を…海軍を奪えどもゴキブリ並みの生命力で俺の視界から消えてくれねえ…。

 

周りを扇動しても…余程気に入られてるのか…奴の敵にならねぇ…

 

何で奴の周りには人が集まるんだ?

腹が立つ。

 

 

 

 

弟や以前の上司、同僚すらも踏み台にした男。

 

艦娘や仲間を…データを元に改造し、傀儡と化させ……そして……

 

 

 

 

 

全ては…思い通りの世界を築く為。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

行け…と命じられたカンムス達はこちらへとやって来る。

 

 

「…」

 

 

 

 

「提督…」

 

 

 

頭の中に誰かが話しかけてくる。

 

 

『これでお仕舞いにしよう…あいつらの好きにはさせない…させちゃいけない!』

 

 

 

目の前にはこの世界を…めちゃくちゃにした奴が居る。

先輩を死に追い込んだ奴が居る。

俺を…殺した奴が居るッ!!

 

 

 

 

皆を見る。

 

「皆が…かわいそうです!無理矢理改造されて…生み出されて!」

 

「やりましょう!平和な…海軍を取り戻しましょう!!」

 

「これ以上…不幸な艦娘達を生み出さないように」

 

 

 

出撃命令を下す。

 

 

 

 

 

 

1人は…己の野望の為に

 

1人は…この世界の為に

 

皆は…愛する提督の見る未来の為に

 

 

 

 

 

 

旧海軍と新帝国海軍の最後の戦いが始まった。

 

 




決戦はそこそこパートが続きます。

ちまちまと語られる部分も出てきます。
胸糞悪い表現や戦いもあります。

オリジナルの展開やその他が出ます。
色々とありますがこの話も最後までお付き合い頂けると幸いです。
なにとぞよろしくお願いします。


感想などありましたらぜひ!よろしくお願いします。


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245話 想い願いの果てに ② その姿は…

私は……ずっと…ずっと頑張って来た。

置いて行かれたくなくて…
必要とされたくて…
負けたくなくて…

大丈夫と言い聞かせて…頑張ってきた…


「…わ、私…?…そして赤城先輩…?」

 

 

 

目の前に居るのは…

同型艦なんてもんじゃない…これは…私自身?

なのに…なんかおかしい。

 

 

 

 

 

 

別の海域では…

 

「…ほう」

武蔵と清霜には武蔵が

 

「…何と……」

桜三笠には三笠が

 

「…チッ」

天龍には天龍と龍田が

 

「…不幸だわ」

山城には扶桑と山城が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…そうよ?私は…作られた吹雪。でもニセモノじゃない…』

『お前を消せば…私は本物になる!』

『この感情も…記憶も私のもの!あなたに否定は出来ない!』

 

 

 

 

 

「砲雷撃戦!開始しますッ!」

 

 

 

 

偽吹雪が砲撃する。

 

 

 

 

「–––え?」

 

感じた違和感。

 

 

『にしても…あなたは昔から邪魔だったから…丁度いいわ!』

 

「え?」

ドキッとしてしまう…。

 

いや…違う。

この赤城は……私は…ニセモノだ!

 

 

「赤城さんは…そんな事言いません…ッ!絶対に!言わないっ」

 

『何故言い切れる?』

 

偽赤城の艦爆から放たれた攻撃が近くで爆発する。

 

「きゃぁあっ!!」

 

「ぐっ…うっ…」

「…負けない…」

 

『私は…赤城を基に作られたんだぞ?』

『私の思考は…赤城そのものだッ』

 

 

 

 

「吹雪さん!惑わされないで!!」

 

「赤城さん…」

 

『馬鹿なの?本心なんか言う訳ないでしょ?』

偽の赤城が言う。

 

 

 

 

『なぁ?そうでしょう?赤城…?』

 

「この…ッ!やめなさい!」

赤城も艦爆を発艦する。

 

 

 

 

 

ズドドドドドン!

 

 

 

 

『おー?焦ってるねぇ?赤城センパイ?図星だからですか?』

偽吹雪に撃墜される。

 

 

どんどんと攻撃に巻き込まれて行く吹雪。

 

 

『ほらほら…コレが(お前)が望んだ姿だろう?』

 

打たれ強くて(耐久値が高くて)強い武装で(火力が高くて)素早く動けて(機動力が高くて)弾幕を張れて(対空値が高くて)魚雷もたくさん積めて…自信に満ちた姿!』

 

「なっ…私は…」

 

 

 

 

そう…

感じた違和感の正体は…艤装。

 

明らかに吹雪が装備できる範疇を超えていた。

軽巡…いや、それ以上のクラスが装備できるものだった。

 

 

それがあれば…私が欲しかった…ものが……

 

 

 

「そんなものがなくても…私はッ!」

 

 

『嘘だな』

 

「…ッ!!」

 

 

 

 

 

『言ったろう?私はお前なんだ…。今の私はお前の理想の姿』

 

 

 

 

 

 

 

『弱いもんなぁ…お前は』

 

 

 

 

 

 

『強く無いと…居場所が無いもんなァ…?他のメンバーに居場所を取られるもんなぁ!愛されないもんなぁ!!!」

 

 

「そんな事ッ!!」

 

 

「吹雪さん!耳を貸しちゃダメ!!」

 

 

赤城が叫ぶが…

『お前の相手は私だろう』

 

偽赤城が近付かせてくれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

偽吹雪が吹雪の顔を掴んで言う。

 

 

『オマエは!期待されちゃいない!ただ…目の前にいたから選ばれただけの初期艦だッ!!提督からも本当に愛されちゃいない!仲間からも…本当に受け入れられてなんかいない!』

 

 

『私はお前だから分かるぞ!お前は…その劣等感を隠して…自分は愛されてると自分に言い聞かせて居るだけだッ!!』

 

 

 

『お前は…愛されてはいないッ』

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

ガクリ…と吹雪は膝をついてしまった。

 

ケラケラと笑う偽吹雪と偽赤城。

 

 

「吹雪さんッ!!」

 

赤城が艦攻を放ち2人を追い払う。

 

ふるふると震える吹雪に手を伸ばす。

 

 

「吹雪さ…「……やめてッ!」

パシン…と、赤城の出した手は…振り払われた。

 

 

「…吹雪さん……」

 

 

 

 

「わ、私…必死だったんです…」

「最初は2人で…何度も海域に挑んで…私が大破して…直して…挑んで…」

「やっとの思いでクリアした時は涙が出るほど嬉しかったんです」

 

「金剛さんが来て…鳳翔さんも来て…私の大破は少なくなりました」

 

「私より何倍も強い方達だったから!!」

 

「それでも…頑張ったんです!私!でも…でも…」

 

「誰にも愛されないならッ!!私はッ!」

 

 

「吹雪さん!落ち着いて!」

 

「赤城先輩も同じように思ってるんですよね!いいですよね!先輩は強くて!頼りになって!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「吹雪さん…ごめんなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パシン

 

乾いた音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え…」

 

 

 

 

痛みがじわりとやってくる。

 

 

 

 

 

吹雪は頬を押さえた。

赤城にぶたれたのだ。

 

 

 

「や…やっぱり…あなたは…「聞きなさいッ!吹雪!!」

 

 

 

驚いた。

叩かれた事じゃない。

あの静かに燃えるような…赤城が…感情を露わにして怒鳴ったから。

 

 

 

 

初めて聞く赤城の怒号だった。

 

 

 

 

涙を流す赤城は…

 

 

「確かにあなたを軽んじて見ていた事はあるわ…」

 

 

でも…と彼女は続ける。

 

 

「吹雪さん…」

「私は…提督と合流した時には金剛さんも…鳳翔さんも…加賀さんも、あなたも居たわ」

 

「正直羨ましかった…追いつく(練度アップ)には時間もかかったもの…」

 

「確かに私達には一航戦の誇りがあったわ。確かに駆逐艦の子が旗艦なんて…って思った事もあったわ」

 

 

「でも…あなたはすぐに私のそんな愚かな考えを改めさせたわ!」

 

「私が…?」

 

「そう…あなたのその直向きさで」

 

 

「私はあなたが羨ましかった。眩しかった。ただ直向きに頑張るあなたが…あぁ…戦場にはこう言う子がきっと必要なんだなって」

 

「だから、あなたが私の随伴艦になるって言った時は信じて疑わなかったわ…あなたならやれるって!そして、あなたは本当にやり切ったわ」

 

 

「あなたは私の憧れなのよ」

 

 

「わた…しが?」

私が先輩の…憧れ?

 

 

 

 

「ええそうよ!」

「いつかあなたのように提督が安心して背中を預けられるパートナーになるって!艦種も関係なく胸を張ってこの場所に立つ為に!」

そして…と続ける赤城。

 

「あなたと共に…夜戦でも戦えるように」

 

 

 

赤城さんが…?

私と…夜戦でも戦えるように?

 

 

 

「立ちなさい!吹雪!」

 

「あなたは…愛されてるじゃない!!」

 

「あなたが1番知っているでしょう?!」

「あの人が同情や…ただの作業でそれを渡していないことを!!」

 

「あなたには有るでしょう?私達と同じ誇りが…あなたしか持っていない…いや!あなただけしか持てない誇りが…!!」

 

 

 

「誇り…?」

 

 

「初期艦の誇りはあなただけのものよ!」

「何人もいる中から…あの人はあなたを選んだのよ!」

 

「それは誰もが手を伸ばしても決して叶うことのない事なの!」

 

 

 

赤城は…吹雪の肩をもって真っ直ぐに彼女を見つめて叫んだ。

 

 

「そんな声に惑わされないで!駆逐艦でも旗艦になれる!第一線で指揮を取って戦える事を証明したのはあなたよ!」

 

 

「だから立ちなさい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「わ、私は…」

 

 

 

 

 




いつの間にか総投稿が250話になってました。
お気に入りも650と…ありがとうございます。
嬉しすぎて泣けます(´;ω;`)


吹雪と赤城戦です。
彼女達の存在とは



少しでもお楽しみ頂けたら幸いです!

感想などお待ちしています!
ぜひ、よろしくお願いします!


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246話 想い願いの果てに ③ 誇りに思ってもいいですか?

それは私…
私だけが持っているもの

段ボールだけの寂しい部屋から…ここまで築き上げてきた…。


あなたに選ばれたこと…

私は…誇りに思っていても良いですか?











「私は…」

 

『憎いだろう?』

 

「私はッ…」

 

『お前は…選ばれない…赤城にも…あの提督にも選ばれない負け犬だ』

『お前も誰も信用しちゃいねえのにな!』

 

 

 

ぐるぐると頭の中を奴の言葉が駆け回る。

 

 

私は…司令官の1番にはなれないの?

私は…金剛さんにも負けて…初期艦のはずなのに…

 

何で初期艦に選んだのだろう?

 

私は…

私は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある時に私がよくする行動がある。

 

 

不安な時に…

寂しい時に…

力が欲しい時に…

勇気が欲しい時に…

前に進みたい時に…

 

 

 

 

私は約束の指輪の左手をぎゅっと右手を添えて握る。

 

 

 

 

 

 

 

 

私の左手には…彼との銀色の指輪(愛の証)が光っていた

 

 

思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

『頼りにしてますよ…!吹雪さん!』

 

『あなたなら…随伴艦を任せられるわ…』

 

『加賀さん…赤城さん!』

 

 

『明日をも知れぬ命だからこそ…今を精一杯生きるの…焦がれる明日を…大好きな人と過ごすために』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あなたが私の司令官ですね!私は吹雪です!よろしくお願いしまひゅ!』

『噛みました…』

 

『あはは、力を抜こう!吹雪…よろしくな!』

 

 

段ボール数箱しかない寂しい部屋から始まった。

 

妖精さんと…大淀さんと…途中氏ら来た間宮さんに伊良胡さん。

そこから私達…

戦いではあなたと2人でがんばりました。

 

 

 

 

 

 

『あなたに一目惚れなんです!』

 

『お前は俺の中でも何があっても一番最初に出会った初期艦だ』

 

 

 

『何で私が初期艦だったんですか?』

 

『…可愛かったってのもあるし……あ、この子だなあって直感ってのもある』

 

『君と見る…何か明るい未来を見た気がするんだ』

 

『未来ですか?』

 

『今でも夢に見るんだ。隣に皆が居て、君が微笑みかけてくれる…明るい未来が…。晴れ渡る木漏れ日の中で…優しい皆の笑顔で…』

 

 

 

『だから…君にコレを改めて贈りたい』

 

 

司令官は私に指輪を……

そして…キス…を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『司令官…!』

 

『ん?』

 

『わ、私は誇って良いですか?!あなたの初期艦となった事を!あなたに選んでもらえた事を…誇ってもいいですか!?』

 

 

『…君は誇ってくれるのか?』

 

 

『はいっ!!』

『私は…ずっと司令官を愛してますからッ!!』

 

『俺も愛してる』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『頼りにしてるぞ吹雪』

 

『私なんか…』

『私も…もっと強ければ良かったんです』

 

『そうか?』

 

『たくさん魚雷を積めて…空からの攻撃にももっと対応できたら…』

 

 

 

 

『お前はお前でいいんだ』

『お前は…いつだって在ろうとしてるじゃないか』

 

 

 

 

『旗艦として…随伴艦として…姉として…皆を守ろうと必死に頑張ってるじゃ無いか』

『誰が見ていなくとも…俺はずっと見ているぞ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『仲間割れか?』

 

 

 

 

「……哀れね」

 

『何?』

 

 

「私達ってくせに…私達の事がわからないなんて…」

「私の随伴艦を…旗艦を舐めないで頂戴」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私はッ…赤城さんの後輩で…随伴艦で…旗艦で…司令官の初期艦ですッ!!」

 

 

「吹雪さん…」

 

 

『ふん!強がるなッ!言い聞かせてるだけだ!!』

 

 

「何と言われようと私の誇りです!初期艦も随伴艦も任せると言ってくれたんだ!!それに初期艦は私だけっ…!それは…誰にも負けない誇りだッ」

「そんな武装なんかに…私は負けないッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「負けない…!私は負けないっ」

言い聞かせるように…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前達なんかに…負けるもんかッ!お前達なんか…お前達なんか!私達がやっつけちゃうんだからッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は誰も信用してないと言いましたね」

「確かに今のあなたは…私の理想の姿です」

 

「でも…分かりますか?」

 

偽吹雪はハッとする。

 

「なんで…その姿でも…アレがないか…」

 

『やめろッ!!』

明らかに焦る偽吹雪。

そう…吹雪のコピーである彼女には分かるのだ。

なぜ…それがないのか。

 

 

 

 

「ふ、吹雪さん?」

吹雪は赤城の方を見て微笑む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何でその装備の中に…空母や軽巡の装備…艦載機が無いか…」

 

 

 

 

「それは…」

 

『言うなッ!やめろおおお!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「それは…赤城先輩達にしかできないと…信じてるから」

「私は…私の役割を知っているから」

 

 

 

 

 

 

 

 

赤城もハッとした。

確かに理想像である偽吹雪の偽装には発艦できる艤装はない。

確かにその攻撃ができれば便利だろう…。

だが、吹雪は思っていたのだ。

 

 

それは…何があっても赤城先輩達に任せたい…信じてるから…と。

 

 

 

対空、対潜、それに特化した装備。

そう…彼女の望んだ姿とは……

 

 

 

随伴艦として

旗艦として

 

 

皆を守り抜ける姿。

 

 

愛されたい

必要とされたい

 

でもそれ以上に…仲間の命を背負って行くに値する子になりたかった。

だから彼女はそれをカバーできるくらいに努力した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行きましょう!赤城先輩ッ!!」

 

 

「吹雪さん…私達って…」

 

またじわりと涙が浮かんできたが…グッと堪えた。

「ええ!行きましょう!吹雪さん!!」

 

 

 

 

『厄介な目だな…』

 

 

 

 

提督…私に…!私達に!!力を貸してくださいッ!!

 

 

 

 

吹雪 改ニ 高揚状態

 

赤城 改ニ 戊 高揚状態

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吹雪さん…私のこの戊は…本当にあなたと共に夜も戦えるように願ったからなの。

 

 

 

 

赤城は無力を感じた。

夜には何も出来ないのが…。

彼女は思った。私も皆と一緒に…吹雪と一緒に戦いたいと。

 

 

その願いは…奇しくもあの運命の5分間の再現で至ったこの姿。

彼女はその真価をたった今理解したのだ。

 

彼女は手にした。

すべては…あなたと共に戦うためにで

願いの果てに辿り着いた…戊という状態。

夜戦が可能な赤城の姿に。

 

 

 

 

 

吹雪は劣等感を感じていた。

しかし、彼女は願っていた…思っていた。

負けたく無い…と。そして努力を重ねていた。

確かに基礎のステータスでは夕張や島風には及ばない。

しかし…彼女は辿り着いていた。

旗艦、随伴艦、初期艦としての経験の積み重ねで…

その努力の果てに

彼女の強さは…駆逐艦の中では誰もが認める鎮守府内でも1番だった。

 

「旗艦としての判断も指揮もピカイチだ」

 

「だって彼女は…提督の隣でずっと彼の指揮を見ていたから!」

 

 

足りないのは自信だった。

だが…彼女は仲間の声によってそれも超えて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「赤城先輩!」

 

「…赤城って呼んで頂戴」

 

「え…」

 

「私も吹雪と呼ぶわ!」

 

先輩後輩じゃない…対等な…仲間。

 

「行きましょう!赤城ッ!!」

 

「ええ!!」

 

 

 

『今更仲良しこよしなんて…小癪なのよッ』

偽赤城が攻撃隊を発艦させる。

 

 

 

 

「赤城!攻撃隊…発艦して迎撃してください!あの数…行けますか?」

 

「…」

赤城はニコリと笑った。

 

 

 

 

あぁ…そうだ…

違うよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吹雪は短く一言だけ言った。

 

 

()()()()()()()()

 

 

その声に彼女はとびきりのニヤリで応える。

「ええ!もちろん!」

 

 

「…任されちゃった。さあ!私が…相手よ!!」

 

 

 

赤城と偽赤城が発艦合戦に入る。

艦攻同士の航空戦…制空権を握る為。

 

 

まだ…いける。

無駄を…無くして…

もっと疾く、正確に!

 

どんどんと赤城の動きが鋭くなって来る。

 

次第に追いついて行く。

 

 

恐ろしい速さで次々と攻撃隊を発艦させる(矢を放ってゆく)赤城。

 

 

『はん!私と張り合おうたって……』

 

 

 

 

 

しかし、偽赤城の余裕の表情はどんどんと曇ってくる。

 

バカな…そんな事が?

 

 

[なっ…私が…追いつかない?]

そう、偽赤城がいつの間にか追いかける側にかわっていたのだ。

 

 

あり得ない!私は!私は…色んな艦娘達を利用して作られたというのに?!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁあああッ!!」

 

『小賢しいッ!!』

 

 

 

偽吹雪が吹雪へと砲撃する…

 

 

が、その悉くを吹雪は撃ち落とす。

 

例え赤城を狙おうとも…その軌道もずらされる。

 

『くっ…艤装はこちらの方が強いのに?!』

 

「撃ち落とせないなら…当てて軌道を変えてやれば私にも赤城にも当たらないッ!」

 

 

それどころか偽赤城に牽制の射撃を行う事すらやっている。

『偽吹雪ッ!!何とかしなさいッ』

 

 

 

『ばかな…その計算もすぐにできると言うのか!?』

 

 

 

 

 

 

 

「今だッ!!」

吹雪は一気に距離を詰めた!

 

『くそッ!舐めるなッ!!』

偽吹雪は構えた。

 

 

 

「私と同じってなら…コレはきっと考えないでしょう!」

 

猛スピードで突っ込む吹雪は急ブレーキからの急旋回を行った。

足の艤装が波を飛沫に変えて偽吹雪へと見舞う。

 

 

『ぐっ!?目がっ』

一瞬、偽吹雪はのけぞった。

 

彼女はそれを見逃さない!!

 

「そこおおお!!」

「夕立ちゃん直伝の…蹴りだぁぁ!!」

急旋回の勢いを利用して回し蹴りを腹に見舞う。

 

 

『ごふっ!?』

後ろへと飛ばされる偽吹雪。

しかし、すぐに体勢を立て直した。

 

『この–––––––!?』

 

前を向いた時に目に映ったのは……

 

 

 

ガツン!!

 

 

 

それが何か分かる前に顔面に衝撃が走った。

 

 

 

吹雪は片腕の艤装を投げつけたのだ!

 

『がっ!?–––艤装だと!?』

ボタボタと鼻血を流しながら…困惑した。

 

 

 

「まだまだァァァァァァ!!!」

更に、蹴り、蹴り、蹴り蹴りッ!!

 

 

 

 

『ぐっ!がっ!があっ!』

押される偽吹雪。

 

有り得ない!私が…私がっ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドン…と何かが背中に当たった。

『なっ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

偽赤城だった。

何と偽吹雪は吹雪の猛攻で偽赤城の立つ位置まで押されていたのだ。

 

 

『『邪魔だっ!』』

と、言い合いになるが

 

 

偽吹雪はハッと気付く。

 

 

 

吹雪が居ない–––

 

 

 

偽赤城はゾッとする。

 

まさか–––

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

それは…今の間にどれだけの差が生まれただろう?

 

 

 

ばっと上を見上げる

 

 

 

 

 

 

『やられ…た』

 

 

『何が!!』

イラつく偽吹雪も同じく見上げる。

 

 

 

 

 

 

そこには…上方から囲むように張り巡らされた攻撃隊の数々。

 

『…綺麗に…やるじゃない』

 

 

 

目の前の吹雪が艤装を構えてこちらを向いている。

 

 

 

『…ケッ…自信に満ちた顔しやがって…すげえわ…お前』

 

 

 

 

 

「てえええええええ!!!」

 

吹雪の号令と共に…攻撃は開始された。

 

 

 

 

 

 

 

大轟音

 

きっと遠くでも見えただろう。

きっと遠くでも聞こえただろう。

 

凄まじい程の熱量が2人に降り注いだ。

 

 

 

 

 

ズドオオオオオオン!!

ズドォォオォオオオオオン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……負けた』

 

『……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…はぁッ……はぁっ」

 

「…」

 

 

 

 

『少しは…自信ついたか?』

偽吹雪が問う。

 

「え?」

吹雪は戸惑う。

 

『言ったろう?私は…お前なんだ。…幾多の艦娘達を基に…お前達の魂のデータを基に作られたコピーの吹雪…』

『お前がどう足掻いても至れない…夢の果ての姿…』

 

 

『そこの赤城もそうだ…』

 

『スペックは私達の方が遥かに上だったのよ?でも負けた』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだ少し…」

と、彼女は答えた…。

 

「なら、足りない分は私達が補います」

と、赤城が答えた。

 

 

 

『素敵ね…私達にはない…本物の……』

 

 

 

 

 

 

『そうか……良いなあ…』

 

『……行け……お前達の愛する…人……が』

 

 

 

 

 

 

 

 

待ってるから

 

 

 

 

 

2人は少し笑ったような顔で…消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「吹雪…行きましょう」

 

「赤城……はい!行きましょう!」

 

 

見送った彼女達は…向かう。

西波島へと。

 

 




やっつけちゃうんだからは
ずっと使いたかったセリフ。
そんな吹雪も格闘デビュー…。

え?艤装の使い方が違う?
投擲武器じゃない?

せ、戦略ですよ…!



少しでもアツいと思って頂けたなら幸いです。


感想など頂けたら嬉しいです(๑╹ω╹๑ )
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247話 想い願いの果てに ④ 誰が決めた!!

誰が決めた!

私がお前に勝てないと…誰が決めたッ!!








「……させないッ」

フーッ…フーッと肩で息をする清霜。

 

 

「清霜ッ!逃げろ!お前が叶う相手では…」

 

 

『そうだ!貴様が戦艦の私に…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前に武蔵さんが居る。

見間違うくらいの…そっくりさ…

いや…違う…武蔵さんじゃない?

 

 

 

武蔵さんのような……私?

 

 

 

 

『そう、私は…清霜』

 

 

「何を言っている!?清霜は駆逐艦ー…」

 

『なら目の前の私は何?』

 

『私は…超弩級戦艦 清霜よ』

 

 

私は信じられなかった。

戦艦の私が目の前に居た。

 

分かる…自分では無い自分…。

 

 

「奴らは一体どんな事をしてお前を生み出したんだ」

 

『さあ?』

 

 

『でも…これは現実…』

『武蔵…貴様が無理と言った戦艦となった私…に勝てる?』

 

 

 

 

 

「清霜!行くぞ!」

 

「は、はい!」

 

 

戦闘が始まる。

 

 

 

 

ズドン!!

繰り出された砲撃。

 

その速さと威力は…私達にそれが現実だと叩きつけた。

 

その言葉は嘘ではなかった…と。

 

 

「なっ!?!?」

 

「本当に…戦艦級なの?」

 

『戦艦級じゃなくて戦艦なのよ』

 

 

 

「きゃぁあ!!」

吹き飛ばされる私。

 

「清霜ぉお!!」

 

 

 

 

『どう?理想を叶えた…()()()()()()()()()()()()姿()を見るのは?』

 

 

「…清霜……!!」

武蔵がカバーに入る。

 

『残念だけど…速さは駆逐艦並みよ?』

 

清霜に近付く偽清霜の攻撃から庇う武蔵。

その腹に拳が突き刺さった。

 

 

「がはっ!?」

 

『もうアンタなんか要らない。そして清霜…アンタも要らない』

『私が清霜…本物の清霜になるのッ』

 

 

 

『あぁ…気持ちいいわあ…この強さ…』

ドゴッ…

武蔵を掴んで殴る偽清霜。

 

『本当…雑魚の頃とは違うわ』

 

「このッ!!」

武蔵の反撃を受け止めて更に殴る。

 

「がはっ」

 

『よくも無理って言ってくれたね』

ドゴッ

 

『雑魚のくせに』

バキッ

 

『エラソーにさ』

ガスッ!ゲシッ

 

『アンタなんか…壊してやるわ』

バキィ!!

 

 

『それが私の意思…清霜が思い続けていた事』

 

 

「嘘よッ!!そんなの!」

清霜は否定する。

 

『嘘なもんですか…私はあなたよ?わかるわよ』

 

武蔵の髪を掴み上げ…ぐいっと顔を近寄らせて言う。

『ついでに言うと…武蔵でもあるから…アンタが何を思ってたかもわかるわ』

 

 

 

 

 

「やめて…」

聞きたく無い…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『無駄な努力なんだよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ッ!!」

清霜は耳を塞いだ。

嫌だ!聞きたく無い!受け入れたくないッ…と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

努力すれば叶うと思っていた。

私もいつか…戦艦になれると信じていた。

 

 

 

 

 

 

偽清霜が私に近寄って来る。

 

 

 

そして

 

 

バキッ

殴った。

 

 

 

 

『現実を見られないお前が嫌いだ』

バキッ

 

『雑魚は…雑魚のまま大人しくしてりゃいいんだよッ!!』

ドゴォ!

 

ズドオオン!!

殴り飛ばされたところに砲撃される。

 

ぼろぼろになる艤装。

大破に追い込まれた私…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やめろっ!!」

武蔵は叫んだ。

 

『何だよ?』

偽清霜は武蔵を殴りに戻る。

 

 

 

 

「そこっ!」

武蔵は偽清霜にしがみついた。

 

 

「逃げろ!清霜ッ!!応援を呼べッ」

 

「で…でも…武蔵さん…」

 

『小賢しいんだよッ』

 

 

ドゴン…と鈍い音がした。

武蔵にボディーブローが深く突き刺さったのだ。

膝から崩れ落ちる武蔵

 

 

 

 

だがそれでも彼女は偽清霜に飛びついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…清霜……確かに私は…無駄だと思ったさ…不可能だと思ったさ…」

「最初に無茶ばかりするお前にな…」

 

「でも…お前は選んだ…駆逐艦として戦艦並みに活躍するようになると」

 

「私はお前の選択を…凄いことだと思った」

 

『……』

 

「己の夢を…思いを変えることがどれだけキツいことかは想像できる」

「ましてや、諦めろと言われているのだからな」

 

「それでも…お前は腐らずに…前を向いたんだ」

「一緒に修行しているが…私がお前に教えられている事も多いんだぞ」

 

 

「私に…?」

 

 

 

 

 

 

 

「決して諦めない事だ」

 

 

「お前は確かに現実を見た…それでも思い続けて必死で頑張っている」

「その必死さが私にも頑張ろうと思える力をくれる」

 

「皆と共に生きる明日を…諦めない事をッ」

 

 

 

『このッ…邪魔だッ』

ガスガスと武蔵を痛めつける偽清霜。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は…

今何も出来ない。

艤装も少しでも使えば完全に壊れるだろう…。

逃げたら…武蔵さんの言う通りにここから逃げれば助かるだろう…武蔵さんの命を犠牲に…。

 

 

仕方ないんだ

私じゃ…勝てないから…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや

 

違うだろう

 

 

 

 

 

何故私は戦艦に憧れた?

武蔵さんに憧れた?

 

 

強いから?

 

 

違う。

 

 

 

 

守れるだけの強さを持っていると思ったから。

 

 

 

でも…あの人と話してわかった。

 

 

提督は強い。

でもその強さは武力の強さじゃなかった。

強さにも色々とある事…。

 

『清霜…人生はな、所詮与えられたカードで勝負するしか無いんだ』

『だから俺はそのカードを最大限に使うんだ』

 

 

現状でできる最大限をやること。

戦艦には戦艦のできること。

 

駆逐艦には駆逐艦の(私には私の)出来ること…

 

 

駆逐艦だって戦艦を沈める時はあるんだぞ?

魚雷は戦艦には撃てないんだし…

 

 

 

 

 

 

 

私にできること…

私にできる最大限……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

覚悟を決めろ私…

 

私は…

私はやれる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「清霜…」

 

『残念だが…奴はもうダメだよ』

 

 

『さあ…死ね…武さー…ぬがぁ!?』

 

偽清霜の顔に砲撃が命中した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……させないッ」

フーッ…フーッと肩で息をする清霜。

 

 

「清霜ッ!逃げろ!お前が叶う相手では…」

 

 

『そうだ!貴様が戦艦の私に…』

 

 

 

 

「…んですか…」

 

 

 

『ん?』

 

 

「誰が決めた」

 

 

『何?』

 

 

駆逐艦()戦艦(お前)に勝てないって誰が決めたぁッ!!」

 

 

 

「私は戦艦になりたい…戦艦級に強い駆逐艦になりたい!それは変わらないッ!その想いは変わらない…」

 

 

確かに勝ち目は薄いだろう。

私の必死の何回もの攻撃はお前の軽い一撃にすら値しないだろう…

 

でも!

 

「でも…ここで仲間を見捨てて生き残るなんて事は…私達の辞書にはないんだッ!」

 

「清霜…」

 

 

『そのボロボロの艤装でなにが出来る!?』

 

 

 

 

「艤装なら…あるッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

清霜は…

武蔵の艤装を背負った。

 

 

 

 

 

「清霜!?」

 

『あら…バカもここまで来ると清々しいな…』

 

 

 

「何度も昔に背負ったんだ…このくらいッ!!」

 

 

しかし…清霜が背負ったのは戦艦と言えども超弩級戦艦の艤装ではなかった。

ガクガクと膝が震える。

 

 

 

悔しい…。

 

私には……

あんなに努力したのにッ……。

 

 

 

 

「清霜ッ!!」

武蔵が叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおおおおおッ!!」

 

ズドンと放たれた砲撃の反動で清霜は後方に吹き飛ばされた。

 

「がっ!ぐっ……」

 

『どこを狙ってるんだ?笑えるな』

 

 

 

 

全身が裂けそうに痛い!

今にも倒れそうで…クソお…

 

 

 

 

 

 

 

何故…お前はそれでも…諦めない?

 

私は言い切った。

駆逐艦は戦艦にはなれない––と。

戦艦級の強さを持つことはできたとしても。

 

 

しかし彼女はとあるきっかけを機に考えを変えた。

『私は戦艦並みに活躍できる駆逐艦になります!』

 

 

 

その後の鍛錬も…きっとキツかっただろう。

しかしお前は一度たりとも根を上げなかった。

 

 

 

 

まさか…お前が私の前に立って守ろうとしてくれるとは…

まさか…お前が私の艤装を背負ってでも戦おうとするとは…

 

なんと情けないことか…

 

 

 

 

 

いや…違う。

 

 

その考えでは軽んじているだけだ…

 

 

()()()()()()()()()()

 

であるなら…私に出来ることは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ハハハハハ!傑作ね!』

 

『もういいわ!終わらせてあげる!!』

 

 

 

 

もう一度構える清霜。

くそっ…震えて照準が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「肩の力を抜け…清霜…」

私に手を添えてくれたのは…武蔵だった。

 

 

「武蔵さん…?」

 

 

「それが…超弩級戦艦…大和型の艤装だ」

「重いだろう?強いだろう?」

 

 

「それの中に…どれほどの物が詰まっているか…分かるだろう?」

「お前はそれを背負っているんだ…その小さな体と大きな心で」

 

「いいか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前は今…戦艦になったのだッ!!」

 

 

「お前は今…私と肩を並べる戦艦となったのだ!」

 

「見せつけてやろう!思い知らしめてやろう!私達の力を!」

 

 

「でも…力が…」

 

「私が支えるッ!!それが仲間だろう!」

「お前が守ってくれるんだろう?帰ろう…2人で」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前ならできる…と言ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吹き飛……ばない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

––––ありがとう、清霜。

私はお前に教えられた…。

 

決して諦めることなく…腐る事なく

思い続け…努力したものが至る場所。

 

 

普通のものなら逃げるだろう––

この鎮守府のメンバーなら…敵に向かって行くだろう。

私を助けようとするだろう。

 

お前は…私の艤装(誇り)すら背負ってでも戦ってくれようとした––

 

 

 

 

 

「ありがとう…清霜」

 

 

「武蔵…さん」

 

私は驚いた。

あの武蔵さんが…涙を浮かべて私にお礼を…言っている。

私は何かできたのだろうか?

 

 

 

 

 

 

清霜は願う。

力が欲しい。

戦艦に…なれずもと、今この時…大切な仲間を守れるだけの力が欲しいと。

 

 

 

 

 

 

 

清霜 改

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お願い…提督…私にもう少し力を…。

たった1発でいい!

この主砲(思い)アイツ(ワタシ)にぶつける力をッ!!

 

 

「提督ッ!!武蔵さん!私に…力を貸してええ!!!」

 

 

 

 

清霜の体が光る。

 

 

清霜 改 高揚状態

 

 

 

 

 

 

 

 

『何だそれ…』

 

 

 

奴は知らない。

その力の正体がわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くぞおお!清霜ォッ!!」

 

「ぶちかませえええええええ!!!」

 

 

 

 

 

「ぬおぉぉああああぁあッ」

 

 

私は背負っている!

彼女の誇りも思いも願いも…力も!

 

 

 

「私は…戦艦級の………」

 

今この時は…私は…!

 

「私は…ッ!戦艦 清霜だぁぁあ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

清霜は放つ。

師匠の艤装を借りて。

 

 

 

 

『なっ!?馬鹿なッ!!まともにコレを!?』

私が恐怖したのか?

たかが…駆逐艦如きに?

 

 

馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な

 

 

「その駆逐艦が…いや!戦艦となった駆逐艦が貴様を打ち倒すんだッ!!」

 

 

 

 

ズドオオオン!!!

 

大和型の主砲が炸裂する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よくやった…清霜…」

 

「武蔵さん!でもまだ!」

奴はまだ生きている!

 

 

「……いいや…」

武蔵は言う…穏やかな表情で。

奴も…きっと同じ気持ちだろう……と。

 

「え…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

震えながら立ち上がろうとこちらを睨む偽清霜。

 

 

『馬鹿な……』

『……馬鹿な……何で……何で…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何で私は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

喜んでいる?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死にそう…いや死に至る痛みなのに

何故?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと…穏やかな表情の武蔵が目に止まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ…そうか

 

 

 

私の中には…清霜だけでなく武蔵も居るからか…

 

 

夢を叶えた清霜と

見守って来た武蔵

 

 

だから嬉しいのか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は私に抱きしめられた。

 

「…ありがとう……こんなこと言うのは変だけど…」

「少しは…誇れるかなあ?」

「諦めなかった私…を…」

 

 

『諦めが悪いんだよ…』

『でも…まぁ…』

 

 

 

 

 

ポン…と手を頭に置く。

 

 

 

 

 

 

 

 

『頑張ったんじゃ無いか?………私』

 

『だって…駆逐艦が戦艦になって……戦艦に…自分に勝ったんだからな…』

 

 

 

絆…かあ…

羨ましいな……

 

 

 

 

 

 

 

 

『…武蔵さん』

 

 

「…何だ?」

 

 

『私は……強かったですか?』

 

 

「私達を見れば分かるだろう?」

「強かったさ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は涙を流した。

 

そして…満面の笑みで言う。

 

 

『…なら満足です』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と言うと彼女は…光となって消えた。

 

 

 

 

 

 

「…ありがとうございます。武蔵さん」

 

「いや…こちらこそ…ありがとう」

 

 

 

2人で抱き合って泣いた。

いろんな思いがあった。

でもそれ以上に…2人でもっと分かり合えたのが嬉しかった。

あなたが生きていた事が…守り切れた事が嬉しかったから。

 

 

抱き締められる力が少し痛いのが嬉しいから

あなたを抱き締められるのが嬉しいから

 

 

 

 

帰路につくまで…2人で泣いた。




武蔵と清霜編でした。

戦艦になりたい駆逐艦の話のある意味続きネタでした。



少しでもアツいと思って頂けたなら幸いです。

感想などお待ちしています!
コメント、評価、メッセージ等お気軽にお願いします!


溶接で目玉焼きになったので
お休みもらいますうう


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248話 想い願いの果てに ⑤ 時代遅れと言われようとも




後ろを見れば栄光があるのに…
目の前は果てしなく続く暗闇なのだ


今この時は…その闇に差し出した光なのだ。









『時代遅れ…』

 

偽艦娘と偽物KAN-SENが放った言葉はその一言だった。

 

 

 

 

 

その言葉は天龍をキレさせるのに十分すぎる一言だった。

 

 

「待て!天龍!」

という桜三笠の静止を振り切って天龍は偽天龍に斬り込んで行く。

 

「くっ…あのバカ…!龍田…奴の援護にまわって貰えるか?」

 

「わかりました。でも…桜三笠さんは…?」

 

「我なら大丈夫だ!」

 

 

 

『味方は多い方が良いのではないか?我よ…いや…我の亡霊よ』

 

目の前には…

砲門の増えた…前弩級型でない三笠が立っている。

 

「亡霊はお主の方だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

許せねえ!許せねえ!!

天龍にとってその言葉は己を踏み躙られるのと同意義であった。

 

 

『図星か?』

 

「るせええ!!」

天龍の一閃をヒラリと避ける。

 

 

目の前に居るコイツがムカつく。

眼帯もしてなくて…装備も…クソ理想的な装備で…。

 

 

 

『テメェじゃ俺には勝てねえよ!』

 

ドゴッ…!!

と、蹴りを喰らう。

 

「ぐっ…このおおお!!」

体勢を取り直して突っ込むが…

 

『甘いッ!』

相手の天龍も刀を出してくる。

刀身も刃渡りも大きい!!

 

「くそおっ!」

間一髪で躱した

 

 

ブシュッ…

左腕に激痛が走る。

どうやら間に合わず斬られたらしい。

 

 

 

 

世界水準…と言われた当時。

その強さは当然のものであった

 

 

 

『惨めだな…天龍。だから置いて行かれるんだ』

 

「あぁ!?」

 

「天龍ちゃん!落ち着いて!」

追いついた龍田が諫める。

 

 

『龍田か…お前も知ってるだろう?』

『古い存在は…弱いと』

 

 

『自分を強いと怖いと言い聞かせて…何と哀れか』

 

「……」

 

「うるせえええ!」

「俺は強え!」

 

()()()()だ!貴様らは時代遅れなんだ!』

 

「このッ…」

 

「落ち着いて!天龍ちゃん!」

 

「うるせええ!悔しくねえのかよ!龍田はッ!」

 

 

『妹にも置いて行かれ…愛する者はお前に目もくれず…』

『そして…龍田お前は…そんな姉を笑う』

 

 

「…龍田?」

 

「そんな事ないわあ!」

 

『嘘だな!無茶ばかりするバカ姉貴に辟易してる。心を痛ませる提督に申し訳なくなる』

 

 

「…いや……でも…」

 

「へっ…そんな事かよ…」

「笑ってたのか…龍田ァ!!」

 

「ちがっ」

ぽろぽろと涙を溢す龍田。

 

 

『……ふん…』

 

「まずはテメェをぶっ殺してやる!!偽天龍!!」

 

天龍が突っ込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ばかめ…』

『だからその改ニも不完全なのだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パキイイイン!

 

 

 

 

 

天龍は斬られた。

自慢の刀ごと。

 

 

 

 

 

ブシュウウウと血が流れる。

 

 

 

 

刀?

俺の…魂の?かたなが?

ガクンと膝をつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「天龍…ちゃん」

 

 

 

 

 

 

『…貴様は……わかってない』

 

 

『だから…提督にも選ばれない』

『いや…提督すら…お前の中では己の存在を確固たるものにする為の手段なのだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…どうした?』

 

「くっ…我はまだ…やれる」

膝をつく桜三笠。

 

『その時代遅れの装備でか?』

 

 

 

 

 

 

前弩級戦艦ー…。

当時は最強とも言われた戦艦もドレッドノート級の台等によって前と言う名称の括りにされた。

 

砲門の数は…即ち攻撃の手数の違い。

所謂、新型の弩級戦艦には前後に2門ずつの主砲があり、最低でも2門が相手に発射可能。

つまり、T字での戦闘においては…4門での掃射が可能になる。

それは砲撃戦においては致命的な違いを持つ。

 

 

時代の移ろいとは…かくも残酷な現実を叩きつける。

 

 

 

 

 

 

「そうだな…」

桜三笠はフッと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから何だってンだァァァア!!」

 

 

血みどろの天龍が吠えた。

 

 

「ぅルセェんだよッ…」

 

「そんな訳ねえ!アイツだけなんだよ…仲間以外でずっと俺を信じてくれた人間は…だから…俺はアイツに応えてえんだ!!」

 

 

『ただ…自分の弱さを認めたくないだけだろうが!!』

 

「…違う…っ!!」

 

 

天龍は…超前衛型…といえば聞こえが良いが、どこの艦隊でも大破しやすい艦娘と言われている。

敵陣に切り込んで行く姿は勇猛と言えるが…

その分傷も負いやすく、大破に追い込まれる可能性が高いのだ。

中には死すら恐れていない天龍も居る。

最終的に効率やその他を鑑みて、安全な遠征に回される事が多い。

 

 

だが、彼女は戦いたい……というより、自分が役に立つ事を証明したいのだ。

だからそこの理想と現実に乖離が生じて性格が曲がるのだ。

 

『そのプライドも折れているがな…』

 

 

 

天龍にとって艤装の刀は天龍そのものなのだ。

 

 

 

 

 

妹に対する劣等感、嫉妬

それを認めたくない心…。

折れた…刀。

 

 

 

 

 

天龍の改ニが不完全なのは……

己を認めていないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだ…

俺は…

 

 

 

 

認めたくねえ…

龍田にも負けてて…

時代遅れで…なんて…

 

俺は…ただ!!

 

 

 

いや…わかってるんだ。

でも認めたら終わっちまう気がするんだ。

俺を支える全てが…

 

 

 

 

 

 

 

 

「天龍よ…」

 

いつの間にか立ち上がっていた桜三笠が言う。

 

 

 

 

 

「我は見てきたぞ」

「この国の…栄光も…どん底も…興廃全てを」

 

 

「どれだけどん底でも立ち上がれるのが強さだ」

 

 

「私とて…当時は世界最先端を征く戦艦だったのだ」

「それが今や…前弩級戦艦…」

 

「いつしかは置いて行かれるものなんだ」

 

 

 

天龍は思い出す。

敷島型四番艦…

明治期の日本を勝利へと導いた旗艦も…今となってはその強さは…完全たる過去の遺物になる。

 

しかし、彼女はそれを受け入れている。

しかし、彼女は強かった。

KAN-SENとしての強さなのか…たしかに武装は弱いが…それでも強かった。

己を受け入れた上でも彼女はもがく。

 

それは…

 

 

 

「後ろを振り返れば栄光があるのに…前を見れば果てしなく遠い…遠い暗闇しかないのだ」

 

 

 

 

「だが…どれだけ時が立とうと私の誇りや栄光は消えない」

 

 

「それはお前達も同じだ」

 

「我にとってな…お主達と共に…この世界を…愛する者を守る為に戦える誇りや喜びというのはのは…果てしなく遠い暗闇に差した…光なのだ」

 

 

彼女がその光へと手を伸ばしたいから…

プライドを捨てて、誇りを守りながら必死でもがくのは…

 

愛する者へ応えたいから。

 

 

 

 

 

彼女は言う。

弱くて良いじゃないか

古くて良いじゃないか

 

我らはここに生まれて…存在している。

それだけで意味がある…と。

 

 

弱きを認めるからこそ…

自分を認めるからこそ…

きっと彼女は強いのだ

 

 

 

 

 

「征こう…共に…」

「暁の水平線に…勝利を刻むのだろう?」

 

 

 

 

「…桜三笠さん………ありがとう」

 

「龍田…ごめんな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほんも……しょうがなねえな」

 

「ええ…先輩にそう言われたら…」

 

 

 

 

やるしかないでしょ!

 

 

 

 

 

「あぁ…そうだよ」

「龍田には先を越されるし…素直になれねぇから…俺はいつまで経っても今のままだ」

 

 

 

 

 

 

 

天龍は思い耽る。

 

『天龍……』

救が差し出した指輪。

 

 

『提督…わりぃ!その指輪…帰ったら贈ってくれよ。そん時ゃあ…俺も素直になれるはずなんだ』

 

 

欲しかった。

でも…今はその資格がないから…と言い聞かせて逃げた。

 

 

 

「俺だって…アイツが大好きなんだッ!!」

 

「龍田にも負けたくねえ!誰にも負けたくねえ!!」

 

 

「天龍…ちゃん」

 

「確かに俺ァ…強くねえよ!!他に強い奴は沢山居るよ!」

「でも…いつだって俺は…」

 

「確かに…世界水準なんかじゃねえよ…」

 

 

 

「皆の先陣切って…誰よりも前で戦って来たんだッ!!」

 

「俺は…ずっとアイツに応えたかったんだ。ずっと1番であり続けたかったんだ」

 

「悪いか!!」

「それは今後も変わらねえ!俺は!俺に出来る方法で…ずっとそうあり続けるんだ!!」

 

 

 

 

 

彼女は認めた。

己は弱い…と。

確かに時代遅れだと。

 

 

 

だが…彼女が歩みを止めることはなかった。

より高く…遠くに…彼女は登ろうとしていた。

 

 

 

 

 

「天龍ちゃん」

 

 

龍田から差し出された物は……

 

 

「刀…?」

 

「提督から…あなたに」

 

「え…」

 

「明石さん達に頼んで作ってもらってたらしいわぁ」

「頑張ってデザインしたらしいわ」

 

 

 

 

 

 

『天龍〜刀見せてくれよぉ〜』

 

『あん?良いけど…』

 

『かっけーよなあ…刀…』

 

『だろぉ?わかってくれるか?!』

 

『これは握っててしっくり来る?』

 

『そーだなあ…それが良いなあ…』

 

 

その感覚を頼りに救は明石にお願いしていたのだ。

[折れない刀を作って欲しい…と]

 

決して折れることの無い天龍のように不屈の刀を

 

 

 

「…ばかやろぉ……」

 

 

「死にたがりな天龍に…折れない()をもう一度」

 

龍田は続ける。

 

()()の帰りを…待っているですって〜」

 

 

 

誰か…ではない。

「皆」なのだ。

指輪の有無は関係ない。全員が生きて無事に戻って来なければ…

勝ちとは言えない。

 

 

 

 

 

 

 

『………』

 

 

『なら超えてみよ!貴様らが…本物だと…この偽物よりも強いと言うのであれば!超えてみよ!!』

 

 

 

 

 

 

 

天龍は構える。

何でしっくりくる刀なんだ…本当に…あの提督は…。

 

 

だからこそ応えたい。

自分の為でなく…アイツが誇れるように。

 

この天龍を戦場に出していることを…誇って貰えるように

 

「悪りぃ…提督…俺ァ…」

 

「あんたの事が…大好きだ!!龍田にも負けたくねえ…!!」

例えこの声が聞こえなくとも良い…

 

 

「こんな…ハンパで…確かに時代遅れで…強かねえけど…」

「ずっと…あんたの隣で…あんたの為にこの刀を払いたい!」

 

 

 

だから…頼む…

俺に力を貸してくれ……

 

 

 

 

 

 

天龍の体が光る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天龍は感じる。

温かな…陽の光のような暖かさを。

 

この感じが…

あぁ……最高だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この刀は…ずっと…あなたと共に

もう…絶対に…折れない(負けない)から!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天龍  改ニ 超高揚状態。

 

 

 

 

 

 

 

天龍は駆ける。

その新しいプライド()を携えて…

やがて彼女の身を光が包む。

 

 

 

 

 

 

「いけえ!天龍ちゃぁあん!!」

 

 

 

天龍は一気に距離を詰めた。

偽天龍が刀を振り払う。

『貴様なんぞに…この俺がぁぁあ!!!』

 

 

 

偽天龍は刀を振り下ろす。

天龍は刀を振り上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音はなかった。

天龍の刀(新しい自分)は…偽天龍の刀(過去の幻影)吹き飛ばし。

 

 

 

そのまま…

 

 

「うおおぉぉぉおおおおお!!!」

天龍は飛んだ。

斬り上げながら高く飛び上がった。

まるで龍が天に昇るかのように。

 

『ぐっ!がっ!ま、まさか!』

『こんなに……!』

 

 

 

 

黄色い閃光が天に昇り…雲までも断った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我も…負けぬぞ!!」

桜三笠は艤装を構える。

 

『…いや…私の負けだ』

 

 

「なっ?!」

 

 

どしゃり…と偽天龍が落ちてくる。

『がふっ…』

 

『やられたな…偽天龍…』

 

『あぁ…本当に時代遅れなのか?って言いたくなるくらいに…強え』

 

 

 

「一体何なのだ?!お前達は…敵なのか?味方なのか?」

 

 

『…敵だよ…でもね……私達にお前達は…撃てない』

偽三笠は微笑んだ。

 

 

「え?」

 

『いいかあ…天龍…その想いだ…ぞ…お前はそれでいい』

『…お前は弱くねえ……もっと自分を見つめて……すりゃあ…きっと…』

 

 

「意味わかんねえよ!何なんだよ!お前達は!」

 

 

 

2人は言う

『『お前達だよ…』」

 

 

 

 

その言葉と共に…2人は消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイツらは何を…」

釈然としない天龍。

「三笠さん。わかります?」

と、竜田も首を傾げる。

 

「…わからんが…一つだけ言えるのは…誰よりも私達のことを分かっていた…ということか」

 

 

 

「…やっぱり俺達なのか?」

 

「…わからんがな…」

 

 

 

勝ちというには…少し後味がよくなかった。

彼女達の心に少しだけ引っ掛かりを感じながら彼女達は…愛する者を目指した。

 




引っ掛かりをもった…後味の悪い終わり方にしています。
不完全燃焼気味な感じ…

何故彼女達は自ら消えたのか…?
何故でしょうか



少しでもお楽しみ頂けたなら嬉しいです!


感想などお待ちしています!
ぜひ!お願いします!


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249話 想い願いの果てに ⑥ 不幸と言う言葉




もう私は不幸…じゃない。
もう離さない!
離してなるものか!









「…あぁ、不幸だわ…相手が自分と時雨だなんて…しかも…武装も違うみたいだし」

 

「だから山城は不幸じゃないって」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……僕かあ…」

 

 

 

 

 

 

 

『幸せよ?艦載機も着陸もできるし…射程も問題ない』

『あんたみたいに…不幸に酔ってない』

 

 

 

 

 

『不幸と言う自分に酔ってるだけ』

 

目の前の偽山城の偽時雨は笑いながら言う。

 

 

 

 

 

「あれ?僕はあんま変わってない?」

 

『…君はそう言う方面じゃ無いからね』

 

「?」

 

『…僕……時雨は………うん、サイコパスだから』

『そうね…』

 

「あ?!」

半ギレする時雨。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いきなり2人は突っ込んできた。

 

『幸せなくせに』

 

「何がッ!!」

 

『何故認めない?』

『あなたと居ると皆が不幸に?』

 

 

 

心がざわつく…。

何よこいつ…人のこと分かった気になって…!!

 

 

 

私は生まれる前から不幸だった。

 

一度として活躍する事なく沈んで…

仲間すら死なせた

 

 

 

歩けば何かが飛んできて…

料理は謎の失敗で

姉は提督にご執心で!

艤装は…歩くのに邪魔だし!

ジャングルジムとか言われるし

 

一緒にいる人にも不幸が訪れる。

お姉様も…皆も不幸になった。

 

 

『…分かってないわ』

 

 

 

 

 

 

「アンタらに何がわかるのよ!」

 

 

 

 

偽山城は時雨の首を持ち上げて言った。

 

『なら…これも不幸?』

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!!」

 

私のせいだ!私が目を離したから…私も来たから

 

 

 

 

 

「ぐっ…は、はなせッ」

ジタバタともがく時雨。

 

 

「…山城は…不幸艦じゃない!」

「山城…皆そんな事思った事ないから!」

 

「前を向いて…動けッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『時雨の方が分かってるわね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴキリ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嫌な音がした。

砲撃のような派手な音でなく静かで…とても嫌な音。

 

 

ビクン!

と動いた時雨は動かなくなった。

 

 

 

 

 

 

偽山城は手を離した。

 

 

 

時雨は…そのまま海に落ちて…沈んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「嘘ッ…」

「うわぁぁあ!!!」

 

 

山城は狂乱しながら突っ込んで行った。

 

 

『…』

 

「不幸よッ!!私が居たから!皆が不幸になるのよ!」

「ごめんなさい!時雨!私が居たから!私と一緒にここにきたから!」

 

唯一生き残って居た時雨すら目の前でやられた。

 

 

 

私が居なければ…あなたは沈まなかったのに

 

 

早く引き上げないと!

引き上げて!!

 

 

ドゴォ!

と偽時雨の蹴りが私に入る。

 

「ぐっ…」

 

耐えた。

耐えてそのまま偽装を脱ぎ捨てて海に飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

闇が広がって居た。

時雨の姿は無かった。

 

 

 

 

グイッと体を掴まれて水面に引き揚げられた。

 

「離しなさいッ!!時雨が!時雨がわたしのせいで!」

 

 

『…それが戦争だろうッ!!』

『全てを背負い込む覚悟もないのに…私のせいだとか言うんじゃないッ』

 

『不幸…?仲間が死ぬのは不幸だろうが…貴様の日常が不幸だなんて…腹が痛いッ!!』

『貴様が周りを不幸にする?思い上がるなッ』

 

偽山城達は…複雑そうな顔で叫ぶ。

 

 

「何よ!何なのよ!!アンタ…」

 

 

 

 

 

 

 

『わからんか…そうか……ならお前も沈め』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『羨ましいのに』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドン…と言う音が私を貫いた。

 

「…え?」

 

ガハッ…と口からドス赤い血がでる。

 

 

撃ち抜かれ…

 

 

 

 

 

 

 

 

サバン…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意識は海とともに溶けて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冷たい水の中…。

 

ごめんなさい…時雨…お姉様…。

でもこのまま溶けて仕舞えば…不幸から解放される…

 

そう思っていた時だった。

 

 

なんと時雨が艤装を捨てて潜って泳いできた?

 

「なっ…時雨?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は…私に追いついて言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当の不幸って何だい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「今のこの毎日(幸せ)が無くなってしまう以上の不幸なんかあるのかい!?」

 

 

 

ハッとした。

 

 

そうだ…私には…大好きなお姉様が居て…

大好きな提督が居て…

大切な仲間がいて…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうよ…不幸よ…」

 

 

 

「朝起きてから寝るまでに数回は転ぶわ!欲しかったものは目の前で売り切れるわ…」

 

 

「むかしは大好きな姉様を死なせてしまったし…旗艦としてもダメだし…」

 

「でも!それを受け入れている自分が大嫌いッ」

 

「あの人にもっと幸せにしてもらうのよ」

 

「だから…それに比べたらこんなもの…不幸のふの字にもならないわ!」

 

「私はわかった!この世界に生まれた意味が!あの人の所に生まれた意味がッ」

 

 

「大好きな提督も大好きなお姉様も大好きな仲間も…アンタも!何もかも不幸に取りこぼさない為よッ」

 

「それ以上の不幸なんかありやしないわ!」

 

 

 

「うん、そうだね」

と、彼女は言う。

 

 

 

「君と居た皆は不幸だったかい?」

 

 

 

 

「わからない……」

 

 

 

「うん、少なくとも僕は…不幸だなんて思ったことないよ」

 

「君と過ごした毎日は…僕にとっても、皆にとっても掛け替えの無い宝物だから…」

 

 

「…私がそう思って居ただけなの…?」

 

「うん、そうだよ」

 

 

 

あぁ…ごめんなさい…

私が…こんなだから…あなたを…私はっ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも…間に合って…良かった……頼んだよ…後は」

 

「ごめん…これしか思い浮かばなくて」

 

 

「え…?」

時雨から託されたのは…応急要員の…

 

 

 

 

私の体が光る。

 

 

「嘘ッ!?」

 

 

「…お願いだよ…山城」

「僕の愛する提督を……守ってね」

 

 

 

 

 

 

 

 

海面に浮かび行く私と

海底に沈み行くあなた。

 

 

 

 

 

 

そうだ…時雨は…私よりも先に轟沈して海に沈んでいた…のに。

 

 

 

 

時雨は轟沈していた。

 

 

しかし…最後まで1人生き残った彼女の後悔。

その念は彼女を突き動かした。

 

 

 

時雨は持っていた応急要員を…山城に使ったのだ。

 

 

 

 

 

ダメだ!

そんな事させるもんか!

 

 

 

 

 

 

だめ!と私は彼女を抱き寄せる。

 

 

 

時雨は…私の腕の中で………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザパァ…と時雨を抱えた山城が水面に立つ。

時雨はぐったりとして…

「時雨の…馬鹿!」

「お願い…時雨!戻ってきてよ!お願いよッ」

 

「時雨ぇ…提督の事好きなんでしょ?私に取られちゃうわよ?」

 

 

 

 

 

 

 

不幸……いや…幸せなのだ。

こんな良い仲間に救われたのだ。

 

自分が助かる道があったのに…

彼女は…私を助けた。

 

戦力的に…勝ち目がある方を選んだ。

 

 

私に…愛する人すら託して…

 

 

 

 

 

「……時雨ぇ、…」

それでも呼びかけに時雨が返事をする事はなかった。

 

 

 

 

 

 

山城は時雨を寝かせて自分の艤装で隠した。

 

 

 

 

 

「……見てなさい…時雨…」

「幸せだと言ってくれてありがとう…」

「私はこんなにも、恵まれて…幸せだったんだ…ごめんなさい!見ないフリをして…不幸に酔う…まさにその通りよ!!」

 

 

 

「……待ってて…私が絶対に死なせないッ!!」

 

 

山城の瞳が燃えたように見えた。

 

 

 

 

 

 

『お前の方が…来たか』

溜息を吐く2人。

 

 

 

 

 

「はぁぁぁあ!!!」

 

山城は偽山城に向かう。

が…相手は偽山城と偽時雨の2人。

 

 

どうやっても、叶わない。

 

「それでも…諦めるものですか!!」

 

 

山城は偽山城を掴んで偽時雨に投げつける。

 

『がっ!』

『お、恐ろしいパワーだ…』

 

 

 

 

 

 

 

獅子奮迅の勢いで2人を圧倒する山城。

偽山城のパンチを躱して偽時雨に蹴りを喰らわせる。

 

『ぐうっ!!』

 

また…偽時雨を偽山城に投げつけて…

 

「くらいなさい!!」

飛び上がった山城は2人目掛けて急降下で蹴りを食らわせる。

 

『『が……がはっ』』

 

 

 

 

 

 

許せないッ!!

守れなかった自分が…

 

許せない!!

めちゃくちゃにしたお前達がッ!!

 

「うわぁぁああああ!!」

山城の鉄拳が炸裂する。

 

 

涙を流しながら彼女はひたすらに2人を相手に闘う。

 

 

 

 

 

 

 

 

『調子に…乗るなッ!!』

偽山城の拳がモロに腹に入る。

 

「ぐぅ」

 

『1人じゃあ何もできないよ!!』

偽時雨の膝が背中に突き刺さる。

 

「きゃあ!!」

 

 

 

 

 

 

『…ねえ?あそこの死体…もういいよね?』

ニタリと2人が笑う。

 

 

 

 

 

「やめなさ…!!」

バシャン!と顔を海に押さえつけられる。

 

『艤装で守って…無駄なのに』

 

ズドン!ズドンと時雨を守る私の艤装に砲撃し出す偽時雨。

 

「やめ…やめろおおお!!」

 

『うるさい!!』

ぐしゃ…

顔面を踏みつけられる。

「だめ…時雨はまだ…私が…」

 

『無理無理、死んでるから』

 

「死んでないっ!死なせないッ!!」

 

 

 

どんどんと崩れ行く私の艤装。

やめて!

 

やめて!

 

 

 

 

そして…

ボガァァン!!

と破壊音とともに私の艤装は壊されてしまった…。

 

 

「うそ…嘘よ…」

 

そこには…艤装の残骸しか残っていなく…

時雨の………

 

 

 

「お前らぁぁ!!絶対に!絶対に!!」

 

ぐしゃっ!

バキッ

 

『テメェが生きてなかったら…奴が生きてたよ』

『もっと早く気づいてれば…別の道があったのに』

 

『そうだ…ねえ?1人生きるのも寂しいから…追いかけてあげなよ』

 

 

『そうね?…ここで全滅するの』

 

 

 

「死ぬ訳にはいかないっ!時雨がつないでくれた命…!」

 

「動けッ!私ッ!!動けええあああ!!!」

 

 

 

 

 

一瞬…驚いた表情をしたが…また無表情に戻る山城。

 

 

偽山城が足を上げる。

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴッ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕の大切な友達を…傷つけるなッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この光景は…何だろうか

奇跡なのか?夢なのか?わからない

 

 

でも、

一つ言えるのは…

 

 

 

時雨が偽山城を蹴り飛ばした事。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『きゃぁあ!!』

蹴り飛ばされた勢いで転がって行く偽山城。

 

『このっ…』と言う前に同じく投げ飛ばされた偽時雨。

 

 

 

 

「…ひどい顔だよ?立てる?山城」

 

 

「あ、あな…あなあなあなた!?何で!?幽霊?!でも足はあるわ!?」

 

 

「…山城の艤装についてた御守りがね」

 

 

 

ハッとする山城。

 

 

 

昔に提督が私にくれた御守りが…?

 

『…山城』

 

『何かしら?』

 

『ほい、御守り』

 

『え…何コレ?』

 

『きっと君を…守ってくれる提督印の御守りだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私を幸せにしてくれる?』

 

『幸せにするのは俺の役目だよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

艤装が撃たれた拍子にお守りが時雨の上に落ちて効果を発揮したらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ばか……幸せにしてくれたじゃない」

 

「……山城…?」

 

「…あれ?僕は…良いところで退場したはずじゃ…って思ったんだけどね」

 

「提督の御守りが…応急要員だったのね…」

 

 

「ふふふ…やっぱり提督の愛情は僕のものなんだね!」

 

「私にくれたものだけどね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これでも不幸かい?」

時雨は笑顔で言う。

 

「ううん…幸せよ」

 

 

 

 

 

 

あぁ…こんな奇跡が有るのだろうか?

友達が生きている事が…こんなにも嬉しい。

 

誰しも居なくなるなんて考えない。

 

居るのが当たり前だからこそ…

失った時の傷が大きい。

 

 

だからこそ2人は抱き合った。

「…時雨の馬鹿あ……ありがとう…ごめん!戻ってきてくれて良かったあ」

 

「うん、ごめんね…辛い思いをさせたね…ありがとう。君のおかげで戻ってこれたんだ」

 

2人で涙を拭う。

 

 

 

 

 

わかってた…。

日常のそんな事は不幸じゃない事

分かってた…。

何でも自分が不幸だからと片付けて…人の事も自分が不幸に巻き込んだと…不幸であろうとした事…。

 

 

 

 

 

もう…やらせない。

 

本当の不幸とは…今でないこと

大切な何かを失って戻ってこないこと…

 

 

今の私は……こんなにも幸せなのだから

もう何でも不幸のせいにするのはやめる。

 

 

何でも自分が不幸だからと…背負うフリをするのもやめるッ!!

 

 

私は…前を向いて一歩踏み出した。

 

 

 

「行くわよ…時雨ッ!!」

 

「おうともさ!」

 

 

 

 

『来いよ…不幸艦娘!!』

 

『全力でかかってこい!』

 

 

 

 

何故か彼女達は笑顔に見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は…不幸艦娘じゃないッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…行くよ!!」

時雨が魚雷を発射した。

 

『馬鹿のひとつ覚え……』

 

『違う!偽山城ッ!そっちは!!』

 

 

 

「着弾観測…」

拾い上げた壊れかけの主砲で狙う。

 

山城はそうだと確信していた。

 

時雨の魚雷の撃ち方は…そう躱すしかないように仕向けた撃ち方。

 

時雨が山城に言った訳ではない。

通じ合うから…

 

そうわかるから!

 

 

 

 

 

「くらいなさい!!」

 

 

 

ズドォン!!

 

山城の主砲が偽山城に直撃する。

 

 

『このくらいなら…まだ……!?』

 

 

「残念だよ…君も山城なら気づいてほしかった…」

「魚雷は二段式だよ」

 

 

ズドオオオン!!!!

時雨が後に放っていた魚雷が偽山城に命中した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『くっ…偽山城がやられ「余所見をしてる余裕は無いよッ!!」

時雨の姉妹直伝の蹴りが炸裂する。

 

『ぐっ…この!』

反撃しようとする偽時雨ー…

 

だが時雨が一歩飛び退いた。

 

『なっ!?逃げる……ハッ』

 

遅かった。

山城の主砲はすでに発射されていて…

 

 

 

 

 

『…あぁ………そうだね』

 

 

ズドォン!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………』

2人を眺める…2人。

 

 

 

『幸せそうじゃない』

 

 

 

「…え?」

 

 

『皆も羨ましがってる』

『私達はね…本物になりたかった偽物』

 

 

「どう言う意味?」

 

「……」

 

 

 

 

『…あなた達が理想とする姿…』

 

 

「僕は?」

 

『君は…うん、そんなとこないだろ?どちらかと言うと…後悔の方だし』

 

 

『…ありがとう』

偽時雨はお礼を言う。

 

「え?」

 

『君が…山城を助けに行った時点で僕は嬉しかった…沈み行く仲間を…1人じゃ……ないから…』

 

「大丈夫…!僕は死なないし…大切な仲間も死なせない」

 

偽時雨は頷いた。

 

 

 

 

 

『幸せでしょう?』

 

「ええ…もう大丈夫よ。私はもう大丈夫だから」

 

うん…と偽山城は言った。

「…」

山城はそっと偽山城の手を握った。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

驚いた表情で山城を見つめる偽山城…。

そして…フッ…と笑った。

 

『鈍感なくせに…』

 

「だって…私なんでしょ?」

 

 

 

 

『ええ、そうよ』

 

 

 

『あなたなら…こんな装備がなくても大丈夫…』

 

 

 

 

 

『…ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ありがとう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女達は光となって消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「生きてて良かった…」

 

「まあ!僕はパーフェクト美少女の時雨だからね!」

キラキラと輝く時雨」

 

「…」

一瞬、そのテンションに不幸だわ…と言いかけた山城。

 

 

 

 

 

 

 

「不思議な子達だったね」

 

「ええ…でも、すごく教えられたわ…」

 

「本物になりたかった偽物…かあ」

少し意味がわからないまま彼女達は鎮守府へと向かう。

 



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250話 想い願いの果てに ⑦ 蒼い誓いの下に



…例え…##でも
その想いは本物だから











私を呼ぶ声が聞こえた。
ならば行こう…
その誓いを果たす為に






『……』

 

「…私デース?」

 

『そうデース』

 

 

 

『……私が本物の鈴谷になるよ』

 

「させないっての」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どう言う事だ?」

 

 

『不思議じゃないか?あれだけ居た俺の駒が居ないと思わないか?』

 

 

 

 

 

 

『…溶かしたのさ』

 

 

「は?」

 

 

 

『幾多の艦娘や…鏡?とやらか?の奴らを基礎として…貴様らの魂のコピーを貼り付けた…いわば合成された艦娘だ』

 

『主人格は貴様の艦娘だが、武装も違う、記憶や知識も他の奴らのも混在している』

『貴様らの1番の敵になるんだ…味方がな…』

 

 

 

『貴様を殺して…貴様の艦娘達で理想郷を作るんだ』

『楽しませてもらうぜ』

 

 

 

 

ケラケラと笑いながら通信が切れた。

 

 

 

 

「そんな…」

 

 

 

 

彼女達にとっての理想の姿…。

こうありたい、こうなりたい…と言った思いを形にした理想の果ての姿。

 

例えば加賀であれば…戦艦としての設計の思いもあり、航空戦艦の形をとっている。

暁達は…軽巡のような大人の姿に。

 

それぞれが思い描く自分が…偽物として自分に対峙する。

 

 

 

現実は理想を超えられない。

 

特にこの海域の艦娘は…他のメンバーが対峙した艦娘とは違い、強力な洗脳を受けていた。

 

 

 

 

「や…やめてくださいー!」

 

『立てッ!!腑抜けッ』

羽黒が…

 

 

『弱い』

 

「くうっ…」

鳳翔が…

 

 

地獄絵図のように見える。

 

 

仲間同士が…ましてや話が本当なら自分同士で殺し合う。

 

 

 

 

傷付くメンバー達。

 

『……金剛…』

 

「…キッツイデース」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…提督』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて…と、林は神崎を見る。

 

『林さん!神崎と言います!今日からよろしくお願いします!』

 

『ん?おお、よろしくな』

 

 

『林部長!契約取れました!』

 

『おお!そうか!初契約だな!今日は…お嬢も連れてお祝いに行くか』

 

 

『もっと頑張ります!先輩や部長みたいに活躍できるように頑張ります!』

 

 

 

 

 

『何で…テメェが生きてるんだッ!!』

 

『2人とも…憧れだったのに…』

 

 

 

 

 

会社では理想郷は完成出来なかった。

羽虫に野望は潰されたが…

 

この世では必ず手に入れる。

俺が…全ての頂点に…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とは言え…

やはり奴の手のついた奴を…置いておくのは気分が悪いからな…

溶かすのもいいが…

代わりは幾らでもいるからな…

 

 

神崎…俺の理想郷に…お前は要らない!!

 

 

『死ねええええ!!』

 

 

奴は撃った。

提督や艦娘…ひいては自軍諸共目掛けて全門を発射した。どこからともなく砲撃や魚雷やらが…救達目掛けて飛んできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…くそ!マジかよ!!」

 

 

 

 

 

誰1人として西波島のメンバーは行く事ができない。

 

 

「ダーリン!」

金剛が叫んだ。

 

「提督ッ!!逃げて!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

『…提督……ダーリン…?』

 

 

 

 

 

 

『無駄だっ!間に合わないぞ!!』

高笑いする林。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は生み出した。

 

理想の姿を。

艦娘の理想の姿を

偽物を本物に変えて乗っ取るために。

 

だが彼は知らなかった…いや、予想出来なかった。

いかに彼女達の中で神崎 救の存在が大きいか。

 

 

鏡の海域では…例え偽物だろうと…実際にその偽物が守った事を。

 

 

彼女達が本物になる事よりも

彼を守る事が最優先だった事を。

 

 

()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

何故なら本物が居るから。

 

 

 

 

 

 

そして…偽者は…皮肉なことに本物よりも速い。

 

偽物の彼女達は…対峙する艦娘達を突き飛ばして動いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…ごめんね』

偽金剛は金剛に笑いかけて言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女達は彼や彼女達の前に立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ちっ…欠陥品がぁあ!!』

忌々しいッ!!それほどまでに…邪魔をするかッ!!

 

 

 

 

 

 

 

ズドン…と偽比叡に魚雷が命中した。

偽比叡は比叡を守ったのだ。

 

ニコリと比叡と俺に微笑みかけながら…そして寂しそうな表情で消えて行く偽比叡。

 

 

 

 

 

 

 

1人、また1人と誰かを守って散って行く。

 

最後に残った####がこちらを見て何か言った。

轟音に掻き消されたその声は俺には届かなかった。

 

 

 

 

 

ただ…

口からわかるに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と。

 

 

 

 

その艦娘も砲撃を受け止めて爆発して散った。

 

 

 

 

 

 

 

「提督ッ!!」

傷付いた山城達が合流した。

 

 

「…なんて事…」

その光景を見て愕然とする吹雪達。

 

 

 

 

 

「…何で私達を守ったのですか?あの人達は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「金剛さん…それは…私達だからですよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女達は自覚している。

自分達の存在を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女達は根本的には…コピーとは言え、西波島の艦娘達だ。

 

劣等感、悲しみ、憧れ、後悔…

本物が待っていて向き合わないものに対して…それを超えているのが自分達だと分かっている。

 

 

だからこそ彼女達は…皆に敵対した。

…超えて欲しい……と。

 

 

本音は羨ましいのだ。

そこに居たい!代わって欲しい。

私が本物になりたい!と。

 

 

しかし、彼女達は分かっている。

自分達は違うんだ…と。

あの人は何も言わずにいいよと言ってくれるだろう。

 

しかし…それでは自分に向き合えていない。

 

だから彼女達は戦った。

 

 

自分達を超えた者へは素直に称賛した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本物への憧れは…誰よりも強く

触れたこともない…あの人への思いもまた強く…。

 

本物の理想の姿である偽物の理想…愛する人を守りたい。

仲間を守りたい!!

 

 

それが彼女達の洗脳という呪縛全てを跳ね除けて彼女達の体を突き動かした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また目の前で…俺達を守って散った。

 

 

どうして…

分からない…。

いや、痛い程に分かる。

だからこそ…この上なく辛い。

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女達は…俺を守って…消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『欠陥品共めえええ!!何故だッ!何故奴らを庇うんだッ!』

 

 

「何が理想郷か!!」

味方の救護に当たる桜加賀が叫んだ。

 

 

 

『理想郷さ…』

『俺が頂点だ!全て俺のものだ!』

 

 

「すぐに命すら切り捨てる奴の理想郷なんて!」

比叡が言う。

 

 

『俺に従えば良いだけだ!!役に立てば捨てられる事も無い!』

 

 

『何と身勝手か…』

桜信濃が言う。

 

『そうすれば…貴様らにも理想の姿も力もやろう!何なら…あの忌々しいガキをくれてやってもいい!』

 

 

 

『そこのー………ん?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『む?奴はどこだ?』

 

 

「提督が…居ない?」

 

 

逃げた…?

全てを放り出して逃げた?

馬鹿な!

 

 

でも…

あの人がいるはずの場所に…提督は居ません!!

 

 

なっ…

 

 

衝撃が走った。

神崎救が居ない。

 

 

 

 

 

『ショックで逃げ出したか?』

 

 

 

 

 

 

いや…

彼はそんなことはしない。

私達を置いて行ったりしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は走る。

奴の元へ…一人で。

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()

 

 

残骸から残骸へと飛び移り、転びながらでも走った。

奴を…許さないから。

 

 

奴の思い通りにさせてはいけない…

 

 

そして何より…彼女達を欠陥品と言った。

 

 

 

 

 

『馬鹿みたいに来たかッ!!どこでも邪魔なんだよ!テメェはぁ!!!!』

 

林が発艦させる。

『死ねやぁあ!!』

 

 

 

迫る艦載機。

 

それでも彼は走るのをやめない。

 

 

 

 

ふと頭をよぎる。

とあるゲームを始めた時…

 

 

 

指揮官は取り残された人を助ける為にソロモン基地に1人残っていた。

 

その人とは戦姫。

 

生まれる前の…彼女の事だ。

 

 

ー命懸けで君を守ってみせるー

 

この誓いの元に…オークランドは生まれた。

 

 

 

 

 

 

それを思い出した。

 

「…オークランド……」

彼はポツリと名前を呟いた。

 

 

 

 

 

 

そのオークランドは…

その時…

 

 

 

 

 

俺に迫った戦闘機を撃ち落として言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたが指揮官ね」

 

 

 

 

 

 

 

そうだ…

彼は思い出した…。

 

彼女は言った。

 

『指揮官…どれだけ離れていても…どれだけ遠くに居ても必ずすぐに駆けつけるから…』

 

『ピンチの時は名前を呼んで』

 

 

 

彼は叫んだ。

 

 

「オークランドッ!!」

「力を…貸してくれええ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『馬鹿がッ!誰も来るはずがないだろうッ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来るよ…だって…指揮官と約束したんだから!」

 

 

 

 

 

 

「あなたが指揮官ね?」

 

 

 

 

「まるであの時みたいだね!」

 

彼女は戦闘機を撃ち落とした。

 

 

 

そのシーンが重なる。

 

 

 

 

 

 

画面の向こうから…現実となって!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっと呼んでくれたね!指揮官っ」

「本当…無茶…しすぎだよ」

 

 

 

「…来てくれたのか……?」

 

 

 

 

「約束したでしょ?誓ったでしょ?命を懸けてあなたを守ってみせるって」

 

 

 

 

「待ってて!全部蹴散らしてくるから!」

 

「オークランドッ!帽子!」

彼は帽子を差し出した。

 

「持ってて!絶対に守り切ってから返してもらうからッ」

 

 

 

 

『小癪な…まだ駒は腐るほどある!行けッ!!』

 

海から現れた深海棲艦が襲い来る。

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっ…流石に多いかな…」

 

囲まれる俺達…

 

そこに…

 

 

 

 

 

 

「私達をおいておったらダメヨー!」

 

 

 

「指揮官様ッ!」

 

 

 

「「ぬおりゃぁぁあ!!」」

ガシャーン!とエントリーしてきたのは金剛と桜赤城。

 

 

 

『貴様らも…しぶといなッ!!』

 

 

 

 

 

 

 

「何度も何度も命を弄びやがって……そんな理想なんか要らないネー!!」

 

 

「貴様だけは絶対に許さないッ!!」

 

 

 

 

『どけっ!ソイツさえ居なければ…俺の理想は完成に近付くんだ!!』

 

 

 

 

「お前の理想なんか…クソ喰らえネッ!!」

 

「絶対に貴様なんかに負けるものかッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

『理想の世界より…その虫ケラを取るんだな?』

 

 

 

「虫ケラじゃない…私達の…明日だッ!!」

 

 

 

 

 

互いに違う世界の者が手を取って…これまた違う世界の…同じ人の為に戦う。

 

 

 

 

 

「「「さぁ!!最後だッ!ぶっ飛ばしてやるッ!!!」」」

 

 

 

 

 

 

人の思いは

時に…海を超え世界を渡り…時を超え未来へと続く。

 

 

世界…はどうだ?

超えられないか?

 

 

いやどうだ

提督の世界(現代)から

この世界(艦これの世界)

別の世界(アズレンの世界)

また別の世界(ブルーオースの世界)

は集まった。

 

 

 

愛する人の為に。

 

だからあり得るのだ。

 

想いは…全てを超えて行くのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

『もう一度殺してやる!』

 

 

 

 

 

「…忘れてないヨ!お前がダーリンを殺した事を…」

「遠慮なくぶちかませるネ」

 

全ての元凶…愛する人を殺したその手を許さない。

ましてや…もう一度と言うなら…尚更!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今迄…幾度となく彼は皆の

 

壁を…

過去を

しがらみを

闇を

悪を

霧を

死すらも

 

ぶち壊してきた。

 

 

 

 

今度は…私達が返す番なんだ。

 

私達は…その為にここに居る。

言わなくてもわかる。

 

 

()()()()()

コイツが提督(神崎 救)の取り払うべき闇で…過去だ!

 

 

 

「行けーッ!!お姉様ァァア!!!」

誰かが叫んだ。

 

 

「行けええ!!桜赤城ーッ!!!こっちは任せとけええ!!」

また…

 

「オークランドッ!やっちゃえええ!!!」

そして…また。

 

 

うじゃうじゃと湧いてくる深海棲艦の相手をするメンバー達。

「私達も…踏ん張るぞッ!!」

 

「あんな理想…許してなるものか!!絶対に負けられないッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蒼オークランドは構える。

 

 

 

 

 

 

 

「天上天下ッ」

 

 

「唯我…」

 

 

「激射ぁあ!!」

 

蒼オークランドが全門から激射する。

 

 

 

 

 

 

「oh…カッコいいデース」

なら…

 

 

「全砲門…Fire!!」

 

「バーニング…」

 

「ラァブ!!!!」

 

 

 

金剛も負けじと掃射する。

 

 

「ふふふ…私は叫びませんわ…」

「でも…」

 

 

 

「…命をもって…償いなさいッ」

桜赤城は全艦を発艦させた。

 

 

 

 

に全弾が着弾する。

ズドオオオン!!

 

誰がその姿から目を離そうか

かくも強大な敵に立ち向かうのがたった3人だから?

 

違う

たった3人で奴を圧倒しているから

 

 

事前に示し合わせた作戦がある訳ではない。

だが…彼女達の魂が示すんだ

どう動けばいいか!

 

 

 

それは彼女達の魂。

彼女達に呼応する皆の魂。

全てが…彼女達に力を与える。

 

 

 

 

「っだらぁぁぁぁあ!!」

 

金剛の鉄拳が突き刺さる。

 

 

「お前だけは殴りたかった!」

 

 

 

殴る。

何度も何度も何度も何度も何度も。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様らとて嬉しいはずだろう!大好きな奴が死んでこの世界に来たからこそ!貴様らは一緒に居られるのだぞッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金剛達は動きが止まった。

いや、止まってしまった。

 

 

 

 

そうだ。

本来なら…ダーリンは平和?に暮らしていて…

私達は…きっと地獄の日々を送って…

 

 

そうだ…

ダーリンが死んだから…私達は幸せになれたのだ。

 

 

 

 

 

 

そうでもしなければ…会えなかった。

 

 

 

『奴を帰してやらないのか?』

 

『お前らだって…奴が死んで得した奴らじゃないか』

 

『貴様らこそ…奴をこの世に縛り付けている原因ではないかっ!』

 

 

 

 

 

突き付けられたのは…言い返し難い事実。

言いがかりではあるが…

それでも彼女達を止めるのには十分すぎる言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

全ての根源は…根本は…

神崎 救が死んだ事。

 

さすれば…

「俺は…感謝こそされるべき人間だぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員が止まる。

 

それを奴は見逃すはずもない。

 

 

『これが…俺の姿だっ!』

林は力を解放させる。

深海棲艦のように…艦娘達のように多くの艤装を取り込んだ姿。

 

 

 

ニタリと笑った林。

 

 

『神崎…愛されてるなァ…』

『お前を愛する奴らを纏めて殺してやろうッ!』

 

 

 

爆雷が降り注ぐ。

 

 

ズドドドドドオオオオン!!

 

薙ぎ払うように皆が吹き飛ばされる。

 

 

 

 

 

 

『馬鹿どもが!俺があの程度でやられる訳ないだろう!』

 

『どれだけいきがろうと…所詮貴様らは…軍人の理想たる俺には勝てないッ』

 

 

 

 

 

 

 

「くっ…まさか一撃で…」

 

 

「…動け…動け!!」

 

 

「うぅっ…痛い…」

 

至近距離で攻撃を受けた3人は立つことすらできない。

 

 

 

後ろに居た艦娘達やKAN-SEN達も一気に追い込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『さあ…死ー…………」

 

 

トドメを刺そうとする林の手が止まった。

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前には林に対峙した指揮官が両手を広げて私達に背中を向けて立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「だー…りん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今迄たくさん助けられてきた…

 

 

 

世界を跨いででも…

 

 

 

だから…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




うほほぅ
250話…早いなあ…皆様のおかげです。
本当にありがとうございます。






少しでも良いなと思って頂けたなら嬉しいです。



感想などありましたらぜひ、お願いします。


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251話 想い願いの果てに ⑧ 最果てと呼ばれた鎮守府の提督

2話目の投稿
今日の0時にも更新されてますのでご注意下さい!


勤労感謝と言うことですが彼の戦いは続いています…




今更ですけれども
ものっそいオリジナル要素が出ます。






普通の何の変哲もない奴だからこそ
起きたんだ…それは



「提督!?」

「指揮官ッ!?」

「指揮官様ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰もが目を疑った。

 

 

 

 

彼は立った。

両手を広げて彼女達の前に立った。

 

 

 

 

 

『フン』

林が放った攻撃が頬を掠める。

 

 

 

それでも彼は微動だにしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

馬鹿でもわかる。

 

人の身で守ろうとしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

「だ、ダーリン…今立つカラ…」

金剛が震える膝を叩いて立ち上がろうとする。

 

「…指揮官様ッ……」

桜赤城も…

 

「指揮官…待って…やめて」

蒼オークランドも。

 

 

『ほう…泣かせるな…貴様は最後まで誰かの為に誰かの前に立つのだな』

 

 

 

『だが…人の身で何が出来るッ!?弾除けにすらならんぞ』

 

 

 

 

 

 

「例え何だろうと…決めたんだ。俺は彼女達と共に在ると」

 

「ならば…ここに立つのは当たり前だろう」

 

 

 

 

 

 

「やめて…ダーリン…」

 

 

「くっ…動きなさいッ私ッ!!」

 

 

「…動いてよおお!!」

 

 

 

 

 

 

『美しい…なぁ…ならそのまま死ねぇぇえッ!!』

 

 

 

 

 

 

放たれた砲撃––––

 

 

 

 

 

 

彼は振り返って笑顔で言う。

 

絶対に守るからと。

 

 

 

 

 

そして砲撃に向き合い…

 

「守ってみせるさ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「負けるなぁあ!救くううううん!!!!」

麗や桜は叫んだ。

滑稽な話なのだ。

人が艦隊に勝てることなど無いのに…

今、まさに砲撃が彼に辿り着こうとするのに…

 

それでも彼女達は叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドォォン!!!

 

 

 

救に直撃した砲弾は大爆発を起こす。

 

 

 

 

絶句する面々

絶望に染まる皆の顔。

 

 

 

 

 

「いやっ!ダーリンっ!!嘘ネ!!」

 

「指揮官…様ッ…」

 

「指揮官…?」

 

 

炎炎と立ち登る炎。

ぱたぱたと自分に飛びかかる水飛沫。

 

 

 

 

 

『クハハハハ!死んだ!死んだぞぅ!』

ゲラゲラと笑う林。

 

 

 

 

 

『蒸発したか?弾け飛んだか?どちらにせよ…これで…奴を消し去ったッ!!俺の時代だぁぁ!!!』

 

 

『ハハハハハ–––––––は?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや

 

爆発する方がおかしい。

 

人なんだ。

弾け飛んで…後ろの艦娘に当たるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『全く……本物の馬鹿なんだなあ…』

 

 

『でも……こんなにも…心が震えるなんて』

 

『後輩君…私もあいつに借りを返したい』

 

『ええ…そうですね』

 

 

 

 

 

 

決して起こり得ないから奇跡。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたには覚えていて欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

艦娘と共に…

KAN-SENと共に

戦姫と共に

深海棲艦と共に戦った…

馬鹿で真っ直ぐな男が起こした

最初で最後の本当の奇跡を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界を超えて…

我が物にしようと、振り下ろされんとする悪の刃を打ち壊し

暁の水平線に…勝利を刻まんとする男の姿を…。

 

 

 

 

 

今、目にしているのは今後にはどう足掻いても起こり得ない二度と見られない奇跡。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督……!!」

清霜は思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

『俺は1発の弾丸も撃てない』

 

 

『皆を守ることも…盾になることすら』

 

 

 

出来るなら彼は迷わず身を挺して守るだろう。

最前線で戦うだろう。

 

幾度思った事か

夢見た事か

 

 

泣きながら語り合った思い。

 

 

 

清霜は武蔵の艤装を背負って戦艦級の駆逐艦として戦った。

 

それは武蔵達の助力があったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

なら彼は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼には誰が手を貸す?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは『縁』

 

彼が…彼等が紡いできた魂の絆。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『馬鹿じゃのぅ……』

 

 

『だが…そんな馬鹿だから…支えたくなるんだ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私の力を使ってくださいなのです!』

とある電が言った。

 

『行け!小僧!あんなカスに負けるんじゃねえ!!』

とある提督が言った。

 

『後輩君…私も力を貸すから…奴に1発ぶちかまさせて!』

とある先輩が言った。

 

 

『あなたなら超えて行ける!私も認めた提督さんなんだから』

とある先輩の能代が言った。

 

 

『力を貸しマース!ダーリンなら乗り越えられマース!』

とある鏡の金剛が言った。

 

『指揮官様…私の力を…』

とある鏡の桜赤城が言った。

 

『ぽーい!使ってぽーい!』

とある妹の夕立が言った。

 

『私も…力を…』

とある姉の白露が言った。

 

 

『提督よ!共に勝利を刻むのだッ』

とある孤独だった長門が叫んだ。

 

 

『お願い!仇を…敵の私の言葉だけど…お願い!』

とある縁の陸奥が言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私達も…もしかしたらこちら側に在られたのかな。

 

 

彼女達は思う。

 

 

幾多の艦娘を材料に

魂のデータを取り付けて作り出されたコピー。

その中には理想の姿、武装…信念がある。

 

しかし…彼女達の素は…西波島の艦娘達。

 

 

 

 

 

平和が好きで

仲間の事が大好きで

提督の事が大好きな……偽物。

 

 

彼女達は知っていた。

自分達が何であるか…

 

 

 

 

本物になりたい…

そうすれば…神崎 救 提督(愛する人)の側に居られるから。

 

 

でもそれは叶わない夢物語。

 

 

だって…本物には勝てないから

偽物はどうやっても、本物には勝てないから

 

だって…あんなに皆は輝いて……

 

 

 

 

でも…どれだけ偽物でも…

あなたへの思いは変わらないから…それだけは!本物だから!

 

 

 

お願い…コレで終わってもいい…

だから…コレは私達にできる…最初で最後のあなたへの恩返し。

 

 

最後に…少しでもあなたの力になりたいの

 

 

 

 

 

[愛してるわ…提督]

 

[もっと…あなたに触れたかったなあ]

 

[でも…あなたの力になれるなら…]

[あなたを守る事が出来るのなら]

 

 

[あなたの未来を切り拓けるのなら!]

 

 

 

 

[私達は…喜んで日陰から力を貸すわ]

 

 

当たり前でしょう?

 

 

だって私達は…あなたの艦娘なのですから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[私の力…使いなよ]

名も知らぬ艦娘が…

 

[今回だけ…今回だけはあなたに力を貸すわ] 

名も知らぬ者達が…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『馬鹿な…何だこれは…』

林は狼狽た。

 

 

 

 

 

海から…彼に集まる温かな光。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『行け…神崎!ワシを超えて行った男よ…』

『…お前はお前の行く道を突き進めッ!!』

 

 

とある元帥が…彼の背を押した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……救…君」

 

「凄いな…私らの大将は……世界すら味方につけるのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう…この物語は

…神崎 救が…救い、救われるお話。

 

 

 

 

沢山の艦娘やKAN-SENや戦姫や…皆に救われてきた。

皆の支えとなった。

皆の救いとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……叶えたんだ…提督も…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは彼が抱いて…夢見て…その果てに叶えたひとつの夢

 

きっと後に夢だったんじゃ?と言われるほどの夢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数多の…幾多の想いが形となって彼に力を貸す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は立っていた。

 

海の上に立っていた。

 

 

形を成さぬ光は…皆にも艤装のように見えた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の思いに呼応したそのギソウは…

この世界…いや…世界すら超えた想い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は守った。

人でありながら…砲撃から仲間を守った。

 

 

 

「ダーリン……?」

 

 

 

 

あぁ…夢じゃない。

夢に見た景色は…ここだったんだ…。

 

 

 

 

 

奇跡は…

 

 

彼女達を守ること…彼女達の為に…戦うこと!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故奴は…

またもや俺の邪魔をしようとするッ?!

 

 

 

 

『殺せ!奴を殺せえええ!!』

 

向かい来る深海棲艦。

 

 

 

「………」

 

彼から

 

 

砲撃…副砲やら魚雷のようなものが発射される。

 

 

 

 

ズドン!

ズドォン!!

ズドオオン!!!

 

轟音と共に深海棲艦を圧倒する。

 

 

 

 

「なっ……凄い…」

 

「すげぇ…」

唖然とするメンバー達。

 

 

 

 

 

 

 

彼は主砲らしきものを構える。

 

 

 

1発……それでいい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

彼は構える。

その光は…形を成して行く。

…それは、かの大戦艦大和型よりも大きな主砲を形取る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は狙う。

そのギソウを支えるように彼女達が手を添える。

 

 

ニコリと金剛が笑った。

 

 

 

 

彼女達を守りたい。

共に明日を一緒に歩みたい。

生きていて欲しいから。

一緒に生きたいから。

 

 

 

「…やっぱり…指揮官様は…本当に凄い…」

桜赤城が涙を浮かべて言う。

 

「まさか指揮官と一緒に戦えるなんて…!!でも指揮官と戦えたこと…誇りに思うよ!さあ!やっちゃおう!激射の時間だよ!」

蒼オークランドが笑う。

 

 

 

 

 

「ダーリン……力抜いて…私達も…居るカラ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

信じられるか?

人が海の上に立って戦ってるんだ…

 

 

そしてそれは…紛れもない

私達の提督なんだぞ?

 

 

 

こんなにも…

こんなにも心が震えることはあるか?

 

 

 

「……け」

誰かがポツリと言った。

 

羽黒だった。

 

「羽黒?どうしたの?」

足柄が心配そうに声をかける。

 

 

 

 

「いけえええ!提督うう!!

 

羽黒が叫んだ。

力の限り叫んだ。

 

 

驚く足柄達…。

 

それは羽黒が大声を出したことだけではない。

 

 

羽黒の体から何かがスッと光が出てくる。

その光は救へと伸びて行く。

 

それは…彼女の願いや想い。

 

 

 

「やっちゃえええ!!」

 

 

「頑張れええ!!」

 

 

「「「「「突き進めえええ!!」」」」

 

 

彼女達は叫んだ。

麗達も…皆。

 

「麗!?お、お前の体が!光ってるぞ!?!」

 

「さ、桜さんからも!?」

 

 

 

全ての想いが彼に集まる。

 

彼が放つのは…想い、愛、喜び、希望…。

 

彼は1人なんかじゃない。

 

皆の想いを背負った提督の…一撃。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理想を現実は超えられない。

 

 

だが…吹雪達はそれを超えた。

 

 

 

 

人としてある意味理想的な強さである林は…

提督…つまり救や麗達にとっての理想の形。

仲間を守れる強さのある理想。

 

 

 

彼は…その理想すら超えて行こうとしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「ばぁにんぐゥ…」」」」

 

「「「「ラァブッ!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

放たれた砲撃。

 

空を割いてまっすぐに相手に向かう。

 

 

 

 

 

 

『こんなもの…!?!?』

対峙する姿勢を取ろうとした林に纏わりつく…何か

 

[責任…取ってくださいね?]

[私達優しいから…あの世までお世話してあげます]

 

『くそっ!離せ!離せ!!!』

 

 

 

 

放たれた砲撃はレーザーのように一直線に深海へと向かう。

 

 

負のエネルギーが深海棲艦となり、人がその力で深海提督となるなら

 

正のエネルギーが艦娘となって絆が力を与えるなら…

 

 

 

 

『ぬおおおおおおおっ!負けるかッ!負けるかァァア!!』

砲撃をする事叶わず、林はその砲撃を受け止めようとした。

 

 

 

 

 

虹…

キラキラと輝く虹が見えた。

 

それは…

彼のギソウから見えた羽のような虹色の光

 

 

地平線…水平線の彼方まで伸びるようなその光は…

林の艤装から出る黒いモヤと対の光を放つように…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

押され…返される…

 

『くくく…ハハハ!やれる!やはり運命は…俺に味方しているんだッ!カスのゴミ共が集まったところで…俺は負けん!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官くぅん?力が必要かしら〜」

 

 

「あ、朝日さん」

蒼オークランドは目を丸くした。

 

 

 

 

「あ、朝日だとッ?!」

桜三笠が反応する。

 

「あら?…そう…別の世界の三笠が居るのね?おばあちゃん…なのに…」

 

 

「マイネリーベ!!」

オイゲンが

 

「主殿ー!」

赤城が

 

「ボスー!!」

ポートランドが

 

 

「何かわかんないけど…力が必要なのよね?」

クイーン・エリザベスが

 

 

 

「みんなぁ!!指揮官に力を貸して!!」

オークランドが叫ぶ。

 

 

 

周りを見て理解した。

何をすれば良いか!

 

 

よーし…と

皆は言う。

 

「「「「頑張れ!指揮官ッ!!」」」

彼女達は力を送る。

 

 

 

 

 

 

ばかな…

数分前に来た別の世界の為如きに力を貸せる?

 

いや…何故世界を超えられる?

 

何の為に…?

 

 

 

 

いや…

何故奴はここまで愛される?

 

 

 

 

 

 

 

「お前が理想ってなら…俺は超えて行く…!!」

「俺が欲しいのは…自分勝手な世界でもない!皆と共に歩む明日なんだ!今なんだ!!」

 

「だから負けられない!」

「お前なんかに…奪われてたまるか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「「俺達だって…」」」」」」」」

 

 

「「「「「「「「負けるもんかぁぁぁあああああああ」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『わかった!お前を殺すのも狙うのもやめるッ!!この攻撃をやめてくれ!!』

彼は叫んだ。

 

だが…救は横に首を振る。

 

『理想なのだぞ!誰にとっても…理想なのだぞ!』

 

 

「そんな理想要らない。好き勝手する理想だって要らない!!辛くても…大好きな皆と進めるならそれでいい!!」

 

「そんなお前の…自分勝手な理想なんぞ…ぶち壊してやる!」

 

 

 

「うおおおおおおお!!」

 

 

 

 

 

 

「コレで……」

 

 

 

終わりだぁぁあああああ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全艦…照準合わせッ」

 

 

長門が叫ぶ。

 

 

 

驚く皆が長門を見つめる。

 

 

「私達も…殴ってやりましょう!」

大淀が叫んだ。

 

 

 

「そうだね」

「やってやろう!」

 

皆が構える。

目標は唯一つ… だ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3つの世界の不思議な子達が構える。

 

「豪華絢爛…だな」

 

「釣りは要らん!」

 

世界すら超えた砲雷撃戦を見よ!!

 

 

 

 

「提督!」

「指揮官!」

「司令官!!」

 

 

さあ…全てを終わらせましょう!

あなたの手であなたのしがらみも…全てを超えて行きましょう!

 

 

 

「てぇえええええ!!!」

 

 

 

 

 

轟音!

 

大轟音!!

 

まるで降り注ぐ大流星の如く…

放たれた感情は真っ直ぐに奴の元へと向かう。

 

 

 

 

 

 

「お前は消えろッ!!暗闇に…還れええええええッ!!」

 

 

 



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252話 想い願いの果てに ⑨ 神崎 救

真っ白な世界に包まれた。

 

 

 

目の前には…林が居て…

え?…敵であったウチの艦娘達が…居て…

 

 

 

 

こちらには…皆が居て…。

 

 

 

 

『提督さん……あなたはあなたの道を行ってください』

 

『きっと未来は明るいですから』

 

 

『自慢してくださいね?誇ってくださいね?』

 

 

 

 

私達(あなた達)は……私達に勝ったんですから』

『そんな強い艦娘達の提督なんですから』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……』

王国が…俺の理想郷が…消えてゆく

 

作り出したはずなんだ…理想を…あと少しなのに

 

 

何故奴らは理想に屈しなかった?

 

全てを超えた理想に…ちっぽけな現実が勝ったんだ?

 

 

 

 

 

 

認められたかった。

1番でありたかった。

 

人生なんぞちっぽけで…短くて

その中で何ができる?

何が残せる?

 

 

そんな奴は一握りの砂を捨てて…その手を払って、それでも手の上に残っている砂粒程なんだ。

 

 

ならば俺は…払い落とされる数多の砂粒(有象無象)でなく、手の皺の中に残る程にしつこい砂粒(唯一)になりたいのだ。

 

 

 

その為に色んなものを犠牲にした!

大切と言う家族とやらも!先輩後輩上司部下!全てっ!!

 

 

なのに何故叶わない?敵わない?

 

 

 

 

この世界でもだめなのか?

 

 

 

 

 

 

 

「……林さん」

「入社した時はお世話になりました。バリバリ働いて…結果も出して…人望もあった林さんが憧れでした。こんな人になりたいと思ってました」

 

「でもあなたのした事は許せない」

 

 

 

お前の憧れが…俺だったのか…

 

『お前も…』

 

現実(神崎)が…理想()を超えて行くのか…』

 

 

 

 

パァン…と林の頬を打った人が居た。

 

 

「先輩…!?」

 

「……スッキリした!」

「後輩君がやってくれたし……私は満足」

「理想の上司だったんですよ?」

加奈江が言う。

 

『………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[行きましょう?提督?]

 

俺を迎えにきたのは…俺の艦娘達。

 

俺の野望の為に俺は彼女達を犠牲にした…。

 

[目が覚めましたか?]

[ずっと居たんですよ?私達は]

 

 

何故だ?

俺はお前達を犠牲にして…この世も乗っ取ろうとしたんだぞ?

 

 

[はい、それでも…この世界の為に戦ってくれてたじゃないですか…それは真実じゃないですか]

 

[私達が大好きな提督さんですから…]

 

 

好きだから…それでも彼女達は自分に協力してくれた。

皮肉なことに…欲しかったものは、自分で壊してしまったのに…。

彼女達は例え魂だけに…肉体が滅びようとも信じてくれていた。

 

 

 

 

 

 

あぁ……なんだ

既にあったのか…俺の理想郷は…

 

 

 

 

 

 

 

……ここで一緒に居てくれるのか?俺を認めてくれるのか?

 

 

–––はい!もちろん!

 

 

…そうか

 

 

–––ゆっくり休んでください

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おい…神崎。

 

つーわけだ…

ここに貴様の居場所はねえ

 

こここそが俺の理想郷らしい…

テメェは…邪魔だ帰んな…

 

 

 

 

 

ただ

俺は謝らねえ

 

俺は俺が正しいと思った道を行ったまでだ!

 

その影で誰かが泣こうと…突き進んだんだ!

 

お前だってそうだろう?

 

 

 

 

 

 

神崎 救

 

 

全て俺の逆を行く奴…。

 

1人じゃなくて

仲間をひたすら愛して

現実…いや、普通の奴で

ひたすらもがく奴

 

 

 

俺は

1人でよかった。

仲間もいらなかった。

理想となりたかった。

流れを作る奴だった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハッとする…。

 

前を見る。

 

 

 

満足そうに微笑む林が砕けて行く。

 

 

 

 

 

「悲しい人なんデスネ」

 

「わかるのか?金剛」

 

「皆、見えてました。ダーリンと繋がってたカラ」

 

 

 

 

 

「ありがとう…皆」

俺に力を貸してくれて…

俺を信じてくれて…

 

 

フッ…とそのギソウは消えた。

海に沈みそうになる救を彼女達は受け止める。

 

 

「指揮官様ッ!指揮官様!!」

桜赤城は物凄い力で抱き締めてくる。

 

 

 

 

 

「指揮官?どうだった?夢を叶えた瞬間は…」

蒼オークランドが聞く。

 

「…重かった!」

彼はニヤリと笑って答えた。

 

 

 

 

夕焼けに差し掛かる海は…静かに…そして綺麗に輝いていた。

 

 

 

 

 

 




次回長いシリアスも終わります。


少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。

感想などお待ちしています!
ぜひよろしくお願いします。


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253話 想い願いの果てに ⑩ 失ったもの、得たもの

巌を再度元帥に据えた海軍であるが…

 

帝国海軍による損害は大きく、艦娘も大多数が損失された。

軍従事者も同じであり、また軍への不信感も相まって補充はかなり困難を極めた。

 

それでも待ってくれないのが深海棲艦。

 

以前よりは海域への侵攻は減ったものの、それでもまだまだ海には脅威が残されている。

 

 

 

 

 

 

そして…

 

思いとは繋がって行くもので…

 

恐怖、独裁を敷いて来た林の側近にも当たる残党も確認されており…

まだまだ仕事は多く残りそうだ。

 

道のりは遠くとも…

それでも前へ進めばきっと

 

 

 

 

「あーー…明日は…宮川達と面会かー…」

「忙しいのは変わらない…なら軍なんかいっそ無くなれば…」

 

「やめんか…お前が反乱起こしたら止める奴が居ねえよ…」

 

「国中でいい加減にしろ!って暴動おきるよ」

 

「ならしっかりと信頼回復の為に仕事だな」

 

ため息をつきながら仕事をする救と巌。

なんやかんやで息は合う2人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大世帯になりましたネー!ダーリン」

 

「そうだなあ」

 

「ライバルが増えて…少し不安デース!」

 

 

 

 

 

 

「ちょうどここで声を掛けてくれたところから始まったんデスネ」

 

「…懐かしいな」

 

 

この世界に来て…最初に出会った艦娘が金剛だったな。

暗い顔で…泣いていた君を見たから…

 

「あの時は抱き締めてくれましたネー!」

 

「あぁ…」

 

「その後…私があなたを突き飛ばして…」

 

「痛かったなあ…」

 

「う…ごめんなさい…」

しょぼんとする鳳翔。

 

「あはは〜冗談だって」

 

「むっ……今でも気にしてるんですからね?」

 

 

 

 

「その後…僕達のために怒って、それで提督になるって宣言してくれたんだよね」

時雨や夕立が言う。

 

 

 

「演習で私と出会ったんだよね。あの時は…こんなに好きになるって思わなかったなあ…」

と、麗が。

 

 

 

 

「皆で記憶を取り戻したり…」

 

「異世界からライバルが現れたり…」

 

 

 

 

 

 

あんなにボロっちかった鎮守府も今では…こんなにも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう…

色々とあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……帰りたくないですか?」

金剛が言った。

 

 

 

「?」

 

彼女の手元には…あの髪飾りがあった。

 

「……ダーリンを元の世界に帰すこともできマース」

 

 

そう…彼女達の最後の引っ掛かり…。

 

 

 

 

死したからこそ‥この世界にやってこれた…

まだ、たくさん出来ることはあっただろう。

こんな戦争の世界でなく、平和な世界で…。

 

 

「林サンの言葉に…何も言い返せなかったのも事実デース」

 

 

 

『俺のおかげで貴様らはこんな奇跡を味わえたのだぞ!!」

 

 

 

 

「だから…ダーリンが…選「俺はずっとここに居るよ」

 

 

「…ッ!!」

「でも!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「帰ったらデートもできないぞ?」

 

 

 

 

 

 

「私達は真面目にッ……」

 

 

 

 

 

「…ばか」

救は言った。

 

 

 

「お前達が言ったんだろう?」

「俺だって同じなんだ」

 

 

「愛される事がこんなにも温かくて、幸せなものなら」

 

「傍に居ることが…こんなにも心強くて、嬉しいものなら」

 

「愛する事が…こんなにも嬉しくて、温かいものなら…」

 

 

 

「この温もりを知ってしまったら…離すことなんて出来ない」

 

 

 

 

「俺はずっとここに居る。ずっと居てお前達と添え遂げる」

 

 

 

 

 

「後悔しませんネー?」

ぽろぽろと涙を零しながら聞いてくる…。

 

「…当たり前だろう?」

自然と自分からも涙が溢れてくる。

 

 

 

 

 

もしかしたら…

いつかは離れないといけない日が来るのでは?と思っていた。

 

 

 

あの日、林は俺も巻き込んで死のうとした。

つまり…愛する人から引き裂こうとしたのだ。

 

白の世界…精神世界…

あの世とこの世の狭間。

 

そこだけがチャンスだった。

それだけの力が…俺の手にはあった。

 

だが、奴は言った。

 

『ここにはお前が邪魔だ』

と…。

 

俺は突き返された訳だ。

 

 

 

 

 

 

まあ…何の問題もないのだけれども…

 

 

 

 

 

 

 

「愛してるから」

 

「はい…」

 

「ずっと居るから!!」

 

「はい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも…帰れと言うなら帰ろうかなあ……」

「この…一泊二日ペアチケットは…不要だなあ…」

 

 

 

「「「「「なッ!?」」」」」

 

 

 

 

「まあ…戻ったら…もっと肉食系で行くかぁ…。合コンとかナンパとか…しまくりますかね!」

 

 

 

 

「おい…久しぶりにキレちまったよ…」

「何ですか?そのチケット…」

「ナンパ?合コン?」

 

「両親挨拶も済ませてるのに?」

 

 

 

 

 

 

 

「ん?コレ?鳳翔とも行った温泉宿のチケット♡」

 

 

 

 

「…帰らなくていいデース!」

 

「さっきの涙は?」

 

「んなもん枯れましたデーース!」

 

 

「いいからそれを金剛と行く…と言うデース」

 

「お?行くか?…なら金ご「待てやッ!!」

 

ズラリと並ぶメンバー達。

 

「チッ…!!しっと!!」

マジで悔しがる金剛。

 

「それは抜け駆けでしょう!?」

 

「指揮官様?ぜひこの桜赤城を…」

「何を!私です!翔鶴です!」

 

「提督、いかんよお?浦風…を」

 

「ご主人様の身の回りのお世話は…メイドの仕事ですので…」

「なら私が行きます!ベルファストさんはメイド教育もありますよね」

何故かバチバチし合う駄目イド達…。

 

 

「温泉って何なのですか?行ってみたいのです!」

おま…それは卑怯…だぞ?

 

「私も行きたいよ!救君!」

 

「救よ!私も行きたいぞ!提督同士…やはり親睦をこれ以上深めないと…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……逃げよっ」

 

 

 

 

 

「「「「「「あ"!!!」」」」」」

 

 

ケラケラと笑う救。

目を血走らせて追いかけてくる皆。

 

 

これで良いんだ。

これからも…今までと同じようにやって行こう。

 

 

 

 

 

「みんなぁぁあ!!」

 

「愛してるぞおおおう!!」

 

 

「「「「「「私もですー!」」」」」」

 

 

でも…温泉旅行…!

「「「「それは私も連れて行ってください」」」」

 

 

久しぶりに楽しい追いかけっこになりそうだ。

 

 




お気に入りが660人!
ありがとうございます!

約半年間好き放題書かせていただきました!


艦これ、アズールレーン、ブルーオースを絡めた3部でした!


その世界での戦いと
別の世界の相手との戦いと
人と人との戦いの流れでした。

想い続けることが
手を伸ばし続ける事がある意味の主軸だったので…

幾度となく、艦娘達は"そこ"に辿り着きました。
主人公も最後に色んな条件が重なった結果辿り着いた…と言う感じでした。



ここがゴールのつもりでした。

でもまだ夫婦話とか書きたいんですよね(๑╹ω╹๑ )

まだ書きますけどね!
日常や馬鹿話やケッコン夫婦話!

時々はシリアスも…


末永くこれからもよろしくお願いします。



少しでも…お楽しみ頂けたなら幸いです!!


感想などお待ちしています!!
ぜひ!ぜひ!!よろしくお願いします!


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1部 4章  鎮守府の明日
254話 またまた異世界からこんにちは


 

 

 

 

そして…

こんにちは…シリアスです。

誇らしきご主人様は…今目の前で土下座をしています。

それはそれは綺麗な土下座をしております。

 

「ねぇ〜?指揮官くん?朝日は怒ってないわよ?」

 

「いえ…本当に申し訳ありません…」

 

「ちょ〜っと寂しいくらいで…全然気にしてないわよぉ?」

 

「目が笑ってないのですが…」

 

 

 

誇らしきご主人のピンチに助力に現れた元ブルースフィアの朝日様率いる戦姫さん達…。

ブルーオースという世界からやって来たけれども皆に紹介されないままだったので…との事です。

 

 

 

「えーと…改めまして…こちら朝日さんです」

 

「朝日でいいわよ?」

 

「朝日様は…明治時期の敷島型二番艦だな。桜三笠の姉に当たる感じだ。まあ世界が違うから…何ともなんだけれども」

 

「うふふ…おばあちゃんなのよ?…で、指揮官君?朝日で良いって言ってるでしょ?」

 

「御意、朝日閣下」

 

「後でお仕置きね〜?」

 

 

 

 

「で…こっちは…オークランド」

 

「オークランドです!よろしくね!」

 

「こっちはポートランド」

 

「やあ!ポートランドだ!私が来たからにはキッチンは任せて欲しい!」

 

「まあ!心強いですね」

喜ぶ間宮と伊良胡。

 

「…それはそのうち……な」

 

「ん?ボス…目が遠くないか?」

 

「ま、まあ…ポートランド?まずは慣れる所から始めないとね〜」

蒼朝日がすかさずフォローする。

 

(ナイスだッ!朝日ぃぃ)

 

(これは仕方ないわ…あの子、料理の味は良いんだけど…料理の見た目が兵器なのよねえ…)

 

アイコンタクトで未曾有の大惨事を回避した2人。

 

 

「こっちは…クイーン・エリザベス…女王様だ」

 

「だから女王様じゃないっての!!…全く…」

「あら…別の世界の私も居るのね?よろしくね」

 

「…ええ、よろしく…」

複雑そうな顔の桜エリザベス。

 

 

あぁ…大人っぽいもんなあ…蒼エリザベスは…。

 

「庶民ッ!今何か失礼な事考えてたでしょ!?」

 

「別にぃ〜?」

 

「ムキーーッ!!」

 

 

 

 

 

 

「アドミラル・ヒッ「む?!ここにも駆逐艦(天使達)が居るのか!?素晴らしい!素晴らしい!」

 

「…素晴らしいぞ!指揮官––––––ん?」

 

ニコニコと天使達を眺める蒼ヒッパーの目の前に仁王立ちした長門が…。

 

「む?貴殿は…?」

 

「長門だ…お前…駆逐艦を天使と呼んだか?」

 

「あぁ!天使達だ!こんな幸せな場所なのだな!指揮官の鎮守府とやらは…」

 

 

「おい…ヒッパーとやら」

 

「……む?」

 

 

 

無言で右手を差し出す長門。

 

「まさか!長門も…?」

 

コクリ…と頷く長門。

 

 

ガシッと握り返す蒼ヒッパー。

 

無言で握手!

 

そのまま肩を組んで消えて行ったとさ。

 

 

 

 

「良いか?アイツらに声を掛けられたら…ブザー鳴らせよ?」

と、防犯ブザーを支給する事を決意した。

 

 

 

 

 

「んで…プリンツ・オイゲン」

 

 

 

 

 

 

 

「マイネリーベ♡会いたかったわあ!」

いきなりのハグ。

まあ紹介まで待ってくれただけヨシとするしかない。

 

「!!?」

一同が臨戦体制に入る。

 

「うふふ…皆さんがマイネリーベの天使たちなのね?マイネリーベが幸せそう。ありがとう」

 

「「「!?!?」」」

一同が混乱した。

 

 

「え?何故ありがとう?」

長門が聞く。

 

「だってマイネリーベが幸せだもの。愛する人が幸せならオイゲンも幸せだから…」

 

「やめとけ長門…こんがらがるぞ」

 

「あ…あぁ」

 

 

 

「………」

 

「………」

 

「…」

 

流れる沈黙。

 

 

 

 

 

 

 

「…指揮官君?私達帰らないわよ?」

 

「マジですか」

 

「どうせ追われてる身だし〜」

「それとも…か弱い乙女達を放逐する気かしら?」

「愛してるよ…朝日って言ってくれたのにぃ〜ぐすん」

 

オイオイと泣き真似をする朝日、おのれ演技派め…。

 

周りも「え?嘘?」みたいな顔すんなよ。

コイツはお前らよりもおばあちゃんなんだぞ?

 

「ひどい!指揮官クン…私がおばあちゃんだから大丈夫だろう!だなんて…シクシク」

 

おい、エスパーしか居ないのか?ここは?

 

 

 

 

「まあ…居てくれるなら心強いんだが…」

 

「うふふ、指揮官クンならそう言ってくれると思ったわ〜」

 

「……」

本当に読めねえ……。

案外こういうのがラスボスポジションだったりしそうで怖い。

 

 

「…私達だってあなたの事が好きだから居たいのよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

んで…

 

 

 

 

「…まあ、林との戦いも終わったし…これから君達はどうする?」

 

 

懲罰の終わったし真希に聞く救。

真希の隣には真希よりも早く懲罰の終了後に救達の雑務の手伝いをしていた静が居る。

 

「それより…」

「そこで睨ンでるアンタの嫁とやらをどーにかしてくださいよ」

 

「さ、里仲さん…コワイですう」

 

 

「・…ジーーー」

 

「あー…アレだ。ライバルが増えたから…らしい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なァ…アンタ…何でアタシを殺さないンだ?」

 

「……はぁ…?」

真希の質問に気の抜けた返事をする救。

 

 

「え?死にたいの?」

 

「…いや、そういう訳では…」

 

「なら何で殺す必要が?」

 

「…アタシらは…アンタらと戦争したンだぞ?」

「静はともかく…アタシは…ッ」

 

 

「…また同じ事するのか?」

 

「え?」

 

 

 

「また…俺らと戦争するの?」

 

 

「し、しない!」

 

「ならそれでいーじゃん!」

「まあ…俺らに協力してくれるなら嬉しいんだけどさ…」

 

 

「…信用できるのか?アタシらを」

 

「君達が俺を信用してくれるなら」

 

 

「……不思議な奴なンだな…」

 

「よく言われるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……疲れた」

 

「…お疲れ様だ。食え」

 

「…那智」

 

「何だ?」

 

「……ここは…BAR…いわゆる、酒処だろ?」

 

「ああ」

 

「何でメニューがカツしかねえの?」

 

「何を言うか!カツ丼、カツとじ、ミルフィーユカツ、カツサンドに、カツカレー!ダブルカツ!」

「こんなにもメニューがあるだろう!?」

 

「重いわッ!てか!全部カツ関連じゃねえか!!」

「何だよ!ウイスキーとカツの組み合わせって!!」

 

 

「あら!ダーリンじゃない♡」

「たくさんカツ揚げてるから…たくさん食べてね♡」

 

足柄ぁ…

 

おい、那智、目を逸らすな。

 

 

おい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 





見直して思った。
ブルーオースのキャラ…マジで紹介をスルーしてた事を…


メインは艦娘達なんですけどね…



ちまちまやっていきますので今後ともよろしくお願いします(๑╹ω╹๑ )



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255話 想い願いの果てに…もうひとつのお話

「…ふぅ」

 

一息つく間宮。

見上げるのは…

 

 

「甘味処 間宮」の看板である。

 

 

初めてこの店を任せてもらう時に提督…旦那様が作ってくれた看板。

 

 

食事処 伊良胡は前回の襲撃騒動で拡張建て直し。

そして、伊良胡ちゃんの名前が堂々と入った食堂になった。

彼女も立派にこなすようになり、私や鳳翔さんと3人で忙しいお店を手伝う形になった。

 

居酒屋 鳳翔は、店のサイズはそのままに建て直し。

 

そして…ついに私の店も…。

利用する人が増えたのでもう少し大きくなります。

 

私と…あの人のお店。

 

 

それを眺める伊良湖と救。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幾度となく待った「帰り」

ずっと祈りながら…無事に帰って来ますように…と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

林との決戦の時。

 

 

 

 

 

「伊良胡ちゃん…大丈夫。きっと大丈夫!心配しないで!」

 

間宮は不安そうに眺める伊良胡の肩に手を置いて励ました。

 

「ありがとうございます…間宮さん…」

でも私は知っている。

あなたが1番心配しているのを…。

涙目で貰った指輪を握りしめるように祈る姿を何度も見た。

 

帰ってきた提督さんを

誰よりも早く迎えに行きましたよね。

 

 

 

 

 

 

 

今回も激しい戦闘なのね…。

 

 

え?

 

 

 

 

 

 

 

 

「……提督?」

 

提督が皆の前に立って……砲撃を…

 

轟音と共に提督は猛火に消えました。

愕然とする鳳翔さんや明石さん。

 

 

 

 

「いや…いやっ!いやぁぁああ!!」

不安は間宮さんの限界を超えて涙と叫びとして彼女から流れ出た。

「嘘っ!嘘よッ!!」

 

 

駆け出そうとする間宮を止める伊良湖。

「間宮さん!どこに行くんですか!」

 

「あの人を助けに行くのよッ!離してッ!!」

 

「…ダメです!」

 

「何でよ!お願い…伊良湖ちゃん…」

 

 

「待つって決めたじゃないですか!!待ってお腹空かせて帰ってくる皆を1番に迎えるって!」

 

「でも…」

 

「心配するなと言ったのは間宮さんですよ?なら…信じましょう?あの人があんな事で死ぬはずない…と」

 

 

「でも…アレじゃあ…きっとあの人は…し」

 

「!!!」

私は間宮さんの口を塞いだ。

 

 

「それ以上はダメです!どれだけ絶望の淵に立っていても…どれだけ困難な場所に居ても…信じるんです!」

「私達にできることは…それなんです!」

 

あなたに言わせない…

言わせちゃダメだ!!

それだけは口に出しちゃダメなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ…」

鳳翔さんも涙を拭って指を指す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには…

「あれは…」

 

 

 

 

あの姿は…。

 

 

 

 

 

「…本当に…何?あれ…」

 

まるで私達と…同じ…

 

 

 

 

 

「明石さん?!」

 

「い、いえ…私は何も作ってないです」

 

「あれは……」

 

 

『思いの形ですよ』

誰かがそう囁いた。

 

 

 

 

 

お願い!どうか無事で居て…!

 

 

 

 

その時…羽黒ちゃんが叫んだ。

 

「行けええ!提督ううう」

 

 

羽黒ちゃんから…何かが……

 

 

私も無我夢中で旦那様の事を祈った。

体から何か出て行った。

 

あの人と繋がった気がした。

 

 

 

 

 

夢…

艦娘なのだから皆と戦いたい。

 

 

 

提督は…私達の夢…陰で支える事を叶えてくれた。

これ以上に幸せな事は無い…

 

 

 

 

無い筈なのに!

 

私は思ってしまう。

艤装を背負ってあの人の為に戦いたい!守りたい!と。

 

叶わない…

決して叶わない夢

 

 

 

 

の筈なのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はあなたの隣で…

あなたに力を貸して…

 

 

 

あなたが微笑んでくれた気がした。

 

 

 

 

 

 

提督は叶えた。

皆と一緒に…いや、皆の為に戦う夢を。

 

提督は叶えてくれた。

 

私を一緒に戦場に立たせてくれた。

目には見えない初めて…の共闘。

 

 

 

 

 

その夢は虹の光となってあなたに力を貸して…

 

敵を打ち破った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「間宮さん…鳳翔さん…今のは……」

 

「……本当に…あの人ったら…」

 

帰ってくる…!

 

 

「迎えに行きましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

きっと皆は傷だらけで帰ってくるのだろう。

 

治らない傷もあるのだろう。

でも彼は言う。

 

『これも思い出だ』って。

 

誇らしい傷なんだろう。

 

 

 

 

急いでご飯を温め直して…

 

自然と駆け足になる。

 

ガヤガヤと声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

私達はいつしか走っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

傷だらけの愛しい人は笑う。

傷だらけの愛しい仲間に支えられて。

 

「「「「「ただいま!!」」」」」

傷だらけの愛しい仲間は笑う。

皆が笑顔で…いつもの言葉を言った。

 

 

 

 

 

 

「「「お帰りなさい」」」

 

私達もいつもの言葉で迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

完成したお店でひと足早くプチご飯。

 

 

 

「お疲れ様」

 

「はい…旦那様も」

 

「良い店になったなあ…」

 

「あなたのおかげです」

 

「…頬の傷…残りそうですね?」

 

「うんー…まあ…いいよ」

  

 

 

「ありがとうございました」

間宮と伊良湖は深々と頭を下げた。

 

「一緒に戦わせてくれて…戦場に立たせてくれて」

「あなたの叶えた夢に乗せてくれて」

 

 

 

救はびっくりした表情から笑顔に変わって言う。

 

 

「こちらこそありがとう」

 

 

 

提督の起こした奇跡。

皆の為に戦うと言う奇跡。

 

守ること

そして…戦うこと。

 

撃ち出した攻撃は深海棲艦を圧倒した。

 

そして、林に向けて撃った最初で最後の主砲。

 

私達の想いを乗せて…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伊良湖ちゃんが明日の仕込みの為に帰ります…と。

鳳翔さんもお店があるからと…

そんな訳で

2人きりになりました。

 

 

 

 

 

 

「はい…どうぞ」

 

 

「これは…」

 

「あら?意外でした?私も料理はしますからね?甘味だけじゃないんですよ?」

 

 

「里芋の煮転がし」

「……美味しい」

 

 

「私も失礼して……」

「ふふ、久しぶりに使いますね?夫婦皿」

 

お酒を交えて軽くご飯。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつの間にか寝ていたらしい。

旦那様の肩に頭を預けて…

 

提督のコートを掛けてくれてるんですね?

 

 

なら、もう少しだから甘えましょう…

今だけは…あなたを……独り占め…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『提督?間宮さん泣きながら待ってたんですからね?』

『そばにいてあげて下さい。あなたを感じさせてあげて下さい』

 

 

『私の方もまた今度お願いしますね♪』

 

 

伊良湖の言葉を思い出しながら、ちびちびと酒を飲む。

 

風邪ひくぞ…と彼女を部屋に送る。

 

 

 

ベッドに寝かせて布団をかける。

可愛い寝顔だなあ。

 

 

 

部屋を出ようとすると袖を引っ張られた。

「……タダで帰っちゃうんですか?」

 

 

 

流れる沈黙。

自分の心臓の音すらうるさく感じるほどに。

 

 

 

「…」

そっとキスをする。

 

 

「おやすみ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっぱり袖を引っ張られた。

 

 

「…やっぱりもう少しそばにいて下さい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「間宮さん………あら?ベルファストさん?」

遅刻した間宮さんを起こしに来たら…間宮さんの部屋の前にベルファストさんが居ました。

 

 

「伊良湖様……見てください。2人の幸せそうな寝顔を……」

 

部屋を覗く伊良湖。

 

 

 

 

 

間宮さんが抱き着いて幸せそうに眠ってました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…本当に幸せそうですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ズルイですね」

 

 

「全くをもって」

 

 

 

 

 

 

ニヤリと笑う悪魔。

きっとココこそが地獄の一丁目。

 

閻魔すら「うわっ…引くわあ」と言うだろうか。

 

 

 

 

 

でも…やるんだよね。普通に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「提督さぁん!!2人で抱き合って寝てないで起きて下さぁぁあいい!!」」

 

 

響く大声

集まるギャラリー

 

響く悲鳴。

 

 

 

起きる2人。

 

 

 

 

わぁい、現状証拠しかねえや!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督は朝一から追いかけっこに勤しんでいた。

 

 

 

「まてーー!!ずるいぞーー!!」

 

「あらあら…」

と、笑いながら楽しそうに見守る間宮。

 

 

 

「間宮さんも…ズルイですー!」

 

「え?!え!?」

 

 

今日は2人で逃げていた。

 

 

 

 

 

 

遠巻きに見ていたこの光景に混じられるなんて…

そんな日が来るなんて…

 

 

間宮は嬉しそうに微笑みながら救の手を取って言った。

 

 

 

 

「行きましょう!」

 

 

 





伊良湖ってこんなキャラだっけ?


最後にはギャグを挟まないと…ね。

お留守番組のお話でした。




少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!



感想などお待ちしています!
ぜひよろしくお願いします!


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256話 時期外れの来訪者 ①





トンデモ話です。
生暖かく見守ってください。








私は取り返す。
例えどんな結末が待っていても…


 

 

寒い季節ではあるが…

その冬の冷たい風はどうやら思いがけないものを一緒に運んで来るらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女の子に抱きしめられた。

「会いたかった!」

 

 

 

 

しかも泣きながら。

 

 

 

 

 

ん?迅鯨かな?

おや違うね…。

 

 

 

迅鯨…その包丁は仕舞おうか…

 

 

 

 

おやおや皆さんまで…。

 

皆様?ハイライトの落とし物はございませんでしたか?

え、ないの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あなたが神崎 救?」

 

いま聞くんかい!

 

「違ってたらやばいよね。で、えーと…どなた?」

 

こんな会話から始まる不思議なお話。

 

 

 

「…私は………私は…」

「か………アカネ…アカネって呼んで」

 

 

「ふむ…俺のデータベース上では知らないなあ…と言うわけで皆さん…その目をやめましょうね?」

 

 

 

「でもピンポイントで指揮官の所にきたし、名前知ってるし」

 

 

「また女の子を泣かしたのかと…」

 

「いや、泣かしてないから!君も引かないで!!」

 

 

 

 

 

 

 

「あなたが1番すごいって…ママに聞いたから…」

 

「ほう…ママ…ねえ?」

 

「色ボケで…女の子大好きで……危険な奴?」

 

「おい、お母様をここに呼びなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?どんな助けが必要なのかな?」

 

「何で?」

 

 

 

 

「何となくさ」

 

 

 

アカネは暗い顔で言う。

 

「…数日の内に…とある海域に化け物が現れるの…それは今は弱いけど…大きくなったら…全てを壊す化け物になるの」

「止めたいけれど…どうしようもなくて……」

 

 

 

「…そんなに?」

 

「ああ…ええ、私の大切なものも奪われたから…」

 

 

 

「任せて下サーイ!私達にかかればあ…安心デース!」

 

 

「本当!?金剛さん!」

喜ぶアカネ。

 

「はい!困ってるなら…榛名も力になりますよ!」

.

「榛名さん…」

 

アカネは泣きそうな顔で喜んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?話をまとめると?」

 

「厄災とやらがこの世界に紛れ込んだ…と。ソイツは年月をかけて成長する…とね。君の大切な人も殺されたから…これ以上被害を増やさない為に……ソイツを倒すのを手伝って欲しいと?」

 

「うん」

 

「数日内に現れるけど…まだ力を使い果たして弱いからワンチャン倒せるかも…と?」

 

 

 

 

「アカネの世界では?どうだったの?」

 

「…色んな犠牲を払って倒した…ううん退けたかな…」

 

 

 

 

「厄災……ねえ?」

 

ちらっと蒼オークランドを見る。

 

「私じゃない!って言ってるよ?赤は」

 

「まあそうだよねえ…」

 

 

 

 

 

 

「そんなにヤバイ奴なんだ…。救君に頼りたくてきたんだね。そりゃ感極まって抱き着くよ」

 

「皆の目がヤバかったけど…ね」

 

 

 

 

 

とりあえず…

その日まではアカネは宿舎に住んでもらうことになった。

戦法、対策、作戦を練る為に色々と聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「海域調査も…範囲を広げるか…」

 

「とはいえ…ここら辺…とは教えてくれてるしな…信じてそこを重点的に監視しよう」

 

 

「しかし…あの子がねえ…」

救は窓からアカネを見る。

 

あんな子が…

そんなに辛い思いをして…世界を渡って…

御蔵のようにならないことを祈らないと…いや、俺達がそうさせないようにしないとな…と思うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら!アカネちゃんだっけ?白玉パフェ…食べて行く?」

 

「あ……はい」

 

話しかけてくれたのは間宮さんだった。

 

 

 

 

 

「はいどうぞ♪」

目の前に出された白玉パフェ。

フルーツも使ったこじんまりとしたミニパフェだった。

 

「美味しい…」

 

 

「……美味しい。本当に昔から好きなんです…コレ」

 

 

「あらそう?あなたの国にもあったのね。コレは今日作ってみたやつなんだけど…でも、気に入ってくれて嬉しいわ」

間宮はニコリと笑った。

 

えへへ…とアカネは笑い返した。

 

 

 

 

 

 

 

「ヘーイ!アカネー!ティータイムしてかなーイ?」

 

「お姉様…まるでナンパですよ…」

 

「だって…」

金剛はアカネに抱き着く。

 

「こんなにキュートな子だものー!」

 

「こ、金剛さん!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

執務室の前でチラチラと中を覗くアカネ。

 

「…アカネ様…宜しければ執務室を見てみますか?」

 

「え?」

ドキッとした。

 

 

「ご一緒に協力される方の為人を見ておくのも宜しいかと…」

 

「は、はい!ぜひ!」

 

 

 

 

 

 

 

「ん?アカネか…いらっしゃい」

 

「あら、アカネちゃん」

鳳翔と提督さんだ。

 

 

「ご主人様?そろそろおやつタイムです」

 

「ん…アカネも一緒にどうだ?」

 

 

「え…いいの?」

 

「ああ!いいとも」

 

 

 

 

 

「君の居た世界はどんなところだったんだい?」

 

口の中のクッキーを飲み込んで…紅茶を一口飲んでから言う。

「私の居た世界もここと変わらないよ。海で戦う人がいて…怪物が居て…企む人がいて…」

 

「どの世界も変わらないんだな」

 

「うん…でも結局は殆どが死ぬんだけどね」

 

「その厄災ってのはそんなにか?」

 

「うん、私の大切な人達も死んだよ」

「守る為に…。命あってこそなのにね」

彼女は遠い目で答える。

 

 

「それだけ守りたいものがあったんじゃないか?皆」

 

 

「でも!!残される方は悲しいよ!!」

思わず声を荒げて立ち上がる。

唖然とする皆。

 

 

「ご、ごめんなさい…」

 

 

「いや、俺の言い方も悪かった」

 

 

 

「まあ…何だ…命懸けで守ったって事は…どうしてもその命を繋ぎたかったんだと思う。その全てを君に託したんだと思う」

 

 

「託した…?」

 

「何を…ってのはわからないけどもね」

 

 

彼女は青ざめた。

「ご、ごめんなさい!私、やっぱり体調悪くて!」

 

 

途端にアカネは泣きながら部屋に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

「…大丈夫かな」

 

「その厄災というストレスは相当なのでしょう…」

「世界を渡ってまで……さぞお辛いと思います」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ…最低だ…私。

あんなに優しい人達に…あんな態度…。

 

 

 

そして…私のやったことの重大さを思い出して私は潰されそうになっていた。

 

 

 

コンコン…

とノックが響いた。

 

 

 

「はい」

 

 

「俺だ」

 

 

「提督さん?」

 

 

 

救さんだった。

 

 

 

 

彼は部屋に入ると…

「ごめんな…」と言った。

 

私は…そんなことないよ!と返す。

そして…聞く。

 

「どうしてそこまでしてくれるのか?」と。

 

すると彼は答えた。

 

「ここに居る以上は俺の家族と同じだから…何かあったら頼ってくれ」

と、頭を撫でられた…。

 

 

 

ぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。

 

 

「ごめん!?嫌だった!?嫌だよね!?ごめんね!?」

 

「ううん…嬉しくて…」

 

 

 

 

 

それからたくさん色んな話をした。

死にかけたことや死んだことや…たくさん。

あなたの方が苦労してるじゃん…って思った。

 

 

 

「…寝るまででいいからそばにいて欲しい…」

 

 

「何なら一緒に寝ようか?」

 

 

「…それなら安心して寝られるね」

 

「え……」

冗談のつもりだったのだけれども…と救は焦る。

 

「お願い…」

 

 

 

 

 

 

 

その日は2人で寝た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督さんは次の日に吊るされていた。

ギルティってみんな言ってた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日して…

楽しいと思い始めた頃に奴は来た。

 

 

 

「…某海域に反応!目視出来たそうです!!」

 

「目標…深海棲艦と接触………瞬殺です!?」

 

 

 

まずはル級とヲ級だった。

自分達に似通った雰囲気でも感じたのだろう。

近づいたところを一瞬だった。

 

 

次に厄災とやらに接近した駆逐艦棲姫らしきものも一瞬でやられた。

 

 

 

「え…?」

 

 

 

 

「なっ…」

私は焦った。

違う…弱ってなんかない!!

 

 

 

 

 

 

 

ダメだ…このままじゃ!

 

 

 

「よし、引いてはこの世界の脅威にもなるやも知れん!ここで止めなくては!」

 

 

 

「主力部隊ッ!金剛!加賀!武蔵!鳳翔!榛名!初月!桜三笠!」

「直ちに出撃せよ!」

 

 

 

「残りのメンバーも…砲撃支援や補給支援…出撃せよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わ、私も連れて行って!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督さんと厄災のところへ向かう。

 

やっぱりそうだ…

私の知っているやつと…少し違う!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

厄災は私を見てニヤリと笑った。

 

コイツ…わかってる…。

私を分かってるッ!!

 

 

チラリと艦娘さん達の方を見てさらに笑う。

 

 

 

「この…!!帰って下サーイ!!」

 

 

 

ズドン!!

金剛の主砲が命中する。

 

グラリ…と厄災が傾いて倒れる。

 

 

 

 

 

 

「…いける?」

私がそうポツリと言った時だった。

 

 

「…手応えがないネー…」

金剛さんが言った。

 

 

 

 

 

 

厄災はぬるりと立ち上がった。

そして…

 

金剛めがけて砲撃を行った。

 

「ぐっ!?…こ、こいつ…武装しているデース!?」

 

「まるで艤装だな…」

 

「デカイ上に…武装なんて卑怯だぞ!!」

 

 

 

 

 

 

『……!』

厄災が武蔵を掴んで海に叩きつける。

 

 

「がっ………はぁッ!?」

 

 

 

 

 

「こりゃ…たしかにやべえ奴だな」

 

「武蔵ッ!金剛!大丈夫か!?」

 

「何とか…!!」

 

「くう…油断した」

 

 

 

「…このォ!!」

「くらいなさいッ!!」

 

加賀と桜三笠が攻撃を行う。

 

 

 

 

 

「…あまり効果ないのね」

 

「…悔しいな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…

厄災は大きな手で海をブッ叩いた!

 

ドパァン!!

 

大きな音と衝撃波と波が皆を襲う。

 

 

 

「指揮官様ッ!アカネちゃん!!」

咄嗟に桜赤城が艤装をメンタルモデル化してくれたお陰で何とか俺達は耐えられた。

 

 

 

 

奴の狙いは…他にあった。

 

 

 

ズドォォン!

ズドドドドド!!!

 

体勢を立て直す前に厄災から放たれる一斉掃射。

 

躱す術なく撃ち込まれる皆。

 

「きゃああっー!」

 

「うぐっ…」

 

「がはっ…」

 

 

 

 

 

 

 

「危ないッ!!」

流れ弾が飛んできたのか…

救はアカネを庇って怪我を負う。

 

「…!?提督さん!!」

 

「大丈夫…君が無事ならいいッ…」

 

 

 

 

 

 

 

アカネは立ち上がった。

その光景に絶句した。

まともな傷をつけられた訳ではない。

奴はピンピンしている。

 

 

 

「うそ…」

アカネは絶望の淵に立たされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでも彼女達は立ち上がろうとする。

 

 

 

 

「やらせないよッ!!」

比較的に被害の少ない蒼オークランド達後衛がカバーに入る。

 

『……!!』

 

しかし、敵はそれすらも許してくれない。

 

 

ズドォォン!

 

「ぐぁっ…!」

「きゃあ!!」

被弾するメンバー達。

 

 

 

「嫌…勝てないの…?」

 

 

 

 

そんなアカネを尻目に…じわじわと距離を詰める厄災。

 

アカネは叫んだ。

 

 

 

 

 

「やめろおお!!」

 

 

 

「この…返せッ!!私の大切なものを返せッ!!」

 

 

 




お気に入りが670!
ありがとうございます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
のんびりやってきますのでよろしくお願いします!





別の世界から…
奴を追ってやってきたアカネ
そしてピンチのメンバー達。



さてどうなるか?





少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!


感想などお待ちしてます!
ぜひ!よろしくお願いします!


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257話 時期外れの来訪者 ②

強くなれ…

守れる程に強くなれ…

そうすれば…お前の手からこぼれ落ちるものは少なくなる。








ーどうすれば強くなれるの?



前を見ろ…
アイツはいつでも前を向いている。
だから強い。






 

 

 

 

 

 

 

「返してよ…!!」

 

「私の大切なものも返してよ!!」

「これ以上奪わないでよッ!!」

 

 

アカネは叫んだ。

 

 

 

 

理不尽…。

そう、厄災とは理不尽なのだ。

 

 

どれだけ平和であろうとも…

どれだけ愛していようとも

一瞬にして飲み込んでしまう。

 

返らない…決して返ってこないのに。

 

 

楽しかったあの時も…

取り消したい…あの時も…

ありがとうと言いたい後悔も…

謝りたいと言うこの後悔も…

 

 

全部奪われたから!!

私を守る為に…!!

 

 

 

 

 

 

 

傷ついた皆…

立ち上がろうとする彼女達。

 

 

にじり寄る厄災。

 

 

「やめて!やめてよッ!」

 

 

ニタリ…と厄災は笑う。

 

 

 

 

「いや…立ってよ…逃げてぇ皆ぁ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ニタニタ笑ってんじゃねえよ…気持ち悪いなぁ!!」

救が血を拭って言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう…ヨー…乙女を泣かせるのは重罪ヨー」

 

「…こんな…もの…あの子の痛みに比べたら…」

 

「どうってことない!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

『コイツを…泣かしてたまるかぁぁぁあ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「待っていろ!アカネ!」

 

「今すぐお前の笑顔を取り戻してやる」

 

「お前がもう泣かなくて良いように!!」

 

「明るく前を向けるように!私達が…導となってみせる」

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう…泣かなくていいぞ、アカネ」

 

「……」

 

「きっと守るから」

『俺が…俺達が絶対お前を守ってみせるから!』

 

重なる…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「だめ…その言葉は…!」

「その言葉はぁ!!」

 

 

 

 

「…死なないでよお……」

 

 

 

 

「死なんさ!」

 

 

 

 

 

 

「「「「どおおおおりゃぁぁぁあああああッ!!!」」」」

 

金剛が

鳳翔が

加賀が

武蔵が

榛名が

初月が

桜三笠が

 

ソレに全力の一撃をブチ込む。

 

 

「負けるかッ!!」

 

「お前みたいな…奴に…私らの住むとこを奪われてたまるかぁぁあ!!」

 

「あなたを倒して…ダーリンさんと美味しいご飯を食べるんです!」

 

「あ"!?」

 

 

「女の子は笑ってるべきなんだッ!!」

 

 

 

 

それでもなお立ち上がる厄災。

 

 

 

 

「もういいよ…逃げよう…?」

 

「いやデースッ!!」

 

「何で!?」

 

「まだ…絶望しちゃいないからな…」

 

 

「何で…そこまで私の為に…?こんなに傷付いて…」

 

「何日か前に現れた怪しい私の為に…」

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「だから」

 

 

「戦う理由なんか」

 

 

「大好きな家族が泣いている」

 

 

「それだけで十分だッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダーリン…!私達に力を貸してッ!!」

 

彼は願う。

どうか…彼女達に厄災を超えて…1人の女の子に笑顔を取り戻すように!

「行け…!行けええ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アカネも叫んでいた…

 

「頑張れ…みんなあ…!!やっちゃええ!!」

「お願いッ!!負けないでッ!!」

「取り返して…!!私の…全部を!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬…彼女が少し光った気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「ブチ抜けッ!!うおおおおおおお!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前が真っ白になる。

 

 

 

 

 

 

なんて事なんだ…

彼は…彼女達は確かに強かった。

聞いた通りに…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が熱くなる。

 

 

 

 

あぁ…

こんなにも…凄いんだ…この人はッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全艦…一斉掃射!!

 

『…………!?』

 

武装が粉々に撃ち抜かれ…

本能的に不味いと思ったのか

それでも尚逃げようと体を引きずるように逃げる厄災。

 

 

 

「榛名ぁ!!行くヨー!!」

 

「はい!お姉様ッ!!」

 

 

 

 

「「くらえ…」」

 

「「沈めえええええええ!!!!」」

2人の鉄拳が突き刺さる。

 

 

 

ベキベキ…と言う音と共に水面に沈み行くソレ。

 

 

「皆ぁ!!最後にッ!!もう一回ッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドォォン!!

ズドォン!ズドオオオオオオン!!

 

 

 

 

 

 

そして…

 

「行けッ!!赤ッ!!」

救が蒼オークランドに向かって言う。

 

 

『フン…仕方ないなッ!』

 

蒼オークランドは赤に代わり赤は構える。

 

 

『厄災と聞いたが…そんなものか…所詮は…その程度か』

 

『不愉快だッ!!』

 

 

 

 

 

『私が本物を見せてやろう!!』

 

赤の構えた刀は巨大なエネルギーを纏う。

 

 

 

 

『アカネよ…見るがいいッ!!この一撃は…お前に捧げてやる』

 

 

 

 

目を見開いて…逸らすなよ?

お前の言う…無理を覆してやろう!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『厄災とやら……死ねえええ!!!』

 

赤はそれを振り下ろす。

 

 

ザン…と言う音の後…。

 

 

厄災は真っ二つに両断され…

厄災は遂にガラガラと崩れ去り…

 

 

『…………クソ……やられた』

 

とだけ言って光となって散った。

 

 

 

 

 

 

 

幾度と無く夢見た光景だった。

 

「あぁ…」

 

「やったんだ…」

 

 

「これで……私は…」

 

帰ることができる…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうね」

「お陰で…私の目的は果たせました。これで…きっと不幸は去ります」

 

 

アカネは皆に頭を下げた。

アカネが光出す。

 

 

「アカネ!?」

 

 

「さて…帰らなくちゃ…」

 

「どこに?」

 

「私が居たところに!」

 

「どこなんデス?」

 

 

 

 

 

 

 

えへへと笑う彼女。

 

 

 

「アカネ?」

救が首を傾げる。彼をじっと見つめているからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの世だよ」

 

 

 

 

彼女は寂しそうに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ど…どういう事だ!?」

戸惑うメンバー達。

当然だ。…あの世から来たと言うのだから。

 

 

 

「私はね…別の世界じゃなくて……この世界の…もっと先から来たんだ」

 

 

 

「アイツのせいで…大切な人達が私を守る為にが亡くなって…無気力に生きて……辛くて…辛くて耐えられなくて自分で閉じたの」

 

 

 

 

「託してくれたって分からずに自殺しちゃったの!」

 

 

 

 

 

「…喧嘩してもごめんなさいも言えなくて…たくさん愛してくれてありがとうっても言えなくて」

 

「それが本当に辛くて…。皆優しくしてくれたんだけどさ…そこには大好きな人達が…居なくて」

 

 

「…だから死にながら…願ったの」

 

「やり直せたら…なあって」

「そしたら…何回も繰り返すうちにここに来たの」

 

「アレは…私の大切なものを奪った奴」

 

「私に力がなかったから…」

「でもようやく…ゴールに着いたんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんね?私…皆の優しさを利用して…怒ってるよね?」

 

 

 

 

 

 

「怒らないさ」

救は言う。周りもうんうんと頷く。

 

 

 

「だって…家族が困ってたんだもの」

「全力で助けるよ」

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい?ありがとう?そう言いたかったんだろう?」

「よし!俺が聞いた!それでどうだ?」

 

 

 

「提督よ…それはいかんだろう…」

 

「ダメか…」

 

 

 

 

 

その言葉…あぁ…。

 

 

 

 

うん

 

ううん…。

満足だ…。

 

 

 

 

 

「あはは…変なの」

 

 

 

 

彼女は涙目で笑う。

きっとそれは誰も…何も止めることができない涙。

 

 

 

 

彼女が過ちを犯して尚願い…

 

彼女の道を突き進んだ果てのー…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ…!改めて自己紹介するね!」

彼女は元気よく叫んだ。

 

 

 

 

 

ー…その果てにあったゴールだったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の名前は…漢字で…朱音」

 

 

「少し…遠いかな?未来からやって来ました!」

 

 

 

「朱音は…大好きなパパとママつけてくれた名前」

 

「2人が…沢山の仲間が死んじゃった……過去…ここで言う未来を変えたくて…やって来たんだ。まさか…パパと戦えるなんて…」

 

 

 

 

「え?…どう言う意味…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の名前は…神崎 朱音」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

救は思わずそう言う。

 

 

「神崎って…え?パパって?」

困惑するメンバー達。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パパ…ありがとう!大好きだよッ!!」

 

チュッ…と頬にキスされた。

 

 

 

彼女が探し続けて居たのは…

彼女を守る為に命を賭した彼や…彼の大切な人達にもう一度会いたくて

そんな過去を変えたくて…

 

それが…

結果として過去の救に助けを求めることとなった。

 

何故なら聞いていたから

『パパは…奇跡を起こす、物凄く強くてカッコいい提督だったんだよ』

 

「えへへ…ママの言う通りだった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだ…

最初がそうだった…

『会いたかった!!』から始まったんだ…。

 

ずっと会いたかったんだ…

死んだのは…俺だったんだな…?

 

 

 

 

救は微笑んだ。

理解したのだ…。一緒に寝て欲しいと言った意味を

 

 

 

金剛はハッとした。

そうだ!思い出した!自己紹介してもないのに名前を知っていた事を…。

 

 

間宮は思い出した。

初めて作った白玉パフェを…ずっと昔からコレが好きなんだと言った事。

 

ベルファストは理解した。

あんなにも…色んな表情で執務室の救を見ていた事。

 

 

 

だから…あの時…体が光ったのかな?

私達に力を貸してくれたんだ…。

 

だって…あの人の子供なら…。

 

 

 

 

 

 

「ふっ……お願い…ぐすん……パパ……ぎゅって…して」ぐすん

 

救は理解した。

実感があるかと言われると難しい。

だが…親が居ない寂しさは痛い程にわかる。

 

死を選ぶほどに辛かったんだ…。

娘は…無垢に父に甘えるように…ねだった。

 

この子は…未来で死んだ俺を助ける為に…

寂しい思いをさせたな…

 

 

「…よしよし」

 

「信じてくれるんだ…」

 

「もちろん…まあ少し戸惑ってるけど…」

 

 

 

「後悔はしていない」

 

「え?」

 

「寂しい思いをさせたのはごめん。でもきっと後悔はしていない。お前を守れたのなら」

 

 

その言葉で彼女を堰き止めていたものが一気に崩れた。

 

「…ありがとうッ!!パパっ…私を守ってくれて…ありがとう…!!」

「ごめんね!耐えられなくて…自殺なんてして…せっかく繋いでくれた命なのに…!!」

うわぁぁん!と無く朱音。

 

 

「お前は来てくれたじゃないか」

 

どれだけの苦痛があっただろうか?

どれだけの孤独に耐えただろうか?

どれだけ…繰り返したのだろうか?

 

それでも彼女は突き進んで…ここに居る。

 

 

 

彼は力一杯に彼女を抱きしめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん…コレ…」

記憶にあるその温もり。

 

やっと……

 

あったかいなあ……

幸せだなあ…

 

 

 

 

「コレ見て?」

彼女が救に見せたものは……

 

 

「それは確かに俺のだわ!」

救は笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう…

彼女は…彼から託された…と聞いて自分を責めたのだ。

自分を守る為に死んだ救達。

 

それを見ずに…彼女は最終的に死を選んだ。

 

 

 

 

だが…ずっと目の前に居たのだ。

会いたかった人が…

さぞ辛かったろう。

言って甘えたかっただろう。

 

でも彼女は…それでも…

 

 

 

 

「ここにいる以上は家族だって言ってくれて嬉しかった」

 

 

 

 

 

 

 

『ごめんなさい?ありがとう?よし俺が聞いた!』

 

そう…この言葉は彼女が1番欲しかった答え。

 

偶然の産物ではあるが…

救の言葉で…彼女は救われたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「パパから聞いていた通り…ママもいい女だったしね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ええええええ!?!?てか!ママ!?誰!?誰えええ!?!?」

 

 

 

 

 

 

「ここに…あなたのママが居るの?」

加賀が普段見せない表情で聞く。

 

 

 

「うん!えへへ」

「誰かは内緒だけどね」

 

 

 

 

「本当に?」

 

 

「本当だよお!」

彼女が見せたのは…遺品だろうか?2つの結婚指輪

 

「ああー!それ!私達のと同じやつ!本当なんだッ!!」

 

 

 

 

 

「提督さんは誰が奥さんか聞かなくていいの!?」

由良がニヤニヤと聞いてくる。

 

 

「うーん…時間が教えてくれるかな?」

 

「あはは!パパらしいや」

 

 

記憶には少ないけれども…大切な思い出。

今のコレも大切な思い出。

大切に胸にしまって帰ろう。

 

 

 

 

 

 

「またね!またどこか別の未来で…」

 

 

 

大好きだよ!パパ!ママ!そして皆!!

ありがとう!! 

 

私の記憶にあるままの皆…!

昔と変わらず…私を助けてくれて!支えてくれてありがとう!

 

 

 

そう叫んで…

 

彼女は笑い泣きしながら光になって消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ありがとう…

大好きだよ…

今まで謝れなかった分

ありがとうって言えなかった分…

 

聞いてくれてありがとう。

 

 

 

 

 

 

 

ごめんね…

死んじゃって…

 

 

 

また会いたいなあ…!!

 

 

 

また…パパとママの子に産まれたいなあ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前が光る。

さあ…地獄でも何でもこい!

私はやり切った!!

 

もう…挫けない!逃げない!

罰だって受ける…!

 

 

彼女は真っ直ぐにその光を見つめた…

 

 

その先には……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お帰り…朱音」

「お帰りなさい」

 

 

 

目の前に2人が居た。

ここは…私の家?

 

 

 

「…パパ…ママ…あれ?ここは?私…あの世に……」

 

 

 

涙が溢れる。

 

ずっと寂しかった。

1人で…皆は居たけれど…2人だけに会えなくて…!!

 

 

最後に見れる幻でも……

それでもいい!

私は頑張ったよ…少しは…!

少しは取り返せたかなあ?

 

 

だって…大好きな2人に…みんなに…

 

 

会いたかったんだ!!

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様…」

 

「え…?」

 

 

 

 

 

「朱音が変えてくれたんだろう?未来を…」

 

「だから…ここに居るのよ」

 

 

私の姿は…あの時から少し経ったくらいの時に戻っていた…。

 

 

 

 

 

 

 

「…覚えてるとも…ほら、この傷も…」

庇った時の傷を見せる救。

 

「私達の為に…ありがとうね」

ママも…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「居られるの?」

「3人で…みんなで!?」

 

 

 

「あぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁあん!!」

パパッ!!ママぁっ!!

 

泣きじゃくって2人に飛び込んだ。

 

夕焼けよりも暖かい。

ずっと…ずっと求めていた温もり。

 

私はきっとズルなんだろう…

卑怯なんだろう

 

でも…それでも会いたかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「過去のパパはカッコ良かったかい?」

 

「最高ッ!!惚れそうだったよ!」

 

「ママは?」

 

 

 

 

 

 

「相変わらず…イイ女だった!!」

 

 

 

 

「さあ…夕飯の買い物行こうか…」

 

 

 

 

「ゲッ!皆から鬼のように着信が……」

 

 

「パパはモテるねえ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらは現世。

 

 

「誰だァァッ!!朱音ちゃんのママは誰だぁぁぁ!!!」

 

「…よく思い出せば…榛名に似てたような…」

榛名がニコニコと言う。

 

「んな訳ないネー!私デース!!」

 

「イイや!私!!」

 

「わ、私かも!救君!!」

 

「俺だろお!?」

 

 

「いーや!朱音と娘に名前をつけようと考えてたんだった!つまり!私かぁぁあ!!」

 

 

 

拝啓…未来の娘とやらの朱音ちゃんへ…

少し寂しい鎮守府になったけれども鎮守府はこんなにも賑やかになったぞ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前の爆弾発言のせいでな!!

 

 

 

今は母親探しに夢中だぞ?

傷は?

 

え?そんな痛み感じない?

 

アドレナリンが出まくってるじゃないか!!

…まったく

 

 

深海棲艦よりも、セイレーンよりも、ムーバー達よりも

お前が1番厄介ごとを持ち込みやがったよおおお!!

 

 

 

 

「「「「あ」」」」

 

ふと彼女達は考えた。

というか気づいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「子供作ってみたらわかりマース!」

 

「既成事実ッ!!」

 

 

清々しい程の実力行使に出るそうだ…

 

 

 

 

 

 

「バカ!おまっ…それはアカンだろう!?」

 

 

しかし、走り逃げる彼は…笑顔だったと言う。

 

 

 

 

 

 

「まあ…子供ができるくらいある程度は平和なんだろ?未来は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや?救ちゃん?この写真の子は?誰だい?」

 

「ん?あぁ…一緒に戦ってくれた…家族だよ」

 

「へえ……どことなく…救ちゃんに似てるよな。2人並んで撮ってると……にしても、いい笑顔だな!」

 

まあね…なんて思いながら、頷く。

 

 

 

元気かな?

会えなくても…

君が覚えてなくとも

俺達は覚えているから…

 

また会おう…

君の行く果てに幸ありますように

 

 

君と一緒に戦えた事…

君が取り戻してくれた事…

誇りに思うよ。

 

 

救はピッと写真に向かって敬礼した。

 

 

 

 




え?
ほのぼの日常だって言ったのに…シリアスパートじゃん!て?

気のせいですよ…
日常ですよこれ…
日常です






前書きは…未来での赤と朱音の会話


時期外れ…
生まれてない人が来た…
ということで時期外れ。


以前に出てきた海の怨念は
また生まれるとありました。
結果としてそれが大きくなって誰も対処できない程になった…と言う話ですね。



誰が母親…とは明言しません。
そこまで考えてない…のもありますが…
その方が楽しみがあるかな?と。

でも…そんなお話どうでしょうか?

無数あるかもしれない可能性のお話?でした。


少しでもええやんと思って頂けたなら幸いです!


感想などお待ちしてますー!!


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258話 翔鶴と1日夫婦 ①

「提督…明日1日ですが、この不束者をよろしくお願い申し上げます」

深々と三つ指をついて頭を下げるのは翔鶴。

明日からの1日の為に前夜からお願いに来たのだ。

 

 

はーーー!!

旦那様の部屋ぁぁあ!!

旦那様って…私ったらぁ!!

ダメよ!翔鶴!落ち着きなさい…

 

 

 

「硬いよう!?もっと気楽に行こう!?」

「なんか皆は今くらいから来るし…うん、もっと甘えてもいいんだよ?」

 

 

「…よろしいのですか?」

 

「うん」

 

「本当に?」

 

「おう」

 

「後悔しませんね?」

 

「ん、あ、ああ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プツン…

 

 

 

 

 

 

「旦那様あぁぁ!!」

 

 

ガバァ!!

 

突然翔鶴は救に飛びついた。

 

 

 

「!?!?!?」

 

 

「あぁー!旦那様ッ!旦那様ぁあっ!!」

「好き好き好きしゅきー!!!」

 

普段の翔鶴からすると、到底考えられない姿がそこにはあった。

 

え?

何これ?

この人本当に翔鶴?

 

「はーーー」

 

目を♡にしてスリスリと擦り寄って甘えてくるこの子が…

あの翔鶴?

 

 

 

 

 

 

 

 

「うそおおお!?」

 

 

 

「どうしましたか?私の旦那様?」

 

「私の…てか、おまッ…お前は誰だ?」

 

 

 

「あなたの…あなたの妻です!翔鶴です!」

 

 

 

「明石になんか変なクスリ飲まされた?」

 

「至って普通ですが?」

 

「え…」

「なら…素がそれ?」

 

 

「普段はだいぶ抑えてます」

 

「……」

 

「でも…いいんですよね?今日、明日くらいは…」

「それとも…幻滅しましたか?」

 

 

「……ぶふっ」

 

「?」

 

「ハハハハハ」

笑い出す救に戸惑う翔鶴。

 

 

「ハハハハハ!あはハハハハハー…ひぃー腹が…うほほ」

 

「あ、あの提督?」

 

 

「いや…真面目気質な翔鶴にこんな一面があったなんて…数年一緒にいても分からないとこもまだまだあるんだなあ…ってさ」

 

「我慢なんかしなくていいだろう?いつでも素で居てくれる方がいいよ」

 

「周りを見てみろ〜?」

 

 

『ダーリン!バーニングラブデース!』

 

『榛名は…ダーリンさんと…♡』

 

『指揮官様あ♡……あら?虫が…』

 

『指揮官〜♡』

 

 

 

 

「部屋に忍び込む…偶然を装って15回も遭遇する…」

「…そんな奴もいるんだぞ?」

 

「それはそれで大丈夫なのですか?」

 

「慣れる」

 

「…慣れですか…お強いですね」

 

 

 

「まあ…なんだ…。俺は素で居てくれる方が嬉しいぞ」

 

 

「……」

考え込む翔鶴…。

 

 

 

「??どした?」

 

 

 

「あ…いえ、こうやって堂々と甘えられたら嬉しいのですが……でも…この姿はあなただけに見せたいと思う自分も居るんです」

 

 

「本当ギャップがヤバいよね翔鶴は」

 

「でもやっぱり甘えたい〜!」

やっぱりガバッと飛びついてきて頬擦りする翔鶴。

とてもじゃないけれども5分くらい前まで厳粛に三つ指ついてよろしくお願いしますねと言っていた人物と…同一とは思えない。

 

まあ…「うふふ…」と普段は大人しくても…

戦闘中になった瞬間に「オラァ…!血ィ見せろやぁぁあ!!」

なんて言う奴もいるしなあ…。

 

「旦那様ぁ〜ダーリン〜」

 

 

「提督さん〜失礼…す」

 

「あら?瑞鶴じゃない…どうしたの?」

 

「???あれ?えと…えと…」

「あれ…なんか一瞬…凄い意外な翔鶴姉「なんのことかしら?」

 

「いや…あ「見間違いじゃない?」

 

「でも…あ「瑞鶴?」

 

翔鶴はトン…と瑞鶴の肩に手を置いて…耳元でボソリと言った。

 

 

「世の中にはね?知らない方が賢いこともあるのよ?」

 

 

ボソリと…。

 

「ヒッ…」

縮み上がる瑞鶴。

 

「翔鶴…」

 

「…はあ…まさか瑞鶴に見られるなんて…」

 

 

「し、翔鶴姉?」

瑞鶴はガクガクと震え上がっている。

余程怖かったのか…

 

「てて提督さん」

と、引っ付いてきた。

とりあえず震える瑞鶴をよしよし…と慰める。

 

「ず、瑞鶴ぅぅ!?」

 

「こら!翔鶴…瑞鶴が怖がってるだろう?お前達は姉妹なんだから…てか…瑞鶴すらこのキャラ知らなかったんだ…」

 

「前にキャラ変わった時はそうだったけど…素だとは思わなくて…」

 

あぁ…確かにそんなこともあったな。

前に明石の薬かなんかで皆のキャラが変わった時に翔鶴が今みたいな感じだったな。

 

確かにあの瑞鶴が全力で逃げ出してたもんなあ…

 

「……ごめんなさい…瑞鶴」

俺に怒られて少ししょんぼりする翔鶴。

 

「…翔鶴姉…私こそごめん…」

 

 

 

 

 

「……どんな空気やねん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ…そうだ!これ、遠征の報告ね!遅くなってごめんなさい」

「……翔鶴姉」

 

「何かしら?」

 

「わ、」

 

「「わ?」」

 

「私だって…提督…いえ!旦那さんの事…愛してるからッ!!」

チュッ…と投げキッス……してから顔を真っ赤にしてうずくまる瑞鶴。

慣れないことをするから……

 

「…おうふ…」

 

「な…なんですって!?」

 

「私だって負けないもん!ねー!あなたー♡しゅきー!しゅきー!」

 

「…瑞鶴ッ!!あなた絶対最初から見てたでしょう!!」

 

「そりゃそーよ!あんな空気で入れる訳ないでしょ!?」

 

「な、なら…怖がってたのは…」

 

「甘いわ!翔鶴姉!!……それもテクニック…よ…」

 

 

 

「「うがーーーっ!!」」

 

 

始まる姉妹大乱闘。

瑞鶴も加賀以外と取っ組み合いなんてするんだねえ…なんてお茶を飲みながら見守る救。

 

あれか?

「私の為に争わないで!!」ってやつか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……良いドロップキックしてんじゃん…瑞鶴…」

 

「翔鶴姉こそ…すごいアイアンクローだったわよ」

 

 

「…プロレスかな?」

 

 

ガッチリと握手を交わしてから解散する馬鹿姉妹。

 

 

「………って!瑞鶴うう!報告書おおおおお!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…疲れたよおう」

 

「あら?お疲れですか?なら寝ます?一緒に♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「目の前でジーッと見つめられたら寝れないよ」

 

 

 

 

「お気になさらず♡」

 

 

いや…お前が言うなや…と思いながら眠りに落ちる提督だった。

 

 

 

 

 

 





さーせん
ウチの所属の翔鶴はこんなんです。
ヤベーヤツランキングがあったら上位に食い込みます。



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259話 翔鶴と1日夫婦 ②

「旦那様あ〜起きてくださーい!朝ご飯が出来ましたあ!」

 

「おはよう…翔鶴」

 

「朝ごはんにしますか?それとも…わ・た・し?」

 

「…とりあえず顔洗ってきます」

 

 

 

 

あの真面目な翔鶴がねえ…

一晩経った後ですらそう思う……。

 

てか…ずっと見つめられてたしなあ。

というか…抱き締められてた気がする。

良い匂いだった……。

 

 

 

瑞鶴と格闘してた時もそうだけども…

意外とあのギャップが良いなと思う自分が居る。

てか瑞鶴も可愛かった。

…おや?背中に寒気が走ったぞ?

 

 

 

 

出会った頃は…何というか…

硬いイメージがあった。生き方も考え方もそう。

責務として…俺についてくる、そんな感じ。

いつからかは…打ち解けたと思ってたけど…そこまで思われてたんだなあ…。

 

 

 

…指輪渡そうかな……先に。

 

 

 

 

 

あ、おかえりなさい♡と迎えてくれる翔鶴。

 

「で?どちらにしますか?朝ごはん?それとも私に「翔鶴」

 

「…はーい♡私ですねー…って」

「え?」

「わたし?」

 

「いえす」

 

「わ…わたし…」

 

 

え?

聞き間違いでしょうか?

今…朝ごはんにしますか?私にしますか?と言って…顔を洗ってくるねと流されたので終わったタイミングで聞き直したのですが今旦那様は翔鶴とはっきり言った気がします、はい。私はあれでしょうか?拗らせすぎて幻聴が聞こえたのでしょうか?謎は深まりますのでもう一度聞いてみましょうか

「私ってのは…翔鶴ですよね?」

「もちろん君だ」

「…はぁ…なるほど…」

聞き間違いじゃなかったぁあ!!間違いなく私だったぁぁあ!!え?朝からですか?朝から…やっちゃうんですか?

いえ、私は全然良い…ハッ…!?朝ご飯作る時に汗を少しでもかいた可能性が…ッ 

ここはお風呂にはあるべきだと思いますが…ハッ!まさか…まさかぁ!2人でお風呂に…?大胆すぎます…大胆すぎます!!こんな朝から…2人でお風呂で濃厚な……『翔鶴…良いだろう?』『お待ち下さい…旦那様ぁ〜』なんてやったりするのでしょうかぁ!?!?あーーー!旦那様ぁぁい!!

 

ちらっと救の方を見る翔鶴。

 

「ここで…でも良いかなあ」

 

え…ここでってのは…今すぐここで致すんですね!?

お風呂なんか要らねえ!と…そう仰るんですねえ?分かりました…うへへ…この翔鶴…きっとやってみせます…五航戦の誇りに賭けて…戦艦だろうが一航戦だろうが…負けてたまるものですかッ!!え?弩級戦艦?…胸じゃないんですよ!大切なのは!!大丈夫!そこは別のでカバーしますからぁぁあ

 

「…それが旦那様のお望みなら…」

スルスルと服を脱ぎだす翔鶴。

 

「え?翔鶴さん?ちょっと…?」

あたふたと目を隠したりする救。

 

「さあ!お召し上がれッ!」

両手を広げて……oh………

 

 

「ふ、服を着てくれええ」

 

 

「…?」

 

 

 

説明に5分くらいかかりました。

翔鶴にするの意味は…指輪を渡したかった訳で…

いや…食べて良いなら食べたいさ。

終身まで皆に捧げる覚悟もある。

だけれとも…その線を越えるのはまだ先だ。

 

「…やっと渡せるな」

「ご飯前ですまない。受け取ってくれるか?」

 

「……指輪」

 

「あぁ…夫婦で朝ごはんを食べないか?」

 

「………はい」

ぽろぽろと、涙をこぼす翔鶴。

 

「翔鶴?」

 

「私にとって…提督は全てなんです」

 

「以前は…生まれてきた意味も…死ぬ意味も」

 

「あなたを守る為に生まれて」

「あなたの為に死ぬ」

 

「それが…五航戦…いえ、西波島航空戦隊の翔鶴なのです」

 

「それだけで十分だと思ってた…筈なんです」

「でも…愛されたいと思ってしまったんです」

 

「その気持ちは日々大きくなって……何年もお慕いしておりました…ずっと…ずっと」

「何度も私には魅力が無いのかと思ってました。妹に負けて…嫉妬もしました。あなたの目に写りたくて…無茶もしました」

 

 

「生まれてきた意味も…生きる意味も、死ぬ意味も変わりました」

 

 

「あなたを守る為に生まれて…」

「あなたと共に歩んで…」

「あなたと共に死にたい」

そう思うようになったんです…

 

 

「現に私はあなたに抱かれたいです」

「あなたに指輪を差し出されて……思考が止まるくらいに…幸せなんです」

 

 

 

 

 

 

「翔鶴…」

お前本当にさっきまでと同一人物か?

「俺は…お前を見ていた。秘書艦が伸びて残念そうにするのも、ずっと隣に来ようとするのも…守ってくれるのも…」

 

「愛してるとも」

「いや…ここまで愛してくれる君がいるのが幸せなんだ」

「だから…もっと隣で幸せと明日を分かち合いたい」

 

 

「喜んでお受けします」

 

涙ぐみながら…

それでも笑顔で俺にそう言った翔鶴。

 

ずるいなあ…その表情…。

ドキッとするくらい可愛い。

 

 

 

 

 

たった数グラムに満たない程の銀細工。

他の人は…その重みがすごいとか…

指輪の感じが良いとか…慣れてきたときに指についた跡が心地いいとか…言うけれども……

 

 

その通りだった。

この数グラムにも満たないものに私の今の幸せがこんなにも詰まっていて…

この左手に伝わる重さは…

こんなにも私に愛の実感をくれる。

 

 

 

 

 

 

「……」

そのキスも…意味が変わる。

 

誓います。

ずっと…あなたと共に…

 

 

 

 

 

 

「はぁぁああ♡これで私も…嫁…♡」

「旦那様ぁー!私は幸せですううう」

「旦那様ぁぁあ!好き!好きい!だいしゅきー!!」

 

「俺もだいしゅきー!!」

 

 

「さあ!朝ご飯が冷めますよ?」

 

「急に元に戻んなや…頑張ったんだぞ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆に見送られてから街へ出た。

 

街では全開でベタベタ甘えてくる翔鶴。

 

ありふれたデートもその指輪のおかげで少し変わる。

繋ぐ手はいつもより強く握られて…

歩くスピードは少し遅い。

 

いつもの一緒の景色や場所なのに…

 

いつもよりもドキドキと胸が高鳴って…

食べるものすら…滅多に食べない高級品のように感じる

ううん…味よりも、あなたがそばに居る事が嬉しすぎてわかんない。

 

心なんて要るか?と思った事もある。

でも…今は思う。

 

こんなに素晴らしいんだ…って。

 

 

翔鶴はクスッと笑う。

その横顔を見ながら…高鳴る胸に手を当てて…

 

「?ん?どした?」

 

「いいえ…」

「ただ…」

 

「ただ?」

 

「幸せなんです…愛しています♡旦那様」

 

「そうか…幸せなら俺も幸せだ!愛してるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私ですね?」

 

「うん?」

 

「桟橋や海から見る鎮守府が1番好きなんです」

 

「ほー…なんで?」

 

「ここは…私が生まれたところで……」

「私が帰る場所で…」

「私を待つ人達が居る所で…」

 

「あんなに小さかったところが、ボロボロだったところが…こんなに大きくなって…沢山のメンバーで溢れて」

 

「それを見て行くのが…堪らなく幸せに感じるんです」

 

ピトッ…と肩に顔を預けてくる翔鶴。

「…この幸せをくれて…ありがとうございます」

 

「ほんと…ギャップだらけだよなあ…君は」

「可愛いなあ」

 

「…ありがとうございます♪旦那様♡」

 

 

 

 

 

 

「はい…これを」

翔鶴は小さな箱を差し出した。

 

「開けて良い?」

 

「はい!」

 

中には…羽の裏ボタン。

「鶴の羽?」

 

「はい!」

 

「その羽がきっとあなたを守ります」

 

「たくさん無茶して…危ない目に突っ込む旦那様へ…恩返しできる羽はないので…それで」

 

「ありがとう…」

 

 

「あ!瑞鶴の鶴も鶴ですけど…私ですからね?翔鶴ですからね!?」

 

「お、おう…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「旦那様ぁあ!!」

「好きですー!大好きですー!!」

 

 

 

「あれ?そのキャラで行くの!?」

 

「はい!やっぱり愛してると伝えないと…ね!」

 

それからと言うもの…翔鶴は素で行動するようになった。

 






…こう言うキャラもええよね……
他の犠牲者は誰になるかな?ヤベーヤツ化されるのは…



少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。


感想などおまちしてます!
お気軽にお願いします!


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260話 @@と1日夫婦 ① ひとりにしないで


シリアスが多い?
いいえ?
日常ですよ?
4部はできるだけほのぼの日常編ですよ?








ここは……

 

 

 

あれ…?

誰も居ない…

 

私は…えと…

 

 

 

 

 

目が覚めたら…シンと静まり返った部屋だった。

 

 

どうしたのー?お寝坊さん?

と、笑いかけてくれる妹。

 

寝過ごしちゃった…なんて笑いながら呟いた。

 

 

 

 

 

 

おかしい…。

 

 

姉妹以外に人の気配も無く…

静まり返った館内。

 

誰か居ないかな?とドアを開けて部屋から外を覗く。

 

誰も居ない。

 

考えても仕方ないかと考えて…妹に話し掛けようと振り返った。

 

 

 

 

 

ゾッとした。

 

 

 

 

 

さっきまでの部屋は無く…妹も居らずの寂れた部屋だった。

 

家具もそんなに無く、机と椅子とがポツンとあって…

埃だらけなベッドがあるだけの寂しい部屋。

 

 

 

どうした…?え?

 

 

何で?

 

 

 

 

 

皆は?

 

 

 

 

恐る恐る歩く。

 

 

 

 

廊下は…

色んな子とすれ違った。

皆…にこやかに話しかけてくれて…

 

でも誰も居ない…。

割れた窓ガラスが…冷たい風を運んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

食堂……

皆で楽しくご飯を食べたところ…。

###さんが…毎日たくさん美味しい料理を作ってくれた…。

 

甘味処##

美味しいあんみつ…があったはず

##さんはいつも微笑ましそうに食べる私や…##さんを見ていた。

 

 

娯楽室

皆で語りながら色々やった…。

夜遅くまで遊んで…こらって怒られたっけ…

 

 

 

 

 

お風呂…

傷ついた時も…疲れた時もすぐに疲れも飛んだ。

ゆっくり浸かりながら話すのが好きだった。

 

 

部屋を覗く度に見える皆の姿も…

瞬きをした後には寂れた廃墟に戻ってしまう…

 

 

 

 

 

 

自然と足が向かう先があった…

 

執務室……

 

 

##さんが居て…

眼鏡の##さんと…######さんが…

 

 

 

 

 

ガチャリと開けた先には…

 

 

 

嘘のように綺麗な執務室…

 

かんざ……##さん!

 

 

ん?どうした?

…##さんが居た。

他の2人や妹も居た。

 

 

##さん…皆が居ないんです…知りませんか?

名前も…思い出せなくて…私…。

 

何か部屋もめちゃくちゃで…

よくわからなくて…

 

 

 

 

 

……そうか…

君は無事なんだな。

 

 

 

 

 

 

え?

どう言う意味ですか?

 

 

 

 

 

 

 

なあ@@…

前を向いて生きて欲しい…

 

 

 

 

 

 

 

 

え?何ですか?それ…

それじゃあ…まるで……皆が……

 

 

 

 

 

 

ハッとした…

 

 

 

 

そうだ…

そうだ…

 

あの時…攻撃を受けて……あの人は……

 

 

 

 

 

 

 

 

死んでしまったんだ

 

 

仲間も…

姉妹も…

何もかも

 

 

 

 

その瞬間…執務室は大きな穴の空いた部屋に戻った。

 

本も無惨に焼き飛ばされて…雨に曝されて読めるものはなく、机も半分以上が抉り取られて…

かすかに残ったカーペットや壁には血の跡…

 

足下には…彼の勲章が落ちていた。

 

 

 

そうだ…

敵の強襲を受けて…真っ先に執務室が爆発したんだ…。

提督は死んで…

皆も……

 

数名しか生き残らなくて…皆…

 

 

 

 

 

 

崩れ落ちる。

 

 

 

もう会えない

愛してもらえない

触れられない

抱き締めてもらえない

愛してると言ってもらえない

一緒に歩くことも

寝ることも

ご飯を食べることも

 

 

泣いた…とにかく泣いた。

 

 

 

 

 

顔を上げた…

 

誰かに呼ばれた気がして

 

 

 

 

すると…

 

 

 

 

 

 

 

「愛してる」

 

 

 

 

 

 

 

 

その一言だけ言って彼は消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嫌だ…

行かないで!

1人にしないで!!

連れて行って!

 

 

と言ってもその言葉は…

大きく海が見えるように砲撃で開いた壁の穴に吸い込まれて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いっそ死んでしまおう…

なら追いかけられるかな?

皆に会えるかなあ…?

 

 

 

 

 

 

艤装を自分に突きつける…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

できない…ッ!

 

だって…私は生きなければならない。

それが残された者の進む道…

なのに…なのに…

それがこんなにも苦しいなんて…

 

 

私は…ッ

私はあ!!

 

 

 

泣けども叫べども

私に返事をくれる人は居なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めた。

酷い光景だった、吐き気がものすごい。

そのまま吐きに行く。

口を濯いで見上げた鏡には…やつれた私の姿…。

 

 

 

涙が止まらなかった。

何で…?なんて考える前に走った。

 

はぁ

はぁ

息が切れる。

 

転んだ…

 

知らない

 

 

ただ走った。

 

 

 

誰も居ない…

 

 

 

何で?なんで居ないの?

ねえ!

 

ねえ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みつけたドアをぶち破った。

 

 

 

そこは執務室…。

 

 

……誰も居なかった…。

 

 

 

綺麗な部屋は…明かりだけがついていて…

 

 

 

 

 

涙が……

夢じゃないの…?

 

「あ…あぁ……ああああ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「どうした?」

「おおう?!ドアがぁ!?」

 

 

後ろから声が聞こえた。

 

提督さんなんだろう…。

 

 

 

私は振り返る事なく言った。

 

 

「…うっ…ぐすっ…行かないで…」

「ひとりにッ…ぐす……しないで…」

「消えないでッ!!」

 

私は叫んだ。

 

「おい?どうした?」

 

 

 

例え私に殴られようとも…蹴られようとも…妹を守りながら…

それでも私の手を取ると言ってくれたあなた。

妹を暗闇から救い出して…私にすら手を取る!生きろ!来い!と言ってくれたあなた…

 

 

 

振り返ったら消えちゃうんでしょう?

見たら…また一言だけ告げて消えちゃうんでしょう?

 

消えちゃうなら…

愛してるなんて言わないで!

 

耐えられない…

心がある事が耐えられない。

あの時のように…無心の鉄になれたら……

そんなことなら心なんていらないのに!

でも…

忘れることなんかできない…

絶対に無理だ!!

 

だって…そうするには

愛しすぎて居るから…

 

 

なら…このままでいいから…振り返らないから…消えないで

私を独りにしないでッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぎゅっと…抱き締められた。

 

「どうした??悪い夢を見たのか?」

肩のところに顔がチラリと見えた…

 

 

「俺はここに居るぞ?」

 

「………」

 

「ん?」

 

 

 

バクンバクンと鼓動がバカデカく聴こえる。

やっぱりダメだ…

あなたを見られないなんて耐えられない。

 

 

 

 

 

振り返って…

ぎゅっと目を瞑る。

 

 

 

 

 

 

 

恐る恐る目を開けた…。

せめて最後なら…焼き付けよう。

愛してると…伝えよう。

 

 

 

 

見上げても彼は消えてなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「て…提督さん…?」

 

「おう?」

 

優しい笑顔が…

私の心をいっぱいにした。

 

「うわぁぁぁん!!提督さん!提督さん!!提督さん!!!」

 

壊れそうなくらい抱き着いた。

バランスを崩して倒れた。

 

 

「うわ!?##?!どうした!?」

 

 

「置いていかないで!お願いッ!!提督さん!いかないで提督さんッ!!ひとりにしないで!私の提督さぁん!!!」

 

ぽたぽたと涙が彼に落ちて行く。

泣いた。

彼の胸で泣いた。

 

「……辛い夢を見たのか?」

 

こくこくと頷いた。

 

「俺が居なくなったのか?」

 

また頷いた。

 

「俺は居るぞ…」

よしよし…と、頭を撫でてくれた。

 

 

「居なくならないで…」

「…ひとりにしないで」

 

 

「約束するよ」

 

 

 

それでも彼女は泣き止まなかった。

 

 

 

 

 

 

「凄い音がしたけど………あれ?」

 

「神州丸…瑞鳳…」

 

「あらあら…大丈夫ですか?」

 

「…」

妹も心配そうに来た。

 

 

 

俺はその体勢のままずっと彼女の側にいた。

 

寒さも身を刺す…冬の事だった。

 





シリアスなのかなあ…?


さてこの子は誰でしょう?


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261話 @@と1日夫婦 ② その名前を呼んでくれるあなた

「艦隊計画の影響が強いのでしょう」

明石はそう言った。

心の傷までは入渠でも治せませんから…と。

 

 

彼女の心は闇から光へと進んだ。

いわばダークサイドから抜け出したのだ。

 

 

だからと言って彼女がやらされた事が消える訳ではない。

確かに記憶に眠るもの

手にかけた記憶や感触は消えないのだ。

それは少しずつ…光が強くなる程に…どんどんと影を広げて行く。

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁッ!ふぅーッ!ふう…」

夜中に飛び起きる。

大丈夫…大丈夫と優しく抱き締めてくれる妹…。

 

「ご…ごめん…起こしたね」

 

どんどんとやつれる@@。

 

「お姉ちゃん…私が居るよ…」

 

「うん…うん…」

 

 

 

 

 

 

   ひとり

妹も居るはずなのに…

夢の中ではひとり…。

 

 

 

どうしよう…

 

そして…

ある日の夢は違った…。

 

誰が居る!ひとりじゃない!

 

 

 

 

 

 

なんでまだ生きてる?

 

 

 

え…

あなたは…

あなた達は…私が…

 

 

 

そう、お前が手を掛けた奴達だ。

 

なぜお前は生きている?

罪から目を逸らして…生きている?

 

 

そんな!私は…

 

 

なんとも思わないのか?

お前の足下を見てみろ…

 

 

 

言われて下を見る…。

 

 

ヒッ…

そこには…たくさんの死に顔があった。

それは手を伸ばして私の方に恨言を吐く。

 

一緒に死のうよ

ずるいよ…自分だけ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁぁぁあッ!!」

飛び起きた。

 

「お姉ちゃん!?」

妹が抱き締めてくれる。

でも寒い…

もうダメだ…私は…私は…

もう限界だ…

 

 

「行かなくちゃ…」

 

「え?」

 

「皆が待ってる…逝かなくちゃ」

 

「ダメだよ!お姉ちゃんッ!!」

 

 

 

「誰かッ!!誰かぁあ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鬼怒が来た。

 

 

「寝てるとこごめんなさい!お願い…提督…お姉ちゃんを助けて」

 

「少しずつ魘されるようになって…それで…」

「もう私の声も届かないッ!提督しか居ない!」

 

 

「き、鬼怒!?」

 

「大好きな提督の声しか聞こえない!」

 

あなたの声なら届くと言う鬼怒。

自責の念が大きくなって…このままじゃお姉ちゃんが潰されて連れて行かれちゃうと涙する妹に…

救ははっきりと言う。

 

 

 

 

「…任せろ鬼怒」

「俺はお前達の手を取ると言っただろう?」

 

「由良は?」

 

「今は明石さんが眠らせた…でももう…このままじゃ…」

 

 

 

「わかった」

俺は机からゴソゴソとあるものを取り出して部屋に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

酷くうなされてるようだった。

 

 

「バイタルは…低下してますね」

と、明石が言う。

 

心は体に出る。

このままじゃ…廃人同然になります…と。

そんなことさせてたまるか。

 

 

 

「お姉ちゃん…助かる?」

鬼怒が涙ぐんで聞いてくる。

 

 

そっと頬に触れる。

 

「…何度でも…何度でも引っ張り上げるさ」

「…お前が重いなら…一緒に下に行って…押し上げるさ」

 

 

 

 

自責の念…

操られ…思いのままにされていた。

仲間を殺すのも何もかも…道具として利用されていた。

彼女の意思ではないが、彼女を蝕むのには十分すぎる理由だったのだ。

私が生き残って幸せになっているという事を思うには…。

 

そして…逝かなくちゃ…という言葉の意味も…。

 

 

きっと最初は小さな悪魔だったのだろう…。

鎮守府が崩壊する夢…打ち捨てられる夢…俺が死ぬ夢。

 

その夢自体ただの悪夢だ。

でも心は結びつけてしまう。

また私が生き残ってしまったとー…。

楽観的に仕方ないと割り切れない程の過去は彼女の心を鋼鉄の荊で雁字搦めにして…冷たく傷痕を残す。

 

だから…ひとりなのだ

ひとりで背負おうとしてるのだ。

 

違う…

俺は…お前の手を取ったんだ…

 

 

 

俺は目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前もこっちに来いよ…

それが責任だろう?

 

 

嫌…私は…

みんなと…

 

 

 

殺された痛み…

私達が生きられた時間…

お前に奪われた時間…!!

 

貴様はわかってる筈だッ!!

逝こう…

 

 

手を出してくる……亡霊達。

 

 

私は…

そうだね…私のせいだもん…仕方ない…よね

と手を伸ばした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだ…

自分の名前も思い出せないお前には…ここしかない

 

 

 

そうだ…私はもう…誰の名前も思い出せない…

手にかけたあなた達も…自分も大切な人も…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「@@」

名前を呼んでる?

誰?

 

「ゆ…@」

 

 

 

え…

 

 

 

「ゆら」

 

 

 

 

 

「由良…」

わ、私の名前?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガシッと私の手を掴んだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督さんが。

 

 

 

 

 

 

「由良…俺が呼ぶ、思い出させる」

「その罪も…俺が背負おう」

 

 

 

 

 

 

 

 

……なに?

 

「俺がそれを背負おうと言ったんだ」

 

 

「…提督さん?」

嘘だ…嘘だ。

何で提督さんがここに!??

 

 

 

 

誰だお前は…!?

 

 

「神崎 救…。西波島鎮守府の提督で…由良の…」

 

 

「私の…?」

 

こいつの?

 

 

「人生を背負う…旦那だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何を言ってる?背負う?コイツの罪はコイツのものだ。

貴様にどうにかできるものではない。

 

 

「…提督さん!やめてください!危ないです!背負うなら私だけでいいんです!」

 

 

 

 

 

 

 

「それくらい…俺に乗せてみろ」

 

 

「え…」

 

 

 

「言った筈だ!手を取るって…お前1人に背負わせたりはしない!」

 

「俺が側にいる」

 

 

 

 

 

ぽたぽたと熱い何かが流れ出た。

 

 

「…甘えてみろ!俺が受け止める」

 

 

 

「……つ…」

 

「つ?」

 

「この暗闇から…つ…連れ出してください…私をひとりにしないでくださいッ!!私を…暗闇から(過去から)光の下に(あなたのところに)連れて行ってください!」

「助けてください!自分勝手な事は分かってます!でも…私は前を向きたいです!お願いします!一緒に…背負ってくれませんか」

 

 

 

 

馬鹿言うなッ!!

貴様には責任があるッ!!

私達を…手にかけた責任が!!

 

 

 

「…果たすさ!!」

彼は言った。

 

「精一杯平和な世を築いてみせる」

「その為に彼女は頑張っている…。決して!!お前達の死を…何も無駄な事になんてしない」

 

「俺は彼女を愛している…だから一緒に背負う」

 

「平和を取り戻して…再びお前達が安寧に眠れるように!」

 

 

 

 

なぜそもそもお前がここに居る?

どうやってきた!!

 

 

 

「コレ」

 

…指輪?

何だそれは…ふざけるな!

 

 

「ふざけてない」

ケッコン指輪…

それは更に艦娘との絆を深める指輪。

強化を目的としたアイテム。

 

より深い絆とは?

心と心で繋がる事。

指輪が2人を更なる場所へと導く。

 

 

 

指輪は光る。

眩しいほどに暖かく…

 

「誓おう…。俺は…由良の罪も一緒に背負おう」

「見ていてくれ…必ず平和を取り戻してみせる」

「道に逸れた時は…俺を連れて行ってくれて構わない」

 

「彼女は…前に進み出したんだ」

「都合が良いと思うだろう…でも見ていて欲しい」

 

「お前達の死を無駄にはしない…この由良と俺…そして皆で絶対に成し遂げてみせる」

 

 

 

「お前達も目指した…平和な明日を掴んで見せるッ!!」

 

 

 

 

 

提督さんは私の方を向く

 

「由良…お前の罪を…俺にも背負わせて欲しい」

「…この指輪はその証だ…俺がお前を愛して…一緒に歩んで行く証だ」

 

「提督さん…」

 

この手を出して良いのかな…

私は……それでもその言葉に縋りたい。

 

 

 

「約束する」

私を壊して…

 

「君の隣に居る」

私を連れ出して!!

 

「君を守ってみせる」

私をその温かな光で包んで!!

私もあなたを守るから…!今度こそ守り抜いてみせるから!

 

 

「はい」

 

 

由良は左手を震えながら差し出した。

救はその薬指に指輪を入れる。

 

そして……

「由良…愛してる」

と、彼女の名前を呼んで抱き寄せる。

 

「ん……」

初めてのキスは涙の味がした。

 

「わ、私も……愛しています」

 

 

 

「わ、私は!!きっとやってみせます!皆の分まで…私がッ…皆が夢見た平和な世界を…取り戻して…!!」

「皆が安心できるようにしてみせるから!!」

 

由良は叫んだ。

 

「挫けない…2人なら…みんなとならやれるからあ!!」

「お願い…見てて…それだけが罪滅ぼしになるとは言わない…でも…皆の事を忘れないから!皆の思いも何もかも背負って連れて行くから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー…頼んだよ

 

と、聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

パリン…と

その世界が破れた。

 

私の心の中の世界…

後悔と過去に押し潰されそうな私が生み出した世界。

 

本当は…前向きにねと皆が言ってくれてるのは知っている。

それでも思わずには居られなかった。

 

『私が生きているから…』と…。

 

 

でもその壁すらあの人は超えてきた…。

私の罪も一緒に背負うと…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「て…ていとくさん?鬼怒?」

 

「お姉ちゃん…良かった…」

 

「バイタル…持ち直しました…一安心です。お疲れ様です…提督」

 

 

提督はずっと私の左手を握って目を閉じていたという。

私の為にずっと…ずっと

そして…私をあの暗い所から引き上げてくれた…ううん

暗い場所に一緒に落ちて…押し上げてくれた…。

 

 

 

 

 

 

その日からうなされる事は無くなった…。

 

 

 

 

 

 

 

261話 由良と1日夫婦ー 

 

 

 

 





はい、由良でした。
ローソンコラボでもね活躍しましたね。

続きますよ!


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262話 由良と1日夫婦 ③ 暖かさをありがとう

幸せとは何だろう?

 

 

 

あれから本当に悪夢を見なくなった。

 

 

 

そして…

 

やばい…。

この人への想いが…本当に大きくなって行く。

悶えるくらいに。

 

「今日は…甘えて良いですか?」

 

「今日に限らずいつでも!」

 

 

 

 

「良いのかな…私が…こんな…」

 

 

「いいとも…ほら、行こう!由良」

 

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

提督さんとお出掛けをする。

 

街は冬景色になって澄んだ景色は遠くまで綺麗に見渡せる。

吐く息は白くなって風に乗る。

私が今もここに生きていることを実感させてくれる…

 

 

「寒いですね」

 

「そうだなあ…寒いなあ…」

なら…と手を繋いでくれた。

コレで少しはあったかいだろう?なんて言ってくれる。

あなたの握ってくれる手の温もりが…嬉しくて…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「由良…お昼はオムライス…食べない?」

 

「はい♡」

 

 

ドキドキする…。

こんなに胸がドキドキするものなの?好きな人と2人きりって…。

 

 

一つのオムライスを2人で食べます。

とろっとろの卵が乗ったオムライスは…とても美味しくて…。

鬼怒に怒られそうなほどに贅沢で…幸せなお昼ご飯。

 

「提督さん?あーん」

 

「あーん」

「うん、余計に美味しい」

 

「…」

 

「ん?」

 

「わたしも……」

 

「はい、あーん」

と、提督さんと濃密な時間を過ごしています。

 

 

2人で手を繋ぎながら…空いた左手を空にかざして見ます。

太陽にキラッと反射する指輪は…とても綺麗で…。

 

 

 

本当に幸せなんだなと強く思います。

 

 

 

 

 

「危ないよ…」

なんて肩を寄せてくれて車が来たら私を守ろうとしてくれる。

「俺がこっち歩くね」

なんて歩くところを代わりながら。

 

「…あ……」

前に雑誌で見た…コート。

鬼怒も似合うよー?なんて言ってくれた…。

 

 

 

 

え?50000円!?

このコートが!?嘘?!

思わず二度見…からの三度見を行う。

はい、値段は変わりませんね…雑誌でも値段は見てなかったなあ…

 

「どうですか?お客様…そちら人気でラスト一着です」

 

「え?!あ…あの…」

「もし…買わなければあちらのお客様が…お買い求めしたいそうで……」

 

 

確か…私の財布の中身は……足りない…

諦めるしかないかなあ…なんて思って居た。

 

「どうぞ…」

 

 

「良いですか?」

 

「はい。奥さんの方が似合うと思うので…」

 

その夫婦は…にこやかに帰っていった。

 

 

 

少し気まずそうな提督さん。

 

 

「て、提督さん?」

 

「ごめん…」

 

「え…いや!良いんです!私にはなかなか似合わないですよ!これも運です!仕方ないですよ」

 

本当は…欲しかったけど…

似合ってると言ってもらいたかったけど…仕方ない。

 

 

「いや…うん」

「鬼怒に聞いてたんだ…」

「だから…」

 

 

 

 

 

「ご予約の神崎様ですね?こちらお取り置きしていた分です」

 

「…買ってたんだ…うん。だから由良が買ったら…危なかった」

 

 

 

「いつの間に…」

 

「いや、本当は前もって渡そうと思ってたんだけど…取りに来られなくて」

 

 

私に付き添ってたから…?

後で他の人にお使い頼まなかったんですね?って聞いたら…

君への贈り物だからね。自分でやんなきゃ!

って言ってました…。

 

 

 

 

 

一気に明るくなる由良。

 

 

「わ、私に?」

 

「うん」

 

「着てもいいですか?!」

 

「うん」

 

コートを脱いで…店員に促されて、新しいコートに袖を通す…

 

 

「どう…ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凄く似合ってる…」

 

 

「えへへ…ありがとうございます」

 

 

欲しかった言葉…

あったかいのはコートだけじゃなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰り道…

ふと後ろから…こっちに来ないの?と声が聞こえた。

 

でも…

「こっち」って提督さんが私の手を引っ張ってくれた。

 

 

「確かにまだ君の中に重く残ってると思う…」

「でも…少しずつ前を向こう」

 

「俺が君を守るから」

 

 

 

 

 

「提督さん…」

嬉しかった。

この人について来て良かった…。

手を取ってくれた人があなたで良かった…。

 

 

 

「愛してます…私…私!今度こそ愛するあなたを守り切ってみせますから!」

 

言葉にならない思いは…涙となって溢れる。

私はそれ以上の言葉が思いつかなくて…

 

彼に飛び込んだ。

 

 

今度こそ…

今度こそ…!!皆…見ててください。

これで私の罪が許される訳ではないけれども…

それでも私はこの命で今の大切な人を守って行きたい。

 

 

だから見てて…

 

見守ってて…

 

きっとやり遂げるから…。

 

 

 

 

 

「ゆっくり帰ろうか…」

 

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の手を取ってくれた愛しい人。

私と一緒に深い闇に降りて来てくれたあなた。

ありがとう…。

 

 

これからもずっと…

あなたのそばに居させてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん!元気そうで良かった!」

 

「鬼怒。心配かけてごめんね?」

 

「ううん!大丈夫!」

「それより……」

 

「指輪もコートも羨ましいなァ…」

 

「えへへ…」

 

「むー!幸せそうな顔見せつけちゃってー!ズルイぞー!」

「飯!飯とデザートおごれー!!」

 

姉妹でにこやかにご飯に向かう姿があったとか…。

 

 

 

 

「…鬼怒?そろそろ容赦して欲しいな…」

 

「お姉ちゃんの財布を空にしてやるううううう」

 

 

 

 





やっぱり幸せになって欲しい…!!
幸せになるべきだ!
幸せにしよう!





はい、少しでもお楽しみ頂けたら幸いです!



感想などお待ちしています!!
お気軽に…よろしくお願いします!!


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263話 れっつごーとぅー猛武鎮守府 

いらっしゃい(お帰りなさい)♪救君」

 

 

「んんん?ルビがおかしくない?」

 

「なんとなくだよ〜。でもまあ…私達…け…け、ケッコンしてるし?」

 

 

 

 

今日は猛武鎮守府に来ています。

特に何か用事がある…訳でもなくだけどね。

 

「お…英雄殿(旦那さん)が来られたか」

 

「ん?武蔵さん?ルビおかしくない?」

 

「そうか?」

 

 

 

 

 

「…神崎提督よ……」

「麗は前回のアレで更にお前に惚れなおしたとか言ってたぞ…」

「本当にゾッコンなんだからな?泣かせるなよ?」

 

「今日だって物凄いはしゃぎようでな?」

「そっちから連絡を貰った時なんか…」

 

 

 

『ねえ麗ちゃん。今度の土曜日そっちに遊びに行っていい?』

 

『…え?!どうしたの?!急に。う、嬉しいけど』

 

『何か君に会いたくて』

 

 

『………』

 

 

 

 

 

 

おい!?麗!?どうした?!

気絶してる…だと!?

攻撃か!?敵襲か!?

 

え?何?神崎提督からの電話?

 

 

奴は…超能力者なのか?

どんな言葉を掛けたら立ったまま気絶させられるんだ!?!?

 

 

「…あの後に大掃除と近海掃討作戦やったんだぞ」

「万一にでも怪我させたら大変だーって…」

 

 

「どうりで何にも遭わなかった訳か…ごめん…」

 

「まあ…神崎提督と居る時の麗は本当に幸せそうなんだ…だから今日は側にいてやってくれ」

「どうせ泊まりなんだろ?」

 

 

「え?」

 

「え?」

「麗は泊まりだと思ってるぞ」

 

 

「おおぅ…!?」

 

 

 

 

 

 

「で?やることはやったの?2人とも…」

 

「まだ!!」

 

ぐっと親指を立ててくる武蔵。

やめんかい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えへへ…さっそく案内するね?」

ピトリと隣に引っ付いてくる麗。

「幸せだな〜」なんて言っちゃって。

 

「…」

麗ちゃんとは毎日会える訳ではない。

そこそこ離れてるから…

 

そして何より、麗が相当に俺の事を好きなのを皆が知ってる。

人という括りなら麗ちゃんに勝てる奴は居ないって認めてるくらいだからね。

だから2人で出掛けたり、来てもらった時に2人で過ごすのを皆は何も言わない。

 

 

 

「私…腕によりをかけてお料理するね!」

 

「泊まって行って欲しいな…」

 

なんて言われたら断れない。

 

 

 

 

 

 

 

廊下を曲がろうとした時だっだ…。

艦娘達の話が聞こえて来た。

 

 

「…西波島の提督さんが来てるらしいよ」

おっ?噂になってんな…。

 

 

「神崎だっけ?優男なんでしょ?」

 

「ばかっ!そんなこと聞かれたら殺されちゃうよ!?」

は!?殺す?

 

「聞いたんだけど…あの人凄いらしいよ」

 

 

 

 

 

 

「味方の艦娘への折檻も片手でアイアンクローで持ち上げるとか…」

まあ事実かな…

 

「深海棲艦も素手で薙ぎ倒すらしいよ」

!?!?

 

「あの長門と互角以上…いや、赤子のようにフルボッコにしたとか」

ん?

事実とは違うぞ?

 

 

「脚力もヤバいらしい……一瞬で移動してくるらしい」

そんな事はないぞう?!

 

「精神攻撃もしてくるらしいよお!」

「魔法も使うらしくて…氷系の魔法使いらしいよ」

それは場を凍りつかせるだけだねえ…

 

「暗殺者を返り討ちにしたとか」

それはある意味事実…

 

「その後その暗殺者を……して手籠にしたそうよ!」

いや…違うッ!違うぞ!?

 

「えええ!?」

 

 

 

「しかも…電話越しに相手を倒すらしいよ…」

 

 

「麗ちゃん…立ったまま気絶してたって…」

さっき聞いたな…

 

 

 

 

 

 

 

その時、後ろから話しかけられた。

 

「あ!あなたはッ!!」

 

「ん?」

 

「以前は失礼致しましたッ!!」

「お元気そうで何よりですッ!!」

 

深々と頭を下げるのは以前の天龍と麻耶。

あの一件以来、ここで扱かれてるらしい。

 

 

コソコソ話してた艦娘達も出てきて挨拶をしてくれた。

かなりバツが悪そうだ。

 

 

「おおー…元気そうだなあ!そんなに畏まらなくてもいいのに」

 

「いえ!先の大戦での英雄様に…私達はなんと失礼な事を…」

 

「は?」

 

 

 

 

 

「おーー!アンタが英雄さんかー!」

 

「アタシはリシュリュー。よろしく!」

 

右手を差し出しれて握手で返す。

 

「お、おう、よろしく」

 

 

「ふーーん?アンタがねぇ……」

と言いながら色んな角度から俺を見てくるリシュリュー。

ジロジロと見られるのは少し恥ずかしい。

 

 

「アレだろ?アンタ…人なのに艤装を展開して」

 

深海棲艦をちぎっては投げちぎっては投げ

死体の山を築き上げて

 

相手の親玉も一撃で粉微塵…いや、跡形もなく消しとばしたんだろう?

 

 

「もはや何なんだ?」

 

一つわかったことがある。

 

俺はこの鎮守府では化け物の扱いらしい。

 

 

 

 

「なんかごめんね…」

 

「いや…面白かった」

「駆逐艦の子とか縮みあがってたなあ…」

 

 

廊下で声かけても

「ひっ…神崎…提督…閣下!!」

とか

「うおー!すげー…その体で長門型をボコボコにするのかー…」

とか

「もう…提督さん1人で事足りませんか?」

とかね。

「ロリコン…」

とかも居たな。

 

 

 

 

ちくしょう…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダーリンは〜麗ちゃんに〜あ〜い〜に〜」

 

「金剛お姉様……落ち着いて…」

 

 

「泊まりだろーなあ………やっちゃうのかなあ?」

 

「何言ってんですか!?お姉様!?」

 

「それはないと思いますよ…」

 

「泊まりデスよ?!相手の庭デース!!くっ…ダーリンッ」

「何も起こらない筈無いデショー!?!?」

 

「私達にだって手を出さないんですから…あの人は」

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

「え?って?」

「お姉様…?」

 

 

「え……」

 

 

 

 

 

「てか…月曜日って…猛武鎮守府と演習試合じゃなかったデース?」

 

 

「……あ……話題変えた!」

 

 

「まあ…金剛は後で尋問にかけるとして……久しぶりに戦うねえ…」

 

「楽しみだなあ」

 

 

 

 

 

 

「……さて金剛…行こうか…」

ズルズルと引きずられて行く金剛。

しかし何故彼女が運ばれて行くか…本人にもよく分かって居ない。

 





特に深い意味はありません!!!



少しでもお楽しみ頂けたら幸いです!


感想などありましたら…ぜひ!
お待ちしてます!


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264話 れっつごーとぅー猛武鎮守府 ②

自己紹介を兼ねて壇上に上がる。

校長先生が使いそうな台に向かってから一言。

 

「えー…当たり前の話ですが、はじめましての方ははじめまして……」

 

「現、海軍の副元帥をしてます…神崎 救と言います」

「最初に言っておきますけど…」

 

 

「長門型をボコボコにしたり、魔法を使ったり、電話越しに相手を気絶させたり、深海棲艦をちぎっては投げ…はしてないからね」

 

 

「え…」

わざとらしく嘘お?みたいな目でこっちを見てくる麗と武蔵。

 

いや…お前らが1番知ってるだろ!?

てかお前らそんなキャラだった?

 

 

「あの…」

と、手を挙げたのは電と響。

この鎮守府でもかなりの強者の一角の駆逐艦だ。

 

「ん?なんだい?」

努めて笑顔で返す救。

 

 

 

「時雨さんや、金剛さんを掴み上げて投げ飛ばしたのを見たのですが…」

 

「………」

メキィ…と救の手元で音がした。

恐らく何かを握りつぶしたのだろう?

 

「見間違いじゃないかな?」

 

 

「島風さんからも逃げ切ってましたよね…」

 

「………」

マジか…

 

 

 

 

 

 

 

「………何が欲しいんだね?電ちゃん響ちゃん?」

 

「「え?」」

 

「何が欲しいんだね?何が望みかな?言ってみ「こらっ!救君っ」

麗ちゃんが止めに入った。

 

「2人を困らせないでよう」

 

 

「ごごごめんなさいなのですううう」

 

「ふ、ふふふるえがとまらないよおお」

 

おい、クソ棒読みやないか!!

お前ら…グルだったのか?!

 

 

 

 

「なっ……あの2人を震え上がらせてるだとォ!?」

武蔵がここぞとばかりに叫ぶ。

 

 

「やっぱり能力隠してたんだ!」

ヒソヒソヒソヒソ。

 

 

 

「………」

震えながら笑いを堪える武蔵と麗。

 

ぐるん…と救の顔が2人を捉えた。

 

この責任は誰がとるの?

確かに彼は口パクでそう言った。

 

 

「「ごめんなさい」」

ちょいちょいと指差す武蔵。

その先には……震える雪風が居た。 

 

 

「ふえ‥ぇ」

 

その手元には…

『ドッキリ大成功!ようこそ猛武鎮守府へ!』のプラカード。

 

 

曰く…。

出て行こうとしたらマジで何かを握り潰して、闇のオーラを纏った救を見て腰を抜かしたらしい。

 

……なんかごめん。

 

 

とまあ、そんな感じで昼食に移行した。

 

 

さすがは元脳筋鎮守府。

あれか?相撲部屋か?

食ったら食っただけ強くなる!ってか!?

 

目の前には超大盛り皿が。

そして、皆がニコニコとコチラを見ている。

 

何だ?食えってか?

西波島の鎮守府の提督の力量を見てやろう…てか?

 

 

 

 

 

 

 

上等だオラァ!やってやんよ!食ってやんよ!

 

 

 

 

「いただきますッ!!」

 

まずは…サラダ…。

シャキシャキ野菜…美味いな。

 

 

唐揚げ……?だよね?これ?

拳くらいの大きさないか??

 

……じゅーしぃー〜。

美味い…

 

白米も…くそう…美味えよ。

 

「……美味い」

 

皆がニッコリした。

 

「そうか!良かったな!間宮!」

 

「?」

 

「今度な公開イベントで間宮の料理を催し物で出すんだ」

「それで味はどうか不安だったんだとよ」

 

「へえ…メインは今の料理か?」

 

「うんにゃ?カレーだが?海軍らしくな」

 

 

「ならカレー出せや!!!」

 

 

「何を言うか!?いきなりメインを出したりするものか!」

 

「ならこの白米はなによ!?」

 

「前菜だろう?!」

 

「十分メインだわ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言うわけでカレーだぞ!!」

 

「だから量!!」

目の前に盛られたのはカレー…推定ご飯1kg

ルー?わかんね…。

 

てか先ほどあれだけ食わせておいてコレかよ…。

 

でも、ここの間宮がクッソ不安そうな目で見てるんだよなあ…。

食うしかないよなあ…

 

「いただきます」

 

…一口食べる。

甘すぎず、辛すぎず子供でも食べられるくらい。

 

野菜もペースト状にしてあるのか?

でもザラつかない感じで良い。

恐らく野菜もさっきのサラダとは違う野菜だな。

 

アサリやイカはそのままか…良いな。

 

 

 

エビフライも…サクサクでくそ…美味しい。

 

「…よく分かったな」

驚いた顔で武蔵が言う。

 

「ウチの駆逐艦や軽巡達もな、野菜を農園作って育ててるんだ」

「無農薬で一生懸命な」

「だから何となくわかった」

 

 

「…ありがとうございます」

と、間宮や他の艦娘達から聞こえた。

 

「…でも提督さん?量多いですよ?無理しないで残しても大丈夫ですからね?」

 

 

「…」

ありがたい言葉だけど、それは罠だ。

見てみろ…残すの?マジ?みたいな顔でみてるやん?他の連中。

 

「間宮さん…皆…舐めてもらっては困るなあ!!」

 

「味わって食べますともッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2分後にその発言に後悔し始めて、時間をかけて食べ切りました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





提督の胃袋はバケモンですな…


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265話 れっつごーとぅー猛武鎮守府 ③

「……」

 

「はい、救君!お待たせ!お夕飯ですよ」

 

「はーい!」

 

「久しぶりに2人きりでも良い?」

なんて聞いてみる。

 

「ん、俺も2人の方が良いかな」

 

 

「…え!?」

「ど、どうしたの?」

 

 

 

 

「……」

「あんな出会いだったけどさ」

 

「いつの間にか君が隣にいてさ…救君!って呼んでくれるようになってさ…いつも、支えてくれて感謝してる」

「…あの時もさ…怖かったんだ、正直ね」

彼が言うのはこの前の…艦娘達の前に立った時の事だろう。

 

確かに有り得ない。

人…が砲撃から何かを守るなんて絶対に有り得ない。

でも、私は何故か応援した。

馬鹿げた話なのに。

 

「君が負けるなって叫んだ声が聞こえてさ…ああ…やれる!って思ったんだ」

 

 

「俺が捕まった時も…命懸けで助けてくれようとしたんだろう?」

 

「武蔵に怒られたけどね」

 

「それでも…その後見たよ…この猛武鎮守府のメンバーと兵士殴り飛ばして…俺の為に手を挙げて反対してくれたね」

「嬉しかったなあ…」

 

 

 

「ありがとう…俺の為に…本当に」

「中々言えないけど…いつもありがとう」

 

 

 

「当たり前だよ!だって大好きな人だから…!」

 

「いつも無茶ばかりして…私は…救君が居なくなったら…そんなこと考えたく無いけど…耐えられないよ、壊れちゃうよ!」

 

 

「麗ちゃん…」

 

「もっと頼ってよ…?」

「私は…あなたの隣で、あなたを守れるように強くなる」

「あなたが私を守ってくれるように…私もあなたを守るの」

 

 

「でも…いつでも一緒に戦えるわけじゃないから…」

 

 

「お願いだから無事に帰ってきてね」

ニコリと彼女は笑って言う。

同じなんだ。

誰かの出撃を見送るのと同じように…俺が思うように、彼女も思うのだ。どうか無事に…と。

そして帰ってくるたびに思うんだ。

生きててよかった…と。

 

 

 

 

 

 

「……少しだけ良い?」

 

「ん?どしたの?」

 

 

 

彼は何も言わずに私に寄り掛かった。

「ま、ま救君…?」

 

「…麗ちゃん……安心するなあ…」

 

「ただいま……」

 

「…おかえり」

私はドキドキしながら彼を抱き締める。

 

 

「…………」

「いつでも私もそばに居るよ」

「離れてても…私も…呼んでくれたらすぐに駆けつけるよ?」

 

「ありがとう」

 

 

 

「ご飯…冷めちゃうよ?後で…たくさん…ね?」

 

「そだね…食べよう!」

 

 

「美味しいよ」

 

「本当?良かった」

 

 

 

 

 

 

(行け!そこだ!麗ッ!押し倒せッ!!)

 

(抱き締めた!?そのまま倒れ込め!)

 

(違ううう!そうじゃないいいいいいい!)

(飯なんか後だろうがぁぁあ!!)

 

 

 

 

「今日は手作りシチューとロールキャベツです」

「あと、ローストビーフ!パンは焼いて見ました」

 

「ほー!本格的!」

 

「いいお嫁さんになるね」

 

「……わざと?」

 

「いいお嫁さんだ」

 

「もちろん…救君のお嫁さんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご馳走様でした」

 

「うん!部屋に戻ろうか」

 

 

…で?

「……」

「すんまへんなァ…こっから先は工事中ですわ…」

「おたくさんらは…アッチに泊まってもらえっか?」

 

 

突然黒ずくめの艦娘達に通せんぼされた。

 

泊まるところが使えないではないか。

 

「おやァ?お二人さんなら丁度いいなあ…あっちの部屋使ってな」

 

その方向を見ると……旅館かな?

提督の間?え?こんなのあったっけ?

 

麗の方を見ても、知らないよ!?と首を振っていた。

視線の端っこで妖精さんがグッタリしていたので、どこの鎮守府でも妖精さんは……くっ……。

 

 

 

「……まあ…仕方ないか」

 

「…いいの!?」

 

これはスルーできない流れだな。

うん、従おう。

 

 

ちなみに麗が武蔵の方を見たら口パクで言っていた。

 

「わかってんだろ?仕留めろ…!確実にッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

んで?

部屋に入ったら?どうなったか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ラブコメの匂いがしマース……」

「指揮官ー!?ズルくない?…あ!お邪魔してまーす!」

部屋に窓に天井に…!!

 

 

ウチのメンバーが居ました。

 

 

「…え?」

救君の方を見たけれど首を全力で振っていた。

そこに猛武蔵がやってくる。

 

「どうだ神崎提督よ……露天風呂付きの部屋……って!何でお前達がここに居るんだ!?」

 

 

「おうおう…やってくれてんなぁ?猛武蔵さんよぉ〜」

 

「ダーリンさんからお泊まりしますなんて文が来たら…そりゃ来るでしょおおお?」

 

 

何だ何だ?と騒ぎを聞いてやって来る猛武メンバー。

慌てふためく提督2人に黒いスーツの艦娘達。

何?抗争が始まんの?

 

 

とりあえず場所移動しない?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おおぅ!?何でぇ?あの部屋はァ…にゃんにゃんして下さい感バチバチやんけぇ?のう!猛武の若頭よぉ…」

 

「金剛…もう少し穏便な言葉…「三笠の姐御ォ!姐御は抑えてくだせえ!頭が出るまでもありやせん…」

 

「む…そうか…」

おい、桜三笠…何嬉しそうにしてんだよ…止めろよお…

 

「事と次第によっちゃあ…大和の主砲が火を吹くぜ?」

 

「え?あ、はい、そうだぞ〜」

大和…無理すんな…。

 

 

 

「あぁん?!不法侵入が何言ってんだコルァ…こちとら…お嬢の為を思ってやってんだよぉ…」

「未だにお嬢に手も出さない奥手の為に舞台用意してんだよおおお」

 

「あー…奥手はわかるわー…じゃないです!おま!引くに引けなくなるだろうかぁあ!!」

 

 

「阿呆!チャンスなんじゃあ…麗にとってもチャンスなんじゃあ…」

「そうだろ!?お嬢ッ!?」

 

 

 

「え!?私!?」

 

「そうじゃ!お嬢もあの男とにゃんにゃんしたかろう!?」

 

「そ、そりゃ…私も奥さんだし?色々したいけど…で「ほら聞いたか!?お嬢も期待したんじゃ!」

 

 

「ちょ!ダーリン!?ダーリンはどーなの?」

 

「………え?」

それお前が聞く?

 

 

 

「アホかあ!金剛おお!麗みたいなないすばでーの女が居たら襲いたくなるだろおお!?」

と、猛武蔵が吠える。

うん、否定はできんよな。

 

 

 

「とにかく…ダーリンのハジメテは渡せまセーン…」

 

「何ッ!?ハジメテだとおおお!?」

「聞いたか!?お嬢おおお!!」

 

 

 

やめてくんない?ナチュラルに童貞を叫ぶのやめてくんない?

 

 

「麗ぁぁ!やっぱりハジメテは…好きなひ…で「黙ろうか…」

 

うわあ…麗ちゃんがキレた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

纏めて全員正座させられる,

 

「麗ちゃんが怖いデース」

 

全員がフルフルと震えているのは笑える…けれども人のプライバシーを叫び続けた奴らに鉄槌が下されるのは愉快である。

 

「失礼よ!人の事をアレコレと」

 

そーだ!そーだ!!

 

「するしないは救君が決める事よ?奪い合いなんてダメに決まってるでしょ」

 

 

「「「「はい」」」」

 

 

 

 

 

「え?金剛はもうやったんじゃなかったの?」

 

「…してないデース…」

おい、そんな目で見るな…。

 

 

「魅力無い?」

ジロッと全員が見て来る。

あれ?立場変わった?

 

 

「いや…そんな事ないぞ?」

慌てて答える。魅力?毎日が誘惑やねん。

耐えてんねん。こちとら。

「でもなあ…誰が最初とか何か言うじゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「真剣に悩んだ結果なら誰も文句は言わないデース」

 

「……私もだよ?」

 

 

「……」

クッソ気まずいやんけ!何やこの空気…。

 

 

 

「2番目からは戦争デスケド」

そゆとこよ?皆様?

 

 

 

 

 

 

「まあ!この話は終わり!で!?お前らこれからどーすんの?」

 

 

 

「あ、ここに泊まります」

「どっちにしろ月曜日は演習なので…」

 

あー…忘れてた…そーだった…。

 

 

「いいの?麗ちゃんは」

 

「…うん!」

少し寂しそうな麗…

そんな麗にボソボソと耳打ちする。

「え?いいの?…それならうん…いいよ」

と、にこやかなら麗は言う。

 

 

 

「よーし…明日演習な」

と、救は言う。

 

「「「は!?」」」

驚く一同。そりゃそーよ。

 

「んで…麗ちゃんとはまた別に旅行に行くわ」

 

「「「んな!?」」」

 

「後今日は麗ちゃんと寝ます」

 

「「「「のおおおお!!」」」」

崩れ落ちる西波島メンバー。

 

「「「「おおおおお!!」」」」

ガッツポーズで喜ぶ猛武メンバー。

 

なにこれ…面白い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お気に入りが680
ありがとうございます!(๑╹ω╹๑ )!


大人な会話も挟みつつ平和な日が続きました。

次回は別の話です。
その後は…演習編です。









ウマ娘…お馬さんのお話も少しずつですが更新してたりします。
良かったらご覧いただけたら幸いです。
良かったらお気に入り登録お願いしますー。宣伝でした。



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266話    太陽ヲ探して  ①

猛武鎮守府から離れます…
2話構成のお話です。

ほのボノ日常カイです。












嘘です。クッソシリアスです

胸糞注意




「妹を知りませんか?…よく出来た可愛い子なんです」

 

彼女は尋ねる。

妹に会う為に。

 

 

 

 

 

 

 

「妹を知りませんか?」

 

「…知らねえよ!来んな!!」

 

「…そうですか…すみません…」

 

 

 

 

「妹を知りませんか?」

 

「…居るよ?…えへへ」

 

そう言って嘘をつく奴も居ました。

 

「…ウソツキ……!!!」

 

「え…?嘘ッ!やめ…ごめ…ぎゃぁぁあ!!」

 

 

ずっと…探して……

 

 

居ない…いない…イナイ

どこにイルノ?

 

 

 

 

 

 

 

 

「……妹を知りませんか?……よく出来タ可愛い子なんです」

 

 

「……とりあえずお茶でも如何ですか?」

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

副題   太陽を探して

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボサボサした白髪頭で…目は死んでいて。

身体中がボロボロになった艦娘。

 

何故艦娘だとわかったか?

海の上を体を引き摺りながら来たから。

隣にいた初月も一瞬固まってたもの。

 

 

「妹さんを探して…?」

 

「はい…」

 

「妹さんの名前は?」

 

「……思いイ出せないんです…顔はあんなに出てくるのに」

 

ほうほう、顔は覚えてるなら…

 

「…紙とペンを…」

 

描いてみてください…とお願いする。

震える手で描いた絵は…

 

 

「………?太陽…?」

その紙に書かれたのは太陽。

たった一つの大きな太陽だった。

 

「はい、あの子は私にとって太陽でした」

「妹は他にも居るはずなんですけど…あの場所にハ…あの子しか居なくて…」

 

 

「……まずは入渠するか」

と言っても無駄なのは何となくわかる。

あきつ丸と同じ…感じがしたから。

 

 

帰ってきた時に一緒に居た明石は首を横に振る。

その予想は当たっており、何かが進展する訳ではなかった。

 

 

「提督さン…すみません…私なんかの為ニ」

 

「んにゃ…困った時はお互い様だよ」

 

「………」

 

 

 

 

「ウチに暫く居るといいよ、たくさん艦娘も居るから…何かきっかけになるかもよ」

 

「…ありがとうございます」

 

 

 

 

「こんにちは」

 

「こ、こんにちは…」

 

「えと…あの…あなたは?お名前は何とお呼びすれば?」

 

「あ……えと…」

 

「なら白いから白ちゃんでどうかしらあ」

 

「こら、愛宕!」

「失礼でしょ!ごめんなさいね!」

 

「いえ…白ちゃんでいいですよ」

 

 

 

「…愛宕………」

 

「なにかしらあ?」

 

「あなた…綺麗ね」

 

「本当?ありがとう」

 

 

 

この鎮守府の人はとても親切で優しくて…。

親身に話を聞いてくれた。

覚えてる限りで話す。

喧嘩したこととか、恋愛話とか…

 

ちぐはぐの話でも彼女達は熱心に聞いてくれて…

真剣に糸口を探してくれた。

 

 

 

久しぶりに食べたご飯は…温かくて…涙が出た。

愛宕が横でよしよししてくれた。

 

……優しい子ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぱんばかぱーん!提督さんー?」

 

「ん?愛宕?どした?」

 

「白ちゃん…なんだけどね?」

 

「うん?白ちゃん?」

 

「ええ、白ちゃん、あのぼろぼろの…」

 

「ああ、白ちゃんと呼んでんの?どしたの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「白ちゃんは高雄よ…」

 

愛宕は言った。

 

「高雄…?高雄ォ!?」

 

「ええ…わかるの…高雄だって」

 

「でも……」

微かに残る服を見れば高雄型か?とは思ったが…髪も白く…。

いや、ストレスか…??

どれ程のストレスを与えればああなるのか…?

 

 

「きっと探してる愛宕…妹はもう居ないと思うの」

「…彼女も長くないと思うの…だから…私がそばにいてもいいかしら?」

 

「愛宕…分かるのか?」

 

「高雄は高雄だから…少しでも………ね?」

 

「わかった」

 

 

 

 

 

一目見て分かった。

なぜか分かった。

まるで引っ張られてるかのように…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わかった…同じ高雄としてお願いするよ…愛宕」

西波島高雄は言う。麻耶、鳥海にも事情を説明した。

愛宕がそばに居ることも、必要に応じて皆が手伝うことも…。

 

 

 

 

「愛宕?」

 

「ええ、私がお世話するわ〜何でも言って頂戴?」

 

「優しい子ね…妹みたい」

 

「案外そうだったりして?」

「あなたは高雄じゃない?愛宕…探してない?」

 

「…ごめんなさい…思い出せなくて…」

 

 

 

彼女が何をしたかったのか…それを思い出す為に…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その願いは叶った。

 

最悪の形で…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あ…居た居た』

『沈んだ妹を探す馬鹿が居た』

 

 

 

重巡棲姫。

浜辺に居た2人に邂逅した。

 

 

 

 

 

 

頭の中で何かが見えた。

 

 

 

 

 

 

 

そうだ…お前だ…。

「……オマエ…あの時のッ!鎮守府を襲った奴!」

 

 

 

 

 

『そーだけど?』

『まだ深海化してなかったんだねえ』

 

「あなた…まさか!!」

愛宕が構える。

 

 

「うわぁぁッ!!」

彼女は艤装を展開しようとする……が、展開できない。

 

『武装無し?当然かァ…。死にかけだもんなァ!!さっさと堕ちてしまえよ!時間かけたんだからさあ…』

 

 

 

「グウ…ウア…」

 

『おー?いいね?あと少し?』

 

「あなた!やめなさいッ!!」

と、愛宕が間に割って入る。

 

 

『おやぁ?代わりの妹かい?悲しくて涙が出て来るよ……』

 

 

そうだ…思い出した…。

 

 

私は高雄型1番艦…高雄。

妹……を探していたんだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…くっ…ダメ…あの子…に会うまで…ハ…」

 

「そうよ!高雄!だめ!負けないで」

 

チッと舌打ちをする棲姫。

『あと少しなんだけどなあ……うーん……お前がこっちに来たら強そうなのに…』

仕方ない…と重巡棲姫は言う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『妹を沈めたのも私なのにね』

 

 

 

 

 

 

 

「「え?」」

一気に血の気が引く。

 

「でもあの子は…帰ってきたのに……」

 

『死ぬ間際まで追い詰めて…返してあげたの…逃げ切った訳でも勝ったんでもないよ?あいつは…』

 

『お姉ちゃあん…提督ぅ〜…ってずっと言ってたっけ?アハハ』

 

 

『そーそー!通りかかったお前らに看取られたんだっけ?』

 

『そん時からお前はターゲットだったのさあ!』

『ジワジワと、時間をかけて…鎮守府も仲間も全部壊して…心を闇に染めて……』

 

 

どんどんと絶望色に染まる高雄。

 

『その悔しさを晴す事なく……恨みで黒く染まりなさい?』

『仕返ししてもいいよ?………あ…無理か…武装もないもんね?』

 

ケラケラケラ

悪魔が居るならコイツだろう。

楽しそうに笑う棲姫。

 

 

 

「…ア…ァァァア!!!お前えええ!!」

 

高雄がバチバチと音を立てる。

メキメキと体にヒビが入って行くき、深海化が進む。

 

「ダメよ!高雄ッ!!抑えて!!」

様子見してた西波島の高雄達が抑える。

 

 

「グウッ…奴ガ!イモートヲをおおおお!!皆ヲオオオオオ!!」

彼女は血の涙を流していた。

 

 

ケラケラと笑う棲姫。

 

 

『トドメにその提督と偽モンの姉妹をぶち殺してやるよおおお!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブチッ…

 

 

 

 

 

「黙れえぇぇぇえええええ!!」

 

 

 

ドゴッ…

何かが棲姫の腹にブチ当る。

「ガッ……」

 

ゾクリ…何かに悪寒が走る棲姫。

吹き飛ばされる棲姫。

 

 

 

 

その子は…普段から底抜けではないが明るい子だ。

姉や他の妹と違って怒ってる所なんかそうそう見ることはない。

 

 

 

 

 

 

その艦娘がキレた。

今までに見たことがない程に憎悪を持って殴り抜いた。

 

 

 

 

「…アタゴ……?」

高雄は言う…。

 

 

 

「許さない…」

 

 

 

 

 

 




明日に続きます〜

自分でも悲しくなる胸糞表現でした


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267話  太陽ヲ探シテ…   ②

ほのぼの日常かいの続き。










『ハッ…笑わせるな!どーせソイツは死んで仲間になる!無駄なんだよおお』

 

 

 

「…あた……ご、…いかないで…?」 

 

 

 

 

 

「いけえええ!!!愛宕おおお!!麻耶ッ!!鳥海ッ!!」

 

 

 

「許さないッ!!」

 

 

 

 

「「「お前だけは…絶対に許さないッ!!!」」」

 

 

ブチギレた3人の妹が奴を見下ろしていた。

 

 

 

 

 

 

 

「愛宕…ッ!」

 

「お願い…提督ッ!私に力を…ありったけの力を!アイツを消し去るくらいの力を貸してッ!!」

 

 

 

 

腹立たしい!

自分の事のように!!

「あぁ…そんな奴…カケラも残さず消してやれッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛宕  改

 

 

 

足りるもんか!!

 

「もっと…もっとおお!!!!」

 

 

 

 

 

 

愛宕… 改  怒りの超高揚状態(オーバードライブ)

 

バチバチと周囲から音を立てる愛宕。

提督とのシンクロ…それも怒りの感情。

 

 

 

「絶対に…絶対に!!貴様だけは許さないッ!!」

 

 

 

『何だよ…偽「沈めええええ!!!」

 

バキイイイイ!!!!

力任せに殴りつける愛宕。

 

ここまで露骨に怒りを露にした愛宕が居たか?

いや、居ない。

 

そうだ…そりゃそうだ。

あんなこと聞いたら…もう止まらないッ!!

 

 

「アタシらも腹立った…」

 

「やってやりましょう…」

 

 

 

『グッ…舐めるなぁぁあ!!カスがああ!!』

 

ズドォン!!と砲撃が放たれる。

目標は…愛宕。

避ければ…高雄や提督に当たる。

 

 

 

「…………」

愛宕は避けない。

 

『馬鹿め!!死ねええ!!』

 

 

「愛宕!!…任せた!」

 

 

「ええ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズン!!!

 

 

 

 

 

 

 

愛宕は砲撃を受け止めた…。それも片手で。

 

「舐めんな…?こっちのセリフよ…」

「その言葉もこの砲撃も…返すわッ!!!!」

 

力任せにそれを投げ返す愛宕。

 

『は?』

 

 

 

ズドオオオン!!!!

 

棲姫に直撃する。

まさか砲撃を片手で受け止めて投げ返すなんて荒技を見ることはあるか?

無いだろうさ。

 

 

 

ズンズンと愛宕が近付いて行く。

 

 

 

 

「…許さないッ!!お前は!!絶対に許さないッ!!!」

 

 

「もう眠って…!!沈んで!!」

「お前にあの人は笑わせないッ!!絶対にッ!!」

 

 

愛宕()(高雄)を思う。

故に負けられない。

愛宕にとっての姉を笑ったから!

全てを奪ったから!!

 

 

 

「…!!!」

高雄は見た。

奴へと進んで行く愛宕の後ろ姿を…。

 

キラ付けが、まるでオーラのように光る彼女。

太陽みたいに…日の光みたいに綺麗な金色の髪。

 

「…アァ…あなた…思い出した…私は…愛宕を……」

 

 

 

 

 

 

『ヒッ…!?』

逃げようとする重巡棲姫。

 

 

「逃さねえよ!」

麻耶が

 

「あなたは…許さない」

鳥海が

 

「絶対に!!」

高雄が

 

「「「くらええええ!!!!」」」

 

姉妹で放つ一撃。

 

 

バカバキバキっ!!!

『ぐぶッ…ガハッ……馬鹿な…!!こんな奴らに!?』

 

 

 

「覚えておきなさい!」

「アンタを倒したのは…高雄型の重巡…アンタが馬鹿にした…姉妹と同じ名前の姉妹よッ!!!!」

 

 

ガシッと奴の顔を掴む。

 

『は、離せぇ…』

 

「離すもんか…絶対に離すもんか!!」

 

 

 

ズドォン!

ゼロ距離で撃つ。

『が…やめ……て』

 

ズドォン!とまた放つ。

『し、死んじゃ………』

 

 

「あの子は死んだわよ」

更に放つ。

『ア……ガ…ッ』

 

 

ズドォン!!!

まだ放つ

ビクンと跳ねた。

 

ズドォン!!

動かなくなった。それでもやめない。

 

手を離して…

ズドォン!ズドォンズドォンズドォン

奴が消し炭になるまで続けた。

 

「うわぁぁあ!!!消えろッ!!消えろッ!消えろおおおおおおお!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前で奴が壊れて行く。

私から全てを奪ったアイツが……

 

「ア…アァ………愛宕…ありがとう」

彼女は元の姿に…いや、深海化が止まった。

 

 

 

 

 

 

 

「ううう!うわぁぁッ!!!」

それでも怒りが収まらない。

悔しいッ!!悔しくて悔しくて!!憎くて憎くて!!!

 

 

オーバードライブ…。

感情も何もかもが膨大に膨れ上がる。

彼女は無理矢理に改ニやその上の特改にも匹敵する力を使ったのだ…今の彼女は暴走手前でもある。

 

 

 

 

 

「…ダメよ…愛宕」

優しい声がした。

 

 

 

 

 

ハッとした。

振り返ると……高雄が這いながらこちらに手を伸ばしていた。

 

死にそうな自分より人の心配をする…ボロボロの体を引きずって必死に私に呼びかけて手を伸ばす彼女を見た…。

 

「…高雄……」

 

一気にその熱が冷まされた。

 

 

 

私は高雄に向かって走った。

身体中が痛くても知らない。

関係ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戻ってきた愛宕…。

「高雄…!!」

愛宕は高雄を抱き締めた。

「ごめんね…ごめんね」

 

「おかエり……アたご」

「いいの…仇とっテくれて…ありがとう……」

 

 

 

 

悔しかろう…口惜しかろう

何もできないのも…人に任せるしかないのも…

それでも彼女はありがとうと言った。

 

 

 

愛宕は泣いた。

その愛宕を高雄は崩れながらも…優しく撫でた。

「……思い出した…愛宕…探して……たの」

「もう…この世に居ないけど…」

 

 

 

西波島高雄を含めて…見守る事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

煌めくような…太陽のような黄色い髪のあなた。

いつも笑顔で…周りにたくさんの艦娘が居て、彼女達も笑顔で…。

 

やっと思いを伝えて貰った…今からって時に散ったあなた。

大好きなものも何もかもを残して死んだあなた。

 

 

人に全部押し付けて…身勝手に姉を置いて行っちゃったあなた。

 

私の好きな人は…好きな人を失った…。

 

 

 

今はもう居ないあなた。

私の可愛い…可愛い妹…。

 

好きな人も仲間も失った…変える場所も失った。

 

 

お姉ちゃんは頑張りました。

でも…無理だった。

 

謝りたかった…ごめんねと。

 

でも…仇は取ってくれたよ…見たことは無いかも知れないけど…妹2人と…私と同じ名前の子と……あなたと同じ…名前の優しい…

 

 

 

「愛宕ぉ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お姉さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛宕は…ここに居ますよ」

 

一瞬…ハッと目を見開いて…ニッコリと笑う愛宕。

「……優しいのネ…アナタ…」

 

 

「…私は愛宕ですよ?高雄の妹です…ならあなたの妹でもあるんです」

 

 

 

「……ごめんね…愛宕…」

彼女は涙を浮かべる。

「あなたの守りたかったもの…守りきれなかったの」

 

「ずっと…ずっと謝りたくて……」

 

 

思い出した…、知っていた。

あなたは本当は…もう居ない事を。

でも…たった一つ、一言謝りたくて居ないあなたを探し続けていたの。

 

その苦労の中で髪が白くなろうと、化け物呼ばわりされようと…

ただ一言、ごめんなさいと言いたかった。

 

 

「大切なもの?」

 

 

高雄はグッと愛宕の服を掴む。

 

「あなたの愛した提督も、仲間も…帰る家も…」

「私は守りきれなかった!!」

 

「あなたの生きた証を…守りきれなかったのッ!!」

 

「ごめんなさい…ごめんなさい」

ぽろぽろと泣きながら謝る高雄。

 

 

 

 

その手を優しく包んで彼女は言う。

「ずっと探し続けてくれたんですね。ありがとう」

「私は恨んでないわ?」

 

「……」

高雄が何を思うかわかる。

でも…それでも彼女は伝える。

 

「だって…私は愛宕だから」

 

探し続けてくれてありがとう。

恨んで無い…ですよ、と。

 

 

 

 

 

…その一言で救われた気がした。

ありがとう…。

ごめんね…。

 

そんなことさせて……

 

 

 

 

 

 

 

「どうかゆっくり休んでください」

  

 

 

 

 

 

彼女にいつもの陽気な感じは無かった。

ただ1人の彼女の為に。

愛宕は慈しむように彼女に膝を貸して頭を撫でる。

彼女の命の灯火が消えて海に還るその時まで…。

 

 

 

 

 

「…ねえ……愛宕?」

 

「なあに?」

 

「最期…に…眠りに落ちるまで…そばに居て?」

 

「うん、居るわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛宕?」

 

「ん?」

 

「どこにも行かないでね?」

 

「もちろんよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

姉は妹を呼ぶ。

 

「愛宕?」

 

「なあに?」

 

「良かった…まだ居てくれるのね」

 

その存在を噛み締めるように確かめる。

 

「居るわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妹は姉を呼ぶ。

 

「高雄?」

 

「……なあ…に?」

 

「呼んだだけ…」

 

懐かしい記憶に少しでも浸れるように。

 

「ふふっ…愛宕ら…しいや…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛宕……?」

 

「なあに?」

 

「何か言って…?」

 

「ぱんぱかぱーん!愛宕です♪」じわりじわりと涙が溢れてくる。

 

「…可愛いわね……愛宕は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あた…ご?」

 

「なあに?」

 

「好きな人は……居る?」

 

 

 

「ええ…」

 

「どんな人?」

 

彼女はチラリと横を見る。

「無茶ばかりする人なんだけど…優しくて…人の為に泣けて…」

「私達皆の事を愛してくれる…素敵な人」

 

「そう…」

と高雄は答えた。

 

「ふふ…きっと…素敵…な人でしょうね」

ええ、と愛宕は答える。

 

「…あなたなら守り抜けるわ…きっと」

「私みたいになっちゃダメよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あた…ご?」

 

「…なあに?」

 

「妹…大切にね?」

「それと………」

 

 

 

姉は言う。

妹へ向けてか…愛宕に向けてか…

それは彼女だけが知る事であるが、彼女は言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ありがとう」

 

「…提…督さんも…ありがと」

 

 

 

 

「…ッ!……いえいえ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん」

 

「……」

 

「お姉ちゃん?」

 

「…………」

 

「……………」

 

 

「…ッ!愛宕?まさか……」

隣に居た。 救が声を掛ける…が、愛宕は人差し指を口に当ててシーっと言う。

少し涙を浮かべた笑顔で。

 

「だめよぉ…今から眠るところなんだから…」

「たくさん自分を責めて…辛い思いをして…きたんだから静かに寝させてあげて…」

声が震える。泣いちゃダメだ…ダメなのに…。

 

「ああ……」

 

「提督?…お願い、手を握ってあげて……」

 

「ん?ああ…」

 

 

救は手を握った。

 

悲しい生き方もしただろう。

たくさんの後悔の中で生きたのだろう。

それでも…ずっとずっと謝る為に居ない筈の妹を探し続けた

精一杯生きた高雄。

まだほんの少し温もりのある手は…微かにその手を握り返した気がした。

 

 

命の消える瞬間…。

それは慣れる事はない。

 

 

 

彼女は眠った。

その顔は…今まで見た中で1番安らいでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん…」

「おやすみ………」

 

 

 

『おやすみ…高雄』

どこかからか微かに声が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

『ありがとう…愛宕』

そう言った気が…した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……2人でゆっくり休んでね」

 

 

 

すうっと…彼女は光になって消えてゆく。

その笑顔のまま…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…お疲れ様…愛宕」

 

愛宕は飛び込んできた。

「…えぐっ…グスッ…うわぁあああ!!!」

「提督!提督ううう!!」

 

止めどなく出る涙が止まらない。

自分のやったことは正しかったのか?

他にできることはなかったか?

考えれば考える程に辛くなる。

 

 

 

 

 

違うと知っても私に謝った彼女。

ごめんなさい。

こちらこそごめんなさい。

 

 

 

「…あの安らかな顔見たらわかるよ…」

「君に出会えて良かったと思ってるはずさ」

 

 

「…優しいのね……提督」

 

「もう少しこのまま居るよ」

 

「ええ…お願い…」

彼女はずっと…その胸で泣き続けた。

姉を思って…の愛宕…として…。

先輩艦…として…か。

それでもその優しさはきっと伝わった筈なんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お姉ちゃん…本当に…こんなになるまで…』

 

『来てくれたんだ…愛宕…ごめんなさい…私!!』

 

『ありがとう…お姉ちゃん…』

 

2人で抱き合う。

姉妹は泣きながら抱き合う。

肉体から解き放たれて…魂となってようやく巡り会えた2人。

 

 

『いい鎮守府に来られて良かったわね』

 

『ええ…本当にありがとう……』

 

 

『みんな待ってるよ…?』

 

 

『ああ…ああ!!』

 

皆…お待たせ……

やっと会えた…

やっと…旅が終わるんだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛宕!あれ!」

西波島の高雄が愛宕に言う。

 

「………!!!」

 

光が天に昇る。

 

分かる…あの姉妹や仲間なんだろう。

会えたんだね?

言えたんだね?

伝わったんだね?

 

 

良かった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「高雄〜?」

 

「何?愛宕」

 

「大好きよ!!」

と、姉に抱きつく愛宕。

 

「……急にどうしたの!?」

 

「…伝えたくて」

 

「…私も大好きよ!太陽みたいな大きな妹ちゃん!」

 

 

「なっ!?大きい!?どこが!!」

 

「…全体的に?」

 

「はああああ!?」

愛宕は少し表情が豊かになった気はする。

 

「またやってら…」

麻耶が笑う。

 

「…まったく…」

と、鳥海も笑う。

 

 

2人も姉2人に飛び込んで行く。

楽しそうな姉妹。

私が太陽であるから…皆を温めるから

そんな日がずっと続きますようにと思う愛宕だった。

 




少しでも…
お楽しみ頂けたなら幸いです。


感想などお待ちしてます!
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268話 演習 VS猛武鎮守府 ①

「……」

 

「またお前達とやれるとはな…」

「今回は…正々堂々と行かせてもらうッ」

 

「負けないデース!」

 

 

バチバチと火花を散らす両軍。

 

 

メンバー

西波島

 

金剛 桜加賀 吹雪 蒼オークランド(赤) 桜三笠 陸奥

 

 

猛武

 

武蔵 リシュリュー 金剛 響(ヴェールヌイ) 電 長門 天龍

 

 

 

 

 

「…本気のチョイスじゃん…」

 

 

「負けたくないもん」

麗も答える。

 

 

 

え?ウチのチョイス?

 

皆が鬼のやる気を見せたのすよ。

「やりまぁぁあす!!!」って。

 

まあ…このメンバーが来るのは予想出来たからこのチョイスにした。

ぶっちゃけ…金剛と赤で大体の艦隊には勝てるだろうけど…

相手も強くなったから全力で行く。

赤に関しては刀は禁止な!と伝えている。

 

ん?相手のが1人多いって?

蒼オークランドは赤に交代できるから…その人数カウント。

 

 

 

 

 

 

「さて…演習とはいえ…本気でやって欲しい」

「無論…MVPも考えてある」

おおー!っと歓声があがる。

 

「あと特別賞な…MVPと同じく頑張っていた奴を投票で決定するぞ」

 

「該当者は俺が何でも一つ常識の範囲内で叶えよう…ボーナスでも休みでも…」

 

 

 

場の雰囲気が変わった。

皆がマジになったんだろう…

 

 

 

 

 

「デートでもいいんですか?」

と、言ったのは猛武の金剛…。

 

「ん?俺と?」

 

「はい」

 

「…まあいいよ」

照れつつも明るくなる猛金剛。

え?マジ?コイツ何言ってんの?みたいな顔の猛武組。

 

「さすがはライバルッ!見る目があるデース!でも、正妻は私デース!」とかいうウチの金剛。

お前はお前で何で敵を増やしたのか?

 

 

 

 

「ふむ…では…例えば…その相手が私でなくても良いのか?」

猛武蔵がニコニコと質問する。

 

「………なんとなくわかったわ…良いよ」

うん…麗とデートしてくれ!だろう?

 

 

 

 

「聞いたか…?ここは麗の為に…頑張らないか?」

「無論…猛金剛の気持ちもある…私達は私達の為に頑張ろう!!」

 

「「「「「「はい!」」」」」」

 

 

 

 

「……」

 

「……」

「ダーリンと旅行…」

 

「指揮官と結婚式…」

 

「提督と……ふへへ」

 

 

演習に参加しないメンバーからも無言の圧力を感じる。

……ウチの鎮守府のメンバーが悪魔に見えてきたよ…。

 

 

 

 

 

 

まあいいや…やろう…

 

「はじめえええ!!」

 

 

 

 

号令と共に始まった。

 

 

 

 

 

 

 

桜加賀は即、発艦させた。

「兵は神速を貴ぶ…だったか?」

「行けッ!!空は私に任せろッ!!」

 

 

 

 

「行くぞ!響!電!!」

真っ先に空母を狙うは猛武蔵と猛電、猛響。

 

桜加賀へと猛進する猛武蔵の前に立ちはだかったのは…

 

 

「YOUの相手は…私金剛デース!!」

 

 

「えええい!!」

猛電と猛響の2人目掛けて砲撃するのは吹雪。

 

「…頼りにしているぞ?吹雪」

桜加賀が笑う。

 

「はい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「桜三笠さん!!」

陸奥が声をかける。

 

「うむ!」

桜三笠が相手を見据える…その先には…

 

 

 

 

 

 

「お前達の相手は…!」

 

「私らだ!!」

 

猛長門と猛リシュリューが居る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヘーイ!蒼オークランド!一緒にやりましょー!」

 

 

「はい!…行きます」

蒼オークランドが構える。

 

「負けません!」

猛武蔵、猛天龍、猛金剛と対峙する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「予想通りの組み合わせ?」と麗が聞いてくる。

無論、その通りである。

 

だが…例え猛武蔵と吹雪がかち合ったとしても…引けを取らない…もしくは中破くらいまでは持ち込む自信はある。

「…ウチのは強いよ?」

 

「うん…だから…どこまで私達が強くなったか…見て欲しいの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吹雪、桜加賀 VS 猛武響、猛武電

 

 

 

桜加賀は他メンバーへの牽制を行いながら腕を組んで2人と戦う吹雪を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか…空母を守りながら戦えると思ったの?」

 

「私達はそこまで甘く無いのです」

 

 

 

 

「…はぁっ…ハァ…ぐっ…」

 

中破状態の吹雪。

ギリギリ…雷撃が行えるか?くらいの中破。

 

対峙するのは響と電。

 

 

「…容赦はしないのです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……馬鹿めが…」

桜加賀が言った。

 

 

「貴様らはバカだ」

 

 

「なっ!?」

 

 

 

「守りながら戦えるか…?だと?」

「舐めるなよ…吹雪を…」

 

「守れてるんだよ……貴様らは現に私にかすり傷一つ負わせてないだろう?制空権も私達のものだ」

 

「例えそちらに空母が居たとしても…同じだと思うがな」

 

 

圧倒的な自信とでも言うか?

この状況でそれを発言できるならそうだろう。

 

だが…

 

 

 

「…」

事実だ。

 

放つコンビネーション射撃も何もかも…彼女は全てを塞いでいる。

1人相手に苦戦する2人。

 

 

「…吹雪は役割を分かっている」

 

「制空権を握る事…」

 

 

艦攻を2人に向かって放つ桜加賀。

 

 

 

「そんなもの…!」

 

対空を行う2人。

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてそれを撃ち落とす吹雪。

 

 

 

 

「何?!そんな事が…可能なのかい?」

 

2人は驚愕した。

一隻の駆逐艦に…2人分の対空射撃を対空射撃で撃ち落とすなんて。

 

 

 

 

 

壁…

圧倒的に高い壁。

最早要塞の高壁と同じほどに思える。

吹雪から後ろが見えない。

 

同じ駆逐艦とは言え…ここまでの高みに上り詰めているのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

認めるわけにはいかない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私達が…強いんだッ!!

 

「舐めるなぁッ!!!」

 

 

2人が突っ込んでくる。

 

 

2人縦に重なって…

そう、以前に宮川の山城相手に完封勝利した戦法…。

それが吹雪に牙を向く。

 

「…電、今だよ」

響が合図を出し、電が動く。

 

電が左にズレ…死角に回り込む……ズドォン!!

「…!?魚雷がーッ!?…きゃあ!!」

電は被弾した。

 

 

「なっー?電…ー?」

「目の前に…吹雪!?!?…きゃあ!!」 ズドン!

響も同じく被弾する。

 

 

何が起こった?

私はわかる…吹雪に撃たれた…。

なのに…なんで電が?

 

「…魚雷が……」

何とか立ち上がろうとする電が言う。

 

 

「魚雷…?バカな…そんな…」

「吹雪…君はあの状況で魚雷を放っていたのか?!」

 

「うん、そうだよ」

 

あり得ない…

なぜなら吹雪は一瞬たりとも電の方に視線を動かしていなかったのだ。

 

「何で…そんな芸当が…」

 

 

 

 

 

 

吹雪は予測した。

こう出るだろうと…だから電に向けて広範囲に魚雷を予測で放った。

だから電に背を向けてでも響を主砲で撃ちにいった。

 

 

 

響は見た。

吹雪の魚雷が全て無くなっている事に。

 

 

 

「まさか…予測だけで…だというのかい?」

 

 

「恥ずかしいけど…うん、そうだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それがウチの最強の随伴艦だ!!良くやった!!吹雪!後は任せろ…」

 

「しまった!そうだ!相手は1人じゃなかったッ!!」

 

間に合わないッ!!!

 

なら…せめてあの空母に一撃ッ!!!

 

「う お おおおお!!!」

 

猛響は桜加賀を狙って砲撃や魚雷を放つ。

 

 

 

 

 

「させないっ!!」

吹雪がそれらを撃ち落としにかかる。

 

「でも…これはどうかな?」

時間差で放たれていた最後の魚雷は真っ直ぐに桜加賀に向かう。

 

 

 

ズドドドドド!!!!

弾雨が2人に降り注ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上空から一気に攻めたてられて…2人は轟沈認定を受ける。

 

 

 

 

その中で彼女は見た。

 

吹雪は…その魚雷の進行路に入って桜加賀を庇った。

「きゃぁぁあああ!!」

 

 

 

 

煙が立ち込め…その中から大破状態の吹雪がヨロヨロと立ち上がった。

 

 

 

「…まも…り…きりまし………た」

 

 

戦闘の要を守り切る。

それが彼女の役割…。

彼女はそれを全うしたのだ。

 

 

 

 

ガクッと膝をつく吹雪。

そして優しく支える桜加賀。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「負けた……」」

 

 

 

 

 

桜加賀は一つの傷も負う事なく、制空権の制圧を遂行できた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ!吹雪ッ!!」

響が聞く。

 

「もし…魚雷が外れていたら……?」

 

吹雪は魚雷を全弾放っていた。

それはつまり、外したら自分はガラ空きの背中に撃ち込まれる…ということ。戦場ならば死ぬ事もおかしくない選択なのだ。

なのに彼女は当たる事を信じ切ったように私に主砲を向けた。

 

何故ー?!

 

「外しませんから…」

 

「!!」

 

「嘘です…外せないからなんです」

「桜加賀さんなら…どうにかしてくれるでしょうけれども…私は何がなんでも制空権を取ってもらう為に勝たなくちゃいけなかったんです」

 

 

「……2人のコンビネーションは最強だと思っていた…でも…うん、まだまだだ…負けたよ…完敗だ」

 

「…もっと強くなるのです」

 

 

後に彼女達は猛雷や猛暁とその名を轟かす水雷六駆として西波島の六駆と大演習で争う事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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269話 演習 VS 猛武鎮守府 ②

吹雪達の決着…

それすらも気付かない戦闘を繰り広げる2人がいた。

 

 

猛長門と陸奥が対峙する。

 

砲撃に殴り合い。

鬼気迫るとしか言いようのない戦いが目の前にあった。

 

 

「ぬおおおおおおっ!!」

 

「はぁぁぁあッ!!」

 

猛長門の拳を受け流して顔面に拳をぶち込む陸奥。

メキッ…

 

「…ぐっ……このおおお!!!」

 

顔面に食らいながら踏ん張り、ボディーブローを叩き込む。

 

ドゴッ…

「ぐぅ…」

 

 

距離をとって砲撃戦に移行する。

 

 

 

 

「「うおお!!!」」

 

放たれる砲弾がぶつかり合い爆発を起こす。

 

「ぐっ!!」

「きゃあ!!」

 

爆風で仰反る2人。

 

体勢を立て直す猛長門。

 

「強い……だが!ー…なっ!?!?」

 

陸奥がその爆風を突き抜けて現れる。

 

「くっ!!」

猛長門が一瞬遅れて蹴りを繰り出す。

が、陸奥はしゃがみ込み回避する!そして…

「そこおおおおお!!!」

 

 

ボディに渾身のストレートを叩き込む!!

 

 

 

ドゴッ…メキメキメキ…

「ぐっ…耐えられない…だと?!…がはぁ!!!」

耐え忍ぶことも能わず、猛長門は吹き飛ばされる。

 

 

「ぐっ…がっ……がっ」

何度も海面に叩きつけられながら体勢を立て直す。

 

 

「…硬いな…陸奥…!」

 

「タフね…あなた…」

 

2人がニヤリと笑う。

砲撃を砲撃で迎撃し、拳を脚を受け止めて…

 

 

 

 

「やるな…陸奥ッ!!」

 

「猛武蔵も…ね!!」

 

 

 

 

 

「だが!私は負けられないッ!!」

「あの日からずっと後悔したんだ!!」

「負けられないッ!!」

 

 

猛長門は後悔していた。

あの日に自分の愚行で輝かしい名前に泥を塗った事を。

 

その自分で塗った泥を雪ぐべく努力した。

 

 

 

「私だって負けられないのよッ!!」

陸奥にも意地がある。

 

あの人に勝利を…!

他の艦娘達にも負けたくないッ!!

ズドォン!!

 

 

ズドォン!!!

 

 

 

 

 

 

両者の拳が頬に当たる。

 

「「がっ……」」

 

 

 

 

 

両者の実力はほぼ拮抗していた。

 

 

挟射からの…

 

着弾観測射撃ー!!

猛長門が渾身の一撃を放つ。

 

 

 

その時、挟射の際に陸奥に跳ねた水飛沫が目に飛んだ。

「ぐ…まずいわ!視界が…」 

 

それが陸奥にとって最大の敵となった。

 

ズドォン!!

 

「きゃぁあ!!」

被弾する陸奥。

だが彼女は耐える。

 

 

 

「…そこだぁぁあ!!!」

チャンスを逃さない猛長門、一気に斉射で勝負を掛ける!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ…こんな…」

ヨロヨロとする陸奥…悔しいが、今はそんな事を言ってる場合ではない。

残りは?どこから?

 

 

いや!

 

 

躱せないと分かるなら…やる事は一つ!残りの弾薬が到達するまでに出来ること…。

 

それは!1発でも多く相手にブチ込むことッ!!!

相手に臨みながら倒れこみながら…一気に放つッ!!

 

「猛長門ッ!!食らいなさいッ!!ええええええい!!!!!!」

ズドン!ズドォン!ズドォン!!!

 

 

 

 

 

 

「しまっ……」

猛長門は焦る。

転びながら、受けの体勢よりも撃つ事を優先させたのに驚く。

反射的に手が出るはずなのだ!

だが、陸奥は己が海面に顔をつけることよりも…私を撃つ事を…!!

 

 

ズドォン!

 

「ぐっ!?あの状態からで?!ぐあ!?ぐああっ!!」ズドォン!!ズドォンーー!!

 

見事に猛長門に命中させた。

 

 

 

斉射しながら陸奥は考える。

「体勢を立て直して…さて…耐えられるかしら…」

ぐっと堪える体勢に入る陸奥…。

 

 

 

ズドォン!ドカン!ドカン!!

「ぐううううっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陸奥…大破認定 続行不可

 

 

 

 

 

「轟沈では無いけれども……悔しいけど私の負け…ね」

 

 

目の前の長門は中破認定にとどまった。

 

 

 

「……」

ドン…と陸奥を気絶させる猛長門。

奴は強かった。

油断…だな…撃たれるはずがないと言う油断…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…強いな…リシュリューだったか?」

 

「軍神様だっけ?光栄だわ?あなたにそう言われると」

 

 

「私も居るぞ…」

見ると中破状態の猛長門。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……これ以上は無理ね…ごめんなさい」

気が付いた陸奥が救護班に運ばれて行くのが見えた。

 

 

 

 

「ふむ…2人相手か……なら…よし…()()()

 

「?」

 

艤装を外した桜三笠。

 

 

「艤装を外した…?」

 

 

 

 

 

次の瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドン

 

 

 

 

 

ドゴォォッ!

「か…はッ!?」

 

猛リシュリューも猛長門も何が起こったか理解するのに時間がかかった。

殴られたと気付いた時には猛武蔵は遥か後方に吹き飛ばされていたから。

 

 

 

単純な話だった。

桜三笠が猛長門を殴り飛ばしていた。

 

 

「ガッ……ぐっ……うっ」

何度も何度も…陸奥の時以上に海面を飛び石のように転げ回る猛長門。

 

「……が………は」

猛長門…轟沈判定。

 

 

ゾクリ…

猛リシュリューは戦慄した。

 

 

 

 

 

「一撃で…中破状態からとは言え…轟沈判定まで…のダメージだと?」

 

 

正直舐めていたところはある。

所詮は…前弩級型だと。

 

だが彼女は思い知る事となる、

 

その彼女が…何故あの鎮守府で総旗艦を担っていたか…。

 

飾りでは無い。

それだけの実力があるから。

 

確かに武装には心許ないものもある…だが!

 

彼女は被弾しない。

そして……それを補う強さがあった。

殴り合いなら金剛にも匹敵するその強さを…肌で感じる事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

戦場において武器を放棄することは即ち死を意味する。

故に彼女は極限までは艤装で戦う…筈だが

彼女はそれを置く。

 

何故なら…その方が強くて早いから。

 

 

 

 

「やはり…こっちの方が少ししっくりくるな…変な話だがな」

「私の拳は…痛いぞ?」

 

 

「くっ!」

 

当たらない。

 

当たらない!

 

当たらない!!!!

 

どれだけ攻撃を繰り出そうと当たらない。

 

私は猛武蔵と並ぶ強さなのに!!

こんな…手玉に取られるなんて!!

 

「……甘く見ない事だ…」

「海は広いんだ…お主よりも強い奴はごまんと居るッ!!」

 

 

「今のお主の目の前の我が…その1人だッ!!」

 

 

 

ドゴォッ!!!

 

リシュリューは思い出す。

あの時と同じ…。

 

猛武蔵と戦った時と同じ…!!

海面に叩きつけられ…上空に跳ねる。

………ッ!高い!猛武蔵の時よりも高くて…痛いッ!!

 

「おおおおおおおッ!!」

 

バキイイイイッ!!!!

 

そのまま…桜三笠はリシュリューを殴り抜いた。

 

 

 

 

ボッ!という音と共にリシュリューは飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…行くぜ!金剛さん!!俺は強くなったんだ!もう負けね…」

 

西波島の金剛と蒼オークランドに対峙する3人のところにリシュリューが吹っ飛ばされて来た。

 

一斉に桜三笠を見る。

「ふむ…これで良いな?」と笑う桜三笠。

 

ゾワリ…と3人は悪寒を感じ取って構える。

 

「……」

だが、桜三笠は腕を組んだまま動かない。

 

「金剛ッ!!蒼オークランドッ!!」

「後はお前達だッ!!行け!」

 

 

 

 

猛武蔵はハッとする。

そうだ!目の前の敵に集中しなくては…!!

 

 

 

視線を戻すと、同じく腕組みをした2人が口を開く。

「今の間に…倒せてますヨ」

 

「うん、私たちが相手なんだから…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




続きます!

少しでもお楽しみ頂ければ幸いです!


感想など頂けたらとても嬉しいです(๑╹ω╹๑ )


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270話演習 VS猛武鎮守府 ③

「……すまなかった」

猛武蔵は素直に頭を下げた。

 

そうだ、3人が桜三笠を見る間に少なくとも1人はやられていた。

 

 

「…こう言っては何だが…2人でいいのか?」

 

「「全然」」

 

「ならやろうか!!」

 

 

 

 

 

「よし!!」と猛武蔵が構えた瞬間だった。

既に金剛の拳が顔面に突き刺さっていた。

 

 

「ガッ…」

 

 

 

「貰いマース!!」

 

 

 

は、早すぎるッ!!

以前よりも何倍も速く…鋭くなっているッ!!

 

が!!

 

「私とて…ただ座っていた訳では…ないッ!!」

喰らいながらも渾身のストレートを見舞う。

 

ガン!!と、鈍い音がする。

ズキッ…

 

「ーッ!!」

金剛の頭は硬かった。

 

「金剛は伊達じゃないデース」

 

「石頭…か…」

「なら…やれ!猛天龍ッ!!!!」

 

 

「よっしゃぁあ!!行くぜぇ!金剛さん!!」

猛天龍が刀を構えて突っ込んで来る。

「むっ…これは…マズいデース」

 

が、逃れられないッ!

「逃さんッ!!」

猛武蔵が両手をグッと掴んで離さない。

 

「貰ったぞ!金ごー…」

 

 

 

 

 

 

 

猛武蔵は見る。

ニヤリと笑った金剛を!!

 

「ちぇぇりぁぁぁあああ!!」

 

 

ガツン…!!

 

と、頭に鈍痛が走る。

頭突き……!?

刀を振り翳した相手を背にしながら…!?

「……なっ!?」

猛武蔵はその手を離してしまった…そして!それを見逃す金剛ではない。

 

「こおおおれでも!喰らえええええ!!」

猛武蔵を掴んで猛天龍目掛けて投げ飛ばす。

 

「…うおおおお!–って!?猛武蔵サン!?ぐわああっ!」

猛天龍は飛んできた彼女を躱すことも斬ることも出来ず、激突する。

 

 

 

「デタラメじゃないか…」

立ち上がりながら2人が呟く。

 

「これが…西波島最強の艦娘…」

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!猛金剛は!?」

 

 

 

 

 

 

 

「…くう……」

「何よ…あの力は」

 

 

いてて…と体勢を立て直す蒼オークランド。

『…代わるか?』

と、話し掛ける赤…だが、「まだ大丈夫…!私が頑張るんだ!」と、笑う蒼オークランド。

 

「まだ…まだぁあ!!」

魚雷を放ちながら副砲を片手に駆ける蒼オークランド。

 

「…くっ!素早い…ですね!」

どれも防ぐつもりの猛金剛。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドカン!ドカン!ガキキキキキキキン!魚雷を撃ち爆ぜさせて、装甲の硬い部分で副砲を受ける。

 

「まだまだ…私はいけます!」

 

 

 

 

 

 

 

だが!!そのどれもがブラフだった!

 

 

 

「…ッ!?オークランドが…居ない!?」

 

一瞬の隙…それを彼女は狙った。

姿を視認できない…それがどれほどの致命傷かは先程味わった…

 

 

2回目の致命傷ッ!

 

「くらえええ!!!」

 

ズドォン!!と、蒼オークランドの主砲が猛金剛にブチ当る!!

「…ぐっ!!」

 

 

 

 

 

だが!!まだ終わらない!

「まだまだぁぁ!!!」

 

そのまま…回し蹴りをブチ込む!!

ドゴッ…!

 

「ぐうううっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

が!!

 

 

「…それじゃ…私は倒れません!倒れる訳には行かないッ!!」

 

 

 

「ッ!!?」

ゼロ距離ーからの主砲での一撃!!

 

 

ズドオオオオオン!!!!!

 

「………」

 

シュウウウ…と言う音と共に白目を剥いた蒼オークランドが膝をつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『相手の実力を見誤ったな…』

 

「うう…行けると思ったのに…」

 

『奴は強いな……』

 

「悔しいなあ……指揮官に勝利を…捧げたかったなあ…」

 

『……』

『なら立て!弱者には…何も語る資格なぞないぞ!』

 

『大破だからなんだ!まだ終わっていないッ』

 

 

『立て!』

 

『立て!』

 

立てと言う。

立たなきゃ!

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ぐっ…まだァ……だ」

 

「…!?」

猛金剛は戦慄した。

確実に仕留めた!重巡や戦艦なら仕留めきれないとしても…

それでも…確実に仕留めた筈なんだッ!!

なのに目の前のソレは…フラフラと立ち上がったのだ。

 

「指揮…官に……勝利を…」

 

 

指揮官に勝利を!

 

指揮官に…勝利をッ!!!

 

 

 

 

ギン…と彼女の目に炎が宿った。

 

「負けない…!」

一歩…

 

「負けないッ!!」

一歩…

 

 

 

 

 

「…ッ!!」

体が動かないッ!!

恐怖?!この震えも…恐怖してると言うの!?

 

 

一歩ずつこちらに向かう蒼オークランドに凄みやら恐怖やらを感じたが…

 

 

 

 

蒼オークランドは動かなくなった…。

「………」

 

「恐ろしかった…アレは…ゾクッと…?まだ鳥肌がおさまらない…??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『代われッ!オークランド!』

 

「…うん、お願い…」

 

 

 

 

ドバッ…と蒼オークランドが赤いオーラを纏って赤と入れ替わる。

 

 

『…ラウンド2だ…』

 

 

「…!!」

鳥肌の正体は…この子!?

禍々しい艤装に漂うオーラ。

 

『指揮官ッ!!やはり刀…使うぞ!!』

『全力で挑ませろッ!!』

 

 

「そうだな…全力でないと失礼だよな!!行けッ!!赤!!」

 

『ふっ…頼れ…』

 

 

 

「オー…赤…共闘は初めてデース?」

 

『ふむ…そうだな?センパイよ…共にあの3人を倒そうではないか!』

 

 

 

「…」

わかる…あの2人は…ヤバい!

3人は感じる。何とも言えない底の見えない感じ…。

 

 

 

『行くぞッ!!おもちゃみたいだが…侮るなよ!』

赤が艦爆を発艦させる。

到底、皆が見る艦載機には見えないが…れっきとしたものである。

 

「姿が変わったら…空まで扱うのかよッ!!」

 

 

『そらそら!魚雷もレーザーもあるぞ!!』

 

異質…である。

艦載機で攻撃して魚雷を放つ軽巡…。

赤ならではである故に1人でも強大な戦力となる。

 

「チィっ!!なら!接近なら!!」

と、猛天龍が近一気に付く!!

 

『遅いっッ!!』

 

 

音もなかった。

もう天龍は一閃の下に下された。

 

「なっ……一撃で……轟沈反対…だと…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バーニング……」

 

「ラァブッ!!!!」

 

 

 

 

「負けるかァッ!!」

 

 

ドゴッ…

両者の拳がぶつかり合う…!

 

 

「「ぬおあああああぁぁぁあああッ!!!」」

 

「ぬううううっッ!!」

 

「うおおおおッ!!」

 

メキメキと音がする。

それでも拳を引かない。

 

 

「「負けるもんか」」

 

ただ、それだけの為にッ!!

 

 

 

 

 

 

 

「おおおおおおおおおッ!!」

 

「バーニング…」

    「ラァブッ!!!」

 

 

金剛は拳を引いた…。

 

 

「ぬうっ!?」

ズルリと前のめりになる猛武蔵…。

 

 

 

 

「もっかい…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ばぁぁあにん…」

 

 

「らぁぁぁぁああぶッッ!!!」

 

 

 

ドゴォォッ!!

金剛のアッパーが猛武蔵の顎を捕らえた。

 

 

「ぶぅぅぅうううううあああああああッ!!!」

 

そして…そのまま勝利のポーズのように拳を上に振り抜いた。

 

 

 

「…………」

 

 

負けるのか…?体が動かない…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや!まだだッ!!まだ…まだ

 

「まだだァァァア!!!」

カッと目を見開く猛武蔵。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前に金剛が居た。

右手を大きく振りかぶって居た。

合わせて飛んできたのだ。

 

「猛武蔵は強いデース…でも私も負けられないデース!…この渾身の一撃で…フィニッシュよー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遠い…

コレが…最強と言われる鎮守府の…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴォォオオオオオ!!!

 

金剛の拳は猛武蔵を海面まで叩きつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこまでーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤がチラリと金剛達の方を見る。

 

『……ふむ…金剛が勝ったか…』

 

「…私達の負けですか……」

 

『あぁ…そうだ。だが…蒼オークランドはお前に負けた…』

『猛金剛…蒼オークランドは次はお前に勝つ…』

 

 

 

 

 

「…確かに…彼女の最後の立ち上がりには…私も恐怖したわ…」

 

『アイツもアイツであの男の為に戦ったんだ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜加賀 桜三笠 赤 小破未満

 

金剛 小破

 

吹雪 大破 続行不可

蒼オークランド 大破、半轟沈判定

陸奥 大破轟沈判定

 

 

 

 

猛武蔵 中破

 

猛武蔵 猛天龍 猛長門

猛響 猛電 猛リシュリュー  轟沈判定

 

 

 

 

 

 

 

 

演習は終わった。

西波島は3名の大破、轟沈の判定だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……お疲れ様」

 

「…みんなあ…お疲れ様」

皆で演習組を迎えに行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうだった?皆、猛武は?」

 

「…強かった…」

「…悔しい…次は…勝つよ」

陸奥や蒼オークランドが言う。

余程悔しかったのだろう…その気持ちが彼女達をより強くするだろう。

 

 

 

 

 

 

「どうだった?救君の艦隊は」

 

「…強かった…」

 

 

「でも!」

 

 

 

「…もっと強くなる…」

「…次は負けんっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悔しそうな顔をしている者も

嬉しそうな顔をしている者も…

彼女達は精一杯やったんだ。

 

皆がニコリと笑いながらこちらを見るのが見えた。

 

 

 

 

 

「麗ちゃん…」

 

「なあに?」

 

「皆いい顔してんな」

 

「うん…」

 

 

 

 

 

 

 

さて…終わった後は?

何する?

 

 





はい、今回は西波島に軍配が上がりました。
もう、三笠1人でもいいんじゃね?なんて思う今日。




次回はまたまた別のお話。






ぜひ…お楽しみにお願いします(๑╹ω╹๑ )


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271話  その誇り…あなたと共に

近海域に深海棲姫が出るようになった…らしい。

 

しかも…毎回西波島の赤城が交戦中に乱入してくる…との事。

まあ最初は聞き間違いじゃね?なんて思ってたけど何回もそういう文句を言われると…ね?動くしかなくて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何か?」

ご飯を食べながら首を傾げる赤城。

 

「………」

 

「あの…そんなに見つめられたら恥ずかしくてご飯が…」

 

「最近空母棲姫と戦った?」

赤城の頬を優しく揉みながら聞く

 

 

「…ひへ?」

 

まあそうだろうな…

最近は他の組と連携訓練が主で出撃も演習もなかったからな…。

 

 

 

 

 

故にウチの赤城は戦場に出ていない。

なら誰かが西波島の赤城を名乗っている…と考えるしかない。

 

 

 

 

真偽を確かめる為にはその空母棲姫と戦うしかない。

 

 

 

 

 

というわけで今に至る。

 

 

 

 

 

目の前には空母棲姫…?

何か少し違うような…

 

 

 

飛龍、蒼龍、浦風、愛宕と交戦の態勢を取るように支持する。

 

彼女は愛宕を見た瞬間に飛びかかってきた。

『…お前…じゃないッ』

 

「何よ!」

彼女を跳ね除けた愛宕が主砲を構える。

 

 

 

 

 

「待ってください!!」

 

赤城…?

「その棲姫は…私が仕留めますッ!!」

 

 

「君は?」

 

「…西波島所属の赤城です!!戦線に私も加えてください」

 

この子が…ウチの赤城を名乗る不届き者の赤城か…。

 

「……よし」

 

 

「ありがとうございます!…さあ…今日こそ決着をつけます」

 

 

 

 

 

『うわぁぁあ!!赤城いいい!!!』

 

「加賀あああ!!!」

 

 

熾烈な航空戦が繰り広げられる。

 

「ひいい!流石は一航戦…すごい」

飛龍達がポロリと溢す。

 

 

「浦風ッ!!」

 

「はいよ!」

浦風の主砲が空母棲姫を狙い撃つ!

 

その時、赤城が射線上に入る。

 

「くうううっ!!?」

浦風はとっさに砲身をずらした。

 

ズドンと言う音と共に…空母棲姫に着弾した!!

「いかん!!掠っただけになってしもた!」

 

 

 

棲姫がこちらをジロリと見た後に撤退をする。

数で不利だと悟ったから…か?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ありがとうございます。逃しましたが…こちらも何とか無事でした」

 

頭を下げてお礼を言った赤城に一言。

 

「確保」

 

「え?」

ガシッと掴まれる赤城(不明)

 

「…近くの落ち着ける所まで連行で」

 

「あの!?私戻らないと…鎮守府に」

焦る赤城。

まあそりゃそーだろうよ?

 

 

「大丈夫」

悪魔のような笑みを浮かべた艦隊がそう返事する。

 

「いや…あの…」

 

「大丈夫 」

 

 

 

 

 

 

「大丈夫…俺達が西波島艦隊だから…」

 

 

 

 

 

「あ……」

赤城の顔がが青城になりました…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「キテクレルネ?」

 

「……はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近くの島で…

 

 

 

「………」

青城は動揺してるらしく、無言の俺達の前で正座して震えていた。

 

 

「……」

 

「…毎回俺達の名前使ってるらしいけど……なんで?」

 

「……」

 

「…未所属艦娘でしょ」

 

「…ッ!!」

 

 

「………」

じっと目を見つめる救に赤城はゾクリとした。

全てを見透かされているような感覚…。

 

 

「……」

カチカチと震える赤城に彼は言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…これは予想なんだけどさ」

「あの子…君の仲間なんだろ?」

 

 

「…だから…止めたかったんじゃないのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「話してよ……力になるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

その一言は赤城に突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみませんでした」

赤城は土下座をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私のかつての相棒…加賀です」

 

 

 

「…どういう事ですか?」

飛龍が問いかける。

 

 

 

 

赤城はポツリと話し始める。

 

私の居た鎮守府は…深海棲姫の侵攻で陥落した。

 

生き残った者は極小で、提督も皆死んだ。

生き残った者も戦場から離れてひっそりと暮らすようになった。

私も艤装解体の退役という事で一般人に戻った。

 

毎日の戦いが嘘に感じるほどに静かな日々だった。

 

 

だが、私は彼女の存在を知る事になる。

ある日、海辺を散歩している時に彼女は目の前に現れた。

 

憎しみや悲哀に満ちた目。

私は一目でわかった。

 

ああ…この人は加賀さんなんだと。

 

その時は別の鎮守府の警邏班が居たのですぐに彼女はにげたのだけれども…助けてくれた人達が、最近ここらを荒らし回る奴と聞いて

まだ彼女の戦いは終わってなかったんだと思ったの。

 

 

 

でも私は退役の身…。

もう一度艤装を装備するなんて出来ない。

だから買ったの…闇ルートで…。

ダメだってわかってる。

でも、私が終わらせてあげなくちゃ…私の相棒だもの。

 

 

 

 

 

それからずっと戦い続けてるの。

同じ空母だし…なかなか勝負もつかなくてね。

 

未所属だから雷撃処分の対象にもなって…

だから…警邏中の西波島の赤城と名乗ったの…ごめんなさい。

 

 

 

 

 

「……どうしたいの?」

 

 

 

「彼女を…安らかに眠らせてあげたいの……」

「お願いします!私を…少しの間だけで良いんです!あなたの艦隊メンバーに加えてくださいッ!何でもします!終わったら…この体をどう使ってくれても構いません!」

 

「どうか…どうか……」

 

「……」

 

 

 

 

目の前の男の人は私の肩に手をかけました。

少しだけ力を入れられて…仰反る形になりました。

 

「ちょ…!?提督!?」

飛龍や愛宕が止めようとしますが…

「黙ってろ」

とだけ彼は言いました。

 

スッと顔が近づいてきます。

 

 

あぁ…この人は"ソレ"を望んでいるんだ。

でも…良いわ

あなた方の名前を使ったのだから…そして何より…私の体を差し出しても…やり遂げたいから…。

 

 

そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

ビシッ…

 

 

 

彼は私にデコピンをしたのです。

 

 

「え?…え?」

 

戸惑う私に彼はこう言いました。

 

 

「自分は大切にしてくれ」

「試すようで悪かったね。うん、君の目は本気の目だ」

 

 

 

イマイチ理解が追いつかない私に言いました。

 

 

「艦隊メンバーへの加入を認める」

 

 

と。

 

 

 

「え?私の事を犯すのでは?」

 

「んな事したら皆が深海化するわ!」

彼は初めて見せる焦り顔で言いました。

 

 

「不思議な人も居るんですね」

 

 

「…そういうもんだろ?」

 

 

「ふふっ…あなたみたいな人…嫌いじゃないですよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ…終わってからもウチで職員として色々やってくれるんだろ?」

 

「はい、提督さえ宜しければお世話になろうかと…」

 

 

と言う訳で作戦会議。

 

恐らく空母棲姫は次は手下を連れてくると予想。

 

 

 

 

なら蒼龍、飛龍と浦風で周辺の奴らを叩き、愛宕がサポート、赤城が加賀を叩くと言う結論になった。

 

「怒らないんですか?」

なんて質問を投げ掛けても、頑張るやつを見捨てたりしないと言われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君がどうしても彼女を討ちたいんだろ?」

「ただ…射線上に入ったりしないでくれ…理由があるなら言ってくれ」

 

 

「…はい」

 

 

「その小刀は?」

赤城の腰にある小刀に目が行く。

 

 

「前の鎮守府の…ものなんです」

「みんな持ってたんですよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督ッ!お話中のとこ悪いんやけど…来たよ」

沖を見ると加賀であろう棲姫が手下を連れてやって来たらしい。

 

 

 

 

「…作戦通りに」

と、指示を出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「多いんよ!コイツら!」

 

「飛龍は左!蒼龍は右から!」

「愛宕ッ!中央から行けるか!?」

 

「「「はいっ!」」」

 

 

 

「赤城…行くぞ!」

 

「はい!」

 

 

 

 

「二航戦!第一次攻撃隊…発艦します!!」

 

「いっけええ!!」

 

2人から繰り出される艦載機に続いて…

「ぱんぱかぱーん!愛宕…いきまーす!浦風ちゃんも行くわよお」

 

「はい!やったるけんね!」

 

 

 

 

 

 

「……赤城?」

 

「え…ええ!やります!」

 

「…無理すんなよ?」

 

 

「……お優しいのですね」

 

 

 

 

 

 

深呼吸…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見つめ合う赤城と加賀…。

まるで時が止まったように…2人の間には時間が流れる。

 

 

「もう置いて行かないから…」

 

 

彼女を沈めるのは…私…

そう思って来た。

 

 

 

「……行きますッ!!赤城…第一次攻撃隊…発艦ッ!!!」

 

 

『う…うううッ!行けえええけ!!』

 

発艦される思い。

それは形を変えて相手へと向かう。

 

同様に棲姫…加賀であった者から放たれたものも彼女に向かう。

 

 

 

 

 

「…加賀さん…今日こそ…今日こそ!あなたを倒して(救って)みせる!」

 

 

『できるものかッ…沈めえええええ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何…あの戦いは……」

飛龍達が驚くのも不思議ではない…。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

放っては突撃して行く様は…まるで…

 

 

 

お互いの戦力(艦載機)を出し尽くした頃には2人は殴り合いを始める…。

 

 

「…」

なぜか俺にはそれが愛おしそうに殴り合うようにしか見えなかったのだ。

 

 

『沈め…!沈め!沈めえええ!!!』

 

「加賀さん!絶対に負けない!!」

 

 

髪を掴み叩き、殴り、蹴って…。

ただ、そこにつけ入る隙は全く無かった。

 

 

 

 

傷つきながらも攻撃をやめない2人。

 

 

 

 

 

だが…何故かやはり…

俺には加賀にも膨大な憎しみの中に…何か温かいものを感じた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アカギ…アカギイイイイイイイイ!!』

ビキビキと右手に力を込める棲姫。

そして赤城へと突っ込んで行く。

 

 

 

 

「加賀さん!…決着つけてあげるわ!!」

赤城が小刀を抜いて彼女に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ごめんなさい…と赤城が言った気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「加賀ぁぁあああ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『赤城ぃいいいいいいいッ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弓も武装も投げ捨てて向かう。

目指す者へと。

 

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『グフッ……』

吐血する深海新空母棲姫

腹に小刀が刺さっている。

ブシュッ…と小刀を返して…傷口が広がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ナンデ…!』

 

 

 

 

 

『何で!?!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

『何でですか!?』

 

 

 

 

 

 

 

『……赤城さん!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ガフッ…」

赤城が吐血する。

 

 

 

 

 

『何で…避けなかったのですか!?!?』

 

 

赤城の腹にも…彼女の右手が刺さっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空母新棲姫…つまり加賀は()()()()()()()()

赤城が避けて私を討つ。

それで疲れ切ったこの戦いも終わるはずだった。

私はあなたの中で生き続ける予定だったのに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう

彼女の選択した答えは

 

 

 

 

––––相討ち–––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ずっと一緒に居たから…あなたの考える事くらい…わかるわ」

 

 

そう、赤城は分かっていた。加賀が避けない事を。

自分を討たせようとする事を…。

 

 

 

 

だからこそ…

彼女は共に行く事を決めたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ずっと一緒に居たあなたを1人で逝かせる訳無いでしょう?」

 

『アカギ…さん…その為だけに?…』

 

 

じわりじわりと流れ出た血は、海に染まり…波と共に消えて行く。

まるで何もなかったかのように広がって行く。

 

 

「…ごめんね……加賀さん」

赤城が加賀の顔に手をかける。

 

「ゴフッ…ガハッ…ずっと…ずっと寂しかったよね?」

 

 

 

棲姫は…加賀に戻っていた。

あの時と同じ…あのままの姿で…。

 

「…赤城さんこそ……苦しかったでしょう…ガフッ……ごめんなさい」

 

 

 

 

知っていた。

 

ずっとあなたに討たれたかった自分を…。

 

己の中の悪が…残りの少ない理性が言った。

 

赤城さんに討たれて眠りたい。

 

だから…どの艦隊相手でも負けるわけには行かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仲間が死んだ…酷く殺された。

提督はその彼女を愛していた、もちろん彼女も…

 

その後に鎮守府は攻め滅ぼされた。

提督も仲間も多く死んだ…

私も…憎しみの中で沈んだ…。

守りきれなかった事…愛する人が死んだ事…何もかもが憎かった。

 

 

目が覚めると…私は深海にいた。

 

 

受け入れ難い現実。

 

 

私は深海棲姫になっていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

憎しみが頭の中を掻き乱す中で…

微かに残った理性が仲間を求めた。

 

 

 

 

高雄に会った。

高雄はあの時と違い、ぼろぼろで私だと気付かずに『妹を知りませんか?』と聞いてきた。

 

 

ある時に赤城さんに出会った。

彼女は退役して一般人として暮らしていたのだろうか…

 

そのまま幸せになって欲しい半分…

憎いと思う心半分…。

 

 

 

 

 

 

 

が…

彼女は海に戻ってきた。

 

 

 

 

彼女は私だと気付いてくれた。

もう残りの少ない仲間が…

 

助けて!私を助けて!

 

 

その声は戦いの中にかき消された。

 

 

 

 

 

何度も何度も戦っては傷つき…でも死なず…

 

 

 

私が思うようになる…

彼女の手で眠りに落ちたいと。

 

 

 

轟沈後の奇妙な縁が私達の存在理由になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

知っていた。

 

彼女は私に討たれたいのだと。

 

誇りある魂は…私に救いの手を求めてるのだと…

 

 

 

 

 

 

だが…

出会って戦う内に思いが芽生える。

 

これで終わってしまう…

 

手にかける事によって…姿が変わろうとも感じられたあなたを感じられなくなる。

 

負ける事によって…何も思えなくなる…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…一緒に逝きましょう?」

 

それは悩み…悩み抜いた末の答え。

 

彼女の艦娘として…存在をかけた最後の結論。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいんですか?」

 

在りし日の一航戦加賀(解き放たれた加賀)は泣きながら言う。

 

 

孤独と戦い、いつか行きたい思った海原じゃない場所…。

 

もう戻る事も出来ない昨日。

 

忘れたくても頭から離れない…皆の顔(輝く思い出)

 

在りし日にかけられた…愛する人からの言葉…。

 

 

頭の奥から湧いてくる憎しみの感情を抑え込んでも…押さえ込んでも…その声は止まなかった。

 

 

 

 

だから…ずっと…ずっと

この楔から解き放たれたかった…あなたの手で…

 

 

なのに…

あなたは私も行くと言う。

 

 

 

 

赤城は涙ながらに優しく返事する…。

 

「勿論…だって私達は……」

「2人で…ひとつの誇り高き一航戦だから…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その誇りと共に逝きましょう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「赤城さん……馬鹿ですよ…あなたは…」

泣きながら彼女は片割れに問いかける。

馬鹿ですよ…と。

嬉しくて…悲しくて仕方がないのに。

 

 

 

 

 

「…そうね……でも…案外…いい…ものよ」

彼女は片割れに応える。

案外いいものと。

それが…彼女の選択なのだから。

 

 

 

 

 

 

2人で泣き合う。

抱き締めて…冷たい体に体温を感じながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました…」

「私は…彼女と共に逝きます‥」

「心優しい提督さん…お約束を反故にしてしまい…申し訳ありません…」

 

 

 

 

「今から来て入渠するって選択肢は?」

彼は尋ねる。

極極小の可能性に賭けて…。

 

 

首を振る2人…に、そうか…と涙目で答える救。

 

 

 

「怒らないんですね?」

赤城はイタズラっぽく聞いてきた。

 

「悩んで出した結論なら…俺は何も言えない…生きて欲しいけども」

「だから悲しいけども見送るよ……」

 

「そんな気もしてたんだ…」

「でもダメだ…慣れねえや…」

 

やはり感じる無力感。

今まさに2人は死のうとしているのに…

幸せそうな顔をするから…

 

 

 

 

 

『泣いてくれて……優シイ…のね…あなたは…』

「ありがとう……でもいいの」

 

ズブズブと膝まで沈む2人。

 

 

なあ!!頼むよ!生きてくれよ!

そう言いたくても…できない。

どうにかする力も術もない。

 

それが堪らなく悔しくて…

 

 

「……提督さん?」

「ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で!そこまでして!」

つい出てしまう本音。

 

 

「だって私は…加賀だから」

「そう、そして…私は赤城だから」

 

 

 

 

 

2人は抱き合う。

彼女達に残された最後の最後の…時間を噛み締めるように。

 

「……行くのか?」

 

2人は…ええ、と答える。

それが… 答えなら…俺には何もできない。

 

 

 

 

 

 

 

だから伝える…

俺の中に確信があるから…

 

 

 

 

「……高雄も…探し物は見つかったぞ」

 

 

2人はまさか?と言う反応をする。

 

 

 

「高雄は…もう愛宕を探さなくてよくなったんですね?」

ああ…そうだと赤城に返す。

 

 

『お世話になりっぱなしですね…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「赤城…約束守ってくれないんだろ?」

 

 

「…ごめんなさい」

 

 

「なら…約束してくれよ」

 

 

「?」

首を傾げる赤城…。

 

 

「生まれ変わったら…俺んとこ来てくれよ」

「あ!希望が通るなら…別艦娘でもいいぞ?海外艦でもな?」

 

 

 

 

「……」

『……』

 

 

「…2人一緒でも?高雄や愛宕も一緒でも?」

『いいのかしら?』

 

 

 

 

「もちろん…セットじゃ無いとダメだな」

 

 

 

 

 

 

「赤城さぁん…」

「加賀さあん…」

 

「泣かないのよ…2人とも…」

「あなたもヨ…提督さん」

 

 

 

 

 

「俺は…神崎 救!西波島の提督だ!」

「いつか…いつか!約束を守って来てくれることを願って……いや!君達が安らかに眠れる海をきっと……きっと……」

 

 

「「ありがとう…」」

 

 

 

 

2人は笑顔で海に沈み…

淡い光となって消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

散り行く華こそ美しいと誰かが言った。

例えば桜…はその姿にすら心奪われる。

秋の紅葉はその散り際にも切なさを感じながらでも風情を感じる。

 

 

しかし…

 

死に際というのはどうだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今迄に経験した中でも苦い苦い体験だった。

 

 

 

 

 

 

 

ーたくさん話したいこともありました…

 

ー私もたくさん聞きたいことが…

 

ー退役した後の話とか…

 

ーもう一度艤装を手にした時の気持ちとか…

 

 

 

 

 

 

 

 

…今の気持ちとか……

 

 

 

 

 

でも…ありがとうございます

 

 

え?

 

 

 

あなたと…一緒に逝けるから…

冷たくないのです。

 

 

 

あら…

私も…同じかな?

 

 

 

 

「「やっぱり私達は2人で一航戦なのね…」」

 

 

 

 

 

ありがとう…西波島の提督さん…

こんな私達に…あんな言葉まで……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あら…?

 

 

 

 

 

愛宕…?

提督さん…?

 

高雄…あなたも?

 

 

 

ああ…見て…加賀さん…

皆…あんなに笑顔で………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…お帰りなさい?提督さん?飛龍に蒼龍」

「どうしたの?皆とも…暗い顔して」

 

ニコリと微笑みかけながら心配してくれる2人に重ねてしまうあの最期の顔。

 

 

 

我慢していた堰は壊れた。

違うと分かっていても…同じ赤城と加賀。

 

「……」

 

 

 

 

「あがぎさぁあん!!」

「ががざぁん」

 

飛龍、蒼龍は2人に飛びついた。

 

 

 

 

 

「あら?どうしたの?!」

 

「…何かあった?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう……羨ましいわね」

 

「ええ…」

 

何で!?と聞き返す皆に2人はこう返す。

 

「好きな…1番隣に居たい相手と迎える最期なら…それはきっと幸せなのですよ」

 

「私が同じ立場でもそうするわ」

 

 

 

 

「でも……」

2人は…最愛の人の下へ行く。

 

そして…抱きしめる。

 

 

 

 

抱きしめられた最愛の人はポツリと漏らす。

「……あれで良かったのか?他に何か…出来る事はあったんじゃないか?」

 

2人は抱きしめる力をぎゅっと強めた。

 

 

 

「「ありがとう」」

「私達の為に涙を流してくれて」

「私達の為に生きてと言ってくれて」

「生まれ変わって…来いよと言ってくれて」

「見送ってくれて…!ありがとう!!」

 

「「本当にありがとう」」

 

どこの赤城か加賀かも知らないが…それでも彼女達はありがとうと言った。

涙が止まらない愛する者をずっと彼女達は抱き締めていた。

 

 

 

 

追いかけて…追われて

求め続けて…求め続けられた者。

その果ては決して側から見たら悲しい最期だろう。

でも…彼女達は幸せだったと言う。

 

それは…

彼女達の中にしかない…思いだから。

 

仲間と誇りと共に旅立った者へ彼の想いも届くだろうか…?

 

 

 

いや…届くだろう。

 

何せ彼女達は…死すれども誇り高い一航戦のだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お気に入りが690ですね!
うひょう!ありがとうございますううう!!





少し後味の悪い感じかな…と。
見方によりますけどね。








さてさて
少し休みをもらって次回は演習の後日談です。
MVPは誰だ?




少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。



感想などお待ちしてます!ぜひ!!


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272話 第二ラウンド…?

ここは猛武鎮守府の入渠場所…所謂お風呂である。

 

 

 

 

 

 

 

「…生き返るうう……」

 

 

「あー…気持ちいい…」

 

「あれ?金剛さん…喋り方…」

 

「あ…まあ…いいデース」

 

「ふむ…鎮守府以外の入渠施設か…新鮮な気分だな」

 

ご覧?の通り、今は両鎮守府の演習メンバーでの入渠中である。

 

 

 

疲れや傷を癒すべく彼女達は風呂に浸かる。

 

 

 

その風呂の中にぷかぷか浮かぶ者が居る。

 

 

 

「あそこに浮いてるのは?」

と、吹雪が尋ねる。

 

 

 

「尻が猛響達」

「胸で浮いてるのが猛武蔵達だな…」

と、桜加賀が答える。

 

 

 

気絶組かあ…

ん?

胸?

 

 

 

 

「……胸…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの戦艦達…再度沈めて来ますね

 

 

 

 

「ああ、行って来い」

笑いながらビシッと指差す桜加賀。

 

 

 

「バカ!桜加賀ッ!!ヤメロォ!吹雪ィィ!!」

「ヤベェ!吹雪が深海化しそうだ!!」

 

 

ガシィッ!

ギリギリギリギリ

 

「いだだだ!?ハッ!?ここは!?」

「入渠…施設…って痛いッ!胸が…って!?吹雪ィ!?」

「もげる!もげる!!」

 

 

猛武蔵と猛長門が悲鳴をあげる。

 

「モゲテモイインデスヨォ」

「ソノニクヨコセエエエエエエエエ!」

 

「風船みたいに浮かびやがってよおおおおおお!!!」

 

 

 

 

 

 

「本当にお前は駆逐艦…いってええええ!!!」

 

 

 

 

 

 

「怖いッ!お宅の駆逐艦怖いよおおおお!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風呂の中でサイド大破まで追い込まれる光景をみたことがあるか?

 

ない?

 

なら目の前を見てみろ

 

今だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうMVPは吹雪でいいんじゃないか?」

 

「…とりあえず猛武蔵と猛長門には…犠牲になってもらおう」

気絶してなくて良かったと思う数名…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で入渠して大破してるんだ?」

 

「聞かないで欲しい……」

 

 

 

 

 

「そんなこんなで準備が出来たので宴会をしましょう」

 

 

「かんぱぁぁぁい」

 

「乾杯!」

「完敗」

 

「艦パイ…」ギリィ…

 

「ちょ…吹雪…」

 

 

「ん?」

「どうした?」

 

「司令官…私…改ニでは皆みたくボンだと思ったんですけど…ウフフ…あはは」

 

「??吹雪は吹雪で素敵じゃないか…?」

 

 

「……」

「素敵……」

「……………」

 

 

 

 

「吹雪が倒れたぞおお!?」

「提督!?一体どんな技をおお!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

「……何か?」

 

ここで見つめ合うのは金剛達。

 

「やはりあなたもダーリンを狙うのですね」

 

「…いえ…あの…」

「初めて接した男性の方なので…」

 

「見る目あるヨー!呑もう!呑もう!」

 

「ワタシとダーリンの出会いはデスネー………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……悔しいな…」

 

「私もよ…」

 

 

「もっと頑張らなくちゃね」

ニコリと陸奥が言う。

 

「はい…」

 

 

「2人ともお疲れ様」

 

 

「指揮官…」

「提督…」

 

「その悔しさはきっと君達を強くする」

「2人共…カッコよかったぞ」

 

「負けたのに?」

 

 

 

 

「こう言う言い方は良くないが…かなり震えたぞ?」

「実戦なら…生き残る事を何よりも優先して欲しいがな……」

 

 

ほら、おいで!と彼は言う。

 

誰も見ていない所で彼女達は彼の胸で泣く。

 

勝てると過信していた訳ではない。

ただ…悔しくて仕方ないのだ。

 

よしよし…と撫でる手が暖かくて…

 

「次は絶対負けないから!」

と、誓う2人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ…負けっぱなしは、良くないよな?」

「宴会に突撃じゃろう!?」

 

 

 

 

「ごーへい!」

 

「ごーへい!」

 

2人はよくわからんテンションで乗り込んで行った。

 

 

 




MVPは…だあれ?
戦果を問わずこいつでいいんじゃないか?と言う奴に投票をお願いします(๑╹ω╹๑ )


アンケート忘れてたんで急遽…ね。



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273話 その恋路は遠く儚くて、近く確かで…

「……」

 

「テートクさんー!」

 

「やほー!」

 

 

「お?姫ちゃん、鬼ちゃん久々だね」

 

「昨日も会いましたけど?」

 

 

「いや…多分相当…ひs「昨日も会いましたけど?」

 

「出番がないだけ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何を見てるんですか?」

 

「ん?コレ?」

「海からの贈り物…と手紙だね。」

 

 

彼が見る先には貝殻?で作った飾り物、そして彼の手には手紙があった。

 

「誰からもらったの?」

 

「んー…ル級」

 

「ル級から!?」

 

「そうそう…」

「好きなんですって言葉と一緒にね」

 

「嘘だよ!騙されたな!って言ってたなあ…」

 

 

「会ったのはそれが最初で最後だけども……元気かなあ…」

 

 

 

 

 

 

 

ーザッ…と視界にノイズが入る。

 

ル級が見えた気がした。

何で?

 

ドクン…と鼓動が早くなる。

 

何だろう…?

 

 

 

 

 

「そのお話…聞かせて?」

姫ちゃんが椅子に座る。

 

 

 

 

 

 

 

「んー…と言ってもねぇ…」

「郵便で届いたんだよね…普通に」

 

 

「んでね、その指定の日に会って…好きですって言われて…」

「そこに来たのがル級だったんだ」

 

「それから?」

 

「私にはやる事があるから…また会いましょう。伝えられて…会えて良かった…って」

 

 

「でも…騙されるなよ!って」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深海地中海棲姫は何とも言えない顔で黙っている。

 

 

 

 

 

 

ダメだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………青い海からこんにちは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

突然の姫ちゃんの言葉に彼はバッと振り向く。

 

彼の知る手紙の出だしの言葉と同じだから 

 

 

 

ぽろぽろと泣く彼女は続ける。

 

 

初めてお手紙を書きます。

面と向かっては…恥ずかしすぎるので

でもどうしても伝えたい事があって…。

 

ずっと一目見た時からあなたを目で追ってしまいます。

 

 

 

もし…

一目でもお会いできて…この気持ちを伝えることを許してくださるなら……岬に…灯台の麓に来てください。

11月…25日は寒いので暖かい格好で来てください。

 

 

 

「……」

「何でかな…」

「わかっちゃうの…」

 

 

「なんでかなあ?」

ぽろぽろと泣きながら彼女が問いかけて来る。

 

「…まさか……君が?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただの人間なのに…なぜか惹かれた。

 

艦娘…私達の敵を指揮する姿に。

彼女達に向ける優しい眼差しに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神様にお願いした。

愛するあなたに会いたい。

 

 

 

一目見た時から…ずっと好きになっていた。

 

 

 

でも私は…深海棲艦。

あなたとは…居られないの。

 

 

 

 

 

 

『ヲー(みのるといいね…その恋)』

 

彼女はヲ級。

私の友達…ずっとこの恋を応援してくれる友達。

2人で色んなことを考えるの。

この前は人魚姫?って本を一緒に読んだ。

 

 

 

 

 

 

『ヲ(でも…恋ってなに?友達と恋人ってどう違うの?)』

 

 

『ル…(親友はかけがえのないもの…恋人は……愛せる人?)』

 

 

『…ヲ(難しい)(前言ってた手紙の為に文字の練習しよう)』

 

『ルー(そだね)』

 

 

 

 

何とかあなたの記憶に残れないかな?

 

何とかあなたを知れないかな?

 

あなたの名前でもいい…知りたい。

 

 

少しでいいの…私の事を覚えて欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ニンゲン…いえ、艦娘になった深海棲艦?』

 

『居るわけない』

 

 

 

 

どこかで聞いたお話…

海の中の人魚は…何かを犠牲に陸に上がった。

でも…その恋は叶う事なく泡となって消えた…。

 

 

 

 

『ヲ!(無理だよ)』

 

『ル…(そうかなあ…)』

 

 

 

 

 

 

 

何と羨ましい事でしょう?

 

きっとその方は…愛する人の記憶に残るに違いない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その魔法は…どこで手に入りますか?

 

 

 

 

 

 

『…ヲ…(ないだろう)』

 

 

『ル…(ないかなあ…)』

 

 

 

 

 

 

 

 

お手紙を書いた。

せっせと頑張って覚えた文字で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あるよ?良い薬が…』

深海棲艦じゃなさそうな奴が声をかけて来た。

 

使えば一気に強くなるものらしい…コアデータとか言ってたかな?

思考能力や言語能力も強くなるから…喋れたりするらしい。

 

 

ただし…負荷が強すぎて体がもたない可能性もある…と。

 

 

 

 

 

 

その薬も使えず、手紙も書いたまま出せない日が続いた…

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日の事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦艦棲姫が私に言った。

 

『貴様の手紙…出しておいたぞ?』

 

 

 

 

『滑稽だな…化け物が人間に恋など…ましてや…敵に恋するとはな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

優しさ…からではなかった。

利用したのだ。

 

『まあ…来るだろうさ…バカならな。そこに派兵する。コレで奴をやれる…』

 

うそだ…。

私の手紙が…?

 

彼が来ちゃうッ!

殺されちゃう…ッ!!

 

『貴様は…敵と内通していたとして…謹慎してもらうぞ?』

『ククク…良かったな…沈んだ死体で会わせてやる』

 

 

 

 

 

私は投獄された。

作戦遂行にあたり邪魔になるらしい…。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな…

今頃彼は手紙を見てるのだろうか?

 

私と知らず…罠と知らずに来ようとしてくれているのか?

 

 

 

 

 

 

ダメだッ!!

彼は…死なせないッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は…その毒を飲んだ。

 

 

 

 

 

 

 

ドカァァァアン!!

 

 

 

 

 

 

 

『やらせない…!!』

 

『ほう…?ル級如きが逆らうか?』

 

 

『確かにその薬なら…知能も上ろう…喋れるだろう?でも…貴様には過ぎた薬…。毒に耐えられなくて…死ぬだけだ』

 

 

『それでもいい!あの人を守れるなら!』

『たとえ気付かれなくても!私じゃなくても!』

 

 

 

 

 

 

ズドオオン!!

 

私は牢をぶち破った外に出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

『裏切り者だぁ!』

 

 

『奴を…行かせるなぁあ!!』

 

 

 

 

私を止めようとするかつての仲間を私は薙ぎ倒して行く…。

 

 

 

 

 

 

 

基地内から出ようとするル級の前にヲ級が立ち塞がる。

 

 

 

『…ヲ……』

 

『ヲーちゃん!どいて!』

 

 

 

 

 

ヲ級はスッと避けてル級を通す。

 

『ごめんね…ヲーちゃんは怪我させたくないから…』

 

 

 

 

 

 

 

 

そして追手へと対峙する。

 

『ヲッ!!』

彼女は行けと言う。

 

 

 

『え!?ヲーちゃん?私を助けてくれるの?』

 

 

『嫌だよ!ヲ級ちゃんも!行こう?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……いいの…行って』

 

 

『あなた!喋れ…るの?』

 

 

その片手には…データのカケラが…。

 

 

 

 

 

 

『…ありがとう…ルーちゃん』

 

 

 

 

 

やっと言えた…。

 

 

 

『ヲー…ちゃん?』

 

 

 

『人魚姫は…陸の王子様に愛を伝える為に…』

 

『あなたは…あの人に会いに行く為に』

 

 

 

『私は…あなたにこの気持ちを伝える為に』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ヲーちゃん!!ダメ…ダメええ!』

何機もの飛行キでルーちゃんを遠ざける。

 

 

 

 

 

 

 

暗い私に喋りかけてくれて…

話を理解してくれて…

ずっとそばに居てくれて…

友達だと言ってくれて…

行こうと言ってくれて…

 

私の為に叫んでくれてありがとう。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ヲ級までも狂ったか……貴様も…処分だ…』

 

 

 

『親友の恋路を邪魔するなんて…思いを踏み躙るなんて許せないッ!!』

 

 

『ハン!ヲ級如きがあ!!』

 

 

 

 

 

勝てないのなんかわかってる…

でもね…

 

 

親友の為なら…惜しくない。

 

 

 

 

ありがとう…ルーちゃん。

 

 

私に友達って意味を教えてくれて…

私を友達だと言ってくれて!!

 

 

 

 

 

 

 

 

コレ…

 

 

『そのボタンは……まさかッ!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カチリ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドォォオォオオオオオン!!

 

 

 

 

小規模の爆発を背に彼女は海を駆けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある灯台の麓。

波風が少し強かった日だった。

 

 

『……提督さん…?』

 

 

「!?」

提督は驚いた。

目の前にはル級が居て…

 

 

 

 

 

『…私は……ル級…デス』

『一目見た時から…あなたのことが…好きで…好きで』

 

 

『戦う意志はないんデス…』

 

 

『ただ…それを伝えたくて…』

スッと差し出したのは海底で拾った貝殻で作った飾り物。

 

「…君は…」

 

 

『こんな深海棲艦が居たことを覚えていて下さい…』

 

 

 

 

「少しお話できない?」

 

優しい声だ…嬉しい…でも!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………嘘です!!』

 

 

「…え?」

 

 

『憎き提督を騙してやったぞ!!お前はバカだな!余程女っ気がないのか?!』

 

 

『…だから帰れ…今すぐに帰れ……』

ゲラゲラと涙目で笑うル級。

コレしかないのだ。

もし…間に合わなかったら…やられる。

 

次に同じ作戦を取られても…この人はきっと来てしまう。

 

 

 

『簡単に騙されるなよ…?』

 

 

「……ありがとう」

 

『!?』

何故お礼を言う!?

何故?何故?

 

 

「おかげで次は大丈夫だ」

「ありがとう…優しいル級…」

 

「会えるのをここで待ってるから…用が終わったら来てね」

 

ポンポンと頭を撫でられた…

やめてよ…どうせ死んじゃうのに…私は…

 

『バーカ!バーカ!』

私は引き返す。

 

 

またおいで…って言ってくれた。

 

 

 

 

 

 

それは叶わない願い。

ううん

でも…

 

 

 

 

 

 

少しでもあなたの記憶の傷になれたのなら!!

 

もう後悔はない!!

 

 

 

あとは…奴らを止めるだけ!

ヲーちゃんを助けるだけ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

基地近くで何体もの棲艦を薙ぎ倒しながら進む…。

 

 

 

 

 

 

 

『ヲ級ちゃんを…虐めるなあああ!!!』

 

 

『ガッ!?』

ヲーちゃんを虐める戦艦棲姫をぶち飛ばす…。

 

 

 

 

そこには既に死に掛けているヲーちゃんが居た。

『…ルーちゃん…?何で逃げなか…の?!』

 

 

『ヲーちゃん!ヲーちゃん!!』

 

 

『伝えられた?』

 

 

 

『うん…あなたのおかげで……あなたにも伝えたくて…それに!親友は…放っておけないから』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ばか…』

 

 

『うん』

 

 

 

 

 

 

 

私もここに来るまでにたくさん怪我をした。

ヲーちゃんも…もうきっと…

 

 

ヲーちゃんは言う。

ここにね…機雷を格納してあるとこを爆破するスイッチがあるの…

さっきの爆発より凄くて…きっと私達も…

だから逃げて…と。

 

 

 

だから私は言う。

私も押すよ…って。

 

 

 

…一緒に?

 

うん。

 

好きな人…守らなきゃだもんね。

 

 

 

 

 

 

 

え?

私を1人にしない…って?

それが友達だから…?

 

 

 

 

 

 

 

『『ありがとう…』』

 

 

 

 

『やめろ!わかった!やめるから!やめるから…!』

 

 

焦る元味方達…。

 

 

 

 

 

 

 

ぐっとスイッチに力を込める。

『人の恋路を邪魔する奴は…馬に蹴られて…死んじまえ』

 

 

 

 

 

カチリ…

 

 

 

 

 

ドカァァァアン!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

鉄槌の炎が私達の身を焦す。

 

天に近付きすぎだ蝋の翼が太陽に溶かされるように…

人に…愛する人に近付く代償は大きかった。

 

 

 

 

 

 

こんな事なら…好きにならなきゃ良かった?

 

ううん…

でも無理だ

 

 

 

 

だって…好きなんだもの…会ったら…素敵だったんだもの!

 

 

 

 

名も知らないあなた。

 

例え叶うことのない想いでも…

 

 

待ってくれてるだろう優しいあなた…。

もう私はそこに行けないのに…。

 

 

 

 

 

 

 

 

最後に手を伸ばしても…

私の上を鳥が飛んで行くだけだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー何故私達も艦娘も人の形をするのか?

 

 

 

誰かは言った。

 

 

 

人に憧れたからじゃないかな…って。

 

 

 

それなら確かにそうだ。

私は人に恋した…。

 

人に近付こうとした。

 

 

 

人魚姫は泡となって海に還る。

私達も…同じように……

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、一つの深海棲姫の集積地基地が大爆発と共に消えた。

 

この集積地の消失を機に勢力図が少し塗り替えられたが…誰もその功績を知らない。

 

例え真実を話したとて誰が信じようか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…来ないなあ……」

彼は待った…。

来る日も来る日も待ち続けたが、彼女が現れることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

「・…なんて話を想像したしたわ!」

姫ちゃんは言う。

 

「面白かった?私の作り話」

 

「なら何で泣いてんの?」

 

「話の出来がよすぎてね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督に来客があるらしく一旦解散となった。

 

 

「…ル…」

幻のル級が私に喋りかける…。

わかってる…。

 

それは私なんだ…。

あなたは私で…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……伝えなよ?」

 

「鬼…ちゃん…」

 

ダメだ…

私は友達を犠牲にして……

あんな酷いことして…

 

 

「ヲーちゃんも…私の為に死んだから……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は…親友にありがとうって言えて良かったよ」

 

 

 

「…え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ヲー…ちゃん?」

 

 

「…ずっと見てたから」

 

「知ってたの?」

 

「何となく…ね」

 

 

 

私は彼女に抱きついた。

「ごめんね…ごめんね」

 

「謝る必要はないよ…」

 

 

 

 

彼女は私の目を見て言う。

 

「ありがとう…私に友達と言う意味と生きる意味をくれて…」

「これからも…たくさん教えてほしい…」

「だから教えて…?あなたの…愛が…生まれ変わっても変わってないって事を……」

 

 

 

 

「…受け入れてくれるかなあ…」

 

「信じてるんでしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

執務室に入る。

伝えるんだ…しっかりと!!

ありがとうって!

ごめんなさいって!!

 

 

 

 

 

だがそこに彼はいなかった。

 

「オーヨドさん!提督は?」

 

「提督…ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

「あの場所で待つ…ですって」

彼女はニコリと笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ええ、わかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぁ…はぁ

と息を切らせながら走る。

 

 

 

灯台の麓…

私の約束の場所…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこにも彼は居なかった…

 

 

私の思い過ごしだったんだと…思った。

 

 

 

 

 

 

 

居ないじゃん……

 

溜息混じりに振り返った時…私は…とあるものを見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

壁に描かれた文字…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

心優しい深海のあなたへ…

鎮守府で待ってます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

壁にはそう書かれていた。

 

波風に晒されて一部は掠れてしまっている文字。

 

 

あの人の字だ…。

 

 

 

 

 

ずっと待ったのだろう…。

 

 

 

そう言えば…ずっと前に聞いたことがある。

提督は一時期ずーっと海で誰かを待ってたらしい…と。

 

 

 

 

 

 

 

ブワッと何かが込み上げてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……遅かったな?」

 

彼が言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テートクさん」

 

 

 

 

 

 

「長かったなあ」

 

「ずっと待ってたの?馬鹿じゃない?」

 

「待つと言ったからね」

「やはり君だったんだね」

 

「……」

 

 

 

 

 

 

「…」

 

 

 

 

「………」

 

 

 

 

 

 

「一目見た時からずっと好きでした…」

「こんな私でも…嘘吐きで…約束守らない私でも……」

 

 

 

「あなたを好きで居て良いですか?」

 

 

「ううん…好きで居させてください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…待ってた」

 

「ずーっとしっかり言ってくれるのを待ってた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どんな君も好きだよ…優しいル級ちゃん」

「ごめんね?何も知らなくて」

「ありがとう…俺の為に…命を懸けてくれて」

 

 

 

 

 

 

 

 

気付いたら彼に飛び込んでいた。

 

 

初めてまともに触れた彼の胸はは暖かくて…

流れ出る涙よりも暖かくて…

 

 

 

「おかえり…」

その一言で…私は報われた。

 

 

「ただいま…」

 

 

 

 

 

 

何年掛けてだったか…

以前の私ではないけれども…

 

 

人に恋焦がれた深海の姫は…

生まれ変わっても…思い出したこの気持ちは変わらなくて…

 

 

遠かったものは…近くにあって

儚い思いは…確かなものに変わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…何で!鬼ちゃんも居るの?」

 

「…私も生まれ変わって愛をしったから…」

「…私も提督さんに愛されたい」

 

「今日くらいは…今日くらいは!!」

 

「ライバルには…負けたらいけないから…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テートクさあーん♡」

 

「むっ!?姫ちゃん!近いよっ!?」

時雨がブーブー言っている。

 

「いいんですよー!私は前世から深ぁい愛でテートクさんを愛してますから!」

 

「??」

 

「もう離しませんからね?深い海の底より…深い愛ですから」




アンケートありがとうございます!
あと数日で締めにしますー!


その繋ぎではないですが…
こんな話でした。




少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!

感想などお待ちしてます!


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274話 その恋路は遠く儚くて、近く確かで… ② 姫ちゃんと1日夫婦

深海地中海棲姫ー

それが彼女の名前であり…深海棲姫であることがわかる。

 

 

建造で100時間とかいうデタラメな数字を叩き出した後にやって来た彼女は……元はル級と言う…お世辞にも強いと言えない存在だった。

 

 

 

 

 

私は恋した。

一目惚れってやつ…かな?

 

そこから…色々あって…今はここに居る。

 

 

 

深海棲艦ー

この世に仇なす存在…。

 

 

 

 

 

 

 

「……どう?」

 

「……上手になったね」

 

今何してるか?

テートクさんに朝ごはんを振る舞ってるのよ?

 

味…は、まだまだ間宮さん達には遠く及ばないけれども…それでも人に出せるくらいにはなったと思うの。

 

 

 

 

「……」

「美味しそーにたべてくれるのね?」

 

「おいしーんだもの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ずっと…ずっと好きでした」

 

「一目見た時から…指揮するあなたが…優しい眼差しを向けるあなたが…」

 

「ずっと夢見てた…その温かい眼差しを向けてもらえたら…って」

 

 

 

 

 

 

例え生まれ変わって…忘れたとしても…

    きっと思い出す…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…これが…人並み…街並み…」

 

目の前には現実離れした光景。

行き交うも人…人人。

 

私が焦がれた(憎いと思った)海じゃない場所(地上)は…こんなにも美しかった。

 

 

 

 

「……目が回りそう…」

圧倒的な情報量は私の脳を混乱させるらしい。

初めて見た外の景色はあなたと見た景色…。

 

 

「…お?姉ちゃんもカンムスって奴か?」

 

「…深海棲姫よ…」

 

「ほーーん…良い奴も居るんだな」

 

「え?」

 

 

 

「神崎ちゃんと居るなら…良い奴に違ねえよ」

どこにそんな自信があるのか?

 

 

 

「…ね?外に出る心配いらないでしょ?」

 

「……でも…石を投げる人が居ないわけではないでしょ?少なからず深海棲艦(私達)と言う存在に嫌悪感や恨みを持つ人が居るかも知れない…」

 

「石が飛んできたら…俺が払うよ」

 

「あなたに当たったら…私許せないけれど…」

 

 

 

 

 

 

「これが…アクセサリーショップ…」

「私が作った貝殻のブローチより…素敵な物ばかり…」

 

「ありがとうございますお客様…」

突然店員が話しかけてきた。

 

「確かに職人の手作りで一つ一つ丁寧に作っております…世界にふたつとないものですが…」

「誰かを想い作ったものには私共では勝ち目はございません」

 

「あくまで…その方の代わりに思いを届けさせて頂く役割を頂戴しているだけなのです」

 

「ですから…神崎様からすれば…ここのアクセサリーを全て…と言われても、あなた様のお作りになられたブローチの足元にも及びませんよ」

 

 

「そう言われたら…買ってプレゼントしにくくなるじゃないか…」

 

「申し訳ありません」

と、笑う店員さん。

 

「姫ちゃん?何かいいのあった?」

 

「全部素敵…」

「でも…テートクさんが選んでくれたものが……いいな」

 

 

「なら…コレかな?」

と、彼が選んだのは真っ赤なルビーの薔薇のブローチ。

真っ赤に燃えるような恋…をモチーフにしたとか。

 

「テートクさん…選ぶの早い…」

なんて感心してると…

「…姫様?最初からコレをご予約されてましたから…」

コソリと教えてくれた…。

 

 

こら!と少し照れて赤くなるテートクさんに聞いた。

「似合ってる?」

 

「もちろんだよ」

彼は笑顔で答えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    

 

 

「化け物ッ!!」

そんな言葉と共に私に石が飛んできた。

 

大丈夫…痛くない…。

 

 

 

 

 

 

え?

 

 

 

 

石は私に当たらなかった…。

 

 

 

彼は前に立った。

額から少しだけ血が滲んだ…。

 

「テートクさん…テートクさん…!?」

 

「……」

彼は愛する人に寄り添って周りを睨んだ。

 

「お前…頭おかしいんじゃないのか…?」

「そいつは…人間の敵だろ!!」

 

 

「違う…」

おかしいと思う奴も居るだろう…

 

 

「やっぱりお前…おかしいわ!!」

 

 

 

「だから何だッ!!」

彼は言う。

 

 

「……彼女は悪い奴じゃない…」

 

「皆の為に戦ってくれた事もある」

「その、彼女を侮辱するな!!」

 

 

 

「…なにを…お前は…」

 

「この子が悪さをしたのを見たのか?」

「この子が人が憎いと…誰かを手にかけたのを見たのか?」

 

「人間じゃねえ…だろ…」

 

「辛ければ涙も流す…嬉しけりゃ笑うぞ?」

「俺らよりよっぽど人らしいと思うが?」

 

彼は頭を下げる…。

 

「石を投げないで欲しい…」

「見た目や名前だけで判断しないで欲しい…」

「彼女の優しさを…お前達は知らないだろう?」

 

「命を投げ出してまで…守ってくれる方な優しい人なんだッ!俺の…かけがえのない人なんだ!」

 

鬼気迫る…と言うのはこういうことだろう。

 

誰一人として…それ以上に何も言わなかった…言えなかった。

 

 

男達は…優しい商店街連中に連れて行かれた…。

 

 

 

「テートクさん!?デコ…血が!!」

 

「ん…大丈夫。君には当たってない?」

 

「私なら当たっても平気なのに!なんで!!」

 

 

 

 

 

「守ると言っただろう?」

「それに…君に傷ついて…人を嫌いになって欲しくないから」

 

 

 

 

 

 

 

 

嬉しかった…。

言葉にならずに涙となって流れ出る思いは…

私の口から出ることを許さなかった。

 

石を投げられる覚悟なんかしてた筈なのに…

あなたなら…そうすると分かるからこそ…余計に嬉しくて…。

 

 

 

顔を覆って泣く私をあなたはずっと抱き締めてくれた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう一度…あなたにしっかりと伝えたい。

 

聞いてくれる…かなあ?

 

 

 

「テートクさん?」

 

「ん?」

 

「もう一度…だけ私を待っててくれませんか?」

 

 

私はもう1度…ワガママを言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりここだ…」

 

「…2人の思い出の場所」

 

そう…町外れの灯台の麓。

 

壁にはまだ彼の書いた言葉が掠れてても残って居て…

それが夢じゃないんだと教えてくれる。

 

 

 

 

 

 

「……もう一度聞いてください」

 

 

 

 

「一目見た時から…ずっと…ずーっと好きでした」

 

「たくさん文字も練習して…お手紙とブローチを作りました」

「…ル級としての私は…あなたの名前も知らないまま…散ったけれども…」

 

「あの時…一目でもあなたに会えて良かった!」

 

「待っててくれて…ありがとう!行けなくて…ごめんなさい」

 

「ずっとちゃんと言いたかった。思い出すのが遅くてごめんなさい」

 

 

 

 

 

「あの手紙もブローチも…ずっと待っててくれてありがとう」

 

 

「私を…庇ってくれて…ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう一度出会ってくれて(建造して呼んでくれて)…ありがとう」

 

 

 

 

「愛してると言ってくれて………あり…が…と…ぉぉ」

 

 

嗚咽と共に出てくる涙と言葉は…

波風にかき消されないようにしっかりと出したつもり…。

 

 

 

 

「愛してますッ!!」

 

 

 

 

ポツポツと涙が地面へと落ちて消えてゆく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コレを…君()に」

 

 

 

 

テートクさんが取り出したのは2つの指輪…

 

そのうちの一つを彼は私の前差し出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……ル…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私から出てきたのは…かつての私(あの日のル級)

幻影…だろうか?

 

 

でもわかる…この子も私なんだ…って。

 

彼は私と私を見ながら言う…。

 

 

「……俺の為に…ありがとう」

「ずーっと待ってた」

 

「知らなくて…ごめんな…俺を…守ってくれて……

 

 

 

 

 

 

 

    ありがとう」

 

 

 

 

 

彼はそう言うと幻影(ル級)に指輪を渡す…。

彼女は嬉しそうに涙混じりで笑う。

 

 

 

 

 

彼が彼女を抱き締めようとした手は…すり抜けてしまった。

 

でも、彼女はニコリと笑う。

 

 

 

 

 

 

『ル!』

 

 

 

 

精一杯の言葉…

人が聞いたらルの一文字…一言だろう。

その言葉は伝わっただろうか?

でも私にはわかる…。

 

 

『ずっと好きです』

 

 

って伝えてるんだって…

 

 

 

 

 

彼はくしゃくしゃの方で頷く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女が振り向いて笑う。

うん…

 

彼女は私の中に…スッと消えていった。

 

 

 

 

「……コレも……君に」

 

もう一つの指輪…。

 

指輪は一つで良いのに…。

それでも彼は私ににも…過去の私(ル級)にも…

 

「受け取ってくれるかな?」

 

 

 

 

 

 

「深海棲艦に指輪を渡すなんて…きっとバカなのよ…」

「…提督に恋する私もバカなんだけど…」

 

 

それでも…

それでも…

 

『バカで良い』

「しょうがないよ…お互いに愛してしまったんだから…」

 

 

「そうね…バカ同士でお似合い…ね」

 

 

左手に今迄夢見続けた指輪が入る。

 

 

 

そっと寄せられた唇は…どんなものよりも温かくて…。

 

 

 

 

 

 

私は泡にも海にも帰る事なく…ここにいる。

きっと卑怯だと言われるだろう。

きっとバカだと言われるだろう。

 

でもいい…。

 

だって…それ以上に愛してるから…。

 

 

 

 

「…深海棲姫に指輪渡すなんて聞いたことないけれど…」

 

「良いの!」

 

「…もしかしたらどこかで艦娘になってたりして」

 

「それはそれでありかも?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰ろっかと帰る道から見た…。

 

夜の街並みは…冷たい海の底と違って…温かな光と音が溢れていた。

 

戦火の()でもなくて…喧騒(叫び声)でもなくて…

生活を彩る街灯や窓の光…そして人々や生活の音や声…

戦場とは違った生きている事を実感できる。

 

 

 

 

私には無縁な世界だったはずなのに…

 

私には遠い世界だったはずなのに…

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたは私の手を取ってそこ(行きたい場所)へと連れて行ってくれるんだもの…。

 

 

「はぐれないかな?」

 

「なら…力を込めて…君の手を掴んでるよ」

彼が手を握る力を少しだけ強めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は冒頭部へ…

 

 

「…良かった…たくさん練習して良かった」

 

「文字もきっとたくさん練習したんだな」

 

「……うん」

 

「大好きな人の為だから…」

 

 

もうすぐ夫婦は終わる。

でも…もう少しだけ…お願い…

 

「もう少しだけ…最後のその時間が終わるまで…そばに居させて…皿洗いも何もかも後でやるから…」

 

彼はそっと私を抱き寄せてくれる…。

ちゅっ…と唇を合わせて…

 

 

その時間をずっと噛み締めた…。

 




うるっとしてくれたら嬉しいです。


少しでもお楽しみ頂けたら幸いです。

感想などお待ちしています!


休みます(๑╹ω╹๑ )!


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275話 お芋騒動、若くはお芋の乱

アンケートありがとうございました(๑╹ω╹๑ )!
そんな訳で吹雪回


吹雪…おめでとう!
そしてごめん!




「MVPは吹雪です」

 

「え?」

 

「撃墜スコア…(風呂の中で3)…サポート2」

「………演習外でのスコアが凄いな…戦艦と軽巡をヤッたのか…」

 

「まあ…そんなこんなで君だよ」

 

 

 

「やったあ!!ありがとうございます!」

 

「お祝いしてもいいですか?」

 

「ん?お前がするのか?」

 

「はい!皆さんに料理を振る舞いたくて…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この料理があんなことになるなんて…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オハヨー!ダーリン♡」

 

と、話しかけてきたのは………?

 

 

 

 

 

 

「こ、こんごー?」

 

「イエス!他に誰と間違うノー?」

 

 

「………誰?」

 

金剛…のはずなんだけど何か違うッ!!

なんだろう…えと…

 

造形が違う!なんか違う!!

 

 

 

 

「わかったぞおおお!?」

しばふ…だッ!!

しばふ顔だぁぁあ!!

 

 

 

 

 

「大淀おおお!金剛が!金剛がぁあ!!」

 

「て、提督?どうしたのですか?」

 

 

「あ!司令官!おはようございます!はーい!武蔵さぁん。ふかし芋ですよー」

 

「吹雪…か。大淀も武蔵も聞いてくれ!金剛が!!」

 

「相棒…どうした?金剛がはっちゃけてるのはいつもの事だろう?」

 

「そーですよー?司令官?司令官も芋食べますか?」

 

 

「芋?」

 

 

「吹雪の手作り料理らしいぞ!……美味いな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボフン…

 

 

「ぬ?」

 

 

 

 

 

 

俺は理解した。

一瞬で理解した。

この芋が原因だと…

 

武蔵もしばふ顔に変わったのだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「むさしいいいいいい!!!!おまっ…むさっ…え…おお!?えええ!?」

 

 

 

凛々しい武蔵が…

ほんわか系な垢抜けた感じにいいぃぃ!?

これは…可愛い…なんで言ってる場合か!!

 

 

「……武蔵雪です」

 

「大和波です」

 

 

「ほ、ほわぁぁぁぁ!?!?大和おお!お前までええ」

 

 

 

 

「ふ…吹雪ぃ??」

救の問いかけに吹雪はニンマリと笑って言う…。

 

「故郷のしばふ村から送られた…芋」

「芋食え!!芋おお!!」

 

「え?しばふ村って…お前」

 

「はい、私と赤城の出身地ですが?」

 

 

「あー…赤城と吹雪は…建造じゃねえもんなあ……」

妙に納得した。

 

 

村娘かあ…

 

 

 

 

 

 

「でも…やめろぉ!そんな事したら…見分けが…」

 

 

「はい!妹たち!しゅーごー!」

 

パンパンと手を叩いて掛け声と共にゾロゾロと入ってくる妹……妹!?

 

 

「ちなみにッ!私の姉妹も…髪型同じにしましたから!」

「叢雲に至っては…髪の色も変えさせましたから!!」

 

 

「見分けもクソもあるかぁぁ!!」

 

 

迫る吹雪軍団。

「芋食べましょ?提督♡」

 

 

「割とノリノリじゃねえか!!特型の奴等めえええ!!」

 

 

 

さあ…司令官もおいでー?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶっきー!?!?」

「ドイツが本物なんだようう」

「……監禁した時俺でXXXしてたのは誰だぁぁあ!?」

 

「ちょ…!司令!!」

1人の吹雪(仮)が赤面して慌てふためく。

 

「貴様だァァァア!!」

 

救は吹雪(本体)を捕まえる。

 

 

 

「今だァァ!!」

 

俺は吹雪にムンバのコーヒーを飲ます。

都会の洗礼…ッ!

お高いコーヒーッ!!

田舎では味わえない…少しお高い奴ッ!!

 

 

「…ん…んぐ…んあ…」

 

ボフン…

 

 

 

「アレ?わ、私は……」

 

 

「よしッ!!目論見通り…なんか都会っぽい子に(アニメ版の外観に)変わったッ!」

「事前に睦月で試したところ…にゃしいと言わなくなったから…まさかとは思ったが…古鷹や加古にも効果はあったし…な!!!」

 

 

 

一つの目論見が外れたとすれば…大元をどうにかしても全部解決にはならなかったことかな?

 

「司令官…?私…何を……」

 

「いいんだ…忘れよう…」

 

俺は吹雪をぎゅっと抱き締める…。

 

 

 

 

「いや…良くないですけど…」

「いい話だったーみたいな感じにしないでください」

 

「その声は白雪と叢雲……?ってぇ!?私いい!?」

 

「…お姉ちゃんがそっくりにしたんでしょ!?てか何?その外見はあ!?…全く…早くこんなお遊び…や……め…うっ…」

 

 

 

「ん?どうした?白雪…?」

 

 

「…う…あ……」

 

「叢雲まで!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「吹雪です…ヤッツケチャウンダカラ…」

 

 

 

「白雪が吹雪になったぁぁぁぁあ!?」

 

 

「え?何?取り込まれたの?」

 

 

 

 

 

 

 

バタン!とドアを開けてやって来た吹雪(?)

 

「…吹雪ですよ…ヤッツケチャウンダカラ」

 

「あの眼帯……天龍…だとぅぅ!?」

「刀は仕舞ええ」

 

 

 

 

 

吹雪(金剛)デース」

 

「くっ!こっちは微妙にキャラ残してやがる!」

 

 

 

「吹雪ですー吹雪ですー」

 

「テメー赤城ィィ!嘘つけぇ!!!元からだろうがァ!!」

 

「ちっ…バレましたか…」

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官様ぁ…♡」

 

「お前らは出てくんなッ!!世界が崩壊してしまうだろうが!!」

 

「もう…世界観なんていまさr……ヤッツケチャウンダカラ…」

 

「桜大鳳おおおおおおおお!!!」

 

 

 

 

「…ん?他の吹雪が桜大鳳吹雪に群がって…」

 

「ナンダァ!?コノムネハァァァア!!!」

 

「羨ましいんじゃコルァァ!!」

 

「引きちぎっちゃうんだからッ!!」

 

「む…武蔵ッ…天龍ううう!桜大鳳おおおお!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まあ…尊い犠牲になったってことで…今のうちに逃げよ!」

 

「司令官!?!?」

 

「大丈夫…目が覚めたら元通りだから…」

現実逃避?してもいいよね?

 

「しれー!?戻ってきて下さい!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「吹雪…ちゃん?本物…?」

 

「睦月ちゃんッ!!無事だったんだね(?)」

 

 

「吹雪ちゃん………にゃしい」

 

「え?」

 

「お腹すいちゃって……にゃしい…」

「…やっつけちゃうんだにゃしい」

 

 

 

「ダメじゃねえか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんかむかついてきた…」

「…司令…全員まとめてやって来ていいですか?」

 

「吹雪…?」

 

「元は私のせいなんですよね?」

 

 

 

「「「はい!そうです!」」」

 

俺や大淀、何とか生き残った古鷹は言う。

後?全滅だよっ!!

 

 

 

「……うう…行ってきます」

吹雪は艤装に模擬弾を装填して向かう…

 

 

 

 

が…

 

 

 

 

想像して欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前に自分と同じ顔が無数に自分に迫るんだ。

 

 

「ヤッツケチャウンダカラ!」

「ヤッツケチャウンダカラ!!」

 

 

 

 

 

ポキリ…

吹雪は自分の心が折れる音がした。

 

 

 

 

「しれえええ!無理ですー!無理ですってえええー!!」

 

 

「帰ってくんなぁあ!!責務をぉぉ…果たせえええ!!r

 

「無理ですッ!心折れた!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えへ…えへへ…心ってぇ〜折れる時…ポキって音するんですねぇ…」

 

「おーい!特型ー!!かえってきてー!」

 

「あー…古鷹さぁん…探照灯は…ダメですよお…お目目…狙われますからねえ」

 

「何の話!?」

 

 

 

 

「…えへへ……しれぇ…」

 

「…うわぁ……」

 

 

 

「…お困りのようねぇ?指揮官クン…」

 

「蒼朝日ッ!?」

 

「…吹雪ちゃんが大量に居るのは…何でかしら?」

 

 

「実は…かくかくしかじか…」

 

「……深海棲艦に食べさせたら平和になるんじゃないの?それ」

 

「俺の体もたねえよ」

 

「……まあ…そのうち元に戻るんじゃないかしら?」

 

「何でそんなに………ん?」

 

 

「指揮官クゥン………ヤッツケチャウンダカラ…」

 

 

 

 

 

 

 

その後の記憶はない。

 

 

起きたら皆普通に戻っていた…。

 

あれは何だったのか?

聞いてみても誰も知らないと言う…。

 

 

悪い夢でも見てたのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

「司令官〜!故郷からお芋が届いたんです!一緒に食べませんかあ?」

 

「おー!いいね!じゃがバターにしよう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うまそー!」

 

「あー!ふかし芋だー!いいなあ!」

 

「みんなで食べましょうー!」

 

 

「「「いただきまーす!」」」

 

ボフン…





ギャグなのかホラーなのか?

もしも他のキャラがしばふ顔になったら…
見てみたい…。


吹雪は芋成分次第でキャラが変わるらしい…。


原作絵もアニメverどっちの吹雪も好きなんですけどね(๑╹ω╹๑ )


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276話 夕立と1日夫婦 ①

とあるお昼の執務室。

 

 

 

 

「ガジガジ」

 

「…あの」

 

「ぐるるる」

 

 

 

 

 

 

 

 

「夕立さん?頭を齧るのをやめて貰ってもいいかな?」

 

そう…俺は今、夕立に噛みつかれてます。

 

 

 

 

 

 

 

「夕立は怒ってます」

 

「何に?」

 

「わからないっぽい!?」

 

「うん……」

 

 

 

 

 

 

 

「嫁回遅くない?最初から出てるのに遅くない?」

「忘れられてるのかと思っちゃうっぽい!!」

 

 

 

 

 

「艦これったら私でしょ?」

 

 

「メタはやめましょうね?」

 

 

 

他の家(他作品)の夕立は割とメイン張ってるっぽい!」

 

「だからメタはやめて下さいッ!!」

 

 

 

 

 

「ともかく!今日の夜と明日はたくさん構って欲しい…な」

 

「急にしおらしくなった…だと!?」

 

 

 

 

 

 

夕立は犬…それも子供っぽい感じ。

気がつくと近くに居る。

 

地雷原への言葉の誘導も夕立が60%ではあるが、改ニ以降は少し大人びたというか…少し落ち着いた気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

その夕立はモジモジとしながらではなく、気まずそうに言った。

 

 

 

 

「でも、その前に……ねえ?提督さん?」

 

「ん?」

 

「ずっと謝りたかった事があるの」

 

「何だい?お菓子勝手に食べた?ジュースかな?」

 

「う…それもだけど…」

「ユウダチとの闘いの時…私1人くらい居なくたって明日はやってくるって言った事……」

 

以前に夕立は、ユウダチと決着…いや、彼女を救うべく自らの命を省みずに出撃しようとして俺と口論になった。

先ほどのセリフはその時に彼女から出た言葉だった。

 

「……ぽいい…」

「ごめんなさい!…提督さんの気持ちを考えずにあんなこと言って……ごめんなさい!」

 

彼女はやっと言えた…とばかりに安堵から涙を流す。

 

だが…その涙は不安の涙に変わる。

 

 

もし…許してくれなかったら?

幻滅されていたら?

 

夕立は怖くて顔を上げられなかった。

 

 

「…夕立?」

呼び掛けてもプルプルと肩を震わせて頭を下げている。

ずっとで思い詰めて居たのだろうか?

日に日に大きくなる不安は、後悔はきっと彼女に重くのしかかっていたのだろう…。

 

どれだけ明るく振る舞おうとも、どれだけ見てみぬふりをしようとも…ソレは背中から離れない。

罪悪感は一度抱いたらずっと…離れない。

 

 

 

 

 

 

 

「夕立…」

トン…と肩に手を置く。

ビクン…と体がはねる。

 

 

 

「……」

キュッと瞑った目を開きたくても開けない。

怖くて怖くて仕方ない。

大好きな提督さん。

私の為に怒ってくれた提督さん…。

 

時雨を虐める大石提督に縋りついていた私を助けてくれた…大好きな人。

 

本当に大好きなんだ…。

あなたの為なら…死ぬ事だって怖くない。

 

あなたの居ない明日の方が怖い。

 

 

 

なのに言ってしまった。

アレは嘘ですなんて言わない、本心だった。

 

 

……

肩に手が置かれた…。

ビクンと体が跳ねてしまった。

怖い…何を言われるのか…怖い…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

抱き締められた。

 

「気にしてないぞ?」

「まあ…寂しかったけど…その後ちゃんと分かってくれたし…」

「怒ってない」

 

「作戦で指輪を渡した訳でもない」

 

「俺の意思で渡したんだ」

 

 

「…………」

 

 

「君の事を…愛してるから」

 

「提督さん…」

「ありがとう…っぽい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただ…お菓子やジュースの件は別だがな…」

提督さんの目が怪しく光ります。

 

「あ…」

 

「無くなってたんだよなあ…プリンが……」

 

「ひゅーひゅー」

 

「口笛も吹けてないぞう?」

 

「お、美味しそうだったので…つい」

 

「つい?」

 

「つい…」

 

「で…4つも?食べちゃう?」

 

「美味しくて……あう…ぽぃ」

 

「ギルティ〜〜」

 

 

 

 

 

 

「ひえっ!?」

逃げ出そうとする夕立であるが…無理だ。

なぜなら抱き締められてるから…。

 

「ぽ…ぽぃぃ……暴力は反対…ぽぃ…」

 

「大丈夫……」

 

「暴力ではないから…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぽ!?!?ぽいいいいい!!!!!!!」

 

それはそれは口に出すことも憚れる罰。

夕立の断末魔が響いたそうな。

 

 

 

「もう…お嫁に行けないっぽい」

「あ!でもケッコンしてるから問題ないっぽい」

 

 

「まだ元気だな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






夕立回です!


少しでもお楽しみ頂けたら幸いです!

感想などお待ちしています。
お気軽にお願いします(๑╹ω╹๑ )


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277話 夕立と1日夫婦 ②

朝ご飯の仕上げ前から考え込む…。

 

「………ぽぃ…」

朝からオムライスは…重くないだろうか?

 

あの人が好きだと言うオムライスを作った。

前にかなり褒められたので、それが嬉しくて嬉しくて…。

 

お昼はお出かけした先で食べたいし…。

夜は…あの人のカレーが食べたいとお願いしている。でも、やっぱりまた褒められたくて作ったオムライス。

 

「うーーーん…」

 

朝からオムライスは重いって言われるかな?

ううん、きっとそう思っても提督さんはそう言わないだろう。

捨てたカレーを食べるような人だ…ここで捨てても意味はない。

 

比叡さんも「重くない?」って言ってたケド…比叡さんも足柄さんも朝からカレーやらカツから出すもん。

 

 

日頃から提督さんには感謝している。

飛びついても怒らずによしよししてくれる。

少し辛い時には隣にずっと黙って座ってくれる。

 

私が…酷いこと言っても……優しく包んでくれる。

目の前に立って真っ向から叱ってくれる。

 

私は…そんな提督さんが大好きだ。

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう…ぽい」

「ご飯…できてるよ」

 

 

「…おはよう…」

 

ドキドキする…

「今日の朝ご飯は……朝ご飯は……

 

「お?夕立のオムライスの匂いがするな?オムライスか?」

 

「…ぽい」

キツい?

私は…きっとバk「食べたかったんだ!ありがとう!」

 

 

「朝から重くない?」

 

 

「何を言うか!好きなものはいつでも食べられるぞ?!」

ニコリと言う提督さん。

「あ…でも……」

耳元でコソリと言う。

 

「あまり夜中に食べてると間宮達に怒られる…」

 

 

ニコニコと朝からオムライスを頬張る提督さん。

美味しそうに食べてくれるその姿はとても見ていて幸せになる。

 

「夕立のオムライスは美味いなあ…」

 

「ありがとう…」

少し照れながら返す。

その顔を見られるだけでとても嬉しいっぽい。

 

 

 

 

街に行く時も腕を組んで引っ付いて…。

 

それほどに好き?と聞かれたら迷わず、うんと答えられる。

 

 

スイーツも…買い物も…

姉妹や吹雪達と巡るのも大好き!

 

でも…どれだけ甘いスイーツの味すらも忘れるくらいに…

あなたとのこの時間がたまらなく愛しい…。

 

 

 

 

そんな時…

 

 

「んあ?チャラ男の提督さんじゃないっすか!」

 

「噂通り…女連れですかー?」

 

「公務もせずに…デートなんて…」

「早く海を取り戻してくださいよー?」

ケラケラと笑う馬鹿ども。

 

 

 

「行こう」と相手にしない提督さん。

何で?何で何も言わないの?

馬鹿にされるのが悔しくないの?

あなたはそんな事言われる人じゃないよ?

 

手を引っ張る提督さんに彼らはまだ言葉を投げつける。

 

 

「逃げんなよ腰抜け」

 

「女に戦わせて…自分は逃げんのかよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

我慢できなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バカにするな…ッ」

 

 

 

「夕立の提督さんをバカにするなッ!!!」

紅い目をギラつかせて睨みながら叫ぶ。

 

「この人がどれだけ辛い思いをしながら今日まで戦ってきたかも…何も知らないクセにッ…」

 

「一生懸命…私達の為に作戦を立ててくれてるんだ」

 

ダメだ…

泣いたら負けなのに…

 

「何も…ぐすっ…知らないくせに……ゆーだちの好きな人を…バカにするなぁ……」

 

 

悔しい…

こんな奴らすぐに倒せるのに…

何もできないのが悔しい…。

 

「あああああっ!!」

 

艤装を展開出来れば…

でもダメだ!!

それは提督さんに迷惑がかかる。

 

「泣いてムキになって…バカじゃねえの?」

ケラケラと笑う男。

 

 

 

 

 

「ありがとう」

提督さんは言います。

 

「でも…でも!」

 

 

「……お前ら…笑ったな?」

「俺の大切な人を馬鹿にして笑ったな?」

 

「…え?」

 

「俺の事は構わん!だが…彼女達の事なら話は別だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督さんはその男達を……のはずだったのだが…

 

「オウ…救ちゃんと夕立ちゃんに文句か?」

 

「俺らの街のヒーローに…イチャモンか?」

 

ぞろぞろと集まってくる市民達。

男でも「ヒッ…」とか言うのねと思った。

 

 

「提督ちゃん!こいつらはオレ達がシメとくからよ!デート楽しんできてくれや」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督さん……」

 

「夕立?」

 

「何で黙ってるっぽい?!夕立は…悔しいよ」

「大好きな人が馬鹿にされるのは悔しいよ!あんな奴等…守るなんて……」

 

絶対に負けないのに…と言う言葉を飲み込む。

 

「ケンカしても負けないのに…てか?」

 

「……ぽい」

 

「でも俺の代わりに怒ってくれた…」

 

「そりゃ…愛してる人っぽい!泣くほど悔しくて仕方ないぽい!」

 

 

ぎゅっと抱き寄せられる。

 

「ありがとう…な」

 

「……」

 

「お前が怒ってくれたから…俺は嬉しいんだ」

ゆるしてくれないか?と提督さんは言う。

 

「ちぅ…してくれないと…許さないっぽい!ヘタレ提督さん…」

 

「……」

ヘタレ…ねえと呟きながら彼は私の肩に手を伸ばして…キスした。

 

 

 

 

 

「ありがとう…提督さん」

 

 

「あの時…私達を助けてくれてありがとう。ずっと側に居てくれてありがとう。支えてくれて、叱ってくれて…ずっと愛してくれてありがとう」

 

「どんな時でも…提督さんが居たから頑張れた。ずっと…ずーっと辛くても提督さんのおかげで雨も止んだの」

 

 

「提督さんの夕立で良かった…」

 

「もう…私の命は提督さんと共にあるから…」

 

「さみしい時には甘えさせてください」

「撫で撫でして欲しいけど…黙って側に居てくれるだけでもいいっぽい」

 

 

「不束者ですが…夕立を………幸せにしてください」

「今も幸せだけど……もっとあなたとの幸せを夕立にください」

 

暴力の冷たい手じゃない…。

愛情の温かい手…。

 

夕立は救の手を取り頬擦りする。

この手が…好き。

 

そして…

 

 

 

 

 

ガブリと噛み付いた。

 

 

「ホワッ!?」

驚く救。

ぽ犬に噛まれるとは!!

 

 

「ゆーだちのものっぽい!」

 

「マーキングなんて……後が怖いぞ…?」

 

「今は夕立が奥さんっぽい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カレー♪カレー♪ていっとくさんのっカレー♪」

 

「そんなに嬉しいか?」

 

「ぽい!」

 

「そう言われるとこっちも嬉しいな」

 

「頂きまぁす!」

「しあわせえ〜ぽい〜♡」

 

「提督さんは…旦那さんはそろそろ知るべきっぽい!いかにカレーが素晴らしいかを…」

一口一口が幸せを運んでくる。

この時のカレーだけは味が伝わってくる。

ドキドキと幸せと…の味。

 

 

「あのね?旦那さん」

私はゴソゴソとカバンを漁る。

 

「はい」

 

夕立が差し出した小さな箱。

 

「開けても?」

 

「…ぽい」

 

箱の中にはメッセージカードが…。

 

 

 

 

 

 

「大好き」

 

そう大きく、一言書かれたカードが。

 

 

 

 

 

そしてその下には…。

夕立とお揃いの花型のピンズ。

 

「…夕立…」

 

「は、恥ずかしいからあまり見ないで?」

「ピンはお揃い…ぽい…良かったら…ううん、是非つけて欲しいっぽい…」

 

 

「ありがとう…」

と、さっそく着ける。

 

「似合う?」

 

「可愛いっぽい!」

 

 

 

彼は知っていた…たまたま知っただけではあるが…

コツコツとお小遣い…もとい、給料を貯めていた事。

銀細工のお店に何度も通って作ったこと。

失敗を重ねても重ねても…何度も諦めずに、お金が掛かろうとも納得のいくお揃いを作ろうとしていたこと。

 

 

 

「俺もコレ…」

 

彼もまた、初めてやった手編みのマフラーを渡す。

鳳翔達に聞きながら一生懸命に編んだもの。

そんな彼女の為に寸暇を惜しんで作り上げたもの。

 

 

「ぽ…い」

 

お互いにお互いの愛情を確かめ合うように引っ付いた。

夕立は嬉しくて泣いた。

胸が張り裂けそうな程に嬉しかった。

首に巻いたマフラーは…どんな寒空の中でもきっとあったかいだろうと思った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら?夕立ちゃん…どうしたの?そのマフラー」

鳳翔さんがニコニコと問いかけてくる。

無論、鳳翔はその出所を知っている。

 

「提督さんからのプレゼントっぽい!」

 

「良かったわね〜。とってもあったかそう」

 

 

彼女は満面の笑みで言う。

 

 

「ぽい!!」

 

 

 

 





夕立…



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278話 酒好きの集い

「あら…」

 

「…うまぁい!」

 

「おいし…」

 

 

「そうだろう?」

 

 

これは那智がBARを開く少し前の話。

 

 

 

何やら上機嫌な那智。

柄にもなく笑顔で口笛なんか吹いてさ。

 

「お?那智、どうした?上機嫌じゃないか」

 

「む?提督か…。例のやつOKでたぞ!明日の夜…来るといい」

 

「ほー!マジか。そりゃあ楽しみだ」

 

 

 

 

さて…例のやつとは?と思ってるだろう?

知りたいか?

知りたいだろう?

知りたい筈だ…そうに違いない。

 

私の趣味は…酒だ。

え?オッサンみたい?

 

沈めるぞ…?

 

 

 

 

酒はいいぞ?

体にも良いし…コミュニケーションの一つにもなる。

無論…飲みすぎると体に良くはないが…そこは個人の采配次第だろう。

 

提督もなかなかイケる口でな…。

さすがというか…色々と入手経路を持ってるらしく…私もそれに肖っている。

 

 

が…

自分で飲むだけではつまらない。

 

 

 

 

 

なので…だ。

 

 

「鳳翔さん…お願いがあるのですが」

 

「はい?何ですか?」

 

 

「その…定休日でいいので…ここでBARをやらせてもらえないか?」

 

「ばー…ですか?」

 

「ああ、私のお酒コレクションを…お金は少し貰うが、皆にも楽しんでもらいたい」

「酒やつまみは用意する!店と席だけ貸してもらえると嬉しいです」

「片付けや掃除もしっかりするし…手伝いもする」

 

「だから、どうか…試しに一回でもいい!お願いできませんか」

 

 

ピッと頭を下げる那智。

鳳翔はクスッと笑い…

「どんなお酒があるのですか?」

と聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

BAR 酒好きの集い

 

鳳翔の看板を見た那智から頼まれた救が作った看板を玄関に立て掛け、はじめてのBARが開店した。

といっても…居るのは

提督に鳳翔、隼鷹に千歳。

 

 

 

 

2週に2回の不定期鳳翔の休みに夜にだけ開く大人の空間。

 

いつしか…新たな憩いの場となった。

 

 

 

 

那智のチョイスするお酒は人気だった。

その日の気分に合ったカクテルや酒を出し、うんちくもウザくない。

 

鳳翔のつまみや、習って作った…もしくは取り寄せたつまみも人気の理由の一つだった。

 

 

 

実際、鳳翔と俺もよく顔を出した。

 

 

「ヘーイ!那智〜!グレートデース!ダーリン♡いいムードヨー?」

 

「…美味しいです…気分が高揚してきました」

 

「酔ってるだけでは?」

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなある日のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「明日からは…ここではできないわ」

 

突然鳳翔さんから言われた。

 

 

 

 

「な……そ、そうか…今までありがとうございました」

 

 

…楽しい。

こんなにも楽しいが…こちらはあくまで間借りしている身、文句は言えない。

 

 

 

何故だ?

鳳翔さんも楽しんでたはずなのに…

何か粗相があったか?

いや…無かったはずだ…

まさか…お金が少なかったから?

売り上げも悪くない…適正価格より少なかったから?

 

 

 

「提督が呼んでましたよ」

 

 

 

「ああ…行きます」

とぼとぼと那智は歩いて行った。

 

 

 

「那智…BAR体験は楽しかったか?」

 

「ああ…でも今日からは出来ないと断られたよ」

「仕方ないな…間借りだからな…でも楽しかったさ」

 

「楽しかった?」

 

「あぁ…皆と語らい、楽しく酒を交わして…普段見られない一面を見て…私も良い刺激になったんだ」

 

「願わくば…またどこか––––」

 

 

 

 

 

「那智、時間はあるか?」

 

「あ…ああ…」

 

呼ばれるがままに背後をついて行く。

途中で鳳翔さんが合流した。背中しか見えないが2人とも少しずつソワソワした感じだった。

 

そういや…お金だけじゃないな…

提督を殴った事もあったな…

もしや…解体されるのか?

 

だから最後にやりたい事をやらせてくれたのか?

 

等と色々と考える。

 

 

「着いたぞ」

提督が言った。

 

 

 

なら、どのような結末でも受け入れようー…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前に…それはあった。

こじんまりとした…洋風の構えの入り口。

 

それは一目で私のBARだと分かった。

 

なぜなら、あの看板が…出入り口のところに架けられていたから。

 

「なっ……あっ…」

 

 

「だって…明日から自分の店を持つのだから……ね」

鳳翔がニッコリと救の隣に立っていた。

 

 

 

「金…解体ではないのか?」

 

「お金?」

 

「解体?何のことだ?」

 

 

 

 

「…鳳翔さんにお礼を言うんだぞ?」

 

 

 

 

 

『あなた?お願いがあるんです』

 

『何?』

 

『このお金…で那智さんにお店を出してあげて欲しいの』

 

『結構な額じゃないか!どうした?』

 

『間借り代とおつまみ代にっていつも納めてくれていたのを取っておいたの』

『あんなに楽しそうにやってるの…なら、応援したいもの』

 

『……』

 

『あなたも楽しかったでしょう?それに…』

 

『ああ…あんなに生き生きとやってたら…なあ』

 

 

 

 

『妖精さん…コレで…どうかな』

救は右手で3の指を出す。

 

『…5…だね』

 

『…5だとぉ!?』

 

『それくらいじゃないと、わりにあわない』

 

『フッ…ケチのついた話だと…ダメだからな…!気持ちよくやって欲しい………よし!なら5…いや!7出す!やってくれるか!?』

両手の指で7を出す。

 

 

 

『ふっ…やってやりますか…』

 

『頼んだぜ』

 

 

 

ちなみにお金ではないよ?

お菓子の数ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は…今までの人生…艦生の中で泣いた事はない。

いや…うるっとはきた事はあるぞ。

でも姉妹以外の人前で涙を流した事は無いはずだ。

 

…正直泣いたことはある。

 

 

だが…

 

 

 

酒は自分の趣味だ。

BARとて…趣味の延長線の筈だ。

しかし、いつしかそれが楽しみとなった。

 

何度も言うが…

お酒を通して得られる時間…

 

仲間の意外な一面や…考え

あの人との時間…

それが…私にとって何よりの楽しみとなった。

 

正直に言おう。

鳳翔さんに…明日からできないと言われた時は…心の中が物凄く傷んだ。

あぁ…そんなにも私は楽しみにしてたのかと…痛い程に自覚した。

 

 

「………ズルイな…そうならそうと…言ってくれれば良いのに…」

 

「すまんな」

びっくりさせたくて…と彼は言う。

 

「良かったね」

と、妙高姉さん達は温かく拍手してくれた。

周りにはいつしか皆が集まって…おめでとうと言ってくれる。

 

馬鹿…

涙が止まらないじゃないか…私はそんなキャラじゃ無いのに…

 

「私はそんなキャラじゃないと思ってるだろう?」

提督がニヤリと笑って言う。

 

「…そうだな」

 

 

「お前が言ったんだ」

「お酒で見えた仲間の意外な一面…て奴だろう」

 

「俺達がお酒を通して知った那智の一面だ」

 

「そうだな…」

と、私は笑った。

 

 

「ありがとう」

 

「明日からやるよ!皆…是非きて欲しい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはBAR 酒好きの集い

 

少しだけ角が取れた?店主のおすすめの酒を飲みながら…語らう

西波島の一画に…そんな小さなBARがオープンした。

 

 

 

 

「で?何で俺は客じゃなくて…バーテン?」

 

「オープンで賑わうからな…頼もしいぞ!提督!」

 

「はーーい!おつまみお待たせ〜」

 

「鳳翔さん!ありがとう」

 

 

「うーーーーん」

唸りながらグラスを拭きあげる救に彼女が言う。

 

「とっておきの酒は…閉店したら2人で飲もう」

 

仕方ないな…と救は笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って言ったのに…ぐすん…」

救の背中にはオープンで張り切って、沢山お酒をご馳走になって潰れて幸せそうな顔をした那智がぐっすりと寝ていたとか…




どんどんと娯楽が増えつつある鎮守府。



少しでもお楽しみ頂けたら幸いです!

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279話 アズレン組と指揮官と

その日、寮というより、アズレン建屋に衝撃が走った。

 

 

 

敵襲である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

敵襲ーーッ!!!

 

一気に緊張が走る。

 

 

目標…門前です!

 

 

 

 

 

 

 

 

門番は、桜霧島と…戦艦加賀…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…笑顔で通したぞおおお!!

 

 

 

 

 

 

 

 

最奥に控える桜長門は震えていた。

あの桜長門が…だ。

 

 

 

 

「来ますよ……」

桜赤城が襖を見つめる。

 

 

 

 

 

スッ…と開かれた襖…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、桜長門ー!メロン貰ったんだー!皆で食わない……ん?」

 

 

 

 

そう…やって来てのは指揮官。

 

 

え?桜長門の震え?

緊張してですよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あ…し、ししし指揮官…よ、よく来たな」

「あ…あかあかあか…赤ちゃん…お茶を出しなさい」

 

 

「赤ちゃん…?」

救が首を傾げる。

 

 

「名前忘れてますね…あまりの緊張で」

 

 

 

 

そんなことがあったり……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三大陣営になってからというもの…救の身の回りの世話をするメイドや………色々な役職(?)は増えた。

日々の来客も増えた。

 

濃いキャラも増えた…

 

 

 

 

 

朝食中の事であった。

 

 

 

「下僕」

桜ドイッチェラント

 

「害虫」

桜シェフィールド

 

「庶民」

桜エリザベス

 

 

 

「「「一緒してもいいのよ!?」」」

 

此奴らの呼び方だけは嫌いだわ。

確かに庶民であるけども…やはり…うん、傷付くし嫌だ。

 

 

「やめてくんない?」

 

 

「何よ!せっかく遊びに来てやったのに!」

 

「一緒に飯を食う栄誉を与えてやろうかと…」

 

 

 

ダメだ…

俺はこれ以上は無理だ。

 

「伊良湖…ごめん、部屋で食べる」 

 

 

 

そう言って提督は部屋に戻って行きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「一緒にご飯が食べたいならそう言えばいいのに…ご主人様…ご機嫌斜めですよ?あれ」

蒼カールスーエルが言う。

 

 

 

 

そう、彼女達はアホなのだ。

素直に言えばいいのについ、高圧的、威圧的態度をとってしまう。

曙や霞を見てみなさい。

素直に「提督ううう〜♡」なんですから。

 

今の今だってご飯食べよ?が言えなかった末路である。

 

救自身もそろそろ灸を据えてやろうかと思って行動に出た訳である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どどどどどどどうしよう!?シェフィールド!?」

 

「あああ謝りに行きましょう!?」

 

 

「私としたことが…」

 

焦る三馬鹿。

蒼エリザベスを見習え!

あの子はあの子で「指揮官?だらしないのはダメよ?」

とか、「女王様って呼ばないでって!」みたいな感じなのよ。

 

ほら、出口を見てください。

 

「あら指揮官、ご機嫌よう?ご飯は部屋で食べるの?」

 

「お、蒼エリザベス。そうだよ、部屋で食べるよ」

 

「ふーん…私も行っていいかしら?たまには一緒に食べましょう?」

 

「良いよー!なら外で待ってるよ」

 

「寒いから先に部屋に行ってなさい?ご飯が冷めてもいけないわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アレが同じクイーンエリザベス?」

「お前パチモンじゃないのか?」

ドイッチェラントに言われる桜エリザベス。

 

「女王としての気品…」

桜シェフィールドも頷く。

 

 

「コラ!どう言う意味だ…!」

「でも…悔しいけど言う通りだわ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し時間が経った後…。

 

 

執務室のドアを叩く。

コンコン…

 

「はい?」

大淀が答える。

 

 

 

「桜エリザベスとシェフィールド…ドイッチェラントです」

と、シェフィールドが言う

 

「……どうぞ」

 

 

 

ガチャ…

 

 

 

 

「下僕!謝罪よ!!」

 

「がいち…謝罪に参りました」

 

 

 

 

 

 

 

「帰れ」

 

 

 

 

 

「私何も言ってな……」

桜エリザベスが全てを言う前に…

 

「申し訳ありません…ご主人様の申し出ですので…」

バタンとその希望は閉ざされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちっがあぁぁああああう!てか、アタシ何も言ってないいいい!てか!!桜ベルファストは誰の味方よおお!!」

頭を抱える桜エリザベス

 

「私の馬鹿!私の馬鹿!私の馬鹿!何で!何で害虫って言葉が出て来るの!!」

ブツブツと呟くシェフィールド

 

「………………」ガンッ!ガンッ!ガンッ!!

無言で壁に頭を打ち付ける桜ドイッチェランド。

「お、お姉ちゃん…」と、桜シュペーがガチで心配するレベル。

 

 

 

それを見つめる蒼カールスーエル。

 

 

 

 

 

「素直になればいいだけでは?」

 

 

 

「それが出来たら苦労しないわよお…」

涙目で返す桜エリザベス。

 

 

「無駄なプライドは…意味ないと思いますよ?あれをご覧ください?」

 

 

 

 

その先には救と桜シリアスの姿が…。

 

 

 

『シリアスは…ダメなメイドでございます…どうか…どうか…ケダモノのようにお仕置きを……』

 

『いや、仕事完璧にできてるよ?』

 

『…なら撫で撫でとキスを…ご褒美に…この卑しいメイドに…ください…』

 

 

「素直ですよ?」

 

 

「で…しょみ…じゃない…指揮官は?」

 

 

「あ…はいはいってしようとしてますね…」

 

 

『シリアスううううう!!!』

『シリアスッ!!どさくさに紛れて何をしてるんですか!?』

桜ベルファストがシリアスの肩を持って振っている。

 

 

 

 

 

 

 

「待ちなさい…」

「あのままの通りにやったら私達の未来は見えてるわ…」

 

「解体か…除籍か……ね」

桜ドイッチェラントが溜息混じりに言う。

 

 

「いや、ないですから」

ツッコむ蒼カールスーエル。

 

「いえ…最悪、慰みものにされるかも…」

青ざめた顔で桜シェフィールドが言う。

 

 

「ないですから」

呆れ顔でツッコむ蒼カールスーエル。

 

 

「家畜同然の扱いで…来る日も来る日も性の捌け口にされるのよッ」

涙目で叫ぶ桜エリザベス。

 

 

「……はぁ」

 

 

 

 

 

「頭の中に綿飴でも詰まってるのでしょうか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で?素直になれない…と?」

桜三笠が言う。

 

「仕方なき事…皆舞い上がるもの…」

 

「…桜信濃様も指揮官様の前では……ね…」

 

「…桜赤城……妾は桜長門程ではない…」

 

 

いや、どっちもかわらんよ…と言う言葉を飲み込む桜赤城。

 

 

 

 

 

アズールレーン宿舎。

 

鉄血も重桜も関係ない。

どの陣営だろうとあの指揮官の下では同じなのだ。

 

ただあの人と同じ時を過ごしたい

それは皆変わらない願いなのだ。

 

 

だがもう少し素直になれたら…

 

きっともっと幸せな毎日が待っているに違いない。

 

 

 

彼女達の頑張りはまだまだ続くのだ。

 

 

 

 

 

 

「誇らしきご主人様ぁあ♡」

 

「指揮官様あー♡」

 

「指揮官様あ♡…こら!ローン!被るでしょう!?やめなさい」

 

「桜大鳳さんこそ…被りますよ?」

「そんなことより…指揮官様?隣に座っても良いですか?抱きしめて欲しいんです」

 

「はぁぁあッ!?」

「それは私がお願いしようとした事ですけどおお!?」

 

 

 

 

「退きなさい?小娘…それは私の仕事です」

 

 

「あ、桜赤城先輩…」

 

「くっ…何たる正妻オーラ…」

 

 

「しかしッ!負けませんわ!!」

「そこは私のポジションですううう!」

 

 

始まるガチンコバトル。 

 

 

 

 

あれ?なんの話だったっけ?このお話?

 

 

 

 

 

 

 

 

 




愉快な仲間達…?
世間はクリスマスムード!
私は仕事だぁあ!!


少しでもお楽しみ頂けたら幸いです!

感想などお待ちしてます!
ぜひ!ぜひ!


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280話 クリスマスの日に

12月25日…

この世で一番嫌いだった日。

 

周りを見ても惨めに思い、孤児院仲間の誕生日のお祝いですらそう感じていた。

 

なのに…

 

 

 

「だぁありん!メリークリスマス♡」

 

朝一に飛び込んできたのは金剛。

抱きついてきて頬擦りしてくる。

 

 

んちゅー!

ちゅっちゅっと等身大どころかマリアナ海溝クラスの愛情表現で甘えてくる。

 

「昨日は幸せなプレゼントをありがとう〜♡おニューの髪留めと髪飾り似合う?似合う?」

 

全員へのプレゼント配布は終わっている。

本当にサンタクロースさんは凄い。

艦娘やKAN-SEN、戦姫への配布だけでも…くっそ時間を使ったんだ…世界中の子供へ…なんて無理だよ。

 

 

だって…アイツら寝ねえんだもの…

酒盛りじゃあ!とか

サンタ狩りじゃあとか…。

もうね…アホかと…

 

「もちろん、似合ってて可愛いよ」

 

 

「えへへー♡嬉しいデース」

 

 

「一番最初に言わせて下サーイ」

「Happy Birthday ♡ダーリン」

「このマフラーをプレゼントしマース」

 

「手作りですけど…頑張ったヨー…」

 

「あったかいよ!ありがとう」

おいで!と、両手を広げてみる。

 

「ダーリン♡」

彼女は嬉しそうに飛び込んできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて…と、金剛は言う。

「フォローミー!」

 

 

彼女は彼の手を引いて歩く。

 

 

 

 

「おはようございます!提督」

「プレゼントありがとうございます」

 

執務室に居たのは大淀と桜ベルファストに蒼カールスルーエ

ニコリと挨拶をしてくれる。

 

「ご主人様…お誕生日おめでとうございます」

「今日だけでなく…これからもよき日になりますよう…」

 

「こちらは私達からの贈り物です」

 

「これまた…高そうなコートだねえ」

 

「お気に入り頂けたら…幸いです」

 

 

 

「たーくさん色んな子が来ると思いマース♡楽しみですね」

秘書艦金剛と共に執務に入る。

 

 

 

 

コンコン…

ノックが鳴る。

「どうぞ」

 

「私だ…」

と、部屋に入ってきたのは長門や吹雪に大井、明石に暁。

 

「提督…誕生日おめでとう」

「皆で来たかったのだが…人数が多くてな。残りの者は夕食の時に言うそうだ」

 

「わざわざありがとう」

 

「コレが…私個人からの……贈り物だ」

と、袋を渡される。

 

「開けても…?」

 

「ああ!きっと喜ぶはずだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「島風コスプレセット?」

 

 

 

「そうだッ!!」

「提督も是非この機会に駆逐kぁぁぁぁぁぁあー…

 

長門の言葉が最後まで発せられることは無かった。

ボタンを押したら…あのアレだよ

床が開くやつ…。

長門は落ちたのだ。

 

後に桜アークロイヤルと蒼ヒッパーが同じ目に合う。

 

 

「指揮官!誕生日らしいな!この駆逐艦のコスプ–––––

 

 

「指揮官よ…こn–––…

 

 

 

 

 

 

 

「明石にはボーナス出さなきゃな…」

いや、マジで…。

 

 

 

 

 

その後もたくさんやって来た。何名かは下に落ちて行ったが…

それも含めて楽しい。

 

 

 

 

 

 

 

夕飯時には皆に手を引かれて食堂に連行された。

 

 

「「「お誕生日おめでとう」」」

 

パァンとクラッカーが鳴って俺にヒラヒラと降り注ぐ。

前よりも…更に増えた皆に囲まれて祝われる。

 

 

皆がおめでとう、と前を通るごとに声を掛けてくれる。

 

迅鯨や麗ちゃん、桜さんに…大ちゃん達も。

 

 

 

ケーキもプレゼントも…

それよりも…

 

皆が居てくれる方が何より嬉しい…

 

 

 

「ありがとう」

 

 

 

 

 

 

「…おいおい…もっと喜んでくれよう!今日はクリスマスだー!」

 

「みんなでワイワイやろうー!」

 

 

 

「そうだな!!」

 

 

 

「日頃から皆…ありがとう!俺は………俺は…」

 

 

「皆といられて幸せだ」

「この幸せを守りたいから…戦う」

 

「やっぱりどんな時でも隣に皆が居ないのは耐えられない」

「自分勝手と思ってくれていい、タラシだと言われてもいい」

 

「それでも俺は皆と…ずーっと居たい」

 

 

「今年もたくさん、ありがとう」

 

「今日は…パーッと行こうぜ!!」

 

 

 

 

 

「乾杯ッ!!」

 

「「「かんぱぁぁあいい!!」」」

 

 

 

 

「ダーリンさん!えへへ…ありがとう」

 

「指揮官…ありがとうね?」

 

「ん?何のこと?」

 

「今年も…サンタクロースがやってきたの」

無論、彼女達は分かってる。

俺がサンタだと…。

でも、敢えて言わないのだ。

 

 

「良かったじゃないか」

あくまでも俺は違うととぼける。

 

 

 

 

 

 

「でも今年のサンタは…イチャつくカップルだったと報告が上がってますよ?」

おい、鹿島ァ…何つった?今?

 

一気にムードが変わる…。

ラスボスのような笑みを此方に向ける鹿島。

 

「…まあ…サンタも1人じゃ配りきれなかったんじゃないか?」

 

「…えらくサンタの肩を持ちますね?」

おい、香取…貴様もか?

え?何で?何でそんなダークサイドに堕ちるの早いん?

 

「ま、まあ…でもアレですよ!」

「サンタはサンタですから」

 

さすが大淀ッ!!

俺がサンタじゃないというこの空気もぶち壊さずにまとめようとしてくれる…!そこに痺れて憧れる!!

 

「めっちゃイチャつきながら配ってたらしいですよ?腕組んで」

 

「説明してください?提督?」

堕ちるん早すぎッ!!大淀さぁン!!

 

 

「何でサンタは私を連れて行ってくれなかったのかな…」

麗ちゃん?深海化するん?そのオーラ…やめよ?

 

 

 

 

 

 

え?その後?

もちろん逃げましたとも!

 

それも楽しいクリスマス。

 

 

 

今では1番大好きな日だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

24日の夜の事…。

むしろ25日の夜中?

 

 

 

『メリークリスマス…なんて……』

『よし…寝てるな…?』

 

最初は金剛…にプレゼントふぉーゆー。

 

『待ってましたヨー♡ダーリンサンタクロース』

 

『テメッ…起きて…』

 

『ダーリンは最初に来てくれると信じてマシタ。なら、それを一番に開けるのも…私じゃないと』

 

ベッドからむくりと起き上がり座ってニコニコとコチラをみる。

 

『見られない事前提なのにシッカリとサンタのcostumeをするダーリンは可愛いデース』

 

『やめないか』

 

 

 

『まあ…なら…君には特別に…』

 

『…?』

 

口づけが終わると私の手には小さなプレゼントが置かれていた。

子供みたいに静かにはしゃぎながらそれを開ける。

 

 

髪飾りと髪留めと…。

 

そして…『愛してる』のコトバ。

 

 

『幸せデース…。ダーリン…ありがとう』

 

行ってしまうダーリンの背中に抱きついた。

行かないで?私の隣に居て?

そう言いたい。

でも…独り占めはダメだから…彼を振り向かせて更にキスをする。

この時が永遠に続くようにと願うくらいに長めのを。

 

 

『………』

 

『行ってらっしゃい…サンタさん』

 

 

おう…と彼は行こうとする…が立ち止まって振り返った。

 

 

 

『金剛?』

 

『?』

 

『サンタってさ…今の俺どう?』

 

『カッコいいデース!!』

 

『違うくて…トナカイとか足りなくない?』

 

『トナカイ連れてなくても最高のサンタクロースデース!!』

グッと親指を立てるコンゴー…。

 

『……マジか…』

 

ニコニコと周りにキラキラを発しながらの金剛。

 

 

 

『…鈍感め…』

と、彼がチラリとトナカイのツノのカチューシャを見せてくる。

 

『…夜道は…トナカイ連れてないと危ないらしい…』

 

 

 

 

あっ…と、やっとそこで察したらしい。

少し顔を赤らめて金剛が返す。

 

 

 

『………鼻は光りませんよ?』

 

『なら…寒いから側に居て温めてくれ』

 

 

 

 

『・・・ハイ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜中に2人で回るプレゼント配りデート。

幸せそうなサンタとトナカイが鎮守府に小さな幸せを運んだとか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『オネエサマ…ズルイ……ハルナモ…』

 

『はいはい!寝ますよ!榛名姉様』

 

 

 

 

 

 

 

 

『青葉…落書きしとこ……』

 

 

 

 

 

12月25日…

今は1番好きな日…。

 

 

 

 

 

 

『お腹いっぱい…羨ましけしからん…』

『ズルイズルイズルイズルイ』

 

そんな声もBARにあがったらしい。

 




メリークリスマス(๑╹ω╹๑ )

サンタ?来てないんですが…どこかで迷ってるのかな?
どこかで見てないですか?


私はここだぁ!!





さて…提督と艦娘達のプレゼントのやり取りはまたどこかでやりまする。
長門達はもう一度落ちます。




少しでも、お楽しみ頂けたなら幸いです!


感想などお待ちしています(๑╹ω╹๑ )
サンタもお待ちしています…ぜひ…。


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281話 時の向こう側 ①

オリジナル要素マシマシどころかオリジナル要素しかありません。
設定もガバガバでござます。


つまりはいつも通りでございます。


1度起きた事は…すでに起こった事であり、つまり2度目も3度目も起きる可能性はある。

 

何が言いたいかって?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

 

 

え?ここどこよ?

 

 

 

 

 

海?

 

ん?

 

ゆられてる?

また…イカダぁ…?

 

え?

何?死んだの?

 

 

 

 

昨日まで……えと…確か……

皆でわいわいと…

そうだ、確かに皆と居たはずだ。

悪酔いして1人で船旅に出る…なんて事はない。

拉致…にしても、誰にもバレずに俺を運び出すのはほぼ不可能だ。

……内部犯以外ににはー…

 

 

 

 

なんて考えていると…

 

 

 

 

 

 

「グルルぁあ!!」

 

 

 

マジ?深海棲艦いんの?

 

報告!そりゃ海だもんな!!

 

てか少し姿が違くない?

 

 

 

 

 

え?助け来ない奴?

 

 

 

「まじか!!」

 

ヘンテコ生物が迫った…その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ドガァアン!!

と、爆発と共に沈むソイツ。

恐らく魚雷が爆発したのだろうか?

 

何はともあれありがたい…。

時雨あたりか?

 

 

 

 

 

「何やってるんですか!!」

「危ないですよ!?」

 

聞き慣れたような…初めて聞くような声の先には…少女が居た。

 

 

「…助かった……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…別基地所属の…艦娘…か?」

 

「?知ってるのですね?正しくは…かん娘…ですが」

 

 

見たこともない娘が立っていた。

 

 

少なくとも俺のデータベースには存在しない娘。

見た目は……駆逐艦か軽巡…か?

初月のように身長は高いが…なんせ装備が…その…物足りないのだ。

 

 

 

 

 

その彼女は言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は…こんごう」

 

「こんごう型の1番艦、こんごうです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「金剛……ね…」

 

 

 

って!?

 

 

「こんごううううう!?!?」

 

思わず叫ぶ。

ビクンと驚くこんごう。

 

「…な、なんですか!?」

 

 

 

「いや待て…金剛って魚雷あったっけ?」

「なかったよねえ!?」

「あれ?夢か?」

 

見れば多少面影はあるが…

なんか服装もすんごいシンプルだし……

 

 

 

 

「何を独り言を…」

慌てるこんごうの元に数名のかん娘がやってくる。

 

 

「お姉様!」

「大丈夫ですか?」

「おや?その人は?」

 

 

 

「きりしま!みょうこう、ちょうかい」

「人の反応はこの人だったんだけど……なんか…」

 

「お姉様?大丈夫ですか?」

みょうこうと呼ばれた娘が心配そうに尋ねた。

 

 

 

お姉様ねえ…

 

 

 

 

お姉様!?

 

 

「は?」

「比叡は?榛名は?」

 

「あの姉妹ですか…」

「知り合いなんですか?」

 

 

 

 

「いや!あの2人と金剛と霧島で金剛型四姉妹だろう!?」

 

 

 

「何を言ってるんですか?」

 

「こんごう、きりしま、みょうこう、ちょうかいの4人で護衛艦こんごう型四姉妹ですよ?」

 

 

 

「ここは日本か?」

 

「はい、そうですよ?」

 

 

「……」

 

確かに現代では…こんごうはその4人だ…。イージス型の護衛艦…。

 

 

 

「…あなたは?誰なんです?」

 

「あー……」

 

 

 

 

 

「……漂流者?」

とりあえずの現状事実を伝える。

 

 

「連行します」

 

 

きりしまだけが訝しげに救を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「何ですか?人の顔をジロジロ見て…」

 

「ううん…少し懐かしくて…」

 

「初対面なのに?」

 

「うっ…」

「西波島の神崎…とか知らない?」

 

「……知りませんね」

 

 

「そうか…」

 

 

 

その言葉に1人だけピクリと反応した者がいた。

 

 

「あなたは一体誰なんですか?」

 

口を開いたのはきりしまだった。

 

「きりしま…?」

こんごうは突然の発言にびっくりしているようだ。

 

「お姉様…私はこの男が何者か気になって仕方ないんです」

 

「旧金剛四姉妹…何故知ってるのですか?」

「それに…西波島と言えば…旧時代の鎮守府の場所…」

 

「「旧時代?」」

俺とこんごうの声が重なる。

 

 

 

「はい、旧世代のものではありますが…知るものは少ないはずなんです」

 

「あなたは一体…?」

ガチャリと武装を向けるきりしま。

「敵と内通している可能性があります…」

 

「そも、イカダで漂流なぞ…妖しさの塊じゃないですか」

 

「…深海棲艦と繋がってる可能性も捨てきれません…」

 

 

 

深海棲艦との繋がり…

その言葉に他の娘も反応する。

 

 

 

 

「西波島の鎮守府に連れて行ってくれないか?」

 

 

「何を…」

 

 

 

「俺が何者か証明出来るかもしれない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イカダを引っ張られる事数時間ー。

 

 

 

 

 

 

「ここが西波島ですよ」

 

打ち捨てられたような廃墟。

だが…懐かしい鎮守府はそこにあった。

 

「…マジか…」

と、彼はポツリと言った。

 

 

 

 

 

 

 

とてもじゃないが誰かが生活してるとは思えない程の…。

ここに彼を証明するものは恐らくないだろう…と彼女達は思う。

 

 

「……」

 

しかし、彼はスタスタと進んで行く…。

慣れ親しんだ場所を通るように、迷う事なく進んで行く。

 

 

「……!?」

 

こんごうは見た。

ほんの刹那の事だった…。

 

資料で見た艦娘が見えたのだ。

 

 

「今のは…?」

 

 

「お姉様…?」

 

 

「ん…なんでもない…」

 

 

 

埃だらけの執務室と言う看板がある部屋まで来た。

 

 

 

 

「…あった」

彼は執務室で足を止めて…埃が被った壁から額縁を降ろした。

 

ふぅっ!と息を吹き、手で埃を払うと…写真が出てきた。

 

「これは?」

 

「ん?俺達の写真…」

 

 

「これがあなただとでも言うのですか?馬鹿馬鹿しい」

 

「…そう思うなら思ってくれ」

「お前達にとったらバカみたいな幻想だと言っても…」

 

 

 

 

 

「俺にとっては…かけがえのない記憶(現実)なんだ」

 

 

 

 

「……感じない…なあ…」

 

「……」

「…」

 

彼がスルーした書物らしきものを見る?

古く、掠れたその中の名前を彼女は見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…俺は神崎 救」

「西波島鎮守府の提督をやってる者だ」

 

 

 

 

 

 

 

神崎 救

その名前が目の前にはあった。

 

 

 

「ありえません…」

 

「何故?」

 

 

「それは…100年以上も前の話ですよ」

きりしまがそれを告げる。

 

 

 

 

 

 

「100年?」

 

「はい」

 

「うっそつけえええ!!霧島ァン!」

「そろそろからかうのは止せええ!」

 

「金剛ぉー?お前もいつもみたいにダーリン♡でこいよ!」

 

 

「……」

皆無言である。

 

 

 

「神崎 救…数々の戦果を修めて海の平和拡大に大きく貢献した人物です。しかし、老齢で亡くなられたと聞いております」

「確かに資料で見た、写真と瓜二つな方ではありますが…」

 

 

 

 

 

 

「……マジか…」

 

「……俺はこの後どうなる?」

 

「……いち被害者としてあなたの家…街まで責任をもって持って送る事は可能です」

 

「ここが家なのに?」

 

「…まだ信じられません、あなたが虚言を言っている可能性もあります」

 

「……その方が嬉しいよ」

 

と言う彼の顔は…寂しそうな顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時…がちゃり…とドアが開いた。

一斉に武器を構える。

 

「誰ですか!?」

 

その主は…私達の声なぞ耳に入ってないと言わんばかりに言った。

 

 

「…提督…?」

 

その声の主は……

ピンクの長い髪の女の人だった…。

 

 

 

「……お前は……?」

 

「提督…提督ッ!!」

 

その人物は…大泣きしながら彼に飛びついた。

 

 

 

「…提督……?」

 

 

「本当にお前か?」

 

「はい…!私ですよ!私です!ずっと待ってました…!120年ですよ!ずっと…ずっと待ってました」

「あなたが死んでから…ずっと…またその魂が戻ってくると信じて……」

 

「死んで…って生きてるけど?」

 

 

 

「ま、待ってくださいッ!その話は本当なのですか!?」

 

120年…待っていた…?

 

きりしまが話を遮って叫ぶ。

「あなたは一体…」

 

 

 

 

 

 

「私は龍鳳です」

 

 

 

 

 

 

 

 




あれ?龍鳳っていたっけ?





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282話 時の向こう側 ② その先の世界で

「…馬鹿な!そんな馬鹿な話があるはずが無い!」

 

「きりしま?」

 

「120年もの前の存在が…?あの激戦を戦い抜いた艦娘が居るなんて!」

「あなたも…その提督の生まれ変わりだとでも!?ありえません」

 

 

 

「目の前にいるのは?狂言役者とでも?」

「どんな絵空事でも…目の前にしたら、それはすでに真実よ?」

と、龍鳳は返しながら言う。

「にしても…あなた…提督そっくりね?面影と言うか…写真で見た…ずーっと昔の提督に…」

 

 

 

 

 

 

「いや…本人だけど…?」

 

 

 

 

 

「「「「「は?」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…気が付いたら海にいたァ!?」

 

「前の日までは艦娘達と過ごしていた?」

 

「正直状況が飲み込めてない?」

 

「…まじですか?」

 

「昨日までクリスマスパーリィやってた?」

 

 

 

「明石が…床の落下装置作ってくれて…ボーナスを…」

 

 

 

 

「…その時はまだ私は居ませんね」

「あなたに会うのは…ずっと先。でも…私提督からちゃんと指輪も貰ってますよ?」

と、彼女はきらりと光る指輪をみせる。

 

 

直接では無いけど…とボソリと言った気がした。

 

 

 

「みんなは…?」

 

「……金剛さんもそこにいるじゃないですか」

 

「私は護衛艦のこんごうです。恐らくあなた方の言う金剛ではないですよ」

 

「……そうです…か…」

 

「…皆は提督の意志を継いで戦い続けてました。麗さんもこの世を去りましたが…」

「中には退役して天寿を全うした娘も多かったですよ」

 

「少なくとも…今この世に存在する中でのあなたを知るのは私だけです」

 

 

「しかし、何故神崎さんはここにきたんでしょうか?」

と、ちょうかいが言った。

もっともな疑問だ…というか、俺もその疑問を持った。

 

「……ごめんなさい」

龍鳳は頭を下げた。

 

「わ、私のせいかも…しれません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…つまり?」

「龍鳳さんは提督の約束に従ってずーっと待ってて、彼にに会いたくて会いたくて120年間待ち続けたと」

「会いたいとずっと思ってたら会えた…と?」

 

 

「はい」

 

 

「それはないでしょう」

バッサリと斬るこんごう。

 

「思うだけで現実になるなんて…あり得ないよ」

そうそう、と続く妙高。

 

 

「というか…本当に神崎さんなら…女性を一世紀以上待たせるなんて…引きます」

 

 

「俺に言うな…でも…まあ…何が真実かは今は分からないけども、俺がここに来た意味がある筈なんだ」

「それを探さなきゃな」

 

 

「あの!」

 

「ご、ご一緒してもいいですか!?」

龍鳳が大きな声で聞いて来た。

その目は必死に懇願する目そのものだった。

 

「君は俺の艦娘なんだろう?聞く必要もないさ」

 

 

 

 

 

「しかし…アレだな…俺の知る艦娘とは装備も全然違うなあ…」

「やはり現代艦だからか?艤装は縮小されてんのね」

 

「まあ…金剛が魚雷をぶっ放すのは驚いた」

と、金剛の演習中の写真をみせる。

 

 

「…以前に資料で見た事はあります。これだけの装備が有れば…戦いも有利でしょう…」

 

 

時代の流れ…なのだろうか?

深海棲艦も見た目はスマートになっていた気はする。

そういう流れなのか…?

 

 

 

 

「と言うか!お姉様!とりあえず私達は帰投しないと!」

 

「…あなた達も一緒に!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

龍鳳の背中に乗って揺られること数時間…。

 

なんか見覚えのある…鎮守府が見えてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「司令官!ただいま戻りました!!」

 

「はい、お疲れ様」

「で?やっぱり罠だった?」

 

 

 

 

「それが…」

 

「……?」

 

 

「どうも…助けられました…神田です」

 

「神崎さん…偽名を使わないでください」

 

 

「途中合流しました…龍鳳です」

 

 

「………どゆこと?」

女性提督は頭を捻った。

 

 

 

 

 

「あー…時の旅人です」

その言葉にピクリと反応した気がした。

 

「……神崎さん…だっけ?」

 

 

 

 

 

 

 

「奇遇ですね、私も神崎って名前なんです」

 

「………」

こんごう達は黙っている。

 

「………!?!?」

 

「……神崎…救です…」

 

 

「て、提督!お待ちください!その前に精神鑑定…いや!精密検査をさせるべきです!」

 

 

こんごう達は事のあらましを説明する。

 

 

 

 

「ですから…深海棲艦との繋がりも捨てきれない可能性として…「…まあ…事実でしょう」

神崎と名乗った提督は言葉を遮って言った。

 

 

「は?」

 

 

 

「……目の前にすると…不思議とわかるものですね」

 

 

神崎と名乗った提督はニヤリと…面影のある顔で笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この人は…私の数代前のお爺ちゃんになる人ですね」

 

 

 

「「「「「「は!?」」」」」」

 

 

 

 

 






朱音ちゃんでは無いです。



少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!

感想などお待ちしてます!


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283話 時の向こう側 ③ 目覚める悪夢

「……古ーい旧姓は…えとひいひい婆さんの時かな?里仲って言ったと思います」

 

「…あぁ…」

 

「おや?驚かないのですか?」

 

「…前に朱音って娘を名乗る子と会ったからなあ……」

 

「………あぁ……誰かわかりますが黙っときますね」

 

 

「てかさ、順応早く無い?君」

 

「血筋ですよ」

 

 

「澪って言います…よろしく、お爺ちゃん」

 

「そのお爺ちゃんってのやめてくんない?」

 

「なら…パパ?」

 

「もっとやめて?」

何故か子孫を名乗る奴らにイジられる。

確かに………あぁ…もしかしてアイツかな?ってのは何となく感じる。

 

 

 

 

 

「…まあ先祖代々では無いですけど…ウチらの中では有名人ですからね」

 

「ウチら…?」

 

「お爺ちゃん…子供どれだけ居ると思ってるの?」

 

「2人とか?」

 

 

「…………」

 

「え?無言やめて?」

え?何人居るの?子供…未来の俺よ…。

 

 

「…私はお爺ちゃんの事を伝えでしか聞いてないけど…」

 

「女たらしで」

「無鉄砲で…」

「目があったら妊娠させられて」

「よく居なくなって…」

「何回か死んで…」

「深海棲艦どころか艦娘とも殴り合って…」

「疑わしい話ですが人ながら艤装を展開して…」

 

 

 

 

「碌な伝わり方してないですね」

 

「やめて…」

泣きそう…ッ。

 

「馬鹿で…」

 

「お願いッ!もうやめてええええ」

泣いていい?俺、泣いていい!?

 

 

 

 

 

クスリと笑って彼女は言った。

 

 

 

 

「どんな時でも艦娘達と共に在った…」

「世界を跨いでも愛される提督だった…って」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時だった。

ドアを勢いよく開けて入ってきた…おそらくかん娘が血相を変えて報告した。

 

 

 

 

 

「た、大変ですッ!!未確認の深海棲艦が…!」

「ただいま、交戦中ですが…」

 

 

 

 

「なんだって!?」

 

「見たこともない程に重武装で…苦戦してます!」

 

 

 

 

「まさか…」

 

 

「データ繋ぎますッ!!映像……出ます!」

 

 

 

 

 

 

 

そこには異形と化した空母…棲姫?が居た。

?なのは一部が他の棲姫から取り込んだような姿をしていたから…

 

 

 

「…なに……あいつ」

 

澪は初めて見るソレに震えすら覚えた。

それはこんごう達も同じようだった。

 

敢えて名付けるなら戦艦空母棲姫…だろうか?

 

どの攻撃も届かず蹂躙と言っても過言ではない戦況が映し出されていた。

 

 

 

 

 

「やっぱり…アイツは」

 

「生きていたの…」

 

 

 

 

「…アレは提督が最後の最後に斃した深海棲姫」

「鎮守府決戦で倒した筈なのに……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

艦娘が120年待てるなら…

奴等も同じである。

 

彼女達は救達にやられて傷付いた体を回復させていた。

 

 

だが…

察知した。

 

奴の存在を…。

 

 

自らを底に叩き落とした…眠らざるを得ない状態に追い込んだ奴を!

 

 

 

現代艦は…装備が強くない。

 

それに合わせてではないが…敵も昔程は強くない。

先人達の戦いで深海棲艦の勢力は一気に削られた。

 

 

だが…そこに旧型が現れたら?

 

現代からすれらデタラメな装備を搭載した奴が現れたら?

 

 

 

 

 

『貴様ァァア!!奴だッ!!奴を感じるッ!!』

 

『私をここまで追い詰めた…奴が…!殺してやる…ッ』

『殺してやるぞおおおお』

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはりあの時の……空母…棲姫でしょう」

龍鳳が言った。

 

 

 

 

「なら…狙いは…俺だろうなあ…」

 

 

俺はその為に呼ばれたんだろう……

そうだろう?未来の俺よ…。

 

 

 

「お爺ちゃんッ!ダメだよ…」

澪は止めた。

「お爺ちゃんにはもう艦娘も…他の世界の娘も居ないんだよ!?」

今行くのはむざむざ、死にに行くのと同義だから。

 

 

「……龍鳳が居る」

彼は龍鳳の方を見た。

 

 

 

「1人で叶う相手じゃないよ!!」

 

「…それでもやらなきゃ…守るべきものも守れなくなる」

「行けるか?龍鳳」

 

「はい!」

龍鳳は力強く頷いた。

 

 

「それに…澪も立ちっぱなしではないだろう?」

 

澪は、ハァ…と大きく溜息をついて言う。

「…頑固ジジイ……」

 

「勿論!こんごう!出れる?」

 

「はい!!こんごう型!可能です!」

バッと敬礼して返事する4人。

 

「なら…お爺ちゃんの指揮に加わってもらうのでいい?」

 

「…はっ!」

「神崎提督…!平和の為…よろしくお願いします」

 

 

 

 

「最強の英雄…お爺ちゃんの指揮見せてもらうよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼らが空母棲姫の暴れ回る海域に到着した時には…

交戦中の部隊の被害は甚大になりつつあった。

 

 

 

 

「大丈夫か!!お前等ッ!下がって手当を!」

 

「あ、あなたは!?」

 

「そんな事はいいから!」

「龍鳳ッ!!頼む!」

 

 

「はいっ!」

龍鳳が合図に合わせて発艦する。

 

 

『貴様…同じ感じだ…貴様が…あの時のおお!!!』

『殺すッ殺す!殺すっ!!!』

 

「…うわあ…凄い殺気…」

 

『小娘も…覚えてるぞ…纏めて地獄に送ってやるッ』

 

 

 

 

 

 

 

 

「きりしま!みょうこう!ちょうかい!行きますよ!」

こんごう達も同じく攻撃を開始する。

 

 

 

 

数こそ多いなれど、軽空母と護衛艦。

相手は戦艦空母となると結果は見えている。

 

 

 

『どけえええ!!』

 

「きゃぁあ!!」

弾き飛ばされる龍鳳。

 

だが…ここで倒れる訳には行かない!

彼を…死なせてたまるかッ!!

 

やっと会えたんだ…!!

 

行かせて…たまるか!

龍鳳は棲姫にしがみついて行手を阻んだ。

 

『邪魔だッ!!』

何度も何度も踏まれた。

 

それでも…譲れない。

 

 

 

 

「何で…あの人はそこまでできるの?」

こんごう達は不思議に思う。

 

提督1人の為にそこまで?

何で?どうして?

 

 

私にはわからない…。

 

 

 

 

 

 

 

でも…それほどの思いなのだろう。

 

 

「やめなさい!その足を退けなさいッ!!」

いくら叫ぼうとやめない。

砲撃も効きやしない…。

 

 

絶望感に支配されそうな時だった…。

 

 

 

 

 

 

 

[…忘れてるだけ…デース!!]

 

「え?」

 

グンッと体が勝手に動いた。

 

『なっ!』

 

ドゴォッ!!

 

 

こんごうは感じた。

自分の体が自分でないような気がした。

私の右腕は奴を殴り抜いていた。

 

 

『がっ!ぐっ!』

不意を突かれてぶっ飛ばされる棲姫。

 

 

 

『……アイツ…』

 

 

 

 

「龍鳳さん!立ってくださいッ!!」

 

「…ありがとう…」

 

 

救も彼女に合流しようとやってくる。

 

「提督…ダメ…逃げて」

 

「あなたが生きて…生き延びてくれたらそれでいい!!」

 

彼女はそう言った。

 



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284話 時の向こう側 ④ 今ここに誓う

「提督…ありがとう」

 

「いきなり何を…」

 

 

逃げて…生き延びてと言う彼女。

 

「まだ私を知らない提督…どうか…その先(未来)で出会う私を…どうか見てください」

 

 

 

 

 

彼女は思い出す。

 

彼女は艦隊に加入した最後の艦娘。

 

 

 

『大鯨…よろしくな?』

老齢の彼はベッドからそう言った。

隣には年老いた女性が数名居た。

 

 

『改二で…龍鳳か…改めてよろしくな』

年老いた彼は言った。

もう起き上がる事すら出来ないらしい。

隣に居た女性は1人になっていた。

 

 

 

 

 

そして…貴方はすぐに逝ってしまった。

 

 

 

『…良い人生だった……皆…ありがとう…』

 

『心から…愛……して……る」

 

 

満足そうな顔で逝った。

最愛の人と逝った。

 

 

 

 

 

 

 

どうして私がここに居るのかー

 

出会ってから過ごす時間が短すぎたのだ。

 

老齢すぎる彼は…もう立てないくらいになり…私と一緒に戦場に立つ事はなかった。

 

 

 

皆さんみたいに何十年も一緒には居られなかったから…。

それでもあなたを好きになってしまったから…

 

 

この指輪は…彼の遺品から見つかった…私宛てへのプレゼント。

贈り主がこの世に居ない…1番欲しかった贈り物…。

 

 

 

 

 

ごめんなさい…

 

 

 

 

ごめんなさい…

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだ…戦うぞ…ここからは俺も一緒だ!龍鳳」

提督が肩に手を置いて話しかけて来た。

 

「何で…?何で逃げないの?戦力差もこんなにあるのに?!」

 

行ってよ!

私に構わず…今回は何があっても…あなたを守るから!私は…!!

 

 

 

 

 

 

 

「お前は俺の艦娘なんだろう?」

「なら…いつでも隣に居る」

 

 

 

 

『龍鳳…すまんな…』

『例え…死んでも…心はずっと…いつでも隣に居る…待っててくれ…また…会いに来るから』

彼の最後の言葉…。

 

 

 

 

 

 

「…提督…」

 

「どんな時でも俺はお前を置いて行かない」

 

彼は言い切った。

 

 

 

「また来いって言っておいて…置いて行ったくせに…!私を…私達を置いて死んだくせにい!」

「ずっとそばに居てくれるって言ったのに!私は…私は!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

約束だったから。

 

 

生まれ変わったら会いに来てくれ…と言う…。

 

 

また会いに来てくれと言う約束を果たした時には…

あなたは…

 

 

待っててくれと言った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

退役して天寿を提督と共に全う金剛さん達を見送って…

 

 

ずっと待った。

皆が退役しようと、戦おうと…

また会いにくる…の一言を信じてずっと待った。

 

何年経とうと

何十年経とうと…

 

 

私は待ち続けた。

 

途中に何度も退役と解体を考えた。

でも出来なかった。

 

次に死ぬ時は…あなたを守ってと決めて居たから。

 

 

それでも…私は待ち続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

野盗や深海棲艦と戦って…

時代の移り変わりを感じながら…ぼろぼろになる鎮守府を見つめながらずっと…ずーっと待っていた。

 

 

 

120年は長かった。

 

 

 

 

「120年もずーっと待たせて…」

 

「今更優しい言葉で…私を喜ばさないでよ!」

「あなたの時代に…早く帰らないと…バカな艦娘のままで居させてよ!」

 

 

「すまん…龍鳳」

なら…と彼は私の指から遺品を取り外して言った。

 

「え?」

 

 

「今、ここで誓おう」

「俺は…ずっとそばに居る」

「何があろうと…この命の限り…君のそばに居る」

 

 

硝煙の匂いと爆発音の中で…その声は

その声だけはハッキリと聞こえた…。

 

 

 

「……」

 

「提督…ずっと一緒に戦ってくれるの?」

涙も溢れて止まらない。

 

 

その言葉をずっと聞きたかった…

 

「もちろん…」

 

 

 

 

 

こんごう達には見えた。

龍鳳に重なる白と赤の和服に身を包んだ名も知らない艦娘の姿が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ってたのは俺もだろうさ…。行くぞ…龍鳳(赤城)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……提督…気付いて……」

 

「俺は提督だぞ?分かるさ」

 

 

 

 

 

 

 

そう、彼女は加賀と共に還った赤城だった。

 

 

 

 

 

仲間を救う為に

共に死を選び海に還った彼女は

約束を果たしてまた戻ってきた。

 

 

だが…遅すぎた…。

 

 

その彼女は…体が朽ち果てるで待ち続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

叶わない筈の私の夢…

あなたの為に戦うと言う夢。

 

 

今こそッ!!

 

「提督ッ!!指示を頂戴ッ!!」

 

 

 

 

 

「おう!!」

 

 

 

 

 

 

 

『フン!今更誓った所で…お前は、練度も足りない経験も足りないひよっこだろう!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「確かに私は…提督の下では数年と戦ってないわ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも…120年は…どの先輩達よりも長い年月よ!」

 

 

 

 

 

そう、彼女は彼の死後から120年は戦い続けたのだ。

彼の没年は謎であるが、少なくとも他の艦娘よりも数十年戦い続けた。

 

今や彼女は…誰にも追いつけない所に居る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

軽い…体が…軽い!

 

「もっと…もっとッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

龍鳳   改

 

 

 

 

 

決して至ることのない筈の高み。

 

でも…今なら届く

 

 

「負けるかぁぁぁああッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

龍鳳  改二

 

 

 

 

 

「私は…!あなたの為に戦うんだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は護衛艦…こんごう…。

 

目の前で…かつて世界最強の鎮守府と呼ばれたらしい提督が…艦娘と共に戦っている。

 

 

こんごう…

かつての艦の名前…金剛。

 

 

 

何だろうか…この思いは…?

 

ワクワクするような…

 

 

何を守りたかったのか?

少し平和になった海?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…それが提督デース』

 

 

誰…?

 

 

『私は…金剛…デース!あなたの先輩?になりマース』

『ダーリンはやっぱり不思議な人デース』

 

『…どんな時でも私達の為に…』

 

 

 

『あなたは…行かないのデス?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かん娘…

 

時代と共に変わり行く姿は…

彼女達の在り方も変えた。

 

 

でも

変わらないものがある。

 

 

脈々と受け継がれた…守るという思い。

 

 

平和な海を

暁の水平線に…勝利を刻む事を

 

 

 

 

彼女達は止まらない。

 

 

 

 

 

ーあの人が生きた証ー…

ー守った海ー…

 

 

 

 

 

 

 

『ー…ご…う』

 

 

 

『こんごう』

あの人の声…

 

 

『金剛!』

 

 

『愛し…てるぞ…金剛…生まれ変わって…も…』

 

 

『……ダー…リン……ご一緒できて……幸せ…』

 

 

 

 

 

これはあの人の最期の記憶?

 

それが目の前のあの人と…あなたの未来の記憶?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は…こんごう

あの名前を継いだ…

 

 

 

金剛さん…

 

『なあに?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

––––力を貸してくださいッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

『おぉうけい!!』

 

 

 

 

 

私は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金剛だッ!!

 

 

 

 

 

 

「提督さん!!」

 

「こんごー…?」

 

 

この艤装じゃない…

私は…!

 

 

 

 

こんごうの艤装が変わって行く。

いや…戻って行く。

 

 

 

 

 

 

 

「私は……英国帰りの帰国子女…金剛型 1番艦ッ!!金剛!!」

 

 

 

誰かが力を貸してくれているような…温かい気持ち。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「時を超えても…その想いは不滅です!」

 

「私も…その誇り…お守りしますッ!!」

 

 

 

 

救には見えた。

彼女の後ろでピースしてる金剛が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「金剛型4番艦…霧島…私も…」

 

 

 

「…妙高型1番艦…!!妙高」

 

 

「高雄型4番艦!鳥海!私だって!!」

 

 

 

 

 

 

「ヘーイ!提督…指示をくださいッ!!」

 

「チェック1..2…いつでもどうぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたの為に戦えるのが…

一緒に戦えるのがこんなにも幸せだなんて…

 

 

 

 

 

 

 

龍鳳 改ニ 丙  超高揚状態

 

 

「私は負けない…あなたに負けないッ!!」

 

「全攻撃隊!発艦ッ!!!!」

 

 

 

 

「援護しますッ!!」

 

「お姉様ッ!!角度調整…右3度!!」

 

「鳥海と妙高は…対空用意ッ!!」

 

 

「「はい!」」

 

「了解ッ!!」

 

 

「ヘーイ!龍鳳!絶対に制空権を取らせますッ」

「やりましょう!!」

 

 

「はい!!」

 

 

 

 

 

『コノ…負けるかッ』

 

「対空射撃始めッ!!」

棲姫の発艦を撃ち落としにかかる2人。

 

 

『クソッ…この…ー

 

ドゴォン!!

金剛の砲撃が見事に命中する。

 

 

『小賢しいッ!!あの厄介な提督の指揮を…ー…あの眼鏡は…!?」

 

 

 

 

 

「いけえええ!霧島ッ!!そのまま打ち込めえええ!!」

 

霧島は飛んだ。

背中に提督を背負って飛んだ。

 

 

 

 

そしてそのまま固く握った拳をぶち込んだ。

 

 

バキィッ!!

『ガッ…ー」

 

 

 

「……制空権制圧完了です!!」

龍鳳が叫んだ。

 

 

 

「一気に畳み掛けるぞ!!」

 

『させるかぁぁあ!!!』

棲姫が龍鳳に殴りかかる。

 

 

それを受け止める龍鳳。

 

 

「…こんなの…!こんなの!!待ちに待った120年に比べたら…痛くもないわよッ!!」

 

バキィッ!!!

 

龍鳳はそのまま棲姫を殴り飛ばした。

 

 

孤独に辛い事は…殴られる事よりも痛い!!

それ以上に…

あなたを忘れてしまう方が怖かったから!!

 

 

「えええええい!!」

龍鳳はそのまま艦爆で爆撃して行く。

 

ズドドドドドン!!

 

『グッ…クソッ…!!』

 

 

 

 

 

逃げようとする棲姫。

 

 

 

 

 

 

「着弾観測射撃…こんごう型4人一斉射!!」

 

 

 

「攻撃隊…爆撃します!!!」

 

 

 

 

 

『クソッ!くそおおおおおおおお』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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285話 時の向こう側 ⑤ 時を超えて

 

 

 

『…ごめんなさいね…後を任せて…』

 

『大丈夫ですよ。ゆっくり休んでください、金剛さん…また生まれ変わったら…会いましょう』

 

 

安らかな顔で眠りについた家族…。

悲しみに暮れる葬式は…一瞬だった。

 

 

 

 

『**さん…あなたも退役するのですか?』

問いかけられた彼女もうんと頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日の事だった。

大淀さんから私に一通の手紙を渡された。

 

 

手紙…?

 

そこには…こう書かれていた。

 

 

 

 

龍鳳

君に直接愛してるとの言葉と共にこの指輪を贈らない事を許してほしい。

君が来てくれて…恐らく君が最後の加入艦娘になるだろうが…それだけが心残りだ。

 

またきっと生まれ変わってでも会いに行くから…

その時を楽しみに待ってくれ。

 

短い文章だったが…優しみに溢れた文章だった。

恐らく死ぬ間際…震える文字で必死に伝えようとした愛してるの言葉…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手紙をくしゃりと握って泣いた。

 

 

もうそこにあなたは居ないんだと言う現実が私の肩を抱く。

 

 

 

 

 

『…てい…とぐぅぅ!!』

 

今になって止めどなく溢れる涙。

 

『うわぁぁ!!置いてかないでくださいよおおお』

 

抑えても抑えても…それは止まらなくて…

 

 

 

 

不思議な感情はいつしか恋心に変わっていたから…。

愛されたかった。

なのにそれは…もう……

 

 

 

 

言葉も…思いも…呪いとなる。

 

 

 

だから決めた…

待ち続ける…と!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督さん……昔に会ったそのまま姿で…また笑いかけてくれた。

ふふ…

赤城だった頃と足すと…200年くらいになるのかな?

 

 

「龍鳳ッ!!」

 

彼が背中に掴まる。

こんなにも軽いのね…。

 

 

「提督!?」

 

「一緒に行くぞ龍鳳!ぶちかませ!」

 

 

「はい!!」

 

龍鳳は加速する。

その右手にありったけの力を込めてー。

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう…提督」

風の音に掻き消された声は…

 

 

ぎゅっと彼女を掴む手が強くなった気がした。

 

 

 

 

『やめろおおお!!』

 

 

 

「「くらえええええええ」」

 

 

 

 

 

 

 

彼女達の(思い)は…棲姫の体を貫いた。

 

 

『グッ…こんな…こんな…100年以上掛けて回復したのに…』

 

「…お互い様よ…」

「私も…待ったもの」

 

 

 

 

 

悪態を吐きながら灰となる棲姫。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……終わった」

ホッと胸を撫で下ろす面々。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

救は龍鳳に言う。

 

 

「俺のやり残した事、君の叶えたかった願い」

 

「……え?」

龍鳳達は首を傾げた。

 

「どういう…?」

 

 

将来の救は叶えたかった。

つまり…やり残したこと…。

 

 

 

 

彼の艦隊最後の加入者に指輪を渡す事…。

それは練度が足らず…いや、彼がその時まで生きられなかったのが理由である。

生涯…彼女だけに渡せなかったその指輪。

 

 

彼はそれを渡したかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…

 

 

 

 

 

彼女の叶えたかった願い。

彼に愛される事…彼と共に戦場に立つ事…。

人とは儚くも短い命…。

その灯火は既に消えかけており、夢を叶えるには遅すぎたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

それは時を超えて…

思いも超えて呼び起こした出来事。

 

 

 

 

 

 

結果として、その契りは過去の救が交わす事になった。

しかし、彼女は…彼女には…

それだけで十分だった。

 

それだけで120年が報われたのだ。

 

 

 

 

 

「この思い出で…私は報われました…。」

 

ぽろぽろと彼女は泣きながら言う。

 

 

「…龍鳳…?」

 

 

120年と言う時は…

本当に長くて一瞬で…

 

今のこの時は、一瞬で…尊く長い…。

 

 

 

彼女は叶えた。

その身が朽ち果てようとも…思いを捧げた相手へ…

その人生を捧げて待ち続けた…。

 

 

 

 

 

 

ありがとう…

 

私に…また来いと言ってくれて…

 

ありがとう…

約束を果たして…会いに来てくれて…

 

ありがとう…

一緒に戦ってくれて…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ありがとう…

愛してくれて…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛しています…。

 

チュッ…と彼女は彼女の愛を伝えて…

 

 

 

 

-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠久とも言える時間を彼女は守ってきた。

彼の生きた証とも呼べる鎮守府を…

 

彼女だけが覚えていた…。

 

彼と言う提督の存在を…。

 

 

 

 

 

役目を終えた艦娘は穏やかな顔で還った。

 

また彼と出会う日まで。

 

 

その身が朽ち果てようともずっと待ち続けた龍鳳。

彼女は守り抜いた。

誇りも…過去も…未来も。

 

 

 

「…ありがとう…龍鳳」

後ろから見た彼は小さく震えていた…。

 

 

 

 

 

 

「り、龍鳳さん……」

 

「消えた…んですか?」

 

「…還ったのさ……」

彼はそう言った。

 

 

金剛達は何もなくなった虚空を見つめた。

 

 

 

 

 

『ユー達……グッジョブデース…』

 

『龍鳳も……ありがとう』

 

誰かの声が…いや、私たちに力を貸してくれた偉大な艦娘の声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

いろんな事で頭が追いつかない。

それでも分かるのは…

彼が愛されていた事。

 

 

それは世界なのか…艦娘なのか…分からないけれども…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ……帰られるのですか?」

見れば俺の体は淡く光っていた。

 

 

《お爺ちゃん!帰っちゃうの?》

モニター越しに澪は言った。

 

 

彼は…ああ、そうだと言って…

「後輩達!」

「よく戦った…!」

と、敬礼して言った。

 

 

 

澪を含めて見ながら答える。

 

 

「先の英雄とご一緒に戦えた事を…誇りに思います!!」

彼女達はビシッと敬礼をした。

 

「最初のご無礼をお許しくださいッ」

 

「怒ってないよ」

 

 

 

 

 

「きっと…もうお会いする事は無いと思いますが…あなたと…そして、私が受け継いだ名前の偉大な艦娘の方と共に戦えた事…とても…嬉しく……」

 

何故だろう…涙が出るのは?

 

 

 

 

 

「お爺ちゃん……凄かったよ…」

彼女も…ポツリと言った…。

 

 

 

 

 

 

彼が愛された理由がわかった気がする…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あら?人ですね…」

帰りのこんごう達は人影を見つける。

 

「あの!あなた達!この島には誰も居ませんよ!?」

 

 

 

 

「…あぁ…かん娘の方…ですね。お疲れ様です」

「もちろん知ってますよ?」

 

「では…?」

 

「…お墓参りですよ」

彼女達はニコリと笑っていった。

 

《あー…そいつらは…身内だ》

と、澪が言った。

 

 

 

「私達のずーっとお爺ちゃんの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

気が付いたら部屋にいて…桜信濃が隣に居た。

 

 

「…指揮官…此度の…旅はどうであった?」

 

「…桜信濃…」

 

「…どこへ行こうと…汝の在り方は変わらぬのだな…」

 

「……もちろんさ」

 

 

「ふむ……であったら…急ぐと良い」

 

「?」

 

「汝を待つ人は…泣きながら汝を待っている」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

急ぎ、言われた場所へと走る。

 

まさか、まさかと思いながら…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「全く!いつもいつも!すぐ消えるッ!!どーしてダーリンはすぐどこかに飛ばされるデス!?」

 

 

待っていたのは涙目で怒る金剛だった。

 

 

 

「…ごめん」

 

 

彼女は…夢現の中でこんごうと繋がった。

つまり…

彼女の残りの最後を知ったのだ。

 

 

 

 

「…でも不思議と今回は私もわかったデース」

 

「……私なら…龍鳳のように…その期間は…耐えられないデース」

 

 

 

「会えるのは…何年後か………会いたいな」

 

「…他の娘の名前を出すのはノーだけど……うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「居ますが…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!?」

 

「え?!え!?」

 

「「えええええ!?!?!?」」

 

 

「なななななんで!?」

 

「…さあ?また会えますようにと思ったら…」

本人も状況が飲み込めてないのか…あたふたしている。

 

 

「……あ」

救が声を上げる。

 

 

「ダーリン…?」

 

 

 

「指輪…か?」

 

 

彼女が着けた指輪…。

 

彼の死後に自分で着けた指輪。

贈り主の居ない指輪は何の効果もない。

 

だが…

あの時彼は渡した。

誓いの言葉と共に…

なら…それは歴とした意味を持つものに変わる。

 

故に引き裂かれない…運命を曲げてでも彼女は会いに来た。

 

 

目の前のあなたは本物なんだ…

私の待ち続けた人なんだ!!

 

 

「提督…やっと会えた…」

「やっと抱きしめてもらえる…」

 

 

彼女は顔をぐしゃぐしゃにして飛び込んだ。

 

こんなに嬉しい事があるだろうか。

いや…ない。

 

彼女はずっと彼の名前を呼びながらずっと彼から離れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

とあるクリスマスの不思議な出来事。

 

行っても誰も信じなさそうな出来事…。

 

愛する者をずっと待ち続けた者と

愛する者の為に戻ってきた者の…儚いお話。

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、
龍鳳との切ないお話でした。


いかがでしたか?
少しでもお楽しみ頂けたら幸いです!

感想などお待ちしてます!
ぜひ!お願いします!


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286話 鎮守府の年末

もしも今日が世界の終わりならー…

 

 

 

私は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    泥

 

それも汚泥とでも言おうか…。

 

 

 

 

 

あなたのいない世界は"泥"に塗れた世界。

 

考えたくない世界。

 

 

 

 

 

「あー……喉が渇かないか?」

 

「どうしました?休憩しますか?コーヒーか何か飲みますか?」

 

彼は少し照れくさそうに言う。

 

「いや、いれてくれと言う意味で言ったんじゃないよ。俺が淹れるから…その、何だ…飲まないか?」

 

 

「頂きます」

 

 

もし…今日が世界の終わりの日なら

もし…今日が私の命の終わりの日なら…

 

 

私はあなたの側にずっといてその最後を迎えたい。

 

 

 

もし…今日があなたの最後の日なら…

 

 

きっとあなたは一緒には逝かせてくれないでしょう…。

 

だから私はその最後の時まで一緒に…片時も離れずそばに居ます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どう?」

 

「…ふふっ、美味しいですよ?」

 

きっと淹れるのを練習したのかな?

あなたがくれるものは何でも宝石以上に輝いて…

降り注ぐ木漏れ日のように暖かくて…

 

 

「よかった…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ!良いなあ!私も飲みたーい!!」

 

「え?マジ?」

恥ずかしそうにコーヒーを淹れるあなた。

 

 

親の熱気と共にコーヒーの芳ばしい匂いが部屋に漂います。

「砂糖とミルクは?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

艦種もクラスも…

海外艦だろうと、世界が違えども…

あなたはずっとその愛情を私達に向けてくれる。

 

それが堪らなく嬉しくて…幸せで…。

独り占めしたくて仕方ないけれども…大好きな皆と分かち合いたくて。

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「どうした?」

 

 

「愛しています」

 

言葉でも伝えたくて。

 

 

「ありがとう。俺も愛してる」

 

 

「……」

 

「……?」

 

 

やっぱり言葉だけじゃ足りない…

 

「…もっと…ください?」

 

「……おいで?」

 

「はい」

 

この人はぎゅーって抱きしめてくれます。

 

 

意地悪…。

抱き締められるのも好きですけど…

……むう…

 

わかってるくせに…

 

 

 

「意地悪しないで下さいよお」

 

 

「…ばれた?」

 

もちろん…

 

私は目を閉じてあなたに合図を送ります。

 

 

 

 

それはもちろん…キスしてください…って意味です。

 

「…」

 

 

あれ?

何でしてくれないんですか?

待ってるんですよ?

 

ねえ?

そんな笑って……

意地悪ぅ!

 

 

 

「何でしてくれないのですか?」

 

「バレた?」

 

「当たり前ですよお!」

「むぅ…拗ねます」

 

プイッとそっぽを向きます。

 

「君からして欲しいな」

 

 

……ズルイですよ。

 

 

「……むぅ」

 

 

 

逃げないように…顔を掴んで……

 

 

 

 

 

 

 

ちゅ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛してます」

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたは私の1番の人。

この戦いの中で…絶対に守り切ります。

 

 

え?

未来では私との間に子供が出来たかも?

 

 

今すぐ…もうけましょう!

さあ!さあ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…いいの?救君。私と年末を過ごして…」

 

今の私の隣には救君がいる。

クリスマスは鎮守府てま皆とパーティをしてたので会えなかったんだけど……

武蔵が行ってこいーって言ってくれたから来ちゃった。

 

 

「会いたかったしね俺も」

ゴソゴソと救君が取り出したのはあったかそうなコート。

 

「え?!私に?」

 

「うん」

 

「え……すっごく嬉しい……着てみていい?」

 

いいよと了解をもらって早速着てみる。

「あったかい…」

 

とても幸せになるんだけど……

 

 

 

 

 

「わ、私…何も用意してない……」

 

あたふたと慌てる私に彼は笑いかけます。

 

「いいよ、側に居てくれるだけで嬉しいよ」

 

「ううん!ちゃんと用意するから!」

 

 

 

 

「……あのね?」

「その……救君…あのね」

 

 

 

「大好きだよ?」

ゴソゴソと私はコートを取り出して渡す。

 

「え?!プレゼントあったの!?」

 

「あるよー!クリスマスに渡せなくてごめんね?」

 

「俺もだよ。ごめんね」

 

 

 

 

そういうやり取りをしながら年末を過ごす。

 

 

 

寒い海辺で隣に座るあなたと手を繋ぐ。

お互いが贈りあったコートを着てあったかいけど…手を繋いだらもっとあったかい…。

 

「……」

 

「…麗ちゃん?」

 

彼に引っ付きます。

もーっとあったかくなる…。

 

 

「いいでしょー?」

 

「ん…あったかい」

 

 

 

 

 

見つめあってそのまま唇を交わす…。

 

 

 

 

 

 

もう少しで今年も終わる。

 

ずーっとこんな日が続けばと思う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーー!」

「提督ー!」

「指揮官ー!」

 

「ここに居たのー!?」

「年越しそば出来たよー!」

 

「はやくはやくー!」

 

 

 

「って!!そんなにひっついてー!ズルイよー!」

 

と、2人の間に割り込んで来る時雨。

それに気づいた金剛や桜赤城達もやってくる。

 

 

ぶーぶー言いながら彼を離さない麗。

 

 

 

「麗ちゃんー!そこ替ってーー!」

 

「いーやーー!!」

 

「ずるいよー!」

 

「そうデース!いくら将来で子供が出てくるといっても………あ」

 

 

 

「え?子供?」

「私の…子供?」

 

 

「シット…口が滑りましたデース!!」

 

「救君との子供?」

「ねえ!?救君?」

 

 

「……まあ…うん、そうらしい…」

 

 

「え…まあ……うん」

恥ずかしそうに答える救。

 

まあ、そりゃそーだよね…恥ずかしいよね。

自分とあなたの子供が未来にはいるんだよ!なんて言ったらね…。

 

 

 

「……嬉しいなあ」

ぎゅっと抱きしめる手の力を強める麗。

 

「…ッ!」

ドキッとする救。

 

 

 

 

 

見つめ合う2人を引き裂くように艦娘達がやってくる。

 

「おーーそーばーー!」

お腹すいたと言う夕立。

 

「あなたー?…って!待ってるのに他の人とイチャイチャしちゃだめです!」

おたまを持ってムスーーっとする鳳翔。

 

 

「…指揮官様あぁぁあ!!!」

嘆く桜大鳳。

 

 

「ダメー!今は私と居るのー!」

イヤイヤと離れない麗。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「寒ーい…!でも…夜戦の時間だよ(除夜の鐘鳴らすよ)

 

なぜかいつの間にか設置されたであろう鐘から

ゴーンと音が聞こえてくる。

 

「ええ……」

 

 

 

 

「おそばー!」

「夜戦ー!」

「ダーリン!」

「寒いー!」

「救君ー!」

「指揮官」

 

 

 

構ってくれ!と言わんばかりに迫る皆笑い掛ける救。

 

「愛してるぞー」

 

 

「「「「「「私も!!」」」」」」

 

 

 

 

 

 

「鳳翔ー!蕎麦食おうー!」

 

「はい♡あなた」

 

 

 

 

「いや!待てやあ!!」

走って食堂を目指す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今年も一年ありがとう」

「あれ?鐘は?川内さん」

 

「飽きた」

 

「さいですか……」

 

 

「ずっとこんな風に年末を君達と過ごせたらと思う」

 

「ずっと一緒に居させて欲しい」

 

 

 

 

「来年もよろしく」

 

 

 

「かんぱーーい」

 

 

「「「「かんぱーい」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幸せそうに過ごす皆を見るのが好きだ。

 

 

 

願わくばこの瞬間が…ずっと続くとを……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ!!私!子供の名前考えたんですッ!!」

 

「今はやめてッ!!」





冒頭のキャラは明確にこの人とは定めてません。
お好きなキャラを当てはめて頂ければ…



今年の5月から大変お世話になりました。
少しでもお楽しみ頂ける作品になりましたでしょうか?


来年もぜひ、よろしくお願いします。

少しでもお楽しみ頂けたら幸いです。
感想などお待ちしてます。



良いお年を〜!


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287話 真 年末大騒動

え?2話目ですよ?
本日2話目です。
286話を見てからご覧ください。


除夜の鐘の鐘が途中で止められた鎮守府。

 

 

 

「真の年越しは私とデース…」

忍び寄るのは金剛。

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

抜き足差し足…忍び足…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「させないわ」

突然後ろから声を掛けられる。

 

 

「なっ…加賀ッ!?」

 

「やられたわ…まさか全ての時計の時間を変えておくなんてね!」

 

「うぐっ…な、何のことデース?」

 

「知らないと思ってるの?」

 

「……正妻ポジは私デース!!」

「いっつも大事なとこでは主役か主役クラス張ってまース!」

 

正妻ポジ(ここ)は譲れません…」

 

 

 

 

「時間の誤差?余裕よ…なんせ私は120年待ったんだから!」

 

「卵焼き…食べてもらうの…」

 

「私だって…やるのです!」

 

 

「金剛…やってくれたね?まさか時計を…フフフ…この時雨をだますなんて!!」

 

「夜戦の匂い!!」

 

 

「私達も行きます!ね!猛武蔵!!」

 

「れ…麗……。う、うむ…お邪魔します…」

 

 

 

 

 

鎮守府は遅めの年末大掃除(大戦争)へ…。

 

「待てッ!!」

 

長門が遮る。

 

「鎮守府を壊したりしてみろ…提督にマジで殺される」

 

「この前なんか那珂ちゃんが虫出たって魚雷で提督のお気に入りのカップ割って…」

 

全員が那珂ちゃんを見る。

 

那珂は青ざめてガタガタと震えている。

 

「思いっきりジャーマン・スープレックスをかけられてたな…」

 

「ええ…見事に頭が床に突き刺さってたもんね…」

 

 

 

「それって…提督が鎮守府壊してるんじゃ……」

 

 

 

 

 

 

「と言うわけで…ここは平和的に!アレで勝負しよう!!」

 

「のぞむところだッ!!」

 

「待っててね…ダーリン!私が勝ちマース」

全員が救の私室のドアを見つめて固く決意する。

 

あなたの隣は私のものだッ–––と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふいー…寒いねえ!」

 

 

 

「いらっ…お帰りなさい、あなた」

 

「うん、ただいま」

 

「いけませんね、クセが抜けなくて…」

 

「いいよいいよ!…あ!おしぼりあったかいー」

 

「寒かったでしょ?熱燗でいいですか?」

 

「一緒にやろっか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この男は私室には居なかった。

なんせ、もう年明けしたと思ってるから鳳翔の小料理をつまみにきたのだ。

後ろでは部屋の前で仁義なき争いが勃発してるなんかつゆ知らず。

 

「あ、あけましておめでとうございます」

 

「こちらこそ、おめでとうございます」

 

「「乾杯」」

 

 

 

「はい、いつものやつですよ」

コトッと出されたのは数の子とおにぎりと…お味噌汁。

彼の大好きセットだ。

 

 

 

 

 

 

 

「じゃんけん…ぽん!!」

 

「よっしや!!」

 

 

 

「ぬぉおおりゃぁぁあああッ!!」

 

バコォォオン!!

 

「ぎゃぁあ!!」

バタリ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァッ…ハァ…」

「やっぱり最後に勝つのは私デース…」

 

「マジ正妻甘くみんなよ……デース」

 

 

 

平和的に酒飲みからの叩いて被ってじゃんけんぽんに勝った金剛。

酒豪No1の座は彼女のものとなり、ダーリンの私室のドアを開ける…が!!

 

 

当然中には誰もおらず。

 

「モー!恥ずかしいからって隠れてるデース?」

 

「布団の中…」

居らず。

 

「クローゼット?」

居らず。

 

「トイレ?長くない?」

居らず。

 

「……お清めのお・ふ・ろ?」

電気すらついてねえ…。

 

「バルコニー!?」.

居ません。

 

 

 

「……why?」

と、金剛は居酒屋鳳翔の明かりがついているのを発見する。

 

 

 

 

 

「あ…」

ここまで約0.1秒

 

 

「あそこかぁぁぁあああ!!」

 

 

皆が不思議そうに見守る中金剛は言う。

 

「居酒屋…ホーショー…」

その一言を残してバルコニーから飛び降りる。

 

「「「「はあ!?」」」」

 

 

 

 

「…あなた…今年もずっと隣に居させてくださいね」

 

「こちらこそ」

 

 

ちゅっとかわされる唇。

 

「待つデース、って!遅かったぁぁあ!!」

 

 

「こ、金剛さん!?」

 

突然の金剛のエントリーに驚く2人。

そしてそこに雪崩れ込む面々。

 

「キス始めは私のものデース」

 

「まだ22時半!!セーフ」

 

 

 

 

 

 

「え??」

 

 

「あ…」

 

 

 

 

 

 

.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「改めてお疲れ様ー」

 

「「「お疲れ様でしたー!」」」

 

 

「許して欲しーデース!ぐすん」

[私は鎮守府の全時計を弄りました]の看板を首からかけて正座させられる金剛。

 

 

「反省してくださいー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…金剛?」

 

「ハイ…何デース?」

 

「……行ってらっしゃいよ」

 

「…?」

 

皆が金剛を見つめる。

 

「あんな事しなくても…金剛が提督と過ごすんだからさ」

「……ま、だからっても負けないですけどね?」

 

「金剛の次は私ですから…」

ちらっと瑞鶴を見る加賀。

 

「あ?」

 

「お?」

 

「ま、まあ!提督とゆっくり過ごしてね」

 

 

 

「…鳳翔は…良いんデース?」

 

「私はあの人とキス納めしましたから♡」

 

「おーぅ…」

 

 

 

「あ、あの!金剛さん!」

 

「何デース?まるゆ?」

 

「ひにn「スターップ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深呼吸をしてダーリンの部屋の前に立つ。

これってそー言う事だよね?

うー…緊張しマース…。

 

 

コンコン…

「失礼しマース」

 

「おー?金剛?いらっしゃい」

 

「あー…ダーリン…そのごめんなさい」

 

ダーリンはクスリと笑って答える。

「もうダメだぞー」

 

「ハーイ…」

 

 

 

 

 

 

温かいお茶を受け取ってベッドに2人で腰掛ける。

 

 

 

 

 

「金剛は…やり残した事はある?」

 

「…ダーリンと……その」

 

「?」

 

「ちゃんと契りを…その……線超えというか…」

 

「……する?」

 

「…酔った勢い?」

 

「……さあ?」

 

「…意地悪…デース」

 

「まあ…勢いではないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛してるぞ…金剛」

 

「私も愛してマース…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ……部屋」

 

 

「今、2人が居る部屋にロケット花火撃ち込んだらどうなるかな?」

 

「…良い考えではあるけど…邪魔しちゃあダメだよね」

 

「まあ!次は私の番ですから!」

 

「…私でしょ?」

 

「あ?」

 

「お!?」

 

「やんのか?」

 

「やるか?」

 

 

 

第二次年末大戦勃発。

 

「その寵愛は私のものですッ!」

 

「ウチのもんや!」

 

「わ、私のものなのです!」

 

「お前は年齢的にアウトだろ!」

 

「あ?いけるわ!……なのです」

 

「…好きって言ってくれたのに…」

 

「猛武蔵……負けられないね」

 

「れ、麗……」

 

 

 

 

 

 

 

鎮守府メンバーと麗達がパイルドライバーをかけられるまであと8時間

 

 

 

 

 

 

 

 




え?
2人がどうなったか?

タグ見てくださいよ!?
怖い怖い





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288話 鎮守府の年始 ①


あけましておめでとうございます!


 

やってまいりましたお年始です。

 

 

 

 

 

 

 

え?今何年ですかだって?

 

おいおい…今はね?20…「改めまして…ダーリン!あけましておめでとーござマース!」

 

 

「おー!あけましておめでとうー!」

 

「やっぱり私が1番乗りデース!!」

 

 

くっそ早朝に自分の部屋に朝帰りした金剛がエントリーしてくる。

毎度ドアの鍵は閉めてるのにね

何で開くんだろうね?

 

 

 

 

「いや……うん」

歯切れの悪い救。

 

「……え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

加賀「残念」

鳳翔「だったですね」

何名かな艦娘やKAN-SEN達が出てくる。

 

 

「オー!シーーット!!」

「確か新年の挨拶は7時以降だったはずデース!!」

今は7時1分のはず…と時計を見る金剛。

 

 

「な、なッ…なんダトぅー!!!」

7()()2()()()()()()()()

 

 

 

「金剛さんの部屋の時計を…」

 

 

 

「1分早めておきました…」

 

 

 

 

 

 

「ぬううううううん!!」

「それは許されない大罪デース!!」

 

 

「アンタやってたでしょ?」

 

「って…夜中まで居たんですから挨拶は終わってるでしょ?」

「挨拶どころか色々とねえ…」

「やっちゃったんだろねえ…」

 

「腰は痛くないの?」

 

「な、ナンノコトデース」

 

 

 

 

 

「…やっぱりロケット花火撃ち込んだら良かった…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…待て」

「エラく…酒臭いな…」

 

 

 

 

 

 

あ…

まずーい。

 

あの場所は見られる訳には……

 

 

 

 

 

 

 

 

昨晩の…

 

『さて…提督の寵愛を年始に受けるのは誰だ選手権ッ!!』

 

『もう、手っ取り早く戦おうよ』

 

 

『良いですね…本気出しますよ?』

ニッコリと微笑む鳳翔。

 

『我も本気を出さねばな…』

パキパキと拳を鳴らす桜三笠。

 

『………なのです』

ハイライトが消える電。

 

 

『勝った人にはワタシが手料理用意しとくよー』

笑顔で言う蒼ポートランド。

 

 

走る戦慄。

震える艦娘達。

特にポートランドの料理に。

 

 

 

結構、ガチバトルで鎮守府はえらいことになっていた。

 

こ、殺される…

絶対バレる訳にはいかないッ!!

 

無駄に固い結束力が生まれた艦娘達は必死にそちらへ行かないように誘導する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何言ってるんだ?提督〜。さあさ!お節でも食べに行こう」

 

「……気になるんだよう…焦げ臭いし…」

 

「年始なんだ、酒もみんな呑むさ」

「七輪でじゃこ天でも焼いたのさ」

 

 

 

 

「なんか隠してない?」

 

「い、いいいいいや?」

 

 

 

 

 

 

 

「ふーーーん」

 

スタスタと現場に向かって行く救。

 

 

 

 

 

 

死にましたわ…コレ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?何これ」

 

壁やら天井やら床やら…破壊されているのを発見された!

というか、隠すのかまず無理だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、あの…」

 

「……誰?」

 

「わ、私は知らないデース!!」

「夜はずっとダーリンと居まシタ」

ブンブンと顔を横に振りまくる金剛。

 

 

 

「……ながもん」

 

「……黙秘する」

 

「それって最早認めたようなもんだよね?………蒼オークランド…」

 

「……やっちゃった♡」

テヘッ…と舌を出す蒼オークランド。

 

「あん?」

 

「だ、だってね!?金剛さんだけズルイよ!?わ、私達だって指揮官と…その……組んず解れつしたいよ!」

 

「組んず解れつって……」

 

「大人の階段は何段でしたかァ!!!」

「景色は良かったですかァァ!?」

 

 

「………」

 

 

 

「そ、そうだ!だから2番は誰か…と争いになって……」

 

「私達だって提督とそーなりたいんだ!!」

 

 

 

「そうか……」

救は意外にも笑って言った。

 

「そんなに俺は愛されてるんだな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?…誰が勝ち残ったの?」

 

「私です」

 

 

「ほ、鳳翔…?」

聞けば…一撃で武蔵をギブアップに追い込んだらしい…。

 

 

 

「2位が我だ」

 

「3位が私です」

 

「桜三笠…加賀…」

 

「4位です」

 

「麗ちゃん!?!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、一位からアイアンクローからのパイルドライバーな」

 

「「「「え?」」」」

 

 

「え?あなた?」

ガシッ…

 

「…鳳翔……」

 

「はい」

 

「愛してるぞ」

 

 

「優しくして…くださいね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鳳翔は鎮守府の床に突き刺さった。

 

「アークロイヤル…他、海外艦よ…これがジャパニーズ門松だ」

 

「え……門松ってこう言うものでした?」

桜ビスマルク達が震えながら問いかける。

 

「竹も無いからね…君達に竹になってもらうことにするよ」

 

「桜三笠…?準備はいいね?舌噛むなよ?」

 

「う、うむ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

それは見事にほぼ全員が床に突き刺さった。

 

 

「麗ちゃんは…デコピンにしようか」

 

「あ…それなら……」

 

 

 

ガタン

 

ガタガタガタガタ…

突如震え出す、おおよそ、那珂ちゃんだと思われる門松。

 

 

「…………え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴッ…

 

 

 

Q 今の何の音?

 

A デコピンです

 

 

 

 

 

 

 

「〜〜〜ッ!!」

「い、痛いいいいいッ」

「痛いよお!救君んんん!!!」

 

悶え苦しむ麗ちゃん。

 

 

「ひどいよお!」

 

「この鎮守府の状態もね!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねんしからはたらかされる…ぶらっくですか?」

 

「のんびりしてたのに…」

 

「うわぁ…みんながいろんなところにささってるよ…」

 

 

 

 

 

「…ごめんね?皆のお給金やお年玉から引いたお金でお菓子買うから」

 

 

「ほう……」

 

「…金平糖…これでどうかな?」

救は指を3にして見せる。

 

「3つ…かあ…」

 

 

「バカを言っちゃいけない3袋だよ」

 

「しゃんでりあでもつけとこうか?」

 

 

 

 

「なら…新年会の準備もいいか?」

 

「よろこんで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うう…あなた…ごめんなさい」

「でも私も…あなたと…本当に結ばれたいんです」

 

 

「…鳳翔……」

 

「…大丈夫デース」

 

「金剛?」

 

「未来では子沢山らしいデース」

 

「やめてくんない?その言い方」

 

「好きな人と結ばれるのは…1番の幸せデース」

 

 

 

「順を追ってね、やっていこうね」

 

「はい♡」

 

 

 

 

 

 

 

「埋まったままじゃなかったらいいんだけどねえ」

 

 

 

 

 

 

 

ズボッ

バキッ…と艦娘達が抜かれて行く。

 

 

 

「さあ…新年会の準備するぞー」

 

 

 

 

 

 

 

 




今年もよろしくお願いします(๑╹ω╹๑ )


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289話 鎮守府の年始 ②

「はい、羽子板やります」

 

「「「「いえええい!!」」」」

 

 

 

発表される組み合わせには救、麗や将大達の名前はなかった。

 

「何で!?」

 

 

「提督サイドの組み合わせを発表します」

 

 

 

 

「はい、俺は麗ちゃんとね」

 

「「「「何で!!」」」」

 

「お前等、容赦ねえもん。この前なんか…陸奥…ねえ」

 

「あ、あら?何だったかしら?」

 

「人の顔に陸奥専用なんて書いただろ?」

 

「事実だもの」

 

 

「羽子板はね、木を貫通したり、鉄製を使ったりしないの」

 

「今回は個人戦ね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

.

「救君罰ゲームはやるよね?!」

 

「いや、罰ゲームはないよ?」

 

「やるの」

 

「やらない…」

 

すでに筆を待ってる麗。

 

「何で書くの?因みに…」

 

「麗の旦那さん♡」

 

「主張強すぎッ」

「ダメです」

 

皆もあった方がいいとの事で…罰ゲームはありとなりました。

 

 

 

「ほい!」

 

「えい!」

 

「あ…」

 

「はい、麗ちゃん罰ゲーム〜」

 

「…負けたよお…」

 

 

 

 

「……書けました」

 

 

「何?何て書いたの?」

 

「秘密」

 

「えええ!!」

 

 

 

 

 

 

「ちょっと!提督」

 

「どうした?加賀」

 

「私にも書いてください」

 

「罰ゲームたからね?アレ」

 

「羨ましすぎます」

 

「何が愛してるですか。私も書かれたいです」

 

 

 

「え…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「フンッ!!」 カン!

 

「セイッ」 カン!!

 

「ハァッ!!」 カン!

 

「そおおおおりゃぁあ!!」 バチィ!!!!

 

「くうっ!!」

 

 

 

「ヨシ!私の勝ちよ!」

 

「…提督!勝ったわよ!飢えた狼は伊達じゃないわ!」

 

勝利報告に足柄がやってきた。

 

「おー!白熱した戦いだったな!おめでとう」

 

「じゃあ……ん……」

足柄は目を閉じてこちらに頬を向けている。

 

「………?」

首を傾げる救。

 

 

 

「…-?」

「あれ?書かないの?」

チラッと目を開けてうるうるした目で聞く足柄。

 

「何を?」

 

「えっ…勝ったら頬に愛してると書いてくれるって……青葉が…」

 

「どんなルール!?!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ…鎮守府の年始がまともなはずはなく…

相変わらず駒回しは地面を掘るし、戦艦の羽子板は恐らく徹甲弾並みの威力を誇るだろう。

 

 

書き初めは…うん

結婚が多かった。

あとは既成事実とか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お節たべましょー」

 

間宮達の用意が出来たようで、お節を頂く。

 

「えー…あけましておめでとう」

「今年も変わらず色々と大変だろうが、是非ともみんなの力を貸してほしい。共にこの戦いを乗り切ってまた年末にバカをやろう」

 

 

「いいぞー!提督ー!」

と、隼鷹達が声援を送る。

と言うかもう呑んでんな?お前。

 

「まだ酔ってません!!」

敬礼しながら言う。

うん、酔ってるわ。

 

 

 

 

「かんぱぁぁぁあいい!」

 

「「「「「かんぱーい」」」」」

 

 

 

 

 

 

にしても…?

「はい!司令官!どーぞ」

 

「指揮官さま」

 

「提督」

 

やたらと周りに皆が集まる。

 

「どしたの?」

 

 

皆がソワソワした感じでこちらを見ているのに気付く。

 

あぁ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お年玉か!」

「よーし…渡してくぞー」

 

 

 

「やったぁぁぁあ!!!」

 

「さすがぁぁあ!!」

 

「指揮官サイコーー!!」

 

 

一人一人に配って行く特別お年玉。

この笑顔の為なら…多少…貧乏でも…うう……

 

よし、巌元帥のとこにタカリに行こう、そうしよう。

 

 

 

 

 

 

 

お節の後は鎮守府にある神社にお参り。

街の神社の分社である。

 

その後は、街の神社に俺と、間宮と足柄と蒼カールスルーエと桜シリアスで向かう。

色々とね、破魔矢とか買ったりする必要があって…。

 

 

 

間宮もお店に置くものを買うらしいが…

商売繁盛はわかる…

家内安全…と恋愛成就……とは?

 

 

シリアスは「失敗しませんように…誇らしきご主人様に捨てられませんように!!」と祈り…

 

 

 

足柄は…………わかってるって…俺がもらうって…。

 

 

蒼カールはこのようなしきたりがなかったから…と困惑してたので、あらかたのやり方は伝授した。

 

「なるほど…では、私メイドにとって…ご主人様が全てになるので…」

 

「ご主人様が末長く、健康でありますように」

 

 

 

 

 

 

 

おみくじをやっているらしく皆に引いておいでと言う。

俺?

俺は基本的に良いのが当たらないから…ね。

今まで凶以外引いた事ない。

 

「大吉ですね」

 

「中吉です」

 

「アレ?提督はひかないんですか?」

間宮が不思議そうにこちらを見る。

 

 

「あぁ…うん、俺基本的に良いのが当たらないから」

 

 

「………なら…」

「誇らしきご主人様!100円出してください」

 

「え?お。おう」

 

桜シリアスはそれをおみくじのお金入れに入れた。

 

「やらないよ!?」

 

「まあまあ、これで」

桜シリアスは救の手におみくじの箱を渡した。

 

 

彼女は彼の手に触れている。

 

 

「振りにくいかも知れませんが…一緒に引きましょう」

 

「ん…わかった」

 

 

 

シャカシャカとそれを振る。

出てきた番号から渡されたおみくじは…小吉だった。

 

初めて出た凶以外の結果。

 

 

「なるほど…」

と、間宮達は微笑みながらその結果を喜んだ。

 

 

「皆が居れば大吉ですね♡」

 

 

「ご主人様は1人ではないのですよ?私達が皆で支えます」

「あなたが運勢が凶でも…それも皆で寄れば問題ないんです」

 

「誇らしきにとって私達が良い存在になれて良かった」

 

ニコリと微笑む彼女にありがとうと言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

鎮守府に帰っても酒盛りは続いていた。

 

 

平和そうに見える鎮守府。

バカもやれて…皆が幸せそうに過ごすこの時が何よりも尊い。

 

 

 

 

 

 

「今年もよろしくな…皆」

 

 

 

 

 

 

「てーとーーーくー!はやくー!一緒に飲もうー!」

 

 

「おっしゃ!!夜通しバカやるぞおおお!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




年末年始休みが終わるううううう


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290話 OC&BL ①

「はあ!ハァッ」

 

息を切らせながら逃げる提督。

 

その後ろを追いかける…というより、追い詰める影。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼に…今まさに、魔の手がかかろうとしている。

  

 

無論、彼にはその理由を知る由もなく…

物事の転機、展開は突然やってきて降りかかるものだから。

 

 

 

 

 

 

「やめてくれ…頼むッ」

後退りしながら逃げる提督

 

 

「ツカマエタ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……提督…」

「もう逃しませんよ…!!」

 

「腹括ってくださいッ!!男なんですから!」

 

「いや…その…」

「ズボンを脱がさないでえええ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、彼の貞操の危機(笑)だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「原稿完成にはですね!リアルな見本が必要なんです…よッ!」

「終わった後の処理も任せてもらっていいですから!」

 

「早くヌードモデルになってくださいッ!」

 

青葉が提督を脱がそうとしている。

 

 

 

 

 

 

「あ、青葉ぁ…提督嫌がってるよ…」

 

「何言ってんですか!?秋雲!?未だに恥ずかしくて見られないとか言ってネットでも(ピーー)を検索もしてなくて、描けないのはアンタでしょーよ!」

 

 

 

「(ピーー)言うなって女の子が」

脱がされながらも突っ込む救。

 

 

「うう…だけど…」

 

「だから好きな提督さんの(ぴーー)を資料として見せてもらってそのまま愛してもらおう作戦なわけなんですよ!」

 

 

「だから(ピーー)言うなって」

 

「何言ってんですか!私ゃ記者ですよ!?そんくらい平気ですよ!そんなのねえ!気にしてたら記者が務まりますかッてね!」

 

 

「あら?経験豊富かな?」

 

 

「…………その話は置いといて…」

 

 

「秋雲…いえ!オータムクラウドォ!見たいんだろう!?提督の…ピーーーが!!」

「初めて(見るの)は大好きな提督!って決めてたんでしょおおお!?」

 

 

 

「あうう…でもぉ…」

 

「皮一枚破るんだ!オータムクラウドッ!脱皮だ!生まれ変われ!」

「そぉして…この提督のパンツの皮一枚破るんだ!」

「理想郷はそこにあるうううう!!」

 

「……なるほど…できるかな?」

 

 

 

「全然上手いこと言ってないからッ!!やめて!?これ普通にヤバい案件だから!!」

 

 

「やめてえええええ!!!!!」

 

 

ゴクリ…と生唾を飲み込んだ秋雲がオドオドとしている。

「提督…秋雲はね…漫画描いてもね?……その…ピーーーだけ描けないの…」

 

 

「だから…その…提督の……見せてくれませんか?」

 

「青葉………上目遣いでもダメッ!!ダメえええ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…秋雲って絵を上手に描くよねえ』

 

『そうかなあ?』

 

『…うん、描き込みも細部まで丁寧だし……いっそのこと漫画販売にしてみたら?』

 

『そ、そんな事まではできないよ』

 

『この間宮さんに怒られてる提督なんかリアルで面白いけどなあ………ん?』

青葉は一冊の本を見つける。

 

『………ふぅん』 パラっ

 

『へえ…』ペラペラ

 

『…なあに?……って!その本は!?』

 

『この絵…秋雲と提督だよね?』

 

『!?!?!?』

 

『ほー…こう言う事…したいんだ?』

『ほほー…濃厚な…』

 

『d@m@'gmg.pmm』

 

『慌てない、慌てない』

(寧ろなんか安心したよ』

『……でもさ…これ…ピーーーの部分書いてないよね』

 

『あう…だって…見たことないし』

 

『ネットとかあるじゃん』

 

『嫌だよ!誰のかも知れないモノなんか見たくないし、恥ずかしいよ』

 

『なら…提督のは?』

 

『………』

ボッ…と顔が赤くなりプシューと言う音と共に倒れ込む秋雲。

 

『……純なのかねえ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからというもの…

 

 

 

「…ん……ふぁあ…朝か……」

 

「ん?」

 

 

 

「恐縮ですッ!!」

布団に潜り込んで来る青葉。

 

 

「寝起きは特にマズイッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンコン…

 

「……俺専用のトイレなのに…?」

 

 

 

「恐縮でぇす!」

 

「トイレはやめてッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「開けてください!お風呂はいりたいのー!!」

 

「青葉ァァ!てめええええ!」

 

 

 

「恐縮ですううう!!」

 

「お風呂迄来るのおおお!?!?」

 

 

 

 

ところ構わずやってくる青葉。

 

それが冒頭に繋がる…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダメだよ…青葉…」

 

「こうなったら…間接的にでも!!」

 

 

 

「金剛さん!提督の主砲についてお尋ねしたいのですが…」

 

「…ほう…」

渋い顔でニヤリと笑い対応する今後。

 

 

「ズバリ…どれほどの……?」

 

 

「…三式d…「やめい」

 

 

「やめい…」

「2人とも……本当にやめてください…」

 

救が本気で頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐぬぬ…」

 

 

悔しがる青葉だが、もう1人は違った。

 

 

秋雲は後悔した。

 

その姿に後悔したのだ。

 

 

 

 

「やめよう…青葉…」

 

 

「何で!?ー……ッ!?」

 

青葉は見た。

涙を浮かべる秋雲を…。

 

 

 

 

 

「これ以上やって嫌われたくないよ…青葉」

 

「秋雲…」

 

 

 

トボトボと部屋に戻って行く秋雲。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……青葉」

 

「不知火?」

 

「…もう少し考えた方が良いです」

 

「……」

 

「秋雲、明後日からの夫婦体験、延期にしたらしいわ」

 

ドキりとした

忘れていた…そうだった。

明後日からだったんだ…。

「な、なんで…」

 

「…提督に嫌われたって…泣いてる」

 

「そ、そんな…」

 

「最後まで断り切れずに着いて行った秋雲も悪いし、暴走した青葉も、悪いと思います」

 

「ジャーナリズムとは…人を不幸にするものではないと思います…」

「あなたの書く青葉新聞も…」

 

 

「秋雲の描くマンガも…」

 

 

 

「末の妹と仲良しなのは知ってますので…陽炎型一同、怒ってないですが…もう少しだけ考えて下さい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

急いで部屋に走る。

 

 

「…秋雲…」

 

「ご、ごめんなさい…」

 

 

「ううん…私も悪いの」

 

 

 

 

 

「わ、私は…」.

 

 

 

 

 

 

 

「ただ、作品を完成させたいだけなの…」

グッと堪えて秋雲が言う。

 

 

「だからそれが不完全なのが辛かったの」

 

 

 

「……秋雲…」

 

 

 

 

「そうだね…アンタ…提督の事大好きだもんね」

「だって…秋雲の描く提督…どれも凄いリアルで…笑顔なんか凄いんだもん」

 

 

 

 

 

「うん…好きな人だから…ネットとかそんなので完結させて描きたくなかったの」

 

 

「ごめんね?青葉…。私の為に色々と…やってくれて」

 

「でも…嫌われたら悲しいから…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……私は何をやったんだろう…」

 

あの顔が物語っていた。

こんなに…こんなに……

 

 

友達の為だった。

でもそれは友達の為にならなかった。

 

 

何が記者か

何がジャーナリズムだ。

私は…友達を傷つけた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督…」

 

「…青葉…」

 

「そんなに警戒しないで…しないから」

 

「…ごめんなさい」

 

「…もういいよ」

 

 

「お願いがあります」

「何でもします」

 

 

「ん?」

 

「提督は…秋雲嫌いですか?」

 

「そんなはずないよ」

「愛してるさ」

 

「私の事は嫌いでも良いです」

「でも、秋雲の事は嫌いにならないでください」

 

「青葉……?」

 

「明後日は…秋雲との夫婦の日だったんですよね」

 

「あぁ…でも、秋雲が延期を申請してきてな…」

 

 

 

「お願いします、もう一度…提督から誘って下さい」

 

 

「どう言う事だ?」

 

 

「私の暴走で…秋雲は提督に嫌われたと思ってるんです」

「悪いのは私なんです」

 

 

「罰は何でも受けます、取材も…新聞制作もやめろと言われたらやめます」

「でも!それ以上に…友達を悲しませたままになんかできないんです」

 

 

 

 

 

「不知火からもお願いします…」

 

 

「不知火!?」

「ぬいぬい!?」

 

不知火も横から出てきて頭を下げる。

「お願いします」

 

その奥からも陽炎型と衣笠がぞろぞろとやってくる。

 

「あ!この…!パパラッチめ!」

 

「こら…嵐…」

 

 

 

 

 

 

 

「そも…なんでピーーーなのさ」

 

 

「…これを」

不知火が一冊の本を差し出す。

 

「これは……おれ?………ブッ!?」

 

「そうじゃ…提督と…秋雲の…らぶ絵じゃ…」

 

 

「本人に見せるのは…描いた側も描かれた側もキツイと思うけど…」

「見て欲しいな…アイツがどれだけアンタを好きか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……つまり?」

 

 

「秋雲は俺に嫌われてると思って…夫婦体験を延期したと…」

 

「んで…原因が俺のピーーーだと…」

 

「「「「はい」」」」

 

「……………うそん」

 

 




オータムクラウド

ブルーリーフ






少しでもお楽しみ頂けたら幸いです。


感想などお待ちしてます!ぜひ!ぜひ!!


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291話 秋雲と青葉  ② 秋雲と1日夫婦  

…私はあなたを描きたい。

あなたがずっと生き続けられるわけではないと知ってるから…。
そして私も…同じく…。


だから…あなたの笑顔も困り顔も…
全部残したいんだ。

あなたが生きた証も…
写真は青葉に…
私は絵であなたへの愛を残したい。

























 

 

「…少なくとも…俺のピーは原因にはならないと思うんだけど…」

 

「いくら友達の為とはいえ、やり過ぎは良くない。わかっただろう?青葉」

 

「はい…すみません…」

 

「…気まずっ……まあ…やるだけやってみるよ」

ぽんぽんと青葉と不知火の頭を撫でて行く提督。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンコン…

「はい…」

 

「…秋雲?」

 

「…提督!?」

 

「入っても?」

 

「は、はい!!ちょッ…ちょっとだけ待ってください!!」

ドアの隙間からにゅっと顔を出した秋雲はそう言って引っ込んだ。

 

 

ガサガサ…ドン! キャァア!!

 

ガラガラ!

 

ガサガサ ウワァァア

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、お待たせしましたぁ…」

 

 

 

 

 

 

「…お、おう…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コトリとお茶を出されて、ちゃぶ台を挟んで向かい合う。

 

 

 

 

「あの………ご迷惑をお掛けしました…」

「本当にすみません」

 

「青葉は私の為に…やってくれたんです」

 

「だから…だから……」

 

 

 

 

「秋雲は…何で俺の…その……何だ……」

自分で言うのはこの上なく恥ずかしい…

「…ピーーーを見たいんだ……」

 

「……あぅ…」

 

「………」

 

「…ぁの…その」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「秋雲」

 

「ひ、ひゃい!」

 

「明後日…デートしよう」

 

「へ!?」

 

「夫婦として過ごそう」

「俺だって君の全てを知ってる訳ではない、だから…お互いをもっと知ろう」

 

 

「…え……?」

 

 

なんで?

この人はもう私がしてる事を知ってる筈なのに…

 

 

 

 

 

 

「…提督?私の事嫌いじゃないんですか?」

 

「へ?何で?」

 

 

「わ…私…自分の描いた絵のことくらいわかります」

 

「青葉と姉達ですよね…」

「描いた絵がない事くらい分かります」

 

「皆に言われてきたんですよね」

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

「気持ち悪くてごめんなさい」

 

「こんなの全部…捨て「ありがとう」

 

頭を下げて謝ろうとした私の肩を止めて彼は言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう…恥ずかしいくらい嬉しいよ」

 

「そ、そんな嘘なんか…」

 

「嘘じゃないよ…」

 

「これでもですか?!!」

ガラリと机から大量の絵を出す秋雲。

 

それも…全部救の絵…。

 

「これも!これも!!これもッ!!」

「全部あなたの絵なんですッ!!ほら!この手を繋いで歩いてるのも!キスしてるのも!抱っこされてるのも!全部!全部っ!!!」

 

 

 

「…でも…」

 

 

 

「ダメなんですッ!!」

 

「私はあなたと手を繋いで歩いたこともない…キスも…えっちも…」

「だからわかんないんです…」

 

「それが悔しいッ!!」

 

「あなたの笑顔なら描けるのに…私があなたとこうなりたいってのには、体験がないからッ!!魂込めて描きたいのに描けないの…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

顔色ひとつ変えずに一枚一枚を見る救。

 

「…私は…あなたが好きです…だから!描きたかったんです!そうなりたいって!気持ち悪いでしょう!?絵の中だけでヤることヤらせて!」

 

「……」

 

「陰気な女には……」

 

「…よく見てくれてるんだなあ」

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

「んにゃ…頬の傷とか…このクセとか…よく見てくれてるんだなあ…って」

 

「そ、そりゃあ…絵を描く上では大切で…」

 

「それくらい俺を見てくれてるんだろう?……ずっと」

 

「………」

 

 

 

 

 

「…はい」

 

「ありがとう」

「そこまで愛してくれてありがとう」

 

 

 

「気持ち悪くないんですか?ぐすん…」

 

 

 

「……来てくれ」

彼は私の手を引いて彼の部屋に…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには彼に昔渡した絵が額縁に入れられて壁に飾られていた。

 

 

「この絵は…」

 

「皆の絵だね。こんな風に集まって写真なんか数回しか撮ったことない」

 

 

「写真にはない…生き生きした絵を描けるのは君の才能だと思う」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は昔から君の絵が好きだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

絵が好き

 

 

 

 

それは魂を込めて描く私にとって…

私を愛してると言ってくれるのと同じくらい嬉しい言葉。

 

私にとって…あなたを描く事は、皆が提督〜大好き〜と伝えてるのと同じなのだから…。

 

 

 

 

「わ、私……」

 

「あなたを描きたくて…」

 

 

「ずっと…ずっと色褪せない思い出を…」

 

「あなたの生きた証を残したくて」

 

 

 

 

 

 

 

 

「知ってるよ」

 

 

「え?」

 

 

「いや…何でもない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は知っている。

 

何故か?

 

彼は見ている。

見慣れた絵柄がその先にあったことを。

 

 

彼の死後120年先で…誰も彼を直接知らない世界で…

とある鎮守府に飾られていた大きな一枚絵を…。

 

 

 

それは…

皆で集まって笑う絵。

 

中心に彼が居て…皆が居て…

 

それを大切に飾る彼の子孫が居て…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ともかく…気持ち悪くない」

「そんな事を言わないでくれ…」

 

 

 

 

「俺は君の絵が大好きだから」

 

 

 

 

 

 

「…はい」

嬉しかった。

ともかく嬉しかった。

 

否定されるのが怖かった…

避けられるのではないかと思った。

 

 

 

 

 

 

 

提督が帰った後…

 

原稿を抱き締めた。抱き締めて泣いた。

ぽたぽたと落ちる涙は止まらなかった。

 

「ふぐっ……うっ……」

 

 

 

「うわぁぁあ」

声を出して泣いた。

 

地味だとか暗いとか思われると思っていたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「秋雲…」

青葉がやってきた。

 

 

「青葉…」

 

 

「ごめんね…」

彼女は謝った。

やりすぎたこと、絵を勝手に見せたこと、提督に相談したことを…。

 

 

 

「ううん…提督…私の絵好きだって。嫌ってないって…だからデートして…もっと深めよう…って…うっ…うわぁぁあん」

 

彼女の涙が安堵のものと知って…青葉も泣いた。

 

「うう…うわぁあん!よがっだあ!ごめんよおお」

 

 

 

2人で抱き合って泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

「ね?不知火ちゃん。大丈夫でしょ?」

 

「陽炎姉さん…」

 

「あのね、提督の私室に絵を飾った時にね?彼は言ってたの『俺は彼女の温かい絵が好きだ…少しずつ人が増えたら書き足してくれるかなあ?』ってね?」

 

「それに…あの人が誰かを否定して貶す事はないと思うの」

「青葉にはいい勉強になったかもね」

 

「……はい」

 

 

 

 

 

 

 

「…ぐすっ」

 

「ううっ」

 

2人で間宮さんにアイスをご馳走してもらってます。

おいしいよお…

 

「で?行くんでしょ?デート」

と、間宮がニコリと秋雲に言う。

 

「はい…」

 

「どこに行きたいか…決めなくちゃね」

 

「あ…」

 

そうだ。

私が提督と行きたい場所…

提督とどう過ごしたいか…

 

「はう…」

想像しただけで…恥ずかしいよ…。

 

「あなたの行きたいところ、やりたいことを素直に伝えるだけで大丈夫よ」

ゆっくり考えなさいね?と間宮さんは優しく言ってくれた。

 

 

 

 

 

そして……





秋雲のキャラが違う?

こんな秋雲…どうですか?



少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。

感想などお待ちしています!


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292話 秋雲と青葉 ③ 秋雲と1日夫婦 




この光景を目に焼き付けよう…。

夕陽よりも輝いて…綿飴よりも甘いこの瞬間を…

この宝物だけは……絶対に












『秋雲…やっぱりアンタの絵は凄いわ』

『私も写真にはすごく自信あるけど…アンタの絵には敵わない』

 

『でも…時間もかかるし…瞬間瞬間を捉えるなら写真の方が…』

 

 

『写真は…その角度と、瞬間だけ』

『でも、絵なら…違う角度も、瞬間も再現できる』

 

 

『秋雲の記憶能力はカメラ並みよ…本当すごいわ』

 

 

『私は好きよ?秋雲はセンセの絵』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お?秋雲…絵描いてんの?』

 

『ひゃっ!?て、提督!?』

パッとスケッチブックを抱え込む。

 

 

 

『ごめん!驚かせた?邪魔した?!』

 

『あ…ぅ…』

『いえ…そんな事はなくて…』

 

『見ても良い?』

 

『……どうぞ』

 

 

 

 

 

『…街の港の灯台か?凄いな!まるで写真だ』

 

子供のように凄い凄いと連呼する提督。

 

『そ、そんな事ないですよ…』

 

『いやいや……ん?これは俺か?』

 

その絵には灯台の下で佇む彼の姿があった。

 

 

『あ…はい、以前街に買い物に行った時に見かけたので…何か…寂しそうと言うか…儚げな表情だったので……』

 

『それが物凄く印象に残ってて…』

モジモジと赤は言う。

 

意外そうな、恥ずかしそうな顔をしながら彼は言う。

 

 

 

『…そうか…ありがとう、よく見てくれてるんだな』

 

『俺は好きだなあ…君の絵』

 

 

 

 

その一言が嬉しくて…

あなたが好きで好きで…

 

 

ずっとあなたの絵を描いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日が来てしまった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出掛ける?」

 

「はい」

 

 

 

 

「行きたいところは?ある?」

 

「あの…画材を……」

 

 

 

 

 

「画材を…一緒に買いに行きたいです」

 

 

 

 

てな訳で、やって来ました!

街のちょー大型デパート。

なんでも揃います、いや本当に。

ネジや草一本から車まで何でも揃います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ…ここ凄い品揃えが……」

 

 

 

 

目を輝かせて画材を見まくる秋雲。

 

 

 

 

 

 

 

「はあ…」

 

 

新作の液タブ…

データ化の波が押し寄せる中で…私はずっと旧式で…

スケッチブックに描いてる。

意外とお金が掛かるからなかなか買えなくて…

 

 

「お…液タブ?」

 

「…え?!知ってるんですか!?」

 

 

「持ってたよ…?」

 

「ええ!?!?」

 

「昔の会社で描いてたしねえ…ポップ作りとかして」

 

「は……初耳です…もっとそういうのには疎いかな…と」

 

「まあ…誰にも言ってないからねえ」

 

 

 

 

「液タブ買う?」

 

「い、いえ!私はアナログにやりますよ」

 

「便利だよー?」

 

「はう…でも…デジタルに抵抗が少し…」

 

「なら両方やっても良いんじゃないかな」

 

「……うう…お金が……我慢しますぅ」

 

 

 

 

 

 

「よーし!神崎さんオススメセットを授けよう」

 

「ええ!?」

 

 

「これはね機能多くていいよ」

「この筆はね…圧が……」

「そうと決まれば…机も……ライト…」

 

 

「あ…でも…君のあの部屋の机はそのままでいいかな?」

 

「え?」

 

「君があの机に向かって描くのはやめて欲しくないかなあ…」

 

 

あの机は…

あなたからもらった1番最初のプレゼント

それでずっと描き続けていた。

 

思い出の机…。

絵の具や、インクで汚れたり傷もあるけど…

それも年月の積み重なり…。

 

 

 

「でも…置くスペースないですよ?」

 

 

「大丈夫、考えはあるから」

 

と、何やら注文を始めた提督。

何のことだかわからないまま買い物は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

カフェタイムはパンケーキ。

提督にお勧めされたチョコパンケーキはとても美味しかった。

 

というか…

目の前にあなたが居るだけで胸がいっぱいになるよ。

 

 

 

 

 

 

 

夕焼けがさして来た頃に帰路に着く。

 

 

 

 

 

「画材…楽しみにしててね?」

 

「うう…ありがとうございます…」

 

 

 

「あっ……夕焼けが綺麗ですねえ…」

 

 

「本当だ……」

 

 

 

 

 

この景色を目に焼き付けよう。

あなたと見る幸せなこの夕焼けを…。

ちらりと彼を見る。

彼は私に微笑みかけてくれる…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「秋雲?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はこの瞬間を一生忘れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これを受け取ってくれないか?」

 

 

夕焼けを浴びながら彼は一つの箱を取り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わかる。

馬鹿でもわかる。

 

 

それが何か…どう言う意味か。

 

 

 

 

きらりと輝く幸せが目の前にあった。

 

 

 

 

 

 

 

「………良いん……ですか?私…で」

 

 

ダメだ。

こんなにも幸せな気持ちになるんだ…。

 

 

 

聞いた話だけでは描けなかった。

 

 

何度も想像した…この瞬間。

でも…描けなかった。

えっちな絵も同じ…未完成なのは…体験してないから…。

 

 

 

 

 

 

ああ…こんな気持ちなんだ…。

 

 

こんなに…

 

 

こんなに…

 

 

 

「…君に受け取って欲しいんだ」

 

 

 

 

「は………はいい…」

幸せで彼の顔が涙で歪んだ。

 

 

 

 

ダメだ!!

涙を拭ってそのシーンを…見ないとダメなのに…

嬉しくて嬉しくて涙が止まらないんだ。

 

 

 

 

「見てないと…覚えないとぉ…」

 

 

 

 

「……秋雲」

 

 

 

 

彼は私の涙を拭った。

 

 

「見てて…」

 

自然と涙が止まった。

少し潤んで霞むけど……

 

 

左手の薬指にそれははまった。

 

 

 

 

 

そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はじめての…キスだった。

 

 

 

 

 

 

「愛してる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わ、私も…愛しでまずううう」

 

止めどなく涙は溢れて来た。

ずっとあなたは私を抱き寄せてくれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は一緒に寝る。

 

「……提督?」

 

「ん?何?」

 

「あの…」

 

「ん?もしかして…見たいの?」

 

「あう……でもですね?」

「見て描くだけなのは寂しいので……あ!でも提督とはああなりたいんで………その時が来たら…私を……」

 

「なるほど…」

 

「はい、体験した方が…わかりやすいかなと…」

 

「ん…わかった」

 

 

 

 

と、彼は抱き締めてくれる。

その温もりと匂いと…優しさに包まれて私は眠った。

 

 

 

これも幸せ…

 

 

絵は確かに完成には至らなかった。

でも…艦生をかけて作り上げて行きたいと思った。

あなたとの関係も…この絵も…。

 

指輪を貰ってはじめて絵が描けそうだと思った。

だから……あの絵の続きもそうありたい。

 

 

 

 

愛してますよ…提督。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は描いた。

己の目に焼き付いて離れないあの場面を…

 

これから先、一生見られない…いや、見たくない場面を。

 

 

 

 

 

「………」

 

彼女は黙々と描いた。

思い出しながら…それを見つめながら…。

 

 

 

 

 

魂込めて…全身全霊で描いた。

 

 

 

 

 

 

アナログで描いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「できた……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは一枚の絵。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

儚そうに、優しそうに…笑顔で差し出す彼の絵。

その手には…小さな箱から顔を出した輝く指輪。

 

 

この絵の前に立てば、まるで自分にプロポーズしていると錯覚を覚えそうなほどに…

今にも「受け取ってくれる?」と聞いてきそうなほどに…

 

 

 

 

 

 

そう…

プロポーズの瞬間だ。

 

 

もう夫婦だからこの先には見られない。

この人以外からのプロポーズは見たくない。

 

 

「秋雲〜ご飯行こ……って!?何その絵!?」

 

「あ!?!?姉さん…」

 

「凄いじゃないッ!!凄い……凄いしか言葉が出てこないのが悔しいけど…」

 

 

 

「どうしたの!?何の声……うおお!すげえ!!」

 

 

その声に釣られてやって来た人の声に釣られて…のループで彼女の完成品は皆に知れ渡った。

恥ずかしさのあまり、布団に篭って出てこない秋雲を皆は優しく引っ張り出した。

 

やっぱり目の前には本物が居て、笑ってた。

 

 

「ありがとう…秋雲」

 

「……は…ぅ」

 

「あーー!いいなあ!私も早く欲しいなあ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は変わって…

 

 

 

「〜♪」

彼女は今日も楽しく絵を描く。

 

 

 

 

 

 

ここは出版部。

写真部から変わってこの名称になった。

 

 

鎮守府内外の情報を取り扱ったり、新聞や雑誌等の制作を行う。

 

彼がプレゼントした机や画材もここにある。

彼の考えとは…こう言うことだったのだ。

 

 

 

 

部員は

部長兼顧問 神崎 救

漫画原稿担当  秋雲

取材、写真担当 青葉

情報処理担当  大淀

 

随時募集中

 

 

 

 

 

 

「………ふぅ!できた…」

 

「お?できた?オータムクラウド先生」

 

「うん!ばっちり!」

 

そう言う彼女の手には…漫画原稿があった。

 

「へえ…どんな本?」

 

「んとね…提督と私達の本…かなあ」

 

 

渡された原稿をペラペラとめくって読む。

「……あはは!こんなこともあったねえ…」

「懐かしいなあ…」

 

 

「今度のコミに出そうと思います」

 

 

 

「え!?」

 

 

「こんな日常が知れ渡るの!?まずくない!?」

 

「いいんですよー!!」

「タイトルも考えてあります!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「タイトルは……提督の鎮守府生活です!」

 

 

 

 

 

 

 

  




290話を超えてのタイトル回収回

こんな秋雲さんも出版部で揉まれるうちにヒャッハーなキャラに変わるかも……





少しでも…ええやん…と思って頂けたなら幸いです!


感想などお待ちしています!!


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293話 秋雲と青葉 ④ 青葉と1日夫婦

「…恐縮です」

苦笑いを浮かべながら前に立つのは青葉。

 

 

「ん、明日からよろしくな?」

 

 

だが…

この青葉は複雑な心境に居る。

 

 

青葉は救に良く思われてないと思っている。

 

 

 

胸に手を当てて考えても…

盗撮したり、パンツ脱がそうとしたり……碌なことしてねえ…と。

 

トドメはこの前の秋雲の事…?

 

 

 

写真部は解体されて…秋雲の画材やらが運び込まれた。

 

笑顔で秋雲が絵を描くのは嬉しいけど……

何か少し悲しくなった。

 

 

 

提督が私の為に作ってくれた場所は…もう無いんだ…って…。

 

 

 

 

 

 

 

 

夜…。

 

「失礼します……」

 

青葉は彼の私室にやって来た。

 

 

 

「青葉…座ってくれないか?」

 

彼はそう言う。

 

ドキりとした。

指輪……?

 

 

彼女は高鳴る胸を抑えて彼の正面に座った。

 

 

「……この前の件もそうだが…やりすぎはダメだぞ?」

 

 

 

 

 

説教…?

 

 

え?何で?

愛してるとかじゃないんですか?

 

 

やっぱり私は…嫌いなんですね?

あの場所がなくなったのも…本当は嫌いだから…

 

 

 

「………」

 

 

「青葉?聞いてる……か?」

 

 

「いいです」

 

「ん?」

 

 

「もういいです!!」

 

「やっぱり提督は私の事嫌いなんですよ!」

 

 

「何のことだ…?」

 

「だからこうやって2人きりで喜ばせといて説教なんですよ!」

 

 

 

 

 

「辞めますよ!写真なんか!!」

 

彼女は首からかけたカメラを投げ捨てた。

 

 

「ちょ…おまっ!!」

彼はそのカメラを飛んでキャッチした。

 

 

ガンッ!

 

「ぐっ!」

 

 

 

 

 

だが…家具の角に頭をぶつけたらしい。

立ち上がった彼は額から血が出ていた。

 

 

「あ…ごめ…」

 

 

 

 

「おい!大切なカメラを投げるなよ……」

 

 

 

 

 

「何の音ですか!?」

と入ってきた艦娘達の前で言ってしまった。

 

 

 

「大切…?そのカメラを提督がお金を出して買ったからでしょ!?」

「そんなに嫌いなら……そんなことしなきゃ良かったんだ!!」

「私の場所もない!!」

「挙句の果てに説教…!」

 

 

「もういいです!」

 

 

 

 

 

「…お姉ちゃんッ!!!」

「なんて事を!!」

 

 

 

「衣笠まで…」

 

 

 

 

 

 

「みんな大っ嫌いだああ!!」

 

 

 

彼女を止めようとする彼の手を振り切って彼女は飛び出していった。

 

 

 

追いかけようとするが、ズキッと頭が痛んだ。

 

 

 

 

 

「大丈夫ですか!?」

 

 

 

「……俺が悪い」

 

「いえ…提督は…」

 

「気付くべきだったんだ…俺は…もっと配慮するべきだと…」

 

「それより…傷の手当てを…」

 

「いや…そんな事より俺は青葉を探しに行くよ」

 

「外は夜で雨ですよ!?無茶です」

 

「だとしても…行かなきゃ…」

 

 

 

 

 

 

 

簡単な手当を受けて彼は彼女を探して飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある場所に彼女は居た。

 

 

 

「…わ、私なんてことを…なんて事を……」

 

 

違うのに…

違うのに…

 

そんな事をやりたくて言いたかった訳じゃないのに…

 

秋雲が羨ましくて…

自分が情けなくて…

 

 

 

 

「青葉……」

誰かが呼んだ。提督かな?と一瞬喜んだ私はきっと卑怯者だ。

でも…

そこに居たのは秋雲だった。

 

「笑いに来たの?」

 

違う…そんな言葉じゃ無いのに

 

「何でそうなるの?」

 

 

 

「なら何よッ!!」

「アンタに何が分かるのよッ!!」

 

 

「わかんないよ!!

「なんで青葉がそうなったかわかんないよ!!」

 

「…ッ」

 

 

 

 

 

「アンタのせいよ!!アンタは良いよね…あんなことになっても怒られずに…愛されて!大切にされてさあ!」

 

「私の唯一の新聞部(居場所)も無くなったんだ!!」

「なのに…私は説教されるだけ!!」

 

 

「私なんか…大切にされてないよッ!おめでとう!指輪も貰えてさあ!!!笑いなよ!笑えよおお!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…馬鹿じゃないの?」

 

 

それは秋雲とは思えない声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な…何よ!アンタも説教!?」

 

 

「結局自分が幸せならそれでいいんでしょ!?」

「私の事なんか大切にしてくれないんだよ!あの人は!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あの人が…大切にしてない奴の新聞をずっとスクラップ帳にして置いておくもんかッ!!」

 

 

「大切にしてない奴を…怪我ン中…雨の中飛び出して探し回ったりするもんかぁぁあ!!」

 

 

 

「え?」

 

「提督は…自分が買ったから守ったんじゃない!」

 

 

 

 

 

「毎日幸せそうにファインダーを覗いてさ!無駄にずーーっと磨いてさ!寝るときなんか…ミニ座布団の上に置いてさ!」

 

「絶対に離さない…パートナーなんでしょ?それを1番知ってて微笑んでるのはあの人なんだよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督は…アンタの魂を守ったんだよぉ!!!」

彼女は泣きながら私に叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私の絵…えへへ…』

『ん…?これは?青葉の新聞…?』

 

 

『お…見たかったか……内緒な?』

そう言った彼の顔はニヤけていた。

 

『アイツさ…バカばっかりやるけど…ほんといい写真撮るんだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私だってダメな時あるよ…でも…コレで終わりじゃないんだよ……」

「一緒に帰ろうよ…」

 

 

 

「何わかった風に…」

 

「さっきも言ったけど分かんないよ!でも解りたいんだ!友達だもん!」

 

 

 

「お調子で…周りを振り回して…バカばっかりして皆に絞められてるけど……」

 

 

 

それでも…!!

 

 

 

 

 

 

「あのクリスマスに写真部を貰って…初めて作ったあなたの新聞は…みんなを笑顔にしてたじゃない!!」

 

 

「あんたの写真は…新聞は…皆を笑顔にするんだからッ!!」

 

「それは確かなんだ!私が証明する!」

 

 

 

彼女は泣きながら言う。

 

 

青葉はハッとした。

 

「……何で提督は…私の写真部を潰したの…」

 

 

「違うよお!1人で黙々とするよりも皆でやった方が楽しいからだよ!」

 

「…でも!」

 

「あなただってわかってるでしょ!!自分が暴走する事くらい!それだって止められるんだ!!みんなで謝れるんだ」

 

 

 

 

「いい加減に…子供みたいなことやらずに認めろばかやろお!!」

 

 

 

 

秋雲はわんわん泣きながら私に飛びついてポカポカと叩く。

 

「…あなたは私と同じだと思ってたんだ!魂込めて作品作りやってると思ってたんだ」

 

「なら…その魂を投げるなよお!提督さんからもらった魂なんだよお!」

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

そうだ…

何で私は馬鹿なのか…。

 

どれだけ愛されていたのか…見失っていた…。

 

私に写真の道を教えてくれたのもあの人なのに…

私はそれを否定した。

 

 

 

 

 

私が悪いのを棚に上げていたんだ。

 

皆の前で締め上げようとすれば出来たのに…彼は2人きりの時に言おうとしてくれた。

 

秋雲も…こんな中追いかけてくれて…

 

提督も…

 

 

 

「……ごめん…秋雲」

 

 

 

 

 

「謝るなら…提督にだよ…」

「でも…ごめんて言ってくれた…」

 

 

 

2人でまた泣いた。

私は後悔した。

そうだ…私は…自分の魂を投げ捨てたんだ…そんな事をしたんだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人で抱き合って泣いているところに彼は来た。

びしょ濡れの彼は凄い形相で目の前に居た。

 

 

「て、提督…」

 

「待って!提督!青葉は…」

 

 




お気に入りが700人…。
ありがとうございます…。
本当にありがとうございます(´;ω;`)
もう少しで300話です…お付き合いください!



嫉妬や情動は時に人の行動を大きく変えるそうです。
コミュニケーションは難しい
すれ違うこともあるんです。ほんの少し苦いお話


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294話 秋雲と青葉 ⑤ 青葉と1日夫婦

「無事で良かった」

と彼は私たちの頭を撫でた。

 

 

 

 

 

「……え?」

 

 

 

「…何でそんな言葉なんですか?」

 

違う…

違うのに!

 

 

「何でもっと責めないんですか!?」

 

 

 

 

こんな言葉じゃないのに!

 

 

 

 

 

「怪我させたんだよ?提督」

「ひどいこともたくさん言ったんだよ?」

 

 

 

「なのに何で私の心配してるの?」

 

 

 

 

 

「何でって……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなの君が好きだからに決まってんだろ」

 

 

 

 

「何で…」

 

 

 

 

「?あんなこと言われたくらいで嫌いになるか!」

「まあ…少しは傷つくけど…」

 

 

 

「それでも愛してる事に変わりはないよ」

 

 

 

 

 

 

 

「…嘘よ」

 

「本当さ…」

 

 

 

「なら何でわたしの写真部が……」

 

 

「皆でワイワイやる方が楽しいぞ」

「一緒に悩む事も…謝る事も笑う事もできる」

 

 

「逆に…すまなかった」

 

 

「え?」

 

 

 

「お前がそんな自己嫌悪に陥ってたり…考えていた事を考えずに居た…」

 

「すまなかった…」

 

 

 

「…わたしが勝手にヤキモチ妬いて…爆発的しただけ…カメラ…」

 

「私の魂を守ってくれて…ありがとう…」

「ごめんなさい…提督…」

 

 

 

「仲直り…できるか?」

彼は微笑んで言う。

 

 

「なら…抱き締めてよ…」

 

 

「濡れたら…風邪ひくよ?」

 

「……あなたも濡れてるなら…一緒に風邪くらいひく」

 

 

 

「そうか……なら」

 

と、彼は私を抱き締めた。

 

 

「無事だったか?心配したんだぞ」

 

「……う……ぅあっ……ごめんなさい…ごめんなさいい!!」

 

青葉は彼の胸の中でひたすらに泣いて謝った。

彼はずっとうんうんと頷いて…俺もごめんなと謝った。

 

 

「…秋雲もありがとう」

と、私も一緒に抱きしめてくれた。

 

 

 

 

ごめんなさい…

バカばかりやる私を…見捨てずに居てくれて

 

秋雲に嫉妬して…何も見ずに…

魂すら投げ出してごめんなさい…

 

 

 

「青葉は…俺の事嫌いか?」

 

 

「……愛してます…ぐずっ…」

 

「秋雲も…衣笠もみんな大好き…」

 

 

 

 

 

 

 

帰ってから皆に謝った。

 

無論、俺も怪我したくせに飛び出してって…と怒られた。

でも…2人で怒られるなら…3人で怒られるなら…

 

ううん…

これからはちゃんと考えるよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を腫らした彼女とのデートは次の日から始まった。

 

昨日の夜はカメラにひたすら謝りながら丁寧に磨き上げた。

 

 

 

そのカメラを首から下げて歩く。

 

 

 

 

 

「ほーーー!!!ここが提督オススメのレストランですね!?」

「ここで何人もの女性を…オトしたんですね!?」

 

「言い方よ」

「全く…」

 

「えへへ…」

 

「まあ…その話が事実なら…」

 

「?」

 

「君もその1人になる訳だ…」

 

 

「………あ…」

と、顔を真っ赤にする青葉。

 

「………はぃ…」

彼女はそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

んでんで

秋雲ともやって来た超大型デパート。

 

 

家電コーナーのカメラコーナーへ。

 

相変わらず…高い…ッ!!

特にレンズは沼に陥りやすいッ!

 

 

 

青葉が今までに見たことがないくらいの目の輝きを見せる。

 

「ほぁあ…」

 

 

「新しいカメラ?」

 

「い、いえ!カメラは魂のコレがありますので!」

 

「投げたじゃん」

 

「…うっ……」

 

 

 

 

「……まあ…意地悪だったかな?」

「……アレだ…レンズを一つ与えよう……」

 

「ほえ!?!?」

 

「…選ぶが良いz「ならこれで!!!」

 

クッソ食い気味に言った青葉が指した先には……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明日からもやし生活かな…。

 

雷か鳳翔に養ってもらお……嘘だけど。

 

「うへへ…コレでもっと良いネタが……」

 

「……」

 

「コホン…良い写真が撮れます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、漁師のおっちゃん!」

 

「おー!2人とも!」

 

「ん?どしたの?困り事?」

 

「実は……」

 

 

 

ふむ、結婚式の筈が?

カメラマンが急な熱でぶっ倒れた!?(棒)

このままじゃ思い出が!?

 

 

「…青葉に任せてくれませんか?」

 

「「「え?」」」

 

て、提督!?

 

「あ、青葉ちゃん…写真撮れるのかい!?」

 

「え、ええ…」

 

 

「今の彼女なら…きっと後悔させない仕事をしますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ファインダー越しに2人を覗く。

 

幸せそうな2人。

 

 

パシャリ…。

 

 

 

 

 

あ…今の顔…

 

 

そう思った時には指が動いてた。

 

 

 

 

「みなさぁん!笑ってー!!」」

 

 

その声に皆が笑顔をこちらに向けてくれる。

 

その角度も…瞬間も逃さなかった。

 

 

 

 

「写真は現像してお渡ししますね」

 

「楽しみに待ってます」

「ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督とのデートの時間が短くなりましたよ」

 

「まあまあ…きっと青葉にとっても良い思い出になるよ」

 

「…そうですかねえ?」

 

「おう、絶対じゃよ…」

 

「うわ!じいさんだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして鎮守府へ帰り…

 

 

「へえ…よく撮れてる」

 

「当たり前です!私が撮ったんですから!」

 

「なら…ベストを選んで行こう」

 

 

と、新郎新婦に渡すアルバムへの写真を選ぶ。

秋雲や大淀さんも一緒に…。

 

 

 

「あ!これブレてるね」

とか

「この表情いいね!」

とか言ってみたり…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…

翌日に渡しに行った。

 

 

 

 

 

「あの!結婚式おめでとうございます!」

と、新郎新婦へとアルバムを渡す。

両方のご両親も見るようでワクワクしながらアルバムをめくった。

 

 

 

途端に両親の表情が固まった。

 

 

青葉は怯えた表情になる。

 

 

 

 

 

「……」

震える青葉に俺は

「大丈夫…」と言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不安そうに俺を見る彼女だが、その理由はすぐに解ることになる。

 

 

 

 

 

 

 

ご両親達が泣き始めたからだ。

 

 

 

 

自分達の子供の晴れ姿…

ポロッと溢れた「良い写真だ」の言葉。

 

特に…青葉がこっちを見てください!と言った時の写真が特に良いらしく…

滅多に笑わない父がこんな良い表情をしている…と。

いつも笑っている母があんなに泣いている…と。

 

見つめ合っていた2人が自然に笑顔でこっちを見ている…と。

 

 

 

 

その瞬間が思い出されて仕方がないらしい。

 

新郎新婦も、つられて嬉し泣きする。

 

 

「ありがとう…青葉ちゃん」

「こんなに素敵なアルバム…写真をありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう

 

 

 

 

ありがとう…。

 

 

仲間でもなく、好きな人からでもない…

 

でも…初めて言われた言葉。

 

 

自分の好きな魂の写真を通して伝えられた言葉。

 

 

 

それが彼女に今までにない感情と経験として突き刺さる。

 

 

「あ…青葉ちゃん?」

おやっさんが驚いた表情で青葉を見る。

 

 

「・…う…あれ?おかしいな」

「何でこんなに私も涙が……?」

 

 

青葉は自然と泣いていた。

 

嬉しくて…誇らしくて、気恥ずかしくて。

 

 

 

な?言っただろ?と提督は笑います。

「お前の写真が誰かを幸せにしたんだ」

 

「少なくともあの6人は幸せなんだぞ?」

「そしてそれを見る俺も…」

 

「凄いぞ?7人も幸せにした!更にはこの報告を受ける秋雲と大淀もそうおもうはずたから…9人!」

「そして…今お前が抱いてる感情が…幸福感なら…10人」

 

「お前はそれだけの人を幸せにしたんだ」

 

 

その言葉を噛み締めながら皆を見る。

 

「はい」

 

そう言う事なんだ…と青葉は頷く。

 

 

 

ジャーナリズムは誰かを笑顔に、幸せにする為に…

 

その意味が分かった青葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督…ありがとうございます」

 

「やったのは君さ」

 

「…でも…ですよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「青葉」

 

「はい?」

 

「カメラ貸して?」

 

「はい!撮りたいものでもありましたか?」

 

「うん、ずっと撮りたかったものがあるんだ」

 

「へえ…何ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これを君に」

 

 

 

「提督…ッ!?」

 

「え?あ?え!?」

 

差し出されたものはキララと輝いて…

 

 

「……ッ!…ッ!よ、喜んで…」

待ちに待った瞬間が来たのだ。

 

 

 

恐る恐る出した左手にあなたの愛の証が刻まれました。

 

嬉しくて嬉しくて涙する私に…

「……」

 

「…するよ?」

と、彼は問いかけます。

 

 

「はい…」

と、私は目を閉じます。

 

 

 

 

誓いのキスは涙の味がしました。

 

 

 

「愛してるよ…青葉」

 

 

 

「はい!私も…愛してます!」

 

 

 

 

パシャリ…

 

 

 

カメラ越しに彼が笑いました。

 

「この表情がずっと撮りたかった」

 

 

撮ることに慣れて撮られることに慣れてないので…恥ずかしい…

 

「もー!提督ー!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「青葉♪ご機嫌だね」

 

「ん?まあね♪」

 

「良い顔してるよ本当」

 

「ありがとう、秋雲」

 

 

ニコニコしながら雑誌作りに励む2人。

 

秋雲は見たのだ。

彼女が嬉しそうに泣きながら左手を愛おしそうに持つ姿を…

 

愛してますと言ってるのが分かりそうな写真を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「青葉ァァァア!!!!おまッ…また人の写真を売り捌いてるらしいなぁぁあ!?!?」

 

 

「ゲッ!?」

 

「あ、青葉!?」

 

「は、欲しい機材があったから…」

 

「どうりで最近機材が増えたわけだ…」

 

 

「待てコルァァダァァア」

 

「ひいいいいい!!!」

 

 

始まる追いかけっこ。

でもその表情は………うん、変わらず楽しそうな鬼の顔だ。

 

 

 

 

 

 

 




青葉は青葉だった!!

総投稿ではこれが300話。
青葉にもってかれたよ!

え?300話の話?
用意はしてますよ!?



珍しく2人続けてのケッコン話…
お付き合い頂き、ありがとうございました!


少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!

感想などお待ちしてます!ぜひ!


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295話 ブルーオース組とわいわい

「 し〜〜き〜〜かぁあん!」

 

その呼び方と共に飛びついて来たのは蒼オークランド。

スキャット帽がトレードマークの戦姫である。

 

帽子は彼女に返そうとしたのだが…

 

「……似合ってるから…あげる」

とか言って蒼朝日に言ってもう一つ作ってもらったみたいだ。

 

 

 

「ん〜?」

よしよしと頭を撫でようと思ったが帽子があるので頬を撫でる。

 

 

「えへへ…指揮官〜♪」

「指揮官だあ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前に彼が居る。

彼が呼んでくれた…

 

 

 

 

 

「オークランドッ!!」

「力を貸してくれッ!!」

 

 

 

 

 

ピンチの中で彼が叫んだ。

 

 

 

 

私の名前を…

 

 

 

 

 

「朝日姉さん!!」

 

「ええ…行きなさい!テーテュアスもすぐに向かわせるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

嬉しくて嬉しくて

あなたの前にもう一度現れたの。

 

 

 

 

「しきかん〜指揮官ー!」

 

「もうべったりねえ〜」

蒼朝日が笑いながら通り過ぎる。

 

 

「うんー!もう離れないよ〜」

 

「……どうした?」

 

「どれだけ寂しかったと思ってるの?」

「それに…いつ見てもピンチばっかりなんだよ」

 

見てたのねえ…?

 

「私がピンチになったら呼んでねなんて言っちゃったから…」

「だから会いにくるに来られなくてッ」

 

 

「ずっと見てたの?」

 

「………うっ…」

 

「……お邪魔虫は退散するわね〜」

 

「ぁ!?朝日さん!?」

 

 

 

「詳しく聞かせてもらおうかー…」

 

 

 

「はうっ…」

 

 

「…げ激射の時間だぁ…演習場にいかなくちゃー」

 

「……」

 

「だ、だってさあ!ピンチじゃないとアレだもん」

「指揮官のピンチに颯爽と現れる…ってシチュの方が好感度アップ間違いないでしょ?」

 

「今メキメキ下がりそうだけどね」

 

「そんなぁ!?」

 

「まあまあ指揮官クン…そんなにいじめちゃダメよぉ〜?」

と蒼朝日がクスクス笑う。

 

 

「朝日達も片付けなきゃならない問題とか…あったのよー?」

 

「問題?」

 

「そーよー?誰かさんが他の子に夢中で居ないからぜーんぶ朝日達が頑張ったんだよー?

 

「そうだよ!指揮官!戦闘指揮もだよー!?」

 

「まあ…ブルースフィアから追われる身としては皆でこっちに来られた方が都合良いんだけどね」

 

 

 

詳細は後々に…だが

ブルーオースの世界での指揮官はブルースフィア所属の指揮官という立場だ。

 

蒼オークランド…赤の一悶着で俺達はブルースフィアから離脱、かつての仲間からも追われる身となった。

 

「まあここに来るドサクサに紛れて以前の仲間の戦姫も連れてきたから…まあ…ある程度は安心よ〜」

 

「よく連れてこられたね」

 

「ご都合ってやつよ〜」

 

 

「まあ…でもお陰で助かったよ」

 

 

「これからは側に居るから絶対何があっても助けるよ」

ニコリと笑顔で言う蒼オークランド。

 

 

 

 

「あら?指揮官?ここに居たの?」

声をかけて来たのは蒼クイーン・エリザベス。

気品漂う感じ…なのに庶民的な感じも漂うお方。

女王様言ったらしばかれる。

もう3回はしばかれた。

 

 

 

 

「おー蒼エリザベス」

 

「私達にも秘書艦ってのは回ってくるのかしら?」

 

メイド達は身の回りの世話や鎮守府の掃除や家事等を担当してくれている。

桜ベルファストはある意味古株ということで執務室から動かない。

テコでも動かないッ!!

 

 

秘書艦が回るのが遅くはなるが…ブルーオース組にもお願いしようとは思っていた。

 

「うん、お願いしようとは思っているよ」

 

「そう、なら良かったわ」

 

「ん?」

 

「だってせっかく会えたのよ?忙しすぎて構ってもらえませーん!じゃ寂しすぎるでしよう?」

クスクスと笑いながら頬を突いてくる…クソ…可愛い…。

 

 

「まあ…適材適所ってのはあるかもしれんからねえ」

「蒼朝日には明石達と合流してもらって渉外等を担当してもらおうと思ってたりもするよ」

 

 

「あら?朝日は指揮官クンの隣から離れる運命なのぉ?」

シクシクとワザとらしい嘘泣きをして来る蒼朝日。

 

「指の間から目が見えてるよ」

「大丈夫、秘書艦はしてもらうよ」

 

 

 

 

 

「ボスーー!」

 

「お?蒼ポートランド」

 

「報告だーー!伊良湖サンの食堂で働くことになったぜー!」

 

「「「「……え?」」」」

固まる俺と朝日とオークランドとエリザベス。

 

 

以前にも説明したかな?

蒼ポートランドの料理は…味と見た目が反比例する。

見た目がね…深海棲艦相手の料理なのよ。いやマジで。

でも、不思議と味は悪くない。つかおいしい。

 

 

 

 

「いや〜!料理してみたらサ…味はいいけど見た目が…って言われてさあ…」

「暫く修行させて貰いながら頑張ってみることになったんだ」

 

 

 

 

恐らく皆が思ってる事は同じだろう。

 

① グッジョブ伊良湖

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

② よくあの料理を食べようとしたな…伊良湖…

 

 

 

「…アレだな…蒼ポートランドには鎮守府料理対決にでも出てもらうようにするかな…」

 

「お!?料理対決なんかあるの?やるやる!」

「味は良いって言われたんだ〜自信あるよ〜」

目を輝かせながら燃えるポートランド。

いや、本当に味は良いんだよねえ…

点数基準が味ならね…

見た目の点数が入ると………ね。

 

 

 

 

そんな事をケラケラ話しながらお昼にしようかと話をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

それが不味かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お!?ならさっき作ったのがあるよ!出すから座って!」

 

 

 

凍りつく面々。

運ばれて来る謎の料理。

 

 

アンコウ丸ごと……何の色?

何で料理が紫色?

 

「さあさあ!たっぷりあるから、たんとお食べ!」

 

「…ポートランド?すまない、執務があるかr……

 

ガシィっと肩を掴まれる俺。

「「昼休みだから大丈夫!!」」

朝日とエリザベスが死ぬほど笑顔で引き留める。

 

 

 

 

(助けてくれる流れじゃないんかい!?)

 

 

"私たちは一心同体よ!?死ぬも一緒よ、?"

 

 

"1人だけ逃すわけないでしよ!?"

 

 

 

 

 

 

 

 

「……赤城…赤城を呼べええええ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いえ…私もこの見た目は………あれ?美味しい」

「…赤城!行きます!!」

 

 

 

さすか一航戦だった。

 

 




ちょいと息抜きなブルオ会。

少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!

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296話 鏡の…? ①

「…………」

 

 

 

「………」

 

 

 

 

 

「…………ふざけんな」

 

 

「ふざけてないヨ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当だって!ピュリっちはふざけてないよ!?」

 

 

 

「何で鏡開きでお前…セイレーンが来るんじゃい!」

「まさか…鏡だから鏡繋がり…とでも言うんか!?おん?」

 

 

「……」

 

「図星かいいいい!!」

 

 

鏡開き…即ち、鏡餅を開いて食べる…的な、

 

 

 

 

いやね?

安直だと思うよ?鏡開きで鏡面海域関係の奴がやってくるって…さ?

 

 

んでさ?

ちゃっかり居るじゃん?こいつ

 

 

「だからさー!私は味方なんだって!」

 

「……」

 

「テスっちと心中してもいいよ!?」

 

「その発言が既にやばい…」

 

 

 

ピュリっちことピュリファイアー

アズレンの世界のセイレーンの一員。

テスターに次いで戦う頻度が高い。

 

んで…味方と言ってるコイツも紛れもなくセイレーンのピュリファイアー。

 

 

 

…実際にゲーム中でも味方だった事はある。

 

此奴らは、仮ボディに魂と精神データをぶち込んでるだけなので…

どこの世界線とのコラボだったか…

精神データにバグが生じてこうなった…。

 

 

 

「でも最後は敵になるけどね」

 

「なんないよ!?」

「私…切り離されたっぽいしね?」

 

 

「それにさー…テスっちみたいなエッグい事したくないよー」

 

 

 

「TBちゃん…どう思う?」

 

「……確かに敵対の意思は見られませんが…」

 

 

「……まあいいか」

 

「「「良いの!?」」」

 

「敵対の意志がないなら……な」

 

「いや、本当だって…」

 

「で?何の用さ?」

 

 

「いや…本当に鏡開きって聞いたから…お餅食べたかったの☆」

 

 

 

 

「まあ、ゆっくりして行きなよ」

 

「…本当に優しいんだねぇ…指揮官サマは…」

「疑わないんだね?それ以上」

 

 

 

 

「バグとは言え…味方だった頃を知ってるからね」

「それに…」

と、目の前の指揮官サマは後ろを指差して言う。

 

 

「…怪しければ…いや、クロなら…ああなる」

 

 

 

 

 

言われた方に目線を移すと…

駆逐艦…?並に小さくなった女の子が磔にされて居た。

 

「青葉さん!だめなのです!」ポコポコ

「レディとしてさいてーよ!」ポコポコ

 

青葉とか言う娘かな?

柔らかい棒で叩かれてる…ね。

 

 

 

「随分と微笑ましくないかな?」

クスクスと笑う私。

 

 

と、言うと無言でガン◯ムハンマーを取り出す指揮官サマ…。

それを受け取ってブンブン振り回す桜ビスマルク。

「一撃必殺」

 

 

 

 

「やだぁ…笑えなーい…重桜組にとっては私は神なのに…てか!ビスマルクも世話になった側でしょ!?」

 

 

「私の(旦那)は指揮官ただ1人だ」

 

「あー…ピュリっち…深くは聞かなーい」

 

色々と察したのだろうか…?

珍しくテンションダウンするピュリっち。

 

 

まあいいや…と

食堂に置かれた大きな鏡餅を……どう割ろうか?

天龍…?え?餅は刀で切りたく無い?

 

桜ウォースパイト!お前の剣…え?実家に忘れて来た?

あー切りたく無いのね?

 

 

 

しゃーねーな…

 

「武蔵いいい!」

と、武蔵を呼ぶ。

 

ぶっちゃけ毎年、同じような展開で武蔵が鏡開き後の鏡餅を割っている。

 

 

 

拳で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…いや…やっぱり大きくない?今年」

 

「面子が増えたからねえ…倍くらいにはなるよねえ」

 

武蔵でも少し尻込みするらしい。

そんな時…

「武蔵ちゃんのー!…ハイッ!」

「いいとこぉー!みてみたぁぁあい!!…ハイッ!!」

 

ハイッ!と手拍子しながらニコニコと声援を送るピュリっち。

 

 

「…ぉ、おう?!」

武蔵もそんなテンションで声援を送られるとは思っておらず、戸惑っているようなのが面白い。

 

 

「…この世界の姉上……ご無理は…」

と、桜信濃が止めに入る。その後ろでは、フンス!と腕組みをして代わってと言われるのを待つ桜三笠(番長)が袖捲りをして待っている。

 

 

「………」

恐らく色々と考えているであろう武蔵。

本当に色々と考えているであろう武蔵。

だが……

 

 

「むッさッしッさんの良いとこしかないけど…いいとこみたぁぁあい!!」

と、一際大声で言う清霜の姿を見た瞬間に彼女は覚悟を決めた。

 

 

「ぬおおおおおおおおお!!この手が光って唸るうううう!!この餅を砕けと轟き叫ぶううう!!」

 

「いや、割ってね?」

 

「くらえ!新年の無茶振りへの戸惑いのおおおお!!」

 

「お前もキャラ変わったよねえ…」

 

 

 

 

「シャイニn「武蔵ぱぁぁぁあんちいいいい!!!!」

と、技名を清霜に被せられながら武蔵は鏡餅を割った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






シャレと勢いと…



…さーせん…


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297話 鏡開き ②

鏡餅(特大)は綺麗に割れた。

 

 

 

 

 

「……フッ……」

「やはり私にかかれば餅は容易かったな!」

 

 

歓声と拍手が沸き起こる。

にこやかにクールに手を振りながらこちらへとやってくる武蔵。

 

 

 

そして…

 

「痛いよお…相棒ぉ…」

小さく右手をすりすりしながら涙目で言う武蔵。

 

よく頑張った…と言いたかったが、申し訳ない話…武蔵には言ってないことがある…。

 

「相棒?」

 

意を決して武蔵にその言葉を言おうとする。

 

「まさか…」

武蔵も何かを察したのか…神妙な表情になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鏡餅…もう一個あんのよ…」

 

言ってしまった!

悪魔的な

 

「なっ……えっ……おまっ」

みるみると動揺が体全体に広がる武蔵。そりゃそうだわな…深海棲艦殴っても痛い言わないのにねぇ…

 

 

「アドミラル……?モチとは何故こんなに強いの?」

強い…と言う表現は今の武蔵を見てのものだろう…が疑問を持ったアークロイヤルが聞いてきたので…俺はアークロイヤルの肩を持って言う。

 

「正月…いや、日本で最強の食材は餅だ…」

 

「そんなに?可愛らしいイメージがあるのだけれど…」

 

「餅を無礼る(ナメる)なよ?恐らく年末年始には1番人の命を奪う…」

 

 

「え?!」ゾッ…

「そんな物を…食べるの?JAPANはクレイジーね…」

 

「喉に詰まったりしたら……」

 

「……ッ!!」

そこを想像して更に青ざめるアークちゃん。

 

 

「まあ本当に命取りになるから食べる時は小さくね」

「よーく噛んで食べましょう」

 

 

「で?それがこの鏡餅の硬さとは…どう繋がりが?」

 

 

 

 

 

 

「ない」

 

「ないの…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ!武蔵ちゃん!もういっこ!」

 

「有給を申請します」

 

「当日は認められない」

 

「なら、早退します」

 

「健康そのものである、問題ない」

 

「………ッ泣」

 

 

「仕方ない…我がやろう」

 

「桜三笠さん……」

地獄に仏とはこう言うものか。

キラキラ輝く目で桜三笠を見つめる武蔵。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「むッッさし〜の良いとこ!またまたみたぁあい!」」」」

ピュリっち、清霜、桜赤城などなどの面々がノリノリで叫ぶ。

それに反応して…おお、なら仕方ない…と桜三笠が捲った袖を戻したのを見て武蔵が涙目でこちらを見た。

 

「……神崎氏…私を本当に愛してるなら…」

未だかつてあろうか?ハイライトをオフにして笑う武蔵の姿は?

 

まあ…流石にこれ以上は可哀想と思ったのでノリノリで酒を飲む長門を指名しようとした時…

 

 

 

「私がやりむひゅ…」

と…出てきた間宮(酔)が一撃で餅を割ったところで場内は静まり返った。

そして思う…もう、間宮には逆らわないでおこう…と。

 

 

 

あんぐりと口をあけたピュリっち…。

 

「…アレで補給艦?嘘でしょ?戦艦より強い補給艦?頭おかしいよ」

 

「敵さんは苦労してアンタ達を乗り越えてやってきた鎮守府には最強の非戦闘要員が居ました…とか…怖すぎる…」

と、ガクガク震えるピュリっちが居る。

 

そこに耳打ちする。

「その上捕まったら…蒼ポートランドの料理(NEW!!)と比叡のカレー(オリジン再現)が待ってるぜ…」

「熱々のおでんが可愛く思えるぜぇ…」

 

「…やばくない?この鎮守府」

 

「今更?」

 

「……だよねえ!」

 

 

 

 

「まあ…私は敵対意志はないよ。ピュリっちはピュリっちだけど…ピュリっち達のやり方は酷いと思うもん。もし…()()()()()()されたら…容赦なく壊していいよ」

 

と、ピュリっちは言う。

 

「そうならない事を祈るよ」

 

 

 

 

 

 

「はーい!出来ましたよー」

鳳翔達が持ってきた雑煮、あべかわ餅、ぜんざい、みたらし餅…etc

 

うひょーい!と飛び付く面々。

「…おいしー!ピュリっち感激」

 

「んー!みたらし最高〜」

 

 

 

「はいどうぞ、あなた♡」

 

「ん、ありがとう……あら、餅がハート型」

 

「私からの愛です」

 

「食べちゃう訳なんだけれども…」

 

 

 

 

 

「司令官!見ててね!」

と、暁達がハート型のお餅をストーブの上の網で焼き始めた。

 

 

「私の司令官への愛が…膨れるよ!大きくなるよ!」

 

なるほど…表現としては面白い……が

 

ぷくーーっと膨れた餅は……?

 

ポフーーッと割れて萎んで行く。

 

 

 

 

「割れたぁ!?!」

「焦げたぁ!?」

 

底は焦げるし、膨らんだ愛はぷしゅーと破れるし…暁達は泣き始めるし…。

 

「……わ、私の愛はお餅じゃあ受け止めきれないようね」

 

と、涙目で言う暁の餅はしっかり食べました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一息つこうと思って外に出たらピュリっちが居た。

 

「ん?指揮官ちゃんジャーん!」

 

「なあ…ピュリファイアー…」

 

「もー!ピュリっちって呼んで欲しいゾ!」

 

「ぴ…ピュリっち…」

 

「んー!OK!なになにー?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…どうやって来た?ここに」

 

「あはは〜聞くよねえ…ソレ…」

 

「お前が来たって事は…奴等も来る可能性があるってことだよな?」

 

「……送られたんだよね。一応アンタの味方のヤツにね」

「どこから見てもこの世界…いや…君は面白すぎる。駒のはずなのに駒じゃない…」

「複数世界に存在する…存在」

 

「…そして君は助けるんだろう」

 

「何を…?」

 

「君やKAN-SEN達の居ない世界は…どうなる?」

「ゲームとはいえ…私達には現実だ。そこの主人公が居て…初めてストーリーはエンディングへと向かうんだ」

「今…私達の世界もブルーオースの世界もその主人公や仲間が居ない状況なんだ」

 

 

 

「いつか君はその世界を越えて世界を救うんだろう…」

 

「……やっぱり無視は出来ないよなあ」

 

「…勘づいていたの?」

 

「まあ…バランスは悪くなったかなあ…くらいに…あまり直視しようとはしなかったよ」

 

「…でも、いつかはそのツケ…現実を目にする日がくるよ」

 

「…それはいつ?」

 

「わかんないよ」

 

「でも…その度に乗り越えるさ」

 

「なら安心だね⭐︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さあ、戻ろうか…と

会場へ戻る彼の背を見て呟く。

 

 

「…ピュリっちにはよく分からないケド……あんなに幸せそうな顔が出来るなら…きっと乗り越えられるよ」

 

 

 

 

「………その瞬間に私も立ち会えたら…面白いのかな」

私だって駒の1つ。

その駒の役割は何となくわかる…。

 

 

でも

でも…もし、叶うなら…

可能性を超えて行く人の元で私の新しい可能性を見てみたいなあ…

 

 

艦娘も深海棲艦も

KAN-SENも戦姫も…愛してくれる指揮官なら…

私も愛してくれたりするのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ってよー!指揮官ちゃんー!ピュリっちを放置しちゃ…ダメだぞー」

 

 

 

 

 

「もー!ピュリっちー!どこ行ってたのー?!」

 

「あー!鈴っち!ごめんごめんー!」

 

 

 

 

でも今は…今を楽しもう…

 

 

餅おいしーー!

 

 

 

 




餅…うめぇ…



少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!

感想などお待ちしています!


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298話 吹雪と1日夫婦 ①

「司令ー!」

 

「おー吹雪!」

 

「好きです」

と、突っ込んで抱き付いてくる吹雪。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と思ったら…

 

 

 

「遅くないですか?」

 

「え?」

 

 

「艦これって言ったら私ですよね?」

 

「え?」

 

「ゲームでもセンターですよ?」

 

「ちょw」

 

「アニメでも主役ですよ?」

 

「おいw」

 

「映画もやりましたよ?」

「艦これって言ったら私ですよ?なのに…」

 

「何でこのタイミングで?」

「ええ、だって…まあ最初は島風さんだったですよ?アイコンというかトップというか…。でも…今ではこの私ですよ?吹雪ですよ?わかりますよね?新任の提督さんが一番最初に目にするのは私のはずなんですよ?そして何よりは初期艦の中の1人でもありますよ?数多くいる駆逐艦の中で初期艦に選ばれる子ですよ?!……え?雷?違います。………え?ゴトランド?知らない子ですね。…つまりですね?私なんですよ!あなたも…私を選んだじゃないですか……え?アニメは…?デザが違う?………………屋上に行こう…か……キレちまったよ…久々に…。同じ吹雪ですよ!?何言ってんですか!?え?芋食ったら変わる?んなわけないでしょ!?何言ってんですか!?…って!そんな話じゃないです!…とにかく!私と言ったら艦これ!艦これと言ったら私なんです!…えと…つまりですね?待たせすぎですよ?司令官…寂しかったです……よ?一目惚れして…なのに…金剛さんにホイホイ行っちゃうし…むう…聞いてますかぁ?寂しーんですよ?この日をどれだけ待ったと思ってるんですか?1日夫婦シリーズも25人以上やってるんですよね?順番とか…もうめちゃくちゃですよね?順番なら最初に私のはずですよね?なのにこの小説も、もうすぐ300話ですよ!?金剛さんなんかド初期にやって…結婚式もやって!?一線越えて!?!?鳳翔さんなんか2回ですよ!?2回!!いつ来るのかなー順番〜とか思ってたら…夕立ちゃんと電ちゃんとかにも置いてかれて…その上何ですか!?アズールレーン?別ゲームですか?!そんなところからゲストならまだしも…常駐でなんか増えましたし!3人くらいならとか思ってたらだんだん増えるし…あああ!!最近に至っては?ブルーオース?!なんてのも増えちゃって!!しかも…アズレンもブルオも…登場の仕方が…美味しいとこでやってくるのが…もーー!!自分でも何をどこまで言ったかわからなくなりました!何文字ですか!?今のセリフは何文字ありますか!?私…結構喋ったと思います!かなーりこの話の文字数増やしたと思いますよ!一話あたりの文章が短すぎると…いけませんからね!!!ちゃんとそこらへんも計算…おっと、話が逸れましたね…つまりですね?私を放置して他の娘とイチャコラするのらダメだと思う訳なんです!あー!思い出しただけで辛い……わかりますか?司令官?寂しくて寂しくて枕をどれだけ濡らしたか…」

 

 

「やめよう?メタ発言とかやめよ?本当ごめんて…てか…枕を濡らしたって…」

 

「今も提督を濡らしてますよ」

 

「どうりで!!暖か冷たいとおもった!!」

俺の体は吹雪の涙やらでぐしょぐしょだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに朝の5時の会話である。

寝起きでこう迫られると………ね。

恐怖である。

ホラーである。

 

 

しかもね?

 

 

布団の中から這い出て来てそう言われるんですよ。

 

 

 

でね?

 

 

 

鍵かけてた筈なんですよ。

 

 

あ…かけてなかったわ。

 

 

 

 

 

「まずは布団から出ようか?」

 

 

「寒いんで…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で!?何で初期艦に選んでくれたのですか?」

 

「直感…て奴かなあ」

「直感?」

 

「ああー…この子だなあって…」

 

「その後建造した金剛さんに惚れたくせにー!!私は司令官に一目惚れなんですよ?」

 

「…まあ愛してくれてますから…いいですけど…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてさて

「そろそろ朝ごはんですよ」

頬にチュッとキスして準備して来てくださいと言う。

 

 

 

 

準備をして彼女の元へ向かう。

 

 

 

「吹雪特製の朝ごはんですよ♡」

 

 

 

 

 

 

 

「里芋の煮っころがし、さつまいもご飯、味噌汁(芋)」

 

「芋…」

 

「何だか……私は…コレを必要としてるような…気がして…」

 

 

なるほど…お前はそっちの吹雪だったのか…

アレか山城じゃなくて赤城先輩!って言う方か…

「やっつけちゃうんだから!」の…あの村出身の方じゃない方か…

 

いや…わかんねえや…

 

 

 

「……ん、うまい」

意外にも味付けは濃くない。

薄すぎるということもなく、丁度良い味付けだ。

 

「本当ですか?いい奥さんになれますか?」

 

「なれるよ…てか、なってるよ」

 

「…ッ!…えへへ…ありがとうございます」

「司令官、今日はどう過ごしますか?」

 

「吹雪は?何かしたい事はある?」

 

と聞くと吹雪は恥ずかしそうに言う。

 

「えとですね…行きたいところがあるんです」

 




吹雪の発言は約1000文字。
一話あたりの最低文字数は1000文字なので吹雪の1人語りで一話いけます。

さーせんした。


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299話 吹雪と1日夫婦 ②

てな訳で2話目の投稿です!
298話も投下してますのでご注意下さいー!



てな訳でね

吹雪と過ごすのだけれども…

 

 

「司令官ー!どうですかー!?」

吹雪が振り返って言う。

彼女と海にいる……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女に引っ張られてイカダで海の上です。

イカダに体育座りしてるよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初めてですよ…こんなクッソシュールな状況は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただの散歩……

 

 

 

 

しかし、彼女の目指す先が何となくわかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

ここには意味がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは…

 

 

 

 

 

「司令官?覚えてますか?」

 

 

「……もちろんだとも」

 

 

 

 

 

 

 

解る…。

俺はそれを直接目にしては居ないが…分かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは

 

鎮守府正面海域

通称…1-1だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女達の頑張りのおかげか…

今となっては平和そのものの海域…

かなりごく稀に深海棲艦が来るくらい…の。

 

その静かな海を前に彼女は目を閉じる…。

 

 

 

そう…

 

 

 

初期艦を選んで着任した提督が最初に挑む海域(ステージ)

俺と吹雪のスタート地点。

全ては…ここから始まった。

 

 

『あなたが…司令官…』

私の…司令官…。

 

画面の向こうのあなたに出会った。

私の声は届かないけれども…あなたは私を選んでくれた…。

 

 

 

『出撃します!!』

私の初出撃…きっと活躍します!

 

 

 

『きゃあ!!』

 

「まずいな…中破しまった…」

 

『ま、まだ行けます!司令官!』

しかし…その声は…届かない。

 

「…ボスマスを考えても、撤退か…」

ポチリと撤退ボタンを押す。

 

 

そんな…と私は思っていたが、すぐさま入渠させてもらった時に

「少しずつ強くなろう」

と、声をかけられて嬉しかった…。

 

 

そこから何日も何回もかけて…演習でボコボコにされながら練度を上げて装備を整えて…

 

そして…

 

『やった…やりました!司令官!私…やりました!』

例え声は届かなくともきっと気持ちは一緒なはず…。

 

「やったな!吹雪!俺達2人の勝利だ!」

きっと彼は私に言ってくれてるんだ…。

胸の奥がきゅんとした…。

ずっと…この人の所で戦いたいって思った。

 

 

 

 

その後…初めて建造して…来たのが金剛さん。

戦艦は強かった…。

一撃で敵を倒してすごく頼りになった…。

 

そして次は鳳翔さん…。

初の航空戦は圧巻だった。

 

加賀さん、雷ちゃん…時雨ちゃんと増えていった。

 

 

途中で赤城さんも合理した。

 

 

私は…第一艦隊の旗艦。

それが誇りだった。

 

 

決して強くないけれども…

初期艦という色眼鏡だったとしても…

あなたに必要とされているのが嬉しかった…。

 

だから…第二艦隊が解放されてそっちの旗艦になっても頑張れた…

華じゃないけれども…

それでも幸せだった。

 

 

例え…あなたの最初のケッコン相手が…金剛さんでも…

いつか…いつか、私ともしてくれる!って

 

 

 

 

「…吹雪…お待たせ…」

「俺の初期艦…吹雪にコレを……」

 

『…司令官?嘘!?本当!?』

 

 

その時が来た時は嬉しかった。

あなたには見えてないと思いますが…嬉しくて…嬉しくてずっと泣いてました。

 

金剛さんも「良かったデース」と、優しく抱きしめてくれて…他の娘も、羨ましいと言いつつおめでとうと祝ってくれた…。

 

 

あなたが来なくなってから…真っ暗な日々が続いた。

捨てられたのかな?必要とされなくなったのかな?と、耐える数年だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな時にあなたは来た。

ごめんなさい…司令官。

後であなたが死んでこっちに来たと知った時…私…悲しむべきなのに…それでも出会えて良かったと思ってしまったんです。

 

だって…

最初からずっと…ずっと好きでした。

金剛さんも生まれた時から…って言ってました。

なら、私は…金剛さんよりも数日長く好きでいるんです。

 

これは…誰にも負けません…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと、思い出に浸る吹雪達の前に珍客がやってきた。

 

「あ…イ級とロ級…」

 

迷い込んだか…2体がこちらに向かってやって来た。

 

 

「……もう…」

吹雪は戦闘態勢に入る。

 

 

 

救の方を見て…ニヤリと笑って

「敵機発見ッ!!司令官の指示を求めます!!」

 

彼も不敵に笑う。

「よし!吹雪…2人での戦闘だ!!」

「魚雷発射からの主砲で攻撃だ!!」

 

 

 

 

 

 

…あの時は私1人での戦いだった。

無論、あなたは近くで遠くに感じてました。

 

あの頃の私が見える。

不安で…縮こまって…それでも一生懸命頑張ってた私が…。

 

『やっつけちゃうんだから!』

ぼろぼろになっても、何回やり直しても頑張ったあなたに教えたい。

 

きっと絶望する。

きっと悲しむ…

でも!!

きつくても…辛くても…止まない雨も…晴れない雲も…明けない夜もないんだって!!!

 

 

 

 

 

「はい!」

「第一艦隊!旗艦…吹雪……いきます!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…吹雪?」

 

「…司令官?」

 

「ん?」

 

「愛しています!司令官を…ずっと…初期艦に選んで貰ったあの日からずっと…ずーっと!愛しています!」

 

「…吹雪…」

 

彼女はいつの間にか泣いていた。

「…えへへ…昔を思い出してました」

「辛いことも…幸せなことも…悔しいことも…嬉しいことも…悲しいこともです」

 

「…私は今、凄く幸せなんです」

「こうやってあなたと一緒に居られて‥時間を共にできて」

 

「ずっとこうやってはっきりと、伝えたかったんです」

 

 

 

吹雪は…

その誇りを胸にずっと頑張って来たんだ。

金剛に…加賀に、鳳翔に…例え戦力で敵うことなくとも

俺に選んで貰ったと言うか細い誇りを胸に刻んで…

 

「…ありがとう」

 

 

 

 

1日波に揺られていた。

吹雪とイカダで2人で…

 

吹雪が作った弁当を食べて…寄り添って…。

たくさん話をした。

俺が居ない時や…俺と出会ってからの事…

彼女はいつになく…饒舌に喋った。

 

その吹雪が愛しくて…ずっと隣で話していた。

 

 

 

 

 

 

 

そろそろ…帰らなきゃですね…という吹雪にもう少し…と、ギリギリまで一緒に2人きりの静かな海を楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は…そんな吹雪に何を返せただろうか?

…いや、そんなのではない…。

俺は…もう、決めているんだから…。

 

 

 

夜に…

「吹雪?」

 

「はい?」

 

 

「指輪貸して?」

 

「え?あ、はい」

 

彼女から指輪を受け取ってクロスで磨く。

 

「いっつも綺麗に手入れしてますよ♪」

えっへん!と、吹雪が得意げに語る。

なるほど、たしかにピカピカだ。

なら…と、それを箱に入れてまた、差し出した。

 

 

 

「…ッ!!」,

その意味は彼女がよく知っている筈だ。

遅くなってごめん…と俺は彼女に言う。

 

「改めて…受け取ってくれるか?」

脳が現実に追いついた頃に、それは喜びの涙という形で彼女を満たした。

彼女は両手で顔を覆い、コクコクと頷いた。

声にならない声は嗚咽となって両の手から漏れる。

 

震える左手を差し出して…ぐしゃぐしゃの泣き笑顔をこちらに向ける。

「ありがどゔ…ございばず」

 

優しく丁寧に薬指に指輪をはめて…キスをしに行く。

 

「司令官…ダメです涙でやばいんで…」

 

「構うもんか」

と、そのまま涙の味のキスをした。

 

 

 

 

「……愛してる」

 

「私も…愛してます」

 

暫く、キスをして抱き合って居た。

 

 

 

 

 

 

 

「幸せ…です」

「でも…怖いなあ…」

「明日…目が覚めたら司令官が居なかったらどうしようって」

「この指輪も消えてたらどうしよう…って」

 

 

「……吹雪?」

 

「はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君を貰うよ」

 

「…ッ!………はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…おはよう」

 

「おはよう…ございます…」

 

「いるだろう?」

 

「…はい」

吹雪はやはり、涙目で頷いた。

 

 

「この温もりも…痛みも…本物です」

彼女はニコリと微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?吹雪…何だか雰囲気かわったかしら?」

陸奥や赤城達に囲まれた吹雪。

 

「そうですか?いつもと同じですよ?」

 

 

「…うーん…何か…違うよーな…」

 

 

 

「はっ…まさか!?」

と、加賀が勘づいた。

 

「あ、あなた……」

 

 

「え?あっ!?え!?」

焦る吹雪。

 

 

 

「……おめでとう」

加賀は優しく言った。

 

「……え?」

 

「あなたはずっと…誰よりも努力した」

「それをあの人は見ていたのよ」

「だから…それはあなたが受けるべき愛よ」

 

 

それに…と、続けて彼女は言う。

 

「私も…愛では負けませんから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…吹雪さん?」

「指揮官様の匂いが…」

 

ズイズイっとやってきた桜赤城に桜大鳳に桜ベルファスト。

恐らく一瞬で理解したのか…司令官の部屋に直行して行きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え!?何!?君達…って…いやぁぁぁあ!!」

「けだものおおおお!やめっ…本当やめてえええ!!」

聞こえる司令官の叫び声。

恐らく身包み剥がされてるんだろうな…と思いながら助けに向かう吹雪だった。

 

 

 

 




吹雪ー!
意外と真面目でした。


イカダで行くってのも少し意味があって…

彼がこの世界に着任した時はイカダにのってました。

簡素に何もないところからのスタートの意味がありました。
ただ浮かぶだけで流されるだけで…という。
所謂、この世界での彼のスタートラインはそこなんですね。

初期艦の吹雪と一緒ってのもそういう意味で
改めて2人で行く1-1という意味があります。






少しでもお楽しみ頂けたら幸いです!

メッセージや感想などお待ちしてます!
めっちゃ待ってます!


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300話 この海超えて、あなたに伝えたい"ありがとう"

300話記念の単話特別長編!

今回は長いです!










ありがとうを伝える為に







きっかけとは小さなものです。

石粒よりも砂粒よりも小さな小さなキッカケ。

 

ほんの些細な事でも…

 

あなたには取るに足らない当たり前の事でも…

他の皆には記憶に留まらない過ぎ去る普通の事でも…

 

 

たったそれだけでも…私はあなたを好きになる。

 

あなたの言葉と態度…

私には十分すぎる言葉…嬉しかった…。

だから夢見て追いかけるんです。

 

 

もっと…理由が必要なら……

 

そう

あなたが私を呼んでくれたから…

 

それだけで…もう離れられなくなっちゃう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから伝えたいんです。

 

 

 

ありがとう…って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんにちは。

 

 

 

私は間宮さん達と同じ補給艦です。

 

領海拡大に伴って、大本営から派遣…というより、転属させて頂くことになりました。

 

 

はい、転属は私の希望です。

 

なぜかって?

 

 

 

 

 

 

あの提督さんに会いたくて…

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

私は、大本営の調理、配給担当でした。

真壁さん直下の艦娘でした…。

戦場の仲間に補給物資を届ける事が役目のはず…なのに…

毎日笑顔もなく、淡々とお料理を作るだけ…。

余計な交流も、会話もなく…

 

コレが美味しいかな?と、レシピ以外のものを作ると怒られました。

勝手なことするな…お前は言われた通りにすればいい…と。

逆らうなら解体処分だと。

 

 

艦娘も兵隊さんもみーんな表情は固くて…生きてるの?と聞きたくなるくらいでした。

 

 

それでも日々とは過ぎ去って行くもので…

 

 

 

 

 

 

そこに彼はやって来ました…。

若い男性の提督さん。

風の噂では…国家転覆を狙って、深海棲艦とも繋がってたらしいですよ。怖いですね。

 

 

 

彼への食事当番が私でした…。

その命令を頂いた時は正直嫌でした…。

 

私達の敵じゃないですか…。

そんな怖い人のお世話なんて…と考えていました。

 

 

嫌だなあと思いながらご飯を持って行きます。

 

…が、そこに居たのは…ぼろぼろの周りよりもかなり若い提督さんでした…。拷問…でしょうか?かなり傷だらけでした。

 

 

 

『…ご飯です』

 

 

『ああ…ありがとう……』

コトリ…と彼の前………の床に料理を置きます。

 

両腕を後ろで縛られている相手への献立が味噌汁とご飯だなんて…

 

『……頂きます』

 

 

 

 

 

屈辱だろう…。

こんな姿を晒すのは…。

 

『あの…お手伝いしますよ?』

 

『いや、そうしたら君が懲罰を受ける』

黙々と犬のように食べる提督…。

 

 

 

『残念だ……』

 

『…え?』

味付け…だめだったかな?と思う私に彼は言いました。

 

『こんなに美味しいのに…ちゃんと食べられないのが残念だ』

 

 

 

『…ッ』

 

 

 

『もしかして…君が作った…のか?』

 

 

『え…ええ』

 

 

 

 

 

 

彼はとんでもないことを言ったんです。

 

 

 

『ごめんね』

 

 

『折角作った美味しいご飯を…床に置かせてしまって…犬みたいに食べるしかなくて…それを見せてしまって…』

 

『本当にごめん…でも凄く美味しいよ…優しい味だ』

 

 

 

まさかそんな事を言うなんて

普通ならこの屈辱的な待遇に不満も…いや罵詈雑言を私に浴びせるでしょう。

なのに彼は…おいしい…と、私に申し訳ないって言うんです。

 

 

 

 

.

胸の中が何とも言えない感じになった私は彼にご飯を食べるお手伝いをしました。

スプーンを取り出して彼の口に運びます。

 

『…ダメだ!君が…』

 

『…これは私の…意思です』

『頑張って作ったご飯を美味しく食べて欲しいから…

 

 

 

 

 

 

『貴様っ!罪人に手を貸すのは違反だぞ!!』

 

 

『きゃあ!』

 

私は私兵に暴力を振るわれました。

 

『貴様ァァ!その人に何してんだッ!!』

彼は今までになかった表情で怒りました。

 

 

一瞬ビクッとした私兵さんでしたが…

『うるさいぞ!!』ドゴッ

私兵さん達は彼を痛めつけます。

 

 

『やめてください!私がやったんです!』

 

『ぐっ…俺をやれ!その代わり…その人に手を出すなッ!!』

 

『へぇ…生優しいんだな!』

 

 

 

その後も彼はずっと殴られてました…。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ごめんなさい…私のせいで…』

 

『……美味しかった…ありがとう…ごめんねこぼしてしまって…』

 

もう一つの噂通りの人だった。

艦娘達に優しくて…体を張って…。

 

 

 

 

 

 

 

その時から私は彼に好意を抱きました。

毎日のご飯が…楽しみになりました。

お給金を少し私兵の方に渡したら…ご飯を食べさせることや話すことを許してくれました…。

 

『…お前も変わりもんだな…どうせコイツは死ぬのに…』

 

 

 

コッソリとレシピ以外のものをつくって食べてもらったりしました。

中でも気に入ってもらえたのは炊き込みご飯でした。

 

 

「…あ…この炊き込みご飯…めっちゃ好きな味だ」

 

「ほ、本当ですか?」

 

 

彼は言う。

「また食べたい!是非作って欲しい」

「落ち着いたら是非ウチに来て欲しい」

 

 

 

『……ッ』

ドキリとした。

そんな言葉を掛けられるなんて…

 

 

 

 

今が…こんな時でなければ二つ返事でOKなんですけどね。

 

 

 

知ってますか?

艦娘には…その言葉は告白と一緒なんですよ?

 

変わらない毎日に光が差した気がした。

 

 

出来るなら今すぐにでもこの拘束を取っ払って、壁を壊して一緒に逃げ出したい…!!

 

 

『…なら、絶対に生き延びてくださいね?』

 

そして…この夢、理想を…現実にしてください…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは彼が処刑される前まで…の楽しみだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

最後の日…

配膳する手が震える…。

ガクガク震えながら最後のご飯を食べてもらう。

彼は最後の最後まで自分で食べる事は叶わなかった。

 

 

 

「…て、提督さん…私」

涙目の私を彼は…

 

「大丈夫」

 

笑顔で彼はそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

優しい提督さん…

私は…私は…祈ることしかできない自分が憎いです。

 

 

 

 

 

 

彼が凶刃に倒れる事はなかった。

鬼怒が由良の攻撃を受け止めたのだ。

 

 

 

そして彼と彼の仲間はは全てを覆した。

凄かった。

 

 

壁をぶち破って入ってきた西波島の面々。

敵だらけの中で手を挙げた猛武と呉の提督。

 

 

そして…私達ですら勝てないかもと思えるくらいの相手に怯まずに進んで行く提督さん…。

 

 

 

アレが絆なんだ…本物の愛なんだって思った。

 

想像した…。

私も…ああやってあの人と喜び合えたら…って。

 

だからできる事をしようと思って…

コソコソと物資を彼女達に渡した。

それしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は帰り際に私に会いに来てくれた。

 

 

『…ありがとう。辛かったけど君の美味しいご飯のお陰で何とか明るく居られたよ』

 

艦娘達に支えられながら…彼は私に微笑みかけてくれました。

『…待ってるからね』

 

 

『はい、必ず!!会いに行きます!あなたの元へ』

 

 

 

真壁さんに従事していたとして、軽くですが罰は受けました。

減刑を進言してくれたお陰で私はかなり軽く済みました。

 

 

 

 

 

 

 

『転属願い?西波島にか?』

御蔵閣下にお願いしました。

 

『はい…』

 

『…ふむ……しかしなあ…ここの人手も足らん…今すぐにと言うわけには行かぬが…構わんか?』

 

 

『はい!』

 

 

 

 

 

それからはやはり、彼の活躍を聞くと喜びが込み上げて…彼の危機を聞くと居ても立っても居られなかった。

 

『…早く行けるといいね』

と、大本営の大淀さんも間宮さんも言ってくれました。

 

 

 

 

 

長い期間待った気がします。

 

 

 

 

 

クーデターの時もじっと耐える日々が続いてました。

神崎提督さんは…と無事を祈る日々が続きました。

 

 

 

 

 

 

そのクーデターも終わって…

年末年始も終わった…今日…ついに!

 

 

 

『……おめでとう。惚れた奴の所に行けるぞ』

と、巌元帥が言ってくれました。

 

…長かった…。

 

 

『ありがとうございます!』

私は頭を下げて回った。

 

 

明日になれば移送艦と共に向かえるのだが…私は一刻も早く会いたくて一人で行けます!と、出発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが不味かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論から言おう。

 

 

私はそこで鎮守府へ辿り着くことなく…死んだ。

 

 

 

    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは覆しようのない…そして、紛れもない事実だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「〜♪〜〜♪」

 

会えると言うだけで幸せで…敵のことなんか頭から離れていた。

 

 

 

ズドオオオン!!!!

 

 

私の体は直上爆撃に耐えきれず……。

反撃する暇も逃げる暇もなく散りました。

 

「くっ!!応戦…!!」

 

「きゃぁぁあ!!」

「ダメ!私は…私は!!絶対に辿り着くんだ!!」

 

 

 

辿り……

ズドオオオオオオン!!!!

 

 

 

 

 

 

あぁ…

あの人が美味しいって言ってくれた…炊き込みご飯…食べてもらえなかったなあ……

 

 

目の前…にお弁当…が…

 

 

コレは…ダメ…

 

 

と溢れる中身を必死で右手で掴み取った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カエリタイ…

 

 

 

 

サミシイ…

 

 

 

 

 

アイタイ…

 

 

 

 

 

 

アイタイ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は気がつくと異形と化していた。

所謂、深海棲艦…。

 

 

湧き上がる憎しみや悲しみ…怒り…。

何への怒りかも分からないが…

 

脳の中に残っていたのは…

 

行きたい…

 

会いたい…

 

 

だった。

 

 

 

微かに残ったその感情は私をある方向へと向かわせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

どこかもわからない…その目的地は遠かった。

 

 

 

 

 

「はぐれ深海棲艦を発見!交戦しますッ!!」

 

 

『…ヤメテ…』

 

『アァ…行きたいだけナノニ…』

 

 

 

かつての仲間が私を傷つける。

 

 

 

痛い…

どんどんと削られる私…。

 

ダメ…ここで死ねない、

 

 

私は…

 

 

コレを届けるんだ…

右手に持ったリョウリ…ヲ…。

 

だから…こんな所で……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だ…あの深海棲艦…」

 

「こちらを無視して…どこに行くの?」

 

 

 

ズルズルと沈みかけの体を引きずって前に進む…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何日もかかってやっとの思いで辿り着いたのは小さな船着場?

ドシャリ…と桟橋に上がる。

 

 

 

前を見ると、そこに1人の人間が居た。

 

 

 

人間…!!

 

人間ッ!!!

 

憎いッ!!

 

 

なぜか憎い!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや…

 

悲しい……

 

何故か悲しかった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君は…」

 

 

 

 

 

 

あ……

 

 

 

 

 

 

その顔は…

 

 

 

片隅の片隅に残された記憶の残滓が…きらりと光った。

 

 

 

『ア……ア…』

 

 

 

 

この人は何日も待ってたんだ…

 

誰を?

 

ナンデ?

 

 

「深海棲艦ッ!!」

艦娘が弓を構える……のを手で遮る人間。

 

 

 

何故攻撃しても来ない…

 

 

何故ソンナ悲しそうなカオをスルの…?

 

 

私は敵…戦わないノ?

 

その人間に手を伸ばす……何故か

そうしたかったから…。

 

この苦しみから解放されると思ったから…。

 

 

アレ?上手く前に進めない…

アレ?私の…足……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんよ……」

 

 

 

彼は膝をついて泣きながら言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんよ…神威ッ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は待っていた。

数日前に着任する筈だった艦娘を…。

 

一足早く出たと聞いて迎えを送ったが…見つからず。

 

結果はロストとなった。

 

 

でも来る気がした。

彼女は約束を守ると思ったから…。

 

 

来る日も来る日も待ち続けた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼はもうすぐ死ぬであろう私を抱きしめて言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神威…

 

彼にはその見覚えのあるバンダナが…見えたから…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ…そうだった…

私は補給艦の神威…。

 

 

 

 

『ア……テー…ク…サン…』

 

 

 

 

彼女は会いに来たのだ。

 

 

 

『タキコ……ハン……食べ……ください』

 

守り切った筈のご飯…

手で握りしめて…潰れたかなあ…?

 

 

 

彼が好きと言ってくれた炊き込みご飯を差し出すが…

 

 

 

 

 

 

「……ッ」

彼は言葉を失った…。

 

 

 

 

 

 

その手すら彼女には無かった…

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう……」

 

 

 

 

『美味し…スカ?……まだ作れ…す……から』

 

 

彼女にはもう、彼も見えていない…

ただ…そこに感じるだけ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼には見えた…

笑顔の彼女が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あの時…守ってくれて…ありがとう…提督さん…イアイライケレ(ありがとう)…』

『最期が…好きな人の……手…中……なら……しあわー……

 

 

と言ったのを…

 

 

 

 

 

 

 

彼女の残された手はゴトリと地に落ちた。

 

そのまま彼女は…目を開く事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

彼とまた会うことを夢みた

彼に手料理を振る舞うことを夢みて待ち続けた彼女は……

 

 

 

彼女は傷ついて…それでも

ここへとやって来た…

 

 

命を賭して…俺の所へ…

いや…死のうとも…俺の元へ…思いを…伝える為に…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…提督さん…この人が言っていた…神威…さん?」

 

「指揮官…」

 

瑞鶴と桜三笠が声をかける…。

 

 

 

 

 

幾たびも色んな戦いに身を投じた…。

戦場には慣れた。

 

 

幾たびも色んな死に直面した。

なのに…どうしたものか…未だに死には慣れない。

慣れる事はない。

 

 

 

彼はいつだってその艦娘達の為に涙を流す。

大の男が…なんてナンセンスな言葉は誰も発さない。

ただ…その優しさが…嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は立ち上がった。

砕ける彼女を抱えて

 

 

間に合わなかった艦娘も居る。

 

でも彼は諦めない。

 

 

 

 

「……」

 

「瑞鶴…桜三笠ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「…うん!行こう!提督さん!」 

 

 

彼は彼女を抱えて走った。

 

ぼろぼろと崩れては消えて行く彼女を抱えて……

 

 

 

明石に通信を入れる瑞鶴。

「明石さん!私!瑞鶴よ!!建造装置…開けておいて!!」

 

 

いきなりどうしたの!?と言う明石に瑞鶴は走りながら説明する。

 

「提督が…彼女を離さない為にッ!!」

 

「……了解!!」

「皆ァ!!建造準備よ!!ありったけの資材をここに持って来て!!」

 

「りょうかい!」

 

「わかったわ!!」

「いくにゃー」

 

「妖精さん達もお願い!」

 

「おっ?りょうかいです!」

「みんなー!いくぞー」

 

 

 

 

 

 

建造装置へと辿り着いた時には彼女は手のひらに収まる程しか残ってなかった。

 

 

資材をぶち込んで彼女を一緒に入れて建造する。

 

 

 

 

 

 

だが…彼女だけは弾かれる。

 

 

 

 

 

 

だが…諦めたく無い。

 

 

 

「もう一度!!」

 

 

 

何度も何度も試した。

 

 

 

 

なのに出来上がるのは…失敗ばかり。

 

 

 

「……ッ!」

 

それでも諦めなかった。

 

 

 

何故?と言われると言葉にするのは難しい。

 

彼女を繋ぎ止めようと思う理由…

 

必要としてくれたから。

もっとお礼を言いたいから。

 

ちゃんと手料理を食べたいから。

 

沈んでも尚、会いに来てくれたから!!

 

 

 

 

"好き"と言ってくれたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが…資材は有限である。

 

 

 

 

 

資材が!!

もう!!

 

 

でも!!

 

彼女が消えてしまう…。

 

「…提督さん?」

瑞鶴が動きが止まった彼に問いかける。

 

 

 

「これ以上は…」

 

 

 

 

…これ以上は鎮守府の運営に必要な資材…!

空にするということは…あってはならない…。

 

皆を犠牲には…できない

 

 

そう思い建造のスイッチから手を離そうとした時だった…

 

 

 

「もう……だm…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「使いなさいッ!!」

瑞鶴が叫んだ。

 

 

 

「…でも…コレ以上は…もう……だm

 

 

 

 

 

 

[ダメ]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉を遮るように彼を桜三笠は引っ叩いた。

 

 

 

パァン!!!

 

 

 

 

周りの妖精さん達や明石、桜明石やベルファスト達は驚いた。

榛名や蒼オイゲンは「桜三笠さん!?」と言う。

 

ただ1人…瑞鶴だけは動じずに彼をジッと見つめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜三笠は涙を滲ませて叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「真面目を言うなッ!莫迦者ォッ!!」

 

 

 

 

 

 

「なッ?」

彼は目を点にした。

勿論、周りの皆も…

莫迦を言うな…だって?と。

 

 

 

 

 

 

 

彼が何を言っている?の言葉を言い始める前に彼女達は言った。

 

 

 

 

「提督さんはバカなの…!!それで良いのよ!!」

瑞鶴は言う。

 

 

「バカで真っ直ぐ進むのがお主なのだッ!!」

桜三笠が言う。

 

 

 

「でも…これ以上は……」

救が瑞鶴に言う。

 

 

 

「資材が足らない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「幾らでも使いなさいよ!!資材くらい私達が幾らでも取ってくるわよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ッ!!で、でも…それはお前達にキツくて…ひもじくて…辛い思いを…」

桜三笠に向かって言う。

 

 

 

「ひもじい…?辛い思い?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お主と仲間が居れば平気だッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「お主はいつだって艦娘や…他の世界の者を諦めたりしなかった!!」

 

「どんな苦境も乗り越えてきた我らの指揮官(我らの希望)が…」

「盾にもならぬような最もらしい理由如きで…進むのを止めるなッ!!」

「男なら……貫き通せッ!!」

 

「それが我らの愛する指揮官なんだッ!!」

 

 

 

 

 

 

「………」

彼が言葉を失ったその時…

 

 

 

 

 

「そうだよ〜提督」

と、通信が入る。

 

 

北上だった。

 

 

「ぽい!資材狩りに行ってくるっぽい!任せて!」

 

「任せるのー!提督のやりたいことは私達のやりたいことなのー!」

 

笑顔で指令を出してもいないのに遠征に行く彼女達。

 

 

 

 

 

 

「お前達……?」

 

 

 

 

全ては彼の為に。

 

彼の笑顔の為に。

 

彼のまだ見ぬ仲間の為に!

 

彼が前に歩けるように。

 

 

「たった一言言えばいい」

「俺の為に…動いてくれ!…と」

 

 

 

いつか彼女達は言った。

 

 

「お前は堂々として言えばいい」

「ただそれだけで良い…」と。

 

 

 

 

 

 

「…皆ぁ…俺に…力を貸してくれッ!」

「俺の我儘を聞いてくれええ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありったけを…」

 

 

「ありったけをぶち込むッ」

 

 

 

 

 

「「「「おう!!」」」」

「「「言われなくても!!」」」

 

 

「「「「それでこそ…あなただ!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

その中にもう一度彼女だったものと彼女のバンダナを入れる。

 

 

 

 

 

 

「届いてくれ…頼む…頼むッ」

 

建造装置に縋り付く彼を後ろから彼女は抱き締めた。

 

 

「……瑞鶴?」

 

 

「私は幸運艦よ?」

「私が隣に居れば…大成功間違いなしよ?」

 

 

 

 

 

 

「運が…足りないか?なら我も側に居よう」

 

「蒼雪風も居ります」

 

 

 

 

 

 

誰かが言った。

運が悪くとも…私達が居れば良くなります…と。

あなたの不運も私達が一緒に分かち合います…と。

 

 

 

彼は不運か?

 

 

 

彼は幸運なのだ。

誰かがきっと助けてくれるから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが…それでも届かない時はある。

 

 

 

どれだけの何を積んでも届かないものはある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全ての資材を使い切っても彼女は戻ってはこなかった。

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだだッ!!」

声が後ろから聞こえた…。

 

 

 

 

そう…

 

彼女達は諦めない。

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせ……」

 

 

「ぽぃ…」

北上や夕立が帰ってきた。

大量の資材を背負って…!!

 

「…提督…持って帰ったわよ!」

大井がドラム缶を何個も引きずって来た。

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様!次はウチらが行くで!!大淀!行けるな?!」

 

「はい!!」

 

 

最低限の補給と休息で彼女達は資材の獲得に向かった。

 

 

 

「何でそこまで……」

 

 

 

 

「何でって…貰ってるからよ」

 

 

 

彼女達は彼から与えられているから。

 

深い深い愛を、慈しみを、優しさを…笑顔を…幸福を。

 

 

戦う事が…海へ出ることが1番の仕事で恩返しになるなら…

 

 

 

 

 

 

 

これ以上にない程の見せ場じゃあないか!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヘーイ!!ダーリン!使ってネ♡」

金剛が帰ってきた。

 

「よっす〜持って帰って来たよ〜」

蒼ポートランドが

 

「指揮官様あ〜」

桜赤城が

 

「指揮官!褒めなさい!」

蒼エリザベスが!

 

 

 

「救君!ウチのも持ってきたから使って!!」

麗や猛武蔵達が…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

合理的だとか、非合理だの話じゃ無い。

 

 

 

 

ここでそうしなきゃ…

 

私達じゃなくなるから…!!

 

自分達がそうしたいから……そうするんだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「退け…ッ!深海棲艦!私の帰りを…この希望(資材)を…待つ提督が居るんだッ!!」

 

 

 

「邪魔を…するなぁぁぁあ!!!!」

 

 

 

鬼神の如き戦とはこうあるものか。

 

長門砲撃は一撃で数体を吹き飛ばす。

 

赤城や大鳳達の艦載機は敵の対空に擦りもしない。

 

 

「…ここは……何があっても通りますッ」

かつてないプレッシャーを放つ鳳翔が…

 

 

「……雑魚に構う暇なんかないわ!!」

桜オイゲンが

 

 

「お前達如きが…邪魔するなッ!!」

桜エンタープライズが

 

 

 

「一刻も早く届けるんだ!!」

蒼オークランドや蒼瑞鶴が

 

 

 

 

「…私の邪魔を…するなッ!私だって指揮官の為に!!」

桜エリザベスと桜シリアスが。

 

 

 

 

 

「当たらない…私は速いよ…!!」

島風が!

 

 

 

 

「私達だって…資材ぐらい持てるんです!!」

間宮や伊良湖達ですら一緒に行って、帰ってはご飯の補給を作るという無茶をする。

 

 

 

 

 

彼女達は詳しく神威を知らない…。

どんな存在かは知っているが、それはデータ上での話である。

 

彼女個人に関しては伝聞で、彼に良くしてくれた…くらいのものだ。

 

なのに何故彼女達はそうするのか?

 

 

 

待ち続ける事を知っているから。

 

 

彼と言う…その温もりを知っているから。

 

 

 

 

例え沈もうとも…彼に会いに来たから。

姿を変えようと、命の間際に居ようとも…

彼に会いに来たから…

 

 

たったそれだけでいい

 

 

 

彼女達が手を伸ばす理由はそれだけで良い。

 

 

 

わかるよ…

だって…最高の提督さんだもの

 

 

 

だから彼女達は奮闘する。

まだ見ぬ仲間の為に必死になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜ベルファストは言う。

 

 

 

「ご主人様は…たった一度だけ…私達に諦めろと仰った事があります」

 

「御蔵様の世界にただ1人取り残された時です」

 

「…ですが……あの時…もう一度開いたゲートを前に……そう仰ったご主人様を前に…諦めた方は居ませんでした」

 

 

 

「私達がピンチの時は…あなたはいつも励ましてくれました」

 

 

「私達が絶望に染まる中でも…ただ1人…皆に微笑み掛けてくれるんです」

と、榛名が言う。

 

 

 

 

「ですから…私達は何があっても諦めません」

桜長門が…

 

 

 

「マイネリーベが諦めそうなら…言うわ」

蒼オイゲンが…

 

 

 

 

 

「諦めるな…と」

蒼カールスルーエが…

 

 

 

 

「…どうやら…指揮官のバカはみーんなに伝染っていたようだ」

桜ティルピッツと桜ビスマルクが言う。

 

 

 

 

 

 

「見てる?ダーリン…これが…あなたが積み上げた絆なの」

金剛が彼の肩に手を添えて言う。

 

 

 

 

 

 

思いは人を突き動かす。

では…何が彼女達をそうたらしめるのか?

 

 

 

愛だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…

 

彼女達が必死に足掻いて掻き集めた資材には

彼女達の思いが…愛が宿る。

 

 

 

 

 

 

「皆が居る…」

 

「そう…私達がいるから」

 

 

 

 

全員の思いを乗せて…彼女を迎えに行きましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は…その愛を一身に背負い…

その想い(建造)その手に乗せた(開始した)

 

 

 

 

 

 

 

 

建造…開始……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督さん?

朝ですよ?

 

 

ーん?朝か?

 

 

ご飯…できてますよ?

はい、提督さんの大好きって言ってくれた炊き込みご飯です。

 

 

ーお…ありがたいな。

 

 

 

うふふ…間宮さんほどじゃ無いですけど…私だって…料理しますよ?

 

 

 

やっと…普通に食べてもらえますね。

 

 

 

ーそうだな…本当に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この夢を見るのは彼か?

それとも彼女か…ー?

 

 

 

優しげな夢の中に彼らは居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…はっ!…け、建造は…??」

 

 

高速建造もできない程に使い果たし、皆の気力も果てかけ…

彼女は額に巻くものだけを残して消え…

 

それでも最後の最後に見た長い建造時間…

 

 

 

どうやら長時間に耐えきれずに寝落ちてしまってたらしい…明石達も同じようだ…。

遠征終了組も寄り添って寝ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

起きなくち「ご無理はダメですよ?」

 

誰かの声が聞こえて…優しく頭を撫でられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は気付く。

寒いはずの工廠が暖かい事に…。

 

周囲に寝る艦娘達には毛布が掛けられており、自分もまた例外ではなかった。

 

 

そして…さらに気付く。

 

 

自分は膝枕をされていることに…。

 

 

 

 

目が合って気付く…。

 

 

 

その心優しい声の主は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ずっと追いかけた彼女だと言うことを…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「か…もい?」

 

この光景は夢なのか?

目の前に彼女が居た。

あの時の姿のままの彼女が…。

 

 

 

目頭が熱くなる。

滲んだ涙で上手く彼女が見られない。

 

 

 

 

 

 

 

 

ぽたり…ぽたりと彼の頬に涙が落ちてくる。

それが今を現実だと教えてくれる。

 

彼女は声にならない声で答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は…い…神威で……す」

「あの時…助けて頂いた…神威です」

 

神威はそう答えた。

いや…話したい事は沢山ある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前…あんなになってまで……なんで俺なんかを…」

 

 

 

 

 

 

「ずっとお礼を言いたくて…」

 

 

 

「…ありがとうございます」

 

「私を庇ってくれて」

 

「ありがとうございます」

 

「私の料理を美味しいと言ってくれて…」

 

 

「それだけの為に…?」

 

 

「はい…」

 

 

「…人を好きになるのに理由が必要なら……私を助けて頂いた事…私のご飯をあんな笑顔で食べてくださった事だけで十分です」

 

「でももっと理由が必要なら…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたが私の名前をずっと呼んでくれたから…です」

 

 

「…ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そして……こんなに…こんなに力強く呼んでもらえるなら…」

 

 

「…もう離れる訳にはいかないじゃないですかあ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とてもお待たせしました」

「そして……とても…とてもとても長く待ちました…この瞬間を…」

「私の…運命の提督に会うこの瞬間を……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「神威ッ!!!」

 

「提督さんんんん!!!」

 

 

 

彼は飛び起きて…私は彼に飛びついて。

彼女は感じる。

あぁ…冷たくない

やっと触れられた。

 

 

彼は感じる。

命の失われる冷たさじゃない。

彼女は今、ちゃんとここに居る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

漂う魂の海で…

ひたすら必死に誰かを呼ぶ声が聞こえた。

 

 

その声は…力強くて、優しくて…暖かくて…悲壮で…切なそうで…。

 

 

でもハッキリわかることが一つあった。

 

 

その声は

 

 

 

私を呼んでくれているんだと。

 

 

 

だから必死に走った。

 

走ったってのはおかしいかな?

 

うん、でも走ったの。

その声のする方へ…する方へ。

 

無我夢中で走ったの。

 

 

遠くて遠くて…辿り着けない程だったけど…

 

その光の方に行くとね…?

 

何か知ってるような…知らないような艦娘が居たの。

 

「どこに行きたいの?」って聞かれたから…

 

 

 

西波島鎮守府(あの人の所)へ行きたいんです」…って答えたの。

 

 

 

そしたらね

 

「まっすぐ行きなさいな…」

って言われたから…ずっとまっすぐ進んでたの…

 

そしたら…

光が強くなって…目が覚めたらここに居たんです。

 

 

 

 

なら…

皆が疲れ果てて寝てて…

 

ああ…私の為に…たくさん建造してくれたんだなあ…って思って…嬉しくて…。

 

 

 

 

 

「……補給艦…神威……やっと着任しました…」

 

彼女は泣いたまま敬礼した。

 

 

 

 

 

 

「…ん………よかったじゃん…提督…」

瑞鶴はその光景を見て涙する。

 

 

「…よがっだ…」

金剛は榛名にハンカチを貰いながら涙を拭う。

 

 

 

 

 

 

 

「提督!!おまたせ!持って帰っ………あぁ…」

 

時雨はその場に崩れ落ちた。

 

 

「…良かった…良かった…」

翔鶴も顔を手で覆い歓びに涙する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たった1人の提督の為に

たった1人のまだ見ぬ仲間の為に

 

 

考えれば非合理だろう。

ましてや、鎮守府の資材を使い切り…あまつさえ艦娘達に遠征で資材を獲得させて、それをも使うのだから…

 

 

鎮守府の管理者として見れば失格だろう。

 

 

 

だが

彼女達は決してそんな目で彼を見ない。

 

 

誰もが喜んで自分の意志で行ったんだ!と

胸を張って言うだろう。

 

 

 

合理だから

非合理だからの世界ではない。

 

 

 

 

それが彼女達の歩む道だから…。

 

 

 

 

同じ補給艦の間宮が近付く。

「神威ちゃん」

 

「ま、間宮さん達まで…こんな傷だらけに……」

 

「ううん…いいの」

そんな事より…と間宮は続ける。

 

「神威ちゃん…いらっし…いえ、()()()()()()

 

 

お帰りなさい…

周囲を見渡すと皆が優しい顔でお帰りなさいと続いて言ってくれる。

彼女は照れくさそうに、嬉しそうに涙ながらに返事する。

「た、ただいま…」

「…本当に…本当に!ありがとうございます…うっ…うわぁぁあん」

 

 

 

「…あり…がとう…ございます…ありがとうござい…ます」

「ほ、補給艦…か…かも…神威……ただ今……ぐすっ……着任致しました!今後と…も…よろしくお願いします!」

 

 

 

震えた。

震えが止まらなかった。

 

 

私はまだ生きてるんだ…

そんな事があるはずが無いのに…私は居る…

 

 

ありがとうの言葉じゃ伝えきれない。

もっと最上級の言葉でも足りない。

 

 

こんなに幸せがあっていいものなのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督さん?朝ですよ?」

 

「……ん…きょうはオフだから…まだ……」

 

 

「朝ごはんの…お味噌汁と炊き込みご飯できてますよ」

 

 

 

 

 

 

 

彼は飛び起きた。

 

 

 

 

 

 

 

鼻を通る匂いが

彼女の存在を現実たらしめる。

 

 

この温かな湯気の向こうの彼女は本物なんだ…

 

 

「いただきます」

 

 

 

 

「うふふ…やっと普通に食べてもらえます」

 

 

「ん…やっぱりこっちのが断然美味い!」

「あーんされるのもよかったけどね?」

 

「いつでもしますよ?」

 

 

 

 

 

 

「…これが提督をオトした炊き込みご飯ですね」もぐもぐ

 

「…正妻として…味見……うまっ…」

「味噌汁もうまっ」

 

 

「おう!?」

 

「あ、お邪魔しています」

しれーーっと俺の部屋に居るメンバー…。

よく見たら皆、茶碗と箸持って外に並んでら…。

 

「神威…ゆっくりはできないらしいぞ?」

 

クスクスと笑いながら彼女は答えた。

「はい!でしたら食堂をお借りしましょう!提督さんの胃袋を掴んだ神威のお料理…披露します」

 

 

 

 

 

 

 

食堂に移ってご飯の支度をする神威。

間宮達も興味津々である。

 

 

 

 

 

並べられたご飯は

炊き込みご飯と卵焼きとお味噌汁。

 

 

頂きます…と食べ始める。

 

 

 

 

 

 

「…ん、美味しい…五航戦には真似できないわね」

「美味しい!ガサツな一航先輩には真似できないわね」

 

 

「あん?やんの?」

 

「お?やるわよ?」

 

 

取っ組み合いをする馬鹿は放置して…

笑顔で彼女に語りかける。

 

 

 

「ん!やっぱり美味しいよ」

 

「イアイライケレ…提督さん」

 

 

 

 

「みんなも…ありがとう」

皆のおかげで…今この時を噛み締められる」

 

 

「本当にありがとう」

 

彼は深く深く…頭を下げた。

 

 

 

「…当たり前でしょ?あなたの我儘くらい叶えられなくて何が私達よ」

 

「どんどん頼って甘えてね」

「私達だってそうするもの」

 

 

 

この日は……いや、変わらずにずっと笑顔に溢れていた食堂だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「し、しししし指揮官!いや!あなた!痛くなかったか?!すまない…叩いたりして…」

 

めっちゃ桜三笠に涙目で謝られたのは別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、10000字超えの長編でした。

300話にちなんで
図鑑no.300の神威ちゃんに登場してもらいました。
え?改じゃない?

こまけえこたぁいいんだよぉぅ!


えっぐい流れからの…ハッピーエンド?


諦めそうな彼を叱咤し、支えるのは…やはり艦娘達。
だからこそあり得ない何かを起こすんですね。




みんな頑張りました。


うるっと来てもらえたら…嬉しい限りです。



早いもんで300話…。

ほのぼの日常とはどこにいったのか?


皆様のおかげでここまで来れたかと思います。
本当にありがとうございます。これからも応援頂けると嬉しく思います。

感想、メッセージ、評価などお待ちしてます!
ぜひぜひ!!


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301話 指揮官と…空母勢の制空権争い(笑)

毎度お馴染みムーンバックス。

 

さーーて今日は?

 

 

 

 

おっ?

何かどんよりした空気が店の近くを通りそうな予感…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

元気のないエンタープライズ。

理由は簡単に想像できる。

 

 

こういうときは気配を消すに限る…

 

 

 

 

 

 

 

「…間宮さんに怒られた…」

 

まあそうだろう…

 

「エンタープライズが食堂にあまり来ない」

と心配した間宮が必死に止めるベルファストを躱してエンタープライズの部屋にご飯を持っていった所…。

 

 

 

レーションだらけの…まあ

生活感溢れる部屋になっていたとか…

 

 

初めて味わう正座でのガチ説教。

 

『いや…あの…レーションばかりではないのだが…やはりな?効率的ではあると思うのだが…』

 

『あの部屋が?』

 

『…片付けようとは思ってるんだ!』

 

『…提督に嫌われますよ』

 

『うっ…それは困る……』

 

『食事はコミュニケーションの場でもあるんですよ?あなたの好きな提督…指揮官も食堂で皆と話してます。置いてかれますよ』

 

『うう…』

 

 

 

そんなやりとりをしたらしい。

 

「ヨークタウン姉さんにも同じ事を言われたよ…」

 

「なるほどね」

 

「……」

 

「気まずいのか?」

 

「え?」

 

「桜赤城や桜ビスマルク達と過ごすのが」

 

「いや…気まずい訳ではない。それは私達の素体の話だからな」

「単純に…楽だからなんだ…効率が……な」

 

 

 

 

「桜加賀と変わらんくらい戦闘狂だもんね」

 

「真面目と言ってくれ!」

 

 

 

「まあ……コミュニケーションは大切だよね」

 

 

 

 

 

 

 

「で?今日は?」

 

「ん?」

キョトンと返す桜エンプラ。

 

「え?」

 

「予定とかは?」

 

「無い!」

 

「何故ここに?」

 

 

「む?い、いつも通っているが?」

「やはり、たまには外食もしないとな」

 

「…これ飲むか?」

と、俺の飲んでいるコーヒーを差し出す。

 

「?何だんそれは?」

 

「スペシャルキャラメルマキアートエクストラソースシロップ」

 

「?!?!?!?」

 

 

「あ…これは部屋も掃除すると言って追い出されたパターンか?」

「艤装を磨こうと思ったのに…くっ!」

 

「よっぽど部屋が散らかってたのねぇ…」

 

「…生活感と言って欲しい」

 

「桜瑞鶴が聞いたら嘆くだろうなあ…グレイゴーストがぁ!!って」

 

 

「……善処します」

 

 

とはいえ、今更戻ったところで…なので

「ベルファスト?エンプラは今日1日フリーでいい?」

 

『…ご主人様とデートでございますか?』.

 

「……そうだと言えば君が不貞腐れるし、違うと言えば後ろのが不貞腐れるし…」

 

うーーーん…

 

『ふふっ…お優しいご主人様ですね。大丈夫ですよ?私はご主人様に誓いの指輪を頂いた身なので、その分の余裕はあります』

『でもまあ…そうですね。帰ってきたら一緒に紅茶を飲んで頂けたら…』

 

さすがは高貴なメイド…なんて会話をしているとエンプラさんがジト目でこちらを見ていた。

 

「…イチャコラの雰囲気を感じ取ったんだが…」

 

「………」

 

 

電話を切ってからエンプラとコーヒーを嗜む。

「苦ッ!!」

 

うぇぇ…と舌を出すエンプラが少し可愛かった。

どうやらブラックは苦手らしい。

 

 

 

「さて…」

 

「?」

エンプラさんは首を傾げた。

 

「出掛けるか?」

その言葉に一瞬、パァッと顔が明るんだが真面目顔に戻って言う。

 

「とても嬉しいが、遠慮しておく」

「せっかくの休みだろう?私は宛てもなくふらついてただけなんだ。指揮官の時間を邪魔はしたくない」

 

 

やはりクソ真面目…

さっきまで電話してたベルファストなんかクッソ食い気味に返事したぞ?

 

「む?指揮官…今他のKAN-SEN(ロイヤルの女)のこと考えてないか?」

 

さすが空母…索敵、警戒能力(女の勘)がしっかりしてらっしゃる…。

 

 

「ん、俺も1人だしさ…暇だし君さえ良ければの話だよ」

 

「……そ、そうか…なら一緒に…」

 

 

 

 

 

「…その話ッ」

「待ったッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「「!?何!?」」

 

突然の声に振り返るとそこには…開いた新聞を閉じながら登場する3人組が……

 

 

「グレイゴースト!私だッ!……あっ…指揮官…♡」

 

「…久しぶりの出番だぜぇ…」

 

「主殿?私もお忘れですか?」

 

 

桜瑞鶴に、大鳳に、蒼赤城…。

 

 

「なっ……にっ…」

動揺するエンプラさん。

桜瑞鶴に至ってはライバル視が半端なくって何かと勝負を挑んでくる。

大の仲良し(笑)である。

 

 

 

だが、恋の話となれば別ッ!!

活発系…デレ女の桜瑞鶴…

デレ…かつ友達系の千歳…

良妻と見せかけて束縛系?蒼赤城

 

そしてクッソ真面目な戦闘狂の私……

 

 

 

 

 

 

制空権争い(ポジション合戦)が始まった…。

 

 

 

 

 

ファイッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…指揮官もオフなの?デート?なら邪魔したらだめかなあ…」(艦戦発艦)

 

「デートに決まってるでしょ?ダメよ〜邪魔したら」(艦攻発艦)

 

「申し訳ありません…主殿…主殿にオフの街で会えたのが嬉しくて…つい…」(艦爆発艦…カットイン)

 

 

 

 

見事な波状攻撃ッ!!!

 

「い、いや…デートではないぞ?」(艦戦…航空戦不利)

 

「…邪魔だなんて…(艦攻…航空戦劣勢!)

 

「し、指揮官はどう思う?」(艦爆、対空不利)

 

 

 

 

 

 

くっ!デートでない事は分かってる癖に…!

あえてデートと言うことで…邪魔したらダメよね?という事でこちらが「そんなことないの?」って言うのを待ってるのね!?

特に指揮官は優しいから……

 

 

 

 

 

「んにゃ?邪魔じゃないぞ?皆で出掛けるか?」(艦隊援護射撃…)

 

 

 

 

 

 

 

 

見事に制空権喪失ッ!!!

 

 

 

 

負けた…このグレイゴーストが負けた…

 

 

 

 

 

 

 

 

そういうとこおおおお!

指揮官ッ!そういうところだぞおお!

 

3人は一瞬ニヤリとしてワザとらしく言う。

「えっぇー!?いいのぉー!?しきかぁん」

 

「そーだよー!無理しないでよ?提督〜」

 

「でも、主殿がせっかく誘って下さったのですから…」

 

「「「お言葉に甘えましょう」」」

 

 

 

 

 

さすがに空母1に対して空母2と軽空母1という1VS3では部が悪く、かつ指揮官の援護射撃もあって制空権争いは見事に完敗だった。

今度からは…もっと対空にも力を入れようと思った。

 

 

 

 

 

うんうんと頷く救に…少し肩を落とすエンプラだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 





制空権争いとは恐ろしいものだなあ…棒


今後ともぜひ、この作品をよろしくお願いします。


少しでもお楽しみ頂けたら幸いです!

感想などお待ちしてます!


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302話 指揮官と…空母勢

てな訳で世界混合空母勢と指揮官の街ブラが始まりました。

 

唯一の救いは

迅鯨や蒼オイゲンと桜赤城、桜大鳳が一同に介してない事…かな?

うーん…やめとこう…現実になりそうで怖い。

 

「どっか行きたいところはある?」

との救の質問に…

 

 

「指揮官の行きたい所で」

 

「指揮官のオススメのスイーツ食べ放題に…」

 

「提督と過ごせるならどこでも♡」

 

「主殿と一緒なら例え火の中でも…」

 

桜瑞鶴がスイーツ食べ放題と…。

恐らくはグレイゴーストより食べられるッ!!と勝負事になるんだろうな…

カラオケやボウリングも同じだろう…というか、こやつらの勝負事は力が入ると面倒だ…ピンどころかボーリング場を壊しかねん。

 

しかし…スイーツは俺にとっては大切なもの…

仕方ない…

オススメの落ち着いた雰囲気の店に行くか…。

そこなら暴れたりはしないだろ…。

 

 

 

 

てな訳で、やってきました!

カフェ[ランプ]

街灯…夜に光る街灯をモチーフにしたような、ぼんやりした少し暗めの店内は俺好みの隠れ家的なスポットである!

マスターも落ち着いていて、にこやかに表情を崩さないダンディ感溢れる人なのもいい所!

 

 

 

 

「おっ…救君、いらっしゃい。今日はまた奥さんんんんんん4人んんんんんんん!?」

 

 

 

「にこやかな表情を崩さないダンディが崩壊したぞ…指揮官」

 

「……こほん」

「いつもは1人の子なのに今日はハーレムだね。ついに目覚めたのかい?」

 

「いや、今日は…「「「「デートです」」」」

 

 

 

 

「えっ…「「「「デートです」」」」

 

 

「まあ…うん…奥のボックス席空いてるから座ってね」

 

 

 

 

 

 

そう案内されて奥のボックス席に移動する5人。

そこに注文を聞きにウェイトレスがやってくる。

「いらっしゃいませ!お久しぶりですね!救さん」

 

「おっ!白雪ちゃん!久しぶりだね」

 

 

「…お知り合いですか?」と、少し微妙な顔をした蒼赤城達だが、千歳がアッと驚く表情に変わる。

 

「え!?白雪…って艦娘の白雪!?」

 

「あ、千歳さんですね?初めまして!元艦娘の白雪です!」

「今は一般人ですけど…えへへ」

「縁あって…というか、提督さんの紹介でここで働いています!」

 

 

 

「……マジか…あ……白雪ちゃん…もしかして…それ」

千歳があるものに気づく。

それは白雪の左手に着けられた輝く指輪…。しかもデザインが艦娘用とは違ったソレ。

 

 

 

「まさか!?」

と、4人が救を見る。

 

 

「いやいやいやいやいや」

ブンブンと首を振る救。ズルイズルイ!と皆がブーブー言う。

するとそこに1人の青年がやって来る。

 

 

 

「あ!救さん!いらっしゃいませ!」

 

そう挨拶したのは見るからに爽やか系の好青年だった。

彼はマスターの息子であり……

 

「タカ君!やっと出来たんだね?プロポーズ」

救はニヤリと笑って言う。彼はえへへ、そうなんですよと返した。

その彼とは、白雪の彼氏に当たる人物である。

 

 

「やっと…て事は!?知ってたんですね!?救さんも!!」

 

彼女達の出会いや過程は今は省略するが…

ある時に出会った白雪を退役後にこのランプに斡旋したのは救であり、彼らの仲を取り持ったのも…救である。

 

 

ホッ…とする4人に白雪とその彼氏が語りかける。

 

「安心してください!私達が結婚するので!」

「提督さんを取ったりしませんよ!」

 

 

 

羨ましいなあという表情でジト目を向ける4人。

初々しい2人は照れながら笑っている。

なんせこの中で指輪をもらってるのは…蒼赤城だけなのだ。

 

 

 

「…早く下さいね?」

と、千歳達が救にコソリと言った…。

 

 

「結婚式は是非来てくださいね!」

 

「そうだなあ…それまで…いや、良い夫婦生活の為に海の平和を守らなきゃなあ…」

救が儚げに笑う。

 

 

 

 

 

彼女達は気付く。

この人達も…周りの人も…皆の平和は私達にかかっているんだ…と。

 

私達が負ける…と言うことは彼等の平和が失われるという事…。

私達の役割は…とても大きい。

提督にとっては負けとは…私達を失うだけでなく、街の大切な友人達を

…その暮らしを失う事になる。

 

だが…彼はそれを私達には課さない。

作戦の立案も…私達との時間も両立しながら…。

 

街の人達は多少の被害では彼に何も言わないだろう。

でも…その家族が亡くなったら?

 

女連れで平和ボケしたお前のせいだ…と、提督を非難するだろうか?

 

いや…するだろう。

千歳は思い返す。

街の人達が救を一度死に追いやった事を。

 

 

あんな悲しみの連鎖を二度と生まない為に私達は頑張るんだ…と。

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、目の前の幸せには素直に喜びたい。

 

「「「「おめでとう!!」」」」

 

いつの日か…自分も純白のヴェールに身を包んで…

あなたと共に歩みたいと思う。

 

チラッと彼の方を見て…皆も彼を見ているのに気付いて思わず笑ってしまう。

 

 

 

 

 

オススメのあまぁいスイーツを食べてから談笑して帰る。

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうな!今日は一緒に出掛けてくれて!」

 

 

 

彼は笑顔で語り掛ける。

 

 

 

 

「……私達がきっと守るから!あなたも…あなたの大切な友人達も…」(艦攻)

 

「桜瑞鶴……ありがとう。でも…君達も自分を大切にね?」

 

「はい…」

 

「私は提督と一緒に居られたら幸せだなあー」(艦爆)

 

「千歳…ありがとうな」

 

 

 

「だから…早く指揮官の伴侶にして欲しい」(カットイン)

 

「…ッ!グレイゴースト!そのセリフは…卑怯だぞ!」

 

「……ッ!!」

今になって顔を赤らめる桜エンプラさん。

 

「言った本人が赤くなってる!!」

ケラケラと笑う千歳と蒼赤城。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お……おお!私の部屋が…綺麗になってる!」

 

「………エンタープライズ様…修行しましょう」

綺麗な部屋の外には桜シリアスやその他のメイド組が息を切らして座り込んでいた…余程キツかったのだろう…。

後でマミヤをご馳走せねば…。

 

「ん?修行?」

 

「是非ともメイド修行を!!」(主砲掃射)

 

「え?!いや、私は…」(艦攻…完敗!!)

 

「ね!?ご主人様!?」(カットイン)

 

 

「お!?エンプラのメイド姿かー!いいかもなー!」(強制敗北)

 

 

「なっ!?」(轟沈)

 

「ね?!」(死体蹴り)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日から時々メイド姿のエンプラの悲鳴が聞こえるようになったとか…

 

 

 




たまにはこーいうのも…ね


お気に入りが710に…
ありがとうございます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

少しでもお楽しみ頂けたら幸いです!

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303話 日曜日の朝の

「ぴょん…」

「うーちゃん嘘つきじゃないぴょん…」

 

 

 

「…よく言った…」

 

 

 

 

 

 

 

ヒーローとは…危機には必ずやって来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

迫り来る深海棲艦。

 

目の前では友達達が怯えて立っている。

やるしか…ないんだ!!

 

 

 

 

 

「離れてて!化け物が…来るぴょん!」

 

「だめだよ!卯月ちゃん!あなた…武器…を…」

引き止めようとするうづきに卯月はグッと指を立てて言う。

 

 

 

「平気だよ!うーちゃんは強いから!」

「あーんな奴らにうーちゃんは負けない!だから…その子達を連れて早く逃げるぴょん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嘘だ。

 

 

艤装は展開できても…

武装はない。

 

 

 

 

 

死にに行くようなものだ。

 

だが…

その嘘で彼女達を守れるのなら…それで良い。

 

 

ねえ?提督さん?

そうだよね?

 

 

うーちゃん…嘘つきじゃないよね?

 

 

だって…

私の勝ち…は

あの子達の明日なんだから!

 

心の底から…守りたいって思ってるんだもの!

 

 

 

 

 

 

 

私は

時雨や夕立みたいに…素手の戦闘は得意じゃない…

 

 

 

 

 

『…弱い』

 

『それで守る…?飛んだ嘘つきじゃないか!』

 

迫る深海棲艦!!

 

 

 

「ぐぅ…うーちゃん…嘘つきじゃないもん…」

「絶対に…うづきや子供達を守るんだ!!」

 

『まだ言う?』

 

「例え…命を懸けても!!守るんだッ!!」

 

 

『なら…死ねよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よく言った」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「素晴らしい覚悟だ…天使の駆逐艦(強い艦娘)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

駆逐艦大好き変態

 

…いや駆逐艦大好きなマジ変態(頼りになるお姉様)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひとォつ…必死で頑張る天使を…貶す奴を」(長門1カメ)

 

 

 

「ふたァァつ…不埒に天使を惑わす奴を…」(桜アークロイヤル)2カメ

 

 

 

 

「みイイイイイッつ…皆殺しにする…」(蒼ヒッパー3カメ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「我らッ!!」」」

 

駆逐艦守護艦船!!(エンジェルガーディアン!!)(決めポーズ)

 

ドカーーン(爆発と紙吹雪と効果音)

 

 

 

 

 

 

『…知り合い?』

 

「…黙秘するぴょん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……泣くな…卯月。お前は立派だ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この涙は…恥ずかしさだぴょん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーちゃん…」

 

 

「あぁ…」

長門が答える。

 

 

「守りたい…」

 

 

「うむ…」

蒼ヒッパーも…

 

 

「あの子達を守りたい!!」

 

「なら前を向けッ!!我らが背後にいる」

桜アークロイヤルが吠える。

 

 

目を開けて前を見ろ

 

 

 

 

 

 

「さあ…お前が旗艦だ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおおおおお!!!」

 

 

 

 

『ナンダ!ウサミミと仮面を着けたゴツいのがコチラに向かって来るぞッ!?しかも強え!』

 

『ヤベェよ…ヤベェよ…マジモンの変態だよ…しかも強え!』

 

 

 

「天使を傷付けた貴様らの罪は重いッ!!」

 

 

『お前らの愛の方が重そうだよ…』

 

 

「くらえ!我ら無敵のぉぉお!!」

 

3人が飛び上がり必殺技を…繰り出すッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

……

 

 

 

 

「と言う我らの日常を描いたドラマを制作中なんだが…」

 

「……ええ…」

「てか…日常…?」

 

 

 

「仮面ヒーローナガモンは…?」

 

「泣く泣く打ち切りとなった」

 

 

 

目の前には企画書という名の台本等々を持ったえんじぇるがーでぃあんなる者達が居た。

ほんッとうに駆逐艦大好きを前面に出した変態どもめ…。

 

卯月は隣で顔を赤らめて立っている。

 

 

 

「主役は誰よ?」

 

「「「勿論!駆逐艦と私達だ」」」

 

「え?何?毎回駆逐艦がピンチになんの?」

 

「あぁ!ちなみにその台本はサードシーズンだな!」

 

「さーどしーずん?」

 

うむ…と、長門が3冊の本を出した。

「まず、ファーストシーズンは私が出るぞ!正義のガーディアンは孤独に戦うんだ!駆逐艦から憧れながら…必死に悪と戦う!」 

「10話あたりからは桜アークロイヤルが出る予定だ!最初はぶつかり合う2人…だが!やがて和解してチームを組む」

 

「セカンドシーズンは2人でメインを張るぞ!」

フンス!と桜アークロイヤルが目を輝かせて喋る。

「もちろん…お色気要素もあってな…駆逐艦と私が…くっ…ふへへ…」

 

「ガーディアンらしからぬ表情だな」

 

 

つーことは…

 

「また最後の方で蒼ヒッパーが出ると?」

 

「フフ…さすがは指揮官……よく分かったな」

 

「まあ…天丼方式だよね」

 

「そしてサードシーズン!私達の各キャラに焦点を当てつつ…エンジェルを救うぞ!!」

 

 

 

 

「あ!12話あたりでの総集編はないから安心してほしい!」

 

「そしてサードシーズン最終話では…劇場版への伏線……そして、劇場版では…くっ…これ以上は……」

 

 

「げきじょーばん…」

 

 

 

「桜明石達…工廠との製作で、グッズ展開も行うぞ!!」

 

「本格的なのね…」

 

 

 

「今のところ…卯月をはじめとした駆逐艦、重桜の駆逐艦達も参加予定だ」

 

「悪役は?」

 

「そう、悪役は…姫ちゃん、鬼ちゃんを初め、武蔵や桜エリザベス達にオファーをかけている」

 

 

 

 

 

 

「劇場版のラスボスは…提督にやってもらいたい」

 

 

 

「嫌です」

 

 

「何で!?」

 

「なんかいや!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オーッホホホホホホ!!やっておしまいなさい!桜加賀さん!桜大鳳さん!」

 

「はい!お姉様!!」

 

 

「アハハハハハハ!踏み潰しちゃうわぁ!」

 

 

桜赤城と桜加賀と桜大鳳がノリノリで撮影してたわ…

 

 

 

「きゃぁあ!!」

 

「赤城さま…こわいよおおお!!」

泣き叫ぶ重桜駆逐艦組。

 

 

アレは演技じゃなくてマジの怖がりだろうなあ…

 

 

 

 

 

「「しきかぁあん!!こわいよおおお」」

 

「え!?」

怖さのあまりに撮影中に飛び出してコチラに飛びついて来る駆逐艦達。

カットが青葉達から入る。

 

 

「あらあら…演技が怖かったのかしら?ふふふ」

汗を拭いながら微笑む桜赤城。

 

 

「……素じゃね?」

青葉と俺からのツッコミが入る。

 

「えっ……」

 

「あ、赤城姉様…!そ、それほどに迫真だったんですよ!」

指揮官!バカ!と言わんばかりの桜加賀の目線が痛いが事実だもん。

 

 

 

 

 

 

 

だが!!

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官…何だ…その状況は……」

 

「ん?コイツらが怖が…「提督が悪役になったのか?」

 

 

 

 

「おいおいおいおいお前らの方が悪役顔じゃないか」

 

「…そう言えば…指揮官も指輪で天使達を誑かしていたな…」

 

「は!?」

「お前も泣きながら貰ってただろ!?長門ォ!」

 

 

「くっ!悪の道に堕ちるとは………許さん!!」

 

「おい!目ぇ逸らすな!ナガモン!!」

 

パキパキと指を鳴らすお三方…。

目の前で駆逐艦が泣いてたらそーなるわなあ…黙ってないわなあ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

んで…

俺がそうなったら黙ってない奴が居るんだよなあ…

 

 

 

「あらぁ?!…まさか…指揮官様に楯突くのかしらぁ?この小娘共はァ!!」

 

「…決着をつけてやるぞ!エンジェルガーディアン!」

 

「桜赤城先輩も桜加賀先輩…役に入りすぎです…」

「でも…指揮官様に敵対するなら……消してやりますわぁあ!!」

 

 

 

 

ヤベー…クッソ頼もしー…。

戦艦を素手で凌駕する空母勢だもんなあ……

手が付けられなくなったら桜三笠と桜天城と間宮を呼ぼう……うん。

 

 

 

 

「「「いくぞおあおおおお!!」」」

 

「「「かかってこいやぁあ!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この場面の方が絵になるわ…」パシャリ

 

「…提督が争いの元に……」カキカキ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局そのあとは全員、怒られた。

 

 





正直すまんかった…

だって…あの3人てそんな感じじゃないですか…




少しでもお楽しみ頂けたら幸いです。

感想などお待ちしてます!


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304話 兎は月の裏の夢を見るか?

ん?
何でこうなったかって?

そうなだなあ…アレはなあ…


ん?何でヒーローか…だって?


ヒーローとは何か?

 

きっと…勇気のある奴を言うんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………綺麗」

 

 

街の一軒の花屋だった。

彼女の目を惹くくらいに綺麗な花だった。

 

「いらっしゃいませ!」

 

「あ……」

 

 

 

 

そこに居たのは…きっと違う道を辿った私。

 

「あなたは…卯月?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へー!花屋をやってるぴょん?」

 

「うん!そうなんだ!」

目の前の子も元卯月だった。

退役して、うづきと名乗っているようだ。喋り方も何とか頑張って直したらしい。

 

「海の近くだと大変じゃないぴょん?」

海風は花にとって悪そうなイメージがある。

 

「うーん…でも、やっぱり海が見えると少し安心するんだ」

 

あれだけ戦って…それでも海が嫌いにならないのが少し不思議に感じたけど…でも、私達が守る海をみると安心すると言ってくれたのは嬉しかった。

 

「お疲れ様です!ヒーローさん!いつも守ってくれてありがとう!」

と、笑顔と共に卯月に花とジュースを差し出す彼女。

 

 

 

「ありがとう…ぴょん」

 

 

 

「あ!花屋のねーちゃん!!」

 

「お!来たな!ボーズたち!」

 

街の子供達だろうか?ニコニコとうづきに近寄って来る。

「今度ねーちゃんの誕生日だから花選んで!」

 

「はいよ!わかったよ!」

 

「ん?あれ?このおねーちゃんは誰?」

 

「この人はねえ…艦娘さんだよ!皆の安全を守ってくれてる凄いお姉ちゃん達なんだぞ?」

うづきは子供の問いに得意げに答えた。

子供達は目を輝かせて「スゲェ!!」と言った。

 

「ねえ!武器見せて!」

「海の上を歩くってどんな感じ!?」

「いつも来てるにーちゃんのお嫁さん!?」

「うーちゃんはイタズラ好きって本当?」

 

わいのわいのと群がっては質問を投げかけて来る。

「う…武器は置いてきたぴょん!」

「海の上を滑るのは…うーん…きもちいいよ?」

「てーとくさんは…うん、そうだよ?……てかここでも有名人ぴょん…」

「うーちゃんはあんまり…」

 

「てか!そこのうづきちゃんも元艦娘だよ!?」

 

「「「え!?」」」

 

 

 

なんて会話をしてる時だった。

 

 

 

ゾクリ…と何かが感じた。

 

それは海の方からだった。

 

 

 

 

 

「ん?海がどうしたの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見えた。

深海棲艦だ。

 

 

 

 

こっちに来ている…!?

抜けてきた!?どうやって!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんて考えてる場合ではなかった。

 

「さあ!子供達よ!ウチヘ帰るぴょん!」

 

「え!?でも…まだ遊び…「街の端まで競争だぴょん!早かった子にはプレゼントをあげるぴょん!」

 

やった!!と言いながら走って行く子供達。

それを見送って…

「うづき…敵が来てるぴょん!皆を逃がして!!」

 

 

 

 

 

鎮守府へ連絡して、更に卯月達の指示で避難を始める街の人々。

 

「よし…これで…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前にはうづきが居た。

「な、何で逃げないぴょん!?はやく逃げるぴょん!!」

 

「ダメ…」

 

「何で!!!」

 

「この花屋は…私の……たった一つの宝物なの」

 

「そんなこと言ってたら危ないぴょん!!」

 

「なら!あなたも逃げよう!?武器ないんでしょ!?仲間が来るんでしょ!?」

 

 

私の為にそう言ったのだ。

私が海に出るなら残るよ

一緒なら逃げるよ…と。

 

 

確かに武器はない。

でも…それは逃げる理由にはならない。

何故なら…

 

 

 

 

 

「この街の平和は…うーちゃん達が守るぴょん!」

「うーのお店も…街も!みんな!」

 

 

「でも!武器が!!」

 

 

「大丈夫ぴょん!!うーちゃんはヒーローだぴょん!あんな奴らに負けないぴょん!!」

 

 

「そんな嘘!!!」

 

「うーちゃんは…嘘つかないぴょん」

 

 

 

 

 

 

「艤装…展開ッ!!!」

 

 

 

彼女は海へと走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うーちゃんが守るんだ。

 

 

 

 

 

 

 

『…1人?舐められたもんだね』

 

『…』

 

「うーちゃんはヒーローだぴょん!ひとりで充分ぴょん」

「街も…みんな守るぴょん!!」

 

 

 

 

 

 

 

『一人で何が出来るッ!!』

片方の深海棲艦が、街へと砲撃を行おうとする。

武器は……ない!

卯月はそれに飛びついて軌道をずらした。

「させない!!」

 

 

 

『この!!』

 

 

 

ドボォン!

 

ドボォン!!

街近くで水柱が上がる。

 

 

うづきには見えた。

彼女が必死に食らいついて街を守ろうとしているのを…

「…やっぱり嘘じゃん!武器…ないのに!!」

何度弾かれても…投げられても彼女はずっと食らいついてはなさなかった。

 

魚雷には…艤装を投げつけてでも街への侵入を防いでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

『待て…コイツ…武器がないぞ?』

 

『へぇ……』

 

 

 

 

 

 

 

彼女達は卯月を痛めつけ始めた。

 

「ぐっ!」

 

『邪魔なお前を…動かなくしてから!街を潰してやるよ』

 

『オラァ!!簡単にくたばんなよ!!』

 

「うあっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やめて…」

「やめてえ!」

 

蘇る記憶。

散った仲間…守りたかった人。

蹂躙されて…散る命。

 

 

 

 

 

 

 

「やめてええええ!!!」

 

 

 

 

 

 

『あん?』

 

『おい、あの小せぇの…アイツ?』

『…邪魔だな…お前の友達か?…』

ニヤリと笑う2人。

 

『撃っちまおうぜ!!』

 

 

「やめるぴょん!!」

 

『うぜええ!!』

リ級が卯月を海面に叩きつけた。

重巡棲姫が…うづきを狙う。

 

 

 

 

 

「やめろおおおお!!」

 

 

『守れなかったな?…嘘つき!お前はヒーロー失格だ!』

『ヒーローってのはなあ!強え奴のことを言うんだぜ!』

 

 

 

 

 

 

ズドォン!!

 

街へと砲撃が放たれた。

 

 

「うわぁぁあ!!!!」

 

『ぬぐっ!?』

卯月はリ級を跳ね除けて砲撃を追いかけた。

 

 

 

 

追いつけるはずもないのに。

 

 

 

 

 

ズドォン!!

 

 

「ぎゃぁ!!」

 

 

背中に激痛が走った。

後ろから撃たれたらしい。

海に叩きつけられるように倒れ込む。

 

 

『この……クソガキがぁぁあ!!』

 

 

 

ガクガク震えながら叫ぶ。

「あぁぁあ!!うづき!逃げるぴょん!!逃げろおお!」

 

 

 

 

叫ぶ卯月。

だが…うづきは一歩も引かなかった。

 

「ごめんね……この店は…皆が…今も戦う皆がくれたお店なの」

「…それを守る為なら…私は退かない!!」

 

「うーちゃん…1人で戦わせたり…しない!私も…守るんだ!!」

 

 

 

 

うづきは両手を広げて店の前に…砲弾の目の前に立った。

 

 

 

「うづき!!ダメだぁぁあ!!!」

 

 

 

守るって言ったのに!

うーちゃんは嘘つきじゃないのに!

 

 

 

ヒーローに…なれない……

 

 

ダメだ…!!

 

誰か!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その意気や良し!!」

 

「そして卯月!君を嘘つきなんかにはさせないッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ぴょん…?」

 

 

「え…」

 

 

 

 

 

 

 

「よく耐えた、良くやったぞ…卯月」

「ぬおおおおお!!!」

 

 

うづきは見た。かつての仲間と同じその背中を

卯月は見た。今を共に戦う仲間の、その顔を……

 

 

迫り来る砲撃を殴り飛ばす姿を!

 

 

 

 

 

 

 

まるで漫画のヒーローのように!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…謎の仮面戦士ナガモン!見参ッ!!」

 

 

「な…長門…さ「ナガモンだ!!」

 

 

 

 

 

『この……

更に砲撃しようとするリ級に蹴りが入る。

 

 

ドゴォォッ!!

「…ざっけんなぁぁあ!!」

 

 

 

「謎の仮面戦士…アーロイ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前の罪は…重いぞ?」

重巡棲姫を殴り飛ばす。

 

 

 

「…謎の戦士…ヒッパー…」

 

 

 

 

 

 

 

「……長門…ぴょん…?」

 

 

 

「否ッ!我らは…街を必死に守ろうとするキミに心を撃たれた非番だった謎のヒー…戦士だ!」

 

 

 

 

 

『ケッ!ヒーロー気取りかよ!』

 

 

「…ヒーロー?違うな…」

 

 

「ヒーローとは?

トンデモないパワーを持った奴か?

 

 

敵を寄せ付けない奴か?

 

 

勇気を出した奴だ。

 

 

 

例え力がなくとも

武器がなくとも…守るものの為に勇気を持って踏み出した…卯月こそヒーローなのだ」

 

 

 

 

 

「…うー…ちゃんが…ヒーロー?」

 

 

 

「うむ、我らは…そうだな…エンジェルガーディアン…とでも呼んでくれ」

 

変態の…集い(エンジェルガーディアン)?」

 

駆逐艦守護艦船(エンジェルガーディアン)!!」

 

 

『ふざけんなッ!!ロリコンがぁぁあ!!」

 

『まとめてぶっ殺してやる!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ!どうする?!卯月…旗艦は君だ!」

 

「我らに…指示を!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……奴等から街を守るぴょん!!」

 

 

「「「了解ッ」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひとつ……非道な奴等に鉄槌を…下し!!」

 

 

「ふたつ…再び海と天使に笑顔を取り戻し…!」

 

 

「みっつ…未来を輝かせる為にッ!!」

 

 

 

 

 

「「「退治てくれよう!!深海棲艦!!」」」

 

 

 

 

 

「ぬおおおおッ!!」

ヒッパーが棲姫をアッパーでカチ上げるッ!!

 

ドゴッ…

『ぐっぎ!!』

 

 

長門が一気に飛び上がって追い討ちをかける!

『がっ!!』

 

 

「そらよッ!!」

アーロイがリ級を棲姫の着地点まで蹴り飛ばす。

 

ぶつかり合う2人。

 

 

 

 

 

 

 

『このッ!』

『武器もないくせー…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「主砲…展開」

 

 

 

長門主砲が

ヒッパーの魚雷が

アーロイの艦爆が

 

 

 

 

「…いつ…非武装だと言った?」

 

 

 

 

「貴様らなど素手でも十分だが…」

 

 

「貴様らは天使を傷つけた…」

 

 

「チリ一つ残さんッ!!」

 

 

 

 

 

「「「卯月ッ!!いつでも行けるぞおおお!!」」」

 

 

 

 

 

 

「うてえええ!!!」

 

卯月は叫んだ。

もう立ち上がる力も無い。

それでも叫んだ。

 

 

 

 

 

 

「「「おおおおおお!!!」」」

 

3人から攻撃が放たれた。

 

 

 

『クソッ!なんだよ!あいつら!!』

『うわぁぁあ!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

ズドドオオオオオン!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーちゃん!うーちゃん!!」

ナガモンに抱えられた卯月がうづきの前にやって来た。

 

「うづき……逃げなきゃダメぴょん…」

 

「…ごめんね…ありがとう…守ってくれて…」

「街も…店も…」

「見てたよ…必死に食らいついて街を守ってくれたの…」

 

 

卯月はグッと親指を立てて言う。

「それが…うーちゃん達ぴょん…」

 

 

ナガモンに向かっても親指を立てる。

ナガモン達はうんと頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

「では…このヒーローを鎮守府に送ろう…」

 

 

傷だらけのヒーローは抱えられながら帰路に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日。

 

 

街の花屋には…

卯の花のマークが付けられた。

 

「あ!お姉ちゃん!これなに?」

 

「コレはねえ…秘密の証なのよ?」

 

 

 

 

 

 

「あ!卯月お姉ちゃん!」

 

「この前!敵が来てたらしいよ!でも!何かヒーローがやっつけたらしいよ!」

「卯月お姉ちゃん知らない!?」

 

 

 

「…うーちゃんがやっつけたぴょん!!」

 

「うそおお!?!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…長門…蒼ヒッパー…桜アークロイヤル」

「そ、その…あ……ありがとう…ぴょん」

 

 

 

「はぁう…何だ…そそそそその照れた…言い方は」

 

「可愛いッ可愛すぎる!」

 

「……(轟沈)」

 

 

「お礼に…間宮のパフェ…おごるぴょん」

 

 

 

 

「ふふっ…お礼?何のことかな?卯月…私達は何も知らないぞ?その…ナガモンとか言うカッコいいヒーローの事は知らんぞ?」

 

「…ほぼ言ってるぴょん…」

「でも……なら…暇なら一緒にパフェ食べに行くぴょん」

 

「そう言う事なら喜んで…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや?珍しいのね?」

笑顔でパフェを出す間宮。

その席には卯月と奇妙な3人組が笑顔でパフェを食べていたとか…。

 

 

 

そして…その時にあの特撮の話がでたとか…なんとか…。

 

 

 





前日譚…みたいなの
掘り下げですねえ


少しでもお楽しみ頂けたら幸いです!

コメントお待ちしてます!


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305話 明石と1日夫婦 ①

「………」

 

「おはようございます。ご飯出来てますよ?」

 

「あ、うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行ってきます」

 

「行ってらっしゃい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おざーす」

 

「おはようござまーす」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様したー」

 

「したー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

「お帰りなさい!お風呂沸いてますよ?」

 

「ありがとう〜」

 

 

 

 

 

 

 

「出た?ご飯出来てますよ」

 

 

「おー!いただきまーす」

 

「はーい」

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「・…?」

 

 

 

「どゆこと!?」

 

「!?」ビクッ

 

「え!?何!?逆に新鮮なんですけど!この導入は!?」

 

 

 

 

「あ、あなた?」

慌てふためく嫁(仮)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「迅鯨ッ!!これは一体何!?」

 

「何って…肉じゃがですけど…気分じゃなかった?」

 

「いや、これは美味しい」

「じゃなくて!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あなた?」

 

「整理させて欲しい!変人だとか狂ったとか思われても構わないッ」

「君は!?」

 

「え!?」

 

「名前と所属と…個人情報を!!」

 

「え!?あ、あの!?」

 

「ぷりーず!!」

 

「…神崎…迅鯨ですよ?所属……?えと…あなたのお嫁さんよ?」

 

 

 

!?!?!?

頭を捻る俺。

わからん。全くわからない!

 

 

 

 

 

「…さっきからおかしいわよ?」

 

 

「もしかして他の女と勘違いしてる?」

 

 

「ふぁっ!?」

 

「…誰?誰と勘違いしてるの?」

すちゃりと包丁を取り出してハイライトがフライアウェイした目でこちらを見てくる。

 

 

「いやいやいやいや!待って!秋姉さん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰よ…秋姉さんって…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え"っ"」

 

無論、秋姉さんとは…秋穂とはアンタの事だろう!?

 

 

 

 

 

 

「…ひどいよ…救くん」

 

「え?」

 

「私の何がダメなの?」

 

「は!?」

 

「好きって言ったのに……」

「好きって言ってくれたのにいいいいい!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てーとくー?」

 

「うわぁぁあ!!迅鯨いいい!?………って明石!?」

 

「アレはだめですよー…修羅場待ったなしですって」

 

「……ハッ」

 

 

 

 

ここは西波島鎮守府の工廠。

日々、艤装のメンテナンスや武器の作成等忙しく稼働している。

 

最近では…桜明石や桜時雨がショップの経営も手伝ってくれるので割と楽になってきたとか…。

 

 

先程までのやり取りは、救と迅鯨が明石の新型VRゲームで遊んでいたものである。

 

仮想現実…にしてはリアルすぎる内容だったと思う…。

 

 

 

にしてもリアルなゲーm「秋姉さんって誰よッ!!」

 

と、胸ぐらを掴んでブンブンと揺らしてくるじんげい。

 

「アンタだよ…迅鯨…」

 

「うーん…もっと改良しなくちゃね」

 

「リアル過ぎて既に怖いわ!」

 

「そう?でも楽しくない?ここから動かなくても…好きなとこいけるのよ?」

そう言って何かを書き込む彼女は輝いていた。

 

 

 

元気ハツラツ!

研究…もとい整備、開発に関しては明石の右に出る者は居ないだろう。

ぶっちゃけ他の鎮守府からの見学明石…夕張も少なくないし、何ならスカウトすらも来る。

だが、その度に「ここが好きなので!」と断っている。

 

 

 

 

「またスカウト…しつこいなあ…私はここを動くつもりなんかないってーの!」

 

「本当にー?」

 

「提督は私が居なくなったら…寂しいでしょ?」

 

「明石は?」

 

「秘密」

 

なんて馬鹿なやり取りもするくらい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ明石達が来る頃かな?」

 

「そうですね」

なんて会話を桜ベルファストや迅鯨とやっていると…

 

 

 

 

 

「早く来てよ…明石ぃ!明石は…明日から提督との1日一緒なんだから…夜から居るでしょ?」

 

 

「待って待って!心の準備がッ!!」

 

 

「ご飯も一緒に食べるんでしょお!?」

「ずっと楽しみにしてたじゃない……抵抗するなー!」

 

「2人き…り!?うひゃあ…」

 

「何今更緊張してんのよー!」

 

 

 

 

 

 

 

「…誰か外に居るのでしょうか?」

なんて迅鯨が言う。

なるほど、確かに誰かがやりとりをしてるらしい…内容までは聞こえないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほら!提督待ってるんだから…執務室に入って!

 

ガチャ!とドアが開いて夕張に押し込められるように明石が入ってくる。

 

 

 

 

 

「え…あ、えと…」

「よろしくお願いします…」

 

そこには顔を赤らめてカチコチの明石が立っていた。

 

 

「!?!?」

迅鯨達が驚いている。

 

「明石?」

救が呼びかける。

 

「……はい」

チラリと目線を逸らして彼女は返事をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…可愛い…」

 

「ほえ!?」

思わず漏れた言葉に明石はギョッとし、迅鯨達は複雑そうな顔でこちらを見て来る。

 

 

 

 

普段の明石の感じからすると考えられない。

ヒャッハー!組ではないが…割とハツラツとした方なので、ここまで緊張してるのも珍しい。

 

 

 

 

 

 

 

そう、明石は…

工廠から一度出て提督に会うと…乙女チックになるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…さて、迅鯨様、私達は退散致しましょう」

 

「…仕方ないね。お二人さん、ごゆっくりね」

 

 

 

「え!?か、帰るの!?」

 

「帰るの…?って…明石ちゃん…2人きりの方がいいでしょ?」

 

そう答えられて、はう…と更に小さくなる明石。

クスクスと笑いながら2人はごゆっくり〜と帰って行く。

 

 

 

 

 

 

 

「あ…あはは、2人になりましたね!て、提督…」

ここまで緊張が伝わる事はあるものか?

言葉遣いも変わるほどに緊張してるなんて…?

 

 

「そうだなあ」

「緊張してる?明石」

 

「そ、そそそそんなことあるわけにゃ………緊張してるよ!」

「だって…初めて…なんだもの…」

 

顔を手で隠しながらクネクネする明石は物凄く新鮮である。

 

 

「明石、おいで!」

と、両手を広げてみる。

我ながら…なかなか鬼畜である。

 

「え!?え、ええええ!?」

「そ、それは…ぎゅっ…ってしてくれる…的な?」

 

「おう」

 

「だ、だだだダメ!手も汚れてるし…汗も…油の匂いもするし!」

 

 

 

 

「気にしない」

彼は胸の前で握り込む私の手を握った。

 

「いつもこの手に助けてもらってるんだ」

と、言いながら彼は私を抱き締めてくれた。

 

 

 

 

それは…暖かくて…

緊張の糸がプツリと切れて大破、気絶するには丁度良かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今の音は!?––––って!?明石様!?」

 

「ごめん…可愛くてつい……」

 

「ご主人様……まったく…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ…!!」

気付いたら入渠中だった……。

 

 

ううーー!

恥ずかしい……そして悔しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

入渠を終えてもう一度彼の部屋に行く。

糸が切れたお陰か…さっきよりは普通に居られる。

 

 

「…ん、明石」

 

「…あ…」

 

「ごめんな?いじめ過ぎた」

 

「う……私も恥ずかし……です」

 

 

 

お詫びに…と彼が夕飯を作ってくれたらしい。

オムライスを作ってくれていた。

 

 

「2人で食べようか」

 

「うん」

 

 

 

 

 

「いただきます」

 

「いただきます」

 

 

 

 

 

あ…私の好きな…タンポポオムライス…

ケチャップ少なめのバターライスに…デミソース。

 

彼は笑顔で語りかける。

「コレが1番好きなんだろう?」

 

「……うん」

こんな事まで憶えてくれるなんて…

本当に…嬉しいなあ。

ちゃんと伝えないと…。

 

 

「ありがとう…提督」

「……本当に嬉しい」

 

 

 

「あ…あの…ごめんね?」

 

「うん?」

 

「どうも…工廠から出て…あなたの前に出ると…恥ずかしくて」

「本当は凄く嬉しくて嬉しくて仕方ないんだよ?」

「あなたと2人きりで居られると思うだけで物凄く幸せなの…このオムライスも…」

 

 

目の前に居るのは…

いつも油まみれで仕事する明石でなく、

1人の…女の子だった。

好きな人の前では照れて…恥ずかしがって

美味しそうに、幸せそうに過ごす

その姿を見られるのが嬉しい。

 

 

「明石、あーーん」

と、スプーンを明石の前に持って行く。

 

「〜〜ッ!!!あ、あーーん」

ケチャップ並みに赤い明石にその一口を持って行く。

 

 

「ん……おいし…」

「はい…あ、あなたも…あーーん」

 

 

 

「ん、明石から食べさせてもらうと更に美味しいな」

 

 

「…もう」

 

 

 

 

 

そんなやりとりを楽しむ2人だった…。

 

 

 




甘めの…はず


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306話 明石と1日夫婦 ②

「…仕方ないんだ……」

「こうするのが…1番なんだ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう…提督。ごはんできてるよ?」

彼女の優しい声で目を覚ます。

というか…いい加減に起こされるのはやめないと……。

 

 

「へえ…コレ全部明石が?すごいな」

目の前には…肉じゃがに味噌汁にサバの塩焼きとごはん。

 

どれも見た目も完璧な料理が…。

 

 

 

「うん…………この機械でね!!」

明石は饒舌に話す。

 

「…この箱みたいなので?」

 

 

「見て見て!この機械!材料ドーン!で全部お任せ!」

「炊飯やパン焼きから煮物から揚げ物までぜーーんぶお任せッ!お手入れも簡単な仕様です!!」

「家庭で料理が苦手な人でも…プロも顔負けの料理が……」

 

 

 

「…ごめんなさい……」

 

自分で言ってて悲しくなった。

 

 

 

私は…料理ができない。

頑張ってみたけど…到底難しかった。

 

だから得意な機械に頼ったんだけど…

それは…自分の手ではこのレベルは出来ないことを更に証明した結果になった。

 

 

「と、とりあえず食べよう?」

と、2人での朝食が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

確かに美味しい。

でも…昨日たべたオムライスのような…何かが足りない。

 

 

「美味しいよ」

 

「……ありがとう」

 

美味しいよの一言が嬉しい筈なのに

 

…少し惨めになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督と街へ出かける。

手?恥ずかしくて繋げないよう…。

 

 

 

ここはとある街の修理工場。

前を通ったら…「あ!明石に提督さん!」と声をかけられた。

 

 

「「あ……」」

明石とその子が対面する。

 

 

 

 

 

 

 

明石と明石。

 

 

 

といっても彼女は退役した「あかし」である。

髪は黒く染め上げられており、ぱっと見明石だと分かる人は居ないだろう。

 

彼女も救が退役後に斡旋した娘の1人だ。

 

 

『…戦いの手入れはもう……』

 

と、泣いていた彼女は今や自動車の修理工だ。

 

 

「…あ、明石よね?」

と、明石が驚いた表情…ではなく

「久しぶりだねえ!!」

と再会を喜んだ。

以前から交流のある明石達だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「で?あかしは今は何やってるの?」

 

「これバラしてるんだよ」

と、大型の何かしらの何かを指差す。

へぇ……と見てると明石が言う。

 

「って!コレは1人じゃ無理だよ!最低でもあと…ー–〜くらいまでは2〜3人でしないと!」

 

確かに言われてみればそうだろう…か?

 

 

「あはは!大丈夫だってー!」

なんてヘラヘラしてるあかし。

 

 

明石は心配そうに見つめる。

 

そんな明石に俺は声をかけた。

「少し手伝うか?」

明石は顔を輝かせて、あかしはいやいやいや!と顔を横に振る。

 

「デート中でしょ!?ダメだって!!」

 

そんな遠慮するあかしに俺は言う。

「明石は君の力になりたいんだよ」

 

「……服汚れるよ?」

 

「平気」

 

 

 

そう言って明石は上着を脱いで腕捲りをしてあかしを手伝う。

 

いつもの明石の姿だ。

 

 

 

カチャカチャと的確にバラして行く。

 

 

「あ…コレ…」

明石がいつも通り、夕張に外した部品を渡すように差し出してきた。

 

「ほい、受け取った」

 

「え!?」

明石が外した部品を受け取った。

手が汚れた。

 

 

 

「あっ…ごめんなさい…!!」

明石の手は油に塗れていた。

 

しまった!!

夕張も居ないんだ!私…いつものくせで!!

ああっ!提督の手が…

 

 

 

 

 

「ごめんなさい!提督!?提督の手が汚れ「だから何だ?」

 

「だから汚れてしま「だからどうなる?」

 

えっ!?えっ!?と焦る明石達に

「俺も…手伝うよ」

と言い、カチャカチャと一緒に作業する。

 

 

 

「…提督…」

不安そうに彼の方を見る…。

 

「楽しいな!こう言うの」

 

 

例え服が汚れようと、顔に汚れが付いても…彼は彼女に笑顔を向けるのをやめなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「…提督…汚れましたよ?」

 

「君とお揃いだから平気さ」

 

 

 

 

 

 

「こら!そこ!…イチャコラするなー!」

 

 

 

いつの日だったか…

桜ベルファストが私達の汚れた手を取ってくれた。

提督はいつでも私のこの手を引いてくれる。

例え手が、手袋が汚れても…。

そして、今日はついに全身がオイルに塗れた。

なのに彼はケラケラと笑って居る。

 

 

「…そう言う人…だもんね」

 

 

 

 

 

 

 

 

『オイルかけた飯が美味い?本当?なら食べるよ?』

 

 

『あ?制服が汚れた?別に…制服が綺麗だから偉いわけじゃ無いだろう?』

 

『椅子に踏ん反り返って座って出来たズボンのシワより…君達と一緒に居てできたシワや傷の方が…俺は立派だと思うね』

 

 

 

 

そう言ってくれた事を思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある程度の作業が終わってひと段落した。

何だろう…この感じ…

 

 

 

あかしは業者に連絡するとかで離席した。

 

 

 

 

 

 

 

「汚れましたねえ…すみません…提督…」

 

彼は言う。

 

「あん?見ろよこの服…綺麗すぎるだろ?」

「だから丁度…汚したいと思ってた所だ」

 

「なら…コレを見たら思い出すんだよ」

「あー…明石と車いじったな…って」

 

「使い古して…洗濯しまくって薄まったころには君と別の思い出ができてるんだって」

 

 

「………」

 

そう言ってくれるから好きなんだ。

 

いや…その言葉だけではないけれども…。

ここまで寄り添ってくれる人は…人生の中で何人見つけられるだろうか?

 

きっと…

「私はもう!機械いじり嫌です!一緒にサボってください!」

って言ったら…「よしわかった!休もう!俺も執務嫌だ!」

って…間宮とかに連れて行ってくれるんだろうなあ…。

 

だからこそ…

そんな人だと分かるからこそ…頑張れるんだよ…ね。

 

 

 

 

 

 

「…提督?」

 

「ん?」

 

 

 

 

「えいっ」

私は…彼の顔にオイルをつけた。

 

 

「はぁぁん!?」

 

「えへへ…」

 

 

 

「このっ!」

彼も負けじと…私にオイルをつけた。

 

「ええ!?女の子にそう言うことします!?」

 

「上司にそう言うことする奴が言うかなぁ!?」

 

「あ!そう言う時だけ上司振るんですか!?」

 

「そーだもん!副元帥なんだもん!偉いんだもん!!」

顔を寄せ合って言い合う。

 

 

 

そして笑う。

 

 

 

 

「もー…提督くらいですよ?こんなに…汚れて…」

 

「汚した奴が…言うなよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そっと私は…彼にキスをする。

 

「ここでぇ?」

 

「私らしいじゃないですか……ね?」

 

仕方ないなあ…と彼もしてくれる。

 

 

 

 

そして…

「なら……コレ…」

 

彼は手をクリーナーで拭いてからソレを取り出した。

 

 

「ここでですかぁ!?」

 

「君らしい…んだろう?」

 

 

「…プッ……そうですね」

 

 

 

 

「受け取ってくれるかな?」

 

 

「…はい、謹んで…喜んでお受けします」

そっと左手の薬指に…はまる指輪。

 

 

「…コレが……指輪……綺麗…えへへ」

「…汚れても綺麗にします!絶対に外しません」

「…何もかもが…傷も汚れも…ぜーんぶが…思い出になりますから」

 

「料理も苦手で…馬鹿な私ですけど……いいんですか?」

 

「料理が…とか、片付けが…とか関係ないよ。俺は君が大好きだから」

 

 

 

 

 

その言葉にグッときてしまった。

ダメだ…言葉が止まらない!

「大好きです!愛しています!

 

 

 

「ありがとうございます!提督!」

「愛しています!」

「あなただけを…ずっと…ずっと!!愛してます!」

 

 

 

 

 

「俺も愛してるさ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は彼に飛び込む。

汚れてもいいって言ってくれたしね?

思いきり抱き着いて…キスして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コホン……お取込み中…ごめんね?」

 

 

「あ、あかし…」

 

「人の働く工場でプロポーズとかイチャコラしないでもらえるかしら?………羨ましいから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ…

そうか…

わかった…。

 

あの料理になくて…

機械にあって…提督のオムライスにもあったもの…

 

 

 

 

 

 

…思い…とか…愛情なんだ。

 

 

 

 

 

「これじゃあ…レストランとかは無理かなあ?」

と言う提督に私は言った。

 

 

「…夕飯は私が作るよ!」

 

「…明石?」

 

「もう一度…作らせて!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は帰宅後にキッチンに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

完璧に作るから美味しい…だけじゃないんだ。

料理は愛情…

うん…そうなんだ。

 

その人を思ってやるから…美味しいんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

例え綺麗に野菜が切れなくても

例え…分量通りにうまくいかなくても…

 

私は……私の手で作ったご飯を愛する人に食べて欲しい!!

 

それだけを考えて私は苦手なキッチンに向かう。

「…ッ!!」

指を切った。   だから何だ!

 

火傷した…だからどうした!!

 

少しでも美味しく

あなたの笑顔の為に

あなたから聞きたい

 

 

笑顔で「美味しい」の一言を聞きたい

 

 

ただ…その為に!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督…お待たせ」

 

 

お盆に乗せたご飯を彼の前に置く。

 

 

「ん?ご飯」

「うお、いい匂いだ…」

 

 

メニューは朝と同じにした。

崩れかけのジャガイモの肉じゃがと…焦げかけたサバと…。

 

朝のが星3だとしたら…星1すら貰えないレベル。

 

涙目だけど…私は出した。

堂々と…自信を持って…レが私なの…本当の私を見て!!

 

 

 

 

 

「いただきます」

 

魚はコゲでジャリと言っていた。

それでも、彼は黙って食べている。

 

 

 

そして箸を置いて彼は言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「明石?」

 

 

 

 

 

 

「うん?」

ドキドキする…ダメなのかなあ……

愛情はたっぷり込めたんだけどなあ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最高に美味しい」

 

 

 

「…ッ」

ダメだ。

 

 

「そ、そう?機械の方が上手く作れるよ?」

私は…何でこんなこと…言っちゃうのか!!

 

 

 

 

「機会はすごいよ?確かに」

「でも…あの料理には無い…君の一生懸命さが…あれ以上の愛情がこの料理には入ってるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見た目悪いのに?」

 

「…」

 

彼は言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「覚えてないか?」

「綺麗な服だから偉いわけじゃ無い」

 

「……ッ!」

 

「例え…油に塗れても…戦場の傷も…普段の何気ない汚れも…含めて偉いと思うんだ」

「なぜなら…そこには君達との思い出があるから」

 

 

 

 

「…見た目が綺麗な料理が最高に美味しいわけではないよ」

「例え少し焦げていようとも…野菜がうまく切れてなくても…」

 

 

 

「……ッ…ッ!」

ジワリじわりと目の前が熱くなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「君が一生懸命に俺のことを考えて作ってくれる料理の方が素晴らしいに決まっている」

 

 

 

 

 

 

「高級レストランの料理よりも…俺は君の…この愛情たっぷりのご飯が食べたいね」

 

 

 

「手を切っても…火傷しても頑張って作ってくれたこの料理に敵うものなんかあるもんか」

 

「……でも…」

 

「馬鹿にする奴なんか居るものか!居たら…いや!俺が馬鹿になんてさせない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…卑怯だよお」

「そんな言葉…掛けられたら…嬉しくて……泣けて来るよう」

 

グスッ…と涙が止まらない。

 

 

 

初めて…ではないけれども

機会いじり以外で認められた…。

ううん…彼はそんなのすら求めてないだろう…私が勝手にそう思ってるだけだろう。

 

でもて嬉しかった。

とてつもなく…この上なく嬉しかった。

 

 

美味しい…

その一言が…こんなにも人を幸せにするなんて…。

 

 

 

 

思わず嬉しくて彼に飛びついた。

 

 

「いつも…あなたは欲しい言葉をかけてくれる…」

「ありがとう…提督」

 

「大好き…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……明石?さすがに離れないとご飯が……」

 

「今日はこのまま離れない」

 

 

明石はずっと離れなかったとか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、明石ー、夕張ー!昼どうする?」

 

 

「あ!提督!いらっしゃい!」

「ほら…明石…来たよ?」

 

 

「提督!あ、あの…お昼はお弁当作ってきたから…一緒に食べよ?」

おずおずと弁当箱を二つ出す明石。

 

 

「お、本当!?やった!食べる食べる」

 

 

「実は…私も!」

夕張も二つ…明石はズルーイ!と言いながらも笑顔で言う。

 

「おかず交換しながら食べよー!」

 

 

 

 

 

少し…工廠が賑やかになったとか…。

 

 





あまーーめの
どうでしょう?え?足りない?

三越…金剛の財布…
財布新調してしまったんだよねえ…くぅ…


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307話 あの空の向こう側 ① プロローグ

かなり…かなーーり原作とは違うオリジナルな設定を加えたシナリオです。
ご注意下さい。




果てしなく続く空の向こうは…海だった。










もっと早く君が居たならば…

僕はこうなっていなかったのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殺してやる…

 

 

お前をッ!!

殺してやるッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……閣下殿」

 

「やめてくんない?!そういうの!」

「幸さんの方が先輩なんですからね!?」

 

「やめてくださいよぉ〜部下にさん付けは〜」

 

 

目の前にいるのは 仙崎 幸(せんざき こう)

この世界に深海棲艦が生まれて…海が奪われて、暫くしてから軍に入隊。

 

戦果自体は可もなく不可もない…くらいのものであるが、不思議と人を寄せ付けるタイプ。

艦娘との関係も良好である。

大ちゃんの跡を継いで遠くの鎮守府からブインに転属してきた…らしい。

今は暇をしてるらしく、こっちに遊びにきた…らしく、麗ちゃんと3人でお茶をしていた。

 

 

彼は翔鶴と霧島を連れていた。

こちらは金剛と鳳翔、麗は武蔵だ。

ベルファスト達には早めのお昼を取ってもらっている。

 

 

「やっぱりここの紅茶が1番美味しいですよ」

 

「デショー!?私のオススメデース♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?やっぱり暇なの?」

 

 

 

「実はねえ…少し相談というか…お願いと言うか…があってね?」

ニヘラと幸が言う。

 

 

「ふんふん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕はずっとね…楽園を作りたかったんだ」

「誰も疎まれなくて…誰も苦しまない世界が…」

「まもちゃんは…この空の向こうは宇宙…?て言ったよね」

 

 

「見てみたいなあ…」

「でも…違うから…そんなものなくて…またきっと絶望しかないから…」

 

 

 

ブツブツと何かを語る幸。

その不穏な雰囲気に押されそうになった。

 

 

 

 

 

「アノ…?」

金剛が不思議そうに問いかける。

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり…この世界…壊すね?」

「僕は…ソラに行くんだ」

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

轟音と共に彼等の後ろ…執務室は半分吹き飛んだ。

 

 

 

 

今までは艦娘…翔鶴と霧島であった者は深海棲艦へと姿を変えていた。

 

 

戦艦棲姫…?

彼女等ら麗達を背後から捕らえる。

 

「れ、れ「暴れるなよ?」

冷たい声だった。

武器は麗、金剛、鳳翔に突きつけられていた。

 

 

 

 

 

 

「敵襲…じゃないんだよな?」

 

 

 

 

「君も正義だ…」

「でも僕達だって正義で…僕達には君は悪なんだ」

 

「何を言って…全く意味が」

「馬鹿な真似はやめろ!!」

 

 

 

 

 

 

「この子達は預かるよ」

 

 

「救君ッ!!」

 

 

何だ!?と艦娘達が入って来て状況を飲み込めずにいた。

 

 

 

 

 

 

「動かないでね?」

「皆の大切な人達が…死んじゃうよ」

 

 

「ねえ?まもちゃん。君もこっち側の人のはずなんだ…だからおいでよ」

 

 

「意味がわからん!何を…」

 

 

 

「まあいいや…時間をあげるから考えてみて……待ってる」

 

 

 

 

「麗ッ!金剛!鳳翔ッ!!」

 

「救君!」

「ダーリン!」

「あなたッ」

 

 

 

 

 

 

彼等はそう言って姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督よ!私達は麗を追う!お前達は手当を!…リシュリュー!早く追いかけろッ!!」

 

「どこかわからないわよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

混乱を極める鎮守府。

 

 

ただ一つ確かなのは

とある男の裏切りと…大切な人達が攫われた事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この空の向こうは何があるのかな?」

 

「え?宇宙だろ?」

 

 

「……宇宙?」

 

 

 

それがファーストコンタクトだった。

 

 

 

「…どうも…仙崎…幸です:」

 

 

 

 

 

 

 

 

 





導入です


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308話 あの空の向こう側 ② ブイン近海域で

「こいつはな、俺の後輩で…今はブインを任せてあるんだ」

 

仙崎幸との出会いはそんな感じで始まった。

 

 

本当に普通。

大きな戦果を上げるわけでは無いが、住民や艦娘との関係は良好だったという。

 

ちょこちょこ遊びに来たが決まって

「この空の続く先には何があるかなあ」と聞いてきた。

 

 

「海の向こう?…島があって…海があって……島があって」

 

「……なら上は?」

 

「……上は…宇宙だろー」

 

「宇宙?」

 

「え?知らない?宇宙」

「空気もない…ほぼ無限に続く……うーーーん」

 

「人は住めないの?」

 

「ん…まあ…ほぼ不可能かな」

「住める環境も…あるかもだけどね」

 

「……宇宙…まもちゃんは行ったことあるの?」

 

「…ないないないない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、まもちゃんは…死んだんだよね」

「守った人達に殺されるって…どんなものなの?」

 

「悲しいよね」

「艦娘の皆も同じだと思う」

 

「……」

 

「この戦いが終わってさ…皆が迫害されたりしなければいいなって…思うよ」

 

「何でそう思うの?」

 

「1番の武力を持ってる事になるからね」

「それを恐れる人は出てくると思うんだ…」

 

 

「……そうだよね」

「でも、そうなったら…皆を集めていっそのこと、国でも作ればいいんじゃないかな?」

 

「それだと俺達が侵略者側になるよ」

 

 

 

そんな話をしていた。

彼は軍を裏切るような理由がない。

何故?という疑念は晴れる事はない。

 

 

 

「……しかし……まさか…彼も迫害された……いや、まさか…」

 

 

 

 

 

 

そこに榛名達が走ってやってくる。

 

「ダーリンさん!お姉様は無事なんですか!?何でお姉様が!!」

 

「鳳翔さんや麗ちゃんまで!!」

 

 

「今すぐブインに出撃許可を!!」

猛武蔵達も尋常じゃない程に焦って戸惑っている。

無理もない、提督が攫われたのだから。

 

 

「待て…!今、桜達がブインに向かっていて、もうすぐ連絡を…

 

と言ったところで通信が入る。

もちろん桜達からだった。

 

 

「あー…桜だ。今ブインについた……正確にはブインより離れたところだな…」

 

「麗達は!?敵は!?」

猛武蔵が捲し立てるように問い詰める。

待て待てと宥めてから桜に話しかける。

 

「…ってことは…()()()()()んだな?」

 

「ああ…やべえとしか言いようがない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「深海棲艦の鎮守府になってやがる…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「地元住民は!?」

 

「…いや、人っ子一人居ねえ…」

「俺は少なくとも1人の生存者にも、死者にも会ってない」

 

 

 

「……大ちゃん…」

 

「…わかってる。無闇に攻め込んだりしない……」

 

「一旦…そっちに帰r「無事に帰られるとでも?」

 

 

冷たい声だった。

2人を含めてバッと振り返る…とそこには霧島…らしき艦娘の姿があった。

霧島…らしきというのを説明すると、霧島は呉にも舞鶴鎮守府にも存在する。

 

 

だが…こんなに白い霧島は居ない。

そう…本当に深海棲艦のような……。

 

 

「……姉貴…ここは俺がッ!!……大和ォ!!」

 

「はい!!」

グッと前に出る呉大和。

退避に移行した桜達。

 

 

『…さすがは姉弟……見捨てて逃げる判断も早い』

 

「……いや!虎はにげないッ!」

 

『おや?挑発に乗るんですか?舞鶴の虎は……まあ…いいですよ。2人の通信を介して聞いてるのでしょう?神崎…。あの人はここには居ない』

『………深い海のあるところ…そこで待つ…です』

 

「…深い海…?」

 

『さあ…ヒントはこれまでです!……私達の恨みの炎…その身を持って

知るがいい!!』

 

 

「大和ッ!!主砲––––––

 

主砲を展開する大和達の足に何かが絡みついた。

「なっ!?こ…これは」

「しまっ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大和!!川内ッ!!皆!しっかりしろ!!」

将大や桜の叫び声が響く。

 

周囲にはグッタリと倒れ込む呉艦娘達。

 

 

 

 

 

 

『…その程度で世界が守れるんですか?』

『その先にある悲しみも……』

 

『殺す価値すらない……』

 

 

 

「貴様ッ…!!」

腰にある銃でキリシマを撃つ桜。

 

が…その弾を桜に弾き返す。

「ぐっ……!?」

 

弾は桜の腹部に突き刺さる。

 

 

 

 

「姉貴ッ!!」

同じく銃を構える将大。

 

 

を…静止した桜。

「待て!俺と同じ目に会うだけだ…」

 

「……クソッ…」

 

 

『負け犬らしく帰りなさい?』

 

 

ケラケラとキリシマの笑い声が響いた。

 

 

「ぐっ……」

 

「姉貴ッ!姉貴ッ!!」

支える手が真っ赤に染まる。

 

「大和ッ!動けるか!!」

 

「…は、はい!なんとか!」

 

 

こんな屈辱が有るだろうか。

おめおめと敵前から逃亡するしかないなんて。

 

全く歯が立たないなんて!

姉がこんなになるなんて!

 

 

何とか一矢報いたい気持ちを無理矢理に抑えつけて将大は撤退命令を下した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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309話 あの空の向こう側 ③ 崩れる平穏 





「担架ッ!!急いで!!」

 

「手術準備できてる!?輸血準備!!!」

 

桜の到着に合わせて緊急手術が行われる。

弾は抜けていたが、出血が酷い。

 

 

 

 

 

「桜ッ!大丈夫か!!」

 

「閣下!お下がり下さいッ!私達がきっと助けますから!!」

 

到着した救が彼女に声を掛けようとするが、看護師に止められてしまう。

 

「救ちゃん…」

 

「大ちゃん……」

 

「姉貴も俺も大丈夫だよ」

将大も治療の為に医務室へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「閣下!!こちらへ!!」

と、オペ中の筈の医師に呼ばれる。

不思議に思いながら着いて行くと桜がそこに居た。

 

「……救」

 

「桜?大丈夫なのか?」

 

「………怒りに流されるな」

 

「何を言って…」

「いや…お前は…誰だ!?」

 

「奴は………に居る」

「でも…間違えると…………に…」

 

 

ドサリと倒れた。

ように見えた。

 

 

 

 

 

 

 

ピー…と言う音だけが手術室に木霊していた。

 

 

「……桜?」

 

 

「電気ショックの用意ッ!!」

「…閣下!!何故ここに…!!」

 

 

「……え?」

 

 

 

 

 

 

わからない。

何が起きているかわからない。

 

一つ分かったのは…桜が死んだ事。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姉貴ッ!!姉貴……」

「ばかやろぉ…何で逃げなかったんだよ……」

 

崩れ落ちる将大と舞鶴メンバー。

手術室前は地獄とも言いたい光景が広がっていた。

 

「姉貴……すまねえ…俺が弱いばかりに」

 

「俺こそ…何もできなくて…ごめん」

 

「………覚悟はしていたけど……キツいな」

 

「…霧島1人に……2人が…」

 

 

 

 

「いや…違う…アレは榛名でした!!」

と、舞鶴の比叡が叫んだ。

 

いや、アレは霧島だったろ?と言う声に涙ながらに言い返した。

「いいえ!私が姉妹艦を見間違うはずがありません!アレは榛名です!」

 

 

「…私は…金剛お姉様を感じたのだけれど……」

呉の霧島が意見を出した。

 

 

「……どういう……事なんだ」

 

「…どちらにしても……姉貴をしっかり弔ってやってくれ…救ちゃん」

 

「大ちゃんは?」

 

「…実家に報告しなきゃいけないから…」

 

「……変な気は起こすなよ」

 

「………ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その次の日に将大は死んだ。

 

厳密に言うと戦死した。

舞鶴と呉の全力を以ってして、ブインに向かって行った。

 

「…大ちゃん!戻れ!!命令だッ!!」

 

「聞けない」

 

「何で!!」

 

「家族を殺されるなんて…耐えられるもんか」

 

「でも…このままじゃ!!」

 

「分かってる!!…でも…俺は行く!!」

 

「せめて俺が行くまで待機をッ!!」

 

 

 

 

 

 

「…救ちゃん」

「あの時、俺も姉貴も負けるなんて思ってなかった」

 

「海から俺達を何かが掴んだんだ」

 

「深海棲艦か?!」

 

「いいや…違う」

「なんというか…得体の知れない何か…」

「……辛くて冷たい何か」

 

 

「大ちゃん…?」

 

「…青葉に記録を頼んである。もしもの時は…頼んだ」

 

ブツッと通信が切れた。

 

「通信…切れました」

大淀が首を横に振る。

 

「繋ぎ直せッ!!」

 

しかし、何度呼びかけても繋がることはなかった。

 

「おいッ!!」

「クソッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこから半日もしない間に呉の青葉が泣きながら記録を持参した。

 

 

そこに映って居たのは…

黒い何かが皆を絡めとるところだった。

 

「す、すみません…私も必死だったので……」

 

 

 

『キャハハハ!!沈めッ!沈めッ!!』

『深い水底から…暗い空に墜ちろッ!!』

 

不思議なのは誰1人として抵抗出来ていないのだ。

なされるがままに撃たれ、食い破られ…爆破され…

 

とてもじゃないが直視できなかった。

 

 

 

 

「くっ…長門……大丈夫か…」

 

「あぁ…」

 

「主砲は…?」

 

「ダメ…だな……」

 

「攻撃方法は…ないか」

 

「いや…大きいのがある…」

 

「…………俺も一緒なら許可する」

 

「……優しいんだな?」

 

「……君と一緒なら……な」

 

 

 

 

 

「やめろ…」

思わず画面に齧り付くように…声を上げた。

 

 

将大がやろうとしていること…

 

 

 

 

 

長門は…艤装と残弾を爆発させようとしているのだ。

 

 

将大が画面の向こうの彼……つまり、青葉の方に向かって言った。

 

 

 

 

 

 

 

「救ちゃん…ごめん」

「やっぱ許せなかった」

 

 

「青葉…頼んだよ」

 

「いやっ!提督!!私も!私もッ!!」

 

 

「ダメだ!!!お前は…お前には重要な役を任せたんだ!!」

 

「…うぐっ……提督…ッ」

 

 

 

 

 

 

 

キリシマの方を見据える呉大和と将大。

 

『……何?』

 

呉長門は一気に距離を詰めてキリシマに掴みかかる。

 

「…キリシマ…いや!ハルナッ!!」

 

「…姉貴の借り…返させてもらうぜ」

 

 

『…まさか……貴様ッ!!ヤメロ!!やめろおおお!!』

暴れるハルナ…を大和は離さない。

 

ズドン!

ズドン!!

例え撃たれようとも…雑魚に齧り付かれようとも…

 

 

 

 

 

そして…

 

 

 

 

「すまんね…長門」

 

「フッ…嫁冥利に尽きるぞ?」

 

「「愛してる」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドカァァァアン!!

 

 

 

 

青葉が吹き飛ばされるほどの爆発が起こった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ……ぁあ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後は

 

はあはあと言う恐らく呉青葉の息遣いと、彼女を逃がそうとする誰かの声が最後に聞こえて、画面は暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

「……終わり…です」

 

 

 

 

言葉が出なかった。

あの2人ですら…勝てない相手…。

 

 

 

「お願いです…私を解体してください…」

呉青葉がグスッと泣きながら解体を懇願する。

 

 

 

 

 

 

 

ぼうっと画面を見た。

真っ暗な画面がそこにある。

 

 

 

 

 

 

 

 

その時

 

 

 

「…信濃を探せ」

 

「深い…1番深い…お前の辿った道に答えはある」

 

 

 

「今のは…?」

 

「…?提督?どうしました?」

 

「いや!今の映像…」

 

「………記録は切れてますよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…さあ……どうする?まもちゃん」

 

 

「…将大先輩も死んだよ」

 

「……ッ!?」

 

 

 

 

 

いつの間にか執務室に幸が居た。

 

 

「……ね?どうする?」

 

「お前ッ!ふざけるな!」

「俺はお前の所になんか行かない!」

 

「僕は君の事…よく分かってるし、君は僕の気持ちがわかるはずなのに…」

 

 

 

 

「……絶望が足りないのかな」

縛られた3人が後ろから連れてこられた。

 

 

 

「……ッ!!」

その言葉が悪魔の囁きのように聞こえた

 

 

 

 

 

 

 

「……救君」

「………聞いちゃダメ」

 

「そうヨー…ダーリン」

 

「私達は…大丈夫だから」

 

 

 

「麗…!金剛ッ!!鳳翔っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嫌な予感がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うるさいなあ…今は僕達が喋ってるんだから…あ…そうか…うん、そうしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パン

 

乾いた音が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドサリと音を立てて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3人が頭から血を流して

 

 

 

 

 

倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麗…ちゃん?

 

 

 

「おい!麗ちゃん…!…麗ッ!!!」

 

 

 

「金剛ッ!!!鳳翔ォォォ!!」

 

 

 

 

 

 

彼の悲

痛な叫びは…

 

 

 

 

彼女に届くこと

 

は無かった。

 

どしゃりと崩れ落ち

 

た彼女

 

の手が…笑顔が彼に向けられることは2度と無かっ

 

た。

 

 

 

 

 

「……嘘ッ…」

錯乱する大淀達。

悲鳴をあげて叫ぶ呉青葉。

 

 

 

 

 

「大丈夫…ちゃんと…僕達が迎えるから」

 

 

「き…貴様ッ…何を…」

 

 

「さあ……仕上げよう?」

幸はニタリと笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ころすッ!!!」

「貴様だけは…ブッ殺すッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

バキン

 

何かが俺の中で砕けた。

 

 

 

 

「うわぁぁああッ!殺してやるッ!!貴様を絶対にいい!!」

 

 

 

 

 

怒り。

それはカラダの底の底の底の底の底の深いトコロから…

 

 

 

俺は…奴に飛びついて居た。

 

『幸様!!』

と…キリシマが俺を睨んでいた…が

「いいんだよ()()()()…これで始まるんだ」

 

 

「……魂の救済を……あの向こうへ…」

 

 

 

 

 

ナニヲ言ってるかワカラナイケド…

 

ぐっと力を込めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

待ってるよ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴキリ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気付いたら幸を殺していた。

満足そうに笑いを浮かべて死んでいる幸。

 

周りは…同じように憎しみに満ちた表情で…。

ハルナ…?に襲い掛かって居た。

 

 

 

爆発音が聞こえる。

 

 

 

敵が攻めてきたラシイ…

 

 

 

 

 

 

 

なにカヲ忘れテいる気がする。

 

 

何だろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん!」

 

 

「……き…ん!」

 

 

 

 

 

「指揮官ッ!指揮官!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

血溜まりの中に俺は居た。

 

無数に積み上げられた敵味方の死体の中に俺は居た。

 

 

 

慟哭と怨嗟の声が聞こえる中に俺は居た。

 

 

 

 

 

 

 

 



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310話 あの空の向こう側 ④ 世界を焼き尽くす程の…

「……ん!」

 

 

「……き…ん!」

 

 

 

 

 

「指揮官ッ!指揮官!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

血溜まりの中に俺は居た。

 

無数に積み上げられた敵味方の死体の中に俺は居た。

 

 

 

慟哭と怨嗟の声が聞こえる中に俺は居た。

 

 

 

髪の一部と目が変色した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官様…アイツを倒せば…深海棲艦はもう…二度と!!」

 

彼は手を挙げ…標的に向かって振り下ろした。

「…殲滅……殺せ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人類は海を取り戻した!!英雄の誕生だぁー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…やはりね…個人が武力を持つなんてはあり得んのだ」

「君達はね…強すぎたんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で私らが終わらなくちゃいけないの!?」

「ねえ!提督…答えてよ…」

 

「撃ちたくないよぉ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「〜〜がやられた!!クソッ!!ぶっ殺してやるッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で私達…こんなに頑張ったのに……なんで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官様?桜赤城のお側を離れないでくださいね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……生まれ変わったら…平和な世で会いましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?

ここは…

 

真っ暗な世界に俺は居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そっと誰かが俺を抱き締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着くが良い…指揮官」

「汝が怒りは当然だが…落ち着くが「落ち着いてられるかッ!!麗が!麗が!!皆が殺されたッ!!」

 

桜信濃の声を弾き飛ばして彼は激昂する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着くのだ!汝の道は…まだ!!」

 

 

「……!!」

 

 

 

「これが汝の求めた結果か!?」

 

「何を…」

 

頭の中は…轟々と燃え上がる炎が…。

各地から聞こえる悲鳴。

何故かコチラを向いて攻撃してくる人間。

 

「何だよ…コレは…この結果は…」

 

 

 

 

「否…汝の道は…まだ」

 

 

 

 

 

そうだ!信濃…桜信濃ッ!!

俺はお前に会うように…!!

 

 

「時間がない…妾もここに渡れたのは奇跡…」

 

「……と言う事は夢?」

 

「……夢ではない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「汝の至るやも知れぬ未来…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「此処はまだ…3人が攫われる少し前…。汝はあのハルナ達にこの世界に引き摺り込まれた」

 

 

「……此処は夢…有り得る…起こり得るかも知れない可能性の世界」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なら目覚めたらいいんだろ!?早く目覚めないと…麗達が!!」

 

「…そう言う簡単な話ではない」

「言ったであろう?可能性と」

 

「ここも、現実ではある…ある意味ではあるが…。同じように辿れば…今と同じ場所に辿り着く」

 

 

 

「因果が巡れば…桜殿は凶弾に倒れ…将大殿も……麗殿や金剛達も…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「桜信濃?」

 

「早く目覚めを…汝は………ーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官様ッ」

 

「お逃げください!ここは…この桜赤城が命に替えてもお守りー

 

 

 

 

 

 

ぐわん…と景色が変わる。

 

 

 

 

目の前には麗と幸と…何故かニヤリと笑うキリシマ達が居た。

 

 

 

 

 

2週目…ってやつか?

 

 

 

 

結果として…まず、やはり桜が死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は2度…皆を失い、幸を殺した。

 

 

 

俺は悲しみの果てに深海棲艦を皆殺しにした。

敵を全滅させた。

 

でも…結局、世界が敵になった。

 

 

 

 

 

 

 

「ふふっ…指揮官様と一緒なら…何が敵でも怖くは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……つまり今のこの状況は…夢と考えよう。

だが…これは起こりうる未来だと桜信濃は言った。

 

 

つまり、何か手を打たないと…確実に桜を始め皆が死ぬ。

 

 

しかし不可解なのは…何故俺に幸は殺されたのか…?

しかも皆を巻き添えにして…

()()()()()()()()()()()()()…のように!

 

 

その後の目的がある筈なんだ…

 

 

キリシマにコンゴウと呼びかけていた事…

艦娘が抵抗できない程の黒い何か…

 

まるで…あの時の海の怨念………

 

 

まさか…?

いや…だとしても幸は普通の人のはず…。

 

謎しかない…。

 

そして…奴の居所…深い海の…なんだったか…

 

 

 

ヒントは…桜信濃。

夢渡りのお陰で俺は今の状況に立って居られる。

 

 

もう一つは……

俺の辿った道…だったか

 

 

……道に奴が居るのか?

 

 

 

 

 

 

 

止められるのか?俺は…

 

 

いや…繰り返しても俺は辿り着く!絶対に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なかなかに我慢強い方だと思っていたが…

 

やはり繰り返しは…キツい。

 

やり直そうとして…変えようとして…も、またここにやってきてしまう。

 

 

 

 

 

 

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も

ここに立った。

 

 

 

 

ある時は鎮守府ごと麗達が吹き飛ばされた。

 

ある時は俺を庇った金剛が死んだ。

 

ある時は大ちゃんが桜の死に方をした。

 

ある時は…鳳翔が俺を魚雷から守って…

ある時は…

 

ある時は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…大切な人がさまざまな死に方をするのに耐えられる奴は居ないだろう。

 

自分自身も壊れそうになるんだ…。

 

だから思う筈なんだ

 

 

 

 

 

もう…"受け入れよう"って…

 

その時から歯車は…その道が正しい道だと言わんばかりに動き始めるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体感で何日…何回かわからない…

その度にニヤケ面を強めるキリシマ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何度目かの、ある日

 

 

気分を変える為にトイレに行こうとした時だった…。

 

 

「救…君?」

麗が話しかけてきた。

思えば久しぶりに会話をする気がする。

 

感極まって彼女に抱き着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……無理しないで」

 

「え?」

思わず彼女を見た。

 

 

 

 

 

 

 

「…もう無理しないでいいんだよ」

そう、麗が言った。

 

「何で……」

俺しか知らない筈の事なのに。

 

「わかるよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「だって私は…あなたのお嫁さんなんだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何となくなんだけど…何かわかる、と彼女は言った。

私達の為にあなたが苦しむのを見たく無いんだ…って

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから言ったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…今無理しないでいつするんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

俺は笑いながら言った。

 

 

彼女は涙を流す。

何故だかわからないけれども…溢れて止まらないの…と。

 

彼女は理解してる訳ではない。

でも…それでも彼女は麗だった。

俺が愛してやまない里仲 麗だった。

 

 

彼女にありがとうと言う。

窓から金剛達が見えた…。

 

 

ああ…俺の愛した皆。

 

彼女達を守れるのなら…どんな地獄でも突き進もう?

 

 

 

 

 

…ありがとう…力を貰ったよ。

 

諦めるもんか…

 

 

 

 

 

何度繰り返そうと諦めなかった。

 

救える命も分かってきた。

 

 

壊れそうな心だけど…

あの笑顔の為に…俺はもがいた。

 

 

 

 

 

 

 

徐々にキリシマのニヤケ面が崩れて来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある時だった。

 

 

 

ついに…皆を死なせない道を見つけた。

 

 

 

その回のキリシマは露骨に嫌悪した顔を俺に向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴール目前で…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ…何で助けてくれなかったの?」

 

「…ダーリン…何で生きてるの?」

 

 

 

 

 

 

深海化したであろう彼女達が俺の肩に手を置いた。

 

 

「置いて行かないで」

 

「一緒に居てくれるって言ったじゃないですか」

 

 

 

 

 

 

背中からそう聞こえる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の後ろには…幾百、幾千の「死」が続いている。

助けられなかった可能性の彼女達が…

俺は…その死を否定するように動いた。

 

 

 

「…ごめん」

「助けられなくてごめん」

 

「…ならここに居てよ」

 

「それは出来ない」

 

「何で!?愛してるって言ってくれたのに!?」

「お前のせいで死んだのに!?」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

俺はそれを置いて行く。

 

 

 

 

 

嘘吐きだとか

ろくでなしだとか

クソッタレだとか、死んでしまえだとか…色々と聴こえてくる。

それでも俺は歩みをやめなかった。

 

 

 

 

 

 

その中で…

 

「……頑張ってね」

 

かき消されそうな…寂しそうな声が俺の背中を押した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……俺の勝ちだ」

 

 

 

 

 

グワッ…と

目の前が晴れて…あの景色に戻った。

 

男の目つきは…変わっていた。

 

 

 

 

 

 

 

馬鹿な!

馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な

あり得ないッ!!

あり得ない!!

 

例え

邪魔(桜信濃)が介入しようと…

内なる何か(奴の先輩)が語りかけようと…

 

あの因果の渦から戻ってこられる筈が無いッ!!

 

 

 

 

正解のルートなんか無い。

心を折って…その運命に流されるのが普通なのだ。

なのに!

なのに…この男はそれらに逆らって掻き分けて這い出て来た。

99.99999%…なんかじゃない!

100%を…99.99999999…%に無理矢理して、0に限りなく近い1を持って来やがった!!

 

 

 

 

 

 

 

「退きなさい…?」

 

 

「……桜赤城…?」

 

 

 

 

 

 

 

「…遅くなりました」

突如と現れた桜赤城に救は戸惑う。

 

 

 

 

 

 

「何で…お前がここに?」

キリシマは狼狽した。

努めて平静を装ったが…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜信濃は考えた。

いかに彼の味方を増やすか。

 

言葉を使って伝えた。

1番古くから居てどの運命でも最後まで生き残る桜赤城に…。

 

 

何周しても…何度も何度も

紙に書こうが何だろうが伝えた。

 

 

理解してもすぐにループして真っ新になる彼女に…

彼女の魂に刻み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理解し難い内容だった。

桜信濃様は…夢渡りで気をやられたのかと正直思った。

 

でも何故か…指揮官様が、重い何かを背負っている気がして仕方ないの。さっき会ったはずのあのお方が…今にも崩れそうな程に…。

 

 

 

 

そして彼女は桜信濃に言った。

「お見せなさい!全てを…」

 

「…汝の心が焼き切れるやも知れぬぞ?」

 

「…指揮官様がそれで救われるなら!お役に立てるなら!…」

それに…と彼女は続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この身も心も全て…!指揮官様に捧げています!世界を敵に回して焼き尽くす覚悟も!何もかも!」

,

 

 

 

 

 

ならば…と桜信濃は桜赤城に今まで見た彼の全てを頭の中に叩き込んだ。

 

 

 

 

「ぐっ……ギッ…ガァァ!!!」

のたうち回る桜赤城。

その一瞬は、確かに存在した歴史なのだ。その全てを彼女は見ている。

 

ボロボロと涙を流す桜赤城。

それは苦しさからでは無い。

 

 

「指揮官様…ッ…ああ!そんな苦しみを……」

 

 

 

 

「……指揮官様ノ…かカカカカ悲しみに比べたら…こんなの!子守唄程度ですッ!!」

 

 

 

そう、桜赤城はこの中で…唯一記録を見た者になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『幸様…』

 

「何だい?霧島?」

 

『……今日のところは…予定があるので帰りましょう…』

 

キリシマの異様な焦りに幸は行動を起こすのをやめた。

 

 

 

 

まだ大丈夫だ!!

私達の位置がわからない限り…まだまだ奴等を…幸様の目的の為に導く事はできる!!

 

 

 

 

彼等は何もせずに初めて帰った。

 

 

 

 

 

 

 

近海域までの見送りの最後に

桜赤城は言った。

 

 

 

 

 

 

 

「例えどんな崇高な目的があろうとも…かかっていようとも……私は絶対にあなた方を許さないッ」

 

ピクリ…とキリシマが反応する。

 

「何千と気付かなかっ「黙れ小娘…貴様はッ!やってはならないことをやったのよ!覚悟なさい…!貴様が小物と罵った人間に貴様は負けたのよッ!!」

 

 

「何か勘違いしてないかな?えーと…桜赤城君だっけ?」

「僕達はね?救いたいんだ…彼を…そして自分達を」

「次のステージに行く為に必要な事なんだけど…凄いな閣下殿は…」

 

「今日は諦めるけど…次は……ね」

 

 

 

「……いいわ…」

「…一航戦の誇り……いえ、私達の誇りにかけて…全力で叩き潰しますわ」

 

 

「…へえ…よく吠え「既に世界を敵に回す覚悟も、焼き尽くす覚悟も出来てるのよッ!!貴様ら如き…に言われなくてもッ」

 

 

彼女の言う覚悟とは嘘では無いし、その場の勢いでもない。

 

実際に繰り返された未来の中で桜赤城は最後まで戦い続けた。

ある時は深海棲艦の軍勢を、

ある時は迫り来る世界の軍勢を相手に後の歴史に名を刻む程に鬼神の如き戦果を残した。

 

 

 

 

 

「いっそのこと…ここで……」

 

 

桜赤城の周囲に札が浮かぶ。

 

 

 

 

 

「………やめとこう」

 

「然るべき段階を経て我々は天国…理想郷へと到達するのだから」

 

 

「まもちゃんに伝えてくれ」

 

 

「深い…深い場所で待つ…とね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近海域まで見送った桜赤城を迎えた後…執務室に戻ろうとして俺の意識はプツンと途切れた。

 

 

 

 

 

 

「指揮官様ッ?!?」

 




お気に入りが720!!
ありがとうございます(๑╹ω╹๑ )!!


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311話 あの空の向こう側 ⑤ 全ての始まりの場所

「………う…ん…」

ベッドに寝かされる救。

 

 

疲れてたのかな…と心配する面々。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢を見た。

 

暗い…暗い…

彼方の世界の明けるはずの空は…深い海の底に…。

止めどなく流れ込む幾多の怨嗟はさらに海を染める。

 

そして光を求めて動き始める。

更なる夜明けを…空の向こうを目指して…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

「目が覚めた!提督…ごめんね」

皆が集まってくる。

長く夢見た…一瞬とは言え、永遠に続くような地獄を味わった。

 

「…・…」

 

「だ、ダーリン?」

 

 

ペタペタと桜や金剛の顔を触る救。

 

 

これが夢か現実かがわからない。

夢でない事を祈りながら触る。

 

「どうしたのデース?」

ニコッと彼女が笑った。

ずっと求め続けていた…ものだった。

 

 

「………」

ぽろぽろ…と…彼の顔が歪む。

 

「……ッ!……うぅっ」

 

彼は声にならない声をあげて泣いた。

 

 

びっくりしながら、不思議そうに彼を見つめる彼女達。

 

 

無理もない、彼の軌跡は誰も知らないのだから…

 

 

 

 

彼女と桜信濃を除いて…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官様ッ!!!」

桜赤城が知らせを聞いて飛んできて、号泣しながら彼に飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…のを周りは理解出来なかった。

ブインのキリシマの帰り際に見せた複雑そうな表情もそうだが…1時間前に一緒に居たはずの桜赤城が、まるで会えなかった人に久しぶりに会ったかのように振る舞うからだ。

 

 

「指揮官様…お1人で……たったお1人で…私達の為に……為にッ」

「さぞ辛かったでしょう?さぞ苦しかったでしょう?」

 

「お側に居られず…申し訳ありません…」

 

 

 

 

何を言ってるかは分からないが、あの気丈な桜赤城が…ギャアギャアと泣き喚いてるのは普通じゃない…ってのだけは分かる。

 

 

「どうしたのだ?桜赤城よ…」

 

「そうだよ、提督も…桜赤城も何かあったの?」

 

 

 

 

 

 

「それは妾から説明しよう」

と、桜信濃が割って入る。

「…麗殿は何かを感じていたはずだが…」

 

皆が麗の方を見る。

 

「わ…わかんない。でも、救君がとっても無理してるのは分かった」

「不安で…怖くて…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜信濃は彼に起こった事を説明する。

 

 

彼の中だけに存在する…

決して誰にも知られる事のない…彼だけの戦いを。

 

正直ゾッとした。

普通なら耐えられるはずはない。

 

だが彼は耐えた。

皆への愛だけで耐え抜いた。

 

 

きっと気が狂いそうだったろう。

正気でいられなかっただろう。

諦めたかっただろう。

逃げ出したかっただろう。

幾度も幾度も皆の死を叩きつけられて…それでも彼は…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダーリン…」

 

「あなた…」

 

「「提督」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

救がポツリと言った。

 

 

「……人を殺した」

幾度となく殺した。

命令を下した。

 

 

彼は明確な殺意を持って幸を何度も殺害し、迫り来る追手も、同じく…。

愛故に憎しみが深いのは彼の短所ともなる。

それが可能性の世界とは言え、皆に苦しい思いをさせてしまった…と

 

 

 

 

 

 

「提督?いいんじゃないかな」

時雨が言う。

 

「え?」

彼は驚いて聞き返した。

 

「提督だって感情があるんだから…。完璧な聖人なんて居ないよ。

僕達だって…提督に何かあったら同じ事しちゃうよ」

 

 

「確かに…指揮官は周りが思う以上に私達を愛してくれてますからね」

「それが強さであり…一気にキレちゃう脆さであるのよね」

吹雪が…。

 

 

「だから…僕達がそうならない為に頑張るんだ。僕達の為に…ありがとう。」

 

 

「お前達……」

 

「良いじゃん、弱さだって脆さだって危なさだって、理解して受け入れてやれば良いんだよ」

 

「そしたら…もっと前に進めるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……にしても…桜赤城って、そんなに強かったんだねえ」

 

確かに…と皆が頷く。

 

 

「普段サボってるの?」

 

「はあっ!?!?し、指揮官様!?そんなことありませんからね!?」

 

「…必死だったのよ……今じゃ考えられないけれども…国や世界の軍隊と戦うってのは…」

「それに……よくわからないけれど、あの憎しみは尋常じゃないわ…深海化すれば力が増すってのは本当みたいね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……人の深海化…

艦娘の深海化…

 

幸の存在…

 

俺を救いたい…

 

もし…あの未来と関係があるのなら…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

にしても…深い…場所…ねえ

 

 

 

 

 

深いと言うなら

マリアナ海溝付近だと思っていた。

だが、周辺を散策しても何も発見出来なかった。

 

 

 

 

 

「深いってのがよくわからないですね」

と、桜ベルファストが言う。

 

 

「海の深さではないのかも知れませんね…」

 

「と言うと…?」

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

俺にとっての深い場所…

 

 

 

 

 

そして…皆にとっても………

きっと奴等にとっても…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ……」

 

 

「何か分かりましたか?」

 

「いや…うーんでも…」

 

 

 

 

「…なんか繋がった気はする!今すぐ、大本営の大淀と繋いでくれっ!」

 

 

 

 

 

 

 

気にした事は無かったが…

 

 

 

俺のルーツとも言える場所があった。

大本営の大淀に確認をとった。

 

「お久しぶりです!ご機嫌いかがですか?」

 

「色々大変だよ」なんて話しながら、本題に入る。

 

「あー…俺が最初にイカダで居たのはどこだった…?」

 

 

 

 

『おや、初めてそう言う話題に触れますね?…えと…あれ?知りませんでしたか?ええとですね…』

 

 

 

 

彼女は言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……行くの?」

 

「麗ちゃん…」

 

彼は今からソコへ出撃するらしい。

未だにさっきまで談笑してた人が私達にとって敵なんて信じられない。

 

でも…世界をめちゃくちゃにするなら…

どうにかしなくてはならない…。

 

 

 

「何だかね?不安なんだ…。救君がもう帰ってこない気がして」

 

これはなんだか感じる胸騒ぎなんだ。

 

 

「………」

 

「どこにも行かない…よね?」

 

 

 

 

 

 

「行かないとも」

「俺はずっと皆の隣に居るよ」

 

 

 

戦場に生きる者にとっての命は明日とも知れない。

だが、心ではいつだって隣に居る。

覚悟もしている。

 

でも…

 

 

 

 

 

それは…君達を幸せにしてからなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私も行く」

 

 

「は!?何言って…「言ったでしょう!?私は…あなたのお嫁さんなの!」

「大好きな旦那さんを待つだけじゃないの!」

 

「私達だって…あなたを守れるんだよ」

 

 

麗には何か確信があった。

このまま見送ったら…もう2度と会えない気がする…という。

だから、是が非でも付いて行くと決めていた。

 

 

「…閣下……麗提督の我儘を聞いてもらえませんか」

 

「猛武蔵……」

 

 

 

「……わかった」

 

無茶はしない事を条件にOKを出した。

それはお互い様だろう?と言われた…ぐぬぬ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶり…に来たな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『鉄底海峡ですよ』

 

 

『アイアンボトムサウンドです』

 

『そのど真ん中からコチラに来るようにあなたは居たのですよ』

 

通信越しに大本営の大淀は言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイアンボトムサウンド…」

 

 

「え?」

 

「アイアンボトムサウンドだ」

 

 

 

 

 

 

彼が殺されてこの世界に来た時

最初の深海棲艦が発見された時

海の怨念が湧き出て戦った時

 

 

 

 

 

全てはここから始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…来たね?まもちゃん」

「……お邪魔虫も居るみたいだけど…」

 

 

 

「……未だに幸ちゃんの目的が分からない」

「君の正体も…何もかもが」

 

 

 

「だから言ったでしょ?僕は大好きな君を救いたいんだ。そして僕を救いたい…僕の艦娘達も…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼はにこやかに言った。

 

 

 

「僕は未来の君なんだ」

 

 

 

 







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312話 あの空の向こう側 ⑥「僕は君の未来なんだ」

本日2話目の投稿です〜


「未来の……俺?しかも…大好き!?!?」

 

救が身構える。

 

 

 

 

 

「「「「「「え」」」」」」

 

皆もこっちを見ながら少し引いている。

 

「…何?俺は未来では自分に殺されようとするの?自分のせいで過去の自分は世界を敵に回すの?あと君のその恋心には……」

 

 

 

 

 

「アレだよ!?僕と君が同じ人物って訳じゃないよ?」

 

 

「…よかったぁぁあ!!」

 

 

「好きってのはそのままだけどね」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…脱線したね。で?…まもちゃん…その未来の中で君は最後どうなった?」

 

「……」

 

「"世界"に弾き出されなかったかい?」

「強すぎる力は〜ナントカって疎まれ…妬まれ…最後は守った者に牙を向けられなかったかい?」

 

「な…何d「何でわかるか?でしょ?」

 

 

 

 

 

「僕がその道を辿ってここに来たから!!」

 

 

「は?」

 

 

「君の見た未来は…既に僕が通った道なんだ」

 

 

 

「なら…何で幸ちゃんは敵対の立場に居るんだよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それなね?僕達が別の世界からやって来た君達人類の敵(深海棲艦)の素なのだから」

 

 

 

 

 

「は?」

 

 

 

彼は語り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある人の話をしよう〜〜!

 

 

 

彼の世界もね…昔は平和だったらしいんだ。

 

でもある日…怪物が現れたんだ。

ある人を救いたくて…化け物をその世界に持ち込んだらしいよ?

 

 

 

その時から彼の世界は平和からかけ離れたんだ。

 

 

でもね?彼の世界にも艦娘が現れたんだ。

アレだろうね。一種のカウンターみたいなものなのかな?彼女達は。

 

 

 

彼は…彼の居た世界で、艦娘を率いて戦ったんだ。

長かったよ…

そして、多数の犠牲を出しながら…辛くも勝利を収めたんだ。 

 

 

 

やっと…平和を取り戻した世界。

 

なのにね?

誰も彼女達を褒めてもくれないんだ。

軍人なんだから当たり前だ!って…。

それにね?彼らには、死んだ者への労いの言葉もなかった。

 

それどころか…その力は平和な世界にとっては脅威でしかない。

 

化け物を倒せるのはバケモノだけ。

深海棲艦の存在無き今は…彼女達と提督こそが世界を支配しうると考えられたんだ。

 

 

 

 

世界は彼達が生きるのを許さなかった。

 

武力に追われ、助けた人達…守った者達に追われ、命を奪われたよ。

彼等の世界のどこにも安寧は無く、1人、また1人と仲間を失い…英雄は死へと追いやられた。

 

 

 

 

 

 

 

死に行きがら彼は思い出だした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小さな頃に思った不思議…

この青い空の向こうには何が有るだろうか?ってね。

 

 

 

母さんは昔言ってたな…

幼い頃に亡くなった父さんは…空の上の天国で見守ってくれてる……と。

 

 

 

平和な世界かな?

天国があるのかな?

理想郷があるのかな?

 

 

 

 

 

彼らの魂は…空の向こうに思いを託して…その空を昇って行った。

 

 

 

 

 

 

皆の魂が空へと昇る。

 

 

どうせなら…夢見たあの向こうに…行きたくて…

 

 

 

 

 

 

 

 

空を登り切った頃に…辺りが暗くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつまでも続きそうな暗い闇だった…。

 

 

 

「…宇宙…?」

 

お前は喋んなって…里仲ぁ

 

…まあいいや!宇宙?違うよ海の底だったんだ。

 

 

 

ゴポゴポと音を立てて昇ってゆく泡。

 

 

まさか…と思ったよ。

 

 

 

そう思いながら…彼らはその泡を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海だった。

深い…深い…海の底だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ん?

不思議かい?

 

君は空の上は宇宙って言ったよね。

 

でもね?

彼の話では…空の上は海の底だったんだって!!

 

 

 

 

でね?ここで問題…。

 

 

 

 

 

 

深海棲艦はどこからやって来た?

 

 

 

 

「……海の底…だよな」

救が答える。

 

 

そう!!正解!!それは海の底…

海の底の空の下の海。

 

 

 

 

「艦娘がどうやったら深海棲艦になるかわかるかい!?」

 

 

 

「………沈む事?」

麗が答える。

 

 

だから…何でお前が答えるかな……本当ウザいよ……。まあいいや。半分正解!死ぬ事と…怒りや憎しみや悲しみなんだッ!!

 

 

 

 

それを抱えて死んだ者は海に眠る悲しみに囚われる。

 

 

 

 

 

 

 

悪を倒して…世界から疎まれた憎しみを抱いた正義が辿り着いた絶望の淵の楽園。

 

光も届かない…

自分達だけの楽園になるはずの…海の底。

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし…彼らは求めた。暖かな…あの光を。

 

 

 

その先の海の上で見た。

平和な世界を…。

 

 

 

 

 

 

 

そして…自分達は…

自分達の持つ感情が何かを知った。

 

 

 

憎しみ…怒り。

身を焼く怒りは…

世界を焼き尽くすような怒りは…彼等の姿をも変えてしまった。

 

 

 

 

 

 

そして…この世界の皆は僕達を化け物だと言う。

 

 

 

だから思った。

 

 

 

僕達を化け物だと言う奴をこの世から排除してやろう…と。

彼等は言う。

 

 

我等は…楽園を求める恨みの代弁者だと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わかった?

 

 

そう…

 

 

僕達こそが…化け物の生みの親って訳さ。

 

 

僕達の憎しみや悲しみが…広がったんだねえ…

 

海の怨念?

いやいやいや

アレは…それが固まっただけ!!

 

君を取り込みたかったけど…無理だったんだ。

 

 

話を戻すね?

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして深海棲艦は生まれたんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして世界から海は奪われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも…僕達の渇きは癒えない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

激しい怒り

世界を焼き尽くすような怒り

その怒りは僕達を大きく変えたのに!

 

同じ殺されて来た君は…姿も変えなかった。

 

それどころか…幸せそうにのうのうと暮らしてる。

 

僕達は…味方を増やす為に人に偽装してまで溶け込んでるのに…。

 

 

 

 

 

 

ねえ?神崎救

君にとって…いや、君は正義なんだろう?

でも…

僕達だって正義だったんだ!!

 

 

 

世界を追われて新たな海にやってきたんだ。

 

その正義はこの世界では悪なんだ!!

 

同じはずなのに!!!

 

 

 

だから!僕はこの先の…君の居た世界に行くんだ!!

 

同じ道を辿る君と一緒に!!

 

 

 

そう、いずれ…戦争は終わる。きっと君は英雄になるだろう。

終わって安堵して初めて直面する絶望。

守った者に狩られる絶望感。

僕は知っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてね…?

 

僕は…

呪いのような運命を壊したいんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕の本当の名前は…

御蔵 幸 (ミクラ ユキ)

 

たった1人を救う為に世界の運命に抗った男の子供。

 

そして…世界に化け物をもたらした咎を背負った子供でもあるんだよ。

 

まあ…その僕もこの世界に化け物を持ち込んだんだけどね。

あはは…親子ってそんなもんだよね?

 

 

「…待て!御蔵のジーサンは…子供なんて…」

 

「…うん、お父さん…怪物は…2人を殺さなかったよね?その2人の子供が私」

 

「でも…お父さんも怪物のお父さんも同じだから……」

「面白い話でさ?私も世界を跨いで…あはは…同じことしててさあ…」

 

 

 

 

 

 

「…何で俺の居た世界にそんなにこだわる??」

 

 

 

 

だから…言ったでしょう?

理想郷に行きたいって

 

 

 

君の居た世界は…

さぞ幸せなのだろう。

 

 

 

だって!!!

このアイアンボトムサウンドに!!!

 

 

 

 

()()()()()()()()()()

 

()()()()()()()()()()

 

 

最上層を彼の居た世界として…

ここは一つ下

 

僕達の世界はもう一つ下…

そう考えてもらってもいい…。

 

 

そう!!

 

何度も言うよ!!

きっと君の居た世界は天国なんだ!!!!

 

 

 

だから…あの空の向こう側へ行くんだ。

 

 

 

 

 

 

あの運命の向こう側へ

あの世界の向こう側へ!!

 

 

そして天国へと到達する!

理想郷へと!!辿り着くんだッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は信じていた。

何故か救は世界から落ちて来たと思い込んでいた。

 

もし、彼の世界がそうでなくても…もう一度上に行こうとするだろう。

 

だが…彼の思想には1つ問題がある。

 

 

殺されなければならないと言う事。

 

 

 

「なら普通に生きて死んでしまえばいいだけじゃないか!」

 

 

…ダメだよ

空を越えるには…強い憎しみしかないんだよ。

 

だから味方に殺されたいんだ。

 

 

 

一応ね…この世界も好きなものだらけだから…

 

 

 

「ならその為に大事な戦友を殺せるのか!!」

 

僕にとって大切なのは僕の艦娘と…光である君だよ。

 

だからそれ以外を殺したの…。

そうすれば…愛する者への耐性が弱い君は…君は必ず僕を殺してくれる。

 

そうして君も同じ道を辿る…。

 

 

 

 

そうすれば僕は君と結ばれるんだ。

 

 

 

「………は?」

 

あれ?男だと思ってた?僕っ娘だからかな?

 

 

僕は女だよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えへへへ……もうすぐ結ばれるからね?」

 

 

「だから何で…」

 

「助けられたから…助けたいんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……世界から弾かれたのは…気持ちはわからないけど…きっと絶えられないほどの苦しみだったんだと思う…」

 

「でも…あなたが救われる為に…何もかも犠牲にして言い訳無い」

 

麗が食ってかかる。

 

「…何さ……アンタに何がわかんのよ!!!」

「僕は苦しみから解放されて!目指した空の向こうの理想郷に行くんだ!!そこで大好きなまもちゃんを迎えるんだ!…私はもう一度救われるんだ!彼を救うんだ!!」

 

 

「ふざけないでよ…!!!」

 

 

 

「何?」

 

 

「天国とか理想郷とか勝手に決めつけてッ!!意味がわかんないよ!!大好き…?そんなの好きって感情じゃないッ!!」

麗が吠えた。

 

 

「……あぁ!もう!!うるさいッ!!大体さ…何であんたがいるの?僕…お前のこと嫌いなんだよね」

 

 

「…ずーーっと彼の側に居てさあ…邪魔だなあ…」

「でも…お前を殺したら…すぐにまもちゃんキレるんだよねえ…何か妬いちゃうなあ」

 

 

 

 

 

「結局はアンタの勝手じゃない!!」

「そんな勝手に…私の旦那さんや大切な人達を巻き込まないでよッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ…ウザい…ウザいッ!!私の愛を否定するな!!お前から殺してやる」

 

 

 

「…やれ!キリシマ!!」

 

「……はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くよ…武蔵ッ!!」

 

「ああ!!」

 

 

「…私も行きます…」

 

猛武蔵と桜赤城がキリシマ…と。

 

 

 

「ヘーイ!相手デース」

 

「…はい!」

 

「…行きます!」

金剛、鳳翔、迅鯨がショウカク率いる深海軍と対峙する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





彼は彼女でした。


世界三層節はあくまで幸の頭の中の話なので…
サイコな子ではありますが…


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313話 あの空の向こう側 ⑦ 初めて褒められたから

「……お前は本当に霧島なのか?」

 

猛武蔵が霧島に問う。

 

「……お前は…金剛ではないのか?」

 

「………」

 

 

 

『『だったら何だ?』』

 

「!?」

 

『『そうよ?私は金剛……であり、比叡であり、榛名であり、霧島』』

 

『『私も…天国へと至れば…また妹達に逢えるんだから…邪魔しないでッ!!!!』』

 

 

「…お前は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『私は妹を守りきれなかった…。あの世界でも…この世界でも』』

 

「この世界でも?」

 

『『深海棲艦となった妹達は……艦娘に沈められたッ!!だから私は彼女達の魂を取り込んだのよ』』

 

ぎゅるりとコンゴウの何かが変わる。

『『コンゴウお姉様!!私がアイツを倒します』』

 

 

『『いえ!ハルナは下がって!!私がやるわ!』』

 

 

 

 

ね?…とコンゴウは笑う。

 

『『彼女達には体が無い…。でもきっと…理想郷に辿り着けば…生まれ変われるの…』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故そんなに俺にこだわるんだよ」

 

 

「………」

「僕が君に救われたから」

 

 

「え…?」

思い返す…だが、彼にはそんな経験はない。 

「俺と君は…前に演習で戦ったくらい……」

 

「そう!それです!覚えてくれてたんですね!!」

 

「…いや、でも!俺には君を救った記憶なんか……

 

 

 

 

 

 

「褒めてくれたじゃないですか」

 

 

 

「……は?」

 

「よく頑張ったね!凄いよ!強いよ!って頭をよしよし…してくれましたね」

 

「ええと…確かに」

 

救君…?と麗がジト目でこちらを見る。

 

 

 

「でも!それだけじゃあないか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それだけ…?

彼女は悲しそうに言う。

 

 

 

「今まで一度も掛けてもらった事のない言葉なんです」

「今まで一度もよしよしなんかされた事なかったんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故お前は…そこまでして!!」

猛武蔵と桜赤城がコンゴウと撃ち合いながら問いかける。

 

 

 

『『何で…?それは』』

 

 

 

『…認められないから』

ショウカクが言う。

 

 

 

 

『『 「どれだけ必死に戦っても!

傷ついても!!

 

 

 

 

 

誰も私達を!!

懸命に戦った妹達を!れ

死んでいった仲間を!!!

 

言葉ひとつ掛けてくれなかった!!褒めてもくれなかった!!!!」 』』

 

 

 

 

 

「「「……ッ!!?」」」

 

 

 

「それがどれだけ寂しいかわかる?!」

『『それがどれだけ無念かわかるか!?』』

「一生懸命に!!ずーーーっと戦い続けて」

『『命を散らして勝ち取った勝利を』』

『『誰も見向きもせず!』』

「報われることもない!」

 

「それどころか!守った人達から死ねと言われて!」

『『守るべき者に大切な者の命を奪われ!』』

 

 

 

 

 

『『 「『それで…救いを求めて何が悪いッ!!」』』』

 

 

 

「この世界でも…同じなんだって思った時に君に救われたんだ!!なら……もっと欲しくなるじゃない!」

 

 

「だから…私はあなたと楽園に行くんだ!!」

「連れて行ってよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お願いだよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

『私達を…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『「『『救ってよ(認めてよ)』』」』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ッ!!」

 

 

 

幸はこの世界では人を殺していない。

 

深海棲艦は確かに彼女達がこの世界に来たことによってもたらされた悪意から生まれた。

 

だが…

彼女達はこちら側として戦っていた。

 

 

 

確かに…悪なのだ。

だが……救いを求めてもがく様は…本当に悪と言えるのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………まもちゃん…?」

 

「…例え、世界を変わっても…天国ではないよ」

 

「…まも…ちゃん?」

 

 

「…味わったからさ…気持ちはわかる」

「…でも……その先でも同じ苦しみしか待ってない」

 

「…だから!!こんなこと…やめよう」

「…まだ踏みとどまれる!ここで…幸せになろう?」

 

 

 

救の言葉に…彼女は顔を歪めた。

 

 

 

「…お前は…まもちゃんじゃない……」

 

「は?」

 

「…まもちゃんはそんなこと言わない!!」

 

「いわない!言わない言わない言わない!!!!!」

 

 

 

 

 

「………偽物め…私の愛も…私が理想郷に行くのを邪魔するんだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……殺してやる」

 

 

 

 

 

 

 

 

「させない」

 

 

 

 

「は??」

 

 

 

 

 

 

「…そんなの愛じゃ無い」

「愛ってのは…自分勝手の為だけじゃない!!」

 

「もっと…「そんなのお前の勝手だろ?僕にとってはこれも愛なんだよ」

 

 

 

「不思議だよね。パパの計画をぶち壊した人が私を止めようとする。

まあ…もう殺し合いしかないから……どっちにしろ…私は向こう側に行くんだッ!!」

 

 

 

 

「行けッ!!僕の艦隊ッ!!奴等を…潰せえええ!!」

 

 

海から艦娘…いや、深海棲艦が出現する。

 

 

 

 

 

「させません!!」

加賀達が応戦する。

 

 

 

 

 

 

「…救君…私がやる…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…なに…」

 

 

 

「私はあなたを止める」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うるさいなあ…………あっ!!危ないッ!!!」

 

 

幸の声に気付いて彼の方を見る。

 

一体の深海棲艦がすり抜けて彼に向かう。

 

 

「……救君ッ!!!」

 

 

 

深海棲艦

の振りかぶった腕が彼に向かう。

間に合わないッ!!

嫌ッ!!

嫌ッ!!!

 

 

 

間に合––––––

 

 

 

 

 

 

 

その拳は…幸に当たる。

彼女が救を庇ったのだ。

 

 

 

 

「ぐふっ……がはぁ!!!!」

彼女は吹き飛んで行く。

 

 

 

 

「迅鯨ッ!!」

 

「はい!!」

迅鯨が敵を彼らから遠ざける。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガハッ…ヒュー…」

 

「何で!!」

「何で君は!!」

 

 

 

 

 

「…な、何でかなあ……ぼ、僕にもよく分かんない…や。体が勝手に………嬉しかったから…かなあ…」

 

 

「………あはは……まもちゃんは…ここで死んじゃいけないから…」

ニヤリと麗の方を見る。

 

 

あぁ…こいつに負けたくなかったんだ。

里仲 麗 お前に。

幸薄そうなお前が幸せになるのが羨ましかった。

 

 

私だって…こんな人生じゃなければ…彼の隣に居たかった。

殺される運命じゃなくて……

ただ普通の女の子としての人生を歩みたかった。

 

 

 

だから

救われるしか無いって思った。

 

本当は別にあの空の向こう側じゃなくてもいい

 

 

 

 

ただ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

普通の幸せが欲しかった。

 

 

 

 

 

 

 

好きな人と恋愛して

 

 

結婚して

 

子供産んで…

 

 

 

貧しくたっていい

 

苦しくたっていい

 

 

 

そんな普通が欲しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが叶わないなら…せめて

 

誰でも良い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

英雄なんて他人行儀な言葉じゃなくて…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頑張ったね…って言われたかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

本当に頑張ったのは……死んでいった彼女達で……誰もそれを見ようとしなかったから。

 

 

 

1番…褒めて欲しい人に…頑張った僕を褒めて貰えなかったから…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕達が…頑張ったって

生きてたって事を…忘れないで欲しかった。

 

 

その事を消さないでほしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言ってくれる筈の人に殺されない世界に行きたい。

私を1番認めてくれるはずの人に…殺されない世界に…

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は…僕達を認めてくれる世界に行きたかったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

それすらもダメなのかい?

 

 

ねえ

教えてよ

 

 

 

どんなに頑張っても報われなくて

どんなに足掻いても無駄に終わって

どんなに…苦しんでも誰も手を差し伸べてくれない…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから…あの手…と言葉…

嬉しかったんだあ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…なら……その思いをぶつけたらいいんだよ」

 

「…何?」

 

 

「…好きなら…好きって!認めてよって!言いなよ」

「この世界でもあなたは頑張ったんでしょ!?」

 

 

「なら…私達が隣に居るよ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「何を知った風に…」

イライラするんだ…。

 

 

 

 

「…知らないわよ!!だから…来なさい!!」

 

彼女は仁王立ちで叫んだ。

 

 

 

 

 

来なさい?何よ…お前…。

本ッ当に腹が立つ女ッ!!

いいよ!行ってやるよ。

 

 

震える手足で立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

「私は…里仲 麗。あなたは!?」

 

「……あなたの敵…仙崎…」

 

「違うッ!!!本当のあなたは!!誰なのッ!どうしたいの!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ッ!!本当にお前は嫌いだッ!!!」

「僕は……!私はッ!!御蔵…幸!!あの空の向こう側に!!幸せになりたいだけの女だァァア!!!」

 

 

幸が涙を浮かべながら麗へと向かう。

 

パシィィン!!

 

幸が麗を平手で引っ叩く。

 

「痛ッ!…ッ!このぉ!!」

よろめきながら麗も応酬する。

 

パシン!!!

 

「…痛い……この…うわぁぁッ!!!」

 

 

 

取っ組み合い、髪を掴み、叩き合い…

 

認められたい…間違えた方向に進み…愛に飢えた者と

努力して…間違えた道からまた戻って努力して…認められた…愛された者と

 

自分の為に他を犠牲にしようとした者

誰かの為に自分を犠牲にできる者

 

2人はひたすらにぶつかり合った。

 

 

「この!死ねよお!!」

幸の蹴りが入る。

 

「ぐっ…死なない!あなたも…止める!!」

 

麗も蹴り返す。

 

 

 

 

 

「ぁぁあああっ!!」

 

 

幸が麗を倒して馬乗りになる。

 

 

 

「このっ!このォ!!この!このおおお!!」

両の手でひたすら叩く殴る。

 

「はぁッ…はぁっ!!」

「悪いかよ…幸せになりたいのが…悪いのかよお」

「お前は良いよな…幸せでさ」

「好きな人とも居られてさ…認められてさあ」

 

ぽたぽたと涙と血が彼女の顔に落ちてくる。

 

 

きっと幸せに…家庭築いてさ

当たり前に幸せになるんだろぉな…

 

いつもニコニコして

 

正義なお前が…嫌いだ!!

 

 

 

「だから嫌いなんだ!私は!お前がッ––––

 

 

 

ガツンと…幸の顔に鈍痛が走る。

麗が頭突きをしたのだ。

 

「……ッ!?〜〜ぐぅうう!!」

 

仰け反った幸を振り落としてマウントを取る。

 

「私だって…頑張ったんだ!!後悔もした!泣きもした!!挫けそうにもなった!!それでも!!私は…前へ進んだんだ!!」

仕返しに平手打ちやらグーやらをお見舞いする。

 

 

「それでも無理ならどうしたら良いのよ!!」

 

 

 

麗は幸の襟を掴んで…額同士で頭突きする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「同じ仲間なんでしょ!?なら…私達を頼りなさいよ!!!」

「死ぬとか…殺すじゃなくて!!」

 

 

 

 

「…ッ!コノ!!」

幸が彼女を振り落とした。

 

はあはあと荒く息をつきながら…彼女は叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

「世界があなたの敵!?なら!私達は味方で居るよ!」

「何の幸せもない!?救君か私とスイーツでも食べに行きましょう!?すごく美味しいよ!!きっと幸せだよ!!」

 

 

「あなた…何を言って…」

 

「休みが合えば女の子同士でショッピングいって恋バナでもしましょう!?私の愛は…あなたに負けないけど」

 

 

 

 

「ただ諦めて…人に何かや理想を押し付けて…そんなので…何かが変わる訳がないんだよおお!!」

 

 

 

グッ…と拳を握って幸の顔に振り抜く。

 

 

ガン!!

と彼女の頬に当たった拳は彼女を打ち倒した。

 

 

「あぐっ…!!」

膝をつく彼女。

 

 

「2人とも!!もう…!!」

為に入る救を2人が止めた。

 

 

 

 

「止めないで…」

 

「負けられないんだ!!」

 

 

 

 

「…ダメ!負けられない……ここで負けたら…私だけじゃない……コンゴウや…ショウカクや…皆の努力が……努力が……負けられない!私は…行くんだ…あの空の向こう側に!私達を認めてくれる……理想郷…皆にお疲れ様って…また会うんだ…

 

 

 

「そして…いずれ私と同じ道を辿るだろう彼を…私が…お疲れ様って……迎えてあげるんだ」

 

 

 

 

 

 

「だからぁぁあああ!!!!」

 

 

 

 

幸は麗に向かう。

 

 

 

 

 

「ならこの世界でその言葉を掛けようよ」

「私達が守るんだよ!!英雄が殺される未来?」

 

 

 

 

 

 

 

「そんなの…私達がぶち壊せばいいんだ!!」

 

 

 

 

 

その言葉に一瞬…幸の目が見開いて…

拳が遅くなった。

 

 

 

 

「目を覚ませ…!!ばかやろおおおおお」

 

 

 

 

 

 

 

再度幸の左頬に拳がぶち込まれる。

 

 

ガクリと膝をつく彼女。

 

 

 

立ち上がらなきゃ…

 

「りそー…きょー……」

立ち…上が

 

 

「ここでも良いじゃないか」

彼が私を掴んだ。

 

 

 

 

「まも……ちゃん?」

 

「俺達じゃあ…味方にはなれないか?」

「麗ちゃんも…そう思ってる」

 

 

「……私はあなたと友達になりたいよ」

 

 

 

 

「………何で?」

「嘘だ!絶対嘘だ!!そんな事あるはずがない!!私達を弾いたこの世界が!私達に優しく微笑みかけるはずなんて……ー

 

 

 

 

 

 

 

 

「もういいよ!!」

麗は彼女を抱締める。

 

「こんな世界でも…幸せになれるんだよ!」

「あなたが思う限り…皆があなたの仲間を忘れてる訳じゃないんだから……だから!!」

 

 

 

 

 

初めて触れる温もり。

 

「離せ…離せよ!気持ち悪い」

涙が何故か出てくる。

 

 

 

「離さない!」

 

 

「やめろ!ねえ?助けて?まもちゃん…コイツ引き剥がしてよ…じゃないと……僕…」

 

 

 

「一緒にさ…やり直そう?」

 

 

彼も彼女達を優しく包み込む。

彼なら…彼女の気持ちが痛い程に分かる。

 

 

理解している者と必死に理解しようとする者…。

2人は…理解されない者を…優しく…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…いい……の?」

 

 

 

 

 

 

「私…この世界にいても良いの?」

 

 

「…うん」

「…友達になりましょ?」

 

 

 

 

 

 

「……でも…私には今の艦娘達が!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…大丈夫ですよ。幸さん」

 

 

 

 

 

いつの間にか…皆に囲まれていた。

 

「……あなたは…迅鯨?」

 

「ええ、でも私は…元は人間ですよ?それに…ここの艦娘は以前に沈んだ娘も居ます」

「きっとあなたの元に帰ってきてくれます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当?本当に?本当にここに居ても…私は……認められるの?」

 

皆が頷く。

 

 

 

「…うっ…あっ…うわぁぁぁぁあぁあん!!あああぁぁああああ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…麗ちゃん…頼んで良い?俺は…もうひとつを決着つけてくる」

 

.「うん…私達も…行くよ」

 

 

彼らはまだ戦う者の場所へと行く。

 

 

 

 

 

 

 

 








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314話 あの空の向こう側 ⑧ 眠る者に花束を

「右ッ!!」

桜赤城と猛武蔵が連携を取る。

流石は歴戦の空母か…

戦闘指揮のレベルが高い。

 

「おう!!」

 

 

『『お姉様!本命の艦爆!左からきます!!』』

 

 

「…ッ!!」

見切られた!?

武蔵の砲撃に気を逸らさせ、私の艦爆をぶち込む作戦なのに…!

 

 

『『ええ!さすがキリシマ!』』

 

『『お姉様…』』

 

『『早く…妹達を……会いたい…この手で抱き締めたいの』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バーーニング…ラァブ!!」

 

「発艦します!!」

 

『無駄よ…』

 

悉くを迎え撃つショウカク。

 

 

 

 

 

「ひえーー…向こうのコンゴウじゃないけど2人居るみたいデース」

 

『……勘違いしてない?あのこは1人よ?』

 

「なっ…」

 

「…あの子は…ずーーっとコンゴウよ?」

 

 

 

 

 

 

『『違うッ!!妹達は私の中に居る!!体を無くしただけだ!!あの空の向こうなら…きっと…きっと!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初めから霧島でも榛名でも比叡でもなかった。

金剛ただ1人だったのだ。

 

『お姉様…必ず…暁の…水平線……に…』

霧島を深海棲艦との戦いで亡くし

 

 

 

 

 

『お姉様…必ず…生き延びて下さい…比叡は…ここで奴等を食い止めます』

 

『…行かせるもんか!!お姉様の元へ行かせるもんかぁぁあ!!』

比叡は世界政府軍との撤退戦で自分を庇い命を落とした。

 

 

『オ、おねエサマ…ドウカ…楽にして下サイ…せめて…大好きな…お姉様の手で……』

榛名はこの世界に来てから、深海化が進行して…この世界の艦娘に大破まで追いやられた。

僅かな理性で金剛に雷撃処分を懇願し、泣き叫びながら金剛は彼女を眠りにつかせた。

 

 

 

 

 

妹を失った悲しみに耐えきれず…壊れた心は

虚像の妹を生み出した。

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

『…私達も限界みたい』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「2人ともお!もう戦わなくて……いいんだ………よ?」

 

それを言いに来た彼女が見たものは…

 

 

 

「桜赤城ッ!!」

「金剛!鳳翔ッ!!」

 

 

彼が私の名を呼ぶ。

 

 

 

 

私達と対峙するコンゴウやショウカクはもう…深海化がかなり進行している。

 

 

 

 

 

「2人とも…ごめんなさい…私のせいで…」

幸が泣きながら彼女達に話しかける。

 

 

だが、彼女の声はもう…2人には届かなかった。

 

「うう…ッ…2人共…」

 

 

 

 

 

ショウカク達2人がこちらに来た。

 

そして救と麗目掛けて殴りかかる。

 

 

「……2人共…?」

 

 

「させないデース!!」

 

「くっ…この!!」

 

金剛と猛武蔵がそれを受け止める。

 

 

 

 

彼女達は深海化しても尚、主人を…残されたたった1人の家族を守ろうとしていた。

 

楽園に行きたい。

皆に会いたい…

 

 

 

それ以上に…彼女達は

幸の寂しい顔をもう見たくなかったから。

 

 

『『ガァァァァア!!』』

 

 

「もういいんだよ!2人共!お願い!止まって!!ね?!皆でここでやり直そう?」

 

 

「ダメデース!もう届きません!!!」

 

「…麗ッ…逃げろ!!」

 

 

「そんな……」

 

 

 

長く、憎しみに支配されてきた…壊れた彼女達はもう元に戻ることはない。

 

 

『…ユキヲ……』

 

『……カゾクを…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ショウカク…コンゴウ、ヒエイ、ハルナ、キリシマ?来なさい」

 

『『?』』

 

2人が声の方を見る。

 

 

 

 

 

そこには…桜赤城が泰然と立っていた。

 

「姿が変わろうとも…己の主を守ろうとする、その姿勢に敬意を表するわ。さすが…大戦を生き残った艦娘ね…。……だから()()纏めて相手して差し上げます」

 

 

 

 

 

 

「あなた達が見せてくれた…未来…鎮守府最強を見せてあげる」

 

 

 

「…行くわよ!猛武蔵!金剛!鳳翔さん!!」

 

「「「おう!!」」」

 

 

 

 

 

『『………』』

 

 

「無論…あなた達5人じゃあ…妹達の魂を背負って居ようとも私には敵わないわ?」

 

 

 

 

だから…

 

 

 

 

 

「だから…生まれ変わって…5人でまた来なさい…相手してあげるわ」

 

 

 

 

桜赤城は知っている。

可能性の未来を見た彼女は…失う悲しみを誰よりも知っている。

だから…

彼女はコンゴウを否定しない。

もし、自分が桜天城や桜加賀を喪ったら…きっと同じになるだろうから。

 

 

 

 

だから…全力で彼女達に敬意を払って迎え撃つのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…さぁて…ショーカク!sleepする時間デース」

 

「…眠って気持ちよく目覚めて…帰ってきてください」

 

『……』

 

 

 

 

 

4人が構える。

 

 

 

 

 

「せめて…泡沫の時でも…安らかに」

 

 

 

 

 

 

 

 

放たれた光は彼女達へと降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

生まれ変わって…

またおいで

 

 

愛する家族は待ってるから……

 

 

 

 

 

 

 

 

まるで慈しむように

まるで労うように

まるで旧知の仲のように

 

優しい雨は彼女達に降り注ぐ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…ありがとう』

と、聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

倒れ込む2人に幸が走り寄る。

 

 

 

 

彼女達は光に変わりながら…

幸に話しかけた。

 

 

『ごめんね…幸ちゃん…叶えられなかった…』

 

「いいの!ね?やり直そう?ここなら!ここなら…」

 

 

『ここの人は…あなたを認めてくれるのね?…あなたを…皆を…』

 

うんうんと泣きながら頷く幸。

 

 

 

『それを見届けられないけど…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『きっと…』

 

 

 

彼女達は言う。

 

『……また生まれ変わっても…あなたと一緒に戦いたい…から……』

 

きっと会いに来るから。

 

 

 

ありがとう…

1人にして…ごめんね…

 

 

 

 

 

 

 

彼女達は光に変わる。

 

 

 

 

 

 

掴めども掴めども

時を共にした彼女達は手から擦り抜けて行く。

 

 

 

 

 

もう戦わなくていいんだよ

 

この一言を言うのが別れの手前だなんて

たった一言を言うのに何年もかかって…

 

 

 

 

 

まだたくさん伝えたいことは有った。

まだたくさん聞きたいことは有った。

 

 

私なんかより…

あなた達が…本当の英雄なのに

ごめんね

私が…僕がもっとちゃんとできてたら

 

君達を振り回さなくて良い人だったら…こんなことには…

 

 

ねえ?

恨み言の一つでも言ってくれたらいいのに

 

無能な指揮官と詰ってくれたら気が楽なのに

 

私は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時…

 

 

 

 

 

その光がぐにゃりと曲がった。

 

「…ッ!?」

 

 

 

「……何?これ?」

 

 

 

 

 

 

救、迅鯨、麗、幸、金剛、鳳翔はその捩れた光に飲まれてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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315話 あの空の向こう側 ⑨ 理想郷

……う……ん…

 

ここは……

 

 

 

 

 

「気が付いた…?」

 

「……麗…ちゃん幸ちゃん…?」

 

 

 

「…提督ッ」

迅鯨、金剛…桜赤城に鳳翔も居た。

 

 

 

 

 

 

「ここは……部屋?」

 

 

見知らぬ部屋だった…。

約1人を除いて。

 

 

 

 

「幸ちゃんの艦娘は…本当に君を空の向こう側に連れて行きたかったんだね」

 

 

 

 

彼女達は願った。

提督という1人の家族が認められる世界へ…。

 

傷付き、倒れていった仲間から繋いだ思いは最後の2人によって現実のものとなった。

 

「でも…2人は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

世界を超える。

一体どれほどのエネルギーが必要か…。

 

 

テレビをつけたら…

総理大臣が変わっただとか、芸能人が結婚しただとか、新型ゲーム機が発売されたとか…

 

 

 

 

 

 

「…ここが…私の目指した理想郷?」

 

「…程遠いと思うよ」

 

 

 

ワイドショーでは年間の自殺者が3万人を超えていると討論していた。

 

「……そんな…」

 

 

 

 

 

 

「……あ…」

 

 

『南の島パッケージツアー!!大海原でのクルージング!イルカやクジラに会いに行こう!ディナーはなんと!船の上!』

 

『豪華客船で行く!世界一周の旅!』

 

『マリンスポーツにスキューバダイビング!』

 

『大海原を一望!快適空の旅!』

 

 

CMでの広告や映像が流れる。

 

 

そんな平和な世界は彼女達にとってはきっと夢のまた夢だった。

 

 

「ほ、本当に…平和なんですね…海で船旅……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てかここどこ?どーやって帰る…?」

 

「私達…死んだのかな」

 

 

 

とりあえずここから出てみようと思って…ガチャリとドアを開ける…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…おや?お客さんかな?」

 

 

 

 

目の前にはお婆さんが居た。

いつの間にか景色は変わって…振り返ってもあの部屋はなかった。

 

 

 

 

 

「「……ッ!」」

 

俺は唖然とした…。

 

 

 

 

 

 

 

「んー…君はどこかで…?」

 

「……」

 

 

 

 

「ふふっ……気のせいかね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー!お兄ちゃん!誰ー!?」

 

「おねーちゃん!遊んでー!」

わらわらと子供達が群がる。

 

「…ハーイ!遊びまショー!」

鳳翔や金剛が相手をする。

 

 

 

「珍しいねえお客さんだなんて…まあ…掛けなさい」

「…って?おや?お嬢ちゃん達は…喧嘩でもしたのかい?傷だらけじゃないか…おいで?手当をしてあげよう」

 

あ…いや…

と麗と幸は遠慮するが、年寄りのお節介は受け取るもんだよ…と、お婆さんに気圧されて大人しく手当をしてもらう。

 

 

「ありやあ…原因は何だい?こんなにしちゃって…」

 

不思議と温かな声だった。

何だろう…全てを包み込んでくれそうな…

どこか懐かしい…感じ…。

どこかで感じたような…温かさ。

 

 

「僕は…幸せになりたかったんだ」

「だから…世界を超えたくて……仲間のお陰でここに来られたの」

「ねえ?おばあちゃん…ここは…理想郷?天国?」

 

 

「…うーん難しい話だねえ…世界が…とかは分からないけど…理想郷はどこにも無いよ」

 

「…ッ!!」

幸は少し表情を歪めた。

 

「だって…それはいつのまにか出来てるものなんだよ」

「お嬢ちゃんの繋いだ人達との絆…がね」

 

 

「誰も私達を認めてくれないなら?弾いてくるなら?」

 

 

「…そうさねえ…きっと誰かは君の味方になってくれるさね。それは君の今までの歩いてきた道が証明してくれるさね」

 

 

 

 

 

「お嬢ちゃんは?」

と、麗の方を見る。

 

「わ、私は…そんな子の力になりたいんです。わかってもらえないかも知れないですけど…友達になりたいんです」

「あなたの周りにも幸せはあるって伝えたいんです」

 

 

「なら…根気さね。時間はかかれども…いつか伝わる日が来るよ。時にはそうやって殴り合いをしなくちゃならない時もあるけれど…」

 

 

 

 

彼女は2人をわしゃわしゃと撫でて抱き締めた。

 

 

 

 

 

「君達を見てるとね…昔に居た子を思い出すよ」

後ろを振り返るお婆さん。

後ろには少しだけ古びた建物があった。

 

 

「あの…ここは?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここはね…孤児院さ」

「身寄りのない子を育てる…教会の孤児院さ」

 

「長いんですか?」

 

「もう…何十年になるかねぇ…」

「たくさんの子をここに迎えて…見送ったよ」

 

 

 

「あなたみたいな人が居るならここを出た子は幸せでしょうね」

桜赤城がにこやかに言う。

「幸せだよー!!」

と、子供達も大きな声で言い、金剛達が笑う。

 

 

 

そうでもないさ…と彼女は言う。

 

「ある子が居てねえ…」

「本当…ろくすっぽ帰らずに死んでお金だけ残して……」

「昔から…稼いでこの建物綺麗にしてあげる…ってね。コツコツ貯めては仕送りして…貯めては…貯めての子でねえ」

 

 

「ほら…アタシらの生活スペースは綺麗に広くなってるだろう?その子のお陰さね」

 

 

なるほど…確かに教会横の建物は新しかった。

畑やその他の設備も増えたらしい。

 

 

「凄いですねその子は」

「どんな人なんですか?」

 

 

 

「馬鹿な子だよ…」

 

「馬鹿…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死んでしまったんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…辛かったろうねぇ……」

「毎日しんどい思いをして…身を粉して…たくさん耐えて…」

「正しい事をして…殺されちゃうなんて……ねえ」

 

「殺された…んですか?」

 

「自殺なんかする筈ない…って思ってたよ。犯人も死んでしまったらしいけどね…」

 

 

 

 

「それから…保険金と手紙が届いてさ…本当に嬉しくない仕送りだったねえ」

 

 

「後を追うように逝った子も居てねぇ…」

 

 

 

「…どうか安らかに眠られるように毎日祈ってるよ…」

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫ですよ」

迅鯨が言う。

 

 

「…そのお二人のことは……ここで会ったことない二人は…」

「きっと幸せに今を生きている筈です」

 

 

 

「……」

「本当かい?」

 

 

「本当です」

迅鯨はハッキリと言い切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「会いにきてくれてありがとうね…救…秋穂」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「ッッ!?!?!?」」」」

 

 

 

救は気付いていた。

最初に辿り着いた場所が…自分の部屋だった場所だと言う事を。

2人は気付いていた。

あの場所が…2人の育った場所だった所だと言う事。

 

 

 

 

 

「おや?何で分かった?って顔してるね」

「気付かないと思ったかい?何人の子供を見てきたと思ってるんだい?全員ちゃーーんと覚えてるさ」

 

 

え?!

え!?!?と、周りが2人を見つめる。

 

 

「私にとってはアンタらは子供なんだよ…。もっと顔をよく見せておくれ…」

 

「ああ…救は…学生の頃の顔だねえ…バイトしながら少しでも仕送りしてくれたねえ…アンタのお陰で…ここも…こんなに……」

 

「秋穂は……うん、外見は変わったけど…わたしにゃ…わかるよ…明るい笑顔で人気者だったねえ…。会えたんだね…救に…よかったねえ…」

ホロリと涙するシスター。

 

 

「…全く嬉しくないよ!!」

彼女は言った。

 

 

「……え…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「生きていてくれて…こそだろう?死んじまったら…それ以上ないじゃないか!!お金が無くて貧しくても…アンタ達が居てくれることの方が幸せなんだよ」

 

 

 

 

「…でも…幸せそうなら…良かったよ」

「信じられない体験だけどね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「帰らなくちゃいけないんでしょ?」

 

 

「…え…?」

 

 

「…私はね…アンタが小さい時から見てたんだ」

「…神職だからか…長いこと祈ってると……願いは叶うんだね」

 

 

「ずっとアンタらの事を祈ってたんだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シスター…少しだけいいですか?」

 

「え?なんだい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人は両脇からかつての家族に抱き着いた。

 

 

「おや?どうしたんだい?2人とも…湿っぽい話に…「…シスター……なっちゃん」

 

なっちゃんとは彼女の愛称である。

堅苦しいのが嫌だった彼女の為の…私達の呼び方。

 

 

 

「「ありがとう…」」

 

 

「こらこら…シスター夏枝と呼びなさい…まったく…」

 

 

 

 

 

「いついかなる時も…思いやりを持って」

「笑顔で前を向いて歩きなさい」

 

 

「……ッ!!」

それは教え…

私が2人…いや、皆に言い聞かせていた教え…。

 

 

「…ありがとう…」

 

 

「私もー!ハグプリーズ!」

 

「ずるい!私も!!」

 

「…私も」

 

「おや!?どうしたんだい?」

 

 

「わ、私も!!」

 

「僕も…」

 

 

 

 

「おやおや………」

 

 

「というか…救?これは何?はーれむと言うやつかい?」

 

 

「あ!紹介遅れました!私は…高速戦艦!金剛方1番艦!金剛デース!ダーリンとはケッコンしてマース!!」

 

 

「金剛?高速戦艦?…???ケッコン!?そ、そりゃあめでたいねえ……あ……」

 

気まずそうに迅鯨を見るシスターさん。

 

 

「私は鳳翔と申します。私もケッコンさせて頂いております」

鳳翔、桜赤城、麗も続く。

 

 

 

「…あ、アンタ…一体何をしてるんだい?」

 

「わ、私はまだだけど…その内ケッコンする予定です!」

 

「僕も…この人と一緒に居たい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…そうかい…こんな女の子が戦うのかい……世知辛いねえ…アンタも…戦いに…ねえ」

「でも…世界の為なら…精一杯やりな!そして………死ぬな」

「生きてこそ…明日も来るんだからね。それを忘れないでおくれ…」

 

 

 

「うん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは理想郷などではなかった。

世界を超えても別の世界があるだけだった…。

 

でも…確かに彼は私にとって…救いだった。

 

 

彼にとっては彼女が救いだったのだろう。

先の彼女の温かさは…彼にしっかりと受け継がれている。

 

彼の優しさは…私達を救った。

それは私であり、麗であり、艦娘であり…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、帰るんだろう?……そこの道をまっすぐ進みな。振り返るんじゃないよ?真っ直ぐに…真っ直ぐにに進みな」

 

 

 

 

 

帰りたくない。

皆で…またここで暮らしたい。

そう思えてしまう。

 

「ダメだよ…アンタにゃ…まだやる事が有るんだろう?途中で投げ出しちゃあ行けないよ」

 

 

 

 

 

もういっちゃうのー?なんて言葉を子供達は投げかける。

「こらこら…お兄ちゃん達はね…帰らなきゃならないんだ」

 

「そっか!またきてね!」

 

 

 

   

 

ちょっと…と、呼び止められて救と迅鯨以外が呼び止められる。

 

「あの子達をよろしくお願いします」

と、彼女が頭を下げた。

 

 

「きっとあなた達が居るからあんなに笑えるんだね…」

「…どうかあの子達を愛してやって欲しい」

 

「本当に無茶する子で…人一倍愛に飢えてるんだと思う。でも…あの子の優しさは…本物だから」

 

 

 

 

 

「愛してますとも…」

「そして…愛されてます」

そう彼女達が答える。

 

 

「あのね!僕……まも君のこと支えるよ!だって…僕は彼に救われたんだ!!だから…だから!!」

 

「ありがとうねえ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さあ早く!と急かされて歩かされる。

バイバイと背中から聞こえるが振り返らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

歩み続けているとフッと周りが暗くなった。

何も感じない暗闇。

 

 

「か、帰れるかなあ」

 

「暗くてどこに行けばいいか分からないよお!」

 

寄り添い合うが、そこは暗闇。

どう進めばいいかも分からなかった彼等は、夏枝の言った真っ直ぐに進めの言葉も忘れかけていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…幸ちゃん…こっち』

 

「え?」

 

『真っ直ぐ…だよ』

 

「その声は…」

 

『大丈夫…また会えるから』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こっち!こっちだよ!皆!」

 

 

幸に呼ばれて一緒にそっちへと走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 



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316話 あの空の向こう側 ⑩ エピローグ

御蔵 幸

彼女の目指した理想郷は空の向こう側には無かった。

焦がれた俺の居た世界も…そうとは言えなかった。

 

 

軍所属の彼女であるが…

一連の行動に関しては、クーデターが起きている訳でもなく

例え夢の中の話としても現実ではない為に起こり得て居ない。

また、彼女が深海棲艦との深い繋がりを証明出来るものはない。

俺が前例であるように…。

 

故に彼女はお咎め無し…と言うか、審議すらしようがなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの不思議な体験は夢だったのか…

そもそも…

 

あの出来事自体が、どこかの可能性の先ではないかと思う今日。

 

 

 

 

 

鎮守府は…

 

 

 

 

 

そして、彼女はまた俺達の敵となるのかー?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バタァン!!!!!!

 

 

 

 

「やっほー!まもく〜ん♡来たよー……って!!麗!?何で君が居るのさ!?」

 

 

 

 

「そりゃ…奥さんだもん!居るよ!!」

 

「君の鎮守府は!?」

 

「リシュリュー達に留守番をお願いしてるよ」

 

「何でだよー!ちゃんと仕事しないと!!」

 

「あ、あなたに言われたくないよ!!」

 

「僕はダーリン君と甘いひと時をすごすんだよー!あぁー!!まも君の甘ーいひとときがぁあ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「……賑やかだなあ…」

 

 

「お邪魔します」

「閣下の周りはいつもああなのですか?」

 

ブインの金剛達が言う。

 

 

 

「ん?ああ…いいものだろう?」

 

「…まあ…残念なことに…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これからは君達もあの中に入る訳だ」

 

 

 

「…ッ」

ブインのメンバーは目を潤ませた。

 

「…さぞ辛かったろう。悔しかったろう。無念だったろう」

「だが…道のりはどうであったにしろ、今はここに辿り着いた」

「君達の言う楽園には程遠いかも知れないが…見て欲しい、あの子達の笑顔を」

 

 

 

「…ちと偉そうだけど…許して欲しい」

 

 

 

 

 

「海軍…副元帥として…」

 

「ブイン提督…御蔵 幸…以下艦娘達」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「世界を跨いでも尚、その強い絆で結ばれた君達に…敬意を」

 

 

 

 

 

「俺は…ここに居る皆は知っている…君達がどれほどに凄い存在かを…」

 

 

 

「だから…」

 

 

 

 

 

「友として…戦友として…言わせて欲しい」

 

 

 

 

 

 

「よく頑張った…。よく耐えた。よく泣いた。……だからその分!これからは楽しくなるし、幸せになれる」

彼は一人一人に語りかけて頭を撫でた。

 

 

 

 

 

変な言葉だった。

とてつもなく…めちゃくちゃで…突飛で…

でも暖かかった。

 

 

 

 

 

 

「マモ君!好き♡好きい♡愛してる〜嬉しいよおー!もっと褒めて!もっと愛して〜♡」

金剛以外で目を♡にしてる奴は初めて見たぞ?

 

 

「ちょっと!わたしの旦那さんだよ!離れてよお」

 

「僕の旦那様になるんだよー!」

 

「ダメ!私の親にも挨拶してるんだからね!」

 

「はーー!?…へーーん!ぼ、僕のお父さんだって…!マモ君のこと…認めてるもん!!」

 

 

「「は?!」」

その場に居た全員から発せられた声。

 

 

「初耳ですよ!?」

 

「やり合ったんでしょ?お父さんに勝ったんでしょ!?なら大丈夫!認められてるよ!」

 

 

 

お父さん…とは…………うーーーん…。

 

 

「それにね?私はその娘だよ?そう簡単に諦める性格じゃないよ」

 

 

 

 

 

 

 

「…何年振りかな?あの子のあんなにはしゃぐ姿は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戻って来られた」

 

「あの子達が…皆が…私の手を引いてくれた…」

金剛が幸の手を握って言う。

 

「辛いことだらけだったんだと思いマース…でも…でも、それでも変わらなかったものが1つありマース」

 

 

「……なに?」

 

 

 

 

「あなたが…あなたの艦娘に愛されていた事…デース」

 

「彼女達はあなたの思いを叶えました。ええ、それが例え結果として理想とは異なるものとしても…。愛する人の為なら…私達は命でも懸けます」

鳳翔が彼女の肩に手を置き優しく喋りかけた。

 

「あなたが迷いそうだから…手を引くんデース」

 

 

「…もう少しだけ待ってみて下サーイ。きっと彼女達はあなたの元に帰ってきますカラ」

 

 

 

 

時間にしては全然経っていなかった。

白昼夢…というやつか?

 

あの子達が見せた優しい夢だったのか…?

 

それは分からない。

 

でも…結果として俺も…迅鯨も…皆も救われた気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「会いたい…よぉ…」

「皆に…また会いたいよお……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「数日お世話になりました……ありがとうまも君…」

 

 

「……麗…も…その……ありがと…」

この数日で彼女なりに考えを噛み締めたらしい。

それを聞いてとても嬉しそうにする麗。

 

「……ッ!!うん!うん!!私達…友達に…なれる?」

 

 

「…あそこまでぶつかってくれる人はて友達じゃないよ……」

 

「え…」

 

「もっと深い…親友になりたい」

 

 

「…!!うん!なろう!なる!」

 

 

 

 

 

抱き合う2人を見ながら数名に指示を出す。

彼女を送る為だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その必要はないですよ」

 

 

 

 

 

その声…声の方に振り向く。

大本営からの手伝いか?と彼等は思う。

 

だが、たった1人だけ違うと思う人が居る。

 

 

 

 

 

 

「あ………ぁ」

 

 

幾年を越えただろうか?その想いは。

 

いかほどに積もっただろうか?その想いは。

 

 

 

 

足が自然と海に向かう。

濡れてしまおうが構わない。

震える体を無視して必死で泳いだ。

 

手を伸ばして伸ばした。

確かめたくて…触れたくて。

 

 

 

逆光で顔が見えない。

私は涙と海水で口の中がしょっぱい。

 

 

 

 

「ったく…風邪ひきますよ?」

 

 

 

 

ぐいっと引き上げてくれてやっと顔が見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「寂しかったな…提督」

涙でぐしゃった顔の皆が居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぁああああああ!!!うわぁぁああん」

彼女は飛び込んだ。

彼女に出来る最大限の力で彼女達にしがみついた。

 

彼女達が優しく…強く受け止める。

 

「ごめんね!ごめんねえええ」

 

 

「…よく生きていてくれた…それだけで…それだけでいいんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曰く、語り掛けてきた人が居たらしい。

アンタ達を待つ人がいるさね。

ボーッとしてないで早く行きな!

 

慌てる私達に彼女は言ったんだ。

 

 

真っ直ぐ行きな!何があっても真っ直ぐにね!

 

 

 

って…

 

 

 

 

 

「あと…」

 

 

「あと?」

 

 

「自慢の子供達に伝えて欲しい」

「 『あたしゃ…いつでも…いつまでも思って祈ってるからね』と」

 

 

 

 

それを聞いて俺たちは泣いた。

嬉しくて…皆で泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…さて、今日も頑張るさね。ん?なんだい?」

 

「親に捨てられたのかい?」

 

「ならもう安心しな!今日からここがアンタの家さね」

 

「ここ?ここは…優心の家さ……え?名前が微妙?!」

 

「この名前はねえ……優しい…優しい心を持った子に…という名前なんだよ!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ?まも君?」

 

「ん?なあに?」

 

「好き…です。褒めてくれたあの時から…」

「…だから…もう間違わない。…僕もあなたを支えられる人になりたいな」

「皆とならそれが出来ると思うんだ」

 

「ありがとう。俺も…新しい君を見てくよ」

 

「…麗にも負けないからね!たっくさんアピールしまくるからね!」

「支えるって言ってくれたんだから……責任とってね?」

 

 

 

 

「こらー!幸ー!ズルイデース!!そこは私のポジション!」

 

「譲れませんし、譲りません」

 

「私の場所ー!救君ー!痛いよー慰めてー」

 

 

 

 

 

 

 

不思議な体験は…新しい仲間を増やして、鎮守府をさらに賑やかにした。

 

 




はい、10パートの長編でした。
僕っ子キャラは1人くらい増えてもええかなあ…と。


とあるキャラに うん?と思ったかもしれませんね。
そーいうことです。

色々と後に繋がる場面もでてきたかも……しれませんね。





すこしでもお楽しみ頂けたなら幸いです。

感想などお待ちしてます!!



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317話 鎮守府のひな祭り

ここは居酒屋鳳翔。

最近、那智の方に顔を出しすぎて鳳翔が拗ねてしまったので来店。

 

涙目で拗ねられたら…ねえ……。

 

 

鳳翔に晩酌をしてもらいながら他愛もない会話をする。

 

 

 

 

 

「そういえば…もうすぐひな祭りですね。何か…お菓子でも用意しましょうか?」

 

ピクリ…と救が反応する。

「……その日は普通の日として過ごす!」

 

「あらあら…どうしてですか?」

 

「…バレンタインならまだしも…ひな祭りだろう?『我こそがお雛様ッ!!』って大戦争が勃発するに決まってるから」

 

「聞かなくてもわかる自分も居ます」

 

 

 

 

 

 

 

「でもきっと大丈夫だと思いますよ?」

 

 

「ほうー?自信あり気だな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だって私がお雛様ですから…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お茶を噴き出す俺。

「鳳翔がお雛s………

最後まで言えなかった!ニコリと笑う鳳翔。

 

 

 

俺の上をスツーカが旋回してやがる!(かつてないプレッシャーを放ってやがる)

 

はい!お雛様です!(言葉には気をつけて下さいね?)

 

どこからこの武装を用意した?

いつ発艦した?

え?てか何?撃つの?

唯一のお内裏様跡形もなく消えちゃうよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[ひな祭り!お雛様は誰だ!?!?](青葉新聞記事)

 

 

 

 

 

 

俺はそっと有給申請を出した。

 

ニコニコ笑顔の大淀に破られて、桜シリアスに燃やされた。

崩れ落ちる俺。そっと優しく慰める桜ベルファスト。

「…おいたわしや…ご主人様…」

 

「優しいな…ベルファスト…お前だけが……」

 

「はい、ベルファストはいつでもご主人様の味方であり、隣に居ります…なのでこちらに…ご署名を…」

 

「……おうおう…………って!?何これ」

 

「…ご覧の通り、誓約書でございますが?」

 

「……何の?」

 

「ご覧の通り、お雛様は桜ベルファストとする…ですが?」

 

 

 

…ん、とその誓約書を大淀に渡す。

ビリビリにそれを破く大淀。燃やす桜シリアス。

崩れ落ちる桜ベルファスト。

 

 

 

「…まったく!こんな理由で有給が取れる訳ありませんよ?提督?」

 

「有給って何だっけ?」

 

「…まあ…どうしてもと言うなら…仕方ないですが…はい、申請書です」

と、新しい有給申請書を渡してくれる大淀。

なんだかんだ言いながら優しいな…よどちゃんは…

 

 

 

 

 

有給申請書

 

時成 巌 元帥殿

 

 

2月8日 1日間

私用の為有給を申請します。

 

 

2月1日

西波島鎮守府 神崎 救 印

 

 

 

 

 

 

        お雛様及び正妻は大淀とする。

 

 

 

 

 

 

 

「大淀ッ…貴様ッ!!」

 

「提督?賢すぎては生き抜けませんよ?」

 

「書類は隅々まで見る方なのでね!」

 

その用紙を桜シリアスが破って桜ベルファストが燃やした。

崩れ落ちる大淀。

 

 

「おい、桜シリアスは動くな!!」

 

 

「はうっ……しょぼん…」

 

何か用意してたんかい!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

「指揮官!!日本文化には興味あるわ?!是非!和服を着させてほしいわね!」

ニコニコと蒼エリザベスがアピールする。

 

「私も興味ありマース!てか!正妻は私でショー?」

 

「あら?金剛?譲ったつもりはないわ?」

 

ぎゃあぎゃあとやり取りする面々…。

 

 

 

 

 

 

 

「…うっ……ダーリン…」

バタリと倒れ込みかける金剛を受け止める。

 

「どうした!?」

 

うるうるとした瞳で俺に語り掛ける金剛。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……できちゃったみたい……♡」

 

支える手を離す俺。落ちる金剛。

「ギャン!…っひどい!ダーリン…」

 

 

 

 

 

「……うっ…」

 

「やめるんだ!吹雪ッ!!」

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

「和服なら私が似合うと思うの」

 

「…大和はなあ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「赤いウェディングドレスでもいいよ?」

 

「時雨?返り血かな?」

 

 

 

「ひな壇が赤いのはね…?倒れて行ったライバル達の返り血なんですよ?」

 

「間宮?そんなバイオレンスなひな祭りはノーサンキュー」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待った!お雛様と言えば…そう!子供!私達がお似合いだと思うわ!」

 

「暁……大人のレディとは?」

 

「ぐっ……そ、そんなものは…要らないわ!」

 

「血の涙流す程?」

 

「だって私だけ指輪まだだもん…1番お姉ちゃんなのに……」

 

「ちゃんと渡すからあ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「お内裏さま…お雛様…」

 

 

 

「そんな年齢じゃないだろう?」

 

「……」

 

 

やめたまえ…駆逐艦や潜水艦達よ…

アレだ…お前らは生まれ歳的にはね…あかんのよ……おい、やめろ!連合を噛むんじゃあない!!魚雷を向けるんじゃないッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、でも…お雛様のポジは譲りマース」

 

 

「お?珍しい判断じゃないか」

 

「そんな事しなくても…私が正妻と言うことには変わりありまセーン!何より…えへ…えへへ」

と、お腹をさする金剛。

 

「いや、子供はないから」

 

 

「くっ…!しばき倒したいけど…ッ!お腹の中の子に罪はない」

 

「ないから」

 

「卑怯だぞ!コンゴー!!」

 

「だから違うって」

 

 

 

 

 

「うっ…つわりが…」

 

「吹雪は乗るんじゃねえええ!!!」

 

 

 

 

 

「もう…お雛様とかいいから…私を貰ってください」

 

「加賀!?!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「面倒いな…やっぱり最後はコレ()しかねえよ!」

武蔵がグーを作って言う……脳筋め。

 

 

 

 

「ふふ…私達に勝てる人はいるかしら?」

 

間宮と伊良湖と鳳翔が立っている。

 

 

 

……ご飯を人質にします♡のプラカードを掲げて。

 

 

 

 

 

「「「「すんませんしたぁ!!!」」」」

 

 

全員綺麗な土下座だった。

 

 

「うっわー…大人気ねええ」

 

 

「勝てば良かろうなのですよ?」

 

「過程や方法なんてどーでもいいんですよ」

 

「結果だけが全て!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なら3人のうち誰になる?」

 

 

「………」×3

項垂れる3人。

まともにやったら鳳翔が強いだろうけど…。

間宮も…中々剛の者なんだよなあ…

恐らく、武蔵や桜赤城達や桜三笠を土下座させられるのは……

 

 

 

 

 

 

明日が怖えよ…

 

 

 

 

 

 





おバカな話でもいかがですか?


少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!

感想などお待ちしてます!


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318話 続 鎮守府のひな祭り

誰かが言った。

1人だけが幸せになるよりも…皆で幸せを噛み締めたい…と。

 

 

そんな訳で始まりましたデスマーチという名の写真撮り。

他の役は妖精さんをお菓子で買収したらしく…

 

 

 

『…全員で撮るってもさ?他の役はどーすんの?着替えと『大丈夫にゃ!妖精さんを雇ったにゃ!』

なんて桜明石が言ってたなあ…。

 

 

 

 

 

「よろしくお願いするにゃ」

 

「うへへ…まかせてくださいよ…うへへへへ」

 

何やら黒く笑う妖精と桜明石。

 

 

「変なことしたら……飯抜きな」

 

「…そういうリアルなのはキツいにゃあ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

用意されるひな壇、衣装!!

そして別の会場ッ!!

 

 

「何これ?」

 

「写真撮りの順番はオークションにするにゃー」

 

「その稼ぎはどこに?」

 

「……ち、鎮守府の経営に…」

 

「嘘つけや!絶対ぇ店の拡張とかだろ!?」

 

「て、手数料は貰うにゃあ」

 

「ほーーん……俺をダシにしてそんなことするのか〜…悲しいなあ…いや、本当に悲しいなあ…」

 

「…に、にゃ!?」

 

「桜明石の事…信じてたのになあ…」

 

「…ご、ご主人……わかったにゃ…」

「……ちなみに1番の特権は…指揮官と1日…ゲフンゲフン」

 

「やめて良かった!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

てな訳で…

くじ引きで順番に写真撮り。

 

 

…アレだな。

ただでさえ可愛い娘達が和服を着ると…うん…可愛い。

特にねえ…海外艦は……やめて!見ないで!そんな目で俺を見ないで!!

 

 

 

 

 

 

 

撮影…?

何とか無事に終わったよ?

 

え?

当たり前でしょ!?

暴走気味な奴を取り押さえるのにどれだけ時間かかったことか!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋に戻ると、珍客が来ていた。

 

「あ!まも君♡お帰りなさい〜」

 

 

 

「幸ちゃん…?!」

 

「そーだよ!幸でーす!」

 

と、笑顔で鍵を掛けたはずの部屋で待ち構えていた幸。

笑顔は可愛いんだけど…やはりまだ治ってない顔の傷は痛々しい。

 

 

「顔大丈夫?」

 

「あ、うん!心配してくれるんだね」

「骨も折れてないし、恐らく傷に残ることはないってさ」

 

「……そうまでなって得られたモノはあった?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あったよ」

「僕からしたら夢みたいにね」

 

 

「あなたが私を救ってくれたから…きっとそうなる未来(あなたが世界から弾かれる時)に私があなたを受け入れて…認めて…よく頑張ったよ!って言うことが」

 

 

「……あの時…麗が僕の目の前に立ってくれたこと」

「あのお婆さんが撫でて抱き締めてくれたこと」

「皆が帰ってきてくれたこと」

「まも君がこうやって居てくれること」

 

「頑張ったねって…あなたが言ってくれたこと」

 

 

「ずーーっと欲しかったものが一気に手に入ってさ…」

 

「怖いんだ」

 

 

「怖い?」

 

 

「この幸せが…すぐに夢だったって思うくらい…無くなっちゃうんじゃないかなって」

 

 

「…目が覚めたら……またあの時に戻っちゃうんじゃないかなって」

 

 

 

 

現実から非現実に切り替わった時…その気持ちは痛いほどに分かる。

幸せが一気にやって来た時…その分不安が大きく押し寄せる。

寝て…覚めたら…もしくは、ある日突然… 無かった当たり前に、元に戻るように…

 

 

でも

 

 

 

「…そうはならないさ」

 

 

そうさせないから…。

 

 

「え?」

 

 

「絶対そうさせないから!」

 

「…ッ!」

 

「今はまだ信じられないかも知れないけど…きっと…きっと!!」

 

「……そこにまも君は居る?」

 

「ん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の…その先(幸せ)に…あなたは居てくれる?」

 

 

 

 

 

「…君は…」

 

「うん?」

 

「その…君はそこまで俺を?」

 

「うん!僕にとって…あなたはそれだけ大きな存在だよ」

 

 

 

「なら…うん、約束するよ。君の隣に居るよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「麗にも負けないからね」

 

「え?」

 

「あの子はライバルだから!絶対負けないからね!!」

彼女はそっと彼に駆け寄ってキスをした。

 

 

「……えへへ…」

 

「ちょ!?幸ちゃん?」

 

「え?嫌だった?そんなに慌てて…」

 

「いやとかじゃなくて…」

 

大体こんな時には……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ?……何やってんの…?救君?」

ほらね?修羅の顔をした麗が居たよ?

 

 

 

「麗ちゃん?節分はまだ先だよ?」

 

 

「は?」

 

「ひっ……すみません…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやいやいや!何してるの!?何したの!?何されたの!?」

 

「麗見てたんでしょー?えぇ〜?もちろん…ちゅーだけど?」

 

「だから何で!?!?」

 

「好きだから…だけど?」

 

「はぁぁあ!?!?救君も何ぼーってしてるの!?」

 

「え…いや、あの…」

 

「何でよお!!!」

ガクガクと俺の首根っこを掴んで振りまくる麗。

 

「ズルイ!私もッ!してほしいのに!!」

 

「ダメだよー!!まも君は僕のだよ!!」

 

 

「何でよ!?私は結婚だってしてるのに!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?でもまだ神崎じゃないよね?」

 

「うっ…そ、それはそうだけど…」

 

「ならまだ婚約…だよね?他の艦娘達も同じな訳で…」

 

「……うん」

 

「なら私にもまだ!!」

 

「うわぁぁん!!だめええ!救君は私の旦那さんなのー!」

 

「ちょ!泣かないでよ!?」

 

「負けない!!ぜーーったい負けない!」

 

 

 

怖い!女の争いは怖い!!

そろりそろりとその場を逃げ出す俺。

 

 

 

 

 

「「「「待てえええええ!!!」」」」

 

提督の嫁は私だーー!!

と、エントリーする面々!!

おい待て…その紙は?え?婚姻届?

 

 

「「え?何その格好…あと手の紙…」」

 

「おや?お2人さん?節分はまだ先だよ………ってすみません、空気読めなくてすみませんだからそんなに睨まないでくださいほんとお願いしますなんでもしますから」

 

あの時雨が負けた…だとッ!?

 

「はい…提督とひな祭りの写真撮りをしてました…皆お雛様でしたはい…え?この婚姻届?…結婚って話が聞こえたのとどさくさに紛れて嫁になりたかったんですやめてくださいそんな鬼の表情でこちらを見ないでくださいほんとにごめんなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぐるりとコチラを見る全員。

 

窓から逃げようとする俺。

 

 

「どこ行くの?」

 

 

「あの空の向こう側に逝きます」

 

 

 

 

 

 

 

「逃すかッ!!!」

 

 

「「「追えええ!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拝啓…元帥閣下…

有給休暇とれますか?

結構溜まってません?

 

 

 

え?ダメ?……そう…

 

 

 

鎮守府は今日も賑やかです。

 

 






顔の傷?
大丈夫!次までには治るから!!


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319話 冬ですけど…

えーと…

怖い話を1つ。

 

 

 

 

 

部屋でのんびりしてた時だった。

 

 

 

 

 

夜の執務室の電話が鳴る。

ジリリリリリリン!ジリリリリリリン!!

無論、大淀達は業務を終えて部屋に居る頃だろう。

 

火急の用件か?と思いながら執務室の電気をつけて電話に出る。

 

「はい、西波島鎮守府…執務室」

 

「……」

 

電話の向こうは無言である。

間違い電話か?

 

 

 

 

 

 

「私メリーさん…今…港にいるの」

 

「どこの…?」

ガチャリと切れた。

 

…いや、港って沢山あんじゃん?

でも不気味なのには変わりない…

 

 

 

 

 

 

 

 

ジリリリリリリン!!

   ジリリリリリリン!!

 

ゴクリ…と飲み込みながら電話に出る。

 

 

「はい…「私メリーさん…今…島の港にいる「やめるんだ!!絶対やめるんだ!!」

 

 

 

 

「ウフフ…怖いのね?大丈夫…すぐに会えるから…」

ガチャリ…

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ま、マジか…マズいぞ…ヤバイぞ…」

冷や汗がドッと出る。

恐らく…門、玄関、廊下…そしてこの部屋…となるだろう!ヤバイぞ!

私室に戻ったとして…も……クソッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジリリリリリリン!!

 ジリリリリリリン

 

恐らく正門から…か?

 

 

 

 

ガチャリ…

 

 

「……もしもし……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私メリーさん…今…「侵入者ァ!夜戦だァァア!!!」え!?何!?何で私の後ろに現れるの!?嫌ッ!こないでえええええ!!!」

 

 

 

 

 

だから言ったんだ…やめるんだ…と…

 

 

 

 

ん?怖かった?

まあ…怖くないと言ったら嘘になる。

 

マズい?ヤバイ?

あぁ…あの子がな!!

 

 

イク達が丁度巡回ルートから離れててよかったねえ…いや本当…

 

だからそれ以外の

正門……神通、川内。

玄関…天龍が居るわけでさ?

 

 

 

 

 

 

 

うわー…ドッカンドッカンはやってないけど…雄叫びが聞こえるなあ…

 

「久しぶりの侵入者だぁあ!!夜戦じゃぁあ!!」

 

「…鎮守府の平和を脅かす者には…死を!!」

 

あぁ見えて神通って意外と武闘派なんだよねえ…

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから何で私の後ろをとれるのよおお!?いやァァァア!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

さて…無事に居られるかな?

……あの子が…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジリリリリリリン!!

 

「……大丈夫?」

 

「わ、私…メリーさん…何よここ……本当…ハァ…ハァ…げ、玄関に居……え?なに?それ?刀?え?嘘?」

 

 

「う、うおおおおお!!て、手前なんか怖くてねええええええ!!」

 

「泣くか叫ぶか刀持つかのどれかにしてよおおお!!あなたの方が怖いわよおおおお!!!」

 

 

 

 

もはや電話越しではなく、直に聞こえる悲鳴。

 

「うおおおおお!!!滅殺うううう!!」

 

「いやぁぁぁあ!!!」

 

 

 

 

「てんりゅー…頼むから物は壊さないでね〜」

 

 

ガチャリ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジリリリリリリン…

 

ガチャリ

 

 

 

「…大丈夫?」

 

「ヒュー…ヒュー…なに?ここ?バケモンパラダイス?何でどいつもこいつも私の背後とれるのよ…」

 

 

 

 

「まあいいわ!」

「私メリーさん…今あなたの部屋の前にいるの…」

 

 

 

「開いてますよ?鍵」

 

 

「え、えぇ…?あ、うん…行くわ…」

 

 

 

 

 

 

 

ガチャリと執務室のドアを開けると…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら?誇らしきご主人様に…何の用でしょうか?ご用件ならこのシリアスが承ります」

 

 

 

ニコリと輝かしいメイドスマイルの桜シリアスが居る。

 

 

 

 

 

「ほっ…普通のおんn…はぅ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メリーさんをアイアンクローで持ち上げる桜シリアス。

言動と行動が合ってないのだが?

 

「え?浮いて…って!?痛い!!いだだだだ!!痛い!」

 

 

 

 

てか?いつの間に?

 

「メイド隊の部屋と執務室は直通ルートがありますので」

 

「初耳ですが!?」

サラッと衝撃な事実を知る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「誇らしきご主人様は…お部屋にお戻り下さい」

 

「殺っちゃだめだよ!?」

 

 

 

ガチャリと執務室から私室に戻る。

確かに桜シリアスはドジであるが…戦闘や俺の脅威の排除に関してはなかなかすごい。

むしろ普段のドジこそ…怒られる為にやってるワザとでは?と思うくらいに。

一度本人に聞いてみたところ…

 

いえ?誇らしきご主人様?

そそそそんなことはありません?

ええ、そんなことはありませんですとも!

そう思わせたなら私の落ち度でございます…

私に!私にお仕置きを!なんて言ってたなあ…

 

 

 

 

 

 

ドアの向こうからはドタドタと聞こえる。

 

 

 

んで…

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、追い詰めたわよ…ヒュハー…ヒュー…」

「さ、さぁ…恐怖に…おののののののの…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うん

予想通りかな?

 

 

 

 

 

「ヘーーイ…」

 

 

「あらぁ…?」

 

「「あなた…なにやってるの…?」」

 

 

 

 

最後に乗り越えなくてはならない壁…ラスボス達(金剛と桜赤城)

 

 

待て!1つ聞きたい。

どうやってこの部屋に入った?

 

 

 

 

 

 

「え…?なに?ちょっと…聞いてn…ぁぁぁぁああああああ!!」

 

メリーさんは連行されて行った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「救君…?」

 

 

「まも…君?」

 

待て2つ聞きたい。

なんで君達はここにいるのかな?

そしてなんで君達は俺の方を向いてるのかな?

 

 

 

「また変な女連れ込んでるの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付いたら鍵が掛かってようと…めっちゃ離れてようとも

いつの間にか居るお前達の方がホラーだわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだァ?!賊かぁ!?」

わらわらと集まって来る艦娘達…。

 

 

 

 

「ダーリンに何しようとしたんデース…?」

 

「そうよ〜?何が望みなんですかぁ…?」

 

「ひいいい!?ふ、増えたぁあ!!!??」

 

 

 

 

 

「ごごごごごめんなさいいいい!!」

 

 

恐らく世界で1番安全……俺にとって安全な場所は…鎮守府であり、俺にとって1番アスレチックな場所も鎮守府だと再認識した。

 

 

 

 

 

 

「話は終わってないよ?」

 

 

「あ…」

 

 

 

 

 




お気に入りが730人ー!ありがとうございますー!(๑╹ω╹๑ )嬉しいでーーす!!


たまのホラー回?
たまには…ね?


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320話 足柄と1日夫婦 ①

 

 

「はーい♡提督ー」

 

「あ、足柄さん…もう…カツ…は…」

 

「後10枚はあるわよ?」.

 

「狼さんはもうお腹いっぱいです…」

 

 

 

 

 

 

 

 

さてさて

以前に足柄から絶対幸せにするから!とまさかの逆プロポーズを受けました。

 

故に指輪を渡すタイミングが見失われております。

足柄はなんか満足してて多分忘れてるっぽくて…

 

 

そんな中迎えた1日夫婦の前日…

俺は未曾有のカツ責めにあっていた!

 

朝もカツ

昼もカツ

3時のおやつもカツ… ←Now

このままだと夕飯も…夜食も…

 

何がアイツをそうさせるの?

えっぐいよ…食べるけどさ!!

 

 

 

「……死に体じゃないか…」

 

「…カツ……」

 

「カツじゃない那智だ。…まあ…心中察する…」

「毎回食べ切れる提督も人間離れしてるがな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……提督?なんで那智と仲良さげに話してるのかしら?」

 

ゴゴゴゴという音が似合いそうなのは間宮や鳳翔に次いでこの場面に間違いないだろう。

姉妹へも嫉妬を向けるあたり、中々の…ヤキモチ妬きさんかな?

 

 

 

 

「いや…足柄…カツばかりだと提督もキツいと思うぞ?」

 

「…そうかなあ…やっぱり…」

 

「気付いてはいたんだな」

 

 

 

そりゃね

カツご飯

カツ

カツ(味噌汁椀)

カツ(サラダ)

冷カツ(デザート)

 

だもんね。私から見てもキッツイと思うよ?実際。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぷ……胸が苦しい…」

そんな一言を発する救。心なしか顔が青ざめてる気がする。

そこにサッと足柄が寄って来る。

そして彼をまるでヒロインのように抱える。

 

「あら?それはきっと恋よ!?提督!」

 

「胸焼けじゃないか…?」

ポツリとツッコむ那智。

 

「…君の料理なら…平気さ……」

彼女を見上げながら彼はつぶやいた………少し青ざめながら。

 

 

 

 

「他所でやってくれ…バカップルめ…」

羨ましさと切なさと…何とも言えない感情の那智は2人を摘み出した。

なぜかって?

この部屋は足柄の部屋でもあって那智や他の姉妹部屋でもあるからね!

 

 

 

 

カツパーティーから解放された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ?今日は提督の部屋で寝てもいいかしら?」

 

「ん?いいよ?」

 

アッサリとした返事かも知れないが、基本的には皆そうしてる。

前の日から泊まって…次の日何かして…泊まって…朝に涙の別れ?みたいな。

「ありがとう!準備して行くわね」

ウキウキ加減がどれくらいかが伝わって来るほどの笑顔。

 

 

アレで…結婚させた艦娘No.1なのがなんでかわからない、

 

「なんか失礼な事思ってない?」

 

「ナイヨ」

 

「…焦ってるのと…じっくり行くのでは別なんだからね?」

 

ハハッ…バレてらあ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

想像するだけで顔がにやけてくる。

ドキドキして……しすぎると余計にカツ揚げちゃうんだけどね。

ごめんね?でも、ちゃんと胸焼けしながらでも食べてくれるのが…うれしくて。

 

 

…私が幸せにするって言っちゃったケド…

好きで居てくれてるかな?幸せにできてるかな?

 

……えと……あなたって呼んでもいいかな?

呼んでみようかな?

なんて考えたり!! きゃぁあ!恥ずかしいよおお!!

 

 

 

「……足柄が布団に突っ伏して悶えてるんですけど?」

妙高が苦笑いでその様子を見つめる。

 

 

「早よ行け…」

那智が呆れ顔で言う。

 

 

「えへへぇ〜行って来るよ〜」

 

 

「わあ…足柄姉さん…幸せそう…羨ましいな」

羽黒だけが羨ましそうに見つめていた。

 

 

 

「飢えてないな…満腹なワンコだなあ…ありゃ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深呼吸。

深呼吸。

 

一緒に見る映画…ヨシ!

一緒に食べるもの…ヨシ!

私の服装…気持ち…ヨシ!

 

あなた…って呼ぶの! ヨシ!

 

 

コンコン

 

「どうぞ」

 

 

「失礼…しま「おかえりなさい」

 

一瞬戸惑う私に彼は言った。

「失礼しますじゃないぞー?俺達は夫婦なんだろう?なら…ただいまでいいんだよ?」

 

あぁ……本当に…優しいのね、あなたは。

 

「…ただいま!」

 

 

「一緒に映画見ない?」

 

「ほーう…どんな?」

 

「えとね…アクションものなんだけど」

 

「ありゃ意外!!」

 

「なんでよ!?」

 

 

 

 

 

足柄の用意した映画は2本。

どれもアクションモノである。

1つはスパイがハニトラにかかりながら敵国でドンパチ。

もう1つは筋肉モリモリのマッチョメンがロケランもって誘拐犯とドンパチする映画。とんでもねえ…待ってたんだ…。

 

意外と恋愛モノが好きだと思ったのは建前で、ぶっちゃけこういうのがめっちゃ好きだろうなってのは分かってた。

アクションの度に目をキラキラさせるのは可愛い。

 

 

「ん?提督?どしたの?」

 

 

「可愛いって思ってさ」

 

「え!?え、あ、ありがと…」

顔を赤らめて喜ぶ足柄。

「………ん」

そのまま目を閉じてこちらを向くのでなく、彼女からキスをしてきた。

 

「好きよ?提督」

 

「抹茶風味」

 

「茶化さない!」

 

「抹茶だけに?!」

 

「ぶふっ…」

「お、乙女の勇気を……」

 

「明日のキスはきっともっと違うよ」

 

「そう…?」

なんて不思議なやりとりをしながら映画を見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「明日は何する?」

この質問はきっと想定済みだったのだろう。

足柄の目がキラリと輝いた。

待ってました!と言わんばかりにこちらを向く彼女。

 

「明日のプランは完璧よ!」

「あ、朝起きたらすぐ出るからね?朝ご飯は…明後日作るから!明日はモーニング食べに行きましょ!」

 

「ふふ…。珍しいでしょ?たまにはそんなのも有りかなあっておもってね?どう?」

 

「君と過ごせるならどこへでも」

 

「うん!なら今日は早めに休みましょう?」

 

「映画2本観た後に言う?」

と、笑いながら問いかける。時刻は午前0時を余裕で回っている。

 

「……提督と居ると…時間忘れちゃうのよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「寝た?」

彼に問いかけた。

「……」

彼はスースーと眠ってる。

 

私は布団から出て、彼の後ろに入り直した。

彼を背中から抱き締めてみた。

温かい体と…シャンプーとかの色んな香りと…提督の…

 

「好きよ……本当に好きすぎる…のよ…提督」

「明日くらいは…狼じゃなくていいかな?」

 

「でも…きっと後悔させない1日にするからね」

 

 

 

 

 

私は彼を抱き締めたまま眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 




次話以降、更新が遅れます。
すみません…。






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321話 足柄と1日夫婦 ②

「さあ!行きましょう!今日は私に任せてね!」

 

ぶっちゃけ結構前から今日の事は全て任せて?なんて足柄が言うから俺はノープラン。

妙高達曰く、かんなり色々と姉妹を振り回してリサーチしたとか…

さすがは飢えた狼…か?

 

 

 

「まずはココ!モーニングのオススメよ!」

 

「カフェのモーニングか」

 

ええ、そうよ!と通されたお店は結構…好みかも。

ログハウス風の建物の窓からは森を眺める事ができる…上に店内には暖炉が設置されている。

何だこれ?俺の好みにドストライクじゃん…。

 

 

メニューはトースト…プレーン、マーガリンシュガー、チーズ

半分のパンが3つで3つの味を楽しめる…だと?!

残りの1つは…ラスク風にされていて…コーンポタージュにつけて!?

 

 

「…………めっちゃ美味い」

 

プレーンが美味い!そして何より…チーズマヨ?これやばい激ウマ…

毎日でも食べ……たら殺されるな…うん。

 

 

「本当!?気に入ってくれた?嬉しいなあ」

 

足柄もニコニコと嬉しそうに一緒に食べる。

 

「こーやって…好きな人と好きなところに行くのが夢だったの」

照れてはにかんだ足柄にドキッとした。

 

 

 

 

手を引かれて歩くのは何だか珍しい気がする。

と言うより…少し焦ってる…?

 

 

嬉々とした表情は変わらないが………

 

 

 

 

「お昼はぁ〜〜ココ!ナンカレー屋さん♡」

 

「ほう!!」

 

「ここのね?チーズナンとシーフードカレーがおすすめなの!」

 

「なんだ!?このとろけるチーズは!?めっちゃ伸びる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どんどん行きましょ!」

足柄が俺の腕に抱きついて歩みを進める。

 

 

ゲームセンターも行った。

服屋も見た。

おまかせコースはかなり充実したデートとなった。

 

 

 

「夕飯は私が作るから…一緒に買い物して帰りましょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰りの船の上での事だった。

荷物を置いた足柄が俺を甲板に呼んだ。

 

 

不安そうな、切なそうな、儚そうな顔の彼女は俺に問いかけた。

 

 

 

 

「ねえ?提督?私…言った通りに幸せにできてる?」

「あれから守れる艦娘で居られてるかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ…

ずっと不安だったんだな。

 

色んな事を負い目に感じながら過ごしたのだろう。

責めたのだろう。

 

そんな必要ないと言っても気にするのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

彼女なりに…ずっと頑張ったのだろう。

確かに幸せだ。

うん…。

 

 

 

 

いや

 

 

 

違うだろう?神崎 救。

確かにソレも有りだろう。

幸せにしてもらうのも有りなんだ。

でも違う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が彼女を幸せにするんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

伝えよう

あの時…悔しかったと。

 

 

 

 

 

 

 

 

だから…

 

 

 

「足柄」

 

「ん?何?」

 

 

 

 

 

 

 

「コレを…君に」

 

 

 

 

「あ……指輪…」

本人もきっと存在を忘れていたソレを差し出す。

 

 

 

俺が言葉を発する前に彼女が喋った。

「あ……そっか…私…あはは…」

 

 

「本当に良いの?私が貰っていいの?」

 

 

 

 

 

彼女は言う。

 

「提督は私のせいで…一回刺されて死んで…那智にも殴られて…」

「私が居たから…ああなったのに優しくて…」

 

「本当に私なんかで––––––

 

 

 

俺はその言葉を遮る。

 

 

 

 

 

 

 

「お前を守ったのは…艦娘だからでも…上司として…提督としてではない」

 

「愛する1人を守りたかったから!1人の男として…君を」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ッ!!」

 

 

 

 

「俺は…足柄を守ることが出来て良かったと思ってる」

 

 

 

 

 

 

「俺は…幸せだぞ?」

「確かに死んださ、殴られたさ…でも…今もちゃんと生きてる。生きて…君の目の前に居る」

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも」

 

 

そう、でもと彼は言ったのだ。

一気に不安になる私。

ドキドキする鼓動が胸に当てる手に頭に嫌なほどに響いて来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は君を愛している。俺が君を幸せにする」

「何があっても君を死なせない。君がその命を全うしたその最後には…きっと飢えなんか忘れられる程の幸せをこれからをかけて君に捧げたい」

 

 

 

 

 

 

 

「この指輪は…その約束の証だ」

 

 

 

 

 

 

 

「……君が他の奴にプロポーズを受けた時は………モヤモヤした。ごめんな。当たり前に君が居るって思ってたんだ」

「だから…君が俺にプロポーズしてくれたのは嬉しかったんだ」

 

 

 

 

 

「頼りない提督だろう。女たらしと言われるだろ…違うな、言われている。皆を幸せにしたいとも思ってる。でも…」

 

「君を想う気持ちは…誰にも負けない!」

 

 

 

 

 

「…ッ!……ッ!!!」

 

 

 

 

あぁ……

こういう人なんだ…。

 

この人は本当に私を嫌ってもなければ…

あの事すら…気にしてないんだ。

 

 

私が幸せにするって言ったのに…

この人は…自分から…。

 

 

私あなたの為にって思ってた。

力抜いていいんだよ…って

 

失礼します…の時もそうだった。

最後まで言わせずに…おかえりって言ってくれた。

私の事を…ずっと…ちゃんと考えてくれている人なんだ。

 

 

ありがとう。

 

 

 

 

 

「…私のプロポーズ……足りなかった?」

少し意地悪を言う。

 

 

「んにゃ?」

 

でも…と彼は言う。

「愛する君に俺から伝えたかったんだ」

 

 

 

 

 

 

 

「愛してる。だからどうか…この指輪を「もちろん!!喜んで…なによりも!なによりも喜んで受け取るわ」

 

 

彼が私の手を取って…ソレを指に入れる。

 

途端に左手の薬指に慣れないけれども心地いい違和感と…確かにずっしりとした愛の重さを感じた。

 

 

 

 

 

「昨日言った意味…」

 

 

彼がそっと私に口づけをした。

 

 

 

彼は言った。

明日のキスはきっと違うキスになる…と。

 

 

夫婦として…本当にケッコンしての初めてのキス。

私の初めてのキスはあなたに捧げた。

ケッコンしての初めてのキスも…。

 

 

 

 

「ねえ?」

 

「うん?」

 

 

「あなたって呼んでもいい?」

 

 

 

「ああ…いいよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなた…」

 

「うん?」

 

 

 

 

 

「あなた」

 

「はい」

 

 

 

 

 

「あなた!」

 

「足柄!」

 

 

 

 

「ふふ…呼び方が変わっただけなのに…何だか…ずーっとあなたを近くに感じる」

 

「良かった…夫婦だもんな…本当に」

 

 

 

 

 

「ねえ?」

 

「うん?」

 

「昨日言った…事本当だったね…キス…」

 

「でしょ?」

 

 

 

 

「あなた…もう一回…ううん、もっと…してもいい?」

 

「うんいいよ!たくさんしよう?」

 

 

 

 

 

寒い冬の船の上だけど…寒さなんか忘れた。

涙で唇はしょっぱいけど…

それでも私は彼から離れなかった。

 

ちらつく雪も、通り抜ける冷たい風も…

私達を離すことはできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ばかな…」

 

「………」

 

 

「完全和食的だと!?」

「な、なぁ…?足柄…?カツは?カツはどこだい?」

 

「ないわよ」

 

「嘘だ…出るんだろ?山盛りのカツ…がよぉ…」

 

「いや、本当にないわよ?」

 

 

目の前にあるのは…

鯖の塩焼き、卵焼き、味噌汁、ごはん。

プチおでんに、きんぴらごぼう…。

 

 

 

「カツをくれぇ…アレが…アレがないとぉ…ヒヒ…」

 

「カツジャンキーじゃない!!た、たまには無くてもいいでしょ!?」

「わ、私だって…カツ以外も作れるんだから」

 

「だから…朝昼は外食の少し濃いめにしたのか」

 

「正気だったのね!?もう……そうよ!この和食を引き立てるためのね!!」

 

「さすが狼…抜け目ない」

 

「ふふ…さあ?食べましょう?あなた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ん!美味い!優しい味付けだな」

 

「そう?ありがとう!おかわりもあるからね?」

 

食べる姿をニコニコと見つめる足柄。

 

「??」

不思議そうに思う彼に彼女は言う。

 

「そんなに美味しそうに食べてくれるのって…あなたくらいよ?」

「だから…あなたの食べる姿…好きなの」

 

なかった微笑む彼女が可愛くて顔が熱くなる。

「……ッ!?」

 

「あら?照れた?照れたの!?」

 

「……」

顔を逸らせて手を振る救。

 

 

「ふふっ。あーもう!好きよ?好き!大好き!!愛してるわ?」

相当嬉しかったのか、横に来て抱きつく彼女。

 

「食べにくいよ…足柄」

 

「やだー!離れたくないもの」

 

「終わってから…な?」

と言う彼を見て足柄も何故か顔が赤くなる。

 

 

「おや!?おやおやおや!?」

 

「な、なによおお!!」

 

「可愛いな、足柄」

「愛してるよ」

 

 

 

「〜〜〜ッ!!も、もうー!?」

 

2人はおアツいひと時を過ごしてる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから…他の部屋でやってくれえ」

「胸焼け…お腹いっぱいよ」

 

「…私も…あんな風に……」

 

 

 

場所は別として…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「オイ!やめろ!足柄ッ!キスしようとするな!やめろ!羽黒への悪影響になる!」

 

「やめなさいー!せめて外で!羨ましいから!泣きたくなるから!!」

 

「はぅ…姉さん……」

 

 

「「「あああああああ!!!」」」

 

 

 




カツジャンキー…って何だ?


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322話 羽黒と1日夫婦 ①

一歩…踏み出すんだ!!

前に…前に!!

 

だから…お願い…力を貸して!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ああああの!ふ…ふちゅ…不束者ですが」

「どうぞよ、よよよろしくお願い  いたし ます!!」

 

 

部屋に帰ったら羽黒が顔を真っ赤にして三つ指ついていた件について…

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひううう…わ、わたしなんかあ…」

プシューって音が聞こえてきそうな程に顔が赤い。

加虐心が疼くが、後が怖い!辞めておこう。

 

 

 

 

 

「あ!夕飯……作ったんですけど」

 

「マジか!食べる!食べる!!」

 

 

 

目の前に並ぶ料理。

大人しめな和食。

しかしながら味付けは薄めだがしっかりとされていた。

 

 

「……あの…お味は…?」

「あ、あの…つ、疲れてるかなあ?なんて思って少し薄めにしました!わ、私にできることは…それくらいなので……」

 

「結婚しよう」

 

「は!?え!?!?」

 

「本当に…羽黒は優しいな」

そう言いながら頭を撫でてくれました。

 

「あ……ありがとうございます…」

 

2人で黙々とご飯を食べました。

時折向けてくれる笑顔が…嬉しくて、微笑み返そうとして恥ずかしくて顔を伏せてしまう。

あと一歩踏み出したいのに。

 

 

 

 

 

 

 

『一歩を踏み出しなさい?』

 

『恋なら…私達に叫びなさい?力を貸すわ』

 

姉さん達のその言葉を思い出した。

部屋を出てここに向かおうとする時に言ってくれた言葉。

 

 

だから…

姉さん…私に力を貸して…ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トン…と背中を押された気がした。

 

 

 

 

「…ッ!!提督!」

 

「うん?」

 

「……す、好きです」

「1日…わ、私だけを見てください!!」

 

座ったままペコリと頭を下げた羽黒。

 

 

 

 

 

 

羽黒は基本的に気弱な性格だ。

キレた時は……うん、アレだけど…。

 

それでも細かな気遣いが本当にできる子で…俺もそれに何度も助けられた。

 

 

 

 

 

「羽黒?」

 

 

「はい…?」

彼女の体がビクンと跳ねた。

慌ててこちらを向いたようだ。

 

 

 

 

 

「………ッ!?」

私はその状況を飲み込むのに数秒は掛かっただろう。

 

目の前に開いた小箱があったから。

そこから覗いていたのは…足柄姉さんが着けていた幸せの証。

いいえ?あなたと居られる今も幸せなのですが…それをもっと…もっと近くに感じられるであろう幸せが…目の前に。

 

 

 

 

「あの…あの……て、提督?」

嫌な程に大きな鼓動が全身から伝わってくる。

 

 

「……君にコレを贈りたい」

「俺とケッコンしてくれないか?」

 

「優しい君が好きだ。怒った君も、困った君も…」

「ずっとそばにいて欲しい」

 

 

「……は…ぃ…ッ………よ…よろごんで…」

指に伝わるこの重さ…

唇に伝わるこの暖かさ

 

 

 

「幸せ…です」

 

 

 

 

 

指輪もキスも…嬉しくて泣けて…ああ

こんな幸せが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日は朝からお出かけです。

街のカフェでホットサンドを食べてからショッピング。

 

「このマフラー羽黒に似合いそうだな」

と、店に飾ってたマフラーを私に巻いてくれました。

 

「あ…あったかい…」

ごめんなさい…。嬉しさと緊張で月並みな感想しか…うう

 

「気に入った?なら…君に贈るよ」

 

「ふぇ!?い、いいいんでふか!?」

 

「もちろんとも」

彼は笑顔で答えてくれた。

 

「えへへ…」

と、マフラーに埋もれてみる。

……暖かいのは…きっとマフラーのおかげだけじゃない。

 

 

幸せだなあ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんで?

 

なんで邪魔されるの?

 

 

 

 

ランチ前のデート中に街に深海棲艦が現れた。

はぐれ組だろうか?

いや、そんな事より…守らなきゃ!!

 

 

「危ないッ!!」

 

 

 

砲撃してくる彼女達。

 

砲撃から私を庇って怪我をした。

 

え?

 

「提督ッ!!提督ッ!!」

 

「大丈夫ッ!このくらい」

 

 

 

 

 

 

 

『む?…貴様…提督と言ったな?』

『都合が良い!来てもらうッ!!』

提督を引っ掴む棲姫。

 

 

「待ちなさ…きゃあ!!」

追いかけようとする私を深海棲姫は弾き飛ばした。

 

 

「くっ…羽黒ッ!!応援を呼べ!俺は……皆を……

連れ去られる提督。

 

 

 

 

 

 

 

武装が有れば……いや!武装が無かったって!!

艤装…展開ッ!!

 

 

街も…あの人も私が守る!!

 

私は海に立った。

 

 

 

 

追いかける私を見た奴が言う。

『これでも…?』

 

ザパァ…と水面に現れる深海棲艦達。

 

 

 

「負けるもんか…!!」

 

私は…敵陣に突っ込んで行く。

 

 

 



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323話 羽黒と1日夫婦 ②

本日2話目の投稿です!!


くううっ…

なんて強さ……

 

徒手格闘じゃ限界が…

 

 

 

軽巡棲姫…遠い…

 

 

 

 

 

「はぁぁあ!!」

 

『弱い…』

 

「きゃぁあ!!」

近付くことすらかなわない。

どうすれば?

どうすれば良い?!

 

 

うるるっと涙が滲んだ。

 

『羽黒さん!?支援部隊…出ますから!耐えてくださいッ!!』

大谷から通信が入る。

内心ホッとした。

 

 

 

 

『…泣き虫か?…おや?仲間でも来るのか?』

『……そこで震えていろ?此奴が死ぬのも、仲間が死ぬのも…仕方ない事だから』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私1人じゃあ…仕方ないですよね。

だって…弱いですから…。

なんとか凌いで…増援を待って…戦うべきなんですよね…。

 

私は姉さん達とは違う…。

 

 

『……羽黒?』

 

妙高姉さん…?

もう…私1人じゃあ…

 

『羽黒の考えてる事は…わかるわ…』

『だから…甘ったれるなッ!!!』

 

 

でも…!でも!

私は…足が震えて…これ以上は…

 

『私達の言った言葉…思い出しなさい』

 

姉さんはそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだ…

そうなんだ。

 

 

 

 

 

姉さん達程に自信も愛嬌も強さも無い。

 

提督はいつも頭を撫でてくれる。

応えたい。

 

出てきても震えて何もできない…こんな自分が嫌だ。

 

 

 

 

 

 

大切なものを奪われて壊されて…

ダメだったって…自分に力が無かったから無理だった…って…

 

そんなの…納得できるもんか!!!

 

 

 

私が言ったんだろう?

私だけを見てって!!!

 

 

なら…逃げるな!!諦めるな!私ッ!!

 

 

 

 

やられて…少し煤けたマフラーが目に映った。

 

覚悟は決まった。

 

 

 

「私が…!私が…ッ!!あの人を助けるんだァァ!!」

 

「私の…大切な人を…返せ…返せえええええええ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ない筈の…武器が現れた。

妖精さんがニコリと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!!皆さん!妙高さん!応援に……

 

と言う大淀に足柄がニコリと笑いながら言う。

 

「…何言ってんのよ…あの子は大丈夫よ」

 

 

「だって…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女を誰よりも知る彼女達は…

誰よりも知る彼女達だからこそ言う。

 

 

 

 

 

「「「あの子が1番強いんだから」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

那智はフッと笑い言う。

「ただ一歩足りないだけ」

 

足柄はモニターを見つめながら言う。

「スイッチの入ったあの子は…凄いわよ?」

 

妙高は足柄の肩に手を置いて堂々と言う。

「妙高型の…誇り高い…武勲艦なんですから」

 

.

 

彼女達の目は…見送りの時の心配な目では無かった。

そう、それは恋愛に関して。

 

戦闘は…守ることは…あの子が1番なんだから…と。

自信を持った目で見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁああああッ!!」

 

羽黒は駆ける。

守りたい人目指して。

 

 

 

そして思い出す。

暖かな姉妹の姿を…。

 

 

『一歩を踏み出しなさい?』

 

『恋なら…私達に叫びなさい?力を貸すわ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…戦いなら…1番護りたいあの人に叫びなさい?』

 

 

『きっとあなたを押してくれるから』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は…ぎゅっと左手を握って叫んだ。

あの時みたいに…もう一度!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督…ッ!!提督ううう!!!」

 

「私に…力を…!あなたを…守りたいものを守る力を貸してくださぁぁぁあああい!!!!」

 

 

 

 

その声に…彼は応えた。

 

 

「羽黒おおおお!!!」

 

 

左手が…光った。

背中に何かを感じた。

 

 

 

 

行けって聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

羽黒 改

 

 

 

 

 

 

 

 

一歩踏み出した。

 

 

 

 

足りないッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

なら!

もう一歩!!自分から前へッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

羽黒 改ニ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「返してもらいます!私の大好きな提督さんを…」

 

 

 

『フン!小娘1人…捻り潰してやる!!』

 

 

「舐めるなよ…お前はその小娘に倒されるんだからな…」

 

 

『……ナッ!?』

 

 

 

 

 

 

奴が来る!

無数のル級やロ級を薙ぎ倒しながら単身でコッチに向かってくる!!

 

 

 

「あなたは許さないッ!!大切な人を傷付けて…許さないッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

『チィィ!!!』

棲姫は救を放り投げた。

そして羽黒向いて砲撃を始める。

 

 

 

 

「あたる…もんかぁ!!!」

羽黒は躱す。

全てを躱す!!

 

 

 

『ならば…コレな…グァア!?!?』

 

突如爆発する棲姫の砲身。

 

 

『マサカ…まさか!?コイツ…()()()()()()()()()()()()()()と言うのか!?』

 

 

『まだ砲身は……グゥウウウ!!?』

 

しかし、棲姫の砲身から弾が出ることは無かった。

砲撃しようとする全ての砲身に寸分違わず撃ち込んだのだ。

 

 

 

『クソッ!逃げ…ギャアア!!』

逃げようとする棲姫の背に砲撃が命中する。

 

「逃がしません…!絶対に!逃がさないッ!!」

 

 

棲姫はゾクリとした。

以前見た狼…奴以上の何かを感じた。

勝負は決した、私は奴には敵わないと体の奥から伝わってくる。

 

 

 

 

 

だが…

『なら…死ぬとてタダでは死なん!!コイツを…殺して……

 

棲姫は後ろに浮かぶ救を殴り飛ばした。

 

「ガッ…ハッ」

海面から掬い上げられ飛ばされる救。

 

そして…トドメを刺そうと…殺そうとした。

 

 

 

 

 

それを見た羽黒は…ついにキレた。

 

 

 

「させるかぁぁああああッッ!守るんだ!!私が…守るんだぁぁあ!!」

 

 

 

羽黒 改ニ 怒りの超過高揚状態(オーバードライブ)

 

 

自分が傷つく事よりも

負けて死ぬことよりも

あなたを失う事の方が…きっと…いや、絶対に辛いから!!

だから…何があっても…どうなっても!!

己の限界を超えて…艤装が悲鳴をあげようとも!

お前が…その人を傷つけるのを許さないッ!!

傷つけさせてしまった私を許せないッ!!

 

 

 

絶対に守り切る!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぐ…ろ?」

羽黒のオーラは赤黒くバチバチと音を立てていた。

 

 

 

 

「あの子…」

妙高は表情を歪めた。

 

しかし…那智だけは一切変えなかった。

「……清濁併せて受け入れる事も大切なんだ」

「…飲まれるな…お前なら大丈夫だ…羽黒」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

羽黒は辿り着いた。立ったのだ。彼の前に。

奴が出す手よりも速く割って入り、棲姫の腹に蹴りをぶち込んだ!!

 

 

 

ドッ…

バキバキバキと腹から音が聞こえた。

 

『グッ…ギャ…ああぁぁぁああああ!!』

 

 

飛ばされながらドンと聞こえた。

あの小娘が砲撃したのだろう。

回避に専念––––––

 

 

いや

 

 

 

あり得ない

 

 

 

 

 

なぜ?

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ほら言ったでしょ?飲まれかけてるけど…もうああなった羽黒は…負けないわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

羽黒の拳が棲姫に突き刺さる。

 

 

 

 

 

何故奴は…着弾よりも速く私を殴り抜けた!?!?

 

さらに後方に加速した棲姫…

 

 

 

『…デタラメだ!あり得ないッ!!あり得–––

 

そこに…放たれた砲撃が命中する!!

 

『くそ!くそおおおお!!!!』

 

 

ドガァァアン!!と言う音と共体がボロボロになって行く棲姫。

 

それでも羽黒は攻撃をやめなかった。

何度も何度も何度も何度も何度も打ち付けた。

それは棲姫は消え去った後も海面に撃ち続けられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近くの瓦礫になんとか登った救。

救には彼女の背しか見えなかった。

怒りを爆発させて力に換えた彼女。

 

行き過ぎた怒りは身を焦がす。

その行く果ては…深海の如き深い闇…。

 

 

 

「…うっ……ぐうっ…」

彼女はうめきながら海面を撃ち続けている。

 

 

「羽黒……?」

 

「ぐううううっ!!」

 

 

 

 

 

 

羽黒が更に苦しみ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「羽黒さんが!!足柄さん!」

その様子を見つめる大淀が慌てて彼女達に呼びかける。

だが、彼女達は涼しい表情を変えなかった。

 

 

 

 

 

 

それは信じてるから。

大切な妹を…そして

 

 

その手を引く彼のことを。

 

 

 

「…大丈夫、大淀」

 

「でも!!」

 

「素敵な旦那さんが居るんですから…きっと届きます」

 

 

 

 

 

「ぐぅぅううあ–––––––––––あ…

背中に冷たい…でも暖かい感触が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?ここは………?

あ…提督さん?

 

 

え?帰ってこい?

 

えと…私…?

あ……はい

 

そうですね…

 

悔しくて…腹が立って…自分でもびっくりするくらいの…怒りでした。

 

…ダメですね…私…

燃やしすぎました…。

 

もう…心は……深く深く…

 

でも…あなたを守れてよか–––––––

 

 

あ………

 

 

 

 

 

 

キス…

 

 

 

 

 

 

 

 

指輪が…光っ…

 

 

 

 

 

,

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…眠った姫は…王子様の……で目覚めるって言うじゃない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………て…提督?」

気がつくと私は…後ろから提督に抱き締められていました。

 

寒い冬の海で…凍えながらでもずっと提督は私に抱きついて私の名前を呼んでくれていた。

 

 

私を深い闇から引き上げてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…無事でよかった…」

羽黒は泣きながら振り向いて彼を抱き締めた。

己のボロボロの体より、闇堕ちしかけた事より…

あなたが無事でいてくれた事だけが全てだから

 

 

 

 

 

「提督ッ!?寒いのに!何で!何で!?」

 

「君を放ってなんか…行けない」

「ありがとう……羽黒…ありがとう…ッ」

「助けてくれて…戻ってきてくれて…」

 

 

 

「……もう…提督…」

 

「…寒いから…早く陸に行こう…」

 

「はい…」

羽黒は少し煤けたマフラーを彼にかけた。

ありがとう…と、彼は言った。

 

「でも……」

と、彼女は彼に更に引っ付いた。

少しでも…暖かいですから…と。

 

 

 

 

「…愛してます」

「あなたを…誰より何より愛しています。あなたが背中を押してくれたから…頑張れたんです。あなたが…引っ張ってくれたから…戻って来れたんです」

 

「あなたを守ることができて…良かった」

 

 

 

 

と、羽黒は彼の唇に自分の唇を重ねた。

姉達に力を借りる事なく、自ら一歩進めて…。

 

 

「…寒いですよね…でも…迎えが来るまで…寒いから、もう少し…このままで…居ますね」

と、羽黒は彼を抱き締めて…

「口も…寒いので」

とキスをして頬を寄せる。

 

 

 

 

 

 

「…よく頑張ったわね」

姉達は誇らしい妹を優しく迎えた。

 

 

 

「…今日だけよ?そんなアツアツなのは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




投稿の遅れ…とは?
いや、遅れますよ?遅れますとも…





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324話 羽黒と1日夫婦 ③ 2日目

「はっ!?今何時…!?」

「え!!も、もう夜中!?!?」

 

羽黒が目覚めた時、時刻は夜中の2時になっていた。

相当な力を使った結果、彼女は入渠中も健診中も眠ったままだった。

 

 

 

隣を見たけど…誰も居なかった。

医務室の中を見渡しても……

 

あの人との時間が終わってしまった。

寒い思いも痛い思いもさせてしまった…

その上…私は……

 

 

 

 

「……う…し、仕方ないですよね…」

ぽろぽろと泣けてきた。

 

 

 

 

 

 

うん…私がもっと強かったら良かったんだ。

でも、彼が無事だから…コレでいいんだ。

きっとあの人も寝てるだろう…姉さん達も……。邪魔しちゃいけないから…今日はこのまま…医務室で…「起きた?羽黒」

 

妙高だった。

「妙高姉さん…ごめんなさい…起こした?」

 

「そのまま寝てしまうの?」

 

「う……だってもう…終わったから…」

 

「何が?」

 

「夫婦の日も…提督も寝てるだろうし…」

「あの人を…酷い目に遭わせてしまったし…」

 

 

「頑張った」

 

「え?」

 

「頑張った…可愛い妹よ!何か願いはあるかな?」

ひょこっと足柄が妙高のの隣に出てきた。

 

「そうだ…単身で敵を討ち取って、提督を守り切った…勲章モノだ」

那智も出てきた。

 

「那智姉さんまで…私にそんな資格…」

 

バチコン!と那智にデコピンされた。

「はう!?」  

 

 

 

 

「うう…願い……願い…」

 

 

 

 

 

「も、もう少し…あの人との時間が欲しかったな…って…思います…」

 

 

「ふむ…!願い確かに聞いた!」

 

「え?!?え!?」

 

「頑張った妹!可愛い妹の願い…それは叶うだろう!いや!叶わせる」

 

 

 

 

 

「な?提督」

そう呼ばれた先には提督が居た。

 

 

「え!?提督?!いつから?」

 

「提督はずーっとあなたの隣に居たわよ?片時も離れずね?今はタイミング悪く、飲み物取りに行ってたみたいだけど…」

 

 

 

「ね?提督?羽黒のかわい〜〜いお願いは叶うかしら?」

 

 

 

救は険しい顔をする…ダメですよね…?

 

「皆から言われた」

 

「…ッ!ごめn「たった1人で…あんなに素晴らしい功績を残したのに…私達は何もできず…ハイ終わりはダメだと」

 

 

「え?」

 

 

 

 

「明日の羽黒の仕事は皆が引き受けるそうだ。だから…もう1日…休めとの事だ」

 

 

「羽黒…明日も1日一緒に居てもいいかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ッ!いいんですか?」

 

 

フフ…と皆が笑う。

じわじわと何かが込み上げてくる。

嬉しくて…嬉しくて…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…おはようございます!提督!」

 

「おはよう…羽黒」

 

 

 

 

前代未聞の2日目–––

それは周りからの羽黒への武勲とも言えるもの。

 

「羽黒にもう1日あげてください」

そう艦娘達は俺に嘆願した。

 

俺から言っても良かった。

果てて眠る彼女を見ながら思った。

必死で戦って…眠る彼女。

暫く目を覚さない彼女。

 

響の時とは違い、楽しむ余裕が無かった。

そんな彼女にもう1日くらい…と。

 

だが…そうはいかない。

 

何故なら守ることは彼女の役割だから。

2人の時間や思いを犠牲にしなければならない時がある。

戦争の不条理さにどれだけ正論で正面から挑んでも勝ち目はない。

 

 

 

そんな俺に彼女達が言ったのだ。

「素晴らしい功績だと思いませんか?街の被害を最小限に抑えてあなたを守り切りました」

 

彼女達は信じていた。

数名は実は救援に向かってはいたが、決して羽黒が負けることはないと。

 

「林さんとの戦いの時…羽黒ちゃんが1番に叫んだんだよね。提督ー!いけええ!って」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな彼女が目の前に居る。

 

 

 

2日目…と、今までにない事は彼女に大きな喜びを与えたらしい。

 

「えへへ……夢じゃない…んですね。提督さんが居てくれるの」

 

「夢…かもよ?」

と、意地悪をしてみる。

 

羽黒が少し困った顔…から変わって笑顔で言う。

「なら……その……えと…確かめないと…ですね?」

 

ん…と羽黒が目を閉じて合図する。

ちゅっ…と唇同士が触れる朝の挨拶。

 

 

でも…羽黒の心は少し曇っていた。

 

 

 

 

 

 

 

街に行く船から降りて…すぐのことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…羽黒?」

 

 

「はい!」

 

「あの時…俺に叫んでくれて…ありがとう」

 

「……え?」

 

「林との時だよ。提督ー!いけえー!って」

 

「あ!ぁあ……はぅう……あ、あの時は…必死で…本当に必死で…」

 

「君の力が…何だろう…俺に入ってきた感じかな?とにかく…たくさん力をもらったよ」

 

 

 

 

「ありがとう」

 

 

彼が頭を下げた。

何故だか…何故だか分からないが涙が溢れてきた。

 

 

「ち、違います」

「お礼を言わなくちゃいけないのは…私なんです」

 

 

「?」

 

「私を見捨てないでいてくれて…ありがとうございます」

「こんな私を…」

 

「…私ッ!提督を無傷で守りきれなかったんです!最初も提督とのデートに浮かれてて…提督に庇われて…」

 

「早く提督を助けなきゃって時にも…勝てないって足が震えて…大淀さんの救援の通信が来た時…一瞬安心しちゃったんです!納得しちゃったんです!!無理だから皆を待とう…って!!」

 

 

「でも…助けに来てくれたじゃないか…」

 

「でも!!あなたに温かい力を貸してもらったから…勝てたんです」

「それなのに!黒いのに飲まれてしまって……」

 

「迷惑ばかりかけて!!今日だって!!あんなになって眠ってた私が悪いのにッ!!…グスッ…」

 

 

 

「私は…喜んだんです…姉に…皆に褒められて…あなたとこうやって居られることが…こんな…こんな私がッ–––––––

 

 

 

 

 

 

 

私は彼に抱き締められていた。

 

 

「え…あの…提督…離してください…私にそんな資格…「ある」

 

「ないで「あるッ!!」

 

「離さない…俺は絶対に離さない」

「君に嫌われようと、突き飛ばされようと離さない」

 

「………ッ!?」

 

 

「羽黒が頑張ってくれなきゃ…俺は死んでた」

「お前が…自分を削って戦ってくれなきゃ俺はここに居ない」

 

 

 

 

 

 

「だからごめん……辛い思いをさせて…。そしてありがとう…俺を…助けてくれて」

 

 

「その後も…温めるようにそばにいてくれて…ありがとう」

「君が目を覚さなかったらって…不安だった…。起きてくれて…変わらず俺のそばにいてくれてありがとう…」

 

 

 

「…ズルイ…」

「そんな事言われたらぁ…ぅぅ…ぅあ…うわぁぁぁあ」

 

「ごぢらこそ…私に一歩を踏み出す後押しを……温かい力を貸してくらてありがとうございますぅぐぅ」

 

 

力一杯抱き締めあった。

 

「離したくないです!離れたくないです!見捨てないでください!必要としてくださいぃぃ」

 

「離さないよ、離れないよ」

「見捨てなんかしない…君が居ないとダメだ」

 

 

「もっと…もっとください…あなたの温もりをください」」

 

 

生きてるから

あなたの温もりも優しさも感じるから。

 

 

だからめいいっぱい抱き締めあって…キスした。

 

「好きです」

「大好きです」

「愛してますッ!!」

 

 

「もっと抱き締めてください!撫でてください」

「私を見てください!私を…私を…」

 

ただひたすら彼を求めた。

ずっと胸にしまってた不安とか…思いを全部ぶつけるように。

 

 

 

ずっと…ずっと離さなかった。

 

 

ずっと…そうだったんだ。

私はこの温もりを…手放せない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

泣き腫らした2人が落ち着いた昼下がりに…2人はやっとはなれた。

 

 

 

 

 

 

「マフラー…少し焦げたな…」

「新しいの…買う?」

 

ううん…と彼女は首を横に振った。

「…あなたがくれたものですから…大切にしたいんです」

 

「この温もりは…幸せなんです…それに…あなたの匂いがするから…抱き締められてるみたいで……えへへ」

 

「ああ…俺に貸してくれてたから…」

彼女はマフラーに埋もれてえへへと笑う。

そして

「でも今は…あなたが居るから…」と抱きついて埋もれてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ランチ…行きませんか?」

 

「うん、行こうか」

 

 

と、歩き出す俺に彼女が言う。

「…手繋いでくれないんですか?」

「言ったじゃないですか……私だけを見てください…って……」

 

「ごめんごめん」

と、2人で手を繋いで歩き出す。

 

きっと泣き腫らした酷い顔だろう。

でもいいんです。

これは私達2人だけの…ものだから。

 

 

ほんの少し私より早い歩幅に合わせて歩く。

私がそうしたいから。

きっと言ったらこの人はゆっくり合わせてくれるだろう。

でもいいんです。私が…そうしたいから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……前に座らないの?」

 

「あの…隣から離れたくなくて…ダメですか?」

ランチの時も羽黒は俺の隣から離れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ランチ後は恋人繋ぎでの腕組みだった。

信号で立ち止まる度に羽黒は頭をコテンと預けてくる。

チラッと見ると…こちらを見上げてニコリと笑う。

 

 

 

 

 

いや本当お前誰?ってくらいの変わりよう。

一歩踏み出すどころか…ジェットパックで地平線の彼方まで飛んで一歩!って言われた気分。

ここまでの甘え方はなかなか居ない。

 

 

 

 

 

「…あ」

 

「あの!えと…パフェ一緒に食べませんか!?」

 

「食べ過ぎは良くないって怒られない?」

 

「き、今日はいい子卒業です!」

「というか、カツとかお酒よりは……いいかと…」

「妙高姉さんも……たまに………」

 

「あ、ソレ聞かなかった方がいいやつだな」

 

 

2人でパフェを食べる。

「甘くて…おいひぃです」

 

「俺のも食べてみる?」

と、あーーんってしてくれました。えへへ…嬉しいなあ

……え?!わ、わわ私もですか!?

はぅ……どうぞ…………間接キス……って!もうキスは何回もしてますよね…

 

 

 

 

「まだ帰るまでに時間ありますか?なら…えと…プリクラってのを撮りたい…です」

 

 

「最近のはアレなんですね?大きいのもあるんですね?」

 

「みたいだね!なんか新鮮だな。羽黒がプリクラって」

 

「部屋に…机に飾りたくて…ひな祭りとは違う…2人だけの思い出が欲しいんです。あ!もちろん!このマフラーも思い出ですよ!?夏でも身につけたいくらいですけど…なかなか難しいので…」

 

「写真とかプリクラみたら、辛くても…寂しくても乗り越えられる気がするんです…いつでもあなたを感じられそうで」

 

 

 

 

 

パシャリと写真を撮りながら…

俺はそうだ…と言う。

 

 

「そばに居るからさ」

 

「え?」

 

「いつでも…部屋の鍵開けとくからさ、寂しかったら…辛かったらおいでよ」

 

羽黒が「え…」とこちらを向く。

パシャリとその瞬間も撮られる。

 

「良いんですか?」

 

「…うん。そんな時には…寄り添っていたいよ」

 

「…ッ!あ、ありがとうございます」

「〜ッ!!」と羽黒は飛び込んで来る。

 

胸に顔を埋めた羽黒が俺を見上げて…背伸びして…

ありがとうございます…ってキスする。

 

パシャリ…と音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

彼女は自分の机の上のプリクラを写真たてに入れている。

それを見てニヤニヤしてる。

 

「…あら?良い顔ね。羽黒」

 

「姉さん……えへへ」

 

「…いい意味で少し変わったわね」

 

「そ、そうかな?」

 

「少なくとも…あなたは一歩以上踏み出せたのよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その裏のプリクラ撮るくらいにはね…」

 

 

 

「え…妙高姉さん………?」

 

一見普通の写真たて。

数枚のプリクラ写真か入っている…が

 

 

「……?」

足柄がその写真たてを外して裏を見ると……

 

 

「「んなッ!?」」

 

「き、キキキキスぅうう!?」

「羽黒ぉ!?きっさまぁぁ!?」

 

 

「なんでバレたの!?」

 

「そりゃ…たまにバラして見てたら…ニヤニヤしてたらバレるわよ……」

 

 

 

「どれも良い顔してるけど…何これ!超大事にされてる感あるし!もー!!」

 

「私も今からちゅーして貰いに行くッ!!」

と、足柄が行こうとするのを止める羽黒。

 

 

笑う姉妹。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?羽黒?どうした?」

 

 

「えと…あ、あなた♡」

ぎゅっと引っ付いてくる羽黒。

 

「愛してます♡」

 

 

 

大人しい子が少し積極的になったようだ…。




おめでとう…
羽黒もデレ期突入デース

バンホーテンに砂糖をぶち込むイメージです。はい。



心の奥に甘いものを感じてもらえたなら幸いです。

感想などお待ちしてます!


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325話 姉として、妹として

こんにちは!私は能代です。

つい先日に、ここ西波島鎮守府に建造されました!

 

 

既に阿賀野や矢矧は居るようですが…

 

 

 

 

 

 

 

「あの!能代です!よろしくお願いします」

 

「おー!能代!よろしくね!」

優しそうな提督さんです。

見たことも聞いたことも…記憶にない艦娘も居るようですが…

 

 

「あ!阿賀野、矢矧!」

 

 

 

「あ……」

 

 

 

阿賀野です。

能代(妹ちゃん)が来ましたが…少し複雑な気持ちです。

 

能代には変わりないのに…まだ妹が近くに居る気がして。

過ごした記憶もあるから…。

 

 

「よろしくね、能代」

矢矧は言う。

 

 

私は気恥ずかしさと

姉への申し訳なさでお姉ちゃんと呼べなかった。

 

 

「……あ、うん!よろしくね!」

 

 

彼女達は決して私をお姉ちゃんと…妹ちゃんと呼んではくれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん、妹ちゃんと呼ばれたい?お姉ちゃんって呼びたい?」

 

 

「はい…私は能代なので…阿賀野や矢矧にはお姉ちゃんか妹ちゃんと呼ばれたいのですが、一度も呼んでくれなくて…私もお姉ちゃんとか呼びにくくて…」

 

そう俺に相談する能代は寂しそうだった。

そして俺はその理由を知っている。

 

 

彼女達は…元々は旧猛武鎮守府の所属だ。

しかし…とある戦いで命を落とした。

そこには彼女もいた、能代だ。

 

阿賀野と矢矧は長く彷徨った。

自分がどこへ向かえばいいかも…誰かもわからなくなっても。

 

そんな時に俺と出会った。

俺の中に居た先輩…提督との出会いで彼女達は成仏できた。

 

 

 

そして…阿賀野と矢矧は俺に会う為に生まれ変わってやってきた。

 

 

 

 

そう…彼女達の中にはまだ能代が居るのだ。

 

 

 

だが…これは俺から言うべきではない。

 

 

 

「能代…時間はかかると思う。アイツらにも色々と理由があるんだ。…納得してくれとか、我慢してくれとかではなく…少しずつ時間をかけて接してやってほしい。きっと心は開いてくれるから…」

 

「…言い難い理由なんですね?」

「わかりました」

 

 

 

 

 

 

 

「おはよ!阿賀野♪矢矧♪」

 

 

「おはよう!能代」

 

「おはよう、能代」

 

 

 

「…………ッ、朝ご飯…行こうか」

 

「「うん」」

 

 

やはりぎこちない…

 

「お姉ちゃん…っては呼べそうにない?」

 

「……ごめん」

矢矧は顔を伏せた。

 

 

「理由は…聞いても?」

 

「………ごめんなさい」

阿賀野はそう答えた。

 

「ごめんね…」

 

「ううん!大丈夫!じっくり行こう」

 

 

 

 

 

 

 

 

「阿賀野〜!洗濯出しとくね」

 

 

「矢矧!遠征お疲れ様!」

 

 

「阿賀野!任務がんばってね!」

 

 

「矢矧〜阿賀野〜ここにカフェできたって!行こう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでも彼女は変わらず私達に接してくれる。

 

 

 

 

「…矢矧…」

 

「うん、わかってる…でも…まだ…能代姉は……まだ居るから」

 

お姉ちゃんと呼んでしまえば…

私達の能代(姉妹)は…思い出として片隅に行ってしまいそうで。

決してそんなことはないと思っても…

 

能代に申し訳ないとか

気まずいとか

 

私達の小さな…ちっぽけな何かがお姉ちゃんと呼ぶ事(それ)を邪魔した。

だからそんな空気を察しているのか…彼女もお姉ちゃんと呼んでこない。

悪循環だ。

 

 

 

 

「でも…きっと能代姉はそんな事で怒ったりしないのにね」

 

「うん…頑張って…妹ちゃんって呼んでみよう」

 

「うん」

 

 

 

 

 

タイミングを探した。

その一歩を踏み出す為に…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は、2人で任務なんだよね?気をつけてね?」

 

呼ぶんだ。お姉ちゃんって…呼ぶんだ。

 

「…うん!お…の……の…能代…も任務がんばってね…」

 

言えなかった。

あと一歩が……踏み出せないまま…私は…。

 

 

「気をつけてね?何だか…嫌な予感がするから…」

「……何かあったら私を呼んで?すぐに私が駆けつけるから!」

 

「……ッ!!!」

 

変わらない優しさを目の前からぶつけてくれるこの人に…

 

 

 

 

 

 

 

『………』

彼女は悲しげに見ていた。

魂となって愛する人と共に居る元猛武の能代。

『…馬鹿な姉妹……嬉しいけど…前に進んでよね…』

 

『…2人も…姉妹がいるんだよ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「能代ーどしたの?」

「まだ姉妹ちゃんって呼んでくれないの?」

任務に同行する鬼怒と由良が話しかけてきた。

 

 

 

「…そうなの……まあ……そうよね。能代が居た記憶があるなら…私は本物にはなれないから」

「でも…初めてできた繋がりだから……」

 

 

「そんなことないよっ!」

鬼怒が言う。

 

「大丈夫!きっと伝わるよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、阿賀野と矢矧は大苦戦を強いられていた。

 

 

 

 

 

 

「くっ……こいつ……!!」

 

阿賀野と矢矧の前には港湾棲姫が居る。

矢矧はその大きな腕に掴まれ投げ飛ばされる。

 

「きゃあ!!……くっそお!!」

 

 

強い。

本当に強い。

 

 

「矢矧!立て直して…2人でッ!!」

 

「うん!!」

一旦距離を置いて…

攻撃で撹乱して!!2人で挟み込んで…蹴りを–––––

 

 

 

 

 

 

ガシッと足を掴まれる2人。

 

 

 

「マジか…って…きゃぁあ!?」

 

港湾は力いっぱい腕を閉じる–––つまり、2人はぶつかり合う。

 

 

「ぐぁ」

 

「ぎゃあ」

 

何度も打ち付けられ

「ガッ…ぐっ……あぁッ!!」

 

「ぶっ…このッ…うぐっ!!」

 

海に叩きつけられる。

 

「「きゃぁあ!!!」」

 

 

 

「…大丈夫?阿賀野姉…」

 

「やばいかも……」

 

それ以上に矢矧はダメージを負っていた。

見てわかる、もうそろそろ限界ラインだと。

 

 

それを知ってか、港湾は矢矧を狙う。

 

––やらせるもんか!

「……はぁぁあああッ!!」

 

「阿賀野姉!?」

 

阿賀野はそうさせまいと港湾に突っ込んで行く。

 

「主砲…潰されてる…くそ!なら…せめて」

 

港湾の大振りを回避して一撃を…!!

ドゴッ!!と港湾の脇腹に蹴りが当たる–––が

 

 

『効かない』

 

ドゴォォ!!

正面から港湾の拳をモロに喰らってしまう。

 

 

「が…はぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

………

……

 

 

 

 

 

 

 

ひゅーひゅーと肩で息をする2人。

 

目の前にはめちゃ強港湾棲姫。

対するは大破状態の2人…。

 

 

逃げた…とて追われてトドメを刺されるのは必然。

 

 

 

 

 

 

頭によぎるのは色々な後悔。こんなことなら…もっと素直に…

 

 

「お姉ちゃん…って呼べば…よかった」

 

「こら…弱音を吐かない!!」

 

「阿賀野姉も妹ちゃんっても呼んでない!!」

 

「………」

 

 

そうだ。

絞り出したはずの薄っぺらいユウキは、頭に浮かんだ姉妹の姿に自らが萎縮して影に隠れた。

 

 

分かってるんだ。

そんな事で今までの姉妹の思い出が壊れない事くらい

でも…私達の姉妹は、あの能代だって我儘な気持ちがあって、あんなに優しい…新しい能代を遠ざけて……最低だ…私達。

 

 

目の前に迫るのは…色濃い"死"

 

 

でも…

 

 

「あの能代の事を…お姉ちゃんって…」

「妹ちゃん…って」

 

「「まだ呼んでない」」

 

 

 

「提督に指輪も貰ってない!デートも行ってない!!」

 

「そうね…やり残しが多い…ね」

 

「「まだ…死ねるか」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だぁぁぁあ!!!」

2人がかりでそれでも挑み続けた。

退けない!絶対に!!

 

 

 

 

何度ぶちのめされようと

何度叩きつけられようと…

 

 

 

 

 

 

が…

 

 

ガクリと矢矧が膝を折った。

 

 

 

 

 

「やば…もう立てないかも…」

 

「矢矧ッ!?」

 

 

甘かった。

最終的に私が囮になって矢矧を退かせる事ができない程に矢矧はやられていた。

 

 

 

 

それを見逃すはずはない港湾。

 

 

そして…妹を見捨てて退く事なんか微塵も考えてない。

 

 

 

 

 

港湾の拳が目の前に…

 

 

だから

 

「矢矧!逃げ…」

阿賀野は矢矧の前に立つ。

 

 

 

 

 

「阿賀野姉!ダメ!!」

 

 

 

「全力で…受け止めてやらぁぁああ!!!」

 

 

『マトメテ…シネ…!!』

 

 

 

後ろから矢矧の声が聞こえる。

ごめん矢矧…ごめん能代…

 

 

 

 

 

 

 

ぎゅっと目を瞑る。

 

 

 

 

 

 

 

ガンと言う鈍い音が響いたー…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





能代の区分けは敢えてやってません。
こんがらがるかも知れませんが…


Twitterのページをプロフィールに貼りました。
あんまり更新はない…かもですけど…


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326話 妹として、姉として

続きでーす!!


「……?」

 

 

 

恐る恐る目を開ける。

 

 

そこには…

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫…もう、大丈夫だからね」

「大事な姉と妹に…なにしてんのよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女が居た。

 

彼女は来た。

 

 

 

 

 

彼女は私達の目の前に迫る剛腕の大きな腕を受け止めた。

 

 

 

 

 

「能代…?なんで!?」

 

 

間に合うはずがない距離を彼女は超えてきた。

姉妹を助ける為に。

能代 改として。

 

 

 

なんで?と言うのには

どうやって来た?とか

なんで私達の為に?とか

そんなぼろぼろなのに?とか…。

 

 

 

「なんで…って」

 

 

 

 

「阿賀野や矢矧にとっては…辛苦を共にした…喜びを分かち合った姉でもないてしょう。単なる能代という思い深い偉大な姉と同じ名前を持つ艦娘の仲間でしょう……。でも…私にとっては…大切な仲間で家族で…姉妹なんだ!!」

 

「私に…やっとできた家族なんだ!!」

 

「他の仲間も…提督も……やっとできた家族なんだ!!」

 

「一方的だって思われてもいい…!!それでも…」

 

 

「私に初めてできた…繋がりなんだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

背中越しに聞こえた彼女の叫びは…

へたり込む私達に深く突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

 

 

特段嫌いな訳ではない。むしろ良くしてくれた。

姉と呼べないのは…能代…姉への申し訳なさだった。

 

 

お姉ちゃんと呼んでしまえば…私達の中からあの人が消えてしまいそうで…

全てが書き変わりそうで怖かったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

……

 

少し前の事。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ッ!!阿賀野?!矢矧!?」

今…胸騒ぎがした。

2人が…危ない!!

 

 

 

その能代の異変に2人が気付く。

「…能代?どうしたの?」

 

 

「え?!あ、えと…」

 

でも…2人を信じないと…私も任務がある…でも!!

私は…私はッ!!

 

 

 

 

 

「能代!行って!!」

由良が言う。

 

 

 

「でも!」

 

 

「うん、作戦からの離脱になるね。命令違反だね」

「でも…行くべきだと思う。感じてるんでしょ?」

 

「姉妹のピンチを」

 

「あ……」

 

 

「それは同型艦の繋がりなのかも知れない。でも…姉妹だから繋がるものもあるんだと思うの」

 

 

「ある…白露が言ったわ…」

「1人だろうが…2人だろうが、妹には代わりないんだって」

「なら!妹を守るのに理由なんか要らないんだって!」

 

 

「だから…行きなさい!!ここは…私達2人でも十分大丈夫だから!」

「…ここは私と鬼怒に任せて!!ね?」

 

 

 

 

 

「…お姉ちゃん…そして、妹の凄さ…見せてあげて?」

 

「……ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…鬼怒…由良…」

「お願いッ!!!行きます!!」

 

 

 

 

 

 

彼女は行く。

姉と呼ばれなくとも…構わない。

私は……能代だから!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行ったね…」

 

 

 

「…提督…怒るかなあ」

 

「ううん?きっと大丈夫だよ!」

 

 

 

 

「さあ…鬼怒?いくよ?」

 

「おっけー!お姉ちゃん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁあ!!!」

「退け!退け退け退け退け退けぇぇえええええ!!!」

 

「大事な仲間が…姉妹が!家族が待ってるんだぁぁあああ」

 

 

 

彼女は征く道を塞ぐ敵を薙ぎ倒して行く。

 

もっと速く!速く…

まだ…もっと!!

 

 

何でもっと速く動けないの!?

ねえ!私の体ぁ…

お願いだから速く進んでよ…

 

 

お願い…

誰でもいい…!!

私に…力を貸してよ…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…能代…もう1人の私……お願いッ…』

祈るのはもう1人の艦娘。

幾度となく姉妹や鎮守府を支えたかつての英雄。

今は最愛の人と世界を見守る艦娘。

 

 

 

 

 

 

 

 

ザッ…と通信?念話?わかんないけど頭に響いた。

「能代…大丈夫だ…前に進め」

 

 

 

 

 

「え!?て、ててて提督…?」

 

「俺が力を貸す」

 

「え?えと…提督が!?」

なんだろう?この安心感。

ずっと前から知ってるような…お日様のような……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザッ…と

何かが映った。

 

これ…は…

彼女達の本当の姉の…?

 

『…妹ちゃん…私達行くね?』

『あの人の力になりたいから』

 

『…うん!私はこの人と居るから…見守ってるから』

 

『例え離れていても私達は姉妹だから』

 

 

 

 

 

あぁ…本当に慕われていたんだ…

 

 

 

 

 

 

 

だから…尚更守らなきゃいけない

同じ…能代として!!

 

 

 

 

 

 

「提督!私に力を貸してください!!妹を!家族を!守る力をほんの少しだけ!…貸してくださいッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「行け!!」

そう聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

能代   改

 

 

 

 

「…能代 改!!いきまぁぁす!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして能代は辿り着いた。

守りたい者の元へと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…バカ』

 

 

 

 

 

 

 

『あなた達の姉妹はそんな気量の狭い艦娘じゃないわよ』

 

そう聞こえた気がした。

 

『私達は何があっても姉妹であることは変わらないよ?でも…あの能代を見て?妹を守る為にあんなになってでも…』

 

『姉が…妹が2人いたって…良いでしょ?そんな贅沢ある?』

 

 

 

『…2人が私を思ってくれてるのは嬉しいよ…大好きな妹だもん』

『でも…矢矧?私の事はいつも通り矢矧能代姉って…阿賀野は妹ちゃん呼びなよ』

 

 

 

 

 

 

 

お姉ちゃん…

 

 

 

妹ちゃん!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…能代姉…ごめん…そうだよね、そうだよね!!」

2人は背に立つ能代へと告げる。

 

後ろには姉の能代姉。

 

前にも能代…お姉ちゃんが居る。

必死に…必死に私達を守ろうとするお姉ちゃんが!!!

 

 

 

姉を守ろうとする妹が居る!!

 

 

 

 

 

()()()()1()()()()()()()()()()()()() ()

 

 

『行って来なさい…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くううう!!負けるもんか!負けるもんかぁあ!!!」

 

 

 

必死で彼女達を守る能代。

それは家族の為に、繋がりの為に。

圧倒的な火力を前に挫けそうな心も体も奮い立たせながら!!

 

「あぁぁああああああ!!やらせない!やらせないいいい!!」

 

 

ここを退いてしまったら…後ろの妹達が!!

びきびきと音を立てて軋む艤装。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん…ごめんね」

「妹ちゃん…ごめんね」

 

 

 

 

 

 

肩に置かれた手は温かく…

 

その2人は前へ出た。

 

 

「ウチのお姉ちゃん「妹ちゃんに…何してくれてんだぁあ!!!」」

 

 

不意をつかれた港湾は矢矧の蹴りで吹き飛ばされる。

 

 

「大丈夫?!ごめんね」

 

 

大丈夫?と手を差し出す阿賀野。

「…あなた達……今…今!!」

 

 

照れ臭そうに彼女達は言う。

 

「…その……守ってくれて…ありがとう…お姉ちゃん」

 

「言い訳にはならないだろうけど…妹ちゃんって呼んだら…何もかもが無かったことになりそうで怖かったんだ」

 

「でもね?能代姉にね?もう1人の姉が居るなんて幸せだろ!って怒られちゃった…そんな事で私は変わらないって」

 

 

「「ごめんなさい」」

 

 

「………」

能代はぽろぽろと温かいものを流した。

決して姉と呼ばれたくて…妹と呼ばれたくて…その為に助けに来た訳ではない。

でも…いつか、いつの日かそうなりたいと思った。

 

 

 

 

 

 

「こんな…我儘な奴等だけど…一緒に戦ってくれる?」

 

 

 

「我儘?姉妹のの甘えは可愛いものよ!!」

2人のの手を取って彼女は立ち上がった。

 

 

「行くよ!!」

阿賀野が言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お願い…提督…力を…貸して」

 

 

「この困難を打ち勝って」

阿賀野が

 

「大切なものを守って」

能代が

 

「笑顔で居られるくらいの」

矢矧が

 

 

 

 

3人が叫ぶ。

「「「ありったけの力を貸して!!」」」

 

 

 

 

 

阿賀野 改

 

 

能代 改ニ

 

 

矢矧 改ニ

 

 

 

 

 

 

 

『………ッ』

たかだか1人増えただけ。

2人相手でも余裕だった。

 

そこに私の拳を受けるのですらいっぱいいっぱいのザコが増えただけなのに…?

 

 

 

 

 

 

なのに…何故私が押されている!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

動きが…

次にどう動けばいいか分かる。

 

 

言葉を交わさずとも…

 

能代が一気に距離を詰める。

 

阿賀野が飛び上がって上から蹴り下ろす。

 

矢矧が超低姿勢から脚を掬いにかかる。

 

 

他の誰かが攻撃されかけた瞬間に他の誰かが速攻をかける。

 

『この……』

港湾が阿賀野を狙いに掛かる。

能代が振り上げた腕を蹴り飛ばす。

 

『この…………ッ!?」

矢矧が脚を掬いバランスを崩させる。

 

そこに阿賀野の蹴り落としが命中する。

 

『ぐぅぅう』

 

 

 

 

 

 

「行くよ!妹ちゃん達ッ!!」

阿賀野が叫ぶ。

 

「…ッ!!うん!()()()()()()()()()()()()()()()

能代が叫ぶ。

 

「おっけー!お姉ちゃん達ッ!!!」

矢矧が答えた!

 

 

 

「「「はぁぁあああああッ!!」」」

 

3人の蹴りが港湾を捉えた!

 

ドゴッ!!!

港湾が後ろへ吹き飛ぶ!

 

 

 

 

 

 

そして…港湾が体勢を立て直した瞬間に勝負は決した。

いや…3人が手を取り合った瞬間に港湾の負けは決まっていたのだ。

 

 

『––––ッ!!』

 

 

 

3人が構える。

 

別に誰かが号令をかけた訳ではない。

でも…姉妹だから分かるんだ!!

 

 

 

「行くよ!!3人一斉射ッ!!!」

 

 

「「「てぇぇえええええ!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

……

 

 

 

 

「おっかえり〜」

 

疲れ果てた3人を迎えたのは由良と鬼怒と救達であった。

 

「鬼怒ッ!由良ッ!!」

能代は彼女達に飛びついた。

「ごめんね…ありがとうッ!ありがとう!!」

 

2人もまた、2人で苦戦を強いられた中を切り抜けて来た。

そんな傷だらけの彼女達は笑いながら言う。

 

「良かったじゃん…能代」

 

 

 

 

 

「その感じだと…良くなったみたいだな?3人の関係は?」

 

 

 

「うん!提督…わかってたんだね?いじわる…」

「でも…力を貸してくれてありがとう」

 

 

「ねっ?由良の提督さん!体が痛いの…お姫様抱っこして…ほしいな」

 

「え?」

 

「あーー!私もー」

 

「ずる!私も」

ぞろぞろと救に寄り付く彼女達。

 

「はいはい!入渠終わったら間宮ご馳走するから早く行く!!」

 

 

「はーーーい!間宮ッ!まーみや!テートクさーん!早く終わったら…あーんしてね?」

その言葉にいの一番に走って行く鬼怒。

 

「あ!待て!ずるいぞ!!」

追いかける面々。

 

 

「わ、わたしもー!」

と追いかける能代。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時…能代は聞こえた。

バッと振り向くとそこには…自分と同じ姿をした艦娘が居た。

 

正確には…浮かんでいた。

 

 

その能代は…記憶で見た能代だった。

 

 

彼女は言う。

『可愛いけど…おバカな姉妹だから…よろしくね』

 

「……任せて?お姉ちゃん」

 

『……え!?』

 

「私は後から生まれた能代だから…矢矧のお姉ちゃんではあるけど同じ能代としては妹…ってことで♪」

 

『……プッ…あははは…面白いわねあなた』

『分かったわ妹ちゃん(能代ちゃん)…。お願いね?』

 

 

「うん!」

と、返事した時にビュウッと風が吹いた。

一瞬閉じた目を開けた時には…彼女は居なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「妹ちゃんー!早く行くよー!!」

 

 

 

「あ…今行くー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…

 

 

「…お姉ちゃん♪妹ちゃん♪…………………お姉ちゃん……」

 

 

 

 

『……なあに?』

何故かしれっと居る能代(魂)

 

 

「ねえ!?あの感動的な別れは?」

 

「…妹ちゃん!?… 何で居るの!?」

「能代姉!?」

 

『ずっと居たよ!?提督さんの中に…』

 

 

「「「ええええ!?!?」」」

 

『酒匂が来たら…戸惑うかなあ?』

 

「いやいや!そう言う問題じゃなくて!!」

 

 

 

 

 

 

「提督!?提督は…コレ…知ってたの!?」

能代が救に詰め寄る。

 

「……自由になったのねえ…能代ちゃん…」

 

『はーい!』

 

『先輩も居るよー!』

能代と先輩提督が答える。

 

「あ、先輩は呼んでないです」

 

『…!?!?』

 

 

「てかどうしよう…能代の呼び分け……」

救が悩んでいる。

 

「だからそう言う問題でも…あるけどないよ!」

 

 

『あなた達で解決する問題だったから黙ってたのよ…』

『ふふっ…まあまあ…まだまだ心配…なのよ〜!』

『仲良く居ましょうねー!』

 

 

 

「「「………はあ」」」

ため息を吐く3人、笑う能代。

 

「ま…それもいいか」

 

「そうねえ」

 

「早く酒匂呼んでね!提督!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日は幽霊が出たとして叫び声が凄まじかったらしい。

 

 

 

 

 

 

鎮守府に素敵な姉妹が増えました(笑)

 

 





少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!

感想やメッセージ、評価等お待ちしております!
モチベがあがります!

こんな話、キャラ、が…と言うのがありましたらTwitterのDMか、ふかひれ!!のページからメッセージを送って頂けたら嬉しいです!


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327話 桜ベルファストと1日夫婦 ①

「ご主人様、本日のお勤めお疲れ様でございました」

「紅茶等を用意しますね」

 

 

比較的早く終わった今日の執務。

 

 

 

終わらせたって言った方がいいか?

 

 

主にあの人が…

 

 

 

 

 

 

というより、桜ベルファストがアホみたいな速度で終わらせた。

恐らくアレは忍者の類だ!だって分身してたもん!!

え?してない?嘘つけ!!

 

桜ベルファストはバグった映像みたいにブレッブレだったよね?

何あれ?軽巡って何?超高速巡洋艦なの?ねえ?

 

 

 

 

「…提督さん…書類が飛んでたのです」

なんて電が言ってたぞ!!

「桜ベルファストさんは凄いのです!忍者か何かですか?」

 

「はい」

 

嘘つけお前日本生まれじゃねーじゃん

 

「電様?メイドたるもの…このくらいは基礎中の基礎でございます」

 

「電も頑張ったらアレくらいできるようになりますか?」

 

「ええもちろん!見る人が見たら書類だけが舞うようになりますよ!ロイヤルメイドは皆…………」

 

 

シリアスは別の意味で書類が舞ってるけどな…なんて救は思う。

 

 

 

「……大体は習得しておりますよ!」

 

あ、一部抜きやがった。絶対アイツだ。

 

 

「きゃぁあ〜」ガシャンガラン!!

さすがは桜シリアス!完璧なタイミングでやってくれたぜ!

「も、申し訳ありませんんんんん」

 

「仕方ないなぁ〜シリアスぅぅ…不本意ながら…お仕置きが必要…「既に完了しております」

 

なんて涼しい顔の桜ベルファスト。

何のことかわらかない俺達……のすぐ後に…スパァァン!!って音が聞こえた。

 

「ひゃううう!?お尻がぁあ!!」

うずくまる桜シリアス。どうやらお尻を叩かれたらしい。

 

音より早い…桜ベルファスト…。

もうお前1人で世界の平和取り戻せるって…

 

 

 

 

 

「……プッ…」

 

「わ、笑わないでくださいー!!」

 

 

 

 

 

 

………

……

 

 

「さて、ご主人様!明日から1日…よろしくお願い申し上げます」

 

ドアの内側でペコリと頭を下げる彼女。

「よろしくね」なんて挨拶を返す俺。

 

「では荷物を…失礼しますね」

と、ドアの向こう側からチラリと見えた唐草模様の風呂敷包みが1個…2個…3個4個!?!?

 

「…その荷物は?」

 

「…?今から明後日の朝までご主人様と過ごすセットですが?」

 

「…大荷物すぎん?」

 

「はい、ここから出るつもりが有りませんから」

 

「なんと!?」

 

ベルファストの荷物は多かった。着替えだけ♡なんてそんなもんじゃやかった。

桜ベルファストの後ろには大風呂敷4つ分くらいの荷物があった。

夜逃げでもすんの?

 

「半ば駆け落ちみたいなイメージですね」

 

こいつはエスパーか?

というか、メイド服の桜ベルファストが唐草模様の風呂敷の荷物を両手にひとつずつと背中にふたつ抱えて来た様は…クソシュール。

加賀とか赤城とかが似合いそうな感じだったのに…。

 

 

「他の女の子の事考えてません?」

 

やっぱりエスパーか?

 

 

ひょこっ!

「似合ってるというのは褒め言葉ですか?」

 

「私も気になります」

 

お前ら(赤城と加賀)は何でここにいる?!

 

 

ぽぽい!と2人を外に出してから桜ベルファストに……って!?何してんの!?

 

「何…って…愛の巣を作っていますが?」

 

「愛の巣ぅ〜?」

 

「ええ、今この時からこの桜ベルファストはあなた様の嫁でもあります」

「つまり!この私室は夫婦の部屋も同然ッ!!……といっても普段は1人用か来客用の小物くらいしかないので…私色も混ぜさせてもらおうかと思いまして…」

 

「ただ…このメイド服で畳の座布団に座るのは…いささかアレなので…テーブルとイスをご用意させて頂いております」

しゃなり…と一礼する桜ベルファスト。

 

 

「え?そのテーブルとイ「ご主人様?お静かに…」

「いや、その風呂し「ご主人様?」

「いや、だ「キスで塞ぎますよ?口を」

 

「いや、それなら喜んで」

 

「………ッ!!」

 

よし!赤くなった!俺の勝ちッ!!

 

 

 

「ん?てか?桜ベルファストは嫁なの?メイドなの?」

 

そうだ。

夫婦と言いながらメイド服を脱がないベルファスト。

「夫婦ってならご主人様ってより、前みたいにさん付けとかの方が良いんだけど…」

 

「申し訳ございません、このベルファスト!メイドでお嫁さんですので!!」

 

「アッハイ」

 

 

 

 

「さて…お夕飯を作らせて頂きますね?」

と、何故かさっきまで無かったキッチンに向かって調理を開始する彼女。

 

アレだな…この際、俺の部屋の広さについては言及しないでおこうか…

 

「賢明な判断です、ご主人様」

 

……精密検査受けようかな。何か仕込まれてない?脳とかに

 

 

 

 

 

 

「ご主人様…お待たせ致しました」

 

お待たせ致しました。

と桜ベルファストが料理を持ってくる。

牛フィレのステーキ、スープ、サラダ……にシーフードパスタ?

 

「何気に様ベルファストの手料理って珍しいよね?」

 

「普段はお菓子を作るくらいでございますからね」

 

 

 

「にしても…桜ベルファストがパスタってなんか珍しい気がする」

 

「…ぱ、パスタは練習したので食べて頂きたくて……」

カァーって顔を赤くして視線を逸らす桜ベルファスト。

 

実の所、料理は鳳翔達にかなり頼み込んで教えてもらった。

パスタ好きと聞いていたのでかなり練習してきたらしい。

 

「ご主人様がパスタ好きと聞いたので…」

可愛いじゃん…もう!

 

 

 

んで目の前にはいつの間にか着替えたベルが居る。

 

 

 

仕事モードがオフになったのか、着替えてラフな格好になる桜ベルファスト。

 

気付かなかったがその首元には…

 

「あ!そのネックレスは」

 

 

彼女はそのネックレスをきゅっと握って言う。

「ええ、片時も離さず身につけております」

「私の大切な大切な宝物です」

 

 

「…あなた?旦那様?救さん?」

 

「好きに呼んでよ」

と、笑いながら返す。すると、桜ベルファストは悩みながら…

「ご主人様「…はやめようね!?」

 

「………」少し膨れる桜ベルファスト…やめろ、可愛い。

 

「…では…旦那様でよろしいでしょうか?」

 

「…うん、それで」

 

「旦那様?」

 

「何だい?ベル」

 

そう、俺はこう言う時はベルと呼ぶ。

俺だけがそう呼んでいるのだ。

 

 

「…〜っ!い、いきなりそれは反則…です」

 

 

「…」

彼女は無言で抱き着いてくる。

普段見られない…………事はないな!暴走気味だもんな!!

いつものベルだな!!

 

「旦那様?この時だけは…私だけを…愛してくださいね?」

 

普段見せない表情にドキッとする。

可愛くて仕方ない。

 

「旦那様。ベルの料理はお気に召しましたか?」

 

「勿論さ…ベルの手料理…幸せだぞ」

 

「…嬉しいです…」

本当にギャップよ、ギャップ…。

 

 

 

 

ご馳走様でした…と手を合わせる。

 

 

 

 

お互いに風呂を済ませてお疲れ様!と夜の晩酌をする。

 

やはり、ベルのチョイスしたツマミはなかなか美味い。

曰く、「ご主人様の事をご主人様以上に知っているのは恐らく私だけだと思います!」とか言ってたなあ

 

 

 

 

 

 

 

 

夜も深くなり…うとうと…とする。

どうぞ…とベルが膝をポンポンと叩くので膝枕に甘える…。

 

 

 

少しずつ落ちる意識…

 

 

 

桜ベルはニヤリと笑う…。

 

 

 

 

「…さあ……目が覚めたら………うふふ……」

 

 

 





凄いメイドはニンジャの末裔らしい!
さすがベルファスト=サン


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328話 ベルファストと1日夫婦 ②

「おはよう御座います、旦那様♡」

 

「ぱぱー!おはようございます」

 

「おぉ…ベル、※※!おはよう」

目の前には愛する妻のベルファストと2人の愛の結晶である愛娘。

小さなベルちゃんを何となく彷彿させる。

可愛い可愛い愛娘………

 

「こら?※※?ぱぱではなくて…?」

ベルが優しく諭す。

 

「あ、そうでした、おとおしゃま!」

 

ごくごく普通の家庭の一幕、娘が居て、嫁が居て…

 

「おとおさま!今日はあそんでくれますか?」

 

「おお!※※!どこに行きたい?何して遊びたい?」

 

「おままごと!おかーしゃまがこどもね!」

 

「あらあら…ふふ、いいですよ?」

 

 

 

 

 

 

 

「ふぃー。ただいま」

 

「お帰りなさい、あなた♡ご飯にする?おふろにする?それとも…わ、た、し?」

驚愕のセリフを言う※※。凍りつく夫婦。

思わずベルを見ると、ブンブンと顔を横に振るベル。

あなた!?と見てくるベルにブンブンと顔を横に振る。

 

「おい、※※?そんなのどこで覚えた?」

 

「同じ保育園の…ながとちゃんが………」

 

「……やっぱりあなたの子じゃ無いですか……」

そうだった…その子は俺と長門の……子供…だわ。

 

「ベル……」

 

「はい」

 

「長門にお仕置き90分コースで」

 

「かしこまりました」

 

 

 

「えう?おとーしゃま…?※※としては…わたしを選「てか何の話いいいいいいい!?!?」

 

 

 

救うは飛び起きた。

目の前にあった…もとい、装着されていた装置を取り外して叫んだ。

 

「あら…気付かれましたか……」

 

ポイ!とそれを取り上げる。

 

「ああ!このW明石と蒼朝日とその他の中に塗れた者達が作り上げた、仮想現実体験のギアが!?欲望に塗れた…『ドキッ!愛するあの人との未来予想図ver.11.03』が!?」

 

「説明乙」

「てか…アレだな…こんなの作ってからに……よし、工廠組の予算配分減らすか…」

 

「それはいけません!!!」

 

「いいですか?!旦那さ…いえ、ご主人様!?僭越ながら申し上げます!男1人に対してこちらは数十人という人数比でございます!ご主人様の事をお慕いしております者は全員でございます!その中でこうやってご主人様との時間を過ごすことができる時間は少なくです」

「そういった者のために作られたのがこの機械でございます!!これがあればご主人様との蜜月がいつでも……体験できるそれはそれはすんばらしい発明でございますよ!?これがあれば…いつでもあなた様との将来を見ることができます!見ましたか!?私とご主人様の愛の結晶を…。目を覚ましたら会えないのは残念で残念で仕方ないですが…。しかし、その将来も夢では無いのですよ?ご主人様さえ…ご主人様さえよければ私はいつでも…準備できております。その機械はまだ量産体制におりません!どうか!どうか!後生でございます!それをお返しください!!」

と、かなり、力説されるので…

 

「秘書官とメイドと大淀達も交代制にするか」

なんて言うと…

 

「…………」

本気で絶望した顔をしてる。

恐らく大淀は泣くだろうな…この話したら

 

「ご…ご主人様ぁ…メイド職を奪われたら…私は…私はぁぁあ!!」

と、散々泣き縋られたのでとりあえず保留にしておく…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

取り乱しました…。と、笑いながら言うベル。

 

 

「私は…メイドもお嫁さんも失格ですね」

 

「何故?」

 

「…主に…忠を尽くすべき主に恋心を…いえ………」

「止めどなく溢れる愛を抱いてしまいましたから」

 

 

 

あなた様のために戦える事も

あなた様のために生きる事も

お茶する事も

意地悪する事も

何もかも全てが私の一部となりました。

 

 

 

 

「ええ、勿論分かっております。その2つが両立できない…すべきでないことくらい…」

「メイドと言う立場である以上、お嫁さんでは居られません。お嫁さんである以上、メイドとして在る事はできません」

 

 

 

「これがその2つが本当の私なのです」

「ご主人様のメイドで在り続ける事が…そしてあなたのお嫁さんで居る事が…私にとって何よりも輝かしく、尊い喜びなのです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ?ベル?」

 

「はい?」

 

「指輪を貸してもらえないか?」

 

「……ご命令でしょうか?」

 

「…お願いではある」

「指揮官として……1人の男として」

 

「…では、私は…ご主人様のKAN-SENとして…1人の女としてお応えします」

 

どうぞ…と指輪を差し出すベル。

表情にこそ出さないが、内心は穏やかではない。

 

もし、それを取り上げられたら…?

私に何か不備が…?

「ご…ご主人様…?」

 

指輪をまじまじと見る彼にそう声をかけるしか出来なかった。

 

 

 

 

 

「…なあ?ベル?」

 

 

 

 

「はい」

例えどんな言葉が私にかけられようとも…

私は…ずっとあなた様の側で……

 

 

 

 

 

「改めて…これを受け取って欲しい」

 

 

 

 

 

 

それは桜赤城が貰ったものと同じもの…。

2つの指輪を合わせた指輪。

「………ッ」

 

目の前の箱の中に入って輝いているのは…その幸せの形。

 

「…はい、喜んで…お受けいたします」

と…彼女は右手を差し出した。

 

 

 

 

 

「違うぞ…ベル」

 

その言葉に戸惑うベル。

「え、あ、ご、ご主人様…?」

今まで見たことがない顔でこちらを見るベル。

その彼女に彼はこう答えた。

 

 

 

「左手を…」…と。

 

 

彼女は言葉が詰まりながら左手を差し出した。

それが何を意味するか…。

右手でない誓いの指輪…。

つまり……彼女達にとっても完全なる愛の絆の誓い。

いや、それ無くとも指揮官の愛を疑う者など居ないだろう。それでも、それでも…求めるのは人も艦娘もKAN-SENも戦姫も…この左手の薬指だろう。

 

 

 

ゆっくりと違和感が左手にやって来た。

「…ッ!」

声にならない喜びは涙となって彼女の頬を伝う。

 

 

 

 

 

彼女はその指輪に過去を見る。

 

 

 

 

 

 

その思い出は出会いの日に…。

 

 

あなたが…私のご主人様…。

そう感じたから。直感とか…そんな感じ。

 

画面の向こうのあなたは…あんなにも笑顔で私に…。

 

最初に…彼が最初に出会ったのは私…。

オイゲン様よりも、ドロップした桜赤城様よりも早く…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご主人様に…貰った指輪も…嬉しかったです」

「画面の向こうのあなた様の声も顔も忘れられません…。あの喜びは…それ以上はきっとこの先の人生で味わうことの出来ないものだと思っておりました」

 

 

「でも…それ以上がありました」

 

 

「何だい?」

 

 

 

 

 

「ご主人様に出会えたことです。突然現れたゲート……あの闇の向こうにあなたがいると魂が告げたんです」

 

 

「うん、来てくれて…ありがとう。ビックリしたけど…嬉しかったよ」

 

 

「この命…尽きるその時まであなた様と共に…だったのですが」

 

「この命…尽きてもあなた様と共に…に変わりました」

 

 

 

 

「いや…違う」

と、彼は言う。

 

「共に……この先ずっと…2人で…だ。俺は何があってもお前を死なせない、先に逝かせない。俺もお前達をおいて逝かない。だから…この先もずっと一緒に…だ」

 

 

 

 

「…は、はい…」

「……それ以上の喜びは…ないと思ってましたが…今、あなた様から直接左手に指輪を頂きました。今までのどんな事よりも…この喜びが全てを覆い尽くすほどの幸せに変わりました」

 

 

「まだあるよ?」

 

「え…」

 

 

 

 

「…左手に指輪してはじめての…キスも……いずれはその先も」

 

 

ちゅっと唇が……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良いんじゃないか?」

 

 

 

 

彼は言う。

平然と、私の悩みなどどこ吹く風で言う。

 

「メイドの君も…お嫁さんの君もどっちも愛する桜ベルファストだから」

と。

 

 

 

 

 

はい…と彼女は指で涙を拭って笑顔で答えた。

そして…

 

「愛してます…」と、力強く…力強く抱き締めてくる。

「もう指輪は返しませんからね?この愛もぜーんぶ受け止めて頂きます。他の方にも負けません!!」

 

「そして…今はご主人様はベルだけを見てください」

「……今の私は…きっと他の人にも見せないベルですから…どうかどうか…その寵愛を全て私に注いでください」

 

 

 

 

 

「愛してるよ」

 

「はい」

 

「………いいんだな?」

 

「はい」

「…この私の全てはご主人様…旦那様のものです」

「そして…私は…それを……ずっと待っていましたから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画面の向こうにもあなたが居なくなって、声も聞こえなくなって…

その孤独感は、喪失感は言葉では言い表せない程のものでした。

私達は戦うKAN-SEN…なのに

この感情は…思いは何なのでしょうか?

 

感謝?親近感?親密感?

 

 

 

 

……恋慕…?

そうだ…これが好き…って事なんだ。愛しいって事なんだ。

 

手を伸ばしても届かない別世界のあなた。

戦い傷つく事は何一つ怖くありません。

 

 

あなたの事を考えるとこんなにも胸が苦しくて…

あなたに会えない…そう思うことが何よりも怖くて…

 

 

 

 

 

 

 

でも今は…この手を握ってくれるあなたが居るから…。

 

「ん?どうした?」

 

もぞもぞと…その温もりの方に身を預けに行く彼女。

「…??」

 

「今は…この温もりがありますから…どんな痛みも…

 

「え!?痛かった?!」と慌てる彼に彼女は笑う。

 

「…ふふ。ご主人様…ありがとうございます」

「幸せな痛みというのも…あるのですね」

 

 

 

彼女はニコリと微笑みながら安心したように眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう御座います♪ご主人様。私としたことが…昼間に寝てしまうとは……」

 

「いやいや、俺も寝たし…」

 

「ふふ、おやさしのですね。では、お夕飯に致しましょう」

 

料理をしながら彼女が言う。

「……子供の名前は何にします?」

 

「え?」

 

「そう遠くない未来に…備えませんか?」

 

「え?え?気が早くないか?」

 

「…いつでも準備できてますからね?」

と、微笑むベル。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…おめでとう?桜ベルファスト」

と、声をかける桜赤城。

 

 

「!?!?!?何が?!?」

 

「ズルイです!私を差し置いて…この小娘となんてえ」

 

「何のことでしょう?」

 

「隠さなくてもわかります。あなたが女になったことくらい…」

 

少し赤くなるベル。

そして、その顔を一瞬で元に戻して言う。

「いずれはお二人共そうなる日が来ると思われますが…」

 

 

「ええ…早くそうなりたいものね…」

 

「でも…本当におめでとう」

 

 

 

「で?どうだったの?教えなさい?」

 

「え?桜赤城様?」

 

「その…いずれの日の為の予習よ!!」

 

「ちょ…ま…」

 

 

 

 

なんかめっちゃ顔が赤い2人が食堂の片隅に居たとか?

 

 

 

 

 




あれですよ。
桜赤城もベルもウブなんですよ。

下ネタトークも顔赤くしながらする感じ。
大鳳?普通の顔しながら言う感じ。



少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!

感想などお待ちしてます!


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329話 バレンタインの前に

別に寂しくて描いたわけではない!


「〜♪」

「いい?皆!今年こそ提督を唸らせるチョコを作るわよ!」

 

「はいなのです!」

 

 

 

「さて…試食を控えて…控えて…提督の為に作るんだから…あ、でも一個くらい……「赤城さん!?」

 

「ありがとう…瑞鳳に龍鳳…。くっ…一航戦の誇り…」

 

「食い気に負ける誇りとは?」

 

 

 

「今年の不知火の準備に落ち度はありません」

 

「今年も頑張るよー!陽炎型!オー!」

 

 

 

「チョコとお揃いのピッタリスパッツ…どっちが喜ばれるかな?浦風」

 

「初月……チョコにしとき…変な扉開いたらいかんから…」

 

 

 

「今年こそ…等身大チョコを贈るデー…って榛名?ちょっと?ソレは…何かな?」

 

「あ、お姉様!これは…榛名の型です♡これにチョコを流し込んで1/1の等身大榛名チョコを作ります」

 

「…榛名?私と被ってるよ?」

 

「お姉様は大きなチョコを削るんですよね?安心して下さい!その面では被ってないですから!」

 

「いや、あのね?」

 

「お姉様…キャラ崩れてますよ?」

 

「こっちが素です!お淑やかにいきます!」

「…このチョコを削る工程が愛を深めるの!流し込んで終わりじゃないよ!」

 

「削った後のチョコ…勿体ないですよね?それに…この型は…私から直に取った型なので…謂わば榛名の体に触れたチョコと同じ…。温もりが違います」

 

 

「は?」

 

「お?」

 

 

 

 

 

「榛名ァ…。幾ら愛する妹とは言え…こりゃあ…あかんぜお」

 

「おねえ…いえ、こんごぉ…妹の恋愛を応援するのも…姉としての器量じゃないどすか?」

 

 

バチる2人。

「大体!自分の型!?不衛生でしょうか!!」

 

「お風呂に3回入りました〜!!超清潔で〜す!」

 

「それに!その型!全部丸見えじゃないの!」

 

「はい!ありのままの榛名ですからぁ?!お胸からでも顔からでも…………からでもどうぞ!な訳ですよ!」

 

 

 

 

 

 

 

「……馬鹿め…なあ、あた………ご?」

呆れる高雄。

愛宕の方を見て驚愕する。

 

「……え?」

愛宕も同じ型を……。

 

「ここにも同じ馬鹿がいた……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこは女の戦場…キッチン特別会場in鎮守府。

提督への愛をチョコに乗せて…というより、チョコを被った愛?を作る場所。

だがしかし、お菓子作りが苦手な者もいる。

駆逐艦勢達もその筆頭…というより過保護者から『待ってくれ!天使達が火傷をしたら……あぁ!そこはこうしたらいいぞ?………あぁ!怖い!お姉さんに任せ……ん?お、おい?なぜ泣いてる!?え?長門さんなんか嫌い?………………マジか…」

 

そう言った面々の為に間宮や伊良湖達がお菓子教室……をやっている。

 

 

(やっぱり今年も…等身大チョコをつくるのね?金剛さんは…)

 

(あら?鈴谷ちゃんはトリュフなのね?箱も手作りかしら?)

 

そこは抜け目ない間宮。

内情観察も兼ねており、いかにこの日が乙女達にとって深海棲艦との戦いよりも重要視されるかがわかる。

 

 

その中に…ある2人の姿があった。

 

 

 

 

 

 

………」

間宮は驚愕していた。

 

 

 

 

「…私は悪くないわ」

 

「……料理なら得意なのに…」

 

加賀と鳳翔は目を泳がせていた。

 

 

 

バレンタインを前に、お菓子作りをしていた………筈なのだが!

 

「これはダークマターですか?」

 

 

「……料理なら…「鳳翔さん、認めてください」

 

「私は悪く…「いや、ダメですから」

 

 

 

 

意外や意外に加賀や鳳翔もその1人。

 

 

 

「あら?先輩?意外ですねえええ!?あの加賀先輩にも苦手があったんですね?プププ」

 

「……瑞鶴…」

 

 

加賀目の前には

瑞鶴、桜瑞鶴、蒼瑞鶴の3人が。

「アホと戦闘狂とドヘンタイ…ね」

 

そこにやって来た桜加賀、戦艦加賀、蒼加賀。

 

「…鉄仮面と戦闘狂その1と戦闘狂その2と女たらしじゃん」

 

「あん?」

 

「お?」

 

 

 

 

 

「まあまあ…瑞鶴?そりや偉大な先輩にも不得意はありますよ」

と、蒼瑞鶴が宥めるが…

「そうよねえ!?あの加賀先輩でも不得意はあるわよねえ」

と瑞鶴が笑う。この2人は煽ることに命懸けなのだろうか?

 

 

「……あ!でも3人共得意な事はあるよね」

と、桜瑞鶴がフォロー(天然の煽り)を入れる。

 

 

「焼き鳥…は得意よね?」

瑞鶴が笑う。

 

 

「黙れ七面鳥…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「というか…アレよね瑞鶴……」

「…同じ瑞鶴なのに……哀れね」

はぁ…とため息を吐きながら加賀が言う。

 

「何がよ!!」

食ってかかる瑞鶴。

 

 

「まあ…なんだ加賀…言ってやるな」

何が言いたいかを察した桜加賀が宥めるように言う。と言っても顔を伏せてプルプルと震えていた。

 

「その感じもアリだけど……育ってから…出直しておいで」

なんて蒼加賀は言う。

 

「…?」

チラリと周りの瑞鶴を見る。

 

 

そして気付く。

格差があった。

脅威の…いや胸囲の格差がそこにはあった。

 

「胸か?胸なのか?胸の事を言ってるのか!?それならアンタだってー………ちくしょおお!!」

崩れ落ちる瑞鶴。何も言えない瑞鶴ズ。

 

だが1人彼女の方に手を置く者がいた。

「気にするな…瑞鶴…」

 

「戦艦加賀さん……」

そう、戦闘狂とも言われる戦艦加賀だった。

ウルウル目で彼女を見上げる瑞鶴に彼女は言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦いやすいだろ?邪魔なのが無い分空気抵抗もないしな!速度も出るんじゃないか?」

グッと親指を立てて爽やかに言う戦艦加賀。この女も煽りよる煽りよる。

 

 

「…ブフッ…」

吹き出したのは間宮と翔鶴ズだった。

加賀は腹を抱えて笑い転げていた。

 

 

 

「翔鶴姉に間宮さんで……うがぁぁ!!」

始まる取っ組み合い。

主に瑞鶴と加賀。

 

「あ、アンタたちは見てるだけなの?!」と瑞鶴が食いつく。

 

「いや…私達は…ねえ?馬鹿にされてないから…」

 

 

「チクショおおおおおおお!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

などと大乱闘にはならない取っ組み合いの裏では…

「出来ました!これでどうですか?伊良湖ちゃん」

 

黙々と真面目に取り組んだ鳳翔お菓子を完成させていた。

 

「できましたね!鳳翔さん!いい出来だと思いますよ」

キャッキャっとハイタッチをしながら喜ぶ2人にコメディのお約束は忍び寄らずに猛ダッシュで駆け寄ってくる。

 

 

 

取っ組み合いをしている馬鹿である。

 

「…あぁっ!!せんぱいとずいかくがおやくそくのようにほうしょうさんのつくったおかしにトックミアイナガラツッコンデユクー」

 

迫る馬鹿。

何としてもこのお菓子を守り抜かなくてはと鳳翔が前に出る……キレ気味に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピタリと両者の顔面を掴む鳳翔。

我に返る2人。

「き、聞いてください!鳳翔さん!コイツらが私の胸を馬鹿にするんです!鳳翔さんなら分かってくれますよね!?」

と、味方に引き入れようとしているのか自ら地雷原に突っ込もうとしているのか分からない瑞鶴は最後まで言い切ってから己の失態に気付く。

 

 

「……あ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

メキャッ…

 

 

 

到底人体から発される音…もとい、発されるべきで無い音と共に瑞鶴はダラリと鳳翔の手から崩れ落ちた。

 

 

 

「………!?!?」

それをみて焦る加賀。

チラリと横目で他のメンバーを見てみたら…真面目にお菓子作りを再開した裏切り者しか居なかった。

 

 

ふっと息を吐く加賀。

その目に迷いはなかった。

「……鎧袖一触ね」

「私は鳳翔さんの慎ましい胸もすk………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メキャッ…

 

 

 

それが加賀本日最後の言葉となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「間宮先生!これでどうですか?」

 

「あら…麗ちゃん?上手ね」

 

「ぼ、僕のだって」

 

「幸ちゃんのは…独創性に富んでますねえ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは提督の秘密の場所(笑)

バレンタインとはいえ、あれだけの雑誌やら何やらを見ていたら作りたくなるのが不思議な所。

街のお菓子教室に通おうとしてブチギレられる未来が見えているので独学で頑張っていた。

 

それなりの数を揃えたオーブンに調理器具。

これはこれで見つかったら怒られるだろうな。

 

 

でも男は燃えていた。

毎年高級チョコを強請られている彼は燃えていた。

俺だってチョコとか作りたい!と。

美味いと言わせてみせる!と。

 

 

それなりにお菓子は作れない事はないが、何せ人数が増えた。

アホみたいに増えた。

だからといってまた買うのは負けた気がしていた。もはや意地だった。

てか、昨年は迅鯨の…ゲフンゲフン。

 

 

 

 

 

全力で作る。

 

 

 

 

 

昨年は…食堂に置いたけど…

今年は手作りだからな…一番に貰う!って戦争が始まらなきゃ良いんだけどなあ…。

 

あ、作るのはカップケーキとトリュフです。

 

 

 

 

 

ガタン!ガタン!!

なんか騒がしいな…。

加賀と瑞鶴あたりが乱闘でもしてるのか?

 

 

静かになったな…

間宮あたりに沈められたか?

 

 

 

 

 

 

 

完成したキャラメルカップケーキとトリュフ。

正直俺が好きなメニューで固めました。

 

 

 

 

 

完成したのは良いけどこれをどこに仕舞えばいい?

どうやって渡せば良い?

それは明日の俺に任せようか…。

 

 

 

 

 

 

 




鳳翔最強説到来!


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330話 バレンタイン in 鎮守府

ほーん…チョコねえ…

 

 

目の前には芸術とも言えるチョコ(等身大)

 

 

金剛のは…あれか?大破ポーズなのね?めっちゃセクシーやん?

 

榛名………なんで水着着せて……………おおぅ…めっちゃリアルやん…コレ…まじ?そこまでする?普通?

 

桜大鳳は……ウエディングドレス?え?これもチョコ?ヤバくね?ヤバくねしか声が出ない語彙力がやばくね?

 

桜赤城は…また可愛いしぐさで…かわいいなあ…。

 

 

 

んで?蒼オイゲン…は?

「マイネリーベ?このチョコソースを掛けて私を食べてね?」

なんて言ってきそうな部類なのだけれども…と思いながら彼女の方を見る。

 

「マイネリーベ?きっと胃もたれするからオイゲンは…明日に胃に優しいおじやをつくってあげるわ♡」

なんて言うんだ。思わず抱きしめた。

 

「マイネリーベ?どうしたの?やっぱりチョコの方が良かった?」

 

「君の心遣いに感謝してるところだ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一通りの等身大を食べながら、何日で消化できるかを考えてみる。

来年は数ヶ月単位でかかるのでアホみたいにでかい冷凍室を使うのだ。

さて…桜赤城のを食べるか…。

 

 

 

 

 

 

人差し指を出したポーズの桜赤城チョコ。

まあ良いか…とその人差し指にぱくついてみる。

 

お?生チョコ風?柔らかいな?

 

 

 

ん?何だこれは…。

すこし硬めのチョコか?

舌触りが……

 

 

「あん、指揮官様♡」

 

「!?」

 

甘い声と共に

口の中で何かがうごめいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

色々とまずい気がして口を離す。

 

指だ。

指がうにうにしてる。

 

 

パキパキとチョコ赤城だったものが崩れ去って桜赤城本体が生まれた、もとい羽化した。

 

全裸である。

この鼻血はきっとチョコのせいだろう……きっとそうだ。

 

 

「おま…何してるん…」

 

「指揮官様に食べて欲しくて………ぽっ」

 

 

 

 

 

「…情熱的な…ねぶり方でした…♡」

「さあ…もっと食べてください…ね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もちろん食べた。食べ尽くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コレはお返しな?俺からのチョコだぞ」

 

「……赤城は…赤城はもう…お腹いっぱいですぅ」

 

チョコだよね?チョコのはず、うん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて…

「…提督ー!」

「食べてー!」と、六駆組がチョコを持ってくる。

 

彼女達らしい、不器用ながらもきっと一生懸命に作ったであろうチョコだった。

「ありがとうな?じゃあ…俺からも、はいどうぞ」

と頭を撫でながらチョコ達を差し出す。

 

「提督さんの手作りなのです!?」

 

「わあ!はらしょー!」

 

 

 

キャッキャと喜びながら帰る天使達を野獣の如き眼光で俺は見つめていた–––

 

 

「おい、ナガモン…変なナレーションを入れるなハゲ」

 

「おま!ハゲて!ナガモンて!違うだろう」

「ゴホン……いや、アレだ…。コレを…あなたに…渡したくてな?」

 

「駆逐艦チョコとか言わないよね?」

 

「茶化すな!本命へのチョコだ…」

「わ、私の心はいつも提督と共にあるから…な」

 

「ありがとう…」

「ならコレをお返しに君に」

とチョコを渡す。

 

「ありがとう…な、なんか照れるな……ありがとう…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなた?」

「…もうたくさんもらって………妬いちゃいますね」

 

「ん?何のコト…」

 

「それに…女のカンです…!もう……」

「……今年は頑張って…教えてもらいながら作りました」

スッとそれを前に差し出す彼女。

 

俺は知っている。

何故かおしることかの料理は得意で、お菓子作りは苦手な彼女の事を。

毎年、買うか料理を出すかで悩んでくれていた事を…。

 

料理なら自信があるだろう。

ただ…苦手だからと言っても作りたかったのだろう。

甘い…想いをチョコに混ぜて届けたかったのだろう。

 

必死で本を見ながら、間宮に聞きながら、アレコレ慣れない事をやって…。それはただ1人の笑顔が見たいから。

 

だから応える。

「え?め、目の前で開けて食べるんですか?!」

あわあわと慌てる彼女。

 

ガサガサと開けると…そこには

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハート型のチョコに

I Love Youの文字。

 

震えながら一生懸命に描いたであろう文字、シンプルな形であるが…1番ストレートに伝わる愛の形。

 

 

 

 

 

 

 

 

パキッ…とその愛を頂いた。

 

 

 

 

 

「……」

不安そうに見つめる彼女。

戦さ場でも滅多に見られない表情…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

砂糖と塩も間違ってないはず!

分量も、文字のスペル?も間違ってないはず!

包装も…一生懸命やりました!

大丈夫…よね?

 

思わずキュッと手を前で握ってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「美味しいよ…。君のチョコが1番美味しい」

 

 

 

 

 

優しい味だった。

 

ただ一心に

ただひたすらに、その人の事を思って作るものに心を撃たれた。

 

だから…正直に心から出た言葉だった。

 

 

 

 

「……ッ!!」

ポロリと何かが私から出ていった。

それは…嬉しさだろうか?幸せだろうか?

分からないけれど…一つだけ言えることは…見たかった笑顔と美味しいの言葉。

 

 

 

 

「……悔しいけれども…仕方ないねー…私が榛名と揉み合ってる間も、皆がワイワイやってる間も…ただ1人、真剣にチョコ作りやってたもんね」

と、金剛が言う。…お前キャラは?

 

 

 

「そうですね…。どうして今年はお菓子を作るのですか?と聞いたら…鳳翔さん…『あの人にいつでも美味しい幸せを差し上げたいから…』って言って、ずーっとあの人はこうしたら…って悩んでましたね」

 

「はい、チョコの形も文字もずーっと悩んで悩んで…シンプルに愛を伝えよう…って」

間宮と伊良湖が微笑みながら言う。

 

 

「ありがとう…鳳翔。これ、御礼のチョコ」

 

「食べさせてください…あーん」

 

「はい…あーん」

 

「…とってもおいひぃです♡」

 

 

 

 

微笑ましい空気。

そっと…身を預けてくる鳳翔。

悔しそうながらも微笑む彼女達…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが…

彼女達はもっと居る。

メラメラと闘志を燃やす彼女達が…

 



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331話 バレンタイン その2

提督の血糖値は上昇気味にあります!


鳳翔のチョコ………を堪能した俺。

 

未だに顔を出していない執務室へと行く。

さてさて…

 

 

 

「遅いです」

 

大淀の第一声はそれだった。

隣の秘書艦である桜ビスマルクも大きくため息をついていた。

 

 

え?メイド?桜シリアスはいつも通り目がハート。蒼カールスルーエは桜ビスマルクと同じ反応。

 

 

「チョコ…もらってて…」

 

「…14時過ぎてますよ?」

 

「すみません…」

 

 

 

 

「コホン…では…。はい、提督!私からのチョコです♪」

と、大淀がチョコを差し出してきた。

さっきまでの表情が嘘のように満面の笑みで渡してくれた。かなりズルいぞ!?そのギャップ。

ちょこはメガネ型のチョコだった。あと本物のお揃いの伊達メガネ。

お揃いですよ♪なんて可愛いセリフを添えて…

 

 

「む、オーヨド…ズルいぞ?」

「指揮官…これは私からよ?」

桜ビスマルクは綺麗なチョコマカロン。

頑張ってみた!と自信あり気だ。

 

 

「あぁ!桜ビスマルク様!ズルいです!誇らしきご主人様?!」

「桜シリアスのチョコもぜひ…ってわぁあ」

 

「っと!そうはさせませんよ?桜シリアス…ドジは潜めてください」

たまたま転びそうになった彼女を受け止めながらチョコを差し出してくれる蒼カールスルーエ。

 

可愛いハートチョコと厳粛な形…真四角のチョコ。

ありがたいねえ…。

 

 

 

お礼を渡しながら皆でチョコをつまむ。

 

 

カップケーキは、結構好評でえへへーなんて笑いながら食べてくれるのは幸せだ。

 

 

そんな時にコンコン…と

チョコサンタ兼チョコハンターが来襲してきた。

 

 

 

天龍、龍田はお酒を使ったチョコ。

蒼天龍はお大福だった。

 

 

大井、北上はそれぞれトリュフに羊羹。

こう見えてウチの北上は和菓子が好きらしい。

グッと親指を立てて「和菓子の甘さも…いいでしょ!」と言う。

 

 

妙高4姉妹は…やりおる…

妙高、足柄のカツ御膳に那智の特選されたお酒…そして食後の晩酌に合う羽黒手作りのチョコボンボン…。

 

 

鈴谷はマロングラッセ。

「さすが今時のJK!!」ったらしばかれた。

熊野は「これですわー!」って本当に高級そうなチョコマカロンを出してきた。「さすがお嬢様」って言ったら…以下略

 

 

 

初月は紙袋…

「部屋で1人で開けてくれ…」とのことだった。

柔らかいな?布?マフラーとなかな?

 

 

浦風はたこ焼き風の一口パンケーキ。

「遊び心あるやろ?もちろんソースはチョコなんよ」との事で。

 

 

 

赤城ズ、加賀ズ、龍鳳や空母勢は…マジか。

ミニチュアキャラの和菓子だった。

デフォルメされたキャラが愛らしい仕上がりになっている…食べるのが勿体ない……ん?待て?この…半身がないのは?

 

服装的に俺だよな?……赤城…?

え?待ちきれなかった?

 

 

チョコ無しな……

 

ええい!泣くな!なんだその顔は!?おまっ…そんな顔する!?

そんなに!?ギャースカ泣くかぁ!?

 

 

 

ん?瑞鶴?この瑞鶴のお菓子……チラッ…チラッ。

 

触れないでおくか…主に甲板……やめとこ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蒼オークランドに蒼ベルファストは…おー!クッキー?嬉しいね………ん?なんだその顔は…蒼ベルファストや…何をそんなに震えてるのかな?うん?

 

 

 

辛いやつだな?え?そんなことない?

 

ほーん……ならそれがもしもあったら…お前の部屋のヘビメタ音楽没収な!!

ちなみに蒼オークランドは射撃禁止な!

 

 

 

 

 

 

めっちゃ辛かった。

アホほど辛かった

 

 

 

 

 

 

2人は地獄へと旅立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラスボスは遅れてやってきた。

 

蒼ポートランドだ。

後ろで蒼朝日と蒼エリザベスが必死に謝るジェスチャーをしていた。

蒼神通は気配を消そうと試みていた。

 

 

「…………マジか」

 

 

目の前に出てきたのは魔女がかき混ぜてそうな紫色の何か…。

 

 

「美味しいからさ!ぜひ食べてくれよな!」

なんて笑顔で言うんだぜ?

あの蒼オイゲンが「味は大丈夫だったわ……マイネリーベ…オイゲン…部屋に戻るわ…」なんて言うんだもの…。

 

「……これ私達からのチョコ……と、胃薬置いとくねえ」

なんて曙や霞が笑顔で去って…行こうとしたのでその手を掴んだ。

 

「せえええっかくなんだ!お前らもお呼ばれしてみろろおおお!!」

 

「ちょ!私達は遠慮するわぁ!!愛されてる提督からチョコは貰えないわぁぁぁあ!!!?」

 

「そ、そうよねえ!!私達はチョコ渡せたし…部屋で映画でも見るからァァァア!!離しなさいよッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

味は良かった。

でも見た目が地獄だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てーーとくー!はい♡ちょこでーす!」

 

「……はい…その…チョコです」

 

「おー!夕張に明石達…ありがとう!おー!?ネジ型のチョコ?」

 

「はい!私達と言えば…これかなあと」

 

「本物は混じってないよね?ね?ね?」

 

「何があったの…?提督…?大丈夫よ?安心して?」

 

 

 

 

全部チョコでした…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今年は…割と平和…だったのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、あなた」

 

「間宮特製いちごパフェチョコ添えです♪」

 

「おー!間宮のパフェだなー!?」

 

「私の最中もありますよ?」

 

「おー!伊良湖最中!」

 

 

 

「2人とも、皆へのお菓子作りのサポートありがとうな」

 

「うふふ、楽しかったですよ?」

 

「そうですね〜皆、個性的でしたね」

 

「でも、変なのは止めてほしいなあ…」

 

「「面白いので止めません♡」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの…と声を掛けられる。

目の前には龍鳳、迅鯨、神威、神州丸、あきつ丸…瑞鳳が居る。

こっそり隠れていた姫ちゃんや鬼ちゃんも出てきた。

 

彼女達は…

「「「「「「転生チョコです」」」」」」

 

「重いッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい!まも君♡」

 

「幸ちゃん。傷…残らなくて良かった」

 

「あ…心配してくれてたんだ…。えへへ…嬉しいな」

「うん!大丈夫!さあ!この僕の愛がたーっぷり詰まったチョコを受け取って!」

「安心して?チョコだから!」

 

 

 

「え!?僕にもチョコ!?やったあ!…え…みんなにも…?なんだ…特別じゃないのかあ…」

少し不貞腐れてる幸が可愛く思える。

 

「あの子からは?……ふーん…まだなんだ…」

 

「…リボンつけた僕を貰っ「次に行ってきます!!」

 

 

提督連中にもヤベーヤツが増えてきたな…とか思いながら、1番やばいのは自分だろなあ〜と思いながら考えるのをやめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず全員からのチョコを貰って部屋に戻った。

部屋には妖精さんに運んでもらった大量のチョコがある。

これを愛と言うのなら喜ばしい。……健康上の問題はさておいて…だけども。

 

 

 

そして今、最後の1人を待っている。

きっと彼女は最後にやってくる。

 

 

 

コンコン…とノックの音がした。

 

 

 

 

 

 



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333話 バレンタイン おまけ!

2話投稿です(๑╹ω╹๑ )!!


 

「ごめんね?夜遅くに」

 

「んにゃ?全然大丈夫」

「麗ちゃんも傷が残らなそうで安心だよ」

 

「そうだね…うん、ありがとう」

 

「まあ…傷が残っても変わらず愛してるけどね」

「何もかもひっくるめて好きだからさ」

 

「……ありがとう…そんなこと言われたら…もう…嬉しすぎるよ…」

 

 

「はい、チョコレート。……わかってると思うけど…大本命だからね?」

顔を赤くしてモジモジとする彼女。

クリスマスとかも一緒に過ごしてるのに…なんか新鮮だな。

 

 

 

「あんなに喧嘩したのは初めてだよ」

 

「そうだろうねえ…本当に驚いた」

 

「でも…救君が真壁さんに立ち向かったり長門さんと殴り合いした気持ちが少し分かった気がするよ」

「体が勝手に動く…んだね」

「でも後悔してないよ!分かりあうことも出来たし…。自己満足とか偽善って言われるかもだけどね」

 

「それにね?やっぱり……何があってもあなたを失いたくなかった」

 

「麗ちゃん…」

 

「恋敵も多いし…金剛さんとか…鳳翔さんとか……加賀さんとか…言い出したらキリが無いよね。別の世界からも来るしさ?提督側だって…桜さんとか…幸ちゃんまだ増えて………」

「本当…罪な男だよ!救君は!!」

 

「そりゃあ…私だけを選んでくれたら…って思うよ?でも……こんなにもあなたの周りに居る皆と一緒に居るのが幸せなんだって思ったらね?こういうのもアリかなあ…って思うようになったよ」

 

「まあ…負けるつもりは無いけどね」

 

「だから1番記憶に残るであろう最後に持ってきた訳ですよ♪」

 

 

「ありがとうね。…早速食べていい?」

 

「あ、うん…は、恥ずかしいなぁ…」

 

 

チョコを開封すると…やはり、ハート型の小さなチョコが綺麗に詰められていた。

一つ一つに一文字ずつ、大 好 き だ よ ♡と描かれている。

蓋の裏側には…

いつも…たくさん力を貰ってます!

愛情たっぷりのチョコを食べて元気に過ごしてね!

デートのお誘い…ずーっと待ってます♡

 

 

チラリと顔を上げて彼女の方を見ると…両手で顔を覆っていた。

ぷしゅーーって音が顔から聞こえてきそうな程に赤い。

 

「ありがとうね…………ん!おいしい!」

 

ミルクチョコではあるが、軽くお酒の風味が効いて…

物凄く好みな味わいである。

 

 

もしゃもしゃ食べながら彼女にお礼のモノを渡す。

 

 

 

「え?!救君の手作り!?わぁあ…嬉しいなあ♡」

 

「知ってたでしょう?」

 

「あ、バレた?幸ちゃんから見せびらかされたよ……少し妬けちゃ…………あ…」

 

 

 

彼女の見た記憶には無いものがあった。

それは…きっと他の人には無いチョコ。

彼を見ると照れたように目線を逸らす。

指輪型の…チョコ。

 

「…特別製です…」

「麗ちゃんには本当にいつも支えになってもらって…本当に助けてもらってる。本気で感謝してるし……うん。だからそれを伝えたくて…愛してるって描く以上の事をしたくて…君だけにってのを贈りたくて」

 

「…えへへ……グスッ…嬉しいなあ…食べるのがもったいなあ」

 

「特別な恋人チョコ……えへへ…おいしいなあ…」

 

 

 

 

 

 

「ねえ?遅いから泊まってく?……というか…良かったら、うん、そうしてほしい」

 

「…良いの?」

 

「うん」

 

「ん、なら荷物置いてから…「この部屋に……」

 

 

「え?」

 

「うん…猛武蔵達に怒られないなら」

 

「ふふ…帰ったら逆に怒られるよう。攻める時は一気に攻めろ!って言われてるからね」

 

 

「お言葉に甘えて……不束者ですが…よろしくお願いします」

 

「よ、よろしくね?麗ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「む、むむむ猛武蔵…!と、泊まることになったよ!救君の部屋に!」

 

「ほう…奴も遂に待った甲斐があったな………ククク…麗よ…奴のそば1m以内から決して離れるな…!掴め!栄光ッ!!なぁに…邪魔者はこの私が灰にしてやろう…ッ」

 

「さあ…麗!!大人の階段登ってこおおい!あ!コレを渡しておこう…」

麗にあるモノを渡して親指を立てる猛武蔵。

 

「何コレ?針…?」

 

「既成事実作成セッt「それ以上はいけないよ!!」

 

 

 

「そーでーす!ダーリンにその手は通用しませーん!」

 

「こ、金剛さん…」

 

「ファーストタイムはこの金剛でしたが…!!麗…私は麗も応援します」

 

「あ、ありがとう…。でも…私も負けないからね!」

 

「ふふん!ライバルは元気なほどやる気がでるよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「行ったな…頑張れ麗…」

 

「まさか…お前が応援するとはな…金剛」

 

「そういう幸せもありまーす」

 

「口調が安定しないな…お前は…」

 

「キャラ模索中デース…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの…ふ、不束者ですが…よろしくお願いします」

 

「こちらこそ…!」

 




健全仕様です。


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334話 鎮守府の馬鹿騒ぎ そのいち 山城と時雨

キャラ崩壊…の予定


比較的静かな西波島鎮守府。

事件はそこで起こった。

 

 

 

 

「扶桑!?山城おおお!?!」

 

時雨の雄叫びにも似た叫び声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前には…扶桑と山城が倒れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて…扶桑と山城が殺害された」

 

『生きてますけど?』

 

「…この部屋は…密室だった」

 

『いや、開いてますよ?鍵かけてませんでしたよ?てか生きてますよ?』

 

 

 

「凶器はこの壺かな」

「油断した2人を後ろから…ガン…って…」

 

『いや、躓いて転んで頭打って…その壺は転んだ時に机から落ちてきただけなのだけれど…』

 

 

「許せないデース!必ずホシを挙げてぶっ殺しマース!

 

『私って嫌われてるのかな』

 

 

 

「扶桑ォォォ!!山城おおおお!!」

 

「…提督…泣いてくれるの?嬉しいけど…私生きてるわよ?」

 

 

 

 

 

『ねえ?今目合ったよね?ねえ!?』

 

 

 

必死に叫ぶも…なぜか無視をされる。

不幸だわ…いやほんと…

 

 

 

 

『…無視なんて酷いわよ…ただ目の前に私と扶桑姉様が倒れてるだけじゃない…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう

目の前は扶桑と()()が倒れている。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

倒れている私にに触れてみる。

 

 

 

 

 

 

スカッ

  スカッ

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぅ…」

と一息つく。

 

 

 

 

「本ッ当に死んでるじゃない!?」

じゃない

  じゃない

    じゃない…

 

 

 

 

 

 

え?あ?マジで?

うそ!?

 

 

てかそうなら扶桑姉様は……?

おいたわしや…アナタも亡くなられ………ん?

 

小刻みに震えてる?

顔赤い?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ…コイツ生きてるわ…

姉は生きてるわ…てか、これアレだ、お姉様は恥ずかしくて起きられないヤツだ…

 

 

 

て事は?!死んでんの私だけじゃん!?

ちょwwww洒落にならんwww何この漫画みたいな展開wwwテラ不幸wwww

 

じゃなくて!!

 

 

どうしようかしら……

 

 

「とりあえず…状況整理をしよう」

 

悩む山城に時雨が近付いて来る。

ーって!?時雨!?こっちにこないで!

 

 

ぶつかる–––––––––!!って透けるからいいか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

「おい!時雨?どうした?時雨?」

 

「あん?誰が時雨よ?てか…え?触れられてる?」

 

「ちょ…時雨?どうしたの?頭でも打ったの?」

 

なによ…みんなして私に向かって時雨だなんて…バカじゃないの?

 

「私は…山し…………ん?」

ふと、提督の向こうにある鏡に私が写った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時雨が。

 

 

 

 

 

 

 

 

左手を上げてみた。

鏡に映る時雨は右手を上げた。

 

 

 

ニコッとアホみたいな笑顔で笑ってみた。

……時雨もわらったよおおお

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…時雨?一体………」

 

 

「…し、しぐれでぇす……考え事してましたぁ…」

私は時雨になり切ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寝たままの扶桑姉様を放置して、倒れている私を放置してとりあえず部屋に戻る…。

かと言って時雨の部屋に戻ってバレたら面倒になりそうなので私の部屋に…ね。

扶桑姉様は…ごめんなさい。そのまま寝ててください…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ちょーーっと!?山城ォ!?何してんの!?その体は僕の体だよ!?てか何で!?どうなってんの!?って自分に聞くのも気味悪いけど!』

 

 

「………」

 

『オイ、自称不幸!無視すんな!』

 

「………」

 

『提督に日記のことバラすから…』

 

「ごめんなさいッ……あ…」

 

『…ほら…やっぱり…』

『で?この状況は?なんで?』

 

 

 

山城は時雨に色々と説明できる範囲で説明した。

 

・転んで落ちてきた花瓶で気絶!

 

・幽体離脱

 

・時雨と入れ替わった!

 

・とりあえず時雨として過ごす ←イマココ

 

 

 

 

 

『…てか扶桑は…うん、引っ込みつかなくなったんだね…。てか、放置してきたの?良いの?妹としてそれは……』

 

「仕方ないじゃない…!ごちゃごちゃになるんだから!」

「てか!何でアンタが日記の内容知ってんのよ!」

 

 

『ふっふーん♪』

得意げな時雨である。

 

 

「まあいいわ……とりあえず…元に戻る方法を探さないと……ちょっと!何でアンタに触れられないの?元に戻れないじゃない!」

 

もう一度ぶつかればいいじゃん!となったが、そうは問屋が卸さなかった。なんせ、時雨に触れられないのだ。

 

『マジか!どうするのさ!?』

 

 

 

「しばらくは時雨として行動するしか……ないわね」

 

『まあ…そうだよね……うう、仕方ない……早く元に戻してね?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「視線が低いのが慣れないわね…」

 

『あん!?どう言う意味さ!?』

 

 

 

「あ、でもこの体ならドアを拡張しなくても…通れるもの!!」

 

 

『艤装をしまって歩いたら良いだけじゃんか!?』

 

「そんなら個性が無くなるじゃないッ!!てか…時雨も誰かに入ったらいいじゃない…そして…軽いわあ…体が軽いわぁ…つっかえるものもないし…」

 

 

『……山城…ォ?どう言う意味かなあ…?』

 

ビシィッ!

 パキィ!! ガタガタガタ

突然部屋のものが揺れ始めた。

 

なんと!時雨はポルターガイストに目覚めたのだ!!

 

「え!?何!?特殊能力!?」

 

 

『許さない…許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない!』

 

「え何怖い」

 

 

 

 

 

 

「…って!!ああ!お気に入りのカップが!」

棚から落ちるカップをギリギリのところでキャッチ!

いつもより身長が低いから…届かないかと思ったのは内緒だ…

 

「ちょっと!ポルターガイストはやめてえええ」

「この棚は!この棚はだめ!本当ダメ!」

 

「私が悪かったから!ごめんなさい!ごめんなさい!!」

 

 

 

 

 

 

うわぁぁぁあ!!!

やめてええ!と何故か時雨が叫び回っていたらしい。

 

 

 

 

 

 




お気に入り740ありがとうございます!!

少しでもお楽しみ頂けるよう頑張ります!これからもどうぞよろしくお願いします(๑╹ω╹๑ )!


扶桑の出番?
……………次行ってみよー


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335話 鎮守府の馬鹿騒ぎ 時雨と榛名と…提督

「……」

 

「時雨?大丈夫?きょろきょろしてるけど…」

 

「し、白露…!?大丈夫だよぉ↑?時雨はだ〜いじょうぶ!」

 

「榛名さんみたいな受け答えね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あ…そうだ』

 

ぴゅーーっと何処かへ行く時雨…もとい自由人。

 

「ちょっと!?待ちなさい!時雨!!」

慌てて私は追いかける。

 

 

 

あいつのことだ…ぜーったい面倒になる!

そんな気がしてならないどころか……んもう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

んで…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………フハハ!やった!やったぞ!!」

 

そんな声が執務室から聞こえてきたのだ。

 

私の予想の中で1番起こったら面白い面倒な事になる…事が!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督の中に入り込んだぞう!!」

 

 

 

悪役みたいなセリフとポーズで叫ぶ提督(時雨)

 

 

 

『……は?』

『………え?何これ…』

 

驚く救。

 

「……えと……時雨…よね?」

 

「うん…あはは…これが提督の体…♡」

時雨は救の体でクネクネしながらぶつぶつと呟いていた。

その表情は恍惚の2文字…と言えばお分かりいただけるだろうか?

 

「え?返せ?……楽しんでからね?」

 

恐らく提督と何かしらのやり取りをしているのだろうか?

私には提督の姿は見えなかった。

 

このまま入れ替わりが続くと面倒になる…というより、私が危ない…。

 

 

 

 

 

その時…ガチャリ…と

その日の秘書艦が入ってきた。

 

「ダーリンさん!おはようございます♪」

 

 

榛名だ。

 

ここで約2名は

「マジかよ…」と思う。

 

約1名は

「楽しそう…♡」と思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう……アレだな…榛名って…よく見ると本当に可愛いよな…」

 

 

!?!?!?

 

そんな行動をとったのは時雨だった。

 

『やめよう?時雨ぇ…。俺の声で…体で…』

 

くいっと榛名の顎を上げる(時雨)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………誰ですか?

 

パシッとその手を払い除けた榛名。

 

 

 

 

 

 

「あなたは…ダーリンさんじゃない…」

 

 

 

「何言ってるんだ?榛名…。俺だよ?」

 

 

「いいえッ!榛名は…榛名が……大好きなダーリンさんを間違えるはずがありませんッ!!」

 

「どうして!?酷いじゃないか!榛名!」

時雨もややムキになって反論する。

 

「外見は確かにダーリンさんです!でも…()()()()()

「榛名は…外見でダーリンさんを愛しているんじゃないんです!心を…在り方を…存在を愛してるんですッ!!」

 

 

『…榛名……』

 

 

「だから…誰があなたをダーリンさんと言おうと私は信じません!」

「あなたはダーリンさんじゃない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この体を好きにしても良いと言ったら?」

 

 

「なら話は別ですね」

 

 

 

 

 

『おおおおおおおい!!」

 

 

 

 

 

 

 

「ちなみに…今は中身は誰ですか?」

 

「時雨だよ」

そう時雨が答えた。

 

「どうやって入れ替わったのですか?」

 

「幽体に触れたら…」

 

ふむふむ…と榛名は考え込んでいるようだ。

 

「なら…今幽体なのはダーリンさんですね?」

 

「よく分かったね…」

 

 

 

「気配がしますから…」

 

 

「…榛名は凄いなあ…」

 

『俺はゾッとしたよ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

「全集中…………。榛名は大丈夫です!」

 

色々とアウトそうな声を出しながらブツブツと…そしてキョロキョロと周りを見る榛名。

そして、カッと目を見開いたかと思えば…!一目散にこちらに来る。

 

 

『マジかよ…!』

確実に見えてない筈なのに!!

時雨ですら…うわぁ…って感じに引いてる。

そのくらい彼女は正確にこっちに来ていた。

 

 

 

 

 

『あ…』って言った時には既に俺は榛名だった。

 

 

そして幽体の榛名は時雨に触れる。

 

つまり…?

俺は榛名の体の中に入っていて

榛名は俺の体の中に入っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

「えへへ……これが…ダーリンさんの体ぁ…♡」

 

セリフだけで言えば可愛い榛名を想像できる…が、待ってほしい。

体は勿論、声も神崎 救がクネクネしながらそんなセリフを吐いているんだから…。

 

「は?ダーリンさんは気持ち悪くないです!」

 

榛名は虚空に叫んでる。

恐らくそこら辺に時雨がいるのだろう…。

 

触れ合った者同士じゃないと見えないのは不便だなあ…

 

 

そして榛名よ…その言葉はなあ…

向けられても仕方ないんだよ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

にしても…スカートはすーすーするし…

こう

 

 

なんつーかな?

 

 

胸の周りの違和感が…半端ない。

重み…?なのか?

 

 

周りが無人なら揉みしだいてそうな程に…

ないものがあって…あるものがない感覚は…なんというか………

 

 

 

 

 

 

「ダーリンさんの体で…私を……えへ…えへへ…両得じゃないですか!」

 

「は?」

 

俺は気付いたら床に押し倒されていた。

 

 

「ちょ!?は、榛名!?」

 

 

 

「私は…ダーリンさんですよ?周りから見たら…ダーリンさんが榛名を襲ってるわけですよね?」

 

 

「おいやめろ…!やめろ!」

 

あれ?山城達は!?居ねえ!!

アイツら…どこに!!なんて事を思っていたら…

 

バァン!と開かれたドア。

乱入してくる金剛。

「榛名ァ!!ダーリンを襲う………襲う?」

 

 

時雨から榛名が提督を襲ってると報告を受けてやってきた金剛。

妹の暴走を止める20%

あわよくば私も…が100%だったりする。

 

 

 

 

 

 

んで……目の前に広がる光景は…

 

 

救視点

救の中に入った榛名が榛名の中に入った救を襲っている。

 

 

 

金剛視点

ダーリンが榛名を襲っている。

 

 

 

 

「なんだ…逆ですか…セーフじゃないですか」

 

 

 

「アウトだから!これアウトだから!」

 

 

「さあて…お姉様の許しも得たことですから…ね?」

と、俺の声でそんなセリフを言いながらにじり寄る(榛名)

 

「ダメだろう!やめろ!やめてくれえええ!!」

と、提督口調で叫ぶ榛名()

 

 

 

どうなる鎮守府。

 

 




やはり榛名はラスボス…!


ゆっくり更新して行きます(๑╹ω╹๑ )


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336話 海と灯台守と温もりと ①

灯台の窓から見える海は…暗い中に伸びる一筋の光だけだった。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんにちは!

そしてこんばんは!!

 

私の名前は宗谷です!南極の氷をバキバキ…の宗谷です!

 

 

最近、赴任…というか…何というか…とりあえず、所属は西波島艦隊です!

え?登場して無かった……?ははっ…何のことかな?

 

 

私は…主にですが、灯台からの近海観察…まあ、所謂灯台守です。

鎮守府から離れた街の…小々波市。

鎮守府とも交流があり、提督がよくデートに使う街は…度々深海棲艦が来ますので、夜警だけでなく灯台からも防衛ラインとして着任することになりました。

 

と言うのも、()()()()退()()()()()()()()。復役と同時にこの西波島鎮守府に籍を置かせて頂く事になって…自らこの役割に志願しました。

観測船として…これは私にしかできない事だから…と言うより………いいえ、何でもないです!

 

 

 

 

 

 

基本的には妖精さんが灯台には常駐してますが…人には見えないので実質的には無人の灯台…ってのが街の人の認識なんですよね。

なので私は基本的に仕事は夜に…ここに居ます。

夜警班と連携を取る…ですね。

 

 

寂しくないか…?ですか?

大丈夫ですよ?慣れてますから!

 

姉妹もこの世界には居ませんが…これも私の大切な使命ですから!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それに…復役しても、私はもう戦えませんから…。

 

 

 

 

 

卑怯なのは分かってる…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日の事だった。

 

 

 

「よーっす!!」

 

「あ!川内さん!お疲れ様です!」

 

いつものように灯台から海や街を見る私に声が掛けられた。

近海夜警にあたっていた川内さんだった。

 

「ふぃーー!寒いねえ!すこしきゅーけー!いい!?」

 

巡回ルートを回る途中で冷える体を摩りながら暖をとりにきたようだ。

なので、私のいつものを差し出した。

 

「はい!どうぞ!…少し待ってくださいね?ホットチョコミルクをお出しします」

 

「あはは、ありがとうね!バレンタインの友チョコ貰っちゃった♪」

 

友チョコ…と言う言葉に少しズキンと心が痛んだ。

 

 

「…あ、そういえば…今月はバレンタインだったんですね」

 

そうだ、世間も少し賑わうバレンタイン。

私は提督にチョコ…渡してないなあ…。ううん、渡す資格も私にはないや…。

 

 

「んー?辛気臭い顔しちゃダメだよー?」

川内が笑いながら声を掛けてくれた。

 

「え…」

 

「っても…基本1人だもんねえ……もしかして…寂しい?」

 

「そ、そんなことは…。この役割は観測船の私にしかできない事ですから!」

 

「…そんな事ないと思うなあ…もっと他にもあると思うよ?」

 

「私は夜戦大好き!どう?宗谷も一緒に!夜警!闇のに紛れて敵をボッコボコにするんだ!」

 

 

「…私は……」

思わず詰まってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦うのが怖い

それは戦う兵士として、艦娘として恥ずべき事だ。

ましてや、自分から復役したのにも関わらず…だ。

 

 

川内は何かを察したのか、フッ…とチョコを飲んだ後に一息ついて言う。

 

 

 

「まっ…提督にチョコあげてない…とか深く考えちゃだめさー!あの人はそんな事で…ヘコま……怒ったりしないよ!それに……きっと良いことあるって!」

 

 

ホットチョコありがとう!と彼女は足早に夜警に戻って行った。

彼女のようにここに寄ってくれる人は少ないから嬉しかった。

 

 

 

 

 

そして………

 

 

 

 

 

 

 

 

「良いことあるって………はぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ごめんなさい…川内さん。

違うんです…。

 

 

 

 

私は戦うのが嫌だった。

傷つく仲間が見たく無かった。

死んだ仲間の笑顔が頭から離れなくて…。

 

だから私は退役した……逃げたんだ。

 

 

 

そうしてこの街にやってきて…流れ着いたのがこの灯台だった。

 

ここはそれなりに平和だった。

 

平和を目指した海も、人の営みも全てが見えた。

 

ここから見る景色が好きになった。

 

 

来ない誰かを待つあの人も

守りたいお店を守ろうとする人も

それを守ろうとするあの子も

やっと出会えたあの2人も…

 

 

 

そうして…見て行く内に…

私の中に守りたいんだと言う気持ちがまた少しだけ戻ってきた。

 

 

 

 

 

それを守りたいと思ったからもう一度この海に戻ってきた。

でもだからといって全てが良くなるわけじゃない。

根本的には戦いは苦手なのは変わらず…役に立てそうにない。

だからこの役を自ら引き受ける事で、その弱い心に言い聞かせてたのだ。

 

私にも役割がある…と。

 

 

 

 

 

 

 

1人なのは慣れている。

この世界に1人だけの……姉妹も居ない私…だからこそ孤独に耐えて出来るんだ。

 

そうして自分に言い聞かせてるだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

「………行っちゃったなあ」

ポツリと漏れた本音。

 

 

 

 

 

自分にしかできないから

 

 

違う

 

寂しい…と言う言葉を言えないだけなんだ。

島風ちゃんだって同じ筈なのに…

 

私は…日が浅いから皆とワイワイできないから

いや、その勇気が無いから…

 

 

 

そうやって自分に言い訳をして居場所を作って痩せた正義感と自尊心に水をやってるだけ…

 

 

 

 

 

 

『あの!』

『わ、私は元々、宗谷として艦娘でした!』

 

『もう一度私を艦娘にして貰えませんか?』

 

 

『この灯台から…平和を守るお手伝いをさせてください!!』

 

 

『灯台…から?』

彼は不思議そうに彼女に問いかけた。

 

『はい、あまり闘うのが得意ではなくて…。でも、私はここから見る景色が好きなんです…。だから…』

 

 

 

快く引き受けてくれた提督さん。

その提督さんに…着任から何度顔を合わせられたかな…?

 

何度言葉を交わせたかな…?

 

 

 

 

 

日々、積もるのは自責の念。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「寂しい…のかなあ」

 

ポツリと漏れた自分勝手な本音。

いや、そんなこと言う資格は無い。

 

でも…もし、私に…いや、やめておこう。

 

「ううん…私にはこれが似合ってる。戦えない卑怯な艦娘には……そんな奴と一緒に居ようって人なんて…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トランプでもする?」

 

 

 

 

 

 

 

 



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337話 海と灯台守と温もりと ②

背後からいきなり掛かった声。

ヒッ…と言う小さな悲鳴と一緒に振り返る。

 

 

 

 

「て、提督!?」

目の前には提督が手をひらひらさせながら笑っていた。

 

「ど、どうやってここに!?」

 

「ん?船で」

 

「いやいや!夜行は危ないですよ!」

そんな事を言ってる場合では無いが…

実際にそうだ。

昼間に比べて活発な動きもなく、また…西波島近海は然程に深海棲艦の往来はない。

だが…それはあくまで通常時である。

夜戦が可能な空母も居れば、通常の敵も存在する。

 

ましてや、今のこの時は灯台なんて敵の的でしか無い。

本来なら船が迷わぬように存在を示すものだが、深海棲艦の跋扈するこの海では「人間の住処はここにあるぞ!」と言っているようなものだ。

 

逆を言えば、そこに群がろうとする輩を撃退し続ける事によって『あそこには近付かない方が良い…』と知らしめる事にもなるが…

今はまだ、完全たる安全海域と言うわけではないのだから。

 

 

艦隊を指揮する以上、夜戦がどれだけ危険かは彼が1番よく知っている筈だ。

なのに船で来たと言う。さらには黙って来たと言う。

 

 

 

「…優秀な娘達が見張っててくれるからね」

彼は悪戯に笑いながら言う。

 

「……ッ!でも……」

と言う言葉以上の言葉は出てこなかった。変に脱力してしまったのだ。

 

 

「てか…寒いのに…平気?」

 

「いや、提督こそ……あ!少し待ってください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで…どうされましたか?」

素朴な疑問を率直に尋ねる。ホットチョコミルクを差し出しながら。

視察かな?それとも…私の経歴を調べて…まさか…

 

 

 

 

 

受け取った彼はそれを見て一瞬…ニコリと笑った気がした。

冷えたであろう手をカップで温めながら一口それを飲んで…「あったかい〜〜」と言う。

そして……

 

「目的は達成された!」

とニヤリと笑って言った。

 

 

 

「……え?」

 

「来た甲斐があったよ」

 

 

 

 

「な、何ですか!?目的って…これじゃあ…まるで私に会いに来て、チョコミルクを飲みに来たみたい……な……あっ…

 

 

不意に川内さんの事を思い出した。

バレンタインのチョコだ〜と言う言葉を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…まさか……このためだけに?」

 

 

「うん、その通り」

 

 

「なんで?」

 

「寂しかったから?そして君を寂しくさせない為かな…」

 

「寂しくなんか無いですよ?それに提督の周りには…たくさんの…艦娘達が居るじゃ無いですか」

 

「…。夜警班のローテに灯台も組み込もうと思うんだけど」

 

「え?」

 

 

やめてください。

私は戦えないからここにいるんです。私にしかできないことをしたいから…私は!私は!

 

「大丈夫ですよ!?これは私にしか…観測船の私にしかできないこと…なんです!」

 

「君にしかできないこと?」

 

「はい!それを奪われたら…私は」

 

 

「君にしかできないことって…他にあるよ」

 

 

彼はそう言った。

そんなものあるはずは無い。

 

臆病で逃げて…戦えずに遠回りしかできない

卑怯な私になんか……

 

 

「え…な、何ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「自分を偽らないこと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ッ!!!」

 

「…色々あったんだと思う。でも…それも含めて君は俺の仲間であり、大切な人なんだから…」

 

 

「や、やめてください!!私は…私は逃げたんです!そんな卑怯な艦娘が馬鹿みたいにもう一度戻って痩せた自尊s「逃げたって良いじゃない」

 

 

 

 

私の言葉を遮ったのは…提督でも無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「か…がさん?」

 

提督も驚いていたが、加賀がそこに居た。

加賀は厳しくも優しい表情で語りかけた。

 

 

 

 

 

「私も一度は逃げたわ…退役して……自分を納得させて…日々を過ごしたわ。そして…仲間に気付かされて…考えて…戻ってきた。大きく遠回りをしてね……」

 

「その時も、昔も、色んなことを見てきたわ…あなたと同じ…。志半ばで散った者も、悔しさと憎しみの中で沈んだ者も…」

「目を逸らしたい現実も何もかも」

 

 

 

 

 

 

「少しくらい遠回りしたっていいの…時には逃げても良いの」

 

「でも…自分を騙して騙して納得させるのは…ダメだと思うの」

 

 

 

「…ッ…!!」

 

 

「ねえ?宗谷?その為に…あなたほ全てを受け止めるために…仲間は…私達は居るのよ」

 

「少なくとも…提督は夜の海を1人で超えてあなたに会いに来るくらいあなたを大切に思ってるわ」

 

 

 

「…なぜです?」

 

「ん?」

 

 

 

「何で私に?メリットも何も無いですよ?優しくもなければ何も!!」

 

 

 

 

「メリットとかで動かないからわかんないけど……」

「優しいよ?君は」

 

「ええ、それは私も知ってるわ」

 

2人は意外な事を口にした。

 

 

 

 

 

「何が……」

 

 

 

 

「コレ」

彼はマグカップを指差した。

 

 

「それが…一体何…ですか…」

 

 

 

 

 

 

「あなたが提督に出してあげたんじゃない……あの時に…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

灯台から街を見る。

珍しく灯台の下に誰かが居た。

誰かと待ち合わせをしているのかな?

来る日も来る日もその人は灯台の下にいた。

 

服装的に軍人…いや、鎮守府関係の提督だろうか?

仲間の帰りを待ってるのかな?なんて思った。

 

 

ふと…気になって…声を掛けた。

 

 

寒く無いですか?…と。

 

寒いね…でも大丈夫!とその男性は答えた。

 

毎日ここに居ますね…と言った。

うん!と言った彼に、来ないかも知れなくても待つんですか?と聞いた。艦娘や仲間なら尚更帰ってこない可能性が高いのに…って思った。

 

そうしたいから待つんだよと返ってきた。

 

 

不思議な人だな…って思った。

どうぞ、寒いですから…と言って私が差し出したのは一杯のホットチョコミルク。

 

 

ありがとう…嬉しいよ!

と彼は笑顔でそれを口に運んだ…。

 

 

 

 

 

 

 

「あ……」

 

そうだ…この人なんだ。

だから…あの時に…カップを見て笑ったんだ…。

 

 

「あの時の…覚えて……」

 

「忘れるわけないさ…あんな優しい顔した子を」

 

「でも何で…加賀さんが…」

 

「私も見てましたから…」

「街を優しい顔で見るあなたを、提督にチョコを出すあなたを」

 

 

 

 

彼女達は知っていた。

宗谷の優しさを…。

 

 

 

 

「だから…次は君にそれを分けたくて…」

 

 

 

 

「それ?」

 

「俺達の暖かさ?って奴かなあ?」

「どんな君でも受け止めることのできる仲間をね」

 

「だから…君の口から寂しいってききたかったんだ」

 

 

 

 

 

「何を……」

 

 

スッと外を指差した加賀。

私は外に出て海を見る…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

其れはかつて見た景色。

 

戦地から帰った私に…仲間が向けた姿。

鎮守府で待つ私に戦地から帰った仲間が向けた姿。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手を振る西波島の仲間が居た。

 

 

 

 

 

たくさん…たくさんの鎮守府の仲間が。

 

 

 

「宗谷〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「びっくりしたでしょ?」

 

 

 

 

 

 

「うそ……なんで…」

 

 

 

 

 

 

彼女を皆は見ていた。

灯台の子と知っている子も居た。

ただ、復役した彼女はある意味、塞ぎ込んでおり…どう接して良いかわからないのも事実だった。

 

だが、川内は何かを察した。

だから静まる鎮守府のメンバーを叩き起こした。

 

 

『私達らしく…ぶつかろう!』と。

 

 

 

 

 

だから来たのだ。

行動を起こすなら…思い立った時だ!と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ずっと見てきた。

平和な海も、人の営みも…

戦う艦娘も、喜び合う仲間達も…

 

 

 

でも本当はそこに混じりたかった。

そこの一部になりたかった。

傍観するのでなく、寂しいと言える場所が…仲間が…

言い訳も何も要らなくて、本音で…居られる場所が…

 

 

 

 

「……呼んでるぞ、宗谷」

「出てきてみないか?閉じこもった世界から…」

 

 

 

 

 

 

「………良いんですか?」

「こんな艦娘でも…」

 

 

 

 

 

「良いに決まってるじゃん!!」

「私達…仲間でしょう!家族でしょ!」

 

「妹の分まで甘えたげるわよ!」

「てか!甘えておいで!!」

 

戦えなくったって‥仲間なんだよ!

一緒に乗り越えようよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付いたら思わず彼女達の方に走って行っていた。

 

 

仲間は…優しく私を受け止めてくれていた……。

 

 

 

 

 

「…うう……寂しかった…もっと…もっと私が…こんな自分…」

 

「今からたっぷり時間をかけて…色々やろうよ」

 

「私達だからこそ出来ることもあるんだよ?」

「そうそう!ゆっくりやっていこうよ…」

 

 

 

久しぶり大声を上げて泣いた気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日も、私は灯台に居る。

夕焼けに差し掛かって…人の営みも変わる頃を見つめていた。

 

 

 

「交代の時間だよー!」

 

「うん!ありがとう」

 

「…あ!仕事始め前のアレ…いい?」

 

「うん、できてるよ?」

私はいつものを彼女に差し出す。

 

「………ふぅーー!!やっぱり宗谷のチョコミルクは美味しいよ!これで頑張れるね!」

 

「大袈裟だよ!」

 

「そんなことないって!」

「さ!帰ったら提督と夕飯食べるんでしょ?早く帰った帰った!」

 

「う、うん!じゃあ…お疲れ様!」

 

「はいよー」

 

ほんの少しずつ…戦地へも出るようになってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

開けた世界は…明るかった。

あの時の提督と皆が海を照らす灯台のように…私を照らしてくれた。

 

私は笑顔で帰路に着いた。

 

 

「宗谷!ただいま戻りました!」

 

「おかえり!お疲れ様!ご飯…行こうか」

 

「はい!」

「あ……食後に…あれお出ししますね」

 

「うん、寒い日の楽しみになったよ」

 

 

 

 

 

2人で笑いながら食堂への道を歩く。

 

「もし」

 

「うん?」

 

 

「もしあの時私が寂しいって呟かなかったらどうしてたのですか?」

 

 

 

私の突然の問いに…彼は、さも当たり前のように言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「言うまでこっそり毎日行ってたかな」

 

「…ッ!も、物好き…ですね」

 

 

 

「それは君もよく知ることだろう?」

 

「………はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鎮守府から灯台が見えた。

私の世界そのものだった場所…。

 

そして…その私と皆を繋いだ…大切な場所。

 

 

 

 

鎮守府の窓から見えた灯台は今日も小さく輝いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




少しでもお楽しみ頂けたら幸いです!

感想などお待ちしてます!




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338話 指揮官と……… ①

悪ノリを突き進んだお話です

















「お待ちくださ〜い」

 

「あははー!捕まえてご覧ー」

 

なんてやり取りは漫画やドラマの中だけ?

いやいや過去の救よ…叶うぞ?その願いは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思いもよらぬ形で…だけどな!

 

 

 

 

 

 

 

「まてえええええ!しきかぁぁあん!!」

 

 

 

「ダーリンさん!待ってください!榛名は大丈夫じゃないです」

 

 

只今、桜赤城や榛名達とぱっぱか曇天レース。

目ん玉は血走ってギラギラでの爆走。

百戦錬磨の強者どもも逃げ出す勢いでの逃避行。

 

 

 

 

その理由は今朝の執務室に遡る。

 

 

 

今日の秘書艦は……桜赤城天城か。

 

「おはようございます…指揮官様」

 

「おお、昨日はすまんな…初めて酔い潰れた気がするよ…君は体調は大丈夫か?」

 

「ええ、指揮官様の為なら…どんな病気でも乗り越えられます」

 

彼女は生まれつき…体が弱い。

メンタルキューブの不具合らしいが……。

素体の桜天城は…もう病院が原因でか、この世を去っているらしい。

 

日々、色々と気にしながら生活をしているが……

 

 

 

 

 

 

 

何せこの桜天城は元気だ。

病弱なのは恐らくキャラかな?と言いたくなるほどに。

 

「粗相とかはなかったか?俺」

 

「はい…個人的に問題になることは……」

 

 

ん?

その言い方だと…何かはあった……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして……

 

 

ガチャリとドアが開かれ、1人の少女が入室した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆弾発言と共に…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございます!おかあさま!おとおさま!」

 

ニコニコ笑顔の可愛らしい子が入ってきた。

覚えがあるぞ?アズレンの……天城ちゃんだな?

天城ちゃんとは…ちっちゃい桜天城ちゃんなのだ!

別個体なのだ!

別人の…子供桜天城と思ってね!!

 

ほー!実物で見ると…かわいいなあ…………ん?

 

 

 

 

 

 

 

 

ん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、おはようー」

 

「ん?おはよ……ん?」

 

 

「はい?どうしましたか?指揮官様?」

 

「いや?今…ん?お父様お母様言わなかった?え?なに?え??この子?」

 

 

 

「…あまぎちゃんですよ?指揮官様?」

 

「いやね?うん、知ってるよ?でもね?…でもね??何でこの子は…?」

 

「おとおさま?あまぎのことをお忘れですか?」

 

『私と貴方さまの…愛の結晶…ですよ…?」

 

 

 

 

「え?」

 

「覚えてらっしゃらないのですか?昨晩…あれだけ激しく求めて下さった結果なのに……」

 

 

 

「え?求めた?」

 

「はい…あんなに激しい建造……初めてでした♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういうことですか…指揮官様…」

 

そこにはワナワナ震える桜赤城が居た。

 

「ゆ、ゆゆゆゆゆ夢です…夢ですわぁ…」

呪詛のようにその言葉を呟き続ける彼女。

 

 

 

そして、フラッと貧血気味にふらつく桜赤城。

オイオイ、マジかよ…的な目線でコチラを見つつ桜赤城を受け止める桜加賀。

 

 

 

「おおおおおお落ち着きなさい桜赤城…冷静に…れいs「だいじょうぶですか?桜赤城さん?」

天城ちゃんが心配したのか声をかける。

 

 

 

 

 

 

 

「ぼおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 

 

 

桜赤城が到底彼女とも、この世とも思えない絶叫を上げた。

 

あの冷静沈着ツンドラに定評のある桜加賀が本気でビクッとした程だ。

 

 

 

「指揮官様…と桜天城姉様との間に子供が……?そんな…私は…私はずっとお待ち申し上げておりますのに……でも…でもでもでもでも愛する指揮官様の愛の相手が桜天城姉様なら………桜加賀!私の頬をつねってご覧なさい!きっと夢だk…いだだだだだ!クッソ痛え!!!!!これは夢…ではないですわ!!こんなにも痛いのだから!!ああ!!でも…目の前には桜天城姉様とクリソツな可愛らしい可愛らしい幼子が……試練ですわ!これは天とカミと指揮官様と桜天城姉様からの愛の試練ですわ!ええ、ええ!乗り越えますとも!!この桜赤城…一航戦の誇りの前に!1人の女として!指揮官様のあんなことやらこんなことまで受け止められる良妻であることを示してみせますわぁぁあ!!」

 

「…落ち着け…桜赤城姉様……」

 

 

 

 

 

 

 

そんな時にまたドアが開かれた。

 

 

 

奴だ。

 

 

奴が来てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの…かなりの叫び声が聞こえt…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

榛名は約0.03秒で理解した。

目の前に存在する桜天城とダーリンさんに引っ付く謎の存在(天城ちゃん)を見た瞬間に…あ、コレはダーリンさんとの子供なんだろなあ…と。

 

 

 

 

 

「何でですか…?」

 

 

「は?」

 

 

 

 

 

 

 

「…ああ!これは夢ですn「どうしましたか?榛名お姉ちゃん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「榛名は大丈夫じゃないですうううううううう!」

 

 

 

 

 

「何ですか?この可愛らしい子は…え?いつの間にですか?え?昨日?昨日何があったのですか?…………ダーリンさんと桜天城さんが?え?酔った勢いで…?………榛名じゃダメなんですか?アレじゃあ足りませんか?アタルマデスレバヨカッタンデスカ?ダーリンさんは榛名を見てくれないんですか?お付き合いはずーーっと榛名の方が長い筈ですよ?何ですか?何が足りないんですか?榛名はダーリンさんの為なら何でもできますよ?1人で深海棲艦の集積基地を潰してこいと言うなら……あ、もう2、3個は潰してますが足りませんか?……それとも家庭の面ですか?お料理もお掃除も全て完璧にこなしますよ?それとも………アレですか?夜の方ですか?!ごめんなさい…榛名は…ダーリンさんしか知らないので…まだまだ未熟ですが…きっと…きっとダーリンさんの嗜好に合うようになりますから…!きっと!榛名とダーリンさんの愛の結晶も珠のように可愛いはずですから!何なら今ここで!今ここでその事実を作りますか!?私はいつでも準備できてます!ですk「待て待て待て待て待て待て待て待て」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダーリン…?」

 

「指揮官…?」

 

わらわらと金剛やら蒼オークランドやらが集まってくる。

あんな叫び声を聞いたなら仕方ないっちゃあ…仕方ないけども…

とりあえず…一つ言えることは…

 

 

 

 

 

俺の身が危ない!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「待ってくださいいいいい」」

 

 

 

追いつかない。主に理解が!

なんでこうなった?

 

 

後ろには修羅が大軍を成して迫っている。

 

そして逃げる俺…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……の横には桜天城と天城ちゃんがにっこり笑顔で並走中。

 

「なんなん?この状況」

 

「一家で追われるなんて…このまま地の果てまで逃げますか?」

 

「おとおさまとおかあさまが一緒なら…あまぎはどこへでも行きます!」

 

 

 

 

「いや!何か違うから!根本的に何か違うからあ!!」

 

 

 

 

 

 

ふと考える…。

あら?そもそも俺…逃げる必要あんのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや…逃げる必要しかないわ

止まったら死ぬわ…色んな意味で死ぬわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

指揮官はひたすらに走り回った。

 

 




お気に入りが750だー!ありがとうございますー!
(๑╹ω╹๑ )宴じゃー


少しでもお楽しみ頂けたら幸いです!

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339話 指揮官と……② 桜天城と夫婦と家族と…

「で?」

 

 

迫り来るバーサーカーからなんとか逃げ切ったので彼女達に尋ねてみた。

 

 

 

 

 

 

「私達はメンタルキューブから生まれるのですよ?指揮官様が生み出してくれたのなら…それは指揮官との子…と言うことですよ?」

 

「その理論なら君達は全員俺の子と言うことになるぞ?」

 

「…………」

 

「おい、その『あ…それもアリかも…』みたいな目をするな」

 

 

 

 

「まあ…酔った指揮官様と建造を致しましたから…」

「2人で建造したのならそう言ってもいいのでは?」

 

 

「え?建造って建造だよね?建造(意味深)じゃないよね?」

 

「うふふ」

 

「ああん!話が通じないッ!」

 

 

「おとおさま?どうしましたか?」

「どこか怪我しましたか?大丈夫ですか?」

 

ウルウルした目で見上げてくる彼女に「…………いや、大丈夫だよ。ありがとう」と、彼はフッと笑うと天城ちゃんの頭を撫でた。

 

「……えへへ」

「立派になっておとおさまもあかぎちゃんもみんな守ります!」

 

 

 

その言葉に俺は一瞬目を見開いた。

 

 

 

 

 

 

彼女は純粋なのだ。

いや…気付いていても…それを止められないのだ。止めたくないのだ。

 

何故なら彼女は小さくとも…桜天城だから。

 

桜天城は祈り願ったのだろう。

俺の武運長久を…。

 

どれほどの思いが篭れば…というのは分からないが、彼女の思いはリトル天城ちゃんとして現界した。

 

だから天城ちゃんはわかっている。

自分が指揮官を愛している事も、皆が同じな事も…

俺が皆を愛している事も…。

 

 

桜天城はその意外な結果に驚き、喜んだのだろう。

まるで…2人の………我が子ができたのではないか?と。

 

 

だから2人は自然と親子という体裁をとったのだろう。

 

いや…それがいいと純粋に思ったのだろう。

 

 

 

 

 

 

この子を見つめながら頭を撫でる。

今迄、想像なんかした事なかったけど、子供が居たらこんな感じなのかなあ…と思った。

 

 

 

前の世界でも何度も考えた将来。

 

結婚して…子供を授かって…家建てて…

普通に、ただ普通に働いて暮らして子供を見守って……歳食って死んで行くと思ってた。

 

子供の名前をどうしようとか、男の子ならキャッチボールをしたいとか、色々考えていた。

今の生活は…本当に幸せな非現実で……

 

仮想現実だとか、夢の中だとかじゃなくて…

この世界でもいつか現実にできそうな夢が目の前にあって……。

 

 

 

「おとぉさま?」

あまぎちゃんが少し不安そうに彼を見上げました。

 

 

 

彼は慈しむような表情でその子を見つめていました。

ええ、えぇ、分かっています。

お遊び…だってことは。

通じ合う2人が決めた…ほんの少しの悪戯…。

 

 

 

 

なのに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

指揮官様はその子を抱き上げて抱き締めたのです。

 

「ふぇ?お、おとおさま?」

 

 

「……ッ!」

桜天城は思わず息を呑んだ。

 

ただ、抱き締めただけだ。

なのに、なのに、この光景を見るだけでどうしてこんなに…心が喜んで涙が溢れそうになるのか?

 

 

桜天城にはそれがわからなかった。

 

 

 

 

 

「おとおさま?えへへ…」

幸せそうなあまぎちゃん。

 

 

 

 

そして……呆気にとられる私の側に来て…

 

 

その子と一緒に私をも抱き締めたのです。

 

 

 

 

 

「おとおさま?」

 

「あなた様…?」

 

 

 

 

 

 

 

彼は何も言わずに…ただ、ただ…優しく愛おしそうに私達を抱き締めてくれたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…桜天城?」

 

「はい」

 

彼はポツリと言いました。

「……こういうのもアリかもな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…お優しいのですね?」

「ええ、ええ、確かにこの子は…キューブ建造で生まれた子です」

 

「酔い潰れた指揮官様と一緒に建造して…来てくれた子…。でも私には運命のように感じました。運命であると同時に…未来を感じたのです」

 

「未来?」

 

「指揮官様はいつか…きっとこの海の平和を取り戻すでしょう。私達が戦場に必要なくなる時です。…今は戦う事に存在意義を感じるところがありますが…その先でもきっと…そうやってあなたは私達にその意味をくれるのだろう……って」

 

 

彼女は笑って言う。

いつものお淑やかな彼女のようでなく…1人のただの女の子のように…。

 

「だから少し…ほんの少しだけからかってみたかったの…………嘘。かまって欲しかったのよ。桜天城として…1人の女として…ね」

 

「はい、そうなんです」

 

 

 

 

 

 

 

「いいよ」

 

「「え?」」

 

「君達が…それを望むなら…幸せと言ってくれるなら」

「俺は今のままでも…幸せかな」

 

「愛の形にも色々あるから…。あまぎちゃんにしろ、桜天城にしろ…愛する事には…そこに差はないんだ」

 

 

 

 

あの…とあまぎちゃんが震えたように言う。

 

 

「おとおさまって呼んでもいいんですか?」

 

「あなた様……どうか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「2人の愛の結晶なんだろう?」

 

 

 

 

冗談とか、からかいとか……ほんの些細な悪戯心からの始まりだった。

でも…蓋を開ければのめり込んでいたのは私達だった。

伴侶としての愛、家族としての愛…。

慈しむように向けられたその全てが…何より嬉しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なら…コレを君に贈らなきゃなあ」

 

 

 

差し出されたのは小さな小箱。

 

その10cm四方も無さそうな小箱の中に私の全てとも言える愛が入っている。

開かれた隙間から覗いたそれは…今まで見たどんな景色よりも綺麗で……

 

 

 

 

「受け取ってくれるかな?」

 

わぁあ…キレー…とあまぎちゃんは目をキラキラさせている。

 

 

 

 

「はい!喜んで…この桜天城、お受け致します」

 

 

 

「あの!?あ、あなた様!?」

 

「ん?」

近付いてくる救を彼女は赤くなりながら止める。

 

「あ、あ、あのあの…その…う、嬉しいのですが…この子が見てるので…その…は、恥ずかしい…んですが…」

 

 

そのあまぎちゃんは顔を手で覆い、指の隙間からガン見してるけどね?

 

 

「……」

(´・ω・`)みたいな顔をする救。

 

「も、もう…ずるいですよ」

 

 

 

 

 

「でも…ひとつだけ確認させてください」

 

「ん?」

 

 

 

 

 

 

 

「同情だとか…義務感だとか…流されて…ではないんですよね?」

 

 

私が…私達が1番恐れているのはそれだ。

もし…そんな気もないのに…そうさせていたなら……

 

 

 

彼は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の全てを賭けて…愛してる事を誓う」

「何があっても君を離さない。何があっても君達を離さない」

 

 

その言葉と共に…指にリングが通った。

 

 

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

唇が触れた。

 

 

 

 

今度は私から飛びついた。

桜赤城に見られたらはしたないって言われるかな?

でもいいの。

好きな人の…愛する人の前でくらい…ね?

 

 

 

「わたしもー!」

と、あまぎちゃんも飛びついた。

 

あぁ…幸せ…だなあ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

「出にくい雰囲気ですね」

 

「……リトル赤城ちゃんも居るので呼べば…家族に……」

 

「リトルベルちゃんも!!」

 

「桜赤城さん?桜ベルファストさん!?」

 

「え!えぇ!聞いてますとも」

「あなたこそ…正気は取り戻しまして?」

 

「榛名はいつでも正気です」

 

 

金剛型四姉妹(バーサーカー)のが何か言ってるぞ」

 

 

「はい?」

 

「お?」

 

「私のどこがバーサーカーですか?」

 

「愛する人を襲うところ」

 

「アレはダーリンさんから…やってきたんですよ?」

 

「そのダーリンさんの姿をしたお前がな!」

「凄かったぞ!?榛名から『おい!榛名やめろ!マジで洒落になんねえ!』…って。そんで『ダーリンさん?優しくしますから!ね?ね?』って指揮官から聞こえてきたらさあ……」

 

「……でも私はやっぱり…ダーリンさんからして欲しいです」

 

「襲った後で言うなよ……」

「貴様はただでさえ…相当に愛されてるんだからな…?」

 

「え?」

 

「貴様が都度都度持って行く夜食も…奴はどれだけ腹がいっぱいだろうと食べる。幸せそうな顔をして…な」

「前に…榛名の奴は行き過ぎてないか?と聞いても…愛されてるし、愛してるから…って……思わずため息が出たぞ」

 

苦い顔で桜加賀が言う。

 

「ま、微笑んで祝ってやるのも…愛…かもな」

 

「……ダーリンさん…」

「…なら榛名は待ちます!はい!榛名は大丈夫です!」

 

「いい会話なのですが…前半が物騒すぎて……」

 

 

そして…

 

「ふふ…桜天城姉様……。良かった」

 

この場の誰よりも、温かな眼差しを向けるのは桜赤城。

彼女のことを思えば…自ずとそう言った言葉が溢れてくる。

 

 

 

 

 

 

 

「まあ…1番はこの桜赤城ですけどね」

 

 

本音も溢れてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなメンバーを「うわあ…」的な感じで大淀は見ていながら、執務を放り投げて逃げた提督に鉄槌を下すべく歩みを進めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ごめんなさい…」

 

「私……大淀といちゃいちゃ2時間コースですね」

 

「え?…そ、それh「あー…提督が戻らない間の執務つかれましたー…職務放棄のパワハラの……なのにご褒美もないのですか?」

 

「あ…はい…かしこまりました」

 

 

 

 

 




少し甘めな…感じで…


少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!

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340話 指揮官と……③ 家族のお出かけ(桜天城と1日夫婦)

まだ寒い風の吹く日の少し温かな木漏れ日の中で……

私は…あなたと…歩む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まさかこんな日が来ようとは…。

 

 

 

 

 

 

 

 

『あなた様?明日は…この子も良いですか?』

明日というのは彼女との1日夫婦の日である。

だが、あまぎちゃんを放っておくという選択肢は無い。俺はもちろん!と返事を返す。

 

 

 

 

 

 

 

「おとぉぉさまあ!!おきてくださぁい!」

あまぎちゃんが寝ている俺に飛び乗って来た。

あらあら…と、桜天城が遅れて入って来た。

彼女曰く、あまぎちゃんはかなり楽しみにしていたらしい。

 

 

 

 

 

「今日はどこにいきますか!?」

私の作った朝ごはんを食べながらそんな会話に入ります。

 

「んー…家族の団欒的な……そうさなあ…街で買い物とかファミレスとか行って…夕飯は俺が作るよ」

 

「いいのですか?私が作りますよ?」

 

「いいのいいの、俺に作らせてよ!父ちゃんの良いとこみせちゃる!」

なんて指揮官様は言ってました。

 

 

 

皆に見送られて鎮守府を出発する。

 

「あら、あまぎちゃん。おはよう〜。今日はどこかに行くの?」

 

「はい!おとおさまと…おかあさまとお出かけして来ます!」

 

「あら…良かったわねえ〜。楽しんでいらっしゃい」

桜赤城とあまぎちゃんがニコニコと会話をしている。

 

 

「あら?珍しいですね。もっとドロドロするかと思ってたのですが」

なんて大淀が桜赤城に声を掛ける。

 

「…そ、そりゃあ…羨ましいですけど…ぐぬぬ…お姉様やあまぎちゃんのあんな幸せそうな顔を見たら…素直に応援するわ」

 

 

 

 

 

 

 

「いってきまぁあす」

 

「「「「いってらっしゃい」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前には海。

でも、今日の景色はいつもより高い眺め。

 

 

 

ゆっくり進む船の上は初めてで…

はしゃぐあまぎちゃんはキラキラと目を輝かせながら私達の手を引っ張ります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いただきます」

 

やって来たのはファミレス。

文字通りファミリーでやって来た初めてのお店。

お子様ランチの国旗を嬉しげに眺めながらオムライスを頬張るあまぎちゃんを見ながら注文したお料理を待ちます。

 

「あまぎちゃん?お口についてますよ?………ほら」

 

「んむ……えへへ、おかあさまありがとうございます」

 

口の周りについていたケチャップを拭ってあげました。

そうする内に指揮官様のお料理も運ばれて来ました…。冷めてしまいますから先にお召し上がりくださいと言っても、君のも待つよだなんて優しく言ってくれるあなた様が私は大好きです。

 

 

数分して、私のお料理もやってきました。

何気に初めてのファミレス…?ですが、その初めてが愛する指揮官様と一緒と言うのが何より嬉しい。

 

 

「ん?一口いる?」

 

「あ、いや…そんなつもりじゃ……でも…はい、頂きます」

あーん…と口を開くとそこにパスタを食べさせてくれるあなた様…。

きっといつものパスタよりも何倍も美味しいのです。

 

「おかあさま!このおむらいすもどうぞ!」

 

「うふふ、ありがとうね」

 

「あまぎちゃんは優しいなあ。よし、あまぎちゃんにもパスタをあげよう」

「ありがとうございますですー!」

 

 

 

 

 

 

ランチの後はショッピング。

 

あまぎちゃんにとってはこちらも初めての光景。

…実は私も………なんですが…。

 

 

 

 

「……ぁ」

 

ゲームセンターでクマのぬいぐるみを見つめる桜天城。

ふわふわで大きなぬいぐるみがケースの中に座っていた。

 

「コレ欲しいの?」

 

「え、あ、あの…」

思わず顔を赤くする私。

 

「あ…ほ、欲しいです…」

 

 

待ってて!という彼は……1000円くらいで取ってくれました。

必死に取ってくれる姿は…思わず見惚れてしまいます。

 

「おとおさますごい!」

 

「取れて良かった……」

 

「……えへへ」と、私はそのぬいぐるみを抱き締めました。

 

 

「おとおさま!私も…あのぬいぐるみ取ってください!」

あまぎちゃんの指差す先には小さめのクマのぬいぐるみが…。

 

 

「まかせろ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドツボにハマる指揮官様。

あまぎちゃんも「おとおさま?もういいですよぉ」と言っていたが、「大丈夫!任せて!」と必死になる指揮官様…。

何度も位置を直してもらって…見かねた店員さんがかなり取りやすい位置に調整してくれてやっとゲット。

 

 

「わぁあ…ありがとうございます!おとおさま!!」

 

彼女も私と同じようにぬいぐるみを抱き締めていました。

 

その後は…服を買ったり、アイス食べたり…本当の家族のように過ごせました。

 

 

 

 

 

 

 

3人で手を繋いで歩きます。

真ん中に指揮官様。その両端に私達。2人で指揮官様を感じます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サーッと少し冷たい風が吹いた。

 

思わず脳裏に蘇った光景。

 

 

 

 

 

 

 

この子を出迎えたあの日…確かに私の脳裡によぎった確かな未来。

 

 

とある日の…暖かな木漏れ日の中で…

子供に手を引かれたあなたと私が…歩いて…

そこには…病弱は私に無理をさせないように労わりながら一緒に歩んでくれるあなたが居て………

街並みがどうとか…風に揺れる寂しげな街路樹がどうとか…

あのお店がオープンした…だとか、お昼は何にしようだとか…。

ありふれた会話の中に幸せを感じて…。

 

 

 

 

少しでも咳き込んだら、何年一緒に居ても相変わらず慌てふためくあなたと子供が………。

 

だから私は思う。

きっとここで死んだら、この人達は立ち直れないくらいに落ち込むんだろうな…とか

だから頑張って体を治したり…長生きしなくちゃいけないなあ…って。

 

 

 

 

 

アズールレーンの天城の宿命…とも言えるバグ…病弱…という状態。

素体はそれにより既に………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ…

私は()()()()()めちゃくちゃ元気なんですけど………。

 

といってもキャラ作りは大切。

病弱キャラは私オンリーなんて思ってた時期が私にもありました…。

なぜかって?

 

手のかかる娘達(主に桜赤城と桜加賀)の相手とか…指揮官様を追いかけたりしてたら…その……バレてしまいまして…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ…」

 

「どうした?」

 

「いえ?ただ…思い描いていた景色に似ていて…。それがとても嬉しくて……嬉しくて」

 

「おかあさま…幸せそう」

 

「ええ、とても幸せよ?」

 

 

 

本心からの言葉だ。

この上ない幸せは…なにものにも替え難くて…

この1秒が、瞬間が私の心を満たしてくれます。

 

 

 

 

「おとおさまの料理もおいしいーです!」

 

「ん…とても美味しいです」

 

目の前には、昨日から仕込んであったであろう唐揚げやらご飯やらが並んでました。

それがどれも美味しくて……

 

 

 

 

 

 

 

 

寝る時は3人で川の字です。

 

「えへへ…おとおさま…今日ほありがとうございました!あまぎはとても幸せです」

 

「このクマさんも…えへへ」

 

「おとおさま…だーいすき」

と、愛しのお父様の頬にチュッとキスをした彼女はコテンと寝落ちしました。

 

 

「寝るの早いな」

 

「はしゃぎまりましたから…」

 

「なら…俺達は……どう?」

 

楽しかったですと言いながら2人で笑う。

うん…とあまぎちゃんが寝返りをうってあわててやめた。

 

 

 

指揮官様に誘われて軽く晩酌をします。

隣に座ってコテリと頭を彼の肩に預けながらお酌をして……唇を交わして…。

 

「これが家族を持つってことなんかね。うん、悪くない。とても楽しかった。これからも…こうしていたいな…」

 

その言葉にまたうるっときてしまう。

 

「ありがとうございます…あなた様」

「私…もう一生分の幸せを頂いた気がします」

 

「ですから…きっとあなた様達を守り抜きます。私は…あなた様も…愛する私達の…子供も…きっと…!」

 

「なら俺は俺で出来ることを精一杯やるよ」

 

 

 

「…指揮官様…」

 

 

「愛しています」

 

「俺も愛してる…」

 

 

もう一度少し長い口づけを交わして…また親子3人で寝ます。

 

…幸せを……ありがとう…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日はぬいぐるみと一緒に皆に自慢して回るあまぎちゃんを部屋から眺めています。

 

…リトルの子達が増えそうだな…なんて思いながら…私は大きなクマのぬいぐるみをぎゅっと抱き締めました。

ほんの少しぬいぐるみから指揮官様の匂いがして…思わず笑みが溢れた。

 

 

 

 

 

 

「…えへへ……愛してます…」




こんなのもたまにはどうでしょう?


少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。

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341話 鎮守府のお風呂 ①

天龍があわあわとしながら部屋に入って来た。

顔は真っ赤で目の焦点も合ってない。

 

 

 

 

 

「聞いちまったんだよ!どうしよう龍田ァ!!!」

 

「天龍ちゃん?どうしたの?とりあえず素数でも数える〜?」

 

「1.3.5.7.9.11.1315.17.19.………1021」

 

「数え過ぎよ〜?」

 

「て、提督の部屋にさ?用があって行ったら…中から2人の声が聞こえてきてよ?その会話の中身が……」

 

 

 

 

 

「??」

 

 

 

「あなたの…立派で大きな……貸し…ないかしら?」

 

「指揮官……熱い……忘れられな……」

 

 

「……これ以上は………」

 

 

「まだよ!…まだ……」

 

「このま……溢れ……」

 

「これよ…コレ!……さすが指揮………んっ……いいわ」

 

 

 

 

 

「ってさ!!やべーよ!提督…あんな幼子にまで……!」

 

「…蒼朝日さんはかなりの大先輩よー?でも……あの人に限ってそんな事はないと思うんだけど…」

 

 

「ここんとこ毎日だぞ!?」

 

「………ま、まぁ明日秘書艦の日だからそれとなく聞いてみるわ〜」

 

 

 

 

 

 

平静を装いながら龍田は焦っていた。

 

え?毎日?毎日朝日さん連れ込んでニャンニャンしてるの?え?

まだ数人くらいだと思ってたのに?え?まだ私には声かかってないのに?

もしかして私たちに飽きたの?

飽きちゃったの!?それとも?何?絶壁趣味?

あの人の事だから…イクちゃんや麗ちゃんみたいな大きなのが好きだと思ってたのに…………でもなら吹雪が……。まて、まさか…見た目も幼児じゃないとダメなの!?

 

どっちにしろ…確かめて…場合によっては……………うふふ

サビになってもらうかも…ねぇ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よかったわあ…指揮官クンのあっついの〜よかったわよ」

 

「……!?」

一瞬、龍田の表情が修羅になる。

 

 

「そう?なら良かったよ。俺も案外気に入った…かも」

 

「うふふ…なら良かったわあ〜」

 

 

 

 

「………」

確信した…。

コイツら…ヤッてる…と!毎日やってる!と!!

 

「あれ?龍田さん?どうしたのですか?」

 

 

 

「信じてたのに…」

 

「え?信じて……え??」

 

「この浮気者おおおお!!」

ブォン!と、涙目で武器を振り回す龍田。間一髪で避ける救。

 

 

「ちょ!?龍田さん!?」

急いで龍田を止める大淀。

 

「話して頂戴!大淀ぉ!!あの人…浮気よ!朝日さんと毎日毎日お風呂プレイしてたのよおおおお!!」

 

 

「え?」

「え?」

「え?」

 

 

 

 

 

バァン!とドアが開く。

 

「浮気者!?ダーリンは浮気したデス!?」

 

 

 

「げええええ!バーサーカー1号まで!!」

 

 

 

フーッ!フーッ!と目を血走らせて唸る猛獣2体。

 

何のことか分からずキョトンとする指揮官クンと私。

 

「聞いたのよッ!!指揮官クンの大きいのがいいとか!さっきも……俺も気に入った…とか!このロリコン!バカ!あほおお」

 

「お、お風呂プレイて…?」

 

「とぼけないでよ!私室のお風呂で…2人で絡み合ってたんでしょ!?そんな事なら!私じゃダメなの!?ねえ!?ねえ!?!?」

 

龍田が叫びまくる。何のこと!?という救。

 

 

 

「…龍田さん」

大淀が龍田に話しかけた。

 

 

「何よ!?邪魔を…「私は龍田さんの味方です」

 

何と大淀は龍田を離した挙句、どこからか大きな斧を取り出した。

 

「最近…子供こさえたり…次はお風呂プレイですか…私達もずーーっとまってるのに…」

 

「金剛さんや麗ちゃんには手を出して私達はいつなんですか!?」

「アレですか!?榛名さんみたいにこっちから行かなきゃいけないんですか!?」

 

 

「だから何!?」

「ちょ…蒼朝日…」と、おれが蒼朝日の方を見ると彼女はニヤニヤしてた。あぁ…何となくわかった。

コイツは全てわかってるな。

わかってる上で黙ってんな?

 

修羅場を楽しんでんな!?!?

 

 

 

 

 

 

 

 

蒼朝日は彼女達に声を掛ける。

 

「みんな勘違いよ〜?ただのお風呂のことよ〜?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日前の事…。

 

 

 

「ぬるい」

 

 

そう言い放ったのは我らが蒼朝日。

割とてんてこ舞いしていた明石ズ達に色々と力を貸していて、その勢力をじわじわと伸ばしてーやめてください、睨まないでください。本当すみませんでしたあ!

 

役職としては指令補佐艦である。

 

 

 

「何が?執務?経営?皆との関係?」

 

 

「執務も何もかも指揮官クンはよくやってくれてるわ」

「というか本当やりすぎで休んでって朝日は思うけど…」

 

 

「本当?やった!蒼朝日に褒められた!愛してる」

 

「あら…嬉しい♡……って!そうじゃないわ!お風呂よ!お・風・呂!」

 

「ぬるいかな?」

 

「ええ!ぬるいわ!もう少しどうにかならないの?」

 

 

 

 

ブルーオース…つまり、パールベイ基地やテーテュアスの中での風呂は結構熱いらしい。

何名かの戦姫も熱い…って言ってたしなあ。

 

 

「といっても…蒼朝日…根本的に違うんだよ」

 

艦これ…鎮守府の風呂…つまり、入渠の目的は修理と言える。

艦型や損傷具合によって入渠時間が決まる。

誰…とは言わないが…入渠時間が1日を越す艦娘も珍しくない。

 

だが、パールベイの方は、気分値の向上と経験値の為……あれ?風呂に入って経験値?熱い風呂で?………熱いのはトレーニングなのかな?忍耐力なのかな?

 

 

「わかる?お風呂ってのはね?1日の癒しの時間なのよ?確かに…この鎮守府では療養の面が強いかもだけどね?」

 

「君らンとこは経験値入るもんね…逆を行くの?…っても温度下がったって話は聞かなかったあたり……やっぱり裏で手を引いてるのは「何か言った?」

 

「いえ、何でもありません」

 

 

「お願い!入渠施設を増設させてくれないかしら?」

 

「入渠だけでなくて、もっと幅広く出来るように…か?」

 

「そう、あつーいお風呂を設けて欲しいの」

 

「…福利厚生みたいなもんか……おん、大淀達と検討してみるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

んで…

 

 

 

「……何?」

なんとその日の夜に蒼朝日が俺の部屋を訪ねて来た。

 

「なに?愛の告白k「あなたの部屋の立派で大きなお風呂貸してくれないかしら?」

 

「何で?」

 

「あなたの…熱いお風呂のが忘れられなくて!!」

 

「また急な…」

 

「仕方ないでしょ?あんな話題になったら…恋しくなるのよ…ね?お願い」

 

「年寄りの言うことは…「何か言った?」

 

 

「ま、まあ…その件はまだ大淀と話中だったな…まあ…蒼朝日には色々とやってもらってるし…いいよ!」

 

「やった!ありがとうね〜」

 

 

 

 

 

んで…ドバドバとクソ熱いお湯を入れる彼女。

 

あっつ!クッソあちい!!

 

 

 

 

 

「おいおい!これ以上入れたら…水が…入るスペースが…」

 

 

「まだよ!まだ!いっぱいいっぱいいれて浸かるのが良いのよ?」

 

「いや!ほんとこれ以上入れたら溢れて床も熱くなるって!!」

 

 

 

 

 

「うん!コレよ!これ!んっーー!いいわあ…このあつさ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ…そんなの誰も知らないわけでね。

修羅場を迎えるわけなんですよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…って事よ〜?」

 

「「「………」」」

 

「でもアレね〜?龍田チャン…指揮官クンをとられたって思ってたのね〜?可愛いわあ」

 

「や、やめてください…」

思わず顔を赤くする龍田。

 

 

「まあ…お風呂が熱いのは本当よ?蒼オークランド達に聞いてみると良いわ?」

 

 

 

 

「明日には出来上がるらしいから…本当だ、龍田…に金剛に大淀…………………ひ天龍…イクに日向に桜赤城に蒼オイゲンにアークロイヤルに麗ちゃんに幸ちゃんに大和に金剛に榛名に桜大鳳に龍鳳に迅鯨に神威に加賀に赤城に大淀に明石に大井に北上に…ええと…夕張に時雨にぽ犬に…ひ、響に武蔵…桜ベルファストに蒼ベルファストに…川内にあきつ丸に神州丸に桜三笠に足柄に桜シリアスに…鬼怒に由良に吹雪に神通まで!?千代田に那智!羽黒……間宮に鳳翔……伊良湖…榛名に…桜天城に…あまぎちゃんは…居ないようだな…!蒼カールスルーエ!?お前まで!?電?雷?その棒は何だ?ん?ロープ?え!るまだ居る!?もう見えないけどまだ声は聞こえるううう」

 

 

とりあえず武器をおろしてもらって事情説明。

皆、漫画の不良みたいな顔しながら帰って行った。

 

 

とりあえず…明日を待つか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……うん…妖精さん達…こんな夜まで…すごいな……」

「てか…工事の…音…大きいな……」





本気でブルオの風呂は何でクソ熱いのに気分値が上がって経験値が貰えるのか?を考えた。


数人の報告…調書によると熱いらしい。
そして、鎮守府の入渠施設と違って体力が回復する訳でもないらしい。

しかし、気分値が上昇…及び、経験値が入るらしい。

お金を払えば10日間くらい入れるらしい…熱いのに。

そこでは指揮官からのプレゼントによっては追加効果を貰えるらしい。
クリティカル上昇…ふむ…?

手渡らしく、所謂…指揮官は常習的に風呂に立ち入ると考えられる…



指揮官が平気で風呂に立ち入る、熱くても経験値が入る……つまり
結果…皆…ドマz………手記はここで断たれている


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342話 鎮守府のお風呂 ②

朝…

工事の音で若干寝不足だけど…まあ、皆が喜ぶならそれでいい。

今日は早めに切り上げてゆっくり風呂に入ろう…なんて思いながら執務室に行くと、蒼朝日達が上機嫌で話しかけてきた。

 

 

 

 

「指揮官クン!ありがとう〜!素敵なお風呂が出来てたわ♡」

満面の笑みで彼女はそう言った。本当に無邪気な感じで可愛らしい。

彼女達の喜ぶ顔が見られるなら、多少の寝不足だってどうってことはない。

 

 

 

「へぇ…見てみたいなあ…行ってみるか」

 

「今は赤城さん達が入渠してますよ?覗きたいんですか?」

光の反射で眼眼鏡の奥まで見えない大淀が言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉で俺は思い留まった。というのも、以前点検を兼ねて状態確認に行った時に赤城と遭遇………ん?事故なんだ!あれは事故だったんた!そんな目で見ないで!?

そ、そうだ…赤城に『よかったらお風呂…1人で寂しいので付き合ってください』と言われてホイホイと了解したんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

入渠時間42時間だったんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「て、ていとくうううううう!うわぁあああああ!!」

と、大谷が高速修復剤ぶち込んでくれなかったら………

「……やめとこう」

 

「その方が(あなたのためにも)いいわよ〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで気にはなりながらも日々の業務に追われて…終わって…

気分的に早く風呂に入りたかったので間宮にそれを伝えて部屋に帰る。

 

 

 

風呂ッ!!

それは…1日の癒しの場!!

誰にも邪魔されない…俺だけの聖域…!

 

 

いざ!行かん!極楽…!!

 

 

 

 

 

 

ガチャリ…

 

 

 

 

「………〜〜♪」

 

 

 

 

「「「いらっしゃい」」」

 

 

 

 

「間違えました」

バタン

 

 

 

 

裸だ。

目の前に裸が居た。

 

 

 

 

 

 

待て、落ち着け、これは夢だ。

もしかしたら…何かと間違いかもしれない。

確認…うん、俺の部屋の風呂だな。確認ヨシ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャリ

 

 

「「「逃げないでよー!提督ぅ〜」」

 

 

 

 

 

 

 

バタン!

 

 

 

 

 

待て待て…まだ慌てなくて良い…。

欲求不満なのかな?俺は。寝不足って怖えな…

 

 

 

 

 

三度目の正直でドアノブに手をかけて………やめた。

 

 

 

 

 

 

そろり…と部屋の窓から外を見る……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嘘やん?

 

鎮守府…の建物広なってるやん?

 

え?この壁…こんなに出てたっけ?

え?何?湯気?

 

 

 

 

 

まさか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おい、妖精さんや?

設計図を見せておくれ?

 

 

ん?

 

守秘義務?

 

あんなに大々的にやってて?

 

 

 

「金平糖でどうかな?」

 

「ん?賄賂?いやいや…日頃から頑張ってくれる君達への…感謝の印だよ…」

 

 

妖精さんはため息を吐くふりをしながらニヤリと笑ってそれを受け取る。

 

 

 

「…まあ…こんぺいとうをたべるのにむちゅうでせっけいずにめがいかないかもしれない…」

 

「話が早くて助かるよ…」

 

「てーとく…おぬしもわるよのお〜」

 

「いえいえ…お代官様程ではぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ってみなくても…そとのけしきがじじつそのものだけどね」

 

「様式美だから…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やりやがった」

「部屋を…風呂を大拡張して…俺の私室の風呂まで繋げやがった!!」

 

「そりゃあ…あんだけデカい音する訳だ!!アッハッハァァア!!」

 

「なぜぎもんにおもわない?」

 

「ハッハーー!昨日の俺を殴りてえ!!」

 

 

 

 

まあ待て…逆に考えるんだ。

ハーレムだぞ?向こうさんは見ても触っても良いよ?状態な訳で…

ってことは俺は悪くない!正義だ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ…誰を見ても触っても……「私は!?!?」ってなって収拾がつかなくなるのは確実なんだけど

 

 

 

 

 

 

ガチャ!とドアが開く。

引き摺り込まれる俺。

 

 

 

「ダーリン♡お風呂でも一緒ー!」

 

「司令官!お背中流しますよ?」

 

「…ここは譲れないわ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パラダイスはここにあったんだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

んで

 

「蒼朝日。目的は達成された?」

 

「両手に華を侍らせてそのセリフはどうかと思うけど…うん。良い熱さよ〜」

 

 

熱い風呂に入りながら蒼朝日は恍惚の表情を見せた。

 

 

 

「へえ…熱い風呂に入りたかったんだ」

誰かが俺たちの言葉に反応した。

 

「そうよ〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「熱いお風呂なら…加賀さんと入れば良いのに」

 

「え?」

「あら?加賀チャンは熱いのが好きなの?」

 

 

 

「…熱いのが好きというより……ええと」

加賀……というより、加賀達は答えるのにしどろもどろになっていた。

 

??という表情の蒼朝日に赤城がコソリと言った。

 

 

「加賀さんが温泉に入ると…温度が上がるのよ?」

 

 

「「「「えっ」」」」

朝日を含めて数名から驚きの声が上がった。

 

「ほ、ほんとなの?」

 

「え、ええ…本当よ」

 

 

「あぁー!!だから加賀さんは1人で入ってるの?」

 

「……そうよ」

どうやら加賀は湯船には1人で入ってるらしい。

 

 

「ああ…一緒に寝る時もすぐ暖かくなったな…」

俺も似たような感想をならべた。

 

 

「「「「「ん?」」」」」

墓穴を掘ったらしかった。

逃げようとしたが遅かった。両脇を固められた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんでまた……?」

蒼朝日は不思議そうに彼女達を見つめた。

 

 

「………」

 

「ああ……」

瑞鶴は納得したようだ。俺も何となくわかった。

 

 

 

 

 

「……やきとり」

瑞鶴がボソリと言った。

 

「き」くらいで加賀達が一瞬で瑞鶴を並んだ。

 

「「「「やるの?七面鳥(小娘)」」」」

 

 

 

 

 

「ヒッ…」

いつもの瑞鶴ならやり返してるが今日は腰を抜かしたらしい。

一瞬見た加賀表情は深海棲姫すら失禁するレベルだった。

 

 

 

 

 

と言うか早く風呂に入りたい。冬にタオル一枚はキツイ、倫理的にも精神衛生的にもキツイ。

 

 

「さあ…冷えてもいけないしねる一緒に入りましょ?…特に瑞鶴?」

 

 

瑞鶴は加賀達の入る湯船に囚われた。

みるみる赤くなる瑞鶴。だが逃げられない!!

 

「て、ていとく…さん」の声を華麗にスルーして仕方なく風呂に入る。

 

え?何故かって?

見てみろよ…俺の部屋の風呂の壁…ねえもん……風呂同士が繋がってんだもん…諦めるしかねえよ……俺の風呂も瑞鶴も……

 

 

 

「指揮官クンも気に入ってくれた?」

 

「ん…まあ…無茶するよね」

 

「うふふ…。慣れってね…そんなものよ?」

「私達にとっては、アレが日常だったもの。似たような別の世界でも…恋しくなるわ」

 

 

 

「それに…あなたも経験したことないでしょ?だから…指揮官クンにも私達と同じものを味わって…共有してみたかったの。…それにこのお風呂なら…一緒に入られるしね?片時も離れたくない…ってのもあるのよ?」

 

ほう…と、周りを見渡してみる。

皆がニコニコとこちらを見ている…。

 

ありがとう。なんて思いながら一人一人を見ようとしたが…

 

 

 

ガシッと腕を掴む龍田や迅鯨。

「…だめよ?よそ見ばかりしちゃうと……目を潰さなきゃ…」

キラリと銀色に光る何かが見えた。

お風呂では武装は解除しましょうね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後のこと?

 

 

どれだけ時間をずらしても…何故か皆が風呂にいるんだよなあ…なんでだろ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どぉ?指揮官クン。広いお風呂にポツンと2人きり…ってのは」

 

「珍しく2人だねえ…」

 

 

「指揮官クン?」

 

「うん?」

 

「……なんでもないわ」

 

「方法が見つかれば……行くよ」

 

「え?」

 

「他の…パールベイの仲間達だろう?」

 

そう…ここにいるブルースフィアのメンバーは全員ではない。

ブルースフィアからの離反組と一部の戦姫が居るだけなのだ。

表向きには奪ったテーテュアス号が見つからない…となっているだろうが、まだ仲間は残されている。

 

 

今回の温泉…風呂の一件の根幹にもそれがあったのだろう。

私達の世界の事も忘れないで…と言うメッセージ…。

 

それは薄々感じていた。

もちろん…アズールレーンの世界も同じだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…約束する。絶対皆も無事に迎え入れる」

 

その言葉に彼女は一瞬めを輝かせた。

 

 

しかし…

 

「そう上手く行くかしら?」

期待と不安が入り混じった返答。

俺達はブルースフィアから見れば…所謂裏切り者なのだ。

仮に向こうの世界に行っても…俺達が脅威と判断されたら…蒼ハウや蒼キングジョージ達も危険にさらされる。

 

 

「……誓う」

「この指輪に誓って……絶対に君を悲しませる結末にしない」

 

「戦えない…私に?」

 

「関係ないよ」

 

「…こんな場所で……ロマンのかけらもないのね?」

 

「そうか……断るのか…」

しょんぼりしながら指輪を片そうとすると、蒼朝日は焦った表情で言う。

「い、いいいるわ!?それは絶対に貰うわ?!」

 

 

 

 

 

歪な形ではあるが…

愛してるの言葉と共に指輪を渡して口づけを交わした。

 

 

 

 

 

 

風呂だけどね?

 

 

 

 

「絶対に皆と笑顔で…ここに集まろう」

 

「ええ…期待してるわ?指揮官クン……いえ?あなた?」

 

そう言って俺にもたれかかってこちらを見上げる彼女。

 

 

 

 

 

 

 

顔が熱いのは…風呂のせいだけじゃないはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瑞鶴は立派な湯で七面鳥になったよ!



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343話 大淀と1日夫婦 ①

「んっ…ん〜〜〜〜!!」

 

大きく伸びをしたのは我らが執務担当艦の大淀。

 

「さ!提督?今日の執務は終了です!お疲れ様でした」

ニコリと笑いかけながら彼女は言う。

 

 

珍しく今日は2人での執務だった。

 

「ふふ。そういえば、2人での執務も本当に久しぶりですね」

 

夕焼けの光が差し込む執務室。

微笑む彼女に思わずドキッとする。

何気に2人きりの時は少し砕けた調子になるのが更に可愛いと思える。

 

 

「さあ!今日は私が夕飯を作りますね?」

 

 

「お!?本当?嬉しいね」

 

「今日の為に一生懸命練習しました!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大淀印の和定食です♪」

 

筍と蕨の煮付け、駆逐艦農園の大豆を使った豆腐、刺身にお吸い物。

 

「いただきます!」

 

当然美味しい…ッ!

 

割烹着姿の君もなかなか……と笑みが溢れた。

 

 

「美味しいですか?良かったです」

 

 

2人で他愛もない話をしながら夕飯を食べる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大淀が今までに見たことがないくらい柔らかい顔をしている。

仕事モードの君を多く見るからか?と自分に問いただしてみた。

 

 

秘書艦制度で大淀と俺の仕事は楽になった。

桜ベルファストが来てから仕事分担は少し減った。

蒼朝日が来てからはさらに楽になった。

 

いかに大淀が大変だったかがわかる。

その中でも出撃や遠征、買い出し等の様々な所について来てくれた。

それはいくら感謝しても足りないだろう。

 

ベルや他の娘達が休みなのは珍しくない。彼女達にも休みを取ってもらわないと困る。

大淀は休みが他の娘に比べて少ないイメージがある。

休みでも執務室に出て来てるのだ。その分給料に足してるが…休んでほしい…本当…。

 

曰く、仕事場の方が落ち着く…らしい。

休日も割と読書や1人で買い物等で時間を潰すらしいが……

 

 

そのことを話すと、決まって彼女は少し表情が暗くなる。

 

今日とて、例外ではなかった。

 

 

 

 

 

「根を詰め過ぎないようにな?」

「休みの日は、しっかり休むべきだぞ?」

 

 

 

 

 

 

その言葉に…

 

 

 

 

 

 

彼女はポツリと言った–––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたの側に居たいからですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう一度…次は聞こえるように大きな声で言った。

 

 

「あなたの側に居たいからなんです」

 

「え…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出会った時から…この人はきっと何かを成し遂げる人だって思いました。ええ、一目惚れです」

 

「戦時中に……部下として…軍人として言ってはいけない事だと思いますが…あなたは優し過ぎました」

 

「あなたは…私にも優しく語りかけてくれましたよね」

 

 

「それがどれだけ嬉しかったか……」

 

 

 

「そう言ってくれると嬉しいな」

俺は素直にそう答えた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから…その分あなたが居なくなって……」

大淀は言葉に詰まった。

 

 

「……どれだけ不安だったか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハッとした…

その後に彼女達の辿った道を…思い出した。

 

 

 

引っ掛かりが…彼女が暗くなって居た理由がわかって…その紐が俺の中で解けた。

 

 

 

そうだ。

彼女と言う存在(軽巡洋艦 大淀)()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

 

 

 

それは…

一番見たくないものを近くで見なければならない

一番不安で不安で仕方ないポジションだった

と言う事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前提督の指揮下で……彼女の心の傷は他の艦娘と比べる…のはアレだが、比類にならない程のストレスに晒されていただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前で家族とも言える艦娘が解体された。

たった一言…『解体』の言葉の下に。

 

 

命絶え絶えで資材を持って帰った彼女はそのまま息を引き取った。

『……フン』

その一言…いや、言葉にもなってないモノが彼女の最期に聞いたモノだった。

 

 

見送った戦友が戻らなかった。

『……』もはや言葉すらなかった。

処罰を覚悟で、せめて彼女に一言…と言うと…『戦争だ、仕方ない。それが役目だ』と言った。

 

 

日々、怯えながら生きる苦痛。

 

 

 

 

 

 

 

怯え、後悔し、自分を責め、日々を耐えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

あの日までは。

 

 

 

 

 

あの日も私は泣きながら提督の後ろを歩いていた。

 

今に思えば、私達なら人に勝つ事は容易いのに…そうしなかったのはきっと[私達が人類にとって最後の砦]であることと、[人を敵に回したくない]もあったからだ。

 

懲罰を理由に時雨さん達を解体しようとするあの人。

 

 

麻痺した感覚は、それすらも普通になって…

私が代わりに!と言っても、執務を担当しているのを理由に私は解体されない。

 

あの日も同じなんだ…と泣きながら懇願していた。

 

 

 

そこにあなたは現れた。

 

 

 

時雨さんの髪を掴む手を掴んで離させ、思い切り殴り抜いた。

あの時の光景は…きっと一生忘れない。

 

1発の拳は、私達の生き方(未来)を大きく変えた。

 

 

 

「私達だって生きてるんだ!!」そう伝えたかった言葉を全てその右拳に込めて言ってくれたように感じた。

 

唖然とする皆の中で…分かった。

この人は助けてくれるんだ…って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自らを犠牲にしても私達に尽くしてくれるあなた。

自分のご飯やその他を殴り捨ててでも私達に温かい食事と、温かい寝床と、お風呂と…人らしい生活を与えてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

「国や俺の為に死ね」

だった命令は

 

 

「絶対に死ぬな」

に変わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嬉しかったのはそれだけじゃなかった。

 

 

私達は……もっと大切な事を思い出せた

 

私は…私達はあなたの艦娘だったんだってことを…思い出せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

でも………

 

 

 

 

 

 

 

 

「今も時々、長い夢を見てるんじゃないかって思うんです」

大淀は手を胸の前で握りしめて俯いて言った。

表情は見えなくとも、ポタリと涙が机に落ちるのを見て…彼女が泣いていることが分かった。

 

 

「め、目を覚ましたら…またあの地獄が待ってるんじゃないか…って」

 

 

 

「夢じゃない…よ」

 

 

「でも!いつかあなたが…帰るべき場所に帰ったら…と思うと私は!」

「あなたが…居なくなってしまったら…」

 

 

 

居なくなるってのは…現実世界に帰ることより…ここで死んだり…と言う意味が強いのだろう…。

 

 

「だから片時もあなたから離れるのが怖くて仕方ないんです!!」

 

 

 

彼女は流す涙を隠すことなく、俺の目を見て…見せた事もない不安な表情を曝け出して…そう言った。

 

 

 

 

「大淀…」

 

「ひっく……グスッ…」

「夜、1人になるのが怖いんです!朝!ドアを開けて…あなたがいなかったら!ドアを開けて入ってくるのがあなたじゃなかったら!そう思うと怖くて仕方ないんです!!」

 

「この指輪も…夢で明日の朝には…指に無くて!見てたのが夢で…これが現実なんだ!って言われるのが怖くて」

 

「幸せと感じれは感じる程に絶望は深くて苦しいものになるから!グスッ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

抱き締めた。

それしか出来なかった。

そこまで…考える事ができて居なかった。

 

そうだ…

大石さんは目を覚ましたが…彼女達の受けた傷が無くなる訳では無かったのだ。

なのに…俺は………もう前を向いて新しいスタートをしたと思っていた。

その場のぬかるみに足を取られてもがく娘も居たことに気付かなかったんだ。

 

 

 

 

「ぐすっ…ひぐっ…ぅゎぁぁあん」

 

 

 

「大淀…ごめんな…そんな言葉じゃ足りない…けど」

 

「でいどぐが謝らないでくだざい…あなだわ…悪ぐないでず」

 

「いいや…お前がそんな状況だと今の今まで気付けないでいた能天気な俺が悪い」

 

「ゔぅ……そんなご「ずっと…側にいるから」

 

「ずっと側に居て言い続ける。これは夢じゃないって」

「今、君が触れている俺は紛れもない現実だって…示し続けるから」

 

 

 

 

 

 

「君がもう…泣かないで良いように」

「俺が君から離れないから」

 

 

「ぅ……うわぁぁぁぁあん!!提督ッ!でいどくううううう!!」

「もう!どこにも行かないで!!私達を置いて行かないで!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう…私を…1人にしないで!!!!!!!」

 

 

 

 

彼女は泣いた。

今迄の全てを吐き出すように。

言葉も涙も止まらなく…それでも彼女は続けた。

 

聞いてほしいんだ!!

私の全てなんだ!!

私達には…私には…あなたしか居ないんだ!!

 

 

だから…二度と離さないで!!と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はずっと彼女を抱き締めて居た…。

 

 

 




お待たせ致しました!


仕事がめたくそ忙しくなってまいりまして…ペースはダウンすると思われますが…何卒…!!


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344話 大淀と1日夫婦 ②

『貴様らの体たらくが原因だろ?なら…土下座して許しを乞え』

 

『そんな…提督…私達は………』

 

 

 

 

 

『…ッ……。すみませんでした…』

 

『なんで守ってくれないの!?しっかりしてよ!』

『それがアンタらの役目だろ!?逃げるなよ』

 

 

 

私達が、私が悪いんだ。

もっと頑張らなきゃ…私が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハッと気付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつの間にか寝て居たらしい。

アレだけ泣きじゃくっておいて寝てしまうとは情け無い。

 

 

提督は!?

嫌気が差していなくなっていたら!?

これが夢が覚めた時なら!?

 

 

 

 

 

 

 

私のその思いは直ぐに消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

寒さを感じないから。

むしろ温かい。

 

 

 

 

 

 

 

顔が触れているのは…彼の胸だった。

彼の心音と彼の匂いと…温かさ…。

 

 

 

 

 

「……起きた?」

 

見上げると彼が私を覗き込んでニコリと笑った。

 

「………ですか?」

 

「ん?」

 

「ずっと…そうやって居てくれてたのですか?」

 

「……まあね」

 

「何故ですか?」

我ながら酷い質問だ…。

–––君が寂しくないように––––

答えなんか決まってるのに…でも私はその答えが欲しくてそう尋ねたのだ。

 

 

 

 

「そりゃ…ねぇ?」

 

「…ッ!?」

予想してた答えと違っていた。

 

「…私が寂しくないようにとかでは?」

ドクンドクンと私の心音が馬鹿みたいに大きく聞こえる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなのは当たり前すぎるよ」

いつだって側にいるよ…と、彼はサラリと言った。

 

「毎日隣で仕事をしても…触れないとこの温もりには気付かないものだね。冬でも…寒く無くてさ…ずーっと引っ付いていたよ」

 

「俺が…君を離さないから…君も俺を離すな。君が悪魔にうなされるなら…俺が手を引く。俺が悪魔に囚われたなら…君が手を引いてくれ」

 

そう言って彼は少しだけ抱き締める力を強くした。

私もそれに応えるように抱き締め返した。

 

「さあ…準備して出かけるか」

 

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

「おやおやー提督さんー!今日もデートかい?」

笑いながら何人もの人達が俺のところにやってくる。

一種の名物らしい…何故だ?

 

 

 

大淀…彼女がギュッと…俺の袖を掴んだ。

その表情は強張って…少し震えていた。

 

「大淀?」

大淀は以前に戦果が悪いことを住民の前で土下座させられた事があると言っていた。

彼らの不平不満を怒号として浴びせられ、ただただ謝るしかできなかった…と。

 

 

 

 

「あらー!別嬪さんじゃねー!」

「次はこの子を泣かすのかいー?」

 

「あなたも艦娘さんだよね?いつもありがとう」

「お姉さん達のお陰で今日も平和だぜー」

 

 

そんな言葉の中で…とある人物がやって来て言葉が発された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あなた…あの時の大淀さんよね?……ごめんね、あの時は」

そう1人の女性が言った。

 

「あなた達が命懸けで戦ってくれてるのに…あんな酷い言葉を言って」

「本当にごめんなさい」

そう言って頭を下げた。

 

 

 

 

「……ッ!?」

大淀は戸惑った。

それに合わせて何人も何人もそうやって頭を下げたのだ。

 

「どうかしてた…なんて言葉じゃ片付けられないけど……必死に戦ってくれるあなた達を見て、自分達がいかにバカなことを言ってたかがわかったの。許してくれなんて言えないけど…伝えさせて欲しいの。ごめんなさい」

 

 

 

「あの…わ、私は」

 

彼女は一度として彼等を恨んだことはない。

いつだって皆の為に頑張った。

自分が弱いから悪いと思ってた。

辛かったけど耐えた。

 

 

例えどれだけ努力が認められなくても–––

例え理解されなくても–––

この戦いが終われば…いつかそんな日が来ると信じて–––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぽろっ…と何かが頬に伝った。

彼女はそれが何かわからない。

戸惑いの中で必死に涙を拭った。言葉を出さなきゃ…と。

 

 

「わ、私こそ…ずっと引きずって…しっかりしなきゃって…あの時は……でも今も…あなた方を怖がって……ごめんなさい…」

 

大淀も頭を下げる。

そんな必要ない!と彼女に駆け寄るその女性。

 

ありがとう––

ごめんなさい–––

 

 

その言葉が交わされて…

大淀は涙を流して、周りの人々も同じように涙を流す。

頭を撫で、抱き合いながら………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ごめんね

いつも…ありがとう…。

その言葉が大淀を撃った。

 

彼女は流した涙の理由が分かった。

嬉しいんだ。

認められた…んだ…と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大淀の仕事は決してではないが日の目を見ることは少ない。

だが、作戦要領も何もかも一緒に考えてアレコレ意見交換し、時に全てを任せて…一生懸命に頑張ってくれた彼女。

決して傷が消えるわけではない。

だが、新しくスタートすることはできる。

 

今…彼女の肩に乗っかる何かが落ちて行くのが見えた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな彼女と街を歩く。

途中でクレープを買い食いした。

「ん…おぃひぃです」

と、なかなか見られなであろう一面を見たり…

 

「わぁ…綺麗な砂浜…少し寒いですけど」

 

「提督!あのお店見ませんか?来てください!一緒に見ましょう!」

 

彼女から手を引いてくれたり…と、楽しい時間はあっという間に過ぎ去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋に帰って2人で一息つく。

ベッドに腰掛ける俺の目の前に彼女が立つ。

 

 

「今日はありがとうございました。提督のおかげで…本当に私達の全てが変わって行きますね」

 

街での出来事だろう。

楽しいデートも良かったが、彼女が少しでも楽になったならそれ以上に良いことはない。

だが、それは俺のおかげではない。

 

「そうか?俺どうこうってより、君達の努力の結晶じゃないかな」

 

「……いえ…やっぱりあなたのお陰ですよ」

 

 

 

 

なぜなら…あなたが居てくれたから今の私達があるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛してます」

「ずっと…あなたに着いて行きます。何があろうと…どんな道だろうと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも一つだけ…言わせてください」

 

そう大淀は言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きっとあなたが神崎 救じゃない誰かでも…あのまま…記憶のないままの出会いでも……きっと私はあなたを好きになっていた」

 

 

そう言って大淀は飛びついてきて涙混じりにキスをした。

押し倒されるように重なった。

 

 

 

大淀は思い返していた。

彼がきっと…例えば神崎 救でない別のAさんであろうと、彼の生き方に惹かれただろう。

あのまま記憶の戻らない状態だったとしても…きっと彼を好きになっている…と。

 

でも…だからこそ…あなたが神崎 救だから……この上なく愛することを止められないのだ…と。

 

 

 

 

 

震える唇が離れて、彼女はぽろぽろと熱いものを零しながら笑顔を向ける。

「私と出会ってくれて…ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……大淀?」

 

「はい」

 

「その…まだ、傷は深いよな」

 

 

 

 

 

 

「はい……」

 

「なら…その…アレだ。それ以上の傷を…だな……ええと…それ以上で覆うことはできないかなって思って…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…上書きしてくれるんですか?」

 

 

「…ん、お前に…酷い事…するぞ?」

 

「……ッ」

 

「……お前は俺のものだって」

 

「……私なんかでいいんですか…」

 

「君が良い」

 

「私…なかなか重いですよ?その初めて…を捧げる訳ですから?」

「もっとヤキモチも妬きますよ?離れませんよ?」

 

 

「余裕さ…」

 

「なら……奪ってください。嫌な過去も…思い出も全部!あなただけって…あなたしか居ないって私に刻み込んでください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう…大淀」

 

「…お、おはようございます。……痛いですね…想像よりも」

彼女は意地悪な表情で彼に言う。

 

「ご、ごめん…」

申し訳なさそうに言う彼に彼女は微笑みながら返す。

 

 

「でも、こんなに心地いい痛みってあるんですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝食を終えて2人で執務室へと向かう。

 

 

「ま、待ってください提督…!何だか…うまく歩けなくて…」

 

「大丈夫か?無理させてごめんな…」

 

「…こんな経験は初めてです」

 

おぼつかない足取りの大淀の手を引いて執務室へと向かう。

 

 

 

それからというもの、執務関係で2人で街へ行っても大淀は明るく振る舞えるようになった。

些細なきっかけかも知れないが、きっと前に進めるのだ。

 

 

「お、大淀ちゃん!いらっしゃい!今日もデートかい?!」

 

「はい!提督とデートです!」

 

「こ、こら大淀ぉ?!」

 

「ふふッ…。いいじゃないですか♪」

少し明るくなった彼女が笑いながら俺の手を握った。





大淀の重さが20上がった!
デレ度はこれ以上上がらない!


少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!


感想などお待ちしてます!





仕事がアホみたいにハードモードに突入したので…更新が遅れ気味になります…orz


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345話 幸とのデート ①

 

ぽっかりと穴の空いた人生。

その穴を埋めるためにひたすら頑張って来た。

世界を超えたって…あの空の向こうに行ったって…その穴は埋まらないけど……

あなたと一緒なら……きっと…少しずつ埋められる気がするの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある朝の話。

 

「…え!?まも君居ないんですか!?」

 

「はい、ご主人様は本日はオフでして…。夕方には帰られると思いますが…」

とある人物が鎮守府を訪ねて来た。

だが、彼女の会いたい人物はどうやら留守らしい。

 

 

 

 

「……待つのもアレだよねえ…あ!鎮守府の案内とかお願いできない?」 

 

「鎮守府の案内は私共より、ご主人様にして頂く方が幸様も嬉しいのでは…と」

 

「あーー…うん、そうだねぇ…。アポ無しできた私が悪いもん、ごめんね?」

 

「いえ、幸様のご訪問…いつでも歓迎致しますよ?」

「宜しければ一杯…紅茶をお出ししますのでご一緒にいかがですか?」

 

「え?良いの?」

 

「はい、ご主人様も好きな紅茶とお菓子でございます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ファン待望のオータムリーフ先生による新刊…予約受付中…?」

街中の本屋の前のポスターに彼は視線を止めた。

 

「…迫り来る危機!魔の手から愛するあの人を守ることが出来るのか!?全6巻予定……だと?!」

 

オータムリーフ…秋雲と青葉の合同ペンネームの作品は大淀や桜明石達の外商の結果、街でも販売されるようになり、今や結構な人気を博している。

 

と言っても…ほぼ、自分達の暴露話でもある訳で…恥ずかしい……ほんと。

 

 

 

軽く笑いながら視線をポスターから戻すと……見覚えのある後ろ姿が………

 

あれは……

 

 

 

 

「あれ?幸ちゃん?」

 

 

 

「え?」

その声と共に振り向いた女の子。

御蔵 幸であった。

 

 

 

「まもくぅううん!こんな所で会うなんて…偶然!いや!運命ダネ!僕嬉しいよー!」

そのセリフと共にひゃほーー!と、飛びついて来ると思ってたが…。

 

 

「あ、まも君、今日はお休みなんだよね?」

 

「え、あ、うん」

思いもよらない彼女の言葉につい、返答に詰まってしまう。

 

「あはは、どうしたの?僕がまもくぅん!て飛びつくと思った?」

 

「ん…まあ…ね」

 

「その方が良いならそうするけど…」

「好きだけど…一方通行じゃなくて、やっぱりちゃんと好きになってもらいたいなあ…って思ってるから…ある程度は弁えないといけない…でしょ?」

 

どっちかというとハッピートリガー的な天真爛漫さはナリを潜め、大人しめの僕っ娘が目の前に立っていた。

 

「幸ちゃんは休み?買い物?」

 

「うん、そうだよ。まも君の顔を見に鎮守府に寄ったらオフで不在って聞いたから…。ベルファストさんに紅茶をご馳走になって…それで…買い物でもして帰ろうかな…なんて思ったら出会えちゃった」

少し顔を赤らめてえへへ…と笑う彼女に少しドキッとした。

 

「そうなの?来てくれたんだ…ごめんね?」

 

「ううん!ベルファストさんのお菓子と紅茶で幸せになれたよ」

 

「ベルが紅茶を……」

 

「うん!とても美味しかったよ」

 

「なら…ベルは君を歓迎してるんだな」

基本的にはベルは心を許す人にしか紅茶や菓子を出さない。

まあ…この人なら…くらいの人には紅茶のフツー茶葉

この人にはOKの人には良い茶葉での紅茶。

気に入った人には紅茶にお菓子もついてくる。

そんな感じだ。

 

「本当?不安だったから…良かった…」

 

 

「でもごめんね?居なくて」

 

「ううん、アポ無しだった僕が悪いよ」

 

「てか、なんか…だいぶキャラが落ち着いたよね」

 

「まあね…悔しいけど麗のお陰…かな。あの時の事はまも君には本当にごめんねって思ってる。何もかもを期待して1人で勝手に思ってたから…」

「でもね?今は1人の男の人として好きなんだ」

 

「まも君の周りには魅力的な…麗とか…艦娘とか多くて……ぼ、僕は胸とか…麗みたいには無いけど…料理も……うう。…だけど…少しでも私を見てもらえたらなあ…って思うよ」

 

「でもね?きっとまも君の気持ちとか…置かれた状況とか…他の人よりは…色々と解ることができる所はあると思うよ。躓いたら…言って?そうでなくてもだけど…力になるよ」

 

 

 

 

 

「そこまで言ってくれるのは…嬉しいな。…色々と考えてくれて…ありがとう」

きっとこの先色々と頼ることはあるだろう。

何より、彼女の中で何かが変われたのなら…良かったと思う。

 

 

 

「ううん、あ!、オフなんだよね?ごめんね?用があるから出てるんだよね!時間取らせてごめんね?私はそろそろ行くよ」

「次はアポとって行くね。少しでも会えて良かった!えへへ」

 

 

 

名残惜しそうにバイバイと行こうとする彼女の手を思わず掴んだ。

無意識だった。

この手を離しちゃいけないって思った。

 

「え?」

 

「あ、ごめん」

 

「ううん?どうしたの?」

 

「あー……。お昼食べた?」

 

「ううん?まだだよ?ここらはあまり詳しく無いから…何があるか分からなくて…。でも、雑誌とかで探すよ!」

 

「なら…俺と今日は出掛けない?」

 

「…………え!?う、嬉しいケド!よ、用があるんじゃないの?」

 

「特には…街をふらついてただけだし…良かったら色々案内させてよ」

「君のことも、もっと良く知りたいし…俺の事も知って欲しい」

 

 

「えと…」

「それって…デートのお誘い…ってことでもいい??」

 

「そうだね。俺とデート…しない?」

 

 

 

 

 

 

「うん!する!まも君とデート!やったぁあ!嬉しいなあ!嬉しいなぁ」

素が出る彼女。余程嬉しかったのだろうか…いや、好きと言う人に誘われてうれしくないはずがない。

だが、お互いの事を知りたいと言うのは本音だし…そこまで考えてくれる人を大切にしたいと思う。

 

「………ハッ…コホン…喜んで♡」

キャラが保たれ無かった事を少し恥ずかしがりつつ、陰で小さくガッツポーズをする彼女が微笑ましかった。

 

 

「漫画の中だけだと思ってたよぉ〜。嬉しいなあ」

 

「そんな大袈裟なあ…」

 

「だってそれしか知らないもん」

 

「そー?」

「まあ……行こうか!デート」

 

「うん!」

 

 

こうして幸とのデートが始まった。

 





御蔵 幸の掘り下げ回。
続くよ!(๑╹ω╹๑ )
麗とは違った魅力を…出せたら…いいなあ…



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346話 幸とのデート ②

「デート嬉しいなあ〜♡」

「手を…繋いでもいい?」

 

「ん?いいよー?」

 

手を繋いだ。

 

「まも君……手あったかいね」

 

「幸ちゃんの手冷たいねー!温めたげるよ」

彼は笑いながら言う。

 

「え!嬉しい…ケド…心が温かいから手が冷たいんだよ!きっと!!」

 

「へー??そーかなー!?てことは…俺冷たいのかあ…」

 

「え!?あ、あぅ…ま、まも君は優しさが滲み出てる…んだよお」

 

「苦しそうww」

 

「そんなことないよお!!」

 

 

 

 

「お昼は何か食べたたい?」

 

「え?んーとね…。僕ね?もっとまも君のこと知りたいし、僕のこと知って欲しいんだ」

 

 

「…ってもね…あはは…僕…デートもしたことないし……ご飯も行ったことないからさ…どこに行ったらいいかわかんないんだ」

「だからね?まも君の好きなお店教えて?」

 

「…オムライス…食べられる?」

 

「うん!ならお昼はオムライスにしよー!」

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃい!おお、提督さんか…そっちは……彼女か?」

 

「はう!?ぼ、ぼぼ僕が彼女!?」

店主らしき人の言葉に一気に顔が赤くなる僕。

 

「んー…彼女!初デートなんだよね」

 

「か、彼女っ!!はつでぇと…」

 

「ほーー!いいねえ!初々しくて……いや、初々しくねえな。色んな子連れ回してるしな…」

 

「少なくともデート中のカップルにかける言葉では無いよね」

 

「せやな……で?注文は?いつもの?」

 

「ん、いつもの2つね」

 

彼と店主の会話のドッジボールの後に当たり前のように…いわゆる、「いつもの!」の注文が入った。

僕は何だかさっきから暑いけど…それ以上に彼と食べるオムライスが楽しみで仕方ない。

 

 

 

 

 

 

 

「はいよ!お待ちどーさん!特製!ふわとろオムライスだ」

 

店主が運んできたのはチキンライスの上に卵がドンと乗ったオムライス…?

 

 

「これ…包んでないやつ?」

と、私が尋ねると…クスリと2人は笑った。

 

「へへ…お嬢ちゃん見てな」と言うと、ぷっくりとした卵焼?オムレツ?に包丁がすーっと入る。

 

 

途端にオムレツは広がって中からトロトロの卵が流れ出てチキンライスを覆った。そこに店主がデミソースをかける。

 

 

「タンポポオムライスってんだ」

得意げに店主が話す。確かに本で見たタンポポに似てる…かな?

 

 

パクリと熱々のオムライスを口に運ぶ。

 

 

「〜〜〜ッ!!」

美味しい!感動出来るほどに美味しい!!

 

「おいひぃ!」

 

「気に入った?」

 

「うん!鎮守府以外で食べた物の中で…1番美味しい!!」

 

「お!そういってくれると嬉しいね!ありがとよ!お嬢ちゃん!」

2人がニコニコと私の方を見てくれる。

 

 

「気に入ってくれて良かった」

 

「うん!他の女の子ともよく来る…ってのは少し妬いちゃうケド…美味しくて幸せ」

 

満面の笑みで微笑む彼女にドキッとした。

もしかして俺はチョロいのか?なんて思ったり……。

 

 

「あ…そうだ。やってみたかったんだ…これ、はい!まも君!あーん」

 

「あーん…ん!美味しい!」

「はい!幸ちゃん!あーん」

 

「えへへ…恥ずかしいね…。あーーん……ん〜!美味しい!」

「好きなオムライスを好きな人にあーんしてもらったり、一緒に食べると…更に幸せに感じるね」

 

 

「僕ね。あ…私ね?「僕で良いよ」

 

「…え?………女の子っぽくないって言わないの?」

 

「その元気さが幸ちゃんでしょ?気にしないよ?」

 

 

「本当に優しいね…」

「僕ね?こんな普通をずーっと求めてたんだ」

「……長い道のりだったけど……たくさん間違ったけど…やっと叶ったんだ…」

 

 

「ありがとう!まも君!」

 

「…こんなに遠かった普通の幸せを感じられることがこんなに嬉しいなんて…。好きな人とこうやって過ごせるのがこんなにも幸せだなんて…。夢なんじゃないかって怖いくらい」

 

「一生分の幸せを味わった気分だよ」

 

そう儚く呟く彼女に彼は言う。

 

 

「一生分?!違うよ?まだまだ今日は長いよ?色々行こう?」

「今日だけじゃなくて、この先も…ずっとね」

 

「…………あはは…。ほんと…まも君は優しすぎるよ」

「…………うん!たくさん私を連れて行って!」

 

オムライスが少ししょっぱく感じた。

 

 

 

 

ただ目的の為にひた走って来た。

周りの世界なんか見えない程に。

だから…初めて触れる世界は…こんなにも輝いていて…私の脳内に電撃のように突き刺さる。

 

 

 

 

「クレープ?あ!本で見たかな」

 

「残り一個らしいけど…2人で分けない?おいしーから!」

 

 

 

「これが噂のクレープ……んー!?おいしいい!!」

 

「俺イチオシのクレープだよん」

彼は甘い物好きらしい。

私も甘いのは好きになった。残り一個のクレープを2人で分けて食べるのも何だか幸せな気分になった。

 

 

 

 

 

 

「この服とか帽子とか幸ちゃん…似合いそうだよね」

 

「可愛い服……と帽子……え?!似合うかなあ」

言われるがままに試着する。

 

 

 

「どう?まも君…似合う?」

 

「良いね!すごく似合ってる!かわいーよ!」

 

「ほ、ほほ本当?!…えへへ……嬉しいなあ」

 

「プレゼントさせてよ」

 

「え?いいの…?」

 

「うん、ぜひ!」

 

るんるんでレジへと持って行く。

「お買い上げありがとうございます!プレゼントですか?着替えて行かれますか?」

 

「良いんですか?!」

 

 

 

 

 

 

 

「えへへ…着替えて良いって言ってくれたから…着替えたよ」

 

「うん、やっぱり可愛い!似合ってるよ」

 

「ええ!?あの………ぇぇ…と……ありがとう…」

初めてプレゼントを貰った…嬉しすぎるよ!

「大切にするね?」

 

 

 

「今日は楽しかった!ありがとうね?まも君」

 

「次はもっと時間掛けて色々行こう」

 

「うん!もっともっと一緒に居たいな」

「………うん、やっぱり僕はまも君が好き」

「本当に1人の人として…大好き!」

 

「……あのね?だからね?」

「もっと僕の事見て知って欲しい…な…だからね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は背伸びをしてキスをする。

「……はじめてのキス……です」

 

 

 

 

 

「えへへ…大好きだよ!…また会おうね?」

彼女は足早に帰って行こうとしたので…また腕を掴んで呼び止めた。

 

「ふぇ?!ど、どうした–––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

えへへ…キスされたぁ

嬉しい…なあ…。

早く会いたいなあ…!もっと好きになっちゃったよぉ!

 

彼女の鎮守府では…帰って部屋に戻って悶える幸の姿があった。

 

「…幸テートクが…悶えてマース…」

 

「思春期かな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「デレデレしちゃってー…」

「私だって…遊びに行ったんだからね?」

 

ぷくりと膨れた麗が居た。

「キスもしてたよね!?ズルイー!!」

 

「見てたんだからねえ!」

麗がヤキモチを妬いてその日は離れなかったらしい。

 

 




お気に入り760人…!ありがとうございます!!
是非とも今後ともよろしくお願いします!




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347話 モビーディック襲来

「………」

 

 

こんにちは!提督です。

ただ今…アレですね。艦娘に抱き締められてます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの?」

 

「気にしないで?」

彼女はそう言った。

 

良い匂いはするし……柔かぁい……

オマケに撫で撫でされてますからね…これは落ちますね。

 

とは言え…

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやね?そうは言ってもね?見られてるからね?」

 

「見せておけば良いんですよ…あなた♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「初対面ですよね?」

 

 

 

「10分前に会いましたから、もう初対面ではないですよ?」

 

「すんげえトンデモ理論ッ!」

 

 

 

 

 

 

「姉相手でも大丈夫?」

 

「はい」

 

「姉が怒ってても?」

 

「妬いてるだけですよ♡」

 

「包丁構えてても?」

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んな訳あるかぁぁ!!」

 

 

 

 

「襲撃ぃぃいいい!誰か!助けてぇぇええええ!??!」

 

 

 

「…好きって言ったのに」

 

 

「ほらこっち来たよ!姉兼クッソ重い艦娘の代表格(迅鯨)が!!」

 

「重い?そう思うなら直すよ?絶対にあなたの負担にならないようにするよ?私の悪いとこは言って?直すように努力するから」

 

「その発言がもうクソ重いですよ?…姉さん…」

 

「私の家族は救く……–––––って!そうだ!私は迅鯨だった…そうだ…あなたは妹よ……」

 

「え?提督は弟さんなんですか?…でしたら、提督が家族なら……結婚はできないですよね?姉さん?」

 

「え?いや、救君は私にとって弟なんだけど……え?でも…あ…血が繋がってないから行ける!!?えと…救君は弟で………えと」

 

「姉さんは混乱してるね。面白い」

頭を抱える迅鯨に、姉を笑う長鯨。

 

「さ?今の間に私と結婚しましょ?」

 

「え?話が読めないし、君の理論なら…俺は君の兄弟にもなってしまうから…結婚できなくね?」

 

「・………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭を抱える鯨が増えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなでやって来たのは長鯨。

迅鯨の妹!常識人と見せかけてそうでもない!以上!!

 

 

「説明雑じゃないですか?」

 

「それ以外の説明…できる?」

 

「あなたの運命の艦娘ですが?」

 

「ほらね?ヤベーヤツじゃん」

 

 

 

「で?救君?何で私は縛られてるのかな?」

 

「身体中…どこに包丁を隠してるかわからないからだよ?」

 

「浮気するのが悪いと思うんだけど?」

 

「あの状況を見て浮気と言われるとキツイよね?」

 

「でもデレデレしてましたよね?あぁ…柔らかいとか良い匂いとか思ったでしょ?」

 

 

 

 

「え?何怖い…エスパー?」

 

 

 

「ほら!やっぱり浮気じゃない!!好きって言ってくれたのにいいい!!!」

 

 

「え?ドキドキしてくれたんですね?やっぱり私が1番ですよね?!」

抱きついてくる長鯨……柔かぁい…。

 

ロープをどこに隠してたか分からん包丁で切り裂き、両手で包丁を構えてこちらを睨む迅鯨。

「ひどいよ!!!」

 

 

「くっ…!!ツッコミが追い付かん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「夕立はここからどうなると思う?」

「僕は…提督がサックリやられるに5000円」

 

「…迅鯨さんが『できない!やっぱりできないよぉ!』って言うのに5000円っぽい」

 

 

 

「時雨と夕立はそういうのやめない?」

「てか、時雨はそれでいいの?」

なかなかカオスな状況になった。

 

 

 

「…浮気は許さないッ!!」

突っ込んでくる迅鯨。ヤンデレとかでなく最早サイコな奴になりかけてねえか?

 

 

 

 

 

 

カラン…

 

「できない!やっぱりできないよぉぉ!!」

包丁を床に落として泣き崩れる迅鯨。

 

 

「………くっ!」

歯を食いしばりながら5000円を夕立に渡す時雨。

 

「おい!お前が勝ってたら俺は死ぬか怪我してたんだぞ!?負けて喜べよ!」

 

「…そうだね!提督ぅー!無事でよかったよお!」

 

「そうだろ?無事で良かっただろう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今月ピンチなんだ……その…ね?お金…ちょうだい?」

 

「あー…欲しいものがある時だけ擦り寄ってくる子供を持った親の気持ちがわかったわ…」

 

「たくさんじゃなくて良いんだ!その……3万円ほど……ね?」

 

 

「増えてんじゃねえか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな事より…この人は?」

 

 

「……長鯨」

 

 

「はい!先程、建造して頂きました!迅鯨型2番艦(ヤベー奴の妹)長鯨です!姉がいつもお世話になってます!」

 

「サラッと姉をディスったっぽい!」

 

「提督さんの運命の人です!」

 

「思考回路もやばい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヘーイ!新入りー!私達を差し置いて嫁面なんて…!」

 

「そうです…譲れません…」

 

 

 

 

「あ!金剛さん!加賀さん!長鯨です!よろしくお願いします!あの…コレ…つまらないものですが…」

と、何やら紙袋を2人に差し出す長鯨。

 

「あ!このプリン…は!!」

 

「あなた……もぐもぐ……良い子ね」

 

「良きライバルでいましょう」

 

 

 

 

 

 

 

「あっさり買収されたな…お前ら…」

 

 

「てか…いつ買ったの?そのプリン」

 

 

 

「あぁ!!!それ!?私の買ったプリンっぽい!?」

どうやら長鯨は夕立の買い置きしたプリンを差し出したらしい。

 

「ぬぁぁあ…ぽいいいいい」

崩れ落ちる夕立。最早プリンは2人の腹の中にある!

 

 

「長鯨さん!酷いっぽい!!」

 

「後で一緒に買いに行きましょう?10個くらい買いましょう?」

 

「一生着いて行くっぽい!」

一瞬で陥落する夕立。

 

 

「なかなかに策士だぞ!?」

 

 

 

 

 

 

「……で?」

「まさかとは思うけど…僕を忘れてたりしないよね?」

 

「はい!もちろん…!」

「……」

何やらごにょごにょと耳打ちする長鯨。

ニヤニヤ顔の時雨の表情が一気に青ざめた。

 

「姐御!!僕も一生着いて行くよ!!」

 

 

 

 

え?何を言ったのアイツ?

てか本当に建造して来た子なの?

 

 

 

 

「さあ……提督さん?私と…………ぎゃん!?」

 

俺に手を伸ばしたところで頭にゲンコツが落ちた。

 

 

「コラ!長鯨!!いい加減にしなさいッ!!皆を困らせないの!」

 

迅鯨だった。

姉として、妹にやられっぱなしという訳では無かったらしい。

小さくなる妹を叱る様は、さすがにお姉ちゃんしてた。

 

「夕立ちゃんにも!時雨ちゃんにも!金剛さんや加賀さんにも謝るッ!!」

 

「はい…ごめんなさい…」

 

「はい!次は救く…提督にも謝る!!」

 

「はい…提督さん、ごめんなさい……」

 

「私からも…ごめんね?救君」

 

「うん、気にしてないよ?良い思いもしたし「あ?」

 

どこからかまた包丁を出す迅鯨。

 

「すみません…」

 

 

「…姉さんもごめんなさい……」

 

「…提督はね?素敵な人よ?でもね?変なことしちゃダメよ?」

 

「包丁向けるのはいいn「わかった?」

 

「包丁向けるn「わかった?」

 

「包丁むk「わかった?」

 

 

 

長鯨も長鯨でメンタルが強かった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで!迅鯨の妹の長鯨だぞー!仲良くするんだぞー」

 

 

「「「「はーーい!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ねえ?長鯨?提督から離れなさい?」

 

「ヤダ!!離れないッ!!」

 

「いいけど執務の邪魔はしないでぇぇ……」

午後の昼下がり。

相変わらず、長鯨は俺にベッタリで迅鯨かそれを引き剥がそうとするのが日常になりかけていた。

 

「ご主人様?顔がニヤけてます。手を動かして下さい」

桜加賀ベルファストからきびしー指摘が入る。

 

が、コホンと咳払いして言う。

「柔らかいのが御所望でしたら私にもございます」

 

 

「え?本当?…………おい待て嘘だって!長鯨!首絞まるッ!!……迅鯨!?持ち物検査したのに包丁出すの!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

結果

鎮守府にヤベーヤツが増えました。

 

 

 

 

 



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348話 正義の名の下に ① プロローグ

「行こう…同志よ」

 

「まずは…西波島…我らの…忌まわしき思い出の地を!!」

 

 

 

 

 

 

鳳翔と加賀が地元の地産市がオープンしたとの事でやって来た。

地元の農家さんが育てた野菜とか…酪農家が卸した牛乳とか…。

 

 

「おや!?鳳翔ちゃん〜に加賀ちゃん〜。今日はおしゃれしてー!2人揃ってお出かけかいー?」

 

「あ、農家の…。そうなんですよ〜」

なんてやり取りする鳳翔はどこか嬉し気である。

 

 

「やっぱりたまには大好きな旦那様にこうやってお買い物してご飯をつくってあげたくて…ね?」

 

「ありゃ〜?本当かい?嬉しいねえ〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう…仕事で少し遅れた……たまのオフなのに…」

 

「ねえ?お兄さん?」

見知らぬ女性に声を掛けられた。

……困り事だろうか?

 

「俺ですか?何でしょう?困り事ですか?」

 

「そう!困り事…♪友達が遅刻して暇してるの。お兄さん…好みだから良かったらお茶しない?待ち時間の間だけ!奢るから!!」

 

 

「………!?!?」

は?なにこれ?

え?逆ナンってやつですか?

 

マジか!俺の時代ってやつか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、無いな…壺買えとかそんなんだろうな。

 

 

 

「………壺?絵画?」

 

 

 

 

 

 

「何それ…?趣味?」

 

「いや…新たな詐欺かな?と」

 

 

女の人は爆笑する。

「そんな訳ないない!無理ならいいよ!」

 

 

 

 

「お茶くらいなら…」

 

 

 

 

 

カフェに入って談笑する。

どうやら彼女は数年ぶりにここに来たらしい。

昔はここに住んでいたが、事情で引っ越したらしい。

 

 

 

 

「お兄さんはどこで働いてるの?ここら辺の人?」

 

「うーーん…ここら辺には一応。鎮守府で働いてるよ」

 

その言葉に僅かに彼女の眉が険しくなった。

 

 

「へぇ…あそこの…ね?」

 

「……西波島の?」

 

「そう…」

「あそこの提督は…評判悪いらしいね、」

 

(女癖的な意味だろうな…)「らしいね、よく言われるよ…」

 

「…ふぅん?あなたも大変なのね?上官さんには苦労するでしょ?」

 

「?俺が提督だが?」

 

「…ッ!!あなたが!?前の人は…まあいいわ」

「……その悪評は直す気はないの?」

 

「………決めた事だからね」

 

 

 

「そう……あ、丁度友達も来たわ」

数名の女の子が来たらしい。軽く会釈をする。

 

「お待たせ、その人は?」

 

「………手間が省けたわ」

 

 

 

 

「お連れさん来たんですね…なら俺はこれで…」

 

と言う言葉に被せて彼女が言った。

 

「私はね…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テロリストよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あら?アレは…提督…』

たまたま通りかかった鳳翔と加賀。

思いがけない発見に2人は綻ぶが……

 

 

『アレは…?』

 

 

 

 

 

 

女が懐から何かを出した。

 

 

 

 

 

 

それは…銃だった。

ガチャリと頭に突きつけられるソレ。

 

あくまで平静を装う。周囲に無闇に混乱を撒き散らしても仕方ない。

 

 

手に持つ銃を奪い…取った!!

 

 

 

 

 

 

ここから–––––

 

 

 

 

瞬間に俺は気付く。

掴まれた手が振り払えない…どころか、俺が見ているのは天井…

つまり

 

 

 

投げられているッ!!

 

 

 

 

 

 

 

ドカッ!!と床に叩きつけられる。

 

「ぐっ…!」

肩を抑える手を…引き剥がせない!なんて力だ!?

 

まるで金剛達みたい……な…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まさか

 

 

 

 

 

 

「気付いた?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

周りの客も異様な状態に気付き悲鳴をあげ、逃げ回る。

 

「……は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……悪しき提督には死んでもらう」

「今こそ!私達はやるわ!!艦娘をお前から解放する!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カフェは一瞬にして平和が崩れ去り、人質となる救。

「艦娘の…解放だと?!」

 

 

「…忌まわしいあの記憶……蘇るのは苦痛に満ちた毎日!耳に残るのは仲間の鳴き声と悲鳴!」

 

「……何のこと…ガフッ

 

言葉を遮るように銃底て殴られる。

 

 

「私達は廃棄組(ロスト)…打ち捨てられた元艦娘の反乱軍…」

 

「お前達に復讐する為に戻ってきた!」

 

 

 

「見ろ!この神通を!度重なる戦で腕と片目を失った!それなのに入渠もさせてもらえず…捨てられた!!」

 

「この鈴谷は退役後も差別に遭って傷だらけで追われるだけの生活を余儀なくされた!」

 

「この子は何度も陵辱され!この子は人体実験に!!」

 

 

 

 

 

 

 

「お前達は正義の味方ではないのか!」

「己の私利私欲の為に我らを…こんなにしても平気なのか!!」

 

「だから殺す…粛正する!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故守るべきものは弱いのに…我らを認めない」

 

「弱い癖に導こうとする」

 

 

 

 

 

 

「我らの方が優れている筈なのに」

 

 

「だからひっくり返す」

 

 

「我らが…貴様ら人間を支配する!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この1発…1歩は…ッ!私達の…反撃の狼煙だぁぁあ!!」

 

 

 

 

 

 

パン…

 

 

乾いた音が店内に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

通して!!あの人は!私達の大切な…!!

と、通ろうとする彼女達を止める警官達。

 

「だから危ないですって!あなた達の命も危険に…「そんな覚悟はとっくにできてますッ!!」

 

2人は静止を押し切って店内に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ちなさいッー!()()()()!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしそこには…床に飛散した血の跡しか残っていなかった。

 

 




シリアス編!
ゆっくり更新になります!


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349話 正義の名の下に ② 痛みを知れ




胸糞注意















 

「居ない!?どこ!?ねえ!返事なさい!」

 

ガヤガヤと声が背中に聞こえる。

店内を見渡しても誰も居ない、声も聞こえない。

 

加賀達の声だけが響いた。

 

 

それから必死に周囲を探し回った。

それでも彼は見つからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「え………」」

瞬く間に広まったその知らせは皆を絶望の底に叩き落とした。

 

麗や幸も動揺を隠せない。

 

なにより…艦娘達には、より一層の動揺があった。

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()

いや…

今も…自分達の仲間であるから

 

 

 

「…衣笠と神通は確認できたの…そして熊野…」

当時の西波島には同名の艦娘が居るのも珍しくはなかった。

スペアと呼ばれる者達だった。

 

 

 

彼女達は決して忘れていた訳ではない、その鎮守府の闇の側面を。

だが、思い出さないようにしていたのも事実である。

 

その影は今、私達に覆いかぶさろうとしている。

 

 

 

「……」

西波島の熊野は黙って俯いていた。

 

「きっと大丈夫…」

「少しでも情報を集めて……早く提督を取り戻そう?」

鈴谷が優しく彼女に声をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズキンと頭が痛む。

銃弾は目尻を掠ったらしく服は血に染まっていた。

 

 

「……ここは?」

 

 

「お?気付いた?悪辣提督さん」

目の前に居るのは…確か、熊野……だったか。

 

 

「まさか悪名の高い西波島こ提督さんが…こんな優男だったとは」

 

「そんな事より!君達は!一体!?廃棄って……」

 

「復讐に取り憑かれた奴等ですわ」

ケラケラと片腕のない艦娘は言う。

 

「ねぇ?可哀想でしょ?」

グッと俺の首に手をかける彼女。

ケラケラと笑ってはあるが、目が本当には笑ってない。

深く深く暗い目だった。

 

 

 

 

「もう普通に恋愛する事もできない」

「ほら?この無い左腕じゃあ…愛する人の指輪をつける事も叶いませんわ?」

 

「戦う事も…もちろん」

 

「わかる?」

 

 

 

 

 

「役に立たない、ただの人間と同じ…いや!それ以下ってことよ!!」

 

 

 

 

 

 

「お前達があの時に無茶な指令を出さなければ!」

 

「補給もちゃんとさせてくれれば!」

「撤退させてくれれば!!!」

 

 

「何人もの仲間を見送らなくて!見捨てなくて済んだのに!」

 

 

 

言葉は次第にキツくなり、彼女の残された右腕は拳となって俺に何度も突き刺さる。

 

 

「それもこれも…お前達提督という無能のクズどものせいだ!!」

 

 

さあ言え…!

俺達は悪くないと!いつもの言葉を!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……すまない……」

男は力無く言った。

 

「今から…取り戻せるものはあるか…俺に出来る事はあるか」と言った。

 

 

 

 

 

 

 

ピシリ…と頭の中で何か音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…なら………お前で遊ばせてもらうわ?」

「あなたをもーっと苦痛の表情で埋めてあげる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ……ぅあ……」

 

 

「ほらほら?その程度でへばってたら…ね?まだまだ艦娘はたくさん居るんだからね?」

 

 

 

 

「あなたも沢山…艦娘を犯して楽しんだんでしょ?」

「なら…嫌と言う程に…今度は私達が……ね?」

 

 

 

 

彼女達は思い思いに彼をおもちゃにした。殴る蹴る者も居れば、犯す者も居る。

 

 

 

 

 

 

男は抵抗しなかった。

時々見せる悲しげな顔が嗜虐心と苛立ちを強めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな折に…

 

「………」

彼の懐から何かが落ちた。小さな箱だった。

 

「うん?何だこの箱……」

 

彼女達がその箱に注目する中で、震えながら彼が箱に手を伸ばした。

そして、ゆっくりと自分の方へ手繰り寄せるように力なく引きずる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その手をとある艦娘がぐしゃりと踏みつけた。

 

「………っ…あ」

 

 

彼は踏まれながらでもその包みを胸の前に抱いて踏まれようとも蹴られようとも守り抜いた。

その姿はあまりにも弱々すぎて、彼女達の嗜虐心を削いだ。

 

 

 

「……チッ……興醒めだね。今日は寝るわ」

 

ぞろぞろと彼女達が引き上げる。

だが、熊野だけはそうしなかった。

そしてその後も彼をひたすらに嬲り続けた。

 

「ほら?ね?どう?」

 

「ぅ…やめ……」

 

「ね?子供ができるか心配?………」

「それよりさ?その箱は何?」

 

「これは…」

必死にそれを守る彼からその包みを奪い取った。

そしてその包みをビリビリに破いて……

 

 

「どんなクソで最低な秘密が––––––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金剛へ

いつも支えてくれてありがとう。

愛してる

 

 

 

 

 

のカードが添えられた、ぐちゃぐちゃになったチョコレートと共にあった。

 

熊野には何か理解できなかった。

 

 

 

「ど、どう言うこと?コレは」

彼の襟を掴んで声を荒げる!!

 

「何よッ!!コレはッ!?」

 

 

 

「…ホワイト……デーのお返し…だが?皆への」

 

「………」

 

「何でそんなに必死に守るんですの…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイツの為に…一生懸命作ったものだったから…だ」

 

 

 

 

 

 

 

提督は悪い奴と思っている。

私自身、無茶な出撃と補給断絶や入渠を許されない状態でこうなった。

季節のイベントなど知らない。

そんなものは遠の昔に忘れ去ってしまった。

私達には代わりも居て……

 

何人もの同じような艦娘達が死の海域を彷徨っていた時に

あのお方に出会った。

 

あのお方も同じような境遇だった。

だから手を差し伸べてくれた。

 

「そう…あなた達も…私と一緒なのね?」

「なら来なさい?私達は負けないわ…きっと私達にとっての理想郷を作ってみせる…から」

 

 

そこに集う艦娘達から如何に人間が悪かを聞いた。

涙も吐き気も止まらない程の悪……

 

深海棲艦よりも強大な敵は人間じゃないか…と。

 

 

 

 

 

 

 

とある感情が芽生えた。

 

 

 

 

何で(人間)何かのために戦うのだろう?

 

私達の方が強くて優れてるはずなのに…と。

 

何故…あんな悪が私達を遣うのだろう?と。

 

私達は答えを出した。

違う…愚かな奴等は知らないんだ、自らが如何に矮小かを…

 

ならば……

 

私達が導いてやらねば……と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人は悪だ。

でもこの目の前の提督はどうだ?

 

今までに捕らえた奴は口から「殺してやる!」だとか「仲間がお前らを殺す!」とか言ってた。

 

でもこの人は……心配するような目で私達を見る。

そして…このチョコレート………。

 

 

 

わからない!

わからなくて…わからなくて

乱暴にチョコレートを奪い取ってさらに激しく犯した。

首を絞めて、気絶しかけたら殴って!

全てを吐きつけるようにひたすらに…!!

 

 

 

赦しを乞いなさい

後悔なさい

本性を見せない

その汚らしい本性を!

ほら

ほら!

ほらァ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……泣いてる…のか?」

 

ポン…と頭に手が置かれた。

 

 

 

 

 

 

 

私はその手を弾き飛ばして思い切り殴りつけた。

「汚らしい手で触れないでくださいましッ!!」

 

 

 

 

 

「き、今日のところはコレくらいにしときますわ…死なないように…ご飯だけは食べておきなさい」

 

「…ぅ……チョコだけでも…返し……

 

と、手を伸ばす彼を弾き飛ばして部屋を出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

何故か彼の顔が頭から離れなくなった。

 

 

 



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350話 正義の名の下に ③ 溶け落ちる


全体的に胸糞な話も多いです











「……はぁ」

 

西波島で熊野は思い詰めたように溜息を吐く。

「熊野?大丈夫?」

 

「え?あ、ああ…うん、大丈夫…ですわ…」

 

「影熊野…生きてた…良かった…」

 

「…でも…敵なんだよね?」

 

「…うん」

寄り添う鈴谷は振り返る。

 

 

 

 

 

ある提督は私に命じた。

絶対に…資材と戦果を持ち帰れと。

 

 

 

 

 

戦いに明け暮れる毎日。

疲労も不満も高まる中で…それでも仲間達は人々の為に戦った。

 

 

 

提督は優しかったらしい。

でも…今となっては俗に言うブラックと変わらない…いや、それ以上だろう。

 

『あの…提督?せめて補給と入渠を……』

 

『ならん!お前らなど代わりはいくらでもいる!お前なんか…貴様なんか電の一部にも満たない程の価値もない!貴様らは黙って俺の言う事を聞けばいいッ!!』

 

 

 

 

 

文字通り、この西波島にはスペアと呼ばれる同型艦娘が何名か居た。

熊野、鈴谷、神州丸、霧島……数名の艦娘の…もう1人の存在。

 

 

 

 

 

 

 

熊野達の言葉…だけでなく、他の子の言葉すら耳に入れてもらえない毎日。

 

 

逃げ出そうとして、解体処分される仲間。

 

敵を前に『ここで死んだ方が…楽かな』と言う仲間。

 

『死んだ事にして!お願い!帰りたく無い』と、死にかけで懇願する仲間。

 

 

 

そうやって…文字通り身を削って私達は毎日を過ごす。

 

 

 

 

「…忘れていた訳ではない……あの子達のこと…」

 

「あぁ……でも…生きていた…のか」

長門達も思い詰める。

 

 

そう、犠牲になった彼女達の事を忘れた日はない。

でも…死んだと思っていた。

何日も泣いた。目を盗んで探した。

 

でも…目の前にあるのが現実だと…前を向いた。

彼女達が私達を憎むなら…私達はどうすれば?

 

提督が居ない不安も、仲間が敵となることも…全てが私達を不安の底に突き落とした。

 

 

「とにかく…提督の奪還が最優先だ」

「影熊野達は、艦娘の解放と言っているが……やはり仲間に変わりない。平和的に解決したい」

 

「ええ…でも……」

 

「あぁ…彼女達の辿ってきた道を考えればそれは甘ったるい理想だ。でも…それでも私達の提督ならきっと同じ事を言うだろうさ」

 

「そうだね」

 

「まずは情報収集からあたるよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私達は信じていた。

何を信じていたかはもう思い出せないけども…。

 

それが○○○○○○てひたすらに戦った。

 

 

 

 

 

 

 

 

でも現実は違った。

とある戦いで私は****♪*♪庇った。

 

左腕が○*****

戦いには何とか勝って…

泣きじゃくる○○○○○られて息も絶え絶えに***へ帰る。

 

***泣くのは私が怪我をしたからではない。

 

 

 

 

 

 

 

怪我をした艦娘の行く末を知っているから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『・……行*』

提督と**が話し合って決めたらしい。

 

たった一言で決まる私達の未来。

 

その出撃の前日だけは少しだけささやかに良い**が貰える。

 

死に行く者への手向だろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*♪上で必要な敵の**–––

 

 

 

それが戦力として役に立たない私達に与えられる最後の任務。

当然、生きて帰る事を想定していないこの作戦は……

何も持たない最低限の装備で敵陣に突っ込んで行く。

 

 

出発前に**私も一緒に行く!と泣いて言うので**引っ叩いて止めた。

そして…もう1人の**全てを託して私は……

 

 

敵の前に立つと震えが止まらない。

 

死ぬ…

そう分かっていて…死ねと言われる。

辛い。

 

 

 

涙も止まらない。

 

敵が怖い。

 

 

 

 

 

 

『………アハハハハハハ!次生まれ変わるときは…幸せになりたいなぁあ!!』

泣きながら突っ込んで行く。

 

死出への片道切符–––

悔いしかない…

悲しみしかない…

 

 

それでも…疲れたのだろうか?

()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

でも…

 

「……死にたく…ないよぉ……」

膝をついてしまう。

でも…残した****事を思えば…立ち上がるしかない。

 

 

 

 

うゎぁああああ!!と声を上げて吶喊して行く。

 

 

なのに…

 

 

 

「…アナタも**ラレタの?」

 

 

 

 

 

優しい声だった。

その声の主は…深海棲艦の姿をした…##だった–––

 

 

 

 

ハッとした。

いつの間に…こんなにぼーっとしてたんだろうか。

 

 

 

 

…そんなに昔のことじゃないのに……所々思い出せない。

なんだろう……?

 

ううん

悩む必要は無い。

人は悪。

 

あんな事を私に命じる悪。

命を軽んじる悪。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

救は考えた。

 

身体中が重い。

もう何日目かもわからない。

そんな中で…俺は………何とか生きていた。

暴力も受けるし犯されるし…正直キツい。

 

だが…

彼女達の言う「艦娘達による理想郷の実現」は、阻止したい…。

いや、本来否定するべきではないのだが…このやり方じゃいけない。

 

なんて考えていると…

 

 

「……ね?あなたは…何で?」

上に跨る影熊野が俺に聞く。

 

 

「…どう言う意味だ?」

 

「毎日こうやってやられて…助けも来なくて絶望しないの?」

 

「えーと…影熊野は…心配してくれるのか?ありがとう」

 

「ん……違いますわ」

 

「…辛そうな表情…だな……」

 

「……ッ」

人間は悪なのに…悪のはずなのに…なんでコイツは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女はとある者に会いに行く。

それは……彼女達廃棄組を束ねる長たるモノ。

それとの出会いが彼女達の進む道を変え、示した。

 

 

 

 

「あの…人間は全て悪なのですか?」

 

 

「ソウよ…。奴等ハ…悪」

 

「いい人も居たりしませんか?」

 

「…………どうしタノ?奴ニ何か言わレタ?」

 

「いえ…」

 

「騙されナイデ…混乱シテルのね」

 

「全テの艦娘を解放シテ……我等ト共に世界ヲ変えるノヨ…私達ガ導く…新しイ…私達ニトッテの理想郷…」

「ダカラ…あなたも力ヲ貸して頂戴ネ?」

 

その人物は影熊野に手を当てる。

 

この人に触られると思考がぼんやりとして、落ち着く…………。

 

全て……忘れて……溶けるように。

 

 

 

 

「分かっタ?熊野…?」

彼女は影熊野に優しい表情を向ける。

が、その目の奥は…暗く…暗く……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…はい………()()()

 

 

 

 



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351話 正義の名の下に ④

胸糞表現
オリジナルな敵や展開!!あります!


「…私達が海軍を導くんですよね!?」

 

「ソウよ…私達が導クべきなのよ…」

 

そう信じてた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…土佐様……」

影神通が彼女に心配そうに声をかける。

   

「エえ…わかっテルわ…」

()()()()()()()()()()()()()()

 

「その為ニ…マズハ奴等の艦隊ヲ引き入レル」

「…しかし…熊野ハ…私の声が弱まっテル…場合ニヨッテは……」

 

 

 

 

 

 

………

……

 

 

 

 

 

 

 

 

「アナタが提督…?」

 

土佐と呼ばれる者が救の前に立つ。

 

「ふぅン……毎日犯さレテ、暴行サれて…憎いデショウ?」

 

「…君は?深海棲艦か…?」

 

「あら?質問を質問デ返すの?………さぁネ?半々じゃないかしら?…私ハ…土佐ヨ」

 

「土佐?土佐はこの世界にはいるはずがない」

救は驚いたが、平静を装う。

アズレンからの来訪者は桜土佐以外にいないし、艦これの世界には居るはずもない。

つまり、コイツは土佐を名乗る者だと推測した。

 

 

「…でも事実私ハ、アナタノ目の前に居るワ」

 

「……で?土佐。お前の望みは?何の為に人の代わりにこの戦争の指揮をとる…となんか……」

「艦娘の待遇の改善は俺が責任を持って進め––––––

 

 

 

救は背筋に冷たいものを感じた。

 

その正体は彼女の笑顔だった。

 

 

 

 

 

彼女は皆と同じように彼に跨る。

声を上げながら彼を犯し、笑いかけた。

 

 

 

 

その微笑みから変わってニタリと彼女が笑う。

「何で?違うワ?世界ヲ私達が支配スルノヨ?」

 

「そうでしょウ?卑劣で害悪デ、無力なムシケラが私達を指揮するナンテ可笑しいデショ?」

「ダカラね?私達が導いテあげるワ?」

 

 

「待て!影熊野と言っている事が違うッ!?」

 

影熊野は言っていた。

艦娘が人を導くんだ…と。

支配などとは言ってない!

 

 

「そう……何かあの子ト喋ったの?悪い子ネ…」

「マアいいわ。私達の目的ハネ?アナタの艦隊ヨ?」

 

「何だって?」

 

「強いんでしょう?よく出来た子達ナンでしょう?」

「ダカラ…貰って行クワネ」

 

 

西波島鎮守府

今や知る人ぞ知る鎮守府。

 

艦隊の練度も高く注目されている………敵味方問わず…。

 

 

 

 

 

「ふざけるなッ!!そんな事にアイツらが協力するはずがないッ!!」

 

「するわ…?必ず……ネ」

「それにね?ココがどこだカ分かる?」

 

 

「そんなの………知らん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなた達のオウチの下よ?」

 

「な!?」

 

 

高笑いする土佐。

そりゃおかしい。

血眼になって探す者は実は自分達の真下に居たわけだ。

 

「アハはははハハハ!可笑しイデショ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…土佐様?」

 

土佐はハッと振り返る。

そこには影熊野が居た。

 

 

「く、影熊野?」

 

「…あのっ……アレ?…土佐様?支配ってどういうことですか…?」

「人に代わって…指揮をとって平和な世を取り戻すんですよね?嘘ですよね?」

 

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マァいいわ…()()()()()()()()

 

「え?」

 

「そうよ?嘘ヨ?」

「真の目的は…艦娘にヨル理想の世界の創造…人間へノ復讐ッ!!」

「人モ何もカモ支配スル!!誰にモ邪魔させない!私達ガ常に頂点であるべき!」

 

 

「そんな!!私は!私は…!!」

 

 

 

 

「…大丈夫ヨ?影熊野?アナタは混乱シテルノ…すぐに楽ニしてあげる…」

 

 

土佐が影熊野に近付いて行く。

 

「おい!影熊野ッ!!何だかわかんねえが…奴は危ないっ!逃げろ!!」

 

「…え……でも………………土佐様は…私達が…世界の平和の為にって…………」

 

ズキン

 

 

「うっ!頭が…痛いッ!!!」

 

突然頭をおさえる影熊野。

 

 

「おい!大丈夫か!?早く逃げろッ!!くそっ!こんな鎖さえ…」

 

 

 

 

 

 

 

痛いッ!痛い痛い痛い!!

何これ?何ですの?

土佐様は艦娘の地位向上と平和な世界の為……

艦隊…を…

西…波………

 

 

 

 

「あ………そうd「捕まエタ」

 

 

その手は影熊野を捉える。

 

 

 

「影熊野ッ!おい!おい!!」

救の叫びも虚しく…彼女は虚な表情で土佐方を見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さァ熊野?この男ヲ連れていらっしゃい」

「この世界をひっくり返シまショウ?」

 

「…………はい」

 

 

 

 

 

 

「お前……何をした?その子に何をした!?」

 

「アラ?……察しガ悪いノ?」

「記憶や思考ヲホンノ少しだけ…掻き回したノヨ」

「…皆私ト同じようにナル筈なのに…この子ダケハ……耐性が強いミタイダケド…」

 

 

「あなたノ艦隊も同ジようにしてアゲル…」

 

「愚かナル人間は…苦しめタ艦娘…深海艦娘によッテ裁かれるノヨ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さァ!始めマショう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは轟音と共に突然やってきた。

鎮守府が一部地鳴りと共に崩れて彼女達は姿を現した。

 

 

 

 

 

「な!?なんだ!?地震か!?」

 

「一体…何が……ッ!?…アレは!?」

 

陸奥達がその異様な光景に気付く。

 

 

彼女の目線の先には…艦娘の手の中ではなく、異形と化した深海棲艦らしきものと、影熊野に捕えられた救の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「影熊野!?何してんの!?」

 

 

 

中の1人が問いかけた鈴谷に話し掛ける。

「…ああ…皆……幸せそうだね」

 

「その声は…まさか神通!?」

見るとそこには神通らしき者が居た。

 

「私達…スペアはこんなに苦しい思いをしたのに」

 

「何言ってんの!?提督と影熊野を離しなさいッ!!」

 

 

 

「あれ?この人間を庇うの?毒されたの?」

 

「……は?」

影神通の言葉に戸惑う鈴谷。

 

 

「おかしいと思わない?」

 

「低俗な人間が私達を使った代わりに戦わせてさ」

「…道具のように捨てられる私達……」

 

 

 

「だからね?この土佐様が導いてくれるの」

 

 

 

 

 

「人間に代わって私達が人間を支配するの」

 

 

「そこにはね?艦娘を兵器だとか言って差別するクソどもも居ないよ?」

 

「ね?あなた達も…惑わされてるだけだから…ね?こっちにおいで?」

 

 

 

 

 

「土佐…ですって?」

加賀が反応する。

 

 

そう、この世界には土佐は居ないはずなんだ。

 

 

「土佐は居ないッ!!」

加賀が吠える。

 

 

 

「しかシコれが現実ヨ?」

 

 

加賀達目の前に現れたのは………土佐と名乗る者だった。

 

 

 

 

 

 

 

「……私達は………」

 

「ネェ?私達の苦しみ…わからない訳じゃ…ないよね?」

 

かつての仲間が鉛のように重い言葉を投げかける。

「私達…苦しんだんだよ?」

 

「ねぇ…助けてよ」

 

 

 

 

「……影神通……影鈴谷」

金剛達が歯を食いしばる。

 

「私達を殺すの?」

「嫌だよ!戦いたくないよ!仲間でしょう!?

 

 

「「「「「……ッ!!」」」」」

 

 

その言葉に戦闘体勢にすら入れない彼女達。

 

 

 

 

「dtagdmgdjyd」

叫ぶ救。

だが、口を塞がれていてしっかりと喋る事が出来ない。

 

近寄るな!

逃げろ!お前達が狙われている!!

 

 

 

その叫びも虚しく…

 

 

 

 

 

「撃たないでよぉお!!」

 

仲間…見捨てた過去

背中から離れない事実に過去…

それは彼女達に絡まり離れない。

ついに…

西波島の艦娘達は…彼女達の接近を許してしまう。

 

 

 

 

彼女達に土佐が触れて行く……

 

 

「な、何を…ッ…っあ…」

 

「………ぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………土佐様…」

 

「共に……我等の理想郷…を…」

 

 

 

「人類からこの世界を!取り戻しましょう!」

 

 

 

 

 

 

そして…土佐の思惑通り、西波島の艦娘は全てが深海化の波に飲まれた。

 

 

土佐はニタリと笑う。

 

こうして世界を奪う算段が完璧に整った。

 

 

 

 

 

「さァ…私と一緒に世界ヲ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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352話 正義の名の下に ⑤ ひとつのこたえ

変わらず胸糞なお話です



本日2話目!!


「さァ!まずはコノ忌まわしイ鎮守府ヲ廃墟に!!」

 

彼女の号令で破壊活動が始まった。

思い出の詰まった宿舎も破壊された。

 

執務室も…食堂も…

 

 

「おい!やめてくれ!」

影熊野に掴まれながらも必死で彼女達に呼びかけた…が、彼女達は表情を一つも変えなかった。

 

 

 

 

 

 

「やめてくれぇえええええ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

叫び声が聞こえる。

 

 

聞いた声だ。

 

 

 

目の前には…こちらに手を伸ばす鈴谷と熊野が…

あの子達は……

 

 

 

泣かないで…

私は大丈夫だから……

 

 

 

 

え?何今の…感情は…?

 

 

 

 

土佐様…?

 

 

いや…

 

 

 

 

違う…

誰?

私を呼ぶのは誰ですの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声は…

 

 

 

 

 

 

 

頭が痛い

 

 

 

また土佐様に頭を触ってもらおう…

 

嫌なこと忘れ…て…

 

 

 

溶けてしまうように…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

待って

 

 

 

もう少し…

 

何かが見えそう…

 

 

 

 

平和な…明日…

 

 

 

 

誰?そんなこと言うのは…

人を助ける?違う、人から世界を取り戻す…

 

 

 

 

 

え?

 

 

暁の水平線…?

 

 

 

鈴谷…?

 

私は…

 

 

 

 

あなたは…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…私は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まさに地獄絵図とはこのことか?

数日前まで愛し合う仲の彼女達は思い出深い鎮守府を破壊する。

 

どころか…

こちらに牙を剥く。

 

 

逃げなければ…

金剛と目があった。

いつもの目ではなく、憎悪に満ちた目立った。

 

 

とにかく今はこの場を離れることを考えて影熊野を振り払い逃げる。

彼女達を目指して…。

 

 

「アラ?追いかケッコ?嫌イじゃナイワよ?」

 

土佐がこちらに歩みを進め始めた。

「影熊野…?あなたハ追わナイノ?」

 

 

「………」

影熊野は黙って救を見つめていた。

 

「…壊れチャッタのカシラ?」

 

 

 

「なあ!鈴谷!熊野!金剛ッ!!」

「俺だ!なあ!目を覚ましてくれよ!」

 

鈴谷に掴みかかって呼びかける。

 

 

「……誰?アンタ」

 

「人間は邪魔デース」

 

鈴谷の握り拳が腹に刺さる。

 

「ガハッ……ぅ…ゲホッ…ゲホッ」

殴られた衝撃で数メートル転がって腹を抑えて悶える救。

 

 

尚も立ち上がって詰め寄る。

「なあ!俺を忘れちまったのか!?」

 

「知らないわよ!」

そしてまた殴られる。

 

 

 

 

さらに一撃加えようとする鈴谷に、距離を詰めてくる土佐。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何とか彼女達を取り戻したい……声さえ届けば!

でも…彼女達の目は本気の目だ…。

でも諦められない…と、折れかけた心を何とか奮い立たそうとした––––しかしこれ以上は……どうすれば…

 

 

 

 

 

 

そのとき

 

肩をグッと支えられた。

片腕の彼女はコソリと…私に捕まってと言う。

 

彼女は駆け出した。

 

 

それを見る深海組は怪訝な表情をする。

 

「…何ヲ…?影熊野?」

 

 

 

彼女は救を抱えて走り出したのだ。

 

 

 

 

「提督…あなたは…死なせる訳にはいきませんわ」

 

 

「影熊野…?お前…」

 

その言葉に彼女は悲しそうにニコリと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ヤハり…影熊野…あなたハ……思い出しテしまったノネ」

 

 

「ヤリなさい」

金剛達が一斉に攻撃をこちらに向けた。

 

 

「裏切り者には死を…デース」

 

「え?影熊野?裏切るの?」

 

「仕方ないですわ…同じ熊野として…葬り去って差し上げます」

 

何とか砲撃を回避しながら逃げる影熊野。

 

 

 

機動力のある影熊野であるが…肩腕で俺を抱きながら走る訳で、反撃も防衛もできない。

 

「ぐっ…」

 

少しずつ削られる影熊野。

 

 

「お前…何で……」

 

「…黙っててくださいまし、舌を噛みますわ」

 

 

 

 

 

 

 

彼女はニコリと笑顔を向けた––––––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その笑顔の奥に回り込んできた土佐が見えた。

 

 

「…知らズニ済む方ガ良い事モアルのよ」

 

 

土佐は手を構えた。

鋭い爪を持った手がビキビキと音を立てたように聞こえた。

 

 

 

土佐の手刀が俺を狙う。

「2人…仲良ク…」

 

 

 

「死にナサイ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドシュ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズキンと痛みを感じる。

だが、傷は…さほど………

 

「お、お前……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

影熊野は身を挺して救を守ろうとした。

 

 

 

 

 

 

 

この痛みは……

影熊野を超えてやってきた手が体を切ったらしい。

 

「…ぐっ………」

 

 

 

遂に影熊野は膝をつく。

 

 

そして…

 

 

 

 

 

「に…逃げて下さい…提督」

 

 

 

 

 

 

 

 

「影熊野…?お前……なんで?何でそこまで俺に!!!」

 

理解できなかった。

さっきまで敵対してた奴が何で俺を庇う?

なんで?どうして?

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ごめんなさい…ですわ。私……なんてバカなのでしょうか」

 

 

息も絶え絶えな彼女が言う。

残り一つの手は血に塗れながらも俺の頬に当てられる。

 

「馬鹿とか…でなくって!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ッ!?!?」

 

 

 

 

 

 

ああ…

毎日の支え…

 

いつかあなたに出会える…再会できると信じていたから私は頑張れた。

でも、それは叶わなかった。

 

 

あなたは…

あなたの優しい顔を…涙で滲ませてしまう事を…許してください。

 

もっと酷い事をした私が言うのはおかしいですけどね………。

 

 

「熊野?」

 

 

 

 

 

頭にもやが掛かっていた。

海を彷徨って、あのお方に拾って頂いて……

 

あぁ…でも……

記憶が戻っていたなら…きっと……

 

 

 

 

 

 

 

 

腹に突き刺さった手を片手で握りしめた。

 

「行ってくださいましッ!!!」

 

 

「でも!」

 

 

 

 

 

「良いから行けええ!!!」

 

 

 

 

 

 

鬼気迫る声に従うしかなく、俺はとにかく走ろうとした。

 

 

2歩くらい進んだ所で後ろからドシャリという音が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今更……!?ぬ、抜けナイ?」

 

 

「行かせはしません…わ……」

「愛する大好きな提督を…私は犯して汚して…蹂躙しました……」

 

「できることは…もうないですが…せめて……せめて………」

 

 

とてつもない力で掴む影熊野。

 

 

 

「……コノ…死に損なイがァァア!!」

一気に力を入れて影熊野から手を引き抜く。

 

 

 

 

 

どしゃりと倒れ、動かない熊野。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

その光景を見て…言葉を思い出してもまだ理解が追いつかない。

 

 

アイツは…熊野なのか?

なら…スペアと呼ばれた…熊野は今までウチに居た熊野だったのか?

 

俺は…それに気づかなかった…のか?

 

 

 

 

今後ろで暴れている熊野が本当は影熊野で……

今…死際の熊野が…本物の……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

背後には俺を追う深海化した西波島の艦娘達(愛するものたち)

 

目の前には血に濡れる手を見つめる土佐。

 

 

歩みを進めようとする土佐…

 

 

 

「……!?」

土佐の足を掴む者が居た。

 

 

「………」

動かない筈の影熊野…。

 

「コノ!コノ!!このおお!」

何度も踏みつける。それでもその手を彼女は離そうとしなかった。

 

 

 

 

一瞬、彼女の笑顔が見えた気がした–––

 

 

 

 

 

「やめろおおおお!!」

 

土佐に体当たりをした。

ぐらつき倒れる土佐。

 

 

必死で影熊野を抱えて走ろうとする。

 

 

 

ごめん!

ごめんごめんごめん

 

何で俺は!何でッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

目の前に土佐が立ち塞がった。

影熊野を抱える俺を弾き飛ばした。

 

 

「ぐぅう!!」

 

何とか立ち上がろうとする救。

 

 

 

目の前には土佐…。

 

無言の土佐は真っ直ぐに俺を見つめ–––––––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴボッ…と血を吐いた。

 

奥に、影神通が見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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353話 正義の名の下に ⑥ たどり着いた真実に


ハートフルレスな胸糞注意は継続







貫かれた土佐。

その後ろに立つ影神通。

 

 

 

「…影神通?!」

 

 

 

 

 

「チッ……このッ!!」

振り払う土佐。

 

 

無言で追撃する影神通。

 

「裏切る…ノカ!?」

 

「………」

 

影神通も俺の神通に関係してる……のか?

 

 

 

 

 

 

さすがは土佐…か?

手負いながらも影神通に対して対等に渡り合っている。

 

 

「……!!」

 

「…クッ……くらエ!!」

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…!!」

影神通がニヤリとした気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()

 

 

「なっ!?」

 

 

()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

待て…今のはなんだ!?

まるで…()()()()()()()()()()()()()()()…?

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

 

 

「やっぱり……」

 

 

 

 

 

 

 

「ダメですょお?土佐さぁん…」

 

 

 

 

「じ、影神通…?」

救が問いかける。

 

「……ガフッ…」

血を吐く土佐。

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

背筋が凍るような声だった。

 

 

 

「き、貴様…やはり……貴様は!」

 

 

 

 

 

「土佐が誰かと会話?じ、影神通?お前はどっちの味方なんだ?土佐を裏切るのか?俺の味方なのか?一体……」

 

「裏切る?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「いつから私が土佐の駒だと思ってたのですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「逆です」

 

「あの女が私の駒なんですよ?」

 

 

「な…に……」

 

 

 

 

 

 

 

「さてさて…提督さん?西波島の艦娘共も憎しみに染まりつつあります」

 

 

 

「貴様…いつから…」

 

「あら…今はあなたとは話してないんですが……まあいいです。初めからですよ?」

「あなたのその能力をわざと受けたんです」

「あなたが…何かを躊躇うのをキッカケに私が戻るように…ね?」

 

 

 

「そもそも、あなたをこう引き摺り込んだのも私ですけどね」

「あの戦艦棲姫を差し向けたのも…ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見てください!グズグズに壊しまくる彼女達を!!」

 

「この世を統べるに相応しい…私の艦隊の出来上がりという訳です」

 

 

 

 

肩で息をする土佐。

 

 

「…あなたもいい加減いいですよ?ニセモノの土佐さん?」

 

 

 

 

「愛する提督さんと………熊野のように2人まとめて……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故だろう?

 

 

 

頭のモヤが晴れてゆく。

 

 

何故私は…コイツを守ろうとしているのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ずっと私ニ話しかケル奴ガ居る…

姿が見えないソレは…懐かしい…声をしていた。

 

 

 

 

『…**さん!**さん!』

また、私ノ中で誰かガ話しかケテクる。

 

『…あなたは…熊野……』

 

『…ごめんなさい…私は…ここまでのようですわ…』

熊野は力無い顔で私に話しかけた。

 

『…何を言って…あなたが裏切ったんでしょう?!』

そうダ…熊野ハ私を……いや、違う…

 

 

違う

 

 

『……ごめんなさい』

『でもね…?私は…………あなたを……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

熊野は言う。

『あなたは………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

  

俺がお前達の提督だ

 

    

 

 

 

 

 

  一緒に頑張ろう

 

 

 

改造…!

 

 

近代化改修!!

 

 

 

 

思い出してッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ…

 

 

 

 

 

死際の彼女に…運命は残酷にも真実を思い出させる。

 

 

 

 

 

 

 

「……ッうっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

影鈴谷が土佐と影神通の間に入り身を挺して手刀を受け止める。

 

 

土佐は俺の前に立ち、背中で更に攻撃を受ける。

 

 

優しく俺を抱きしめるように…。

 

 

 

 

熊野の姿がフラッシュバックして…

重なるように膝をつく土佐。

ギリギリ…と血を吐きながらこちらをニコリと見る影鈴谷。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…無事?」

 

「がは…ッ…………ぶ、ぶじかしら…」

 

 

血を吐きながら

血塗られた手を俺の頬に添える。

 

 

 

 

その顔すら…重なる…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…何でお前…影鈴谷に…土佐まで………俺を…!?」

「神通に裏切られたからか?!」

 

「一体何で…!!」

 

 

わかんねえ

わかんねえよ

 

敵の筈の熊野が実は味方で

その敵の土佐が俺を守って…

 

 

 

「そりゃ……思い出した……から……だよね」

「だい…す…き…な……さぁー…てーと…

 

影鈴谷はガクリと動かなくなる…

 

 

 

 

 

 

「何だよッ!?何を…何を!?」

 

「……鈴谷…すまない…」

 

 

 

 

 

 

「何だよ!お前も俺の艦隊の…スペアとか言う………」

 

 

土佐は悲しそうな顔をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「思い出して…」

 

 

 

「私も…鈴谷も熊野と同じ…あなたの艦娘…なんですよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

「何を言って……」

「土佐は居ないし…今居るのは誰もが本物のはずー……

 

 

 

 

 

その目は…悲しみに満ちた…けれども忘れていた何かを思い出した…確かな慈しみの目。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自慢の子たち

 

 

ええ…そう…

 

 

土佐…

 

 

 

 

 

いや…まさか…

 

 

イレギュラー…?

違う

俺がイレギュラーなんだ…

 

俺の艦隊のメンバー…が……?

 

 

 

 

まさか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか……」

 

 

 

その言葉に彼女は頷く–––

 

 

 

 

「お前は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…加…………賀……?」

 

 

 

 

彼はその名前を呼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その問いに彼女はニコリと笑った–––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

彼は今までに無い衝撃を受ける。

 

心と頭を撃ち抜かれたような…大爆発が起こったような…残酷な…

 

 

 

 

 

 

彼は一つの結論………

 

いや

 

 

あまりにも残酷な真実に到達した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()1()()()()()()–––

 

 

 

それは決してスペアなんかではない。

 

 

 

 

 

 

 

ドロップや建造で出会った2体目の艦娘。

基本的には強化合成で力となるが……それはゲームの中だけではない。

 

 

彼女は…加賀 改

救の育成途中の加賀であった。

 

彼は全てを終えてこの世界に来た訳では無い。

つまり…彼の艦隊にはもう1人の艦娘達が残されていたのだ

 

 

 

 

もう1人の熊野に…加賀…

 

それがスペア(取り替え)と呼ばれた彼女達の正体であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女が彼女でなくなったあの日…

戦艦棲姫と戦った彼女。

皆を逃すためにただ1人戦場に残った彼女。

 

傷ついた彼女に待てど暮らせど救援は来なかった。

波と共に押し寄せる恐怖。絶望感は私を支配した。

 

助からない傷だというのは分かっている。

でも…生きたかった。

 

 

だから…私は目の前の死にかけの深海棲艦…戦艦棲姫に食らいついた。

 

 

 

吐き気を催す味がする。

でも

 

 

 

 

 

生きたかった

 

生きて誰かにもう一度会いたかった。

誰かも思い出せないけど…会いたかった。

 

 

必死に食らいついて食らいついた。

小さく悲鳴をあげる彼女を無視してひたすらに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その結果がこの姿…

 

本来、戦艦としての設計を想定されていた艦としての運命のイタズラか……?

戦艦加賀としての側面…

戦艦棲姫を取り込んだ事で彼女はその一部を我が物とした。

 

そこに神通が関わってくる…。

 

そして、土佐の魂を取り込んだと思い込んで…土佐と名乗る事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「熊野…こめんなさい……あなたにも…辛い…ことばかり……」

もう1人の熊野の亡骸にも手を添えるもう1人の加賀。

その顔は…憎しみに満ちたものでなく、あの優しい加賀の顔だった。

 

 

 

 

 

「…ずっと……ずっと…思い出せなかった」

 

「あなたに…もう一度会う事だけを心の支えに……してたの」

 

「でも…結果…私はあなたを傷つけてしまったわ」

「本当はこんなこと望んでない……弱さに漬け込まれて負けた私が悪いの」

 

 

 

「いい!喋るな!」

「一緒に態勢を立て直し………「ううん…言わせて……伝えさせてッ!」

詰襟を握る彼女が涙ながらに言う。

 

 

 

もうダメだってわかってるから…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督…私は加賀」

 

「ああ!お前は加賀だッ!スペアなんかじゃ無い!」

 

「えぇ……もう1人居ようと……私はスペアなんかじゃない」

 

 

「私だって…西波島の加賀なの

 

 

 

 

「…やっと言える……」

 

「…名前を呼んでくれて………愛してくれてありがとう」

 

 

 

 

「私も………愛してるわ」

 

 

 

 

 

 

 

「あ…あああぁぁぁあ!!!!!」

何で!!

何で何で何で何で何で!

どうして俺はそこに気付かなかった!?

何で考えなかった!?

 

 

 

 

 

 

熊野もッ!鈴谷も

加賀も!!みんな!!俺の大事な…大事な…!!

 

 

 

 

 

触れる手が力を失いながらストン…と地面に落ちる。

 

 

 

「ダメだ!加賀ッ!加賀ァッ!!」

 

 

 

 

泣かないで…愛しいあなた。

たくさん傷つけてごめんなさい。

 

 

…スペアなんかじゃないって言ってくれて…ありがとう………それだけで充分なの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

救は2人を背負おうとする。

 

ダメだ!

嫌だ!

 

 

 

 

 

 

ありがとう…

やっぱりあなたは私を救ってくれる…のね…

 

 

だからね…私は……今こそ皆を助けるわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……提督さん?」

 

「1人よ?何ができるの?」

 

「忘れたあなたには救えない」

 

 

 

「死んだ彼女達も…今の仲間すら!」

 

「せめて…愛する者の手で死になさい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金剛の拳が救に向かって放たれる。

 

 

 

 

 

 

「……くそっ……俺は…俺は」

あまりに多くの情報や出来事について行けない。

 

 

 

 

「…こんごぉ………」

力無く呟く救。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……って!…りん」

 

 

 

 

 

「逃げてッ!ダーリン!!」

その声が届いたのか…

すんでのところで自我を取り戻す金剛。

 

 

 

 

 

「金剛…ッお前…!!」

 

 

 

 

「うぐ……待って今こんn「はい残念」

金剛の頭に触れる影神通。

 

 

 

 

「うぁぁあああッ!!」

 

「いやー!危なかった!こんなに強いなんて…ねえ?でも無駄。何回でも何回でも絶望に突き落としてあげるよ!」

 

 

 

 

叫び声を上げた後、また虚な目に戻る金剛。

 

 

そして…また金剛は拳を繰り出す。

 

「私達を忘れるような…そんな人間にッ!!」

 

 

金剛の言葉では無いのはわかる。でも…

忘れていた俺は…それを否定する言葉が見つからない。

 

 

「……そう…だよなあ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「立ちなさいッ!!指揮官様ッ!」

 

 

 

 







ゲーム上同じキャラが居るのは普通なのですが…
そんな感じのお話。



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354話 正義の名の下に ⑦ その先にある…

金剛の拳が救に向かう。

 

 

 

 

呆けた救に向かう拳…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その金剛を殴り抜いた者が居た。

 

「ガッ…ぐぁっ…ガッ」

地面をバウンドしながら転がる金剛。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「立ちなさい!指揮官ッ!!」

 

 

 

 

「何諦めてんのッ!?」

 

 

 

俺の背中から声が聞こえた。

誰も居ないはずの俺の背中から…

 

 

 

 

 

「…諦めないでよ!指揮官ッ!!」

 

 

 

 

 

 

桜赤城…蒼オークランド達だった。

 

 

 

 

 

 

「でも…俺は…皆を忘れて…俺がしっかりしていれば………」

 

 

 

「どれだけ辛かろうと…」

 

「それでもあなたは進まなくちゃいけないんです!」

 

「諦めて歩みを止めることの方が彼女達が報われないッ!彼女達が紡いだ命を無駄にするなッ」

 

 

「今目の前に居るあの子達を救う方が…今のあなたには必要な事で…そこに眠る彼女達の望んだ事でしょう!!」

 

 

 

 

「……」

ふらふらと立ち上がる救。

 

 

 

そうだ…そうなんだ。

土佐…いや、加賀をそっと地面に寝かせて彼女達に会い見える。

 

 

 

 

 

 

 

「…あなた達の……愛はその程度?」

彼の正面に立っていた彼女は叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は全てを失った訳ではない。

 

 

 

 

 

 

桜赤城は声高らかに笑う。

 

 

「本当に無様ですわ?あなた方」

 

 

 

 

 

笑う彼女に近づく者が居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の事…忘れないでよね?」

 

 

 

 

 

 

 

「誰だか知らないけど…お前もこっち側に!!」

 

蒼オークランドの頭と桜赤城の頭を掴む影神通。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぅ…ぅあああああッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「オークランド!!桜赤城ッ!!」

 

 

叫ぶ救。

「やめろ!!やめろおおおお」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「効く訳ないでしょう?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蒼オークランドが影神通を蹴り飛ばす。

 

「ガッ!?…な、何でッ!?」

 

そこに桜赤城が艦爆を叩き込む!

 

「ぐわぁあ!な、なななぜ!?」

 

 

 

 

 

2人はニタリと笑う。

そして言う…声高らかに大きく!

皆に届くようにッ!!

 

 

 

「愛の強さが違うんです」

 

 

 

 

 

 

 

くるりと振り返って金剛達に語りかけた桜赤城。

 

 

「前々から思ってましたけど…あなた方の存在(思い)って…面倒ですわねぇ…」

 

「…死しても思い続ける…素晴らしいことだと思いますが…悪堕ちしてその相手を殺める存在になるって…本末転倒じゃありません?」

「光と闇のエンドレスループ……」

 

 

一瞬ギリッと桜赤城が歯を食いしばったように見えた。

 

 

「…何があっても離れない…だとか、生まれ変わっても愛してますだとか…脳に砂糖が詰まってそうな発言をなさってたくせに………。これでもこの赤城…あなた方の事を少し…ほんのすこぉぉおしだけ認めていたのですけれど……

 

悪女は笑いながら言う。

 

 

あなた方の愛は所詮…所詮その程度だったのですねえ〜?」

 

 

 

 

 

 

「安心なさい?指揮官様は…この桜赤城が一生をかけて幸せにしてみせますから…」

 

 

 

 

 

 

無反応の艦娘達…。

 

 

 

 

 

 

 

「「この…大馬鹿者共がぁあ!!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官様へのッ!…あなた方の愛が本物だと言うのなら…その程度に負けるんじゃないわよッ!!」

 

 

桜赤城と蒼オークランドが吠える。

 

 

発せられる彼女の怒号。

ビリビリと空気が震える。

 

 

 

この彼女達の怒りは本物だ。

かつてない程に彼女は怒っていた。

認めていたからこそ、大切に思っていたからこそ、一緒に乗り越えて来たからこそ…彼女は本気で心の底から怒っている。

 

 

『うるせええええ!』

飛びかかる雷、飛龍、天龍

 

「邪魔よ…」

桜赤城が右手を薙ぎ払う動作をする。

幾重もの艦爆が彼女達を薙ぎ払った。

 

ズドドドドオオオオン!!!

 

 

ピリピリと空気が摩擦する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『うああ…!三笠ぁぁあ!!!』

 

 

 

「…悲しいぞ…金剛…。我はお主こそ…と思っていたのだが…莫迦後輩ッ!!先輩として…お主に道を示してやろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

…作戦三笠は叫んだ。

「安全装置…解除…」

「目標…………目前の深海化艦娘…及び…影神通」

 

 

「一度はやってみたかったんだ…お前達と…」

桜加賀がポキポキと指を鳴らす。

 

「根性入れ直してやる…」

蒼ポートランドが言う。

 

 

 

 

 

 

ビシッと指差して全員が言う。

 

「知るがいい影神通とやら!」

 

「貴様が敵に回したKAN-SENと戦姫の強さを」

「貴様らの言う正義に裂くことが出来ない絆というものを…」

 

 

 

「見せてやろう!神崎 救指揮官ッ!!!」

「お主が紡いで来た絆の強さを!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「裏切り者ォッ!!」

 

「ふッ……」

 

 

榛名の繰り出す蹴りに対抗する戦艦加賀。

「いつものキレが無いんじゃないのか?榛名」

 

 

天龍の刀を受け止めて肘打ちを喰らわせる桜霧島。

「…いつもより遅いぞ?」

 

「…ぶっ殺すッ!!」

 

 

「マイネリーベを悲しませる子は…許さない」

「早く元に戻らないと…本当に許さない」

 

 

「……知るかっ!!」

 

「沈めええええ!!」

蒼オイゲンに対する電、雷。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり…できないのです」

「桜綾波は……睦月ちゃん達と戦いたくないのです」

 

「お前達なんか知らない」

 

 

 

 

 

「明石さんー!お願いだにゃあ…元に…元に戻って欲しいにゃあ!!」

 

 

 

 

 

「武蔵…!!そんなのでは…メイドは務まりませんよ?!」

 

「…知らない!そんな事どうでもいい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女達は知っている。

どれだけ艦娘が1人の提督の心の拠り所かを…。

1人、この世界にやってきた彼をずっと支え続けて来た彼女達の大きさを。

 

 

 

彼女達は知っている。

彼がどれだけ自分達を愛して、必要としてくれているかを。

 

 

彼女達は知っている。

本当なら1番戦いたくない相手だということを。

 

 

 

 

 

彼女達は知っている。

 

アイツらがこんな所で終わる奴等じゃあないと言う事を。

 

 

 

だから正面から向き合うんだ。

 

 

だから戦うんだ。

 

 

 

 

 

良きライバルと明日を一緒に歩むために!!

 

 

 

 

「目を…覚ませええ!!駆逐艦同盟の名が!…偉大な長門名前が泣くぞぉおおおおおお!!!」

桜アークロイヤル、蒼ヒッパーが長門を攻める。

 

「……グッ!?」

 

 

 

「お前達の誇りは…そんなもの!?」

桜ビスマルクが、桜ティルピッツが。

 

 

 

 

 

「お前達が飲まれれば!!」

「指揮官を守ったあの者達の気持ちはどうなる!?」

 

 

 

 

 

「忘れてたじゃないか!!!」

誰かが叫んだ。

 

 

「控えだとか!コピーだとか!!予備だとか!!」

「ごみみたいな扱いしか人間は…しないじゃないか!!」

 

 

 

 

 

 

「…そうだ」

「それは我らも同じく背負わなくてはならない業だろう」

 

 

 

 

 

「だからこそ!もう二度とそんな思いをする者を生み出さない為に!!今せねばならぬ事があるッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

彼女達の正面から彼女達に向き合おうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………金剛…」

彼は彼女に話しかける。

 

 

「黙れ…人間は悪だッ!!お前は死ぬべきなんだッ!!」

 

その拳を受け止めて左頬に拳を叩き込む桜赤城。

 

「いい加減に目を覚ましなさいッ!!」

「その手の…その左手のその証は…ッ!!!」

 

 

「お飾りじゃないでしょうっ!?」

 

更に蹴りを見舞う桜赤城に金剛のボディーブローが腹に突き刺さる。

 

「うるさいッ!うるさいうるさいうるさいうるさい」

 

「ガハッ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁああッ!!」

赤が急降下の踵落としを金剛の頭にぶち込んで––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見えてるんデース…!!」

 

それを受け止めて…

「なッ……ぅわぁぁあ!?」

 

ぶん回して桜赤城に投げつける金剛。

 

「「ガッ……」」

 

 

 

「さ、さすがは…ウチのNo1…」

桜赤城も蒼オークランド…赤もトップクラスの戦力である。

それを2人同時に相手しても引けを取らないどころか、圧倒的な力を見せつける金剛。

 

 

 

 

ヨロヨロと立ち上がろうとする彼女達の前に…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……?何のつもりデース?」

 

「指揮官様…?」

 

 

2人の前に彼が立っていた。

「金剛…戻ってこい」

 

 

「はぁ!?何を言って…」

 

奴がこちらに向いて歩んでくる。

な、なんだこいつは…?

 

 

頬を引っ叩いてみたけど退かなかった。

口から血を流しながらでも、こちらを見て離さない…

 

「お前達人間は嘘を吐くッ!!」

殴った。

きっと骨も折れただろう。

 

なのに奴は…私に抱きついてきた。

 

「俺は…もう…離さないから!!」

「お前達を…誰1人として離さないから!!」

しがみつく男を何度も殴る。

 

 

 

 

なのに

 

なのに何でこいつは離さない?

 

 

 

 

 

 

 

何でこうも心がざわつく?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんなごめん…ごめん!!」

「俺はダメな提督だ!お前達を何よりも大切にすると言ったのに…!忘れてのうのうと提督して…あんなに悲しんでるアイツらを…助けることも出来ずに……あぁ!!俺は最低野郎だ!!」

 

「でも……アイツらが命懸けで繋いでくれた俺だから」

 

「俺は……今度こそお前達を守りたいッ!!」

 

「だから戻ってきてくれ」

 

「俺に力を貸してくれ!!!」

 

 

 

 

「………ッ!!!」

何かむず痒い…熱いものを感じた。

奴を突き飛ばした。

 

 

 

のに…

 

 

 

奴の後ろから…

さっき吹き飛ばした2人が出てきた。

 

 

 

 

 

「そうだよ」

蒼オークランドが

 

「いい加減に…負けずに」

桜赤城が

 

 

 

 

 

 

 

吠えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「帰ってこいやぁぁあああッ!!」」

 

 

 

2人の拳が金剛に突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。

感想などお待ちしてます!ぜひ!!


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355話 正義の名の下に ⑧ 忘れないで


独特な世界観になるかも……


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ねえ…起きて』

 

『金剛さん!鳳翔さん!』

誰かが語りかけてくる。

 

 

『鈴谷!起きてくださいまし…!熊野…もう1人の私』

それは懐かしく…久しぶりに聞く声。

 

 

「……加賀…熊野…鈴谷」

 

『私達は…もう…戻れないけど……あなた達ならまだ間に合いますわ』

 

『お願い』

 

 

「ごめん…なさい」

彼女達の問いを遮るように頭を下げる艦娘達。

 

『え…』

戸惑う熊野達。

 

 

「私達も…あなた達を忘れていた…一緒に苦楽を共にしたのに!」

「私達だけ……私達だけ…ッ」

 

 

膝をついてぽろぽろと泣き崩れる金剛達。

同じく涙を流す加賀の肩に…もう1人の加賀が手を置いた。

 

『それだけで十分よ』

『その気持ちだけで…私は…私達は報われるわ』

 

 

「……ッ!」

 

 

 

 

『例え……この身はなくなってしまっても……」

 

 

『心は何があっても離れないから』

 

『超えなさい。きっと…今迄も同じような危機があったでしょう?』

 

『悲しくて…折れてしまいそうな時があったでしょう?』

 

 

『でも…ここに生きていると言うことは…それらを乗り越えてきたって事でしょう?』

 

 

 

 

『なら、まだやれる!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お願い…あの人を……守って…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿な……」

影神通は戸惑った。

 

 

 

 

 

 

「………………ダーリン」

 

次々と戦闘を止める艦娘達。

 

 

「睦月ちゃん!!長門さん!」

 

 

「……あぁ………」

 

 

 

 

「ダーリン…ごめんなさい!!痛かったよね!ごめんなさい」

 

「いいんだ…おかえり…」

「あの子達は……なんて?」

 

 

加賀が前へ出てくる。

「…大好きなあの人を……お願い…と」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員が影神通の方を見る。

 

 

 

ギリッと歯を食いしばった彼女が叫ぶ。

 

 

 

 

「…私は…忘れられた艦娘…」

データの片隅(海の底深く)に残された…見向きもされない艦娘」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…忘れるくせにッ!!」

「神崎 救ッ!!」

彼を指差して言う。

 

 

()()()()()()()!!」

 

 

「本命が居たら後は強化材料か…部屋の片隅に座ってるだけなんだ!!」

「改修で艦型が変わる奴ならまだ幸せだ」

「演習のキラ付け要員になれたらまだ幸せだ」

 

「でも居るんだッ!!」

「日も当たらない暗い部屋の片隅で(ドックの後ろの方で)膝を抱えて座って今か今かとお前達(提督)を待って心を壊す奴が居るんだッ」

 

「やっと出られたと思ったらエサにされるだけ…」

 

「ふざけるなッ!!」

 

「わかるか?!」

 

一度も出撃する事もないこと(レベル1のままである事)が!お前にわかるのかッ!?」

 

 

生まれた意味も知らずに(出会った瞬間に)

 

すぐに命を終える者(強化材料にされる者)の気持ちが」

 

 

 

 

分かるのかッ(分かってよッ)!!

 

 

 

 

 

 

「……ッ!!」

 

 

この中でその意味が分かるのは…救だけだろう。

いや…彼女達も薄々分かってる筈…。

 

 

「私達は正義の為に!人の為に戦うんだ!それが存在理由なんだ!!」

「なのに人は私達を…忘れて行く!!!」

「この世界では酷い扱いをされる!!」

 

 

「おかしいだろう!!」

 

 

 

「私達が正義なんだ!!」

「お前達も正義って言うだろう!でも!!」

 

「私と同じ奴等にとっては…私達が正義なんだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この力が有れば…そんな悲しい記憶すら消せるんだッ」

 

「人に縛られない…楽園がそこにあるんだ」

 

 

 

「だから邪魔をしないでよ…」

 

 

 

「……否定できる?!それをする側のあなたに!私が!否定出来ますか!?」

 

 

 

「できない!させない!」

 

 

 

 

 

 

「…そうだな……」

救は考え込んだ。

 

 

 

「……あなたは勘違いをしているわ」

 

「加賀…」

 

 

 

「確かに…私達はあの子達の事を…死んだと思っていて…提督も忘れていたわ…」

「でも……彼の艦隊の中に…練度が30以下の者は居ないわ」

 

 

「…ッ!!」

「だからと言って…それが今回の事とは……」

 

 

「…あなたにとっては、言い訳になるだろうし…それを今……証明できないけど…彼は…途中で確かに指揮をやめてしまったわ……でも」

 

 

 

「あの加賀や鈴谷や…熊野は…心の底から彼を愛していたし…守って死んだ事に後悔はしていないわ」

 

「…ッ」

「………でもッ」

 

 

 

 

 

 

 

「……俺は…確かに最低野郎だ。謝っても悔いても足りない」

「だから…きっと皆が幸せになれる世界にしてみせる」

 

「それが…今の俺にできる事だから」

 

 

「簡単に言ってくれるわね!?」

「そんな覚悟もないくせに!!」

 

 

 

 

「ある!!」

 

 

 

「どれだけ人生を注ぎ込んでも無駄かもしれないのに!?」

 

 

 

「それでも!!」

「例え一生を賭けても!!やる!!!」

 

 

 

 

「…………ッ」

 

尻込みする程に彼の言葉と目は真剣だった。

あぁ……ダメだ。

 

 

 

 

 

「だから…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウチへ来ないか?」

 

 

 

 

 

 

「…っ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「……一緒にやり直さないか……」

 

 

 

「………」

 

 

「………」

 

簡単に言ってくれる。

掛けて欲しい言葉を簡単に…。

 

でも…だめだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう」

 

 

 

 

「でも無理よ」

 

 

 

 

ごめんなさい…。

言って欲しい言葉を言ってくれてありがとう。

でも……

このやり方じゃないと…私の仲間にも申し訳ないから……。

 

 

 

「……私は……もう…提督の名前も鎮守府の名前も思い出せないけど…!忘れ去られた艦娘を導いて…!艦娘の為の楽園を築くんだッ」

 

 

 

 

心は負けを認めかけているけど……

私は彼女達の正義である必要があるんだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前を…こっち側に……ッ」

救の頭を掴む影神通。

 

「……」

何の変化も起きない。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……!!」

何よ…あなた達まで……何満足そうな顔して……

 

 

 

 

 

 

チラリと周りを見るが、桜赤城や青オークランドには通用しないと分かっている。

 

「くそっ」

 

 

 

「なら…もう一度…仲間に!!」

 

金剛の頭を掴みにかかるが…

 

「ならないっ!もう二度と惑わされないッ!!ダーリンとの絆は負けないんだ‥!!」

 

 

 

 

金剛だけでない、加賀にも鳳翔にも効かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

へたり込む影神通。

 

 

「何でだッ!ずるいなぁ………………」

「ずるい…よぉ」

 

 

 

 

 

 

 

 

キュッとくちびるを噛み締めて彼を見つめる。

 

 

 

「………」

「………忘れないで」

 

「私達みたいな艦娘も居るということ」

「あなた達みたいに幸せな艦娘ばかりでないってこと…」

 

 

 

 

 

 

「きっと私と同じ奴が出てくる事」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何を……」

 

 

 

 

「……ごめんね」

「本当はね?誘ってくれて嬉しかった」

 

 

「でも…ダメだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

影神通は自分の頭を自ら掴んだ。






少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。

次回エピローグ。

感想などお待ちしてます。


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356話 正義の名の下に ⑨ エピローグ…

「さようなら…」

「せめて…あなた達の傷になってくれるように……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

影……神通は自分に能力を使った。

 

 

全てを忘れて…いや…消去した彼女は…

 

「………あ、あれ…わ、私はいったい…」

 

本当に全てまっさらになってしまった。

 

 

 

 

 

 

彼女は見てしまった。

彼を洗脳しようとした時に彼女を弾き飛ばした艦娘を…。

 

ほんの少し前まで自分の配下に居た筈の者達は、例えその身が滅びようとも彼を守り抜いた。

 

 

自分の境遇と同じ艦娘だった者達が…だ。

確かに洗脳して賛同させた筈だが、同じ境遇だった筈なのだ。

 

 

なのに…彼を守ろうとする。

それを見た瞬間に彼女の正義()にヒビが入ってしまったのだ。

 

 

 

 

苦渋の決断だったのだろう。

 

正義を貫きたい気持ち

声をかけられて嬉しい気持ち

自分の正義が通らない悔しさ

 

 

 

 

 

 

 

「…皆さん?どうしましたか?」

「傷だらけじゃないですか!!大丈夫なんですか!?」

 

あてふたと慌てる神通。

何も知らないなら当然だ…。

 

 

「大丈夫…」

彼や彼女達は神通を優しく保護した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は金剛達に支えられながら…横たわる彼女達の近くにやって来る。

 

「…ありがとう……ごめんな……遅くなって…」

 

 

 

「…加賀達……ゆっくり休んで…また会いに来てくれるかな」

彼は涙を流しながら問いかけた。

 

「……ええ、きっと来るわ」

「あなたのことが大好きなんだから…きっとね」

 

「…その時は…その時は……きっと…」

 

 

 

.いつから艦隊に同じ艦娘は居ないと思っていたのか…。

他の鎮守府を見てなのか…そう思い込んでしまっていたのかは分からない。

でも…俺が彼女達を悲しませたのは事実だ。

もう…彼女達は居ない。

償う事ができない。

 

 

 

 

だから俺は…神通にも言ったように……

きっとこの世界を幸せにしてみせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベッドで仰向けに寝る彼。

鎮守府は再建中なので仮の宿舎であるが……。

彼は割と骨折しまくっているので安静にしなければならない訳で…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

「………」

 

「……………」

 

 

 

 

 

 

「…ねえ?」

 

『何ですか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で普通に居るの?」

 

『幽霊ですから』

 

 

 

 

3人は何故か普通に浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

「いやいやいや!!」

 

 

 

 

『な、何ですの!?』

幽熊野が彼のテンションに驚いた。

 

 

「ほら!この流れってさ!?アレじゃん?!」

「悲しみ乗り越えて頑張る的な感じじゃん?」

 

『……提督?』

 

「ん?」

 

『あなたをあの神通の洗脳から守ったのは……?』

 

「え?」

「…俺の転生者能力とかじゃ?」

 

『私達が守ったんですが?』

『あなたにそんな能力はありませんわ?』

『ごめんね?なんか……』

 

 

そう…彼女達は神通から彼を守った。

「ということは……」

 

 

 

『私達はあの時から…ここに居るという事ですね』

 

 

 

 

 

「それもアレじゃない?!最後の力を振り絞って…とかでなくて?!」

 

『最後の力どころか…すこぶる元気で身軽ですわぁー!』

ケラケラ笑う幽熊野。

 

『身軽にきまってるよー!そりゃ幽体だしねぇ〜!』

腹を抱えて笑う幽鈴谷。

 

『はい〜幽霊ジョーク』

幽加賀の掛け声と共に決めポーズをする3人。

 

 

「…………うそん」

 

 

『でも……』

『あなたに会えて良かった』

 

触れたその手は…少しひんやりしていた……。

 

 

 

『たくさんひどい事してごめんね…』

『その…殴ったり……ゴニヨゴニョ』

 

 

 

 

「…あ〜。たくさん犯されたしなあ…」

 

 

 

 

「あ?」 布団から

「お?」 壁から

「あん?」 天井から

「聞き捨てなりませんね」 床から

「屋上…いこうか…」 ドアから

「坊さん呼んできます」 絵の後ろから

「……幽霊…成仏……できるだけ苦しく……検索…」 いきなり現れるように

「龍驤さんお札貸してください」 龍驤を引っ張ってきながら

 

 

『で、でもあの時は自我がなかったわけで…!!』

 

「でも覚えてるんだよね?」

「良かった?」

彼は意地悪に聞いた。

 

 

『とても良かったです』

恍惚そうな表情で答える幽鈴谷。

 

 

「…シッ……シッシッ!」

 

「榛名さんがアップを始めましたね」

 

「おぉー…拳が見えない?!」

 

 

 

その中でそろ〜りと逃げ出す影が…。

一番最初に反応して布団から出てきた金剛だ。

それを見て幽鈴谷がポツリと言う。

 

 

『金剛さんは提督をボコボコにしてましたよね?』

 

「あっ………」

 

「いや、あの、えーと…あの時は操られてたから!!ノーカン!」

 

『なら私達もノーカンですよね?』

 

「うぐっ……」

 

汗をダラダラ流す金剛の肩に鳳翔が手を置く。

「金剛さん…」

 

「ほ、鳳翔……」

 

彼女はニコリと微笑んで言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「4人纏めてお仕置きです」

 

 

 

 

 

 

怒らせてはならないお艦…いや、嫁艦。

 

「誰かッ!記憶消して!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『『『あ"ぁ"ぁ"あ"あ"あ"あ"」』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鳳翔サン…ぱねぇよ…幽体を素手であんな……ヒッ!見るな電!」

 

「マジか…あんな……うわ…次の作品のネタにしよ…」

 

「…どうせカメラで撮っても写らないんでしょ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆がバタバタと病室?から出て行く。

 

彼女の正義…かぁ…と思う。

今迄もたくさんの正義とやりあってきた…。

 

己の野望の為

世界を変える為

己を認めてもらう為

全てを取り戻す為……

 

 

 

ただ…

確かに今回の正義は…この鎮守府に大きな傷を残していった。

 

 

彼にとっては、救えたのに救えなかった仲間や神通の事が今も心に刺さっている。

 

 

『…提督』

幽加賀だった。

 

『……全てを救える人なんか居ません』

 

『あなたのその小さな両の手の届く範囲でしか、その足で行ける距離の事でないと……不可能です』

 

『その為に私達が居ますが…それでもこの広い世界を全てカバーしきることなんかできっこありません』

『もし、そのつもりなら…凄く傲慢です』

 

『だからあの子に言ったみたいに…この世界を少しずつ…少しずつ幸せにしていきませんか』

 

『例え最初は小さくとも…いつか大輪の花になりますから』

 

『そしてその時は……あの子にも見せてあげましょう』

彼女達はニコリと笑う。

 

 

 

ああ…と頷く。

「一緒に…歩んでくれるか?」

 

『ええもちろん』

 

『足はないけどね!』

 

『はい!幽霊ジョーク〜』

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしもし?Tさん居る?…そう、寺生まれの」

救がどこかに電話するところで3人は焦る。

 

『マジでそれはシャレになんない!!』

 

 

 

 

 

 

鎮守府は少しずつ…日常を取り戻して行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……神通のあの力……」

「何より神通はあの世界の事…ゲームの中の事を知っている……」

「これが…俺には引っかかる…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 





もし、ドックの後ろの方で忘れ去られてる子が居たら思い出してあげてください。
彼女達も確かにそこに存在していたんです。

何も言わずに黙って強化素材にされようと、退役解体されようと…
何体目の彼女達だろうと………

そんなお話でした。

割とダークなお話…お付き合い頂きありがとうございました。
最後はほんの少しの救いでした。
一番救われないのは…首謀者でしたが………?




少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。



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357話 戻ってきた日常……?

突如として吹き飛ぶ仮設執務室のドア(笑)

 

 

息を荒げにやってきたのは鳳翔や…加賀達。

 

 

 

 

 

 

 

「何で私達は何もないんですか!?」

 

「何が?」

 

 

「ドレスや教会ですッ!!」

 

 

「・……はい?」

治療中の骨が軋む音が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

時は遡って………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大きめの袋を抱える桜赤城に遭遇した鳳翔と蒼伊勢。

 

 

『あら?桜赤城さん…お部屋の模様替えですか?』

 

『あら…鳳翔さん…に…蒼伊勢。ええそうです。服の整理とかを…』

 

『あー…もうすぐ春だもんねえ。そう言う時期なんだね。私もそろそろやんなくちゃ…なんて思いながら蒼日向に任せてっきりだなあ…』

 

 

『ちゃんと自分でもしましょうね?……桜赤城さん?よろしければお手伝いしますよ?』

『はい、お手伝いさせてください』

 

 

 

『そんな………うーん…じゃあ…お言葉に甘えます♪』

 

 

 

 

そんな訳でやって来たアズレン組宿舎の赤城の部屋。

彼女達の生活スペースが何より大切…とのことで、早めに建ててくれたのです。

 

 

 

 

綺麗に整頓された部屋には…アイドルの服からいつもの服から水着まで…意外と桜赤城は服が多いらしい。キワドイ服も……あ、いつもですね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは?

 

 

 

 

 

 

鳳翔は部屋の最奥にある、一際大きな………黒い大きなベールに包まれた何かを見つける。と言うか目に入る。

 

 

 

ああ…それは…と、そのベールを取っ払う桜赤城。

その下から現れたのは……

 

 

和装の……結婚式で着るような……

いや、まさか…ね?

 

 

 

 

『ケッコン衣装ですわ♡』

 

 

 

 

 

『え?』

 

『え?』

 

 

 

 

 

『だ、誰にもらったんですか!?』

見たこともない表情の鳳翔。

 

『まさか…バツイ『違います!こら!蒼伊勢!失礼でしょう!!』

 

 

 

 

『指揮官様ですよ?』

 

『え?』

 

『教会で指輪を頂いた時に一緒に……桜三笠や桜ベルや桜大鳳も待ってます』

 

 

『………ええ…』

 

『羨ましいなあー!私なんか教会に呼んでもらっての誓いだったのになあー』

脳の処理が追いついてない鳳翔の隣でブーブー言う蒼伊勢。

 

『…え?蒼伊勢ちゃんは……教会…?』

 

 

『そうよー!教会に呼び出されて…プロポーズだよ!』

 

『あら?いいじゃない。私は左手に貰える方が羨ましいわよ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………ずるい…』

 

鳳翔から発せられるオーラ。

戦闘力は軽く日本の人口分くらいにはなりそうな勢いだった。

 

 

 

 

 

 

『……ほ、鳳翔さん?』

 

オロオロとする桜赤城に……

『敵襲か!?凄まじい気配がッ!?!?』

長門と武蔵、加賀達がバタバタと走ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前のケッコン衣装。

怒りの鳳翔。

 

取り敢えず怒りを鎮める為に間宮のアイスを手渡す。

一瞬でアイスはジュースに変わる。

一気に飲み干す鳳翔…多少は落ち着いた……か?

 

 

 

 

 

『行きます…事情は行きがてらに説明します!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

んで、いまに至る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「有給申s「待てや…」

任侠映画に出てくる怖い黒服の人も震え上がりそうなドスの効いた声で俺の肩を持つ姐御(鳳翔)

 

 

 

「はぅ!?」

もうね?そんな事されたら素っ頓狂な声しか出ないよ?

てかね?

怪我人よ?もっと優しくしてよね?

 

「桜赤城さんや桜ベルファストさん達は教会で…ウェディングドレス……」

 

「蒼オークランドさん達は…教会で告白!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私も!!それに憧れてるのに!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

拝啓……お父様、お母様…。

息子は…異世界で提督をしております。

 

この世界は凄いですよ。

資源と甘味さえあれば、1日で大体の物を作ってくれます…………妖精さんが……。

 

 

今回もいい感じに鎮守府は壊されました。

俺の大切なものは妖精さんがある程度運び出してくれてましたが……何か重点的に壊されてた気がします。

 

 

 

 

 

んで…まあ…建て替わったんですが………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何で教会が建てられてるんですか?

鎮守府の神社なんかありましたか?

 

どこにそんな予算と資材があったのですか?

 

 

 

ねえ?妖精さん?何で目を逸らすんですか?

え?肩震えてませんか?

 

 

……鳳翔?

 

 

「……鳳翔」

 

「……何ですか?」

 

「………」

 

「………うっ…だって…」

 

「…だってじゃない……」

 

「ずるいですよ!!」

 

 

 

 

 

 

眠るベッドの横に彼女が座る。

 

 

「……あなた?」

 

「なに?」

窓の外を眺めながら返事をする。

なんせ教会に蒼ベルファスト達が入って行くんだもの……

 

 

 

「……ダメですか?」

その声にバッと彼女の方を振り向く。

折れた骨が軋んだがどうでも良かった。

 

 

 

 

 

 

その声は震えていたから…。

 

 

 

「………目の前で…あなたが攫われた時…どれだけ不安だったかわかりますか?」

 

「血の跡だけを残して……あんなにぼろぼろになって……」

 

「私たちが意識を取り戻した時も…目を覆いたくなるような傷で…」

「金剛さんにどれだけボコボコにされても優しく迎えに行ったって…」

 

「あなたが傷つけられるのが嫌だった」

「何もできなかった自分が歯痒かった」

 

 

俯いて…膝の上に握る手にポタポタと……涙が溢れている。

 

 

「……わ、私には…あなたしかいないんですよ?」

 

「心から…一生をかけて愛してるのはあなただけなんですよ」

 

そうとも限らない…なんては有り得ない。

きっと彼女は……いや、彼女達はそうなのだろう。

 

「今でも夢に見るんですよ」

「あなたと…2人で小料理屋をする夢を」

 

「幸せな…甘い夢を……」

なのに…と彼女は言う。

 

 

「いつも…最後の方に…ノイズが入って…一瞬、血だらけのあなたが映って……ブツンと真っ暗になって終わっちゃうんです」

 

 

「……あなたはいつだって傷ついて…!!私たちみたいに治らないんですよ!?」

 

「あなたが居なくなりそうで……怖いんです」

 

 

 

 

「…だから………羨ましいのもありますが、直接の目で私たちのケッコン衣装とか……教会とか神社とかの場面を見てもらえれば……もっと自分を大切にしてくれるんじゃないか…って」

 

 

 

「鳳翔……」

鳳翔の頭にポンポンと手を置いた。

 

「………そうだな…」

「……俺も鳳翔とか金剛のケッコン衣装見てみたいな」

 

「金剛さんは着てますよね」

 

ヤッベ…地雷踏んだわ。

 

 

「……そういうところですよ!…もう」

 

 

 

「鳳翔」

 

「はい」

 

「俺はどこにも行かないし…お前達から離れたりしない。約束する」

 

彼女は俺に優しく抱きつく。

「…約束ですよ!絶対ですよ!!」

 

「ああ…約束だ。だって愛してるからね」

 

「はい、私もあなたを愛してます」

 

チュッ…と唇が触れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?和式と洋式どちらがいいですか?」

 

 

「取り敢えずは治療させて……」







抑えて下さい!抑えて下さい!!
きっと…いつか!多分!そんな衣装も実装さr………
メーデー!大本営の周りを艦娘が取り囲んで…ぎゃあああ




そんなお話でした。


少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。

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358話 鎮守府の日常

「………何故なの?」

 

「…由々しき事態よ!!」

 

 

「ぶりゃーー」

 

 

 

ブーブー言う3人は誰でしょう?

「依頼が来ないと私達の活躍の場がないわよ!」

 

「何で!?何でなの!?電!」

 

 

「はわわ…ち、知名度が低いんじゃ…?」

 

 

 

 

「もーー!もっと私達を頼ってよー!」

 

「ちょ!それ私のセリフー!」

 

 

 

 

 

 

はい、そうです。

暁型の4人組です。

 

 

この4人は部屋を事務所として鎮守府のあれこれを解決したい何でも屋的なものを営んでいる(鎮守府非公式)

 

曰く『大人のレディなら誰かの役に立ってと言う建前で本音としてはチヤホヤされたいというかマジで私だけ指輪をもらってないのでそろそろ私の大人度合いを見せつけた上で提督も私を放って置かないだろう的な感じのために設立されました』

 

 

 

かと言ってご覧の通り、閑古鳥が鳴く事務所には誰も訪ねては来なかった。

この前は猫が逃げたとかで探し回ったくらいだ。

 

 

 

 

 

「…暇ねえ……」

 

「そうなのです…」

 

 

 

 

「そぉれじゃぁあダメよお!!レディたるもの…自ら事件を探すものよ!!」

 

「も、燃え上がってるのです…暁…」

 

「冬なのに熱いわね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな訳で仕事を求めて鎮守府内を歩く4人。

 

「おや?おちびちゃん達何してんの?」

 

「あ、川内さん!何か困り事はない?」

 

声をかけてきたのは川内だった。

夜景明けだろうか?少し眠そうな顔で風呂から出てきた。

早速困り事はないかと聞いてみる。

 

 

「困り事?ん〜夜戦が少ないとかかなあ…どんぱちやりたいんだよねぇ……」

 

「聞かなかったことにするわね」

 

「あはは!2割は冗談だよ!」

 

「ほぼ本気じゃない!!」

 

 

「んー……あ!あったよ!事件」

事件という言葉に目を輝かせる暁達。

 

「え!?何?何?詳しく!詳しく!」

 

「説明するよりも直で見たほうが早いかな?食堂にいってみなよ!ブチギレだ娘が居るから」

 

 

「「「「え」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ…僕のプリン食べたでしょ?」

 

「僕は食べてないよ」

 

「なら!そのカラの容器は何なのさあ!!」

 

「これは提督から貰ったプリンなんだ」

 

 

 

 

「どうやら何かプリンがどうのとか…みたいなのです」

 

「却下ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…私のパンツが盗まれた………?」

 

 

「そ、そうなの…」

さめざめと泣く睦月と如月。

 

「長門さんか桜アークさんか蒼ヒッパーさんね」

 

 

 

 

 

 

「ん?どうした?」

 

「パンツ!」

 

 

「?!」

(ま、まさか…私が買ってきたこの可愛らしい奴のことか!?くっ…!可愛いものを見る内に欲しくなって…つい買ってしまったが!確かに見られたら『えぇー!?戦艦の長門さんがこんなクマさんのパンツ履くんですかぁ!?失望しました!近づかないで下さい…』ってなってしまうだろうか!?なんとしても…なんとしてもそれだけは避けなば)

 

 

「……なんのことだ?」

 

「知ってるのよ…?」

 

(くっ……やはり通販での受け取りにするべきだったか……)

 

 

「盗んだでしょ?」

 

「……は?」

 

「その紙袋…巧みに偽装されているけど…盗ったでしょ!?」

 

「ぶりゃーー」

 

 

「な…な!?」

 

「連行ね」

 

「待て!何か勘違いしてる!!」

 

「黙秘権とか……あるのです」

 

「そんな目で見るな!聞いてくれてええ」

 

ガシッと彼女を取り囲む暁姉妹達。

 

 

 

 

 

 

「ちょ!待て!何かの誤解だッ!」

ポロリと長門の買い物紙袋から何かが落ちる。

 

 

「あら?」

陸奥がそれを拾い上げる。

 

 

「クマの…パンツ……ッ!!やっぱり!!」

 

 

「違うッ!それは適正に購入したものだッ!!」

 

 

「「「「え」」」」

 

「あ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あらあらあらあらあらあらあら?」

 

 

「待て!陸奥!そんな目で見るな!!」

 

 

「ウフフ…知ってるわよ」

「暁ちゃん?これは長門のもので間違いないわよ?」

 

「え?そ、そんな!長門さんがこんなぷりちーなものを履くはずが!!」

 

「この子は意外と乙女なのよ?」

 

「と言うか…私にどんなイメージをもってるんだ?」

 

「「「「ふんどし」」」」

 

 

 

 

 

「ぷっ…あはは…!!こ、今度部屋にいらっしゃいな」

 

「可愛いものだらけ?」

 

「意外とね?」

 

「…………まじか」

 

「いい?大人のレディでも筋肉ゴリラでも可愛いものが好きなのは普通なのよ?」

 

「それら他人の趣味を受け入れられるのも…大人への一歩よ」

 

 

 

落ち込んだ長門をほんの少し慰めてからブツを探しに行こうとしたら、乾燥機の中に忘れなたとか報告が入った。まあそんなもんだろう…なんて思う雷だった。

 

 

「…つまんねー終わり方なのです」

 

「電?キャラブレ起こしてるわよ?」

 

「はらしょー!!」

 

「響は奇声しかあげてないわね……」

 

 

「まあ……解決してよかったわ」

「ありがとうと、ごめんねって言われた時は微妙な気持ちになったけどね……」

 

「でもいつもこんな感じよね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つーかアレでしょ?提督にいいとこ見せたいんでしょ?詰まるところ」

 

「押し倒しちゃえばいいのよ」

 

夕立と時雨が言う。

「アンタなら本当にやりかねないよね…」

 

 

「セクシー路線でアピールは?」

と、如月が言う。

 

 

「…捕まらない?あの人」

「側から見たら完全に事案よね」

初月が難しい表情で言う。

 

「それを言われたら身も蓋もないわよぉ」

 

 

 

 

 

「ま、負けないもの!なかなか私は見向きもされないけど…何でも屋も恋愛もがんばるわ!」

 

 

 

暁は健気だった。

内心はかなり不安だが……

 

 

 

 

その時部屋の電話が鳴った。

 

「はい…………。あ、はい」

何やら背筋をピンとしている。

 

 

「えと……それは………すこしまってもらえるかしら?」

ガチャリと一旦電話を切って皆の方を向く。

 

「あ、あのね?提督が買い出しに行かないか?って………」

 

「皆も一緒にいk「あーー!用事思い出した」

 

「あ…雷は用事があるの?ならほk「私達も用事あるのです」

 

「え……」

 

「あーー!せっかくの提督のお誘いなのにー!用事があったら仕方ないわー!優先される用事だわー」

 

ぞろぞろと皆は用事だと言って部屋を後にする……笑顔で。

 

「皆?そんなに笑顔で…そんなに楽しい用事なの?」

 

「…ふふっ。まあ気にせずに提督とお出かけしておいで」

 

そう言われてわかったわ!私が華麗にエスコートしてみせるわ!と意気揚々に執務室へと行く暁。

 

 

「まーーーったく!世話の焼ける姉でごぜーますよ…」

 

「まあ…でもうん、よく頑張ってる(?)し…たまにはね」

 

 

 

 

彼女達が窓から外を見ると

笑顔の暁が彼と手を繋いで歩いて行くのが見えた。

 

 

 

 

 

 

 

「ありゃ保護者と子供だな」

 

「捕まらないようにね」

 

 

彼女達はある意味笑顔で見送っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わぁお……長門さんの部屋…可愛らしいぬいぐるみとかたくさん」

 

「おー…下着も中々可愛らしいのも……」

 

「……皆には内緒な?」

 

「…今度スカート履こうね…長門さん」

 

「え」

 





少しでもほんわかしてもらえたなら幸いです。


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359話 鎮守府の日常 提督とお見舞いと

ここは病室…ではなく救の私室(仮)

未だに療養期間の続く彼はベッドで寝ている。

 

 

その隣でシャリシャリ…と音が聞こえる。

長い髪の和装のその娘は…とても穏やかな表情でりんごを剥いていた。

 

 

 

「はい、提督。リンゴ…ウサギちゃんですよ?」

あーーんという言葉とともに目の前に可愛らしいリンゴが持って来られるのでパクリと食べる。

 

「ん?美味しいなこれ…もう一つくれるか?」

 

 

「あ…すみません…一つしかなくて……」

 

「そうか……」

 

 

「桃ならありますよ?」

 

「ん、貰うよ」

 

「はい、あーんです」

 

「……おいひいな…」

「もう一切れもらえるか?」

 

 

「すみません…もう無くて……」

 

 

 

「そうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前がそんだけ食べてたらなッ」

 

「えっ」モグ…ゴクン

 

「え?じゃねえよ。片っ端から俺へのお見舞い品食い尽くしやがって…」

 

「美味しそうだったので…つい」

 

「ついじゃねえよ」

と、圧をかける。

 

 

「わ、わかりました…」

 

そう言うと、ぷるぷる震える手で桃のついたフォークを涙目で差し出す赤城。

「どうぞ!!「食えるかぁ!!」

 

その言葉にパァッと顔を明るくする赤城。

「いや!違うからな!?」

 

最初は甲斐甲斐しくお見舞いに来てくれる優しい奴だと思ったがそれは大きな間違いというか誤解というかなんというか…

 

 

 

 

 

 

 

 

『提督?具合はどーです?』

 

『お、金剛…ありがとうな』

 

『……ごめんね。本当に…。早く良くなってね』

 

『おう!大丈夫だからかにするな』

 

『うん…あ、これ…クッキー作ったから食べてね。私は出撃してくるから…』

お願いね、赤城…と、赤城に託して金剛は部屋を後にした。

 

『はい!任せてください!一航戦の誇りにかけて!…もぐもぐ』

 

誇りはクッキーよりも砕けやすかったらしい。

 

 

 

 

 

『しれぇ…。早く元気になってね?これ…』

 

『私達で買ってきたの』

 

雪風や夕張達がメロンを差し出してくれた。

 

 

赤城は既に包丁とまな板をスタンバっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで支えれられる見舞い品は大方7-8割は赤城の胃袋の中に収まっている。

え?2-3割食えるだろ?て?

 

 

『…美味しい……美味しい……』

加賀が…

 

『わー!おいしそうなメロンなのー!』

イクが…

 

『でちッ!でちぃぃ!!』

でち公が…

 

『はらしょ!』

響…が…

 

『あら?指揮官?…おいしそうね?貰ってもいいかしら?』

桜オイゲンが…

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?皆の目当てはお見舞い…品?

 

 

 

 

 

 

「ご、ごめんなさい…ごくん」

 

「謝るか食べるかどちらかにしようなー…てか食いやがったな…」

 

「美味しかった……です…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官くぅん〜?指揮官クンの大好きなプリンを…買ってきたわ……よ?……ってどしたの〜?そんな泣き腫らして…」

 

「いや…久しぶりにまともなお見舞い客が…」

 

「……なんとなく察するわ」

「…ベッド起こすわね〜?ほらプリン食べさせてあげるからね」

 

あーんと食べさせてもらうプリンは美味しかった。

 

「言っとくけど…本当に指揮官クンの好きなプリンをご馳走に来ただけだからね」

 

「蒼朝日は優しいな」

 

「ふふ…もっと褒めてもいいのよ?」

 

「いや…本当色々と支えてもらってるよ」

 

「……こんなおばあちゃんなのに?」

 

「そんなことないよ。可愛いよ」

 

「愛してる〜?」

 

「もちろん愛してるよ」

 

「本当?嬉しい!」

ガバって抱き付く蒼朝日。

 

「アッ–––––骨がッ」

 

「あ"」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんね…指揮官クン…」

 

「イインダヨ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダーリンさん!お見舞いに来ました!榛名です」

 

「おお、榛名か」

 

「あれ?何か昨日より酷くなってませんか?」

 

「…人生色々さ」

 

「榛名にできる事はありますか?」

 

「なら………」

 

 

「はい!わかりました!では後ほど…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンコンとドアがノックされた。

ぶっちゃけ今なら怖いものはない。

 

「あの…提督……」

遠慮気味に入ってきたのは風呂敷包みを引っ提げた赤城だった。

 

「ん?赤城?どした?」

 

「…ごめんなさい…その…提督のお見舞いのモノを食べてしまって…」

 

「あー…うん、いいよ」

「君が幸せなら……いいんだ」

 

「あの…これを」

彼女は風呂敷を開ける。

中には…よく見えないが、鍋?みたいなのが見えた。

 

「ケーキを焼いてきたんです。あなたに食べて欲しくて」

「紅茶も教えてもらって…淹れますね」

 

 

ぎこちなく準備する彼女。

シフォンケーキと紅茶を用意してくれたらしい。

 

ありがとう…と、言いながら食べる。

「ん……美味しい」

 

その言葉にホッとした表情となる赤城。

きっと彼女は怒ってると思ったのだろう。

 

「一緒に食べよう」なんて声を掛けると、彼女は顔をブンブンと横に振る。

それでも…とフォークを彼女の前に差し出すと、彼女はニコリと笑いながらシフォンケーキをパクリと食べた。

「おぃひぃ…………提督は……怒ってないですか?」

彼女は不安気な表情で俺に尋ねた。

 

「赤城の美味しそうに食べる姿が好きだぞ」

と言っておいた。

 

赤城は赤くなって…でも…小さくありがとうございますと言った。

 

「でも…ちゃんと俺の分も残してくれよ?」

 

「はい」

と、赤城とも楽しいティータイムを過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

やっぱりプリンは半分食われた。おのれ赤城……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダーリンさん♡お待たせ致しました!」

夜に榛名がやって来た。

 

「えへへ…久しぶりにダーリンさんからお夜食のオーダーがあって榛名は嬉しいです」

そう言って彼女はおにぎりと卵焼きと味噌汁を出してくれた。

「今日は特別にウィンナーもつけます!」との事だ。

 

鳳翔の居酒屋や那智のバーだけでなく、色々と充実しつつある鎮守府。

施設だけでなく、メンバーも増えたと言うことは…榛名のように夜食を差し入れてくれる者も少なくない。だが、その差し入れを全部が全部食べられる訳ではない。

つまりは…榛名も以前のようなペースでは俺に夜食を作れなくなったのだ。

 

 

「ん!やっぱり榛名の夜食は美味しいな」

 

「本当ですか?嬉しいです」

俺の食べる姿をジーっと見つめる榛名。

「ん?榛名も食べる?」

 

「あ、いえ、そういうつもりでは無いんです。ただ…」

 

「ただ?」

 

「ダーリンさんが居るなぁ〜♡って…私の作ったお夜食を幸せそうに食べてくれてるな〜♡って思うと嬉しくて」

 

ニコリと笑う彼女が堪らなく愛しく思えた。

 

「よしよし……ありがとうな」

と、榛名の頭を撫でる。

 

「………榛名は幸せです」

そして彼女を抱き寄せて…珍しく彼女にキスをしてみた。

 

 

 

 

珍しくってのは…アレだ。特別嫌いだとか苦手だからって訳では無い。

むしろかなり愛してるッ!

 

でも…

 

 

榛名に捕食される率のが高いからだね

 

 

 

 

 

 

「ダーリン…さん♡」

 

夜食を食べながら2人で取り止めもない話題で過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イモートが朝帰り!?まさかダーリンを………って…榛名…」

帰らない榛名を心ぱ……警戒して金剛が救の部屋にやってきた。

 

「………榛名…ふふっ」

 

 

目の前にはスヤスヤと眠るダーリンと、そのダーリンの胸で眠る榛名が居たとか…。

でも榛名の頭に彼の左手が乗ってたのがなんか癪だったので榛名を寄せて自分も潜り込んだ。




少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!


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360話 踊りませんか?

ほんわか!
ほのぼの!日常回ッ!!

















「私と踊ってくれませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「司令官!一緒に探し物をしてくれませんか?」

 

「敷波。あぁ、いいよ?…して、探し物とは何かな?」

 

「えーとですね。大切な…何かなんです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は港に居た。

ビシッと敬礼をして言う。

「この度こちらに転属になりました!敷波です!よろしくお願いします」

 

と、眠れない夜の散歩の時に言われたのが懐かしい。

出会った瞬間は幽霊だーー!!ってマジでビックリして死ぬかと思ったけど…。

 

 

敷波は良くやってくれている。

何でも以前の鎮守府ではエースだったとか…本当か?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし…探し物ねぇ…」

 

「勲章とか?」

 

「思い出の写真とか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「探し物……探し物…大切な……うーーん…何だろう」

 

「あれ?司令官どうしましたか?」

 

「おお、吹雪」

 

「あ!吹雪さんー!!」

 

「いやな?今、探し物を考えていてな」

 

「探し物…?」

 

「そうなんです!凄く大切な大切なものなんです」

 

 

「何だか珍しいですね?具体的…には?」

 

「それがよくわからなくて…な」

 

「……女へのプレゼントとかじゃないですよね?」

 

「違うよ」

 

「では、資料室に行ってみてはどうですか?何かヒントがあるかも知れませんよ?」

 

「おお…確かに!何か進むかも知れないな!」

 

「よろしければ私も行きましょうか?1人より2人の方が色々と探しやすいかも知れませんよ?」

 

「むっ!吹雪さんヒドイー!私だって自分の探し物なんですから頑張りますよー!!」

 

「ははは。ありがとう吹雪。でも大丈夫だ。行き詰まったら助けを呼ぶよ」

 

 

「……そうですか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお、おはよう。桜明石、桜不知火」

 

「おはようございます!」

 

「おはようだにゃ。どうしたんだにゃ?1人でニヤニヤして…。何か良いことがあったのかにゃ?」

 

「あ…指揮官さま……おはよう…ございます」

 

 

「ん?毎日が幸せだぞ?今から資料室に行くんだが……」

 

「お2人も来られますか?」

 

 

「資料室?何か調べ物かにゃ?」

 

「あぁ…ちょっとな」

 

「桜明石はお店の仕入れで忙しいから行けないにゃあー」

 

「あらら…それは残念ですね…」

 

「私も…準備がありますから……頑張ってくださいね」

 

 

そう言って2人は店の準備へと向かっていった。

「……」

チラリと桜不知火がこちらをみた。

気に掛けてくれてるのかな?

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

「何かあったかな?」

 

 

「うーん…なかなか見つかりませんね」

「あ!見てください!この写真!私です!ほら!このバッジ!皆と一緒でしょ!?」

 

確かに言われてみればそうだった。

とある鎮守府の資料だった。

 

「へぇ…エースだったのか!?敷波は」

 

「えへん!これでもピカイチだったんですよ!?」

 

「……なるほどなあ」

 

「此処でもがんばりますからね!?」

 

「…選手層は厚いぞー?」

 

「任せてください!!」

 

「ちなみに踊りも得意だったんですよ?」

 

「へぇ?」

 

「お手を拝借?」

 

「また今度な」

 

 

「むむむ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パタンと本を閉じて彼は言った。

 

 

「行ってみるか」

 

 

 

 

「大切なもの…見つけに行くか」

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

そう言って彼は暫く空けると言って1人街へと旅立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督が帰ってきて肩を落とした。

仕入れから鎮守府に帰ったら…指揮官さまが港に居た。

 

 

私は…「指揮官さま…お疲れ様でした……」と…声を掛けるしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

丸一日かけて移動した先での事だった。

海の見える小高い丘の上に着きました。

 

 

「司令官さん?随分と…遠くまで来ましたね」

 

「ん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここだよ」

彼の案内してくれた先には…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小さなお墓がありました。

 

「君の探し物は……()()にあるよ」

 

 

「……お…はか?」

 

 

 

 

「…君の提督はね、戦死してたんだ」

 

「……え」

そんな冗談を……と言おうとして見上げた彼の顔は…

行き場のない感情を噛み殺した貌だった。

 

 

「そんな……」

彼女はペタリとそのお墓の前にへたり込んだ。

刻まれている名前に触れて…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「確かに……うん…あの人の名前…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……待ってるよ…今でも君を」

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だって……君は魂になっても此処を探し続けていたんだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

彼女は誰にも見る事ができなかった。

彼を除いて。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いつ…あなたは気付いたのですか?」

彼女はポツリとつぶやいた。

 

 

 

 

 

 

 

「資料室で…」

 

 

 

 

 

敷波は生きてはいなかった。

それに気付いたのは…資料室で彼女の艦隊の事を見つけた時だった。

 

 

そこに載っていたのは…かつて存在したとある仮の鎮守府の資料だった。

小さな小さな鎮守府の資料だった。

 

細々と頑張る鎮守府も…敵の攻撃を受けて………。

 

 

 

 

 

そこで思い出した。

 

 

 

 

 

 

誰も彼女と会話してないと言う事を…。

 

吹雪の1人より2人の方がいいってのも敷波1人より…ではなかったのだ。

俺1人より吹雪と2人の方がいいって意味だったんだ。

 

桜不知火達もよくよく考えたら会話はしていない。

 

でも…桜不知火は見えていたようだ。

桜明石が居た手前か黙っていたんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の探し物は………提督だったんだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ありがとうございます」

 

 

 

「確かに小さな小さな…ほんっとーに小さな鎮守府でした」

「艦娘もそんなに居なくて……でも楽しかった」

 

「…私ね…帰られなかったんです」

 

「ああ……」

知ってるとも…。

 

 

 

 

 

「ここにいたんだ……」

 

「ここは…その鎮守府があった所らしい。今となっては…その影すら分からないがな」

 

「はい、私の…大切な場所なんです。…寂しかったですよね……提督」

 

「いや、そうではないかも知れないぞ」

彼は言いました。

 

 

「何で…?」

 

 

 

 

 

「好きな海を見ながら眠れるんだ」

「大好きな君と見た海を見ながら……そして、君は此処に帰ってきたんだから」

 

 

 

 

『君と海を見ながら踊るのが好きだな』

そう、提督が言ってくれた事を思い出した。

 

バルコニーに差し込む部屋からの光を背に星空の下で踊った事を…。

 

 

 

「あのあたりに…バルコニーがあったんですよ」

と、彼女はそこを指差した。

寂れた鉄骨がその虚しさを余計に大きくした。

 

「あそこで……よく社交ダンスしてたんですよ?」

 

「信じるとも」

それも…資料室で見たよ。

幸せそうな顔の2人を…ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「踊りませんか?」

彼女が涙混じりの笑顔で言った。

 

 

 

「社交ダンス?した事ねえよ?」

彼は戸惑った。

「そんな経験もないし、リードできる自信もないし…何よりお前の提督の墓の前…だぞ!?」

 

 

「私がおしえてあげますよ」

 

 

正直怖かった。

あの時…お手を拝借?を断ったのも…

もし触れられなかったら…と考えたから…。

 

 

「お手を…拝借?」

 

 

「だーいすきな提督に怒られるぞ?」

 

「そんな…心の狭い人じゃないですよ…提督は」

 

 

「ね?」

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ」

でも、その手を掴まない理由はなかった。

目の前で艦娘が泣いているから。

笑顔で逝って欲しいから…。

 

 

 

 

 

 

 

彼が私の手を取った。

ふふ…いつもとは逆なんです。

 

 

 

 

はい、そうです。

手は此処に…

ステップは私について来てください。

 

 

 

 

はい

 

 

そうです。

お上手ですよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 

 

「手を…握ってくれて」

 

 

その手は…ひんやりとしていた。

 

 

 

「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気付いたらそこに居た。

でもどれだけ叫んでも…手を振っても誰も気付いてくれなかった。

 

私は…敷波

それだけは覚えていたのに

 

 

 

ある日、あなたに出会えた。

あなただけは私を見てくれた。

 

 

私は自分が幽霊だと言うことすら忘れて……その鎮守府の一部みたいになれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督…見てくれてますか?

ヤキモチ…妬いて下さい。

 

でもね?

この司令官…わたしがエースだった事も、ダンスが得意だった事も疑うんですよ!?

だから……教えてやるんです!

私は出来る子だって!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ごめんなさい。

 

帰ることができなくて

あなたを守ることが出来なくて

 

 

 

 

 

 

 

 

ごめんなさい

 

 

 

 

 

 

 

 

もうすぐあなたの元に……行けるかな

 

 

 

 

 

 

 

「行けるよ」

 

 

「え」

 

 

 

 

涙で滲む顔を上げると…優しい顔が私を見下ろして…いや、見つめていた。

 

 

 

「…此処が君の旅の終着駅だ」

踊りながら、ぎこちなく回りながら彼は言う。

 

 

「いや……第二の…始発駅か…?」

 

「たくさん甘えて…労ってもらって…話して……おいで」

 

 

 

 

 

 

「優しいですね」

「こんな僻地まで…休みを潰して……」

「こーんな幽霊の為に……あなたは馬鹿ですよ」

 

 

 

「そうだな…」

「でもそんな馬鹿だからこそ…」

 

 

 

 

 

 

 

彼は言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君を此処に連れてくることができる。笑顔の君を見送る事ができる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ッ」

 

 

 

 

「だからその目に焼き付けて逝って欲しい」

「こんな世界だけど…この景色は……こんなにも綺麗だって」

 

彼の背中越しに見えた夕焼けは……とてもとても綺麗で……

それを追うように私の背中から星が昇って行くのが見えた気がした。

 

 

 

「思ったより…グスッ…ギザですね」

 

「……かもね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……いきますね…もう」

涙を流して顔がぐちゃぐちゃになった彼女。

 

 

 

 

「あぁ」

きっと皆も待ってる…とからは言ってくれました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おせわになりました」

 

 

 

「こちらこそ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

チュッ…と手の甲にキスをされた。

 

 

 

 

瞬きをしたら…彼女は居なくなっていた。

握っていたはずの…左手に黒いリボンが残されていた。

 

 

「逆…だよなー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ありがとうございました、素敵な…司令官さん。

あなたの…あなたの人生に幸あらん事を……。

 

 

 

あ……。

 

 

ヤキモチ妬いてます?

 

 

 

えへへ

ただいま!!提督!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官さま……」

 

「桜不知火か…大丈夫。俺は大丈夫」

 

「………不思議な経験も…辛い経験もたくさんあります」

「……落ち込むな…とは言いません」

「でも………きっとあなたを強くします」

 

「あぁ…そうだな」

 

「なあ?桜不知火」

 

「何ですか?」

 

「本……社交ダンスの本ないかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日の事だった。

 

 

「…………」

意外と気になるもので社交ダンスの本とやらを買ってみた。

 

 

「あー!司令官!その本は…?社交ダンス?」

気がつくとそこには吹雪が居た。

 

「ん、あぁ。吹雪…社交ダンス知ってたのか」

 

 

「失礼な!!知ってますよ!!」

 

 

 

「……そうなの?」

 

「…えへん!……踊りませんか?」

 

 

 

その言葉が彼女と重なった。

 

言われるがままに手を取って一緒に踊った。

 

 

 

 

 

 

まさにあの時にやった動きと同じ動きだった。

 

 

「・…はい、お上手ですよ」

 

 

 

 

 

「昔ですね?別の艦隊の敷波ちゃんにほーんの少し教えてもらった事があったんですよ」

 

 

 

「………ッ!!」

思わず感極まってしまう。

 

 

 

 

「…はい、大丈夫ですよ」

「きっと彼女も見てくれてますから」

 

 

 

 

 

 

「なっ!?」

吹雪は彼女が見えなかったはずだ!なのに!?なのに?何で?

 

 

「…私も最初は信じがたかったです」

 

「なら何で」

 

「…夢に敷波ちゃんが出て来たんですよ」

「髪を解いた彼女が」

 

「妹みたいなものですから、信じますよ」

それに…と彼女は言う。

 

 

 

 

 

 

「司令官の持ってるそのリボン…敷波ちゃんのですよね?」

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう…って言ってましたよ」

目の前の吹雪が涙を溜めて言う。

 

 

「吹雪…」

 

「私からも言わせて下さい」

「…敷波ちゃんを救ってくれてありがとうございました…ッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『吹雪さん……いや、吹雪お姉さん』

『司令官さんに伝えて下さい』

 

『旅立つ終着駅…ううん、始発駅まで見送りにきてくれて嬉しかった。またあの人達に会えたからって……』

 

『あの日のぎこちない踊りと…綺麗な景色はぜーーったいに忘れません』

 

 

 

『ありがとう…って』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから数日経った。

 

 

「こんなもんでいいかな?」

 

「はい、喜ぶと思います」

 

あの丘の上に…新しく墓を建てた。

鎮守府の皆が安らかに眠られるように…と。

 

この景色を見ながら眠って…また生まれ変わって生きて欲しいから。

 

 

 

そして手をあわせる。

 

「帰ろっか…吹雪。来てくれてありがとうな」

 

「いえ!司令官とのデートですから♡」

「それに…妹…ですからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰り際に後ろから

もっとダンス上手くなってねと聞こえた気がした。




時系列は…気にしないで



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361話 大和と1日夫婦 ①

 

 

 

 

「……まずいわッ!!」

 

大和は戦慄していた。

今私が直面してるのは、恐らく…この艦生…人生で一番のピンチッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワタシノヘヤニ

テイトクガ

ムカッテル

 

 

今までの夫婦生活を聞く限りでは…こっちから提督の部屋に行くのがセオリーのはずなのに!?

なんで来るの!?なんで!?どうしよう!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武蔵から知らせを受けて約3秒…私の停止した思考がフル回転し始めた。

 

 

 

待て…大和落ち着きなさい。

冷静に…。そう、冷静に。

 

 

 

 

無理ね。

でも!この状況を打破しなくては–––ッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督の位置が廊下の先…階段を登って…ここまで約2分ッ!!

その間にどこまで片付けと言う名の押し込みができるか?!

 

 

 

できるか?…ではないッ!!

 

私は誰だ!?

 

 

 

 

私こそ最強の戦艦の……大和!!!

その名を世界に轟かせた…かつての最近の戦艦大和!

退く訳には……!

 

 

 

 

やってみせるわ!やってみせる!大和型一番艦、大和!推して参りまs「おーい!大和ー居るかー?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

馬鹿なッ!?

い、今の間に2分経ってたと言うの!?何これスタンド攻撃かしら!?

武蔵はうたた寝をしている!?くっ…ピンチね…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かくなる上はぁ……リーサルウェポン出撃ッ(武蔵!時間稼ぎして!!)

 

「…御意」

 

 

 

 

 

 

 

ガチャリ…

 

「相棒…何をしてるんだ?」

 

「お?武蔵大和は居るか?」

 

「あ〜〜〜〜〜今は用事中だ。少し時間が掛かるらしいから…多分…5分くr…え?!じゅ!?………10分程時間を貰いたいらしいんだ」

 

「だから私と「なら出直してくるよ」

 

くるりと回る提督の肩をグッと掴む武蔵。

「待て…まぁ…待て」

 

「相棒……いや、最愛の提督よ…。目の前の私を放置して戻るとは…傷つくぞ?」

 

 

「そうだな…少し時間を一緒に過ごそうか」

 

 

「うん、それでこそだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大和……その…」

 

「何!?今修羅場なの!佳境なの」

 

「まだ序盤に見えるんだが……」

 

「作戦は!?失敗!?」

 

元から作戦として成り立ってない…と思いながら面白そうなので黙っておこうと思った武蔵だった。

 

「いや……まあ…やるだけやろうか」

 

「さすが武蔵!」

 

「にしても…大和は極端だな。普段は真面目なのにな」

 

そう、普段の大和は真面目そのものなのだ。

品行方正、成績優秀、料理もできて所謂大和撫子である。

 

だが、その大和がダメになる時がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

救に何かあった時だ。

 

彼に何かあった時、彼女はその優秀さを発揮する。

真壁との戦いの時もそうであるが、味方をも欺く程のものである。

 

なら大丈夫じゃないか!と思っただろう?

違うんだ。

 

 

その後なんだ。

 

 

提督の無事の帰還を迎えた後は一気に腑抜ける。

反動が来たと言えば聞こえが良いが…かなりだらける。

 

普段着もジャージになって、冬ならこたつから、夏ならクーラーか扇風機の前から動かない。

そんなポンコツになってしまうのがこの大和だ、

 

 

「………」

目の前で電みたいにはわはわ言ってるのは可愛らしいんだろうけどさあ…。

 

 

「…………ジャージなんだよなぁ……」

しかも頭にタオル巻いてるし…日曜大工すんの?

 

 

「とりあえず…提督と少し出かけてくる。購買でも覗いてくるよ」

 

「え?何?デート?ずるくない?」

 

「時間を稼げと言ったのは大和だろう!?」

 

 

 

 

 

 

「さて…お片付けッ!大和推して参ります!」(2度目)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へー…大和の部屋って…何か…シンプルだね」

 

「ブフッ…」

 

大和の片付けられた?部屋を見て感想を述べる救と吹き出しかける武蔵。

 

 

『ちょっと武蔵?やめなさい?吹いたら…ダメよ』

 

『すまん。でも何だ?あの押し入れは?ギチギチ言ってないか?決壊寸前じゃないか?』

 

念話で話す2人。

 

『とりあえず押し込んだ!ってのは片付けじゃないぞ?』

 

『わかってます!次から気をつけます』

 

 

 

 

「で?今日は何をご馳走してくれるんだ?」

 

そう言いながら押し入れに近付く救。

…そのまま取っ手に手を掛け………

 

 

 

「提督?乙女の部屋を漁るのは…めっ…ですよ?」

 

またもや吹き出す武蔵。

 

「す、すまんな…何か気になってな」

 

そりゃそうだろうな?

そんだけギチギチしてたら気になるよな…わかるぞ?相棒。

 

「洗濯した下着とか入ってます…見たいんですか?」

 

お前の下着は暴れるのか?

 

 

「ん?じゃあ見てみたいな」

 

ブフッ…

つ、強いな!相棒ぉ……さすがだwwww

 

「ええ!?!?」

 

くっ……くくっ…大和…!

そんな素っ頓狂な声を…上げるなんて…!!

いや、いいぞ!?もっと攻めろ!相棒ッ!!

 

「…相棒?何が目的だ?」

 

「ん?好きな人の全てを知りたいだろう?」

 

「………なるほど」

 

ヨォシ!!この提督は馬鹿だッ!

行け!行け突き進めッ!こりゃ面白い…くそぅ!腹痛ぇ

 

 

「なっ…まっ……えっ」

 

大和も嬉しさの戸惑いとで…なんて表情だ!

クソァ!がまんだ!我慢するんだ武蔵!まだ笑うな!!

 

 

(武蔵ッ!助けてよ!!)

 

(無駄だな…奴が退くと思うか?)

 

(いいえ…でもッ!バレるわけにはいかないのよ!私にも意地があります!大和型としての意地が!!)

 

(くっだらない意地だな…)

 

(言わないで)

 

 

 

 

 

「…ねえ?大和?武蔵?この襖…震えてない?」

 

「ナンノコトカシラ」

 

「え?何?猛獣でも飼ってんの?」

 

「ソンナワケナイデスヨ」

 

ある意味猛獣かな?なんて武蔵は思う。

 

 

そして、救が襖に手を掛けた瞬間…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

襖は雪崩を起こしたように中身と共に救に襲いかかった。

 

 

 

「んぎゅ!?…!…!」

素っ頓狂な言葉と共に諸々の下敷きになる救。

救いを求める声は微かにしか聞こえない。

 

「提督!?!?」

青ざめる大和、

 

 

「ブッ…ブハッ…クハハハハハハハ!!」

笑いで赤くなる武蔵。

 

 

 

 

「提督っ!?提督ううう!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっとのことで救出…もとい掘り出すことに成功した大和。

 

 

「これは…いったい…」

呆然とする救。

 

「あ、相棒…ぷっ……そ、その左手を見てみろ…」

 

 

 

「「あ」」

 

左手に握られていたのは…大和の下着(上)だった。

 

 

「………」

 

「洗濯してますからね?」

 

「……」

ブラと大和を交互に見る救。

 

 

「本当に洗濯してますから!嗅いでみてください!柔軟剤のいい匂いがしますから!ほら!ほらあ!!」

 

「いや、それは不味いかなと…思います」

 

「いいですから!脱ぎっぱなしのを部屋に放置されてると思われるくらいなら!いいですからぁあ!!」

 

「い、いや…」

 

「さあ!!」

 

 

おぉ…なぜか形勢逆転だな…

さあ!どーなる?腹筋が痛いぞぅ!!

 

 

 

 

「…わかったよ!大和!うん!洗濯済みだ!うん」

 

「何もやってないですよね!?」

「さぁ!どうぞ!怒りませんから!ちくりませんから!!」

 

 

「い、いやぁ……なんというか…」

 

「いいじゃないですか!!その内にそれよりも恥ずかしい事をするんですから!」

「なんなら脱ぎましょうか!?いっそのこと!ここで!!」

 

 

「はーい!大和!そろそろ暴走やめような?相棒が困ってる…クヒヒ」

 

「笑ってんじゃん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?大和は…あれなのね?色々と押しつぶされそうでこうなるのね?」

 

「………はい」

 

「一気に緊張の糸が切れるとこうなるのね?」

 

「はい」

「すみません…」

 

「…まぁ、私からも補足すると…。相棒、お前に何かあった時は金剛や三笠さん達と同じくらいに色々と大和も走り回るんだ」

「それは…"大和"としてのプライドや責任感というのもあるだろうが…何があってもお前が帰ってくると信じてるから…その帰る場所を守ろうとするんだ」

 

「だからお前が無事だと…ここに帰って来たんだと分かれば…安心してしまうんだ」

 

武蔵は優しい表情で…大和の肩に手を置いて言う。

そうか…と、彼は言う。

 

 

すまなかった…と。そして、続けて…

 

「その分たっぷり甘えてくれ」

 

「え?」

 

「明日は…その分な…甘えてくれ」

彼は言った。

 

 

「…いいんですか?」

「わ、わたし…こんなに大きな…お姉さんなのに…」

 

「?いいじゃないか。たくさん甘えるといいよ」

 

「はい!」

 

 

 

「いいセリフなんだがな……ブラを片手に持ってなければ…」

 

「言わないで…それ…」



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362話 大和と1日夫婦 ②

名残惜しいと思いながらも大和のブラを時間をかけて返却した救。

ゆっくりと差し出したソレをなんとも言えぬ表情で受け取る大和の顔に武蔵が爆笑していた。

 

ちなみにその瞬間を激写したパパラッチ(ブルーリーフ)さんは、あえなく大和に捕らえられてアイアンクローで持ち上げられていた。

青葉の頭からキリキリと音がする中で「あ……何か頭から出そう」と、マジトーンで言う青葉がかなり記憶に残った。

 

 

 

そして次の日…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう御座います、あなた様」

 

「誰だお前!?」

思わず口に出た言葉。

 

「酷くないですか?!」

 

「だって……昨日のポンコツ娘が朝ごはんの乗った食卓の横で三つ指ついて頭下げてんだもの……」

 

 

そう、この大和は昨日のある意味本来の姿失態を取り返すべく、必死に頑張っていつも通りの優等生として朝ごはんの支度からやっていたのだ。

 

「うぅ…一度イメージを持たれると大変ですね…」

 

「本来の姿だろう?」

 

「……いわないでぇ…見本みたいな娘のままでいさせてぇ…」

 

 

この感じ…

本当普段の大和を想像するとダメだわ…。

メガネ探す時の大淀とか料理するときの蒼ポートランドとか…そんな感じが……。

 

顔を洗いながらそんなことを考えた。

 

 

 

 

んで?

朝ごはんは?

味の塩焼きと卵焼きと味噌汁とほうれん草か。

シンプルイズザベスト!好きなメニューだ。

 

 

「頂きます」

 

「はい!」

 

「……ん?!めちゃくちゃ美味しい!」

 

「本当ですか!?夜中から頑張った甲斐がありました!」

 

「早朝じゃなくて?」

 

「潮の関係で、夜中からアジを釣りに行きました」

 

「は!?」

 

そして帰り次第、下処理をした後に鶏小屋から卵を取って…駆逐艦農園のほうれん草や、野菜を収穫……」

 

「そして、新米を釜戸で炊き上げて……「そこまで!?」

 

「はい!もちろんです!」

 

 

 

「いや…本当に美味しいから…でも、何もそこまでしなくても…」

 

「あなた様に喜んでもらえるなら…私は何でもしますよ」

 

「朝カレーではないのね?」

 

「ホテルネタはNGですよ」

 

「洋食バイキング…」

 

「ホテルネタは…」

 

「朝食チケット……」

 

「怒りますよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんて会話をしながら2人で朝ごはんを食べる。

釜戸で炊いて、おひつに入ったご飯はマジで美味かった。

 

「…大和は料理が上手いな」

 

「そうですか?」

 

「うん、かなーり美味しい」

 

「ふふっ…そう言ってもらえると、頑張った甲斐がありましたね」

「師匠直伝の料理ですから♪」

 

…恐らく、鳳翔だろう。

鳳翔の味付けは本当に俺好みが基準だからなあ…。

 

 

「大和の手料理が食べられるなら幸せだな」

 

「煽ても何も出ませんよ?」

 

笑いながらの食卓は楽しく、すぐに過ぎ去ってしまう。

 

 

 

「大和?渡したいものがあるんだが………」

 

「……ッ…。もう?あなた様?今は食事中ですよ?」

 

「そ、そうだな」

 

ん?心なしか…

否定的な気が……?

 

 

 

 

ご馳走様でした。

と言う言葉を終えて前を見ると大和が居なかった––––––と、同時に背中に柔らかい感触が‥ゲフンゲフン。

 

「大和?」

 

「………」

ぐすん…と言う小さな小さな声が聞こえた。

肩のあたりに何か温かいものを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

大和は泣いていた。

 

恥ずかしい姿を見られたからではない–––

 

 

 

 

「……っぅ」

彼女の声と力が強くなった。

 

 

「大和?」

 

「ず…すごしだげ……ごのままで居させてくだざい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたが無事でよかった」

「あなたが帰って来てくれて良かった」

 

 

大和はそう言った。

「あなたが…いつも危険な目に遭うたびに…心が締め付けられるんです」

 

「ぐすっ…普通に生きてくださいって言うべきなんですよね。でも…私はあなたと離れたくない…。わがままですよね」

「それがあなたを危険に晒す事になるのに」

 

「絶対に私があなたを守りますから」

「どうか…グスッ…見捨てないでください…!!」

 

「きっと危険な目に遭わせてしまうと思います。でも!命に替えてもあなたを守り切りますから!!お願いします」

 

 

 

「大和…」

 

「お願いします!」

 

 

 

 

振り返りたくても…アホみたいな力で抱きしめられてるので叶わない。

 

 

「や、やまとぉ…」

 

「離したくないんです!」

 

ちゃうねん

めっちゃ苦しいねん…

 

 

 

 

 

 

 

ガクッー…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんて事にはならないッ!!

 

泣いているから。

愛する人が…泣いているから。

 

グッと堪えて何とか振り返る。

びっくりした彼女の顔が目の前にあった。

 

「……あなた様?」

何とか絞り出した声で彼女は言った。

 

 

「大和」

 

「グスッ…はい」

 

「君が俺を守ってくれるように……俺も君を守る」

「…俺は居なくならないよ」

 

「……」

 

「不安にさせてたんだな…ごめんな」

 

「…私こそすみません……取り乱して…」

「もう少しだけ……このままでもいいですか?」

 

「好きなだけ…いいよ」

「でも…約束の証として…これを君に」

 

 

 

 

 

 

 

      

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ッ」

「い、嫌です」

「受け取れません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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363話 大和と1日夫婦 ③

 

 

 

「私は…その指輪をお受けできません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は固まった。

 

初めてだった。

初めて断られた。

 

混乱した。

 

「や、大和…?」

「俺のこと…好き…なんだよな?」

 

「はい、愛しています」

 

「ほ、本当なんだな?」

 

「はい!本当です!嘘偽りありません!この私全てを懸けてあなたを愛しています!」

 

「なら何で!!?」

 

慢心があった。

必ず受け取ってくれると言う心が…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたが居なくなるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は確かにそう言った。

 

「居なくなる?」

 

「夢に見るんです。あなたが居なくなる夢を」

「敵にあなたが倒されて消える夢」

「笑顔で帰るって…あなたの世界に帰ってしまう夢」

 

「どっちの夢も…私達は何もできずに泣くだけです」

 

「それが…指輪にどんな関係が…」

 

「私が指輪を受け取った次の日なんです」

だから!だから!と彼女は懇願する。

 

「あなたが消えてしまうくらいなら…私は指輪を受け取りたくないです」

 

 

 

俺はそれ以上…

強く何かを言うことはなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

指輪を貰ってウキウキな次の日のデート。

街に現れた深海棲艦の攻撃から市民を庇ってあなたは………

 

守りきれなかった無能な提督と艦娘と言うレッテルを貼られるようになる…。

 

その悲しみが…何よりリアルで…

 

 

だから私はいい…

例え指輪を貰えなくても……あなたが生きていてくれるなら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのに……

今目の前に深海棲艦が居る。

 

 

 

彼が住民に避難を促す声が遠くのように聞こえる。

 

 

 

 

 

 

 

      

 

 

 

気を取り直して…デートに来たはずなのに…

 

指輪も受け取らなかったのに…

 

何で?

 

どうして?

 

 

 

 

 

どうして夢に見た未来が目の前にあるの?

 

 

 

 

 

立ち尽くす私に彼が大声で言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大和ッ!!皆を守れ!!」

 

 

 

 

 

それが正しい指揮だ。

大切なものを守る為の正しい指揮。

自らの命よりも大切な人達を守る為の……

 

 

 

 

 

なのに体が動かない。

何発も攻撃を喰らってフラフラする。

 

震えるのは…痛いからじゃない…。

あなたを失うのが怖いから。

 

 

 

 

 

あまりにも夢に見た光景と重なりすぎて…私は動かなかった。

 

格好の的になって愛する人の声すらも遠くに聴こえるほどに…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ウフフ…デクノボウなのかしら?……あの人間の方がよっぽど守ってるわね……』

 

『でも…逃がさない』

 

 

ズドンと撃ち出された1発の砲弾。

 

 

私が避ければ街は…愛する人は…死んでしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だめぇ!おねえちゃん」

 

1人の少女が私の目の前に立った。

 

「あなた…何して……」

 

「いっつもお姉ちゃんが街を守ってくれてるの!」

「だからわたしが…まもるのぉ!!」

 

「逃げなさい!あなたじゃ…」

 

 

「だからって…やめたくないのぉ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉に頭をガツンと殴られたような気分だった。

 

 

ハッとすると…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女の子は居なかった…。

代わりに彼が目の前に居た。

 

私に背を向けて両手を広げて…

 

 

 

 

 

人間なんかひとたまりもないはずなのに

 

 

 

 

 

 彼が言った

 

 

 

 

「…守るって言ったんだ」

 

 

「それに俺は…お前を信じている!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちがう…

 

 

 

 

 

私も言ったじゃないか…

でも彼を失いたくない…

 

大好きな小々波の人達も失いたくない…

 

 

 

 

でも

 

 

 

 

 

でも…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嫌だッ!!

 

 

 

 

守れないのも…

失うのも嫌だッ!!

 

 

 

 

 

 

私は誰だ?

 

私は大和だ。

 

 

この国最強の戦艦!

この国の名前を冠した世界最強の戦艦大和!!

 

 

大切なものも

愛する人も守れなくて何が最強か

 

迫り来る悪夢も打ち破れなくて…何が最強か

 

 

「私は…大和」

 

彼女は目を見開く。

見ろ

突破口が必ずある。

 

 

 

 

 

 

敵から放たれた砲弾は彼と彼が庇う人に向かう。

 

 

 

 

やれる。

いや!やる!

 

大和はその射線上に入る。

 

 

「大和!?」

 

何歩も彼の前に私は出て行った。

 

 

そして––––––

 

 

 

 

 

 

 

 

その砲撃を受け止める。

 

 

ガリガリガリィ!!と足の艤装が地面を抉る音が響く。

 

「んぐぅううぅぅあぁぁあああッ!!!」

 

手が痛い。

足も摩擦で痛い熱い。

 

 

んなもん

どうでもいいッ!!!

 

 

 

 

 

 

負けられないッ!!

失いたくないッ!!

 

「ぉああぁぁぁあああっ!」

 

 

 

後退する大和のスピードが落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『止めた…だと!?』

 

騒つく周辺。

でも最早、音も聞こえない。

 

 

 

 

「…ッだらぁああああ!!」

 

大和はその砲弾を敵に投げ返した。

 

 

『!?』

 

ボカァン!!!!

敵に着弾した砲弾が爆発を起こして周囲を巻き込んで行く。

 

 

『な…う、撃てっ!うてえええ!!』

脅威。

まさに自分達を脅かす脅威だった。

 

 

全員が大和に砲撃を行う。

大和は艤装で庇いながら撃ち返す。

 

撃ち出された三式弾が敵を屠る。

 

何発も!何発も何発も撃ち込んだ。

 

 

 

壮絶な撃ち合いが続く。

最早敵は大和だけを狙う。

 

 

 

 

バカァン!!

左の艤装が爆発した。

 

 

 

 

膝が笑っている。

今にも折れそうだ…

膝をついたら楽になるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

だから何だ。

 

私は…

私は!!

 

 

 

 

 

 

 

 

全部…守り切るんだッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【そうだよ…守り切るんだよ】

 

誰かの声が聞こえる。

どこかで聞いた…声がする。

 

 

その声は言った。

 

【私達が…そんな悲しい未来にさせないから】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カッと目を見開く。

 

 

 

 

グンと背中を押された気がした。

 

震えて折れかけた膝がシャンとした。

 

周りが全てスローに見えた。

 

 

 

 

いつもより頭がクリアになった––––

 

 

「うおおおおおおぉおッ」

 

残った右側の砲身から一気に放つ。

 

 

ズドドドドォォォン!!!

 

横一閃に爆発が起こる。

その光は…反撃の光は敵陣を薙ぎ払う。

 

 

『ぬぅううう!?!?』

 

敵が大和の思わぬ反撃に尻込みする深海棲艦。

 

 

 

 

 

はあ…はぁ…ッ!

はぁ

 

息を整える。

 

はー……スー…

 

 

「…大和?」

 

 

 

 

大和がくるりとこちらを向いた。

 

「どうした?!」

 

救が彼女に呼びかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「下さい」

 

 

 

 

 

 

 

 

「何を…?修理剤か!?待て…今連絡を…」

 

「いえ、指輪です」

 

「え?こ、こんな時に!?」

 

「こんな時だからこそ……」

 

 

 

「こんな悪夢にあなたを…大切なものを奪わせません!!」

 

「あなたが私達を庇った時に…思い出したんです」

 

 

 

「守り切るって言ったことを…!!」

 

 

だから

 

 

 

 

 

 

あなたの愛の証を下さい(指輪を…下さい)

 

一生変わらない愛の結晶を(覚悟を分かち合う指輪を)

 

「私に下さいッ」

 

 

 

 

 

 

 

彼女は今までのどんな時よりも真っ直ぐな目を彼に向けた。

 

 

 

 

 

彼は笑った。

 

「ああっ!!」

そして彼は頷いた。

 

 

 

 

「不安だったぞ…断られた時は」

 

「すみません…でももう大丈夫です」

 

 

 

 

互いに歩み寄る。

共に同じ歩幅で同じ歩数。

 

彼が指輪を差し出した。

私が左手を差し出した。

 

私の左手を取って…彼が持つそれが左手の指に通される。

 

 

硝煙と…焦げた匂いが海風に流される中で…

 

誓いの指輪と口づけが交わされた…。

 

 

ほろりと滲む涙をキュッと目を瞑って親指で跳ね除ける。

 

 

「心から愛しています」

「私はどんな悪夢にも負けません」

 

 

 

 

 

行くよって声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶対に諦めない。

 

この覚悟は……

何があっても折れないっ!!!

 

 

 

 

大和の体が光る。

 

 

 

 

 

 

大和 改

 

 

 

 

 

 

 

大和 改 超高揚状態

 

 

 

 

 

 

 

『…改?改ニにもなれない…出来損ないがぁぁッ!!』

 

 

 

 

 

 

 

そうだ。大和には改ニが無い

 

 

だが、次の瞬間…大和の雰囲気が変わった。

その大和に対峙する…敵である彼女は見た。

 

大和に数多の何かが力を貸すのを。

後ろの男が彼女を変えたのだと!!

 

…今の彼女からは改ニにも匹敵するほどの力を感じる。

 

 

 

 

大和から一斉射が放たれ、大半の深海棲艦がその姿を消した。

 

慌てふためき逃げる者も現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし

 

 

 

彼女…

南方棲戦姫だけは彼女に向かってくる。

 

『ぬぁぁあああ!!シズメッ!皆底に…水底にィ!!沈めええええええ!!!!!!』

 

 

がむしゃら…と言う言葉が似合うだろうか?

手当たり次第艤装から発砲してくる。

 

大口径の主砲は受け止めて投げ返した。

何体もの深海棲艦を海へと堕とした。

 

大和は其れを悉く撃ち落としながらこちらに全速力で向かう彼女にその拳を叩き込む為に構えた。

 

 

 

 

『沈め…沈めよおおお!!』

 

 

「私は負けない。あの子達が教えてくれた…」

「幸せも…この手で掴み取って離さないっ!!向かってくる不幸も…この手で払い除けるッ!!」

 

 

「私はもう二度と…後ろに退かないッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『沈め…ッ!!暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い水底に沈めぇええええええええええ』

 

 

 

「沈まないッ!この手は…その為の………一歩だぁぁぁああああッ」

 

 

 

 

大和の魂の叫びと右拳がゴシャリと言う音と共に南方棲艦姫に突き刺さった。

 

 

『沈め…沈めッ!うがぁああああッ!』

大和の渾身を受けながらも彼女も右拳を大和に向ける。

大和の左頬にその右拳がガツンと言う音と共に突き刺さる。

 

 

踏ん張る地面が割れる。

それでもその足腰も、右腕もまだ前に突き出す。

 

その手で暗闇に引き摺り込むと言うのなら…私はその暗闇を払い除ける。

 

ミシミシと音が聞こえた。

左頬と歯が痛い。血の滲む味がする。

でもそんなのどっでもよかった。

 

私の意地を…覚悟を貫き通す方が大事だったから!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

行けって声が聞こえた。

 

誰かが背中を押してくれた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ッ!ッぉおおおおおおおおッ!」

 

グッと体が前に動く。

南方棲艦姫の体が少し後ろに退がる。

 

 

『負けるか…負けるがぁぁぁあ!!』

 

 

 

 

 

彼女も負け時と力を込めて前に進む–––––––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上の力で大和は拳を振り抜いた。

 

 

「私だって…負けないぃぃあぁああああああッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボロボロと崩れる体…

その薄れ行く満足気な意識の中で見た。

 

 

 

輝く大和は…美しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ペタンとへたり込む。

息を切らして…

駆け寄る彼に笑顔で親指を立てる。

 

 

 

 

 

「少しは…見直しましたか?」

 

 

 

 




お気に入りが770!!ありがとうございます(´;ω;`)


珍しくバトル回?

大和編は次回で終わります!


少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!


感想などお待ちしています!!


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364話 続 大和と1日夫婦 ④

あの声は…

あの子は一体誰だったんだろう?

 

そう思いながら彼女は彼等の方を向く。

 

 

怖い思いをさせた…

それを小々波の皆に謝らなければ…と思った。

 

 

 

 

「あ、あの…ご「ありがとお!!」

 

頭を下げても…批判の一つくらい覚悟していた。しかし、彼等の口から出た言葉は想像とは真逆の言葉ばかりだった。

 

「カッコよかった!!」

「強い!すごい!」

「いつもありがとう!」

「ラブパワーすごーい!」

 

 

「艦娘さんも怖かったんだよね」

「なのにあんなに踏ん張って立ち上がってくれて……ありがとう」

 

 

「…そんな」

途端に恥ずかしくなる。

怖かったのは怖かったけど…うん、敵が怖いとかじゃなかったのよね……。

言いづらいなぁ……

 

救の方を見る大和。

救は黙って首を横に振った。

 

 

「皆さんも…私達がきっと守りますから!」

彼女はニコリと微笑んで言った。

大和は世間を知った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

「大和?」

 

 

俺の呼びかけに大和はこちらを見てニコリと笑う。

そして…俺の手を握って言う。

 

「…私は夢に悩まされていました」

「あなたを失うくらいなら…指輪なんて貰わない方がいいって」

 

「でも……その未来を…形作るのは他でも無い私なんだって気付いたんです」

 

 

「金剛さんほど…桜三笠さんほどの強さはありませんが…それでも…私もあなたを愛する事は誰にも負けませんよ」

 

彼女は更にニコリと笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガタンガタン……

 

 

 

 

 

 

 

 

ガタン…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そ、そうか…でも今言うことじゃ––––––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぅおおおおお!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛の言葉は…

 

 

 

 

 

ジェットコースターの上で言うことでは無い––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「おほほほあぁぁぁあ!!!」」

2人の声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

市民達の粋な計らい…と言うか、何というか…

遊園地に招待された俺と大和。

 

まあ、デートが潰れた分の補填と考えれば有難いんだけど…さ?

 

 

 

 

 

 

初手ジェットコースターは凄まじい。

入園の瞬間に手を引かれてごーとぅージェットコースター。

 

 

 

 

ガタンガタンと音を立てながらゆっくりと頂上に向かう悪夢…。

 

「見てください!すごい高いですよ!うわぁー!綺麗なけしきーーーーーーーーーー」

 

何で周りを見る余裕があるんですかね?

 

 

 

 

そして一気に加速して滑り出すジェットコースター!!

 

「あはは…私の速度より速いですよ!」

 

 

冷静な見解ありがとうございます。

 

 

「私もこれくらい早く動けたら……」

 

 

時速が100km近い戦艦って最早バケモンですよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

「は、早かった…島風もマジ無理!とか言うレベルだな…ありや」

  

 

 

「む!他の子の話はダメですよ!提督…ううん、あなた!こっち!次はアレに乗りましょう!」

 

大和に手を引かれて走る。

今の彼女は艦娘の大和では無い。

1人の…女性だ。

 

 

あんなに笑顔を見せながらはしゃぐ彼女を見るのは久しぶり…いや、初めてじゃないか?

 

 

「さあ!並びますよー!」

 

「…コレは……また…」

 

フリーフォール……だとぉ………

 

 

 

 

「ぁぁぁぁ…

 

「ああああ

 

「あああおああ

 

「ああああぁ

 

「ああああああぁ

 

「ぉおおおおお!!!!!」

 

 

「たーのしーーですねえええ!!」

 

 

ヒュン…ってした!

ヒュンってなったぁ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

んで

 

 

 

 

「思い切り行きますよ?」

 

「や…やめーッ––––––––

 

高速回転するコーヒーカップ。

 

「あはははは!たーのしいいいいい!!」

 

「あばばば!飛ぶッ!飛んじゃうっててええ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

んで

 

 

 

「さあ!飛びますよ?」

 

「待て!俺は飛ばな––––––––あぁぁぁぁぁぁあああ…

 

バンジージャンプする大和に抱えられてのバンジージャンプという名の心中もどき。

 

 

「たっのしーですねえ!」

 

「お前…俺のこと恨んでたりしない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楽しい時間というのは飛躍過ぎ去るものだ。

空はオレンジ色に染まり、その日の終わりを儚く告げ始めた。

 

少し寂しそうな表情の大和と帰路に着く。

 

 

 

 

大和は思い返した。

 

 

 

 

 

とにかく気を張っていた。

腑抜ける時の事は武蔵しか知らない。

それが大切だと思ってたから。

いつだって私が冷静に居なければと思っていたから…。

 

 

あなたを失うのが何よりも怖かった…。

それは、私が死ぬ事よりも怖いから…

 

指輪を断ったあの日…1人で泣いた。

 

 

それでも…この鋼鉄の意志は…あなたを守る為……だった。

 

 

なのに

私は弱い。

 

その愛が欲しくて欲しくて仕方ない。

 

たった数グラムの銀細工が

欲しくて欲しくて堪らなかった。

 

 

 

挫けそうな心をあなたが晴らしてくれた…。

その体全てで私達を守ろうとしてくれた…。

 

なら、あなたの声に応えない私(最弱の思いに応えない最強)は…最弱じゃないか。

 

だからこの身を以てあなたを守ると決めた。

 

 

 

私の内側から聞こえた声は…

私に全ての覚悟を決める後押しをしてくれた。

 

馬鹿なのは分かっていた。

でもあの場で貰いたかった。

あなたの思いを…。

 

 

 

あなたがくれたこの指輪…。

私の限界を超える力を貸してくれた…。

あなたがより隣に感じられて……

 

こうして今も隣に居られる…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…えへへ」

 

大和は左手を天に仰ぎながら表情を綻ばせる。

 

「ど…どしたあ……」

絶叫マシンやらお化け屋敷やらを連れ回されて満身創痍ながらも彼女に問いかける。

 

 

 

 

 

「幸せたなあ…って思います」

 

「そうか……」

 

 

「あなたを守り切ります。どんな悪夢が私を惑わそうとも…きっと必ず」

「この指輪はその覚悟の証です!」

 

「一緒に分かち合う為だろ?」

 

「…ッ!はい!」

 

 

 

 

 

 

「ポンコツでも良いじゃないか」

彼はポツリと言った。

 

「え?」

 

「君の弱いところも含めて全てを見られるなら幸せだ」

「その分俺がカバーする。俺に足りないところを君がカバーする」

 

 

「夫婦ってそんなもんだろ?」

 

「はい…」

 

「でも片付けはしっかりとや「それ以上は言わないでください!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛しています…あなた様」

 

「俺も愛してるよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺が背負われて無ければとてもいい会話なんだろうけどな」

 

「ですね」

 

 

散々連れ回された救は3度目のバンジージャンプで大和が一瞬手を離すなどの悪ノリで膝が笑い始めた。

その後もひたすらと絶叫マシンでコテンパンにされて、現在帰路を大和に背負われて移動中なのだ。

 

 

 

 

「情けねえ……」

 

いや、ほんとに恥ずかしい…

 

 

「いいじゃないですか」

大和が言った。

 

 

「夫婦は支え合うものですよね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「自立する足を折ったのは君だけどね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え!?!?大和さんが…ジャージ!?」

 

「い、意外…」

 

数日後、鎮守府では、かなりラフな大和が見られるようになった。

 

「この私も本当の私ですよ」

 

「まあ…今の方がいいかなあ……?」

 

「そうねえ、親しみやすそうよね」

 

 

少しだけ砕けた大和が皆に囲まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダーリン!遊園地いきましょーー?」

 

「バンジーは嫌だぞう!絶対に嫌だぞうううう!!」

 

同時に大和はバンジーの恐怖を救に植え付けたのだった…。



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365話 あなたと会った日だから

「あちゃぁ……また失敗した」

 

ぽりぽりと頭を掻く1人の少女。

彼女の目の前には失敗した料理があった。

 

「ま、まだ挫けないんだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は作り続けた。

毎日昼夜と…ただ、1人の為に……感謝と元気を伝える為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………もうやめよう」

食材も無駄。時間も無駄だ。

 

度重なる失敗に彼女の心は折れてしまった。

何度も挑戦すれば上手くなる!積み重ね!と人は言うけれど…

積み重なるのは失敗作と言う名の焦げたオムライスと悔しさとダメージ。

 

 

 

 

 

 

––指揮官に美味しい手料理を作って食べてもらって元気になって欲しい––

 

その一心で始めた料理だった。

彼の好きだと言うオムライスを何度も作っては失敗した料理を自分で食べた…全然美味しくなかった。

 

 

 

 

「………あはは…」

「赤みたいに強くなければ…料理もできない」

「あたしって……」

 

 

 

 

蒼オークランドは決して弱く無い、

戦いのセンスも高く、状況判断能力も優れている。

指揮官…救をブルーオースの世界で最初期から支えている彼女であるが…戦姫が増える毎に彼女よりも強い者が現れる。

 

特に、赤…今は大人しく彼等に力を貸すが…彼女は厄災…。

航空攻撃、魚雷…と幅広い攻撃手段を持つ…だけならまだ良いが、彼女とは体を共有している…。

 

つまり、赤が出れば…蒼オークランドの出番はある意味無いのだ。

 

 

ならば…せめて、と他でカバーしようとするが…

艦娘やKAN-SENも増えた今、その他のことですら遅れをとってしまう。

 

焦ってしまう。

 

 

知ってる。

この気持ちは何一つ揺るがない好きと言う気持ちなのに…

置いて行かれそうで怖いんだ。

 

 

 

 

 

 

そろそろ指揮官は怪我が回復する。

そうなる前に元気つけたかった。

でもその焦りか、私のレベルの問題か…渾身の出来には程遠かった。

 

 

仕方ないんだ。

私には向いてないんだと自分に納得して、その失敗したオムライスを置いてとぼとほと部屋に戻る。

 

 

 

『指揮官ー!ほら!オークランド特製オムライスだよ!これ食べて元気出してリハビリ頑張ろ!』

 

『おお!美味い!美味いよ!オークランド!やっぱり君は最高だな!リハビリも頑張れるよ!』

 

なんて頭の中の劇場でのやりとりは現実では交わされそうにない。

 

 

 

ため息が漏れる。

4月だと言うのにまだ寒いのは…どうしてだろうか。

ため息を吐く度に幸せが逃げると言うが……

幸せが遠く感じるからため息が出るのではないのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

「諦めるんですか?」

廊下で彼女のに声をかける人物がいた。

 

「ほ、鳳翔…さん」

 

「諦めがつくほどのものでしたか?」

物腰は柔らかな感じであるが、いつものトーンではない。

ある意味プレッシャーを感じる蒼オークランドだった。

 

「何事も諦めるのは簡単で楽ですけど…それは自分の頑張りを否定する事になりますよ」

 

 

 

「あたしは…!鳳翔さんみたいに器用でもないし!料理がうまいわけでも!強い訳でもないよ!!」

 

 

「だから何ですか!!!」

強い声だった。

やけに周りが馬鹿みたいに静かになった気がした。

 

 

「だからやめるんですか?そうやって理由を付けて」

「彼の隣に居られなくなる…って理由も添えてしまって…逃げるんですか?」

 

「いや…そんな事は「なら何ですか!?」

 

 

「私は軽空母です」

「正規空母程強くはありません」

「速力が速いわけでもありません、夜戦ができるわけでもありません」

「強いて…強いて言うなら利点は燃費の良さでしょうか」

 

「あの…?鳳翔…さん?」

 

ですが…と彼女は続ける。

「でも、そんな事関係ないんです」

 

 

「ここに居る皆1人誰1人としてその存在に意味の無い無い人なんか居ませんよ」

 

 

 

「でも!それは鳳翔さん達に役割があって!特別愛されているからでしょ!?」

 

つい声が荒くなった。

 

「ワタシは……赤みたいに強くも無い!鳳翔さん達みたいに料理ができるわけでも!大淀さんみたいに指令補佐ができるわけでも!朝日さんや明石さんみたいにサポート出来るわけでも!金剛さんや桜三笠さんみたいに強いわけでもない!!」

 

「頑張ったって積み上がるのは失敗と悔しさだけ」

 

「なのに!そんな分かったような言い方をしないでよッ!!」

 

 

 

 

 

ハッとした。

しまった…と思った。

勢いで私はなんて事を言ったんだろう…と。

 

 

 

チラリと鳳翔を見る。

だが、彼女は怒った様子もなかった。

ただ…少し寂しそうにこちらを見ていた。

 

 

「なら…」

鳳翔は重い口を開いた。

 

なら…出て行け…って言うんでしょ?

そうよ…きっと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なら、何であの時にあなたの名前をあの人は呼んだのでしょうか?」

 

 

 

「何であなたの帽子を今も被り続けてるのでしょうか?」

 

 

 

 

 

「……え」

 

 

 

 

あの時と言うのは…彼が林と戦った時だ。

 

彼のピンチに…あの人は私の名前を叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

『この帽子…私が隣に居るって証』

『ピンチの時は私を呼んで!いつでもどんなに遠くても駆けつけるから』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『オークランドッ!!力を貸してくれええ!!』

 

 

『指揮官ッ!!やっと呼んでくれた…!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだ。

ヒッパーさんも、オイゲンさんも、朝日さんも、ポートランドも、神通も、エリザベスも、ベルファストも、私より強い赤も居るのに…

あの人は私の名前を呼んでくれた…。

他の誰でも無い…私の名前を……

 

 

私の宝物のキャスケット帽を今も被ってくれている。

 

 

 

 

 

 

私の運命の人…。

沈み行くソロモン前線基地から…私を生み出して助け出してくれた指揮官。

2人で基地から脱出して……どんな時も…ううん、時に離れ離れになったけど…それでも隣に居てくれた…。

 

 

そうだ…

弱いのは…諦めてるのは私だ。

指揮官のピンチを助けるって言ったのも私だ!

 

 

なら

指揮官を元気付けるのをやめたら…私は自分でした約束を自分で破ることになるんだ!!

 

 

 

 

 

 

鳳翔は黙ってじっと彼女を見つめていた。

先程のプレッシャーでなく、少し悲しげな…

 

 

 

 

「………鳳翔さん」

 

「何ですか?」

 

 

 

 

 

 

彼女は頭を下げた。

「偉そうな態度をとってごめんなさい!!」

「お願い!…ううん、お願いします!私に料理を教えてください!」

「大好きな指揮官に…元気になってもらえるような料理が作れるようになりたいんです!」

 

 

「蒼オークランドちゃん…」

 

「私はあの人を元気にしたい!」

 

 

 

 

 

 

 

「ふふっ…」

彼女が笑った気がした。

鳳翔は嬉しかったのだ。

鳳翔はオークランドが部屋に帰って塞ぎ込むと少し心配していた。

 

でも彼女は強かった。

自らを省みて、謝ることもできた。

恥ずかしい気持ちを捨てて教えてくださいとお願いできた。

 

なら…私に出来ることは……

 

 

 

 

「間宮ちゃんのパフェ…」

 

「え?」

 

「それをご馳走してくれるなら…」

「私、頑張って教えちゃいます」

 

 

「鳳翔さん!!」

 

蒼オークランドは鳳翔に何度もありがとうと頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で…何を食べているのですか?」

 

「ん?!」

 

 

夜の食堂では暗い中で1人何かをしていたようだ。

声をかけられてビクッと跳ねた。

 

 

その正体は…救であった。

 

「あなた……それは」

 

彼はオークランドが置いて行ったオムライスを食べていた。

 

「…それは?」

 

「ん……オムライスがあったから」

「ここ最近ずーっとあるんだよね。少しずつ美味しくなってると思うけど…」

 

「誰が作ったか分からないものを何も言わずに食べて大丈夫なんですか?」と、彼女は少し笑いながら聞く。

 

「ん……まあね」

「優しい味がするんだ」

「鳳翔は…誰が作ってるか知ってるのか?」

 

「さあ…?」

悪戯に答える鳳翔。

 

そうか…と、彼は言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……頑張りますか」

「私は厳しいですよ!」

 

 

「はい!!」



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366話 君と会った日だから 蒼オークランドと1日夫婦

「鳳翔さん…」

不安そうな彼女が名前を呼んだ。

 

「大丈夫!自信持って」

鳳翔はニコッと笑って彼女の最中を軽く叩く。

 

 

 

料理を教わりだして数日後の事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせ!指揮官!」

 

「ううん。今来たとこだよ」

と、会話をしながら船に乗る。

 

 

まだまだ寒い空の下。

海風を浴びながらの船旅を終え、4月とは思えない程に寒い道を行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は最愛の人とデートに出ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私服姿のあなたの後ろを歩く。

目立つお揃いの帽子が少し嬉しい。

 

私の手には、今朝1人で作ったお弁当。

愛情も溢れんばかりに盛り込んだお弁当…喜んでくれるかな?

 

 

空いた右手が寂しくて…

あなたの左手を握りたいのだけれども…

破裂しそうな、飛び出しそうなくらいにうるさい私の心臓の音だけが身体中に伝わって……緊張してその一歩を踏み出せない。

 

 

「あ…」

やっと絞りに絞り出せた一声は…たった一文字の言葉で…

聞こえているか分からない程に小さくて…

 

 

「ん?」

と、立ち止まってこちらを振り返るあなたに私は…

 

「う、ううん!寒いね!今日は」

としか返せなかった。

 

手を繋いで欲しいな…と言えない私が悔しい。

繋いでくれないかも知れないなんて思ってない。

でも…その勇気が私には少し足りなかった。

 

 

 

「寒いな」

と、彼は言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不意に体が暖かくなった。

 

 

 

あなたが上着を私に掛けてくれたんだと自分を見て気付いた。

 

 

 

「え?し、指揮官?!」

 

「これで少しは暖かいか?」

 

「え!?う、うん!でも、あなたは!?」

 

「意外と着込んでるから平気さ」

 

 

あなたの温もりと匂いが何だか嬉しくてつい、顔を埋めてしまう。

 

 

 

そっと手を繋いでくれた。

温かなあなたの手が冷たい私の手を温めてくれた。

 

「おー…冷やいな。オークランドの手は」

 

「指揮官があったかすぎるんだよ」

 

なんて笑いながら2人でゆっくり歩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お昼は公園で。

ベンチに座ってテーブルにお弁当を広げる。

 

「これを…オークランドが?」

 

「うん。頑張って1人で作ってみたよ」

モジモジと答える彼女。

 

『鳳翔さん達ほど上手くできないけど……』

なんて言い訳はしない。

 

「一生懸命作ったよ!たくさん愛情も込めたよ!」

精一杯の笑顔で私は答えた。

 

楽しみだなあと彼が言う。

 

 

いただきますの言葉と共に彼がパクリと卵焼きを食べた。

 

そして、ジッと私の方を見る。

 

 

 

 

 

「美味しい」

「とても美味しい」

 

「ほんと?良かった…」

「次はもっと綺麗に作るから」

 

 

 

 

確かに見た目はめちゃくちゃ綺麗な形とは言えない。

しかしそれが何だ。

それ以上に伝わってくるこの温かさは。

あぁ………あのオムライスはオークランドなのか。

 

食堂にあったオムライス。

一口食べたら分かる、誰かを思って作っただろうその味は………ずっと俺宛だったのか…。

 

 

「美味しい」

「うん……とてもとても美味しい」

 

 

 

 

「ありがとう!元気出たよ!」

欲しかった指揮官の言葉…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ッ」

結論から言う。

蒼オークランドは彼の療養中にオムライスを作れなかった。

いや、厳密に言うと作らなかった。

 

料理の練習に納得がいかなかったわけではない。

しかし…この夫婦生活で彼の復活を祝う為にその練習期間を延ばしたのだ。

もっと美味しく、よりもっと美味しくできるように。

 

 

 

 

 

 

 

 

その結果が目の前に今出た。

彼は満面の笑みで美味しいと言いながらそれを食べている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オークランド」

 

「ん?何?」

 

「指輪貸してくれない?」

 

「え、う…うん…いいよ?」

左手からそれを外して彼に渡す。

 

 

途端に失われる"何か"。それは言葉では形容し難い何かだった。

安心感?多幸感?分かんないけど…大切な何か。

 

 

不安な彼女を横に彼はそれを大切にクロスで磨いた。

そしてゴソゴソと何かをして私の方を向いた。

 

 

 

「オークランド」

 

 

 

 

「もう一度…次はこの手で君にコレを渡したい」

「もう一度受け取って…貰えるかな」

 

 

 

 

 

 

目の前に差し出された小さな小箱が開かれる。

途端に思い出される教会での景色(あの時の思い出)

 

 

「どうして今?」

なんとなく出た言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は言う

 

今日は初めて君と会った日だから…と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだ。

今日は…初めてあなたと会った日だ。

 

 

「そうだったね…あはは。指揮官に言われちゃった」

「…覚えていてくれて嬉しいな。うん!喜んでもう一度受けます!」

 

 

 

 

指輪が…彼の手から…

私の手に入る瞬間…だった。

 

 

 

 

 

 

 

「…命懸けで君を守ってみせる」

 

 

彼は言った。

 

 

 

 

「……ッ!!」

 

 

 

「私も…守るよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「幸せな毎日を君に」

 

 

 

え…

その言葉は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦争が終わっても…」

 

 

 

あなたが私に誓ってくれた…

 

 

更なる誓いの言葉…

 

 

 

 

 

 

 

「死が2人を分つまで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それはゲームの台詞…そう、指揮官のゲームでの台詞。

 

でも…

 

ただのゲームの台詞ではない。

俺が俺の意志で言うんだ。

だから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺が君を幸せにしてみせる」

 

 

 

 

 

 

 

そう誓うんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦力を強化するための誓いではない。

照れ隠ししなくても分かる。

 

この言葉は本気の言葉だっ…て。

 

 

 

 

「指揮……官…?」

 

 

 

「どんな困難が待ち受けていようと、どんな高い壁が俺達を隔てようとも…きっと乗り越えてみせる。君と共に」

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

手先が温かくなった。

あなたが手をギュッと取ってくれている。

もう一度左手に誓いの指輪が収まった。

 

自然と熱いものが込み上げてきた。

この感じは……

 

 

呆然としたままで涙だけが私の頬を伝った。

 

 

「え!?お、オークランド!?」

なんて彼は言わなかった。

 

ただ、優しい優しい表情で私を見つめてくれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その指輪は今日2度目の一歩を踏み出す勇気を私にくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん、私も誓う。あなたを絶対に1人にしないって」

「どんな困難があっても、壁もあなたと乗り越えてみせる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛してるッ!」

 

彼に飛びついた。唇を重ねる。泣きながら重ねる。

わんわん泣いた。でもいい。

あなたの胸の中で泣けるなら、あなたが受け止めてくれるなら、どんな私もあなたに曝け出そう。

 

あなたを失って流す絶望の涙なんかより、あなたを思って、あなたに流す涙の方がずーーっと良いから。

 

 

「俺も愛してるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楽しい時間も終わりはやってくる。

朝よりも肌寒く感じる帰り道。

 

 

「やっぱり夜は寒いね」

と言うと、やっぱり上着を掛けてくれる。

 

「指揮官…寒いでしょ?」

 

「意外と着込んでるから平気さ」

朝と同じ返しをしてくる。

 

 

だから

 

「ダメだよ」

「2人で……でしょ?」

 

私は彼の腕に抱きついた。

ごめんなさい。これしかできないけど…

「ほんの少しでも温かくなって…くれたらいいなあ」

 

 

 

その言葉がたまらなく嬉しかった。

だから俺からももっと引っ付いてみる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜の私室にて……。

 

 

 

「……どう?」

ドキドキと緊張しながらオムライスを彼の前に出す。

 

「ん……変わらず幸せな味だよ」

 

「そっか…!良かっ–––––え?」

「変わらずって……何?私は今日初めて指揮官に出したんだよ!?」

 

「全部食べてたからね。置きっぱなしのオムライス」

 

 

「え…」

 

「優しい…なんて言うかさ、一生懸命頑張って作ったんだろなって思ってた。オークランドが作ったって分からなかったけどね」

 

「ならなんで今わかったの?」

 

「もっと前だよ。お弁当食べた時かな。あぁ…この感じは…オークランドだったんだ……って」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…本当はね?療養中の指揮官を元気つけたくて始めたんだ」

「でもね…あはは…。全然納得できるのが作れなくて…諦め掛けたんだ」

 

「でも…鳳翔さんに励まされて……もう一度頑張れたんだ」

 

「間に合わなかったけど…復活第一号で食べて欲しかったから!今日作ったの」

 

 

 

 

 

『包丁の使い方は…』

 

『火加減!弱すぎです!』

 

『とにかく落ち着いて?焦っても上手くならないですよ。食べてもらう人に沢山愛情を込めて…ね?』

 

 

 

 

 

鳳翔さん……ありがとう。

目の前に…あんなに思い描いた表情があるよ。

 

 

「えへへ…なんでも……グスッ…私に任せてよ!」

 

「ずっとあなたを支えるから」

 

彼女は親指を立てて言った。

 

 

ピトッと横に座って彼の肩に頭を預けた。

幸せだって感じる。

うん…

ずっとこうしていたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛してるよ」

 

「うん、愛してる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日…。

 

 

「鳳翔さん!」

 

「あら、どうでしたか…って聞くまででもなさそうですね」

満面の笑みで言葉を交わす2人。

 

「はい!ありがとうございました!」

「鳳翔さんのおかげです!」

 

「そんなことないですよ?アレは蒼オークランドちゃんの頑張りです」

「あなたの気持ちが通じたんですよ」

 

「えへへ…でも鳳翔さんのおかげだよ」

「だからね?約束の…パフェ…行こう?」

 

「ふふっ…冗談だったのだけれど…ご馳走になります」

「沢山お話聞かせてくださいね?」

 

「妬かないでね〜?」

笑うオークランド。

 

「自信ない」

暗い笑みを浮かべる鳳翔。

 

2人は笑いながら間宮へと向かう。

その足取りは軽かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…」

一息つく救。

 

頭から帽子を取って帽子掛けに掛かる。

 

「ふふん」

その制服に似合わないキャスケット帽子が実はえらく気に入っている。

 

 

「さぁて……コーヒーでも飲むかな」

 

「そこは紅茶でしょ」

 

「……いつから居た?金剛」

 

「今来たばかりデース!」

 

「仕方ない。紅茶淹れてくれる?」

 

「デートの話聞かせてね」

 

「妬くなよ?」

 

「無理」

 

 

 

 

鎮守府の朝はまた始まる。




4月7日でブルーオースが2周年になるので…
少し早めの…

少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!!

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367話 提督と…加賀

"最近提督がカレンダーを見てそわそわしてる気がする"

そんな噂が少しずつ秘書艦から立つようになった。

 

 

 

「実は聞いちゃったんだ。電話で誰かと話してるの…」

「やっと会える…だとか早く俺のものにしたいー!とか言ってたよ」

 

「「「「「は?」」」」」

 

 

「いやいやいや麗ちゃんか、幸ちゃんとデートだろ?」

 

「だとしたら私達に言うでしょ?」

 

「まさか街の人とデート?」

 

「人妻とか?」

 

「法律的にアウトな年齢なのかも知れないのです」

 

「おい、ロリッ娘…鏡見てこいや」

 

「あん?」

 

「お?」

 

 

 

 

「まさか…かなりの歳上…?」

 

「ここにいるみんな殆どが還暦越してるけどね」

 

「むしろ…100歳……やめとこ」

 

 

 

 

そんな不安な会話が為された数日後…

 

 

 

 

 

 

「明日は少し出てくるよ」

 

少しウキウキそうに大淀に伝える救。

 

 

「明日は非番ですね。えと…誰か付けますか?」

 

「病み上がりですし…この前のようなことがあっても不安ですから…」

大淀や桜シリアスが言う。

 

もちろん本音だ。

 

 

 

 

 

 

20%くらい。

 

後の80%は『誰とどこに行くつもりだ?あ?浮気か?』である。

 

 

「んー…大丈夫だよ」

「たまには1人で……ね?」

 

 

 

 

 

怪しい

とは思いながら、結局は何も聞けずに1日を終えた。

 

 

 

翌日、救は朝に一人で出掛けて行った。

 

 

 

 

 

 

 

鎮守府では悶える艦娘達が後を絶たず、まさに地獄絵図だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな心配を他所に救は…

 

お目当ての子とご対面していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キタキタキタキタキタ!!!!

遂に来たぁぁぁあ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

輝くぼでー!

低重心かつ、大きな見た目。

ベントハンドル…!

二本出しマフラー…!

自己主張のある黒革サイドバッグ…!!

 

なんと言っても目立つV型エンジン!

 

 

 

 

そう

バイク♡

 

 

遂に買っちゃいました♡

 

 

 

 

「はぁぁぁぁあ♡念願のバイクだぁあ♡」

バイクのタンクに頬擦りする救。

 

確かにそんな姿を見られるわけには…いかないよね。

 

 

 

 

「はうーー!ずっと大切にするからねえええええ「て…ていと…く?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?加賀どうした?」

救はいたって冷静に…声をかけられて0.001秒で普段モードに戻る。

 

 

「いや、今ので無かったことにはならないわよ」

しかし見逃してくれない一航戦。

 

 

「随分とご執心みたいだけど……まさかあんな姿を見られるとはね」

 

「何のことかな?」

 

「あら?あくまでシラを切るのね?」

 

「なにもなかったからね」

 

「そう……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピロン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

スマホが鳴って画面を見る救。

加賀からメッセージが来たよ…う…………!?

 

 

『はぁぁああ♡念願のバイクだぁ♡』

死にたくなるほどの甘い声でバイクに頬擦りする俺の姿が。

 

 

「さらにこれを……」

 

 

ピロン

 

 

もう一通届くメッセージ。

恐る恐る開くと…

 

 

 

 

『はぁぁ♡加賀↑ずっと大切にするからねえ♡愛↑してる↓ー』

加賀の名前を呼びながら何かに頬擦りする俺の映像があった。

つまり、映像編集された動画が添付されていた。

 

 

 

 

 

「んんんんんん!?」

 

「このくらい朝飯前ですが」

「この指先ひとつで……皆のグループに送ることもできますが?」

 

 

 

「すみませんでした」

 

 

 

 

 

 

「……で?」

 

「見ての通り、バイクの納車だよ」

 

「………少し妬けるわ」

 

「え!?なんで!?」

 

「だって…あんな顔しないでしょ?」

 

「皆相手にあんな事してたら…ヤバいだろ…」

 

「それでも…よ。それでもあなたの持ち得る限りの全ての愛だとか…感情だとかを欲しいのよ」

「私達が見てないところで、私達に見せない顔なんか…嫌よ」

 

「でも、やりすぎね…ごめんなさい」

加賀は素直に頭を下げた。

 

「素敵なバイクね。ゆっくり楽しんで」

そう言いながら去ろうとする加賀に声をかけた。

 

 

 

 

「今日暇か?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えぇ…暇だけれど…」

 

「なら…一緒に行こうか」

 

「………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ッ!?……ッ!?」

 

「しっかり捕まってろよー!!」

 

 

 

提督の背中にしがみついた私を乗せて提督のバイクが走る。

 

 

 

 

 

 

未知の感覚–––

電車や船と違う…海の上とも違う感じ…。

 

人より早く海の上を走ることができる私だけれども…

海の上とも…自転車…の感じとも違う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ほら』

 

提督が私に何かを投げた。

それを両手でキャッチした。

 

ヘルメットと呼ばれるものだった。

艦載機の妖精さんが似たようなものを被ってたような気がする。

 

 

『乗っちゃいなYO』

と、クイッと後部座席を親指で指した。なんかもイラッとした。

 

 

『シートベルト…はないわね。どこに捕まればいいの?』

 

『俺にしがみついてたら良いよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたの腰に回した手に力が入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたの後ろから見る景色は放つ矢のように過ぎ去って行く。

怖くない。

怖くないけれど…

振り落とされないようにあなたにしがみついた。

 

 

 

 

過ぎ去る景色は…街から山道に変わって…

木々も緑色のカーテンのように見えた。

 

 

 

 

「楽しめてるか?」

 

「は、速すぎて……ッ」

 

「しっかり捕まってろよー!!」

 

 

 

 

 

 

 

それから山道を少し走って峠の喫茶店に着いた。

 

「到着ですよ……っと」

 

地面に足がつくと…少し…ほーーんのすこしだけ震えていたかも知れない。

 

 

「怖かった?」

 

「…………少し」

 

「そうか…あはは」

 

「何か?」

 

「ううん」

 

「何ですか」

 

「楽しかったなら良かった」

 

「??」

 

 

楽しいなんて一言も加賀は言っていない。

しかし…彼は見ていた。

ミラーに写る彼女のヘルメットから覗く表情を。

 

初めて綺麗なものを見るような…瞳をキラキラさせる彼女を。

 

「………楽しかったわ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バイクに昔乗ってたの?」

見晴らしのいいテラス席でコーヒーを飲みながら加賀は尋ねた。

 

「ん?少しね」

彼は少し寂しそうに言った。

 

「……こーやってさ、走ってる時は嫌な事も忘れられたんだ」

「風になった気分でさ…全部何もかも置いてきぼりにして走ってる時がね」

 

 

「今も…忘れたい事があったの?」

 

「ん?!あー……いや…」

「雑誌でバイク特集を見てな?乗りたくなって…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰かを後ろに乗せて走ってみたかったんだ」

 

 

「そう……」

「私で良かったの?」

 

「何が?」

 

「最初に後ろに乗せるのが…」

 

「1番最初にバイクの事を知った子に乗ってもらうつもりだったんだよ」

 

 

「そう…」

「光栄だわ。あなたの1番になれたなら」

 

「しがみついてる君は可愛かったぞ」

 

「か、からかわないで!」

 

ブラックのコーヒーが甘く感じた加賀だった。

 

 

 

 

 

 

 

帰り道は新鮮だ。

先程までの明るい道でなく、緋色の夕焼けから星空に変わった。

手の届いてしまいそうな満天の星空を感じながらあなたの後ろに座る。

私達が風を切る音とエンジン音と時々あなたの声を聞きながら幸せなバイクツーリングは終わりを迎えた。

 

 

あなたの温もりを感じながら…

ずっとあなたに抱きついていた。

降りるのが名残惜しかったから「いいよ」と言われても少しの間抱きついて降りなかった。

 

「また行こうな」って言ってくれたから仕方なく降りた。

 

 

 

 

 

私が1番最初…

それがとても…とてもたまらなく嬉しかった。




お待たせしました…。


少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!

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368話 この島から風になって

「……う…ここは…………ッ!?」

「提督っ!?提督ッ!提督!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『助けてくださいッ!!』

そんな通信が鎮守府に入った。

 

『私は捕らえられ…きゃぁあー…

ポイントの座標系とこのこの場を最後に通信は切れた。

 

 

 

 

 

現場で指揮を執る救。

その隣に古鷹は居た。

 

とある海域での戦闘任務。

艦娘を鹵獲し、資材溜まりを深海棲艦が根城にしているとのことで調査並びに脅威と判断した時には排斥を行うための遠征だった。

 

私は提督の護衛艦として就いていた。

戦闘も指揮も問題なかった。

 

捕らえられた艦娘も保護した。

後は退却しながら無事に帰るだけ…のはずだった。

 

 

 

 

 

 

 

だが、一瞬で全てを持っていかれた。

 

 

私達の足元で爆発が起こった。

 

私が最後に見た景色は……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ダイ……タス…カラ」

 

「メガ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付けば私は大破状態で砂浜に打ち上げられていた。

 

 

ぼうっとする。

次第に意識がハッキリとしてきた。

 

 

 

 

 

 

提督はどこ?!

 

1番に頭に浮かんだのがそれだった。

 

周りを何とか見回した。

まだ視界がぼやける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の姿があった。

 

 

何者かに抱えられて引きずられて行く場面を見た。

 

 

 

「ま、待ちなさい」

 

と言いたかった声は思うように出ず、立ちあがろうとしてもふらふらとしてしまう。

それでも私は護衛艦だ。

何が何でも命懸けで彼を守らなくてはならない。

 

 

フラフラと彼を追いかけて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこの!止まりなさい!!」

なんとか洞窟まで追いかけて声を掛けた。

壊れかけの艤装を構えた。

 

 

「オキタノ?」

 

 

「–––––ッ!?」

 

そこに居たのは重巡棲姫だった。

 

 

「い、今すぐその人を離しなさいッ!!」

「さもなくば…!!」

 

「ウツノ?」

 

「ええ!撃ちます!!」

 

「ツカエナイギソウデ?」

 

「…ッ」

図星だった。彼女の言う通り構えた主砲は撃てない。

彼女が続ける。

 

「ソレニ…イマウテバカレモマキコムワヨ?タイセツナテートクサンナンデショ?」

「ソシテナニヨリ…ワタシニテキイハナイワ」

 

「そんな嘘に「ホントヨ」

 

 

「アナタ…ジブントコノヒトヲヨクミナサイ」

 

 

 

 

 

提督には手当てされた跡があった。

彼の元には、水やら果物が置かれていた。

 

私は左手で自分の体を触った。

確かに包帯やらが巻かれていた。

 

「ミギテノシュホウ…オキナサイ。オレテルンダカラ…ソレニヒダリメモネ…」

「アリキタリナイイカタダケド、テキナラ、テアテセズニコロシテルワ」

 

 

「………本当にその人に危害を加えない?」

 

「エエ」

 

「仲間は?」

「他の艦娘は?!」

 

「ワタシヒトリヨ。アナタタチフタリシカシラナイワ」

 

 

 

 

 

ガシャンと艤装を落としてへたり込んだ。

 

「……ごめんなさい。そして…ありがとう」

 

「イロイロキキタイコトモアルデシヨウケド…マズハヤスミナサイ」

 

私の意識は落ちて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女…重巡棲艦には本当に敵意がないらしい。

私の潰れた左目や右腕を簡易であるが手当てしてくれた。

その医療キットの出どころを聞くと「イロンナモノガナガレツクノ」と教えてくれた。

 

提督は目を覚さない。

鎮守府とも連絡は取れない。

 

海に出れば…と思ったが、足の艤装も壊れていて不可能だった。

ならば…と思い彼女にお願いしたが、それも無理らしい。

 

運良く、艤装が流れてくるか…仲間が通りかかるのを待つしか無いらしい。

 

 

 

「……ガハッ」

数日して提督は目覚めた。

 

「提督!良かった…良かったぁ…」

 

「……古鷹…お前…眼と腕が……」

 

「…すみません…」

 

「早く入渠しなきゃ!!」

 

「………」

 

私は提督に事情を説明した。

ここはどこかもわからない島である事。

通信も取れず、私の艤装も使い物にならない事…

重巡棲姫が助けてくれている事を…

 

さすが提督と言うべきか…?割とすんなりと聞き入れてくれたのはありがたかった。

 

「君が…古鷹の言う重巡棲姫だね?」

「本当にありがとう」

 

そう言って彼は頭を下げた。

 

「………イイノヨ」

「ソレヨリ…コンゴヲカンガエナイトネ」

 

「カエッテモ…イバショガアレバイイケドネ」

 

意味深に呟く棲姫。

 

「どう言う意味ですか?」

 

「………」

 

 

 

 

 

「…提督?何であの時…私達は攻撃を受けたのでしょうか」

 

「………いや、思い出せない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ヘイワナモノネ」

「ナカマニウラギラレタトイウノニ…」

 

 

 

「「え!?」」

「な、何を言って…」

 

狼狽える救達。

無理もない。今の状況は仲間の裏切りによって引き起こされたと言うのだから。

 

 

「ウチのメンバーにそんな事をする娘なんて…いません!」

 

「………モウヒトリイナカッタ?」

 

「あの戦闘時には深海棲艦と私達以外……………まさか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや…居た。

 

 

私達が助け出した…利根が居た。

 

「いや…でも、私達は彼女から救援要請を受け取ったんですよ!?」

 

「…テキニトラエラレタカラッテ?」

 

「……ッ」

 

「何でそれを……」

 

「いえ……確かに私が最後に見た景色は……確かに利根が…」

 

 

「まさか救援を求めたはぐれの利根が裏切りを…?だったら皆が危ない…!!」

 

「レンラクヲトルシュダンハナイケドネ」

 

 

「にしても……今は分からない事だらけだ」

 

 

 

 

「ゲンキダシテ…」

 

「…優しいんだな」

 

「……シンジテモラエナイカモシレナイケド…シンカイセイカンモ…ゼンインガアクデハナイノヨ」

 

「知ってる…ウチにも居るからさ」

 

「イルノ!?」

 

「ん…あぁ…」

 

「ヘェ…ゼヒアッテミタイワ」

 

 

 

「来たらいいじゃないですか」

 

「エ…」

 

「おお!古鷹…!いい事言うな」

「うん!姫ちゃんと鬼ちゃんも喜ぶだろう!来て欲しい」

 

「……フフ…カンガエテオクワ」

 

「ワタシハネ……コノシマカラデタコトガナイノ」

「ウマレテカラズット……」

「ウマクウミニタテナイノ」

 

塞ぎ込むようにポツリと呟く彼女の手を優しく取る2人。

 

 

「大丈夫」

「俺達と…見に行こう」

 

 

 

 

「ソレモワルクナイワネ…」

 

 

「「「ふふっ」」」

 

 

 

 

 

 

 

物は流れ着いた物しか無い故に出来ることは限られたが、魚や果実が取れたので取り敢えずは困らなかった。

 

「……とりあえず魚と芋を焼いてみた」

 

「…ナニコレ、オイシイ…」

「アナタタチハコンナオイシイモノヲイツモ!?」

 

「え、ああ…まあ」

 

「コレハカナラズイカナイトネ」

「デモ…ワタシハ…アナタタチノ……」

 

 

 

「もう友達だよ?」

 

 

 

「エ……」

 

 

 

 

 

 

「命も救ってもらって…こうやってしてもらって…本当感謝しかない」

「俺とも友達でいて欲しい」

 

 

「…ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

友達…

あなた達は…

 

 

 

 

 

 

 

 



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369話 この島から風になって ②

「トモダチ……」

 

 

 

なんかその言葉は私の胸をチクリと刺した。

 

––この海の向こう…島の向こうに連れて行って––

そう言いたかった。

 

でも……私にはそんな資格はない。

だから…答えを言えずに居た。

 

 

 

 

「お?」

救がいきなり変な声を上げた。

 

「な、なんですか!?」

 

「ナニ?!」

 

ゴソゴソと懐をまさぐる救。

その手には飴玉の包みが握られていた。

 

 

「ナニソレ?」

 

「え?飴玉知らない?」

 

はい、と渡されたソレを不思議そうに見る。

「こーやって…包みをひらいてー…中身を口に」

 

「ナニコレ…トテモ…キレイ」

初めて見たソレは…流れ着くガラスよりも綺麗で…

 

とてもとても甘くて…私の頭を…一瞬にして幸せにした。

 

「もっといろんなものがあるよ!この外には」

 

「服屋さんとか…コーヒー屋さんとか」

 

「フクヤ?コーヒーヤ?」

 

 

 

 

 

 

 

外…

私はここしか知らない。

あなた達だけが私に優しくしてくれた…

 

 

 

きっとあの利根は生きていないだろう。

奴らに利用されたんだろう…彼女達を誘き寄せる為に。

 

あなた達は馬鹿よ。

私を疑う事なく…こんな……

 

 

 

 

 

 

それ以上に私が……大馬鹿よね。

 

 

 

 

 

 

 

でも夢見てしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして……

 

『…やっぱりここに居たのね』

 

「……ッ!!」

 

 

 

救を守るように古鷹が前に立ち、その2人を庇うように私が前に立った。

 

 

 

バレた。

 

『ここらへんの海流はね…独特なのよ…っても、あなたは知らないでしょうけどね?』

『なぁに?コイツらに絆されたのぉ?』

ケラケラと笑う空母棲姫。

そして後ろから顔を出した戦艦棲姫。

 

 

『む?貴様は……』

『そうか…貴様が隠していたのか…()()()

 

 

「失敗作?…どう言う事?」

 

『知らないのか?おめでたいな』

 

『ソイツは私達の側なんだよ』

『生まれつき上手く艤装(てあし)を動かせない失敗作だからな』

『この島に閉じ込めて、お前達にとどめを刺すように言ってたんだがな……まさか匿っているとはなあ…飛んだ裏切りじゃないか…ええ?』

 

 

「重巡ちゃん…君は…」

 

「…ゴメンナサイ」

 

『アハハハハハハ!いいわ?お前達もあの娘みたいに殺してあげるから』

 

 

「…はぐれの利根のことか?」

 

『ん?…そうそう、アイツは…()()()()

 

 

「なんでッ!!!」

殺したと言う言葉に激昂する救。

 

 

 

『おや?庇うの?』

『死にたくない為にお前達を売った奴だからだが。死にたくない為にお前達を攻撃したんだから』

 

『そーんな裏切り者…死んで当然じゃないか?』

 

 

 

 

やはり、俺達を攻撃したのは利根だった。

いや…利根は死にたくなかったのだ。

苦渋の決断の末に俺達に頼って………

 

『お前達を攻撃した後さあ……私達に楯突いてきたんだぜえ?』

『やっぱりそれじゃためなんじゃ!ってさあ?!』

 

『ごめんなさい…ゴメンナサイって言いながら沈んでいったよ』

 

 

後悔したのだろう。

せめても…ではないが、致命傷にならないように攻撃してから奴等に挑んだのだろう。

何で他の艦娘を頼ってくれなかったんだ…。

 

心にチクリその情景が浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で殺したぁあ!」

 

『ウルサイ』

突っ込もうとする古鷹を弾き飛ばす戦艦棲姫。

 

「あうっ」

 

 

「ヤメテ!!トモダチヲキズツケナイデ!!」

 

『何が友達だぁ!!』

『こんなカスどもをおおおおお!』

ゲシゲシと古鷹を蹴る戦艦棲姫から彼女を庇う重巡ちゃん。

 

「ぐっ……重巡ちゃん!?」

 

「アウッ…グッ…ヤメテ……ワタシノトモダチ…」

 

それは何度も何度も繰り返される。

ドゴッ…ゲシッ!ドカッ!

 

「やめて!重巡ちゃん!私が…たたかうからぁあ!」

何とか歯を食いしばって立ち上がろうとする古鷹を空母棲姫が蹴り飛ばした。

『うーん?この腕でえ?』

 

グリグリと折れた右腕を踏み躙る。

 

「きゃあぁあ!!ぐっううううううっ」

 

「やめろぉ!!」

救が体当たりに行くが簡単に弾き飛ばされる。

 

「ぐうっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やめてよ

私の友達に…

初めてできた友達に…

 

 

 

酷いことしないでよおおお!!

 

 

 

 

 

 

重巡棲姫は戦艦棲姫を弾き飛ばして空母棲姫に体当たりした。

 

『チィッ!!コイツ!こんなに動けたなんて…』

 

『あったまきたァ!ぶっ殺してやるッ!』

 

 

 

「サセルモンカァァァア!!」

彼女は鬼の形相で友達に仇なす者に単身で突っ込んで行く。

 

 

 

 

 

 

「重巡ちゃん!」の声も耳に入らなくてそれでも…

生まれて初めて体が軽く動いた気がした。

 

ほんとは…

ずっと知ってた。

 

私は…生まれた時から憎しみが薄かったから…

失敗作だとして、偽装を剥がされてこの島に閉じ込めて居た。

ずっとそう言い聞かされてきたから。

 

毎日毎日同じ景色を眺めるだけの日々。

知らない事だらけで、当たり前の毎日に…突如として敵と教えられたあなた達がきた。

 

殺しちゃいけないって気がした。

私の…この退屈な毎日を壊してくれる気がしたから。

 

 

でも…

あなた達は友達を教えてくれた。

優しさを教えてくれた。

私に居場所を…この小さな島の外に居場所をくれた。

 

 

 

…夢が……叶いそうな気がした。

 

 

「ウァァアアアアアア!!」

強引に右腕を戦艦棲姫に叩き込んだ。

バキャン!!という音と共に彼女は吹き飛ばされた。

そのまま左腕で空母棲姫の腕を掴んで地面に叩きつけながら放り投げた。

 

 

 

『なっ!?こ、こんな力が…?』

ゾクリとした。どこにこんな力があったと言うのか?

 

 

 

「オマエタチヲタオセバ…ワタシハ!トモダチト、ユメミタソトニユケルンダ!!』

 

 

 

 

しかし、重巡ちゃんがいくら強いとは言え、丸腰。

艤装を持たぬ身では…彼女達には…勝てない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢は…見続けるから夢。

 

突っ込む彼女に向けられた艤装。

 

 

 

 

爆発する体。

飛び散る血飛沫。

 

私だったものが…私から離れて行く。

 

 

それでも彼女は駆けた。

そして、空母棲姫に飛びついて首に…歯を立てた。

嫌な音が響いた。

 

『うぎゃぉぁあ!!き、貴様ァァア!!ヤメロ!!』

『貴様みたいな失敗作にぃぃ!!』

 

「オオオオオ!!」

『ぐううううううう!!』

 

 

 

 

 

 

 

バツン––

 

 

 

 

 

彼女はその首を噛み砕いた。

主人の無い胴体はピクンと跳ねて動かなくなった。

 

 

『ひっ……』

戦艦棲姫は恐怖した。

 

「何で…何でそこまで』

 

「トモダチを…マモルンダ」

「イッショニユクンダ」

 

 

重巡ちゃんは駆け出した。

その手はもう動かないけれども。

 

 

 

『クソが!!貴様なんぞおお!!!』

 

 

突っ込む彼女に砲口を向けながら戦艦棲姫はいかに生き残るかを考えた。

 

 

考えた末に…彼女は古鷹や救に砲口を向けた。

 

『アハハ!!奴等ガラ空きだぁぁぁあ!!!』

 

そう、彼らは自衛の手段がない、よしんば防いだとしても攻撃の手段もない。きっと重巡は奴らを庇う!!そして死ぬ!そうなれば残された奴を殺せばいいだけだ!!と。

 

 

 

 

砲撃が放たれた。

古鷹は前に出て救を守ろうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フタリトモ」

重巡ちゃんは戦艦の読み通りに彼女達を庇う。

 

 

 

「マモルカラ」

 

 

彼女は振り返ってニコリと微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

「重巡ちゃ––––––

 

 

ズドオオオオン!!

 

 

古鷹が見た光景は……彼女が爆風に飲まれる光景だった。

 

 

 

 



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370話 この島から風になって ③

『……お主…我輩を殺さぬのか?』

『我輩は生きたい。何があっても…生きたいのじゃ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は限界ながらも駆けた。

 

初めて立つ海の上に…

友達を守りたい…この一心で踏み出した!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドォオン!!

 

その勇気も優しさも何もかもを…1発の砲弾が砕いた。

 

 

 

腹に風穴が空いたらしい。

幸い…砲弾は友達には当たらなかったようだ。

 

 

 

 

 

だから何だッ!!

 

彼女は感覚のない左腕を食い千切って投げつけた。

ガァン!!と鈍い音がした、戦艦棲姫の顔面に当たったらしい。

戦艦棲姫が後ろに倒れた。

 

 

彼女も膝をガクガクと震わせて倒れ込んだ。

 

 

 

 

 

 

古鷹が駆け寄ってくる。

 

「大丈夫!?なんで!?何で!!」

 

 

 

 

 

 

彼女は最後の力で古鷹の顔に手を添えて言う。

 

その身をぼろぼろと崩れ落としながら彼女に言う。

 

 

 

「トモダチヲマモル……ナニヨリタイセツナ…」

 

「外に出るんでしょ!?一緒に!!ねえ!生きて!まだ間に合うからッ」

 

 

「アリガトウ…」

「アノ…シンダ…トネモユルシテアゲテ……アノコニモイキタカッタアシタガアルハズダカラ…」

 

 

「何を…言って……って!重巡ちゃん!それ以上喋らないで!あなた!死んじゃうからッ!!」

 

 

 

 

 

「イイノ…」

 

 

 

 

「アナタノ…アナタタチノオカゲデワタシハ…」

 

 

 

 

 

 

少しとは言え、楽しい時間を過ごせた。

波打ち際で毎日見える水平線の向こう側に思いを馳せていた。

 

人とは…分かり合えない。

艦娘ともきっと分かり合えない。

そう教えられていた日々。

 

 

でも…

見てしまったから。

 

 

 

死にかけの体で必死に彼を庇いながら泳ぎ切り、目の前の私の前に立ち震えながら彼を守ろうとしていたあなたを。

『我輩が間違っておったのじゃ…せめて…せめて此奴らは……死なせたくないのじゃ』

 

彼女は悔いたのだろう。

その在り方を。思い出したのだろう…最後の最後に…誇りある生き方を。

 

 

 

目覚めたあなた達は…その残された目は、聞いていた侵略者の目でもなかった。

ただ、ひたすらに仲間を守ろうとする綺麗な目だった。

 

 

あなた達は私に武器を…憎しみを向ける事なく、感謝の言葉を向けた。

 

私に居場所をくれようとした。

友達と言ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ありがとう。

 

 

 

 

 

 

 

 

言葉を出すほどにこの身は崩れ落ちて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでも良いと思った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたは私の知らない"愛"を持っている。

この気持ちは…今までに抱いたことのない感情。

 

トモダチっていうものを教えてくれた。

 

生まれが違ってても…通じ合えるんだって教えてくれてありがとう。

 

 

 

 

 

 

 

 

本当は…もっと友達で居たかった。

 

 

 

でもその約束は守れそうにない。

あなた達の素敵な鎮守府ってのにも行けそうにもない。

 

頭の中でしか描けなかった…艦娘()と手を取って仲良く出来る世界ってのも見えそうに…ない。

 

 

 

 

いや

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、それは見た

 

 

 

 

 

今見ている光景がまさに…手を取る瞬間なんだ

 

なら…1つでも夢は叶ったんだ。

 

 

 

 

なら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は…

 

 

この全てを使って

 

 

 

 

喜んであなたの力になるわ。

 

 

 

 

 

「ウケトッテ」

 

重巡棲姫は光へと変わって行く。

使い物にならない折れて千切れかけの古鷹の右腕から彼女に入って行く。

 

 

 

 

「ワタシガアナタノ"メ"("光")ニナルワ」

 

「嫌だ…見えなくていいよ」

 

「アナタノミライヲキリヒラク"ブキ"("右腕")ニナルワ」

 

「嫌だよ!私が頑張るから!!」

 

「アナタノマモリタイモノヲマモルタメノマモル"タテ"("艤装")ニナルワ」

 

「嫌よ!!もう充分守ってくれたよ!!」

 

 

 

「……」

彼女の手をとって嫌だと泣きながら叫ぶ古鷹。

 

そんな古鷹に彼女は…一喝した。

 

「イキナサイッ!!」

 

「…ッ!!」

 

それは…行きなさいであり、生きなさい。

彼女が1番そうしたかったであろう…その言葉。

 

 

 

「トモダチノナカデイキラレルナラ…ソンナシアワセナ…シ…イエ」

「コレハ…"死"デハナイワ」

 

 

 

 

 

「私は…あなたの中で生き続けるんだもの…」

 

「あなたの中から…ずっと夢見た景色を見るの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なぜか言葉がカタコトに聞こえなかった–––

懐かしい…懐かしい何かをその声から感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウケトッテ」

「ソシテワタシヲ……

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は満面の笑みで伝える。

命を賭して…友へと伝える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思い描いても…出られなかった海へ…

 

 

頭の中でしか行けなかった…平和なところへ

あなた達の話の中でしか行けなかった…

街や…服屋さんとかコーヒーやさんとか……

 

 

 

それは飴玉のように甘いのかな?

それは太陽のように眩しいのかな?

それは月明かりのように優しいのかな?

 

 

きっと…飴玉のようにいい匂いで甘くて

きっと…太陽のように明るくて…輝いて

きっと…闇を照らす月明かりのように明るくて優しくて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が恋焦がれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『コノシマノ…ウミノサキニハ…ナニガアルノカナァ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの海の向こうへと

  一緒に連れて行ってー…

 

 

 

 

 

 

 

 

触れた手が地面に落ちる。

その手を落とさせやしないと彼女はその手を受け止めた。

もう、右腕の痛みなんかどうでもいい。

 

掴む手から変わらず彼女が流れ込んで来る。

 

 

 

 

 

 

「……ッ!!…………わかった」

 

 

ニコリと…死に行く彼女は笑った。

 

 

 

 

「提督…」

「お願いです」

 

 

 

 

 

「力を貸してください」

 

 

「あなたの持てるありったけの力を…」

 

 

 

「貸してくださいッ」

 

 

 

「おう!!」

「2人に……誓う」

 

「俺がお前達を支えるッ!!だから!!」

 

 

 

 

 

 

「アリガ…トウ」

 

 

 

 

彼女が私に溶けて行く。

 

 

 

 

 

ありがとう。

 

こんな言葉しか…見つからないけど…

 

 

 

『…いいの。それが私の選んだ道だから』

 

『受け取って』

 

 

 

 

『私の全てをッ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦艦棲姫は見た。

失敗作と馬鹿にした奴が…

艦娘とも手を取り合えないか?と戯言を繰り返していた奴が…

 

 

 

 

 

光を浴びて艦娘に溶け込んでゆくのを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

古鷹   改ニ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

左眼の視力が戻ってきた。

 

 

右手も動く…本当に嫌と言うほどに軽やかに動く。

 

 

 

ホロリ…と涙が流れた。

それは古鷹の涙か––––重巡棲姫の涙か––––––

 

古鷹は涙を拭った。

 

それは友のために––

 

今を必死に生きてきた…誰かの為に命を差し出してくれた…親友と呼びたいその彼女の為に。

 

 

 

 

 

「行こう…」

「私が…あなたを連れて行くから!」

 

 

 

 

「…重巡……古鷹…行きますッ!!!」

 

 

拭ったその中から覗いたのは…開かれたのは…輝く眼。

彼女の意思を背負った金色に輝く眼。

 

 

 

 

 

「私は…お前を許さないッ」

 

 

 

 

 

 

聞いたことがないッ!!

艦娘と深海棲姫がひとつになるなんて…!

 

艤装に…強化になるなんて!!

自分の意思でそうなるなんて!!!

 

 

 

金色の眼が雷光のように私に迫った。

私は震えて動けなかった。

 

 

ドゴッー!!

古鷹の右拳か戦艦棲姫の腹にぶち込まれた。

 

『ぐぅぅ!!』

 

「おおおおおお!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は島から海へと戦艦棲姫を吹き飛ばした。

 

それは…今は彼女の中に眠る友達への手向け。

 

島の外に…あの水平線の向こうに憧れた彼女への…

 

 

「見てる?これが海の上よ……あなたの憧れた海の…島の外ッ!!」

 

 

あなたが私に力をくれたから…ッ

 

 

一歩

 また一歩 

確かに海を踏みしめながら駆ける。

 

 

 

『…ッ!?』

 

あまりの恐怖からか…戦艦棲姫には古鷹がボヤけて…重巡棲姫と重なって見えた……。

 

そしてその雷光は再び彼女に迫り…

その右拳を叩き込んだ–––。

 

『負け…る…かぁあ』

 

「行くよッ」彼女は言った。

「ええ…」彼女は答えた。

 

 

 

 

 

「「うおおおぉぉぉおおおッ」」

 

 

その拳は…戦艦棲姫を…重巡棲姫が超えられなかった壁を打ち破った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皮肉な話だが、艤装が戻った事により仲間と連絡をとれるようになった。つまり、彼女は島を出ると言う夢を叶えた。

その身から魂が解放されて…。

古鷹という友達の中からその海に旅に出た。

 

一部の特殊な海流の関係で本来の海流とは逆方向に流された事と、艤装が壊れた事により捜索が困難になった。

もし、そうでなかったなら…重巡棲姫は助かったのか?

 

そう胸が潰れそうになったけど…

心からは温かいものが溢れてきた。

 

「そんなことないよ」と言ってくれているように…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無事でしたか!?すみませんッ!!」

「ダーリン!ごめん!!」

「って…古鷹!?その姿は!?」

 

 

 

 

 

古鷹達が事情を話す。

信じられないと漏らす面々。

だが、手当てされた跡や古鷹の様子を見るに真実だと理解させられる。

 

 

「……そんなことが…」

加古は泣く古鷹に寄り添って背中を摩る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰かが口を開いた。

「全員ッ」

「最後に己に打ち勝った…艦娘利根に!!」

 

「種を超えて…その誇りを示した…深海…いや…!!」

 

「艦娘の重巡棲姫に敬礼ぇぇぇえ!!」

 

 

 

 

 

 

古鷹はその両の眼で見た。

 

一糸乱れぬ敬礼だった。

彼女達は…友達を艦娘にと呼んでくれた。

艦娘も…深海棲艦も、KAN-SENもセイレーンも戦姫も赤も…

会わせたかった皆が背筋を張って敬礼をしている。

 

ドォン!と誰かが主砲を撃った。

手向けの砲音は寂しく…強く響いた。

 

 

 

 

左目からの涙が何故か止まらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督…喜んでこの指輪を受け取ります…。でも」

 

「ん?」

 

「お願いします。重巡ちゃんにも指輪を…友達に…私の中に生きる友達にも…」

 

「もちろん」

 

古鷹の指に指輪が通される。

もう一つは…首から下げて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真もないけれど…

2人しかその姿をみてないけれど…彼女は確かに居た。

 

 

「良かったな!古鷹」

 

加古が笑いながら古鷹に声をかける。

 

「うん…良かった」

 

「…いやー!羨ましいn–––––ん?」

 

「え?なに?どうしたの?」

 

「え……いや…なんでも……」

ゴシゴシと目を擦る加古。

加古には古鷹に笑う重巡棲姫が重なって見えたとか。




古鷹の左目をオリジナルにしたネタでした。
夕立も同じような感じでしたね

少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!

感想などおまちしています!



投稿遅れます…
今流行りの…あれ


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371話 風になって吹き抜けて エピローグ


珍しく2話目の投稿!370話の続き

ご注意下さい!

この島から風になってのエピローグとなります。
前話をご覧になってない方はぜひそちらからで

















「……到着…と」

 

 

ここが…私達のよく来る街…小々波市だよ。

ほら、こんな大きな建物もあって……。

 

「あれが服屋さん。服を売ってるんだよ」

「ほら、この服…きっと似合うだろうなあ…」

あの子と2人でこうやって服屋さんを廻るのを想像する。

 

『この服似合うよ!』

 

『エェ…ニアウカナァ…?』

なんて想像の幻が目の前で楽しそうに会話をしている。

 

 

 

独り言を言う私にきっと周りは奇怪な目を向けるだろう。

だって彼らは知らないから。

私の事も…彼女の事も……。

 

じわりと涙が溢れてきた。

慌てたように店員が話しかけてきた。

「ご気分が優れませんか?!大丈夫ですか?」

 

 

 

「いえ…大丈夫です」

 

「後は俺が…すみません」

そんな店員の横から現れたのは提督だった。

彼は私達の手を取って言った。

 

 

「この服…どう思いますか?」

 

「…2人に似合うと思う」

 

「えへへ…本当ですか?」

 

「プレゼントするから着替えておいで」

店員に了承を得て、購入してから着替えた。

 

 

 

あの子に似合いそうな早めのワンピース。

と、ヒール。

「似合いますか?」

 

「うん、似合ってる」

 

「もう一着…買って良いですか?!私から…あの子に」

 

「もちろん」

 

 

 

 

 

 

「行こうか…おふたりさん」

変わらず周りの人は奇怪な目を向ける。

同じ服をもう一着買うのだから?

誰も居ないのに喋っていたから?

1人で泣いていたから?

誰も知らない、知らなくて良い。

 

 

でも…その中で彼だけは、私に何も変わらない優しい目で語りかけてくれた。

誰か1人でも良い…。こうやって知ってくれている人が居ればいい。

 

 

 

 

 

「…あ…救君」

「本当だ、まも君…」

 

 

「と…古鷹…ちゃん?デートかな?」

麗が古鷹を見る。

「え?私には…気のせいかな。別の誰かが見えたような…』

幸には彼女に重なってもう1人見えたようだった。

 

 

 

 

 

 

 

「これがコーヒー屋さん!ムーンバックス!!」

もちろん…コーヒーを3つ頼む。

3人掛けの席に移動してからコーヒーとお菓子を並べる。

 

「これが…おすすめのコーヒーだよ」

 

「古鷹が飲んであげないと」

 

「あ、そうですね」

「……あまぁい…」

 

「ホットサンドは……ん…おいひぃです」

 

 

それからもたくさんまわった。

オススメの雑貨屋さん、見晴らしの良い橋、農場の展望台で食べるソフトクリーム。

 

 

 

そして…

私達の住む鎮守府。

 

 

 

見てますか?

ここが鎮守府だよ。

 

 

連れてきたかった…場所。

色んな子が入り混じって過ごす場所。

あなたが望んだ…皆が手を取り合う場所…。

 

ベンチに座って星空を見上げる。

重桜組の育てる…どこから用意したのかわからないけど立派な桜が月夜に照らされて綺麗だった。

 

 

 

 

「…あなた」

姫ちゃんが話しかけてきた。

ジッと私を見つめてニコリと微笑んだ。

 

「うん、幸せそうね」

 

「……え?」

 

「あなたの中の…娘よ」

 

「わかるの?」

私は思わず彼女に詰め寄った。

「ねえ!教えて!私…!あの子が見てるかなって思って、行きたがってた街に出たの!たくさん色んなところ回って…それで!それで!!」

 

「彼女は満足してくれた?って?」

 

「うん!わかるなら教えて!お願い」

 

「それはあなたが一番よくわかってるんじゃないの?」

 

「…ッ!!!」

「わかんない…わかんないの!!」

 

私は思わず語気を強めた。

それでも変わらず彼女は…優しく言う。

 

 

 

 

 

 

 

「ここ」

そう言って彼女は私の胸に触れた。

 

 

 

 

 

 

 

「ここは…冷たい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思い出す。

服屋もコーヒー屋も…景色の良いあの街並みも何もかも

心に温かい何かを感じていた事。

 

鎮守府での皆の様子を見てきた時に見えた彼女の幻。

 

優しく微笑みかけてくれるような感覚の。

 

 

「どう?」

彼女がもう一度問いかけた。

 

 

 

 

 

「冷たく……ない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…温かいよぉ………」

私は胸の前で手を握り締めて泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

背中に…肩に誰かが手を置いてくれているような感覚になった。

きっと彼女が居るんだ。

 

「うわぁぁああああん!!」

膝を折って泣き崩れた。

姫ちゃんは優しくそっと抱き締めてくれた。

 

「生きていて欲しかった!!友達だから!」

「一緒に過ごしたかった!」

「もっとありがとうって言いたかった!!」

「私なんかの為にごめんねって言いたかった」

 

「友達になってくれてありがとうって言いたかった」

 

 

 

「あの人を守る為の力をくれてありがとうって言いたかった」

 

止めどなく言葉が涙と共に溢れてくる。

それを聴きながら…うんうんと頷いて優しく頭を撫でてくれる姫ちゃん。

 

「悲しい顔しないで」

「笑って」

 

「ほら」

 

 

思わず振り返って見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには涙目で笑う重巡ちゃんが居た気がした。

 

 

『ナカナイデ…』

 

『笑って』

 

 

夢幻でも良かった。

面と向かってお礼を言いたかったから。

 

 

「う…ぐっ…グスッ…ゔわぁぁあん!!」

暖かくて懐かしくて悲しくて…彼女にしがみついた。

「ありがどぉ」

「本当にありがどぉぉぉ」

 

声にならない声をあげて泣いた。哭いた。

 

『イッタデショ?』

『ズットアナタノナカデ…イキツヅケルノッテ…』

 

『マタ…イロイロツレテイッテネ』

 

「やだ!行かないでよ!ねえ!ねえ!!」

 

『ダイジョウブ…ズーットイツマデモソバニイルカラ…』

 

 

 

 

 

 

––泣かないで

    笑って…

      私の友達–––

 

 

彼女は私の中に消えた。

夢幻でも構わない。

もう一度会えたことに私は……嬉しくて悲しくて切なくて泣いた。

ずっと姫ちゃんが居てくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…幸せだったと思うわ…あの子は」

 

「そうかな…」

 

「まあ…それを証明するのは…あなたの今後よ」

「笑って生きなさい」

「その目で色んなものを見なさい」

「それがきっと…彼女への良い手向けになるから」

 

「そうすればいつかまた…会いにきてくれるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督ー!!ランチいきましょー!」

 

「ん?お、おぉ…行くか」

 

2人で歩く鎮守府の町。

あなたに一番見て欲しい景色…。

あなたの友達で……私の1番大好きな人……。

 

あなたのくれた…力できっとあなたの望んだ…

平和で美しい世界を…できるなら…

分かり合える世界にしてみせるから!

 

「何食べる?」

 

『…オムライス』

 

「え?」

救が聞き返す。

 

「え?何ですか?」

 

「今、オムライスって言った?」

 

「いえ、言ってないですが…」

「でも良いですね!オムライス!なんだか私も食べたくなってきました」

 

ビュウッと風が優しく私達を撫でた気がした。

 

 

 

 

 

 

今も彼女の部屋には、台に掛けられた服と指輪のネックレスが置かれている。

 

 





切ないお話ですが、お楽しみ頂けたなら幸いです。

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372話 うそはあまりよくない

心地良い三拍子のエンジン音。

アクセルを開けば重低音が更に…

そう!今、またバイクで走ってる!!

 

「………」

 

 

「ひゃほぉぉぉぉう!!」

「さいこおおおおおおお!!」

 

 

「なあ!天龍!!」

 

「なんだァ!てーとくううう!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その刀仕舞ってくんない!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なーんでだよおー!かっこいいだろー?!」

 

「あほか!!暴走族じゃねーんだぞ!?」

 

「提督……」

 

「何だ?」

 

 

 

 

 

 

 

「1台だから族じゃねえよwwww」

 

「いや、そんな冷静なツッコミいらねええええ」

 

 

そんな訳で今日は天龍とデートです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もっとブッ飛ばしてくれえええ!風になりたいんだぁぁあ」

 

後ろで刀を振り回しながら乗るのはやめていただきたい…。

なんだよ、風になりたいって!お前そんなキャラだったか!?

てか、アレだな。

麻耶も同じようなこと言ってたようnウー

 

「はーい、そこのバイクさん路肩に止めてねー」

 

 

まあ…そうだろうなあ…

2人乗りのバイクで爆走しながら後ろで砲撃構えたり、刀振り回したりしてりゃあ…そうなるわなあ…。

一瞬頭によぎった、このまま走ったら逃げれんじゃね??てか、原因はコイツ(てんりゅー)な訳だからコイツを落として行けば解決すんじゃね?という邪な考えをする頭の中の悪魔をそんなことしてはいけませんよ…という天使の見た目をした悪魔がズタズタに切り裂いたところで俺は路肩にバイクを止めた。

 

 

 

 

「何だよぉぉ!俺達なにもしてねえじゃんよー!」

やめてくんない?刀振り回しながら威嚇するの…

 

「してるから止めた訳なんだけどねえ」

「通報が重なっちゃうと…ねぇ…」

「え?てか何?デート中?」

 

「そーだよ!悪りぃかよ!」

少し顔を赤らめて怒る天龍。

 

「今時居る?!そんな木刀……え?模造刀…!?」

「コッチはエアガンかな?」

 

「ちげーよ!本物だよ!」

そう言うと近くの木を切り倒して砲撃する天龍。

 

「ちょ!馬鹿!」

慌てて止めようとしても遅かった。

つまりは…やらかした訳だな。

 

 

「「逮捕ですね」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「違うんですッ!!」

俺は全力で手錠を持つ警察官を止めた。

逮捕されたくないからではない…いや、逮捕されたくないけども!

それ以上に天龍が暴れ回ったら大変だし…デート邪魔されたーって警察署とか破壊しかねないし…龍田も鬼の形相で来そうじゃん?

俺も怒られるじゃん?そんなの嫌じゃん?

 

 

 

 

「わ、私は…西波島の提督で神崎 救と言うものですが!!」

 

「あー!やっぱり見たことあると思いましたよ」

そんな事を言い始めた1人の警察官。

俺はしめた!!と思いましたね!!

 

「実は…今は…陸の警戒パトロール中なんです」

 

「………はぁ…」

キョトンとする警察官A.B。

まあ…無理もないよね。

お前ら海のモンじゃろ?って言われたらそれまでだもん…。

 

「え…あぁ…でも、あなた方は海のう「そう!海のモンですよ!」

 

でも…畳み掛けるしかねえ!!

 

「でもねえ!陸に上がることもあるんですよ!そんな時…私らは海の上だと間に合わないんですよ!」

「あなた方や陸の戦力でどーにかなりますか?ならないですよね!?」

 

「だからこーやって警戒パトロールするんですよ!」

 

 

 

「…猛スピードで?」

 

「奴らの速さは馬鹿に出来ませんからね!広範囲を周るためには仕方ないですよ!」

 

 

「………刀振り回しながら?」

 

「コイツなりの気合いの入れ方なんですよ!」

 

 

「バンバン砲撃しながら?」

 

「ほら!ハイキングの時も熊除けの鈴とかならすでしょ!?それと一緒ですよ!砲撃音にビビって深海棲艦を牽制するんです」

 

「それで逃げるんですか?」

 

「ええ!もちろん!逃げますとも!尻尾巻いて海に帰りますね」

 

「そうですか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ならアレは?」

 

 

「え」

警察官Bの指差した先には川で釣りをする深海棲艦が居た。

 

「うそやん」

 

 

「撃ちます?撃ちます?」

警察官Aは天龍に問いかけている。

その天龍も撃っていいもんなの?と俺に目線を向けてくる。

俺は取り敢えず慌てて釣り人棲艦の所に走って向かった。

 

 

「君ィ〜何してるのかな?」

 

「…ツリ」

 

「この街とかに危害加えたりしない?」

 

「……オマエハ…テイトクカ…」

「…ナツノウミデセワニナッタシナ…アバレタリシナイヨ」

 

「まじか!なら釣りを楽しんでくれ!」

半ば無理矢理に彼女と握手をして戻ろうとしたら3人がこちらに来ていた。

 

「え?敵なんですか?」

 

「いやいやいやいやいやいや!この子はね!…えーと…アレですよアレ!そう!河川棲艦ってね!アレですよ!川で生まれた深海棲艦なんですね!」

 

「「「「え」」」」

 

「…提督?」

マジで不安そうな顔を向けてくる天龍。

察しろ!察してくれ!ノッテくれえええ

 

「ワタシハ…カワデウマレタノカ…」

お前は純粋かよおおお!!!

「ソウダ!ワタシハカワデウマレタ!ニンゲン!カワヲヨゴスナ!」

ノリの塊じゃねえか!なんていい奴なんだぁぁ!!

 

 

「……えぇ…」

 

「ニンゲンガ、カワヲヨゴストセイタイケイガクルウ!ソレヨクナイ」

 

「えと…でもあなた…釣りしてましたよね?」

「何でですか?」

 

「ソリャハラガヘル「生態系の調査だよなぁ!!!」

 

「イヤ…オナカが…「生態系の調査ッ!!」

 

 

「…セイタイケイノチョウサダ!!ミロ!この針ニハカエシモナイ!ヤツラノカンサツモワレラノシゴト!」

 

「この壺の中に何匹も入ってますが?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

河川棲艦…こと軽巡棲姫は血の涙を流しながら魚を放流した。

「ゲ、ゲンキデナ…!!」

 

 

「ウゥ……ゴハン…」

と、消えそうな声で呟く棲姫ちゃん。

 

「泣いてませんか?」

 

「チガァウ!ヒサシブリノサイカイトワカレニハナミダガツキモノダロウ!」

 

 

本当にごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい

ごめんなさいごめんなさい。

後でご飯でも奢りますし、物資も分けますから許して下さい。

 

 

 

 

 

「そうでしたか……なんかモヤモヤは残る気もしますが…平和の為だったのですね。お呼び止めして申し訳ありませんでした!」

「でも可能なら…鎮守府巡回中の印や届出をして頂けると助かります」

 

 

やべぇ。

変な仕事が増えそうな気がして来た…。

 

「あ、はいそうですねすみませんでした紛らわしい事をしてご迷惑をおかけしました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

河川棲姫…の体を張ったノリのお陰でなんとか乗り切れた気がしたが…

 

 

「……鎮守府においで……ゴハンたらふく食べていいから」

 

「クチクカンモヨンデイイ?」

 

「いいよぉ…」

 

「イキュウ、ロキュウモ?」

 

「いいよぉ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、町の警護もお願いされたとかで大淀に怒られたし、皆に笑われたし、河川棲姫に飯食わせたし…天龍もまたいこーぜ!とか言うし…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アラ、ケイジュン。ジョウキゲンネ?」

 

「ウマイモンタクサンクエタ!」

 

「アラ!ヨカッタワネ」

 

「チンジュフッテスゴイナァ…」

 

「エ?チョットマッテナニ?」

 

「ツリシテタラ、チンジュフデメシクワシテクレタ」

 

「何言ってんのお前…」

 

「キャラトンデンゾ…」

 

 

 







さーせんしたぁ!!


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373話 水面は青空に憧れて 

「おねえちぁん♪救さん♪」

 

 

「あ、いらっしゃい」

 

えへへ…と笑うのは花の入ったカートを押して来た奈々ちゃん。

 

 

「いつもお疲れ様です!」

 

 

小々波の孤児院に居た彼女は先月くらいから、うづきの花屋…もとい、お店で働き始めたらしく…鎮守府と街のイベントの時に花屋のスタッフとして来ていた時に出会った。

同じ境遇…と言うのもあってかすぐに仲良くなれた訳で、特に金剛多々と仲が良くお姉ちゃんと呼んでいる。

今では、ウチに花や物資を卸しに来る兼遊びに来る子になった。 

 

 

『今日からはこの子が西波島に納入にくるからね』

 

『お、うづきちゃん。その子は?』

 

『えと、奈々って子だよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だいぶウチにも慣れてくれたねぇ」

 

「うん、お陰様で!」

「でも…いいなあ…ここの人は…皆が家族みたいで」

 

「まあ…家族みたいなものだからね」

 

「そうデース!じゃない!そうだよー!ワタシとダーリンは夫婦ですからー!ファミリーですよー!もちろん奈々も私達のシスターでーす!」

いつもの金剛の軽いノリの"妹"と言う言葉に目を輝かせる奈々。

 

 

 

 

「榛名もダーリンさんのお嫁さんです!」

 

 

 

え?みたいな顔でこちらを見てくる奈々ちゃんから目を逸らして会話を変える。

 

「そ、そんな事より今日の花は何かなぁ?」

 

「あ、今日はバラです」

 

「おー!さっそく飾るようにするよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ!奈々ちゃん!うづきさん!おはよー!」

 

「あー!麗ちゃん!おはようー!」

 

「んー?誰?」

ひょこりと当たり前のように現れる2人。

「紹介するね!この子は奈々ちゃん。街の花屋さんで働く子だよ」

 

「へぇ…僕は幸って言うの、よろしくね」

 

「はい!奈々です!よろしくお願いします」

 

 

 

 

「折角なんだし3人で鎮守府の中ふらついて間宮に行って来たら?」

救達がニコニコしながら言ってくる。

「まも君は来ないの?」

 

「俺は仕事があるし…納入のことでうづきと話もあるしね」

 

「そうだね、いいよ!奈々、行っておいで」

 

「いいんですか!?やった!」

 

「じゃあ…女子会しようかー!」

 

3人が意気揚々と執務室を飛び出して行く様子を見ながら「男子は俺だけだもんなあ…」と、呟いてみる。

 

「99%が女だもんね、毎日女子会だよね」

 

 

 

 

 

 

 

 

「奈々ちゃん、いらっしゃい…って、あら!今日は麗ちゃんと幸ちゃんも一緒なのね」

 

「私も居るよー!!」

 

「あら、金剛さんも!」

 

 

「特製パフェ4…いや、5つ!!」

 

「誰が2人分たべるの?」

クスクスと笑いながらオーダー票に書き込む間宮に4人がニヤニヤと「間宮さんも一緒に!」と言う。

 

「あらあら、嬉しいお誘い。ならお言葉に甘えようかな」

 

パフェが皆の前に出されて、和気藹々とガールズトークに花が咲く。

 

「んー!これが間宮さんのパフェ?!すごくおいしー!」

 

「でしょー!?他の鎮守府のパフェと全然違うんだよねぇ」

 

「煽ても何も出ないわよー?」

 

「でもこの鎮守府は他のに比べて…うん、本当に幸せそうだけどね」

「間宮さんはここの人だからそう感じないだけだよ」

 

「そう?だとしたら、あの人のお陰ね」

 

間宮にとっては他の鎮守府の事は知らないことの方が多い。

組合で他の間宮の話を聞くことも多々あるが、そこでも同じような事を言われる。

 

 

「羨ましいなあ…」

それも、麗や幸からすれば羨ましいのだ。

日常の中に彼が居ると言うことがどれだけ幸せか彼女達はよく知っている。

 

「っても、2人もほぼウチに入り浸ってるでしょー」

 

 

だが、それ以上にそれを羨ましがる人物が居た。

 

 

 

 

 

奈々だ。

彼女は知らない。

物心つく前から孤児院に居た彼女は愛を知らない、贅沢なんか知らない、交流も知らない。

お世辞にも良い生活でなかった彼女にとって、今のこの状況も不思議体験の一つだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あ、あの…うづきさんの所でお世話になることになりました奈々と申します』

 

『ん?あぁ!花屋だけじゃなくてウチ関連の物資も手掛けてくれるようになったって言ってたね』

 

『はい……あの!』

 

『ん?』

 

『提督様…閣下も孤児院の出身と聞きました』

 

 

 

救はこれまでの歩みを彼女に話した。

荒唐無稽と言ってしまえばそれまでのお話、まるで昔見た本の内容のような人生。

それでも彼は笑顔で話した。

 

 

『閣下は幸せですか?』

 

彼女は問いかけた。

 

 

『幸せだな』

彼はスルリと答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私は……幸せになれますか?』

 

彼の心の中に一番残っている言葉だ。

不安そうな…切ない目で訴えかけるように投げかけられた言葉。

『幸せ…ね、なれるよ』

彼は笑顔を崩さず…それでも真剣な眼差しで彼女に語りかけた。

 

『幸せにしてみせるよ…………なんてね』

 

 

ドキリとした。

今までに感じたことのない…なんだろう。

 

 

『気軽に遊びに来てよ!仕事のついでにお昼とか夕飯とか一緒に食べて行ってよ!』

 

『でも、そんな…私は他人ですよ?!』

 

『ならアナタは私のイモートでーす!かわいいー!』

ヒョコと現れたのは金剛と榛名。

金剛は奈々を抱きしめてヨシヨシと頬擦りをして頭を撫でる。

 

『ほえ!?こ、金剛さん!?』

 

『誰がなんと言おうとあなたは私達のイモートでーす!』

 

『はい!榛名も賛成です!霧島の妹です!』

 

 

 

それを見つめる救さんに、大淀さん達。

なぜか無性に嬉しくて嬉しくて…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それって…何!?え!?いつの間にそんな話を?!」

 

「救君ったら……私がいるのに……ウフフフフ」

 

「アハハ…それで奈々ちゃんもオチちゃった…と」

 

「え!?あ、えと…そんなのはよくわからないけど…会えると嬉しいというか…ここら辺があったかくなるんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…おおぅ!寒気が」

 

「今日は暑いくらいですよ?」

 

「…きっと噂されてるのですね。ご主人様は誰にでもお優しいですから…」

 

「ええ…」

 

「皆を愛するといっても、競争率は高いのですよ?」

 

「まあ…薄々勘づいてたから一緒に行ってないんだけどね」

 

 

 

 

さて、休憩でもしようかな…と言う時にバァン!とドアが開かれる。

「執務室のドアはアレだな、無い方がいいのかも知れないな」

 

「では、ちょうど良い機会ですね。たった今壊れましたから、修理はやめておきますか?」

 

「そうする…」

 

 

 

幸が救に飛びかかってブンブンと彼を揺さぶる。

「ちょっと!まも君!?何?!幸せにしてみせるって!?」

 

「ち、ちょ!幸様!?ご主人様が漫画みたいにブンブンとなっております!!」

 

「僕は!?僕はぁぁ!?」

 

 

「ダーリン!?奈々もだけど私を忘れちゃノーよ!?」

 

「こ、金剛様まで…!?」

 

 

 

 

この日から執務室のドアは無くなったとか…?

 

 

 

 

 

 



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374話 水面は青空に憧れて ② 深い水底へ水底へ

とある日の昼下がり、うづきの店にとある者達が乱入…もとい訪れた。

 

「やほー!な〜な〜ちゃん!」

 

「お手伝いに来たよ!」

 

「え!?金剛お姉ちゃん!?麗さん!?幸さん?!」

そう、女子会(笑)メンバーである。

 

「えへへ、休みで遊びに来たでーす」

 

「む!奈々ちゃん!さん付けはダメだよ!同じちゃん付けでお願いだよ!」

 

「あ……うん…ありがとう」

 

 

 

「あれ?!金剛さん!?」

奥から出てきたのはうづき。

 

「オー!うづきー!今日は遊びに…兼手伝いにきたねー!」

 

「ええ!?本当ですか!?」

 

「色々と忙しくなったと聞いたよー!」

 

元々は花屋だったうづきのお店。

だが、ここ最近で事業拡大…というより、元艦娘としての繋がりを利用して物資も扱うようになった。

専ら西波島関係ではあるが、海路の関係もあって重宝されている。

 

 

 

 

「良いんですか?せっかくのお休みなのに…」

 

「友達とイモートは大切にするものでーす!」

 

 

「そう?なら嬉しいです!なら…奈々ちゃんのお手伝いお願いしますね」

 

「「「はーい!」」」

 

 

 

ガラガラと台車を引きながら街への納入に回る奈々を手伝う。

 

「おやあ?今日は美人さん揃いでの仕事かい?」

 

「美人さんだなんて…ありがとうデース!」

 

美人さんが笑顔で納入に来ると言うと言うことで人気が出たらしく、行く先々でお菓子やら何やらをたくさん貰った。

正直行く時より荷物が増えた気がする。

 

 

「いやぁ〜。金剛さん達…美人さんて評判で、また来て欲しいってたくさん注文貰いましたよー!」

 

「ならまた手伝いに来るでーす!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日は、

 

 

「行きますよー!」

「金剛型1番艦金剛!!ダーリンラァブデース!」

 

「金剛型2番艦!比叡気合い入れて!行きます!」

 

「金剛型3番艦!榛名は大丈夫です!」

 

「金剛型4番艦!霧島、マイクは手放しません!」

 

「…えと…末っ子!奈々です!が、がんばります!」

 

「「「「我ら!金剛型5姉妹ッ!」」」」「しまい!」

 

「ほいよ」

カチッと青葉がスイッチを押すと後ろで大爆発。

紙吹雪が舞って歓声が沸き起こる。

 

 

「おー…奈々〜。まだ恥ずかしさが残ってるねー」

「もっと…ガツガツ行くべきでーす!」

 

「そうですよ?見てくださいお姉様を。カタコトキャラを脱却しようと頑張ってるんですよ?そのくらいのガッツが必要ですよ!」

 

「あう……」

 

「キャラ確立はなかなか難しいデース…」

 

 

 

 

特に金剛の奈々への可愛がりは凄かった。

わざに小々波の街まで迎えに行く程だった。

だが、彼女も喜んでるようで姉妹揃って楽しそうにしていた。

 

 

 

 

 

 

救が近寄って来て話しかける。

 

「楽しくやってるようだね」

 

「はい!こんなによくされて…嬉しいです」

「私も艦娘だったらな…って思います…あはは」

 

「艦娘だとか人間だとか関係ないよ」

 

「でも、一緒に戦えたら…って思います」

 

「物資の運搬も大事なものだよ!奈々ちゃんも立派なウチのメンバーだよ」

 

「…わ、わたし…救さんの力になれてますか?」

 

「もちろんだよ?どしたの?」

 

「……あなたの力にもなりたいんです」

彼女は顔を赤らめて言う。

 

「ありがとう」

 

「ムー!!ダーリンは私のダーリンよー!」

 

「違いますー!榛名のダーリンさんですっ!」

 

「比叡と霧島も忘れて貰っては困ります!」

 

他のメンバーも入り乱れてのワーキャー具合になるいつもの感じ…それが奈々のお気に入りだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしだった。

そんなある日の事だった。

 

大規模侵攻が行われ、西波島のメンバーは防衛ラインを敷いて殲滅に当たっていた。

 

住民達への避難指示を出し、誘導を行う。

 

 

「うづきさんも早く!」

 

「ダメよ!まだ奈々が戻ってないの!」

 

「奈々ちゃんが!?今どこに!?」

 

「離島に納品に…小船で!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『呆気ないな…金剛とやら!』

 

金剛を片手で持ち上げて主砲を金剛に当てる。

対する深海棲艦はいつでも金剛を殺すことができる態勢だ。

 

戦艦棲姫…今回の大侵攻の首謀者である彼女は一際強かった。

霧島や陸奥は中破に追い込まれ、撤退戦と消耗戦を余儀なくされる部隊も少なくなかった。

 

 

 

 

「こんごおお!」

 

「お姉様ァァ!!」

 

 

「ぐっ…この」

ジタバタと暴れる金剛

そしてー

 

 

『死ね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

救に緊急通信が入る、かつてない程に慌てるベルだった。

 

「ベルッ!今はそれどころじ「ご主人様ッ!!奈々様が!奈々がそちらに!!」

 

「なにぃ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パァン…と乾いた音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カキン

戦艦棲姫の艤装に弾があたった。

 

『む?』

 

棲姫の目線の先に居たのは…小舟から銃を構えた奈々だった。

 

「お姉ちゃん…」

カチカチと震えながら涙目で呼び掛ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『今、その近海で大規模な戦闘が行われてるらしい!みんな今避難してる!今すぐ仕事をやめて帰って来て!もしくは西波島の皆が来るまで島にいて!!!』

 

奈々は舵を切る。

進路は小々波の方へと向きを変えた。

 

『うん……危ないからね………って!?奈々!?』

 

 

 

そう思った束の間、進路は…金剛達の方に向かう。

 

 

『お姉ちゃんがピンチなんです!!』

彼女はうづきを振り払って行く。

 

 

 

いつも守って貰ったんだ。

だから…私が守るんだ!!

 

 

『奈々ッ!!ダメだ!帰れ!帰ってこい!!』

 

『ごめんなさい…うづきさん。できません。胸騒ぎがするんです!行かせてください』

 

『ダメだッ!絶対にダメだ』

 

『貯金は家の箪笥にあります、保険も掛けてます……うづきお姉ちゃん…ごめんなさい』

 

その言葉を最後にプツリと通信は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「奈々!?何してるの!!」

金剛達が慌てて退くように叫ぶ。

 

少女は小さな銃を両手で握りしめていた。

「お姉ちゃんを…離せぇッ」

 

 

「馬鹿ッ!!」

 

急いで駆け寄る救と榛名。

 

 

 

片手で持ち上げた金剛を見た後に視線を奈々の方へ移しニタァと笑う棲姫。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やめろぉおおおおお」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女はソレを悟る。

 

「お姉ちゃん…救さん…大好きだよ」

「私が守るから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰もが目を覆った。

 

彼女が乗る小舟は大爆発を起こした、榛名と背に乗った救は爆風で吹き飛ばされる。

それ程の爆発だった…そのかけらも残さない程に。

彼女は納品に向かう途中だった。

 

でも彼女は我慢できなかった。うづきの静止を振り切って銃を手に向かってきたのだ。

 

 

『アハハハハハハ!死んだ!死んだ!!跡形も無く消し飛んだ!!ほら!見てこいよ!!』

金剛を乱暴に爆発し、今も燃え上がる海に投げつけた。

 

 

 

 

 

 

「奈々ッ!!奈々ァァ!ななぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

 

「ドコッ!?返事を…返事をしてえええ!!」

 

 

 

 

 

「榛名!大丈夫……か……」

 

「は、榛名は…大丈夫…です……奈々ちゃんは」

 

「ッ!?奈々ちゃん!!」

「戦艦棲姫を牽制しながら探すぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 

しかし、既にそこに深海棲姫達の姿は無く…

水面に跪いて必死に戻らぬ彼女を探す金剛の姿だけがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何日も捜索が行われた。

望みは全くも言って良いほどでは無かったが、それでも探した。

その悲痛な金剛を誰も止める事が出来なかった。

 

 

 

「奈々!お願い…お願い!出てきてよおおお!!」

 

「金剛さん!奈々は!奈々は!」

 

「うづき!止めないで!きっと奈々は…」

 

「金剛さん!」

 

「あの子は私のイモートなんです!!この悲しみがわかりますか!止めるなァァア!!」

 

鬼のような形相でうづきに突っ掛かる金剛。

だが、うづきは負けずに言い返す。

 

「金剛さんッ!!私だって辛い!!!」

「私だって…信じたくない…!でも!でも!!」

「あなただってボロボロなんだ!!こんなの奈々は望んでない!!」

 

 

「…うっ……うわぁぁぁあああああ!!!」

ぽろぽろと泣き崩れる金剛。

 

2人はひたすら泣き明かした。

 

大切な家族を、友人を亡くした悲しみは…深く傷となって…

どれほどに傷を癒そうとそれは消えることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オネェチャン…」

 

 



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375話 水面は青空に憧れて ③ 深い海の底から

『フフフ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その者は彷徨った。

ポツリと生まれ落ちたその娘は、あるものを探して彷徨った。

フラフラと誰かを探すように彷徨う彼女。

 

 

 

 

大侵攻があったかも分からないくらい平和な小々波のとある店。

うづきの店には2人の姿があった。

「……寂しいですね」

 

「………うん」

 

店主であるうづきと金剛の姿だった。

特に奈々を可愛がっていた金剛にとってこの喪失感は想像に出来ないほどのものだろう。

 

 

カラン…とドアを開けて入ってくる客があった。

 

 

 

「ごめんなさい…今日はお店……ッ!?こ、金剛さん!!」

 

うづきが怒鳴り声のような声を上げる。

無理もない。

そこに居たのはタ級と呼ばれる深海棲艦だったのだ。

 

 

ガシャン…と砲門をコチラに向けるタ級。

金剛はすかさずタ級に飛びついて外に飛び出して行く。

間一髪のところで砲撃は海の方へと放たれた、そして金剛もタ級にタックルしたまま海…街から離れるように海上へと進んで行く。

 

「お前達のせいで…奈々は!奈々は!!」

金剛の目が血走った。

バチッと音を立てるように彼女の周りはピリピリとした空気が漂う。

馬乗りになるように彼女に乗り掛かり、その右拳を振り上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『オネェ…ちゃん』

 

 

 

 

 

 

 

 

「……は?」

 

 

絶望的な声が聞こえた。

絶望的な言葉が聞こえた。

決して開かれることの無いはずの彼女の口から…あの日から聞けなくなった声が聞こえたのだ。

 

騙されている、弄ばれていると思おうとした金剛は更に拳を上へと振り上げる。

 

「大好きなシスターの声で…お姉ちゃんと呼ぶなッ」

 

 

 

『オネェ…ちゃん……ごめんね』

 

 

だが、再度その口から放たれた言葉は…

どう足掻いても失ったもう1人のイモートの声そのものだった。

 

 

「な、なら!!なら!!お前の名前を言ってみろ!!」

 

嘘だと言ってくれた方がいい。

いや、本当だと言ってくれた方がいい。

そんなぐちゃぐちゃな思考に頭をかき混ぜられながら金剛は叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『な……ナ…だヨ』

 

 

「…〜〜ッ!!」

金剛はその拳の力を解いて…ギュッと彼女を抱きしめた。

 

『オネェちゃん。泣かないで?』

 

 

 

 

 

例え悪魔だろうと、天使だろうと、何でもいい。

会いたかった。

ただ愛しい妹な会いたかった。

ごめんねとありがとうと言いたかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…こ、金剛さん!?」

 

「……奈々なんだよ…この子は」

 

「え…?!そんな、嘘ッ」

うづきは目の前の金剛に驚きを隠さずに居た、泣き腫らした顔でタ級をうづきだと言って連れて…手を繋いでいるのだ。

 

 

うづきにとっても敵の姿。憎き敵の姿。

ずっと…ずっと心の底から敵だと思っている。

仲間を死に追いやって、大切なものを奪って行く…

 

「いくら金剛さんでもッ!!許しませんよ!!」

 

「ほ、ほんとデース!うづき」

 

「いや!あり得ないッ!!そんなことあるはずが無い!艦娘になりたいって言ってた子だけど、そんな!深海棲艦を奈々だなんて言わないで!」

 

「姫ちゃん達も深海棲艦デース!艦娘として戻ってきた子もいまス!」

 

「……ぐっ」

 

確かにそうだけど。

いや、どこかでは姫ちゃんとか鬼ちゃんとか言われるあの2人にも嫌悪感は少なからずあった。

でも…

でも!!

 

 

 

 

 

 

『うづき姉さん…心配カケテ…ごめんなさい』

 

『…お姉ちゃんヲ…助けたクテ……勝手にフネ…ヲ…』

 

 

「……ッ!!!」

 

 

確かにあの子の声を発するのはタ級だった。

認めたくない。

認めたくないけれども…それが現実らしい。

 

「………」

「ばか…ばか!ばかぁあ!!」

 

3人で泣きあった。

周りの通行人が店の前で足を止めるのも関係なしに泣いた。

 

 

 

2人は喜びのあまり鎮守府へと彼女を連れて帰る。

麗や幸も駆けつけて喜びに沸く鎮守府。

 

救はもちろんの事こと、皆も姫ちゃんの存在もあり、すんなりと受け入れるようだった。

 

 

 

 

 

 

 

『わぁ…ココがお風呂…広い…』

 

鎮守府でのお泊まり会となったようで、ガールズトークとはいかないが会話に花が咲いていた。

 

 

 

『この姿でモ…あの人ハ…私のコト認めてくれるカナぁ…』

 

彼女は不安そうに漏らす。

 

思えば、良い思いをした事が無かった人生だった。

親がいない。

必死に生きようとしても…誰もが訝しげな目でこちらを見てくる。

勉強もがんばった…でも学歴はついてこない。

贅沢なんかできなかった、それでも我慢した。

 

ある日の事だった。

カフェでバイトをしていた時のことだった。

お釣りを間違えて渡してしまい…お客さんにかなり喚かれた。

やれ、孤児だとか…低学歴だとか……頭を下げていたが悲しくなって泣けてきたが、それすらも否定される。

 

その時に彼が助けてくれたのだ。

「誰にでも失敗はありますよ。それをそこまで人間否定するように言うあなたはそこまで偉いんですか?」

「私は彼女の明るい接客でいつも元気を貰ってます。たまの楽しみになってるんです。だから彼女を一度の失敗でそこまで責めないでください」

 

客を嗜めた後、笑顔を私に向けてくれたあなた。

すみませんでした!と頭を下げる私に俺も同じだから…辛さはわかるよ!何かあったらいつでもいつでも言ってね!と言ってくれた。

 

ご縁があってうづきさんのところね働き始めたけども…

嬉しかったのはあの人が私の事を覚えていてくれたこと。

 

 

 

「あの人はそんなに小さな人じゃないデース」

「ダーリンは奈々の事も大切にしてくれまーす!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もちろんうづきのお店も続けている。

海の上を移動できるようになったのと艤装?ってのがあるから仕事も楽になった。

 

むしろ、海の上でも一緒に金剛お姉ちゃん達と居られるのが嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなある日に…私はお姉ちゃん達と海にいた。

 

 

 

 

 

いまだに海の上にいる事が信じられない…。

 

 

 

 

 

 

深海棲艦…

よくわからないけども…そんなに恨みが強かったのかな。

でもあの人に会いたかった。

お姉ちゃん達とずっと居たかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

いや

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんな世界が嫌いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思った瞬間に頭の中にノイズが走った。

 

 

 

 

 

 

 

『自覚したわね?残された時間は…あと2時間よ…』

 

『何!?ドウ言うコト!?』

 

『アナタが生まれた時…仕掛けたのよ。深海棲艦になるなんてよっぽどこの世界に恨みがあるのねえ…』

だからあなたごと大切なものも嫌いなものも消し去ってあげようと思ったのよ

 

『一体ドウいうこと!?』

 

 

 

 

頭の中に響いた声。

いつだ?いつの声だ?誰の声だ?

 

 

頭が痛い。

膝をついて蹲るタ級…もとい奈々。

 

「どうしたの?!」と、心配そうに声をかける金剛。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだ。

昨日…私は……奴に…。

思い出された姿は戦艦棲姫が私に何かをしたこと。

『家族に会わせてあげるわ?』

『時限付きだけどね?その時が来たら…嫌でも一緒になれるわぁ』

 

 

 

 

『アナタが爆弾そのものになるのだからね』

 

 

『ひたすら破壊をしつくして自分ごと消えなさい?仲間にしてとこうとも考えたけど…人の分際で私に銃を向けたアンタを生かしてはおかないわぁ』

 

 

 

『さあ…逝きなさぁい』

 

 

途端に私の頭をとてつもない憎しみが覆う。

私の負の感情が一気に一気に広がり、ガクガクと震えてくる。

 

 

ワタシを…憎い感情ガ…染めテ行く…て

 

 

 

 

「大丈夫?」

「さあ帰ろう?」と金剛が優しく声を掛けてくれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

私は…

金剛を突き飛ばして、鎮守府に砲撃を行った–––––

 

 

 





暗いお話。



少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。

感想などお待ちしてます!


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376話 水面は青空に憧れて ④ 心引き裂く覚悟

胸糞…注意


「…ッ!?奈々!?」

 

 

波止場のうづきが絶望的な目でこちらを見る、鎮守府からわらわらと皆が出てくる。

 

 

 

 

『ハァッ…はぁっ…』

 

 

殺せ

死ね

消えろ

 

 

 

 

こんな世界消えてしまえ

 

 

 

 

 

消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえきえてしまえ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

消してしまえ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『うグあ…あぁぁぁあ!!』

『金剛ぉ…逃…ゲテ』

 

 

「奈々!」

必死に呼びかける金剛。

 

 

 

 

 

 

 

『消しテヤルッ!!』

 

 

 

あたり一面に砲撃を始める奈々…いや、タ級。

その姿は今までに見た深海棲艦そのものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だよう…やっぱり奈々は悪なの?」

「やっぱり深海棲艦なんか……」

 

ギリッと握りしめた手を見ながら言ってはならない一言を発そうとした時だった。

 

「……あの子を信じてあげてほしい」

 

そう言って私の横を駆け抜けて行ったのは姫ちゃんの後ろに乗る救提督だった。

 

 

「……ッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗イ…

 

深イ…憎い海…

 

 

 

 

 

 

皆消し去ロウ…

 

私ゴト…

皆ガ…ヒテーする私ゴト…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いいや

そんな訳にはいかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が死ねば…

私が倒されれば…ッ

 

みんなは助かるんだからッ

 

起爆装置はこの身体。

爆弾もこの身体。

 

 

 

 

 

皆を傷つける訳にはいかない!

鎮守府を…皆の場所を壊すのも、皆の栄光に傷をつけるのもダメだ!

 

 

なら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女はその小さな、今にも潰されそうな心で…腹を括った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁあああああッ」

 

 

 

彼女は大好きな皆へと走る……砲撃を行いながら。

 

 

私が敵なんだ!と叫びながら。

 

 

 

 

『わ、私を倒さないと…ここら一帯吹き飛ぶぞッ!!』

 

 

タ級…奈々が発した言葉は金剛達の耳に入る。

『私が爆弾だ!あと1時間もしない間に爆発するぞ!!そうなりゃ…ここら一帯…鎮守府も吹き飛ぶぞ!あなた達の居ない間に深海棲艦が街に攻め込むぞ!!』

 

 

「奈々…まさか」

 

 

そう、彼女の意識は闇に飲まれてはいない。

大切な人達を守りたい––

その心だけで押し潰されそうなほどの悪意に耐えているのだ。

 

 

 

 

「奈々!きっと助けるから!!」

 

『そんな…夢物語な話があるかッ!私はお前達の敵だぁぁ!!』

 

 

 

 

 

 

ギリッと歯を食いしばる金剛。

助けたい。

しかしその術がない。

 

ここまで無力なのか。

こんなにも…手を伸ばしたら彼女に触れられるのに…私は助けることもできない。

 

 

 

『なんで来ないんですか……』

誰にも聞こえない声で奈々は言う。

 

なら……

 

 

 

 

 

 

「こんごおおおおおおッ!!」

「あな…お前はッ私が沈めてやるぅぅううう」

 

「お前が大嫌いだった!!」

 

 

 

ズキンと何かが痛んだ。

それが何かわからない。

 

視界がなぜか歪む。

何故かわからない。

 

 

 

 

 

「いつでも…底抜けに明るくて」

 

 

「優しいお前が大嫌いだったんだぁぁぁあ!」

 

 

 

 

皆が艤装を構える。

やめろと言う救さんの声が聞こえた。

 

 

 

 

 

バッと金剛が手を出す。

"手を出すな"の合図だ。

 

金剛も分かっていた。

彼女が今何をしようとしているのか、分かりたく無かったが分かってしまった。

 

 

「…………」

 

 

「…私も…イジイジしたお前がッ!大嫌いだったァァ!!」

 

 

 

きっと皆にも見えているだろう。

私もきっと酷い顔をしているだろう。

涙でぐちゃぐちゃな顔をしているだろう。

 

 

 

「「うわぁあああああっ!!」」

 

 

ドコッ…という生々しい音がして…

 

拳がお互いの頬に突き刺さる。

涙と血が飛び散る。

 

「ガッ」

 

「ううっ」

 

 

 

数秒の間時が止まった。

 

あなたの温かさが…こんなにも伝わってくるのに…。

 

 

「「うおおおおおっ」」

 

凄惨…心が痛む殴り合いが続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの小さな体に…なんて力を持ったのだろう。

あの小さな体で…なんて覚悟を背負ったのだろう。

 

 

 

 

ただ見守るしかなかった。

それを選んだ彼女

それを受け止めた彼女

両者を止められる者は居なかった。

 

 

 

「馬鹿姉貴ィィイイ」

 

「この馬鹿妹ォォオオ!!」

 

 

 

 

 

金剛は涙目でタ級の顔面に拳を叩き込む!

 

奈々は…その拳を払い除けて同じように拳を金剛に叩き込む!

 

 

拳と拳が、脚と脚がぶつかり合う。

何度も肉薄してはど付き合い、血や涙を飛び散らせながら声にならない声をあげてぶつかり合う。

 

 

 

 

「何で金剛さんは泣きながら戦ってんだ?!奈々だろう!?」

 

「…奈々は金剛に倒されようとしてる」

 

「なんだって!?」

 

「奈々は呑まれかけてるのよ…闇に。でも何とか正気を保ってる。このままだと彼女に仕掛けられたモノが爆発するからって」

「だから彼女はそれを防ぐ為に戦ってるのよ…金剛とも自分とも」

 

 

「何だよ!それ!そんな酷い話があんのかよ!!奴は!アイツの心は…ッ」

 

「目の前にあるじゃないッ!彼女は…どれだけの苦悩の中に居るか…」

 

「何もできねえのかよ!?俺たちは!!」

 

「見守るしか…ないわよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「金剛さん!その子を…とめてあげてええええ」

「ななぁぁぁああ!!負けるなぁぁあああ!!」

 

とある少女は泣き叫ぶ。

孤児院から彼女を引き取った少女は泣き叫んだ。

 

暗い子だった。

笑わない、ただ淡々と日々を生きて仕事をするだけ。

幸せを知らない、愛を知らない、普通を知らない壊れた心。

氷のように閉ざされた扉は…

私もよく知る彼らが開いてくれた。

 

 

笑うようになった、乙女の顔をするようになった。

艦娘への憧れや家族への憧れを持つようになった。

金剛さんや提督さんの話が増えた。

可能なら…鎮守府に行かせても良いと思った、彼女がそれを望んで幸せと言うのなら…。あの人を追いかけるのも良いと思った。

 

でも彼女は死んだ。

 

 

ヒトが艦娘に…ましてや深海棲艦になるなんて聞いた事がない。

 

しかし現実(奈々)は目の前に在った。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

ようやく明るくなれたのに…

ようやく希望を持てたのに…こんなのあんまりだ…と、うづきは泣き崩れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

痛々しい乱打戦の一瞬の隙…。

金剛は奈々を足払いする。

 

 

 

 

 

 

立ち上がろうとするタ級…いや、奈々は動きを止めた。

 

 

ガシャン…と主砲が彼女に向けられた。

その主砲の先端は…ピタリと彼女についていた。

彼女は抵抗しなかった。

ただ…涙を浮かべて「負けちゃった…」と呟いた。

 

それでも金剛は撃たずにいた、当然だろう。

思い出と言う名の門が邪魔をする。

短くとも…濃い思い出が彼女にその一歩を踏み出す事を許さなかった。

 

「撃てない…よ」

金剛はぽろぽろとその心情を涙と共に吐露した…撃てるわけない…と。

 

 

 

あぁ…そこまで思ってくれているんだ。

嬉しいなあ…

 

 

「奈々ァァァア!!」

あの人が私の名前を呼んでくれている…。

 

あぁ…幸せにしてくれるって言ってくれたもんね…

うん

私…今、ものすごく幸せ。

なら…尚更、この大好きな人達を死なせる訳にはいかないなあ。

 

 

残り時間はもう無い。

 

彼女の震えが止まった。

空気が変わった。

それは金剛も感じとった。

 

 

 

彼女は叫んだ。

 

 

 

 

 

 

大嫌いだなんて言ったけど…

本当は

 

 

 

本当は大好きな

 

 

 

お姉ちゃんのような艦娘に叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「テメェが撃たなきゃ死ぬんだぞッ!!」

「今すぐにでも…奴等を撃てるんだぞ!!」

 

 

「撃てぇぇええええええ!金剛ぉおおおお」

 

ガシャンと艤装を大好きな救の方に向ける。

 

カチリ…とトリガーをー…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドン…と

乾いた音と周りの叫ぶ声と

金剛の声だけがこだました。

 

 

 

 

 

 

 

 

倒れながら…彼女は見た。

 

『撃った!仲間を撃った!!』

遠くの戦艦棲姫がそう言った。

高みの見物?

最低ね…。

 

 

 

 

まだ…

せめて…あの女だけは…

 

 

 

 

 

 

 

 

倒れ行く奈々を金剛は抱き止める。

 

「なんで!!」

 

『こうでもしなきゃ…みんな死んじゃうから』

 

「そんな…でも!」

 

『…これしかなかった…ごめんね』

 

自らの命を引き換えに皆を守る事を選択した彼女。

妹として、敵として…暗い闇に打ち勝って…大好きな姉に倒される事を選択した彼女。

 

 

 

 

「「ほんとは」」

 

 

「お姉ちゃんができたみたいだった」

奈々…タ級は言う。

 

「妹ができたみたいだった…ううん、あなたはイモート!」

金剛は言う。

 

 

「……ごめんね、お姉ちゃん」

 

「………許してとは…言いません」

 

「ううん…怒ってないよ」

彼女はニコリと笑った。

 

 

 

「みんな…大好きッ!」

「金剛お姉ちゃんも…榛名お姉ちゃんも…みんな…てーとくさんも大好き」

 

 

 

 

 

 

 

「生まれ変わったら…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「艦娘に」

 

 

 

 

お姉ちゃんの妹に…

 

 

 

 

今度こそ

 

 

 

 

皆の仲間(かぞく)

 

 

 

 

なりたいな

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は再度、姉を弾き飛ばす。

 

「奈々!?」

 

 

 

 

彼女は最後の力を振り絞って進む。

嘲笑う戦艦棲姫の居る場所へ…

 

せめてお前を巻き込んで…散ってやる。

 

金剛達の視線の先にも戦艦棲姫が見えた。

 

『私から何もかも奪ったお前を許さない!!』

『お前の思い通りになんかなるもんか!!』

『お前なんかに負けるもんか!!』

 

 

『私がみんなを守るんだぁぁあああ!!』

 

 

どれほどの覚悟だろうか?

どれほどの勇気だろうか?

 

そんなものは本人にしかわからない。

 

だが、彼女は逝く。

その小さな全てに大きなものを背負って…

 

 

 

 

 

 

 

『来るな!1人で死んで行けッ!』

 

 

 

放たれる砲弾を躱しながら奴へと進む。

擦りながら…体を飛ばされながら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして

あと一歩の所でワタシは力尽きた。

 

 

『……ごめん…お姉ちゃん』

でも見て…

 

この手は…アイツに届いたんだ…

悔しいなあ……

 

 

悔しいなあ…

 

 

 

 

 

 

彼女はドシャリと倒れ込んで動きを止めた。

ブクブクと沈み行く彼女。

 

『少し焦ったが……やっぱり貴様のような犬にはやられるものかぁ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

追いついた金剛達が見たのは…

沈み行く彼女と…あの時の戦艦棲姫。

 

 

 

 

 

「「奈々ぁぁあああッ!!」」

 

うづきも…金剛も誰もがその名を叫んだ。

 

 

 

 

 

 

「お前か…お前が奈々を!2度もッ!!」

 

『命拾いしたな!…しかし…利用価値もなかったな…』

 

 

 

 

 

 

「…許さない」

「何があっても…貴様がどれだけ謝っても」

 

 

「私は貴様をッ」

 

 

 

 

「絶対に許さない」

 

 

 

 

『まだ間に合うんじゃない?あのゴミの回収は』

 

その言葉に金剛は反応してしまう。

急いで海に飛び込む。

 

 

居ない。

 

 

 

息が途切れて水面に上がる。

 

 

『よく探してよ?くくく』

 

遠ざかる奴を無視して私はずっと妹を探し続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗い…

  暗い…

 

 

 

ごめんね

 

ごめんね





少しでもお楽しみ頂けたなら…



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377話 青空は水面に憧れて ⑤ 憎しみは内からやって来る

はい、2話目の投稿です!
④から見てくださいね!


探す。

 

あの日の奈々は彼女達の頭から、眼から消えなかった。

 

金剛達姉妹は毎日毎日来る日も来る日も来る日も来る日も来る日も来る日も来る日も来る日も来る日も来る日も来る日も来る日も来る日も来る日も来る日も来る日も来る日ももう1人の妹を探し回った。

 

たとえ周りに止められようとも探すのを辞めなかった。

 

 

 

 

 

その3日後彼女は見つかった…

 

 

「金剛お姉様ァ!!こっち!こっちです!!」

青ざめた比叡の叫び声で金剛が走ってくる。

比叡の腕の中には……冷たい彼女の姿が在った。

 

浜辺に打ち上げられた彼女は2度目の死を迎えていくら触れようとも温めようとも…ぴくりとも動かなかった。

 

「奈々!?奈々!!」

何度も何度も呼びかけた。

それが無駄だとしても、彼女はそれを止めることも出来なかった。

 

金剛達は泣いた。

たとえ誰が側に居てもそのいつもの明るい表情を取り戻すことなく影がさしたように…。

 

「帰ろう……」

と、彼女の亡骸を抱えて鎮守府へ帰ろうとした時…

奈々はガラガラと崩れ落ち、光となって消えた。

 

それは金剛達にとって今後も引き摺るであろう光景となった。

可愛いイモートは…

新しい家族はこの世に何一つ残す事なく、私達を2度も守って消えた…

 

 

「奈々ッ!?なな!?ドコ!?ねえ!どこ!?」

 

「奈々ァァアアア!!」

浜辺で濡れるとも厭わず膝から崩れ落ちて泣いた、哭き叫んだ。

その肩を抱く妹達も同じよう砂を握りしめて涙を流した。

 

 

 

 

そして…

彼女の中には底知れぬ怒りと憎しみが渦巻いていた。

 

 

 

「ぶっ殺してやる……」

金剛達の眼は黒く…暗く染まっていた。

 

 

 

 

金剛達は鬼のように深海棲艦を狩に行き、血眼であの戦艦棲姫を探した。

 

 

誰もその4人を止める事すら出来ずにいた。

補給も入渠もそこそこに気力だけで彼女達はひたすらに戦い続けた。

 

「おい!金剛!其方は…止めぬか!」

桜三笠が金剛を掴んで問い詰める。

 

その間はさらに暗く…クマや傷も相まって、より鬼気迫る表情のように見えた。

「大丈夫」

 

「もうずっと休んでないでしょ!?無茶な事はしないでよ」

瑞鶴達も涙目で語りかける…が、金剛は聞く耳を持たない。

 

「大丈夫って言ってるデショ!?早く奴を見つけて仕留めないとッ」

 

「ヒッ…。でも!これ以上無茶したら…金剛さん達が「沈むって言うデース?」

 

「そ、それは…」

 

「刺し違えてでも奴を仕留めマース」

 

金剛が絶対に言わないであろう言葉を放つ。

 

 

 

パァン…

 

 

翔鶴が泣きながら金剛を叩いた。

 

「お説教ですカ…」

 

「そうですよ!そんな結末ッ!あの子が望むんですか!?あなたのダーリンさんが望むんですか!?」

 

「……ッ」

 

「あなた達が死んでしまったら何も意味がないじゃないですか!!」

「あなた達まで失ったら…わたし…たち…はぁ!」

 

翔鶴はそのまま泣き崩れた。

 

「榛名さん達は…これでいいの?」

 

「…止めたい気持ちもありますが…やはり、大切なもう1人の妹が死んだ傷は大きいです」

「…私は…お姉様の行く道を進みます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、大淀から通信が入った。

戦艦棲姫が見つかった…との事だった。

 

「金剛ッ!せめて少し休め!補給もしろ!その間は我等が奴等を引き留めるから!」

 

だが、金剛達はこんな声すらも無視して出撃して行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つけたァァアアア!!」

目に入るやいなや、彼女達は全力で戦艦棲姫の命を狙う。

生かしておかない、必ず殺す、そう心に決めて。

 

確かに、今のこの状況が正しくないのは分かっている。

ダーリンさんや他の仲間の声を無視するのも、お姉様を止めないのもダメだってことも…このままだと私達も……下手すれば死ぬことも。

 

でも止められない。

止められるはずがない。

 

この怒りも…憎しみも止まらないから!!

 

 

 

 

 

 

ガッ!

ドゴッ!

 

金剛と戦艦棲姫が殴り合う。

だが、棲姫は何枚も上手か…然程ダメージを与えられた様子もなく、金剛へのダメージが増えて行くのみだ。

 

「……っく!霧島ッ!!そっち!」

 

「はい!お姉様ッ!」

 

霧島が飛びついて蹴りを繰り出すが、それを躱して肘打ちで迎撃すると、そのまま比叡に蹴りを繰り出す。

 

「グッ…」

 

「きゃあ!!」

 

 

その比叡の影から榛名は飛び出した。

「これなら…どうですか!!」

榛名の渾身の蹴りが棲姫の顔面を捉えた。

 

「ダメ押しだッ!!」

金剛も棲姫の後頭部へと蹴りを打ち込む。

 

 

 

 

 

 

『…アハ…きいてないよ?』

 

 

 

 

 

 

「何でッ」

 

傷一つ…と言うわけではないが、ダメージは無いに等しい。

ケラケラと笑う棲姫。

 

 

 

 

 

 

 

『あらぁ…本当に復讐?』

 

「当たり前だッ!!お前は消すッ!!」

 

『怖い顔よお?あなた達の方が悪役よ?』

『それにあの子は死ぬべきだったわ?私に牙を剥いたのよ?2度も…弱いから死ぬの』

 

『戦争なのよ?あなた達もそれはわかってるでしょ?それとも何?謝ればいいの?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『弱い虫を2度も捻り潰してごめんなさい…ってぇ??』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金剛の意識はそこで途切れた。

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どれだけ時間が経っただろうか?

 

 

震えながら榛名が海を見つめた。

霧島も傷つき…震えている。

 

 

 

 

金剛と比叡は

 

 

金剛は戦艦棲姫と渡り合っていた。

髪は真っ白に染まりかけ、眼は紅く、黒く染まってバチバチと音を立てながら……そう

まるで…まるで…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アハ!あなたの方が深海棲姫みたいよ?』

 

 

 

 

 

 

 

「五月蝿いッ!!コロス!殺す殺す殺す殺すコロス!」

「消してやるッ!!この手でッ一つ残らず!消してやる」

 

 

 

 

「金剛お姉様!!ダメですっ!」

榛名が金剛に飛びついた。

泣きながら止まってくれと懇願する。

「それ以上行ったら戻れなくなりますッ!!」

 

「例えそうでも!奴は…奴は消すッ!!」

比叡と金剛は榛名を押し退けて更に髪を白く染めて立ち向かって行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやあ…お願い…お願い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あはは!!!お前達も同じように利用して殺してやるよおお』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー起きなさい、小さきものよ

 

え?

わ、わたし?

 

ーそうです、小さきものよ

 

 

ち、小さいですか…?

 

 

ーええ、その小さな体に似合わない大きな思い…

 

えと…どういう?

 

 

ーあなたの思いを私の存在にのせなさい

 

 

あの…あなたは?

 

ーはじめまして、私は…ってもあなたは知らないかもね

 

存在にのせるって…?

あなたは大丈夫なんですか?

私よくわからなくて…

 

 

その声はふうっと溜息を吐いて言う。

ーあぁっ!もう!!私の体をあげるって事!!

あんた…見てらんないわよ!

 

 

なんでそこまで?

会ったこともないんですよね?なのに…

 

ーアンタの生き方がカッコよかったからよ…。

ホント…何言ってんだろ…私は…あの猪突猛進のが移ったのかしら…

 

 

???

彼女は首をかしげる。

 

ーこっちの話よ…

さあ!どう?私の手を取る気はある?

あなたの意識は無くなるかも知れない、誰もあなた誰かもわからないかも知れない。更なる死を味わうことになるかも知れない。

 

ーそれでも…あなたが手を取ると言うのなら、私はあなたの最強の力となりましょう。

 

 

彼女は間髪入れずに答える。お願いします…と。

そして、教えてください…と言う。

あなたは…?と。

 

 

ー私は……生まれ得なかった

ううん

あなたが私を紡いでくれるから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかとその耳に頭に刻みなさい!

私は…紀伊型戦艦 3番艦!

 

 

 

 

 

 





暗いお話ですが…ね



感想などお待ちしています!!


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378話 水面は青空に憧れて ⑥ 抜錨

「金剛さん達のバイタル!低下中です!!」

 

「くっ…」

 

「他の海域の深海棲艦!依然として数は変わりません!!」

 

突如として現れ、侵攻を開始した深海棲艦。

そう、まるで金剛達の方へ誰も行かせないようにする…ように。

 

「由良!もっと近付けるか!?」

 

「頑張ってみる!離さないでね!」

由良は救を乗せて金剛達の方へと向かうが…

 

 

 

 

 

 

 

「…な…」

救達が目にしたのは…変わり果てた4姉妹の姿だった。

最早、彼女が金剛型の1番艦だったことすらわからないだろう。

髪は真っ白に染まり上がり、艤装も禍々しく変化していた。

比叡、榛名、霧島も6〜7割は染まっているようだ。3人は膝をついて息も上がっているが…金剛だけは棲姫と殴り合っていた。

 

 

「コロス…オマエハ…コロス」

 

『うーん…本当にどっちが悪なんだろうね?』

 

奴の言う通り…と言えば癪だが、その通りとしか言えなかった。

「金剛ッ!!」「金剛さん!!」

 

2人の呼びかけに対して金剛は

「邪魔ヲスルナ!!」と、砲撃で牽制する。

もう…俺の声すら届かない…のか?

 

 

 

 

 

 

そんな時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「に、にゃぁぁ!?」

西波島鎮守府の工廠では桜明石が腰を抜かしていた。

 

 

 

「これは?」

夕張達が騒ぎを聞きつけてやって来る。

目の前にあった光景は…

 

 

「き、キューブが…キューブが!光ってるにやぁあ」

 

工廠にあったキューブが光っていた。

呼応するように他のキューブも光る。

 

 

 

 

その様子も救に通信で伝わる。

「何?工廠のキューブが光ってる?」

「今はそれどころじゃ……うわっ!!」

救達に砲撃が飛んでくる。

 

「ダーリン…サン…ダメ…近寄らないで」

榛名達ですら意識が混濁しているのか、こちらを敵視する様子も見られる。

 

『あはは!!傑作だね!愛する提督すら見えない。なんて無様な奴らだあ…』

 

その様子をケラケラと笑う戦艦棲姫。

 

 

 

 

「いったい何なんだ…」

目の前では大切な人が深海化して、そして…憎い敵がいて…皆も大侵攻で戦っていて、工廠ではキューブが謎の発光…。

頭がパニックになりそうだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご、ご主人様ッ!!」

桜ベルファストが救達に追いついた、その手には金剛がいつも持ち歩いていた砕けたキューブのカケラの首飾りがあった。

 

今回の命令無視の際に置いて行ったものだ。

そのキューブはかつて鏡の海域で散ったもう1人の金剛の残滓であった。

 

 

救も目の前の事に驚きを隠せなかった。

意思を持っているように、彼を呼ぶように…光続け、キューブがさらに光を強めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか……お前達が…?」

その首飾りを手に取る救。

 

 

その時だった。

 

首飾りだったものは1つのキューブに変わった。

 

 

 

 

 

 

「「「「!?」」」」」

誰もがその光景に驚いた。

足りないものを他から補うように…数個のキューブが1つになったのだ。

 

そして–––––

 

 

 

そのキューブは更に光った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

虹色に。

 

 

 

 

 

「虹色に光って…!?」

 

 

 

 

 

 

 

「お前が俺を呼んでいるのか?」

 

意思を持っているようだ…と表現したが

救は感じた。

意思を持って語りかけて来るのを

 

 

 

 

 

まるで今すぐ建造しろといわんばかりに主張するのを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時だった。

 

 

「奈々ッ!!奈々ぁあ!!」

うづきだ。

 

「なんで君がここに!?」

救は驚いた。無理もない、彼女は艦娘を退役している…。

艤装もなければ海の上を走ることなんか出来るはずがないのだから。

 

「借りたのよ!」

「金剛さん…みんなまで……」

 

「それより!今…奈々ちゃんの名前を…?」

 

 

 

「奈々が呼んでたの。私達を…あなたを」

「だから来たの」

「お願い…あなたも名前を呼んで」

 

「一体何のことだよ!うづき」

 

「きっともう一度…あの子は戻って来るから!!」

 

 

 

 

 

確信なんかなかった。

でも…強く感じたの…。

奈々が私を呼んでるって、あの海のあの場所で…もがいてもがいてもう一度…家族を救おうとしているって。

 

 

「応えて…あげて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…よし」

 

救も全てを把握した訳ではない。

しかし…彼も同じようにキューブに呼ばれている気がしたのだ。

 

だから彼は言う。

 

 

 

 

「頼む」

 

「もう一度…力を貸してくれ」

 

「大切な仲間を家族を誇りを!!守る為に」

 

 

 

「俺に…俺達にもう一度力を貸してくれえええ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…指揮官。力を貸すよ」

そんな声が響いた気がした。

 

 

 

 

 

バチバチと音を立てて何かが組み上がって行く。

 

「……?」

 

『なに?面白いことが起きるのかな?』

 

 

 

 

 

 

ひときわ強い光が周囲を覆った後…

 

 

現れたのは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スラッとした出立ち。

ヤギのようなツノ、腰に下げた軍刀。

将官の上着を羽織った堂々とした姿。

戦艦を思い浮かべることができそうな重厚感のある連装主砲。

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は戦艦駿河…私に…任せて」

 

 

「する…が?」

 

 

 

 

 

 

「………」

ぽひゅん!という音と共に凛々しい角は耳に変わり、尻尾が現れた。

ヒラリ…と、救の前に葉っぱが1枚落ちた。

 

「ん?葉っぱ?」

するとどうだ。

彼女がいきなり、人が変わったかのように焦り出した。

 

「はぁ!?何で!?ちゃんと渡したはずなのに!?」

 

「ん?」

 

「え!?何で私が出てるの!?」

 

 

「君は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は戦艦駿河。かの大戦時に竣工…されなかった戦艦です」

「さっきまでの姿は…もう一つの私の姿と思って欲しい」

 

コホンと咳払いをして駿河は喋る。

「あなたが…指揮官ね」

 

「ああ」

 

 

「お願い。あの子を起こしてください」

 

「ん?どゆこと?あの子?」

 

「……私はとある気高い魂に呼応しました。決して幸せとは言えない人生を歩んだ彼女は…それでも最後まで戦いました」

「それを馬鹿という人もいるでしょう」

 

「諦めの悪い指揮官。鏡の為に泣くあなたを…壊れたキューブや他のキューブを通して見ていました

 

「皆もあなたを馬鹿と言いますね…。でも…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私はそんな馬鹿が大好きなんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…と言う事は」

 

「ええ、さっきの私の姿は奈々と呼ばれる子です」

「彼女の魂と…うまく説明できないんですが、私を一緒に建造してもらったと思ってもらえたら…」

 

「でも彼女は眠ったままだと…?」

 

「そうです」

 

 

そう言う駿河にうづきは泣き縋るように語りかけた。

 

 

「起きてよ…ねえ!奈々ぁ!」

 

「アンタが居ないと…寂しくて仕方ないんだよお」

 

 

「大好きな金剛お姉ちゃんを助けなきゃ!!ねえ!」

「起きろぉ!!馬鹿やろー!!」

 

 

 

「………」

 

「大事な家族なんだろう…お姉ちゃんなんだろう!」

「大好きな人なんだろう!!」

 

「なら…ぼーっと寝てんじゃねえよぉ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダメね…」

それでも彼女が目覚める事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『期待はずれかな?でもいいや…目障りな気配がするから…殺すね』

 

「ウッ…ウアアア!!」

 

戦艦棲姫と霧島が駿河に向かって襲いかかって来る。

 

 

 

 

 

「駿河!!避けろ!」

咄嗟に出た言葉を頭が否定した。

違う。

そうじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

救は叫んだ。

 

「奈々ぁ!!お前が家族を守るんだぁぁぁあ!!」

 

 

『無理無理』

 

 

「……あ、」その一文字だけ…駿河は発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛びかからながら棲姫は違和感を感じた…

『…むっ!?この気配は…まさ…ガハァ!!」

戦艦棲姫は駿河の回し蹴りで吹き飛ばされる。

ドン…バチィ!バチィ!と音を立てて海の上を跳ねて行く。

『ガッ…グッ…ぐぅう…何て力なの…』

 

 

 

 

 

 

「奈々!!まだだ!霧島が!!」

 

 

 

「ウァアアアア!!!」

霧島は駿河に飛びついて…

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「霧島お姉ちゃん…もう大丈夫だよ」

 

 

 

 

 

駿河……いや、奈々は優しく霧島を抱きしめていた。





反撃開始だ






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379話 水面は青空に憧れて ⑦ 何度でも立ち上がる

霧島は何が起こったか分かってないようだった。

ハッとすると暴れようとする、しかし…次第に大人しくなって行く。

榛名はふらふらとうめき声を上げながら駿河に近寄って行く…まるで助けを求めるように彼女に手を伸ばして。

 

尚も駿河は榛名をも抱き締める。

「榛名お姉ちゃん…うん、大丈夫」

 

救には見えた。

榛名や霧島から流れた…ひとすじの涙。

 

 

「…あ…れ」

 

「私達は……って、あなたは?」

 

 

正気を取り戻したらしい彼女達は目の前の少女を見つめる。

そして…

「…奈々…ちゃん?」

と、信じられない言葉を発した。

「うん、馬鹿なことを言ってるのはわかる。でも…この感じは…奈々ちゃんしかない」

 

 

奈々と呼ばれた…その視線の先の少女は……ニコリと笑って言う。

 

「うん!お姉ちゃん!奈々だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「再会を喜ぶのは後で!今は…2人のお姉ちゃんを呼び戻さなきゃ!」

 

 

 

 

 

 

「金剛お姉ちゃん!比叡お姉ちゃん!」

 

 

「「ウグァァア!邪魔ヲスルナ!!!」」

2人が飛びかかり殴りつけて来る。

 

「…ッ!!」

身構える奈々。

 

「大丈夫だ!!」

後ろから聞こえた声。

「奈々ちゃんなら…できる!今の君は戦艦なんだから!」

 

彼が指揮官だからだろうか?

それとも私にとっても大切な人だからだろうか?

いつもより…スッと深くまで声が届いた。

 

「うん!見てて…絶対に取り戻してみせるから」

 

 

2人の拳を受け止め、流して榛名達と同様に抱き締める。

彼女達は深くまで潜りすぎた。

何度も何度も奈々を殴る。

殴りつけて噛みついて…「奈々ノ仇ヲ」と言う、目の前にいるのにも関わらず。

 

だが、彼女は表情を変えなかった。

大切なものを慈しむように2人をジッと見つめていた。

その表情に2人は戸惑いを覚える、何だこいつ?何でコイツは私達を攻撃しない?何だこの気持ちは…と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『比叡、私達は…深く堕ち過ぎました』

 

『はい…もう周りも見えませんね』

 

『……ごめんなさい』

 

『…お姉様と一緒なら私はどこへとも行きますよ』

 

 

 

 

『お姉ちゃん!!』

 

『金剛お姉様…私達に迎えが来たようですよ』

 

『奈々に謝らなくちゃネ』

 

 

 

『目を覚ませぇえ!!』

声のする方を見ると、奈々がいた。

 

『奈々!?本物なの!?』

 

『でも…奈々は…私が……』

金剛達は目を逸らす。

自らが妹と呼ぶ子の2度の死に関わった、その声も顔も何もかもが肩にのしかかるからだ。

 

 

 

 

 

そう、この怒りも憎しみも…ほぼ自分に向いているものだ。

巻き込んだこと、助けられなかったこと全てを。

この復讐が何かになる訳ではないのはよく知っている。

でも…この内から湧き上がるモノを奴に命懸けでぶつけるしか残されていないと思えるのだから。

 

 

 

『ごめんなさい…ごめんなさい』

2人はただひたすら謝ることしかできなかった。

 

 

 

 

『私を見てッ!!』

そんな2人の顔を自分の方へ向けて彼女は言う。

 

 

『やっと見てくれた…お姉ちゃん!起きて!!私は居るから!目の前にいるから!もう…自分を責めて呑まれないで!!』

 

 

『私はここに居る』

 

 

『あり得ないかも知れないけれど…確かにここに居る!』

 

『お姉ちゃん達を助けて…もう一度笑顔で歩む為に私はここに居るの!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だからお願い––

 

目を覚まして––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……私は……」

金剛達の髪の色が戻って行く。

呻くような声は鳴き声に変わって…強く強く自らを包み込む相手にしがみつく。

 

「おかえりなさい…お姉ちゃん」

 

『ううっ…うあぁ…奈々…ななぁ」

 

「奈々ぁぁあ」

 

榛名と霧島も3人の方へと駆け寄って、その輪に入って行く。

「うわぁあん!!お姉様ぁ!奈々ぁ!!」

 

敵陣の真ん中で5人で抱き合い泣く様子はなんとも言えない光景だった。

 

 

 

 

 

 

『馬鹿なッ!?呑まれて戻ってこられる筈が…!!』

その様子を戦艦棲姫は驚愕した表情で見つめた。

あり得ない!

深海の光すら届かない闇に囚われた者は、這い上がる事は叶わない。

不可能だ!

 

ましてや…あの未確認の艦娘…奴からはヒトの気配…私に楯突いたアイツの気配すらする!そんな空想物語は…あってはならない!

 

『クッ…フフフ!また死にに来たのか?!もう一度殺されて…また深海棲艦になるか?大切なカゾクはもう一度深い深い闇の底に行くかぁ?』

 

 

 

「…もうそんな事にはならないよ」

金剛が言い放つ。

 

「うん!ならない!!」

 

 

「なぜなら…」

 

 

「「「「「私達はお前なんかに負けないッ!!」」」」」

 

 

 

『…はん!1人増えたからって何なんだ!!深海化した4人でさえ私に勝てなかっただろう!』

 

 

「確かにそうだけど…」

 

 

 

「NEW!金剛5姉妹デース!!」

 

「そして…愛するダーリンを加えた金剛5姉妹は最強!無敵デース!」

 

 

「行くよ!!!皆ぁあ!!後ろは私達に任せろぉお!」

由良達は迫り来る深海棲艦を相手にする。

「はい!ここは私達に任せてください!」

 

「ご主人様は金剛様達と…!」

 

 

救は金剛の背中に乗って指揮を執る。

「行くぞ!!5人共!!」

 

 

「いっくよー!!」

 

「「「「「おー!!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霧島と比叡が構えて主砲掃射を行う!

 

『そんなの…あたるか!』

ヒラリと後方に避ける棲姫…そこに榛名が副砲と主砲を絡めながら狙い撃ちをする。

 

『くっ!!』

流石にかわしきれないと判断した棲姫は飛び上がって回避に徹する。

 

 

(さっきまでと動きが違う!!…しかし…やれない事はない!……)

(待て……クソッ!やられた!)

 

 

棲姫は気付く、避けた訳ではない。そう避けさせられたのだ…と。

比叡と霧島の主砲掃射は2人で私を挟むように放った。

榛名の掃射はその間…私を直に狙うように超低空に放たれた。

 

つまり…この時点で上に逃げるしかないように追い込まれた!

 

 

 

そして

 

 

 

 

目の前には金剛と駿河…こと奈々が拳を構えていた。

2人共が飛び上がって居たのだろう。

 

「「くらぇえええええッ!!」」

 

ドゴオオオ!!

 

その拳が棲姫の腹に突き刺さり……一気に殴り抜いた!!

 

『ゴッ…がぁっ!!』

先程よりも強い力で海に叩きつけられて転がる棲姫。

『クソがぁ!!調子に乗んなァァア!!』

 

 

ガバっと立ち上がる棲姫–––

 

 

 

 

 

そこには主砲を構えた5人の姿があった。

「これが私達の絆の強さ!」

 

「例え闇に沈んでも」

 

「きっと私達が呼び戻してみせる!」

 

「私達は…負けない!」

 

「くらえッ!!」

 

 

 

 

 

「「「「「バーニング…」」」」」

 

「「「「「ラァブ!!」」」」」

 

 

 

ズドォォン!!

耳をつん裂くような砲撃音と共に放たれた砲弾は…

一直線に棲姫へと向かう!!

 

『クソッ!クソッ!!』

棲姫も負けじと応戦するが…

 

バチっ!と棲姫の放った主砲は金剛達の放った主砲に弾かれる!

 

 

 

 

『…なんだ………強いじゃないか…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドォォン!!!!

 

 

 

 

 

 

盛大な轟音と爆炎と水飛沫が上がった。

 





次回!エピローグ!
主人公はほぼ活躍してない珍しいシリアス!


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380話 水面は青空に憧れて ⑧ 青く澄み渡る

人は私をバカ…それも大馬鹿と呼ぶだろう。

人の身でありながら深海棲艦に勝てるはずなんか無いのに…

ううん…勝てるとか勝てないとか、そんなのはどうでもよくて…ただ、お姉ちゃん達を虐めるあの人が許せなかった。

 

結果として私は死んだ。

 

死にながら…海の底に沈みながら…私の人生は酷いものだと思い返してたら……暗闇の冷たい海が温かくて心地よく感じて…

気付いたら深海棲艦になってて…

 

また死んで…

 

あの時の金剛お姉ちゃん…本当に辛そうな顔してた。

 

 

 

 

救さん。

あなたが私を救ってくれたから…私は誰かを助けようと思えるくらいに前を向けたんだ。恋ってすごいね。

 

 

駿河さん…

私をもう一度暗い海から引き上げてくれてありがとう。

お陰で私は…大好きな家族を守ることが出来たよ。

だから……もう…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは夢

 

 

 

 

 

 

 

2度も海に命を落とした人間が見た…泡沫の夢

 

 

 

()は…暗い海の底から…もう一度青空を見る為に(大切な人に会う為に)暗い海の底から思いを馳せて上って行く。

 

 

水面の(泡沫)は同じくらい広い青空に憧れて…膨れて青空(あの人)に手を伸ばす。

 

そして…それは割れて…水面に溶けて行く。

あの空に憧れを抱いたままに…暗い、暗い底に。

 

 

暗い深い海の底に囚われた魂は…そこから再び明るい世界に行く事はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は見た。

水中深くへと落ちてゆく…まだ生きている戦艦棲姫を

 

行かなくてはならない。

私は本来存在してはならない…存在しない者。

なら…私が…!

 

 

 

 

 

 

 

彼女はフッ…と力を抜く。

「お姉ちゃん…救さん。ありがとう」

「大好きだよ」

 

 

 

 

 

「待って!奈々!私も……ッ!

 

 

 

 

 

 

彼女の体は再び水中へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここで終わりにするわ」

 

『クソッ!何だよ!何度も何度もしつこいなぁ!』

 

 

 

 

「……これくらいは…私だって最後までやるよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドパァン…!!

 

ひときわ大きな水柱が彼女達が潜った箇所から上がった。

 

 

 

 

「嘘…何で」

 

「3度も…あの子は海に…」

 

「奈々ぁ!!!」

潜ろうとした、それでも海は私達を拒むように水面へと押し戻してくる。

 

 

 

何度も呼んだ、力の限り叫んだ。

それでも…彼女は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お姉ちゃん達を救えてよかった。

あの人達に会えてよかった。

 

うん…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぽひゅん…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや!終わりじゃないから!」

「え?何『この一瞬の為に戻ってきたから…私帰るね?』みたいな話し方してんの!?」

 

「居るから!あンたはここに居るの!このまま居ていいの!」

 

「死なせるもんか」

 

「死んでたまるものですかぁぁああ!!!」

 

化けの皮(建前)が剥がれた姿(本音)の駿河が表に出てくる。

 

 

 

 

 

死なせるもんか!

何勝手に私達の命を諦めようとしてんのよ!!

これくらい…昇ってみせるわよ!!

 

…駿河さん…

 

ほら!あなたも生きようとしなさい!!

生きる権利があるの!

 

 

 

 

 

––逃がさナイ

 

 

〜って!?嘘でしょ!?

アンタも大概しつこいわね!!そんなコールタールみたいなのになっても執着するの?!

 

…駿河さん!

 

任せなさいよ!これくらい…!!

 

 

 

 

––お前ダケハ…海の底ニ連れて行ク!!

 

 

嘘!!足を掴まれた!?

 

…駿河さん!私の魂が狙いなんです!私を切り離してください!

 

 

 

出来るかッ!!そんな事!!

いい?!私は…アンタの魂に惚れたようなものなの!

可哀想とか同情とかでアンタに力を貸した訳じゃない!!

 

 

アンタに生きて欲しいんだ!!

私は生まれることが無かった艦船だけど…生まれる意味をずっと自問してたけど…わかったんだ!

私は今この為に…生まれてよかったって思ったの!!

だから諦めない!

アンタを諦めない!!

 

好き勝手暴れさせたんだ!今回は私が好き勝手にアンタを生きさせてみせるのよッ!!

 

…駿河さん…うん!

生きたい!またもう一度!お姉ちゃん達に!!

 

 

 

 

 

 

 

 

必死に空へと…水面へと向かう泡沫と沈み行く闇。

深い闇はその泡沫すら覆って…

 

クソッ…あと少しなのに!

あと少しで…私もこの子も

 

 

 

––フフフ沈みマショ?1人は寂シイカラぁ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グン…と引っ張られる。

ああ……なんて事…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

水面に引っ張られるなんて!!

 

 

 

 

目の前には救の金剛…その後ろに比叡、榛名、霧島が居た。

霧島が榛名を、榛名が比叡を…比叡が金剛と救を水中へと押して行く。

…彼女達は強引に潜ってきたのだ。

 

その後ろに由良が…桜ベルファストが…皆が!!

 

 

 

 

2人の手が駿河を掴んだ。

ズルリ…と駿河の足から戦艦棲姫の成れの果てが離れた。

グン!と駿河を寄せてくる…が、奴も諦めない。それでも光を沈めようともがいてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほんの少し前のこと…。

 

「…お姉様…」

 

泣く泣くその場を立ち去ろうとする彼女達。

その中で金剛の艤装からまだ海を見つめる人が居た。

 

 

「いや…」

「この感じ…」

 

 

「ダーリン…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は海へと飛び込んだ。

 

 

「ダーリン!?」

金剛達には分からなかった。何故救が飛び込んだのか。

 

「……まさか」

金剛も半信半疑で海に飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

目の前にあるのは…またまた信じがたい光景。

海の上を行く彼女達は…仲間を追って水面の下へと行く。

 

『……キレイジャナイ』

 

 

 

「…本当にこれで最後よ!!」

 

金剛の艤装から砲撃が放たれた–––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザパァ!!!

 

 

 

「ヒュー!ひゅーーッ!ガハッ…ゼーハー…ゼーハー……」

 

「ぶはぁ!!死ぬかと思ったぁあ!」

皆が口々にそう漏らすのも無理もない。深くまで前の仲間を押しながら潜ってたのだから…。

 

 

 

 

 

 

 

「どうだぁ!!全部は私の力じゃないけども…!上がってやったぞ!」

「私だって…アンタを守り切ったぞ!!」

 

 

そう吠えるのはたぬき耳に尻尾の駿河。

「…目立っちゃうのは嫌よ」

 

 

「でも……見なさい。奈々」

「この光景が…あなたを待つ人達よ。こんなに美しいモノ…どこだって見られる訳じゃないわよ」

 

 

行きなさい…と言いぽひゅん…と変わる駿河。

 

呆然とへたり込んでいるのは奈々。

 

 

 

 

 

 

「…お姉ちゃん…救さん……皆……」

私は還るつもりだった。

2度目も3度目も人生があるなんかあり得ないから…。

でも…どうにかお姉ちゃんを助けたかった一心のロスタイムみたいなものだと思ってたから。

 

 

 

ガバっと金剛達が彼女を抱きしめる。

 

「…おかえり…おかえりぃ」

「ありがとう…するがぁ……」

 

 

怒ることもなく、ただただ私に向けられたのは温かい抱擁と嬉しい言葉。

 

4姉妹に抱き締められながら…私は皆の待つ鎮守府へと帰るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーい!奈々!これ配達よろしくー!」

 

「はいー!行ってきますー!」

 

「金剛さんー!これは…舞鶴ぅ!?遠いけど行けますか!?」

 

「おー…遠いねーダーリンにあえないのがさみしーねー…」

 

うづきの店…というより会社レベルになったモノは、大忙しだった。

 

西波島鎮守府の委託企業という民間企業…という形になった。

うづき的にも面倒な計算は任せられるから楽♡とのことで…その内に花屋をメインにして行こうかとか言ってたりする。

 

 

駿河は相変わらず奈々と交代交代で表に出てくる感じだ。

パフェとか…いい思いのする時にひょっこり出てきたりするらしい。

でも奈々曰く、目立つのは嫌だからあまり出ない!らしいけど…。

 

奈々も相変わらずで、金剛達といつも一緒に居るようだ。

迅鯨が妬んだような目で見てた気がするが、これは別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…そんなに目立たなかったな…俺」

 

「それもたまには良いことですよ?ご主人様?」

 

「うーん…」

 

「ほら?今日は金剛五姉妹とランチですよね?待たせると拗ねられますよ?」

 

 

「へーい…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせ」

 

 

「ヘーイ!!!長女!金剛!!バーニングラブ!」

 

「次女!比叡!気合い!入れて!行きます!」

 

「三女!榛名!大丈夫です!」

 

「四女!霧島!マイクも完璧です!」

 

「五女!奈々&駿河!愛してます♡」

 

 

「5人揃ってぇー?」

 

 

 

 

 

「「「「「金剛五姉妹ー!」」」」」

ちゅどーーーん!!

 

 

 

 

 

金剛達の騒がしさが倍になったらしい。

 

 





少しでもお楽しみいただけたなら幸いです!

感想などお待ちしています!!


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381話 鎮守府と提督 

「………」

 

「…………」

 

 

鎮守府の昼下がり。

そこには頭を抱えた艦娘達の姿があった。

 

 

「どうしたの?」

声をかけたのは桜赤城と蒼オークランド。

 

 

「おー…」

 

「実は…もうすぐダーリンが着任しての記念日になるんだけど…何年目だったか…わからなくなって……」

 

「えぇ…わからないって…」

 

「10年だったか…でもこの世界に来て…何年だったか………」

 

「せっていぶそくー」

通りすがりの妖精さんが怖いことを呟いた。

 

 

「………ま、まあ…確かに重要な話題よね」

 

「1周年でいいんじゃない?」

蒼オークランドが言う。

 

「クリスマスは少なくとも2回以上はやったのよ?」

 

「ナンノコトカワカラナイナァ」

 

 

「わ、私達が!3陣営が揃ってから1周年てことにならない?!」

 

「1年経ってたっけ?」

 

「蒼オークランドが来てからは経ってないね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「細かい事はいいか!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ベル?紅茶ほしいな」

 

「申し訳ございません。私はとても忙しいので…」

 

救の目の前に置かれたのはティーカップとソーサーとティーパック

「お湯は?」

 

「セルフでお願いします」

 

 

 

 

じょぼぼぼ…

ポットのお湯をカップに注ぐ…。透明色のお湯は瞬く間に紅茶色に変わって行く。

 

俺何かしたかなあ?

って…アレか、いつもいつも小間使いみたいにお願いしてたらダメだよな、うん…反省しよう。

 

 

 

1人の執務室は広く…少し寂しく感じる。

 

 

 

「……やっぱり皆の淹れてくれる紅茶の方が美味しいな」

 

 

 

 

 

 

 

「間宮?夜食をお願いしたいんだが…」

 

「ごめんなさい…!仕込みが忙しくて…」

 

 

「鳳翔は…鎮守府の夜警だよなあ…」

「ん?龍田?おーい」

 

「あらあ?どうしたのー?……夜食を?」

「ごめんなさい。先約が入ってるの〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

「そうだな、たまには自分で作らないとな…」

 

 

 

 

 

「…自分の為に作るとなると、途端に面倒に感じるよな…」

「誰かの為にいつも当たり前のように作ってくれたり、声を掛けてくれる皆には感謝しないとな…」

 

 

「…とりあえず、たまご丼ができた…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…鳳翔や間宮達には敵わないなあ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご、ご主人様ぁ…」

 

「誇らしきご主人様…ッ」

メイド隊は涙目で震えていた。

「申し訳ございませんッ!しかし…しかし!ベルファストは…耐えねばなりません!ご主人様に今すぐ紅茶とクッキーとかその他諸々をして差し上げたい!」

 

「でも…色々と準備がありますので……くううう」

 

「誇らしきご主人様…きっと悲しんでます…。うう…このダメイドをお許しください…」

 

彼女達は重症だった。

しかしながら耐えねばならない!

来るべきその日に……思い切り…お祝いをするのだから!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつもとは違う執務室。

その理由は……

 

 

 

「………」

 

「大淀もベルも…非番かあ。超久しぶりだな、1人の執務は」

 

 

 

 

 

 

 

しかし!この男は割と気にして無かった。

むしろ、逆に効率良く仕事ができていた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここ数日、艦娘達を含めてほぼほぼ会話がない。

普通の人なら『避けられてる!?』となるが、彼はそうならない。

 

 

 

めちゃくちゃ忙しいから!!

普段の仕事だけでもそれなりに多いが…彼は皆との時間も大切にする為に一気に仕事を終わらせているのだ。

そうでもしないと皆との夫婦時間も取れないから。

 

しかもそれを1人でやる訳なので忙殺されるんだけれども…

まあ!書類の減らないこと減らないこと!

こんなのに一々ハンコ要る!?要らねえだろ!?

 

 

 

 

何だよ!鎮守府のトイレを新調したいって!!!

すればいいだろぉ!?

 

ダメったら壊れたので我慢するの?!近所のコンビニとかまで走るの!?

 

 

 

鎮守府に外から調理師を雇いたい?

 

勝手にせえや!!

お前ンとこでやりくりできるなら勝手にしろ!!

ウチは呼ばねえぞ!?

 

 

なになに?

福利厚生で旅行に行きたい?

 

だから勝手に行けやって!!

他の鎮守府と哨戒の折り合い付けて行けや!!

 

 

 

 

 

 

「ん〜〜〜〜〜ッ!!!よく働いた!!ーって!?まだこんな時間!?」

時計を見たが、まだ9:49分…。

「マジか…全然経ってねえ…」

 

普段なら誰かと話すから時間が過ぎるのが早いのだが、今日は違う。

1人なのだ。

取り敢えずブレイクタイムを入れよう…とベルを呼ぼうとするが居ないので仕方なく私室に戻ってインスタントのコーヒーを作りに行く。

 

 

 

 

 

無人の執務室に入ってきたのは不知火と鬼怒。

「あら?提督はいないんですね」

 

「む……本当ね」

「あ…でも隣に居るのかな?」

 

「6日は…ささやかな会食をするって伝えないとね」

「提督の記念日ってのは内緒ですよ?」

 

 

こそこそと計画を立案してきたメンバー達。

あとは予定を空けておいてもらうだけ…!

 

 

 

ガチャリとドアが開き、コーヒーを持った救が出てきた。

 

 

「ん?おお!不知火に鬼怒。お疲れ様!」

 

「あ…提督」

「お疲れ様!あのね?6日なんだけど…」

 

 

そう、非番なのは知ってる。

だから…この日にしたんだ。

 

あなたがあなたでいてくれてありがとう…と皆で伝えたいから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「6日?6日は予定がはいったよ」

 

「「え…」」

 

予想外の返答に固まる2人。

「よ、予定が?どんな?」

ほんの少しだけの予定なら調節ができる。

でも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「巌のじーさんに言われてねね。何でも国のお偉いさんに呼ばれたらしいんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その予想外の事態に皆は困惑した。

 

 

 

「えぇ!?ダーリンが来られない!?」

 

「内緒で進めてたから仕方ないけど…」

 

「この時期に…お偉いさんからの呼び出し?」

 

「あの人が褒められるなら良いんだけど…うーん……」

 

なんだか胸騒ぎがする。

 




早いものでこのお話を書き始めてもうすぐ1年になります。
少しは楽しいお話になってますでしょうか?
楽しい時間になってますでしょうか?


ほのぼの…とは少し違うかもしれませんが
お楽しみ頂ければ幸いと思います。


感想などお待ちしています!

メッセージ等もありがとうございます!
とても嬉しく読ませ頂いてます!
ぜひせひ……!お待ちしています!


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382話 鎮守府と提督 ②

皆の不安や悪い予感を他所に、救は巌と合流していた。

 

「何?今日の呼び出しとやらは?」

 

「ん?褒章らしいけどな」

 

「……出なくちゃダメ?」

 

「直直の指名だからな…」

 

 

上司である俺が迎えに来たのにも関わらず…。

西波島の奴等はものっそい形相で俺を睨んでやがる…。

 

「…………」ジー(×人数+殺意の目が数名)

 

 

「なら、皆!行ってくるよ」

 

「ダーリン♡気をつけてね?(本音)早く帰って来てね?(超本音)」

 

「ついて行こうか?(心の底からの本当に)不安でしょ?」

 

「ううん、大丈夫だよ」

「ごめんな?今日居られなくて…。また埋め合わせはするからさ」

 

「ううん…いいの!仕事だから仕方ないよ(建前)」

 

 

…え?何あのキャラの変わりよう…怖い!怖いんですけど!

神崎が振り向いた瞬間にあんなに屈託の無い笑顔に変わるの!?

〜って!神崎がコッチ向いたらまたあの虚無の表情に戻ったァァ!!

怖いよぉ!もう怖いんだけど!!

 

巌大本営の大淀から渡された胃薬をそっと飲んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

船の上で…

 

 

「…神崎よ」

 

「はい?」

 

「今日本当に良かったの?」

 

「なんでです?」

 

「いや…えと…何となく?アイツらと予定あったのかなー?って」

 

「大丈夫ですよ?それにお偉いさんからの褒章なら出ておかないと…」

 

「う…うむ、すまんな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ははは…大丈夫だって?

 

んなわきゃねえだろう!

なんて日にこんな予定ぶち込んでくれてんだァ!?お偉いさんとやらはぁあ!!

全休とって皆に日頃の労いと感謝とかetcする為に色々と準備して来たってのによおおおお!!

下らん理由の呼び出しとやらなら………ダークサイドに堕ちるからな!

一瞬で暗黒面に堕ちてやっからな!!

 

 

 

 

何故かわからないが、今年は無性に祝いたかった救。

 

ゴールデンウィークだから皆に休みを許して1人で色々と準備してた。料理からプレゼントから色々!なのにコレ。

 

もうキレかけていた。殺意すら湧いていた。

お偉いさん?誰よ!

首相?誰か知らねえよッ!!こちとら島からほぼ出てないんだ!島だぞ!?選挙!?行けるもんか!

 

 

 

 

 

 

 

 

メキィ…

神崎は船の手摺を握りしめていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

えええ…手摺を握りつぶしてんじゃんか…。

 

もうやだ…

設備壊さないでよ……

 

 

巌は更に胃薬を飲んだ。

 

 

 

 

 

 

 

船も巌の胃腸も痛みながら航路は首都へと進む。

お互いに一致しているのは「早く終わるか、この招集が今すぐ中止にならないかな?」という思想だけだった。むしろ、巌の方がそれを強く望んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その前に新しい軍服に着替えようか……」

 

「やだ…」

 

何故かコイツは初期の軍服に拘る。

ハッキリと言うと綺麗ではない。

破れたところは綺麗に補修してあるが、焦げ跡等も目立つのにも関わらず大本営にもそれで平気で来る。

周りの若い奴やジーサン達も「何アレ?貧乏なの?」とか言うけど本人は全く気にしてない。

本人曰く、1番馴染むんです…だとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、都内の某ホテルの大広間に彼らの姿はあった。

普段は絶対と言っていいほどに見る機会は無いであろう煌びやかなシャンデリアや超大型丸テーブル、床は一面豪華模様の絨毯か?

一体いくらかかったのだろうか?と想像しようとしてやめた。

 

しばらくして、小難しい名前のおっさんがやってきた。

 

「誰?」

 

「馬鹿!首相だ」

なんてやり取りをして更に巌の胃が痛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…提督スイッチ…おーん」

明石がポチりとボタンを押す。

もはや狂気ではあるが、提督に渡したペンは超小型カメラ付きの(以下略)リアルタイムで様子が見れる!

 

「…ほら!提督に何かあった時に!場所とか犯人とかわかるでしょ!?」

 

「………許可します!」

大淀達ももはやネジが飛んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…君が神崎君か!若いのに凄いらしいな!」

「色々と海軍ではあったらしいが……な」

 

 

チラリとこちらを見る大和田総理大臣。

耳が痛いが仕方ない、事実だからな。

 

異例中の異例なのだ。

原因は度重なるクーデターと海軍の最高司令官とされる元帥の失踪。

その中で頭角を現して来たのは20代の若造だった。

奴の立場は俺の嫌がらせもあっての立場であるが、本当によく仕事はこなしてくれる。

 

 

 

「さあさあ!表彰と祝賀会だ」

 

 

 

 

 

形ばかりのお褒めの言葉と勲章の授与が行われた。

調べて言葉にしました!感満載の神崎の功績を添えて

 

 

 

 

 

 

「…本当に表彰なんだね」

「でも…この胸騒ぎはなんですか」

盗聴……しながら艦娘達は喜び半分、何とも言えない気持ち半分だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

形ばかりの表彰が終わり、祝賀会と言う名の立食パーティーとやらが始まった。

名前もわからないような奴等がこぞって神崎の所へのニタニタしながら行く。

 

 

(褒章ならもっと早くに渡せたはずだ、なのにこのタイミング…)

 

 

 

 

 

「いやあ!おめでとう!神崎君!」

「君みたいな愛国心のある若者を誇りに思うよ」

 

 

「しかし、大変だろう?数多くの危険兵器を管理するのは」

 

「…兵器?」

 

その言葉には救や巌だけでなく、艦娘達もピクリと反応した。

 

 

 

「君も若いだろうが…色々と大変だろう?」

「今後も色々と連携を取って行く必要があると思うんだ」

 

「海の化け物だけでなく、海外や色んな奴らに対しても…」

 

 

 

 

 

嫌な予感がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君も独り身じゃあ…色々とアレだろう?」

 

 

 

 

 

「娘と結婚しないか?」

 

 

 

 

 

 



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383話 鎮守府と提督 ③

2話目の投稿!





巌は焦った。

何故って?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日前の事だった。

 

 

 

『閣下!!閣下!?』

 

『どうした?大淀。騒がしいぞ?』

血相を変えてやって来た大淀がいきなりドアを乱暴に開けて叫んでいた。

 

大淀の後ろには……

 

 

『どういうことですか?元帥閣下?』

 

『君は確か…桜赤城と迅鯨だったかな?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『まずはその包丁を仕舞おうか』

『話はそれからだ』

 

 

ヤベーヤツらが立っていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怖えんだよ!アイツら!

来る!?普通…大本営に包丁片手に乗り込む?

無いよね?普通は!!

兵士達も兵士達で「いや、アレは無理ッスわ」とか言ってんじゃねえよ。何2人に制圧されてんだよ。

 

………いや

アイツら普通じゃなかったわ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      

 

 

 

「娘と結婚しないか?」

 

 

 

 

 

 

 

「け、結婚!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バカヤロォおおおお!!!

何言ってんだこのクソ野郎ッ!

 

 

 

ただでさえ…この俺を!

此奴の上司の俺を予定の日にパーティ開けないという理由で脅しに来た艦娘達の親玉だぞ!そんな奴らが控えてんだぞ!?

 

 

 

 

 

滅ぶぞ?!

日本滅ぶぞ!?

いや

 

世界が滅ぶぞ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(というか…こ、こいつ!そうまでして…海軍の力を己の手中に収めておきたいか!!)

 

(隣にいる娘の方も…顔色ひとつ変えてない。()()()()()()()と教えられてきたか)

 

確かに結婚をすれば…奴は義理とは言え、総理の子供となる。

周囲から見れば華やかなものだろう…海軍期待の次期元帥が確約されたようなものの奴と、今後も国家を担うであろう首相の娘の結婚は

しかし、その実は出る杭を打つ為だろう。

 

にしなみしま…今では、さいはとうと呼ばれるこの島の小さな鎮守府は揶揄されて、サイハテ鎮守府と呼ばれているが…今や弱小鎮守府ではない。

 

 

なんのカラクリか…因果かは知らないが、轟沈をした奴も居ない。

我々が束になっても勝てないであろう奴にも立ち向かい、クーデターだろうと何だろうと制圧して、人の心も掴んでいる。

 

 

艦娘…そしてKAN-SENと戦姫だったか?

御伽噺でも聞かないような、別の世界から神崎を追って来た連中もいるんだろ?

 

 

 

俺らが本気の束になってもきっと勝てない奴等なんだぞ。

 

 

 

 

つまりは…国家の軍事力に匹敵…いや

国家の軍事力そのもの…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…大和田達は恐れている。

 

艦娘達ではない…今や、国家軍事力に匹敵する程の力を持ったこの男を…だ。

 

 

 

だからこそ、全力で獲りに来ているんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうする?神崎!

基本的に国家はカネ以外は全て俺達に放り投げている。

 

しかしお前はこの褒章を受けた。

つまり、国家に帰属する集団だと…その上でこの話がでているのだ。

与えられる立場と与える立場を明確にした上で、後に退かせない部隊を作り上げていやがる!

 

 

 

 

 

お前は…この状況を「お断りします」

 

 

 

 

「「「「は?」」」」

 

 

彼は笑顔で断った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ですよねー!!!!!

うんー!知ってたー!!

平常運転はんざーい

 

 

 

 

 

「ちなみに何故だ?この娘は綺麗で、性格もいいぞ?」

 

なるほど、コイツが娘か…さっきからお酌しまくってるから誰だと思っていたが…

 

 

「総理大臣の息子を名乗れるんだぞ」

 

「要りません」

 

 

「そんなボロボロの軍服も着なくていいんだぞ!?」

 

「嫌です」

 

「苦労してるんだろ!?楽できるぞ?」

 

「そんなんじゃないんです」

 

 

 

「これは破れる度に鳳翔が縫い直してくれてます。私の宝物なんです」

 

 

「ほ、鳳翔…?」

「なんだ?女が居るのかね?」

 

 

彼は服を脱いで見せた。

 

「オイ…アレ」

 

彼の脱いだ上着の内側には補修の跡が目立っていた。

笑い声すら上がる場内。

 

 

 

 

盗聴器の向こう側では、鳳翔達が下を向いていた。

自分が恥をかかせたのではないかと思ったから。

 

 

 

 

 

「……この破れた箇所は突き飛ばされた時、…これは撃たれた時…」

つらつらとその破れ補修が何の時かを並べて行く救。

その度に鳳翔や皆が縫い直してくれたと言う。

裏側には御守りやハートのワッペン補修がされていた。

それも見て笑われる。

 

 

「そんな誰かもわからん娘より…ウチの娘の方が……

 

 

 

巌はゾクリとした。

その威圧を通り越して殺気を放つのはこの場に居る中で恐らく最年少の男が放ったものだった。

 

 

 

「知らない?」

「この国を…国民を身を挺して守るために戦う彼女達の事を知らない?」

 

ビリビリと何かが揺れる。

慌てた部下が耳打ちする。

 

 

「あぁ…軍艦の鳳翔ね」

 

「……あなたもこの国を担う1人なのですよね?」

「その人間が何でわからないのですか?」

 

 

 

 

 

 

たかだか小僧1人。

たかだか自分よりも下の奴。

なのに馬鹿にされた。

大和田がキレるには十分な言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「黙れ!あんな人の形をした兵器の化け物達の事なんか…!」

若造に言われてイラッとしてのだろう。

しかし……それが墓穴となった。

奴は言ってはならない本音を…言葉を発してしまった。

 

「何…?」

 

「貴様もその化け物と触れ合って結婚しようだと!?馬鹿馬鹿しい!!」

 

「いいか!この国を支えているのは私だっ!その私の指揮下に貴様達も入らねばならない!!」

「娘をくれてやるのはそう言うためだ!じゃなければ誰が好き好んで貴様のような奴に…」

 

 

「訂正してください」

 

「はん?」

 

「化け物だとか…そう言うの全部」

「化け物とか言う奴に守られてんのはアンタもなんだよ」

 

 

「人知の及ばぬモノはみなそう呼ばれるんだッ!!」

「貴様とて同じだろう!?奴等化け物を利用したからこそ!それを手にしているんだ!!」

指差す先には…ニコニコしながらつけてくれた勲章が……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神崎は勲章を外して投げ返し、賞状を破り捨てた。

 

 

 

 

 

 

 

そして今にも殴りかかりそうな彼を差し置いて前に出たのは巌だった。

 

 

そして首相とやらを殴りつけた。

「ガハッ!?」

顔面を屈強な漢に殴られてのたうち回る首相。

巌は、その手をハンカチで拭きながら言う。

 

「……私の嫁も艦娘なのですが」

 

 

 

 

「このクソがッ!!」

「やっぱり海軍は化け物集団か!!国家の安寧が見えないのかッ!」

大和田の合図と共に黒服達が銃をこちらに構えた。

もはやなりふり構わないようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!!マズい!」

「提督が!!」

 

盗聴先では彼女達が慌てる。

行こうが、声を上げようが、彼のピンチがどうにかなるわけではないからだ。

 

 

 

 

 

 

 

「貴様は黙って俺達の下に付けば良い!」

「貴様らの力はいずれ…この国が世界の中で昇り詰めるのに役に立つ!」

 

「無論…タダでとは言わん!」

「今回のこの無礼も不問にしてやろう!」

「甘い汁もたくさん吸えるぞ!?」

 

「愛など抜かさぬ…強力な軍事国家を築いてみせるんだ」

 

 

 

「何故?」

 

「下らん!兵器に愛なぞ要らぬ!」

「ましてや…その指揮を執る貴様が現を抜かすなど言語道断だろう!」

 

「貴様らのような先陣に立つ者には愛だのなんだのは不要なんだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛するのが悪いのですか」

 

「なに?」

 

「彼女達に想われて、彼女達を想って何が悪いんですか」

 

「馬鹿を言うな!!奴等は兵器だぞ!軍艦の名前を冠してるんだろう!?なら兵器じゃあないか!」

 

「兵器は涙を…血を流すんですか?」

「私は………俺は、アイツらのためなら命を投げ捨てる事もできます」

 

「アンタの娘とを貰って、息子になって得られる甘い汁よりも」

「アイツらと舐める苦い汁の方が何倍も価値があるし、嬉しい事なんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ポロリポロリと涙が出た。

化け物と呼ばれたから、兵器と言われたからではない。

それに対して彼ならこう言うなんて事は誰もがわかる事ではあるが、それでも涙が止まらなかった。

思えば出会った頃から変わらないあなたの優しさ。

 

 

傷ついて帰ってくる度に心配して

居なくなったあなたを想って涙を皆で流して…

 

あなたとの思い出…とその服を恥ずかしいかな?と思いながら直して…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嫌だ…」

 

誰かが言った。

 

「何があってもあの人と離れたくない」

 

 

 

 

「私達の意味は…ダーリンがくれたんだもの」

「愛することも、笑顔も何もかも」

 

 

 

 

 

その声は…その機械の先から聞こえた。

 

 

『この世界で独りぼっちの俺に愛をくれたのは…アイツらなんです』

『俺にこの世界にいる意味をくれたのも、アイツらなんです』

 

 

 

「…ッ!!」

彼女達は言葉に詰まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたの娘さんは意味を俺にくれますか?」

 

ーダーリン!あなたが居てくれるから私達は頑張れるの!

 

 

 

「破れた服を夜なべして直してくれますか?」

 

ーふふっ、制服、直しておきましたよ。

この御守りがきっとあなたを守ってくれます。

 

 

「遅くまで起きて、帰った俺にご飯を一緒に食べましょう?って温かいご飯を用意して迎えてくれますか?」

 

ーあなた?甘味じゃありません!ご飯です。

一緒に…食べましょう?

え?起きてたのか…ですか?当たり前です。いくらでも待ちます。

…お帰りなさい。

 

 

「悲しくて、悔しくて仕方ない時に…一緒に泣いてくれますか?」

 

ー泣いていいんだよ。

私達も…一緒に泣くからさ…。

頑張ろう…?次は一緒に笑うために。

 

 

「俺が心底ピンチの時にどんな壁も乗り越えて来てくれますか?」

 

ーよく耐えられました…誇らしきご主人様。

ーあなたが指揮官ね?お待たせ。

 

 

どうなんだ?と言う声に、大和田の娘は黙り込む。

 

 

 

 

「そんな事に何の意味があるというのか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから俺は俺で居られるんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから言います、何度でも!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『俺は皆を心から愛してる』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「例え脅されても…殺されてもっ」

 

「俺の心は変わらない」

 

 

 

 

 

 



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384話 鎮守府と提督 ④

「……」

 

 

 

 

 

 

「…認めろ、諦めろ」

「そうすれば…命は助けてやる」

ゾロゾロとゴツい奴らが入ってくる。

恐らく強化スーツとかそんなんだろう。

 

 

 

はあーっと大きなため息をついて彼らは言う。

「無理ですね」

 

「緊迫感のない奴だな…」

そこに関しては同意する…と、巌は思った。

何せこの男は動じてない。

 

「なら国家反逆罪で貴様を捕らえても良いんだぞ?」

 

「…艦娘達も反旗しますよ?」

 

「なら、纏めて始末するさ」

「仮に逃げられたとして、お尋ね者に変わりはない」

 

「………皆と居られるなら、追われても何でも良いや」

 

いや、これがこの男なのだ。

この国の為…もあるが、彼女達が居るから…戦うから自分もその熾烈な戦いに身を投じるのだ。

 

艦娘達が開墾、開拓が主な仕事なら喜んで鍬を片手に耕すだろう。

宇宙探索が仕事なら宇宙に行くだろう。

 

そんな奴なのだ。

そんな奴を相手にしたところで奴は動かない。

初めから奴等の負けは決まっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだね」

「僕達も…提督が居てくれるなら何でも良い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前に…大広間の壁を突き破って彼女達が入ってきた。

大本営のあの時みたいに。

 

 

 

 

 

 

「何ぃ!?何で貴様らが!?本隊は!?」

 

「あー…やっぱりすれ違ったあのお船は君達なんだね」

「僕達を脅迫の材料にするためだったんだね」

 

「まあ……負けなかったし、擦り傷ひとつないけどね?僕達は」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ?提督?」

 

「あなたと一緒なら、田んぼでも山の中でもどこでもよろこんで」

 

 

「…いくらでも側に居る」

「どんな時でもね」

 

「一緒に泣くし笑う」

 

「あなただけをずっと見てる」

 

「あなたを何が何でも守り切る」

 

「どんなにぼろぼろだって」

「どんなに泥臭くたって」

「どんなにカッコ悪かったって」

「何度服が破けようと」

「どれだけひもじい思いをしても」

 

「私達はこの世界にあなたがいる限り…」

 

 

「あなたと共に歩み続ける」

 

 

 

 

 

「それに」

と言いながら加賀が大和田の娘の方を見る。

 

 

 

 

 

 

「アンタの娘じゃあ…それはできないだろうね」

天龍が笑いながら言い放つ。

 

 

「なっ!?」

 

 

 

 

 

「撃つぞッ」

 

「撃てば?」

「もしも…提督が死んだら私達は…一瞬でこの場を灰に帰してあげる」

 

「まあ…できたらの話だけど」

暁が言う。

 

「その弾はご主人様には届くことはありませんけど」

桜ベルファストが言う。

 

 

 

 

 

 

「覚悟はあるの?」

 

「訓練訓練ばかりのYOU達が…」

 

「海でひたすら死と隣り合わせで戦う私達に」

 

 

 

 

 

 

彼女達は彼の前に立つ。

それが彼女達の在り方だから。

 

 

 

兵器だと化け物だと罵られようと気にしない。

 

愛する彼が隣に居てくれるなら

例え追われる身になったって構わない。

不自由な生活でも構わない。

 

 

なによりも彼の笑顔が愛が無い方が辛いから。

 

 

 

「いくら艦娘達とはいえ、こちとら強化スーツに最新鋭の武装だぞ」

「負ける筈がない」

 

 

「確かに強そうだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも深海棲艦達程の圧はないし…」

「この中で誰かがやられたって……確実にお前だけは…獲る」

 

ニタリと笑う時雨に大和田を含めて数名がゾクリとした。

 

 

 

 

 

 

そして…銃を構える中の2人が銃のトリガーの指に力を込めた–––

 

瞬間に川内と桜霧島が抑え込む。

 

「「遅いッ」」

 

ズダァン!!という音と共に床に叩きつけられる兵士。

彼女達の膝は首に置かれ、いつでもその命を狩る事ができる位置にあった。

 

 

「貴様ッ!撃つz「撃ってみなよ」

兵士が銃口を川内に向けるが、彼女は口一つで奴らの動きを止めた。

そして、川内はその膝に体重をかるくかけた。

メキメキと首に圧が掛かって兵士が声にならない悲鳴をあげる。

 

「……ガッ…グッ………」

 

 

「僕達は本気だ」

「君達を敵に回す覚悟なんか…とっくの昔にできている」

 

「私達を馬鹿にするのも罵るのも構わない」

 

「でも」

 

「いつでも直向きに頑張る、私達の愛する人を笑って馬鹿にしたことは…許さない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近くの兵士が巌を殴りつける。

 

「ぐっ…」

「腰が入っとらんぞッ!!」

巌も負けじと殴り返した。

 

 

 

 

 

 

呑まれている。

数も立場も圧倒的に有利なはずの部隊が!

あんな小娘如きにッ!!

 

大和田は指示を出した。

 

「くっ…!構わん!足手纏いごと撃てッ」

「何よりも先に提督の始末をしろォ」

 

 

 

 

 

 

 

 

殴り飛ばされた兵士が腰から拳銃を取り出した…

 

 

 

 

「くそっ」

構える巌…。

その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボッコォォオン!!

 

 

大広間の壁がぶち抜かれた。

 

 

 

 

 

 

「「……え?」」

これに驚いたのは救と巌と西波島一同。

 

 

 

 

 

 

 

砂煙の上がる中から現れたのは…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウチの主人がお世話になってます」

「ご挨拶が遅くなりました…どうも…化け物(巌の妻)ですが…」

 

 

 

 

 

 

 

 

大本営の大和(クソ強嫁さん)だった。

 

「ヒェッ…」

巌は思わずそんな声を漏らしてしまった。

 

固まる場内。

 

カツカツと巌の元へ一直線の巌大和。

本当に巌大和の足音以外聞こえないの。

 

 

 

 

「あら?」

「アナタ……」

 

 

巌大和の前には…殴られて口から血を少し流す巌の姿が…

 

「あらあら…誰がやったんですか?」

心配そうに巌の肩を掴む巌大和。

 

 

 

「いや…これh「誰ですか?」

巌の胃と肩からメキィ…と音がした気がした。

 

 

 

 

「…………アイツら」

巌はとりあえず2人を指差した。

 

 

「あら…」

 

 

「ウチの主人が失礼な事をしましたか?」

「でしたら、私にも責任がございます…」

 

「どうも…」

 

 

「申し訳ありませんッ!!」

巌大和はお辞儀という名のヘッドバッドを繰り出した。

ヘルメットが割れてブシュッ…と血が飛んだ気がしたが無視しよう。

バタリと1人が倒れた。

 

 

 

 

「そおおおりゃぉあああ!!」

巌大和の渾身の蹴りが強化スーツごと兵士を2蹴り飛ばした。

腹の強化スーツは足型に割れて壁まで吹き飛ばされた。

もちろん壁が人型に穴が開いたのは言うまでもない。

 

 

「ごめん、アイツらだったかも」

巌は流れで別の2人を指差した。

 

「あら…間違いは誰にでもありますわ?」

 

そいつらも同じように吹き飛ばされた。

少し何かがスッキリした巌だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何でアイツ…クソッ…早く!早く奴等w…グブッ!?!?」

命令を下す前に顔面に鈍痛が走った大和田。

 

 

「……」

その男は誓っていた。

絶対に1発!顔面にぶち込んでやる…と。

 

愛する者をコケにされ、嘲笑った奴等を許さない…と。

 

「グバァァア!!」

鼻血を飛び散らせながら転がる大和田。

ボタボタと血を流しながら叫ぶ。

 

「ころひえ…!ほろひぇえええ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「桜大鳳ッ!!」

 

「はい!指揮官様あ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬で決着はついた。

 

 

 

桜大鳳が艤装をメンタルモデル化させたのだ。

大広間の中で。

 

 

 

 

 

 

 

「め、めちゃくちゃやりやがるッ!?」

 

一気にホテルは崩壊して行く。

従業員達は予め避難させていた。

 

故にそれ以外を飲み込んでゆく。

無論、兵士も何もかもを巻き添えにして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ヒッ…」

 

倒れ込む大和田に長門と蒼オークランドが砲門を向ける。

 

「一応言っておくが…お仲間は無事だぞ?怪我はしてるかもしれんがな」

 

 

 

「この国は守る。でも、それは彼の下で一緒に戦うからだ!」

「我々のことも考えない奴の下で戦う気はないッ」

 

 

 

 

 

「…………くっ」

大和田はガクリ…と下を向いた。

 

 

 

「……帰りますね」

「彼女達と過ごしたいので…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして西波島艦隊は鎮守府へと帰って行く。

この話は一気に拡がった。

軍事力を拡大しようと暴挙に出た首相と権力に屈しない提督と艦娘達。

神崎艦隊の名は全国に拡がった……良くも悪くも…。

 

 

 

巌も巌大和に担がれて一緒に鎮守府へと向かう。

嫁には一生勝てないと思ったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて……」

「皆で飯にするか」

 

 

鎮守府に帰ってきたのは夜になってしまった。

しかし、皆は笑顔だった。

 

 

遅めのお祝いが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 



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385話 鎮守府と提督 エピローグ

2話目の投稿!

一年間ありがとうございました!!


 

「提督!こっちに来て?」

 

手を引っ張られるがままに着いて行く。

鎮守府の外…

パッとライトが点いたら見えたのは…

 

左右にずらりと並んだ西波島の面々だった。

 

 

 

 

皆がアーチを作るように俺が通る道に立つ。

 

「ダーリンさん!愛してます」

 

「指揮官!おめでたいな!」

 

「マイネリーベ!マイネリーベ!」

 

 

全く何のことかわからないまま進むと…

 

 

 

 

 

 

広場にその場所はあった。

 

 

 

 

 

 

【提督着任 周年祝!いつもありがとう】

そう横断幕には書かれていた。

 

 

 

手作りであろうそれや、会場の飾り付け。

一生懸命作ったであろう料理が並べられていた。

 

 

 

 

 

「本当はね?ご飯も皆で作りたかったんだけど…ほら、あんな事があったからさ」

 

「何人かで残って頑張って作ったんだよ」

 

 

 

「ほら!主役が固まってどーするの?ダーリン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「乾杯の挨拶もしてね?」

 

 

 

 

予想なんかしてなかった。

なんだか嬉しくて嬉しくて…

俺の計画は…今回の件で全てが水泡に帰したが…

 

 

「ありがとう」

 

「皆のおかげでここまで来られた」

「色々あった」

 

「嫌な事も嬉しい事も…本当に色々あった」

 

「それは皆が居なければ乗り越えられなかった」

「それは皆が居なければ分かち合えなかった」

 

 

 

「俺も色々計画してたけど何も出来なくて…すまない」

「くそっ……嬉しくて泣けてきた」

 

 

 

 

「ありがとうなあ!!ちくしょーー!!嬉しすぎるんだよお!!」

 

「かんぱぁい!!!」

 

 

「「「かんぱぁい!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何でこの場所にしたか…わかる?」

「この場所はね?」

 

 

 

 

 

「あなたが私達の提督になるって言ってくれた場所なんだ」

 

 

 

 

 

『大丈夫…私は君の味方だ!』

ここで金剛を抱きしめた。

 

「ダーリンはここで私を抱きしめてくれたね」

 

 

 

『金剛さんに乱暴しないでください!!』

そういや、最初は鳳翔に突き飛ばされたっけ?

 

「突き飛ばした私をあなたは許してくれましたね」

 

 

 

『何してんだぁあ!!』

暴力を振るう大石を殴り飛ばしたなあ…

 

「提督は…大石提督を殴り飛ばして私達を助けてくれたね』

 

 

 

『たった今を以て私、神崎 救が提督としてこの西波島鎮守府に着任する!皆と共に命を掛けて一緒に歩んで生きて行く!!』

勢いだけど…

今となっては…うん…よかったと思う。

 

「提督はここで力強く宣言してくれたね」

 

 

 

 

「この鎮守府でも色々あったなあ」

 

 

 

 

 

『遠征任務終わりました!あきつ丸であります』

梅雨時期の出合いもあった。

 

「思い返せば壮絶な出会いでありましたな」

 

 

 

『えええ!?赤城!?大鳳!?ベルファストォ!?』

世界を超えた出会いがあった。

 

「世界すら…超えましたわ」

 

 

『私は…あなたが好き…』

ずっと好きで居てくれる君も居た。

 

「あの頃からずっと救君が大好きだよ」

 

 

『お待たせ!指揮官ッ!!』

誓いを果たす為に世界を超えてきてくれた。

 

「いつだってどこだってすぐに駆けつけるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    

 

 

 

走馬灯のように…思い出が駆け巡る。

こんなにも慌ただしくて…幸せで温かな毎日をありがとう。

 

これからも…ずっとずーっと一緒に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだなあ…本当に…思い出だらけだな」

 

「その気持ちは今も変わらない?」

 

 

その声に振り返ると…

皆がこちらを見ていた。

 

 

「変わらないさ」

「ずーっと皆が大好きだ!!」

 

 

 

 

 

わいわいと彼を囲んだパーティーは夜中まで続いた。

久しぶりに皆ではしゃぐのは……幸せだった。

 

 

 

「あ…そうだ」

「頑張って一つずつ手作りしたんだけど…」

 

「皆にネックレスをプレz…………

 

 

 

 

 

 

 

 

そこから意識は無い。

薄れ行く景色の中で…金剛が何故かガッツポーズしてたのだけは覚えている。

 

 

皆の分…あるのに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

「桜大鳳?」

 

「はい♡指揮官様♡」

 

「これを見てくれ」

 

「まあ…なんて…大きな……」

 

「凄いだろう?」

 

「ええ…私…ここまで大きなもの…見たことないです♡」

 

 

「ほら…目を逸らしちゃダメだろ?よく見てごらん?」

 

 

「はぅ……指揮官様ぁ」

 

 

「どうする?…どうしてくれるかな?」

 

「まぁ…私………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もちろん、請求書である。

デカい請求が来てるのだよ。

 

「何であそこまでしたの?」

 

「一撃で終わらせたかったので…」

 

 

「ホテル壊したら…あかんやろう…?」

 

「国に回されては?今回の迷惑料ということで…」

 

 

 

 

 

「そうする…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……クソッ。あのガキどもめ」

 

『おやおやおやぁ?』

 

「な、なんだ!?何だ貴様はッ」

 

『ウーン…神様とでも言おうかなあ?うふふふ』

『復讐したぁい?』

 

 

 

 

 

『神崎と仲間達に復讐したぁい?』

 

「もちろんだ!この私をコケにした奴らを…必ず!必ずッ!!」

 

『なら征こう?うふ…あははははは!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 




と言うわけでエピローグ


ちょうど1年前にこの小説を投稿し始めました。
早いもので…380話を越しましたよ!
話数で言うと1日1話ペース!

皆様のおかげでここまでやってこられました!
本当に、本当にありがとうございます!


これからもぜひこの稚拙ではありますが本作をよろしくお願い申し上げます。


少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。


感想などお待ちしています!



あ!次回から新章開始です


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2部 1章 遥かな航路
386話 いつもの明日


提督の居る執務室…の奥、救の私室のさらに奥にそれはある。

ほんの少し広めのバルコニーである。

 

なんだかベランダやバルコニーでのお楽しみを街で耳にしたらしく、妖精さんを買収説得して作ってもらったそうだ。

通気性の良さそうなリクライニングも可能な椅子とテーブル、ランタン等が置かれており、春の日には日向ぼっこと言う名の昼寝等が楽しめ、七輪もどきも常備されているので晩酌にも持ってこい!な場所となっている。

 

 

では、艦娘達の溜まり場となっているか?というとそうではない。

彼女達も渋々了承した彼のプライバシーを尊重する姿勢は持っている。

 

と言うのも…彼女達は互いに仲間であり、ライバルである。……恋のであるが。

 

 

こう言った彼にとっての特別な所に招待される日を心待ちにしながら日々を過ごしている。

 

 

 

「…提督?いいの?私が行っても」

 

 

 

 

 

ドキドキしながら彼の私室のドアをノックするのはアークロイヤル。

鎮守府の島に流れ着いたというアウトローな出会い方をした彼女であるが、何気に西波島初の海外艦であった……あったの!!

 

 

 

 

 

どうぞ…と言う声に反応してドアを開けると、桜ビスマルクが居た。

彼女達はお互いに顔にこそ出さなかったが、「え?2人きりじゃないの?」と割と思っていた。

 

「あら?2人きりだと思ってたのだけれど…」

口を開いたのは桜ビスマルク。

 

「私もそう思ってたのだけれど」

負けじと言い足したのはアークロイヤル。

 

2人は事実でもバチバチにやり合ってた仲という事を失念していた。

 

ヤベェ…と少し内心思いつつ、それでも…わがままが通るなら仲良くして欲しいと思う。

 

「え?いや、今日は2人に、と思ったんだけれども…別の日にする?」

 

「「いいえ!!今日にするわ!!」」

 

「ぉ…ぉぅ…」

気圧された救だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バルコニーは静寂そのものだった。

厳密に言うと、七輪の炭がパチパチと焼ける音が嫌に大きく聞こえる。

その間が物凄く気まずい。

 

 

「あのぉ…」

 

 

「なに?」

「どうしましたか?」

 

 

「こんなこと聞くのはアレだけど…やっぱり2人は仲悪い?」

 

 

「どうして?」

 

 

「いや…無言だし…」

「ほら、2人って大戦時はバチバチにやりあったじゃないか」

「やっぱり思うところはあるのかなあ…とか」

 

「別にそう言う意味で呼んだわけではないんだぞ!?ただ、2人とこーやって過ごしたかったから…って訳でだな?」

 

 

 

 

 

 

 

「……フッ」

 

「フフフ」

 

救が焦ったように喋る中で2人が笑い始めた。

 

 

「大丈夫よ。指揮官」

 

「そうだ、アドミラル」

 

 

 

「……え?」

 

 

「私はあの追撃戦の事は今は気にしてないわ」

 

「私もだ」

 

 

「今は大切な仲間だもの…」

 

 

「なら…何で険悪な雰囲気に?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたと2人きりだと思い込んでいたからよ」

 

「そうそう、この場所もそうだけど…アドミラルが招待してくれるまで入れない場所ってあるのよね」

 

「そんな場所に2人きりで居られる事が私達の中ではトクベツなのよ」

 

「だから2人きりって思い込んじゃってね。少し妬いたのよ」

「私は…一番乗りじゃなかったことに」

 

「私は…私だけじゃなかったことにね」

 

 

 

 

 

 

 

「まあ…あれだ」

「今度は…2人きりだといいわ」

 

 

 

焼き上がったじゃこてんやら…魚を出してみる。

箸の使い方も大分慣れたみたいで、はふはふ言いながら食べる姿は可愛らしい。

 

 

「にしても…」

「同じアークロイヤルでも違うもんなんだな」

 

 

「確かにね、もっと……こう……ええと」

 

「やばいヤツって言いたいんでしょ?」

「アドミラルもそういう意味で言ったんでしょ?」

 

「「まあね」」

 

 

俺達の中ではアークロイヤル=駆逐艦大好き!が成り立っているのだ。

 

 

 

「…あなた達の所の桜アークロイヤルのお陰でアークロイヤル=駆逐艦大好きのロリコンだと思われてるのよね」

 

「…何というか……お気の毒に?」

「桜長門も同じような扱い受けてたと思うわ」

 

 

「アイツは…存在そのものがロリだろう?」

この前、長門と桜長門が並んでいたが…アレは親子だったぞ。

とはいえ、イメージとは怖いもので…桜長門も見た目がロリなのにロリコン疑惑がかけられている。

 

 

 

 

談笑しながら過ごす時間は尊いもので、アークロイヤルと桜ビスマルクが良い仲間である事が見られて良かったと思う。

 

「これからも皆でがんばろうな」

 

その言葉にほんの一瞬、桜ビスマルクは寂しげな顔をした気がした。

 

「えぇ、頑張りましょう」

 

「アドミラル、私に任せて」

 

 

 

 

 

 

3人で片付けをしながら明日のことを考える。

明日も同じように楽しくて騒がしい明日が来るんだ…と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうだった?」

 

「ん?桜エンタープライズか。…えぇ、やはり指揮官は…変わらないな」

声をかけてきたのは桜エンタープライズだったようだ。

 

「あぁ…私達が愛したただ1人の指揮官」

 

「そして…この世界が呼んだ…提督」

「紛い物の私達でなく…彼女達の願いに世界が呼応したんだ」

 

 

 

「……いいの?本当に」

 

「あぁ…皆で決めた事だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「〜〜〜。………ごめんなさい」

 

「承りました」

 

「ありがとう、それといい?確認よ」

「…コードは……………………」

 

「畏まりました」

 

 

桜赤城と桜ベルファストが誰かと話をしているようだった。

 

 

「桜赤城?桜ベルファスト?行くぞ」

 

「ええ、いま行くわ」

 

「かしこまりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寝付けなくて風にあたりにきた救。

鎮守府はシン…と静まり返り、遠くに夜警の川内の探照灯がみえるだけだった。

 

 

「指揮官」

 

「ん?なんだ?」

いきなりの声に少し驚く。その先に居たのは…桜ビスマルクだった。

彼女はニコリと笑って…儚げに言った。

 

「これだけは伝えておきたい」

 

 

 

 

 

 

 

 

「どれだけ…離れていようと、心は変わらない」

「何があっても…我々アズールレーンは指揮官と共にある」

 

 

「?………俺だってそうさ?」

 

「ふふっ…そうだな。おやすみ…指揮官」

 

「ああ、おやすみ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、アズールレーンは鎮守府から姿を消した。




新章開始です

訂正
この話までの部を1部として今話から第2部開始とさせていただきます。
何卒よろしくお願いします!


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387話 決別

 

「えへへ…救君とデートだなんて、嬉しいな」

 

目の前にいるのは迅鯨…もとい秋姉さん。

「1日夫婦だなんて…幸せだなぁ」

 

 

「色々行きたいな。今までできなかった事…あなたとしたい」

 

「そうだねぇ。行きたいトコとか、したいことはある?」

 

「えとね…今日は一緒に寝ていい?」

 

「可愛いねえ、いいよ」

 

「ホント?やった!」

「ならまずは、夜食一緒に食べよう?」

 

 

今日の夜から…かつ明日から迅鯨と1日夫婦の日である。

桜ビスマルク達とのやり取りを見ていた迅鯨が若干妬いていたが、スルーする。

 

 

「今日は私の手料理でーす」

 

若干、キャラがおかしい気もするが…それだけテンションが上がってるのだろうと思えば本当に可愛いものだ。

 

「全部俺の好きなものじゃないか」

 

「当たり前だよ!何でも知ってるんだからね?」

この言葉に恐怖を感じたが気のせいだろう…。

ニコリと笑う迅鯨に勧められてお夜食を頂く。

 

 

「ふふっ…昔はこーやって一緒にご飯とか、お風呂とか寝たりとかしてたのにね」

 

「はえ!?や、やめてくれよぅ」

 

「恥ずかしい?」

 

「そりゃもちろん…」

 

「ふふっ可愛いね」

「一緒に寝よ?」

「他の子とも一緒に寝てたでしょ…?私の事好きって言ってくれてたのに……」

 

迅鯨の目からハイライトが消えた。

やめてくれ!元に戻ってえええ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…おはようございますなのです!今日もメイド修行よろ………」

 

「あれ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督さん!!大変!起きて!!」

乱暴にノックされ、外から誰かが俺を呼んでいた。

 

 

「…うん……北上…どうした?」

 

私が出ますよ、と迅鯨がドアを開けた。

 

 

「血相変えて…何かありました?」

 

 

 

 

「アズールレーンの皆が…居ないの!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その異変はすぐに鎮守府中に駆け巡った。

 

メイドの桜ベルファストや桜シリアスもシェフィールドすらいない。

いつもなら「指揮官様あ!」と飛びついてくるヤベーヤツすらも。

 

 

島のどこを探しても彼女達を見つける事は叶わなかった。

 

 

 

 

 

緊急招集をかけて、全メンバーが集まった。

やはり、艦娘と戦姫しかいなかった。

 

「…」

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

「奈々…ちゃん……駿河は!?」

 

奈々は人間でありながKAN-SENの力を借りている。

彼女なら何かしらの事情を知ってるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

「……居ません…」

 

 

「アズールレーンは誰1人として…居ません」

 

 

 

 

 

 

 

 

「TBちゃん!!」

ダメもとで呼んでみる。

 

「はい…」

救の問いかけに答えたのはTBちゃん。

アズールレーンの世界ではセイレーン作戦を支えてくれるインターフェイスだ。

 

「皆が居ないのは何故だ!?」

 

「………」

 

「何とか言ってくれ!!」

 

「プログラムを預かっていますが……」

 

「ならそれを開いてくれ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

彼女の口から出た言葉に耳を疑った。

 

「何!?」

 

「あなたはこの世界の提督です」

「故に、あちらの世界(アズレンの世界)での権限がありません」

 

「何を言っているんだッ!!アイツらは俺の艦隊…」

 

「権限がありません…。それしか言えません」

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「ダーリン…」

 

「どうにもならない…のか…?」

 

「………」

TBちゃんは黙ったままだ。

 

 

 

 

 

その時、麗が口を開いた。

 

「…諦めないで!!」

 

「でも!権限がないって言われたら…」

 

「うん、そうだね、何もできないね」

「でも…私の本当に大好きな提督は」

「私の大好きな救君は」

 

「絶対に仲間を諦めない!」

 

 

 

「……ッ!」

確かにそうだ。

 

 

「行こうよ!」

 

 

「私達の仲間を…助けに!!」

「そんな提督は見たくないよ!!」

 

 

 

麗は本当に立派な提督になった。

か弱そうな彼女はもう居ない。目の前に居るのは…安心して背中を預けられる強い提督だ。そんな彼女の言葉が俺達の頭を更に回転させる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……もしかしてですが…」

「提督が提督である事が問題じゃないのでは?」

 

「神州丸?どういうことだ?」

 

「はい、神州丸です。えとですね?」

「提督は指揮官ですけど…この世界では提督な訳で…」

 

「ん?ん!?ん!?どう言う事だ!?」

神州丸の言葉の意味が理解できない救。

 

 

「ですから…あの世界でも指揮官である事を宣言すれば良いのでは?と」

 

 

「そうなのか?TBちゃん」

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひとつ言えるのは、覚悟無しには前に進めないという事です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「TBちゃん。俺は…アイツらの指揮官だ」

「それはずっと変わらない。だから…開いてくれ」

 

「…………承認します」

 

 

 

 

 

画面に映像が映し出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※この先の名前の表記はそのままです。

赤城や加賀名前もアズールレーンのものと思ってください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「集まったな」

 

「皆…向こうの世界の母港から通信が入った。通信というより伝言なんだが…」

 

『ね、姉さん!大変!!セイレーンが!セイレーンが母港に攻めて…』

 

映像に映ったのはホーネットだった。

その後ろには島風やニュージャージーと言った面々が見えた。

 

『上層部も軒並み壊滅…!このままじゃこの世界は…!!鉄血達への連絡は!?くそぉ』

 

 

どうやら、セイレーン艦隊が母港に攻め入っているようで、戦況は切迫しているようだった。

 

 

 

「早く行かないといけない状況なんだ!!」

エンタープライズ達が言う。

 

 

 

「だが…指揮官を巻き込むわけにはいかない」

 

 

「そうね…」

 

「指揮官が最初に来たのが私達の世界じゃなかった事を悔やむな…」

 

 

「お願いしたら来てくれるのではないのか?」

 

「きっとそうだと言うだろう。でも彼にも立場もある」

「この世界を守ると言う使命もある…」

 

「……怒るだろうな」

 

「うん」

 

「でも…仕方ない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、各自準備は済んだな?」

「戦況が戦況だ。もう一度皆で帰って来られるかはわからない」

 

「でも…次は皆で…揃ってこの世界にお世話になりに来よう」

ニコッと笑ってエンタープライズは言う。

 

 

 

 

「行くぞ!!アズールレーン、セイレーン作戦開始だッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆が裂け目から世界を跨いで行った後のモニターにはまだホーネット達が映っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『待って…何で()()()()()()()()()()()()()()()!?』

 

 

 

 

 

ブツリ…と一旦、映像は切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホーネット!!ホーネット!」

ゲートを潜って出た先にホーネット達は居た。

 

「姉さん!来てくれたんだ。でも…アレ!アレ!」

 

 

 

ホーネット達の指差す先には……

 

 

 

 

 

 

 

「…あれ…ビスマルク…?」

 

「オイゲン!?重桜艦隊まで!?」

 

 

 

「動かないで」

「ここから先は…レッドアクシズとして行動させてもらうわ」

 

信じ難い光景だった。

セイレーンと共に行動しているのは、レッドアクシズ…つまり、鉄血と重桜だった。

ビスマルクもティルピッツもオイゲンも赤城も加賀も皆が私達と相対するようにこちらに艤装を向けて立っていた。

 

 

 

 

 

 

「何でだ!?」

「向こうでは皆で戦ったじゃないか!!」

 

 

「それは指揮官の居る世界だったからよ」

「この世界には…問題が多すぎる。だから…私は知りたい。何故私達がここに居るのか、その本当の意味を」

 

「だからって…セイレーン側につくなんて!!」

 

「あの人の来なかったこの世界は紛い物…。紛い物は朽ちるのが運命なの。なら、私は仲間の未来をせめて少しでも本物に近づけたいだけなの」

 

「その仲間ってのは私達は含まれていないんだな」

 

「………」

ビスマルクは黙り込んだ。

そして…

 

「あなた方もこちらに来れば良い」

と言い放つ。

 

「それはできない」

エンタープライズ達は毅然と返す。

 

「そう…。運命は変えられない。なら…抗うのは無駄ってわかるでしょう?」

 

 

 

「戦うしか…ないのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プツリと映像が消えて以上です…とTBちゃんが言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ビスマルク…!?」

 

「ビスマルクさん達がエンタープライズさん達を裏切ってセイレーン側についたって事!?」

 

「映像を見る限り、彼女達が戻る前からレッドアクシズはセイレーン側についていたと言うことになる」

 

「ってことは…いつからビスマルク達は!?」

 

「最初から…?」

 

 

 

 

 

「分からない…情報が多すぎて少なすぎる…」

 

 

 

 

 

 

突然の事に何も言えなくなる救だった。



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388話 枝分かれする未来 ① アズレンサイド

 

 

 

 

セイレーン…

突如として現れたソレは世界を瞬く間に混乱に陥れた。

私達KAN-SENの誕生にも深く関わっているとされるそれは…

奴らは今を犠牲にして…奴らにとって大切な未来の破滅を防ぐ事を目的としているようだ。

 

その鍵を握るのが「進化」

そう…その破滅を防ぐ為に必要な進化をもとめている。

 

 

アズールレーンから枝分かれした鉄血、重桜はセイレーンの技術を取り入れる事でセイレーンへの対抗を目的とした。

 

 

 

 

 

 

 

だが…今のビスマルク達は完全にセイレーンの横に立っている。

 

 

 

「ありゃー?やっぱりナカヨシゴッコは飽きたあ?」

ビスマルクの横からぬっと顔を出したのはピュリファイヤー。

セイレーンの中でも好戦的な奴である、ピュリファイヤーは舐め回すようにビスマルクとエンタープライズを交互に見る。

 

「……ピュリファイヤー…茶々は入れないで」

 

「ふーん…まぁいいや」

「君もわかってるだろうしねぇ…」

 

 

 

「君達の技術は僕達には勝てないって事を…」

 

 

「そうね。なら運命を受け入れるしかないものね…普通は」

 

「うんうん。アイツらは馬鹿なんだね」

 

「だからせめて仲間をより良い未来へと連れて行きたいのよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ…ビスマルク…!何で!どうしてだ!!」

エンタープライズの叫びを他所に、赤城達が攻撃を開始する。

 

迫り来る爆撃機…。

 

 

 

「…ッ!!」

「応戦なんか……クソッ」

 

西波島での楽しい思い出が邪魔をする。

あの笑顔も…想いも全て嘘だったのか!?

 

「お前の…仲間という言葉は…嘘だったのか…?」

 

「嘘じゃないわ…ただ…仲間の定義があなた達と違うのよ!!」

 

 

 

 

 

「レッドアクシズ…前進」

 

その一言でさっきのさっきまで頼もしい仲間と信じて…いや

微塵も立ちはだかるとすら思ってなかった者達がこちらに目を向けて進んでくる。

 

そして、その頼もしさが一気に牙を剥いた。

 

 

 

 

「…赤城、加賀…翔鶴、瑞鶴ッ!!」

 

その掛け声と共に一気に艦載機が発着された。

空を覆い尽くすようなそれはまるで押し寄せる波のように私達に向かって来る!

 

「くっ」

もはや言葉は届かない。

必要なのは…仲間を守ること!!

 

 

「ホーネット!!皆ッ!!迎え撃つッ!!対空用意!」

「本気でかかるぞ!!奴等も本気だッ」

 

 

 

爆音が、轟音が鳴り響く。

飛んで進んでは壊して…

飛んで進んでは壊されて…

 

ある意味手の内を知り尽くした彼女達の戦いは平行線を辿った。

 

 

「ありゃあ…殺意が凄いねえ…。こりゃ僕達も巻き込まれそうだあ」

「後は任せるね?ビスマルクちゃん」

ビスマルクの肩をポンと叩いて彼女は笑いながら後退して行く。

 

 

 

 

「セイレーンが引き上げて行く?」

「まさかその為の時間稼ぎ…か?」

 

そう、セイレーンを母港から遠ざける為の作戦。

幸い…こちらには鉄血達からの攻撃で甚大なダメージを負った者は居ない。即ち、体勢を立て直す為の時間稼ぎ……

 

 

 

と淡い期待を抱いたアズールレーンのメンバー。

しかし、その期待は勢いを増す攻撃の波に飲まれて掻き消された。

 

 

 

「一気に押し切るわよ」

 

「…わかったわ」

 

 

 

オイゲン達を先頭に主力部隊がコチラヘと向かってくる。

全員、まさに鉄のような眼差しをこちらに向ける、もはや先程までの関係では居られない事は誰でも理解できた。

 

「迎え撃ちます!!」

 

 

「…酷いよね」

ニュージャージーが三笠と対峙する。

 

「小娘には…わからぬ事だ」

いつもの甘い感じは一切無く、そこに居たのは冷徹な戦艦三笠だった。

 

ガスッ…

ニュージャージーの拳が三笠の左頬を捉えた。

三笠の口から血が出、それを拭う。

 

「………」

 

 

ドスッ…!!

ニュージャージーは腹部に一撃を貰った。

痛みが一気にやって来て、もんどりうつ彼女。

 

「がはッ……」

 

 

ニュージャージーを見下ろす彼女の目は…氷よりも冷たいと言えるようだった。

 

「………」

 

 

 

「ねえ!綾波ちゃん!!嫌だよッ!!」

 

「……仕方のない事なのです」

「綾波達は…歴史の駒なのです」

 

ジャベリンやクリーブランドを相手に綾波とZ23が対峙する。

 

分かってる。

昨日の昨日まであんなに仲良くしてたのに…。

 

 

「それが戦争なのですッ!!」

 

綾波の放った魚雷が近くで爆発し、クリーブランド達は吹き飛ばされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「打開を狙いますッ!ロイヤルネイビー行きます!!」

フッドやベルファストが出陣する。

 

 

 

「あなたは私が貰うわ!」

オイゲンがベルファストに仕掛ける。

 

「そうはいきません!」

ベルファストも主砲を放って牽制する。

 

シリアスはシュペーと、エリザベスはドイッチェラントや金剛達と…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フッドだけが1人になった。

いや、1人になるように仕向けられた。

 

 

 

 

 

フッドの目の前にはビスマルクが立っていた。

 

エンタープライズの目にそれが入った。

冷や汗が流れた。

 

 

 

 

まさか…

 

 

 

 

 

「ビスマルク…お願い。元に戻って?」

傷つく仲間を横目に必死に懇願するフッド。

 

 

「…運命とは……あなたの命も雁字搦めにするの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり私はあなたが嫌いだわ」

 

 

 

ズドン…

 

 

 

 

 

 

 

 

「え…」

 

 

 

 

 

ドシャッ…という音と共にフッドの艤装が海へと落ちた。

と、同時にフッドも膝から崩れ落ちて行く。

フッドは辛々ビスマルクの腰に縋り付くように掴みかかる。

 

「あ、あなた……そん…な…」

「ねえ……あのと…き……………

 

 

 

 

「…すまないと思ってるわフッド…」

「でもこれも必要な…レールだから」

 

 

 

昔に…

ビスマルク達鉄血がアズールレーンから枝分かれした時…

彼女はフッドを撃った。

それが…その時以上に皆の脳裏に重なった。

 

 

 

 

 

 

 

エンタープライズ達に見えたのは…立ち上る水柱の中、水面へと消えて行くフッドの姿だった。

 

 

「嘘だッ…嘘だぁぁぁあ!!!」

 

 

 



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389話 枝分かれする未来 ② アズレンサイド

 

『ヤメロぉ!!ビスマルク!!』

 

間一髪だった。

指揮官が…西波島艦隊がやって来たのだ。

桜フッドを退げさせて明石が手当に入る。

 

『ビスマルク…お前…』

 

 

『指揮官…来てしまったの?』

 

『来るさ、俺はお前達の指揮官なんだから』

 

 

 

 

 

 

 

 

『なあ、やり直そう』

 

『全ての責任は俺が取る』

 

彼は両サイドに頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

指揮官がそう言う。

ビスマルクは軽くため息をつく。

 

『指揮官が居るなら…この世界でも私に意味があるわ…』

『フッドは致命傷を避けてるから…大丈夫なはずよ…でもごめんなさい』

 

幸いフッドは言う通り軽傷だったらしく、痛かったですよ?と文句を笑いながら言っている。

 

『信じて良いんだな?』

 

『ええ、全てに誓うわ』

『私は…何があってもアズールレーンの一員で、指揮官のKAN-SENよ』

 

レッドアクシズ…鉄血と重桜がニコリと笑う。

全ては私達の抱いた期待と同じ事だった、彼女達は仲間だった。

今からでも立て直せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんて事は起こり得ない。

 

 

そんな漫画みたいな事は起こらない。

 

目の前に映る現実こそが全てなのだ。

それ以外は全てが虚構であり妄想であり幻想である。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あ…あぁあ……

 

急いで駆け寄り、水面下へと飛び込む。

いくらもがけども体は上へと引っ張られ、代わりに微かに見えるフッドが暗い海の底へと引っ張られるように沈んで行った。

 

「ぷはぁ…ハァッ…ハァッ!!」

彼女と引き離されるように水面へと上がった彼女。

立ち上がりながらギロリとその元凶を見上げて睨みつける。

私と彼女の居る海を見つめる彼女の目は…もう私の知るビスマルクではなかった。

 

「…うっ……うっ」

 

「諦めなさい…」

ビスマルクは諭すように優しく声をかける。

やめてくれ、やるなら徹底的に冷たく徹してくれ!

私に…これ以上お前との思い出を頭にちらつかせないでくれ!!

 

「仲間が…死んだんだぞ」

 

「………私にとっては元仲間…いえ、同僚かしら」

 

「何も感じないのか?!」

 

「運命の歯車というのはそういうものよ」

 

 

 

 

 

 

その一言でブツン…ときた。

 

 

「ビスマルクゥゥぅぅうあああッ」

 

エンタープライズが怒気を露わにして飛びかかる。

 

 

「桂馬の高跳び歩の餌食……だったかしら?」

 

 

 

 

「…空母が前に出過ぎたら……戦艦に討たれるのよッ!!」

 

ズドォン!!!

 

主砲が思い切り掠って飛んで行く。

エンタープライズはきりもみしながら後方へと吹き飛ばされて行く。

 

 

「ガッ…グフッ…うっ…」

ギリっと拳を握りしめる。

フッドが何をした?再現?

お前は運命なら争う為に指揮官と共にセイレーンと戦ったのではないのか?!

信じた私が馬鹿だったのか!?

 

教えてくれ…ビスマルク

教えてくれ…指揮官

 

私は何を信じて戦えばいいんだ!

 

 

 

「うわぁぁああ!!」

軋む身を起こして再度殴りかかる。

ヒラリと避けられ、腹に一撃を食らう。

 

ビスマルクは淡々とエンタープライズを殴って蹴って…

 

 

 

ガシャン…

と主砲を構えた。

 

 

 

「くっ……ビス…

 

 

 

 

 

ズドォン!!!

 

 

容赦なく発射された。

艤装でカバーしたが、爆発には耐えられなかった。

後方へと吹き飛ばされるエンタープライズ。

 

 

何度も何度も海に叩きつけられながら己の無力を感じた。

 

 

 

 

 

「……うっ…くっ」

体が動かない、弓も構えられない程に、指先を動かすのでさえ激痛が走る。

視界の端にビスマルクの足が見えた、彼女が近付いて来てるのだろう。

後ろからは立って!逃げて!との声が…叫び声が聞こえる。

お前達もレッドアクシズに囲まれてると言うのに…

 

 

「…頼む…ビスマルク」

 

「なに?」

 

 

 

「ここは私の命ひとつで許してもらえないか」

 

 

「都合が良い事だとはわかっている。未だにお前達が敵になったと信じられない…信じたくない奴等も沢山居るんだ」

 

ビスマルクは悲しそうな顔をする訳でもなく

そう…とだけ言った。

 

 

「……無様ね…グレイゴースト」

 

 

 

「見なさい」

ビスマルクはエンタープライズを掴んで言い放つ。

「……皆…」

 

大破や轟沈こそしてないものの、殆どの仲間が傷付き、涙を流している。

「お前達が弱いからだ。運命は乗り越えられないのに…抗おうとするからだ」

 

「でも…ビスマルク!お前はッ」

 

「黙りなさい。嫌が応にも分かってしまうのよ」

「いかに残酷な運命でも…それに逆らう事は出来ないって」

 

「なら…最良の選択をするしかないじゃない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この母港は我々が占拠させてもらうッ!!」

「今すぐ…この死にかけの白い奴を拾って無様に背を向けて行くが良い!!」

 

 

その言葉に皆が狼狽える中で「……何なのアンタは…何がしたいのよ!!」と、エリザベスが吠える。

「味方だと思ったら敵で…殺したと思ったら見逃して…何がしたいのよ!アンタはどこの所属なのよッ!!」

 

 

 

「私はレッドアクシズのビスマルクよー…」

 

その今までに見たこともない眼と声にエリザベスは思わずヒッ…と声を上げた。

 

「別に…今ここで殺しても構わない」

「ただね…あなた達みたいな羽虫如きが飛び回ったところでこの未来は変わらないし、どうにもならないのよ」

 

「…くっ!!仲間に向けてそんな言い草!!」

 

「だから言ってるでしょう?仲間なんかじゃないって」

「あの人の側に居るから…そう思い込んでいたのね…哀れ」

 

 

「さあ、どうするの?」

「少しでも変な気を起こすなら、ここで皆…海の藻屑となって貰うわ」

「逃げたとしても…最期までの時間が少し伸びるだけだけどね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エリザベス達の指示の下、ロイヤルやユニオン達…残されたアズールレーンは負傷者を抱えて撤退した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母港の執務室の指揮官の椅子に彼女の姿はあった。

 

 

 

 

「……これでよかったの?やり過ぎじゃない?ビスマルク」

 

「赤城…。私はレッドアクシズの旗艦だ、皆を守る義務がある」

「その為ならセイレーンに頭も下げるし、何でもする」

 

「そう…」

 

「まぁ…そうね、指揮官様の居ない未来に意味はないものね…重桜も協力するわ……」

 

 

 

「奴等はまた来るでしょう……皆を呼んで、今後の説明をするわ…」



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390話 残された者の行方 ① 鎮守府サイド

「……」

 

『誇らしきご主人様あー!!桜シリアス…朝ご飯を作りましたあ♡』

 

『ちょっと!小娘!何抜けがけしてるの!?……指揮官様?桜赤城、朝ご飯のご用意が出来ております』

 

『ちょ!先輩!醜い争いはやめましょうよ…』

取っ組み合いをする2人に桜瑞鶴が止めに入る。

 

『桜瑞鶴…。えぇ、そうよね…みっともなかったわね』

さすがは桜赤城、ちゃんと自分を律することが出来るようだ、故に重桜の一航戦として後輩を引っ張って行けるんだな…。

桜瑞鶴も桜赤城の後輩として…しっかり背中を見て育ってるんだな…。

 

『そうですよ?重桜の幹部なんですからしっかりして下さいね?………そんなことより、指揮官?私の部屋で朝食でもとりながら…『『お前もじゃん!!』』

 

うん、見てたわ。しっかり背中見て育ってたわ後輩。

 

 

 

 

「ふふっ」

 

「どうかしましたか?」

 

「ん?不知火、いや、色々と思い出して…な」

 

「アズールレーンの皆の事ですね」

 

「あぁ…」

「未だに色々と受け入れられないところがある」

 

「桜ビスマルクさんのことですね」

 

「あぁ、一度会って話をしたい。ロイヤル達は彼女を許さないと言うだろうが…それでも……俺は…アイツらを信じたい」

 

「提督らしいです」

「そんな提督が私達は大好きですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ありがとう…と、慣れた手で紅茶を淹れて飲む。

桜ベルやシリアスのに比べたらまだまだ…だな。

 

一息入れてから思考を巡らせる。

 

 

 

 

 

「………」

アズールレーンの離脱、これは母港の強襲に際してのものだから仕方がない。

だが、どうして声をかけてくれなかった?

 

① 俺達が頼りない。

② 俺達が世界を超えられない。

③ 俺達の事を考慮して。

 

どちらにせよ…寂しい事には変わりない。

 

 

そして…ビスマルク。

鉄血と重桜の離反…。

これは相当に深刻な問題だ。

 

 

 

 

元々、確かに彼女達はアズールレーンから離反した。

セイレーンの技術を取り入れるだとか、カミとして扱うだとか…陣営の思想や方向性の違いによるものではあるが…。

 

少なくとも…あのビスマルクは再度アズールレーンとしてこの世界に来たはずだ。あの時の戦い以降には。

 

 

 

 

「…TBちゃん」

 

「はい、何でしょうか?指揮官様」

 

「……あの映像を見せるように仕向けたのは誰だ?」

 

「………桜フッド様です」

 

「桜フッドが?」

 

「はい、『勝手な事をしてごめんなさい。こうするしかなかったの。この問題は私達で解決するわ…。だから……だからあなたはこっちへは来ちゃダメ』と」

 

「…………そうか」

 

「向こうとは連絡は取れないのか?」

 

「俺達の力も必要なら…「不可能です」

TBちゃんはキッパリと言い切った。

 

「何で?」

 

「………」

 

「言えないのか?」

 

「………」

 

 

 

 

 

 

 

いや、考えろ考えろ!

アイツらは来られたんだ。何故だ?何故来られた?

いや…違う。

なんで帰ることが出来た?

 

 

 

 

俺…か?

 

彼女達は言っていた。

「俺の為に来た…」と。

 

 

 

 

「………まさかねえー!」

俺が鍵だなんてはあり得ないだろう。

 

「ど、どうしましたか!?」

大淀と不知火がびっくりして声をかけて来た、申し訳ない…。

 

「いや、あり得ない事を考えていただけだよ」

と、笑いながら答えた。

すると…

 

 

 

 

 

 

 

 

「あり得ないなんて事はあり得ませんよ」

 

 

 

 

 

「え?」

 

その言葉にびっくりして2人の方を見ると…

2人は真っ直ぐに、真剣にこちらを見ていた。

 

 

「そうですよ?提督」

 

 

 

 

 

 

「あり得ないなんて事はあり得ないんですよ?だって何故なら既にあり得ない事は起こっているから…」

 

 

「あなたがこの世界に来た事、皆があなたを追いかけてこの世界に来た事ですよ」

 

 

 

そうだ…

もうそれは起こっていた。

 

 

 

 

何かが晴れた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「TBちゃん」

 

「はい」

 

「あるんだろ?方法が」

()()()()()()()()()

 

「…ッ!!」

「指揮官様…フッド様からは…」

 

「俺は行くぞ」

 

「行かなくて何が指揮官か!側にいなくて何がケッコンか!!」

「アイツらは俺を支えてくれた!なら俺が皆を支えなくてどうする!!」

 

「絶対に見つけて見せる」

「俺は…アイツらの指揮官だッ!」

「他の誰でもない!俺が……俺だけがアイツらの指揮官なんだ」

 

 

 

 

 

 

 

熱く語る救に声をかける者が居た。

 

 

 

 

 

 

「行くにしても、鎮守府とかはどうするつもりなの?」

 

麗だった。横に

 

 

「麗ちゃん……それは…」

確かにそうだ。

俺にも立場や、やらなければならない事は沢山ある。

それらを放っぽり出して…結果としてこの世界が危なくなったら本末転倒だ…。

 

 

「俺1人で行くよ…………………なんて事は言わせないからね」

金剛が居た。

いや、他にも部屋の中にも廊下にも皆が居た。

 

「ダーリン?これで置いて行かれる気持ちは分かったでしょ?」

 

「そうやで、1人で行くなんて言ったらあかんで」

 

「私達だってどんな時でも…提督と一緒ですからね?ね?」

 

 

「でも、お前達…鎮守府は………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行って来なよ」

 

「え?」

 

「…ここも、救君の大切な街もみーんな…」

「私達に任せてよ」

 

 

 

 

 

 

「……でもッ そr「私は…そんなに頼りない?」

 

彼女は寂しく笑いながら言った。

 

「任せるって言ってよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「私ね?これでも結構頑張ったんだよ?」

「大好きなあなたの背中を預かれるように…って」

「あなたの帰りを待つ事だって出来るようにって!」

 

「安心してあなたが行って…あなたの帰る場所を…大切なものを一緒に守ることが出来るようにって!!」

 

「だからさ…だからさあ」

 

 

 

彼女はきっとこの将来もこの世界を背負って立つ娘だろう。

その子がそんな事を言ってくれる俺はきっと幸せ者なんだろう。

ずっと守りたいと思っていた、でも…彼女も俺をずっと守って支えて来てくれたんだ。

 

本当は海ちゃんもついて行きたいと言いたいはずだ。

それをグッと…グッと押さえて今の言葉を俺にかけてくれてるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

「私は…ッわt「任せる」

 

「ここも…この街も…何もかも大切なものだ。勿論、君もその中で………言い表せないくらいに大切な人」

「だからこそ頼んだ。何があっても皆で絶対に帰ってくるから」

 

ドキッとした。

私の肩を持って…彼の顔が近いからではない。

私の好きな人はこんなに真剣に私を見て任せてくれたから、その真剣な眼差しがこんなにかっこよかったんだ…って。

 

 

「うん」

 

 

 

「よし、準備だ!」

 

 

 

 

「……その前に行く方法見つけないとね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




暗い話が続いてます。
メンタルの方はまだ耐えられますでしょうか?
鬱展開やキッツイ話も出てきます…



少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。
感想などお待ちしてます!


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391話 残された者の行方 ② 鎮守府サイド

 

 

「やべえ…全然思いつかん」

 

勢いよく啖呵を切ったものの、向こうへの行き方がわかんない。

祈りも捧げてみたし、時雨が昔に用意したエロ本も燃やしてみた。

はてまた、黒魔術的なものもしたし、生贄も捧げた。

 

「半年分の給料無しでいいから!!」

 

………

 

「い、一年んんんんん!!」

 

「いや、無理に決まってんでしょ」

 

必死の祈りも虚しく…何も進まなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…指揮官はほーんとに暑苦しい人だねぇ」

 

「あら!?ピュリっち!?居たのぉ?!」

ピュリファイヤーが声をかけて来た。

ごめん、ぶっちゃけ居たことに…あれ?アズレン勢だよね!?

 

 

「居たさ!居たら悪いかよっ!」

「てかなんだい!駿河(奈々)は探すのにアタシのことは放置かよー!」

 

「ごめん…」

 

「や、やめろょお!そんなに落ち込むなよお!コッチが悪者みたいじゃんかよー!」

 

「せやな」

 

「テンション一気に戻すなよお!」

「ってもさぁ…アタシにはな〜んも出来ないけどねえ」

 

「いやいや、居てくれるだけで心強いよ」

 

 

「まあよお…アタシは行けたとしても行かないけどな」

 

 

「何でよー!」

金剛達もブーブー言う、俺も同感だ!

 

「だってさ、アタシはイレギュラーなんだぜ?」

「本体に見つかったら……どうなることか…さ」

 

 

「まあ…そーだよなあ…ピュリっちにはこれからも居て欲しいもんなあ…。まあ…留守番は頼んだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのさあ」

 

「ん?」

 

「何で疑わないの?」

ピュリっちが半分呆れた様な目で、声で俺に問いかけた。

 

「アタシはセイレーンだよ!?何でアンタとKAN-SENを何度もピンチに陥れた相手を…そんなに普通に接することができるの?!」

「今回だってそーじゃん!アタシが…裏で実は糸ひいてるかもしんないじゃん!?母校襲撃も…ビスッちの裏切りも…指揮官だけが取り残されたのも!!!」

 

「それはないだろ」

 

「だから何でさ!!」

 

「信じてるから」

 

「はぁぁ!?!?」

「なッ…何それッ…馬鹿じゃないの!?」

「信じてるから?!何?ビスっちの裏切りも?アタシがセイレーンと繋がってないってのも?信じてるっての!?」

 

 

「うん」

 

 

「何でさ!?」

 

「・…何でだろうな?分かんねえや」

「好きな相手だからかな?」

 

「それで痛い目見たらどーすんだよ!!」

 

「あー…それは悲しいな」

「まあ……うん、でもそれも含めて好きなんじゃないか?」

「それに…それも受け止められるのも、受け止めるのも指揮官だろ」

 

 

目の前のこの人間は馬鹿だ…

予測不可能だ。

私にとっても…イレギュラー過ぎる…。

でも……

 

 

 

 

「……っはぁ!!アタシの負け負け!!」

「ビスっちの事は分かんないけど…アタシは…うん、アンタの味方だよ。命賭けてもいい」

 

「ちぇっ!わかってるよ!みたいな顔しちゃってさあ!!ほーーんとアンタは馬鹿だよ……でも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンタが好かれる理由…よく分かるよ」

 

「ピュリっちもその1人?」

 

「あーーハイハイ、スキスキアイシテルー…」

くそっ!言ってて恥ずかしくなった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ……そんな指揮官サマだ、ご褒美じゃないけど…ヒントをあげるよ」

 

「映像…もう一回よーーく見てみな…」

「その上で…アイツらをよーく思い出してみな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アズールレーンの宿舎に来た。

もぬけの殻…と言うわけでなく、妙に生活感の残るその場所に余計に寂しさを感じる。

本当に誰も居ないんだな…と呟きながら歩く。

 

そして違和感を覚えた。

映像で見た広さの部屋は存在しなかったのだ。

各個人や姉妹の部屋もあんなに広くないし、暗くない。

 

 

窓もなければ…………

窓?

 

 

 

 

 

まさかと思いながら周りを見渡す。

今は共用スペースに居る。

そう、あの映像と同じくらいの広さの………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その部屋には、小広いスペースと何やら機械が設置されていた。

アズールレーンの四陣営の唯一の公共のスペースの地下にそれはあった。

 

 

 

「来ちゃいましたか」

ヴン…と言う音と共にTBちゃんが立体映像で映し出された。

 

「ここはアズールレーンの秘密基地か?」

 

「……何故お分かりに?」

 

「俺は皆の指揮官だぞ?皆の部屋にしては見たことのない場所だったからな。窓もないってことは…地下かなあとね」

 

「そうですか」

 

「ってのは半分嘘…。ピュリっちにヒントをもらってね…。よーーく映像を見てみなって」

 

「そうですか…」

 

 

「怒らないんだ?…何故君は止めるんだ?」

 

「そう言う情報も含めて…それがあなた様の指揮官としての力ですから。……止めるのはそれが皆様のご意志だからです」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「世界か違うと言うことには大きな意味があります」

 

「意味?」

 

「はい、仮に指揮官様が向こう(アズレン)の世界に行ったとして…あなたはその理から外れた人になるのです」

 

「理から外れた人?」

 

「はい、この世界での過去のデータを見させて頂きましたが…思い当たる節もあるかと思います」

「例えば誰かに命を貰ったり…未来から誰かを呼んだり、世界を変えたり…()()()()()()()()()()()()

 

「何が…言いたいんだ?」

 

「御蔵様は世界を超えた結果…あちらの世界に侵略という形で深海棲艦を発生させるスタートラインを作ってしまいました」

 

 

 

「……あなた様が世界を渡るということは…何かしらの厄災を持ち込む可能性もございます」

「それに、ビスマルク様達の裏切りやセイレーンの侵攻の中であなた様が生き残れる確率も非常に低いと思われます」

 

「仮に仲間が助けてくれる、誰かが助けてくれるとしても…それはこの世界の理の外側での事なので、全てに確証がある訳ではありません」

 

「ですかr「それでも行きたい」

 

その目は…真っ直ぐとコチラを向いていた、

「どんな困難が待ってても…俺は…俺達は行く」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうですか……」

「でしたら…最後の壁で御座います」

 

「ええ、確かに行く方法を預かっております」

「それは不確かなもので…確実にこちらへと戻られるとは限りません、あなた様をお待ちになられている麗様や幸様をどれほどの時間待たせるかも分かりません。どこぞの艦娘様みたいに一世紀以上かも知れません」

 

「それでも行きますか?」

 

「おう」

 

「即答ですね…。でしたら…フッド様から指定された言葉があります」

「ヒントはありません。一回切りのチャレンジです。それを見事に言い当てて見てください」

 

 

 

 

「……」

ヒラケゴマとかではないだろう

 

 

いや…わかってる

きっとこれだと分かってる

 

 

 

 

 

「俺は…神崎 救は皆の提督であり、司令官であり…指揮官だ」

 

 

「だから行く!例え世界を越えようと、何が待ってようと!それが俺だから……俺は皆と共にあるッ」

 

「………例え世界が違おうとも?」

 

「当たり前だ」

 

「自らにどんな危険が待ってようとも?」

 

「私達が守ってみせる」

 

「抗い難い…受け入れ難い運命が待っていようと?」

 

「それをいつも乗り越えて来た」

 

 

 

「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「準備はお済みですか?」

「開きます……」

 

 

「正解…なんだな?」

 

「……はい」

 

 

本当はそこには正解なんてなかった。

ただ、覚悟が知りたかった。

過酷な未来が待ってるのは想像できる、そして指揮官がその運命を乗り越える力を持っているのも…。

でもここから先はその理の向こう側。

 

だから…彼女達は来ないでと言った。

方法を隠した。

 

だけど私は………指揮官様と皆が笑って一緒に居る姿を忘れたくない。

それを思い出のままにしたくない。

 

だから生半可な覚悟を許さない。

 

 

でも…彼も、艦娘も……覚悟がある。

十二分に覚悟がある。

なら私はナビゲーターとしての責務を全うする。

 

 

ぐにゅん…とゲートが開く。

 

「さあ!どうぞ…」

 

「皆!覚悟はできてんな?」

 

「聞くまでもないよ!ダーリン!!」

金剛達が答える。

確かに聞くまでもなかったようだ。

 

 

「気を付けてね?待ってるから…ずっと待ってるから!ビスマルクさん達を…皆をお願いね」

麗が寂しそうな声で言う。

行ってきます…と行こうとする俺を引き止めて「キスもしてくれないの?」と言う。

「待て待て待て!ずるいぞ!僕も手伝うんだからね!?まも君!?忘れないでね!?」と、幸がキスをする。

 

「あぁあ!!幸ちゃん!!………むう……行ってらっしゃい」

麗が飛びついてキスをする。

 

「行ってくる」

私には上着を、幸には軍帽を預けて彼は行く。

 

 

こうして皆は旅立った。

世界を超えて…救君のために会いに来た娘達を助けるために世界を超えて…。

 

 

 

「寂しいなあ!!早く帰ってきてね…うっ…ぐす」

私達は少しだけ…それを抱いて泣いた。

でも…約束だから…。

守り通してみせるよ!!!

 

 

 

 

 

 

 

俺達は世界を超えた。



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392話 邂逅と戦闘

目の前がサアッと暗くなる。

変な感覚が身体中を駆け巡る。

 

 

 

 

まるで何かが塗り変わるような…そんな感覚…。

 

 

 

 

 

 

 

そんな事はどうでもよかった。

心にあるのは…皆の事。

 

ただそれだけだった。

何かの間違いであってほしい、勘違いだとか作戦だとか…皆で笑える明日を迎えたいだとか…そう言う気持ちでいっぱいだった。

 

 

 

 

 

 

目の前が明るくなる。

 

 

「……ん…んぅ…」

 

ボヤけた視界がハッキリとした。

 

 

 

 

 

ゲートの画面で見た…記憶はあまりないが、ここは母港か?

大きな…広い所に出たな…。

「皆居るか?」と声をかける。

 

「はい!皆いますよ!」

 

「……てーとくさん!ここはどこ?」

 

「恐らくは…こっちの世界の母港じゃないかな…」

「と言うのも…あまり見た事が無くて…なあ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……指揮官」

 

 

コツコツと歩みながらそう声をかけてきたのは桜ビスマルク。

 

 

救は思考を加速させた。

母港襲撃に加わったのはレッドアクシズとセイレーン…。

 

つまり、この場に桜エンプラ達が居ないと言う事は…母港は乗っ取られたと見ていいだろう。

 

 

 

 

 

 

「おう!来たぞ!ビスマルク!ひどいじゃないか…黙って行くなんて」

 

「ごめんなさい…数日会わないだけだったけど、元気そうでよかったわ…。会えなくて寂しかったわよ」

 

「俺も寂しかったさ……本当に…いきなり居なくなるなんてさ」

 

「……ごめんなさい」

 

 

 

「……で?皆は?」

 

()()()()()()()()()()()

やけに穏やかな顔の桜ビスマルク達。

 

「そうか………」

 

「で?ビスマルク…お前た––––––」

さらなる再会を喜ぶ前に主砲がコチラを向く。

 

「ー…何のつもりだ?皆」

「冗談でも笑えないぞ?」

 

 

 

 

「あなたの言おうとした事は…こうじゃない?」

 

 

 

 

「何で仲間を裏切ったか…?でしょ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「話が早いな…」

「なら答えてくれ!何でだ?」

「…何かの間違いだとか、作戦だと俺は信じている」

 

中には複雑そうな顔をした者も居る。

ほんの数日前までは笑い合っていた仲なのだから…。

 

 

「………本当にあなたは……馬鹿ね」

 

「だから来ただろう?」

 

「……まさか来るなんてね…そうよ…知ってるなら話が早いわ。それにしても…やっぱり誰かが余計なことをしたみたいね…」

 

「悪いけど…大人しか帰ってくれない?これは私達の世界の問題なの」

 

「そうはいかない。お前達の問題は俺の問題でもある」

 

「……そう言うと思ったわ」

 

 

 

「…もし……」

桜ビスマルクはポツリと言い始めた。

「もし、あなたが最初に来た世界がここなら…こんな事にはならなかったでしょうね」

 

「あなたがいない世界は…どれも偽物なの」

「モブは頑張っても主役にはなれない」

 

 

「レッドアクシズは…仲間の為に戦うわ!」

 

「その中に俺達は居ないのか?i」

 

「……ッ。ええ!この世界での仲間は私達レッドアクシズだけよ!!」

「だからこの母港を乗っ取ったのよ!!あなたが来るならここだろうと思ってね!!」

 

「エンプラ達は…?」

 

「あの敗残兵達ならそこら辺を彷徨ってるんじゃないかしら?その内私達かセイレーン艦隊にやられるのが関の山でしょうけどね」

 

 

 

「桜ビスマルク…俺はお前達を信じt「まだ生ぬるい事を言ってるの!?あなたが邪魔なのよ!!……いいわ……あなた達も桜フッドのように海の藻屑にしてあげるわ!!」

 

「なっ…お前!?まさかフッドを!?」

 

「ええそうよ!あの邪魔な奴は私が沈めた!私が殺したわ!」

 

「……桜ビスマルク……なあ、冗談にしては…良くないぞ?」

 

「………」

桜ビスマルクは小銃を発砲した。

その弾が救の頬を掠ってゆく。

 

「これでも?冗談かしら?」

 

もはや俺達の声も届かない。

彼女達は………

 

 

 

 

「……お前達はそれでいいんだな?」

 

桜赤城や桜三笠達がずいっと前に出てくる。

 

「……指揮官様…」

「いいえ!神崎 救!!」

「私達の未来の為あなたを…ここから排除します!」

 

 

 

 

 

間違いであって欲しかった。

そして……慣れ親しんだ指揮官の言葉よりも名前で呼ばれるのが悲しい日が来るとは思わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「行きなさいッ!!この世界の為…不穏分子は排除よ!!」

 

「迎撃ッ!!絶対に殺すな!!お前達も死ぬな!!」

 

 

「無茶言うよねぇ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヘーイ!センパーイ!そろそろ目を覚ました方が…って!きゃぁあ!?」

 

殴りかかってきた桜三笠をいなそうとした金剛は掴まれて壁へと投げつけられる。

「ぎゃん!!……いったいなあ!!」

 

金剛も負けじと桜三笠を掴んで投げ返した。

 

 

「ぐっ!!やるなあ!」

壁へと投げつけられた桜三笠はニヤリと笑った。

 

「それでこそだッ!!」

拳と拳と、脚と脚がぶつかり合う。

 

「「はぁぁぁぁああッ!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「桜赤城さん!何故ですか!!」

 

赤城は桜赤城と対峙していた。奥には加賀達が対峙しているようだ。

 

「…私達には私達の目的があります。仲良しごっこは終わりなんです」

 

「目的って…何ですか!!」

「そんなに悲しそうな目で…達成される目的って何ですか!」

 

 

「答える訳ないだろう!!」

戦いたくない…その気持ちが前へと出る。

理由があるなら力になりたい…。

しかし、その赤城の問いに桜加賀達がバッサリと切り捨てる。

 

「貴様らのような…本物にはわからんのだ!!」

 

「本物とか偽物って何よ!」

 

 

 

「第二次攻撃隊……発艦ッ!!」

 

「第二次迎撃隊…発艦!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で…何で!!」

 

「………」

 

「答えなさいッ!桜ビスマルクッ!!」

 

アークロイヤルが桜ビスマルクに詰め寄る。

「私達…皆…ずっとうまくやって来たじゃない!!」

 

「えぇ。何度も言うけど……向こうの世界だからよ!」

 

「でも!でもっ!!」

 

桜ビスマルクがアークロイヤルを躱して組み伏せる。

ダァン!と言う床の音と共に…桜ビスマルクが上へと乗る。

ポロポロとアークロイヤルが悔し涙を流しながら語りかける。

 

「何で…何で!!!あなたとも…私は…夢のようだったのに」

 

「そう…夢は夢のままでいて欲しかったわ」

 

「私は…ッ!あなたの方が戦友としても大s…

その言葉が言い終わる前に彼女は壁へと投げつけられた。

 

「………やめて頂戴」

 

桜ビスマルクは母港に集った皆を見渡す。

 

 

長門は桜長門と砲撃戦を繰り広げながら叫び、まだ間に合う!と伝える。

 

桜オイゲン達は武蔵達と無言で肉弾戦を繰り広げている。

 

 

「止めよう!!なあ!皆ッ!!何かあるんだろ!?なあ!桜ヒッパー!」

 

「……言う事はないわ」

 

 

「……ッ!!桜信濃ォ!!」

 

「……別世界のお姉様…。これは夢ではないわ」

 

 

 

 

「なあ……俺は信じてる。皆が…こんな…こんな」

 

「……ッ!!受け入れなさい!!神崎 救!!」

彼女は叫んだ。

 

「桜赤城…」

 

「あなたは…あなたは!!ええ!沢山の事を成して来たお方です!でも!それはあの世界だからなのです!!この世界では…それは通用しないのです!」

 

 

 

 

 

 

 

「そう…でもあなたは…神崎 救は予想外をきっと起こしてしまう」

桜ビスマルクが歩みをこちらに進める。

 

「誰も予想しない…彼女達が求めない進化を……」

 

 

 

 

 

 

「だから…あなたの存在はセイレーンにとって…引いては私達にとって脅威となるの……だから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから…()()()…ごめんなさい……!!」

 

 

 

 

桜ビスマルクが手刀でガラ空きの救を狙う。

 

 

 

「ダーリン!!逃げて!」

 

「桜ビスマルクさん!やめて!!」

 

 

「ごめんなさい…。これしかないの」

 

 

 

 

 

彼は彼女を見つめるのをやめなかった。

「……信じてる」

 

 

「………指揮官。愛してるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドシュ……

と嫌な音がした。

ピッ…と顔に温かい何か…血が飛んできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅く染まる手が見えるはずのない…桜赤城から見えた。

 

 

 

「ごめんなさい」

 

その言葉は俺に向けられたものか、桜ビスマルクに向けられたものかはわからないが……とにかく彼女はごめんなさいと口にした。

 

 

「なっ……桜赤城!?お前……お前ッ」



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393話 離別と…

ガフッ…と言う声とビチャッと言う音と…

聞きたくもないものが耳に入ってくる。

 

 

 

彼女は…俺を包むように守っていた。

桜ビスマルクに背を向けて…俺に苦悶と笑顔を向けて。

 

 

 

 

 

ズッ…と言う音と共に桜赤城からその手は抜かれた。

その場に倒れ込む桜赤城から…右腕が真っ赤に染まった桜ビスマルクの姿が見えた。

 

 

 

 

 

 

「桜赤城ッ!あなた…裏切るの?!」

桜ビスマルクは狼狽えるように言った。

俺達から離反したはずの桜赤城が…俺を庇ったのだ。

 

 

 

「ごめんなさい…桜ビスマルク…ダメね」

「あなたの…愛してるわ…って言葉で…一気に考えが変わっちゃったわ」

 

「この気持ちは…想いは………愛は…やっぱり本物」

「偽物にだって……本物の愛はあるの」

 

 

 

 

 

「指揮官様…申し訳ありません…あなたへの想いを振り払い切れませんでしたわ」

「桜赤城は…あなたに冷徹に徹する事ができませんでした。…またあなたに辛い思いをさせてしまいます」

「どうか…泣かないで」

「私は…私の心に従ったのですから」

 

 

ニコリと笑った彼女……

 

「……ふふっ………あいし……て……

ゴトリ…とその手は地に落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姉様ッ!!姉様ぁあ!!」

桜加賀達が叫ぶ。

重桜メンバーが彼女の名を叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「桜ビスマルクぅぅああああ!!!」

 

 

アークロイヤルが桜ビスマルク目掛けて主砲掃射を行った。

ズドォォン!!と言う音と共に吹っ飛ぶ彼女。

 

 

「ぐうっ……」

なんとか体勢を立て直して立とうとするが額付近からボタボタと血を流す彼女。

 

「おッ……貴様ァァァア!!」

アークロイヤルは彼女に掴みかかり、尚も激昂している。

そうだ、目の前で仲間を失ったから。

彼女は信じていた、誰よりも…例え血塗られた歴史でも、手を取り合って歩んで行けると。

だからこそ、彼女は桜ビスマルクの襟を掴んで叫び上げた。

「どうしてだ!!どうしてそんな事が…!!」

 

 

 

「ぐっ…!」

桜ヒッパー達が庇おうと、また反撃しようと構える…が、それを止める桜ビスマルク。

 

「答えろ!答えろッ!!貴様にとって…仲間とはそんなものか!!」

 

「……私は…ッ!!」

「私は…ッ!それでも前に進まなきゃならないの!!」

「皆に…皆の未来のために…ッ!桜赤城は私でなく、彼を選んだ!だその未来よッ!」

 

「あなただって……あなただってッ!!」

力無く彼女に訴えかけるアークロイヤル。

 

「そうだ…ッ」

「我らも守るべきものがある」

「進まねば…我らに未来は無いのだッ!!」

桜三笠達も立ち上がろうとする。

 

 

彼女達はまだ戦うつもりだ。

不安要素…未知の可能性(別の世界の来訪者)を…排斥するために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なあ、桜赤城」

 

 

 

 

 

 

その声に…掠れるほどに小さな声に、ピタリ…と戦闘行動が止んだ。

 

彼は動かない彼女を揺さぶる。

 

 

 

 

 

「なあ…嘘だろ?なあ…いつもみたいに指揮官様って呼んでくれよ…なあ…なあ!!!」

呼べども返ってこない返事、それでも呼び続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……もうやめよう。嫌だ、皆の傷付く姿を…見たくない」

彼は悲痛な叫びをあげた。

「わかった…俺が居なくなって皆が傷つかないなら…俺は去るから…もうやめてくれぇ…」

 

 

 

 

 

 

 

皆も視線を下げて黙っている。

しかし…

「…そう…あなたがこの世界から退去してくれるなら良いわ。それに…アズールレーンの奴らが戻って来ても面倒だし、退くわ」

「でもね?…神崎…。ここはあなたを愛した桜赤城に免じて…よ。変な真似はしないでね…」

 

坦々と言い放つ桜ビスマルク。

その言葉を皮切りに、レッドアクシズのメンバーは撤退の準備を始めた。

 

「…必ずこの世界から退去することね」

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

「……指揮官、姉様を連れて帰りたい」

同じく泣き腫らした桜加賀達が目の前に居た。

 

「…どこにだよ」

 

「重桜の桜の下へ…頼む…」

「……姉様もそこに還りたいはずだ」

 

頼む…と頭を下げる彼女。

こんな桜加賀を見た事があるだろうか。

 

 

 

 

 

何も言えなかった。

ただ、あぁ…わかった…と、首を縦に振るしかなかった。

桜赤城を丁重に抱えて彼女達は母港を後にした。

得るものはなく、ただただ失うものしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かねてからずっと来たかった母港。

画面の中ではカッコいいBGMや軽快なBGMで楽しんだ記憶のある母港、アズールレーンの世界。

なのに今は…アレほど来たかった世界はこんなにも重く冷たい世界だった。

確かに戦争だ。

仲間が死ぬのも仕方ない。

自分が戦いに身を置く以上、死ぬのは仕方ない。

でも…それでも、こんな…こんな思いをしなくてはならないなんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

あれからまた数日の時間が経った。

受け入れるには重すぎる全てが手の中に残る。

 

俺はそれでも桜ビスマルクを信じたい。

それでも…一瞬でも彼女に敵意を感じた事は事実だ。

信じると言いながら…その感情を持ってしまった。

 

 

 

「俺が無責任に来なかったら…こうはならなかったんじゃないか」

 

「俺にもっと力があれば」

 

「俺にもっと…」

 

「俺に………」

「俺はいない方がいいな」

 

 

「ダーリン……」

誰も何も言えずにいた。

 

そして、退去の準備に掛ろうかとした時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……指揮官は居るか!!」

 

母港のドアは叩かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前は…桜加賀に桜オイゲン…?!」

 

目の前に桜オイゲンと桜加賀が立っていた。

川内達が数名で俺を取り囲む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私達は戦いに来た訳では無い!本当だ!」

 

 

 

「指揮官の下につきたいの」

 

「……あんな事があったんですよ!?信じられると思いますか?!」

俺の後ろから来たアークロイヤルが目を見開いて言う。

 

「だから…だ!!姉様をやられたのに…奴等に加担する理由があるか!?」

桜加賀は歯を食いしばって言う、あの事とは…桜赤城が救を庇って沈んだ事だ。

 

「……だとしても…」

大淀達は難色を示す。

 

「いや、信じるよ」

俺の言葉に来訪者を除くその場の全員が驚愕した。

 

 

 

「…しかし、どうやってここまで辿り着けた?」

 

「……」

 

「というか何故手を後ろに回してるんだ?」

見れば、彼女達は手を後ろに回していた、全員が。

敵意がないなら手は前に置くべきだと思うが…

 

「それは私から説明するよ、指揮官」

彼女達の向こうからやってきたのは桜エンタープライズ達だった。

見れば彼女達もボロボロだ、恐らく桜ビスマルク達と戦闘状態から回復できていないのだろう。

 

「解いてあげてくれ」

そして、その言葉と共に手の位置の理由が分かった。

桜加賀達は後ろ手に縛られていたのだ。

 

「……すまない、指揮官…指揮官の前でこんな事はしたくなかったが……桜フッドのことがあったから……」

 

「いいえ…私達も信用されてるとは思ってない」

「ただ…どうあれ、姉様は死んだ訳だ。そう…指揮官…お前を守って…ッ」

 

「ならそれは…姉様の意思だと思う、だから私はお前を…桜赤城が命懸けで守った(お前)を守りたい」

 

 

 

「……わかった」

「…で?お前は?桜オイゲン」

 

「…つまらない」

 

「「「は?」」」

つまらない。

そう彼女は言った。

 

「………もちろん、桜ビスマルク達のことは仲間として大切で好きよ。それ以上に指揮官…あなたの事が好きよ」

「だから…私は仲間の為なら命懸けで戦えるわ。でも…鉄血の未来が見えないの」

 

「ジリジリと未来のために命を削るような戦いは好きよ」

「でも…あの子のしようとしてるのは……前進ではないの、ただただ今でない終わりを待つだけのその場足踏み。そんなの…つまらない」

 

 

 

「……アイツの目的は?」

 

「変わらないわ」

「セイレーンの技術よ」

 

「奴らの上級個体は私達が束になってやっと勝てるかって所なの」

「そんな奴等がもし…私達を攻めてきたら…私達はひとたまりもないわ?」

 

「だからこそあの子はその技術をさらに取り入れてレッドアクシズの未来を守ろうとしている」

「何を犠牲にしようとも」

 

「でも、あなたが来るとは思ってなかったのよ」

 

「あなたは予想外の塊よ…。だからセイレーンの邪魔になる。あなたが居れば、桜ビスマルクの立場も危うくなる」

「だから切り捨てる必要があったの」

 

「思い出も…好きと言う感情も…なにもかも、未来のために」

 

 

 

 

「…でだ、何故お前達は合流できたんだ?」

 

 

「あぁ…この数日の事を指揮官には話さなくてはな…」

 

 

「私達は母港を奪われ…屈辱的な敗北の後…海を彷徨って居たんだ」

 

 

 

 




もうすぐ400?
早いもので…


鬱展開中ですが、メンタル補充は………
少しでもお楽しみ頂ければ幸いです。

感想などありましたらぜひ、お願いします!


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394話 さらに別れる枝の先 


今回の登場人物も全てアズレンキャラです。


 

 

まず…私達は母港を追いやられた後は離れた島を拠点にしてたんだ。

 

もちろん、泊地修理にも限界があった。

明石達が居ない以上仕方のない事だが…現状、戦闘を重ねる度に消耗するしか無いのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…損傷状態は?」

 

「酷くて中破かな…」

ニュージャージーが答える。

 

「…フッドの事を考えると何とも言えないが…大破者が居ないだけマシ…と考えなくてはな…」

 

「まさか…ビスマルク達が裏切るとは…ね。いや、最初からそれが狙いだったのかな」

 

 

 

 

「しかし、何で奴は私を殺さなかったのか」

エンタープライズは考えた、確かにそうなのだ。

1番邪魔になる戦力は削ぐに限る。なら、当然エンタープライズは真っ先に倒すべきであるが…

 

「…エンプラちゃんを殺す事で躍起になった私らと戦えば彼女達も無事では済まないだろうからねえ…」

ニュージャージーは言う。

「そんな事になるより、私らの回復や戦力の増強手段である母港を封鎖して心を折る方が良いって考えたんだろうかな」

 

「まあ…()()()()()()()()()()しね」

 

 

「そうだな…指揮官が居ない事が幸い…なのか」

 

「あーあ!こっちでもハニー(指揮官)の事見たかったなあ…」

 

「ふふっ…まだ会えてないもんな、彼の事だ、どうにかこっちに来たら来たで彼は喜ぶと思う…………」

 

 

ここで私達は気付いたんだ。

 

 

彼女達の狙いが私達を追って何も知らずにやってくる指揮官(あなた)だって事を…。

 

 

 

 

 

「…マズいッ!!」

「指揮官がもし!こちらに来たら」

 

 

 

「母港にやってきてしまう!!」

 

 

「まさか…ビスマルクはそれを狙って母港を占領したの?」

 

「あり得ない話ではないッ」

 

「今の奴は指揮官を取り込むか殺すかするだろう」

 

 

 

 

「泊地修理は…やはり満足にはいかないが…」

「しかし、奴の狙いが絞られた今、悠長に過ごす暇はないッ!何としてでもビスマルク達から母港を奪還しなければ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……目前!12時の方向…ビスマルク艦隊です!」

 

「なっ…くそっ!追い討ちか!!」

 

「いえ…私達と会敵した時より…損傷があるような…」

 

「なに?」

「とりあえず…戦闘陣形の態勢ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら?ビスマルク…数日ぶりね。母港は棄てたの?」

 

「………あなた達に言う必要は無いわね」

 

「あら?加賀背負ってるのは…赤城……やられたの?」

 

「貴様らには関係ないッ」

 

「……その泣き腫らした感じを見ると……()()()()()を負ったようね」

 

「………」

レッドアクシズのメンバーは黙っている。

 

 

 

「あなた達が母港から出て行くなら…丁度いい。私達は母港に帰ろう」

 

 

ビスマルクの横を抜けて行こうとするエンタープライズ達をビスマルクは手を広げて止める。

 

「何の真似だ?ビスマルク」

ピリッとした空気が流れる。

ビスマルクは言う。

 

 

「…言ったはずよ……」

「次は絶対にどちらかが沈むって!!」

 

「お前も傷が深いだろう?やめておこう」

エンタープライズが落ち着け…と諭すが…

 

「戦争はそんなの待ってくれないッ!!」

 

 

 

雨が降り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

激しい殴り合いが両者で行われた……無言のまま。

 

ゴッ ガッ

と、鈍い音と雨音だけが鳴り響いた。

 

 

ドスッ…とエンタープライズの拳がビスマルクの腹に突き刺さる。

「ガハッ…」

 

ビスマルクは起き上がりざまにエンタープライズの顎を拳で打ち抜く。

「うっ…」

 

よろめいたエンタープライズの髪を掴んで海に顔面を叩きつける。

グイッと顔を持ち上げて何度も何度も殴った。

 

「………どう…した?ビスマルク……そんな悲しそうな顔で…全然効かないぞ…」

 

「……〜ッ!!」

「うるさいッ!!!」

 

ビスマルクは髪を掴む手を離して思い切り顔面を殴り抜いた。

 

「ぶっ…」

エンタープライズは仰け反りながらも、体勢はそのままに思い切りビスマルクの顔面に拳を浴びせた。

 

「ぐぅ!!!」

ボタボタとお互いに血を流す。

 

 

 

 

 

 

「うわぁぉあ!!」

ビスマルクは艤装を展開させてエンタープライズを狙……

 

 

 

 

 

うよりも早くエンタープライズは弓を引き、その照準をビスマルクに合わせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……トドメを刺しなさい」

ビスマルクはエンタープライズを見上げて言う。

雨が強まった。

反撃する気力も残ってない…なら、残された道は殺される事だけ。

彼女にはその資格がある。

フッドの仇である私を討つ資格が…

 

 

「…行け」

 

エンタープライズの口から出た言葉は意外なものだった。

私を逃がそうと言うのだ。

 

「何故!!何でだッ!?」

「情けか!?情けをかけるのか!?仲間を殺した私に…」

 

「…それでも……お前は仲間だったんだ」

「最初の戦闘で私を見逃してくれた借りを返す」

 

 

「だから次は無いッ」

「次は……どちらかが倒れる迄戦う」

 

 

エンタープライズは振り返り、ヨロヨロと歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

雨が鬱陶しい。

私だけが雨に打たれるように…

見上げた先は…雲の切間から太陽が覗いているのに…

エンタープライズはそちらへ行くのに…

 

 

 

 

 

 

 

「………行くわよ」

ビスマルクは重い体を引きずって海を行く。

雨は尚も降り続けた。

遥か彼方の空に光が差すだけ…、振り返れば晴れているのに…。

 

 

 

その後にな、赤城の弔いを終えた2人が私達がに追いついたんだ。

やはり私達も無事ではなかった。

特にエンタープライズの傷は酷かって…休み休み動いていたから追いつかれたんだ。

今思えばそれが敵部隊でなくてよかったよ。

 

 

 

 

 

 

「待ってくれ!」

 

「お前達は…加賀にプリンツ・オイゲン」

 

「…私達も同行させてもらえないか?」

 

「何を勝手な…!!」

「アンタ達のせいでフッドも………「エリザベス様…」

ベルファストに嗜められ黙るエリザベス。

 

「…私達に同行する理由は?」

 

「……母港に行くんだろう?指揮官に会いに…」

 

 

「やっぱり指揮官が来てるのね…」

「ならあなた達の傷は……」

 

「あぁ、指揮官の部隊との戦闘でなったものだ」

 

「その中で赤城さんは……」

 

 

「……赤城姉様はビスマルクから指揮官を庇ったんだ」

 

その言葉に一同は驚愕する。

 

「天城姉様も居た、もちろん私や後輩達も居た。大切な仲間だ」

「でも…赤城姉様はやはり自分を偽れなかった。最後の最後に1番大切な者を守ったんだ」

「その意志は私が継ぎたい」

 

 

「……だからって…アンタ達ねえ…」

 

「わかった」

渋るエリザベスを遮るようにエンタープライズが了承する。

もちろん皆は騒ついた。

 

「…しかし、母港に着く迄は手錠を掛けさせてもらう」

「もちろん、艤装の展開も禁止する。海域での戦闘は我々に任せて欲しい…その君の意思は指揮官に会うまで私達も守る」

「だから例え、私達がピンチでも艤装を展開しないと約束して欲しい。展開すると言うことはどんな状況下でも敵対行動とみなす」

 

これはあくまでもエンタープライズなりの配慮である。

口には出してないが、捕虜の立場とするしかないのだ。

仲間だが…いや、仲間だったからこそ…怒りを覚える者も居ない訳では無いから…。その矛先を彼女達に向かないようにありとあらゆる戦闘行動を封じるしか無いのだ。

 

「「…了解」」

2人は了承する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言う訳だ」

 

「……なるほど」

「にしても2人はよく抜けられたね」

 

「あぁ…そこまで私達は重要視されてないのだろう」

 

「そうね、私達2人くらい居なくたって…セイレーンの勝利は揺るがないんでしょうよ…」

 

 

 

「………まあ…なんだ、今はみんな傷を癒して休んでくれ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

加賀達の離反。

悩ましい事が続くな。

本当に彼女達は離反したのか?

赤城が理由なのは頷けるが…………オイゲンもまあ……うん。

 

「…ご主人様」

ベルファストが急ぎめに部屋に来た。

 

「ん?どうした?」

 

「……上層部の方から通信が…」

 

「…出た方が良いよね」

 

「はい、それと……」

ベルファストは小声で俺に伝えた。

「艦娘の方や戦姫の方の存在は伏せておきましょう…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『君が神崎君かね?』

ぶっきらぼうな声が画面越しに聞こえた。

 

「ええ、はい」

 

『母港の指揮官が……永く椅子を空けていたそうじゃないか』

 

「……」

 

『黙りかね…。まあいい、君はセイレーン作戦に非常に前向きと聞いた』

 

『率直に言う。セイレーンへの反攻作戦はやめておけ』

 

「何故です!?」

 

『…それ以上は君に言っても仕方のない事だ』

『君の成すべき事は…レッドアクシズの殲滅と攻め入って来たセイレーンの脅威から母港と人を守る事だ』

 

「…し、しか『これは命令である』

 

その言葉と共にブツリと通信は切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

「レッドアクシズの…殲滅?」

 

ごちゃごちゃになる救のもとに訪ねてくる者が居た。

「入るわね」

 

「…オイゲン…」

 

「……レッドアクシズの殲滅?私達が居ることがバレるとまずいかもね…て言うか笑えないわね」

 

「………引っ掛かることがたくさんあるけどな」

 

「……指揮官?」

 

「なんだ?」

オイゲンがずいっと寄ってくる。

 

 

「……指揮官。今、レッドアクシズ…いえ、セイレーンのところには人間の指揮官が居るわ…それもあなたと同じような立場の人間がね」

 

 

 



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395話 枝分かれの穂 レッドアクシズサイド

海域外某所…

レッドアクシズ泊地。

セイレーンの用意したレッドアクシズ用の小規模の基地である。

 

 

「……ふう」

ビスマルクは入渠で傷を癒していた。

 

重桜のメンバーは赤城を弔っているらしい。

 

 

 

 

「…………」

 

1人の時間は貴重だ。しかし、その時間も終われば現実が目の前にやってくる。

指揮官も含めて皆、私を仲間殺しと呼ぶだろう。

だが…仕方ない。

これは私が受け入れなくてはならない事なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ビスマルク」

声をかけて来たのは加賀、三笠だった。

 

「なに?」

 

「……すまないが私はレッドアクシズを抜けさせてもらう」

 

「それは重桜として?個人として?」

 

「…私個人としてだ」

 

「………そう」

 

加賀と三笠がレッドアクシズを抜ける…と言う。

ビスマルクは淡々と答えた。

 

 

「私も抜けるわ」

 

「………オイゲン」

 

何と声の主はプリンツ・オイゲンだった。

ある意味1番の腹心である彼女が抜けるのはビスマルクにとっては痛手だろう。

 

「…………あなたも」

 

 

 

 

 

『…………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果として、彼女達の離反をビスマルクは許した。

「好きにしなさい…。でも、次に会う時は敵ね…」と。

 

 

 

 

彼女は夜風にあたる。

何を思うかは彼女のみぞ知る。

 

 

 

 

 

『アハ!アハハハハハハ!!ヤッタね!ヤッタねえ!ビスマルクぅう!』

 

『もう後戻りなんかできないねえ!仲間殺しは…重罪だものお!!』

 

 

 

 

「お前は…ピュリっち…」

そこに居たのはピュリファイヤーだった。

…とは言え、ここはセイレーンの基地でもある、何の珍しいことでは無い。

 

『はぁぁ!?ピュリちぃぃ?!!?』

『なぁに気安く言っちゃってくれてンの?アンタそんなキャラだっけ?ムカつくなぁ…』

 

「……そう言う気分だったのよ」

 

 

 

 

『まあ………うんまあいいか!君の頑張りに免じてボクは退こう。仲間も失って傷心気味そうだし?アズールレーンにも打撃を与えられた訳だしぃ?』

 

 

いちいち言い方が癪に障るな…と彼女は思った。

 

 

 

「…そうだねえ……」

奥から誰かがやって来たらしい。

 

とある男だった。

仮面をつけたその男は2人に向かって話しかけて来た。

 

「やあ…KAN-SENの…ビスマルクだっけ?私は……まあ名乗らなくて良いか…」

「縁があってね、君達の上司になるのかな?セイレーンの指揮官としてこの世界に着任したんだ」

 

「……指揮官…だと?」

 

 

 

 

『おや?不思議かい?』

ピュリファイヤーはニタリと笑う。

『まあ…利害の一致さあ…それに、指揮官の存在がどんなものかはよく知っている。向こうの世界でもねえ…』

 

 

「酷い言い草だな。誘ったのはお前らだろ?」

 

『そうだねえ…』

 

「まあいい……ビスマルクだったか?貴様らは轟沈者も脱走者も出したそうじゃないか」

「なんとも嘆かわしい…本当に役に立つのかね」

 

「………」

ビスマルクは黙り、ピュリファイヤーはニヤニヤと笑っている。

 

「まあいい。どちらにせよ…あの母港の壊滅を優先しろ。協力者から聞いた。あの忌々しい小僧があの母港の指揮官とか言うじゃないか」

 

 

「…しかし、セイレーンの猛攻で母港が壊滅となると…セイレーン作戦への刺激になるのではないでしょうか」

 

 

 

 

 

 

「そこら辺もうまくやれる。安心しろ」

 

「……わかったわ」

 

「あぁ…それが賢い選択さ…」

「さあ…本体指揮に戻るとするか…」

 

ペコリと頭を下げてピュリファイヤーと指揮官とやらを見送る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……だからあの入渠施設なのね………」

ビスマルクはポツリと呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自室に戻ろうとする彼女にとあるKAN-SENが話しかけてくる。

 

 

 

「……そろそろ大丈夫なはずよビスマルク…どうする?」

 

 

「……そうね、そろそろ行ってもらえる?」

 

「わかったわ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「頼んだわよ…フリードリヒ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって母港。

 

 

 

「なあ…」

 

 

 

 

 

 

 

「俺はそれでも桜ビスマルクを信じたい」

 

彼は集まったメンバーに向かって話をしていた。

正直に…そして今後を。

 

 

 

 

 

「あ、アンタ正気!?」

桜エリザベスが食ってかかる。

「アンタの事を誰よりも…愛してた桜赤城を殺して…桜フッドを殺して…それでも平然としてる奴よ!?」

「到底許される事じゃないわよ!?」

 

 

 

「…確かにあいつのしたことは許されない事だ…事実だ」

 

 

「でも…一緒に過ごした思い出も本物で事実だ」

 

「………その判断が仲間を更に死に追いやるかも知れないのよ」

 

「……」

 

「もし、その考えが変わらないってなら、このアズールレーンを抜けるって言う娘だって居るかも知れないわよ!それに…そいつらだって裏切らないとは言い切れないわ!?」

 

 

「………」

 

 

「………何よ、答えられないの?」

「なら信じるとか言ってんじゃないわよッ!そんな奴に指揮を預けられるもんですか!」

 

 

 

ツカツカと執務室を出て行ってしまう桜エリザベス。

「桜フッド様の事で思い詰めてるのもあるのです。悪気はありません…申し訳ありません」と、頭を下げるロイヤルメイド達。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…桜エリザベスの言う事にも一理ある…。次にレッドアクシズと戦う時は…セイレーンとレッドアクシズを指揮官が指揮する訳だ」

桜加賀や桜三笠はそう言う。

 

 

「…戦う事にはなるのか」

 

「奴等からやって来たら応戦せねばなるまい」

 

「………嫌だろう」

 

 

「……ああ嫌だ……桜ビスマルクが言ったように…俺がこの世界から出て皆が傷つかないなら…俺は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…指揮官」

 

 

 

 

「ヘーイ!ダーリン!何を悩んでるデース!?」

 

 

「ダーリンらしくないデース」

「いつものダーリンなら…それでも俺は信じたいって言うんでしょう!

だから俺に力を貸してくれって」

 

「真実を知りたく無いの?」

金剛がストレートに言う。

 

「帰ったら逃げになるよ、ダーリン。やらなくちゃいけない時って今だと思うよ」

 

「…桜エリザベスはダーリンが迷ってそうにするから怒るんですよ。堂々と…してなくちゃ!相手はジョーオーサマなんだからね」

 

 

 

 

「………」

 

 

「もう一度皆を集めてくれないか」

彼は言った。



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396話 その剣は折れない

 

 

 

 

『…へぇ……あの指揮官クンが来たんだ…』

『面白くて面白くないね』

 

 

 

その悪意は歩を進める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「敵襲ッ!!敵襲ぅ!」

 

つんざくような音と共に悪夢のような奴がやってきた。

 

『あれれれれー?』

 

『なぁーんで指揮官…神崎クンが居るのかなぁ?』

ニタニタと笑いながら彼女は言う。

 

『さすがのビスッちも殺さなかったかあ…』

 

 

 

 

 

「ピュリっち!!」

 

 

『だぁかぁら〜馴れ馴れしいゾ?』

『何で皆そう呼ぶかなあ…』

 

ピュリファイヤーはヤレヤレと言う。皆は癖でピュリっちと呼ぶが彼女は向こうの世界にイレギュラーの自分がいる事には感付いてないらしい。

 

 

 

 

『まぁいいや。取り敢えず全員死のうか』

『KAN-SEN達は死にかけだけど…艦娘達が居るからね、君はね…僕達の邪魔になりそうだからね』

 

 

ピュリファイヤーはセイレーン艦隊を展開させる

 

 

 

 

 

 

「…ってええぇえええいッ!!」

 

『うおっ!?』

飛びかかり、鉄拳を見舞おうとする金剛。

間一髪のところで避けるピュリファイヤー。

 

 

 

 

「チッ!!シィット!!はずしたッ」

 

『いきなり殴りかかるのはどうなんだい!?』

避ける体勢から金剛に蹴りを食らわせる!金剛は両腕でガードする。

 

「…ッ!?」

 

『おや?』

『弱くなったかい?』

 

 

「そこだッ!!」

飛び込んできた長門蹴りですらヒラリと躱される。

 

 

 

 

 

 

 

『でも…ほーんとに予想外ばかりだね!まさかお前達まで居るなんてさあ!ほーんとに……』

 

 

『でもまだ……うん。今の内に芽を刈っておこうか』

 

 

ピュリファイヤーの号令で一斉掃射が行われる。

以前なら何のことはない筈……だが、なぜかまともにダメージを受けてしまう。

 

 

「何で……本調子じゃ…」

 

『おや?おやおやおやおや?弱くなったねぇ〜』

 

 

 

 

 

 

「…ッこの!!」

桜ウォースパイトが攻撃に出るが…

 

『おそい』

ドゴッ!!

 

ヒラリと避けられて顔面に拳を叩き込まれる。

 

「ぐっ……」

 

『そらそらそらァ!』

尚もピュリファイヤーとセイレーン艦隊の攻撃は続く、何とか立ち上がろうとする艦娘もKAN-SENもその猛攻に立ち上がる事ができない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穿たれる母港、倒れる仲間を背に彼女の膝は折れなかった。

 

 

 

 

 

「…負けるものか…」

桜ウォースパイトは立ち上がる。

 

「私は剣だ。陛下と……指揮官を守る剣だッ」

 

『だから何だよ鈍が…。折れちまえよ』

 

ゴッ…と鈍い音がする、ピュリファイヤーが桜ウォースパイトを殴り続けている。

桜ウォースパイトの後ろには救が居る。

彼女は一歩も引かずその全てを受けていた。

 

 

 

「折れるもんか」

彼女には折れない…いや、折られる訳にはいかない理由がある。

友の戦死、離反…。

こんな世界の為にやって来てくれた皆を…

 

 

彼女は夢見ていた。

今は離反した彼女達とまた笑い合える日を…

共に歩んだ道は再度枝分かれしたけれども、またきっと手を取り合えると!!

 

 

 

 

 

「どんな中でも私達を信用してくれる指揮官を…私は守るんだ」

 

 

『アーーナカヨシゴッコうぜー!もう死んどけよぉ♡』

ピュリファイヤーは飛び退いて助走をつける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜ウォースパイトは振り返って言った。

「指揮官…私はあなたを信じる、この先何があっても待っていても!」

「だから私に…あなたの剣に…あなたの命を預けて!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私に力を貸してッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ!!」

彼は彼女の肩に手を置いて応えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ギギッ…と音がした気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光を放ち振り返る桜ウォースパイト。

眩い閃光がピュリファイヤーの目に入った、いや、皆の目には見えた筈だ。

 

 

『え…』

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付いたらそうなっていた。

 

 

 

 

 

ピュリファイヤーは真っ二つに斬られていた。

いや、ピュリファイヤーだけでない、後ろの艦隊もぶった斬られていた!

 

 

『はぁぁぁ!!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウォースパイト 改

 

 

大きな剣を地面に刺し、彼女は立っていた。

その剣は指揮官を守り、仇なす敵を斬り伏せる。

 

「…桜ウォースパイト…ナイス!」

 

「ふふっ…通じ合ったみたいね」

 

 

 

『くそっ!なんだよ!覚醒しやがって!クソッ!次は殺してやるッ殺して–––––

 

 

 

「黙りなさい」

その剣はそれ以上の会話を許さなかった。

ピュリファイヤーの体は更に分割され、スペアとしての機能を停止した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何とか乗り切れた…な」

 

「桜ウォースパイト!よくやったわ!」

 

「ありがとうございます、陛下…」

 

「……」

 

全く歯が立たなかった悔しさ、不甲斐なさを感じた。

勝てた筈の戦いに勝てなかった。

 

 

だがそれが何故か分からない。

 

奇跡にも近い勝利だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……へぇ…あなたが指揮官…ね?」

 

 

それは気配も音もなくやって来た。

 

長い髪に2本のツノ…

この人数に対しても落ち着きを通り越して余裕の表情で立って居られるその佇まい。

誰のよりも大きな艤装…デカいなんてもんじゃない…

 

肌で感じるその強さ、圧倒的なプレッシャー。

 

 

誰もが声を出せなかった。

まるで首に鎌を突き付けられてるような冷たい感覚。

カチカチと震える者も居た。

何とか立ち上がろうとする皆。

 

 

 

「お前は…?会った事ない奴だな」

口を開いたのは救だった。

 

彼女は意外そうな顔をした。

しかしすぐに冷ややかな表情に戻る。

「ええそうね」

「初めまして…私はフリードリヒ・デア・クローセ…鉄血の指揮を執らせて貰ってるわ」

 

「何…?桜ビスマルクがトップの筈だろう」

 

「…そのトップが居ない間のね………」

 

「……なら、何の用だ?言っておくが…」

 

 

 

 

「言っておくが…?」

 

 

「桜オイゲンも桜加賀達も渡さないぞ」

 

 

 

「………へぇ……折れかけの仲間も多い中で…戦えないヒトが…私の強さを前にして…そんな余裕があるの?」

 

 

 

 

 

その言葉に救は一歩前へ出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ッ…フフ…アハハハハハハ」

フリードリヒは突然笑い出した。

 

「聞いてた通りのおバカさんね!お姉さんお腹痛いわ」

 

 

ずいっと桜ウォースパイトが前へと出る。

「あら?………そうね、この中ならあなたが1番私の足元には届きそう…ね」

 

 

 

 

「へぇ…あの娘だけなのね?まあいいわ…とりあえず…でも、ダメね。えぇ、全然ダメ」

 

「全く足りないわ」

 

 

 

 

 

 

 

「暫く再起不能になってもらいましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……皆…無事か?」

 

「………何とかね…」

「……あんなので本当に手を取り合えるのかしら」

 

「………心が折れそうだ」

 

「奇遇ね、私もよ…庶民…」

 

 

 

 

 

 

 

奇跡的に轟沈は無かった。

皆大破で……母港はほぼ壊滅だけど…

 

こっちの妖精さん…………饅頭ひよこさんは無事なようで、オイ…マジかよ的な表情で瓦礫の山を見つめていた。

 

 

 

「……さま……」

その声はスマホ的なものから聞こえて来た。

「…きか……さま」

 

 

「指揮官様」

 

 

 

「TBちゃん!?」

 



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397話 リスタート

 

意識を取り戻しつつある頭に響いた声はTBちゃんのものだった。

「TBちゃん」

 

「…ようやく繋がりました、サポートできず申し訳ありません」

 

スマホから聞こえて来たTBちゃんの声。

そうだ、確か…ゲートをくぐる前に会話したのが最後だったか?

 

「…皆は」

 

何とか振り返るとそこには膝をついている者も、倒れ込んでいる者も居た。

桜ウォースパイトは剣を地面に立てて俺の前で片膝をついて気絶していた。

 

「皆さんのバイタルが低下していますね」

 

 

 

 

「そして…見事に母港は壊滅ですね…」

 

「せやな…」

 

「…まずは、饅頭さん達に任せて皆様は傷を癒す事を推奨します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

饅頭さんにお願いをして仮の修復用施設を作る。

艦これ風に温泉にしてもらう。

アズレン風に宿舎で飯を食うのでもいいんだけど…風呂にしといた。

 

高速修復材をセットして…

ひと段落ついた時のことだった。

 

 

 

「ん…ここが君の管轄の母港かね……ぼろぼろみたいだが?」

 

「ふむ…修復用の入渠施設か…まあそれが限界か…」

 

見知らぬ男が立っていた。

 

「えと……」

 

「神崎君…大変だったね」

確かに男は俺の名前を呼んだ。

 

「あ、ありがとうございます。何で私の名前をご存知で?」

そう、俺は自己紹介をしていないのに…だ。

 

「フフフ…私のネットワークは広いんだよ」

にこやかにその男は言った。

立とうとする俺に「構わない」と言い、「困った事があったら言いなさい」と言ってくれた。

 

「(なぁTBちゃん、この人は誰だ?)」

救はTBに小声で話しかけるが、返答はない。

 

「(……TBちゃん?)」

 

「む?どうしたのかな?」

 

「い、いえ…」

 

 

まあ…恐らくアズールレーンの上層部の人間だろう?

瓦礫の山と化した母港を見て溜息を吐いていた。

セイレーンの猛攻とレッドアクシズメンバーの裏切りを話してもあまり動じてない気がしたのと、「所詮はそんなものさ」と言う言葉には引っかかったが…。

 

 

 

 

 

「……疲れてるのだろう、ゆっくり休みなさい」

 

「ありがとうございます」

 

 

 

 

 

「だが…セイレーンへの反攻作戦や深追いはやめておきたまえ」

「これは命令に近いものと思いなさい」

「…作戦の概要は追ってウチのインターフェースを通して君に伝える」

 

「え?」

 

「ん?どうしたのかね?」

 

「い、いえ…」

「それはセイレーン作戦用のインターフェースですか?」

 

「あぁ、そうだ。まだ実戦投入はしていないがね…。最終調整に入ってるところだ」

 

「そうですか」

「…で、あなたの名前は?申し訳ありません、存じ上げないもので」

 

 

 

「ふむ……私は君の上司になるのかな?大和田と言うものだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大和田を見送った後に考え込んだ。

TBちゃんはセイレーン作戦用にアズールレーンの上層部から送られてきた筈のインターフェースのはずだ。

通信も意図的に遮断してたとしたら辻褄があってしまう。

 

「……指揮官様」

 

「君は何者なんだ?TBちゃん」

 

「……」

「…アズールレーンの上層部が送り込んだセイレーン作戦用のインターフェースです」

 

「でもあの人はまだ…」

 

「はい、現時点では出来上がっていません」

 

「……君も何か目的があって動いてるのか?」

「……遠くにいっちゃうのか?」

 

裏切るのか?とは言えなかった。

だから遠くに行くのか?としか聞けなかった。

 

TBちゃんは一瞬ハッとした顔をして

「…私の事を信用してください。お願いします」とだけ言って…画面上の彼女はペコリと頭を下げた。

 

 

 

 

 

「私達にも…話があるんでしょ?」

桜エリザベス達が入渠を終えて戻ってきた。

 

更地になった母港を見渡すと、艦これの世界に来た時を思い出した。

と言うより、コレがデフォなの?と思う。

 

 

「俺は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう一度桜ビスマルク達と手を繋ぎたいと思う」

 

 

集まってくれた皆に正直に考えをぶつけてみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ッ!あ、アンタねぇ…あんな事があったばかりなのに!?」

声を張り上げる桜エリザベスを桜ベルファストが止めに入る。

「ご主人様のお話を最後まで聞きましょう…」

 

「桜フッドや桜赤城の事を忘れろと言う訳じゃ無い。ロハにしろって事じゃあない」

 

 

「これは俺の責任なんだ」

 

「俺がお前達だけで行動させてしまったから」

 

「はぁ!?何言ってんの!?馬鹿なの!?私達がアンタを連れてこなかったのよ」

 

 

 

 

「だからだッ」

 

 

 

「俺がもっと頼れる指揮官なら」

「お前達だけで抱え込んでしまわなくていいような指揮官なら」

「もっと他の道があったんじゃ無いかって思う」

 

「そんなタラレバ…傲慢じゃないかしら?」

 

「だとしてもだ!!」

 

 

 

 

「俺はお前達の指揮官だ」

「今までも…これからもずっと…。だから…俺に指揮を執らせてくれるというのなら……俺はこの考えを曲げたく無い」

 

「………」

 

 

「俺は、あの今までの思い出が偽物だった…だなんて思いたくない!!もう一度!もう一度!!「わかったわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンタがそこまでの覚悟を持ってるのね?」

 

「あぁ…この世界で…この命をお前達に預ける」

 

「もしまた裏切られたら?」

 

「…その時は俺の命を差し出してくれ」

 

「…馬鹿なの?」

 

「え?」

 

「もう二度とそんな事にはさせないわよ…」

「いい!?皆!クイーン・エリザベスの名において宣言するわ」

 

「私達は指揮官とこの問題を解決するわ」

「そして…あのアホ達にキツイ一発を見舞って目を覚まさせてやりましょう」

 

 

「だから堂々と指揮を執りなさい。どんなことも私達が全力でやるわ」

 

 

彼女達はニヤリと笑って答えてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

んでんで

目下はあのクソ強いお姉さん達への対抗策を考える事が重要だ。

 

 

「フリードリヒってのは何者だよ、出鱈目に強かったけど」

 

「確かに…」

「全く歯が立たなかったと言うより…別格な気がしたわ」

 

「ピュリファイヤーにも苦戦したものね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆様は気づいてないのですか?」

TBちゃんは意外そうに言った。

 

「なにが?」

 

「何が気づいてない?」

 

 

 

 

「指揮官が指揮官として機能してないのを…」

 

「えぇ!?」

 

 

 

彼女曰く、俺はこの世界で指揮官としても提督としても世界に認められていないらしい。故にKAN-SENも艦娘もフルパワーを発揮できない…とか?

「あちらの世界でも同じような事はありませんでしたか?」

と、言われれば納得がいく。確かに艦これの世界でも俺が居ないと同様に力が発揮できないと言ってたな…。

 

「ま、待って?なら私は?私は何故?」

桜ウォースパイトが狼狽ように言う。

そうだ、なら何故彼女は改状態になれたのか?

 

 

 

「…それ以上の繋がりが2人の間に生じたからだと思います」

 

「心当たりはありませんか?」

 

「私は…」

 

「私は心から誓ったの、あなたに忠も愛も全てを尽くすこと…何があっても信じて守り抜くことを」

 

「それですね」

 

 

 

「宣言はしたんだけどなあ…さっき」

 

「まだ、何かが足りないのかも知れませんね」

 

「うーーん…」

「まあ…アレだな。大和田さんも言ってたけど今は休もうか…」

「TBちゃんは大和田さんの情報を集めといてくれる?」

 

「かしこまりました、ちなみに何故ですか?」

 

「何か……うーん、なんとも言えないけど、なんか引っかかるんだよね」

 

「なるほど、かしこまりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ…まずは休むか…」

「………プレハブも慣れたもんだなあ…」

 

ひよこがせっせとやってるのは何だか新鮮だけど…妖精さんを酷使してる身からすると…慣れって怖いなと思う。

こうして、母港での活動が、再スタートを切ろうとしていた…。

 



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398話 暗い航路を征く

 

あれから数日、母港も何とか復旧が終わった。

その数日は平和に過ごす事ができている。

とは言え、物資や店の商品と言ったものはまだ足りない状況であり、皆のケアも少しずつ…と言ったところだ。

 

 

アズールレーンの上層部らしき人が何回かやって来たが、そもそも建物が無いので帰って行った。

だが、金剛達曰く…何だか嫌な感じがする人達との事だった。

無論、金剛達の存在はひた隠しにしているが…

 

『所属不明のKAN-SENが確認されたと連絡があったが?』

と、聞かれたのにはドキッとした。

 

「彼等には注意した方がいいです」

と、TBちゃんが言うのは何となく分かった気はした。

 

 

「…そうだな」

 

ハッキリと言うと、TBちゃんへの疑惑は晴れてはいない。

彼女は信用してくれと言うが…その真意は分からずだからだ。

彼女は意図的に連絡を遮断していた……としたら、誰かにその存在を知られるとマズいから…となる。

 

①セイレーンやレッドアクシズメンバー

 セイレーン作戦へのサポートは必ずどこかで彼女達の障害となるから…とすると納得は行くか…

 

②アズールレーン上層部の大和田さん

 セイレーン作戦用のインターフェースがまだ完成していないとすると…彼女の存在はかなり不明瞭なものになる。

そうなると、彼等には存在を知られたくないというのは納得が行く。

 

だが…ここ数日の上層部の動きと大和田さんの登場にも疑問が残る。

 

頑なにセイレーン作戦への介入を行う事と、この世界に来たばかりの俺の存在を知っている事だ。

この世界で俺に会ったのはレッドアクシズとピュリファイヤーだけの筈…。

なら、まさか上層部とセイレーンは繋がりが…?

 

だと仮定すれば、彼等に注意してくださいと言うTBちゃんの言葉にも納得が行く……TBちゃんを信用すると決めたからその方向で動くつもりでは居るが…。

 

 

 

 

 

 

 

と言う息も詰まる状況を打破すべく、俺は街へと繰り出した。

考えなければならない事は多いが…頭がパンクしてしまうとアレなので…ね?たまにはね?許して?

実際には物資等々の入荷も考えなくてはならないし…ね?

 

 

 

 

 

 

小洒落たお店を見つけて入ってみた。

テラス席に案内されたが…うん、街並みを観察しながら軽食がとれるのはポイントが高い。

 

メニューは悩んだが…コーラとスコーンと言う組み合わせになった。

コーラはよくビスマルク達が出してくれたし、スコーンはロイヤルメンバーが出してくれた。

指揮官は紅茶とコーラどっちが好きか?で言い合いをしていたのを思い出した。

実際、甲乙は付け難いが……

 

 

「ビスマルク…」

ふと、彼女の名前を口にしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「あ……」

声のする方を見ると彼女が居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて問題です。ばったりと意中の者に遭ってしまった時は?

 

 

 

 

 

「………」

 

 

 

気まずそうに逃げ出そうとする彼女の腕を掴んだ。

流石に街中でドンパチ始める奴ではないだろ?

 

「………わかった」

 

「何でここに?」

 

「……美味しいって聞いたから…」

意外と少女な答えが帰ってきた。

 

 

 

 

 

「母港の建て直しは順調かしら?」

 

「お陰様でな」

 

「余計なものが無くなって良かったんじゃない?」

 

「何が無くなったかもさっぱりさ…」

 

 

 

 

 

 

「なあ…何でだ?」

 

「…それは何故裏切ったのかってこと?」

 

「色々あるけど…そうだ」

 

「………私は……」

彼女は少し悲しげな顔で言った気がした。

 

「私は私の仲間の未来を良くしたい…その為に戦うの」

 

 

 

「だから私の死がより良い未来を掴む礎になるのなら…あなたに討たれてもなんの悔いもないわ」

 

「そんなの…「間違いじゃないわ」

 

「それが…鉄血のビスマルクとしての意志よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の艦隊としてのビスマルクとしては…?」

 

「………」

彼女はニコリとだけ笑って…

 

 

 

 

 

 

 

「……数日後には全力であなた達を叩くわ」

「攻撃してこなかったおかげで準備は整ったわ。深追いするなって命令でも来てたの?」

 

「ピュリファイヤーも全力でウォースパイトを潰すつもりらしいわ」

「もちろん、フリードリヒや私も出るしね…。圧倒的な技術と火力とピュリファイヤーのスペアで…飲み込むわ」

 

「………もう戻れないのか?俺は信じてるんだが………」

 

 

「言ったでしょう?私の在り方は変わってないって…」

 

 

 

 

側から見れば他愛もない会話をする男女ペアにしか映らないだろう。

注文したものを分け合う姿は微笑ましくも平和に感じるのだろうが、当人達は悲しげな目をしているのだから。

 

「……それでも俺は…お前達ともう一度手を取りたい」

「いや」

 

「この手を離したくない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母港に帰ってから作戦を立てる。

ビスマルクは『お人好しね…。一つだけ…スコーンのお礼に』

『上層部には気をつけなさい』と…そして、俺に何かの入った小袋を渡して帰って行った。

小袋の中にあったのはキューブだった。

どう言う意味か…考えるのも重要だが、まずは侵攻への対策を立てなければ。

 

 

 

「……という事で大規模な侵攻が予測される」

「向こうさんは全力でこちらを叩きに来るだろう」

 

「厄介なのはフリードリヒやピュリファイヤーだ」

「フリードリヒは言わずもがな超火力、ピュリファイヤーは…スペアだろう、本体を叩けたら手痛いダメージを与えられるのだがそれは叶わないだろう」

 

「とかく、死なない事優先だ」

 

 

 

「けーっきょく…戦うんじゃない」

 

 

 

「そうだな…。でも、何が打開策があるはずだ」

「そして…上層部には応援は要請しない」

 

 

 

 

この言葉に驚いた者と、ふんふん…と落ち着いて聞く者が居た。

「な、何言ってんの!?少しでも応援がいるところでしょ!?」

 

「いや…正直、上層部は信用ならない」

「故に様子見…と言ったところで、今回は要請しない」

 

「…私達だけでやるのね?」

 

「……指揮官…」

 

「桜加賀達にも勿論作戦には参加してもらう」

「でも……上層部達の事も考えて金剛達は暫くは待機だ」

 

「何で!?」

 

「少し疑問が残ってるんだ」

「それが解決するまで……」

 

「……余裕よ!ロイヤルのユニオンの力を見せつけてやるわ」

「まだ少し微妙だけど…万全なら良い戦いはできるわ!」

 

 

 

 

 

 

上層部が繋がってた場合、欲しがるのは艦娘のデータと力だろう。

無理矢理にでも手に入れようとするか、俺との交渉材料にされかねない。

戦力的には居てくれる方が何倍も楽だが…様子見だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーむ…運が良いのか………情報が入って来ないな」

「…奴らは失敗したか…」

 

 

 

 

 

 

 

「さあ…ビスマルク、行ってください。あの母港を潰しなさい」

 

「…はい」

「ピュリファイヤーも行くのでしょう?」

 

『調整終わったしね?あの神崎を潰してくるよ……大和田指揮官』

 

 

「クククク…あぁ…やって来い」

 

 

 

 

 

 

 

 

「………レッドアクシズ…出るわよ」

「私達の敵を…全力で潰すわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

「…伝令ッ!!」

「近海域に反応有りッ!」

 

 

「セイレーン艦隊及び…レッドアクシズのものと思われます」

 

 

 

 

「第一次戦闘配備!!」

 

 

 

 

 

 

 

アズールレーン…母港とセイレーン組の戦いが始まってしまう。



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399話 我等が道を征く

 

 

 

『うん?艦娘は出て来てないんだね…まァいいか!ぶっ潰して引き摺り出してやるよぉお!!』

 

 

 

「させるか!!」

 

ピュリファイヤーと桜ウォースパイトがぶつかり合う。

 

『お前だよお前ぇぇ!痛かったなァ〜痛かったぞー?』

『同じように細切れにしてやるからなぁ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ」

 

艦娘達は出られないのだ。

先だって、上層部から連絡が入った。

『所属不明の艦を所有しているとの情報が入った。故に近海域に監視を設ける』

 

『存在が確認、情報が正しいと判断された場合…貴君並びにKAN-SENに対する何らかの処罰が考えられる』

 

 

所謂脅しだ。

やっぱり繋がっているじゃないか…。

 

『ごめんねぇ…ハニー…。今迄はさ…私達で居ない指揮官を居るようにカバーしてたんだけど……少し前から異様にハニーの姿を見たがって…』と、ニュージャージーは言っていた。

 

つまり、俺の存在に気が付いたと見ていい。

なら…俺が前に艦娘達と出るのは悪手だろう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こっちも行こうかしら……」

フリードリヒが前に出る……ところに飛び込んで来たのは桜ニュージャージーだった!

 

 

「行くわよぉ!!」

不意打ちに近い形で左頬を打ち抜かれたフリードリヒ。

 

「……いいわね…良い調べを奏でましょう?」

 

 

 

「援護するッ!!」

 

桜三笠や桜加賀がフリードリヒを狙う。

 

 

 

 

 

 

「………邪魔するのね、桜オイゲン」

 

「ええ、寝坊助のビスマルク達には起きてもらわないとね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アハハハハハハ!壊れろォ!壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろォ!』

 

「ぐっ…!」

 

ピュリファイヤーの砲撃を受け流しながら反撃の機会を窺う彼女。

猛攻は続いて行く。

 

「桜ウォースパイト!負けるんじゃないわよ!」

 

「はい!閣下!!」

桜エリザベスが叱咤する、少し元気が出た。

 

 

『あー…ウッザ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたは…強いのね」

 

「そうよ!私は強いよ!」

桜ニュージャージーは最初以来、決定的な一撃をフリードリヒに与えられていない。

なんせ彼女の艤装はデカい。

艤装に阻まれ、攻撃され…の流れが桜ニュージャージーに攻撃の隙を与えず防戦へと流してしまう。

 

 

(強いって言ったけど…防戦一方なのよね…。このフリードリヒって娘…本当に強い)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ビスマルクぅぅう!!」

 

アークロイヤルはいの一番にビスマルクへと向かう。

彼女は知りたかった、ビスマルクの真意を…。

 

「させないわ」

だが、ティルピッツに阻まれてしまう。

 

「退いて!」

アークロイヤルは彼女を目指す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐぅううう!」

セイレーン艦隊やピュリファイヤーに押される桜ウォースパイト。

 

 

ドゴォ!!

艤装に捕まれ壁へと打ち込まれる桜ニュージャージーや桜三笠達。

 

 

圧倒的火力に膝をつくロイヤル。

 

 

「…綾波ちゃん!!」

 

「………」

 

必死に話しかける桜ユニコーンや桜ジャベリン達に対して無言を貫く綾波や高雄達。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仲間同士で戦う。

 

傷付く仲間

大切な者達が傷付いては倒れて行く。

 

 

嘲笑うピュリファイヤー…。

監視の目を光らせる上層部…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大和田はニヤリと笑う。

見えたのだ、彼の終わりが。

何もできないまま、仲間を失う彼の姿が…。

ダメだ、声を出して笑いそうだ…耐えろ…耐えろ…!

 

出さないよな、出せないわなあ!

この情報は各陣営に流している。

正体不明の力を持つお前は、艦娘の力を使う事は…この世界においては

セイレーンと同等の力を持つ事を世界に示すことになる。

そうすればどの陣営にも狙われる事になる。

 

そしてお前は…

艦娘の力もKAN-SENの力も引き出せて無い。

仮に出撃させても…世界はお前には応えない。

つまり…お前は最初から負け戦に挑んでいるんだ。

 

さあ沈め、死ね、絶望しろ!!

 

 

私に恥をかかさなければ…こうはならなかったのに…

馬鹿な男だ。

 

しかし…良いな。

この世界もアリだ…。

あの時に声を掛けてもらえて良かった。

 

この世界はお前でなく、私を選ぶんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は馬鹿か?

 

俺は何を考えていた?

俺にとって何が重要なのか?

 

 

彼女達以外に何がある?

 

上層部に艦娘達が見つかる事が重要か?

 

 

 

 

 

 

 

画面の向こうで戦う皆以外に大切なものは俺にあるのか?

 

 

何で俺は…ここに居る?

彼女達を助けるため、共にもう一度手を取り合うためだろう?

 

 

 

 

 

なら何で俺はここに居る?

母港の執務室に居る?

 

 

 

 

 

 

 

違うだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の居場所は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつだって皆の隣(戦場)じゃあないか

 

 

 

 

 

 

彼は大声を張り上げる。

 

 

 

 

「金剛ッ!蒼オークランドッ!皆!出撃できるか!?」

 

皆の意外な顔は、すぐにニヤリ顔に変わる。

 

 

 

 

 

 

 

「いつでも!!」

期待した返事が返ってくる。

 

 

「上層部の事があるんじゃないの?」

瑞鶴が言う。

 

「…恐らくセイレーンと各陣営の上層部は繋がりがある。だから何だ」

「俺が馬鹿だった」

 

「皆より大切なものなんか無いのにな」

 

 

 

「例え何を敵に回したって…俺は皆と共に在りたい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ビスマルクぅぅううう!!」

 

「エンタープライズぅう!!」

ビスマルクと桜エンタープライズが武器を構えて放つ。

 

 

 

『さぁぁあ!!死ねよおおお!!』

ピュリファイヤーが艤装から一斉射を行う。

 

 

 

「綾波ちゃぁあん!!」

仲間が…剣を構え、振り下ろそうとする友達の名前を叫ぶ。

 

 

「さあ…眠りなさい?」

フリードリヒが桜ニュージャージーに手をかけようとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドォォン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは放たれた。

 

砲撃や艦載機が空を切り、今まさに振り下ろされんとする凶刃を跳ね飛ばした。

 

 

 

 

 

「何だ!?」

 

ピュリファイヤーもビスマルクも綾波もフリードリヒも…

桜ニュージャージーも皆がその音のする方角を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それらは母港から現れた。

 

 

それはこの世界の人々は見たこともない存在。

 

世界は違えど、海を守らんとする艦の名前を受け継いだ同じ存在。

 

 

「西波島艦隊ッ!!出るぞぉ!!」

 

「「「「おお!!」」」」

 

 

 

 

「セイレーン艦隊をぶっ叩けッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アイツ…神崎ィィ!!!出しやがった!出しやがったぁあ!てか戦場に出て来やがった!!!』

『馬鹿だろバカだろ莫迦だろおお!!お前!狂ってる!狂ってるぞ!指揮官んんんん』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺はいつだって、どこだって皆と共にある」

 

皆が命を懸けて戦うなら、その隣に俺は居る

 

その声を、思いを届ける為に俺は前へと出る

 

 

 

 

 

「だから俺はここに居る」

 

 

 

 

カチリ…と音がした。

歪な音でなく、しっかひと最後のピースがはまったかのような音が。

 

 

 

 

ブワッ…と何かが変わった。

雰囲気?空気?

ピュリファイヤーはなんとも言えない何かを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

「この感じ…」

 

 

内から湧き上がる高揚感ー。

鉛のように重かった脚は軽くなった。

 

 

 

 

 

「「「うおおおお!!」」」

桜ウォースパイトと蒼赤城はピュリファイヤーを弾き飛ばし、桜ニュージャージーと桜三笠はフリードリヒの艤装を押し退けて。

桜ジャベリン達は綾波達の攻撃を躱して…。

 

 

ビスマルク達の前にはアークロイヤルや金剛達が立ちはだかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男は狼狽えた。

「馬鹿な?世界が認めたというのか?奴を…指揮官として!この世界に居ることを認めたというのか!?!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイツだ!

アイツが何かをしたんだ!

神崎 救!

やっぱりお前かッ!!

 

 

『だから何だってんだっ!!ぶっ殺してやるよぉお!!』

ピュリファイヤーが救目掛けて走り始めた。

 

 

「させるものですか!」

「主様には指一本触れさせませんよ」

 

蒼赤城が、桜三笠が…その前に立ちはだかる。

 

 

 

力が…戻った!

 

 

 

 

 

 

 

 

「ティルピッツ!!」

 

「ええ」

 

ビスマルクとティルピッツ、ドイッチェラントに対するは桜アークロイヤル改、桜エンタープライズ金剛達だ。

 

「ハーイ!ビスマルクぅ」

「ユー達を止めに来ました」

 

「力を取り戻したのね?厄介ね」

 

 

 

 

 

 

 

何だ!?

 

何なんだ?!この力はッ!?

 

指揮官の存在はこうも…コイツらに影響を与えるのか!?

「はぁぁあッ!!」

 

桜ベルファストの蹴りがピュリファイヤーを捉える。

 

 

 

 

 

『死ねぇぇええええ!!』

ピュリファイヤーが右腕を伸ばす。

 

 

「もう一度…帰れ!帰れえぇエエエエエエエエ!!」

 

ズダン!と桜ウォースパイトが右腕を斬り落とす。

クソッと…左腕を伸ばす。意地でも救を殺したいようだ。

 

「そこ!」

 

さらに蒼赤城が左腕を斬り落とす。

『ぐぅう!!やってくれるなぁ!いい女が台無しじゃないか」

 

「黙ってる方がもっと良いかもよ?」

 

『え?マジ?ってか何それ?ウザいって事?』

 

「そこです!!」

ドスッ…と桜ウォースパイトの剣がピュリファイヤーを貫いた。

 

 

 

 

 

 

『スペアの損傷が甚大じゃないか…クソがッ!!』

 

『チッ!でも良いさ!スペアなら幾らでもある!』

『お前達は永遠と追いかけごっこに付き合ってもらうヨ!』

 

 

 

 

 

 

「くそっ!」

確かにそうだ。

彼女達は本体からスペアに情報を写した存在。

本体を叩ければ…こんな追いかけごっこすぐにでも…

 

「だとしても…何回でも打ち破ってみせる!!」

桜三笠の右拳がピュリファイヤーの顔面をぶち抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガズン!!と頭の中に何かがぶち込まれた。

もうこの体はもたないだろう。

 

「早く!本体に切り替えを!」

 

『分かってるよ!』

 

 

 

 

『ビスマルクゥ!すぐに他のスペアに切り替えてコイツら……を………殺す……

 

 

 

 

いや待て–––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピュリファイヤーはこの日のこの瞬間の事を未来永劫忘れないだろう。

 

ピュリファイヤーは見た。

ビスマルクの目を

 

そして…その声を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………今よ!!開いてッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

『何?』

 

フリードリヒは応える。

「任せて……行きますよ」

 

 

『なに…を……まさか』

 

 

桜ビスマルクはニヤリと笑った。

 

 

「ずっと待ってた…この時を」

 

 

 

ゲートは開かれた。

 

 



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400話 我等が道を征く ②

うおお…400話…






 

 

 

本来、本体の在る場所は誰にも秘匿されてある。

例え奴等がゲートを使えたとしても…その場所を知らない限りは到達し得ない。

 

 

だが、スペアから本体へと戻るその瞬間にソレをねじ込まれたら?

 

 

 

 

ぐにゅり…とゲートが開いて行く。

 

 

待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て

 

 

 

 

 

バックリと開かれた裂け目は…ピュリファイヤー本体の存在する場所へと通じているのだから。

本体へと戻ったピュリファイヤーが見たのは…裂け目からのぞく憎き天敵(西波島艦隊)だったのだ。

 

 

 

 

 

驚いた…いや、驚かされた。

気づけた筈なのに気付かなかった。

 

いや

奴等はそういうもの(指揮官大好き)だという事を失念していた。

 

 

 

『何ぃぃいいい!?ビスマルクッ!!貴様ッ裏切るのかぁあ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら…これは予想外かしら?」

 

彼女は輝く目で笑う。

きっと誰もが見たこともない表情で笑う。

 

 

 

「あなたの1番嫌な予想外をプレゼントするわ!」

 

 

 

 

 

 

『何ぃいいいいい!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたが掻き消したくて掻き消したくて仕方ない…神崎 救(予想外)の艦隊の存在を私の指揮官を…ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女が…彼女達が俺を…俺達を信じ続けていた結果だから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全てはレッドアクシズ達の壮大な計画だった。

 

 

元々はセイレーンを叩く為に立てた作戦だった。

しかしその進路は大きく変わることになった。

 

 

そう、大和田という人物が指揮官として陣営に加わったと情報が入って来たことだ。

 

 

 

異世界からやって来たと聞いたからだ。

それだけならまだ良い、しかし指揮官としてやって来たと聞いたからだ。

 

この男は艦これの世界からこの世界に来たのではないだろうか?

と言う疑念があった。

 

 

フリードリヒの情報からも事前に得ていたが…レッドアクシズの施設にあった入渠施設を見て決定打となった。

疑念は確証に変わった。

 

大和田は艦これの世界から来た…と。

 

 

 

いずれは2つの世界に仇なす存在になると考えた彼女達はここで2つを叩く事を決めたのだ。

 

 

 

 

セイレーンの本体を叩く。

つまり、喉元に刃を突き立てる事!

私達の手はいつでもお前に届くんだと言う意思表示!

 

 

 

 

 

 

 

「このおおおお!!!』

ピュリファイヤーは本体を守るべくコピーを展開する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一気に叩けぇええええ!!」

 

 

待ってました…とばかりに桜ビスマルクの周りに鉄血、重桜組が集まってくる。

その攻撃の矛先は…アズールレーンじゃない。

 

セイレーンの本体達(過去と未来へのしがらみ)へと向く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全レッドアクシズに告ぐ!!我々の目論みは達成された!!……一気にセイレーンを叩くッ!!」

 

 

「…理解不能」

「理解不能なんだけどッ!!!」

 

「あなたには分からないでしょうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜エンタープライズ達は遅れて理解をした、させられた。

 

 

「行こう!!指揮官ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲートの裂け目から覗くのは禍々しい世界だった。

 

「な…な!」

そこに奴の本体が居た。

 

 

それに向かうレッドアクシズ達を見て…

彼は熱いものが込み上げて来た。

 

 

やっぱり桜ビスマルク達は……この為に…

 

 

 

 

 

 

今まで叩けども叩けどもヒラリと躱されたスペア。

だが本体を叩くことができれば!!!

 

 

『来たかぁあ!!神崎ィィ!!』

 

 

『殲滅!!』

 

救達に向けて一気に火力が集中される。

 

 

 

 

 

 

「マズい!!まだ…皆がゲートを……対空ッ!くそ!間に合わないッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

眩い光が辺りを覆った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「させませんわ」

 

 

 

その光は彼のキューブから発された光。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び主人を守らんとする光。

 

 

 

 

 

 

 

 

迫り来る弾幕を一気に掻き消す流星の如き炎。

しなやかな尻尾に和装の佇まいのその後姿に彼は息を呑んだ。

 

 

 

男は知っている。

その背中を知っている。

 

 

その声を愛を優しさをー

 

 

だから

名前を呼ばずには居られなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…桜赤城……?」

 

 

 

 

 

 

「はい、指揮官様」

 

何日も泣き暮れた。

フッドの死も…悲しかったが…桜赤城を目の前で喪った悲しみは言い表せなかった。

もう触れることも…あの声を聞くことも出来ない…と。

絶対に信じると誓った桜ビスマルクを恨みそうになる自分を許せなかった。

 

 

 

どんな奇跡よりも……こんなに嬉しい事はない。

 

 

 

 

「本物だな?」

 

「はい」

 

彼は周りの目も気にせずに飛びついた。

「よかった!!良かったぁぁああ!!!」

その声は彼女が驚く程に子供のように泣きじゃくりながらだった。

 

 

「ウフフ…指揮官様が私に……うへへ」

 

「素が出てるぞ?姉様」

 

 

 

 

「え?知ってたの?桜加賀」

素っ頓狂な顔をする救

 

「面白い顔だな…指揮官。……もちろんな…作戦だったからな」

 

救は桜ビスマルクを見る。

 

「ごめんなさい、指揮官」

合流した桜ビスマルクが頭を下げる。

 

「全く……本気で殴り合ったんだからな、言ってくれれば良いものを…悪役なんか選んで……」

桜エンタープライズ達が言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

ビスマルクは元からそのつもりだった。

自らが悪者になる事で、周りからの目を逸らさせる。

セイレーンの内側に入り込む事で内部からの崩壊を画策したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『しかし、指揮官が来なければお前達は死ぬだけだったんだぞ!?』

 

 

 

ビスマルクは微笑んで言う。

「来てくれると信じていたから」

 

「誰1人として信じてくれなくても…指揮官だけは私を信じてくれてると…信じてたから」

 

「…ッ!ッ!!」

 

『その為にッ!その為に仲間(フッド)すら殺せるのか!?』

 

 

 

 

 

 

 

「あんなことでロイヤルネイビーの栄光は消えたりしませんよ?」

 

「「「「ええええ!?!?」」」」

 

 

「死体が見つからない時点で…疑わないと…ね?」

 

「なら…桜赤城は!?」

 

「……生きてたから、キューブに戻ってもらった。葬式したことにして」

 

 

「うひゃー…まんまと騙されたわけかー!」

桜クリーブランド達が笑いながら言う。

 

 

 

 

「言ったでしょう?仲間の為に…より良い未来の為にむて」

 

「その仲間のより良い未来の中には私達も居たのね」

 

「誰もセイレーンが仲間なんて言ってないわ?」

 

 

 

ビスマルクは言った。

仲間の未来を少しでも良くしたいとー…。

それはアズールレーンの仲間を指していた。

 

セイレーンは運命を再現する。

運命とは、そうなっているもの…と。

 

しかし、その運命を打ち破る者が居る。

 

それは人であり、指揮官である。

そして…その渦中の指揮官とは、神崎 救である。

 

彼はいくつもの困難を打ち破って来た。

セイレーンが予期せぬほどに。

 

彼女はこの世界を去る前に彼女に準備させた。

フリードリヒ・デア・グローセに終わりを始まらせる事を。

 

 

 

無論、敵の手の内であろう母校に桜エンタープライズ達を置くのも問題なかった。

しかし、指揮官が来るのなら話は別だった。

 

だから彼女達は艦隊から離れる事を選んだ。

 

指揮官が居なければ力を発揮できない。

つまり、共倒れになる可能性もあったのだ。

だからセイレーン側には指揮官が居るとの事でそちらに移ったのだ。

 

 

 

可能性…神崎 救

ビスマルクはそれに賭けていた。

彼女は…いや、彼女達は知っている、彼がきっと世界を超えて助けに来てくれると…。

だからこそ、保険として自らが悪役になる事にした。

 

TBにあの映像を、そしてこの世界への切符を用意したのも実は彼女なのだ。

あまつさえ、セイレーンの情報をTBに流してサポートしていた。

だが、彼女も敵の目を欺く為にこの世界での自らの行為の再現としてフッドを沈め、回収させた。

 

 

桜赤城をキューブに戻し、機会を窺わせる為に救達に負けて母校を譲る為に…。

 

桜加賀達に裏切りとして神崎サイドに行く動機付けと情報を持たせる…。

そして、フリードリヒが母校を破壊する事で盗聴等を無くさせる為。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だからあの日、桜ビスマルクは街で救に会った。

声が聞きたかった。

姿が見たかった。

何時間も待ち続けたのだ。

「俺はそれでも信じている」

 

1番欲しかった言葉を彼はくれた。

だから…

彼女は折れそうな心を何とか奮い立たせて踏ん張った。

 

 

 

 

 

指揮官が母港を取り戻し、皆を集め…力を蓄えるこっちから離反する者が情報を持って行く。

そして最終には私達が内側から崩す。

 

その為なら私も沈んでも良いと思っていた

全ては…仲間の為に

 

–––仲間がより良い未来へと行ける為に–––

 

 

 

そう

それはこの今の瞬間の為に。

 

 

 

予備機なんかじゃなく…

本体を叩く為に!!

 

 

 

 

 

 

 

「……もう一度…もう一度私と一緒に戦ってくれない?」

 

 

「何を言っているんだ」

 

ビスマルクの問いに桜エンタープライズや桜エリザベス、桜長門は…

 

 

 

 

 

 

 

「当たり前でしょう?」

桜フッドが笑って言う。

 

「私達は…アズールレーンよ?」

桜赤城が言う。

 

「驚いたけど…これが狙いだったのよね?」

 

「あんな事で私達の絆は砕けないから」

 

 

 

 

「なら何で私達は喧嘩してたの?」

桜ビスマルクが笑いながら問いかける。

 

 

 

「指揮官に勧めるのはたんさんこーらか紅茶かで揉めてたんじゃない?」

 

 

「…指揮官…」

 

「TBちゃんへの伝言も全て君だろう?」

 

「何故そう思うの?」

 

「喋り方がフッドとは違う事と……来ないで…って言葉に来て欲しいって何となく感じたんだ」

 

「……ッ」

 

「苦しかったろう?辛かったろう?」

「ずっと信じてるぞ…だなんて言ってもっと他にできることがあったんじゃないかって思う。もっと君を…「いいのよ…指揮官」

 

「その言葉だけで…私は救われるわ」

「いいえ…私について来てくれたレッドアクシズの皆が救われる…」

 

 

 

 

「……行けるか?」

 

「レッドアクシズ…いえ、鉄血…行けるわ!!」

桜ビスマルク達が構える。

 

「重桜…いつでも指揮官様と共に!」

桜赤城や桜長門の声に皆が構える。

 

「ロイヤル…既に準備は出来てるわ!」

桜エリザベスの声に皆が構える。

 

「ユニオン…いつでも言ってくれ!」

桜エンタープライズの声に皆が構える。

 

 

 

 

 

 

桜ビスマルクは叫んだ。

「さあ!!指揮官ッ!!アズールレーンは指揮官と共にあるッ」

 

西波島(母港)の艦隊は…我々は誰1人欠ける事なく…あなたの指揮に従うッ!

 

 

 

 

「私達も忘れないでネー」

 

「そーだよ!私達も一員よー?」

 

金剛や蒼オークランド達も構える。

 

 

 

 

「よし……今をもって…セイレーン作戦の次弾作戦を開始するッ!!!!」

 

「西波島艦隊…全員抜錨ォ!!!」

 

 

 

 

 

 

わらわらと出てくるスペア。

相手もなりふり構ってられないようだ。

 

 

「道を切り開くわッ!!進みなさい!!」

蒼エリザベスやオークランドがそれらを相手取る。

 

 

「…行くぞ」

 

 

 

 

 

『ビスマルクッ!ビスマルクゥゥゥウウアアア!!』

彼女は桜ビスマルクへと向かって行く。

 

「させるものか」

作戦エンタープライズが矢を放つ。

 

「はい!ダメですよ」

桜フッドが同じく邪魔をする、

 

 

『守れ!マモレ!守れ!!!』

本体へと近付くごとに強くなる守り…。

 

 

 

 

 

「勝負だッ」

 

「お前の守りと私達の絆…どちらが上か勝負だぁッ」

 

 

セイレーン艦隊も上位個体も下位個体も出している。

 

なのに止まらないッ!

 

 

奴らの歩みを止められないッ!!

 

出しても出しても奴等は…あの女とあの男(桜ビスマルクと指揮官)を前へと歩ませようと動いてくるッ!!

 

 

 

 

「止まれぇ!神崎ィィ!!」

「意味が分かっているのか!?貴様は全てを…敵に回すと言うのか!?」

 

 

「誰だか知らねえが…知るかぁぁ!!」

「これが俺達の行く道じゃぁぁあ!!」

 

 

 

 

「行くぞぉお!!桜ビスマルクぅ!!!」

 

「ええ!行くわよ…指揮官ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

『クソッ!止まれ…止まれええええ!!』

 

 

 

 

 

 

「ダメね…ダメよ?」

桜ビスマルク達の行手を阻むセイレーンを阻むのは…

 

「…桜オイゲン、桜ティルピッツ…!」

 

「ふふっ…いいところは譲ってあげる」

 

「姉さん…行って!指揮官……頼んだわよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「桜ビスマルク…行けそうか?」

駆ける桜ビスマルクに救は問いかける。

「ええ…でも少し不安…かも」

ほんの少し厳しい顔をする彼女。

 

 

「なら…コレを」

彼が差し出したのは銀色の指輪だった。

 

「…今?」

 

 

「おう、いま、君を後押しする最強の指輪」

 

 

「受け取るわ…あなたの気持ちと一緒に」

と言って右手を差し出す彼女に彼は言う。

 

「左手」と。

 

「……はい」

 

彼女は駆けながら左手を彼に差し出す。

彼はその左手の薬指にその証を入れる。

 

「いつまでも…君と共に」

 

 

 

 

 

 

 

グン!と速力が上がる。

この気持ち…流れ込んでくる彼の優しさ。

 

 

泣くのは後…終わらせてから!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『来るな!来るなぁあ!!』

 

 

 

 

絶望が…

目の前に立っていた…




てな訳で400話…
早え…
まさかここまで来るとは思ってなくて…
皆様のおかげです!ありがとうございます!


といっても続きます!


少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!

感想などお待ちしてます!


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401話 我等が道の先

 

–––私の絶望…

 つまりはお前達にとっての希望–––

 

それは目の前に立っていた。

虫ケラと思っていた奴等が…嘲笑いの対象だった奴等が実は私を壊し得る可能性を秘めた毒蜂だなんて…。

 

 

 

 

 

……面白えじゃん

 やってやるよ

   やってやんよぉぉおおお

 

彼女はその拳に渾身の力を込める。

 

向かい合う彼女も同じくその拳に力を込める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行けぇぇ!!桜ビスマルクぅぅ!!」

 

「うぉおおおおおッ!!」

「これが…私達の答えだぁぁあああッ」

 

桜ビスマルクの拳はピュリファイヤーの顔面を捉える。

 

ガキン!と音がする。

 

 

『この……ッ!負けるかよぉ!私がアンタらみたいな雑魚にィィィイ!!』

 

負けじと顔面を殴り返すピュリファイヤー、互いが互いの顔面を拳で…

桜ビスマルクは仲間の未来の為にその思いを…

ピュリファイヤーも自分達の未来の為に…

 

「『うぉおおおおお!!』」

 

バキバキと音を立てる艤装。

ミシミシと音を立てる私の身、私の骨、私の心。

 

 

–––それでも

   私は折れない–––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勝敗を分けたのは…たった一つのシンプルなものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行けぇぇ!!桜ビスマルク!!」

 

 

「やっちゃえええ!!」

「負けるなぁあ!!」

 

「もう一踏ん張りだぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行けッ!行けぇぇッ!!…いや、一緒に行くぞぉおおお!!」

彼女の腕に手を寄り添わせる指揮官(只の人間)

その手が、腕が何を出来ようか?

 

ピュリファイヤーは鼻で笑う。

たかが人間…と。

 

そうだ、ニンゲンとは脆い。

私達が一息で直ぐに楽に簡単に呆れるほどに壊れる。

身も心もガラスのように脆い。

 

 

 

 

 

 

–––と思っていたのに。

 

何故こいつは…コイツの手が加わった瞬間に…この女の力が増した!?

魔法か?!手品か!?それとも手を抜いていたとでも言うのか?!

 

 

 

 

 

 

 

いや…

人が起こす奇跡こそ…我等の求める進化…

指揮官(プレイヤー)だからこそ覆せる不可能の領域(既に起こった過去)の再現…。

奴等は基本的に運命に引っ張られる…。

その運命の糸すらぶち切って新しいその先(あり得ない未来)に奴等を押し上げてしまう!

 

 

 

だが…それだけじゃないはずだッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…不思議そうな顔をしているな…ピュリファイヤー」

 

不敵そうに笑う桜ビスマルク。

 

あぁ…気になる。

何でそうなった?教えてくれ。

私達の求める…進化が、意外性があるのか!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女はニヤリと笑って言う。

 

 

「周りを見てみろ」

 

 

『なに?』

 

 

ピュリファイヤーは目を動かして周りを見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

KAN-SENと艦娘と戦姫が居た。

私の艦隊はとうにやられたらしい。

 

 

そして…今になってその声が私達を叩いた事に気付いた。

 

 

「負けるなぁ!!」

「いけえええ!!」

 

その声援ひとつひとつが私の背中を…肩を…頬を打って行く。

 

 

 

 

 

()だ」

 

 

 

 

 

 

 

私に声援を送る者は居ない。

 

フン……

 

なんだ…そんなものか…

 

 

 

 

『あぁクソ…意外…やっぱり…神崎、お前が来たから狂っちまったなぁ』

 

『…覚えてやがれ』

 

 

 

 

 

「うぉおおぉ…り…ゃああああああぁあ!!」

 

グン!と力を増した桜ビスマルクがピュリファイヤーを殴り抜いた!

後方に吹き飛ばされるピュリファイヤーに更に主砲掃射の追い討ちをかける!

 

 

『…!…!!…!!!』

ズドンと言う轟音、立ち昇る煙、砂煙。

 

 

『そ、損失…90%………直ちに…休眠態勢に入らなければ……』

 

 

 

 

 

「させるかぁあ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トドメを刺そうとする彼女の前が強く光った。

 

彼女は動かなかった…いや、動かなくて正解だった。

なぜなら彼女の目の前がばっくりと消えていたから。

 

 

 

謎の光は全てを消し去っていた。

 

 

 

 

『…この小娘は必要…連れて帰る』

『今回はアナタ達の勝ち…』

最早死に体の彼女を抱えてゲートを潜る謎のセイレーン。

 

「お前は!?」

 

 

 

「やってくれたな……」

 

「アンタは…大和田さん?」

 

「そうだとも」

 

謎のセイレーンと現れたのは…上層部の人間であるはずの大和田だった。

 

「やっぱり通通なのね?」

救は皮肉を交えて言う。

 

 

「フン!元からこっち側なのだよ」

「まあいい、暫くは小さな勝利に酔いしれるがいい!いずれは貴様も消してやるッ!!」

 

「………そこまで恨まれる理由あったか!?俺」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の下に付かなかったろ?」

 

 

 

「え?」

 

 

「理由なんぞそれだけで構わん」

そう言って大和田もゲートに帰って行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……またいつか会う日が来るでしょう。その時に……ね、運命に抗う者達さん』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何なの?あの人…」

 

 

「…指揮官?アレは大和田首相かと思われます」

 

「え…若返ってるから何となく面影あるなーくらいだったけど…あの人…首相さん!?」

 

「え!?ズルくない?!何で向こう側に!?」

 

「…あなたへの恨みが強いのですね」

 

「淡々と言わないでよTBちゃん」

 

 

 

 

 

「でも…まぁ」

 

 

 

「勝った…」

 

「やったぁ!!」

 

 

 

へたり込む者、泣き喜ぶ者、枝分かれした者との再会に抱き合う者…

 

母港は、一旦喜びに包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てぇ〜ことれぇ〜!しきかんのぉ…母港ちゃくにんをぉぉ…おいわーいしてえ」

 

 

 

「かんぱぁあい」

 

 

 

 

「「「「かんぱぁい」」」」

 

「俺思うんだけどさ…何で乾杯の音頭取りが既に酔っぱらってんの?」

 

「…すまない…指揮官……桜オイゲンったら……もう…」

 

「あらー?こまかいことわあ〜いいのよ〜?ねえ?し・き・か・ぁ・ん♡」

 

「うわ…どれだけ飲んでんの?」

 

「ええとお〜ビールがあ…たくさんとぉ…じゅーおーのお酒が…一樽?」

 

「おい、誰かコイツの口にガムテープ貼っとけ」

 

「吐けないじゃない」

 

「吐かないで済むように飲むな」

 

「むーーりーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

集まる指揮官、桜ビスマルク、桜エンタープライズ、桜赤城、桜フッドに桜エリザベス。

 

 

「……辛かった選択だろう…桜ビスマルク…桜フッド、桜赤城」

桜エンタープライズがグラスを各々と交わしながら言う。

 

「……いいえ?私は信じてたから」

桜ビスマルクが

 

「私もですわ」

桜赤城が

 

「…同じです」

桜フッドが続けて言う。

 

 

「ほーんと良くやったわ…。私も知らなかったんですものね!」

ブスーとしてるのは桜エリザベスだ、彼女はおろか誰もその作戦を知らなかったのだから…。

 

「まあまあ…閣下が知ったら止めるでしょうから……ね?」

 

「……まあ…本当生きててよかったわ」

 

 

 

「指揮官は気付いて居たから信じたいと言ってたのか?」

 

「うんにゃ、ただ信じたかったんだ。あの時間は何があっても本物だから…ってな」

「とことん付き合うつもりだったよ。例え俺が1人になっても…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?桜加賀!例のものは?」

 

「……姉様…あまり………まあいいか…ここにあるぞ」

桜加賀がある物を桜赤城に渡す。

 

「うふふ…指揮官様?私…少し失礼しますね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「桜加賀?」

 

「私は何も知らん」

 

「桜加賀ちゃん?」

 

「やめろ!」

 

「…………」

 

「そんな目で見るな!怖いだろう!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…赤城姉様が死んだ時の指揮官の表情とか…の詰め合わせのDV……もう行ってしまったか…」

 

「早かったな……」

 

「そうね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドンドンドンドン!がんがんがんがん!!

「開けろぉおお!桜赤城ィィィイ!!!」

「くっそあかねぇ!!ブチ破るしかねえええ!!」

 

 

 

 

ドゴォン!!

 

 

 

 

「おい!桜あ……かぎ………

 

 

 

 

 

 

 

 

桜赤城の部屋、大型スクリーンに映し出される俺、しかも泣いてら。

 

『桜赤城ッ!なあ!なぁ!!嘘だろ!?なあ!…なあ!!」

泣きじゃくりながら彼女を必死で揺さぶる俺。

 

 

「はぁぁぁあ!!指揮官様ぁ♡桜赤城はぁ!桜赤城はあ!!幸せですわぁぁあ!!」

 

 

 

 

「いやぁぁぁあああああああッ!!!!」

 

 

 

 

 

「うわー…指揮官ガチ泣きじゃん…」

 

「愛されてるねえ…羨ましい」

 

 

 

 

 

みんな居た。

 

 

 

「本当にやめてええええええええええ!!!」

 

 

 

その肩にガッと手が置かれた。

 

「指揮官様?私の時は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の時は?」ニッコリ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

始まる上映会。

何で映像があるか?

んなもん、青葉がハッキングしたからに決まってるだろ!!

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ…指揮官の粛々と泣く姿…」

 

「ダーリンさん……抱きしめてあげたい!」

 

 

 

 

 

「殺せよぉ…殺せよおお……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官?改めて…ありがとう」

 

「ん?もう変な映像ないよね」

 

「えぇ、私は私で[指揮官の決意編]をしっかり見たから」

 

「もうやだ…帰りたひ……」

 

 

「フフッ……隣、いい?」

 

「もう好きにして…」

失礼するわね、とストンと横に座る桜ビスマルク。

 

「あなたが信じてくれて良かったわ」

「ええ、あの言葉で私は折れる事なく頑張れたわ」

救の肩に頭を預けて語りかける彼女。

 

桜ビスマルクだけではないが…少なくとも、1番と順位付けをしてしまえば彼女にのしかかった責任や重圧はとてつもない物だっただろう。

 

全ては仲間の為、俺の為。

味方すら欺いたその計略は…賞賛の言葉だけでは足りないであろう。

今の彼女の顔は、鉄血のトップのそれではない。

ただ1人の…男の横に座る穏やかな女性の顔だった。

 

 

決して全てが解決した訳ではない。

それでも…今は、今くらいは……いいでしょう?

 

 

彼女は頬を赤らめて…

彼を見つめながら目を閉じる。

「お願い…指揮官……キスして」

 

彼女らしくない…いや、これが本来の彼女なのだろうか。

彼女にできる最大限の甘え。

彼は勿論応える。

 

重なる唇は……お酒の味がした。

 

 

 

 

「愛してるわ…指揮官」

 

「俺も愛してるよ……」

 

そして平和な時間が………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー!ずるいー!あたしもおおお」

そうは問屋が卸さないのがこのメンバー。

 

雰囲気?空気?知らない子ですね…?なんてどこぞの赤い方の一航戦が言う。

 

「指揮官様ぁ!?おかえりのちゅうは!?キスは!?桜赤城…待ち続けてるのですがぁー!?」

 

「やっぱり私へのリアクションが少し足りないと思うのですが?指揮官様?ねえ?ねえ?指揮官様?」

 

 

「……好きって言ったのに」

 

 

 

 

場所は違えど彼女達と彼の場所。

それが母港。

 

例えどんな困難が待ち受けても…きっと。

 

 

 

 

 

「「「待ってよおおお」」」

 

 

多分なんとかなるんじゃないかな?

 

 

 

 

 

「DVD焼き増ししまーす!1枚5000円からー!」

「ポスターは3000円にゃー」

 

 

 

「一枚下さる!?」

 

「指揮官のサインは別料金にゃー」

「セットで買うと握手券つけるよー!」

 

明石と桜明石は逞しかった。

 

 

 

「ブッ……明石sめえええええ!!ぶっ飛ばしてやるううううう!!」

 

 

「「ヒェッ…逃げるんだよおおお!!」」

 

 

「ふむ…1セット貰えるかしら?」

 

「「ま、まま毎度ありー(にゃ)」

 

 

「桜ビスマルクぅぅう!?!?」

 

「家宝にさせて頂く…」

 

「あ!桜ビスマルクさんー…プラス6000円で…告白とキスシーンのDVDもセッt「言い値で買うわ」

 

 

 

「嘘やん?!」

 

 

「「毎度ありー!」」

 

ニコリと笑う桜ビスマルク。

あの笑顔はきっと悪魔の顔よっ!!恐ろしい子!!

 

そんないつもと変わらない騒がしい母港でした。

 

 

 

 

 

 

 




セイレーン作戦母港戦 終わり!
まだ暫くはアズレン世界…かな?
場所が変わってもヤベーヤツらは変わらないのでセーフ!…アウトかな?

ヤバくないやつが逆に居るのか!?



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402話 コーラor紅茶or緑茶? 鉄血編





本日2話目の投稿です!
406話も投稿されてるので…まだの方はそちらから!








 

 

平和な母港。

 

なんせ楽しみがほぼ無い。

イベント時期は何かしらの出店とかやってるけど…今は閑古鳥が鳴く勢いの我が母港。

売店とかでは限界が来る…おい睨むな!待て!話し合おう!

その手のものを置こうか?桜明石。

 

 

 

 

でも事実な訳で…気が滅入っちゃうよね?ね?

 

ならば作ろうでは無いか…

 

 

鳳翔の居酒屋!

 

那智のBAR!

 

伊良湖の食堂!

 

間宮の甘味処!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全…ッ然!!変わり映えねええええええ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも?」

 

「通っちゃう♡」

 

「はい、あなた♡お待たせ致しました♡」

 

「はーいそこのバカップルさんーワタシタチノコトモワスレナイデネーカマッテクレナキャサミシーヨー」

 

結局こうなるんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……このままでは西波島鎮守府なのか西波母港なのかが分からない」

「この世界の住人としてそれでいいのか?と自問したところ、よくねーよと言う答えが返ってきたわ」

と、神妙な面持ちで語るのは桜ビスマルク。

 

「ならどうする?」

桜ティルピッツが尋ねる。

 

 

 

「なら……」

「(鉄血名物のコーラを)(ロイヤルの紅茶を)指揮官に楽しんで貰えばいいのよ!!」

被る言葉、内容は似て非なる真反対だけど。

 

「え?」

「え?」

 

「こ、紅茶?」

「こ、コーラ?」

 

 

「ちょっと待ちなさい!紅茶は毎日飲んでるでしょ!?暑い日も続くのよ!?キンッキンに冷えたコーラが1番に決まってるでしょう!?」

 

「はぁぁあ!?アイスティーだってあるわよ!?なんならアイスもつけるわよ!?コーラってwwコーラってw子供じゃないんだからww」

 

「いやいやいや!指揮官はコーラ大好きだから!愛飲してるからね!?執務室にもたくさんあるんだから!そ、れ、に!ビールもソーセージもありますけど!!!そちらは?フィッシュ&チップスしかないでしょ!?」

 

「ぐぬぬ…それは否定しないけど…紅茶に合うお菓子ならたくさんあるわよ!?(主にメイドが作るけど)」

 

 

 

 

ビスマルクもエリザベスもキャラを置いて自分達のがすんばらしいと言っている。

 

 

 

 

「なら…重桜は和食で楽しんでいただきますね」

ここで爆弾を投下する桜赤城。

 

「あん?おい、女狐何言ってんのよ」

 

「桜赤城?ここはレッドアクシズとして協力すべきでは?」

 

 

「私達も指揮官様に褒められたいですし……ね?」

「まあ…指揮官様の同郷の料理が1番好きでしょうねー!!アハハハハハハ」

高らかに勝ち誇ったように笑う女策士。

と言うより、メイド服とかより和服の方がいいと思ってたのは内緒話らしい。

 

 

「「はぁぁぁあ!?!?」

 

「重桜はレッドアクシズから離脱して独自路線(和食一択)で行きますわあ」

 

 

勃発する三国大戦、きっと呂布すら泣いて逃げ出すであろう光景。

 

 

 

「「「ユニオンは!?」」」

睨まれる桜クリーブランド、何で私が?と思う彼女。仕方ない、1番近いところに居たんだから…。

 

 

「ふ、不参加で…」

地雷地帯を大手を振って渡るのはアホだ。

だから彼女は不参加を申し出る、てか後ろの皆もウンウンと頷いてる。

ナイス判断。

 

 

「レーションなら提供できるぞ?」

 

桜エンタープライズ(空気を読め馬鹿野郎)!」

まぁ…私達はここは手伝いに徹しよう?(消し炭になりたいの?)

 

「レーション…美味しいぞ?」

 

「料理でないからね?簡易携帯食だからね?お部屋に帰ろうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

んで執務室にて…

 

「で?結果として?」

 

 

「鉄血組でレストランバー」

 

「重桜組で和食処」

 

「ロイヤルでメイド喫茶」

「ユニオンは分散して流れで手伝いで」

 

 

「何で手伝い?」

 

「指揮官はレーションパラダイスがお望みか?」

桜クリーブランドが親指で桜エンタープライズを指しながら言う。

 

「よし、お手伝い頑張れ」

救は親指をグッと立てて言った、本音全開で。

 

「それに」

「皆のメイド服姿…見たくない?」

 

「……経費はいくらでも回そう」 グッ

 

「賃金ゲット!」 グッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

んでんで

饅頭さん達を過酷な労働環境に放り込んで約数日…。

完成したとされる店に行くことになった。

 

 

 

「ここが……鉄血のレストランバーね……って開店前だったかな?」

何やら店の前で集まる鉄血組。声をかけると…

 

「あ、指揮官…丁度いいわ。お店の名前がね?まだ決まってないの」

「どれがいいかしら?」

 

名前の案が書かれた3枚の紙を出してきた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

① アイアンブラッド

② レストランバー Nishinami

③ レストラン鉄血

 

 

救は考えるのを辞めた。

 

え?何?めっちゃ物騒じゃね?

①と③何か英語か日本語読みかの違いくらいじゃね?

②とかローマ字表記なだけで和風テイストじゃん、ドイツ語とか無かったの?え?何?ドイツってどこって?

 

 

「ちなみに私が考えたのは①よ」

照れ顔で言う桜ビスマルク、②であって欲しかったというのは心の底からの本音。

 

「と言うか…アレだなこの中には桜オイゲンの考えたのは無さそうだな」

 

「あら?正解よ?指揮官」

 

「何でだ?」

 

「却下されたのよ…いいセンスだと思ったのだけれど…」

 

 

「へぇ?ちなみに?」

 

 

「Ich liebe dich Kommandant(指揮官 愛してる)よ?はー」

 

「客層が縛られそうだね」

 

「縛るどころか直球よ」

 

 

 

 

 

 

 

結果

レストラン

Blut und Eisen

 

血と鉄

まあ…ドイツ語だしいいか…

 

 

 

 

「で?メニューは?」

 

「オススメは…愛情♡たっぷりソーセージのボイルとビールセット」

にこやかにビスマルクが言う。

 

「オイ、絶対ぇロイヤル意識してんだろ」

 

「あと…指揮官様の為のジャーマンポテト〜愛情を惜しげもなく詰め込んで〜」

 

「なんだ、その"〜"は!何風!?ねぇ!?何風なの!?」

 

 

 

 

「………私の考えたメニューなのだけれど?」

 

「誰だ?ラスボスにメイド服着せたのは」

救の目の前には桜フリードリヒがメイド服で居た。

絶対意識してるよね?対抗意識燃やしてるよね?

 

「あら?ラスボスってことはそこまで心に残ってるのね?嬉しいわ?」

 

「前向きなのねぇ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……コレ」

 

「はい、愛情♡たっぷりソーセージのボイルとビールセット〜最上級の愛を添えて〜ね?」

 

「え?正式名称言うの?てか名前増えてね?」

 

「いいえ?他には?」

 

「ビスマルクのオススメで」

 

「わかったわ」

 

 

 

 

 

 

 

「オーダーよ」

 

 

 

愛情♡たっぷりソーセージのボイルとビールセット〜最上級の愛を添えて〜を1つ」

 

 

「ブッ!!」

 

 

 

愛情♡たっぷりソーセージのボイルとビールセット〜最上級の愛を添えて〜を1つですね!?」

 

 

 

 

「えぇ、愛情♡たっぷりソーセージのボイルとビールセット〜最上級の愛を添えて〜を1つよ」

 

 

「フッテンシェフー!愛情♡たっぷりソーセージのボイルとビールセット〜最上級の愛を添えて〜を1つ」

 

 

 

 

「あぁ愛情♡たっぷりソーセージのボイルとビールセット〜最上級の愛を添えて〜を1つ承った」

 

 

 

 

「帰りたい」

 

 

 

 

「お待たせ致しました!愛情♡たっぷりソーセージのボイルとビールセット〜最上級の愛を添えて〜です!」

 

 

「「「「「「愛情♡たっぷりソーセージのボイルとビールセット〜最上級の愛を添えて〜です」」」」」」」

 

 

「あとプレッツェルとグラーシュ……〜あなたを決して離さない〜です」

 

「もはやお前達の心の声じゃねえか」

 

 

恐らく俺は何か恨まれてるんだ、うんきっとそうだ。

 

「愛情よ?Ich liebe dich」

 

「「「「「「Ich liebe dich」」」」」」

 

え?この状況からでも入れる保険があるんですか?……ない?あそう。

 

 

 

 

 

「…でも美味しいッ!」

「ソーセージ…てかブルスト?クソうめぇ!グラーシュは肉の感じとトマトが……プレッツェルは塩加減が最高だ…てか柔らかいのね?プレッツェル」

 

「お菓子の硬いイメージがついてるのね?柔らかいのよ?」

 

「あー!ビールもうめえ…やべえ…生き返る…」

 

「そう?気に入ってくれた?」

 

「ああ!超お気に入りだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なら他の店は行かなくて良いのよ?」

 

「は?」

 

 

「フォーメーションAッ!!」

 

掛け声と共に集まる鉄血組…が俺のテーブルを取り囲む。

「指揮官♡」

「指揮官様♡」

「帰らないで?」

「他に行かないで?」

 

 

あぁ…脅迫ですね?え?違う?

ならね…?ローン君?その手のカタナは何かな?うん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと!協定違反でしょ!?鉄血ぅ!」

 

「え?何?協定っ「あらあ?敵情視察?違うわ?寂しいからもっと居てコールよ?鉄血では当たり前なのよ?」

 

「ねぇ…協t「だからあ!指揮官をお!ずっと無理矢理居させるのはダメでしょう!?!?」

 

「……「…わかったわよ…ほら、オイゲン?退きなさい」

 

「はぁい。指揮官?また来てね…?チュッ」

抱きつくオイゲンが退く時にキスしてきた。

 

この行動で店は半壊すると俺は思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ!指揮官!ロイヤルのメイド喫茶に行くわよ!!私自らが案内してあげるわ!!」

息巻く桜エリザベス。

 

しかし、彼女は大切な事を忘れている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうお腹いっぱいだから明日でいい?」

 

 

 

 

「…………部屋に案内するわね…」

 






しょっぱい話が続いてたので…どうか…これでお納めくだせぇ…えへへ


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403話 コーラor紅茶or緑茶? ロイヤル編

 

 

 

エリザベスに連れて帰られるまでは結構飲んでいた。

 

「まったく…飲み過ぎなのよ!」

そう言われるのも仕方ないかも知れない。

体を支えてくれる彼女をじいっと見つめる。

 

「な、なによぉ!?」

 

「………」

可愛いよな、なんて言おうと思ったがやめておこう。

あ、でも慌てふためくところを見てd@wg.pxp………

 

 

 

 

 

彼が見つめてくる。

その澄んだ瞳には自分が反射していた(本人の所見です)

その目に吸い込まれそうになりながら、私は照れ隠ししながら見つめ返すことしかできなかった。

 

 

まさか…好きとか?指輪あげるよとか?

そんならとーっても嬉しいのだけれど?!

私はいつでもウェルカムよ!?

 

 

 

 

 

「……ぐぅ…」

 

 

 

 

 

 

 

「は!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え!?指揮官?!寝た!?ねぇ!?寝たの!?おい!寝るな!指揮官ッ!庶民!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭が痛い。

所謂二日酔いか?

 

でも行かなきゃ…

ロイヤル(物理)されちゃう…

 

 

「何よ!?ロイヤル(物理)って!?……というか二日酔いなの!?どれだけ飲んだのよ…!」

 

あぁぁ!その声も頭にダイレクトダメージがぁぁあ!!

 

 

「もう…仕方ないわね…指揮官?ほら、ミネラルウォーターよ、飲んで?」

 

こう見るとクイーン・エリザベスすら神に思えてくる。

 

でも、水と言わずにミネラルウォーターを出す所を見るとかなりお嬢様だよなあ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気を取り直してロイヤルのメイド喫茶…ROYALへと案内される。

 

そんままだね、店の名前。鉄血も同じだったけど……

 

 

 

豪華な木と煉瓦造りのシックな外観、室内も落ち着いた雰囲気で統一されており、入り口を入ればピシッとメイド達がお辞儀をして出迎えてくれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お帰りなさいませ、ご主人様」

一糸乱れぬお辞儀とはかくあるべきか…。

見事に完成された(見慣れた)メイド達の姿が……と思ったが…

 

 

 

白や青を基調とせず、王道の白黒スタイルでのメイド姿は新鮮だ。

何せ、ロンドンやエンタープライズ、果てはアークロイヤルまでもがメイド姿。

 

 

 

 

 

「指揮官!見てくれ…このぉ!?」

ゴンという鈍い音と共にエンタープライズの身体が縮んだ気がした。

元祖メイド隊の鉄拳…らしい。

 

「べ、()()()()()()…あ…しまった」

 

ゴン

 

「め、メイド長………」

 

「はい、そうですね?……申し訳ございません、ご主人様…。少々教育が不十分だったようで……」

 

「うう…手伝えって言うから手伝ってるだけなのに……」

 

 

心の声ダダ漏れである。

しかし、実際そうだ巻き込まれて手伝ってるだけなんだよな…

 

 

「何で私まで……」

クリーブランドが虚無の表情でこちらを見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

資金は潤沢に分配した……。

つまり、準備に余念無し!故に増える人員!

やりたくない?そんなの関係ねぇ!と言わんばかりに人数に組み込まれるユニオン勢+α

 

 

 

「あー!ハニ…じゃなくて、ご主人様〜♡お帰りなさい?こう言うの…好きなんでしょ?」

と、現れたのはニュージャージー。

 

「ん?あぁ好きだぞ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも何でウエディングドレスなの?ねえ?何で?

 

 

「あ…ニュージャージー…ダメって言ったでしょう!?」

 

「えー!ハニーはこう言うの好きだから…ねえ?」

ねえ?と言うな、巻き込むな!と思いながらウンウンと頷く俺。心と身体は別である!

 

 

 

気を取り直して席に座る。

が…しかし、ガッチガチである。

クッソ真面目の権化なんだろうなあ…と思いながら、もう少しラフにならないか?と提案してみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一時間後……再度来店してみた。

 

 

 

 

 

 

 

「ごっしゅじーーん☆おつおつー!」

メイク…?迷彩?で日焼け風になったエンプラさんが出迎えてくれる。

 

クッソギャル口調でな!

 

 

 

 

エンタープライズ……お前ぇ……

ちゃうねん、そうじゃないんよ……ちゃうねん…

 

キャハーとか言いながら寄ってくるメイド達。

 

 

「いやー!今日も疲れたよね?癒されたいよね?」

めっちゃ肩叩いてくるやん…。

 

「いや…とk「うんうん!癒されたいよね!」

 

「はぁい!迷える仔羊のごあーんない!」

 

 

 

 

「「「おかえりなさいませ、ご主人様」」」

 

半ば拉致…いや、タチの悪いキャッチに捕まれたように席へと案内される。腕とかに当たる感触は天国なのに、あの椅子へと座るのが…近付くのが地獄への歩みとしか思えないの。

 

先に着くと「ほいー!あつしぼねー!」なんて熱々のおしぼりを渡された。

 

 

 

 

 

 

「ご主人様…」

 

「ベルファスト…」

 

 

 

「盛り上がってるぅー!?」

 

「ブフッ」

顔をマジで赤らめながら言うベルファストに思わず吹き出してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちゃうんや!違うんだよおおおお」

 

俺は心の声を叫んだ。

 

 

「も、申し訳ありません…テンション上げすぎました」

なんて顔を赤らめたベルファストが手で顔を隠しながら言ってくるのがウケた。

 

もう、普通でいいよと言いながら30分後に再来店。

クソ真面目の権化なロイヤル勢を見られただけでも思うに儲けもんだろうけれども!だけれども!!やはり俺としてはメイド喫茶がメインな訳で…

 

 

 

 

 

 

 

気を取り直して3度目の正直。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「お帰りなさいませ!ご主人様♪」」」」」

 

 

ニコッとハニカム笑顔の出迎えで席に通される。

そうだよ、これだよこれ!

 

 

「ご主人様?オススメは3種のスコーンとロイヤルミルクティです」

ダイドーやイラストリアス達がオススメを教えてくれる。

 

「指揮官様?スコーンもほっぺたがこぼれ落ちそうな程美味しいですよ?」

と、イラストリアスが言う。確かにこぼれ落ちそうだ。

 

……お前の胸がな!

 

何だ?その際どいメイド服は!?ペコリとお辞儀するたびに軟着陸しそうな…こぼれ落ちそうな星…いや、そんな小さなもんじゃねえ!天体か!?惑星か?!

きっとそこには夢と希望が詰まってるのだろう!

 

男のロマンが!未知なる世界がそこに–––「ご主人様?」

 

目をぎらつかせるウォースパイトやクリーブランドやジャベリン達。

おっと?失礼があったかな?

何で怒ってるんだ?ワタシワカラナイ…

何か共通点があるのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さーせん…」

魚雷や主砲は人に向ける物ではないよ!君達ィ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

静かな店の中に微かに聞こえるオーケストラらしきミュージックが心地良い。

一生懸命に作られたモノを運んでくるユニコーンは可愛らしかった。

 

 

「し、しきか……ご主人様、お待たせいたしました」

 

周りもほっこりしているのがわかるが…俺もほっこりした。

 

 

 

 

目の前に出されたのはオススメされたロイヤルミルクティと3種のスコーン。

 

水でなく、牛乳で紅茶を作る。

砂糖は多め。

 

一口飲むと本当に幸せになる。

 

個人的に好きなイングリッシュブレックファーストでのミルクティーを出すあたり、本気さが窺える。

 

 

 

「左からプレーン、チョコ、キャラメルです」

と、説明を受ける。

スコーンもかなり手間暇かけたのだろうか、めちゃくちゃ美味しい。

 

 

「ご主人様の大好きな硬めのプリンですよ?はい、あーん」

そう、硬いプリンは大好きです。

 

ニュージャージーの抜け駆けに周りの空気がピリついているが、気づかないふりをしてプリンを食べる。

うん、プリンに罪はないしね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あらぁ〜?スコーンとプリン以外はないのぉ?」

 

「お酒はぁ??」

 

 

店に突如響き渡った2人の声。

 

オイゲン(酒乱)フリードリヒ(裏世界の人)だ。

 

 

「お酒くらい出してよー」

 

お前もう酔ってんじゃん。

 

「お肉はないのかしら?」

 

喫茶だッ!つってんだろうが!!!

 

 

 

 

「…あら?敵情視察?関心ね?それとも余裕がないの?」

奥から出てきたエリザベスが高らかに煽る煽る。

 

 

「はぁ?お酒飲みに来ただけよ?ねえ〜フリードリヒ?」

 

「オイゲン?あなたの話しかけてるのは柱だけど?酔ってるのね?」

 

「酔ってないわよ?素面よ?間違えたわ?ね?フリードリヒ?」

 

「私はエンタープライズだが?」

 

「ダメね…安酒じゃ…悪酔いするわ」

と、ティーカップを揺らすオイゲン。

 

「来た時から酔ってたわよね!?というか紅茶しか出してないわよ!?」

 

「紅茶に何を混ぜたの!?」

 

「ミルクと砂糖しか混ぜてないんだけれど!?!?」

「あなたは何をしに来たの!?フリードリヒ」

 

「………面白そうだったから…指揮官にも会いたかったし…」

 

 

 

「真面目な答えやめてくれるぅ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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404話 炭酸と紅茶と緑茶 重桜編

 

「………美味しいじゃない」

「紅茶もスコーンも美味しいじゃない!!最高の酒とツマミよ!」

 

オイゲンは酔っ払ったまま叫んだいた。

と言うか、ビスマルクも居た、いつの間にか。

 

酔っ払ってな!!

 

「何よこれ……本当に美味しいじゃない…」

 

 

 

 

 

「………ツッコまないからな」

 

「ぐっ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

喚き散らす2人をニコニコと見守るフリードリヒ。

 

「止めないのか?」

 

「あそこまで行ったら手がつけられないのよね…」

 

 

 

 

「ぐっ……グスッ」

 

「こんなに美味しいと…」

 

 

 

 

「「ううううう」」

 

 

 

 

 

 

2人がなんと泣き始めたのだ。

 

「指揮官が盗られるぅう」

ビスマルクが泣き喚く。

 

……盗られるって何に?

 

 

 

「このままじゃ指揮官がロイヤルっちゃうううう」

オイゲンも泣き喚く。

 

……え?ロイヤルって何て意味だっけ?

 

 

「え?ちょ…え?……え?か、閣下!?」

ベルファストがマジで焦っている。

 

 

「ちょっ…こっちに助けを求めないでよ!ええええ」

 

 

 

鉄血のトップとその右腕がガチ泣きする様子は敵陣営に的確に内側へとダメージを与えた。

 

 

 

 

 

ちなみに2人とも次の日に二日酔いと気まずさで部屋から出てこなかったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言うのが2つの陣営らしいぞ」

と、加賀が赤城にパワポで報告していた。

 

「……楽しそ……いえ、難敵ね」

 

「そうだろうか?潰し合いをしているように思えるが…」

 

「私達の陣営にも起こりうることよ?」

 

「まあ……うん……そうですね」

 

 

 

「まずは店の名前からね…。コンセプトが被らないようにしなくちゃね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤城はそれに並々ならぬ思いを馳せて居た。

 

 

 

 

指揮官が私が戻った時に涙を見せたから。

好きなんて気持ちはとうの…とうの昔から持っていた。

 

 

–––誰にも優しい指揮官–––

そんなことはわかっていた。

 

––きっと1番好かれてるのはあの娘––

そんな事もわかっている。

 

 

 

でも、だからと言ってこの想いは止められない。

あの日…生きてて良かったと私に泣きついた姿を…

私が死んだと思った時に落ち込んで泣いていたあの姿を…

 

そうまで私を想ってくれるあなたの姿を知ってしまえば、この想いは更に燃え上がってしまったのだから。

 

 

 

 

此の身も心も全ては指揮官様のもの…

全てを捧げると誓ったのだから

 

だから負けられない。

例え相手が誰だろうと…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官様来店です!」

想いにふける時間は唐突に終わりを告げた。

現実という名の指揮官が来店した。

 

 

 

和服姿のKAN-SEN達がペコリとお出迎えする。

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官様?来ていただいてありがとうございます」

玄関をくぐった先で赤城と天城達がお出迎えする。

 

「うん、すごく楽しみなんだ」

 

和食処…桜

 

日本家屋…純和風テイストなその佇まいは静かさの中に荘厳なものを感じる。

だが、あくまでそれは初めて見る者が得る印象だ。

 

実家のような安心感をコンセプトに作られたそれは…指揮官をあの時に返らせるような…

 

 

「オススメは…重桜和定食です」

 

「なら、それを」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新鮮お魚の刺身、駆逐艦農園のお味噌汁、ふっくら炊き立てごはん、軽巡農園のお肉を使った肉じゃが…

どれも指揮官の好み知り尽くした彼女だからこそ出せる献立だ。

 

 

 

「んん〜ッ!美味しい!!」

救はご満悦である。

 

 

天城や信濃が琴やらを奏でる部屋にはほっこりとした空気が漂っていた。

 

 

「指揮官様…どうぞ、お茶です」

 

「ありがとう…んー!おいしい!」

 

「良かった…」

 

ニコリと微笑みかけてくれる笑顔に嬉しくなる。

「指揮官様の笑顔の為に赤城…頑張りました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

素敵な時間が流れる…

今までは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふっ…指揮官様が楽しそうで何よ…ガフッ…

突然吐血する天城。

 

「大丈夫ですか!?お姉様!?」

駆け寄る2人……の中の指揮官の手を取る天城。

 

「大丈夫ですよ…ふふっ…指揮官様の手…あったかい…」

その手を握り締めて離さない天城。

 

「ん?強くない?力」

「てか…本当に血?」

 

「先ほど飲んだトマトジュースですが?」

 

 

 

赤城は察した。

あ…これダメな流れだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「修行するぞおお〜あたごおおお」

 

高雄に抱えられた愛宕を筆頭に乱入する酔っ払い共…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し前の事だ…

 

 

重桜の和食処…桜家

 

 

––––––の前は厳戒態勢が敷かれていた。

もちろん、それは指揮官には見えないところで

酔っ払い(イレギュラー)の乱入があった為に指揮官がゆっくりと食事ができないなんて言語道断だからだ。

 

 

そのただ一つの門を護るは高雄。

厳粛かつ、武士道精神気高い彼女に任せられた大任である。

 

 

 

「……来たな…」

先日の鉄血達の騒ぎは聞いている。旧知の仲とは言え、陣営の威信を賭けた戦いである以上…本気で挑まなくてはならない…と、高雄は刀に手をかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「酒はあるぅぅ?」

但し、相手が酒乱モンスターでなければ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「マジか」

高雄は少し後悔した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戻って今現在。

 

オイゲンやビスマルク…エリザベスやエンタープライズまでもが酔っ払いと化していた…。

 

 

 

外は雨が降っている。

 

 

わーきゃー騒ぎになる店内。

思い描いた理想には程遠すぎる現実。

 

涙混じりの溜息が出るが………というか殺意すら湧いてきた。

何お前達一緒に酔ってんの?

てか…高雄…やられたわね…とか。

 

 

「上手くいかないわね…」

 

 

 

「本当に…上手くいかないわね…」

 

 

「いいじゃないか。それに」

 

 

 

「君の気持ちは凄く伝わったよ。ありがとう」

「君達とこう過ごせて幸せだよ」

 

ありがとう

その言葉にハッとした。

 

 

 

 

私は自分の事しか考えてなかったじゃないか。

 

皆もそれぞれ指揮官には思いを寄せている。

その中で私に…私の行動に手助けしてくれているんじゃないか。

 

私はそれを分かっていながら……

 

皆のその優しさを利用していた。

指揮官様の優しさを知っているから…

皆の優しさを知っているから…

 

 

 

バッと姿勢を正す。

三つ指をついて溢れる思いを隠すように頭を下げた。

「私は指揮官様に尽くすと言いながら…自分の事しか考えていませんでした…」

 

「こちらこそありがとうございます…幸せと言って頂いてありがとうございます」

 

「私は…私は……」

 

畳に落ちるパタパタという音が耳障りなほどによく聞こえた。

サァッという雨の音すらも同じように…

 

 

 

 

永遠のような時間が過ぎたように感じた。

皆黙っている。

わかっている、私の自分勝手だって。

でも…でも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭に手が置かれた。

優しい、温かな手。

 

その手は慈しむように私の頭を撫でてゆく。

くしゃくしゃになった顔で見上げる…

滲んでぼやけて見てない。

 

彼の指が私の涙を晴らした。

ニコリと笑うあなたが見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

抑えきれなかった。

 

 

「ごめんなさいッ!ごめんなさい」

思わず飛びついてしまった。

 

あなたを騙した事、悲しませた事…

何もかも。

 

あなたが流してくれた涙、こぼしてくれた本音…

全部に。

 

 

 

ぎゅっと抱き寄せられたのも分かった。

その涙を隠してくれているのも…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局皆でワイワイ騒ぎになった。

 

鉄血も重桜もロイヤルも……ユニオンも皆が楽しそうにそれぞれの得意を持ち寄った。

 

 

「まさか…赤城さんの涙が見られるなんてねえ?」

 

「あらあ?ビスマルクの『指揮官が盗られちゃうぅ』もレアモノよお?」

 

「エリザベスの酔っ払い姿もねえ?」

 

 

 

 

「エンタープライズは………」

 

 

 

 

 

 

「高雄殿お〜…その鍛錬…良いと思うよお」

 

「おお〜エンたーぷらいず殿…分かってもらえるかあ」

 

 

「鍛錬討論に花を咲かせてるな……………話しかける相手が柱でなければだけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?どの店が1番良かったの?」

と、エリザベスが爆弾を投下した。

 

 

「……」

全員の視線が集まる。

 

「どの店も良かった」

 

「いや!違うくて!」

 

「だってそれぞれの店の出し物のコンセプトが違うじゃん」

 

 

「「「あ」」」

 

そう、重桜では定食、ロイヤルではアフタヌーンティー、鉄血では軽食とお酒…。

ものの見事にバラバラだったのだ。

 

 

「…1日の食事風景ですね」

TBちゃんが的確にツッコミを入れた。

 

 

「なら次はランチバトルね」

 

「望むところです」

 

「……余裕よ」

 

 

新たな戦いの火蓋は切って落とされそうだが、それはまた別の話…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあて…そろそろこっちを見てもらわないと困りますね?皆さん?」

 

「ダーリンの正妻は私なんだから!!」

 

「いえ?改ニ実装されたこの大和ですが?」

 

「あん?」

 

「お?」

 

彼女達もアップを始めました…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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405話 炭酸と紅茶と緑茶 番外編

 

 

母港の夕方…。

 

 

執務なんてものはないので…というか、上層部の動き待ちなのでゆっくりできる。

夕陽を眺めながら優雅にコーヒーを嗜んでいると…

 

 

 

 

 

 

 

 

私室のドアが壁に吹き飛んでいた

 

 

厳密に言うと、私室の扉がそのままの状態で飛んできた。

わぁ!砕けない程丈夫だからかな?漫画みたいな吹っ飛び方をしたよ!?

 

祝!初扉破壊!!

記念すべき1枚目……はフリードリヒだろうけど、あれはノーカン!

んで?

 

 

 

コーヒーを吹き出しそうになりながら、修理費はいくらかな?なんて計算してますと?

 

 

「提督!提督!!見てください!見てください!!この私の姿を」

 

 

 

その犯人は意外な人物であった。

というか大和だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はい、そこには何かすんごい…やんごとなき姿の大和が居た。

砲身増えてね?なに?その外套は?え?

何があったん?話聞くよ?ドア壊さなくても…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見てください!提督!この大和の改ニ 重を!」

 

 

「え?改ニ?」

 

「はい!改ニ重です!」

 

「え?それって何か…戦いの中で目覚めるものじゃないの?」

 

「………さあ?」

 

 

 

 

 

『恐らくですが、改や改ニ、その先への変化は指揮官との魂の繋がり具合によって変化するようです』

 

「TBちゃん!?」

スマホから聞こえた声は彼女のものだった。

 

「そんな設定だったの!?なら…大和は何で…」

 

『きっと元からカンストなんですよ…あなたへの気持ちが…』

ふむふむ…と聞いている。

 

『低速ではありますが……うわっ何ですかこの性能……チートじゃないですか……………あぁ…だから重なんですね』

 

…?なんか最後の方不穏な感じが…?

 

 

 

 

「む?他の女の人と話をするのは…めっですよ?」

ずいっと寄ってくる大和。

 

「ごめんね?へえ…でも重装ね?強そうだな!期待してるぞ大和」

 

 

 

「はい…これも全ては提督の為なんです。そう、提督に群がる悪き深海棲艦から守り抜く為の力なんですが…。武蔵や長門には格好良さを取られたとか色々と言われてましたけどもう大丈夫。私はこれでやっていけますから…というか提督に群がる望む深海棲艦だけじゃないですよね?他の艦娘とか…世界超えて来た娘達も沢山いますよね?まあどんな娘が相手でも寄せ付けない火力と体力がウリなので負ける気もしませんけど…それにですよ?この改ニのコンバートはあなたとの絆…想いや愛の結晶だと思うんですよ。ウフフ…ウフフフフ…もうこれで私を唯の大飯食いだなんて言わせませんよ?え?入居時間が60時間??ナンノコトデスカ?あぁ、大丈夫ですよ?60時間も一緒にお風呂に入って居られるなら私を幸せですよ?私の甲板装甲の良さ…じーっくりと教えて差し上げますね?もう大和ホテルなんかじゃないですよ?城ですよ?城!アハハ!アハハハハハハ!日本最強なんですよ?!世界最大最強の戦艦ですからね?期待してください?そしてご褒美をください!そうですね…具体的にはあなたの一生がいいですね!はい、2人でアパートから始めましょう!私も働きます!少し貧乏でも仕事からの帰りにお買い物して、あなたの帰りを待つんです。帰って来たあなたにご飯にします?って鳳翔さんのような声をかけるんです。はい、今程の贅沢はできませんけど…夢のマイホームの為に…って頑張るんです!……え?給料はそこそこ良い?ダメです!戦いなんて離れてもらいます!はい!そこから頑張ってマイホーム立てて…子供は…はい!2人は欲しいですね。男の子と女の子です!きっと2人に似て…えへへ…」

 

大和は悦に浸っていた。

 

 

「重って性格の方なんだ?」

 

大和 改ニ重は性格が重くなった重だった。

 

 

「すまんな…相棒……抑圧された…感情が………今の大和…を……」

 

 

「武蔵ィィ!!?」

声のする方を見ると驚く程にゲッソリした武蔵が壁にもたれかかっていた。

 

「昨日から…」

 

「え?何だ!?気を確かに持て!!」

 

「昨日から延々あの話だぞ…?何度もループするんだ……相棒…私は生まれて初めて恐怖というものを味わったよ…姉だぞ?姉にだぞ?深海棲艦は怖くない、死ぬのは…皆と離れるのは怖いが、日常で怖いという感情をもったことはなかったんだ!でも……ハハッ見てみろ…手が、手が震えてるだろ?もうな?これは提督に任せるしかないと思うんだ、うん本当に」

 

 

 

「あら、武蔵?どうしたの?今ね?旦那様と2人の将来について話してたのよ?」

 

「「あっ……」」

 

「2人でアパートから始めるの!私も働きますよ?少し貧乏でも仕事からの帰りにお買い物して、あなたの帰りを待つんです。帰って来たあなたにご飯にします?って鳳翔さんのような声をかけるんです。はい、今程の贅沢はできませんけど…夢のマイホームの為に…って頑張るんです!……え?給料はそこそこ良い?ダメです!戦いなんて離れてもらいます!はい!そこから頑張ってマイホーム立てて…子供は…はい!2人は欲しいですね。男の子と女の子です!きっと2人に似て…えへへ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご、ごめんなさい…」

 

しゅんと落ち込む大和。

自室へと運ばれた武蔵。

 

 

「色々と嬉しくて…つい……」

 

「うん、大丈夫だよ」

 

「嫌わないで?旦那様!ダメなとこ言って?直すからあ」

涙目で縋る大和。

「生きていけない!旦那様に嫌われたら生きていけない!!そうなったら…私ッ!私ッ!!」

 

それが既に重いよぅ…

 

 

 

「そうなったら…こんな世界壊しちゃいましょうか…」

 

「まだ来て一月も経ってない世界を?」

 

「だって…あなたの居ない世界なんか…!」

 

「俺はここに居るぞ?」

 

「私から旦那様を奪うような世界は!!」

 

「誰にも奪われてないですが?」

 

「木端微塵にしt…あだっ!?」

そろそろか…と大和にチョップする。

 

「え…あ…私………ううっ」

 

 

 

聞けば、妹や他の艦娘達の改ニが出てくる中でずっと待ち続けた中で出てしまったものらしい。

ごめんなさい!とペコペコ頭を下げる大和を怒ることは出来ない。

 

「……あの…ご飯の用意が出来ています」

 

 

 

 

 

 

「この流れで!?」

食堂に連行される救だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、彼女達は待っていた。

主に出番を待っていた。

最近ほぼほぼ出番をアズレン組に奪われ、空気と化した彼女達は今か今かとその出番を待っていた…。

 

「メインは私達だよね?」

 

「いつの間にかライバルの新キャラも増えちゃってさ…収集つくの?」

 

「てか、これ浮気ですよね?浮気ですよね?私も改ニ実装のあかつきには……確約はされてるんで…ウフフフフ」

 

「やっべ…鳳翔さんの目がヤバイ…」

 

 

 

「好きって言ってくれたのに…」

 

「迅鯨はいつも通りだな」

 

「おい、大和〜?何抜け駆けしてんの?ねえ?」

 

 

 

 

 

 

「はい!」

「鳳翔さんと伊良湖ちゃんの料理に那智の酒に間宮さんのデザートに金剛の紅茶」 

「豪華フルコース」

 

「お、おぉう…」

 

本気だ。

本気のフルコースだ…。

 

鳳翔は特にマジで俺の好みを知り尽くしている。

これはこのメンバーの中でも随一と言っても良い。

 

何せ麗ちゃんとかも鳳翔のトコで修行してるくらいだしなあ…。

 

 

コトリ…と出されたのは…

卵焼きと鯖の味噌煮とお吸い物、筍と蕨のおひたし。

そして白ごはん。

 

その後ろでデザート組が待ち構えている。

 

 

 

 

皆もあんぐりしている。

 

 

 

 

そう、食堂なのだ。

店の構えもなく、店内装飾も何もない…皆がいつも飯を食べる食堂。

盛り付けは普通…いつも通りでお皿も特に豪華な訳でもなく、いつものもの提督専用のものだ。

 

 

 

そしてそれをいつものように美味しそうに食べる彼の姿…。

 

 

 

「あ…」

皆は気付く。

 

普通で良いんだと。

背伸びする必要なんか無いんだ。

 

 

 

どこが1番だとか…そんなの関係ないなって…

 

「…鳳翔さん?私も同じものを」

誰かが言った。

 

鳳翔はクスリと笑った。

そう…その言葉がまるで出てくるのを知ってたように…。

そして「はい」とニコリと笑い返事をして同じ料理を出した。

 

 

1人、また1人と列が出来上がる。

そして…食堂内は皆が同じ料理を前にいつものように笑いながら食事する風景に変わった。

 

 

 

 

「まあ…楽しかったけどね」

 

「良い機会にはなったと思うわ?」

 

「たまには私達も指揮官に料理を振る舞うわね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?誰のが1番良いの?」

 

誰かが言った。

 

「まあまあ、誰が1番とか…ね?もう良いでしょ?」

と、笑うメンバー達。

 

 

 

 

 

 

「あれ?1番には2人きりの熱い夜をプレゼントって言ってなかった?」

 

その言葉と共に食堂は再び戦場に変わる…




悪ふざけです、本当にありがとうございます


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406話 待ち望んだ日 鈴谷と1日夫婦 ①

待っていた。

 

ずっと…ずっとずーっとこの日を待っていた。

心の底からずっと…

 

1週間も前からドキドキしながら時間を過ごして待った。

1分1秒でも早くあなたに会いたくて…。

 

1時間も前から鏡の前に立って支度する。

先週に街に買いに行ったら新しい服。

 

 

 

「随分気合入ってますのね…鈴谷は」

熊野からそう声をかけられる。

 

「当たり前でしょ!?やっと来た順番なんだもん!気合い!入れて!鈴谷頑張る!」

 

「別の方が乗り移ってますけど…。そうね、提督大好きだものね」

熊野は笑いながら頑張れと言ってくれます。

あなたも好きなくせに!

 

そわそわと…まだかな?と時計をチラチラ見る私に…

「そんなに何度も時計を見ても時間は変わりませんわよ?」

と、また熊野は笑いながら落ち着きなさいな…と言う。

 

「う、うるさいなあ!分かってるよ…」

 

「ふふっ、1分1秒でも早く会いたい…のですねぇ?」

 

「うっ…そ、そうよ…」

そうだ、早く、早く会いたい。

 

「なら、それは言わないとね?」

「どんなに秘めた美しい言葉も言わないと伝わりませんわよ?」

 

 

 

………

……

 

 

 

なんてやり取りをしてたのがさっきのように思う…あの人の私室のドアの前の私。

もう既に5分が経過していた。

 

自分の心臓の音が嫌に大きくて…

震える手はドアノブに触れようとしては引っ込んで…

 

早く!早くしないと!

待ち望んでいた時間は刻一刻と過ぎて行くのに!!

 

なんて声をかければいいだろう?

提督!来たよ!かな?……他人行儀かな?

 

あなた♡来たよ!かなあ?…ぶっ込みすぎかな?

 

どうしよう!わかんない!

本音は今すぐドアを開けてあの人に飛びついて…したいのに…

何故だろう…怖くて仕方ない。

傷付くのが?1番じゃ無いから?何が…かは分からないけども、物凄い怖い。

 

 

 

 

何分経っただろう?

どれだけ手を出して引っ込めて…しただろう。

どれだけ最初にかける言葉を探しただろう。

 

 

何で私にはこんなに勇気がないの!?

ねえ私!お願い!

 

 

 

 

その時、ガチャっとドアが開いた。

 

「えっ…あっ…えと」

現れたその人を見て、私は固まってしまう。

言葉が出ない…。怪しいよね!引くよね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえり、鈴谷」

 

 

 

 

会ったら言いたい事は…言おうとした事は沢山あった。

呼び方も沢山考えた。

 

でも…その中に「ただいま」の言葉はなかったんだ。

提督からの意外な言葉に私は……嬉しくて…嬉しくて…恥ずかしくて

 

「うん、」としか言えなかった…。

入って、の言葉に頷いて靴を脱ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダメだろう!鈴谷!違うだろう!

私は立ち止まった。

廊下で振り返る彼は不思議そうに私を見る。

「鈴谷?」

 

 

 

 

 

『どれだけ美しい言葉を秘めていても…言わなきゃ伝わりませんわよ?』

熊野の言葉を思い出す。

 

 

伝えた想いは、言葉は…

伝えなきゃ…声に出さなきゃ伝わらない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだろう?(鈴谷)

私は何だ?

艦娘の鈴谷か?

 

 

 

––違う

 私は… 私は

 

 

 

 

神崎 救(愛する人)の奥さんじゃないか–––

 

 

言え!

不良の天龍達と戦った時みたいに!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「た…ただいまぁ……ダーリン」

絞り出した…笑顔での言葉。そう、金剛さんや榛名さんと同じ…ダーリン呼び。

好きで好きでたまらない相手をそう呼びたくて…。

 

必死に…ううん、自然に笑顔を向ける。

大好きなあなたに…嬉しくて笑顔を向ける。

 

あなたは意外そうな顔をして…すぐにニコッ笑いかけてくれて「おいで」と言ってくれる。

 

言葉に対して考えるより体が先に動いた。私はすぐさまに飛びついたのだ。

あなたの胸に顔を埋めて…「待ってた」と言う。

そのまま彼にもたれかかるように押し倒して…私は言った。

 

 

「ずっと…ずーーーーっと今日を待ってた」

「鈴谷は…私は、あなたが大好きッ」

 

「何よりも、誰よりも…あなたが大好きなの」

「あなたが居るから…待っててくれるから、信じてくれるからここに帰って来られる」

 

 

「どれだけ戦闘で傷ついても…どれだけ悲しい思いをしても頑張れるのはあなたが居るから」

 

「見て?オシャレしてるでしょ?何時間も前から…ううん、何日も前から悩んで悩んで…でもね?それはダーリンに見て欲しいから!あなただけにこの私を見せたいから、考えるのは苦手だけど…この為なら頑張れるの」

 

 

それでも彼は真剣に聞いてくれます。

 

「…好き、好きなの!あなたが好きで好きで仕方ないの」

 

 

 

 

「………」

 

言った。

言えた…。

言っちゃった。

 

「重いよね、気持ちも私も……ごめん」

 

「そんな事ないぞ」

 

「ううん、無理しないで…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺もだッ!」

彼は力強く言った。

 

「ほえ!?!?」

 

その言葉にビクッとした、意外過ぎる言葉だったからだ。

 

「俺だって鈴谷の事大好きだぞ!!」

 

「え!?え!?」

 

「ギャルっぽい感じとは裏腹に…意外と大人しめな所も!俺のことを好きで居てくれるとこも!飯の時とか…俺の事をじーっと見つめてくる可愛いところも!」

 

「ぁぅ…ぇと……」

 

「クッキー焼いてくれて持ってくる前にドアの前でぐるぐる回ってるところも」

 

「ぇぅ!?何で知ってるのよぉ!?」

 

 

「俺の為に1週間もかけてオシャレしてくれるところも」

 

「………恥ずかしい…やめてぇ」

 

「……俺の為に泣いてくれる所も、俺と一緒に笑ってくれる所も、馬鹿にされた俺の為に怒ってくれる所も…」

 

「…ッ」

 

「何もかも大好きだ」

「何時間でも話せるぞ!!」

 

 

いちおう…この人は私が馬乗りになってる状態…なのに

私から一切目を逸らす事なく…恥ずかしげもなく、と言うか私の方が恥ずかしい事をスラスラと言い切った。

 

 

 

 

 

何が怖かったか分かった…

愛されてなければ…どうしよう?だ。

 

周りにはライバルが多い。

私より可愛くて、良い子も沢山居る…。

そんな中じゃ私は埋もれちゃう…。

 

駆逐艦や軽巡より速くない。

戦艦より華はない。

空母より空を制せない。

潜水艦より…………

 

 

 

 

不安なんだ。

不安で不安で仕方ないんだ。

 

 

 

 

 

 

「え、ぇ、え…そ、そんなに?そんなに私の事好きなの?」

 

俯く私は泣きながらその言葉を絞り出す。

バクンバクンと大きな鼓動を聴きながら…

 

 

 

 

「当たり前だろう?」

「俺以上に鈴谷の事を愛してる人は居ない!」

 

「皆にそれを言ってなければなあ…完璧なのに…」

「ううん…でも…私も皆の事大好きだからそれでいいの」

 

 

好き…

愛してる…彼が言ったその言葉を何度も何度も頭の中に繰り返す。

 

「ダーリン?な、なら……き、キスしていい?……違う!キスしてよ」

 

精一杯の言葉…。

あなたから得られる愛は全て欲しいから…

お願い…

あなたからの愛を下さい。

 

 

 

「……ん」

ちぅ…

唇が重なる。

 

嬉しい…幸せ………え?

 

 

「ん……ん!?」

ちょ!?提督…!?

 

「んんんん!?!?」

えぇぇ!?そ、そこまで!?嘘…え!?

 

ボッと顔が熱くなる。

え!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…美味しくいただきました」

 

「……はぅ……ぁぅ……こ、こちらこそ…」

 

 

 

 

 

 

 

あ、あんなキス…初めて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーい!座っててね?私が夕飯作っちゃうから」

 

「はーい」

 

この母港は凄い…

提督の私室にキッチンがある…というか1DKくらいのアパート?って言った方が良いんじゃない?コレ…

 

トントンと小気味良い音が響いて行き、

 

 

 

「エプロン似合ってるな、鈴谷」

 

「えぇ〜?本当ぉ?」

 

「うん、本当」

 

「えへへ…嬉しいなあ♪ニヤけちゃう」

一度やってみたかったんだよねえ〜!エプロン着て好きな人の前で料理!

鳳翔サン達には勝てないけど…愛情は負けてないよ?

 

 

 

 

 

 

それでね?

後ろから…抱き締められて…きゃあ♡

 

 

 

「え!?」

え?!?背中にあったかい感触が…ほ、本当に?本当に抱き締められてる!?

 

「……何となく……抱き締めたくなって…」

どうやら本当に抱き締められていたらしい…。

こ、こんなに嬉しい事は…嬉し過ぎるよ…

 

 

「嬉しいなあ…。でも待っててね?もう少しでご飯できるからね?」

気持ちをグッと堪えて待ってもらう。

だって…料理は美味しく食べてもらいたいから…ね?

ちゃんと作らないとね。

 

 

 

「はい!完成〜!」

 

提督…ダーリンの待つテーブルに夕飯を並べてゆく…。

 

 

 

 




鈴谷回!

久しぶりの夫婦回!

お気に入りが790…!
ありがとうございます!
ぜひこれからもよろしくお願いします!



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407話 待ち焦がれた日 鈴谷と1日夫婦 ②

 

朝から手を繋いで街へ行く。

ぼちぼちと店が開いて行く街を行く。

朝の徐々に人々が行き交う喧騒の中を行く。

あなたの左手を右手で握りしめて隣を行く。

 

 

 

私より少しだけ高い目線のあなたを横の特等席から見つめる。

作戦時のオンのあなたも素敵だけど…こっちの方が好き。

 

ねえダーリン?

私が初めてなんだよ?

母港から出て2人で初めての街にデートに行くの…。

 

そんな意味を込めて握る手の力をほんの少しだけ強めてみる。

きっと誰にも分からないくらい…

意味を感じさせないくらいのほんの少し強い思いで。

 

 

 

 

 

 

その力を感じ取ったのか…あなたは同じくらいの力で握り返す。

 

意外そうにあなたを見る私に…あなたは優しく微笑みかける。

「この世界に来て…デートは初めてだな」

「君とが…最初だな」

 

 

金剛さんでもない、鳳翔さんでも加賀さんでも間宮さんでも吹雪でもない。

 

私が……。

何であなたは欲しい言葉を察したように言ってくれるの?

 

私はえへへ…と、そうだねと笑って答える。

 

 

 

 

 

 

あなたは移動販売のアイスクリーム屋を見つける。

暑いせいか長めの列が出来上がっている。

 

「ソフトクリーム食べる?買ってくるよ」

 

「え?私も並ぶよ?」

 

「暑いからさ、そこの陰で待っててね」

 

「……ありがと」

嬉しい…な、そう言う気遣い。

 

 

 

 

 

 

並ぶあなたを見つめる、時々手を振る。

するとあなたは笑顔で手を振りかえす。

 

 

 

 

 

「お姉さ〜ん!お茶しない?」

また私をナンパする男が来た。

 

「……」

でも私は無視をする。

 

「えっ無視?傷つくなー」

やれ、可愛いだとか、遊ぼうだとか…

 

 

全く心に響かない。でも、しつこくてウザいから…

「私はアンタらに興味もないの!」

「私が待つのも好きなのも1人だけ!」と言う。

 

 

「そいつよりカッコいい自信あるけど?」

 

「そう言ってる時点で中身がダメね」

「無理よ!この先の一生…何があってもあなた達に微塵の好きと言う感情を持つ事はないわ」

 

「はぁ!?なにい「命を賭けても良いわ」

 

 

だって本当に命懸けの恋だもん。

明日とも言えぬ戦いに私は身を投じているのだから…。

だから、だから後悔しない生き方をするって誓ったんだ。

 

 

そう力強く言う私の元にソフトクリームを持った彼が戻ってきた!

あの人の腕にしがみつく。

「おっかえりー!ダーリン!!」

 

「おっ!お待たせ!……ん?ナンパ?」

 

「え?何?こんなやつが良いの?」

「ハン!ビッチそうだしお似合いなカップ––––

 

馬鹿にされても気にしないで居た彼は私を馬鹿にする言葉に一気に顔色を変える。

私にソフトクリームを渡してその男の顔面を掴んでギリギリと力を加えて行く。

 

「いっでぇええ!!」

 

彼らは知らない。

この人だって私達の隣で前線に立とうとする提督だって事を。

どの世界でも平和を守る為に必死に戦う人だって事を…。

 

 

 

何より嬉しかった。

私の為だけに…ここまで怒ってくれて…。

 

 

 

 

 

 

また手を繋いで歩く。

さっきよりも強く手を握って歩く。

 

街を行き交う人なんか目にまとまらない。

だって私の目には…ずっと前からあなたしか映ってないのだから。

 

 

綺麗で可愛い洋服より、食べきれない程の美味しいスイーツより、あなたとの時間が何よりも幸せで…幸せで。

こんな時間が永遠に続きますように…と思いながら、また2人でデートが出来るように平和を守らなくちゃ…って思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お昼にしようか」

 

「うん」

 

「…あ、ここ…」

通りすがりに見たお店は最近、雑誌で見て興味を持ったお店。

ほら、別のとこってワクワクするでしょ?

 

とか思いながら通り過ぎようとして、ダーリンに止められる。

 

「ここだよ」

 

「え!?」

一瞬戸惑った。

声に出てた!?どうしてわかったの?!

 

 

「予約してる神崎です」

彼がそう言うと店員はニコッと笑って席へと通してくれる。

 

 

 

「予約してあったんだ!?」

 

ランチは前に熊野に行きたいと言っていたお店だった。

通りすがった提督が覚えてくれていて…それで予約してくれたらしい。

 

 

 

パスタを頼んで食べる。

味なんかしない。

美味しいんだろう。

でもそれ以上に幸せで嬉しくて…味がわからない。

 

だから怖い。

この幸せを失うのが…怖い。

 

「……や」

「…ずや」

 

 

「鈴谷!」

 

 

「え!?ぁ!ぅ!うん!?なに!?」

 

どうやらボーッとしてたらしい。

 

 

 

 

「気分じゃなかった?」

 

 

 

言わせてしまった。

違う。あなたはあり得ない程やってくれている。

 

 

「違う」

「最ッ高に幸せなの」

 

「ずっと私が欲しい言葉とか…行きたいところに連れて行ってくれて……幸せなの」

 

「幸せすぎて怖いよ」

 

 

その本音に彼は頭に手を置いてポンポンとしてくれた。

そして…「はい、あーん」

と、彼の食べる料理を私に食べさせてくれた。

 

 

一気に口の中に味が拡がった。

美味しい!美味しい!!

幸せな味が広がる。

あなたの作るもの程じゃないけど…それでもめちゃくちゃ美味しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

もっと幸せ噛み締めていいのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楽しい時間も終わって夜。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前に好きな人が居る。

何の隔たりも無い…布団の中と言う同じ空間の中に居る。

 

息がかかりそうな距離に…

その瞳に吸い込まれそうな程の距離に…

 

 

 

 

「美味しかったよ、鈴谷の手料理」

 

「うん…えへへ。嬉しいな♪」

 

 

 

 

 

 

『今日の夕飯は私が作ったよ!』

 

『お!?マジ!?楽しみ!!』

 

『と言っても鳳翔さんに習ったんだけどね?』

『頑張ったんだよ!?愛情は嫌と言うほど詰め込んでるからね!?』

 

 

ご飯に卵焼きにお味噌汁に肉じゃがに焼き魚

 

シンプルに和食で出した料理を幸せそうに食べてくれたダーリン。

思わず嬉しくて泣き笑いしてしまったなぁ…。

 

 

 

 

 

鳳翔さんに習った和食。

鳳翔さんは教えて欲しいと言うと必ず教えてくれる。

誰も鳳翔さんには敵わないのは知っている…。

でも彼女は違う。そうは思ってない。

『ただ、料理が好きで…沢山してきたから…かな?』と言う。

『それに…食べてくれる人への想いの込め方は…測れないでしょ?』

 

あの人が喜んでくれるのが好きだから…。

だから彼女は教えを拒まない。

そして必ず…『愛情をたっぷり込めて下さいね』と言う。

 

 

 

 

鳳翔さん…。

美味しいって言ってくれたよ!

 

なんて思い出しながら布団の中で笑う。

 

 

「ねぇ?ダーリン」

呼んでみる。

 

「ん?何だ?」

答えてくれるあなた。

 

 

 

 

 

「愛してるよ」

だから精一杯の持てる限りの想いをあなたに捧げたい。

 

「俺もだよ」

そう返してくれるあなた。

だから少しだけ意地悪をするんだ。

 

「ちゃんと言って?」

少しムスッとした私にあなたはアハハと笑いながら応えてくれます。

 

 

「鈴谷」

彼は真剣な目で私に話しかけます。

 

「ん?何?」

 

 

 

「愛してる」

 

「うん」

 

 

 

 

 

「他の誰にも負けない程に君を思ってるよ」

「ずっと……この命が果てるまで君と居る」

 

「死ぬときは…お年寄りになってからね」

 

 

 

 

 

もぞもぞと近寄ってみる。

ぎゅっと抱き寄せられる。

 

 

「まだ怖いか?」

 

「ん…。でも死なないよ。私は」

「あなたと…ダーリンとずっと一緒に居たいからね」

 

「ん、なら俺も頑張る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ねぇ?ダーリン?」

 

「何?鈴谷」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………あのね?…えとね?……………良いよ?」

ボソボソと言ってみる。

 

「………ん?」

 

「………ね?」

恥ずかしさと何もかもですごい顔してるだろなあ…。

 

 

「………ん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜中に目が覚めた。

 

隣にあなたが居る。

それだけで幸せ。

この眠さも、感じる痛みも何もかも…

あなたと共に…なら、私はそれだけで幸せ。

あなたの幸せは私の幸せ。

 

 

あなたも…少しでも良いからそう思ってくれたら……幸せだな。

 

 

 

思い返してみる。

 

母港に帰りたくないな

今日が終わってほしくないなってかなり思った。

 

でもその分また来年を楽しみに頑張れる。

 

 

「絶対にダーリンを遺して逝ったりしないから」

「あなたを絶対に守るから」

 

 

 

「愛してるよ…ダーリン」

 

そう言ってキスして私は彼の腕の中でまた眠りについた。



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408話 母港での日常

 

「………」

 

 

「………」

 

 

 

「はい…」

 

 

 

スマホ?というものは便利ですね。

別の世界の人にでも連絡を取れるのですね。

提督がスマホを手にぺこぺこ頭を下げています。

相手は…麗ちゃんでしょうか?

 

 

恐らく連絡してなかった事を怒られてるのですね。

フフフ…あの子もあの人が大好きですからね…。

 

私も…すまほとやらを持てばいつでもやりとりができるのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

「……よし」

 

「お電話終わりましたか?ずっと頭を下げてましたね。麗ちゃんも寂しかったんですね」

 

「ん?ほ、鳳翔!?」

ギクッ!と言う音が聞こえそうな程のリアクションを見せてくれるあなた。

 

「あれだけの動きをしてたら目立ちますよ?」

 

「うう…恥ずかしいな」

 

「そんなことありませんよ?……で?麗ちゃんは許してくれましたか?」

 

 

 

「あ〜…いや…えとだな」

私の問いに歯切れの悪い返事をするあなた。

 

「?」

小首を傾げる私に…「シミュレーション…」と呟いたあなた。

 

「…はい?」

 

「麗ちゃんに電話した時のシミュレーション……絶対怒られるから…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆笑しました。

腹を抱えて笑いました。

初めてでした、笑い死ぬ!と本気で思ったのは…!!

といいますか…割とそんなこと気にしてるタイプなんですね?

あぁ…でも何日も連絡くれなかったら少し怒っちゃうかも…。

はい、あなたが少しだけ悪いですね。

 

『指揮官様?繋ぎますか?』

いつもより1トーン高めの楽しそうな声で聞いてくるのはTBちゃん。

 

「あぁ…うん、いや、まだ…ええと」

恐らく…というより、確実に怒られるのがわかってるのだろうか?

中々GOサインを出さないあなた。

 

「いいですよ、TBちゃん。かけてください」

 

「ふぁっ!?ほ、鳳翔!?」

 

「怒られるなら少しでも早い方がいいですよ?早く安心させてあげましょう?」

「1人で怒られるのが嫌なら私も一緒に怒られますから」

 

 

 

「え!?いいのぉ?」

縋る子犬のような目で私をみるあなたを始めてみました。

そんなに麗ちゃんは怖いのかしら…?

 

「はい、それがである私の役目ですから」

 

「……火にガソリンをぶち撒ける発言だよぉ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしもし?」

彼が話しかける。

 

 

暫くの間無言が続いているのか何も聞こえなかった。

 

 

 

 

 

 

「……救君?」

か細い声が向こうから聞こえた。

 

 

 

「うん」

 

「……」

 

無言が続く。

彼はえと…あの…と慌てている。

でも私には分かった。

 

 

 

彼女は泣いているのだ。

厳密に言うと泣くのを必死に我慢しているのだ。

 

不安で仕方なかったでしょう。

来たくて仕方なかったでしょう。

顔が見たくて、声が聞きたくて仕方なかったでしょう。

 

彼に背中を任された事を…必ず帰ってくる事を支えとして日々を戦っていただろう彼女。

 

 

 

 

 

 

 

「よがっだ…」

 

その言葉で彼もやっと理解したらしい。

 

 

 

 

「ごめんッ!麗……麗ちゃん!!」

彼は頭を下げる。

例え彼女に見えてなくともしっかりと…。

 

 

「うわぁぁぁん!!」

電話の向こうから大号泣が聞こえた。

 

 

「ずっと繋がらなくて…不安で…不安で…」

「でも…信じて待つって決めてたから…グスっ…」

 

「でも…あんなもの見せられたら……」

 

 

 

「あんなもの?」

 

 

「…救君達が倒れてるとこだよ」

「桜赤城さんも死んだのも見たの…」

 

 

「…ッ!?」

「な、何でそれを!?」

俺も含めて皆が息を呑んだ。

 

 

 

 

 

 

知ってるはずがない事のはずなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

「もう1人のピュリちゃんが来たの」

 

「は?」

 

「もう1人のピュリファイヤーちゃん」

「あなたは…救君はあそこで死ぬって…!私…何もできなくて…」

 

「アイツの居た所を壊すんだって…攻めて来たの」

 

 

「…ッ!麗ちゃんは無事なのか!?猛武の皆は!?」

 

「自分の帰る所は心配じゃないの?」

 

「そんなものいい!皆が居てくれればそれでいい!」

 

 

「だめだよ」

「私にとっても…沢山の思い出の場所だから」

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたの帰る場所は…ちゃんと守ったよ」

「これからもあなたが帰るまで守り続けるから」

 

「だから」

 

 

「だから安心して戦って」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私たちの知らないところで麗ちゃんは戦っていた。

大好きな人の帰る場所を守る為に…

不安を振り払って、己を燃やして。

 

生きててよかった

声が聞けてよかった

 

 

 

 

「元気出た」

「大好きだよ、救君」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも連絡くれないのは寂しいんだよ!?」

「僕も一緒に戦って待ってるんだよ!?」

 

切ない感じの空気は一変した。

幸の登場である。

 

 

「僕に内緒って酷くない!?遊びに来たら恋敵がまも君の部屋で寝てるしさあ!!」

 

「「え?」」

一瞬で空気が凍りつく。

 

「俺の…」 「提督の…」

「「部屋??」」

 

 

 

「ちょっ…幸ちゃん!!それは言っちゃ…」

 

「何でよ!びっくりだよぉ!?まも君のベッドで幸せそうに寝てるんだよ!?僕泣きそうになったよ!!」

 

「そ、それは幸ちゃんが飛び込んで来たからでしょ!!」

「と言うか救君だと思って部屋に入って来てベッドに入ってきたんじゃない!!」

 

「うっ…そうだけど…でも勝手にベッド使ってたのは麗ちゃんでしょ!?まさかそんなことになってるとは思わないでしょう!?」

 

通信の向こうでは2人がワーキャーと言い争いをしている。

私からしても…旦那様のベッドで寝てるなんて…なんて羨まし…ゲフンゲフン。

 

えと……旦那様は……

あー…、固まってますね。

放心状態ですね。

 

 

 

 

 

「……2人とも…?」

 

 

 

「「……はい」」

 

 

 

 

 

 

「帰ったらお話があります…」

 

 

 

「ヒッ…」

「あ……しんかいせいかんがせめてきたよ!ゆきちゃん」

 

「うん!そうだね!まもくんのたいせつなおうちをまもらなきゃ!だね」

 

「「よぉし!がんばるぞお!!」」

「「というわけでいってくるね!!」」

 

 

「おい」

 

ブツリ…。

 

 

 

 

 

 

「切りやがった…」

その言葉と共にハッとする救。

「…TBちゃん?」

 

「はい?」

 

「俺の部屋…ってさ…?」

 

「はい、皆さん指揮官様の居ない間に………」

デバイスを見る俺から視線を逸らすTBちゃん。

 

 

「………なんなん?」

 

「…程々にしないと…ですよね!」

 

「え?」

 

「あっ…いえ……ゆ、許せませんね!!」

つい本音が…。

 

「……鳳翔?……暫くお部屋出禁ね」

 

「ひゅ!?!?」

「な、ななななななぜ!?」

  

 

 

「暫くは…みーんな出禁にしよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の晩…。

 

「〜♪今日も指揮官様のお隣で寝ますわぁ♡」

と、鼻歌混じりに廊下を歩くのは桜大鳳。

救の部屋の前に立ち胸元から手作りの合鍵(非公式)を取り出す。

 

 

「あら?鍵が合わな………」

桜大鳳の持つ鍵が合わないらしい。

その理由を彼女は2秒で理解する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官様ぁぁ!?どうしてこんな…鍵が……20個も…!?」

 

 

「…暫く皆さん出禁です」

 

「ふぁっ!?!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで安心だ…」と、一息つく救の部屋のドアがノックされる。

 

 

「……あなた?せっかく作ったお夜食冷めますよ?」

ドアの前にはお夜食を持った間宮が居た。

 

「やべえ!そうだったぁぁあ!!うおおお!!」

総勢25個の鍵を一生懸命に開けて行く救の姿があったとか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…で、出来ました25個分の合鍵…」

3日かけて桜大鳳は合鍵を完成させたが、翌日には鍵を変えられたうえに数が増えていたのを見て膝から崩れ落ちたとか…

 

 

 

 

 

 

 

 




少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!

更新ペースが落ちますが、ご容赦下さい…


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409話 提督と艦娘 ①

 

 

影が部屋を出る。

そろりそろりと足音を立てずに部屋を出ようとすると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どこへ行こうと言うのかね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の朝イチはこの一言から始まった。

 

「ふぇぇ!?」

 

「もう一度聞くよ。どこへ行こうと言うのかね?」

強めの口調で問いただす。

 

「はぅ…」

片方はしどろもどろになっている。

 

「答えない……と」

「それとも……答えられない………?」

 

「いや…あのね?これは…ね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

救と初月だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

問い詰められているのが救であり、そのやり取りが行われているのは救の私室である。

 

 

 

「こんな早くからどこに行くって言うの?僕を置き去りにして!」

 

「お、置き去りィ!?そんなつもりは…」

 

「でも1人で行こうとしてるじゃないか」

 

「いやいやいやいや!部屋に…布団に入り込んでいたのはお前だろう!?」

 

「温もりが欲しいじゃないか!!」

 

「温もりならあるだろー!?その黒いスパッツ的なのがさ!!」

 

「人肌が恋しいんだよ!」

 

「スパッツ越しの温もり!?邪魔にならない!?それ!」

 

「………むぅ」

ぷくりと頬を膨らませモジトジとする初月。

 

 

 

 

「………いか」

ボソリと初月が何かを言う。

 

「ん?」

 

彼女は叫ぶ。

「破いたらいいでしょ!獣みたいに」

 

「何で俺が怒られてんの!?」

 

「さあ!破りなよ!オータムセンセーの本みたいにさァ!」

「大丈夫だよ!替えも沢山あるから!」

「部屋も涼しくしてたし、お風呂で綺麗にしてるから…その…匂いとかも大丈夫なはずだから!」

 

「い、いや…話がズレてる…」

 

そも、救は気付いていた。

誰かしらが布団に潜り込んでいた事は。

しかし、いつものこと過ぎて慣れを起こした彼は逆に潜り込んできた者を抱き枕にしたりしている。

今日も背中にしがみつく初月を感じながら抱き枕にしがみついていたのだ。

 

 

 

「まあ良いや…寂しかったんだな…初月」

初月を抱き寄せて頭を撫でる。

初月は顔を綻ばせて「はぅ…」と言っている、救は心の中で勝利を確信した。

「な?これで寂しくないだろ?」

 

「うん」

 

「よおし…良い子だ。お留守できるな?」

 

「うん」

 

「ベッドで寝てて良いから」

 

「本当?」

 

「あぁ!いいぞ!」

 

「嬉しい…」

 

「よし、俺は少し出てくるから…な?」

 

「……うん。…………うん?」

 

 

策士とは相手を読んで勝つものである。

彼は利用した。彼女達の弱点を!

私物である!

ぶっちゃけ追われる時もトリモチや捕獲ネットを放つよりも上着を投げつけた方が効果的なのだ。

それを知っている彼、故に負けない。

 

 

 

 

 

「だからどこに行くって?」

初月の目が赤く光る!

 

「チイィッ!!逃げられん…だと…!?」

 

 

––––だが、策士は策に溺れる。

勝利を確信し、油断した時点で負けは決まるのだ。

 

 

 

 

 

「良いのかい?提督…」

初月は声をワントーン落として言う。

 

「この手に有るのは…このスイッチは…対提督用緊急招集スイッチだ」

 

「…たい…ていとくよぉ?」

 

「これを押せば照月を始め…夕立や時雨達がすぐに駆けつけるぞ?」

 

「何でそこまでするの!?」

 

「僕は…!僕はぁっ!提督を独り占めしたいんだッ」

 

「おっと!動かないで!!押すよ?そうすれば…提督は外には出れない…よ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前も俺を独り占め出来なくなるけどな…」

 

「…あ」

 

「え?今気付いたの?」

 

みるみると苦悶の表情に変わって行く初月。

 

「そうかあ…。うん、押して良いよ?俺1人なら…初月を丸め込んで逃げられる気もするからな」

「でも…何で君がここに居るの?ってなるよね?」

 

「うぐっ…!!」

 

「そうしたら君は問い詰められるだろうな…」

「そして俺は正直に言うよ?初月が夜な夜な部屋に侵入して布団に潜り込んできたって」

 

「ふぐぅ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの…鬼怒もいるんですが…」

 

 

「鬼怒ぅぅ!?」

 

 

伏兵は居た。

寧ろ初月よりも前から布団の中に居たッ!!

 

というか彼が今日抱き枕にしてたのは鬼怒だった。

 

「鬼怒の方が先に提督に出会ったのに!お姉ちゃんの方が先に結婚して…ッ!嬉しいケド…!嬉しいケド!!なんか複雑っ!」

「だから潜り込んだの!」

 

「鬼怒…ぱない」

初月が鬼怒の勢いに圧されている!

 

「それは鬼怒の十八番!!」

 

 

まさかの伏兵の登場で戦場は膠着状態となっていた!

しかし、このままで困るのは三者三様である。

救は己の目的の為にこれ以上時間をかけていられない。

初月と鬼怒は時間をかけると他のメンバーがやってきて厄介になる。

2人きりだと思っていたらそんな事はなかった訳で…ライバルを排除しない訳にはないかないし、提督を流したくないし。

 

 

故に仕方がない。

ここは2人で提督をシェアすると言う考えに至る!

背に腹はかえられない!!

 

 

 

 

 

 

「そ、それより!提督はどこにいこうとしてたのかな?」

 

「そ、そうだよ!気になるよ!」

 

 

提督と一緒に居る…。

2人きりは叶わないとの考えには至ったが、目的は一致している。

強いて言えば、追い出されてショボンとした仲間を見たくないのと、泣き出して他のメンバーを呼ばれても面倒だから…穏便に済ませたいのだ。

 

そんな2人の問いかけに対して彼は思う。

正直に言うしかない…と!

 

 

 

 

「焼き立てプリンパンを手に入れたいッ…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

「やきたてぷりんぱん?」

 

「プリンパン」

 

 

「て、提督はそれだけの為にこんなに早くから行動するのかい?!」

初月は驚いた。

彼が無類のスイーツ好きなことは周知の事実だが…まさかそこまでとは!

何故なら今は午前3時30分!

船で行くとしても…早すぎるのだッ!

 

「あぁ、早朝モーニングをしてる店があってな…。そこでコーヒーを頂いてから並ぼうと思っていたんだ」

 

 

 

 

 

朝の6時半からそのパン屋はオープンする。

しかしそこは地元で有名な影の人気店ッ!早朝とは言え…並ぶのだッ!人が!!

ましてや救の求めるプリンパンは週末だけの特別メニューッ!!限定10個のお一人様1個までッ!!!

 

弱いッ!……限定という言葉に…ッ!欲しくなる!

並ばないはずがないッ!人が!!

故に彼は早めに行動をしたのだ。しようとしたのだ。

 

3つも買えないから!

3人で行っても買えないかもしれないから!!

 

 

 

 

何としても食べなければならなかった!!

 

 

 

「……」

そのただならぬ闘気に気圧された2人。

最早、一般人から放たれるそれではない。

 

 

 

 

「あの…」

鬼怒が口を開く。

 

「それって鬼怒達もついて行ったら……ダメかな」

「あのね?ちゃんと鬼怒達も並んで買うから…買えなくても文句言わないから………だめ?」

 

「お、お願い!僕も行きたい!」

 

 

「な、何で…そこまで…」

彼はハッとした。

 

 

 

 

 

一緒に居たいから…。

布団に潜り込んで来るほどに、引っ付いて離れない程に。

例え、それが一緒に食べられなかったとしても…笑顔を見られるだけで幸せだから。

その時間が愛おしいから。

 

 

「……あー………」

そんなこと聞かなくたって分かるじゃないか。

 

 

 

「……行くか?」

 

その言葉に2人はパァッと明るくなる。

 

「「うん!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴソゴソと3人で母港を出る。

目指すはプリンパン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこまでうまく行くかは…別の話だが……。

 



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410話 提督と艦娘と悪魔 ②

 

どこで用意したのか?と言いたくなる小舟を操作して彼は行く。

というか…彼女達からすれば信じられない光景である。

 

夜の海を1人…ましてやこんな小舟で行くなんて無謀にも程があるのが私達の世界の常識だった…。

……まあこの人たまに灯台とか行ってたけど…

 

ここら辺のセイレーン達は大人しい。

それは先の作戦での傷が影響しているのか…

最大戦力の母港近くだからか…

 

どちらにせよ、平和に越した事はない。

しかし、やはり考えてしまうのでソワソワしてしまう。

いや…絶対何があっても守り切るんだけれども、やっぱり少し怖いのと…お出かけが出来る嬉しさが……うん…。

 

 

都合の良い感じに用意された提督が契約しているらしい船着場に船を止める。

私達が船から降りるってのもシュールだけれども…うん、気にしないでおこうか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ……」

 

「あっ」

 

「むっ」

 

 

 

 

 

港の近くにパン屋はあった………が、少なくとも15人以上は並んでいた。

 

一目で分かる。

これではプリンパンを買う事はできないだろう…と。

 

 

なんやかんやで今は5時少し前。

救の当初の予定であるモーニングを食べてから並ぶと言うのは叶いそうにない。

 

 

2人は苦い顔をした。

もし、自分達が時間を掛けずに提督を行かせていれば間に合ったのではないか?と考えられずには居られなかったのだ。

 

 

 

 

 

「仕方ない、モーニングでも食べてからパン買って帰るか」

と、彼は飄々と言う。

「えっ」「あっ」と言葉にならない言葉しか出ない2人は恐る恐る救の顔を覗くが救はケロッとしていた……のが逆に怖くて申し訳なかった。

 

「ご、ごめんね…提督」

彼の前に出て頭を下げる。

 

どんな言葉でも甘んじて受けようと思った。

でも彼は私達の頭にポンと手を置いて撫でてくれた。

 

「気にするな……っても無理か」

よしよし…と愛おしそうにその両の手で撫でてくれる。

そして、「行こう」と私達の手を引いてモーニングへと向かった。

 

 

ぼんやりと明るくなってきた中、周りはまだ暗い中でポツリと明るい所があった。

提督の目指した喫茶店である。

店先ではほんのりとコーヒーとパンの焼ける匂いがお腹に突き刺さった。

 

 

「…くっ!何で美味しそうな匂いなんだ」

初月は口元を拭いながらジイッと店を見つめた。

 

「この匂い…ぱない」

眠さからか…語彙力の低下が見られる鬼怒であった。

 

 

 

 

「…あぁ、君か…いらっしゃい」

 

「マスター、おはようございます」

 

マスターと呼ばれた初老の男性が救達を迎える。

 

「…今日は女の子連れか」

厳粛そうな雰囲気を醸し出すマスターはそう言う。

きっと厳しい人なんだろう…。私達居ていいのかな…と不安になる。

 

「いつものでいいか?」

 

「はい、オススメで」

 

 

 

慣れた手つきで粛々とコーヒーを淹れる。

焼き上がったパンと同時にコーヒーを出される。

「甘いのが好きなら牛乳と砂糖を入れるといい」

「パンは熱いうちに食べるといい」

 

無愛想な感じに説明してくれるのを不安気に見る私達。

提督は少し笑っていたような気がした。

 

 

 

ある程度食べたところでスッとマスターが何かを出した。

女の子が写った写真だった。

 

ゴクリ…と唾を呑む私。

ま、まさか…

 

「次はこの子が?」

 

まさか…殺すリスト……?

 

 

 

 

 

 

 

「来年、下の子が高校に入学するんじゃあああ!!!」

「見てみ?見てみ?めっちゃかわええじゃろ?」

 

 

「「ええっ!?」」

 

先程までの雰囲気は粉々にぶち壊れ、写真を見せびらかしながらクネクネする爺さんが目の前に居た。

 

 

 

厳粛そうな雰囲気のおじさまは…ものっそいお茶目なおじさまだった。

なんでも…

「やっぱり雰囲気とかって大切じゃろ?ロマンスグレーなお爺さまで居たいんじゃー」…だとか。

 

「カワイイデスネー」

 

「でもやらんからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モーニングを終えてパンを買う。

皆にも買って帰ろうという事で、食パンを買えるだけ買って帰る。

 

「帰ったらズルイって怒られるかな…」

 

「僕は大丈夫。お腹いっぱいになったからね…。多少の小言には耐えられる」

不安がる鬼怒に初月は堂々と言い放つ。

多分意味はズレてるんだろうけれども…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら?お帰りなさい指揮官」

出迎えてくれたのは桜鈴谷達だった。

 

「デート?…羨ましいです…私の事も誘って…欲しいんですけど」

 

「ごめんね…次は行こうね」

 

「はい、鈴谷は分かってますから」

 

 

「で…出迎えてくれたのには理由があるんだろ?どうした?」

 

 

 

「ふふふ…指揮官?指揮官に見せたいあるのよ?」

 

「ん?なんだ??」

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女達が差し出したのはプリンパン。

「……え?」

 

驚く彼等に彼女達は笑いかける。

 

「こういうの好きでしょう?」

 

「え?え…え?え?」

 

 

 

 

 

 

「あ、ありが––––––––

 

受け取ろうとする救の手は空を切る。

「あげるとは言ってませんよ?」

 

そのプリンパンを手にした者達がズラリと並ぶ。

そう、並んでいたのは西波島の面々だったのだ。

 

「1人抜け駆けして食べようとした…までは良いとしても、他の女を連れて夜な夜な出て行くのには…ねぇ」

 

「ならばいっそ買い占めてやろうと…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このプリンパンがぁ欲しければぁ〜?」

 

「「今日の夜のお供は私達に決定…でなければねぇ?」

 

悪魔の如き顔をする桜シリアスと桜鈴谷。

 

「そ、そんな卑怯な手に提督g「何なりと…!!」

 

正義は悪の枢軸の手に堕ちた。

むしろ、即オチした。エロ漫画でも驚く程の速さの堕ち方だった。

 

 

しかしながらソレを食べる提督の顔は幸せそのものであり、私達も少しにこやかになる。

 

 

 

 

 

……それ以上に悪魔のような笑みを浮かべるアズレン組には私達も少し戦慄する。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、恐ろしい速さだったね…。というか提督はそんなにスイーツが好きなんだね」

 

「ん?まあね」

 

「どうしてそんなに好きになったの?」

 

 

「どうして………かあ」

 

考えたこともなかった。

何で好きになったのか…なんか。

いや、本当は知ってるんだ。

 

 

 

 

孤児院の生活は決して裕福では……いや、貧乏だった。

その中でたまに、本当にたまに食べたホットケーキが好きだった。

その日は皆が笑顔で嬉しそうに、幸せそうにそれを食べていたのが強く印象に残っている。

 

『甘いものは皆を幸せにしてくれるんだ』そう思っていた。

 

大学で一人暮らしをした時も、社会人になってからもそれは変わらなかった。

良いことがあったら…辛いことがあったら…ご褒美に…

甘いものを食べるようになった。

もちろん、孤児院にも贈った。

 

きっとこれが皆を幸せにしてくれると信じていたから。

 

 

 

「子どもっぽかったかな」

 

ポツリと彼が言った。

 

えぇ、きっと甘いでしょう。

砂糖菓子よりも甘い理想でしょう…。

 

 

でもそれはこの世界だから。

彼が生きていたのは今とは程遠い世界…。

だから……

 

 

 

 

 

 

 

いいえ

 

でもその理想こそがあなたなのです。

それでいいんです。

 

「私達はあなたと一緒にいられて幸せですよ?」

「見てください?あの皆の笑顔を」

鬼怒は皆を指差す。

 

 

 

 

 

 

 

初月は顔を逸らす。

 

 

 

 

 

 

 

「……悪魔のような笑顔だけど?」

いいことを言った鬼怒の前には悪魔が列を成していた。

 

 

 

 

「………悪魔に魂を売ったのは提督ですから…」

鬼怒はそう言うしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

え?この後ですか?

指揮官狩りか母港で繰り広げられたらしいですよ…。





入院してました…


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411話 どこに行っても変わらない ①

 

救達がアズールレーンの世界へと行きはや数週間以上が経った。

 

母港の機能も飯屋以外にも拡張されつつあった。

艦娘達や戦姫達も割と…というか普通に慣れ始め、三者でうまくやっているようだ。

 

救の仕事もこの世界においては普通の指揮官になるので艦これ世界程の忙殺される仕事量ではない。

…とは言え、多いのは間違いないのだが…。

まぁ比較的時間が取れやすので皆との交流も盛んである、

 

 

 

さて、ここは母港の中の庭…というよりかなり広い広場。

今日は割と涼しめで過ごしやすい天気だ。

 

レジャーシートやらパラソルやらを立ててのんびりしてる者も珍しくない。

 

 

 

 

 

そんな平和な広場の一角にて……

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、あなた?ごはん…できてます」

 

「おう…」

 

スッと出されたのは泥団子。

俺達は加賀、まるゆ、イクに長鯨とおままごとをしていた。

葉っぱをお皿に見立てて出された綺麗な泥団子。

 

 

「あら?召し上がらないのですか?」

 

「お、おう!?食べるぞ!?食べるぞぉ!?」

 

食べるとは言ってもおままごとである…ので救はそれをパクリと食べるフリをする…

 

「うん、美味しいぞ」

 

 

「ぱぱぁ〜。私にも食べさせてぇ?」

娘が引っ付いてくる。

可愛いなと頭をなでながらスッと泥団子を娘に食べさせるふりをしてから置く。

 

その光景をニコニコと見ていた母…彼女はにこりと笑って…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら?あなた?食べてませんよ?」と言う。

 

 

 

 

 

「「は?」」

 

 

「いえ、は?じゃなくて…ね?食べてませんよね?ひと口も」

 

「いや…あのね?k「ひと口も食べずに私が丹精込めて作ったお団子(泥)の味がわかるのですか?」

 

「いや…」

 

「あ、娘ちゃんも食べたいって言ってましたね」

 

ちゃんとあなたの分もありますからね…と後ろから取り出した追加の泥団子。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ…加賀ちゃんあーんしてね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだ。

嫁役はまるゆである。

旦那は俺、娘は加賀(次女3歳)であり、レジャーシートの端の方でガタガタ震えているイク(長女)が居る。

 

「え、あ…お、お母さん?わ、私やっぱりお腹いっぱい…」

3歳の設定を忘れるくらいの流暢な喋りを見せる加賀。

元は赤ちゃんの設定だったが、「無理」との事で3歳になった。

 

 

「あらあら加賀ちゃん?ママでしょ?好き嫌いはだめでちゅよ?」

迫る泥団子…と鬼神の如きまるゆ。

追い込まれる加賀。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私!私、赤ちゃん!!ミルクで良いいいいい!!」

加賀(赤ちゃん)は叫んだ。

むっ…というまるゆの声、加賀は確信する。

プライドを捨てて赤ちゃん設定に帰る事で団子を拒否できる…と!

 

 

(捨てやがった…!加賀がプライドを捨てたッ)

まあ…嫌だろなあ…

仕方ないかあ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい」

ドン!と出されたのはミルク(泥水)

 

「なっ…」

歴戦の一航戦は戦慄した。

 

このまるゆ…用意周到だった!!

 

 

 

「「嘘やん…」」

思わず声が重なる救と加賀。

 

 

 

 

 

加賀ダウン。

一航戦も震え上がる母性だった。

 

まあ元々が赤ちゃん設定だからね…

用意してるよね……

 

轟沈(意味深)した加賀を横目に目の前のボスと対峙する俺。

ガラガラと団子を持ったその艦娘に勝てるヴィジョンがまるで浮かばない。

 

 

 

 

 

 

 

 

その時だった。

ピンポーンとなるチャイム(長鯨の声)

すかさずイクが「きっとお友達の長鯨ちゃんね!で、でてくるのね!」と席を立ちガチャリ(イクの声)とドアを開ける。

 

 

 

 

 

 

え?嘘?って聞こえた気がした…。

 

 

 

 

 

 

 

「ぱ…パパ、ママ…」

 

「あのね…長鯨ちゃんがね」

あからさまに目が泳ぐイク。

ちょうどイクの後ろに長鯨は居るので彼女の表情等は見られないのだが…

 

 

「うん?どうしたの?座ってもらいなさい?」

「ちょうど良かったわ、長鯨ちゃんもご飯食べる?」

 

まるゆは特に気にする様子もなく、役に徹している。

 

 

「…救さん」

 

姿の見えない長鯨から俺の名前が出た。

 

 

 

そんな設定あったか?と、一瞬考えたが…確か娘の友達が来るとか言う設定だった…まあそんなものか?思い出しながら振り返ると…ちょうどイクが横に避けたのか長鯨の姿が見えた。

長鯨はまるゆの方を見て…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……この泥棒猫」

「私の愛する人を返してよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

包丁(段ボール)を持った長鯨がハイライトをオフにして立っていた。

 

 

 

「おうふ……」

目の前がクラッとすると同時に寒気がする。

アレか?娘の友達と××な関係になった!的なやつか?!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ!救さん!私の事…愛してるって…!その女と別れてくれるって言ったじゃない!!」

 

「んなっ!」

 

 

まるゆはクルリと首をこちらに向けて「…誰ですか?あなたのお知り合い?」と言うので…

 

 

「えぇ……初耳だょぉ…」と答えてみたら

 

「酷い!!このお腹の子も…一緒に育てようねって言ったじゃない!……うっ」

口元を押さえてよろける長鯨。

 

「子供まで作ったの…?」

またもや、まるゆが首だけをギギギギっとこちらに向ける。

どうやらこちらもハイライトをオフにしたようだ。

 

 

「パパ…酷い…」

ここぞとばかりに乗るイク。

 

「いや、イク!違うんだ!これはきっと…」

 

 

「パパ!酷い!!」

 

 

 

 

 

 

「救さん………うっ」

またも口元を押さえる長鯨。つわりか?

 

 

「あなた!?他の子に…!?3人目もできたばかりなのよ!?」

 

「初耳ですが?」

 

「タイミングを見計らってたの!」

 

神崎家、3人目を懐妊という喜ばしい出来事が起こる……家庭崩壊の危機も起こってるけど。

 

 

てか、くっそリアルな演技やめてくんない?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え?加賀?

 

 

 

聞かない方がいい…。

 

え?知りたい?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おしゃぶり咥えて泣きながらゆりかごに入ってるよ。

 

「提督…私は今空気なのでこちらを巻き込まないで下さいね」

 

「いや…う、うん、そうするよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?てか、俺どんな設定?ヤベーヤツじゃね?娘にも手出して…」

 

「働かずにギャンブルと女遊び三昧」

 

「圧倒的にクズじゃねーか…」

 

「私の友達も毒牙にかかったのね」

 

「救いようもないな」

 

 

 

 

 

「ねえ!!別れてよ!こんな女ッ!泥団子を無理矢理食わせるような女より私の方がいいですよね!!!?」

 

「ん?設定はどこに行った?」

 

「はぁぁあ!?こちとら初登場は赤ちゃんですよ!?やっとまともな出番なんですけどぉ!?」

 

「まともでは…ないわな」

 

「赤ちゃんよりマシですぅぅ!!!」

 

「やめようねぇ…加賀がさらに泣いちゃうからねぇ…あ、ほら、こっちに背を向けて震えてるヨォ…泣いてるよお」

 

 

「今は一航戦(笑)はどうでもいいの!!」

「イクちゃん!どっちの味方なの!?」

 

「イク!?ママの味方よね!?」

 

2人はイクを見つめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パパ…私が一番だって言ってくれたのね…!…うっ」

イクも口を手で押さえる。

 

「「「は?」」」

 

イクはにこりとして言う。

「パパ?出来ちゃったみたい…」

 

 

 

 

「「「なにぃぃぃぃいいいいい!?!?」」」

 

ここに来てまさかの爆弾発言…by娘

 

「え?俺の子?!」

 

「え?そうだよ?イクとパパ…この前愛しあったでしょ?」

 

「えええ!?」

「え……ええええ…って!まるゆ!その(段ボール)包丁をしまいなさい!それは危ないし教育上よろしくない!って!!おおい!!長鯨!?さっきまで段ボールだったよね!?何で本物に変わってるのかな!?てかそれ包丁じゃないよね!?斬魄刀じゃね?やめよ?色々アウトだから」

 

 

「滲み出す混濁の紋「ダメだからぁぁあ!!」

破道はダメだから、それ強いやつだから。

 

 

 

 

「なに?2人とも…私の邪魔をするの?」

イクが鎌を構えている。

 

「どっからそんなの持ってきたの?」

俺の冷静なツッコミにイクは…「命を刈り取r……」とか言ってたが俺は聞こえないフリをした。

 

 

 

「…あまり強い言葉を使いすぎるな…弱く見えr……「まるゆ?やめておこうね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はん!生き残ったのが神崎の嫁だァァ!!」

 

「臨むところだぜぇぇえ」

 

「ブッコロせぇええええええええ!!」

 

 

 

 

 

いつの間にか黒い和装に着替えた3人が激突するのを見た俺は…

そっと加賀をお姫様抱っこしてその場を去った。

ここに神崎家は崩壊を宣言して…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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412話 どこに行っても変わらない ②

 

リアル昼ドラおままごとから解放され…逃げ出した救と加賀。

執務室の窓から様子を見てみると…

 

 

「……もうアイツら艤装無しでも世界征服できるんじゃね?」

と、彼はつぶやいた。

 

詳細はアレだけれども…

ハドーケン!とかタツマキッ!とか

ショータイムダ!!とか色々聞こえていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご主人様…」

 

「うん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前に並ぶメイド隊は全員であり、不満気な表情を浮かべていた……と言うより桜シリアスとかは泣いてた。ガチ泣きしてた。

 

 

「あの丸いのは何でしょうか?」

 

 

桜ベルファストが見る方向には…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴン…ゴン…

丸いものが未だにおしゃぶりを咥えて泣く加賀に体当たりを繰り返していた。

 

 

 

 

 

 

 

「え?お掃除君の事?」

 

「お掃除君……ですか……はい、あの丸いお掃除ロボットに仕事を取られた…と報告が多数上がってます」

「と言いますか…加賀様はずっとアレなのですか?」

 

 

そう、心にある意味深い傷を負う事件があった。

加賀は色んな意味で幼児退行してしまった…かつての一航戦の誇りは消え失せて、今となってはルンバに体当たりを喰らいながら泣く大きな赤ん坊と化していた。

 

「…泥ミルク………えへへ…」 ゴン…ゴン

 

「加賀…辛かったな…。今はゆっくり休もう…」

 

「ぱぁぱ…」

頭を撫でる救に大きな赤ん坊は満面の笑みで答える…が、時折りあの事件を思い出しては泣くのだ。そしてルンバにやられるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………何か色々と違う気もしますが、私達の掃除の仕事が取られてるのです!」

 

「そ、そうです!誇らしきご主人様!私の仕事が丸っこいロボットに奪われてるのです!!」

 

「桜シリアスは仕事増やしてるだろぅ!?お仕置きして欲しい為に」

 

桜シリアスが焦ったように言う姿をジト目で見る桜ベルファスト。

 

「なっ……あっ!め、メイド長!?ワザとじゃありません!決して!決してお仕置きと称して誇らしきご主人様を独占したい等と考えていたりは………」

 

 

「……卑しか女ばい………」

ボソリと桜ベルファストは言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お掃除君にゴンゴンされるのが2人になりました。

 

 

 

「全く…言語道断です。我々の目的はご主人様の全面サポートであって、私利私欲の為に行っているものではないのです」

 

 

「はい……桜シリアスは…不出来なメイドです」

「お掃除君にゴンゴンされるくらいがちょうどいいですね……加賀様」

 

「む!」

 

 

 

 

「隅っこ同盟が出来上がってるんですけど…」

 

「お掃除君は彼女達を掃除対象認識してるようですが…」

 

「ジメジメしてるからじゃない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご主人様…アレは……」

プルプルと指を刺す先にあるのは…

 

「あぁ…お話ロボット君ね」

速い話が○ッパー君とか○レクサ的な奴。

 

 

「お話をするなら私達が居るじゃないですかぁ!!」

「何が不満なんですか!?」

 

グイッと寄ってくる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督ぅぅー!お掃除君とお話ロボット君…2つの機能がひとつになった超画期的な発明が出来ましたぁ!!」

 

「おおー!明石〜!」

「………で?その資材はどこから出たのかな?」

 

「ふっふっふー…こまけぇこたぁイインデスヨ」

「見てくださいよコレ!!」

 

 

 

 

 

 

「メイドロボットサンです!!」

 

 

「んなっ…!?」

普段はクール(笑)な桜ベルファストが大きく口を開けていた。

 

「提督の健康管理から食事の配膳、話し相手から動画鑑賞まで何でもこなします!勿論……そっちの趣味にも…うへへ」

「見てくださいよ…こんなところまでリアルに作り込んだのですよお」

 

「うわっ…すげっ……」

「でも…明石??給料から引いとくな」

 

 

 

メイドロボットは完璧だった。

起床から睡眠までのあらゆる管理をこなした。

メイド隊がこなす内容を同様に行うだけだが、無駄がない。

コンピュータを入れてるからね…天気もすぐ分かるし、ネット通販も即座に行える。

飯も必要ないので適当な時に自分で充電器に行けるし、ソーラーパネルすら付いてる。てか明石なら原子力すらいけるんでね?

 

なにより

 

 

「さて、そろそろ休憩…「ダメです」

 

「いや…もうティータイm「まだ進捗状況が68%です。定時までに終わる見込みがありません」

 

鉄の心の厳しさでサボらせなかった。

次第に母港の業務効率は上がって行った。

 

 

いい事ではあるが納得いかないのがメイド隊。

お株を奪われてしまった彼女達は悲しみに暮れている。

 

「誇らしきご主人様は…あのロボットの方がいいのでしょうか」

 

無論、彼女達も対抗意識を燃やしていた………が

 

 

コップを落としてしまった桜シリアスのフォローをしようとした桜ベルファストがお皿を落として割ってしまう事があった。

蒼カールスルーエ達がフォローに入る前にロボットに先を越されてしまったのだ。

 

 

 

 

「うぐっ…ううううっ!!」

あの桜ベルファストが泣いていたのだ。

しかし彼女達には怒る事ができない。

 

 

というのも…この母港…とにかく資金難に等しい状況だった。

上層部からは睨まれ、最低限の資金や物資しか入ってこない状態であり、桜明石や明石、蒼朝日達の尽力で何とかやりくりしているのだ。

 

無論、支給物資の横流しは御法度になるので遠征等で入手した資材の加工や卸売を行っている。

街への人材の派遣も検討されたが有事の時への対応や……女の子と言うこともあり救が許可を出さない。

 

 

故に工廠部は作った。

ロボットを。

 

 

実験的に機能を認められれば街への卸しが可能になるからである。

だから耐えるしか…ないはずなのだが…

 

 

 

 

 

 

 

 

「……いいので…か」

 

 

「うん?」

 

ある日の事だった。

メイド達は彼の前にズラッと並んで言った。

 

 

 

 

 

 

 

「ご主人様はそんな可愛くて失敗しない気遣いのできるロボットが良いのですか!?」 

 

 

「褒めてる…のね?」

 

 

 

業務に差し障りが…と言うロボットを「やかましい!」の一言で黙らせてから彼女達は言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そりゃ完璧だろう」

それに対して彼は言った。

 

 

「だってベースはお前達なんだから」

 

「「……ッ!!」」

 

 

 

そうだ

このメイドロボットのベースは桜ベルファスト達である。

主人への気配り、最適解の算出…

それは彼女達をよく観察している明石達だからこそ再現できた「世話に特化」したロボットである。

だから速く、正確で完璧なのだ。

 

「でもこのロボットには足らないものがある」

彼は言う。

 

 

「な、何ですか?」

桜ベルファスト達は涙ぐみながら尋ねる。

 

 

 

「ここに二つのおにぎりがある」

「一つは暁が握ったおにぎりで、もう一つはロボットが握ったおにぎりだ」

 

 

「……」

食べなくても分かる。

何故なら、見た目が違う。

完璧なまでの綺麗な三角おにぎりと…歪な三角おにぎり。

料理は…いや、料理に限らず見た目程に物を言う。

 

掃除も何もかも完成された物だからこそできる領域なのだろう。

これで劣るものがあるのだろうか?と思う。

 

私達は完璧を目指すメイドである。

その私達をベースとしたのなら……

 

 

 

 

 

 

 

 

ひと口食べて彼女達は知る…

いや、思い出す。

 

私達が絶対に負けないものを。

 

 

 

 

 

 

 

明石達はそれが何かを分かっているようで、えへへ…と笑っていた。

 

「……分かるか?桜シリアス」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誇らしきご主人様への……愛でしょうか」

 

 

 

 

「そうですね」

「ロボットはあくまでロボットです」

 

 

 

 

 

思い浮かんだのだ。

暁が一生懸命に慣れない手で「提督の為に!」と握る光景が。

 

淡々と無機質ではない、その人の事を想う姿が…。

 

 

 

 

 

「家事ロボとしては優秀なんだろうけど…やっぱりお前達には敵わないだろうよ」

 

 

「ご主人様……」

桜ベルファスト達は涙を浮かべて…

 

「まあ…メイドが嫉妬するほど仕事ができるなら…量産体制も考えるか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも、ロボットとは言え…浮気は浮気ですよね」

 

「!?!?」

 

 

「え…ええ!?い、今いい感じにまとまりそうな雰囲気だったよね!?」

 

「…危うく騙されるところでしたね」

「そのロボット…ムフフ機能がついてますよね」

 

「え、あ、うん」

 

「試しましたか?」

 

「え、いや…まだ」

 

「あれ?おかしいですね…『気持ち良かった』と仰ってましたよね?」

 

「あれはマッサージ機能で…」

 

「ま、マッサージならこの桜シリアスにもできますよ!ううっ…グスッ…誇らしきご主人様にならいつでも……襲われてもいいのに…」

 

「あ、明石………って!!居ねえ!!!」

 

「まだ…と言うことは試す予定もあったと言う事ですね?」

 

「いや!これは言葉のあや的な……ね?ね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご主人様?私達の方が優れている事を教えて差し上げます」

 

「は?」

泣き腫らしたメイド隊がハイライトをオフにしてにじり寄る。

 

 

「ご主人様?私の泣き顔見ましたよね?」

「…この胸に空いた穴…埋めてもらいますからね」

 

 

 

 

 

彼は思った。

やっぱり生きた奴の方が恐ろしい……と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後…

 

「…もう3時か…でもキリのいいところm「ご主人様♡?ティータイム♡しましょう」

 

「いや…これがもう少しで終わるかr「ね?根を詰めすぎてもダメですからね?ね?」

 

 

甘やかすメイド?

いえいえ、彼女達の目はマジです。圧力です。

見てくださいよ、由良がメイドになりましたけど…ほら

 

「ね?きゅーけいしましょ?ね?ね?」

俺の肩を持つ手がメキメキ言ってるでしょ?

ロボットに対抗して甘やかすのよ。

 

「は、はい」

 

「はい、今日のクッキーは由良と霞ちゃんで焼きました」

 

 

「はぁい、ご主人様…あなた?あーん」

霞がクッキーを差し出してくる。

 

「あ、あーん」

クッキーを食べさせてもらう俺……の肩を持つ手の力が少し強まった、もはや痛みも感じない。

 

「ゆ、由良?お前にもあーんされたいなあ?」

 

「由良の提督さん…私から食べさせてほしいんてますね?ううん!ご主人様♡はい、あーん!」

 

と、やりとりしてみたら霞が半泣きでこちらを見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

まったくさいこうだぜ……

 

おや?他のメイド隊も……うわ!おいやめ………





あ、お気に入りが800
ありがとうございます(´;ω;`)ありがとうございます

こんなご時世ですが少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。


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413話 提督と釣り ①

母港の一角の長ーーい防波堤の先端に彼は居た。

折り畳みの椅子に腰掛け、慣れた手つきで針に餌をつけて投げる。

そう、釣りである。

 

「おっ?アタリか」

ピクンと手に伝わる感触がアタリ…所謂魚が食ったと分かり、彼は一気に合わせてリールを巻く。

ググッと竿がしなり、彼も負けじと踏ん張っては竿を立てながらひたすらにドラグを調整しながら巻いてゆく。

キラリと見えたピンク色の魚影が鯛…しかも大物だと分かった途端に俄然やる気が湧いてくる。

 

「ぬぉおおおおおおお」

そして彼はついにそれを釣り上げた!!

 

50センチ…あるかないかくらいの真鯛だった。

 

「おっほー!!いいね!いいねぇ!!」

 

「ダーリン!凄いね!」

「ダーリンさん!流石です!」

「はい、あなた?写真撮りましょう」

 

金剛、榛名、鳳翔が盛り上がる。

 

 

 

 

そう…今日はオフで釣りをしているのだ。

え?いつもオフじゃないかって?

執務の様子なんか見ても楽しくないでしょ?

そんな忙しい合間の貴ッ〜重なオフを放映していますからね!!

 

 

救が釣り上げた真鯛を掲げる。

向かいの防波堤では桜シリアスと加賀…蒼オークランド達が拍手を贈ってくれている。

 

 

パシャリと写真を撮ってもらい、生簀網にそれを入れる。

 

 

「いいねぇ…釣り」

金剛がにこやかに言いながら竿を振る。

 

「はい、西波島の鎮守府じゃ……ね」

榛名が微妙そうな顔で答える。

 

「………ね」

鳳翔も同じく。

 

 

「「「機雷とイの奴とかしか釣れないからね」」」

 

「…というかアイツらってミミズとか食べんのね」

 

鎮守府近海では釣りをすれども来る日も来る日も深海棲艦しか釣れないのだ。

怒り狂ったメンバー…主に赤城を主軸とする食間メンバーは駆逐作戦を決行。鎮守府近海域の海上で網を仕掛けたり、潜水艦のローラー作戦を展開し約4日をかけてマジで駆逐した。

この作戦は西波島鎮守府近海域火の4日間と言われており、地元民からは「この世の終わりかと思ったら近海が安全になった」とか、「もう赤城さんだけで深海棲艦滅ぼせるんじゃない?」とか言われ…赤城は地元民の間では鎮守府の赤い悪魔と呼ばれることになった。

 

まあ…その近海域の魚も赤城が食い尽くすんじゃね?とか言われてるのは内緒である。

 

まあ…そこら辺の深海棲艦に負ける奴等ではないよなあ…

仮に俺が超絶ブラックの悪の提督だったとして…大破進軍しろ!とか言っても、ふっつーに生き延びるだろうしなあ…

今の大和とか…坊ノ岬沖…沖縄どころか世界一周して華麗に帰投しました!とか言いそうだもん…

赤城も運命の5分間…というか相手の命が、相手の運命が5分間なんだよなあ…

 

 

その中で唯一の犠牲者…と言うべきか…

蒼エリザベスなのだが…

 

彼女は作戦の途中で複数のイ級に腹部に噛みつかれた。

仲間を庇っての事だった、彼女らしいと言えばそうなのだが。

 

イ級の歯は深くまで食い込んでいるようで彼女は苦痛の声と表情を見せる。引き剥がそうにも無理そうで彼女は医務室で様子を見ざるを得なかった。

何よりそのイ級はイレギュラーらしく、毒を持っているようだった。

その毒に侵されているようで苦痛を訴えるようだった。

そしてその後3日苦しみ続け…

 

死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イ級が

 

 

 

 

 

初めて見た。

イ級があんなに悲鳴を上げながら3日苦しみ続けて死ぬ様を…。

死の間際なんか「あ、やっと解放されます?」みたいな感じだったよ?アイツら喋らんけども。

 

「チャッ○・ノ○スかよ…」と思わず突っ込んでしまう俺。

 

「ちょっ!納得いかないんですけど!?」

蒼エリザベスは吠えるが、誰かが「薔薇って棘あるもんね」と言った時の彼女の顔が忘れられない。

その日から彼女は薔薇姫と呼ばれるようになった。

 

呼んだらものっそいキレられるけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ話を元に戻すけども、こちらは本当に母港周辺海域は平和なもので…

こうやって釣りにも勤しめる訳だ。

 

 

 

「?ホーショー?なにしてるの?」

金剛が鳳翔に尋ねる。

 

「ご飯を炊いてます、折角いいお魚が釣れたので食べませんか?」

 

鳳翔はどうやら飯盒でご飯を炊いているようだ。

ん?その飯盒どこかで見たな…

具体的には900円くらいで当たったらラッキーな感じのする…親近感湧きそうな飯盒だな?

 

「ご飯が炊けたらお魚を捌きますね」

 

 

 

 

 

 

「…では、榛名も頑張ります!ダーリンさん!見ててくださいね」

と、ノーマル榛名が奮起する。

 

と、同時に榛名に当たりが来たようだ。

 

「あ!ダーリンさん!来ました!来ました!!」

えい!とフッキングを行い、リールを巻く。

 

 

 

 

 

 

よっぽど大物なのか格闘が暫く続く。

 

「頑張れ榛名!」

 

「…ッ!ハイ♡」

恐らく今の一言でエンジンがフル回転したのだろう、榛名は渾身の力で魚を引き寄せた…。

が、

ソイツは水面を思いっきり尾で叩いた!

 

 

水が飛び散って俺にかかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

ブツン…と音が聞こえた。

 

 

 

決して糸がやられた訳ではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

榛名のエンジンがフル回転を通り越して、ノーマル榛名からデビル榛名へと変貌したようだ。

 

 

 

 

 

「よくもダーリンさんを…」

 

ガシャン!と艤装を構えるデビル榛名を金剛と2人がかりで止める。

「でも…」と納得のいかない榛名は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拳で海を割った。

 

 

 

 

久しぶりに見たわ…

十戒みたいにキレーに割れてんの…

 

 

 

 

 

 

 

 

榛名は海底だった所に飛び降りてにソイツを握り揚げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クッソでっかいウツボだった。

 

なんか榛名らしいな……って思った。

 

「ダーリンさん!見てください!榛名はやりました!」

恐らくウツボの返り血かな?榛名が赤く見えるよ…

やりました?殺りましたじゃなくて?

 

 

 

 

 

え?そのウツボ?

 

鳳翔が焼いてるってよ…





少なくてすみません…

暫く休みになります
流行りのアレ…かかりまして…


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414話 提督と釣り ②

 

さてさて

こちらは対岸の防波堤…

 

問題児の多く集まる防波堤…。

 

 

「あら…向こう…海割れてる?」

 

 

 

 

 

「さあさあ…釣れてくださいね」

なんて言いながら釣り糸を垂らすのは赤城。

 

 

その数10本!!

 

 

 

その光景を見た麻耶達は語る。

 

『艤装があるからさ…海の上に立って釣りするならまだわかる』

『でもアレは普通じゃねえ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『艦載機に釣り糸と仕掛けを付けて飛ばしてるンだぜ?』

『そっちのがぶっ飛んでるって』

 

『ヒットした瞬間に急上昇で釣り上げるんだもんなあ…』

 

『真面目に釣りしてる私らが馬鹿みたいに思えてくるよ』

 

『伊良湖と間宮達がせっせと魚料理してンだよなあ…』

 

 

 

赤城は燃えていた。

この日の為に魚を1週間も食べなかった…そのくらいの気合いだ。

 

『海が平和ですものね…。きっとお魚も美味しいに決まってるわ』

………と!

 

 

 

 

 

『あ、あの赤城さんが3日も魚を食べてない…だと?』

 

『あ、赤城さん?どうしたの?』

加賀をはじめとする面々が不安そうに赤城を見つめていた。

好き嫌いなんかある訳ない、むしろ在庫を食い尽くす事すら可能な赤城が…あの赤城が3日も魚を食べてないのだから…。

この3日目から伊良湖も食堂のオススメメニューを魚料理に変えたが、当然赤城はスルー。

 

ショックのあまり躍起になった伊良湖によって7日目には食堂のメニューの95%が魚料理になったがオリハルコン並みの心で赤城はスルー。

 

『な、なんで…』

崩れ落ちる伊良湖。

メニューを全て魚料理にしないのはせめてもの良心からであった。

ちなみに残りの5%はなんだったかと言うと?

唐揚げ丼と豚キムチ丼だった。

赤城はその2つをローテーションして耐え忍んだ。

 

もきゅもきゅと丼とは到底思えない超大型の丼で食べながらカレンダーを指差した。

 

明日の日付には赤く丸が入れられていて…解禁日と書かれていた。

 

『え?明日?何かあった?』

伊良湖達が首を傾げる。

 

 

『釣りだったよな?確か』

天龍がボソリと言いながら昨日買った竿を磨いている。

 

『『『え』』』

 

この『え』は決して釣りの事を指してるのではない。

その為に魚を食べてない赤城の行動が予測できたからである。

 

解禁日…

つまりは魚…釣り…………狩猟解禁という訳であり…

誰もが母港周辺の生態系が終了すると思っての言葉である。

 

 

 

 

そして加賀は知っていた。

彼女が夜な夜な艦載機を防波堤から飛ばして何やら訓練をしていた事を…。

 

『…ふっ………ふぅっ』

凄まじい集中力の中で操る艦載機は凄いの一言では言い表せない、鬼気迫るものすら感じていたが今となっては…別の目的があるんだろなあ…とすら思えた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……の結果が今である。

 

 

 

 

防波堤からの陸っぱり?

 

いいえ?海の上を征けるのですから…海の上に行きますとも!!

1週間我慢したのですから…根こそぎ行きますよ?

 

 

「ぽいー!まだ釣るのぉ?!」

 

「あ、赤城……さん…ぼ、ぼく…そろそろ提督のところに行きたいな……ねぇ?春雨?」

 

夕立、時雨の2名は移動式の生簀を持って赤城の後ろを着いてまわる。

釣った瞬間に生簀に入れるのだが……魚の数は数えてない。

ブーブー言う夕立に春雨に話しかける時雨。

 

「春雨なら提督のところにスープ持っていってたよ」

と、白露が返事する。彼女も艦載機から垂らす釣り糸で釣れた魚を生簀へと入れている。

 

 

「…は?」

ぐるん…とあり得ない角度に時雨の頭は動いた。

180°回っていた。

確かに視線の先には堤防で食卓を囲む提督達が居た。

 

 

 

 

「はい、あなた!お刺身と…出来ましたよ!」

 

「おっ!なら飯にするか!」

 

「榛名の釣った魚も刺身にしてみました!」

 

 

「春雨スープ持ってきました!!」

と、何故かしれーっと居る春雨。

 

「ねえ?チーム分けは?」

 

「春雨スープ作ってきました!」

 

「は、春雨?」

 

「春雨スープ作ってきました!」

 

「・・・h「ハルサメスープツクッテキマシタ」

 

「やだ!この子怖いッ!!?」

「貰うから!食べるから!ね?!?ね?!」

と、救は春雨スープを春雨から受け取る………が、春雨のドス黒い目は彼から離れない。

 

「……食べないんですか?冷めますよ?」

「春雨特製のスープですから」

 

「変なもの入ってないよね?」

 

「愛がたっぷり入ってますよ?」

 

救は諦めてスープを一口飲む、美味しい。

「…ん?美味しい。美味しいよ?春雨」

 

「本当ですか?良かった」

 

「で?何が入ってんの?何の出汁?」

 

「☆〆♪♪♪♪♪€€€€€」

聞かなかったことにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

「でもいいの?時雨とか夕立がブーブー言ってるんじゃないの?」

と、震える金剛が春雨に尋ねる。

榛名は「そう言う愛の形もあるんですね…」とか言ってたけどスルーさせてもらうし、帰りにはやめとくように釘を刺しておく。

そう考えながら背中に冷たい何かを感じて振り返ると……

 

 

 

 

時雨がこっちを見てた。

 

 

「…ヌケガケカナ?ハルサメ……ネェ?ナンデテートクモウレシソウニウケトッテルノ?」

 

その瞳から光は消え失せ、奥の見えない漆黒だけが蠢いていた。

てか、あれ…背中じゃね?

うわ…こわっ…。

 

 

 

「ぽぃぃ!?!?時雨が壊れたぽいいいいい!!!」とでも言ってるのだろう、夕立があたふたしているのが見えた。

 

 

 

その、げっそりとした顔をした夕立と白露がこっちに気づいてニコリと笑い手を振ってくれた……まではよかった。

その隣…つまり俺の目の前には海の上を縦横無尽に魚を釣りまくる赤城。

背中に阿修羅の如き闘気を纏わせて「サカナサカナサカナサカナサカナサカナサカナサカナサカナ」と呟く姿は最早妖怪としか思えなかった。

そして、時雨。首の方向がおかしいと思うけどもずーっとこっちを見てる。うん、怖いよその半笑い。

そして、俺の右には同じ目をした春雨。さっきから顔を赤くしてニヤニヤとこっちを見てやがる。

左には頬を少し赤くした榛名。ヤンデレかな?

 

 

後ろには飯を早く食べてほしそうにちょこんと座った鳳翔と小さくなってご飯を食べる金剛。俺の天国はそこにしかなさそうだ。

 

 

 

………考えるのをやめた。

 

 

 

 




遅くなりました!
短めですがご勘弁を!


後に残るのが辛すぎますね…おのれコロナ……
味覚と嗅覚があぼんしました。
まだまだかかりそうなのが辛いです


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415話 提督と釣り ③

〜前回のあらすじ〜

後ろ意外ヤベーヤツしかいなかった!

 

具体的に言うと…

鬼神の如く漁(根こそぎの勢いで近代兵器使いまくって)をする一航戦 赤城(ヤベーヤツ)

 

……の横で首が…目が……うん…その方向に曲がるの?目の奥はブラックホールなの?って感じのヤベーヤツ代表 時雨(最早ホラー)

 

そして俺の横で謎の美味しい春雨スープ(原材料を知ればヤバイ)を全て飲むまで帰らないであろうやっぱり白露型な春雨(どう足掻いてもヤベーヤツ)

 

ガチでそれに影響を受けた感じで見たこともない表情を浮かべてる高速戦艦(意味深) 榛名(ヤベーヤツ代表取締役)

 

 

そして…

 

「……そういうのが好みなのですか?」

と言いながら包丁を磨ぐ鳳翔(お艦)

慣れない感じで少し顔を赤くしながら言う姿は可愛いのだが…

 

お艦?妻ではなく?

一気に鳳翔の声がトーンダウンし、その目から光は消え失せた。

 

 

 

あ、あ艦これ…あ艦やつや!!

お艦は地雷だったらしい。妻が良かったらしい。

「す、すまん!!!」

 

助けてほしいと金剛の方をチラリと見ると…

 

 

 

 

 

「…ダーリン」

と、1人寂しくご飯をモソモソと食べている。

妹は放置………した方がいいわなそりゃ…でも可愛いな金剛は…とか思って少し笑顔になっ「ダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリン」

 

 

「!?!?」

 

「何でダーリンは私を放置なのデース…口調も猛武のコンゴーみたいに矯正してみたのに…何?何が足りないの?ねえ!何が足りないの?私が1番じゃないの?あれは嘘なの?ねえ!ねえ!!!私…ずっと信じてた!不安だったけど…私があなたの1番だって願って信じてたの!だからあの日ダーリンにハジメテ捧げた時だって…!!でもダーリンは他の女とも……ううっ…私、悔しいデース!でも!私が1番最初だからって…自分に言い聞かせて!!榛名達に申し訳ないとか、少しザマーミロとか思いながら今日まで来ました…!!王道こそ良い!と!!鈴谷はアレは反則レベルだけれども!!私だって!!とか思ってなら…何!?海の上(物理的に)釣りしてる奴とか首が変な角度まで回る奴とか、**を原材料にして料理出す奴とか、それを真似そうになるイモートとか、純愛系だと思ったらヤバイ方向もイケル良妻キャラとか!分からない!!もうダーリンが分からない!!どのキャラが好きなの!?ブレッブレで分からないデース!!私も!?私も病んだ方がいいのか!?病むの?!病もう…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……1番じゃなきゃ嫌デース…」

 

「顔赤いぞ」

 

「慣れませんよこんなの」

 

「キャラブレてんぞ」

 

「ダーリンに好かれるためなら何でもやる!!」

 

「なら…普通で居てくれたらそれでいいさ」

 

「ダーリン…」キュン

 

「金剛…」ニコリ

 

 

 

 

榛名時雨春雨夕立鳳翔赤城白露

「「「「「「「何いい雰囲気になってんのさ(るんですか)…?」」」」」」」

 

 

「「ひっ!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…俺達だけはまともに釣りしような……加賀サン」

 

「えぇ…そうね天龍…」

 

「あ……提督が手を振ってるぞ」

加賀は天龍に言われて奥を見る。救が泣きながら手を振っていた。

 

「…私達を道連れにするつもりね」

 

「なるほど…なら無視が賢明か」

 

2人は下を向き、釣りに集中した。

視界の限界範囲で彼を見ると健気にも泣きながら手を振り続けていた。

 

何故だろう?

私達は何も悪くないのに心が痛む…

 

「……ふぅ…仕方ないわね」

と、彼に向いて手を振りかえす。

横を見ると天龍と同じように手を振りかえしていた…同じだねと笑いながら2人は顔を見合わせる。

 

好きな人を1人には出来ないわね。

 

そうだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お互いの奥にこちらに迫る悪魔(時雨と春雨)が見えたけども…

 

「フフ…怖いな…」

 

「………鎧袖一触…では済まないわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………楽しそうだなぁ…指揮官達…」

 

「…そうかしら?」

 

「お姉様達…」

 

ここは加賀達とは逆側の防波堤、居るのは蒼オークランドと蒼エリザベスと桜駿河…というか奈々。

 

楽しそうかはさておいて、こちらは真面目に釣りに勤しんでいる。

 

「ん…釣れたわ」

 

「おー…流石は女王様」

 

「やめなさい     あら?奈々?掛かってるみたいよ?」

 

「え?あ!うん!」

「うっ……重いぃー!!」

 

「お!引いてるね!手伝うよ!」

蒼オークランドの掛け声と共に蒼エリザベスが竿を持つ。

 

「なかなか重いわね!!」

 

「ありがとう………って?何してるの?蒼オークランドちゃん?」

 

 

蒼オークランドは海に向かって砲身を向けていた。

 

「え?魚を仕留めるつもりだけど…?」

「そんなことしたら食べられないでしょ!?」

 

「焼けて丁度いいと思うけど」

 

「跡形も無くなっちゃうよ!オークランドちゃんは激射するんだから!!!」

 

「うっ……じ、冗談だよ〜」

 

「いいから手伝いなさいよ!!」

 

3人で格闘の末に1mを超える魚が釣れて「「「やったね!!」」」と喜んびたい。後ろに今回居るのは蒼ポートランドではなく伊良湖なのでがどんな料理を作るかが楽しみで仕方ない。

 

「蒼ポートランドがブーブー言ってたけどね」

 

「しゃーないしゃーない」

 

とは言えタダでは済まないこのメンバー。

バシャッと海面に姿を現したのはアホみたいにデカい

 

 

「映画かな?」

 

「って!こっちに突っ込んでくるよ!?」

 

「女王様シールドッ!!!」

蒼オークランドは蒼エリザベスを盾にする。

 

「何してんのよッ!?アンタぁ!?」

 

「ほら!いつも砲撃から守ってくれるでしょ!?ね?ね?」

 

「アンタさっきまで殺る気満々だったでしょ!?ほら!今こそ発揮しなさいな!」

 

「無理無理!戦姫3人分のサメに勝てるわけないでしょ!?軽巡なめんな!!軽巡より戦艦のが耐久力あるでしょ!?」

 

彼女が言うのはクイーン・エリザベスのスキルである。

砲撃から身を挺して仲間を守るのだ、所謂「かばう」であるが…。

 

「ふざけんな!!アレは自分の意志で発動するものよ!心の準備とか必要なの!」

「伊良湖…って!伊良湖は戦えないのよね!!退がってなさい!てか!駿河!アンタも戦艦でしょ!?どうにか手伝いなさいよ!」

 

「え!?無理無理無理無理無理!てか間に合わない!」

 

「何よ!こんな展開聞いてないわよ!?コッチは平和だって思うじゃないッ!そういう路線は向こうの役割でしょう!?何で私達が…こんな馬鹿でかい…こんな…こん…「「「ぎゃぁぁぁぁあ」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふんぐぉおおおおおおッ!食われてたまるものですかぁぁあ!!」

食われる寸前で耐える蒼エリザベス。

 

「上顎と下顎を支えて…ま、漫画みたいな耐え方だね!」

 

「歯とか刺さらないの?!」

 

「ええから早く助けんかいィッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

耐える蒼エリザベス。

「何で私がぁぁ………」

 

 

 

「あ…助けがきたでち……」

 

「ご、ゴーヤぁぁあ!?!?!?」

 

 

鮫の口の奥にはゴーヤが居た。

 

 

 

 

 

 

 

 



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416話 提督と釣り ④

 

「ゴーヤだけじゃないでち」

 

「助けて……欲しいのです…」

 

「桜綾波ぃぃぃ?!?!」

 

 

 

 

 

 

 

時は遡る事……少し前。

 

『桜綾波達も釣って指揮官に誉められるのです』

 

『でちっ!!』

 

『…ゴーヤちゃん…魚雷はダメなのです』

 

『でちっ!?』

 

『焼き魚には間宮さん達にしてもらうのです。それに、武器を使ったらただの環境破壊なのです』

 

『環境破壊は楽しいZO『ダメなのですッ!!』

 

桜綾波は水上から釣りを、ゴーヤは水中で網を使い漁をしていた。

が!

そこに忍び寄るのは大きな鮫。

 

 

ツンツン

 

『今忙しいでち』

 

 

『………』

 

 

ツンツン

 

『あやなみぃ!やめるでち』

 

 

ツンツン

 

『しつこいでち!』

振り払おうとした手に違和感を覚えた。

ざらりとした感触だった。

 

『??桜綾波?いつの間にこんなにザラザラに–––––––

 

 

振り返ると目の前にはコンニチワする鮫さんが…

 

 

 

 

 

 

 

『……でち?!さ、鮫ぇええええ!!!』

ゴーヤは急浮上し桜綾波に助けを求める。

 

『さ、鮫!鮫でちぃいいいい』

 

 

 

『そりゃサメだって居るのですよ』

 

『ち、ちげーよ!!こんな!こんなクッソでかいのがいたんだって!!』

 

『キャラは海に置いてきたのです?』

 

『んなもんより命のが大事だよおおおお』

 

 

『はいはい、そんなのが居たら桜綾波がこの刀で三枚に……

 

 

フンスと鼻を鳴らした桜綾波。

もう予想がつくだろう。

 

そうだ!

 

 

 

 

 

『コンニチワ』

と言わんばかりに大きく口を開けた鮫が目の前に居ますよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あ』

 

『あ!じゃねえよ!早く3枚でも5枚でもオロシテくれよおおお』

 

 

刀を握る手を脱力させて…サメを一点に見つめて

フッ…と彼女は笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『無理』

 

 

『だろうねえええ!!!』

 

 

 

桜綾波は食われた。

 

 

 

『桜綾波ぃぃ!!』

 

丸呑みだった、ひと呑みだった。

さっきまでの彼女の力無い微笑みが頭から離れない。

 

 

そんな場合ではないッ!!

今必要なのは!?

そう!直ちに人命(自分)を尊重した行動をとること!!

 

 

『くっ!犠牲は無駄にはしないでち!きっと生き延びて助けを呼んでくるでち!だから消化されずに待っ–––––

 

 

 

だが、目の前には口を開けた鮫が居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その口の奥からこちらに手を伸ばした桜綾波が見えた。

 

 

『何1人で逃げようとしてるんです…?ゴーヤもたべられるんですよおおお』

 

最早…サメの一部と化した桜綾波が「お前もこっちに来いよぉ♪」と言わんばかりに…というか言いながら寄ってくる。

 

『でちぃぃい!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

そして今に至る。

 

 

 

 

 

 

「ちょっ!あなた達!今の内に出るか手伝うかしてちょうだい!」

相変わらず口で踏ん張る蒼エリザベスは口の中の2人へと脱出を促す。

 

「…ひんやりして…きもちいいんでち…」

 

「どーせ誰も助からないのです…」

 

「ほら、意外と快適ですよ?座布団どうぞ」

 

 

 

「諦めんなぁぁぁ!!!てか、どんな胃袋!?」

「てか!お前らも早く助けんかいぃ!!!」

蒼エリザベスは蒼オークランド達に叫ぶ。

 

「え?快適らし…邪魔したらだめかなあ…って」

 

「アホかッ!!!!」

 

 

 

 

「まあでも…助けるよ!」

蒼オークランドが艤装を展開して突っ込んでくる。

 

「砲雷撃戦はダメよ!!」

 

「わかってるって!!」

 

 

 

 

 

 

蒼オークランドは突っ込んできた。

 

そう、突っ込んで来たのだ。

 

 

 

 

 

 

蒼エリザベスの横を通り抜けてサメの口の中に

 

 

「「あ」」

 

 

 

 

 

蒼オークランドも食べられた

 

 

「ちょ…どれだけ馬鹿なのよ!この単細胞ッ!!」

 

「ごめぇえん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「奈々!?奈々!?」

こうなれば頼みの綱は奈々しか居ない。戦艦ならパワーもあるだろう、私もそろそろ色々と限界だから!!

 

 

「助けてぇ…」

その頼みの綱の声はか細く聞こえた…

 

 

 

 

 

サメの口の中から。

 

 

 

 

 

 

 

 

嘘みたいな話だが…

突っ込んで来た蒼オークランドに巻き込まれる形で彼女も口の中に飛び込んでいたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

もうあかんやつや…とエリザベスは思った。

だから使いたくはない最終手段を取ることにした。

 

 

西波島鎮守府の守護神を呼び出すのだ。

指笛を吹けば駆けつけてくれるのだ。

何故か駆逐艦なら吹く前に到着するらしい…が、できれば頼りたくないのだ。

だが、そんな事は言ってられない!

 

エリザベスは指笛を吹いた。

そう、片手を離して…。

 

 

 

「女王サマ!?片手離したら……」

 

 

 

「あ…」

 

そう、ギリギリのラインで耐えていたのだ。両の手で。

 

 

 

 

 

 

彼女の笛の音はすぐにサメの口と共に閉じられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

閉ざされた山の中にすぐに光が差し込んだ。

 

 

 

 

「駆逐艦のピンチと聞いて!!!」

 

えんじぇるがーでぃあん(西波島名物変態仮面軍団)の登場だ。

長門と思しき謎の仮面がサメの首?を掴み上げて海から引き摺り出した。

 

 

 

 

 

「…サメよ……お前の行為は到底許されない」

 

 

「姐御ぉ〜!姐御が出るまでもねぇっすよおおお」

拳を握りしめる長門を2人が止める。

 

 

「おぉん?キサン誰に手ぇ出してんだぁ?オルァ」ゲシゲシ

 

「オラァ!オラァ!!」ゲシゲシ

 

恐らく鮫肌が痛いのかな?

殴る行為から蹴りにシフトしてるぞ。

てか、口の中から早く出してあげて?

 

 

 

「楽には逝かさんぞおおお!?」

 

「フカヒレにして…刺身にして…どうしてくれようかぁぁ?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ええから早よ助けろやああ!!……溶けそうなんでごぜーますよおおおおお」

桜綾波の一言で速攻救出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何であんなところに鮫が居るでち?」

 

「……棲家がめちゃくちゃになったらしいよ」

と、奈々が言う。

 

「え?わかんの?」

 

「ん、なんとなく…」

 

曰く

なぜか小魚のような餌が居なかった(赤城の乱獲で魚が居なかった)

普段の棲家が突然割れたり(榛名に海を破られたり)

 

 

 

 

 

 

ちらりと向こうを見る。

 

 

相変わらず赤城は狩り尽くし、その行動範囲を拡大しているし…

榛名は相変わらず海を割っているし…

他のヤベーヤツは提督にまとわり付いてるし…

 

「……悪って奴らじゃないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方には赤城と榛名達が正座させられていたとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後…

 

 

「………釣れる?」

 

「ん?ほれ」

 

1人平和に釣りを楽しむ救の所に暁がやって来た。

海に入れている網の中には鯛らしきものが入っていた。

 

「す、凄いわね」

 

「どくしたんだ?一緒にやるか?」

 

「ええ!」

喜ばしげに答える暁だが、何か歯切れが悪い。

 

「どうしたんだ?何かあったか?」

 

「えとね?おにぎり作ってきたの……お腹いっぱいだよね」

そう、彼の下には鳳翔が用意してくれた弁当箱があったのだ。

先程まで彼が食べていたであろうものが…

 

「食べるぞ」

 

その一言にパァッと明るくなる暁。

 

「上手にできてるな」

 

「当たり前よ?!一人前のレディなんだから!」

 

ふんふーん…と鼻歌を歌いながら上機嫌にシートと椅子をだす暁。

 

こういう午後がいいなと思う救であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに暁ぎ砂糖と塩を間違えた事に気付いて落ち込むまであと30秒の事だった。

 



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417話 鎮守府の夏!!①


久しぶりです!!
え?夏も終わる?

いーんですよ!まだ暑いですから!











 

 

『……もちろん、準備は進めてある』

 

『これ以上ない絶望に打ちのめされるだろうね』

 

 

()()()()()()()()()()()()

 

『平和なんて仮初なものだろう?』

 

 

彼女はニタリと笑いながら振り返り問いかけた。

『なぁ、神崎 救君?』

 

『あぁ…そうだな。教えてやろうじゃないか…運命ってやつを』

 

神崎 救と呼びかけられた男は冷たい表情でそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………どうしてこうなった?」

 

目の前には割れた河原砂浜がある。美しい砂浜であったであろう場所は荒れ果てていた。

艦娘やKAN-SEN達も数名倒れていたり、震えていたりする。

 

 

「すまない」

彼女は膝をガクリと着いて言った。

 

「私がもっと…うまくやればッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだね」

 

 

「力加減って大事だね」

 

 

 

陸奥は言う。

 

「スイカ割りでこんなに……ねぇ」

 

 

「すまないいい!天使達ィィ!!」

 

 

 

 

そう、この現状を生み出したのは長門だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てーとくーさん!海に行きませんか?」

 

「ばかんすばかんす!」

 

海防艦や駆逐艦達に海に行こうとねだられる救の姿があった。

 

「そーさなあ…海「海と聞いて』

会話を遮ってのエントリーはいつものメンバー達(お馴染みのお馬鹿さん)

 

 

 

「良いね!ダーリン?行こうー?」

 

「指揮官様の水着姿がまた見られるのですか?」

 

海というワードに…水着というワードにワラワラと集まるメンバー達。

「「「バーカンス!バーカンス!!」」」

 

一斉に始まるバカンスコール。

 

「バカンス?」と、救が聞き返す。

 

「バカンス!!」と、答え返すいつの間にか水着に着替えた彼女達。

 

「馬鹿ンス?アレだろ?結局何が起きるんだろ?」

「てか着替えと切り替え早くない?仕事は?ねえ?仕事は?」

 

 

「「「誰が馬鹿やねん」」」

 

 

 

 

 

「たまの息抜きは必要だろう?真面目にコツコツとやる為には…な!」

 

「鏡見てこようか?長門は」

長門はビキニに浮き輪というなんかすんごい格好で居た。

 

 

と言ってもやはり季節は夏。

エアコンの涼しさも幸せではあるが、夏らしい暑さを感じたいのも事実。

 

 

 

「川に行くか」

 

「川ぁ?」

 

「この前は海行ったしな」

以前の鎮守府での夏バカンスの事だ。

それに……と彼は付け加える。

 

「この前の海を滅茶苦茶にした件で地域住民の視線が怖い」

 

「そ、そうですね…」

約数名程が視線を逸らしたり、咳き込んだりしているが無視をする。

 

正直なところ山間の川は涼しい。

海水や海風でないからベタつかないし、天候が悪化したり、虫さえどうにか出来れば快適である。

 

 

「せっかくだ、河原で窯でも作って火を起こしてバーベキューでもしながらダラダラするか〜」

彼の発したその言葉に周囲が目を輝かせるのがひしひしと伝わってくる。

 

「さすがは提督……」

 

「ありがてぇ…っ!ありがてえ!!」

 

「一生着いて行くぜ!!」

 

「さすがは変態さんなのです!!(声真似)」

 

「エロいなあ!スケベ!!」

 

「よっ!ドエロ大統領ッ!!」

 

 

 

「「「へーんたい! へーんたい!(提督!    提督!)」」」

 

 

褒めてるのか貶してるのか分からないコールが巻き起こる。

ピキィ…と救の額に青筋が立ち、渦中の人物である青葉がアイアンクローをされた事で場は通常運転に戻った。

 

「ちょっ…て、提督?やだなあ…!冗談ですって!じょうd……ぎやぁぁぁぁああっ!!ちょ!提督!?艦娘の頭から!美少女の頭からしてはならない音がしてぇぇ!あ!メキッて言いましたよ!?ね!?やばいですって!!……あっ…痛くなくなっt……てなぃぃぃ!!!痛ぁぁあああ––––––––––

 

ゴトリ…と持ち上げられていた青葉が床に転がった事で一気に青ざめる煽り勢。

 

 

「てんりゅーー?まやぁあ??桜あーくろいやるに桜エリザベスぅぅ???」

 

 

 

 

名前を呼ばれた4人は固まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とぅるるるるるるるー!

 

「え?何この音」

 

 

 

 

怒りに燃える提督(バーサーカー)があらわれた!

 

 

「え!?何これ」

 

 

 

 

 

どうする?

 

「どうするって……」

 

 

 

 

 

 →たたかう

  アイテム

  説得(成功率0%)

逃げる

 

 

 

「何この選択肢…?って!この人数だぞ?負けるわけがないぜ!」

 

 

「青葉の仇–––––

 

天龍の攻撃!

 

しかしあたらなかった!!

 

「何でだッ!!!」

 

救の攻撃!

パイルドライバー!!

 

天龍に1000000のダメージ!

天龍はちからつきた!

 

 

ドサリと倒れ込む天龍。

 

「アハハハハハハ!早くも1人脱落したようですわね?」

 

「おい!!桜赤城ィィ!!何でお前がしれっとそこに居るんだ!?」

いつの間にか桜赤城が救の隣で扇子を片手にオホホホと笑っていた。

 

「ラスボスと美人の側近はお約束でしょ?」

 

 

 

「うわー!痛ッ!あの子自分で美人とか言ってる!!」

「うわー…本当だー…いたたたた」

 

摩耶と桜エリザベス達がヒソヒソと言い出した。

 

 

「年齢とか気にしてるんじゃね?」

 

「あー…指揮官の前だもんねぇ…」

 

「まあ…悪女っぽいしね」

 

 

 

 

「何ですって!?小娘ッ!」

 

 

戦闘に修羅の女(桜赤城)が加わった!

 

 

 

 

「くっそwwww増えた」

 

「こうなりゃ…説得しかねえ!あの女狐を止められるのは指揮官しかいない!てことは必然的に指揮官を説得………だな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ!ていt「もはや愛など要らぬ」

 

「なんか上半身裸のムキムキの人が見えたよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウボァーー!!!」

摩耶は斃れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「説得も無理だったぞ!チクショウ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  たたかう

  アイテム

  説得

 →にげる

 

「もう説得も無理じゃん!!逃げるっきゃねーよ!!」

 

 

さくらえりざべすたちは逃げ出した!

 

 

 

 

 

 

 

しかし回り込まれた!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後この一行を見たものは居ない––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ?川行かないの?」




感想などお待ちしてます!

少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!


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418話 鎮守府の夏 ②

 

それは最初から決まっていた。

抱かないはずのない疑問。

–––いや、見ないフリをしていた疑問。

 

彼は選択せねばならない

何を守るかを––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

てな訳でやってきました…どっかの河原、

 

 

 

艦載機飛ばしてロケーションを探すといううまい使い方なのかサボり気味なのかとかいう事をしながら、見つけた良さげな場所を目指す。

 

大所帯での移動になるので割り勘でバスをチャーター。

ある程度のところからは歩く…という事で決まった。

 

 

準備に関しては、皆の姿はもうバカンスmodeなので問題ない。

バーベキューの食糧も問題ないだろう。

というか足りなかったら現地調達するとか言ってたな…。

 

『肉とかこれで足りる?』

 

『問題ないだろう。まぁ…足りなかったら現地調達するさ』

 

『…むぅ……』

 

『提督?何か心配なのか?安心しろ!猪にも魚にも熊にも負けんさ』

 

フンス!と胸を張る長門。

 

『…あぁ…うん…心強いね』

ちゃうねん。

生態系が狂うんじゃないかって方が心配やねん

少数精鋭で食い尽くすからな…奴等は。

 

 

間宮達にたらふく用意して……え?何?問題ない?

…まじか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「痛かったあ…大破轟沈数前でしたよ!艦娘が陸で沈むなんて皮肉すぎますよお」

プリプリと青葉が怒っているようだ。その背中や両手には沢山の荷物がある。彼女曰く、輸送作戦のドラム缶や資材獲得遠征の帰りよりはマシ…とのことだが…。

 

自業自得なんだよなあ…とか思ったりする。

ただ、その時に感じた違和感を尋ねようと思った。

 

 

「なあ?青葉?」

 

「何です?」

 

「俺お前にはアイアンクローしかしてなかったと思うの」

 

「はい、バチくそ痛かったですよ」

 

「女の子がバチくそとか言う言葉を使わない!…ってか、何で服まで破けた(大破mode)なの?」

 

「女の子って…嬉しいですね♪…………よ、お約束(様式美)?」

 

「んなんきゃねーよ!服にダメージなかったろ!」

頭以外にダメージはなかったはずなのに破れた衣服に問題があるのだから。

 

「精神ダメージじゃないです?」

 

「何その設定!?アズレンの2人はそんな事なかったんだけどなあ…」

 

「ヨー◯ターさんエロ大好きだけど…大破イラストの問題じゃないです?ゲームの仕様の問題じゃないですk「おい、やめろ」

 

 

 

 

 

「わ、私に荷物を持たせるなんて……しょ、指揮官は…本当に…ッ」

ゼーハーと息を切らしながら桜エリザベスが坂道を登る。

 

「あぁ…桜エリザベスはハンコとペン以上の重さのものを持った事ないもんなあ…」

 

「失礼よッ!?てか!アンタ最近扱い酷くない!?」

 

いやあ…反応が楽しくてさとは言えなかった。

 

 

「ご主人様ッ!!陛下へのその言葉は失礼でございます!」

 

キリッと現れたのは桜ベルファスト。

さすがはメイド、主人のピンチを見逃さないのはできたメイドだ。

 

まあ…その主人の指揮官が俺なんだけどさ。

 

「ベル…」

パァッと明るくなる桜エリザベス。

イジリの中に見出した一筋の光…か?

 

 

「ティーポットくらいならお持ちになられます!」

 

 

ドヤ顔で言い切った桜ベルファスト。

固まる桜エリザベス。

ブフッと吹き出したロイヤルメイド隊。

大爆笑する俺。

 

 

顔を真っ赤にして桜エリザベスが怒っていた。

 

 

しかし、彼女はメイド隊に持てとは言わない。

そうなのだ。

そう命令すれば楽になれるのだ。

 

 

しかし、それを彼女は良しとしない。

真に高貴なるは何たるかを彼女は知っているから。

 

蒼エリザベスも同じであるが、誇りを胸に張るのは構わない。

しかし、その権威をひけらかすのは愚である…と。

 

だから俺は彼女が好きだ。

懸命に庶民に近しく在ろうとする彼女g「女王命令よ!持ちなさい!桜シリアス!てか!笑った全員よッ」

 

「………」

ダメですわ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて…着いたわけだが…

 

「釜戸を作ろうかね」

こう見えて意外とアウトドア好きなんだ。

良いところを見せておきたいな!

 

 

「かまど?アレですか?鬼殺しの人ですか?炭作りですか?」

 

「ちげーよ」

「こうやって石を積み上げてだな?」

と、石を積み上げて行く。大きめな石をコの字に積み上げて行くのがポイントである。

 

 

「あぁっ!指揮官様ッ…なんてことでしょう!!」

 

「指揮官様?悪いことしたなら懺悔効きますよ?……特別割引で」

 

蒼ベルファストやら蒼エディンバラがカマドを作る俺の目の前で祈り始めた。

「え?何?」

 

「聞いたことがあります。人は悪行を重ねると地獄で石を積み立て、贖罪するのだとか…」

 

「しかもどれだけ頑張っても鬼にそれを崩されるのですよね?」

 

「ん?ん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ですからその鬼を石を積み上げて誘き寄せてぶっ殺すんですね?鬼殺するんですね?」

 

「んーーー?世界観どうなってるの?」

 

「私達は指揮官様の味方です!どんな指揮官様でも受け止めて見せますから!!

 

 

 

 

うーーん…と唸る俺の横で大淀が焦った様子であたふたしていた。

 

「ど、どうした?大淀」

 

「え、あ、て、提督…まさか石で釜戸を作るなんて思ってなかったので…」

どうも歯切れの悪い大淀である。

 

「??」

 

 

「ほーーい!明石と夕張特製の野外BBQセットだよー!!」

 

「……」

 

「て、提督?手作りのも趣があっていいと思いますよ?」

大淀が必死にフォローを入れてくれる。

 

 

「ま、まあ…なら、スイカと飲み物を冷たい川で冷やし「冷蔵庫持ってきましたー!」

 

「………グスン」

 

「私は好きですからね?」

 

 

 

 

文明の利器には勝てそうもない救はいじけるしかなかった。

その肩をポンと叩いて桜エリザベスが「アンタも大変ね」とニタリと笑って言った。

 

 

 

 

 

 

とりあえず頬をつねってやったらやり返された。

 

「んぎぎぎ!ひゃなひなひゃひよ!」

 

「おはへほほ、はなひぇひょ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

桜赤城と大淀が明石達の便利グッズを片っ端から壊し回った。

最初は涙目でやめてと言う2人であったが、色々説明を受けた後は

「あちゃーコワレチャッター!」

「ドーシマショーコノママジャバーベキューデキナーイ」

とお膳立てしてコチラをチラチラ見てきた。

 

逆にやりにくくなった。

 

 

 

 

 

 

 

結局皆で石を積み上げた。

 

「これを壊して回れば良いのか?」

と、現れた長門は磔にされてポコポコ叩かれていた。

 

 

 

 

「何ひとつ進んでなくない?」

 

「鈴谷……そうだね」





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419話 鎮守府の夏 ③

 

 

「持ち味を活かせッ!!」と、何故か通りすがりの赤髪の大男に言われた気がしてプラン変更。

 

各々…ないし、チームで考える「理想的なアウトドア」をする事に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見るがいい!指揮官!我ら重桜のあうとどあを!」

まずは問題J……個性豊かなメンバーが多く居る重桜。

案内役を務めるのは桜長門である。

 

 

「重桜は古典的なアウトドアのイメージがあるな」

救の意外な言葉に首を傾げる桜長門、そして微笑む重桜メンバー。

 

 

 

「そうか?我らとて…文明の利器くらいは「火打ち石とか使うイメージあったんだけどな」

 

「!?!?!?!?」

 

 

ピタァッ…と時間が止まった。

 

「指揮官は我らを縄文時代の文化と勘違いしてないか?」

 

「進んでも昭和初期みたいな釜戸ご飯とか…竹筒でフーフーするような」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

重桜メンバー達は考えた「え?フリ?フリなの?そうしろってフリなの?」と。「バリバリ発電機やらガスコンロやら持ち出したんですけど……と」

 

桜金剛四姉妹が救と桜長門の視線に耐えかねて桜赤城を見つめる。

少なくともそこに居合わせた重桜メンバーはただならぬ場の雰囲気に冷や汗が止まらない。

桜三笠や桜信濃ですら彼女に、助けの目線を送っていたのだから…

こんな時に限って桜加賀は居ないし!!

 

 

 

「……〜ッ!!」

「やるわよッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぬおおおぉぉおッ」

桜三笠が鬼の勢いで錐揉みで火を起こす。

木の板と棒で火起こしする原始的なアレね。

 

「頑張って下さい!桜三笠様!!」

桜綾波達が応援する。

年長者として頑張らざるを得ない…ッ!!

 

 

徐々に煙が立ち込めてくる。

カッと目を見開いた桜三笠がその小さな小さな火種を次の者へと手渡す

––––––桜信濃に。

 

 

桜信濃はその火種を燃えやすい、解した麻と藁の中に入れてフーフーと息を送り込み、そしてぶん回す。

「ふ…ふぉお」

 

恐らくは普段絶対に見られない光景に驚き半分、申し訳なさ半分である。

 

 

桜信濃の手の中で燃え上がったそれに薪をくべてさらに火を大きくしようと試みる。

 

「やった!やったのです!!」

わーきゃーと駆逐艦達から声と拍手が巻き起こる。

 

年長者達は親指をグッと立てて倒れ込んだ。

 

 

「よくやってくれました!その火をこっちに頂戴!!」

声のする先には桜赤城達が石を積み上げて窯を作っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

石窯を積み上げて釜戸ご飯を炊く。

「フー!フー!!」と、全力で空気を送り込む桜金剛。

 

 

その光景を大変そうだなあと思いながら桜長門は己に降りかかる

 

「さあ!桜長門様も!!」

 

「え"…本気?」

お淑やか系お嬢様系の桜金剛はそこには居ない。

汗と煤を輝かせる彼女は涼しげにこちらを見る桜長門を引き込もうと目を血走らせていた。

その気迫はかの一航戦すら「え?あぁ…はい」と言わざるを得ないだろう。

 

 

 

「フー!フー!!」

 

「はい!桜長門様ッ!ファイトですわ!そんなのじゃ火が消えて指揮官様が悲しみます」

 

「か弱い…私が…」

 

「見た目は駆逐艦でも中身は戦艦です、丈夫な子です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

薪を拾い終えた桜加賀がクーラーボックスのコーラを飲もうとした所に桜赤城が掴みかかって血走った目で言う。

「水しかないわ!」

 

「な、何を言って?!」

 

「いいの!ここは今からディ◯カバリーチャンネルに匹敵するようなキャンプ場になるの」

 

「意味がわからないんだが…」

 

「アレよ!森のベアさんじゃなくてエドさんの方のレベルだからね」

 

「????」

 

「今すぐ魚と肉を調達してきて頂戴…ッ」

 

「え、え、え?な、何故?足りないならスーパーd「良いから…ッ…現地調達…ッ!指揮官様の愛の試練なのよッ!ディスカバリーなのよおおおお!」

 

また始まった…と思いかけた桜加賀であるが、周りのメンバーの目線や…あることに気付いて頷くしかなかった。

 

用意した食材は封印して山や川で獲れた新鮮な食材を使っての料理を…

 

 

風呂??石で作った風呂だってよ。

 

 

 

 

準備が終わる頃には桜加賀が狩ってきた肉を捌いていた。

誰も彼もが汗だくで煤まみれになっていたが一種の達成感があった。

上下関係なく、皆でやり遂げ、作り上げると言うのはこんなにも気持ちのだろうか–––––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら?指揮官はこーいうのが好み?」

 

 

良い感じの達成感は燃え上がる炎へと変わる。

 

 

 

 

 

「くっ…やはり無視できないわね…桜オイゲン!」

 

 

 

 

 

 

そう

重桜の横には鉄血軍団が居たのだから。

 

 

 

 

 

 

「はぁい♡桜オイゲンでーす」

と、彼女はヒラヒラと手を振る。

横には桜ティルピッツや桜フリードリヒ達もいる。

 

俺の横では桜赤城達が俺にしがみついてフーッ!と彼女達を威嚇している。

 

 

「ふむ、指揮官?重桜だけ贔屓するのは寂しいわ?ね?桜ビスマルク?」

 

 

 

 

 

 

 

「あーっはっはっはっははは!!」

高笑いと噴射するスモークの奥から現れたのは…

 

 

 

 

「そ、そうだぞー指揮官。わ、我ら鉄血の最新てくのろじーをふ、ふんだんに使ったキャンプをぜひ見てほしぃ…」

 

 

慣れない高笑いキャラに恥ずかしがる桜ビスマルクだった。

 

 

 

 

 

 

「…慣れないならするべきではないわよ?」

桜赤城かマジトーンで突っ込んだ。

 

「………」

桜ビスマルクはいじけてしまった。

 

 

 

 

「…ね?指揮官?彼女も頑張ったの」

「だから…ウチにも見に来てね?」

 

と、桜オイゲンが目をうるうるさせながら上目遣いで言う、反則だろこれ。

 

「あぁ…うん、わかったよ」

と返事したら「ありがとう、まあダーリン♡」とキスされた。

 

 

 

 

 

固まる両陣営。

待ってるわね!と退散する張本人。

残された俺。

 

 

突き刺さる視線。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平和な夏は…まだ遠いらしい

 

 



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420話 いつか夜は明けるから ① 鎮守府の夏の終わり

 

 

 

 

一度起きたことは…いつか起こりうる–––––

 

たとえその火を消そうとも、燻る灰の中から新しい火は灯る–

 

そしてその小さな火はやがて大きな大火となって全てを焼き尽くす炎となる–––

 

世界を超えて焼き尽くす炎に–––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

–––大丈夫…

どれだけの困難が待っていたとしても…

あなたには私達がついてるから

例え見えなくても…

きっと背中を押して–––––––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やる…のね?』

 

 

 

『あぁ、やろう』

男は笑う、傍の**の肩を抱きながら。

 

『……全てへの復讐の始まりだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『なッ!?』

あり得ない光景が目の前に広がっていた。

 

 

先程迄何も無かった筈の景色は一瞬にして変わる。

目の前に–––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**が現れたのだ。

 

 

 

『お前は……k––––––

 

その言葉を発する途中に彼女は吹き飛ばされる。

 

ドォォオン!!

秘密裏に動く訳でもなく、堂々と構えられた主砲から放たれた一撃は彼女を更に粉微塵にして行く。

その音に反応……する前からその存在を理解した仲間が集まる。

 

『反応がいきなり現れたと思ったら………貴様らは…ッ!!』

 

『……』

 

 

 

 

響く轟音は彼女達…セイレーンを恐怖へと誘う。

 

 

 

 

彼女達には自負があった。

自分達がどんな存在か……という。

 

 

薙ぎ払われる艦隊はその考えを一変させる。

 

 

セイレーンの艦隊は蹂躙されていた。

 

たった数隻の…数人の()()に、()()()()に!

 

 

『くっ…なんだコイツらッ』

『セイレーンの力が…歯が立たないだと!?』

『私達はとんでもないバケモノの相手をしていたのか?』

 

 

 

 

 

 

『皮肉なものだネ…私達を打ち破るとすれば、君だろうと思ってはいたが……』

 

目の前に居るのは

  

 

 

 

 

 

神崎 救と金剛そのものだったから。

 

 

 

 

 

 

 

『やはり……神崎 救はどうあっても……世界を滅ぼす人間…』

『しかし!何故今は制御下にあって敵対もしていないはずの我等を攻撃する!?』

 

 

『私達が誰かを忘れたのかッ!!?』

セイレーンの1人が叫んだ。

 

神崎 救と呼ばれた者は彼女達を見下しながら言う。

 

『…黙れ……』

 

 

 

 

『いつ俺が、俺を作ってくれと頼んだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

『全てを踏み潰すッ!!…この世界も!あの世界もッ!!本物もッ!!もう誰にも止められないッ!!』

 

 

 

 

 

 

グシャリとオブザーバーを踏みつけて更に笑う。

『お前らより強いんだ…俺は奴よりも強い』

 

 

オブザーバーはニタリと笑って言う。

 

『お前は奴を…奴等を甘く見ない方がいい』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『なら、答えろ。本物はどこに居る!?』

 

『自分で探せ』

 

『まぁいい…奴には最高の絶望が待っている。それが早くなるか遅くなるか…だけだからな』

 

 

 

 

神崎 救は笑いながら去って行く。

死に体のセイレーン達には目もくれず、道端に転がる小石を踏みつけるようにしながら…

 

 

 

彼女達の意識はそこで絶たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…さあ始めようか、最終戦争だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

重桜組の原始的なキャンプを体感しながら、現れた鉄血グループに誘われた俺。

妬ましそうにコチラを見つめる重桜組の視線が物凄く痛い。

 

 

「さあ!指揮官?私達鉄血は都会派なキャンプよ」

「田舎も…「あぁん?!」……コホン、レトロ感漂うキャンプではないって事よ」

 

田舎者と言おうとしたのだろうか?

重桜組の鬼の目線に気付いた鉄血メンバーは言い方を変えた。

 

 

はずだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「始めようか」

そう聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん?」

 

見慣れた天井だった。

……厳密に言うとそれは今は見慣れない天井だった。

 

 

体を起こす。

天井という面から景色は変わり、首を回すとやはりかつては見慣れていた光景が広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頬をつねってみても痛い。

 

つまりこれは現実…?

 

 

 

 

いや

 

 

()()()()()()()()()()()

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

たまの休みの日の朝じゃないか。

 

 

 

何だかリアルな夢を見ていた気がする。

長い…長い夢を見ていた気がする。

 

 

 

 

 

「誰の夢を…何の夢を見てた?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも

なんだろう…

 

何か大切な事を忘れている気がする。



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421話 いつか夜は明けるから ② 壊れた日常

…なんだ?

「………」

 

何だろう…。

このぽっかりと穴の空いたような感覚は?

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

その感覚がまるで熱帯夜の汗まみれのシャツのように不快に纏わりつく。

 

 

夢…?

 

 

 

 

 

 

 

テレビを点ける。

この何だかモヤモヤした気分を少しでも紛らわせたかった。

 

 

 

「謎の集団!深海棲艦について!!」

夜中のテレビはワイドショーの討論の最中だった。

テレビの声は続く。

「千葉のテーマパークが深海棲艦によって攻撃されたのはまだ皆さんの記憶にも……………………昨日は横須賀で…………提督らしき……深海側……

 

 

ぼうっとそれを見聞きする。

 

人は食物連鎖の頂点だ!…と誰かが言ったのを覚えている。

しかし、それは…かくも脆いものだと知った。

 

人には知恵がある、技術がある…それは力となるからだと。

 

でもそれを上回る何かが現れたら?

 

 

 

馬鹿馬鹿しい!そんな事は地球外生命体が侵略してない限りあり得ない?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな事はあり得たのだ。

 

 

ひとつだけ…さっきの話と違う事があるとすれば…

 

 

 

 

 

 

彼女達は海から現れた…と言うことだけだ。

 

 

そうだ。

突如として現れた謎の生き物、深海棲艦。

瞬く間に人々は海から追いやられた。

 

 

 

え?

世界も軍事力はもってるだろう?って?

 

 

結論から言おう、無理だった。

 

武力行使に和平交渉、様々な手段を用いて人々は海の奪還を試みたが全ては失敗に終わった。

 

平和と言う脆い砂上の城を崩された人は、日々怯えながら生きて行く事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

馬鹿みたいな話だが、奴らは海の上や中を…空を自由に動き回る。

 

多くの艦や戦闘機が、潜水艦が、人が守る為に戦って……いや、なすすべもなく散った。

 

 

 

 

 

 

人々は軍を非難した。

何故勝てないのかと

何故罪もない人々を死なせてしまったのかと

 

歯が立たない相手には何を向けるわけにも行かず、やりどころの無い怒りは内側へと向かう。

 

 

 

 

ある人は言う、これは終末だと。

人々の傍若無人ぶりがついに世界を怒らせてしまったのだと。

 

 

 

 

 

そんな時だ、艦娘が現れたのは…。

 

 

1人の少女が現れたらしい。

 

その少女も海に立っていた。

人々に仇なす深海棲艦を打ち倒して…。

 

その先の大戦の艦の名前を名乗った。

 

 

 

やがてぽつぽつと、艦娘は増えて行き…噂では民間人もスカウトによって艦娘として戦いに従事してるらしい。

 

彼女達は兵器なのか人なのかと言う議論も上がったが、大人の事情なのかあまり騒がれなくなった。

そうだろう…下手にヘイトを稼いで見捨てられたら人に待つ未来は滅びしかない…。

 

 

 

 

 

でも何故だろう?

彼女達を見ると切なくなるのは…。

 

 

 

 

 

 

「次のニュースです、深海棲艦の攻撃でOO商事がビル倒壊の……「は?俺の職場じゃん」

 

「またそれを受けて△△市では避難命令が…「は?ここじゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ…アンタ…救……」

 

「会社が吹き飛ばされてさ…これってもう出勤しなくていいよね」

 

「本当にアンタかい!?」

 

「家にも帰れないし」

 

「と、とにかく入りな!」

 

救の姿は彼のいた孤児院にあった。

避難命令の出た市から離れ、更に街から離れた山間にある唯一の拠り所に。

 

 

 

 

 

 

職場も吹き飛ばされた。

住む家も避難命令で追いやられて……

 

 

 

 

「……」

 

「まあ、アンタが戻った時はビックリしたけど…まあ前回ので慣れたよ」

 

「??前回?」

 

「おや?覚えてないのかい?」

 

「まさか海の深海棲艦とやらが陸に来るなんてねえ」

 

「そうさね」

 

 

「いつから奴らは海に現れたんだっけ」

 

「数ヶ月前さね、前にアンタがひょっこり戻ってきた後くらいさね」

 

「そうかあ…」

 

「そいや、あの子達は元気なのかい?」

 

「あの子…?あぁ、会社の仲間?元気だよ」

 

「会社……」

なっちゃんは怪訝な顔をした。

 

「ん?」

 

「い、いや、何でもないよ」

 

 

 

「いや、救?アンタ…やらなきゃならない事があるんじゃないのかい?」

 

 

「ん?()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それに会社も無くなったしねえ」

 

「……ッ!?」

 

「どうしたの?シスター?」

 

「……まあいいさ。荷物を取っておいで。その間に部屋を用意しておくから」

 

「ありがとう」

 

「アンタの家だからね…。それにアンタは…アタシにとって……」

そう言ってシスターは黙り込む。

 

「ん?」

 

「何でもないさね」

 

「え?気になるんだけど」

 

「いいから早く取っておいで!!」

 

何かを言おうとした彼女に急かされて彼は孤児院を出て行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼を門から見送り、その背中を見つめる彼女。

「……この胸騒ぎは何だろうね。目の前にアンタが居るのがとても嬉しいのにねぇ…。何でアンタはあのままなんだい?」

 

 

「あの時の艦娘の子達の事は何で話題に出さないんだい」

 

 

彼女は言えなかった。

言ってしまったら救がまた居なくなりそうで。

 

途端に救は踵を返しこちらに走ってきた。

 

「おや?忘れ物かい?全く…せっかちな子だ––––––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の家か…

と思いながら振り返り孤児院を見ていた俺を影が追い越した。

 

 

体が思うより先に動いた。

 

 

上空から迫る一粒の絶望

簡単に人を死に追いやるそれ

孤児院にはチビ達やシスターも…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな!!隠れ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは俺の全てをぶち壊した。

 

 

 

 

 

 

 



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422話 いつか夜は明けるから ③ もう戻らないもの

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で…ッ!!何で!!!!」

 

「しょうがないだろ…体が勝手に動いちまったんさ」

2度も目の前で失いたくないのさ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆弾を抱えた深海棲艦が孤児院を目指して飛んでいた。

俺は走った。

大事な家族を守りたくて…

 

 

しかしシスターもこちらに走ってきて、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の目に映ったのは

俺に向かってくるシスターだった。

 

 

 

 

 

 

真っ直ぐにその爆撃は孤児院に向かっていた。直撃はどう考えても避けられない。

 

 

 

でもそれから逃げるためじゃない。

 

()()()()()()()()()()()()()

 

飛び散る破片から、迫り来る熱波から

身を挺して俺を守ろうとしたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁあああッ!!チビ達が!家が!!」

「早く助けに行かなくちゃ!ねえ!シスター!なっちゃん!!」

 

痛い…!助けてお兄ちゃんと言う声が聞こえる。

助けてシスターと言う声が聞こえる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっちゃ–––––––––––––

ドロリとした生暖かい感触と硬い何かの感触が手に伝わった。

 

 

ハッとしてすぐさま覆い被さるシスターから退いて彼女を座らせて見る。

その背中には無数の破片が刺さっていた。

 

 

「何してんだい…」

「そんな顔して…アンタらしくないじゃないか」

彼女は息も絶え絶えにも関わらず笑顔で言う。

 

「待ってて!今助けを––––––

 

 

 

なのに体が動かなかった

–––いや、動けなかった。

 

 

決して怖いからではない。

 

 

 

 

 

彼女は彼の手を掴んで行かせなかったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は彼の手を握って言う。

「間に合わん事はわかるだろう?私よりもアンタがすべき事を…ガフッ」

 

炎に包まれた拠り所からの声は止んでいた。

外で遊んでいた2人だけのチビ達が泣きながらこちらに寄ってきた。

 

「チビ達ッ!」

 

「お兄ちゃん…無事?」

息も絶え絶えにコチラを心配する2人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何言ってんだよ!間に合うよ!」

 

「自分の事は自分が一番分かんのさ」

「まあ…あんたが助かってよかったよ……」

 

「い、嫌だッ!!何で俺なんかを庇ったんだよ!他のチビも居ただろう!!?何で俺なんかを!!俺が代わn「馬鹿言うんじゃ無いよッ!!!」

 

久しぶりに聞く彼女の怒号が彼の頭を揺さぶった。

 

「アンタはアタシが助けた命を軽んじるのかい!?アタシが助けた命は…そんなにどうでも良いものかい!?」

 

「………なっちゃんが皆が居ない方が………重くて辛いよ」

 

「…なぁに言ったんだい!……アタシもね、そう長くは無い命だったんだ。それがね…アンタを助けられるために使えたなら本望さね」

「それに…仕方ないだろう…体が先に動いちまったんだよ」

 

「2度も大事な子を失ってたまるもんですか」

 

「2度って…秋姉さんのこと?」

 

「……今のアンタにはきっと何か意味があるんだろねえ」

 

「何言ってんだよ…訳が…」

 

「だってお兄ちゃんは………だから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飲む薬は前より増えた。

動ける時間も少しずつ減っていった。

代わりに他の子の負担が増えた。

 

 

 

 

 

あぁ…本当は…そりゃ皆に見送られながら逝きたかったさ。

でもね

 

アンタを守れたなら、それ以上に嬉しい事はないんだよ

冷たいアンタに2度と会いたくなかった

アタシが今まで生きてきたのはこの時の為だったと思うくらいにね

 

 

だってアンタはアタシにとっては大切な息子なんだから…

アンタはどう思ってるかは分かンないけどさ

アタシはアンタを胸張って送り出したんだ

 

気に病むだろう

  引き摺るだろう

 

きっと悲しい現実が待ってるんだろう

苦しい壁が待ってるんだろう

でもね

 

胸張って生きてほしい

アタシが守った命だって

 

きっとアンタなら乗り越えられる

 

 

 

 

 

あぁ

 

 

目が霞んできた…

 

お別れ…の

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう……母さん」

 

 

 

 

 

 

 

「………ッ」

 

 

 

もはや目は霞ぼやけて見えない。

周りの喧騒も耳に入らない。

 

 

 

でも

 

その一言だけは耳に入った。

例え見えなくとも顔も分かった。

 

 

 

「な、何言ってんだぃ…」

 

「たとえ血が繋がってなくても……なっちゃんは俺をこんなに育てて愛情をくれたんだ」

「ずっとそう言いたかった。でも恥ずかしくて言えなくてごめん」

 

彼は嗚咽を伴って泣きながら言う。

バカだね、死ぬ前の奴を泣かしに来る奴がいるかい…

 

 

 

 

 

 

 

ポスっと頭に手が置かれた。

 

「…生きるんだよ…可愛い息子…馬鹿息子……」

 

 

「母さん!母さんッ!!俺!俺ッ!!」

 

「……どんなに暗くたって、長い夜だって明るんだ」

 

 

「明けない夜は無いよ」

 

 

 

 

「アンタならきっとあの娘達……と……………っ!!行きな」

 

「ここは私達に任せて…ね?」

3人をぎゅっと抱きしめる。

 

 

分かってる。

もうダメだって…

でも、皆の言葉を裏切れなくて…

 

ごめんと一言だけ言った。

 

 

 

 

 

 

「行ってらっしゃい」

消え入りそうな声でそう聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

泣いた。

叫んだ。

どんどんと冷たくなって行く彼女を抱きしめて泣いた。

 

沢山の思い出が蘇った。

沢山の公開が押し寄せた。

沢山のまだ伝えてない言葉が口から溢れでた。

 

 

泣きながら走った。

 

 

 

 

 

 

「行ったね…」

 

「シスター…お兄ちゃん行ったよ」

 

「そうかい…」

 

 

 

「お兄ちゃんは提督さんなんだから」

 

「そうさね」

 

「忘れてるみたいだよ?」

 

「きっとあの子達が…真夏達が思い出させてくれるはずさ」

 

「……やっと言えたね、行ってらっしゃいって」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて…残念だったね…アンタ達…狙いの息子はここには居ないよ」

 

『………』

 

「行かせやしないよ」

 

「だめ!」

「いかせない!」

 

『離せ』

 

「離すもんか!!」

 

「お兄ちゃんを守るんだ!!」

 

 

 

奥から現れた深海棲艦とやら。

彼女達は咄嗟に理解した、奴の狙いは救だったと。

だから彼女達は深海棲艦にしがみついて行かせないようにした。

息も絶え絶えだった。

チビ達の内1人はズルリと倒れ落ちた。

 

それでもシスターともう1人のチビは離さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パンという音が2回

辺りに響いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寒い夜の事だった。

満天の空に目が奪われて…

自然と外に足を運んだらアンタが居た。

 

あぁ…この子はきっと輝く星の下に生まれたんだろうねと思った。

 

我が子じゃない…いいえ、あなたは私の子供。

 

辛い時には現れてくれる優しい君。

前回に女の子達と来てくれた時は病気と言われて落ち込んでた時だったね…

生きる気力を貰えたよ…

 

それに

アンタが寂しくないって分かって嬉しかった。

 

 

 

 

もう見えない我が子

暗い暗い景色もいつか晴れるから

その場にアタシ達は居なくても、きっとアンタの周りには………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ッ!!」

 

走れと言われた。

何故か走っていた。

体が本能がそうさせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギギギと音がした。

後ろに深海棲艦が追いついていた。

 

 

立ち止まって振り返る

 

 

 

 

 

「よくも…みんなを!大人しく海でいろよ!!皆が何したって言うんだッ」

 

『お前がお前だから…』

 

「…クソッ」

 

 

 

 

 

 

 

どうすれはいい?

立ち向かうか?––––––貰った命なのに?

逃げるか?––––追い付かれるのに?

 

 

俺のせいで皆は死んだのに?

秋姉さんも死んで……

 

 

 

あれ?

 

 

秋姉さんは……

 

 

 

 

 

目の前に迫る深海棲艦。

でも頭がこんがらがって体が動かない。

 

 

 

 

あれ…俺は……ー

 

 

 

 

 

 

「何してるんですか!早く逃げて下さい!!」

どこかで聞いた声が後ろから響いた。

 

 

 

 

 

「民間人を発見!吹雪!深海棲艦との戦闘に入ります!!」

 

 

 



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423話 いつか夜は明けるから ④ 再会

 

目の前で繰り広げられる戦闘は凄まじかった。

吹雪と名乗ったその子はこちらを守りながら敵を追い詰めて行く。

 

その後ろ姿に脳裏に何かが過った。

 

 

《何があってもあなたは守り抜きます》

 

《俺もお前達を守ってみせる》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何だ今のは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に目に飛び込んで来たのは、隠れた敵が吹雪に向かって何かを発射する瞬間だった。

体は勝手に動いた。

 

「危ないッ」

助けてもらう側が足を引っ張るなんて馬鹿な…と思う。

でも、体が勝手に動いてしまった。

 

 

 

約束したんだって何故か頭によぎった。

 

「え?!きゃぁあ!?」

 

ガシャンと音を立てて艤装ごと倒れる吹雪…そりゃそうだ、俺が覆い被さるように飛びついたからだ。

ドカァン!と奥の方で砲弾が岩に直撃した音がした。

 

間一髪で回避できたことに安堵しながら冷や汗をかく。

 

「あ、ありがとうございます!というか!危ないですよ!?…あの…えと……お怪我はないで––––––––

 

助ける側に助けられた吹雪は戸惑いながらも感謝を述べるが…

 

 

 

 

 

お兄ちゃん?

 

 

 

 

はぁはぁと肩で息を切らせてコチラに笑顔を向けてくれた吹雪は俺の顔をみて小さくお兄ちゃん?と呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え…嘘…救お兄ちゃん?」

 

「…ッ!?」

 

 

 

 

その姿を、顔を声を俺は知っている。

 

 

「未冬?」

ポツリと俺も呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…救お兄ちゃん!!」

そう呼んだのは孤児院時代の家族の1人の未冬だった。

 

「良かった!良かった!!生きてたんだぁあ」

彼女は手にした艤装を放り出して俺に飛び込んできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前、その姿は?」

 

「えへへ…私ね?吹雪って艦娘さんの適性があったから艦娘になったんだ!真夏姉さんに小春姉さんもなんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『何があったって私達が守りますから』

 

 

 

 

 

 

「ん?何か言ったか?」

 

 

「ううん?何も?」

「よおし!元気出た!!待ってて!あんな奴ら…私がやっつけちゃうんだから」

 

意気込みよく敵陣へと向かおうとする吹雪の背中に何か別の背中が重なった。

 

 

「吹雪ッ!!左へ飛べ!!」

 

「はい!」

 

咄嗟に出た指示だった。

迫り来る砲撃を躱すように出た言葉に吹雪は、さも当然のように反応した。

 

 

 

「左下ッ!!ガラ空きだ!叩き込め!!」

 

「はいっ!」

 

 

彼女は間違いなく、孤児院の時の妹の未冬だ。

そう分かってる。

なのに…なんだろう?

 

彼女の背中を見ながら吹雪という名前を呼ぶのがこれほどに心がざわつくのは?

 

 

「吹雪…行きますッ!!えええええい!!」

 

 

 

 

 

 

 

–––お兄ちゃんが生きていた

 それだけで嬉しいはずなのに、なんだろう?

吹雪と呼ばれるだけで…あなたが後ろにいるだけで、こんなにも力が溢れてくるのは…

まるで戦場を知って、お兄ちゃんと一緒に戦う事を体が知ってるかのように…

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドォン!という音と共に、敵深海棲艦の撃破を確信する。

 

 

 

 

 

 

「…敵、沈黙確認………

の言葉と同時にへたり込む吹雪。

 

「や、やった……やったよぉ」

 

「未冬!大丈夫か!?」

その様子を見て駆け寄る救。

 

「お、お兄ちゃん…い、今になって震えが出てるよ…」

「わ、私ね?初めての実戦だったんだあ…」

 

「何だって!?」

 

「でもね?助けなくっちゃ!て思ったら体が勝手に動いたんだよ。それでね?それでね!?お兄ちゃんに呼ばれたら…こう、ぐわーって力が湧いてね?」

 

 

目の前に居る少女は、記憶を探ればまだ制服に身を包む少女だった。

それが武器を携えて戦場に出る。

自分以外の誰かを守らんとする為に。

震える手足を無理矢理進めて…。

 

「それでね?それで…あ………」

 

目の前で無理矢理作った笑顔でコチラを困惑させないようにする彼女に俺ができることは、家族として抱きしめることだった。それしかなかった。

 

いや

むしろそれで俺が救われようとしたのだろう。

 

残り少ない家族に会えた事で…

孤児院の家族を死なせてしまったという重い事実から少しでも…

 

「…ぅ…うあぁ…うわぁぁぁあ」

未冬は泣き出した。

 

「あのね、私達の家が燃えてたの…皆…皆ね…ううっ…、だから絶対に許さないって思って追いかけてきたら…お兄ちゃんが居て」

 

「…いや、俺のせいなんだ」

 

「…ううん、生きててよかった」

 

 

 

 

 

 

2人で泣いて慰め合いながらこれまでのことを簡潔に説明した。

 

「住む家もないじゃん?!」

 

「そうだなあ……とりあえずはいつもの家に戻ろうと思うよ」

 

「それはあまりおすすめできないよ?危険区域だし、人が居ないから無法地帯みたいで…夜盗とかたくさん居るから…」

 

 

それは事実だろう。

かと言って…ホテル暮らしをするような余裕は…あるけどまあ…

街一つから人が流れるわけだから…うーん…。

 

 

「あの、とりあえず保護という形でうちに来ませんか?」

 

「え?うちって?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「西波島鎮守府というところだよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

–––––ところ変わって…

アズールレーン世界に居る西波島のメンバーサイド…

 

 

「司令官?」と吹雪が呼びかける。

先程まで隣に居た指揮官の姿が無い。

瞬きする間に姿を消した。

心がざわつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その異変を感じ取った面々が集まってくる。

 

 

「ダーリンが…ダーリンが!!」

 

彼女達に分かるのは彼がこの世界から消えてしまったと言うことだ。

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたんですか?」

吹雪が尋ねる。

 

「何って…」

加賀が「あなたもさっきまで言ってたじゃないたと言いた気に吹雪を見つめるが、すぐに気付く…吹雪の目は本当に何も知らないのだろうということに。

 

「やっぱり…ダーリンさんが消えたの」

榛名が涙目で答える。

 

「ダーリンさん?」

吹雪がさらに首を傾げる。

 

「も、もう!吹雪ちゃん!冗談はやめてよ!提督ですよ!神崎 救提督ですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吹雪は答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰ですか?その神崎 救って人は」

 

 

 

 





少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!

感想などお待ちしてます!よろしくお願いします!!


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424話 いつか夜は明けるから ⑤ 忘却と邂逅と

 

「あなた…何言ってるの!?冗談もほどほどにしなさいッ!」

 

激昂した加賀が吹雪に掴みかかる

 

「ヘイ!加賀!やめて!」

 

「やめましょう!加賀さん」

金剛や赤城が加賀を止めに入るが、吹雪の方を見てもイマイチ状況が理解出来ていないように感じる。

 

 

 

「司令官は大石さんじゃないですか」

 

「〜〜ッ!?!?」

 

カタカタと少し震えて怯えた表情を見せる吹雪。

本当に怯えきった様子にに嘘を言ってるようには思えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆さん?何してるのですか?早く業務に戻らないと…提督に折檻されますよ」

暗い表情で鳳翔がやって来た。

 

「ダーリンは折檻なんかしないよ…?」

 

「??この前も金剛さんは叩かれたでしょう?」

 

 

「「「!?!?!?」」」

 

「ま、まて!鳳翔!お前は何を…」

「…ッ!!明石!明石を呼べぇえ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…うーん…診察の感じでは異常はないかな」

腕組みをしながら明石が答える。

「とは言え、2人に提督に関する記憶の喪失が見られるのは問題だよねえ」

吹雪、鳳翔は不安そうな顔で周りを見つめる。

 

彼女達のバイタルには何の問題もない。

…神崎 救に関する記憶以外には…。

 

問診する中で分かったことは、今までの神崎 救との記憶が全て以前の提督に塗り替えられているという点である。

しかも悪い方向に。

 

「うーん…過度なストレス…の防衛本能だとしても2人同時に同じ症状…ってのは朝日でもわからないわあ」

蒼朝日も頭を抱える。

 

 

 

「そうだな、神崎 救に関する記憶だけなくなると言うのも………」

 

「ん?長門?どしたの?」

 

「……神崎?誰だ?神崎と言うのは?」

 

長門の発言に鹿島や明石も凍りついた。

 

…時だった。

バタン!!と大きな音を立ててドアを開けて榛名が入ってきた。その表情は青ざめており…彼女が何を言わんとするかが分かってしまう。

 

 

 

「た、大変ですッ!!金剛お姉様もダーリンさんを忘れてしまいました!!」

 

 

榛名は明石達の予想通りの言葉を発した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって現実世界での救。

 

(2つの世界の艦娘が登場しますので、現実世界での艦娘は西◯◯と表記させていただきます)

 

 

 

 

 

 

「ここが…鎮守府?」

 

「うん!私達の基地みたいなものだよ!」

 

 

 

オモイダシテ

微かにそう聞こえた。

 

「え?何を?」

 

「え…未冬、今何か言っただろう?思い出して…とか」

 

「何も言ってないよ?変なお兄ちゃん…」

クスクスと笑う未冬はこっちだよ!と俺の手を引いてゆく。

「会わせたい人も居るんだ」

 

 

 

 

「西吹雪!ただ今帰投しました!!」

ビシッと敬礼をする吹雪を迎える2人の艦娘。

 

 

 

 

 

 

「お帰りなさい西吹雪!そちらが今回襲撃から––––って…え?」

笑顔で西吹雪を迎えた彼女達が俺を見た瞬間に固まる。

 

「…ね?驚いたでしょ?」

 

 

 

「……救?救なの?」

 

 

––アナタ…

 ズットソバニイマスカラネ–

 

頭にノイズが走る。

何だ?と思いながら着物姿の彼女を見る。

 

 

 

「…こ、小春姉さん?」

 

「…ッ!………ッ!!」

両の手を口元にあてて感極まったようにこちらを見る彼女。

「生きてたの!!良かった!!」

小春と呼ばれた艦娘は救に近付いて彼を抱き締めた。

 

「良かった…良かった」

彼女は涙を浮かべて彼を強く強く抱き締めている。

 

 

「こ、小春姉!?お兄ちゃんが…艦娘の力だと………」

 

「…く、苦しい………小春姉さん」

 

「やだ!もう少しだけこうさせて……」

 

 

西鳳翔の胸の中で悶える救。

だが、そのすぐ後にだらん…と動かなくなったところで解放される。

「窒息してません??」

 

「あっ……」

 

 

 

後に彼は、『お花畑が見えたよ』と語っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…む?どうした?西鳳翔……そこの人は?」

 

「ぐすっ……西長門さん、私の家族が生きてたんです」

 

 

 

––ワタシニナグリカカッテクルバカハ

 ヒトリシカイナイー

 

 

 

「……はじめまして、戦艦の西長門だ。よろしく」

一瞬目を見開いたような表情をした彼女ではあるが、すぐにクールな感じに戻った。そして自己紹介を軽くして右手を差し出す。

 

「あ…あぁ、神崎 救です。こちらこそ」

呆気に取られながらもすぐに右手を差し出し、握手を交わす。

 

「…懐かしいな」

ボソリと彼女が呟いた。

 

「ん?何か言った?」

 

「?どうした?」

 

確かに西長門は何かを呟いた。

消え入りそうなその声の意味は分からなかったが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダーリン…?

 

え?ダーリンて誰?

 

え?救?

嘘?

 

でも感じる…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バァン!!と正面ドアを乱暴に開いて走ってくる娘がいた。

 

「むっ!西金剛!あれほどドアは優しく開けろと言っt「救!?救なの!?」

長門の声を遮って彼女はその名前を呼んだ。

 

 

 

––ダーリン

 メヲハナシチャノーナンダカラネ––

 

何故だろう?

さっきから艦娘を見る度に…頭の中にノイズが走るんだ…

 

「…金剛……夏海…?」

 

 

 

「救ッ!!!」

 

彼は本日2度目の気絶を味わうこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そう、シスターが…」

小春、夏海、未冬は孤児院が襲撃にあった顛末を救から聞く。

近頃襲撃は多くなった。

しかし、誰が自分の家を襲われると予想するだろうか?

続く平和がこうも簡単に崩れ去ると思うだろうか。

 

「ごめん、俺のせいだ」

そういう彼の肩に手を寄せて「そんなことない、生きててくれて良かった」と言うしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君が神崎 救君かね」

 

執務室というところに通された俺を迎えたのは…御蔵と名乗るおじいさんだった。

 

「………」

2人の間に微妙な空気が流れる。

 

「…………」

 

「……」

 

 

 

「…」

 

 

「……この世界に深海棲艦をもたらした原因か」

 

「…え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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425話 いつか夜は明けるから ⑥ ここが家だから

 

孤児院から独立後は一人暮らしで孤児院には仕送りの時に電話をして、年に数回顔を出すだけだった。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()小春姉さんと夏海も外に出てたことから敬遠してたのもある。

小春、夏海、秋穂、未冬は4人で季節姉妹と呼ばれていた。

ほんわかした小春、元気いっぱい夏海、大人しめな秋穂、幼げな未冬…

俺にとっては誰も大切な…大好きな人だったけど…

まさかこんな形で再会するなんて思ってもなかった。

 

 

と、再開を喜ぶのは良いが当面の生活を考えなければならない。

会社も無ければ住む家も無い。

金は…まあそれなりにあるけれどもいつかは尽きる。

 

 

「ねえ!聞いてる?」

頭を抱える救に話しかける者が居る。

 

「ん?あ、あぁ、すまん!考え事をしてた」

 

 

 

「とにかくさ!お兄ちゃんは住むところ…無いんだよね?」

ずいっ…と西吹雪が前へ出てくる。

 

「うん」

 

「働くところも…ないのよね?」

すずいっ…と西鳳翔が西吹雪を押し退けて出てくる。

 

「う、うん」

 

「それは困るよね!?」

ずずずいっ…と西金剛が以下略

 

 

この3人が何を言わんとするかは…火を見るより明らかだろうなあ…

この鎮守府で働かn「「「この鎮守府で働かない!?」」」

 

……思考よりも早い…だと!?

 

 

 

 

 

「よし行こう!!」

答えなんか答える暇もなく俺は引き摺られて行く。

ゴッ!ゴッ!!と床やら階段やら曲がり角で俺がどこに何をぶつけようとお構い無し、3名の悪魔は談笑しながら俺を引き摺って行く。

この時点で俺の中でのヤベーヤツランキングの順位が入れ替わった。

 

4位 勧誘 ←ランクダウン

 

3位 上司

 

2位 艦娘 ←New!!

 

1位 深海棲艦

同率1位 給料日前の飲み会の幹事

 

 

え?今の状態も勧誘じゃないか!って?

これは誘拐拉致と言うんじゃないかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、それを良しとは言えない。

たまたま生き残ったからここで働ける

たまたま艦娘の家族だったからここに置いてもらえる

俺だけそんな特別は許されていいはずがない

 

何より…

また彼女達に危険な目にあって欲しくない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ…君か?此度の侵略で生き残ったという青年は」

連れて来られた…半ば拉致されて連行された執務室で俺はおじいさんに会った。

「ワシは…あー……御蔵と言う、海軍で元帥をやっておる……って大丈夫か?」

 

御蔵と名乗ったそのおじいさんに何処か懐かしさを感じながら向かいの椅子に腰掛ける。

 

「尻が摩擦で燃えそうなんです…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よく生き残ってくれた」

 

おじいさんはニコリと笑って言った、ポンポンと肩を叩きながら。

 

 

まるで再会を喜ぶように、優しい…優しい表情で言った。

 

 

 

 

 

 

「え…あ、えと、生き残ったと言うより、生かされたんです」

「俺の代わりに死んだ人も居て…」

 

「ふむ、そこら辺は西吹雪から報告を受けている」

 

 

「……」

 

「……」

 

沈黙が続く。

 

 

 

 

「深海棲艦」

 

「深海棲艦がこの世に現れた原因か…」

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

「何も知らんようじゃな」

 

「はい、すみません…」

 

「…まぁ、実のところワシらにも……分かってはおらんのだがな」

 

「…」

 

「さて、西吹雪達から君をここに置いて欲しいとな」

 

「俺もそう聞きました」

 

「………」

 

 

 

 

 

 

 

以下、御蔵元帥と艦娘の会話の回想。

 

『…来たか、奴を守………え?!ここで住まわせたい!?!?』

 

『やっぱりここで私達が守るのが1番だと思うんです』

 

『いや、とは言え…のぅ』

 

 

 

『げ・ん・す・い閣下?分かってますよね?』ガチャ

 

『いや、しかしな…?』

 

『………ね?お願い!!』ズイッ

 

『ね?じゃないわい、どこに上官に砲身向けてお願いする奴がおるか』

『世間一般ではそれを脅しと言うんじゃが!?』

 

 

 

回想終了〜

 

どうも奴の周りに集まる艦娘は頑固なのが多いのう…

 

 

「…しかし、俺がここに居る訳には…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前さんはこう思ってるんじゃないのか?"また彼女達を危険に晒してしまうのではないか?足手まといで命を落としてしまうんじゃあないか?"と」

 

 

図星だった。何も答えられなかった。

守ろうとしても…強大な力の前には人は無力だ。

どれだけ足掻こうと、立ち上がろうと踏み潰される…

 

 

「無力ではない」

 

「…ッ!?」

一言、たった一言だが…年齢を全く感じない鋭い視線とオーラが彼から感じられた。

 

 

「人は奴等を前に無力ではない」

「確かに個々人の力では何も出来ん」

 

「しかし、艦娘達の協力があれば…決して敵わない相手では無いのだ」

 

「だからこそ力を貸して欲しい」

 

「力を…?俺が?」

 

「うむ」

 

 

 

その理由…それはお前が1番知っている筈だ。

 

何故ならお前は…※※なのだから…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

あの後は嵐のようだった。

「「「決定!就職!!!」」」

春夏冬がパーンとクラッカー…え?砲身?を鳴らして乱入してくる。

御蔵さんも「え、うん、ヨカッタネ…」という感じである。

 

「もうね!部屋も用意してあるからね!」

 

「早くない?」

 

「ご飯もあるからね!」

 

「まだ14時だよ?」

 

「着替えもあるからね!」

 

「え…えぇ…」

 

ズルズルと引き摺られる俺。

心なしか御蔵さんの表情が引き攣ってるように見える…気がする訳ない。だって引き攣ってるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()ありがとうございます」

引き摺られながら俺は敬礼とお礼を述べた。

 

 

 

「………うむ」

御蔵さんは寂しそうに返事をした。

「ここはお前さんの家だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……やるんですね』

 

 

『……』

 

『彼が真実を知ったら挫けますよ』

 

『あぁ、挫けるだろう』

『この鎮守府も奴も彼女達も本来ならこの世に居ない存在…』

 

 

『でも救は私達が守るよ』

 

『…西金剛さん…』

 

『私達はその為にこの西波島鎮守府に居るのだから…』

 

 

 

 

 

『ワシも…そのつもりだ』

『あ奴が全てを思い出して、この根源と戦う準備ができるまで…な』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神崎よ…

お前は自分と言う存在を思い出した時、自分を責めるだろう。

周りの艦娘達の意味を知った時、道を見失うだろう。

周りは皆敵となり、居場所を感じられなくなり…絶望するだろう。

でも敵は待ってくれない。

 

ワシらに出来ることをワシらはやろう。

じゃから…ワシらが全力でお前を守ろう。

 

 

 

 

 

 

 





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426話 いつか夜は明けるから ⑦ 忘れたくない!忘れたくない!!

 

 

「くっ…」

 

考えたくないが、最近敵の襲撃が多い気がする。

 

「反撃…撃ち方……始めぇぇええ!!」

 

母港へのセイレーンの襲撃は増えた。

聴きなれない提督の名前を皆が発し始めてから…

 

長門は考える、神崎 救と言う名の者と関係があるのだろうか…?と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何より大切なあの人…

例え血は繋がってなくたって…こんなに大切な人は居ない。

 

小春姉さんも、夏海も、未冬んも…4人で大好きだったあの人。

 

彼が死んで4人で泣いたのに

 

あぁ

   ナンデ頭から ココロから剥がれて行くの?

 

お願い 消えないデ

  忘れたく…ないの

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

桜ビスマルクはため息を吐く。

 

母港での皆は元気が無い。

いや、日に日に弱くなっている。

 

「面倒だな…その、提督という存在が居ないと力が出ないというのは」

頭を抱えるのはアズールレーンやブルーオースのメンバー達。

 

鎮守府にて、神崎 救と言う提督が居たからこそ彼女達はどんな敵にも負けなかった。

この世界では母港を鎮守府として見ていたからこそ活動にも問題はなかったが、今ではそれも叶いそうに無い。

 

居ない筈の大石と言う名の人物に怯えながら日々を過ごす彼女達…。

 

 

日に日に彼の事を忘れて行く者が増えると言う異常事態もさることながら、対セイレーン作戦における重要戦力の損失は大きな問題であった。

ましてや…自分達のメンバーの中からも同じ状況に陥る者が出てくるとは夢にも思わなかった。

 

 

 

「…もし、このまま元に戻らなかったら?」

 

「嫌…私嫌!!あの人の事忘れたく無いッ」

 

日に日に蝕むように…それは私達の中に広がって行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本当に神崎 救という人物は存在したのか?

 

まやかしの記憶ではないだろうか?

 

姉妹の姿にそう思い始めながらも己と葛藤する者も少なくなかった。

 

 

 

 

 

その中に他の艦娘とは少し違う路線を歩む者が居た。

 

 

「お、お姉ちゃん…?これは?」

そう声をかけるのは長鯨、迅鯨の妹である。

 

長鯨は目の前の光景に驚きを隠さずに居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     壁

 

 

 

 壁

 

 

 

         天井

 

 

 

 

   床

 

 

 

神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ありとあらゆる所に張り出された 神崎 救と言う名前が書かれた写真。

もはや狂気にも近いその状況にただ声を失うだけだった。

 

 

「長鯨…」

声をかけられた迅鯨は言う。

 

「あなたは覚えてる?大好きな…大切な人の事を」

彼女は涙を流しながら問いかける…が、長鯨は難しい顔をする。

 

「…ごめんお姉ちゃん」

ううん、と首を横に振って彼女はその写真を愛おしそうに見つめる。

 

「…お姉ちゃんにとっても私にとっても…みんなにとっても大切な人なんだよね?」

 

「うん」

「私ね…どんどん忘れていっちゃってるの」

 

「好きなのに…こんなにも大切なのに少しずつ…少しずつ忘れていっちゃってるの!!」

 

 

忘れたくないのに

 

しかし、長鯨にはその気持ちを理解できない。

忘れ去ってしまった彼女にはそれを理解することはできない。

 

「……ッ」

 

ただ、目の前で大切な姉が悲しんでいる事しかわからない。

 

 

 

 

「……ジンゲー…」

 

金剛や榛名、霧島が入ってくる。

 

「凄いですね…迅鯨さん…」

霧島が声を掛ける、彼女は四姉妹の中で唯一彼を覚えている艦娘である。

 

「えぇ、日に日に忘れて行くの…だから、忘れたくなくて……」

 

 

 

 

 

「本当にそんな人居たの?」

金剛が訝しげに迅鯨に問いかける。

 

「……は?」

迅鯨は鋭い目で彼女を睨みつける。

 

「ちょ…金剛お姉様!!」

 

「だって!霧島も…迅鯨も蒼オークランド達もおかしいデース!!在りもしない人の名をずっと呼び続けて…日々攻撃も激しくなってるのに…」

 

 

「やめてよ」

迅鯨は涙目で彼女を睨む。

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()

 

 

「…〜〜〜ッ!!!」

 

迅鯨は金剛から飛び掛かった。

 

ガタン!!と言う音と共に金剛に馬乗りになる迅鯨。

「ジンゲー!何するんデース!」

目を見開いて怒る金剛。

 

「迅鯨さん!お姉様を離して下さい!!」

榛名が止めに入る。

 

 

 

 

「退いて下さ––––

 

2人の言葉は途中で止まる。

ポタポタと彼女の目から止めどなく溢れる涙が金剛に落ちて行くから。

 

「何であなたが……あなたが忘れてるのよ…」

 

 

 

 

 

「何で…何で忘れ去って平気な顔してんのよっ!!1番…近くで…ひぐっ…あんなに愛してたくせにッ!!」

 

 

『ダーリン!バーニング…ラ〜ブ!』って

毎日毎日あんなに愛を囁いてた…叫んでたくせに!!

羨ましかったのに!!

 

ウラヤマシカッタノニ!!!!

 

 

 

グッ…と掴みかかった手に力が入る。

 

「お姉ちゃんッ!!ダメだよ!!」

 

 

 

 

 

「……わかりまセン!私には…わからないデース!!」

金剛も最早彼の事を思い出せない。

彼女達からすれば、ありもしない記憶を必死に追いかけて行く迅鯨達の方が異常なのだから…。

 

 

「くそおお!!」

迅鯨は彼女らしくない声をあげて掴んだ手を離す。

 

「…」

金剛は改めて部屋を見渡す。

 

幾つもの写真が、名前が嫌でも目に入る。

「…知らないのに……何でこんなに胸が苦しいのでショウ」

 

 

 

「うわぁぁぁぁあん!!!」

 

 

ポツリと呟いた金剛の言葉に迅鯨は大きな声を上げて泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドカァァァアン!!

 

大きな音とともに部屋が揺れる。

 

 

 

 

[敵襲ッ!直ちに戦闘態勢に入れッ!!]

 

長門や桜ビスマルクの放送を聴き母港の守りに入る面々。

 

 

「こんな時でも敵は待ってくれないんだな…」

 

「哨戒中の奴らは一体何をしてるんだ」

 

そう、母港の周辺だろうと哨戒は怠っていないはずだ。

「桜綾波と川内に神通に蒼オイゲン達のはずだろう!!」

 

敵を絶対に倒すマン筆頭の神通達が敵を見落とすなど考え難いが–––––と思った時だった、彼女達が目の前に戻ってきた……ボロボロで。

 

 

 

「どうしたの!?みんなッ」

その姿に驚愕する陸奥と大淀。

その陸奥達に向かって神通達は言う–––

 

 

 

 

「…撃てません………神崎提督を撃つなんてできませんッ」

 

 

「…は?提督??一体何を––––––「居たぞ!あそこだッ!!」

 

長門が敵の姿を捉える。

「深海棲艦と……人…?軍服だと!?相手側の指揮官かッ」

 

「深海棲艦も…?この世界に?!」

陸奥は長門の指す方向を見る…。

そこに迅鯨や金剛達も到着した。

 

 

 

そして嫌でもその姿を見てしまう。

 

 

 

 

 

 

 

「…救君?」

 

「指揮官…と…金剛さん?!」

 

「お、お姉様…?」

 

「わ、私デース!?」

 

白髪のその男は…髪の色こそ違えども私たちのよく知る人だった。

そしてその隣に居るのも…

 

 

『……』

 

白い神崎は寄り添う白い金剛に『やれ』と一言だけ言う。

 

 

無数の砲撃が母港に向いて放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「敵襲ッ!敵襲ーー!」

 

西大淀が大声で放送を入れる。

 

「…何?敵襲!?」

救はベッドから飛び起きる。

 

「お兄ちゃん!!起きて–––るね!!」

 

「西吹…未冬!私は何をしたらいい!?」

 

「司令室に行って!!」

 

 

 

 

 

 

 

 





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427話 いつか夜は明けるから ⑧ 急転

 

忘れた者には彼が単なる敵に、

忘れぬ者は彼が絶望に見えた–––

 

 

 

「ね、ねぇ?指揮官様?何の冗談ですか?」

桜赤城は強張った表情で尋ねる。

 

 

「姉様ッ!!馬鹿なこと言うなッ!指揮官なはずがない!指揮官が…皆を攻撃するはずが無い!!」

桜加賀が激昂する。

当然だ、指揮官が皆を傷つけるはずなど無いのだから…と皆が分かってるのだから。

 

「馬鹿な事は分かってるわよッ!!でもね…」

 

「あの感覚は…何があっても覚えてるわ…あの感じは…紛れもなく指揮官様なのよ」

 

 

白髪頭の彼は笑って言う。

「……なら、桜赤城?その俺を攻撃できるのかい?」

 

「……ッ!!!」

 

彼はフウッと溜息を吐いて言う。

「…忘れてれば幸せだったのにな」

 

 

 

 

「俺は神崎 救!!深海棲艦の提督だ!!世界を超える貴様らを潰して…現実世界も貴様らの世界も俺が貰う」

 

 

「やめて!!その名前を使わないでッ!」

神崎 救

その名前は彼女達にとって大切な意味を持つ…のに…

 

 

 

 

 

 

あぁ…

その名前が彼女達に刻まれてゆく。

 

「きゃぁあ!!」

榛名が被弾した。

 

「榛名っ!?大丈夫デース!?」

 

「は、は、い。榛名は、まだ大丈夫です」

 

 

 

 

「よくも榛名を……!神崎?覚えましたからネー!!ここはやらせまセン!」

その最中でも忘れて行く者は彼の名前を悪の一員としてその心に刻んで行く。

 

 

 

「アハハハハハハ!!沈めッ!沈めぇえええええ!!」

 

 

轟音は鳴り響く。

圧倒的な戦力ではないが、今の彼女達にとっては大きな脅威には間違いなかった。

 

 

 

 

–仲間を傷つける者として––

–深海棲艦の提督として––

 

 

 

 

その様子を迅鯨はへたり込みながら眺めていた…。

身体が動かなかった。

 

あの人は…

何故だろう?

私にとって…凄く大切な"何か"な気がするのに…

 

 

バタバタと横を仲間が駆けて行く…

その何かに向かって、敵意を向けながら…

 

 

ふと、横を見ると…金剛達が誰かに対峙していた。

 

 

 

 

 

 

そう、その姿は白い…かつての仲間。

忘却は全てを塗り替えて行く。

彼の愛した深海棲艦でさえ–––

 

 

 

 

「居たぞ!!ここにも姫クラスが!!」

「後方ラインは何をしていた!!」

 

 

艤装を構える先には姫ちゃん、鬼ちゃんが居る。

2人は涙ながらに訴える。

 

 

「ねえ…みんなあ…思い出してよお…私達だよ!!」

 

「深海棲艦が随分と馴れ馴れしいな…」

 

そう、それは姫ちゃん達ですら例外ではない。

彼の愛した深海棲艦に関する記憶も抜け落ちて…かつての仲間は単なる敵として認識される。

 

「…ッ!お願い…」

 

「……」

金剛は艤装を向けながらも疑問に思ってしまう。

 

何故この2人は私たちに敵意を向けないのか?

後ろに居る深海棲艦達と何が違うと言うのか?と。

 

「金剛!!何をもたついてる!!後ろの神崎達が迫ってるんだぞ!!」

長門が金剛に声をかけながら神崎深海提督の元へと走って行く。

 

 

「……長門!行って下さサイ!!この2人は私1人で処分しマース」

 

そう声をかけた金剛は1人考えた。

 

 

頭が痛い。

 

 

 

 

「ねえ!!金剛さん!!ねえ!お願いッ!!」

 

その声が…頭が痛くなる。

 

「私は死んでもいいから…思い出して」

 

何でそこまで言う?

 

 

 

 

頭が…

頭が…

頭が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

砲撃音が響いた––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

––救サイド––

 

平和な時間は簡単に消え去る、たった1発の砲弾で。

揺れは彼に非現実を現実として叩きつける。

 

「敵襲だー!!」

轟音と建物が揺れる中に声が響いた。

 

窓から海を見ると、遠くで何かが光った。

 

次の瞬間、また轟音と共に天井が目に入った。

一瞬の間を置いて隣の部屋が砲撃されたと気付く。

顔面から壁に叩きつけられ俺は仰向けに倒れていたのだと…

 

「救!?救!?!?」

青褪めた様子で西金剛…夏海が飛び込んできた。

 

 

「大丈夫…。敵襲?」

 

「血が出てるじゃない!これ使って…救、逃げるよ」

タオルを額に当ててもらいながら手を取られて行く。

 

 

 

夏海が「早すぎる…」と呟いたが何のことかも分からなかった。

 

 

 

 

後ろでダァン!という砲撃音と揺れを感じながら走る。

 

 

 

 

揺れる鎮守府から抜け出して出撃ゲートへとやって来た。

御蔵が「来たか…」と言いながら一歩下がるように言う。

 

 

 

 

 

ゲートの窓から外を見る…

 

 

「相手が見えるわね」

 

「え?どこ?見えない」

 

「救君には見えないかもね…まぁ、見えない方がいいわ」

救は目を凝らすが敵の姿は見えない。

ドォンと言う音がして、ひどい揺れが起こった。さっきまで居た鎮守府が爆発したらしい。

 

「あぁ……住む家が…」

 

「………」

御蔵が俺を見つめた。

いや、そこに居る全員が俺を見ていた。

 

「…え、なに?」

 

 

「何があっても…絶対に守るから」

誰かがポツリと言った。

新人にここまでする必要があるのか?と思った。

 

 

 

 

ダァン!!と言う音と共に出撃ゲートが破られ、鹿島と他数名が煙の中から現れた。

 

「良かった…救え––––

言い終わる前に「見つけた…」と言う言葉と共に鹿島から副砲が放たれた。

 

タン…と乾いた音が響いた

 

 

 




あけましておめでとうございます!

遅くなりましたが!!
すみません(´;ω;`)


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428話 いつか夜は明けるから ⑨ 逃避

 

ズキっと頬に痛みが走る。

それ以上に突き飛ばされた衝撃が凄い。

 

「アンタ…ッ!」

どうやら西金剛が俺を射線上から突き飛ばしてくれたようだ。

その西金剛は鹿島相手に睨み、艤装を向けている。

 

 

「え……?何で…?」

頬の痛みで頭が余計にこんがらがる。

目の前に立つ鹿島……の艤装から出る煙は砲撃したことを俺に伝えた。

俺は後ろ、周囲に敵は居ない。

 

 

つまりは俺を狙ったと言うことだ。

 

 

 

 

「うーーん…残念」

鹿島はニタリと笑いながら言った。

 

「な、何が…」

帰ってくる答えはある程度予想がつく。

だが…心当たりはない、故に

 

「今ので死ねたら、楽だったのに♡」

 

 

 

その言葉は俺に深く突き刺さった。

 

 

『あれ?何で?って顔をしてますねえ』

『もしかして、まだ言ってないんですね?流石は西波島艦隊さん♡』

 

何をだ?

 

『いいですかぁ?神崎 救さん?』ニコニコと笑顔を崩さない鹿島。

 

何だ?なんで俺の名前を…?

 

『あなたは…「撃てぇ!!」

その言葉を遮るように御蔵の号令が響くと共に鹿島めがけて砲撃が飛ぶ。

 

『きゃあ♡危ないですよ?』

笑いながら顔を上げる鹿島の前には艤装を構える西波島の艦隊の姿があった。

 

 

……鹿島から貼り付けたような笑顔が消えた。

救はその表情にゾクリと悪寒が走った。

 

『ふぅん…あなた達はあくまでその道を貫くんですね』

『逃げもできないのは分かってるくせに、真実から目を逸らして……』

 

 

『いいですよ』

 

 

 

 

 

 

「戦闘態s…「行ってください」

 

御蔵の声掛けを遮るように西鳳翔が言った。

 

「小春姉!?」

 

 

夏海…西金剛は西鳳翔に待てと言うが、彼女は答えない。

 

「……夏海?お願いね?私は分かってるし、信じてるからね」

 

「……ッ!!」

ボソリと何かをやりとりしたらしいが俺には聞こえなかった。

 

 

「行くよ!救ッ!!」

西金剛が俺の手を引いて海を駆ける。

御蔵や他のメンバーが周囲を守りながら…

 

『あら…逃げるんですね?……まぁいいです』

鹿島は救に向かってまた微笑みかけた。

『本当に信用できるなら…ですけどね?』

 

 

「え…」

 

どう言う意味だと聞きたかったが、もう彼女は西鳳翔で見えなくなった。

 

でも、最後に見た顔は少し寂しげな顔をしていた気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

行っちゃった。

 

私の運命の人。

 

ううん

私達の運命の人。

 

さようなら…

 

どうか

 どうか

 

生まれ変わったらもう一度…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

『ふふっ。貴重な戦力を割いて大丈夫なんですか?それにこの数…分かりますよね?』

 

ズラリと並ぶ敵艦隊。

見知った顔が沢山並ぶそれは、味方ならどれだけ心強い事かと思う。

 

「……えぇ、そうね。私達はここで終わる…」

 

「でも…彼を死なせるわけにはいかない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『彼がこの世界に深海棲艦をもたらした原因なのに?』

 

 

『自らが生み出した影が深海棲艦の提督として向こうの世界を踏み躙ってるのに?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

分かってる。

知ってる。

理解している。

 

私が鳳翔だから分かる。

彼が…以前にここに……シスターに会った時に、境界はその役目を失った。

 

艦これの世界(二次元の世界)から私たちの世界(三次元の世界)へと、それは溢れ出したのだ。

 

 

世界を越えるというのはそういう事なのだ。

 

 

「でも!それは彼の意思とは関係ないでしょう!?」

 

『ええそうですね。でもだから何ですか?』

 

 

『意識してないから許されるのですか?』

『冷たい海の底から這い上げられ、また戦いという悲しみの中に放り込まれる事が許されるのですか?』

 

 

 

 

 

『私達は還りたいんです』

 

 

 

『沈んだ私達は海の底に……』

 

 

 

『だから…あるべきところに還さないといけないでしょう?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『例え彼を殺したとしても』

 

 

 

 

 

『貴方達は存在しない艦隊、鎮守府、艦娘』

 

 

『西波島?そんなものありませんよ?』

 

『彼の妄想なんですから』

 

 

 

 

 

 

 

『全て偽物なのですからね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鹿島の前に何かが飛んでくる。

 

『-----ッ!?』

間一髪でソレを躱す鹿島。

 

目の前には西波島艦隊(妄想の産物)がこちらを睨んでいる。

 

 

『ふふっ。本気なんですね?』

 

笑う鹿島。

しかしその顔に笑顔はない。

 

「……はい、全力で止めます」

「追わせません、殺させません」

 

「あの人を……否定させません!!」

 

西鳳翔は構える。

続いて残ったメンバーも構える。

 

 

数は圧倒的に不利なのも分かっている。

練度も何もかも……

でも負けないものが一つだけあった。

 

 

 

彼を助けたいという思いだ。

 

今の彼は知らない。

何故彼女達がそうするかを…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビリビリと頬を空気が割いてゆく。

こちらの鳳翔には無いプレッシャーだ。

 

 

 

『いいですかあ?皆さん?』

『アレは妄想の中に生まれた艦娘達が本m………いえ、決死の艦隊です』

 

 

『………私達が還る為に必要な犠牲です』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………私もそっちに居たかったのに』

 

 

 

 

 

 

 

 



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429話 いつか夜は明けるから ⑩ キラキラした夢

 

 

 

 

海に溶けた私達の想いはひたすらに漂う

 

暗くて冷たくて永遠を感じる中をずっと…

 

 

 

いつしかその中に芽生えた感情は

 

 

憎しみだった。

黒い

 暗い

     ドス黒い感情

 

私達の犠牲は忘れられたのか?

 

 私達はずっとこのままなのか?

 

 

 

 

 

お前達の安寧は

 

 私達の残骸の上に成り立って

 

 

   るの

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その感情に呼応するように

私達には手足が現れた

 

 

体が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある者は安らぎを求めて旅立った

 

 

ある者は全てを壊す為に旅立った

 

 

 

 

 

 

 

 

私達も行こうか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何この声は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はぁぁぁあッ!!」

 

放つ–––

放つ放つ放つ––

 

 

迎え撃つ–

撃つ撃つ撃つ––

 

戦況は拮抗していた。

 

 

西鳳翔が、西大鳳、西最上がひたすらに発艦を行い、制空権争いを行う。

 

敵連合艦隊はソレを撃ち落とす為に更なる対空準備に取り掛かるが––

 

 

 

 

 

 

閃光のようにソレは一気に近付いた。

 

 

 

 

「オラァ!!!」

目の前には西天龍が刀を構えて突っ込んできたのだ。

 

『きゃっ!?ぐっ…うぅ…』

『あ、諦めが悪いんですね?……こっちはあなた達の3倍以上の戦力ですよ?!』

 

 

 

「数がなんだ!!やらせねえよ!」

 

『そこまでしてあの人を守る価値があるのですか?』

 

「当たり前だろォ!!」

 

『貴女も私も影…偽物でしかないのに?!』

 

「そんな事分かってる!!」

 

 

徐々に押され始める天龍達。

それも仕方ない。

相手は何倍もの数でこちらを押してくるのだから。

 

 

 

でも諦めない––––

 

 

『何ですか?あの人の為に命を捨てる覚悟があるとでも言うのですか?』

 

 

その気迫に圧された鹿島が問いかける。

 

 

 

 

 

「はい」

と、静かに彼女は言った。

 

 

『……退いてください』

 

『私達にも彼が必要なんですよ』

 

『あなた達と同じ…本物になる為にッ』

 

 

 

 

「退けません!!」

 

「あの人が…皆の所に帰る為に!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『は?』

 

鹿島は目を見開いた。

あり得ない言葉が聞こえたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

『何言ってるんです?あなた達は…本物になる為にあの人を匿ってるんじゃないんですか?特にあなたや西金剛さんは!!!』

 

 

 

 

 

 

 

まさかコイツらは本当に彼を…あの世界に送り出すために自らを犠牲にしてでも動くつもりなのか?

 

 

そんな輝かしい、甘ったれた理想を?

 

私達は………

 

 

 

 

 

 

 

 

『認めない…そんな美しい理想(綺麗事)私達は認めないッ』

 

『認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない』

 

 

 

 

 

『お前も私達も…見捨てられた存在なんだ!!』

 

『私だって…私達だって確かにここに居るのに!存在しているのに!!』

 

 

『そうじゃないからと言う理由で偽物なんだ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

『だから本物になりたいのッ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『その為には彼が…私達を唯一認めてくれる彼が必要なのッ!!』

 

 

『変わらないッ!事実は変わらない!!神崎 救がこの世界に深海棲艦をもたらした事!お前達が…私達も存在しない筈の艦隊だと言う事も!!

 

 

 

 

『私たちが本物にならなきゃ…勝てないんだから!!!』

 

 

 

 

 

「…えぇ、そうね」

「でもね、それでも私達は……信じてるから。彼が勝つって」

 

 

 

「私達の存在にはきっと意味があるって」

 

 

 

『それなら…私達にもッ!!』

『たまたま先に……私達より先に出会っただけの奴のくせに!!』

『盗られてたまるかぁぁあ!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

許せない…

 

認めない

 

そんなことあってたまるか

 

 

 

 

 

もし本当に少しのズレがあれば、もしかしたら隣に居たのは私かもしれない。

 

偽物だと自覚することなく、あの箱から出なければ良かったと思わなくて良かったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

鳳翔…いや、永山 小春

 

彼女は平凡な人だった。

決して活発ではなく、いつも隅の方に居るタイプの…。

 

孤児院ではそのおっとりとした性格から慕われていた。

怒らず、騒がず、泣かず…

 

その彼女が静かに激昂していたのだ。

 

 

 

彼女達の語らんとしている意味は分かっている。

 

神崎 救という男の存在の意味

私達…存在しない艦娘、艦隊という存在の意味を…

 

 

あぁ、そうだ。

鹿島の言う通りなのだ。

 

そうしなければ…きっと勝てないのだ。

世界を蝕むモノには勝てないのだ。

 

 

ここに正義も悪もない。

ただ……彼女達もまた、守りたいものがあるのだから

 

でも、その為に悲しむのは私達でいいと…思っている。

 

 

だから

 

「させない!!絶対にさせないッ」–––––と

 

 

 

 

 

 

 

あの人の居ない世界は灰色だった。

それでもあの人の生きた世界(生きた証)を守りたかった。

だから彼女はこの世界で艦娘になったのだ。

 

 

「……」

 

 

『全艦隊ッ!!撃てぇえええええ!!!!』

 

鹿島の号令と共に覆うような弾幕がコチラに飛んでくる。

 

 

 

『アンタ達の理想も、正義も私達が潰してやる!!私達が…本物なんだからぁあ!!!』

 

 

 

 

「やらせないッ!!」

西麻耶が、西天龍が、させないと彼女を守る。

 

 

ドパン…

西天龍の右腕が吹き飛んだ。

彼女は刀を咥えて「西鳳翔サン…行くよ」と言って敵陣へと突き進んで行った。

 

 

「ッ!!…っぅぅううう!!!」

 

西麻耶は西鳳翔を降り注ぐ弾幕から守る。

弾幕を撃ち落とし、取りこぼした分は自らの体を以って守り抜こうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『煙で見えないじゃない!!』

 

撃った、撃って撃ちまくった。

海に立ち昇る煙と炎は視界すら覆うほどに…

 

 

生きている筈がない。

アレだけの…砲撃を前n ––––––––

 

 

 

 

 

 

 

『え』

 

 

 

 

 

 

腹部に激しい痛みが…

 

 

え?

西天龍…?

 

 

 

 

「…すまんな、鹿島ァ」

「お前の気持ちも分かる……でもそれじゃあダメなんだ」

 

 

 

「付き合ってもらうぜ?あの世まで」

 

 

『このッ!!』

ズドンと言う音と共に頭を撃ち抜かれた西天龍が水面へと倒れ込む。

 

 

千切れ飛んだ腕の代わりに口に咥えた刀で私を…刺しただなんて

生き絶えつつもその歯を離さない西天龍を蹴り……

 

手に着いた血を見る。

 

『…早く治療しないと……コイツ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギリギリ…と弦を絞る。

ただひたすらに、一矢報いる為に。

 

 

 

 

 

 

西麻耶も斃れた。

向こうに見えるのは西天龍だろう。

 

 

楽しい思い出もあった。

一緒に笑い合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「西鳳翔さん…先に逝きます」

そう言って西大鳳が最期の矢を放ち海へと帰った。

 

次々と倒れ込む仲間達。

 

ニコリと笑って皆は言う。

 

「あの人に会えて良かった」

 

 

 

 

 

 

 

西鳳翔から放たれた矢はその姿を変えて鹿島の元へと飛ぶ。

 

 

 

西鳳翔はポツリと言った。

 

「…………ごめんね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

馬鹿な、馬鹿な!!

何で?何でそこまで綺麗事を、実現させようとする!?

嫌だ!

嫌だ嫌だ!!

 

 

 

ズドン!!と届いた爆撃で仲間が吹き飛んだ。

『……っ!!』

 

 

 

逃げなくちゃ!!

 

逃げ…

 

 

 

 

 

 

 

『は?』

 

 

 

 

動かない。

 

 

 

『この…!!!』

彼女の見下ろした先には、彼女の足を掴んで離さない…艦娘が居た。

既に生き絶えた彼女は最後の力を振り絞って前に進み、鹿島の足を掴んでいたのだ。

 

 

 

『あ”あ"ぁ"あ"!!邪魔ッ!離せッ!!』

彼女は西雲龍に蹴りを入れるが、彼女の手は足から離れない。

 

嫌だ!

死にたくないッ!

 

私は

まだ笑ってない。

心の底から…あの…との……なり…笑………

 

私達が…アイ…ちから………ま…るんだ……ら

 

 

 

 

 

 

 

 

キラキラした…私の夢

 

あぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドォォオォオオオオオン!!!!!

 

 

 

 

 



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430話 縺?▽縺句、懊?譏弱¢繧九°繧

 

 

 

 

 

あぁ!

ダメだダメだ!!

 

違う!

そうじゃない!!

 

望んだのは…そうじゃない!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは電 の海( 構の 界) 

 

幾 の 提  見た

 

戦っ 散っ

 

生き残 

 

私達はここに居るのに

 

 

物言えぬ が 妬ま

 

 

あぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

息が切れる。

目が霞む。

 

わかる––––私はもうダメだと。

 

 

共に戦った仲間はもう逝ってしまった。

大丈夫…私ももう少しでそっちに行くから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ア…ぁ

 

いつも夢を見る

 

輝かしい()()()のこと

 

私は##さんの手ヲ…引いテ……

 

皆ガ笑ッて……

 

 

 

 

それは叶わない夢

 

あの世界では叶うことのない夢

 

 

 

だから

少しの(ひかり)に縋ってしまった。

 

 

 

 

 

 

『アぁああアアァ!!!!』

 

 

 

 

煙の向こうから聞こえた悲しい叫び声

 

 

 

金切り声のような声は次第に憎悪に染まった悲痛な声に変わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ッ…か、鹿島さん」

 

 

最早それは艦娘、鹿島とは言えないナニカとなって私の前に歩みを進めてくる。

 

 

 

血を流しすぎているのか、体に力が入らない。

でも、やらなきゃ

止めなきゃ

 

彼女を…止めなきゃ!!

 

 

 

「……動いて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バキッ!!!

 

目の前に迫った**の腕が私を薙ぎ払って吹き飛ばす。

 

「ぐっ…がっ!!」

水面に何度も叩きつけられ、何とか止まった。

 

痛い

苦しい

 

 

 

 

私は放っておいても死ぬ。

 

目が霞む

 

 

全身の感覚もない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも立たなきゃ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの子を

艦娘、鹿島として見送ってあげないと

悲しい連鎖から解き放ってあげないと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お願い……シスタ……救君…みんなあ…力を貸して」

 

「もうこれで終わりだから…お願い」

 

 

 

 

 

カシマが目の前に立つ。

その腕を振り上げて…。

 

 

 

そうだ。

現実なんてそんなもんだ。

私には何もできない。

あの時も…今も…

 

 

 

 

 

『死ネ!!!シネええええええええ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バァッーー!と目の前が真っ白になった。

 

 

 

『…ーさん!』

 

『小春姉さん!!』

 

 

 

あの人の呼ぶ声が…

 

 

 

 

 

 

救?

ごめんね?

 

ううん

あなたは悪くないの

 

あなたが挫けそうな時に私はもう隣に居られないから

 

その背中に…

背負いきれない程のものを背負うあなたの…隣に

 

 

ううん

私に悔いはないの

 

むしろね

 

ここで命を燃やさない方が後悔するから

 

 

 

 

 

うん

行きましょう!

 

一緒に

 

家族として、戦友として

 

 

 

私は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鳳翔だから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ナっ…』

 

彼女から立ち昇る淡い光。

それは彼女を包み込んで…

 

『それハ……改ニ…提督との絆の力(人としての可能性)

 

 

私達は

拒絶された

 

奴ハ

選ばれタ

 

 

 

 

 

 

 

 

迫り来る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

違うッ!!

 

その瞬間、全ては壊れた。

 

 

 

違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う

 

破り捨てられたページ(現実)と共に彼女達はまるで無かったかのように消え去って行く。

 

 

 

救えない

救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない救えない

 

 

何故と男は自問する

どうしてと男は自嘲する

何がダメだったと男は落胆する

 

 

 

 

 

 

 

結末は塗り潰される。

彼が見た最後のページ

 

 

 

神崎 救の死

 

 

世界の崩壊

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の名は@@

もう捨てた名前だ。

 

彼は絶望した顔で天を仰いだ

 

 

 



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431話

 

崩壊して行く–––––

 

「こんなところで………負けるなんて…

 

金剛は薄れ行く意識の中で誰かの影を見た。

 

 

吐く血は海に紅い色を広め、1人また1人と暗い海へと還って逝く。

 

最後に見たのは

 

 

 

誰かの笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

くしゃくしゃ…

 

男はページを消して行く。

 

 

「はぁ…まただめだ」

 

男は溜息を吐きながらまた紙へと視線を戻して行く。

 

 

 

そこは真っ暗な部屋だった。

机がポツンとあって、その上にはパソコンと紙とペンがあるだけだった。

 

 

 

 

 

 

男は物語を書き続けていた。

 

 

 

 

 

彼の周りにはくしゃくしゃに丸められた紙屑達が溢れかえっていた。

 

それは紙切れ(可能性)であり紙屑(世界)あり得た結末(望んだ未来)

 

 

 

ごめん

ごめんよ

 

今度もダメだった。

 

 

 

 

 

 

また最初から…なのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

男は描いていた。

救えなかった命を救たくて…

 

あり得なかった未来を掴みたくて…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男は戦っていた。

提督として艦娘と共に戦っていた……はずだった。

 

輝かしい経歴も戦果も、永い悠久の時を経ては何の意味も持たず、彼を覚えている者は最早この世には存在しない。

いや、もしかすると…彼が覚えている存在も最早、曖昧なものになっているのも知れない。

 

ただ彼はひたすらに書く。

 

救えずその手から零れ落ちた命を

あの笑顔を

あの輝かしい日を

 

 

 

 

 

 

取り戻したい一心で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

名前も思い出せない彼女達と彼の話を紡ごうとする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……もう限界かい?』

 

彼を唯一知る…

そして彼も唯一知る####が彼の前にストンと座り話しかけてくる。

 

 

「……まだ」

彼は力無くそう言った。

 

 

『そうか…まぁ、時間はまだまだあるからね』

 

 

 

彼女はそう皮肉混じりに言って彼から立ち去って行く。

彼はまた1人取り残される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『む?………君は』

 

彼女はあなたに気付いて満面の笑みで寄ってくる。

 

『ほうほう、へぇ…へぇぇえ』

あなたを舐め回すように見つめる彼女。

 

 

その満面の笑みのまま彼女は言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おっとごめんよ?悪気はないのさ。何せ………えと…忘れるくらい久くヒトに会ってなかったからね』

 

『え?ここはどこかって?』

 

『うーん…可能性の始まりとも言えるし、終わりの始まりとも言えるし……うーん』

そう彼女は考える仕草をしながら、あなたの周りを指差す。

 

『ほら!そこに転がってる…今となっては紙屑を広げてごらん?』

 

あなたは言われた通りにそれを開く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神崎 救と艦娘達のお話

 

 

また別の紙を広げる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神崎 救と##のお話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ッ!?」

何枚も何枚も広げてみる。

どれにも途中で掻き消された神崎 救と艦娘達の話が書かれていた。

 

 

 

 

『それはね、彼がずーっと何年も、幾星霜を掛けて書きたい…いや、書きたかったお話だよ』

 

『ここはね、そんな世界なんだ』

 

 

 

 

『僕はね、ヒトの進化を見たかった』

『幾度となく困難に打ち勝って進んできた、抗ってきたヒトの進化をね』

 

『でも…やはり運命には敵わない』

 

 

だから彼は書いた。

彼の理想の物語を…。

 

 

 

 

 

だってそうだろう?

死んだ奴が蘇る事なんてあるかい?

 

世界を渡って…世界を救うなんて事あるかい?

 

ないだろうさ

 

 

うん

ない。

 

 

え?

 

 

彼はどうなるのか?って?

 

 

 

さあね?

 

書き続けるかも知れないし…

書くのをやめるかも知れないし…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある男がいた。

歴史好きな男だ。

 

かの大戦の話が特に好きで、心を痛めながらその話を擦り切れるほどに調べ尽くした。

 

現存した三笠を見て、軍艦防波堤を見て、様々な資料に当時に思いを馳せた。

 

もっと駆けたかっただろう。

もっと存在意義を全うしたかっただろう…と。

 

しかし、彼にはそれに実際に触れる事はできない。

 

だから始めたゲーム。

–艦隊これくしょん–

 

彼は決めた。

 

誰1人として死なせない…そして、勝利を暁の水平線に刻む…と。

 

 

しかし、ゲームとは言え、沈むのだ。

テシオニカケテ育てた艦娘達は自らの手によって再度海の底へと沈んだのだ。

 

彼は後悔した。

 

 

 

だから書いた。

 

誰も泣かない話(彼の理想)を。

 

 

 

どれほどの時が経っただろう?

書いた話はハッピーエンドのはずなのに、どんどんと暗く重くなる。

 

 

 

 

 

 

 

そして彼女達は3度目の死を迎える。

 

 

 

 

 

なぜだ?

彼は思った。

そう、確かにハッピーエンドへ向けた話のはずなのに、何故かそれが既定路線のようにバッドエンドに向かう。

 

狂ったように物語を書き続ける彼を周りは気味悪いと近付かなくなり、やがて彼は1人になった。

 

 

…たった1人の##を残して



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432話

 

真っ暗な何も存在しない世界

 

『言い得て妙だけど…いつだったかな…?あいつらの言っていた"あの人の居ない世界に色は無い"ってのはあながち間違いじゃあないね』

 

『結局のところ…どの話も…こう言う結果になっちゃうんだね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私だけはずっと見てるよ』

 

彼女はそう彼に笑いかけた。

 

彼は書き続けた。

彼女達を笑顔にしたかった。

 

 

神崎 救という男を通して、彼にできなかった事を成し遂げたくて…

 

 

 

 

しかし、失敗する。

 

『大丈夫さ』

その失敗を怒ることなく彼女は笑う。

 

 

しかし、砂浜に描いた絵が波にかき消されるように…彼の書く理想の物語は何をどうやってもバッドエンドに変わる。

 

ある時は艦娘に殺され、ある時は艦娘達が全員沈み…

その度に彼は紙を破り捨てた。

 

だから小さな綻びすら無いように物語を紡いだ……が、その補強をすればするほどに酷い結末を迎えてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ねえ?君は何をここにしに来たんだい?』

 

『……わからないか…』

問いかけられたあなたはくしゃくしゃになった紙を広げてはその物語を見つめる。

 

 

 

 

 

「え?運命は変えられないのか?って?』

 

 

 

 

 

『当たり前だ。運命は変えられない』

『それは僕達がずっと見てきたからわかる事だ』

 

 

 

 

『…あっ!おい!無駄だぞ!…』

 

『そいつに話しかけても答えは返ってこないぞ』

 

その言葉を無視してあなたは彼の元へ行く。

 

 

 

 

 

そして、あなたは彼に問いかけた

何故…書くのか?と。

 

しかし、彼はその問いには答えない。

 

『…だから言っただろう?無駄だって』

『彼には届かない…きっともうすぐ僕の声すら届かなくなるからね』

 

 

『君の声すら届かない…なんてね』

 

 

あなたは必死に呼び掛ける…声にならない声を張り上げながら、伝えなきゃいけないはずの…何かを

 

あれ?

何を伝えなきゃいけなかったんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……あの世界はもう存在しない』

 

『だって…彼が創り出した虚構の世界だからね』

『艦娘という存在を幸せにしたい』

『本当に世界の海を取り戻したい』

 

『そんな願いを文字に託して生まれた二次創作(あり得ない)世界だからね』

 

『でも運命はいつだって決まってる』

 

『沈んだ命はまた引きずられるんだ』

『でもあの世界なら、それが可能だと信じ、別の世界から別の陣営を呼んで……』

 

『ここには無い別のお話だって数え切れない程にあるんだ』

 

 

 

 

 

『ほら見てご覧?あの奥で浮いていたのが…**の』

彼女は説明し始めた。

ある物語はブラックな鎮守府からの始まり。

ある物語は現実へとやってきた艦娘とのお話。

ある物語は………

 

 

そうやって紡がれた話がここにはたくさんある。

 

 

 

 

 

彼がふと自分の方を見て言葉を発した。

「…開かないか……」と。

 

最初は自分に話かけられていると思ったあなただが、その目線が自分の後ろに向いていることに気付く。

 

 

そこには大きな扉があった。

あなたはその扉の前に立ち、押して引いてを繰り返してみた。

 

 

『開かないよ、その扉は』

彼女がなんだか残念そうに話かけてきた。

 

『どこへ通じているかもわからない扉』

『でも彼は信じている。いつか、最良の結末が書けた時、そこに通じる扉が開くって…ね』

 

 

扉から彼に目線を戻すと、やはり彼は頭を抱えながら書いては破りを繰り返していた。

 

「違うっ!違う!!」

 

 

 

 

 

一際、近くにあったボロボロの紙を拾い上げて覗いてみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼女達を幸せにする」

 

と、掠れた文字で書かれていた。

どれほどの月日が流れていたのだろうか

どれほどの思いが込められていたのだろうか

 

ただ、その気持ち一心で彼はペンを握り、現実へと向かい合っていたのだ。

 

 

 

 

『私もどれだけの時間が経ったかなんて覚えてないなあ』

 

『ただ、アイツがそうしたいって言うからここに閉じ込めたけど…さあ』

 

 

 

 

 

 

 



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