初めての気持ち (主義)
しおりを挟む

出会い

その日、早坂愛は毎度のことながらかぐや様のサポートをしていた。彼女にとってかぐや様に幸せになってもらうのが一番の目的。幼い頃から一緒にいる時間が長くてかぐや様の一番の身近な理解者でもある彼女がかぐや様の幸せを願わないはずがない。自分の幸せよりもかぐや様の幸せを優先している。

だから彼女にとって自分の幸せはどうでも良いとまでは言わないが…優先すべきことではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日の早坂は決してコンディションが良いとは言えなかった。朝から頭痛がして熱っぽいのを感じながらも主君のために力を振り絞ってここまで来た。だけど体に限界がきているのが自分でも感じられた。今にも倒れてしまいそうなのを必死に耐えている。

だが、ここで倒れるわけにはいかないので踏ん張っていると……急に後ろから肩を掴まれた。後ろを振り返るとそこには如何にもガラの悪そうな人が数人いた。いつもの私ならこの程度の人数なら対処できたはず……だけど何故か体が思うように動かなかった。体も熱いし、頭がボーっとしてきた。

 

 

 

「なぁ嬢ちゃん、俺たちと一緒に遊ばねぇか?」

 

 

 

「…け…っ…こう………」

 

 

言葉を発するだけでもこんなにきついの初めて。

 

 

 

「え、良いじゃねぇか」

 

 

 

 

そう言いながら男たちは私の体を触り始めた。気持ち悪い……だが、体が言う事をきかない。このままじゃこんな奴らの言われるがままになってしまう。声を出そうにも出せない。こんなにダメだったんなら…かぐや様に言って今日はお休みを貰えばよかったな。

 

もうこのまま私はこんな奴らの思い通りになってしまうのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな事を考えていると……急に男たちの手が私の体を触ってこなくなった。恐る恐る、目を開けるとそこには男たちが倒れていた。誰か…と思い、辺りを見渡すとそこには…倒れている男の上に腰を下ろしている。あんまりぼやけてよく見えないけど……少し怖そうな顔つきをしている人。

 

 

 

「大丈夫?ここまでするつもりはなかったんだけどな。この人たちが抵抗をしなかったら…もっと簡単に鎮静化出来たのにな」

 

 

声を発したいけど発せない。もう本当にダメかもしれない……

 

 

 

「これは絶対にダメだね。病院に連れて行った方が良いな」

 

 

倒れている男の上に座っていた男が立ち上がり私の近くに来た。すると背中を見せて乗るように言ってきた。普段の私だったら見ず知らずの人間におんぶされるなんて絶対にないけど今は頭がボーっとしているし、倒れそう。

 

 

 

「…も…う……むり…」

 

 

私は男の背中に寄りかかる形で倒れてしまった。そこで私の意識は途絶えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に私が目を覚ました時には私は病院のベッドの上だった。

 

 

「はやさか~~~心配したんだから~調子が悪かったなら言ってくれれば良かったのに……っ…」

 

 

 

かぐや様が目に涙を浮かべながら私に抱き着いてきた。主にここまで心配を掛けてしまったなんて…反省しなくてはならない。

 

 

「かぐや様、苦しいです。そんなに抱き着かないでください」

 

 

 

「あ、ごめんなさい……早坂が目覚めたのが嬉しくて」

 

 

 

「そう言えば、私をここまで運んでくれた人は……どこにいるんですか?」

 

 

 

「あなたをここまで運んでくれた人は……あなたをここまで運んだらどこかに行ってしまったみたい」

 

 

会って一言ぐらいお礼を言いたかった。あの人が運んでくれたから私は助かった。

 

 

 

「そうですか………」

 

その後、かぐや様との会話を少しするとかぐや様は私の荷物を取りに行くために屋敷へと帰った。そんな事は使用人にお願いすればいいのに……と思いながらも…かぐや様らしいと考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば、名前も聞いてないな。まあ、あの状況で聞けるわけないけど」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

『柏木家』の執事

ボクの名前は泉谷沙羅と言います。『泉谷家』は代々『柏木家』の執事として働く事が務めとなっている。各故、ボクも柏木家のご令嬢である、渚様の執事を務めている。渚様の執事になって十年近い年月が経っており、ボクもこの仕事にさすがに慣れた。執事になった当初はスケジュール管理や車の手配などでミスをすることもあったりしましたが今ではそういうことも無くなった。年も始めた時は学生だったのに今では二十代後半に差し掛かっている。時が経つのは本当に早いものだなとしみじみ感じてしまう。

 

 

 

 

ボクが初めて渚様に会った時はまだ小学校にも上がっていなかったのに今では秀知院学園高等部に通っている。そして最近彼氏が出来たようでとても幸せそうな顔をしている。家に帰って来た時も最近は彼氏さんのお話をよくしている。

 

彼氏さんのお話をする時がとても幸せそうな笑顔を浮かべながら話すものだからボクも顔には出さないけど嬉しい。まあ、嬉しい反面幼い頃から渚様のことを見てきたからこそ少し寂しい気持ちになったりしますけどね。渚様には笑顔が一番似合いますからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言えば、全然話は変わるけど…病院に連れて行った金髪の子は目を覚ましただろうか。あの時は用があったから彼女を送り届けたらすぐに病院を出てしまったから彼女がどんな容体なのかすらも知らない。

 

仕事が終わった後で見舞いに顔を出そうかという考えが一瞬頭によぎったが…すぐにやめようと思った。彼女はボクの顔を憶えているとは思えないし、憶えていたとしてもボクと彼女は身内でも無ければ知人でもない。そんなボクが見舞いに行ったら彼女も身構えてしまうと思うしね。それが一番だろうと考えた末にボクは彼女の見舞いには行かないことにした。

 

 

 

 

 

------

 

そんなこんなで渚様の帰宅時刻になってしまった。渚様が周知院学園に入学してまだ日が経たない頃は送り迎えをしていたけど最近はしていない。彼氏、彼女と言えば帰りにどこかに寄ったりするものだろうしね。執事として主の側にお使いしないのはあまり褒められたことではないけど…それが主のためなら良いと個人的に思っている。でも、渚様のお父様にバレたら確実にボクは何か言われるなと思いながらも渚様の好きなようにさせている。

 

 

 

 

そんなことを考えていると…渚様が館に扉を開けてもらい入って来た。

 

 

 

 

「おかえりなさいませ!渚様」

 

 

 

 

渚様はボクの存在に気付くと…会釈をしてボクに話し掛けてきた。

 

 

 

「はい、毎回お出迎えしていただいてこちらこそありがとうございます」

 

 

 

 

いつも渚様はボクに気を使ってくれているのか、ボクにが出迎えていると感謝してくる。ボクは只『泉谷家』の一員として『柏木家』の執事をしているだけなのだから。

 

 

 

 

 

「ボクは渚様の執事ですからね」

 

 

 

渚様は満面の笑みを浮かべながらまたお礼を言う。

 

 

 

 

「それでもありがとうございます」

 

 

 

 

 

「主にそこまで感謝されるとは光栄の至りです」

 

 

 

 

「もう十年以上も一緒にいるのですから私に敬語を使わなくても良いですよ。それにあなたは私よりと年上ですしね」

 

 

 

 

「年上だとか年下とかは関係ないですよ。ボクは渚様様のお父様に雇われている一介の執事に変わりないのですから」

 

その後も私と渚様は立ったまま十分以上会話を続けた。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。