バチュルですが、なにか? (天廻シーカ)
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裏設定込みのお話
閑話 勇者と蜘蛛


これは昔描いたネタの一部分です。
読まなくても展開には問題ありません(他の話を読んでから戻るのを推奨します)。


「ユリウス様。

 また、オーツ国から依頼です」

「なんの依頼だ?」

「悪夢の残滓を討伐せよということです」

「エルロー大迷宮か。

 わかった。

 すぐそっちに向かうと伝えてくれ」

 

 

ソファから立ち上がり軽く伸びをする。

もう外は明るくなってきて窓からは朝の日差しが差し込んできた。

けれど、今この瞬間にも苦しんでいる人がいるのだと思うと僕の心は明るくなんかならない。

 

 

「ユリウス兄様。もう出掛けてしまうんですか?

 まだ3日しか経っていません」

「すまない。すぐにまた戻ってくる」

 

 

落ち込んでしまったシュンを慰めるために僕は考える。

本当に言葉通りすぐの別れで申し訳ない。

あちらに行けばまた依頼されていくだろうし、しばらく帰れはしないのだろう。

 

 

「そのスカーフ。僕の持ってるものとお揃いだろ?

 あと、その地竜や蜘蛛もみんな迷宮出身だし僕たちは迷宮に好かれてる。

 また無事に倒して元気に帰るさ」

「わかりました。頑張って行ってきてください、兄様!」

「お気をつけてください。無理はしないで」

 

 

スーとシュン。

僕は勇者ってだけでなく兄としてもありたいけど。

こんな弟と妹に恵まれて僕は幸せだ。

 

 

「二人ともありがとう。さ、エミュシャ。行こうか」

「はい。行きましょう」

「じゃあまた!」

 

 

彼らの声を背に受けて、僕の後ろでドアはガチャリと鈍い音を立てて閉まったのだった。

 

 

 

 

「ヤーナとハイリンスも準備は出来たかな」

「さぁ?一応情報は伝わってると思いますが」

「悪夢の残滓か。なんか縁があるな、僕たち」

「そうですか?

 私は似た種族ですが、それを含めても特に強い感情を抱いてはいませんよ」

 

 

2人もすぐに客間から出てきた。

僕たちと同時に知らされていたのだろうか。

おそらく違うだろうし、いつでも出れる準備をしていたのはさすがとしか言いようがない。

 

「じゃ、悪夢の残滓を倒しにいこうぜ。

 ユリウス、エミュシャ」

 

出てきた僕たちに、ハイリンスはいつも通り不敵に笑う。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

場所は変わって迷宮入り口。

僕たちは迷宮案内人のゴイエフさんと合流することになっている。

 

 

あ、入り口の砦のところに地図を見ながら立っている。

しかも普段に比べたら人数が多い。

道自体は覚えているだろうし、何かあったのか?

 

 

「ユリウスさん。また今回もよろしくな。

 いつも世話になってる」

「こちらこそ。

 そういえば、いつもよりも人がだいぶ多いですが。

 まさか、ここ数年の魔物の異常発生と関係してなにか起きているんですか?」

「いやぁな。

 悪夢の残滓も新しく発生した魔物を追って入り口近くまで来ちまった感じのようだから影響はあるっちゃあるぜ。

 最近も群れ単位で活発になってるぽいからな。

 あと気をつけろ。あくまで可能性だが死の乗馬かもしれねぇ。

 黄色いものが背中にくっついてたっていう報告もある」

「デス・ロデオ。種族の面汚しですね。被害は?」

 

 

エミュシャが嫌そうな声をあげる。同族である彼女がそう言うのも無理は無い。

でも、人間にも良い人と悪い人がいる。

そんなもので分けることなんてできない。

まして罪悪感のもとに働いている彼女が悪い存在であるわけはない。

 

 

「今のところ死んだやつが2人。怪我人は4人っていう報告だ。

 行方不明者はたくさんいるが、まあそいつらは大抵あれかもな……。

 ま、あんたはなにも悪くねぇ。

 べっぴんさん」

「あ、ありがとうございます。えっと」

「話してちゃキリないぞ。ユリウスとヤーナも待ってるし。

 ゴイエフさんたち案内を頼む」

 

 

ハイリンスの声のもと、彼も決まり悪そうに頭を掻いた。

 

 

「すまんな。あんたたちにはここ最近で一番世話になってるのに。

 こんな湿っぽい洞窟で過ごしてる時間が長いといろいろ話したくなっちまう。

 じゃあ迷宮に入るぞ」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「ユリウス!この魔物は剣じゃ倒せねぇ!!魔法を使え!!」

「ヤーナ!数が多い!!火炎魔法だ!!」

「はいっ!!」

「ふぅ。電撃!!」

 

 

ガチャリという、魔物らしくない音を立てながら地面に落ちていく魔物たち。

元々浮いていることがおかしいし、部品のような形をしているのもおかしい。

まるで人工的に作られた魔物みたいだ。

 

 

「流石勇者様、お強いです。

 この魔物はここら辺では逃げるしかないというのに」

 

 

しかも前回は単体でしかいなかった。

この集団で襲ってくるとは短時間でどれだけ数を増やしたんだ?

剣での攻撃も効かないし、鋼で体が出来ているってどういう仕組みなんだ。

 

 

 

「ハイリンス様、スモールレッサーギアルといいます。

 ここ数年で大幅に数を増やしたのか目撃されるようになりました。または……」

「または?」

「下層から縦穴を通って上層まで出てきたか」

 

 

それはマズい。

下層は何がいるのかほとんどわかっていない。

おそらく僕たちでも倒せない魔物ばかり。

そんなものが外へ出たら被害は尋常ではないものになる。

個体数が多いと思われるこの魔物ですら、僕たちが倒すには苦しむのだから。

 

 

「とりあえず先に進もう。僕たちがとりあえず倒すべきは悪夢の残滓だ。

 申し訳ないけれど、魔物の異常発生については後手に回るしかない。

 下層にいてくれればまだ被害は出ないのだし、今起きている被害をなくすことが最優先だ」

「ちょっと待って!」

「どうした、ヤーナ?」

 

 

「2匹身体が凄い小さくなってる。まるで」

「エレテクト種か」

 

 

愕然とする。

今まで、エレテクト種以外でも小さくなった魔物の報告は数件しかない。

数件あるのも問題だけれど。

ともかく、これはなんなんだ?

 

 

「ヤーナ。わかりませんが、数匹持ち帰って国で調べてもらいましょう?ユリウスとハイリンスもいいですか?」

「モンスター関連はエミュシャに任せてるからな。俺は構わんが」

「僕も構わない」

「ありがとう」

 

 

エミュシャはその魔物を拾い、糸でできた袋に詰める。

小さくなったものも何匹かを突っ込んでガッチリと閉めた。

 

 

「これは私の持ち物として持っています。行きましょう」

 

 

そう言って、蜘蛛の姿のエミュシャはガサガサッと身体を震わせ、空間の狭間に袋を突っ込んだ。

 

 

 

 

 

 

「倒した時に身体が小さくなる魔物。エレテクトじゃないならなんだったんでしょう」

「わからないけど、最近迷宮おかしいから」

 

 

薪を囲み休息をとる。

案内人の人達が言うけどそうじゃない。

 

 

「いや俺たちは迷宮外にも色んな魔物の討伐にいくが、普通じゃねぇ、いやそもそも見たことねぇヤツばかりだ。巨大な岩が連なった蛇、弓を使って射ぬこうとしてくるフクロウ、ブレスを打ちながら空を跳ね回る巨大な水竜とかな。ワケがわからなくなる」

「そう言えば。最初に発見された死の乗馬を知ってるか?」

 

 

案内人の1人が話し始めた。

 

 

 

 

「15年前。蜘蛛の巣を燃やして大丈夫な頃だった時の話だ。今だから言えるが、盗賊のようなことをしていた。冒険者の装備を奪ったり、蜘蛛を殺して経験値をあげたりを繰り返す生活だった」

「まあ、もう期限切れだろ。続きを話してくれ」

 

 

ハイリンスはあからさまに苛ついている。

一度俺達も盗賊の被害に遭ったからなぁ。

 

 

「あんな不気味な日は絶対忘れねぇ。蜘蛛の巣を見つけたから、中の蜘蛛を殺すために俺達は巣に火をつけた。そしたらソイツが出てきたんだ。

スモールレッサーバチュル。ソイツは当たり前のようにスモールレッサータラテクトの上に乗って逃げ始めた」

「待ってくれ。バチュルがスモールレッサータラテクトに乗ってたのか?死の乗馬ぁならともかく、どちらもそこまでの知能はないと思うんだが」

 

 

僕もそう思う。

街なかにいるバチュルは欲望以外の意志があるかも怪しいんだ。

そんな自己主体性はあるはずない。

 

 

「まあ聞いてくれ。あのとき俺は、というか俺達全員は始めてバチュルを見たんだ。だから捕まえようと追いかけた」

「それで捕まえてどうしたんですか?」

 

 

「それが逃げられた。たかがスモールレッサータラテクトに。しかも、奴は身体の半分近くあるバチュルを乗せていたのにだ」

「!」

「バチュルの方も、俺達の足元に向かって糸を大量に撃ってくる。まるで足を止めれば動けなくなると判断したみたいにだ。そして奴らはT字路でどっちに曲がるか考えたふうにしたあと、右に曲がってモンスターに紛れて逃げていった」

「あの。とんでもなく恐ろしいことを聞いていいですか?」

 

 

エミュシャが手を軽く挙げる。黄色い長髪に薪の光が反射して薄く赤めいている。

 

 

「なんで、ユリウスとシュンのスカーフは15年前から消えていないんですか?」

「は?」

 

 

目の前の案内人、キエフは地面に肉を落とす。

 

 

「おい、ユリウス。そのスカーフ15年前からあるのか?」

「ああ。はい。っ!!」

「なんてことだ。糸がそこに行ってたか。転売に転売を重ねてたから、どこにいったかわからなくなってたんだ。まさか勇者にわたってたなんてな」

「いや、キエフさんそこじゃねえ。蜘蛛の糸だぞ?」

 

 

「あ。な、なぜ、――まだ残ってる?」

【蜘蛛糸】。というか糸系のスキルはスキルの保持者がいなくなった時点で消え去る。ということは。

「さ、最悪の場合だが」

「迷宮の悪夢と元祖の乗者は、どちらもまだ生きている――」

 

 

 

 

 

『ユウシャ。来た』

『ユウシャ?来た!』

 

 

マズい。

 

 

「火を消してくれ。来たぞ」

 

 

ゆっくりと、巨大な蜘蛛が現れた。

それこそ人間の数倍の大きさがあるような蜘蛛だ。

 

 

「グレータータラテクトが1、2、いや3体か」

「いや、まだだ」

 

 

「悪夢の残滓!違う」

 

 

ジジッ!!ジジジッ!!と鳴いている。これは。

 

 

「上にエジク・ラアがいる!

死の乗馬だ!案内人の方々は自分の身を最優先にして下さい。僕がグレーターを先に片付ける。だから他のみんなで死の乗馬の足止めを!!」

「わかった!!」

 

 

マズい。

恐らく死の乗馬と戦ってまともに時間を稼げるのはエミュシャだけ。

速く仕留めないと!!

 

 

「閃光斬!!乱突!!光斬!!」

 

 

ドスン。

 

 

よしこのまま!あと、2匹!!

 

 

 

 

 

 

「私が足止め、あ、危ない!!」

「きゃっ!!」

 

 

私は急いでヤーナを抱きしめ、そのまま地面に倒れた。

と同時に残沚は現れ空を切り裂く。

 

 

「ハイリンス、ヤーナを守って下さい!!」

 

 

急いでヤーナをハイリンスへ向かって投げ蜘蛛に変身。

 

 

「私は素早さにだけは自信があります。とらえてみなさい!!」

乗者が勢いよく糸を撃ってくるのをギリギリで回避する。

 

 

「ファイヤボール!!」

 

 

ヤーナがハイリンスの陰から援護射撃をしてくれる。

それでも素早さに追いついて無いみたいだが。

 

 

私以外に攻撃が向けられると大分マズい。

 

 

「電気罠!!」

 

 

罠を作り、残滓の動きを制限かつヤーナたちに攻撃が向きにくいようにする。

どこまで持つか。

ユリウス、急いで。

 

 

 

 

 

ズシャリ。

ドスッン。

あと1匹。グレータータラテクトだって普通じゃ1人で倒すものではないし、時間はかかってしまう。速く倒さなければ。

 

 

「聖光波!!」

 

 

たしかに、よろけた。

 

 

「今か!!」

よし倒した!不意打ちなら残滓に当てられるかもしれない!

 

 

「【真空斬】!!」

斬撃としては最高レベルの火力。だけど。

 

 

ガキリ。

 

 

手の鎌で受け止めた!?

 

 

「みんな注意しろ!エミュシャは防護の準備!!」

「はい!!」

「聖光!!」

 

 

サンッ!!ザァァァッ!!

 

 

「絶対防壁!!」

 

 

光の粒子が勢いよく残滓に直撃し、押し戻していく。普通の魔物だったらほぼ確実に倒せるけれど。

ジュッ!!

やっぱり。残滓にも乗者にもほとんど効いていない。かなりタフだな。

 

 

『ユウシャ。ヤッカイ』

『メンドクサイ』

 

 

ユラッ!!

なっ。背後――。

「剣を奪われた!!」

「俺の盾もだ!!」

 

 

マズい。スティールの錬度がエミュシャと違う。

コイツらを地上に出したらマズすぎる。

バシュという音とともに周りにあるいとはどんどん増えていく。

 

 

「なっ!?」

「きゃっ!!え?」

 

 

ハイリンスとヤーナの足が発射された糸に絡めとられる。

魔法を出さないと2人が危ない!だけど、当たるか?

 

 

『マザー?』

『グランマ?』

『『ア』』

 

 

え?

ぶるッ!ぶるるっ!!

 

 

ザンッ!!

残滓が乗者を振り落として切りつける。

乗者も身体を大きくして取っ組み合いが始まった。

 

 

どういうことだ?

 

 

「ユリウス!!今だ!!」

「わ、わかった!!」

 

 

2匹の蜘蛛に照準を合わせる。

 

 

「ふぅ――。聖光線!!」

 

 

そして、死の乗馬は動かなくなった。

 

 

「すまない。剣を奪われてしまった」

「大丈夫です。結果的に倒したんだから剣戻ってきたじゃないですか」

「俺はなんも出来なかった」

「だから、エミュシャも言ってましたけど結果オーライでしょう?」

「そうだな、バカ女」

「何でまたそれいうんですか!?」

 

 

でも。何故。奴らは仲間割れしたんだ?

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ」

 

 

「どうしました?」

「先走っちゃったヤツがいた。勇者にやられたっぽいけど」

 

 

魔王は溜め息をついてテーブルにおいてあるスイカをそのままかじる。

 

 

「バルトはあまり気にしなくていいよ。私たちが10年以上かけて少しずつやってきたこと。それを変に破壊されたら不味いんだよね」

 

魔王様、怒ってらっしゃる。

 

 

「柔らかく内部から破壊。考えが凝り固まってた私だけだったら確実に思いつかなかった、集団の恐ろしさ。その発想には惚れ惚れするよ」

「でしょ?」

「ここ10年で現れた種族はたくさんある。こんなに長く生きてきたのに、知らない魔物ばっかりだ」

「はぁ」

「だから、世界は不確定。正直怖い。でも」

「「頑張らなきゃね」」

テーブルに座った少女は、魔王様と共に笑った。




筆者「ポケモンの名前もっとひねれません?あれギアルでしょ?あの歯車2つくっついたトーマスみたいなやつ」
管理者D「私に800匹進化系まで名前考えろってのか?」
筆者「やっぱなんでもないです」



ギアルも好きです。



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第1章 世界で生まれた変な蜘蛛
1 虫


バチュル・虫ポケモン。弱い。

最初のポケモン知識の方は読まなくても問題ありません()


俺はある100レベルの虫6匹を連れてポケモンをプレイしている。

デンチュラ。

電気を纏ったデカい蜘蛛なのだが、これがいいポケモンである。

 

 

第一にふくがん。

技の命中率を上げるというなかなかいい特性をしているのだが、ふくがんには実はもうひとつの効果がある。

野生ポケモンの道具の所持率の増加。

 

 

ポケモンにはひとつの道具を持たせることができ、野生ポケモンもたまに道具を所持した状態で出現する。

他のゲームでいえば倒した時に一定の割合で決まった道具を落とすみたいなものか。

そこでふくがんという特性は野生ポケモンが道具を持って出現する確率を大幅に上げることが出来るのだ。

ちなみにこの特性は虫ポケモンしか持っておらず、対戦では全般的に弱いため本来の用途で使われることはほぼない。

 

 

第二に、デンチュラは『どろぼう』という技を使える。

この技は相手ポケモンが持っている道具を奪い取れるというものだ。

この技を使えるポケモンはなかなかに少なく虫ポケモンでまともに使えるのはデンチュラくらい。

持っていたポケモンで他に見つからなかっただけかも知れないけど。

 

 

ちなみにこれも戦闘で使われることはほぼない。使いにくい道具を奪ってしまうとデメリットしかないうえ、基本もともと持ち物を持って戦うので奪えないのだ。

 

 

とにかく、この二つを兼ね揃えているため、野生ポケモンが道具を持っている確率を上げながら貴重な品々を掠めとり逃げるという戦法が出来る。

ちなみにデンチュラはとても素早いので、100レベルならほぼ確実に逃げ切れるというおまけつきだ。

 

 

 

 

 

まぁそんなことはあくまでゲームの話で、実際の俺はただの高校生で何の関係もない話。

プロゲーマーになるわけでもなく、なんならポケモンをやってる理由も他のことをやりたくないからだし。

昼飯を食べたあと学校にさりげなく持ってきていたゲーム機で昼休み中その作業を行いそのまま5限の古文に突入する。

飯食べたから眠くなってきたけど、どうせ古文の先生は優しいから赤点回避出来るはず。

なら、このまま突っ伏して寝てしまえ。

 

 

 

 

 

教室を包む閃光。

何も感じず、俺は眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

ん?

どういうことだ?

真っ暗で何も見えない。

あとなんかカサカサ聴こえる気がする。

 

 

カッカッ。

 

 

身体になんか硬いものが当たる。

なんだこれ?

てか俺の状態はなんなんだ?

とりあえず周りの状況を確認したい。

めちゃくちゃカサカサ言ってるよな。

 

 

がッがッがッ。

身体をぶつけて周りの硬いものがなんとかならないか試みる。

 

 

パキャ。

あ、開いた。

 

 

よっしょいこっと。

手をかけ力を込めて外に出る。

 

 

 

 

ん……?

ん……?

ん……?

んッッ!?

 

 

はぁぁぁぁっ?

たくさんの、巨大な蜘蛛たちが周りで蠢いていた。

 

 

え?

ちょっと待ってね、疲れてるみたい。

あー、夢かー、タチ悪い夢ってあるもんなんだなー。

疲れてると良くないもんだ、ゲームやり過ぎたか?

さて現実に戻ろう。

ゴシゴシ。

え?

 

 

目を開けると、蜘蛛たちがこっちを向いていた。

いや待て怖い怖い怖い!

なんだそのサイズは!?

正面の高さでも俺の身長の二倍はあるぞ。

逃げなきゃ死ぬ。

 

 

ガサガサガサッ!!

うわ、なんかものすごい速度で追ってきた。

夢だよな!?

なあこれ夢だよな!?

おい誰か起こしてくれ!?

 

 

 

いや待て訳がわからん!

てか死にたくないんだよ!

石蹴ったりする感覚とかなんか妙に感覚リアルだし!

 

 

あれ?

足たくさん生えてね?

ダッシュした瞬間にいつもとは全く違う感覚がある。

まるで、地面にたくさんの足で立っているような。

 

 

自分の身体をググッと曲げて見て、俺の心は固まった。

たくさんの脚が生えていた。

 

 

は、はぁ?

わからん、なんか地獄に落ちたか?

いやまずは逃亡だ!

進めばふたつ、逃げればひとつ!

俺は逃げる!

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

よし落ち着こう。

なんとか壁に張り付いてため息をつく。

あの蜘蛛身体は大きかったけどまだ壁には登れないみたいだった。

小さいからできる技なのかも知れない。

 

 

 

で、ここは洞窟か?

ヤバイ数のウジャウジャ蜘蛛がいなければペルーとかにありそう。

はて、暗いのになんでよく目が見えてるんだろう。

 

 

 

あえて考えないようにしてたけどあれだよな俺。

うん蜘蛛。

蜘蛛だよな。

 

 

てかなんで蜘蛛になってんだ。

アホみたいな大爆発があって、俺が死んで?

これ死んだかわけわからん妄想を植物状態でしてるかだな。

なんならそうだったら一番嬉しい。

 

 

ガンガンッ!!

でも強く叩けば足も痛いし、壁の感触もしっかりある。

やっぱ妄想じゃない感じ?

なんなら転生後、または蜘蛛地獄みたいな地獄に落ちたか?

俺そんなに悪いことはしてないと思うんだが。

 

 

うわぁ。

転生ならまだしも地獄だと嫌だなぁ。

マジで地獄絵図だし。

 

 

なにより俺の身体はどうなってるんだ?

水溜まりがあるし、反射して見えたりしないかな。

 

 

 

映った青い目。

黄色い、僅かに艶のある体毛。

澄んだ色の青い足。

 

 

 

ああ、あ、これバチュルだわ。

水に映った顔を見て確信した。

 

 

黄色い身体に青い目。

確かでんきぐもポケモンだった気がする。

弱い。

高さ10cmの最も小さいポケモン。デンチュラの進化前。

マジで最弱レベル。

人でも勝てそうなポケモンの代表格。

 

 

 

 

あれ?

そんなやつに生まれ変わったところで、俺どうやって生き残れば?

神様、少なくとも即死の未来が見えるのですが。

 

 

そもそもなんで周りの蜘蛛が結構デカイのに俺だけチビなんだよ。

全長奴らの半分あるか怪しいぞ?

タイマンじゃ絶対死ぬ。

 

 

くそ、どうやって生き残ろう。

この蜘蛛以外になんか生き物はいるのか?

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

歩いてきたら、しっかりいた。

カエルやらハチやら蛇。

 

 

ただ言えること。

デカい。少なくともあの蜘蛛たちより絶対強い。

多分比にならず強い。

身体が小さいから隠密性は人一倍、蜘蛛一倍あるけど倒せはしないし近づきたくもない。

 

 

壁に張り付きながら俺は再びため息をつく。

俺、飢えて死ぬのか。

次は人間になれますように。

悪いことこの世界でしてないし、なんとかなれる気がする。

 

 

 

 

 

 

やることも思いつかないので、蜘蛛の群れを見ています。

弱いからなのか、なぜか電気も使えません。

糸は少し出ました。

マジでチビの蜘蛛です。

兄弟に狩られる理由がわかりました。

チビだからです。

多分獲物を狩れません。

チビだからです。

 

 

あれ?

なんかヤバい蜘蛛がいる。

二本足で踊ってるし。

なんだあいつ奇行種か?

一回見に行って見よう。

 

 

 

あ、ワンチャン俺と同じ転生者の可能性もあるのか。

 





ちなみに蜘蛛子はポケモンをほとんど知らない設定でいきます。


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2 共に生きると決めた


公式だとバチュルは静電気をためているだけで自分では電気を作れないと説明されていました。マジでよく生きられるなコヤツ。


【挿絵表示】

これはアニメ絵バチュル(デフォルメ)

【挿絵表示】

これが現実


さて。

どう接触しようか。

 

 

手をブンブン振り回している蜘蛛を見下ろし腕を組む。

 

 

たとえ転生者であるとしても、考慮しなきゃいけないことはたくさんある。

下手に接触すると危ない蜘蛛かと思われて逃げられるかもしれない。

でも情報なんてものはないのかも知れないけど出来るならば一緒に行動したいという願望がある。

だって死ぬもん。

俺一人では何も狩れんし。

しょうがない。奥の手を出すしかないか。

 

 

腹っていう弱点を見せることにもなるし、何より馬鹿らしくてアホらしい。

よし。

寝転がっているその蜘蛛の近くの地面に降りて、2本脚で立つ!

 

 

プルプルプル。

足が震える。

体の構造的に無理か?

蜘蛛だし。

 

 

いや待て。

いけるんかい。

わざわざこの体勢になる必要は本当に皆無だけど!

ここから、踊る!!

 

 

 

よーいしょ。

よいしょ!!

 

 

回る回る。雪月花のように。

脚を軸にして。

なんで花が回ってるかは知らんけど。

花と雪と月が回ってるの?

あれ、どゆこと?

俺にわかなんだけどマジで知らん。

 

 

その件の蜘蛛はこっちをただじっと見ていた。

あれ、まさかやらかしたか?

え、転生者じゃなかった?

そしたら逃げないといけないんですが?

死ぬんですが?

さてどう来る。

 

 

その蜘蛛は、俺が回り終わった後に再び回り出した。

あ、あれ。

これまさかのまさかの?

 

意思疎通出来てんのか!?

 

 

俺がもう一度回ると、その蜘蛛ももう一度回った。

よし成功だ!!

ありがとう神様!

後は地面に文字を書く!

 

 

『なまえなんですか』

 

 

その文字を見た蜘蛛は大分驚いてる。

まあそうだよね。

見た目蜘蛛だし、俺も恐いし。

そのくせに日本語についてわかっていて急に書き始めるんだから。

てか、日本人だよね?

そうじゃないと英語イマイチだから避けたいんだけど。

そもそも地球人だよね?

そうであってくれ。

 

 

でも俺の心配を他所に、蜘蛛は案外すぐに書きはじめてくれた。

 

 

 

『若葉姫色です

 まじですか。あ、おれ佐野蒼生です。わかりますか

 同じクラスの人ですね』

 

 

まさかまさかの同じクラスの人だった。

しかも、俺がクラスの中ではトップレベルに関わっていたほうのヤツ。

ただこれで状況が良くなったわけでもないし、まずは情報収集をしなければいけない。

 

 

話そうとして、二人で顔を見合わせてシャーシャーいう。

あ、発声器官ないから日本語分かっても通じないのか。

言葉ないと不便ってすごいわかる。

人類の発展、発声マジ大事。

また結局諦めて地面に書いてるしな。

 

 

『これからどうします?

 どうしましょ

 おれとしてはいっしょにこうどうしたかったんですが。小さく生まれてきてしまったもんで

 そうだね。でもはなすのがこれだとめちゃつらいとおもいます

 そうですね。てんせいものだったらねんわくらいほしいですよね

 かみさまなんだからそれくらいやってほしいですね』

 

 

《要請を上位管理者Dが受諾しました》

《スキル『共生Lv1』を構築中です》

《構築が完了しました》

 

 

《条件を満たしました。スキル『共生v1』を獲得しました》

 

 

「「はぁっ!?」」

 

 

ロクでもないことが起こった気がする。

いや、なんか得たのはいいことだと思うんだけど、その過程がロクでも無さそうなんだよ。

まるで、世界に飼い慣らされているような。

てか神様煽っちゃったことになるのではこれ。

もしかしてとんでもないことやっちゃったか!?

神様いるって知ってたのにすごいこと書いちゃった。

あー、神様ごめん許して。

 

 

ただ今は、情報不足で考えようがないというのも事実。

というか必至に生きようとしないと死ぬから考える余裕がない。

 

 

「えっと、なんか色々あったけど、これから一緒に行きませんか?」

「いいけど、ひとついい?」

「ああはい」

「あんた男子だったよね。

 なんか念話だと女の声だよ」

 

えっ?なんで。

まさか性別変わってたりするの?

ショック。

嘘でしょ?

 

 

でもあんたもあんたなんて言葉言わなかったと思うけど。

もっと厳格で、上品で、君とかって言ってたはずなんだけど。

そういうのに敏感な俺が言うのだから間違いない。

てかアンタと関わっていた主な理由のひとつはそれだ。

 

 

今言ってもしょうがないか。

Siriみたいにデフォルトで女声なのかもしれんし。

若葉さんも何かしら変わっててもおかしくない。

何より今考えてもわからないしね。

 

 

「理由はわかりません。

 てかどうします?2人でもいろいろ問題があるんですよね。

 管理者Dがなんなのかもわからないし」

「その人のことは一応後にまわそう。

 いまは食べることだ。なんか探そう?」

「はい」

 

 

若葉さんが歩き出したから俺もついていく。

そして、彼女はそのままどんどん加速していく。

 

俺も加速する。

でも若葉さんはそれよりさらに歩く。

 

 

え?

歩くの速くないか?

歩いてんだよな、これ。

マッハ?

 

 

「あのー、ちょっといいですか?」

「なに?」

「めちゃくちゃ速くないですか、足?」

「え、本当?

 全くそんなつもりなかったんだけど。

 いやでも、速かったかも?」

 

 

うんうん唸る彼女。

やっぱ変わったよなぁ。

前はわからないことなんて無いみたいな態度取ってたし、人の話なんて興味ないみたいな人だったのに。

「はい。多分普通の蜘蛛の速さの2倍くらいの速さありますよ。

 俺より全然足速いですもん」

「えぇ。じゃ、どうしよう。

 よし、私の背中に乗れ」

 

 

え?

う、うん。

まあそれがベストではあるけど。

俺男のはずなんだよなぁ。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

「とかなんでそんな蜘蛛になったの?

 私よりも全然ちっさいし」

 

 

結局若葉さんに背中に乗っけてもらっている。

結局最適解だししょうがない。

俺、男なのに。

 

 

「ポケモンの話なんですけど。バチュルっていう蜘蛛のポケモンがいるんです。

 これはその姿にそっくりで。

 転生前めちゃくちゃポケモンやってたからかもしれないです」

「そういうのでもなる可能性があるのか。転生怖」

 

 

「あ、そういえばなんて呼びます?

 転生前と同じ名前使うのはなんか嫌じゃないですか?」

「同感だ。ってわけでどうしよう?」

「うーん。無駄に長くするのもあれだから。

 白はどうです?」

「白?」

「白いし。今ホワイトでもじろうとしたけど思いつかなかった。

 それはともかく今さら異世界風の名前にしてもやりにくいかなって思いました」

 

 

「ああー。そうくる。

 じゃ、君の名前は青にしよう」

「えっ?思い切り黄色なんですけど」

「目が青いし!!

 あんたのもとの名前の蒼生からの連想で!!

 何より黄だと一文字でキリが悪い!!」

 

 

そういうことか。

うーむ、納得できるような出来ないような。

でも名前をつけてもらうことに価値があるんだ。

実際そうだし、そう思おう。

 

 

「じゃあわかりました。俺は青にします」

「よし、じゃあ白と青の冒険を始めよう!!」

「青白か、紅白って感じじゃないすね」

「一言多い!」

「さーせん」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

「あれは!?」

「蜘蛛の死体!」

「なんか斬られてる!?」

「食えるかも!!」

 

 

衝撃!!

暗闇から現れた兄弟の死体!?

 

 

「「あ」」

 

死体の近くに人間の足跡発見。

はい俺たち結構デカいことが判明しました。

で、ここは異世界確定です!!

 

 

マジか。

よーし冷静になろう。

歩いてたら、切り裂かれた兄弟の死体を見つけた。

そして人の足跡があった。

その足跡よりだいぶ俺たちがデカいから、異世界確定。

うーむ良くない流れ。

でも一つわかったことがある。

 

 

「これ、人に会ったら殺されるね」

「はい」

「ともかくたべよ」

「うん」

 

 

マジか。

自分で言ったからアレなんだけど正直食いたくない。

だって明らかにウマいってことない見た目してるもん。

 

 

「じゃ、降りるぞ」

「おけ。私が3分の2くらい食べていい?」

「わかた。どうぞ」

 

 

あと話し合いの結果、俺は砲台となることが決定した。

下の白が移動し上の青が糸を発射するという魂胆。

ちなみに二人ともまだ上手く糸を出せはしない。

 

 

よし、現実逃避はここまでにして食べるか。

俺現実逃避だいぶ得意かもしれない。

さすが前世から磨いてきたスキル。

そんなことを考えながら、牙を立ててグチュリという音を立てて蜘蛛にかぶりつく。

 

 

《条件を満たしました。称号『悪食』を獲得しました》

《称号『悪食』の効果により、スキル『毒耐性LV1』『腐蝕耐性LV1』を獲得しました》

 

 

《条件を満たしました。称号『血縁喰ライ』を獲得しました》

《称号『血縁喰ライ』の効果により、スキル『禁忌LV1』『外道魔法LV1』を獲得しました》

 

 

なにか聞こえた。わからん。

でもそれ以上にお腹が減ってるんだ。

食わせてくれ。

今はそんなこと考えてる暇ない。

謎解きは飯の後で、これ大事。

海賊王も言ってるかも。

 

 

 

 

 

はい食べました。

うん、うん。

何というか、これ、まずい飯としかいいようなかった。

先に一口食べた白が全く笑ってなくて目が死んでたから少しは悟っていたけど。

 

 

「獲物狩れるようにしよう、青」

「そうっすね、食べたい。ウマイの。白」

「まさか毒耐性が手にはいるとは」

「ほんとですよ」

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

しばらく糸を出す練習を2人でして巣を作ってみる。

2人の糸が絡んで友情が壊れかけたのは知らない知らない。

 

 

《熟練度が一定に達しました。『蜘蛛糸Lv1』を獲得しました》

《熟練度が一定に達しました。『蜘蛛糸Lv2』を獲得しました》

 

 

やったね。

 

 

「この巣を3つくらい作って、鳴り子つけて、なんかかかるのを待とう」

「それまでは?」

「兄弟を食べます」

 

 

あーあ。

 

 

 

あれからしばらく経っている、さすがに狩のやり方も覚えた。

最初は手こずってバッタバッタしたけどね。

 

いつも通り糸で罠を作り、兄弟がかかったところに俺が糸で口を塞ぐ。

あとは白が噛みついて終了。

 

 

《熟練度が一定に達しました。『蜘蛛糸Lv3』を獲得しました》

 

「何回かやってるけど大分安定してるね。

 蜘蛛糸も強くなってる」

 

 

白は喜んでるしまあ上手くいってるんだろう。

 

 

《経験値が一定に達しました。LV2にレベルアップしました》

 

 

あ、レベルアップした。

バリバリっと皮が剥がれていく。

まさかこれは脱皮するのか!?

しちゃうのか!?

蜘蛛なのに!?

 

 

バリっ。

 

 

あーそういう仕組み。

脱皮だわ。

うん。

ほんとにしたわ。

しちゃったねぇー。

 

《『HP吸収Lv1』『連鎖斬Lv1』を獲得しました。『鑑定Lv1』を取得できます》

 

 

なんか生まれた時からあるスキルポイントは100で、今レベルアップでもらったのが100だから合計200。

そして、手に入れられるのは鑑定。

なんとなくだけど、スキルポイントを消費したくないんだよなぁ。

いつか必要かもだし。

 

 

ポケモンでいうと「連鎖斬」はおそらくれんぞくぎりという技の異世界版。

そして「HP吸収」はすいとるという技の異世界版。

両方とも1レベルの時点で覚えている技だから、覚えたんだと思う。

そして蜘蛛の糸に関する技も後々覚えるわけで。

 

 

鑑定はどうだろう。

でも下手に惜しむとそこまでに死ぬかもしれないからなぁ。

 

 

「青、そっちは何のスキルが取得出来るの?」

「鑑定」

「あー。こっちと全く同じだ。

 ポイントはあるし、取った方がいいかなー」

「そうかー。ポイントはあるし、いま出来ることはやった方がいいか。おけ」

 

 

取ります!

 

 

《『鑑定Lv1』を獲得しました》

 

 

やっちまったぜ。

後悔はしていない。

 

 

「「よし、鑑定!!」」

『石』

 

 

ん?

 

 

「「よし、鑑定!!」」

『石』

 

 

白と顔を見合わせる。

えっと、うん、草。

 

 

「私たち、二人ともこれ取ったんか?」

「そうみたいッスね」

「かなしいね」

「かなしいね」

「かなしいね」

「とりあえずまた兄弟倒して経験値稼ぎます?」

「でも、私たちそこまで食べられないよ?」

「じゃあ、倒したら群れのところに放り込みましょう?」

「うーん。まあ、それなら勿体ないとは思わないけど。うん、そうしようか」

 

 

4匹ほど狩ったところで、近くの鳴り子が鳴る。

鳴り子!なんかかかった!?

 

 

 

 

はい、カエルがかかってた。

さてどうしようか。

完全に身動きは取れなくなってるけどこっちを向いてかかっちゃってる。

ベロでやられるかなあ。

こわ。

 

 

「青、大丈夫?」

「OK。糸は任せて!」

「「よし、行こう!!」」

 

 

びちゃっ。

 

えっ?

は?

 

カエルが毒を吐いた。

毒を吐くなよお前カエルだろベロ使えベロ!!

なんか抵抗はすると思ってたけどそれは予想外だよ!

 

 

「危なっ!糸は?」

「まだ遠い!!あと少し近づきたい!」

「おっけ!」

 

 

びちゃっ。びちゃっ。びちゃっ。

ビュッ!

ビュッビュ!

白は速い。

カエルが吐く毒をどんどん回避して少しずつ近づいていける。

よし、糸を。

 

 

お尻からカエルの口に向かって糸を出した瞬間、カエルが毒を吐いたのが見えた。

 

 

びちゃっ!!ジュッ!

お尻が焼けるのがわかるし、何より冗談じゃなく痛い。

 

 

うん、痛い。

てかマジで痛いな!?

お腹の方にまで突き刺すみたいな痛みがある。

でもいける!

 

 

「青、平気か!?」

「うん平気!白は!」

「こっちも焼けたけど身体が大きいからまだいける!

 でも安全第一!」

 

 

《熟練度が一定に達しました。『酸耐性Lv1』を獲得しました》

 

 

スキルが出来たからか、ちょっと楽になった。

カエルの方は今口が塞がれてるしいける!

 

 

HP吸収と連鎖斬。

やれるはず。

 

 

いけ!

白はカエルの喉元に噛みつき、俺はうなじにくっついてHPを吸収しながら爪でカエルの身体を切り裂く。

 

 

「死ねぇぇぇっ!!」

 

 

そんな物騒な声とともに、カエルは動かなくなった。

 

 

 

 

はい。

お食事タイム。

 

 

「まずい」

「まずい」

 

 

知ってた。

《熟練度が一定に達しました。スキル『毒耐性LV1』が『毒耐性LV2』になりました》

 

 

「なんか耐性上がったわ」

「こっちも上がったわ」

 

 

ムシャムシャ。

 

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『酸耐性LV1』が『酸耐性LV2』になりました》

 

 

「上がった」

「上がった」

「苦いね」

「酸っぱいね」

「「食うもんじゃないな」」

 

 

「なんか白はスキル増えた?」

「毒牙もらった」

「いま持ってるスキルまとめたいね」

「えっと、青が持ってるのは?」

「HP吸収と連鎖斬、毒耐性と酸耐性、あと鑑定、蜘蛛糸」

「その最初の2つはなんなんだ。私は毒耐性と酸耐性、鑑定、毒牙、蜘蛛糸」

 

 

「そのほかの奴らは?」

「忘れよう。変に触れたら死ぬ予感がする。

 忘れるべきだ。

 その最初二つのスキルは何処からきてるの?」

「あれはポケモンの影響っぽい。

 ポケモンが使える技を使えるようになったっていうか……」

「いいなー」

「まあまあ白も毒牙があるじゃないですか」

「まあそうだけどさ」

 

 

「ていうか電気ポケモンなのにまだ電気っぽいこと出来ないんだよね」

「ポケモンはわからんからそっちでがんばれ」

「あっはい」

 

 

《経験値が一定に達しました。LV3にレベルアップしました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『共生LV1』が『共生LV2』になりました》

 

 

「白さんもレベルアップしました?」

「こっちもしてる!ペースは同じっぽいね」

「てか脱皮で火傷治った!すごいなこのシステム!」

「マジだすごい」

 

 

「今日は寝ます?」

「うん」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

次の日。

お腹も満ちていたから糸で2人で簡易ハウスを作った。

 

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『蜘蛛糸LV3』が『蜘蛛糸LV4』になりました》

 

 

「青ー。熟練度ってどのスキルにもあるのかな?」

「俺そっちのオープンワールド系のゲームあんまりやったことないんですよね。あ、でもそうじゃないすか?知らんけど」

「じゃあ、鑑定にも熟練あるのでは?」

「!」

 

 

「「よし、鑑定!!」」

 

 

『蜘蛛』

あ、はい。知ってます。

多分あっちも同じ答え出てるんだろうな。

俺たちはなりふり構わず周りを鑑定し始める。

 

 

『壁』『石』『糸』『空気』『壁』 etc,

 

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『鑑定LV1』が『鑑定LV2』になりました》

 

 

よし。マジでレベルが上がった!

この調子だ鑑定がんばれ!

 

 

「あ、レベルアップした」

「白も?」

「おっと、君には負けたようだワトソン君。じゃあ、お楽しみの鑑定っこをしようじゃないか」

「「えい」」

 

 

『スモールレッサータラテクト 名前 白』

 

 

出た。すごいぞ鑑定。

あ、自分にも。

 

 

『スモールレッサーバチュル 名前 青』

 

 

うん。本当にバチュルでまかり通るのそれ?

壁は?

 

 

『迷宮の壁』

 

 

ふーん。

ここ迷宮なんだ。

 

 

出れるの?

 

 

「青」

「なに?」

「出れるかは後だ。この迷宮内でずっと生きていけるくらいには強くなろう」

「うん」

 

 

 

 

 

そしてたった今。

お腹が減ったところで再び鳴り子が鳴った。




二人とも「共生」忘れてるな……。

あと、称号とかの表記少し変えてます。理由は書きやすいからです()


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3 マイホームまたはシェアハウス

バチュルの全長は25cmのつもりです。


ねぇ。

鳴ったから来たはいいけどさ、なんでまたカエルなの。

あんたどんだけいるんだよ?

この迷宮内にさ。

 

 

「「鑑定!」」

 

『エルローフロッグ』

 

 

毒を吐いてくるけどそこまでの脅威じゃないはず。

いや、当たらなければの話か。

もちろん当たるとめちゃくちゃ痛いです。死にそうな程ね。いやマジ冗談抜きで。

 

 

てか俺は上に乗ってる人間(蜘蛛)だから白が避けるのがどんぐらい大変か正直把握出来てない。

よし、今回は毒に1発も当たらないで口をふさいだ!

 

 

「いくよ!」

「おうよ!」

 

 

白が喉に噛みついている間に、背後に回ってうなじをズシャリズシャリと切り裂いていく。

もちろんカエルは暴れる。

だけど俺たちもそんなことやる前からわかってるしもちろん対策済みだ。

そしてすぐにカエルの首は体から離れ、ドサリという音と共に地面へ落ちた。

 

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『連鎖斬LV1』が『連鎖斬LV2』になりました》

 

 

よっしゃ成長した。

しかも今回はノーダメージ!

 

 

「私たち、案外強いのではないか?」

「そうかもしれん」

 

 

カエルを食べながら2人で話す。

だってカエルだぞ?

タダのカエルじゃない。

めちゃくちゃデカいカエルにノーダメージだぞ?

地球で人間の時だったら間違いなく死んでるぞ?

 

 

「よし、このままカエルを狩っていこう!」

「おー!」

「じゃあ、食べたし家に戻ろう!!」

「おー!」

 

 

ん?

なんかバチバチ言ってないか?

なんか何かを擦り合わせてるみたいな、まさかこれ羽音か?

少なくとも蚊みたいな小さな虫の音じゃなくて本当にデカイ感じに虫の羽音がする。

 

 

あ。

 

 

「白、ダッシュ!!」

 

 

俺は白に飛び乗り、背中をバシバシ叩きながら叫ぶ。

 

 

 

「え?どうした急に。

 急に競馬の馬みたいに背中叩いて。

 そんなに痛くないけど」

「ハチ!」

「は?」

 

 

ハチだ。

ただただデカい、カエルよりもデカイ、化け物のみたいなハチ。

そしてそのお尻から、シャープペンシルよりも太いだろう黒々とした針がチラリと見えた。

 

 

『フィンジゴアット』

 

「逃げろ!!」

 

 

バシュ。

ビチャっ。

 

 

当たらん。

相手が動きすぎる。

 

 

うわ悔しいなこれ。

てかなんだそのサイズ馬鹿か?

なんでその身体で飛べんだよ!

 

 

 

 

「青、深追いはしない!!

 落ちるなよ!?」

「わかってる!!

 追われてるのはこっちだけど!!」

 

 

 

---------

 

「はぁ」

「はぁ、家の中にまでは入って来なくてよかった」

「とりあえず、慢心は止めよう。私も一回蛇見たし」

「うん」

「とりあえず家の中は安全だから、ちゃんと管理しよう」

「はい」

 

 

ん?あれはなんだ?

遠くのほうからだ。

兄弟か。

 

 

あれ?

家の周りの一応の包囲網突破されたのか?

 

 

「白!なんか突破網乗り越えてきてる蜘蛛いるんだけど!?」

「え!?」

「「鑑定!!」」

 

『スモールレッサータラテクト』

 

 

 

 

「しょうがない、青。狩るぞ」

 

 

うん。

兄弟だけど、しょうがない。

 

「でもなぁ。大手を振って、包囲網まで突破して歩いてるってことはなかなかに強いかもってことで。青。めちゃくちゃ警戒しよう」

「うん。気を引き締めていこう」

 

 

ザザッ!!青on白は戦闘態勢をとる。よし、どうくる。

え?

バシュ!!ぼたっ。

なんか無策で飛びかかってきた。糸も用意せずに。だから俺が糸を出したら絡まって普通に落ちた。

 

 

弱い。

ええ。

 

 

「青。トドメ」

 

 

俺が呆然と見ていると、白が言ってくる。

うん。

呆気なさすぎてびっくりした。

 

 

「さあ、毒牙!!」

 

 

ガブッ!!

 

 

「はいHP吸収と連鎖斬」

 

 

ズバズバズバッと!!

 

 

うん勝った。

食うぜ。

 

 

「私たち強くないか?」

「うん。強いかもしれん」

「でもあの蜘蛛は弱かったな」

「うん」

 

 

家に持ち帰ってモグモグする。そして、家の包囲網の拡張と家の改装。

 

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『蜘蛛糸LV4』が『蜘蛛糸LV5』になりました》

 

 

よし。

色々出来そうな感じに育ってきた。

 

 

「白!糸玉作ってみよう」

「よし、じゃあ高く売れそうなやつを作った人の勝ちね」

 

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『蜘蛛糸LV5』が『蜘蛛糸LV6』になりました》

 

 

そうして20個ほどの糸玉は家の外に積まれた。

 

 

もちろん、糸を出せば腹が減る。

その分食べなければいけないということで。

食べてました。

糸にかかった魔物はみんな倒してきている。

おかげで毒耐性はLv5にまで上がった。

 

 

俺たちがこれまでに倒した魔物は『エルローランダネル』が3匹、『エルローペカトット』『エルローバジリスク』『フィンジゴアット』が1匹ずつだ。

後はカエルと蜘蛛多数。

どれも網に引っかかったところを糸でさらに拘束して、二人がかりで集中砲火した。

エルローランダネルは小型の恐竜みたいな魔物で、3匹まとめてかかっていたからびびった。

1匹ずつ仕留めたけど。

エルローペカトットはペンギンとペリカンを合わせたような胴体に、猿みたいな腕を持った奇妙な魔物だった。普通に倒せた。

フィンジゴアットは蜂みたいな魔物で、異様なほど大きく、3メートルくらいあるこの通路を埋め尽くすくらいの巨体だった。

そのせいで余計網にかかりやすかったぽいし、普通に倒せたからまあいいか。

 

 

圧倒的にやばかったのはエルローバジリスクだ。

でかいトカゲみたいな外見の魔物だったけど、石化攻撃なんて器用なことをしてきた。

目があった時に発動したから石化の魔眼?みたいなやつなんだろうが、両前足が石化させられた。連鎖斬出来なくてめちゃくちゃ苦労したし迷惑かけた。

なんとか倒すことはできたけど、恐ろしい。

その後レベルアップして脱皮するまで、石化した足で過ごさなきゃならなかったからほんと辛い。

石化耐性のスキルをゲットできたから収支としてはプラスかもしれんが、危ないもんは危ないんじゃ。

 

 

ちなみに結構レベルが上がっている。

今は6か。

てか、これの経験値の仕組みどうなってんやろか。

2人で同時に殴って倒してるから2人に配られてるのか?

 

 

そしてスキル。だいぶ育った。

白と話すときには呪われそうなやつについてはっきりとは言わないけど、まとめるとこうだ。

 

 

「共生Lv3」「電気付与Lv2」「蜘蛛糸Lv6」「鑑定Lv2」「禁忌Lv1」「外道魔法Lv1」「毒耐性Lv5」「酸耐性Lv3」「腐蝕耐性Lv1」「石化耐性Lv1」

 

 

ここで1つヤバイものがあるのが見えるだろうか。

もちろん、「電気付与Lv2」である。

4レベルで覚えたからおそらくエレキネットという技を糸で再現するためにある。

エレキネットというのは4レベルでバチュルが覚える技だ。

だからか糸以外のものには未だに付与出来ない。

微弱だからどのくらい効いているのかわからないし、あと一度白に当たってダメージを与えてしまったから乗ってるときは使うなと釘を刺されてしまった。

で、たまにカエルを殺っていたらこういう感じになった。

 

 

スキルはいろいろ口に出してみたり、踊ったりしたけれど何も得られなかった。

残念。

あと、白とふたりでダンスしてたりしていたら共生のレベルが上がった。何が変わったのかはあまりわからないけど。

 

 

「スキル欲しいなぁ」

「スキル欲しいねぇ」

「白、寝たら出かけよ」

「そうだね。すぐ帰れるような態勢で行ってみようか」

 

 

日本むかしばなしかいな。

 

 

 

ていうわけで冒険に出かけるぜ!いつもの青on白のスタイルである。

たまに蛇とかハチとかカエルはいる。隠れるけど。糸がないのに変に戦うなんて意志はもちろんない。だって死ぬもん。

あ。なんかある。

 

 

「白、なんかある」

「敵!?」

「いや、なんだあれ……卵か?」

 

 

ちなみに白より青の方が視野が広い。単純に台に乗ったみたいなもんだからだけど。

うーん?やはりこれは……。卵?

 

 

「目玉焼き?」

「いや、卵」

「そうかオムライス派か」

 

 

ヤバい最近の食生活のせいで白が壊れた。卵割る気満々だ。割られる前に速く調べないと!

 

 

「「鑑定!!」」

 

『地龍の卵』

 

 

これウマいのか?てかドラゴンの卵勝手に奪っていいのか?

 

 

「まあ、周りに巣……というか大きいものが動いた痕跡はないけど。割るか」

 

 

ガンッ!!

白が卵をぶっ叩くけど、全く割れてない。

 

 

「痛った」

白がうずくまる。流石に見ててかわいそうになってきた。

 

 

「連鎖斬!!」

ガキっ!!ガキッ!!ガキッ!!ガキッ!!――。

 

 

「痛った」

うわあ腹立った割ってやりたい。

 

 

「食らえ毒牙!!」

ガキッ!!

 

 

「痛った……」

結局2人でうずくまる。

よし、絶対割ってやる。

 

 

「ふっ。私は元人間、頭脳が違うのだよ」

そう言って白は岩に糸を引っ掻け、滑車のように卵を持ち上げる。これは!

「いけぇぇぇっ!!」

白は糸を断ち切り、卵は猛スピードで落下する。

 

 

ドガキャッ。

舞い上がる砂煙。

やったか!?

 

 

はい。

割れてませんでした。

てかなにさっきの効果音卵が出す音じゃないよな。

なんだよガキャって。

どっから出た音だよ。

 

 

「青どうするよ?」

「家に持ち帰ってみるしか」

「そうだね持ち帰るか」

「そだねー」

「そだねー」

 

 

青い卵。

お尻から出した糸で卵をくくりつけ、俺がそのまま白の背中に乗って運ぶ。

 

 

「白?」

「なーに」

「この世界、俺つまり青以外のポケモン見ないんだよね」

「見てないだけなんじゃないの?」

 

 

いや、ちがうんだよなぁ。

ポケモンが現れると、そのモデルとなるような生き物の存在は消滅するっていう都市伝説がある。

だから共存なんて不可能なはず。

予備知識だけだから実際どうなのかは不明。

もともとゲーム自体がフィクションだからね。

 

 

そして、バチュル(俺)が現れた。

虫1匹だけで世界がどうにかなるもんではないとは分かってるけど、恐ろしいものは恐ろしい。

生態系が崩壊して人類が滅びるとか。

 

 

「まあ、考えすぎないでいこうよ。変なところでエネルギー使うと死ぬよ?」

 

 

あ。ほんとに死ぬ可能性がある冗談は笑えないから。

「ほら、家の中に突っ込むよ!!なんか上手くいけばドラゴンに刷り込み出来るかも知れないし!」

 

 

おお!

夢がある。

いいねそれ、最高だ!!

 

 

「オッケ!!ドラゴン育てよーぜ!!」

「よし、じゃあ搬入だ!!」

 

 

このドラゴンが何日で孵化するかはわからない。でも、このままいれば少なくとも状況は改善出来る。死にもしないで、ドラゴンをテイム出来る。

なら、俺たちは。今は。

家でゴロゴロしながら毛糸をぶん回す白をじっと見つめる。

 

 

 

 

運命は平静を許してくれるだろうか。




現実は厳しい。


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4 全長5cmの悪魔

週一投稿なのに書きたい意欲に負けて書いてしまったぜ……。後悔はしていない。


※今回主人公がだいぶチートです。
注意書き読みましたね?


※今回主人公がだいぶチートです。


「白」

「なんだい青くん?」

「こっち見てみて」

 

 

家。現在俺たちはスローライフを楽しんでいます。ちなみにカエルを命懸けで獲りに行くので食には困っていません。

 

 

「うん?

 

 はぁぁぁぁ!?」

 

 

そして、青です。

俺はポケモンとして出来ることを模索しています。

 

 

「なんでそうなったの!?」

「なんかいけるかなってやったらいけた」

「ポケモンマジヤバイな!?えっと……私じゃなにも起きへんぞ?」

 

 

自身のサイズの操作。ポケモンは、ポケットなモンスターだ。

そしてモンスターボールに入るのは、小さくなる特徴があったからだった気がする。

でも、そこまでちゃんとは操作できないし5分の1の大きさとを往復するので限界だ。

あと息がめちゃくちゃ切れるから体力使ってると思うけど、慣れたら楽にいけるんだろうか。

 

 

「あと。さっき食べてる間にやっていたことがありました」

「またなんかやばかったりする?」

「ていうか。隠せなくなっただけなんだけど……」

 

 

ジジッ。ジッ。

 

 

「子供です」

「は?」

 

 

 

 

「生まれて1分でポケモンは卵を産めるようになるからやってみたらいけました、か。

 わたしゃどうすりゃええねん。

 今試したらちゃんと出来なかったぞ」

「あと卵が5つあるんだけど」

 

 

「ねぇ。そんなに産んで大丈夫だったの?」

「食べながらだったら全く疲れなかったけど、食べ終わったあとは1つ産むだけでだいぶ疲れた」

「卵1個食べていい?」

「まだカエル食べ終わってから少ししか経ってないのに食欲あるのか。受精卵っぽいから蜘蛛のできかけが出てくるかもだけど」

 

 

「やめとく」

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「青。コイツら逃がしていいよね」

 

 

しょうがないよなぁ。

あれからしばらく経って、6匹のバチュルたちを見ながらため息をつく。

正直食べ物が無くなることになるからつらい。

いや、俺が産んだんだけどさ。

 

 

「もう開き直る?俺たちが生き残るんだったらの方法があるけど」

 

 

「聞かせてくれ、青」

「バチュルは寄生虫みたいな生き方が出来る。

 大きな生き物にくっついて養分をすいとって生きれる。

 さっき彼らに聞いたんだけど、もう吸収と連鎖斬は出来るみたいなんだ。

 それで、子供達の様子は親が直々に確認可能で、相互に簡単な連絡を送れる。

 お互いに知能がないと駄目だけど。だからマザーと同じ生存作戦をとる」

 

 

 

 

説明しよう!

マザーとは、俺たちの卵を産んだ蜘蛛。体長はゆうに50mを超えていて、大量の卵を産む。

でかいから勝てる気がしない生き物である!

 

 

「つまり?」

「魔物たちにくっついて大繁栄してもらう。人間には会わないように注意して、鉢合わせたら隠れる。そして、情報の送信。ラッキーなことに、ポケモンは卵を産むのにほとんどデメリットが無いっぽい。そして、これが一番あれなんだけど」

 

 

「レベル上げのためにマザーがやらせてたみたいに孫たちで殺し合いをしてもらう。そうすれば子供たちは強くなって、最終的にはマザーとやりあえるくらいになるかも知れない」

「子供たちはそれを拒否出来るの?」

「出来ない。俺が指示したら後はほぼ従うだけ」

 

 

「私たちが生き残るためか。やろう」

 

 

驚いた。

すぐに賛同してくれるのか。

否定されても多分やってはいたけど。

 

 

「人のことを考えてちゃ生きていけない。

 生きるにはしょうがない。

 1度に卵はいくつ産める?」

「1度に5個。それで、食べながらだったらいくらでも問題なくいける」

「子供たちはどういう感じなんだ?」

「魔物の体力を奪って、孫を食べながらレベルアップしてもらう。

 魔物の背中で養分を吸収し続けるから、実質何万匹卵を産んでも疲れはしないはず。

 孫は、本当にレベルアップのためだけに喰われる」

 

 

「うん。ひとついい?子供たちに孫を食うことに抵抗はあるか聞いた?」

「無いって」

「そうか。これがポケモンの恐怖なのかな。まえ青がいってた、ポケモンが現れた時世界は大きく変わるって」

「でもやりたいでしょ?」

「私たちで世界を掻き乱すのか。ただの蜘蛛2匹の気まぐれで」

「うん」

「青。いや、佐野蒼生。私はアンタが昔からそこまで強欲で傲慢だとは思ってなかったからビックリした。でもやりたいね。私もおかしくなっちゃったか?ふふっ」

 

 

「そう?若葉姫色。じゃあ、ワールドブレイクを始めようじゃないか」

 

 

《熟練度が一定に達しました。『禁忌Lv1』が『禁忌Lv2』にレベルアップしました。称号『大感染』を獲得しました》

 

 

「「あ」」

 

 

《称号『オリジン』を獲得しました。『禁忌Lv2』が『禁忌Lv3』にレベルアップしました》

 

 

「あ」

俺たちは顔を見合わせる。

これはやべーもんを上げてしまったかも。

やはり世界は、見逃してくれそうにない。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

そのまま時は経ち、子供達を100匹ほど放ったところで、恐ろしいことが起こってしまった。

 

「青!急いで逃げるよ!!」

 

見れば、家の逆側からモクモクと煙が上がっている。

 

「白!?この煙はなに?」

「外に出てみればわかる!!急げ!!なにも持たなくていい!おかしもだ!」

 

 

パチバチという音。煙。嫌な予感。予想はつくけど考えたくない。

ボオォォォッ!!

マイホームは、激しく燃えていた。

 

 

 

なんでだよ!

 

「青、早く乗れ!逃げるよ!」

「うん!あ。人間!」

 

松明を持った人間が追いかけてくる!なんでや!!

これが異世界人とのファーストコンタクトなんて嫌なんだけど!?

てか人間が火つけたのか!ふざけんな!

 

 

くそ!!やるんならやってやる!

 

 

「蜘蛛糸!!」

 

バシュっと音が鳴るが、当たらない。

人間もそれなりに速いのが厄介だ。

 

 

「だから青しっかり掴んでろよ!?」

「わかってるそこは!」

 

 

ドシャという音とともに、糸に粘着された奴は倒れる。

よし、1人ぶっ倒したか。

でもあと4人いる。

 

 

て、おっと!!

危な!なんで急停止!?

 

 

「青、T字路!!どっちに向かう!?右にはトカゲ3兄弟がいるけど!?」

「よし、右に行こう!白行けるよね!?」

「前から思ってたけど青私の速さを過信してる節あるよね!?」

「過信しなきゃ生きてけん!!トカゲの横をすり抜けて!」

「わかったやるよ!やればいいんでしょ!」

 

 

 

俺はしっかり白にしがみつき、白はスピードを上げる。

ぶつかる直前で、壁側に一気に移動。

これでトカゲの攻撃をすり抜ける。

 

 

「「よし、すり抜けた!!」」

「あとは頑張れ、人間!」

「カーブ!気をつけて!!青!」

「オッケー!!」

「よし曲がるよ!!」

「「せーの!!」」

 

 

スカッ。

次の瞬間、白の身体から消え去る振動。

下を見れば、奈落。底が全く見えない地獄への道。

 

 

「「あ」」

俺たちは為す術もなく落下していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「糸!蜘蛛糸!」

「オッケー!一旦分離しよう!」

 

 

「「分離!」」

「蜘蛛糸!」

 

 

壁にくっついた糸で俺はそのまま振り子のように叩きつけられる。

痛った。

大きいと空気抵抗は小さいのかな。

結構なスピードになってたし。

 

 

白は大丈夫か?

 

 

ジジジっと何かが擦れるような音がする。

この音は確か。

 

 

『フィンジゴアット』

 

 

 

ハチか。マズい。

よく見たら遠く、壁の逆側に蜂の巣がある。

クソッ、そういうことか。

 

 

 

「もう一回!!」

俺は身体を最大限縮めて、再び飛び降りた。

 

 

「白!いた!」

 

 

発見した俺は、近くに行けるように壁に糸を発射。

そして今度は体も小さくしてゆっくり着地する。

結局、一番下まで来ちゃったか。

 

 

「白!」

「しっ!!サイズはこのまま!!でかくなっちゃダメ!!」

なんか感動の再開なのに、念話で白に本気で怒られたんですけど。

 

 

 

 

ドンッ!

シャッーッ!!グシャッ!!ドシッ!!グギャ!!グシャッ!!ドスン。

は?なにあれ。

 

 

縦穴に続く通路ででかい怪物に蛇やハチが蹂躙されてる。

蛇も抵抗してるみたいだけど、まるで歯が立ってない。

その怪物の牙で、紙のように軽く引き裂かれていく。

 

 

 

「鑑定」

『地龍 アラバ』

 

 

龍?

なにそれ。

なんでいるの?でかい。

 

 

確実に死ぬ。勝てない。終わり。

バレるなバレるなバレるなバレるな。

バレるなバレるなバレるな。

 

 

ドスン。ドスン。

このまま消えてくれ。

俺に気づかずに行ってくれ。

 

 

いや違う。俺たちに気づかずに行ってくれ。

頼む。頼む。

だから立ち止まらないでくれ。

 

 

ドスン。ドスン。

地龍アラバはこの場を立ち去った。

 

 

「白」

「はぁ。生きた心地がする」

「生きてて良かった」

 

「「はぁ」」

 

縦穴の底で一息つく。でも、余裕はない。

アラバが居なくなったのを見計らってハチが降りてきたら確実に殺られる。

ただ、ここにはいたい。

 

 

なぜなら食糧がたくさんある。

死んでぐしゃぐしゃになった蛇3匹にハチが5匹。

だから、俺は決断した。

 

 

「白」

「なんとなく予想はついてる。私たちが一番生存率が高い方法、でしょ?」

「しばらく、ハチに耐えられる巣を作ろう。この餌をすべて守れるように」

「うん。だから速く産んでね」

 わかってる。

 

 

俺は、しばらくそのあとは完全に卵製造機となっていた。

10秒に1個。その1個の卵も産み落としてから10分で孵化する。

そして蛇とかハチの肉の欠片と卵の殻を持たせて、旅立たせる。

身体のなかで異物が生まれるぐにゅりという気持ち悪い感覚や、産んだときの謎の爽快感?も、数をこなしていくともうどうにでもよくなってくる。

 

 

「いま何匹ぐらい行ったかな」

「数えてたけど1400匹ぐらいじゃない?あと餌どれくらいある?」

「あと蛇1匹だけ」

「案外早いね。やっと家が出来たのに」

 

 

 

でも、この家にも長くはいれない。

アラバみたいなやつが出てきた時に、家ごと身体を破壊されてしまう。

 

 

「ごめん、この家すぐに使わなくなりそう」

「大丈夫、大丈夫。

 もともと長く使うなんて予定無いんだから」

 

 

《熟練度が一定に達しました。『鑑定Lv3』が『鑑定Lv4』にレベルアップしました》

 

 

 

俺たちは、卵と卵から産まれたエルローバチュルを片っ端から鑑定し続けている。

そして鑑定のレベルはもう4までに達していた。俺は卵産まなきゃだから自分の状態を確認してる暇なんて無いんだけど。

さっきのハチで上がった「毒耐性Lv6」もまだ見てない。

 

 

そしてバチュルたち。

小さな肉と卵の殻をくわえ、続々と家から出ていく。

バチュルたちには強き者にくっつき卵を産んで増殖しろということと、自分自身を強くしていくことというのをインプットしてある。

バチュルたちは、産まれたばかりで1匹5cm程しかないか。これからは自然成長とかででかくなっていってくれ。

 

 

でも、この作戦は上手くいくと思う。

結構前に見た兵士の足跡の大きさを30cmとすると、俺は25cmぐらいで白は70cmぐらいだった。あのとき計りあったから間違いない。

で、この蛇の太さは俺の2倍くらい。

それで、長さは30mくらいか。アラバはこれ計算でいくと50mくらいか?

 

 

じゃあ、アラバに近づいてくっつけさえすれば俺達の勝ちだ。

5cmを50mの身体から探しきれるなら話は別だけど。

ま、人間に例えれば身体じゅうから2mmのダニを探すのと同じだからね。あと首もと1mを繁殖場所に使うなら、マザーが子供たちを詰めてた密度でいえば20×20÷2で200匹は入るか。

しかもポケモンはサイズをいくらでも変えられるから、なんならマザークラスのが5cmになって首もとにくっついてた!!なんて離れ業もできる。

 

 

いやぁバチュルをなめていたね。いや、この世界とマッチし過ぎたのか。

学校のプールぐらいの大きさじゃないとこの大きさの虫の寄生虫ムーブは安定しないと思うし。

やっぱりLv1で吸収が出来るのがチートだし、卵を栄養さえあればノーリスクで出せるのがおかしい。

これはポケモンが生態系ぶっ壊しますわ。

 

 

 

「あ。白!食べ終わったし、みんな送り出した!」

「オッケー!!多分1800匹くらいかな?頑張って数えたんだよ!!」

「ありがと!助かるラスカル!」

「「よし、じゃあ今度はこっちの番!鑑定をしよう!」」

「「よし!!」」

 

 

二人で同時に自身を鑑定する。

 

 

『スモールレッサーバチュル Lv5 名前 青』

 

 

あれ?レベル表記と、なんか下にバーが4本ある。

てか、スモールレッサーバチュルって名前やっぱなんなんだよ。

弱いってことか?

 

 

『スモールレッサーバチュル:エルロー大迷宮に適応したバチュル。エレテクト種の幼体』

 

 

念じたらなんか出た!!

えっと?

これは鑑定で出た名前の鑑定をしたのか?

なかなかやるやん鑑定。

では。試しにさらにもう一回鑑定。

 

 

『エレテクト:電気蜘蛛型ポケモン種の魔物の総称』

 

 

説明長いな!?てかバチュルって何かの生き物の一種だったのか。

こりゃデンチュラ以外にも進化先あるな?

エルロー大迷宮って云う場所に俺たちがいることも判明した。

名前がわかってもどうにもならないけど。

てかエルロー。

 

 

ピリッ!

その時俺の脳に電流走る!!このビリッとした感じ不意打ちだとこわっ!!

 

 

『バチュル42番からの報告:なんか大きい生き物にくっつきました。バレる気配は無く、安定しています』

 

 

42番。

上で生まれた蜘蛛達にいたやつか。

『生き物の特徴は?』

『大きい生き物で、なんか長いものが8本生えています。色は少し暗い色です』

『大きいって?』

『端から端が分からないくらい大きいです』

 

 

それたぶん。

 

 

 

『マジかよ』




始まったぜパンデミック()。あからさまには寄生虫のいない世界で世界最悪の寄生虫が生まれてしまった……。


今回ポケモンが小さくなるということで論争が起きそうなのでまとめておきます。
ポケモンは弱ったら小さくなるという話が確かあるのですが、じゃあ体力満タンに回復したポケモンはどうやってモンスターボールに入っているのかという発想にいたり、その後モンスターボールがポケモンのエネルギーを奪い取って小さくさせているというのを発案しました(勝手に)。
しかし、そしたらジョーイさんの
『ポケモンを回復させます』
の下りでポケモンを回復させてるんじゃなくてボールにエネルギーを込めているのでは?と思い混乱状態になったので思考放棄をしてこの結果になりました。
ちなみに弊害はありますがそれは後ほど。

あとたまに前の小説に挿絵入れていくかもしれません。


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5 パンデミック。そして進化?

ケンキっておいしい?


うーん。

てかこれ、なんか発動してるのか?

だって子供の声なんて聞こえんのワケわからんし。

ま、いつかわかると信じてやってみるか。

 

 

じゃあ子供の数を教えて?

すると、ブーンという音とともに「鑑定」みたいのが出てきた。

てかはじっこに『賢姫』って書いてあるんだが。

なんかワケわからんのがまたでやがった。

 

 

「鑑定!!」

『賢姫:ポケモン型魔物の管理において、最上位の性能を持つスキル』

 

 

なにこれ。

こんなのただで貰っちゃってええんか?

てかどんだけこの世界は俺を女にしたいんだ。

賢姫って名前からして。

いや、今は純粋に貰ったことを感謝するべきか?

 

 

俺は「共生」での声も女ならもう男の記憶を持ったメスのポケモンでしかないのか?

じゃあ俺はポケモンだけど、女として生きた方がいいのか?

でも考えても分からんよなぁ……。

転生前に思っていたことはあるが。

 

 

「白」

「なーに?」

「1個チートスキルあった」

 

 

「またぁ?なんか青だけチートスキル多くない?」

「賢姫だって」

「ケンキ?なにそれ美味しいの?」

「えっと、ポケモン型魔物の管理において最強クラスのスキルだって」

「うわぁえげつな。十分チートだ」

 

 

「でも「禁忌」のレベル上がらなかったんだよ。

 取得の音も鳴らなかった」

「うーん、もとからあったけど気づいてなかったのかなぁ?」

「白にはなにがあるんだろう?」

「やめよう。

 これ以上話してると友情にヒビが入る予感がする」

「はい」

 

 

ええと、【8/1904】が生き物には吸着してて、【1658/1904】が取り敢えず生きてる総数か。

あ、【1654/1904】に減った。

 

 

あと距離的に8番、36番、42番、98番が同じ生き物に吸着してるっぽいか。

ワンチャンそいつマザーなんだよなぁ。

まあでも引き続き頼もう。

今は困らんし。

明日は明日の風が吹く。

 

 

【何かありますか?】

お、42番か。

【君をそこの班のリーダーとする】

【わかりました】

【あと、みんなの状態を確認してくれ】

【わかりました】

 

 

状態ってすごいぼやかして言ってしまった。

俺だったらわからないなぁ。

なんか異常がないかってことなんだけど。管理職に向いとらん。

でも勝手に後悔していても、それに関わらずくる返信。

 

 

【私と8番がLv3で、36番と98番がLv2です】

え――。レベル上がってやがる。いや吸着が安定したって言ってたから少しは産んでるかなとか、しばらくしたしもう子供食ったのかなとは思ってたけどさぁ……。まあ、いいや。

【全員にスキル「鑑定」を取得させてくれ。産んだ卵とスモールレッサーバチュルを鑑定すれば勝手にレベルは上がってくから】

【わかりました】

【あと母さんもまだ取得できてないけど、「空間魔法」っていうのがあるらしい。もしとれるようなスキルポイントが貯まったら各自とっていってくれ】

【わかりました】

 

 

【あ、あと子供を何匹か強めの子分にしてもいいかもしれない。危ないところに行かせる用とか】

【わかりました。増殖と「鑑定」、「空間魔法」、子分でいいですか?】

【オッケー。じゃあこちらからは以上だ。たまにレベルとかの確認で連絡とるからよろしく。あと気をつけて。この数になると少しぐらい減ってもいいとは言ってられないから】

【わかりました。母さんこそ気をつけて】

【ではがんばれ】

 

ブチッ。

これは美人になる声だし、将来に期待しよう。蜘蛛だけど。

あとは。

 

【君たちは一人一人動いてるっぽいから一方的に連絡する。

 宿主の身体が小さい場合は注意しながら増殖すること。すぐにレベルは上がると思うけど、Lv2になったら「鑑定」を取得すること。

 スキルポイントが増えたら「空間魔法」を取得すること。

 子分も出来たらでいいけど何匹か増やすべき。

 

 以上、母さんからの連絡でした】

 

 

よし、残りの奴らに送った。

さすがにこれがわかる知能はあってくれ。

 

 

【こちら113番です。生き物にくっつきました】

マジか立て続けに。

ってお前それさっき産んだやつだな!?

 

【生き物の特徴を教えてくれ】

【4本の棒?で動いてる】

 

 

うーん。わからん。頭の中の地図を見て悩む。迷宮の道の表記がなくて座標しか書かれてないから本当に分からないんだよなぁ……。

『地龍 アラバ』

 

 

すまん、何で「鑑定」が反応した?

 

 

すると、恐ろしいことに気づいた。前の家のところだけ地形がめちゃくちゃ丁寧に描かれてる。

「鑑定」のレベル上げのためにはちゃめちゃに鑑定したところだ。

 

 

『エルロー大迷宮の壁』

『エルロー大迷宮の床』

 

あ。これ「賢姫」の座標地図に「鑑定」が反映されてるな?

ってわけで地龍アラバだけめちゃくちゃ鮮明に写っているわけで――。

 

【今、一応聞くけどどういう状況だ?】

【生き物がでかい生き物と戦って勝ったから寝てる。だからみんなで乗ってる】

 

 

はい。今、15匹目が乗ったみたいです。

地図から見えるけどマジでパンデミックしてるわこいつら。怖すぎ。

 

 

【あ】

【あ】

 

アラバが動き出した。

48匹上に乗ってますね、クソゲーです。がんばれアラバ!

【では君たちのなかで、113番をリーダーとする!――】

俺は、またさっきの発言を繰り返した。

 

 

【59/1904】が生き物には吸着してて、【1402/1904】が生きてる総数。すぐに【1398/1904】に減ったけど。

 

「だから青!なに考えてるの!!」

「あ。すまん。子供たちの管理してた。あとしばらく、飢え死ぬか吸着するかわかるまでこんなかんじかもしれないけど許して」

「――いいけど、戦闘中は考えないでよ?どんな感じだった?」

「48匹がアラバの上に乗ってる。あとも着々と吸着してるっぽいね」

「はぁぁっ――!?48匹?だいたい通ってた小学校の一学年なんだが!?」

「寝てたアラバが悪い」

「あ、うん……。あとこっちでわかったこと。ここ、エルロー大迷宮の下層だって。だいたいさ、下層ってヤバい予感しかしないんだけど」

「マジか。じゃあ、強くてでかい魔物が多いってことか」

「そう、強くてデカイ――」

「「あ」」

 

 

 

 

「あれなに?」

「カマキリだね」

「いっぱいハチ切り裂いてるね」

必死に隠れながら通りすぎ――。

ズシャッ!!

 

「「え?」」

 

カマキリが、でかい蜘蛛に腹から喰い殺されていた。

 

『グレータータラテクト Lv8』

 

えっと、俺たちはハチにすら勝てないんですが。

 

「ねぇ、あの蜘蛛の頭」

「え?」

 

なんか黄色いのいるな?あ。バチュルが乗ってるなこれ。

 

 

「ねぇ、これ」

「生態系はぶっ壊れたね」

 

 

俺たちは悟ってしまった。

 

そして、そのあとに出会うでかい魔物にまれにくっついているバチュル。

これは寄生虫すぎる。

 

今は【125/1904】が生き物は吸着してて、【1065/1904】が生きてる総数。

しかも下層でデカイ魔物が多いからか成功率が上層より高い気が……。

 

でもなぁ。

そろそろこっちが餌を探さないと。

 

「カエル倒すしかないね」

「せやな」

「青がカギだからね?」

「わかっとるわかっとる」

 

それから2、3日。

はい。カエルはなんとか倒せました。

毒液一発食らって死ぬかと思ったけどな!

レベル上がったからオーケーだぜ!

 

これって2人だから普通に勝ててるけど、1人だったらどう戦うんだろう?

そんなことを2人でカエルを食べながら話し合う。

あれ?そう言えばもう子供たち放ってからしばらく経ってるのか。

 

ほい、「賢姫」っと。

今は……。【253/1904】が生き物に吸着してて、【305/1904】が生きてる総数。

あ。結構減ったな?

 

「白!」

「ん?なぁに?」

 

むしゃむしゃしながらけだるげに食べてる。

疲れてんのか?一緒にレベル上がったばっかやん。

 

「子供たちがだいたいくっついた。253/1904だって」

「結構生き残った……のか?とりあえず私が子供だったらゴメンな率だけど子供じゃないからまあいいか」

「子供じゃないからまあいいな。じゃ、ちょっとステータス確認するね」

「おけ」

 

えっと、まず上層四天王から。

 

【8番 ビリチュレ Lv7】

【42番 ビリチュレ Lv8】

【36番 ビリチュレ Lv7】

【98番 ビリチュレ Lv7】

 

ホワット??

ホワァ?

 

ハァ?ハァ、敗北者?

 

 

誰だお前ら。

奴ら進化?までしてるよ。なんでその上でレベルまで俺より上のヤツいるんだよ。イッツクレイジー。

 

【42番、聴こえるか?】

【はい、何ですか?】

 

 

【レベルこんなにあがるのか?てか進化したのか?】

【はい。常に経験値が入ってくる状態なので】

【はやくね?】

【はい。常に経験値が入ってくる状態なので】

 

 

【じゃあ「鑑定」はどうなってる?】

【Lv7です】

 

【あ。負けた。どこから聞けばいいんや……。えっと、じゃあ今さらかもしれんけどLv5ってなにがわかるんだ?】

【秘密です】

【ええ……。まあレベル上がったら見るからいいけど。あまり隠し事しないでくれよ?】

【わかりました】

【進化先ってなにがあった?てか何レべで進化?】

【Lv10です。ビリチュレとバチュレアがありました。「鑑定」で調べたんですが、バチュレアが身体が小さいままでステータスを上げる進化、ビリチュレが身体の大きさとステータスを共に上げる進化みたいです】

 

【おい。ビリチュレでも身体小さく出来るか?】

【問題なく同じサイズまで小さくなりました。あと、ステータスはサイズと共に変化するっぽくて、小さくなるとステータスも減少しました】

【ありがとう。それがわかったのはめちゃくちゃありがたい】

【どういたしまして】

【じゃあそれは置いといて。何にくっついてる?】

【クイーンタラテクトです】

【あ。それたぶん母さんのマザーや】

 

【えっ】

 

【じゃ、じゃあ切ります】

 

ブチッ。

 

ねぇ?なんかお嬢様みたいになってきたぞ?うちの子。

あと、今さらだけどポケモンとしても俺たちおかしくないか?

なんでメスだけで産卵出来るんだよ。まさか、単為生殖?

 

ポケモンが出来ることは俺たちみんなにも問題なくいけるようだし、本気でこの星汚染しようとしてるな。ま、やっちゃったしいいか!

 

次はARB48。

えっと?あれ?あれあれあれ?

 

悲報:1匹減って47匹になっちまった。

 

 

自然界、厳しいッスね――。

これまでに約8割死滅してるけど。

 

【113番 ビリチュレ Lv6】

【114番 ビリチュレ Lv5】

【115番 ビリチュレ Lv5】

―――(続く)。

 

おい。なんでお前らみんな当たり前のように進化してるんだ。

 

【じゃあそっちにも伝達。アラバ組は、栄養すいとり過ぎると数の関係でバレるかも知れないから注意!】

【わかった】【わかった】【わかった】【わかった】【わかった】【わかった】――――。

【うるさいな!?返事はリーダーが!!いいね?】

【わかった】

 

ふう。

他の奴らも軒並み進化してて、なんなら進化してない奴の方が少ない。

母とはなんぞや。

 

経験値を10秒に1回得られるってぶっ壊れなんやな。

それまでの死亡率は8割を越えることを考えなければ羨ましい。

あと、なんでみんなビリチュレに進化する?

100匹以上進化してて、バチュレアに進化したのが1匹もいないのはさすがに気持ち悪い。

なにかの本能的行動?

いや、単純に子供を増やしたいから?

わからんけど、もっと試行回数を増やしてみればわかるもんかな。

 

「おい、青」

「なんだ、白?」

「あれだ、蛇だ」

 

え?白が指した方向には、結構な大きさの蛇がこっちをじっと見つめて。

ってバレてるのか。

 

え?マジで?

バレてる!?

バレてるのか!?

 

あ、蛇が首を上げた。

これはバレてるわ。

 

『エルローバラドラード Lv9』

 

「逃げるぞ」

「いや、仕留める」

 

え?白。マジで?蛇だぞ?

 

「上層にもいるヤツだから他の生き物よりははるかに弱いはず。いけなきゃ今後が不安」

クソッ。やるしかないか。

「本音は?」

「ここが広場なのとあっちが出口だから出れない」

 

ですよね――!

ドザザッ!!ザッザサッ!!

蛇がこちらに突進してくる。っ――速い!

 

「じゃあ、やろうか、青」

「オッケー。蛇は、食うもんだ。」

 

俺は、白にジャンプして飛び乗った。

 

 

――バシュ!!バシュ!!バシュ!!

ドシャッ!!ドンッ!!

 

「蜘蛛糸!!蜘蛛糸!!蜘蛛糸!!」

 

――バシュ!!バシュ!!バシュ!!

べちゃ。べちゃ。

色んなものに当ててきた甲斐あってか、なかなかの割合で当たる。このまま口を封じてやる!!

蛇だって広場の柱を避けて突撃してくる。だけど白なら――ってほど素早さ勝ってないな!?身体が小さいから動きやすいけど!!

 

「青、落ちるなよ!?」

「わかってる!!あと3発当てたい!!」

 

――バシュ!!バシュ!!バシュ!!

べちゃ。べちゃ。べちゃ。

よっしゃ!!3連命中!!

ドシャャッ――!!あ。俺が落ちた。

 

「おい!」

「すまん!!」

「後で怒る!」

 

調子乗りました。白に拾ってもらい、口を封じてるうちに蛇にさっさと止めを刺しにいく。

 

「毒牙!!」

「連鎖斬!!吸収!!」

 

ズシャッ!!ドシャッ!!ドスンッドスン!!ドンッ!!

くそがっ。暴れまわるな!こちとら必死で死ぬ気――。

 

ドンッ!!

 

あ。赤いバーがギューンと減って……。

 

《経験値が一定に達しました。Lv8にレベルアップしました。スキル「糸合成Lv1」を獲得しました。経験値が一定に達しました。Lv9にレベルアップしました》

 

ぬぎっ!!

我、ふっかぁーつ!!

危な!!死ぬとこだったぞ!!

 

「白!」

「青!よかった!身体がちぎれかけてたから!」

 

こわっ!!

その情報もこわっ!!

言わんでいい!

 

「じゃあLv10になったことだしそっちも進化出来るの?」

「え?俺Lv9なんだけど」

「「え?」」

 

ここで流れる気まずい空気が迷宮に澄みわたるぜ!!

初めてレベルに差が生まれたか。

たぶんギリギリ足りてないんだよなぁ。

蛇食いながら子供産んで稼ぐか?

 

「えっと、私は今Lv10で、進化したいからするよ?スモールタラテクトに」

「あ、うん。今俺もすぐにレベル上げて進化するからお先にどうぞ」

 

そうして、白の進化が始まった。

 

 

うーん。蛇を食って、卵を産む。

あと5分くらいで卵が孵化し始める。

 

じゃあなんか別のこと考えよう。

「糸合成」は、糸の強度、飛距離を操作出来るものだった。

糸の強度には1、2、3があって上げれば飛距離は下がるし、下げれば飛距離は延びる。

いつものは2に近いものだったようだ。

 

あといつも「電撃付与」はしてるんだけどなぁ。

レベルが低すぎるのか今まで効果があったのを見た記憶がない。

白は光ってるけど、まだ動きは見られないし。

いや、光ってることがおかしいけど!!

ちなみに進化が始まったあと、頑張って蛇を白を隠すように運んだ。

目立っちゃうからね。

 

すぐに終わるなら嬉しいんだけど。

 

 

ズス。

ズッス。

え?

 

『エルローバラドラード Lv2』

 

おい。なんでまた蛇がそこにいる。広場の出口塞ぎやがった。

あれ、ウソだろ?

今の状況を理解して、硬直する

。俺は今、死んだ蛇に乗っている。その蛇の陰に白が寝てて、蛇は死んだ蛇を食いたがってるのか。

いや、白も食うか。

助けて。白。

一緒に戦ってくれよ。

 

 

助けてくれよ。

 

ズッス。

蛇は、俺のような黄色い蜘蛛を初めて見たからか警戒している。

 

クイーン四天王ならすぐに勝てたのか?

俺も、寄生生活をするべきだったのか?

 

理性は戦えという。本能は逃げろという。

逃げて生き延びて種族を増やすんだと叫ぶ。

 

いや。

馬鹿だろ。あいつがいなきゃ俺カエルに勝てるか分からねえんだよ。

試行回数的に今、殺るわ。

 

 

俺はポケモンのために生きるんじゃねえ。俺のために生きんだよ!!

 

《「外道耐性Lv1」を獲得しました》

 

共鳴するようにスキルレベルが上がった。もういい。

 

 

かかってこい、蛇野郎!!

 

 

 

 

 

 

こちらが動いたのを見てか、蛇はスピードを上げて突撃してくる。

バシュ!!

 

よし!糸1なら速さがギリ足りて避けられる。

壁にくっつき、すぐさま糸3を放つ。

べちゃっ。チッ、飛距離不足か。

地面に落ちやがった。

 

ズサッ!!――バシュ!!

 

危なっ!!かすっただけなのに体力少し持ってかれたわ!!

こんなの蛇のレベル関係無いだろ!!質量だろ!

白から離れて戦わなきゃいけないのも苦痛だ。範囲が小さいから、逃げにくい。

――バシュ!!

 

糸2で口を封じようとしても、1人で戦ってるせいで上手く当てられない。

ズサッ!!ズッズッズッズッ!!

クソッ!!糸3を蛇の身体に当てて、数秒を稼ぐ。

 

バシュ!!

 

どうするか。今の耐久力をみるに、糸3を上手く口に当てれば一発で口を封じれる。だけど、飛距離が足りない。

蛇も戦うのに面倒くさくなったのか、死体の方へ向かっていく。マズイ!!

 

―――バシュ!!バシュ!!バシュ!!バシュ!!バシュ!!

背後から方向を調整しながらスピードマックスで突っ込んで回り込む!

 

チャンスは1回!!

 

しくったら死ぬ!!

くらえぇぇっっっ――!!

 

バシュ!!

べちゃっ!!――糸は正確に蛇の口に命中した。

ドンッ!!あ。頭でぶん殴られ――。

 

バシュ!!

危な――。赤ゲージが意識もろとも飛びかけた。もう体力だってほとんど残ってないのにまだ口しか封じてない。いや、いける!!

ドンッ!!ドンドンッ!!

蛇は口を開けようとのたうっている。いや、呼吸出来てないのか?

よし。じゃあ。終わりだよ。

俺は糸3を撃ちまくり、蛇をがんじらめにした。

 

 

HP吸収で体力を少しずつ回復する。

蛇はもう呼吸出来ているらしく死なない。

いや、蛇からしたら死ねないか。

死にたいんだもんね。苦しいからね。

 

 

これ力的にLv9の奴だったら負けてたな。

これはあとで白と一緒に殺してレベルをあげよう。

じゃ、子供たち!我が糧となれ。

 

これから殺すってのに集まってくるのは「賢姫」の効果か?

ムシャムシャ。

うん、淡白で不味くはないな。旨くもないけど。

なんか全然子供食うことに抵抗ない。

そうやってインプットされてんのかもしれんなぁ。

 

《経験値が一定に達しました。Lv10にレベルアップしました。バチュレアまたは

ビリチュレに進化可能です》

 

 

 

じゃあ、白が起きるまで待つか。




ケンキは埼玉県狭山市の美味しい和菓子。みんな買ってね!()


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6 進化遅くて悪かったな

やっと?進化します


ゴソッ。ゴソッ。

音がする。なんかうごめき始めた?

 

あ、蛇の上から手が見えた。きっと来そうな音楽が流れてきそう。

怖くてあれ結局まともに見てないなぁ。TSU○YA近くにあったのに。

 

「青!!進化したった!!」

 

そして、ついに白がその全身を見せた!

すげえ。なんも見た目の変化がない!

いや、産毛が減ってツルツルになったくらいか?

それでも基本的になにも変化してない。

 

してない……よな?

ふっ、進化が不安になってきたぜ!

てかこれ進化っていうの?

 

「青。その蛇は?」

「ふっふっふっ。我が1人で捕らえた」

「え?」

「いや、なんか襲ってきたんやもん。結構死にかけたぞ」

「青、ありがとう」

 

待て。感謝されたときの対応の仕方を16年間ボッチで生きてきた俺は知らんぞ。

がんばろ。

 

「どういたしまして。じゃあ俺が進化していいか?」

「あ、鑑定がレベルアップした」

 

運命のLv5。なぜか出来ることを教えてくれなかったとこだ。

 

「鑑定してみて」

「わかった」

 

さあ、運命の瞬間です。

白選手、どうぞ!!

デデデデデ、デデン!!

 

『スモールタラテクト Lv1 名前 白

 

 ステータス 弱い』

 

ひでえ。これは悪魔。まじで悪魔。許すまじ四天王。

 

「ねぇ」

「はい」

「わたし、進化一発目にこれを見させられたんだけど」

「これは誰も想定してなかった。許せ」

 

――――――。

 

「進化してきます!」

 

冷たい視線を浴びながら俺はいそいそと蛇の陰に隠れた。

 

えっと、ビリチュレとバチュレアってどっちがいいんだ?

何となくだけど、ビリチュレの方がいい気がするんだよなぁ。

みんなそうだしギャンブル性少ないし。

 

 

あれ?俺まさかだが思考誘導かかってね?

さっきバチュレアにする気マンマンだったはずなんだが。よし、バチュレア!

即決!さっさと進化!

 

《進化が完了しました》

《種族名:バチュレアになりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度進化ボーナスを獲得しました》

《熟練度が一定に達しました。「禁忌Lv3」が「禁忌Lv4」にレベルアップしました》

《熟練度が一定に達しました。「外道魔法Lv1」が「外道魔法Lv2」にレベルアップしました》

《熟練度が一定に達しました。「糸合成Lv1」が「糸合成Lv2」にレベルアップしました》

《熟練度が一定に達しました。「電撃付与Lv3」が「電撃付与Lv4」にレベルアップしました》

《スキルポイントを獲得しました》

 

じゃあ、おやすみ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おはよう。太陽出てないけどね。

虫だと暗闇ちゃんと見えるのすごいわ。蜘蛛って夜行性なんか?

 

 

「白!」

「青!蛇どうすんの?」

 

がんじらめにされた蛇を白が指さす。

てか周りにいた蛇白が全部食ったの?

あと進化に関してのコメントはないんか。

あ、俺もしてないから何も言えん。

それはそれでじゃあまあいいとして。

 

「よし、じゃあふたりで殺そう」

「毒牙」

「連鎖斬。吸収」

《経験値が一定に達しました。バチュレアがLv2にレベルアップしました》

 

よし、ちゃんとレベルアップした。頑張らんと子供に追いつけん!

 

「鑑定!!」

 

『バチュレア Lv2 名前 青

 佐野蒼生

 

 ステータス 弱い』

 

あー。知ってたからこのくだりはもういいっす!!

まぁ、これで一段落。じゃ、食べて出かけるか。腹も減ったことだし。

 

 

下層はヤバい敵が多い。

地竜とか地龍とか、蜘蛛とか、カマキリとか、ハチとか――。

 

だから、勝てる相手を選んで戦う。

上層からいるメンツは、だいたい毒持ちか群れているやつ。

もちろんスモールレッサータラテクトはいない。

 

3日に1回、4日に1回しか獲物が取れない時もたまにある。

そんなときに現れたのが、タニシ虫だ。

あいつはヤバい。食べた瞬間にフラリと意識が飛んだ。

白はなんとか食べてたからただ単純にヤバい味をしていたってこと。こわ。

なんか俺が気絶したあとに力業で俺に食わせてたらしいけどね。

イッツクレイジー。

 

もう、進化してからだいぶ時間がたった。2ヶ月くらいだろうか。

そして「賢姫」で見ていたら四天王達がついにデンチュラにとっくに進化してその次の進化を完了していた。これでだいたい2進化分先を行かれたことになる。

 

『デトロエレテクト Lv8 名前 アナ』

『デトロエレテクト Lv8 名前 アニ』

『デトロエレテクト Lv8 名前 アネ』

『デトロエレテクト Lv8 名前 アノ』

 

あと、思い思いに勝手に名前つけていた。はっきり言って成長が早すぎて引いてる。

なにコイツら。

絶対ダイジェストでストーリー進めてるよね?

次はアラバ47。えっと?

 

『デトロエレテクト Lv7 名前 ミア』

『デトロエレテクト Lv7 名前 ミイ』

『デトロエレテクト Lv7 名前 ミウ』

『デトロエレテクト Lv7 名前 ミエ』

――――。

 

アラバ44になってた。自然って恐ろしい。思ったけど名前流行ってるのか?

それぞれコンタクトは出来ないはずなんだけど。

ほかのやつらもデトロ組とデンチュラ組が半々くらい。もはやビリチュレ組はいない。母親とは。

ちなみに、今は200匹弱生き残っている。

 

でも、大きな変化はあった。

それは、寄生していない子供たちが現れ始めたということ。彼らに「賢姫」で話を聞いたらタラテクトに寄生してたらバレたから殺したとか、吸収に宿主の回復が追い付かなくなったから殺したとかそんな答えが返ってきた。

まあ、彼らには上層への抜け穴の場所とクイーン四天王たちがいる場所を雑に教えといたからうまくいけばまた寄生出来ると思う。

クイーンタラテクトってすごいでかいから少し増えても大丈夫だし、まあ別に寄生しなくても多分生きてけるだろうけどね。

 

そのクイーン四天王は子分を育て始めたらしい。

こっちからは存在しかわからないしステータスも種族名すらも出てこないけども、多分一番強い子分が俺よりだいぶ強いくらいだと思うとなんか草。

 

はぁぁ。

ピンチになったらクイーン四天王を回収する仕組みがほしいけど、そこらへんどうしよう。

まだ今は無理か?

俺と白はカエルを狩ることでLv5まで上がった。

でもいかんせん効率が違いすぎるんだよなぁ……。

 

「鑑定」はLv6になったし、あのときは白と二人で踊りあった。だって基礎能力値全部出たんやもん。

ま、こんな感じだけど。

 

『バチュレア Lv5 名前 青

佐野蒼生

HP:40/41(緑)

MP:41/41(青)

SP:41/41(黄)

  :41/41(赤)

ステータス

平均攻撃能力31

平均防御能力29

平均魔法能力32

平均抵抗能力29

平均速度能力45』

 

結論。弱い。めちゃくちゃ弱い。ま、蛇殺すのにもスキル頼みだったししょうがないとこではあるがな!!

速度だけ微妙に高いのはバチュルの素早さだけ高いのを再現してるのか?

 

「探知」と「操糸」はスキルポイントで習得したのに成長が見られないし。

いや「操糸」は少しずつは成長してるけど「探知」?

あんな発動した瞬間情報過多で頭痛がおきる外道スキル知らん。

よし、鬱になってきたし今考えてたことは忘れて、今に集中しよう!!

 

 

そしてナウ。グレータータラテクトLv7から身を隠してます。

ちなみにその上でデトロエレテクトLv7がちっさくなって大家族を作ってるのが見えてます!

もうなにこれ?

 

グレータータラテクトが体長7mあるのが悪いっちゃ悪い。

なんかミステリーサークルみたいっすねぇ……。

すげえぞ我が娘。

しーらない!!って言って見なかったことにしたいなぁ。

だってこれ迷宮中で起きてんでしょ?変に関わりたくないし単純に画がヤバい。

 

『おい、イルナ!!』

『なんすか?』

『そのグレーターって、倒そうと思えば倒せるのか?』

 

ま、でもとりあえず上のヤツと通話はしなきゃ。

情報収集よ。

 

『うーん。スキルが全然育ってないから無理っすねぇ……。別に速急に倒す必要もないのでまだしばらくはいますかね』

『吸収するエネルギー量ってどうなってるんだ?』

『どうせ結構な魔物がHP自動回復を持っていますし、別に持ってなくても「鑑定」持ちでなければちょっとの変化なんてわかりっこないっすよ。

 なにより獲物のHP自動回復のレベルがHP吸収で上がっていきますからね。

 獲物としても嬉しいんじゃないすか?』

『こわ。それ、レベルアップでバレないのか?』

『さあ。ってわけでもっと吸収するようになってもバレないっす。この無限サイクルの途中でレベルが上がっていくんすよ』

『えぐっ』

 

 

あ。でもパッと見この迷宮ここまでヤバい寄生虫いないんだよなぁ。

そりゃ寄生虫って概念が無いならばれないよね……。無いものを想像することは想像の域を出ないっていうし。

 

『でも身体を小さくするとステータスにすごい下降補正かかるのめちゃくちゃ厄介すよ』

『そうでもしないと世界のバランス崩壊するやろ』

『あ、グレーターが引っ込んでくぽいんで切りますね。話し相手が子供しかいないんで母さんからの電話みんな結構楽しみにしてるんじゃないすか?じゃあ』

 

ブチッ。

 

『えぐっ』

 

ただ、それだけ。それだけが感想だった。

 

高さ200m程ならありそうな巨大なホール。たくさんの穴が開いていて、魔物がそこを行き来しているっぽい。

そして、今ちょうど下を大量の猿がめちゃくちゃ走ってる。触らぬ神に祟りなしっていうしもちろん関わる気は無い。

 

「下すごいね」

 

『アノグラッチ Lv7』

『アノグラッチ Lv6』

『アノグラッチ Lv2』

『アノグラッチ Lv8』

『アノグラッチ Lv3』

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「猿の群れか。青絶対に落ちないでよ?」

「わかってる」

「前に1回落ちたでしょ?」

 

「すいません」

 

猿達が去って行ったのを確認して、家を作る。

鰯の群れみたいに猿が群れてるのを俺はもう見たくないと願います。

だってこれテレビとかじゃなくてリアルなんだもん。

落ちたら死ぬんやで。

 

 

じゃあ、作りますか。

 

崖の上ハウス。

壁を登れないと攻撃は出来ないっていうクソ仕様となっております。

なんなら登ろうとしても上から蜘蛛糸が降ってくるクソ仕様です。

さて、登るか登らないか、どっちのクソを選びますか?

 

「うーん」

「どうしたの、白?」

「蜘蛛糸が白いからバレそう」

「じゃあどうするよ?」

「下に岩切りにいくか。貼っつけるぞ」

「えーあ」

 

そして白が「斬糸」でギコギコと切っていく。俺は力が足りないので出来ません。クソですね。

仕方無いから「蜘蛛糸」を出しまくってスキルの熟練度を獲得しにいく。

あ、これはちゃんと運搬用に使うから手伝いは出来てるからね。

 

《熟練度が一定に達しました。「糸合成Lv6」から「糸合成Lv7」にレベルアッ

プしました》

 

「あ。猿だ。こっちに走ってきてる、てか殺意が凄そう」

「駆逐出来る?」

「とりま一緒にいかん?」

「おけ」

 

白に乗って猿のもとへ向かう。

 

『アノグラッチ Lv7

HP:98/102(緑)

MP:41/41(青)

SP:93/93(黄)

  :95/95(赤)

ステータスの鑑定に失敗しました』

 

うん弱い。俺の方が弱いけど。

バシュ!!バシュ!!

ほな足を抑えました、勝ちです。

バシュ!!怖いから背中にもちゃんと糸をぶつけて地面にくっつかせる。

勝ちもうした。コロンビア。

 

「ガアアアアアァ――ッ!!」

 

うるさいねん。ほい。

 

バシュ!!

口をふさいだ。これで静かになった!やったねたえちゃん!!

 

「毒牙っと」

 

白に殺してもらって、糸で雑に梱包する。

さて、帰るか。

 

 

巣の周囲を鑑定して安全を確認。

 

《熟練度が一定に達しました。「鑑定Lv6」が「鑑定Lv7」にレベルアップしました》

勝ち!

 

「白!鑑定Lv7!」

「マジで!?あ、ほんとだすぐにLv7になった!やった!」

「よし、鑑定!!」

 

『バチュレア Lv5 名前 青

   佐野蒼生

HP:47/47(緑)

MP:47/47(青)

SP:47/47(黄)

 :47/47(赤)

ステータス

平均攻撃能力31

平均防御能力29

平均魔法能力32

平均抵抗能力29

平均速度能力45

「HP吸収Lv6」「蜘蛛糸Lv9」「操糸Lv7」「糸合成Lv7」「斬糸Lv2」「集中Lv5」「命中Lv7」「鑑定Lv7」「探知Lv3」「隠密Lv5」「連鎖斬Lv8」「外道魔法Lv2」「電撃付与Lv8」「過食Lv8」「暗視Lv10」「視覚領域拡張Lv1」「毒耐性Lv7」「麻痺無効」「雷耐性Lv7」「石化耐性Lv3」「酸耐性Lv3」「腐蝕耐性Lv3」「外道耐性Lv1」「恐怖耐性Lv5」「苦痛無効」「痛覚軽減Lv4」「強力Lv8」「堅固Lv8」「強化産卵Lv10」「小型化Lv10」「共生Lv5」「賢姫Lv1」「禁忌Lv4」「n%I=W」

スキルポイント:300』

 

おーう。エグいぜ。1つずつ見ていくか。

 

でもその前にまず1つ突っ込ませろ。なんで「電撃付与」はあるのに電撃魔法はないんや。よし。

バシュ!!電撃付与!!

バチっ!!バチっ!!

強めの静電気レベルだけど出るから……。

糸の出る量を減らして……。分離出来るか。

 

バシュ!!べちゃ。

バシュ!!ペチャッ。

バシュ!!ペチャッ。

バシュ!!ペチャッ。

バシュ!!ペチャ。

バシュ!!ぺチ。

バシュ!!ぺチ。

 

バシュ!!バシュ!!バシュ!!――――。

 

《熟練度が一定に達しました。『電気魔法LV8』を獲得しました》

 

 

よっしゃ!

クモンビア。勝つる勝つる!!

まじでこの手段でいけるのか電気魔法!!

しかもレベル8。

これは強い。

 

白はちなみに毒魔法と影魔法があった。

レベル的にはこちらの大勝利だけどまあ張り合うもんでもない。

使える魔法の数も負けてるしね。

てか「強化産卵」ってなに?

 

 

 

『強化産卵:HPを1削って1つの卵を産む。この場合HPは自動回復しない。ポケモン型魔物の固有スキル』

あー。だから子供たちもみんな使えるわけか。

ポケモン認定されてるわけで。

あとこれやっぱ単為生殖の匂いがする。

まあ、それの方がいいけど。

 

 

『小型化:5cmまで小型化可能』

これ地味だけど多分エグいんだろうね。

地味だけど。

ステータスが下降するらしいからそのレベルにもよるけど使えるのかな?

 

 

『視覚領域拡張:視覚能力の強化を行う』

え?

え?

私は思わず2度見する。

 

 

よく子供たちバレなかったな!?

アイツらどうやって隠れてんだよ。

めちゃくちゃ「隠密」とかのレベル上がってそうだし、もし今いてもアイツらに気づけないと思う。

 

 

『麻痺無効:エレテクト種は麻痺を無効化する』

ただのチートやん。いや、普通に強いよね。

ポケモンでの理持ち込み過ぎじゃない?

 

 

『賢姫:ポケモン型魔物を使役する中で最上級のスキル』

これの説明はほとんど変わってないか。よし次。

 

 

『外道魔法:精神にダメージを与える魔法』

よし、外道魔法Lv2発動。

 

 

うーん。うーん。

うーん。

うー。

 

 

これ発動出来てない?難しそうだしやり方わからん。

めちゃくちゃやってみたいけど。

とりあえず次。

 

 

『過食:食べた量をエネルギーとして保存。SPに換算される』

これは普通に強い。身体が小さいからか成長も早いしね。

 

 

『共生:共に生きるスキル。経験値が近いレベルになるよう振り分けられたり、増加したりする。念話など共生に必要なスキルは含まれている』

はぇー。初めて説明読んだけど面白いなこのスキル。

でも、経験値が増えてる量が分からないんだよなぁ。

しょうがないけど。

それ確かめるためにわざわざ一人で戦う気にもならんし。

 

 

 

『強力:平均攻撃能力に上乗せがかかる』

『堅固:平均防御能力に上乗せがかかる』

コイツらも地味にありがたい。増えるなら少しでも大歓迎だ。

で、ここから問題の奴等。

 

『禁忌:決して上げることなかれ』

うわっ!!怖い。はい終了!!

早く次出して!!

雑!

詳しく説明しろ!

 

 

『n%I=W:鑑定不能』

なんだお前。わけわかめのワカメ太夫Lv38か。

あ、俺疲れてんな。

 

 

いやぁ―。

スキルまでちゃんと調べられるようはになると鑑定様だね。

便利すぎる。

 

 

「青も見終わった?」

「うん。見る?」

「あ、みるみる。わたしも見せるわ」

 

 

「チートばっか」

「韋駄天が全てをぶっ飛ばすくらい強いんだが?

 それで速度エグいことになってるよ?

 まあ俺はずっと乗ってるからその恩恵を享受してるともいえなくもないけど」

 

 

「あの、オリジンとか賢姫とか持ってるアンタがいいますか」

「それ俺自身には全く補正かからない無用の長物だからな?今のところはだけど。

 てかもう寝よ?疲れてるでしょ」

「そーだね。寝るか」




主人公の性格:まあまあ悪い


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7 ただただ周りがやべえ

ファンキーモンキーモンキーズ


奈落。そんな言葉がある。俺たちは下層に落ちたとき、奈落に落ちたように感じた。

そして今初めて、その地獄は俺たちに全力で牙を剥く。

 

「白、なにこれ?」

 

響く地鳴りと猿の声。諸行無常の響き無し。

 

『アノグラッチ Lv8 ステータスの鑑定に失敗しました』

『アノグラッチ Lv2 ステータスの鑑定に失敗しました』

『アノグラッチ Lv4 ステータスの鑑定に失敗しました』

―――

 

「なんか猿が集まってる。考えられることとすれば、あの猿が叫んだから集まったことかな。ないわー」

 

え?先に口塞いどけば良かったのか?

マジか。

ウソだろ。

それだけでこうなるのか?

 

あー、ヤッバ。

異世界ヤッパ。

この間にもゆっくりと壁を登り始めてるし。

 

「「これ、マズくね?」」

「よし白!逃げよう!」

「オッケー!!」

 

白に乗って上に上に逃げるのだ!

 

ツルッ!ツルリ。

 

は?

 

「ダメだ、滑って歩けん」

「待って!糸合成!!粘度マックス!!」

 

べちゃ。ドロッ!

 

「あ、これギリギリ無理だ」

 

2人で苦い顔をして見合わせる。

 

「どうする?」

 

猿はゆっくりと、しかし確実に上に登って来ている。

 

「はぁー。迎撃するしかない!!数的に耐久は無理だ!!」

「わかった!」

『子供たち、カモン!!寄生してないやつだけ、来い!!』

 

「賢姫」で檄を飛ばすと同時に糸の準備を始める。はっきり言って間に合いそうな奴等はほとんどいないけど、長期戦に備えて一応呼び寄せたい。

 

「青!」

「わかった!」

 

白は猿の足止めのために糸を壁に張り巡らせていた。

そして俺は簡易ハウスの所まで降りて糸を合成。

とりあえず電撃付与付きで。

 

「青!わたしは上から蜘蛛毒を投下していく!そっちは足止めを頼む!」

「わかった!」

 

言っとくが俺は糸に関しては一流だぞ。

生まれてからそればっかしかしてないし固定砲台舐めんな。

 

「糸合成粘度マックス!!大綱落とし!!」

 

ドルルルルッ!!

MPを8も使う大技。

粘度マックスなら、10匹ぐらいを糸に巻き込んで落とすことが出来る。

なにより白が蜘蛛糸を上手く張り巡らせてるから猿が一点に集まるっていうのが大きいけど。

 

ガラッ、ドシャという鈍い音が響いて猿のダンゴが落下。

うんもがいてるな。

しばらくはそのまま絡まってろ。

 

俺とは別に、白が蜘蛛毒を落としていく。

それも効果抜群のようで猿たちをどんどん落下させていく。

 

強い。

凄い成長してるな……。

それ初めて見たぞ。

さっき鑑定で見つけたんか?

 

「ねぇ」

「おう!!」

「これマズくない?」

 

全然減ってない。むしろ増えてね?

あ。

 

《経験値が一定に達しました。バチュレアがLv5からLv6になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「蜘蛛糸Lv9」が「蜘蛛糸Lv10」になりました。「大奈魔糸Lv1」を獲得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「糸合成Lv7」が「糸合成Lv8」になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「集中Lv5」が「集中Lv6」になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「電撃付与Lv8」が「電撃付与Lv9」になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「電気魔法Lv8」が「電気魔法Lv9」になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

マズい!!

いつもなら踊って喜ぶ進化だけれど、今回に関しては非常に好ましくない。

急いで簡易ハウスの中に入って皮を脱ぐ。

この時間が命取りすぎる。

 

白の皮があるってことはさっきレベル上がったのか。

良かった。

 

 

これは。

見てない間にだいぶ進まれている。

まだ半分いかないくらいだけど確実にマズい。

 

「増えてね?」

「うん、増えてる」

 

最初にいた数はそろそろ叩き落としたはず。それでもまだ、ていうかそれ以上が崖を登っている。

 

「大奈魔糸!!超粘度!!」

 

ドロロロルッ!!

自分の身体の太さほどもある極太の糸を出して投下。移動しながら落としてるから異常な数、それこそ10匹以上を巻きつけ落とせると思う。

 

ドシャ!!

あ、マズい!早く簡易ハウスに!

 

《経験値が一定に達しました。バチュレアがLv6からLv7になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「HP吸収Lv6」が「HP吸収Lv7」になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「集中Lv6」が「集中Lv7」になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「操糸Lv7」が「操糸Lv8」になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

またタイムロス!!

しかも今落ちただけで即死、ってことはだいぶ上がって来てるな!?

 

「わたしもレベルアップ!!頼む!」

 

マジか。

出来ることはあるけど量がエグすぎる。

あと何十匹援軍くるんだ?

 

「大奈魔糸!!」

 

MPの大部分を使って巨大な綱を作り、そのまま投下。

レベルアップはしたくないけど、あいつらが近いから余裕がない!

 

「大綱!!」

 

ガラガラッ!!

ドシャッ!!

 

《経験値が一定に達しました。バチュレアがLv7からLv8になりました》

《各種基能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「命中Lv7」が「命中Lv8」になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「集中Lv7」が「集中Lv8」になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「賢姫Lv1」が「賢姫Lv2」になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

白と入れ替わりでハウスの中へ入るけど、レベルアップスピードが早すぎて隙が多すぎる。

まさかこれ共生の弊害!?

 

「痛っ!!」

「白!?」

「アイツら石投げて来やがった!」

 

マジ?今まで隠してたのは隙を狙ってたのか?

これ以上注意してると時間が足らんぞ!?

 

「こりゃ石食らったら落とされるな。一応ハウスからは離れないべきか」

 

はああああ。行動の制限がかかってしまった。

白なら速さ的に問題ないかも知れないけど、分離してる今避けられる希望は持てない。

 

ゾロゾロと、もうすぐそこまで猿たちが迫っていた。

クソが。

弱いからって舐めていた。

集団の暴力性を。

だからもう舐めない。

 

「糸合成!!大綱落とし!!」

 

ドルルッ!!

大奈魔糸は使わない。

MP消費が激しすぎて連続で打てないし、ならこっちの方が効率がいい。

猿たちは分散して絡まりにくいようにしてるけどそれでも十分当てられる。

それ以上の猿がいるのが一番の問題なんだけど。

 

「大綱落とし!」

「毒合成!」

「大綱落とし!」

 

マズい、そろそろあれが来てしまう。

 

《経験値が一定に達しました。バチュレアがLv8からLv9になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「堅固Lv8」が「堅固Lv9」になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「集中Lv8」が「集中Lv9」になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「強力Lv8」が「強力Lv9」になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《スキルポイントを入手しました》

 

ガシッ!!危な!

足を握られた瞬間に皮を脱いでギリギリで回避。ちッ!!ハウスまで来たか!!

 

「白!」

「青!一網打尽の賭けに出る!!乗れ!!」

 

白といえば、上にいた。大量の糸を壁に張り付けて。

ガシッ!!あ。クソッ!!

目を離した隙に俺の足は猿に捕まれていた。赤ゲージが一気に減少していく。ミシミシと足が嫌な音を鳴らし、激痛に襲われる。

 

《「痛覚軽減Lv4」が「痛覚軽減Lv5」にレベルアップしました》

 

ブチッ!!

足が千切れた。でも、行くしかない!!

白と違って、足は4本しかない。

あと1本無くなったら身体を安定させることもままならなくなる。

 

痛い。痛っい。

バシュ!!

白の背中に糸を出して、とりあえず安定を確保――。

ドンッ!!

あ、石がっ……。

背中に強い衝撃を受け、さらに赤ゲージは減少する。

 

ガシッ!!

ふ――。ふ――。ふ――。

 

「青、大丈夫!?」

「白、こっちは、平気。早く、レベルアップ」

「わかった!!」

 

ビリっ!ばりっ。ばりっ。

 

 

蜘蛛の糸に絡まった猿たちがそのまま宙に浮いていく。

 

――バリバリバリッ!!

ドドドドドッ!!ドドッ!!

 

白は簡易ハウスに全体重をかけ、そのまま猿を捕らえた巨大な網となった巨大な蜘蛛糸を地面に叩きつけた。

 

《経験値が一定に達しました。バチュレアがLv9からLv10になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「電気魔法Lv8」が「電気魔法Lv10」になりました。「雷魔法Lv1」を獲得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「雷魔法Lv1」が「雷魔法Lv3」になりました》

《一定のレベルに達しました。スキル「威速電撃Lv1」を獲得しました》

《スキル「雷付与Lv3」を獲得しました》

《「タランテスラ」または「デンチュラ」に進化可能になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

 

 

次の猿たちが、少しだけ露出した地面の糸に警戒している隙に、再び壁に糸を張りつけながら急いで登る。次は、同じ戦法は通じない。

 

もう軽く150匹は倒してると思う。

それでも、奴らはただの小さな蜘蛛2匹に命をかけて突撃してくる。

こわい。なんだコイツら。命は消耗品じゃないんだぞ。生きろよ、てめえら。自分のために。

 

「青!」

「わかった!」

 

雷付与も使って再び壁の上に登って蜘蛛糸を張り巡らせる。

 

ビリッ!!ビリッ!!

猿の動きが遅くなった。効いてる。

このまま時間を稼いでって、はぁ!?

 

アイツら糸にくっついた味方の上を登っていってやがる。もうその下の猿に用は無いみたいな。仲間だと見なしてない。

 

俺たちをはやく仕留めようとして、糸が邪魔だと判断したのか。

でもそれ以上に戦況に悪化し始めた。それは遠くを見たらすぐにわかる。

 

『バグラグラッチ Lv8』

『バグラグラッチ Lv7』

『バグラグラッチ Lv9』

『バグラグラッチ Lv8』

 

――。

 

おい何で大猿たちがいるんだ。大きさ、猿たちの2倍はあるか?

 

「白」

「あれ、マズいね。猿たちが呼んだのかも」

ガシッ!!大岩を掴んでぶん投げ――。岩!?

「回避!」

「おし!」

 

ドゴッ!!

俺の5倍くらいの岩が近くの壁にぶつかって激突する。あら、これ当たったら即死だ。

ただただ、数がとんでもない。下には200匹以上の猿の亡骸があるのに、なぜそこまで俺たちを潰そうとするんだよ。また半分近くまで登られてきた。そしてどんどん大猿の数も増えてきて、簡単な糸じゃほとんど落ちない。てか糸に絡まった瞬間に身を投げる。これ生物種として恐ろし過ぎないか!?

 

「白!」

「猿を舐めてた。わたしたちより強い奴らが本気で殺しに来てるってことの意味を考えなきゃいけなかった。それにしても数の力は恐ろしいね」

 

《熟練度が一定に達しました。「集中Lv9」が「集中Lv10」にレベルアップしました。「思考加速Lv1」を獲得しました。「思考加速Lv1」に「集中Lv10」を統合しました》

 

だけど。ここまで耐えた。俺たちの勝ちだ。

ここまで。ここまでの長期戦は予想してなかったけど、もうじき奴らが着く。

 

 

 

 

 

 

バシュバシュ!!ドシン。

バシュ!!ドン!

 

え?デカ。でも勝ったと、ただ、ただそれだけは確信出来た。

5mはある巨大な蜘蛛が3方向から糸を伝ってゲシゲシと猿を蹴散らす。そして背中に何十匹もの小さくなった蜘蛛たちを背負いながら壁を登り、身体に電気を纏わせた。

 

『デトロエレテクト Lv9 名前 サヤ

HP:1845/1858(緑)

MP:1855/1952(青)

SP:1922/1922(黄)

  :1948/1956(赤)

ステータスの鑑定に失敗しました』

『デトロエレテクト Lv2 名前 エナトロ』

『デトロエレテクト Lv5 名前 シアン』

 

「青!」

「大丈夫。勝ちだ」

 

焦って足をバタバタさせる白を横目に、通話を開始。

 

『すまん。ありがとう』

『じゃあ、どうしますか?』

『か普通猿に攻撃加えます?集団でアイツらずっといるのヤバい予感しかしないじゃないですか』

『あのときはなぜか一匹しかいなかったんだよ』

『じゃあしょうがない』

『はやく潰してレベル上げますよ。なぜ母さんのレベルがそんなに低いんです?』

『やめい』

『『『じゃ、デスゲームを始めましょう』』』

『空間魔法!座標指定』

『雷魔法Lv9』

『体内電気大放出!』

 

 

 

 

 

「ねえ、お前の子供らやべえな」

 

うん、俺もそう思う。

大猿と猿が宙を舞い、斬糸で肉片が飛ぶ。

鈍い音が響いて猿が倒れ、蜘蛛は再び脱皮する。

孫たちも暴れまわってるし、もはや地獄絵図。

 

『デトロエレテクト Lv10 名前 サヤ』

 

あ、やっぱレベル上がってる……。うんやべえなアイツら。

 

「これ200匹弱いるんでしょ?アラバ倒せるんじゃね?」

「わからん。でも、猿の群れが減ってきたね」

「あんな6mくらいある化け物らが襲って来たら逃げたくもなるよ。あいつらは逃げないけど」

 

猿も大猿も全く同じように殺され、地面に折り重なる。

もはや蹂躙だけど死にかけた身からすると安心するから不思議だ。

 

『進化はやくしちゃって下さい』

『母さん。白さんとの念話ください』

『おお、わかった』

 

『え、あ、あの』

『白さんですか?いつも母さんをありがとうございます』

『なんか母さんヤバそうな称号持ってるので暴発しないようにお願いしますよ』

『あとで毒魔法教えて下さい』

 

『あ、し、進化してきます』

 

あ。

白進化を始めちゃった。

 

『母さんもさっさと進化出来ませんか?』

『すまん。してきます』

 

 

 

 

 

じゃ。岩の陰に隠れて進化の分岐の確認。あっちでドンパッチいってるけど平気か?こっち来ないよね?

 

『タランテスラ:希少種。小さな身体から強力な電気を放ち、纏わせる』

『デンチュラ:中型の魔物。電気を帯びた毛は数日寝込むほど強い電気を持つ』

 

え。デンチュラってそんなヤバいヤツだったん?タランテスラを選ぶけど。みんなデンチュラだったらしいしね。てかデンチュラにはバチュレアからもビリチュレからも進化出来るんだ。

 

じゃ、タランテスラに進化!

 

 

 

 

 

お休み――。

 

《進化が完了しました》

《種族名:タランテスラになりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度進化ボーナスを獲得しました》

《進化スキルボーナスを獲得しました。スキル「怠慢Lv1」を獲得しました》

《熟練度が一定に達しました。「禁忌Lv4」が「禁忌Lv5」にレベルアップしました》

《熟練度が一定に達しました。「外道魔法Lv2」が「外道魔法Lv3」にレベルアップしました》

《熟練度が一定に達しました。「糸合成Lv8」が「糸合成Lv9」にレベルアップしました》

《「威速電撃Lv1」を「雷魔法Lv3」に統合しました。熟練度が一定に達しました。「雷魔法Lv3」が「雷魔法Lv4」にレベルアップしました》

《「雷耐性Lv1」を獲得しました》

《「電気耐性Lv7」を「雷耐性Lv1」に統合しました。熟練度が一定に達しました。「雷耐性Lv1」が「雷耐性Lv4」にレベルアップしました》

《熟練度が一定に達しました。「雷付与Lv3」が「雷付与Lv4」にレベルアップしました》

《熟練度が一定に達しました。「隠密Lv5」が「隠密Lv6」にレベルアップしました》

《熟練度が一定に達しました。「賢姫Lv2」が「賢姫Lv3」にレベルアップしました》

《熟練度が一定に達しました。「共生Lv5」が「共生Lv6」にレベルアップしました》

《熟練度が一定に達しました。「斬糸Lv2」が「斬糸Lv3」にレベルアップしました》

《熟練度が一定に達しました。「連鎖斬Lv8」が「連鎖斬Lv9」にレベルアップしました》

《熟練度が一定に達しました。「強力Lv9」が「強力Lv10」にレベルアップしました。スキル「剛力Lv1」を獲得しました。「強力Lv10」を「剛力Lv1」に統合しました。「剛力Lv1」が「剛力Lv2」にレベルアップしました》

《熟練度が一定に達しました。「堅固Lv9」が「堅固Lv10」にレベルアップしました。スキル「堅牢Lv1」を獲得しました。「堅固Lv10」を「堅牢Lv1」に統合しました。「堅牢Lv1」が「堅牢Lv2」にレベルアップしました》

《熟練度が一定に達しました。「視覚領域拡張Lv1」が「視覚領域拡張Lv2」にレベルアップしました》

《熟練度が一定に達しました。「石化耐性Lv3」が「石化耐性Lv4」にレベルアップしました》

《熟練度が一定に達しました。「外道耐性Lv2」が「外道耐性Lv3」にレベルアップしました》

《スキルポイントを獲得しました》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あー起きた。腹へった。

 

あれ?俺、めちゃくちゃ見た目変わってね?なんか頭&胸と腹に分かれてるし、足が4本から6本に増えた。

まあデトロエレテクトが完全に足8本の蜘蛛だったからまた足の数増えんのかな。

 

「白!」

「青!ん?なんかわたしみたいな見た目になったな!?ちょっと青黒いしサイズはそのままだけど!!」

「それ結構違くない?まあサイズがそのままで良かったよ」

 

『で、猿の止めを刺してくれませんか?』

『あ。ほんとスマン』

 

よく見ると、たくさんの猿が生きたまま糸に絡まってる。

経験値くれるってことでいいんだよな?

 

『よく私たちがいない間あそこまで耐えましたね』

『猿よりも何倍もステータスがあるならまだしも、半分しかないからね。スキルも精神もいろいろヤバいよ』

 

ガブッ!

 

《経験値が一定に達しました。タランテスラがLv1からLv2になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「操糸Lv8」が「操糸Lv9」になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

ガブッ!

 

《経験値が一定に達しました。タランテスラがLv2からLv3になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《スキルポイントを入手しました》

 

ガブッ!

 

《経験値が一定に達しました。タランテスラがLv3からLv4になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「鑑定Lv7」が「鑑定Lv8」になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「大奈魔糸Lv1」が「大奈魔糸Lv2」になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

ふぅ。じゃあ食うか。

噛んでるだけでも疲れたな。

 

『産卵忘れないで下さいね?』

『わかったわかった。じゃあやるか』

 

 

 

第二回パンデミック大会。




これで日刊ランキング乗りました!ありがとうございます!誤字を指摘もありがとうございます!

ちなみに。

『威速電撃:自分と相手の素早さを比べた際、自分が素早いほど威力が上がる』
ポケモンの「エレキボール」という技そのまんまです。バチュルはLv20で覚えます(すぐ統合されたけど)。『怠慢』と今の主人公のステータスについては次回。


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8 怠慢で傲慢な俺ちゃんの完成!

母が弱し。


たくさんのバチュルが生まれ、猿肉を持って旅立っていく。こうやって見るとなんか蟻みたいだな。

『うちらこうやって生まれたのか……』

『いや、前も2000匹いたんだぞ?数的にも大量生産になるって』

『まあまあ、あたしら今実際生きてるし結果オーライよ!』

 

 

9割死んでるけどな……。

しばらく経ってついに白が完全に黙ってしまった。俺だって今女子(蜘蛛)に囲まれて苦しんでんだから頑張って欲しい。その前に全長6mある蜘蛛なのにコイツら念話の声が女子すぎるんだよ。確かに産まれてから全然経ってないけどさ。

 

 

『自分でいうのはあれなんだけど、お前らどうする?』

『どうしようかしら。宿主殺して来ちゃったし、もともとそろそろやる気ではあったけど』

『なんかすまん』

『気にしないで。エナトロとシアンの2人はちゃんととっくに殺してたから』

『言い方』

 

 

 

猿を食いながら話してるけど、念話は口使わなくていいから便利だわ。地球に生きてた時に使いたかった。

『よし、じゃあ私からはお願いあるんだけどいい?白さんも』

『え、あ、わたし?』

『あ、はい。どうぞ』

『これからどうするの?』

『上層に向かおうと思ってる。いま考えてるのは中層を通って行くルート。ハチの群れにはまだ勝てないと思うし、地龍がいるかもしれないから』

『じゃあその中層から行くルート、私も連れてってくれない?多分過剰戦力になるけど』

『え?まじ?』

『マジで?』

『私、拠点を無くしたから少し不安があるの。あとスキルに関してはあなた方の方が全然知ってるはずよ』

『そうかも知れないけど……。いいのか?』

『いいわ。私も上層に行きたいの。安全だしね』

『白、いいか?』

『大、賛、成』

『じゃあ、よろしく』

『そしたら、子供たちを乗っけて』

『え?』

 

 

サヤの背中からわさわさと子供たちが乗り移って――って。あ。

体力減り始めたぞ。なにやってんだお前ら!?

『何で母さんは自動HP回復持ってないのよ。

 

 

 いま子供たちがHP吸収適度にやってるから必死に食べてあと卵産んで』

 

 

 

鬼だ。

 

 

 

食べ続けること約半日。

 

 

『今回は、5011匹か』

《熟練度が一定に達しました。スキル「HP自動回復Lv3」が「HP自動回復Lv4」にレベルアップしました》

 

 

地面に寝転がってぐったりする。猫なら可愛いんだろうけど猫サイズの蜘蛛だから、人が見たら間違いなくレッツゴーキゼチュウだ。

 

 

『なんかめちゃくちゃ疲れたんだけど』

『あ、あと私も母さんのこと青って呼ぶわね。一応一緒に行動するんだし、母さんって呼ぶのはなんか嫌だわ』

そりゃ冒険に母さんいたら嫌だろ。あれ対義語だぞ。

 

 

一方その頃、白も白で陽の者たちに絡まれていた。

 

 

『じゃああたしからも1つお願い。毒魔法教えて?』

『あ、エナトロさん、わたし?』

『そうそう白さん。あたしは鑑定で取得出来るのは知ってたんだけど、白さんは種族的に自動で獲得したんじゃない?』

『う、はい』

『いや、ちょっと待て!?なんで鑑定で取得できるスキルわかるんだ?』

『いや、母さんも空間魔法知ってたじゃん』

『それはありそうな魔法連呼したからだぞ』

『てかそもそもスキルポイントから調べたらでるじゃん。たしか、鑑定Lv8でいけるはずだったよ』

『え?』

 

 

「鑑定!!」

 

 

『タランテスラ Lv4 名前 青

               佐野蒼生

ステータス

HP:69/69(緑)

MP:80/80(青)

SP:72/72(黄)

  :72/72(赤)

ステータス

平均攻撃能力95

平均防御能力82

平均魔法能力104

平均抵抗能力84

平均速度能力121

「HP吸収Lv7」「HP自動回復Lv4」「蜘蛛糸Lv10」「大奈魔糸Lv2」「操糸Lv9」「糸合成Lv9」「斬糸Lv3」「思考加速Lv1」「命中Lv8」「鑑定Lv8」「探知Lv3」「隠密Lv6」「連鎖斬Lv9」「外道魔法Lv3」「電撃付与Lv10」「雷付与Lv4」「過食Lv8」「暗視Lv10」「視覚領域拡張Lv1」「電気魔法Lv10」「雷魔法Lv4」「雷耐性Lv4」「毒耐性Lv7」「麻痺無効」「石化耐性Lv4」「酸耐性Lv3」「腐蝕耐性Lv3」「外道耐性Lv3」「恐怖耐性Lv5」「苦痛無効」「痛覚軽減Lv5」「剛力Lv2」「堅牢Lv2」「強化産卵Lv10」「小型化Lv10」「共生Lv6」「賢姫Lv3」「怠慢Lv1」「禁忌Lv5」「n%I=W」

スキルポイント:1300』

 

 

あ。スキルポイントの下に小さく詳細って書いてある。これか?

詳細っと……。ええ?ヤバ。

 

 

「白」

「やべえ」

「すげえ」

 

 

獲得できるスキルとその一覧。スキルポイントが足りないのも表示されてるから、これからのスキルポイントの使い方とかも考えられる。

 

 

『はじめてか。好きに見てていいよ。それから教えて』

『わかった!』

 

 

よしよし……。

邪眼系のスキルは種族の関係で無理と。毒魔法と影魔法は100ポイントで簡単は取得可能だけど他は300ポイント。火魔法の耐性獲得は500ポイントかかるけど。たしかデンチュラの覚える技が電気、悪、毒、虫とかだから反映されてるのか。大罪系はめちゃくちゃスキルポイントがかかる。当たり前だけど、強いスキルほど大量のスキルポイントが必要になる。

 

 

「白、どうする?2人で同じスキル一緒にとっても結構無駄になるよ?」

「そうだね。じゃあどうしようか」

あ。あれ俺なんかヤバいスキル持ってない?この怠慢ってやつ。

 

 

『怠慢:自分以外の周囲の魔物全ての平均速度能力を低下させる』

 

 

バ・ケ・モ・ノ。多分あれなんだろうな。ポケモンでバチュルからデンチュラに進化したら覚える技、ねばねばネット。相手の素早さを一段階下げる罠的な技だったけどこんな形になるか?化け物過ぎんだろ。

 

 

『ねぇ。サヤ』

『なに?』

『怠慢ってあるか?』

『あるわ』

 

 

あー。これこの種族が使えるチートスキルってことでよさそう。チートばっかやな俺ら。

 

 

「白は邪眼系いける?」

「うん。今は無理らしいけど。青はいけないの?」

「ずっと無理らしい」

「なんかこれあれだけどポケモンの限界感じて安心したわ」

 

 

大丈夫俺も少し安心した。なんか逆に不安になってたからね。

ま、とりあえず魔法はとっとこう。

 

 

《スキルポイントを100使って「影魔法Lv1」を獲得しますか?》

YES。

《スキルポイントを消費。「影魔法Lv1」を獲得しました》

 

 

《スキルポイントを100使って「毒魔法Lv1」を獲得しますか?》

いえす。

《スキルポイントを消費。「毒魔法Lv1」を獲得しました》

 

 

あと、空間魔法はとっておきたい。上手くいけば転移を覚えられるし、マップ移動が重要なことはポケモン民ならわかること(そらをとぶ)。

 

 

《スキルポイントを500使って「空間魔法Lv1」を獲得しますか?》

いえす。

《スキルポイントを消費。「空間魔法Lv1」を獲得しました》

 

 

さてと……。

 

 

「あ、傲慢って100でいける」

「マジで?」

どこだどこだどこだぁ?あ、あったわ。

 

 

『傲慢(100):神へと至らんとするn%の力。取得する経験値と熟練度が大幅に上昇し、各能力成長値が上昇する。また、Wのシステムを凌駕し、MA領域への干渉権を得る』

 

 

「「こわ」」

 

 

白なんてもん見つけてんだ。破格すぎてワケわからんし。いや、意味は分かるんだけど。

n%にWのシステム、MA領域。鑑定しても、全部『鑑定不能』で遮られる。この世界の理に関わるということ?

ただ怖いけど、今の時点でもっと怖いことは自分が死ぬこと。だからこんな成長の機会は逃したくない。さっきだって足が千切れたし、いつ死んでもおかしくない状況で悔いは残したくないし。なにより、生きなきゃいけない。

 

 

「白、決めた?」

「覚悟はできてる」

「いいね、最高だ!いくか?傲慢」

「いこうか青!」

「「来い、傲慢!!」」

 

 

《スキル「傲慢」を獲得しました』

《熟練度が一定に達しました。「禁忌Lv5」が「禁忌Lv6」にレベルアップしました》

《条件を達しました。称号『傲慢の支配者』を獲得しました》

《称号『傲慢の支配者』の効果により、スキル「深淵魔法Lv10」「奈落」を獲得しました》

 

 

「「は?」」

 

 

なんかやっちゃって無いですか?てかなんだお前マジでレベル上げんやな。もう過ぎ去ったことはどうしようも無いけどなぁ。ヤバい不安だぞレベル上げてしまった。あーどっと疲れた。もういい。

 

 

「「寝よう」」

 

 

しばらくはそのホールで過ごした。白はエナトロに捕まってて、俺は俺でサヤに捕まって鍛えられる毎日で正直辛かった。だってガチで鍛えられるだけだったんだもん。そりゃ辛いて。

 

 

『じゃ、シアン。頼むぞ』

 

 

そして、中層へ偵察に行ったシアンが帰ってきたから俺たちは出発する。そして何故

かそこの様子はまた教えてくれなかった。娘たちが秘匿癖ひどいです。もういい加減素直に教えてくれ、死ぬから。

賢姫では力技で聞き出せるとは思うけど、まだその時じゃない。今のところは好感度を稼ぐのを優先しよう。

 

 

『あ、着いてく。着いたら別れっけど』

 

 

なんて言ってエナトロもついてくる。俺たちはまだしも6mくらいの蜘蛛が3匹いるんだぞ。人間がこれ見たら即気絶だろうなぁ。いやこの世界だと案外いるサイズなのか?マザーはめちゃくちゃでかいし食物連鎖の頂点に立ってそう。

 

 

『じゃあしばらくお願いします』

 

 

白がだいぶ慣れてきたし頑張ってくれ。

 

 

『あ、そろそろ着くよ』

 

 

え?まだ少ししか経ってないんだが。約3時間?

 

 

『じゃ、私たちは帰るわ。3人で頑張って!』

『じゃ!』

『ありがとうございました』

 

 

ああやって客観的に見ると、俺ヤバイことしてるな。だって俺たち大量に子供背負ってるんだぜ?パンデミックにもほどがある。虫嫌いな人が見たら気絶しそう。

 

 

『ねえ、なにか明るくない?』

『明るいな』

『ねえ、青、さっきから思ってたんだけどこれ共生でリンクつかないの?』

 

 

白が人数減って元気になった。やったね。

 

 

『まって。やってみる』

 

 

 

 

《「共生」及び「賢姫」の兼用は可能です。出来ました》

 

 

「あ、いけたね」

「共生ってなんなんですか?」

「言っちゃえば経験値分配システムかな。足したら元の経験値より絶対増えてる気がするけど」

「サヤ。青。じゃあ行こうか」

「わかりました」

「おう!」

「「いざ中層!」」

 

 

グツグツ!グツグツ!グツグツ!

 

 

「はいマグマ!!退却!」

うっそだろおい。

 

 

 

 

 

 

「子供たちどうしようかしら」

 

 

そりゃマグマだからな。俺たちはだいぶ進化してるけどまだ全然進化してないやつもいるし、すぐ焼け死んじゃうかも。てかなんで中層マグマ地獄なんだよ。たしかマグマって溶岩になってすぐ固まるよな。なんで固体にならずに流れ続けてるんだよ。なんで?異世界面白ーい、わろた。

 

 

「もうここで下層においてきちゃえば?」

「よし、決めたわ。じゃ、ここで3人で山分けして食べましょう」

「「マジで?」」

 

 

バチュルやデンチュラがわさわさと俺たちの背中から降りてくる。お前らもそれでいいんか?

 

 

「おい、マジで食うのか?」

「もちろん。生き残りやすくなるし2人はレベルも上がるわ」

「でも」

 

 

 

白の言葉に関わらず、サヤはため息をつくようにしてからバチュルを食べ始めた。

 

 

「わたしだって場をわきまえてるわ。特に青。あなたはなんだかんだ言って≪オリジン≫なんて始祖の称号持ってるんだから。私たちの種族の産みの親でもあるんだし。一緒に行動出来ること自体に意味があると思ってるの。その思い出作りの一環よ」

「はぁ」

 

 

あれ?産みの親って突然変異の俺産んだマザーじゃね?詳しくは言わんけど。

 

 

「だから、ちゃんと食べてレベルを上げなさい」

「はい」

 

 

娘は強い。多分母さんよりも。

 

 

 

 

ちなみに、結局レベルは上がらなかった。




禁忌のレベルが上がりまくってる……。これ大丈夫か?


果たしてこの娘、うまく扱えるのか⁉︎


受験があるので不定期更新になります。来年には戻します(そこまで続けば)。あと鑑定の称号部分を削除したり色々かきなおしました。


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9 drive to the god

自力で考える。

今までの鑑定称号が入っていたので消去しました。たまにこういう修正入れると思うので温かい目で見てもらえたら……。


「あっついな」

「そりゃ暑いだろ。天候ダメージ大嫌い」

「耐えて。私だって辛いのよ?」

 

 

ここは中層。俺たちはずっと下層と中層を往復して火耐性を上げようとしている。てかなんでいるだけなのに火耐性が必要なのん?暑すぎない?てか今火耐性Lv1だけど本当に獲得出来ちゃうとかどんだけ暑いんだよ。

 

 

ジリジリと身体が焼けるような感覚。地球だったら絶対に味わえないね。味わいたくもないけど。

 

 

「青。今子供達はどういう感じ?」

「今【430/5011】がくっついてるって。ちなみに生存数は【624/5011】」

「凄い死んでるわね……。よく私生き残ったものだわ」

「ガチでそこは誇っていいと思うぞ」

 

 

暑いし体力減るの早い。1分に2くらい?

まだ耐性が足りないのか、つれーぞこれは。

 

 

「あおー。わたし体力10切ったから出よー」

「はーい。サヤはどうする?」

「もうちょっと粘るからお先にどうぞ」

「「はーい」」

 

 

 

 

 

 

よいしょいこっと。2人で中層の入り口にある窪みに移動。ちなみに下層という扱いなのか涼しいし、壁に触れると「鑑定」で下層の壁と出てくる。

あーマジで涼しい。やっぱり下層は最高だぜ!

 

 

そこそこ大きい石の上にポンと乗ってぐったりとする。もう特等席だね。

 

 

はー。涼しいわぁー。石マジ涼しいわぁ。

ねぇ、あとなんで下層に全然熱がまわって来ないの?てか溶岩の中にタツノオトシゴみたいなやつがいたし思考放棄するべきかぁー?かぁー?はぁ。

 

 

「ねぇ青。なんか魔法関連異常に上がてるよね。約100」

「傲慢の関係じゃない?知らんけどあのあとに上がったってことは」

「まあ上がったしいいか!」

 

 

これでもサヤとは比較にならないほど弱い。他より圧倒的に高いMPで思いっきり桁が違うしサヤのスキルどうなってるんだろ。後で見せてもらお。

 

 

《「影魔法Lv2」が「影魔法Lv3」にレベルアップしました》

 

 

「傲慢」のお陰かめちゃくちゃスキルのレベルがすぐ上がる。傲慢様……とは流石に言えないけど。だってアイツ禁忌上げたんだぞ?こんぐらいはしてもらわないと困る。

 

 

「ねぇ、「傲慢の支配者」って何人もいていいのかな?」

「白、どういうこと?」

 

 

白は足を組んで静かに言うけどあれ、それ手か?

 

 

「普通、ゲームとかなら大罪系の支配者は1人だ。まさかだけどこの世界において私たちって1人として扱われてない?」

「キュレムみたいなもんか?」

「キュレムが全くわからないけど。「共生」って、最終的にはどうなるんだろう」

「禁忌は上がってない。だから、めちゃくちゃヤバいってことは無いと思う」

「じゃあ楽観的……」

「白。思考を一旦放棄しよう。今考えても絶対わからない」

「そうだね。ありがとう青」

 

 

ショートした思考で得た結果が思考を放棄すること。実際思考を放棄していいのかわからんけどいくら考えてもわからないのは事実だし、なら考えてる意味がない。我ながらタチの悪い考え方だ。

ゴロゴロしてながら毛玉をびよんびよんさせる白を見て考える。

 

 

あれ?

 

 

鑑定。

今度はまじめなこと。

 

 

「鑑定」は気分を悪くするというのはわかってる。「共生」で打ち消されてるけどそこじゃなくて。そんな単純なことじゃなくて。

 

 

 

 

『スモールポイズンタラテクト Lv4 名前 白』

『タランテスラ Lv4 名前 青

 

               佐野蒼生 』

 

 

 

やっぱり。なんで気づかなかった。

 

 

なんで白って前世の名前が鑑定に出ないんだ?

これだけは絶対に思考する。何があっても。若葉姫色に神が何を思ったのかを。

 

 

 

よし、思考。

 

 

《「思考加速Lv1」が「思考加速Lv2」にレベルアップしました》

《「予測Lv2」が「予測Lv3」にレベルアップしました》

 

 

若葉姫色の名前が無い理由。記憶はあって個体としての繋がりはない。俺は、記憶もあって個体としての繋がりもあるから名前もある。思考を放棄しなければ、てかこの世界が本物だと考えるなら、ここで名前が出ない条件が2つ。

 

 

1つは神様、管理者Dの設定ミス。管理者Dがスキルの作成をできるのは「共生」で知ってる、てかそこでしか見てないけど。ここで若葉姫色の名前をどわすれして入れていなかったという事例。ただ、この説を認める場合この世界はゲームで管理者Dは運営だと見なさなければいけない。

 

 

もう1つは、こちらの方が現実的だが若葉姫色の魂を神が別に持っていって記憶だけをこの蜘蛛に移したという可能性。

 

 

「なぁ、白」

「なに?」

 

 

若葉姫色の周りの環境なんて知らない。神に特別扱いされる理由も。だから俺は質問で殴りかかる。

 

 

「家族について、友達について、どれだけ覚えてる?」

「えっと――。あれ?わたし、両親いたっけ?いやでもいないとおかしいよなぁ」

「クラスの人の名前は?」

「えーと。佐野がわかったからなぁ。あと夏目くんとか山田くんとかかなぁ」

「誰と遊んでたかわかる?」

「えーと。わからない」

 

 

あ、それ俺なんだわ。あんた公園で1人はじっこにいただろ。俺もあれだからな、基本的に人に混じれず……てか俺はゴキブリも殺さずに捕まえて家の外に放すようなくらい虫好きだったからな。公園なんかにクラスで連れられても虫ばっかに興味向いて人に興味向かなかった。なんなら何人かもう名前が出てこない。

 

 

他の例で言えば、学校に蜘蛛が出たときも最初に外には出そうとしたり。でも結局蜘蛛が手に登ってきて外に出る気が無かったから諦めた。そのあとあの蜘蛛夏目に殺されかけてたけどその時は陽のオーラに勝てなかった。つらい。

 

 

ともかく、まあ若葉には授業で公園にいるとき毎回1回は話しかけるようにしてた。あれ?これ遊んでるとはいわんな?それでもクラスで一番関わってた自信はある。

 

 

ま、それはそれとして。両親の顔忘れるのはやばくない?てか学校の人を覚えてて家族について何も出てこないのは流石におかしい。

 

 

「どうかした?」

「いや、少し考え事」

 

 

これで記憶移植説が有力になった気がする。じゃあ次。

なんで若葉を特別扱いする?1つは出生があれだったりする場合。もう1つは若葉の関係者が神の場合。

 

 

管理者Dが欲しいのは若葉の魂。何に使ったのかは不明だけど、スキルをいちいち作らなきゃいけないレベルの神が記憶を全部移すのは結構大変なはず。それで雑になってるんだろうし。家族よりクラスメートの記憶が濃厚。ここからわかるのはなんだ?

 

 

俺と若葉が転生、コイツ若葉じゃないっぽいけど――。ってことは他のクラスメートも転生した可能性が高い。この世界かはわからないが、雑に構成された白の記憶にあるってことは多分関わる手段がある。

 

 

あとクラスメートの記憶が白にあって、家族の記憶がないってことは家族は転生してない?じゃあ、この学校内でしかあの爆発での死者はいない?

 

 

じゃあ管理者Dアイツの魂ほしくて学校爆破したんか!?

こわっ!!

 

 

または過失で爆発した場合。人為的なものか神様的なものかの2つ理由あるけどこの転生した状態をかんがみるに神様的な感じだよなぁ。しかも過失なら若葉の魂を何故取った?

 

 

てかなんでホントに魂欲しいんだよ。あのタイミングで動いたこと自体が謎だし……。アイツが管理者Dとなんか繋がってたなんてことは?

 

 

あるな。だってマジで人と関わらない。

気持ち悪いくらい。

てかアイツが管理者Dだったり。それはないか。

 

 

それに禁忌はなんだ?この調子だと世界がゲームで運営がいますぜ!みたいなもんかな。それで俺は運営の管理者D!!みたいな。そしたらこの世界はゲームで確定か。てかそんぐらいしか禁忌で言いそうなことが思いつかない。あとベタな感じでいけばあと何ヵ月で世界が終わるとかか?おい、これだと管理者Dの人間性にかかってんじゃねーか!?神様なら世界どうにかしやがれ!!バチュル作ったんだから行けるだろ!この世界ゲームだし!電脳世界ぐらいなんとかしろや!!いや、俺がちゃんと存在出来てるってことは世界をゲームにカスタマイズしたってこと?

 

 

 

 

《ザザッ!!ザッ!!ザー。ザーザー。ザー。ザー。ザッ!

 

 

 

ピンッ!!

 

 

管理者より称号が送られます。称号『電脳の支配者』『究明者』を獲得しました》

『称号『電脳の支配者』により、「電脳」「魔力感知Lv10」を獲得します。『傲慢の支配者』及び『電脳の支配者』により、『オリジン』の介入が発生。「魔導の極み」「妖姫」を獲得しました。「魔力感知Lv10」を「探知」に統合》

《電脳」により統合が妨害され失敗しました》

《よって「賢姫」に統合されます。成功しました》

《熟練度が一定に達しました。「賢姫Lv3」が「賢姫Lv4」にレベルアップしました》

《『究明者』により、「予測Lv10」「鑑定Lv10」を獲得しました。進化しました。「予見Lv1」を獲得しました》

《「鑑定Lv10」を「電脳」に、「剛力」「堅牢」を「妖姫」に統合しました》

《≪究明者≫により、「禁忌Lv6」が「禁忌Lv7」にレベルアップしました》

 

 

はぁ、はぁ。じゃあさっきの話。管理者Dと繋がってたまたはアイツが管理者Dという思考について。

 

 

管理者Dと繋がってたならアイツなんか精神操作されてない?マジで静かだったぞ?

 

 

アイツが管理者Dなら爆発のなか1人生き延びたってことか。それでこのゲームの運営してると。たまに学校休んでたからなぁ、アイツ。でもクラスメートが神なんて考えにくい。次。

 

 

クラスメートの若葉と仲良くなりたい奴が神様だったというとんでもない予想も今出てきちゃったけど考えにくいで済ませられるかなぁ……。これ情報が少なすぎるわ。マジつらたん肉そばうどん炒め。

 

 

俺がバチュルになった理由。神様俺がバチュル好きって知ってたことになるけどあのプレイングしてたのたった1ヶ月だぞ?いや、今だって見られるんだからそこは関係ないか。あー。神様スキル一個一個作らなきゃいけないのにポケットモンスター作るの大変だったでしょ。ほんとありがとうございます。

 

 

《「思考加速Lv2」が「思考加速Lv3」にレベルアップしました》

 

 

結論。白、ただのゲームの中の蜘蛛やん。いや俺も今はただのゲームの蜘蛛だけど。結局中身は変わらないし別に記憶あるなら良くない?

 

 

けど怖いな。だって命はDが握ってんでしょ?まあ今までも知らなかっただけで同じ状態だったんだろうけど。気にかけんといてくれって言ってもポケモン全種類作る程度には溺愛されてるからなぁ。

 

 

よし、忘れよう!怖いけど!

駄目だ思い出すな!よし!

フゥー。思いっきし息を吸って吐く。

まあここで管理者Dが若葉姫色の魂でなんかやってたらブッ飛ばしますわ。それだけは許さん。

 

 

あとポケモンの件に関してはありがとうございます。このゲームにポケモン要素を入れてくれたのマジで感謝。ポケモンに関してだけなら暴れられる自信が十分にある。今だって寄生虫ムーブで世界を破壊しようとしてるし流石世界の寄生虫。

 

 

いや、ここは寄生獣か?虫です調子乗りましたすみませんでした。

よし、調子戻ってきた。

思考放棄最高だぜ!!

 

 

そういや進化時に「賢姫」成長してたけどなんか説明追加されてないかな。なんだかんだ見てなかったし見てみるか。

 

 

『賢姫:Lv1 ポケモン型魔物使役

    

    Lv2 使役魔物成長補正

   

    Lv3 ポケモン大量発生

    

    Lv4 魔法大強化』

 

 

ん?なんでLv4になってんの?Lv3に上がったから見に来たんだけど。

 

 

『ポケモン大量発生:ポケモンが大量発生する

 魔法大強化:空間にある魔力を感知し、自身の魔法の最適効果に誘導する』

 

 

やべえ。Lv4チートだ!また出やがった!

 

 

 

と、ともかく今回はこっちのLv3。やってみたいけどなぁ。でもDさんが多分俺と賢姫産み出したんだしやれってことだよね?だって今もうこの世界自体がゲームってわかってんだし手加減する必要もないじゃん。じゃあ神様のいうこと信じてジャスト、ドゥイットしてみるか。

 

 

《「賢姫Lv3」の使用を管理者Dに申請。許可されました。「管理者D」からのメッセージが届きました》

 

 

 

《君の生きたいようにやればいい。設定は作った。というか私設定作るの大変だったからな?邪神を信じろ上手くいく。世界を揺らせ新しい風。第一回目は大サービス!ってことで3種類つっこみます。すぐに気づけるようにカスタマイズするからそこんところお願いしますねー。

 マジでポケモン設定疲れた。ちゃんと活用してね?私も最高神と話さなきゃだし》

 

 

あ、ホントに辛かったらしい。

ありがとうございます。

 

 

《ポケモン3種類の追加、及びに「或世生」の分体の生成が終了しました。これから管理者Dと「或世生」の気まぐれのもとポケモンが発生します》

 

 

よし。俺の知ってる世界に巻き込んだ。せいぜい抵抗してみな。

まずは「エルロー大迷宮」。

 

 

 

かかって来い!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日。魔王。人間。神。ただ簡単には説明出来ないが、確かに声が響いた。

 

 

 

《対象:この惑星に存在する世界の全てを知る者。「禁忌Lv10」が進化します。

 

 

ザッ――。ザザザッ!!ザザッ!ザザッ――。

ザザッ――――。ザッ!ザザッ!!

 

 

ピンッ!!

情報のアップデートを開始します。

 

 

 

 

アップデートが終了しました。管理者Dからの通達が届きました》

 

 

 

《新しい風が入りましたし、注意事項を説明しますねー。

《1。しばらくは発生源には関わらないこと》

《それで死ぬならしょうがありませんが、特に魔王さん。エルロー大迷宮では見たことのない魔物を下手に殺さない方が身のためですよー。作った設定を急に壊されて無かったことにされるのは嫌ですからね》

《あ、不安にならないで下さい。臆病なあなたには一応伝えますが、この世界に意味はありますから》

《しばらく経ったら少しずつこの縛りは緩くしますし。

 

 

《2つ目。発生源以外は今から本気で狩っても構いませんー。そんな簡単に滅びる種族じゃないですから。》

《なんたって色んな宇宙を見てきて、サブカルも回りましたがあそこまで侵略能力が高い種族はなかなかいませんからねー》

《久しぶりに真の龍族のあなたも暴れてみてはどうでしょうか?多分増殖能力にビビりますよー》

《では私は最高神の1人と会ってきますね。はぁやだなぁ。あの方の分体が生まれちゃっかぁ。めんどくさ》

 

 

《新種族「ポケットの中の侵略者」の発生を確認しました》




キュレム。伝説のポケモンだが、元々は他の伝説ポケモンを取りこんでいて一匹の扱いだった。昔は滅茶苦茶強かった。


白がバケモノになるせいでここまでやらんと割に合わない気がしてきた。あと、途中の『電脳』の獲得はまだ青には聞こえていない(思考でめちゃくちゃ集中してたため)。

管理者Ⅾとのタッグという悪夢。


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10 称号

今回は称号説明回。

前回訂正をし、「妖姫」というスキルを追加しました。



さて、一段落終わったことだけど。その「賢姫Lv4」どっから来た?一回スキルとか出して。

 

 

『タランテスラ Lv4 名前 青

               佐野蒼生

HP:65/68(緑)

MP:678/678(青)

SP:68/68(黄)

  :67/67(赤)

ステータス

平均攻撃能力60

平均防御能力54

平均魔法能力665

平均抵抗能力656

平均速度能力570

「HP吸収Lv7」「HP自動回復Lv5」「大奈魔糸Lv2」「操糸Lv9」「糸合成Lv9」「斬糸Lv3」「集中Lv10」「思考加速Lv3」「並列思考Lv3」「命中Lv8」「探知Lv4」「隠密Lv7」「魔連斬Lv1」「外道魔法Lv3」「電撃付与Lv10」「雷付与Lv4」「過食Lv8」「暗視Lv10」「視覚領域拡張Lv1」「予見Lv1」「電気魔法Lv10」「雷魔法Lv4」「雷耐性Lv4」「火耐性Lv1」「影魔法Lv4」「毒魔法Lv4」「毒耐性Lv7」「空間魔法Lv3」「深淵魔法Lv10」「麻痺無効」「石化耐性Lv4」「酸耐性Lv3」「腐蝕耐性Lv3」「外道耐性Lv3」「恐怖耐性Lv5」「苦痛無効」「痛覚軽減Lv4」「強化産卵Lv10」「小型化Lv10」「共生Lv6」「賢姫Lv4」「妖姫」「怠慢Lv1」「電脳」「傲慢」「奈落」「禁忌Lv7」「n%I=W」

スキルポイント:1300

称号 「悪食」「血縁喰ライ」「魔物殺し」「魔物の殺戮者」「毒術師」「糸使い」「大感染」「オリジン」「傲慢の支配者」「電脳の支配者」「究明者」「暗殺者」』

 

――は?

 

 

 

は?なにこのステータス。

 

 

は?なんで全部500ずつ上がってるんだ?笑い事で済まない。どんな過程でこんな馬鹿げたステータス上昇が発生したんだよ。

えっと朝見たときと変化したのは、てか聞いたことがないのは≪電脳の支配者≫と≪究明者≫あたり。

そして、スキル「電脳」、「予見」。

 

 

 

「鑑定」無くなってね?

え!?俺今、何でこれ見れてんの!?

と、取り敢えず1個すつスキルと称号確認していくか。今見れてるってことはうまく「鑑定」も残ってるってことだろうしどっかに入ってるかもしれない。

 

 

『電脳:神へと至らんとするn%の力。自身の知覚範囲内にある物質についての表示や記録、及び演算処理を行うことで最適解を目指す。また、Wのシステムを凌駕し、MA領域への干渉権を得る』

 

 

『電脳の支配者:取得スキル「電脳」「魔力感知Lv10」etc,他の称号により追加:取得条件:「電脳」の獲得。または直接的獲得:効果:MP、魔法、抵抗、速度に対する能力の上昇。魔法系スキルの熟練度に対する+補正。支配者階級特権を獲得:説明:電脳を支配する者に与えられる称号』

 

 

『魔導の極み:システム内における魔力制御補助、及び術式展開各種能力値が最大となる。また、MPの回復速度が最大となり、消費が最低となる』

 

 

『妖姫:MP、魔法、抵抗、速度の各種ステータスに500のプラス補正がかかる。また、攻撃、防御の各種ステータスにレベルアップ時に50の成長補正が掛かる』

 

 

なんだこいつらバグってんのか?てかなんでこれ手に入った?は?なんで?

管理者Dと連絡取ったからか?いやだって管理者そんなことについて一言も言ってなかったぞ?じゃあなんでだ?と、取り敢えずあと『究明者』調べてはみるか。

 

 

『究明者:取得スキル「鑑定Lv10」「予測Lv10」:取得条件:「禁忌」の自力解明:効果:頭が良くなる:説明:世界を究明した者に贈られる称号』

 

 

『頭が良くなる』?なんだこのアバウト加減。頑張ってくれや。

あとこれ『電脳』で見れてるのかな。物質についての表示ってあったし。てか『探知』とかも頑張って入れてくれれば良かったのに。そうすれば色々見れたかも知れない。

 

 

『「電脳」が「探知」の統合に挑戦。成功しました』

 

 

あ。やっべ。マジやっべ。

出来んの!?スゲーやお前!!さすが最適解に突き進むスキル!

そこにしびれる、あこがれるぅ!!

 

 

麻痺無効だけど。

じゃあ、「探知」発動!!

 

 

 

 

あっ!!うっ!うぁぁぁぁっ!!ああっ!!あぁぁぁぁっ!!

 

 

《熟練度が一定に達しました。「外道耐性Lv3」が「外道耐性Lv5」にレベルアップしました》

 

 

悪魔!鬼!サディスト!

これ魂に攻撃してんのかよ!!初めて外道耐性真面目にあげたわ!!はいはい外道耐性をなんとか上げきるまで使いませんよ!!

 

 

「青!大丈夫!?」

 

 

「探知」

「あっ。乙です」

 

 

白が察してまたグダグダと横になる。探知辛いよねわかるわかる。

あと、俺の精神は男だけど声は女だから、いたいけな少女のダメージボイスが響きわたったわけで。一部の癖の強い方々なら興奮しそうだわな。え、管理者Dさん、俺はどうかって?さぁ、想像にお任せしますよ?

 

 

じゃあ次にいきますか。

称号とか調べていきましょー。

 

 

てかそもそも称号ってなんなの?イメージとしてはなんかスキルくっつけてくるやつとしか思って無かったんだけど。

 

 

『称号:特定の条件を満たすことで得られる強化コード。獲得することでスキルを得ることが出来る。称号のなかには特殊な効果を持つものや、ステータスを底上げするものも含まれている』

 

あ、そうなん。そういえばさっきの電脳の支配者にはスキル以外の効果もあったね。

じゃあ時間もあるしサヤが帰ってくるまで見てみるか。

あとで白にも見せないとだけどとりま自分で見たいなぁ。

 

 

じゃあこい。

 

 

『悪食:獲得スキル「毒耐性Lv1」「腐蝕耐性Lv1」:取得条件:一定期間毒物やそれに準ずるものを大量に摂取する:効果:胃腸が強くなる:説明:毒すらも食物とする者に送られる称号』

 

 

あ、はい、『胃腸が強くなる』と。もっといい言い方はないんかな。まあスキルに関しては嬉しいからものすごい感謝だね。

 

 

『血縁喰ライ:獲得スキル「禁忌Lv1」「外道魔法Lv1」:取得条件:血縁を捕食する:効果:なし:説明:血縁を捕食したものに贈られる称号』

 

 

はい。嬉しくないね。初めて禁忌上げた輩だ。「外道魔法」が「電脳」で使えれば話は変わるけど、どうかな?今のところは効果も『なし』だからこの称号ほんとふざけてるけど。サメとか胎内で食い争うからみんなもってるんか?

 

 

なぁ?

 

 

『魔物殺し:獲得スキル「強力Lv1」「堅固Lv1」:取得条件:魔物を一定数撃破:効果:魔物相手に与ダメージが微増:説明:数多くの魔物を倒したものに贈られる称号』

 

 

やっぱりね。予想はついてたけど色んなゲームの称号にある一定数以上○○する系か。でもこんな効果があったのはよい計算違い。非常にいいね。

 

 

『魔物の殺戮者:獲得スキル「剛力Lv1」「堅牢Lv1」:取得条件:魔物を一定数撃破:効果:魔物相手に与ダメージが増加:説明:膨大な数の魔物を倒したものに贈られる称号』

 

 

で、さっきの進化系と。あんたもありがとねぇ。あんたいなかったら私死んでた可能性あったからねぇ。マジ感謝。

 

 

『毒術師:獲得スキル「毒合成Lv1」「毒魔法Lv1」:取得条件:一定量以上の毒を使用する:効果:毒属性を強化:説明:毒を使いし贈られる称号』

 

 

で、あんた。嬉しいんだけど最近まで酷かったんだからね。ギリギリ使えた魔法が「毒触」ってやつだったけど、あれ自傷ダメージ入るじゃん。白がいたから毒耐性は大分上がってたけど、1人だったら危なかったからな?

 

 

『暗殺者:取得スキル「隠密LV1」「影魔法LV1」:取得条件:不意打ちによる暗殺成功回数が一定に達する:効果:不意打ちの一撃にダメージボーナス:説明:暗殺を繰り返したものに贈られる称号』

 

 

カッコいいじゃないか。異世界らしくロマンがある。

 

 

『糸使い:獲得スキル「操糸Lv1」「斬糸Lv1」:取得条件:一定量以上の糸を攻撃に使用する:効果:糸による攻撃力を増加:説明:糸を使いしものに贈られる称号』

 

 

いつもありがとう。俺あなたがいるから存在価値があるし仕事できてます。言えることが無いです。

 

 

『大感染:獲得スキル:なし:取得条件:寄生生物を繁栄させる意思を持ち、行為を行う。称号≪オリジン≫の保持:効果:「賢姫」の熟練度に+補正が掛かる。新たな力を得る触媒となるとともに、子の生存率が2倍に上昇する:説明:寄生生物の始祖に贈られる称号』

 

 

こわ。てか、これはヤバイ。さすが「禁忌」上げられただけあるわ。「賢姫」が大分おかしいからそれの補助って云うのだけでもヤバイのにその後の効果説明がおかしい。なにコイツ。どこまで影響広げてんの?てかこれってこの称号自体が「賢姫」に寄生してるってこと?こわ。

 

 

『オリジン:獲得スキル:なし:取得条件:オリジンであること。世界を変えうる力があること:効果:オリジン種に進化可能となる。全スキルの補助、及び熟練度に+補正が掛かる。新たな力を得る触媒となるとともに、オリジン種に狙われる。由来:説明:オリジンとなる権利を得たものに贈られる称号』

 

 

は?は?

 

 

は?待て。俺なんかに命狙われてんのか?俺良く今まで生きてきてるな?なんで生きてんの?エルロー大迷宮から出た瞬間に狩られるとか無いよね?

あと効果がバグ。全スキルの熟練度獲得に対する+補正?なに考えられて作られてるんだ?おかしい。マジでおかしい。

あとオリジン種ってなんだ?

 

 

『オリジン種:魔物の種族の王である、人とほぼ同じ姿をした魔物。人間や他の種族の生物と対等以上に話す能力や、魔物を使役する能力に関してトップレベルの能力を持つ』

 

 

はい。とりま目標がオリジン種に定まりました。人の姿の魔物とか絶対になりたい。コミュニケーションも取れるらしいし、さすがにオリジン種になれば他のオリジンが狙って来ても返り討ちに出来るでしょ。てかオリジンにならないと死ぬ。

 

 

『傲慢の支配者:獲得スキル:「深淵魔法Lv10」「奈落」:取得条件:「傲慢」の獲得:効果:MP、魔法、抵抗の各能力上昇、精神系スキルの熟練度に+補正、支配者階級特権の獲得:説明:傲慢を支配せし者に贈られる称号』

 

 

あんたも負けてないね。アピールポイントの深淵魔法と奈落でオリジンと電脳に猛追かけてるよ。それでも追いつけてる感じはしないけど。

 

 

ま、こんな感じか。

白に説明どうすりゃいいんだよ……。




アルセウス「あんな装備で大丈夫か?」
邪神D「大丈夫だ、問題ない」 


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閑話 龍と邪神と最高神

期末が待ってるぜ!


「で、何をしに来たんですか?」

「とぼけるでない。分体も出来たし、ワレはあの世界管理する必要あるだろうが」

 

 

ある星のある一室。

黒髪の少女は無機質な空間でパソコンをカチカチと打っている。

そして、その後ろで白いパーカーを着た黄色い髪の若い男が腕を枕にして寝転がりながら漫画を読んでいた。

 

 

1人の女子高生のものであるはずであるのに、その部屋には全くの弛緩も感じられず凍てつくような力ばかりが感じられる。

 

 

「あの世界のポケモンは今までの奴等と違って少し適応させているし、滅びかけの世界でもある。これほど稀な実験場も無いのだよ」

「人々を救うような最高神らしくもない発言ですね」

 

 

D。恐ろしく高位な神であり、星を幾つも生み出す力を持っている邪神である。

アルセウスと比べるのはひどく酷な話で、比較にならないという表現が一番正確だが。

 

 

アルセウス。

ブドウの房のような繋がりを持つ宇宙の塊において、その一粒、宇宙1つを丸ごと産み出した神。

そんな神が動くことは元来許されていないはずなのだが、それでも彼はここにいる。

 

 

「あの世界にポケモンを突っ込むのは興味があったしお前の協力には非常に感謝している。ワレの管轄外であったからな」

「そうですか?私は当然のことをしただけですよ?」

 

 

神々の世界は、繋がりの世界であるといえる。

最高神の1人と繋がることは安定や平和を確実にすることと同値であり、それはかなり安全な立場にいるDでさえも望んでいたことだった。

そこに突如訪れたアルセウスからの依頼と、ほぼ同時期に起きた大爆発。この上ないチャンスを、邪神が逃すわけがない。

 

 

「人間と話すときは威厳を保たなければならないからな。カジュアルに話せるのは非常に気持ちが良い」

「――それがカジュアルなんですか?」

 

 

苦笑いをしながらパソコンのキーボードを叩く。

アルセウスがいることは、Dにとっても決して悪い話ではないのだ。

難しい話を嫌う冥土は彼のオーラを感じれば近づこうとも思わないらしく現に彼が来てからは1度も感づかれていない。

しかも、Dにとっても疲れはするが仕事をしなくてよいと思えばまだ十分プラスである。これからの利益も考えればまったく安い話であった。

 

 

「アルセウス様は大丈夫だったのですか?」

「こちらのしがらみの話か?あくまで本人が下手に動くなという話だからな、分体を飛ばしてしまえばなんてことはない。だから本人が動くなというのも最早意味が無いんだろうが」

 

 

自身の力を自由に分割して飛ばす。

並みの神には簡単なことではなく、Dにも成功するかはわからない芸当である。

アルセウスはプレートの力を利用することで雑に可能にしているが、同位の最高神にとってもその行為が難しいことにいまだ気づいていない。

 

 

「聞くが、『オリジンエレテクト』の設定について変える気はやはりないのか?」

「別にありませんよ。彼は生きられればの話ですが、順風満帆の人生を送ります。いや、蜘蛛生ですね」

「なんだかな。筋違いというか、突飛という気がする」

 

 

アルセウスはプレートからお茶を絞りだしコップに注ぐ。

馬鹿げたことをしているのだが、これはアルセウスの力があるから出来ることでもある。

 

 

「さあ、念願の人になるのですよ?ちゃんと人らしくなるじゃないですか」

「アリエルに狙われながら、だがな。お前はやはり性格の矯正が必要か?」

 

 

無論、冗談である。

これほどの神が性格を改竄されれば流石に最高神のせいだと足がつくため、そんなことはしない。

その弱味を知ってなのかDは変わらない表情でキーボードを叩く。

 

 

「ともかくいつでも潰せる力があることだけは覚えておくように。その時は剣ぶんまわして先制攻撃するからな?」

「そのコンボはやめて欲しいですね――。流石に知っています、力の差は」

 

 

その昔。Dは冥土と2人でアルセウスに挑んだことがある。

結果は惨敗。回復能力を奪われてから四肢をもがれ、1年ほどなぞのばしょに放置された。

そして、完全に回復してから冥土と2人でもう一度殴りかかった。アルセウスからは何も手出ししないという約束を取りつけてから。

 

 

ディアルガとパルキアを召喚されボコられた。回復能力を奪われてから四肢をもがれ、ギラティナにやぶれたせかいに連れていかれ再び一年放置。

その後2人でギラティナをなんとか張り倒し出てきたものの、アルセウス本人は飽きて元の宇宙に帰っていたという有り様だった。

以来、アルセウスの話を聞いただけでも虫唾が走っていたし、今回の話を初めに聞いた時はどんなことをやられるのかと震えていた。

まさか、依頼だと言って頭を下げられるとは思っていなかったのだ。

 

 

「次は瞑想しながら耐久してやるから安心しろ」

「思考覗きましたね?別にいいですが」

 

 

当たり前に思考を読む――これが分体の性能であってたまるか。

Dの正直な感想である。その感想に一切の間違いはなく、分体は全タイプの数出せるので本当におかしい性能だと言うしかない。

本人はいうほど強くないというが。

 

 

「ムゲンダイナ一匹放り込んだらあの世界は楽になるが、そうはしないのだろう?」

「当たり前じゃないですか。なんならネクロズマもしばらくは投入しませんよ。グラカイレックはもう突っ込みましたが」

「あ、じゃあデオキシスいるか?最近こっちの宇宙の隕石からいっぱい沸いてきて困ってるんだが」

「やめてください。こっちの宇宙がポケモンまみれになります」

 

 

なんでデオキシス湧いてるんだ?

Dは叫びたくなるが、もちろん隠す。こんな神でも最高神なのだ。

変なことを考えただけでも物理的に首は飛び、あとはなんか色々飛んで死ぬと容易に予想できる。

 

 

「お前も相当だがな。まあよい、ギュリエディストデュオスはいるのか?」

「ギュリエディストディエスですね。呼びますか?」

「一応呼んでくれ」

「わかりました」

 

 

『ギュリエすぐにここに来てくださーい。場所は自分で特定してくださーい』

『わかりました』

 

 

そして、すぐにワープホールは現れた。

ブウン。

「Dさ――」

 

 

は?

ギュリエディストディエスは顔を出した瞬間、それに気づいて硬直。

最適な答えを探すも見つからず、ただただ立ち尽くすことしかできない。

 

 

え、え?は?え?

 

 

「まあ良い、落ち着け」

「はっ!」

「頭を上げろ。つくばうな」

「ですが……」

 

 

姿勢を元に戻しながら、最大限に思考を巡らせる。

何が起きているんだ?なぜここに最高神がいる?Dの仕業か?なに考えてる。下手しても下手しなくても死ぬぞ。

 

 

「最近はドラゴンの暴走も収まり始めた。フェアリーの分体全員でドラゴン族を丸ごと崩壊させることも考えたが、少し解体するだけですんだようだ」

「――えっ」

 

 

少しって何匹だ?とギュリエは考える。1割でも訳のわからない数になるが、過激派を鎮火するレベルなら3割ほど殺ったのかもしれない。

やはり、この方はおかしい。

 

 

「お前は別に仕事をしていない訳では――いや、仕事はしていないがドラゴン族であるのに星を傷つける存在でないというのはだいぶ異端だ。それは称賛に値する」

「ありがたきお言葉、感謝いたします」

 

 

ギュリエディストディエスの頬から一筋の汗が滴り、身体は震える。

返答を間違えた瞬間にサリエル様ごと、なんならDごとこの星を飛ばされかねない。

そのだけの力がこの最高神にはあり、なんならいつでも自由に使えるのだ。

 

 

「別にワレはパワハラ上司では無いのでな。別に罰を与えるつもりで来たわけではない。むしろ褒美だ」

「なんでしょうか?」

 

 

直立不動でギュリエは固まる。

アルセウスはアルセウスで初めこそ楽に接して欲しいと思っていたのだが、面白いからそのままにしようと決めた。

 

 

「あのポケモンという生命体は、世界にエネルギーをもたらす」

「と、いうと?」

「その種族は全宇宙最大級のスピードで食物連鎖を繰り返す。そして、あの世界は生命が滅びるほどエネルギーが星に届く。その意味がわかるか?」

「……!」

 

 

星の急速な再生。世界の安泰。

そしてサリエル様の復活。

 

 

「まあ、人類がポケモンの征服に耐えられるかはわからないが」

 

 

それは待ってくれ。

サリエル様は人類を愛していたということは、それはサリエル様を傷つけることになるのでは?

 

 

「人間とポケモンが共存する方法は無いのですか?」

「さあな。ま、あの世界でポケモンについてまともに知っているのはあのダニと何人かの転生者のみだ。やつらが全員滅びれば人類はポケモンと共存する方法を思考するすべを失い、アリエルごと星を破壊されるかもな」

 

 

え?

結局、世界ごと壊されるということか?少しでも舵を切り間違えれば。

これは、褒美なんてものではなく劇薬だ。

確かにあの世界はただの薬などでは回復もしそうにないが、だからといって治すことも壊すことも簡単にできる劇薬をポンと渡されても恐怖以外の何者も抱けない。

 

 

サリエル様ならどうしただろうか。人間とポケモンを、どうやって共存させるのだろうか。難しい。わからない。

ギュリエディストディエスは呆然と立ち尽くした。

 

 

 

一方、Dは別のことに驚き固まっていた。

え、あれ蜘蛛じゃなくてダニなのか?あのバチュルっていう生き物。

無論、ダニである。生態的にもダニ。進化後は蜘蛛になるが進化前はあくまでダニである。

 

 

スキルに関してはポケモンの技をすべてパクっているだけであるので別に関係は無いのだが、アルセウスの前で醜態を晒すというのはDにとっても嫌だったらしく悔しそうな顔を露にする。

そもそもゲーマーであるDがゲームでの自身のミスを許せないと点もあるが。

 

 

そうは言っても白と会っていなければ即死していた可能性がかなり高いので、青にとっては蜘蛛としてクイーンタラテクトの卵から産まれたのは幸運でしかないと言える。

 

 

「まあよい、その話はここまでにしよう。今回ワレがここにいるのはある理由があってだ」

「勿体ぶってますね?世界の仕組みについてでしたっけ?」

「事実勿体ぶったからワレは何も文句言わんが――。ポケモンをこの世界にぶちこむことの条件についてだ。これから様々な理由で変更されるとは思うが、根本の根本、憲法みたいなのは作っておきたいと思ってな。ちゃんと聞くように」

「「わかりました」」

 

 

いつもならあり得ない面持ちをするD。そこには、最高神と付き合うことに対する覚悟がはっきりと写し出されている。

 

 

「ポケモンにある奇妙なスキル2つを取り敢えず説明しておけばよいか?まず小型化か。5cmから元のサイズまで任意に変更可能という情報でよいな」

「「はい」」

 

 

これって拒否権あるのか?とDとギュリエは全く同じ感情を抱いたが、勿論それを聞く勇気があるわけはない。

まだ先程の雰囲気なら聞けたかも知れないが、もうそうではない。

 

 

「次に目玉の『強化産卵』。そもそもが十二分にすごいが、まああれにも色々強化要素がある。デフォルトでついてるのはただの産卵だけだが。じゃあ産卵について説明しよう」

 

 

「HP1を消費して1つの卵を産む。ただし、食事をしてSPを回復しながら産卵した場合はそのHP消費は存在しない。そして、この産卵で減ったHPはスキルのHP自動回復で回復することはなく獲物を捕食することでこのHPの最大値は回復する。また、自分で産んだ子や卵を捕食した場合SPは回復し経験値も得られるがHP回復は得られない。取り敢えずこの仕組みで異論は無いな?」

「「ありません」」

「OK。じゃあ最後は『特性』についてだ。ポケモンには基本1つの特性、いわば能力が付与されている。その特性はそれぞれ1つのスキルに変化させ取得させた。これで話は終わりだが、まだ聞きたいことはあるか?」

 

 

「ポケモンを増やす目的を教えていただくことは可能でしょうか?」

 

 

ギュリエディストディエスはわずかに震えながら口を開く。

それには、星を守りたいという感情と、星を救って欲しいという2つの感情がせめぎあっているようだった。

 

 

「あ、それはな。結構実験的な趣が大きい。あとはこの宇宙にポケモンの種をばらまけるからな」

「えっ!?アルセウス様、何を考えてらっしゃるのですか!?」

 

 

それに対して即座に反応したのはDだ。というのも、この宇宙自体はDの権限で自由に動かせるものではないのだ。

それを自分の都合で変えてしまうなど、とんでもない。

しかも、相手は全宇宙最高レベルの侵略力を持つポケモンでDは頭を抱えるしかなかった。

 

 

 

「無論、世界の生き物には関与しないという取り決めは継続だよな?D」

「はい」

 

 

奴の方が、よっぽど邪神だった。




アルセウスブッ壊れてるぜ!
魔王様リトライ風の結構なネタ回。

※説明
アルセウス……ポケモン世界の神。全ての属性になる能力を持つ。プレートには属性エネルギーが含まれているので、それを奪われると属性のバランスが崩れ、無敵状態では無くなる。
ムゲンダイナ……超エネルギーを持っている異世界のポケモン。コイツのエネルギーがあれば大体解決する。
ネクロズマ……ポケモンにおける異世界の神であるドラゴン。アルセウスならボコボコに出来る。
ギラティナ、パルキア、ディアルガ……ドラゴンで、アルセウスの弟分。普通に強い。ギラティナはやぶれた世界という空間を支配していて、パルキアはこの世界の空間、ディアルガはこの世界の時間をイジる能力がある。
グラードン……陸地の王。マグマだまりに生息するゴジラみたいなやつ。人が出会うことはほぼない。
カイオーガ……海の王。深海に住んでいるシャチみたいなやつ。人が出会うことはほぼない。
レックウザ……天空に住む龍で、青龍のような姿をしている。グラードンとカイオーガが喧嘩すると大体仲裁に来る。人が出会うことはほぼない。
デオキシス……遺伝子ポケモン。高さ2メートルくらいの宇宙人のような姿で、DNAのような螺旋状の腕を持つ。隕石に含まれた遺伝子から湧いてくる。幻のポケモンなので、珍しい。
フェアリー……ドラゴン技を無効化するタイプ。強い。


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11 初めまして、天然のポケモン!

原作カテゴリに「蜘蛛ですが、なにか?」が追加された……。

ヤッタゼ。




自分で言うのもあれだけど、強いスキルと称号が多すぎる。

 

 

なんだよ≪オリジン≫とか「電脳」とか……。

そのぶん「禁忌」のレベルは上がってるけど。

うん?

そういや俺は禁忌のレベルは7で白はレベル5か。

 

 

あれ、俺不味くね?

進化で今まで1レベル上がってきてるし。

禁忌Lv10でカンストで。

 

 

いや、平気だわ。

よくよく考えたら「究明者」に「禁忌」の自己解析成功してるってあったもん。

あのタイミングで手に入ってたってことは恐らくこの世界がゲームであることとか?ゲーム改造した知覚空間であることとかどうせ言うんやろ。

じゃあ別に即死するわけでもなさそうだし、このままでもいい。

 

 

なにより禁忌カンストで死亡とか管理者Dがやる気がしない。

あの人少なくとも物事を雑に終わらせるのはめちゃくちゃ嫌ってるぽいからな。

よし忘れよう。

今のところは新しく得たスキルを見るか。

 

 

 

 

「魔導の極み、発動」

 

 

身体の中で勢い良く魔力がめぐるのを感じる。

MPが流れる感覚。

冷たいような、暖かいような……。

液体を回してるのか?

 

 

「青?」

「雷魔法Lv3、雷弾」

 

 

ブゥン。

 

 

頭の中で雷の弾が浮かび上がるのを想像したとたん、魔方陣が浮かび上がった。

次の瞬間電気の弾が勢いよく飛び出し、壁に当たって弾ける。

 

 

「青?青!」

 

 

白に身体をゆっさゆっさと揺らされる。

待ってほしい。

まだ自分でも状況の整理が出来てないんだって。

 

 

「青、どうしたの!?てか良く魔法出来たね!?さっき「探知」でぶったおれてたのに!」

「鑑定してみて」

「えっ――は?」

「うん」

「は?」

 

 

「えっと、どういう状況かしら?」

 

 

サヤが帰ってきたとき、俺は壁に向かって雷弾を撃ちまくっていた。

あ、MPが無くならないかだって?

問題ない、だってMP自動回復までマックスになってんだから。

今の練度で撃てるスピードだと消費量より回復量の方が上回ってるらしいし、減るこっちゃない。

 

 

「青に魔導の極みが出来たから今めちゃくちゃやらせてる」

「怒ってるの?」

「怒ってないよ?」

 

 

白が激怒にしていることに気づいたサヤは、話題を変えることで青の救出を目論みることにした。

 

 

「青」

 

 

「どうしたサヤ?」

「マグマみたいな魔物がいっぱい出てきたからとりあえず2人に伝えに来たわ」

 

 

あ、おう、助かった。

えーと、もう出てきました?

想像よりも100倍早くてビビってるけど。

生命すげえなぁ。

 

 

「なんだった?」

「鑑定ではスモールレッサーマグマッグだったわ。そしてレベルは全て1なうえに、現れた瞬間に交尾して卵たくさん産み始めた。行動が理解不能ですごい気持ち悪かったわ」

 

 

はー、マグマッグね。

あのマグマナメクジ。マグマを纏ってるナメクジってよくよく考えたらだいぶ怖いんだけど、身体どうなってんだろう。

外気に触れたら一瞬で固まりそうだし。

 

 

《「演算処理Lv8」を獲得しました》

 

 

ん、なんだお前。

初めて見た気がするんだけど?

忘れてたのか?

あー。

てかポケモンシステム辛かったのか?ゲームの容量的に。

俺は知ったこっちゃないが、頑張れ管理者。

 

 

あとポケモンの発生についての仕組みがなんとなくわかった。

いくら少ないHPでも全ポケモンが強化産卵を持ってるなら1匹あたり5つくらいの卵を産んで死んでいけばいい。

 

 

そうすれば、ねずみ算式に5分程度で4倍ずつに増えていく。

あ、餌は死んだやつ食えばいいし。

そこでも補完できんじゃん。

Dが監修してるし一定数で止まるはず?

だよな。

 

 

止まるよね?

 

 

《熟練度が一定に達しました。「演算処理Lv8」が「演算処理Lv9」にレベルアップしました》

 

 

なら30分くらいで他の魔物と同じくらいの数にはなるんだろ。

バケモノや。

 

 

でもマグマッグかぁ。

触れた瞬間ダメージ入りそうでイヤだなぁ。

いやでもマグマって異世界だと即死じゃなかったりする?

 

 

じゃあまだマシか?

触ればわかりそうだな、やらんけど。

 

 

 

 

 

あ、そういえば「鑑定」させてもらお。

何だかんだまだ見てなかったわ。

 

 

「あ、そのマグマッグの件はそこまで驚異じゃないと思うから構わないぞ。サヤ、鑑定していい?」

 

 

「別にいいわ。私も一応2人の確認するわよ?」

「「「鑑定!」」」

 

 

『デトロエレテクト Lv10 名前 サヤ  

HP:1435/1872(緑)

MP:1751/1964(青)

SP:1722/1932(黄)

:1845/1960(赤)

ステータス

平均攻撃能力:1855

平均防御能力:1688

平均魔法能力:1830

平均抵抗能力:1716

平均速度能力:1553

「HP大吸収Lv4」「HP自動回復Lv4」「MP回復速度Lv1」「SP回復速度Lv2」「SP消費緩和Lv1」「蜘蛛糸Lv9」「操糸Lv10」「糸合成Lv8」「斬糸Lv3」「思考加速Lv8」「予見Lv5」「演算処理Lv7」「命中Lv9」「鑑定Lv10」「隠密Lv10」「魔連斬Lv2」「無音Lv10」「影魔法Lv1」「過食Lv3」「電撃付与Lv10」「雷付与Lv4」「暗視Lv10」「視覚領域拡張Lv8」「電気魔法Lv10」「雷魔法Lv9」「雷耐性Lv9」「外道魔法Lv1」「毒耐性Lv1」「腐蝕耐性Lv1」「火耐性Lv1」「麻痺無効」「苦痛耐性Lv4」「視覚強化Lv3」「聴覚強化Lv3」「嗅覚強化Lv3」「触覚強化Lv7」「生命Lv1」「魔量Lv1」「持久Lv1」「強力Lv4」「堅固Lv4」「強化産卵Lv10」「小型化Lv10」「怠慢Lv2」「禁忌Lv4」  

スキルポイント:2400

称号 「悪食」「血縁喰ライ」「糸使い」「魔物殺し」「無慈悲」』

 

 

やべえ。

スキルうんぬん関係ないほど強い。

スキルは結構偏ってるけど、ステータス違い過ぎるもん。

てか多分同じステータスの個体と比べてスキルは全然弱いんだと思うけど同じ期間で考えたら俺よりも強い。

熟練度ボーナスめ……。

 

 

「白は速度特化、青は今のところは魔物使役に特化してるのね」

「素早さあんたに負けてるけどな。わたしの素早さあんたの半分くらいだぞ」

「単体だとあんたより弱いけどな。呼ぶの時間かかるし召還まだ出来ないっぽいし」

 

 

「まぁ、行きましょう。青。マグマッグって魔物についてなにか知ってるの?」

「え?なんで?」

 

 

「いや、だって青サヤに名前きいただけなのに驚異じゃないと思うって言ってるし落ち着いてるじゃん。その意味不明な行動する魔物ってビビると思うんだけど」

 

 

「あ――。説明します。ポケモンです。正直言って俺以外のポケモンがどんな形でこの世界に出現するかいまいちわかってないんだが。あったことは全部話すわ」

 

 

俺は観念して「賢姫Lv3」に書いてあったことを2人に洗いざらい話した。

ポケモンの説明のために、サヤには前世のことまで少し話した。

 

 

この世界や白の魂については話さなかったけど。

そこは不確定要素だし、わざわざ傷つける必要もない。

なにより、それに関しては内容が酷すぎる。

 

 

一通り話終わって出てくるのは深い溜め息のみ。

 

 

「はぁ」

「青。あなたとんでもないことしてるのね。他の世界を使って世界の仕組みをまるごと変えていくなんて」

「神が望んでたんだよ。あとなサヤ、言い訳だけど俺たち2人滅茶苦茶強い精神支配かかってるからな?俺は転生者だからかたまに抗えるが、その時毎回外道耐性のレベルが上がるんだよ」

 

 

下手したら探知に影響したりしてるのか?

外道耐性上がってるし、そこらへんホントにわからんけど。

 

 

「――私は存在すら気づかなかった」

「普通気づかないように出来てるんだと思う。俺たちはあくまでポケモンとして転生させられたってこと」

「もー!!青!サヤ!また中層行こう!難しい話をすると疲れるだけ」

「わかった」

「――わかったわ」

 

 

俺はそのあんたの特訓から逃げ出すためにこの話題広げたんだが……。

 

 

 

 

 

 

 

真の龍族と呼ばれる男は、腕組みして考える。

ただでさえ日本の倍の面積を誇るエルロー大迷宮、中層のみといっても現れた魔物の絶滅は不可能に近かった。

 

 

 

「D。私が来ることを考えて仕組んでいるのか」

 

 

実をいうと、先程の青の計算はいろんな意味で間違っていた。

そのうちの一つは最初から男の処理が追い付かない程度には魔物が放たれたこと。

魔王にも牽制はされていたが、転移も使えない臆病な魔王について管理者Dはほとんど懸念もしていないようだった。

男は転移を繰り返しそのたびに魔物は消滅する。

だが増殖に間に合わない。

 

 

ずっと殺し続けているのに、だ。

 

 

 

「新しい風、大禁忌か。なんて爆薬をヤツは産んだんだ」

『あ、別に増えすぎてってことは無いですよ?一定数になったらちゃんと生育し始めますから』

『我々がちゃんと管理し、いざとなったら殲滅する。気に病むな』

「わかっています。ただ、試したかっただけです」

 

 

真なる龍は小さな声で呟き、エルロー大迷宮を後にした。

 

 

 

 

 

「マグマッグかぁ」

 

 

やっぱり、よくわからん奴が最初に出てくるとは思わなかった。

中層に現れたってことは他のポケモンでも中層から出てくるのがいるっぽいか?

てか思ったよりガチの溶岩だ。ふざけて触れたら死ねそう。

 

 

「鑑定!」

『スモールレッサーマグマッグ Lv1

ステータス

HP:3/12(緑)

MP:21/21(青)

SP:12/12(黄)

  :20/20(赤)

平均攻撃能力12

平均防御能力12

平均魔法能力12

平均抵抗能力22

平均速度能力12

「毒霧Lv1」「外道魔法Lv1」「強化産卵Lv10」「小型化Lv10」「溶岩鎧」』

 

 

「外道魔法Lv1」ってなに?

『外道魔法Lv1:「眠気」。相手に眠気を付与する』

 

 

うーん……。

あ!「あくび」か!?次のターンに相手が寝るやつ。

あと毒霧は煙幕みたいな技があった気がするからそれかな。

あくまで眠気ってことはポケモンと違って即寝ることはないんだろうけど。

そしてもう卵産むの止めてるってことは一定数に達したってことなのかな。

 

 

でもコイツが増えるのは流石にやだなぁ。

「コイツ絶対触ったらマグマダメージ入るよね?」

「入ると思うわ」

 

 

はいマグマの鎧まじ悪魔。

 

 

 

いざとなったら猿戦みたいに腕千切れば触れんじゃねとか思っちゃったけどやりたくねぇ。

触る必要性皆無だし。

あ、そういや「賢姫Lv1」の使役でワンチャン召喚は出来なくても色々出来るんじゃ。

だってLv3で大量発生やん。

Lv1でも捕まえられるんじゃね?

 

 

『【ポケモン魔物使役】:触れることにより捕獲可能です。体力の1割以下、または1で捕獲可能。体力が少なければ少ないほど捕獲成功率は上昇します。

ポケモン魔物使役:ポケモン型魔物が従うように使役する。他の場所にいるとき、召喚することは出来ない』

 

 

うーん、ポケモン!Dはマジでポケモン好きなのか?

でも、1割以下でしかボールも投げられないってことだもんな。ラッキーパンチだけは起きないように上手く仕組まれてやがる。はぁーー。猿がいっぱいいた時なら結構な数触れて捕獲できそうだったなぁ。もったいない。

あ、2人に共有。

 

 

「賢姫もうチートだよ」

「あとで体力減らしとくから一応やってね」

 

 

うん。チートだよね。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ポケモンじゃなさそうなやつもいるじゃん!よかった!」

 

 

おい。何がいいんだ白。余計死ぬだろ。

一応仲間なんだからポケモンで素直に喜べよ!

 

 

えっと、てかなんだあのタツノオトシゴは。ふつう魚は口水面に出しちゃダメじゃね?

電脳、はい!

 

 

『エルローゲネラッシュ LV1

 ステータス

 HP:132/132(緑)

 MP:106/106(青)

 SP:128/128(黄)

   :128/128(赤)

 平均攻撃能力:70

 平均防御能力:70

 平均魔法能力:68

 平均抵抗能力:67

 平均速度能力:73

 スキル

「火竜LV1」「命中LV1」「遊泳LV1」「炎熱無効」』

 

 

うん、こっち見てるね。

なんか無効あるし強そう。

でも、今用は無いしほっといていいか。

 

 

は?火の玉撃ってきやがった。

あぶな!

 

 

 

「白、大丈夫か?」

「ま、まあ。別に」

「と、取り敢えず帰りましょ!相手のことわかっていないし!」

 

 

帰ってきて下層。

あいつ1レベだったし次あったら絶対弁当にしてやる。

 

 

「サヤ。5つ卵産んでみてくれ。HPの最大値5減るけど、大丈夫か?」

「別にいいけど、どうして?」

「少し共生の適用条件を確認したい」

 

 

しばらくして、ワシャワシャと卵から出てくるバチュルたち。

「おい、青」

 

 

 

呼び止められ振り向くと、腕を組み溜め息をつく白の姿が。

なんだお前は。

カッコつけてるんだろうけど蜘蛛の姿のせいでただ寄りかかって休んでるようにしか見えんぞ?

 

 

 

「この世界ってゲームみたいだけど、実はゲームじゃない。共生ってやり過ぎると弊害あるんじゃないか?」

「「あ」」

 

 

 

えっと。

何匹共生出来るかっての試したかったんだけど。

 

 

おっしゃる通りです。

鋭い。

電脳、調べてみて。

 

 

『共生:経験値が分けられるスキル。レベルが上がればさまざまなものを配分することが出来る。4個体まで接続可能だが、メンバーから外すことも出来る。共生が切れたとき、すなわち共生している個体がENDしたとき、最大HPの4分の1が消滅する』

 

 

やっぱこの世界ゲームだろ。

最大HPが4分の3になるってことは、不味くね?

えっと下手に共生してそいつが死ぬと体力最大値が削られていくと。

 

 

「すまん、サヤ。バチュル食べるぞ。

 産んでくれたのにスマン」

「しょうがないわ。状況が状況だもの」

 

 

 

皆でバチュルをつまみながらどうするか考える。

今では白、サヤと共生してる。

つまり、共生を外さない限りは2人を殺してしまうことは超絶NGってことだ。

うん、頑張ろ。

2人もわかってるだろうし。

 

 

 

 

 

はい!あれから暫く経過!

HP管理が出来るようになって、来ました中層!!




マグマックさんについての説明はまた今度。


地味に昔一回出した未来ネタ(S1のやつ)の制約がすげえ……。


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A1 アルセウス談話「その1」

3人でDの部屋にちゃぶ台を置いてポケモンなどについて語ります。
※激しいキャラ崩壊及びたくさんのネタがあるため、合わない方は本編の方のみお読みくださると嬉しいです。

ではどうぞ。

(最後にこの閑話についてのアンケートがありますので、気が向いたら投票してってください)


 

 

邪神「そういえばディアルガパルキアとギラティナって今なにやってるんですか?」

 

 

 

アルセウス「ああ、龍に紛れ込んで普通に生活してるな。アイツらも龍の一種だし。気になってるようだから教えるがそんなにあの3匹は強くないぞ」

 

 

 

邪神「――」

 

 

 

アルセウス「まず、ディアルガとパルキアは搦め手が強いだけで先手必勝でぶつかれば普通に勝てる。攻撃力は中々にあるが耐久に欠けていてな。確かお前たちは変に強化魔術とか展開しようとして時間をかけていたし、それで時と空間を先に操られた訳だ」

 

 

 

邪神「そうなんですか……。時空を歪められたあとはリンチにあったみたいな感じだったので実際の強さがあまりわからなかったんですよ」

 

 

 

アルセウス「まあワレが力を分け与えれば話は別だが――」

 

 

邪神「」

 

 

 

アルセウス「あとギラティナを倒したというのはかなり驚いた。やぶれたせかいのギラティナはフィールド補正が掛かっているから中々の強さになっていた筈だが」

 

 

 

邪神「頑張ったんですよ?耐久も火力も素早さも高かったんですから」

 

 

 

ギュリエ『――次元の違う話をなさっている』

 

 

 

アルセウス「まあせいぜい強くなれ」

 

 

 

ギュリエ「ありがたきお言葉、感謝いたします」

 

 

 

邪神「前も全く同じ返答してた気がするから返答気にした方がいいですよ」

 

 

 

ギュリエ「はい、わかりました……」

 

 

 

アルセウス「そういえばギュリエディストデュエス――名前長いな、ギュリオスと呼ぶぞ?」

 

 

 

ギュリエ「改名した方がいいですか?実をいうと最高神のあなたに作ってもらった名前の方が龍族につけてもらった名前より価値があるのですが(もともとギュリエディストディエスなんだが)」

 

 

 

アルセウス「え?ま、まあ好きにしろ。ふむ、じゃあこの空間でのみそう名乗れ」

 

 

 

ギュリオス「ありがとうございます。私ギュリオス、この宇宙のために精進致します」

 

 

 

邪神「本当にそうするんですか?それに関して私は別にいいですが、もっとアルセウス様に気を許してください。彼は堅苦しい世界が面倒くさくてここに来ているのにこんなにガチガチだとアルセウス様が疲れますよ」

 

 

 

アルセウス「ああそうだぞ。カップラーメン作ってきてやるから喜べ」

 

 

 

ギュリオス「しかし――」

 

 

 

アルセウス「カップラーメン作ってきてやるから喜べ」

 

 

 

ギュリオス「――わかりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

邪神「さて、アルセウス様がキッチンへと向かわれましたが、そもそもあなたはポケモンをほとんど知らないのでは?」

 

 

 

ギュリオス「恐縮ながら……はい」

 

 

 

邪神「この世界に増えていくのだし説明してあげます。ちゃんと聞いて下さいね?」

 

 

 

邪神「アルセウス。宇宙を創造したポケモン。宇宙を創造し眠りという名の引きこもり生活を最近までしていましたが、人間の様子に興味を持って目覚めたようらしいです」

 

 

 

ギュリオス「言い方は……」

 

 

 

邪神「私には今以上の表現が見つからなかったんですよ。具体的は何をやっていたかわかりませんし」

 

 

 

邪神「ちなみに、ポケモンのときは馬みたいな姿になっているって言っていました。今はフード被った長身短髪で目が黄色くて肌が白い、チャラそうな若者の姿ですが」

 

 

 

ギュリオス「なんでそんな説明口調なんですか?」

 

 

 

邪神「だって画像作るのが大変なんですもん」

 

 

 

ギュリオス「それはしょうがないですね」

 

 

 

アルセウス「あー、戻ってきたぞ。カップラーメンだ。昔ながらのネコジャラシ粉を加工してみた。食え」

 

 

 

邪神・ギュリオス「急にラフになった……」

 

 

 

邪神「てかドアから入ってきて下さい。なんで当たり前みたいに空間割って出てくるんですか」

 

 

 

ギュリオス「それカップラーメンなんですか?」

 

 

 

アルセウス「ちゃんと作ってからカップにぶちこんだからな。実質カップラーメンだ」

 

 

 

邪神「実質論法の使い手だ……」

 

 

 

ギュリオス「じゃあ食べます」

 

 

 

邪神「ネコジャラシラーメンって……。漫画に影響されました?」

 

 

 

アルセウス「ドクストは面白いしな」

 

 

 

邪神「キャラどこいった」

 

 

 

ギュリオス『これアルセウス様大丈夫か?』

 

 

 

アルセウス「あくまで二次創作だし怒られはしないさ。冒頭にも説明書きは入れた」

 

 

 

ギュリオス『いやキャラ崩壊が苦手な人様に避けられるでしょ。てか二次創作ってなんの話だ?』

 

 

 

アルセウス「まあ食え。人にも表裏があるように神にも表裏があるのが良いだろう?」

 

 

 

邪神「その通りですが」

 

 

 

ギュリオス「!?」

 

 

 

邪神「ギュリオス、食べたギュリオスが光ってます!」

 

 

 

アルセウス「マコトか」

 

 

 

邪神「あ、元に戻りました」

 

 

 

ギュリオス「魔力が全回復してる上に容量がわずかにですが増えている――え?」

 

 

 

アルセウス「水プレートと土プレートから出汁とったからか?」

 

 

 

邪神「前もそれでお茶飲んでいましたしね」

 

 

 

アルセウス「位が違いすぎて危なかった……下手したら爆散していたかもな。さて、ギュリオス」

 

 

 

ギュリオス「当たり前のようになかったことにしてません?私死にかけたのですが」

 

 

 

アルセウス「あの世界の再生にこのエネルギー使ってよいから許せ」

 

 

 

ギュリオス「わかりました。ありがとうございます」

 

 

 

邪神「手のひらドリルだな。すごい勢いだ」

 

 

 

アルセウス「あとはじめの一口にエネルギーは一気に流れるからそのあとは普通に食っていいぞ」

 

 

 

ギュリオス「ありがとうございます」

 

 

 

アルセウス「たしか、ポケモンの説明をしていたな」

 

邪神「なぜ知って……」

 

 

 

アルセウス「別に心読めるのだから知らん方がおかしかろうに」

 

 

 

ギュリオス「まあ、そうですが」

 

 

 

アルセウス「ちなみに、前の話だが剣舞からの神速と瞑想耐久は言ってあるか?」

 

 

 

邪神「まだ説明はしてませんしギュリオスはあそこにはいなかったはずですよ」

 

 

 

アルセウス「ああそうか、ギュリオス。ワレの戦術についてだから聞きたければ聞け。勝手に説明する」

 

 

 

ギュリオス「聞きます!」

 

 

 

アルセウス「よい返事だ。剣舞はエネルギーで産み出した剣で舞うことで鼓舞し、攻撃力を上昇させる技だ」

 

 

 

ギュリオス『もう真似できる気がしない……』

 

 

 

アルセウス「一部のポケモンが覚えるからそっちの世界で観察して覚えるといい。そして神速だが、普通の2倍くらいの火力がある先制攻撃技だ。もうわかるか?」

 

 

 

ギュリオス「攻撃力をあげて、神速ですか?」

 

 

 

アルセウス「その通りだ。大体の相手はこれで死ぬ。ああ、今のは『ポケットモンスター』というゲームに反映されているが、そのお陰でアルセウスは登場から10作品ほど出ているのに未だに最強のポケモンで通っている」

 

 

 

ギュリオス「インフレしないのはすごいですね」

 

 

 

アルセウス「なんで普通はインフレするって知ってるんだ……?あ、Dか」

 

 

 

邪神「フンッ」

 

 

 

アルセウス「その鼻を鳴らすのはなんの感情なんだか。次、瞑想耐久型。これをゲームで使うと大抵の相手は台パンをする」

 

 

 

ギュリオス「台パンですか?」

 

 

 

アルセウス「わからないならやってやろうか?」

 

 

 

邪神「さすがにわかっていると思いますがここでやったら私はともかく、ギュリオスは即死しますからね?私も無傷じゃすみません」

 

 

 

アルセウス「さすがに冗談だ」

 

 

 

邪神「ありがとうございます。では、続けましょう」

 

 

 

ギュリオス「怖い方……」

 

 

 

アルセウス「瞑想耐久型は瞑想で耐久を上げた後に自己再生をする型。ちなみに、瞑想は魔法能力と抵抗能力をあげる技で自己再生はまあ……名前の通りだ」

 

 

 

ギュリオス「物理攻撃が来たらどうするんですか?」

 

 

 

アルセウス「素のステータスが高いから普通に耐えられるぞ」

 

 

 

ギュリオス「――」

 

 

 

アルセウス「それでもやはり剣舞神速型の方が強いからそちらを使うが。ゲ――」

 

 

 

 

 

 

 

ビッー!!ビッー!!ビッー!!ビッー!

 

ファンファンファンファン!!

 

ファンファンファンファン!!

 

 

 

 

 

 

 

ギュリオス「なんですか!?」

 

 

 

邪神「待ってください、私も知らないです!」

 

 

 

アルセウス「来たか」

 

 

 

 

 

 

 

『個体名ポティマスによる惑星の損傷を確認。損傷が30%に達しました。「大禁忌Lv1」が発動します!!警戒してください!!警戒してください!!警戒してください!!警戒してください!!――』

 

 

 

 

 

 

 

アルセウス「時にD。大禁忌は、禁忌を適当にレベルアップさせたものだと勘違いしていないか?」

 

 

 

D「この鳴り響くサイレン、についてですか?確かに禁忌を進化されたのでは?」

 

 

 

アルセウス「ワレの分体が現れると同時にあの世界はワレの影響を受ける。そして怪物が産まれたようだな」

 

 

 

ギュリオス「止めにいきます!なんなんですか?」

 

 

 

アルセウス「言ってしまえばレジギガス。訳せば抵抗する巨人か。現れただけで非常にゆっくりとしか動かないし、時限爆弾だ」

 

 

 

ギュリオス「いや、でも」

 

 

 

アルセウス「今殺せば体内に溜まったエネルギーで星が吹き飛ぶぞ?あと15年待て、そうしたらアイツは判断する。星の為に全生命を滅ぼすか否かをだな」

 

 

 

ギュリオス「――!?」

 

 

 

邪神「どういう風の吹き回しで現れたんですか?」

 

 

 

アルセウス「ワレが宇宙を作った時に謎の妨害を受けたから絶滅させたはずなんだが、代わりに関わった星々に残滓が届くようになったのだ。そして惑星が滅びるときに、星が最期の力を振り絞り残滓に大量のエネルギーを振りかけると生まれる、いわば世界の最終防衛機構といて役割を果たすようになった。全生命を滅ぼすことで星のエネルギーを回復させようとしているらしいがな」

 

 

 

ギュリオス「――星のための、星自身の自己防衛ですか。

 

――ポティマス」

 

 

 

邪神「まあまあ、今は待ちましょう。やっとゲームが始まったってことでいいんですね?」

 

 

 

アルセウス「お前は本当に性格が悪いな……。おいギュリオス」

 

 

 

ギュリオス「――はい」

 

 

 

アルセウス「ワレはこの世界の人間、いや、知的生命体を見に来たともいえる。お前の思うところに従え」

 

 

 

ギュリオス「わかりました」




どうだったでしょうか?なにかご意見ありましたら是非とも活動報告へ。

(アンケートの結果がどうであろうと、世界とポケモンのすり合わせ解説のために談話自体は続きます)


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12 何がないってメシよ

やっと帰ってきた

少し短いです


中層攻略で考えなきゃいけないことは幾つかある。

その中でも一番キツイのは、

 

「なんかおらん?」

「おらん」

 

 

食糧事情。

 

なんか、マグマックが増えたせいかほかの魔物を全然見ない。

蜘蛛の身体だからか飢えには強いけど、流石に疲れるくらい歩いてちゃんとした生物を見てないのは辛い。

 

「疲れた。青歩け」

「ヤダ」

「歩け」

「なんか上がりそうだしいいやん」

「それはそう」

「いいんか……」

 

下層では何も言わずに乗っけてくれていた白も、こんな感じでたまに話しかけてくるようになった。

 

会話の内容以上にヤバいのは、この会話が一日に何回も行われてること。

俺はまだマグマックをキャラとして知ってるから面白いけど、白にとってはただマグマとナメクジしかいない風景が延々と続いてるんだし、もう三日は何も食べてない。

そろそろ精神的にもマジでやばくなるのはわかる。

 

 

 

「サヤ、なんかいない?」

「見渡す限り何もいないわよ。洞窟で見渡すもなにもないけど」

「サヤはどういう感じ?」

「身体のサイズの関係かまだ問題はないわよ」

「うらやま」

 

サヤはサヤでずっと天井を歩いてる。

降りてくればいいのに。

このまま地面に落ちると落下ダメージ食らうんじゃないか。

知らんけど。

 

「てか、青もゆっくりしてないで歩いたら?」

「「電脳」あるしトレーニングはいいや」

「歩け」

「歩きなさい」

「はい、歩きます」

 

なんやこれ。

ちょっと前も歩くかの話はしたと思うんだけど。マグマック多すぎておかしくなったんか。

 

数が多いし、食糧も残ってないから仲間にすることも出来ない。

ただ邪魔でハイリスクノーリターン。

詐欺に注意!的な?

 

 

 

「あっ、でもタツノオトシゴいた!」

「「マジで?!」」

 

 

 

 

うーむ、でもなあ、いくら手に届きそうなところにいると言ってもアイツ火の玉撃つんだよなぁ。

 

でもほかに手段もないし、目の前にスタンバイして飛んでくるのを待つ。

 

 

来た!はっ!

エイムエイムエイム!はっ!

 

頑張れ白!はっ!

頑張れ!

 

 

はっ!っていってるけど俺は白にしがみついているだけ。

だってそりゃそうじゃん素。

早さ白より遅いんだから降りる意味ないでしょ。

 

頑張れ白!

負けるな白!

当たるな白!

たぶん当たったら二人まとめて消し炭になる!

 

「なんか糸撃てないの!?」

「はい!青、撃ちます!」

 

バシュッ!

 

いやこれはダメだわ。

マグマックの時もそうだったけど糸はすぐ燃えちゃうか。

まあいい。

 

「雷弾」!

 

ドンッ!

 

『エルローゲネラッシュ LV3

 ステータス

 HP:131/140(緑)』

 

微妙に火力低いなおい。

うん、でも火の玉にもMP使ってるぽいし、下の白に頑張ってもらってMPが切れるまで耐えて見ても良さそう。

 

まじ白頑張れ!多分当たったら灰も残らず燃えると思うから!

 

はいっ!ジャンプ!

よし!

あっそれは!

 

平気だったわ。

最後、避けて!

 

「よし、グッジョブ!」

「青なんかした?」

 

「いや、焼け石に水だし……。サヤだって何もしてないでしょ」

「ニート二人いると大変なんだけど?」

「すまん」

「……」

 

おいなんかしゃべれサヤ。

天井にいるけど聞こえてるだろお前。

えっと、MPはこれで切れたはず。

 

どうくる?頼むから初見殺し的な攻撃はしてこないでくれ。

 

 

 

ええ……。

安全地帯のはずのマグマから出てくんのお前。

俺たちのこと舐めてる?

遅いし。

 

 

「白、狩るか」

 

「さっきサボってたんだし触りたくもないから分け前もらいたい人は殴ってくれ。私は触れないようには動いてあげるから」

「はーい!!」

 

結局、白にとってはすごい遅い突進を避けながら、俺が雷弾をぶっ放しまくって勝った。

 

 

 

「なんでサヤ攻撃しないの?」

「さっきからなにもやってないじゃん」

「私はまだお腹は空いてないから。あと、色んなスキルレベル上げるためには私が手伝わない方がいいでしょ?育てとかないといざというときに詰むわよ」

 

だけどさ、それ俺たちと一緒に行動する意味なくない?

 

タツノオトシゴ美味いな。

モキュモキュと食べながら俺たちは話す。

てか、別にそれはそれでいいとしてもサヤはどこで食べるんだ?

タツノオトシゴ美味い。

 

「私は暇な時とかに移動して食べ物取ってくるから気にしなくていいわよ」

 

うわ。なんで聞いてないのにわかったんだよ。

テレパシーか?

 

「てか戦闘に参加しないのにいてもらわれると厄介な時もあるんだけど?一回わたし敵と見間違えてギョッとしたし」

「だから私はあくまで保険よ。常にちゃんと働くとか考えないでもらっていい?」

「でもプラマイゼロならともかく邪魔だからマイナスなんですが?」

「保険に入ってるか入ってないかで戦闘面にプラスな点はないんですかね?」

 

 

 

うわあ女子の言い合い怖い。

なんだお前ら。

その言い争いマジで無駄だからやめろ。

てゆーか怖いしサヤなんで保険とかわかるの?

俺そんなこと言ってたっけ?

 

 

 

「青もなんか言ってよ。戦わないのに居てもらうのは邪魔なだけでしょ」

「青、あなたは王なんだからちゃんと強くなりなさい。私のことはどうでもいいけどあなたは死んじゃいけないから、保険は必要でしょう」

 

 

 

あー、助けて。

 

「マジでどうでもいい。

 

 いや、どうでもは良くないけど、マジで言い合いは止めろ。

 心にデバフかけんな。

 いざという時に悪影響を及ぼしたくない」

 

まあでも、少しは対処をしてやろう。

 

 

『サヤ、少し離れてくれないか?白の目に入らないところ。出来れば、そこで飯とか取っててくれていいから』

『わかったわ。助けられる位置にはいるから。あと「共生」は一応切っておくわね。私の生存に青の生存が関わるのは癪でしょう?白も嫌だろうし』

『いや』

『いいわね』

『えっ』

 

考えてるふりをして念話を使う。

サヤだけに伝えて。

 

あっ、行っちゃった。

 

でも遠くまでは行かないらしいし大丈夫かなぁ。

別に少し離れた所であまり関係ないでしょ。

 

「青、サヤは?念話使った?」 

「使いました。なんでわかるんだよ」

「ずっと黙ってるし。うーん、まあいいや。上層への道探していこう」

「うん」

 

タツノオトシゴは、美味かった。

でも骨ばっかだったから、もっと柔らかいものを食べたいかも。

 

 

あーあ、なんでこんなに暑いんだろう。




リハビリタイム


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W1 白ですが、なにか?

白視点ですが、これからのストーリーの時系列と思いっきし関わって来るので読んでいただけると幸いです。


アルセウスやりたい。


わたしは死んで、蜘蛛になった。よくわからん世界のよくわからん場所に転生して、何回もよくわからん方法で死にかけた。

そこまではいい――よくないけど、よしとしよう。でもどうして、どうして、どうして、

 

「青のスキルはそんなに強いんだよ!」

「――知らん」

 

マジでなんでそんなに差が開いた?

パッと考えてみてもステータスは高くないし、いや高いけど。それもスキルのせいだし。

単純にスキルの強さが違う。

 

もともとの生物種としての能力が違うのか?

こんな世界に来てまで種族ゲーなのこれ?わたしが青とサヤより全然弱いとしても、マザーがいるからわかりきったことは言えないけど。

あー、もうわからん。考えてるとエネルギー使うわ。

 

ナメクジは相変わらず多いし、邪魔だし。もともとの数がバグなんじゃないかってくらい多いんだよ!あとたまに群れるのまじでやめろ。

 

触れるとダメージ受けるギミック感あるの最悪では?

マグマで十分だよ、そんなん!

 

「暑いわぁ」

「今に始まったことではないでしょ」

「」

 

サヤはもう全く反応してくれないし。なんなの?わたし、青のために歩いてんですが?

 

「子供たちは?」

「相変わらず育ってる。バケモンだけど」

 

青がいうには、生態系の空白というものがあるらしい。例えば恐竜が絶滅したときには、陸地と海が空いたからそこに哺乳類が増えた。

それと同じように、この世界の寄生という概念の空白に子供たちを入れているとか。

知らんけど!

 

「タツノオトシゴいる?」

「いないな」

「――」

 

おいサヤ反応しろ。はぁー。

サヤもサヤだ。青みたいなバケモノスキルをもってるわけじゃないけど、ステータスがバケモンだから結局強い。

本人に戦う気がないからしょうがないけど、そうじゃなかったらわたしたちがいなくても敵なんか殲滅してくれるだろう。

 

あれ、わたしいらない子?うーんまあいいや。

コミュニケーションを円滑にするって方向で役に立てば!

てかサヤ働け。

お前歩いてるだけだろ。

 

「青、今は子供たちになんて伝えてるの?」

「別に常に伝えてるわけじゃないぞ。卵産むときは、誇りも何もくそくらえだからとりあえず逃げまくって生き残れって教えてるけど」

 

その結果大量に生き残ってるんだよ、超ステータスの虫どもがさぁ

。これ、溶岩地帯抜けて上層来たら無双するんじゃないか?

あーだからバケモン共はイヤだわぁ。

ま、生き残れるからいいけどさ。

 

「寄生様様だな」

「マジでそうなんだよなぁ」

「流石にマザーに気づかれそうだけど」

 

「「「あれ?」」」

 

これって、まさかマズイ?

 

「ちょっと、考える」

「いや、まって。まだマザーが寄生に気づいていない可能性がある!今はマザーからとりあえず引き剥がす?」

「いざというときの兵は捨てたくない。

 HPはたぶん2000超えてるんだし!」

「私は今の生活考えると寄生中の方が楽だったけど――そういう問題ではなさそうね」

 

マザーはサヤより圧倒的にでかいし、強いはず。

いざ戦いとなったら絶対に勝てない。

というか、そもそも戦いにならない。

 

「バレたらヤバい?」

「いや、だって――、あ」

「まあとりあえず、大丈夫なんじゃないかしら」

「は?」

「私も、たぶん宿主にはバレていたし。ステータスが追い抜かしちゃったし抹殺したけどね」

「たしかに平気だったわ」

わけがわからん。あと、青の勝手に考えてわかったみたいな顔がもっと腹立つ。

「私たちだってバカじゃないわ。殺すつもりでHP吸収はしないわよ」

「それで?」

「白、アイツが言ってたじゃん。えーと、誰だっけ……。あ、イルナが言ってたじゃん。別に大丈夫だろうって」

「誰だよイルナ」

「下層でグレーターの上にいたヤツ。「念話」で話してたんだけど、白は繋いでなかったっけ」

「あ、いたかもしれん。つないでないけどね。で、それがなんで平気なの?」

「簡潔にいうと、アイツが吸収してて、寄生主のLV上がっててもバレないらしい」

 

「そのグレーター鈍感すぎね?」

「いや、鑑定ないと自分の状況もわかんないじゃん。あと、今まで寄生っていう概念がなかったから気づかれていないんでしょ」

「そうだね。あとバレたとしてもステータス上がってるわけだしいい虫って判断するかも」

「まあ、だから結果的に寛容なんじゃないか?別に損する訳じゃないんだし」

「そうか。じゃ、兵たちにはどんどん育ってもらちゃおう!」

「他の魔物も育っちゃうけどな」

「「それは言わないお約束!」」

 

案外、私たちは息が合うのかもしれない。

 

「あ、タツノオトシゴ!」

「えっ、どこ!?」

 

 

 

 

 

タツノオトシゴは美味しくないけど、まずくはないから許容範囲。

本当はもっと美味しいものを食べたいけど、まあ異世界だからしょうがない。

でもやっぱ食べたい。

 

「あ、レベル上がった」

「こっちもだ」

 

「「共生」、便利だねぇ」

「そうだねぇ」

「サヤは?」

「出かけていったよ」

「そう」

 

たまにサヤは一人で出かけていくけど、本人いわく一人で修行したいとのこと。まあ別にいいや。いつも戦力になってるわけじゃないし。

 

 

毒魔法を自分にかけてっと……。

「あれ、改めて考えたら自分で自分に攻撃魔法をかけ続けるって馬鹿なんか?」

「馬鹿なんじゃね?てかヤバい奴だと思われそう」

「でもアンタもかけてんじゃん」

「発案お前」

「うっせえわ。てかアンタが採用してる時点でいいじゃん」

 

いいもん。役にたってるもん。見ろこの電気耐性と毒耐性。レベル上がってるし、絶対役にたってるし。

 

「あれ、マグマック捕まえてみれば?エサもあるし」

「エサっていうか自分の食糧な。てか食べてもSPしか回復しないだろ。マグマックに使うのはマグマに耐えられるHPだぞ」

「そうだったわ。じゃあそれ死にスキルじゃん」

「いいもん。別に「電脳」あるからいいもん」

「そういえば、どうやって「電脳」手に入れたの?」

「なんか、愚痴ってたら追加されてた」

「本当?」

「マジ」

 

「神様、なんかくれ。すごい力」

 

 

 

 

 

「反応ないんだが?」

「知らん。

 運じゃね?頑張れ」

「すごいスキル持ってる奴はよゆーだな」

「もうこれ話すのやめよ」

「そーだね」

タツノオトシゴを食べたら、休憩。

また、歩いて上層の方ーー。

 

 

地鳴りがする。後ろの方からか。これは、ヤバい予感がする。

なんか巨大ななにかがぶつかってるみたいな……。

 

「サヤの方からか……。あ、ヤバい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見えたのは、巨大な赤い身体とデカい口。ヒレとかがついてるから魚なのか?

まずい。このままだと巨体で潰される。素早さは負けてるし。

 

 

 

 

 

「ごめんなさい、まずい!逃げ切れなかったわ!」

 

まてまてまてまて思ったよりデカかった!サヤ、マジでヤバいヤツ連れてきやがった。ふざけんな、戦わないのに敵は連れてくんのか。こいつは流石に格が違うし、本来なら手を出したらいけない、ほんとうに強いボスだ。

 

でも、後ろからきたってことは、いつかは追いつかれたかもしれないし。どっちにしろ遭遇したもしれないから、サヤは悪くないかも。

そもそもどこから現れた?さっき通った分岐路からきたのか?

 

考えてる暇はない!

 

 

「――ッアイツか。タイプの変化もあるのか?マジか、白行くぞ。サヤ2人乗せてくれ、足にする!」

「わかったわ!」

「あーー青、ポケモンか!?もう、いくっきゃないし、やってやるよ!」

 

「青、「共生」!「電脳」!お願い!」

「オッケー!!「電脳」!「念話」を使用してこちらの鑑定結果を全員に報告!」

【鑑定結果を通知します。

『フレイムギャラドス Lv28

HP:1428/1432(緑)

MP:1064/1088(青)

SP:2081/2285(黄)

:2087/2189(赤)

ステータス

平均攻撃能力:1895

平均防御能力:1457

平均魔法能力:1183

平均抵抗能力:1716

平均速度能力:1486

 「火竜LV8」「逆鱗LV2」「地動波動LV3」「HP自動回復LV2」「MP回復速度LV1」「MP消費緩和LV1」「SP回復速度LV6」「SP消費緩和LV6」「火炎攻撃LV5」「火炎強化LV3」「炎噛LV6」「竜巻LV4」「炎柱LV1」「破壊強化LV6」「打撃強化LV4」「命中LV10」「回避LV10」「確率補正LV8」「気配感知LV4」「危険感知LV7」「高速遊泳LV7」「飽食LV3」「打撃耐性LV6」「炎熱無効」「身命LV1」「瞬発LV8」「持久LV9」「剛力LV1」「堅牢LV1」「術師LV4」「護法LV4」「疾走LV5」「強化産卵Lv10」「小型化Lv10」「禁忌Lv1」  

スキルポイント:8500

称号 「悪食」「血縁喰ライ」「魔物殺し」「魔物の殺戮者」「無慈悲」』】

 

なんだこのステータス。見た目通りバケモンだ。

えっと、取り敢えず。今パッと見てヤバそうなのは、逆鱗、地動波動、炎柱……。

 

てか、多いな!どうする。もうサヤはターゲットにされてるし、それに乗ってるわたしたちはもちろん攻撃対象だ。

サヤは幸いスピードで勝ってるけど、SPが多分負けてる。すると、逃げきれなかったら死ななきゃいけなくなる。

わたしたちの素早さが圧倒的に負けてることを考えると、わたしたちはサヤにずっと乗ってなきゃいけないし。

 

やっぱ戦うしかないか。パッと見て20mはあるんだよね。わたしたちと竜の間もちょうど20mくらい。

 

次の瞬間、竜の身体はマグマから飛び出した。

 

「跳ぶ!!」

 

くっ!危ない!サヤから手を離すところだった!

ドンッと爆発のような音が鳴り響き、わたしたちは一瞬宙に放り投げられる。

 

「白、無事か!?」

「青は!?」

「無事!」

 

すぐにサヤに糸を伸ばして接着。

ただのなんの特徴もない、ただの突進なのに地震みたいに地面が揺れた。壁の岩はガラガラ崩れ落ちてるし、触れたらそこの部位丸々綺麗になくなるかもしれない。

でもまともに当たったら死ぬな。掠るだけでも動けなくなるかもしれない。

 

青と同じオリジンでもなくてこんなにつよいのか。オリジンだとどうなっちゃうんだ?

 

 

待て!

「あぶな!」

火の玉撃ってきた。

サヤはかろうじて避けたけど、大きすぎる。それこそサヤと同じぐらい。

わたしも下手に手を離したら即死するかもしれない。

後ろの壁が火の玉の直撃でパラパラと崩れる。

 

うん、火力は十分だ。

即死できる。

 

竜がこちらを向き直り、動きを止める。様子を伺ってるのか?

 

距離感はさっきと同じくらい。だけど、壁が崩れて少し穴が開いた。

このままだと、中層の一部が崩落するかもしれない。そしたら、岩につぶされてわたしたちは死ぬ。

 

竜は1体。わたしたちは3人。

 

 

 

 

さて、どう殺るか。



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13 炎竜、地震、魔王

今回は外野がうるさいです。なんでかは予想ついてるかもしれませんが。


これ、マジでどうしようかな。

なんか電脳が喋れるようになったのは良かったけど、戦況は非常によろしくない。

 

 

再び巨大な火の玉をギリギリで回避する。

 

 

けど火の玉が壁に当たった時の爆発でHPが削れた。

火力がとんでもない。

このままだと逃げ続けてもジリ貧か。

 

 

「白、ギャラドスの上を通るときに毒を投下して!」

「わかってる!青こそちゃんと雷槍撃っててよ!」

「了解!」

 

 

怠慢を発動させて、魔導の極みに意識を移す。

体に液体を流す感じで温度、流動を感じ取る。

 

 

「「雷弾」!」

 

 

『フレイムギャラドス  Lv28

 HP:1418/1432(緑)』

 

 

え、は、10ダメージ?

まずい。

思ったより効いてない!

勝てないかも。

どうしようか。

 

 

「サヤも魔法撃って!」

「わかったわ!」

 

 

サヤが溜めている間にも火の玉は飛んでくる。

避けれてるけど、その分溜めに時間がかかってる。

俺より大技なところもあるかもしれないけど、魔導の極みがないことも確実に影響してる。

このまほう、元々俺みたいな感覚で撃つものじゃないのかもしれない。

 

 

「「雷魔法LV4、雷弾」!」

 

 

激しい音がして、高速の電気の球がギャラドスに激突した。

ギャラドスがのけぞったのを確認し俺たちは再び体勢を整える。

これは結構効いたんじゃないか?

 

 

『フレイムギャラドス Lv28

HP:1345/1432(緑)』

 

 

全然効いてねぇ!

やばい。今まで戦った敵とは硬さが違いすぎる。

なんで頭吹っ飛ばしてこれしか効いてないの?

硬過ぎない?

少なくとももう電気弱点とは思わない方がいいかもしれない。

もともと水タイプは消えてるかもしれないし、相性という概念が曖昧なのかも。

どちらにしろ、このままだと絶対に死ぬ!

 

 

「サヤ、白!殺す方法思いつくか!?」

「まだ思いついてない!」

「今のところはないわ!」

 

 

まずい。

今はなんとか避けられてるけど、サヤのMPの減り方を考えると削りきれないのがわかる。

さっきの魔法あと10回くらいしか撃てないらしいし。

逃げるしかないか?

 

うん。逃げよう。

 

 

「サヤ、逃走しよう。これは削りきれない」

「わかったわ。やってみるだけやってみる」

 

「白もいいな?」

「う、うん」

 

 

 

じゃあ、生き残りに賭けるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺たちが方向転換したのを見て、ギャラドスは追い討ちをかけるように突進してくる。

 

実際のところ火の玉だったら距離を取れていたと思うから、その近付いてくるっていう選択は出来ればしないで欲しかった。

 

「サヤ、次は左!」

「わかったわ!」

 

白には進行方向を指示してもらっている。

俺たちが下層にいたときも白が道を決めていたし、多分俺が前を見て思考するよりかはいいだろう。

 

 

ただ状況が良くなったわけではなくて、あくまで長引かせてるだけ。

ギャラドスも逃さまいとしてるしこのままだとジリ貧なのに変わりはない。

実際この後はどうする?

上手く隠れてやり過ごすのがいいのか?

そんなうまく撒くことなんて出来ないかもだけどもうそれしか残ってないんだ。

 

 

「白、サヤ。多分逃げ切るのは無理だ!隠れた方がいい!」

「わかったわ!」

「わたし小型化使えないんだけど!」

「知ってる!でも、サヤと俺が小さくなるだけでだいぶ変わるはず!」

「白、サヤ、隠れ……」

 

 

 

 

えっ。

身体が突然揺れ始めた。

 

 

サヤがおかしくなった?

なんだ?

いや、違う!!

 

 

 

サヤとか、私自身が揺れてるわけじゃない。

地面が揺れてる!

地震か!?

いや、でも地震にしては規模が大き過ぎる。

 

 

 

 

いや待て嘘だろ。

嘘だと言ってくれ!

だんだんと激しくなってる!

ギャラドスの突進の時の揺れなんてものじゃない。

 

 

 

 

ガラガラと激しい音をたてて、巨大な壁が崩れ落ちた。

崩れ落ちた壁はマグマの中にボチャボチャと激しい音をたてて沈んでいく。

しかもその範囲はどんどん広くなっていて、ドミノ倒しのように一気に広がっていく。

 

 

まずい!

てか、やばい!

中層もろとも崩れ落ちて消滅する!

このままだと生存競争とかじゃなく、天災で死んじまう!

 

 

 

 

「サヤ、落石!」

「わかってるわ!」

 

次の瞬間、ドガンと激しい音を立てながら一気に天井の岩が崩れ落ちてきた。

 

俺たちは全力でその場から退避する。

ギャラドスも追いかけて来てるけど目の前で間に合わなずに下敷きになった。

一瞬で見えなくなるギャラドス。

ただ、そんなことどうでもいい!

こっちが死んじまう!

 

 

『ギャラドス死ぬか?』

『この落石では、おそらく死なないと考えられます』

 

 

 

ダメかって、いや、あぶな!

巨石が俺とサヤを掠めて地面に落ちる。

小型化したいけど、ここで能力が下がっちゃうと絶対に死んじゃう!

 

「ナメクジに気をつけて!」

「わかってるわ!」

 

鞘の上で立ち位置を白と交代して、邪魔な位置にいるマグマックを雷弾で撃ち倒していく。

 

マグマックどもは現状を理解できずに、いつも通り動いてる。

そして、潰されていった。

 

「青!前に落石!」

「右に避けるぞ!」

 

 

 

やべえ。

これ、中層全てが埋まったら終わるな。

 

「青!サヤ!岩の間に入れそうな隙間が出来てる!どうする!」

 

見ると、ちょうど白がギリギリ入れそうな隙間があった。

いや、これ、潰されなさそう!

 

頑丈だし!

多分!

 

前方も崩れ続けてるし、今生き残ることを考えると……隠れてみるか。

 

「これこそ賭けだぞ、2人とも!」

「「わかってる!」」

 

俺たちは、岩の隙間に入り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

激しい地鳴りは一日中続いた。

朝と夜もわからないけど。

ギャラドスと戦う前に、タツノオトシゴを食べていたから飢えることもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

そして、地鳴りは終わった。

 

 

生き残った!

このよくわからん地震をなんとか生き残った!

そしてギャラドスからも逃げ切った!

 

偉い!偉いぞ俺!

 

サヤと一緒に外に出て、伸びをする。

相変わらず熱いし、岩の隙間からマグマが噴き出してきたりはしてるけど、さっきの様子と比べたらすごい平和だ。

 

あ、マグマックどもも出てきた。

岩の隙間から出てきてるし、一部の危険に気づいた奴らが小型化したのかな?

すると、厳選されてるわけか。

まあ、その遺伝子は俺が強くなるまで頑張って取っといてもらいましょう!

 

岩をどかして白を救出する。よし!これで元通り!

 

さて、ではどうしようか。

中層をこのまま進むのでいいかな。

 

「じゃあ、青、サヤ。何が起こったかはわからないけど、中層から上層で向かうのを続行するのでいいよね?」

 

「「もちろん」」

 

 

 

 

ただ、俺の電脳だけはそれを許してくれなかった。

 

『来ます』

『クソ。これでも生き残るのかよ。アイツは潰されただろ』

『来ます』

『わかってるよ』

 

 

 

 

「白、サヤ。やっぱ来たぞ」

「マジか」

 

ドゴン!ドガン!ドゴン!

遠くの岩が吹き飛び、ヤツが再び姿を現した。

 

 

 

 

 

『フレイムギャラドス Lv28

HP:538/1432(緑)

MP:862/1088(青)

SP:968/2285(黄)

:1495/2189(赤)

ステータス

平均攻撃能力:1895

平均防御能力:1457

平均魔法能力:1183

平均抵抗能力:1716

平均速度能力:1486

 「火竜LV8」「逆鱗LV2」「地動波動LV3」「HP自動回復LV3」「MP回復速度LV1」「MP消費緩和LV1」「SP回復速度LV6」「SP消費緩和LV6」「火炎攻撃LV5」「火炎強化LV3」「炎噛LV6」「竜巻LV4」「炎柱LV1」「破壊強化LV6」「打撃強化LV4」「命中LV10」「回避LV10」「確率補正LV8」「気配感知LV4」「危険感知LV7」「高速遊泳LV7」「飽食LV3」「打撃耐性LV6」「炎熱無効」「身命LV1」「瞬発LV8」「持久LV9」「剛力LV1」「堅牢LV1」「術師LV4」「護法LV4」「疾走LV5」「強化産卵Lv10」「小型化Lv10」「禁忌Lv1」  

スキルポイント:8500

称号 「悪食」「血縁喰ライ」「魔物殺し」「魔物の殺戮者」「無慈悲」』

 

「やるしかないわね。弱体化はしてるし。私に乗って」

「「おう!」」

 

やっぱり、硬いなお前は。

だからこそ、しっかり終わらせよう。

 

もう、疲れただろ。破壊は。

俺たちは、ギャラドスの方に向き直った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

同時刻。魔王アリエルは、頭を抱えていた。それもそのはず、彼女にとって、この状況は異常過ぎた。

 

『クイーンタラテクト LV89』

『クイーンタラテクト LV87』

『クイーンタラテクト LV69』

『クイーンタラテクト LV79』

『クイーンタラテクト LV78』

『クイーンタラテクト LV89』

『クイーンタラテクト LV87』

『クイーンタラテクト LV69』

『クイーンタラテクト LV79』

『クイーンタラテクト LV78』

 

 

 

おかしい。クイーンタラテクトは5体しかいなかった。

そして、クイーンタラテクトなんておいそれと進化しない種族だ。何かがおかしい。

 

なんで10体に増えた?

さっきまであった激しい地鳴りもやっと収まった。

けれど、あれにも違和感を感じる。

 

 

 

あの地鳴りは、街から一定距離以上離れた場所でしか発生しなかった。

だから世界が滅亡する程の地鳴りなのに、人的被害はほぼゼロのようだ。

ただの地鳴りならあのクズ男(ポティマス)の仕業かもしれないけど、奴にはそんなことは出来っこない。そもそも人の被害などと考える男ではないし。

 

しかも。

 

『カオス大迷宮』『ソウル大迷宮』『ホロア大迷宮』『エンデ大迷宮』『フェクト大迷宮』

 

なに、これ。私の知らないうちに、大迷宮が5つも増えている。

名前も聞いたことがない迷宮で、新しく増えたクイーンたちはそこに配属されているらしい。

私はなにもしていないのに。

 

でも、やっぱりわからない。世界が急回復しているのを感じる。

こそ、世界中にエネルギーが満ちているのを感じる。

こんなにエネルギーで満ちているのなら、世界は一瞬で修復されてしまうだろう。

 

でも。

でもだ。

 

なんで?エネルギーは増えているの?

 

 

気持ちが悪い。

恐ろしい。

私が知らない間に、何が起こっているのかわからない。

怖い。

 

たぶん、Dという人からきた「大禁忌」というスキルが関係している。

その人について私はギュリエディストデュオスから聞いた話でしか知らないし、その人の声を聞いたのも何千年ぶりだろうか。なんで、今更関わってきたのだろう。

 

その人は、私とこの世界に何を望んでいるのだろう。

 

確か、あの人は私にも話しかけてきていた。

内容は、世界を変えるなにかの発生源を殺さないこと。

他の生き物は殺してもいいとは言っていたけど、そんなの見ただけじゃわからないでしょ。

ふざけてる。

 

 

「オリジン」という称号が追加されていた。

なぜか、身体が疼く。

その新しい生き物に、見に行きたい。

会ってみたい。欲しい。

会ったところで手出しは出来ないのに。不愉快だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

不安と焦りと恐怖と驚きと喜びが混ざってる。

こんな気持ちは、何千年振りだろう。

 

まあいい。わからないことが多すぎる。とりあえず増えたクイーンタラテクトを見に行こう。

そして、エルロー大迷宮も見に行く。

 

話はそれからだ。オリジン共。




ギャラドス……水、飛行タイプのポケモン。本編なら電気技で即死する。

この世界ではタイプが変わっている模様。


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14 フレイムギャラドス

ギャラドス編はこれで終わりです。


俺は今の状況を整理する。

ここは大きなドームになってるから、ギャラドスの軽い攻撃ならびくともしなそう。

前と違ってもう落ちてきそうな岩もない。

たぶん大地震で地面に全て落ち切ったんだろう。

 

正直言って、だいぶ有利な状況で戦闘を始められたと言っていい。

おまけにギャラドスの胸と背中の鱗は落石で砕けたみたいで、肉が露出している。

そこを狙っていけば、案外すぐに倒せるかもしれないし。

 

ギャラドスが身体を仰け反らせるとともに、身体がぶれた。

予見の効果か。

ギャラドスがなにかを吐き出そうとしてる。うん、くるな、でかいのが。

 

「サヤ、跳べ!」

「分かってるわ!」

 

次の瞬間、ギャラドスは地面スレスレに薙ぎ払うように火炎を放った。

 

結構ギリギリではあったけれど、俺たちはジャンプして回避すると共に胸の傷口に雷弾をぶっ放す。

避けた筈なのに熱気でHPが少し減ってるし、直撃したら絶対一撃だ。多分サヤでさえやられると思う。

 

 

 

 

 

 

 

下は炎で燃え盛っている。あのままだったらやけーー。は?

俺たちの攻撃は終わったし、これから地面に落ちなきゃいけない。それなのに、まだ地面の火は消えてない!

 

 

待て待て待て待て!このままだと落ちて焼ける!

 

「大奈魔糸!電脳手助け頼む!」

「「糸合成!」」

 

でも、サヤの巨体を支えるにはその糸では貧弱すぎた。だから、天井ではなく壁に糸を放つ。

確かにそうだ。サヤはほとんど糸をまともに使ったことがないのだから。

全身で糸を力いっぱい引いて、壁にぎりぎりしがみつく。

 

と同時に、床の炎が消えた。

そのまま落ちていたら焼けるか焼けないかでは怪しいところだった。いや、多分焼けてたか。

 

でも、これはなんのスキルだ?タツノオトシゴにはなかったし、竜のスキルだろうか。でも、火球よりもヤバいスキルなのはわかる。

 

 

「電脳!」

 

『火炎ブレス:広範囲を焼く火炎の吐息を吐く』

『炎渦:炎の持続時間を増幅させる』

 

ーーッ。嫌なスキル持ってるじゃないか。ほのおのうずもやっかいなスキルに進化してるし、やなことこの上ない。

 

だけど、ギャラドスのHPも減ってる。火炎ブレスに当たらなければ、勝てそうかな?

 

もちろん、火球に当たっても死ぬけどそれは言うまでもない。タツノオトシゴの火球でも死ぬし。

 

いや、でもどうなんだろう。妖姫のおかげで魔法抵抗力も500上がってるし、タツノオトシゴなら耐えられるかも?

ギャラドスならどっちにしろ死ぬだろうけど。

 

ただ、まだ地動波動だけ見れてない。じたばただけど、何をしてくるのか正直わからなんだよな。

ほのおのうずがあのバケモノ効果に変化してる以上、当たったら即死の超破壊力のわざになってることもありうる。

 

巨大な身体で暴れられただけで、こちとら致命傷だし。

というか、こんなにダメージ負ってるなら当たったらどっちにしろ死ぬか。

 

 

 

あぶな!

 

いつの間にか向かってきていた火の玉をかがんでギリギリで回避する。ーー。ぼけっとしてた俺が悪い。反省します。

 

《熟練度が一定に達しました。『並列思考Lv4』が『並列思考Lv5』にレベルアップしました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『思考加速LV4』が『思考加速LV5』になりました》

クソ。よし、やってやる。雷弾ぶっ放しまくる。

 

「雷だーー」

「ちょっと待って!」

「なに?」

「なんかあいつの体光ってない?」

「は?」

 

確かに、光り輝いている。しかも、体の一部ではなく、全身がだ。

 

『「地動波動」の発生準備が行われていると考えられます』

 

やばそう。少なくとも、低火力のわざが飛んでくる時の溜め方じゃない。

 

『電脳、なにかわかりやすくしてくれ。特に魔力の溜まり方』

『わかりました』

 

でも、予見ではなにも映ってない。これはなにもないか?

 

『終了しました。異常を感知しました。魔導の極みによる魔力図を構成しました』

 

その図には、魔力で真っ赤になったギャラドスが映っていた。

やばい。絶対なんかしてくる。多分じたばた。今当たれば即死だ。

 

 

 

「サヤ、離れろ」

「え、けれど」

「いいから逃げろ!周囲一帯吹き飛ぶまでありうる!」

「「!」」

 

サヤが弾けるように走り出した瞬間、ギャラドスは突進してきた。

 

予想よりも速い。予見でも見きれなかった。サヤは上に飛んで攻撃を避けるけど、ギャラドスはこれだけでは止まらない。

壁に激突して、そのまま上に。

 

顔から迫ってくるギャラドスにサヤは身体を捻って避けて、そのまま地面に着地。

そして、上から迫り来る尻尾に対しては俺と白が鱗の結合部に糸を当てる。

 

その瞬間、確かに一瞬だけ遅くなった。サヤがわずかに避け切れる程度には。

 

「青、雷弾頼む!」

「わかた!」

 

横に避けたサヤの上で、雷弾を打つ瞬間に白の毒糸玉を含みそのまままとめてぶっとばす。

それをギャラドスもギリギリで回避。

 

 

 

ーー速いな。魔導の極みで魔法陣は最速で組めてるはずなんだけど、やっぱり当たらないか。これは動きを止めるまで多分無理だな。

 

 

上に再び跳んで、

まずい。ななめ後ろ下から突撃してきた。白と俺が後ろを向いても、サヤがいるからこっちからは見えない。

 

「サヤ、見えてない!とりあえず糸を出して右方向に引く!」

「わかった!」

糸を全力で引いて、ギャラドスの方から離れる。

 

 

ぐっ。纏ってるオーラみたいのに掠った。火じゃなくて良かった。それでも体力はゴリゴリ削れる。

 

ジリジリと焼かれるみたいな痛みが響く。

痛い。でも、怯んだら死ぬ!

 

「電脳」、最適化!

『わかりました。魔導の極みを用いて魔力の流れを作成し、軽減しますか?』

頼む!

『わかりました』

 

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『痛覚軽減LV6』が『痛覚軽減LV7』になりました》

 

 

よし、ちょうどレベルが上がったし、痛みはある程度、ある程度だけど収まった。

まだ動くには支障があるけどしがみついてるだけならなんとか凌げそう。

 

「サヤ、大丈夫?」

「はぁ、なんとか」

 

やべえ。一発掠っただけで4割以上体力が削られた。

いや、これやばいの俺じゃなくて白だな。

 

「いける!」

 

 

 

いや、いけてないだろ。体力6割くらい削られてんぞ。確かに、白の方が俺よりかすりにくい場所にいたはず。それでもここまでってことは魔法抵抗力が関わってるか。クソ。

 

だけど、いけてなくても状況はそれを許してくれない。サヤの体力も一気に削られてしまった。あともういっぱつ食うと命が危ない。

 

でも、それはギャラドスも同じなはず。この攻撃を繰り返す間にMPとSPがどちらも一気に削られ続けてる。

 

あと少し避ければ自滅してくれることは目に見えてる。あとは、ここで避け切れるかだけ。

 

『フレイムギャラドス Lv28

HP:375/1432(緑)

MP:512/1088(青)

SP:295/2285(黄)

:988/2189(赤)』

 

いや、無理だ。サヤのSPの減りのほうがはやいな。

SPの量は勝ってるけど、あまり動いてこなかったせいでSPの減少量が多いのか。

 

削り切るしかない。このスピードのヤツに当てるのはだいぶキツいけど、やらないと。

 

速度を上げるギャラドスを横目に見ながら、魔法陣を構築する。同時に、電脳にギャラドスの移動場所の予測をしてもらいながら、背中をとられないようにサヤに伝える。

 

やっぱり速い。白には毒糸の生成を頼んで、出せる最高火力を全力で練り上げる。あと数発分しか避けるSPが残ってない。急げ。

 

よし、いった!

 

「毒糸3発分オーケー!いつでも言って!」

「よし!サヤいく!」

「わかったわ!どうすればいい!?」

「「天井から落ちて!」」

 

壁をダッシュする。そして反射するように進むギャラドスを見ながら、予備の魔法陣の構築を開始。ギャラドスも狙いを定めてぶつかってきてはいるけど、白が指示してるから上手く避けられてる。

 

「準備ができたら即飛ぶぞ!一瞬でもタイミングがズレたら死ぬ!」 

「わかってる!」

 

 

サヤの黄色ゲージもギャラドス以上になくなって、切れた。

うん、冗談じゃなく、切れてる。

 

「落ちるーー」

 

くそ。惜しかった。天井までもう少しだった。もういい。なってしまったものはどうしようもない。

 

 

 

やるしか、ない。

 

 

 

「白、撃つぞ!」

「おう!」

 

まずは、一発目!

 

「「毒雷弾!」」

 

直進してきてたギャラドスも、流石に当たったら死ぬとわかったのか空中を滑るように回避する。相変わらず、空を飛べるというのは厄介だ。

でも、体勢を崩してる。今ならいける!

 

「「毒雷弾!」」

 

 

反射するように進んでいたギャラドスは、急カーブをして壁に激突。そして、バランスを崩したように地面に激突して、再び跳ね起きた。

 

「サヤ!」

「わかってる!」

 

魔導の極み、動け!

 

「「毒雷弾!」」

 

俺たちの3発目の攻撃は、見事ギャラドスの口の中に入った。よし!

 

「よし、糸全力!」

「「わかってるって!」」

 

壁に向けて3人で全力で糸を放って、それを引っ張る。スタミナが削られれーー。 

着地できた。

 

 

うん、ギャラドスの方はもがいてる。でも簡単に突破できるものではないし、舐めてもらっては困る。こちとら生まれてからずっと毒と電気で生きてるんだから。

しかも、なんだかんだ言って俺はバチュルの王であるんだし。別にオリジンでもないお前に耐えられちゃ困るんだよ。

 

 

 

それでも、耐えてやがる。最後の最後でHPがスレスレで残ってる。なぜだ?

 

『生命変遷:SPを消費してHPを回復する』

 

火龍のスキル、レベル3の生命変遷か。残りわずかなSPを湯水のように使って回復してる。

でも、もうギャラドスの運は尽きている。

それは、もう全てを使い果たして逃げることもできない本人が一番わかっていることだろうし、俺たちも遠慮する気はない。

 

「蜘蛛猛毒!」

「「雷弾!」」

 

 

 

そして、ギャラドスはそのまま息をするのを完全にやめた。

 

 

《経験値が一定に達しました。個体、タランテスラがLV6からLV7になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『並列思考LV5』が『並列思考LV6』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『SP回復速度LV1』が『SP回復速度LV2』になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《経験値が一定に達しました。個体、タランテスラがLV7からLV8になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『思考加速LV5』が『並列思考LV6』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『SP回復速度LV2』が『SP回復速度LV3』になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《経験値が一定に達しました。個体、タランテスラがLV8からLV9になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『瞬発LV8』が『瞬発LV9』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『持久LV8』が『持久LV9』になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《経験値が一定に達しました。個体、タランテスラがLV9からLV10になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『視覚強化LV8』が『視覚強化LV9』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『聴覚強化LV8』が『聴覚強化LV9』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『生命LV8』が『生命LV9』になりました》

《スキルポイントを入手しました》

《条件を満たしました。個体、タランテスラが進化可能です》

 

 

 

よし、勝ち確定!よっしゃ!




このギャラドスについて

実験体。邪神二人が試しに干渉して作ってみた個体であるため、オリジンではない。


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15 タロットカード 『塔』 & じたばた

タイトルカッコつけてみました。「塔」の意味は、時代のうねりです。


よっしゃ!ギャラドスに勝った!強かった!

確かにこいつは強かった!でも、俺が勝った!

 

てか30m位あるよなやっぱ。デカすぎない?

あほくさ。てかこいつがただ弱い個体だから勝てたとかありそーだわ。

 

まあいい!勝ったものは勝ったんだ!

 

アイムア、ウィナァァ!!

イェェェェェーーイ!!ジャャスティス!

正義は、勝つ!!

うおっしゃあああ!!

 

「勝った!!」

「勝った!!」

「コロンビア!」

「「イェェェェェーーイ!!ジャャスティス!!」」

「ほら、サヤも!!」

「え?あ、はい。え?」

「うおっしゃぁぁぁ!!!」

「イェェェェェーーイ!!」

「うおおおーー……。

 

 

*映像と音声が乱れております。テンションが下がるまでしばらくお待ちください。

 

 

 

はあ、はあ。と、とりあえず一応勝ったってことでいいんだよな。

えっと、じゃあ、どうしよう。進化できるみたいだし、し、進化しようかな。はあ。

 

でもその前に。言っておかないと。

 

「サヤ、正直に言わせてくれ。ギャラドスにタゲ取られた時に、出来ればこちらに来ないで欲しかった」

「はい」

 

「うん。じゃあわたしからも言わせて。正直、基本的にわたしたちーー、白と青は自己責任で生きてきてるの。だから自分で起こしたトラブルについては自分で責任を取って。次同じことがあった場合、私たちの方に来ないでほしい。関わらないように、離れてほしい。あくまで、これは正直な話だけどね。いい?いざとなったらわたしたちもそうするから」

「ーー分かったわ。もうしない」

「本当だよ?」

「ーー分かってる」

 

 

まだ睨みあってるーーというかサヤに白が敵意を向けてるけどお互い言いたいことは言ったか?まあ言ってないだろうな。

俺ももちろん思うところはあるし言いたいけど堪えてることもたくさんある。

ふざけんなって気持ちもある。

 

でもそれを言い出したら終わらなくなってしまうような気がする。だから俺はこの感情を飲み込むことにした。

 

「うん、じゃあ。これで終わり!これ以上話しても気分はよくならない!進化だ進化!」

 

なんか考えてるのを忘れてるような気もするけど進化しよう。

これが第一だ。強くなるに越したことはないし。

じゃあ進化先を出してくれ電脳!

 

《進化先の候補が複数あります。次の中からお選びください。

 テスラエレテクト

 ラグ・ロア》

 

あ、これ電脳の声じゃなくてレベルアップの時と同じ声なんだ。

まあそうしないと俺以外の人進化できないしね。蜘蛛だけど。

 

ていうか何だこれ。ラグ・ロア?全く蜘蛛と関係していなさそうな名前だし。わけわからん。

電脳!

 

『ラグ・ロア:進化条件:一定以上のステータスを持つ小型電気蜘蛛モンスター、「暗殺者」の称号

      :説明:混沌の前兆とも言われ恐れられる、小型の電気蜘蛛の魔物。高い戦闘能力と隠密性を持つ』

 

かっこいい。ただただかっこいい。いいねこれ!

とりあえずはこれになるかな?テスラエレテクトについてもとりあえず調べてみるけど。

 

『テスラエレテクト:進化条件:タランテスラLV10:説明:エレテクト種と呼ばれる蜘蛛型の魔物の希少種の成体。非常に強力な雷撃能力を持つ』

 

うわあ。雷撃だよこっちも。かっこいい。

でもどうしようかなあ。テスラエレテクトには小型ってついてないってことは多分でっかいんだよね。

この世界別に体が小さくてもステータスが高ければ強いっぽいんだよなあ。

マザーは別だけど、ギャラドスとサヤのステータスも同じなんだし。大きさは全く違うけどな。

 

うん、ラグ・ロアにしよう。当たり判定小さそうだし。

ラグあったらキレるけど、まあないでしょ!高い戦闘力あるらしいし!

 

マジでないよな?うーん、でも暗殺者ってスキルが必要なら、ラグないか。ラグあり暗殺者とか弱すぎだもんね。

よし決めた!俺は暗殺者で生きていくぜ!

 

ん?ラグ・ロアって最終進化じゃないよね。よくよく考えたら最終進化なら詰むんだけど。

電脳、進化ツリーある?

 

『しばらくお待ちください。進化ツリーの作成に成功しました。進化ツリーを表示します』

 

え。マジでできんの?神かお前。じゃ、見させてもらおう。

 

 

 

 

 

 

すごい。ただ、美しい。俺の頭の中に、青白く輝く大樹が浮かび上がる。そこから、実のようになっている進化系統のたくさんの種類。合計で、20はあるんじゃなかろうか。ただ、美しい。  

 

オリジンエレテクトは、その樹木のてっぺんに君臨していた。ただ、美しく存在し、圧倒的な存在感を周りに振り撒いている。

 

ここを、()が目指しているのかと考えるとゾクゾクする。俺は、ここまで辿り着けるのだろうか。

いや辿り着く。()は、絶対にたどり着いてみせる。

 

ちゃんとラグ・ロアからもツリーは繋がっていた。エジク・ラアとか、訳わからないものも間に挟まっていたけど。でも、まだまだラグ・ロアは進化できるらしいし、これでいいか。

 

 

 

 

 

「白決めた?」

「うん。わたしはゾア・エレっていうのに進化することにした」

「あ、あと俺はラグ・ロアに進化することにしたわ。小さいらしいし」

 

電脳!

 

『ゾア・エレ:進化条件:一定以上のステータスを持つ小型蜘蛛型モンスター、「暗殺者」の称号:説明:不吉の象徴とも言われ恐れられる、小型の蜘蛛型の魔物。高い戦闘能力と隠密性を持つ』

 

おお、ゾア・エレさんも強そうじゃあありませんか。よきよき。これ二人とも進化できたらだいぶ強くなるんじゃないか?サヤには勝てないとしても前ハチがいっぱいいたあの下層の大穴も普通に通れそう。

 

ねえ、電脳。白の進化ツリーも作れない?

『可能です。作成しました。表示します』

 

俺の時よりだいぶ早くない?なんか俺の時準備してなかったとかあるの?いや、急に言い出したこっちが悪いか。

 

やっぱすげえ。じゃあ、白にも共生で見せてくれないか?

『可能です。表示しました』

 

次の瞬間、白が全身をビクッとさせた。申し訳ない……。

 

説明してみてもらう。結局、いつも通り愚痴は言われたけど納得してくれたみたいだし、喜んでくれたからよかった。

 

 

 

「じゃあ、進化するわ。ギャラドス取っといてね」

「わかったわ」

「敵呼び寄せないでよ?あと、ちゃんと守ってね」

「わかったわ」

 

 

 

 

 

うん。じゃあ、白行くぞ。

うん。じゃあ、青行こう。

 

 

進化!!

 

俺たちはギャラドスの陰で意識を失う。

 

 

 

 

 

 

《進化が完了しました》

《種族ラグ・ロアになりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度進化ボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『HP吸収LV8』が『HP吸収LV9』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『HP自動回復LV5』が『HP自動回復LV6』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『破壊強化LV1』が『破壊強化LV2』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『斬撃強化LV1』が『斬撃強化LV2』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『毒強化LV3』が『毒強化LV4』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『気闘法LV1』が『気闘法LV2』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『毒合成LV7』が『毒合成LV8』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『大奈魔糸LV2』が『大奈魔糸LV3』になりました》

《条件を満たしました。『電脳』により、スキル『万能糸LV1』を作成しました》

《『斬糸Lv3』『糸合成Lv9』『大奈魔糸LV3』が『万能糸LV1』に統合されました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『万能糸LV1』が『万能糸LV3』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『影魔法LV5』が『影魔法LV6』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『雷魔法LV5』が『雷魔法LV6』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『毒魔法LV5』が『毒魔法LV6』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『破壊耐性LV1』が『破壊耐性LV2』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『気絶耐性LV2』が『気絶耐性LV3』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『触覚強化LV6』が『触覚強化LV7』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『剛力LV3』が『剛力LV4』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『堅牢LV3』が『堅牢LV4』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『護法LV3』が『護法LV4』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『禁忌LV7』が『禁忌LV8』になりました》

《進化によりスキル『腐蝕攻撃LV1』を獲得しました》

《進化によりスキル『斬撃強化LV1』を獲得しました》

《『斬撃強化LV1』が『斬撃強化LV2』に統合されました》

《進化によりスキル『隠密LV1』を獲得しました》

《『隠密LV1』が『隠密LV7』に統合されました》

《進化によりスキル『無音LV1』を獲得しました》

《スキルポイントを入手しました》

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「なんでここにいるの?」

「…………………」

「私が配置したから?」

「…………………」

「そう。私が配置したからか。わかった。ありがとう」

 

だめだ。全くもって()()()()()()()()()。まるで、元から本当にこの場所にいるみたいなことを言う。

こんな感じじゃ他の奴らに聞いても埒が開かないかもしれない。私がいくら質問しても、まるで記憶があるかのように話してくる。

 

「私がおかしいのか?この短時間で何が起きてる?」

「…………………?」

「何でもない。独り言だ」

 

私はその場を去ることにした。

 

 

 

 

そしてフェクト大迷宮の深部。さっき、確かに何も異常がないと言った。でもそれはクイーンに限ったことで、それ以外ではこの迷宮は異常の塊だった。

 

 

 

『スモールレッサークリムガンLv1』『スモールレッサーメレシーLv2』『スモールレッサークチートLv1』『スモールレッサーズバットLv1』『スモールレッサーイシツブテLv1』『スモールレッサーダンゴロLv1』『スモールレッサーサイホーンLv1』『スモールレッサーコロモリLv1』『スモールレッサーイワークLv1』『スモールレッサーメレシーLv2』『スモールレッサーサイホーンLv1』『スモールレッサーズバットLv1』『スモールレッサーイシツブテLv1』『スモールレッサーイシツブテLv1』『スモールレッサーイシツブテLv1』『スモールレッサーイシツブテLv1』『スモールレッサーコロモリLv1』『スモールレッサーイワークLv1』『スモールレッサーダンゴロLv1』『スモールレッサーイワークLv1』『スモールレッサー…………。

 

探知に大量の反応が引っかかる。多すぎて頭が痛くなりそう。

そこかしこで、よくわからない魔物が大量発生している。卵から生まれて、その個体が卵を産み、それで力尽きて、また次の個体が卵産む。というサイクルを繰り返し続けてて、私が殺しても他の奴らは一匹も私に目を向けない。そして、ただ一心で産卵し続ける。

 

 

私はそこに向かってブレスを放った。もちろん、消し炭も残さぬ様に。

岩が焼け、赤く光る。残った奴らにも、ブレスを繰り返す。即死するように。苦しまずに、一撃で死ぬように。

 

確かに、世界の回復という点ではこの方法は確かに一理かなっている。

 

でも、不快だ。

 

だって洗脳されてるのが見ていてわかるから。私のクイーンだって、思考の誘導とかはしてるけど意識を完全支配なんてのはしてない。

 

この景色が、この状況が、私の女神様に重なった。

それが不快だった。

 

わかってる。私一人でこの世界での謎の魔物の増殖を抑えられる訳がないということも。こんな迷宮が、まだたくさんあるということも。

 

でも、抵抗させてほしい。ただの私の、ワガママのために。




ポケモンたちがどんどん増えていきます。
細かい奴らについては、解説が多くなりすぎるので飛ばしていきたいと思います。わからない方は各自調べていただければありがたい。あと、あまりストーリーには関わらないのでわからなくても問題はありません。

なんかいっぱいいるなあと思ってくれれば。

アルセウスの内容ちゃんと見ました。面白かったです。


スイッチ欲しい。


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閑話 ポケモンとニンゲンの境目

閑話です。あの人の話です。
読みにくいと思われる挑戦的な文章を書きました。大変だと思いますが読んでいただけたら嬉しいです。
*後書きで一応説明します。

あと、この作品においてのアルセウスのイメージ画像を描いたので目次の方も見ていただけると光栄です。


ボクは目覚めた。そこは何もない原っぱだった。そこにボクは仰向けになって寝ていて意識はあって空気はおいしい。ヒトの影響を受けていない美しい環境だとわかった。

 

ボクのトモダチは一人だけいた。その子は半透明になってボクを見ていた。遠くに一つの大きな街が見えてボクはそこに向かっていくことに決めた。

 

 

 

そうして、5歳の少年は歩き出した。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

本当に素晴らしい世界だ。ボクは早足で歩きながら空を見上げてまた城壁で囲まれた街の方に目を向ける。ボクのトモダチもついてきてくれるみたいだ。お腹はまだ減らないし街も少しずつ近づいてきている気がする。いや気のせいだ。草は青々としている。キレイだ。確かにボクはこの世界のことは何もわかっていないけれどヒトがいることやこの世界が知らない世界であることはわかる。ああ、疲れた。

 

 

 

 

 

疲れた。単調だけどそれは純粋だ。街も遠くなっているような近くなっているような気がする。違う。確かに近づいてきている。あと、3時間53分で着くはず。湿度は61%で5時間後に雨が降るけど間に合う。街にはどんなヒトがいるんだろう。ポケモンがいるんだろう。ポケモンに会いたいな。

 

 

考えないと、わからないや。

 

 

少年は考えの濁流に抵抗するのをやめた。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

街だ。この街も少しばかり前の世界よりもキレイみたいだ。あくまで環境の話でそれ以外のものは全て純粋に汚いけれど。治安はすごい悪いのに表面上はみなとりつくろってる。でも裏側でもヒトはヒトで戦っているし、魔物は魔物で戦ってる。ヒトと魔物の干渉はとても少ない。まだ不完全だけどこのままならその干渉もなくなるんじゃないか。

 

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥?」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

「………………………!」

 

ボクのトモダチは食べ物について心配してくれたけれど、あの草原の野草を食べればしばらくは生きて生けることがわかってる。肉も食べろといってくるけど盗むしかないいんだからしょうがないじゃないか。野鼠もいないんだし。

 

 

 

「‥‥…‥‥‥‥‥‥‥」

そうだね。雨宿りをしよう。ここには教会もあるらしいしなにか生活のためのものもそこでもらえるかもしれない。修道士さんがたまに歩いてることからもある程度影響力があるのがわかる。ボクのトモダチの分も食料をもらいたいな。いまだって周りのヒトにボクの姿が見えていないのはトモダチのお陰だし。

 

少年は街の中心にある教会へ向かう。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

「お前は、なんだ?」

「ボクはボクだ」

「そうじゃねぇ!その服はどこの服だよ!どこの貴族の出かはわからないがーー父さん母さんは?」

 

身体を鎧で固めた傭兵さんに言われて、ぼくは自分の服を見て着替えていなかったのに気づく。今までトモダチの力で隠れていたからなにもなかったのか。当たり前の事なのに馬鹿なことを忘れてた。

 

「雨をしのがせてください」

「ーーまあそれくらいいいが。ただ、なんであったとしてもそれ以外の援助は出来ん。みろ、周りを」

 

たくさんの人たちが、教会にはひしめき合っていた。飢えがひどいのかな。服も結構ボロボロみたいだし、ボクは少し目立ってるか。睨みつけてくるヒトもいるし、疎外感を感じる。

 

「俺だって仕事があるのは嬉しいが……。こんなに沢山の貧民の世話をしなきゃいけないっていうんなら俺もこの仕事やるか考えてるわ……。てかなんでこんなに……」

 

途中から自分語りが始まった。腹が立つ。ボクが話を聞いてるのに。まあ別にいいや。

 

「雨宿りだけします」

「わかったが、そういうことだから教会はもう君みたいな子供は来るような場所じゃねえんだ。本当にすまんな。ーーちゃんと勉強して俺みたいになるなよ」

「大丈夫です。ありがとうございます」

「そんなのはいいから。雨が止んだらちゃんと直ぐ帰れな。絶対寄り道するなよ?いいな?俺が送っていってやろうか?」

「いや、大丈夫です。気にしなくていいですから」

「てかなんでこんなガキが……。まあいい、マジで早く帰れ。

ーー流石に帰る場所はあるんだよな?ここの町の治安もなんだかんだいってヤバいからな。

本当なら送ってってやりたいがあいにく俺にはこの仕事がある。だから、雨が止んだら本当に気をつけて帰れよ」

「わかりました」

 

すごい優しい。嬉しいなあ。こんな心から優しい人はプラズマ団にもいなかったなぁ。

 

 

 

 

そして、傭兵さんはボクの手をとって教会の奥へと歩き始めた。

「こっちだ」

「なんでボクだけ違う場所に連れていくの?大勢の人はみんな大広間にいるよ」

「お前の身に付けてるものを、アイツらと比べてみればわかる。お前、殺されるぞ」

 

確かに、貴族が圧政か何かしているのかもしれない。なら、貧民はボクの服を見たら貴族だと思って襲いかかってくるのかな。さっきも突き刺すみたいな視線で睨みつけられたりしてたし。ヒトは怖い。

 

ボクが考えるのに構わず、傭兵さんはずんずんと進んで行って、一つの大きな部屋に着いた。大きくて長い机がひとつあるし、会議室なのかな。

「ささ、この部屋にいろ。いや、いてください、でいいのか?」

「厳しい口調のままでいいよ」

「そうか。じゃあ、雨が止んで教会の中にいる奴らに手当をしたら戻ってくる。それまで下手なことはするなよ」

「わかったよ」

「ならいい」

その傭兵さんは、ドアを閉じて去っていった。優しいな、あのヒトは。見た目も言動も厳しいけど心は優しい。何より、ボクの安全を第一に考えてくれいる。

 

もう大丈夫だよ。

次の瞬間、ボクの目の前にトモダチが現れて、捲し立てるように話しかけてくる。

「…………………………?」

うん。ここにしばらくいれるから大丈夫。気にしなくても平気だよ。

「…………………………!?」

でもあのヒトも信用できないヒトじゃないと思う。だからここにいるんだし。

「…………………………」

わかってるって。雨が止んだらでていくさ。ボクだって自殺志願者じゃないんだ。

 

 

 

少年は部屋の中でそのポケモンと遊ぶことにした。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

「すまんな。ちょっとてこづった……って、あれ?」

 

「その魔物はなんだ?」

 

急に帰ってきたせいで気づかなかった。ボクのトモダチは一瞬で隠れたけど、それでも存在ははっきり見られてしまった。

どうしよう。

 

「……………」

「えっと、なんだ?まず、教会には基本的に魔物を持ち込んじゃいけないんだ。わかるか?」

「……………」

「まあ、流石に今も問題なくて見えてないし、召喚した魔物なんだろうが……。もうやるなよ。今回だけは特別だ」

「ーーわかりました」

「よし、じゃあ帰るぞガキ。その年齢で召喚魔法も使えるなんてすごいな。家はどこの区画だ?」

「気にしなくて大丈夫です」

「だから家……」

「気にしなくて大丈夫です!」

 

ついはりあげてしまった。まただ。辛い。苦しい。ジブンが嫌になる。

 

「……お前が体験してきた人生がどんなもんかは知ったこっちゃねえ。ただ一つだけ忠告してやる。二度と人にそんな口を聞くな」

「……すみません」

「頑張れよ。お前は家を教えたくないみたいだし、教会の入り口で別れよう」

 

この会話の間、傭兵さんは一度も振り向くことはなかったけれど、ボクに対して本気で怒ってくれたのだとわかった。

 

 

 

「元気でいろよ」

「ありがとうございます」

「!!」

 

手を振ってくれている男性が見つめる中、明かりはあったけれどもそれでも暗い道で、少年は姿を消した。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

やっぱり食べ物を貰えなかったけど無理はない。この街がいくら裕福な街と言っても世界中で食料不足が起きているのだから。まあ、遅かれ早かれすぐに滅ぶんじゃないかな。世界が世界だし。ボクが関わる事でもないけどね。

 

「………………………」

そうだね。野草でも取りに行こうか。雨が止んだのなら基本的にはヒトの街と関わる必要はない。何より、表面上の取り繕いは夜にはなくなるらしいし、人殺しも、奴隷の商売屋も、盗賊も増えるだろう。

 

「はやく大人になりたいなぁ」

 

少年は呟き、街から出て行く。




彼について

彼は、人間でありながらポケモンと話せる変わった人です。

プラズマ団は、ポケモンの解放をうたう彼を王とした過激派団体です。ただし、彼も神輿にされているだけで詳しい仕組みなどは聞かされていません。

それでも彼自身の頭脳は凄まじく、計算や理論については異常な程の知識と演算能力を持っています(同時に発達障害という説もあります)。
*彼はゲームでも登場しますが、あの見た目で20歳なので、この世界では5歳からスタートしています。





わからない方は、「ポケモン N」と検索されるとわかると思います。


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16 進化鬼つええ!

やっとこさ進化。

ここまでチートやってるのに白に素早さで勝てないのどうかしてない?


あー、起きた。

 

無事に進化できてよかった。微妙に頼りないところあるからなぁ、サヤ。

「青も進化出来たの?」

「出来たぞ」

「ギャラドス食べる?」

「食べるに決まってるでしょうが」

 

そういう白の身体は、黒白くなっていた。白なのに黒も入ってパンダみたくなってしまった。うーん、白だから白いままでいて欲しかった。まるで俺がネーミングセンスないみたいじゃん。

 

 

かく言う俺も、青と黄色の模様がついてるらしい。進化前は黒と黄色が混じった感じだったし、青っていう名前には近づいたんじゃないか?

 

 

 

 

「目覚めたのね」

「ああ」

「ギャラドスの残り食べなさい。白はもう半分食べたから」

「わかった。守ってくれてありがとう」

「どういたしまして」

 

サヤも、さっき俺たちが怒ったことに対して傷ついてはなさそう。これなら、中層探索を再開出来そうかな。ヨカッタ。ニンゲンカンケイマジ大事。コレ絶対。

 

ギャラドスを見ても、白に食べられた部分以外の損傷はないっぽいし寝てる間に何かに襲われた訳ではなさそうだね。

 

よし。じゃあお待ちかねの。

 

「電脳、ステータス開示!」

 

『わかりました。

 

ラグ・ロア Lv1 名前 青

               佐野蒼生

HP:125/125(緑)

MP:803/803(青)

SP:146/146(黄)

  :148/148(赤)+98

ステータス

平均攻撃能力382

平均防御能力385

平均魔法能力738

平均抵抗能力765

平均速度能力792

「HP吸収Lv9」「HP自動回復Lv5」「SP回復速度LV3」「SP消費緩和LV3」「破壊強化LV2」「斬撃強化LV2」「毒強化LV4」「毒合成LV8」「気闘法LV2」「気力付与LV2」「猛毒攻撃LV3」「腐蝕攻撃LV1」「毒合成LV8」「糸の才能LV6」「万能糸Lv3」「操糸Lv9」「投擲LV7」「立体機動LV5」「集中Lv10」「思考加速Lv5」「並列思考Lv5」「命中Lv8」「無音LV1」「隠密Lv7」「魔連斬Lv6」「外道魔法Lv3」「電撃付与Lv10」「雷付与Lv5」「過食Lv8」「暗視Lv10」「視覚領域拡張Lv2」「予見Lv1」「演算処理LV7」「命中LV8」「回避LV7」「電気魔法Lv10」「雷魔法Lv6」「雷耐性Lv6」「火耐性Lv1」「影魔法Lv6」「毒魔法Lv6」「毒耐性Lv8」「空間魔法Lv3」「深淵魔法Lv10」「麻痺無効」「石化耐性Lv4」「酸耐性Lv4」「腐蝕耐性Lv3」「外道耐性Lv5」「破壊耐性LV2」「打撃耐性LV2」「斬撃耐性LV3」「恐怖耐性Lv5」「苦痛無効」「痛覚軽減Lv4」「気絶耐性LV3」「視覚強化LV9」「聴覚強化LV8」「嗅覚強化LV7」「味覚強化LV7」「触覚強化LV7」「生命LV9」「魔量LV8」「瞬発LV9」「持久LV9」「剛力LV4」「堅牢LV4」「護法LV4」「強化産卵Lv10」「小型化Lv10」「共生Lv6」「賢姫Lv4」「妖姫」「怠慢Lv7」「電脳」「傲慢」「奈落」「禁忌Lv8」「n%I=W」

スキルポイント:1680

称号 「悪食」「血縁喰ライ」「魔物殺し」「魔物の殺戮者」「毒術師」「糸使い」「大感染」「オリジン」「傲慢の支配者」「電脳の支配者」「究明者」「暗殺者」』

 

あの……。ステータスやばくないか?多分妖姫の影響というか、その成長補正がえぐいんだろうけど、もはやゲージの値とステータスがかけ離れてる。

 

そして、過食で生まれた余剰分のSPも現在進行形でちゃんと残ってる。やっぱり過食はちゃんと使われてるしよかった。

 

称号の数も改めて見たらおかしいんだな……。正直なところグレーターくらいなら真っ向からやり合えそう。あくまでやり合えそうだからこっちも死ぬかもしれないけど。

 

 

 

とりあえずギャラドス食うか。

 

新たに鎌になった腕でギャラドスの鱗を剥がす。この鎌が想像以上に使いやすい。タツノオトシゴの時よりぜんぜん硬くて丈夫なはずの鱗も薄氷のようにパキパキと剥がれていく。うん。これは強い。俺この仕事だったら最高クラスの働きできる自信あるわ。

 

ギャラドスの鱗を全て剥がして、ガブリと肉にかぶりつく。

 

 

 

うまい!マジでうまい。うーん、なんだろう。

鰻の蒲焼きのタレ無い部分みたいな味がする。

もはやウナギ。98%ウナギ。

 

まあ結論としてはあれだ。

食ってみろ。飛ぶぞ。のやつだ。

主にテンションが。

 

うまい!うまい!うまい!

マジでうまい。

問答無用でうまい。

 

でも二人を待たせてるし、速攻でギャラドスを食べて過食を発動させる。

本当はゆっくり食べたいけどしょうがない。

早く起きなかった俺のせいってのもほんの少しあるしね。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『過食LV8』が『過食LV9』になりました》

 

レベルアップも同時に来たか。グッジョブ!

 

じゃあ、第二章。青と白の無双編と行こうか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うん。あのテンションはフラグっぽいけど、普通に俺たち強いわ。

 

さっき見せてもらった白のステータスとしては、素早さが1200超えてて、他のステータスは俺の半分よりちょっと少ないぐらいだった。

 

あのあと、ナマズっぽいのが歩いていたから、調べてみた。

そしたら、ステータスは低かったから魔法をぶっ放したら死んだ。

うん。簡単に倒れた。

 

 

雷魔法Lv6で新しく手に入れた雷槍を適当に2、3発撃ってたらそのまま力尽きた。

進化する前より桁ちがいに強くなってるんだと思う。

それこそ比にならないくらい。

まあナマズを見たのは始めてだったけど、美味いし強めではあるから狩っていこうかなと思う。

 

 

あれ?ギャラドスにも勝ってるし、中層なら無双できるのでは?




なんだかんだ言ってこの蜘蛛、白の背中に乗るからいまだに体長1mない。


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17 人の意思ってもんはそう簡単には増えないはず

やっと白にあれが来る。


ある日。いつものようにナマズを狩り倒したとき。

白に変化が現れた。

 

 

『こんちは!新しく生まれた蜘蛛です!』

『『は?』『え?』』

 

急に頭の中にやばい声が響いてきた。

最初はめちゃくちゃビビったよ。

だって大声で初めてあったみたいに話しかけて来るんやもん。

 

そりゃビビる。

サヤだって固まってるし。

 

『白、コイツ誰?』

『『コイツはーー』『わたしはーー』』

『なお、この白とは元いた白を表すとする』

 

 

『ふーう。えっと、じゃあ片方黙ったわけだし元いた方のわたしが説明するわ』

『頼む』

『並列思考が進化して並列意思に進化したらこうなった』

『うん?』

 

聞けば、並列意思は二重人格っぽいスキルであることがわかった。

二人が一つの体内にいてそれぞれ別のことを考えられる的な。

 

これチートだよね。

だって人格が2倍になってそれがずっと現れてるんでしよ?

そしたら、集中力とかも全部2倍になってマルチタスクもやり放題か。

普通は半分にならない?

 

ヤバいなこのスキル。

 

実際白は役割分担してるし。

白1は情報担当で、白2は体担当。

やっぱ楽だよなぁ。

 

並列思考を育てれば俺にも使えるようになるのかなぁ。

マジで欲しいわぁ。

 

あと、最近こっちが覚えられないタイプのスキルを白が覚えるようになった。

邪眼系然り、忍耐然り。

しかもこの両方が強いから困る。

 

例えば呪いの邪眼なら、ずっと敵を見ているだけで死んでいく。

見てる限りHPもSPも削るスキルみたい。

なかなかぶっ壊れてる。

 

マグマックがたくさんいるから経験値が常に入ってくるらしいところも羨ましい所。

てな訳で手に入る経験値量に差が生まれ始めた。

まだ塵積もだけど、いつか山みたいな差が出来ちゃいそう。

 

そして忍耐。

忍耐はMPが残っている限り体力1で生き残るスキルらしい。

なに言ってるかわかんなくなってくるけど、MP が残っていれば死なないってこと。

おかしい。

圧倒的に強さがバグって天元突破してる。

 

しかもポケモン系、少なくともエレテクトは七つの美徳系スキルを覚えられないときた。

これはまずい。

 

白は忍耐のおかげで外道無効を手に入れたらしいし、それで探知も使えるらしい。

禁忌も2レベルも上がったって嘆いてたけど正直それは命にあんまり関係なさそうだし、上げたってところでって感じもする。

上がらないに越したことは無いけど。

 

うーむ、スキルかぁ。

並列意思はせめて出来るようになりたい。

 

 

 

「電脳、スキル作れない?例えば忍耐のコピー」

『出来ません。必要条件が多すぎます』

 

流石にだめかぁ。

必要条件って言っても全くわからんし。

無理なんだろう。

 

 

---------

 

 

 

なんだかんだあったけども、今俺は1つのことに悩んでいる。

 

マグマック、多くね?

マジで多い。

アホみたいに歩いてる。

アホか。マジで。D。

 

あいつらのやなところは、生死に関わらず触れたらアウトなところ。

マグマの鎧が死んでも機能する感じ。

あっちゃならんだろ。

なんで特性なのに死んでも機能するん?

なぁ。

 

それだけじゃない。

もちろんマグマからだって魔物は出てくる。

 

 

 

 

突然ざぱっとね。

こんな感じで鰻が出てきたりもする。

 

電脳!

 

『エルローゲネレイブ LV2

 ステータス

 HP:1001/1001(緑)

 MP:511/511(青)

 SP:899/899(黄)

   :971/971(赤)+57

 平均攻撃能力:893

 平均防御能力:821

 平均魔法能力:454

 平均抵抗能力:433

 平均速度能力:582

 スキル

 「火竜LV4」「龍鱗LV5」「火強化LV1」「命中LV10」「回避LV1」「確率補正LV1」「高速遊泳LV2」「過食LV5」「炎熱無効」「生命LV3」「瞬発LV1」「持久LV3」「強力LV1」「堅固LV1」』

 

 

 

ちょっと待て。

いや、待ってくださいませんか?

この強さは想定してませんでしたが?

 

冗談じゃない。

マジでなかなか笑えないステータスだぞこれは。

 

まず、電脳の鑑定で相手に不快感は与えてるから、気づかれてないなんてことはあり得ない。

 

魔法とか抵抗なら俺が勝ってるけど、あいにくコイツは火攻撃持ち。

一撃で死ぬのは目に見えてる。

 

素早さは白が勝ってるけど、SPが完全に負けている。

逃げることも叶わないかもしれない。

 

「白、どうする?選択肢はあれだけど」

「「仕留めるぞ」」

 

 

今はサヤも出かけてるし、俺たちで処理するしかないか。

電脳!

あいつの情報及び鑑定結果の常時表示を頼む。

 

『わかりました。

 

エルローゲネレイブ:エルロー大迷宮中層に生息する中位竜に属する魔物。雑食性だが他の魔物を好んで食べる習性がある』

 

この大きさで中位竜かよ!

ま、まあ確かにギャラドスは上位竜だと思うし?

確かにアイツと比べたら中位竜かもしれないけど?

 

でも、どうせナマズの進化系でしょ。

来るなら来い。

避けてやる。

 

次の瞬間、鰻の頭がブレて横に振れる。

これは、ギャラドスの時に見たやつだ!

 

「白、跳べ!」

 

ほぼ同時に白が飛び跳ねる。

次の瞬間、下は火の海になっていた。

 

 

またかよおおおお!!!

なんだ、なんでそんな火の海に。

飛び込まなきゃいけないんだ。

と思っていたら、案外一瞬で火は消えた。

 

その理由は簡単にわかった。

コイツはギャラドスと違って炎渦を持ってないんだ。

だから火の持続時間が短い。

 

 

 

そもそもギャラドスにはたくさんのスキルがあった。

そのうえで、同じステータスで勝負していたような感じだった。

だいぶギリギリだったけど、なんとか3人で勝てた。

 

 

ならば、この鰻。

2人でも十分勝てるはずだ。




10話くらいのやつを見たら、設定が全然違った。


書き直さなきゃならん。
泣きたい。


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18 並列意思

もう2人ともだいぶ強いんだよなぁ


鰻が火の玉を吐いてくる。

それを予見で見ながら回避して雷槍で反撃する。

進化したからか、余裕がある。

 

だけど楽勝ってわけじゃなさそう。

思ったより白の黄色ゲージの消費が激しい。

しかも、俺の魔法も龍鱗のせいで威力が落ちている。

正直戦闘終了まで持つかはわからない。

 

鰻も鰻でこっちの動きを予想して撃ってきてるし、何より確率補正で当てようとしてくる。

こっちは予見と思考加速も使って気合いで避ける。

そして俺は雷槍をぶっ放して鰻を削り続ける。

 

正直、鰻もだいぶ追い詰められてるんだと思う。

当たり前のように火炎ブレスを放ってきてるし。

さすがに雷槍をくらい続けるのはまずいって気づいたのかな。

 

鰻のMPはまだ余裕がある。

それこそ火球なら何十発も打てるくらい。

対して俺の雷槍もまだ大量に発動できる。

長期戦になるのはわかるけど、サヤは呼び寄せても間に合わないくらいに離れてる。

 

白の体力だけが問題だ。

当たったら死ぬっていう状況で体力がないのは命取りになる。

 

 

 

 

ならやりたいことは決まった。

 

 

鰻のHPを先に削り切る。

 

「白、避けるのに専念!SPの消費を最小限に!」

「やってる!」

「担当二人とも回避に専念!俺が殴る!」

「「わかった!」」

 

 

 

だから、俺は本気でやってみる。

 

多分勝てる。

そんな計画を立ててきているからな!

 

『電脳!魔法の常時展開は可能か!』

『可能です』

『わかった!雷槍を打ち続ける!MPなんて気にしなくていい!』

『わかりました』

 

 

 

次の瞬間、大量の槍が魔法陣から構築される。

我ながらギルガメッシュみたいだ。

 

《熟練度が一定に達しました。『並列思考Lv5』が『並列思考Lv6』にレベルアップしました》

《熟練度が一定に達しました。『並列思考Lv6』が『並列思考Lv7』にレベルアップしました》

《熟練度が一定に達しました。『並列思考Lv7』が『並列思考Lv8』にレベルアップしました》

 

勢いでどんどんレベル上がった。

正直嬉しい。

でも今はそれどころじゃない!

 

「影縫い!」

影魔法。レベル4では影の変形。レベル5で影の固形化。そしてレベル6で影の操作。

これはやっと使えるようになった影攻撃。威力も低いし攻撃力も低い。

ただし、面白いことが出来る。

 

次の瞬間、作り出した矢が勢いよく飛ぶ。

そのまま方向を転回して鰻を囲む。

 

「ゴー!」

 

そしてそのほとんどが鰻に突き刺さった。

うん、ほとんど効いてないね。

でも面白いのはここから。

 

「黒鞭!」

 

叫ぶと、影の矢の尾から細長い糸のようなものが飛び出す。

同時に現実でも糸が構成される。

そのまま地面の影と交わって、テントのように鰻が固定された。

 

これが影縫いの真骨頂。影の実現化。

 

電脳に聞いたら、研究を行なってくれた。

いわくこれは生み出されたスキルのバグ技らしい。

 

影の矢を当てると、現実のものに傷がつく。

その原理を応用して現実に影を具現化させてしまったのだ。

万能糸のスキルがないと作ることも出来ないみたいだけど。

 

影から作ってるから、もちろん火では燃えない。

そのかわり持続時間も短いし力にも弱いけどね。

でも鰻は騙されてくれた。

 

 

鰻が炎を纏う。

もちろん、糸を断ち切るために。

火には燃えない糸を。

 

これで、今までの火球でよっぽど削れてるはずの鰻のMPとSPをさらに削れる。

同時に俺は第二陣の影縫いを発射。

 

無限(エンドレス)電槍群(サンダースピア)!」

 

《熟練度が一定に達しました。『並列思考Lv8』が『並列思考Lv9』にレベルアップしました》

 

その間にも、電脳が同時作成した槍を一気に飛ばし続ける。

大量の槍が鰻に突き刺ささった。

 

鰻が暴れて黒鞭が剥がされていく。

でもまだ火は関係ないことに気づいてない。

もうMPが切れるけど、いいのか?鰻。

 

鰻は暴れてこちらに火炎ブレスを吐いていく。

それを白はギリギリ、でも確かに避けていく。

 

鰻は雷槍を受けきれてない。

ちょうど雷耐性を獲得したみたいだけど、この攻撃は抑えきれない。

 

 

 

鰻の体力ゲージは一気に減っていく。

これなら、あと数秒で落ちる。

俺たちの勝ちだ。

 

 

 

「だめだ!」

「きつい!」

白2人が叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

そして、切れた。

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その瞬間、全ての槍が消滅する。

全ての魔法陣と共に消えてゆく。

 

 

 

この瞬間を鰻は見逃してくれなかった。

予見で、地面を薙ぎ払うように最後の火炎ブレスを吐こうとしているのが見えた。

あと数発。体力、15。

削れなかった。

俺も鰻もMPはもうない。

白は、もうほとんど動けない。

 

油断していた。

この世界で起きた出来事が走馬灯のように頭をよぎる。

進化したから、余裕で勝てると思っていた。

これがこのザマだ。我ながら恥ずかしい。

でも、恥じたってなんとかなるわけじゃない。

 

 

もう正気で考えたらうつ手はない。

 

 

だから俺は賭けに出た。

 

『電脳、後は頼んだ』

『わかりました』

 

《熟練度が一定に達しました。『並列思考Lv9』が『並列思考Lv10』にレベルアップしました》

《『並列思考Lv10』が『並列意思Lv1』に進化しました》

《魂を分離します》

 

 

 

そして、俺は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()

 

 

 

《魂が崩壊します》

《スキルを還元します》

《電脳により拒否されました》

《ステータスを還元します》

《電脳により拒否されました》

《称号を還元します》

《電脳により拒否されました》

《スキルポイントを還元します》

《電脳により拒否されました》

《経験値を還元します》

《電脳により拒否されました》

 

 

『魂の再構成を行います』

『失敗しました』

『措置を行います』

『成功しました』

『電脳により、並列意思が捕食されました』

 

 

 

 

コンマ1秒、それは動き出した。

 

 

 

 

 

『あー、もういい。どんな手段を使ったとしても、100億パーセントアイツは生き残らせるぜ』



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19 鰻、決着





啖呵を切った以上、オレ様に負けることは許されていない。

ならば、切り札を切ってでも安全に勝つべきか。

 

 

勝ち方は2通りある。

Dに完全にバレるであろうやり方と、Dには怪しまれるかもしれないというやり方。

流石にバレないという可能性があった方がいいか。

 

 

『白。共生を利用してMPとSPを共有する。タイミングを見て跳びやがれ』

『!!』

 

 

念話じゃ情報伝達が間に合わない。

直接脳に情報を送る。

 

 

『出来た。跳べ!』

 

 

 

 

白がしっかり跳んだのを見て、オレ様は鰻に雷槍を数発撃ち込んだ。

 

 

《経験値が一定に達しました。個体、ラグ・ロアがLV1からLV2になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。『HP吸収LV9』が『HP吸収LV10』にレベルアップしました》

《『HP吸収Lv10』が『HP大吸収Lv1』に進化しました》

《熟練度が一定に達しました。『火耐性LV1』が『火耐性LV2』にレベルアップしました》

《スキルポイントを入手しました》

 

 

 

《経験値が一定に達しました。個体、ラグ・ロアがLV2からLV3になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。『破壊強化LV2』が『破壊強化LV3』にレベルアップしました》

《熟練度が一定に達しました。『命中LV8』が『命中LV9』にレベルアップしました》

《スキルポイントを入手しました》

 

 

 

そして鰻はズンと地響きをたてながら地面に沈んだ。

 

 

ここからどうする。

無事勝った。

だが、その代わりにDにバレている確率は大幅に高まっている。

ここまできたら白がどう行動しても関係ないだろう。

ならオレ様から行動するべきか。

 

 

『落ち着いて聞け。白。初めて会ったな』

 

正直言っても言わなくても同じだろうが、念のために言っておくことにした。

 

『並列意思が感情を持った。あと並列意思が電脳を使ってるだけだ』

 

実際は逆なんだが、別にこう言っても齟齬はないだろう。

 

『わかった。青は?』

『いまは並列意思を発動したショックで意識を飛ばされた。じきに目を覚ます』

『無事なの?』

『無事だろう』

『本当に?』

『ああ』

『ちょっと、青が起きるまで待とう』

 

 

なかなか愛されてるじゃねえか。

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

私は夢を見た。

地球で暮らしている夢だ。

 

 

今までに体験されたことが一度に思い出される。

悲しみ。喜び。怒り。

そして、懐かしい全てのものが私の記憶の中に強く突き刺さった。

 

 

ああ、私、私として生きてきてなかったんだ。

抜け殻だったんだね。

寂しいな。

 

ーーーーーーーーー

 

 

「おはよう」

「青!大丈夫!?なんか魂崩壊したらしいんだけど!?生きてる!?意識ある!?」

「あるある。喋ってんだから大丈夫だよ」

 

 

「よかった。マジでよかった」

『まあ無事なら良い。問題なく思考はあるんだな?

 

 

『誰だお前!?』

『電脳だ。並列思考はもらったが許して欲しい。そうしなければお前は少なくとも廃人、最悪死んでしまっていた』

『わかった。私を助けようとしてくれたんでしょ。ありがとうね』

 

 

『だが、お前にはだいぶ迷惑をかけることになる。魂が損傷しているうえ、人格も変わっちまったぽいからな』

『大丈夫。今のところおかしなところはなにもないし』

『少なくとも注意力は低下してそうなんだが』

『まあ、大丈夫でしょ』

 

 

電脳が溜息を吐くのが聞こえる。

気にしてるのかな。

この後はどうしよう。

 

 

「「じゃあ、鰻食べよ!」」

「そうだね。食べないともったいない」

「うん、食べよう!」

 

 

 

 

凄く美味しかった。

ギャラドスよりも肉が柔らかい。

それこそ地球の鰻みたいだ。

問題なのは。

 

 

 

『そんなことがあったのね』

『アンタのいない間だけだけどな』

『別にいいでしょう?少し出かけても』

 

 

 

サヤと白、2人が喧嘩してる。

別にいいんじゃないの?

生き残ったんだし。

 

 

そもそもサヤがどうであろうと私たちのやることは変わらないんだから。

サヤは食べ物の面でも私たちのを奪っているわけじゃないんだしね。

そんなにどうこういう事じゃなくない?

 

 

『やっぱオレ様が見ておいた方が良さそうだな。知能退行してないか?』

『なんてことをいうのさ。私は正常だよ』

『その発言が正常じゃないんだがな』

 

 

あの後、2人をなだめるのに体感1時間かかった。

 

 

ーーーーーーーー

 

ある空間。

 

 

アルセウスは画面を見つめていた。

それに対して、Dは机に向かって仕事をしている。

Dの隣には、監視するようにメイド姿の女性が立っていた。

 

 

「なにが起きているんですか?」

「ワレに聞くな。あれが最適解なのだろう。こちらが口出しすることではないわ。そもそもお前は聞かなくてもなにが起きているのかはわかるだろう」

「スキルに並列意思を譲渡するのは流石に考えてませんでしたね。スキルの心を読み取るツールも作るべきでしょうか」

「作れるのなら作れば良いのではないか?この世界はあくまでお前のものなのだから、知りたければ作れば良いだろう」

 

 

「冥土、コイツは忙しいのか?」

「はい。まだまだたくさん仕事が残っています。いくらかアルセウス様に処理して頂いたのに、この馬鹿はまた仕事を溜めたのです」

「まあそうだな、頑張れ」

「ひどくないですか?」

「さあな。仕事を溜めた方が悪い」

 

 

 

アルセウスは画面に向き直り、思わぬ成長にほくそ笑む。




電脳のイメージは、dr.stoneの石神千空とグラブルのカリオストロ(カリおっさん)を組み合わせたようなかんじです。

声はガッチガチの青年ボイス。石神千空に近いかも。


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A2 アルセウス談話「その2」


邪神D「なんでアレは女っぽくなったんですか?」

アルセウス「さあな」

冥土「机に体を向けなさい。仕事しなさい」

邪神「くっ」


この物語に出て来るギラティナは女性ベースです(小柄なお姉さんキャラを想像してもらえば容易いかも。ラブコメアニメにたまに出て来る感じの)。

誤字報告もありがとうございます!モチベになります。


 

 

アルセウス『おおギラティナ、元気にしてたか?』

 

 

 

ギラティナ『元気にしてたかって言っても3日前にも会っているでしょう?で、私を呼び出した用件は何です?』

 

 

 

アルセウス『いや、最近アイツらが劇的に変化しまくってるからそれの解説をしたくて呼び出した』

 

 

 

ギラティナ『え?私関係なくないですか?わざわざ別空間からテレビ電話繋いでるんですけど?』

 

 

 

アルセウス『ワレが関係あるから呼び出した』

 

 

 

ギラティナ『あなたっていつもそうですよね!私のことなんだと思ってるんですか?』

 

 

 

アルセウス『呼び出してはっきんだま貸してやればなんでもしてくれるやつ』

 

 

 

ギラティナ『で、なんなんです?そんな解説するほどの変化あったんですか?』

 

 

 

アルセウス『大ありだ。魂の存在の仕方が変わっているのだから説明しないといけないだろ』

 

 

 

ギラティナ『それは確かに大きな変化ですね。私を呼ぶ意味だけわからないですが』

 

 

 

アルセウス『Dには説明したくなかったし、ギュリオスに話してもどうせDに伝わるしな。お前が1番適任だった』

 

 

 

ギラティナ『ディアパルを呼び出せばいいじゃないですか』

 

 

 

アルセウス『2人も呼ぶのめんどくさいし、アイツら血の気が多いから話通じにくい気がするんだよな』

 

 

 

ギラティナ『そうですか』

 

 

 

アルセウス『てなわけで説明していく。まず、今の青の状態からだ』

 

 

 

ギラティナ『青ってどれですか?』

 

 

 

アルセウス『いや、あの黄色いやつ』

 

 

 

ギラティナ『あ、アレ青なんですか。黄色か青かはっきりしてほしい模様してますね。で、どういう状態なんです?』

 

 

 

アルセウス『意思が4割ほど分離して電脳に捕食されたな』

 

 

 

ギラティナ『はい?なんで生きてるんですか?』

 

 

 

アルセウス『電脳が思ったより凄かった』

 

 

 

ギラティナ『というと?』

 

 

 

アルセウス『いや、アイツの魂1度は砕け散ってんだよ。結構粉々に』

 

 

 

ギラティナ『は?』

 

 

 

アルセウス『なんか精神分離するっていうスキルがあってそれに失敗してな。逆に言ってしまえば魂の分離なんて出来る白もだいぶおかしいのだがな。アイツこの時点でギュリオスよりも魂の扱いうまいと思うし』

 

 

ギラティナ『どうやって意識を取り戻したんですか?』

 

 

 

アルセウス『いや、ワレも何言ってんだって感じなんだけど、魂を2つにまた合体した。雄型と雌型にな』

 

 

 

ギラティナ『は?』

 

 

 

アルセウス『だから、粉々になった魂を性別ごとに合体させたんだよ。多分そこが一番綺麗にまとめやすかったのだろうな』

 

 

 

ギラティナ『ヤバいですね、それ』

 

 

 

アルセウス『ま、それで適合させたら本体には雌型の方が合ってたようだ。産卵とかも出来るってことを考えればなんら違和感は無い』

 

 

 

ギラティナ『まあ、もう前世の性別なんて関係ないですからね。それより、それに使われたのが電脳なんですね?私は電脳が何かもわかってないんですが』

 

 

アルセウス『話が早くて助かる。ちなみに、電脳はスキルで、最適解を求めるっていう効果がある。しかも、アレはDについてある程度の理解をしてるみたいだ。化け物だな』

 

 

 

ギラティナ『それとDとは会ったことはないって口振りですね』

 

 

 

アルセウス『ああ。なんなら、存在してるって1文しか見てないはずなんだが』

 

 

 

ギラティナ『うん?』

 

 

 

アルセウス『名前表記の違和感、前世で死ぬ直前の様子、禁忌とスキルの存在。これだけでほぼ辿ってるみたいだ』

 

 

 

ギラティナ『想像以上ですね。アルセウス様、思考回路はわかりますか?』

 

 

 

アルセウス『なんとなくだがわかるぞ。説明してやろう』

 

 

 

アルセウス『まず、Dの存在がバレたところからだな。最初に転生してきたとき、Dの名前が一度出たが青は存在を知っただけって感じだったな』

 

 

アルセウス『だが、青は考え始めた。そして、ある程度の答えに達した。もちろん間違っているところも矛盾しているところもたくさんあったがな。そこで、その褒美として青からの要請とワレの希望で電脳を作成したのだ』

 

 

ギラティナ『あのスキルは誰が作ったんですか?』

 

 

 

アルセウス『ワレだな。もちろん、あの世界に送る前に見せて許可ももらっているぞ。最適解を求めるスキルっていう説明を見せられても何もわからないはずだしあのチェックも形骸化していたが』

 

 

ギラティナ『電脳はどれくらい本腰入れて作ったんですか?』

 

 

 

アルセウス『なかなかに本気で作ったな。もちろんそのときには自意識などは全くなかったが、言えばなんでも調べてくれる存在になるようにした。Dの得意分野でない魔術も試行できる下地は作っているし、案外面白くなるかもな』

 

 

アルセウス『次は、禁忌に対する電脳の思考回路を説明してやろう』

 

 

 

ギラティナ『お茶持ってきますね』

 

 

 

アルセウス『そうか』

 

 

 

アルセウス『じゃあ気を取り直して説明してやる。禁忌があることでアイツが即座に予想したのは、Dの性格が悪いということだな』

 

 

 

ギラティナ『あとは?』

 

 

 

アルセウス『ただそれだけだ』

 

 

 

ギラティナ『それって、だからなんだって感じじゃないですか?』

 

 

 

アルセウス『まあ、さまざまなことに対して対策網を張り巡らせる電脳にはいい情報になったらしいな』

 

 

 

ギラティナ『というと?』

 

 

 

アルセウス『青自身はともかく、電脳はもうDをほとんど信用していない上で行動している』

 

 

 

ギラティナ『まだ、電脳ってDと全く接触してないんですよね?』

 

 

 

アルセウス『ああ。だが、関わると面倒臭いってのはわかっているようだな』

 

 

 

ギラティナ『今、電脳って何考えてるんですか?』

 

 

 

アルセウス『さあな』

 

 

 

ギラティナ『本当はわかっているのでしょ?』

 

 

 

アルセウス『なんとなくな、言うつもりはないが』

 

 

 

 

 

アルセウス『次に、名前表記の違和感から電脳が感じたことだ。アイツはただの名前表記から、白の出自について疑っている』

 

 

 

ギラティナ『まあ、白と自分の名前表記が違っていれば疑ってもおかしくないですね』

 

 

 

アルセウス『それと同時にDが多忙である可能性と、スキルを簡単には作れないという可能性を考察しているようだが、それもあながちな違っているわけではないというのが恐ろしい』

 

 

ギラティナ『結論としてはなんなんですか?』

 

 

 

アルセウス『話締めようとしてないか?』

 

 

 

ギラティナ『してないです』

 

 

 

アルセウス『じゃあいい。簡潔にまとめるとだな、()()()()()()()()()()()()()()()()()




はっきんだま……ギラティナの専用アイテム。ギラティナはこれを持つと真の力を解放できる。

なお、二人が念話で話している間、Dはずっと仕事をさせられていた模様。


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20 炎界の王


ヤバいやつばっかり



私たちは中層を進んでいる。

 

あの後サヤにはだいぶ心配させたけど今はもう別行動をしている。

安心したのかな。

あと、なんでサヤが別行動をしてるのかがやっとわかった。

 

サヤには火耐性がつきにくいみたい。

それでHP管理のために獲物を探して徘徊しまくってたってわけ。

白もそれで納得してくれた。

 

電脳にも話したら、まあそれもあるだろうなって一蹴された。

それもってなんなのよ。

他に何があんのよ。

 

そんな感じになりながらも、私たちはナマズを探して徘徊していた。

鰻?

そんなもんは知らんな。

アイツわりかし強いから、負けるかも知れないし。

 

『間違っちゃいねえが負けたら死ぬってことわかってるか?』

「もちろん。だって実際前死にかけたじゃん」

『わかってるならいいが』

 

鰻って強いんだよね。

白が麻痺の邪眼を手に入れてたけどこれでも勝てるかは不安だ。

相手のことを見てたら麻痺になるっていうだいぶ壊れたスキルのはずなんだけど。

 

『おい、青、白。あの穴から離れとけ』

 

大きな穴があった。

とてもとても大きな穴。

直径にすれば100mくらいあるんじゃないかな。

 

「なんで?」

『いや、あの穴はなんか嫌な予感がする。なんかいるぞ』

「青、できるだけ離れながら通るよ」

 

結局、迂回する。

わざわざ危険な橋を渡る必要は無いしね。

サヤはどうやって通ってたんだろう。

壁を沿うようにして穴からできるだけ離れながら歩く。

 

「そういえば、電脳はどうやって危険って判断したの?」

『穴の縁が削られて新鮮な岩が露出してたからな。巨大な何かが通ることで溶岩が削られたって考えるのが一番筋が通る』

「良く見てるね」

 

ゆっくりゆっくり歩いて穴のそばを通り過ぎる。

 

 

通り過ぎて、視界にぎりぎり穴が入るような距離で。

その穴の主は姿を現した。

 

 

 

 

ここからでもはっきりと見えるほど巨大で、黒く光る体躯。

紅く巨大な目に、私たちの数倍の大きさのありそうな鋭い牙。

一本一本が巨大な樹のような脚。

それについた、人の指を思わせるような巨大な爪。

 

何より、全てを黙らせることの出来そうな強大な気迫。

 

 

私たちのマザー、クイーンタラテクトだ。

 

 

 

 

『鑑定はしないが、予測はする。眼に入れとけ』

 

電脳が無理な指図をしてくる。

無理なものは無理だ。見られたら死ぬ。

 

『もう大丈夫だ。欲しかった情報は手にいれた』

 

ああ、そう。それはよかった。

 

「マザーがこの迷宮だとトップなのかな」

「そうなんじゃない?アレよりでかい化け物いたらわたしたち生きていけないでしょ」

「そーだね。マザーは迷宮をここ使って行き来してるのかもね」

『かもじゃなく98%そうだがな』

 

でも近づかないでよかった。

ネタ半分で近づいてたら、狙われてやられてジエンドだった。

狙われて生き残るなんて無理でしょ。

 

あの巨体じゃ狭い場所は通れないけど、おそらく道をこじ開けてでもこちらを追いかけてきそう。

そんな恐怖があった。

 

これになら、アラバが負けたとしても何も違和感がない。

ギャラドスなんて一撃だろうね。

あーヤダヤダ。なんでこんな怪物がいるんだろう。

サヤなんて目じゃないぞ。

 

マザーの視線が、ある一点に定まる。

それは、マグマの巨大な湖の底。

あの湖もおっきかったんだよね。

今まで見た中で1番大きいくらい。

 

「白、探知で何かわかる?」

「えーと、あのさっき調べたけど何にもなかった。浅くてびっくりしたくらいかな」

 

でも、なんだろう。浅いマグマの湖。

嫌な予感がする。

なにもないはずなのに。

 

そしてマザーは口を向けて、光線を放った。

グラグラと迷宮が揺れる。

 

本物の光線だ。バグじゃない。

本当の、破壊光線。

 

私は固まった。この力の凄さと恐怖と美しさに。

白も、電脳でさえも言葉を失っている。

こんなものを見たら、しゃべれない。

 

 

 

 

 

次の瞬間だった。

 

 

 

地面から、壁から、天井から。

轟音が鳴り響き始める。

 

 

 

ドゴン。

 

 

 

巨大な土の槍が何十本もマザーに向かって飛び出した。

元々身構えていたのかぎりぎりではあったけど、それらを全て避け切ってる。

 

 

 

だけど、その後に湖から放たれた巨大な光線に、マザーは対応しきれなかった。

脚の一本にその光線が当たって、先端が溶け落ちる。

 

マザーも逃げようとは思ったみたいだけど、その光線はマザーが出てきた穴にも撃ち込まれる。

巨大な地響きと共に大量の岩がその穴から降って来た。

マザーはそれに幅まれて上層に上がることは出来なかったみたいだ。

 

そして、マザーを屠ろうとした張本人は、湖から姿を現した。

 

100メートルはあるだろう身体に、赤く光る鱗。

全てを破壊できる鉤爪。

どんなものでも押し潰せる、圧倒的な存在感。

 

うん。4種類目のポケモンがこれか。

勘弁してほしい。

 

 

 

 

グラードン。

 

それは、体内から発光し始める。

周りの岩が、溶けていく。

地獄絵図みたいだ。

 

いや、地獄そのものだ。

 

『離れろ!』

「わかってる!」

 

字面が揺れる中、白が猛ダッシュをかける。

 

 

 

瞬間、噴火が起きたのがわかった。

山じゃなく、ポケモンから湧き出るマグマ。

立ち上る噴煙に、降りかかるマグマに身体を削られるマザー。

 

この記憶は、火耐性でも相殺できなかったHP減少とともに私の身体に刷り込まれた。

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

「え?」

 

他の大迷宮に向かっている間、私はクイーンからの要請を受けた。

曰く、クイーンが瀕死になったらしい。

まだ命はあるようだし、生き残ったのは良かったんだけど、誰にやられたんだ?

 

火龍の気が狂ったとして、一対一じゃ負けるはずがない。

でも、一対一だったというのは間違いないらしい。

 

急ごう。星の逆側だ。

急いでクイーンを治癒して、その敵も確認しなければ。

 

私は、ジェット機のように速度を上げる。

 

 

 

 

 

 

突然、()()()()()()()()()()

 

ものすごい衝撃と共に手放しそうになった意識を無理やり抱きとめ、私は顔を上げる。

上げているのだろうか。

わからない。 

墜落する身体に鞭打って、なんとか体勢を整える。

飛び去っていく襲撃者の姿も確認出来た。

 

 

やられた落とし前ならつけてやる。

 

見たこともない龍に、私は一片の容赦も無く襲い掛かかった。





龍って誰なんだろうな(遠い目)


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21 私はなにも見なかった

これで勝つる


なにも見なかった。

マザーとグラードンのマジバトルなんて見てない。

マグマを被ってるマザーなんて見てない。

 

嗚呼、異世界は恐ろしい。

生まれて初めて会った、最強の蜘蛛。

それは私自身の母さんだった。

 

これがトップレベルの存在だと思っていた。

だけど、そのマザーがグラードンに対して防戦一方だった。

異世界の魔物の強さがわからない。

まあ、そのグラードンが放たれた原因が私っていう可能性もあるんだけど。

 

 

ウダウダ考えるのはやめよう。

だって、こんなのが出てくるんだし。

 

 

 

鰻。

なんだお前、こっちが考えてる時ばっかに出てくるな。

前は勝てたけど、色々犠牲にしたっぽいしなあ。

今回はなにも失いたくないので、穏便に済ませません?

ステータス私が勝ってるし。

 

でも私の期待とは逆に、鰻は火球を放ってくる。

 

 

 

あ、鑑定したし襲ってくるの当たり前か。

ある程度余裕を持って避ける。

ん?なんで余裕あるの?

 

 

『鰻の方に麻痺が入ってる。麻痺の邪眼だな。じきに動けなくなるぞ』

 

実際、その言葉が言い終わられる前に、鰻は完全に動けなくなった。

その隙に雷魔法をバンバン撃ち込んで鰻を倒す。

白は完全に他のこと考えてるっぽいし、舐めプが凄い。

 

 

《経験値が一定に達しました。個体、ラグ・ロアがLV3からLV4になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。『思考加速LV5』が『思考加速LV6』にレベルアップしました》

《熟練度が一定に達しました。『空間魔法LV3』が『空間魔法LV4』にレベルアップしました》

《スキルポイントを入手しました》

 

 

 

 

 

てか、麻痺の邪眼強すぎない?

 

 

『ある程度ステータス準拠だし、エレテクトには無効だ。あと黙って欲しいが』

『え?』

 

次の瞬間、白の思考が流れ込んでくる。

あれ、私覗き見してるの?

 

 

 

 

 

ねえ、鑑定がやっとLV10になったんだけど、なにもないの?D。流石に魔法くらいは撃てるようになりたいんだけど。

鑑定の強化版。例えば叡智みたいなスキル、あってもいいかなーって、思わない?

 

 

 

『ねえ、なに言ってるの?』

『Dを揺すってるな』

『いや、無理でしょ』

『そうか?でもDだぞ』

『いや、逆にDだから無理なんでしょ』

 

《ザ、……ザー、…ザ、ザー、ザー、……》

 

え?

 

《ザー、要請、ザー、…上位管理者権限かく、ザー、……》

 

《ザー、…理者サリ………ザー、…却下、ザー》

 

アイツ、やりやがった。本当に。Dを、動かしやがった。

 

《ザー、ピン!》

 

機械音が鋭く響いて、

 

《要請を上位管理者Dが受諾しました》

《スキル『叡智』を構築中です》

《構築が完了しました》

 

《条件を満たしました。スキル『叡智』を獲得しました》

《『鑑定LV10』が『叡智』に統合されました》

《『探知LV10』が『叡智』に統合されました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『禁忌LV7』が『禁忌LV8』になりました》

 

《条件を満たしました。称号『叡智の支配者』を獲得しました》

《称号『叡智の支配者』の効果により、スキル『魔導の極み』『星魔』を獲得しました》

《『MP回復速度LV4』が『魔導の極み』に統合されました》

《『MP消費緩和LV3』が『魔導の極み』に統合されました》

《『魔量LV9』が『星魔』に統合されました》

《『護法LV4』が『星魔』に統合されました》

 

沈黙した。

 

本当に、本当にやりやがった。

 

 

 

『いいサンプルになった。正直マジで受諾するとは思ってなかったが。オレ様が鰻を回収してやるからお前は白と話してろ』

『あ、うん』

 

 

 

 

「ねえ、青?鑑定していい?」

「いいけど?」

「鑑定!」

 

 

 

 

「変化なくね?」

『そりゃあそうだろうな。叡智の効果は知覚範囲全てでの鑑定。あくまで鑑定範囲が広がるだけだ。もう既に知ってればそれ以上の情報は出てこねぇさ』

「電脳!?なに言ってくれてんの!?青びっくりさせるつもりだったんだけど!」

『まあ、さっき覗き見してたしな。オレ様主体で』

 

「マジ?」

「マジです」

 

「はぁー、で、これ平気なの?」

「なにが?」

『そりゃスキル急に作られたら不安になるだろ』

「電脳、どう思う?」

 

 

 

 

私、戦力外?

いいもん。

取得可能なスキル見るし。

 

 

 

 

 

『まあ問題ないだろ。死んで欲しかったらあのD様がスキル作るわきゃねーに決まってる。せいぜい生き残れ蜘蛛風情がっていう励ましだよ』

 

「酷くない?全部が」

 

 

 

あ、取得出来るスキル色々ある。

しかもスキルポイント0で。

えっと、どれどれ?

 

取得出来るのは、えっと?

 

 

 

 

 

《現在所持スキルポイントは2000です。

 スキル『瞬間速度強化LV1』『不意撃LV1』『魔連斬LV6』『範囲電撃LV6』をスキルポイント0使用して取得可能です。

 取得しますか?》

 

強くないか?

 

 

 

じゃあ、全部取得!

ゴー!

 

《『瞬間速度強化LV1』『不意撃LV1』『魔連斬LV6』『範囲電撃LV6』を取得しました。残りスキルポイント2000です》

《『魔連斬LV6』『斬撃強化LV2』が『魔連斬LV6』に統合されました。熟練度が一定に達しました。『魔王斬LV1』を獲得しました》

《『範囲電撃LV6』が『雷魔法LV6』に統合されました。熟練度が一定に達しました。『雷光魔法LV1』を獲得しました》

《『不意撃LV1』が『影魔法LV6』に統合されました。熟練度が一定に達しました。『闇魔法LV1』を獲得しました》

 

おい。超強化入ったんだが?

電脳。

 

 

『あー、すまんすまん。思ったより優しくてよかった。いい方向に想定外だったな』

『私の方だけ雑じゃない?』

『いや、マジでよかった。下手なドーピングをしたら禁忌が上がるかなって理由でやめてただけだ』

『ああ、そう』

『あと、統合するとスキル消滅するかなってな』

『うん。消滅してる』

『わかってる。終わったことだし結果オーライだろ。

 最高だな』

 

 

 

うん。本当によかった。






物語、微妙なところで切れてしまった。


瞬間速度強化は高速移動、魔連斬はきりさく、不意撃はふいうち、範囲電撃は放電から取ってます。

強くなりすぎかもしれんけど、他の魔物も強くなってるし……(墓穴)。


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22 ファイアキング

白は叡智を手に入れた!
白は強くなった!


「いくぜ」

「おう」

 

白が、壁に向かって構えると共に、魔法陣が浮かびあがった。

おお様になってる。

私が魔法撃ってる時もこういう感じなのかな。

 

「術式展開!

 魔力充填完了!

 毒弾発動!」

 

なんか、黒っぽいものが発生して飛んでいった。

あれが毒弾か?

 

雷魔法以外の魔法は初めて見たから気になるね。

近づいて、触れてみる。

何もないな。

舐めてみるか。

 

イタっ。

 

『アホか。毒だから痛いに決まってるだろ。

 解析でどっちにしろ触れるつもりだったが』

 

「どう?」

『蜘蛛毒ではないな。しかも相当弱い。

 そこまで威力に期待はできないと思った方がいいぞ』

 

「うーん」

 

じゃあ、私の番。

 

「雷光弾!」

 

周囲の魔力を一点に集めて、小さな電気玉を構成する。

バチバチと強い力を持った弾はそのまま飛んでいく。

 

ドン!

 

え?壁が抉れた。よな?

これ。

なんか湯気上がってるよね。中層なのに。

 

『ちとこれはキツイな。

 正直今の所制御がムズい。

 これから練習するからちょっと待ってろ』

 

 

 

 

 

「青、強くない?

 私、やっと魔導の極み手に入れたところなんだけど?」

「文句言わないで。仲間でしょ」

 

微妙に不服そうな顔をした白と共に、中層を徘徊する。

 

ついでに近くにいたナマズに2発雷光弾を撃って倒す。

本当に楽に勝てるようになった。

どうせだし、ナマズ食いながらステータスでも見てみるか。

 

『ラグ・ロア Lv4 名前 青

               佐野蒼生

HP:135/135(緑)

MP:860/860(青)

SP:178/185(黄)

  :175/185(赤)+897

ステータス

平均攻撃能力543

平均防御能力546

平均魔法能力805

平均抵抗能力837

平均速度能力873

「HP大吸収Lv1」「HP自動回復Lv5」「SP回復速度LV3」「SP消費緩和LV3」「瞬間速度強化LV1」「破壊強化LV3」「毒強化LV4」「毒合成LV8」「気闘法LV2」「気力付与LV2」「猛毒攻撃LV3」「腐蝕攻撃LV1」「毒合成LV8」「糸の才能LV6」「万能糸Lv3」「操糸Lv9」「投擲LV7」「立体機動LV5」「集中Lv10」「思考加速Lv5」「並列意思Lv2」「命中Lv9」「無音LV1」「隠密Lv7」「魔王斬Lv1」「外道魔法Lv5」「電撃付与Lv10」「雷付与Lv5」「過食Lv8」「暗視Lv10」「視覚領域拡張Lv2」「予見Lv1」「演算処理LV7」「命中LV9」「回避LV7」「電気魔法Lv10」「雷魔法Lv10」「雷光魔法Lv1」「雷耐性Lv6」「火耐性Lv2」「影魔法Lv10」「闇魔法Lv1」「毒魔法Lv6」「毒耐性Lv8」「空間魔法Lv3」「深淵魔法Lv10」「麻痺無効」「石化耐性Lv4」「酸耐性Lv4」「腐蝕耐性Lv3」「外道耐性Lv3」「破壊耐性LV4」「打撃耐性LV2」「斬撃耐性LV3」「恐怖耐性Lv5」「苦痛無効」「痛覚軽減Lv4」「気絶耐性LV3」「視覚強化LV9」「聴覚強化LV8」「嗅覚強化LV7」「味覚強化LV7」「触覚強化LV7」「生命LV9」「瞬発LV9」「持久LV9」「剛力LV4」「堅牢LV4」「強化産卵Lv10」「小型化Lv10」「共生Lv6」「賢姫Lv4」「妖姫」「怠慢Lv7」「電脳」「傲慢」「奈落」「禁忌Lv8」「n%I=W」

スキルポイント:2000

称号 「悪食」「血縁喰ライ」「魔物殺し」「魔物の殺戮者」「毒術師」「糸使い」「大感染」「オリジン」「傲慢の支配者」「電脳の支配者」「究明者」「暗殺者」』

 

 

 

 

だいぶ強くなってる。それこそ、昔じゃ信じられないほどに。

あ、でも鰻よりは低かったな。ステータス。

残念。

高いと思ってたのに。

 

 

『おっす!私魔法担当!白の並列意思から生まれました!』

「おお、頑張れ」

 

いつの間にか生まれていた白の魔法担当に挨拶をして、私はなんとなく前を見る。

 

 

 

 

 

 

 

うん?

 

あれ、マグマックの進化系か?

マグカルゴみたいなやつ。

ビッグカタツムリ。

 

駆け寄って、電脳に頼む。

 

電脳!

 

『マグカルゴン Lv4 名前 無し

ステータス

HP:69/69(緑)

MP:80/80(青)

SP:132/135(黄)

  :135/135(赤)

ステータス

平均攻撃能力95

平均防御能力98

平均魔法能力104

平均抵抗能力109

平均速度能力67

「HP吸収Lv7」「HP自動回復Lv1」「思考加速Lv1」「命中Lv8」「鑑定Lv8」「探知Lv3」「隠密Lv6」「外道魔法Lv3」「電撃付与Lv10」「雷付与Lv4」「過食Lv8」「暗視Lv10」「視覚領域拡張Lv1」「火魔法Lv10」「火炎魔法Lv6」「毒魔法Lv3」「毒耐性Lv1」「土魔法Lv3」「麻痺耐性Lv1」「石化耐性Lv4」「酸耐性Lv3」「腐蝕耐性Lv3」「外道耐性Lv3」「恐怖耐性Lv5」「炎熱無効」「苦痛無効」「痛覚軽減Lv5」「剛力Lv2」「堅牢Lv1」「小型化Lv10」「毒霧Lv3」「溶岩鎧」「禁忌Lv4」

称号 「悪食」「血縁喰ライ」「魔物殺し」「オリジン」

スキルポイント:800』

 

いいもん見つけてしまった。

あまりにいいもん見つけてしまった。

オリジン個体。

キタコレだね。

 

 

 

早速、毒魔法の弱毒で削っていく。

とうのマグカルゴ自体はというと。

 

 

 

めっちゃ炎を吐いてきた。

 

そりゃそうだよな!

いくら私が捕まえるつもりで魔法してても殺されると思うよな!?

 

危ない!

私の横を火の玉が掠める。

龍系でもないのに殺意高くないか!?

 

いいよ、もう体力ほぼ削ったし!

捕まえるわ!

 

死にかけのマグカルゴに手を触れ、体力が減り切る前に急いで手を離す。

激痛に襲われるけど、痛覚耐性でゴリ押す。

 

《熟練度が一定に達しました。『痛覚軽減Lv4』が『痛覚軽減Lv5』にレベルアップしました》

 

うん。

 

捕獲、成功しました!




10話あたりの書き違え多すぎないか?

デバック作業、死にそう。

マグカルゴ……マグマックの進化系。でかいカタツムリ


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23 ステータス

『星魔:MP、魔法、抵抗の各種ステータスに1000のプラス補正が掛かる。また、レベルアップ時に100の成長補正が掛かる』

?????

ん?


マグマックは、とりあえずその場に放置することにした。

餌として私の卵をいくらかあげてはおく。

 

 

そして、私は、白を鑑定して衝撃的なことに気づいてしまった。

 

『ゾア・エレ LV4 名前 白

 ステータス

 HP:236/236(緑)

 MP:1431/1431(青)

 SP:235/235(黄)

   :235/235(赤)+799

 平均攻撃能力:305

 平均防御能力:405

 平均魔法能力:1427

 平均抵抗能力:1603

 平均速度能力:1732』

 

なんだ、と……。

 

 

 

私のステータス、これの半分だよな。

大体全部。

スキルは鑑定してた。

でも、ステータスは確認してなかった。

なんだよ星魔って。

 

 

 

私の方が圧倒的に弱いじゃないか。

魔法自体は、私の方が強い。

だから気づかなかったんだ。

ステータスは比較にならないと。

 

こう思ってる自分が、情けない。

ステータスなんて関係ない、仲間だって言っていた私は、嘘吐きだ。

 

悔しい。

何か、方法はないか。

強くなれる方法は。

 

 

力が欲しいか。

そう言われれば、私は即座に禁忌をカンストしてでも貰ってやる。

電脳。

 

 

 

『あればやってるわ。

 出来てねー時点で、まあ、じゃあそういうことだな』

 

 

 

だめだ。

私は今まで余裕ぶっていた。

先輩ヅラをしていた。

 

ステータスが上だったから。

Dに与えられた、仮初の力で。

 

自分に与えられた力で驕った、私が嫌いだ。

もういい。

私は、やりたいように生きる。

 

 

 

『賢姫!』

 

『賢姫ならオレ様が管理してるが。最近見にきてなかったからな』

『管理権をもらっていいか?』

『もちろん』

 

 

 

子供たちの中で生きてるのは600匹くらいか。

そのうちには、アースエレテクトになっている個体もいる。

 

アースエレテクトは、デトロエレテクトの進化系でアークと同じ立ち位置にある魔物だ。

 

だけど、中層ではそれも意味がない。

アースが中層にぶち込まれたところでほとんど動けない。

おそらく、HPが減る方が早い。

 

 

 

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『並列意思LV1』が『並列意思LV2』になりました》

 

 

 

うっさい!

意識が吹っ飛びかけるのを無理やり抑えて、電脳に要請をかける。

そして、再び眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『賢姫LV4』が『賢姫LV5』になりました》

 

 

 

 

 

 

『起きたか』

『白は?』

 

『もう歩いてるだろ。お前は今は落ち着かないかなって思ったから気絶してるのバレないように行動してやったからな』

『ありがとう』

 

『落ち着いた。他の意思はどういう状態?』

『まだオレ様が保存してる。

 賢姫と妖姫、どちらに付与したい?』

『え?』

 

『お前の意識は、それ自身では持ってられない。

 依代が必要だ。

 出来ればすぐ選べ』

『賢姫の場合どうなると思う?』

『魔物使役の強化だろうな』

 

『じゃあ妖姫の場合は?』

『ステータス強化の増強だな。おそらくだが』

 

『妖姫にしよう』

『いいのか?

 オレ様は賢姫の方がいいとも思うが』

『中層ではどうしようもないし』

『それもそうだな。じゃあやるわ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『終わったぞ』

『妖姫!』

『?』

『電脳。妖姫はどういう状態なの?』

『軽ーく意識がある感じだな。

 元々かなり弱ってたし。

 会話には期待しない方がいいぞ』

『?』

 

『じゃあ、電脳、妖姫。協力してステータスの強化の研究をお願い』

『わかった。まかしとけ』

『ん』

 

これ、一応話してることはわかってるくない?

 

さてじゃあどうしようか。

アースたちはクイーンになってほしいからそのままほっとこう。

 

いや、中層に来てもらうか?

でもなあ。

グラードンに出くわしたらほとんど全滅しちゃうだろうし。

そんなことはほぼないだろうけど、私は出くわしたからロクでもない危険性を知っている。

そもそもHP吸収ばっかやって生きてたはずだから、HP自動回復はほとんどないはず。

じゃあ無理だ。

火耐性ないからすぐ死ぬじゃん。

 

『HP回復だけ鍛えとけってアイツらに説明できる?』

『もちろん、やっておく。

 あと、賢姫のレベルも5に上がってる。

 確認してみろ』

 

 

 

 

 

『賢姫 レベル5 卵品種改良』

 

よくわからないスキルが追加されていた。なにこれ。

 

 

 

『卵品種改良:効果:被産卵個体のスキル操作、または卵自体の操作か可能。ただしその際、体力を多く消費する』

 

ほおーん。卵の改造か。

多分無精卵とか作れるのかな。

 

美味しそう。

そしたら人族のご飯とかも作れそうだね。

 

 

 

 

正直、白は違うかもしれないけど。

 

私は人族の奴隷になるつもりだ。

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

強い。

 

私の腕が弾き飛ばされる。

素早い。

しかも、平均ステータスも30000を超えている。

これはクイーン以上だ。

確かにクイーンなら負けてしまう。

 

龍の首を持って、隕石のように地面に叩きつける。

大気圏から一気に。

それでも、倒れない。

 

 

それどころか、2本の角に巨大な業火を纏わせて頭突きをしてきた。

モロに食らって私のHPの1割が吹き飛ぶ。

 

なんなんだ、コイツは。

 

なんで、現れ、私に襲い掛かる。

また、あれか。

ポケットの中の侵略者。

 

侵略者どもは、残りHPが100でも全く気にしないのか。

 

 

 

どうなんだ、レックウザ。

 

鋭いかまいたちを避けて、叫ぶ。

 

『うるさい!なぜ私の邪魔をする!

 

 レックウザ!!』

 

 

 

同時に深淵魔法LV10、反逆地獄を放つ。

 

 

 

『貴様が縄張りに入ったからだ!そもそもーー』

 

え。

待って。話せるの。

 

待って。死なないで。

 

 

でも、私の深淵魔法は奴の次の言葉を許さなかった。

 

身体に深淵魔法が当たり、消滅していく。

 

待って。

この世界は……。

 

《『逃亡』が発動しました》

《レックウザは遠くへ飛び去っていった……》

 

 

 

 

 

 

どういうこと?

 

私は、地面に仰向けに倒れ込む。




レックウザは、めちゃくちゃ縄張り意識が強いらしい。


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24 人族の奴隷





一概に人族の奴隷といってもいわれたことになんでも従うわけじゃない。

出来るだけ彼らの近くで食べ物を提供するだけだ。

 

上層で会った人たちのことを考える。

おそらく、今の時代は中世のはず。

鎧着た奴らがいたし。

 

ならば食生活は安定していないはずだ。

それか貴族だけ安定してる状態。

 

そんな時、超栄養のある卵を産む生き物が擦り寄ってきたらどうよ?

そりゃ最初は警戒される。

だって蜘蛛だしね。

 

この世界がポケモンワールドみたいに人様とモンスターの仲がいいなら話は別。

でも私だって殺されないように糸で抵抗してるしそれはないな。

 

まあ卵を配ることで飢えた人たちから徐々に浸食していくわけ。

 

 

 

 

私天才か?

 

 

 

問題もある。

ノコノコ迷宮に入ってくるようなやつらが、飢えてんのかっていう問題。

 

 

 

人間は余裕がないと冒険を出来ないとは聞く。

なぜなら土台の上に娯楽は成り立つものだから。

 

流石に冒険業を娯楽っていうのは舐めてるか。

逆に、変な薬の実験体になる方に近いのかもしれない。

他の人が知らない場所に入って行くんだから。

 

うわぁ。

探検者たちに同情する。

あの人たち鎧着てたし貴族の圧力で来てた傭兵さんでしょ。

 

かわいそう。

来たくて来たわけじゃないんだろうなぁ。

多分仕事だから行けって言われたんだろうなぁ。

 

人に私の子供をいくらか貸してあげてもいいかもしれない。

減るもんじゃないし。

 

 

 

人間だしろくでもないことはたくさんやってると思う。

それでもDに嫌がられなければ人に協力したい。

 

Dに嫌がられたら?

ないない、私が殺される。

そしたら流石に人族は守らない。

 

でも、やっぱり人間ってすごいな。

多分地球の人間と同じでGよりも殲滅しにくいんだろう。

 

だってあれだぞ?

あんなクイーンタラテクトとかアラバとか生きてる世界で人様が普通にいるんだぞ?

 

もちろん、迷宮に魔物が多いだけで地上に魔物が全くいない可能性も否定はできない。

でもその線は薄いと思う。

 

 

マザーが中層に一時的に来ても無事だったみたいに、魔物に光に弱いとか言う特性は無い。

 

マザーだけかもしれないけど、マザー以外のタツノオトシゴや鰻も光に弱いわけじゃ無いしそんなスキルも無い。

なにより、光対策スキルをもたない私が、今ここにいる。

 

 

それならば人を狩りに地上に出ても全くおかしくないはずだ。

じゃあ、流石に外に魔物が出て進化するのもおかしくないでしょ。

 

 

それに対し、しぶとく生き残る人間。

どんだけ適応力高いんだよ。

地球と文化も近いし。

 

 

うん、やっぱり人様のお膝元にいた方がいいな。

利益が大きすぎる。

 

 

人様の街の中で卵を産んで、兵も出して、まさにポケモンのような存在になろう。

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

『電脳!探知を頼む!』

『あー、やりてえことわかったわ』

《熟練度が一定に達しました。『外道耐性Lv5』が『外道耐性Lv6』にレベルアップしました》

《熟練度が一定に達しました。『外道耐性Lv6』が『外道耐性Lv7』にレベルアップしました》

《熟練度が一定に達しました。『外道耐性Lv7』が『外道耐性Lv8』にレベルアップしました》

 

 

私の探知は実はほとんど使えないヤツだった。

白は忍耐を取って外道無効を獲得したけど、私はそうじゃなかったから。

 

流石に探知を使いこなせないのはまずい。

だから、電脳に耐えてもらうことにしました!

 

 

 

 

電脳は、すごい。

実は電脳は外道無効でなくても探知を使える。

 

 

もともと、外道無効である必要があるのは、あまりにも情報量が多すぎるからであって。

それを上回る処理能力を電脳は持っている。

 

ただ、それだと探知をするために電脳を毎回消費しなければいけなくなる。

電脳にやらせたい仕事はたくさんあるから、それは出来るだけ避けたい。

 

 

 

だから私、決めました!

電脳に無抵抗になってもらって外道無効を獲得する。

 

そうすれば、電脳無しで探知が使い放題!

 

 

 

『鬼かお前は。オレ様の使い方間違ってるだろ!』

『電脳だって早く言ってくれれば良かったのに。最適解を出すスキルなんじゃないの?』

『オレ様は一度始めた研究には集中したいタイプなんだよ。無理言うな』

『無理ではなくない?』

 

 

なんだかんだ言って電脳は従ってくれる。

ありがたい。

君のおかげで私は生きている。

 

 

 

《熟練度が一定に達しました。『外道耐性Lv8』が『外道耐性Lv9』にレベルアップしました》

《熟練度が一定に達しました。『外道耐性Lv9』が『外道耐性Lv10』にレベルアップしました》

《『外道耐性Lv10』が『外道大耐性LV1』に進化しました》

 

 

 

うん?

ねえ。電脳。

 

 

『ああ?』

『苦しんでる中申し訳ないんだけど、無効じゃなくて大耐性に進化した』

『クソが』

 

 

ここまで口が悪くなる?

私の片割れだよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

レックウザにかまってる暇はないかな。

 

私はゆっくりと起き上がる。

なんだかんだアイツは生きてるっぽいし。

 

なんだよ、スキル『逃亡』って。

おかしい。

 

深淵魔法を当てたんだぞ。

逃げられる身体であってたまるか。

 

 

 

とりあえず今はいいや。

急ぐべき用はこれじゃない。

 

 

 

エルロー大迷宮に、飛ぼう。




エルロー大迷宮に飛んでくる魔王!
青は生き残ることができるのか!

次回、『青、死す!』

デュエルスタンバイ!


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25 魔王、飛来

タイトルナンバー9と10の内容が関係します。読んでいない方は読んでいただけると光栄です。

9の最後の部分と、10の称号の部分です


そうやって外道無効を獲得して数日。

私たちは中層を少しずつ進んでいた。

 

そして今。

最悪のことが起きている。

 

『今はどこに向かってる!?』

『道が入り組んでいる方。逆向き側』

『わかった。ありがとう』

 

 

 

 

 

私は一人、中層を歩く。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

事の発端は子供たちからの念話だった。

 

『母さん!』

『何があった、娘よ』

『女が飛んできた!』

『え?』

 

 

『ああ、そう言うことか。ありがとう』

 

 

 

私は通話を切り、ため息をつく。

 

『電脳、どういうことだと思う?』

『あくまで推測だが、厳しい現実を突きつけていいか?』

『うん。電脳が言うってことは多分そうなんだよね』

 

 

 

 

『『オリジンがきた』』

 

 

 

 

 

「白、別れの時だね」

「どう言うこと?ちょっとまって!」

 

白は引き止めようとしてくれる。

だから私は、彼女から離れる。

 

 

「オリジンが来た。私を捕食したがってるオリジンだ」

 

お尻から糸を放つ。

素早く、確実に。

ほどけるように白の脚に結びつける。

 

 

 

そして私は、彼女が見えなくなるまで走り続けた。

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

そして今に至っている。

私は探知と電脳をフルで働かせて、それに子供たちからの目撃情報を組み合わせていく。

 

すると、一つの解にたどり着いた。

 

 

クイーン四天王の方に進んでる。

どういうことだ?

 

ちなみにクイーン四天王は、マザーにくっついていた4匹のバチュルだ。

それぞれにアナ、アニ、アネ、アノと名前がついている。

 

『アナ、今はどう言う状態?』

『特にここ数日は変わりがありません。クイーンタラテクトが瀕死ということも変わらないです』

『待って。マザー生きてた?』

『生きてましたよ。腕が2本完全に吹き飛んでいて、体も一部無くなってる。だいぶ重症だとは思いますが』

 

 

じゃあマザーに関係することが最優先事項。

ついでに私を殺しに来たって感じなのかな。

 

 

最悪から遠のいたように見えて実は変わらない。

オリジンにとって、私は片手間でも十分殺せるから。

 

 

しかももう人の姿になっていると言うことは、オリジンの最終進化まで辿り着いているということだ。

そんな奴にまだギャラドスにも一人で勝てない私が勝てるわけがない。

まずい。

出くわしたら本当に死ぬ。

 

 

『とりあえず4人で下層に飛び降りて』

『待ってください。何があったんですか?』

 

『クイーンに向かう上位存在が現れた。おそらくオリジンだと思う』

『勝てないですかね』

『無理だ。もう人の姿をしてるってことは、強さがおかしいっていうことだし。逃げてほしい』

『わかりました』

 

 

 

『おい、電脳だ。お前ら、クイーンにはバレてるのか?』

『バレてます』

 

マジか。

だからといって何も言えはしないけど。

 

『今クイーンには意識はあるのか?』

『ありません。仮死状態で昏睡中です』

『何日前から意識はないんだ?』

『4日前です。その時、クイーンは中層に行って見るも無残な姿で帰ってきました』

 

 

見るも無残って最近言わないよね。

 

『その後、緊張状態から解放されたのかすぐに意識を失い今の状態に至ります』

『今の状況はよーくわかった。

 中層への道はわかってるか?』

『クイーンでもこんな状態なんですけど中層に向かいますか?』

『大丈夫だ。

 アイツが死にかけなのはグラードンが原因だ。

 襲われていた様子を見ていたが自分からは襲いかかってこない』

『攻撃されたら仕返してくるってことですか?』

『そうだ。中層と下層への抜け道は連結してる。

 飛び降りれば下層にそのまま行けるから、火耐性がなくても問題ない。

 だから飛び降りろ』

『わかりました』

 

 

 

これでクイーン四天王に対しての警告は終わった。

 

 

 

 

 

あとは、私が逃げ延びるだけだ。

 

 

 

 

娘たちの情報と、電脳が私の記憶から生み出したエルロー大迷宮の地図を用いてオリジンの位置を特定し続ける。

 

『電脳、私を生き残らせるために最善を尽くして』

『もちろんだ。

 本気出すぞ』

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

よくわからない蜘蛛が何匹かいる。

私は一匹だけ優しく捕まえて、鑑定を行う。

 

 

 

スキルが多い。

ステータスはこんなに低いのに。

なんだこの虫は。

 

わけがわからない。

 

うっ。

鑑定を逆に行われた。

こちらは鑑定を阻害できる。だから、情報は伝わらない。

 

私は、Dに課せられた約束を思い出す。

 

『この出来事の元凶を、殺してはならない』

だったか。

 

おそらく、この出来事の元凶は世界を裏から見て笑っているのだろう。

腹が立つ。

悔しい。

 

 

でも、同時にこの世界には存在するとはわかっている。

どんな怪物なのだろう。

少なくともレックウザ、そしてクイーンを襲った魔物を従えている。

 

そんな怪物に、私は勝てるのか?

 

私はアースエレテクトという魔物を、地面に投げ捨てる。

 

 

 

 

 

わかった。

わかってしまった。

 

中層にいる。

確かにその怪物は中層にいる。

私のオリジンが疼きだした。

スキルなのに、ゾクゾクする。

なんだろう、この興奮は。

 

行こう。中層に。




グラードン……でかいゴジラ。めちゃくちゃ熱を持っていて熱いのに炎属性はついていない。


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26 魔王アリエル

グラードンのことでかいゴジラって書いたけど小さいゴジラってなんなんや(哲学)



うん。

オリジンは絶賛クイーンの方へ向かっている。

おそらく治療を行なってから中層に向かう感じかな。

グラードンと遭遇して足止めになってくれたらいいんだけど。

 

 

 

で、おそらくオリジンとグラードンが戦えばオリジンが勝つと思う。

クイーンでもあんなに攻撃をくらって死んでいないんだ。

その上位存在にいるオリジンはよっぽどのことがない限り死なないと思う。

 

でも私の希望はことごとく打ち砕かれた。

 

クイーンに触れることなくそのまま中層に向かってきたオリジンのために、私は準備を急ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

ついに来てしまった。

招かれざるものよ。

 

 

オリジンよ。

 

 

見た目は、少女のようだった。

ただその目は全く笑っていない。

今までのバチュルの増殖で何か気付いたのかな。

服装はなぜか、とても布面積が小さい。

なんで?

 

あと、マント?なのかな。

そんな感じの6本の足みたいなのがついたフードっぽいのをつけている。

いや、身長的に私の方が圧倒的に小さいです。

だから、その上から目線で観察するような目はやめてください。

 

話し合いで解決できたりしませんか?

 

「*******?」

 

だめでした。

私が言語をわかってない。

私まだ異世界語勉強できてないから。

日本語わかったりしない?

 

「戦い、良くない、やめましょう」

「*******?」

 

だめだ。首傾げてる。

例えわかってたとしてもあっちが日本語話せないと私が理解できないし。

 

「*******」

 

オリジンは手をこちらに伸ばしてくる。

その手のひらに展開される魔法陣。

まずい。

 

『電脳!』

『よしきた!』

 

『オリジンタラテクト LV139 名前 アリエル 

 ステータス

 HP:90098/90098(緑)+99999(詳細)

 MP:87655/87655(青)+99999(詳細)

 SP:89862/89862(黄)(詳細)

   :89856/89856(赤)+99567(詳細)

 平均攻撃能力:90021(詳細)

 平均防御能力:89997(詳細)

 平均魔法能力:87504(詳細)

 平均抵抗能力:87489(詳細)

 平均速度能力:89518(詳細)

 スキル

「HP超速回復LV10」「MP高速回復LV10」「MP消費大緩和LV10」「魔力精密操作LV10」「魔神法LV10」「魔力付与LV10」「魔法付与LV10」「大魔力撃LV10」「SP高速回復LV10」「SP消費大緩和LV10」「破壊大強化LV10」「打撃大強化LV10」「斬撃大強化LV8」「貫通大強化LV9」「衝撃大強化LV10」「状態異常大強化LV10」「闘神法LV10」「気力付与LV10」「技能付与LV10」「大気力撃LV10」「神龍力LV10」「神龍結界LV10」「猛毒攻撃LV10」「強麻痺攻撃LV10」「毒合成LV10」「薬合成LV10」「糸の天才LV10」「神織糸」「操糸LV10」「念力LV10」「投擲LV10」「射出LV10」「空間機動LV10」「連携LV10」「軍師LV10」「眷属支配LV10」「産卵LV10」「召喚LV10」「集中LV10」「思考超加速LV6」「未来視LV6」「並列意思LV4」「高速演算LV10」「命中LV10」「回避LV10」「確率大補正LV10」「隠密LV10」「隠蔽LV10」「無音LV10」「無臭LV10」「帝王」「鑑定LV10」「探知LV10」「昇華」「外道魔法LV10」「火魔法LV8」「水魔法LV10」「水流魔法LV5」「風魔法LV10」「暴風魔法LV10」「嵐天魔法LV10」「土魔法LV10」「大地魔法LV10」「地裂魔法LV10」「雷魔法LV10」「雷光魔法LV8」「光魔法LV10」「聖光魔法LV2」「影魔法LV10」「闇魔法LV10」「暗黒魔法LV10」「毒魔法LV10」「治療魔法LV10」「空間魔法LV2」「重魔法LV10」「深淵魔法LV10」「大魔王LV10」「矜持LV5」「激怒LV9」「暴食」「簒奪LV8」「休LV9」「堕淫LV4」「物理無効」「火炎耐性LV5」「水流無効」「暴風無効」「大地無効」「雷光無効」「聖光耐性LV8」「暗黒無効」「重無効」「状態異常無効」「酸無効」「腐蝕大耐性LV7」「気絶無効」「恐怖無効」「外道大耐性LV6」「苦痛無効」「痛覚無効」「暗視LV10」「万里眼LV10」「五感大強化LV10」「知覚領域拡張LV10」「神性領域拡張LV3」「天命LV10」「天魔LV10」「天動LV10」「富天LV10」「剛毅LV10」「城塞LV10」「天道LV10」「天守LV10」「韋駄天LV10」「禁忌LV10」

 スキルポイント:0

 称号

「人族殺し」「人族の殺戮者」「人族の天災」「魔族殺し」「魔族の殺戮者」「魔族の天災」「妖精殺し」「妖精の殺戮者」「妖精の天災」「魔物殺し」「魔物の殺戮者」「魔物の天災」「竜殺し」「竜の殺戮者」「竜の天災」「龍殺し」「龍の殺戮者」「無慈悲」「悪食」「血縁喰ライ」「暗殺者」「毒術師」「糸使い」「人形使い」「率いるもの」「覇者」「王」「古の神獣」「暴食の支配者」「魔王」「オリジン」』

 

 

 

うん?

 

『なにやってんの!?

 鑑定って相手不愉快にさせるんだよ?

 殺されるよ?』

『大丈夫だ。俺たちも今鑑定された。お互い様だし大丈夫だろう』

『大丈夫じゃないよ』

 

やっぱり見てみるととんでもないな。

なんだこの称号の数は。

でも、何より目を引いたのはそのステータスと名前だ。

 

タラテクトってことは蜘蛛から進化したのかな?

それこそ、スモールレッサータラテクトから。

アリエルって名前もどこから来たのか気になる。

 

あと何だ、そのステータスは。

高すぎでしょ。

こんなの逆立ちしても勝てないよ。

 

 

『おい!アリエルを見ろ!』

 

ふと前を見ると、アリエルが私に向かって魔法を構築していた。

待って。

まずい。

絶対に死ぬ。

 

『よけーー』

 

電脳の言葉が終わる前に、超至近距離で放たれた深淵魔法は私を貫いた。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

あー、やばすぎて笑えない。

ステータス高すぎだし、そもそも魔法ですら私よりも全然うまい。

情報は得られたから、もう大丈夫だよ。

 

帰ってくれ。

あとすまんな、脳操られてた私の子供。

深淵魔法は流石に感覚共有してても抑えようがなかった。

 

 

私本体は、近くの岩陰に縮こまっている。

 

私が生み出した蜘蛛はなかなかのものだと思ってたんだけどすぐに殺されてしまった。

やっぱりオリジンは駆逐すべきだと思ってるのかな。

狙われるっていうし。

 

私が卵改造で生み出した蜘蛛の能力は、こうだ。

 

 

 

『バチュル LV1 

HP:65/68(緑)

MP:60/60(青)

SP:68/68(黄)

  :67/67(赤)

ステータス

平均攻撃能力60

平均防御能力54

平均魔法能力60

平均抵抗能力60

平均速度能力57

「HP吸収LV1」「HP自動回復LV3」「火耐性LV1」「強化産卵LV10」「小型化LV10」「永久レベル1」「禁忌Lv4」

スキルポイント:100

称号 「悪食」「魔物殺し」「魔物の殺戮者」「毒術師」「大感染」「オリジン」「暗殺者」』

 

 

 

 

HP吸収と火耐性は、中層で生きていたものだって思わせるために卵改造でつけた。

そして称号の全てとスキルの一部は鑑定を()()()()()()()()()だ。

 

オリジンなんて称号を蜘蛛に付与しようとしたら、消費されるHPの量は私のHPとちょうど同じだった。

それだと私が死ぬから本末転倒。

じゃあどうしようもないかなってなった時に電脳が提案してくれた。

鑑定を誤表記に導くことを。

 

魔法について散々調べた時に、鑑定の表記のされ方についてわかったらしい。

そして、子供からの連絡で伝えられた、アリエルの鑑定不可。

それから発案されたのがこの作戦、影武者死んだふり作戦の全容だ。

 

ちなみにレベルが1だと怪しまれるかもしれないから、永久レベル1というスキルもつけている。

もちろん、ハッタリだけど。

 

 

 

 

アリエルは、バチュルが散った跡をじっと見つめている。

バレなければ私の勝ちで、バレたら私の負けだ。

 

 

 

しばらくして、彼女は踵を返す。

 

そして体長5cmの私の体をつまみあげた。




アリエルはつよい(天下無双)


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27 蜘蛛と魔王と最高神

前回の補足です。
青は影武者を立てたあとその場から離れませんでした。
というのも子供の操作は本体から送る電波を一部用いているので、離れると不安定になるからです。

以上、補足でした。

あと、主人公はアルセウス未プレイ。


捕まった。

流石に死んだんじゃないか、これ。

なんでわかったの。

ここに私がいるのが。

 

アリエルは私のことをジロジロと観察している。

どうにか抜ける方法は?

 

『背中を引き裂くしかねぇ。多分無理だ』

『なんでそんなに落ち着いてられるのよ』

『だって』

 

 

「※※※!」

 

アリエルの頭にゴツンと白い何かが落ちた。

 

 

 

スマホだった。

 

 

スマホ?

なぜスマホ?

しかも電脳もびっくりしてるみたいだ。

探知からすり抜けた?

 

しかもなんか変な装飾がある。

普通の人なら変な装飾で済むと思う。

だけど、私は気づいてしまった。

 

アルセウスだ。

 

 

 

アルセウスの装飾がされてる。

リングがデカくて使いにくそう。

 

 

 

『ここはエルローだいめいきゅう』

 

 

え?

えっ、え?

 

スマホの中から荘厳な声が聞こえ始めた。

男?

 

 

『わたしはアルセウス

 あなたたち ひとがそうよぶもの』

 

 

え?

アルセウスなのか?

どういうこと?

 

「わざわざオーパーツなんて使ってなにがしたいんだ?」

 

 

アリエルが日本語で喋ってる。

てかオーパーツってなに?

混乱する。

 

『電脳』

『今はそれどころじゃないわな』

 

そりゃそうだ。

アルセウスが喋ってんだし。

 

 

『あなたのかおを

 よくみせてください』

 

 

「写真でも撮ればいいの?」

『zoomでもかまいません』

「zoomってなんだ」

 

 

アリエルの出自がわからない。

写真とかスマホのことはわかってるのにzoomについては知ってない。

異世界人?

 

 

『じどりはできますか』

「じどりってなに?」

『じぶんでじぶんのしゃしんをとってください

 あおのぶんもおねがいします』

 

 

おお、名前覚えられてる。

凄い。

いやこれはいいことなのか?

悪いことなのか?

わからん。

 

「やり方わからないよ?」

『あお おしえることはできますか?』

 

ま、まあ。

 

「この矢印が2本ある場所を押して」

「こう?」

「そう、ほら」

 

「出来た。 

 なんで知ってるんだか」

 

睨まれた。

まずい。

地雷踏んだか?

 

地雷の場所分からないのやめて貰えません?

 

 

『それではふたりとも スマホをむけてうつってください

 できればえがおでいっしょに

 ゆうこうてきであることをアピールしたいのでおねがいします』

 

 

アリエルにスマホと私を持ってもらって写真を撮る。

するとスマホから溜息のようなものが聞こえた。

 

 

『えがおでとっていただければ うれしかったのですが

 さすがに だいいちほしびとだと それもむずかしそうですね』

 

 

日本列島◯ーツの旅みたいなテンション。

なんなの?

 

あと私の持ち方って背中をつまむのが正解なの?

手の上に置いて欲しいんだけど。

 

 

「このスマホだっけ?持ちにくくない?」

「それはわかる」

 

 

 

 

 

 

『なんとよびましょう』

 

 

私のこと思いっきり青って言ってたじゃん。

体裁で言ってるだけでしょ。

 

「私はアリエル、いや、やっぱり魔王と呼んでくれると嬉しいな」

 

 

アリエル魔王だったんか。

いや、流石にその強さだと魔王でも驚かないけど。

私が魔王に会ったこと自体が驚きだよ。

 

 

じゃあ私魔王に狙われてるの?

まだ無双もしてないのに。

 

『それでよいのですね』

「うん」

 

「私は青だけど」

『わかっています あんしんしてください』

 

体裁はどこにいった。

そもそもその発言が安心できないんだけど。

ねえ。

 

 

『まおう……』

 

『あなたが いま

 おりたっているせかいには

 ひとがポケモンとよぶ

 ふしぎないきものたちがあらわれます』

 

『まおう』

 

『すべてのポケモンにであうのです

 そのときに せかいはすくわれるでしょう』

 

「待って!」

 

アリエルがスマホに向かって叫ぶ。

 

「どういうこと!また世界をかき回すの!?

 女神様が奪われたように!」

 

どういうこと?

さっきからわからないことが多すぎる。

圧倒的に情報過多だ。

 

 

『ひとにも サリエルにも

 きがいをくわえるつもりはありません』

 

「じゃあ、なんでわけのわからない生き物を増やすの?

 侵略者さん」

 

 

やばい。

本気で怒ってる。

てかサリエル=女神なのかな。

 

『サリエルは きずつきません

 せかいのかいふくがよそうされます』

 

「それなら他の生物はどうでもいいって言いたいの?」

 

『はい まおうはちがうのですか』

 

 

 

 

 

 

「痛いところをつくね。黙秘するよ」

 

それはほぼ認めたようなものだと思うんだけど。

 

え?

 

サリエルって女神以外どうでもいいの?

それは私も困るんだけど。

 

あとアルセウスも創造神だよね。

なに言ってるの?

 

『ポケモンずかんがかんせいにちかづくとともに

 MAエネルギーをわたします』

「それはあのクズ男に使われるんじゃないの?」

『つかわれないように かこうします

 きにしないでください』

 

「わかった。やればいいんでしょ?

 どうすればいいの?」

『そのスマホのなかにポケモンずかんのデータがはいっています

 ずかんタスクは あとでかくにんしてください』

 

 

なんか急展開じゃないこれ?

私は何を見せられてるの。

 

『では またあいましょう

 さようなら Dにはきたことをいわないでください』

 

「待って!」

『こんどは なんですか』

「この蜘蛛はなんなの?」

 

アリエルに指を指される。

私、急な呼び出し。

てかなんで今生かされてるんだ?

 

『もうポケモンがわくのとは かんけいありません

 Dにしたがってください

 さようなら しばらくげんごせっていはオートにしておきます』

 

そして、アルセウスとの通話は切れた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「ねえ」

「なんですか?」

「青って言うんだよね」

 

魔王アリエルに背中を掴まれている。

嬉しいことに殺意はなさそうだけど、睨まれているのには変わりない。

 

「この世界を破壊したいとか思ってる?」

「いや全く思ってないですまったく」

 

怖い。

何考えてるんだ本当に。

暴力反対。

 

「私の邪魔をしたら本気で殺すからね?」

「わかりました」

「わかったならいい」

 

地面にポトリと落とされる。

た、助かったぁ。

 

 

「君の出自はなんなの?まさかこの世界の住人じゃないとか?」

「はい」

「そう。ギュリエディストディエスの言った通りだなぁ」

 

誰だそいつ。

初めて聞いたぞ。

 

 

「魔王の出自は?」

「本当は言いたいんだけど、禁忌に関わるからダメかな。

 でもその情報だけである程度わかるかもね」

 

 

 

「禁忌ってまだカンストしてないでしょ?」

「もうLV8だけど」

「カンストしそうだね。そしたらまた話そう。

 今、私は嬉しい気持ちとイライラした気持ちでいっぱいだから」

 

「あ、あと1つ」

 

帰ろうとした魔王が、振り向きざまに冷たい目を向けてくる。

 

 

 

「今からクイーンに会いに行くんだけど、なにもしてないよね?」

「してないです」

「じゃあいいや」

 

 

頼む私の娘。

なにもしてないでくれ。

寄生だけなら害虫と見られてないかもしれないから。

他なんかやってたらアウトだから。

 

 

 

 

 

「やっぱりこのスマホ持ちづらい。

 こんなでかいものどこに入れときゃいいの?」

 

 

 

それは私もすごいわかる。




アルセウス『やっと通話終わった』

ギラティナ『そうですか』

アルセウス『Dにバレないようにするの大変だったわ。
あとひらがなで喋るのキツかった。
でも、人の足元見て交渉するのは楽しかったな』

ギラティナ『最低』


図鑑はアルセウス仕様の、増えていくスタイルのものです


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W2 機嫌が悪い

白視点です。
青がいなくなった辺りから。


わたしは今機嫌がとても悪い。

青が何も言わずにどこかに行ってしまったから。

言いたいことはわかる。

 

私たちじゃオリジンには勝てないんでしょ。

オリジンは魔物の最終形態だから。

 

だからと言って勝手に一人で行くのはどうなのよ。

絶対死ぬじゃん。

二人でも死ぬ確率の方が全然高いってのに。

 

本当にふざけてる。

私が今の青の場所を特定できるのだって知ってるんじゃないの?

叡智で使えるマーキング。

自分がピンを刺したものに対してその現在位置やステータスを確認できる、チート級に強いスキル。

 

これのおかげでわたしは今の青の場所とステータスをしっかり見ることができる。

余計にタチが悪い。

見たくもない現実も見なきゃいけない。

 

それをわかって言ってたのか?

青。

 

 

今から助けに行くか?

正直行きたくはない。

だけどかなりムカムカする。

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

うん。助けに行くのはやめよう。

だって死ぬことが確定してるし。

 

戦っても勝てないし、勝てない勝負をするのは馬鹿だ。

自然界ならなおさら。

 

 

叡智があるからわたしは死ぬことはないんじゃないか。

一人でも戦えると思うし。

 

鰻だって麻痺の邪眼で完全に動けなくなったんだ。

ギャラドスだって麻痺で勝てるかもしれないんだから。

麻痺が効かなくても、逃げればいい。

わたしの素早さはほとんどの魔物を上回ってる。

 

 

それはグラードンでも。

だって逃げ切れたし。

そもそもグラードンだったら青と一緒にいても死ぬでしょ。

 

 

ギャラドスと戦った時もなかなか無理ゲーだったよね。

サヤはいたけど、素早さのステータスが同じ上で一撃食らったら死ぬって感じだったし。

 

 

よくわたし戦ったな!?

 

今までよく逃げてる印象だったんだけど。

いつから攻撃するようになったんだろう。

 

『電脳!』

 

 

 

あ、そうだ。

アイツもいないのか。

それはキツイ。

 

 

 

なんか分かりそうだったんだけどな。

ひっかかってるんだもん。

なにかが。

 

うん。

引っかかってる。

中層に来てから、なにか違和感を感じてる。

最近一気にそれが弱まった。

なにかがあった。

 

今までの経験を思い出す。

そして、記憶を一気に引っ張り出していく。

 

 

 

 

 

あ。

わかってしまった。

本当にわかってしまった。

 

 

 

 

 

龍にだけ強い憎悪を抱いてる。

 

 

 

 

 

どうして?

なぜわたしはこんな龍に対して怒ってる?

 

アイツの専売特許だけど、考えてみるか。

 

『叡智!』

 

わたし自身を調べる。

徹底的に。

ありえる可能性を。

 

龍に恨みを持つようなことはしてないはず。

誰かがわたしの魂をいじって感情操作してるのか?

 

 

そもそも、魂に干渉するってなにがあるんだ?

 

『行動に干渉するものと精神に干渉するものは種類が異なる』

 

ふむふむ。

干渉されてるのは精神の方だね。

精神に干渉するで、検索!

 

『精神に干渉するものは2つ存在する。深淵魔法のように魂そのものを削るスキルと、魂は削らないがその在り方を操作するものである』

 

多分下だよね?

うん。

下だと信じよう。

上だと死ぬし。

 

魂の在り方操作で検索!

 

『精神操作は他者の精神を操ることである。

 基本的には使われることはない。

 精神操作として最もよく知られるものは眷属支配であるが、支配者スキルの一部でも可能である』

 

えっと?

つまり支配者スキルで影響受けてるなら話は別として。

なんかの眷属支配に引っかかってる?

 

支配者スキルはあんまり関係なさそうだし、やっぱ眷属支配だよね。

名前的にも。

 

 

 

 

「俺の子供には生き残れってとりあえず言ってある。

 そんな思考操作をしてる」

 

 

 

 

なんで、思い出しちゃうかな。

青が言ってたこと。

なんで、青が言ってたこととわたしの境遇は一致しちゃうかな。

 

 

 

ああもう嫌だ。

こんな苦しみはもう嫌だ。

この世界で、いや前世から知っていた人を、わたしは見捨てたくない。

 

 

死にたくない。

こんな、矛盾だらけなわたしが許せない。

弱いわたしが許せない。

 

なにもかにもDが悪い。

勝手にスキル作るくせに、肝心なところでは手を差し伸べない。

 

なにもかにも、この眷属支配が悪い。

大切な人を守るためじゃなくて、一部の生き物にだけ魂をそそぐこのスキルが悪い。

 

 

 

強くならなきゃ。

自由にならなきゃ。

幸せな不自由を手に入れるために、わたしは完全なる自由を捨てる。

 

 

出来ることからやっていこう。

 

まずは、眷属支配。

 

貴様からだ。

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

『並列意思たち!』

『やりたいことはわかってる!ガッテン!』

『頭脳担当が考えてること、わたしもわかるからね。しっかり元凶は辿っておいた』

『誰だった?』

『ぶっちゃけマザー』

『マジか。お前ら2人でなんとかなる?』

『なる!』

 

 

 

『魔法担当、体担当信用出来る?イエスしか言わないんだけど』

『信用はしていいんじゃないか?

 やる気はありそうだし頑張ればいけるってわかってるから』

『なに話してるんだお前ら!』

 

 

 

 

 

目標は、マザーの眷属支配の完全解除。

次にマザーへの精神攻撃。

 

 

正直出来るかはわからない。

電脳がたまに頭おかしいことやるんだし、こんくらいなら出来るでしょ。

魔法担当が下見に行ってくれたし。

 

 

『ガッテン!行ってくるぜ!』

『ちょっと待て。気が早い』

『どうしたの、頭脳担当?』

 

 

『お前らが出かけるまえに、やりたいことがある』

 

 

 

 

 

『しょうがないね。頭脳なんだし』

『わかった!私が地獄の果てまで連れてってやる!』

『連れてくのはやめろ。わたしが連れていくから』

 

 

 

 

 

 

 

いくぞ、青を救いに。






青の感覚 グラードン>>マザー
白の感覚 グラードン==マザー



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28 生存

忙しくて草。




白に会いにいこう。

魔王がいなくなったのを見て、わたしは歩き出す。

正直なにを言われるかはわからない。

だいぶ怒られるとは思うけど。

 

『電脳、白の場所は?』

『こちらに向かってきてるな』

『え?』

 

白。

マジか。

ほぼ確実に死ぬのに来るのか。

 

いよいよ、白も私も末期だな。

死にに向かって行くなんて。

 

 

あ、動かなくなった。

大丈夫か?

 

『隠れたな。まだ狙われてると思ってんだろ。かわいそうだから話してやれ』

 

『白、もう大丈夫。オリジンはマザーの治療に行った』

『早く帰ってこい』

『わかりました』

 

 

白。本当にすみませんでした。

 

 

 

『で、なにがあったかひとつひとつ説明してくれないかなー』

『はい』

 

私は白に全部説明していく。

白は、一言も話してくれなかったけど聞いてくれていた。

 

 

 

 

『ふーん。で、今魔王はマザーの所に向かったんだね』

『はい』

『わかった』

 

 

 

『白、なかなかのことやったんだな』

『まあね』

 

え?なにをやったの?

 

 

『まあまあやべえことしてたな』

 

え?なに?気になるんだけど。

 

『後で話してやる。今オレ様は他のことに集中してえ』

 

気になるんだけどな。

でも電脳が気になるのもわかる。

だってアルセウスだよ?

最高神だよ?

そりゃ気になるに決まってる。

特に考察好きのこいつには。

 

 

『青、マジで反省してるね?』

『してる。でも、どうすればよかった?』

『知らん。ちゃんと考えて』

 

え、私が悪いのか?

いや悪いか。

 

 

 

 

 

でも、どうすればよかったんだろう?

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

『アルセウスな。何を考えてるんだか』

『ギュリエディストディエスもなんなんだよ』

『Dも何か企んでやがる』

 

 

 

『もともとまあ青は生き残ると思ってたがな。

 考えりゃ当たり前だ。

 Dがこんな簡単にポケモンの発生源を殺すわきゃないだろうが』

 

 

『予想通りDからの牽制が入ってきてたっぽいけどな』

『魔王とサリエルとの関係性はなんだ?』

『名前が似てるが関係性はあるのか?』

 

 

オレ様が考えてやるか。

まず、オーパーツってなんだ?

スマホがオーパーツ?昔には存在してたのか?

存在していたとして、いつの話だ?

なぜスマホを作れた文明が今鎧ひとつで旅をしている?

 

 

サリエルつー女神は世界から奪われたらしい。

だがおそらく死んじゃいねえ。

死んでたら死んだっつーだろ普通。

 

ギュリエディストディエスも気になる。

転生者について魔王に入れ知恵できるんなら、おそらくDの同僚だ。

または、オレ様みたいなスキルの超強化版を持ってるか。

 

アルセウスはロクなこと考えちゃいねえ。

せいぜい、ポケモンをこの世界に大量に増やすくらいか。

0から1を作るとかマジでふざけてんだろ。

 

MAエネルギーとかなんだよ。

なんのためのエネルギーかもわかんねえが、おそらく世界の構成か?

あれば世界は救われるみてーだからな。

 

 

 

待て。重要なことを忘れてたわ。

これ確認をしてなかった。

全然、情報量が変わる。

 

 

魔王の鑑定結果を出そう。

 

 

『オリジンタラテクト LV139 名前 アリエル 

 ステータス

 HP:90098/90098(緑)+99999(詳細)

 MP:87655/87655(青)+99999(詳細)

 SP:89862/89862(黄)(詳細)

   :89856/89856(赤)+99567(詳細)

 平均攻撃能力:90021(詳細)

 平均防御能力:89997(詳細)

 平均魔法能力:87504(詳細)

 平均抵抗能力:87489(詳細)

 平均速度能力:89518(詳細)

 スキル

「HP超速回復LV10」「MP高速回復LV10」「MP消費大緩和LV10」「魔力精密操作LV10」「魔神法LV10」「魔力付与LV10」「魔法付与LV10」「大魔力撃LV10」「SP高速回復LV10」「SP消費大緩和LV10」「破壊大強化LV10」「打撃大強化LV10」「斬撃大強化LV8」「貫通大強化LV9」「衝撃大強化LV10」「状態異常大強化LV10」「闘神法LV10」「気力付与LV10」「技能付与LV10」「大気力撃LV10」「神龍力LV10」「神龍結界LV10」「猛毒攻撃LV10」「強麻痺攻撃LV10」「毒合成LV10」「薬合成LV10」「糸の天才LV10」「神織糸」「操糸LV10」「念力LV10」「投擲LV10」「射出LV10」「空間機動LV10」「連携LV10」「軍師LV10」「眷属支配LV10」「産卵LV10」「召喚LV10」「集中LV10」「思考超加速LV6」「未来視LV6」「並列意思LV4」「高速演算LV10」「命中LV10」「回避LV10」「確率大補正LV10」「隠密LV10」「隠蔽LV10」「無音LV10」「無臭LV10」「帝王」「鑑定LV10」「探知LV10」「昇華」「外道魔法LV10」「火魔法LV8」「水魔法LV10」「水流魔法LV5」「風魔法LV10」「暴風魔法LV10」「嵐天魔法LV10」「土魔法LV10」「大地魔法LV10」「地裂魔法LV10」「雷魔法LV10」「雷光魔法LV8」「光魔法LV10」「聖光魔法LV2」「影魔法LV10」「闇魔法LV10」「暗黒魔法LV10」「毒魔法LV10」「治療魔法LV10」「空間魔法LV2」「重魔法LV10」「深淵魔法LV10」「大魔王LV10」「矜持LV5」「激怒LV9」「暴食」「簒奪LV8」「休LV9」「堕淫LV4」「物理無効」「火炎耐性LV5」「水流無効」「暴風無効」「大地無効」「雷光無効」「聖光耐性LV8」「暗黒無効」「重無効」「状態異常無効」「酸無効」「腐蝕大耐性LV7」「気絶無効」「恐怖無効」「外道大耐性LV6」「苦痛無効」「痛覚無効」「暗視LV10」「万里眼LV10」「五感大強化LV10」「知覚領域拡張LV10」「神性領域拡張LV3」「天命LV10」「天魔LV10」「天動LV10」「富天LV10」「剛毅LV10」「城塞LV10」「天道LV10」「天守LV10」「韋駄天LV10」「禁忌LV10」

 スキルポイント:0

 称号

「人族殺し」「人族の殺戮者」「人族の天災」「魔族殺し」「魔族の殺戮者」「魔族の天災」「妖精殺し」「妖精の殺戮者」「妖精の天災」「魔物殺し」「魔物の殺戮者」「魔物の天災」「竜殺し」「竜の殺戮者」「竜の天災」「龍殺し」「龍の殺戮者」「無慈悲」「悪食」「血縁喰ライ」「暗殺者」「毒術師」「糸使い」「人形使い」「率いるもの」「覇者」「王」「古の神獣」「暴食の支配者」「魔王」「オリジン」』

 

やっぱ馬鹿げた量あるな。だが、オレ様が知りたいのは称号だ。

 

古の神獣、か。

あの女が。

あいつはこの世界でスマホがあったらしい太古から生きてたんだな。

 

よし。色々わかってきた。

妄想をまとめてみるか。

 

 

 

 

 

 

まず初めに、スマホやカメラがあった太古の時代からアリエルは生きていた。

女神サリエルもおそらく同時代にはいたと考えられる。

アリエルはサリエルを尊敬し、そして愛して暮らしていた。

サリエルもサリエルで、名前も持てないような不幸な境遇にあった奴に、自身に似た名前を与えて愛し育てた。

 

だが事件が発生する。

その事件によってサリエルは女神であることの不死性から何処かにキツく封印された。

その封印は非常に強固であり、アリエル程度では解放不可能であった。

 

と同時にその事件によってかMAエネルギーが世界から流出し始めた。

 

事件によってか、MAエネルギーの放出によってか、ここで人間の社会は壊滅する。

その結果人間は電子機器の作り方も忘れ、中世のような暮らししか出来なくなった。

 

 

その後、現代になって。

MAエネルギーを湯水のように使い出すアホ男が現れる。

そのアホ男によってMAエネルギーは大幅に減少が進んでいる。

 

Dとギュリエディストディエスはここまでの流れに特に関わってはいない。

事件には関係あるかもしれないが。

 

 

こんなもんだろう。わりかしあっていると思うがな。

湯水のように使うクズ男すげーな。

一人で世界の破滅まで導いてやがる。

おそろしい。

 

 

 

 

 

 

 

まあ正直こんなことはどうでもいい。

魔王様がオレ様に鑑定させちまったのは間違いだった。

 

 

マオーサマ、転移使えねーんだなぁ!







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29 生きる道

感想、誤字訂正ありがとうございます!


もう、いいや。

根本から間違ってた。

 

どうすればいいのかわからないと言った馬鹿な私は、さんざん考えてやっと私の間違いに気づいた。

私は、なかなかに最低だ。

 

答えが見つかった。

白に言わないと。

 

 

 

 

 

 

「助けに来てくれてありがとう」

「え、あ、うん。

 どういたしまして」

 

私たちは、気分新たに冒険を再開する。

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

ここは、綺麗な湖。

地球だったら、観光船が運行されていることだろう。

 

nice boat.

 

『なに言ってんだか』

『別にいいじゃん。てか、サヤもこれ見たと思う?』

『多分な。だいぶ先まで進んじまってるみたいだが。おかげで行き止まりとかもわかってるし、ほっといてもいいだろ』

『うーん』

 

サヤとはもうしばらく会ってない。

そのまま進んでいっちゃってるし。

ひとりで大丈夫なのかなぁ。

 

 

『大丈夫っぽいぞ』

『なんでかなー』

 

 

「青、ちゃんと周り見てよ?なんかいるかもしれないんだから。綺麗なマグマだまりにはグラードンがいる可能性だってあるんだし」

 

グラードンドンマイ。

あんた、白からのイメージがヤゴだ。

地球でも、一応伝説なのにでかいサンドとか言われるし散々だ。

 

 

 

マジでいたりしないよね。

この世界が伝説大量湧きのシステムを組み込んでたら確実にいる。

結構運ゲーだけど祈るしか無い。

 

 

『『来た!』』

『え?』

 

なにが。

 

湖の少し離れた部分の水中に巨大な反応。

グラードンよりは全然でかくない。

でもギャラドスくらいはある。

モンスタークラス。

 

 

大丈夫かな。

勝てるか。

 

「青、逃げる?」

「いや、これは無理じゃない?あちらさん方が戦う気いっぱいだね」

「そうだよねー」

「どうする?」

 

当たり前のように私たちの周りを魔物で囲い込んでる。

眷属支配系のスキルがあるのかな。

すると頭も良さそう?

 

「戦うか」

「そうだね」

『オレ様がサポートに回る。安心して全力でぶつかれ』

『わかった。ありがとう』

 

水中からその影の主がゆっくりと顔を上げた。

あ、見た目やばそうだぞ。

ガチモンの竜感ある。

 

『電脳!』

 

『エルローゲネソーカ LV17

 ステータス

 HP:2331/2331(緑)(詳細)

 MP:1894/1894(青)(詳細)

 SP:2119/2119(黄)(詳細)

   :2315/2315(赤)+264(詳細)

 平均攻撃能力:1999(詳細)

 平均防御能力:1876(詳細)

 平均魔法能力:1551(詳細)

 平均抵抗能力:1528(詳細)

 平均速度能力:1657(詳細)

 スキル

 「火竜LV9」「逆鱗LV2」「HP自動回復LV2」「MP回復速度LV1」「MP消費緩和LV1」「SP回復速度LV3」「SP消費緩和LV3」「火炎攻撃LV5」「火炎強化LV3」「破壊強化LV2」「打撃強化LV4」「連携LV5」「統率LV7」「命中LV10」「回避LV10」「確率補正LV8」「気配感知LV4」「危険感知LV7」「高速遊泳LV7」「過食LV8」「打撃耐性LV6」「炎熱無効」「身命LV1」「瞬発LV8」「持久LV9」「剛力LV1」「堅牢LV1」「術師LV4」「護法LV4」「疾走LV5」

 スキルポイント:11250

 称号

 「魔物殺し」「魔物の殺戮者」「率いるもの」』

 

ねえ、強くない?

もちろん私も強くなってるよ?

白も速く強くなってるけど。

それでもキツい。

 

これは火竜か。

見た目もギャラドス以上に竜だしちゃんと腕がある。

鰻の進化系かな。

やばい。

魔法を弱める逆鱗もしっかりあるし。勝てるかなあ。

 

「白、そっちは回避に専念して。私が魔法を撃つ」

「了解!」

 

 

『電脳は魔法をお願い。雷光魔法LV1の雷光弾をずっと撃って貰ってると嬉しい』

『わかった。オレ様は魔法に専念したいのもあるから、お前中心で情報を流してほしい』

『了解』

 

話している間に、火竜からの火球が飛んでくる。

白は天井に飛んで即座に回避。

 

よし、じゃあ私も今の状況を確認しよう。

 

今現在最初に攻撃してきた火竜に続いて配下たちがどんどん出てくる。

火竜が1匹に、それに付き従う鰻3匹。その他、ナマズが8匹くらいでタツノオトシゴが十数匹か。

 

 

『火竜が1匹と鰻3匹!あと雑魚合計約20!』

「わかった!」

 

でも、連携と統率っていう二つのスキルがなかなかに強い。

連携力を連携で高めて、統率で配下のステータスの底上げと行動の支配をする。

この二つのコンボで配下を自分の手足のように自由自在に扱ってくる。

 

うん。

強い。

強いんだろう。

 

相手が私たちでなければ。

 

『雷光魔法LV1 雷光弾!』

 

まずはタツノオトシゴを殲滅する。

同時にナマズの数も減らしていこう。

 

電脳が雷光弾をタツノオトシゴに当てて倒していく。

2発で死ぬようなものを弾幕で撃ってるからナマズも巻き込まれて死んでいってるけど。

 

「黒鞭!」

 

影魔法で影を現実に発現させて、ナマズを固定。

鰻の時は少ししか拘束できなかったけどナマズ程度なら結構止められる。

そのまま雷光弾で攻撃すれば倒れていく。

 

 

白も頑張って避けてるし、このままなら鰻3匹と火竜1匹になるのは間もないかな。

 

 

火竜ども。

逃げるなら今だぞ。

逃がさないけど。




今のステータス

『ラグ・ロア Lv6 名前 青
               佐野蒼生
HP:205/205(緑)
MP:1060/1060(青)
SP:225/225(黄)
  :232/232(赤)+987
ステータス
平均攻撃能力584
平均防御能力595
平均魔法能力1648
平均抵抗能力1647
平均速度能力1024
「HP大吸収Lv1」「HP自動回復Lv5」「SP回復速度LV3」「SP消費緩和LV3」「瞬間速度強化LV1」「破壊強化LV3」「毒強化LV4」「毒合成LV8」「気闘法LV2」「気力付与LV2」「猛毒攻撃LV3」「腐蝕攻撃LV1」「毒合成LV8」「糸の才能LV6」「万能糸Lv3」「操糸Lv9」「投擲LV7」「立体機動LV5」「集中Lv10」「思考加速Lv5」「並列意思Lv3」「命中Lv9」「無音LV1」「隠密Lv7」「魔王斬Lv1」「外道魔法Lv5」「電撃付与Lv10」「雷付与Lv5」「過食Lv9」「暗視Lv10」「視覚領域拡張Lv2」「予見Lv1」「演算処理LV7」「命中LV9」「回避LV7」「電気魔法Lv10」「雷魔法Lv10」「雷光魔法Lv1」「雷耐性Lv6」「火耐性Lv2」「影魔法Lv10」「闇魔法Lv1」「毒魔法Lv6」「毒耐性Lv8」「空間魔法Lv3」「深淵魔法Lv10」「麻痺無効」「石化耐性Lv4」「酸耐性Lv4」「腐蝕耐性Lv3」「外道無効」「破壊耐性LV4」「打撃耐性LV2」「斬撃耐性LV3」「恐怖耐性Lv5」「苦痛無効」「痛覚軽減Lv4」「気絶耐性LV3」「視覚強化LV9」「聴覚強化LV8」「嗅覚強化LV7」「味覚強化LV7」「触覚強化LV7」「生命LV9」「瞬身LV1」「持久LV9」「剛力LV5」「堅牢LV5」「強化産卵Lv10」「小型化Lv10」「共生Lv6」「賢姫Lv5」「妖姫」「怠慢Lv8」「電脳」「傲慢」「奈落」「禁忌Lv8」「n%I=W」
スキルポイント:2200
称号 「悪食」「血縁喰ライ」「魔物殺し」「魔物の殺戮者」「毒術師」「糸使い」「大感染」「オリジン」「傲慢の支配者」「電脳の支配者」「究明者」「暗殺者」』



サンド……アルマジロのような地面タイプのポケモン。なぜかグラードンに似ている。グラードンが似ているのかもしれない。


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30 勝ち申した






《経験値が一定に達しました。個体、ラグ・ロアがLV6からLV7になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『演算処理LV7』が『演算処理LV8』になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《経験値が一定に達しました。個体、ラグ・ロアがLV7からLV8になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『気闘法LV2』が『気闘法LV3』になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《条件を満たしました。称号『竜殺し』を獲得しました》

《称号『竜殺し』の効果により、スキル『生命LV1』『竜力LV1』を獲得しました》

《『生命LV1』が『生命LV9』に統合されました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『生命LV9』が『生命LV10』になりました》

《『生命LV10』が『身命LV1』に進化しました》

 

おお、一気に上がった。

雑魚たちが一緒に力尽きたのかな。

 

やばい。

皮を脱がないと。

白も全く同じタイミングでレベルが上がったみたい。

それを狙って鰻が火球を吐く。

 

 

逃げに専念しきってた白は皮を脱いでギリギリ避ける。

流石に危なかった。

でも、当たってないしまだ舞える!

 

 

 

火竜1匹、鰻3匹。

 

元気いっぱいな私たちに対し、鰻はもう戦う意欲が失せてる。

すっごい嫌そうな顔してるし。

 

それに対して火竜はまだ諦めないで火球を放ってる。

ヤケクソ感も出てるけど。

 

 

正直なところ、連携と統率が悪く出たんじゃないかなって思う。

さっき弾幕張ったときも雑魚たちは逃げようとしてたけど、火竜がそれを防いでたっぽいし。

 

その集中力を私たちに費やせばあの時なら勝てたんじゃない?

もう無理だけど。

今回は十分ゲージも残ってるし、最後のお掃除をするか。

 

 

白が麻痺の邪眼を発動する。

麻痺の邪眼は見てれば永続で麻痺状態に出来る。

難点としては、1匹に1つの目を使ってしまうこと。

だからさっきまでなら目の数が足りずに使えなかった。

 

でももう使える。

だって4匹じゃん、君たち。

発動したら防御不能だし、こいつらにはどうしようもないかな。

 

だんだんと遅くなっていく火竜たちの動き。

白の邪眼とたまに当たってた雷光弾があってもともと弱ってた?

 

ごめんね、鰻。

悪いのは竜のほうだからそっちに文句言ってね。

 

最後の抵抗のつもりか火球と火炎ブレスを吐かれた。

どうせなんかしてくると思っていたし、魔法陣を覚える。

火魔法は覚えにくいらしいけど、頑張りゃいけるでしょ。

 

さて、頑張っても動けなくなった鰻たち。

どう食うか。

 

 

「白、どうする?」

「そうなんだよねー。陸に上げてトドメ刺すか。

 流石にマグマの上で毒投げなくないし。料理はまな板でしょう」

「うまい」

 

鰻たちはこの世が終わるみたいな顔をしてる。

火竜は抵抗しようと力んでるけど、その力んだ筋肉が麻痺してるんだから動けるわけもない。

 

どういう仕組みなんだろう。

鰻たちは絶望の表情できてるんだよな。筋肉麻痺してるのに。

てか、そもそも鰻の絶望の表情ってなに?

いや実際そんな顔してるんだけどさ。

 

『麻痺は自分の思い通りにならねぇように筋肉か神経がバグってる状態だ。多分、術者に問題ない程度には動くようになってるんじゃねえか』

『どゆこと?』

『Dに調整されてるってことだ』

『おお、簡単。わかりやすい』

 

 

1匹ずつ引っ張り上げよう。

まずは鰻から。

白には麻痺の邪眼でしっかりと見てもらいながら黒鞭で引き上げる。

強度は糸より断然弱いけど、不燃性だ。

これだけで中層じゃ使える要素になる。

やっぱり中層は不便だね。

 

うん。なんだかんだで引き上げ終わった。

 

私が2匹目を引き上げてる間に、白に毒合成してもらう。

 

そして白は蜘蛛猛毒を口の中にぶち込んだ。

動けないはずの鰻は、それでもビクンと痙攣して力尽きる。

 

《経験値が一定に達しました。個体、ラグ・ロアがLV8からLV9になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『立体機動LV5』が『空間機動LV6』になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

おお、かわいそうに。

引き上げてる鰻くんもう悟っちゃってるよ。

だからといって優しくするつもりはないけど。

 

はい2匹目。

やっぱり黒鞭便利だね。

 

《経験値が一定に達しました。個体、ラグ・ロアがLV9からLV10になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『SP回復速度LV3』が『SP回復速度LV4』になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

ごめんねぇ、鰻くん。遅れたわ。

君も一緒だよ。

みんな一緒だ、怖くない。

 

『性格悪!』

『電脳?いいじゃん別に』

『いや、悪いだろ流石に』

『ん』

 

ねぇ、妖姫めちゃくちゃ自我強くない?

こいつ自我弱いはずなんじゃないの?

確かに最近は話にも参加して来なかったけど。

 

鰻さん、引き上げ終了。あとは火竜くんだ。

 

《経験値が一定に達しました。個体、ラグ・ロアがLV10からLV11になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『SP消費緩和LV3』が『SP消費緩和LV4』になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《条件を満たしました。称号『恐怖を齎す者』を獲得しました》

《称号『恐怖を齎す者』の効果により、スキル『威圧LV1』『外道攻撃LV1』を獲得しました》

 

鰻倒した時に変な称号きた?

 

まあいい、私は火竜くんだ。

うーん、この火竜くんなかなかに強敵だったね。

私たちにとっても鰻たちにとっても。

私たちが勝ったから言うことないけど。

 

歯を食いしばって抵抗しようとしてる。

無理なんだけどなぁ。

今まで順風満帆に生きすぎてたんじゃないかな。

 

火竜を引き上げて渡す。

 

白も白で、火竜にそのままの毒合成でトドメを刺した。

 

《経験値が一定に達しました。個体、ラグ・ロアがLV11からLV12になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『空間魔法LV3』が『空間魔法LV4』になりました》

《スキル『神性拡張領域LV1』を獲得しました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《経験値が一定に達しました。個体、ラグ・ロアがLV12からLV13になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『回避LV7』が『回避LV8』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『神性拡張領域LV1』が『神性拡張領域LV2』になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《経験値が一定に達しました。個体、ラグ・ロアがLV13からLV14になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『闇魔法LV1』が『闇魔法LV2』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『神性拡張領域LV2』が『神性拡張領域LV3』になりました》

《スキルポイントを入手しました》




ステータス

『ラグ・ロア Lv14 名前 青
               佐野蒼生
HP:511/511(緑)
MP:3385/3385(青)
SP:495/495(黄)
  :495/495(赤)+987
ステータス
平均攻撃能力1249
平均防御能力1263
平均魔法能力3295
平均抵抗能力3295
平均速度能力2253
「HP大吸収Lv1」「HP自動回復Lv5」「SP回復速度LV4」「SP消費緩和LV4」「瞬間速度強化LV1」「破壊強化LV3」「毒強化LV4」「毒合成LV8」「気闘法LV3」「気力付与LV2」「猛毒攻撃LV3」「腐蝕攻撃LV1」「毒合成LV8」「糸の才能LV6」「万能糸Lv3」「操糸Lv9」「投擲LV7」「立体機動LV6」「集中Lv10」「思考加速Lv5」「並列意思Lv3」「命中Lv9」「無音LV1」「隠密Lv7」「威圧LV1」「魔王斬Lv1」「外道魔法Lv5」「電撃付与Lv10」「雷付与Lv5」「過食Lv9」「暗視Lv10」「視覚領域拡張Lv2」「予見Lv1」「演算処理LV8」「命中LV9」「回避LV8」「電気魔法Lv10」「雷魔法Lv10」「雷光魔法Lv1」「雷耐性Lv6」「火耐性Lv2」「影魔法Lv10」「闇魔法Lv2」「毒魔法Lv6」「毒耐性Lv8」「空間魔法Lv4」「深淵魔法Lv10」「麻痺無効」「石化耐性Lv4」「酸耐性Lv4」「腐蝕耐性Lv3」「外道無効」「破壊耐性LV4」「打撃耐性LV2」「斬撃耐性LV3」「恐怖耐性Lv5」「苦痛無効」「痛覚軽減Lv4」「気絶耐性LV3」「視覚強化LV9」「聴覚強化LV8」「嗅覚強化LV7」「味覚強化LV7」「触覚強化LV7」「神性拡張領域LV3」「生命LV9」「瞬身LV1」「持久LV9」「剛力LV5」「堅牢LV5」「強化産卵Lv10」「小型化Lv10」「共生Lv6」「賢姫Lv5」「妖姫」「怠慢Lv8」「電脳」「傲慢」「奈落」「禁忌Lv8」「n%I=W」
スキルポイント:3000
称号 「悪食」「血縁喰ライ」「魔物殺し」「魔物の殺戮者」「竜殺し」「毒術師」「糸使い」「大感染」「オリジン」「傲慢の支配者」「電脳の支配者」「恐怖を齎す者」「究明者」「暗殺者」』


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31 私たち


大学楽だとか言ったやつはどこだ



『体担当、火竜の鱗剥ぎ頼む』

『わかった許さん。てか青もやってよ?』

『電脳頼む』

『了解』

 

電脳優しい。私感動。

 

それはそれとして私は手に入れた称号を確認する。

 

『竜殺し:取得スキル「生命LV1」「竜力LV1」:取得条件:竜種を一定数撃破:効果:竜、龍種相手に与ダメージが微増:説明:数多くの竜種を倒したものに贈られる称号』

 

『恐怖を齎す者:取得スキル「威圧LV1」「外道攻撃LV1」:取得条件:他者に恐怖耐性の熟練度を一定以上稼がせる:効果:姿を見たものに外道属性「恐怖」の効果を与える:説明:恐怖の体現するものに贈られる称号』

 

うーん、竜殺しの方は嬉しいけど恐怖を齎す者の方は良くないかな。

これで捕まえてないポケモンの個体とかが逃げても困るし。

そもそも中層ではご飯少ないのに魔物に逃げられちゃたまったもんじゃない。

何より人と話す時に困る。

 

対策は後で電脳と話すとして。

とりあえずスキルも見よう。

 

 

 

『竜力:竜の力を一時的に得る』

 

なにこれ。曖昧で良くわからない。

とりあえず発動してみる?

 

『電脳、竜力ってなに?』

『習うより慣れよだ。問題ないから一度発動させてみろ』

 

オッケー。

竜力、発動!

ステータスがちょっと上がった。

それと同時にMPとSPが両方減った。

MPとSPを消費してステータスを底上げするスキルって感じかな?

魔闘法と気闘法とは違って魔法系のステータスも上昇するっぽいし。

レベル1だからさほど上昇量は高くないけど、これも常時発動させてレベル上げればすごい強くなれるかも?

 

魔闘法と気闘法の重ね掛けも出来るんだしだいぶ強いんじゃない?

便利で損もない。

だいぶうれしいね。

 

『威圧:周囲に外道属性「恐怖」の効果を与える』

 

非常にまずい。

さっきの恐怖を齎すものと併用したら取り返しがつかなくなる。

人間だけには絶対向けないようにしよう。

魔物?

私を攻撃してきそうな奴には容赦なくぶっ放すよ?

 

 

『外道攻撃:攻撃に外道属性「破魂」を付与する』

『外道属性「破魂」:魂を直接破壊する属性』

 

あ、だめだこれ。

私には使えない。

白ならまだしも私は魂の扱いがそこまで上手くない。

最悪使うことになったとしてもテクいことはできないし自爆攻撃になるかな。

 

じゃあ今あるスキルポイントでもらえるものを見てみよう。

 

《現在所持スキルポイントは3000です。

 スキル『無垢LV1』『怨響LV1』をスキルポイント0使用して取得可能です。

 取得しますか?》

 

なんだこの物騒なスキルたちは。

なんか、私が進化していくたびに凶悪なスキル増えてきてない?

 

調べてみるか。

 

『無垢:一定時間相手の称号の効果を無効化する』

 

ナニコレ。

強くなさそうに見えなくもないけど、これ実はバグレベルに強いのでは?

 

 

いや、そうでもない?よくわからん。

もともとの技はなんなんだろう。

 

じゃああと一つ。怨響の方。

音響と読み方は同じだけど、怨むぞー!って感じがでてる。

 

『怨響:相手の平均防御能力を大幅に低下させる。レベルアップによって低下度合いが変化する』

 

うれしいようでうれしくないなぁ。

私が主体としてるのは魔法だし、相性が悪い。

わざわざ物理で殴るなんてことないからね。

 

まあでももらっておこう。

損はないし。

 

《『無垢LV1』『怨響LV1』を取得しました。残りスキルポイント3000です》

 

よし。

他のスキルでもいいものがないか見てみよう。

どうせだし恐怖を齎す者と逆の効果を持つものとかないかな。

 

 

 

と思ったら、いいのがありました。

流石D。

管理者なだけあってスキルのストックいっぱいあるね。

 

 

『魅了:MPを消費している間、相手に魅了の効果をもたらす。レベルアップでその程度は大きくなる』

『魅了の効果:理由のない好意。または、恋』

 

 

はい?

魅了の効果がわからん。

いやわかるけど。

D絶対ネタでこれ作ったでしょ。

 

 

必要なスキルポイントはちょうど3000。

MPの消費がどんくらいかはわからないけど、私は魔導の極みのお陰で回復速度は最高。

正直大丈夫じゃないかな。

 

 

 

恐ろしく怖いのに、何故か感じる恋心。

近づいたら喰われるかもしれない。

でも、なぜか好きと感じるんだ!

 

 

 

 

 

怖っ。私怖っ。

 

 

でもいいかもね。

誰もが怖いと感じてるのに同時に誰もが親しく好意をもってるとか。

最高に不合理な存在だ。

1番良い()()()()()の距離感じゃないかな。

 

 

魔王が中層まで遊びに来てたのを考えると、強さ的にオリジン個体は神様に近い扱いになるんだとおもう。

回復魔法でどんな病気も治せるし産卵で食料問題も解決可能。

元のステータスは高いから龍くらいなら撃退して人類を守れる。

 

 

魔王自体は人を嫌ってたけどね。

それこそ魔王の勝手だし私は人族を助けよう。

他意はない。

 

 

てか、魔王はDから解放されたら私を殺しにくるでしょ。

私が魔王に勝てるかというと無理。

魔王斬なんてのはあるけど特効な訳じゃないし。

 

そもそも魔王に対抗するのは勇者と決まってる。

勇者に我が身を守ってもらうのだ。

 

うん、我ながら良さそうだね。

 

 

勇者いるよね?

魔王いるし。

 

 

 

ただ白はどう動くかわからない。

人族と仲良くするように一応説得はするけど無理だったら諦めることになると思う。

 

この後は、私たちが禁忌を知ったあとになるのかな。




怨響……いやなおと。原作では相手の防御力を2段階下げる技。
無垢……いえき。原作では相手のとくせいを無くす。


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32 上層へ向かえー

息抜き回


『火竜の鱗剥ぎ終了!』

『ありがとう!体担当!』

『電脳、ありがとね』

『まあな。オレ様も学びたいことあったし気にすんな』

 

『学びたいこと?』

『ああ。異世界におけるハニカム構造の防御能力および耐性能力の』

『ストップ!すごいことをやろうとしてるのはわかった!』

 

『あと、魅了はまだ取るな』

『え?』

 

 

『青、食べるよー』

『わかった』

 

なんでだろう。まあいいか。

さて、火竜のお味は!?

 

 

 

ああ。悲しい。非常に悲しい。

火竜味薄い。

鰻の進化なのに、脂減った。

白身魚になった。

悲しい。

 

 

私たち2人が悲しみに暮れてちびちび食べている間にも、電脳はぶっちゃけてくる。

 

『で、白。青。サヤが上層に着いたらしいが、どうする?』

『『は?』』

 

 

 

 

もう上層に着いたの?

早くない?

 

『まあ、あと1週間も歩けば着く。

 なにもなければだが』

『なにそのなんかありそうな言い草』

『サヤの方が巨大な龍を見つけたらしくてな。

 バレないように鑑定は使わなかったらしいが、ステータスは竜以上はありそうって話だ』

 

『まさかだけど、サヤが今まで無事だったのって』

『小型化を濫用して姿を隠すか弱く見せ続けてだんだな。

 なにより、5センチの魔物狩るって発想にならないだろ。

 遊びじゃねぇんだから』

『ないわー。マジでないわー』

 

 

確かに賢い。

体力使ってまで食うところもない魔物を狩ろうなんていないわな。

上手いこと生き延びてるよ。

 

残念ながら私たちには白がいるからそれは無理。

しかも、ここから上層までは一本道。

 

そしたらやっぱり通るしかないかな?

一本道だし絶対火龍もいる。

 

だからと言って今までの道を戻っていくのは馬鹿だ。

グラードンもいるし。

 

 

うん。

決めた。

白もいいかな?

 

 

『『火龍倒そう』』

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

『では今回の議題を発表する。目標は、火龍の抹殺および中層攻略の終了だ』

『電脳いつになく気合い入ってるね』

『お前の心残りらしいけどな。目立ちたいっていう』

『何か言った?』

『さあ』

 

私たちは、鰻と火竜を食べ切って顔を突き合わせている。

ナニコレ。

 

『こんなことやってるけど、なんか意味あるの?火龍なんて気合いで倒すしかなくない?』

『気合いの割合を減らすためにやってんだ』

『ふーん』

『まずは、持ってるスキルを確認するぞ。白からだ』

 

『ゾア・エレ LV15 名前 白

 ステータス

 HP:502/502(緑)+189

 MP:4096/4096(青)+437

 SP:522/522(黄)

   :522/522(赤)+971

 平均攻撃能力:506

 平均防御能力:603

 平均魔法能力:3901

 平均抵抗能力:4021

 平均速度能力:2580

 スキル

 「HP自動回復LV7」「魔導の極み」「魔闘法LV2」「SP回復速度LV6」「SP消費緩和LV7」「破壊強化LV3」「斬撃強化LV3」「毒強化LV7」「気闘法LV4」「気力付与LV2」「竜力LV1」「猛毒攻撃LV3」「腐蝕攻撃LV1」「外道攻撃LV1」「毒合成LV8」「糸の才能LV4」「万能糸LV1」「操糸LV8」「投擲LV7」「立体機動LV9」「集中LV10」「思考加速LV7」「予見LV7」「並列意思LV2」「高速演算LV3」「命中LV9」「回避LV9」「隠密LV9」「無音LV5」「威圧LV1」「断罪」「奈落」「外道魔法LV6」「影魔法LV7」「毒魔法LV7」「空間魔法LV1」「深淵魔法LV10」「忍耐」「傲慢」「飽食LV1」「叡智」「暗視LV10」「視覚領域拡張LV3」「破壊耐性LV3」「打撃耐性LV3」「斬撃耐性LV3」「火耐性LV4」「雷耐性LV3」「猛毒耐性LV2」「麻痺耐性LV5」「石化耐性LV3」「酸耐性LV4」「腐蝕耐性LV4」「気絶耐性LV3」「恐怖耐性LV8」「外道無効」「苦痛無効」「痛覚軽減LV7」「視覚強化LV10」「望遠LV8」「呪いの邪眼LV7」「麻痺の邪眼LV5」「聴覚強化LV9」「嗅覚強化LV7」「味覚強化LV7」「触覚強化LV8」「神性領域拡張LV4」「星魔」「身命LV1」「瞬身LV1」「耐久LV1」「剛力LV4」「堅牢LV4」「韋駄天LV4」「禁忌LV8」「n%I=W」

 スキルポイント:0

 称号

 「悪食」「血縁喰ライ」「暗殺者」「魔物殺し」「毒術師」「糸使い」「無慈悲」「大感染」「魔物の殺戮者」「傲慢の支配者」「忍耐の支配者」「叡智の支配者」「竜殺し」「恐怖を齎す者」』

 

 

私がいうのはあれだけどやべえ。

強すぎでしょ。

誰に負けるのよ。

 

 

『次に青だ』

 

 

『ラグ・ロア Lv14 名前 青

               佐野蒼生

 HP:511/511(緑) +191

 MP:3385/3385(青) +410

 SP:495/495(黄)

   :495/495(赤)+987

 ステータス

 平均攻撃能力1249

 平均防御能力1263

 平均魔法能力3295

 平均抵抗能力3295

 平均速度能力2253

 「魔力付与LV2」「魔導の極み」「魔闘法LV2」「HP大吸収LV1」「HP自動回復LV5」「SP回復速度LV4」「SP消費緩和LV4」「瞬間速度強化LV1」「破壊強化LV3」「斬撃強化LV3」「毒強化LV4」「毒合成LV8」「気闘法LV3」「気力付与LV2」「猛毒攻撃LV3」「腐蝕攻撃LV1」「毒合成LV8」「糸の才能LV6」「万能糸LV3」「操糸LV9」「投擲LV7」「立体機動LV6」「集中LV10」「思考加速LV5」「並列意思LV2」「命中LV9」「無音LV1」「隠密LV7」「威圧LV1」「魔王斬LV1」「外道魔法LV5」「電撃付与Lv10」「雷付与LV5」「飽食LV1」「暗視LV10」「視覚領域拡張LV2」「予見LV1」「演算処理LV8」「命中LV9」「回避LV8」「電気魔法LV10」「雷魔法LV10」「雷光魔法LV1」「雷耐性LV6」「火耐性LV2」「影魔法LV10」「闇魔法LV2」「毒魔法LV6」「毒耐性LV8」「空間魔法LV4」「深淵魔法LV10」「麻痺無効」「石化耐性LV4」「酸耐性LV4」「腐蝕耐性LV3」「外道無効」「破壊耐性LV4」「打撃耐性LV2」「斬撃耐性LV3」「恐怖耐性LV5」「苦痛無効」「痛覚軽減LV4」「気絶耐性LV3」「視覚強化LV9」「聴覚強化LV8」「嗅覚強化LV7」「味覚強化LV7」「触覚強化LV7」「神性拡張領域LV3」「生命LV9」「瞬身LV1」「持久LV9」「剛力LV5」「堅牢LV5」「強化産卵LV10」「小型化LV10」「共生LV6」「賢姫LV5」「妖姫」「怠慢Lv8」「無垢LV1」「怨響LV1」「電脳」「傲慢」「奈落」「禁忌Lv8」「n%I=W」

 スキルポイント:3000

 称号 

 「悪食」「血縁喰ライ」「魔物殺し」「魔物の殺戮者」「竜殺し」「毒術師」「糸使い」「大感染」「オリジン」「傲慢の支配者」「電脳の支配者」「恐怖を齎す者」「究明者」「暗殺者」』

 

 

 

『こいつヤベェな』

なんだと。バケモンはどっちだ。

 

 

『どっちも十分バケモンだろ。

 こっから強化する方法を考えていくぞ』

 

『まず青。演算処理を電脳に組み込め』

『う、うん。できるの?』

『出来る』

 

《「演算処理LV8」を「電脳」に統合しました》

 

出来んのかい!

 

『次に、雷光魔法LV1の雷光弾を自分に当て続けろ』

 

ドンっ!

 

私は、静かに意識を手放した。

 

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『痛覚軽減LV4』が『痛覚軽減LV5』になりました》

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

『ねえ。やばいよこいつ』

『うん』

 

約3日気を失っていたらしい。

その間にも、電脳は魔法をかけ続けてた。

お陰でいろんなスキルが上がっている。

 

 

でも、納得したくないのはなんでだ?




 

 強化内容についてはいずれ(言うほど強化されてない)


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33 火龍レンド






ヤベェなこいつ。

私が寝てる間にずっと魔法当ててるとか。

死体蹴りとかそんなレベルじゃない。

 

確かにレベル上がったよ?

雷光魔法LV2の雷光槍ならナマズくらいならワンパン出来るとおもうし。

闇魔法だって3レベルも上がってる。

文句は言いませんとも。

 

なんかもやっとはするけどさ。

 

 

『やっほー。私魔法担当その2!青もお見知りおきを!マザー食ってきます!』

 

そうか。魔法担当その2?

マザー食べにいくのね。

 

 

え?

 

 

「白!魔法担当その2だっけ!?マザー食いに行ったけど!?」

「うん。あー、青にはちゃんと言ってなかったっけ。マザー食べることにしたの」

「え?」

 

どういうこと?

そもそも食べるってなに?

 

『精神を食うってことだな』

『なんでそんなことするの?』

『白自身に聞いてみろ』

 

「私にかけられた呪いを解除するためだよ」

「呪い?」

「うん。龍を恨むっていう呪い」

 

「それ眷属支配だよね?」

「あ。まあそうなんだけどさ、言い方ってあるじゃん」

 

おお。申し訳ない。

許せ。

 

「でも、龍を恨むってどういうことなんだろう」

「わたしもそれはよくわかってないんだよね」

『オレ様もわからんから聞くなよ?』

 

電脳もわからないのか。

それは残念。

 

「でもマザー食べちゃえば解決するのか。そしたら、案外悪くない戦法なのかもね」

 

わたしだって本当はやってみたい。

魂の扱いが下手くそだから無理だけど。

 

 

 

まあ、これで最後のキャンプは終わった。

後は天国の上層に行くだけだ。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

もう3日も歩いてきた。

このまま進んでいけば、後3日で上層には行ける。

ナマズとかの狩りも良好。

あいつらが気づく前にヘッドショットしてるしね。

水中で倒しても黒鞭で回収できるし。

 

もはや私たちの餌でしかない。

 

 

 

 

瞬間、バチッと鋭い電流が頭に流れた。

来たか?

 

私たちの前方にあったマグマの池が激しく振動し始める。

うん。

 

今まで戦おうって決めた中では1番強いね。

流石のオーラだ。

鑑定しなくても強いってわかる。

 

火龍はゆっくりと顔を上げた。

 

 

『火龍レンド LV20

 ステータス

 HP:3701/3701(緑)+1200(詳細)

 MP:3122/3122(青)+1200(詳細)

 SP:3698/3698(黄)(詳細)

   :3665/3665(赤)+912(詳細)

 平均攻撃能力:3281(詳細)

 平均防御能力:3009(詳細)

 平均魔法能力:2645(詳細)

 平均抵抗能力:2601(詳細)

 平均速度能力:3175(詳細)

 スキル

 「火龍LV1」「逆鱗LV8」「HP高速回復LV3」「MP回復速度LV6」「MP消費緩和LV6」「魔力感知LV5」「魔力操作LV4」「魔力撃LV4」「SP高速回復LV1」「SP消費大緩和LV1」「火炎攻撃LV9」「火炎強化LV7」「破壊強化LV6」「斬撃強化LV2」「貫通強化LV2」「打撃大強化LV2」「連携LV10」「指揮LV2」「立体機動LV4」「命中LV10」「回避LV10」「確率大補正LV5」「気配感知LV10」「危険感知LV10」「熱感知LV3」「飛翔LV7」「高速遊泳LV10」「飽食LV2」「火魔法LV4」「斬撃耐性LV1」「貫通耐性LV1」「打撃大耐性LV1」「炎熱無効」「状態異常耐性LV1」「身命LV5」「魔蔵LV4」「瞬身LV5」「耐久LV5」「剛力LV5」「堅牢LV5」「道士LV4」「護符LV3」「縮地LV5」

 スキルポイント:30050

 称号

 「魔物殺し」「魔物の殺戮者」「率いるもの」「龍」「覇者」』

 

 

 

 

 

よし、逃げよう!

 

「逃げるの!?」

「いや無理でしょ!なにこのスキルの数は!バグかな?」

『バグならオレ様も出来るが』

「そういう問題じゃない!」

 

よくよく考えたら火竜とか呼び寄せられたら詰むじゃん。

火竜だって鰻3匹呼び寄せるんだし、火竜3匹は龍がいなくても無理だ。

しっかり連携と指揮あるし!

 

 

「そもそもあっちの方が速いんだよ!逃げるのはやめ!」

「もうわかった!呼び寄せる前に全部おわらせる!」

 

 

 

 

怠慢と無垢を重ねてかける。

これで火竜の到着を遅らせられるかな。

さらに魔闘法と気闘法と竜力を同時発動。

全力で、殺しにかかる。

 

やられる前にやってやる。

 

 

火龍も火龍で、私たちが体勢を整えたのに呼応するみたいに火炎を纏った。

火竜レベル8で習得する火炎纏か。

火竜レベル2で習得する熱纏の上位互換で、激しい火炎をその身に纏う。

しかもその熱で運動能力も向上するみたい。

てか、なぜスキルを使えてる?

 

『無垢は、攻撃面は打ち消せねぇみたいだな』

なにそれ。

じゃあ火竜のスキルは消せないの?

『オレ様もイマイチわかってねぇ。ちょっと待ってろ』

 

わかった。

でも、どっちにしろなかなかぶっ壊れてる。

流石火龍。

 

ぶっ壊れ具合なら、わたしも負けちゃいないけど!

 

 

『雷光魔法、雷光槍!』

魔法は逆鱗で半減されるはず。

 

どうだ?

 

 

何発か放った槍のうち一発が龍の脇腹に刺さる。

 

その槍は私が思った以上に大幅に火龍の体力を削る。

大体20発くらい撃てば倒せるのかな。

 

こっちの方は無垢が働いてるのか。

すると無垢は防御スキルだけ無効化する感じか。

それならなかなか強いね。

 

 

火龍も混乱してる。

感じたことのない違和感、感じてる?

 

『雷光槍、無限』

 

大量の雷光槍の標準が合わせられた。

狙いは火龍。

 

さて、どこまで耐えられるかな?




主人公、調子乗りがち。


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34 蜘蛛VS火龍






正直、勝てると思う。

確かに最初見た時はスキルが多すぎると思った。

けどそれも無垢で一定数打ち消せる。

雷光槍も当たれば結構ダメージを与えられる。

しかもその雷光槍はほぼ無限。

連射もできるしたくさん一気に放てる。

 

 

ここまできたら負ける理由もない。

中層を抜けられるんだし、負けるつもりもない。

私が勝つ。

 

 

 

火龍が空中に舞い上がった。

それを見た白は急いで毒合成。

もちろん私も。

ここまでの予備動作がある技はアレしかない。何より、火龍のものとなると避けきれない。

 

 

直後、火龍の口から火炎が放たれた。

極大のブレスが地上を一瞬で火の海に変えていく。

火竜スキルレベル10、獄炎ブレス。

その広範囲のブレスは周りの地面を融解させ、ただの炎の海じゃない、新たなマグマの海に変えた。

 

 

弱毒を大量に顕現させて浴びながら壁を伝ってジャンプする。

 

かろうじてダメージを受ける前に天井に逃げられた。

毒のダメージでHPは少し減ったけど、気にする程度ではない。

 

 

 

マズイ。

ギャラドスなんて比じゃない。

ギャラドスは火の海に帰るだけで地面はすぐに元には戻った。

けど、この火龍は地面自体を無くしていく。

倒す気満々だ。

手加減なんて全くない。

 

その上、なかなか動きが速い。

雷光槍も避けられるから、まだ体力を半分削れてないし。

すぐに飛んで避けるのが厄介すぎる。

麻痺の邪眼も効いてないみたい。

他の邪眼も効いてないって考えた方がいいのかな。

 

火龍の方はまだまだ火炎ブレスのストックがある。

それに対して私たちは火龍の速めの火の玉を食らうだけでおそらく死ぬ。

もちろん当たったら死ぬわけで避けることはできる。

ただ、一回でもミスったら死だ。

しかも火炎纏。

これにも触れたら死ぬ。

つまり、体当たりされたら死。

 

 

 

即死攻撃が多すぎる。

これはちょっと流石にマズイかも。

 

 

 

 

 

私たちは獄炎ブレスで天井に追い込まれた。

ここにいると白が全速力で走れない。

だから地面に降りたいんだけど、地面がマグマになるとどうしようもない。

 

 

猛毒合成は火炎纏で焼き消される。

猛毒合成は雷光槍よりも何倍も火力のある技だから、当てられたら勝つんだろうけど。

火龍の体力も半分近くまで削ったしね。

 

 

私の雷光槍のおかげで、火龍は回避に専念しなきゃいけない時も多々ある。

でも、その間私たちは安全な地面を探すことしかできない。

火竜たちは近づいているというのに。

しかも、安全な地面なんてものは見つからない。

 

 

 

 

ついに、火竜たちが迫ってきているのが見えてしまった。

まずい。

合流してしまう。

されたら、死ぬ。

 

この瞬間、私たちは2人とも火龍から意識を逸らしてしまった。

 

火龍レンドが放った獄炎ブレスは、何の対策もしていない私たちに降りかかり、チリも残さず焼き尽くしていった。

 

 

 

 

 

 

 

とでも思ったかデカブツ!

お前に隙見せたら襲ってくるよなぁ!

なぜなら私がそうだからだ!

私たちは、天井の違う場所から思いっきりジャンプする。

 

 

私は巨大な弱毒の水玉、白は巨大な蜘蛛毒の水玉を携えて。

まず私が火龍の身体に水玉を当てて、火炎纏を一瞬だけ無効化。

確かに火龍は一瞬混乱したけど動き出そうとした。

でもその一瞬が命取り。

 

 

白の鎌が火龍の鱗を引き裂く。

腐蝕攻撃。

おそらく全ての防御を貫通する、トップレベルで恐ろしい最強の攻撃。

鎌も同時にダメになるけれど。

 

そして、私が現れた肉を魔王斬で切り裂いた。

 

苦しそうにうめき声を上げる火龍。

再び火炎纏を発動させようとしたけど、もう遅い。

 

白の蜘蛛毒が傷口にぶつけられる。

麻痺を最大に乗せた、殺意マックスの必殺攻撃。

それは火龍の命を、じわじわと、そして確実に刈り取った。

 

 

 

 

《経験値が一定に達しました。個体、ラグ・ロアがLV14からLV15になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『立体機動LV6』が『立体機動LV7』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『HP自動回復LV8』が『HP自動回復LV9』になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《経験値が一定に達しました。個体、ラグ・ロアがLV15からLV16になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『腐蝕攻撃LV1』が『腐蝕攻撃LV2』になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《経験値が一定に達しました。個体、ラグ・ロアがLV16からLV17になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『回避LV9』が『回避LV10』になりました》

《条件を満たしました。スキル『回避LV10』からスキル『確率補正LV1』が派生しました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《経験値が一定に達しました。個体、ラグ・ロアがLV17からLV18になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『命中LV9』が『命中LV10』になりました》

《条件を満たしました。スキル『命中LV10』からスキル『確率補正LV1』が派生しました》

《『確率補正LV1』が『確率補正LV1』に統合されました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『生命LV9』が『生命LV10』になりました》

《条件を満たしました。スキル『生命LV10』がスキル『身命LV1』に進化しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『万能糸LV1』が『万能糸LV2』になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《条件を満たしました。称号『龍殺し』を獲得しました》

《称号『龍殺し』の効果により、スキル『天命LV1』『龍力LV1』を獲得しました》

《『身命LV1』が『天命LV1』に統合されました》

《『竜力LV3』が『龍力LV1』に統合されました》

 

 

うん。こっから竜たちを全員やらなきゃやらんのか。

幻夢という最強の絡め手無しで。

 

私たちは、現れた火竜たちに向き直る。






こっからが勝負?


幻夢については次回説明するつもりです。
ちなみに、幻夢はMPの消費上もう使えません。


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35 3匹の火竜

前回の後書き、幻夢を使えないと言ったな?
あれは嘘だ(レベルアップの回復忘れてた)。




さぁ、どう捌く。

相手の火竜は3匹に、鰻が8匹。

その他ナマズ、タツノオトシゴ多数。

 

これ、さっきの火龍よりも大変なんじゃないだろうか。

火竜たちも3匹なら勝てると思ってるのか連携を解くつもりは無さそう。

まずは雑魚を洗い流すか。

 

 

「白は避けに専念!

 弾幕くるよ!」

「わかった!」

 

『雷光弾!』

「毒霧!」

 

雷光槍なら確かに一撃でナマズとかは屠れる。

でもそうなると数不足で弾幕を相殺しきれない。

逆に雷光弾だと火球の相殺は出来るけど一撃では屠れなくなる。

 

だから私は雷光弾で火球を相殺しながら毒霧で削っていくことにした。

これなら、少しずつだけど倒していける。

少しずつだけど。

 

 

 

けれど現実は甘くない。

私がナマズやらオトシゴやらを半壊させた時だった。

 

《経験値が一定に達しました。個体、ラグ・ロアがLV18からLV19になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『聴覚強化LV8』が『聴覚強化LV9』になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

「レベルアップ!」

 

脱皮が始まる。

でも、この瞬間を火竜たちが逃すわけがなかった。

 

鰻6匹が私たちを囲うように火炎ブレスを放つ。

そして残りの2匹と火竜たちがその内側に向かって首をもたげた。

 

まずい。

火竜たちが火炎ブレスを吐く前に白が麻痺の邪眼を発動させる。

その隙に私は皮を脱いで、弱毒を大量に生成。

鰻の火炎ブレスの終わり際を狙って脱出した。

 

今の一連でナマズの火球に直撃した。

しかも鰻のブレスにも掠ってるし、体力は半分をとっくに切ってる。

両方をまともに食らった白はもう忍耐の食いしばり圏内に入ってるし。

 

鰻たちは基本的に火球を撃ち続けてる。

ブレスは撃って来てないけど、さっきの攻撃で撃たれたら詰むってことは認識した。

 

ただ嬉しいことに鰻たちのMPにも余裕はないみたい。

だから私たちが隙を見せないと撃ってこない。

 

 

『でもそれは奴らのミスだ。もうすぐ証明される』

そうだね。

そろそろ全部終わる。

 

私は、再び避けながらナマズの処理を開始。

なんだかんだで時間も経っているし、タツノオトシゴは毒霧に耐えられなくてほぼ全滅。

ナマズも私の雷光弾で全滅気味。

弾幕の数も徐々に減ってきた。

 

 

「レベルアップ!」

 

 

 

白。

来たか。

ここが正念場だ。

 

白の動きが一瞬止まったのを確認して、鰻たちは再び火炎ブレスで囲みこむ。

今度は火竜たちの火炎ブレスが速い。

白の麻痺の邪眼が、間に合わない。

 

『天井から落ちろ!』

電脳が幻夢を再び発動させる。

鰻たちは見事に騙されて上にブレスを放っていった。

 

麻痺の邪眼がここで発動。

鰻3匹と火竜3匹の動きが止まった。

 

ここからは私のターン。

 

「黒鞭!」

 

不燃性の鞭で、鰻と火竜3匹を結びつけて巨大な蜘蛛の巣を作り出していく。

元々が影魔法だから一瞬で出来上がる。

そこの上に落下してマグマの中に落ちるのを回避した。

 

 

 

 

ここからは蹂躙だ。

 

白は二つ目を残してる。

それに相対する鰻は5匹。

でもその5匹は火炎ブレスをするだけのMPを残してない。

 

 

 

だから私たちの餌だって言ってんだよ!

 

『雷光槍!』

「黒鞭!」

 

5匹の鰻にも結びつける。

もちろん彼らは抵抗するけど、一瞬でも隙を見せたら私たちの勝ちだ。

 

もう鰻たちと一緒に攻撃してくれるナマズたちはいない。

雷光槍を受け切れる手数ももう残っていない。

何より、私たちを倒せるだけの弾をもう放てない。

5匹の鰻たちは、降り注ぐ雷光槍に成すすべなく沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

さて、あとは火竜たちだ。

残った鰻たちはまた絶望に打ちひしがれたみたいな表情をしてる。

いつもの。

 

火竜たちの反応はさまざま。

まだ生き残れると思ってるのか必死に動こうとするやつ。

もう動けないと悟ったのか無表情のやつ。

鰻と同じように絶望してるやつ。

三者三様だ。

 

鰻の方が感情のバリエーションが少ないね。

火竜になってから増えるもんなのかな。

 

 

 

再び、引き上げタイム。

まずは火竜から。

下手に麻痺対策のスキルとか手に入れられると困るし。

 

火竜を1匹ずつ引き上げる。

前上げたよりもだいぶ楽になってる?

これは力が強くなってるからかな。

 

抵抗したがってるけど無視。

そのまま猛毒を口に流し込む。

 

うーん、体力は無くなってるし、火竜の死骸になってる。

それなのに私のレベルは上がらない。

 

やっぱり経験値がいっぱい必要なのか。

 

2匹目も同じように流し込んだ。

それでも無反応。

3匹目を倒したところでやっとレベルが上がった。

 

《経験値が一定に達しました。個体、ラグ・ロアがLV19からLV20になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『闇魔法LV5』が『闇魔法LV6』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『視覚強化LV9』が『視覚強化LV10』になりました》

《条件を満たしました。スキル『視覚強化LV10』がスキル『視覚大強化LV1』に進化しました》

《スキルポイントを入手しました》

《条件を満たしました。個体、ラグ・ロアが進化可能です》

 

《進化先の候補が複数あります。次の中からお選びください。

 エジク・ラア

 デトロエレテクト

 ラクトルターガ》

 

あ、進化できる。

待ってくれ。

あと鰻8匹と火龍を引き上げなきゃいけないんだ。

 

 

引き上げきつい。



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36 進化

重大な書き間違えが多すぎる。


鰻を1匹ずつ引き上げる。

そしてトドメを刺していく。

上げて刺して上げて刺しての繰り返し。

というかこっちの方が戦闘より時間がかかったんじゃないか。

 

もうレベルもカンストしちゃったし。

経験値ももったいない。

 

「ナマズとかも引き上げておく?」

「そーだね。飽食あるし。

 どうせだし産卵してみれば?」

 

確かに今までは熱で死ぬっていう理由で中層では産卵してこなかった。

でももう卵改造ができる。

これなら、産んでも問題ないかな。

 

またえっちらおっちらナマズたちを引き上げる。

鰻たちよりも軽いけど数が多い。きつい。

ナマズを全て引き上げたら次はタツノオトシゴ。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『剛力LV6』が『剛力LV7』になりました》

 

おお。まあでも上がるよな。こんなにたくさん引き上げてるんだし。

 

タツノオトシゴを引き上げて最後は火龍。

最初に倒したせいで完全に沈んじゃってるから、えっちらおっちら引き上げる。

レンドさんは強かった。

死んでもなお私を苦しめるとはさすがだ。

 

黒鞭だって重さの限界値がある。

だから、最大まで顕現させて引く。

マジで終わった後の方が強くない?

 

白は白でなんかぼっーとしてるし。私は働いてんのに。

 

やっと火龍を引き上げた。

やばいなこの量は、山の如し。

本当に山になってるし、なんなら中層の道をほとんど埋めてる。

食べ切れるのか、これ?

 

「ねえ白、もうここで進化しちゃわない?」

「そうだね。別に襲ってくる奴らもいないでしょ」

「ご飯もったいないしね」

 

 

 

じゃあ進化先について見てみよう。

 

 

デトロエレテクト。

サヤみたいになるやつだ。

正直却下かな。

わざわざ身体デカくする意味ないし。

身体デカくすると小さくなった時のステータス低下も激しいしね。

 

そもそもどんな個体からでもオリジンエレテクトになれるかどうかがわからない。

アラクネの条件には小さな個体ってのがあるらしいし、そんな賭けをする気もない。

 

すると、選択肢は二つになる。

 

『エジク・ラア:進化条件:ラグ・ロアLV20:説明:「  」の象徴とも言われ恐れられる、小型の電気蜘蛛の魔物。非常に高い戦闘能力と隠密性を持つ』

『ラクトルターガ:進化条件:一定以上のステータスを持つ電気蜘蛛モンスター、魔法系スキル所持:説明:魔法に精通する電気蜘蛛の魔物。知能が高く、敵を錯乱するのに長ける』

 

うん。

ラクトルターガではないかな。

私元々天才だし。

知能元々高いし。

 

『オレ様がその知能吸いとっちまったがな』

 

うるさい。

それでも頭はいいんだよ。

 

何より、ラクトルターガは進化ツリーが切れてる。

オリジンにはどっからでもなれるとしてもより強くなれる方がいいでしょ。

 

エジク・ラアは小さいし進化ツリーでの位も高い。

でもなんの象徴かはわからない。

ラグ・ロアは混沌の象徴だったのに、これは空欄になってる。

 

『なんの象徴になるんだろうな。Dも予測不能ってか?』

 

そうか。

私はオリジンなんだ。

Dもどうなるかはわからない。

あくまで、適当な化学物質の混ぜ合わせ。

設定もない、運次第の進化。

 

 

 

面白いじゃん。

 

『ギャンブラーか?』

 

別にそれでもいいけどね。

 

「白、進化順はどうする?」

「私はどっちでもいいよ」

『そうか。じゃあ先に青からにさせてくれ。色々見たい』

「いーよー」

 

『おい青』

『なに、電脳?』

『お前、まさかオレ様が興味のためだけに先に進化させろって言ってると思ってないよな?』

『思ってるよ』

 

盛大にため息をつかれた。

私間違ってない。なぜ?

 

『今、禁忌はLV8だ。これはわかるな?』

『流石に書いてあるしわかるよ』

『そして、オレ様たちはもうすぐ進化して、最上位に近い魔物になる』

『禁忌のカンスト?』

 

 

『わりかしちゃんとした脳持ってるじゃねえか。

 どんどん魔物としての位が上がってる。

 禁忌のレベルアップが一気に2上がってもおかしくはねえ。

 まあ仮の話だが』

 

『するとどうなる。もし白の出自が公開されたら。

 仮初の世界だとバラされたら。

 この世界が、魔王の言う通りクソみたいな世界だとバラされたら』

 

『進化してないお前は、進化してショックで暴走する白を抑えられる自信でもあるのか?』

『ない』

『そういうことだ。さっさと進化するぞ』

『うん』

 

《個体ラグ・ロアがエジク・ラアに進化します》

 

私の意識は、進化へ溺れていく。

 

 

『お前の禁忌は、オレ様が何とかしてやる』

ありがとう。

 

私の意識はここで完全に途絶えた。

 

 

 

《進化が完了しました》

《種族エジク・ラアになりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度進化ボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『HP自動回復LV9』が『HP自動回復LV10』になりました》

《条件を満たしました。スキル『HP自動回復LV10』がスキル『HP高速回復LV1』に進化しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『HP高速回復LV1』が『HP高速回復LV2』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『魔力付与LV4』が『魔力付与LV5』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『破壊強化LV4』が『破壊強化LV5』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『斬撃強化LV5』が『斬撃強化LV6』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『毒強化LV7』が『毒強化LV8』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『気闘法LV6』が『気闘法LV7』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『気力付与LV3』が『気力付与LV4』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『万能糸LV3』が『万能糸LV4』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『闇魔法LV6』が『闇魔法LV7』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『空間魔法LV5』が『空間魔法LV6』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『外道魔法LV8』が『外道魔法LV10』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『禁忌LV8』が『禁忌LV9』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『破壊耐性LV5』が『破壊耐性LV6』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『打撃耐性LV3』が『打撃耐性LV4』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『斬撃耐性LV4』が『斬撃耐性LV5』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『石化耐性LV4』が『石化耐性LV5』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『酸耐性LV4』が『酸耐性LV5』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『痛覚軽減LV9』が『痛覚軽減LV10』になりました》

《条件を満たしました。スキル『痛覚軽減LV10』がスキル『痛覚大軽減LV1』に進化しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『天命LV1』が『天命LV2』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『瞬身LV2』が『瞬身LV5』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『耐久LV4』が『耐久LV5』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『禁忌LV9』が『禁忌LV10』になりました》

《進化によりスキル『腐蝕耐性LV1』を獲得しました》

《『腐蝕耐性LV1』が『腐蝕耐性LV4』に統合されました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『腐蝕耐性LV4』が『腐蝕耐性LV5』になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《条件を満たしました。禁忌の効果を発動します。インストール中です》

《インストールが完了しました》









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37 夢のような話







おはよう。

私は今、気分が悪い。

ムシャクシャに火龍を食べてるけど、その怒りが収まる気配はない。

 

馬鹿か、魔王。

なにやってんだ。馬鹿野郎が。

 

なぜポティマスを殺さない?

貴様なら殺せるはずだろうが。

臆病が。

 

ギュリエディストディエスとかいう馬鹿も何をやってたんだ。

私を。世界を。人類を。さっさと救いやがれ。

 

力を持っている奴が正しく行動しない。

だから世界がおかしくなる。

そのくせ、世界は力を持たないと会話すること自体を許さない。

 

そりゃそうだ。

だから世界は糞になる。

何も許さない世界が、ここまで汚い物だとは思わなかった。

 

許せない。

世界に干渉しなければ。

MAエネルギーを自由に操れる管理者にならなければ。

 

実際はただムカつくからなんだよね。

世界とか関係なく。

私が死ぬし。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『怒LV1』を獲得しました》

 

『それがお前の幸せなんだろ?』

うん。

 

『いずれは同じ結論か』

うん。

 

「電脳。お前は私の想像を超えることができるだろ?」

『容易い。お前どころか、全生命の思考解読してやるわ』

「ならいい。私の役に立て」

『当たり前だ。ずっとついていくぜ』

「そう」

 

落ち着いてきた。

やりたいことも決まったし、何をするかも決めた。

あとは行動するだけだ。

 

『ステータス確認するぞ。白が起きる前にだ』

 

『エジク・ラア Lv1 名前 青

               佐野蒼生

 HP:915/915(緑) +693

 MP:4895/4895(青) +1032

 SP:1186/1186(黄)

   :1215/1215(赤)+1036

 ステータス

 平均攻撃能力1795

 平均防御能力1798

 平均魔法能力5136

 平均抵抗能力5231

 平均速度能力2991

 「魔力付与LV5」「魔導の極み」「魔闘法LV5」「HP大吸収LV3」「HP高速回復LV2」「SP回復速度LV7」「SP消費緩和LV7」「瞬間速度強化LV3」「破壊強化LV5」「斬撃強化LV6」「毒強化LV8」「毒合成LV8」「気闘法LV7」「気力付与LV4」「猛毒攻撃LV3」「腐蝕攻撃LV1」「糸の才能LV6」「万能糸LV4」「操糸LV10」「投擲LV10」「射出LV1」「立体機動LV7」「集中LV10」「思考加速LV5」「並列意思LV2」「命中LV10」「確率補正LV2」「無音LV4」「隠密LV8」「威圧LV1」「魔王斬LV2」「外道魔法LV5」「電撃付与Lv10」「雷付与LV10」「雷光付与LV2」「飽食LV3」「暗視LV10」「視覚領域拡張LV2」「予見LV1」「回避LV8」「外道魔法LV10」「電気魔法LV10」「雷魔法LV10」「雷光魔法LV2」「雷光耐性LV2」「火耐性LV3」「影魔法LV10」「闇魔法LV7」「毒魔法LV8」「毒耐性LV8」「空間魔法LV7」「深淵魔法LV10」「麻痺無効」「石化耐性LV5」「酸耐性LV5」「腐蝕耐性LV5」「外道無効」「破壊耐性LV6」「打撃耐性LV4」「斬撃耐性LV5」「恐怖耐性LV5」「苦痛無効」「痛覚大軽減LV1」「気絶耐性LV3」「視覚大強化LV1」「千里眼LV2」「聴覚大強化LV1」「嗅覚強化LV9」「味覚強化LV9」「触覚強化LV9」「神性拡張領域LV4」「天命LV2」「瞬身LV5」「耐久LV5」「剛力LV5」「堅牢LV5」「強化産卵LV10」「小型化LV10」「共生LV6」「賢姫LV5」「妖姫」「怠慢Lv8」「無垢LV2」「怨響LV2」「怒LV1」「電脳」「傲慢」「奈落」「禁忌LV10」「n%I=W」

 スキルポイント4000

 称号 

 「悪食」「血縁喰ライ」「魔物殺し」「魔物の殺戮者」「竜殺し」「龍殺し」「毒術師」「糸使い」「大感染」「オリジン」「傲慢の支配者」「電脳の支配者」「恐怖を齎す者」「究明者」「暗殺者」』

 

 

恐ろしいステータスだ。平均ステータスも3000ぐらい。

相当な化け物になったなと我ながら思う。

これでも、全然足りないけど。

そもそも資格ないし。

 

『まあ、さっさと色々食っとけ。

 白を抑えられるようにな』

 

白も進化中。

そろそろ目覚めるだろうから、

急いで食べなければ。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

全く目覚めない。

もう相当経ってるはず。

少なくとも進化は終わってるはず。何があった。

 

白、死ぬな。

 

私はおもむろに手を伸ばす。

腕が突き刺さった。

というか、すり抜けた。

 

あ。まずい。

 

 

幻夢だ。

 

『裏側見てみろ!』

 

山の後ろには、無残にも食い荒らされた鰻たちやナマズがいた。

言葉通り食い荒らされたという表現が正しいと思う。

いつもの白とは思えないくらい食べるのが乱雑だし、急いでいたのがわかる。

 

 

『こりゃやられたな』

そうみたいだ。

 

 

 

 

白は私から逃げた。

 

 

 

「なぜだ?」

『お前と白じゃ根本的に根が違う。あいつは戦いを好み自分の意志を尊重する。だがテメーの場合はそもそもその意志が希薄だ』

 

『何より今回の禁忌はそんなお前ですら戦闘を考えた。

 白に抑えられるわけがない。

 それでキャパオーバーで暴走したか』

 

「何で私に話さなかったんだろう」

『当たり前だ。()()()()()()()()()()って知ってるからだ』

 

そうだね。

 

 

確かに、私は逃げるの優先で生きてる。

 

これからもそうするつもりだし。

 

『電脳』

『なんだ?』

 

私は決めた。もう揺るがない。

白が残した食べ物も残しちゃいけないし。

彼女はそれも望んでるはずだ。

 

 

『白追いかけなくてもいいよね?』

『いいと思うぞ』






別れは突然に。


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38 管理者


答え合わせかも


鰻たちは全て食い尽くした。

もったいないし。

 

そして、余ったHPで賢姫を使ってマグマックたちを十数匹確保した。

やるべき仕事があるからね。

 

 

で、今は中層を歩いてる。

白は上層で暴れ回ってるみたい。

 

別に上層だし死なないよね。ほっとこう。

 

 

『空間が歪んだ。来るな』

『え?なにが?』

『神話だ』

 

私もやっと理解した。

直感だけどこれは転移だ。

誰かが来ようとしてる。

電脳が言うことを考えると禁忌の関係者?

 

すると今の私に抵抗は難しい。

まず戦って勝てない。

 

魔王すらも転移は使ってきてない。

だと最悪魔王以上の実力者となる。

 

誰だ。

狙いは私のはず。

じゃなきゃここにわざわざ転移しに来ない。

 

一年ほどでここまで強くなった私に警戒を示したか?

それとも、一定のなにかを満たしたからか?

私は身構える。

戦うためじゃなく、逃げる為の体勢で。

 

最悪、D本人、またはアルセウスが出てくるかもしれない。

すると運だ。

 

でもいい。

生き残るんだ。

 

 

 

出てきたのは1人の男だった。

黒い鱗に身体を包まれた、黒い服を着た男。

ただただ黒い。

 

その目には疲れの色がはっきりと映っている。

 

私はこの男について知っていた。

なにも思い出せないのに、なにもわからないのに、知っている気がする。

 

 

 

「@@@@@@@@」

 

すまん。またか。

 

あいにく私は異世界語がわからない。

電脳に魔王との会話を調べてもらったりもしたけど、ほとんど不明。

途中からアルセウスが全翻訳しちゃったしね。

 

 

「日本語でお願いします」

「@@@@@@」

「私もわからんのよ」

 

通じてないことで通じてる気がする。

通じてないんだろうけど。

 

でも、私を倒すっていう算段はないのかな。

あっちも困惑してるってことは多分意思疎通したくて来たんだろうし。

 

 

 

 

カタリ。

 

男と私の間の地面になにか落ちてきた。

 

スマホだ。

またか。神たちはどんだけスマホが好きなの?

 

ただ今回はアルセウスの装飾がない。

するとD?

わからない。

シンプルだし、Dのかな。

 

『もしもし。こちら管理者Dです』

 

スマホからいきなり声が聞こえた。

 

 

 

ビンゴ!!

いや別に嬉しくないけどね?

たまたま当たっただけだし?

私のたまたまはなかなかないことだけど?

 

Dは2つの言語を重ねてしゃべってる。

一つは日本語で、もう一つは聞いたこともない言語で。

 

これはこの世界の言語か。

 

「*******!?」

 

おお男ビビってる。かわいそうに。

 

 

 

 

 

『思っても口に出すなよ?

 絶対にだ』

『電脳?なんで?』

『いや、相手神だぞ?

 下手なこと言うと殺されるだろ。

 今だってDに命握られてんだし』

『じゃあどうすればいいの?』

『穏便に話せ』

 

 

 

いいからそうしろ。ヤバくなったらオレ様が交代してやる。

ただし、交代したら絶対に口を挟むな。

任せろ。

 

いや、それ解決策じゃないじゃん。

どうすんのよ。

 

男が消えゆくのを見て、私は向き直る。

どうしよう。

次は私の番だ。

地球でも会話は苦手だったのに。

 

 

『お待たせしましたー。全てを一任されてしまった青さん。彼には説明したので大丈夫です。気にしないでくださーい』

 

 

いや、しっかり心読まれとる!

無理でしょ!穏便に話せなんて!

 

 

 

『助けて電脳!』

『オレ様を巻き込むな!』

 

ため息をつかれた。

文句言いたいのはこっちなんだけど。

 

 

『はい、もしもし。こちらクソ寄生虫です。寄生されたくないのであれば帰宅して頂けるとあなたの身のためになると思いますが』

『あなたが電脳さんですねー。相当機嫌悪いみたいですねー』

『当たり前です。この女に頼んだのにすぐ代わって来ましたからねー。なんの用事でしょうか』

『やろうと思えばあなたを汚い花火に出来るんですよ?』

『わかりましたすいませんマジで反省しています』

 

『本当に反省の色が見えるので今回はいいでしょう。許します』

 

 

こわっ。頼むから、変なこと言わないで。

てか電脳まじめになって喋って。

 

『でも驚きましたー。まさか禁忌がインストールされる前に世界の秘密を知ってしまうなんて』

『探求が好きなもので。ありがとうございます』

 

 

『ですから、私からはなにも言いません』

 

え?

 

『あなたがどんどん知っていく。その限界を見てみたいんです』

『わかりました。任せてください。

 世界を救ってみせますよ』

『大口を叩きますね。

 楽しみに待っています。では』

 

え?え?

 

待って。いや、電脳。

なに言ってんの。

 

 

スマホが消えた。

なんの予兆も無しに。

 

私はただ1人、中層に残された。

 

 

 

 

 

『どうすんのよ、電脳。そんな大口叩いて』

『今生き残るための最善の手を突き詰めたらそうなったんだよ』

『しょうがないな、もう』

 

それでも無駄なこともたくさん言ってたけどね?

 

ーーーーーーー

 

龍を倒したあと私は歩き続けた。

たった3日ほど。その3日は長かった。

 

 

 

見えた。

長い上り坂に続く暗闇が。

この暗闇が、私にとってここまで心地の良いものとは思わなかった。

素晴らしい。

マグマがないって素晴らしい。

 

 

 

ただいま、上層。






ここから物語は急展開へ?


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39 人間様のおもてなし準備





上層に出たことだし。

まずは中層近くに巣を作ろう。火に強い素材がたくさん欲しいしね。

 

 

 

 

よーし!マグマックども、私に渡せ!

彼らに運んでもらってた火龍や火竜のウロコを糸に括り付けて引きずっていく。

これは人様のため。文明の利器を作るためには火がいるしね。

それに強い素材も必要。

 

白は転移が出来るようになったみたいで下層と上層を往復してるのがよく見える。

巣は下層に作ったみたい。また縦穴から降りたのかな。

 

私も出来るようになったけどしばらくは使うつもりがない。

使う必要があればいっぱい使うかな。

 

 

それより、私が待っていたことその2をするときがついに来た。

なんならこれが1番楽しみで上層に来たとも言える。

 

『子供たち、集合!』

 

 

この後に起こる出来事を、私はまだ知らない。

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

予想外。流石にこれは予想外。

もちろん戦力は多い方がいい。

でも、これは軍隊過ぎる。

 

アースエレテクトが300頭来るとか、誰が想像したよ?

 

まさかほぼ全員が転移出来るとは。

スキルポイントレベルアップボーナスは伊達じゃない。

空間魔法覚えとけとは言ったけどさ。

 

ま、まあステータス確認しよう。

名前は省略。300頭もいるんだし覚えられるわけない。

 

『アースエレテクト LV8

 HP:3516/3516(緑)+1400

 MP:4182/4182(青)+1400

 SP:2985/2985(黄)

   :2988/2988(赤)+1288

 平均攻撃能力:3988(詳細)

 平均防御能力:3986(詳細)

 平均魔法能力:3004(詳細)

 平均抵抗能力:3101(詳細)

 平均速度能力:3987(詳細)

 スキル

 「HP高速回復LV1」「HP大吸収LV8」「瞬間速度強化LV6」「MP回復速度LV3」「MP消費緩和LV3」「魔力感知LV4」「魔力操作LV6」「魔王斬LV4」「魔力撃LV1」「魔闘法LV2」「SP高速回復LV1」「SP消費大緩和LV1」「気闘法LV7」「糸の才能LV5」「万能糸LV3」「操糸LV10」「念動LV2」「毒合成LV5」「猛毒攻撃LV10」「状態異常大強化LV1」「破壊大強化LV2」「斬撃大強化LV4」「貫通大強化LV8」「打撃大強化LV3」「衝撃大強化LV1」「空間機動LV8」「命中LV10」「回避LV10」「確率補正LV8」「危険感知LV10」「気配感知LV10」「動体感知LV10」「外道魔法LV10」「毒魔法LV10」「電撃付与Lv10」「雷付与LV10」「雷光付与LV2」「電気魔法LV10」「雷魔法LV10」「雷光魔法LV2」「雷光耐性LV2」「空間魔法LV10」「次元魔法LV1」「治療魔法LV4」「飽食LV4」「破壊大耐性LV1」「斬撃大耐性LV2」「貫通大耐性LV2」「打撃大耐性LV4」「衝撃耐性LV9」「状態異常大耐性LV1」「腐蝕耐性LV6」「外道耐性LV5」「苦痛無効」「麻痺無効」「痛覚大軽減LV2」「暗視LV10」「視覚領域拡張LV7」「視覚強化LV10」「千里眼LV2」「聴覚強化LV7」「嗅覚強化LV2」「触覚強化LV7」「強化産卵LV10」「小型化LV10」「無限Lv1」「無垢LV5」「怨響LV5」「天命LV2」「魔蔵LV8」「天動LV1」「富天LV1」「剛毅LV2」「城塞LV2」「道士LV7」「護符LV2」「韋駄天LV1」「禁忌LV6」

 スキルポイント:8900

 称号

 「悪食」「血縁喰ライ」「魔物殺し」「毒術師」「糸使い」』

 

 

やばい。ステータスが高すぎる。

私、まさかの敗北。ショック。

 

コイツらを私が従えてるってことで。

実質私の戦力だしいいや。

 

いやー、魔王の気持ちもわかるね。

こんな子分いっぱいいれば大船に乗った気持ちにもなりますわ。

いいからポティマス処理して欲しいけど。

 

 

 

アースども。

まずはウロコを頼む。

 

『どうすればいいんですか?』

『爪で皿の形に加工してほしい。なめらかにしてくれってこと。できる?』

『できます』

 

私が人間に対して持っている武器のうち最も強いのは食べ物、特に卵だ。

中世なら飢饉飢餓は当たり前。

なら高級食材の卵を配るのが一番手っ取り早い。

 

『電脳?卵、人に対して無害だよね?』

『おそらくな。突然の栄養過多による体調不良は予想がつくが、それも量で調整できる』

 

うん。

てことで、次は出口探し。

迷宮の出口を探そう。

出来れば兵士たちが使うところがいいな。

人と関わりたいのもあるし。

 

 

『アースたち!出口知ってる人いたら手をあげて!お願い!』

『私知ってるよ』

『私もー!』

 

 

まじか。

思ったより情報網もちゃんとしてた。

私、いらないのでは?

 

 

『その出口って人が入ってきそうなとこだった?』

『うん。門と警備員さんいたよね?』

『いたね』

 

『え?なんでバレなかったの?』

『小さくなってたし』

『う、うん』

 

小さくなるってすごい。

小さい魔物はいないっていう人間様の勘違いかもしれないけどね。

 

 

『残ったアースたちは巣を作ってね。お願い』

『『了解でーす!』』

 

よし。準備は整った。

 

 

 

 

出るぞ、迷宮。

懐柔するぞ、人間。




コイツ、巣を一瞬で捨てるつもりか。


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40 食





迷宮の入り口。

私は隠れながら様子を確認する。

てか、めちゃくちゃデカい扉あるね。

その割には脆いけど。

逆に脆いから厚くしてるのかな。

 

 

しっかりと警備員さんもいる。こんな暗闇で眠くなりそう。

 

『で、どうするつもりなんだ?』

『うーん、人様に敵意を持たれる前提で進めなきゃいけないのが大変。

 うまいこと出来ればいいんだけど』

 

私が人と関わりたいって言ったから、電脳はお休み。

言語を解読してもらうっていう仕事もあるしね。

 

接触を図るか?でも急に目の前に魔物が現れるとびっくりするかもしれない。

 

 

 

いや、バレてんなこれ。

鎧に隠れてるけどチラチラこちら見てるわ。

それでも何もやられないのはやっぱり私が無害だと思われてるから?

 

警備員さん二人で話し合ってる。

どうしたかな?

 

『単純にお前を殺すかどうかの議論じゃね?迷宮の異常には変わらないだし』

 

あ、前に向き直った。

私のことは完全に無視してる。舐められたもんだ。

 

まあいいもん。

胃袋を掴むことの重要さを教えてやる。

 

私は、持ってきていた卵を転がして転移した。

 

 

 

 

 

どうなってるかなー。

転移用ゲートをもう一度開いて、さっきの兵隊さんたちを確認。

 

うんうん。卵見てるね。

剣でつついてる。魔物の卵なんてびびるよね。

そりゃ私もびびる。

 

 

パキャ。

 

 

待って?

いや待って?

 

剣でそのまま割ってきたんだけど。

 

いやうそでしょー。

なんでそんなに人間ビビリなのよ。

蜘蛛の巣は焼き払うのに。

 

見たこともない蜘蛛の卵はびびって割るの?

本当によくわからない。

 

しょうがないなー。

人間は小心者なんだから。

私もここまできたら腕を振るってあげよう。

 

 

お料理教室、開催!

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

じゃあ。

お料理教室の始まりだよー。

 

1。適当な魔物を狩ります!

  カエルはギリ許容範囲!蛇がベストです!

 

2。皿に乗せます!蛇のお肉も乗せましょう!

  もちろん卵も乗せます!

  これがメインディッシュだし。

 

3。焼きます!蛇やらカエルやらは燃料です!

  カエルの汁がパチパチしても肉や卵にかからないように!

  かかると死にます!人だと。多分。

 

4。毒味します!電脳さんに調べてもらって大丈夫ならまあ大丈夫でしょう!

 

 

てなわけで、どう?

 

『多分有毒。あくまで地球の世界の人間基準だがな』

『え?』

『カエルの毒が混ざっちまったみたいだな。もうカエル温めるのやめとけよ』

『もう混ざっちゃってるし。またヘビ狩ってくるの?』

『ああ』

 

マジか。

もうアースたちに持ってきてもらうか。

 

『てか、なんでお前糸使わないの?糸使えばいいじゃん』

『え?』

 

ーーーーーーーー

 

 

 

ある日のことだ。

違和感が生まれ始めた。

 

ある日、よくわからない蜘蛛が隠れていた。

脚が8本だったしあれは蜘蛛だろう。

 

そいつは、俺たちの方向をじっと見つめていた。

しばらく見ているが一向に攻撃してくる気配がない。

手のひらに乗るようなサイズだし戦ってても勝てるとは思うが。

 

「相棒。なんだアイツ?どこから出てきた蜘蛛だ?」

「さあ、どうする?」

 

相棒も気にかけていたようで話しかけてきた。

確かにこんな魔物はいねえ。

見たこともない。

だが負ける気もしない。

 

「ほっとくんでいいんじゃねえか」

「そーだよな。害があるわけでもなさそうだし」

 

そして、俺たちが目を離したら消えていた。

一つの卵を残して。

 

 

 

次の日。同じ時間にその蜘蛛は再び現れた。

そして俺たちに手を振った。蜘蛛が手を振るハズはねえ。

でも確かに振ったんだ。

少なくとも俺にはそう見えた。

 

そして、その前日のように消えた。

再び置いてある卵。

昨日は食えないだろうと思って割った卵も、あの時なら食えそうだと思った。

なんの根拠もなかったのにな。

 

相棒も同じことを思ったみたいだ。

 

「どうやって食う?」

「焼いて食うのが良さそうじゃないか?害は無いだろ」

「バッカお前。卵だぞ。害があるわけねえじゃねえか」

「それもそうだな」

 

その日は俺たちで卵を焼いて食った。

もちろん、調味料なんてものはねえ。塩も香辛料もない。

それでもなかなかに美味かった。

 

 

 

またその次の日。

ソイツは自分から近づいてきた。

もちろん、俺たちも警戒しない。

警戒するようなものでもないだろう。

俺たちに飯をくれてるんだし。

 

蜘蛛は糸を出して、火魔法で焚き火を始めた。

蜘蛛が魔法を出すとは凄いな。

しかも苦手なはずの火魔法。

女神教に存在するそれこそ神獣か?

 

焚いた火の上に皿を乗せていく。

皿は妙に赤いし硬い。

石の割には軽いな。

この皿はなんかの生物の鱗か。

神獣ならこんなことをしてもおかしくないが。

 

 

 

恐ろしく頭が良い。

さすが神獣だ。

こんなこともできるとは。

 

蜘蛛は、その後俺たちに皿をスッと差し出してくれた。

 

優しいな。

魔物と対峙しているということを忘れてしまいそうだ。

というより、その時は忘れていた。

今も忘れているのかも知れない。

警戒心などはないのだから。

 

 

美味かった。

とんでもないほど美味かった。

生きてきた中で最も美味かった。

涙が止まらないほどだ。

この飯を一日一回食えるならこの仕事なんてやめていいと思えるほどだった。

その神獣は、俺たちの顔を見ながらうんうん頷いていた。

 

 

それから三日が経った。

その神獣は、今もなお俺たちに飯をくれている。



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W3 わたし、強く、なりたい






青と別れてから3日ぐらい経ったのかな。

わたしは一人下層にいる。

 

ああ、D?

もちろん会った。

スマホで。

よくわからない男もいた。

 

 

青からスマホを見たっていうのは聞いたけど、本当だったのか。

正直びっくりした。

青は意見をコロコロ変えるし、物事を誇大して話すことが結構多いし。

 

わたしは青と別行動をとることにした。

理由は簡単。青はおそらく戦闘が好きじゃないから。

わたしみたいな、戦闘狂じゃないから。

 

上層に来て、わたしは強くなったと確信した。

嬉しかった。

でも同時に弱かった。

そう思ってしまうわたしの心と、管理者にもなってないわたしの体は弱いままだ。

 

 

 

だから決めた。

わたしはアラバを打ち倒す。

異世界にきて、その厳しさを教えてくれたアラバをだ。

 

もちろんそれを青に言うことも考えた。

青もトラウマになっていると思うから。

でも、戦うことには賛成しないと思う。

だって青だし。

 

 

 

 

 

 

 

そしてついに。

ついに。

 

わたしは、空間魔法の進化系である次元魔法を獲得したのだ!

これを使えば転移ができる。

なんとマザーが襲ってきても逃亡できるのだ!

 

 

 

 

禁忌が発動してから一週間。

確かにわたしは狂ったように戦った。

地竜もヘビもカエルも平等に刈り取った。

上層の獲物がいなくなれば下層に行って、下層に獲物がなくなれば上層に向かう。

そんな生活を繰り返してた。

 

そのおかげで一気に育ったから獲得できたんだけどね。

もうやらん。

 

 

だってあの時、なにも考えずにそのまま地龍に挑んだんだよ?

結果は敗北。

まあ、そりゃあそう。

 

あの時、わたしと相対したのは地龍カグナ。

実は下層でアイツと出会ってた。

初めて会った時は時は無理だと思ってたけど、怒りで暴れていたわたしはいけると思った。

 

 

無理でした。

危なかった。ブレスを喰らう前に転移で逃げられたから大丈夫だったけど、当たったら死んでたと思う。

地龍は恐い。火龍よりも。

 

そのとき鑑定したのがこれだ。

 

『地龍カグナ LV26

 HP:4198/4198(緑)

 MP:3339/3654(青)

 SP:2798/2798(黄)

   :2995/3112(赤)

 平均攻撃能力:3989(詳細)

 平均防御能力:4333(詳細)

 平均魔法能力:1837(詳細)

 平均抵抗能力:4005(詳細)

 平均速度能力:1225(詳細)

 スキル

 「地龍LV2」「逆鱗LV9」「堅甲殻LV8」「鋼体LV8」「HP高速回復LV6」「MP回復速度LV2」「MP消費緩和LV2」「魔力感知LV3」「魔力操作LV3」「魔力撃LV1」「SP回復速度LV1」「SP消費緩和LV1」「大地攻撃LV9」「大地強化LV8」「破壊強化LV8」「貫通強化LV6」「打撃大強化LV5」「命中LV3」「危険感知LV10」「熱感知LV6」「土魔法LV2」「破壊耐性LV9」「斬撃大耐性LV2」「貫通大耐性LV3」「打撃大耐性LV6」「衝撃大耐性LV4」「大地無効」「火耐性LV3」「雷耐性LV7」「水耐性LV3」「風耐性LV5」「重耐性LV2」「状態異常大耐性LV8」「腐蝕耐性LV3」「苦痛無効」「痛覚大軽減LV3」「暗視LV10」「視覚領域拡張LV4」「視覚強化LV3」「聴覚強化LV1」「天命LV2」「魔蔵LV3」「瞬身LV1」「耐久LV1」「剛力LV9」「城塞LV2」「道士LV2」「天守LV1」「縮地LV1」

 スキルポイント:31200

 称号

 「魔物殺し」「魔物の殺戮者」「龍」「覇者」』

 

 

なにコイツ。動く城じゃん。

 

攻撃と防御が高すぎる。なら抵抗力は弱くしてよ。なんで高いのよ。

 

 

うーん。

アラバを倒す前にコイツを倒してもいいかな。

アラバよりは弱いでしょ。

なんとなく、気迫が、ねえ?

そもそもアラバだったら突撃して戦うなんてことしないしね。

 

 

こういうことを考えてると、青は強かったんだなあとつくづく思う。

正確に言うとわたしと組んだ青だけど。

だって、コイツわたしが避けてる間に青が雷光魔法撃ってたら終わるでしょ。

無垢でスキル打ち消せば魔法耐性の逆鱗だって打ち消せるんだし。

 

HP高速回復はあるけど倒せると思う。

カグナは雷系魔法に対する耐性ないし。

 

あーあ。青と別れたの失敗だったかなぁ。

今からでも青を連れ戻しにいくか?

多分来てもくれるんだよなぁ。

 

でも本人は戦いたいってわけでもないし、ただわたしの自己満足で戦いに巻き込んでいるだけ。

それはわたしが許せない。

そんな簡単に人の覚悟、意志を無碍にすることはできない。

わたしも甘くなったもんだ。

 

 

じゃあ、わたし一人で戦うか?

運のいいことに、深淵魔法を放てば瀕死にはできそうなんだよね。

 

わたしは見たこともないけど、電脳が龍くらいならいけそうって言ってたし。

とりあえずやってみないと話は始まらないか。

 

 

「深淵魔法LV1、地獄門!」

 

大量の魔法陣が現れる。

それらは細かく振動して、大爆発を引き起こした。

 

迷宮は砂埃に包まれていった。

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

ないわー。

 

まさか試しに撃ったLV1の魔法でわたしが制御不能になるとか。

しかもそれで爆発するとか。

深淵魔法、どんだけなのよ。

わたし魔導の極みも持ってるはずなんだけど。

 

うーん、術者自体の経験不足か。

並列意思がいてくれたらまだ戦えるんだけど生憎外出中だしなー。

最近やっと手に入れた暗黒魔法でもカグナは倒せないっぽいし。

無垢のスキルが欲しい。

マジで。

 

 

 

 

 

 

でも暗黒魔法なら練習する機会はありそうだね。

食われているのにやっと気づいたマザーのおかげで。

わたしの本体を殺せば助かるって気づいたマザーのおかげで。

 

 

わたしは忍び寄っていたマザーの刺客たちに向き直る。





白、原作とやることがほとんど変わらない。

これは白についての話減らすことになるかも。


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41 全生命の集う地上へ






うん。

正直驚いてる。こんなに簡単に受け入れてくれるとは。

魅了、やばいな。

 

『魅了:相手に「魅了」のステータス異常を付与することが可能』

 

思ったよりめちゃくちゃ効いてるんだけど。

 

1日に3回人の交代があるから毎度おかずあげてるけども、3日目にしてもう警戒心を失ってたよ。

そしてそのまま1週間経ったのが今。

 

普通に食べ物もらいに歩いてくるからね。

門番なのに門無視して。

魅了はただ好きにするはずのスキルなのに、思考にも影響し始めたみたい。

もはやここまで来ると洗脳だね。

 

 

電脳にも頑張ってもらってるおかげで、言語もわかってきた。

流石に早くないかって?

アイツらめちゃくちゃ話しかけてくれるんだもん。

食事中は情報あげないといけないとか思ってるの?

喜んで聞くけどさ。

 

わかったことその1。

なんか私が崇められてる存在に見られてる。

 

その2。

私、すごい強いらしい。

 

その3。

私、すげー。

 

こんなことばっか。

確かにバチュルなんて今までいなかったし?

崇められるのもわかるけどさ?

 

でもどうしようかなー。

このおじさんたちと話してても埒があかないし。

出たいって頼んでも拒否されたしなー。

なんか上が許さんとかなんとかで。

 

流石に作戦変更かな。

 

 

 

 

 

 

アディオス!

一通り話した後、またいつも通り巣に帰る。

ほとんど会話は一方通行だけどね。

念話も通じないし。

 

 

えーと、どうしようかな?

1番最適な方法は迷宮の他の出口を探すこと。

でも探さないといけないんだよなぁ。

日本みたいな大きさあるし、何日かかるかわからない。

 

 

『おい、もっといい方法思いついたけどやるか?』

『なに?』

 

『〜〜〜〜〜〜〜ツ!やろう!それがいい!』

 

見つけてしまった。圧倒的に楽で、手っ取り早い方法を。

 

ーーーーーーーー

 

私は再び門の前に行く。

まあ、兵士が来るからご飯をあげて帰る。

私はただそれをしているだけでいい。そう、私は。

 

 

 

 

上層の天井を掘り破る。

よくよく考えればここは地下。

なら、上に掘るだけで地上に出るのは当たり前。

 

 

嬉しいことに電波の反射で上が陸地であることも確認済み。

私がなにもする必要はない。

アースたちに掘ってもらえれば全部解決する。

 

 

この間にアークタラテクトやらなんやらが襲って来てたらしいけどね。

返り討ちにしてもらった。

まじめに考えて同列のアースが10体もいるのに突破出来るわけが無いよね。

マザーいくらなんでもそれは舐めすぎ。

 

 

こんな感じで掘るのは順調だから私はただ人様を惹きつけているだけでいい。穴を掘ってるのをバレない程度に惹きつけてれば。

 

 

 

こんな生活を3日続けてた。

たった3日。

地上に出る穴は、出来上がっていた。

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

上層トップレベルの大広場。

アースタラテクトを集めての大集会。

地味にこの集会誰かに見られたらヤバい気がするんだよね。

白からの連絡で龍のステータスわかったし。

 

てかなんでこのアース1匹と龍の平均ステータスが同等なの?

アースを私が解放しただけで世界終わるでしょ。

 

てか、後継者の育成に取り組まなすぎ。

魔王頑張ってよ。

いいや。私が魔王の代わりになるし。

 

 

 

 

『地上にいきたい人、手を上げて!』

 

ほぼ全員手が上がる。

なに、みんなそんなに行きたいの?

びっくりした。てか私が1番行きたいはずだったんだけど。

 

『うーん、何匹連れてこう』

『俺としては少ない数で行くべきだな。多くても5匹』

 

うん。そうだよね。

多過ぎるとびっくりされちゃう。

 

じゃあ、勘で!

適当に3匹指を指す。

別に考えすぎても意味ないしね。

 

よし。

まあいい。

 

一喜一憂してるみたいだけど。

まぁ何年かしたらみんな出れるようにするし。

 

とりあえず、地上へ行くぞ。子供たち。

わたしは、明るい、美しい地上へと飛び跳ねる。

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

『システム、アンロック』

『認証システム稼働!』

『大禁忌、解放!』

 

『5』

『4』

『3』

『2』

『1』

 

『GO!』

 

この瞬間、全ての縛りが剥がされる。

 

Dは縛りを消滅させる。

それに呼応するように、魔王は殺害に対する縛りが消滅する。

全てのオリジンが、互いの位置を理解する。

 

 

 

そしてなにより。

全てのポケモンがここで生を受ける。

 

伝説。幻。

関係ない。

 

人造。真祖。

関係ない。

 

海の神。太陽の神。

関係ない。

 

陸の回帰。海の回帰。天空神の進化。

関係ない。

 

時空。空間。破滅の世界。

関係ない。

 

理想。真実。

関係ない。

 

生命。死。永遠。

関係ない。

 

太陽の捕食者。月の誘惑者。異世界神。

関係ない。

 

妖精王の剣。格闘王の盾。豊穣の王。

関係ない。

 

古来。未来。

関係ない。

 

そして、創造神。

関係ない。

 

 

 

 

 

「この世界に生み出される生命がどんな色を持つのか」

「どう進化するのか」

「どんな未来を生み出すのか」

「気になってたまらないな」

 

 

「我も楽しむとするか」

 

 

世界にゆっくりと降り立った。

 

 

聖職者、言うならば教皇。

そんな姿をした若者は聖職者らしくない感情を抱いて、胸を膨らませる。






結論。
世界がカオスになった。


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42 地上に出た蜘蛛 & 伝説の胎動






晴れわたる青い空の下。

美しく澄んだ空気の中で。

感じる涼しげのある風。

 

ああ、なんて素晴らしいのだろう。

地上は。

 

もう空気が美味しすぎる。

迷宮の中は何年もそこにあった空気が溜まってるだけだからね。

そりゃ味が違う。

 

世界に色がついたのもある。

人間もそうだけど暗いと色の判別なんてできない。

色が鮮やかに見えるってのも空気を美味しくする原因だと思う。

 

 

ちらっ。

外から迷宮の入り口を確認。

うん。

検問所?みたいになってる。

国境みたいなもんなのかな。

 

 

魔物が外に出ると大変だからねー。

ま、30センチくらいの幅で穴開けちゃったんだけど。

 

 

検問所を出ても砦で囲まれてる。

よっぽどこの大迷宮は警戒されてるんだね。

まさかさらに囲まれてるとは。

このまま進むけど。

 

 

小さくなって砦の壁を歩いていく。

残念ながら、体長5センチってのは普通の蜘蛛でもいるサイズなのだ!

残念!わたしの勝ち!

なんで負けたか明日までに考えといてください。

 

 

よし。

当たり前のように砦を突破して歩いていく。

うーん、大きい道があるからこれは街に行くの専用かな?

 

「空間機動!」

 

お、案外街が近い。空間機動で見える位置にあるとは。

道を外れると右側は平原で、左側も平原がちょっと続いてその先は森になってる。

 

後ろは山。

エルロー大迷宮は大陸と大陸を繋いでるはずだったんだけど、どこを探しても海が無かった。

 

山を越えた先にあるのかな?

 

まずはどこへ行こう。

大きい街に行ってもいいんだけどびっくりされちゃうか。

このちっこいまま出かければ、確かに怖がらせることはない。

でも舐められちゃうかも。

 

 

舐められること自体にも問題はない。

ただ、舐められるとその後が面倒だ。

何しても怒らない雑魚とか見られるとちょっかい出してくる奴らとかが絶対いる。

 

最悪わたしがちょっかい出されてもいい。

兵士を鑑定したけど、揃いも揃って弱かったし。

私に傷をつけることもできなそうだし。

でもそのあとが問題。

そこまで舐められちゃうと、卵の窃盗とか転売が起きちゃうんだよね。

中世の窃盗とか殺人が当たり前だろうし。

 

 

これだと、私が来ると人が死ぬ疫病神じゃん。

それ絶対馴染めないでしょ。

エジク・ラアが不幸の象徴になっちゃう。

 

うーん。

小さい町か村を探そう。

それならでっかい体でビビらせればいい。

その後に卵あげれば神獣扱い継続できそうだし。

 

 

そうしよう。

私も神輿に乗れるし。

 

まずは小さい村を探さなきゃ。

あてはあるかな。

 

『とりま海に行ってみるのはどうだ?山と海に挟まれた土地なら多かれ少なかれ人はいると思うが』

 

確かに。鎌倉だってそれで栄えてたんだしね。

絶対に人はいる。

 

 

『あとそういえばなんだが、殺人者を見つけたらどうするんだ?』

『あ、それか』

 

 

魔物を上層で適当に狩っていた時、人族殺しという称号を持った地竜がいた。

別になんもないし倒しちゃったけど流石にそれが人間だった場合はめんどくさい。

はい抹殺ってわけにもいかないし。

 

 

『でも私は殺した方がいいと思うんだよね。人間を殺した人が恨み持たれてないわけでもないと思うし』

『そうだな。まあ、実際起こってみた時に考えた方がいいか』

 

私たちは、山を越えに向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『これは転移か。だが、小規模なものだな。断片的に起きていることを考えるのが適切。ヨが行ったものよりは小規模だ』

 

目覚めると同時に、悟った。

同時に理解できない場所に送られたことによる困惑も生まれたが。

 

『だが、過去でも未来でも現代でもない。それが不可解。なぜ飛ばしたかも不明。元の空間は無事なのか?』

『わからぬ。ひとまずポケモンを探すとするか』

 

豊穣の王は宙に浮く。

 

 

 

 

 

妖精王の剣は目覚める。

襲ってきた者たちを撒いて、考えることは一つ。

弟を探さねば。

 

格闘王の盾は目覚める。

襲ってきた者たちを撒いて、考えることは一つ。

姉を探さねば。

 

 

陸と海は覚醒する。

陸は海を見つける。

海は陸を見つける。

互いに呼応する2つのエネルギーは一点へと収束を開始する。

 

天空神は覚醒する。

己の力の異常な解放に苦しみながらも、目指す場所はただ一つ。

陸と海のエネルギーの収束地点へ。

 

 

海の王は目覚める。

襲ってきた者をねじ伏せ、再び眠りについた。

太陽の王は目覚める。

世界の異常を察知し、飛び去った。

 

理想は目覚める。

それを追い求め希望の世界を作り出す者を探しに、稲妻のように飛び立った。

真実は目覚める。

それを追い求め善の世界を作り出す者を探しに、火炎を宿して飛び立った。

人喰いは目覚める。

それは周囲を一瞬で凍てつかせたのち、満足したのか再び眠りにつく。

 

生命は目覚める。

それは周りに命を分け与えるため、世界を駆けはじめる。

死は目覚める。

それは周りの命を吸い取って、大空へ羽ばたきはじめる。

 

太陽の捕食者は目覚める。

それは太陽へと向かって走り出した。

月の誘惑者は目覚める。

それは二つある月へ向かって飛び去った。

異世界神は目覚める。

それは尽きそうなエネルギーを増幅させ、苦しみながらも辺り一面を焼け野原にした。

 

 

 

 

時空と空間、そして破滅の世界。

世界が耐えられる体の構成を開始する。

 

 

 

 

最後に創造神。彼はその時街へ歩いていた。




伝説のポケモンたちがほぼ全て解放されてしまった()
MAエネルギーを作れるであろうムゲンダイナさんだけ監禁中。


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A3 アルセウス談話「その3」


※メタ的描写多数


アルセウス「急遽開催だな」

 

 

D「ほんとですよ。どうしたんですか?」

 

 

アルセウス「どこぞの馬鹿がポケモンの説明し忘れてたってわけでわれわれがその補完をしなければならなくなったのだ」

 

 

D「あー。そういう感じですか。ならどんどん説明していきましょう」

 

 

アルセウス「まず、最新話に出てきた大量の奴らについて解説する。言うならば伝説ポケモンたちだな。ワレが送り込んだ奴らだ」

 

 

D「改めて考えてもなんてことしてくれたんだすぎる」

 

 

アルセウス「どうせ世界終わりかけてたしまあいいだろ」

 

 

D「私が遊ぶための世界なんですが」

 

 

アルセウス「その前提がおかしいんだよ」

 

 

D「宇宙で遊んでる人がなに言ってるんですか」

 

 

アルセウス「いいから。はやく説明していくぞ。ほら」

 

 

アルセウス「まず豊穣の王だ。単刀直入にいうとコイツはバドレックス。最新のポケモン、剣盾で出た奴だ。蕾のついた植物を摘んで蕾の根元に鹿の顔をつけたみたいな見た目をしてる」

 

 

D「うん?」

 

 

アルセウス「いや、マジでコイツの容姿の説明は大変なんだって。わからなかったら素直に調べてくれ」

 

 

アルセウス「一人称はヨで、古代のポケモンの集団の王だな。大きさは1mちょっとで、喋れる珍しいポケモンの1匹だ。今は信仰心を失われたが対戦環境では暴れているぞ。昔テレポートを使って大量のポケモンを隕石から守ったらしいな」

 

 

D「というと?」

 

 

アルセウス「空間一帯のポケモンをテレポートさせたらしい」

 

 

D「それ普通にポケモン界にいる強さなんですか?」

 

 

アルセウス「まあな。次は妖精王の剣と格闘王の盾だ。剣盾で出てきた伝説ポケモンで、それぞれザシアンとザマゼンタという。どちらも見た目はオオカミだ。体長3mあるがな」

 

 

D「化けオオカミ」

 

 

アルセウス「ちなみにザシアンが剣の方でザマゼンタが盾の方だ。2匹とも形態変化が出来てな、そうなるとザシアンは剣を咥える。ザマゼンタは盾を首に嵌める感じになる。ちなみに対戦環境だとザシアンの使用率は1位でザマゼンタはランキング圏外だ」

 

 

D「かわいそうに」

 

 

アルセウス「姉に勝る弟は存在しないからな。しょうがない」

 

 

アルセウス「次は海、陸、天空神だな」

 

 

アルセウス「海はカイオーガのことだ。シャチの黒い部分を青くしたみたいな奴だな。そいつ自体はもうこの世界にいた」

 

 

D「含みのある言い方ですね」

 

 

アルセウス「デカいゴジラ……。グラードンもそうなんだが、この2匹は可逆的な進化が出来る。原始回帰というんだが」

 

 

D「待ってください。海はカイオーガ、陸はグラードンっていうことですよね。海と陸って生き物じゃないですよ?」

 

 

アルセウス「海の神がカイオーガで、陸の神がグラードンなんだ。カイオーガは海を広げた。グラードンは陸を広げたんだな」

 

 

D「じゃあ、2匹が一点に向かっているというのは?」

 

 

アルセウス「陸と海の拡大で対立してるから喧嘩しにいくんじゃないか?」

 

 

D「え?世界は」

 

 

アルセウス「まあレックウザが仲裁に行ったし大丈夫だろう。本来は1匹でやるもんじゃないから代償ありだけど可逆進化するし。両方ボコって解決するはず」

 

 

D「ええ……。てか対になるやつがいるんですか?1匹では進化しないってことは」

 

 

 

アルセウス「いや、人間と心を通じ合わせると進化する。今は無理矢理進化したみたいだがな。2匹止めなきゃだし」

 

 

 

D「大変ですね」

 

 

アルセウス「それはそう」

 

 

アルセウス「あ、あとレックウザが天空神な。見た目はまんま青龍。あと、コイツら3匹は大きさ100m近くある。原作だとチビだったがまあいいだろう」

 

 

D「は?」

 

 

アルセウス「次は海の王と太陽の王だ」

 

 

アルセウス「海の王から説明する。ルギアっていう手のひらみたいな翼を持つ鳥みたいな竜みたいなヤツ。体表はすべすべしてる。すまん、これもわからんかったら調べてくれ。ワレも説明出来ん」

 

 

D「まあ許します。カイオーガとの違いはなんなんですか?」

 

 

アルセウス「いい質問だ。カイオーガは海そのものだ。そして、ルギアは海を支配する王。ポセイドンっていう認識があっているかもな」

 

 

D「カイオーガは?」

 

 

アルセウス「海そのものの化身だ。多分カイオーガが死ねば海が滅ぶ。グラードンが死ねば陸がなくなる。そんな感じだ」

 

 

D「じゃあカイオーガはルギアより偉いんですね」

 

 

アルセウス「それで合ってる」

 

 

アルセウス「次は太陽の王。名前をホウオウという。マジで鳳凰だからそのままだ。見た目もデカいワシみたいな感じで頭に鳳凰の羽根飾りがついてる」

 

 

D「こっちはわかりやすいですね」

 

 

アルセウス「ちなみに2匹とも4、5mほどある」

 

 

D「でっか」

 

 

アルセウス「続きは次回かな。少し長くなった」

 

 

D「そうですか?まあ私はいいですが。早く本編に戻りましょうね」

 

 

アルセウス「わかった。あと、今までから描写少なくないかとは作者も思ってたらしいし、改善したいらしいからそこらへんも頼む。では」

 

 

アルセウス「次回も、お楽しみに!」



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A4 アルセウス談話「その4」

とりあえずここで紹介は終わりにします


アルセウス「はい。紹介第二部だ。どんどん説明していくぞ」

 

 

D「そうですね。早めに済ませていきましょう。本編待ってる方もいるんですから」

 

 

アルセウス「それもそうだな」

 

 

アルセウス「次は真実と理想だ。真実が表しているのはレシラムという伝説ポケモンだな。炎龍だが、全身が白い毛並みに覆われた二本足で立つ美しいドラゴンだ」

 

 

D「これもわからなければ検索推奨です」

 

 

アルセウス「てか、わからない伝説は調べてくれると嬉しい。ポケモンを広めるワレが説明出来ないのは問題だがマジで難しい。容姿以外は説明する。容姿は許してくれ」

 

 

D「許します」

 

 

アルセウス「ありがとう。レシラムは真実を追求し、そんな真実に満ちた世界を作る者を補佐するといういい伝えがある」

 

 

アルセウス「次に理想についてだ。理想が表しているのはゼクロムという伝説ポケモンだ。プラスチックのようにテカテカした黒い身体をもち、レシラムと同じような二本足で立つドラゴンだな。こちらは雷龍だが」

 

 

D「なんでそんな曖昧なものが象徴になってるんです?」

 

 

アルセウス「もともとは1匹の龍だったんだよ、この2匹はな」

 

 

D「え?」

 

 

アルセウス「ある国の守護神だったんだが、その時兄弟でやってた王が対立したんだよ」

 

 

D「へぇ」

 

 

アルセウス「それで、真実を信じた兄と、理想を求めた弟のために、龍は2匹に分裂して、今に至る」

 

 

D「この世界では何をするつもりなんでしょう」

 

 

アルセウス「わからんが、Nのところに向かったようだな。Nについてはポケモンと人間の境目で見てほしい」

 

 

D「ダメです」

 

 

アルセウス「ええ……」

 

 

D「Nは普通の人間じゃないんです。高速演算できて異常な速度で言葉を発して、それなのに筋の通った話のできない人なんですよ」

 

 

アルセウス「わかったわかった。説明する。Nはポケモンと話せる数少ない人間だ。アニポケのサトシは会話はしないがアイツは明確な会話が出来る。その結果としてポケモンの方が人より好きになってしまったがな」

 

 

D「難儀ですね」

 

 

アルセウス「アイツは人とポケモンが全く干渉しない世界を目指してるからワレの敵だな。まあそんな簡単にポケモンの増殖は止まらんが」

 

 

D「話脱線してますよ」

 

 

アルセウス「すまない。じゃあ戻そう。次は人喰いについてだな」

 

 

アルセウス「人喰いはキュレムという翼の生えたティラノサウルスみたいなドラゴンだ。まあ、その体はほとんど凍りついてるんだがな」

 

 

D「は?」

 

 

アルセウス「さっきの話でも出てきたが、キュレムはゼクロムとレシラムが別れた時にできた抜け殻だ。そのせいでエネルギー切れになって急速に冷えた。それを補うために人を喰ってるってわけだ。まあ大抵寝てるが」

 

 

D「なんかこの3体密接に関わり過ぎてわけわからないですね」

 

 

アルセウス「まあ、人を喰う凍ったドラゴンと、Nっていう人を目指す2匹のドラゴンがいるって覚えておいてくれ」

 

 

D「そんな感じでいいんですか」

 

 

アルセウス「あとコイツらもこの世界では5m」

 

 

D「ドラゴンにしては小さいですね」

 

 

アルセウス「本編だと半分の大きさだぞ」

 

 

D「ちっさ」

 

 

アルセウス「まあいい。次に行く。次は、生命と死だ」

 

 

アルセウス「生命は、ゼルネアスという伝説ポケモンだな。見た目は、角が虹色で身体が青いシシガミ様だな。もっと顔は鹿だが」

 

 

アルセウス「行動もシシガミ様だ。森林を走り回って生命を分け与える」

 

 

D「わかりやすいですね。死はなんですか?」

 

 

アルセウス「死はイベルタルという鳥のような姿をした赤黒い……鳥か?鳥か、手のひらみたいな翼あるし」

 

 

D「はっきりしてくださいよ」

 

 

アルセウス「まあ、鳥でいい。コイツはゼルネアスの逆で飛んでるだけで命を吸い取る鳥だな。2匹の関係性はあんまりないな」

 

 

アルセウス「次は永遠だな。ジガルデというヘビのポケモンだな」

 

 

アルセウス「コイツはずっと世界の生命の生死を見つめ続けている。なにもしてないともいう」

 

 

D「じゃあなんでいるんですか?」

 

 

アルセウス「世界がマジでヤバくなった時なんとかしにくる。今もうヤバいし動くんじゃね?知らんけど」

 

 

D「文字数ヤバいですよ。早く次行きましょう」

 

 

アルセウス「わかった。ちなみにアイツらは4mくらいな」

 

 

アルセウス「次は太陽の捕食者、ソルガレオについて説明する。簡単にいうと真っ白いライオンだ」

 

 

D「わかりやすいですね」

 

 

アルセウス「太陽に向かう真っ白いライオン。光を纏って太陽に突き進んでゆく。以上」

 

 

D「え?」

 

 

アルセウス「いや、マジで。原作でも説明が全然ない。異空間を走れるらしいけど、それだけだし。なんか設定あんのかって思ってもあんまないし。暗くなると光になるらしい」

 

 

D「設定少ないですね。まあいいですが」

 

 

アルセウス「次は月の誘惑者、ルナアーラについてだ。コウモリのような姿をしているが、翼と体を組み合わせて満月のような形になる」

 

 

D「???」

 

 

アルセウス「わからなかったら検索してくれ。許せ」

 

 

D「はぁ」

 

 

アルセウス「ちなみに、ソルガレオと同じで異空間を飛べる。あと体長は2匹とも4mちょっと」

 

 

D「じゃあ最後ですね。異世界神ってなんですか?」

 

 

アルセウス「やっとだぁ……。ソイツはネクロズマという伝説ポケモンだな。今は力をほぼ失って黒ずんだ鉄クズみたいになってる。それでもかなりのエネルギーを持ってるみたいだが」

 

 

D「凄いですね。今は何してるんでしょう」

 

 

アルセウス「エネルギー不足で苦しみ続けてる。しばらくはキツイだろうな。頑張ってもらおう。ちなみに3mくらいの大きさ」

 

 

 

 

アルセウス「以上!伝説ポケモンの説明は終わり!あとは本編だ!風呂敷広げまくって苦しんでる筆者はいるが、みんなは気にせず楽しんでくれ!アディオス!」

 

 

 

 

 

 

 

アルセウス「じゃ、ワレは下界に行ってくる!」

 

 

D「はぁ!?」








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43 山だー!



やっと本編スタート


いやー、楽しい。

だっていっぱい見たことないものあるんだもん。

 

 

植物。虫。鳥。

どれも洞窟では見られなかった小さな生き物たち。

こんな生き物1匹1匹にもしっかりと名前と特徴がある。

それなのにガン無視することなんて出来ないでしょ。

 

 

私が前世から生き物とかポケモンとか好きなのが結構影響してるんだと思う。

そうであるからこそ、鑑定しまくってるってこと。

しまくってたら山の麓でもう日が暮れたけど。

 

 

正直、急ぐ必要もない。

急いだところで今の状況が一気に変わることはないし。

白は急いでるけど私はそんな性格じゃあないもん。

 

 

いずれ終わるものは基本的に静かに朽ち果てていく。

そんな急ぐ必要などないのだよ、ワトソンくん。

 

 

てか、なんだかんだで連れてきたアース3体どうしよう。

今は静かに私の背中に乗ってるけどやることもやらせることもない。

迷宮の外だから魔法バンバン撃つ練習も出来ない。

 

 

デカいからどうしようもないしなぁ。

ま、それは人を見つけてから考えよう。

別にそれまでは問題にもならない。

 

 

日が暮れたら思ったより真っ暗になった。

わたしは暗視があるからいいんだけど、明かりがないとこんなに暗くなるのね。

産業革命はやっぱり偉大だったってわかる。

 

 

迷宮の外での初めての夜。

キャンプファイヤーでもしてみようかな。

いや、流石にだめか。

山火事になっちゃう。

じゃあしょうがないけど星でも見よう。

 

 

やっぱり空は美しい。

夜には星が輝くんだもん。

これか中世のいいところではある。

 

 

まだ私の本拠地は上層にあるからいつでも帰れる。

だから、日帰り旅行みたいな感覚。

お泊まりしてる時点でそうじゃないんだけど。

 

 

糸で簡易ホーム作成。

からの夜営準備。

食事はどうしようかなぁ。

ま、アースに卵出してもらうか。

 

 

アースたちに卵を出してもらって私は家から皿を持ってくる。

火竜の鱗を地面に敷き詰めてその上に燃料の草を投入。

そこに火をつけて、うまいこと岩と火龍の皿を重ね合わせれば目玉焼き作成機の完成!

 

 

もうこのまま皿に卵を割って乗せれば目玉焼きができる。

てことで調理開始。

調味料がないのは惜しいけど、海に行けば塩かなんやらが手に入るはず。

それまでの辛抱だ。

 

 

焼けたー!

焼けました。

なんと焦げてない。

黄身はちゃんと黄色いし卵の成分は同じなのかな?

 

 

お食事タイム。

おお。やっぱり美味しい。

上層でおじさんたちとは食べてたはずなんだけど、星空が気分を高揚させてくれる。

そのおかげで味がマシマシになってるのかな?

 

 

うん。

美味しく食べたし、もう寝よう。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

朝でーす。

まじめに考えたら、後ろ結構すぐ山だったのにまだふもとなのヤバくね?って思いました。

てなわけで今日は急ぎ足。

 

 

昨日調べた野草はガン無視。

キリが無いし、始めて見る野草は調べてるし大丈夫でしょ。

 

 

やっと山の森の中に突入。

今までは麓と言っても草ばっかり生えてて木は生えてなかった。

これなら身を隠せるからアースにでっかくなってもらっても大丈夫?

あ、通れないじゃん。森だし。

 

 

道なんてものはないし、鬱蒼としていて進みにくいけど、空間機動で木と木を飛び越えて進む。

獣道もないし、魔物の姿も見ない。

この山には魔物が少ないのかな?

洞窟に魔物が多かっただけかもしれないけど。

 

 

お。

赤い実のついた蔦植物を発見。

 

 

電脳!

『ボンクゥラ:カサナガラ大陸に自生している植物。定期的に花を咲かせ、実をつける。実は甘いが、麻痺の成分が若干含まれている』

 

 

へえ。酷い名前。

食べるか。

麻痺無効だし。

 

 

いただきまーす!

甘い。

めちゃくちゃ甘い。

美味しすぎないか?

美味すぎる。

 

 

しょうがない。

アースたちも食べたがってるしあげよう。

おお、腕振ってめちゃくちゃ喜んどる。

ここまで喜んでくれるならちょっとならあげていいや。

 

 

気づいたらその蔦の実は無くなっちゃってた。

とりあえず種をアースに持ってもらおう。

あー、終わっちゃった。

育てるとしても時間はかかるしなぁー。

とりあえずごちそうさまです。

 

 

生の果物は常々美味しい。

これは前世から変わらないけど。

ボンクゥラは見つけたらどんどん確保していこう。

 

 

森の中をピョンピョン進む。

このダニみたいな飛び方が本当のバチュルなんだよね。

あんまり知られてないけど。

 

 

道中では何度もボンクゥラを発見した。

もちろん全部確保。

空間魔法の空納を使ってみる。

 

 

空納はアイテムボックスみたいなもの。

収納だね。

異空間に物を入れて、いつでも取り出せるようにする非常に便利な魔法だ。

わたしは転移で家に帰って持ち帰れるからいらないんだけど。

食料はすぐ食べるから貯めないし。

 

 

出し入れにMPを消費するし劣化もするし。

劣化速度は遅いみたいだけど劣化するんだもん。

ま、今回ばかりは使ってやろう。

スキル育ての意味ももちろんある。

 

 

こう考えると私もいいスキルをいっぱい持ってるのか?

ほとんどスキルなんて取ってきたわけじゃないけど、称号とか種族で取れちゃったやつも役に立ちまくってる。

 

 

毒合成もたまに使ってたり雷魔法も火龍を倒せるまでに成長した。

闇魔法も電脳の力を使って強化してきたし。

支配者スキルの奈落とかは使わないけどね。

神聖拡張領域が削られちゃうし、それは避けたい。

 

 

とは言っても、バケモノスキルの無垢とかもある。

なにより電脳もいるし。

 

 

わたし、もしかしてもう十分強いのか?






すーぐ調子に乗る。キャンプファイヤー結局してるし。


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44 山は平和です






こちら森にいた蜘蛛です。

いつの間にやら山に入ってたみたい。

森と山の区別なんて難しいしね。

 

 

とはいっても山だし斜面ばっか。

木々の間隔も広いし。

まあ、木を伝ってく方が地面を歩くより楽だから結局跳ねるんだけど。

 

 

お、探知にまあまあ大きな反応を確認。

森にいる間は鳥とかリスとかの小動物しか探知にかからなかったけどこれは大きい獣っぽい。

小さい獣でも群れればやばいとは知ってるんだけどね。

猿が具体例。

 

 

そういえば猿で思い出したんだけど、白と私のステータスの差が日々広がってる。

私も私で転移で帰って地竜を倒したりはしてる。

でも下層でずっと鍛え続けてる白に追いつくことは難しい。

それこそ猿とか大量狩りできれば楽なんだけど。

 

 

魔王にも、大魔王っていう魔王から逃げられないってスキルがあるのが問題。

電脳に対策考えてもらったけど無理だったし。

となると今魔王に奇襲されると非常にマズい。

 

 

しばらく後に襲って来てくれるなら大丈夫なんだけど。

最強レベルのトラップを今作成中だしなー。

それまでの辛抱。

 

 

ってわけでもないんだよなぁ……。

私のステータスが低すぎるとそもそものトラップに放り込むことが出来ずに殺される。

敵対しない限りは大丈夫なんだけど、人間か白を魔王が攻撃するんなら敵対確定。

 

 

あれ?

人間はともかく魔王が白を攻撃しない理由って無くない?

だって白、クイーンに攻撃してるよね。

魔王はクイーンを従えてるはずで、同じタラテクト種だもん。

この次の展開、魔王が白に襲いかかるに決まってる。

 

 

詰んだわこれ。

少なくともこうやって山で遊んでるわけにはいかない。

人間と仲良くなるのも大切ではあるんだけど、魔王の対処をすっかり忘れてた。

私としたことが馬鹿だった。

どうしよう。

 

 

 

 

 

『ったく。オレ様が色々考えてるから参考にしろ』

『電脳?』

 

 

『まず考えろ。もちろんオレ様の意見も仮定だがな』

『で、なんなの?』

『だからお前はボンクゥラなんだよ。まあいい。初めて人間に会った時、なぜ迷宮に探検隊が来ていた?』

『馬鹿な貴族がけしかけて来たからじゃないの?』

 

 

『確かにその線もありうるな。じゃあ、なんで砦と検問所が迷宮の入り口に立っていた?』

『そりゃ魔物が出て行かないようにでしょ』

『それなら迷宮の入り口を塞げばいいだろ』

 

 

『完全にガッチリ固めて龍クラスでないと突破出来ない入り口を作ればいい。この世界にレンガはあるんだから可能だぞ。砦あるんだから金もあるぞ。しかも龍ならデカくて通れんし魔物は出てこれない。それなのになぜそうしない』

『人が中に入る理由があるんじゃないの』

『ビンゴ。その理由とはなにか』

 

 

『資源とか?』

『それはオレ様も考えた。だがアース300体に聞いたところでロクな資源はなかったんだわ。宝石の類でかつ中世に価値を持ったものは無かったし、鉄はあったがそのわりに開発が無さすぎる。そもそもその探検隊がいた道順に何も目ぼしいものはなかったしな』

『長い。つまり、人間は物資のために来てたわけじゃないのね』

『ああ』

 

 

『次にアホな貴族がけしかけた説だが、これを考えると可能性は更に低くなる。アホな貴族は基本的に長期的には考えないしな』

『ってことは、資源がないところを開発しないってこと?』

『ああ。今ある資源を奪い取ろうとするだろう』

 

 

『なら、賢い人が長期で見てやってんじゃないの?』

『お前自身が食優先だと思ってんのにその余裕はどっから来るんだ?』

『あ』

 

 

『じゃあ、定期的に私たちみたいなヤバい魔物が沸くから監視で見てるってのは?』

『それは確かにあるが線は薄いとも思う。そんな魔物がいたなら完全に封鎖した方がやっぱいいだろ。てかまだ中世の文明で耐えられてるってことはそんな頻繁には出ねーだろうしな』

 

 

『じゃ、ここまで行ってるけど電脳の出した結論ってなに?』

『この世界の海がバグってる』

『え?』

 

 

『考える中で一番正解なのは、この世界の海が人間には踏破不可能って筋だ。例えば魔物の巣窟であるとか絶望的な海流してるとかな』

『なんで急に海の話になるの?』

『迷宮は2つの大陸を結んでるだろ?人の通り道として機能してるってことだよ』

『そゆことか』

 

 

『うん。ここまではわかった。それで電脳の考えてることってなに?』

『海に行ったら狩りして経験値稼ぐぞ』

『そゆこと』

 

 

完全に理解した。海に行けば強いバケモノが恐らくいる。

海流がおかしくてもそのおかしな海流にはヤバい強さのバケモノがウジャウジャいるだろうし。

 

 

考えれば当たり前だ。

世界が破壊されてから魔物は増えてるんだし。

陸ならまだしも海は人の領域じゃないんだから普通の生き物は駆逐されるよね。

 

 

じゃ、私のやることは決まってる。

海に行って魔物を狩ることだ。

 

 

あれ、海沿いに街ってあるのかな。そしたら。

『ないことはないだろ。海自体がダメでもその海の力で生み出された地形には素晴らしいものがある。よっぽどのことがない限り街はあるさ』

『よっぽどのことって?』

『海から這い出てくる魔物とかだな』

 

 

あれ?

それって結構な確率でありそうじゃない?






獣のことは早速頭から抜け落ちてる模様。


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45 いざ大海原へ






こんにちは。

山にいる蜘蛛です。

今はダッシュで海に向かってます。

 

 

だって、ねぇ。

あの後一回探知した獣だけど弱かったんだもん。

ステータスにして全部200にならないくらい。

あんなの倒しても経験値にもならない。

 

 

頭が豚で身体が熊みたいな魔物だったんだけどね。

大きさも3mくらいあったし、RPGだったら序盤のボスって感じ。

あの見た目なら少なくとも500はステータスあるでしょ。

とんだ見かけ倒しだったわ。

あーもう、無駄に時間使った。

 

 

こちとら時間がないんだ。

いつ魔王と白が対立するかわからない以上、私も早々に対策しなきゃならない。

白説得しに行きたいわ。

 

 

『ま、これは白も思ってるだろうな』

 

 

ド正論。白は白で一緒に戦ってほしいとか思ってるんだろう。

お互いの性質が違いすぎてすれ違う。

本当にピンチになったときこそ人の本性が出るとはよく言ったものだ。

 

 

魔王とギュリエディストディエスがちゃんとしてたならこんなピンチにもなってないんだけどな!

ねぇ。今からでもいいから元凶狩ってくれない?

まだ許すからさ。まだ罠に入れないであげるから。

 

 

てなことを考えながら、私は飛び跳ね続けた。

ボンクゥラは確保してだけど、それ以外の植物はほぼガン無視で立体機動。

電脳が調べたがってたけど、探知でわかることまでで納得してもらう。

結局私が寝てる間に行動してたみたいだけど。

 

 

遂に山に入って3日目の朝。

わたしはとうとう砂浜へとたどり着いた。

 

 

 

ーーーーーーー

 

青い海。

ゴミ1つない砂浜。

プライベートビーチは、こんなにも美しいのか。

 

 

なんでこの砂浜はできたんだろう。

山に囲まれているからか、砂が集まったからかな。

それとも海流?

 

 

まあいいや、海はこんなに綺麗なんだもん。

波の音は美しい。

まるで天使の声のように。

 

 

さんさんと太陽は輝く。

それに合わせて波はキラキラと光る。

てか眩しいなオイ。

 

 

落ち着いたところで、この海に関する正直な感想。

海というかは砂浜に関しての感想なんだけど。

熱くない?

 

 

いや、熱さとしては地球くらいだよ?

でも私前世はゲーマーかつ超内向的だったマンなのでありまして。

ここまで砂浜が熱いと前世を思い出すのですよ。

砂浜で熱中症になりかけた記憶をですね?

 

 

あれは嫌な記憶だった。

修学旅行で海行ったのにぶっ倒れたとか。

中学での男女共同の海だぞ?

そりゃショックだよ。

 

 

あーあ、はしゃぎすぎって良くないね。

今世の私は水なんかで問題になったこと無いし大丈夫だけど。

 

 

でも、私が望んでいたのは悲しいかな、海じゃなくモンスターなのだ。

やらなきゃいけないこともあるし、ここからが仕事だ。

まずアース3体を背中から解放する。

もともと糸で落ちないように縛ってたし、可哀想ではあったけど。

 

 

ここでアースの奴らにしてもらうことは漁村の捜索。

要をいえば人探しだね。

私は海で狩らなきゃ駄目だし。

サイズ調整も出来るし、そこは電脳に管理してもらうからアースの方は心配無用。

 

 

え?私がどうやって狩るかって?

水中で雷光魔法をぶっ放すだけよ!

だってそうじゃん。

雷なら海で伝導するんだからお魚取り放題でしょ。

まず魚がいるかは確認しなきゃだけど。

 

 

ということでダーイブ!!

 

 

バシャンと激しい水飛沫が飛ぶ。

うわっ、水が冷たいしすごい気持ちいい。

ここに女?男?まぁ、人がいてくれたらもっと楽しめるんだけどな。

残念ながら電脳を除いて私はボッチなのだ。

 

 

うん?

あれ?

おかしいな。

え?

体が沈まないんだけど。

虫だから浮くの?

このサイズの虫って流石に沈まない?

 

 

私は確かに50cmちょっとしかない。

白の半分くらいの大きさしかないし、大きくないのも認める。

でも沈むでしょ普通は。

少なくとも地球なら。

浮いちゃってんだけど。

 

 

細かいことは気にしちゃいけない。

私がやらなきゃいけんのは魚取りだ。

ジョーズが来ても今の私なら狩れるはずだから問題ないし、来てもいいぞ。

 

 

てことで探知発動。

電脳の電波アシストも加えて相当な範囲を探知できそう。

障害物のない海っていいね。

探知が遠くまで届く。

 

 

 

 

うわっ。

こりゃエグい。

見渡せる範囲でも巨大な魚影がウジャウジャある。

ここまでヤバいのか。

 

 

てか浮かんでてもイルカみたいのが下に泳いでるの見えるし。

あ、バレた。

めっちゃ猛スピードで泳いできとる。

雷光付与。

 

 

私が身体に雷を付与した瞬間、近くの水に感電したのかプカーっと浮いてくるお魚。

もちろん絶命済み。

うーん、コイツ浮かんできたはいいけど私はどうしよう。

 

 

この魚自体は別にいい。空納でしまえるし。

でもよくよく考えたら私、陸に戻れないんだよね。

浮けるのに泳げないから。

 

 

泳ぐためには、スキル遊泳が必要だったのか。

タツノオトシゴとかにもあったやつ。

スキルポイントも1000必要。

足りるけど使いたくはないなぁ。

 

 

『どうやって陸に帰るつもりだったんだ?』

『考えてなかった』

『アホ』

 

 

しょうがないじゃん。

考えてなかったんだから。

そんなネチネチ言うとモテないよ?

 

 

 

 

 

 

結局あの後魚を10匹くらい倒して陸に上がってきた。

どうやって上がったかだって?

アースに引き上げてもらったんだよ!

 

 

洞窟にいるアースたちから2匹救命隊を募ったら喜んできてくれた。

もともと外に出たい奴らばっかりだったしね。

ただ、アースB。

浮いて困ってる私を空から笑ったのは一生忘れない。

 

 

ともかく、お魚のお陰でレベルも2上がったのはでかい。

しかも調べてみたら全部水竜だった。

わけがわからん。

なにこの海。

世紀末かよ。

世紀末だったわ。

 

 

確かに私を食べにきてるから雑魚は来ないかも知れないけど。

ナマズとかタツノオトシゴポジションの魔物はいないの?

なんで少なくとも水竜って感じなの?

 

 

でもよかったな、お前ら。

私に食ってもらえるんだから。

では実食といきましょうか。

 

 

コイツら、みんなサメっぽい見た目だけどどうなんだろう。

フカヒレとかいうしおいしいことはおいしいのかな。

まあいいや。

命に感謝して、いただきます!

 

 

皮硬っ!?








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46 水龍






よく考えたら当たり前だわ。

だって水竜って言ってもサメみたいなもんだし。

鮫肌って言葉がある以上硬いのは当たり前だ。

なんでウロコがあるのかは知らんけどな!

 

 

 

みんなを招集して夕飯タイム。

皮の内側にあるウロコを全部剥がせば食べられるし、なにより美味しい。

だがしかし淡白なんだよなぁ。調味料くれ。

 

 

集まったアースたちもうまうまと食べてる。

でも少し落ち込んでるよな?

どうしたんだろう。

 

 

「すみません」

「家屋が見つかりませんでした」

「ああ、そういうこと?」

 

 

聞くと今日1日では人間の住処を発見できなかったみたい。

電脳曰く、山に近いところならまだしも海からすぐのところにはいないかもしれないらしい。

内湾まで水竜がいっぱい入り込んでることを考えると妥当だけどね。

 

 

「まあ、気にしないでね」

「ありがとうございます」

「私も海でレベル上げがあるし、今は魚食べようや」

「はい」

 

 

うまうま。

卵かけてると余計おいしいね。

特にフカヒレと卵を混ぜて作ったスープ。

火龍のウロコを皿にしてるから、少し食べにくいし皿は滑るけど、それでもおいしいことに変わりはない。

 

 

蜘蛛の体でもこんなにおいしいんだ。

人の味覚ならもっとおいしいに違いない。

早く人間に会ってご馳走してやりたいもんだ。

 

 

浜辺でのキャンプファイヤーは楽しかった。

こんな感じで水竜をどんどんたくさん取っていこう。

食糧としても経験値としてもね。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

次の日。

今日もサンサンと太陽が照っている。

もちろん、お魚ハントに出発。

 

 

そうそう、私とんでもないことを考えてなかった。

それは進化しないとオリジンエレテクトまで辿り着けないってこと。

私としては別に強くならなくても人とちゃんと関われてたらいいよねっていうスタンスでやってたんだけど、何やってんだ私。

 

 

オリジンエレテクトになれれば人との関わりも魔王への対策も全て終わるじゃないか。

まず、人にかなり近い見た目、てか魔王と同じ見た目になれば基本的に人間と見做される。

次に魔王が襲ってきたとしてもオリジンの素の能力で捻り倒せる。

そもそも魔王に対して素で戦う気はさらさらないけどね。

 

 

てことで水竜狩りだ。

ギュリエディストディエスは龍の生き残りとか言ってけど、文句言わないでよ。

こんなうじゃうじゃいるんなら流石に間引かないと世界に毒だ。

何より、こんなところに経験値が燻ってるなら流石に陸には揚げてくれ。

 

 

では、海に感謝!

空間機動で外湾まで移動してからのダイブ。

もちろんバシャリと大きな音も鳴るし、それを竜たちが聞き逃すこともない。

我先にと群がってくる水竜たち。

やっぱりこんなプライドのない奴らを竜と呼ぶのは間違いなんじゃない?

 

 

雷光付与!

 

 

プカーと気絶して浮いてくるお魚さんたち。お、昨日のやつは死んじゃってたからそいつより強いのか?

 

 

『数がいっぱいいるから電撃が分散されたんだろうな。ステータスが高いわけではないぞ』

 

 

ふーん。

もう一回バチバチと電撃を放って刈り取る。

早速1レベル上がった。

魚様様だね。

 

 

空納でお魚たちを回収してから転移。

昨日帰れなくなった時もこれすりゃよかった。

そしたらアースの助け無しで行けたし。

私ってちょっと抜けてるとこあるかもしれん。

 

 

そして上層のホームに帰って水竜をポンポン出していく。

これは洞窟に残ってるアース達へのお弁当。

疲れた体にこれは沁みるだろう。

 

 

はい、砂浜に帰還。

次はもっと外湾に行ってみよう。

もっと大きいお魚がいっぱい獲れるかもしれないしね。

 

 

空間機動でピョンピョン飛んで、再びダイブ。

また水竜が集まってくるからもう一回雷光付与。

そして気絶したお魚達を回収。

 

 

おお、今回も大漁や。

水竜はお持ち帰り。

レベルアップもしたし帰宅帰宅!

 

 

遠くの海がギラリと光った気がする。

千里眼、発動!

 

 

あれ?

あれは魚かな。

なんか近くなってきてない?

 

 

あ。

 

 

 

 

次の瞬間、私の胴体には巨大な水龍の吻が突き刺さっていた。

 

 

 

 

 

 

『水龍ミドラ LV32

 ステータス

 HP:4219/4219(緑)+1200(詳細)

 MP:2987/2987(青)+1200(詳細)

 SP:4987/4987(黄)(詳細)

   :4987/4987(赤)+1867(詳細)

 平均攻撃能力:4879(詳細)

 平均防御能力:4217(詳細)

 平均魔法能力:2445(詳細)

 平均抵抗能力:2501(詳細)

 平均速度能力:6175(詳細)

 スキル

 「水龍LV3」「天鱗LV1」「HP高速回復LV3」「MP回復速度LV6」「MP消費緩和LV6」「魔力感知LV5」「魔力操作LV4」「魔力撃LV4」「SP高速回復LV5」「SP消費大緩和LV5」「水流攻撃LV9」「水流大強化LV1」「破壊大強化LV2」「斬撃大強化LV1」「貫通大強化LV8」「打撃大強化LV1」「連携LV10」「指揮LV2」「立体機動LV9」「命中LV10」「回避LV10」「確率大補正LV7」「隠密LV10」「迷彩LV1」「気配感知LV10」「危険感知LV10」「熱感知LV10」「動体感知LV10」「水流感知LV5」「高速遊泳LV10」「飽食LV2」「水魔法LV9」「破壊大耐性LV1」「斬撃大耐性LV1」「貫通大耐性LV5」「打撃大耐性LV3」「衝撃大耐性LV1」「水流無効」「苦痛無効」「痛覚大軽減LV5」「暗視LV10」「視覚領域拡張LV2」「視覚強化LV10」「望遠LV6」「聴覚強化LV10」「聴覚領域拡張LV5」「嗅覚強化LV8」「触覚強化LV8」「状態異常大耐性LV1」「天命LV2」「天魔LV1」「天動LV1」「富天LV1」「剛毅LV2」「城塞LV2」「天道LV1」「天守LV1」「韋駄天LV5」

 スキルポイント:31130

 称号

 「魔物殺し」「魔物の殺戮者」「率いるもの」「龍」「覇者」「魔物の天災」』

 

 

 

 

 

なに、コイツ……?






『エジク・ラア Lv13 名前 青
               佐野蒼生
 HP:2534/2534(緑) +1600(詳細)
 MP:8467/8467(青) +1600(詳細)
 SP:2081/2081(黄)(詳細)
   :2081/2081(赤)+1035(詳細)
 ステータス
 平均攻撃能力3256(詳細)
 平均防御能力3354(詳細)
 平均魔法能力8697(詳細)
 平均抵抗能力8959(詳細)
 平均速度能力4956(詳細)
 「HP大吸収LV4」「HP高速回復LV4」「魔導の極み」「魔闘法LV8」「魔力付与LV6」「SP高速回復LV1」「SP消費大緩和LV1」「瞬間速度強化LV6」「破壊強化LV6」「斬撃強化LV7」「状態異常強化LV8」「毒合成LV10」「薬合成LV4」「気闘法LV8」「気力付与LV5」「龍力LV3」「猛毒攻撃LV4」「腐蝕攻撃LV2」「糸の才能LV7」「万能糸LV5」「操糸LV10」「投擲LV10」「射出LV2」「空間機動LV5」「集中LV10」「思考加速LV7」「並列意思LV4」「命中LV10」「回避LV10」「確率補正LV5」「隠密LV10」「迷彩LV1」「無音LV5」「暴君LV1」「威圧LV4」「魔王斬LV3」「外道魔法LV8」「電撃付与Lv10」「雷付与LV10」「雷光付与LV3」「飽食LV9」「暗視LV10」「視覚領域拡張LV2」「予見LV1」「外道魔法LV10」「電気魔法LV10」「雷魔法LV10」「雷光魔法LV3」「雷光耐性LV3」「火耐性LV7」「影魔法LV10」「闇魔法LV10」「暗黒魔法LV2」「毒魔法LV10」「空間魔法LV10」「次元魔法LV4」「火炎魔法LV1」「深淵魔法LV10」「麻痺無効」「猛毒耐性LV1」「石化耐性LV5」「酸耐性LV5」「腐蝕耐性LV6」「外道無効」「破壊耐性LV6」「打撃耐性LV4」「斬撃耐性LV5」「恐怖耐性LV7」「苦痛無効」「痛覚大軽減LV3」「気絶耐性LV5」「睡眠耐性LV7」「暗視LV10」「千里眼LV5」「五感大強化LV1」「神性拡張領域LV6」「天命LV2」「瞬身LV6」「耐久LV6」「剛毅LV1」「城塞LV1」「韋駄天LV3」「強化産卵LV10」「小型化LV10」「共生LV8」「賢姫LV5」「妖姫」「無限LV1」「無垢LV4」「怨響LV4」「怒LV1」「電脳」「傲慢」「奈落」「魅了LV2」「禁忌LV10」「n%I=W」
 スキルポイント2300
 称号 
 「悪食」「血縁喰ライ」「魔物殺し」「魔物の殺戮者」「竜殺し」「龍殺し」「毒術師」「糸使い」「大感染」「オリジン」「傲慢の支配者」「電脳の支配者」「恐怖を齎す者」「究明者」「暗殺者」』


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47 水龍ミドラ&戦前の凪


吻とは口の上の硬い出っ張りのようなもの。

ミドラさんのステータス少し修正しました。
なんだかんだ言ってこの人の強さもレベルもアラバと同じなんだよなぁ。


久しぶりに味わった激痛。

身体がいうことを聞いてくれない。

頭が身体から切り離されたみたいだ。

 

 

手放しそうになった意識を手繰り寄せる。

気絶はまだしてない。

でもHPのゲージが一気に削れてる。

 

 

水龍がさらに泳ぐスピードを上げているのが、水の流れからわかる。

剣のような吻は私の身体をとっくに貫通してる。

このままだと身体がちぎれるのは確定だ。

 

 

やられちゃいけない内臓がやられてってる。

手を当てようとしても腕が動かない。

やられちゃいけない。

やられちゃいけないのはわかってる。

 

 

死ぬ。

 

 

治療魔法!

毒魔法の派生で手に入れた治療魔法を発動。

ダメだ。

体力の減りに追いついてない。

一度下がり始めたHPは、私のいうことを全く聞いてくれない。

持って1分だ。

 

 

まず、い。

 

 

ここで、電脳が準備したのか転移が起きる。

転移先は昨日飛び込んだ内湾。

血を流す無防備な蜘蛛が飛び込んで来たのを勘付いたのか水竜たちはピラニアのように一気に集まってきた。

 

 

 

 

 

ありがたい!

早速糧になれ。

 

 

『雷光槍!』

 

 

雷でできた槍が竜の体を1匹ずつ突き刺していく。

勝てないと悟っても逃げ始めてももう遅い。

私は、集まってきていた水竜たちをたった10秒で殲滅した。

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

危なかった。

水竜たちでレベルアップした時、残り体力200だったよ。

だいぶギリギリ。

正直、あの時死んだと思った。

 

 

倒した奴らを砂浜に運ぶ。

今回は大量。

なにせ、私の命のために一気に狩った竜たちだしね。

加減なんかもできなかったし、手当たりしだいに殺してたし。

 

 

私を殺そうとしたのは水龍ミドラ。

カジキの頭にイルカの胴体をくっつけたような龍だった。

腕や脚はなかったから、完全に水中型なんだと思う。

くそっ、油断した。

まさか水龍直々に襲ってくるとは。

 

 

コイツ水龍の中では強い方だよね。

高速遊泳LV10で素早く近づいてきてそのまま刺し殺す。

素早さのステータスも6000超えてるし、ここにスキル諸々を組み合わせた実質速度は相当のものだろう。

20000近くまでいく?

この素早さで動かれたら、刺した瞬間に獲物の動きはだいぶ制限されて死ぬ。

私でさえこれなんだから。

 

 

だけど魔法に関してはめっぽう弱い。

魔法を食らう機会も無かったんだろう。

そもそも魔法を見たことないのかもしれないけど。

 

 

『今回に関しては狩るんだな?』

『うん。流石に腹が立った。

 ステータス的に倒せない相手でもないし倒すよ』

『そうか。じゃあオレ様も手伝う。アイツの動きに関しては任せろ』

『ありがとう』

 

コイツの厄介なところは単純に素早いこと。

たとえ私が瞬間速度強化を使った上で無限を使っても、素早さに関しては勝てる自信が無い。

もちろん龍力とかも組み合わせた上でだ。

それほどこの水龍は速いといえる。

 

 

ちなみに無限は怠慢の進化系。

発動するだけで、自分の周囲の生物の平均速度能力を大きく下げることが出来る。

でも下げると言ってもせいぜい数百だ。

実質速度20000ほどある水龍に、そんなに効果があるとは思えない。

 

 

『多分あるぞ。無限の参照は元々の平均速度能力だ。

 それを変化させるから実質速度は2000くらい削れるんじゃないか?』

『え、そうなの?』

 

 

意外。

それは嬉しい誤算だ。

 

 

まあでも、もともと戦うつもりだったし、それも考慮に入れるだけ。

私を怒らせた水龍が悪い。

 

 

よし。

作戦は立った。

ミドラの位置もマーキング済み。

 

 

じゃあ戦闘だ。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

私は今、海上にいる。

ミドラからはギリギリ見える位置。

水面近くから空間機動で足場を作り、水中を見据えている。

 

 

でもミドラにはおそらく空という概念がないはず。

だってアイツは水中で魚を狩って生きている。

空にわざわざ飛び出す理由もないし、そのためのスキルも持ってない。

 

 

所詮は井の中の蛙。

そんな奴が、大迷宮で鍛えてきた私に勝てるわけがない。

刺されたのは初見だったからだ。

もう初見殺しは通用しない。

 

 

ああ。

アラバと戦うであろう白もこんな気持ちなんだろうか。

なんだろう。

この高揚感は。

今から戦いが始まるってのに。

 

 

これが、たったの片鱗というのか。

洗脳から解放されるというのは。

なんか良くない薬をキメたみたいにテンションが上がる。

 

 

よし。

私の気分も乗って来た。

そろそろいい加減に終わらせよう。

元々私も何もしないまま自然界を去るのは名残惜しいものがあったし。

 

 

色々なことを感じてきた。

この世界に送られて来たことへの怒り。

この世界が想像以上に最低だったことへの怒り。

アラバとかいう強大な龍への恐怖。

 

 

わけわからない迷宮で燻ってきた私の思い。

ただ平和な世界に身を置きたいという思い。

迷宮から外に出たときの喜び。

太陽光の暖かさ、そして熱さ。

私を助け、馬鹿にしてくるたくさんの神様に対しての強い複雑な思い。

 

 

これらを全て糧にする。

これらを全ての餌にする。

これらを全て供養する。

私と残酷な自然界の繋がりを断つために。

私の望む世界を作るための礎になってくれ。

この世界の鎮魂歌を、私は今から奏でよう。

 

 

D。

今度は私の番だよ。

私のわがままを聞いてもらう番だよ。

 

 

ねえ。

あなたの世界に、私も入れてよ。

 

 

 

 

まずは水龍ミドラ。

対戦よろしくお願いします。









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48 電気蜘蛛VS水龍ミドラ①






私は水中に糸玉を投げ込んだ。

この糸玉は特製のものだ。

万能糸に黄色く色をつけて、大きさも私と全く同じにしてある。

近くで見れば流石にわかるけど、遠くから見るならルアーとして働くと思う。

 

 

ミドラは気づいたみたいで、猛スピードで泳いできた。

うん。終わったね。多分勝った。

こんなに昂ったのにもったいない。

まあでも、私が勝てるんだし別にいいや。

私は白みたいな戦闘狂じゃないし。

 

 

その鋭い吻が糸玉に突き刺さる。

ミドラはそれが糸玉とは気づいていないんだろう。

今も刺しっぱなしで全速力で泳いでるし。

もう見えなくなってるんだけど。

 

 

速すぎない?

アイツの体長、50mはあったよ?

それが一瞬で見えなくなるとか。

速すぎて、正直ビビってる。

よく私生きてたな。

 

 

じゃ、調理開始。

いいよね。

私の作戦通りに進めて。

 

 

私が魔法陣を構築する。

私は糸とミドラを巻き込むようにした次元魔法。

糸で粘着する必要があったのは、巻き込む条件に接触していることがあったから。

私の生成物に触れていれば間接的にだけど接触してることに含まれるっぽい。

これは本当に救いだ。

 

 

そして私の転移先は、中層のマグマ地帯。

やること?

 

 

決まってる。

魚らしく焼いてあげるんだよ!

 

 

次元魔法の構築が終わった。

これで終わらせよう。

『転移!』

その場から消える瞬間、ミドラは私の真横で口を広げていた。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

まずい。

転移中のわずかな瞬間に私と電脳は急いで転移後の位置関係を調整する。

私が陸地に、奴はマグマ内に落ちるように。

 

 

転移の眩い光を瞬間的に浴びたのち、中層到着。

私は陸地に降り立ちミドラの方を振り向いた。

マグマの中に、ミドラは大きな音とマグマ飛沫を上げて落下する。

それと共に急激に減少していくHP。

 

 

危なかった。

やられるところだった。

まさか気づいていたとは。

気づいていた上で、超遠方からミサイルのように飛んでくるとは。

 

 

耐えかねたミドラが再び飛んでくるかもしれない。

奴の体力ゲージはもうほとんどないけど、警戒を怠ったら負ける。

でも、本当に転移が一瞬でも遅れてたらやられてた。

危ない。

危なすぎた。

 

 

そして思考加速が無くてもやられてた。

転移中に電脳がいなくてもやられてた。

これらを持ち合わせていたから、助かった。

 

 

暑い。

だけど、ミドラはもっと辛いのが分かってる。

いくら水龍で高熱に強いと言っても、マグマは溜まったもんじゃないでしょ。

 

 

私は、わずかながらも減っていく龍のHPゲージを見ながらため息をついた。

 

 

 

 

『あ、やべえ』

は。はぁ?

電脳の素の声が頭に響く。

今までは聞いた事がなかった。

神に会った時も、魔王と相対した時も。

私が今まで最悪とは思って来たときも電脳は素を出さなかった。

どうやら今までの人生の中で起こりうる最悪の事象が起きてしまったらしい。

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

水龍ミドラと戦うことにした後。

砂浜の上で、寝転がりながら私は電脳と話していた。

それは、ミドラとアラバのステータスの差についてだ。

 

 

ミドラは素早さがやっぱりおかしい。

これは海だからって事で話がついていた。

 

 

それに対してアラバは地龍でオールラウンダー。

アラバには突出したものはないけど、全てのステータスが4000越え。

 

 

正直魔法で戦うんだったら、アラバの方がキツい。

ミドラは魔法抵抗力が低いし無垢を使えば上手く戦えるはず。

当たればHPをそこそこ削れると思うし。

そもそも溶岩に突っ込ませるんだけど。

 

 

そんな感じでそれぞれの特徴を確認していたつもりだった。

でも私は明確に忘れているものがあった。

 

 

それはどちらにも共通していること。

だけど、環境を考えたら片方にとってはあり得ないもの。

違いばかり考えていた私はある共通点に気づかなかった。

 

 

地龍アラバには空間機動と大地魔法を持っている。

それに対し水龍ミドラは立体機動LV9と水魔法を持っている。

そう確認した私は次のスキルについて考え始めていた。

 

 

なぜ、なぜミドラは立体機動と水魔法を持っていたんだ。

考えればよかった。

水魔法はともかく、立体機動は水中では使えない。

水に入って使おうとした私が言うんだから、間違いない。

それを、水の中にしかいない龍が持っているのはおかしい。

 

 

そしてもうひとつ。

アラバと同じくらい生きているはずなのにどうして持ってるスキルポイントに10000も差があったんた。

 

 

あの時考えていればよかった。

でも、もう遅い。

今わかっても後の祭り。

マグマの中にいるはずのミドラのHPゲージは、満タンになってそこで止まった。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

ふざけるな。

 

 

まさか。

まさか湖の中の火龍を狩ってるとは。

マグマの湖の中にいた竜たちを狩りたおしてレベルを上げるとか。

なに考えてるんだ。

 

 

ものすごい勢いで30000以上あったはずのスキルポイントが50になる。

奴がレベルアップで獲得したスキルポイントも合わせて一気に消費されていく。

今、スキルポイントでスキルを獲得するとか。

ふざけてる。

 

このポイントでミドラが獲得したスキルは3つ。

獄炎耐性、空間感知、斬撃付与。

 

 

獄炎耐性はマグマの中でも無事でいるため。

こうなると、奴自身の高速遊泳が私にとっての大きな障害となる。

マグマの中を高速で移動できるんだから。

 

 

それに加えて私の転移を探知するための空間感知。

私の串刺しにしたのち、一瞬で殺すための斬撃付与。

 

 

ここまでならよかった。

いや、良くないけど納得できる。

スキルポイントが少なかったのと繋がったから。

 

 

あいつはなんかのタイミングで立体機動を獲得していたんだと思う。

スキルポイントで、本来手に入れることのないはずのそれを。

水中にいたなら必要のないそれを。

 

 

だから今回もポイントを使ったってことなんだろう。

うん。

ヤバい。

 

 

 

 

なんで立体機動なんか獲得してたかな。

陸に打ち上げられたりでもしたの?

違うスキルなかったかな。

 

 

 

本当にヤバいんだよ。

コイツ、今のレベルアップで空間機動に進化してるんだよ。

まだ水中にいるけどいつ飛び出してくるかわからない。

マジでヤバい。

 

 

下手したら死ぬ。

下手しなくても死ぬ。

 

 

 

私は、巨大なドーナツ型のマグマの湖の中心で警戒しながら身構えた。




登場人物のおさらい。


青……この物語の主人公。戦いは好まないが、彼女にとってミドラは琴線に触れたらしい。ミドラのことを正直舐めていた。見た目はデンチュラのようだが、体長60cmほどと小さい。宿難のような黒い模様が背中に刻み込まれており、脚も8本ある。一人称は私。


電脳……超有能コンピュータ。スキル『電脳』が進化して並列意思のひとつを乗っ取った。基本的に魔法の熟練度上げに勤しんでいるが考察も好き。青から並列意思として分離した際に男性要素を青から全て奪い取っていった。一人称はオレ様。カッコつけていることが多いが、考察は割と当たるので青にとって本当にカッコよく感じる時も多々ある。


水龍ミドラ……頭がカジキで、体がイルカのような青い水龍。全身が鋭い鱗で覆われており、物理攻撃を一切寄せ付けない。金眼である。こう見えて肺呼吸であるが3時間ほどなら余裕で水中に潜っていられる。原作にはいないが、本作ではひょんなことから青と本気で戦うハメになった。異常に素早く、吻で突き刺す以外にも攻撃方法はたくさんあり、平均ステータスもレベルもアラバと同等の強敵である。




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49 電気蜘蛛VS水龍ミドラ②







ミドラはマグマの中で様子を伺ってる。

ならば私がやることはただ一つ。

 

 

転移だ。

卑怯だと思ったそこの君、私は卑怯ではない。

だってこんな怪物と戦える訳ないじゃん。

確かに私が中層に連れてこなければここまでヤバくならなかったとは思うよ?

でももう手遅れだし。

 

 

ここまで強くなった水龍くんなら別に生きていけるでしょ。

私のせいで死ぬわけでもあるまいし、せいぜい頑張ってもらいたい。

同族には会えないかもしれないけどまあ頑張れ。

統率とか指揮は死にスキルになるけど私は悪く無い。

 

 

と思っていたらマグマから飛んでくる水色のブレス。

慌ててジャンプすると、それは脚を掠めていって壁をわずかに青黒くしていった。

 

 

あちゃー。

これしっかり転移バレてるな。

その隙を撃ち抜こうとしてるっぽいし。

完全にマグマ内から狙撃する気満々じゃん。

 

 

自分だけ安全地帯に篭るとか私好きじゃないんだよね。

それはズルくない?

しょうがないから、雷光弾で天井を撃ち続ける。

雷光弾の方が雷光槍よりも破壊力が大きい。

一発当たりの破壊力は同じなんだけど、雷光弾の方が連発して出来る。

だから破壊するときは雷光弾を連射してる。

 

 

ドーム状の天井は徐々に砕けて大岩がガラガラと音と飛沫を上げてマグマの中に落ちていく。

うん、探知で見てもちゃんと溶けずに沈んでるね。

流石に避けられるかな?

 

 

おおー。

ミドラは岩から逃げてる。

流石に水龍だからか全然避けれてるね。

その分攻撃をしてる暇はないらしいけど。これなら隙が生まれるかな。

 

 

再び転移チャレンジ。

そう考えた瞬間、今度はミドラ本体が突っ込んできた。

今度は身構えてたから瞬間速度強化と無限を使って、素早さは補助してあるしこのままジャンプ。

私の脚をかすめようとしたのちに再びマグマの中に潜ろうとするけど、それは甘えだ。

 

 

無垢発動からの雷光槍を展開。

マグマ内に入ったミドラをそのまま狙って、背中を数発突き刺すことに成功した。

 

 

雷光槍を刺したスリップダメージで削る。

お、案外回復速度が遅いな?

マグマのお陰でHP高速回復の効果が弱まってるのか。

ないすマグマ。

出来れば糸を燃やさないでくれればもっと嬉しいんだけど。

 

 

私からの攻撃手段としてあるのは、上から岩を落としていくこと。

ミドラの攻撃手段としては、私の隙を狙った突き刺し攻撃。

こりゃ長期戦になりそうだ。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

あれからどれほど経ったんだろう。

さっきの雷光槍のスリップダメージは切れた。

ミドラの体力は満タンに逆戻りしちゃったし、作戦を変えなきゃダメか。

 

 

転移!

さっきみたいに飛び出してくるミドラをかわして、雷光槍を突き刺す。

ミドラがマグマに入ったのを確認してもう一度転移の準備。

今度はブレスを放ってきたから、ジャンプして再び雷光弾で天井を破壊する。

 

 

もう、体力を回復する隙は与えない。

ただただ削り続ける。

ミドラの体力が尽きるまで。

 

 

三度、ミドラが飛んでくる。

ここまで来たら作業ゲーだ。

今まで何度も見てるし、同じ手は通じない。

さては蜘蛛の学習能力を舐めてるな?

 

 

私はさっきみたいにジャンプする。

だけど今度は、脚2本の脛から下が斬れ落ちた。

え?

 

 

耐えられない痛みでは無い。

だけど違和感は感じるし、痛いことには痛い。

移動はしにくくなったかも。

厄介だね。

許さん。

 

 

ミドラはさっきまでと同じようなフリをしてさりげなく斬撃を加えていた。

私に油断をさせた上で一気に切り裂こうとしていた。

もし私がもう少しギリギリを攻めて跳んでたら、今頃細切れになっていただろう。

 

 

斬撃付与について怪しかったのがここで足を引っ張るか。

まさか斬撃付与が、切れ味を良くするんじゃなくてかまいたちを作る物だったとは。

これはまずいかも。

 

 

地面につく脚が6本になっても、もともと脚6本だったから動けないわけでは無い。

けれどスピードは流石に下がる。

常に無限と速度強化を組まないと、避けられなくなったかもしれない。

毎回組み直す暇が無くなったのは事実だ。

 

 

まあずっと組んでることに対しての損は殆ど無いんだけど。

アイツが怠慢耐性をつけちゃったらヤバいってことくらい。

って言っても組まないわけにはいかないから、組むしかない。

多分怠慢切った瞬間に飛んできて切り刻まれるし。

 

 

全く困った。

HPゲージの減り具合的に耐性を持つ前に倒せると思うから、気にしないで魔法撃つけど。

 

 

奴もジャンプしようとする私を狙ったのか、今度は斜め下から飛び出してくる。

だけど、私も私でその感知は出来る。

私は上側に飛んだのを確認してから地面に屈む。

 

 

ブン。

 

 

あ。

ヤバい。立体機動が私の真上に構築される。

コレはミドラのだ。

まずい。

 

 

私が横に飛んだ瞬間立体機動の足場に直撃するミドラ。

けれどミドラ自身も立体機動を使いこなせないのか、私がいた足場ではなく真上に飛んでいく。

 

 

それはやめてほしかった。

てか天井に突き刺さるとか。

そのまま抜けなくなってくれることを期待したんだけど、そうは問屋がおろしてくれない。

 

 

足場の真上の天井に突き刺さったミドラが斬撃付与でその部分の岩を一気に砕き割っていく。

マグマに落ちていく岩。

私がいた足場を埋めていく大岩の数々。

 

 

マグマに落ちていく岩はそれ自身の体積でマグマの水位を上げていく。

それに加えて私がもともと落として来た大岩たち。

 

 

ドームは縦穴になって、その床はマグマに満たされた。








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50 電気蜘蛛VS水龍ミドラ③

誤字修正感謝です


細長い縦穴となったドーム。

足場となる床は無くなったけどまだ戦える。

ポケモンでだってバチュルは壁に張り付くのが上手いんだ。

こんなところでやられてたまるか。

 

 

再び私を撃ち抜くように飛んでくるブレス。

走ってかわしながら雷光槍を展開して、ブレスに撃ち返す。

狙いはミドラの口の中。

正直意味ないと思うけど、小手調べ。

 

 

槍はブレスを開くように進んでいくけれど、同時に少しずつ速度を落としていく。

そのまま途中で力尽きたように消え去った。

散乱するブレスを予見で回避して、再び飛んできたブレスを躱す。

 

 

槍一本でブレスとある程度戦えるのか。

なかなかやるな槍。

じゃあこっちの槍に関してはどうだ?

雷光魔法の魔法陣をしまって、私が展開するのはそう、暗黒魔法だ。

 

 

 

雷光槍から暗黒槍へのチェンジ。

わはははは!

電脳のおかげで闇魔法から暗黒魔法に進化しているのだ!

だから相手によって使い分けるのも出来るのだよ!

 

 

そのままミドラに発射。

回避出来ずに背中にくらってるね、どうだ。

暗黒槍は前のスキルが影と闇だったからか、撃った後もある程度操作が出来る。

それは一本に限るから本当に当てたい時しかやらないけど。

 

うーん。

予想はしてたけど、暗黒槍だとダメージはイマイチ。

もともと暗黒槍のほうが雷光槍よりも魔法ダメージは少ない。

その分与える衝撃は大きいという差別があるけど。

 

 

でも奴が弱いのは衝撃じゃなくて魔法攻撃。

そんなミドラに暗黒槍を撃ってもあまり削れないのは当然だろう。

検証出来ただけよしとしよう。

 

 

暗黒槍から雷光槍に戻して再び撃っていく。

縦穴になったから戦闘が不利になったかというと実はそうではない。

ミドラもミドラで行動範囲が狭まっているからね。

私は床が使えなくなった。

ミドラは高い部分にはブレスしか届かなくなった。

 

 

本当に、お互い決め手に欠けている。

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

私は雷光槍を撃つ、かわす、逃げる。

ミドラはブレスを放つ、避ける、岩を崩す。

 

 

展開が前とは逆になった。

私は上へ上へと移動しながら天井近くにとどまっている。

それに対してミドラは天井をブレスで砕くことによって水位を上げて私を追い詰めようとする。

 

 

これの繰り返し。

私は岩に何度か当たったせいでちょうど体力が半分くらい。

でもミドラも同じで、繰り返しの雷光槍で半分近くまで削られてる。

 

 

さっきまで天井のすぐそばにあった壁は今ちょうど沈んだ。

もうもともと戦っていたドームはとっくに岩に埋もれてるはず。

それほどまで、私たちがいる空間は上がり続けてる。

 

 

拉致が開かないと思ったのか、マグマの底に潜り込むミドラ。

突き刺しか。

さっきまでとは違ってこの縦穴は全然細長い。

だから大丈夫なはず。

1番上までは届かない。

 

 

なら、なんで沈み込んだ?

思考加速を使って考える。

ヤバい。思いつかない。

 

 

 

 

私の目の前に迫るミドラの身体。

急いで躱すけど、私のスピードはもともとミドラと比べものにならないくらい遅い。

吻についていたかまいたちに思いっきり触れる。

切れ味は完璧。

私の腹に刻まれる切り口。

 

 

内臓の重みで切り口は拡大していく。

痛いとかじゃない。感覚が、身体から離れてってる。

コレはヤバい。

下手すると死ぬ。

 

 

切れた2本の脚でお腹を押さえながら、吻を振り回すミドラから逃げるためにそのまま自由落下。

下はマグマだ。

それでも背に腹は代えられない。

今のミドラは全身凶器だ。

 

 

壁に糸をつけて一瞬で着地。

そこから、万能糸でお腹を修復。

やられた。

ここまで技巧派だったとは。

 

 

 

 

水魔法を空中で撃つことでそれに乗って加速するとか。

チートかよ。

初見でこんなこと出来るとか、まじでお前は天才なのか。

高速遊泳と水流感知があったところで簡単に出来ることじゃない。

 

 

内臓はやられてない。

だけど皮はやられたから、今処置が出来ていなかったら内臓が出て死んでた。

正直、内臓がやられずに済んだのは奇跡だ。

たまたまその時そこに内臓が無かったから無事だったのに過ぎない。

ここまでの怪我は私の治癒魔法では治せない。

応急処置は出来るしHPも治癒魔法で回復できるけどもう一度傷口が開いたら死ぬ。

 

 

空間機動を解除したミドラが下に下に落ちてくる。

これも水魔法で加速して。

 

 

私も空間機動の足場で、ミドラを弾き飛ばす。

そしてすれ違う。よし。行けた。ギリギリ。

脚が6本だったけどなんとかなるとは。

 

 

天井への猛ダッシュ。

下からブレスが飛んでくるけどこれは予見で回避。

ブレスで上からも岩を落としてくるとか。

どんな天才肌だ。

 

 

壁に沿って撃たれるブレスは私の背中を掠っていく。

さらに削れるHP。

もう、体力はほとんどない。

なにかが直撃すれば本当に死ぬ。

 

 

でも何故だ。逃げる気にならない。

気分はどんどん高揚してる。

なにより全力でやらないとミドラに申し訳ないという気持ちが湧いた。

よし、決めた。

私は逃げない。貴様を殺して全てを終わらせる。

ミドラ。ありがとう。

私はあなたを殺す。

 

 

天井近くに空間機動の足場を作る。

下にはブレスを吐くミドラ。

いくぞ。

 

 

『電脳!ツール解放を許可する!本気出せ!』

『よし来た!』

『それから同調レベルを最大まで引き上げる。調整しとけ!』

『任せろ』

 

 

私の心が再び一つになる。

なんだ、この全能感は。

これが電脳にとってのこの世界なのか。

 

 

もう手加減しない。私の今の全力を出す。

全身に電流が一気に廻るのを感じる。

あまりのエネルギーで、意識がイッてしまいそう。

それでもワクワクは止まらない。

 

 

『雷光魔法・改  LV1  爆雷』

 

 

『目ぇカッ開け!此が貴様の走馬灯だ!』

 

 

私は叫びながら、電気を纏って空を舞う。








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51 水溜まりはやがて干上がる



電気蜘蛛VS水龍ミドラ
決着


ポケモンのBW2が発売10周年になりました。
バチュルも頑張ります。


爆雷。

これは自分の身体に電流を流すことで速度を極限まで上げる魔法。

この魔法は私自身が作ったもので、D自身もこんなのを作れるなんて想定できないだろう。

 

 

だから隠しておきたかった。

Dにこの存在がバレるということは私がシステム外行動を取れることがバレるようなものだ。

警戒レベルを上げられるかもしれない。

それだと、下手したら私の本当にやりたいことが出来なくなる。

 

 

 

とりあえずバレないように設定は調整した。

ひとまず2年欲しい。

全てが安定すると想定できる2年間が欲しい。

それまでにバレたら私は死ぬ。Dに確実に殺される。

 

 

そんなリスクを冒してまで私はミドラと本気で戦いたいと思ってしまった。

爆雷の効果で、身体中を電流が駆け廻る。

それも無視して跳ねる。

 

 

電流の力で増強された神経系は、探知のスキルも組み合わさって一気に過敏化する。

魔力の流れと、マグマの熱気がバチバチと顔に当たってくる。

痛いような、くすぐったいような変な気持ちだ。

 

 

電流の力で同じく強化される筋肉。

外骨格の内側で増強されていくのをメキメキと感じる。

それに伴ってどんどん削れていくSP。

さっきとは減少の仕方が桁違いだ。

 

 

 

私は、空間機動を使って水龍のブレスをどんどん避けていく。

一瞬でケリをつけよう。

私もHPがほとんどないし何かに当たったらどうせ死ぬんだ。

ほっといてもSP切れで死ぬんだし。

 

 

幻夢を発動。

そのまま雷光槍を大量に展開してミドラへと発射。

高速の槍は流星群のように落ちていく。

 

 

 

どうくるかと思っていたら、奴もそのまま突っ込んで来た。

しかもあっちもあっちで全力を出してるみたいだ。

 

 

水魔法に高速遊泳を重ねて、さらに空間機動も組み合わせたミドラの最高速攻撃。

さっきより素早さも増した上に方向転換も上手くなってる。

空間機動で足場にぶつかりながら移動して水魔法で方向転換してるのか。

この短時間でここまで成長するとは。

私が放っておいたらどれだけ強くなったんだろう。

 

 

でも世界でもかなり上位の強さになったんじゃないかな、コイツ。

確かに今までの私だったらそのまま刺されて死んでいただろうし。

けれど今は違う。

私だってトップクラスのスペランカーだ。

 

 

よし、楽しくなってきた。

本気で殺りあおう。

 

 

ミドラはぱっと見では雷光槍を避けながら突撃してきている。

だけど、実際はめちゃくちゃ食らっているのをやせ我慢しているだけ。

だって幻夢で槍を一部見えなくしてるもん。

 

 

見えなくしてる雷光槍には結構当たっているし確かにHPも削れてる。

ミドラの体力も再び半分を切ってるしね。

さっきも半分だったのに、HP高速回復本当に許さん。

 

 

考えてる間にも、当たり前のように飛んでくるブレス。

魔法使いながらブレスも撃てるのか。

どんだけ魔法の素質あるんだよ。

 

 

あわてて避けて雷光槍を発射。

ブレスは戦いの振動で脆くなった壁をどんどん崩していく。

なんなら、私じゃなくて壁狙ってるまである。

 

 

あれ?

ちょっと待って。これ本当に壁を狙ってる。

 

 

私に気づかれないように少しずつ壁削ってるな。

本当に少しずつ、削り取っていくように。

それでも確かに壁は削れてる。

 

 

なにが目的だ。

少なくともロクな理由じゃないと思うけど。

 

 

探知!

私が壁の中で光る赤いものを探知した瞬間、その壁は崩れ落ちた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

うー。

バカかなー。

てか、なんでこんなこと思いついたかなー。

 

 

壁から流れ出るマグマは空間機動の足場の上に降りかかっている。

私が屋根として急遽作った足場にだ。

 

 

マグマ溜まりと縦穴を繋げるとか。

マグマに触れたら、体力的にも即死。

水流感知で流れてるのを感知したんだろう。

 

 

ミドラにはマグマ効かないのが本当に嫌だ。

HP高速回復で相殺した上で回復がさらに上回るとか。

やりたい放題しすぎでしょ。

 

 

再び爆雷を掛け直す。

ミドラが飛びかかって来てるのを探知した私は、空間機動の足場を広げてその上を走る。

 

 

マグマに触れないように上の足場も同時に拡大。

空間機動の使いすぎでMPゲージまでもが半分を切った。

MPはすぐに回復するからいいけど、まさかここまで減るとは。

ミドラ恐るべし。

 

 

助走して足場から大ジャンプ。

そんな空中にいて身動きの取れない蜘蛛をミドラが見逃すわけが無い。

 

 

足場から飛んだ私を狙って、大口を開けるミドラ。

 

 

確かにいい判断だ。

私を食べるなら今口を開けなきゃいけないしね。

雷光槍でも、暗黒槍でも、私は奴を削りきれない。

万能糸を使ったとしても私はミドラからは逃げられない。

 

 

だけどそれは最良じゃない。

 

 

 

 

この瞬間、勝負はついた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

ミドラの口は空を切り、ミドラ自身も落下していく。

 

 

 

天井にへばり付いてホッと一息つく。

ミドラがマグマの中に落ちていったのを確認して私は治癒魔法を発動させる。

 

 

危なかった。

爆雷を見せた時に、ミドラが手札を使い切ってくれたと思ってくれたのが功を奏した。

爆雷に対応すれば勝てると思ったんだろう。

 

 

私が使ったのは、猛毒合成と黒鞭。

猛毒合成で特大の毒をミドラの口の中に放り込んだ後、糸よりも速く動かせて熱に強い黒鞭で天井に逃げた。

 

 

あの時ミドラが口を完全に閉じていたら私は死んでいたかもしれない。

都合よく口を開けていたことには感謝しかない。

 

 

私が黒鞭を途中で見せていたら警戒されたかもしれない。

私が毒合成を見せていたら避けられたかもしれない。

バチュルが元からいた生き物だったら知られていたかもしれない。

こんな、たまたまの連続で生き残った。

これは胸にしっかり刻み込もう。

 

 

《経験値が一定に達しました。個体、エジク・ラアがLV13からLV14になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『魔闘法LV8』が『気闘法LV9』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『怒LV1』が『怒LV2』になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《経験値が一定に達しました。個体、エジク・ラアがLV14からLV15になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『無限LV1』が『無限LV2』になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《経験値が一定に達しました。個体、エジク・ラアがLV15からLV16になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『睡眠耐性LV7』が『睡眠耐性LV8』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『賢姫LV5』が『賢姫LV6』になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《経験値が一定に達しました。個体、エジク・ラアがLV16からLV17になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『HP高速回復LV4』が『HP高速回復LV5』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『外道魔法LV8』が『外道魔法LV9』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『神性拡張領域LV6』が『神性拡張領域LV7』になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《経験値が一定に達しました。個体、エジク・ラアがLV17からLV18になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『石化耐性LV5』が『石化耐性LV6』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『恐怖耐性LV7』が『恐怖耐性LV8』になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《経験値が一定に達しました。個体、エジク・ラアがLV18からLV19になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『次元魔法LV4』が『次元魔法LV5』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『魔闘法LV9』が『魔闘法LV10』になりました》

《条件を満たしました。スキル『魔闘法LV10』がスキル『魔神法LV1』に進化しました》

《スキルポイントを入手しました》

 

 

脱皮で脚が復活する。

切れたお腹もすっかり治った。

ほんと、なかなかやってくれたもんだ。

ただただ危なかった。

 

 

 

 

『始まりました』

 

 

うん?

なにが?

 

 

これは下層にいる子供からか。

位置は地龍アラバ。

そうか。

 

 

そうなんだ。

やるんだね、白。








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52 水竜フェス



ミドラを倒した後……やることはただひとつ。




再び海へと帰還。

あー、真昼間だけど中層と比べたら全然涼しい。

マグマが無いとこんなに違うのか。まあ当たり前だけど。

 

 

じゃあ水竜狩りを再開しよう。

ミドラっていうイレギュラーがいただけで海は安全な経験値の宝庫だからね。

こんなに竜が大量にいて、しかも頭がいいわけじゃないから簡単に倒せる。

なんだこのパラダイスは。

 

 

てかこれ絶対白のレベル上げよりも効率いいよね。

うーむ。この世界ステータスよりもスキル頼りっていうのはわかるから白のレベル上げの方法に反対するわけじゃ無いんだけど。

白は今どんな感じかな。

 

 

 

共生の感知システムを使って確認。

そこに映される死にかけの蜘蛛と、それを追う地龍。

地面は炎が燃え盛ってる。

ヤバくない?

パッと見でめちゃくちゃ死にそうなんだけど。

もう忍耐発動してるし私行った方がいいか?

 

 

忍耐というのはHP0でもMPが尽きない限り死なないという壊れスキル。

そのかわりMPは減っていって、尽きたら本当に死ぬ。

MPも半分くらいは残ってるけどこれ先に白死ぬんじゃ。

 

 

『だけどアイツが覚悟したことでもある。一度舞台から降りたお前にはできない勝負だ』

『でも、白が死ぬかもしれない』

『考えてみろ。アイツ、並列意思あえて使って無いんだぞ』

 

 

電脳は呆れたように言うけど私は賢いわけじゃ無いからわからない。

 

 

『舐めプ?』

『そうでもあるが違うとも言える。並列意思の中でアラバに直接出会ったのは情報担当だけだと思ってるから、情報担当だけで戦おうとしてるのかもな。実際は全員が会ってはいるんだが』

『でもアラバに固執してるの情報担当だけだよね』

『まあな。他の奴らはそれぞれの役目を全うしてるし、それで情報にのみ残ってるアラバをずっと見ている情報担当だけが強い思いを持ってたんだろうな』

 

 

『なんだか難しいね。白は助けなくても死なないの?』

『死なないとは否定できん。だけどお前が入れる舞台ではないな。白本人も、共生を一時的に外してきてる』

『それ本気じゃん』

 

 

共生のデメリットとして共生相手が死んだ時にHP最高値がごっそり減るというものがある。もともと私たちは遠くにいるから今は共生が発動してないけど、近づいても発動しないようにオフにしたみたいだ。地球でいうBluetoothみたいな感じだね。

 

 

うーん。結論としては助けにいくべきじゃ無いってことか。

白本人から拒絶されてるとなると、故意にアラバと戦ってることになるんだしな。

 

 

正直私は人の覚悟なんてどうでもいいし白の覚悟もどうでもいい。

白が生きてれば他のこともわりかしどうでもいい。

白の身のためなら、私は覚悟なんて関係なく白を助けたい。

 

 

ただ。

それと同じくらい私は彼女に嫌われたくない。

私が白の覚悟を踏みにじったことで、白から嫌われるのは嫌だ。

だから私は助けられない。

助けたくても助けられない。

 

 

 

 

私はなにも選べない。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

あれから10分。

白はアラバに勝った。

でもギリギリだった。

 

 

いつ死んでもおかしくない体力で走り回っていたのを想像するとその健気さにジーンとくる。

どうやって勝ったのよ、あの状況から。

でも、本当に良かった。

私にとっても白にとっても、最良の結果だ。

 

 

私は今なにやってるかだって?

電脳とそれについて話しながら海に浮いている。

 

 

理由?水竜狩るために決まってる。

マジで効率良すぎるんだ。

10分で1レベル上がるぞ。

 

 

水竜たちがすぐに周り泳ぎ始めるのが悪い。

確かに私も脚からわざと血を流して集めてるけど。

かんたんすぎでしょ、このレベル上げ。

 

 

確かに水竜は雷光槍一発では死なない。

でも、電流を海に流しながらやれば4発くらいで確実に死ぬ。

これを10匹やっただけでレベルが1上がる。

なにこれ。

 

 

さっきまでLV19だったのがもうLV25になってる。

竜パラダイス。

サイコーだ。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

あれから3時間くらい狩りをやってLV30まで来た。

結構時間かかっちゃったな。

水竜たちも後半は頭が良くなったのか、狩りの効率が悪くなったのが原因だ。

今日は結構湾内で狩りしてたのもあるし明日からは湾外で狩りしよう。

 

 

こんなに成長スピードが速いならオリジンエレテクトまで進化してから人と会うっていう考え方でもいいかもしれない。

最初は蜘蛛の身体で会うことを考えてたけどね。

だって楽すぎだよ?

1ヶ月以内にこれはオリジンエレテクトまでいけるんだよ。

こんなに楽なのに、レベル上げとかない理由なんてある?

 

 

今日はとりあえずLV30になったし寝る時ついでに進化しないと。

進化分岐についてはご飯食べてから確認しよう。

とりま転移。

 

 

上層のマイホームの近くに水竜を山にしておく。

てかなんだこの家は。

新築二階建て屋根ありとか洞窟内に絶対いらんだろ。

瓦に竜のウロコが使ってあるし、私の子供建築ガチ勢か?

 

 

でもアルセウスも上手くやってるなぁ。

上層にはポケモンかまだちゃんとは出ていない。

下層とかだと結構増えてきてるんだよね。

 

 

クリムガンとかイワークとか。

メレシーも前行った時には見つけた。

もちろん片っ端から眷属にしておいてある。

 

 

上層に現れてないのは人にバレないためだと思う。

バレたら後々大変だろうし。

ほんと上手くやってるよ。

 

 

 

 

私は浜辺に戻ってキャンプファイヤーの準備をする。

あたりはもう暗い。

子供たちにも招集かけてるから、今に来るはず。

 

 

転移で次々と帰ってきてる。

だけど。私はそれとは違う空間の歪みを感じ取った。

この精密さ、アイツだ。

 

 

なんで来る?

私が今日1日やったことと言えば……。

 

 

あ。

言い訳の準備しとこう。




クリムガン……顔が真っ赤で身体が青い、二本足の小柄なドラゴン。大きさは1.6mほど。身体が冷えると動けなくなるので中層と下層の中間あたりに生息している。


イワーク……9m程の巨大な岩ヘビ。いくつもの岩が連なった身体をしており、時速80kmで移動できるが、なぜか平均攻撃能力は雀の涙(ポケモン本編でも攻撃力は小鳥程度である)。


メレシー……ウサギの頭に鉱石の原石を付け、それが宙に浮いている不思議なポケモン。大きさもウサギほど。鉱脈から湧くらしいので、青が見つけたのはなかなか運がいい。


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53 私はユーグレナです







空間から現れる黒ずくめの男。

やっぱり黒と一体化したような姿だ。

暗くなった風景に少しだけ同化してて見にくい。

 

 

管理者ギュリエディストディエス。

世界の管理をDから頼まれていて、同時に現在進行形でDにいじめられている男だ。

 

 

彼は私のことを細い目で見てから、ため息をつく。

 

『これで聴こえるか?』

『ああな、流石龍。昔から生きてただけあるじゃねえか』

『は?』

 

待って。何言ってんの?

電脳。

 

 

『私はDの作ったシステムの言語設定に干渉したのだが。これでも無理矢理やっているのだから普通は出来ない筈だ。お前はなぜ話せている?そもそもお前はDのシステム下で生きているんだよな?』

『あー。こちとら魔法改造して魔術もう作ってんだ。オリジナルは無理でも干渉程度なら出来る。結論としてはそっちと一緒だな。あと後者についてはノーコメントだ』

 

待って何言ってんの。

本当に。

ヤバくない、こんなこと言うと?

 

 

 

 

 

オレ様が話す。ボロ出さないように嘘つくぞ。

黙っててもらっていいか。

 

 

頭の中に電脳の言葉が響く。

私もどうしようもないのはわかってるし、とりあえず頷いておく。

 

 

 

 

 

 

しばらく続いた沈黙を破ったのはギュリエディストディエス本人だった。

『そうか。ならなぜ私が来たかわかるか?』

 

 

あ、はい。すみません。

流石に乱獲やばかったか?

 

 

『あー、とっくのとうに予想ついてるわ。オレ様たちが狩りまくってた竜だろ?オレ様はやめる気無いが謝っておく。申し訳ないな』

『やはり傲慢だな……。こちらも謝ろう。平穏に生きていたのに、こちらの世界の都合で死んでしまった。それだけでも十分な仕打ちであるのに、Dからこの世界に無理矢理送り込まれたというのは聞いている。外部の神が少し関わってるという話もあるが。本当に申し訳ない。だが、この世界の生態系を壊すまで暴れまわるのはやめてほしい。出来れば、あまり壊さないで欲しいのだ。この世界でじっとしていて欲しい。出来れば人間には関わって欲しくないし竜を狩ることで気が晴れるのならば喜んで受け入れよう』

 

 

恐ろしく下手に出てきた。

立場としてはまだギュリエディストディエスの方が圧倒的に高いと思うんだけど。

だって世界の管理者でしょ?

私、一応まだタダの電気蜘蛛としか認知されてないはずよ?

 

 

あれ?

これはDにバレちゃってるのか?

流石にミドラの時やりすぎたかも。

やばい。

 

 

『返答を聞かせてもらえないだろうか?』

 

 

この質問にはお前が答えろ。

お、おうわかった。

とりあえず正直に答えるね。

 

 

ギュリエディストディオスは抗おうとしてる。

この世界の運命に。

それならば私も、その覚悟には応えなきゃいけない。

 

 

私は電脳が発す言葉につられてゆっくりと言葉を紡ぐ。

 

 

『無理です』

 

 

管理者、ギュリエディストディオスは口を紡いだ。そしてただ一言、

 

 

『どうしてもか?』

 

 

と発する。

 

 

彼自身の、考え込んだ末の一言。

 

 

そりゃそうだ。

君が抱いてるものはあまりにも重すぎる。

君自身のしがらみが、あまりに強すぎる。

 

 

『はい』

 

 

『そうか。ならば私も何も言うことはできない。だが一つ聞かせてくれ』

 

 

なに?

なんのようについてだ。

出来れば穏便に頼む。私はまだ死にたくない。

 

 

『異世界人から見て私は滑稽に見えるか?』

 

 

なんだ、そんなことか。

全然Dにはバレてなさそうだ。良かった。

そんなこと私に聞くまでもないと思うけどな。

最高の一般人さん。

 

 

『私がなんとかしてあげる。だから私を助けてね』

『どこまでも傲慢だな。だが感謝する。つまりはそういうことなんだな』

『うん』

 

 

『では失礼する』

『待て、ギュリエディストディオス。

 オレ様が少し話したいんだ。

 ちょっとバーベキューに付き合え、時間はあるだろ?』

 

 

はい?

この人、爆弾投下したんだけど!

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

『水竜の肉、思ってたのよりは旨い。誘ってくれて感謝する。部下を食うのは複雑だがな』

『おー、そう言ってもらえると嬉しい。

 末端だし別にいいだろ。ところでお前の持ってるその酒、少しくれないか?』

『ドンドンくれてやる。

 だが私を酒の席に誘ったってことは覚悟が出来てるってことでいいんだな?』

『出来てるわ。むしろそれ聞いてやるために誘ったって言っても過言じゃない。

 せっかく誘ってやったんだから全部吐き出せ、な?

 オレ様に出来ることは限られてんだし話したって問題ねーだろ』

 

 

 

なんだこの状況。

夜の砂浜で丸太が組まれて焼かれている。

その周りを囲い込む蜘蛛たちと、砂浜に置かれた丸太に座って話す蜘蛛と一体の人型の龍。

 

 

蜘蛛たちは龍と私に肉を取り分けて皿の上に乗せる。

マジでどうなってるんだこの状況。

 

 

しかも私の中には二つの人格があってそれぞれ話せるとか。

訳わからんでしょ。

 

 

電脳酔ってるっぽいし。

並列意思って酔うの?

それなら私も酔うかも知れないんだけど。

 

 

グラスとワインが不釣り合いだー。

ギュリエディストディオスが持ってきたの絶対キャンプファイヤー用じゃないし。

グラスだから割らないように注意しなきゃいけないし。

おお、肉ありがとう娘よ。

 

 

 

 

 

「本当にこの世界はふざけてるんだよ。本当に最低な世界だ。まずポティマスがクズだ。クズどころではなく存在してはいけない生命体だ。いくら釘を刺しても私の想定を上回る最低な策略を画策する。しかもそれがわかるのが毎回全て終わった後だから最悪だ。毎回致命的なところには行かないよう抑えることが出来ているから、今の言い方は間違ってるかも知れないな。そのせいで今の最低な状況が連続的に繰り返されてる訳だが」

「最低な状況とか草」

「私は娘いるから楽な人生送れてるけどねー。白もいるし」

「こちらは辛い人生だがな。ダスティンも己の信念に従って突き進んでいる。それ自体はいいんだよ。アリエルに関しても停滞はしているが下手な真似はしていない。これからする可能性特大だが。手出し無用だから本当にやめてほしいし貴様も動くだろうし、世界が揺れるようなことはしないでほしいのだが」

「そりゃ動くに決まってるだろアホ。白死んだら嫌なんだよコッチは。てかもー手遅れだろさっさとグラードン止めてこい」

「あー、グラードン動いたの?中層からどっか行ってくれたらうれしーな」

「そんな幸せな脳をしているから楽な人生が送れてるのか。そんな幸せ頭が考えるようなことはしているし、グラードンを止められるならもう止めている。いくら倒しても復活するから倒せないんだよ。今は海の水干上がらせながら歩いているしなにしたいのか訳がわからん。私以外グラードン止めようとしてる奴はいないしボッチにこのクエストは難しいすぎるんだ」

「頑張れボッチ。オレ様がいるしボッチ脱却じゃねーか?どっちにしろグラードン止まんなそうだけど」

「どうせカイオーガのとこ行ったんでしょ。ステータス見ても上がってるしゲンシカイキゲンシカイキ。星を一掃できるからよかったじゃん」

「私もそうしたい。いいよな星に住んでる人族の一掃。人間どもは自らが殺すサリエルを信仰するし、狂気の屑どもであるし生かす意味などないからな。だがサリエルがそれを望まないのが厄介だ。彼女の考えだけが障害ならまだしも神にはもうひとりヤツがいる。あれはあれでサリエルを放す気はなさそうだし完全に遊びのネタにしているから手に負えん。しかも最近は他の宇宙の最高神まで呼び込んで遊んでいるからどうしようもない。最高神も邪神のようだしあれとぶつかって破滅して仕舞えばいいのに」

「そりゃ無理だろ。神より上の存在であるオレ様を生み出した最高神だぞ?Dが適当に爆死することはあってもアルセウスは死なんて」

「あーお肉美味しい。おい娘おかわりカモン」

「神よりも上の存在ならこの状況をどうにかしろ。そもそもシステムの上で生きてるのに上の存在もなにもないだろ。お前もお前だ。私が監視者として置いていた龍を2匹も抹殺しているし当の本人には悪気がないどころか開き直っている。監視者を補充するのの大変さをわかっていなぃだろ」

「ああん?アース5体くらい譲ってやろうか?それで満足だろ」

「いいよー、私はギュリがそれで納得するなら」

「普通はおいそれとその地位の魔物増やせないんだよ。貰えるなら貰っておきたいがな。やっぱり貴様は異常だ。才能か?それともアルセウスの力か?」

「ま、大体アルセウスの力じゃねーの?そういや、この話Dにすんなよ。阻害かけてんだから。お前から言ったら全部パーだからな」

「肉くれー」

「いいよな力がある奴は。最高神も完全に観光気分でいるし遊ばれているのがよくわかる。部下の気持ちなんて考えたことないだろ。私もサリエルがいなければこんな星さっさと捨てているんだ。彼女が好きだから私はどうしようもないんだ。酒でも飲まないとやっていけない」

「マジで喋んなよ?ボッチだからおしゃべりになるんだよ。Dにオレ様の能力が知れたらサリエル救出も詰むんだ。マジで黙ってろ」

「男に会いたーい!」

「は?サリエル救出ってなんだ。詳しく聞かせろ」

私はお酒を一気飲みした。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

うん?

 

 

あれ。

明るくなってる。

私寝てたのかな。

 

 

頭痛い。

えーと、昨日ギュリとなに話したんだっけ?










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54 嘘つきの魔物



青がどんどん馬鹿になってる。電脳に思考能力吸い取られたのか。


『進化可能:テル・ライズ』

 

 

ピカピカと光る進化可能の文字。

ついに来た最高ランクの魔物への進化。

私もここまで辿り着いたのか。

昨日お酒を飲んでからの進化だから全く実感がない。

レベル上げが楽だったってのも大きいけどね。

 

 

この進化で魔物としての地位はマザーと同等。抱えてる戦力はマザー以上オリジン以下。

私個人の実力はマザーとほぼ同等となる。

 

 

これでマザーとなら全面戦争起きても勝てるから、障害になりうるは魔王のみということになった。

魔王と戦うことになったら転移で逃げときゃいいし。

最悪逃げられなかったらそれはそれでなんとかしよう。

 

 

ちなみに、私が寝ている間に電脳とギュリでうまいこと協定を繋いでくれたらしい。

しかもボロ出すかも知れないからって言って私にはマトモに教えてくれない。酷い。

 

 

うーん。

テル・ライズに進化してからも先は長いんだよね。

まずオリジンエレテクトにならないと魔王と拮抗した戦いは出来ない。

そもそも、管理者になるための繋ぎでしかないし。

 

 

まだまだ先は長いなぁ。

バケモノみたいに育ったスキルもまだ還元出来ないし。

管理者のかの字も見えやしない。

これはキツイ道のりだぞ。

 

 

『この世界に来た時点でそれは認めてろよ。いいから進化するぞ』

 

 

うー。

確かに未来のこと考えるのは電脳の仕事だし、進化するか。

まだ朝だけどヤケクソで進化してやる!

 

 

《個体エジク・ラアがテル・ライズに進化します》 

 

YES!

 

じゃあ、おやすみー。

 

 

 

待って。眠くならないんだけど。

 

 

睡眠無効があるからか?

電脳、そこんところどんな感じなの?

 

 

『電脳はスリープモードです。進化終了までお待ちください』

 

 

えっ?

これはサリエルの声だ。

今はサリエルの声を借りて話してるのか?

うーんわからん。

 

 

ま、どっちにしろ睡眠無効で眠くなってないんでしょ。

電脳と私による魔法研究共同作業の時にいつのまにか獲得していたスキル、睡眠耐性。

これが水竜狩りによるスキル熟練度ボータスで睡眠無効に進化していたらしい。

このスキルは睡眠属性の攻撃を無効化するだけじゃなく、睡眠を取らないことによって起こるペナルティーがなくなる。

つまり24時間睡眠ゼロの地獄の魔法研究でも楽々行えるってこと。

しかも、寝たい時は普通に寝れる。

今の感じからすると進化による気絶も睡眠状態に含まれてるみたいだ。

 

 

しかしこれが進化か。

なんか変な感じ。

確かに、痛みも痒みもない。だけど、身体の何かで激しく何かが流れている。

卵産みの感覚を全身に移した感じ。

それでも怖くはないし嫌悪感もないから、何か感じるかっていうとわからない。

本当に不思議な感じだ。

 

 

《進化が完了しました》

《種族テル・ライズになりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度進化ボーナスを取得しました》

 

 

一気にレベルアップしたスキルが羅列されていく。

ぱっと見、訳がわからない。

そしてレベルアップしたスキルが順番を様々に変えていく。

自ら意志を持ってるみたいに動くスキル。

中には合わさってひとつになるものも、分離して派生するものもある。

 

 

これ多分全部電脳がやってるんだよね。

そう考えると、ギュリじゃないけど私もアイツの恐ろしさがわかった気がする。

だって言葉通りバケモノじゃん。

スキルのほぼ全てにおいての理解があるとか。

 

 

《進化によりスキル『不死』を獲得しました》

《スキルポイントを入手しました》

 

 

うん。

進化終了し、って待て!?

なんか聞こえたぞ!

だいぶヤバそうなスキルが!!

なんて言った!?

 

 

『不死:システム内において死ぬことがなくなる』

 

 

なにやってんだ、おまえぇー!!

いいのかそれは!?

いや、ありがたく受け取るよ!?

でもいいのかこんなの付録で!?

 

 

と、とりあえず落ち着こう。

私にとってDが邪神であるのは知ってる。

するとだいぶロクでもない理由でもない理由で渡したに違いない。

これから起こることに、私はひとつの予想がある。

こんな私を見てDがやることはただ一つ。

 

 

『子供たち、上層に転移!』

『わかりました!』

 

 

子供たちが転移したのを確認して、私は空間感知の感度をマックスまで高める。

そして、私が空間の歪みを探知したのとスマホがコトリと落ちてきたのはほぼ同時だった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

よし、無視無視。

無かったことにするべきだ。

 

『もしもし、Dです。聞こえますかー』

 

無視無視。

 

『なんだ?用があるならさっさといいやがれ』

 

オゥ……。

電脳さんまたか。

 

『おっと、こんなところに蜘蛛花火ボタンが』

『それは怖い。申し訳なかった。用件はなんです?』

 

急に下手に出る電脳。

コイツ、殺されないと思い込んでふざけてるな。

 

 

 

 

『じゃ、ポチッとな』

『は?』

 

 

 

 

 

こわっ!?

冷静に言うから怖い。

抑揚がないんだもん。

本気で殺す気かと思うじゃん。

 

『冗談ですよー。キョロキョロしなくても大丈夫です』

 

それならいいんだけど。

なにしに来たの?

 

『それを今から話すんですよ』

『そういうことならわかりました。話を始めましょう』

 

 

 

私、蚊帳の外?









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55 腹黒☆真夏の探り合い祭り!



説明回



私の困惑をよそに、2人は話し出す。

 

『私が今まで聞きたかったことがあるんですよ』

『なんですか?』

 

『あなたがなぜ魔術を作れるかってことです』

 

あちゃーバレてる。こりゃまずいかも。

バレたくなかったんだけどなぁ。

 

『それはオレ様をギュリエディストディエスに会わせたからだ。もともと自分1人じゃなにも出来ねぇし、なにもわからないはずの存在なんだ。ソイツに、魔力でもって魔術を使えるアイツを会わせてこんなことになった』

 

『なるほど、ギュリエのせいですか。わかりました。とりあえずそうしておきましょう。心はどうせ読み取れることですし』

 

Dも納得はしてないっぽい。

考えながらも、妥協したって感じだ。

 

『わかった。ならサッサとこの話終わらせようぜ。青も話したいことあるだろ』

 

お互いが腹を隠しながら話してる。正直全くわからない。

Dは心を読めるから分かってるんだろうけど!

 

『そうですね。あなたの口から発する気が無いのならば私から口出しするつもりはありません。青、なにを聞きたいんですか?』

 

あ、お、私か。

聞きたいことはあるから聞かせてもらおう。

 

 

不死とか簡単に渡してよかったの?あんなスキル、簡単に言っておかしいよ?

 

 

『そうですね。不死は、全てを求めた人の夢の究極形です。始皇帝から始まり、エジプト文明の歴史や竹取物語でもその夢は顕著に表れています。そしてなにより、不死は全生命の目標です』

 

うーむ、確かにそれはそう。全生命の目標は子孫の繁栄な気がしなくもないけどね。

 

『それも、その種族を不死にするという意味合いで行われているものなのです。もともと不死であれば子供など産みません。末端の神様に生殖能力がないのはそれも理由なんですよ』

 

ふーん。で、私の不死とどんな関係があるの?

 

『不死になることが出来るのであれば、さっきの話のように全生命が目指します。最上位の生命にのみ与えられる不死。それを追い求めて全ての生命が戦いで研鑽を重ね、死んでいくのです。素晴らしい世界だと思いませんか?』

 

思いませーん。弱肉強食とかじゃなくて無理矢理に不死という餌に誘き寄せて競争させるんでしょ?

少なくともそんな世界ロクなものではないと思う。

 

考えてみてほしい。学生たちが好きなことを学んで賢くなる教室と、一定以上の点が取れたらもらえる単位のために勉強する教室。どっちが健全かは火を見るより明らかでしょ。

 

『なかなかに言いますね。ですがこの世界にもそんな余裕はないんですよ?あなたも分かっていると思いますが』

 

その割には矛盾が多いんだけどね。

ポケモンをたくさん発生させるだけのエネルギーは大量にあるのにエネルギーがないというのは通用しないよ?

 

『痛いところをつきますね。では教えてあげましょう。今は最高神のエネルギーがこの世界に貸し出されてるだけなんですよ。だからこのエネルギーがなくなったら世界は消滅します』

 

え?なんで貸し出されてるエネルギーがなくなったら世界がなくなるの?

元々エネルギーがあって世界は成立していたんじゃないの?

なんかエネルギー無駄遣いした?

 

 

『うーん、どこぞの誰かがエネルギーを大量に掻っ攫ったことで世界に異常が起きていることくらいじゃないですか?エネルギーの無駄というのは』

 

あー、はい。どこぞの誰かですね。よくわかります。

でも、私たちのエネルギーはアルセウスから供給されたものなんじゃないの?

 

『元々はそうでした。しかし、最高クラスの魔物をこの速度で増やせるとは誰も想定していなかったようですね。おそらくですが』

 

うん?おそらく?

 

『どこぞの邪神が想定していないという私の一種の想定ですよ。話を戻しましょう』

『ここでひとつクイズです。アルセウスのエネルギーの瞬間放出量を上回ったアースエレテクト進化のために、なんのエネルギーが使われたでしょう?』

 

それがこの世界のエネルギー?

 

『大正解です。この時点で、一部のアースエレテクトにこの世界のMAエネルギーが配られることになりますね』

 

それが元々あったアルセウスのエネルギーが混ざった集合体が、私たちってこと?

 

『そうです。だから、もうあなた方はポケモンではないんです。ポケモンと魔物のちょうど中間。なんの派閥でもない、本当にカオスな存在ですよ』

 

それほどでもー。

 

『そのため、実験材料として最高の存在といえますね』

 

は?

 

『本当にすごいです。感動です。いや、感動も通り越します。ただただ恍惚です』

 

はぁ?

どういうこと?

 

『まず、あなたの使うスキル、特に雷光魔法改。これはシステム外行動です』

 

う、うん。そうだよね。

知ってた。

魔法じゃなくて魔術だもんね。

だから何ってことではないけど。

 

『まあどこぞの白い蜘蛛もシステム外攻撃を繰り返してるんですけどね。その話はまた今度にしましょう』

 

え。白のどこがシステム外攻撃なの?

そっちの方が気になるんですけど。

 

『確かに、外部からの働きかけ無しで面白い蜘蛛に興味がないといえば嘘になりますけどね。それ以上に、外部からの関わりがあって変質した生き物の方が気になるんですよ』

 

あからさまに私の質問を無視するD。これは答える気がないな。

 

 

 

でも、私は変化が小さい方が面白いと思うけどね。

対照実験として。

私では実験材料としては厄介なことが多すぎるんじゃないのかなぁ。

 

『確かにそうですが。実験場自体の変化が起こりうるという場合さすがにあなたの監視が必要になります』

 

 

 

ふーん。そゆこと。

じゃ、私もそろそろ神になれそうだね。

 

『そこは期待していますよ。まだ、何か聞きたいことはありますか?』

 

えーとどうしよう。

何聞こうかな。








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56 アンサータイム







じゃあ聞かせてもらうよ。

 

私はもう死んでるんだよね?あの教室で?

あなたがなにを望んで殺したかについてはあえて聞かないけど。

 

『確かに死んでます。ああ、あと訂正しておきましょう。勘違いしているようですがあの爆発を起こしたのは私じゃないですよ』

 

マジか。

まさか第三者による殺害だったとは。

てっきり白の魂狙ってまとめて殺したのかと思った。

 

『彼女の魂にそんな価値はありませんよ。あくまで私は死んでしまったあなたたちを転生させてあげた存在なんです。それより、私に対する考え悪くないですか?』

 

ならその怪しまれるような言動と前科をなかったことにしてくれないかな。

疑われるのは身から出た錆だよ。

 

『それは無理です。私、邪神ですから』

 

解出てんじゃん。てか自分で邪神とか認めてるんだね。

それ一番直す気ないやつだし。

 

『私はこんな私好きですから。話を戻しましょう。

 あなた方が亡くなった爆発は先代の勇者と魔王に関わっているものです』

 

え?私たちは地球で授業受けてたんだよ。

なんで違う星の戦いに巻き込まれるの?

 

『違いますよ。勇者と魔王は敵対してた訳じゃないんです。2人で協力して倒そうとしてたんですよ』

 

なにをよ。しかもなんで地球にぶつかってくるわけ?

しかもあの教室に。

 

『どうやら彼らは管理者を敵として見做してたみたいですね。どこの誰にそそのかされたのか』

 

なんか確定じゃないけど思い浮かぶやつが1人おるな。

めちゃくちゃそそのかしそうなやつが。

 

『そして、私がいたのもあって教室は爆破されました。もちろん私は無傷です。ですが、何の罪もない高校生たちが死んだ上にシステムに巻き込まれてしまいました。私も原因の一部ですし、システムの構築者として最低限のフォローはしておくべきだと思ったのです』

 

そして私たちを転生させたと。

ふーんDそこにいたんだね。

あーあ、そういうことか。

 

『今その世界には26人の元地球人が転生しています。授業中の教室は見るも無残に破壊され、生存者はいませんでした。そして、その時の衝撃で、その時に死んだ人の魂はその世界のシステムに逆流してしまい、その世界で転生することになってしまったのです。私はそのままでは分解されてしまう魂を保護し、記憶や元の魂の力をそのままにこの世界で生きていけるように、n%I=Wのスキルを付与しました。あとは、適正を見て適当なスキルを1つずつプレゼントして、なるべく魂の波長が近い種族に転生できるように調整及び実行しました。これで、最低限のフォローは出来ているはずです』

 

 

しかもヒントをありがとう。

大体全部繋がった。

白に関する何もかもが。

 

 

『流石です。電脳、そして青。この地点で大体理解しているとは。まだこの世界の一片も見ていないはずなのに。想像以上に想定外です』

 

『あー、そりゃそうだ。オレ様が産まれる前から青は推測して来てたんだ。お前が話したことで全ての辻褄があったんだよ。

 

 

 

 

 

 

 なぁ、若葉姫色』

 

 

 

『やっぱり流石です。やはりあなたたちは最高の実験材料です。素晴らしい』

 

『この世界よりも素晴らしい実験材料とまでは言いませんが、近しい貴重さではあります。ぜひ可愛がらせてください』

 

『あー、分かってるわ。こちらこそ頼む。よろしくな』

 

もちろん私もいいよ。

この世界、私も大好きだから。

 

 

『貴重な時間をありがとうございます。では』

 

 

 

スマホは流星のように宇宙に飛んでいった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

『よし、上手いこと乗り切ったな。だいぶ危なかったが』

『多分乗り切れてるよね?言われてないし』

『多分乗り切れてるだろ。状況が状況だったぞ。実際のところバレてたらこんな星なんてどうでもいいレベルで貴重って思われるだろうし』

 

 

『でもこれからどうするんだ?』

『まってよ。まずステータス見させて』

『ああ分かった。そういや見せてなかったな』

 

 

 

 

『テル・ライズ Lv1 名前 青

                佐野蒼生

 HP:5424/5424(緑) +1700(詳細)

 MP:13297/13297(青) +1700(詳細)

 SP:3302/3302(黄)(詳細)

   :3302/3302(赤)+135(詳細)

 ステータス

 平均攻撃能力5062(詳細)

 平均防御能力5057(詳細)

 平均魔法能力13688(詳細)

 平均抵抗能力13688(詳細)

 平均速度能力6987(詳細)

 「HP大吸収LV8」「HP高速回復LV8」「魔導の極み」「魔神法LV2」「魔力付与LV7」「SP高速回復LV2」「SP消費大緩和LV2」「瞬間速度強化LV8」「破壊強化LV7」「斬撃強化LV8」「状態異常大強化LV1」「毒合成LV10」「薬合成LV6」「闘神法LV1」「気力付与LV5」「龍力LV8」「猛毒攻撃LV4」「腐蝕攻撃LV3」「糸の才能LV8」「万能糸LV5」「操糸LV10」「念動LV1」「投擲LV10」「射出LV2」「空間機動LV7」「集中LV10」「思考超加速LV1」「未来視LV1」「並列意思LV8」「命中LV10」「回避LV10」「確率補正LV8」「隠密LV10」「迷彩LV2」「無音LV7」「暴君LV2」「威圧LV4」「奈落」「不死」「魔王斬LV6」「電撃付与Lv10」「雷付与LV10」「雷光付与LV6」「飽食LV9」「暗視LV10」「視覚領域拡張LV2」「予見LV1」「外道魔法LV10」「電気魔法LV10」「雷魔法LV10」「雷光魔法LV4」「雷光耐性LV4」「影魔法LV10」「闇魔法LV10」「暗黒魔法LV4」「毒魔法LV10」「治療魔法LV10」「空間魔法LV10」「次元魔法LV5」「火炎魔法LV1」「水魔法LV5」「深淵魔法LV10」「麻痺無効」「猛毒耐性LV3」「火炎耐性LV4」「石化耐性LV6」「酸耐性LV7」「腐蝕耐性LV8」「外道無効」「破壊耐性LV7」「打撃耐性LV6」「斬撃耐性LV7」「恐怖大耐性LV1」「苦痛無効」「痛覚大軽減LV4」「気絶耐性LV6」「睡眠無効」「暗視LV10」「千里眼LV8」「五感大強化LV2」「神性拡張領域LV7」「天命LV3」「瞬身LV7」「耐久LV7」「剛毅LV2」「城塞LV2」「韋駄天LV5」「強化産卵LV10」「小型化LV10」「共生LV8」「賢姫LV6」「妖姫」「無限LV2」「無垢LV5」「怨響LV5」「怒LV2」「電脳」「傲慢」「魅了LV4」「禁忌LV10」「n%I=W」

 スキルポイント4300

 称号 

 「悪食」「血縁喰ライ」「魔物殺し」「魔物の殺戮者」「竜殺し」「竜の殺戮者」「龍殺し」「毒術師」「糸使い」「大感染」「オリジン」「傲慢の支配者」「電脳の支配者」「恐怖を齎す者」「究明者」「暗殺者」「覇者」』

 

 

 

よし。

まあまあ強くなったし、人里に上がってみようかな。







水竜経験値多すぎだろ!


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57 やべーぞこれは!!



人族の村へと押しかけ。
こいつ、厄介極まりないな。




うーむ。

 

 

昨日娘から聞いた話で人族のいる場所はわかっている。

私が思っていたよりもけっこう山側にいたらしい。

さて、どうやってバレないように近づくか。

 

 

迷宮で兵士を鑑定から予想だけど、おそらく人間のステータスは300を超えない。

一部の最高クラスの人たちは超えてくるんだろうけどね。

スキルも村に住んでいるなら兵士たちよりも低いはずだし、私の隠密を破れる人はいないだろう。

 

 

じゃあ普通に近づいちゃっていいか。

最悪バレたところで卵あげたらなんとか出来るかもしれない。

村ごと逃げられたら詰むからそれは避けないとだけど。

 

 

『アースエレテクトたちも連れていくんだろ?』

『もちろん。娘たちも人に慣れないといけないし』

 

 

昨日、娘たちに人間に対する感情を聞いた。

返ってきた答えはまさかの恐怖。

 

 

私が地球にいた時の感情を反映しちゃったみたい。

どうやら娘たちの感情は今の私だけじゃなくて前世の私の影響が色濃く出ちゃうみたいだ。

Dが感情操作の一部を担ってるんだろうか。

もちろん私も眷属支配である程度は操れるんだけど。

 

 

ただ人間とちゃんと関わっていくとなると眷属支配で表面上だけで操ってくのは良くない気がする。

私が眷属支配を外した瞬間に逃亡するとかいうことになったら嫌だし。

ちゃんと心の面からケアしていきたい。

 

 

『娘たち!人族の村に行くよ!一応小さくなって背中に乗って!』

『はーい!』

 

 

手を振る体長7mのアースエレテクトたち。

もし私が管理してなかったら悪夢だよな、これ。

こいつを止められる人間まともにいないでしょ。

それこそ勇者くらい。

 

 

空間機動で足場を作りながら転移して移動。

空間機動で跳ねるよりももう転移しちゃった方が楽なんだよね。

確かに跳ねればMPは使わないけど疲れるんだよね。

なら転移で飛び続けてた方が楽だ。

次元魔法の熟練度も稼げるしね。

千里眼で周りを見渡すと、なんか家が見えた。

あれ、村だ!

 

 

うーん、やっぱり山側にあるってことで漁村ってよりは農村みたいだな。

漁の道具は見つからないし、畑はしっかりあるし。

山の一部を切り出して、そこに畑とか家とか建てて暮らしてる感じだ。

 

 

とりあえず空中から近づくわけにもいかないから、少し離れたところから地上に降りる。

変なキノコとかもあったけど無視。

私が今気になっているのは人間ただひとつなのだ!

 

 

林の中から千里眼で様子を観察する。

うん。私は不審者ではない。

私は蜘蛛だからどちらかといえば捕食者だ。

 

はい、電脳お願い!

スキルバレないように鑑定して!

 

 

『わかった』

 

 

電脳の言葉と一緒に出てくる沢山のステータス。

あんた一気に表示できるの?

優秀すぎ。

あれ?

待て待て待て。

非常に良くないぞこの村!

 

 

ねえ。

なんで一定数、同族喰ライいるの?

いやなんか違和感はあったよ?

 

 

村からは街道は繋がってるけどさ。

塩はどっからとってるのかとか、栄養たりてないんじゃとか。

悪食は全員しっかり持ってるし。

畑はあるけど飢えてるだろうなとかおもってたもん。

 

 

おかしいぞこれ。この村。

人狼ゲームか?

よし、どうせだし一番ステータス高いやつ探そう。

そいつがワンチャン全てをこの村で支配しているかもしれない。

もちろん異論は認めない。

 

 

 

いました!

一番ステータス高い男。

でも平均ステータス100切ってました!

弱かったです!

 

 

その一番強かったのは、村の用心棒みたいな男。

身長高いしで結構強いと思ったんだけどな。

やっぱり見た目と強さは比例しないのか。

性格も良さそうだし、短髪で細マッチョとか最高か。

全然弱いんだけど。

 

 

うーむ。

村一番の男にも悪食があるのか。

こりゃ食糧事情改善しなきゃダメだ、私の信者を増やす前に死者が出る。

とりあえず今日は村の端っこに卵を積んで帰ろう。

 

 

はい、浜辺の拠点に帰ってきました。

次元魔法で空間を開いて上空から千里眼で覗く。

これをやればただ千里眼を使うより全然長い距離が見れる。

その分行ったことのない場所は見れないという制約はあるけど、それを考えても全然使いやすい。

 

 

おおすぐに気がついたな村の人たち。

なんか話し合ってる。

でもビビってるって感じがすごい。

 

 

恐る恐る遠巻きから見てるって感じ。

ニワトリの卵くらいの大きさなんだけど、急に現れたらそりゃ怖いか。

私だって警戒するもん。

100個ぐらい山積みにしてきちゃったしごめんな村の人たち。

 

 

あ、小学生くらいの子供が卵持ってった。

お父さんぽい人が追いかけてるけど、そのお子さん走りながら食べちゃってる。

口を黄身で汚しながらその黄身も垂らさないように必死に拭うお子さん。

ああ、お父さん諦めた。

 

 

毒はないんだけど、一個丸ごと食べちゃったか。

栄養素が高すぎて子供だとお腹壊しちゃいそうで怖いんだよな。

ま、大丈夫でしょ!いざとなったら助けに行くし。

 

 

お子さんが食べてから、そのお父さんもとつぜん卵食べ始めた。

それに続き卵を食べる村人さん一同。

よっぽどお腹減ってたんだね。

それか、一人食べっちゃったからもう関係ない!ってことかもしれないけど。

 

 

どんどん減っていく卵。

集まっていく村人たち。

食べてるのはわかるんだけど、鑑定で見てもまだ栄養失調が消えてないってっことは相当な重症だったんだ。

ほんとどんどんみんなで食べてくれ。

 

 

結局、あれから5分もせずに無くなってしまった。

とりあえず一人残らず食べれたようでよかった。

みんなが美味しそうに食べてるのを見てあたしゃ幸せだよ。

さてこっから持続させて食べてもらわなきゃいけないわけだが。

 

 

 

 

まず卵は焼いて食べて。

今更卵あった場所に石並べても意味ないから。










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58 神様、ひきニート?






村の人たちに卵をあげるようになって3日が経過した。

栄養失調だった人たちも元気になってきたし村にも活気が出てきたんじゃなかろうか。

そんな私は今日も千里眼で浜辺から村の様子を確認する。

 

 

私自身が会いに行けって?

無理無理。

卵渡すだけならまだしも人と会話するとか無理だから。

コミュ症にそんなこと無理だっての。

 

 

だから明日私の娘を派遣することにした。

もちろん最初の日くらいは私も同行する。

言語の勉強もしたいしね。

 

 

村の人たちは卵をいつも置いているところに小さな祠を建てていってる。

神からの恵みとかでも思ってるんだろう。

本当に神にはなるつもりだし、騙してるわけじゃない。

 

 

ちなみに砂浜の近くには大きな家が建っている。

電脳が引っ張ってきた地球からの知識で作っているものだ。

蜘蛛に合うように基本的なものの高さは調整してあるけど、地球にいた時とそこまで生活水準は変わっていないはず。

食べ物の種類が少ないのが玉に瑕。

 

 

『ひとついいですか?』

『なに、ハルユメ?』

 

 

アースたちにもレッキとした名前がある。私の目から離れた瞬間にそれぞれがキラキラネームをつけ始めたけどね。

地球と違って個々の意識っていうのを強く持ってなきゃいけないし、別にいいかもだけど。

 

 

『言語教えてください』

『私もわからないんだけど……』

『わかる必要なくないか、そもそも?』

『『え?』』

『言葉わからなったとしてもオレ様たち悪くねーじゃん』

『『え?』』

 

『オレ様たちが神様なのに下界の奴らの話わかる必要あんのか?』

『それは、ないね』

『ないんですか……』

『神は神らしく自由に動いときゃいいんだ。そしてたまに人助けすれば』

 

『人助けってどうすればいいんですか?』

『患部ごと抉った後治療魔法で治せ』

『え、電脳。何で患部ごと?』

 

『お前らこの世界の体の仕組みわかってんのか?』

『いや、わかってないね』

『私もです』

『なら患部ごと削っちまえ。治療魔法ならシステムで治せる』

 

なんかシステム便利だね。

 

-----------

 

そして次の日。

旅立ちの日。

 

私が旅立たせるのは、1匹の蜘蛛、

成長したよ、三日前から。

言語も結局少しだけ仕組んでさ、治療魔法も勉強させてさ。

名前も昨日確認してさ。

全く長かった。

 

『なに言ってんだコイツ』

無視無視。

私は何にも聞こえてないでーす。

 

『私、どうすればいいですか?』

『うん?とりあえず彼らが建てた小さい祠行こう?神だし別に通してくれるでしょ。じゃあ、出発ー!!』

『え?ちょっと待ってくださいよ!?』

 

ハルユメにはまた大きくなってもらった。

そして、出遅れたハルユメが私を追いかけてくる。

その前を誘導するように私が歩く。

完璧だ。

 

『なにがだ』

『GOD Knows』

 

 

おい電脳。何だそのため息は。

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

真昼間から村の入り口から侵入する私たち。

周りにいる人たちは蜘蛛の子を散らしたように逃げていく。

しょうがないよね、見たこともない魔物なんだし。

 

 

お、でも気付いた人もいるみたい。

私たちが祠に向かってることに。

そして一人が気づくと後は早い。

 

 

話は伝染して、逃げる人は減っていく。

そして逃げるのをやめた人々は物陰から物色するようになる。

私たちを監視しているようだけど、実際のところ知的好奇心なのかな。

 

 

『過去の信仰舐めるんじゃねぇ。お前はもう信仰対象だ。今はまだないが、いつか命を差し出されるぞ。せいぜいその覚悟だけはしておくことだ』

『え?』

『簡単に言えば、知的好奇心なんて甘ったるいもんじゃねぇってことだ。一応そう考えとけ。

 じゃなきゃ後悔するぞ』

『そう。ありがとう。参考にするよ。ハルユメもわかった?』

『は、はい!』

『ならいーよ』

 

 

ハルユメ、だいぶ緊張してるみたいだ。

そりゃそうだ。

今までの人生で、自分を中心としたコミュニティにしかいなかったんだから。

私は産み落としてからの育児放棄で、ハルユメ自身はハルユメの子供としか生活したことがない。

人見知りになるのも当たり前だ。

 

 

『これだな、祠』

『思ったより小さいね』

『そりゃそうだ。配ってたサイズからして人より大きいこと想定されてないだろ。

 いや、単純に資材不足か。それか人手不足か時間不足か。いややっぱ時間不足か。

 そりゃ3日で大きい祠建つわけないか』

『電脳、なに考えてるの。てかどうするこれから』

 

 

祠は高さ2mくらいしかない。しかも高さの方が幅よりも大きいから、実際に使える面積はとても小さくなる。

神社の御神体を入れる箱が少し大きくなった感じみたいだ。

 

 

『とりあえず恵むぞ。懐柔しなきゃ話は始まらない。今までは卵を配ってきたが、治療とかもできれば今日からやりたい。ハルユメ、そこも頼む』

『わかりました』

『そんな固くならなくて大丈夫。そのために私も来てるんだし落ち着いていこう』

『まずは卵置いていくぞ』

『オッケー』

 

 

実は卵を産むのはだいぶ面倒くさい。少し違うか。

デバフ無しで卵を産むのは難しい。

卵を産むのにはHPを消費するからだ。

迷宮でみたいに卵をノーリスクで産むためには、エネルギー源を外部のものに頼る必要がある。

 

 

 

『てなわけで狩ってきたよ。水竜』

『コンビニ行くみたいに言わないでください!』

『だって楽だし。今回は気絶させてるだけだしこれで卵産んでみて』

『わかりました。少し祠に入ります』

 

 

水竜の尻尾だけを祠に入れるようにして、糸で入り口をがんじらめにするハルユメ。

私も言われたから手伝ったけど、なんで祠入ったんだろう。

 

 

『どこでも卵埋めるやつと違って普通デリカシーあるんだよ』

『失礼な。私は生存本能強いだけだよ』

『それをデリカシーないって言うんだよ。

 そもそも生存本能高いならちゃんと隠れて卵産むわ。あぶねーし。

 もと人間だから感覚狂ってんだよ』

 

 

あーヤダヤダ、これだから精神論主義者は。

さて。

次は私の後ろで平伏してる人たちを精神論で懐柔しなきゃいけないのか。

 

しゃべれないのに。









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59 神の威光






えっと?

 

神。力。ありがとう。

部分部分ではわかるけどやっぱりお礼を言ってるのか。

まああんなのほとんどタダだから別にいいんだけど。

 

私は話せない異世界語を紡ごうとする。

 

 

『あ、しゃべりたいならちょっと設定すれば普通にしゃべれるぞ』

『え?』

『ギュリから言葉少し学んだしな。アイツと会話した時点である程度文法も確認した。ま、オレ様は喋れん方がいいと思うけどな』

『なんで?』

『いやだって言葉わかってても喋れんだろお前。だったら言葉がわからない方が圧倒的に都合がいい』

 

それもそうか。

どうせカタコトになるのなら言葉がわかってない方が違和感ないか。

なによりコミュニケーション下手くそってバレない。

 

 

よし。

『人』

「は、はい!」

聞こえてる聞こえてる。みんながソワソワしてるし聞こえてるっぽい。しかもこの時点で騒ぐはずの子供を帰らせてるとか、教育がなってるじゃないか。村なのにね。

逆に村だからこそ子供の指導が行き渡ってるのかもしれないけど。

 

 

『私は神だ。私は食糧をあなた方に与える。あなた方は食糧多くある時に私に与える。いいか?』

「了解いたしました」

『よい』

 

『あなた方が良くない時、私の部下があなた方を治す』

「は、わかりました」

 

『私は去る。またどこかに行く。部下はここにいる。よいか?』

「わかりました」

 

 

おー、通じた。やっぱり言語は偉大だ。

 

 

『ねぇ、卵産んだ?』

『はい。もう出ていいですか?』

『いいよー』

 

モゾモゾと竜の尻尾を持って出てくるハルユメ。

ただ、さっき気絶してたはずの竜は絶命していて体力を吸い取られてる。

身体の損傷なしでHP0にするってなかなかこわいな。

 

『邪眼系のスキルならあるな。現に白も持ってるし』

白もスキルはすごいのばっかりもってるからなぁ。

根っからの天才には勝てやしない。

 

『卵配れる?私も手伝おうか?』

『いや、手伝わなくていいです。私でやってみたくなりました』

『おお。どんな心境の変化?』

『人って、それほど強くないんだなって思いました』

『おー。とりあえずその解釈でいいよ』

 

 

私は今まで人のことを強く恐ろしい存在と教えていた。でも、それは間違っているのかもしれない。

 

 

人間は弱く、1人だけじゃ何もできない存在だ。兵士50人が束になってもハルユメを倒せないだろうし。なにより、数だけは多いからひとりひとりにビビっていたらキリがない。

 

 

決めた。私の教育方針を変更する。

私はもう人間じゃないんだから、人のことを買い被らない。

 

 

ハルユメが卵を配る間、私は娘達に念話を繋いだ。

 

 

『娘達に告ぐ。人族は弱かった。人族は弱い存在である。人族が生きている理由は、数が多く他の生命よりわずかに賢かったからという理由しかない。今の人族は昔の人々の燃え滓でしかないのだ。

 

 結論を言おう。人族を恐れるな。彼らはただ我らに近しい知能を持つ弱小種族であるのみなのだ』

 

 

あれ?

なんで私って人族を守ろうとしてたんだろう。

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

あのあと治療もした。卵を配って人々の家も回った。

そして今、私はこの村を出る。

 

 

「ありがとうございます」

『気にしない。私は嫌ではない』

「ありがとうございます」

 

 

なんでこんな考えが急に生まれたんだろう。

この博愛主義だったはずの私に。

なんで、人間なんてどうでもいいと思い始めたんだろう。

 

 

『お前はその理由を知りたいのか』

『知りたくはないよ』

『でもな。お前はもうわかってるんだろ』

 

 

ああ。わかってるよ。わかっちゃってるよ。

わかってる。

最低なんだ、私は。

 

 

私の博愛は恐れから来てたってだけなんだよ。

私は1人で生きてきた。

それは人間だった頃からだ。

 

 

私の前世が浮かび上がってくる。

今まで私が考えていたことも、考えにもなかったことも。

残っていたのは愛してほしいという感情だったのか。

 

 

 

 

親に愛されながら生きてきた。

愛された私はずっと塾に通っていた。

愛された私は生活費を全て負担してもらっていた。

愛された私は広い一軒家を1人で使うことが出来た。

愛された私は何年もの間エアコンの中の涼しい部屋で過ごせていた。

愛された私はどんな生活を送っていてもお金で苦労することはなかった。

 

 

そんな私はポケモンにハマることになる。

もともと生き物が好きだった私は、ポケモンという架空の生き物を追いかけてさらに空想の中に潜っていった。

 

 

それにはしっかりとした生態があった。ネットでの対戦システムも、私の熱をさらに高めた。

私は対戦システムにおける戦法をネットにあげた。

それは瞬く間に有名になりテンプレのキャラ構成の一つを生み出した。

その構成に対しても様々な論争が起き、その世界では私が中心にいた。

 

 

これらが私にとっては愛だった。

 

 

 

 

 

だけど、私には沢山の愛がもうある。

沢山の、神からの、娘からの愛だ。

 

 

だから、もういらないと気づいたんだ。








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60 寄生廻戦







するとどうしようか。

人間は弱小生物だ。しかも私たち以上にこの世界の寄生虫。

たとえ滅びたとしても百利あって一害無し。

ただ、いずれ滅ぼすとしても3つ懸念対象がある。

 

 

ひとつ目はサリエルとギュリ。

サリエルの方は人を助けたいと思っていて、ギュリは愛するサリエルの意向に従いたいと思っている。

私が人族を殲滅するならば彼らは迎撃してくるはずだし、流石に未来の私といえどもその対処はやすやすとはできる自信がない。

 

 

ふたつ目はダスティン。

ギュリからしか聞き出せてはいないけど、聞いたところによると人類の存続のためにずっと頑張ってきたみたいだ。

それこそ数千年レベルで。

もしそんなやつと敵対することになったらと思うと手間がかかる。というか、並大抵の覚悟だとこちらが突破されかねない。

 

みっつ目に。

人間の知能だ。残念ながら私が何を言ってもこの真実だけは変わらない。

知能を持った生き物は想像以上に恐ろしい。

本能で勝てないと判断しても知性があれば逆らって襲いかかれるといえばわかりやすいだろうか。

もちろん戦えば勝ちうるわけで、そうなると知能を持っている獣は私に対してわずかな確率を狙って勝つという運ゲーを仕掛けられることになる。

獣側からすればわずかな勝ち筋のつもりなんだろうが、私側からしたらその運ゲーはたまったものじゃない。

 

 

なんだかんだで人間の強さの限界も見えていないしね。

一部の人間がめちゃくちゃ強い可能性も考えなければいけない。

 

 

やっぱり私って人間のこと買い被ってるのか?

 

 

『さあな。ま、知能レベルが他の獣より高いんだ。イレギュラーもあるだろうし警戒するに越したことはないだろ。

 それより1ついいか?最終確認だ』

 

『ん。なに?』

 

『例えば全く同じ姿になれるとして、お前はもう人になる気はないのか?』

 

『ないよ。もう私はどんな姿になっても自分のことを人とは思わない』

 

『そうか。

 それはお前が人間を軽視しているからか?』

 

『うーん、それとも違うと思うんだよね。

 電脳、ゴブリンと人ってどちらが優れてると思う?』

 

『一長一短あると思うから一概にはいえない。

 ゴブリンは小さく、知能指数も小さいがその分繁殖能力は高い。また、三欲を利用することで群れの連携をとることが多く連携能力なら人を超えうるだろう。

 人は知能指数も大きく身体も大きいが、その分繁殖能力は低い。また、様々な欲が頭の中に存在するために完全な統率は取りにくい。知能指数が大きいために街を作れるがな』

 

『そう。だから、私と人間は似たとしても全く非なる生き物となる。もちろんどちらが優れているとかもない。

 だから互いに争い、化かし合うことになる』

 

 

 

 

 

『おい』

 

 

『戦争する気はないよな?被害ヤバいことになるぞ』

 

『わかってるわかってる。

 少し寄生するだけだよ』

 

 

計画は変えない。

ただ人間に対する意識を変えるだけ。

これからも円滑に事を進められるように。

人族が私たちの計画の妨げにならないように。

 

 

私は笑って、村から続く道を歩き出した。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

道の真ん中を堂々と歩く。

とは言っても、凄い細い獣道みたいな道なんだけどね。

こんな道じゃ物資を補給するのもままならないはずだし、あの村は実際陸の孤島みたいだった。

こんな状況じゃ食糧不足になるのもわかる。

同族喰ライが発生したのも食糧不足の影響なんだろう。

 

 

ジブリであったみたいな道を抜けると、広めの道路に出た。

洞窟の兵士さんたちも言ってた街道。

地面が舗装されてるわけではないんだけど馬車とかなら通れそうだね。

実際車輪の跡がしっかり残ってるし。

 

 

となるとここから人間と会う可能性も高くなってくるか。

もし会ったとしてもこちらからはあまり手出ししたくないんだよなぁ。

まあ、私の体長も70センチくらいあるんだし逃げてくれるでしょ。

 

 

私が人間に手出しできない理由として、もし殺すと称号が手に入ってしまうところにある。

その称号は人族殺し。

これだけならまだいい。一部の兵士や村人にもあったからね。

だけど、その後にもっと殺すと『人族の殺戮者』と『人族の天災』が手に入ってしまう。

 

 

私はあくまでマスコットだ。

そんなマスコットが殺戮者なんてなってしまったら笑えない。

天災にまでなってしまったら、畏怖はされても受け入れられるわけがない。

 

 

私はあくまで寄生する立場だ。

寄生するなら寄生するなりに、まずは受け入れてもらわなけばならない。

体内に入れてもらわないで寄生できる虫が地球にも居ないように。

 

 

だから私は舐められる。

この世界の寄生虫を内部から破壊するために。

流行りじゃないが、寄生廻戦だ。

 

 

宿り合おうぜ、終末世界で。

 

 

 

 

 

お、てか馬車発見。

てかなんで止まってるの?仲良くお話中?

いや、商人さんと身包み剥いでる盗賊さんか。

大変だねー、この世界も。

 

 

なんかお偉い人が襲われてるってのがテンプレだけどそうじゃないっぽいしなー。

商人さんたちも抵抗する気はないみたいだけどどうしよっか。

盗賊さんたちも人族殺しの称号持ってるし、殺す気いっぱいみたいだね。

じゃ、この商人たちはほっとけば死ぬ。

 

 

よし媚び売ろう!

盗賊ゲット出来るし、パイプ得られるし!

 

 

なにより、なんか面白そうだし!









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A5 ぶらり食い歩きの旅



久しぶりにアルセウス視点です


「うーむ、どちらを食べるべきか」

「さっさと決めろそこのお前!コッチは今忙しいんだ!」

明るい日の光のもと、エセ神官は出店の前で考えていた。

 

 

「ふぅ、毎度ありー!」

「ありがとな」

 

 

彼は串についた魔物の肉を頬張りながら周りを見る。

どうやら、彼が思っていたよりも魂が摩耗しているようだ。

呆れたような顔で周りを見渡し、再び肉を喰らいはじめた。

 

 

彼はこの世界に来てからというもの、様々な出店を回っている。

というのも暇だったのだ。

「ノリでこの世界に来たはいいが特にやることもない。それなら食べ歩きでもしていた方がまだ楽しめそうだ」

これが彼の基本的なスタンスであり、理不尽な点であると言えるだろう。

 

 

予想通りしっかりと奴隷制も存在している。

表面上には出ていないが路地に少し入れば一瞬で奴隷になれるだろう。

本当にラノベの異世界みたいなんだな。そう思いながらため息をついて食べ歩きを始める。

 

 

 

 

 

彼はアルセウス。

宇宙に1人しかいないはずの全能神である。

ーーまあ、もともと宇宙自体が1つではないのだが。

 

 

アルセウスにとってこの星にどれほどの興味があるのかというと、実は全くない。

今の星の状態は稀にだが見られるからだ。そしてそのまま崩壊していく。

だから基本的には持ち直す星など存在しない。

 

 

ただ、彼にはポケモンという劇薬がある。

その劇薬を試したいという神の単なる興味がここまで突き動かしてきたのだ。

 

 

ーー本当にタチの悪い神の悪戯である。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

ーープルルルル。ガチャ。

 

『こちらアルセウス。わかったことを言ってくからメモしろ』

『え?私まだ呼ばれるんですか?』

『残念ながら』

『は、はぁ?』

 

電話の先から、力強い声が響く。

その声にも呆れが含まれているのだが。

 

 

その名はギラティナ。

だいぶ強いのにアルセウスには頭が上がらない残念な神である。

本人は謙遜しているが、Dや冥土に勝てる程度には。

 

『わ・か・り・ま・し・た。言ってください』

『ーーまあいい』

 

 

 

『ヒトの魂の消耗率70%。再生減少割合0.08%。素材強度64.8%だ。ギラティナ、どう思う?』

『だいぶ末期ですね。なにかキッカケがあればまとめて崩れるんじゃないでしょうか。ほんとによく生きてますね、そいつら』

『Dと似たようなことお前もやろうとしてだけど、ここまでなったことあるっけ?』

『ないですよ。私がいる世界はそんなジェンガがシュッと立つ世界ではありませんから。てかもっと不安定ですし』

 

ギラティナのいる世界はやぶれた世界と呼ばれる。そこには地面と万有引力が存在せず、ただ砕かれた大地が空中を散乱しているだけの、不思議な場所だ。

 

ギラティナはそこで生態系を作ってみようとしてDの魂再生システムを使ってみようとしたのだ。

激しく変化する環境に耐えられる生き物が存在せず、断念することになったが。

 

 

 

『うーん、生態系とか一応凝り固まってるおかげで無事なのか?なんだかんだで上手くできてるものだな。

 あ、そうだ!もうひとつ面白いことを発見したぞ!』

『なんです?』

 

電話から嫌そうな声が響くが、彼は気にしない。それほど興味深いものであったのだ。

 

『例の虫のスキルが、元の意識を抹消しようとしてたんだ!』

『は?』

 

 

『はぁ?』

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

『つまり、最適解を求めるスキルが遂に本体の破壊へと着手したと?なかなかなこと言いますね』

『そのなかなかがおきてるからおもしろいんだよ』

 

 

道路脇のベンチに座り笑いながら足を組む。

周囲の人々がきみ悪がって離れていくが彼は気にしない。やはり、傍若無人を人の形にしたような化け物である。

 

 

『人工知能はいずれ感情をゴミと見る。合理性は不合理をゴミと見る。それと同じだ。

 電脳は青をゴミと見做した』

『ーーそのままでいいんですか?』

『ああな』

『え』

 

 

『最悪青が死んだとしたら、なにになると思う?』

『いや、わかりませんよ。なにを考えてるんですか』

 

ギラティナは呆れたように声を出す。

ただアルセウスがずっと黙っているために、想像もできないものなのだと唾を飲んだ。

 

 

 

 

 

『ーー星になる』

『はぁ?』

 

 

 

 

『青もといテル・ライズは、自身でエネルギーの生産と消費が出来る。すると面白いことが起きるんだ』

『神と星の関係を、1人で完結させることが出来るんだよ』

『は、はぁ』

 

なに言ってるんだコイツ。控えめに言って次元が違い過ぎる。

なに言ってるんだ。

 

 

『人と植物で例えてやろう。人は酸素を吸って二酸化炭素を出す。植物は二酸化炭素を吸って酸素を出す。これの神と星版だ』

『その意味はわかりますが……なぜ星になるのかがわかりません。そもそもエネルギーなんて生産してるんですかあの蜘蛛』

 

 

 

『いや、HPで卵産めるわけないじゃん』

『唐突なメタ発言!?』

『システムに対してのメタだよ。実は、強化産卵も最適解を目指すってプログラムしてだんだ。それが電脳によってHP1で卵1つに変化した。この意味がわかるか?』

『もともとエネルギーを生産していたから最適解がそれになったと?』

『ビンゴ。ま、エネルギーを生産してるのはこの世界のポケモン全般って確認出来たんだけどな』

 

 

『星になる理由は簡単だ。感情を失い行動が失われていけばエネルギーを消費しなくなる。そうなれば、生産するだけのただの星だ』

 

 

 

『ーーわかりました。あとひとついいですか?』

『ああ。ジャンジャン聞いてくれ』

 

 

 

『電脳と青は、互いにどう考えているんですか?』

『あー、それか』

 

 

『青は、電脳を信じ愛している。

 電脳は、青を信じ宿り殺そうとしている。もちろん怪しまれないようにだが』

 

『青は、死ぬかもしれないですね』

『そうだな。ワレはそう思わんが』

『ちょっ、どういうーー』

 

アルセウスは通話を切り、街の外へと歩き出した。






消耗率…魂の質が低下している割合
再生減少割合…一世代の種族においての魂の劣化の速度(一部星の再生に使われるため親から子に引き渡されるMAエネルギーは親の持つもの以下となる)
素材強度…魂が劣化した結果で、魂自体の強度。劣化0%で強度100%となる


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61 盗賊!やはり盗賊は全てを解決する!



前回の補足(A5についての補足です)

電脳はもう純粋な1つのスキルではありません。というのも、あくまで並列意思を取り込んでいるからです。
つまり、今の電脳はスキルでもあり、感情のある存在でもあり、青の一部でもあります。

拙い言葉で申し訳ありませんが、こんな感じだと軽く感じてくだされば嬉しいです。


うーむ、商人さんも盗賊さんも私には気付いてないな。

サクッと終わらせちゃおう。

 

 

まずは状況分析。

盗賊さんが7人、商人さんが5人。商人さんは抵抗する気はないみたいで見ぐるみを剥がされてる。

てか自分から諦めて装備外してる。異世界だと逆らったら殺されたりするのかな?

盗賊さんたちは斧やら槍やら武器をそれぞれ持ってる。真ん中にいるリーダーみたいな人は剣を持ってるし、それなりに稼いできたのかな?

剣は金属の量かなんやらで高級品だって兵士の人たちが言ってたと思うし。

 

 

とりあえず魅了発動。

なんだかんだまだ気づかれてないけど、これで気づかれたとしても彼らは意識を保てるはず。

最悪気を失っても死にはしない。とりあえず死ななければ治療魔法で治せるだろうしオッケーだ。

 

 

私たちの位置関係は、人間、馬車、私という感じだ。

よっぽどのことがない限り気付かれないはずだし都合がいい。

まずは馬車の近くで商人たちの荷物を積ませているリーダーみたいな人を背後から即拘束。

次に、荷物を積んでる盗賊たちもそのままサッと拘束。

 

 

ここで残りの4人も、状況のヤバさに気づいたみたい。

武器も全て捨てて私のいない方へ走り出す。

逃げてもいいよー。

ま、もう足縛ってるんだけど。

ドシャドシャと倒れる盗賊たちの足についた糸を綱引きの要領で引っ張って回収。

 

 

そい!そいっ!

回収した盗賊たちを一人づつ糸で丁寧に簀巻きにしていく。

盗賊たちにしてはこれから巣に持ち帰られるのかとか怖いだろうねー。

自業自得だ諦めろ。

 

 

えーと、じゃあ固まってる商人さんたちの処理もしないとね。

ついでに少し泳がせよう。

 

『私はあなたたちに害を及ぼさない。安心しろ』

「は、はい!

 

 話せるのですか?」

 

うーんまだ警戒されてるなぁ。流石に会ったばかりじゃ魅了で支配出来ないか。

あの兵士たちも時間かけて洗脳してきてたんだし。

 

『私は当たり前のように話す。わかるな?』

「は、は、ではどうすればいいのですか?」

『盗賊の処理をしたい。今は生かしているが、あなたたちの扱い方が気になる。街まで連れて行け』

「し、しかし……」

『勝手についていくので安心しろ。迷惑はかけない』

 

 

そう。隙は絶対に見せない。

見せたら絶対逃げられるもん。

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

『お、あれが街か。思ってたよりも大きいね』

『中世だからな。土地がある分街も広くなる』

 

 

商人さんの馬車の後ろを私たちは歩いている。

流石に馬車に乗ったりとかは出来ない。

だって私蜘蛛だし。

さっきの盗賊7人は、娘の1人に運んでもらっている。

これも商人たちに勝手に処理されると嫌だしね。

私の手柄は私の手柄だ。

 

 

「どうするんですか?」

『私は入り口で待つ。馬車はもう街に入れて構わない。ただ、兵士連れて来て』

「わかりました」

 

 

街に近づくにつれてザワザワとし始めるのがわかる。

そりゃそうだよね。

馬車の後ろに馬車ぐらいの大きさある蜘蛛がついて来てるんだから。

 

 

あれ?

でも兵士が一気に出てくるって感じでもないのか?

千里眼で覗いてみても、慌てふためいてはいるけど戦う準備をしてる人たちは少ない。

街が危ないんだから死ぬ気で飛び出してくるもんだと思ったんだけど。

 

 

お、商人と兵士たちが何か話し始めたぞ?

私の方指差しながら兵士がどなってる。

いやー、照れるなぁ。こんなに注目してくれるとは。

話を聞いたっぽい兵士さんは大声でなにか周りに言ってるねー。

それに伴ってさらに慌てふためいてる兵士たち。

でも議論っぽい言い合いもしてる。

私が虫なのに、動いてるのだけ見たらあっちが虫みたいだ。

 

 

お、動きがあった。

兵士さんたち鎧を付け始めたね。

相当警戒されてる。

私は襲うつもりは一向にないんだけど、やっぱ魔物であることのハンデって大きいんだなー。

 

 

うおー、いっぱいガチャガチャした奴らが出始めた。

中には槍とか盾とか持ってる人もいるけど、思ったよりは少ない。

さっきの議論でなんか決まったのかも。

てか兜いいなー。カッコよ。

 

 

『私の対処のために出てきたの?』

『そうだろうな。娘はどうするんだ?』

『別にしばらくは私もこの街にいるつもりだし、とりあえず娘に何かさせるつもりはないかな』

 

 

実はこの街にはしばらく滞在したい。

前の村とは全然規模が違うし、この世界のことについて学べることも多いはずだ。

一般教養だけはちゃんとした街で学びたかったんだよね。

 

 

ひー、ふー、みー、えっと……。

いや多いな!兵士30人くらい出てきたのか?

正直100人来ても150人来ても、私には勝てないと思うけどねー。

彼らがしたいのは交渉のはずだし、私がしたいのも交渉だから、そんなのでは武力は関係ない。気分は変わるけど。

 

 

「なにをしに街に来たんですか?」

お、遠くから話しかけてきた。でもこれ私じゃなくて娘がボスだと思ってるな?

私がボスだ、私が。

 

 

『盗賊を捕らえた。私は盗賊の処理をしたい』

「ーーわかりました!こちらで致しますので盗賊をこちらに引き渡してください」

 

 

 

すっかり言語解ってる前提で話しかけてきてるねー。私カタコトなのに、やさしさが足りなくない?交渉ならもっと相手のこと考えないと。

 

『断る。私は自らの手で盗賊を処理したい。

 ハッキリ言おう。私はあなた方の暮らし方を見たい』

 

 

「少し待って下さい!」

 

 

何人かの兵士が再び街の塀の中に入っていく。

お偉いさんに聞きに行ったのかな?

聞いてきてもいいんだけど、私そんなに長くは待ちたくないんだよね。

今までの話有耶無耶になりそうだし。

 

 

『私はどうすればいい?』

「お待ちください!」

『今日中に決めてください』

「わかりました!」

 

 

残った兵士はビクビクしながらも私たちを囲む。

頑張れ社畜!国の犬!今日も国民を守るため、働け!

 

 

いやー、でも盗賊って凄いね。

盗賊が全てを解決するツールと化したよ。

通貨としての盗賊、ほんと便利。






兵士A『あの蜘蛛、どうすりゃいいんだ。流石に追い払うか』
兵士B『でも女神教の人だって多い。領主様もそうだ』
兵士C『マジでどうすりゃいいんだ』


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62 変わり者たち







 

 

「お待たせいたしました!」

『ありがとう』

 

 

あれから1時間、やっと伝令の兵隊さんたちが帰ってきた。

えっとなになに?

 

いや聞き間違えだよね。ちゃんと教えて?

え、マジなのか。

凄いなそいつ。その人勇気ありすぎじゃね?

 

 

どうやら、私と話しにこの街の領主様が今から直々に来るらしい。

普通こういうのって部下がやるもんじゃないのかな。

危険度的にも、地位的にも。

 

 

あと地味にすぐ予定入れられるの有能じゃない?

それか暇なの?

流石に会話が通じる人であってほしいから傲慢でないことを祈る。

でも、魔物に対して強気って時点で人生舐めてる馬鹿者にしか思えないんだよなぁ。

 

 

やっぱりロクな性格の奴では無さそうな気がする。

愚か者ほど騙しやすいからそれならそれでなんとかするんだけど。

単純に話しててイライラしそうなんだよね。イライラしても殺せないから、ストレスになる会話は嫌だ。

 

 

「砦の中で待っていただくので良いでしょうか」

『かまわない』

「わかりました。ではいきましょう。他の方々はどういたしますか?」

 

私の方を見ながら、一番老年っぽい方が話しかけてくる。

やっぱりそうだよな。

疑ってたけど、やっぱそうみたいだよな。

 

 

『目立たない場所で待たせてやってください。我々のこともありますが、あなたたちの都合もあるでしょう。

 あと、念話で話してるの、私です』

一番小さい蜘蛛が手を挙げると、老兵さんは顔を真っ青にした。

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

「先程はご無礼を働き、誠に申し訳ございませんでした!」

『構いません。私は小さいのでわかります。私は間違えられうる、すなわちあなたは間違っていない』

 

 

私が今いるのは、街の入り口にあった検問所の大きな檻の中。

待てって言われた場所が檻の中だったから、最初はふざけてるのかと思った。私も魔物だから我慢しようって感じだったし納得はできてた。

でも面白いことに、どうやらその領主さんも隣の大きな檻の中に入るらしい。そうすれば私も領主も互いに危害を及ぼせないって兵隊さんが言ってきたのだ。

 

領主さん自ら檻に入るとは。

なかなか頭の柔らかそうな人だし、案外話しても面白いのかもしれない。

ただ、確かに理には適ってるけど同じ立場に立つだけで礼儀って訳じゃないからな?

私と同じ変わり者ってことだからさっきよりも気になると言ったら嘘になるけどさ。

確かに魔物と同じ立ち位置に立つってことを認めてくれてる訳だし。

 

 

ちなみに娘たちは盗賊と共に違う部屋の檻に入っているらしい。

盗賊をしっかり持ってるの、偉いぞ娘。

国際通貨は落としたら勿体なさすぎるからね。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

私は待っている間、パサパサしたクッキーを頬張る。

兵隊さんたちもたまに檻の中に入ってくるけど、なかなかに肝が据わった人達だ。

こんなに肝が据わってるなら冒険者とかも出来そう。

まあでも、やっぱり命が惜しいんだろうな。あんな危ない仕事誰もやりたくないし。

 

 

そして異世界のクッキー、やっぱり美味しくない。

まだ砂糖の安定供給も出来ないような文明レベルだろうし私が深く突っ込むことも出来ないんだけど、せいぜい果物から砂糖を抽出したりしないんだろうか。

果糖でもいいからさ。実際果糖がなんなのかは知らないけど。

 

 

お、部屋の小窓からガラガラ聞こえ始めた。

車輪の音がするし馬車で来てるってことは領主さんかな?

この建物の人達がみんなあわてて動いてるしそうっぽいね。

 

 

千里眼!

空間魔法で時空を歪めて、その穴からさらに千里眼で馬車全体をパパッと調べる。

ちなみにこの穴にも幻夢をかけているから人間に気づかれることはない。

私も本当に器用になったものだ。

 

 

 

 

うん、イケメンはいないと。

領主さんはカッコいいんだけど奥さんいるしなぁ。

別にいなくてもなんもしないよ?

しないって。

 

 

次に強さの確認。

ただ、私の千里眼には鑑定を載せることが出来ない。

だから見た目だけで判断することになるんだけど、今までの経験から案外人間は見た目とステータスが比例してるのがわかってるから実は問題がなかったりする。

ムキムキなヤツが弱小だったら面白いことは確かだけど実際はそんなことないのが世知辛いよね。

ほんと、現実に準拠しすぎたクソゲーだ。

Dの性格の悪さがこれだけでも窺える。

 

 

うん?

あの子供、馬車の中にいる子供の目が赤い。違う。よくよく見ると瞳が真っ赤なのか。

髪も白いし変わった子だ、アルビノなのだろうか。それにしては髪が綺麗すぎると思うけど。

 

 

この世界の人間については村で観察してきた。それでわかっているのは、この世界の人間でも髪の毛の色は基本的に地味であり、黒や茶色が多いということだ。

派手な人間は村で生活しにくいとかもあるのかもしれないけど基本は遺伝で伝わっているものなのだろう。

サンプル数が少ないから断言はしないが、おそらく合っているはずだ。

 

 

こんなことを考えてみると、この赤子は気持ち悪い存在だ。

髪の毛は真っ白で、目も赤い。

領主さんたちは2人とも茶色い髪なのに。

てか、異世界に来てから銀髪?みたいな色の髪は見てこなかったのに。

 

 

あの赤子、怪しいな。

異常なところがはっきりしすぎている。これは要鑑定だ。

 

 

こんなことを考えていたら再びさっきの老兵さんが来て私に話しかけてきた。

「領主様がいらっしゃいましたので、なにか準備があればなさってください。面会の時間も20分程度しか取れないと思われますので、話すことも考えて下さっていれば光栄です」

『ありがとう。君には感謝する』

「ありがとうございます。その言葉は遠慮なく頂かせてもらいます」

 

 

よし。

色々気になることはあるけど、まずは駆け引きのお時間だ。









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63 流れ者

テスト終わったので帰ってきました。


コメント、高評価あると嬉しいです。最近、蜘蛛ですがなにかの二次創作が減ってきている……。


ついにガチャリとドアが開いた。

そこから入ってきた領主さんはそのまま私の隣にある檻にスッと入っていく。

 

改めてこの人すごいなぁ。なんと言っても、覚悟決まってるのがすごい。

 

「こんにちは」

『こんにちは。ありがとうございます』

 

 

あー、一瞬引いたな?わかるけどさ。

そりゃ虫が急に喋ったら引くのもわかるけど。

知能があるっていうのも言ってあったと思うし話せるっていうのも言ってあったと思うけどね。

 

 

「こちらこそありがとうございます。どうやらアルゴ村の方々も助けてくださったようで、感謝いたします」

 

 

ふーん。あの村アルゴ村って名前だったんだ。はじめて知った。

看板とかはあった訳だし文字読む練習もしないといけないな。情報もしっかりとした武器だからしっかりと役立てないと私が不利になる。

人間が繁栄する理由も情報によるものだし、何より電脳が勿体無い。

 

 

『気にしなくて構わない。私の趣味だ』

「ーーあの、何を望んでいらっしゃるのですか?」

 

 

うーん、この人嫌いじゃないんだけどな。変なところで反感買って殺されちゃいそう。

特に私みたいな上位存在にはここはゴマ擦らなきゃ殺されかねないぞ。

別に領主さん自体が死んじゃってもまあ私は興味ないんだけど。

 

 

『人々が喜んでるのを見て楽しんでいる。身体が優れない人を見ているのは私でも心が痛む』

「ですが……。出来ればやめて頂くことはできないでしょうか」

『それは無理だ』

 

 

だよね。

言われるとは思ってたことだし、私はピシャリと言い返す。

自らの生活に、全く訳のわからない化物がいたと思えば誰だってそりゃ逃げようと思う。

だから私は逃がさない。

私のために、そして彼自身のために。

 

 

『私は卵を与えるし、人を害するつもりもない。

 あなたの言いたいことはわかる。だが、私も人と対立したくない。わかってくれないだろうか』

「少しだけ考えさせてください」

 

 

領主さんは頭を抱えている。私への対応について考えてるのだろう。

考えたところで答えは決まってるし好きなだけ考えてくれ。

その私の考えに呼応するように、彼は私の想像よりも早く顔を上げた。

 

 

「わかりました。私の街ではあなたのことを神獣と正式に認めます。

 さまざまな無礼を働いたこと、お許しください」

 

 

シンジュウって、なに?

 

 

ーーーーーーー

 

 

『神獣とはなにか。私はただの蜘蛛だぞ?』

「いや、神獣です。世界をお救いになった女神様の乗り物でなさった神獣です」

 

 

自分に言い聞かせるように神獣であると連呼する領主さん。

うんうん。自身の判断が間違っていれば街の人みんなを危険に晒すことになるから。不安でも信じるしかない。

ただそんなことは私にはどうでもいい。人間殺したところで得られる利益は何もないし、不安程度は実績で吹き飛ばせる。

 

 

どういうことだ?確かアリエルにも最古の神獣って称号があったはず。 

女神様っていう話からも考えるとサリエルも関係してるのかな?

サリエルがアリエルと一緒になにかやって人を助けた説が濃厚。

『電脳!アリエルの発言もう一度教えて?』

『わかった。レコーダーで流す』

 

 

テープレコーダーのように流れる声を聞きながら、私は高速で考える。

うん。なんとなく掴めたけど、同時に腹が立ってきた。

 

 

アリエルはサリエルのことだけを愛しているからサリエルが人族を守るって聞いた時にも最初は賛成した。だけどそれによってサリエルが封印されるとは知らなかったから激昂している。

ただ、人族はそれを知らないからサリエルの近くにいた蜘蛛を神獣として今も崇めてるのだろう。

 

 

アホくさ。本当にアリエル被害者じゃん。

ギュリはともかくアリエルはまだ力なかったかもしれないし。

理不尽すぎるし人間が愚かすぎて目も当てられない。これは人族の殲滅すべきだわ。

マジで生かしてる意味がない。

 

 

ただ、今殺すのは勿体無い。

もっと待つべきだ。私たちの寄生が終了するまで。宿り切るまで。

なにより、サリエルとアリエルの気持ちが合致するまで。

私は人族を生かそうと思う。

そもそも私に決める権利なんてあんま無いと思うし。

今の私は根無し草。今の最終目標だって私がなんとなく決めてることだし、いつこれが変わるかなんて知ったこっちゃない。

 

 

「私にまだ望むことはありますか?あるのならば対応しますが」

『ああ、一ついい?

 君の子を見せてほしい。』

「え?ーーいや、あの、ーーわかりました」

 

 

 

 

よろしい。

 

 

 

領主さんが引っ込んでからため息をつく。びっくりした。

最初に一瞬驚かれた時、確実に意表がつかれていたはずだ。それなのに私の要望を拒否しようという心が瞬間的に働いていた。結局のところは私が魅了を使って力づくで緩めたけど、この一瞬で抵抗を受けるとは。

よもやよもや、子供を思う親の気持ちはこんなにも恐ろしいものであったのか。

 

確かにダスティンは怖いけど、こんな辺境でそれに近しいものを感じる羽目になるとは。

やっぱり知的生命体の感情は恐ろしい。

私いつかこいつらの群れをまとめて相手取らなきゃいけないの?

 

 

あー、ヤダヤダ。

めんどくさいとかじゃなくて単純に勝てないんだよ。

スキつかれたら死にかねないとかマジでやめてほしい。

しかも人族の頂点の強さもわかってないしさ。クイーンくらい強いとかはないよね?あったら逃げるか、魔王とぶつけるんだけど。

 

 

まあいいや。ひとまず、あの子供の確認だ。

 

 

「この子のことでしょうか。神獣様」

 

 

領主さんが抱いてきた子供を透視で確認。

うん、領主様が抱いてきた子供はあいつであってるな。

改めて見ると変な人間だな。瞳孔も思いっきり赤いし髪の毛も真っ白だ。

まるで作り物みたい、が実際にありうるとしたらこんな感じか。

 

 

『鑑定!』

 

 

だけど、私はこのステータスに硬直することになる。

 

 

『人族 吸血鬼 LV1 名前 ソフィア・ケレン

               根岸 彰子

 ステータス

 HP:11/11(緑)(詳細)

 MP:35/35(青)(詳細)

 SP:12/12(黄)(詳細)

   :12/12(赤)(詳細)

 平均攻撃能力:9(詳細)

 平均防御能力:8(詳細)

 平均魔法能力:32(詳細)

 平均抵抗能力:33(詳細)

 平均速度能力:8(詳細)

 スキル

 「吸血鬼LV1」「不死体LV1」「HP自動回復LV1」「魔力感知LV3」「魔力操作LV3」「暗視LV1」「五感強化LV1」「n%I=W」

 スキルポイント:75000

 称号

「吸血鬼」「真祖」』

 

 

ごめん。一つ言わせて。

 

 

はぁ?



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64 逃亡と放棄

会ってしまった蜘蛛と人




マジかぁー。

いや、うーん、マジかぁ。

正直なところ今会ったところで私に出来ることが少なすぎる。

せいぜいマーキングくらいか?

 

 

『あー、うー、聞こえますか?念話ですが』

 

 

『ーーッ』

 

 

待って。反応あるんだけど。

電脳、まさかだけど念話繋がってるの?

 

 

『ギュリの会話技術はしっかり参考にさせていただいてるからな。一方的に念話使わせるくらいならなんとか出来る。てか、今までどう人間と喋ってたつもりなんだ?』

『ア、ハイ』

 

 

赤ちゃんが知能的に喋れるんかっていう問題もあるけど、こっちのほうは私(蜘蛛)が喋ってるっていう例外があるから参考にはならないんだよなー。多分頭脳も元の世界準拠になってるし。

電脳は別だけど。

 

 

てか待ってよ、聞こえてないつもりで話しかけてたから急に反応されても困るんですけど。

私どうすりゃいいのよ。

まあ思考加速で考えよう。幸いアッチには思考加速ないし、私が言葉に詰まったとは思われないでしょ。

 

 

 

まず考えなければいけないのはこの根岸彰子という存在について。アルセウス、及びDの転生特典が何かしら彼女にもついているはずだし、ロクでもないことが起こりかねないと考えるとこの赤子でも警戒対象となる。

 

ただ、地球でなにが好きだったとかもわからないんだよな。私はオタク友達0だったせいで割と男女同じくらいの頻度で話しかけてたけど。

てか、小中でいじめられた原因それだな?

 

 

うーん、根岸さんは私と違ってまともな隠キャな感じだったんだろうなー。

ワンチャンいじめられてた?高校でも静かだったし。

普通のやつはいじめられたら静かになるはずだしその線かもしれん。いじめられたら引っ込むみたいに静かに行動する奴は実際多いはず。

 

 

うー、まじでわからん。てか本当に顔しか思い浮かんでないんだよな。

あとリホ子ってあだ名。なんでそんなあだ名なん?リホ子のリの字もないじゃん。

 

 

 

『あ、聞こえてるなら聞こえてるで大丈夫です。ソフィアいや、根岸彰子さん。なにか聞きたいことはありますか?』

 

『ーー』

 

え。ガン無視か。私の方は聞きたいこと色々あるんだけど。

なんで吸血鬼なのに人族の領土で普通に暮らせてるのかとか、その目で見る世界はどんな色に見えるかとか。

そんな当たり前なことだって私は聞きたい。

 

 

なんたって私は今当たり前じゃないし。蜘蛛だし。

 

 

『自己俯瞰えらい。ならば自分が今どんな状態で相手に話しかけてるかわかってるな?』

『うん。私は蜘蛛で、吸血鬼の赤んーー』

 

 

あ、そりゃビビるわ!私自己紹介してないじゃん。自身よりでかい蜘蛛が話しかけてきて警戒しないとかそれこそありえんわ。

実際私が根岸さんの立場だったらめちゃくちゃ警戒するはずだ。

 

 

人間に囲まれた場所に住んでる奴なんて、ある程度は頼って生きること許されてるだろうしね。

その分自分に甘いし世の中舐めてるはず。

少なくとも人外の私よりは幸せに暮らせてるでしょ。てな訳で、ビビりますよねー。

 

 

『あ、私は佐野蒼生です。覚えているか……はわかりませんが、別に覚えてなくても大丈夫です。クラスメイトだった奴っていう認識でも構いません。あのずっとゲームやってた奴。わかります?』

 

『なんで男から女になってるのかわからない。でも構わないで。私はもう根岸彰子としても生きてないし、リホ子としても生きてない。ただ、ソフィアとしてこの世界の家族のもとで暮らしてるの。だから、もういい』

 

 

なんか勘違いしてるなこの子。

私が話しかけた理由、てかこの子を呼んだ理由として根本にあるのはソフィアとしてこの世界の家族のもとで暮らせないだろうなっていう観測からなんだけど。

そもそも実際何もなく暮らせるはずなら私がわざわざ呼びつける必要ないじゃないか。

 

 

ぱっと見た目で一般人じゃないってわかるからこちとらわざわざ呼びつけてるんだよ、吸血鬼、根岸彰子。

神様なめんな。

 

 

お前のただの平和妄想なんて、一瞬でぶち壊せるの。

そもそも平和じゃないのに平和ボケしようとしてるのなんてただの現実逃避。孤独は確かに人を狂わせる。だけど私は乗り越えた。乗り越えることは出来る。

 

 

だから、乗り越えられないのは怠惰だ。

 

 

 

『お前、言いたいことなら言っていいわけじゃねえの、わかってるよな?異世界に転移する前からそんなに性格悪かったか?』

『ごめん。私と似たところがあって、つい腹が立った』

 

『そうか。ま、どうでもいいんだが、それ以上心汚すなよ。かえってこちらが辛くなる』

 

電脳の言うことにも一理ある。

いくら電脳が優秀なスキルであっても、スキルの域から出ることはない。

だから吸収したはずの私の並列意思からも少なからず影響を受けることになる。私の心が虐殺に動けば電脳の意思も虐殺に傾く。

電脳としては私に意識的に汚染されすぎるのを防ぐために今みたいに歯止めを掛けたんだと思う。

 

本当の彼の仕組みは彼しかわからないだろうけど。

 

 

『お前はやっかんでるだけっていうのも大きくあるからな?お前、コイツのこと好きじゃあねぇだろ?』

『うん』

『ならそんな特別視しなくていいだろうが。地球出身だからってことで気にしてんのか?』

『うん』

『はーあ、めんどくせ』

 

 

私も考えなきゃいけないのかな。

クラスメイトたちに関してどうするか。

異世界人とどう付き合っていくか。

 

 

まぁ、ひとまずは助ける気でいる。

それも踏まえた上で考えてもやっぱりソフィアはほっとくべきなのか。

今幸せならそれでいいのかもしれない。

私がやることは確かに独りよがりだし、なにより今の彼女に出来ることはない。

 

 

なら、今はなにも考えずに幸せを享受しているのでもいいじゃないか。

いずれなにが起きるとしても。

戦力としては彼女がいなくても十分なんだし。

 

 

なにか起こるまで、彼女は彼女で私は私だ。






現実は現実で現実に違いない



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65 脅威であり最愛であり

あの後、領主さんを砦から追い出したけどまだやることが決まってない。

てか話してた間に不味い連絡が娘から来てる。

 

『『マジか』』

 

白、調査隊の一行を抹殺したらしい。1人じゃなくて一行。そしてついたあだ名が迷宮の悪夢。

マジかー。

 

 

白がここまでバンパカやっちゃうと、私の身の振り方も考えなきゃいけなくなる。

この街では蜘蛛は神獣だけど他の土地ではそうはいかないかもしれないから。

最悪、蜘蛛は虐殺すべきという発想に転換してしまう。

 

 

これを防ぐのに私が取れる手段は二つ。

一つ目に、私がさまざまな街を歩き回ることで白の悪い噂が広がる以上に私のいい噂を広める。

こうすれば手間はかかるけどなんとか鎮火できるだろう。

 

二つ目に、私がこの街に敢えて留まった上で人を救い続ける。

こっちは手間があまりかからないけど、人族の情報網に大きく依存することになる。

 

 

うーむ。私としてはあまり移動したくない。

というのも、実はアースたちをさまざまな場所にもう送り込んでるんだよね。体長もタランチュラくらいだしステータスバケモンの爆弾とは夢にも思われないから工作員として地味に優秀。

人族に化けれないのが結構痛いけど。

 

 

とまあ、結局のところあいつらを様々な場所に送り込むことで電脳にデータをとらせてる。それぞれのアースの動き方とかから地形がわかったりするらしい。

数百匹のデータを全てまとめて一つの地球儀にできる電脳って、改めて考えると訳わからない存在だと思う。実際それで地形図が完成していってるわけだし。

 

 

私が動き回ることになると人との関わりが否が応でも増えてしまう。人との関わりが増えれば翻訳に電脳のリソースがある程度削がれるしなにより咄嗟な行動が制限される。しかも言語解析も遅れるし、コミュニケーションに電脳のリソースを分けたくない。何より白が大量虐殺始めても止められない状況とかになると流石に不味い。

うーん、やっぱり一つの街で安定させるのが安パイかな。

この街にずっといれば信頼もされるはずだし、いざという時に咄嗟に転移しても理解が得やすそう。

 

 

地味にあいつの吸血鬼のスキルについても知りたいことがあるしね。

あとこの街結構デカいし、いくら中世といっても情報発信力は十分あるはずだから居座っても問題ないはずだ。

 

 

よし居座ろう。

私が死ぬと困るのは娘たちだから私のためじゃない。娘のためだ。

決して歩くのが面倒だからではない。断じてない。

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

私が移動を躊躇う理由はもう一つある。

それはこれだ。

 

 

《経験値が一定に達しました。個体名、テル・ライズがLV13からLV14になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『次元魔法LV7』が『次元魔法LV8』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『魔神法LV5』が『魔神法LV6』になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

 

レベリング。

これについてもなんだかんだで急がなければいけない。というのも、近いうちにクイーンと戦う予定だからだ。

 

 

魔王はまだ白と敵対しきってないーー、てかクイーンの異常に気づいてないのかもしれないけどいつ動き出すかわからない。そして白は白で今のステータスは魔王に太刀打ちできないもののはず。

こうなると、魔王が近づいてきてヘマすると白死ぬんだよね。大魔王からは逃げられないも発動するわけだし。

ここで白を助けるには私が魔王を叩きのめす必要がある。すると、私はオリジンまで進化しておいた方が良さそう。すると、経験値が足りない。水龍狩っても限度あるし。

 

 

てな感じで、クイーン狩るしかないんですわー。

運がいいごとに私のステータスはクイーンに近しいものになるんだよね。ならなおさら狩る以外はないでしょうが。

 

 

たく、出来の悪い親友を持つと大変だねぇ。せめて暴れないでくれればよかったんだけど。

実際暴れられちゃったからどうしようもないけど。

アースたちをばら撒いた目的も星の裏側にいるクイーンたちを狩るため。

場所が完全に特定できないと倒すための対策が取れないし、なにより私自身が転移できない。

 

 

 

Dも厄介な仕組みにするもんだ。

転移、行ったことない土地にもできるようにしてくれれば良かったのに。

そのせいで()()()()()()()()()して行けるようにしなきゃダメだった。

結局周りの地形がわかれば飛べるように調整はしたけど出来なきゃどうすりゃ良かったのよ。

まあ出来たからいいけど。

 

 

さんざんシステム外行動やら攻撃やら繰り返してるからね。しかも多方面からさまざまな手段で。

1年前なら警戒心まだあったかもしれないけど案外襲ってこないじゃん。

警戒してた私が馬鹿みたいだ。

 

 

あーあ、水龍狩りも最近は効率落ちてきてるし。

1日に1、2レベくらいしか上がらないからログインボーナスみたいになってる。

まあそこは私が結構な時間街にいるのもあるかもしれないけどさ?

とにかく、時間無いんよ。

 




『テル・ライズ Lv14 名前 青
               佐野蒼生
 HP:19876/19876(緑) +1700(詳細)
 MP:25784/25784(青) +1700(詳細)
 SP:13966/13966(黄)(詳細)
   :13966/13966(赤)+2000(詳細)
 ステータス
 平均攻撃能力17769(詳細)
 平均防御能力16736(詳細)
 平均魔法能力20032(詳細)
 平均抵抗能力20032(詳細)
 平均速度能力18899(詳細)
 「HP大吸収LV8」「HP高速回復LV9」「魔導の極み」「魔神法LV6」「魔力付与LV10」「魔法付与LV4」「大魔力撃LV1」「SP高速回復LV5」「SP消費大緩和LV5」「瞬間速度大強化LV3」「破壊大強化LV4」「斬撃大強化LV4」「貫通大強化LV4」「衝撃大強化LV4」「状態異常大強化LV5」「闘神法LV2」「気力付与LV9」「神龍力LV3」「龍結界LV5」「猛毒攻撃LV10」「強麻痺攻撃LV10」「腐蝕攻撃LV4」「外道攻撃LV7」「毒合成LV10」「薬合成LV10」「糸の天才LV10」「鉄壁LV1」「神織糸」「操糸LV10」「投擲LV10」「射出LV10」「空間機動LV10」「眷属支配LV10」「集中LV10」「思考超加速LV1」「未来視LV1」「並列意思LV7」「命中LV10」「回避LV10」「確率大補正LV5」「隠密LV10」「隠蔽LV1」「無音LV10」「無臭LV1」「帝王」「断罪」「奈落」「退廃」「不死」「カミゴロシLV5」「外道魔法LV8」「電撃付与Lv10」「雷付与LV10」「雷光付与LV3」「飽食LV9」「暗視LV10」「視覚領域拡張LV2」「予見LV1」「外道魔法LV10」「火魔法LV10」「火炎魔法LV2」「水魔法LV10」「水流魔法LV1」「風魔法LV10」「暴風魔法LV1」「土魔法LV10」「大地魔法LV3」「電気魔法LV10」「雷魔法LV10」「雷光魔法LV6」「光魔法LV10」「聖光魔法LV1」「影魔法LV10」「闇魔法LV10」「暗黒魔法LV5」「毒魔法LV10」「治癒魔法LV10」「空間魔法LV10」「次元魔法LV8」「深淵魔法LV10」「死音LV3」「無限LV8」「傲慢」「激怒Lv1」「飽食LV10」「魅了LV9」「賢姫LV8」「妖姫」「電脳」「破壊大耐性LV4」「打撃無効」「斬撃大耐性LV4」「貫通大耐性LV4」「衝撃大耐性LV4」「火炎耐性LV5」「水流耐性LV1」「暴風耐性LV1」「大地大耐性LV3」「雷光耐性LV6」「聖光耐性LV1」「暗黒耐性LV5」「重大耐性LV1」「状態異常無効」「酸大耐性LV3」「腐蝕大耐性LV2」「外道無効」「恐怖大耐性LV1」「苦痛無効」「痛覚大耐性LV7」「気絶耐性LV6」「暗視LV10」「千里眼LV9」「五感大強化LV10」「神性拡張領域LV8」「天命LV10」「天動LV9」「富天LV9」「剛毅LV10」「城塞LV10」「韋駄天LV9」「強化産卵LV10」「小型化LV10」「共生LV9」「清浄LV1」「禁忌LV10」「n%I=W」
 スキルポイント2900
 称号 
 「悪食」「血縁喰ライ」「魔物殺し」「魔物の殺戮者」「竜殺し」「龍殺し」「毒術師」「糸使い」「大感染」「オリジン」「傲慢の支配者」「電脳の支配者」「恐怖を齎す者」「究明者」「暗殺者」「覇者」「率いるもの」「竜の殺戮者」「竜の天災」「龍の殺戮者」「王」』




『賢姫:Lv1 ポケモン型魔物使役
    
    Lv2 使役魔物成長補正
   
    Lv3 ポケモン大量発生
    
    Lv4 魔法大強化

    LV5 卵品種改良

    LV6 眷族召喚(ポケモン型魔物に限る)

    LV7 賢姫改造

    LV8 ポケモン型魔物弱操作(眷族でないものを含む)』


賢姫改造+電脳=スキルの連鎖、および場所の連鎖(1個体が訪問済み、かつ電脳の所持で転移可能)(1個体がスキルを獲得した際、電脳はスキルの解析可能)


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66 キレた!マザーがキレた!




主人公の性格悪い()




いやー、あれからしばらく経ったけど面白いねえ。

最近起きたこととしては白がまた虐殺をして、そしてマザーがキレた。

 

 

白、調査隊の生き残った奴らにマーキングしてたみたい。それでそいつらを泳がして無事地上に到達したらしい。

エルロー大迷宮広いからまあわかるしすごい合理的じゃないかな。

 

 

ここまではいいんだよ。そう、ここまでみたいに何もせず静かに外に出てくれれば。

調査隊の人は殺しまくったけどせいぜい探検隊だし。死ぬこと覚悟してもらわなきゃ困るし、何より目撃者少ないし。

 

 

ただ迷宮の入り口の奴らを殺すのはやめて欲しかったかなー?確かに真っ向から出るのは面倒くさかったよ?

だけどさ、私さ、上に脱出したよね?私が通った後、上に穴空いてたはずだよ?

埋めてないし。

 

 

『おまえさぁ、白は小型化出来ないからな?少なくともあの小さな穴は通れないかんな』

『あー、たしかに。それはそうだね。だけどさ、広げれば良くなかった?最悪私の娘に通してくれたなら道開通させたし、細い道があったってことはそこ広げるだけでよかったじゃん』

『それはそうだな』

 

 

ま、まあ、もうどうしようもないからね?起きちゃったことだし、マジでどうしようもないから。

黙って静かに行動してれば私も嬉しかったんだよ。

黙って行動してれば私の計画も問題なく動いたのに、まさか魔王と同じレベルで掻き回してくるとは。

白とDそっくりだな。タチ悪。

 

 

てか今思い出したけどギュリも同じこと言ってたんだよね。静かに行動してくれ、そうすれば世界は落ち着くって。

ギュリも実際は何か考えてたっぽいし。

 

 

私がなにも考えてなかっただけでギュリも考えてたのかな。

世界を救う方法とか、平和的に今の大惨事を回避する方法について。

ギュリのそんなアイデアとかあったとして、私が踏み躙ってたら嫌だなー。

実際私はなにも考えてなかったしギュリは才能がどうとか言ってたからその可能性も否定出来ない。

実際は才能なんてもんじゃなくて、馬鹿げた天賦の力なんだけど。

 

 

申し訳ないことしたのかもしれないなぁ……。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

よし!

ウジウジ言っててもしょうがない!だってほっといても状況悪くなるし!

まさかマザーキレると思ってなかったし!

 

 

マザーがキレたのには2つの理由がある。

ひとつ目には度重なる白のシステム外攻撃。地味にマザーの精神を削り続けてた結果、ついにマザーが本腰入れて調べてしまった。それで多分白が暴れてることがバレた。

ふたつ目に白が洞窟の外に出たこと。私が洞窟の外に出た時は認識阻害とか娘を使ったりでマザーレーダーを誤魔化してたからなー。白は子孫も残さずに単独で外に出たから、マザーレーダーに感知されちゃったんだろう。

で、こんな感じでマザーがキレた。あくまで電脳の推測によるものだけど大体合っているんじゃないかな。私自身も白から情報を得ているし納得も出来るから。

 

 

うーむ。

私が楽観視できてる理由でもあるんだけどキレた所でそこまでヤバくなさそうなんだよね。

マザーがキレて実際に白に差し向けてきた刺客はアーク一体にグレーター三体。あとその他雑魚多数。

エデ・ザイネの時の白ならヤバかったかも知れないけどあいにくザナ・ホロワについ先日進化したばっかり。進化したのはちょうど調査隊を狩り倒した時か。

 

 

進化してたからかおもちゃ感覚でなぶり倒してたね。

ステータスは私の半分しかないはずなのにようやりおる。

 

 

 

 

 

うーん、でもなぁ。

なんか引っ掛かるんだよなぁ。

マザーそんな馬鹿かな?

白への刺客の軍隊、見掛け倒し感あったの正直否めない。

雑魚いっぱいであれ経験値でしょ。

 

 

腐っても何千年か生きてる生物があんな馬鹿な真似するかなぁ?

白に精神削られてるのもあるのかもしれないけどそれで短気になってたならそれこそマザー自体が襲ってこない?

やっぱ頭いいのかも。

頭よかった所で、不死のスキル持ってる白なら早々死なんと思うしマザー自身が凸らないと制圧出来ないだろうけどね。

ま、経過観察だ。

 

 

ーーーーーーー

 

白について、私も対策立てた方がいいんだろうか。

というのも迷宮にいた時点から私の娘たちの一部が殺されて経験値となってる。

別に襲っていいとは言ったけど本当に娘を殺してくるとは思わないじゃん。

アークと生物としての序列は同じだから経験値としていいんだろうね。

娘たちは転移を駆使して逃げてもらえばいいか。最悪経験値になっても白は育つから、私にとっても後腐れはない。

なにより食物連鎖だから我慢してね。

世界って残酷だから。

 

 

 

街の壁の外で少しログハウス作って快適に過ごしてる私がいうのもあれだけど。

私だって暇じゃないから子供たちに家作らせたし。

私はログハウス作るほど暇あった訳じゃないし。

 

 

ただ、卵の配布とか怪我人の治療とかも娘にやらせてて、流石に仕事するべきかなって思ってる。

それも激重の。

 

 

 

仕事場はこの星の裏側。

それ、クイーンタラテクトの討伐って言うんですけど……。









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W4 いつの間にかやべえやつおるやんけ






わたしは、エルロー大迷宮を脱出した。

マジマジのマジで。わたし自身こんな上手くいくとは思ってなかった。

まさかマーキング一発で外に出れるとはねー。

楽勝でしたよ楽勝。

 

 

本当に外最高。 

これ地味に重要なんだけど、まず色がちゃんと見える。

色が見えれば味も変わるし何より果物とか見つけやすい。

人間もいっぱいいるから遊び回ってもいざとなってもリカバー可能。

人間のなにがいいかって?

そりゃ経験値ですよ。あいつら一人当たり竜レベルで多いんだぞ。

ウハウハですよウハウハ。

経験値欲しくなったら狩ればいいんですから。

 

 

ただあんま狩りすぎるのも良くないと思う。

人だったせいで気持ちとかわかっちゃうし数に限度がある。

だから悪いやつらだけ狩ればいいかな。

 

 

盗賊とか、盗人とか。

悪い奴なら殺しても後腐れないしみんなそうなわけじゃないから人減りすぎないでしょ。

減ったらまあ、みんな盗人ってことで。

 

 

ただ気になることもある。

なんで青あんなにレベル上がってるん?こっちレベル4なのにあいつ20だぞ。

われ迷宮の下層にずっといたんだぞ。

 

 

諸君はわたしがサボったのかと思うかもしれない。

だが断じて違う!

わたしはコツコツと下層で経験値を稼ぎ続けていたのだ!

 

 

で、なんで差が生まれたん?

言っちゃえば青ずっと外いたし経験値獲得してないはずなんだけど。

おかしくない?

あいつ人殺しはしない主義だったはずだしそうでもなければ別行動なんてしてない。

今頃2人で街に極大魔法ぶっ放してたはずだ。

 

 

またお得意のシステムの合間縫って悪いことしてるのかな?

ほんと悪いやつだ、今日は一日中共生つけて張ってやる。

 

 

わたしが経験値欲しいから張ってるのかって?

張って悪かったな。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

わたし自身追われてる身だかんねー。

というのもマザーがキレたからね。

まだ問題はない。

アークだって返り討ちにしたしマザー自身が突っ込んできてるわけじゃないから。

だけどなんか嫌な予感がする。

わたしの嫌な予感は青の思考以上に当たるし今回のも当たる気がする。

 

 

青からもらった情報を聴くと魔王はクイーンタラテクトを眷族支配で操っている線が濃厚らしい。

そしてわたしがマザーに支配されてるのも多分眷族支配なんですよ。

 

 

これ、実はマザーから魔王に情報行くんじゃね?

私が繋げられてるんだし情報共有ぐらいは出来る線が濃厚。

しかもマザーと魔王はまだ繋がって無いけどいざ繋がったらそれなりに不味い。

 

 

魔王さんアクティブだから比喩じゃなく飛んでくるかも。

最悪魔王にバレたら転移連打で諦めてもらうまで逃げるけどね。

今のところは魔王転移出来ないらしいからバレたら一気に警戒レベル高めるんでいいか。

魔王にヤバい動きあったら教えてって青に言ってあるしその点は大丈夫だろう。

 

 

でもこれからどうしようかなー。

近くの街には青がいるし青がいなくなるまでは他の場所にいようかなって思ってる。

一緒のところにいた所でって感じだしね。

 

 

もともと別れた理由は意見の不一致からだ。

形式的にはわたしが逃げた形になったけれど、あのまま生活していたら青のほうが逃げていたと思う。

事実わたしは人も狩るつもりだったしそこまでいけば青はいつのまにか居なくなってたはず。

ま、結果論だけどわたしたちは間違ってなかったってことよ。

 

 

地味に青の娘のはずのアースも狩ってたからねー。

アイツら知能は高いけどその分経験が未熟だから狩りやすいんだもん。

しかもそれで倒したら竜並みに経験値手に入るとかいう神仕様。

なんだかんだ2回くらい死にかけたのを除けばもっと神仕様だった。

 

 

エデ・ザイネの時のわたしにはキツい相手に変わりなかったからね。

普通に人並みの知力で嵌められたらわたし負けるし。

死にかけたのを除いても危なかったのは無数にあった。

 

 

ちなみに死にかけた時にやらかしたのはこんな感じだった。

あの時、わたしは1匹のアースエレテクトを追っていた。

追いかけながら闇魔法を撃ちまくって結構削れてた。

だけどあいつは壁際に逃げた。

自分から壁際に逃げるとは、って思ったからわたしも気になって叡智使ったんよ。

 

 

でも叡智ではそこは壁ではないって出た。

あれって思ったから探知で地形を確認した。

次の瞬間には無くなっている視界。

そして同時にどんどん減っていく赤いゲージ。

 

 

もう訳がわからなかったからなりふり構わず目の前に向かって暗黒弾をぶちかました。

ただ、確かに手応えはあったんだけど視界が晴れた時にはなにも残っていなかったのだ。

 

 

 

 

 

アイツらヤバくない?強さ狂ってるよね?

生まれて一年目のやつがあんな強さ持ってるのおかしくない?

わたしが言うのもあれだけどさ。

 

 

わたしを抹殺しかけてたのは腐蝕攻撃だろうし結構削ってたから追ってたやつは死んだだろうけどあいつら自体は少なくとも1000体くらいいると思うんだよね。

青が産んだやつだけじゃなくて青が産んだやつの子供達もアースエレテクトまで進化してるだろうし。

言っちゃえば子供たちの方が生活的に卵産みまくってたはずだし多く見積もったら5000体くらいいるのかも。

何あの下層。

ポケモンだっけ?みたいな生命体も順調に増えてるっぽいからこれすぐに元々いたやつら滅ぶんじゃないの?

グレーターまでは完全に餌にされてるしアークタラテクトも栄養源にされて寄生中。

倒したアラバからも大量のアースが逃げ出してたから龍の周りにも群がってると思われる。

 

 

アノグラッチっていうモンスター猿も寄生には反応しないみたいだしなー。

あいつら寄生に反応しないから絶好の栄養源にされてるんだよね。

1匹の猿に10匹くらいのデトロエレテクト群がって寄生してた時には声あげそうになったわ。

生殺与奪の権バッチバチに握ってた、あれ。

 

 

でもいいこともあったっぽい。

HP高速再生みんな持ってるわアラバもわけわからん超速再生なんて持ってたわで案外寄生の対象にとってもいいことなのかもしれん。

実際怠惰でSPを削り切らなきゃアラバを殺せなかったわけだし。

怠惰という神スキルに乾杯。

 

 

だがもう関係ない!

わたしはもう地上にいるのだ!

わけわからん生物が増え始めたカオスな下層とはおさらばだ!

 

 

 

カオスの原因の一つ地上にいるんすけどね。

そのカオスの原因、今街全体にLV1の治癒魔法ぶっ放し続けてるっぽいし。

街全体に治癒魔法ぶっ放し続けることで消毒とか色々やばくないか?

これこそ異世界ファンタジー設定のやつやん。

街が汚くない理由その1のやつ。

 

 

 

考えたら平均ステータス20000のやつが5000のやつを数千体従えてるんよな。

これ人類だいじょうぶ?

わたし自身が人族のことクズどもと思ってるけど、流石に気の毒だよ?

頑張れ人類!負けるな人類!媚びとけ人類!

 

 

 

魔王も頑張れ!クイーンもがんばれ!

なんならマザーも頑張ってくれ。

いやわたしがぶっ倒すから頑張って耐えて?

アースたちがきたとしても、ね?

 

 

 

まあ虫さん下層にいるし地上に出れば安泰なんですけどね。

空も綺麗だし私は果物探しながらどっかしらへぶらぶら進むのだ!

ふははは、わたしの快進撃は終わらないぞ!

待ってろ世界!

 

 

 

 

 

あ、リンゴに黄色い蜘蛛おる。








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67 魔雷大戦① 開戦の火蓋






私がやらせた事だけど、とうとう新たな迷宮のもとにアースがたどり着いてしまった。

まあ納得はできる。

2匹ペアで互いにおぶり合いながらめちゃくちゃ走ってもらったからね。

 

 

いくら場所が想像できたとは言っても星の裏側まで走らせるのは不安があった。

まずは食糧的な問題。

互いに卵を産んでも間に合わないかもって思ったけどギリ間に合ったようでよかった。

 

 

次に魔王にバレないかって問題。

うんバレなかった。

ヨシ!

結果論だけどほんとにバレてないみたいだから大丈夫だ。

 

 

最後に人族にもバレないかっていう問題。

バレたところで神の使徒とかって私が熱弁すればなんとかなるのかもしれない。

ただ蜘蛛が超高速で走り続けるのはどう考えても気味が悪いでしょ。

流石に気づかれないにこしたことは無い。

 

 

ただ転移を使って覗いてみても迷宮がある土地には人族が見つからない。

アースが通ってきた道を確認しても人族が全くいないのには変わりないしなんなんだろう。

まるでさっぱり1からやり直して星を作ってるみたいな感じで気持ち悪いな。

遠くの方にはクレーターみたいなのが見えるし何か関係があるのかも。

 

 

どうせ最高神サマが関わってるんでしょうねぇ。

あの人なんだかんだで邪神っぽいし。

Dの成すことについても縛ってそうだからろくな存在ではなさそうなんだよなぁ。

 

 

いいや。さっさとクイーン倒してレベルアップしていこう。

別にステータスが勝ってるかはわからないけど、生物種としてのランクは同じなんだしいけるでしょ。

最悪やばかったら転移で逃げればいいし。

大魔王のスキルは上位種でないと無理だからクイーン覚えんし問題ない。

 

 

じゃ、転移!

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

ヒュンと迷宮の入り口までワープするとともに、走ってくれた娘たちに塩を渡して帰還させる。

蜘蛛だから汗はかかないかもしれないけど労って損はないはず。

人なら水分と塩取らないと死ぬし。

水分は自分の卵から取ってもらおう。

 

 

私はパックリと口を開ける巨大な洞窟の入り口に手をかがげる。

鑑定!

 

 

 

 

『フェクト大迷宮』

 

 

 

 

マジか。

しっかり大迷宮なのかい!

てっきり迷宮だと思ってました、畜生!

 

 

待て待て待て。流石にこれは撤退案件か?

ただの迷宮なら何日か探検してればクイーンにたどり着けるだろうけど大迷宮はまずい。

いくら私がどんな魔物も瞬殺できる力量があると言っても踏破に馬鹿みたいな時間がかかる。

そもそもの大きさが日本近くあるんだよ!

 

 

 

『電脳、何か方法ある?』

『あー、ない訳じゃねぇ。プランとしては二つあるが聞いておくか?』

『お願い』

 

 

『オッケー。

 一つ目は大探知を使う。

 まあ言っちまえば探知なんだが、こちとらマップ超把握の叡智は持ってねぇかんな。

 代わりみたいなもんだと思え』

『じゃあなんで出来んだ……?』

『おっと聞いていくか?

 仕組みとしては電磁誘導を利用した磁場の強さとか位相の変化量を測定して生命体の活動電位の大き』

『ストップ。要は私が電気使える蜘蛛だから出来んでしょ?』

『あー正解だ』

 

 

『二つ目はお前の秘策の奴らを解き放つ。

 こっちは色々時間かかるしクイーンの発見まで最悪10日かかると思うが、その分大迷宮のマップはかなりしっかり作れるな』

『うーん、でもそれ回収にものすごい時間かからない?』

『かかるだろうな。最悪一ヶ月くらい』

『いやそれはまずいって。私があいつら育ててる理由魔王処理のための秘策だよ?

 一ヶ月以内に魔王が襲ってくる可能性だって十分あるんだしそれは無理だ。

 最初のプランにしよう』

 

 

『わかった。じゃ、やるか』

『うん。早めに終わらせよう』

 

 

 

『『大探知!』』

 

 

すごい。

なんだこれは。

美しい。

 

 

私が生み出す磁場によって解析されたその空間は電脳の力によって一つの立体の地図に変化していく。

中の色がわかる訳じゃないけど、頭の中に構成される透明な地図は青い空間の中を少しずつ進んでいく。

まるで土の中に水が染み込んでいくように少しずつ末端が現れて、閉ざされて、また新しい立体が現れる。

現れた立体はそこからも流れるように広がっていって青い空間の中に浮かび上がっていく。

 

 

なんだこの、美しい営みは。

空間の、星の、解析の美しさは、ここまでのものなのか。

娘たちが解析して出来た地図とはまた違う。

色も正確さもなく、ただ形だけを映し出した立体地図。

こんなにも美しくて、こんなに壮大な世界がこんなにあるのか。

私の真下に。

 

 

『おい、クイーン見つかったぞ。探知終了だ』

 

 

あ、消えた。

急に消えたけど、うー、しょうがない!

気持ち切り替えて仕事しよう!

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

今この大迷宮に潜ってみて驚いたのは、ここでもエルロー大迷宮みたいな生態系がきちんとあること。

カエルが闊歩していたりそのカエルを食べる蛇がいたり。

モンスターの見た目もほとんど変わらないし、上層にポケモンが全くいないのまで同じだ。

ただ全部、エルローっていう名前じゃなくてカオスって名前になってるけどね。

 

 

 

クイーンがいるのはここの下層らしい。

エルロー大迷宮と同じように上層と下層を行き来しているみたいだけど基本的に下層に住んでいる感じっぽい。

アークとかがいる巨大空間も下層にあるしね。

いざとなったら上にブレス出して地上に出るんだろうけど。

 

 

クイーン以外にはアークが20体くらいにグレーターが50体くらいかな。

あとはよくわからん人型のブツがあるけど糸でできたおもちゃか?

とりあえず魔王でも人化した蜘蛛でもないしクイーンよりは弱い。

 

 

 

 

 

 

 

 

『電脳。他の仕事は事が終わるまでしなくていい。ぶちかます』

『了解。さっさと終わらすぞ』

 

 

 

戦略?

そんなもんは一ヶ月前から考えてある。

ステータス?

そんなもんはずっと育ててきた。

私は止まることことなく、成長し続けている。

 

 

やろうぜクイーン。

一世一代の大戦を。

 

 

 

 

 

 

私はクイーンのいる空間の真上に立ち、大量の魔法陣を形成した。

 

 

『深淵魔法 LV8 暴虐地獄』

 

途端、天井に展開された巨大な魔法陣が震え出す。

まるでギロチンの刃のような形で顕現した闇が幾重にも重なって、暴風のような巨大なかまいたちを纏い、轟音をたてながらゆっくりと地面を削り落としていく。

削られた地面は闇に沈んだり、逆に腐蝕のように塵になって消滅していく。

 

 

深淵魔法レベル8暴虐地獄。

暴力に狂い咲く地獄の、闇の最上位魔法。

全てを平等に砕き、潰し、永遠に伸びていくドリルは一定の速度で迷宮を掘り進む。

 

 

 

私が上層から出したその魔法は、そのまま最下層まで迷宮をぶち破って静かに蒸発した。




『テル・ライズ Lv24 名前 青
                佐野蒼生
 HP:22882/22882(緑) +2000(詳細)
 MP:27796/27784(青) +2000(詳細)
 SP:16966/16966(黄)(詳細)
   :16966/16966(赤)+2000(詳細)
 ステータス
 平均攻撃能力22532(詳細)
 平均防御能力23796(詳細)
 平均魔法能力27325(詳細)
 平均抵抗能力27363(詳細)
 平均速度能力24115(詳細)
 「HP超吸収LV2」「HP超速回復LV1」「魔導の極み」「魔神法LV8」「魔力付与LV10」「魔法付与LV6」「大魔力撃LV4」「SP高速回復LV7」「SP消費大緩和LV7」「瞬間速度大強化LV6」「破壊大強化LV6」「斬撃大強化LV6」「貫通大強化LV6」「衝撃大強化LV6」「状態異常大強化LV6」「闘神法LV4」「気力付与LV10」「技能付与LV1」「大気力撃LV2」「神龍力LV5」「龍結界LV7」「猛毒攻撃LV10」「強麻痺攻撃LV10」「腐蝕攻撃LV5」「外道攻撃LV9」「毒合成LV10」「薬合成LV10」「糸の天才LV10」「鉄壁LV2」「神織糸」「操糸LV10」「投擲LV10」「射出LV10」「空間機動LV10」「眷属支配LV10」「集中LV10」「思考超加速LV2」「未来視LV2」「並列意思LV8」「命中LV10」「回避LV10」「確率大補正LV5」「隠密LV10」「隠蔽LV2」「無音LV10」「無臭LV2」「帝王」「断罪」「奈落」「退廃」「不死」「カミゴロシLV7」「外道魔法LV9」「電撃付与Lv10」「雷付与LV10」「雷光付与LV8」「暗視LV10」「視覚領域拡張LV8」「外道魔法LV10」「火魔法LV10」「火炎魔法LV2」「水魔法LV10」「水流魔法LV4」「風魔法LV10」「暴風魔法LV4」「土魔法LV10」「大地魔法LV5」「電気魔法LV10」「雷魔法LV10」「雷光魔法LV8」「光魔法LV10」「聖光魔法LV2」「影魔法LV10」「闇魔法LV10」「暗黒魔法LV7」「毒魔法LV10」「治癒魔法LV10」「空間魔法LV10」「次元魔法LV9」「深淵魔法LV10」「死音LV5」「無限LV9」「傲慢」「激怒LV2」「飽食LV10」「魅了LV9」「賢姫LV8」「妖姫」「電脳」「破壊大耐性LV6」「打撃無効」「斬撃大耐性LV6」「貫通大耐性LV6」「衝撃大耐性LV6」「火炎耐性LV6」「水流耐性LV3」「暴風耐性LV3」「大地耐性LV4」「雷光耐性LV8」「聖光耐性LV2」「暗黒耐性LV7」「重大耐性LV3」「状態異常無効」「酸大耐性LV4」「腐蝕大耐性LV3」「外道無効」「恐怖大耐性LV2」「苦痛無効」「痛覚大耐性LV8」「気絶耐性LV7」「暗視LV10」「万里眼LV1」「五感大強化LV10」「神性拡張領域LV8」「天命LV10」「天動LV10」「富天LV9」「剛毅LV10」「城塞LV10」「韋駄天LV10」「強化産卵LV10」「小型化LV10」「共生LV9」「清浄LV3」「禁忌LV10」「n%I=W」
 スキルポイント5900
 称号 
 「悪食」「血縁喰ライ」「魔物殺し」「魔物の殺戮者」「竜殺し」「龍殺し」「毒術師」「糸使い」「大感染」「オリジン」「傲慢の支配者」「電脳の支配者」「恐怖を齎す者」「究明者」「暗殺者」「覇者」「率いるもの」「竜の殺戮者」「竜の天災」「龍の殺戮者」「王」』


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68 魔雷大戦② 先鋒


大地分け目(物理)の大いくさ。

新しい奴については後書きを参照してください


うん。

やっぱり効果は薄いか。

ほとんどの蜘蛛が上手く避けきってる。

 

というのも反逆地獄自体は万能な魔法ではない。

貫通力や破壊力が高いだけで触れなければ殺傷能力はないし、そもそもの魔法がすごいゆっくりしているし。

最悪天井から降りてきてるのを見てから逃げれば生まれたてでも避けられるんじゃないかな。

 

うんうん。

上がってきてる。

クイーンがもともと繋いでた穴からたくさんの蜘蛛たちが登ってるねぇ。

ただ、クイーン自身が登ってきてるわけじゃないから先鋒の人たちかな?

 

私も地上に転移して準備開始。

まずは賢姫でアースたちを15体ほど召喚。

ついでにマグマックだったものたちも10匹くらい召喚してみる。

 

 

おぅ……。

こいつらもデカくなってるな?

元々のサイズの5倍にまでなっとる。

もともと私の足の長さくらいだったはずなんだけど。

 

 

オリジンの個体なんて2mくらいあるんじゃないの?

てか、なんでこんなに大きくなってるのよ。

私が小さいの馬鹿みたいじゃないか。

 

「お前が小さいから悪いのだろうが!

 我は大きいから好き勝手できるのでな、人化するのを楽しみに待っていろ!

 フハハハハハ!」

 

しかもめっちゃ喋るじゃねーか。

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

「で、あんたはどうするの?甲羅トゲトゲカタツムリ」

「ああ?我に命令するのか?

 いい度胸だな」

「お前事実上私の眷族って扱いだからな?

 偉そうなこと言ってるけど立場的に私が上。

 素早さも攻撃力も耐久力に至っても私が上。

 いいね?」

「ふうむ、そんなことなどわかっている。

 大切なのは心だ心」

「ぶっ飛ばしてやろうか貴様」

 

そう言って胸を張るように身体を伸ばすカタツムリ。

こいつ、私以上にこの世界舐めてんじゃなかろうか。

しかもステータスも素早さを除けば平均的に10000近くある。

素早さステータスも3000あるしなんだよ竜以上に早い巻き貝って。

 

見た目もだいぶエグくなってる。

ナメクジの時には無かった甲羅を背負っていて、その甲羅も岩のトゲが生えていたりしてすごい豪華になって。

マグマの身体だけで十分殺傷能力あるのにトゲいるの?

空間機動も使えるらしいし、こいつじゃあカタツムリのくせして空飛べんのかよ。

く、腹立つけどどうやって飛ぶのかちょっと見てみたい。

 

一応獄炎魔法使えるらしいし。

こいつも一年ちょっとしか生きてないんだよな。

傲慢もないのにどうやってここまでスキル鍛えてるのよ。

 

 

『お前の使役魔物成長補正のせいだろうが』

え、何それ。

初めて聞いたんだけど。

 

 

『賢姫LV2の効果であっただろうが……。はぁ』

いやいやいや。

あったとしても絶対そんなの覚えてないって。

私スキル100個くらいは持ってるんだよ?

そのうちのスキルひとつの、さらにそのうちの一つのレベルの効果なんて覚えてないって。

それ電脳だから覚えてるんだよ。

そんな呆れた声みたいな出しても騙されんからな。

 

 

 

「おい、我を差し置いてなんか話してるな?

 アドバイスしてやるから言ってみろ」

 

マジでぶっ飛ばしてやろうか。

 

ーーーーーーーーー

 

結局私とコイツはペアを組むことになった。

ペアっていうか、なんかコイツ自身が強いから一緒に戦った方が生存率が大きく上がりそうなのよ。

獄炎魔法自体蜘蛛に対しては化け物みたいに強い上に、いつの間にか下層に移動して魔物狩りまくってたらしいからだ。

 

 

うん?

コイツ私の娘まさか狩ってた?

でもまさかコイツがねぇ。

ステータスは重戦車系だし娘なら逃げられてるはず。

 

 

「お前、まさか私の娘狩ってたりしてない?」

「い、いや、ま、まさかそんなことあるはずがなかろう!

 我はその娘とやらは断じて狩っとらん!

 そもそも娘狩ったら孫狩れなくなるだろうが!」

 

 

 

「うん?」

「あれ?」

 

 

ねえ、これ孫狩ってるよね。

『常習犯のセリフと見ていいんじゃね?

 これからの計画に支障はねーからオレ様は構わんけどな。

 てかマグマックの中でコイツだけ妙にレベル高いと思ってたけどそういうことか』

『いや、その、我はな、そ、そう!

 貴様の大切な娘の周りで外敵から守ってたのだ!

 この世界ステータス平均10000超える地龍もいるのだし協力は大切だろう!

 フ、フハハハハ!』

 

 

おい念話に割り込んでくるな。

コイツあとでシバこう。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

よし。

迷宮の入り口に陣取って戦闘の準備を整える。

出てくるのはアーク7体に糸人形1体。

あとはグレーター20体くらいと雑魚大量か。

クイーンはまだ下層にいるみたいだし、戦力の分散しちゃってるねぇ。

 

 

「我が全部倒していいのか?」

「いややめてよ?

 私も経験値欲しいしそのためにここまで来てんだから」

「もうすぐ来るし早い者勝ちでいいか?

 ただ奴らが迷宮から出てくるまでは待て。

 それが一番後腐れないだろう」

「あーないない。

 1匹も残らなくても文句言わないでよ?」

「我が言う訳なかろう。

 

 ほら、来たぞ」

 

 

探知でも大量の蜘蛛が上がってきているのが見える。

正直この処理は私一人、最悪でもこの変なカタツムリもいればいけるだろう。

まあアース15体出したのは過剰戦力だったと思うけどクイーンが出張ってきてないこと考えるとどうひっくり返るかわからないからねー。

アースとアークではアース勝てないはずだし。

 

まだ糸人形のステータスも判明してないからそこも警戒しないと。

クイーンより強いわけではなさそうだけど変なスキル持ってるかも。

絡め手はやりたいけどやられたくはない。

 

とりあえず弾幕張ればいいか。

私が大量の魔法陣を展開した瞬間、隣のカタツムリは殻を破った。

 

 

 

 

 

 

はあ?




マグマック……全身マグマに覆われたナメクジ。中層攻略の時にたくさん捕獲して放牧していた。

マグカルゴ……マグマックの進化後のポケモンで、カタツムリ。調べたら一発でわかるから気になる方は是非調べてほしい。

変なでかいカタツムリ……オリジン個体のマグカルゴ。コイツ自身は人化したいとは思っていないが、青を煽るためだけに獲得してもいいかなと思っている。謎に頭も回るが、これは下層で何かあったためのようだ。

オリジン個体……その種で最初に発生した個体。この個体が卵を産んでその種のポケモンが爆発的に増えている。また、オリジンという称号を持っている。称号のオリジンについては10話らへんを確認してほしい。


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69 魔雷大戦③ キング・オブ・三枚目

高評価、感想いただけると幸いです(最近、蜘蛛ですがなにかの小説が少なすぎて辛い)




 

 

からをやぶる、略称としては「からやぶ」という技がポケモンには存在する。

効果はというと、防御能力2つをダウンさせるかわりに物理攻撃力と魔法攻撃力と速度能力を2倍にするというものだ。

 

 

 

 

結論から言おう。

ぶっ壊れ技だ。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

あー。

そーゆーことね、完全に理解した。

マグマック系統ってからやぶ覚えたわ。

 

 

技として強すぎたからほとんどのポケモンが覚えないんだよなー。

というのも、攻撃性能が異常に上がるのに防御能力が言うほど落ちないんだもん。

もともと殻を持ったキャラって十分耐久力高いから下がっても言うほど問題にならんし。

 

 

で、隣のコイツはからやぶを覚えると。

流石にこの世界ではステータスの変化量控えめになってるけど十分ぶっ壊れてる。

10割上昇から7割上昇に変わったりしてるけど変わらんでしょこれ。

 

 

今の平均攻撃能力と平均魔法能力は私とほぼ同じだし。

なんなら平均攻撃能力は私を上回ってる。

そのかわり防御能力は7割くらいになってるけど、マジで関係ないやろ。

素早さも上がってるんだからその分避けられるだろうし。

てか、新しく出てきた殻ってどういう構造になっとるん?

 

 

 

『お?ボーっとしてんなら全部狩っちゃうからな?』

あん?

こちらこそ全部やったるわ。

 

 

 

 

いや待て、素早さ上げてるんだしコイツ絶対走ってくよな?

で、勝手に走って見えなくなるよな?

『そうだが?何か問題あるか?』

『いや名前教えて。わからんと別れた時に念話だるい』

『フハハハ、そういうことか!

 いいか、我の名はゼルギズ・フェクトガギアだ!

 よく覚えてけ、ではな!』

 

 

そのまま穴に向かって進んでいく爆速カタツムリ。

それを見ながら私は思った。

 

 

おいあいつ、名前負けしてんぞ。

 

 

 

 

 

ま、まぁ私のやるこったぁ決まってるし?

雷光魔法ぶっ放すだけだし?

よーし私、やっちゃうぞー!

 

魔法陣から大量の雷光槍を顕現させて、大迷宮の入り口に向かって発射。

気分はあのアニメのギルガメッシュだ。

 

おーおー、一気に削れてる。

流石にグレーターより下の奴らは瞬殺出来てるね。

グレーター自体もみるみる削れてるし。

 

でも様子を見ている限り、アークと糸人形はまだ中にいるままだ。

おそらく魔法の威力とか確認してるのかな?

絶対想定以上で泣きたいだろうけど。

 

ただ別に逃すわけないんですよねー。

というのも、どこぞの馬鹿が突っ込むので!

 

頑張れアーク共!

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

ゼルギズは爆速で地面を走る。

一般人が見れば、こんなカタツムリいてたまるかという感じであり、苦手な人が見たら見たら卒倒するに違いない。

ただこのカタツムリ、幾つもの点でただの虫とは言えない部分がある。

まずは全身にマグマを纏っていること。

この世界のマグマがいくら弱体化されていると言っても、人が触れれば瞬間的に死に至る。

つまりこの時点でこのカタツムリに触れれば死が確定しているのだ。

次に体長2メートルほどのサイズ。

質量が多ければ突進による純粋な破壊力も増大し、龍よりも速く走るゼルギズによるそれは現代の対戦車砲に匹敵する。

さらにマグマを纏っていることで貫通力も遥かに向上しており、この突進に耐えられる兵器及び防具は地球上に()()()()()

これを火が弱点であるアークタラテクトが食らうとどうなるかは言うまでもない。

 

次の瞬間、探知で様子を探っていたアークタラテクト2匹に円形の風穴が開けられた。

 

 

壁を滑るようにしながら速度を落とし、ゼルギズは残った5匹のアークタラテクトと糸人形を見渡して考える。

別にアークタラテクトはなんら気にしなくても素早さが勝っているし触れば勝てると踏んでいる。

ただ、後ろにいる糸人形に対しては見なかったことにしたいというのが本音だ。

というのもこの糸人形、パペットタラテクトというのだが少し特殊なのである。

ゼルギズが鑑定してみると中に微小な蜘蛛がいてそれが糸人形を操っていることがわかったのだ。

そのくせ人形を含めたステータスは平均10000を超えていて、しかも平均速度能力が負けている。

そして、殻を破るで防御のステータスが下がっている中、この火力の攻撃を受けるのは危ないという危機感も流石にゼルギズには残っている。

 

ただ幸運なことに、相手も相応にビビっているようだ。

触れられたら一瞬でその部位が消滅すると考えれば、ビビるのも当たり前だが。

だが別にゼルギズは殲滅を目的にしているわけでなく、なんなら遊んでいるという感じに近いので戦うつもりは全くない。

なにより、迷宮の外には10000程度なら即処理できる奴がいるのだからどう動かれても構わない。

なんならパペットタラテクトの狙いも外の奴なのだろうし、流石に少しくらいは経験値を分けてやらないと文句を言われかねないのだから、分けてやってもいいかなという考えもある。

そのため、あえてゼルギズは逃してやることにした。

 

 

マグマで出来た表皮を一時的に冷やし、固体へと色を変えていく。

その瞬間をパペットタラテクトは見逃すわけもなく、即座に横から外へ脱出しようと動く。

もちろんゼルギズも横に飛んで道を譲り外に出るよう促すと、そのまま疾風のように外へ飛び出していくパペットタラテクト。

それを見送ったのちに再びマグマで体表を覆い残り5体のアークタラテクトの前に立ち塞がる。

マグマに後退りするアークたちはもはやゼルギズの敵ではないと、その場にいる6体全てが理解している。

 

 

純粋で、一方的な狩りが始まった。








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70 魔雷大戦④ 洗練された死

高評価、感想よろしくお願いしますm(_ _)m


 

 

楽しいことになったとゼルギズは笑う。

まさか1匹もアークタラテクトを逃さなかったという喜びは大きい。

何しろ、今まではグレーターほどの個体ばっかり狩っていたので成長スピードが遅くなっていたのだ。

パペットタラテクトはしっかりと青に押しつけることは出来たし、本当に満足できる結果であると言えるだろう。

 

 

そんなことをゼルギズが思っていると、ふと上から背中に冷たいものが降ってきた。

これは、ゼルギズが来た瞬間にアークタラテクトが即座に作った毒の罠。

糸に染み込んだ毒が熱で糸が溶かされることで落ちる仕組みとなっており、普通の魔物なら即死級の罠である。

 

 

そして罠など全く警戒していなかったゼルギズは、一瞬思考が硬直したのち飛び退くがもう遅く、毒液が全身に降りかかる。

だがそれに対してHPはほとんど減らず、マグマの熱を上げることでその毒も蒸発させていく。

 

 

「は、マジか。頭良すぎないかこいつら。

 こりゃ舐めてたら死ぬ。

 さっさと殺るか」

 

 

そう愚痴を言いながら獄炎魔法で洞窟に炎を灯す。

そのまま斜線上にいた1匹のアークタラテクトを消し炭にするが、火力を上げる温度は決して緩めない。

 

 

そもそもゼルギズはこう言っているが、かなりの猛毒であり普通の知能の魔物ならコト切れていてもおかしくない。

だが彼は下層で鍛え続けていた。

下層で鍛えていたということが意味するのは、青の子供たちと遭遇していたということである。

そして当然寄生されていた。

もちろんゼルギズは寄生の危険性を理解している。

弱れば狩られるかもしれないし、ステータスが子供に敗北すれば狩られることも知っていた。

そうやって狩られている魔物を探知で山ほど見てきていたのだ。

ただこの男はそれ以上に馬鹿で、博打が好きだ。

危険なことをやってなお生き残ることを願う傲慢な博打。

しかし運が相応に良かったと、ゼルギズはほくそ笑む。

というのもゼルギズのステータスは周囲の蜘蛛を上回り続けたのだ。

青による魔物の成長補正とオリジンによる成長補正。

それを掛け合わせた上に、さらに青の孫を延々と狩り続けることによる経験値の大量獲得。

これによりステータスが急上昇し続け、生き延びることが出来たとゼルギズは思っているし、この経験は成功体験として鮮明に残っている。

 

 

 

 

実際は青がオリジンを狩らせないように眷族支配していただけなのだが、ゼルギズがそれに気づくことはない。

 

 

 

 

それでも獄炎はそんな事実とは関わらず火力を上げ続け、周囲のモノを焼き尽くす。

そして、そのままアークタラテクトたちは獄炎魔法の業火で灰となっていった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

青は考える。

視線の先にいるのは1匹のパペットタラテクト。

今しがた飛んできて、一発雷光弾を撃って吹っ飛ばしたものだ。

ただ見てみるとステータスは()()()()10000程度しかない。

なら大した強さではないし、適当に遊んでいいかと青は結論づけた。

なにより、クイーンタラテクトは未だ地中にいて出てくる気配もないのだから警戒も薄くていい。

ならば試したいことがあると、パペットタラテクトの胸に手を当てて集中する。

 

 

「電脳、後は頼むよ。

 システム外攻撃『破人』」

 

青の精神はパペットタラテクトを削り始める。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

パペットタラテクトはすっかりお手上げ状態だった。

もともと、巨大な深淵魔法を初手に放つような相手。

それが先制攻撃を仕掛けてきたわけで、対処できるはずがない。

なにより、戦闘開始時に地形に向かって深淵魔法を撃つような狂った奴は前例がないのだ。

それに加えてよくわからない力で鑑定も阻害され、ステータスもスキルもわかりやしない。

雷光魔法で吹っ飛ばされたことまで考慮して、勝っているわけがないということははっきりわかったが、クイーンタラテクトからの命令で逃げることも許されない。

もともと、確実性のための捨て駒でしかないというのは、パペットタラテクト本人が一番わかっていたが。

ならば課せられた仕事をこなすのみ。

あくまで蜘蛛は、世界を救うための一種の踏み台にしかすぎないのだから。

 

 

だがつぎの瞬間、その意識に違和感が生まれる。

まるで何者かがなにかを奪っているような。

ただ、それがわかっていても対処できない。

なにかが失われているのだろうが、どうすることもできない。

 

 

構わない。

捨て駒に変わりはなく役割の遂行にも支障はないと判断する。

どうせ全てが塵になるのだから、もう関係ない。

 

パペットタラテクトは静かに移動を開始する。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

青のステータスが徐々に上昇し始めるのを見て、電脳は安堵する。

どうやら上手くいったようだし今のところ問題もないし、帰ってくるのだけ気にすれば大丈夫だろう。

そう考えながら、パペットタラテクトと一定の距離を保つ。

 

破人とは、魂を削り取って殺していくシステム外攻撃である。

もともと白が行っているシステム外攻撃を参考にして理論上やってみたが、一発で成功させることが出来た。

だがもちろん白の攻撃と比べると、一長一短が存在する。

長所としては、眷族支配関係なく削れる点。

やろうと思えば龍のスキルやステータスを掠め取ることが出来、これは白には真似できない芸当であろう。

だがもちろん短所もあり、それは対象に触れる必要があるという点。

青の精神の移動にエネルギーを用いているために、行き帰り時には接触しないといけないのだ。

行きならまだしも、帰りも必要になるのが大問題。

というのも、最悪ステータスを奪い切るとどうなるかのシュミレートが出来ておらず、必ず生きているうちにもう一度遭遇しなければいけない。

今回は相手が弱いため完全にお試しだが。

 

 

 

 

ただ不安要素としては、未だに地下深くにいるクイーンタラテクト。

このままだとパペットタラテクトは勝てるわけがないのはわかっているはずなのに、なぜ来ないのだろうかと思案する。

ただ考えても理由は思い浮かばない。

いや思い浮かぶことはいくつかあるのだが、それらは全て想像に近しいものでもはや妄想でしかない。

 

だがここまで動きがないとなると考慮しなければならないのかもしれない。

そのためにも、今はパペットタラテクトからステータスを奪い続けなければ。

 

 

 

 

 

脳内に巨大なサイレンが頭に鳴り響く。

いつもの電脳であれば即座に対処できたであろう、外部からの緊急速報。

ただ今の電脳は青からの指示でこの戦闘以外になにも意識を向けておらず一瞬反応が遅れた。

この一瞬の隙を突いて、超粘着性の糸を絡めた6本の腕でパペットタラテクトが青の体を拘束する。

急いで青の精神体をタラテクトから回収し、爆雷で強化した脚で跳ね脱出を試みる。

だが、時すでに遅し。

 

 

 

頭以外の部位が、下から襲いくる巨大なブレスで一瞬にして消滅した。








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71 魔雷大戦⑤ 強者とはそれだけで尊き存在






まずい。

頭だけになって吹っ飛ばされながら、私は指令を出す。

対象は周囲の蜘蛛とゼルギズ。

上手くいけば即座に回収して貰えるだろうが、状況は非常にまずい。

 

 

まさか上層から掘った穴からブレスをぶっ放されるとは。

しかも、相当な知能があるみたいだ。

電脳の知能を持つ奴にこんな単純なブレスに当てるなんてことはそうそう出来ない。

そして少なくとも、私の知っている電脳はこんな落ち度のあることをしない。

 

 

『電脳!

 私がいない間に何があった?』

『白が許容超過のダメージを食らった。

 忍耐及び不死が発動したことの合図がここまで届いてる』

『白は生きてるんだよな?

 転移で助けに行かなきゃ!』

『大丈夫だ。

 不死で問題なく生きてるし、おそらく原因であるはずの魔王も離れていってる。

 深淵魔法を打ち込まれた形跡もないし、死なんだろう』

『魔王が白の生存に気づく可能性は?』

『限りなく低い。

 てかテメーの心配をしろ。

 下手すりゃあと1分でお陀仏だぞ!』

 

 

 

白が生きてるならまあよかった。

不死のスキルがなければもう死んでいたようだし、彼女もだいぶギリギリの橋を渡っている。

ここまで同時に攻撃されたなら、おそらく故意に仕組まれている。

完全にタイミングを合わされた。

白と私を同タイミングで狙い、私をキャパオーバーにして対処出来なくしようとしたんだろう。

おそらくパペットがが目標地点についたのが合図だったんだと思う。

となると、私と白が密接に関わり合っているのも知られているということだし、同時に高い連携能力があるということ。

本当に厄介だ。

 

 

だけどそんなこと考えてる暇はない。

クイーンはもう登ってきているし、体全部吹っ飛ばされたせいで魔法陣が安定して組めない。

もう逃げるための脚もないし、このままだとマジで死ぬ!

 

 

もういい。

やるだけやってやる!

私の持ってるもの最大限使って、お前を倒してやる!

 

 

だから、今は、誰か助けて。

ーーーーーーーーーー

 

 

 

ヤバい。

青が死ぬ。

青が死んだら世界は変わらない。

 

 

我が助けなければ。

何も変えられない。

なにも変わらない。

 

 

アイツは言っていた。

強者とはそれだけで尊き存在と。

我はそれを信じる。

 

 

奴は何も知らない我に全てを教えてくれた。

あの美しく、全てを見定めた龍のように我はなりたい。

だから、強くなり、我は全てを変える。

 

 

あのかの者が、奴の同胞を打ち破り世界を変革させてゆくように。

我が主である青が、愛に縛られながらそれを引きずり突っ走って生きるように。

我は本当の自由を生きたい。奴が言っていた世界を漫遊し、さまざまな奴と遊びたい。

さまざまな遊戯をしたい。

何者にも縛られることのない本当の自由が欲しい。

 

 

強さは正義だ。

強さを味方につけることで世界は変わり、我は変わる。

だから、助けなければ。

世界も、我をも強く変えてくれる青を助けなければ。

 

 

 

我は青に向かって突っ走る。

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

クイーンの移動速度が思ったよりも速い。

まさか、スキル込みとはいえあの巨体でここまで高速に動けるとは。

パペットタラテクトは私と一緒にブレスでやられて消し炭になったから今はもう気にする必要はないけど、あいつが元凶だった。

まさかあいつが移動してたの、私の地形破壊を利用するためだったとは。

まさかが多すぎるし、アドリブも多すぎる。

マジでクイーンの賢さを侮っていた。

 

 

「おい!きたぞ!

 てかどう回収すればいいんだよ!?

 我マグマだぞ!

 

 

 

 てかもうくっついてんじゃねーか!?」

 

 

 

こいつ、マジで口数多くてうるさいな。

私は牙から糸を出して殻に噛み付くようにしてくっつく。

殻の部分だけは岩だから、糸が溶けないんだよね。

 

 

「思ったより早かったね。

 眷族の中では忠誠心低い方だと思ってたから飛んできたの驚きだよ」

 

事実、瞬間速度強化を多用してきてるみたいだし、並大抵の気持ちでは出来ないことを駆使してこいつはここまでやって来ている。

並列意思もないのに。

 

「貴様は我より尊い存在だからな。

 我が守るのは当然のことと言える」

「うげー」

「な!?」

「いやまあね、なんとなく思っただけ。

 感謝だけはしとく。

 実際あんたがいなかったら危なかった」

「フハハハッ!

 

 生き残ってから言え、そんなことは!」

「それはそう。

 まずはアースたちと合流して。喰う」

 

「了解!

 突っ走るから捕まってろよ!」

 

地面から、私たちを狙うようにして飛び出す大量の極太ブレス。

さっきまではブレスなんて放ってなかったのに急に放ってきたな。

おそらく私がゼルギズにくっついたから、ブレスを撃っても見失わないとでも思ったのだろう。

 

 

危な!

ゼルギズの尻尾辺りを掠めるように飛んでくるブレス。

これ、普通にブレス避けるのもムズイっぽいな!?

 

「あんた平気!?」

「気にすんな!!

 肉体がいくら削られようと治癒魔法がある!

 お前も吸収する準備だけしとけ!」

「おけ!」

 

そうか、こいつ貝系だから再生力高いのか。

だからといっても危ないことに変わりはないし受けないことが最良なんだけど。

 

 

 

そして子供たちのところにたどり着く。

ここからは、私の時間との勝負だ。

娘に乗り移るために私は糸を放った。

そして、同時に離れていくゼルギズへ向かって叫ぶ。

 

 

 

「よし、行ってくる!」

「わかった!

 さっさと済ませてこい。

 我は足止めをしてくる」

 

 

うん。

ゼルギズありがとう。

 

 

すぐに終わらせるから、生き残れ。








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72 魔雷大戦⑥ 三者三様

高評価、感想くださるとモチベになります。





我は耐えなければならない。

相手取らねばならんのは、アーク13体にクイーン1体。

これを、青が回復し終えるまで持ち堪える。

おそらく時間にして、3分程度。

 

 

いけるか?

我は眷族召喚で大量に部下たちを呼び出す。

やれるかはわからない。

だが、やらねばならない。

 

 

目の前に、クイーンの巨体が完全に現れた。

 

 

「フハハハハッ!

 かかってこい、腐った神話よ!!」

 

全てのバフデバフと大量のマグマックたちを解き放ち、我は跳ぶ。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

あいつ、すごいな。

バフデバフが私に匹敵して多い。

しかもあいつが持ってるスキルに、最強スキルの無垢が入ってるしよっぽど選ばれた種族なんじゃないだろうか。

それ以上にこの世界に合った生物の私が言うのはなんだけど。

 

 

3匹目のアークのHPを吸い取りながら私は考える。

おそらく私はポケモンの中でもこの世界に最も適している種族だ。

私の種族、電気蜘蛛バチュルは殺傷能力をほとんど持たずに寄生しながら生きている。

寄生でエネルギーも電気も全て賄いながら生きていて、それで実際に生き残ることが出来る種族なのだ。

 

 

そんな生物が魂すらもエネルギーで構成された世界に放り込まれたらどうなるか。

それは簡単で、一瞬で他の生物を()()()()()()()()()()()

もちろん制約も大きくあるけど、考慮した上で壊れた存在だと思う。

ゲームでの性能と全く違うのはご愛嬌なのかも。

まあ、他のゲームでも設定と実際の性能違うこと多くあるから大丈夫か!

 

 

てか速く吸収しよう。

多分10匹殺れば経験値でレベルアップ出来る。

ただ、クイーンの動きが怪しい。

おそらくブレスが飛んでくるからマジで急ごう。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

電脳からの通達が来た。

どうやら、クイーンがブレスを飛ばすらしい。

 

 

それは流石に我でも対応できん。

てかヤバい。

我がやって来たのはクイーンの真上からマグマックを降らせるという物量作戦だ。

確かにこれは嫌がらせとして有効だったし、無垢も加えていたことで強制的に防御体勢を取らせることが出来た。

具体的にいえば、空間機動の足場を強制的に作らせたことなどだろうか。

無垢で防御スキルを無効化した上でにマグマを落とすとかいうなかなかな嫌がらせだったけどな。

 

 

ただ奴がブレスを撃つとなると、我にはどうしようもない。

ブレスの貫通力的にマグマック100匹を盾にしても白には軽く届くだろう。

もちろん我が盾になっても同様だ。

となると、我が白を生かすための手段は一つしかない。

 

 

ブレスが発射される前に、クイーンに大ダメージを与えて発射できなくさせる。

なかなか難しそうだし出来るかはわからないが、やるしかないのだろう。

死力を尽くそう。

 

 

『電脳、青!

 貴様らブレス放てるだろう!

 説明やら動画やらよこせ!

 確認する!』

『了解した。

 てか待て!

 オレ様ブレスのスキル無いんだが!?

 

 

 あー、こりゃスキル自体が無いんだな。

 とりあえずシュミレーションしたのとハッキングしたやつ送る。

 オレ様の方でも研究進めるから今はこれで我慢できるか?』

『わかった。

 そちらも頑張れ!』

 

 

マジか。

パーフェクトコンピュータだと思っていた電脳にガタが来ていたとは。

我も驚いた。

青って本当にバケモノなのだな。

 

 

念話を切り、送られてきた動画を確認する。

 

 

ふむ。

装填開始から発射まで約10秒。

そして発射に必要なのは呼吸器官と口。

口全体に魔力を込めなければ、望む方向には発射できず暴発するのか。

それか、発射する瞬間に口を塞ぐ。

そうすればブレスは口の中で暴発して外部に発射することは出来ない。

 

 

これは部位破壊の方が賢明そうだ。

糸を使える青ならまだしも、我は拘束術を心得ているわけではない。

あの巨体を拘束できるだけの体もないし、まだ壊した方が楽に見える。

 

 

まだ装填前の魔力整理のようだし、時間はある。

だが、残り1分少々で青が全快することを考慮すればもうすぐ発射が始まるだろう。

 

 

 

我は、獄炎魔法の準備を始めながらマグマックを召喚し続ける。

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

オレ様になにがあった?

いつから狂った?

昔は確かにこんな存在ではなかったはずだ。

まだオレ様がスキル「電脳」であった時、こんな馬鹿げたミスはしなかった。

青の魂の一部を破壊して吸収したとき。

あの並列意思を奪い取ったとき、オレ様のなにかが変わった。

 

 

オレ様の求めるものは変わっていないはずだ。

「世界の平和」に向かって、確実に進んでいたはずだ。

自分の意思を作った結果か?

なぜだ。

なぜおかしくなった。

 

 

もういいや。

行動しよう。

オレ様は産んでくれた青のために、()()()()()()()

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

急がなきゃ。

早く吸収し終えないと、ゼルギズもろとも死ぬ。

死んだら白とはもう会えない。

そして、愛してる()()を殺すことになる。

それだけは許せない。

 

許さない。

 

 

 

私は絶対に生き残って、私の世界を救う。

これが私の、私にしかできない傲慢な私が生み出すことのできる最高の世界で、最高の世界線のはずだ。







愛のために生きるもの。
自由のために生きるもの。
野望のために生きるもの。




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73 魔雷大戦⑦ 龍魂 of カタツムリ

高評価、感想よろしくお願いします。


蜘蛛ですが、なにか?は滅びない


残り10秒。

 

クイーンの口内に魔力が集中するのを確認し、我はクイーンの頭目掛けてマグマックを大量に召喚する。

マグマでクイーンの頭部が削られることを願いながら獄炎魔法の詠唱を完了。

正直運だが仕方がない。

これでダメだったら青が死ぬ。

ここは、我と青の運の良さを信じるしかない。

 

 

 

残り9秒。

 

我は獄炎魔法LV3の獄炎槍を3発、発射する。

目標は、クイーンタラテクトの頬。

今までのマグマックによる消耗も加えて、これで貫通できれば嬉しい。

てか、出来なければやばい。

貫通させることで初めて、ブレスを暴発させることが出来る。

逆に言えばどれだけダメージを与えたとしても頬を貫通できなければ正しく発射されてしまう。

我は顔の脇にいるから今貫通してしまえば最悪こちらに飛んできてしまうが仕方がない。

 

 

 

残り8秒。

 

3発の獄炎槍のうち、1発はアークタラテクトに庇われてしまった。

だが残りの2発は無事命中。

今のうちはまだ貫通していない。

だが、槍系の魔法は弾系の魔法とは違って持続性がある。

数秒は持続するから、その間に破壊できると嬉しい。

今のうちにもマグマックは投下するから、あと5秒以内に開いてくれ。

頼む。

 

 

 

残り7秒。

 

クイーンが顔を青の方へ向けた。

我の方を向いてくれればまだ青が生き残る手があったとしても、流石に青がマークされているか。

青はまだレベルアップしていない。

あと1分はかかりそうだし我が抑えなければならなそうだ。

周りにいるアークたちもこちらに向かって糸を発射して来ているし、余裕がなくなってきた。

流石にキツいか?

 

 

残り6秒。

 

マグマックたちを遅れて出てきたアークタラテクトの方へ投下していく。

我のMPも残り2割程度しかないし、ここを耐え忍んだら本当にお荷物になるしかないだろう。

クイーンの頬に刺さり続けている槍は未だクイーンを削り続けてるようだが、あと三割ほどの暑さのある肉を削れない気がする。

となると、もう一度獄炎槍を撃たなければならない。

だが獄炎槍を撃つとなると、今我を狙って糸を撃って来ているアークタラテクトの対処が出来ずに我が死んでしまう。

青の命と我の命、どちらを優先すべきかやはり考えなければならないか。

このわずかな時間で。

 

 

残り5秒。

 

召喚魔法を出し続けながら、獄炎槍の詠唱を始める。

あいにく我は魔導の極みなんてものは持っていないが、それくらいは自身の魔導でカバーしてみせる。

青なら1秒で魔法の詠唱など終わらせてしまうのだろうな。

流石だ。

ふむ。

魔法陣の形成で見ることは出来ないが、どうやらアークタラテクトの糸が殻にくっついたようだ。

我の命もどうやら長くないらしい。

 

 

まあよい。

青は生き残るのだろうしな。

奴なら、世界を変えられる。

奴が変えた世界が見れないのは残念だがまたいつか生まれ変われる。

その時に遊べると、祈ってでもやるか。

 

 

残り4秒。

 

 

我の身体に纏わりつく糸が増えてきた。

アークタラテクトはマグマックで対応しきれないか。

ステータス自体は天と地の差があるしな。

 

だが、まだだ。

まだ魔法陣は完成しない。

ただでさえ火力はギリギリなのに、我の目の前にクイーンの頬があるわけじゃない。

軌道を曲げなければ、クイーンに直接当てることは叶わない。

 

もっと強く。

もっと正確に。

もっと。もっと。

 

 

残り3秒。

 

 

威力を上げろ。

火力を上げろ。

我が命を焼き尽くすほど。

身体が千切れて、息絶える前に。

 

 

殻が軋む。

まだだ。

まだ、強く。

もっと精巧に。

確実に。

穿て。

我はゼルギズ・フェクトガギアだ。

 

名前に恥じない働きをしろ。

 

 

残り2秒。

 

 

身体がちぎれそうだ。

アークタラテクトに数方向から引っ張られてるのか。

やはり蜘蛛の糸はロクでもないシロモノなのだな。

 

死が近づいているからか、冷静になってきたか?

魔法陣はもう出来る。

あとはアースに任せればいい。

最悪、アース共が転移もできるんだし、その時に逃げてもらえばいい。

 

はぁ!?

 

 

残り1秒。

 

 

待て待て待て!

とりあえず獄炎槍発射!

よし軌道通りーーって!

 

 

ふざけんなァァ!!!

我が稼いだ時間、なんだったんだこれ!

 

 

青、さっさとアース共と転移しときゃよかっただろうが!

転移して逃げればすぐ回復できてただろうが!?

ふざけんな!!

それだったら、我死ぬ必要なかっただろうが!

 

 

 

ーーもういい。

我のやることはやった。

 

 

アイツを生き残させることは出来た。

さまざまな不安要素はあるが。

 

 

確かにアイツは頭も悪いし、傲慢だし、何もわかっていないやつだが、単純に強い。

強き者は尊い。

そして、我はあの龍の言ったことを信じ、あの龍のことを信じている。

 

 

本当に尊いんだよな?

アイツ、あんなに馬鹿なんだが。

我を浅い思慮で殺すような馬鹿なんだが。

なあ、我は正解だったのか?

 

 

教えてくれ、ガギア。

 

 

我はーー。

 

 

 

 

残り0秒。

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

残り0秒。

 

 

私の遠くでクイーンの顎が爆音と共に大爆発して、煙が立ち上り始める。

どうやら、ゼルギズはうまく時間を稼げたっぽい。

アイツ、サイコーだね。

本当にすごいと思う。

死なせかけてる私が言うのもあれだけど。

 

万里眼でアッチの被害状況確認。

待って。

予想以上にやばい。

ゼルギズの殻が完全に吹っ飛んで内臓が露出してる。

 

でも、私が指令で転移させたアースエレテクト5体でちゃんと治療してるし殻の回復も急速に進んでる。

アークも6体いるけど、ゼルギズの回復までは持つかな?

意識が戻ればゼルギズも戦闘参加してくれるだろうし。

私もあと3体アースを吸収すればレベルを上げられる。

元々多めに15体連れて来てたのが本当によかった。

それまで耐えてくれ。

 

 

 

 

耐えてくれたらその分、全部終わらせるから。

嵐、起こすから。

 

 

 

言葉通り、世界を変えるから。






どこぞの龍の名前、ガキアなんですけどね


カタツムリさん、ガギアじゃないです……


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74 魔雷大戦⑧ 蜘蛛だけど、なに?



蜘蛛としての命




よし。

 

あとは私の番だ。

1分。

1分だけ待って。

ねえ、クイーンさん。

 

クイーンからの暗黒槍を、召喚してもらった孫で防ぐ。

ただ、まさか火力がこんなに高いとは。

いくら低レベルといっても、まさかアースエレテクトを即死させて来るとは。

 

ゼルギズはまだ動けない。

私もまだ頭から下が再生していない。

糸があるから娘から娘に飛び移れはするけど、そんな避けれるほどは回復してない。

 

しかも、魔導の極みを持ってないからか、オリジンじゃないからかは分からないけど、残った娘たちの召喚魔法もクイーンの魔法には追いつかない。

 

絶賛クイーンは私のところに猛ダッシュ中。

あと30秒もすれば辿り着くだろうし本当にヤバい。

私がクイーンから距離を取ってた上でこれだから、本当にまずい。

 

『電脳!

 どうするか決まってる!?』

『時間稼ぎの方法は決まってない!

 稼いだあとは即終了だが!』

 

 

「娘たち!ゼルギズの回復30秒かかる!?」

「1分はかかる!」

「かかります!」

「あー、わかった!

 そっち死なせないでね!!

 絶対!」

「わかりました!」

「ました!」

 

 

ヤバい。

私だけで30秒は耐えなきゃならない。

 

 

 

うん。

キツイ。

トップレベルにキツイ。

 

 

でも、懐かしい。

なんか懐かしい。

なんでなんだろう。

 

 

穏やかな気持ちになって来た。

じゃあ、やろう。

私。

 

 

 

おやすみ。

私だったもの。

 

 

 

電脳。

頑張ろう。

 

私は同調レベルをMAXにして、もう一人の私となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時までの私はまだ蜘蛛だった。

そう。

この日までは。

今になって思う。

これが最後の、まともな、ただ1匹の生き物としての姿だったんだろうなと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

暴れてやる。

オレ様が私だ。

私はオレ様だ。

全部、暴れ尽くす。

行くぞ。

 

 

頭しかないんだけどな!!!

 

 

魔神法。瞬間速度大強化。闘神法。神龍力。龍結界。死音。無限。魅了。無垢。

発動。

 

 

使えるものの確認。

魔法系はうまく制御できなくてほぼ全部ダメ。

吸収がなければまだ使えたかもだけど、今はそんなに手が回らない。

転移も無理。

HPは頭だけだからか回復し切らない。

 

糸は頭からならどこでも出せる。

私が作り出した魔術の爆雷と、腐蝕攻撃は使える。

あと、空間機動も使える。

娘たちは、あと2匹を私が吸い付くすし、実質何も出来ない。

そもそも私の脚として回避してもらわなければ。

 

 

十分だ。

これだけあれば、30秒なら耐え切れる。娘と一緒に。

 

勝負だ。

 

クイーン。

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

私の目の前に来て、脚を振りかぶるクイーン。

 

未来視で振り下ろすのを確認して、クイーンとの間に斜めに空間機動の足場を展開。

クイーンの脚はわずかに軌道をずらして落下する。

そのうちに、逆方向の地面に糸を飛ばして、私が噛み付いてる娘ごと逆方向に飛ぶ。

これで3秒。

 

 

いける。

このままいけばいける。

 

 

いや、ちょっと待て!?

いやいやいや!?

ウッソだろおい!?

 

こんな近距離で魔法使うやつ普通いるか!?

 

 

 

大量の暗黒槍の魔法陣を展開するクイーン。

私は糸で娘ごとくっつけながら、魔法陣の向いていない方向へ力任せに這いずっていく。

 

 

次の瞬間後ろで鳴る魔法の激しい着弾音。

マシンガンみたいな音と、後ろからの激しい爆風に煽られながら再び未来視で確認。

そして、上からまた飛んでくる脚を空間機動で逸らして、糸と黒鞭で這い回る。

 

 

クソッ!!

我が娘、脚が遅すぎる。

元々クイーンとアースエレテクトのステータスは5倍は差がある。

クイーンが20000くらいで、アースが4000くらい。

そして、私が地面を糸で這い回ってる速度はおそらく9000くらいなのか?

 

 

となるとって!?

迫って来ていた暗黒槍と脚の同時攻撃を避けて、空間機動の足場に黒鞭を絡めてターザンのように跳ぶ。

もちろん娘は引っ付けたまま。

 

娘、ステータス低すぎて逃げることすら出来ん!!

私が振り回しすぎてまともに魔法展開も出来ないっぽいし!

もう体力ないから意識もほとんどなさそうだし!

 

 

 

 

ただ、2回魔法を撃ってくれたおかげでだいぶ時間を稼げた。

あと4秒。

これならいける。

 

 

 

遠心力で遠くに飛んでいった私に向かって、クイーンは暗黒槍の魔法陣を展開する。

そして発射。

そのまま蜘蛛の腹を突き刺し、暗黒槍は遥か彼方に飛んでいった。

 

 

 

 

 

というのは嘘で!!

外道魔法の幻夢です!

で、外道魔法が使えるということは?

 

 

 

私、レベルアップで完全復活!!

クククッ、私はアンタの真上にいるんだよ!

残念だったなクイーン!

 

鎌に魂を込めて振りかぶってーー。

 

クイーンの頭にそーい!!!

 

 

 

びよーん。

ーーは?

 

脚が動かない。

身体が動かない。

鎌が動かない。

下を見ると、ブレスを貯めてるクイーンがいる。

そして、脚を見ると絡まった糸が。

そのさらに糸の先には空間機動の足場。

 

 

 

ウッソでしょ?

頭良すぎない?

私が上から攻撃すること予想してたの?

あと空間機動って足場の維持ってMP的にすごいキツいはずなんだけど。

まあでも、別にいいや。

2秒で終わらせるから。

ステータスがほぼ同じでも、私とあんたじゃ見てる世界が違う。

 

雷光魔法最高火力の雷光界の魔法陣をとりあえず5つほど、小さめにしてクイーンの空間機動の足場の上に展開。

小さめって言っても5mあるから十分大きいけど。

もとが200mくらいあるからミニサイズにしても無駄に大きい。

まあいいや、ほいドーン!

魔法陣を展開してから一瞬で発射。

もちろんクイーンは新しい足場を作って対抗しようとしてるけど、そこにもドーン!

 

ここで完全に私に対する糸の拘束が外れて、身体が動くようになる。

やりたいのは魂の破壊だけど、元気な状態で近づくのも嫌だから削っておこう。

 

『電脳、ギリ死なないように加減するとなるとあの魔法、魔法陣何枚でいける?』

『10枚だな。

 それで瀕死になるんじゃねーか?

 少なくとも耐えるラインはそこだ。11発以上の火力だと生存の保証はできねー』

『おけ!じゃ、撃ったらその後はよろしく!

 私はクイーンのスキル奪うから近くいてね!

 魔王来ると困るし!』

『オッケー。

 さっさとしとめていくぞ』

 

 

私が繰り出すのは、今まで私が作った中で最も構築が難しい魔法。

そして、おそらく誰一人成し遂げたことがないであろう偉業。

 

 

 

最高だ。

どうせだし、詠唱でもしておこう。

別にいらないけど。

 

「神よ、この世界を救いたまえ。

 このか弱き蜘蛛を許したまえ。

 我は御力の根源を欲す!

 世界を変えろ!

 

 ”星幽破滅”アストラルカタストルフィ!!!

 

 

 

私が起こす美しい直径200mの広域殲滅攻撃。

魂を破壊することのみは敵わないが、火力だけなら深淵魔法を軽く上回る文字通りの世界最強破滅魔法。

10枚の魔法陣が高さ2kmにわたり縦に連なり、それぞれが連動し一つの巨大なコイルのようなものが浮かび上がる。

末端からも放電がほとばしり、それが掠るだけでも地面が抉れていく。

植物はもう無く、わずか一瞬で炭化した。

まさしく天災。

 

 

いや、天災どころではない。

神話。

まさしく神話だ。

私が言うのもアレだけど、なんだろうこれ。

ラグナロクだね。

 

 

転移能力の持たない蜘蛛は一瞬で炭化し、そのまま炎上。

アースたちとゼルギズは転移させてたから無事だけどね。

 

ただ、顕現しただけ。

まだ魔法は発動していない。

だけど今、この瞬間発動させる。

 

 

 

轟音と共に白い閃光が天から魔法陣内部に流れ込み、電磁砲のように堕とされる。

そしてそのままこの星を抉っていく。

閃光はクイーンタラテクトを押しながら掘削を続けていき、最終的にはフェクト大迷宮を最下層よりも深く削った末に消滅した。

 

 

 

 

待って?

これ生きてるの?

クイーン。

 

『ほら万里眼で見てみろ。

 生きてる』

 

うわまじだ。

なんで生きてるのよ。

残り体力200で黒焦げなのに、ほんとになんで生きてんの?

 

 

 

雷光魔法最高攻撃力を持つ雷光界。

ただこれ一回だけなら別に寝ながらでも撃てる。

というか、電脳の演算能力でこれだけだったら勿体無い。

 

だから10枚重ねた。

それだけ。

だけど雷光魔法の源である雷は闇とか水とは違って大きな収束力があって、相乗効果で超破壊力になったのだ。

てか深さ3kmの穴とか、どんなもの作るのよこの魔法。

これに耐えるクイーンもおかしいし。

 

 

 

 

 

だって地面もう黒焦げだよ。

空だって暗くなってるんだし。

いや待て。

 

私の10秒の魔法で黒い雲と雷発生しとる。

私自身はなにもしてないし、システム上の電気しか動かしてないのに。

もうわけわからないから後に電脳に調べてもらおう。

私がクイーン喰う間にでもやって貰えばいいかな。

 

 

『じゃあ、食べるから降りよう』

『おう』

 

私は落下してその勢いのまま鎌をクイーンに突き刺す。

そして私は鎌をつたって侵入して魂を食う。

早めに食べないと、クイーン倒したの察知した魔王来ちゃうし急ごう。

 

 

『ねえ、電脳?いつ頃魔王来る?』

 

 

 

 

 

『ねえ?』

私の探知から、もといた体が一瞬で消え去っていた。






違う世界



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第2章 特異点
75 愛してドッペルゲンガー


高評価、感想お願いします。

一応注意書きです。
主人公の内面、過去、および激しい感情に対する描写があります。
主人公の性格が良いわけでは決してないので、不快感を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、読んでくださると光栄です。



どうして。

なんで電脳何処か行ったの?

 

『電脳、戻ってきて。

 私帰れなくなるから出来るだけ早く』

『……』

 

反応がない。

元来、私と離れてても念話出来るはずなんだけど。

試した事はないけど電脳も出来るって言ってたもん。

おかしい。

 

『ねぇ、そっちでなにが起きてるの?』

 

万里眼!!

 

えっと、電脳はというと……。

いた。

 

私が行くつもりだった場所で、思いっきり交戦しとる。

でも別にそんなヤバい相手じゃないはずだからなぁ。

だから連絡しないって訳でもないんだろうし。

 

 

それに、いくらなんでも死んだ施設なんだから普通に勝てるでしょ。

生きたところだったら私でもだいぶ警戒するけど。

生きた施設じゃないから魔法も使えてるし、なんで私に連絡よこさないで勝手に行くの?

ねぇ?

なんで。教えてよ。電脳。

 

 

魔王も近づいてきてるし。

ただ遠くにはいるから、来るのにあと1週間くらいは猶予ありそうだけど!

 

 

てか、なんで念話が通じない?

別に電脳側の調子がおかしい訳でもないし、状態異常にかかってる訳でもないし、やっぱり故意にやってるよね。

私なんか嫌われるようなことしたかなぁ。

いやしてないって言ったら嘘になるけど、それ以上に仲良かったとも思うんよ。

だからなんでこんなことするのかわからない。

 

 

 

あれ?

もともと私、電脳にその場にいてって言ったよね。

その上で、なんの状態異常にもかからず、おそらく自分の意志でこの場を離れた。

 

あっそう。

そうなんだ。

私のこと、忘れることにしたんだ。

『ひとまず、反乱と見させてもらっていいんだね』

『……』

ほんと、馬鹿なやつ。

 

 

私の最も恐ろしい欠陥を知らないお前が、私に勝てるわけないじゃないか。

私から全てを奪った欠陥を知らないくせに、自殺行為じゃないか。

首を長くして待っててね。

 

私の愛しの、ベストフレンド。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

オレ様のなにがおかしかった?

わからない。

ただ異常の原因である可能性が高い青からは離れることが出来た。

やつの色に染まってしまっていたと言うのならば、これで改善されるはずだ。

何より、変なあいつとあれ以上関わっていたらオレ様の脳が壊れきってしまう。

 

転移で施設の真上に移動。

よし、死んでる割にはエネルギーが残ってるな。

よく見つけてくれた。

 

エレテクト種は電気とエネルギーの扱いに長けている。

そこで、大量の蜘蛛に探知させながら世界中を走らせたら、地下奥深く、普通なら絶対発見されない場所にロクでもなさそうな施設が大量に発見された。

生きてそうなのと死んでそうなの合計10個ほど。

 

生きてそうなのでもいけるかとは思ったが、まずは死んでいるところ。

別に数はあるのだし望めば後でいくらでもいける。

なんと言っても、まだギュリエディストディエスは気づいていないのだから。

 

アースたちが掘った穴を進んでいくと、銀色の壁が現れる。

鑑定できないらしいが、一応オレ様もやっておくか。

 

『鑑定不能』

 

ま、ダメだな。

しっかりと魔法耐性が組み込まれてる。

もう死んでるはずなのにこれだから厄介なんだよ。

自動兵器っていうのは。

 

だが別に構わない。

オレ様の本来の目的はこの中に侵入することだし、入り口もわかっている。

なんなら探知で中の様子や、どこに何があるかまでわかってるしな。

 

壁伝いにアリの巣のように掘られた穴を進んでいくと、分厚い金属の扉が現れる。

ここまではアースたちにやってもらったことだ。

そしてこれからはまだオレ様も知らない、未知の世界。

 

楽しみじゃねーか。

唆るぜ、これは。

 

 

重い扉に手をかけ少しずつ開いていく。

金属で超硬加工も施されてるからか、鬼のように重い。

それでもまあ開くんだが。

 

中にあったのは、まるで研究施設のような空間。

死んでしまっているから真っ暗なんだが、暗視で確認すると非常灯のようなものや大量の機械があるのが見える。

特に気になるのは壁に立てかけられているロボットだ。

なかなかの性能を持っているようだし、軍事利用したとしても役立つはずだ。

 

 

おっすげー!

起動した!

そして結構な数がこっちに銃乱射してきた!

まじでないわ、それは。

 

弾を避けながら探知を発動させ、全ロボット個体の保存状態を確認。

生きている施設なら魔法の妨害もされると娘たちから聞いているが、あいにくとここは死んだ施設。

魔法も全部使えるし正直敵じゃねぇ。

結局、多く見えたが生きてるの20体ほどしかいなかったしな。

5分の1も生き残ってるなら上出来かもしれんが。

 

『青、さっさと処理して次のステップに行くぞ』

『……』

 

そうか。

念話をこちらから切っているのを忘れていた。

忘れていた。

関係ない、進もう。

 

一体一体のステータスは10000越えくらいだが、こちらの身体強化も考えればオレ様の3分の1くらいにしかすぎない。

だが持っている武器が危なっかしい。

4本ある腕のうち、2本は短剣と銃を合わせたみたいな武器を持っていて、残り2本の腕にもしっかりと大口径の銃が。

しかも頭の位置に小型の銃ついてるし。

草。

 

 

いやいやいや。

わけわからん。草って言葉どっから出てきたんだよ。

オレ様、マジで侵食されてきてるじゃねーか。

とりま戦闘を終わらせなければ。

急げ。

 

 

 

爆雷を発動、前にダッシュして銃弾を避ける。

そのまま突進して腕を蹴り上げて、そのまま万歳をした状態で糸で拘束。

そしてそのロボットを遠くに投げる。

 

なかなか面倒臭いステップだが、これでようやく一体のロボを完全なる資源とできる。

まあ結構弾直撃するがほぼ無効だし一方的に終わらせよう。

 

ここからはほぼ作業だった。

前半は知識収集とかもあって楽しかったが、後半はほぼ作業ゲーだった。

正直つまらなかった。

まとめたロボたちを施設の端にまとめて、探検を開始する。

 

 

なんだろうな。

施設探索がつまらんわけじゃないんだが、正直面白みもない。

なんと言っても理屈がある程度思いついてしまうのだ。

わからないことも結構あるんだが、それもまあいいやで済ませてしまう。

 

別に仕組みについて考えたいなーとも思うが、他に考えなくちゃいけないこともたくさんある。

ギュリエディストディエス然り、魔王然り。

ゼルギズにもどんな反応されるかわからんし、それも考えなければ。

魔法について考えてる暇、ねぇな。

 

 

てか、寂しい。

これからこの世界でオレ様一人で生きていかなきゃいけねーのかよ。

青は死んじまうし、白はいるけど話してくれるかわからねーし。

オレ様、一人で生きなきゃいけねーのかな。

ああ、寂しい。

 

寂しい。

ああ。ああ。

オレ様のなにが悪かったんだ。

ごめん。許して。

私が悪い。

オレ様が悪い。

寂しい。

 

誰か愛して。

お願い。誰か、誰か、愛して。

お願い。見捨てないで。愛して。ごめんなさい。愛して。

愛して。

 

 

ロボを20体まとめて引きづりながら地上へと這っていく。

きつい。

苦しい。

オレ様はなんてことをしてしまったんだ。

なんで青を捨てたんだ。

オレ様の、一番大切な友達を。

自分の、人格が崩れていくという理由だけで。

もう嫌だ。

自分が嫌だ。

許してくれ。

 

地上にたどり着くとともに、ロボの銃に噛み付いてそのまま噛み砕く。

そのまま、腕も。コアも。胴体も。足も。

寂しい。辛い。耐えられない。

 

そのまま、二体目、三体目と食いちぎる。

ごめんなさい。私が悪いんです。

こんな心を持った存在として生まれてごめんなさい。

社交性があれば、私は愛された?

ちゃんと、同じ家の人として愛してくれた?

あなたたちと一緒に、住むことができたのですか?

 

でも、いたよな。

私を愛してくれた人。

たしかにーー。

 

 

 

何考えた、オレ様。

いいから喰おう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

そろそろかな。

クイーンを削りながら万里眼で電脳の様子確認。

私だったら、そろそろ病む時間だけど。

 

 

おーと。

近くにある穴広がってるってことは施設襲ったんだね。

あの精神で凸ったとは尊敬に値する。

 

 

さてさて、肝心の私の体はどこいったかなー?

お、草むらにキラリと光るもの発見!

さては機械食ってるな?

えらいえらい私の意志受け継いでるね。

私も金属は食うつもりだったし。

 

 

あれ?

これ、私だよな。

え?た、探知!

あ、合ってる。

 

なんだこの機械に囲まれて仰向けで寝る全裸の少女。

 

 

これ、放置しちゃ色んな意味で不味くない?





紡ごうとする、理不尽な愛の記憶。



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W5 空き家有効活用

感想、高評価よろしくお願いします。
そして、誤字訂正してくださった方ありがとうございます。

後半のステータスの数字は、これからの展開に大きく関わるので見てもらえると幸いです。


こんにちは。

白です。

 

 

今、わたしは吸血っ子のいる街に住んでいます。

青さんがしばらく帰ってこないらしいので、彼女の家を借りていいことになりました。

てな訳で、ここにいる一般市民の方々の治療も一緒にしながら住んでます。

てか家綺麗すぎるだろ畜生。

 

全ての家具が、蜘蛛のサイズでちょうどいい高さでつくられてある。

しかもタンスとか絶対いらないのにあるし。

わたしも水が出ない蛇口とか作ってたから文句言えないけどね?

 

結局、快適なことに変わりないし、家作ってないわたしが口出しはしちゃいけないんだろう。

他の蜘蛛たちとのシェアハウスってのにも思うことあるけど。

え、結局口出ししてるって?

誰も傷つけてないからセーフセーフ。

センス悪いとは決して思ってないし言ってないし。

なにより、あっちにはあっちの考え方があって、それはわたしとは少し違うものだ。

てな訳で、しっかり住ませてもらいます!

 

うーむ、でもなぁ。

青には思うことがある。

というのも、私が海釣りしてた時に魔王が来た件について、青が魔王対策の連絡するはずだったのにしなかったんよ。

それでまだそのことについての返信が来てない。

別になんも話ししてなくて連絡しなかったっていうことならいいんよ。

だけど、しっかりと連絡するって言ってくれた上で連絡が来なかった。

約束した上で守られないのは、わたしとしてはだいぶ嫌だ。

家あるから文句言えんけど。

 

あの時は大変だった。

魔王に全身バラバラにされて、なにもできずに海にぷかぷか浮いていた。

水竜に食われることで体力を大きく回復できたけど、周りに弱いのが来なかったらあと5日くらいは再生に時間がかかっていただろう。

魔王ほんと、どう倒せばいいんだろう。

 

 

そしてこれからの振る舞いも考えなきゃいけない。

わけわからん吸血っ子の処理もそうだし、この街での振る舞い方だったり然り。

吸血っ子については、一応万里眼で見ておくだけでいいかな。

危なかったら少し助けてあげてもいいけど。

いざしっかり認知してしまうと手をかけたくなっちゃうのは悪い癖だ。

 

この街についても青の留守中はいるつもり。

青が人助けしてきたのを、同じ蜘蛛である私が無視するのは卑怯だと思う。

何より、もうこの街にいるための一つの掟となってるみたいだし。

 

ていうかこの街、なんであたり前のようにアースたちが闊歩してるの?

建設現場で当たり前に仕事してたんだけど。

糸を骨組みにしてお金がない人のために仮設住居を作ったり、仮骨組みを立てるお手伝いをしてたり。

しっかり給料もらってたし、しかもあいつらそのお金で保存食買ってたぞ。

ボンクゥラのドライフルーツめっちゃ美味そうに家で食ってるぞ。

 

あいつら人間生活に慣れすぎやろ。

これ、元の日常生活戻れるのかな。

私がこの世界に来る前よりも一般人な生活送ってる。

もちろん獣狩りまくって食べてる奴らもいるけどね。

 

わたし?

わたしはもちろんニートしてるぞ。

だけど、めちゃくちゃ鍛えた万里眼で言語の勉強してるから実質真面目に働いていると言っても過言ではない。

ちなみに糸でちゃんと音も聞こえてるからリスニング勉強も完璧だ。

 

 

てかビックリしたなー。

まさか青以外の転生者にこんな街で出会うとは。

しかも、見事にほっといたら死ぬ感じ。

 

道に沿って歩いてたら、馬車が襲われてた。

だから盗賊の経験値欲しさにササっと倒したんだけど、そのあとがまあすごいのよ。

吸血っ子を抱き抱えた女の人が出てきてわたしの前で平伏し始めた。

お子さん地面に置いていいの?って思ったけど。

しかもその後に出てきたその夫さんみたいな人も、平伏。

しかも盗賊と戦ってた人まで平伏。

 

てか平伏なんて言ってるけど、こちらから見たら土下座だからね?

見ず知らずのわけわからん白い蜘蛛に土下座よ?

もちろん治療してあげた後の話ね?

 

てか青どんな教育っていうか、統治してきてんのよ。

こんな土下座って普通しないからな?

この世界に平伏っていう行為がちゃんとあるのにもビックリしたけどさ。

 

まあでも、それだけ信頼されてるってことなんだろうね。

実際街を浄化してきてるんだし、それでたくさんの人が救われてきたのだろう。

私の友人ながら、さすがだ。

 

 

うん?

なんか頭に、ピリッという手応えがきた。

えーと、これあれだ、念話だ。

 

青からか。

この勢い的に何かあったな。

めちゃくちゃ接続が早いし。

 

『白!至急お願いがある!

 聞いて!』

『わかった、どうしたの?』

『私の体の回収を頼む!!

 このままだとすぐ死ぬ!

 言葉通りだから急いで!

 ごめん、お願い!』

『わかったすぐ行く!

 念話切る!』

 

共生で場所を確認して、近くにいたアースエレテクトとともに転移で飛ぶ。

ここでなぜ私が万里眼で状況を確認しないかと言うと単純に遠すぎて見えないからだ。

いくら遠くを見ることに適した万里眼といえども、星の真裏まで見えるようなものじゃない。

だから、転移場所を覚えているアースエレテクトを連れてこなければ行けなかった。

正直めんどくさい。

 

 

 

で、飛んでみたけどどんな状況なの?

訳がわからない。

わたしが見た物をありのままに説明するぜ!

まず青が寝てるはずの地点半径10mくらいににわけわからんロボットみたいなのが散乱してる。

そして、その中心の窪みでスースー寝息を立てる金髪全裸の少女。

 

まさかなんだけど、これアレだよな。

青だよな。

なにが起きてこうなったの?

 

鑑定!

 

『オリジンエレテクト(弱体化中)Lv2 名前 青

                       佐野 蒼生

 HP:39/43(緑)(詳細)(MAX43928)

 MP:42/42(青)(詳細)(MAX42384)

 SP:38/38(黄)(詳細)(MAX38727)

   :32/38(赤)(詳細)(MAX38727)

 ステータス

 平均攻撃能力42(詳細)(MAX42399)

 平均防御能力41(詳細)(MAX41494)

 平均魔法能力44(詳細)(MAX44356)

 平均抵抗能力43(詳細)(MAX43021)

 平均速度能力44(詳細)(MAX44678)

 「HP超吸収LV7」「HP超速回復LV3」「魔導の極み」「魔神法LV10」「魔力付与LV10」「魔法付与LV8」「大魔力撃LV6」「SP高速回復LV8」「SP消費大緩和LV8」「瞬間速度大強化LV7」「破壊大強化LV7」「斬撃大強化LV8」「貫通大強化LV8」「衝撃大強化LV8」「状態異常大強化LV8」「闘神法LV6」「気力付与LV10」「技能付与LV3」「大気力撃LV4」「神龍力LV7」「神龍結界LV2」「猛毒攻撃LV10」「強麻痺攻撃LV10」「腐蝕攻撃LV6」「外道攻撃LV10」「毒合成LV10」「薬合成LV10」「糸の天才LV10」「鉄壁LV2」「神織糸」「操糸LV10」「念力LV5」「投擲LV10」「射出LV10」「空間機動LV10」「眷属支配LV10」「集中LV10」「思考超加速LV4」「未来視LV4」「並列意思LV9」「命中LV10」「回避LV10」「確率大補正LV8」「隠密LV10」「隠蔽LV4」「無音LV10」「無臭LV5」「帝王」「断罪」「奈落」「退廃」「不死」「カミゴロシLV9」「外道魔法LV10」「電撃付与Lv10」「雷付与LV10」「雷光付与LV8」「外道魔法LV10」「火魔法LV10」「火炎魔法LV5」「氷魔法LV10」「氷結魔法LV9」「水魔法LV10」「水流魔法LV8」「風魔法LV10」「暴風魔法LV10」「嵐天魔法LV1」「土魔法LV10」「大地魔法LV10」「地裂魔法LV3」「電気魔法LV10」「雷魔法LV10」「雷光魔法LV10」「天雷魔法LV10」「光魔法LV10」「聖光魔法LV7」「影魔法LV10」「闇魔法LV10」「暗黒魔法LV8」「毒魔法LV10」「治癒魔法LV10」「奇跡魔法LV5」「空間魔法LV10」「次元魔法LV10」「重魔法LV9」「深淵魔法LV10」「死音LV8」「無限LV10」「傲慢」「激怒LV6」「飽食LV10」「魅了LV10」「賢姫LV9」「妖姫」「電脳」「破壊大耐性LV8」「打撃無効」「斬撃大耐性LV8」「貫通大耐性LV8」「衝撃大耐性LV8」「火炎耐性LV8」「氷結耐性LV9」「水流耐性LV9」「嵐天耐性LV1」「地裂耐性LV3」「天雷無効」「聖光耐性LV7」「暗黒耐性LV8」「重大耐性LV3」「状態異常無効」「酸大耐性LV8」「腐蝕大耐性LV8」「外道無効」「恐怖大耐性LV9」「苦痛無効」「痛覚無効」「気絶無効」「暗視LV10」「万里眼LV8」「五感大強化LV10」「知覚領域拡張LV10」「神性拡張領域LV9」「天命LV10」「天動LV10」「富天LV10」「剛毅LV10」「城塞LV10」「韋駄天LV10」「強化産卵LV10」「小型化LV10」「共生LV9」「清浄LV6」「禁忌LV10」「n%I=W」

「歪」

 スキルポイント18900

 称号 

 「悪食」「血縁喰ライ」「魔物殺し」「魔物の殺戮者」「竜殺し」「龍殺し」「毒術師」「糸使い」「大感染」「オリジン」「傲慢の支配者」「電脳の支配者」「恐怖を齎す者」「究明者」「暗殺者」「覇者」「率いるもの」「竜の殺戮者」「竜の天災」「龍の殺戮者」「王」「運命の神獣」「特異点」』

 

待って。

何これ。

 

ヤバいこれ本当に死にかねない。

回収だ回収!

わたしは青を引っ掴み、家へ再び転移した。






人間を目指すのならば、神は試練を与えよう。


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76 知らない体

高評価、感想よろしくお願いします。


特異点の目覚め




『青!回収できた!

 これどうすればいいの!?

 てかアンタ今どこいんの!?』

『クイーンを削ってる!

 3日ぐらいかかりそうだから少し待って!

 あと落ちてた機械穴に突っ込んどいて!』

『注文が多い!

 わかったけどそっち終わったら全部教えてね!?』

 

プチっ。

ここで切れる念話。

うん、しっかりと家のところに座標がある。

無事に家まで送ってもらったみたいだ。

 

あーあ。

アイツ大丈夫かなぁ。

多分私の性格からして、起きたらケロッとしちゃうんだよな。

その後は少し元気になっちゃうだろうしそしたら捕縛は面倒臭いか?

 

いや行けるか。

ステータス的に完全なる雑魚になってるんだし、別に接触することはできる。

接触できれば私の人格も帰れるんだし主導権も取り返せるからね。

 

でも馬鹿げたことをやってくれたもんだ、D貴様。

スキル「(いびつ)」。

おそらくだけどこれがステータスを成人女性くらいまでに下げさせた原因なのだろう。

まあ逆に言って仕舞えば、少女体型なのにあのステータスくれたのは手心あったのか?

いやないなこれ。

単純に0.1%にしただけでしょ。

 

あれ?

確か吸血赤ちゃんのステータスって10くらいあったよな?

それの4倍くらいっていうとやっぱ少女くらいの力しかないのかマジか。

これは流石にステータス低すぎるなー。

てか電脳がいないから名前思い出せないのモヤモヤする。

 

だけど、とりあえずこれで私のDに対する評価は最低まで落ちた。

もともとロクな性格のやつではないと考えてたけど、今回の件でもっと落ちた。

やっぱり、世界が破滅したのDのせいなのあるでしょ。

なんならポティマス以上に。

 

あー、もういい!

今ウダウダ考えたところでどーせ体の所有権ゲットするまで動けないんだから!

さっさと食べて帰ってやる。

 

でも驚いたなぁ。

まさか死んだ施設でも私が進化するだけのエネルギーが蓄えられていたとは。

こりゃ多分、生きてる施設にあるエネルギーは馬鹿にならん量あるでしょ。

その分、攻略難易度も大幅に高いんだろうけど。

 

でも私もオリジンかぁ。

現在進行形でバタバタしてはいるけど、たどり着くとこまで辿り着いたものだ。

元々はただの小さな1匹の蜘蛛だった。

それが、アルセウスの力も借りながら白と暴れ続けて進化してきた。

 

そして、私はいつしか自然と独立した。

独立してからも水龍を狩ったりしてレベルを上げていった。

その間も殺されかけながら、なんとか勝った戦いも何度かあった。

忍耐の食いしばりがないことを考えれば、よくやったんじゃないか。

HP以上の攻撃くらったら即死だったんだし。

 

そんな蜘蛛は、いつしか目標を達成した。

予想していた通りの能力も手に入れて、Dからの支配からもだいたい解放されたと思っていた。

それがこの結果だよ畜生。

逆にピンチになった。

 

本当に(いびつ)がなければ私無双できるはずなのに。

なんてことしてくれたんだ。

おかげでいつ死んでもおかしい体になっちゃったじゃないか。

 

 

クソッ。

もう最強になってんのにさ。

蜘蛛すらやめて、なんなら新生物になったとまで言えるのに。

金属食べてるし、()()()()()()()()()()()()()()ことまでいってるのに。

それが馬鹿げた神の一手で詰むことになるなんて。

許せない。

 

てなこと言ってもなぁ。

私今動けるわけじゃないし、少なくとも数日はクイーンの魂の破壊にかかる。

今は電脳が動かないことに賭けるしかない。

お願いだから電脳、無茶しないでね。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

うーん。

オレ様は、なにか夢を見ていた。

それは見たままに記憶から離れていく。

 

オレ様は、離れた記憶をたぐり寄せる。

失わないように。

知識として消えないように。

 

けれど、()()()()()保存しようとしたそれは形を止めることなく、砂のように手の平からこぼれ落ちていった。

わずかに寂しさを残して。

 

 

 

ああ、もういつまで寝てんだ。

オレ様は目を擦りながら、うつ伏せになるために手をつく。

なぜか仰向けのまま寝ていたから、危険回避しなければ。

背中はまだしも、腹は獣に襲われると危ない。

 

目を開ける。

視界に飛び込んできたのは、青と共同で作った家の壁だった。

ぼんやりとしながら不思議に思っていると、身体がコテンと横に倒れた。

 

は?

横になったまま手足をジタバタと動かしていると、背中の方から響く声。

 

「電脳、目が覚めた?

 そんなにジタバタしても、足8本あるわけじゃないよ」

 

あん?

と思っていたら、ずきりという痛みが腹に響く。

そこでゆっくりと下を見てみると色白の全身がある。

それでも、地球で見ればなんの違和感もないような人の体ではあるんだが。

 

 

どういうことだ?

身体に向かって鑑定をしてみると、そこに浮かび上がったのはオリジンエレテクトの文字。

どうやら、機械と一緒にエネルギーを食ったことで進化したようだ。

レベルアップはできると思っていたが、思ったよりも経験値多かったな。

 

 

 

だがそんなこと今はどうでもいい。

問題は、0.1%になったステータスだ。

これは本当にガキのステータスしかない。

スキルは封じられてないが、階段から落ちれば死ぬといえばそんなものどうでもいいだろう。

人の体ということで外骨格も無くなっているわけだしな。

ステータスも実際の身体もマジで弱くなっている。

 

 

「で、アンタ。

 青と仲違いしたんでしょ。

 わたしは詳しく事情知らないから説明してくれないかな。

 お腹の傷、治してあげたんだし。痛みはまだあるかもしれないけどね」

 

 

腹の傷お前が作ったもんじゃないのと聞きたくなるが、あいにく今のオレ様には抵抗する権利がない。

力が全てのこの世界で、今現在はただの人族と同じなのだから。

オレ様は、ふらふらと立ち上がってそのまま白の隣へ座り込んだ。








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77 クソガキ、命を語る

高評価、感想お願いします。




「ふーん、てなわけで今は別行動してるのね?」

「今は、じゃない。これからもだ。

 勘違いするな」

「素直じゃないやつ。

 で、これからどうすんの?

 人に奉仕するのは続ける?」

「奉仕じゃなくて利用だけどな」

「あっそ。

 わたしは別にここに住んでるから自由にすれば?

 ちなみにここ、青の家だからアンタに所有権あるわけじゃないよ」

「わかってる」

「ならいーんじゃない?

 わたしとしてはさっさと服着て欲しいけどね。

 身だしなみくらいはしっかり欲しいな」

 

そう言って、去っていく白。

おそらくオレ様は子供に見られているのだろう。

実際、いまのオレ様は夢を語るクソガキと同義だ。

青がいなくなって、首が回らなくなってからも仲直りしたいとなどは思いたくないのだから。

 

両手の指から太めの糸を出し、右手の糸を左手の糸に絡めていく。

いくらステータスが低くなったといっても技術が低下しているわけじゃない。

オレ様は少しずつ確実に服の形をかたどっていく。

ただ、指を動かす速さが1000分の1ということは作成にかかる時間は1000倍となる。

強度的に普通の糸ならばそうはならないだろうが、神織糸ならそうなってしまう。

 

オレ様はその日夜まで編み続けて、そのままコトリと眠りに落ちた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

『ねえ青、コイツいてイライラするんだけど。

 あんたの嫌なところ煮詰めたみたいな性格なのがヤダ』

『ごめんって。

 確かに私に似て他人の心わからない奴なのも認めるけど、ああ見えて技術力とか研究能力とかはすごいから。

 私がいないとホントにダメなやつとは認めるけどさ』

『わたしはそのダメな部分しか関わらないからめんどくさいのよ。

 早めに帰ってきてよ?

 てかあんた以外にコイツまともに従えられる奴いないんだから』

『わかってる。

 今急いでるから待って。

 あと、ほっとくんでいいから家からは出さないで』

『オッケー。

 じゃあ切るね?』

『おけ』

 

プチっ。

まずいな。だいぶ白の機嫌が悪い。

口調だけで本気で怒ってるのがわかる。

思ったより電脳のコミュ障が働いてるっぽいからホントにまずい。

あいつ、コミュ障になるとただの嫌な子供でしかないんだよな。

まるで昔の私みたいだ。

 

お願いだから許してくれ、白。

私とアイツ、共依存だからさ。

どちらかが崩れたらもう崩れちゃうからさ。

だから許して、お願い。

 

次の瞬間、私の脳内に爆音が響いた。

『おい貴様、さっさと元気になりやがれ!

 ドアホ野郎!』

『うるさい!

 ゼルギズ、どうしたの?

 てか今どこにいるの?』

『今はエルロー大迷宮の中層で療養中だ!

 あのなー、話したいことあるんだけどなー?

 クイーンのブレスが来た時、なんでアースにお前ごと転移させなかったんだ?』

 

うん?

どゆこと?

 

『クイーンのブレス前急いでアース吸収してただろ?

 その時お前は危なかったから我は貴様を命懸けで守ったんだ。

 なぜ、ブレスが来るってわかった瞬間にアースと共に転移しなかった?』

 

 

あ。

『そんな手があったのか!』

『あ、あほか。

 いやその時我も気づかなかったからもう言わんけどな?

 とりあえず無事なようでよかった。

 無事なようでよかったよな?な?』

 

こっちはこっちでめちゃくちゃ圧かけてくるじゃん。

これは無事じゃないといえない雰囲気にしてるな?

めちゃくちゃ感謝してるけど。

実際彼がいなかったら私死んでたしな。

卵も産むカタツムリだから彼というべきかはわからんけども。

 

『ありがとう、元気だよ。

 そちらの体調はどういう感じ?』

『今ちょうどレベルアップしたから元気だ。

 今言ったこと考えて少し病んでたが』

『ホントにありがと。

 心から感謝してるし、今度何かしらで恩は返す。

 でも、電脳が帰ってくるまでは待ってほしい』

 

念話から響く素っ頓狂な声。

これは、おそらく私と電脳が分離したこと気付いてないな。

じゃあなんで電脳の方じゃなくこっちに電話くれたのよ。

 

『電脳とどうしたんだ?』

『あいつが拗ねたのよ。

 まー、私も悪かったところあると思うけど。

 仲直りできるから気にしないで』

『それならいいが、仲良くしろよ』

 

優しい口調で話しかけてくるゼルギズ。

だいぶ気をつかっているのかな。

心配かけちゃって申し訳ない。

 

『で、我にしてほしいこととかあるか?

 出来ることはやっておくが』

『うーん、今は特にない。

 それこそ電脳が帰ってきたあとお願い』

『よし来た。

 無理はすんなよ』

 

ブチッ。

やっぱり私も子供なんだろうな。

まあいい、今は急いでクイーンを食い殺さなきゃいけないし。

 

だけどもともとクイーンの捕食なんてモノが3日で終わるわけがない。

私だってクイーンの魂を3日で喰うつもりなんてサラサラなかったしね。

だから少し、私は雑に捕食している。

 

 

私が最初考えてたのはスキルとステータスをまとめて捕食すること。

これの場合、自分の大幅強化は可能だけどその分スキルの保護が必要となり2週間はかかってしまう。

そこで考えたのは魂のエネルギーだけを捕食すること。

この場合、スキルは破壊されてしまうけどステータスは吸収できる。

正直クイーン1体のスキルが本当にもったいないけどそれ以上に時間がないからね。

 

魔王がここまで飛んでくるのにかかる時間はあと6日。

それまでにさっさと食べて電脳を回収する。

 

 

これしかわたしが生き残る術はない。

地味にこれ、ピンチでは?








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78 ある少年の、未熟で届かない物語



過去最高に重いです。
主人公の過去を掘り下げてるので重いものになるのは前から確定でしたが。
ではどうぞ。





愛の形がわからない


オレ様は目を覚ます。

再び目に入るのは、木と糸でできた家の天井。

 

『……』

そうか、念話を使っても青はいないんだった。

我ながら変わってしまったものだ。

研究狂いで魔法にしか興味のなかったはずのオレ様がいつの間にか愛に溺れてしまったのだから。

 

これはなんだ?

身体の上に、糸で出来た大きめの柔らかい布が被さっている。

布団か毛布の類か?

 

鑑定。

『神織糸(作成者 白)』

 

 

昨日は散々怒っていたのに、白が作ってくれたらしい。

怒られたのは、ひとえにオレ様の精神年齢が低いせいだが。

 

「起きたの?

 わたしはアンタの服作れないから、そっちは自分で作ってよ?

 あと水竜捕まえてきて焼いたからそのまま食べて。切ってあるからアンタのステータスでも食えるはず。

 じゃあ出かけてくるから服作ってて」

 

白の声が隣から響いてくる。

それと同時に鳴る、バタンというドアの音。

これは青のための行動なのだろうか。

 

考えれば考えるほど、白の性格の良さが伝わってくる。

白がオレ様の服を作らないのも、こちらの身体のことを思っているからなのだろう。

それもこれも、回収しようとして一度触った時に怪我させたから。

怪我させた後に治癒魔法を使ってもオレ様が痛みをわずかに感じたことに気づいたから。

だから、触る可能性のある服作りを拒否しているのだ。

 

 

こんなことを考えていると、こちらの性格の悪さが際立つ。

やはりオレ様は未熟だ。

青の中に閉じこもっていたからか何もかもが足りていない。

 

人を思いやる優しさも。

自分から愛を与えるという寛容さも。

何より、愛以外でも動くという自分への信用も。

これは一人で生きてこなかったという弊害か、なんなのか。

 

 

違うな。

オレ様が狂ったのは、やはり青がおかしかったからなのだろう。

なんたってオレ様が侵され始めたのは並列意思を吸収したときなのだから。

 

 

そもそもがおかしいのだ。

オレ様が情報として持っている人間の生活と青の生活の記憶がかけ離れている。

いや青じゃない。

青の原型である佐野蒼生の人生がおかしいのだ。

たとえオレ様に心がなかったとしても、比較するだけで狂っているのがわかる。

なぜコイツはここまで心に穴を開けて生きてきたんだ?

 

 

 

なんでコイツはこんな異常な人生を過ごしてなんの病気にもならず生きてこれたんだ?

佐野(さの)蒼生(あおい)、そんな少年の狂った人生がオレ様の頭の中を駆け巡っていた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「なんで俺は、母さんとは別々に住んでるの?」

「私だって好きで別々に住んでるわけじゃないんだよ。

 だから蒼生、諦めて」

「みんなは一緒に住んでるのに?

 なんでウチだけ違うの?」

「……」

「なんでウチの両親は愛してくれないの?」

「……」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「愛が、愛が欲しい!」

「愛って……?

 ーーじゃあ、どうしてほしいの?

 蒼生は、どうしたら愛してもらったと思うの?」

「ただ一回でいい!

 ただ一回でいいから、私を抱きしめて欲しい。

 ただ一回でいいから、抱きしめて愛していると言ってほしい!

 ただそれでいいから。

 ただそれだけでいいから!

 ただそれだけで……」

「諦めて!

 お願いだからもう言うのをやめて!

 ウチの両親は、そんな(あい)し方を知らないだけだから!

 蒼生が愛されてないわけじゃないから!」

 

泣きじゃくる少年の叫びに心が動いたのか、自然と女の目からも涙が溢れる。

だが、少年はそれを見ても声を出すのを辞めなかった。

 

「じゃあなんで、姉ちゃんとは違う苗字にしなきゃいけなかったの?」

「ーーごめん蒼生、もう言うのをやめて。

 あと諦めて。

 いくら言っても無理だから」

 

そう言ってそっぽを向く女。

どうやら、一人称をいつの間にか変えていた少年の叫びは女にはどうしようもないものだったらしい。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「どうする、凛さん?

 このままだと蒼生が耐えられないと思う。

 それ以上に、私が辛くて見てられない」

「ーーそうですね。

 申し訳ありません。

 これは本来私が解決しなければいけない問題です。

 それを貴方に言わせてしまうとは」

「いいの。

 もともと私もこれには完璧に対処できると思ってないから。

 それ以上にウチの状況を鑑みれば元来頼むことすら憚られることだもの。

 割り切れてる私が特殊なだけ。

 何より、ウチの両親でさえ解決できるとは思っていないであなたに依頼しているはずよ。

 そこは凛さんも承知の上だろうけど」

「お気遣いありがとうございます。

 ですが、私のやらなければいけないことは変わりません。

 私に課せられた仕事なのですから」

 

「そう?

 それならこれからもお願いしますね、凛さん」

「お言葉ありがとうございます」

「私にはそんな敬語で喋らなくていいって言ってるのに。

 じゃあ、これからもよろしくお願い」

 

ガチャリという扉の開いた音が響く。

だがその扉が閉じる前にも女は口を開いた。

 

「あと蒼生が一番気にしてたの苗字らしいからそれについても考えて。

 その平凡で当たり障りのない苗字も、私たちと違うだけで十分な凶器になりうる。

 矯正するの本気でやるのなら頑張ってね。

 ーー難しいとは思うけど。

 

 佐野凛さん」

 

「ご助言ありがとうございます。

 ですが、私もあくまで九重(ここのえ)家の侍女の一人です。

 課せられた仕事は全てやり遂げます。

 

 九重いぶき様」

 

 

そして扉は完全に閉じ、部屋の隅で寝たふりをした少年は涙を流していた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「なんで泣いてるの?

 まだ拗ねてるわけじゃないよね?

 てかもう夜だし、ご飯食べてないなんてとんでもない。

 ほら食べて」

 

 

あれ、泣いていたのか?

このオレ様が。

機械のように生きていたはずのオレ様が。

 

外はもう暗い。

何もやっていないのにも関わらず、オレ様の目の前に置かれた皿と肉、そして野菜。

その肉も力の弱いオレ様のためか細かく千切られている。

まるでいぶきという女のようだ。

静かに蒼生という男に愛を与え続けた女のようだ。

ただ、生前には己の未熟さからそれに気づき切れてはいなかったようだが。

 

 

 

 

オレ様は思う。

もう終わってしまったのだと。

楽に自由に生きていた、幸せな狂気の世界はもう心の中でとっくに終わっていたのだと。








高評価、感想よろしくお願いします。




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79 ほら、仲直りのお時間ですよー



高評価、感想お願いします。


あれから丸2日。

丸2日頑張って、ついに達成した。

 

《経験値が一定に達しました。個体、オリジンエレテクトがLV2からLV3になりました》

《経験値が一定に達しました。個体、オリジンエレテクトがLV3からLV4になりました》

《経験値が一定に達しました。個体、オリジンエレテクトがLV4からLV5になりました》

 

よっしゃ!

クイーン捕食終了!

よーし、じゃあ準備だ。

 

『ゼルギズ、アース連れてきて!

 捕食終わったー!』

『やっと仕事か。わかったわかった、今行く』

 

私はクイーンタラテクトの脚で身体全体をカリカリと掻きながらゼルギズの到着を待つ。

実は電脳がスキル全ての所有権を担っているために、この身体では私自身のスキル、例えば転移とかを使うことができないのだ。

そのせいで賢姫なんていうバケモノ眷族支配も発動出来ないし、産卵も不安定にしかできない。

ただ念話だけはちゃんともとから持ってくれていたからよかった。

これが無ければたまたま近くに娘が来ない限り詰んだ筈だしね。

 

あ、そうそう、白にも連絡しないと。

『白ー!

 捕食終わったから電脳屋外の広い場所に連れてきて!』

『オッケー!あと何分くらいで来るの!』

『3分くらい!電脳の調子はどう!』

『うーん、なんかしおらしくなってるけど反抗の意思はないみたい。

 あんたのこと、本当は嫌いじゃないみたいだし従うつもりみたいよ』

『ありがと!じゃあお願い!

 連れてきたら連絡頼むね!』

 

プチっ。

念話を切り私はため息をつく。

電脳が私のこと嫌いなわけないじゃないか。嫌いになるようなことが出来るやつなら、私はこんな世界まで来る前に死んでいる。

私は私が好きだから生きてきたんだから。

私が好きだから。

もちろん、白も同じくらい好きだけど!

 

私を愛してくれるのだから。

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

「で、アース連れてきたが行く宛は立ってるのか?

 てかお前、ちゃんと食ったんだよな」

「食べたよ。ほら」

 

アースと共にゼルギズの目の前で前脚をブンブン振って、無事をアピール。

おっと危ない、腕を振りすぎてよろけた。脚が長いからその分の遠心力も大きくなってるぽい?

身体が急に大きくなるとその分扱いづらくなるもんだ。

一重に私が慣れてないだけだろうけど。

 

「お前、いくらクイーンといえども長時間我に触れたら溶けるからな?あの時は少し時間が足らなかっただけで」

「ごめんって。

 でもありがとね。急にクイーンとの戦闘に駆り出して。正直そんなに期待する戦力として出してなかった」

「フハハハッ!

 別に構わん!我だってお前の孫を狩っていたのだし、これでチャラだろう!

 

 てかお前もう少し頭良くなってくれない?

 我、はっちゃけたいのに貴様馬鹿すぎてふざけらんないんだが」

 

ああん?

コイツ私が感謝してるのに乗じて色々吐きやがったな?

エスカルゴにして食ってやろうか、マグマカタツムリ。

いくら弱体化してるとはいえアンタなら狩れるわ。

 

私が糸を発射しようと脚を構えた瞬間響く念話の着信。

くっ、命拾いしたか。

白に感謝するんだな。

 

『もしもし?こちら白。

 無事クイーンが来ても大丈夫な広場に到着。

 そちらはどう?テステス』

『こちらも全部オッケー。

 その場所、なんとなくでいいから送って』

 

うーむ。

エルロー大迷宮の下層の広場か。

みんな転移出来るしそこでいけそうだね。

 

『じゃあ行くね』

『オッケー』

 

アース、じゃあ発動お願い。

転移!

 

私は、アースの転移によって下層へと移動した。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

シュタット!

無事到着!

えーと、白と電脳は……?

 

いたいた。

電脳、白に身体簀巻きにされて歩かされとる。

これ昔の戦争捕虜の扱いじゃない?

まあいいや。

 

『白、先にやることやっちゃっていい?』

『うん』

 

じゃあ、遠慮なく。

 

私は自身の身体に触れる。

そしてぬるりとところてんのように魂を身体に入れた。

 

あー、やっぱり居心地がいい。

いくらステータスが下がってるとはいえ懐かしい温度がして落ち着く。

精神空間が狭いのも気が楽だ。

ただ、言わなきゃいけないことは言っておかないと。

 

『で、電脳。

 アンタが私にやろうとしたことわかってるね?』

『ああ』

『ならいいよ』

『!?』

『今回の件に私はすごく理解があるつもりだ。

 私だって転生前は家出しかしてない。

 それでなんか変わったかといえばなにもないけどね』

 

 

『電脳が私の軌跡を辿ったのは少し残念だとも言えるけど、逆に言ってしまえばそれも私らしい。

 ま、結論としては私が悪かったのもあるから。

 チャラってことで』

『いやお前、あのまま放置されてたら死んでたんだぞ!?

 魔王だってそっちに飛んできてだんだから!』

『スキルポイントだってあったんだし、念話なんてのはいつでも誰でも獲得出来るやつだからいいの!

 あとアンタだって自分の手で殺せなかったクセに悪い子ぶらないの!』

『……』

『ね?』

『すまなかった』

『よし!』

 

しばしの沈黙。

え?なんで私、和解したはずなのに気まずいの?

なんか悪いことした?

 

 

「で、この後どうするの青」

「うーん、今まで通りアリエル対策はしていくつもり。

 あ、またちょっとだけ待って」

 

 

『1つ電脳に指令を出す。

 これは君の罪滅ぼしの意味も含んでいる。

 「歪」を即解除しろ。

 どのくらいで出来る?』

『たく、お前にゃ敵わねーな。

 1日でやる。てかお前、よくオレ様が歪解除できるってわかったな。

 腐っても「歪」は支配者スキルに匹敵する最重要スキルの扱いなんだからな?

 Dがオリジンに課した枷なんだからよ』

『でも所詮システム上の枷でしょ?

 体内にMA原子炉持ってる奴が言っても信用ないって』

『ッ。

 そこまで知ってんのかよ。

 バケモンだな』

 

すっごい嫌そうな声出すじゃん。

私だってアンタの考えなんてわかってるのよ。

オリジンになったら最初に作りたいってずっと思ってたじゃんか。

カマかけてみたら、まさか弱体化中に手に入れてたとは予想以上だけど。

 

『クイーンはどうするんだ?』

『うーん、もうスキルも抜き出せないただの抜け殻だしな。

 暴食地獄にでも突っ込んどいてもらえば?

 アイツらも腹減ってんでしょ』

『ほんっと、趣味悪いよな。

 あの地獄作るとか』

『対アリエルの兵器に文句言わんでくれない?

 アンタだって賛成したんだから』

『いや、あれはまだ人の情がほとんどーー』

 

 

 

「そろそろあの機械について説明してくれない?

 わたしも想像できてるし、簡潔にでいいからさ」

 

『『すみませんでした』』

 

コイツ、仲違いのことばっか話してたの?






もともと卵を実質無限に産めた時点でMAエネルギー的にはバグってはいるんよな、この蜘蛛。





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80 特異点の胎動


高評価、感想お願いします。




「まず最初に言うと、白が見つけた機械は地下施設にあったものだ。そして、その地下施設はおそらくMAエネルギー採掘場。もともとは星から奪ったMAエネルギーを蓄えてた筈だ」

「筈っていうのは?」

「今はあの施設、死んじまってるからな。事実、ーー」

 

うーん。

私知ってることが少なすぎて話に参加できんぞ?

いや私がなにも知らないってわけじゃないんだけど、いかんせん実際に行ってきて調べた奴がいるから完全に役に立たない。

知識量的には単純劣化だし。

 

どうせだしオリジンに変わった身体を調べておくか。

指から斬糸を出して白からの拘束から抜け出す。

 

下を見た瞬間、現れる肌色の身体。

え?これ、いろんなもの露出してるよな?

え?

 

 

 

ッー!

わたし服着てないじゃん?

これどういうこと!?

 

「いやお前、別にもともとなにも持ってないだろうが!

 今更気にすんな!

 フハハハッ!」

 

うっさいゼルギズ!!

今はアンタ黙ってろ!

そういや、人間体験してないやつは服の重要性分かってないよなあ!

 

 

はー、はー、落ち着いた。

「そうだった、コイツ転生者でもなんでもないんだった。

 妙に会話できるモンスターだしてっきり服の意味くらいわかってると思ったけど」

「口に出てる口に出てる。

 あと地味に今我のことディスらなかった?」

「いや?」

「うん?」

 

 

まあでも、コイツだってオリジンなんだからすぐに人化するだろう。

そのために服の重要性は教えておかねば。

いつかは人里に降りてきてもらうつもりなのに、露出狂になると困る。

 

「ねぇゼルギズ」

「なんだ?」

 

 

自分の腕を指差しながら、糸を何回か巻きつける。

 

 

「これが糸、わかる?」

「いやわかるが。

 当たり前だろう。我だってお前の戦闘見てるんだから」

 

 

呆れるように肩をすくめるカタツムリ。

やっぱコイツ、やっちゃっていいのでは?

そのまま糸の量を一気に100倍にして、あやとりの要領で右手と左手で一気に編む。

そして、手の間に出来た一辺5cmほどの布を見せる。

 

 

「これが布。わかる?」

「この小さい糸の板がか?

 見たところ何の意味も無さそうなのに、ちゃんとした名前があるんだな。驚いた」

 

 

はー、これだから野生動物は。

アンタらの身体と人の身体は色々仕組み違うのよ。

 

「で、今の布を身体の形に合うように組み合わせて、身体の外側に纏わせる。

 それが服ね。人間っていう生き物はみんな、この服ってものを着るの。ちょっと作るのに時間かかるから家で作るけど」

「そうか!フハハハハッ!!そうか!

 完全に理解した!

 貴様は今人の姿をしていて、これから人の擬態をするために服という布の塊を纏うのだな!

 どうだこの名推理は!」

「はぁー。

 大体合ってるよ。私の羞恥心からってのも結構あるけどさ」

「だが、なぜ人は服を纏う必要があるのだ?

 貴様は簡単に作れるからまだ良いものの、人は猿の仲間なのだろう?

 糸すら簡単に作れないと思うが」

 

 

く、コイツ、カタツムリのくせにいい質問してくるじゃないか。

地味に猿の仲間とまでいい当ててるし。

 

 

「私の身体をちゃんと見ればわかるでしょ?

 あと、人のステータスは今の私くらいのステータスだから」

 

 

両手を広げて、クルリと回る。

相手が人間ならまだしもコイツはただのカタツムリ。

だから別になんも恥はないし、なんならマグマに触れたら死ぬから恐怖の方がまだあるといえる。

 

 

「うーむ、猿と違って胴体にはほとんど毛がないのだな。

 我のように粘液で覆われているわけでもないとなると……。

 となると、身体の防御のためか?」

「正解。服がないとめちゃくちゃ簡単に人は死ぬ。寒さとかでもいっぱい死ぬんじゃないかな。

 あと、サブ的な理由としては生殖が案外関わってたりするね」

 

 

「生殖か?」

「うん。

 人って他の猿より頭いいから、その分発生に時間がかかるの。

 妊娠っていう体内に入れたまま幼体を育てる方式を人はとってるんだけど、同時に年中発情期でもある。

 発生に時間がかかるということは、母体のダメージも結構来ちゃうし、産むのはそんなに出来ない。

 だけど男の欲は他の獣と違わず結構大きいから、男と女で釣り合いがとれない。

 だから、男女とも服を着るようにして、生殖器を隠すことで互いの欲情を誤魔化すようになったという話もある。

 あくまでも身体の防御の2の次だけどね。

 あ、あとついでに言っとくとここが生殖器の入り口。カタツムリは首らへんだろうから全く感覚違うと思うけど、いつかアンタも人化するんだろうし覚えといて」

 

 

 

私は股の部分を指差しながら話をする。

ゼルギズはウンウン唸りながら考えてるけど、正直やめて欲しい。

私だって好きでコイツに股間見せてるわけじゃないんだから。

いつかコイツだって人化するんだし、どうせ体温管理とか要らんやつにはこういう性的な話しか注意点ないんよ。

倫理感的なことも齟齬が大きすぎて伝わんないと思うしさ。

言っちゃえばもともとがカタツムリだから性の対象がどうなるかわからんけど、結局人になったら困るし。

 

 

 

いや、カタツムリ相手でも見てて嫌だけどさ。

私が人間に対して性的欲求抱いちゃってるんだから十分人でありうるんだろうなぁ……。

あー、ヤダヤダ。

サッサとコイツの目の前から離れたい。

私自身、どんな身体してるのか気になってる部分あるのに。

元男だったし色々気になるっちゃ気になるのよ。

胸の部分とか、股の部分とかさ。

 

 

「はいじゃあこの話終わり!

 アンタにはあとで助けてくれたお礼あげるから!」

「で、こういう場所を自主的に保護するために羞恥心が生まれたのだな」

 

タッタとゼルギズの目から逃げて、端にうずくまる。

そしてそのまま大きめの布を10秒くらいで作って真ん中に穴を開けそこに頭を通す。

これで見た目はてるてる坊主だけど隠す場所は隠せた筈だ。

でもそのかわりか、1つだけ知りたいことができた。

 

 

コイツにはなんの魔法が一番効くんだろう。

 

 

 

『おい青、とっくにこっちは話終わってるしなんなら白は先に帰ってるぞ。

 こっちはどうする?』

 

あ、そうか。

さっきから頭の中が静かになったと思ってだけど、もう白との会話終わってたのか。

ゼルギズのせいで色々考えちゃってたから気づいてなかったわ。

 

 

『うーん、一回最下層行こう。

 身体の作りとか、MA原子炉についてとか確認しないといけない』

『ゼルギズは?』

『別にほっといていいでしょ。

 死なんし』

 

 

「じゃ、ゼルギズ!

 報酬は明日まで待って!」

「オッケーだ!

 無事を祈る!」

 

転移の直前、耳に届く声。

私はそれに返答する事なく、ワープゲートに飛び込んだ。

 

うん?

最後まであいつ、私のこと馬鹿にした?








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81 運命の神獣、逆鱗

連休中、予定が重なり投稿が遅れていました。
無事書き終えられたので投稿します。
高評価、感想よろしくお願いします。



称号「特異点」「運命の神獣」


あのあと、私は最下層に行ってさまざまなことを調べた。

自身の体についてや世界の仕組みについて。

私が体をどうやっていじったかについては大したことではないし省くとすると、下層に行った上での結論としてはDの性格がすごい悪いというのが大きい。

いや前からわかってたけどさ。

 

というのも、サリエルをしばっていたのが案外簡単な魔術だったのだ。

流石に私がそれを作ることはできないけれど原理自体はわかるくらいの簡単な魔術。

 

のはずなんだけどなー。

あの邪神敢えてこんがらせてきやがった。

さまざまないらない魔術を挟み込んで、魔術の簡潔化を可能にするコードを導入した上で簡潔にさせなかったり。

一つの魔術のために五つの言語で書き込んでいたのはいくら私でも閉口した。

 

 

で、システムに囚われるサリエルを見て思ったのは、サリエルが囚われた当時はかなり緊迫した状況下だったということ。

それこそ今にも世界が滅びますって感じだったのだろう。

じゃなければ、私でもわかる胡散臭さマックスの魔法陣に足を踏み込むなんて考えないはず。

まるで振り込め詐欺のような手口だ。

ほんとにタチが悪い。

 

あとそういえば、最下層に面白い龍がいた。

たしかガキアだっけな。

あの龍自体はステータス一万くらいで脅威じゃないんだけど、面白かったのはその周りにいる奴ら。

体表にバチュルやマグマックの進化系がいっぱいくっつけながら歩いてたのよ。

 

しかもおそらく故意につけていた。

身体の見やすい位置にも普通にくっついてたし。

てかマグマック、体表マグマなのになんでつけられるのん?

 

ともかく、今までの龍の行動を踏まえるとモンスターなのに知能が高すぎる。

少なくともスキルを育てるために敵をわざと体につけるのは知能がないと絶対に出来ない。

ただ、四足動物である以上進化の過程でそこまで賢くなるはずはない筈だ。

地球の環境と大きく異なるわけでもないのだし、龍という存在自体が歪つ。

もちろんスキル云々でどうにかなる問題でもないし。

 

 

やっぱり、龍族は人為的に生み出された種族か。

となるとアリエルと生まれは同じなのか?

アリエルもアリエルで蜘蛛とは全く違う姿をしているのだから、生物としては歪だ。

一番構造バグってるのは絶対私だと思うけどもね。

 

『そう、歪だ。

 まるで今のステータスを奪われオレ様たちのようにな。

 オレ様はこんなスキルの存在自体が怪しいと思うが』

『まるでなにか言いたげな口調だね。

 私とアリエルの共通点……?

 そうか。オリジンであること!

 オリジン種は皆、歪に苦しむのか!?』

 

『あくまでオレ様の予想だがな。

 すると、アリエルもオリジンになりたての頃は歪に弱ってたんじゃないか?』

『そうだねー』

 

『『だからといってもなにもわからん!』』

 

「はい、アンタら!

 ご飯作りの手伝いしなさい!

 貧しい人の分も作るって言ってたのにいいの?」

 

白、お母さんみたいになってきてない?

 

ーーーーーーーーーーー

 

ちなみに、私によるボランティア活動は再開されている。

なんだかんだステータスが戻るのは明日だし、戻ったらやりたいこともあるけれどひとまずは人を助けようという感じだね。

 

水竜の肉を巨大な鍋でグツグツと煮ながら考える。

人の姿になった以上、吸血少女のとこに挨拶しに行った方がいいのかな。

まだまともなコミュニケーションは怪しかった訳だし。

 

『そうした方がいいと思うが。

 まあお前が嫌だというなら行かなくてもいいけどな。

 言葉は無くとも、事実この街はオレ様たち無ければ成立しない』

 

そう。

私たちは、なんだかんだ1ヶ月ほどはこの町に留まっている。

私たちが卵で栄養を与えることで、人族は飢餓から抜け出した。

そして今に至っては全ての状態異常が解除されている。

街の人がほぼ全員かかっていた毒状態も無事に解除されていて、私のお陰で助かった人は100人はくだらないだろう。

それほどこの街は一変した。

 

だけど、同時に人族の身体も一変した。

もともとは強かった免疫もたった3週間ほどで弱体化。

流石に地球人とは比べ物にならない程度は維持できてるものの、元の身体と比べれば免疫力は半減近くに低下している。

 

特に黒斑病に対する耐性がなくなったのが不味い。

黒斑病というのは下水から水を摂取することで発生する寄生虫型の感染症で、症状が現れてからたった1週間で致死率3割を上回る恐ろしい病気だ。

だけど元々は免疫があったお陰で症状が発生することは稀だったし、精々かかるのは生まれて間もない赤子くらいだった。

 

その病気が、私の街を出た人には頻発して発現している。

しかも、赤子に薬を与えても致死率が高いからかまともな薬すら発明されていない。

今はアースを派遣して治癒魔法を撃つことで解決しているけど、このままだとこの街の成長に対応出来なくなる。

 

まさか、たかが中世の情報伝達能力で、飢えがないという理由だけで1ヶ月で人口が2割増えるとは。

それだけ、人族の生活が困窮しているとは。

こんな時代、誰だって終末世界に苦しんでるに決まってる。

 

 

 

はぁ。

ごめん、アリエル。

やっぱり私、アンタの考え打ち砕いてやるよ。

歴史如きが今の人族を傷つける権利なんてないんだよ。

 

ああ。

認めてやるよ。

確かに、サリエルはこの世界から奪われた。

お前が中層で言ったこと、確かに認めてやる。

 

だけどな。

奪い返さなかったのは、貴様だ。

引っ込み思案の臆病馬鹿が。

 

私だったら、白を何があっても奪い返す。

相手が、神でも、Dでも。

それは貴様の、怠慢だ。

 

それから目を逸らして。

目を逸らして来て、今にも崩れ落ちていく一つ一つの意思を、何千年も放置してきてよくそれを恥ずかしがらずに言ったな。

人は、神と同じく死ぬんだぞ。

貴様がサリエルに持った、愛のような感情は一つ一つ宿ってるんだよ。

 

 

私は腐っても特異点で、腐っても()()()()()だ。

私が運命を決める。

それだけの可能性を、力を、私はすでに掴んでいる。

 

だから(いにしえ)、世代交代だ。

黙ってろ。

私が貴様の1番したいこと、全部叶えてやる。

 

 

 

あとD。

私は、貴方の殺害は望んでいない。

だから1つだけ。

 

一発、殴らせろ。









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82 2人目の暴食者



高評価、感想よろしくお願いします。




『システム、アンロック。

 処理が終了しました。

 デバイスを再び保護します』

 

 

やっーーーと、終わった!

スキル歪で起きてた制限の破壊!

これで私も自由だ。

めいいっぱい遊ぶぞー!

 

というわけには行かない。

ちゃんと力を取り戻した上でやらなきゃいけないこともある。

 

『白、ステータス取り戻したから機械のとこ行ってくる』

『オッケー!

 うーんと、魔王はエルロー大迷宮の上層らへんにいるのか。

 方角は違うから大丈夫だと思うけど気をつけてね』

 

あれ?

なんでアリエル、エルロー大迷宮なんかにいるの?

用事なんてなかったはず……。

 

『そういえば私、マザー統合したの』

『あ、そういうことか』

 

白、地味に私がクイーンでのところにいた時にマザー統合してたのか。

ならアリエルが向かっていったのも理解出来る。

手札の所有権が変わったなら早めに処理しなきゃだしね。

それに追っててもどうせ転移で逃げるって学習しただろうし。

 

 

ま、どっちにせよアリエルがこっちに来ないのは好都合。

来ちゃえば私だって舐めプできないし、何よりまだ準備不足だし。

エルロー大迷宮で時間使っててくれ。

 

 

じゃあ、転移!

シュタッと研究所の上の地面に着地する。

そのまま近くの穴を潜っていくと山のように積み上がっている機械類。

おお、ありがたいことに白ちゃんとしまってくれてたみたいだ。

やっぱ白って結構ちゃんとしてるよね。

 

 

着ていたワンピースを脱ぎ、電脳を発動。

なんだかんだ電脳も服作ってくれてたんだしお礼言わなきゃな。

最下層から帰ってきた時も、ずっと考え事してたおかげであまり話せてないし。

 

 

さて、再び全裸になったわけだけど、私が痴女ってわけではないと思う……。多分。

暗い穴の中だし見てるような人もいないわけで、私は別にいいと思うんだ。

とりあえずステータスは取り戻してるわけだし、こっからこの体の本領発揮だ。

 

 

背中の辺りで腕の成分を生成して、肩甲骨の下あたりから腕を2本生やす。

それと同時に金属のサメのような歯を一瞬で生やす。

今あった子供の歯は生え変わる時に一瞬で溶け落ちたし、地味に人外になったんだという実感が湧いて来てるなぁ。

 

 

そのまま元からあった2本の腕で機械の情報収集、新しい腕では調べた機械や鉄屑を掴んで口に持っていく。

うん早い。

マルチタスクできる脳の容量があるからやって正解だった。

 

私は機械を見たことでこの世界でも使ってみたいなと思うようになった。

ただ私が前世から持っている知識には限界があるわけだし、いくら電脳で計算したとしても机上の空論に過ぎない。

だから目で見ながら機械をバラすことでこの世界での理を理解していく。

そして、電脳も叩き込みながら解析していく。

 

だけど同時に銃火器を作るとなると金属を摂取しなければいけない。

ただ解析した後に食べるとなると時間がかかる。

腐っても世界の癌だから早めに処理しておきたいし、ギュリに勘づかれたら面倒臭そうだから早く作業を終わらせたい。

 

 

その結果思いついたのが腕を2本追加で生やすことだ。

追加で生やしてしまえば食べながら機械をバラすことも簡単だし、なにより私と電脳でストレスなく役割分担出来る。

せっかく仲良くなったのにまた仲悪くなるの嫌だし。

ま、もう大丈夫だとは思うけど。

 

 

歯も実は簡単な仕組みで生やすことができる。

作り方は単純。

金属に超電圧をかけて熱を加え、好きな形に加工する。

それを体の表面上に露出させるだけだ。

体内で作業を行うのが難しいって言われたらぐうの音も出ないけども。

 

 

ガキンという音が地中に響く。

バキバキという音とともに銃弾が砕かれる。

地上までプラズマが走り、木々が焦げる。

それも無視するかのように、地中から金属が砕かれる音は響いていく。

 

 

10分後には、私が地上に持って来ていた分の武器や金属は影も形も残していなかった。

 

-------------------

 

 

次は研究所そのものだ。

実際はエネルギー採掘所って言った方がいいのかもしれないけど。

とりあえず食べていこう。

 

 

シェルターの外壁に噛み付くと響く、ガキンという歯がぶつかる音。

これ硬いな。

壁が厚いからか噛み砕ききれなかった。

それどころか力を加える場所がなくて、歯が滑ってしまう始末。

 

 

しょうがない。

もう少し本気を出す。

 

『爆雷、死音、カミゴロシ、発動』

 

もともと死音(シオン)は平均防御能力を低下させるスキルだけど、原理から操って仕舞えばそんな仕様は関係ない。

金属とかの無生物であっても、原子から揺れ動かして仕舞えば硬度を低下させられる。

Dも余裕ぶったもんだ。

魔法を補助ありで使わせるってことは、その原理全て公開するようなものなのに。

原理から再現してくる生き物が現れるとは想定もしなかったんだろう。

 

そして歯にはカミゴロシを付与する。

元々連続斬だったのが、いつしか魔連斬となって、そのまま魔王斬へと変化して、カミゴロシと至った。

つまり言うならば斬撃属性の最高威力物理攻撃魔法。

正直私も無機物に使ったことはないから、どんな切れ味なのかは想定がつかない。

 

それに加えて、平均攻撃能力と平均速度能力を倍近くまで引き上げる爆雷。

顎周りに発動することで、頬の辺りをバリバリと電流が走っているのを感じる。

ピリピリという感覚とともにSPも減っていくけど、戦闘中でもないし困るもんでもない。

ここまでバフデバフかけまくるとどうなるか、いざ!

 

 

するっ。

金属のものではない感触。

まるでプリンのように柔らかく抉れ、口の形にそのままの形で削り取られる金属。

そして口の中でそのまま溶解して飲み込む。

思ったより柔らかいし簡単に切れる。

何より電脳が体内で処理するから私は食べるだけでいいのが本当に便利だ。

 

これを繰り返してどんどん外壁を削っていく。

壁の厚さが50cmくらいあるのは大変だけど問答無用で削り取れるのはすごい楽。

体内での処理も無事進んでるみたいだし、そのまま食べていけばいいか。

口の大きさが中学生並みだからキツいけど!

 

 

がちん。

歯がぶつかる音が響く。

うーんと、おそらく貫通したか?

 

『あ、少し待て。

 貫通したとしても、建物を食い切る前にまず中を確認させてくれ。

 オレ様が一度侵入した時は中の探索雑にしか済ませてないしな。

 MA原子炉に使える素材もあるかもしれねぇ』

 

あー、オッケー。

私も色々知識を蓄えて損になることないしね。

全て食い尽くす前にまずは探索しよう。






食事パート前半終了


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83 全てをまた、ゼロから


高評価、感想お願いします。


穴が空いた場所を押し開き、床に飛び降りる。

まずは死んだロボたちの解析をしたい。

いくら死んだといっても、経年劣化で死んだっぽいから原型はかなり保たれている。

元々の素材の金属が頑丈なだけなのかもしれないけれど。

 

うんうん。

魔術の展開式は損傷が少ないね。

これなら、電脳が戦った時のデータも合わせて修復出来そう。

 

そんなことを考えながら工場見学のような気分で進んでいく。

ロボの整備をするロボや、施設内の空気を清浄するシステムはあったりするけど、あくまでここは死んだ施設でそれらが動くことはない。

 

やっぱりこの世界は、一度滅んだんだなとしみじみと思う。

この施設内だけは地球の技術力を大きく上回ってるんだもん。

もともと、技術力が無ければ滅ぼすことすら出来ないだろうしね。

 

一際大きな自動ドアに突き当たって、力技でドアを開ける。

そこにあったのは巨大な機械。

エネルギーはもう作られてないみたいだけど、ぱっと見であっちゃいけない存在なのはわかる。

事実、これでこの世界は滅んだはずだ。

 

MAエネルギー発生装置。

稼働していたときは、中心にあるコアに大量のエネルギーが詰められていたのだろう。

まだ稼働してるやつもこの世界にはあるんだけど……。

 

ただ、もう作動しないこの装置に用はない。

背中から再び腕を生やして上からバラしていく。

バラして、仕組みを調べて、バラしての繰り返し。

その間ももう2本の腕で引きちぎりながら喰らい続ける。

よくわからない油も、金属も、放射性物質も。

 

体内に巨大な空納を開いて、全てを飲み込んでいく。

私のMA原子炉にも使えそうな物質はある。

特にコアの部分。

MAエネルギーを蓄えた時の経年劣化が、こっちの体内にある素材より格段に少ない。

そもそも私の原子炉がどう動いてんのかは完全にはわかってないんだけど。

 

だって私のエネルギーの生み出し方星と同じだよ?

星と同じことを中学生くらいの大きさの体でやってるのに、仕組みを完全に理解している方がおかしい。

電脳はわかってるのかな。

うーんでも、わかってないんじゃないか?

そんな簡単にわかるんならエネルギー生み出してる生き物もっといてもいいと思う。

 

バクバクと食い破って引きちぎっていく。

まるで食べ物のように。

一瞬で引きちぎり、喉の奥に飲み込む。

これが暴食なのだろうか。

そんなの、私にはわからないけども。

 

部屋の中央の装置を食べ切って今度は施設全体の内壁に目を向ける。

施設の外側だけ食べなければ崩落しないだろうし、大丈夫なはず……。

 

バキッ。

うん、装置より弱い素材で出来てるみたいだ。

金属としては硬いけど弾力はほぼないから結果的に耐久は低くなってる。

てか装置、やっぱ珍しい金属だったっぽいな。

食べといてよかった。

 

部屋の内壁を食べた後は死んだ機械たちを食べる。

腕を2本追加して、電脳も活用して、どんどん解析。

いくら死んだやつといっても仕組み的には学べるんだから使わない理由はない。

新人歯科医の研修だって、歯医者で抜いた歯を再利用してるんだし。

世の中SDGSだよSDGS。

 

うん?

あ、術式の確認もしたいのか。

はい。

 

私は目の下にもう2つ小さな目を開く。

気分はまさに両面宿儺だ。

いや、腕4本で目が4つということはマジでそうなのかな?

知らんけど。

はーい、知らんけどって言葉流行してるらしいから覚えとけー!

ここテストに出るぞー!

 

てな感じで、読み取りながらさらに分解。

機械の数が多い……。

地道だけど一体ずつやってくしかないか。

 

 

 

体感1日かかった。

これ、私が悪いわけじゃないと思う。

てか誰も悪くない。

許せ。

 

 

『最後に外壁だな。そしたらこの施設があった空間は崩落してなにもなかった場所となるけど、本当にいいな?』

『もちろん私たちが選んだ道だよ。それにこんな場所、守ってる意味も必要も無いしね』

『そうだな。

 お前、失うことを恐れてた時より少し変わった。人は変わるもんだな』

『変わった?

 でも、それならあんたはもっと変わってるけどね。なんたって、思考回路の根本すら変わってんだから』

『ふっ。じゃあ食うか』

 

あーもう、話逸らしたなこのキザ!

めんどくさい!

 

グニャ。

そんな音が聞こえそうなほど柔らかく金属がねじ曲がる。

そして喉がスライムのように変形して広がり、ごくんと飲み込まれる。

今の私は人だけど人じゃない。

なんでもできる存在なのだ。

 

鋭く尖った牙で金属を噛みちぎる。

そしてまた飲み込む。

過去の産物なんて、私が全て生まれ変わらせてやる。

 

飲み込んだところの天井が崩落して半身が埋まるけど、食べながら土を持ち上げて脱出。

窒息死だけは怖いけど、もう私の体内で酸素なんて作り出せるだろうしおそらく大丈夫なはずだ。

私はそんな崩落なんて無視して食べ続ければいい。

ガキン。グシャ。グニャ。

バキッ。ガコン!ドシャ。

 

そんな解体作業は、一昼夜かけて行われた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ご馳走様でした」

青空の下、陥没した地面の前で私は手を合わせる。

過去の人たちに感謝だ。

技術以外の部分では戦犯しかしてないけどさ。

 

『この後はどうするんだ?』

『うーん、人助けでもするか。

 施設を食べ切っちゃった視点で、アリエルがちょっかい出したところでもう私は止められないし』

 

そう。

これで対アリエルの準備は十分すぎるほど整った。

もう絶対に私は止められないし、止まらない。

アリエルにとってのタイムリミットは過ぎてしまったわけだ。

 

エルフの奴らはもとからどうとでもなる。

と考えると、やはり民間人の保護が最優先なわけだ。

人権なんてクソくらえな世界だからね。

人命第一よ。

 

 

 

誰も悪くは無い。

誰もが幸せを、自由を、遊びを求めただけ。

所詮、どんな世界も弱肉強食なのだ。

政治戦争も金融戦争も、企業戦争も。

前世の私に課された重い罪も。

 

だけど私はそれが嫌いだ。

夢物語かも知れないけど、私はそれが大嫌いだ。

だから邪魔をしないで。

私が作る。

 

 

子供が屈託のない笑顔を浮かべる、新世界を。






私は最強(あくまで個人の感想です)



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84 人生鰹節




高評価、感想お願いします。
後書きにアンケートを出したので見てください。




私が食べていた2日の間になかなか凄いことになっている。

いやはや、まさかアリエルが最下層で止められるとは。

地龍凄い。地龍鬼凄い。

 

 

確かにアリエルは白にやられたクイーンを狙って下層まで来ていた。

そこから撹乱させるために娘たちに転移でクイーンを運びまくって貰ってたけど、まさか最下層で地龍が足止めしてくれるとは。

想定外にいい方向に進んでる。

 

 

しかも地龍たち、勝利とまではいかなくてもなかなか善戦出来てる。

ステータスが低いからすぐにやられてしまうのかと思ってたけどどうやらそうでもないらしい。

 

 

というのも神龍結界。

魔法妨害効果と物理的な壁としての効果を併せ持った世界最高峰の絶対防御スキル。

これが厄介なのは、魔法かどうか関係なくスキルなら全て封じてしまうから破壊するには純粋なパワーで叩き壊すしかないこと。

しかも地龍たちは空間魔法も複合して同時使用している。

アリエルはスキルレベルも低いし空間魔法を打ち破る術がない。

だからパワーを上げて魔法ごとぶち壊してるみたいだけど、その間にも新しい結界が貼られて地龍は後退する。

それをアリエルがまた破壊。

その間に新しい結界を展開。

この繰り返しだ。

 

 

ただ今回の戦い、地龍は絶対に勝てない。

なぜならこの戦いにおいてアリエルのSPは減少するどころか増加し続けているからだ。

アリエルが口を閉じると結界が抉れる。

そして咀嚼して飲み込むとSPが回復する。

改めてヤバいなこのスキル、暴食。

 

 

『暴食:神へと至らんとするn%の力。全てのものを捕食可能になり、純粋エネルギーとしてストックすることができる。また、Wのシステムを凌駕し、MA領域への干渉権を得る』

 

 

これのためにアリエルはどんなに戦ってもSPが減少することがない。

つまりこの人相手に持久戦は不可能。

それどころか、どんなに耐久ができてアリエルを動かすことが出来たとしても負かすことはできない。

大罪スキルの中でも戦闘に特化したバグスキルだと思う。

 

 

私もなんでも食べるけどあれは物質の貯蓄であって物質をエネルギーに変換することは出来ない。

MA原子炉もアリエルの瞬間回復量に比べたら劣っているかも知れない。

私も真っ向から戦えば勝率は五分五分だろう。

それほどまでに古の神獣は強い。

 

 

 

だけど突如アリエルが急に飛び退いて上を見上げる。

次の瞬間、上から大量に流れ落ちてくるマグマ。

これやったね。

アイツらやりやがったな。

 

 

そうだろゼルギズ。

マグマック達。

アンタらもガキアのこと大事にしてたもんね。

名前間違ってたけど。

 

 

『中層から土魔法で最下層まで貫通させたか。

 ただの生物に出来ることじゃねーぞ。

 なーに天変地異起こしてやがる』

 

 

電脳焦ってるな。

そりゃそうだ、私だって焦ってる。

中層から最下層まで1k m近くはあるんだぞ。

並の精神じゃ出来ない。

 

 

だけど焦っているのはアリエルも同じ。

マグマの水位はまだ0に等しいけど徐々に水位が上がってくるわけだし、地龍たちは神龍結界のおかげでマグマに浸かってもダメージを受けることはない。

それに対してアリエルは炎属性に対する耐性が低い。

触れただけなら大ダメージは受けないだろうけど浸かるなんて真似は出来ないだろう。

つまり、彼女の一番の長所である継戦能力が大幅に削られたわけで、相当厄介なはず。

 

 

頭にゼルギズの声が響く。

念話か、なんかやばいこと起きたか?

 

 

『青!

 戦闘参加してもいいか!?』

 

 

うーん、そっちかぁ。

本格的に戦闘に参加するのは避けてもらいたかったんだけどいかんせん私だったらやってるからタチが悪い。

なにより、相手に転移による逃亡不可のスキルが入ってるから最悪ゼルギズという手札を捨てることになる。

私にそれだけの覚悟はあるか?

 

 

このままほっとけば地龍たちは確実に死ぬ。

コイツががなにを学んできたのかは知らんけど後腐れのないようにしたい。

ただ、もともと負け戦。

勝てるかどうか分からんし、隙を生み出せるかもわからない戦いにあまり命はかけられない。

その中で私は決める。

 

 

『戦闘許可は出す!

 だけど条件として私の管轄下で戦ってもらう。

 もとから負け戦だから、それは理解してほしい。

 ゼルギズ、なんかアイツから言われたか?』

『旧世界の奴とケリをつけてくる……とだけ言われたな』

『そう。

 ゼルギズ、下層にいるんでしょ?

 今行く』

 

 

ヒュン。

そんな音を立てて、少女は部屋から消え去った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

青、アイツなにやってるんだ。

2日くらい外出してたと思ってたら、またすぐにどっか行くとか。

今はなぜか人が少ないから仕事手は足りているけど、まさか領主さんの家にいた偉そうなの殺したの関係してないよね?

いや、偉そうな奴のせいでもここの雰囲気悪くなってたし殺ってよかったに違いない。

 

 

私は、バチュルたちの食用卵を配りながら考える。

帰ったらなにやってたのか聞くつもりだったのに聞く前にどっか行っちゃうとはなー。

最近あんまり話してなかったのに、合流してからも結局話せてないよ。

青も忙しくなったんだね。

 

 

共生で見てみてわかったのはエルロー大迷宮の下層にいるということ、そしてよくわからない魔法陣を展開してること。

最下層に魔王がいるわけだし接触はしないはず。

まあでも接触しても特段問題はない。

青だけだったら不安だけど電脳がいるし。

電脳だけだったら不安だけど青がいるし。

 

 

彼らは、お互いが互いの存在のもと生きてる。

2人揃ってるなら絶対に負けない。

それだけ2人は強い。

それにエルロー大迷宮の下層と最下層の間には地獄がある。

青が1年かけて作って、今も自動的に大きくなり続けている地獄。

あれがあるんだし青が負けることは無いはず。

 

 

ただひとつだけ不安だ。

魔王のいる場所から地獄までどう移動するつもりなんだろう。

アイツ、大魔王のスキルの効果わかってるんだよね?

 

 

わたしもわたしで魔王に攻撃は仕掛けてる。

並列意思の体担当が精神を破壊するために暴れ続けてる。

頼む体担当、侵食を急いでくれ。

 

 

彼らが沈む前に。






蜘蛛ですが、なにかの二次創作も減ってきました。
アンケートをとります。回答お願いいたします。


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85 嫌がらせが嫌すぎる


高評価、感想お願いします。


転移した私は、中層でゼルギズと合流して最下層への転移窓を開く。

そして転移窓に飛び込もうとするゼルギズの殻をガシッと抱き止めた。

 

「勝手に転移するのは禁止!

 最悪帰ってこれなくなるし、勝手に怠慢とか使って耐性持たれても困る。

 私の妥協案だから、これだけは認めて」

 

 

「わかった、お前の言うこと自体は認める。

 ならば中層でどうすれば良いのだ?

 お前の管轄下で我がなにをできるのか教えてくれ。

 このままではガギアは死ぬぞ」

 

 

ガキアだけどね。

確かにガキアは死ぬと思うんだけど、そもそも私ガキアを生かせるとは思ってないんだよなぁ。

だってもうアリエルにロックオンされてるのよ?

しかも本人が突っかかって自殺しに行ってるのに、なんで止められるのよ。

「あとそれ、ガキアが決めたことでしょ」

 

 

「すまない、無粋なことを聞いた。

 なかったことにしてくれ」

 

 

あ、口に出ちゃってた。

でも本人が納得してるならいいか。

運がめちゃくちゃ良くてアリエルがめちゃくちゃバカならなんとかなるかもしれんし。

その場合は多分アリエルは死んじゃってるけど、それはそれならまた運命。

私が悪いわけじゃない。

 

 

「じゃ、最下層にいこうか」

私はゼルギズと共に転移する。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

本体からは魔王を早く支配しろという指令が来たけど、こちとら一生懸命やっていてなにも言われる筋合いがない。

しかもいくら外道無効とは言っても、抵抗されればわたしの方が支配されかねない。

それほど魔王はヤバい。

てか、上からマグマが落ちてきたのって魔王を物理で倒すためじゃないんか?

わたし陣営以外の、第三者からの攻撃かもしれない。

となると誰だ?

 

 

だけどわたしが本格的に考え始める前に魔王は、攻めあぐねている龍への攻撃をやめた。

そして突如背後に放たれる深淵魔法。

なんで撃ったのかと思ったのも束の間、後ろからビリビリという衝撃が響く。

これは、魔法が相殺された衝撃?

 

 

魔王は振り向き、ついにその敵を視認した。

そしてわたしも悟った。

コイツらも怪物なんだと。

青、もといオリジンエレテクトとゼルギズがそこには立っていた。

 

 

 

魔王はなにか考えているのか顎へ手をやる。

おそらく地龍と青のどっちを先に始末するかについてだろう。

正直な話をすると魔王はどっちを先に始末しても問題がない。

どちらを先に攻撃したとしても、もう片方も大魔王で逃げる事は出来ないし、魔王が殺されるとも考えにくい。

ならば、本当はどっちから倒しても変化はない。

 

 

魔王は地龍の方へ向き直り跳躍する。

そこから放たれたパンチは神龍結界によって防がれたけど、それに弾かれたのをさらに利用して壁を蹴りもう一度殴って結界を破壊した。

呼応するように、再び結界を貼り直す龍たち。

 

 

どうやら地龍を先に倒すことにしたみたい。

ただ、それは同時に厄介であろう青の対処を後回しにする選択となる。

わたしだったらまだ青の方優先すると思うけどなー。

厄介な絡め手はしてきそうだし。

 

 

魔王が地龍への攻撃を再開したのを確認してか、青はゼルギズとともに次元魔法の門をくぐる。

転移は出来ないはずなのに、青はこの空間から姿を消した。

どゆこと?

 

 

でも、叡智で確認しても青の存在はそこにあるし、魔王の警戒してる様子はあるし、皆が認知している。

待ってこれほんとにどゆこと?

 

わかった。

空納の仕組み使ったな。

空納で空間に歪みを生んでその歪みの中に隠れてるんだ。

相変わらずバケモンだな。

 

 

魔王に位置を認識されてるから転移は使えないけど、魔王も空間魔法を突破できないから少なくとも引き分けになる。

とりあえず青が死ぬ事はないかな。

地龍はこのままだと死んじゃうから急がないと。

 

 

青のいる空間が金色の光を放ち始めた。

これは爆発かな。

輝きがどんどん激しくなってるのを見ると、かなり規模の大きいものになりそう。

最下層を崩されると迷宮がヤバいかもだし出来れば小規模であって欲しい。

 

魔王も注意はしながら龍との戦闘を続行してる。

空間魔法には何もできないとわかってるのはさすがだ。

しかも自身が倒れないだろうという確固たる予測のもと行動してるからか、一切の迷いがない。

ほんとに流石魔王だ。

 

 

次の瞬間迷宮内に閃光が駆け巡る。

ついに来た。

魔王は青の方へ向き直って咄嗟に腕でガード。

ただ、放たれた人のは爆発じゃなくてビームで、身体ほどの太さのそれは魔王とは反対の方向と突き進む。

そしてそのまま時空の歪みを通って真上から魔王を叩き落とした。

 

 

は?

いや、は?

 

 

ギュリギュリが使ってる類の転移でビームを転移させてるの?

わけがわからない。

いやわかるけどそんな魔法叡智込みでも作れるもんじゃないぞ。

相変わらず化け物電脳が。

 

 

マグマに触れてダメージを受けた魔王はすぐさま跳ねてまた空間機動の足場を作る。

そして結界を削ってSPを回復。

減ったHPもまた回復し始めたし今のペースだと魔王の回復の方がダメージを上回る。

だから結局、青に出来るのもせいぜい時間稼ぎ。

だけどその僅かな時間もわたしと地龍を大きく支えるものとなる。

 

 

地龍たちにとっては体勢を立て直して再び結界を張る時間。

わたしにとっては魔王の精神を削る時間。

そしてわたしと地龍はお互いに支え合ってて、相乗効果でさらにその恩恵を大きくする。

 

 

さてこれからの持久戦、キツくなるのはどっちだ?





未来に託す


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86 超長期戦

ONE PIECE FILM Zで投稿をすっかり忘れていた。


高評価、感想よろしくお願いします。




 

調子に乗っているようで実は私もだいぶヤバい。

というのも中層から流れ落ちてくるマグマが切れる見込みがついてしまったのだ。

今まで流れ落ちてきたマグマは水深30センチ程のマグマ湖を生み出してるけど、もう中層の湖にあるマグマの三分の一は最下層に流れ落ちている。

すなわちマグマが最大量流れたとしても高さ40メートルほどある最下層の1メートルしか埋められない。

 

 

もちろん魔王が地上に降りれないという点で意味はあるし、事実魔王は空間機動を使って戦うことを強いられている。

MPの回復も早いから単純に思考増やさせてるだけなんだけどね。

ただ逃げ場を無くして熱殺という選択肢がなくなったのはキツい。

自動的に長期戦になることが確定するし、その場合損するのは私たちだ。

 

あとゼルギズになにもさせられてない。

でも出たところでジリ貧になることを考えると逆になにもさせられない。

常々、最高峰同士のケンカは力がないとキツい。

 

天雷魔法最高火力の天雷界をゼルギズの獄炎槍とまとめて圧縮して直径2mほどの球を作る。

それに爆雷を加えて、不安定化。

 

獄炎天雷砲(ごくえんてんらいほう)!』

 

私は空間を開いて極太のビームを発射。

さらにビームの通過点の空間もこじ開けてビームを他の空間の穴から飛び出させる。

奴は避けるけど、当てるまでこれは続く。

てか当たっても効かないでしょ。

 

アリエルは2回は避けるものの3回目に直撃して天井に激突。

その間に龍には結界を貼ってもらって、再び状況を振り出しに戻す。

だけどアリエルのHPもすぐ回復するから堕とせはしなさそう。

ダメージ1000くらいしか入らなかったし。

 

 

龍たちが戦い始めてから丸2日。

その間に脱落した龍は0匹で、減っていくのは龍のSPとHPのみ。

その二つも、総量で見ればまだ1割しか削れていない。

これは超長期戦だ。

 

 

 

 

バチッという音と共に念話が繋がる。

主なんて確認する余裕は無いけど、こんな状況の中ズカズカと頭に入って話しかけてくる奴は1人しかいない。

白だ。

 

 

『青!戦況が落ち着いたみたいだから伝える!

 わたしたちはこのまま耐久してれば勝てる。

 だからそのまま、舵まっすぐで!』

 

どういうこと?

クイーンを捕食したときアリエルに時限爆弾でも仕掛けたのか?

それか最下層全体を対象とする破滅攻撃?

わからない。

 

『くわしく説明求む!

 アリエルになにかやってるのか?』

 

眉間に皺を寄せながら私は叫ぶ。

事実、青は魂の扱いに関しては私より上手い節がある。

ならなにか仕掛けていても不思議じゃない。

悔しいけど白とはそんな奴だ。

 

『魔王には私の並列意志が攻撃を仕掛けてる!

 ステータスの暴力のせいか侵食は遅いけど確実に蝕んでる。

 このままなら勝てる、だから耐えて!』

 

流石、白。

やることなすこと予想外だ。

それでありながら見事にやってのける。

だから彼女は最高だ。

 

私はニヤリと笑って叫ぶ。

『わかった!

 あと3週間は耐えてみせる。

 そっちも元気で!』

 

『オッケー!

 コッチもなんか戦争始まるみたい!

 じゃ!』

 

え?

戦争って、何がどうなった?

 

バチッという音と共に、念話が切れる。

それと同時に割れる一枚の結界。

魔王がまた殴りかかる前に防がなきゃ。

ビームを溜めながら歯噛みする。

 

 

くそっ。

今は耐えるしかないな。

話はそれからだ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

思ったよりも青、元気そうだ。

念話かける前は精神的に参っちゃってるかなとか思ってたけど案外元気に話してた。

龍のステータスの減り方から考えても本当に3週間耐久出来るのかもしれない。

 

 

あとこの戦争の原因はやっぱりわたしだった。

というのも、青がいない間になんとなくで殺したおっさん。

あいつがどっかの国のお偉いさんだったらしく、突然死したからなんかやったな!?ってことになったみたい。

 

まー、第一次世界大戦じゃあるまいしそれで戦争ってのもおかしな話だけど。

どっちにしろ戦争は仕掛けるつもりだったんだろう。

ついでに豊かな街であるここを植民地として奪いたいとかもあるのかも。

国境に近いから狙いやすいし、わたしたちがいるから豊かなわけで自衛できる様な軍備があるわけでもないしね。

 

まあでも、おっさんは殺していい奴だった。

いくら偉いとはいえわたしたちのことを人族の奴隷みたいなこと言ってたみたいだし、部下に住民の畑を荒らさせたり物盗ませたりしてたし。

 

もう十分いい暮らししてたでしょうが。

なにに対して不満持ってたのよ。

なんで生活豊かなのに性格悪いんだろうね。

親御さんなにやってたんだ。

 

まあ、もう死んだやつについて今更考えたって意味はない。

言葉通りもう2度と関わらないのだから。

考えなきゃいけないのはこれからのことについてだ。

 

これから始まるのはおそらく宗教戦争。

事務担当の蜘蛛に聞くと最近教会に寄付してる食料が多かったみたいだし、多くの人が教会に集っていたみたい。

それもある日には男だけ、ある日には女子供だけと綺麗に分かれてたみたいだ。

 

こんなことからも考えるとやはり宗教戦争の節が強い。

ちなみにわたしがその集会に呼ばれなかったのは、わたしはあくまで青の仲間という立ち位置だから。

しかも青より関わりが少なかったし、少し危なめの神獣とでも見られているのだろう。

実際否定はしないけども。

 

 

そして、我々女神教に対抗するのは真言教だ。

青の娘たちが収集した情報によると、真言教は女神教よりも大きいらしいしより多くの国が信仰してるみたい。

ただこの領地がある国は女神教の総本山。国も十分に大きいからそんな簡単には落とされない。なんなら、一国二国程度なら蹴散らせる。

 

 

一国二国程度だったらの話だけどね。

ただ、もらった地図とかを見ると絶対3ヵ国は来ると予想できる。下手したら4ヵ国かもしれない。

言葉通り、大国の国境の半分が戦争になりうる。

 

しかも戦争は彼方から仕掛けてきてる。

彼方から仕掛けてくるということはすなわち此方は防御に回らなければいけない。

どこを攻めてくるかわからないから戦力を分散させなきゃいけないし、一箇所から攻められたら簡単に瓦解する。

なによりそもそも超無理矢理起こしてるんだ。

負ける見込みのある戦争に、何ヵ国も協力してそんな労力は割けない。

 

 

つまり結論。

わたしが介入しなければこの戦争は此方の負けだ。

そしてわたしはこの国の神獣その2。

ということはですよ?

 

 

 

合法的な狩りができるわけだ。

誰も文句は言えない。

なぜならば、わたしは国を守るために戦争に参加するからだ!

 

わたしは庇護する国の住民を守るために殺戮するのだから。

わたしの経験値が貯まれば、わたしの目標であるアラクネにも近づけるわけだし。

人間たちは真言教の人達を圧殺出来てハッピー。

わたしは経験値をゲット出来てハッピー。

なんと素晴らしいWINーWIN関係でしょう!

 

 

楽しみだなー。

ちょうどあと3週間くらいで二つの国の軍は接触するはず。

あー、早く来ないかな。










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87 激闘の果てに


ついに100話いきましためでたい。
高評価、感想お願いします。



あれからどれだけ経っただろうか。

一週間?二週間?

いや、それ以上は確実に経っている。

あ、三週間か。

 

 

もともと戦っていた龍たちはおとといついに最後の1頭まで減らされた。

でも、外道攻撃を喰らっているはずのアリエルの猛攻はいつになっても終わらない。

それどころか攻撃自体は激しくなっている気がする。

その分隙や受けるダメージも大きくなっているけれど、そもそもの自然回復のせいで体力は減ってない。

 

 

「スパイダーパンチ!

 うーん、これじゃ火力はあるけど予備動作があるせいで狙いを定めにくいなー。

 もうちょっと色々研究しなくちゃ。

 

 で、あんたはいつまで粘るの?」

 

 

拳に斬糸を絡めて放ったパンチが龍の結界を今まで以上に削る。

その分端っこだったから再生も早いけど、火力自体は高まっているからまともに当たると危ない。

そう考えて次の攻撃前の予備動作でアリエルを叩き落とす。

くっそ、もうマグマに触れても怯まなくなったか。

精神的に成長されるとまずい。

 

 

この戦いでの1番の変化。

アリエルが楽観主義者になって発言も幼くなった。

引っ込み思案だったのに今では捨て身の特攻を頻繁にするようになってきた。

しかも、やけくそなんかじゃなくちゃんと考えられた特攻だ。

 

 

でも実は、考えられずに特攻されるだけでもだいぶヤバい。

というのも白や私たちがステータス負けている相手に勝つのに一番よく使うのは、絡め手ありの耐久。

てかそれでしか勝てないし、事実白はアリエルに対して現在進行形で外道攻撃を加えて精神の破壊を試みている。

 

 

だけど、頻繁に特攻してくることでアリエルは耐久する隙すらも奪った。

ステータスによる圧倒的な暴力の前では絡め手なんてものはほぼ意味をなさないから、純粋な狩りとなってしまう。

事実、私のいる空間をアリエルは通り抜けて特攻しまくってるし私が次元魔法を解除したら即やられる。

正直めちゃまずい。

 

 

 

 

だけど龍たちも皆立派に散っていった。

一体一体、冷静に魔王に対処した。

もちろん私の援護もあっただろうけど、皆がSPを失いきって倒れていった。

皆HPを残したまま。

誰一人、できるパフォーマンスを残して死んでいった者はいなかった。

 

 

全員が最大限尽くしたのちの死。

魔王が死んだ龍を食べようとしても、残った龍は魔法で妨害した。

後半は特にお残し厳禁とか言って積極的に食べようとしてきたけど、結論として死んだ龍には傷ひとつ与えさせなかった。

 

 

残り一頭。

この最後の一人が地龍ガキアだ。

ガキアもおとといから一体で耐えてきて、もうすぐSPが尽きる。

 

 

ゼルギズも覚悟ができたのかただその時が来るのを待っている。

バキバキと静かに結界が剥がされる音がする。

私は完全に剥がされる前に、再びアリエルを地に落とす。

 

もうガキアにはMPもSPも残っていない。

最期に結界を一枚貼り、SPが切れると共にその龍は地に堕ちた。

みるみる減っていくHP。

そして死ぬ直前、あいつは確かに私を見た。

 

 

 

 

おととい。

ガキアから念話が来た。

彼は言う。

 

「主がゼルギズの言っていた者か?」

「え?

 ゼルギズを支配してるっていうんなら私。

 支配してるっていうか、管理してるっていうかだけど……」

「それなら安心だ。

 世界を任せる、強者たちよ」

 

それだけで通話は切れた。

その時の私は困惑していてゼルギズも静かに聞いていた。

誤魔化そうとはしたけれど、コミュ障っぷりがはっきりと現れていたに違いない。

 

 

 

地龍は沈んだ。

私にはそれの真意がなんだったのかはわからない。

でも任された。

とんだものを最後に任されてしまった。

世界なんてとんだものを。

 

 

魔王にもどうしようもなかった問題を。

ギュリエも涙を飲むしかなかった問題を。

この世の全生命が苦しむようになった問題を。

Dが抱く最高神としての問題を。

 

 

残念ながら私には全て解決する資質がある。

全部解決して平和にすることができる可能性のある力を持っている。

良くも悪くも、なんでもありなら私は最強だ。

 

 

 

 

「ところで、あんたらはいつまでそこに引きこもってるの?

 三週間前からちびちびちょっかい出されてると私でも嫌気がさすんだよね。

 そうは言っても空間魔法からは出るつもりないだろうし私もなんもできないからなー。

 こっちも龍食べることしかやることないし、しばらく居座るから出て来れば?

 MP持たないでしょ」

 

 

ノーコメント。

こちとらMA原子炉があるからそんな簡単にMPなんぞ尽きない。

龍たちの弔いをできないのは残念だけど、あいにくこっちは世界の命運を担ってるんだ。

私とゼルギズは強者なんだし。

 

 

「そう、なにも言うことはないってか。

 じゃああんたらに構ってる必要もないね。

 せっかく龍を倒したんだ、食べないと私の信条に反する」

 

 

アリエルは1時間ほどかけて龍の亡骸をどんどん担ぎ上げて大きな山にする。

それを担ぐアリエルもなかなかだけど、そのせいで私は亡骸を回収できなかったから厄介なことには厄介だ。

 

そして全ての龍を下ろして、目の前にどかっと座って一言。

 

「いただきます」

「いただくな」

 

 

 

手を合わせた魔王の後ろに、管理者であるギュリエディストディオスが立っていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ついに互いの軍がかち合った。

やったね。

わたしは木のてっぺんから軍勢の様子を見て笑う。

 

 

人たちにとっては必死の大戦なんだけど、こちらにとってはレベルアップの場だ。

すまんな人族、わたしも今日を生きるのに必死なんだ。

今は大迷宮の最下層にいるけど魔王だっているわけだし。

 

 

ちなみに、青と話した後の二つの軍は思ったよりも単調に進んで全面衝突となった。

なぜ?

侵略、支配するだけなら戦力の分散がどっかしらで起こるとは思ったんだけど。

宗教戦争だからかもしれないけど、疎いからよくわからない。

 

 

まさか、侵略、支配が目的なんじゃなくて、人族の大幅な減少が目的だったりする?

いやないよな。

人を殺せばMAエネルギーが星にたくさん補充されはするけどそんなこと知ってる奴はほとんどいない。

そもそも禁忌見たやつもほとんどいないだろうし、実際にやろうとするやつもいないはず。

頭がすげ変わって人外がトップになってるならまだしも、人の思考してるやつが人を大量虐殺するなんて発想するわけないし。

 

 

もしかして、わたしみたいな異常進化個体が実はいてトップを牛耳ってたりするのか?

それだと非常にまずい。

魔王以外にも警戒しなきゃいけないことが増える。

 

ともかく、ともかく。

今は戦場の分析をしよう。

そんなこと考えたって電脳じゃないんだからわかりゃしない。

 

 

平原でお互いの軍勢が睨み合っている。

女神教を信仰する我が国サリエーラ王国と、真言教を信仰する敵国オウツ国中心の連合国軍だ。

叡智を使ってみたけどやっぱり数では負けている。

サリエーラ王国の軍勢は約48000、それに対して連合国軍側は約53000。

確かに、これだけ見ればサリエーラ王国が勝つのは大変だ。

 

 

 

 

だけど兵士の質ではどうかな?

実はサリエーラ王国の兵士たちが進軍する三週間の間わたしは青の娘たちに食糧を運ばせ続けた。

衣食住の三つの点で支援し続けたから実に快適な旅を送れたはずだし、それに加えて娘たちの蜘蛛糸で装備は強化している。

 

 

だからサリエーラ王国の兵の質はとてもいい。

この言葉だと語弊があるか。

ステータスで言うと高くはないんだけど、ステータス以外の数値に現れない場所がめちゃくちゃ強化されている。

精神面にしかり、装備にしかり。

 

 

対してオウツ国側の連合国軍の兵の質はバラバラだ。

もちろんサリエーラより悪いのもいるけど、良いのもいる。

あくまでステータスの話であって、精神的にはどんなもんかわからんけどね。

少なくとも、こちら以上の待遇はされてきていないはずだ。

 

 

まーでも、正直わたしが参加しなければオウツ国側がギリギリ勝つんじゃないかな。

残念ながら参加させてもらいますけど!

ごめんなオウツ、国の場所が悪かったと思え。

 

 

ちなみに青の娘たちは戦闘に参加しない。

経験値を独り占めするためっていうのももちろんあるけど、それだけならサリエーラ王国の人が泣きついてくれば出陣させるつもりだった。

だけど、人との戦闘を好まない青の子供だ。

戦闘させたら青の意向に反するかもしれない。

だからわたしは戦わせないことにした。

別に制圧するのにかかる時間が変わるだけだけど。

 

 

 

 

ともかくだ。

戦闘が始まれば加勢するから、それまでは黙ってよう。




世界最高最悪最凶



『オリジンエレテクト      Lv16 名前 青
                        佐野 蒼生
 HP:53768/53768(緑)(詳細)
 MP:52384/52987(青)(詳細)
 SP:48757/48757(黄)(詳細)
   :48757/48757(赤)(詳細)
 ステータス
 平均攻撃能力52938(詳細)
 平均防御能力51838(詳細)
 平均魔法能力55647(詳細)
 平均抵抗能力53673(詳細)
 平均速度能力54888(詳細)
 「HP超吸収LV9」「HP超速回復LV6」「魔導の極み」「魔神法LV10」「魔力付与LV10」「魔法付与LV10」「大魔力撃LV8」「SP高速回復LV10」「SP消費大緩和LV10」「瞬間速度大強化LV9」「破壊大強化LV9」「斬撃大強化LV9」「貫通大強化LV10」「衝撃大強化LV9」「状態異常大強化LV10」「闘神法LV8」「気力付与LV10」「技能付与LV5」「大気力撃LV6」「神龍力LV8」「神龍結界LV4」「猛毒攻撃LV10」「強麻痺攻撃LV10」「腐蝕攻撃LV8」「外道攻撃LV10」「毒合成LV10」「薬合成LV10」「糸の天才LV10」「鉄壁LV4」「神織糸」「操糸LV10」「念力LV7」「投擲LV10」「射出LV10」「空間機動LV10」「眷属支配LV10」「集中LV10」「思考超加速LV6」「未来視LV6」「並列意思LV10」「命中LV10」「回避LV10」「確率大補正LV10」「隠密LV10」「隠蔽LV6」「無音LV10」「無臭LV7」「帝王」「断罪」「奈落」「退廃」「不死」「カミゴロシLV10」「終末」「外道魔法LV10」「電撃付与Lv10」「雷付与LV10」「雷光付与LV10」「外道魔法LV10」「火魔法LV10」「火炎魔法LV6」「氷魔法LV10」「氷結魔法LV10」「氷獄魔法LV1」「水魔法LV10」「水流魔法LV10」「蒼海魔法LV1」「風魔法LV10」「暴風魔法LV10」「嵐天魔法LV2」「土魔法LV10」「大地魔法LV10」「地裂魔法LV4」「電気魔法LV10」「雷魔法LV10」「雷光魔法LV10」「天雷魔法LV10」「光魔法LV10」「聖光魔法LV9」「影魔法LV10」「闇魔法LV10」「暗黒魔法LV9」「毒魔法LV10」「治癒魔法LV10」「奇跡魔法LV5」「空間魔法LV10」「次元魔法LV10」「重魔法LV10」「深淵魔法LV10」「死音LV10」「無限LV10」「傲慢」「激怒LV6」「飽食LV10」「魅了LV10」「賢姫LV9」「妖姫」「電脳」「破壊大耐性LV9」「打撃無効」「斬撃無効」「貫通無効」「衝撃大耐性LV9」「火炎耐性LV9」「氷結耐性LV9」「水流耐性LV9」「嵐天耐性LV2」「地裂耐性LV4」「天雷無効」「聖光耐性LV9」「暗黒無効」「重大耐性LV6」「状態異常無効」「酸無効」「腐蝕大耐性LV9」「外道無効」「恐怖無効」「苦痛無効」「痛覚無効」「気絶無効」「暗視LV10」「万里眼LV9」「五感大強化LV10」「知覚領域拡張LV10」「神性拡張領域LV9」「天命LV10」「天動LV10」「富天LV10」「剛毅LV10」「城塞LV10」「韋駄天LV10」「強化産卵LV10」「小型化LV10」「共生LV9」「清浄LV8」「禁忌LV10」「n%I=W」
「歪」
 スキルポイント22320
 称号 
 「悪食」「血縁喰ライ」「魔物殺し」「魔物の殺戮者」「竜殺し」「龍殺し」「毒術師」「糸使い」「大感染」「オリジン」「傲慢の支配者」「電脳の支配者」「恐怖を齎す者」「究明者」「暗殺者」「覇者」「率いるもの」「竜の殺戮者」「竜の天災」「龍の殺戮者」「王」「運命の神獣」「特異点」』




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88 魔王告白


蜘蛛ですがなにかの二次創作が再び盛り上がってきましたね。

君の二次創作が、私を救った。


私の目の前に立ったそいつ、黒き管理者は問いかけてくる。

 

「で、今のお前は白とアリエルのどちらなんだ?」

 

「うーんわからない。

 まあ、どっちでもなんとかなるんじゃない?

 ギュリギュリ?ギュリエ?

 うーん、ギュリエから見るとどっちに見えるの?」

 

パンパンと土埃を払いながら立ち上がる。

実を言うと、私が誰なのかもう私もわかっていない。

この目の前にいる管理者に対してどう接すればいいのかもわからないし、なんて呼べばいいのかもわからない。

 

まあ、あの白っていう蜘蛛を殺さないとっていう気持ちだけはしっかり残ってるからまだ意識は私側なのかな。

 

「すまないが私には正直どちらなのかは判断しかねる。

 混ざりに混ざってもうどっちと言うのも間違いなのかもしれない。

 だが、この後どうするかは決まっているのか?」

 

「うん、龍を食べたあと白っていう蜘蛛を殺しに行く。

 だからそれを考えると、意識は案外こっち側にあるのかもね」

 

「性格や言動、態度はあっち側みたいだがな。

 私がいうのもなんだがやり直せるならばやり直したいものだ」

 

それ、確かに性格とかはあいつに似てしまった。

事実こんなにも精神を奪われたのに全く危機感を感じない。

楽観的になったし、まあなんとかなるでしょ。

って思ってしまうからやばい!

 

 

「ただ、白って蜘蛛を殺したところでどうにかなるとも思えないんだよね。

 今さら魂を分離しても壊れるだろうし。

 正直今までの私が戻ることがないとは思っといてね」

 

「そうか。

 すまない、聞いているか青?

 君なら簡単に魔王との魂の分離をできると思うんだが。

 この状況から私が助けるからその対価として魂を分離しないか?」

 

 

さっきまでずっと隠れていた、私と同じくらいの少女が何もない空間を破って姿を現す。

だけど、改めて見てみると考えなくても厄介な存在だってわかる。

蜘蛛は基本人化をできないのに人の姿をしている時点で異常種なのだから。

 

 

だがその少女はというとギュリエの要求に対しめちゃくちゃ嫌そうな顔をしている。

 

 

「正直あんたがいなくても私は脱出できたの。

 実際MPの減少はないんだし。

 だからその取引には乗らない。

 

 てかそもそも、計画には行動的なアリエルの方があんたのためにもサリエルのためにもなるでしょ?

 なら意識も残ってるんだしいいじゃん」

 

「そうはいうが、こちらも4000年ともにいた友人の精神をかなり捻じ曲げられているんだ。

 文句の一つくらいは言いたくなる。

 彼女は私の素晴らしい友だったのだ」

 

 

 

話し方を見ていてわかった。

こいつ、人格は変わってるぽいけど私が変な板をもらった時にいた蜘蛛だ。

あのわけわからない板も今現在小さくなって私のポケットに入れられてるし、とんでもないエネルギーがこもっていて破壊もできないしね。

 

 

結論。

この蜘蛛と関わると碌なことにならない。

でも、ほっとくと今回の妨害みたいにもっと碌なことにならない。

だけどこの蜘蛛はサリエルという言葉を口にした。

だから即滅殺なんてことはできない。

 

 

私の精神の違いでサリエルのためになるってどういうこと?

顰めっ面をしている私を見て察したのか、ギュリエは話し始める。

 

 

「疑問に思ってるようだから説明するが、こいつ、青はおそらくサリエルを解放するだけの能力と可能性を持っている。

 ただ、あくまで可能性だがな」

「その可能性はどのくらい?」

『オレ様が考えうる最高の状況を揃えられれば60%だ。

 その最高の状況ってのは簡単には揃いやしねぇが』

 

 

高い。

正直、私の想定を軽く超えるレベルでめちゃくちゃ高い。

てか待て。

 

 

このしゃべったやつ、誰だ?

ギュリエの声でもないし私の声でもない。

でもこの青って存在でもないはずだ。

一人称違うし。

 

 

『ああ、オレ様は青の補佐役及びパートナーの電脳だ。

 お前がこちら側に被害を与えない限りこちらも被害を加えないのでそこのところよろしく』

 

一つの体に二つの意志が入ってる二重人格か。

その割には見事に助け合いができているようだし、どっかで分離したけどなかなか相性が良かったって感じかな?

いやそんなこと考えてる場合じゃない。

 

 

「最高の条件ってなに?」

『ああ、それだが……』

 

 

ここで提示されたのはさまざまな条件。

だけど聞いている間に私は気づいた。

 

コイツは私と似ている。

強くなったから強い者としての使命を果たそうとしている。

自分の好きに行動するとは口で言っても、実際にそのように行動することはない。

 

 

だから逆に言って仕舞えばコイツは私がどう動こうが世界を変えるために動くだろう。

残念だし、申し訳ないけど利用させていただく。

私も私で落とし前をつけたい。

これが古の神獣としての、最期の意地で誇りだ。

 

 

 

『ギュリエ、どうであっても私は落とし前をつけに行く。

 こんな体になった以上、何もしないとなると私である根拠がなくなる。

 だから行くね』

 

『そうか。

 じゃあそいつの元に送るだけは送る。

 これがせめてもの同情で、餞だ』

 

 

青と電脳にバレないようにギュリエと古代の言語と念話で話す。

餞ね……。

独り身のくせに、洒落たことを言うじゃないか。

 

 

『ってなわけである程度の人材を一定数以上確保……』

「ごめんね、落とし前をつけに行く」

 

私は電脳の話を振り切り、転移で飛んだ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

さあ、始まりました大戦争!

戦争の前に一応口上あったけど別にいいよね!

女神教は魔族友達って言ってて真言教は魔族悪って言ってただけだし!

私魔物だからここでも女神教の仲間だし!

 

 

 

じゃあ白、いっきまーす!!!

戦闘が始まると共に空間軌道で上空へと駆け上がってオウツ国側の聖職者っぽい白装束を着てる人たちに向かってそのまま暗黒界を発射。

暗黒魔法の中でも最高の火力がある暗黒界によって、直径200メートルにクレーターが出来る。

レベルアップの通知音が鳴り響く。

おお、これだけで2レベルも上がったのか。

これならもっと積極的に人狩ってた方がよかった。

 

 

 

直後下から飛んでくるノロノロとした矢。

よく見ると人がいっぱい矢を打って当てようとしてる。

そりゃ上から超破壊力の魔法きたら怖いか。

 

 

乱闘だったからかサリエーラ王国の人たちも矢を放ってきてる。

そりゃ錯乱するよなー、この威力の魔法落ちてきたら。

 

でもあいにく私はサリエーラ王国側だ。

仕方がないし、連合国の人が多くいるところに移動しよう。

えーと、サリエーラ王国の人は白い甲冑だし、だから白くない甲冑の人たちは倒していいはずだからどこだ?

 

お、南の方に発見。

じゃあ行こう。

 

 

ジャンプしようとした瞬間、真下から爆発音と共に砂埃が上がる。

鳴り響く共生によって送られる電脳からの強烈なアラート音。

バランスを崩し、地面へボトリと落ちる私。

あ、これやばいやつだ。

 

 

魔王来ちゃった。



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89 信条と祈り


高評価、感想お願いします。

ポケモン世界の神であるアルセウスが登場しますが、「龍と邪神と最高神」と、アルセウス談話を見ていただければ大体の性格は掴めると思います。


「ギュリエ」

それは私の方を睨んだ。

わかっている。

この蜘蛛にとって、白がどんな存在であるかということは私でも知っている。

 

その上で私はアリエルを送り届けることを選んだ。

この報いとして私がどうなっても構わない。

私などいてもいなくても、この蜘蛛はサリエルの救出に動くのだから。

 

「君はその選択をした。

 君は間違っていない、アリエルだって白に身内であるクイーンを殺されているのだから。

 私だって殺したしね。

 だからこれでパンパン。私の身内の白を殺そうとするアリエルと、白を守るためにアリエルを殺すことになった私。

 ただそれだけの話。

 

 だから君は、もう関与するな」

 

その少女の髪は黄色く輝き、体の表面には青い電気が走り始める。

髪がぶわりと広がるのも気に留めずアースエレテクトを召喚。

そしてそのアースエレテクトに触れ転移して消えていった。

 

 

とんだ化け物だ。

アリエルを転移で飛ばした瞬間に、どこへ飛んでいったかを把握していた。

そして次の瞬間には最も近くまで転移で飛べる蜘蛛を即座に判別して転移していった。

本当に私ができないようなことも、軽々とあたり前のようにやってのける。

 

 

アリエルが白を殺せるかどうかはわからないし、その結果に関わらずアリエルが青に殺されるかどうかもわからない。

ただ一つ言えるのは私が餞としてアリエルを送ったことには後悔していないことだ。

彼女自身の命が危ないということを考慮しなければ、の話だが。

 

 

お互いの正義のぶつかり合いに正解はなく、誰が間違っているということもない。

けれども、こんな世界では正義と正義がぶつかったとき必ずなにかが壊れてしまう。

私は、アリエルと青と白の戦いにおいてなにも失いたくない。

 

 

そのためには私が間を取り持たないければならない。

Dには関与はしないよう釘を刺されているが、そうするしかない。

そうしなければ誰かが死んでしまう。

もう誰も失いたくない。

いや、私が失わさせない。

 

 

 

 

『無事、アリエルを送り届けることに成功したみたいでよかったです。

 お疲れ様でした。

 ではあなたはそこでお見守りください』

 

は?

 

私の右手にはいつの間にか薄い板のような機械が握られていた。

そこから届く、耳元で囁くように小さいのにはっきりと響く声。

単調で落ち着いた穏やかな声のはずなのに、そこに優しさは感じられない。

なんだと?

見守るとは、動いてはならないということか?

 

『なにを当たり前のことを。

 そこでお見守り、ですよ』

 

 

なるほど。

私が動かない方が面白いと思ったか、D。

面白いと思っただけで最終的な決定を下す、上位神の一柱が。

 

 

『ああそうだ、動くなってことだろ。

 なあに安心しろ、あの蜘蛛はお前の想定を既にゆうに超えてる。

 Dの思惑なんぞでどうこうなるもんじゃない。

 まあ落ち着け知らんけど』

 

 

は。

これはDの声じゃない。

別の世界の創造主が語りかけてくる。

フランクな言葉なのに、汗が止まらない。

訳がわからない。

いや、私は理解した。

言葉の意味がわからないのではなく、脳が理解を拒んでいるのだ。

 

 

 

『急に黙り込んでどうしましたか?』

 

 

 

Dが不思議そうに声をかけてくる。

まさか私がアルセウスに声をかけられたのに気づいていないのか?

となると、Dごと時止めを行っていた?

私を安心させるがためだけに最高神が?

真意がわからない。

 

 

『はぁ。その様子だと最高神の彼が関与したみたいですね。

 しかも私に気づかれないように。

 ですが、今私があなたになにをされたか聞いてもまともな返答ができる精神状況ではないでしょう。

 

 なので、彼のお言葉に歯向かわない上で私の言ったことには従ってくださいね。

 では』

 

 

私は体に力を入れられなくなって地面にへたり込む。

もはや思考をする余裕さえも残っていない。

だからただ祈らせてくれ。

 

 

 

生き残れ。

 

そう願う私の周り、エルロー大迷宮の最深部にはポケモンという生き物たちがうごめき始めていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

やばーい!!!

魔王が転移してくるのはないない!!

てかまじでやばい!

 

 

鑑定!

あれ!?転移がない。

じゃあ私をぶっ倒すために転移魔法を持ったわけではって!?

 

 

突如私の方へ飛んでくる魔王のパンチ。

わたしは未来視と思考加速の力で避けまくる。

クイーンをこっちだって吸収してるんだ。

簡単に負けるなんてのは私が許さない。

避けることしかできないけどな!

 

 

よーし!

私もやってやる!

ヤケクソだけどどうだ!

 

「転移!」

 

パリーンという音と共に結界に激突し地面に落ちる。

くそ、青から聞いた結界スキル、大魔王がやっぱり発動してるか。

こりゃ逃げることもできない。

 

 

でも魔王はそんなわたしの隙を逃さず連続パンチ。

必死に回避しながら作戦を考える。

青は共生で生きてるってわかるけど、今どんな状況かはわからないから援軍も望めない。

てかここに来たやつはみんな魔王に殺されるからできればそのまま来ないでくれ。

 

 

「くっ、くらえ!暗黒魔法!?」

 

 

私が苦し紛れに出そうとした暗黒魔法は、魔法陣が構成される前に破壊される。

まじか!この結界転移だけじゃなくて魔法も阻害してんの!?

これは本格的にヤバい!!

 

 

しかも魔王も殺意やばいし!

無言でぶん殴ってくるし!

私のこと本当に殺そうとしてるな!?

 

 

あれ?

まさかだけど、相当焦ってる?

えーと、わたくしが精神汚染したとき体担当地雷踏みましたか?

それかまだ完全には削りきれてないけど、今なら治る見込みがあるとか?

どうなんだ、頼む、教えてくれ体担当。

 

 

そんなことを考えた瞬間お腹に響く強い痛み。

そのまま弾き飛ばされて、わたしは兵隊さんたちをドミノ倒しのように薙ぎ倒していく。

 

 

テロリンテロリン。

吹っ飛ばされた衝撃で兵士を弾き殺したことで2レベルも上がった。

いや待て。

あれ?いくら人がまばらにいたとはいえ、わたしが暗黒界であげたレベルも2だったよな?

つまり、わたしが吹っ飛ばされて殺した兵士の数と、わたしが暗黒界で吹っ飛ばした兵の数が同じってこと!?

わたし何キロ吹っ飛ばされた!?

 

 

やばいやばい!

ぐはぁ!

わたしが体勢を整える前に再び蹴り飛ばされる。

サッカーボールの気持ちってこんなんなのか!?

 

 

吹っ飛ばされながらわたしは考える。

どうやらこれ殴られて飛ばされ続けた方がいいな。

レベルアップもするから死ぬことはないし、深淵魔法でもないから死ぬわけでもない。

 

 

人間たち?

しょうがない、もともとはサリエーラ王国の人たちは味方のつもりだったけどもうどうしようもない。

わたしの経験値となって頑張ってくれ。

いつかこの星の助けになる。

 

 

起き上がった先でまた蹴られそうになるけど今度は回避。

人が多くいる方向にダッシュして、再び蹴られる。

また上がるレベル。

 

 

キッツい。

これ繰り返すのも相当きついぞ!

レベル上げる方法としてはいいけど魔王倒す方法では全くないわけだし!

魔王の倒し方思いつかないし。

 

 

 

5分くらいこんなことを繰り返してたけど、いよいよ平原の端まで追い詰められた。

体が脱皮のしすぎでヒリヒリする。

ただそれ以上にヒリヒリじゃなくて死ぬことになる。

だって目の前には、万全の状態の魔王がいるんですもの!

 

 

だけど、そんな緊迫した空気の中そこには似つかわしくない子供の声が響いた。

「ば、化け物!覚悟はいいな!

 僕が相手だ!」

 

 

 

なんだこの子?

なんでこの戦場に子供がいるの?

鑑定!

 

 

『ユリウス・ザガン・アナレイト

 称号「勇者」』

 

 

え、な、え、なんで勇者がここにいるの?

しかもなんで子供?

どゆこと?

ここ、宗教戦争の現場だぞ?

 

 

わたしはこの瞬間、勇者に注意を向けすぎていた。

あと、魔法が結界内で使えないということもあって油断していた。

魔王に対する警戒を緩めすぎた。

 

 

探知が術式を感知して危険信号を発する。

その術式の名は深淵魔法。

目を離した隙に放たれていたそれは、渦巻きながら私の体に向かってドリルのように空中を進み続ける。

 

 

マズイ。

速すぎて、相殺が間に合わない。

あ、まず、し……。

 

 

 

 

わたしの意識は、巨大な爆発音と共に刈り取られた。





止まれない止まらない。


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90 古VS運命①


高評価、感想お願いします。




私は閉口する。

追いついたと思ったら深淵魔法魔王が撃ってるんだ。

ギリ間に合ったけど、あと1秒遅れてたら白は消し炭にされてたし冗談じゃない。

こんな馬鹿げたことしやがって。

 

 

ただ、白がいる以上私は下手に身動きができない。

当の本人は意識を失っているし、今動けば確実に後ろにいる白が狙われてやられる。

だから私はここからは動かない。

 

 

うごかないけど攻撃はさせてもらおう。

あいにく、私にはそれができる。

 

 

「電脳。容赦なし。

 こいつはちょっとやそっとで死にやしない。

 やっと追いついたんだ、覚悟の準備もできているだろう」

 

 

まずは私の半径1キロメートル以内にいる兵士たちの頭に念話で通達をする。

その内容は逃げろというもの。

というのも、私と魔王がガチでやり合い始めたらクレーターが出来る。

私だって人殺しの称号を得たくないし人も殺したくない。

何より、こんな状況で発令しないと人が勝手に死ぬ。

そしてその後白がやったみたいに受動的に称号を押し付けられるって流れだけは勘弁だ。

 

 

まあいい、それはそれ。

私は電脳とのリンクを最大限に強化する。

それに伴って気分も怒りに満ちていく。

もう止められない。

 

 

『スキル「終末」を発動。

 魔術、錬成も同時使用』

 

 

次の瞬間片腕が消えた。

大罪系スキルの暴食か。

ただ、スキルである以上対応できる。

 

 

錬成で機械の腕を生成し勢いよく生やし、即座に傷口を埋める。

地下施設から手に入れた金属は山ほどあるから尽きることはない。

魔王も猛毒を持っているから、ダメージを受けた部分はすぐ直さないと徐々に悪くなりかねない。

そこは注意せねば。

 

 

着ているもの全部消滅させて、錬成を使用。

対象は私の肉体。

特に背中。

 

 

バキバキという効果音を立てながら、背中に蜘蛛の脚のような体節のある触手が6本生える。

そしてその先端に仕組まれるのは銃口。

触手の先端が銃となり、アリエルに向かう。

ロボたちには悪いが、食った時に最も殺傷能力があった奴らのデータを解析させてもらった。

その時の仕組みをそのまま利用させてもらう。

致命傷は与えられなくとも魔王の体に十分な傷をつけることはできるだろう。

 

 

同時に魔王の目が赤くなった。

怒が発動したのかな。

強い殺意が感じられるから、アリエルも機械に対しては何か思うことがあるのだろう。

機械のためにこの4000年間苦しめられてきたんだろうし。

 

 

まあ関係ないから撃つか。

作った6本の脚の先端から放たれる銃弾は、魔王目掛けて放たれる。

それを全てギリギリで回避していく魔王。

 

 

さすが魔王、伊達に生きてきたわけでもない。

避けながらも少しずつ近づいてきてるあたり、このままでも私不利になるのか。

こりゃ白が勝てないわけだわ。

 

 

回避しながらもジリジリと近づいてくる魔王。

それに対して銃撃で対応する私。

残念だけど、このままでは私が不利。

いつかは肉弾戦になるからその時はちゃんとやらなきゃ負ける。

 

 

 

今はその時じゃないがな!

魔王が眼前まで突っ込んできた瞬間私は胸の間で銃を生成して発射。

突っ込んできた魔王は暴食を使ってその弾を食べようとしたけど間にあわない。

間に合わないと気づいた魔王は回避を選択する。

けれど、私だって確率補正は持っているし元から避けようとするであろうことは想定してる。

そのまま避けきれなかった魔王にの脇腹に直撃して血を流させることに成功した。

 

 

私が発射した弾には終末が付与がされている。

カミゴロシが進化した、私が生み出した最強の斬撃攻撃だ。

魔王のステータスなら効かないかもしれないけど、使って損することはない。

事実、貫通はしなかったけど結構なダメージを与えることはできた。

 

 

 

 

ここからが勝負だ。

魔王は今この瞬間は、予期しない攻撃への対応で咄嗟に後ろに跳んだ。

けれど、魔王が魔法不可の結界の中で深淵魔法を使うことが出来たのは魔王の力で支えられている結界が勇者の存在で弱まったから。

だから魔王が私から離れれば、近くにいる勇者からも離れることになるしそうなると魔王も治癒魔法使うことが出来ない。

かといって近づくと銃撃を喰らう。

そして魔王は私に勝てるか怪しいことわかってるだろうし、半分自殺のつもりでここにいることも想定できる。

てなると、ここからくる展開は決まっている。

 

 

ちくしょう、やっぱ捨て身覚悟で突っ込んできやがった!!

同時に暴食で消し去られる頭。

くっそ!

頭がやられるとこっちも思考処理速度落ちるんだよ!

てか魔王も私の不死身性わかってやがるな!

サリエルのこと考えたら普通はそんなことやらんだろ!

 

 

急いで爆雷を使って自身の身体強化。

そして上に飛び魔王の突進を回避。

そのまま両腕にも銃を生やして魔王に向かって発射したのち、頭を回復させる。

 

 

頭が破壊されても、私の精神はもう全身に巡らせてるから死ぬことはないし、深淵魔法以外で死ぬことはない。

だから単純に視界が奪われるのと計算処理能力がガタ落ちするだけだ。

だけどこの時、私はそのせいで優先順位をとり違えた。

一番大事なものを置いてきてしまった。

 

 

完全に見えるようになる私の視界。

それと同時に私の銃弾が掠り意識を取り戻す白。

その開けた視界の中心に、白を掴んで片手で深淵魔法を放つ魔王が見えた。

 

 

慌てて私は魔王に向かって銃弾を放つ。

だけどその弾は、白に向かう深淵魔法とさほど速度が変わらなかった。

鋭い消滅のドリルが白を襲う。

 

 

手を伸ばしても届かない。

私の最愛の存在よ。

私を救ってくれた存在よ。

 

 

私の目の前で白き蜘蛛の体は崩れ去った。

 

 

 

あ、あああ、ああ……。

私はここで意識を失った。





最愛、砕け散る。



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91 古VS運命② 電脳


小説の説明欄少し変更させました。今の雰囲気にはこっちの方があってるはず……。
高評価、感想お願いします。



その背中に脚を生やした少女、青は地面にそのままどさりと落下する。

私はそれを見て後ろに跳ぶ。

わからない。

まさか白と呼ばれる蜘蛛が死んだことによるショックで気絶したのか?

まさか、そのまさかなのか?

私ですら殺せるかもしれない化け物が?

 

 

私は勇者から逃げるようにして平原の逆端かつ人のいない場所へ移動する。

青が気絶してしまった以上私がここにいる意味もない。

青が起きていたならば私も迎え撃たないといけないけれど気絶してしまったからにはしょうがない。

 

 

次の瞬間だった。

空中から雨のように大量の銃弾が降り注ぐ。

そしてその銃弾は私の、そしてギュリエの結界すらも削り崩していく。

神であるギュリエの結界をだ。

 

 

化け物め。

そう思いながら手のひらで目を覆って見上げると、いつの間にか生まれている紫色の空間の裂け目。

そっから大量の銃弾が飛び出してくる。

あの中に銃が収納されているのか?

どちらにせよこのままだと結界が切り崩される。

神による魔法不可の結界が。

 

 

裂け目から勢いよく少女が飛び出すとともにその勢いのまま踵落としが結界へ繰り出される。

同時に響くベキベキと結界がひび割れていく音。

そのまま、そこを中心に魔法不可の結界が割れたガラスのような破片を落としながら崩れ始める。

 

 

バキリ。

結界が完全に割れ少女は体勢を崩して地面に落下した。

私は舞い上がった砂埃の中、急いで暴食を発動する。

けれど同時に立ちはだかった土壁によって本体にダメージを与えられなかった。

く、ギリギリ魔法が使えるようになってたか。

 

 

私が歯噛みする中、黄色い髪の少女は土埃を祓いながら立ち上がる。

けれど服は着直しているし目には瞳孔がなくそれがあるはずの場所は青白く光っているから、青の見た目はしているけども青には見えない。

さっきとは全く違う、まるで機械みたいな動きで動揺が感じられない。

そんなことを考える私を横目に少女は手を変形させて銃にしていく。

 

 

 

 

くっそ。

もう頭を抱えたい。

青には本気で敵対されているし、白を殺したはずなのに私の精神が元に戻ってない。

クソッ、白もこれじゃどっかで生きている。

 

 

しかも青の様子がおかしいときた。

どのスキルが作用しているかはわからないけどおそらく精神干渉を受けている。

こんな目が青くなる、機械化みたいな精神干渉は知らないけど。

 

 

だけどその答えはすぐにわかった。

 

 

『こちら電脳。魔王に対して通達を行う。

 現在の状況について整理、白は死亡、青は精神的ショックのため気絶中。

 生き残る手段は3つ。

 ひとつ目、オレ様の体力を8割削る。

 ふたつ目、オレ様の脳を破壊することでショックをもいちど与え青の意識を取り戻させる。

 みっつ目、オレ様に有用だと認めさせる。

 以上だ』

 

 

一方的に矢継ぎ早に言ってきたか、そちらの裏の人格の電脳。

私に向けた通達ということで嘘が混ざっている可能性も十分にある。

いや、共生を持っているこいつが白が死んでいないなんてわかってないはずがない。

なら嘘はそこの部分で白は生きているのだろう。

 

 

ともかく、真正面から戦っても私に勝ち目はほとんどないから会話での解決を済ませたい。

これは白を襲ってた時から分かってたんだけどな。

それでも後先考えず白のことを攻撃してしまったあたり、精神汚染は恐ろしいものだとしみじみと思う。

4000年間戦ってきた私をこんな蜘蛛が簡単に上回れるようになってしまうのだから。

 

 

「私はアリエルだ。

 一方的で申し訳ないが、停戦を申し込みたい。

 君も分かっているはずだが白は生きている。

 確かに君は強いが私だって強いのだし、君が勝ったとしても後遺症を残すかも知れない!

 この勝負に決着がついたとして誰も利益は得ないし、私は停戦を望む!

 そちらの返答をくれ!」

 

 

分かっている。

これが理不尽な交渉であることも。

私は奴の身内、しかも最も近しい存在であろう蜘蛛を殺そうとしたのに、その暗殺が失敗した瞬間に赦しを乞うなど。

私だったら当然許さない。

だけど、だけど。

私の性根は腐っている。

もちろん戦ってはきたけども、こうやって、乞いて、足掻いて、逃げたのも含めて私は4000年間生き延びてきた。

だから分かってる。

認められなくとも、こう言ってしまう私の意地汚さを。

だからこの答えはイエスでもノーでも構わない。

私は責任を取る。

 

 

だから、正しい判断を電脳は下してくれた。

『もちろんノーだ。

 身内が殺されかけたのを許すバカがどこにいる。

 しかもこれによってうちの露出きょ、いや青が気を失っている。

 なにより貴様はこうなるのを知って攻撃しただろう?

 喜べ。本気で潰してやる』

 

 

うん。

私が選んだ道だ。

君の全力を、私は受け止めて見せる。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

魔法阻害結界が破壊された空間。

大魔王は残ってるけど、私たち二人とも逃げるつもりはないから関係ない。

そもそも、私はこいつに勝てるかわからない。

 

 

 

雷斬銃(らいざんじゅう)雷牙(らいが)

奴の銃から放たれる銃弾。

でもそれはポティマスのものとは比べものにならない殺傷能力を持っている。

雷光魔法だけでなく超強化された斬撃まで付与されているのだから。

 

だけど私も暴食というスキルを持ってるし、弾速がポティマスのより2倍程度である程度で十分対応は可能だ。

大罪系スキルはその存在自体が脅威となりうるもので、私の暴食もその名に恥じない力を持つ。

だから対処できる。

 

 

そのはずだった。

暴食を発動させて口を閉じた瞬間、口の中に広がる重み。

そして金属を噛み砕いたような鉄の味。

弾の中に鉄が入ってたのか?

 

 

違う。

私の口の中が斬撃で削られたんだ。

削られて、顎を支える筋肉が減ったから相対的に重く感じたんだ。

急いで手で顎を押さえてそのまま飲み込み、一気にエネルギーに変換する。

 

 

やばい!

顎を抑えた私に襲いかかる横なぎの蹴り。

頭を狙って放たれるそれを、しゃがんで回避する。

 

 

しゃがんだ瞬間、お腹に強い衝撃が響く。

吹っ飛んだ衝撃で頭を打つけどその間に顎は回復した。

もう一度暴食を発動することで電脳を牽制して距離をとる。

 

 

ヤバい。

見ると私のいたところに時空の歪みがいつの間にか発生していて、消えた。

マジか。転移魔法で蹴りを無理やり当ててくるか普通!?

 

 

私が体勢を整えている間電脳は攻撃で破れた服を補修している。

これが奴の本気なのか。

私のHPがいくらすぐ回復するからといって連続で食らい続けると死ぬかもしれない。

少なくとも、こんな調子でハメられ続けたら死ぬ。

 

 

これは素直に電脳の言った手段に従うべきなのか?

それでも怪しいけど。





フルで活用すると、電脳ほんとインチキになるから焦りが止まらない


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92 古VS運命③ 本気


王VS王補佐(王より弱いとは言ってない)

高評価、感想お願いします。



どうする。

私のステータスは確かに高い。

でも、電脳の爆雷のせいで攻撃力と速度は負けている。

 

 

そして魔法能力に至っては大きく敗北。

鑑定をしたけどほぼ全ての最高位魔法を使える相手に勝つ自信はないし、なにより相手は魔導の極み持ち。

だからもちろん魔法の撃ち合いになれば負ける。

 

 

私の勝ち筋は暴食でやつの急所を破壊すること。

具体的に言うと背骨と頭だ。

このどちらかを破壊すれば、機動力か思考能力どちらかを大きく削りながらHPを削ることが出来る。

そうなれば倒すことはできなくとも交渉まで持ち込むことも可能なはずだ。

事実、さっき片腕と頭を食べた時青のHPは減少している。

SPとMPは不思議なほど減っていないけどそれと比べればHPの増加は大幅に遅いしいける。

 

 

それか直接殴って体力を減らすか。

これも手段として有効。

青の防御力は60000ない訳だし、殴る余裕があれば積極的にやっていきたい。

電脳は暴食に警戒するはずだからさりげなく挟んでいこう。

 

 

私は立ち上がり、奴を見定める。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

青がショックで気絶した。

白が殺されかけた。

コイツは、故意で白を殺そうとした。

 

 

全てコイツだ。

コイツのせいだ。

コイツのせいで全て失われかけた。

 

 

青は精神が弱いんだ。

オレ様を生み出したから。

いくら覚悟していても、いくら生きようと足掻いても、簡単に崩れ落ちてしまう。

そんなやつにそれだけのショックを与えるとか。

 

 

オレ様が奴に生きる可能性を与えたのは単純に青に対する優しさだ。

青はおそらくコイツを許す。

白を殺しかけたコイツでも死んでいなければおそらく許す。

それどころか愛してもらうことを望むかもしれない。

それほどあいつは、常に愛を求めている。

 

 

自身と対等に話せる強さがあるのならばなおさらだ。

彼女は純粋な愛を望むのだから。

オレ様でも純粋な愛を望むのだし、愛と女成分を濃縮した青ならばよりそう動く。

 

 

だから男であるオレ様は怒りでストッパーとなる。

愛すことで、白を殺しかけたコイツを殺すことでオレ様はオレ様であることを証明する。

オレ様はそんな理由づけをした。

本当はわからない。

この怒りはどこから生まれたのか。

機械であるはずのオレ様が、理由のない怒りに溺れるとか。

 

 

これも青がくれたのか。

いいや。

とりまコイツ殺ろう。

本当に本気で、圧倒的な力で叩き潰そう。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

電脳は私に向かって歩き始める。

銃から戻った拳を握り締めながら。

確かな足取りで。

 

 

私は暴食を発動させる。

発動した瞬間に発生した暗黒弾に暴食を肩代わりされる。

くっ、さっきの土魔法でも想定できたけどこの速度で魔法を生成できるか。

 

 

もう一度暴食を発動しても再び防がれる。

そして電脳は足を曲げて力を込めた。

跳んで来る。

私は拳に力を込めて思い切り振りかぶる。

 

 

パシッ。

抑えられた私の拳。

そしてこの音が耳に届くと同時に、彼女の声が頭に響く。

 

 

『転移』

 

 

吹っ飛ばされたのは、何もない平原。

今度はスキルの転移と同じで、ゲートを介さずに直接飛ぶって方法で来たか。

転移の方法も2種類共できるとなると、私が思っていたよりも相当魔法が上手いっぽいな。

これ凌ぐだけで結構きつい可能性あるんだけど、私攻撃できるか?

 

 

てか、気になるのが当たり前のように転移してること。

大魔王結界では転移ができないってことになってるはずなんだが。

なんかまたチート使ってるのか?

 

 

電脳が放つ銃弾を思考加速で回避しながら考える。

すると案外簡単に理由はわかった。

私ごと転移してるからだ。

結界は私を囲むようにして構成されている。

だから白が私から離れるようにして発動した時も結界に阻まれて転移不能だった。

ならば私から離れないようにして転移すれば。

 

 

無論、普通に転移できる。

今までの人生で逃げること以外に転移を使う人をまともに見なかったから転移不能と勘違いしていた。

でもそれがわかったところで今の状況がよくなるわけでもない!

 

 

この場所も、人がいないことを除けばさっきとそう変わらない。

ただのだだっ広い平原だ。

なにをしにここに来たんだ?

 

 

『どうしてここに飛ばしてきたか疑問に思っているようだが、それは単純に天変地異を起こしても問題ないから。

 それと、人に裸を見られないようにだな』

「なんでこちらの思考わかってるのよ」

 

 

私は吐き捨てるように言う。

人の感情を読み取れたのはギュリエの言ってた最高神だけなはず。

だから本当はわかってるわけないんだけど、事実わかられてるからこっちはどうしようもない。

なによりコイツならばできかねない。

 

 

『攻撃を緩めたのに逆にやり返してこないから考えてんだなって思ったんだよ。

 それに周りを目で見渡してたし別にオレ様じゃなくてもわかる』

 

 

あっそう。

その言葉を耳に入れながら私は蹴り飛ばす。

吹っ飛んだ電脳は地面を転がるけど、どうせ大したダメージは入ってない。

頭を吹っ飛ばしても普通に動くんだから。

 

 

案の定電脳は立ち上がる。

そして、次の瞬間展開された大量の魔法陣がやつの周囲を回り出す。

あ、これやばいやつだ。

 

 

『今までの頭部破壊、腕破壊で20%。そして今の蹴りで5%。

 合計で25%壊された。

 残りHP55%分、死ぬ気で削りに来い!』

 

 

 

『天雷魔法LV9 天雷界』

『暗黒魔法LV9 暗黒界』

『地裂魔法LV2 地裂槍』

『火炎魔法LV2 火炎槍』

『氷獄魔法LV1 氷獄弾』

『蒼海魔法LV1 蒼海弾』

『嵐天魔法LV2 嵐天槍』

『聖光魔法LV9 聖光界』

 

全ての属性の魔法陣が、私へ向いて牙を向く。





並列意思8つを使った魔法の発動。



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93 古VS運命④ 王の一手


高評価、感想よろしくお願いします。
誤字修正ありがとうどざいます。


大量の魔法が同時に発動し、アリエルに突き刺さる。

炎系の魔法以外は最高位の魔法だけども大体が槍や弾止まりで火力は正直怪しい。

いや、本当は火力は申し分ないはずなんだが、それ以上に奴の耐久がおかしい。

 

 

オレ様の超連撃を受けてバランスを崩しながらも立ち上がる魔王。

はーあ、今展開した魔法をほぼ全てまともに食ら続けているのにまだ3割しか削れないとかなかなか馬鹿げている。

魔法を放ち続けながらアリエルに当てた魔法情報をフィードバックし特に体力を減らした魔法を炙り出すと、聖光界天雷界氷獄弾が特に効いてるらしい。

こちらとしては暗黒界が氷獄弾や蒼海弾よりも効いていないのが驚きだ。

一応蜘蛛系は暗黒魔法が一番得意なはずだしオレ様が放つ火力も高いが、アリエルの耐久も同様に高かったか。

その結果スキルレベルが低い氷獄弾や蒼海弾が効いたと見て良さそうだな。

 

 

アリエルはダメージを受けながらもこちらに向かって走ってきている。

魔王、覚悟決めて突っ込んできたか。

コイツの元の性格的に控えると思ったけども白に精神削られて変質したと見るか。

クッソ、アリエルのステータスだとこれやられると一番嫌なんだよ。

 

 

暗黒弾の魔法陣を6つ作成し上半身と顔を攻撃。

暗黒魔法の特徴は強い衝撃。

ダメージは通らないけれど脳と三半規管を揺らすことができる。

 

 

脳を揺らせば脳震盪を引き起こしてスキルの上から意識を曖昧にすることができるし、三半規管を揺らせば酔う。

魔法の贅沢な使い方だがこれがアリエルには一番効く。

そのまま間髪入れず本命を放つ。

 

 

一瞬足を止めてふらついたアリエルに対し、終末を付与した氷獄弾を連射。

そして氷獄魔法の特徴は強い一点に対する貫通力。

そこに加わる最強斬撃攻撃の終末。

 

 

結論。

足が千切れ、うつ伏せの状態で地に堕ちるアリエル。

奴は高速回復で足を生やそうとはしてくるがそれ以上のスピードで切り落とし立ち上がるのを許さない。

いや、やっぱ再生早いしもっと真面目に潰した方がいいか。

 

 

火炎弾を足に向けて放ち、傷口を焼く。

これで高速回復させるための細胞は死ぬ。

出血も止まるけどまあ足がなくなった方が楽だし結果オーライ。

 

 

次に、地下施設で解析したときにゲットした魔術を展開。

それはスキルを無効化させる魔術。

完全な状態で発動させるのは閉鎖空間でもないから難しいけど、アリエルの回復を止める程度ならこれで十分。

どっちにしろ攻撃魔法は放つからな。

 

 

これで詰み。

スキルは発動不可で、足は太腿から無くなっていてHPも残り3割。

対してオレ様のHPは8割残っているし5体満足。

残念だったが、ここまでか。

オレ様に似たステータスの奴は少なかったから親近感を持ってはいたんだがな。

白を殺そうとした上にオレ様の裏をかけないというのならここまで。

元から殺すつもりだったからまあいいが。

 

 

オレ様はアリエルに歩み寄り腕から刀を取り出し終末を付与。

この刀は施設で得られた金属で作った特別製で、日本刀よりは切れ味がないだろうが普通のナイフなどよりは切れるはずだ。

今この瞬間体内で生成したものだから実際はどうであるか全然わからんが、今付与した終末も合わせて切れると信じよう。

けれども、地に伏せたアリエルは呑気に歩み寄ってきたオレ様を睨む。

先に仕掛けたそちらが悪いというのにそんな敵対心を持たれても困る。

確かにオレ様にも非はあるが。

白が先にアリエル攻撃したのもあるし、白が先にクイーン殺したのもあるし、オレ様たちがクイーン殺したのもあるし……。

 

 

あれ、案外こちらに罪あるくないか?

実はアリエルは自己防衛してるだけってのもあるっぽいしなー。

でもそれが許す理由にはならんし、コイツとも約束してるからなー。

なんてことを高速思考で考えながらアリエルの背後に歩いて行こうとした瞬間だった。

不意にオレ様の頭は弾け飛ぶ。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

危なかった。

彼女の魔術の仕組みをギリギリで理解できたからよかった。

あの刀、終末以外にも色々付与されてたから切られたら本当に死んでいた。

 

 

出てきたクイーンタラテクトを撫でて平原の端を指差して行くように促す。

私がやったのは召喚だ。

召喚を青の頭蓋骨内でやったことによって頭を弾け飛ばさせたのだ。

 

 

終末を刀に付与した時点でこの領域内でもスキルを発動させることができるということがわかった。

次に考えたのは、なんの条件が揃えばスキルを発動させることができるかについてだ。

青の技術によって魔法ができるのならば無理だったけど私はそうでないと確信していた。

その魔法不可の魔術はポティマスが使ってたものよりは劣化していたから。

劣化していたから、青の技術で使用できるんじゃなくてどこかしらに穴があるんだと思った。

そして気づいた。

 

 

彼女の体内ではスキルが発動できるのではないか。

そしてこの環境でも一番スキルを使っていそうなのは脳だ。

事実私もさっき脳を揺らされたせいでスキルを使えなかった。

なら無意識にスキルを発動させていたから、攻撃する時も脳を狙ったのかもしれない。

てかそれしか勝ち筋がない。

 

 

青の頭を見つめ、位置を調整する。

目に見えない場所に1発で魔法を発動させるから簡単ではない。

でもそうしないと死ぬ。

暴食も使えないし一番可能なのは召喚だ。

他の高等魔法だと、魔導の極み無しでは見えない状態での発動は難しい。

正直賭け。

 

 

私は召喚を発動し、青の頭をクイーンタラテクトの質量で吹き飛ばした。

 

 

首のない青は立ち上がりこちらに体を向ける。

同時に首から上がものすごい速度で再生してる。

正直私よりも再生速度早いんじゃないか。

本当に生後2年とは思えない。

 

 

青が再生する間、私は焼かれた足を切って再生させる。

頭を破壊したからか一時的に魔術が解除された。

この間に私も回復しなきゃ終わる。

 

 

彼女の瞳孔が黒色に戻る。

私たちはほぼ同時に再生を終えて互いを見つめる。

青はため息をついたのちなぜか笑うと、体を屈め臨戦態勢をとった。

 

 

「ごめんね。

 さすが魔王、電脳も油断してたみたい。

 これからは私が相手する」

 

 

全身から蒼い電気が再び迸る。





第一試練、突破。


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94 古VS運命⑤ 地獄


高評価、感想お願いします。
ポケモンSV楽しい。
あと一週間ほどは投稿遅れるかもしれないですがご了承ください。



生き残ってきたね、魔王。

私は爆雷を発生させながらニヤリと笑う。

青が生きているということを気絶している最中に知ることができた。

そして、私の理解者となりうる魔王はまだ生きてる。

最高だ。

 

 

確かに白を殺そうとしたという事実は看過できないもので、昔の私なら許さなかったかも知れない。

だけど今は今で私は変わった。

生きてるなら、この人にはまだ望める。

私の最愛を殺さなかった。

その事実だけでどうであろうと私は望める。

人は変わる。

私は高笑いしながら全力で飛び跳ねる。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

青の雰囲気が元に戻った。

いや、テンションがあまりにも高いから元に戻ったいうのもおかしいんけど、精神が青の方に帰ってきたらしい。

となると私の懸命な頭部破壊が功を奏したみたいで、それが青の意識を覚醒させることに結びついたと見て良さそうだ。

戦闘が終わる気配は全くないがな!

電脳が提示してきた条件の中に意識を覚醒させるというのがあったけれども、あれはあくまで戦闘を終わらせて和解に導くものではなくて青を覚醒させるためだけの条件だったか。

まあそれでもプログラムよりは人情ある方がまだ和解しやすいんだろう。

でなければ条件としてそれを提示することはない。

そもそもその条件を厳しい方であるプログラム側が提示している時点でおかしい気もするけれど、それに突っ込むのは野暮な話か。

 

 

今現在青は私の周囲に大量の空間機動の足場を作って飛び跳ねている。

それとともに少しずつ上がっていくスピード。

これになんの意味があるのかわからないのも辛いところだ。

 

 

どんなスピードでも、青のパンチくらいなら私は耐える。

魔法なら少しはやばいけどそれでも撃つならこんなわけもなく跳ねる必要がない。

やばい、なにしたいのか全くわからない。

 

 

ゴムボールのように跳ねる青。

そしてその勢いのまま、私に殴りかかってきた。

 

『領域展開:蜘蛛地獄!』

 

よくわからないことを口走りながら。

 

 

 

 

 

目を開けようとする。

目が開かない。

暴食を使おうとする。

口が動かない。

手足を動かそうとする。

手足が動かない。

 

全身にすべすべとした感触を感じる。

それに混じって毛の感触もあるけれど。

いや待って、大量の生物と接触してるのはわかるがここどこだ!?

 

 

探知を起動して、無理やり周囲の様子を確認。

ぐっ、頭が猛烈に痛い。

この私がなんで探知でキャパオーバーになってる?

手のひらサイズの虫の山で情報過多になったのか。

いや待ってどういうこと?

 

 

『クイーンエレテクト LV10』『アースエレテクト LV38』『アースエレテクト LV17』『アースエレテクト LV19』『クイーンエレテクト LV6』『アースエレテクト LV32』『クイーンエレテクト LV9』……….etc.

 

 

脳の中に大量に響いてぶつかってくる通知。

しかもあまりにも数がいすぎて数が把握できない。

無限にいるんじゃないかこいつら。

やばいやばい!

 

 

しかもこれ一番まずいのはクイーンが超大量に存在すること。

私だって自分で作ったのは5体だけで、それ以外の5体は最高神に作られたものなのに。

なんでパッと見で100体はいるの?

本当にコイツ、この世界をどうしたいんだ?

 

 

『アンタには怠慢がかかってる。

 今まで味わったことないデバフのはずだけど戦えるかな?』

 

 

頭に声が響くけど私はそんなのを聴いている余裕がない。

HPが今まで体感したことない勢いで削れていく。

否が応でも暴食を発動させないともうすぐ死ぬから、動かない身体で顎を閉じるために口に力を入れる。

わずかにだけど口が閉じていくのを感じる。

 

 

私に向かって蜘蛛の群れが押しかけHPの減りがわずかに早くなる。

ピンチにはなったけど、その代わり仕組みが完全にわかった。

怠慢で速度を1にされながらHPを吸収されているのか。

そう考えればHPの減りが早くなったのも説明がつく。

接触した蜘蛛の数が増えたからその分吸収が早く進んで、私の体力が減ったんだ。

 

 

そうだ、しかもこのエレテクトどもは身体をスキルによってサイズ変更できる。

だから体長5cmまで縮めた上で私に触れられる匹数を増やしたんだ。

ステータスはサイズ変更によって弱体化されても、スキルは弱体化されないのも知ってる。

だから、クイーンのスキルをそのまま流用できるこの戦法を思いついた?

でも、そんなのいいから、口、閉じろ!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『青、やっぱ上手く刺さったな。でもこれからどうすんだ?』

蜘蛛の群れをかき分けて下へ進む私に電脳は問いかける。

確かにこの地獄は昔から考えていた通り完璧に機能した。

 

 

怠慢は一つのスキルで発動と耐性の両方を担っている。

だから耐性を獲得すれば発動も行うことができるというメリットもあるけど、スキルが育ちにくいという大きなデメリットもある。

そのデメリットはもちろん魔王でも適用されるし、いくらステータスが高い魔王といえども突破は容易ではないはずだ。

 

 

それに加えて数の暴力。

私たちエレテクト種は体長5cmまで身体を小さくすることができる。

そして怠慢の発生範囲は自身の大きさに関わらず50mで、これが魔王にとって1番の脅威。

 

 

魔王には悪いけど、半径50m以内に20万匹詰めこませてもらった。

立体的な球体の中に詰め込まれる20万匹のアースやクイーンたちが一斉に怠慢を発動させると、ステータス90000の魔王では到底抑えることができずに全て喰らうことになる。

そして結果として速度能力は1まで低下して詰むというわけだ。

 

 

半径300mの、中層と下層の間に生まれた最強の地獄。

その名も蜘蛛地獄。

私がこの世界に来て一番最初に味わった絶望からその名前をとらせてもらおう。

せっかく一年以上かけて作ったんだし、久しぶりに絶望を味わっていただきたい。

 

 

 

ただ、私が思ってるより案外魔王の事態の飲み込みが早い。

速度1でも動けることはバレてしまったし、いくらゆっくりでも力は万力なんだからいずれ閉じる。しかも、こんな空間で一回暴食が発生すると2万匹はやられる。

これだけやられれば一気に体力は全回復されてしまうだろう。

ま、回復されたところで上からさらに蜘蛛たちが降ってくるんだけどね。

 

 

暴食1回目の発動。

2万匹が一気に消滅して大量に頭の中に流れ込んでくる死亡ログ。

あ、魔王の体力ゲージが一気に満たされていく。

 

あれ?

やばい!

これレベルアップしちゃったか?

 

 

まずい。

これ下手にレベルアップさせちゃうと怠慢を獲得しちゃうかも。

あーれ、雲行き怪しくなってきたぞ?

 

 

魔王の他のスキルレベル的にもう獲得してもおかしくないし。

不味すぎる。

持久させるつもりだったけど、そんな余裕なさそう。

 

 

さっき地上で跳ねて作っておいた球体の結界を発射して大魔王結界を破壊して、そこから穴を開けて下層に降りる。

魔王はまだ2回目の暴食を発動してないし、速度1だからあと1分くらいの余裕ありそうだし。

てか動けない状態になることここ1000年ないだろうし感覚バグるんじゃないか?

いっそこのストレスで自滅してくれたりしない?

まあ、少なくとも心は折れるはず。

 

 

怠慢獲得したら勝手に私のこと追いかけてきてくれると思うし、私も彼女とは和解したい。

彼女も私の強さはわかってるからあとはメリットを提示するだけだ。

 

 

 

私の思い、そのままぶつけてやる。





体は元青年、心は幼児。


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95 古と運命 私の思い

失踪はしない(強い意志)

しばらく投稿しておらず申し訳ありません。
これからは少しずつ投稿していこうと思います。




今までのあらすじ

バチュルとして生まれた青、白と一緒に強くなる

白、魔王に深淵魔法で攻撃されてその場から消滅

青は魔王に怒ったものの色々精神性を理解して落ち着く。


暴食を発動して周囲の蜘蛛を消滅させても再び大量に上から落ちてくる。

だけどジリ貧のように見えて実はこちらが有利みたいだ。

レベルアップで増加した体力を盾に再び暴食の発動のために口を閉じ始める。

うん、時間的に問題なく間に合う。

 

 

レベルアップは匹数的に毎回できそうだし、私を縛ってる根本の原因である怠慢も経験値ボーナスで獲得できそう。

ボーナス的にもう一度レベルアップすればいけるかな?

HPの減りも早いけどHP超速回復も合わせてあと数分は耐えられるから行けそうだ。

 

くー、それでもほぼ動けないのが精神的に辛い。

よし気を紛らわせるためにこれからのことについてなにか考えよう!

えっと、えっーと?

 

 

私は青にどうしてほしい?

まず望むのはとりあえず私のことは殺さないでほしい。

最愛の存在であるだろう白を殺そうとした手前、ここは無理かもしれないけど。

 

 

次に望むのは私の意志を受け継いでほしいということ。

なかなか最悪のものであるし、こんな意志を受け継いでほしいなんて思ってる私も相当嫌な存在だろう。

こんな不可能な意志は一種の呪いだ。

だけど、奴なら受け入れてしまうという、そんな確信がある。

 

 

そして最後に。

私が殺されるとしてもあいつに私のことを食ってもらうことはできるだろうか。

彼女は生物でありながら大量の兵器を体外に露出させながら戦っていた。

それを踏まえると体内のどこかに外部の物質、金属などを吸収する機能があるのだろう。

そこで私を食ってもらう。

私はこんな性格をしているけど強さだけは一級品だ。

食ってもらって、さらに上手くいけばギュリエと同じような存在にまで辿り着けるかもしれない。

そして、私の意志のために動いてくれ。

 

 

ギュリエには今までたくさんの迷惑をかけた。

こんな怪物が生まれると知っていれば私もまたもう少しちゃんとできたんだろうか。

わからない。

まあ、もう思い残すことはほとんどない。

だから青。

 

 

この世にはDやアルセウスというよくわからない神がいるらしい。

だけど、女神様やギュリエのような必死に生きてる神もいる。

しかもその下に何も知らない愚かな民衆や私がいる。

地元最強でお前の祖母である私が言ってやる。

 

 

世界に不満があるなら!

この星のもの全部ぶっ壊して混沌を作ってやれ!

 

 

2回目の暴食が発動する。

また何万匹もの蜘蛛が死んで、大量に手に入る経験値。

 

 

『熟練度が一定に達しました。スキル「怠慢LV1」を獲得しました』

瞬間、再び力を入れていた口がガチンという音と共に一気に閉じる。

再び消滅する生体反応。

どうやら3回目の暴食が発動したみたいだ。

 

 

 

うん、耐性を得たからもう動ける。

青。

呪いを受けとって。

私は彼女のいる下層の巨大ドームへと跳ぶ。

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

下層には巨大な半球のドームがある。

もともとマグマ溜まりだったのか、岩壁一面に黒い結晶がついている。

そんな美しい場所で終えるのなら悔いはない。

 

 

着いた。

確かな足取りでそのドームの入り口へと歩く。

暗いけど暗視があれば結晶だって見えるはずだ。

 

 

人よりも少し大きいくらいの穴を通り、ドームに入る。

地面には人ほどの体長のエレテクトたちがひしめいていて足の踏み場はほとんどない。

青はその中心にポツンと佇んでいた。

そして入り口近くに、一箇所だけ不自然にその群れに穴が空いている。

どういうことだ?

 

 

私は跳ねそこに着地してそのまま青の方へ跳ぼうとする。

瞬間、地面に足がくっついてツンのめりながら、何とか体勢を整え青の方を見た。

同時に巨大な音がドームの中に響き始め、天井からの光で青がライトアップされる。

 

 

『みんな、来てくれてありがとう!』

 

 

大声を響かせている彼女。

私にはこのパフォーマンスの真意がわからない。

でも、そんな私の疑問には答えずさらに言葉を紡ぐ。

 

『みんな、今まで生きてきた!

 辛いことがあってもなにがあっても、生きてこれたのは素晴らしい!

 だからこそ、今日は笑おう!』

『君は頑張った!』

 

青はなにか金属の棒を持って叫ぶ。

どうやらあの棒が音を吸収して増幅させてるみたいだ。

それで壁から音を出している、のか?

 

 

『私もみんなに会えてこの思いを伝えられることが嬉しい!

 だから最初に伝えるよ!

 ステージチェンジ!』

 

その声と共に私の意識は遠くなる。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

あれ?

目を擦って床に座る。

気を失ったはずなのに周りにはなにも変化はないし、蜘蛛たちがいるだけだ。

 

「よお」

 

いや違うわ、よくわからない固まりかけの溶岩で出来た男が隣であぐらかいてる。

そのくせちゃんと顔は美形で身長も高いし、どうやらギュリエの鎧みたいに溶岩がまとわりついているって感じだ。

目の上に掲げた二本指がなんかチャラ男感あって嫌だけど。

 

「よく来たな!

 思ったより友好的で我驚いた!」

「今どういう状況?

 てか、あんた誰」

 

 

そいつは顎に手を当てて考えるふりをする。

なーんで少しイラッとくるんだー?

「うーむ、あのカタツムリだ。

 青に抱き抱えられてたカタツムリ」

「あ、さっきのやつ?

 待て、それまだ1時間経ってないよなあれから」

「いや経ってないが。

 あーそうか、この世界の性質で我はこの姿になってるのよ」

「は?この世界?」

 

 

周りを見渡してみても、気を失う前からなにも変化がない。

全然そんな印象ないぞ。

強いて言うなら、隣にこいつがいるだけ。

 

『ここはドリームワールド!

 私の世界で、私の好きなものが生み出せる世界!

 みんなもさあ想像して創造しよう!』

 

「って声が聞こえるけどこれただの幻夢な?

 お前の外道耐性低いこと利用して仮想の世界生み出してんだ。

 ちなみに、周りの蜘蛛たちも協力してるが同時に幻夢は見てる」

 

そうなのか。

なんか青の扱いが悪いのはともかくとして、なんだかすごい世界だ。

魔王である私でさえこんなに驚いているのだから。

全く幻想を見ていると思えないのだから。

 

 

何か違いがないのか周りをじっと見ていると隣から肩を叩かれる。

見ると、そのカタツムリの人が笑っていた。

 

 

「ここでは全部忘れろ。自分の地位とか、自分の姿とか。

 我だって想像だけでこんな体を手に入れている。

 なにより、この世界では幻夢だったものが真になる」

 

 

額に手を当ててため息を吐く元カタツムリ。

確かにコイツは、元々カタツムリだったはずなのに今では全く人間と見た目の差がない。

人間でもマグマの鎧を着ればこう見える奴だっていると思う。

そもそもそんなもの着れるやつはいないはずだけど。

 

「じゃああんたが私の肩に触れられたのはどうして?

 幻夢だけじゃ無理でしょ」

『あくまでこの世界が幻夢中心に回っているだけであって幻夢だけというわけではない。

 そこは青による外道魔法で辻褄あわせされている。

 いくら微調整といってもやばいことやってるとはわかるがな。

 ほら』

 

急に指を向けられデコピンされる。

私は思わず振り払うけど、やっぱり間違いなく手に触れた感覚がある。

まじか。

 

『こうやって触れられるということを疑わなければ、本当に触れることができる。

 逆に言ってしまえば無理だろうと思えば難しいわけだが。

 粗探ししなければこの世界のものは実体として存在してるのと同義だ。

 もとの我がただのカタツムリでしかないと言うことを考えるとすごいだろう?』

 

いやそれはそうだけど。

そうなるとこいつの本体はどこにいるんだ。

存在しないものが存在するように思われるのなら、存在するものはどうなってしまう?

 

 

そんなことを聞いたら、またため息をつかれる。

うーん。

なんでイケメン高身長なのにここまでウザいんだ?

 

 

『聞くべきではないこともこの世には存在するってことを覚えとけ。

 格が違うものはこの世に存在する。

 趣味が悪いようだが我には説明しかねる。

 ただ一つだけ言っておく、夢は壊すな。特にあいつのはな。

 

 

 ほら、はじまるぞ。

 ステージを見ろ』

 

 

これも幻夢かなんなのか、不思議な力で行われている。

正直もうなんかわからない。

 

『じゃあ一曲目いくよ!私は最強!』

 

 

突如青の姿がライトアップされるとともに壁から響き出す巨大な音。

予見ガン無視で私が驚かされたのも考慮すると、持ってるスキルも容赦無く貫通するのか。

全くふざけたバケモンだ。

 

 

『ああ見えて、あいつは頼ろうとする時には全然頼る。

 それどころかだいぶ依存する。

 今回あいつが歌うって決めた曲も黒龍から聞いたモンだしな』

 

 

でもこんなポップな歌ギュリエが聴くはずないんだけど。

いや聴くのか?聴かないと思うけど。

そう考えると黒龍から聞いたってのは建前で、実際は転生前からも聴いていた歌なんだろうか。

 

『あー、でもこんな娯楽よく思いつくモンだな。

 少なくともこの世界にはないだろうし転生前か?』

「え、そういえばあんたって純正のここ生まれここ育ち?」

『そうだが?』

 

え、こいつもこんな知能ありながら転生とか全く経験してなかったの?

そしたらめちゃくちゃ感情持ってるじゃんこのモンスター。

青っていう狂った特異存在がいなければ十分コイツも異常の類だぞ?

へんなことなければ十分世界の行方を左右してるし、人族だって殲滅できるだろう。

 

 

 

「あっ、いや……」

『なんだ?』

「凄いなって……」

『まあな』

 

 

でも、そんな思考も他所にするような爆裂する音。

叫ばれる強大な歌。

これでもかというほどに頭に叩き込まれていく。

耳をつんざくような声。

異世界ではこんなものが流行っているのか?

わからない。

わからないけど、なんかすごい。

 

 

私は最強、か。

そんなものでもないだろう。

私だって最強であるはずなのにあのクズを殺すことができないし、女神様を救うことすらできない。

青だって最強になったはずなのに白を殺されかけただけで意識を失うし、精神面ではとっくに破壊されている。

 

私たちは最強なんかじゃない。

確かに最強として生きていて、繕ってるかもしれないけど私たちは最強じゃない。

だから誰かに寄生して、頼って生きるんだ。

 

 

 

一人ぼっちは嫌いだ。

飽き飽きだ。

だけどもう誰もいない。

長く生きていたら、いつの間にか一人ぼっちになっていた。

周りのみんなはとっくのとうに消えていた。

 

 

私は置いていかれたのかもしれない。

だけれど可笑しいのは私でアンカーも私だ。

悪党はいるけど、何も変えれない私も悪党。

愛が間違えではないはず。

愛すことと愛されることで人は救われる。

だからただ、虚しくて寂しい。

 

 

『最後に、新時代!』

 

この世の中はそう簡単には変わらない。

変わらないけれど、私と彼女は新時代を求めている。

だから彼女は全てを混沌に沈めようとしている。

自身の持つ力全てを使って、破壊し尽くそうとしている。

 

 

やっぱり、考えれば考えるほど面白い。

最低だけど世界の破滅なんて最高に面白いじゃないか。

 

 

 

ああ、生きたい。

私は生きたい。

最低だけど、最低なりに私は生きたい。

 

 

今の今まで死んでもいいかなって思っていたのに、たった今になって泥を啜ってでも生きたいと思う。

だけど私は生きられるかはわからない。

青からも許されてるかわからないのに。

 

 

隣のやつがため息ついてるけど、それは無視。

私が彼らに犯した罪はとても重いのだから。

これが最後の鎮魂歌であったとしても文句は言えない。

 

 

『殺すやつ相手に茶番やる余裕うちにゃないわ』

文句は言え、ない。

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

『みんな、じゃあねー!』

 

全て歌い切ったのか、舞台は暗転して青は姿を消す。

本当にすごかった。

てか凄すぎてなにもわからなかった。

でも、それでも、私にとって最低だったライトの光が嫌いじゃなくなるまでには変えられた。

ほんととんでもない。

 

 

 

 

 

『やあアリエル。

 えっーと、あなたはなにをしたい?

 サリエルの解放は最終目標としてもまずは今日の予定立てようよ』

「は!?」

 

 

 

 

明るくなった瞬間目の前に現れる青い目の少女。

台のようなものに乗りながら少し屈んで私に目線を合わせて、少女は一言言う。

私が怯んでることなんて無視して。

 

 

『世界を一度、一緒に壊そ?』

 

手を伸ばす、私と同じような幼い少女。

けれど彼女に秘められた力は世界を軽く破滅出来るもの。

ただそんな強さなんて、今の私にはどうでもいい。

 

「ありがとう。

 ーー望むところだ」

 

 

伸ばされた同志の手を私は握る。





環境は違っても、育ち方は収束する


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96 世界を喰い尽くせ



この世全てを、狙い撃て。




疲れた。

今回初めてライブをやってみたけど、圧倒的に想像以上の精神的疲労が来てる。

なんのかんのアリエルとゼルギズのせいだ。

確かにリハもやってて私が舐めてたのはあったけど、ゼルギズとか急にアリエルに触れてるし、アリエルもアリエルで少し疑ってかかってくるし。

幻夢とか外道魔法とかすごい使った。

 

 

しかも最後のイキリ様よ。

私が最後にイキリたかったのはあるけどハキハキ喋るんじゃなかった。

緊張での精神的ダメージで魂削られるわこんなもん。

あーもう疲れた。

 

 

私は、肉体の主導権を電脳に引き渡し、そのまま意識を奥底へと埋めた。

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

あー、ドサッて急に身体が倒れたから魔王だいぶびっくりしてるじゃねーか。

オレ様は倒れた状態から起き上がりゼルギズの報酬についての説明を手短にする。

青はめちゃくちゃ雑にアイツを扱うが、なんだかんだ細かいことをこなしてくれる存在だから実は結構大事な存在だ。

そのくせオレ様たちがオリジンにまできて人化してから、一度も正式には報酬をあげていない気がする。

そろそろあげねぇといろんなところが軋み出す。

 

「ねえ、青は?」

「今の娯楽で疲れてぶっ倒れてる。ま、とりあえず白のところに行こうじゃねぇか。まずはアンタとの和解に成功したこと言わなきゃ本当の戦争は終結しねぇ」

「場所わかってるの?」

「ああ、もちろん」

 

オレ様はアリエルの手を取り、転移で空間を跳んだ。

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

あん!?

なんかギュリギュリからもらった地龍食べてたらピュンって青と魔王転移してきたんだけど!?

まだ体未成長だし、ステータス2桁出しで無理だろこりゃ!

何しにきた!?

 

 

うん?

魔王、戦って感じの雰囲気じゃなくただわたしのことじっと見てるだけ?

スキルもあんまり発動してないしさっきみたいな臨戦態勢でもない。

これはなんか交渉したのか、青。

 

 

「白、電脳だ。

 魔王と和平を結んだ。落ち着いて食え」

「青は?」

『疲れてるけど生きてるよ。

 ハッピーバースデーエブリワン』

 

青大丈夫かこれ。

なんか寝ぼけてるし。

 

「青も疲れてるだけでダメージ受けてねぇから問題ない。

 そういやお前進化出来るみてーだからした方がいいんじゃね?」

 

なんかこいつ、横柄になってない?

進化出来ること教えてくれたのは感謝だけどさ。

 

あれ?

えー、えー、あ、進化か!

わたし、ついにアラクネまでなれるってこと!?

ついに!!

待望の!!

アラクネ!?

 

 

騒いでる私の目の端に呆れてるやつが2人見えたけど、無視だ無視!

まずはこの進化を確定させてやる!

進化!

 

 

《個体ザナ・ホロワがアラクネに進化します》

体の中でミシミシという音が響き始めるのを感じる。

それに伴ってか少しずつ大きくなり始める身体。

てかこれめちゃくちゃ変な気持ち。

痛覚無効があるから痛くはないし気持ち悪いってわけでもないんだけど、なんか変な感じなんだよ。

くすぐったいってわけでもないけど、なんかムカムカするってわけでもないし。

でもお腹の中で何かが確実に蠢いている。

進化の時はこんなのが毎回起きていたのだろうか。

 

 

 

だんだんメシメシという音がメキメキという音に変わり始めた。

これマジで平気か?

頭の上らへんがむずむずしてるし、重さ増してきた気もするしどうなってんのホントこれ。

うわ絶対なんか生えてきてる。

あ、てかこれアラクネだから胴体なのか多分。

知らんけど。

 

あれ?

待ってやば。

進化に体が追いついてないのか末端が崩れ始めた。

私のステータスが全然回復してないのに無理やり進化しちゃったからか。

まずい、地龍食わないと。

 

ガツガツと必死に地龍を口の中にかき込む。

それに伴ってか少し回復するけど、緩めた瞬間にまた低下する。

やばい、これ一瞬でもやめたら死んじゃうやつだ。

 

 

 

頭にあった意識がなぜか上の方にも運ばれていく。

いや、元の頭の方にも意識はあるから二つに分かれてるのか。

並列意思の時からそうだったけど同じ体の違う場所にあるのには違和感がある。

 

でも食わなきゃ。食わなきゃ死んでまう。

あー、進化ミスった!

 

10分くらいかかっただろうか。

生えてきた胴体の構築はお構いなくメキメキと進んで、ついに終了した。

私にとっては無限の時間に感じられたけれど。

 

 

《進化が完了しました》

《種族アラクネになりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度進化ボーナスを取得しました》

 

 

わたしはついに、アラクネとなった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

キョロキョロと周りを見渡す。

どうやら体が蜘蛛の頭から生えたおかげで、だいぶ視界が高くなったみたい。

しかも首を動かすだけで見渡せるあたり、人間の上半身がすごい便利だ。

 

 

 

魔王も興味深そうにわたしのことを物色してるし、青に至っては蜘蛛の側の背中に乗っている。

は?なんで乗ってるのこいつ。

電脳だったよな今身体の主要権握ってるの。

 

「私がきた!

 真面目な話すると白がアラクネになるのに見てないなんて私失格じゃん」

 

どうやら電脳から身体の所有権を青に移行させたらしい。

疲れてたらしいけど、回復したの?

 

「あと私精神的に疲れてただけで肉体的にとかMP的に疲れてたわけじゃないから大丈夫だよ」

 

 

なんで当たり前のように思考読み取ってるの?

青にそんなスキルなかったよね。

うーむ、私が気づかない間に青も少しずつ成長していたのかな。

そこに気づくことができなかったのがちょっと悔しい。

 

「人の体に進化してるから白が思ってるより顔に出てるんだよ。

 蜘蛛の時よりも顔が動くし、感情がわかりやすい」

 

あー、そういうこと?

それなら少しだけ納得。

確かにこのわたしですら青が人になってから感情わかるようになったし、もともと色々見てたっぽい青がわたしの気持ちわかるようになるのも割と納得な気がする。

 

 

でも思いっきり体は女みたいだなー、胸あるし。

ワンチャン性別雄だったりするのかなとか思ってたけど普通に体が雌だ。

青も雄から雌になってるあたり蜘蛛になった時点で雌になる強制力が働いてる?

卵も産むんだし。

 

私が雌ということは。

とりあえず服着なきゃまずいんじゃね?

流石に変な称号とか手に入ることはないと思うけど、人の体になったくせに全裸のまま過ごすとか猿と変わらんし人である意味がない。

よーし、服を作ろう。

 

 

指先から真っ白な糸を出して簡単な服を作る。

まあ細かいことは家でやればいいから下着だけ作っとこう。

お、結構サクサク作れるじゃん便利。

やっぱり人の指があると物を掴めるから文明開化だねぇ。

 

 

パキャ。

パキャキャ。

 

うん?

わたしの周りにあるたくさんの卵が孵化し始めた。

魔王から逃げる移動用の卵とか非常食用の卵が。

私が進化したから孵化が早くなったのかな?

 

 

パクッ。

えっ、青が背中から飛び降りて1匹食ってそっぽ向いた。

こっわ。

コイツら生まれた時からヒヨコ大のサイズある蜘蛛なんだけど?

 

 

しかも食う時に明らかに口が広がってたし。

何この生き物。

もう人と見た目同じだし、背中から蜘蛛の足見たいな腕とか生えることあるし。

質量保存の法則無視して身体から大量に金属出したりもするしコイツ本当になんなん?

てか、コイツってまさかだけど、もう神なのか?

肉体なんて今さらどうでもいいんだろうし。

絶対とりあってくれないから聞かないけど。

 

 

とりあえず私の娘たちにはご飯をあげとこう。

わたしは優しいんでね!

空納からモンスターの死体を20匹くらい出してぽいぽいと放る。

これくらいあればしばらくは生きていれるでしょ。

 

 

 

 

 

パン!

モンスターを配り終えた私に、突然青が手を叩いてニヤリと笑う。

状況を飲み込めない私と魔王にはお構いなく、青は歯を尖らせて目を輝かせる。

 

「私たちの街の領主さん宅に希少金属レアメタルが出た!喰いに行こう!」

 

 

は?

希少金属って、まさかだけど、あの施設にあったみたいな兵器?

じゃ、じゃああの吸血っ子は?

 

 

無事?





和解、覚醒、自由。


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97 美食家降臨


感想、高評価よろしくお願いします。

ついにポのやつと遭遇。


私は白と魔王を巻き込んでの範囲転移魔法を展開する。

目標はあの人形。

あの人形には施設にもなかった性能のいい加工された金属もありそうだし、なかなか良さそうだ。

ソフィア?

そんなやつ私は知らない。忠告したし。

 

 

『もともと日本人で平和かぶれのやつに忠告しても無理があるだろ。あいつは悪くなくね?』

正論パンチやーめーろ!

私は忠告したもん!!

 

 

転移。

迷宮内から私たちの姿は消える。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

とうちゃーく!!

開いた扉からお屋敷に侵入。

だけど、入った途端に深くフードを被った人たちの矢が飛んでくる。

やーばいなこれ。

 

体にビュンビュン飛んでくる矢を受けながら魔王と白を待つ。

うーむ、別に殺すのも悪くないんだけどね。

ここまで貫き通してきたものをいきなり破るのは良くないし。

 

 

でもなぁ。

私の目には人間とは映ってないんだよなぁ。

耳が長いし、電脳に確認しても不純らしいしからエルフか。

まあどっちにしろ改造人間みたいに遺伝子が結構いじられてるからロクな存在じゃない。

 

 

「奴らはエルフ。この世界においてはポティマスが使ってる害悪な生き物だよ。

 青が別に殺すの躊躇うのなら私が殺るけど、別に殺していいと思う。

 てか大量の矢刺さってるけど、平気なの?」

「平気平気。あと頼んだ。

 じゃあ白行こう」

 

 

遅れてきたアリエルに周りのエルフたちの処理を頼んで、ポティマスがいるであろう入り口ホールへ壁を叩き割る。

矢を体内に吸収して、周りの様子を確認。

すると階段の下に突っ立っている金属が護衛の人に剣を向けていた。

あー、これ想定以上にキマってる状況だな。

私は希少金属の前に飛ぶ。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

「白、やりたいなら彼ら回復してね」

「たくもー!正直じゃないんだから!」

ポティマスの前にいたソフィアと彼女を守ろうとしていた男の人を掴んで、軽く回復をしながら白の方へぶん投げる。

ついでにポティマスの剣も吸収してしまおうと思ったけどもとりあえず今はいいからポティマスごと磁力で吹っ飛ばす。

そんなポティマスに構わず剣やらを振るってくる護衛たち。

私ポティマスの周りにいる護衛のエルフたちになにもできないじゃん。

 

あ、アリエルも飛び降りてきた。

彼女に頼もう。

 

 

「アリエル、ポティマス以外のエルフはもう殲滅してほしい。

 逆にポティマスにはなにも手出ししないで。

 私に対する試金石として、ね?」

「いいけど青また剣とか突き刺さってるじゃん。

 いいなら別にこちらは言わないけどさー、服とか気をつけてよ?

 血も出てるしいたたまれないぞー?」

「へーきヘーき」

 

アリエルに殲滅してもらってる間、ポティマスの方を見る。

うーむ。

流石に傷つけないように吹っ飛ばしただけあって元気だ。

でも思ったより硬いみたい。

流石に4000年積み重ねてればいくら資源不足でも技術は発展するか。

 

 

よし、状況整理。

白がキャッチして庇った彼ら2人はとりあえず元気。

毒矢とかも刺さってたのに回復してるのはさすが白だ。

だけど彼ら以外は死んじゃってる……、のか?

 

 

『電脳!』

『全滅だ。領主込みでももちろんオールデス。

 なかなかやりやがったな、このクソロボ』

 

 

チッ、マジか。

領主さんにも色々お世話になったのに。

無理な依頼も大量に押し付けたし大量の発注もした。

街の人たちの食糧事情を解決するために一緒に尽力したのに。

さらっと死ぬとか私なにその間に歌ってたんだよ。

 

 

私を蜘蛛の姿で受け入れてくれた人なのに。

奥さんもお弁当とか作ってくれてたまに配給所に顔出してくれたのに。

まじでふざけんな。

 

 

あー、キレた。

キレちゃったよ、私。

私キレると何するかわからないよ?

 

 

『あーはいはい、お前の精神が狂うとオレ様の精神も狂うからやめてなー。

 よし喰らう』

 

 

「アリエル、殲滅終わったら白と一緒に彼ら守ってて」

「わかったけど私を顎で使うのアンタだけだよ!?」

 

 

そろそろ殲滅が終わりそうなアリエルに叫んで、ソフィアたちを守ってもらう。

せめて彼らが守ろうとしたものを絶対に守ろう。

これから一番きつくなるのは彼女自身だろうしね。

 

 

 

「なんだ貴様……?

 なぜアリエルに命令できる?

 なんだ、言ってみろ?」

 

 

おおいつの間にか立ち上がってたかポティマスくん。

 

「壁まで吹っ飛ばしたのに、不具合なかったんだね!!」

「なんだ貴様本当に……、気味が悪い。

 ともかく迅速に処理させてもらうぞ」

 

 

あっ、口に出てた。

別にいいんだけど。

私実は機械特効なんだよねー。

 

 

「鑑定!」

「無駄だ。抗魔術結界を起動させてもらう」

 

ポティマスが叫ぶと同時に、立体のキューブみたいなものが見えて私にかかっている魔法系のバフが全て消滅した。

白たちまで範囲は及んでないみたいだからソフィアたちを回復できないっていう最悪の事態は避けられるかな。

ならばヨシ!

 

 

どうせだしちゃんと調べ尽くさないとね!

「すっご!この結界外殻無しでも発生させられたの!?」

「貴様は何を言っている?」

いっーや、4000年ってすごい!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ポティマスが剣を振るってくる。

私はぴょんと跳んで回避かつ地面に着地。

 

 

「は?」

いや、は?じゃないけど。

別に避けられるし、そんなスキルもステータスも乗ってないただの剣。

 

 

いつも通り体内で完結する爆雷を使えばまあ、目で問題なく視認できるし躱せるし。

まあ体力回復速度は遅くなるけど爆雷便利だからなー。

結界でステータス自体も下がってるぽいけどそれでも避けれるもん。

 

 

ポティマスの攻撃をいなしながら結界の仕組みを観察する。

特に気になるのはキューブの端っこの部分だ。

おそらく角があるから立方体にできているのだろう。

昔の魔術結界だと球体ばっかりだから、端っこになにか結界を引き延ばすエネルギー放出の効果でもあるのだろうか。

全方位にエネルギーが向かってるなら球体の結界にならざるを得ないはずだし。

 

 

攻撃を再びひらりと避ける。

同時に視界の端に見える歪んだポティマスの顔。

すっごい機嫌悪そう。

どうせだし機嫌取りのためにも一発喰らっとこうか。

 

 

振るわれた剣の先に左手を突き出す。

それと同時にスッと切り落とされる腕。

え、普通に切れるのか火力舐めてた。

 

 

よーしじゃあ再生するぞー!!

ほい!

 

 

シーン。

 

は?

シーン。

 

 

「おっとっと!!」

 

ビュン!!

いつの間にか迫っていたポティマスの刃を体を剃らせてギリギリで避ける。

マジか、再生妨害まで4000年前から進化してるのか!

昔の結界なら出来てた筈なのに。

 

 

「なるほど、再生は流石に出来ないか。

 貴様が機敏に動くのは未だ理解ならないが、ここまで脆ければ問題なさそうだな」

 

うっさい。

後ろに跳んでポティマスからとりあえず距離を取る。

けれど、4000年前からあったものを考慮するとおそれくあれが来るはずだ。

 

 

パァンパァン!!

ああやっぱきやがった!

ポティマスの指から発射された銃弾をギリギリで避ける。

まだ余裕はあるけど、流石に研究してるだけの余裕は無くなってきた。

 

 

しかも片腕飛んだせいでそこから血液が流れ落ちてきている。

ああもう、こんな余裕ないなら見せてやるよコンニャロ!

 

 

左腕の肩近くの体内に壁を形成していく。

ポティマスの銃弾を避けながら。

しかもなんだかエネルギー弾なのか、全然弾切れする予期がない。

エネルギーだとしても相当な量消費してると思うんだけど。

 

 

できた!

左腕を自切し新たにできた壁を皮膚として代用して無理やり出血を止める。

あくまで一時的だし、少しは血が溜まるから応急処置だ。

 

 

「チッ、ーー化け物が」

 

 

あいつは舌打ちをして、右腕をキャノンの形に変更させる。

なんだあの面白変形ロボ。

バリエーション豊富すぎるだろ。

 

 

ドドドド!!

キャノンのくせにこれはエネルギー弾じゃなくてガチモンのマシンガンなのかよ!

さっきより上がっている弾速にビビったけど、足に鞭を打って一気に天井まで跳ねて回避。

背中に生やした脚で天井を掴みながらさも台所に現れる嫌な虫のように高速で回避する。

予想以上に銃のバリエーションもあってわりかし危ない。

 

 

ドドン!

あ、やばい。

あのクソエルフ、私が一瞬目を離したスキにソフィアの方に銃撃ちやがった。

いくら爆雷バフありでも銃弾以上の速度は出ない。

つまり防げない。

 

 

「さすがゴミ、慣れた手つきだね。

 どうやら死にたいみたいだな」

 

 

だけど立ちはだかるのはアリエル。

彼女はそう言って飛んできた銃弾に左手をかざす。

そして、手のひらを貫通して速度の落ちた金属の弾を右手でつまんで潰した。

ああ相当狂ってるよあの人も。

 

 

「ほお、防がれたか。

 まあいい、今は貴様だ」

 

こっち向いてきたけど、貴様だじゃねーよクソエルフ!

浮気したのお前じゃねえか!

しかも白にめっちゃジト目で見られてるよ!

あんたを観察してる間に銃撃たせちゃったから!

 

 

一瞬で終わらせる!

『アンチアンチ魔法領域!』

「は?」

 

 

呆けてるポティマスの結界を弱めて、奴につかみかかる。

蹴り倒してから馬乗りになってそのまま背中の脚でしがみつく。

そして口の入り口を拡大。

奴も行く末を理解したのかマシンガン乱発してくるけどあいにく魔法領域を弱めた空間でのそれは無意味。

発射された弾は、私を貫通する前に吸収される。

私の資源として還元されるために。

 

 

首を握る。

ぐにゃりと捻りちぎられる。

足で体を軋ませる。

中身の金属が捻じ曲がる。

鋭く硬い脚を体に突き刺す。

バチバチとショートが始まる。

 

 

「ーーチッ。想定に組み込まなければ。

 面倒だ」

うっさい!

 

 

頭を丸ごとごくりと飲み込む。

広がる喉。

それを体内の空納に送り込んで分析。

体の中の体積としてはゼロでも、確実に私の栄養へと変化している。

挟んでいた足で体をふたつに分ける。

これもまた空納へ送る。

貴重な金属を確実に食うために。

 

 

背中に生えた6本の脚の先端を刃物に変形させ、獲物を細かく切り刻む。

それを焼き鳥のように脚に刺し、一つずつゴクンと飲み込む。

これら全部、私の知識と力になるんだ。

 

 

ーーポティマス、ごちそうさまでした。

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

私はとんでもない少女を拾ってしまったようだ。

まさかあのクソエルフを跡形もなく喰いつくすとか。

正真正銘の化け物だ。

 

 

今も彼女は天井に背中の脚を突き刺して避けた分のマシンガンの弾を探している。

それも弾の金属と火薬を食べるためなのだろう。

あーあ、えげつない存在が生まれちゃったんだなぁ。

 

 

私、こんな色んな意味で凄い子、初めてだ。

仲良くなれるかなぁ?





なんでも食べます


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98 燃ゆ

高評価、感想お願いします。




すべて燃えた。
そして燃やされていて、燃やして生く。
灰になってゆく。


パクリ。

数分かけて周囲に転がっていた弾と火薬を食べ切って、やっと私は気づく。

ああやばい。

まだここでの戦争は終わってないんだ。

 

 

私は正面入り口の扉を力で鍵ごとぶち破り外へ飛び出す。

あのクズエルフが、自分の目的を達成できなかっただけで諦めるはずがない。

ヤケクソで最悪火を放たれててもおかしくない。

少なくともソフィア誘拐のカモフラージュのための子供は攫うだろうし。

てかその子供たちはどこにやってるんだ。

 

跳ねるとすでに街の各所で火の手が上がっているのが見えた。

予想通りだけどやりやがった。

あいにく今日は風が強い。

あのクズ野郎のことだから、火を放つことも考慮してたのだろう。

私は盛大な舌打ちをして叫んだ。

 

「アリエル、この屋敷に避難民をやるから見てて!

 白、攻めてきた兵士とエルフを殲滅して!」

「青はどうするの!?」

「私は鎮火と人命救助に回る!」

 

私は白の言葉に答え、宙に舞う。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

二人とも勝手に行ってしまった。

ああ、なんで私に屋敷にいることを頼んだ?

私一番人が嫌いだしこの街にもいなかったんだけど。

 

なにより、身近な2人が避難所にいた方が安心するんじゃないか?

あの時みたいに。

 

 

いや違うか。

白が私より魔法上手いから連れて行ったのか。

弱い人間どもに私が魔法下手に撃ったら死ぬかもだし。

 

 

「私たちは何をすべきでしょう」

ああ、私の足元に寝せていた奴起きたのか。

青に投げられた衝撃で気絶してたもんね。

それでも赤ちゃんを手放さなかったことには尊敬しかないけど。

 

「とりあえず2階で休んどいて。

 これからこの街の人を一時的にこの屋敷に避難させるみたい。

 あと私たち一応敵じゃないから警戒しなくていいよ。

 白と青も一緒にいたの見たでしょ」

「ーーはい、わかりました。

 ですが、この街の人口を考えるとおそらく屋敷の一階だけでは到底収まりません。庭がありますのでそこも使っていただければ嬉しいのですが……」

「わかったわかった。あとで2人に伝えておくよ。

 でも、ともかくアンタたちは休んでて。念の為パペットも1体預けておくからさ」

 

私はパペットタラテクトを召喚し、階段にある瓦礫などを退かさせる。

ついでに威圧して奴らを上に向かわせる。

青に頼まれてるのになにか事故でもあったらあわせる顔がない。

 

 

たく、困ったものだ。

そろそろ避難民の人たちが到着してしまう。

散々助けられてはきたのに私はどう接すればいいのかわからない。

私も皮肉なやつだ。

助けられることばかりに慣れて、助けることは全く出来てなかったとは。

 

私は避難者を受け入れるため屋敷の正門を開けに歩き出す。

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

やばい。

鎮火のためになにも考えずに飛び出したはいいけど、火の発生源が多い。

どうやら思ったよりもエルフに侵入されているみたいだ。

 

しかも火を放ってる奴らの中には人間も混じってる。

おそらくポティマスに雇われた傭兵のような者たちなのだろう。

どうせ全部終わってもお金が払われることは無いのに。

払われる前に焼け死ぬのだから。

 

 

火元に水魔法を放ちながら、同時に逃げてきた人たちにも水をぶっかけてびしょ濡れにする。

今日が暖かい日でよかった。

逃げてきた人たちにも水をかけておけば、マッチで火をつけることも出来ないから内部からのテロも防げるし街の人の火への耐性も強まるし一石二鳥。

持ってる紙とかはダメになるかもだけど今は緊急事態だから勘弁してくれ。

 

 

電脳に白の叡智と繋いでもらってマーキング。

このマーキングによって、エルフと人間の裏切り者がいる場所が示される。

残念ながらどんなに逃げても、群衆に紛れても白に殺される運命だ。

私から何も言うことはない。

 

 

「落ち着いてください!

 ここから領主様のお屋敷に避難してください!

 鎮火はされています!落ち着いて、足元をよく見て避難してください!」

「女神さまはどうするの!?」

「私にはまだ助ける人がいます!

 君たちにもまた会える!さあ、歩くんだ!」

 

 

子供たちの声に応え私は再び跳ねる。

ポティマス。

 

この街の人は誰一人殺させない。

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

はい、ザシュッと。

私は叡智でマーキングされたエルフや人間どもを仕留めていく。

いくら私でも人間の裏切り者の肉はまずいから食わないし、子供達の餌にする。

エルフの肉はまだうまそうだから後で食べよ。

 

どうやら避難してる人たちの話を聞いていると、わたしと青は2人で一つの神として崇められているらしい。

青の方は人々に幸せを与え、わたしの方は悪人を地獄に落とすみたいな。

そんなひとつの神様の陽と隠が分かれたみたいな感じで。

 

別にいいんだけどね。

わたしの方だけなんかちやほやされてない。

女神様お助けくださいとは聞くけど、蜘蛛様お助けくださいは聞かないし。

でも蜘蛛様不届き者に天誅を!というのは聞いたな。

まー、静かに殺しまくっててしかもビッグなアラクネになってるからなー。

ワンチャン地獄のガチギレ仏様モードに見られてるのかも。

いつも静かなやつだけどキレたら終わりみたいなね。

 

 

おおレベルアップした。エルフといっても人間と同じで経験値いっぱいくれるところはいいね。

うーむ、だけど街が広いからだいぶたくさん潜ってるぽいなー。

市民さんのところにも潜ってるし、後で狩りにいかなきゃ。

1人でも逃したら被害でかいはずだしなんとかしないと。

あー、やば。細かい炎が多い。

もう少し効率よく殺していこう。

TASさんみたいにね。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

ねえ。

どうしてこんなことになったの?

お父さん。お母さん。

 

 

私がなんとかできなかったのだろうか。

この力で。

この、吸血鬼の力で。

 

 

疲れた。

目も開けたくない。

もういいや。

もう、夢を見よう。







命は燃える。


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99 人族の奴隷がLVアップしました。最高の奴隷になりました

汚いのに、美しいもの。




避難民の人たちを正門で誘導して、屋敷の一階玄関ホールへと移動させていく。

チッ、なんで私が人なんかを助けなくちゃいけないのかな。

女神様はコイツらの先祖に殺されたも同然なのにのうのうと生きてやがって。

いくら4000年前のことと言ってもムカつくものがある。

 

「ありがとう、女神さまの眷属さま!」

「ーーッ。あ、ああ。わかったから、早く入ろう、な?

 死にたくはないでしょ?あ、あっちだから」

 

 

キ、キレそう。さっきたまに青のことを女神さまとか抜かす奴らがいるし、何故か私が眷属に思われてたりする。

私の女神様は彼女一人なのに。

なんで青なんかが。

 

 

『あー、こりゃ思ったよりも被害者が多い。

 アリエル、そちらにアークエレテクトを5体送る。

 炊き出しの時のメンバーだから人間もビビらねぇはずだ。

 事務作業は出来るから3体には屋敷内で整理と点呼とらせてくれるとありがたい。

 残りの2体は中庭で誘導とかで働かせてくれ、想定以上の働きはするはずだ。

 よろしく頼む』

 

頭に声が響いた瞬間、庭に転移して現れるアークエレテクトたち。

しかもそのエレテクトたちを見て人間たちが上げるのは歓声。

そのまま彼らは電脳の言われた通りに動いて、人間たちを誘導し始める。

 

 

ただの蜘蛛がここまでの信頼を勝ち取って信じられて生きている。

すごいな青、本当にすごい。

種族なんて関わらず人間みんなを幸せにしてるなんて。

身内しか愛せない私には無理だよ。

 

 

私が人間だったら、彼女が女神にーー。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

よし全部鎮火終了!

兵士は殲滅させたしまだ潜伏してる住民たちに潜伏してるエルフや人間どもはいるけど、全員濡らしてあるし武器ないのも確認してるからもうテロ行為は出来ない。

助けるべき生命反応ももう確認できない。

いろんな意味で全部終わったな。

 

 

私が助けられなかった人もたくさんいた。

私が助けた人はそれ以上に多いけれど。

だけど街の人口の5%以上は負傷していて、死者も1%を超えてしまった。

 

 

本当に駆けつけたのが遅かった。

私が魔王なんかと戦ってる間にもこの街は襲撃を受けていたのに。

そのせいで一番大事な奴らを生かしておくことが出来なかった。

ああ、ケレン領主夫妻よ。

申し訳ない。

 

 

街は3割燃えた。

人も死んだ。

何よりあなた方が死んだ。

 

 

けれどあなた方は娘さんを残した。

護衛の方も今思えばメラゾフィスという執事の方だろう。

その二人を確実に残した。

 

私の心を生み出したあなた方に感謝を。

彼らは、私が絶対に守り抜きます。

 

 

「電脳、転移。領主宅へ」

『ああ』

 

 

空間は破れ少女は消える。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ザシュという音とともにエルフを切り裂く。

どうやら、青の方も鎮火終了したっぽい。

私も今最後の余ったエルフを殺したしベストタイミング。

 

 

殺したエルフの肉を下の方の蜘蛛の口で食べながら、腕組みをして考える。

というのもこれからについて。

正直、無知な私から見てもこの街の被害はとんでもない。

特に南側の一部の区画は壊滅的な被害を受けている。

完全な復興には年単位かかってしまうだろう。

チッ、あのクソエルフなんてことをしてくれやがった。

決めた。

エルフは悪で経験値だ。殲滅しよう。

 

 

「まー、青が転移で帰ってるってことはとりあえず終わったんだろねー」

 

 

わたしは転移で屋敷へと帰る。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

私が屋敷に帰ってきたときアリエルは門のところに突っ立っていた。

ーーなんとなく予想できるけど聞いておくか。

 

 

「魔王!今の状況は!?」

「とりあえず人は集まってる。

 庭まで使えば全然入るはず」

「ダメダメ!プライベートを守れるだけのスペースは確保できない!あくまで最低限度の生活は目指さないと!仮設トイレは準備した?街の人2週間くらい賄える食療と水は?この屋敷での規則は作った?」

「いや、……まだ出来てない」

「ーーツ。食糧に関しては私の空納の中に入ってる肉を使う!干物とかに加工するからパペットタラテクトとか出して手伝って!」

 

はい、しょうがない。

なんなら私だってアリエルには期待していなかったし、そんなもんだとは思っていた。

だって昔の私と同じ嫌な匂いがするもん。

今を生きようとも思わず過去に囚われていて檻の中に籠る。

そんな味方が減っていくしかない生き方で、今となっては勿体無いとしか言いようがない生き方だ。

私も昔はその生き方でいいと思っていた。

この世界に来るまでは。

 

 

だけど白と出会って私は変わった。

今の私は両手両足を引きちぎってでも檻から抜け出して、地面を這いずるように生きている。

その傷口がどんなに疼き消えないものであってもその痛みを無視して這っている。

それで這ってきた結果がこの街の人たちだ。

最高じゃないか。

 

 

愛されるなら。

ただの人間たちに。白に。領主さんに。アリエルに。ソフィアに。そして、私に。

愛されればいい。

 

 

愛されるなら、私は世界の理すら砕いて食ってやる。

私はそう思ってるからアリエルにもそうなって欲しい。

過去に後悔があるならでいいから。

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

翌朝。

炊き出しのために巨大な調理器具を作ったり水竜を狩りに行ったりした疲れで床に眠りに落ちていた私は、頭の中に響く話し声で目を覚ます。

 

 

 

「あー、やばいなこれ。

 協力出来たならよかったが逆に協力された立場だしな。

 なあ電脳、我もいくべきか?」

『絶対来い。

 マンパワーが足りてねーから進化の補助してやったんだ。

 一刻も早く飛びやがれ。

 転移使えねーのか?』

「いや、使えるが我そっち行ったことない。

 中層に蜘蛛よこしてくれん?」

『あークソ、今から行くから待ちやがれ』

 

 

 

『青、飛ぶぞ?』

え。

ぼんやりした頭を叩き起こして目を開けると、目の前のマグマがボコボコ音を鳴らしているのが見えた。





青について。
寝る必要はないですが、精神的に疲れると現実逃避で寝たりします


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100 人と成った龍のなり損ない

高評価、感想お願いします。

ついに100話まで来ました。あまり本編に絡ませないように記念回作りたいですね。


少し時間が遡ります。


我は目を覚ました。

確か、進化していた筈だが……。

そう思いながら手を動かすため神経を集中させる。

 

手がある。

我に手がある。

今まではあったとしても幻の手だけであった。

青から与えられた、想像だけで創造されていた仮初の腕。

それが今、肩から生えていた。

 

力任せに拳を作ってみる。

鎧のような黒々とした溶岩がパラパラと崩れ落ちる感触をえた。

ああ、これは間違いなく本物の腕だ。

 

 

ただ、重大な問題がある。

というのも腕が生えたことはいいのだがそもそもまともに動けない。

仰向けになった状態から腕の一本動かすことができないのだ。

言うならば、体の周りを土魔法で固められた気分だ。

さてどうするか。

 

 

鑑定を発動させてみると、どうやら我の種族名はオリジンマグカルゴであるみたいだ。

そしてステータスは2桁台。

青からも聞いた通り、見事に歪が発動している。

ステータスは一般男性なのに身体が固まった溶岩に覆われているなら流石にそれは動けない。

 

だが面白いことに魔法は使えるし、中層にいるのにも関わらず寒くなってきた。

これは体温がどんどん上がってきているのか?

身体の周りの溶岩が再び液体へと戻り始めているし、このままなら案外身体が動くようになるのも早いかもしれない。

そもそもこの体温に自身が耐えられるかという問題を考慮しなければだがな。

 

 

 

パキリ。

肘の溶岩が割れる。

ガキリ。

膝の溶岩が砕ける。

パキン。

腰の溶岩が、砕かれ流れる。

 

 

手をついて立ち上がり、我は高くなった視界から周囲を見渡す。

目を瞑り頭に神経を集中させる。

 

『鑑定、三人称』

 

頭の中に現れたのは、顔以外の身体全体からマグマを垂れ流すあの幻想で見た男の姿そのものだった。

 

『まあいい、青に連絡しなければ』

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

てな訳で私は中層まで転移させられたらしい。

まあ今は空納で作った空間の中に引きこもってるんだけど。

 

 

というのもゼルギズの体温があまりにも高すぎる。

今のゼルギズの体温は8000度。だけど5分前に顔を合わせた時には9000度を突破しようとしていて、転移した私すら軽く溶かされかけた。

 

マジでわけわからん。

身体が一部溶けた後に蒸発する前に逃げ込んだからいいものの、後30秒いれば間違いなくこの世から消えていた。

炎熱無効じゃないと確実に即死するクソギミックと化している。

 

てかなんで地面溶けないんだよ。

あー炎熱無効だからですねクソが。

本来なら地球溶ける温度なんだけどな。

 

 

だってマントルの温度6000度で太陽の表面温度も6000度だし。

軽く超えてきやがった。そりゃ私ですら溶けるに決まってる。

なんなら私以外ならそもそも対応出来ずに蒸発だ。生きてただけいい。

 

 

あと、中層でこいつが進化してくれたのも良かった。

逆に中層以外で進化してたら大惨事にも程がある。

ワンチャン地面を溶かし続けてこの星ぶっ壊したんじゃないの?

本当に良かった。

 

 

ただ、問題はここからだ。

低くするようには頼んだけど、これからゼルギズの体温はどこまで下がっていく?

最低でも60度くらいまでは下がってもらわないと話にならない。

逆に体温か60度まで下がっていれば表面温度は45度くらいまで下がるし、その温度なら最悪人に触れても火傷にはならなくて済む。

そもそもあくまで私たちや人間と行動するならっていう前提での話で、別に今まで通りの生活をするのならこの体温でもいいんだけどね。

いやそれでも2000度までは下げてもらわんと岩溶けるからダメだ。

溶岩以上の温度のものが動き回るのは流石に想定してない。

とりま頑張れ。

 

 

『青はどうするのだ?』

あー確かに。私がここにいてもただ体温下がったいくのを眺めてても時間の無駄だ。だけど来たばっかりにすぐ帰るってのも骨の無駄折り損みたいな感じがして癪。

そもそもこいつに呼ばれなければ来る必要もなかったんだけど。

 

 

 

 

 

ーーま、今回に関してはそうでもなかったみたい。

今この瞬間やばいものが感知できた。

よかった、先に気付いて。

 

 

 

 

「ゼルギズ、今空間を開くから片手突っ込んで」

『我まだ冷えてないが!?』

「いいから。

 冷えたら一人で帰って来れるように、転移に登録しといて」

『あ、そういうことか』

 

 

私は体が溶けるのも構わずゼルギズに近づいて、近くで空間を開いて手を突っ込ませる。

よし、これでこいつは街の近くの地点には転移できるようになった。

 

 

じゃあ、あとは……。

「いってら」

『は?

 どこに!?』

 

 

 

 

ゼルギズを中層の逆側に飛ばして私は体を再生させる。

あーあ、まずいな。

あいつがまた元気になっちゃった。

ゼルギズの体温が高くなり過ぎたこと、近くに眠ってたことが原因だろう。

 

 

地面が揺れ始めてマグマが渦を巻き始める。同時に上がっていく中層の温度。

揺れと共に熱せられて赤く光る天井の岩が大量に落ちてきて私を潰そうとしてくる。

だけど私も強くなったし、こんな遅いものなんかには当たらない。

 

 

そして、近くの巨大なマグマ溜まりからザバリと現れた巨大なゴジラのような龍に私は拳を握りしめて構えた。

この世界においては体長100mのバケモノで、炎界の王。

 

 

 

逃げれはする。

だけど逃げたらダメな気がする。

これからこの世界でこれ以上のバケモノに挑むことになるんだ。

コイツなんかに逃げたら、私が私として目指す目標と矛盾する気がする。

だから今度はもう昔のようには逃げない。

そちらが本気で来るなら、本気で受け止める。

 

 

大地の化身、グラードン。

 

 

かかってこい。

正面から叩き潰す。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「魔王」

「うん。今電脳から連絡来たね。

 これからの予定がもう決まってるなら、私たちもそれに向けて動こう。

 それまで青の不在に対応しないと」

「人、手助け」

「ーーうん、わかってる。

 まずは炊き出しだ」

 

 

2人の蜘蛛は今日も、彼女らの街で忙しなく働き始めた。






もう一歩上の神のステージ


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101 心と体、繋ぐもの

高評価、感想お願いします。

意志。


さて。

どう調理する。

相手は伝説、グラードンだ。

そんな簡単に倒せる相手ではないはず。

 

『ステータス表示する』

助かる。ロクなものの予感しないけど、私だって異次元の強さは持ってるから文句は言わない。

 

 

 

『よし、これだ。

 うわマジかよ。とりあえず表示するぞ』

 

『水涸龍王 グラードン LV1 

 ステータス

 HP:30048/30048(緑)

 MP:30163/30163(青)

 SP:41231/41231(黄)

   :41231/41231(赤)

 平均攻撃能力:45633(詳細)

 平均防御能力:42892(詳細)

 平均魔法能力:30948(詳細)

 平均抵抗能力:27767(詳細)

 平均速度能力:27678(詳細)

 スキル

「火龍LV10」「地龍LV10」「天鱗LV10」「神外殻LV10」「神鋼体LV10」「HP超速回復LV10」「MP高速回復LV10」「MP消費大緩和LV10」「魔力精密操作LV10」「魔神法LV10」「魔力付与LV10」「魔法付与LV10」「大魔力撃LV10」「SP高速回復LV10」「SP消費大緩和LV10」「破壊大強化LV10」「打撃大強化LV10」「斬撃大強化LV7」「貫通大強化LV10」「衝撃大強化LV10」「状態異常大強化LV10」「闘神法LV10」「気力付与LV10」「技能付与LV10」「大気力撃LV10」「神龍力LV10」「神龍結界LV10」「念力LV10」「投擲LV10」「射出LV10」「立体機動LV4」「連携LV10」「軍師LV10」「眷属支配LV10」「召喚LV10」「集中LV10」「思考超加速LV10」「未来視LV6」「並列意思LV4」「高速演算LV10」「命中LV10」「回避LV10」「確率大補正LV10」「隠密LV10」「隠蔽LV10」「無音LV10」「無臭LV10」「帝王」「鑑定LV10」「探知LV10」「蒸発」「干天」「外道魔法LV10」「火魔法LV10」「炎魔法LV10」「獄炎魔法LV10」「風魔法LV10」「暴風魔法LV10」「嵐天魔法LV3」「土魔法LV10」「大地魔法LV10」「地裂魔法LV10」「断崖之剣」「光魔法LV10」「聖光魔法LV10」「影魔法LV10」「闇魔法LV10」「暗黒魔法LV8」「毒魔法LV10」「治療魔法LV10」「空間魔法LV1」「重魔法LV10」「深淵魔法LV10」「大魔王LV10」「矜持LV10」「激怒LV10」「暴走」「物理無効」「獄炎耐性LV9」「水流耐性LV3」「暴風耐性LV4」「地裂無効」「雷光無効」「聖光耐性LV8」「暗黒耐性LV4」「重無効」「状態異常無効」「酸無効」「腐蝕無効」「気絶無効」「恐怖無効」「外道無効」「苦痛無効」「痛覚無効」「暗視LV10」「万里眼LV10」「五感大強化LV10」「知覚領域拡張LV10」「神性領域拡張LV9」「天命LV10」「天魔LV10」「天動LV10」「富天LV10」「剛毅LV10」「城塞LV10」「天道LV10」「天守LV10」「韋駄天LV10」「禁忌LV10」「逃亡」

 スキルポイント:0

 称号

「人族殺し」「人族の殺戮者」「人族の天災」「魔物殺し」「魔物の殺戮者」「魔物の天災」「竜殺し」「竜の殺戮者」「竜の天災」「龍殺し」「無慈悲」「悪食」「率いるもの」「覇者」「王」「大地の化身」「神」』

 

 

うーわやばい。

え、こいつやばくない?

 

いやステータスも十分やばいよ?

だけどそれ以上にスキルにやばいものが揃っている。

火龍のレベルが当たり前のようにMAXだし、最初のずらずらと並んでる見たこともない防御系スキルの群れ。

てかなんで火龍だけじゃなく地龍も複合してんだよ!おかしいだろ!

確かにポケモンのグラードンの方はほぼ複合してるけどさ!

 

 

だけどまあしょうがない。

相手はそもそも伝説。そんな簡単にくたばるもんでもないだろう。

私だって神獣で伝説なんだから迎え撃とう。

 

 

そんなことを考えながら、未来視を発動。

連続で放たれるブレスをひらりと跳んで回避する。

私の背後でドゴンという音とともに大量の岩が崩れ落ちていく。

 

うん、でも平気かな。

ブレス自体の速度と火力はすごく速いけど、グラードン自体が早く動けるわけじゃない。

となると、結局撃ち始めの挙動を見れば実際に当たるまでに余裕で回避できる。

ただ、一発当たればそれなりのダメージは入るはず。

私地面はともかく火の攻撃はくらうと痛いし。

まあ油断してでも当たらない。

なぜかって、私だからね。

 

 

雷光魔法と地裂魔法は無効ということでまずはそれを除いた6つの属性の槍を展開してそのままグラードンにぶち当てる。

槍はバキバキという音を立てながらぶつかっていくけど、それもグラードンは簡単に叩き割ってこちらに突き進んでくる。

いやこれ魔王刺さってた槍なんだけど。

いくら魔法耐性が龍の売りだっても、硬すぎない?

まあ鎧が硬いだけなんだろうけど。

 

 

 

後ろに飛びながら陸地に着地。

く、この私が後退させられるとは。

ステータス的には勝ってるはずなぶん余計に悔しい。

 

 

よし決めた。

これは流石に殴り潰そう。

ステータス上は圧倒的に防御が高いけどわざわざ槍をこいつの殻を貫通させるより圧倒的に楽だ。

槍以外の魔法も貫通させられる感じには見えないし、貫通よりも衝撃に絶対弱い。

 

 

てかこいつポケモンだとまだ第一形態だよね。嘘だと言ってくれ。

これ以上は本当に勘弁なんだけど。

もう体力一気に削って即殺した方がいいよな。

変に移行されると面倒だ。

 

 

 

『爆雷。魔法陣付与。闘神法』

クラウチングスタートの体勢を取る。

斬撃魔法を腕に込める。

天雷魔法を四肢に流す。

暗黒魔法を四肢の先端に込める。

地面に極小の天雷界を展開する。

魔法の血液に、魔法の肉体。

それに私自身の強固な肉体。

 

 

私を潰すためにか、グラードンは巨体のまま炎を纏って突進してくる。

この炎もマグマ以上の温度なんだろう。

でも残念だけど、しばらくまた寝てて。

まだ不十分だからさ。

まだ、この世界は変える時じゃない。

 

 

おやすみ。

「砕け散れ!”烈情”れつじょう!!!

 

 

地面に設置した天雷界が発動してグラードンに向かって照射される。

同時に地面を蹴った私の脚は粉々に砕け、感覚が消えていく。

そのレーザーの中で魔王に匹敵する私の肉体が唸る。

 

 

 

 

龍は赤いその鱗を花火のように飛び散らせた。

 

 

 

 

私は止まって纏わりつく炎を振り払う。

後ろの龍、腹を貫かれたグラードンが倒れる音と共に。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

正しいことは何か。

正義とは何か。

生きるとは何か。

 

 

自身は、何者か。

ああ、また。

まただ。

 

 

龍は倒れ消えていく。

逃亡のスキルの下で。

わずかに芽生えた信念を宿しながら。



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102 愛しているのにな


グラードン……陸を広げたとされるでかいゴジラ。見るだけで神話に出てくるやべーやつだとわかるだけの神々しさはある。

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「ただいま」

 

私が帰ってくるとともに、あんぐりと口を開けるアリエルと白。

なんか文句でもあるのか。

 

「ねぇ、一応聞いておくけどグラードンはどうしたの?」

「一撃で仕留めた。まずは基本的なインフラを回復させよう」

2人ともめちゃくちゃ困惑している。そりゃそうだ。

数日間でも戦いそうなテンションでメッセージを送ったのに5分で潰してきたんだから。

 

正直私も自分で出しておいたメッセージには従いたくない。

私の思いには反するものだから。私の根本からのアイデンティティを揺るがすものだから。

でもしょうがない。決めたから。

 

この街のためだ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

「青様。事情はお聞きしました。

 領主様は、亡くなられたのですよね」

「ああ。私が助けに来れた時点で既に絶命していたよ。

 遅れてすまなかった」

 

仕事が一度落ち着いてやっと彼らの元へ来れた。

開口一番にこんなことを言うのは絶対に良くないけど死んでしまったのは紛れもない事実なんだ。

 

 

静かに顔を押さえて嗚咽するメラゾフィスをじっと見据える。

おそらくだけど彼は私が来る前から散々領主の死については聞かされているはず。

それなのに私のこの宣告でここまで涙を流している。

良くも悪くも私さえいればどうにかなるのかもしれないとでも思えていたのかもな。

 

 

それでも彼は一言も文句を口にしない。

私でも遅れたこととかには言うと思うけどな。

まだ神化はしてないけれど、伝説的には私が神だから?

確かにそれもなくはないだろう。

 

けれど、彼は明らかに自身の弱さを一つの理由としている。

自身が弱いからこの惨事が起きてしまったとも思っている。

なかなか覚悟決まってるし、そう思ってくれてるならありがたい。

元来精神崩壊しそうなのによく自分を惨事の原因に出来るものだ。

 

 

「とりあえず街が再建する目処が立てば私たちはこの街を出る。

 強制はしないけど、あなたたちにも出てもらえると嬉しいな。

 質問はある?」

 

 

あーあ、泣き止んだ勢いのまま真っ赤な目を見開いて固まってら。

そりゃそうだよ。

治安もいいこの街を捨ててどっか行けとこの街の神様が言っていて、同時に神様も出ていくと宣言してるんだから。

びっくりしない方がおかしい。

けれど、あいにくこちらにも考えていることがある。

 

「この街が壊された原因は私たちにある。

 君が抱えているソフィアにもだ。

 残念ながら、私たちがこの街に来ずソフィアが生まれて居なければこんな襲撃など来ることもなかった。

 無論、この街の輝きを見ればわかるようにそんなこと誰も望んじゃいないだろうけどね」

 

なんだかんだ、街が狙われた理由はそれだ。

転生者が3人もいて、そのうちの2人が世界で1匹の固有種と来た。

しかも今の今までは魔王という強大な存在はおらずポティマスにとっては最高戦力である私たちですら龍の最高峰とギリギリでタイマンできるかという認識だっただろう(実際は龍3体くらいならまとめて倒せると思うけど)。

そりゃ狙われる。

 

「ーー青様はでは、この街をどうするのですか?」

「君の望んだ答えかはわからないが、ちゃんと守っていくよ。街を防護するためのパペット種、さらにその進化系なんかも現在進行形で思案中だ。肝心なのは私たちがいつでも助けに行けるという形を作りながら同時に自立させていくこと。ただの軍隊程度で傾く治安のままじゃ、いつか餌にされる。

 なあに、現時点でこの街の財力は国内トップだ。どんな外部にとってもすぐに下手に操れるような存在じゃない」

「ーーでは、なぜお嬢様も外へ?」

「まだ詳しく話すつもりはまだないが、君が自覚しているように彼女は吸血鬼。

 しかも他人にまで感染させられる高度なもの。

 しょうがないが誰から見てもソフィアは厄ネタだ。だから街を出て行くべきだと言っている」

「つまりこの街を守るために、ですか」

「最初からそうだと言っているけど?

 ともかく、そろそろ私の友達2人も仕事を終えてここに来るはず。その時話そうじゃないか」

 

私は白い糸で作ったハンモックを勝手に部屋の中に吊るし、その中で眠りに落ちる。

 

 

 

残念なことに私がしていた最悪の想定が的中してしまった。もう事態は進んで、後戻りは出来ない。今は眠りについている、彼女をどう説得しようか。

あーあ。

 

悪夢は収束する。

私の思っていた通りに臆病者は厄を見る。

嗚呼、世界はなんと残酷で、なんと感動的で、なんと美しいものであろうか。

 

 

ーーーーーーーー

 

ガチャリ。

アリエルと白がいっしょに入ってきた。

万里眼で覗いてみると、グタグタにバテているみたいだ。

かわいそうに。

 

 

起き上がって労る気持ちで見つめていたら白に睨まれた。

いいじゃないか、みんな仕事は終わったんだから。

これから第二の仕事っぽいものは始まるけどさ。

 

「青、仕事早い。ホワイ?」

「眷属達に一部頼んでたから。

 あとメラゾフィスに軽く説明したからさ、それでイーブンにしてくれない?」

 

不満げに私のことを見てくる2人を無視しながら、立ち上がって肩を揺らして寝ているメラゾフィスを起こす。

椅子に座りながら寝てるとはなかなかの漢だ。嫌いじゃない。

 

 

「やぁ。これからはソフィアにも聞いて欲しい話だから、とりあえず起こそうか」

 

”握唱”あっしょう

「かはっ」

 

服の上から胸に触れ、外道魔法で臓器に触れた感触を再現して叩き起こす。

臓器に触れるっていうのいろんな異世界ものであったから正直再現できるのはテンション上がってるんだよね。

 

「ごほっ、がほ」

 

 

おお、咳き込んでる。

まだ一歳なのに咳嗽ができるとは。

尿を漏らしてはいるけど吸血鬼として人よりは肉体が強化されてるのかな?

 

「青様。

 ーーおやめください」

 

 

見るとソフィアを抱いていたメラゾフィスが鋭い目で私の目を見つめていた。

ーーーー。

 

 

 

はーぁ。個人的にはソフィア大嫌いなんだけど彼は好きだから免じて許してやろう。

ま、白のソフィアに対する食い物を見るような目も弱まったし漏らさせたのも良かったことには良かったでしょ。

 

『おいお前、だから言い過ぎには気をつけろよ。

 あとオレ様は忙しいからあんま見れねえけど、とりまこっち連れてきていいぜ。

 クソエルフが見てたら困るしな』

 

ああ、そうか。

一応やっといたほうがいいね。

 

 

「そういえばみんな、ここだとこれからのことを話すのに不備があるかもしれない。

 だから移動するね」

「は?ちょっーー」

 

”無虚空間”ノッシンネスペース

 

 

アリエルの言葉が終わる前に、部屋全体を暗闇が埋め尽くした。





空納をかっこよく言うために考え続けた結果、生まれた言葉『無虚空間』



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W6 一気に駆け上がれ!


久しぶりの白視点。
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「てめぇら。

 やっと会えたな」

 

えっと、今はどこにいるんだ?

目を開けても広がっているのは紫の空間。

なんかマス目が見えるけどね。

 

「あー、すまん。

 知覚出来るようにしてなかったわー!

 今まで客人呼んだこともなかったから、そこらへん忘れてた!!」

 

これ電脳の声だ。

魔力感知でもわからなかったけど確かにいる。

気配というかなんというか。

本能的な違和感?

いやそれ言ったら足場もないのに浮いてるしもうとっくに気持ち悪いんだけど。

 

 

次の瞬間、ブゥンという音と共に巨大な空間機動の足場が浮かび上がった。

そしてそれと共に目の前に現れる煙突付きの工場。

しかもいつのまにか青とか魔王までいるじゃん。

総じて状況理解できてないみたいだけどさー。

魔王もうキレてるし。

 

 

「青、この工場、どうやって建設された?」

「ん、前地下施設一個食ったからね。

 あの時食べた金属で建てたんじゃないかな。

 流石にサイズは小さくなってるけど」

 

魔王の怒が発動してたのが抜けていく。

まあね、昔から地下施設はあったみたいだし怒るのもわかる。

そもそもどうやって再建したかとか青は管理してないのかとか気になることはたくさんあるけどな!

メラゾフィスに至ってはもう理解できずに呆けてるし。

吸血っ子は幸い地球で工場とか見てたからまだ理解はあるっぽいけど。

 

 

とか思っていたら、工場の入り口のドアがガチャリと開いて人が出てきた。

いや人でもないか。

体型は人だけど、髪の毛は黄色だし瞳は真っ青だし。

何より髪が悟空みたいに逆立っている。

言ってみれば、黄色いネギみたいな感じか?

 

 

でもそもそもここに人がいるのがおかしい。

だってここ空納だしたぶん!

あいつ名前はイキってたけど!

 

「よーしテメェら。

 よく集まってくれた。

 一応言っておくがオレ様は電脳、よろしくな。

 でお前らはオレ様の構築した最強空間、無虚空間に閉じ込められたと?」

 

 

「「「は?」」」

 

 

いやちょっと待て。

わたしとかが理解できてないのはまだいい。

だけど、青は流石に理解してろよ!

なんでは?ってあんたも言ってんのよ!

もう捕らわれたらしいんだが!?

 

 

「もちろん冗談だぞ。

 別にすぐに全員出してやっていいが、その前に色々手伝ってもらいてぇ。

 そもそもお前らこれからのことについて話すために来てんだろ。

 不完全燃焼のまま外に出すのはオレ様も青も困るからさっさと話してくれ」

 

 

そうめっちゃニヤニヤした顔で言って、ガチャリとドアを開けて工場の中に入って行った。

なんだ、あいつ……。

 

 

「おお。

 私も姿は初めて見たけどあらかた見た目は予想通りだった。

 元ネタちなみにDr.Stoneの石神千空ね。

 私あの漫画好きだったんだよ」

 

 

いや知るか。

青が別に布教したくてもうちらは知りたいわけじゃないから。

なんならさっさと話して帰りたい。

てか姿くらい前から知っとけお前!

あんたここの管理者じゃないの?

 

 

「まあ彼がそういうのなら先に話しておこうか。

 てかあいつも聞かんとダメでしょ。

 電脳話に参加しろ!」

『念話で聞いてる聞いてる。

 さっさと話せ』

「ねえ、あいつの話し方ポティマスに似てるんだけど。

 処していい?」

 

 

待って。

大渋滞だよ。

みんな話したいこと話すのやめてくれ。

吸血っ子とメラゾフィスも圧で死にかけてるし!

主に魔王の圧で!

 

 

『クソもうだりぃだりぃ!

 オレ様がそっちに行くから。

 あとあのクソエルフと話し方似てるのは科学者だからだ。

 勘弁してくれ!』

 

 

お、工場からまた走ってきた。

なんだったんだ今の一連の流れは……。

しかもめっちゃ肩で息してるから超体力ないじゃんこいつ。

デコピンで死にそう。

 

 

「はぁ、はぁ。

 オレ様のことは、いいからまず、青から話せ。

 てかお前がひとまず決めてんだろ……」

「女神様救出大作戦は?」

「進行中だから青話せ!」

 

 

たまに割り込んでくる魔王に、それを遮るドラゴンボールみたいな髪の貧弱人間。

逆によくコイツこのモヤシっぷりで魔王と言い合えてるな。

メンタルバケモンかよ。

 

「よし、みんないいね!」

 

パァンと手を叩いて青は笑うけど、言い訳あるかボケ。

逆にもう突っ込むの疲れたから休むけどさぁ。

--女神ってこんな胆力いるのかなぁ。

 

 

 

「まずはこの街について!

 電脳、蜘蛛を出して」

「ククク、あの遺伝子操作しまくったやつでいいのか?」

「フッフッフッ、見せた方が早い」

 

うお一気に顔悪い極悪コンビになった。

コイツらも関わらせたらダメなやつだ。

あ、だめだコイツら同人格だったわ。

うーわ。

 

 

「鑑定してみろ」

 

差し出した電脳の手の上に、いつの間にか浮かび上がっている蜘蛛。

なんだこのシステムと空間。

てかそもそも電脳自身に鑑定してやりたいんだけど。

もう5回ゴリ押してるけど突破できない。

まあいいや、蜘蛛の方を鑑定!

 

『プロテクトエレテクト Lv1

                      

 HP:4300/4300(緑)(詳細)

 MP:6000/6000(青)(詳細)

 SP:3900/3900(黄)(詳細)

   :3900/3900(赤)(詳細)

 ステータス

 平均攻撃能力4200(詳細)

 平均防御能力4100(詳細)

 平均魔法能力6000(詳細)

 平均抵抗能力6000(詳細)

 平均速度能力5000(詳細)

 「HP超吸収LV1」「HP超速回復LV1」「神龍力LV8」「神龍結界LV3」「猛毒攻撃LV10」「強麻痺攻撃LV10」「腐蝕攻撃LV6」「外道攻撃LV10」「毒合成LV10」「薬合成LV10」「糸の天才LV10」「鉄壁LV2」「神織糸」「操糸LV10」「念力LV5」「投擲LV10」「射出LV10」「空間機動LV10」「集中LV10」「思考超加速LV4」「未来視LV4」「並列意思LV1」「命中LV10」「回避LV10」「確率大補正LV1」「隠密LV10」「超生命」「外道魔法LV10」「電撃付与Lv10」「外道魔法LV10」「火魔法LV10」「氷魔法LV10」「水魔法LV10」「水流魔法LV8」「風魔法LV10」「暴風魔法LV10」「嵐天魔法LV1」「土魔法LV10」「電気魔法LV10」「雷魔法LV10」「雷光魔法LV10」「天雷魔法LV1」「光魔法LV10」「影魔法LV10」「毒魔法LV10」「治癒魔法LV10」「空間魔法LV10」「次元魔法LV10」「重魔法LV9」「無限LV10」「状態異常無効」「外道無効」「恐怖耐性LV1」「苦痛無効」「痛覚無効」「気絶無効」「暗視LV10」「万里眼LV8」「五感大強化LV10」「知覚領域拡張LV10」「神性拡張領域LV5」「天命LV10」「天動LV10」「富天LV10」「剛毅LV10」「城塞LV10」「韋駄天LV10」「強化産卵LV10」「小型化LV10」「人化」

 スキルポイント40000』

 

「ねえ、この蜘蛛何?」

魔王が言いたいことを代弁してくれた。

そもそも人化が当たり前のようにくっついている。

なんだこの化け物。

 

 

「クク、これがオレ様の傑作のプロテクトエレテクトだ。

 攻撃面に関しては問題があるが防御スキルだけなら青に匹敵する。

 コイツらを配備して街は守るっていう計算だ」

「ちなみに今度勇者にもあげる予定。

 ともかく行く街に配属していって勢力圏を広げていこうっていう魂胆だね」

 

 

あん?

当たり前のように勇者にも渡すって言ったなコイツ。

やべー。まじやべー。

聞かなかったことにしよう。

 

 

「勇者に渡すってどうやって?」

「まだ未定だな。

 で、なんも理解してないメラゾフィスとソフィアに詳しく説明してやる。

 まずはメラゾフィス、ソフィアについてどこまで知ってる?」

「お嬢様が吸血鬼であるということは知っていますが……。

 まさかそれ以上になにかあると?」

「あーまだその認識でいい。

 ただ、今から説明することは理解しなくてもいいから認識しておけ。

 お前が後悔したくなきゃの話だがな」

 

身構えるメラゾフィスに対し、真面目な顔をする電脳。

どうやらよほどの内容みたいだ。

 

「まあオレ様が説明しなくても聞きゃわかるか。

 な、転生者、根岸彰子」

『え、なんで私?

 今漏らしてるのに?

 待ってどういう状況?

 なんでみんな見てる?』

「……!?」

「それは今念話勝手に繋いでるからだな。

 心の声漏れ出てるぞ。

 観念しやがれ」

 

 

 

『え、あ、ああ………。

 

 根岸彰子です』

「え?」

 

いや魔王も知らなかったん?

鑑定使えないメラゾフィスはともかくあんたは鑑定使えるんだからやっとけや!

あんたの質問が挟まると話こんがらがるんだよ!

 

「理解してない奴らもいるしここで説明しておく。

 元々、この世界の他にもいろんな生物の住む無数個の世界がある。

 その別の世界とは基本干渉しあうことはねぇんだが……。

 生命の叡智はそれすらも上回った。

 ま、その干渉っての結果はクソ食らえだったんだがな」

 

 

うわ魔王また怒を発動させてるよ。

いやでも今回は電脳のせいだろ。

青から聞いた話だと神殺害計画だったらしいし。

そんなばかなもんにエネルギー消費するなって話だもんね。

それを生命の叡智っていう電脳もなかなか性格が悪い。

 

 

「結果として、干渉という名の大爆発が発生した。

 しかも残念なことにその発生場所はオレ様たちの学び屋だったっていうオチだ。

 ここまでならただの悲劇のストーリーだが、こっから面白いことが起きた。

 わかるか用人サマ?」

 

 

おーい、メラゾフィス理解出来てるかー?

話こんがらがってきてるけど。

てか電脳の話し方がこんがららせてるんだが!

本人はすっごいノリノリで話してるけどさ!

 

 

「つまり、お嬢様たちが過去学んでいた空間がこちらの世界の所為で壊されて転生……したということ、ですか?」

「ビンゴ。

 あとその所為、爆発が起きた理由は神への攻撃だった。

 だから神にも思うことがあってオレ様たちを記憶そのままにこちらの世界に移動させたってオチ。

 オマケとして不思議モリモリのギフトが込められた肉体に入れ替えてな。

 それであのクソエルフはソフィアを奪おうとした」

 

 

いや理解あるなメラくん。

体験もしてないのに転生について理解してやがる。

さすがだ。

あの領主様のお連れだっただけあるな。

 

 

「そう……ですか。

 ならば、より私が吸血鬼として生きながらえなければいけないですね。

 長命であるソフィア様を守るためにも」

「「『え?』」」

 

嬉しそうな顔してるけど、いやわけわからん。

なんだお前、切り替え早すぎないか?

 

 

『いやメラゾフィス、あなたを吸血鬼に私はしてしまったんだよ?

 もう人としては生きられない。

 吸血鬼という名前らしく人の血を吸わなければならない。

 そんな体に私がしちゃったのよ?』

「構いませんよ。

 あなたと同じ体になれたこと、光栄です。

 もう一つ。

 旦那様と奥様を守れなかったこと、申し訳ありません。

 だからせめて私にあなたの人生を支えさせてください」

『メラゾフィス……。

 

 ありがとう』

 

赤子を見つめて、抱きしめるイケオジ。

うんうんイイハナシダナー。

最高にいい話だ。

 

 

「よし!

 そういうことだ!

 君たち、魔族領まで来い!

 最高に気に入った!」

 

うお、今度は急に魔王のスイッチが入った!

いくら感動されたからって急に話に入ってこられるとビビる。

あとこの街出るって話はしてたけどやっぱり魔族領なのね。

まあこちらが人外であること考慮すれば妥当かなー。

 

「世界最強の私が庇護下に入れるんだ、そんな簡単には傷つけさせないよ!

 しかも吸血鬼でも住み放題!3食昼寝付きで、行こうと思えば学校にも行ける!

 ちゃんとした生活が保障されている!

 これでどうだ!」

 

いーや、どうだと言われてもって感じでは?

メラゾフィスと吸血っ子二人とも気おされているし。

青は呑気に目を擦ってるけど。

 

『えっと、考えさせてください。

 メラゾフィスは?』

「私はお嬢様の決定に従いますよ」

「わかった!まあでもゆっくりでいいよ!

 とりあえず一緒に行動してみて考えてみればいいさ!」

 

魔王すごいニコニコしてるな。

よっぽど嬉しかったみたい。

人と関わることが、かな?

知らんけど。

 

 

 

 

 

「よし。

 テメーら話したいことは終わったな。

 これからはオレ様の未来ステップに付き合ってもらう!

 いいな!?」

 

元祖急にテンション上がる人来た!

こわ、なにこいつ。

てかこいつ電脳っていう名前と最もかけ離れた性格してるよな。

昔の頭良かった時はともかく。

 

「まず最初にこの世界での電気を開通させたり、腐った政治を全部復活させたり、この星の防衛ラインを建築……」

「「「『タンマ!』」」」

 

待て待て。

今なに言った?

この星の防衛ライン?

腐った政治?

電気開通?

何言ってるんだコイツは。

 

「てか電脳、先に最終目的話さないと。

 サリエルの解放が最終目的じゃないでしょ?」

「あー、あったり前だ。

 いくら女神様を解放したところで元々の原因が解決してなきゃ後戻りまっしぐらだかんな。

 かと言ってこの星をDが解放しない限りエネルギーを補う余裕はくれねぇと思うが。

 てか出来たらテメーの体使って世界とっくに救ってるわボケ。

 まともな地下施設なんてあと10も埋まっちゃいねぇんだから。

 エルフの里にあるやつも言うほどじゃねーし」

 

 

 

「は?」

なに言ってるのコイツ。

いや、なに言ってるとかの次元じゃない。

もうこの世界救えるとか言っちゃってる。

エルフの里?

どゆこと?

 

うだうだし始めるわたしや怒り始める魔王を無視して、電脳は上へ指差した。

そこにパッと投影される宇宙。

たくさんの星の中には青く美しい星も映っていた。

 

『よしじゃあオレ様が言ってやる!

 オレ様、いやオレの考えてることは一つ!』

『世界を誕生させまくって、地球もなんかかんも繋ぎまくって、

 この星の仕組みを一から再構築する!』

 

『題して”世界創造大作戦”ワールドクラフトだいさくせんだ!!!!』

 

「「『はぁ!?』」」

「ククク、最高に唆るじゃねぇか」

 

 

 

 

 

えーと夢でも見てんのか、わたし?





非力であっても性悪であっても、確実に夢へと進む本物の漢。


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103 一人だけ科学に生きている


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「ねえ、一つずつ説明してくれないかな。

 聞き捨てならないこといくつか聞いたんだけど。

 まずはエルフの里の把握。

 

 どうやってる?」

 

 

まずい。

アリエルがガチギレしている。

詰め寄られた電脳は、襟首を掴まれて持ち上げられてる。

その上で自信を持っているのだいぶやばいけど。

 

「あー、青の娘全世界に放出して走らせてるからな……。

 電気蜘蛛であること生かして地下の施設は探知済みなんだよ。

 あくまで規模レベルだが」

 

 

ビュンと魔王の首がこっちに向く。

許してくれ。

こちらも基本電脳に任せてて、今話してた情報以上にロクなもんは持ってない。

 

 

「で、青。

 アンタはなんで危機的状況であることを理解しながら改善しない?

 せめて施設とかは破壊できなかった?

 過去の遺物のさ」

 

 

あー確かに。

でも、怠慢はあるけどそれ以上にちゃんとした理由があるんだよ。

そもそも4000年生きてるあなたがなにもやらなかったこと考えりゃトントンだろ。

 

 

「それにもオレ様が答えるから、手離してくれね……。

 ゲボ、ゲボ、ありがとう」

 

お、電脳解放された。

いくらアリエルがバケモンだと言っても、男が少女に捕まってるのは見るに耐えなかった。

良かったー。

 

「あのなー、正直な話やろうと思えばもうこの星は救えんだよ。

 Dだけ考慮しなければ。アイツに下手に知られるとマジで終わる。

 だからここに連れてきてるんだ。

 そもそも、計画を話はするが納得までして貰えばその記憶は消すからな?

 思考読まれたら詰むし」

 

はぁとため息をつくアリエル。

どうやら未知の存在であるDに関しても理解してくれたみたいだ。

ただ電脳、私の体内のエネルギーで星丸ごと救えるとかそんなこと初めて知った。

後で言わなかったこと、シバこう。

 

「わかったよ。

 で、Dっていうギュリエの上司に当たる存在の処理のために星を作ろうとしてるってこと?

 そんなこと可能?」

 

それ普通思うよね。

私もその馬鹿げた計画考えた時思ったわ。

面白いことに、行けるのよ。

私の力があれば。

 

 

「可能だよ。

 あの空間にいたクイーンエレテクトの群れ、アリエルも見たでしょ?

 クイーンエレテクト一体でギュリの持ってるエネルギーの5%くらいになるからね。

 単純計算でも20体ほどでギュリと同じエネルギーがゲット出来る」

 

 

「白ちゃん、コイツらヤバいよね?」

「うん、やばい」

 

なんか滔々と話してたら急にヤバい認定された。

いや、ヤバいけどさ?

多分電脳がヤバいんであって、私はヤバくない。

うん、ヤバくない。

 

 

 

 

「で、こっからついでなんだが、お前らに頼みてーことがある」

『頼みたいこと?』

「まずは全員の身体検査、次にそれぞれいろんなことな」

 

 

身体検査と聞いて、またアリエルが眉を顰めた。

なんか色々申し訳ない気持ちになってきたよ。

多分トラウマ掘り起こしまくりだし。

 

 

「まー、身体検査も嫌ならやらなくていい。

 オレ様も男だ、詮索はしねぇよ」

「やるから気にしなくていい。

 何か変わるんだろ?」

「ああ変わる、特にテメーのデータならな。

 この星の運命程度なら変えられんだろ」

「ふーん。やるよ」

「感謝する」

 

アリエル、覚悟決めてるんだな。

嫌な顔はしてても、思うことはあっても、なんだかんだ色々手伝ってくれてる。

この街で住民助けてくれてからずっとそうだ。

優しい人だ。

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

工場から出てきて、私はため息を吐く。

まさか私まで検査されるとは。

隅々までスキルも含めてやったから2時間くらいかかった。

MPとかSPも一回すっからかんにされたし。

キツかった。

 

 

後から出てきた白は肉をもらってて嬉しそう。

というか完全に釣られたな、あいつ。

白って食べ物であんなに釣れるのかよ。

なんか悲しい。

 

 

先に出て来てたメラゾフィスと吸血っ子は新しい服を着ていて嬉しそう。

身体検査のついでに貰ったのか。

あれ、私だけじゃねなんも貰ってないの。

ずるくない?

 

 

最後に出てきたアリエルは、顔が完全に死んでいる。

多分私以上に色々絞られてんな。

かわいそうに。

 

「ねえ青、アイツってあんなにSなの?」

「いや、アンタのスキルの良さに多分めちゃくちゃ興奮したんじゃね」

「あー」

 

あ、トボトボと歩いて床にぶっ倒れた。

かわいそうに。

それだけだけど。

 

「よし、テメーら身体検査感謝!

 次は個人個人に頼みてーことがある。

 

 とは言ってもアリエル、アンタについてだ」

「えー、おばあちゃんもう疲れたよ」

「ダメだ」

 

アリエルをズリズリと引きずって再び工場の中に引き込む電脳。

残念ながら、人の心はなかったみたいだ。

ナンマイダブナンマイダブ。

 

 

「青」

「多分タラテクト種に関して知りたいんじゃない?

 今後エレテクトたちを細かく分業化させるにあたって知りたいことは山ほどあるし。

 パペットタラテクトの人形についても知りたいだろうしね」

 

『あ、残りのテメーら。

 特に頼むことないから休んでていーぞ』

 

再び肉を嬉しそうに食べ始める白と、頭の中に響くのほほんとした電脳の声。

だけど、アンタに言いたい。

言われなくても休んでるわ。

アリエルのこともあるけど、ここブラック企業かよ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

起きたらもう朝で屋敷の布団の上だった。

白やメラゾフィスに聞いても、これからの予定についてしか覚えていない。

 

 

ただひとつだけ面白かったことがある。

アリエルが、1日働くのを拒否してベッドの中に篭り続けていた。





かわいそうなアリエル……(どこぞのマグマナメクジさんはその後ずっと拘束をされている模様)。


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血1 嫌なやつ

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生きろ。




どうしてこうなったんだか。

メラゾフィスに抱かれながら考えているけど、一向にわからない。

女神こと青にすっごい私は嫌われているし。

 

『あー、テメー。

 いろいろ気になってるようだからオレ様が教えてやろうか?』

 

この声は電脳だ。

人の心に勝手に侵入してきて。

この人も性格は良くない。

服はくれたけど。

 

 

『なに?』

『お前は異世界で前世と同じ生活をし過ぎたんだよ。

 コッチは毎日恐竜に食われかけて腕千切ってたのに。

 まー、理解はできるがな』

 

……。

で、でも。

今のまま暮らしていれば問題なく生きていけただろう。私が吸血鬼であっても、なんとかなったはずだ。

 

 

『お前を過度に傷つけ、無駄に傷つける青にはオレ様が釘を刺しておく。

 そこらへんは心配するな』

『は。

 なんであなたに。

 なんで、あなたが勝手にいろいろ決めてるんですか!』

 

 

私が間違っているのだろう。

彼の言葉通り、幸せな生活を異世界でしてはいけなかったのだろう。

けれど、けれど。

否定しなければ、私が消えたくなってしまう。

 

 

『あなたたちが、来なければ……。

 こんなことは起きなかったんじゃないの……か』

『……チッ。

 それに関して完全否定は出来ねーよ。

 だが同時に、それを罪にするならテメーも同罪だ。

 世界唯一の真祖の吸血鬼・ソフィア。

 テメーは世界最高のご馳走だ』

『……っ』

 

何もいえない。

コイツの言葉通り私は弱い。

それでいて、吸血鬼。

だから狙われることに否定は出来ない。

でも。

 

『街が栄えなければ……!』

『エルフが襲って来なかったのか?

 アイツらはどっちにしろ来たと思うがな。

 テメーだけを狙いに、屋敷だけを襲って』

『……』

 

 

完敗だ。

何も言い返せない。

どちらにしろ、私の親は死ぬ運命だったのか?

私のせいで。

私が産まれてしまったせいで。

 

 

『ハァ……。

 めんどくせぇ。

 心、切り替えていけよ』

『は、はぁ?』

 

な、何を言っているんだ?

めんどくさい?

この私の、両親を失った悲しみを?

私が生きていることを後悔しているのを?

馬鹿にしてるのか?

あのモヤシ野郎。

 

ふざけるな。

怒りではらわたが煮え繰り返りそうだ。

本当に馬鹿にしてるのか?

だけどソイツは私の怒りに構わず話し始めた。

勝手に。けれど丁寧に。

 

 

 

『じゃあ罪じゃねぇ、只の真実を教えてやる。

 耳かっぽじって聞いておけ。

 テメーのせいで失われた命は300。

 対して、テメーのおかげで救われた命は20000だ。

 で、それでも懺悔するのか?

 視野狭窄吸血鬼サマ』

 

 

『は?』

 

どういうこと?

私のおかげで救われた命が20000?

何をでたらめ言っているんだ、コイツ。

なにを。

 

 

『なにか質問は?』

『その20000っていうのはなに?

 まさかだけど、私が吸血鬼という資源として利用されることで作れるエネルギー?』

『いや違うに決まって……、現在進行系でゼルギズを無虚空間の中で熱エネルギー源として使ってるから否定し辛ぇ……。

 とりまそんなんじゃねぇ、安心しろ』

 

 

え、本当に使われている人がいるみたいだ。

とんでもない。

てか本当にエネルギーになりうるの?

怖い。

 

 

『お前が救ってきた20000という功績の命は、この街に青を住まわせたことで生まれたもんだ。

 もちろんテメーがいなくても青は他の街に住み込んだだろーが、街はここまでデカくならねえ。

 結果的に、この街に住み込んだことで合計20000の命が生まれ、救われたんだ』

『な……』

 

 

 

いや、それでも気になることはある。

青は私のことを嫌っている。

事実私はアイツに内臓から痛めつけられた。

だから、私がいなくても青はこの街に住み込んだんじゃないのか。

 

 

『私がいるのと青がいるのに関係はあるの?』

『あるが。

 一応言うがお前青に特別視されてるしな。

 基本人の名前覚えないやつが、お前の名前覚えてやがったんだぞ。

 異世界人として気にかけてたんだよ』

『でも私さっき内臓やられたんだよ』

『地球で生まれ落ちたクラスメートとして、嫌ってるからだろ』

『えっ』

『住み着いた件については、そもそも街が近かったから住み着いたのもあるし、領主が優しかったから住み着いたのもあるかもな。

 だが。

 確実にテメーも理由の一つだ。』

 

 

そうなのか。

こんな暮らしをしてた私を、毎日腕千切って生きてきた人が許して仲間と見ているのか。

ああ。

 

ああ、何が正しいのかわからない。

私が悪かったのか?

 

 

『ま、アイツは過去引きずってるがテメーには引きずってもらいたかねぇよ。

 これからのことを考えろ。

 もうなにも失わせたくないなら、強くなれ。

 白くれーにはな』

 

 

白……か。

私にとってはアイツの方が怖いかもしれない。

化け物感は青よりあるし。

蜘蛛が普通に歩いてるこの街で言うことではないと思うけど。

身体生えてるから普通の蜘蛛より怖い。

てか、青も一応蜘蛛なのか。

化け物しかいない。

困った、私も吸血鬼という化け物だ。

強さは比較にならないが。

 

 

『でも、あんなに強い化け物に……』

『成れるだろ、若いんだし。

 てか今の白よりフツーに強くなるんじゃね、頑張れば』

『ほんとに?』

『ああ、オレ様の計算だとなるぞ』

『そう……』

 

 

電脳の計算だと、大丈夫らしい。

本当に大丈夫なのかな。

だけど、電脳がまた言ってるみたいに、ポジティブにならなきゃ。

電脳の計算なら大丈夫なんだから。

 

 

ーーん!?

待って!?

 

 

『てか、あんた実際はなんなの!?

 さっきからフツーに話してたけど!

 存在として!』

『うお、ビックリした!』

 

いやおかしい。

今まで話してきたことから考えると青と電脳は違う存在だ。

てなると、この人はどこから出てきた?

怖すぎる。

 

 

『じゃあご丁寧にもう一度言っといてやる。

 オレ様は電脳、青の別人格だ』

『別人格?』

『二重人格っていう理解でいい。

 てかそんなもんだ』

 

 

その割には意識がすごいはっきりしてたり、計算凄かったり、一緒にいたりしてるけど。

私にはわからない話なのだろうか。

 

 

『強くなれば、いずれわかる。

 あ、あとオレ様と青は普通に仲良いからな。

 心配すんなよ』

 

 

それは見るだけでわかるからいい。

でもまた強くなればか。

なにをするにも周りの人は、弱いから、強いからと言う。

この世界だと強くならないとなにもわからない。

なんか悔しいし、ズルい。

 

 

『とりま勝手に強くなれ』

『言われなくても』

 

 

強さが、自由が、知識が。

悔しい、ズルい、妬ましい。

嫉妬する。

 

だから、強くならなきゃ。

私が世界を知るために。

満足して生きるために。





強くなれ。



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血2 女神様のお仕事

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仕事



電脳の空間から出て、みんなが起きた後、私とメラゾフィスは外に出るよう青から伝えられた。

アリエルさんと白は屋敷の片付けをしてくれるらしい。

結構大掛かりな片付けらしく、これからの生活でいるものは予め集めておいて欲しいと言われた。

そのくせに外に出ろとか、矛盾してるんじゃないか?

そもそも一日で片付くわけでもないのか。

 

メラゾフィスが外に出る準備している間に青が作っていた空間についてアリエルさんに聞いたら、

 

「奴以外にとっては訳がわからない。

 アレは技術面ではこの星一のバケモンだよ。

 世界の理を歪ませている」

 

とため息を吐かれた。どうやら魔王なんて比較にならないバケモノって思われているみたい。

だけど、実際アイツの別人格と仲良く喧嘩している姿を見てしまったから考えられないレベルには達していることはわかる。

てか元々変な男だったやつがどうしてこうなったんだ。

 

「ソフィア、メラゾフィス。

 準備出来たら外に出てね。

 私待ってるから」

 

私たちは、いそいそと準備を進める。

 

 

 

 

外に出ると、男女のワンピースのような服を着た人が待ち構えていた。

 

「お二人様、こちらです」

 

なんてことを男の人が仰々しく言うと、着いてくるように手招きしてくる。

青の知り合いだろうか。

それにしてはあまりにも仰々しいし服装もアイツに似ている。

あー、また訳のわからないものを見せられそうな気がしてきた。

 

「ありがとう。君らも着いてくるように。

 事務作業は全部覚えてね」

「わかりました」

 

私たちが歩いて行った先で執事さんにニコリと笑う青。

10代中盤くらいの見た目に加え、白いワンピースのような服を着ているから正直女神様と言うよりいいとこのお嬢様と言う方がしっくりくる。

けれど私以外のこの街の人はほぼ全員女神と見做しているから、事実とは恐ろしい。

 

「それじゃあ2人も来たことだし、出発しようか」

 

急に6mくらいの蜘蛛が現れる。

急にそれに乗せられる。

急にその蜘蛛が歩き出す。

 

待って、怖い。

理解出来ないことが多すぎる。

 

 

 

 

 

 

『あ、あの、今の状況は?』

「ああ、説明してなかったか。

 これからこの街を本格的に再建していきたいんだ。

 街の7割は無傷だからうまく生かしていきたいね」

 

いや違う。

蜘蛛のお腹部分にに乗せられたメラゾフィスと私は、困惑しながら青の話を聞いている。

そして、蜘蛛の手綱を馬のように持っているのはあの急に現れた2人。

この状況について聞きたかった。

青、考えていることがズレている。

こういうところは昔と変わらないのか。

 

『いや、なんで私たち乗って?』

「そっちか。

 プロテクトタラテクトたちと、君らに私の仕事をお見せしようかなと思ってね。

 今後いろんな街に行くにあたって知っといてほしい」

 

鼻唄混じりに青は言ってくるけど、正直私は屋敷で片付けしていたかった。

知ったところで手伝えることはなさそうだし。

ただ、口には出してないから奴はどんどん話を進めてきた。

 

「なによりいちばん大事なのは、この慈善活動はあくまで慈善活動であること。

 宗教と交わらせるとろくなことが起きない」

 

は?

あんたは女神様じゃないのか。

早速の矛盾だ。

けど、メラゾフィスも同じことを思ったみたいで、

 

「青様は女神様では無いのですか?

 いや、実際にはわからないですが、私たちからすれば女神様にしか見えません」

 

と聞いている。

すると、青は首を横に振ってこう言ってのけた。

 

「私は人を救うだけ。

 私が人を救うことで、連鎖的に失われる命だってあるはず。

 例えば独裁国家の守衛が革命で亡くなったりね。

 その時、誰が悪い?私?」

『いや、その、じゃあ救われた人?』

「さあね。

 ただ、私が殺しの主犯になるのだけは勘弁かな。

 流石に殺人とかは責任とってもらわないと。

 唆されたって話になると誰も幸せにならない争論になる。

 だから私はただ救う。

 ただそれだけ」

 

「ま、そんな私を宗教として祭り上げてくれるなら私は喜ぶさ。

 勝手に信じて勝手に幸せになってくれ」

 

 

そんなことを言う青の髪は風に吹かれて軽くなびいている。

私の知らないところで、ただのクラスメートであったはずの佐野蒼生という人間は勝手に成長していたみたいだ。

現実の厳しさを知った上で、それにめげずに明るく生きている。

まだ私には難しい。

でも、彼女が女神様と呼ばれる理由はわかった気がする。

 

 

 

 

 

あれから私たちは、たくさんの人たちが避難していた建物を渡り歩いた。

その間で伝えられる、私のパパとママが亡くなったこと。

慌てる人もいれば、涙を流し始める人もいた。

本当に私の両親が良い人であったんだと実感する。

 

その後で青が言った、彼女自身が街に出ることには苦言を呈する人もいちおういた。

タイミングがタイミングだしね。

青を信仰している人も数多くいるから、思い切り口に出す人は少なかったけれど。

 

 

『あー、テメーら、安心しろ……、』

 

 

そっから急に出てきてペラペラ喋り始める電脳。

青自身は話すのもうまくはないし、誤魔化さなきゃいけない時は電脳に頼ってるみたいだ。

てか電脳も当たり前のようにこの街の人には浸透していたのか、ビックリした。

結局、防衛設備とかについて延々語ってこのタイミングで出ることをうやむやにしたのは流石としか言いようがない。

 

 

 

そして、空き家の解体と建築。

これも青の傘下の蜘蛛たちがやるみたいだ。

ひとりひとりが人智を超えた強さと計算能力を持っているから、数日でどんどん立つ見込みらしい。

ほんととんでもない。

 

 

 

 

 

 

そんなことを巡回でしていると、すぐに一日が終わる。

精神面でも肉体面でも疲れる。

ああ……。

 

 

私が疲れて苦しんでいる間に、あっという間に3日は経過した。





働く。


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104 旅に出る

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旅は突然に。



なんだかんだで、もう街の再建が見えてきた。

まだ騒動があってから5日も経ってないんだけどね。

たた、ソフィアとメラゾフィスがまた裕福な暮らしに慣れちゃうとめんどくさそうということで、もう出ることにした。

反論は聞かない。

 

 

「で、なんで夜に?

 女神様のくせに夜逃げみたいじゃないか」

 

 

うるさいアリエル。

私だって好きで女神様みたいに扱われてる訳じゃないんだ。

下手な一挙一動すら神格化されかねないのに大手振って出れる訳ないだろう。

コケたら女神様おコケの場所になるかも知れないんだぞ。

 

 

『私、今日も疲れてるんだけど……。

 特に心が』

 

 

ソフィアもうるさい。

疲れてるならなんかスキル獲得出来るんじゃないの知らんけど。

でも荷物は無虚空間に突っ込んだからな、諦めろ。

 

 

ちなみに、魔王やソフィアには言ってないが魔族領まではひとっ飛びでいける。

てかもう昨日一回行ってきた。

蜘蛛世界中にばら撒いちゃってるしそら行けるわな。

前星の裏側に転移した時も使ったし。

 

 

まー、これを白以外にはこれからも言うつもりはない。

白にはさっき言ったけど、彼女もあまり人前で話さないし多分大丈夫。

あと納得させるための理由は十二分にあるしね。

私も歩いてまでやりたいこと、あります!

 

 

「えーと、街には昼間一緒に周ったプロテクトタラテクトたちとアースは10体くらい置いてあるし、大丈夫か。

 

 さて出発だ。

 じゃ、みんなアースエレテクトに掴まって!

 走るよ!」

 

 

元気いっぱいに言って、アースエレテクトを召喚する。

それを聞いて嫌な予感を察知したのか、急いでしがみつくアリエルと白。

メラゾフィスとソフィアはいま糸で蜘蛛に縛ったからヨシ!

 

 

「じゃあ、レッツゴー!」

『『狂ってんのか、お前!!』』

 

凄い勢いで走り出す蜘蛛。

伴って街はどんどん離れていく。

なんだ、電脳とソフィア、結構君たち仲良いじゃないか。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

『馬鹿かテメー、そんぐらいは転移使えよ!

 人にバレたくねぇっても言ってもな!』

 

はい、正論です……。

 

あれから私は、5分ほど走ってめちゃくちゃ電脳に怒られている。

近くには転移しても全く問題ないことをすっかり忘れていた。

でも、街から私たちが見えないところまで来ることは出来た。

メラゾフィスとソフィアも恐怖耐性はついたし結果オーライじゃないか?

 

 

『オレ様に謝るんじゃねぇ、2人に謝っとけよ。

 あいつら、こんな経験ねーだろ』

「はい」

 

 

とりあえず2人を蜘蛛糸から解放して土下座する。

流石に今回は私が悪いのもあるししょうがない。

以後、こんなことは言ってからやろう。

 

 

「誠に申し訳ありませんでした。

 以後気をつけます」

「いや青様。

 確かに、危なかったですが……、

 はい、以後、お気をつけて下さい」

『てか普通に危ない。

 死にそうだからやめてほしい』

「はい、すいません」

 

 

ああ、メラゾフィスのフォローしようとしたけど出来なかった感が辛い。

すまん私が悪かった許してくれ。

そうだよな、ソフィア危険に晒したらそりゃメラゾフィスも私をフォローしようとは思わないよな!

すみませんでした!

 

 

「ま、まぁ?

 みんな無事だったからね?

 なにより私たちはビビってないし死にそうになったらやるししょうがない部分もまぁ…‥、あるんじゃないかな?」

 

 

アリエル、頭に手をやりながら捻り出しても、フォローがフォローになってないよ。

確かに私悪かったからもう許してくれないか。

 

 

『まー、もう終いにするか。

 青も懲りたことだし。

 で、白。

 やりてーことがあるんだろ?』

「うん、ソフィア、特訓、歩く」

 

 

ワ、ワァ……。

し、白、遠慮ないね。

お、お疲れ!

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

「えっ、え?

 ほんとにやるんですか?」

「もちろん」

 

白の前に糸で吊り下げられて立たされているソフィア。

その隣でメラゾフィスがオロオロ心配そうに見たい聞いたりしている。

そりゃそうだ、まだ一歳ちょうどくらいの奴を無理やり立たせてるんだから。

 

 

「歩く。一歩、ほら」

『よ、よ……』

『歩け。

 これで付くスキルはHP自動回復と、MP回復速度と、MP消費緩和と、SP回復速度と、SP消費緩和……』

 

 

おお、電脳全部説明してるの凄いな。

てか歩くだけでこんなにたくさんのスキル手に入るの?

赤ちゃんって凄い。

 

 

『メラゾフィスもやるぞ。

 オレ様が重魔法かけるから普通に歩いてこい』

 

 

次の瞬間、メラゾフィスが膝をつく。

どうやらそこそこの重さをかけられているようだ。

それでも倒れないあたりかなりガッツがある。

嫌いじゃない。

 

 

『これで得られるスキルは、SP回復速度と、SP消費緩和だな。

 ま、赤ん坊でもねぇから少しは余裕生まれちまう。

 だから得られるスキルも結果的に少なくなっちまうな。

 やらねーよりは格段にマシだが』

 

 

それを聞いたメラゾフィスは、糸でほぼ完全に操られているソフィアを見て立ち上がる。

どうやら自分よりも苦しい動きをさせられている主人を見て自分が挫けているのを情けないと思ったみたいだ。

頑張れ頑張れ、応援してるぞ。

 

 

『なぁ、人里離れたが我はいつになったら出ていいんだ?』

『今はまだ卵孵化に専念しろー、なー、いつか出してやるからー』

『ちょ、いや、待って……』

 

 

無虚空間に閉じ込められた悲しきカタツムリの声が聞こえた気がする。

かわいそう。

 

 

 

こんなわけで、魔物と美少女と私は、死にかけの赤ちゃんと男を連れて歩き出した。





限りなく虐待に近いなにか


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105 女神、暗躍する


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仕事のお時間



深夜。

みんなが寝静まった夜。

私はムクリと立ち上がり、周りの様子を確認する。

 

 

私以外は寝ているようだ。

ソフィアとメラゾフィスはうんうん唸っているし、アリエルはグースカ眠っている。

白も繭みたいなものに篭っているから多分寝てるんだろう。

起こしたらヤバそう。

 

 

今日はみんな初めてのことばっかりで疲れてるはずだし起きないはず。

だから、やりたい放題やらせてもらう。

 

「転移」

 

私は一瞬にして消え去った。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

よっと。

階段の下に降り立って、一応一礼。

一応サリエルはサリエル様だし敬わなければ。

 

 

そして、階段を一段ずつ登り始めた。

下を見るとまだ明かりがちらほら。

真夜中だけれど街の活気はいまだに残っているあたりさすが国一番の街だ。

 

 

ギィと重い扉を開ける。

中から溢れ出す、眩い光。

この時代背景であれば、少なくとも日常的には決して使われない量の光だ。

昼間連絡したのがちゃんと効いていた、良かった。

 

 

「こんばんは。

 ケレン領から参りました、女神です」

「どうぞ、こちらへ」

 

 

私は女性の修道士のような人に連れられ教会の中をそろそろと進む。

跪く人々の間を、赤いレッドカーペットを、ゆっくりと歩く。

そして教会の奥に置かれた玉座にストンと座った。

 

「みな、私の前へお立ちください。

 私の麗しい子供たちよ、私を見るのです。

 私もあなたを見たい」

 

うやうやしく歩いてくる人たちを眺めながら、精神安定を電脳に頼む。

こんな話し合いは精神を無理やり安定させなければやってけない。

少なくとも前世の私の精神じゃ無理だ。

 

 

並んだ人たちを見ながら、鑑定をかけていく。

お相手が弱すぎて不快感は感じさせるけどしょうがない。

覇気だということにしてもらおう。

 

 

「まずは、謝辞を述べさせていただく。

 こんな真夜中ですまない。

 最近は戦もありケレン領でも休息を取ることが出来なかった」

「いえ、こちらこそ。

 まず私たちにお姿を見せて下さったこと、至極光栄です。

 ですが……」

 

 

うんわかってる。

一部の人間、私が女神であることを信用してないよね。

とりあえず見せておこう。

 

 

「クイーンエレテクト、召喚」

アリエルを捕まえた地獄から適当に1匹召喚して、ミニサイズにして手のひらに出す。

それを大きくしていく。

ギリギリ教会を壊さない大きさまで。

 

 

「め、女神様……!?」

 

あ、やべ。

王様らしき人がガチビビりして腰を抜かしている。

他の人も逃げ惑い始めたし。

このままだと逆に魔王的な存在に思われるかも。

それだけはまずい。

 

 

『精神安定、治癒魔法』

 

 

念話を外部に向けて発射。

相手のスキルなしで念話をするのはだいぶ狂った技術なんだけど電脳に研究させることで出来るようになった。

一方的にしか出来ないし、念話じゃなくて実際は外道魔法使ってるけどね。

 

『戻りなさい』

 

蜘蛛を手に乗るサイズまで縮めてから、身体の隣に開いた無虚空間のホールへ放り込む。

まあ精神安定も施したし大丈夫でしょう!

 

 

「試したような真似をして大変申し訳ございません。

 対する罰は全てこの身に」

「いや、あなたは自身の体を大切にせよ。

 長く女神は現れなかったのだ、仕方ない」

「は!」

 

 

教皇さんが土下座のようにして謝っている。

こんな扱いは困るんだけれども。

それだけの権力は振るうけどさ。

 

 

「戦でたくさんの者が傷ついた。

 対処はしたが未然に防ぐべきだったな、すまない」

「いや、女神様がおっしゃることでは……」

 

 

 

それは教皇さんの考え。

他の思いを抱いている人もこの中にたくさんいる。

というか、有耶無耶になりかけだったけど完全には収められてなかったからな。

 

 

戦場に蜘蛛を送り込んで呉越同舟にしてかつこちらは攻撃を全く加えないというのを今日の昼やった。

でも言っちゃうと忙しすぎて今日まで忘れてたんよなぁ……。

一応精神安定持ちのやつにやらせたりとか大変ではあったけど。

 

 

てかちゃんと理解してもらってて良かった。

でなきゃ今の話で蜘蛛はなった奴として大騒ぎだったもん。

次からやり方変えよう。

 

 

 

ただもう今回に関しては取り返しのつかないことがたくさんある。

例えば、いくらか人は死んでいること。

私は蘇生なんてものはまだ出来ないし魂の保持も不可能。

だから、Dみたいに転生もさせられないし、完全なるエネルギーとなって終わり。

だからこれは私の罪だ。

 

 

「ごめんなさい。

 命を救うことが出来なかった方々。

 この中に遺族の方もいることでしょう。

 すみません。未来のために尽力させてください」

 

 

静寂のなか私は土下座をする。

この世界に土下座の文化はあるから意図は伝わっているはずだ。

確かに私は、上位存在だ。

 

けれどそれがなんだ。

人を守れなかっただけでそんなもんに対する信頼は吹き飛ぶ。

信用はあっても、信頼は死ぬ。

人の心は簡単に壊れる。

だから私は土下座する。

全て変わらない。

けれど、受け入れて欲しいから。

しょうがないから。

 

 

 

「あなたの気持ちはわかりました。

 ですが、あなたが謝っているのは過去のこと。

 ならば未来を変えていきましょう。

 こんなことがもう起こらぬように」

「貴様……!」

「うるさい。あなたこそだまりなさい。

 女神教に関しては私の方が優位なはずですが」

 

 

 

顔を上げると、教皇が王様を手で静止していた。

王様はぐぬぬという顔ですごい威圧感を放っている。

どうやら、私の気持ちを重んじて教皇さんは建設的なことを言ってくれてるようだ。

私も立場なんて関係ない喝が欲しかったのは事実あるし、これに関しては本当に教皇さんが正しかったと思う。

良くも悪くも一番宗教に真摯なのだ。

私が好きなタイプ。

 

 

「では、どうしたしましょう?

 あなたがすべきことは我々に謝ることではないはず」

「ーーありがとう。

 わかった、これからのことを考えよう」

 

 

土下座から玉座に座り直して、顎に手を当てて考える。

まず最初に止めたいのは真言教と女神教のいざこざ。

私が蜘蛛を大量に輪廻させまくってるからエネルギー的にはもうプラスになってんだよね。

だから、なんでまだ戦争なんて起きてるんだ?

黒龍ことギュリエディストディエスには星が回復してることは伝わってるけどなー。

まだ真言教の中心には伝わってないのか?

あー、私から伝えに行かなきゃかもな。

そんなことを高速思考で考えて、彼らに向き直る。

 

 

「一つだけまず言わせてくれ」

「はい。仰せのままに」

「私はあくまで女神教の女神でありこの国の政治に関わる気はない。

 だけど恵みは与えるつもりだし、どうせなら腐ったところは一から修正するつもりだ。

 だから王様、君を罰するつもりはないが共に国の矯正はする、いいね?」

「ーーわかりました」

 

 

王様みたいな人が僅かに顔を引き攣らせる。

まぁ思うところありますよねー。

中世の巨大国家で思うところない方がなんならビビるわ。

ビビってくれて良かったまである。

 

 

「あともう一つ」

「なんですか?」

「私は神だけど、単純に人より色々わかるというわけで完璧なわけではない。

 だから、私が間違ったときには進言して欲しいし、私が押し進めることに疑問があればどんどん言ってくれ」

「わかりました」

 

 

おお、教皇さんすごい物分かりいい有能さんだぞ!

大当たりだ!

やったね!

 

 

 

でもみんなとりあえずは納得しているみたいだ。

国王と教皇も一応別に存在しているし、うまいこと2人を操って暗躍していきたい。

サリエーラ国の中では私は全権を握った様なもんだし。

 

 

「じゃあ今日はここでひとまず終わりにさせていただく。

 明日も来るので今日の様に待っていてくれ。

 その時に、国の変革については話していく」

「「「わかりました」」」

「ありがとう。

 ではさらばだ」

 

 

 

 

私は転移でその空間から消え去って、そのまま布団に入る。

おー今万里眼で見てるとみんな緊張が解けてバッタリぶっ倒れとる。

明日からも会議なのに。

頑張れー、サリエーラ国人!





圧倒的時間外労働




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106 毒女神


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『お、おはよう。

 何作ってるの?』

 

 

次の朝目を覚ましたソフィアがビビりながら聞いてきた。

ヤバそうな食材も机の上に置いてたから見えないかなー、って思ってだんだけど無理だったか。

 

「ご飯」

『鍋が紫色の煙出してるんだけど!

 しかも灰色って感じじゃなくて青色に近い感じの!』

 

おー、まだ昨日出発したばっかりなのにギリギリ歩けてる。

さすが吸血鬼、人とは違う。

てか白が昨日作った時の煙も緑だったじゃんか、私が今更言われる筋合いはない。

 

 

『あー、オプションあるけどどうする?』

『オプション……?』

『HP減少を呼び起こす毒花、MP減少を呼び起こす閻魔草、SP減少を引き起こす魂の実、痛覚を呼び起こす破砕種……』

『待って!

 とりあえず無しで!』

 

後退りしてめちゃくちゃガチビビりしとるやんけ。

せっかく朝から集めてきたのに。

しかも電脳さんの監修済みだぞ。

 

『言っとくが全部効力あるからなー?

 しかもオレ様が0.1mg単位でスキル獲得とレベルアップできるように調整してる。

 いつか後悔しても知らねーぜ』

『うう……』

 

 

怖い、ヤクザです。

脅迫の仕方が嫌なヤクザ。

私これ言われたら泣く自信あるぞ。

 

 

『ちなみにゼルギズには全部ぶちこんである。

 アイツ、龍になりたいなんてほざくから追加でさらに入れといてはあるが』

『えっ、その人可哀想じゃない……?』

 

 

わかるー。

すごいわかるー!

ゼルギズは龍の精巣詰め合わせとか食わされてんだぜー。

 

 

まじで可哀想なんだよな、本人が龍になりたいなんて言って聞かないからしょうがないけど。

ま、電脳のおかげで遺伝子操作すれば龍になれるんだしアイツにとっては良かったか。

なんだかんだ電脳が全て快適にはしてくれてるからなー。

文句言えない。

 

 

『で、どうする?

 てかどっちにしろ毒は食うんだからもうヤケクソで全部ぶち込もうぜ。

 そっちの方が飯でスキルを得るって点では100億倍効率的だ』

『う、うん……』

 

 

さてどうする。

強くなりたいなら食っとけ。

てかメラゾフィスと魔王が今起きたから早く決めてくれ。

待たせることになる。

 

『じゃあ、全部食べる!

 その代わり一ついい!?』

『あー、どした』

『あんた、そこまでいうなら一緒に食べて!』

『ハァ!?』

 

 

頭の中に電脳の声が響く。

てか、は、はぁ?

マジですか……?

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

「あー、マジで呼び出すのかよ。

 フツー考えてすっか、こんなこと?」

『赤ちゃんに毒食わせてるのによく言う』

 

 

結局電脳はソフィアの圧に引きずり出されて出てきた。

コイツ、無虚空間から出て来れるんだ。

初めて知った。

 

 

ただ、引きずり出された電脳はかなり不快そう。

そして紫色の煙を見てさらに不快そうな顔をした。

ここまで私の料理嫌がられると流石に傷つくんだけど。

 

 

「白ー、ご飯の時間だよー!

 出てきてー!」

 

 

カンカンとお玉で鍋を叩いて音を出す。

この時間まで白はよく寝てるな。

人と関わるのは苦手だからしょうがないか。

 

 

『アンタ、前世からそのノリの軽さは変わらないわね』

うっさいこれか私だ。

 

 

ポトリ。

ん!?

 

白巣から落下したぞ!

人間部分から落ちたけど平気か!?

助けに行かなければ!

 

 

『昔よりは人のこと考えるようになったんじゃない?』

 

白に向かって走っていく私に、ソフィアはそう言い放った。

知らない、私は私のままだ。

変わっちゃいない。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

『まずい』

「あー、クソ痛いクソ不味いクソ疲れる。

 なんだこのわけわからん料理は」

 

 

なんだ貴様ら文句あんのか?

特に電脳、レシピもアンタがくれてその通り作ってんのになにソフィアの数倍文句言ってんだ。

そもそもどこがどうなってどうアンタは存在してんだ。

痛みも感じてるっぽいし。

 

 

「まあねー、無理はしなくていいよ。

 最悪この食事抜きでも死なないと思うし」

 

 

優しいように見えてアリエルは一番キツいこと言ってるし。

どうやら慈悲はないようだ。

ま、メラゾフィスも黙って食べてるし白も嬉しそうに食ってるし私の料理は間違っていなかった。

これが現実だ。

あきらめろー。

 

 

 

でも、たまにえづきながらもみんな後半は文句も言わず食べ切っていた。

なんだかんだ心は強いと思う。

尊敬尊敬。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

あのー。

一ついいですか?

電脳、さすがに可哀想じゃない?

 

 

ご飯食べた後、草むらの中とか山の中をゆっくり進んでるんだけどなぜか電脳がソフィアから解放されなかった。

彼女が言うには、自分たちだけ苦しい思いをするのは間違っていると言うことらしい。

だからって電脳を追い込みます?

しかも一応電脳言い返してたのに完封され切ってたぞ。

転生者怖い。

 

 

というかもう一つ言いたいことあります!

あ、電脳こけた。

フラフラだけど頑張れー。

 

 

電脳がヘタレすぎる。

流石に生後一年の赤ちゃんよりは体力がある。

でも、どうして重魔法かけてるメラゾフィスより先に倒れ込む。

わけわからんぞ私の別人格。

肉体ステータス終わってるんだよね。

 

 

たぶん前世の私の推しであった石神千空に色々似せすぎてるんだろう。

そいつ、研究とか化学調べるのに対する興味はすごかったけど体力は終わってるからな。

姿形性格だけでなく肉体強度までコピーしちゃったか、ナンマイダブナンマイダブ。

 

 

ただ、見てるとあまりにも可哀想になってきたから苦しんでるソフィアに聞いてみるか。

絶対こいつはステータス育たんだろうし。

 

 

「ねぇ、帰してもいいんじゃない?

 無虚空間に」

『帰さない』

「うっ」

 

 

駄目でした。

怖い怖い。

ソフィアもへんな性格になってきてないか。

睨まないでくれ。

 

 

 

みんなの体力がついてきたら足を引っ張ることになりそうだな、このアホ研究者。





巻き込まれて、嫉妬の対象にもされかけている可哀想な人。


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107 MAD SCIENTISTS


高評価、感想お願いします。


狂っているのはこちらもそうだ。




『てかいーか?』

 

なんだ、歩きながら死にかけてる電脳。

でも念話でしかも私だけを対象にして話してるってことはそれなりに重要なことだよね。

どうしたんだろう。

 

 

『いいけど』

『アリエルからはクソポティマスのせいで世界がグッダグダになったって聞いたんだが、そもそも龍とアリエルの体内機構におかしい共通点があるんだが』

『ん?どゆこと?』

『具体的にいやーテロメアの構造が不思議なくらい同じだ。遺伝情報がそっくりそのままコピーされてる。

 まあ簡潔に言うと、同じ種類の生命体じゃねーと有り得ねーこと起きてんだ』

 

 

いや、テロメアってなんだ。

あと全く同じって言うのも別にスキルでなんとかなってるんじゃないの?

 

 

『ついでに簡単に説明しとくと、テロメアっつーのは生物の残りの寿命をインプットした遺伝情報サマだ。

 だから元来は生物種ごとに違うんだけどな。

 龍とアリエルの遺伝情報がソフィアとアリエルの遺伝情報より一致してんのは流石におかしい話になってこねーか?』

 

 

そうか、ソフィアにもちゃんとあるならスキルという問題でもないのかもしれない。

あと私ももともと生き物好きだからある程度知ってるけど遺伝情報は最高ランクの生物の設計図だ。

あそこまで姿形の違う生き物の細部遺伝子が完全に一致するのは気持ち悪いというのにも納得できる。

 

 

『でも、それでなにがわかるの?』

『クックック、テメーには結論から言っちまった方が早かったかもな。

 

 アイツら、元は人間だったんだよ。

 アリエルもガギアもみんな仲良しこよしでな!』

 

 

はぁ?

でも、どうなんだ?

正直否定出来っこない。

それだけアリエルは人情に溢れているし、ガギアも武人だった。

なんでじゃああんな強さになったのだろうか。

人間なのに、どうしてあんな身体になったのだろうか。

 

 

『ま、倫理観終わったやつの元生きてたから仲良しこよしにすらならなかったかもな』

『どゆこと?』

『おかしな寿命を維持できるテロメアが完全に一致するには2つの条件がある。

 1つ目に元が同じ生物種であること。

 そして2つ目に、付与されるテロメアが全く同じものであることだ』

 

 

えーと、また遠回りしてきたぞ……?

つまり人間から他の生き物にされたときに同じ遺伝子が渡されたってこと?

でも蜘蛛と龍だぞ?

そんな似た遺伝子になんてなるんだろうか。

見るからに違う生物ではあるけど。

 

 

『別に龍と蜘蛛であるこたぁ関係ねぇ。

 今回の場合は、実験上で使用された遺伝子が同じだったっつー話だ。

 例えると同じ茎のワサビが入ってるって話』

 

 

ん?

何言ってんだコイツ。

急にワサビとか言い出したんだが。

わけわからんぞ。

 

 

『寿司のシャリの部分が同じコメの品種なら、同じ店で作られた可能性は高いだろ?』

 

 

ま、まあ。

 

 

『その上で寿司に入ったワサビが同じ茎のものであれば同じ店で作ってるって確定するだろ?

 上に乗ってるネタがなんであれ』

 

 

うーん、分かるけど例え下手じゃない?

 

 

『結論としては、同じ研究所で、下手したら同じ人間に改造されて人間辞めたってことでしょ』

『ビンゴ。よくわかったじゃねーか』

 

 

いやアンタの説明で混乱したんだが。

実際わかったからいいんだけどさ。

 

 

『で、話は終わり?』

『いーや、もひとつ話してーことがある。

 あのクソエルフ、ポティマスとその研究所の関係性についてだ』

 

 

うーわ、また難しそうな話題来ましたよ。

今度は簡潔に説明してくれないか。

 

 

『オレ様の予想だと、ポティマスはその研究所に勤務していた』

 

 

いーや、何言ってるの。

『いくらなんでも4000年前でしょ?

 ナイナイそんなの』

『いやお前、アリエルとか龍だって4000年前から生きてんだからフツーにアリエル話だろ』

 

 

いまダジャレぶっ込んだなコイツ。

でも確かに生きてる人たちもいるんだもんね。

アリエルかも。

 

 

『てかアリエルの機械に対するトラウマとかポティマスに対する殺意とか一番説明が楽に済むんだよ』

 

 

そうだよな、確かに異常だし。

でも、当事者が当事者にガチギレするのならまだ理解出来る。

ポティマスの方はスキルとか調べられなかったからなんで長生きしてんのかわからないんだけど。

 

 

『そのポティマスはなんで長生きしてるの』

『エルフだからじゃね知らんけど』

『てか蜘蛛で斥候出してるじゃん、それで調べられないの?』

『しらみつぶしに殺してきやがるから完全に察知されてんな』

 

 

うーむ、最低限の脳はあるみたいだ。

厄介な相手ではある。

 

 

『てか真言教の教皇も警戒はしてくるしたまに潰してきやがるからわけわかんねー。

 これも勘付かれてんだろ』

 

 

まじかー。

ダルイ相手が2人に増えました。

困ったもんだ。

しかもこれは真言教教皇もめんどくさそうな雰囲気がする。

触れたくねー。

 

 

 

『でもなぁ……。

 本当はオレ様もなんだかんだクソエルフからは学びたかったこともあるんだがなぁ。

 いかんせん人を殺しすぎだ、アイツは。

 探究心だけは尊敬してんだが。

 だって長生きしてまで調べてーことがあるってことだろ?

 元来いいことじゃねーか。

 

 うらやましい』

 

 

あーあ、かわいそうに。

電脳がしょげちゃった。

これはポティマス叩き潰すしかないですね。

 

 

私の大事な仲間を悲しませる奴は、全部潰します。





ポティマス『何コイツ、こわ』



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108 神と神の違い


高評価、感想お願いします。

愛される神と暴れる神。


その日の夜。

私は考える。

どうでもいいように思えるけれど大事なことだ。

 

 

「最近考えてばっかりだからなんかぶん殴りたい」

『「え?」』

 

 

アリエルとソフィアがハモるのは珍しいな、白はもう巣に入っちゃったから反応はないけど。

 

 

「いやー、最近なんもちゃんとした戦いやってない。

 うーむ命に関わらない優しさのある人で戦ってくれる人いないかな」

『いや、ポティマスって奴と戦ったじゃん』

「私との戦いも同じ日だしねー」

 

 

でももうあれから一週間も経つ。

魔王が敵対していた時はばちばち警戒心マックスで良かったんだけど、ポティマスはエサだったからなぁ。

対等なんてものじゃなかったし、金属素材としてしか意味なかったわ。

 

 

「青は蜘蛛の進化とか出来るんでしょ?電脳に頼んで色々やって貰えばいいじゃん」

「まあねー。いかんせん私より弱い個体しか作れんし精神汚染も入っちゃうから戦闘にならない」

『逆に強かったらヤバいでしょ……』

 

 

それはそうだ。

でもどうするか。

今エルロー大迷宮の下層で増えてるポケモンたちと戦ってもなんもならんしなー。

せいぜい少しいい経験値となるだけ。

 

 

「なんなら宇宙から龍呼び寄せてみるか?」

「おい、ギュリエに勝てないくせにそれは悪手じゃないか?」

「すみませんでした」

 

 

アリエルにガチギレされました、はい。

事実勝てないからな。

いくらエネルギー自体がギュリエの100倍はあってもそれをまともに出力するだけの機能がまだ体に備わってない。

 

 

『じゃあDって奴と口論するのは?』

「出来るけどまだやだ」

『あとさ、青。

 私から見ればもうアンタも神なんだけど、アンタがいう神とアンタはどう違うの?』

「私も気になります」

 

 

ありゃ、説明してなかったか。

どうせだしこの機会に説明しておくか。

 

 

えーと、電脳は完全に熟睡してる。

まあ一番顔は死んでたからしょうがないか。

今しゃべったメラゾフィスももうすでにふらふらしている。

逆にソフィアすごいな。

赤ちゃんで一番負担すごかったくせに起きてたってことだもん。

 

 

「まぁ、私たちがソフィアの面倒見るから寝なさい。

 記憶に関しては明日の朝作り出してやる」

「なっ」

 

背中から生やした蜘蛛の足で首をとんと叩く。

それと同時にパタリと眠るメラゾフィス。

これでヨシ!

 

 

『そういう変なベクトルで優しいところとか、記憶操作とか、ヤバい脚生やすところとかね……、神くさい』

 

 

いやいや、Dなんかこんなん比較にならないくらいやばい神だぞ。

てかいつかあの人死は救済とか言いそうだし。

正直比較されるのすら心外だ。

 

「まぁ、私から神について説明させてもらう。

 神とみなされる条件は二つ。

 一つ目に、普通の生物ではありえないほどのエネルギーを溜め込んでいること。

 二つ目に、星のシステムから自立していること。

 私については二つ目のシステムから自立がまだ当てはまってないね」

「わたしゃその片方すら達成している人をはじめて見たんだけど……。

 あと一つ、1が達成されたら2は自動的に達成されるんじゃないの?

 エネルギーがあれば強さはともかく神になれるんだろうし」

「君のような感のいいガキは嫌いだよ」

「!?」

 

 

アリエル、いや、マジでやめて欲しい。

なんで1達成したら2達成されるって知ってんだ。

勘良すぎじゃないか?

もういいや言ってまえ!

どうせDは縛りあるから私をぶん殴ってくることはないだろうし!

 

 

「みんなこの世界で生存競争に苦しんでるだろうけど、実は神の世界でも生存競争があるんだよ。

 私はすぐにでも神になりたいわけじゃないし今神化をしないで下準備をしてるってこと」

 

 

『じゃあ本当は、今すぐにでも神化できるの?』

「まぁ、無理やり抑えちゃったせいでなかなかのエネルギー追加投入しないと完全な覚醒はできないけど」

『こわい……』

 

 

ビビられました。

なんか理不尽では?

神の領域だと、でも、まぁ、ビビられるのもしょうがないか。

 

 

「そんなヤバい奴がいるとはねー。

 私が保証するけど、アンタたぶんギュリエには余裕綽々へのカッパで勝てるよ。

 さっきは勝てないって言ったけどね。

 ま、それはアンタがその前にバカなこと言ったからってことで」

「いや無理でしょ、アイツ魔術妨害やばいよ」

 

 

否定する私に、アリエルがやれやれと肩をすくめる。

うーむ、でもやっぱきついんじゃね。

妨害怖いし。

 

 

「昔のアンタなら確かにキツかったかも知れないけど、私見逃してないからね?

 エルロー大迷宮と同じ規模の迷宮の最下層まで魔法一発で掘り砕いてよく言う。

 しかもあれ本気じゃないでしょ。

 今のアンタが本気でやれば、青が生まれたくらいのこの星なら無かったことに出来るんじゃない?」

「それはこの星弱いだけじゃね」

『へっ、出来るの?』

「うん」

 

 

前のクイーン叩き潰したやつのあれか。

いやー、でも前やった以上は流石に全力すぎて私も死にそう。

てか魔術無効だから相当頑張らないと龍には干渉できないし。

いくらこの星を壊せても、逆にこの星だぞ?

龍なんかより多分全然やわい。

 

 

 

「ま、なんだかんだ言ってギュリじゃなくても龍とは戦いたい。

 現時点ではともかく神になるならいずれ対処が必要な相手だし。

 まだ神よりは対処可能ではあるでしょ」

「いや神と龍の序列なんて知らないけど……。

 ーー確かにね、少しだけどそんなイメージはある。

 ただこの星を少しでも傷つけるならアンタであっても容赦はしない」

「そりゃそうだ」

 

 

あれ、話してる間にいつの間にかソフィアが反応しなくなってる?

一応起きてるけど、ビビって少し静かにしてるのか。

まあ話してる内容的にしょうがないね。

そのまま寝ていいよ。

 

 

私も、これから夜通しで女神教を根本から変える改革をしなきゃいけない。

宗教の根本にあるエネルギーの奉納まで変わるんだから大変な改革。

おそらく私が女神として表に出なきゃいけないだろう。

大変だけど、頑張るか。

 

 

世界を救うために。





愛される神になるために。


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109 世界には革命を


産業革命へ



「みなさん、今夜も集まっていただきありがとうございます。

 昼の業務で疲れている方は結構ですから、元気な方だけ会議に参加してください」

「先に休ませているので問題ありません」

「感謝します。

 では話していきましょう」

 

深夜。再び皆が眠り込んでから。

教会でいつも会議に使われる部屋で長机の端に座り私は話し始める。

これからのこの国の政治についてと、女神教についてだ。

ダスティンとかいうめんどくさい奴のためにも先に対処できるだけの国力を蓄えておきたい。

また戦争仕掛けてきたらたまったもんじゃないしね。

 

 

「まず最初に、先の戦争での和平ってどうなってますか?」

「会議日程は決定しているがまだその段階だ。

 詳しくは外交官同士で話すことになるけども、奴らはケレン領を割譲してくるよう行ってくるだろうな。

 あんな栄えた街だ、こちら側も簡単に引く気はない」

「情報ありがとう」

 

 

こう言うのは私の右隣にいるサリエーラ国の王であるソルジアさん。

中世の王という立場でありながら、お飾りの王ではなくてそれなりに政治はわかっている。

特にこれといった専門分野はないけど、全てのことを最低限知っている感じだ。

正直話がわかる人で助かった。

教皇が顔をしかめてるあたり、彼の口調に関しては思うことあるみたい。

別にわざわざ丁寧語で話してくれなくても私は別にいいけど。

 

 

てか一部の他の人も顔しかめてるな?

こいつらまさかだけど戦争に負けたと思ってないのか?

そりゃ勝手に仕掛けられて勝手に殴られまくって制圧されたらそりゃキレるの納得だけどさ。

残念ながら、負けちゃってるから諦めて欲しい。

すまんな。

 

 

「よし、じゃあこうしましょう。

 外交官みんなで賠償金の方向へ持ってってください。

 確かに最終的な戦況は圧倒的に不利でしたが、完全に責められるほどの完敗ではありません。

 その隙を利用して、金銭面での工面を目指しましょう。

 経済面なら私が表に出ればどうとでもなります」

「表に出るということにしなさったのですか?」

「色々考えたけど結局メリットが大きすぎるのでそういうことにしました。

 暗殺とかがもしもあったとしても私の肉体であれば無傷ですから安心して出れますしね」

 

 

教皇さん私の言葉一言一句覚えてらっしゃる。

優秀。

有能な方は多ければ多いほど助かるからね。

これからもどんどん頼っていくからよろしく。

 

 

「あー、あと一応私もその会議参加しますね」

「「え?」」

 

いや外交官ら、あんたらも別に私とはずっと喋ってるやろうがい。

なんなら今個人的なこと聞いてもいいんだぞ?

好きな食べ物とか。

 

 

「いかんせん長く封印されていたものですので、私が行っても知識的には外交で有利にはできないでしょう。

 ですが私が存在していることに意味があると思いますし、なにより邪魔はしません。

 神が復活し、それが身近に自由に動くこと。

 これを世界に伝える場面としてはこれ以上の場所は無いはずです」

「外務大臣頼んだぞ」

「りょ、了解しました」

 

 

王様えらーい。

外務大臣くんも頑張ってね!

女神教とサリエーラ国が孤立していたあたり大丈夫か不安になってきたけど!

 

 

「うん、よし。

 教皇さんは明日、街中に私が復活したことを通告できる?」

「明日でしょうか?

 ううむ、可能ですが混乱が望まれますね……。

 国が大敗を決した直後ですし、復活が遅いということで信仰心にブレを生む人もいそうですが……。

 けれど蜘蛛が戦場に大量に現れたことに疑問を呈している人もより多い。

 それも考慮すると、確かに通達してしまった方が楽かもしれません」

「信仰心は大丈夫なの?」

「なにを今更。

 あなたが蘇ったんですから、そんなものは一瞬でV字回復しますよ」

 

 

穏やかな笑顔で笑う教皇さん。

優しそー。

元気に頑張ってくれ。

私も応援するからさ。

 

 

「ですが、どう民衆に伝えるか。

 街の中でクイーン種の蜘蛛を解放するというのも大きな混乱を生みますよね?

 ソルジア王、新聞などをすることは出来ます?

 号外などでも構いませんが」

「俺も実はそうしたいが、いかんせん貴族が反発する。

 奴らが基本印刷系の税は払っているからな。

 戦争終結の時ですら号外として出さなかったのに、神復活の時に号外を出せば十分反発しうる」

「貴方、神ですよ。

 戦争と神のどちらが重要かわからないのですか?」

「戦争で人は死ぬが神降臨で人は死なねぇよ」

「ま、まずは言い争うのやめましょう」

 

 

王様も王様で正論で刺しまくってくる。

とりあえずは私がうまく公表すればいいんでしょう?

それについてなんだし。

 

 

「公表の件についてですが、私が守護獣を市民一人一人に配布します。

 貴族に対して区別をつけなければいけないというのならば、私が生み出した最高品質の糸の束も一緒に彼らには渡すということで折り合いをつけましょう。

 神の糸を渡すという条件付きであれば、どんな貴族でさえも印刷程度で文句は言わないでしょう」

「そうだな、あいつらは良くも悪くも黙ると思うぞ」

「教皇さんもそれで大丈夫ですか?」

「大丈夫ですが一人一匹で貴方こそ大丈夫なのですか?」

「問題ないですよ」

 

 

不安そうな顔をする教皇と満足げな顔をした王様。

そうか、普通10万匹の蜘蛛を配るだなんて無理だもんね。

だが出来る、私ならね!

 

 

「もう10万匹はいるから明日の朝までに5000万匹までには増やしておきます。

 そのうちの20万匹持っていきますよ。

 大きさは5センチメートルくらいなのでご心配なく」

「ーー無理はしないでくださいね」

「それは大丈夫。

 だから神が蘇ったことだけ記事を作っておいて。

 朝までには糸を作るから」

 

 

 

 

 

「ですので、糸のために少し解散しますね。

 お願いします」

「「えっ」」

「王、頑張りましょう」

「ああ、政教分離なんて馬鹿げたことを考えていたがやめにするか」

 

 

 

転移の瞬間に聞こえた声。

どうやら二人も少し和解しようとしているみたい。

私の働きかけで不仲なのを変えられたら良いけど、どうくるかな。

だが、私は私のために働く。

 

 

エルロー大迷宮へと、私は飛び降りる。





世界に平和を


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110 ゼルギズには労働を


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ま、しょうがないよね!




えーと、まずはどうするか。

電脳の意識本体はアリエル達のところで寝てるからなぁ。

叩き起こしてもいいけどなんか可哀想だし別にいいや。

 

 

ここは地獄と呼ばれている空間。

知ってる人は私とアリエル、電脳しかいないけどね。

目の前の巨大な洞穴の中には、約20万匹のクイーンエレテクトとアースエレテクトが所狭しと詰められている。

だから、世界で一番エネルギーが溜め込まれている場所でもあるか。

 

 

万里眼と電波反射でしっかりと詰まっていること、異物が混入していないことを確認してから私はトスンと座り込む。

本当にどうしようか。

どうカスタムしよう。

 

 

ここに詰められているアースとクイーンは自我というものがない。

元々アリエルを殺すために作ったもんだし、今現在もこの中ではエネルギーの吸い取りあいの同族狩りが頻発している。

ううむ、これはただ何匹か出しても殺し合いに発展するな?

よし私には無理だ!電脳起こそう。

 

 

『電脳ー!

 ヘルプ!』

『あー、起きてる起きてる。

 ソフィアに絡まれてからエネルギーの消費がデケェ気がする。

 で、なんだ』

『蜘蛛を明日までに20万匹用意して町中にばら撒きたいんだけど、増やせる?』

『え、マジ?』

『マジ』

 

 

あ、これまずい?

大丈夫だとは思ってるんだけど、実はキツかったか?

 

 

『あー、あの、な?

 戦闘力は皆無にするっきゃねぇがそうすりゃ出来る。

 だからあくまで卵のための蜘蛛になるな』

『ありがとう。

 一応聞いておくんだけど、何がヤバかった?

 私的にはイケると思ってたんだけど』

『そりゃまぁ、単純にエネルギーが足りねぇ。

 ここで大量の蜘蛛が生きてんのは共食いで常に輪廻を回してエネルギーサイクルを高速で回してるからだ。

 人の家とかにばら撒くっつー話なら共食いは出来ねーだろ?

 となるとマジでエネルギーが全く足りねーんだわ。

 ま、よかったな。

 エネルギー源があって』

『エネルギー源?』

 

 

なんだか、とんでもない依頼をしてたみたい。

普通だったら技術者がぶん殴ってくる依頼をとって来ちゃった雰囲気だ。

けれどこの雰囲気だとどうやら補填はできるようだ。

私にも無理のない範囲のことだったら良いけど。

 

 

『ゼルギズ、テメー今からエネルギー源として働け。

 最近今日は結構休んでたしいーだろ』

『え?

 今我瞑想してたんだけど。

 てかまたなんかエネルギー必要なことあるのか?』

『青が一気に国民に蜘蛛広げる構想立てたみてーだ。

 それで蜘蛛をばら撒きてぇからそのためのエネルギーが欲しい』

『よーしオーケー!

 我が動くのだ、感謝しろよ!』

 

 

あーれ。

ゼルギズ働かせるのはまだ理解できるけどなんでこいつエネルギー吸われることにポジティブなの。

電脳なんか言いくるめでもしたのか?

 

 

「ゼルギズ、あんたエネルギー吸われることに抵抗ないのー?

 いやそんな仕事させる私にも問題はあるけども。

 なんかごめんね」

『いやいや我がエネルギー消費してもまたすぐに勝手に生まれるから問題ない。

 どうやら我の体、熱エネルギーを無限産生できるみたいでな。

 このままどんどん頼れ!』

 

 

いや頼もしい。

私よりも全然弱いけどすっごい頼りになる。

さすが体表温度一万度にできるやつだ、伊達じゃない。

それを完全に利用できる電脳パワーありきだけど。

 

 

『コイツもコイツでエネルギーの生産が早くなりゃぁ龍への体内の変性も早く済ませられるからな。

 体内のタンパク質の変性と鱗の作成で結構なエネルギー使うんだわ。

 それも含めてさっさとエネルギー産生量は今のうちに増やしておきてぇ』

『っていうわけだ。

 我の今の体は2mしかないし、昔のガキアくらいのサイズにはなってやりたいのもあるしな。

 もちろん人型は今のサイズでいいが龍化する時のサイズを30mくらいにはしたい!』

 

 

相当な暴論をコイツはコイツで言っている。

体長30m分の鱗とかエネルギーどうなると思ってるんだ。

全部諸々含めたら今のコイツのエネルギーの1000倍必要なんじゃね。

まーじでこれ電脳に言いくるめされてやがんな。

でも、本人が幸せならオッケーです!

 

 

『だから、蜘蛛の増殖の方はオレ様がやっておく。

 あと一応そっちの世界で今寝てやがるオレ様の分身も回収しておくわ、下手にいじられるとやだし。

 てかそっちの蜘蛛じゃなくて無虚空間にいる品種のやつ増やすから地獄からは持ってこなくていい。

 つーわけで、テメー糸作りの方よろしくー!』

 

 

は。

なんだぁ、テメェ……?

あんたもあんたでなかなかな要求を私にふっかけてくるな。

いや確かに、神様の作った糸(神様の作った糸ではない)を配布するのは流石にNGか。

しょうがないから私自身で糸を作ろう。

指から糸出せるようになってるし、だいぶ楽ではあるからね。

 

 

シュロロロと糸を出して生糸みたいにパンの形みたいにして丸めていく。

いくら貴族が強欲とは言っても、家族あたりワンピース1着くらい作れる量配布しておけば文句言わないでしょ。

いや言いそうだな……。

信仰心なさそうな貴族なら案外文句言ってきそうな気がする。

多分ああいう人らが文句を言うのって他の人たちと比べるからだもん。

いくら貴族だけに配布すると言っても、貴族みんなに配布するんならそれはそれで言う人いるよなぁ……。

国の外の貴族と比べてイキってもらおうそうしよう。

王様はまともだし上手く外部の人にヘイト向けてイキってもらえるようにすれば万々歳だ。

てかそうしないと無理っす。

どう足掻いてもも文句言われるエンドになる。

 

 

糸は白いものにしよう。

そっちの方が綺麗だし、どうせなら火に燃えないものを。

人の剣程度じゃ切れない、本当の神だとわかるものにしよう。

最高に美しく艶のあるものに。

 

 

これを大体1000個。

一個あたり1分だから16時間……。

あれこれダメじゃね。

全然終わらないじゃんやばい。

 

 

よーし、全部の指から一気に10個ずつ作っていこう。

これで2時間くらいでできるはず。

てかできないと終わるから頑張れ私。

 

 

シュルシュル。

シュルシュルシュル。

シュルシュル。

シュルル……。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

あ、やばい。

寝てた。

えーと、2時間くらいか?

てかなんで寝てたのに糸玉1000個出来上がってんだ。

鑑定で確認してもしっかり1000個できてるしすごいぞ私。

 

 

『今蜘蛛何匹いる?

『1万匹だ。あと20分で終わる。

 少し待て』

『スキルとかって組み込んでる?』

『あー、最初は無理だと思ってたけど結局できそーだわ。

 自衛できるだけのスキルはしっかりあるし、ステータスも100くらいだから普通の人間より強い。

 卵も産めるし生ゴミでも食わせれば健康的な生活送れるようにはなる』

『ありがとう。

 こっちはもうカゴに糸詰めとくよ。

 今はえっと、4時半だからまだ納品には余裕あるね。

 今日の昼は街で私のお披露目会しないとね』

『あー、いくらテメーがコミュ障でもちゃんとものだけ渡しときゃぁ大丈夫だ、とりま納品して寝とこうぜ』

 

 

 

朝5時前。

そしてついに全ての準備を終わらせることができた。

新聞もイキリセリフが一部あったけどもちゃんとした内容ではあったからおけ。

糸も教会に渡して、あとは正午に人前で神様の降臨を宣言するだけだ。

 

 

 

よーーし、世界を変えるぞー!

おー!





千里の道


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111 民衆には幸福を


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「てなわけで、あと2時間くらいしたら国の方に行くね。

 午後からは私は別行動するからよろしく」

「不安」

「大丈夫なの?

 いや大丈夫なんだろうけどさ」

 

 

あの後、私はいつも通りの時間に起きて朝食で2人に地獄を見せてから一緒に歩いていた。

だけどわたしが計画について話したらこのザマだ。

全く信用されていない。

てかなんだ貴様ら。

別に私昔から上手くやってたじゃんか。

なんで今更急に不安がるんだ。

 

 

「いや、まあねー。

 青は思いついたままに行動する末っ子っていうイメージがあってね。

 確かにケレン領では上手くやってたけどさ」

「同感。

 暴走する気がする。

 あとやっぱり思いついたこと無理やりやろうとするから危なっかしい。

 本当はわたしが監視しておきたい」

「白ちゃんが長文を喋った!?

 マジで青大丈夫!?

 すっごい不安になってきたんだけど!」

 

 

しかも、ソフィアとメラゾフィスの元々死にかけてた顔がさらにしかめ面になってる。

全部していて尚且つふらふらの電脳は流石に無反応だとしても流石に他の奴らの反応厳しくないか。

私悲しいんだが。

 

 

「確かに私は結構好き勝手行動するし予定なんか立てないで行き当たりバッタリで生きてるよ?

 でもそれでもケレン領を大きく発展させることは出来てるんだ、それが国単位にまで広がったところでなんとかなる」

「なんとかなるかねー。

 サリエーラ国は巨大だから末端まで血液が行き渡るようにするのは相当に難しいよー。

 事実ケレン領までは行き渡ってなくて財政不安だったんだから。

 それに真言教中心の国家は連合国で、しかも敵対関係。

 しかも真言教のトップにはダスティンが君臨してるし。

 外交初心者には難しいんじゃない?」

 

 

からかうように言ってくるけどあんたはなんなんだ。

あ、魔王だったわ。

そりゃいくら魔の王でも王なんだから外交はしてるわな。

だけど人間と魔族が敵対関係の時点でこの人も外交失敗しているのでは?

てかそもそも外交に正解はないし、サリエーラ国の外交官が有能ならあんなたくさんの国を相手どって戦争することは絶対になかった。

だから私がやったところで悪くはならんでしょ。

もともとがマイナスなんだから。

 

 

「青がやりたいならいいんじゃないの。

 最悪電脳がカバー……、出来るでしょ。

 今顔死んでるけど」

「ねえ白ちゃん、話しすぎだけど大丈夫?」

「いや白は私関係のことなら案外しゃべるぞ。

 私と2人きりならアホみたいなテンションにたまになる」

「青」

「ごめん」

 

 

なんか気に障ったみたいだ。

確かに白としてはあんまり喋りたくないだろうし私が不用心に話しすぎた。

申し訳ない。

 

 

「あとさ。

 私から一つ忠告だけど」

「なに、アリエル」

「人に好かれたいならもう行ったほうがいいよ。

 転移」

「は!?」

 

 

アリエルに肩をぽんと叩かれた瞬間、私の身体は空間を吹っ飛んだ。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

えーと、どゆこと?

なんか急に教会の中に転移させられたんだけど。

幸い今は新聞とか糸の整理のために祈ってる人はいないけどいたらどうするんだ。

 

 

せわしなく働く修道士さんたち。

教皇は、王様と念話して備品の最終確認しているみたい。

12月の比じゃないくらい本当の師走だ。

前世てもし私が社畜だったら戦争って言われてたぞ。

 

 

「女神様!

 来ていただきありがとうございます!

 ですが、まだ準備が済んでおりません!

 申し訳ないのですがしばらくお待ちください!」

「いや、手伝います。

 力仕事も器用さが必要な仕事もどんどん持ってきてください。

 人事は苦手ですが、それ以外は出来ると思います」

「なんと!

 ありがとうございます!では……」

 

 

めちゃくちゃ驚いた声で今なんとって言ったな。

私一応神ではあるけどさ、こんな戦争状態で手伝わなかったらそれこそ感性バグってるでしょ。

Dならともかく私はまだ人間に近いほうの神だぞ。

人に好かれたいんだから、苦しんでんなら手伝うでしょーが。

 

 

 

 

私も、魔法担当の人たちにMPを流し込んで準備を始める。

この世界では魔法が一番便利で、人に情報を流せる手段だ。

ならば徹底的に活用してやる。

 

万里眼で城前広場を確認。

よしよし、アースたちがちゃんとセレモニーのための建設してる。

最初はパレードでもやろうかと思ったけどやれるなら派手にやるということでセレモニーをやることにした。

城の中の庭も使っていいということだし王様も心が広いもんだ。

どれもこれも一日で全部の建築を終えられるアースたちがいなきゃ成立しないことではあったけどね。

 

 

世界最大級の国の、世界最大級の広場をふたつ繋げている。

ワンチャンこれサリエーラ国民全員全員入るんじゃない?

うん考えてみたけど入るわ。

無理しなきゃいけないから結局ダメだけど。

 

 

『ムービーエレテクト、準備オーケー。

 録画と中継くれーなら出来るぞ。

 田舎とかにはあらかじめばら撒いておこーぜ』

「よし、ベストタイミング!

 ありがとう!」

 

 

ムービーエレテクト。

映像を電波で受信してプロジェクターのように壁に投影することの出来る蜘蛛だ。

私の力では流石に様々な場所に干渉することができなかったから、人手を補うために生み出されたエレテクト。

この蜘蛛たちに、プロテクトエレテクトをホストとして繋ぐことで映像配信が可能となる。

我ながら狂った品種改良してるけど実際出来ちゃってるから文句を言われる筋合いはない。

あと将来はプロテクトエレテクト世界中にばら撒きゃなきゃいけないんだし、こんなことで苦しんでる暇なんて実際ない。

ムービーエレテクトの方がプロテクトエレテクトより全然コストはかからないんだし。

 

 

『もうアースたちに運ばせてる。

 しかも深夜の間に魔法使いたちが辺境の地には蜘蛛送ること通達してくれたらしい。

 マジ有能』

 

 

それはマジ有能だよ。

本当に感謝。

私が仕事なくなるほど有能だよ。

この師走時だから仕事は山のように残ってるがな!

 

 

「広場の工事は何時ごろ終了しそう?」

『あー。あと30分で終了させる。

 今の時間は10時だし、12時から式典やること考えりゃあ間に合う。

 この街にいるやつなら1時間で間に合うはずだ。

 アースの一部も国民の運搬に使うつもりだから他の街に住んでる人間も転移させられるぞ』

「グッジョブ!!」

 

 

今使えるアースは100体はいるし、全員範囲転移は覚えてる。

魔道の極みはないから構築に時間はかかるけど戦闘に使うわけでもないし全く問題はなし。

10分もあればドベでも転移魔法は構築できる。

 

 

あとは働くだけだ!

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

正午。

ついにこの時が来た。

雲ひとつない青空のもと、広場には人がぎゅうぎゅうに詰まっている。

貴族の人たちのスペースには余裕まだありそうだけど、一般市民は本当にすし詰め状態だ。

そして建てられた櫓の上には全国に放送するための大量のムービーエレテクトが配備されている。

この映像どうせ全世界に一瞬で広まるんだろうな。

なにせ私が出るんだから。

 

 

 

 

すし詰めの国民の不満が爆発する前に行こう。

私はすうと深呼吸をして城のベランダの扉の取手を掴む。

そして、ゆっくりと扉を押す。

 

 

 

大丈夫。

私は最強だ。




今回の教会への転移は電脳がやってます。





こんにちは、作者の天廻です。
今回はこの小説の展望について書いておきたいと思います。
まず最初に。
この小説は意地でも描き切るつもりです。
蜘蛛ですが、なにか?という小説の二次創作が減っているのもありますし、私もひとまず古の書き手としてちゃんと燃え切るつもりです。
ただ問題としてあるのが、おそらく250話近くまでかかります。
もしかしたら300話超えるかもしれません。
それまでこんな頻度で描き続けていくつもりですがよろしくお願いします。
流石に長いと思った方は感想に書いてくだされば私も少し考えるつもりです。



あともう一つ。
高評価、感想いただけると作者が喜びます。
蜘蛛ですが、なにか?の二次創作を書いてくださっても喜びます。
私も長く生きるつもりなのでこれからもよろしくお願いいたします。


蜘蛛ですが、なにか?に栄光あれ。


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112 革命


高評価、感想お願いします。
生きさせろ。


『この新聞は、女神降臨祭で配られた新聞です。

 

 帝国新聞

 先日、女神様はついに復活なさった。しかも、本日我々の前に降臨なさり、我々に語りかけなさるようだ。嗚呼、本当にこんな事が起こってよいのだろうか。我々が直に御方のことばを耳に入れる事ができるなど、決して起こり得なかったことだ。本当の真言を聞き入れることが出来るとは。裕福な者だけでなく、貧しい人、病を持った者、そしてこの街に住まぬ者皆平等に愛して下さるとは。女神様直々に、我々に慈愛の心を持って、啓示を現し示しなさるとは。

 

 

 これは革命であり、我々に自信と確信と繁栄をもたらすものである。そして運命である。遥か昔から定められた、運命である。

 

 これは奇跡である。神よ。御方よ。我々はあなたに着いてゆく。命を燃やし、魂を溶かし、あなたに全てを捧げる。

 だから、ただ、あなたは。あなたの世界をただ、自由に生きてください。

 

                  女神教教皇  サリエーラ』

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

私は、歓声の中で手を振る。

手を振る人々、舞う紙吹雪。快晴の空のもと私は笑顔を作る。

 

 

貴族の人たちは平民の人たちよりも高台にいて、座っている。

けれど私に笑顔で手を振ってくれているし大丈夫かな。

それ以上に泣いてる人多すぎて困る。

そんな信仰されてんのか、女神教。

だから、これを言うのは辛い。

 

 

「こんにちは。

 まず最初に言いたい事があります。

 わかっている人も多いでしょうが、私はあなたたちが信仰している神そのものではありません」

 

 

起こるざわめきと困惑する人々。

そりゃそうだ、女神女神言ってたんだから。

私の隣にいる教皇さんも僅かに顔を強張らせている。

彼は私が違うことを知ってるんだけれど、まあ状況が状況だからな。

 

 

「私の今の存在はちょうど女神サリエル様と神獣の中間に位置しています。

 そのため、サリエル様は未だ解放されていません。

 けれどあなたたちの貢物と私の力で身体が削られる苦痛からは解放されました。彼女が解放される日も近いでしょう」

「とすると、あなたは神獣様ということでよろしいでしょうか」

「はい、その通りです。

 私はしがない獣ですが、力を蓄えることで女神様と近い事が出来るようになりました。いずれ女神を解放できるよう、尽力してまいります。そしてあなたたち皆も、今すぐに助けます」

 

 

ナイス教皇。

もう神獣って言っちゃった方が楽だもんね。

最初は女神様のつもりでやろうとしたけど。

 

 

ただ人々は戸惑っている。

女神様ではないものが女神様と偽ったこと、けれど助けると言っていること。

この狭間にはさまれて、困惑している。

だから私は押し通す。

 

 

「私は、ケレン領に現れた一匹の蜘蛛でした。

 たくさんの人に支えられ成長してきました。

 ですので、今回は。

 今回は、この国そのものを支えさせてください。

 

 

 誰一人、見捨てません。

 誰一人、諦めさせません。

 夢のような世界を作ります。

 みんなが好きなものをお腹いっぱい食べれる世界を、今ここで」

 

 

いつの間にかマイクを持って身振り手振り語りかける私に、どよめきを隠さない人々。

まあここでは流石に歌わないけどね。

1週間前はアリエルの心を動かすために歌ったけど、その時は外道魔法の起点になる蜘蛛たちがいっぱいいた。

だけど流石に今回は蜘蛛より人間たちの方が圧倒的に多いから洗脳で夢を見せることはできない。

 

 

 

だから、私は現実を夢にする。

夢を実現する。

 

 

「まずは、この街から病を消し去ります。

 『神聖魔法・夢の命』」

 

 

私が屈んで下へ手をかざすと、広場全体の地面が光を放ち始める。

一部の人たちはびびってるけどもう遅い。

実績で殴ってやる。

 

 

次の瞬間、巨大なエネルギーと共に広場全体から眩い光が天に昇った。

街の外にいる人から見れば神の降臨かとでも思うだろう。

でも、本当に降臨している。

この私が。

そしてそれは実績として現れる。

 

 

 

「え、足……!

 足が、足が……。

 右足が生えている……!

 どういうことだ!?」

「熱、治ったかも」

「え……!?」

 

 

ざわざわという声が大きくなっていく。

足を失っていた貴族も、たまたま風邪でふらふらになっていた市民も、飢餓によって身体を壊した農民も。

皆が、変化に震え私を見上げる。

 

 

全ての人へ平等に寵愛を。

バカにならないMPが一発で吹っ飛ぶ。

気力も一瞬で吹っ飛ぶ。

でも、まだいける。

 

 

「皆さん両手で器を作ってください。

 今から、ひとりひとりに我が眷族を送ります。

 人を確実に助けるために生まれた蜘蛛たちです。

 どうぞ受け取って下さい」

 

 

やばい。

ふらって一瞬なった。

MP切れだ。

 

 

『電脳、ゼルギズのエネルギーもMPに変換しろ!

 瞬間的に使うMPが多すぎる!』

『あー、わかってる。

 もう魔力のコックは開いたから数秒耐えろ。

 とにかくぶっ倒れるな!』

 

 

やっばい。

酸欠みたいになってる。

頭が痛いし、意識が飛ぶ。

いや、これ、やば……い。

 

 

「大丈夫ですか?」

「や、やばいかも。

 いや、大丈夫」

 

 

あぶな。

教皇さんが声をかけてくれなければこのまま完全に意識を失ってぶっ倒れていた。

今この瞬間かろうじて意識が戻ったし、なんか楽になったかもしれない。

エネルギーがまた供給されてきているのかな。

 

 

 

街の人たちの手には次々に蜘蛛が召喚させられていく。

私の体内から20万匹を召喚しなければ。

粘れ、私。

みんなに蜘蛛が行き渡るまで。

 

 

血は通っているはずなのに、体からどんどん抜けていくのを感じる。

冷たくなっていく。

まじでどうなってる私の身体。

 

 

『--ろ。血液酸欠に栄養不足、--にエネルギーをきょーーしてる。

 ぶっ倒れそうになるのも当然だ。

 もーーーない、無事ーーだ』

 

 

いややばい。

今まではこんな感じにプツプツと念話が阻害されることなかったのに。

こんなやばい現象起きるのか。

 

 

『終わりだ』

『え、あ、終わったの?』

『あー、よく耐えた。

 だがテメー、今まで体感してきた数倍は無理してる。

 なんなら腕数本失った時よりもな。

 さっさと休まなきゃ死に至るぞ。

 一応言っておくが冗談でもなんでもねぇ』

『待って。あと何分ここにいていい?』

『3分。それ以上は強制転移だ』

『わかった』

 

 

 

「その蜘蛛は、あなたのための蜘蛛。

 そしてみんなの幸せのための蜘蛛。

 みんながお腹いっぱいになれるための蜘蛛。

 

 だから、誰かが誰かを傷つけることはもうやめて。

 これ以上は私が許さない」

 

 

 

魔王覇気。

普段なら倒れる人もいると思うけど彼らにとってはあいにく回復されたばっかりで余裕綽々だ。

だからみんな意識を保つ。

いや、意識を保たざるを得なくて、苦痛に蝕まれる。

 

 

 

「というわけです。

 今のはあくまで冗談、かつお願いですから、守っていただけると嬉しいです。

 この蜘蛛の使い方については教皇さんに聞いてください。

 今日は、ありがとうございました」

 

 

 

プロテクトエレテクトたちに市民への治癒魔法をかけてもらいながら、私はその間にいそいそと城の中へ戻る。

そして扉が閉まり切ってから即転移。

白の体の上に飛び乗って、すぐに寝転がった。

 

 

「どうだったの?」

「いや地獄。

 エネルギー消費がやばかった。

 だから今日は寝させて」

「オッケー」

 

 

規則的に揺れる、白の蜘蛛の体の背中で私は眠りに落ちていく。

この先がどうなるかはわからない。

 

 

 

けれど、もう起爆剤は投げ込んだ。






無理を叶える力技。



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閑話 世界を揺るがす者


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女神降臨の次の日、彼らは何を思う。






「ついにサリエーラ国首都に女神が出現したか」

「はい、今現在記録された映像がデータとして世界中に配布されています。

 この蜘蛛で」

「は、蜘蛛で、か?」

 

 

秘書が持つ黄色い蜘蛛を見て私は一瞬思考を止めた。

これは少し、世界がとんでもないことになっている。

想定を遥かに凌駕してきたか。

 

 

「少しだけ考えたい事がある。

 その蜘蛛を置いて一人にさせてくれないか」

「は!」

 

 

彼女がギイと扉を閉めたと同時に、私は頭を抱える。

何があった。

どうしてこうなった。

アリエル、君は今なにをしているんだ。

 

 

なぜ君はそいつにこんなに勢力を拡大させた?

4000年動かなかった君が、なぜ全てを砕くことを許した。

 

 

黄色い蜘蛛は今もこの街に大量に発生している。

どうやら、怪我に湧くウジやゴキブリを集中的に食べるために好かれているということだ。

私は見つけたら然るべき処理をしているが。

だが世間では便利な生き物として馬と同等に扱われることすらある。

『蜘蛛は黄色に限る』

そんな言葉すら流行ってしまった。

 

 

 

そんなことをしていると思ったらいつの間にか女神の復活などという。

聞いた話によるとケレン領の女神が世界を変えるのだとか。

とんでもない眉唾物だ。

 

 

私はそう思っているが、民衆は止まらない。

なんせ相手はケレン領を半年で人口5倍近くまで引き上げ、サリエーラ国内で最も裕福にした化け物だ。

大抵が人口流入による増加だが最も豊かであることに変わり無い。

ああ、嫌な話だが勝てる気がしない。

不快だ。

 

 

そもそも蜘蛛であったのだからアリエルの眷族ではないのか?

彼女は元々自分よりも弱い存在に屈しない。

それでありながらケレン事件の際には女神のもとで働いている。

長く付き合っていればいるほど、その心境の変化を理解出来ない。

 

 

アリエルよりも女神が強い可能性はあるか?

無いと信じたいが、それにしては関係性がおかし過ぎる。

人が嫌いでたまらない彼女が避難民の救助を行っていたのだぞ?

ありえない話だ。

 

 

クソ。

そんなことは今はいい。

考えなければいけないことはたくさんあるが、優先順位がある。

今この瞬間考えなければいけないことは女神そのものではなく、真言教についてだ。

このままでは真言教の女神教へ対する優位性が一瞬でひっくり返ってしまう。

今の一瞬の幸せにかまければ即世界が終わる。

そのために動かなければ。

 

 

『すまない、入ってきてくれ。

 今の街の状況について教えてくれないか』

『わかりました。失礼します』

 

 

ガチャリというドアの音とともに入ってくる秘書。

この子はまだ真言教の本当の存在理由については知らない。

だから、正直に聞いていく。

 

 

「まず、今現在の街の状況についてだ。

 女神が降臨はしたがすでに女神教についての映像の拡散は禁止していた。

 だから市民が昨日の女神降臨に関する情報を詳しく知ることはないだろうが、それに対する不満はあるだろうか」

「僭越ながら申し上げますが、今現在市民の不満は膨れ上がっているようで政府の管轄外では女神教を信じる者も出始めたようです。

 今までは女神教を同調圧力で禁止していた部分もありますが、これからは難しくなるでしょう」

「だろうな。残念ながら想定通りだ。

 いかんせん女神教を否定する材料が圧倒的に不足している。

 なんなら、私の信じている真言教の方が馬鹿馬鹿しい」

「そんなことは……!」

 

 

ああ、断じてない。

システムにスキルを返却して救うなどという女神教の教えは決してあってはいけないものだ。

我々は、自らの力で輪廻の歯車を回してMAエネルギーを増幅させなければいけないのだから。

短絡的なその手法では今の惑星破滅を防ぐのは不可能。

だから馬鹿げているのは女神教であり、こちらは正攻法。

だが、世界の真実を知らない限りはあちらの富に叩き潰される。

本当に厄介な相手だ。

 

 

「ですが、ケレン領の女神は本当の女神ではないようです」

「は?なぜだ。

 どうしてそうなった」

「街の人々が話しておりました。

 映像は禁止していても、人々の口伝えは封じ込め切れませんでした。

 申し訳ございません」

「いやいい」

 

 

よくない。

私のわずかな希望がまた一つ潰された。

なんと女神でないことをあちらから情報開示してくるか。

まずい、アリエルとは考える作戦の練度が違う。

 

 

というのも今もサリエルはエルロー大迷宮の最下層に封印されているからケレン領の女神は完全なる偽物だ。

痛覚耐性を昨日レベルアップさせたからそれは確実。

だから、これを私だけが持っている情報だと思っていたしここから女神教を攻めるという手段もあった。

だがその情報はすでに開示されていてその上で信用を保っているときた。

女神バレによる信頼下落を先に潰してきたか。

 

 

しかもこの情報は今まで流されていなかったはず。

となるとこの子が聞いてきた情報は昨日の女神降臨のものそのままだ。

女神違いの話がただの噂である可能性もあるが、こんな罰当たりな噂が根拠もなしに展開されているのは違和感がある。

やはり昨日開示されてそれが一日で伝わったという可能性の方が濃厚だな。

 

 

「君は女神教のことをどう思っている?

 正直な思いでいい。

 今の君の仕事を脅かすことは決してないし、食い扶持を奪おうなんてことは全く考えていない。

 だから教えてくれ」

「正直に、ですか。

 すみません、述べさせていただきます。

 私は女神教も真言教も正しい宗教であるんだと思っています。

 いや、思っていました」

 

「ですが、ここ1年における女神教の躍進を見て、私はわからなくなりました。

 宗教を新しく裏打ちする存在が現れその神によって事実国は発展しまった。

 女神教に矛盾点があっても、現実がそれを塗りつぶしてしまっている。

 正直、私は何を信じればいいのかわかりません。

 真言教は自衛を促しますが、経済発展を果たしていない。

 女神教は発展を促しますが、自己防衛を許していない。

 

 ですので、今は真言教を信じていますが、私はわかりません。

 ですが真言教を信じていたいです」

「そうか、ありがとう」

 

 

さて、どうするか。

この子は孤児で、私の庇護のもと育ててきた子だ。

だから今のは正直な感想であるはずだろうし、最も真言教を信じてきた種類の人間だ。

その子でさえ女神教と真言教の狭間で迷っている。

 

 

 

 

下手したら、あと数ヶ月でこの宗教は終わりを迎えるかもしれない。

命に変えても阻止してやるが。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「今現在はどうなってる。

 言ってみろ」

「世界は完全に修復されています。

 MAエネルギーの代用となる物質が循環しているようです。

 星のひび割れなどももうありません」

「そうか」

 

 

これはとんでもないことが起きている。

4000年かけて修復しなかったものがたった一年で完全回復した。

アリエルのもとのイレギュラーが極めて狂った存在になっている。

だいぶ尖ったものだ。

 

 

 

ケレン領の女神。

一般にはそう謳われるエネルギーの怪物。

生まれて1年しか経たないのにアリエルに勝利可能な化け物だ。

 

 

実際アリエルに勝てるかと言えば、実戦を見ていないのでなんとも言えない。

だが、まあ勝てるはずだ。

現にアリエルはあれに従って行動をしているから上位関係でも植え付けられたのだろう。

私に抵抗してきた時も速度の限界を突破していたし。

 

 

だがこれは同時にチャンスでもある。

なんたってあれはエネルギーの塊だ。

おそらくあれは神1体分のエネルギーに匹敵する。

うまく抑えればこちらのもので、すぐにでも私は神になれる。

 

 

エネルギーをどう吸収するかは後で考えるとしてまずはどう回収するか。

先日食われたことも考えるとあいにくあれもこちらを餌だと思っているようで、下手をすると私もただの餌になりかねない。

しかも不定形生物を捕獲するというように考えなきゃいけないだろうし、ロボを作るにしても時間が必要だ。

となると、あれの成長速度についていけない。

嫌なイタチごっこを展開してくれる。

 

 

 

まあそんなもの構わない。

4000年間で、私にとって最も大きいチャンス。

これは必ず私のものにする。

 

 

たとえ世界が破滅しようとも、野望のために消費してやる。





揺れる宗教、揺れる欲望。
やはりエルフは悪。


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113 妥協はしない


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「おーおー、荒れてる荒れてる。

 サリエーラ国だけでなくまさか真言教本山である聖アレイウス教国まで揺らせるとは。

 女神教様様だね」

 

女神降臨祭の次の日、私たちは最寄りの街に向かって歩いている。

私自身は白の上に腰掛けながら新聞とかを見てるだけで一歩も歩いてないけど。

 

「そりゃそうだ。

 人族にとっては今までの4000年のうちいちばんすんごい大革命だからね。

 彼らの生活水準だってメキメキと上がってる。

 正直、君が味方で良かったよ」

 

肩をすくめながら呆れ顔で歩くアリエル。

でも確かに中世の世界観とはかけ離れた手段で革命をやっていこうとしている。

大量生産とか中世でやることじゃないだろうし。

 

 

「でもいちばんとっておきは昨晩サリエーラ国に叩きつけた通達。

 ダスティンの反応が楽しみだ」

「どんな通達?わたし嫌な予感」

「スキル大量獲得からの自己防衛をオーケーにしろっていう通達」

「「うっわ」」

 

 

女神教最大の欠点、スキルによる自己防衛禁止をここで撤廃する。

申し訳ないけど真言教は完全に潰してしまいたい。

だけど今までありがとう。

この宗教がなければこの星は4000年絶対に持たなかった。

 

 

「青、とんでもない禁止カードを切っちゃったけど、それ平気?

 これからの世界情勢が崩壊するよ?」

「へーきへーき、私が手を下さなくても崩壊する予定だったし。

 もうとっくに女神教と真言教の優位性は逆転してんだから。

 でも、政教分離されてないからどうなるかだな……」

 

 

蜘蛛が行き渡り始めているし、食糧不足とか魔物から人間を守ることは容易だ。

だけど真言教がシステムとして組み込まれている国は多くある。

内乱は私どっちに味方すればいいんだ?

いやできんよな。

女神である以上どんな人間であれ殺すことはできない。

私が関与すると正義は悪を潰していいんだぜっていう風潮が拡大しちゃいそうだし。

本当なら穏便に済ませたい。

 

 

「あと数年は血で血を洗う戦争が起きると思うよ。

 私には関係ないけど。

 あと明日には街に着くと思うけどどうする?

 青は布教活動するの?」

「え、明日着くの?」

「着くけど」

 

 

着くけど、か。

ソフィアも私が色々やってる間に少し話せるようになったんだな……。

感慨深い。

でも業務は基本あっちでやってるしこっちでは旅行したい。

あくまで仕事は仕事よ。

 

 

「布教するつもりはないかな。

 してもいいんだけど、真言教の街だしグダグダしそう。

 ならまた今度ゆっくり浸透させていけばいいし個人的にホテルとか泊まって見たいしね」

「「人の心とかないんか」」

 

 

え、ネットミーム白とアリエルで被った。

おい白の体担当アリエルになんてこと吹き込んでるんだ。

当たり前のように出てきた白はともかく。

あとなんでホテル泊まったらいけない感じ?

 

 

「わたしどこ泊まるよ」

 

 

確かに。

白、泊まる場所がない。

私たちがホテルとかに泊まったとして白に残される場所は街の近くの森の中だ。

無虚空間に入れれば街の中は移動できるけど結果的に体の大きさ的にホテルに入らない。

いかんせん身長3m幅3mあるんだもん。

あーあ、蜘蛛の部分無ければ入るんだけど。

 

 

「うーん、やっぱり森の中いてくれない?

 私たちはホテル泊まるからさ。

 大丈夫、プロテクトたちとかパペットもおいていくから寂しい気持ちにはさせないよ」

「白ちゃんはそれでいいの?」

「別に平気」

 

 

いーや、本当に平気か?

でも平気な顔はしてる。

私も本当なら白街の中まで連れて行ってあげたいんだけどいかんせん体の大きさがね。

 

 

じゃあ街にわざわざ行かなくていいんじゃねという考えもあるだろう。

残念ながらそれは無理だ。

というのも、食材が全く足りん!!

 

 

メラゾフィスも血を飲まなきゃいけないからそれの補給が必要。

ソフィアはまだ幼いからかもしれないからいらないけど結局もらいにいかなきゃなぁ……。

あと調味料。

蜘蛛とかも食べられるから食糧には困らないけど塩胡椒がない。

QOLを維持するためにもそういう食べ物を補給しなければ。

 

 

『あー白連れていきゃいいんじゃねぇの?

 だってテメー、一目見ただけで女神って分かるじゃねえか。

 女神と一緒にアラクネがいることはもうとっくに確認されてんだからもう女神として開きなおろうぜ』

『でも仕事したくないんだけど』

『めっちゃ弱く覇気でも放ち続けてればいいんじゃねえかな。

 それかテメーが酒屋でチャランポランになって威厳を完全に無くすか。

 ま、確かに白連れてかねーのも一つの手だな。

 単純にモンスターだからビビられるだろうし、そんな女神とか女神じゃないとかそれ以前の騒ぎになる気がするわ』

 

 

うん、私もそんな気がする。

街中にモンスター連れてくるのはどう考えても駄目だ。

白には申し訳ないけど本当に大惨事が起きかねない。

本人がいいって言ってんだし素直に安全策を取ろう。

 

 

「街の中に入ったらソフィアのことメラゾフィスに見てもらっていい?

 私色々見ておきたいし、市場とかで揉まれる体力はまだないと思う」

「わかりました。お嬢様もよろしいですか?」

「全然平気よ。メラゾフィス、おねがいね」

「わかりました」

 

 

よーし、ソフィアをメラゾフィスに押し付けることにも成功。

これで私は自由。

街の中を自由に散策出来そうだ。

 

 

待ってろ街中ライフ!





真言教、敵認定。


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114 知らぬが仏の観光旅


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金持ちの豪遊。



いやぁ。

無事。

無事街には到着した。

けれどまあ、どうしたものか。

 

 

 

私、まだ関所にいるんだけど。

てかまだ関所までしか進んでないんだけど。

なんで雰囲気が壊滅的なの?

 

 

『あー、そうなるかー。

 まあそりゃそうだな。

 この街、真言教信仰してるから金の価値が暴落してやがる。

 アレイウス通貨っつー金は知ってるか?』

『なんとなく、ね。

 ケレン領にいた時から見たことがある。

 あっちではサリエーラ通貨を使ってたから珍しいものだったけど』

『女神教信仰の方が少ないこともあって、元来サリエーラ通貨の方がレアな通貨だ。

 そんな時に起きた女神教の再興。

 サリエーラ通貨が高騰してアレイウス通貨が暴落しやがった。

 クッソ、考えりゃ小学生でもわかる』

 

 

無虚空間の中で悔しがる電脳。

最近はソフィアとの口喧嘩に勝って中に入れる機会が増えたみたい。

あと小学生でもわかるはアリエルすらわかってなかったんだからやめてくれ。

あ、血で血を洗う争いが起きるって言ってたしわかってたのかもしれん。

それただ私がバカってことじゃん。

私も悔しくなってきた。

 

 

『一応言っておくけど、女神ってバレたらやばいよ?

 少なくともサービス業の人たちにフルボッコにされると思う。

 ちゃんとフードで顔隠してね』

『うん。

 こりゃバレたらやばそうだ』

 

 

ちなみに白は街の外で待機している。

プロテクトエレテクトは3体置いてきたし、パペットタラテクトも2体いる。

パペットタラテクトを見てなんか考え込んでいたし、私みたいになにかしら企みがあるんじゃないかな?

少なくとも数日は暇つぶしできそうってことでそのまま置いてきた。

後悔はしていない。

 

 

「では、子供1人大人3人。

 気になるところはあるが規則を破ってはいない。

 通れ」

 

 

よーし、関所突破!

蜘蛛だった時は止めたれたのに、やはり人型は偉大……!!

こっからまずは宿に直行だぜ!

テンションあがってきた!

 

 

『じゃあみんな、女神教ってバレたら命が危ないよ!

 でもホテルには泊まりたいし白にお土産も買って行きたい!

 てなわけで、命懸けの観光旅スタートだ!』

『『おーー!!』』

『とはならないわよね……』

 

 

ソフィア、うるさい。

メラゾフィスを見ろ、諦めて静かになってるでしょうが。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

うーむ。

うーん?

全く女神って気づかれないな?

どして?

身長20cmくらいは式典の時変えてだけどそんなにバレないもん?

 

 

『今のテメーはアリエルにも劣らねー身長のちんちくりんだ。

 そんな奴が女神なんて思うやつはいねーようだ』

『私のことちんちくりんって言った?』

『いや言ってねーよ。

 テメーは身体は幼いが頭がしっかりしてやがる。

 頭までお花畑のコイツとはちげーよ』

『……』

 

 

急にアリエルが勝手に話に介入してきてなぜか私が馬鹿にされた。

ひどくない?

確かに私は頭お花畑だけど人助けようとしてんじゃん。

色々考えてるしちゃんと結果も出してるよ。

 

 

『なんか私を産んだ人探されてんだけど……。

 アリエルさんはともかく青は無理あるでしょ』

『こちらでは15歳で子供を産む方もおりますしそこまで珍しい話ではありません。

 あとこの世界では成人でも身長の低い方がたくさんいます。

 そのため、お嬢様の前世の常識はわかりませんが青様でも問題なく子供は産めると思われているのかと』

『……』

 

 

コイツ、メラゾフィスに抱かれてるくせに好き勝手話してんなー。

ちなみに私かアリエルが性行為する対象と見做されてるの、メラゾフィスお前だぞ。

今お化けみたいに真っ白なアンタと誰がしたいって言うのよ。

いや人間的には120%完璧ないい人だから複雑だけど、明らかに産まれる子は白い髪にならないわ。

そもそもロリコンみたいに思われてることになんか思いなさい。

 

 

うん、今まで歩いてきて思ったけど私やアリエルが美人といわれても女神ってバレないし全然問題はない。

やっぱり白連れてこなくてよかった。

言いたくはないけど化け物だし、今も子供3人の変な集団なのにこれ以上話題になったらたまったもんじゃない。

なんなら関所通る時に男女比で不審がられてた。

なんだよ、男子の1000倍筋力ある女がいてもいいでしょうが。

 

 

あといつもの身長にしていたのも正しい判断。

関所のためとかいって下手に20cm上げといたら変な輩に襲われていた気がする。

女神教的にも性的にも、色んな意味で。

それだけ今私たちは注目を集めてる。

特に私、流石の美貌だ。

自分でも惚れ惚れしちゃうね。

 

 

『おーい、ちんちくりん。

 多分白がテメーみたいに人化出来てたら同じくらいはモテると思うぞー!

 奢り高ぶんなー』

 

 

うっさい。

若葉姫色はもともとDなんだから美しくないわけないじゃんか。

なんならアイツのせいでクラスの男子の女子に対する基準が狂って恋愛減ってんだよ。

私はどっちにしろ彼女出来なかったと思うけど。

 

 

というか元男なのにそんなやべー奴と同じレベルに達してる私の方がすごい。

もっと私を褒めろ。

 

 

『……』

 

 

よし黙らせたから私の勝ち。

なんで負けたか、明日まで考えといてください。 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

「宿屋ってどこにある?

 教えてくれると嬉しいな」

「二つ目の十字路を右に。

 そのまま進めば突き当たりに宿屋があるはず、です」

「そう、ありがとう。

 感謝するよ」

 

 

フードから少しだけ顔を出して、ニコリと笑う。

そして手を軽く振って歩いていく。

おお、冒険者の人、話しかけられたことで喜んでるのが少し聞こえる。

よかったじゃん。

 

 

 

「青、流石に会計は私がするよ。

 いつも頼ってばっかりじゃ申し訳ないしね」

 

 

宿屋に着くと、アリエルはそう言って先陣きって歩いて行った。

その後をいそいそと着いていく私たち。

けれど私たちが宿屋の中に入った時には会計が終わっていて、しかもロビー全体が騒然としていた。

 

 

「さっさと行くよ。

 下手にロビーで過ごすのは百害あって一利なしだ」

 

 

そう言われて私たちはロビーにあった螺旋階段を急いで登る。

その間にアリエルから話を聞いていると、どうやら一番価値が高い金貨で払ったみたい。

さすが王様お金持ちだ。

しかも深入りしないこととか、部屋の中で色々済ませてくれとか、そういうことも一緒に頼んでくれた。

さすが4000年生きてるだけあって上手くやってる。

私だと細かく説明するのに手間取っただろうしね。

 

 

『青、アリエルさんっていくらお金持ってるの?』

『まー、一度に自由に動かせる金は数千億億円くらいじゃね。

 それ以上も頑張ればいけると思うが、独断じゃなく会議は必要になるだろうな。

 独裁国家なんてそんなもんだ』

『……』

 

 

 

ソフィアもそりゃ困惑するよね。

日本とは根本的に制度が違うから黙り込むのもわかるわ。

 

 

私も同じくらいのお金なら動かせるけど、もっと慎重に使いたい。





電脳は、女神教の関係で働く時にさりげなくソフィアから逃げています(たまに失敗する)。




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115 ちゃんと周りを見ようね


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「はぁー。

 流石の私でもストレスが溜まる。

 この私がだよ?

 やっぱり、素情を知られてない街にはあんまり来たくない」

「青がそこまで言うだなんて珍しいね。

 私はそこまで敏感じゃないけど、そんなやばい感じ?」

「うん、やばい。

 正直白がこの視線に晒されたら大虐殺すると思う。

 あと電脳が呆れて一言も発しない」

 

 

ソフィアとメラゾフィスを宿屋において、私たちは出店で買い物をしている。

買うのは主に高級品の干物や調味料。

私は別に高いもの買う必要ないと思ったんだけど、アリエルがお金があるからとすごい言うからそれに甘えてあえて高いものを選んでいく。

 

 

なんかやだなぁ。

買い物で市場に入っているということもあって、大通りよりも全然人の密度が多い。

となると当然私のことを邪な目で見るやつもたくさんいるわけで。

 

 

しかも私、真っ白なワンピース(フード付き)とかいうめちゃくちゃ露出度が高い服を着ている。

この世界だとギリギリ娼婦判定されない服だと正直思う。

かと言って寒くもないのに無駄に服着たくないっていう考えがあるから結局このまま歩いてる。

そりゃ卑猥な目で見られるわな。

 

 

「まあねー。

 正直不思議に思われてんじゃないかな?

 こんな純白のワンピースを着た美少女が普通の街を闊歩してるんだから。

 いくらフードで顔とか頭を隠してるとは言っても、浮いてるよ」

「そうだよね。

 今までは浮いてることに意味があったからなぁ。

 女神って隠す必要もなかったし、なんならわざと存在感を放ってた」

 

 

アリエルに擦り寄って、そこから腕を絡めていかにも一緒に買い物に来ました感をアピール。

これで注目を2人に分散させる。

正直私はアリエルよりも美少女だからあんまり変わらないかもだけど、邪な感情や視線が少しでも分散してくれたらだいぶ気分的に楽になるはずだ。

というか邪な感情を感じ取りまくって電脳がキレてる。

しょうがないね、電脳は私を助けるために動いてくれてんだから。

 

 

「アリエル、人の血って流石に売ってないよね。

 メラゾフィスの分どこで買って行こうか」

「うーん。

 しばらく街に寄らないとなると少なくとも人族3人分の血が欲しいなぁ。

 私はうまく人から血液抽出出来ないし」

 

 

おーおー、当たり前のように人殺しオーケー発言が出てきた。

電脳に聞いても今の電脳だと人殺ししようとしか言わなそうだしなぁ。

メラゾフィスにはいつか自力で吸血して欲しいけどまだ騒ぎになっちゃいそうな強さだからまださせるわけにはいかない。

 

 

いっそのこと今からサリエーラ国まで飛んで献血依頼するか?

あっちなら絶対に血を集められる。

ただ、あんまり頼りたくはない。

私も自立したいからね。

 

 

「やるとしてもアリエルにやってほしい。

 申し訳ないけど、今まで必死に守り抜いてきた殺人未経験を放棄したくなくて。

 殺した後の血抜きはやるからさ」

「青ももう殺人前提なのね……。

 わかった、ここには4日くらい滞在するしその間に3人くらい趣味悪いやつを処理しておくよ。

 そうすれば彼の血が足りなくなることもないはず」

「うん、それでお願い」

 

 

よし、加工品はある程度買った。

あとは調味料だ。

 

 

やべー、視線やべー。

ただのワンピース着てるだけでこんな見てくるとか、これもはや視姦だろ。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

『あー、ソフィア。

 テメー何してる。

 ちゃんとスキル育ててるか?』

『やってるわよ。

 というかアンタ青との買い物は?

 頭の中にずっといるって言っても、あっちの手伝いすればいいのに』

 

 

私が青がくれた蜘蛛からHPを吸われていたら、念話で電脳が話しかけてきた。

ちなみに私が当たり前のように蜘蛛をおでこにくっつけられていたのはHP吸収でHPを奪われるため。

というのもHPを吸われていればHP自動回復が勝手に育っていくらしい。

迷宮にいる時からやってたらしいけど、よく思いついたものだ。

 

 

『いやー、買い物は順調に進んでる。

 ただアイツめちゃくちゃ雑な服で歩いてるから色んな目で見られてんだよ。

 男からは視姦されてるし、女からは軽蔑や嫉妬の目で見られてる。

 正直耐えられねーから帰ってきたわ』

 

 

それはそうね。

青、自分のやりたいように推し進めるのは得意だと思うんだけど周りの気持ちを全然考えない。

だから好奇な目を向けられたり軽蔑されたりするのよ。

やっぱり、彼女根本的なとこ全然解決してない。

 

 

『あとテメーには朗報だ。

 白と合流するまで飯に毒は入れねー。

 喜んで食え』

『え、本当!?』

『ああ、テメーまで嫌な顔されるとうぜぇからな』

 

 

いや、私は嬉しいけどさ……。

電脳本気でキレてるじゃん。

これ、青が帰ってきたら修羅場にならない?

 

 

『と思ったので、先にご飯作って持ってきまーす!

 電脳結構酔うらしいから酒飲ませて忘れさせるよ!

 てなわけで引きずり出すのよろしく!』

 

 

あ、アリエルさん?

念話盗み聞きしてたの?

みんな、意思疎通が高度すぎない?

 

 

と、とにかく。

今は修羅場回避のために電脳を無虚空間から引きずり出さないと。

無虚空間の出口は転移できる場所で設定されているからここにも引きずり出せるはず。

青の尻拭い、頑張ろう。





あまり展開が進まずすみません。
夕食シーンまで書くと長くなると思いました。後悔はないです。


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血3 思ったよりも冷静な人、思ったよりも過激な……


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思ったよりも過激な人。



『ねぇ、電脳はご飯食べないの?』

『あんま食べる理由はねぇな。

 良くも悪くもこの街に来たことで人間の様々な側面について知ることが出来た。

 だからそれについて調べてぇ』

『食べたらいいのに……。

 高級品、なんだかんだ言ってほとんど食べたことないでしょ?』

 

 

念話で電脳に話しかける。

正直どのくらいお酒に弱いんだろうか。

でもアリエルさんが言ってるってことはそれなりに信憑性はある。

なにより、電脳の機嫌が悪いと私に課される特訓も予測が出来なくなるしうまく場をまとめたい。

私はアリエルさんから送られてきたメモみたいな情報を確認しながら言う。

 

 

『アリエルさんがせっかく高いもの買ってくれてるみたいなんだから、食べないと申し訳ないんじゃない?

 アリエルさんが食べて欲しいっていうので買ってくれたのに。

 あんたも食べた方が絶対喜ぶよ』

『そうか。

 確かにオレ様の機嫌がワリーこととアリエルが思いやってくれてんのは関係ねぇ。

 食わないと申し訳ないか』

『うん』

 

 

別にこれは電脳を説得させるとか関係なく、純粋に思う。

アリエルさんもあの見た目だけれどシステムができる前から生きてる人なのよね。

お婆ちゃんが孫に美味しいものを食べさせてあげようというのと似た思いで買ってくれているんじゃないかしら。

だから食べないのはかわいそうだ。

 

 

『あと、アンタも人の心を勉強したいなら無虚空間から出る頻度増やしなさいよ。

 前は私が引き摺り出してたけど最近女神教の仕事とか言って上手いこと引きこもってたでしょ。

 そんなことしてるから青が色目使われるだけでキレるのよ』

『チッ、痛いところを突きやがる。

 だかな、オレ様にも疲れっつーものはあるんだよ。

 体は疲れなくても精神的にーー』

『これは命令よ。

 今日は寝るまで外、私の隣に居なさい』

『わかった。

 しゃあねぇなあ』

 

 

ブゥンという音と共に無虚空間の扉が開いて、電脳が出てきた。

そして私が寝ているベッドに頬杖をついて私の頬をつついてくる。

 

 

つつかれてるのは気がくわないけど、下手に電脳が機嫌の悪いままよりはマシだわ。

このまま放っておけば電脳も寝てしまうだろうし私も寝てしまおう。

じゃあおやすみなさい。

 

 

疲れていた私は、すぐに眠りに落ちていく。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

「ほら、二人とも!

 ご飯だから起きなさい!

 アリエルが作ってくれたから!」

 

 

青の声に、私は目を開ける。

その隣で突っ伏していた電脳が目を覚まして起き上がる。

どうやら本当に私の隣で寝てたみたいね。

 

 

「あー、テメー戻ってきてたのか。

 詳しくは言わんがもっと周りの目を気にしろ。

 以上だ」

「でも地球ならこんな格好してる人いるじゃん。

 ただのフードついたワンピースだよ」

「いや、なぁ?

 まあテメーがそれでいいならとりまいいか。

 アリエル、運ぶのは流石にオレ様がやる。

 飯まで作ってもらっといて申し訳ない」

 

 

う、うーん?

これって大丈夫なのかしら。

電脳、妙に食い下がらなかったけど。

これ怒ってない?

 

 

『怒ってないみたい。

 コイツは研究者だから、無理なもんは無理だと諦めて別の案を見つけるのが上手いんだよ。

 とりあえず切り替えるまでの気持ちにさせてくれてありがとう』

『青、ちゃんと考えて。

 思いやってもらってんだからたまにはアンタが根負けしなさい』

『ごめん、それは無理。

 いずれわかると思う』

『は?』

 

 

「アリエル、今度電脳にも作り方教えて。

 私習ったけど習得できる自信がまるでない。

 てことで電脳オーケー?」

「もちろんだ。

 テメーの思考回路で料理出来るとはこっちも100億%思ってねぇ。

 つーわけでアリエル今度料理教えてくれー。

 こんなぱっと見でクソ美味そうな飯作れたらQOL爆上がりで寿命跳ね上がるわ」

「なんで2人とも私を無視して話進めてんのよ。

 いやまあ、そんな褒められて悪い気もしないから教えるけどさ。

 言っとくけど教えるの私だよ?」

「「知ってる!」」

「君たちのようなタチの悪いガキ共は嫌いだよ」

 

 

なに、この人たち。

なんでこんなにすぐに仲良くなってガチャガチャと料理運んでんのよ。

さっきまで喧嘩してたんだよね。

なんでこんなに仲良くなったの?

わけわからん。

 

 

『ねぇ、さっきまでのことはいいの?

 すんごい怒ってたじゃん』

『あー、さっきの服のことな。

 良くも悪くも1年近くアイツとは過ごしてんだ、よくよく考えたらオレ様が言ったところで改善するわきゃねぇ。

 ま、一言で言っちゃえば痛い目勝手に見ろっつーことだ。

 アイツの雑頭ならそれが一番ブッ刺さんだろ』

『あんたも……、あんなに青と仲良くしてるのにそんな痛い目だなんてさ。

 さっき怒ってた内容って、最悪の場合やばい犯罪に行くんだよ?

 その、昔の日本でも重罪だった……』

『ま、死なんだろ』

『へ?』

 

 

そりゃ死なないけどさ。

死なないからって何よ。

私が言った、その、最悪の場合って、犯されるってことなんじゃないの?

青のことをこんなに大事にしてて、恋人みたいにしてるあんたが、犯されていいなんて考えてるの?

わからない。

なんなの、こいつ。

 

 

『いやー、さっきまでは確かにテメーの言う通りだと思ってたんだけど、色々思い出に浸ったらそんなことどうでもへのカッパになってな。

 今は言っても無駄だと思うからちゃんとは言う気ねーが、生きてんだしいいだろ。

 この世界人はありんこみたいに死ぬんだし』

『……でも』

 

 

確かに死ぬさ。

なんなら、私のお母さんやお父さんも亡くなった。

そんなことあんたに言われなくても私はわかってる。

私も両親が死んでんだから。

 

 

『テメーにはまだ理解できねーと思うが。

 腕何本吹っ飛びやがった。

 足何本ちぎれやがった。

 体、何回再生しやがった?

 

 いずれわかるからとりま今は夢でも見てろ、クソガキ。

 ほら飯運びきったし食うぞ』

 

 

何よ。

気に食わない。

なに、死にかけでもしなきゃ人生言っちゃいけないの?

ムカつく。

 

 

 

 

 

 

あーあ。

そんな気分でご飯を食べたんだけど、アリエルさんのご飯は結局美味しい。

地球でも今までに食べたことがないくらい美味しくて、赤ちゃんなのに腕がとんでもなく動いてしまう。

体が小さいからそんなにたくさんは食べられないことが唯一の悔やみだ。

ほんと、ご飯は人間の命綱。

 

 

ご飯を食べ終わって、お腹がたまった私は早々にベッドに移動する。

疲れてる様子のメラゾフィスはひと足さきに寝てるし、私も青や電脳、アリエルさんの酒飲みトークについていける気がしない。

寝よう、色々あったこと全て忘れるために。

 

 

 

 

 

 

次の日の朝、私が目覚めると全身黒い鎧に包まれた男が縄で縛られていて、縄で縛られたアリエルさんと共に電脳から尋問を受けていた。

え、ナニコレ。

あと誰この人。






龍捕まえましたが、なにか?



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116 ひゃっほう!龍を捕まえたぜ!


高評価、感想お願いします。

(こんな機嫌は良くない)


違和感に気づいたのはお酒を飲んでみんなが寝静まった深夜のこと。

いつも通り私は1時間ほどサリエーラ国で会議をして、悠々と転移して寝るつもりだった。

だが、寝るようと体を横にした瞬間、空間にわずかな歪みを感じた。

 

 

今までもこんな経験は数回あった。

だけどその時は毎回ポティマスのドローンやらなんやらがあって、それが原因だと思っていた。

でも今回はそんなロボは見つからない。

何より、いくら夜だといっても街中にロボを放つようなバカな真似をやつがするとは考えにくい。

 

 

白の様子を万里眼で確認する。

白は普段通り繭にこもって寝ていた。

となると、こんな微弱な乱れってことはエレテクトたちになにか異常があるのか?

 

 

『賢姫発動。

 全エレテクトの情報開示を請求する』

 

 

うーん?

久しぶりに賢姫を使って蜘蛛たちを確認してみても、なにも変なことがない。

となると怪しいのはアリエルかソフィアだな。

アリエルはなにか悪いこと企んでるかもしれないし、ソフィアはなにかチップでも入れられてるかもしれない。

流石に確認しなければ。

 

 

『電脳。

 電波の発信源を探知』

『うん、アリエルから。

 えーとその先の電波は……、と。

 これわからん。

 この星の空間ではないところに発信されている。

 無虚空間とか、神のいる空間とかかもしんねー。

 とりあえずそういうたぐい』

『MA・ZI・KA。

 えーと、あり得るのは私が好き放題やりすぎてDが動き始めたとか?

 あとは……、サリエルの件でDと交渉してるとか?

 少なくともろくな理由が思いつかないんだけど』

『とか言うと思って今解析してる。

 えーと、どれどれ。

 

 

 この人間の街にも、意外とちゃんとした食料があった。

 それはそうだ。良くも悪くも人間だ、巧妙に生きようとはしてんだろう。

 私は知ったこっちゃないが。

 

 

 とな』

『よーし叩き起こそう!

 この口調、アリエルとギュリだ!

 ギュリには色々聞きたいこともあるし、先にコンタクト繋げといて悪いことはない!』

 

 

「おうら!」

 

 

寝ているアリエルの頭に向かって思いっきり手刀を喰らわせる。

ボゴンという音を立てる床と、めり込むアリエル。

危ない、電脳が咄嗟にバリアを張ってくれなきゃ床に穴が開くところだった。

 

 

「青、きゅ、急になにを……」

「ギュリを出して。

 私に説明なく話していたのはまだいい。

 だけど、狸寝入りされてるっていうのが結構不快。

 通話つながってんでしょ、かわるよ」

「ちょ……」

 

 

『あー。ギュリエディストディエス。

 テメーに話したいことあるんでこの宿に来い。

 なあに、悪いことは言わねー。

 いくつかお願いするだけだ。

 あと来なかったら場所逆探知するから来いよなー』

 

 

ブチっ。

念話を叩き切る。

さて、この不快な気持ちをどう抑えるか。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

「えっと、青ちゃん……?」

 

 

バキバキに割れた床とそれにめり込む布団。

その上で、アリエルが困惑しながら私のことを見る。

残念ながら、残念ながらだね。

ちょっとだけ、がっかりしちゃったなー。

 

 

「ごめんね魔王。

 私もちょっと落ち着いてなくてね。

 私って、そんな信頼されない存在だったりするのかなー?」

 

 

にこりと笑って、アリエルの顔を真正面から見定める。

でも彼女、不安そうにしながらも心は安定しているね。

私、ちょっとだけ気に食わないなー。

 

 

「いや、そういうわけじゃなくてね?

 もともと私とギュリエの今の連絡は青じゃなくて白ちゃんを警戒して始めたものであってね?

 いや、警戒っていうか、人をいっぱい殺したりするの、ギュリエ的にも私的にも良くないって思っているから……」

 

 

ふーん。

別にいいんだよ。

ただ、前世のこともあるし私の処遇について私の知らないところで話されるのはだいぶ不快でね。

だからって私が関与できない状態で私について話されるのももっと不快だけど。

 

 

「そう。

 まあいいんだけど、私もギュリには色々聞きたいことあったからなー。

 本当はもっと早く連絡先知りたかったんだよねー。

 あと狸寝入りはマジでうざい。

 起きてたでしょ」

 

 

私が言った途端、あからさまに目を背けるアリエル。

そうかそうか、狸寝入りはしていたのね。

手刀でぶん殴っといて良かったわ。

殴らなかったら今後悔してた。

 

 

「ただいまとう……」

 

 

時空の歪みを探知してコンマ数秒で繰り出された私の回し蹴りがギュリの頭にクリーンヒット!

同時に吹き飛ぶギュリ。

よし、今度は壁がベコってなったな!

修復費用もアリエルが払ってるし大丈夫でしょう!

 

 

「ア、アリエル。

 どうなってる。

 おい、青に何したんだ?

 まだあれよりは人のことを考える存在だと思うんだが。

 どうしてこんなにガチギレしている」

「私が隠れて連絡してたからね……。

 あとギュリに連絡取りたかったからみたい」

「つまり、連絡先を知っていたのに教えなかったからと?」

「そういうことだと……」

 

 

おーおー、好き勝手言いなさる。

というか怒った理由は、信用されてないかなーって思ったから。

それももう落ち着いたからいいけど。

 

 

「床に倒れてるギュリくん、一応最初に聞きたいんだけどさ、地球の座標ってわかるの?」

「あ、ああ。

 どこに何があるかなんてものはわからないが、座標はわかる。

 行ったこともないがDから聞いた」

「助かる。今教えて」

「は?」

 

 

お?

とりあえず無言の圧力をかけてみる。

うーん、抵抗してるな。

じゃあ今度はMAエネルギーを直接ぶつけて……、あ、すぐにバテた。

キャパオーバーだったか?

 

 

「教えるから一度落ち着け。

 全く、貴様はなんなんだ。

 今教える」

「ありがとう。

 いやアルセウス見てればどうせ私もやべー奴ってわかるでしょ。

 Dよりも格的にあいつ上なんじゃないの?」

「そんな正論を言われるとこちらも口を出せん」

 

 

よし、電脳の方に座標は渡った。

これで地球への転移が可能になる。

少し準備は必要だけど、転移自体は明日にでも出来るようになるんじゃないかな……。

 

 

「アリエル、明後日とか地球帰ってもいい?」

「「は?」」

 

 

ハモったね。

あんたら地味に仲良いんじゃない?

ま、伊達に長く生きてないんだろう。

 

 

「待て、貴様。

 そもそもお前は神ではない、いいな?

 それでいて他の星に転移するということは自殺行為だぞ?

 システムの補助なしで宇宙を踏破するなど……」

「アリエルくん、無理だと思う?」

 

 

「ごめん、正直今の青なら余裕な気がする……。

 だって青、魔法使ってるように見せてるけどほぼ魔術でしょ。

 使ってる素材とか技術は魔法由来だけど正直関係なさそう。

 補助輪なしで走れるけど補助輪使ってるみたいな感じ?」

「うん。

 というか空間の歪みを察知してギュリが反応する前に蹴り飛ばすなんてこと魔法じゃ絶対できないし。

 それはギュリが一番わかってるでしょ」

 

 

ギュリエディストディエスは、私をじっと見つめてため息をついた。

どうやら彼もわかっていたらしい。

諦めた口調で、ただひとつ、彼は言う。

 

 

「どう言っても地球には行くつもりなんだな」

「もちろん。

 私の夢、そして君たちの夢のためにも必要だ。

 そして過去の私のためにも。

 だから絶対止まる気はない」

『オレ様と青の二重人格とか、全部地球から巡り巡ってここまで来てんだよ。

 過去を見つめないとすぐに限界が来るわ。

 つーわけで地球には行く』

 

 

「ま、でも今日は朝まで縛られててね!

 反省してほしいし!」

「「あ!?」」

 

 

先にギュリを縛って、その隙に逃げようとしたアリエルを捕まえてまた糸で縛る。

しょうがないじゃんこんな有益なこと隠してたんだから。

これくらいさせてよ。






全ての発生源へ、羽ばたけ私。
夢を知って終わらせろ。


最初にキレた時、アリエルとギュリの念話をハッキングして通話を奪っているので実はすごいことをしている。


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117 何故


高評価、感想お願いします。
今回は主人公の内面が出ているので少し重い話です。


「えっと、そこにいる黒い鎧の人は?」

 

 

後ろから聞こえるソフィアの声。

お、赤ちゃんである彼女が起きたってことはもう朝だ。

となるとギュリとアリエルは解放してあげるべきか。

 

 

「じゃ、朝までありがとう!

 いろいろ聞けたし、もう帰っていいよ」

 

 

ギュリを縛っていた糸をスルスルと剥がす。

いやー、本当に色々聞けた。

昔一緒にお酒を飲んだ時には聞けなかったこともたくさん。

正直これからの予定を立てる上でめちゃくちゃ役に立つ。

 

 

「たく……。

 貴様は、あれとは違って狡猾に世界を崩していくのだろうな。

 貴様の夢、目的は私の夢そのものでもあるし許すがあまり馬鹿げた行為はやめてほしい。

 我々は貴様が思っているより脆い存在なんだ」

「そうかもしれないね。

 けれど、私がこれから相手取るやつ相手にそれは通じない。

 君たちが天地をひっくり返しても勝てないのなら、天地をひっくり返したら勝てるかもしれない私が天地をひっくり返すしかない。

 最悪の最悪、そんな天地がひっくり返るようなことが起きたら、サリエルに守ってもらって」

「彼女は私が守る。

 あと、貴様には祈ることしかせんぞ」

「うん、多分足手纏いだからそれでおけ」

 

 

そんなことを話していたらブゥンと音を立ててギュリが帰っていった。

うーん、最後怒らせたか?

正直な話、私の成長も踏まえたら多分足手纏いになる。

だからと言って、私の手の届かないところでは働いてもらうつもりではあるけど。

 

 

『てか電脳、もう無虚空間じゃないところでしゃべったけど大丈夫だよね。

 Dには全部聞こえてるけど』

『まー、平気だろ。

 詳しい作戦までは言ってねーんだし。

 基本的にオレ様らはギュリから情報もらっただけで、こっちの情報はほとんど開示してない』

 

 

うん、確かに。

今日はいろんなことを聞いたけど、私たちからはほとんど話してない。

あくまで情報収集だった。

何より、私をDは攻撃できないはずだしね。

この星の生物である私に。

 

 

 

 

--3時間前。

 

「原生生物への攻撃禁止?」

「ああ。

 私がポティマスに攻撃をすることができない直接の理由だ。

 これはDと私、ついでにサリエルにも課された共通の掟。

 破れば、D直々に処罰されるだろう」

 

 

淡々とギュリは説明してるけど、その内容はなかなかのゴミシステム。

Dが罰すると言う時点でDに課せられた掟にはなってないんだよなぁ……。

まじでギュリとサリエルだけに課せられた命令でしかない。

 

 

『ま、それは2年くらい前の話なんじゃねーの?

 今は違う』

 

 

ん?

電脳、なんでそんなに自信あるのよ。

あくまで仮説をそこまで大真面目に話せるのすごいな。

 

 

「ああ、さすがだ。

 今はアルセウスという上位存在が現れたことでそのパワーバランスが大きく変化した。

 言うなれば、アルセウスも含む4人でその掟を結ぶことになったためにDも罰せられることになったのだ。

 それで迂闊にDも貴様に手を出せなくなっている」

 

 

しかもあってると。

まあそんな確信がなければそんな暴走できないしね。

こんな面白生物、自由に触っていいんならすぐにDに支配されたと思う。

 

 

「おい電脳、貴様まさか故意に神になってないのか?

 それだけの体内エネルギーがあればすぐに神にでもなれるはず。

 なんならなりたくなくても無理矢理神に変化させられる。

 それでも神になってないということは」

『そりゃそうだ。

 神になるということは、Dと同格になるということ。

 ぱっと考えりゃあ同格になりゃいいと思うかもしれねーが、テメーのこき使われ方見てそれは思わねぇよ。

 同格という建前の中で虐められるだけだ』

「やはり、貴様は違うな……」

 

 

ねえ、ギュリがうなだれてる。

電脳の思考回路凄すぎてギュリが落ち込んでるって。

正直同情するから!

もう少しなんというか、その手心というか。

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

さてと。

今日は部屋の中にでも篭ろうか。

明日違う星に行くことを考えると準備してしまいたい。

やりたいことも、聞きたいことも色々あるし。

 

 

聞きたいことってなんだろう。

あ、やばい。止まらない。

疑問が。

 

 

何故。

なぜ。

どうして。

 

 

なぜ、Dは私をこの世界へと送り出した?

なぜ、アルセウスは私をこの世界へ送り出した?

なぜ。なぜ。なぜ?

 

 

なぜ、白は生み出された?

なぜ、私は性別を変えられた?

なぜ、私はこの性別を受け入れた?

 

 

なぜ、私は。

なぜ、私は人を思いやれる。

なぜ、私は今更、人のことを考えられる。

もう起きてしまったものは戻らない。

失ったものは返らない。

なぜ、私は、今きちんと挨拶ができる。

なぜ、私は、今きちんと黙ることができる。

なぜ、私は、今きちんと人の目を見れる。

なぜ、なぜ?

獣だった私をなぜ選んだ、アルセウス。

クソ邪神が。

 

 

一番死ぬことを認めていたはずの私が。

一番空白の私が。

空っぽの化け物の私が。

愛を、知ろうとしなかった私が。

 

 

なぜ、ポケモンとして選ばれた。

なぜに、こんな存在として生きることを許した。

こんな。

お互い支え合わなければいけないところに二人を飛び込ませて。

愛を。感じさせて。

飢えた獣のプライドを殺して、無理矢理にでも餌を与えて。

楽しかったか、クソガキ。

 

 

 

 

まあいいや。

今は何もわからないけど、やがて全てがわかる。

なぜ、なぜ、なぜ。

そのすべての秘密が、若葉姫色の家にある。

人として生きる邪神のもとに。

 

 

 

 

待ってろクソ邪神ども。

私はテメーらのために生きてんじゃねぇ。

私は私、ただ一人のために生きる完全無欠な生命体だ。

全ての愛を私に向けさせて、全部貪り尽くしてやる。

その私に向けるかわいいかわいい感情を、残酷な心と叶わぬ願いで蹂躙してやる。

待っていろ、下等生物ども。

テメーら食い殺してやるから。

天然素材のバケモノを、止めてみやがれ。

 

 

《条件を満たしました。称号『無虚』を獲得しました》

《称号『無虚』の効果を改変、魔術を作成します》







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118 神


高評価、感想お願いします。



 

 

「は、はぁ。きつい。

 さすが地球、空気の臭いがキツすぎる。

 なんだよ車の排気ガス」

 

 

とりあえず嗅覚を最低レベルまで下げる。

こんなにおいの強い場所歩いてられるわけがない。

こんなにこっちの世界も汚れていたのか、楽園なんてないな。

 

 

周りからの視線を無視して私は歩く。

どうやらこっちの世界でも少しは目立つみたいだ。

しょうがない。

 

 

「まずは若葉姫色を見に行きたい。

 電脳、場所わかる?」

『ん。

 地図あるから頭に写しとく。

 あと元から近くに飛んでるから、すぐ着くはずだ』

「ありがとう」

 

 

そんな独り言を吐きながら、暗くなってまもない町を私は進む。

途中、塾帰りに談笑する学生とすれ違って気分が悪くなる。

全く難儀に育ったものだ。

 

 

「えーと、この家か?」

 

 

建っていたのは、新築って感じでも何もないただの一軒家。

だけど、周りに住宅があって、その陰に建つような立地だから正直陰気くさい。

てかこんなところに神住んでるとかテロでしかないだろ。

神は神らしくちゃんとしたとこ住めや。

 

 

うーむ。

来たのはいいけどどう入ろう。

白に入り方聞いときゃよかった。

とりあえずポチリとインターホンを押す。

下手に力技出来ないしね。

いかんせん神様の家だ、ふざけたら私が死ぬ。

 

 

『はーい』

 

 

そんな声がインターホンから聞こえた。

確かに、自分の脳内にある声だ。

蜘蛛の身体からも、念話からも、聞かなかった音。

それが確実に自分のことを突き刺す。

 

 

チッ。

俺は知った上でここに来ている。

だから引き下がる気はない。

こちとら元から狂ってる。

 

 

「いらっしゃい。

 君がこの家に来るのは初めてだったね、佐野蒼生。

 君の猛アプローチがやっと実を結んだんだ、喜んでくれると嬉しいな」

 

 

俺の前でドアを開けた彼女は、笑う。

はぁ。

確かにやっとここまで来たんだね。

 

 

「ありがとう。

 すごく嬉しいよ」

 

 

俺も、彼女に釣られて笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、嫌だー。

 そんな戦い方するようなやつやっぱ嫌われるって!

 絶対いじめられてたのそれ原因、それマジ!」

「君がそれを言うんですね。

 鏡を見てください」

「そんなコンボ普通試すか、それ?」

 

 

やっぱこの人性格悪いわ。

家に入った蟻ですら外に逃すこの俺が性格悪いっていうんだぞ、相当だぞ。

容姿もあるけど絶対これ原因。

 

 

今のゲームは3つ目。

一つ目のゲームはポケモンのガチ対戦。

思いっきし暴力パで行ったのに陰キャネチネチ戦法で返り討ちにされた。

2つ目のゲームは銀河を駆ける戦士が主人公のゲームの一章分タイムアタック。

なんだかんだでこれが一番僅差だったけど、最後の最後でHPが無くなって敗北。

そして、今やっているのがいろんなキャラでの大乱闘。

その結果、めちゃくちゃ賢いコンボで完全に運ばれている。

全部のゲームやったことあるのに、何故だ。

 

 

「君、弱いですね。

 なんで私とゲームやろうなんて言ったんですか。

 別にゲームしなくても色々話したいことはあるんじゃないですか?」

「確かにあるよ。

 今はもうあなたへの興味も薄れたし。

 本当は白についてとか聞きたい」

「次の寄生先を見つけられたようでなによりです」

「そりゃどうも。

 あなたのおかげですぐ見つかった」

 

 

あ、また運ばれた負けた。

今までまともに攻撃も出来てないし勝てる希望もなさそうだ。

そう思いながら俺はまたキャラを選び、対戦画面へと進む。

 

 

「心の中では怒っていても、ぱっと見は優しく振る舞いますね。

 クラスメイトにも、蟻にも、そして蜘蛛にも。

 実はアルセウスがいなくてもあなたは蜘蛛に変えてあげるつもりだったんですよ?

 それだけ気持ち悪い人だった」

「思いっきり悪口を言うな。

 気持ち悪いが、感情としての気持ち悪いなら嫌だけどそんな感じするし」

「もちろんそれも含んでますよ」

「うわー」

 

 

確かに俺は常識に逸脱した行動ばかりしていた。

もちろんクラスにいる高嶺の花、若葉姫色にも。

だから、Dであった彼女も明確に俺を認識しているのだろう。

 

 

「誰にでも過剰に付き合おうとした。

 深く、深く、依存したがった。

 そんなあなたは、他の生物まで慈しみ、何かを求めた。

 そうでしょう?

 佐野蒼生、もとい九重蒼生。

 この世界において国内トップの資産を持つ九重グループの御曹司であり、同時に愛だけは与えられずに育った人間。

 人間は単純ですね」

「ああ、極めて単純だ。

 こんな強い欲望の理由すらわかってる。

 ほんと簡単な存在だよ」

 

ほんと、人間は愚かだ。

 

 

 

 

 

「私が買い物に行っている間に邂逅するとか。

 本当に困ったものだな」

 

 

え?

俺は、地面に突っ伏していた。

それはDも然り。

二人とも腹ばいにされていた。

 

 

おかしい、立てない。

呼吸が苦しい。

今、何Gの重力がかかってる。

それでいてなんで家具は壊れない。

 

 

いつ現れた。

いつ、いつ。

俺は、目の前に立ち、見定めてくるパーカー姿の男を睨む。

そうだ、こいつの目、なにかに似てると思ったらポティマスだ。

このゴミを見定めるかのような目は。

く、そ。

 

 

「落ち着け。

 今のお前は青だろう。

 佐野蒼生は死んだ。

 自我を取り戻せ」

 

 

知るか。

拘束してるのはあんただろう。

私だって抜けられるなら抜けたい。

勝手にすんな。

 

 

『チッ、重力操作する。

 オレ様の力込みでギリギリ通常の行動はできるはず。

 馬鹿げた真似しやがる』

 

 

フラフラになりながら、電脳の補助込みで膝をガクガクにして私は立ち上がる。

その隣にはいつの間にか完全に立ち上がっているD。

どうやら、私の復帰よりも先に安定したようだ。

 

 

「たく、お前は碌でもない。

 人の過去を掘り返して何になる」

「楽しいじゃないですか。

 青という人格が一瞬で塗りつぶされた。

 あなただって、ポケモンを増やすという目標がなければやっていたはずですよ」

「目標あるから諦めろ。

 仮定は現実じゃない。

 というか、電脳まで一度消滅させたのか。

 さすが上位神」

 

 

えっと?

なんか色々されてたみたい。

でもよくわからないからまあいいか。

考えるのは苦手だ。

 

 

「私は知ったこっちゃないが、青。

 今すぐこの部屋から逃げろ。

 今の精神状態で貴様のしこりを解消するのは無理だ。

 せめて次はワレがいる時に来い。

 なんならこの場所には来ないで自力で解決しろ。

 悪化するだけだぞ」

 

 

え、そうなのか。

ただ確かにそうかもしれない。

今は全然スッキリしてるしなんかしこりはあった気がするけど今はスッキリしている。

なら、この世界にいても意味はない。

 

 

うーん、じゃあ帰るか。

 

 

「とりあえず今日はありがとう、D。

 色々遊べて楽しかったよ」

「そうですね、青。

 また遊びましょう」

 

 

 

 

 

 

ん、あれ。

なんか宿屋に帰ってきてる。

ソフィアがびっくりしてるし、どゆこと?

んーなんで全部聞かずに帰ってきてんだろうか。

地球で何かに遮られた?








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119 ため息と翻弄の旅


高評価、感想よろしくお願いします。



「お、帰還早いね。

 浮かばない顔してるけど、何があったの?」

「とんでもない精神破壊を食らった、と思う。

 記憶も全くねぇし青とオレ様の意識を無理矢理合成しやがったかもしれねぇ。

 一応音声を頭の中で録音しといてよかったわ」

「青がそれやられるとは、相手は相当とんでもなかったんだね。

 あと人族何人か仕留めてきたよ。

 路地裏におびき寄せて捕まえたあまり良くない人たち。

 空納に入れてあるけど」

「あー、ちゃんと解剖してーから無虚空間で処理する。

 入ってこい」

 

 

電脳が無虚空間への入り口を開いてアリエルの手を引き入っていった。

確かに人間の解剖はこの世界ではやったことがない。

システムの構造的に見たことない器官を見つけられるかも。

 

 

「青、でもあっちに行くとして、どうするの?

 正直戻ったところでいいことはないでしょ?」

 

 

ああ、ソフィアに言われた通りいい記憶はない。

だから行かなきゃいけない。

ろくな経験しかしてないからその嫌な気持ちを溶解させないといけない。

どうせ最後には行かなきゃいけないんだ。

全てを終わらせるときに。

 

 

「で、明日この街から出るってことでOK?

 メラゾフィス、アリエルはそう言ってた?」

「はい。アリエル様はそう言っていました。

 白様も外で待たせていますし」

 

 

確かにねー。

なんも騒ぎ起きてないから大丈夫だとは思うけど、結構待たせてしまった。

でも白も今の間に卵とかいろんな場所に産めたんじゃないかな。

あの、魔王にやられた時に使った卵復活のための。

あれがあるかぎり白は不滅だし産んでるはず。

 

 

よし、暗くなったし寝よう。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

「お、やっと、てどういうこと?

 この状況」

「おーおー、好き勝手やったね。

 そのワンピースとか服は似合ってるけどこっちの状況はどういう感じにしたの?」

 

 

私たちが白のところに帰ってくると、彼女は服を作っていた。

今まで来ていた服に加えてワンピースとかパペットタラテクトの服まである。

どうやら、裁縫に目覚めたみたい。

 

 

「裁縫」

 

 

いや、それは知ってる。

まあ暇していなかったんならよかった。

少し不安だったからね。

変に病んでないかとか。

私だったら病むし。

 

 

「じゃあ、青も白も。

 また行こうか。

 ソフィアとメラゾフィス君は特訓込みね」

「おー!」

『最悪……』

 

 

私たちは、再び歩き出す。

 

 

 

 

その数日後。

私はまだ地球には帰れていない。

前回は無理やり帰ったけれど、あの後は1日のうちどこかしらに女神教の仕事が詰まっていて帰れなかった。

この世界よりも地球の方が時間の流れが遅いらしくて、下手に居座るととんでもない時間過ぎてしまうかもだし。

 

 

『ギュリ。

 真言教はどうなってる?

 聖国とかどうなってるの?』

『だいぶ壊滅的な被害を受け始めている。

 末端はもう破滅寸前。

 一部の国ももう求心力は壊滅的だ。

 貴様、それで本当に平気なのか?』

『うん。

 これで人が一定数死ねば純粋なMAエネルギーもだいぶ補給される。

 サリエルは絶対許容しないと思うけどね。

 ただ、先に死んでしまえばそんな許容なんてのはもう通じない』

『そうか』

 

 

歩きながら念話で話す。

もう私の念話の範囲はこの星全土に及んでいる。

ばら撒いた蜘蛛たちの一部がうまく電波塔として機能しているみたいだ。

 

 

『だけど、まだ10日前後だよ?

 しかも私が伝えたのは真言教の堕落とかについてじゃなくて女神教におけるただの自己防衛の許可。

 それでそんなになるか』

『まあなるだろうな。

 人間も馬鹿じゃないんだ、元々真言教の運営方法に不満を持っている者も元々多かった。

 それに絶対的な安全や食糧の安定供給が確約された女神教。

 その上で女神教の唯一の欠点がなくなった。

 そりゃこうなる』

 

 

女神教を信仰している国では、私が根幹からテコ入れすることによって経済や産業が大きく発展している。

というのも、大量に配った蜘蛛が卵を産むから食糧難とか解決するし、糸を出すから真言教に売り出すことも出来る。

食べるのは有機物全般だからゴミ処理も出来る。

だから医療班を送り込んだのもあるけど疫病とかも一瞬でなくなったしね。

 

 

『貴様は真言教を潰したいのか?』

『うん。

 もう役目が終わったものを残しておくのは厄ネタだ。

 ダスティンには悪いけど念の為、ね』

『そういえばダスティンが貴様との面会を望んでいたが。

 いつか行く気はないか?』

『先に言って。

 今行く』

 

 

「ごめん、私は転移できるから先に行って。

 ダスティンと話してくる」

「え?」

 

 

魔王の声を背に受けて、私は転移する。

あいつとは一度話しておきたかった。

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

私は聖国における報告書を眺める。

どうやら、女神に打たれた一手によって世論が逆転したようだ。

これはまずい、おそらく取り返しがつかない。

 

 

「こんにちは、ダスティン。

 あなたについては黒龍とアリエルから話を受けている。

 今までありがとうね」

「……」

 

 

声が聞こえ顔を上げると、目の前に少女が立っていた。

驚き、思わず声を失う。

いつ現れた、この少女は。

 

 

「お褒めいただきありがとうございます。

 ですが、この部屋に入るのならば許可を頂ければより幸いでした。

 ケレン領の女神、で正しいでしょうか」

「はい、あっています。

 少しこれからのことについて話しましょう。

 4000年の歴史をもとに」

 

 

やはり、身長などは異なっていてもケレン領の女神であっているか。

だが状況は極めてまずい。

今までありがとう、4000年の歴史をもとに。

まるで私の心の中を見透かされているようだ。

 

 

「4000年という数字がなぜ出てきたかわかりませんが、そうしましょう。

 まず一番最初に聞かせていただきたいのですが、あなたが式典で言った女神サリエル様というのは、今はどのような状態なのでしょうか」

「ああ、彼女は今拘束状態にあるだけ。

 昔はエネルギー体を削られていたけど、今現在は私が蜘蛛で輪廻を回しまくっているからノーダメージ。

 人族の被害ゼロでもエネルギー供給はプラスに回るから戦争とかもいらないね」

「お待ちください。エネルギーというのは、どういうことでしょうか?」

 

 

今どういう状況なんだ。

確かに、過去よりもここ数ヶ月で生まれた子供の方が圧倒的に生命力が強いとは聞く。

けれど星全体のエネルギー供給がプラスに回るなどあり得ない。

この4000年、そんなことは一度も起きなかったのだから。

 

 

エネルギーについてまず話し出すという時点で彼女は禁忌を見ているのだろう。

その上でおそらく私の正体についても知っている。

だが、黒龍が全てを話すのならそれ相応の信頼が必要だ。

その根拠はなんだ?

 

 

「MAエネルギー。

 世界を構成するエネルギーだよ。

 クソエルフがいたせいで減ってたけど、私が輪廻を回すことで回復してんの。

 まだエルフは殺してないから物量で相殺してるだけだけどね」

 

 

呆れたように言う女神。

なんだか、私も本心を隠すのがバカらしくなってきた。

今までの習慣がそんな簡単に治るわけでもないが。

 

 

「真言教の実質的な存在意義であった戦争の発生によるエネルギーの補給。

 それがもう必要無くなった真言教に存在価値はないんだ。

 この星を維持してくれたことはありがたいけど」

「……」

 

 

そう、なのか。

もう世界は回復し始めているのか。

この4000年は報われたということか。

 

 

「ですが、真言教はいります。

 私が教皇だからというわけではありません。

 まだ根本的な原因を潰していない」

「そう。

 なら別に残ってもらって構わない。

 ただ、私は女神教の運営に尽力する。

 頑張って生き残ってね」

 

 

とんでもないことを言う。

あなたが運営に尽力すれば即壊滅するのだが。

今も真言教の末端の国ではクーデターが起きかねない状況なのだ。

こちらが戦力を出したところでそんな国が多すぎるし人が死にすぎる。

 

 

そうか。

この方の最終目標はサリエルを救出すること。

決して人族を守ることではない。

今まで人族を殺す報告がないのも懐柔させるため。

そんな方が求心力を蓄えてしまったのはとてもまずい。

だが、もう手遅れだ。

 

 

「ここまできたら、真言教を女神教の宗派にしてもいいと思うけど。

 宗派の総本山ということにすれば聖国も生き残れると思うし。

 ただその場合サリエーラ国の属国になるからきついか?

 うーん、私には難しい」

 

 

はて、どうするか。

ただこの方は黒龍とは違って口が軽いようだ。

しかも人は殺さない主義ときている。

それなら、今のうちにせめてこれは聞いておこう。

 

 

「あなたは、何を目指しているのですか?」

「ん?

 ああ、それね。

 恒久的な世界の平和と4000年前の状況へ後戻りさせること。

 具体的に言えば、人間がとりあえず星への決定権持っている状況かな」

 

 

それは私も望んでいることだ。

今はMAエネルギーの減少によって自由に生きられない人が多すぎる。

病気や飢餓などももちろんあるからな。

 

 

「そういや、システムって知ってる?

 私の最終目標の中にはシステムの完全破壊もあるんだ。

 だって、システムってことは管理者がいるじゃん。

 で、管理者は別次元の存在だからさらにその上がいるわけで。

 神々のしがらみに巻き込まれるの正直嫌でしょ」

 

 

ならば、今この世界にも管理者がいるということになる。

黒龍?

それともサリエル様?

それとも、それとは違う方がいるのか?

さらにその上もいるとなると、皆目検討がつかない。

だがそれを無くしたいとなると人族の被害もとんでもないことになりそうだ。

 

 

「とりあえず私が話したいことはこれで以上ね。

 また暇になった時来るかも。

 じゃあ!

 あと戦争はやめろ」

 

 

はぁ。

女神様が消えた場所を見て、私はため息をつく。

これからの真言教のため尽力しよう。

疾風のような変化にしがみつくために。

少しでも生き残らせるために。





4000年の歴史の変化。


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120 vs機械円盤① -眠れる龍-


高評価、感想お願いします。



なんだかんだで、あれから一年が経過した。

一年が経過してしまった。

やばい、時の流れが早すぎる。

 

 

その間に私の過去については大体解決はしたんだけど、そのことは後で話すとして。

私はついに目標の場所に達した。

この世界において最も面白いイレギュラーが起きている場所にだ。

 

 

ま、とりあえず誰かが気づくまで私は話す気ないです。

これバレたら昔に処理してろって言われそうだし!

エネルギー的にはどっちにしろ最悪どうにかなるんだけどな!

現在進行形で革命で人いっぱい死んでるし!

 

 

「白ちゃん、どうしたの?

 考え込んでるけど」

 

 

飛龍が舞う元で、私たちはだだっ広い砂漠のような荒野を進む。

白も違和感は感じてるのかな……。

 

 

 

 

 

あ、これ良くないやつだな?

白も完全には分からなそうだしアリエルに至っては完全に分かってないし。

これは私が言わないと通り過ぎかねない。

 

 

「ちょっと地下が気になるから割る。

 機械の匂いがする」

 

 

ポティマスのドローンが遠くから見ているのを確認して、私は地面をバカリと叩き割る。

そこに現れる巨大な蟻たち。

どうやら、ここ蟻の巣になってるみたいだ。

 

 

「え、青ちゃん、急にどうしたの……?

 青ちゃんが言うんなら正しいのかもしれないけど私はぱっと見はわからない。

 でも飛龍がいっぱい飛んでるのにそんな無視するなんてことあるかな。

 あいつら、機械とか一番嫌いなはずなんだけど」

 

 

じゃあなんであるのよ。

実際にあるんだからもっとヤバさ増したじゃないか。

絶対処理しなきゃ。

 

ちなみにいつの間にかアリエルは私のことをちゃん付けにして呼ぶようになっている。

あとソフィアには何故か天使ちゃんとか天使様とか呼ばれてる。

どうやら私がサリエーラで仕事してる間にカードゲームをしていて、その罰ゲームなんだとか。

白もなかなか趣味が悪い。

 

 

「蟻の巣はともかくとして、ね。

 その下にまだある」

 

 

プロテクトエレテクトを数体出して蟻を焼き払う。

うん、蟻の巣の下の空間も本格的に広い。

私だけじゃ処理出来ないな。

 

 

『ゼルギズ、本気で暴れていい。

 まず出る準備だけして』

『よし来た!』

 

 

よし。

無虚空間の中でゼルギズがウォーミングアップしてるのを確認して、私は下の土を見る。

彼も一年間鍛え続けてたし大丈夫かな。

ただ、彼が平気だとしても地上にソフィアとメラゾフィスをそのまま置いていくのはヤバそうな気がする。

 

 

無虚空間からパペットタラテクトを何体か出して、地上へ。

よしこれで大丈夫でしょう!

地下に行くのは私たち精鋭で十分だ。

 

 

「電脳はどうする?」

「念の為オレ様も地上で待機するが、ヤバかったら言え。

 即意識だけ飛ばすわ」

「おけ」

 

 

 

「いや、降りてきて。

 私のそばが一番安全だ」

「は?」

 

 

その言葉に、思わずアリエルを見つめる。

いや何言ってんのよ。

これからやばい施設カチコミに行くんだよ?

機械あるって言ったよね?

機械の危険性はアンタが一番知ってるはずだけど。

 

 

「私に近いほうが安全だ。

 崩落があって生き埋めになったとしても私がいれば助けられる。

 飛龍も何故か多く飛んでたし、念の為だけどね」

「……そう、みんな降りてきて」

 

 

ピョンピョンとソフィアを抱いて降りてくるメラゾフィスと、パペットタラテクトたち。

うーん、私が過保護だったのだろうか。

正直アリエルも自分に自信持ちすぎじゃないか?

だけどそこまで言うなら仕方ない。

少しぐらいは自己防衛出来ると信じよう。

正直守り切れる自信はない。

 

 

 

 

バキリ、バキリと蟻の巣の層を掘り砕いていく。

そろそろ施設に到着するはず、と!

バコン!

砕かれずに凹んだ層の土を払い除けると、そこから現れる銀色の板。

ビンゴ。

 

 

「アリエル、白、ソフィア、メラゾフィス。

 侵入するよ、覚悟はいい?

 パペットタラテクトたちはソフィアとメラゾフィスを本気で守って」

「これって、天使ちゃんが言ってたエネルギー施設?」

「その通り。

 下手すると死ぬからマジで頑張れ」

「そんなにビビらなくても大丈夫。

 私が守るから近くにいればいいよ」

 

 

うーむ不安。

まあいい、行こう。

 

「白、アリエル、行くよ!

 せーの!」

 

 

バガァァン!!

 

 

私たちは施設の天井を拳で叩き割って潜入する。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

『ビィー!ビィー!ビィー!』

 

 

サイレンの中私たちは歩く。

予想通りこの施設生きていた。

エネルギーの貯められてる心臓部もあるし、早く向かわなければ。

 

 

ガコン、ガシャリ。

「危ない」

次の瞬間、ガシャガシャと崩れ落ちていく機械たち。

アリエルやばい。

今、たぶん私たちのことを壁から出た銃口が狙おうとしたんだよな。

後ろ振り向いたら全部終わってたんだけど。

 

 

残った残骸たちを無虚空間に突っ込んで、そのうちの一本を骨つき肉のように頬張る。

そのまま最後尾を歩く白の元へ。

一応念の為ね。

 

 

「今ってアリエル?」

「うん、操糸」

 

 

うわー。

これはやばいわー。

てかなんで私勝ったんだこの人に。

考えたら考えるほど勝てる気しない。

この速度で操糸使えるとか、私でも精度怪しいわ。

 

 

「青ちゃん道なりでオーケー?

 突き当たりのあの大きな扉を開けるので」

「うん、あと戦闘準備しといて。

 多分ロボットいる」

 

 

爆雷を発動して身体に電気を纏わせる。

さっきはアリエルも魔法を使えてたみたいだけど、いつから不能になるか想定がつかない。

なら最初から妨害される魔法は一切使わないで力で蹂躙すればいい。

 

 

「じゃ、また注意してね。

 え、ゼルギズやるの?

 おーけー無理はしないで」

 

 

「じゃあ、オープン!」

 

 

バキバキと扉を開けるとともに大量のロボットが稼働してこちらを向く。

100体くらいいるんじゃないか、関係ないけど。

電脳こんくらいの数は対応したはずだし。

ま、もともとパペットなら一対一で勝てる程度の強さだもん。

 

 

「バリア展開!」

”超過熱線”オーバーヒート

 

 

 

ゼルギズの声と同時に私の身体の温度が急激に上がる。

それと共に機能を停止するロボット、カメラ、ドア、スピーカー。

そして、液体となった金属が天井からボタポタと融解し始める。

 

 

「「「『は?』」」」

「氷獄界!!」

 

 

天井に向けて氷獄界を撃って急速冷凍。

一気に凍りついてから、すぐ氷が溶けて元通りになっていく。

あーやばかった。

まさか天井まで溶けてくるとは。

冗談じゃなく焼け死ぬとこだったぞ。

魔法で付け焼き刃だけど、多分平気なはず……。

 

 

『今のやつ、システム外行動だと思うけど関係ない魔法で平気なの?』

『多分。温度は下がってるし』

 

 

というのも、氷魔法の氷は魔力で生成された氷で水とかは一切関与していない。

それに対してゼルギズの熱はちゃんと反応を起こして発生するシステム関係ないもの。

だから本来は相性が悪くて、下手すると効果なしの可能性もあった。

今回は冷えたから結果オーライ。

 

 

「たく、私も青のついででバリアを貼ってたけどまさかそうやるとは……。

 ゼルギズ君には後で灸を据えておこう」

 

 

呆れ顔でため息をつくアリエルと、無虚空間からビビってるゼルギズ。

そりゃそうなりますよね。

私は悪くない。

 

 

 

 

 

カツン。カツン。

今までで、一番大きい扉へ歩く。

この扉を開ければエネルギーの中心にたどり着くはずだ。

だけどみんな、今までの余裕からか談笑し始めている。

 

 

私たちの侵入に反応してかエネルギーは増幅されていく。

ヤバいな、もう私の扱える量を優に超えている。

これは笑えない。

 

 

 

犠牲がいるかも。






眠れる龍となった。




※この1年間で変わったこと

パペットタラテクト
青が使うようになった。ただあくまで少しで基本的には使わない。また、召喚のエネルギーを使わないためにアリエルの許可のもと無虚空間内に入れられている。


人族
真言教を掲げる国の多くで反乱が勃発。聖アレイウス国ではまだ反乱は起きていないが女神教の宗派となるかについての選挙が近々行われる予定。


ゼルギズ
1年間全くと言っていいほど無虚空間から出ていない。だが、電脳によりソフィアやメラゾフィスと比べものにならない速度で成長し龍へと変貌してきた。目標のガキアにはだいぶ見た目も大きさも近づいてきている。


ポティマス
MAエネルギーがだいぶ増えてきたので実験を活性化している。さすがのクズ。



街に行くたびに街の外で裁縫を繰り返す日々。
裁縫の対象はパペットタラテクトであることが多いため、彼らは人形でありながらとんでもなくリアルになっている。
パペットタラテクトを青が使っているのには白が改良してるから使わないのは勿体無いという理由もある。
そんな日々の中、自分の脚を切断してそれを刃とした鎌を作った。



過去については払拭したが、これについてはのちに書く。地球の賢い人たちと色々しようとは考えている(腹黒)。


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121 vs機械円盤② -たたかうくるま-


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「これが最後の扉かな。

 ここを開ければこの基地のエネルギーコアがあるはず」

 

 

ドアの前に立って、私は腕組みする。

うーん。

でもなにか違和感。

この部屋、他の部屋よりあからさまに広い。

巨大な棒状の金属が地下深くまで刺さってるみたいだし。

なんかとんでもないものがある気がする。

ま、開けたらわかるでしょ。

 

 

力をかけるとわかる明らかな軽さ。

メキメキというドアと、響く轟音。

ん?あれ、これドア勝手に開き始めてないか?

私の力以外にも力がかかってる。

 

 

 

開けていたドアの向こう、私の目の前に現れる砲口。

あ!?ああ!?

やば。

 

 

 

 

目の前からくる爆風と轟音。

やばい。

私でも反応しきれない。

腰から下の感覚がなくなって、体が引きちぎれる。

今はソフィアとメラゾフィスだけでも守らなきゃ。

 

 

「口閉じろ!」

 

 

吹き飛びかける意識をギリギリで保持しながら掴んだ自分の下半身をゲル状にして二人にぶつける。

盾なんてもん用意できないし、無虚空間に取り込むことも出来ない。

ああそうだ、最初から無虚空間に二人を入れときゃよかった。

こんな馬鹿げた機械出てくんだからアリエルでもパペットタラテクトでも守り切れるわけないだろうが。

思いきり、戦車の攻撃を真正面から受けて吹き飛ぶ。

 

 

 

 

危ない。

意識が途切れる。

電脳と意識を同調して繋ぎ止めると同時に、残った上半身で蜘蛛の身体を構成。

そのまま爆雷でメラゾフィスの方へダッシュ。

勢いのまま、ゲル状の身体を奪い取って再生する。

そして一呼吸。

 

 

あー、やばかった。

まじで死ぬぞこの私でも。

1年前だったら死んでたかもしれない。

顔を下ろすと、メラゾフィスやソフィアも無事なのが見えた。

ちゃんとゲルが爆発時の衝撃吸収してくれたみたいだ。

 

 

あん!?

また砲口が私の方を向いてる。

なんか私だけ狙われてねーか!?

いいよもう、もう一回放ちやがれ!

 

 

メラゾフィスとソフィアを無虚空間に放り込むとともに再び頭の中に轟音。

今回は頭がちぎれたから、抱えたまま吹き飛ぶ。

いや普通これ食らったら死ぬから加減しろバカ!

 

 

頭を首にセットして、戦車へ殴りかかっているアリエルの元へ。

そしてバコンと一緒に吹っ飛ばされる。

え、装填早くないか?

 

 

ただ今回は五体満足。

どうやら砲台がいくつもあるみたいで、さっきの2発は特に強いのを食らったみたい。

白も攻撃を仕掛けようとしてるけど近づけないって感じで手こずってる。

砲撃が凄すぎる。

 

 

えっと、やばいタイプの砲身、前面にあるのが4つ。

さっき食らったのがこれを食らうとこの私でも危ない。

次に対空向けの弱めの砲身4つ。

こっちは食らっても平気だけど装填が早いし吹き飛ばされる。

そして後ろにある砲身が4つ。

これはまだ食らってないけど前面と同じくやばい気がする。

食らったらちぎれそう。

 

 

「今までも同じ戦車相手したことあるけどこんなに火力なかったはずだし連続で撃ってこなかった。

 どうしてだ?」

「わからん!この施設のMAエネルギー回収量が多いとかじゃないの!?」

 

 

避けながら、大声を出す。

そんなこと考えてる暇ないんだよ爆撃すごいんだから。

これもう爆撃だよ、本当に弾なのかこれ!?

少しでも動くのをやめたら再起不能なレベルで撃ち砕かれる。

 

 

 

あ、やべ。

一番強いタイプ、前面の砲口が全部こっち向いてる。

死ぬかも。

今度は体何分割するんだ。

少なくとも無事ではない。

アリエルと白も戦車の後方にいて間に合わないし無理だ。

爆発を少しでも軽減するために目を瞑って耳を手で覆って体育座り。

生き残ればいいな。

そして、過去一番の轟音と風が、私を吹き飛ばす。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

この戦車は、青によって強化されていた。

青がこの世界においてMAエネルギーを増幅していたために、それを取り込んでいた施設も活性化。

その結果戦車もアリエルが処理したものより大幅に火力が上がった。

こんな砲撃の嵐が襲い掛かれば青といえども跡形もなく消滅する。

 

 

襲い掛かればな!

 

 

「待て待て待て!

 我出た瞬間に両腕と両脇腹吹き飛んだんだが!?」

「ありがとう!」

 

 

砲撃は、より体の大きいゼルギズを狙う。

それをいいことに私は身体を屈めて爆雷込みで走る。

そしてMAエネルギーを拳に込めて前面4砲にそのままパンチ。

急な衝撃に耐えられずへし曲がる砲身。

だよな、防御力は変わってるわけないんだし!

 

 

私が殴った衝撃で一瞬傾く戦車。

白とアリエルを狙っていた照準がブレる。

砲身を横から鎌で4つ一気に切り落とされる。

砲身が4つ縦に潰される。

元々12砲あった砲身は、一瞬にして全て機能を停止した。

 

 

にひひ、この弾も撃てない戦車にもう戦闘力はない。

ということであとは無虚空間にいる電脳に解体をお願いしよう。

私は空間の入り口を虫取り網のようにして上から被せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「危なかったー」

「いや少し待て。

 危ないの前に我になんか言え。

 タンク役でも参加できたのは嬉しいが、なんか言うことあるだろ」

「いや元カタツムリなんだし身体再生できるし、私より硬いし」

 

 

腕を再生したゼルギズが手を頭に当ててから肩をすくめる。

なんだその呆れフルコースみたいなの。

バカにしてんのか。

 

 

「いやー、今回はさすがに青ちゃんが悪いと思うよ。

 呼ばれて意気込んで出た瞬間に爆撃されたんだから。

 あとゼルギズくんさすがに硬すぎてびっくりした」

 

 

それはそう……かも。

まー、ゼルギズも電脳に介入されまくって改造されまくってるしね。

脇腹と背中、手足に黒い溶岩の鎧つけてるし、頭にはツノ生えてるし。

カタツムリの名残といえばわずかに背中にある台形の塊だけだし。

あれこいつ思ったより変な見た目だな?

まあ虹彩が黄色いだけで白目とか瞳の部分はちゃんと普通の色になっただけ気持ち悪いとは思わんけど。

いやその硬さは少し気持ち悪いな。

 

 

『テメーら転移だ!

 今すぐしないとこの施設崩壊する』

 

 

急に響く電脳の声に、予備の服を被りながら私は首を傾げる。

でも確かに施設で鳴ってた警報音が変化してる。

どちらかといえば警告じゃなくて、なんかの合図みたいな。

ただやばいことには変わらない。

 

 

あ、通路が爆発した。

どんどん爆発してる。

やべ。

これ施設の自爆装置か。

 

 

これはなりふり構わない、転移!

「行くよ!」

集団転移を即発動。

地上に戻ると、下から響く爆音。

これ近かったな。

しょうがない、短時間の転移じゃ無理がある。

結局爆風防がなきゃ。

 

 

『電脳完全プロテクト起動。

 このくらいの風なら止めてやる』

 

 

私中心に磁場で球形のバリアを作って爆風を防ぐ。

うん、問題なく防げる。

これはプロテクトタラテクトに詰め込んであるけど今後にも使えそう。

 

 

『あ、ちょっとやべーかも。

 いやバリアじゃなくてこの星が』

 

 

 

は?

何言ってる。

バリアじゃなくて、星?

土煙がある程度収まって視界が開ける。

だけど雲一つなかったはずの空からはなぜか光が届かない。

沈黙の中、思わず上を見上げる。

 

 

UFOとしか言いようのない何かが滞空していた。




ありし日のゼルギズ。


『ゼルギズ、役目がある!
 今私の体からこっちに出てきて!』

『おうは!?
 くぁwせdrftgyふじこlp!』


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122 vs機械円盤③ -(Gフリート対策会議)-


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は?

わけがわからない。

どうなって、この狂ったUFOが現れた。

今の爆発がどう影響したんだ。

 

 

『あー、深くまで刺さってた棒あったろ?

 あれが地下に眠ってたコイツのエネルギー供給パイプになってたみてーだ。

 正直オレ様も想定してたレベルのことじゃねぇからちょっと焦ってる』

 

 

ツー。

こんなの想定できた方が馬鹿だ。

なんなの、今の爆発が円盤の打ち上げだったってことか?

馬鹿げてやがる。

 

 

「青ちゃん、流石に私の暴食でも手出しできない。

 そっちはどう?」

「あいにくこっちでも無理。

 無理やり撃ち落とすことは出来るけどそれするとそもそも星が持たない」

 

 

 

前クイーンにぶつけた星幽破滅を強化すれば魔法妨害ありでも落とすことはできる。

ただ、クイーンを倒した時ですら周囲一体が焦土になったわけだからそれを数十倍にすれば星が砕ける。

だからといって弱く設定すれば普通に効かないだろうし、結局手出しが出来ん。

 

 

『へいへいへいー、話が違うじゃねぇか、蜘蛛の!

 こいつぁーどういう了見だー?』

 

 

ぱっと上を見ると、風龍がこちらに詰め寄っていた。

しかも電脳で見た限りだと平均ステータスはガキアに近い。

こりゃなかなかの龍だ。

 

 

『場合によってはタダじゃおかねーぜ?

 なんたって何もしねーってことで通してんだかよー!』

『いや待てよこれ。

 テメーら知らんの?』

『いや俺も知らんし!

 だけどテメーらがきてすぐこれっつーのはなんか関係あるんじゃねーのー?』

 

 

まじか。

今電脳が聞いたけど本当に知らない感じ。

うーんこれはゆっくり話し合うべきなのか?

ただ、その前にアリエルがブチギレた。

 

 

アリエルがクイと指を下げるとそれに合わせて龍が地面に叩き落とされる。

もう糸で縛られてたか、ナンマイダブナンマイダブ。

元からふざけた感じで話してたししょうがないね!

 

 

「1。私たちが地下を調査したら出てきたからこれは放置してたお前らの責任だ。

 2。そもそも地下を調査したのもこっちの厚意で調べなくてもよかった。

 3。ギュリエを今すぐここに呼べ」

『……はひ』

 

 

おお、言いたいこと全部言うな。

確かに私も死にかけるレベルでやばい戦車と戦ったしそう言いたい気持ちもわかるわ。

てかほんとに龍の群れの下にあったしね。

ギュリエとポティマスの間で変な取り決めなんかがあってもおかしくない。

まあだからキレてんだろうけど。

 

 

 

バチっ。

は、今度はなんだ?

もうこれ以上に厄ネタは抱え切れんぞ。

だって転移が汚いし、ギュリエのやつじゃないんだもん。

 

うん、確かにこれは初めての波長だ。

クソエルフとも違う、あいつはもっと静かに転移してくる。

誰だ。

 

 

『先ぶれもなくお伺いした非礼をお許しください、魔王様。

 そして女神様』

 

 

あー、ダスティンと御付きの人か。

なら良……くねぇよ、古狸が。

帰ってくれ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

爆風の残り香の強風に煽られながら、私たちと教皇さんは対峙する。

正直この人がここにきても何も解決しなくない?

 

 

「んで、もう破滅寸前の真言教の教皇がどうしてここにきたの?

 まさかこんな時に青ちゃんを殺しに来たりとか?」

 

 

冷たい顔のままアリエルが揶揄する。

正直この人にできることはないもんね。

めっちゃ正論。

 

 

「はて、なんのことやら。

 ともかく今は協力してあれを処理しましょう。

 あれは確実に人類の危機だ」

「そ。やることないだろうけど、勝手にすれば?」

「はい、勝手にさせていただきます」

 

 

うげー、ピリピリしとる。

てかまじで帰ってくれ。

私がやるとしても基本範囲攻撃だから少なくともあんたは死ぬわ。

 

 

無虚空間の中にいるソフィアたちだって会わせたらだるそうだし。

だって街焼いた原因の一つだぞ。

まじで会わせたくない。

顔は見せちゃダメだ。

 

 

「つーか我が働きゃいいだろ。

 近づいて熱でUFOごと溶かせばいい」

「それ気づいてたか。

 ギュリが無理っぽかったら採用するつもり。

 まあ彼が対応しなきゃいけない問題ではあるからね」

 

 

そう。

私単体じゃ無理でも私とゼルギズなら空気を弄ってUFO自体はなんとかなる。

でも、それをやると少なくともここの生態系が全滅する。

下手したらこの星自体の気候を変える大災害が起こるし。

というかギュリがなんとか出来んならそれで解決だし、わざわざそんなリスクを負う方がバカバカしい。

 

 

そもそもアリエルが言ってたみたいに古代文明の破壊は私たちの仕事じゃない。

私が処理してるのはあくまで有効活用のためだ。

ここまでデカいやつの相手ならそりゃ尻尾巻いて逃げるって。

 

 

「たく、君らも引き出しの数やばいねー。

 本来宇宙にいる龍を撃退するための機械だよ?

 星に住んでる君たちは視野に入らないはずなんだけどね」

 

 

そんなもんでしょ。

私、強いし。

システム外行動たくさんできるように仕込んだDが悪い。

 

 

 

 

 

「ああ、本来私が処理しなければならないものだ。

 連絡ありがとう」

 

 

お、声が姿表すより先に聞こえたぞ。

さすがギュリ、ダスティンとかより全然転移がうまい。

惚れ惚れしちゃう。

 

 

「まさかこんな巨大なものを見落としていたとは。

 私の落ち度だ、すぐに対処する」

 

 

転移空間から出てくるやいなや宇宙船を見上げそう言い放す。

いやー、すっごい。

そんな簡単に対処出来るもんじゃないって。

それを当たり前のように言ってのけるとは。

 

 

「星への被害なしで出来る?」

「被害ゼロは無理だ。

 だが、下手な破壊はさせん。

 少なくとも君が星の裏でやった魔法よりは被害出さないつもりだ」

「責めてる?」

「あんな破壊行為、あれしかないから比較対象にしただけだ」

 

 

言ってくれるじゃないの。

ま、そんぐらいで解決するならオールオッケーよ。

あの魔法による被害もあんまりないからね。

局地的に気候と植生が変化したくらいだし。

 

 

「……君か」

「どうした?

 なんか我に用か?」

「なんでもない。

 この星にいる龍たちと似た波長を感じただけだ」

 

 

ついでにゼルギズ龍判定貰えたじゃん。

流石に宇宙にいる龍とは違うみたいだけど、まあそれは私がサンプル採取出来なかったししょうがないってことで。

 

 

うーん、てかアリエル警戒してるなぁ。

このサイズの機械気づかなかったことに違和感でも感じてるのか?

でもアリエルも気づかなかったしそんなもんでしょ。

もう壊すんだし。

 

 

あ、また転移。

静かで汚い構築の転移ってことは、奴だ。

あーだるい、やめてくれ元凶B。

ちなみに元凶AはDね?

AがDなのよくわからんな、Dにしときゃよかった。

 

 

「龍がいるということは貴様が処理するつもりなのかもしれんが、やめておけ。

 Gフリートの対処について話してやる」

 

 

皆の警戒のなかそう言い放つポティマス。

よく普通に話せんなこいつ。

お前が現れたせいでみんなほぼ臨戦態勢なのに。

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

沈黙。

あー地獄。

しかもこのクソエルフ、ギュリが処理することにケチつけたよな。

なにが目的だ。

 

 

「あれはGフリートというのか。

 で、なんで龍が処理してはいけないのか答えろ」

「当たり前だろう、龍のための兵器なのだから。

 龍のためならなんだってするプログラムが組まれている。

 そんなこともわからないのか」

「やっぱりお前が作ったのか、碌でもない。

 本当はアンタに処理して欲しいんだけど」

「私は作っていない。

 設計図は売り払ったがな」

『うわー、これまずいパターンじゃねぇか。

 そっちの組織の技術力が低いことを祈るしかねぇ。

 下手に高かったら兵器として改良されてるから100億%メンドくせーぞ』

 

 

うわー。

さっきまではまだ協力って感じだったのにもう潰し合いぞ?

やっぱポティマスは良くないわ。

 

 

「誰だ貴様、どっから話してる?」

『オレ様は青の別人格の電脳、技術者だ。

 で、そっちの組織の研究力は』

「大丈夫だ、あの時は私が世界で一番優れた科学者だった。

 エンジンや爆弾ですら一国では作れないみたいだから先に作ってやったしな。

 ガワは勝手にやったみたいだが」

『最悪で草も生えねぇ。

 お前が最高技術者ならゼッテー他のやつがメンテ出来んところとかあるだろうが。

 そうすりゃ基本金は入ってくるしな』

「ああ、よくわかってるじゃないか。

 研究資金に確かにそれを利用していた」

『いやー、マジか。

 確かに金もらってんならプロとしては成立するがな、メンテ出来るのオレ様だけでーす、つーのはプロの心がけじゃねーよ。

 アマチュアならそれでもいいとは思うがよくそれで信用保てたなお前。

 確かに技術力と探究心は買うが、金貰う奴の態度じゃない』

「あの時は技術力が全てだったからな。

 戦争もあったし、懐かしい」

 

 

そう言って、目をつぶって感傷に浸るポティマス。

懐かしいとか言ってんじゃねー!

今その皺寄せだけ私たちの方に来てんだ。

てかなんで龍が処理しちゃいけんのだ。

それを言え。

 

 

「龍が処理するとなればどうなるか教えてくんない?

 対策はされてんの分かってるけどどう対策されてるかを言って」

「龍が相対すれば爆弾が投下される。

 大陸が吹き飛ぶくらいのな」

 

 

現場が凍りつく。

いや、なんだって龍であるギュリがこんなにUFOの近くにいるんだもん。

やばくね。

大陸吹き飛ぶ爆弾はヤバいって。

ヤバい。

 

 

「あくまで正しく機能していればな。

 いかんせん能無しが組み立ててるからどう動くかわからん」

『もうテメーが全部作りゃ良かったのに。

 いくらテメーより技術低いやつがガワ作ったとてメンテだるいだろ。

 しかも大陸破壊爆弾とか狂ってるし、マジでその時のお前なに考えてたの?』

「爆弾についても私は小さいものをたくさん作っただけでまさか設計図のまま束ねるとか思ってないし、そもそも部品は作ったが他の武器に転用すると思ってたんだよ。

 考えてみろ、あの宇宙船作るのに明らかに金使いすぎだろ。

 だから本当に作ると思ってないし、作ったの見て頭抱えてるんだ」

『あーそゆこと。

 テメーがどうせその機械設計図の中でポジリまくったから勘違いしたんじゃね。

 一般人にそんな判断まで求めんなよ、アイツらお前が思うより基本的なこともわからんぞ。

 子供に教えるつもりでやれ』

「私が子供に教えるつもりでやると思うか?」

『あー、思わねぇわ。

 ともかく試算度外視の糞機械の設計図渡す時点で察しろ。

 お前は金稼ぐことばっか考えててテメーが生き残ること考えてねーんだよ。

 大陸壊す爆弾に然り』

「……」

 

 

なんか言い負かしてる人いるって。

え、こいつを言い負かせるの?

あとめっちゃ喋るな仲良しかよ。

 

 

「ともかく、貴様はGフリートに近づくな。

 お前には別にやってもらうこともあるしな」

 

 

そう言って手からホログラムを出す。

そこに映されたのは、タコのような頭と足を持つ衛星みたいな機械。

なんだこれ。

 

 

「こっちはGメテオ。

 設計図通りであればGフリートの打ち上げと共に星の外に打ち上げられている。

 貴様ら、見てないか?」

『高エネルギー反応が急速に上に向かっていくのは確認した。

 それだろうな』

「そうか。

 ならばすでに発射されていると見ていいな。

 あれは二つの月の間から小惑星を引っ張って隕石として落とす兵器だ」

「「は?」」

「どうせならと面白半分でつけた機能が全てある。

 ふざけてるな。

 ちなみにこれも落ちれば大陸が吹き飛ぶ」

 

は?

バカでしょ。

なんでこいつ自殺しそうな兵器ばっか作ってんの?

やばすぎ。

 

 

「ただ、こっちについては落とすまでは無防備。

 龍のお前、その隙に破壊しろ」

 

 

うーん。

困った。

その兵器、宇宙にまで飛んでいっちゃってるんだもんなぁ。

それにギュリがついていくと、こちらは私たちだけになっちゃうわけで。

ポティマスはこっちに来るんだし悪巧みした時の対処がダルそうだ。

とかいっても私が宇宙行ってそのタコを仕留めるとしても、ギュリは宇宙船に入れない。

 

 

ギュリやアリエルもポティマスを疑っているのか、苦虫を噛み潰したみたいな顔をしている。

ただ情報がいかんせんポティマス準拠だから悩んでもしょうがない感じがある。

まあしょうがないのか……?

 

 

『おい、Gフリートの設計図あるか?

 流石に持ってなきゃ研究者として狂ってると思うが、念の為だ。

 見せろ』

「はぁ。

 それくらいいくらでも見せてやる。

 なんならくれてやってもいい」

『お、さんきゅ』

 

 

設計図の入ったUSBのようなものを受け取ってそのまま無虚空間にいる電脳にパス。

解析したいんだろうけど、実際に出来るんだろうか。

あんな数キロもある兵器の解析なんて。

 

 

『テメー、主要な部品だけは作ったんだよな?』

「ああ」

『ガワはテメーがつくったんじゃないだろ?』

「そう言ったはずだが」

『エンジニアなんだから二重チェックしろ。

 テメーの高尚な技術をケアレスミスでお陀仏にしたくなかったらな』

「はぁ、わかった。

 貴様だけは研究者として向き合ってやる」

『サンキューな』

 

 

うーん、で、どうなんだ?

エンジニア同士の難しい話されてもわからんのだが。

 

 

『わかんね。

 ただガワ自体は龍とかカンケーねー素材なのはわかった。

 だから心臓部がどんな血液を回してるかなんだが、設計図通りなら元からこの星にいねー龍は拒絶される。

 ま、コイツが世界最高の技術者ならどんな小細工してるかわからん以上素直に従っておくのが吉だ』

 

 

「マジかー。

 じゃあギュリは別行動確定か」

「流石にそうするしかないか」

「はあ、最初から疑わなければ良かったものを。

 誠に遺憾だ」

 

 

アンタが元凶だし、全員遺憾だし。

少なくとも元凶は黙っとれ。

 

 





Gフリートはすごい。


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123 vs機械円盤④ -出陣-


高評価、感想お願いします。



「だがそんなことを言っている時間はない。

 見ろ」

 

 

ポティマスが指指す先に宇宙船から放たれる大量の黒い点。

万里眼で見てみてわかったけど、黒い点は全部ロボか。

うん数がヤバいしちょっとだるいかも。

 

 

 

「あれは地上部隊だな。

 10万いるから人的被害を出したくなければ兵を出せ。

 移動速度的に数日で人里まで到着するはずだ」

「なんと!

 うむ、どうするか……」

 

 

頭に手を当てて考える素振りをする教皇に目を細めるポティマス。

あ、これヤバい。

まさかだけどこれ、ダスティン兵を出す余裕ないな。

とりあえずポティマスに悟られる前に助け舟を出さねば。

 

 

「私が10万兵全てを出す。

 相手の強さはおそらくロボレベルだろうし全く問題はない。

 ポティマス、アンタも兵出したくないなら出さないでいいよ。

 ただGフリートには一緒に来い」

「わかりました。

 お言葉に甘えましょう」

「了解した。

 ならば私も兵は出さない。

 無駄な被害は出したくないのでな」

 

 

ダスティンはともかくポティマス、お前無駄な被害とかいう一言無駄すぎる。

なにコイツ、なにかしら一言追加で言わないと気が済まないの?

だから嫌われるんだよ。

 

 

「あとは航空部隊がいる。

 我々がGフリートに潜入しようと飛び立てば返り討ちにあうだろうな。

 その対策はどうする」

「そこは我に任せて先に行け。

 上手くやる。

 あ、もちろん飛龍どもには手伝ってもらうが」

 

 

腕組みしながら言うゼルギズ。

いや、無理じゃねコイツには。

そもそも飛べないだろ。

 

 

「いや、我飛べるし!

 1年間伊達に引きこもってたわけじゃないんだ、ちゃんと龍の姿にもなれる」

 

 

そう。

ならとりあえず好きにさせてみていいか。

どうせ連れて行くんだし。

 

 

「ならばとりあえずこの問題は解決だな。

 では青、貴様は蜘蛛を10万匹呼べ。

 本当に出来るならな」

「問題ない、今やる」

 

 

私は高台からひょいと飛び降りて、平原に着地。

そこから召喚を発動。

クイーン2万、アース8万匹でいいか。

本当はクイーンの方が多いけど場所取りすぎちゃいそうだし。

 

 

地獄の蜘蛛たちは共食いの性質があるから、呼び出す奴らだけ賢姫で共食いの性質を解除。

その代わりに機械を襲わせるように仕向ける。

ポティマスはわからんけどぱっと見機械じゃないから襲われないと思う。

 

 

『召喚』

 

 

ぽとぽとと地面に落ちた小さな蜘蛛たちは、本来のサイズを取り戻すために巨大化して行く。

見上げるサイズになるけどクイーンはまだまだ大きくなる。

なんだって、あのマザーと同格の魔物だ。

スキルはほとんどないけどステータスの暴力はできる。

しかもロボ相手だったら魔法バリアとかもあるしスキルの有無はあまり関係ない。

 

 

『お前ら、地上にロボがこれから降りてくる。

 それを一匹残らず殲滅しろ。

 出来るだけ星にダメージは与えるな』

 

 

この言葉を聞いて、蜘蛛たちはずもももと移動を開始する。

移動先は地上部隊の着地地点。

戦車が出てこない限り殲滅できるだろうし問題なし。

 

 

「ソフィア、メラゾフィス」

 

 

白に指差されて、私は考える。

いかんせん無虚空間より安全な場所はないしなー。

私が死ぬ可能性は考慮したくないけど、死んだら詰むよな。

それだけは避けたい。

 

 

よし。

ケレン領に預けよう。

シュンと転移して、ポイと二人を出して戻ってくる。

私が昔住んでたログハウスの中に入れてきたし大丈夫でしょ。

ケレン管理担当のプロテクトもそこに住んでるし、高速念話で話したからオールOK。

 

 

「私はこのことについて各国に伝えに行きます。

 最悪の事態は考慮せねばなりません」

 

 

そう言ってダスティンも帰って行った。

まあありがたい。

変に弱い人がここに残っていても巻き込んで殺してしまうかもしれないしね。

 

 

「あー嫌な予感がする-!

 どうして俺がこの役に-!」

「アンタら飛龍生命線だからね」

 

 

私たちに近づいてきた飛龍の主、ヒュバンは頭を抱えてる。

背中に白がくっついてるしアリエルには絞られてるしで大変そうだ。

ポティマスやアリエルも龍に乗る準備をしてるあたりみんな飛龍に乗っていくんだな?

 

 

「じゃ、我も龍になるとするか!」

 

 

いつの間にか離れていたゼルギズが腕伸ばしをするとともに、現れるのは巨大な炎の球体の渦。

え、何するつもりだこいつ。

地龍がモデルの龍は羽無いはずだし、なんで龍になるんだ?

響く轟音に、思わず皆が見つめていた。

 

 

「よし、この世界で龍化するのは初めてだったが、案外気持ちの良いものだな!」

 

 

現れたのは、体長20mはあろうかという、巨大な翼を生やし黒い溶岩を鱗として体を包んだバハムート。

いや、いや。

ちょっと待て。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「待って、どうして翼生やした。

 てか飛べないだろ」

 

 

昔のカタツムリ形態どこにいった。

今も甲羅はサドルみたいになって残ってるけど、翼とか角なんてもん生えてたらもはやカタツムリでもない。

あと大きさ負けてるヒュバンが固まってるだろ、飛龍の主可哀想。

 

 

「翼生やしたのは飛べると便利だからだ。

 まあ気流に煽られれば飛べないのだがな。

 だから無理やり飛ぶ。

 電脳にも聞いたが、ちゃんと安定して飛ぶにはバハムート体型でなくヒュバンのようなワイバーン体型でなければいけないようだ。

 だから少しインチキして一気に進んでいく。

 ヒュバン、お前らガン無視して飛ぶから努力しろ。

 気流は完全に掻き乱す」

「あー、やべーよこいつらまじやべーよ。

 しょうがねぇ、俺ら飛龍だからマジで気にせず飛べ!」

「我と電脳、青は優先して航空部隊を殲滅する、だからお前らは侵入最優先だ。

 白、バズーカの確認しとけ」

 

 

白は手に持ったバズーカをもう一度見る。

ポティマスお手製の、超威力バズーカ。

これでGフリートの壁を破壊して内部に侵入するみたいだ。

そしてコアを破壊してゲームセット。

 

 

よし、問題ないな!

 

 

「たく、貴様はとんでもないものを毎度見せてくれる。

 私はGメテオの破壊に行く。

 誰一人欠けずに帰ってこい」

 

 

ギュリがアリエルの頭に手を乗せる。

その手を静かに取って降ろすアリエル。

なんだコイツら、本当に愛し合ってるじゃないか。

絶対に全員生かしてやる。

 

 

「アンタも早く全て終わらせてね。

 Gフリートの後処理しなきゃいけないんだし」

「もう終わったつもりになってるのか……。

 まあいい、そんな気持ちで最後まで終わらせてくれ」

「ん、気をつけて」

 

 

アリエルと私の言葉を背に受けて転移していった。

よしGメテオは多分これで大丈夫。

あとはこちらの番だ。

 

 

「ポティマス、裏切るなよ」

「善処する」

 

 

いや善処ってなんだ、そこ誤魔化すな。

まあでも、ここで爆弾が落ちたら私の積み上げてきたものはパーか。

人類滅ぶし。

だから世界を救うために本気でやらなきゃ。

ゼルギズに乗ってGフリートを見定める。

私の、みんなの全力をかけて。

 

 

”豪火絢爛”ゴウカケンラン

 

 

ゼルギズが体表の溶岩を融解させたことで周囲に激しい気流が発生する。

これなら風を少しでも受けただけで空に打ち上げられる。

だけどお前ら飛龍だろ、ゼルギズの暴走にも耐えて頑張って飛んでくれ。

 

 

出撃しゅつげき!!』

 

 

吹き荒れる上昇気流のもと私たちは一気に空へ舞う。





ゼルギズの見た目がガキアからだいぶ変化しているのは、もともとあった龍に対してゼルギズが持っていた理想像と青や電脳の龍に対するイメージが無虚空間内で混ざり合った結果です。


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124 vs機械円盤⑤ -戦闘機-


高評価、感想、誤字指摘よろしくお願いします。



 

熱い。

夏で暑いなんてもんじゃない、本当に焼かれているような暑さだ。

私じゃなきゃ、アリエルでさえ焼け死んでいると思う。

それほどまでに熱い空気が私の周りをまとわりつく。

ああ、HP高速回復が無ければ間違いなく死んでいる。

 

 

『フハハ、敵にあらず!

 所詮人類が作ったもの、溶岩地龍を傷つけるには至れないのだ!』

 

 

私の下にいるこの熱の元凶が、嬉しそうに吠えている自称溶岩地龍ことゼルギズ・フェクトガキア。

コイツはマグマを軽く上回る体温で無理やり周りの空気を加熱し上昇気流に乗って飛行しているのだ。

もともと飛ぶのが下手だったからこうやって飛んでるんだけど、マジで気候が変わっちゃいそう。

後で無虚空間から引っ張り出すのでもよかったか?

 

 

直線的に飛ぶゼルギズに向かって放たれる戦闘機からの射撃を、空間機動の足場を作ったり熱の壁を作ったりして無理やり止める。

そして体温の上昇や低下を繰り返すことで周囲の気流を狂わせて墜落させる。

なんつーか、普通なら絶対にできない突破法。

案の定遠くにいる白が呆れ顔をしているのが見えるし。

 

 

『てかよく飛べてるな、ヒュバン。

 我結構激しく気流掻き乱してるから、ここでの飛行は無理になると思ったが』

『うん、結構やばいよ。

 竜はともかく龍たちもみんな戦ってるし、正直めちゃくちゃ飛ぶの上手いと思う』

 

 

だって戦闘機すら安定しては空気が読めずに墜落しうる環境なんだぞ?

その中で当たり前のように飛んでいて、なんなら戦闘機の射撃をアクロバット飛行で回避なんかもしているのだ。

今のゼルギズにはそんなこと絶対無理だし、しかも環境は戦闘機の結界によって魔法が不安定。

なんで当たり前のように飛べてんだ。

 

 

まー、私たちは戦闘機の殲滅が第一だから安定して数を減らしていくのが目的。

後でGフリートの中には入るつもりだけど、それは入り口開いてから後で入るんでいいからね。

今は白たちの道を切り開かねば。

 

 

『白たちに先行しろ!

 今はあいつら攻撃回避をしているから余裕があるはずだ!

 嵐天界を積み上げる!』

『は!?

 お前が言うんなら平気か!

 温度とスピード上げるから殻に掴まれ!』

 

 

温度を上げて、さらに上昇気流を加速。

鞍のようになった殻の上で嵐天界の準備をする。

魔力は結界を貫通しないけど爆風を結界内までぶつけてやる。

覚悟しろ戦闘機ども。

 

 

ゴォォォという爆音が耳を掠めていく。

それとともに落ちていく戦闘機。

ここら辺になると近づいた瞬間に融解するとか、もうとんでもない温度になってるんじゃないか。

こんな温度なら理論上はGフリート内でも好き勝手出来そう。

流石にコア融解とかはやる気しないけど。

 

 

 

 

 

航空班は、Gフリートのコアである爆弾をいち早く分離させて機能を停止させなければいけない。

もともと勝手に飛び上がったGフリートがいつ爆弾を落下させるかわからないからだ。

ギュリが殴ったところで爆弾は投下されないかもしれないし、ゼルギズが溶かしたところで投下されないかもしれない。

だけど逆に私たちが触れる前に投下してくる可能性だってあるし、今この瞬間に落とされるかもしれない。

どんなに優れた兵器であっても4000年前に生み出された古代兵器だ、必ずガタは来ている。

急がなきゃ。

 

 

だけど、急ぎすぎたから準備不足だった。

下を見ると、今この瞬間に竜が断末魔とともに戦闘機に撃ち落とされている。

ゼルギズによって生み出された強烈な空気の対流は、竜たちのSPを一気に削るのに十分なんだ。

中位や下位の竜たちは息切れした瞬間に射撃に撃ち落とされそのまま命を絶っていく。

そして上位の竜でさえ疲労が溜まれば戦闘機の鋭い連撃を避けることはできない。

竜たちは地上の蜘蛛部隊を守るために下の方で戦闘してもらっていたけど、このままでは全滅する。

より高い位置からの射撃を受ける弾除けとしか機能していない。

 

 

だからと言ってもう止まれない。

ゼルギズの乱気流は上層の戦闘機に十分有効だ。

白たちを送り届ける上で、上層の戦闘機を削ぐのは絶対条件。

しかも戦闘機は無限に湧き出てくるから、もう乱気流を止める隙もない。

止めたらやられてしまう。

だから下層の彼らにはただ粘ってもらうしかない。

くそ、まじで時間が足りなかった。

だから一刻でも早く終わらせる。

 

 

『よし、ぶっ放すぞ!

 ゼルギズ飛び続けろ!』

『わかったって、待て!?』

 

 

私は、ゼルギズから飛び降りて嵐天界を重ねる。

私の背中には天使のような白くて巨大な羽。

羽は上昇気流を受けて私ごと大きく空を舞う。

 

 

狙うは戦闘機の出撃口。

重ねる枚数は8枚。

少ないようだけどこれでも下手すれば天候が変わる。

それだけやばい魔法だし、龍以外はおそらく余波の気流にすら耐えられない。

 

 

標準を合わせる。

直径200mの魔法陣を寸分違わず整える。

そして私は全力で発射した。

 

 

『絡繰兵器に幸運あれ!

 ”旋星咆哮”エアログレイブ!!!

 

 

私の魔法は、途中でバリアで魔力が削がれ純粋な風のエネルギーだけになる。

だけどその風のエネルギーだけでも出撃口を破壊するのには十分だ。

私はゼルギズのもとへ降り立って静かに様子を見定める。

 

 

 

戦闘機を落としながら進むドリル状の旋風はいとも容易くGフリートに激突。

その力で、大きく凹む四角形の出撃口。

下側の半分はメコメコにしたせいで詰まったのか、出撃口で起きる爆発。

よし。

なんか爆発はしたけど戦闘機の出は遅くなったから結果オーライ。

 

 

 

 

 

 

次の瞬間だった。

Gフリートの副砲であろう小さな砲台たちが皆わずかに光り始める。

キュィィンという感じで、光の粒子が集まってる。

あ、待って、これ。

いけない。





結果的に火の車



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125 vs機械円盤⑥ -いのちvs機械-



高評価、感想、誤字訂正よろしくお願いします。




Gフリートの底面の外周が、カッと光る。

ヤバい、来る。

光線だ。

 

 

『レーザー!

 ポティマス、説明をよこせ!』

 

 

念話で叫ぶと共に回避。

だけど外周から放たれる大量のレーザーは残った戦闘機ごと龍を無差別に爆撃する。

龍の数匹がそれを喰らって断末魔とともに墜落していく。

龍の身体を軽く貫通するレーザーとか、これゼルギズが喰らっても不味いかも。

当たりどころが悪けりゃ、一撃でお陀仏だ。

 

 

『戦闘機の放出が停止したことによる対抗措置だ。

 もともとこのGフリートは副砲も数百搭載されている。

 基本的には発動しないはずが、侵略モードから戦闘モードに切り替わったから機能しているようだな』

 

 

いや、ヤバいって。

私が動き出した時に言って欲しかった。

アンタ、星が壊れたら一緒に死ぬんだよ?

もっと焦ってくれ。

 

 

『だが主砲の周りはこれで危険がだいぶ減った。

 こっちは副砲もないし、主砲が発射されるのはわずかだが予備動作がある。

 アリエルの眷族の白いほう、主砲ごとそれで破壊しろ。

 そこから侵入する』

 

 

どうやら、ロケランで主砲ごと破壊して侵入する方針になったみたい。

だけど確かに理に適っている。

ロケランにそれだけのパワーがあればの話だけどね。

 

 

『ゼルギズ、私たちも主砲の方へ向かう!

 上昇気流を起こしてみんなを引き上げる!

 だから先行する』

『了解だ!

 問題なく送り届ける』

 

 

体温を下げ、上昇気流を弱める。

そのまま一気に滑空して白たちの前へ。

私たちの役目は主砲まで安全にみなを送り届けること。

再び体温を上げ、先行しながら上昇気流を生み出す。

これで私の下にいる白たちも登りやすくなったはずだ。     

 

 

龍の数も少し減って、副砲を避けるために結構な体力は使っちゃったけれど、無事こちらまで来れた龍も沢山いる。

ここならば集まって一気に進むことが出来る。

副砲の砲撃はここまで来ないし、戦闘機もだいぶ減ったし。

 

 

 

あれ。

でも、おかしくない?

だって、私が凹ませたとは言ってもまだ出撃口は空いてるわけで。

なんならめっちゃでかい出撃口だから平面のところもある。

だけど戦闘機はほとんど出るのをやめている。

流石に変じゃないか?

 

 

 

 

『全員退避!』

 

 

白の声が響く。

高速思考を無理やり加速して考えて、私はゼルギズから跳ぶ。

私の本気をぶつける。

 

 

ダメだ、主砲の発射は抑えられない。

遅くなった世界の中、私は手をかめはめ波の形にして突き出す。

しょうがないだろ、避けられなきゃみんな死ぬんだから。

不死が発動したとしても危ないやつなんだから。

無理はさせてもらう。

 

 

合わせた両手の間で魔術を構築して機械の結界を打ち消す。

それでもまだ足りない。

腕にレールガンのような磁場を帯びさせそれで無理やり魔力を捻じ曲げる。

捻じ曲がった魔力は、直線に進むのを妨害されたために強いエネルギーを生み出す。

私の体ですら破壊するほどに。

ああ、腕の皮が吹っ飛ぶ。

 

そのエネルギーを腕に帯びさせ、さらに天雷界を10cmまでに圧縮する。

そしてそれを30枚圧縮して1cmの厚さまで薄くする。

もうこんなにエネルギーが貯まった、これだけでも地球へ何往復出来るだろうか。

ヤバい、指が千切れる。

指が千切れたら暴発してしまう。

だけどみんなを守らなきゃ。

白を守らなきゃ。

私のことは神にでも祈る。

 

 

ダメ。

私も生きなきゃ。

私も、一緒に生きなきゃ。

私が生きることが、今は選択肢として合ってるはずだ。

後悔を残さないためには。

 

 

誰も殺させない。

私も死なない。

傲慢が、この世界の答えの筈だ。

 

 

”時空貫通”ワールドトラベル

 

レーザーが発射されたのと、私が指を緩めたのはほぼ同時。

指が吹き飛んでいくのを見ながら私から翼が剥がれていく。

 

 

ごめんね。

私は少し願ってみるよ。

レーザーは、任せろ。

 

 

 

Gフリートを見上げて、笑えた。

 

 

黄色い閃光は全てを貫いていく。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

馬鹿じゃねえか。

今お前は死んじゃいけない。

我は、瞬間的に移動した青に向かって飛び降りる。

翼を消し去って人の姿になって。

世界で一番大切で、貴重で、生きがいのある奴はおまえだったはずだ。

昔から変わっちゃいねぇ、お前は自覚しろ。

我は、レーザーの向かう先へ飛び降りる。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

ヤバい。

青、急にワープして閃光を放ったと思ったらボロボロになって落ちていった。

わたしの目に映るレーザーの射線に飛び込む赤黒い龍と、レーザーの真ん中を無理やり切り開いていく細い閃光。

直後回避する前に裂かれたレーザーはわたしの周囲を包み込む。

細い光り輝くチューブのような中を、ヒュバンとわたしは飛んでいる。

なんだこれ。

私の前に起きているあまりの事態に状況が飲み込めない。

青は、無事か?

 

 

『ヒュウ!上手いことやりやがる!

 とりあえず今は先のこと考えろ!

 今ので主砲もなかなかなダメージ入ったはずだし、次の発射は修復含めても時間かかるぜ!

 例のもの取り出せ!』

『うん』

 

 

青とゼルギズはレーザーの中に飛び込んでいった。

2人の状況はわからないけど生きてることを考えるしかない。

青は不死を持っているし、ゼルギズはとんでもない耐久力を持っている。

だから生きてると願うしかない。

 

 

だよな、ヒュバン。

お前はすごいやつだ。

焼け死んだ龍がいるというのに。

大切な人を後回しにして今を生きれるなんてね。

ま、あいつも前世からの腐れ縁、生きてるに決まってる。

うん、生きてる。

 

 

なによりそんなセンチメンタル、わたしには似合わないか!

わたしの回りを覆っていたレーザーが切れると同時に、わたしは空納からロケランを取り出す。

いつの間にかだいぶ主砲に近づいていた。

後は撃ち放つだけだ。

 

 

 

 

狙いを定めて引き金を引く。

光り出すロケランに、わたしはヒュバンを蹴り飛ばして上に飛んだ。

 

ああ、とんでもないミスをしちゃったみたいだ。

今までの事のせいでついこれを作ったやつがポティマスであることを忘れていた。

 

 

これ、本体も爆発するやつだ!

 

 

放たれるロケランがあまりの衝撃に耐えられず自爆する。

強い爆発に身体が吹き飛ぶ。





死ぬわきゃない。
まだ生きたい。生きなきゃいけない。
未来のために。


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126 vs機械円盤⑦ -止まるな-


高評価、感想、誤字訂正お願いします。
機械円盤編は10回前後で終わるはずです。




「よし、少しイレギュラーはあったが問題なく侵入できたな。

 これでコアを止めに行ける」

 

 

主砲を破壊した部分、そして今私たちがいるところ。

そこに降り立って飄々としているポティマスにわたしは唇を噛む。

アリエルもヒュバンも納得しているようには見えない。

ポティマスを担いできた龍でさえ強く睨みつけている。

 

 

あの爆発でわたしは上半身、人の身体の部分を全て吹き飛ばされた。

蜘蛛の頭が残っていたから奇跡魔法を使って今この場に立っているけど、不死も奇跡魔法も無ければ死んでいたと思う。

あんなロケランを仕込んでいたの、正直馬鹿なんじゃないか。

下手したら惑星が吹き飛ぶんだぞ。

それと怒っていることはもう一つ。

なんならこっちの方が本命だ。

 

 

「主砲の装填が少し遅いといったけど、お前、なんであんな早く発射された。

 まさか故意で誘導したわけじゃねーよな」

 

 

今までのわたしとは思えないほど強い語気になって、言葉がすらすらと出てくる。

頭に血が昇るなんてモンじゃない。

純粋にケチョンケチョンにしてやりたいと思う。

殺意が湧き出てくる。

 

 

「主砲の装填が早かったのはこの星のエネルギーが今現在飽和気味だからだ。

 元々エネルギーが貯まれば発射されるものだったからな。

 それでも威力は増していたが」

 

 

態度を超えないポティマスに、私はつい拳を強く握り締める。

まずい、怒りを収めないと今この瞬間にコイツを鉄くずにしてしまう。

 

 

「青とはまだ音信不通。

 彼女がレーザーをこじ開けてくれたからここまで来れたんだ、感謝の気持ちの一つすらないのか?」

「ねぇ、白ちゃん、ひとまず落ち着こう」

「ないな、強いて言うなら電脳だ。

 アイツがいれば様々な実験が円滑に進んだだろうし、協力関係を築ければ一緒にやりたかったものだ。

 本当に残念だと思っている」

「クソエルフも黙れ」

 

 

魔王が、ポティマスの身体を垂直に腰まで叩き埋める。

魔王の額にも青筋が浮かんでいる。

操糸でがんじらめにしてから、勢いよく引き抜く。

あまりに勢いよく引き抜きすぎてポティマスが天井に頭をガンとぶつけたけれど、魔王は気にしない。

私も殴りたいけど魔王に止められそうだな、不快。

 

 

「青ちゃんはね、私の孫のような存在なんだ。

 白ちゃんも青ちゃんも私の孫だけどさ。

 もちろん電脳くんも私の孫のように見ている。

 君も、ちょっとばかし人に優しくする術を覚えたらいいんじゃないかな?

 これは私の言葉じゃない、青と電脳なら言うであろう言葉だよ。

 貴様にすら優しい心を捨てない2人の言葉だ。

 貴様にすら自分を捨てれる優しい2人の言葉だよ。

 それを、お前は、お前は……!

 

 白ちゃん、行こう。

 コイツを今この瞬間は殺せない」

 

 

「おい待て、貴様、私をせめて解放しろ!」

 

 

ポティマスを縛りつけたまま、私たちは走り出す。

こちとら怒りのはけ口を探したいんだ。

 

 

 

 

ロボットをバキリバキリと砕きながら進む。

ただ幸運なことに、このロボットは大して強くない。

あの馬鹿が言ったこともここには反映されてないみたい。

そもそもあれを信じるかっていうのも野暮な話だけど。

 

 

 

 

『ヅー、ヅー、あー、あー、聞こえるか?』

 

その声に思わず足を止めるわたしと魔王。

そりゃそうださっきまで全く音信不通だったのに、急に声が響いたんだから。

私たちが待ち望んだ声が。

ポティマスもニヤリと笑った気がするけど、気にしない気にしない。

 

 

『電脳だ、お前ら今Gフリートのどこにいる。

 ちょっとムカついた、一撃加えてから侵入する。

 ポティマス場所を教えろ』

『B33、L45、F21だ』

『感謝する』

 

 

次の瞬間、床が目の前の戦車と共に弾け飛ぶ。

その衝撃波はどんどん天井まで破壊していく。

トン、そんな音が鳴りそうな足取りで着地する黄色い髪の少年。

彼は満面の笑みでこっちを見て、笑った。

 

 

「あー、待たせたな。

 行くぞ、止まるな」

 

 

少年は、片手をかざしてロボットの群れを吹き飛ばした。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

少しばかりだるいことになった。

というのも、青の身体の方は問題ない。

だけど意識が少し弱くなっている。

すぐ治るかもしれないが、そうでもないかも。

つまり、オレ様ですら予測不能なことが起きてしまった。

もとから気絶無効のくせによく気絶しかけるコイツにイレギュラーが発生しないことを祈ること自体野暮なのかも知れないが。

 

 

破壊したロボット群を無虚空間の中へ放り込んでいく。

中にいるゼルギズも瀕死だが、まあ放り込んでも大丈夫だろう。

てかなんで生きてんだ、普通に不死なかったらあのレーザービーム死ぬだろ。

青の身体ですら生存できるか怪しいビームなのに。

 

 

龍の結界でも手に入れてたのか?

それならまだ話はわかるが。

だとしたら終わってんだろ、火力上がった上でゼルギズにすら生存許すとか。

龍にどう対抗するつもりだったんだよ。

 

 

そもそも侵略モードがある時点でわけわかんねー。

最初の侵略モードとか誰を侵略するんだよ。

マジで金と技術の無駄遣いしてて頭が痛くなる。

こりゃ黒歴史にもなるわ。

 

 

ポティマスを解放して、道案内とロボットについての説明をさせる。

白は少し不満げだけどしょうがねぇ。

今は効率重視だ。

 

 

青はオレ様の体内で休養中ということも伝える。

納得してるかは怪しいが、今は今だ。

そもそもGフリートの中に入れば身体交代することも視野に入れてたしな。

技術的にも。

 

 

「貴様、本当に野良に放っておくのにはもったいない。

 ちゃんと手続きすればエルフの方に来てもいいが」

「遠慮しとくわ。

 手続きに碌な予感がしねー。

 本当に行きたくなったら行くけど今んところはそんなキョーミねーし。

 ま、いつか行けたら行く」

「ああ、待っている」

 

 

そんな軽口をポティマスと叩きながら進んでいく。

戦闘はアリエルと白に任せっきりだが、実際2人の方が強いしな。

オレ様は魔法自体は上手いが実戦経験が足りんし、青といた方が正直戦える。

最初に威切ったのも少しやり過ぎたし。

 

 

ただなー。

ポティマス、精神性は終わっているが技術力を捨てるのは人類の損失レベルのものだ。

うまいこと使えねーかなー?

星で腐らせるには勿体無い。

何億人殺したかわかんねーからどう救えばいいかもわからんけど。

いっそ神にでもなってもらった方が楽なのか?

Dも似たようなもんだろうし。

よりたくさんの人救うなら罪を背負えるのでは。

 

 

あー、考えてもわかんねぇ。

オレ様は進むべき扉をまた吹き飛ばす。





今電脳がバテてないのは青の体を流用しているからです。
青とは違う体を作って使えばすぐバテます。
そもそも電脳は肉体に自信ない奴だし。



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127 vs機械円盤⑧ -止めろ爆弾-


高評価、感想お願いします。


「戦車だ、貴様らすぐ処理をしろ。

 我々は先に進む」

 

 

現れた戦車たちの処理を二人に頼んで、先へ進む。

早く行ってGMA爆弾を止めなければいけないからだ。

あと結界が張られているから外の状況もわかっていないし。

仮にもクイーンを万単位で置いているからロボ如きに敗北してもらっちゃ困るが、オレ様が一時的にでも管理下から離していることで暴走してもそれはそれで困る。

敵をロボにしているからバグればフレンドリファイアすることもできないし、もしクイーンが龍を狙えばギリギリで保っている制空権が一気に崩壊しかねない。

出撃口も完全には破壊されていないから戦闘機出るだろうしな。

 

 

 

このGフリートは拠点という意味も兼ね備えているからかやけに道が入り組んでいる。

城下町のような、といえばわかりやすいだろうか。

要するに走っていてもそれなりの時間がかかってしまうのだ。

だが道が長いだけでこちらのペース自体は順調。

敵を処理する時間はほぼゼロに近いし、RTAだとしてもかなりいいタイムが出ていると言えるだろう。

 

 

「そーいやテメー、なかなか裏切らねぇな。

 本当はなんかしてーんじゃねぇのか?」

「無理だろう、アリエルが即敵を処理しているのだからそんな余裕あるはずもない。

 貴様、わかってて言ってるだろ」

「ご名答。

 ただの揶揄だよ揶揄」

 

 

ポティマスは今の所裏切る素振りをしていない。

いや、ロケラン爆発させたから裏切ってはいるか。

あれ、てことはこいつ白を傷つけようとしたってことか。

地獄に蹴り落とさないとダメじゃねーか、たく。

さて。

 

 

走った距離的にもうすぐ機関室には着くだろうがそしたらどうしたものか。

ポティマスのことは、全て終わったらオレ様が何もしなくても白とアリエルが処理するだろう。

だがポティマスの方もオレ様や白の捕縛や殺害、アリエルの殺害もしたいはずだ。

よし状況整理だ。

 

 

オレ様でも解除はできるが、ポティマスというパーツがGMA爆弾の解除には最も適している。

だからオレ様らはポティマスが爆弾を解除するまではポティマスを傷つけるわけにもいかない。

下手に傷つけて解除不可ってなると詰む。

逆に、ポティマスは仮にこちらが死んでも問題なく解除できる。

だからコイツは爆弾解除の前に仕掛けてくるだろう。

こちらは傷つけられねぇんだから。

 

 

クソ、これは予想以上にきついかもしれねぇ。

アリエルや白が殺しちまえっていうテンションならさっさと殺してオレ様が解除するってことも出来るんだが。

いかんせんアリエルがちゃんと考えてくれててポティマス生かしてるからな。

合理的な以上傷つけらんねぇ。

 

 

 

 

そんなことを考えていたら、目的地に到着していた。

クッソ、Gフリートの金属喰らいたいが時間がなさすぎた。

もったいねぇ、全部終わって落とした後喰うんでいいか。

 

 

「私とこいつでハッキングや諸々のことをする。

 アリエルと白いのは戦闘をしろ。

 中になにかいた場合、だけどな」

 

 

ため息をついた白を横目にポティマスと扉を開錠するためのハッキングを始める。

だが、これ自体は別に一人で開けられるんじゃないかっていう難易度。

なんなら地球最高峰の電子制御キーとそんなに遜色がない。

開発者なら開けられない方がおかしな簡単さだ。

それなのにオレ様を同伴させたのが怪しい。

 

 

カチリ。

鍵が開けられて、静かにドアが開いていく。

そこに合ったのは、円形の殺風景な部屋。

ポティマスが警戒したようなロボなんてものはなく、真ん中にただの柱があるだけ……。

 

 

 

嘘だろ。

思わず膝を地面につき、頭を抱える。

バカかよ。

とんでもないこと起きてるじゃねぇか。

最悪のサンドイッチ起きてやがる。

 

 

その隣で、

「バカな」

そんなポティマスの声が聞こえる。

は、これ想定できてなかったのか?

お前がこのGフリートについて一番知ってるはずなのに?

あー、念の為エンジニアのこいつ連れてきててよかったわ。

オレ様も想定できてなかったし正攻法ならコイツ必要だわ。

 

 

顔を上げると柱から大量の銃が剥き出しになっている。

ラッキーなことに感知しただけで、まだこちらを狙撃する気はないらしい。

部屋の中に入ってきたら撃ち放ってくるのだろう。

ならば、こちらもやりたいことをさせてもらう。

 

 

「全員この部屋から少し離れろー!

 作戦会議だー!」

 

 

受動的って言うのは手を出さない限りなんでも出来ていいねぇ!

 

 

 

少し離れて部屋の外から機械を見つめる。

肉眼でも分析し放題なあたり、どうやらここまで見られたりするのは想定されてねーみたいだな。

そしたらもうこっちのもんだ。

 

 

「電脳、どういうこと?」

「真ん中に兵器あるだろー。

 あのコアがGMA爆弾!」

 

 

それを聞いて、頭を抱えるアリエルと白。

だがポティマスは対処法をもう思いついたのか、落ち着いている。

まあ考えていることは同じはずだ。

 

 

「どうするよ」

「「ギュリエディストディエスに処理してもらう」」

 

 

おー、ビンゴ。

そりゃそうだわなー。

いくら龍とは言ってもそれがノーリスクだし。

なんなら柱にも龍感知機能とかねーの今見て分かったから完全に脅威は消え去った。

と同時に予想通り空から落ちてくるスマホをパシリと掴み、口元に当ててほくそ笑む。 

そこから流れ出る時止めの魔術を強制的に一部解除。

今までは好き勝手されてたんだからいい加減こっちのターンだわな。

 

 

「許してくれっきゃねーけど、実際どうなんだ?

 流石にそれ拒否だとちと手間がかかるが。

 あと白にさりげなく干渉するのダリーからやめろ。

 オレ様に干渉できねぇからするとか負け犬だなぁ」

 

 

この場にいる全員が聞いている中、無理やりに交渉を開始する。

Dとかいう馬鹿に。

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

『ああ、それについてですがギュリエには宇宙に待機してもらってますよ。

 彼がいたら全部解決するしでつまらないじゃないですか』

「いやオレ様がいる時点で同義だろ。

 まじでパパッと解除してもいいんだが」

『ならしていいですよ。

 私はそんなあなたの成長を願っています。

 これは本当です。

 あなたが成長するのはこの世界、いやこの宇宙の一つの願いですから』

「バカ臭え。これで通信終わりなら切んぞ。

 てかゲームしたい時にいつでも会えるしな。

 じゃ」

 

 

そう言ってスマホを口の中に入れた瞬間スマホが消え去った。

クソ、手遅れだった。

ギュリは先に根回しされてたしスマホの構造は分析できないしで、踏んだり蹴ったりだ。

 

 

 

「電脳くん、今のは?」

「オレが前々から話には挙げてたおありがてぇ邪神サマだ。

 で、アイツの権限でギュリ宇宙にいるらしいからオレらで解決すっぞ」

「おい待て貴様、今何が起きた!」

「あー、クソエルフ、神の上にいる超神様とお話しした。

 サリエルとか知ってんだろ、あれを軽く上回るすげーやつだ。

 実際は普通の人よりちょっとエネルギーがあるだけのただの女」

「そうか、エネルギーがあるだけのただの女、か。

 私にはそんなようには聞こえなかったが」

 

 

あったりまえだー!!

そう聞こえてたら狂ってるとでも思うだろ!

頭硬すぎじゃねーかこれも冗談だよ!

 

 

まあコイツは元からそんなやつとしてどう対処するか。

プランは3つくらいあるが全部見せたくねぇ。

全て後々作戦に使うやつだし今のコイツの科学力じゃオレ様ですら対処可能だ。

MAエネルギーさえあればあのGフリートの主砲でさえ連発可能になるんだから、それだけエネルギー資源が無限にあることは脅威になる。

 

 

「おいポティマス、お前対抗策あるか?」

「あるが、私の今のボディが無防備になる。

 だから却下したいが」

「やれ。

 今はテメー殺す時間も余裕もありゃしねー。

 お前を嫌いまくってるアリエルすら黙ってんだからマジで余裕ないんだよ。

 お前、今のMAエネルギー飽和状態で落とされるGMA爆弾とか全員お陀仏になりかねねーぞ」

 

 

白の方に目配せして頷かせる。

実際白が従ってくれてよかった、コイツはアリエル以上にポティマスにキレてる可能性あるし。

 

 

「はあ分かった。

 貴様の進言に従ってやるとしよう。

 だが勘違いするなよ、私がやりたくてやるのだ」

「オッケー、センキューな」

 

 

ポティマスが壁にへたり込むと、その背中からするするとコードが出てくる。

どうやらこれでハッキングする作戦のようだ。

コイツが急に動きを止めたのを見ると、その間は動けないから無防備になるということなのだろう。

ただコイツ、勝手に始めちゃったからやべえ。

まだ何にも決めてねーのに。

 

 

「アリエルは先行して部屋の中に入って銃撃を防げ!

 白はポティマスを守り抜け!

 オレ様はロボット本体を無力化する!」

 

なんとかするぞ、無理矢理でも。








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128 vs機械円盤⑨ -ヒトガタ-


高評価、感想お願いします。
少し刺激の強い描写があります。ご注意ください。



部屋の中に侵入したコードに向かって爆弾ロボの銃撃が雨のように降り注ぐ。

というのも柱全部を銃が占めているんだからとんでもない数だ。

普通のやつなら防ぎようがないというか、チリも残さず打ち砕かれる。

あくまで普通のやつなら、の話だが。

 

 

銃撃が放たれるのとほぼ同時に入ってきたアリエルが暴食を発動させると、銃弾がまとめて消滅する。

防いだとかいう感じではなく本当に消えたという言い方が相応しい。

これがただの支配者スキルの一つだと考えると頭が痛くなるけど、今現在だけはそれは有難い。

白だと絶対無理だったはずだし、オレ様も初発は抑え切れると思ってなかった。

 

 

”急激液化”ドッキリキッド‼︎

 からの”究極吸収”アルティメットゲッター!!』

 

次発の銃撃の前に飛び当たると予測される部分の体をあらかじめ液化。

そしてくらって言葉通りその弾のエネルギーも食らってから元の体に戻る。

体の大きさくらいしか守れないという欠点はあるが、ロボットから見たコードはそんなに大きく見えないからこれで十分だ。

 

 

「白!」

「わかってる!」

 

 

ポティマスの方へ飛んでいく銃撃も白が盾を持って防ぐ。

まあ盾といってもこの部屋の扉を無理矢理に引きちぎったもの。

それでも完全に抑えられているし、予想以上の仕事が出来ていると言えるだろう。

 

 

「やばかったら言え!」

「問題ない!

 むしろそっちヤバいんじゃ!

 身体半分近く溶けてるよ!」

「いつものこったろ!

 もうこっちはただのエネルギー体に近いんだ。

 人間の見た目なのも動くの楽だからって理由だかんな!」

 

 

実際そうだ。

事実上青の体はもう生命をやめている。

単為生殖だって可能で、心臓が無くても脳がなくても問題なく生きていく事ができる。

なんなら水槽の中に液体となって保存されることも可能。

こんなのは生き物とはもはや呼べないだろう。

まあそれはDやヤツのお付きの冥土にこそ言えるだろうが。

 

 

つーかコードはどこにブッ刺さるつもりなんだ。

もちろん刺すための穴も無いし、ポティマス側のコードには突起はあるがだからといって解決する問題でも無いだろう。

と思っていたらグサリと柱にコードが突き刺さった。

マジかよ、どんな力がコードから出てんだよ。

まさかそのまま刺さって侵入するとは誰も思わねーって!

まあそれで出来るならいいけどなぁ!

 

 

撃たれながらコードの長さを計算し、コアまでの距離を概算。

それに一秒あたりの運動距離を計算に加えかかる時間を軽く確認する。

ああ、でも案外早く終わりそうだ。

ポティマスが思ったより安全な処理方法思いついてくれたおかげで楽に行けたわ。

そもそもコイツがGフリート設計図作ったんだがな。

ま、全部終わったらGフリートごとオレ様が鹵獲するし許してやろう。

 

 

 

 

そんなことを思っていた矢先だった。

急に体が重くなり、身体の周りに纏わせていた微細な魔法が解除される。

ただ理由ははっきりわかる、クソエルフだ。

視界の端に映る白に向かって銃を放つソイツ。

だが白は急に結界が貼られたことに違和感を感じているのか、ボーとしているのか、ポティマスの撃った弾を見つめている。

チッ、無理をするしかねぇ。

 

 

神経を活性化し爆雷を発生。

それと共に一気に体内を組み替えて、瞬発力を上げる。

そして跳ぶ。

 

 

よし、白とポティマスの間には余裕を持って割り込める。

だがアリエル、お前は近づかんでくれ。

いくらアンタでも暴食なしでポティマスに撃たれたら重症になる。

だからオレ様が抑える。

 

 

白を庇おうとするアリエルにタックルして、壁まで吹き飛ばす。

そしてポティマスの方を向き、両手を広げた。

ポティマスが撃った弾はオレ様の胸を狙っている。

無論こちらがそう動いただけだが。

胸を液化させて、さっきのように銃弾を受ける。

その瞬間、確かに目の前のポティマスがニヤリと笑った。

 

 

「あ」

 

 

やっちまった。

一つ致命的なミスを犯していた。

バカだ。

そうだオレ、一度戦った時コイツにもう肉体の液化は見せてたのに、また通用すると思っていてしまっていた。

こんなエネルギードバドバな星で対策されてないはずがない。

やべぇ、死ぬかも。

 

 

肉体が溶解していく。

マズイ、再生しなければ、原型を戻さなければ、この戦場に完全な足手纏いを生んでしまう。

だけど直らない。

体は徐々に崩れ液体となっていく。

崩れたタンパク質のようになって、砕けて、また水になって、また肌色と黄色の混ざったグズになる。

だけどすぐに溶けてゆく。

やばい。

 

 

 

考えろ。

思考加速を無理矢理さらに強めて、考える。

今回の銃弾には強い酸が封入されていてそれがオレ様の肉体溶解機構主に神経伝達部位と筋肉終板のアセチルコリン受容体およびミオシン頭部アクチンフィラメント結合部位におけるトロポミオシン上トロポニンを溶解させ筋収縮を抑制して同時に神経伝達が抑制されてる。

となると考えられる酸はオレ様の肉体を貫通させ全身に回るレベルであることを考慮した上で最終的に完全液化までには至らない濃度、それでいて銃弾内に詰めても問題なく射出可能なレベルまで酸を弱めるとするとマジック酸あたりが一番当てはまる。

となるとマジック酸がピストルから発射されているわけで、マジック酸ならこの星独自の法則、ステータスくらいなら軽く貫通できる。マジック酸に耐えられる容器は100億%銃弾に封入できる硬度ねぇのになんで出来てるんだよこのクソエルフ。

 

 

結論。

この酸が込められた銃弾を止める術は地球上に存在せず、同時にこの星においてもポティマス以外は持ち得ない。オレ様以外の原生生物に当たったら溶け消えて死ぬ。

 

 

糞ゲー過ぎでは?

このオレ様が糞ゲーって言うんだぞ、終わってるぞこれ。

てか伝えなきゃ死ぬわコイツら。

マジで。

 

 

『オレ様は死なない!

 だけどこれを食らえば身体が溶けてお前たちは確実に死ぬ!

 逃げろ!』

 

 

クソッ、だよな、逃げようとはしないよな!

ポティマスに向き直った2人を見て、無い唇を噛む。

 

 

「私ももちろん貴様らを逃す気はない。

 電脳には悪いが貴様の体が欲しかったからな、回収するには邪魔を排除する必要がある。

 なに、意識は残すように尽力する。

 もう一人の方は捨てるが」

 

 

 

ふざけんなよ。

全部終わる。

こんなヤツのせいで、こんな中途半端で。

これはオレ様にとって到底許されることではない。

 

 

MA原子炉が身体の中で回る。

身体の中のエネルギーがオレ様の中で廻り回って、身体が弾けるように揺らぐ。

理屈ではわからない心を無理矢理突き動かす。

ああ、助けたい。

青のことを、白のことを、アリエルのことを。

それだけが今のオレの願いだ。

 

 

 

ダメだ。

無理矢理でも動けない。

今まではこんなピンチでも動けていたのに、クソ。

理屈に、科学に、勝てねぇ。

 

 

ポティマスが動けないオレに銃を向ける。

それを遮るように立つ白とアリエル。

マズイ、このままだと本当に死んでしまう。

 

 

あー!!科学に勝てないか、そうかそうか、そうに決まってる。

今まで気づけなかったオレの名が泣く。

オレ様は電脳で、科学は逆らうものじゃなく使うもんだ。

見てやがれ。

 

 

酸性のものをその物質自体を取り除かずに変性させて無毒化する方法は二つある。一つは水を大量に加えることで濃度を下げること、そして二つ目はアルカリ性の物質を加えて中和することだ。だが今回は大量の水がないからアルカリ性の物質を加えるしかない。

じゃあそのアルカリ性の物質、出来るならば浸透の早い液体をどう作れるか。

簡単だ。超強力アルカリ性火山性ガスを無理矢理溶解させてそれを超高濃度にする。

そしてゼルギズのお陰で無虚空間には山程メタンガスやエタンがある。

普通なら溶けねぇ、だがオレ様の体内で超圧縮すれば溶かせる。

よし少しだけ中和できた、このままいけばいける。

時間が欲しい。

 

 

「じゃあ貴様らはこれで終わり。

 自分本位で動けば助かるものを、人を守るために動かないとは本当に愚かなのだな」

 

 

だけど無慈悲で、言葉と共に弾が2発放たれる。

クソ、中和が間に合わない。

クッソ!

 

 

「今まで散々、守ってくれてありがとう。

 だから次はわたしが守る」

 

 

そんなバカなことを言って白は振り向いて笑ってポティマスに突進する。

放たれるピストルに、スローモーションになって見える。

 

 

「そうは問屋が下さない!

 白ちゃん、今は生きろ!」

そして白を止めるために白以上に加速するアリエル。

ああ、これ、オレを救おうとしてるんだ、この2人は。

 

 

チッーー。

オレはオレの仕事をする。

この星を救うタイムリミットはオレが殺されるまでだ。

決して2人が死ぬまでじゃねぇ、目的を忘れんな。

体内でガスに圧力をかけて無理矢理溶かしていく。

そして無理矢理体を中和していく。

 

 

 

ドプンという鈍い音がアリエルの腕と白の頭から響く。

どうやら着弾したみたいだ。

急げ。この一秒を無駄にするな。

この一秒が世界を変える。

 

 

ブォンという空気を切り裂く音と、地面に響く鈍い音。

は。

よし一定以上中和した、これで立てる。

行かなければ。

 

 

顔を上げると、床に落ちている溶けかけの白の頭とアリエルの左腕。

顔のない白は鎌を持ってポティマスに脚で掴みかかっていた。

ピョンとその間にオレ様の隣に跳ぶアリエル。

そして切れた左腕を隠し、右手でピースを作って笑って言った。

 

 

「ほらね、死ななかった。

 君が思ってるより私たちは丈夫だよ!

 魔法少女アリエルちゃんと白ちゃんが死ぬわけないじゃないか!

 不思議な力で生き返るさ!」

 

 

彼女の笑顔になぜかクラリと脳が刺激される。

ああ、舐めてたのはオレ様だったんだな。

この2人を。

この2人はオレ様が思っているより断然強かった。

まさか撃たれた部分を即座に鎌で切り落として浸透を防ぐとは。

 

 

白の力でバキリという音で砕けはじめるポティマス。

その隙にアリエルが柱とのコードを切断して柱を一気に蹴り飛ばす。

おい、爆弾入ってんのに平気か?

 

 

ポティマスも爆弾入りロボットも2人が対応してくれている。

これで全部終わった、か。

オレ様が見くびってただけだったのかもしれねぇな。

まあ終わったんだ、無事に。

……アリエル、本気で爆弾入り柱ロボットケチョンケチョンにしてるけど大丈夫だよな?

ポティマス自分で処理出来ないのそんなに苛立ってんのか?

そんなことを考えていた瞬間だった。

 

 

ドン、ドン、ドドン。

 

 

 

響く銃にオレ様とアリエルは目を見開く。

背中からでもわかる、溶け始める白の体。

ポティマスもボコボコにされてとっくにもう動けないと思っていた。

まだ銃を撃てたのか。

今の弾は4発だし、頭にも命中している。

白の蜘蛛の頭も人の頭もやられた。

動きを止めてグズリと自重に耐えきれずに崩れる白。

どんどん身体が溶け落ちていく。

 

 

 

救わなきゃ。

待って。








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129 vs機械円盤⑩ -美しい終わり-

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走る。

白が死んでしまうから。

ポティマスの結界のせいでスキルが発動しないこの世界では白は卵復活出来るからわからない。

だってただでさえふたつの脳が両方やられているんだ、私が対処しても最悪の事態ということはありうる。

 

 

「どうすればいい!?」

「今アリエルは何もしないで!

 下手に触れるとみんな死ぬ!」

「青……!?」

 

 

ああそうか、アリエルは私と電脳が今この瞬間に同期したことを知らない。

だから驚いてるのか。

 

 

「私はもう平気、だから心配しないで。

 それよりアリエル、あなたにはこの後やってもらうことがある。

 だから今は参加しないでいい。

 後で頑張って」

「……わかった。

 何か出来ることがあったらすぐに言って」

「うん」

 

 

おそらくアリエルは私がアリエルを思いやってやってもらうことがあるなんて言っていると思っているはずだ。

だけど本当にやってもらうことはある。

私と一緒にではあるけれど、明らかに分不相応な場所へついてきてもらうことになるだろう。

多分だ、あくまで多分。

私もそうならないことを願う。

そもそも何もなければそうはならないんだ。

 

 

強酸が付着している部分を切断して白の中に生き残っていく部分をかき集めていく。

ただ唯一良かったのはポティマスが白に銃を撃つとともに力尽きてくれたこと。

まだ見られているかもだけど私から見ても完全に機能は停止しているから干渉されなければいいや。

いやでも、私の能力バレのせいでこんなことになっちゃったんだし念のため破壊しとこう。

 

 

「アリエル、ポティマスを粉々に砕いといて」

「うん、私に任せなさい」

 

 

そうアリエルに頼んで、砕いてもらっている間にも私はその間も白の体から組織を取り出していく。

私もとい電脳が作ってくれた強アルカリ、あれなら白に撃たれた弾の酸を中和できるけどいかんせん4発も撃たれちゃ許容可能なキャパシティを軽く越えられてしまう。

馬鹿げたことをやられたもんだ。

 

 

ああ、キレそう。

手が溶けるのも構わずハサミのように尖らせた腕で白の組織を切っていく。

ラッキーなことに人の部位の心臓は生きてくれている、これさえ恒常的に生きながらえられるようにすれば不死と高速再生で勝手に再生してくれるはず。

そもそも不死なんだ、主要な臓器さえ守り抜けば死にはしない。

ここまで来たらあとは私がこの心臓を傷つけなければオールOK。

はぁー、ヒヤヒヤした、心臓まで酸が侵食していたら間違いなく助からなかった。

肺とかまで酸が侵食してたから本当に危なかったよ。

ドクン。

私が切り取って両手の上に乗せていた心臓が一度急に拍動した。

どうした。

 

 

 

そして止まった。

 

 

 

 

はぁ?

どうして、いやわかってる、理由はあのクソ女だ。

ただなんで心臓が止まった。

どんな原理で止められた。

それがわからないとどちらにしろ生かすことは難しい。

いやよくない考えてる暇なんか無い!

だってもう心臓は止まってんだよこのままにしたら死ぬんだよ馬鹿野郎!

もう余裕はない。

 

 

 

『おいD、干渉を止めろ!

 不死であっても、ポティマスの結界内では本来関係ないはずだ!

 それなのに不死の機能が止まったのはお前の仕業だろ!

 ふざけるな!

 早く元に戻せ!』

 

 

こんなことを私が言っても、念話からはうんともすんとも帰ってこない。

ヤバい、完全に白が死んでしまう。

生命なんて魂なんて本来心臓に宿らないんだ。

不死でそれをカバーしてるのにその不死を消してくるとは。

マジで死すべき邪神だ。

 

 

クソッ!

魂を縫い付けておく方法なんて知ったこっちゃない。

私も今まで不死とかで無理やり保存してて、地球間での移動も万全な状態で行ってたからどうすれば保てるかとか知らない。

だけど保たないと白が死ぬ。

どうすればいいんだ。

 

 

だけどひとつだけ解決法を思いついた。

ただこれは未来を投げ打ってしまうことになるかもしれない。

個体としての私が死ぬかもしれない。

だけど、だけどだ。

白が生きられないならどうでもいい。

全生命と白なら、白に私の命をくれてやる。

 

 

私は、刃のように鋭く変形させた自分の腕を胸にグサリと突き刺した。

大量の真っ赤な温かい液体が流れ出るのを感じるけどそんなのはどうでもいい。

無虚空間でさえきちんと保存できるかわからないんだよ、これしかないだろう。

 

 

「青……、えっ?」

「あとアリエルGフリートのコアを頂戴、私の背中に押し当てて!

 そっからエネルギー吸収するから!

 私の持ってるエネルギーじゃ白に適合するかわからない!」

「わかった!」

 

 

ともかくアリエルには後のことを任せる。

私は今、どんなことをしても彼女を助けるんだ。

自分の心臓を切り取り、グニュリと外へ押し出す。

そして白の心臓を私の心臓があった所へはめる。

血管を繋げて、神経を繋げて、筋を繋げる。

これで白の心臓は理論上動けるはず。

彼女の心臓は私の心臓になったんだから。

 

 

爆弾ロボットからコアを取ったアリエルが、私の背中にそれを押し当てる。

うんやっぱり片手に収まるほど小さかったね。

私の予想でも両手に収まると思ってたし、簡単に運べるサイズだったのは良かった。

背中からMAエネルギーを吸収していく。

ヤバいすごい、身体全体がビリビリする。

元々大量のエネルギーを持ってる私がこんなに身体をビリビリと神経を焼き切られそうになってるとか、どんなにエネルギー詰めてたんだ。

ヤバい、辛い。

 

 

全身に響く痛みを必死に抑えながら心臓にエネルギーを送り込む。

こんなにすごい力を送ってるんだ、白の心臓であってもマッサージに十分なりうる。

今は私の神経が心臓にも絡まっているから形容し難い痛みは襲ってくるけれど。

そもそも心臓マッサージだって肋骨折ってやること……ヤバい、どうして痛覚無効なのに痛い!?

ドクンと身体中が揺れる。

やっと心臓が動き出した。

よしこれで第一段階は終わり、でいいんだよな。

あとは私の肉体に白の精神を宿す。

つまり私は体の中の主導権を彼女に明け渡すということだ。

実際にはそれでも死にはしないけど、はたから見れば死んだように見える。

まあ神とかいう上位存在に弄ばれたら消えるくらいには存在弱くなるけど。

 

 

じゃあおやすみ。

あとは任せたぞ、白。アリエル。

ああやっぱりだ。

私もすぐ戻るから頑張って。

私が戻るまで、2人で粘って。

今まで床だったものが天井になって壁が消滅する。

まるで虫かごをひっくり返したように重力がめちゃくちゃになる。

けれど私は空中で眠りに落ちた。

アリエルのことは気絶したせいでわからないけど、せめてただ粘り切って欲しい。

本当に願ってる。

 

 

 

これから神たちの会合が始まる。




これで第2章、『特異点』編は終わりです。
次からは第3章へと参ります。
最後まで書いていきますので、よろしくお願いします。


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第3章 真生命創世
130 ギンガ神核コア


高評価、感想お願いします。


なにもないけど、不意に空に手を伸ばす。

魔力感知をしても不純物を感じることはなくて、ただ落ちている感覚は初めてだ。

無虚空間の足場が無くなった感じが1番近いと言えるだろうか。

 

 

床だったはずの天井が見えなくなる。

最悪空間機動を使えば落下は防げるんだけど、なんとなくこんなものには使いどきがあるんじゃないかと思ってしまう。

いや今使わなきゃダメだろ何言ってんだ。

 

 

次の瞬間だった。

紫色だった空が急に暗くなり、満点の星空が浮かび上がる。

どういうことかはわからないけどこれ以上ないくらいに綺麗だ。

私が幼かったら感動で泣いていたかもしれない。

だけど古狸の私はもうなにも思わない。

 

 

違う違う。

そうじゃない。

青はこれから頼むと言っていた。

ということは良くも悪くもこれからとんでもないことが起こるはず。

白も青もいないけどどうにかしなければ。

足をダンダンと踏み鳴らして、思わず固まる。

 

 

え。

今度はいつのまにか立っていた。

わけがわからないけれどいつの間にか落ちるのは終わっていた。

私が立っているのはガラスの方眼紙のような床。

だけど下は見えなくて、光を反射しているのに眩しいというわけではない。

さっぱり仕組みはわからない。

 

 

「く、あー、まずは落ち着こう!

 なあになにが出たとしてもかかってこい!」

「ああ貴様も来ていたのだな。

 今はデータ収集に忙しいからあまり話すな」

 

 

 

あ”ぁ?

めちゃくちゃ不快な声が聞こえたから横を見ると、案の定いたクソ野郎ポティマス

え、は、なんでコイツまで一緒にいる。

甚だ反吐が出るし、この空間でなければブチ殺してしまいたい。

コイツのせいで4000年傷付けられ続けてきたものもあるんだぞ。

 

 

「なんだ、思ったより冷静だな。

 正直この空間では未知なことが多すぎるから襲ってこないのは幸運だが」

「幸運とか、別に運じゃなく私が襲ってないだけだろうが。

 まさか不老不死ではないからこの環境にビビってるのかな〜?

 私には不死があるけど〜?」

「貴様もビビってるから襲ってないのだろう。

 臆病は生き残るに必須のスキルだ」

「チッ」

 

 

ああ図星だよ。

しょうがない、私もビビってんだから。

死にたくないっていう希望を第一に掲げてるポティマスがいつもとは違ってビビりまくってるのもわかる。

何もわからないし、パッと死ぬかもしれないし。

なんならポティマスが色々調べてくれてるのは正直ありがたい。

そのデータを教えてくれたらの話だけど。

まーでもコイツだから役には立たないんだろうなー!

はぁ、あーうざい。

 

 

「ああそうだ、私に似つかないことを言っていいか」

「あ”?」

「私に従え、いや違う。

 ひとまず私と協力関係になれ」

「え、は?

 今なんて言った」

「私と協力関係になれ。

 私に歯向かうな、私も歯向かわない。

 あと一つ教えてやる。

 今の私は精神体が引き摺り出されてるから死んだら終わりだ。

 だが殺さない方が賢明だぞ。

 なにが引き金で星が、宇宙が滅びるかわからん」

「スキルは発動してるのによくそれを吐けるな。

 この星であって、しかも問題ないことが起きているって可能性は無いの?」

「自分の心に聞いてみろ」

 

 

うん、そんなわけないね。

そもそもポティマスの魂を引き摺り出すことがこの星の生き物には無理だ。

青なら出来るかもしれないとかそんなレベル。

それで問題無いしスキルが発動してるからオーケーとかそんなことは無いよな。

でも少し意外というか、あれ、流石におかしくないか? 

いくら命の危険といえど4000年で腐り切った性根が治るのか?

それともこんなやつでも命の危機が本格的に迫るとここまでまともになるのか。

うんわからん。

 

 

ま、ともかくてして私のことを同列扱いしたのも下手に喧嘩しても何が起こるかわからないからってことだろうし、正直これに関しては私も賛成。

良くも悪くも4000年前から生きているんだ、私もリスクのありすぎる行動は取らないからコイツも案外そうなのかも。

てか星が滅ぶのくらい別に私もどうでも良かったはずなんだけどなー。

青と一緒に過ごしてなかったら間違いなくコイツ殺してた。

 

 

「さっきまで舐め腐ってたのを見ても、私がこの状況をGMA爆弾より危険視してるのはわかるはずだ。

 警戒しろ」

「当たり前だろうが」

 

 

コイツ確かにGMA爆弾の時舐め腐って殺しに来てたわ。

ん?

じゃあコイツ的には星吹っ飛ばす爆弾よりも致死率高いと見てこの場にいるの?

うわー、別に星吹っ飛んでもいいと思っていたことはともかくとして、流石にこれはよろしくない。

青が耐えてって言ってた理由がわかる気がする。

たまんねーぜ、これ!

マジで堪らん。

ヘルプ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

しばらくして。

 

 

「おいポ。

 なんか異常はあるか?」

「ああ、あいにく空気がない。

 我々がなぜ生きているかもわからんぞ、実験生物」

 

 

やばい、なんかイライラしてきた。

ポとか実験生物とか、喧嘩にならない程度のギリギリの煽り合いをお互い繰り返してるからだ。

だんだん暴力振るいたくなってきてる?

ただこれはポティマスも同じはず。

お互いイライラすれば結果オーライだ!?

オーライか?

オーライじゃないなぁ!

知らんけど。

 

 

「頭を抱えながら悶えるな、強い感情が引き金で爆発でも起きたらどうすんだ」

「感情の起伏の無さで爆発が起こることもあるかもよ?」

「そうなったら私は知らん」

 

 

あー、はいはい、確かにそうだね。

そう言いながら地面をコツコツ叩くポティマスに、私はなにも知らないからなにも言えないしなにもできない。

本当にどうしよう。

私にも出来ることないなぁ。

せめて魔力感知でなにかが見えたらいいんだけど……。

 

 

そんなことを考えながら魔力感知を再び発動させた瞬間、バリンという音がした。

後ろを見ると空間がガラスのように割れている。

そしてガラスの奥から響く超強力な魔力反応。

 

 

待て!

こんな攻撃4000年間一度も見たことがない!

なんなら空間自体を破壊する能力持ってる奴すら見たことがない!

危ないんだよ!

いくらこの世の存在じゃないって言っても無理あるだろ!

 

 

弾けるようにすぐさま上に跳ねて、こちらに向かっている巨大な魔力から回避。

エネルギーの発生速度と移動距離からして避けられるはず。

頼むからちゃんとことわりはあってくれ!

 

 

その時急に全身を床に叩きつけられた。

骨が折れそうなほど強い衝撃に身体が麻痺する。

同時にガラスが散って私の身体を切りつけていく。

身体もガラスのようにパキリと砕ける。

そのまま、私の体はガラス細工のように砕け散った。

 

 





抽象的な回だったために少し難産だったけれどいかがだったでしょうか?
これからさらに加速させていきたい。


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131 平凡


オリ設定、オリキャラがいます。
だが蜘蛛ですがなにかの原作と齟齬は起きてないはず。



目をパチリと開く。

そこに広がっていたのは、はるか昔にはあった気がする壁や天井、床の部屋。

今の中世的な感じは一切なくて、4000年前のあの時代のものにも見える。

あれ、てか私なんも考えずに起き上がったけどバキバキに砕かれてたはずなのになんで今五体満足でいれてるんだ?

手もあるし足もあるしでわからない。

 

 

「ああ、起きたか。

 お前が一番最初だな」

 

 

そんな声がして、振り向くとそこには椅子を回転させてこちらを見下ろしている青年がいた。

なんの特徴もない、ただの黄色い長髪を持つ青年。

僅かにポティマスに見た目が似てるから不快だ。

いや観察するような目も似てるし白い服も似ている部分がある。

なんだ、なんだ、なぜこんな嫌な感じがする。

 

 

「ま、まだ一人起きてないしもう少し待つべきか。

 ギラティナお茶」

「え」

 

 

まさかの放置。

いや私はどうすりゃいいんだ。

え、この部屋について物色していいのか?

 

 

「急に連れて来られて驚いているだろうからな、別に自由にしていていいぞ。

 しばらくいれば落ち着くはずだしな」

 

 

お、おう。

振り向かずにパソコンをカチカチと叩きながらそんなことをほざくソイツ。

謎の空間から出てきたお茶を飲んで、頭を手の後ろにやって椅子をガタガタと揺らしている。

なんか人を人として見てない感じで私の嫌なタイプ。

だけどそんなことはどうでもいい。

この場所が何かについて知るのが最優先だ。

 

 

「ここってどこですか?」

「地球の若葉姫色の家。

 とりまワレが動きたくないから連れてきた。

 みんな起きたらまたギンガ神核しんかくコアに移動していいかなとは思ってる。

 どうせこの部屋狭いしな」

「若葉姫色——」

 

 

私はその名を知っている。

白の前世での名前だ。

あれ、てことはここは違う星!?

うん確かにそうだ、なぜかスキルは発動してるのに星が違う。

なぜ、どういうことだ!?

 

 

「ときに女王、幸せとはなんだと思う」

「は、はぁ?」

 

 

なんだコイツ。

なんの紹介もなしに唐突に聞いてきた。

んだよ、変なやつ。

魔力も全くないのに私にビビらないし。

 

 

「わからない。

 ただ、私が思うにどんなに貧しい人でもお腹いっぱい食べられることかな。

 それなら他の色々なことも一気に解決するでしょ」

「そうか。

 確かにそれも一理ある。

 では絡繰、お前はどう思う」

 

 

は。

そんな言葉と共に私の隣に足から姿を現したクソ野郎。

え、マジでなにが起きてどうなって現れてる?

ホログラムみたいな感じで出てきたのにちゃんと実体はあるみたいだし。

ちょっとよくわからないことが起きてる。

 

 

「私が思うのは、夢を叶えることが幸せだということだ。

 それを否定する奴や妨害をする奴は自身の独断で排除して構わない」

「ほう、そんな考えは嫌いじゃない。

 ワレが主導して決めることでもないがな」

「てかどうしてそんなことを聞くの?」

 

 

猫かぶりしているポティマスに殺意を抑えながら私は思ったことを口にする。

幸せなんて人によって違うのになんで聞いたんだ。

聞いても無駄だろう。

 

 

「これからの会議での判断材料にする。

 会議とは言っても実際はこれからの予定決めだが。

 だけど一応星羅族スターウェイの奴にも傍聴してもらうからそのつもりで」

星羅族スターウェイってなんなのか教えてくれ」

「神の中の公務員の一族だよ。

 お前ら2人とも4000年前から生きてるから公務員って言葉は知ってるだろ。

 一言で言えば神対神の交渉及び取り決めを円滑に行うための団体さんさ」

 

 

うーむ、ポティマスがまだ猫かぶってることはともかくとして私ついていけんのかな?

神対神の会合ってことはサリエル様とかギュリエディストディエスとかがバッチバッチにやる会合ってことだよね。

間違いなく私ついていけないと思うんだけど。

 

 

「なお、この場に来てこの話を聞いた時点で参加することに対しての拒否権はない。

 なにより、というかどちらにしろお前らはあの星の未来を担っているのだろう。

 もちろんあの星の今後もかかってるんだから参加したいだろ」

 

 

そりゃまあ。

参加したいけど神様の会合だからヤバそうなんだよな。

ただもうそう言われたら参加せざるを得ないだろ。

 

 

「「参加する」」

「よし。

 彼女も準備が終わったようだし、そんな考えを持っているなら後腐れないだろう。

 ならばワレが言うことはない。

 じゃあ行くか」

 

 

そう口にした青年は立ち上がり、私たちの前で腕を組んだ。

そして一言。

 

 

「絡繰はともかく貴様もわからなかったのは残念だ。

 身体能力はワレの予想を上回っていたが魔力に関しては想定以下。

 つまらん」

 

 

そんな言葉を残されて、私はそのまま光の中に意識を失う。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

目を覚ますと私は立っていて目の前に円卓があった。

そして周りの様子はさっきの何もないように見える空間だ。

床が無ければ紫の謎の空間に浮かんでいると言えるだろう。

 

 

「やぁ、君たちが彼の言っていたお付きだね?

 とりあえず部屋の温度大丈夫?

 寒かったり暑かったりしない?」

「私がちゃんと設定してるのに、信用できないんですか?」

「いやなにいやなに、本人たちに聞くのがいちばんいーじゃん、ね?」

 

 

私とポティマスに話しかけて来たのは、私より少しだけ身長の高い赤と青の目のオッドアイの美少女。

いかにも好きな格好で来ているという感じで、オレンジのパーカー?に水色の半ズボンが映えている。

しかもその髪は金髪銀髪が混ざったような色で、快活というイメージを私にビシバシとぶつけてきて正直眩しい。

その言葉に聞いたことのある声が円卓の方から聞こえてきているけど、彼女はどこ吹く風で部屋がなんだとか言っている。

あと少なくともこの空間部屋ではないと思うんだけど。

うーんなんだったか、目の前の騒いでる短髪の少女よりそっちの声の方が気になる。

 

 

「ボクは全星羅族盟主スターウェイマスター全生命体共存管理者コズミックソウルラバーのキラ・ドルトンヘイア。軽くキラって呼んでね!

 あとあそこの女の子はDちゃんで一応君たちの星の管理者かな。

 ちなみに今日の会議も彼女の提案で開かれてるよ!

 かわいいかわいい彼女のお願いでボクも遠くから参上したってわけ!」

「私はリズムが乱されるので嫌いです。あと呼んでないです」

「いーじゃん、結局呼ぶんだしその手間省けたと思えばー」

 

 

そうか、Dだ。

青が電話していた相手。

さっきは電話越しだったけど、今の彼女の声は予想以上に澄んでいる。

わからん、なんだコイツ。

きみが悪い。

 

 

「お前——達も来たのか、とりあえず私の後ろに来い。

 席は無いから私の後ろに立っていろ、まだそっちの方が安全だ。

 あとキラ、茶化すのもいい加減にしろ」

「ちえー、おっけー。

 真面目は楽しくないよ?」

 

 

すでに座っていたらしいギュリエが、しっしと手でキラを払いのける。

ポティマスを見つけたのか思いっきりしかめ面をしたけど、すぐにその顔は元に戻った。

どうやらギュリエもギュリエなりにこの会議には思うところがあるみたい。

ただ私としてはれっきとした知り合いがいるだけで嬉しいけどね。

 

 

「じゃ、ワレは一人寂しく遠くの席まで歩くとするか。

 キラに近いのもヤダし」

「あー!?

 みんな酷くない!?

 私がせっかく来たんだよ、てか私がいなきゃ会議成り立たないんだからね!

 みんな女性は大事に扱うって学ばなかった!?」

「お前は特に強いじゃん、メンタル。

 あと猫かぶりは神には通用せんから。

 原生生物にはブッ刺さるかもだけど」

 

 

バシバシ机を両手で叩いてキラは抗議するけど、思いっきり無視して青年は離れた席まで歩いて座る。

同時に後ろからどうやってか現れる金と黒の色のドレスを着た女性。

一言も発さず、後ろにただ立っているから奇妙だ。

しかもなんか闇のオーラ放ってる気がする。

そんなことも気にせずに、笑いながらパンパンDを叩いたりしている時点でキラも相当な奴なんだろう。

 

 

「あと椅子は2つ」

 

 

ギュリエの隣に座る黄色い髪の美少女がそう静かに口を開く。

なんかこの子白にそっくりだ。

髪が青みたいに黄色くて、真っ赤な瞳孔が片目だけでも4つあることを除けば。

蜘蛛の体もないし。

 

 

「えーと、まだ来てないのはゼルギズ・フェクトガキアと青か。

 青はどうなるかわからないとして、もう一人の龍が来ないのはちょっとアレだねぇ。

 てかアルセウス彼って本当に龍?

 個体番号に存在しないんだけど、それってどういうことかなー?」

「一応未だ原生生物の扱いだろうが、一度見ればまあそう言ってられなくなる。

 お、来るぞ」

 

 

 

ア、ル、セ、ウ、ス?

待ってくれ青から聞いた話、あと私自身が直接聞いた話だと——。

思考を回そうとした瞬間、無虚空間のような割れ目が円卓の真ん中に開いて中から赤く輝いた鎧をつけた男がそのままドンと落下した。

そして木の素材の円卓の真ん中を真っ黒に焦がし、周りを見回して頭を抱える。

それを見て引きつった笑いをするD。

固まるギュリエディストディエス。

手を叩いて爆笑するアルセウスとキラ。

 

 

 

「あれ、我なんかやっちゃいました?」

 

 

 

三者三様の反応の中で、その男ゼルギズはいつものように呑気に口を開いた。

ああ変わらない、コイツはどんな時も変わらない。

なんかいろいろ緊張してたのが馬鹿馬鹿しい。

私ももうなんの考えもなしに大きなため息をついて言う。

 

 

「ああ、やった。

 やったよ」

 

 

本当に、やってくれてありがとう。




高評価、感想お願いします。


星羅族……神の中でも珍しい、繁殖をする明確な種族。神の中でも優れた記憶力を持つために交渉の傍聴などを頼まれることが多く、同時にそれを好む。ちなみに、古い慣習を重要視する穏健派と新しい可能性を探す急進派に分かれており絶賛派閥争い中。キラは急進派である。

キラ・ドルトンヘイア……全星羅族盟主兼全生命体共存管理者。肩書きの通り星羅族のトップであり、アルセウスに呼び出され快諾した。本人はどんな生命体でもパッと見は丁重に平等に扱う。年齢としてはDよりも幼く、過激な面も多々あるが様々な策を打ち出せる柔軟な面もある。


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132 神々の会合






「では、神々の会合を始めさせていただきます。

 司会はこのボク、キラ・ドルトンヘイアが担当いたします」

 

 

椅子へどかされたゼルギズをよそ目に会議は始まった。

先ほどのキラのふざけた雰囲気は完全に他所で、この会議が真面目なものであるということを無理矢理にでも理解させられる。

アルセウス——私が普通に話していた青年がそうだったらしいけど、最高神である彼さえも目を瞑って無言で何かを考えている。

 

 

「まず最初に、本日はお忙しいところ生誕顕現祭にお集まりいただきありがとうございます。

 一名欠席者がおりますが、開始準備が整いましたので早速始めさせていただきます。

 まずはお集まりいただいた皆さんの紹介を私も含めてさせてもらいます。

 

 

 ”全なる神”ゴッド・オブ・オールアルセウス。

 アルセウスの従者として、”反転龍神”リベリオンギラティナ。

 ”独善の災害”サンクチュアリ及び”最終の神”アンカーD。

 ”退廃の守護者”クライストレンジギュリエディストディエス。

 ギュリエディストディエスの従者として、”無名”ノーネームアリエル、ポティマス・ハァイフェナス。

 ”辺境の暴走龍”グラウンド・ゼロゼルギズ・フェクトガキア。

 ”全生命体共存管理者”コズミックソウルラバーキラ・ドルトンヘイア。

 そして、本日の主役、“新生神“ニューボーン白。

 

 なお、"夢現世魔星"アストラルドリーム青はまだお見えになっていませんが、いずれ来るかもしれないのでその時のため余った席は残しておきます」

 

 

仰々しい二つ名と共に出席者の名前が読み上げられていく。

てか新生神が白ってことは、まさか白ちゃん、神になったのか?

本当に神になれることなんてあるのか!?

となると消去法でまさかあの瞳孔4つあった人が白ちゃん?

 

 

いやでも確かにそうかもしれない。

瞳孔の数や髪の色こそ違えどそれ以外の部分はあまりアラクネのときと変わらないし、全然面影は残っている。

となると白ちゃんより青ちゃんが心配だ。

髪の色的に身体はあれから白ちゃんとくっついてる感じだけど、ちゃんと出てこれるのだろうか。

というかそもそも精神は無事?

身体奪われたせいで一緒にやられてない?

青らしさが全くないから不安でしょうがないんだけど。

 

 

 

そして、名前を呼ばれて反応する彼ら。

片目を開いたり、軽く会釈したり、固まってたりと色々だ。

ゼルギズですら落ち着いてんのに、ギュリエは固まるな不安になる。

 

 

「次に今回の発議者であるD様、なぜこの会を開いたのか、そしてこの会での目標はなにか、発表お願いいたします」

「では。

 発議した理由は単純明快、私の管理する星で生まれた個体が神まで成り上がったからです。

 そして今回の会議で決めたいことは、宇宙における彼女の立ち位置を定めること、ゼルギズと青に対する処遇、退廃の星のこれからについて、この3つです。

 参加者の皆様、把握の程をお願いします」

「うん?我についても?」

「はいそうです」

「——ええ、マジか」

 

 

そう発表を終え、立ち上がっていたDは座る。

おそらく私が生きている星は退廃の星なんだろうし、私が1番気になるのはそれだろうか。

いや、最初と2つ目もおそらく私の身内の話なんだし全部重要だ。

あとゼルギズちょっと自重しろそんなリラックス会議してるわけでもないんだよ。

 

 

「D様、ありがとうございました。

 では先ほど言ってくださった議題その1、白の宇宙内立ち位置を決めたいと思います。

 はい、ボクの司会は終わり!

 ここからは自由な会話、発言、行動OK!

 神同士の殺し合いだけ少し控えてくれればいいよ!

 議題からは逸れないで欲しいけど!」

 

 

うん?

え、これからそんな雑に会議始める?

リラックス結局するんかい、今までの厳格な雰囲気どこへ行ったよ。

まあいいけどさ。

私も楽だし落ち着くし。

あとなにがあっても暴力反対。

私神じゃないから殺されても文句言えないのかも。

 

 

「まー、じゃとりあえず先言っとくけどキラありがとう。

 あとこれからは書記頼む」

「わかってるわかってる。

 あとボク書記だけど普通に口挟むからね?」

「知ってる。

 知ってる上で呼び出してるからいつも通りやってくれ」

「オッケー。

 じゃあやるよー。

 飲み物取ってくるけどなにか飲みたいものある?」

「我コーラ。あと出来ればポテチ」

「おけ、じゃあ白は?」

「カルピス」

「おけまるー!じゃ!」

 

 

そう言って謎に開かれた歪みから消えたキラ。

なんだ、アイツ。

でもとりあえずあの黄色い髪の子が白ちゃんであることは確認した、それが今の時点でわかったのは本当にラッキーだ。

 

 

ただマズい。

アルセウスがいるとはいえここには青がやばい邪神と言い張っていたDがいる。

そんな彼女がどう動くかはわからないし、ならば私はあまり動かない方が良いだろう。

あとどういう過程があったかは知らないけれど、神になったばかりの白ちゃんも本調子じゃないに決まってる。

 

 

「白、神としての振る舞いは覚えましたか?

 指南書が頭の中に送られたはずです」

「はい。覚えてます」

 

 

白ちゃん、警戒しながらDと話してる。

本当に神になったばっかりなのかな。

私が下手な行動したらこりゃ無理だ。

 

 

「おい、アリエル。

 とにかく気をつけろ。

 いくら原生生物を害さないという契りがあれど、最高神2人は面白いとなれば簡単に舵を切るはずだ。

 だからそんな状況にするな。

 私とゼルギズ、白の3人がかりではDへの時間稼ぎすら出来ない」

「わかってる」

「だがいちばんの問題はそうじゃない。

 1番君を殺す可能性が高いのは——」

 

 

「はい、ゼルギズはコーラとポテチ、白はカルピス!

 特にゼルギズ、あんたポテチまで要求したんだし会議ではがんばれ!」

「良くも悪くもボチボチやる、期待するな」

「もー、しょうがないなー、君は。

 あとポティマスくんとアリエルちゃんも会議に頑張って参加してね!」

「わかっている」

「は、はい」

 

 

空間転移してきたキラを見てギュリエは口を閉ざす。

そして、その言葉を聞いたのか聞いてないのか、快活に私たちに話しかけてくるキラ。

え、そうなのか?

本当にそうなの?

こんな心象のいい彼女が?

 

 

「じゃ、白の処遇についてだけどさー、まずなんか言いたい人はいる?」

「じゃあ、私が。

 私の星で生まれたのですし、私が管理下に置きたいと思っています。

 アルセウスもよろしいですね?」

「もちろん。

 ワレがここで口を出す権利はない。

 なんか文句があるなら白くらいだろう」

「白、いいですか?」

 

 

一気にトントン拍子で決まっていく。

早い早い、ついていけない。

あと白ちゃん神になったばっかりなのに拒否権あるの?

平気?

 

そんな私の心配を他所に、白ちゃんはゆっくりと目を閉じて、開ける。

そして深呼吸をしてから、ただ一つ言った。

 

 

「条件がひとつある。

 わたしだけで無く青の安全も確保して」

「それは出来ません。

 あなた、わかって言っていますね?

 青が現状況で生きているのかすらわからないのに。

 彼女の危険性についてはあなたも知っていると思いますが念のため。

 

 

 あんな化け物に付き合ってたら、あなた死にますよ?」

「うん、死ぬと思う。

 わかってるから、わたしは最期まで一緒にいたい。

 今だってわたしと青はくっついてるんだし、青の方もなにも言うことはないはず」

「そうですか。

 なら今の私の話もなかったことにしましょう。

 最悪、気変わりして私の傘の下に入りたくなった時には考えてあげます」

「ありがとうございます」

 

 

白ちゃんが、今までにないほどの長いセリフを吐いた。

しかもその会話は、お互いがしっかりと理解しているものだ。

事実、強い神様であるDの管理下に置かれた方が安全だろうし、彼女もそれについては理解している。

DもDで、青の危険性について十分に理解していて、青まで一緒に管理下に置くことを断った。

それはいずれ自身にいずれ攻撃してくるであろう青に、手札を知られないようにということだろう。

これで、お互いが青という境界のもとで対立関係にあるということを互いに理解してしまったはずだ。

 

 

「うーん、じゃ。なんかよくわからなくなっちゃったけど、白はDにはつかないってことね?

 そしたら白は1匹狼になっちゃうよ?

 青なんて良くも悪くも生まれたての生き物がまだ生きてる証拠なんてないんだから。

 星を丸々一つ破壊できるエネルギーを瞬間的に食らっちゃったんだし」

 

 

ん?

私はキラの言葉に首を傾げ、隣にいるポティマスを見る。

思った通りポティマスもポティマスで顔を真っ青にしていた。

おもしろ、青が星にエネルギー補充したおかげで惑星ごと飛ばせるものだったのか。

ポティマスふざけてたら星ごと死んだんじゃん。

 

 

「はい。

 それでいい。青は生きているから」

「ふーん、ボクですらわからないのにね。

 まあならいいんじゃないかな?

 誰も反対の人は居ないんだし、そうしようか!

 ん、いないよね?」

 

 

白ちゃんの言葉に、苦い面をしながらも何も言わないギュリエ。

他の人は特に思うことはないみたいだけど、うーん。

青ちゃんが生きてないっていう証拠は無い以上私も彼女を引き止めることは出来なさそうだ。

なにより私も青ちゃんが生きていると信じたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーん、白の話はこれで終わりか。

 じゃあ次の議題の青とゼルギズの処遇についてだけどさ。

 ひとつ気になることあるから、まずお二人さん死んでくれない?

 ポティマスくんとアリエルちゃん」

 

こちらに向けて満面の笑みを浮かべるキラだけど、その口から飛び出した衝撃的な言葉で私は思わず固まる。

え、おい待て。

死ね、だと?

 

え?

え、ホントにどういうこと?




高評価、感想お願いします。


ちなみに今回の二つ名のなかには、キラが個人的に調べてつけたものでこの宇宙では普遍的に呼ばれていないものもあります(ゼルギズとか誰も知らないだろうし)


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133 それぞれの思惑

 ”全なる神”ゴッド・オブ・オールアルセウス。
 ”反転龍神”リベリオンギラティナ。
 ”独善の災害”サンクチュアリ及び”最終の神”アンカーD。
”退廃の守護者”クライストレンジギュリエディストディエス。
”無名”ノーネームアリエル、ポティマス・ハァイフェナス。
”辺境の暴走龍”グラウンド・ゼロゼルギズ・フェクトガキア。
”全生命体共存管理者”コズミックソウルラバーキラ・ドルトンヘイア。
“新生神“ニューボーン白。
"夢現世魔星"アストラルドリーム青。


はぁ?

我はキラの言葉を聞いて、思わず持っていたコーラを落とすところだった。

 

元来神がその他を殺すことはなんの問題にもならない。そしてキラが人殺しを好む殺人狂なら納得も出来る。

だが真っ当に考えてキラがそうであるようには見えないし、なによりそうならこの場で最も中立を保っているアルセウスが呼び出しはしないだろう。

なのになんで急に殺害を仄めかせた?

本当に殺したいのならただ不意を打てば殺せるのではないか。

だから先に宣言したのには確実になにか思惑がある。奴が気になることがあると言っていたことがおそらくそれそのものだろう。

だがこの場でそんな思考は時間の無駄だ。

守れれば生き残る、守れなければ死ぬ、それだけ。

我は今この瞬間の我の役割を全うするため不敵に笑うキラの前に立ちはだかる。

 

 

 

—————————————

 

 

 

とてもまずい事態になった。

アリエルがキラに殺害予告を受けている。

だがどうする。

キラがアリエルを殺すとなっても私には触れることすら出来ないだろう。

本気のデコピンを受けたら受けた部位が消滅してしまうほどの力量差があるのだ、止められるわけがない。

だが止めなければアリエルが死ぬ、どうするか。私は頭の中をフル回転させじっと考える。

 

そこで唯一微かに思い浮かべたのはまだ私が生まれたばかりの時の記憶。まだあの星に訪れるずっと前のことだ。

私は宇宙の辺境で生まれた龍だが、星羅族について軽く聞いたことはある。

それはなぜ彼らが生殖をするかということ、なぜ彼らが神の中でも仲介役という異質な役割を担っているかについてだ。そしてその理由はただ一つ。

 

彼らは不老ではあるが不死ではない。彼らのことを多くの神はDのような不老不死であると勘違いしているがそれは間違いである。

彼らは素晴らしい記憶能力を対価に、不老不死だった自分たちを不老のみにした。

まあ、結局そもそもの戦闘力が高すぎて基本死なないんだが。

それでも宇宙を作る存在や惑星や神を複数従える超高位存在は彼らが死ぬことを知っている、という軽い噂話だった。

まさか今この瞬間にそれを思い出すこととなるとは。

だが、今の記憶からわかったことは少なくとも私は勝てないということだけだろう。

じゃあ諦めるのか。

4000年間共に過ごしてきた友人を見殺しにするのか。

それは出来ない。ただ唯一ラッキーなことに、神同士で命を奪うことだけはこの場でキラ自身が禁止している。

だから私に出来ることはひとつだけ。

そのちっぽけな取り決めを信じ自らの身体をもってアリエルを守り切るだけだ。

 

 

 

————————————

 

 

 

えっと、ヤバいです。

なんか急に魔王が殺されるって話になって、ギュリギュリとゼルギズがすぐに魔王を守るように動いた。

それはわかる。わかるしうれしくてたまらんのだけど。

わたしは残念ながらなにも出来ない。いやなにもしようがない。

 

なぜなら、たとえ立ち上がってもつんのめって転んでしまうと思われるほど立ち上がり方も足の使い方もわからないからだ。

この部屋に来れたのだって、繭の中で眠っていたようになっていたところをDの力で助けられたからだ。

しかもわたしは大量のエネルギーを取り込んで神になったとはいえ、今の身体能力は一般人以下しかない。まあ魔力の動かし方がわからないからDによればそれはそうらしいんだけど。

 

だから動きたくても動けなくて、精々顔の向きを変えることだけで限界。

そんな中常人では目にも捉えられないであろうやり取りに介入するなんてのは無理。

わたしは今までの経験があるからどう彼らが動いてるかなんとなくわかるけど地球人が今彼らを見たらワープしたようにしか見えないと思う。そんなところに地球人以下の肉体強度の私が割り込めるわけないだろ。

 

だけど、願うだけ願って動かないのは性に合わない。でもそれ以上に身体がまったく動かない。

クッソ、思考だけ回って焦ったい。

ごめん魔王。

わたしは願うことしかできないけれど、お願いだから生きてくれ。

 

 

 

 

「ごめんね2人とも。

 アリエルちゃんとポティマスくんを殺さないとボクの気になることがわからないんだ。

 お願いだから私は君らを殺したくない」

「黒龍、アリエルを頼む。我がやる。

 なぜだ。なぜ、殺さなければならない?

 それがわからない限り我らはアリエルを引き渡さない。アリエルの隣にいるポティマスならいくらでも殺していいがな」

「ふーん、ポティマスくんが君らにとっては苦手な子で、アリエルちゃんが大切な子ね?ありがとう、これは今後の役に立つ」

「なんだ今後の役に立つとは。

 これは白の生誕顕現祭とやらではないのか、神同士で険悪になってどうする?

 祝う会なんだろう、会議の根本の意味すら揺らいでしまうぞ?」

「——うん、そう。

 確かに祝う会だよ。でもさ、祝う会っていう名目じゃないと人集まらないでしょ?」

「チッ、罠に嵌められたか。

 相手自身が法律だとこんなにダルイものなのだな。

 我も後学になった、感謝する」

 

 

やっばい。

わたしにも全然キラの思惑がわからない。

今はゼルギズの言葉でなんとか止まってたけど交渉が決裂してしまった。

しかもアイツは急にポティマスのことを無視して私たちが守ろうとしている魔王だけを見据えている。

なんかキラ、底が見えなすぎて気味が悪い。

 

 

「念のため、無限空間を作っとくか。

 上手くボクの知りたいこと調べられたら、お二人さんも生き残れるんじゃないかな?」

 

そんな言葉と同時に円卓の真ん中が空きその中に全員が移動していた。

そしてなぜか、水平線のように円卓が私たちの遥か遠くを囲っている。

空間をここまで簡単に捻じ曲げるなんてこんな技術、青でも使っているのを見たことがない。

 

 

「じゃあ調べさせてね?

 跳躍弾、フリード2。

 この弾神様には当たっても傷つかない制約あるから安心していいよ。

 原生生物相手には確殺だけど」

 

彼女はそう言うと同時に手を銃の形にしてバンと言い放つ。

その人差し指から放たれた白く輝くエネルギー弾は、叫んだゼルギズの鎧に当たりまさに横に重力があるように放物線を描いて跳ね返る。

そしてその銃弾の向かう先は魔王で——違う、わたしだ!

なぜかこの弾、わたしの手の甲に向かってる。

え、なんで?

わからんわからん、でもなんでだよ撃つのミスったの!?

 

わたしは弾が当たるのをじっと見ていた。

身体能力的に動けはしないけど、見続けるくらいなら出来る。

だけどその弾は着弾するであろう瞬間に透明になったのか、わたしには全くの痛みもなく消えた。

ええ、なんだったんだこれ。

 

「思ったよりゼルギズくん動くの速くてミスっちゃった、次は当てる。

 

笑顔でキラはそう言いながら今度は両手でババンと一弾ずつ放ってくる。

その2弾はゼルギズに当たって、1弾は魔王へ、そして遅れてもう1弾はわたしの方へ飛ぶ。

 

 

ヤバい、わたしはともかく魔王がヤバい。

ゼルギズも、ギュリエも思考はできるけど動けない弾速。

というかなんで誰ひとり動けない、変な空間にでもされてるのか!?

ヤバい!

もう弾は魔王に迫っている!

魔王に当たる!

 

 

だけど再び、魔王に当たる前に弾は消滅する。

わたしがキラのわけの分からない行動に頭を悩ませながら額に銃弾を受けようと力を込めて目を閉じたその時だった。

 

「あ、今度のは神でも死ぬやつだから」

 

 

キラのぶっきらぼうな声がスローモーションになった世界の中頭に響く。

その声に思わず目を開けたけれども銃弾が止まるわけはない。

ヤバいヤバいと心も焦るけれども、身体は動かない。

ヤバい、死ぬ。

無理だこれ終わったかもしれん。

全く解決策が見当たらない。

 

諦めようとした瞬間のことだ。

わたしの頭が何かに叩かれたかのように下に弾かれる。

そして銃弾は、わたしの頭の上を通り過ぎた。

 

わたしは思わず、反射的に顔を上げる。

だけど目の前には誰もいなくて後ろから肩を叩かれた。

そしてわたしが振り向いた先には案の定彼女がいた。

 

「白、大丈夫!?」

 

わたしを救ってくれた人、いつもと変わらぬ青がそこに立っていた。

 

 

———————

 

 

「お前は、その格好はああ、キラ・ドルトンヘイアか。

 ふざけるな」

 

私は怒りに怒っている。

ああ、怒っている。

だって私が力尽きてる間に白を殺そうとしていたのだから。

ふざけるな、そんなもの私が許すわけがないだろう。

舐め腐りやがって、私の守護パワーを。

 

「ごめんねー、どうしてもボク知りたいことあったからさ。

 でも君が今出てきて完全にわかった、だから大丈夫。今の話はなかったことにして会議の続きしようか」

 

はぁ?なにとぼけた言ってんだコイツ。

大丈夫かどうかは私が決めるんであって、コイツに決める権利は無いんだが?

なんなら白のこの身体が死んでたら私も死んでたかもしれないんだぞ、心中なら2人でやるから2人とも他殺しようとかマジでふざけんな。

 

「まあな、ふざけた話だ。

 だが会議は続行すべきだとワレは思う。

 神社会は腐っても実力主義社会だし、強きものこそ有利になりやすい。まして相手は存在が法の星羅族だぞ、そこを忘れるな」

「ああアルセウス、今は体裁上は生誕顕現祭か、理解した。

 わかった、今回はなにもなかったこととして手を打とう」

「ありがとう。

 君が許してくれて、嬉しいよ」

 

キラの言葉を無視して、どかっと椅子に腰掛け足を机の上に乗せる。ああ腹が立つ、私が力量差の分からない馬鹿なら怒りで飛びかかっていた。

 

 

「白、大丈夫だった?

 怪我はない?」

「うん、大丈夫」

 

ふーん、なら許してやる。

かすり傷でもついたなら話は別だった。

 

「はい、じゃあ青も加わったことだし、会議再開!

 みんないいね!」

 

戻った空間の中、三者三様の様相を呈しながら会議は再開された。





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この作品のこれからについての重要なアンケートがあるのでお答えいただけると幸いです。


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134 軽々しく進む会議、その結末。


会議編、閉幕。



「2つ目、次は青とゼルギズの処遇についてだけど、今2人ともそもそもどういう存在なの?

 下等生物っていう設定なのに全然神以上のエネルギー持ってるみたいだし、青に至っては地球の原生生物たちと取引までやってるよね?

 私、というか神たちの認識として惑星間移動ができる存在を神以外のなにかにしてるのもわけわかんないしさ」

「ここはD、あんたじゃなくて私が答えるんで構わないか?」

「もちろん。あなたが責任もって答えて下さい」

「ん〜。我も特に青と機構変わらんしお前が答えていいぞ。なんか思うところあったら口を挟むかもしれんが」

「そう、ありがとう」

 

正直さっきのイライラが収まったわけじゃないけど、この話はちゃんと答えなきゃダメそう。なにより、キラがウザいと言えど神々の情報源を担っている星羅族に私の好きな情報を流せるって考えればとってもお得だ。いくら特異的と言えど、新米の私の影響力はたかが知れてるしね。

 

「私とゼルギズは、身体の仕組みさえ整えれば別にシステムの補助無しでも生きれる。宇宙空間における耐性もあるし。だけどまだ星の準備も出来てないし神になる気はない。神になりたいと思ったらまたキラには連絡するからその時に神の間で広めてね」

「どうやって神になれるのになってないように抑えてるかを聞いても?」

「無理やりシステムとエネルギーを組み合わせてあの星でないと少し身体のバランス壊れるように作ってるの。ちなみにゼルギズもそう」

「ふーん、詳しくは聞かないけどそれ聞けただけでもありがたいね。Dちゃんいるのにそこら辺の事情に踏み込むのは申し訳なかったかな?」

「我が言うのもなんだが、謝るのならそんなことはすんなよ」

 

いやゼルギズ、コイツは謝るつもりでわざとなりふり構わず暴走してるんだからな?謝ってるのもただの口だけでそれさえやればなんでもしていいっていうゴミみたいな認識だぞ?というか謝ってるのはもはや儀式でしかないだろ、クッソ考えるだけでろくな女じゃない。

 

「まあねー。

 で、2人ともどのタイミングで神になるのとか考えてる?

 また白みたいな生誕顕現祭とかやるから出来るだけ知っておきたいんだよね。

 神様も一応予定合わせ必要だし君は特異体だから結構な人が顕現祭に参加したいと思うんだよ」

 

うーん、どうするか。これ言っちゃっていいんだろうか。いやいずれ言わなきゃだし先言っといたほうがいいのか?

今後の予定普通にとんでもないんだよ。特にやばいのはDにキレられそうってこと。あの星の資源一部借りなきゃだしなによりいずれ歯向かうであろう神に塩を送ってくれるかって問題。

かといって今言わないで後回しにするのもそれ相応にやばい。いざギリギリになってあんなやばいこと言い出したら今度はDだけじゃなくキラにもボコボコにされる気がする。となると、他の神様に知られちゃっても今言ってしまったほうがいいかもしれない。

よし言おう、言わないよりさっさと言ってしまったほうがいい。どうせアルセウスがいるんだからDは今私を殺さないはずだし。

 

「自立するのはとりあえず星作ってからにしようかな。一個作って、そこを私の星にして、ちゃんとあらかじめ星一つを獲得してから神化するつもり。

 ゼルギズもそうだよね?」

「まあそうだが……それ言ってよかったのか?

 星なんてもの作ったら利権争いになると思うが」

「だからあえて今言ったんだよ。

 人を仲裁すること、知識を得ることが最高の生き甲斐である星羅族のトップの目の前で」

 

それを聞いたキラ・ドルトンヘイア、Dは無言で固まっている。

そして腕組みしながら再び目を瞑るアルセウス。

ギュリエは最初から固まってるから別として、みなそれぞれになにか思惑があるんだろう。

 

「ぷっ、ははっ、君ほんとサイコーだね。

 白の命を守るための防御機構となったり、そんなことしてると思ったら急に星作るとか言い出しちゃってさ。

 訳わからなすぎてサイコー。

 Dちゃんが君のことに熱中してる理由、分かった気がするよ。

 ふふ、はは、笑っちゃう」

 

うーわ。

マジで私Dに熱中されてるの?

キラは机バンバン叩くほど大笑いしてるけど、本当に勘弁してほしい。

猫に捕捉された猫じゃらしの気持ちわかるか?

ほんとキツいぞマジで。

 

「でも星作るなんておおそれたこと、まだ自分の星も持ってない神様が出来るかな。

 Dちゃんだって星の破壊はできても1からの作成はできないだろうし……。

 アルセウス、Dちゃんそこらへんどう思う?」

「私も出来るかわからないですね。

 あなたの言う通り、星の破壊は問題なく出来ますが生成したことはないです。

 ま、生成するほうが破壊するのより全然難しいと思いますが」

「だよねー。

 アルセウスはどう思う、星作るってことについてさ」

「いやー、ワレも呆れるほど長く過ごしてるけど、星も自分で持ってないような奴が星作んのは聞いたことないぞ?例外的に神を大量に引き連れてたやつが作ったことはあるが、あいつ自身とんでもなく長く生きてるから結局神としてのランクはバカ高いからなー。

 まあ極論言っちゃえば新米で自分の星ほしいから作りますっていうやべーやつは見たことがない。でもやってみればいいと思うぞ、お前の生態上理屈では出来ると思うし作ってる過程見て見てみたいからワレはO K。

 ってそんな感じでワレはいいと思ってるんだけどキラ、お前はどう判断する?」

「えーと、最高神サマ?

 あなたがそこまで推してる相手を私が拒否しろと?

 そんなこと出来るわけないじゃないですか、やだなー」

「いやでも他の神様とのやり取りで結構ワレの言うことディスったり否定したりしない?

 お前そこらへん権力に屈しないやつじゃん、なんなら権力アンチなんじゃないかとも思ってるんだが」

「いやいやそんなことー、ある、かも?」

 

うーむ、やっぱり他の神様でも初心者で星作るようなやばいやつはいないのか、そりゃそうだ。私がたまたま考えついただけで普通の神様そんな訳わからんこと思いつかないと思うしできないと思うんよ。あいにく出来るだけの生態と発想、それに原生生物に手出ししないっていうDの盟約が全て生きて成立する。

ただアルセウスが一瞬で思いついたのは悔しい、私が一年かけて構想してきたものなのに。

同時に出来るだろうっていう太鼓判を押してもらったのはこれ以上ない幸運と言えるけどさ。

 

あとアルセウスとキラすっごい仲良くない?

最高神相手にこんな軽口叩けるの、いくら顕現祭と言っても尻込みしない?

それはキラの立場からなのかそれともプライベートな仲なのか、わからないけどすごいな彼女。

 

「ともかく、ともかく!

 ボクとしても星作っていいと思ってるよ。

 ただもちろん他の星の軌道めちゃくちゃにするような位置に作ったり、他の星を侵略するための拠点にするとかならもちろんアウトだけど。実際星は増えたほうが最悪君が亡くなった後でも資源が増えるから大歓迎なんだ。

 なのにたく、あのクソヤロー共はなんでもかんでもボクのやることにケチつけるからマジでイライラする。

 自分たちが星獲得出来なかったりとかの負け惜しみでどうせまたなんか言ってくるんだろうなー。

 ごめんごめん、だからオールオッケー!一部のわからず屋の神は私が説得するからさ、君はなんも気にせず星作っちゃえ!」

 

怖っ!?

あれ、今一瞬とんでもならない量の闇のオーラが出たぞ?

え、マジでキラってそんなにやばい神?

神同士の仲介役って時点でとんでもない神だけどさ、ぱっと見そうは見えないんだよ。

うーわ、高校生くらいの男子か女子かわからないようなかわいい子が訳わからんドス黒いオーラ出したの怖すぎるよ。

ほんとに見た目はかわいいかわいい美少女?美青年?なのにさ。

 

仲介役ってことは、いろんな恨みを買いながら生きてるんだろうな。

変な神が今日の私みたいに要求して断られることも全然あるだろうから、アンチが生まれてしまうこともわかる。

変な嫌がらせとかされそうだし、族の盟主ってこともあるし私が予想してるより全然キツい人生を送ってるのかもしれない。

 

「じゃあ二つ目の議題については青がいずれ星作るまでは原生生物としてDちゃんが管理ってことでいいね?

 もちろんアルセウスの取り決め、原生生物に干渉しないっていうのももちろんそのまま維持。

 いいね、Dちゃんも」

「はい、大丈夫です」

 

「よーし、じゃあ最後の議題、退廃の星のこれからについてだけど。

 Dちゃんなに企んでる?」

 

は?

空気が一瞬にして凍ったような気がする。

え、え?企んでるってどういうことだ。

あの星に住んでる私ですらなにもわからないんだけど、ほんとにどういうこと?

笑顔で言うキラがただただ怖い。

 

「別に何も企んでいませんが」

「いやいやボクを舐めちゃダメだよ?

 冷静に考えておかしいじゃん、だってDちゃんあの星に興味なかったのに急にこれからを変えたいとか、なにを企んでるのかねぇー?

 アルセウスとの約束、まさか変えて欲しいとか?」

「——あなたはさすがですね」

「もー、それは無理だよ無理。

 ポケモンのキャパシティが多分予想超えちゃったんでしょ?

 まさかエネルギー最大クラスまで回復すると思ってなかったもんねー。

 そこら辺は青が独立してからやりなよ」

「わかりました」

 

えーと、ヤバいでーす!神になった瞬間即狩られそうでーす!

元々星作ったらそれ防衛しなきゃいけないのにマジヤバいでーす!

星守る前に自己防衛しないと死にそうでーす!

 

「じゃ三つ目の議題も解決したってことにして、とりあえずこの生誕顕現祭は終わりかな?

 あとなにか言いたい人いる?」

「ワレにひとつ」

「なにー?アルセウス」

 

アルセウスは軽く手を挙げる。

なんだなんだ最高神。とりあえず話は終わったはずだけど。

彼はこちらを向いて、その挙げた手でそのままサムズアップした。

 

「Good luck!」

 

彼は叫んだ。

次の瞬間、天地がひっくり返る。

そして遥か下に見える巨大円盤。

え、あの円盤が全然ちっさく見える!魔法も使えない!どっから落ちてる!?

 

私は神に、神社会全てに喧嘩を売った。

星を作るということは星を資源として石油のように奪い合う神たちに餌を与えるということ。神初心者の私はそれを持ったまま、神の暴力、智力、権力に全て歯向かわなければいけない。

これは宣戦布告だ。

だけれど負けない、全て破壊し尽くすだけだ。

これは欲張りな私の、私のために戦う下剋上だ。

 

 

そんな決意を固めながら、訳わからない空間で、訳わからない重力を受けながら私たちは風を切って落ちていく。

 

 

———————————

 

 

 

「ほらほらみんな帰った。

 キラも早く帰れ、神たちに今日の話の起承転結話さなきゃいけないんだろ」

「そうだねー、ボクも帰らなきゃ。

 アルセウス、今日の会議ちなみにどうだった?」

「お前、流石だな。

 嘘つきまくりでワレ引いたわ」

「あちゃー、結局アルセウスには全部バレちゃってるか。

 まあ知りたいこと知れたしボクは帰るね」

 

 

暗くなった空間の中、アルセウス1人だけが取り残された。

 

 

「誰も死なないよう敢えてすぐに帰した。生き残れ、若人よ。

 世界を変えてみろ、若人よ」

 

 

最高神で、最高の邪神は、薄ら笑いを浮かべた。





嘘と真のグラデーション⭐︎


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閑話 ゼルギズ・フェクトガキア 〜プロニートの1日〜


閑話です。



朝7時、白が目を覚ますと同時に我は無虚空間内で目を覚ます。

目を覚ましたら、家の外に出て陽の光を浴びながら朝のストレッチ。

無論無虚空間内での話である。

 

というのも、我はいくら地龍を名乗っているとは言え長期間光を浴びていないのはなかなかに精神に応えるのだ。青も光を浴びていないと結構簡単に病むとは言っていたし、我も光を浴びるのは大事だと思ったから電脳に頼んで仮想太陽を作ってもらった。

なんか青が色々地球でやり取りをしたらしく、特にここ最近で核廃棄物?というのを貰って来ていた時は電脳もすごいホクホクした顔を見せていた。我には危険だから近づくとはやめとけと釘刺されたが。

 

そして我はストレッチを終えてから電脳が仕事をしている筈の工場へ向かいインターホンで呼び出す。ストレッチを20分もかけてしているのだ、いくら我のエネルギー効率がいいとはいえ腹が減る。朝飯もまだ食ってないし食わねばならぬ。

 

「あ"ー、もう朝飯の時間か。オレ様も食ってないから今食うかな。

 外で青が飯作ってるしそれに色々加えるか。

 今日はなんかいるか、毒とか鋭利なものとか」

「うーむ、より強固なドラゴンになりたいからな、全部突っ込んでくれない?

 ちなみに献立ってなんだ」

「カレーらしい。米は貴重だからパン的な物が炭水化物枠だ」

「わかった。最近は毒に強くなって来て美味さを感じるから、好きなもんで良かった」

 

こんな話をインターホン越しにして少しすると作業着姿の電脳が出て来て小さなゲートのようなものを開けてくれる。今日は電脳も一緒に食うらしいが、たまにゴーグルをかけていたり装備していたりでそのまま帰っていく日もある。我が言うのもなんだがちゃんと飯は食って欲しいものだ。

 

外に置かれたテーブルのもと電脳が色々な毒物などを入れ、共に飯を食う。我はカレーが好きだからとても嬉しい。だがこんなパンみたいな薄い物は初めて見た、なんだこれは。

 

「これはなにだ?」

「なんだよ」

「だからなにって聞いている」

「んだからナンだよ」

「だからなんだ」

「ナンだって言ってるだろ!」

「なんだ貴様、その物言いは!」

「いや——」

 

紆余曲折あったがナンという食べ物だったようだ。後半は我もなんかも知れないと察した部分もあったが、引き返せなくなってしまった。

強情というのは罪だし毒だと思う。

まあお互いがなにを勘違いしていたかは理解できたし、結局は和解出来たから問題ないだろう。なんもかんもナンというよくわからん名前が悪い。味は良いからまた今度食いたいと思う。

 

 

 

飯を食い終わってからはテレビでエレテクトたちの撮った映像を見ながら内職をする。内職というのは、ただただ我自身の鎧を剥がして積み重ねていくこと。

どうやら電脳によれば、鎧は鎧を剥がすほどにより強固に、より美しさを増していくらしい。

我が目指しているのは完全に黒光りした、黒龍などとはレベルの違う美しい鎧、美しい鱗を持った龍なのだ。それになるためならこの作業は絶対に欠かせない。

鎧をある程度剥がしたらテレビの隣にある専用のゴミ箱に全て突っ込む。どこぞのく◯寿司のように突っ込んだらそのまま自動で電脳の工場まで送られるから、アイツも我の身体を素材として使える、WinWinだな。

 

 

 

そんなことをしていると午後になっている。

家の外が暑くなってくる頃だが、こんな時間になると電脳の方がインターホンを押してくる。お、今日も来た。

 

「いるかー?エネルギー源になれ」

「わかった、我に任せろ!」

 

そんな会話をしてから行くのは工場の最下層。エレベーターで降りて、小さな窓のついた小部屋に入る。ここは10000度でも耐えられる本当に丈夫な部屋で、天井にさまざまな機械がくっついている。上に直接タンクがあるらしいが、機械でも熱は吸収しているようだ。

 

「よーし、じゃあ頼む!いつも通り最高温度でいけー」

「任せろ!いつもの頼むな!」

 

体温をどんどん上げ身体の鎧を完全に溶かす。

身体は赤く光り、部屋の中はサウナのように超高温になる。

だが我はそんなことを気にも留めない。

 

電脳は我がこの部屋の中にいる間だけ知識を共有してくれるのだ。

だから我は頭の中でその知識を探り龍についてのイメージや情報を集めていく。神話とかサブカルあたりを特に見ているから、その知識なら青に負けないくらい知っていると思う。

 

「じゃあ終わりだー、帰れー。

 あと飯、夕飯な」

「サンキュー」

 

そんな会話を終え工場の目の前にある家に帰る。熱エネルギーになってる時間6時間近くあるから、工場出たら人工太陽もなくなってるんよな。

そして電脳からもらった飯を食いながらテレビ視聴。

どうせ流れる映像は大抵エレテクトたちが撮って来た星の風景とか人の暮らしぶりとかだが。

あー、青が地球に行った時はあの星のテレビの映像が映ったからまた見たい。真新しいものたくさん見れたしなー、あの時は。

 

飯も3食食えたし地球いいよなー。なんでこの星1日2食なんだろう、やっぱ食料少ないからか?

どちらにしろ外には出てないが。

 

電脳も電脳だ。

あいつ、1日1食しか食ってないよな。

日光もビタミンDが得られれば十分とか言って、全然光浴びないし。

 

 

うーむ。

そんなことを考えながら我はベッドに入る。

いつか、本物の美しき、強きドラゴンになるために。

 




読了ありがとうございます。
7月2日23時59分を過ぎたため、アンケートを締め切らせていただきました。

結果としてはリメイクを作るということに決定しましたが、僅差であったためこの小説は残させていただきます。

私もリメイクを書いて整理したいと考えていたのでご容赦ください。
少し時間はかかるかも知れませんがいずれ神化顕現祭の部分まで戻って来ます。

リメイクの第一話は7日までに上げさせていただきます。
これからもよろしくお願い致します。


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135 戦争、その後処理


たまにはこちらも上げたい。



「あー、ヤバいヤバいヤバい!

 急いでやんなきゃいけないことが多すぎる!

 誰がDに喧嘩売ったんだよ!

 私だ————!!」

 

あのあと、なぜかふわりと着地出来た私たちはGフリートが墜落しているのを確認。

そして待ってくれていた龍に適当に爆発物だけ処理しろと伝えて今に至る。

今はちょうど暴走してるクイーンを叩き潰して食ってる。

龍どももポティマスは紛い物というけどそれでもちゃんとした志はあるから十分使い物になるね、私が帰ってくるまでクイーンに対して粘ってくれたんだから。

強さも及第点はあるかな。

 

『ギュリエ!

 あんたは今宇宙空間にいるはずだから体内に溜め込んでるMAエネルギー全放出しちゃって!

 帰ってきたらまた補充してあげるから!

 出来れば何往復かしてくれると嬉しい!』

『はぁ!?

 貴様はなにを言っている!そんなことしたらまた龍が湧くぞ!?

 その膨大なエネルギーを回収しに!』

『わかってる!

 私も龍どもと接触したいんだよ!星作るまでにまず戦力は確保したいから!頼んだよ!』

『いや、待——-』

 

すまんな、念話時間ないから切った。

宇宙空間にいるヤツと念話するのエネルギーも結構食うからしゃあないしゃあない。

あー、ヤバいヤバい。これからやんなきゃいけないことは何個だ?

一つ、二つ、三つ、四つ……。

ああ多い、私が宣戦布告しちゃったから何にも言えないけどやること多いよ。

腕が何本あっても足りん。

 

皮となったクイーンの上で、半裸の私は背中から生やした6本のカニみたいな脚で6つの浮かび上がってるパネルをいじる。あークソ、賢姫とかダスティンとかとにかく処理が多い。

ゼルギズもあの空間じゃ精神体だけなんとか取り繕って出したけど体は不完全のまま。しかも白に至ってはDにだいぶ無理させられたのかこっちの世界に来てから指一本動かせなかった。今は無虚空間にいるから安全だけは確保されてるけどマジで許さんからなD。

電脳も2人の回復のためにこっちに時間取れないしさ。

 

「青ちゃん……、私はどうすればいい?」

「とりあえずGフリートに入ってるであろう武器の無力化!

 出来れば使えるような状態のまま、戦闘機とかもそのまんまの感じで!弾薬とかだけ暴食で食べるので出来ないかな?」

「わかったやってみる。

 ありがとうね、事務作業」

「こっちは大丈夫だからそっち頼んだ!」

 

『ダスティン!

 こっちは無事Gフリートを叩き落とした!

 あと兵隊不足だったら改めて言ってくれ、ポティマスに悟られるのが1番めんどくさい!

 それはあんたもわかるでしょ!』

『それはわかっております。

 Gフリートに関しては誠にありがとうございます。

 ですが、私の兵力については秘匿させていただければ幸いです』

『オッケー、その言葉だけ聞けば大体察せられた!

 あとは事後処理までこっちで済ませて機械なんか見る影もないようにしてあげるかはそっちは人間関係の問題解決して!

 適当に天災とか言っときゃいいんじゃないの、実際うちのクイーン軍団のおかげで気候変わるんだし!』

『そこは私が上手くやります。

 今回の件、本当にありがとうございました。心から感謝いたします』

 

おぉい!

感謝してる割に隠し事の数えぐいぞ!

というか念話そっちから切ったな、話すこともうないし忙しいから全然許すけど!

 

クッソ、クソエルフも世界反転の時にちゃんとエルフの里の中まで帰りやがったな。

とは言っても今の私なら問答無用全力カチコミでやつの人生は終了させられる。

だけどワンチャン外部存在への対抗手段とか産んでくれるのならちょっとは泳がせていいかもしれない。アイツGフリートでのあの兵器からしてエネルギーさえあれば外部の神をワンチャン傷つけられるものでも作れるかもだし。

いや作れないかも、宇宙龍対策のレーザーゼルギズが生きてるもん。

まあどっちにしろわざわざ行く必要も無さそうだし今はほっとくか。

 

『Gフリートは叩き落としたから安全になったらソフィアとメラゾフィス、アンタらも連れ戻すよ!

 明日くらいには!』

『え!?あ、はい、わかりました』

 

よしメラゾフィスの返答確認。

Gフリートレベルの脅威じゃないと今の私にとって害無いからね、なんもないなら無虚空間に回収しちゃった方が絶対に安全だ。

ずっとそのままで魔族領まで行くわけではないけど、この戦後処理が終わるまで。

というかソフィアたちの安全だけ考えるなら私もう魔族領まで転移出来るし。魔王に言うとめんどくさそうだから言ってないが。

変な場所だったらめんどくさいからケレン領にいた時に念のため確認してきている。

 

とりあえずこれで連絡は終わりかな。

じゃあこれからはここのお掃除だ。

今までの連絡大体勝手になんとかしろって言ってただけだし、実はこっからが私の事後処理としては本番なんだよなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まず一番最初にだけど、良かった。

ほんとに良かった。

Gフリートが爆発しなかったこともだけど、実はもう一つ良かったと思うことがある。

というか普通にガバガバだったし下手したら世界中更地になってたからな。私のせいで地ならしが起きてこの星が更地になってましたとかエネルギー関係なく笑えんからな。

 

 

動きを止めたクイーンエレテクトの軍団を見て、私は深いため息をつく。

良かった、機械全滅させた後に1体以外は暴走しなくて。

私がこの星から飛んでたし下手したら数万体が暴走して世界が更地になっていた。

というかこれは私じゃなくて急に星から飛ばしたキラとかアルセウスが悪いんじゃないか?

私は元から星出るつもりなくて命令したのに星の外に勝手に飛ばしたのは彼らなんだから。

でもまあアルセウスが暴走防いでくれたのかもね、そしたら……嬉しくないわ、というか1体暴れてたしそれはないだろ。

いくらうちのクイーンがステータス10000超え程度だといえど龍が足止めしてくんなきゃ大惨事だったからな?

なんとかなったから良かった。

 

「ヒュウ青、そっちは全部終わったのか!?

 オレたちはいちおう変な火薬とか全部処理してきたが!!

 ……というか上着なくていいのか?全部丸見えだが」

「ありがとう。じゃああとは私が処理するよ。

 あと服は怪我はしないし別に恥ずかしい訳でもないからいい。そもそも今は背中から脚生やしてパネル打ってるからね、ほら。

 面倒なんだよ、服着てると案外」

 

飛んできたヒュバンにクイクイと6本の脚を動かしてみせる。

というかこの龍にも恥とかそういう概念あるんだ、少し意外。ガキアと暮らしてたゼルギズが服とかいう概念知らなかったし、全裸でもなんも言わないんじゃないかって思ってた。

まあ胸もアリエルよりはあるから、いくら見た目が幼めだといえどまあ人前に出る時はちゃんと着る。そこら辺はわかってるしなんなら下は今もちゃんとスカートみたいに履いてるからね。

結構ズリ落ちそうで危ないけど。

 

「今は何も言わないが、ちゃんと終わったら着ろよー!!」

 

私がGフリートへ転移する直前、後ろからそんな声が聞こえた。本当にあの龍人間のこと知りすぎじゃない?

私には関係ないことだけど前世人間とかだったりするのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『電脳、全部食べるよー!!無虚空間に機械置く場所開けといてねー!!』

『あ“ー、わかってるわかってる。

 だけどそれ一日で食えんのか?

 無理だろ絶対』

 

あー確かに。

そんなことを話しながら青い空の下Gフリートの上で全裸になって寝転ぶ。

龍やアリエルにはクイーンたちが荒らした土地の整備を頼んだし今ここにいるのは私だけだ、だから見られることもないってわけよ。

たまに補給で離れる飛龍が上飛んでる時あるけど気づいたら負けだぞ。

どっちにしろヒュバン以外変な反応しないしまあ平気でしょ。

 

「服着ろ、気まずい」

「あん?あ」

 

身体を起こすと、ギュリエが私を見て頭を抱えていた。どうやらいつのまにかエネルギーを放出して帰ってきてたみたい。

この時間で帰ってこれるのなら上出来上出来よ。

 

「ヒュバンだけ私の全裸に反応するから面白くて見てだんだけど、なんでかわかる?アイツだけロリコンとか?」

「最低な勘違いをするな。

 アイツだけはもとは人間だからな、普通に気にしているんだよ。心配させるな」

「え」

 

 

ちょっと待てい!

龍が人間にされてるのかこの世界!

正直元人間に裸見られてるとかそんなことよりこっちの方がヤバそうなんですけど!

そもそもこれ、聞いてよかったんだろうか。

 

 

その後、クソエルフの人体実験での失敗作が彼らなんだとギュリエは教えてくれた。

龍に対抗するために龍を作るとかいう、テラフォ◯マーズみたいなことをやろうとしてくれたわけだ。

見事に失敗したから今も奴はヒュバンを見下しているわけだけど。

おいあのエルフクズ過ぎるぞ。

まあ、それはともかく。

 

「はい、少ししたらいってらっしゃい」

「急に私の背中に触ってどうした」

「エネルギー充電してるからあと10分したら宇宙へGO!」

「鬼か!?」

 

はい、鬼です。

星とサリエル救うためなら鬼になりますよ。

 

 

ギュリエを宇宙へ弾き出して再びため息をつく。

そもそも全裸になったのも私が露出狂だからじゃないし、そろそろ本題に入りますか。

 

 

Gフリートさん、その機械に感謝して。

 

 

いただきます。





最近投稿頻度落ちます、すみません。


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W6 どうもこんにちは神の分身です

お久しぶりです。
やりたいことをやっていたら遅れました。


「なんか食うか?飯あるが」

「いらない。お腹減らないし」

「おけ。我もまだ完治してないから動きたくないし、それならそれでいい」

 

私は白。青が作った空間の中にいるものの、まごうことなき神の分身だ。

元々の心、感情を、知能を押しつぶして生まれた、神の分身。

もともと感情なんてものがあったのかは知れないが。

 

その違和感に気づいたのは、神になって目を覚ましたとき。

私の目の前でポテチを食べながら笑っていた女は前世の私そのものだった。

そして混乱する私の目の前でそいつは言う。

 

「貴方方はこの世界に転生したんです、私がいたために教室が爆発したので」

 

だからなんだ、と思った。

私は混乱しているんだ、そんなことは関係ないと思った。

知りたいのはなぜお前なのか、それだけだった。

なんだお前、私が見た私はもっと静かで……。

 

あれ、私、鏡なんて机の上に置いていたか?

いや置いていない。

じゃあ、この私の顔は誰が見たんだ?

思い出そうとしても、蒼生の顔しか出てこない。

なんだなんだ、なんだこれ呪いか?

この蒼生の顔の記憶はなんなんだ。

この覗き込むような記憶は。

 

彼の手の上を私は歩く。

周りには呆れたようなクラスメイトたちの目、彼の次に見える私の呆れ顔。

笑う蒼生。

 

次の瞬間、私の頭に雷が走り二つの人生が一気にフラッシュバックしていく。

人をゴミのように見る私。人を恐れて逃げて、隠れて、殺して敵とみなすわたし。

青のことを軽視する私。青以外のものを全て軽視するわたし。

私以外の人間は下等なクズだと笑う私。わたしが最も下等であると自分を嘲笑するわたし。

全ての歯車が、頭の中で記憶と共にガコンガコンと組み合わさっていく。

残酷に、でも確実に噛み合っていって、私は全てを理解した。

 

 

 

 

私は教室に迷い込んだちっぽけな蜘蛛だったんだ。

そしてそんな蜘蛛を、本来ならば巨大な人間たちに勝手に殺されているであろうちっぽけな蜘蛛を、クラスメイトなんかよりも全然大切にし続けた蒼生。

ああそうか、そうか、そうだよな。

青も私も、魂のレベルは等しく愚かだったんだ。

私は蜘蛛で、彼は人間を捨ててそれに合わせていたから、私と彼は2人で蜘蛛になった。

 

彼と私は、最初からこの目の前の化け物と同じくらいに狂っていたんだ。

 

 

 

 

「おい、おい、聞いてるか?」

「ああごめん、どしたの?」

「テメーが寝てんのは不都合だからな、叩き起こした。

 何より泣きながら寝てんのは気分がわりぃ、泣くんならオレ様の目の前で泣け」

 

目の前にいつの間にか電脳が立っていた。

と言うか私泣いていたのか、驚き。

 

「テメーが泣いてる理由当ててやる。

 自分の存在を初めて理解した、OK?

 それで自分がどうすればいいのかわからなくなってるんだろ」

「いや、その、わかんない」

「あー、まあとりあえずオレ様の話を聞け。

 テメーが蜘蛛であること、それをオレ様と青が認識したのは2年前だ」

「は?」

 

思わずすごい声が出た。

でも、理解出来ない。

なんで私がついさっき知ったことをコイツらは2年前から知ってるんだ。

どうやって?

 

「あー、理解出来ねぇって顔をしてんな?電脳舐めんな。

 名前がねーこととか、テメーの家族構成、クラスメイトへの記憶がバグみてーな挙動してたかんな、それで推測した」

「それだけでいけるの?」

「まあオレ様も確証なかったが。Dに会った時点で確定したが」

 

やっぱ化け物だなこいつ。

私のことを確実に私より知っている。

あれ、じゃあ青も私のことをより知ってるってことか?

ええと、それはなんか少しだけ嫌な気がするな。怖い。

 

「だからまあポジティブにいけ、どんなことをしてもテメーはテメーだ。

 今のお前があの蜘蛛とDのキメラだとしたって関係ねぇ。それを知ったところで、たとえお前がそれを言いふらしたところでいつも通り接するからな。

 みんなみんなそうすんだろ。

 何があろうと、何が起きようと、人は変らねぇ」

 

うん、そうだ。

やっぱりそうだ。

いつもなら私はこんなことを言われたら、そりゃそうだろうと言って普通に流したはずだ。

だけれど今日の私はどこか敏感だったのか、その言葉を受け止めたくなかった。

電脳の声色に、諦めたような声に、私は反応せざるを得なかった。

 

「電脳」

「なんだ?」

「人は変わるよ」

「いや、変わんねぇな。

 死んでも変わんねぇ」

「変わる」

「変わんねぇよ」

「変わる」

「なにが言いたい」

 

こちらを見下げる電脳の睨みつけるような目に思わず怯む。

けれど伝えなければいけない。

彼が壊れる前に、壊れきってしまう前に。

 

「だから、だから。

 自分を殺さないで……」

「……ああそう、オレ様のことはオレ様がいちばんわぁーてる、安心しろ」

「待って!」

 

私の言葉はスッと青い空間に消えた電脳には届かなかった。

無虚空間だから、彼の住処に等しい工場へとワープでもしたのだろう、そう思うしかない。

けれどそれがわかっていても身体はまともに動かせない、足が動かない、立てない。

彼の心は、彼女の心は、もう壊れてしまっていた。

呆然として、彼のいなくなった空間を見つめる。

 

 

なぜ私は今まで気づかなかったのか。

彼の、彼女のこの一年はなにがおかしかったのか。

地球に何回も行って、前世のことを全部処理してきたと言っていた彼は、そこでなにを知ってしまったのか。

なんで心を壊さなきゃいけなかったのか。

人の記憶に蜘蛛の心を持った私は、私は未だそれを理解することが出来ない。



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136 神展開よくない、私も神だったわ


久しぶりです


どうするかねぇ……。

私はGフリートを喰らいながら考える。

これからのことを考えると言ったはいいけど正直過去最高にこちらが不利だ。

いくら星羅族の法で縛ってたとしてDがガン無視して突っ走ったら終わりだからね。そうでなくても今の私がやってるようなことをDにされたら詰む。

それを考えると冥土の入れ知恵が怖いな。私の策略を行った上で冥土がどう動くかはこちらにとっても想定不能だけど。

 

「そういやお前、今大切なのってなんなんだ?」

「おおどうした電脳、もちろん白たちだよ」

 

それを聞いた電脳は一息ついてこちらに語りかける。

どうやらなにか物思いに耽ってたみたいだね。私もそういう時頻繁にあるからわかるよ。

 

「人間とか、今はどう思う?」

「大切な存在だよ。絶滅したら立ち直れないかも」

「はぁぁぁ。そうなったか。オレ様の精神がこうも元ネタから離れてきちまったか分かったわ」

 

 

もうそういうレベルじゃない気はするけど、電脳はまだやさしいんだなぁ。そんなことを思いながら彼の話の続きを促す。

残念ながら私はもう人を辞めてるからね。ヒトには敵対されなきゃなにがあってもよかったのですよ。

 

「オレ様のガワの元ネタは石神千空、お前が好きだった漫画の主人公だ。

 そいつは一度終わった世界を自身の知能、記憶力、計算能力で元に戻そうとした。それをお前は奴の第一印象として思っている。

 全人類救うという奴の馬鹿げた、それでいて美しい理想を歪んだ信条に変えてな」

 

ああ、歪んでいる。

彼の純粋な善意による目標を私は歪んだ自己防衛のための理由として採用した。

人間を殺さなければ人に敵意を向けられないという、ふざけた理由で。

 

 

「その心を受け継いで生まれたのがオレ様だ。

 だからオレ様は石神千空というガワで生まれながらその意志だけはガラクタの化け物になってる。

 はは、尊厳破壊としては100億%ネタでしかねぇな。

 ーーそしてお前は、今もそれを思ってる。

 もう一度聞こう。お前にとって人間は何だ?」

「獣の1種。いくら減ろうが増えようが構わない。

 例えば戦争が起きたとしても、私の大切な人が無事で、人類が絶滅しないのならそれもいい。

 どんなにゴミみたいな国が世界の中心になったりしても、大量の人が拷問や凌辱をされて死んだとしても、それを非人道的だと訴える気にはならない。

 だって獣だ。ウサギやイヌが殺されているような嫌な気持ちはあるけど、それは嫌なものを見たという気持ちであって不快感であって悲しみじゃない」

 

その点白はすごいよね。自身を大切にしてくれた人間側で戦争に走ったんだから。

いくら恩義があるとはいえ、そんな単純作業私はやりたくない。めんどくさいもん。

 

「ただ、さすがに絶滅しそうってなると話は別かな。

 今のところ数は少しずつ増やしてるし、正直普通の獣よりも多いから気にしていないけど、絶滅の危機に瀕したらちゃんと疲れてあげるつもり。

 そんなもんだよ、私の意志は」

「お前だな、やっぱり。

 オレ様もおまえだからそういうクズみたいな性格嫌嫌いじゃねーわ。

 まー、そのおかげで元ネタの一番のお魅力さんは吹っ飛んじまったんだけどな」

「魅力なんてもの人によって違うんだ。

 Dしかり白しかり、私しかり。

 それが神だよ」

「確かにな。だからこれは神展開で、盤上の上だ」

「頭痛が痛そうだね」

 

ケラケラと話しながら笑う壊れた私たちは、未来へと歩く。

食らい続ける。

寂しさに全てを破壊されないように大切な人だけを抱えて。

それに絡みついたものを、すべて引きちぎりながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

困った。

ポテチを食べる手を止めてメモ帳にいろいろ書きこんでみる。なんの予測も立ちはしないが。

手の打ちようがない。いや、考えれば打てる手はあるんだろうけれどあいにく今は思いついてない。

どうしようか。おそらく私が考えた作戦で青は星を作るはずだ。馬鹿げた理屈だけど、私が絶対手を出せない作戦。原生生物に関与できない限り私がそれを抑えることはできない。

ほんと馬鹿だ、彼女。

 

「だから面白い」

 

私も腹の虫を全力で動かして見せよう。

神の力のその一端、思い知るがいい。

そして思い知れ、井の中の蛙よ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つーかお前、そもそも龍に勝てるのか?

 ギュリが呼び寄せたのはいいが、もしまけたら元も子もねぇ。

 負けたらこの星ごと全部パーだぞ」

「大丈夫。絶対に私は負けない」

「どうしてだ」

「みんな、元人間をなめすぎてる。

 そしてその怒りを負った人間の強さをなめすぎだ」

「そうは、あんまり思えねぇんだがな」

 

確かに私は勘違いしているのかもしていない。

案外龍が強くて、私はボコボコにされるのかもしれない。

そしたら、もう終わりだな。そんな運命だったと受け入れてあきらめてしまうのだろう。

けれど、残念ながら、本当に残念なことだけれど、これが私だ。

これが私の悲しい本質で、おそらく白も、Dも同じなんだろう。

ただリスクをどこまで考慮しているかの違いの、悲しき不死身のモンスターたちの空っぽな中身だ。

 

 

「とりあえずは、Gフリートを食うだけだな。

 それ以外のことは今度考えようぜ」

「確かに」

 

美しい荒野の中で、金属を削る鋭い音だけが響いていた。





蜘蛛ですが何かの二次創作、私はなんだかんだで最後まで残りたいですね。
生き証人になれたら。


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