司波(達也)咲耶のオラリオ『さすおに』物語—— (仁611)
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『魔法科高校の劣等生』

 

ライトノベルを始め、アニメや漫画と多くの作品として俺がいた日本では商業目的で販売されていた。現実では無い筈の第三次世界大戦が発端となり、超能力者の活躍で核兵器による世界の破滅は免れた。核兵器と呼ばれる化学兵器を退けた『未知の力』は、各国のパワーバランスを決める最重要ピースとなり、世界の各所で科学的に研究や実験を行う流れになった。

 

超能力を科学的に論理付け、その結果『魔法師』と呼ばれる存在が各国の中心となって行き、一世紀程経った世界で主人である公司波達也を取り巻く様々なイベントが起きる物語だ…。

 

 

 

何故いきなりそんな話が?そう思われてしまうのは無理も無いが、俺は何故か司波達也に憑依していた。だが——摩訶不思議な現象はそれだけでは終わらず、司波達也として魔法科高校で主人公ロールプレイを無事消化していたある日。

 

『横浜動乱編』と呼ばれるストーリーの最中、司波兄妹の実父と再婚した司波小百合が【聖遺物】と呼ばれ、魔法的な性質を持ち現代の科学水準を持ってしても複製が不可能な【瓊勾玉】(ニノマガタマ)の解析依頼をして来た。国防軍から依頼を受けたらしいパンドラの箱を解析する様な無茶な依頼、俺は今までイレギュラーを生まない為にもストーリーを忠実にこなして来た…。

 

司波小百合は、司波達也が『トーラス・シルバー』としても四葉の関係者としても疎ましく思っていた、だからこそ達也の小言である無茶だと言う台詞に頭に来たらしく、我が家から護衛も付けずにフォア・リーブス・テクノロジー、通称FLT(Four Leaves Technology)へと自分で【瓊勾玉】(ニノマガタマ)を持って行くと言い出て行ったのだが、大亜連(大亜細亜連合)のスパイが多く日本に潜伏中の状態では危険だと思い、俺は妹の深雪に「送って来る」と伝えて義母の小百合を追い掛けたのだ。

 

 

追い付いた時には、襲撃者に取り囲まれて怯える小百合が目前に見えていた為、CADと呼ばれる魔法の補助具を抜き放った。襲撃者を全て無力化すると、小百合を搭乗していた車両の物陰に退避させ、一応【瓊勾玉】(ニノマガタマ)を俺自身が受け取ってから周囲への警戒を行った瞬間、【瓊勾玉】(ニノマガタマ)ごと俺の心臓を狙撃者に撃ち抜かれた…。

 

その瞬間がどれだけの確率が存在するだろうか、左手に持った勾玉と心臓が射線上にある上での狙撃など——主人公『司波達也』は分解と再生を固有魔法として所持しており、再生は自身が生存する機能を失った場合即座に自動展開される。

 

肉体に【瓊勾玉】(ニノマガタマ)の破片が多く点在している自覚はあったし、過去に何度も再生を行なって一度もイレギュラーなど起きた事が無かった——【瓊勾玉】(ニノマガタマ)と言う未解明な物質が無ければ…。

 

 

 

 

 

 

意識が戻った場所は中世の欧米の様な雰囲気が見受けられ、自身の横たわる場所は城壁の様な街の周囲を覆う外壁上部だった。何より目の前に飛び込んだ最も衝撃的な建造物『バベルの塔』が雲をも超える高さでそびえ立っていた。

 

 

『ダンジョンに出会いを求めてるのは間違っているだろうか』

 

 

このフレーズが即座に頭を過ぎった——司波達也の肉体を持ったままどうやら今度は異世界転移をしたらしいのだ…。

 

自分の理解がおよぶ世界が変わってしまうのは二度目だからか、司波達也と言う肉体の感情起伏の抑制からなのか至って冷静で、思考は冴えていたお陰か自身の状況は整理しおわっていた。

 

司波達也として作り出したCADは両脇のホルスターに納まり、起動式圧縮ストレージとして使う弾倉部の予備がアタッシュケースに20本納められており、携帯型CAD調整器としてストーリーに無い俺オリジナルの機器が何故か調整用仮想デバイスと一緒に置いてあった…。

 

調整用仮想デバイスを簡単に説明するなら、某映画のアイアンマンが設計図を指のみで図面をいじる場面と同じ感じだ。携帯型CAD調整器自体は大型では無いが、それでもらいぶハウスのアンプ程の大きさがあるのでかんたんに運べない、だがしかし現代風なアルミ製の台車に括り付けられたサービスがなされた状態で置いてある。

 

司波達也の身体であるからには、どうしても確認がひつようだった『魔法』の展開を行なって見たが、想子(サイオン)と呼ばれる魔力の素も感じるし、情報体次元(イデア)に存在する自身の個別情報体(エイドス)の履歴も読み取れた。

 

『ダンまち』などと呼ばれるこの世界にも、科学水準が低いが『魔法科高校の劣等生』の世界同様の理論がどうやら通用するらしい。

 

 

折角だ、司波達也として生きる抜く縛りが無くなったのだから『椎名咲耶』と言う前世の名前を使おう——ふと深雪の事が頭を過ぎり、十数年間兄妹としての関係が胸にチクリと訴える。

 

悩んだ末に『司波咲耶』として、3度目になる生を送る事で自身の全てを忘れない様に心の奥底で誓うのだった。

 

 

 

現在俺の最大の課題は、住居とお金と身元不明と言う3大異世界課題とも呼べる内容だったのだが、前世?前回では全て既に四葉家の類縁で司波達也と言う身分があったが、今回は転生でもひょういでも無く転移と言う状態…。

 

暴漢や敵に対する慈悲や武力行使への忌避感は無いが、路地裏で絡まれるのを率先してやるのもどうかと思う。それと『ダンまち』の世界観だからと全く同じとも言い切れないし、転移した年代だって俺には今現在では分からない。

 

この物語の主人公ベル・クラネルが、迷宮都市オラリオに来てるかどうかで判断したり、アイズ・ヴァレンシュタインの現在のレベルで判断するか、アストレアファミリアの存続で年代把握するしかない。

 

 

 

結局ファミリアに所属する以外に生活して行く術は無く、情報収集は平行して行なって行く他無いだろう。荷物を台車に載せて引いて行くだけでも時代背景から考えられない技術水準だし、司波小百合を救出に向かった時と同じ私服で紺のジャケットと黒いシャツ、黒のパンツを着こなす時代背景に似合わない科学繊維を使用した格好——周囲の視線は好奇心や奇人を見る様な目で、動物園のパンダにでもなった様な気分を味わっている。

 

どうにかバベルのそばにある、【万神殿】(パンテオン)と呼ばれるギルドが所有する冒険者用の役所へと辿り着いた。内部は掃除も行き届いている様で、粗暴者が多い冒険者を相手にする場所とは思え無い雰囲気があった、受付の女性達に換金所の男性達も制服を纏って教育も行き届いている様に見受けられる。

 

受付カウンターへたどり着くと、冒険者としてファミリアを探してる旨を伝えた。カウンターにたたづむ女性はどこか『千葉エリカ』を思わせる雰囲気を感じる人で、他のギルド職員よりフランクな話し口調だった。

 

彼女に案内された先に居たのは、『ダンまち』でも意外と登場回数の多いエイナ・チュールその人であり、偶然にも眼鏡を掛けていない状態で目頭を押さえ一息ついていた時だった。

 

眼鏡を掛けて無い彼女はレアで、ベル君とへファイストスファミリアで防具を買いに行くシーンしか俺は覚えていない。まあそもそも『ダンまち』自体を余り詳しく無いのだが——エイナがエリカ似の彼女に声を掛けられると、ミィシャ(エリカ似さん)と二、三言葉を交わして俺に向き直る。

 

 

「——ギルド所属、冒険者アドバイザーのエイナ・チュールと申します。先程の職員からお話は伺っておりますが、ファミリアをお探しだと言う事で宜しいでしょうか?」

 

「ご丁寧にありがとうございます。司波咲耶と申します——先程の彼女にもお伝えしましたが、出来たら規模は気にしませんが眷属(家族)思いな神のファミリアが良いのですが…それとオラリオに来たばかりで道も伺いたいですね」

 

 

俺の返事や態度に驚いたのか、エイナが少しの間フリーズしてしまい返事を待つ間何が駄目だったのか思案していた。横隣の冒険者とアドバイザーのやり取りや、換金所での冒険者を観察してみたがどうやら俺は丁寧に対応し過ぎな上横柄でなさ過ぎる様だな——エルフらしき種族の人達は言葉こそ丁寧だが、どこか見下した態度が見受けられるので、俺の様に丁寧で物腰が柔らかいのはめずらしいのだろう。

 

 

「——貴方の様な品のある男性冒険者さんはめずらしいですので、動揺してしまいすみません「いえ、お気になさらないで下さい」ありがとうございます。では簡易地図と募集ファミリア表の写しを持って来ますので暫くお待ち下さい」

 

「お手数お掛けします」

 

 

どうも司波達也の頃の達也ロールプレイが染み付いて、椎名咲耶と言う人間が薄くなってしまっている。元々の俺自身、横柄な態度は嫌いだし物腰が柔らかいと思う——そんな事を考えていると、エイナが二枚の再生紙の様な色合いの紙を持って来た。

 

エイナがファミリアの情報や街についての情報などを丁寧に教えてくれたお陰で、現在が『ダンまち』の主人公ベル・クラネルが来訪する半年前だろうと推察できた。

 

現在の治安は、4年半前のアストレアファミリアの崩壊後かなり改善されたと聞かされ、【怪物祭】(モンスターフィリア)が半年後に控えている事でベル君の来訪が予測出来たのだ。また、ファミリアの実情においては探索系は【ロキファミリア】、商業系【デメテルファミリア】【ヘルメスファミリア】を紹介され、医療系【ミアハファミリア】と守銭奴だが団員は大事にする【ディアンケヒトファミリア】を紹介される。物作りが割と好きだと伝えていたので、最後に紹介されたのは【ゴブニュファミリア】【へファイストスファミリア】だったが、ゴブニュファミリアはガチ職人の集まり過ぎて馴染める自信を持てない為、へファイストスファミリアに向かう事にした。

 

『ダンまち』を知る人間なら、タケミカヅチとヘスティアはどうしたと思うだろうが、タケミカヅチファミリアは貧乏過ぎて団員補充が不可能だし、ヘスティアファミリアは爆弾ファミリア過ぎて正直進んで入ろうとは思わない。

 

 

 

 

俺が向かったのは、バベルにあるへファイストスファミリアの武具店

が建ち並ぶエリアで最大規模の店舗だった。何故ファミリアのホームでは無くココなのか、至って単純で団長椿・コルブランドの作品を扱うのは間違い無く最大規模の店舗で、その奥には社長兼主神であるへファイストスの鍛冶場兼執務室が存在するだろうからだ…。

 

神へファイストスに最速で会うには、団長か幹部が居そうな最大規模の店舗に行くか、主神へファイストスに直に遭遇するしか無いと言う事からこの選択を即座に選んだ。

 

 

 

——そこに店員としてカウンターに控えていたのは、へファイストスファミリアの団長椿・コルブランド本人で、普段は個人の鍛冶場で製作に明け暮れるだろう人物だった。

 

余談だが、椎名咲耶だった頃の実家は備前長船刀と呼ばれる岡山県の田舎にある由緒ある刀鍛冶の家だ。曽祖父も祖父も父でさえも刀鍛冶をしており、ひとりっ子だった俺は小学校高学年から鍛冶場のノウハウは叩き込まれていた——37歳と言う若さで生涯を終えた当時の俺だったが、20年以上刀鍛冶師としてやっていたからか、司波達也時代に九重八雲師匠の元で『沖田総司』が使った天然理心流や、北辰一刀流などを習うなど人生全てに刀があった。

 

目の前の椿・コルブランドを他所に、目に止まった結構地味な場所に置かれた飾り毛の無い一本の無銘の刀が気になり、他に目もくれず刀を抜き身でもって見た。日ノ本と呼ばれる刀の技術より拙い鉄の扱いだが、意も言えぬ不思議な鍛造刀だと分かった。

 

『ダンまち』で日本に当たる極東で、日本の様に戦国時代があったかどうかは俺には分からない——武器がより武器らしくあり技術が進むのは必ず闘争が前提になってくる、それを地盤に多くの職人が競い更なる技術を生み出して洗練して行く。

 

 

 

——居合切り

 

 

 

店内だと言う事を忘れて無意識に刀の本質が見たくなり居合をしていたのだが、達也の能力【精霊の目】で物質の構成では見知らぬ神秘の力を刀に感じた。

 

ふと我に返り、視線が俺に突き刺さるのを感じて刀を元の場所へと戻してから、視線の送り主である椿・コルブランドへと向き直る。俺が僅かに見せた刀と言うモノに対する不満気な顔を見たのか、椿はニヤニヤと興味ぶかげにこちらに尋ねて来た。

 

 

「見事見事、素晴らしい居合だの——手前が見る限りその方の剣はオラリオでも頭一つ出ておる。そんな者から不満げな顔で刀を戻されては気になって仕方ない、理由を手前に教えて貰えんか?」

 

「すみません——顔に出すつもりは無かったですが、刀を生身で造って来た者としては何とも言えないモノだったので」

 

「おっ!その方は刀鍛冶と申すのか?それにその手荷物からしてオラリオの外から来たばかりと見える!へファイストスファミリアに入って手前に刀鍛冶の腕前を見せてはくれんか?」

 

「確かに刀鍛冶ですが、ファミリア加入を貴女だけで決められるのですか?」

 

「おぉ!そうじゃった——手前はココ、へファイストスファミリアの団長をしておる椿・コルブランドと申す。主神様にも聞かねばならんのだが、お主の剣や対応を見る限り主神様も喜ばれると手前は思っておるよ」

 

「俺自身、ファミリアを探してたので助かりますが——良いのですかね?」

 

「構わん構わん!善は急げじゃな——ほれっ手前が主神様のところへ案内する」

 

 

椿・コルブランドに言われるまま、店の従業員しか入る事が許されないエリアに腕を引かれ、強引だが真っ直ぐな彼女のひととなりを感じて警戒を解いて付いて行く。

 

何故か読めてしまう、『ダンまち』世界の共通語で書かれた【社長室兼主神執務室】と言うプレート——豪快な性格が見受けられる椿だったが、流石の彼女でも神へファイストスの部屋に入る際のノックは礼節を弁えていた。

 

神へファイストスであろう女性の返事を聞き、勧められるまま一緒に社長室へと連れ込まれる。司波達也だった頃もそうだが、強引な女性が俺の周りには多い気がするが、一先ずそう言った事は別の機会に考えようと思考を切り替え椿の紹介で自己紹介を始めた。

 

 

「主神様!逸材を見つけて来たぞ」

 

「はぁ〜犬猫では無いのよ?もっときちんと紹介してくれる?既に分かっているだろうけど私がへファイストスファミリアの主神で、鍛冶を司るへファイストスよ」

 

「自己紹介は自分でさせて頂きます。俺は司波咲耶です——椿さんとは先程店内で知り合ったばかりですが、刀鍛冶歴は20年過ぎた程度の若輩者ですが、店舗に置いてあった刀に思う所があった所を彼女に見つかったと言うところです。俺自身ファミリアを探していたので渡りに船ですが、椿さんにファミリアへと誘拐…では無く誘われてと言うのが経緯です」

 

「はぁ〜所々気になる部分があるのだけれど、質問いいかしら?」

 

「ええ、答えられる範囲で良いのでしたら」

 

「まずは、ウチのファミリアで良いの?椿に強引に引っ張れれて来た様だし、不本意でわ無いのよね?」

 

 

「ええ——鍛冶の経験は刀類と薙刀に分銅と言う、偏った分野で良いのであれば俺は願ったりです」

 

「そう——刀鍛冶歴20年過ぎたと言っていたけれど、貴方…見た目と年齢が一致して無いわね。いったい何歳なのかしら?」

 

「——現在の(肉体)年齢は16歳ですが、鍛冶歴は20年以上「ちょっと待って頂戴!」何ですか?」

 

「え〜と——おかしいわよね?どう言う…まさか」

 

「俺は——異世界転生者で転移者ですから」

 

 

そこからの会話は地獄絵図だったと言える、椿が異世界転生と言う聞き覚えのない単語に興奮して脱線したり、神へファイストスの胃がキリキリなりながら今までの経緯を大まかな感じで説明した。

 

へファイストスは額に手を当て、椿は逸材をゲットした事にドヤ顔で主神に目を向けている。流石にこの世界が『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』と言う創作物だと言ってはいないし前世も創作物だと伝えなかった。

 

一通り話し終えると、神へファイストスは『毒を喰らわば皿まで』と呟き俺の入団を認めてくれた。俺の身の上が神と言う存在にとってパンドラの箱其の物だと言うのは分かっているし、へファイストス自身聞いてしまったが最後、()格者として見捨てる選択はどうやら無かった様で一安心した。

 

一応鍛冶師として、へファイストスの鍛冶場を使い一般的な鋼で鍛冶をして見せた。椎名咲耶の時には既に刀で重要な炭素量が科学的に研究され、多くの名刀がどう言った物質構成か分かっていた。

 

司波達也の持っている【精霊の眼】によって物質構造を理解した上で鍛錬を行い、柔らかい心鉄と硬い皮鉄を完璧に組み合わせる事で椎名時代より洗練された日本刀を完成させた。

 

CADを操作する事で、『魔法科高校の劣等生』の世界で使う魔法によって【加速・加重】【移動・振動】【収束・発散】【吸収・放出】四系統八種と呼ばれる、正と負を合わせて16に分類される力でかなり省略した刀鍛冶を行った。

 

神へファイストスからしても「ずるい」と言わしめる魔法に、椿から刀の歴史が遥かに上な技術に刀剣の歴史をせがまれた。へファイストスすら学ぶものが多いと言わしめた刀を極めた先祖へ俺は無意識に感謝し、この世界の鉱物を使ってこれ以上を成し得たら刀においては比率無いと言われた。

 

何より神からしても情報体次元(イデア)の理論は興味深いらしく、個々に存在する個別情報体(エイドス)を視認できる存在などこの世界の神すら存在しないらしい——そんな話はさて置き、神へファイストスによって早速と言って【神の恩恵】(ファルナ)を授けて貰う事になった。

 

 


 

サクヤ・シバ(司波咲耶)

 

Lv.1>>rank up

 

力:S999

耐:EX5743

器:SSS1332

俊:SS1186

魔:EX———

 

《魔法》

【未知魔法】

前世での魔法を魔法式を解す事で使用出来、固有魔法【分解】【再生】もこれらに含まれている。古式魔法もこれらに含まれている。

※知識に無いものは不可能

【】

【】

 

《スキル》

【精霊の眼】(エレメンタル・サイト)

個別情報体(エイドス)を読み取る事が出来、非物質である霊子(プシオン)(魂の様なものと言われている)以外は情報として読み解ける。

 

【瓊勾玉体】(オーパーツ)

別次元への器として、微精霊を吸収した上活性化させた非物質を物質へと強制的に変換した調整体。魔法演算領域を拡張し、起動式(CADのストレージに当たる弾倉と同じ)を8つまで常時保存可能(CAD不介入)で即時魔法が放てる。

※【分解】【再生】は常時魔法演算領域に存在する為含まれない。

※魔法式の保存は恩恵更新の際に読み込みが必要

———error———

 

【異世界言語】

多種多様な言語を常用言語として強制理解をする上、魔法演算領域と同じく無意識下で文字や言語を使用する。

 

 


 

 

とんでもアビリティだったが、神へファイストス曰く耐久の数値が高いのは【再生】を繰り返しているが、器として俺の前世で言う霊子(プシオン)に残っているのだろうとか、魔力に関しては司波達也と言う人間の想子(サイオン)量が高い事を、この世界の仕組みに反映しているのでは無いかと言う予想だった。

 

ランクアップも並行して行ったが、ランクアップ自体は魔法常識を壊した事が偉業なのか、歴史的な刀を打った事が偉業なのか判断出来ないと神へファイストスは言った。

 

俺のアビリティに関して当然箝口令を言い渡され、椿に至っては口外した場合鍛冶禁止1年と言われて青ざめていた——椿が鍛冶に関する内容で興奮すると、鍛冶関連で口が軽くなる事を見越した釘を刺して来たのだと直感で理解した。

 

 

その後俺に関してだが、鍛冶場やCAD関連のファミリアでもかなり秘匿性が高い内容から与えられた鍛冶場は、現在神へファイストスの社長室兼執務室兼鍛冶場と同フロアにあり、改装予定の中規模店舗裏にある倉庫を改装する事になった。

 

それらの特別扱いを妬むおそれがあったため、極一部の幹部と団長に主神だけが事実を知り、他の団員には鉱物研究室として建築すると伝える事になった。

 

 

 

 

 

店舗での改装(倉庫のみ即日着工)に必要な打ち合わせも済ませ、へファイストスファミリアのホームへと椿が案内してくれた。それと言うのも、オラリオの常識やファミリアの決まりを教わる上で、団長か主神以外情報開示が出来ない為に椿一択になった。

 

ホームは流石最大鍛冶ファミリアと言える大きさで、何故か幹部エリアにある椿の個人部屋の隣を指定(椿の独断)され、その時は気付きもせずに幹部エリアで椿の部屋(角部屋)の隣だけ飛ばして全て埋まっており、必然的にそこしか(幹部エリアには)無かった——この時は椿の隣が何故飛ばされているかなど、考えなかったのを俺はのちに後悔する事になるが、その時は以外と早かった…。

 

 

夕食を食堂で済ませる際に、自己紹介と椿の刀鍛冶ならへファイストス様のお墨付きと言う言葉によってかなり質問を受けた。鍛冶師が職人気質故なのか、食堂で団員が一堂に会すのはかなり希らしく今日は強制招集での俺の自己紹介が行われた。

 

自己紹介の時には、椿が神へファイストスと決めた極東のとある山奥に存在する(噂があるが未確認)村の出だと言ってくれたお陰なのだろうか、噂上は口伝のみで継承するとされる刀鍛冶の一族な為、村の正確な位置や細かい情報は秘匿事項だと言える様に設定した。

 

団員達がいつから鍛冶をしてるか聞いてくると——3歳からと言う設定にしており、かなりの年数の鍛冶経験を積んでいると言う話になっている。

 

椿曰く、極東でもその村は未だに見つかっておらず伝説の様な逸話がいくつも存在すると説明を受けている。夕食が終わって自室へと戻って数分、椿が突然部屋に入って来たのには驚いた…。

 

そう——椿の隣が空いていた訳は、後日他の幹部から同情と合わせて聞いた話で分かったにだが、幹部連中=とある分野の熟練鍛冶師と言う事なのだが、椿にとっては生きる自分以外の専門書の様な扱いらしく、連日連夜訪れて鬱陶しいのが原因で物理的に生き易い隣部屋だけは避けたからだ。

 

別の話になるが、これから4日後には神へファイストスに扉を最高錬成硬度の鉱物で扉を作り、CADに使用される起動式を保存するストレージと想子(サイオン)を電子化する感応石と呼ばれる部品を半分に割って、【精霊の眼】(エレメンタル・サイト)によって解析した結果を、固有魔法の【再生】によって倍々ゲームの要領で増やしていくと、この世界にある魔法石と呼ばれる魔法の補助石を使い、魔石と合わせて前世と今世のハイブリッドなインターホンを取り付けた。

 

詳しい事は省くが、魔石(想子格納庫)を電池にして感応石で電子的な信号に置き換えてストレージ内の起動式を読み取り、魔法石(簡易魔法演算領域)で事象を起こす事に成功した。

 

『ダンまち』世界の魔法は、前世の世界と違い魔法演算領域と言うブラックボックスを『詠唱』と呼ぶ摩訶不思議に依存していると予測していた——魔法石が魔法の補助足り得るのは、『詠唱』によって伝達不足を補うから威力上昇や魔力消費が軽減していたと考え、【精霊の眼】を駆使して解析と研究した。

 

結果としては扉前の人物を、光の収束を利用して室内へとホログラムとして写し出す事が出来た。オラリオに無い技術革新を俺はオラリオに来て数日で可能にした——因みに無一文の俺に鉱物を提供してくれる代わりに、100キロに及ぶ鉱石の不純物を分解する事で手を打ってもらった…。

 

 

 

 

1週間、オラリオに関する一般常識や俺と言うこの世界に存在しない人間のバックグラウンドを設定したりと、神に嘘がつける様に神へファイストスとも調整を済ませた。

 

実はこの1週間で起きた特別なイベント(イレギュラー)が存在するのだが、それはまた別の時に振り返ろう。

 

 

——初ダンジョン

 

 

自分で制作した刀を帯刀し、椿お墨付きで中層までは余裕と言う事で初ダンジョンへと赴いていた。体術や剣術に関しては九重師匠の人間離れした教えにより、レベル5の椿ですら俺を魔法無しで一瞬見失う身のこなしなのだ——俊歩と呼ばれる足運びに、殺害と言うものに忌避を覚えない前世が合わさり、ダンジョンへと訪れて30分しか経たずに8階層へと来ていた。

 

今のところ戦闘に魔法は一度も使用しておらず、移動の際に加重と加速のみ魔法を使った。

 

 

「ん?」

 

 

丁度俺が曲がり角で壁を足場にかなりの速度で通りすぎる際、金色がかなり目立つ俺と同じぐらいの年齢の女の子とすれ違った——現在はその女の子に絶賛襲われ中で、先程まで使わなかった俺自身を動かす移動と、風の抵抗を無くし利用する吸収と放出を使う起動式を最大速度で展開している。

 

最初はすれ違いざまで気付かなかったが、爆風と共に追い掛ける人物がロキファミリア 団員で、二つ名が【剣姫】と呼ばれる戦闘狂のアイズ・ヴェレンシュタインだと直ぐに分かった。

 

 

 

 

 

 

——結果

 

 

ダンジョン歴の差で、絶対記憶があろうと身体が覚えているアイズ・ヴァレンシュタインには敵わず、道順と言う致命的な差によって彼女に捕まってしまった。

 

因みに31階層で…。

 

 

「貴方…誰?」

 

 

この第一声は正直顔が引き攣ってしまう俺が悪い訳じゃ無い、アイズと言う女性が口下手なだけなのだろうが、追い掛け回された俺としては他に言う事は?そう思って仕方なかった。

 

 

「へファイストスファミリア所属の司波咲耶だ——因みに咲耶が名前で司波が苗字だ」

 

「私は、ロキファミリア——アイズ・ヴァレンシュタイン…です」

 

「そうか、何故俺を追い掛けた?」

 

「?……逃げるから?」

 

「逆じゃ無いか?急に追われて俺は逃げただけだ」

 

「ん?………移動が凄く速くて、重心がブレない足運び……だったから、気になって——追い掛けた」

 

 

マジで理不尽此処に極まりだな——アイズのアイズ検定が必要そうな会をを進めて行き、武術や剣術の正式な師匠がいない彼女にとって洗練された動きをする俺に興味があったらしい。即日模擬戦を懇願されてしまい、断りを入れようとするとこの世の終わりの様な顔をされてしまい主神が許すならと伝えた——結果、アイズはロキファミリアにロキを拉致した後、へファイストスファミリアへと力技(ランク差)と言う暴力で無理矢理連れて行かれたのだった。

 

 



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アイズに拉致された俺と気絶した神ロキは、神へファイストスがこの時間居るだろう店舗の方に向かい、周囲から受けるアイズと言うビックネームの人物とロキを誘拐してる犯罪者の気分だったが、どうにか気配を極力消して歩く事で上級冒険者以外には気付く者は居ない様子で少しはダメージを減らせただろう。

 

店舗に着くと椿が偶然武具の納品に来ていた様で、見つかった状況が故に「駆け落ちか?」などと揶揄われはしたが、どうにか神へファイストスへと椿の口利きで話を通した。

 

 

 

「これはどう言う事なの?」

 

「ウチに聞かんとって!アイズたんにいきなり拉致されたんやで?」

 

 

俺が椿に説明した事の顛末を、この場にいる2柱にも全て説明することになった。その結果は説明する必要が無いが、椿とロキは腹を抱えて笑い、へファイストスは額に手を当て溜息を吐く姿にアイズは頬を膨らませて『私不機嫌です』と訴えてる。

 

結局だが、へファイストスの機転の利いた提案を呑んで貰う事でアイズとの模擬戦は許可される事になった。他派閥と言う括りがあるが、俺を擁護する程度はする事が決まり、友好関係と口上の上で俺を擁護する事になった。当時神ロキは俺がへファイストスファミリアの中でも特殊な存在だと薄々気付いているが、へファイストスファミリアと仲違いするデメリットよりメリットを優先した。

 

模擬戦場所は、へファイストスファミリアホームにある修練場を使う事と、ロキファミリア最古参の3名のみなら観戦を許し回復薬は全てロキファミリア負担と決まった瞬間、神ロキの指示の元アイズは回復薬と幹部3名へと声を掛けに一時【黄昏の館】へと帰って行った。

 

神ロキのみこの場に残ると、へファイストスへと俺の何がそんなに護らないといけないのかを聞いてきた。

 

 

「んで〜サクヤはんのどこがそんな秘密なん?」

 

「そこ聞くのを諦めたんじゃ無かったのね——まあ咲耶はかなり特殊なのは認めるわ。けれど彼の秘密は簡単に教えて良いものでは無いのよね」

 

「ちょっとだけええやん?ちょこっとだけ…」

 

「駄目に決まってるじゃない!どうしてもと言うなら、彼に直接聞きなさい」

 

 

神へファイストスが俺に振るのには訳がある、この1週間で俺の思考力や頭の回転の速さを知り、ロキファミリアの団長フィン・ディムナの前で交渉させても安心ねと言わしめた程だ。当然であるが、神へファイストスがそう言う結論に至ったのは、神ヘルメスが武器の購入時にあの神ヘルメスを脅し——交渉で言い負かせた事から株が急上昇し始めた。

 

それ以外にも神ヘスティアのヤル気を出させ追放——独り立ちを決意させたり、ヴェルフ・クロッゾの周囲から受けるやっかみを「自分のポリシーを曲げた鍛冶を、強要された上で先輩方はその申し出を簡単に受け入れますか?」と言いやっかみを半減させた事が大きいだろうな。

 

 

「サクヤはん〜どうなん?ウチにも教えてぇや」

 

「それでは神ロキがこの事を口外せず、尚且つ口外した場合天界送還と全ての財を譲渡することを誓えますか?」

 

「!?自分むっちゃ怖い子やなぁ〜そないせえへんと教えられん内容やって事やんな?」

 

「ええ、そこは否定しませんし縁を大切にする事でロキファミリアに将来的に徳になるかも知れませんね」

 

 

神ロキが唸りながらこの問題が起こす損得勘定を始め、神の言動や些細な個別情報体(エイドス)の変化を観察した。神と言う存在をまじかで観察するのは【へファイストス】【ヘスティア】【ヘルメス】そして【ロキ】だけだが、神の個別情報体(エイドス)は制限を掛けていないと情報過多になる程の膨大な情報が流れ込む、神の共通点を排除したり個々の差を分析する事で結構掴める様になって来た。

 

 

「…分かったで!約束したる、その代わりフィンだけは教えたらあかん?勿論フィンが口外したらさっきの条件は守ったる」

 

「……良いでしょう——それで手を打ちますが可能な限り個神として神ロキに協力してもらいます。当然拒否権はありますが、ロキファミリアの不利益にならない限り受けて下さい」

 

「そう言う事ならウチは構わんで」

 

 

それから少し情報を限定したが、俺の特殊な出生と違う理論を基に生まれた魔法の事を話した。そこで神ロキは副団長のリヴェリアと魔法について話し合ったらどうだと提案して来たが、理論が違う魔法を話すには俺の秘密をある程度開示しなくてはならない…。

 

本当はそこも予想はしていたし、ロキファミリアとしては摩訶不思議の魔法を理論として確立した俺の知識が、喉から手が出る程欲しいのは簡単に予想出来た。神ロキの背後から見える神へファイストスはそうやって罠を仕掛ける俺の手口を薄々感じ、額に手を当て聞こえない溜息を吐き捨てた。

 

 

「魔法の理論は間違いなく大きな『力』ですよね?何を神ロキは差し出してくれるんですか?」

 

「うがぁ〜へファたん〜なんなんこの子?知略や策略に長け過ぎやからな!明らかに分かっとってリヴェリアの事を出しとるやん」

 

「まあ、ヘルメスを平気で脅す子だから仕方無いわね」

 

「はぁ?ヘルメスの阿呆を脅したん!あれでもアイツは猪口才な奴やで…その上搦め手が得意な駄神(クズ)やで?」

 

「所々悪口が混ざってるわね——彼、貴女にも引けを取らない思考力と頭の回転なのよ…貴女のとこの団長でも渡り合えると思うわ」

 

「ぐわ〜しゃあなしや!リヴェリアの知識全てとリヴェリアへの貸し1つでどうや?」

 

「……平気で副団長の人権無視ですね——それでもはっきり言って安いですが、リヴェリアさんが了承した上神ロキにも貸し一つなら手を打ちますよ?」

 

「グギギギッ——ウチはさて置きリヴェリアは絶対に食い付くで!ウチはさて置き…」

 

「リヴェリアさんは副団長ですし、【千の妖精】(サウザンド・エルフ)の師匠だからこそ魔法の理論は無限の可能性があります。どうしますか?」

 

「分かった!そこまで言うんなら、フィンのも一緒に付けてウチを含めた3人分の貸しや!?これで文句無いやろ」

 

「ではリヴェリアさんの知識と、団長さん副団長さんに神ロキへの貸し一つと、今後50年は団員数半分以上の購入をへファイストスファミリアで専売としてもらいます」

 

 

俺の言葉をトドメに、神ロキは机に額を打ち付けてうなっているがへファイストスはクスクスとその様子を眺めていた。単に3名の貸しですら安いと言っている事に他ならないからへファイストスも笑っているのだ。

 

そうこうしていると、アイズがロキファミリアの団長フィン・ディムナと副団長リヴェリア・リヨス・アールヴを連れて戻って来た。どうやらもう一人の最古参ガレス・ランドロックは、椿の所へ武器の整備依頼を店内でしてるらしいが、結局最古参全員が俺と言う存在に興味があるらしく、アイズの摩訶不思議言語であっても模擬戦を観戦する事になった。

 

移動を開始する際に、神ロキに「このままではガレスさんの耳に秘密が漏れて天界送還ですね」そう耳打ちすると、大量の冷や汗を流しながら団員総額7割以上を向こう50年専売契約を交わす事が即座に決まったのだ。因みに現在のロキファミリア団員が利用している割合は3割5分〜4割なのだが、アイズ・ティオナの一級装備と、魔法職レフィーヤとリヴェリアの武具費用を考えたらかなりきつい数字なのは目に見えている。

 

後に整備をアイズ・ティオナ以外全員へファイストスファミリアで行い、次回の武具購入で間に合わない為とある事がきっかけで準幹部候補以上に【不壊属性】(デュランダル)装備を購入したり、団長製作の高級魔剣を遠征用に何本か購入するのだった。

 

 

 

 

 

「それでロキ——どう言う事だい?僕の貸しをロキが勝手に作ったって言うのは——魔法の理論的解明が出来るのは確かにファミリアとしては是が非でも欲しい知識だよ。でもロキが勝手に貸しを作るのはどうなんだい?」

 

「まあロキが全面的に悪いの」

 

「ああ。私は彼の知識を是非欲しいから吝かじゃ無いが、フィンは明らかにとばっちりだな」

 

「私も強くなれる?」

 

「アイズが勉強するなら可能だろうな——アイズが望むなら私から彼に頼むぞ?」

 

「……」

 

「何故目を逸らした」

 

 

ロキファミリアのメンバーが話をしている中、へファイストスファミリアの修練場に光の屈折をさせる魔法を展開して、建物や地面に物理障壁を展開させると、一際リヴェリアさんの視線がグサグサ背中に刺さるが一先ず無視してアイズにルールを聞いてみた。

 

 

「アイズさん?「アイズで良い」アイズさ「アイズ」アイズは剣術の技量で勝負したいのか、魔法含めた戦闘能力で勝負したいのかどっちなんだ?」

 

「……どっちも」

 

「魔法含んだら勝負にならないが良いのか?」

 

「……良い!」

 

 

アイズはどうやら、俺の言葉が馬鹿にしてると取ったのかかなり不機嫌そうにこちらを睨む、深雪の目が笑って無い笑顔で見つめられるよりアイズのどこか幼女が睨んでる様な雰囲気に内心癒されていた。

 

最初に魔法込みの戦闘をする事を伝えると、フィンさんが審判をしてくれる様なので互いに20M(メドル)離れた位置にて待機した。ホルスターから抜き出した『シルバーホーン』の超高性能デバイスを二挺とも握り、フィンさんの「始め」と言う言葉の瞬間にアイズはその場で想子(サイオン)波を受けて膝を着く。

 

俺が放ったのは、魔法が使える者ほど影響する船酔いと同じ現象を起こす想子の波に加え、それより速く彼女の脚と地面の相対位置を固定する結構単純な魔法だ…。アイズが昏倒しなかったのは人間を凌駕するランクアップにより、人体のグレードアップが大きく関係している様でこちらもかなり驚いた。

 

ロキファミリアの面々はアイズが手も足もでない状況に驚き、アイズの船酔い状態が落ち着く間に多くの質問が飛んで来た。魔法発動の速度がこの世界ではあり得ないし、現象そのものがこの世界の魔法では理解出来ないでいるのだ。

 

リヴェリアさんはもっと沢山聞きたい様だが、深く掘り下げるのは今後行う事で諦めて貰い、フィンさんの最速発動速度を聞かれてゼロコンマ以下だと答えて驚愕する全員に、使える魔法の種類を聞かれて使うだけならとんでもない量になると答えた。

 

ガレスさんですら、この魔法理論がもたらす恩恵がどれほど膨大な価値があるか理解するのだ、神ロキやフィンさんにリヴェリアと言う頭の回転が速い人間にはこれの価値は直ぐに分かった。

 

アイズ自身もは天然な上に戦闘狂だが、戦闘狂故に魔法の発動が余りに速すぎる事で自身が完全に動き出す前なら俺には絶対に勝てないと分かった。当然実際の対人戦では、やり方次第で俺の魔法を防ぐ方法などいくらでもあるが、初見と知識の差が彼女との戦闘にこれほど差が存在する。

 

彼女が漸く戦闘が可能となり、フィンさんの掛け声で互いに戦闘態勢へと入るのだが、アイズも先程の様な興奮が見られず冷静に俺を強敵と言う認識で構えていた。

 

 

——「始め」

 

 

フィンさんの開始の合図とともに、彼女が全力で俺に剣を振るって来るのだが、レベル2相手に普通全力は出さないだろと内心思いながら彼女の筋肉や骨格の可動域を予想して刀をレイピアに触れる。

 

アイズの全力が難なく逸らされ、その事から俺の剣術が自身の力量より上だと判断した瞬間、力よりスピードを上げる方法で俺を追い詰める気で来ている…。

 

人の体幹と可動域である程度相手の切っ尖がどこに来るか予想出来、スピードは相手の筋肉収縮の強弱で刃を見ずとも分かってしまう。アイズは俺に掠りもしない己の不甲斐無さにショックを受けている様だが、彼女のひたむきさが深雪と被りついつい指導をしてしまう。

 

 

「アイズ——己の未熟さを嘆くな、俺は君の体幹や可動域に筋肉収縮しか見ていない…。音や温度に息遣いも戦闘時は相手の行動が読めるんだ、俺を見ながら学べ!アイズにはそれが可能な才がある」

 

「!?……分かった」

 

 

それから30分間、少しづつ動きでは無く息遣いや筋肉収縮などでもフェイントを入れて来たりする様になり、レベル差と言う体力の限界が俺にやって来るまで模擬戦を行った。

 

魔法無しで彼女と全力戦闘だと、こちらの無駄をなくしたとしても体力は何倍も持っている。最後に見本として彼女の斬撃を吸収して倍加した斬撃を持って、彼女のレイピアを弾き飛ばして模擬戦は終了するのだった。

 

全員が凄い剣術に魅了され、神であり一般人と変わらないロキとへファイストスですら俺が行う動きの滑らかさに感嘆して沈黙した。短い静寂を破ったのは模擬戦相手のアイズで、自分に足りないものが目の前にある嬉しさからか、ロキファミリアのメンバーが見たこともない笑顔で「ありがとう」と感謝を述べた。

 

まあその後神ロキによって嫉妬と言う名の口撃を受けたが、最古参の3名からは我が子の様に思うアイズの成長を促してくれた俺に、本心からの最大の感謝を受けた。その直後、フィンさんとガレスさんには是非自分達とも模擬戦をと言われ、直ぐには遠慮するが機会は必ず設けると伝えて納得してもらった。

 

今回の件で神ロキは冗談半分で口撃して来たが、去り際に「ほんまにありがとうな」そう言った言葉にはアイズ達家族(ファミリア)を思う親心が過分に含まれていた。ギルドで団員を大切にすると言う条件でロキファミリアが一番に上がる理由が垣間見えた瞬間だ…。

 

 

 

 



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アイズとの模擬戦が行われた翌日から、毎日アイズは俺と一緒にダンジョンへと誘って来る様になり、俺の生活のルーティーンには鍛冶と魔法研究に勉強会と並び、アイズとダンジョン探索が組み込まれて行った。

 

世の中誰しも平穏無事が最良だが、『魔法科高校の劣等生』のお兄様事司波達也にそれは当てはまらないのだ…。魔法大学付属第一高校へ入学して数ヶ月の間だけでも、同級生の難癖や偏った思想の自己中犯罪集団の学校襲撃、魔法科高校のみで行う魔法中心競技の九校戦での外国人犯罪組織が仕掛けて来た殺人レベルの妨害。

 

振り返ると転移するその瞬間ですら狙撃されるなど、お兄様は事件やトラブルの吸引機だと言える。

 

 

 

目の前には狼人(ウェアウルフ)と呼ばれる種族のイケメン、ロキファミリア所属の【凶狼】(ヴァナルガンド)ベート・ローガが俺を睨みながら戦闘態勢を取っている。

 

ダンジョンでアイズと17階層にある嘆きの大壁に差し掛かった時、急に彼が俺に蹴りを見舞って来たのが事の始まりだ。雑魚にアイズの隣は相応しく無いなど嫉妬塗れのツンデレ狼に怒鳴られ、司波達也時代の罵倒や陰口に比べたら砂糖より甘い彼の口撃…。

 

アイズはベート・ローガの雑魚と言う言葉に頭に来たのか、ベートに向かって俺がアイズに勝ったと伝えた。彼からしたらどんな理由を付けてでも男を排除したいのだろうが、それ以前に俺のレベルが2である事をアイズと共にダンジョンに行く俺が有名になっていたので当然耳にしていた彼は、アイズの言葉と言えど卑怯な事でもしないと無理だと、どうしても信じられないでいる。

 

 

「テメェがどうせ卑怯な魔法か呪詛(カース)なんかでアイズに勝ったんだろうが!結局テメェが雑魚に変わりねえんだから、今すぐ自分の部屋に閉じこもって出て来んじゃねぇ!」

 

「…ベートさん——私の事も、馬鹿にしてる?」

 

「!?」

 

「そうだな。呪詛(カース)にしろ魔法にしろ、アイズが動くまでに当てる事が出来るならそれは強さだが?真正面からの物理以外は全てが卑怯と言うなら、剣術の研鑽は卑怯で体術の研鑽も卑怯になる。お前の言っていることはアイズが相手を舐めて掛かった上、俺の魔法に無残にも負けたと言ってる事になるが?俺はアイズと同条件で模擬戦を行い、彼女が俺を認めただけだ…。お前は俺達の模擬戦を馬鹿にしてるのか?」

 

「——俺と勝負しろ!それで勝てば認めてやる」

 

「……」

 

「俺にお前と戦うメリットを感じない」

 

「逃げんのか!?」

 

「はぁ……俺とアイズの模擬戦を馬鹿にした上、上から目線で勝負を挑む相手に俺がわざわざ付き合う必要があるのか?アイズがダンジョンに一緒に行く相手はアイズ自身が決める事だ、お前が認めるかどうかは関係ない」

 

「——俺が言ってる事が自分勝手なのは分かってる。頼む、勝負を受けてくれ!俺の勝手だが納得してぇだけだ」

 

 

アニメで知るベート・ローガでは見た事無い顔と、自分よりレベルの低い相手に頭を下げた姿にどこまでも真っ直ぐなレオを捻くれ者にした様な雰囲気を感じた——ベートはアイズ自身にも俺の時間を融通してくれる様に頼み込む姿は正にレオだと思ってしまった。

 

自分の信念故に譲れない何かがある事を、創作物では感じない人としての矜持を感じ、俺はアイズに視線をやって少しだけベートとの事に時間をもらう事になった。

 

ルールは致命傷や殺害以外、直ぐに治る攻撃のみで何でもありと言う事で決まり、アイズが合図をしてくれるらしく嘆きの大壁で模擬戦は始まるのだった。彼の心意気を買い、魔法は瞬殺で終わらない系統に絞って身体強化系や戦闘サポートのみ使用する事にした。

 

 

 

——「……始め」

 

 

 

ベートの瞬足はアイズを上回り俺を捉えようとするが、アイズに行った何倍ものスピードを魔法で行い、彼の攻撃を軌道を逸らす前段階の状態で関節を動かせなくする位置を鞘に収めた刀で叩く、彼がどんなに激しく動こうとも全て人体の構造を理解した上封殺する。

 

かれは恐らく、俺の能力をある程度予想はしていたのかも知れない様な表情で、必死に自分の矜持を貫いている様に感じた。彼の本気度を感じた俺は、『魔法科高校の劣等生』で登場する九島家の秘術と呼ばれる【仮装行列】(パレード)と名付けられた、元は古式魔法の幻術に由来する九島家の秘術だが、九重師匠に相談しながら創作物の知識で補填し、自身の個別情報体(エイドス)の色・形・音・熱・位置に関する情報を複写・加工して本体と異なる姿を映し出し、ダミーの情報体を作り上げる対抗魔法だが独自開発したそれを展開し、彼やアイズには俺が別の場所にいる様に認識させる。

 

【仮装行列】(パレード)の展開は通常の魔法とは違い、展開する起動式を相手にバレない位置で発動する。ベート・ローガは魔法を発動した事にも気付けず、俺の全力で背後から近付いて喉元に鞘が触れて初めて自身の負けに気付いた。

 

アイズも何が起きたのか分からず、俺が模擬戦で手を抜いたのかその後しつこく追求される。魔法を使えば無限の戦闘方がある事は肯定した上で、アイズとの模擬戦は剣術も魔法混合戦も真面目にしたと彼女に説明した。

 

ベートは黙って頭を下げ自分の未熟を認め、我儘に付き合った事に短く「感謝する」そう言って上層へと引き返して行った。そんなベートの意外な姿を目の当たりにしたアイズは、目を大きく開いて初めて見たと彼の感謝に感慨深そうにしていた。

 

 

「では、ダンジョン探索の続きをするか?」

 

「うん」

 

 

最近ではアイズの戦闘中の指導もだいぶ減り、俺が闘う姿を一生懸命見て自分に落とし込んだりしている。一番意外なのは魔法理論を苦戦しながらリヴェリアさんと一緒に学んでいる事だ…。

 

知識=強さを体現した現代魔法と呼ばれる知識、俺の戦闘そのものに経験と知識が含まれるが故に彼女も真面目に取り組んでいる。だがしかしトラブルの申し子のお兄様には、『アイズ絶LOVE』事レフィーヤ・ウィリディスが俺に突っかかって来るのは、それから数日後と言う直ぐの事だった。

 

 

 

 

 

いつもの様に、バベルにあるヘファイストスファミリアが店舗を構える場所に存在する、専用として改装してもらった俺の鍛冶場兼研究室でもある場所でリヴェリアさんとアイズは魔法理論を学んでいる。

 

CAD関係は室内では区切られた場所にあり、神ヘファイストスの執務室に似た造りになっており、そこに別に研究室が隣にある様に造ってもらった。そもそもCADは技術水準がぶっちぎりだし、熱に弱い物が多く存在するのもあり別室として設計した。

 

ある意味主神より扱いの良い俺の作業場は、別派閥の人間を呼んでも何ら不思議でない位置に入り口が繋がっている。店舗を経由しなくても店舗横から入れる扉を付けてあり、強度や秘匿性はオラリオに来て直ぐに開発した技術によってかなり強化されている。扉にはインターホンが取り付けてあり、CAD調整室と鍛冶場の両方に神フレイヤが覗き見する神の鏡を解析して創った認識阻害がされている。CAD調整室に至っては、壁に物理障壁と魔防障壁が展開された上での最高錬成硬度の鉱物が使われており、【不壊属性】(デュランダル)を解析した神秘を解き明かした技術が使われている。

 

【不壊属性】(デュランダル)の特性は至って単純で、個別情報体(エイドス)に壊れない仕様が施され、研磨や整備を行うと刃の鋭利を再度修復する事が明記されていた。それらの情報を常に維持する装置を設置して、CAD調整室は絶対防御に近いシェルターも逃げ出す世界最高峰のセキュリティを保持している。

 

 

そんな事を考えながら彼女達に理論の基礎を教えていると、店舗側の扉をノックする音が室内に響きわたる。【千の妖精】(サウザンドエルフ)レフィーヤ・ウィリディスが訪ねて来たのだとか、しかも呼び出し相手はアイズとリヴェリアさんだとか…。

 

それを聞くとリヴェリアさんは額に手を当て俺に謝り、店舗側からレフィーヤに話を付けに向かった。創作物としてのレフィーヤ・ウィリディスの性格を知る俺は、この後どうなるか予想が付いてしまっているが、アイズの質問へと意識を割く事で現実逃避を行った。

 

 

数分後には、リヴェリアさんによって事情説明を受けた上でレフィーヤさんの入室を許可するしか無かった。彼女は拗らせ系爆弾娘だからこそ、風評被害や暴走し過ぎて今以上に問題行動に出られない様にある程度の関係性を維持する事にしたのだ…。

 

レフィーヤさんが入室して直ぐに、チワワが番犬をする様に俺を威嚇し始めたが、アイズとリヴェリアさんに叱られ見えない筈の尻尾と耳が項垂れてる様に感じた。授業が始まって数分後にはリヴェリアさんすら知らない理論を説明する俺と、生徒になってる彼女に驚いている様だだったが、それより更にアイズが真面目に勉強を行なっている姿に自身が恥ずかしくなったのか静かに手作り教科書に目を通し始めたのだった。

 

 

「レフィーヤ——自分で自己紹介をしろ」

 

「……ウィーシェの森出身のレフィーヤ・ウィリディス…です」

 

「初めまして——司波咲耶です。咲耶が名前で、司波が苗字になります——呼び方は出来たら名前でお願いします」

 

「えっと…わ、私もレフィーヤでお願いします!多分私の方が年下だと思うので」

 

「ああ。分かった——リヴェリアさんに聞いていたが、レフィーヤは勤勉で努力家だそうだな?それに若いと言うのは俺の勉強に関して言えばプラスになると思うぞ」

 

「あの…何でですか?」

 

「魔導師の殆どがエルフだと聞いてるが、エルフ族は長命だからこそ多くの知識を有してる。だがその知識は時として、新たな思想や革新的な知識を自分の積み重ねが邪魔をする場合が多い——リヴェリアさんの様に柔軟に知識を欲するタイプは意外と少ないんだ」

 

「なるほど——」

 

「レフィーヤに面白い考察を教える——エルフ族が長命な理由を多少は分析出来たと思うぞ…。エルフは多種族より心臓の速さが遅く、それらの代用として魔力循環が、身体全体に必要な栄養を巡らせている様なんだ——細胞の老化が遅いのも、精霊と同じ原理だと俺は考えているが、精霊は特殊な核とも言える【霊子】(プシオン)要は魂を持っていて、それら以外は膨大な魔力で肉体を構築している。精霊が神の様に死なない訳はココにあると考えてる——」

 

「それは面白い発想だな——我々エルフが長命なのは生まれながらに多くの魔力を有しているから、そう言う事か?」

 

「単純に魔力を持っているだけでは駄目ですが、魔力循環を幼い頃から学んでいる事や元々持って生まれた素地が良いお陰ですね」

 

「では、冒険者が一般人より長生きなのは——」

 

「そうですね。リヴェリアさんが考えた通り、この世界では誰でも魔力を有しており、【神の恩恵】(ファルナ)が元々持っている魔力を強化することで更に増えるからですね——エルフ族は魔法と言う分野では凄く興味深い種族だ…レフィーヤ、もし良かったら今度アイズとのダンジョン探索に付き合ってくれないか?」

 

「えっ!良いんですか?」

 

「私は…良いよ?」

 

「むっ——狡いではないか」

 

「リヴェリアさんも来ますか?」

 

「サクヤは何やら、また世界の深淵を覗こうとしているのか?」

 

「まだまだ深淵など、遠いですね」

 

 

 

今もこうして勉強は教えているが、俺の知識としてある魔法理論は漏れる事はまずい内容の為、教科書もノートも全部がこの部屋以外ではリヴェリアさんの責任で管理されている。リヴェリアさんが漏洩と言う部分で信頼するファミリアの団員以外は教えず、限定的な知識として徐々に枠を広げる予定だ…。

 

話によると準幹部候補以上の団員以外ははまだ知らないようで、それはレフィーヤ以外全員レベル4以上になる。元々知識が財産だと知るロキファミリアだからこそ、俺自身そこまで心配してはいない。

 

今日の勉強が終わると、レフィーヤからは嫉妬ありきで尊敬が(ない)交ぜな表情が見受けられ、偶に「負けません」とか呟いているが少しずつ俺の印象のが変化してるのを感じられた。今後も少しずつ友好な関係性が出来るよう、見っともない姿を見せない様に気をひきしめた。

 

 

 

 

 

 

 

——転移数日後の事

 

 

「お邪魔するわね、ヘファイストス」

 

「えっ?どうしてフレイヤがここに」

 

「どうしてって…。そこにいる不思議な子に会いに来たのよ」

 

「さっ咲耶に——いくら貴女でもこの子はあげないわよ」

 

「ふふっ——どうかしら?私の元に来ないかしら」

 

 

これは俺が目をつけられて数日の事だ、初日から個別情報体(エイドス)を読み取られてる様な不快な感覚を覚えていたし、何となくだが神の鏡で覗いてると直感で感じて鏡を解析した。それ以降事あるごとに覗く鏡を分解したりもしたし、直接視線を感じて認識阻害を行ったりしたが、彼女は霊子(プシオン)を直接見てる為意味がない事は理解していた——前世に置いて柴田美月、彼女が神フレイヤと同じ様な特性を持っており、霊子放射光過敏症と言う霊子を直接見て色々な情報を受けていた。

 

 

神フレイヤが俺の頬に触れ、魅了と呼ばれる彼女固有のある意味呪いに近い能力は効かなかったのだ——俺と言うか、司波達也は調整体として感情起伏を抑制されている事と、俺と言う人格は別の位置に存在する様になっている。達也が多くの情報を得る受信機で、俺がそれをテレビの様に見てコントローラで操作してる感じだ…。

 

神フレイヤは、俺の一切影響を見受けられない姿を見て嬉しそうに笑っている。次に発した言葉は、俺が司波達也の頃に思っていた事に少し似ているのでは、そう思ってしまう内容だった。

 

 

「あら、やっぱり魅了されないのね。ねえ——私の初めての友達になってくれないかしら?」

 

「ええ、構いませんよ——フレイヤ」

 

「!?——貴様!」

 

 

横に控える猫人(キャットピープル)の護衛が怒鳴って来たが、その横に佇む猪人である都市最強と言われる【王者】オッタルが制しすると、オッタルを睨みながらそのまま黙り込んだ。オッタルにはフレイヤの気持ちが少しだけ分かるのかも知れないな…。

 

司波達也だった頃は、魔法科高校に行くまで友達は愚か好意的に接してくる人間など片手未満だった。色眼鏡抜きに見られる事も無いし四葉と言う枷が重くのしかかっていた——フレイヤも【美】【豊穣】の美によって苦しんでいるのかも知れないな…。

 

フレイヤは神として定められた存在の在り方に、司波達也は調整体で四葉のガーディアンとして深雪と共に四葉としての生き方に…。

 

 

 



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