ウマ娘 ワールドダービー 凱旋門レギュ『4:25:00』 ミホノブルボンチャート (ルルマンド)
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第一部 クラシックロード
オペレーション:計測開始


 はーい、よーいスタート。

 

 誰よりも早く駆け抜けたいRTA、はーじまーるよー。

 今回走っていくのはウマ娘ワールドダービー。据え置き化とともに自由度が増えたマイナーチェンジ(大嘘)版です。キャラくらいしか原型残ってないんだよなぁ……

 

 今回は一般的な凱旋門→URAのレギュレーションに則って走ります。計測開始はトレーナーデータ作成完了、計測終了はURA後のエピローグ閲覧、理事長の扇子が閉じたところまで。ゲーム的には担当ウマ娘の引退どころかトレーナー君そのものの引退までできるけど、そこまですると冗談じゃなく徹夜を強いられるので多少はね?

 

 トレーナー名は入力速度を考慮してオート。

 『ほも』じゃないやん! 『れず』ですらないやん!という兄貴達もおられるでしょうが、本名を呼ばれることは(一部を除いて)ないから多少はね?

 

 今現在ゲーム画面ではトレーナーの能力厳選が展開されています(64倍速)。なので、これからスマホ版との違いなどを、お話します。

 まず、このゲームには因子というものがありません。じゃあどうやって距離適性をあげるんだと問われれば、コミュです。短距離適正を上げたければサクラバクシンオー、マイルならタイキシャトル、中距離ならテイオー、長距離ならメジロ家の方々などと友好度を蓄積していくと、特殊能力のコツとともに距離適性があがるわけです。

 あとは単純に、レースですね。重賞を勝つごとに確率で距離適性が上がっていきます。自分が担当した引退ウマ娘に教えてもらうという方法もあるにはありますが、今回はレギュレーションの関係でできません。

 

 そしてここがスマホ版との大きな違いなのですが、主人公たるトレーナーにも能力が設定されています。それが練習効率を引き上げる育成力と怪我率を見極める分析力で、現在その二項目がC以上のトレーナー、所謂天才型を求めているわけです。

 

 そして現在、厳選が終わりました。育成力A、分析力B――――ファッ!? 凡才型の凱旋門制覇時並の能力なんだが!?

 バグか?と思いましたが、見てください、この画面下の部分。初期特殊能力欄に『指導上手』『愛嬌✕』『スカウト下手』という特能が燦然と輝いております。これはパワプロでいうところのセンス✕、スマホ版ウマ娘における片頭痛などの赤特能にあたります。指導上手はケガ率20%↓、愛嬌✕はウマ娘との信頼度上昇が30%↓、スカウト下手はスカウト成功率が30%↓ですね。育成力Aと指導上手、愛嬌✕とスカウト下手はそれぞれカレーと福神漬け、チョコに牛乳並のかみ合わせの良さです()

 

 スカウトってなんやねん、となった方もおられると思うので説明しますと、このゲームはトレーナーによるスカウトパートからはじまります。

そしてRTAの成否はぶっちゃけ、このスカウトがいかにうまくいくかにかかっています。

 

 トウカイテイオー、シンボリルドルフなどのシンボリ系、メジロマックイーン、リャイアンなどのメジロ系などの初期能力が高い名門の方々は実に10ターンもかかる一連のスカウトイベントをこなして信頼度を上げていかなければなりません。

 じゃあ確定1ターンで済むハルウララ、ダブルジェット師匠とかにすればよくね?と思われる方もおられるかもしれませんが、たった9ターンで埋まる初期能力の差ではありません。天才はいる。悔しいが。

 ですがこのときの私は当初の王道を往くシンボリルドルフチャートからデュアルブラスト師匠大逃げチャートへの乗り換えを真剣に検討したりしています。それほど育成力A+指導上手は魅力的なんですね。この組み合わせがあれば、大抵のガバはカバーできますから。

 

 【堂々と悩むな】【再走しろ】等のコメントが流れているであろうもたもたぶりですが、計測開始はトレーナーデータ作成完了から。まだ完了ボタンを押していないので、これはガバではありません。これだけははっきりと真実を伝えたかった。

 

 はい。そんなこと言っている間に考えがまとまったようです。まあまとまらなければこのRTAは投稿されていないわけですが。

 はじまる前にふっ飛ばされたチャートを箪笥にしまって、トイレに行って準備完了。

 

では、イクゾー! デッデッデデデデ!(カーン)デデデデ!

 



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オペレーション:私の夢

※文中で撲殺と表記するべき箇所を撲札としています。これは物騒な単語(殺す)などを頃すと表現するbiimシステムに則ったものです。


 早々にオリチャーを強いられるRTA、はーじまーるよー。

 前回は天文学的な確率で天才型の中の天才を見事引いたものの、先人たちと親によって構築された皇帝チャートが消し飛ばされたところまででしたね。この皇帝チャートは数多の走者の道を粉砕してきた最強ウマ娘、スカウト難易度が高い代わりにずば抜けた安定感と能力を持つ皇帝ことシンボリルドルフを使って確実に凱旋門を獲るという安定と攻めを両立できる王道のチャートでした。

 スカウトとサウジアラビアさえ超えられればあとは流れで勝てるくらいの安定感があっただけに残念ですが、失ったものを今更とやかく言ってもどうにもなりません。諦めて二の矢で勝負に出ます。

 

 とはいえ、愛嬌✕とスカウト下手の組み合わせは脅威的。スカウト難易度と性能をややマイルドにしたジェネリック皇帝ことトウカイテイオーどころか、能力に見合わない圧倒的なスカウトしやすさを誇るみんなのアイドルナイスネイチャすらスカウト成功率は40%を切ります。つまり無理ということです。

 

 あー、どこかに初期能力が高くてスカウト難易度が低い娘はいな――――いました。それがミホノブルボンです。

 彼女は作中最高の安定感を誇る戦法『逃げ』を得意とするウマ娘で、淡々と同じようなラップタイムを刻んでいく機械じみた逃げを繰り出してきます。

プレイヤーな視点で見ると爆発力のあるサイレンススズカの大逃げ、デバフを駆使するセイウンスカイの幻惑の逃げに比べてこれと言った爆発力を持たないので敵としてはさほど怖くない印象ですが、担当するぶんにはその爆発力のなさが逆に安定感につながります。

 

 爆発力が発揮されなかったとしても淡々と勝ってくれるわけですからね。逃げという安定感のある戦法もあり、なによりもガバが恐れられるRTAにとっては心強い味方になってくれます。

 そしてなによりも優れているのがスカウト難易度の低さ。スカウト時に提示する目標を『クラシック三冠』にすることで、ほぼ確実に来てくれます。ゲーム序盤のミホノブルボンは短距離・マイルが向いているという評価しかされていないので、CPUトレーナーたちが提示する目標は主に『二大マイル戦制覇』『最優秀短距離ウマ娘』を目標に据えがちです。

 

 と説明を終えたところでプレイヤーの成長方針をスキル重視に設定して12月の2週まで日程スキップ。オリチャーを発動し、初期アイテム欄が空だったので購買部でスカウト教本を購入。持ち物にセットします。

 

 どのレースを見ようか……という選択肢の中から4番レースを選択。ちなみに3番レースではみんな大好きライスシャワーが走っています。あとはモブ。

 ということでこのクソ寒い冬空の中、レース場にやってまいりました。ここでは今から入学前レースが行われます。ゲーム的に言うと、ここでスカウト対象とのつながりを作り、スカウトパートに移行するわけです。

 ミホノブルボンのスカウトチャンスは2回。この入学前レース後のスカウトと、3月2週の『オペレーション︰三冠の夢』イベントからはじまる一連のイベントを完走してのスカウト。前者は確率に勝つ必要がありますが、後者は確定。つまりここで失敗しても10数ターン無駄にすればリカバリできますが、正直10数ターン無駄にすることは避けたいです。

 

 とかなんとか言っている間に、レースがはじまりました。ミホノブルボンは圧倒的な瞬発力ですぐさま先頭に立ち、他9人のモブウマ娘を率いてコーナーを曲がってこちらに来ます。

 

「すごい瞬発力だ……」

 

「これは期待のスプリンターが現れたな!」

 

 短距離適正C、マイルBなんだよなぁ……CPUの見る目はガバガバ――――でもないんだなこれが。

 現状、ミホノブルボンの距離適正は短距離C、マイルB、中距離E、長距離Eです。スマホ版では短距離C、マイルB、中距離A、長距離Bのまま登場しますが、このワールドダービーというゲームでは史実の『鍛えて距離の壁を克服した』という事実に基づき、なんと距離適性が低い状態で出てきます。つらい。

 スタミナをFにすれば中距離D、Eにすれば中距離Cの長距離D、Dにすれば――――というように練習することで中距離A、長距離Bまでは簡単に上がっていくわけですが、現状のミホノブルボンは生粋のスプリンター。ベテラントレーナーさんたちの見る目は、この時点ではガバガバではないわけです。

 

 さて、レースはなにごともなくミホノブルボンが大差で勝利を収めました。これは運とか実力とは関係なく、スカウト対象が勝つようになっています(ナイスネイチャとハルウララは除く)。

 スキップ不可の観戦モードが終わったので操作開始。モブトレーナーたちに十重二十重に囲まれているミホノブルボンに近寄る前に、現在のスカウト状況をチェック。

 

 現在のスカウト競争の首位は中距離GⅠを制覇した実績を持つベテラントレーナー。目標はスプリンターズSと高松宮制覇。アプリでミホノブルボンを育てたことがある兄貴にはピンとくるかもしれませんが、彼がアプリ世界線における元マスターです。

 これからは完璧に想像でしかありませんが、アプリでは中・長距離バとしてスカウトされることはないだろうと判断した結果、自分の夢を表に出すことなくバリバリの短距離路線で育てようとしているこのベテラントレーナーを選び、自主練習で研鑽を積んだ末に中・長距離路線に変更することを認めさせようとしたのかもしれません。

 

 ということで、初コンタクト。本RTA最大の難所、シンボリルドルフにとってのサウジアラビア、スカウトのお時間です。

まず声を掛ける前に視線カーソルをミホノブルボンの耳に移動。ぺたりと畳まれた状態から『会話のヒント』を得ます。

 

 【ミホノブルボンはあまり楽しくなさそうだ】

 【なにか、嫌なことでもあったのだろうか……】

 【『会話のヒント:不機嫌?』を取得した!】

 

 そこで思考が止まるからお前は愛嬌✕なんだよ(憤怒)。まあ、『会話のヒント:不機嫌?』を得ましたし、ここで怒っていてもしょうがないので続いてベテラントレーナーの方に目をやります。

 

 【実に熱心に口説いている。さすがはベテランというべきか、勧誘の仕方も手慣れているようだ】

 

 これ、実はいいイベントです。目当ての『会話のヒント』こそ得られないものの、確率でスカウト上手が手に入るので。

 ですが案の定手に入らなかったので、ここで先程購入した『スカウト教本』を使用。トレーニング機材どうしようとか、特能本どうしようとか、プレゼントでの好感度↑チャートが既に破壊されつつあるとか、そういうことを抜きにして買っておいてよかったーって思うわけ。

 

 【スカウト教本を開いた。勧誘するには、そのウマ娘の夢の事前調査が必要らしい】

 【『会話のヒント:君の夢』を取得した!】

 【スカウト教本は破れて読めなくなってしまった……】

 

 必要らしい、で終わっていたら画面の中に入ってこのトレーナーを撲札していたかもしれませんが、それは杞憂に終わりました。では、スカウトフェーズへいざ鎌倉!

 

 ミホノブルボォン!

 

「はい、トレーナーさん」

 

 マスターと呼ばれないのは相当新鮮だというどうでもいい感想は置いておいて、まず選ぶのは『会話のヒント』によって鍵の開けられた選択肢。君の夢は?と問いを投げることで、ミホノブルボンが求めるものを自ら提示させます。

 

「私の夢……」

 

 【パチリと、星空のような青い瞳が瞬いた。表情が乏しくてよくわからないが、少し驚いているようだ……】

 

 ポエマーだな、ほも(カッコカリ)くん。そして相変わらず感情の機微に疎い。

 

「なぜ、そう訊かれるのですか?」

 

 これには『会話のヒント:不機嫌?』を使用。使用しなくても普通ならうまいこと言って聞き出してくれますし、使用する時間とエフェクトを考えるとここはRTA的には使うべきでない場面なのですが、ほもくんの対人能力を信じきれないので使って安定を取ります。

 

 【スカウトされているのに、気分が乗っていないように見えた】

 

「……」

 

 沈黙。早く喋ってくれよなー、頼むよーという本音は表に出さず、会話コマンドを一切使わず見つめ合って数秒待つ。視界を広げるように首を左右にゆっくりと振り、やっと画面が動いた。おそいとおもった(人間のクズ)。

 

「私の夢は、クラシック三冠です」

 

 【『会話のヒント:私の夢』を取得した!】

 

 はい。メッセージウィンドウに無事『会話のヒント』を取得したと出ました。この先選択肢を間違えなければ、この時点でほぼスカウト確定です。

 同じ問いを投げても時折、ミホノブルボンは夢を口に出すのを憚ることがあるらしいです。口にするにはあまりにも能力が足りていないと判断したからだとかなんとか。その場合ここのスカウトは失敗。3月2週の『オペレーション︰三冠の夢』イベントからはじまる一連のイベントに希望を託すことになります。

 

 まわりのモブトレーナーがムチャダブルボンだのなんだのガヤガヤ言っている間に、ここでスカウトを開始。夢を否定されたミホノブルボンの耳がぺたんとなっているこの瞬間に、すかさずモーションをかけていきます。

初期契約期間は3年固定、目標はクラシック三冠。このゲームの仕様的に、一度スカウトをかけるとルート変更は許されません。成功することを祈りましょう。

 

 

 お前も三冠バにならないか?(AKZ)

 

 メッセージウィンドウが表示され切るが早いか、ミホノブルボンのぺたんとしょぼくれていた耳がピンと立ちました。

 

 お……?

 

「質問があります。貴方の言う三冠とは中距離・長距離のレース。皐月賞・日本ダービー・菊花賞で間違いありませんか?」

 

 そうだよ(便乗)。

 

「私の母は短距離・マイルを主戦場としたウマ娘であったと、お父さんから聴いています。従って私もそうであるだろうと言われていましたし、現状はそうです」

 

 あ、釣れた(確信)。釣れました、これ。

 あとは丸ボタン連打でメッセージウィンドウを飛ばしつつ、周りの雑音を無視して【スタミナは努力で補える】を選択します。

 一応解説しておくと、距離の壁を超えられると思うか、スタミナの限界を超えられると思うか、という問いです。それに対して【努力で補える】と返したわけですね。

 

「これからどうぞよろしくお願いします。おと……マスター」

 

 スパルタの風を感じる答えに満足したのか、少し微笑んだミホノブルボンのスカウトに成功したところで、今回はここまで。ご視聴、ありがとうございました。




123G兄貴、Hey,sorry兄貴、感想・評価ありがとナス!


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オペレーション:夜明け前

 虐待一歩手前の調教がはじまるRTA、はーじまーるよー。

 前回は見事、ミホノブルボンのスカウトに成功しました。これはネイチャが若駒ステークスで1位をとることに相当する快挙です。

 

 まず、ここで現状を説明します。ミホノブルボンは現在入学前ですが、入寮を済ませた状態です。

 つまり前回、ほもくんの見事なコミュ力によってスカウト成功したことにより、スマホ版シナリオよりも10数ターン早く調教を開始できることになります。これは当然ながら、大きなメリットです。

 

 しかしそのメリットの代わりに、現在のブルボンは中距離適性、長距離適性が共にE。なかなかに絶望的ですが、これはパート2で説明したとおりスタミナの上昇とともに上がっていきます。

 なので現状の最低目標は皐月賞が開催される4月3週までに中距離適性がAとなるスタミナCにまで上げることです。

 

 では、スタミナCまでどう上げるか。答えは1つ、練習です。

 なぜ愛嬌×、スカウト下手などという地獄のコンボを持っているこのほもくんで開始したのか。それはひとえに、初期ステータスが天才型の理論値に近い高さだったからです。

 

 パート1でも触れましたが、育成力A、分析力Bは上振れた凡才型の凱旋門制覇時の能力並。育成力は高ければ高いほど練習時の消費体力が減り、分析力は高ければ高いほど練習時に上がる能力が増えます。

 現在のほもくんのステータスをわかりやすく言えば、永続消費体力半減、練習レベル4での育成スタートということになります。しかも実際の練習レベルは1。伸びしろですねぇ!

 

 で、練習はどう選んでいくのか。これは答えが決まっています。

 

 坂 路 練 習 し か し ま せ

ん 。

 

 坂路練習とはなんぞや?となると思われますので説明します。

 スマホ版ではスピード練習、スタミナ練習、パワー練習、根性練習、賢さ練習という単純明快な5つの練習しかありませんでしたが、このワールドダービーなるゲームにはオリジナル練習というものがあります。

 

 シンボリルドルフだと賢さと体力とやる気が上がるダジャレ百連発、テイオーだと体力を回復させつつスタミナとパワーを上げる水中遊泳、マックイーンだと体力・根性・スタミナを上げる野球観戦。

 要は、それぞれのウマ娘にあった個別練習を、このゲームではオリジナル練習というわけです。

 

 オリジナル練習は相当な練習効率を誇りますが、欠点もあります。それが、トレーナーの分析力がBを超えないと解放されない、ということです。

 ここまで説明したらおわかりでしょう。そう、ほもくんは最初から分析力がBなのでオリジナル練習が解放されています。その解放される練習こそが、坂路練習。スピード、スタミナ、パワーという三種の神器を万遍なく上げてくれる神練習です。

 

 皇帝チャート、帝王チャートではどうしても、いちいち練習を覗いて確認する必要があります。どこが1番効率的かを見極め、その都度目標値に達成するように計算する。

 これは『データ引き継ぎなし、最初から、因子継承なし』というステータスを伸ばしにくいことこの上ないレギュレーションの中で凱旋門を勝つには必要なことです。半端なステータスだとあっさり負けるので。

 

 しかしRTA的には、とんでもないロスです。いちいち練習を見て、最効率を考える。これを36×4+α繰り返すのは、端的に言って地獄です。

 ですがこのチャートだと、ボタンを連打するだけで済みます。少なくとも計算上は、3年目の凱旋門までにスピード・スタミナ・パワーがSSS(1500)にまで上がっていることになっています。タイムもまあ、順調に行けば42.114514分くらい縮まるんじゃないすかね(テキトー)。

 

 ということで、(坂路練習に)イクゾー!

 

「ファーストオーダー、受け取りました。ミホノブルボン、坂路練習に向かいます」

 

 タイムのことしか頭にない悪いトレーナーに騙されてスカウトされた健気なブルボンが走ったり走ったり走ったり走ったり休んだりしてる間に、もうひとつ説明をします。

 それはつまり、特殊能力はどうすんの?ということです。スマホ版ではサポートカードに編成したキャラからコツをもらうパワプロ式で習得していましたが、この坂路練習連打法ではそういったことが望めません。なにせ連打しかしないので。

 

 ですが特殊能力なしのすかんぴんウォークでは凱旋門は勝てないのもまた事実。なので本チャートでは、購買部を利用して特殊能力を取得していきます。

 わかりやすく言えば、ブルボンがレースに勝って得てきた賞金で特殊能力本を買い、ブルボンを強くします。無限ブルボンシステムですね。

 

 あとはまぁ、コミュで集めます。対象は二人。どちらも近々出てくるはずなので、説明はそのときに。

 

 そうこうしている間でも怒涛の64倍速で坂路練習とちょっとしたイベントが映されていますが、さしあたってプラスにもマイナスにもならないイベントなので64倍速。

 中身を要約するとブルボンの従順さに甘えて無理をさせすぎるな、ということですね。なんのこったよ……(体力限界まで坂路練習させながら)

 

 この警告をあんまりにも無視し続けるとトレーナーの評判が下がったり愛嬌×が付いたりします(3敗)。

 

 が、このほもくんには下がる評判も愛嬌もないので無視して全く問題ありません。

 評判が下がるとどうなるかと言えば、はじめてのウマ娘との最初の3年間が終わったときにクビにされやすくなったり、4年目からはじまるイベント『チーム結成』時に事故りやすくなります。

 

 どのみちほもくんに4年目はないから問題はないな! ヨシ!

 と言うことで、無視して練習を続けます。休みも最小限にして、コミュも取らずにひたすら練習を続けます。

 

 なぜこんなに練習漬けにしているかといえば、メイクデビュー→朝日杯FS→スプリングSと続く強制出走レースのマイル3連戦が本RTA最大の事故ポイントだからです。

 ミホノブルボンはスタミナを上げることによって中距離適性と長距離適性を上げることができますが、この3連戦に必要とされるのはマイル適性。このマイル適性は、いくら練習してもBからピクリとも動きません。

 

 逃げウマ特有の安定感でゴリ押ししようにも、シンボリルドルフ(サウジアラビアのすがた)のようにコロッと負けるときがあります。

 だから、無理をしてでもここでステータスを上げる必要があったんですね。

 

 負けたらどうなるか?

 負けたらリセです。本RTAでは回復スキルを無敗で三冠バになると得られる、とある特殊能力に依存することになります。それがゲットできないということはつまり、そういうことです。

 

 ということでメイクデビューはマイルでイクゾー!(甚だ不本意)

 

「オーダー、受領いたしました。ミホノブルボン、発進します」

 

 マイル適性Bというのは、結構微妙な値です。このゲームではスマホ版と変わらず逃げという戦法がとにかく強いのですが、それでも事故はゼロではありません。

 メイクデビューは相手の能力が弱いということもあり、逃げでの事故は極めて起こりにくくだいたい体感、50回に1回はミホノブルボンでも事故を起こします。

 

《ああっとミホノブルボン、大きく出遅れた!》

 

 そう、こんな風にね。何よりもスタートが大事な逃げという戦法をとったにも拘わらず、スタートに出遅れてバ群に呑まれて負ける。稀によくあります。

 

 …………あああああああもうやだああああああ!!

 あぁぁあ!負ける!負けちゃう!チャートが壊れる!再走しなきゃいけなくなる!マジでホント勘弁してくださいリセマラは嫌です神様仏様biim様ぁぁぁあ!

 

 ……なんてね。スキップボタンを押したところ、最終コーナー付近ではぶっちぎりでミホノブルボンが先頭に立ってました。

 ええ、信じてましたよ。はい(震え声)。

 

 チャートと心が壊れかけたところで、今回はここまで。ご視聴、ありがとうございました。




123G兄貴、感想ありがとナス!
りゅーど兄貴、評価ありがとナス!


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サイドストーリー:道無き道を

 君はどんなウマ娘になりたいんだ、と。そう聴かれた。

 周りのトレーナーたちが素質へ、才能へ語りかけているのに対して、その人だけがミホノブルボンという個人を見ていた。

 

 彼女の父は、そういうトレーナーだった。自分の娘が明らかにスプリンターとしての天稟を持っていたとしても、ステイヤーとしての調教をつけてくれるような。

 そんな人を探しますと、ミホノブルボンは見送りに来てくれた父に向かってそう言った。

 

 ――――ブルボン。トレーナーとは、そういうものではない

 

 三冠ウマ娘になりたいという意思を曲げないであろう娘がトレセン学園に向かう間際の駅のホームで、父は静かに頭を振った。

 

 夢を応援するといえば、聴こえはいい。だが実のところ、求められるのは結果なのだ。

 トレーナーが善人であるとか悪人であるとか、そういうことではない。彼らにも生活があって、ウマ娘たちにも生活がある。

 

 夢を追ったけど一銭にもなりませんでしたでは、だめなのだ。

 

『君はどんなウマ娘になりたいんだ?』

 

 トレセン学園に来る前ならばすぐ答えられていたであろうその問いに答えられなかったのは、父の言葉が現実味を帯びていたからかもしれない。

 

 トレーナーは才能を見る。現実を見る。夢を見るのはウマ娘と、ウマ娘を見る観客だけだ。

 誰かが、現実を見なければならない。でなければ、この厳しい世界を生き抜くことはできない。

 娘の夢を肯定したい父として、そしてあくまでも現実的な視点に立った元トレーナーとして。

 

 ――――トレーナーとは、そういうものではない

 

 つまりこの言葉は、その狭間から発された言葉なのだ。

 

「なぜ、そう訊かれるのですか?」

 

「スカウトされているのに、気分が乗っていないように見えたからだ」

 

 ミホノブルボンの夢。

 それは、口にするのは簡単だ。わかりきっている。クラシック三冠の達成。はじめて現地で見たあの熱気、歓声。日本ダービーを走る、後に三冠に輝いたウマ娘。

 

 ああなりたいと。そう思ったその日から、ミホノブルボンの夢は決まっているのだ。

 

「私の夢は、クラシック三冠です」

 

 無茶だ、と誰かが言った。記憶データベースに蓄積され続けた、よくある反応。

 

「なぜクラシック三冠を目指す?」

 

「……私が初めて観戦したレース、日本ダービーにおいて後の三冠ウマ娘の走る姿を見ました。そのときに獲得したステータス、『憧れ』が現在も私を動かしています」

 

「そうか。なら、お前も三冠ウマ娘にならないか?」

 

 あまりにも軽い勧誘だった。少なくとも、ブルボンの才能を見抜き、育てようとしている他トレーナーたちにはそう聴こえた。

 

「質問があります。貴方の言う三冠とは中距離・長距離のレース。皐月賞・日本ダービー・菊花賞で間違いありませんか?」

 

「ああ」

 

「私の母は短距離・マイルを主戦場としたウマ娘であったと、お父さんから聴いています。従って私もそうであるだろうと言われていましたし、現状はそうです」

 

 距離の壁、という思想がある。

 ステイヤーを母に持つウマ娘は、ステイヤーとしての才能を持つ。スプリンターを母に持つウマ娘は、スプリンターとしての才能を持つ。つまるところ距離適性は血統で決まるという、そういう思想である。

 

 その思想の体現者こそが、メジロ家だろう。天皇賞をこそ至高のものと考える彼ら一族は、代々優秀なステイヤーを輩出してきた。

 

「私の夢は、この思想に反するものです。貴方は、どう思われますか?」

 

「スタミナは努力で補える。距離の壁は、強靭な意志と血を吐くような努力で破壊できる」

 

 夢を叶えるとは、そういうことだ。死ぬほど努力して、努力して、努力して。それ以外の全てを犠牲にして掴むチャンスを手に入れる。

 

「トレーナーとは、平坦な道の砂利を掃除するためにいるのではない。夢を大地に引きずり落とし、道なき道を舗装するためにこそいる」

 

(……この人を)

 

 信じてみようと、ミホノブルボンはそう思った。夢が手の届かないソラにあることを隠すことなく伝え、進むべき道が地獄であることも伝え、それでも良いならばこの手を掴めと差し伸べてきたこの人を。

 

「これからどうぞよろしくお願いします。おと……マスター」

 

 

 それから間髪を入れず、過酷なトレーニングがはじまった。身体の状態を確かめ、どれほどの負荷に耐えうるか導き出し、その限界寸前まで負荷をかける。

 切り立った断崖絶壁へ走らされ、止まれと言われたところで止まる。一歩でも過ぎれば故障するであろう地点を正確に見抜き、峠の走り屋のごとく限界ギリギリを走らせる。

 

 周りから心配されるほどの素直さで、ミホノブルボンは課せられたメニューを正確にこなした。それは素直というより愚直であり、トレーニングというよりは虐待に近かった。

 

 優秀なウマ娘というのは、気性難が多い。それはあるいは自分の優秀な能力が故障によって損なわれないための――――限界ギリギリを踏み越えない、といった――――防衛本能からくるのかもしれないと思うほどの、圧倒的なトレーニング量。

 

 普通のウマ娘であれば投げ出していた。普通以上であったならば、逃げだしていた。賢いウマ娘であれば、自分の夢を諦めたかもしれない。

 

 だが、ミホノブルボンは優秀で愚かなウマ娘だった。

 

 坂路を1日8本走るという気狂いじみたトレーニングが、故障しにくく負荷が大きいというその性質が、自分に最もあっていることをやっているうちに悟った。それは彼女が優秀だからこそわかり得たことだった。

 

 そして彼女は、夢を諦められるほどの賢さはなかった。朝練を終えて教室へ移動する最中、見かねに見かねたベテラントレーナーから『このままでは潰れる。手続きと彼への説得は私がやっておくし、理事長へも手を回してあげるから壊れる前にこちらに来なさい』と言われたときも、これっぽっちも移籍する気が湧かなかった。

 

 ベテラントレーナーは、良い人だった。このままでは折角の才能が新人に潰されるだろうということは最早トレセン学園のトレーナーの中では噂になりつつあったし、その過酷なトレーニングを強いている本人はバ耳東風の知らん顔。

 引き抜き行為というものは減給、ともすれば解雇に繋がる。このベテラントレーナーは、それでも動いた。それはミホノブルボンの才能を惜しんだということもあるだろうし、地獄のトレーニングに対して文句も言わずに従う彼女の姿が見るに堪えないということもあっただろう。

 

 担当ウマ娘の従順さに甘えるのは、新人トレーナーにはありがちなことだ。

 サブトレーナーとは比較にならない権限を持つメイントレーナーになって、自分の理想を実現しようとウマ娘を酷使する。それはありがちだし、ベテラントレーナーたちにも経験がある。が、それにも限度がある。

 

「私は三冠ウマ娘になるという目標のために行動しています。マスターの課すトレーニングは確かに過酷なものですが、故障に気を使い、私の弱点を補うために必要なものです」

 

 そう言って、失礼しますと頭を下げた。

 その中身が間違ったものであれ、心配してくれること自体は嬉しい。

 しかし嬉しいからトレーニングをやめるかと言えば、そうではなかった。

 

 トレーニングは、厳しい。夢を追うにあたって文句というものを吐かないようにプログラムされているミホノブルボンですら、弱音を吐いてしまいそうな程に苦しい。だが、なんの成果ももたらさない苦しさではない。

 

 古代スパルタ人の末裔だなんだと言われているミホノブルボンのトレーナーは、坂路練習を終えると丹念なマッサージとケア、詳細な食事管理で明日に疲れが出ないように尽力している。

 現にミホノブルボンは、これほどまでに苦しいトレーニングをしながらも筋肉痛以外の痛みや不調を感じたことがない。

 

 1000メートル、1200メートル、1400メートル、1600メートル。短距離からマイルまでの距離ですら、ミホノブルボンは今まで息を切らしながら駆け抜けていた。

 

 だが、今は軽度な息切れすらしない。

 

 スタミナがついたのだと、ミホノブルボンはこのときに初めて実感した。

 

「むやみに走るのではなく、タイマーを内蔵して走るのだ。自分の時間感覚を研ぎ澄まし、レースの時間配分を把握しろ。そして、脚と頭を連動させろ。いいか――――」

 

 そんな達成感と高揚感に包まれる彼女に対し、彼は言った。

 

「――――レコードタイムから逆算して区間タイムを割り出す。そしてそれを更新し続ければ、お前は誰にだって勝てるのだ」

 

 心の中にいる、あの三冠ウマ娘にすら。

 

 それは、殺し文句だった。振り返ってみてみると、マスターはやる気を煽るのがうまい。

 ストップウォッチを片手に、寝る寸前まで体内時計の調律に挑む。そんな機械じみた調整をしていたミホノブルボンは、朝起きたときにそう思った。

 

「メイクデビューが決まった」

 

 そんな日々が続く中でも、ミホノブルボンのやることは変わらない。坂路を走り、ストップウォッチで体内時計を限りなく精緻に調律する。

 相当苦しかったトレーニングがやや苦しい程度にまで慣れれば追加され、慣れれば慣れただけ追加される。

 そんな果てのない日常の中で唐突にそう言われたとき、ミホノブルボンは驚いた。もう3ヶ月経ったのだという事実に、である。

 

 メイクデビューは7月の2週で、これまでにどれくらいのトレーニングを積むか、どれくらいの成果を上げるか。

 そういうフローチャートは提示されていたし、読んだ。加えて言うならば、実力もそのとおりに推移した。しかし、提示されたフローチャートに終わりがあるという考えがトレーニングをこなす毎日の中で抜け落ちていた。

 

 思えば、クリスマスも祝わなかった。ケーキを食べた記憶はデータベースに保存されているからわかるとして、お正月やら入学式はいつ過ぎたのか。

 

 虚空を見つめながら疑問符を浮かべるミホノブルボンの意識が身体の中に帰ってくるのを見計らったように、ミホノブルボンのトレーナーは続けた。

 

「距離は1600メートル。今のお前なら走り切れるだろうし、基本は今まで通り坂路での調教になる。わかったな」

 

「承知しました」

 

 そして迎えたメイクデビュー、ミホノブルボンはものの見事に出遅れた。凄まじいを通り越して、ある種の芸術性すら感じられる出遅れだった。実況に『これはとんでもない出遅れ!』と叫ばれる程度にはひどい出遅れだった。

 8ハロン、1600メートル。出遅れが致命傷になりがちな短距離とは違い、それなりに距離はあるが、それでも出遅れするとしないとでは大きな違いがある。

 

 が、ミホノブルボンは200メートルで後続に追いつき、400メートルで中団に躍り出て、800メートル時点で差し切り、そしてそれ以後の800メートル、影すら踏ませることなく逃げ切った。

 

 出遅れ込みでも1ハロン12.8近辺をひたすら刻み続けての勝利に観客が沸き立つ中。

 ミホノブルボンは調律を終えた体内時計に自信を持ちつつ、トレーナーに向かって頭を下げた。

 

「バッドステータス、『出遅れ』の発生を確認。申し訳ありません、マスター」

 

「今の君の実力であれば10回走れば1回の出遅れがある。今回はそれを引いた、ただそれだけのこと。いちいち陳謝は無用だ」

 

「はい、マスター」

 

「それと、皐月賞ではもう少しペースを下げないとバテる。自己ベストを目指すより、理想のタイムを目指せ」

 

「了解しました。これよりはじまる実戦の中で、最適のラップタイムを見つけ出します」

 

 勝利の喜びというものは、あった。胸が熱くなるような、脚が軽くなるようなステータスの変調。

 だが一方で、ミホノブルボンはこうも思った。

 

 勝つのは当たり前だ、と。

 なぜならば、努力してきたから。それだけのことをやってきたから。この勝利は目の前にあるものを手にとったという、ただそれだけのことなのだ。

 

「加えて言おう。君の実力であれば、勝って当然だ。そして君ならば、この当然の範囲を来年の4月2週までに皐月賞を覆う程に拡大させることができるだろう」

 

「はい。私とマスターであれば、可能であろうと予測されます」

 

「次の出走は12月3週、朝日杯FSだ。こちらとしてもそれまで、それなりの対策を立てる。その後の調教スケジュールはいくつか用意してあるから、取り敢えず12月までは坂路だ」

 

 じろりと、怜悧な目がミホノブルボンを見据えた。それは単なる冷静さとか、冷徹さとか、酷薄さとか、そういうものではない。自ら決定した目的のために突き進む、研ぎ澄まされた刃のような美しい光。

 

 この眼は常に、問いかけてくる。お前は自分の夢のために、どれほどのことができるのかと。どれほどのものを捨てられるのかと。

 

 怖い眼だと思った。だけどなぜだか、恐ろしくはなかった。




123G兄貴、バンダメント兄貴、終焉齎す王兄貴、朱ザク兄貴、ドラゴミレスク兄貴、Hey,sorry兄貴、一般通過ウマ娘兄貴、感想ありがとナス!

ダウンタエン兄貴、オクスタン兄貴、義紀兄貴、イガラ兄貴、イキ杉謙信兄貴、ハサセン兄貴、k@ins兄貴、スナーク兄貴、評価ありがとナス!


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オペレーション:希望を手に

 ひとつのガバがガバを呼ぶRTA、はーじまーるよー。

 前回はミホノブルボンが凄まじい出遅れを噛ましたものの、見事な末脚で差し切ったところまでやりましたね。スキップしたからどうなったのかは見ていませんが、たぶんそうだと思われます。

 

 さて、早速ですがこの着順表にご注目ください。1位ミホノブルボンと2位パカパカの間が『大差』となっています。

 これはこの両者を隔てる距離が10バ身以上ついた時に表示されます。要は、数え切れないから『大差』とするわけです。

 

 このウマ娘ワールドダービーというゲームでは様々なイベントが用意されていますが、その一部にはこの『大差』をつけて勝つという条件を満たすことで発生するものもあります。

 つまり何が言いたいかというと、やっているうちに思いついたオリジナルチャートがあるのでやってみようかな、ということです。今確認することはできませんが、三連戦を逃げで大差勝ちすることであるイベントが起こったはずなので。

 

 因みにこの大差勝ちが失敗したとしても、RTAは続行します。あくまで大差勝ちできたらいいな、くらいなものです。

 メイクデビュー後の取材パートでは事務的に答えます。記者の好感度を下げると、こういったイベントをスキップできるので。

 

 ただ、ここで間違っても三冠ウマ娘を目指さない、みたいなことは言わないようにしましょう。ちょっぴりしかないであろうブルボンの信頼度が落ちます。

 

 チャートの解説を挟みますと、この場合の質問傾向としては【マイル戦は目指さないんですか?】という希望を押し付けてくるタイプ、【クラシック三冠を目指す理由は?】という真相究明タイプ、【クラシック三冠に出て、勝てるとは思えませんが】という挑発タイプの三種に分けられます。

 

 この場合の返答としては、

【マイル戦は目指さないんですか?】→【目指さない】

【クラシック三冠を目指す理由は?】→【本人との相談の上決定しました】

【クラシック三冠に出て、勝てるとは思えませんが】→【わからんやつにはわからんで結構】

 

 という返しをしましょう。柔らかく対応する必要はありません。あえて断定形での返答をすることで、指導ウマ娘の信頼度が上がりますので。言ってることをコロコロ変えるやつは信用ならないってはっきりわかんだね。

 

 え、記者の好感度? それはまぁ、ナオキです……

 

 【ミホノブルボン圧勝! マイル路線の新たな覇者か! 専門家「三冠は無理」】

 【ミホノブルボン三冠宣言! 距離の壁は超えられるのか!?】

 

 翌週。

 予想通りきこえのいい言葉が紙面を賑わせていますが、(マイル路線には進ま)ないです。まあ、強制出走レースの兼ね合いで当分はマイル戦を荒らさなければならないわけですが。

 

 ちなみに上のでたらめ書いてる雑誌は月刊ターフ。ワールドダービーで新しく登場した、ちょくちょくやる気を下げてくるうんこです。

 下の雑誌は月刊トゥインクル。スマホ版でレース後にちょくちょくやる気を上げてくれた乙名史記者を擁するこの広報誌は、阪神で言うところのデイリー、巨人でいうところの報知新聞。要は大本営です。

 

 先程答えた3問のうちの真ん中、一番まともな質問を投げてきた雑誌社ですね。何をしなくともレースに勝つたびに好感度が上がるので、なにもせずに放っておきましょう。

 

 さて、広報パートを終えいつもの画面に戻ってきたところで十字キーを左に滑らせて○ボタンを連打。メイクデビューを果たしたことによってウマ娘用アイテムの販売が解禁されたショップを覗きます。

 ちなみに現在の所持金はトレーナーとしての給料800万+メイクデビュー1位の賞金400万で1200万。初期資金の500万はスカウト教本に消えたため、これがほもくんの全財産です。

 

 今回欲しいのは逃げ系のスキル本と集中力の本。優先度を表すと、逃げのコツの本>>>>集中力の本>>>>その他の逃げ系のスキル本>>>>汎用のスキル本となります。

 

 【購買部には5冊の本が並んでいる……どれを買おうか?】

 【センターは私!】

 【好きなものは別腹!】

 【街亭布陣図】

 【銅鑼の演奏法】

 【一人カラオケの極意】

 

 5冊。緑特能の本が2冊ありますが、どちらもあんまり噛み合わないですね。

 後付けで実況している今にしてみれば【一人カラオケの極意】は買っても良かったかと思いますが、モブの逃げウマ娘に当たる確率もそれなりにあったことを考えれば妥当……のはず。

 

 ちょっと後悔をはさみつつも、このときの私は【街亭布陣図】を買いました。お値段なんと1200万円! うん、おいしい!(白目)

 

 てことでブルボン、これをあげよう。中身はいずれ手に入るかもしれなかった特殊能力だけど、やる気が上がるよ。

 

「感謝します、マスター」

 

 【ミホノブルボンのやる気が上がった! ミホノブルボンは特殊能力《登山家》を習得した!】

 

 ブルボンが強くなったところで、購買部を出ます。ラインナップが変化するのは最短で4週間後。つまり8月3週が最短となりますが、普通にお金が足りないので朝日杯FSが終わってから顔を出すことにします。

 

 じゃあ金をとっておけよオラァン!という視聴者兄貴もいらっしゃるかも知れませんが、一刻でも早く月刊ターフの記事で下がったやる気を上げたかった(弁明)

 

 そして見どころさんのない練習パートに入ります。ミニキャラブルボンが坂路を走るだけ。

 なぜミニキャラかと言えば、くっそ出来のいい綺麗な3Dモデルを動かすよりも処理が軽くなるからです。

 

 牛丼に水をぶっかけて一気にかき込むが如き蛮行ですが、1秒でも早く駆け抜けたいのでこうしています。ミニキャラはかわいいからいいよね?

 

 【購買部に新しい本が入荷されました!】

 

 …………現在9月3週です。ラインナップの変更は最短4週、最長8週。つまりどうあがいても、この変更で入荷されたスキル本は購入することができません。次の賞金のアテは12月3週にある朝日杯FSの1400万だからです。

 

 ……また話が変わるんですが、スマホ版ウマ娘をやっている兄貴たちはメジロマックイーンを育てたことがあるでしょうか?

 メジロマックイーンの目標の1つに、1月前半までにファン数を3000人にする、というものがあります。実に簡単な目標です。途中で適当なレースに出ればそれでクリア。

 

 ですが人というのは強欲なもので、ウマ娘ユーザーたちは出るレースで得られるリターンを最大化するために12月後半のホープフルステークスに出ることを選択しがちです。

 12月後半。つまり、このターンでレースに出てファン数を増やさなければ、目標未達成でゲームオーバー。ここで取れる選択肢は、レースに出ること一択。

 

 ですが好奇心旺盛な人は、ふと思ってしまいます。レースに出なきゃならないけど、それはわかってるけど、練習できないこともわかってるけど、練習はどうなっているんだろうなー、と。

 

 例えば、4連友情トレーニングが組めているかもしれない。キタサンブラックがコツマークを出しているかもしれない。どうせできない練習なのに、人はホープフルステークスの前に練習画面を覗きます。

 

 私もそうです。レースに出なければ買えないことはわかってるけど、レースに出たらチャートが壊れることがわかってるけど、それでも自分の判断の正しさを証明するために見てしまう。それがたとえ、本来縮められた数秒を浪費することになってしまっても。

 

 【購買部には5冊の本が並んでいる……どれを買おうか?】

 【刹那の見切り】

 【好物は別腹!】

 【膨らまないハンドリング(長距離)】

 【孤高の狼】

 【必見逃走術】

 

 上から集中力の本、別腹タンクの本、長距離コーナーの本、一匹狼の本、逃げのコツの本。

 

 う~~ううう……あんまりだ……H E E E E Y Y Y Y あ ァ ァ ァ ん ま り だ ァ ァ ア ァ AHYYY AHYYY AHY WHOOOOOOOHHHHHHHH!!

 おおおおおおれェェェェェのォォォォォ チャートォォォォがァァァァァ~~~!! 判ドゥアンがぁぁぁあ〜〜〜!!!

 私のバ鹿! 役立たず! ゴミクズ! 加藤良三!

 

 ……ふぅ。見なきゃよかった。そしたら知らないまま幸せでいられたのに。

 まあぶっちゃけ、無理してレースに出れば取れますよ。効率を無視してプレオープンとかGⅢで、お金のために走ればね。でも皐月賞やら日本ダービーやらを勝つために、この時点での練習って絶対にサボっちゃいけないんですよ。

 集中力が欲しいのは、出遅れガバを防ぎたいから。逃げのコツが欲しいのは、凱旋門で勝ちたいから。でもそれも、皐月賞と日本ダービー、あと菊花賞を勝たなければ挑戦すらできないわけで。

 

 ここは、チャートを守ります。チャートはちゃーんと守らなければ意味がないのでね(渾身の激ウマギャグ)。

 

 涙を流しながらのボタン連打で、あっという間に12月3週になりました。朝日杯FSのお時間です。もちろん購買部のラインナップは変更されてます。集中力も逃げのコツも買えません。

 ……これ、賛否両論あると思うんですが、2週連続出走しようと思います。朝日杯FSに加えて、ホープフルステークス。ここを走ってお金を稼ぎます。

 

 朝日杯FSとホープフルステークスはどちらもGⅠ。15程度能力も直で上がりますし、スキルポイントも60手に入ります。貯金しておいた方がいいなーと身にしみて思ったので。

 

 これは後付になりますけど、朝日杯FSとホープフルステークスを勝つと注目度にバフがかかって、クラシック路線における獲得ファン数にボーナスがつくんですよ。

 このゲームは声援ボーナス――――ファン数が多ければ多いほどウマ娘の能力にバフが乗る機能があるので、多分回り回って練習一回分の負債を完済できるでしょう、たぶん。

 

 一応、この時点でブルボンはスピード・スタミナ・パワーは限りなくCよりのオールD+。中距離適性はBにまで上がってます。最良の条件ではないけど、無茶ではない。そんなところです。

 

 ということで朝日杯FSにイクゾー(デッデッデデデデ!(カーン)デデデデ! デッデッデデデデ!(カーン)デデデデ!)。

 

 今日もブルボンは絶好調。まあたぶん勝てるけど、大差勝ちしてくれよなー、頼むよー――――という願いが通じたのか、普通に大差勝ち。すごいすごい。これ、時々2位とか3位とかになるんですけどね。

 少なくとも、大差勝ちしてるのはあんま見ないです。

 

 ライスシャワーとのイベントを○ボタン連打でスキップして、じゃあ続いてホープフルステークスにイクゾー!

 

「ホープフルステークス。中距離レースですね」

 

 まあ皐月賞と同じ距離だからさ。パパッとやって終わりっ!って感じで!と説得し、ブルボンの背を押します。

 

 言い訳をさせていただきますと、この時の私は先程の購買部の変から立ち直っていません。だから会話コマンドも細やかにやってませんし、説得コマンドの切り方も適当です。

 

 これは信じてもらうしかないんですが、通常の精神状態だったら中距離適性Bで事故多発地帯のホープフルステークスになんか行かせません。

 これは例えるなら真冬の雪山に登山道具無しで挑むような真似ですから、要はガバですね。負けるようなことがあれば責任をとって、ほもくんと冨岡義勇が腹を切ってお詫びいたします。

 

 というか同じようなことを何回も言っていますが、ここで負けたら終わりです。まあ中距離適性B、向かうは事故のメッカことホープフルステークス。流石のブルボンでも――――

 

「コンプリート。一着、達成しました」

 

 出遅れ・掛かりのないブルボンは神。しかもまた大差勝ちだし。

 ブルボンは神ということが皆さんにも知れ渡ったと思うので、今回はここまで。ご視聴、ありが――――

 

「お前、ずっとすごいな! ターボもああやって勝ちたい! ビューっとぶっちぎりで一番で!」

 

 んぁ、へ?

 何 故 ダ ブ ル ジ ェ ッ ト 師 匠 が こ こ に い る ん で す ?




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オペレーション:邂逅

 明らかに人間に許された配色をしていない師匠がポップしたRTA、はーじまーるよー。

 前パートでは購買部の変の影響もありとんでもないガバを晒しました私ですが、師匠襲来によってメンタルがリセットされています。故に今回、ガバはありません。

 

 たぶんこのときの私は、なんで師匠が来たんや、とか思いながら○ボタンを連打しています。なんだかよくわからんがとにかくヨシ!という現場猫メンタルですね。

 ですが当然、師匠が来たのには理由があります。それが前パートでちょくちょく言っていた、大差勝ちがどうたらという話です。

 

 このツインターボこと師匠は、《逃げ戦法で大差をつけて三連勝》という条件を達成することで出てくる育成お助けキャラです。練習効率を10%上げてくれたり、豊富な逃げ系スキルのコツをくれたり、一緒に練習してくれたりします。

 まあこちらはチャート的に坂路練習しかしないので友情タッグトレーニングは組めないのですが、記念すべき初めてのトレーニング相手。

 6個の練習の中からピンポイントで坂路練習に顔を出し、その上で特殊能力のコツの発生、更に師匠の保持する特殊能力の中から有用な物を当てるという3段クルーンを突破できることを祈りましょう。

 

 ブルボンがダブルエンジン師匠に絡まれているところで、一応現在のステータスをば。

 現在最重要のステータスであるスタミナはC。ホープフルステークス勝利時のステータス直上げによって、早々に目標達成となりました。これでブルボンの中距離適性はA、長距離適性はB。取り敢えず日本ダービーまで負けはないと断言できる程度には強くなれました。

 

 問題となるのは、菊花賞。史実でもミホノブルボンはここで負けたわけですが、このゲームでもかなりの確率で負けます。たぶん普通にやっても、勝率8割はありません。

 8割ってほぼ勝ったようなもんじゃん、と思う兄貴もいらっしゃると思いますが、ポケモンの技で考えてみてください。8割という確率がまるで信用ならないことを思い出していただけるはずです。

 

 取り敢えず中距離の壁を破ったブルボンを褒め、RTAの観点からこれまでサボりがちだったコミュを実行。愛嬌×ということもあり致命的な気もしますが、最終的に造反されない程度の信頼度があればいいのでハードルは地面に埋まるくらいに低いです。

 

 皐月から日本ダービーに続く試金石だったんだよ、みたいな適当な後付け理由をつけて茶を濁します。

 まあホントは本を買うお金が欲しかったんだけどね(人間の屑)

 

「ステータス、高揚を感知。曖昧な言い方になりますが、何かを乗り越えた……そんな気がします」

 

 まあ実際中距離適性がAに、長距離適性がBになったわけだからそうでしょうね。

 割と無理矢理走らせた感じだったので信頼度が下がったかなと思いましたが、本人的には上機嫌なようです。

 

 ライブ以外では徹底的に表情に乏しいミホノブルボンですが、そのぶん耳と尻尾が感情をよく映すため、ちらりと見ればわかります。

 

 これは……結果オーライじゃな?で普段は済ませられますが、今回のほもくんは愛嬌×。安定策として、たった今得た賞金を使って豪遊!します。

 

 そもそも出会って即契約してから今に至るまで死ぬほどキツい調教をつけているわけで、如何にブルボンと言えどもストレスゲージもそろそろ有頂天を迎える頃です。たぶん。

 たぶんというのは、ストレスゲージが見えないからですね。これはマスクデータで、言動や耳、あとは尻尾から見抜くしかありません。

 

 と言ってもわかるのは爆発寸前かどうかくらい。じゃあ試走時に計算しておけばええやんとなるかも知れませんが、このミホノブルボンチャートはキャラクリ時に爆発四散した皇帝チャートを一部流用して即興で作ったもの。追走も試走もしていない、文字通りできたてホヤホヤのオリチャーです。

 なので一応、皇帝ことシンボリルドルフさんのストレスが限界値に届きかけるこの時期に減らしておくか、という発想です。

 

 向かう先は主にスイーツを提供する高級店。ちょうどよく体力も減っていますし、体力管理の面から見てもいい感じです。

 ストレスゲージを限界まで溜め込んでからでもいいかなと思わないでもないですが、レース直前にストレスゲージがマックス→コミュを強いられてからの太り気味を喰らうのが怖すぎるので今のうちにやっておきます。

 流石に1年近くコミュなしで練習させ続けて、ストレスがないということもないでしょう。

 

 【尻尾をしきりに動かしている。ミホノブルボンは、甘い物が好きなようだ】

 

 などとあたかも甘い物が嫌いなウマ娘がいるみたいなメッセージが出ていますが、甘い物が好きじゃないウマ娘はいない……はずです(おぼろげ)。少なくともRTAを走るにあたって選ばれるウマ娘の中には居ませんでした。

 第一、本物の馬が味覚的に甘いもの大好きらしいですからね。よっぽど強烈なエピソードがない限りは、甘い物嫌いのウマ娘は出てこないと思われます。

 

 少し脱線しましたが、そんな間にもブルボンは黙々とメニューに目を通しています。

 

 【しばらくして、続々とスイーツが運ばれてくる。林檎のタルト、林檎のケーキ、アップルパイ……ブルボンは林檎が好きなのかもしれない】

 【『会話のヒント:What food do you like?』を手に入れました】

 

 多少の出費はかかりましたが、これでプレゼントを選ぶときにトンチンカンなものを送らずに済みます。

 因みにブルボンの誕生日は4月25日。すなわちこの世界では4月4週になります。割と近い。備えよう。

 

 4月4週といえば皐月賞が終わっている頃ですので皐月賞の出来によってはこのRTAは終わり、誕生日を迎えられない世界線もないこともないわけですが、まあなんとかなるでしょ(楽観)

 このチャートのホントの敵はライスシャワーだって、それ一番言われてるから。まあ、その宿敵の初登場を○ボタン連打で飛ばしたのは私なわけですが……

 

「マスター、このあとの練習はいかがしますか?」

 

 勝ちにも浸らず、食ったらすぐ練習するのか……(困惑)

 

 いい ウマ娘 ってのは

 勝利を得て 自慢するでもなく

 敗れて 取り乱すでもなく

 ただ 次の勝利を 求めるのさ

 

 といったところですが、悪い反応ではありません。この積極性を見るにストレスゲージはきれいさっぱりクリーンアップされたようですし、やる気MAX。体力も8割残っているので、充分練習できるでしょう。

 

 もちろん今日も練習はさせるわけですが、信頼度稼ぎのために三択の中から【親に連絡しなくていいのか?】を選択。気遣いを見せておきます。

 

「ありがとうございます、マスター。ですが、お父さんへの連絡は夜にでもできることです。今は今にしかできないことをやるべきであると考えます」

 

 二週連続で出走してレースのあとに坂路練習を組むとか(ほもくんの評判が)壊れちゃーう!

 嘘です。壊れる評判なんてものはありません。デュアルエンジン師匠のイベントを一刻も速く完走するために、さっさとトレセン学園に帰還。時間いっぱいを使って坂路を走らせます。

 朝フェイズで中山に移動、昼フェイズでレース、夜フェイズで練習とか、鬼畜以外の何物でもない。まあ、これからもちょくちょくやるんですけどね。

 

 すごく今更な説明になりますが、このゲームはターン制のゲームです。一週間が1ターンで、1ターンは朝・昼・夜の3フェイズにわかれています。

 

 朝フェイズでは朝練を、昼フェイズでは昼練を、夜フェイズでは夜練をする。私はレース以外の日はこういうふうに進めてきました。

 因みにCPUトレーナーだと朝フェイズはコミュ、昼フェイズお休み、夜フェイズ練習という健全なスケジュールを組みます。

 

 つまりブルボンは今までもこれからも、通常の3倍練習することになるわけです。そら心配されるわ。

 

「あれ、今日はレースに出るんじゃなかったのか?」

 

 【ブルボンのトレーニング風景を見守りつつ練習メニューを管理していると、後ろから声をかけられた。彼は……】

 

 出たわね。

 はい、こいつ。このトレーナーは脹相(ウマ娘)です。

 脹相(ウマ娘)とかいうキメラみたいな単語は一旦置いてわからない人に向けて噛み砕いて説明すると、彼はライスシャワーのトレーナーです。

 

 どけ!俺はお兄様だぞ!とかいうネタセリフも普通に言いそうなこの男こそが、ブルボンチャートが流行らなかった原因にして本チャート最大の敵、そして最大の味方でもあります。

 だいたい11.4514分前に解説したとおり、ミホノブルボンの長距離適性はB。これ以上スタミナを上げても、Bから上がることはありません。

 

 この長距離適性を上げてくれるのがこの脹相(ウマ娘)とライスシャワーです。ぶっちゃけ有馬とかならBでも勝てなくはないものの、それでもAになれば事故率が飛躍的に少なくなるのでありがたい……のですが。

 

 こいつら、クソ強いです。前にRTAに向いてるウマ娘と向いてないウマ娘がいる、みたいな話をしたと思うんですが、ぶっちゃけライスシャワーはRTAに向いてないです。

 理由は、出せる力の安定感がないから。スイッチ入ったときは全ウマ娘の中でも最強クラスの力を発揮する反面、なんでもないところ――――メイクデビュー、ホープフルステークス、皐月賞とかでコロッと負けます。

 

 これは原作再現だな!とか言って当初は笑えてたのですが、これは一つのミスが死を招くRTA。スイッチ入ったライスシャワーの前には理想個体シンボリルドルフでも、菊花賞や春天で差しきられたりします(56敗)。

 

 56敗ってなんだよ……と思われるかもしれませんが、皇帝チャートは1000回以上走ってるのでこんなもんです。少なく見積もっても残り944回は勝ってるわけで、確率にして約5%。

 しかしこの5%にぶち当たることがあまりにも多いことを、スーパークリークを育てた経験のある兄貴たちはわかると思います。

 

 つまりブルボンがどんなに頑張っても5%で負けるという、6分の1スケールハサミギロチン。それがライスシャワーです。

 ブルボンという名前とギロチンという物体の名前を併記すると嫌な予感しかしないのでこれくらいにしておきますが、要はクソ強くて怖いロマン砲。それがライスシャワーです。

 

 【……ライスシャワーのトレーナーだ。耳を立てて調子の良さそうなライスシャワーもあとに続いている】

 

 好調にならないで一生不調でいてくれや(人間のクズ)

 まあ懇願しようがなにしようが相手ウマ娘の調子には干渉できないんですけどね。怖いです、ほんと。ただ単純にライスシャワーが怖い。嫌いじゃないです。むしろ好きだからこそ恐ろしい。56回目の敗戦は今でも時々夢で見ます。

 切れ者も引けてサウジアラビアを超えた最高の状態でレースに臨み、負ける。しかも勝ったなガハハしてたのに。絶好調ダジャレマシーンと化した皇帝が本気で凹むのを見るのが辛かった(小並感)

 

 このときの私は無言で配信とタイマーを切り、ついでに筐体の電源を切って走ることをやめました。まあ、あきらめてる時間があるなら厳選したほうが早いと判断して、3時間後にはまた走り出したわけですが。

 

 何が言いたいかというと、ライスシャワーは怖いということです。引退試合における村田修一くらい。

 

 会話コマンドですが、ライスシャワーに視線を定めた上で【レースに出たからと言って今日は練習をしなくていい、ということにはならない】とかなんとか言っておきましょうか。

 ぶっちゃけこんなスパルタな回答の他にも色々選択肢はあるんですが、根性と賢さは主に会話コマンドで上げていく方針ですので、こういう択を進まざるを得ないです。

 

 それにしてもライスシャワーが怖いですね。まだ鬼が宿ってないにも関わらず、根源的な恐怖を感じます。これがトラウマか……

 

「なんというか、相変わらずだな……」

 

 まあね。ほもくんのことは知らないけれども、このワールドダービーというゲームは選んできた選択肢に矛盾しないように過去が作られていくようになってます。

 つまり私が根性論者のスパルタ人として振る舞わせているほもくんは、彼を知る誰が見ても今と矛盾しないような過去を持っているのでしょう。

 

「あ、あの……ミホノブルボンさんの休憩っていつ、ですか?」

 

 なぜかビビってるライスシャワーですが、私も同じくらいかそれ以上、ライスシャワーという存在に畏怖を感じています。端的に言えば恐怖感。

 

 それにしても、わざわざ訪ねてきてくれたのは嬉しいですね。

 チャートの安定性を高めるには、菊花賞までに長距離適性をAにすることが必須。菊花賞まではあと9ヶ月ちょい、38ターンとかそこらなので、積極的にブルボンとライスシャワー間の友好度を上げていかなければなりません。

 

 ここで提示された選択肢は2つ。

 【なにか話があるならば伝えておくが?】と、【もう終わるところだ】です。

 

 ここは下を選んで少し早めに上がらせて、ライスシャワーとの友好度を高めておくことにします。今週の夜ターンに上がるはずだった能力が2割ほど減りますが、誤差です。

 

 練習を中断されてやや不満げなブルボンには【これからは社会性の向上も必要だ】などと言って説得成功。ライスシャワーの紹介をして、全財産の2900万円を大事に掴んで購買部へダッシュ。

 

 【購買部には5冊の本が並んでいる……どれを買おうか?】

 【☆影すら置き去り】

 【宿題は後回し!】

 【一気飲みの極意】

 【手弁当でパクパク】

 【追い込み漁のヒケツ】

 

 一新されたラインナップを確認したところで、本日はここまで。ご視聴、ありがとうございました。




123G兄貴、埋まる系グフ兄貴、ゼリン兄貴、白野葵兄貴、remk兄貴、11兄貴、慈鳥兄貴、ピノス兄貴、一般通過ガイジ兄貴、緒方兄貴、ガレッキー兄貴、一般へっぽこヒト息子兄貴、ほっか飯倉兄貴、マサパン兄貴、HIPのYOU兄貴、貴築華道兄貴、ころに兄貴、一般通過ウマ息子兄貴、すらららん兄貴、八咫烏兄貴、まるまーる兄貴、酔漢兄貴、乱読する鳩兄貴、元大盗賊兄貴、ゆきろー兄貴、Xres兄貴、終焉齎す王兄貴姉貴、あqswでfrgt兄貴、ソフィア兄貴、うまだっち兄貴、O-sam兄貴、ラプソディ兄貴、ビッグべアー兄貴、石倉景理兄貴、114514兄貴、卵掛けられたご飯兄貴、課金は負けだと思ってる兄貴、タマゴタケ兄貴、ZOXV兄貴、Nazz兄貴、ヘイトリッド兄貴、ステーキ大好き兄貴、sk-Ⅱ兄貴、スクート兄貴、けれすけ兄貴、南高梅兄貴、ピノス兄貴、雨邪孔兄貴、イナモチ兄貴、ブブゼラ兄貴、ライセン兄貴、ESAS兄貴、あなざーおぶあなざー兄貴、サガリギミー兄貴、ヤンデレ大好き侍兄貴、サンシタ兄貴、ながも~兄貴、例の兄貴兄貴、ガリガリ君コーラ味兄貴、朱ザク兄貴、星ノ瀬竜牙兄貴、感想アリシャス!

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オペレーション:春風に乗って

 お前……その本を読んでみろなRTA、はーじまーるよー。

 前パートはなんか色々ありましたが、何も進んでないです。ええんかそれでお前……(絶句)

 

 さて、前パートの最後に購買部に行きました。そのときにあった本こそが、中途半端なところでパートをわけた理由です。

 

 購買部に置いてある、【☆影すら置き去り】という本。これ、パワプロ的な言い方をすると金特本です。読むと先程エシディシ並みに号泣して、結局手に入れられなかった《集中力》の上位スキル、《コンセントレーション》を得られます。

 

 この『コンセントレーション』。極言すると、ミホノブルボンには必須のスキルです。

 ブルボンの固有スキルは《G00 1st.F∞》。効果は最終直線まで自ら崩れることなく前の方にいると速度が上がるというものですが、この『自ら崩れることなく』というのがなかなかの曲者。出遅れも許されませんし、掛かることも許されません。

 

 まあ掛かることはそんなにないのでいいんですが、出遅れは結構よくあるのがこのゲーム。その出遅れの発生率を極限まで抑えてくれるのがこの《コンセントレーション》なんですね。

 

 これのお値段は2800万円。通常のスキル本の倍の値段。よって貯金するために挑んだホープフルステークスが終わった瞬間にまた無一文になりますが、これは買わざるを得ません。

 TDNさんが時々くれますが、何度も言うようにこのほもくんは愛嬌×。好感度を上げ、イベントを完走するなど望むべくもありませんので最初から考えないこととします。

 

 ウキウキでスパルタステップを踏みながら練習場に戻ると、もうライスシャワーと脹相(ウマ娘)は帰ったみたいですね。飼い主を待つ犬のように、ブルボンがちょこんとベンチに座って待っています。

 

「マスター。ライスシャワーさんは私にステータス『憧れ』を抱いているとのこと。私の乏しい社会経験では、どのような態度を取ればいいかわかりません」

 

 そらもうあれよ。ありのままで接せばいいのよ。

 憧れを抱かれすぎて結果として超然的な存在になりすぎ、その結果ダジャレに傾倒したカイチョーもいるけど、あくまでもそれは1手段。ライスシャワーが憧れた今のまま、ありのままで接せばいいのよ。

 

 そういう毒にも薬にもならないことをいいつつ、いつものように分析力Bを活かしたクールダウン・マッサージでケアを実施。

 

「……私は父から、社会性の乏しさを改善するようにとのオーダーを受けています。であるのに現状のままを善しとしていいのでしょうか?」

 

 態度を変えても社会性は得られないゾ。経験を積んだ結果として態度が変化し、社会性を得られるんだゾ。

 だからライスシャワーともっと話して、どうぞ。

 

「アドバイスを理解。オーダー、受領いたしました。……マスター」

 

 なんかいい感じになってますが、相談に乗ってる間ひたすら脚をもんでます。傍から見たら完全にアレです。

 たぶん変態だと思うんですけど(自首)

 

 というか、ん?

 

「私的な相談にも乗っていただき、感謝します」

 

 べ、別にあんたの私的な悩みになんか興味ないんだから! ライスシャワーと仲良くして長距離適性をAにしてほしいだけなんだからね!(純度100%の本音)

 

「マスターも私同様、社会性項目の意思伝達に齟齬があると分析。ステータス『素直でない』と判断します」

 

 これはな、ツンデレっていうんや……というのは置いておいて、こうも会話が続くあたり結構信頼度高いですね。理由は全くわかりませんが、いいことです。

 

「マスター、それは?」

 

 しばらくの沈黙の後、ようやくブルボンが本に気づきました。

 お前……この本を読んでみろ(ZON)

 

「分析開始。厚み、文字の量から情報量の膨大さを算出。理解には3週間ほどの時間がかかると推察されます」

 

 【ミホノブルボンは『☆影すら置き去り』の本を手にとった。

 渡しますか?】

 

 登山家の本を渡すときは確認してこなかったシステムくん迫真の確認。

 (それ以外の選択肢なんて)ないです。

 

 まあ色々と予想外のことこそありましたが、現在の状況はチャートが想定したそれを大きく超えています。

 ツインターボ師匠の登場は3月3週のスプリングS以後のことになると思ってましたし、スプリングSで大差勝ちできなければ登場しないことすらありえました。

 ついでに言えばコンセントレーションなんて取れる可能性すらなかったわけです。金スキル本の登場確率は1%で、その1%を引いてもろくすっぽ使えないスキルを引く可能性もあります。

 火事場のバ鹿力くん。君に言ってるんだぞ?

 

 要は、現在果てしなく運がいいということですね。個人的な考えですが禍福は糾える縄の如しという言葉の通り、運が良ければ悪いときもあるものだと考えています。

 コンセントレーションを手に入れた幸運は素晴らしいものですが、この幸運が反転して襲いかかってくるときが怖いですね。

 

 では3月3週まで一気にイクゾー!(デッデッデデデ――――

 

「明けましておめでとうございます、マスター」

 

 【ノック音に気づいてドアを開けるとブルボンがいた。よそ行きのラフな格好だ】

 

 ん? んん? んんん?

 あれ、なんで初詣イベントが起こってるんですかね。

 初詣イベントは信頼度が一定値を満たさないと起こらない季節イベントです。だから本チャートでは2年目1月(今)はスルーして3年目1月にこの初詣イベントが起こるものとして組み込んでいたのですが、これは嬉しい誤算。

 

 選択肢は【ブルボンの能力向上を祈る】と【ブルボンの健康を祈る】と【ブルボンの特殊技能向上を祈る】と【金運祈願】の4つ。

 

【ブルボンの能力向上を祈る】でひとつの能力が5アップ。【ブルボンの健康を祈る】で体力20回復。【ブルボンの特殊技能向上を祈る】でスキルポイントが20アップ。【金運祈願】で200万円がもらえます。

 ここはまぁ、健康を祈っておきましょうか。スキルポイントはチャート通りに進めば4だけ残して使い切るはずですし、体力もそこそこ減っています。

 

 さて思わぬ邪魔が入りましたが、ここからはおなじみ倍速で行きます。一日に三回坂路練習をするだけなのでね。イベントが起これば等速に――――

 

「マスター」

 

 なにかなぁ?(草加)

 というかイベント渋滞してない? 渋滞が頻発する1月だからってそんなところまで再現しなくてもいいのよ?

 

「GⅠに2回出走したことにより、勝負服の申請を行えるようになりました。デザイン・企画は私が行いますので、申請の処理をお願いできますでしょうか?」

 

 ……ああ、なるほど。勝負服イベントですか。

 この勝負服を作るというイベントは、ファン数1万人以上+GⅠ2回出走という条件を満たせば確定で発生します。

 

 これを承認するとやる気と信頼度が上がる上にパワーが+20されるので却下する理由がないように見えますが……レースでの読み込み時間がやや増えるんですよね。

 塵も積もれば大和撫子というので却下したいところですが、虐待が過ぎると差し切り体勢(比喩表現)に入られそうなので承認しておきます。

 

 ちなみにノンケの視聴者兄貴たちにとっては嬉しいことに、ブルボンの勝負服はかなりエッチです。みんな踊れー!

 

「マスター」

 

 はい。イベント後に坂路連打してたらまたイベントが起こりました。ちょっと最近こう、多すぎじゃないですかね……(3週連続)

 

「こちらの本の分析・習得を完了しました。ステータス《精神統一》を取得。次回のレースでは、完璧なスタートをお見せします」

 

 【ミホノブルボンは絶好調をキープしている】

 【ミホノブルボンは特殊能力《コンセントレーション》を習得した!】

 

 ああ、そう言えば本渡してから3ターン後か……(痴呆)

 チャートに書いてないことをするとその影響を忘れがちになる。これは割とガチだと思います。

 

 (だから余計なオリチャー発動は)しないようにしようね。

 まあ、するんですが。RTAってのは高度な柔軟性を保持しつつ臨機応変に対処するんだよ!(名将)

 

「マスター。この本、いただいてもよろしいでしょうか?」

 

 あっ、いいっすよ。返却されても謎の力で本が使い物にならなくなるだけなんで。

 というかまた知らないイベントですね……本の虫ことゼンノロブロイでもこんなイベントなかったんですけど。

 

 【ミホノブルボンの尻尾がバサバサと揺れている。とても嬉しそうだ】

 【ミホノブルボンの信頼度がかなり上がった!】

 

 へぇ……そんなイベントあったんだ(イベントを把握しきれてない走者のクズ)。普通は返却→〇〇の本は破れてしまった……で終わるんですけどね。

 たぶん発動はランダムでしょうけど、金スキル本限定なのかな?

 

 金スキル本を引くのが確率1%くらい。その中でも優秀なものを引き、その後のランダムイベントを引くというのは明らかに現実的ではありませんが、一応○ボタンを連打しつつメモしておきます。

 

 メモを終えるとはい、3月3週に来ました。長かったですね。プレイ時間からするとそうでもありませんが、パートが縦長、間延びした展開になってそうです(なけなしの競バ要素)。

 

 なのでここから巻いていきます。スプリングSに出走! 坂路! 坂路! 坂路!って感じで。

 

 早速スプリングSに出走し――――ました。もちろんスキップボタン3連打です。当たり前だよなぁ!?(ホモはせっかち)

 そしてレース後も坂路! 3月4週も坂路3回!したところで4月1週。体力も限界なので流石に休み坂路2本走らせて終了!

 

 そして練習後のここで、確定イベントが挟まります。なにせ来週はクラシック三冠ですからね。サイボーグウマ娘のミホノブルボンと言えども不安になって、その心の内を打ち明けて(激ウマギャグ)くるわけです。

 

 さぁこぉい! ほもくんが相談に乗ってやるぞ!

 

 【4月2週。今日はいよいよ皐月賞だ】

 【クラシック三冠。無茶だと言われながらもミホノブルボンが掲げた夢に挑む、その一歩目。朝練は身体を動かすだけにとどめて、少し早く中山に向かうことにした】

 

 ん? ん? ん?

 なんで? なんで? なんで? 起こすべきイベントが起こらないのはわかる。それはガバだから。

 ただ起こるべきイベントが起こらないのは何故なんですかね……ステータス評価が基準値を下回るか、信頼度30以上90未満で確定発生だって、チャートに書いてあるんですが……(直立不動の○ボタン連打)

 

 ステータスは基準値を超えていますが、信頼度は30〜90の枠に収まっているはずです。

 初詣イベントが起こるボーダーは60。つまり60は超えているはず。なのになぜイベントが起こらないのか。コレガワカラナイ。

 コンセントレーションの1%を引いたから、揺り戻しでイベントが起こらない1%を引いたとかでしょうか。まあ未だによくわかってないので、そういうことにしておきます。

 

 そしてなにやら話していますが、ここも○ボタンを連打。このゲームは基本的に上の選択肢が正解です。よって○ボタンを連打すれば、正解を選びつつ最速で駆け抜けることができます。

 

 《最も速いウマ娘が勝つと言われる皐月賞! 成長を見せつけるのは誰だ!》

 《3番人気はこの子、マチカネタンホイザ》

 《2番人気はこの子、ナリタタイセイ》

 《ファンの期待を一身に背負って、ここまで無敗ジュニア王者のウマ娘、ミホノブルボン。1番人気です》

 

 《今レースが――――》

 

 スタートするところで、今回はここまで。ご視聴、ありがとうございました。




次回はストーリーパートです(無慈悲なお預け)

123G兄貴、白野葵兄貴、水素の音の精霊兄貴、ペンタ兄貴、街泡星兄貴、みっくん兄貴、mitt兄貴、すず塩兄貴、ムーブ兄貴、アブリトレーナー兄貴、レンタカー兄貴、ほっか飯倉兄貴、パンダメント兄貴、aa兄貴、Hotateman兄貴、kinoppi兄貴、ベルク兄貴、メルヘン兄貴、八津崎兄貴、11兄貴、k@ins兄貴、N2兄貴、ESAS兄貴、棚町薫の妻兄貴、道遊庫塒兄貴、スクート兄貴、リアロテ兄貴、スパロボの民兄貴、拓摩兄貴、114514兄貴、Nazz兄貴、緒方兄貴、サガリギミー兄貴、ケティル兄貴、O-sam兄貴、たかたかた兄貴、石倉景理兄貴、ユウれい兄貴、ライセン兄貴、ヘイトリッド兄貴、星ノ瀬竜牙兄貴、ラプソディ兄貴、感想ありがとナス!


レンジャー提督兄貴、ナナシロキ兄貴、鹿尾菜兄貴、hoover兄貴、レッドナイト兄貴、闇夜に浮かぶ半月兄貴、にゃるおじさん兄貴、作者さん兄貴、シチョウ兄貴、ミカヤ兄貴、埋まる系グフ兄貴、街泡星兄貴、0141443兄貴、武理兄貴、小さな小さな百鬼夜行兄貴、ぽたのひと兄貴、まぶた兄貴、やまそう兄貴、水銀(Hg)兄貴、タスコ兄貴、ProtoA兄貴、ぐれぃ兄貴、猫に木天蓼兄貴、ねりまき兄貴、FROSTY=BLAKK兄貴、黒井Android兄貴、夜迷子ノエ兄貴、refresh兄貴、一般人のような一般人兄貴、すず塩兄貴、パンダメント兄貴、毒蛇兄貴、ケーナ兄貴、トラディ兄貴、六枝兄貴、くろぬこ兄貴、AwaKa_KS VZ 2020兄貴、ぱりぴろっぷ兄貴、うすい兄貴、eコップ兄貴、どんとこす兄貴、キーチ兄貴、~ナルカナ~兄貴、てりやきトトロ兄貴、阿寒湖兄貴、kuuchan兄貴、ぬこまんま兄貴、電子レンジ兄貴、88兄貴、gomaneko兄貴、百式機関短銃兄貴、河豚カスタム兄貴、まるーの兄貴、神祇兄貴、6-4-3の併殺兄貴、朱華兄貴、隣のAG/凍る天然水兄貴、ロボ戦極凌馬兄貴、つきのは兄貴、申し訳侍兄貴、メイビー兄貴、もちもちの実兄貴、喪分兄貴、ソリュー兄貴、推しにDVしたい兄貴、showu兄貴、Saboten@兄貴、ゆーり兄貴、草臥済兄貴、赤い白米兄貴、ゆっゆ兄貴、リアロテ兄貴、カイザレックス兄貴、空深兄貴、秋針兄貴、ユユユsummerG兄貴、Dankje兄貴、TS大好き兄貴、ヤンデレハーレム好き兄貴、sigure4539兄貴、世繋兄貴、ユウれい兄貴、mig21兄貴、マイテン兄貴、CARA兄貴、2ページ兄貴、ライセン兄貴、餅パン兄貴、ー鏡花ー兄貴、ZapGun兄貴、鰻のぼり兄貴、評価ありがとナス!


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サイドストーリー:過去と未来と

 出遅れというアクシデントが発生したメイクデビューを終えて。それでもなおというべきか、マイル路線を目指すべきだという声はやまなかった。

 

「マイル戦は目指さないのですか?」

 

「あくまで目標はクラシック三冠であると、そうお伝えしたはずですが」

 

 実に彼らしい、にべもない返答だった。

 言っただろう。2度同じことを言わせるなということを隠しもしない、圧倒的な断定。

 

 こういう冷厳とした態度を取るときの彼は、正直に言って怖い。整い過ぎるほどに整った顔立ちから表情が退去すると、その美しさが反転して恐怖に変わる。

 

 自分の表情の乏しさを無意識のうちに棚に上げて、ミホノブルボンはぼけーっとそんなことを思っていた。

 

(とはいえ)

 

 この記者がそういう問いを投げた理由を、ブルボンとしてはわからないでもなかった。 

 

 中距離・長距離戦ならば大差勝ちするというのはままあり得るが、マイル戦で大差勝ちするというのは、あまりない。

 実力の差というものは一秒毎に積み重なっていくものであり、長ければ長いほどその積み上がりは高くなるものだからだ。

 

 その積み上がりが結果的に、大差勝ちに繋がる。しかしマイル戦は距離が短く、必然的に積み重ねていくための時間が短い。

 しかも思っきり出遅れてなおの、大差勝ちなのだ。やはりマイルでと思われても、そこまでおかしいことではない。

 

「ミホノブルボンは明らかにスプリンターです。クラシック三冠を目指す理由は?」

 

 その質問を受けて、ブルボンはやや耳を傾けながら一歩前へ出た。

 

 それは私が無理を押し通したからだと、そう言うつもりだったのである。自分のわがままのせいで――――別にそれだけ、というわけではないが――――彼への風当たりが強くなっていることを、ブルボンは明敏に感じていた。

 

 マスターは、私の夢を尊重してくれただけです。目標も、夢も、練習も、それはすべて私が望んだことです。

 そんな声が喉まで出かかった瞬間、鋼鉄の瞳と視線が合った。

 

「当人との相談の末そう決めました。既に目標に向けて進行中であり、目的の変更はありえません」

 

 その後の質問も1つを除いて友好的とは言い難いものだったが、彼はそれに淡々と答えていく。

 数分の後に囲み取材が終わったあと。先程発言を押し止めた眼差しが再び、ブルボンの方を向いた。

 

「よく俺の意図を察したな」

 

 なにも言うな。

 眼差しや目の色からそういうものを読み取って、ミホノブルボンは口を閉ざした。

 

 彼女は極めて従順な気質をしたウマ娘である。小さな頃から他者のリクエストを受けてから行動を起こすタイプであったし、それは今も変わらない。

 腹筋をしろと言われたら、具体的な数値を指定されなければ『やめろ』と言われたり、次の指示が下されるまでやる。痛かろうが何しようが、やり抜く。

 

 そういう愚直なまでの従順さは間違いなく長所だったが、同時に自発的な行動に欠けるという短所でもあった。

 

 そんな彼女が自発的に、それも他人に向けられた質問に対して解答・発言しようなどと思うのは極めて珍しいことである。

 そのことは彼女自身すらも、理解していない。この場を見て瞬時に珍しさに気付けるのは、おそらくは彼女のトレーナーと父だけだった。

 

「はい。目の色、眼差しから分析。ステータス『牽制』と判断しました。ですが……」

 

 ですが、なんだろう。

 ミホノブルボンは、自分で言っておきながらそう思った。ですが、なんなのか。口をついてでてきた言葉を飲み込むことは、できない。

 だがなぜ『ですが』と言ってしまったのか、彼女にはわからなかった。

 

(マスターの指示に従う。私は、そう誓ったはず)

 

 夢を肯定してくれた、あの時から。

 夢を見るだけだった三冠への道筋を立ててくれた、あの時から。

 

 自分の中に発生した明確なエラーを分析にかかっても、なにもわからない。

 なぜ、言ったのか。なんのために、言ったのか。

 

 思考の袋小路に陥ってしまった彼女を見かねたように、エラーの原因が口を開いた。

 

「なぜ自分が短距離路線やマイル路線に進めと言われているか、わかるか?」

 

「……それは私の脚質が瞬発力に優れ、持久力に欠けた性質を有しているからです。一般的にこういった性質を持つウマ娘は、マイル・短距離路線に進むことが多いため、一般論に当てはめられてそう言っていると、そう思考します」

 

「そうだ。つまり君は自分の志望先とはまた違った方向への能力の高さを証明したからこそ、望まぬ道へ進むことを勧められている」

 

 その通りだと、ミホノブルボンは首肯した。

 自分の能力と、夢が絶望的にマッチしていない。そのことはトレセン学園に来る前から、父とトレーニングを積んでいたあの時からわかりきっていたことである。

 

 しかし向いていないからと言って、諦めたくはない。

 彼女の思考はいつもここで止まっていた。

 

「君の能力はマイル・短距離に向いている。その事実を踏まえて、君がすべきことはなにか。わかるか?」

 

 他の人が言うならば、ブルボンは『つまり諦めろということか』と思っていただろう。

 だが問いかけたのは、二人しかいない夢の後援者、その内の一人である。

 

「……諦めろということではない、ということはわかります」

 

「当たり前だ。トレーナーというものは夢への舗装者であって、夢に引導を渡す役割では断じてない。諦めるというのはいつだって、ウマ娘側から自発的に行われるものなのだ」

 

 わかりません。

 そう言えば会話が進むことはわかっていたが、ブルボンはわからないとは言いたくなかった。

 

「……まあ、わからないなら教えよう。それはつまり、マイル・短距離路線よりも中距離・長距離に適性があると証明することだ」

 

 それはなんというか、あまりにも単純で力押しの解決法だった。

 しかし思い返してみれば、彼の思考はいつものそれと変わらない。

 

 スタミナがないから中距離が無理と言われればスタミナを付けさせる。コロンブスが卵を立たせるために先っぽを潰してみせたような、最短距離をぶっちぎるような力技を彼は好む。

 

「そして教えておいてやろう。なぜ俺が記者やら同僚からとやかく言われても気にしないのか。それは、君ならば三冠を取れるからだ。

そんなこともわからないバ鹿の戯言を相手にするのは時間の無駄でしかないし、わからんやつはわからないままでいい」

 

「マスターはおっしゃいました。出るレースのレコードタイムを上回れば、負けることはないと。しかし私の未熟さ故に、皐月賞2000メートルのレコードタイムを上回ったことがありません」

 

 レコードタイムを出せるだけの練習はしてきたし、出せるだけの指導は受けてきた。

 

 まだ実際のレースで中距離を走ったことがないミホノブルボンではあるが、確信を持って断言できる。

 彼の組み立てたトレーニングによって得られた力を存分に活かせれば、自分の未熟さという不確定要素――――出遅れであるとか――――がなければ、既にレコードタイムを出せてもおかしくはないのだと。

 

 2000メートルも走り切れなかった短距離専門ウマ娘が、今や皐月賞2000メートルのレコードに手をかけるところまで来ている。

 それも何年という単位で行われたトレーニングによる結果ではない。

 

(だから、マスターは正しい)

 

 夢に向けて具体的に走り出したのは、たった1年前のことである。それははっきり言えば、異常な成果だと言えた。

 その異常さを生んだのは、やはり練習量の異常さだろう。普通のウマ娘なら2桁は故障してもおかしくはない――――そしてたぶん、怪我をする前に逃げてしまうであろう量の練習を、ミホノブルボンはこなしている。

 

 その間に、彼女は何を得たのか。

 

 走りながらラップタイムを意識し、走っていないときもストップウォッチを使って訓練を続けることで狂いのない体内時計を得た。

 

 スプリンターとしての天稟を更に活かし、スタートに遅れても即座に差し返せるほどの速度を得た。

 

 そして並行してスタミナを増強することに成功した。

 今や彼女はトレセン学園に作られた坂路600メートルを息もつかないで5周するという地獄のようなメニューを、朝昼夜で計9本行えるようになった。

 

 元々の頑丈さを最大に活かせるメニューを組み、それにあぐらをかいてクールダウンに手を抜くこともない。

 体力と疲労を正確に把握し、一歩、また一歩と限界の壁を押し退けていく。彼女がやってきたのは、そういうトレーニングである。

 

 農夫のように、ひたすら限界の畝を耕していく。その一方で猟師のように獲物を仕留めてどうこうという博打的で、天才的な飛躍はない。

 

(このままでは届かない、と考えているわけか)

 

 トレーナーは、そう受け取った。

 

 ミホノブルボンを支えているのは努力に裏打ちされた自信と、自分の指導者への信頼である。

 

 それはひとえに、勝つべきことをやってきたという事実。自分の意志で苦難を乗り越え、貫徹してきたという事実。

 そして2つ目は、自分の指導者を信じ抜いていること。過酷なトレーニングに愚直なまでに従っている姿こそ、その表れだ。

 

(だが、それだけでは三冠は取れん)

 

 ミホノブルボンは弱音を吐かない。

 ミホノブルボンは文句を言わない。

 

 その精神性を、トレーナーは素直に尊敬している。本人の前では口にこそ出さないが、何度も『よくぞここまで』と感嘆すらしていた。

 

 だがその精神的な強さがほんの少しの歪さを発生させていることを、トレーナーはこのとき知った。

 たぶんそれを、ミホノブルボンは自覚していない。

 

(努力を信じることもいい。それは積み重ねてきた過去を信じることだから。指導者を信じることもいいだろう。それは未来を信じることだから。だがこいつは、現在を信じるための材料を持たない)

 

 過去の自分と未来の自分を信じているが、肝心な今の自分に対して自信が持てていない。

 

 ターフに立って走るのは、今のミホノブルボンであって過去の彼女ではない。無論、トレーナーでもない。

 

(早めに気づいてよかったと思うべきだろうな)

 

 過去を信じなければ立つことはできない。人は、過去に支えられて立つ生き物だから。

 未来を信じなければ進むことはできない。人は、夢を見なければ生きていけない生き物だから。

 

 だが現在を信じなければ、これら2つがはっきりとしたビジョンをしていても無駄だと言える。

 現在を信じるということは、過去と未来を正確に繋げるということなのだ。彼女の場合、積み重ねてきた過去と輝かしい未来をつなぐ現在という道が、それらの重みに耐えかねて陥没しかかっている。

 

「君もそろそろ、自分の実力を知ってもいい頃だ」

 

 意味有りげにそう言われたあと、ブルボンはひたすら坂路練習に打ち込んだ。

 しかし、満足のいく結果は出なかった。安定的に叩き出せるラップタイムは皐月賞のレコードタイムのそれから下回る。

 

 久しぶりに、芝の上を走った。懐かしさすら感じる走り心地だったが、だからこそ戸惑い、スタートに遅れた。

 一応、前日に芝を走らせてもらったのだ。これまでずっと土の坂路を走っていたからと。

 

 だからこそ、言い訳にもならないことだとブルボンは自分を責めている。

 かつての自分ならば最後に息が切れていたであろう1600メートルは酷く短く感じたし、簡単に走り切ることができた。その達成感よりも、スタートに遅れたという悔いの方が重い。

 

 だがそれでも、ミホノブルボンは自分の実力を疑ってはいなかった。

 

 マスターができると言ったら、できる。それだけのことはやってきた。

 そして積み重ねてきた『それだけのこと』は、マスターの計画が未来に繋げてくれる。

 

 その信頼は、即座に証明された。

 朝日杯FS。GⅠという最高の舞台で、ミホノブルボンはなんの危なげもなく勝ち切った。

 

 良くもなく悪くもない、しかしやや不安定なスタートを決めて、その後は圧倒的なエンジンの差で差を広げて勝つ。

 

(これは、当たり前なことです)

 

 勝っても喜びよりもそんな感想が出てくる程度には、過去を信じていた。己のマスターが予め提示してくれた通りに進む未来も、信じていた。

 

「次のホープフルステークスに出ることが決まった」

 

 だからこそ、ひどく他人事な口調で告げられた『次』が唐突に描かれたとき、ミホノブルボンは動揺した。

 

 過去の積み重ねによって得られたのは、あくまでもマイル戦における栄光であって、中距離における栄光ではない。

 そしてホープフルステークスに出るという予定はなかった。これまでの未来図になかった。

 

 中距離に向けての練習は3月の終わりを持って完結するはずだった。だが今は、12月の末。当然中距離に挑むための準備は万全ではなく、努力の積み上げも不充分である。

 

 これはトレーナーが立てた未来図にないレースである。他人事な言い方からも、今の今まで教えてくれなかったことからも、唐突に決まった――――あるいは、決めた――――ことが窺える。

 

 この時点でミホノブルボンは、過去による自信と未来への自信がなくなった。

 ホープフルステークスがどうというより、中距離はまだ早い。そんな感覚があったのである。

 

「中距離に向けてはまだ早い。そしてホープフルステークスは予定外のレースだ。対策も取れていない。だが、今の君ならば必ず勝てると踏んだ。だから受けた。その力を証明してくれ」

 

 ――――君は今の自分にこそ、自信を持つべきだ

 

 そう言われて迎えた、ホープフルステークス。

 このとき初めて、ミホノブルボンは本当の意味でレースに向かうことの難しさを知ることになる。

 

 過去の積み重ねは言っている。まだ早いと。

 未来に描かれるべき光景は言っている。そんな予定はないと。

 

 最も信頼を置く存在である彼女のマスターは、ご丁寧に過去と未来を起因とする自信を潰したあとに、言った。

 

 それでも君ならば、必ず勝てると。

 

 確たる証拠を持つ無機物はすべて、中距離は無理だと告げていた。

 自分の勝利を信じているのは『俺の信頼には根拠がない』と断言したマスターと、自分自身。

 

 今の彼女にできることは現在の己を使って信頼に応えることのみである。

 今や何も、彼女の勝利を保証しない。

 

 だがこの苦難を乗り越えてこそ三冠を得られるのだと、ミホノブルボンのトレーナーは考えていた。




123G兄貴、津烏ヨハネ兄貴、murakumo5641兄貴、ガンバスター兄貴、多以良兄貴、リリィちゃん兄貴、アキ兄貴、オルダム兄貴、作者さん兄貴、ババンバンバ京都兄貴、乱読する鳩兄貴、石倉景理兄貴、N2兄貴、五穀米兎、イクバール兄貴、ノッカー兄貴、娘役兄貴、kinoppi兄貴、鹿尾菜兄貴、スクート兄貴、課金は負けだと思ってる兄貴、酔漢兄貴、例の兄貴兄貴、拓摩兄貴、ストライクノワール兄貴、ラプソディ兄貴、114514兄貴、レンタカー兄貴、白野葵兄貴、ビッグベアー兄貴、タマゴタケ兄貴、rigu兄貴、無兄貴、Nazz兄貴、卵掛けられた兄貴、ハムred兄貴、山猫部隊兄貴、ケティル兄貴、ほっか飯倉兄貴、RAYA兄貴、主犯兄貴、たかたかた兄貴、一般通過お兄様兄貴、梅山葵兄貴、睦月スバル兄貴、アドミラルY兄貴、サガリギミー兄貴、化猫屋敷兄貴、通りすがりのRTA読者兄貴、いちご酒兄貴、ころに兄貴、JORGE兄貴、ESAS兄貴、Carudera兄貴、レギ兄貴、朱ザク兄貴、緒方兄貴、ガリガリ君コーラ味兄貴、fumo666兄貴、イヌキ兄貴、ユユクロ兄貴、おるか人兄貴、ライセン兄貴、終焉齎す王兄貴姉貴、O-sam兄貴、アイルリッヒ兄貴、テル兄貴、推しにDVしたい兄貴、霊帝兄貴、星ノ瀬竜牙兄貴、ヘビビンガー兄貴、いっぱんぴーぽー兄貴、感想ありがとナス!

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サイドストーリー:だから宇宙を征く

 パドックで虚空を見つめて微動だにしないミホノブルボン、賑やかな観客に手を振るマチカネタンホイザ。ライスシャワーは明らかに本調子でないミホノブルボンの方を、心配そうに見つめている。

 そんな光景を見て、ライスシャワーのトレーナーは口を開いた。

 

「おい、参謀。ホープフルには出ないって言ってなかったか?」

 

「出ると言っていなかっただけだ。勘違いを起こすなよ、将軍」

 

 かつて同じチーム――――リギルに所属していたときの渾名をあてつけのように言い合う両者は、腐れ縁というべき関係である。

 必然的に、互いの担当するウマ娘の様子もチェックし合っている。

 

「というか大丈夫なのか、ミホノブルボンは。あいつ……」

 

 どう見たって、本調子ではない。

 そんなことを言いかけて、ライスシャワーのトレーナーは口をつぐんだ。

 

「俺が見誤ると思うか?」

 

「いや……」

 

 あいつは目がいい。

 

 最強チームたるリギルを束ねるトレーナー――――おハナさんのもとで、同期として共に励んだ。その上で得た結論がこれだった。

 

 調子の見極め、体力の見極め、何を考えているのか、何を思うのか、何を望むのか。

 ひと目見れば即座に、ウマ娘たちが内に秘めたそれらがわかるのではないかと思ってしまうほどに、それらの洞察眼に優れている。

 

 だからリギルでのサブトレーナー時代のミホノブルボンのトレーナーは、ずっとおハナさんの副官をやっていた。

 固定の担当を持たず、巡回・洞察して疑問点や不満点、練習の改善案をまとめ、次のレースに出走するウマ娘の情報を分析した上で意見する。おハナさんはその意見に耳を傾け、伝わりやすいように改変して個別に伝えていく。

 

 そして現場には自分が立ち、モチベーターとして指示通りの指導・おハナさんがいない時の代理を行う。

 

 交渉・統率役を果たす君主タイプのおハナさん、指揮官兼モチベーター役を果たす将軍タイプの自分、練習メニューの作成・食事管理・敵の分析をこなす参謀役のあいつ。

 あのときのリギルは、その3頭体制で王朝を築いたのだ。一強状態を危惧したURAによって6年で解体させられた、それほどのチームだった。

 

 そのおかげと言ったら何だが、二人は早々に独立したトレーナーとして認められ、今に至るわけである。

 

(あまりにも歯に衣着せぬ言動は賛否あったが……)

 

 不調気味だったグラスワンダーに対して、ぬっとやってきてひと目見て、『1.2キロ肥えたな。食べるのを控えて寝るのをやめて動け。つまり痩せろということだ』などと直球を投げ込むのはあいつくらいなものだろうと、しみじみ思う。

 

 そのあと『言っていることの正しさは認めますが、もう少し伝え方を……』と言われて『1.246キロ肥えた。これでいいか?』と言っていたときは殺されるのではないかと思った。

 

 だがそれでもうまくやっていたのは、やはりウマ娘たちの思いを無視すべきときは無視し、汲み取るべきときは汲み取っていたからなのだろう。

 

 現に、日本ダービーにグラスワンダーやエルコンドルパサーが出れないということになったときなど、まるで学生運動の指導者のような暴れっぷりだった。

 

 ――――誠実に、正当に夢を追ってきたものの道が不当に絶たれることを許していいのか。

 

 構想を持ち込んで協力を頼めば、そんな一言からはじまる大演説の原稿を書き上げてきたのだ。

 

 実行者たる自分は用意されたそれを大仰に読んで、トレセン学園の生徒を巻き込む。

 シンボリルドルフなどが率先して全面的な協力を約束してくれたことで、URAの外国人枠騒動は燎原の火の如き広がりを見せた。

 その後はレース後の署名などの地道な作業と理事長を通したURA上層部への働きかけなどの大技小技を駆使して、URAにルールの変更を呑ませることに成功。

 

 結果として実行者と計画者の二人は揃って謹慎を喰らわせられたものの、それは半月ほどで解除された。

 実際のところURAも外国人枠の撤廃は時期を見計らっていたようであり、謹慎もほぼ形式的なものでしかなかったのだ。

 

 そんなこともあり、未だになんとなくの借りというか、恩がある。

 そして、この怜悧・冷淡・冷静の三拍子が実のところは相当な激情家で、担当ですらないウマ娘の夢のために自分の進退を賭けられる男であることを知っている。だからこそ、日々のつれない態度にもめげずに友達付き合いをしようとしてきたわけである。

 

(まあこいつは、恩だなんだなどとは考えていないんだろうな)

 

 謹慎が明けたあと、ありがとうと言った。外国人枠の撤廃は、俺一人ではできなかったと。

 確かにあと数年で廃止されていたかもしれないが、今できなければグラスワンダーもエルコンドルパサーも夢を見ることすらできなかった、と。恩はいずれ返すとも、そう言った。

 

『俺は人を動かすことができない。お前は人を動かす術を知らない。つまり、利害が一致しただけだ』

 

 人格が変わったのかと思うほどの平熱の解答に戸惑ったものの、ライスシャワーのトレーナーの戸惑いは次の一言で消えた。

 

『今回は、矢面に立たせてしまって悪かった。適材適所もいいが、理屈を抜きにして矢面に立たなければならないこともあるらしい』

 

 ああこいつ、不器用なんだ。

 

 仕事もできるし、仕事以外のことも大いにできる。だが基本的に、器用ではない。

 そんなことを思いつつ、『気にするな』と声をかけた。その後は自分たちが巻き起こした運動の後処理に追われていたから話すような機会もなかったが、こうして今機会を得ても、特に話すことがあるわけでもない。

 

(喋らないでいい関係ってのもあんのかもな)

 

 黙り込み、ひたすらにパドックを見ている男は、コミュニケーションに長けたライスシャワーのトレーナーにとっても、見たことのなかったタイプである。

 

「思考に耽るのもいいが」

 

 相変わらずの、平熱の声がした。

 

「ちゃんと走るところを見てやれ。俺たちには、それくらいしかできないのだからな」

 

 お前のことだからやるべきことはやってきたのだろうが、それでも見てやることは大切だ。

 

 そういう怜悧・冷淡・冷静な男は、夢のためにすべてをかけるウマ娘への、静かな敬意に満ちていた。

 

 

 ファンファーレが鳴る。

 実況が、待ってましたとばかりに口を開く。

 

 《誰をも魅了し心を奪う、希望の星が誕生する! ホープフルステークス!》

 《3番人気はこの子、ライスシャワー》

 《2番人気はこの子、スーツアクター》

 《1番人気はこの子、マチカネタンホイザ》

 《ここまで2戦2勝、ジュニア王者のウマ娘、ミホノブルボン。4番人気です》

 

 《三冠挑戦を明言しているミホノブルボン。挑むであろう皐月と同じ舞台で、距離の壁を超えられるかが注目です》

 

 

 新人たちが抱く来季への夢を乗せた、ホープフルステークスがはじまった。

 

 

 1番人気のマチカネタンホイザは、皐月賞のために朝日杯FSに続いてホープフルステークスに臨んでいる。

 

 2番人気のスーツアクターはメイクデビューでマイルに出走。ミホノブルボンの前に差し切られて敗れたが、その粘り強さを買われて中距離に転向。本来の持ち味が生きはじめ、クラシック路線の有望株になりつつあった。

 

 3番人気はライスシャワー。将来を嘱望された生粋のステイヤー。

 しかしレースへの出走拒否、直前でのキャンセルなどが祟り、ややウマ娘としてのメンタルを持っているのかと疑われているが、新しいトレーナーと組んでから持ち直しつつあるということで、3番人気に食い込んだ。

 

 ミホノブルボンは圧倒的なトップスピードと正確無比なラップタイムを兼ね揃えたスプリンターである。彼女が長い距離を走れればホープフルステークスでも勝てるだろうと、評論家たちはそう言っている。

 だが実のところ、2000メートルを走り切れると自信を持って断言する評論家はいない。精々が、『走り切れたら入賞は固い』という程度である。

 

 なにせ、彼女自身にすら時期尚早だという感じがあるのだ。自分に自信がないものが、他者を信じさせられるわけもない。

 

(練習が足りていない。計画に載っているレースでもない)

 

 これまで自信の源泉になってきた過去と未来は沈黙している。

 ちらりと、虚空を彷徨わせていた視線を揺らす。その先には、もはや何もやることはないとばかりに腕を組んであぐらをかいて膝を立てた彼女のマスターがいた。

 

 

 ――――君は今の自分にこそ、自信を持つべきだ

 

 

 朝日杯FSが終わったあと、そう言われた。

 自信なら、あった。積み重ねてきたものを振り返り安心し、未来を見て希望を抱く。過去と未来に支えられ、確かにあのときの自分は自信に満ち溢れていた。

 それは、今の自分に対しての自信ではないのか。過去に支えられ、未来を見据えた自分を見て自信を抱く。それは今の自分に対しての自信とは、言えないのか。

 

 少なくとも、マスターはそう考えてはいないのだろうと、ミホノブルボンは思っている。

 ならばそうだろうと、彼女は思った。今の自分は、自信というものを持てていない。

 

 誰からも、無理だと言われた。それが正しい理屈だという認識くらい、自分でもわかる。

 だからこそ、無理だからこそ、無理だと言わない人が描いた未来図を信じた。これまでやってきた努力を信じた。

 

 それ以外に、何を信じろというのか。

 無理を覆そうとするならば、努力するしかない。その努力を信じて、努力の向かう先を信じる。そうして今まで、駆けてきた。

 

 ――――周りをよく見て、走ってこい

 

 パドックに入るための誘導を受ける直前に、彼女はマスターにそんなことを言われた。

 視界を広く持てとは、言われたことがある。それは現在走るターフの状態を知るためであったり、周囲を走るウマ娘の様子を探るためでもある。

 

 だがそういう技術的なものではないような、そんな助言だった。少なくとも今までのマスターならば、具体的にどこを気にしろ、ということを細やかに指示する。

 

 何をすればいいのか、わからない。

 

 そんな混線する思考の盲を開くように、ゲートが開く。開きはじめから開き切るまでの僅かな時間を縫うように、ミホノブルボンは駆け出した。

 

《ミホノブルボン、真っ先に飛び出した!》

 

《差しでいくのかという噂もありましたが、いつもと変わらず逃げを打つようですね》

 

 ミホノブルボンにはわからない。自分が今、何を求められているのか。

 だが、負けは求められていない。それだけはわかる。今の、未熟な自分で勝つことを求められている。それくらいは、わかる。

 

 彼女の前を遮る者は誰も居ない。心の動揺とは関係なく、これまで積み重ねてきたものがミホノブルボンの身体を動かしていた。

 

 体内時計も、正確に時を刻む。脚も、常と変わらず快調に回る。

 心理的にはともかく、肉体的には絶好調だと言っていい。

 

 何をすればいいのか。

 400メートルを、800メートルを、1200メートルを、1600メートルを、ミホノブルボンは先陣切って駆け抜けた。

 

 追従する者は、僅かに居た。だが殆どが、そのスタミナを燃やし尽くすような、マイル戦の如き破滅的な速度に追従することを控えている。

 

 レースというものに造詣が深い、だれもが思った。あのペースでは続かない。つまり、いずれ速度が落ちてくる。なので下手に追従してペースを乱すことなくレースを進み、ミホノブルボンが落ちてきたときに差し切るための、脚を溜めるべきだと。

 

(スパートを)

 

 マイルの限度である1800メートルを超え、肺が痛むが脚は動く。

 無理だと言われて、無茶だと言われて、無謀だと言われて、それでもマイルの壁は、今超えた。

 

 1600メートルを超えた時点で後方で集団が仕掛けてきたのは、知っている。だがそれでも、彼女は無茶なスパートをかけなかった。

 

(スパートは……)

 

 千々に乱れた心が、収まっていく。ほつれた糸が組み合わさり、ズレた歯車が再び噛み合う。

 

 なぜ、スパートを掛けないのか。ここまで来たら、逃げ切りたい。一刻でも、一分でも、一秒でも早く。スパートをかけて、逃げ切ってしまいたい。

 

(スパートは、かけない。私のレースは――――)

 

 時を刻む。ただひたすらに、ただ愚直に。坂路を走るだけのあのときのように。勝てるための時間を刻み続ける。刻んだ時間の中で、走るべき距離を走り切る。

 

 それは、孤独なレースだった。相手に合わせるだとか、展開に合わせるだとか、そういうことをしない。ひたすらに、自分を信じる。信じ抜く。

 

 体内時計が、時を正確に刻めていることを。

 脚が、刻んだときの間を駆け抜けていることを。

 そしてなにより、今の自分がそれを実行するに足る能力があるということを。

 

 

 ――――君は今の自分にこそ、自信を持つべきだ

 

 

 マスターは、そう言った。

 そうだ。過去できたからと言って、今できるとは限らない。未来図が描かれているからと言って、正しく進めるとも限らない。

 

 だから、信じなければならないのだ。過去を糧にし未来を見る、今走っている自分自身を。

 

 

 そのことを理解したとき、世界が切り離される音がした。

 暗く、目指すべきゴール板があった地点には瞬く星。後ろを振り返れば、もはや物理的に差し切れないほどの遥か後ろに、多くの星が瞬いている。

 

 暗く、光る星でしか位置を知り得ない宇宙(そら)の闇の中を、ミホノブルボンは駆けていた。

 無音で、見るべき景色もない。ただひたすらに向かうべき星を目指して、数多の星を置き去りにしてでも闇を駆ける。

 

 誰が何をしようとも、関係ない。築き上げた自己を信じ抜くとは、こういうことなのだ。

 

 暗さを抜けて、ミホノブルボンはあまりの明るさに目を閉じた。

 電光掲示板には、ぽつんと一人の名前が刻まれている。

 

 大歓声が空を突き、反響しかかった音が帰ってきたときにようやく、二番目・三番目の名前が刻まれた。

 

《1:59:7! レコード! レコードです! ミホノブルボン圧勝ォォオ! 最初から最後まで、減速なしのノンストップ! 影すら踏ませませんでした!》

 

 中山芝2000メートル。彼女にとっては、無理、無茶、無謀の代名詞。

 確かに無茶ではあったし、無謀でもあった。

 

 だけど無理ではなかったと、ミホノブルボンは虚空を見つめながらそう思った。




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サイドストーリー:エラーコード54

 観客の大歓声は、ミホノブルボン一人に向けられていた。

 逃げというのは本来、リードを守るということに重きをおいた戦法である。誰にも邪魔されない序盤に全力を絞り出し、本来勝負をかけるべき終盤にはヘロヘロになりながらもなんとか序盤のリードを守り切る。それが逃げというものだった。

 

 それは決して、器用な戦い方ではない。逃げというものはつまり、ストレートしか投げられないピッチャーのようなものなのだ。

 先行、差し、追い込み。それらには投げるコースを決めたり、どの変化球を投げるかといったような駆け引きがある。

 いつ仕掛けるか、どう仕掛けるか。そう言った楽しみがある。

 

 だが逃げはそうではない。ストレートしか投げない。とんでもなく威力のあるストレートを、1回から9回までひたすら投げ続ける。ひたすら、ド真ん中に投げ続ける。

 スタミナが切れて速度が落ち、球威が落ちたら終わり。あとはボコボコに打たれながら、それまでとったリードが守られることを祈りながら投げるしかない。

 

 ある一部の例外は逃げながら脚を溜めて差しに行くという意味のわからない走りをできたものもいたが、それはあくまでもたった1つの例外でしかない。

 逃げウマ娘は、たいてい終盤はスタミナが切れ、ボコボコにされてバ群に沈む。

 しかし、ミホノブルボンは違った。初っ端から全力で駆け出し――――観客たちには、少なくともそう見えていた――――ただの一度も緩めることなく力で押し切る。

 

 例えるならば、ずーっとひたすら愚直に158キロを投げる。1回から9回まで、ひたすらスピンの効いた158キロを投げる。ただそれだけ。

 

 そしてそのあまりにも圧倒的なパワープレイは、駆け引きというものに慣れ始めていた観客たちの心を掴んだ。

 

 ミホノブルボンは勝ったあともペースを守って200メートルほど走り続け、しばらくしてからようやく速度を徐々に落としはじめた。

 ウマ娘たちがよくやる、勝った後のポーズ――――腕を上げたり、手を振ったり――――もしなかった。虚無的な無表情で虚空を見ながらゆっくりと走っていた、ただそれだけ。

 

 あまりにもあんまりな無愛想さ・無関心さ(本人としては無視というより、集中のし過ぎで単純に目にも耳にも入っていなかっただけなのだが)すらも、観客たちは喜んだ。

 

 こういうのが居てもいい。

 

 ブルボン機械説などというもっともな説を面白おかしく議論し合いながらも、観客たちは新たなスターの誕生を喜んだ。

 超えられない壁を超えた、ちょっと機械的なスターが製造されたことを祝福した。

 

 そして敗けたウマ娘のトレーナーですら、その圧巻の走りには感嘆の声を漏らさずには居られなかった。それほど完璧で、次元の違う走りだったのである。

 

「ぶっちぎりのレコードじゃねえか!」

 

 ライスシャワーのトレーナーはあまりにも圧倒的な走りを見て、次いで表示されたタイムを見て、悔しさを通り越したそんな声が出た。

 それに反して隣の怜悧冷徹冷静三兄弟をその身に宿した男は、実につれない顔をしている。

 

「そうだな」

 

「……お前さ。もっと喜びを面に出したらどうだ?」

 

「別に取り立てて喜ぶほどのことでもない」

 

「ミホノブルボンはそれだけのことをしてきたし、できるだけの実力があった。さも意外とでも言うように大仰に祝福することは、却って彼女にとって失礼だ、ってか?」

 

「そうだ」

 

「それを言えよ、お前。また誤解されかねんぞ」

 

「……考慮しよう」

 

 そう言い残して、席を立つ。

 どこか浮ついたような、そんな歩き方で観戦席から下り、関係者専用の通路を通って控え室に向かう。

 

「マスター。ご報告があります」

 

 圧倒的な勝利を果たしたミホノブルボンが、わずかな喜色すら浮かべずにそこにいた。

 

「そうか。俺も君に対して、色々と言わなければならないことがある」

 

「よろしいのですか?」

 

 私から言っても。

 言葉にしなかった部分を正確に読み取り、彼女のトレーナーは頷いた。

 

「オーダーコンプリート。一着、達成しました。中山芝2000メートルは皐月賞と同じ条件。これよりさらに磨きをかけ、勝利をより確実なものとします」

 

「君の実力と長所が充分に出た、いい走りだった」

 

「はい」

 

 少し、ミホノブルボンの表情が崩れた。

 褒めると言うにはあまりにも無機質な言葉だが、それこそが彼なりの信頼の証だということを知っている。

 

「そして、もうひとつ。私はマスターが下されたもう一つのオーダー、『自分を信じる』を充分に理解せず、レースに臨みました。途中で理解・分析に成功。自分なりの答えを出せたものの、十全な答えを用意する前にレースに望んだ時点で、マスターの期待に応えられたとは思えません。申し訳ありませんでした」

 

「そう、そのことだ」

 

 ミホノブルボンは、少し身を強張らせた。

 見捨てられることはないだろうと、信じている。願っている。祈っている。だがもしそうなればと考えたことがないと言えば、嘘になる。

 

 今が夢かもしれないと、朝起きたら彼が居なくなっていて、夢を擁護してくれる人がまた、お父さん一人だけのあのときに戻る。そんなことが起こるかもしれないと思ったことがないと言えば、嘘になる。

 

「俺は君の三冠の夢を応援すると言ったし、実行するための計画を立ててきた。だがどうしても、そのために乗り越えなければならないことがあった」

 

「私に対して、過去でもなく未来でもない今に自信を持たせる、ということでしょうか」

 

「そうだ。俺にできるのは過去を積み上げていき、未来を進むための推進力にすること。そして進む先の未来をより鮮明に描き、魅力的なものにすること。それだけだった」

 

 すまなかった、と。

 なんの迷いもなく、ミホノブルボンのトレーナーは頭を下げた。

 

「俺には――――君が何の寄る辺もない状態で、今の自分しか信じられない状態で走らせる以外の解決策が見い出せなかった。思いつかなかった。これは俺の指導力不足であり、怠慢だ。結果的に君は精神的な不安定さの中でレースに臨まねばならなかったし、結果によっては二冠すら危うくなるところだった。

もしかしたら今に対しての自信がなくとも、君は三冠ウマ娘になれていたかもしれない。だが俺は、君の選手生命をチップにしてこのホープフルステークスを勝つことに賭けた。これは、トレーナー失格だ」

 

 すまなかった、と。もう一度繰り返す彼に向けて、ミホノブルボンは口を開いた。

 

「マスターは……私の指導を、もうしてくださらない、ということでしょうか」

 

「君が許すなら、指導は続けたいとは思っている。だが、許しを乞うつもりはない。今の君ならば引く手あまただろうし、自分の夢を危機に晒したトレーナーとそれらを吟味し、その上で――――」

 

「マスター」

 

 夢を危機に晒した、と。この人はそう言った。だが、輪郭だけの夢は危機に晒されようがない。

 危機に晒されるのは、実体があるからだ。では実体があるのは、なぜか。実体を持たせてくれたのは、誰か。

 

 そんな理屈が頭をよぎって、消える。自分でも驚くほどに、ミホノブルボンは焦っていた。

 

「私の夢は、マスターと共にあります。お父さんと描いた輪郭を実体にしてくださったのは、マスターです。私のマスターは、貴方です。貴方だけが、私のマスターです」

 

 未だかつてこれほどまでに長い言葉を喋っているミホノブルボンを見たことがない。

 下げた頭を少し上げて見て、トレーナーは少し驚いた。

 

「今回マスターが投機的な解決策に出ざるを得なくなった原因を作った私こそが、謝るべきです。申し訳ありません」

 

「いや、君は悪くない。悪いのは俺だ」

 

 いつも通りの断定形に、彼女は少し安堵する。

 少なくとも謝っていたあの時よりはマスターはマスターらしくなったと、そう思えた。

 

「貴方は、私のマスターです。他はありえません」

 

「そうか」

 

「はい」

 

 いつも通りの冷徹で明晰な顔は変わらない。

 だがなんとなく、ほっと一息ついたような安堵感が漂っているような気がした。

 そんな彼を見て、ミホノブルボンは咄嗟に思っていたことが口に出た。

 

「……マスターは私と共に栄冠を掴みたいとは思われなかったのですか」

 

 ――――優秀なウマ娘は、首に縄をつけてでも離すな。

 

 トレーナーの間では、そう言う教えもある。優秀なウマ娘の担当を勝ち取れれば、良質な経験と実績と栄光と、実利を得られる。経歴に箔がつく。

 ついた箔を利用すれば、また優秀なウマ娘をスカウトできる。

 

 そういう言葉もあると、彼女は父から聴いていた。

 

「君が目指すべき夢を達成できるのであれば、俺としては必ずしもトレーナーが誰だというところに固執する必要を感じない」

 

 彼は自らがとった手段が間違っていたからではなく、他の方法を見いだせなかった無能を謝ったのである。

 

 例えばここで関係が決裂したとして、その上でレース前に時を戻せたとする。

 そうしたら、彼は最後の最後まで悩むだろう。他の方法はないものか、と。

 

 だが見つからなければ、決裂が確定したとしてもより自分のためになる方法を取る。誰にやめろと言われても、たぶんやめることはない。

 彼が一度信じた物に殉じる人間であることを、ミホノブルボンは流石に察してきていた。

 

「私はマスターがマスターとして居てくださることこそが、最良にして最優であると信じます」

 

「ああ。今のところはそうだと、俺も思うよ」

 

 ――――これでも一応、自己の能力に対しては自信も自負もある。

 

 そう言った彼の持つ自信とか自負は、正当なものだ。

 どんな状況であろうとも理性的な彼が示す指針は、間違いなく正しい。彼がミホノブルボンを信じているように、ミホノブルボンも彼を信じている。

 

 だがなんというか、彼はあまりにも感情というものを無視している。

 感情はあるのだろうが、判断能力とか行動指針とか、保身とか。本来ならば感情が作用してくるであろうそれらから、徹底的に感情を排除しているのだ。

 

 彼は、相手の心を読むのに長けている。つまり感情がわかる、ということなのだ。汲み取った感情を、意図的に斟酌しないときがある。というか、一瞥もくれないことが多いだけで。

 

(……?)

 

 なんでそんなわかりきったことを今更分析しているのかと、ミホノブルボンは自問した。

 軽くエラーが起こっている。抱きようのないはずの不満が、わずかにデータベースを侵食している。

 

「君」

 

「はい」

 

「あと17分でウイニングライブの時間だ。そろそろ更衣室に行ったほうがいい」

 

 急かすにしてはあまりにも理詰めに過ぎる言葉に従い、控室を出て更衣室に向かう。

 

 ウイニングライブ。レースで入賞を果たした者たちがステージに上がり歌って踊るという、レースと双璧を為すコンテンツ。

 今中山レース場に詰めかけた観客の半分がレースを見に来ているとすれば、残りはライブを見に来ているのだ。

 

「歌うときは決められた感情を出す。教えた通りの抑揚を再生する。表情に関しては任せる」

 

 歌えば棒読みちゃん、踊れば教材、表情は能。

 つまり歌っても声には見事に感情が乗らないし、表情が変わらない。完璧なダンス技術とは裏腹に、かつてのミホノブルボンには色々と問題が多かったのである。

 

 だが今はダンスはそのままに、歌は調声抜群のボーカロイド程度にまでは進化していた。

 ボイストレーナーからは『どうしたらここまで機械っぽく歌えるのかしら……』とまで言わしめた無感情――――詳しく言うならば童謡読み聞かせの如き絶望的な抑揚は、それなりに改善された上でメイクデビューを迎えたのである。

 

「はい。マスターの指導通り、完璧にウイニングライブを実行します」

 

 言行一致というべきか、ミホノブルボンは大盛況のうちにウイニングライブを完遂した。

 

 因みにそのライブ内で彼女が披露した歌は、前日のリハーサルのときに歌い上げたもののそれと一音半句の狂いもなく同じであった。

 

 圧倒的な走りを見せて観客を熱狂に包んだ彼女が持つ、あまりにも正確無比で優秀すぎる蓄音機としての才能。

 それに気づいた人間は、このときはまだいなかった。




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オペレーション:春を駆ける

 皐月とダービーを駆け抜けるRTA、はーじまーるよー。

 さて、前回は皐月賞のスタートがかかった時点で終わりました。ですがまあスキップしますので、視聴者兄貴たちがわかるのは出遅れの有無と勝てたか否かくらいです。

 

 (RTAだから)仕方ないね。

 

 ということで勝ちました。2位のナリタタイセイとは大差をつけての勝利。

 また大差か……(困惑)

 

 大差は、本物の競馬ではこんなにポンポン出ません。正直3馬身とかつけての勝利でも圧勝と呼んでいいですし、1馬身差でも割と余裕の勝ちです。

 大差ってのはつまり、相手にすらなってないということですからね。つまり『お話になりませんわ!』『くそ笑いましたわ!』『パクパクですわ!』な状態なわけで、通常はここまで実力が突出することはまあないわけです。

 

 ですがこれは大差が頻発するウマ娘。ついでに言えば、アプリ版とは違ってレコード更新も可能です。そしてホープフルステークスで更新したらしいとのこと。視聴者兄貴が言ってました。

 今回もチラッとしか見てませんが、2分を切ってます。強い強い。

 

 【皐月賞に出走した!】

 【ミホノブルボンは1着だった】

 【ライスシャワーは3着だった】

 

 ん、ライスシャワー?

 ……え、これ、なんでライスシャワーが出てるんですかね。クラシック三冠におけるライスシャワーの確定出走は日本ダービーと菊花賞のみ。皐月賞は確定出走ではありません。

 原作でのライスシャワーは皐月賞に出ていますが、ウマ娘のライスシャワーは皐月賞を回避することが多いです。なんで回避するのかは知りませんが、そうなってます。

 

 チャートによると、この時点でのCPUライスシャワーでは入賞は難しいとのこと。

 (入賞)してんじゃん。まあ1位ミホノブルボンと2位ナリタタイセイが大差、2位ナリタタイセイと3位ライスシャワーが3バ身差なので、実力に差があったことは間違いなさそうですが……上振れしたんですかね。

 

 というかライスシャワーが出走したおかげで皐月賞後のイベントのログが大変なことになってます。めちゃ長い。

 

 要約すると、周りを不幸にしてしまう(と思いこんでる)ライスシャワーは距離の壁や周りの不安、非難を超えて今や一番人気を勝ち取るまでに至ったヒーローのようなミホノブルボンに憧れていた。ホープフルステークスで直接戦って、さらにその気持ちは強くなった。

 で、今回も走れることを喜んでいたのですが、圧倒的に負けて『すごい』と感心するばかりだった弱い自分を反省。『次は追いつくんだ』と決意する。まあこんな感じです。

 

 (親指が)壊れるわ……と嘆いていたところ終わったので、切り替えていきます。

 

 まあ、いくらいいタイムを残して勝とうが一勝は一勝なのでね。ライスシャワーは怖いですが、まあなんとかなると信じます。

 次って日本ダービーのことか?と勘のいい視聴者兄貴たちなら察するかもしれませんが、違います。

 

 それは、ブルボンの誕生日です。

 そしてこれはガバの告白なのですが、私は現在ブルボンの信頼度を把握していません。30以上90未満で発生するであろうイベントが起こらず、60以上で起こる初詣イベントが起こる。はっきり言って意味不明です。

 

 当初の皇帝チャートだと、正月時点で70程度まで上げておくつもりでした。これは初詣イベントを2回踏むためだったのですが、これはキャラクリ時にくっついてきた愛嬌×の影響もありチャートごと断念。結果として初詣を諦めてコミュを取らずに練習の鬼となり、今に至ります。

 

 可能性としては2つ。

 信頼度が90以上。そして、初詣イベントの発生条件にまだ解析されていない何かがある。この2つです。

 

 まず信頼度90ですが、愛嬌×でそこまで上げるにはパーフェクトコミュニケーションを連発しなければなりません。

 なのでかなり低い確率にはなりますが有り得ることではあります。ですが私は○を連打していたのでとった選択肢がわかりません。

 

 ログを見ろ(迫真)という話ですが、見て選択肢を調べて計算して……とかしてるとタイムが伸びるので却下。なのでここではリカバリ策として、信頼度が低いという前提に立って当初チャート通りに進みます。

 つまり、ここから凱旋門までに信頼度バフ(全能力1.2倍)のかかる100まで上げる、ということです。皇帝チャートであれば《理想の果て》というイベントをこなすことで最大値(255、全能力1.5倍)までいけたのですが、それは諦めます。1.2倍でいい(謙虚)

 

 本当の意味で最速を狙うには上振れを信じて突き進むのがいいのですが、ここで『たぶん90以上だからコミュサボっていいべ』と判断して信頼度が足りずにノーバフで凱旋門に挑み、勝てないという史上最大のガバを犯すよりはまぁマシであろうと判断しました。許しは乞わぬ。

 

 ということではい。アップルケーキをお食べ。時計もあげるよ。

 

「ありがとうございます、マスター。大事にします」

 

 はい、信頼度が上がりました。現在50(にいってたらいいな)程度だと思われますので、ここからちょこちょことちょっかい掛けていきます。

 

 因みにプレゼントした時計はすぐ壊れます。だいたい夏合宿前とか、そのあたりに。

 これは使い方が雑とかそういうわけではなく、ミホノブルボンには一定確率で触れた電子機器を破壊する、『クラッシュエラー』というデバフがデフォルトで備わっているからです。

 

 このデバフが発動するとやる気が下がるわけですが、無論防ぐ方法もあります。

 

 1つ目が、そもそも機械類を触れさせるようなトレーニングをさせない・機械類をプレゼントしないというもの。2つ目が、とある一連のイベントを起こして克服するというもの。

 

 今回は3年目4月4週まで続く克服イベントを起こし、信頼度の底上げを計ります。やる気ダウンは痛いですが、信頼度+30はうま味です。なのでそのためには前提として、作為的にこのやる気ダウンイベントを起こす必要があります。

 だから、時計をプレゼントする必要があったんですね。

 

 因みにみんな大好きエアグルーヴのデバフは、『洒落知らず』。会長のダジャレの意味を解せなかったときにやる気が下がるというもの。みんなお馴染みのアレです。

 彼女の場合は克服イベントをこなすと小粋なジョークで場を和ませる、変わり果てた姿で発見されることになります。

 

 おいたわしや、副会長上……

 

 まあ副会長のやる気がどうなろうが知ったこっちゃないのでそれはそれとして、話を前に進めます。

 たぶん時計を破壊してやる気が下がるという確定事象をどう捌くか、というアレです。

 

 これに関してですが、リカバリ策は既に用意してます。問題はいつ起こるかですが、こればっかりは管理できません。ただただレース前に起こらないことを祈るばかりです。

 まああげて3ターンで壊すみたいなことは限りなく低い確率でしか起こらないので――――

 

「……マスター。ご報告があります」

 

 耳ぺたん、尻尾しょぼん。ついでに言えばぴょこんと大きなアホ毛もしょぼん。

 これは……壊れたな?(名推理)

 

「マスターからいただいた時計を壊してしまいました」

 

 【ミホノブルボンは時計を壊してしまったようだ……】

 【怪我はないかと問うたところ、そういう壊れ方はしていないようだ】

 

 意外と早く落ちたな……(困惑)

 2ターンは速い……はやくない? そしてガッツリやる気が下がる、と。まあまだ普通だからセーフ。

 ここで会話コマンドを発動して視線カーソルを耳と尻尾に移動。【会話のヒント:ドント・タッチ・メカニズム】を得ます。

 

 これで来年の誕生日に克服イベントの発生が確定し、信頼度+30を得られます。うん、おいしい!

 

 じゃあリカバリ策の出番だな!となるところですが、私はこのやる気ダウンイベントが夏合宿付近で発生すると目算していました。

 なので下がったやる気は夏合宿中の夏祭りイベントでやる気を上げようと思ったのですが、実際に起こったのは今、5月3週。

 

 ここは通常通りに練習を進行させ、皐月賞を勝った状態で日本ダービーに挑むと発生するやる気アップイベント、《次いで二冠》でリカバリします。

 皐月賞前のやる気アップイベント《まず一冠》はやる気が絶好調状態だったので発動しませんでしたが、今回は問題なく発動しました。それで調子は好調。まあ勝てるでしょ(慢心)

 

 ということで挑むのはクラシック三冠路線が二番手、東京レース場で行われる日本ダービー(東京優駿)。

 先程制した皐月賞が一番速いウマ娘が勝つレースと呼ばれているのに対し、日本ダービーは一番運のいいウマ娘が勝つと呼ばれています。無論このゲームに運のステータスなどありませんので、勝つのは結局強いウマ娘です。

 

 日本ダービーは皐月・菊花と比べてもちょっと抜けた歴史・格式を持ち、現実世界同様にここで勝つことはトレーナー・ウマ娘にとっての最高の栄誉を得ることを意味します。

 まあ、挑戦できるのは1回だけですからね。これは皐月と菊花にも言えることですが、単に実力があるだけではとれないわけです。

 

 戦法は変わらず逃げ。いつも通り、誰にも邪魔されずにぶっちぎっていただきます。

 

 直前コミュの選択肢は上が賢さの上がる【いつも通りに走れ】、下がスタミナの上がる【頑張ってこい】だったので、上を選択。

 

 現在のステータスはスピード・スタミナ・パワーがB+(750前後)で根性と賢さがD(350前後)。

 すごく今更な話になりますが、このRTAでは練習は坂路練習しかしないので、コミュ・イベントでの調整で指導方針がスパルタ、性格が冷静になるようにチャートを組んでいます。

 

 指導方針《スパルタ》を得る条件は3ヶ月間担当ウマ娘とコミュをとらないこと。

 性格《冷静》の獲得条件は選択肢・イベントなどで性格傾向を冷静に傾かせることです。

 

 指導方針《スパルタ》の効果はターン経過時に根性上昇、消費体力&練習効果微増。

 性格《冷静》の効果はターン経過時に賢さ上昇、根性練習の効率低下。

 坂路練習しかしないミホノブルボンは根性と賢さが練習で上げられないため、この2つでちょこちょこ上げていこう、ということになりました。

 

 指導方法を理論派(ターン経過時に賢さ上昇、体力回復量増加)、トレーナーの性格を熱血(ターン経過時に根性上昇、信頼度上昇に+効果)にしても良かったのですが、ミホノブルボン関連のイベントでは冷静さの性格値が上がる選択肢が上に配置されることが多い=連打時にガバを起こしにくいため、こうなりました。

 どうせ愛嬌×なので、熱血の補正をかけて多少あがいても無駄だろうというのもありますが。

 

 とかなんとか解説している間に日本ダービー前の一連のイベントが終わったので、演出をスキップ。レースに進みます。

 

 《全てのウマ娘が目指す頂点、日本ダービー! 歴史に蹄跡を残すのは誰だ!》

 《1番人気はもちろんこの娘。ここまで無敗皐月賞ウマ娘、ミホノブルボン。ダービーの舞台で、アイネスフウジン以来の逃げ切りを見せるか》

 《2番人気はこの子、ナリタタイセイ。文句なしの打倒ミホノブルボン1番手です》

 《3番人気はライスシャワー。ホープフルステークスから大きく成長を見せた末脚に期待です》

 

 なんか当たり前のように一番人気になってますね。距離の不安とはなんだったのか……とは思いますが、正直日本ダービーは絶好調じゃなくとも楽勝なので、ある意味当然だと言えます。

 

 問題は菊花。スキップしている間にこれからの予定を話しますが、坂路練習が封印される夏合宿ではライスシャワーをひたすらストーキングします。

 評価を上げ、長距離適性アップイベントを引けるか引けないかでこれからの難易度が大きく変わってくるので、絶対に2年目の夏合宿でライスシャワーを落とします。

 

《ミホノブルボン、これは途轍もない強さ! 完璧な独走でゴールイン! 圧勝、圧勝です!》

 

 そんな決意を語っている間にミホノブルボンがダービーを制覇したので、今回はここまで。ご視聴、ありがとうございました。




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サイドストーリー:前夜

 皐月賞ウマ娘は、ミホノブルボンだ。

 

 今や誰もが心の中で抱くそんな共通認識は、たった3ヶ月前に植え付けられたものである。

 

 それを『たった3ヶ月前に植え付けられたものでしかない』と取るか、『たった3ヶ月前に植え付けられたものなのに』と取るかは人による。

 

 『たった3ヶ月前に植え付けられたものでしかない』と思うものは、覆せるだろうと思考する。

 『たった3ヶ月前に植え付けられたものなのに』と思うものは、ここまで浸透した認識を覆すことに無理を感じている。

 

「だが実のところ、この世界に真に無理と呼べる物は多くない。君の挑戦を無理と断じた者が翻り、君への挑戦を無理だと断じている。世論とはつまり、その程度のものなのだ」

 

 トゥインクルシリーズ。ウマ娘とトレーナーたちが夢を追いかけ、努力と才能を煌めかせる場所。まず間違いなく、日本で一番人気があるコンテンツ。故に報道やらネットやらは、情勢を一変させるが如き極端な言葉を好む。

 その極端な言葉に載せられるバ鹿が、一定数いるからである。

 

「マスターが仰りたいのは、油断するなということでしょうか」

 

「そうだ。君は今世間の風に背中を押されているし、俺もそうだ。だからここで慢心せず、一歩引いて物事を見なければならない」

 

 ――――夢がそこにある以上、努力で才能の壁は超えられる

 

 そう宣言した彼を、一旦世間は称賛した。それはとても、耳触りのいい言葉だったからである。

 だが実情――――ウマ娘にとって血統というものが大事であり、スプリンターとしての才能を持つウマ娘がステイヤーになろうとするのは魚が陸に上がり、空を飛ぼうとするようなものだという正しい情報――――を知るにつれて、関係者たちの発言が取り上げられるようになってから旗色は変わった。

 

 曰く、一流のトレーナーとは叶わない夢を諦めさせることも重要である。

 曰く、現実を知らせることも大事である。

 曰く、あんなバ鹿げた量の練習をしているようではミホノブルボンが潰れる。

 曰く、当初の夢を諦めたとしてもスプリンターとして大成した方が本人のためである。

 

 最後のは完全に本人の判断によるので保留にするとしても、確かに前3つは正論だった。

 この時点では完璧に、間違っているのはミホノブルボンとそのトレーナーだった。だから世の中は、こぞって虐待だなんだと騒いだ。

 

 しかし今や、『夢を追わせるのは正しいことだ』とか『夢のためにはあれほどの苦難が必要なのだ』とか、そういうバ鹿げた論説がさも正論であるかのようにお茶の間で流れている。

 

 ――――俺はミホノブルボンというウマ娘を毎日毎日飽きることもなく地獄に投擲しているのだ。思い切り放り投げて、着地してぺしゃんこになる前に引き上げているから、なんとか故障せずに済んでいるのだ。

 

 彼の内心としてはそうであった。もっと簡単に言うならば、『一度でもやれば騒がれるレベルの無茶と無謀を限界まで酷使して世間的な無理をこじ開けた』のである。

 これは当然、誰にでもできることではない。ミホノブルボンの肉体が持つ特異な頑健さ、思い込んだら愚直なまでに一途な精神性。その双方が揃わなければ成立しない。

 

 この世には常識に則って生きる大多数と、常識を敵にできる極少数がいる。

 ミホノブルボンは、その極少数だった。

 

 彼女にとって押し付けられる常識は敵でしかなかった。

 常識を敵に回して平気でいられる心身を備えていた。

 常識を敵に回してもどこ吹く風と流せ、常識に打ち克つ方法を授ける人間がいた。

 

 なんてことのない話になるが、彼女にとっては一般的に言われていた無理は無茶ではあったし無謀ではあったが、そもそも無理でなかったのだ。

 

 その極少数のための理論が世に憚るのは、よろしくない。

 ミホノブルボンが皐月に勝ち、ダービーに勝ち、菊花に勝てば、その極少数のための理論が世の中を席巻することだろう。

 

 そして、そのことをそこまで予測している男がこのとき何を思っていたかと言えば。

 

(そんなものは知らん)

 

 と言うことだった。

 そう、知らないのだ。知ったこっちゃないのだ。世論がどうなろうが、そんなもの無視すればよい。自分なりの正しさを穿けばいい。

 でなければ、首をかけて担当でもないウマ娘のためにデモを起こしたりなんざするわけもない。

 

 彼にとってのマスメディアとは敵になろうが味方になろうがどうでもいい存在だった。

 例えるならば、弁当のバラン。あったら役に立つがなくても困らない、その程度の存在。

 

「君は皐月賞ウマ娘の最有力候補だ。それは間違いない。だが下バ評通りに進むことなどほとんどない。必ずアクシデントというものは起こる。だから限界まで備え、事に当たって慌てず、戦うに当たって不変を保つ。この3つを必ず守らなけれならない」

 

 ホープフルステークスに勝ってからというもの、この二人を覆う状況は様変わりを見せた。

 月刊ターフなどは編集長自らが謝罪にやってきて論旨を180°変化させ、常に彼を擁護していた月刊トゥインクルはこの『努力』という熱風に対して冷水をかけるように論陣を鮮明にし、ミホノブルボンはあくまでも特異な存在であるということを強調した。

 

 擁護者と批判者がくるりと変わった。

 少なくとも、ミホノブルボンからしてみればそう見えた。

 

 ――――月刊トゥインクルはよくやるものだ

 

 マスターはそう褒めていたが、ミホノブルボンにはそこのところがよくわからない。

 

 わかることはたった1つ。

 嫌だ、予定がある、断る、時間がないなどと取材を拒否することが多いマスターが、月刊トゥインクルの取材を断ったことがないという事実である。

 

「マスターは、今の状況をどうお思いですか?」

 

 いつものように坂路練習をこなしたあとで、ミホノブルボンはそう問うた。

 少し驚いたように見られたことを、覚えている。

 

「どうとは?」

 

「私はよくなったと思います。マスターへの非難は止み、むしろ応援されています。私からすればこれは、とても喜ばしいことです」

 

 自分のせいで非難されるようになった人を、自分が打ち立てた実績によって救い出せた。やや自作自演感が漂うが、それでも非難され続けるマスターを見続けるよりは遥かにマシだと、ミホノブルボンは考えていた。

 

「良くなった部分もあった。悪くなった部分もあった。いつも通りといったところかな」

 

 瞼を閉じろ、と声がかかる。その通りに目をぎゅっと瞑ると、温かいタオルが顔を拭った。

 

「眼に土埃は入ってないな?」

 

「視界良好、問題はありません」

 

「なら良し。一応目薬も渡しておくから、直前になって気になるようだったら差しておけ」

 

「はい」

 

 受け取った目薬の袋を手で摘み、バッグのポケットに入れる。

 その様子を確認してから、マスターは再び口を開いた。

 

「明日は朝から中山だ。車と電車のどちらがいい?」

 

「車を」

 

「わかった」

 

 いつもの通りアイシングとマッサージを受け終え、さあ今日は終わりだと言われて坂路を後にする。

 そんなミホノブルボンの前を、小さく黒い影が横切った。

 

「あ、あの、ブルボンさん!」

 

「はい、ライスシャワーさん。こんばんは」

 

「こ、こんばんわ……」

 

 ライスシャワーは、肩で息をしていた。着ているジャージは土埃でところどころが斑に染まり、靴には泥と芝の葉が付着している。

 

 ターフで最後の調整をしていたのかと、ミホノブルボンは察知した。

 思えば自分たちは、そういう『特別なこと』をあまりしない。当初はメイクデビュー前の最後の練習で軽くターフで走ってみたりはしたことがある。

 だがあのときに出遅れてからというもの、レース前だからといって特別なことをするのはやめようという、暗黙の掟ができたように思えるのだ。

 

 現に朝日杯FSの前も、ホープフルステークスの前も、そして皐月賞の前となる今も、自分は変わらず坂路を走っている。

 朝起きて、また坂路を走る。そんないつもの日常が来ても全く動じない程度には、今日も昨日と変わらない終わり方をした。

 

「あ、明日、ね。一緒に走れるから、その」

 

 覚悟しろ、ということだろうか。

 ライスシャワーの視線が徐々に地面に沈んでいくのと対極に、ぼんやりと虚空へ虚空へと視線を上げながら、ミホノブルボンはそんなことを思った。

 

 そう。ホープフルステークス以来、多くの種類の視線を感じるようになった。

 それ以前も多くの視線を感じていたが、種類としてはひとつ。可哀想とかそういうたぐいのもの。だが今や、対抗心や畏怖を向けられることが増えた。未だ向けられる視線の分類・解析は完全に成功していないが、完全な解析を終えられれば十数種類はあるのではないかと思うほどに。

 

「その、ね、嬉しくって……」

 

「嬉しい、ですか」

 

 同学年のクラシック路線に進むウマ娘たちから向けられる視線は、大抵が畏怖や恐怖といったものだった。

 

 争っても勝てないと、そう思われている。

お父さんとマスターから下されたオーダー、社会性の向上。それを達成するには友人が不可欠。その不可欠な友人を作るには、畏怖や恐怖といった感情は邪魔になる。

 だが一方で、レースではどうか。畏怖を感じる相手を、恐怖を感じる相手を、面と向かってまともに見れるのか。

 

 まともに見れない相手に勝つことなど、到底おぼつかない。戦うために、相手を知らなければならない。まともに見れない相手を、知ることなどできない。

 だからミホノブルボンは、畏怖や恐怖の視線を向けてくるウマ娘たちを歯牙にもかけていなかった。

 

 ――――この人たちは、私の夢に立ち塞がらないでしょう

 

 そういう認識が、彼女の中にある。まともに相手になるのは嘗ての世代の双璧、マチカネタンホイザとナリタタイセイの2人。

 この2人の中には、自分に対する畏怖も恐怖もない。決して前には立たないものの、巧みに横から後ろから観察し、あるいは声をかけ、思考を知り、対抗心を燃やしている。

 

 だが。

 

(こうやって直接、声を掛けには来ませんでした)

 

 おどおどとしている。自分に自信がないというより、自分に対する自信の置き場がないといった、如何にもひ弱そうな印象を受けるこのライスシャワーという漆黒のウマ娘は、正面に来た。

 進むべき道に出てきて立ち塞がり、心から共に走れることを喜んでいる。

 

(なるほど)

 

 マスターの言うことが、ようやくわかった。情報として輪郭だけをインプットしていたものに、実体感がついた。

 この優しげな、ひどく小さいウマ娘。弱いようで強い行動を取る、漆黒のステイヤー。

 

「ライスシャワーさん」

 

「ひゃ、ひゃい!」

 

「私は三冠ウマ娘になります」

 

 手を伸ばした。

 勝つ、ではない。そこまで能動的な感情を、このときのミホノブルボンは未だ持たない。

 

「誰にも敗けるつもりはありません。明日のレースも、これからのレースも」

 

 きょとんと、仄暗い光を宿した紫水晶の瞳が大きく拡がった。

 自分に向けて伸ばされた手と、幼子のような細い手が重なる。

 

「うん、よろしくね! ブルボンさん!」

 

 無邪気な笑顔だった。勝つとか負けるとか、ある種の殺伐さを感じさせるはずの勝負の舞台に立っているとは思えない笑顔。

 

 夢に、憧れに手を伸ばすような。

 

(わからない)

 

 その表情をする理由が。その表情をする人間は、必ず後ろからやってくる。憧れとはつまり、追うものだからだ。

 

(私とは違う)

 

 ミホノブルボンは幼い頃、後の三冠ウマ娘を見た。日本ダービーの舞台で走り、歓声を受けるその姿を見た。だが彼女は、その背を追うことはしなかった。

 

 三冠ウマ娘になりたいと思ったのは、あの人のようになりたいから、ではない。

 幼い頃、父と共に日本ダービーを見たミホノブルボンは感じたのだ。歓声を受け、流星のように走る。彼女が追っているものを、自分の手で掴み取りたいと。

 

 トウカイテイオーというウマ娘は、無敗でクラシック三冠を果たしたシンボリルドルフに夢を見た。偶像として崇拝するほど敬慕するシンボリルドルフのようになりたくて、無敗の三冠を志した。

 ミホノブルボンも、似たようなものである。彼女はとある三冠ウマ娘を見て、三冠ウマ娘になることを志した。だが彼女は、かつて見た三冠ウマ娘の名前も知らない。知る必要も感じない。

 

 彼女はあのとき見た三冠ウマ娘のようになりたいのではなく、三冠ウマ娘になりたいのである。

 

 夢を叶えるためには夢に向かい合うことが大事なのだということを、ミホノブルボンは知っている。ライスシャワーにはその強さがあるだろうということも、ミホノブルボンにはわかっていた。

 

 向かい合う勇気があるのに、他者に憧れ後を追う。

 

 それは何故だと、ミホノブルボンは思った。そう思うところで止まるのが、彼女にとっての限界だった。




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サイドストーリー:必然の範囲





 皐月賞は、最も速いものが勝つ。

 聴き飽きるほどに聴いたそんな標語を、ミホノブルボンの脳はリフレインしていた。

 

「酔ったのか?」

 

 窓を見ていたからそう思われたのだろうと、ミホノブルボンは理解した。

 

「いえ、マスター」

 

「ならいい」

 

 優美で荒々しさが微塵も感じられない――――同乗者に毛ほどの負担もかけたくないという気持ちがなんとなく察せられる――――運転で、その白い車は関係者専用の駐車場に止まった。

 

「マスター」

 

 早く着き過ぎたか。

 そんなことを思いつつ窓の外を見た男の耳に、これまで黙り込んでいた少女の声が届いた。

 

「どうした」

 

「マスターはあのとき、ライスシャワーさんと話すようにと仰られました。あのときとはつまり、12月20日19時24分のことです」

 

「ああ、確かに言った」

 

 朝日杯FSが終わったあとの練習のあと、珍しく顔を出した客人を見て、確かに彼はそう言った。その記憶は鮮明に、彼の脳にも残っている。

 

「マスターは仰られました。社会性の向上もこれからのお前には必要だ、と。あれは本意でしょうか?」

 

「本意だ」

 

「では、真意ではあるでしょうか?」

 

「なるほど」

 

 バタリと、逆側の扉が開いた音がした。長身を屈めてマスターが外に出て、ブルボンが少し前まで寄りかかっていた扉が開く。

 

「そこにベンチがある。座って話そうか」

 

 そう言われ、指し示された先に座る。

 トレセン学園に入ってからこれまで終始一貫して、彼が描き肉付けした未来に向けてミホノブルボンは歩いてきた。このちょっとした動作も、その一環である。

 

「ほら」

 

「天然水ですか」

 

 少し間を空けて、マスターはやってきた。

 差し出されたペットボトルは、とても冷たい。自分がベンチに座って待っている間、近くの自販機で買ってきたのだろうとミホノブルボンは思った。

 

「りんごフレーバーのな。好きだろう、君は」

 

「はい」

 

 ストローでちゅーっと吸って、一息つく。

 それを見計らったように、隣に座ったマスターは口を開いた。

 

「昨日、会ったか。そして君なりに何かを感じた」

 

「はい。明瞭ならざる違和感を感じました」

 

「まさしく。しかし、君らしからぬ不明瞭な言い方だな」

 

「申し訳ありません」

 

 そうやって謝ったミホノブルボンを、マスターは手で制した。

 常と変わらない、透き通り凍りついた湖面のような冷徹な横顔。

 

 この表情の不変さは、ややさざめいているミホノブルボンの心に静けさを与えてくれていた。

 

「誤解を恐れずに言えば、ライスシャワーは今のところ脅威ではない。いくら芯が強かろうが、才能があろうが、実力が伴わなければ意味がない。彼女には半年間の空白がある。普通ならばその時点で、脅威の対象からは外れるのだ。まぁ、それを覆しつつあるというのがあいつらの怖さなのだろうが」

 

「半年間。レースに出走しなかった期間、ですか」

 

 ライスシャワーは、高等部から新入生としてやってきたミホノブルボンとは違い、中等部からここに居た。そして中等部2年の夏休み明けから冬まで、一切レースに出なかった。

 リギルの将軍、あのトレーナーと出会うまでは。

 

「そうだ。ライスシャワーは君より早期に才能が見出されていたし、実戦経験も豊富だろう。中距離専門として見ても、長距離専門――――ステイヤーとして見ても、才能の多寡で言えば、君は圧倒的に負けている」

 

 ライスシャワーはサボりたいからとか辛いからとかで、サボるようには見えない。

 それはミホノブルボンと彼女のマスターとの統一見解だった。練習風景をひと目見ただけで、わかるものにはわかるのである。

 

「はい」

 

「無論これは、今回の君の負けを意味しない。およそ世界史上に外敵のみによって滅んだ国家がないように、敵に圧倒されたからと言って即座に負けることはない。負けるときとはつまり、自らを信じられなくなったとき。君が彼女に圧倒され、自らの長所を捨てたときだ」

 

「ラップ走法を捨てる、ということでしょうか」

 

「そうかもしれない。ライスシャワーはスタミナに物を言わせたロングスパートで差を詰めてくる差しよりの先行型だ。君は逃げだから、ライスシャワーによる後方からのプレッシャーに当てられて、ラップ走法を捨てて駆け出す。それは考えられる敗因の1つではあるが、もう1つある」

 

 逃げという戦法には、誤算が少ない。先頭を切って走るということはつまり、自らペースを作れるということである。

 誤算というものは主に、誰かに作られたペースに載せられた上で発生する。逃げている限り、誤算というものは起こりにくい。

 

「……それは、なんでしょうか」

 

「例えば、だ。君以上の逃げウマ娘が出てきたとき、君はどうする? 二番手に甘んじるか、それとも無理して先頭を取りに行くか」

 

 先頭を取りに行くだろうと、ミホノブルボンは思った。

 ラップ走法の価値とは、正確無比に時間を刻み続けるところにある。先頭に誰かがいて、そのウマ娘に頭を抑えられる時点で正確無比に時間を刻むことは難しいのだ。

 

「俺は思う。つまりこの時点で、君は自分のペースを作れない、と」

 

 先頭に立ってこそ、正確無比に時を刻める。1ハロン11秒代後半の時をひたすらに刻める。

 それはなにも、体内時計が正確だからやっているのではない。スピードを一定に保つことで、スタミナの減少を抑えられるからやっているのである。

 

 無理して先頭を取りに行けばどうなる?

 そのとき、ミホノブルボンはペースを乱される。スタミナの減少はいつもより激しく、速くなる。

 

 先頭を取りに行かなければ、どうなる?

 そうすれば、自分のペースを保てなくなる。正確な時を刻めなくなる。周りに合わせて速度を増減させ、スタミナの減少が加速する。

 

「ですが現在、私以上の逃げウマ娘はいません」

 

「トータルならな」

 

「トータルなら、とは?」

 

 彼女にとって逃げとはつまり、超高速のジョギングだった。一定速度を保ち、息切れすることなくゴールまで駆ける。

 だからこそ、マスターがトータルと言った意味がわからなかった。

 

「例を出そう。君とツインターボ。初速はどちらのほうが速い?」

 

「ターボさんです」

 

「じゃあ君は、スタート時点からツインターボのスタミナが尽きるまでの間、そのレースの中では2番目の逃げウマ娘になるということだ。最終的には勝つだろうが、中盤までは負けている。そうではないのかな?」

 

「……それは、そうです」

 

「君は現状最強の逃げウマ娘だ。だが、瞬間的に最強というわけじゃない。あくまでもトータルで最強なのだ」

 

 へたりと、耳が栗毛の髪に触れるほどに倒れる。

 そんな、たいらになって随分撫でやすくなった頭の上に、大きな掌が乗った。

 

「ブルボン」

 

 名前を呼ばれるのは、初めてのことだった。

 スカウトのとき、ミホノブルボンとは呼ばれたことがある。あとは他には、君とかお前とか。略称で呼ばれたという記録は、ミホノブルボンのデータベースには存在しない。

 

「ここまで予測できていて。君という総合的に最強のウマ娘が居て。それで、俺が対策を立てられていないと、そう思うか?」

 

 思わない。心の中で即座に、ミホノブルボンは断じた。

 しかしその言葉が口をついて出る前に、彼女のマスターは言葉を続けた。

 

「君は言ったな。皐月賞の勝利は私とマスターであれば、可能であろうと予測されます、と」

 

「はい」

 

「あれから4ヶ月。《必然》という範囲は延び、既に菊花を射程に捉えている」

 

 ――――安心しろ。全部巧くいく

 

 涼しげながら油断ならなそうな、底が知れないような。それでも味方だと考えれば心から信頼できる不敵な笑み。

 なんの根拠もなかった。なんの実証もない言葉だった。だけど彼にはそれを信じさせるに足る信頼と、実績があった。

 

「だから君はいつもの通りに走って、いつもの通りに練習して――――」

 

 手が離れ、笑みが消える。いつも通りに冷徹な、参謀と呼ばれるにふさわしい明晰な顔立ち。

 

 ――――俺の言う通りに動け

 

「はい、マスター」

 

 ぴょこんと栗毛の耳が屹立し、扇風機のようにぶんぶんと尻尾が回る。

 不安が飛んでいく。頭を覆っていたエラーが解決され、視界が涼やかに澄み渡る。

 

「勝ちます。マスター」

 

「当たり前だ」

 

 それから、二人は話さなかった。話す必要が無かった。

 おもむろに立ち上がり、一人は控え室に、一人は関係者用の観戦席へ。

 

 初めてとなる勝負服を身に着け、ミホノブルボンはパドックに入った。

 何も、目に入らなかった。何も、聴こえてこなかった。視界の先に、腕組んで胡座掻いて勝利を待っている人が見えたのを確認して、目を閉じる。

 

 快晴が通り過ぎ、やや冷たい春風が吹く絶好の良バ場。

 

 ――――ひらく

 

 そのタイミングが、直感的にわかった。

 

 ゲートが開き切る前に、一歩を踏み出す。それはウマ娘として初めて教わると言っていいほどに、当たり前の技術。

 だがミホノブルボンは、それより更に速かった。

 

 影すらを置き去りにするほどのスタートからはじまり、他のウマ娘など当然置き去りにしてミホノブルボンはハナを進む。

 ナリタタイセイも、マチカネタンホイザも、そしてライスシャワーも、付いていくことすらできなかった。喰らいつこうとしたナリタタイセイは途中で脚が尽きてバ群に呑まれ、スタミナが尽きるまでマークしようとしていたマチカネタンホイザはひっつく前に引き剥がされ、無限に近いスタミナを持つライスシャワーのロングスパートは、物理の壁に阻まれる。

 

 

 差されたくないなら、こうすればいい。

 

 

 逃げウマ娘ならば、その走りが理想であることがわかる。何よりも雄弁に、そう語っているのがわかる。

 いっそ、暴力的なまでに明瞭な解答だった。追ってくるウマ娘が怖いなら、差されるのが怖いなら、物理的に差しきれない距離を開けてしまえばいい。

 

 タイムは1:57:2。2位との着差はまさしく大差。自身がほぼ同条件で記録したホープフルステークスにおけるタイムを2秒縮める、圧倒的なレコードタイム。

 ラップタイムは1ハロンごとに11.7。誤差は最大で0.2。200メートルを11.5から11.9の狭い間を彷徨いながら刻み続ける。ただそれだけの単調で単純な、だからこそ強い圧倒的な押し切り勝ち。

 絶好調のミホノブルボンはまさに精密機械の如き走りを見せた。

 

「マスター。レコード、達成いたしました」

 

「脚を使い過ぎだ。見せてみろ」

 

 今まで見せなかった全力疾走であるが、これは今まで見せられなかった全力疾走でもある。

 最高のバ場だった。最高のコンディションだった。だからこそ、どこまでいけるのか試してみたくなった。

 

「ウマ娘の脚は消耗品だ。ああいう速さにかまけた、何も考えないような走りは寿命を縮めることになるぞ」

 

「……はい」

 

 熱を持った脚に冷たい指が触れ、しょぼんと耳が垂れる。

 芝を走ると、とにかく脚に負担がかかるのだ。あまりにも酷使すれば屈腱炎などの不治の病にかかったり、骨が折れたりする。

 

 坂路を走るのは辛い。辛いが、脚にかかる負担は芝と比べれば然程でもない。だからこそ、狂気じみた練習メニューを組めているわけである。

 

「申し訳ありませんでした、マスター」

 

「……いや。消耗させるに足る、素晴らしいレースだった。それは確かだ」

 

 だがトレーナーとしては、どうしても消耗の方が先に気になるのだ。

 

「全力で走るのはいい。だが全力を出すことと、最善を尽くすことは違う。わかるな」

 

 全力で走り続ければ、スタミナが尽きる。脚が消耗する。全力を出すことが勝利のための最善策であるならばいいが、今日に限っては全力を出さなくとも勝てた。

 ミホノブルボンの望みが全力で走ることならば、彼としては別にここまでうるさく言う気はない。しかし、彼女の夢はあくまでもクラシック三冠である。

 

 全力を尽くすことが礼儀だ、などと言って無闇な消耗を許すわけにはいかない。

 

「はい」

 

「全力で走ることが必要になるのはわかる。だが使う場所とタイミングを弁えなければならない。そうしなければ遠くない未来に怪我をするはめになる」

 

 怪我をさせたくない。

 怪我に苦しむ姿を見たくない。

 

 彼が心からそう思っているということは、指示されている細やか過ぎるウォームアップと入念なクールダウンを見ればわかる。

 そのことは誰よりも、ミホノブルボンが知っている。スパルタスパルタと言われるが、彼は絶対に無理はさせない。無茶も無謀もするが、練習における無理の壁だけは乗り越えさせない。

 

 無茶と無謀で、少しずつ無理の範囲を縮める。練習メニュー1つとっても、気の遠くなるほどの分析力と忍耐、綿密さで立てているのだ。

 

「マスター」

 

「もう言うな。俺ももう言わん。素晴らしいレースだったんだから、今はただ胸を張れ」

 

 ウイニングライブの後の練習は、珍しく休みだった。ぬいぐるみ化計画の相談があるから、ということだったが、たぶんそうではないだろうと、ミホノブルボンはそう思った。




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サイドストーリー:『故障しました』

『ブルボン。ぬいぐるみの発売は3ヶ月後になった。一応サンプルが送られる手筈になっているから、相部屋の子にも伝えておく様に』

 

 彼女が今見ているのは、スマートフォンのメールの画面。機械に触れただけで破壊する能力者である彼女は、わざわざタッチペンを携帯してスマートフォンを操作することを強いられている。

 

 普段ならばここでしみじみと不便さを感じるところだが、今の彼女は違った。

 

 あのとき限りと思った呼び方が継続していることに、ミホノブルボンは密かな満足感を得ていたのである。

 やはりミホノブルボンとか君とかお前とか、そういうのよりブルボンと呼ばれる方がいい。何がいいかはわからない。だが、耳触りがいい。

 

 呼ばれると、そのたびに元気になれる。そんな気がする彼女は、現在掛け値なしに元気だった。

 

 皐月賞が終わったあと、ひたすらに休んだからである。やはりクールダウンを入念にやったとしても、疲れが完全に消えるわけではない。

 いい機会だったと思えと、彼女はあのあとマスターから言われていた。

 

 いつものように鞄に制服を詰め、ジャージを着て坂路に出ていく。

 そこにはやはりいつも通りの人が、いつも通りの顔をして待っていた。

 

「マスター。本日もご指導・ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします」

 

「ああ。無論のことだ」

 

 無敗の皐月賞ウマ娘と、新人にして既に日本競バ界の最高峰たるGⅠを3勝するほどのウマ娘を育て上げたトレーナー。

 3つのうち2つがジュニア級、格式の低いGⅠだと言ってもGⅠはGⅠ。ついで得た皐月賞など、最高クラスの格式のGⅠである。

 

 そもそもレースで一着を取れるウマ娘自体、全体から見れば3割程度と少数派。

 トレセン学園に配属された新人トレーナーにしても、最初の勝利を掴めないままに地方に飛ばされる者もいる。GⅠにしても、1回でも勝てれば経歴に箔がつくと言われるくらいなのだ。

 

 そういうわけで、少しくらいパーティーでもすればどうなんだろうと、周りはそう思わないでもない。

 

 だがこの2人は、実にいつも通りだった。新聞という新聞が、ニュースというニュースがすべて嘘をついているのかもしれないと錯覚を起こすほどに、いつも通り過ぎた。

 

「お前さ、ミホノブルボンが皐月賞を勝ったってこと知ってる?」

 

「勝ち得た栄光に興味はない。現在、最低でもあと2回勝たなければいけないということのみを知っている」

 

 それを俺の前でいうか、と。リギルの《将軍》は口をへの字に曲げた。

 彼が現在担当するライスシャワーは、ミホノブルボンと同い年である。つまり同じくクラシック三冠路線へ漕ぎ出した同期なのだ。

 

 その前で『あと2回』というのは、ウマ娘にとっての最高の栄誉《日本ダービー》と、世代最強を証明する《菊花賞》。その2つを獲るという、明確な宣戦。

 ……いや、宣戦ですらない。ミホノブルボンが淡々と時を刻むように、この《参謀》は淡々と事実を刻む。後2つ勝つということを、単純に口にしただけなのだ。

 

 現状相手にされていないだろうと、《将軍》は思う。それはそうだとも、《将軍》は思う。

 

 ホープフルステークスで、ミホノブルボンは覚醒した。朝日杯FSでレコードを叩き出したあたりからその片鱗は見せていたが、ホープフルステークスで彼女は完全に一皮むけた。

 

 GⅠ出走3回。レコード3回。昨日の皐月賞で記録したタイムなどは、トゥインクルシリーズがはじまる前から記録され続けてきた中央でのどの記録よりも速い。

 

 つまりミホノブルボンは走行距離が2000メートル以内であればどの時代の誰を相手にしても無敵であると、血統に頼らぬ実力で証明してみせた。

 

 やや先の話になるが、ミホノブルボンは無敵ではなくなる。ウオッカというウマ娘によって、彼女の記録は肉薄されることになるのである。

 だが今のところは無敵であるということは、誰もが認めるところだった。

 

「勝つ自信はありそうだな」

 

「己を過小評価しているやつがそのまま寝ていてくれればな」

 

「ライスのことか?」

 

「違う」

 

 なんの間もなく断言した。となるとそうではないのかなと、《将軍》は思う。

 だが、その油断とすら言えない軽微な侮りこそがライスシャワーの勝ち目であると、《将軍》は知っている。

 

 彼とて、一流のトレーナーである。ライスシャワーがミホノブルボンに勝つ可能性があるウマ娘であるということを、世界の誰よりも信じている。

 

「……まあ、とにかくさ。もうすぐミホノブルボンは誕生日だろ。こんなときくらい、お祝いを考えたほうがいいと思うぜ。ただでさえ誤解を招きやすいんだから」

 

「お前の言う通りであることは否定しないが、これでも随分思ったことを口にするようになっただろう」

 

 たしかに最近、心做しか口数が多くなったような気もする。

 

「それでも誕生日は特別だぜ。お前もほら、わかるだろ?」

 

「生まれてこの方、俺の生誕を祝うのはお前と師匠、あとはルドルフくらいなものだ」

 

 ん?という顔を、《将軍》はした。

 だがすぐさまなんとなく納得したような顔になり、頷く。

 

「まあそうかもしれないけども、サラッと悲しいことを……」

 

 別に《参謀》としては、悲しいという思いはない。『死に一歩近づく息子をどうして祝賀しなければならないのか』という親の言説はなるほど、もっともだと思うからだ。

 

(それにしても……ルドルフのあれは何だったのだろうか)

 

 『誕生日おめでとう参謀くん。外国人枠の撤廃で多くのウマ娘の幸福が守られたこともあり、目出度い。そう、実に目出度い。めでたいめでたい、ということで鯛のプレゼントだ。ふふっ』

 

『ああ、ありがとう。誕生日プレゼントをもらったのは初めてだ』

 

 誕生日おめでとうからということでまでの意味はまったくわからなかったが、お礼は言った。そして贈られた鯛は刺し身にして食べた。

 そしてシンボリルドルフの意図を察することに長けたエアグルーヴにこの顛末を話して解読を乞うたが、結局エアグルーヴにもわからなかった。

 

 近々の誕生日の記憶は、そういうものである。

 

(エアグルーヴに聴いてみるか……)

 

 結局あの、ルドルフらしからぬ長ったらしいのはどういう意味を持っていたのか。

 

「ともあれ、誕生日プレゼントは渡しておけよ。ケーキは……お前にも栄養管理があるだろうから無理にとは言わないけども」

 

「わかった。買おう」

 

 ということで、買った。何をと問われれば、時計とケーキを。

 別にミホノブルボンが時計好きなわけではない。単純に彼の脳裏には、ぬいぐるみの記憶が残っていたのである。

 

 ミホノブルボンは最近、精密機械と呼ばれはじめた。正確無比なラップタイムが所以である。だからぬいぐるみは、時計を持ったデザインにしよう。

 外国人枠撤廃運動のときに協力してくれたURAの渉外担当とそういう話をして、頷いた。だからミホノブルボンには時計だという、そういう認識がどこかにある。

 

「ブルボン」

 

「はい」

 

 ピコンと、耳がご機嫌そうに揺れる。

 皐月賞に勝った。壁を超えた。その嬉しさが未だに去らないらしい。

 

「今日は誕生日らしいな」

 

「はい。サクラバクシンオーさんからは祝福の言葉と電池をいただきました」

 

 それは果たして誕生日プレゼントとして適切なのか。

 そんな疑問は浮かんだが、あくまでも当人たちは仲良くやっているらしいと判断し、口を出すのはやめた。

 

 これを他のトレーナーが見たら、驚くことだろう。

 極めて優秀だがスパルタ的な厳しさと口うるさいまでの管理気質を持つ、典型的な管理屋。彼は他のトレーナー連中からは、そう思われている。

 

 しかしリギルで参謀役をやっていたときの彼の役目はと言えば、気づいたことやウマ娘本人すら気づかない要望を吸い上げて提出し、敵チームの分析をして、個々人のカリキュラム・好みに合わせた献立を作ることだった。

 

 つまり、個々人にどうこうと口を出すことはしていなかったのである。

 

 ブルボンのトレーナーになってからというもの、彼は常に口を出している。身体を作るために必要な食事をどう摂取するか、いつ摂取するか、練習はどうするか、どれくらいするか。部屋で練習したいと思ったときは何をするか。

 

 傍から見ると直接出向いて細々口を出す官僚じみた管理者のように見える。

 しかし実のところ彼はカリスマ性のある個人に従属しながら助言する、軍師的なことの方が得意なのだ。

 観察し、分析し、自分なりの見解と事実を分けて主体性を持つ個人――――かつての場合は彼の師匠である東条ハナ――――に上奏する。管理主義で分権的なリギルでの仕事は、実に彼に合っていた。

 

 根っからの管理者では、そうはいかない。分析して上奏する前に、気づいたことに片っ端から口を出していくだろう。

 だが彼は、そうではない。故に根っからの管理者ならば看過できないこういったことを、彼はサラリとスルーすることが可能だった。

 

 あくまでも目標の設定は、本人に任せる。自分はそれを後援し、実行するための手立てを考える。

 実際のところ彼の本質はそれであり、今もこれっぽっちも変わらない。

 

 夢を持つ者の後援者であり、助言者であり、夢へと続く道の舗装者。そのためならば向いていないこともやるし、矢面にも立つ。

 それが、ミホノブルボンのトレーナーだった。

 

「俺からはこれをやろう。時計だ」

 

「ありがとうございます、マスター。大事にします」

 

 ここで断っておこう。

 ミホノブルボンは、大事にはした。大事にはしたのだ。貰ったものをどうしたらいいかわからずにエラーを吐きながら部屋をうろうろし、1日目は箱に入れて保管。

 

 2日目は『使うことが1番の感謝を表す行動なのではないか』と思って手につけてみたり、つけたまま歩いてみたりして、練習に向かうにあたっては箱に入れて保管。

 

 3日目は昼休みに鼻歌交じりに時計を磨き、周囲の生徒からは『あの人に音楽機能がアップデートされたのかな……』などと戦慄させた。

 

 そしてやや飛んで、14日目。朝練のために起きたミホノブルボンは、やや無遠慮にスマートフォンを掴んだ。

 

 電源が、つかない。

 仕方ないと、ミホノブルボンは思った。というか、諦めていた。自分が触れた機械が一定確率でその機能を永遠に停止させることを、彼女は知っている。

 

 しかし、時間がわからないのは困る。

 そこでミホノブルボンは思い出した。自分は時計をもらったということを。

 枕元に置いていた革張りの箱を開け、腕時計を取り出す。無駄な装飾のない無骨で機械的な時計は、彼女の好みに合っていた。

 

 5時50分。いつもどおりの起床時間。5分で着替えて坂路に向かう。

 そして彼女は素早く着替えて、時計を見た。

 

 5時50分だった。

 

(…………)

 

 ミホノブルボンは、見なかったことにした。

 自分が着替えるのが速かった。たぶんきっと、そうだ。秒針が動いていないのも、気のせいだ、と。

 

 果たして朝練を終えて帰ってきても、時計は変わらず5時50分を示していた。

 

(1日に2回は正しい時間を表示する、そんな時計……)

 

 人はそんな時計を、壊れているという。

 

「マスター。ご報告があります」

 

「ん?」

 

 昼休み。

 坂路に併設されたベンチであぐらをかいて待っていた男の心胆を心から寒からしめる一言を、ミホノブルボンは発した。

 

「故障しました」




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サイドストーリー:優駿の門へ

「……どこをだ。いつ気づいた。どこで気づいた。何をしたら痛んだ?」

 

 管理は完璧だったはず……とか、そういう今までの練習メニューへの追想やら何やらが浮かんできたのを押しとどめて、取り敢えずトレーナーはそう問うた。

 

 怪我したときに1番大事なのは、原因と現状を確かめることである。その点で、彼の質問は性急ではあるが適切だった。

 

 捻挫とかそういうことなら、ダービーまでに治せる。だが骨とか腱とかならば、無理である。

 己の指示・解析のミスが夢を絶たせたということで、彼も責任というものを果たさなければならない。たったそれだけで済むとも思えないが。

 

「時計です。朝、私室で気づきました」

 

「時計。ああ……ラップ走法ができなくなったとか、そういうことか。まあできなくなったのは痛いが、できないならできないなりの策はある。勝率は下がるが、君なら充分――――」

 

 勝てる。なにせ、実力は突出しているのだ。

 ブルボンの体内時計が壊れたとしても、まだそれなりには使えるだろう。なにせ、朝の練習ではやや上の空感はあったものの、きっちりと時を刻めていたのだ。

 

 菊花までに直せばいい。となると、夏の合宿でそれ用のメニューを組むか。

 そこまでを、彼は一瞬のうちに思考していた。そしてその目算を、またもブルボンは破壊した。

 

 彼女が大事にしていた時計と同じように。

 

「私はマスターからいただいた時計を壊しました」

 

「…………ああ」

 

 心配させるな。

 そう言いたかったが、意味を汲めなかったのにはこちらにも責任がある。となると彼女だけを責めるわけにもいかない。

 

 というより。

 

「部品は飛び散ったか?」

 

「いえ。動作が完全に停止したのみです」

 

「……君は怪我をしていないんだな?」

 

「はい」

 

 最近非常に幅広い感情表現を見せるようになった耳が、髪と同化するのではないかというレベルにまでぺたんとなっている。

 

 尻尾にも当然、力がない。

 

「ならよかった」

 

「よくはありません。私はマスターからいただいた時計を壊してしまいました」

 

 凹んでいる。放っておいたら大地に沈んでいきそうなほどに。

 

「となると、不良品だったのか」

 

 それなりの値段はしたんだがな、と。

 既に凹み切ったミホノブルボンの頭を無意識の言葉のハンマーで陥没させながら、トレーナーは首を傾げた。

 

「私の扱いが雑だった、とは思われないのですか?」

 

「君はあの時喜んでいたし、丁寧で慎重な子だ。そういう扱いをするとは思えない」

 

 その言葉を受けてちょっとだけ、髪と同化しかけていたミホノブルボンの耳が浮き出た。

 尻尾が人が死ぬ寸前に動かした腕のようにピクリと動き、パタリと戻る。

 

「……そう言えば君は、ストップウォッチもかなり壊していたな。あれは単なる使いすぎだと思っていたが」

 

 体内時計の正確性を上げるためにと、トレーナーはブルボンにストップウォッチをいくつか渡していた。どうしても自主トレがやりたくなったときは身体を動かさず、これを使って体内の時間感覚を研ぎ澄ませろ、と。

 

 ミホノブルボンはこのストップウォッチを、かなりの頻度で故障させていた。それは勤勉さが故のものだと思っていたのだが。

 

「私は機械に触れると、故障を誘発させる体質です。マスターにお伝えしようか迷い、今まで伝えられていませんでした。申し訳ありません」

 

「なぜ謝る。1番辛いのは大事にしていたものを自分の扱いとは別なところで壊してしまった、特異体質である君自身だろう。思慮が足りなかったのはこちらだ」

 

 別になりたくてなったのではあるまい、と。

 自分がそれなりに選んで(ついでに言えば金もかけて)プレゼントした物をたった2週間で破壊された男とは思えない寛容さで、トレーナーはブルボンの謝罪を切り捨てた。

 練習に対して一切の妥協を許さない姿勢や、徹底的な食事管理から不寛容な人物だと思われがちだが、基本的にそれ以外のことには寛容な男なのである。

 

「……そうか。ならば練習メニューはプリントして渡すべきだったし、連絡も手紙にするべきだな。ストップウォッチに変わる練習……砂時計でも使うか。それならば――――」

 

「マスター」

 

「なんだ」

 

「私を、怒らないのですか」

 

「なぜだ?」

 

 発言の意図が心の底から理解できないとばかりに、トレーナーは眉をひそめた。

 

「わざとではない。そして体質だと言うのならば怒ってどうにかなるものでもない。

となると、むしろ1年以上担当していて気づかなかった俺が節穴だと怒られるべきだろう。機械を贈って破壊させ、怪我のリスクを高め、余計な罪悪感を植え付けさせた。君こそ、怒っていいんだぞ」

 

「……いえ」

 

「そうか」

 

 ペンをくるくる回し、何やら改善点を書いていく。

 そんな彼は本当に、怒っているようには見えなかった。

 

「マスター。私は……」

 

 今、何をすればよろしいでしょうか。

 そんな言外の言葉を察したのか、トレーナーはひらひらと手を振った。

 

「ああ、こちらで改善点を纏めておく。今は集中力にも欠けるようだし、帰っていい。気分転換に成功できたと思ったら、夕方にまた来てくれ」

 

「……はい」

 

 明朗にして的確な指示だった。確かに今のミホノブルボンは集中力に欠ける。現実逃避していた朝ですら、どこか上の空感が出ていたのだ。

 時計を自らの手で破壊してしまったことを認識した今練習をしても、最悪怪我すらありうるし、身にもならない。

 

 時速70キロで走る生物が適当に練習してコケたりすれば、骨折で済むとも限らない。下手をすれば命に関わる。

 

 マスターの言うことは適切だと、ミホノブルボンは思った。

 そしてこんな大事な――――日本ダービー前――――時期にそんな指示を下されてしまった自分を、この上なく恥じた。

 

「マスター」

 

「ん……」

 

 授業が終わった、夕方。

 恥ずべき己への悔いと夢への思いを力に変えてやってきたブルボンに、ちらりと視線が向けられる。

 

 どうか、と。身体に緊張が走った。

 

「じゃあ、取り敢えずウォームアップ。昼動いてないんだから急かず、ゆっくり、念入りにな。そのあとは坂路。取り敢えず5本。今日はそれで終わりだ」

 

「マスター。まだやれます」

 

「いや、やれない。5本走るか、やらないか。どちらにするかは君に任せる」

 

 選択肢はない。

 

 ミホノブルボンは丁寧にウォームアップを行って身体を起こし、できうる限り身になるように5本を走った。

 

「走り終えました。マスター」

 

「クールダウンを終えたらマッサージをする。それで今日は終わりだ。温かい風呂に長く浸かって、早く寝ろ。いいな?」

 

「はい。今日は――――」

 

 謝ろうとしたブルボンの前に大きな掌が翳され、思わず出そうとしていた言葉が止まる。

 

「いい。こんな日もある。今までなかっただけだ」

 

 マッサージを終えるときっかり12秒を計れる砂時計、これからの練習メニューを記したノート、他の有力ウマ娘のデータをまとめたノートを渡して、トレーナーはさっさと坂路を後にした。

 

 ――――自主練習を、しようか

 

 そんな悪魔のささやきをぶんぶんと首を振って追い出して、ミホノブルボンは寮へと帰った。

 言われた通りにゆっくりとお風呂につかって、出たぴったりの時間でマスターが直々に作った栄養バランスが完璧に整えられた食事が運ばれてきた。

 

 運び人は、フジキセキ。ブルボンの所属する栗東寮の寮長である。

 

「この料理を見るたびに思うけど……なんというか相変わらずだね、あの人」

 

「フジキセキさんは、マスターをご存知なのですか?」

 

「まあね。うちの……リギルの参謀をやってたんだよ、あの人。割となんでもできる人だったけど、唯一愛嬌はなかったな。うん」

 

 まあそれでも、ウマ娘思いの人だったから嫌われてはなかったけどね。

 だから私もこうやって、配膳を手伝ってるわけで。

 

 思い出すようにそんなことをこぼして、フジキセキはそそくさとその場を後にした。

 

(知りませんでした)

 

 パクリと、一口頬張る。

 栄養を考えられた食品というのは、栄養のことしか考慮されていないことが多い。つまり、かなりの確率で味が酷かったりする。

 

 だが彼の作るそれは、違う。日々の活力になるような味をしていて、なおかつ栄養を完璧に備え切っていた。

 

(リギル……)

 

 トレセン学園最強のチーム。それがリギル。

 日本での最高峰が、トレセン学園。その中での最強ということはつまり、日本最強のチームということである。

 そこに、マスターがいた。それは高等部から編入してきた彼女にとって、未知の情報だった。

 

 ミホノブルボンも、一応勧誘は受けていた。もちろん、スプリンターとして。

 

(私は、マスターのことを知らない)

 

 ――――君が知る必要はない。君はただ今の俺を見て、信じて付いてくればそれでいい

 

 過去にそう言われたことがあるし、おそらく今でもあの人はそう思っているだろうと、ミホノブルボンは察した。

 それはそうだ。過去を一々知る必要はない。大事なのは、今なのだ。今指導してくれている彼を見て、知って、信じられればそれでいい。

 

 体内時計の調律をしてから急遽作ってくれたであろうノートを読み込み、同室のニシノフラワーの睡眠に合わせてやめる。

 電気を消して、ミホノブルボンは布団の中にするりと入った。

 

(マスター)

 

 明日は、きっと。

 きっと、ご期待に応えます。応えさせてください。期待してください。信じてください。

 

 身体に溜まっていた疲れが意識を溶かし、速やかにブルボンを眠りへと誘う。

 とろけるように眠って、ミホノブルボンはむくりと起きた。

 

(……マスター)

 

 今日こそは。

 するすると二段ベッドの上から下りて、着替えて早々坂路に向かう。

 

 当然のように、待ち人はそこにいた。

 この人は、いつ寝てるんだろう。少なくとも、ブルボンが練習に向かうと決まって、マスターはそこに居る。

 

「マシな顔にはなったな、ブルボン」

 

「マスター。今日はご心配をおかけしないことを約束いたします」

 

「そうか。まあ、そうであるに越したことはない」

 

 ウォームアップで身体を起こし、軽くジョギングして身体を慣らし、坂路を走る。

 いつものことを、いつも通りにする。そんな幸せを噛み締めながら1日を終えて、ミホノブルボンはややウキウキとしながら思ったことを口に出した。

 

「マスターは、リギルにいらっしゃったのですか?」

 

 その瞬間、マッサージをしていた指がピタリと止まる。

 

「ペラペラと意味もないことを喋ったのはフジキセキか」

 

「…………」

 

 余計なことを、と続きそうな語調に口を噤む。

 申し訳ありません、フジキセキさん。心の中でそんなことを思いながら、ミホノブルボンはマスターの次の言葉を待っていた。

 

「まあ、仕方ないから答えよう。事実だ」

 

「どなたか、担当されていたのですか?」

 

 例えば、フジキセキさんはどうなのだろうか。

 ミホノブルボンは、なぜ自分がそう問うたのかわからなかった。知りたいと思った理由が、わからなかった。

 

「担当、担当か。あいつはグラスワンダーとエルコンドルパサーを担当していたと言えるんだろうが――――」

 

 親しげに呼ぶ『あいつ』が、ライスシャワーのトレーナーであることは、なんとなく察せた。

 彼が雑に呼ぶのは、ライスシャワーのトレーナーくらいなものなのだ。

 

「俺は担当していたと言えばしていた。だが君に対してやってるような特別なことは何もしていないし、主な業務はリギルというチーム全体の分析と栄養管理、敵チームの分析と対策だった。だから担当と言われても、その認識は薄いな」

 

「どなたですか?」

 

 マッサージは、滞りなく続く。

 なぜここまで、彼が担当していたウマ娘のことを知りたいのか、ミホノブルボンはわからない。

 

 ただ、わかる。自分が何よりもその情報を欲している、ということが。

 

「知ってどうする」

 

「……わかりません。お話を聴きたいとは、思っています」

 

「なら無理だな。ここにいないやつから話は聴けまい」

 

 何かあったのだろうかとミホノブルボンは勘繰ったが、そうとは思えなかった。

 何かあったとなれば、彼の声色はやや暗いものへと変わる。だがあくまでも彼の声音は変化を見せない。

 

「どんな方だったか、お訊きしてもよろしいでしょうか」

 

「君と同じくらい不器用で一途なやつだったな。夢の為にはいくらでもバ鹿になれる、ある種の素質があるやつだったよ」

 

 お前もバ鹿。

 サラッとそう言われたが、ミホノブルボンは別段怒りもしない。

 いつか会ってみたいな、と。そう思うだけだった。




自給自足にも限度があるからウマ娘RTA流行らせコラ! 書きたい兄貴は何でも相談にのるしこの作品の設定使ってもいいから書いてくれよなー頼むよー(懇願)


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サイドストーリー:幻再び

 日本ダービー。ブルボンの夢の原点でもあるこの東京レース場で行われる、すべてのウマ娘の夢にしてすべてのトレーナーの夢。

 

 一生のうち、挑戦権を得られるのは一度限り。デビューから2年目、クラシック級に分類されるウマ娘のみが挑戦を許されるこの競走の格式は高く、歴史も古い。

 

 今年、この競走を優勝し歴史に蹄跡を残すのは誰なのか。

 

 それはやはりミホノブルボンであろうというのが、世間一般の認識だった。

 ミホノブルボンは、速すぎる。ホープフルステークスで得た人気は、ワールドレコードを叩き出した皐月賞で更に爆発した。おそらく2400メートルはそれなりにキツいだろうが、それでも問題なく勝ち切るであろうと。

 

 努力で成り上がったサイボーグ。

 そんな二つ名に圧倒的なレース結果、容姿の端麗さが合わさり、いまやミホノブルボンはトゥインクルシリーズを代表するスターウマ娘になりつつあった。

 

 繰り返しになるが、トゥインクルシリーズには国民的な人気がある。その中でスターということはつまり、国民的なスターということである。

 

 今や誰もが、彼女の夢――――クラシック三冠が達成されるところを見たいと思っていたし、信じていた。

 あと2つくらい勝てるだろう、と。去年のトウカイテイオーが為せなかった無敗の三冠を彼女なら達成できるだろう、と。

 

 無敗の三冠。

 

 現在リハビリに励むスターウマ娘・トウカイテイオー本人が『ボクは無敗の三冠ウマ娘になる』と連呼し続けたこともあり、トゥインクルシリーズのファンにとっては非常に聞き覚えがある単語である。

 

 去年、ファンたちはトウカイテイオーの無敗の三冠を見たがっていた。

 結果的にはトウカイテイオーは日本ダービーを勝った後に骨折して、菊花賞への挑戦すら叶わなかったわけだが、その『無敗の三冠』という言葉は呪いのように生き続けている。

 

 ファンたちは、見たいのだ。シンボリルドルフ以来の無敗の三冠を。唯一無二にして絶対の皇帝、シンボリルドルフだけのものだと思われていたその冠を被る誰かを。

 

 トウカイテイオーは、伝説という壁を壊した。無敗の二冠ウマ娘となり、無敗の三冠が不可能でないことを示した。

 だからこそ、望まれている。今度こその無敗の三冠を。そしてシニア級でシンボリルドルフと無敗の三冠同士が激突することを。

 

 だからこそ、ミホノブルボンはいっそ狂気的なほどに応援されている。先帝の無念を晴らすことを望まれている。

 

 ただ差し当たっての問題は東京レース場というコースそのものである。坂が多く起伏に富んだこのコースでは、通常2400メートルを走るよりも遥かに体力を使う。

 負けるとすればそこでスタミナを使い過ぎたからであろうと、専門家や有識者たちは予想していた。

 

「問題は敵の戦術だ。君ならば坂などは全く問題にならない」

 

「はい。マスターとのトレーニングにより『慣れて』います。全く問題はありません」

 

 そしてその一方で、走る当人たちはその辺りを全く気にしていなかった。

 ミホノブルボンは坂路に次ぐ坂路で鍛え抜かれたウマ娘である。東京レース場のような起伏の多い地形はむしろ得意だとすら言える。

 

「ダービーは勝てる。普通にやってもな。だからここで、菊花に向けての布石を打つ。君にも協力してほしい」

 

「はい、マスター」

 

「まず、俺の予想から話していく。いいか――――」

 

 話し、頷く。

 静かな時間が過ぎ、そして日本ダービーははじまった。

 

 《全てのウマ娘が目指す頂点、日本ダービー! 歴史に蹄跡を残すのは誰だ!》

 《1番人気はもちろんこの娘。ここまで無敗皐月賞ウマ娘、ミホノブルボン。ダービーの舞台で、アイネスフウジン以来の逃げ切りを見せるか》

 

 順当な結果だった。

 芝2000メートルまでなら最強。どこかで聴いたような称号を手にしたミホノブルボンは、たとえ調子が底であったとしても変わらず一番人気を手にしただろう。

 

 間違いなく、この時この瞬間で最も勝つことを望まれているのは、ミホノブルボンだった。

 

 《2番人気はこの娘、ナリタタイセイ。文句なしの打倒ミホノブルボン1番手です》

 

 ナリタタイセイは皐月賞では早期に食らいつきに行ってスタミナを切らし、着順も沈んだ。

 しかしなぜ2番人気かといえば、NHK杯の覇者だからである。

 

 NHK杯は芝2000メートル。そして開催場所はここ、東京レース場。そこでライスシャワー(2着)とマチカネタンホイザ(3着)を破って勝利した。

 

 因みにこの時のミホノブルボンはと言えばもらった時計を破壊し、現実から逃げていた頃である。ナリタタイセイはミホノブルボンが現実――――信頼するトレーナーからもらった物を僅か2週間で壊したという――――から逃げていたその時も、皐月賞で叩きつけられた現実と戦っていた。

 

 ナリタタイセイは、あくまでも勝利するつもりだった。

 

 ミホノブルボンは中山でしか中距離を走ったことがなく、経験の面で不安が残る。

 更に言えば中山の直線は短い。一方で東京レース場の直線は長い。直線が長ければ長いほど、好位に控えて機を見て仕掛けるような――――王道のレースを得意とする者には有利になる。

 

 つまり、東京レース場ではミホノブルボンは不利なのだと、ナリタタイセイとそのトレーナーは考えていた。

 

 《3番人気はライスシャワー。ホープフルステークスから大きく成長を見せた末脚に期待です》

 

 3番人気にあげられた漆黒のウマ娘、ライスシャワーはナリタタイセイの一歩後ろにいた。

 勝つではなく、負けたくない。追い越したいではなく、追いつきたい。

 

 だからこその、3番人気。彼女の闘争心は、まだまどろみの中にいる。

 

(勝つ)

 

 ナリタタイセイは7枠15番にすっぽりと納まったミホノブルボンを、闘志に溢れる眼差しで見た。

 芝でのレースは、最短距離を進める内枠が有利になる。彼女も4枠8番と最良の条件ではないが、大事なのはミホノブルボンより有利という点なのである。

 

 宇宙に思いを馳せるミホノブルボンは、視線に気づいたのか気づいていないのか、そういう素振りすら見せない。

 周りを気にせず、落ち着いている。相変わらずファンに手を振ったりなどといったサービス精神の欠片もないが、それでも大声援の殆どがミホノブルボンの名を叫んでいた。

 

(ナリタタイセイさん、凄い目……ライスにはあんな目できないよ……)

 

 目標を見据え躍りかかり、挑みかかるような獣の眼差し。自信と、闘志と、意地。それら全てを見てわかるほどに総身に宿し、ナリタタイセイはミホノブルボンのみを見つめている。

 

(怖く、ないのかな。ミホノブルボンさんは)

 

 あんな目で見つめられて。

 ライスシャワーはおずおずと、ミホノブルボンの集中力を削らないようちらりと見た。

 

 ミホノブルボンは、全く何も気にしていなかった。微妙に半開きした口から魂が抜けているのでは無いかと思うほどの、リラックス状態。

 

(凄い歓声……)

 

 ミホノブルボンの名がうるさく響く。

 こんな中でもし、他のウマ娘が勝ったとしたら。もし自分が、勝ったとしたら。

 

 彼女には、そういう経験がある。トレセン学園での入試レースでもそうだった。1番人気を得て、地元の後援会が総出で応援しに来ていた子を、ライスシャワーは一気に捲った。

 捲って、勝って。そしてその子はこの衝撃から立ち直れずにバ群に沈んでトレセン学園への入学を勝ち取れなかった。

 

 その時のブーイングが、ライスシャワーが受けた最大最強のざわめき、ブーイングである。

 これまでも、そして入試レース後でも1番人気を負かして、ライスシャワーは度々ブーイングを受けてきた。その結果としてレースに出るのが嫌になってしまい、彼女は半年間ほどサボった。

 

(怖くないのかな、タイセイさんは)

 

 入試レースの自分と同じ目に遭うかもしれないのに。

 いや、その比ではないだろう。それなのに、挑む。追う。駆ける。

 

(強いんだ。ライスと違って。ライスも……)

 

 その先に続くであろう思いを、ライスシャワーは呑み込んだ。帽子を深く被り直して、両手を祈るように合わせて前を見る。

 ミホノブルボンもまた、軽く首を回してから走る態勢を整える。ナリタタイセイも、同じように走る態勢を整えていた。

 

(ミホノブルボンさんもナリタタイセイさんも、そうするんだ。ライスも、そうしてみようかな……)

 

 そうしたら、強くなれるかな。

 

 周りの言葉に負けずに頑張って、勝って祝福を受けるヒーローに。

 周りの声援に負けずに立ち向かって、勝とうと足掻くヒーローに。

 

《さあ、優駿の門を駆け抜け、栄光を手にするのは誰か!》

 

 今、レースが。

 

《スタートしました!》

 

 はじまった。

 いつも通り誰よりも速く、ミホノブルボンが流星の如く前に出る。

 

(知ってるんだ! スタートが速いことは! 誰よりも巧いってことは!)

 

 だけどお前は外枠だ。その速さは、外枠としての不利を打ち消すだけに留まる。

 

 内枠が必ずしも有利になるというわけではない。だがここ東京レース場での日本ダービーでは、内枠が絶対に有利に働く。それが逃げウマならば、なおさら。

 

 ナリタタイセイは、織り込み済みの展開に歯噛みした。ここでスタートに失敗してくれれば、もっと理想のレース運びができるのに、と。

 

(付いていってやる。付いて、迫って、差し切って、追い越して、勝つんだ!)

 

 充分なリードをとったミホノブルボンが、内枠へとスライドしてくる。後続の邪魔になったと判断されない余裕をとった、コース取り。

 その最中にも、ミホノブルボンは一切後を振り向かなかった。

 

《ミホノブルボン、ナリタタイセイ、ホクセツギンガ。この3人が先頭集団を形成します。その他7人が一定の距離を保ち追走》

 

 ミホノブルボンが先陣を駆け、その後ろに2人。2人の後ろには前3人が垂れてくるであろう中盤で仕掛けるべく好位を狙うウマ娘たちが続き、最後方には最後に全てを賭けるウマ娘たちが続く。

 

 ミホノブルボンは、いつも通り走っていた。自分に迫ってくる2人など知らないとばかりに、涼しい顔で走っていた。

 

(こっちを見ろ! 影に怯えろ!)

 

 ナリタタイセイは、殊更に音を響かせてミホノブルボンを追う。その斜め後ろからホクセツギンガがナリタタイセイを追い、その後ろを徐々に上げてきた黒い影が疾駆する。

 

 はじまった時の横一線は既に崩れた。そして団子状態も崩れた。ミホノブルボンが崩した。

 皐月賞と変わらないようなペースで、隊列を思いっきり縦長に引き延ばしていく。

 

 400メートル延びた。坂が増えた。直線が延びた。そんなことは関係ない。

 そんな走り方で、ミホノブルボンは後続の17人を引き連れながら駆けていく。

 

 勝負は坂だ。

 そう思い走るナリタタイセイの目の前に、最初の坂路が開けていた。

 

(頭おかしいトレーニングしてることは知ってる! 見た! 聴いた!)

 

 だが、坂路ではどうしても速度は落ちる。正確無比なラップタイムこそがミホノブルボンの持ち味だからこそ、この速度の低下の繰り返しが積み重なれば致命傷になる。

しかしそれはナリタタイセイにとっても同じこと。彼女とミホノブルボンのどちらが坂で秀でるかといえば、それはミホノブルボンの方だ。

 

 だけどここで突き放されては、差しきれない。それほどの差をつけられてしまう。

 

(勝つ! 坂は耐えて、直線で差す!)

 

 ナリタタイセイは、全力で追走しながら覚悟を固めた。




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サイドストーリー:午睡から明けて

ちょっと前話の表現が拙く、タイセイさんの意図がいまいち伝わりきれていなかったので加筆修正しました。
あと活動報告を投稿しました。よろしければご一読のほどよろしくお願いいたします。



 東京優駿こと、日本ダービー。

 ここで、それまでサイボーグだの何だのと言われてきたミホノブルボンを表す渾名に、とある一節が追加された。

 それは今まで付きそうで付かなかった、とある渾名。

 

 ミホノブルボンほど、坂路で駆けたウマ娘はいない。

 ミホノブルボンほど、坂路で苦しんだウマ娘はいない。

 ミホノブルボンほど、坂路で成長したウマ娘はいない。

 

 これらの三条に、このとき新たに一つ加わった。

 

 ミホノブルボンほど、坂路に強いウマ娘もいない。

 

 彼女こそ『坂路の申し子』であると、人は言う。

 

(差が……)

 

 広がる。坂を登り降りするたびに。

 ウマ娘の発達した聴覚は、前を駆けるミホノブルボンが息を乱していないことを伝えてくる。そして同様に、自分が息を乱していることを伝えてくる。

 

 坂路トレーニングというものは、この頃あまり広く知られていなかった。効果も効能も、有用性も。

 

 知られていたのは、たった1つ。坂路を駆けるのは死ぬほど辛いということ。

 そしてそこから必然的に、坂路は心肺機能と脚力こそ向上させるがウマ娘のガラスの脚に負担をかけるものだという認識も広がっていた。

 

 だが、違う。坂路は脚にはあまり負荷がかからない。詳しく言うならば、脚で最も負荷をかけてはならない関節には負荷がかからない。

 そのぶん、鍛えたい部位に負荷がかかる。並の精神力では毎日、それも何回もやることなど耐えられないほどの負荷が。

 

 だがその負荷は、肉体を破壊するための負荷ではない。肉体を成長させるための負荷である。

 

 この二人の明暗を分けた原因は、いくつかある。スピード、スタミナ、精神力。だがその最たるものは、知識の差だった。

 

《ミホノブルボン、完全に抜け出した! だがここからは彼女の血が知り得ない、未知の世界に漕ぎ出します!》

 

 2000メートルを超え、最後の直線に入る。残り400メートルは、ミホノブルボンも、そして彼女の身に流れる短距離系の血にとっても知らない世界である。

 

 ――――ここからだ。

 

 ナリタタイセイは、確信した。

 残り400メートルに差し掛かった瞬間、これまで機械の如く一定の速度を保っていたミホノブルボンの速度が露骨に落ちた。

 一瞬で速度を戻したが、スタミナ切れはそこまで来ている。少なくともナリタタイセイは、そう思った。

 

 速度が戻った瞬間、星のような燦めきを宿す青い眼がナリタタイセイの方を向いた。今気づいたと言わんばかりの、反射の動作。

 

(やっと)

 

 見た。気にした。そのまま見てろ。ここからスパートをかけてやる。

 とっくに疲れ切った脚を動かすナリタタイセイの横を、黒い影が過ぎった。

 

(ライス、シャワー……!)

 

 逃げるミホノブルボンの青い目と、追うライスシャワーの紫水晶の瞳が合い、離れた。

 ナリタタイセイの後ろで静かに、静かに待っていたライスシャワーが前に出たのだ。

 

 掛かり気味に走っていたナリタタイセイの影。そこに暗殺者の如く静かに佇み、脚を溜め、駆ける。

 

(いつから)

 

 ナリタタイセイは、気づかなかった。追っていることを気づかせようとしていた本人が、追われていることに気づかなかった。

 

 序盤から終盤に至る今まで、向かい風をすべてナリタタイセイに受けさせて傘にしたライスシャワーは、前を走る彼女の速度が落ちたと見るや即座に仕掛けたのである。

 

 姿勢を低くし、溜めていた脚を解放して、ライスシャワーは完璧な差し切り態勢に入った。

 追われるミホノブルボンは、完璧な押し切り態勢に入っている。

 

《ライスシャワー追う! しかしこの距離は如何ともし難い! ミホノブルボン! もう大丈夫か、ミホノブルボン!》

 

 ミホノブルボンは、平静さを保っていた。

 反射的に見た。気にした。今まで気にしていなかった闇の中に怪物がいるのではないかという恐怖が、彼女にその無駄な動作をさせた。

 

 不可能を意味していたはずの青薔薇の蔦が、確かに後ろから伸びてきていた。

 その蔦を振り切って、目を切って、ミホノブルボンは大地を駆ける。

 

《ミホノブルボン、これは途轍もない強さ! 完璧な独走でゴールイン! 圧勝、圧勝です!》

《勝ったのはミホノブルボン! 差は8バ身! 堂々の走りで昨年のトウカイテイオーに続いて無敗の二冠! しかしライスシャワーもよくやりました! あと少し距離があれば! そう思わせるだけのレースをしました!》

 

 そう。あと少しの距離があれば。

 あと600メートルあれば、もう少し詰められていた。負けることはなかったにしても、圧勝とまではいかなかった。

 

 ミホノブルボンは、珍しくくるくると身体ごと視界を回した。

 いつもなら、わかるのだ。どこでマスターが見ていてくれるのか。ゴール直前に、わかる。わかるからそちらを向ける。

 

「ブルボン」

 

 大歓声の中でも、その静かな声はよく響いた。栗毛の尻尾がパタパタと上下し、即座にくるりと向きを変える。

 やっと見つけた鋼鉄の眼は、言っていた。言いたいことはわかる。だが今は、お前のやるべきことをしろ、と。

 

 ミホノブルボンは、手を振った。応援してくれた人たちに向けて一礼して、また手を振って、そして控え室に帰った。

 クールダウンをして、マッサージを受けて、その間も喋らない。

 

 行ってきます。

 行ってこい。

 

 そんなやり取りをしてウイニングライブに向かい、完璧な歌と踊りを披露したあとの車の中。

 

「落ち着いたか」

 

「はい、マスター」

 

 エンジンがかかる。アクセルを軽く踏み込んで、男は静かに口を開いた。

 

「言いたいことはわかる。ライスシャワーだな」

 

 猛追。あの音もない進出と追撃には、まさしくその名が相応しい。

 

「俺はライスシャワーの肉体的な能力を評価していた。それはつまり、君が後天的に得ようとしていたものだからだ」

 

「はい」

 

 ロングスパート。強い脚とスタミナに物を言わせた、好位からの猛追。

 誰もが夢想する理想のステイヤー。ライスシャワーは、そうなれる素質があった。

 

「君とライスシャワーは正反対なのだ。ライスシャワーに必要なのはメンタルであって、肉体的な成長ではない。君に必要なのは肉体的な成長であって、メンタルではない。素質もそうだ。ライスシャワーにはスプリンターとしての素質がまるでなく、君にはステイヤーとしての素質がまるでない」

 

 メンタルと言っても、ライスシャワーには芯の強さはある。自分の実力に対しての自信もある。

 より正確に言うならば、闘争心と言うべきだろうか。勝ってもブーイングを受けてきたライスシャワーは、本来備えていたはずの闘争心が欠けているのだ。

 

「君はあのとき、残り328メートル地点で振り返った。らしからぬ行動をとった――――とらせた、その原因はなんだ」

 

 先頭に立つウマ娘が後続を振り返るのは、よくあることである。だがミホノブルボンに限っては、それをしない。

 

 彼女は、覚えている。『どんなレースであろうとレコードを出せば勝てる』と言われたことを。

 彼女は、信じている。『どんなレースであろうとレコードを出せば勝てる』と言ったマスターの言葉を。

 

 そして自分が出せるであろうということも、信じている。その信頼はこれまでの努力に根ざし、未来の光に向けて枝を伸ばすものである。

 正統で、根拠のある、確固たる自信。現にミホノブルボンはこのレースでも、レコードを叩き出した。圧倒的に不利な外枠だとしても、ミホノブルボンはオーダーを忠実に履行した。

 

「蔦が見えました」

 

「つた?」

 

「私を絡めとろうとする茨の蔦です。抽象的なイメージを伝播させる愚を懸念して報告していませんでしたが、私は最後のコーナーを曲がったあとに、星空に包まれるような感覚を覚えます。何物をも存在しない宇宙を駆けるような、全能感を得られていました」

 

「なるほど」

 

 信じてくれるだろうかと、そう疑っていたわけではない。

 だがミホノブルボンが述べた感覚は、幻覚とすら呼べるほど幻想的で、その癖妙なリアリティを持ったものである。

 

 だがその『それは君の錯覚だよ』と流されそうな言葉を、彼はいとも容易く受け入れた。

 

「信じてくれたのか、という顔だな」

 

「……マスターはこう言った抽象的なものを好まれません」

 

「好みはどうあれ事実を受け入れるのがトレーナーというものだ」

 

 トレーナーというのは先入観とか前提とか、そういったものを持つべきではない。

 大事なのは、私心のなさだ。

 

 トレーナーにとって最も大事なことは、と記者に訊かれた時、彼はそう言った。

 

「俺は今日の専門家でいたいと思うし、明日の専門家になりたいと思う。そして、昨日の専門家のままではいたくない。しかし専門家というのは、昨日の専門家になりがちだ。その原因はありのままを受け入れないからだと、俺なりに思うわけだ」

 

 信号待ちの時間になにやらチャットツールを起動し、文字を打ち込んで送信する。

 暫しのドライブのあと学園について、ミホノブルボンは脚にかけていた毛布を手で掴んでから手袋のようにして車のドアを開けた。

 

「よし、行くぞ」

 

「はい、マスター」

 

 目的の発表もなしに唐突に歩き出すマスターに、何も訊かずに付いていくウマ娘。

 

 ――――えっ、どこに? なにしに? なんで訊かないの?

 

 そんな周りの視線を集めながら、二人はトレセン学園の本校舎に入った。歴史の深さを感じる飴色の木階段を上がり、更に奥へと進む。

 

 

 生徒会室。

 

 

 ミホノブルボン自身はまるで意識したことはなかったが、そこには彼女が王手をかけている『無敗の三冠』を為したウマ娘がいる。

 

 理事長室と並ぶ近寄りがたい部屋を、トレーナーは無造作に開けた。

 瞬間、雷撃のような威圧感がミホノブルボンの身体を通り過ぎた。

 

 

 ――――この先には、上位者がいる

 

 

 威光、というべきか。

 大聖堂を前にした信徒が祈りを捧げるような――――というのは、正しくはないように彼女には思えた。

 もっと生々しい、無機物のように圧巻にして重厚でありながら機械的でない、絶対者としての生物的なエネルギーを感じる。例えるならばそれは、皇帝のような。

 

 

「――――ようこそ、ミホノブルボン。領域へ」

 

 

 覇気のある声だった。眼差しは鋭く、誇り高い。

 上位者の、更に上。ミホノブルボンが平民だとするならば、貴族を束ねるのがこのウマ娘。

 

 無意識に揺れた尻尾を隣に立つトレーナーの手に巻きつかせながら、ミホノブルボンは仰ぎ見る。

 

「私の名はシンボリルドルフ。君が入った世界というものを、おそらくは最もよく知る者だ」




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オペレーション:『領域』

 本来の主人公と邂逅を果たすRTA、はーじまーるよー。

 さて、前回は日本ダービーを制し二冠達成。三冠まで残るはクラシック路線の終着点・菊花賞のみとなりました。

 

 はじまって早々、ミホノブルボンとコミュを取ります。

 視聴者兄貴は○連打によって飛ばされてわからないと思いますので解説いたしますと、このイベントはミホノブルボンがライスシャワーの怖さに気づくイベントです。

 

 全お兄さま・全マスターからすれば今更ァ!?って感じですが、今回のライスシャワーは8バ身差の2位。ここまでずっと大差勝ちしてきたミホノブルボンに、はじめて数値化できるところまで肉薄してました。そのあたりが気になったのでしょう(予測)

 

 レースで得た会話のヒント【ライスシャワー】を使って、選択肢を作成。選択します。

 

【ライスシャワーだな】

 

 ここ、会話をせずに黙っているという選択肢もありますが、そちらは菊花賞に向けての対策イベント【ソリューション:不安】が潰れるルートなので却下。

 

 ここで【ライスシャワーだな?】という選択肢を選んだ場合、結果は二択に分かれます。

 なんでもないとして相談してくれず誤魔化されるルートと、自分の感じた違和感や恐怖を打ち明けてくれるルートです。

 

 信頼度によって確率が変動しますが、なんでもないと言われたときはここから怒涛のストーキング&遊びで信頼度を上げて理由を聴き出し、なんとしても夏合宿までにはイベント【ソリューション:不安】を起こします。

 

 ブルボン、お前も不安にならないか?(ひろがるトラウマ)

 

「蔦が見えました」

 

 ん?(困惑)

 これは……クスリでもやってらっしゃる?と思われた視聴者兄貴も居られるとは思いますが、誓ってクスリはやってません。

 

 これはあれですね。【ソリューション:不安】と【領域】の複合イベントです。

 ブルボンは大抵菊花賞を超えるとこの【領域】イベントが起こるんですが、今回は結構早かったみたいです。

 

 ちょっと解説しますと【領域】イベントはアプリ的に言うならば、☆2から☆3へ昇格して固有スキルを強化するためのイベントになります。

 おっ、待てぃ。ブルボンは最初から☆3だゾ、という指摘はもっともだと思いますが、これは比喩です。

 

 つまりこのゲームはソシャゲではないので、ガチャがありません。なので基本、全キャラがゲームで言う☆2の状態からはじまります。

 アプリをやってる兄貴たちはわかると思うんですが、固有スキルは☆2から☆3にすることで進化します。この場合の進化が、この【領域】イベントです。

 

 なので当然、今のブルボンが持っている固有スキルは、本来の性能ではありません。ダスカでいうところの【レッドエース】、ゴルシでいうところの【波乱注意砲】。つまり羽化する前の蛹みたいな状態です。

 まぁ、マルゼンスキーとかシンボリルドルフとかそういったところは最初っから蛹なんかにならず羽化してるんですけどね。チートがこの野郎……(原作再現)

 

 ともあれ、【ソリューション:不安】のイベントは発生しました。最初のイベントさえ起こればあとは自動で進んでいくので一旦ロバロバの中に置いておいて、能動的に起こせる【領域】イベントを進めます。

 

 この【領域】イベントを進めるキーを持つ、イカれたメンバーを紹介するぜ!

 

 我らがカイチョー、シンボリルドルフ!(チート)

 ナウでヤングなお姉さん、マルゼンスキー!(チート)

 汚い声(褒め言葉)の白い稲妻、タマモクロス!(チート)

 みんな大好きダートエース、スーパーウマ娘オグリキャップ!(チート)

 

 

 チートばっかじゃねぇかよお前んち……というのは抜きにして、この四人の誰に頼むかですが、私はタマモクロスに頼む予定です。

 

 シンボリルドルフはイベントを確定2ターンで完走させてくれますが、彼女自身がクソ忙しいので不定期な不在期間がちょこちょこあり、一々カーソルを移動させて居るかどうかを確認して生徒会室へ訪問、ということをしなければなりません。

 (信頼度が高ければ不在になる確率が下がりますが、博打みたいなことしたく)ないです。

 

 マルゼンスキーは相性によって最速1ターンで終わらせてくれますが、ドライブでやる気が下がったり、そもそも学園に居なかったりとガバの温床。ミホノブルボンとも相性があまりよろしくないので却下。

 

 タマモクロスは家の手伝いとかでちょこちょこ不在期間がありますが、基本的にずっと学園にいます。最速4ターンとやや遅いですが、まあ許容範囲内かな、と。

 

 オグリキャップは説明が下手なのかそれとも感性が独特なのか、最速で6ターン。

 地方トレセンからきたウマ娘をパートナーにしてると最速3ターンまで縮まりますし、不在期間がないというメリットもありますが、イベントを起こすたびにかなりの金が飛んでいくのでここは安定のタマモクロスに、という感じですね。

 

 まぁ、カイチョーが今暇だったらあと1回引けばいいだけなんで、ちょこっと確認してみましょう。

 これ一応RTAなので、短縮要素を探すために時間をかけるのはどうなの?と思われそうですが、やはり最速4ターンと確定2ターンでは訳が違います。

 

 RTAとはいえゲーム内時間にして約3000年を共に過ごした仲ですし(存在しない記憶)、そこのあたりにも期待して生徒会室を覗きます。

 

 

 ……あ、いた。

 居ましたね。ひょっとしてカイチョー、ひ・ま?(願望)

 ということでアポイントメントとっていざ鎌倉! 生徒会室へと向かいます。

 

「ようこそ、ミホノブルボン。領域へ」

 

 かっこいい(ヒヒーン)。

 こんなイケメンが隙あらば寒いダジャレを言ってきて、休日になればクソダサTシャツを漁りに行くわけないよなぁ!?

 

 ずっと隣にいたこともあってこうしてカイチョーと相対するのはめちゃくちゃ久しぶりですが、流石にカイチョーの会話パターンは知ってます。

 会話コマンドの焦点は耳。隣で緊張してることを如実に伝えてくるブルボンの尻尾と違い、名門のウマ娘はあまり尻尾に感情が出ません。ついでに言えばカイチョーは腹芸がお上手な方なので顔にも出ません。

 

 だったらどうするかと言えば、耳に会話カーソルを置き続けて情報を集め続けて選択肢を増やし、正答を選び続けるだけです。

 

 取り敢えず実演していただいたので、あとは翌日以降にカイチョー直々の講義を受ければイベントは完走ということになります。

 

 いいだろお前3000年来の仲だゾ、と存在しない記憶を使ってゴネてみますが、まあ無理だと思われます。カイチョー忙しいので。

 

「そうだな……明日の昼休みに共々連れ添って来るといい。時間を作っておこう」

 

 ひょっとしてマジで暇なのかこの人……というのは置いておいて、これは僥倖です。

 天才型ではじめると経歴に確率で『元リギルのサブトレーナー』と付くので、今回はそういうことだったのかもしれません。愛嬌×なあたり信頼度は稼げていないと思ってたのですが、相性値が近いからボーナスが付いたのかも知れませんね。

 

 プレイヤーの相性値はランダム生成される上にマスクデータです。

 もっともスカウト前にセーブしてウマ娘に話しかけ、初期スカウト値を見てリセット、また別のウマ娘に話しかけ、初期スカウト値を見てリセット、という方法を繰り返せば確かめられますが、今更確かめるのは無理。諦めましょう。

 

 ということで夜は休ませます。【領域】イベントで体力が-30されなければここでも練習してました。鬼ですな(他人事)

 

「マスター。まだ、いけます」

 

 もういけない。

 

 ミホノブルボンが珍しく練習志願してきましたが無視。稀少な自発性を怪我率12%のここで発揮しないで(懇願)

 この練習志願を聴いてあげると練習後にやる気が1段階と能力がちょこっと(+5)上がるので普段なら諸手を上げて喜ぶんですが、万が一にも怪我するわけにはいかないので不許可。

 

 体力+5&信頼度がちょびっと下ります。いたい(切実)。ただでさえ上がりにくいんだから勘弁してくれや……

 

 んじゃ、休みましょ。

 

「マスター。練習の許可を」

 

 お前どんだけ練習したいねん……(困惑)

 ミホノブルボンはその気性の従順さから追加練習イベントと練習志願イベントが起こりにくいようになってます。要は自発的な発案をあまりしてこないわけです。

 この対極にいるのがダスカとかスズカですね。やつら、死ぬほど積極性に富んでます。

 

 そういう手合ならともかくブルボンで夜→朝と発生するって乱数どうなってるんですかね……まあプレゼント破損事件で下がったやる気がこれで戻ったからいいけれども。

 

 じゃあ昼休みだしカイチョーのところに行きますか。

 

「やあ、参謀くん。君らしく、プラスもマイナスもない時間通りだな」

 

 愛称呼び+くん付け+君らしくってことは信頼度結構ありますね。耳の動きとか見るに109とか? 尻尾が動いてるから+2して111かな。きっと、たぶんそうだと思われます。

 

 誤差? 1か2くらい(絶対の自信)

 

 じゃあつまり前のターンも運が良かったとかではなく、信頼度が高かったが故の必然だったわけですか。どのみちシンボリルドルフの信頼度は上げておいて困ることは……まあ1つありますが、これ以上あげなければ問題ないからいいや。意識して避けるほどでもないでしょう。意識しないと会えないですし。

 

「では、はじめようか。ミホノブルボン。領域とは――――」

 

 長いので省略。

 領域とはつまり、スポーツで言うゾーンです。ある特定の条件(ミホノブルボンで言えば出遅れず掛からないこと)を達成することで発生します。

 発生するタイミングはたいてい終盤だけど、例外あり(スマートファルコンなど)。通常のスキルより性能がクソ高い。

 精度を高めることで自分の理想とする景色、原点となる景色を見ることができ、そうなれば効果は上がる。こんな感じです。

 

 カイチョーは『じっくりと君の原点を探ることだ』とか言ってますが、固有スキルを進化させるぶんにはそんなもんはいりません。このイベントが起こった時点で固有スキルは進化しています。

 じゃあカイチョーは無駄なことを言っているのかといえば、そうではありません。原点を探るってどうたらこうたらと言うのは、固有スキルのレベルを上げたほうがいいよということですね。まあこれも、普通にプレイをしていれば何をすることもなく上がっていきますので気にすることはないです。

 

 ありがとう皇帝! このあとの夏合宿ではライスシャワーにブルーローズチェイスを仕掛けてエクストリームハイパーストーキングおじさんになるからもう会うことはないだろうけど元気でな!

 

 と軽快な挨拶を残して生徒会室の扉を選択。

 んじゃ、帰りましょ。

 

「参謀。ちょっといいかしら」

 

 アイエエエ! ハナサン! ハナサンナンデ!?

 となったところで、今回はここまで。ご視聴、ありがとうございました。




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オペレーション:夏合宿

RTAの姿か? これが…


 人の成長とは未熟な過去に打ち勝つことだということを伝えたいRTA、はーじまーるよ。

 

 前回は夏合宿直前、ライスシャワーストーキング宣言をしたところ、おハナさんにとっ捕まったところまでやりました。まだやってないだろ! いい加減にしろ!(保護拘禁)

 

 まあ言うほど慌ててませんけどね。シンボリ・カイチョー・皇帝・ル=ドルフさんの信頼度からほもくんがリギル関係者だったことは察してましたので。

 こんなこともあろうかと、スピカ関係者だった場合、リギル関係者だった場合の対策はチャートにちゃーんと記載済みです。

 

 カノープス? (天才型を引く以上カノープスである可能性は)ないです。

 

「貴方、夏合宿は誰とやるつもり?」

 

 知ってた。というところで、夏合宿の説明をば。

 夏合宿はすべての練習レベルがMAXの状態で行える神イベントです。期間は7月1週から8月4週までの8ターン。フェイズ換算だと24フェイズ。

 しかしこの神イベント、1つだけ問題があります。それがミホノブルボンで言うところの坂路練習、カイチョーで言えばダジャレ100連発ができない。つまりウマ娘固有の練習を行えない、ということです。

 

 なのでライスシャワーをストーキングして絆ポイントを稼ぎつつ、ここで賢さと根性を盛りまくります。夏合宿に来てやることがクイズ大会……普通だな!(錯乱)

 

 そして夏合宿前に、こうやって勧誘を受けることがあります。僕たちのチームと一緒にやりませんとか、僕たちとやりませんかとか、そんな感じですね。

 今回はおハナさん率いるリギルとの合同合宿に誘われたと。そういうわけです。

 

 リギルと合同合宿をすると様々ないいことがあるので普段ならここでの選択肢は【参加する】一択なんですが、ライスシャワーが来ない可能性がある以上頷くわけにもいきません。

 なぜライスシャワーに来てほしいのか?それは彼女とブルボンが絆を深めることで長距離適性を上げてもらえるからです。

 

 ということで、選ぶ選択肢は【ライバルも誘っていいかと訊く】。ライバル設定されたペアを環境的に出し抜きたくない、的な選択肢です。

 

「相変わらず公正な男ね。もちろん彼にも声を掛けてるわ。彼は貴方次第だと言っていたけど」

 

 おろ。ということはあの脹相(ウマ娘)って同期で同僚でライバルなんですかね。

 ……仲良さそう。まあ、その仲良しと絆を結んだウマ娘を蹴落としていくのがレースというものなんですが。

 

 となると了承一択です。正直愛嬌×を引いた時点でリギルとの合宿は諦めてたんですが、これは良い上振れ。持つべきものは権力者の友人です。

 

「そう。では、リギルの合宿所に来なさい。場所はわかっているでしょう?」

 

 チャートにちゃーんと書いてありますよ(激ウマ天丼)

 

「ならいいわ。リギルの一員としての夏合宿。働きに期待しているわよ」

 

 こういうこと言われた以上なにかイベントがあるのでは……ロス要素があるのでは……となりますが、特にありません。普通に設備を借りて練習するだけです。

 

 まあ裏で練習メニューやら食事メニューやらを考えているのかも知れませんが、ロスがなければ何でもいいです。ほもくんならどうとでも使ってくれい。

 

「マスター、合同合宿ですか」

 

 そうだよ(皇帝)。などという激ウマギャグを挟みつつ、昼フェイズが終了。

 夜フェイズは練習して、6月4週まで進めます。現在の残り体力は28%くらい。ここは今まで全然やってこなかった賢さ練習を1回して、合宿所まで脹相と一緒に行く約束をしてから休んで合宿に向かいます。

 

 はい、何事もなく朝ターンになりましたので、車に脹相とライスシャワーを乗っけて、到着。

 こうすることでライスシャワーとミホノブルボンの絆が上がる……ことがあります。まあ合宿前の体力調節ついでにやらないよりマシということで。

 

「いつもいつも悪いな」

 

 (脹相は運転スキルがEだから)しゃーない。この借りは菊花で返してくれればええで(本音)

 因みにほもくんは割と多才です。今までRTAに直接関係するスキルしか見せていませんでしたが、ウマ娘との信頼度を上げられたりストレス値を下げたりすることができる【運転】スキルと【料理】スキル、練習後に体力を微回復+信頼度を上げる【医術】、プレゼントを自作できる【工作】をどれもB〜Aという高いランクで保持してます。

 

 まあ、このRTAではオート発動する【医術】と【料理】以外は使いませんけどね。これからこのゲームをやる人は日常系スキルを厳選してみると、なかなかに快適なウマ娘とのイチャラブライフを送れますよ。

 

 ついでに言わなくてもわかると思いますが、このRTAに桃色要素はないです。諦めよう。

 

「さあ、合宿をはじめる!」

 

 さあ、おハナさんの号令と共に合宿開始。この期間中の練習にはおハナさんの【合理徹底】(練習効果10%↑)、ほもくんの【管制官】(練習効果15%↑)と【指導上手】(怪我率20%↓)、脹相の【モチベーター】(やる気効果アップ、絶好調固定)、【指導巧者】(怪我率10%↓)が発動しています。つよい。

 

 というかクッソ有能なスキルである【管制官】はいつ付いたんですかね(ガバ)。

 メッセージを飛ばしまくってたら見忘れるという、アプリ版での切れ者現象が起きてます。

 

 トレーナーのスキルは付いた報告がメッセージでしかされないので見落としがちなんですよね。ウマ娘のスキル獲得はボイスが付いてるのでわかりやすいんですが、連打が早いのも考えものです。

 

 なにか大事なこと読み飛ばしてそう……そうじゃない?

 

 まあ今更どうしようもないので忘れることにしましょう。取り敢えず賢さ練習が得意なカイチョーとフジキセキが賢さ練習にいれば賢さ練習に、居なければライスシャワーを追います。

 ライスシャワーはたいてい根性練習にいるので、足りない長距離適性と根性を補えて一石二鳥。

 

 おっ、早速カイチョーのイベントが起こりました。一緒に賢さ練習をするとこれまでの経験を話してくれるやつですね。

 (賢さ+20は)うん、おいしい!

 

 次はライスシャワー。次もライスシャワー。次もライスシャワー。賢さ挟んでライスシャワー……と言ったところでイベント発生。

 

 憧れてた。追いつきたいと思ってた。だけどそれじゃあ勝てないから、追い越したいから、菊花で勝つ。そんな感じのイベントですね。

 これで長距離適性がA! いやぁ長かった! これでもうガバは起こらない! 起こりません!

 

 折角ですし、残りはカイチョーを追って絆を上げていきますか。中距離適性か芝適性がSになるかもしれませんし、カイチョーは様々なデバフ技を教えてくれます。

 

 お誂向きにカイチョーの横にはビックリマーク。コツを教えてくれるらしいです。

 《地固め》、《先行けん制》とか……いただけないでしょうか?

 

【ミホノブルボンは《束縛》のコツを掴んだようだ! 《束縛》のコツレベルが2上がった!】

 

 《束縛》。中距離専用スキル。効果、前方のウマ娘の速度を下げる。

 

 いらない。圧倒的にいらない。

 このスキルはアプリ版から発動条件が大幅に変更されてめちゃめちゃ使いやすくなりました。差しとか追い込みだけでなく、先行でも余裕で使えるようになりました。

 

 しかし、逃げは束縛をかけるであろう誰かの後ろにいません。ついでに言うならば逃げが誰かの後ろにいたらそれは負けです。デバフが発動しようが何しようが無駄です。

 まぁ何かの役に立つかも知れませんが、今のところはいりません。それより普通に使える《地固め》とライスシャワー対策の《先行けん制》ください。特に《地固め》。逃げは序盤にいっぱいスキル使うから《地固め》が欲しいんです。

 

【ミホノブルボンは《束縛》のコツを掴んだようだ! 《束縛》のコツレベルが2上がった!】

 

 祈りが天に通じたのか、見事2回目の束縛を引きました。いらないって言ってんだろうがよ(声だけ迫真)

 

 ……はい。今回も賢さ、そしてビックリマーク。3回連続3回目のカイチョーチャレンジです。

 正直パチンカス理論によればここ2回のクズ運を考えるに次こそいいスキルが来るはずですが、正直信頼できないので《束縛》をとっちゃいます。とっちゃえばコツをゲットすることもないので。

 ついでに金スキル《先手必勝》と《逃げ直線》、《逃げコーナー》。師匠からもらった《先頭プライド》、《勢い任せ》を取得しておきます。

 

 《束縛》は正直いらないスキルですが、《地固め》はかなり優秀なスキルなんですよね。他のデバフでもいいから、何某かゲットしておきたいところ。

 

 頼むよ〜(懇願)

 

【ミホノブルボンは《地固め》のコツを掴んだようだ! 《地固め》のコツレベルが2上がった!】

 

 はい。やりました。束縛ロボブルボンが束縛地固めロボブルボンに進化です。字面やばいけど関係ないからセーフ。

 そして迎えた8月3週。この夏合宿で賢さが2倍に増えたブルボンが、トコトコとやってきました。

 

 どしたん。

 

「マスター。夏祭りが開催されるとのことです」

 

 【行こうか】

 【行ってくるといい】

 

 これ選択肢は二択ですが、効果的には四択です。なんでかというと、信頼度で選択肢の効果が変わるんですね。

 

 信頼度100以下だと上を選べばどれかの能力+10と金銭消費。下を選ぶと信頼度アップ。

 信頼度100以上で上を選ぶとやる気と信頼度と全能力が+10、下を選ぶとやる気ダウンと信頼度ダウン。

 

 信頼度150以上でまた違うイベントが起こりますが、今回は関係ないので解説しません。

 そしてここは信頼度が欲しいので、下を選びます。

 

 【ミホノブルボンはしゅんとしてしまった】

 【どうやら傷つけてしまったようだ……】

 

 なんで? なんで? なんで?(エラー)

 え、なんで??? なんで信頼度100超えてるの?

 

 というか耳と尻尾のたれ方が絶不調のときのそれなんですけど! 練習が!

 チャートが……って、大丈夫か。脹相のモチベーターで絶好調から下降しないし。

 

 信頼度が下がったのは痛いですが、この時点で100を超えているならばこれ以上上げる必要もありません。例の誕生日イベントをこなせばまた100に戻りますから、まあ無理なくリカバリできる範囲です。

 

 だからガバではない(断言)

 

「……マスター。私はマスターと一緒にお祭りに行きたい、です。遅くなっても短くても構いません。お仕事が終わってからでもいいので、一緒に行っていただけませんか?」

 

 【構わない】

 【駄目だ】

 

 …………RTA的にはこれ、断るべきなんですよね。イベントが長いので。

 だから本来、信頼度は夏合宿までは100以下に抑えるべきだったんです。CG付きイベントだから○ボタン連打で飛ばせないし。

 

 ……

 …………

 ………………あっ、連打癖が。つい上の選択肢を押しちゃった。

 

「それは……本当、でしょうか」

 

 本当だよ(曇りなきガバ)

 

「ありがとうございます、マスター。感謝いたします。用意して待っていますので、いつでもお声がけください」

 

 ……はい。

 ここからすっぽかすという鬼の所業もできますが、流石にそこまで人間性を捨てられないのでおとなしくミホノブルボンのところに向かいます。

 練習選択とかその場での能力調整とかがいらないぶん、このRTAは現時点で世界記録との差が25分。更新待ったなしです。だからガバをしても、多少はね?

 

「マスター、お待ちしていました」

 

 はい、CG1枚目。ユカタブルボンです。ユタカではない。かわいい。そして悲しい。

 

「コース取り、位置取り、露店の巡り方。空き時間に巡り、事前に計算しておきました。最上の効率をお約束いたします」

 

 いつもの右手を前に突き出すポーズにも心無しかキレがあるように見える(錯覚)

 

 ワシにとって最上の効率はお主と夏祭りに行かぬことじゃ……と今更言っても仕方ないので諦めます。せっかくだから信頼度200でも目指しますかね(オリチャー)。

 

 会話コマンドを起動して白い浴衣にカーソルを合わせて会話のヒントを取得。

 【その浴衣は?】とでも訊いてみましょうか。

 

「お父さんから送っていただきました。移動には不向きですが、『場の空気に合った』ものであるかと」

 

 ここで足元にカーソルを合わせて、会話のヒントを取得。【転びそうになったら危ないから】と手を差し出します。

 

 いいだろお前夏祭りだぞ(支離滅裂)

 

「……はい、マスター」

 

 繋いだ手を引っ張りながら夏祭りに向かうブルボンのCGが表示されたところで、○ボタンを連打。最後の花火CGを回収したところで、今回はここまで。ご視聴、ありがとうございました。




123G兄貴、シガラキ兄貴、必勝刃鬼兄貴、ベルク兄貴、音無兄貴、ガンバスター兄貴、えのき茸兄貴、ガリガリ栄養失調トレーナー兄貴、Nazz兄貴、踊るモルモット兄貴、障子から見ているメアリー兄貴、終焉齎す王兄貴姉貴、さけきゅー兄貴、ESAS兄貴、星ノ瀬竜牙兄貴、志之司兄貴、すらららん兄貴、fumo666兄貴、サガリギミー兄貴、め玉マ玖兄貴、JORGE兄貴、餡堂夏兄貴、拓摩兄貴、11兄貴、レギ兄貴、zexi兄貴、すまない兄貴、初見兄貴、ライセン兄貴、一般通過ガバ兄貴、主犯兄貴、Jupiter兄貴、五穀米兎兄貴、クリストミス兄貴、take3812兄貴、がんも兄貴、KAIKI兄貴、zenra兄貴、非水没王子兄貴、くお兄貴、ステーキ大好き兄貴、まーか兄貴、感想ありがとナス!

noxlight兄貴、VISP兄貴、涼介三等兵兄貴、AC9S兄貴、RURL兄貴、kotokoto13兄貴、ppm332兄貴、霜月ハク兄貴、taniki兄貴、不理尽な味噌汁兄貴、赫棘兄貴、けれすけ兄貴、久遠 篝兄貴、べいく兄貴、SCI石兄貴、ヨーマンの橋兄貴、評価ありがとナス!


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サイドストーリー:領域縮小

 シンボリルドルフというウマ娘は、格が違う。

 ミホノブルボンは尻尾を触ってその存在を確かめながら、素直にそう思った。

 

 領域。自分も度々入っている、過集中空間。ゾーンらしきもの。

 

 厳しい古城のような、光差す聖堂のような空間に屹立する玉座、轟く雷霆。

 

 ぼんやりとした星と、闇夜のような宇宙。未だ漠然とした自分の領域とは、情報の濃度も密度も違う。

 支えにする物も、目指すべき場所も、全てを把握してそこにいる。だからこそトレセン学園の生徒会長を務めているのだと、ミホノブルボンは言われずともわかった。

 

 ――――茨の蔦

 

 それがおそらく、ライスシャワーの領域の片鱗。どことなく領域があやふやな自分とは違い、あの時に見たそれは確かな目的を持っていた。

 

 三冠ウマ娘になる。

 その目標は、ミホノブルボンにとっては遥か遠いものだった。だが今となっては、手を伸ばせば触れられるほど近くにある。

 

 これからというものを、考えるべきときが来たのかもしれない。

 ミホノブルボンは、そう思った。

 

 なぜ、自分の領域は宇宙なのか。

 それは宇宙を駆ける戦闘機のように速くなりたいと思ったからだろうと、ミホノブルボンは思っていた。

 

 だが、違う。勿論あのときテレビで見た戦闘機のように速くなりたいというのは嘘ではないが、本質的には違う。

 なぜ、宇宙なのか。それは、目標が遠かったからだ。あまりにも遠い、道すら見つけることができない目標に向かって駆けてきたからだ。だから未知の象徴である宇宙が、自分の領域になった。

 

(思えば、最も深く領域に潜れたのは皐月賞のときでした)

 

 皐月賞。クラシック路線の初戦、中山芝2000メートル。

 あの時のミホノブルボンは、なんの疑いもなく自分ならば未知のソラを駆けられると思った。クラシック路線という、遥かにあって存在しか知らなかった夢を駆けられると。

 

 日本ダービーでは、領域に潜るのが遅れた。しかもやっと入った領域には浅さがあって、その結果ライスシャワーの猛追に動揺した。

 

 ライスシャワーの猛追が、皐月賞のときに起こっていたらどうだろう。

 

 意味のない仮定ではあるが、ミホノブルボンは言い切れる。あの時の私であれば、歯牙にすらかけなかっただろう、と。動揺することもなかった。振り向くことも、なかった。

 

 実力は上がっている。それは間違いない。あの時の私は、今のように日本ダービーでレコードを出せなかった。

 だからこそ、わからない。実力が上がると共に、領域が浅く、小さくなった理由が。

 

「未知の航路を征く挑戦者ではなくなったからだろう」

 

 わからなくて、わからなくて、わからなければならないと思った結果、ミホノブルボンは最も信頼する人に相談を持ちかけた。

 新しく与えられた部室の掃除をしながら、彼女のマスターはたったの一拍も置かずに答えを出した。

 

「宇宙というのは、君にとっては未知と挑戦の象徴だった。君はこれまで、目標に進むだけだった。挑戦者だった。1600メートルは無理だと言われ、2000メートルは無理だと言われ、2400メートルは無理だと言われた」

 

 ――――言い方は悪いが、俺と君以外は誰も君が勝つとは思っちゃいなかった。

 

 彼女のトレーナーは、本棚を組み立てながらそう言った。

 

「今も3000メートルは無理だと言われています」

 

「だがこうも言われている。2度あったんだから今回も大丈夫だろう、と。つまりこれが、二冠とそれ以外の差だ」

 

 皐月賞をとっても、『あと2つだ』と思う人間は少ない。

 すごいとは思うだろう。速いとは思うだろう。だが別に、この時点で『皐月を取れたのだから三冠全てを得られる』と信じる人間はいない。

 

 だが日本ダービーが終わってみて、どうか。ミホノブルボンは2つ目をとった。それは単純にもう1回勝った、それだけのことだ。

 しかし世間の目は違ってくる。後1個だと、強く意識するようになる。

 

「ミホノブルボンはいけるのか。そういう世論だったのが、変わった。ミホノブルボンを止められるウマ娘はいるのか。日本ダービーを終えて、世間はそういうフェーズに至った。君もクラスメイトから言われるようになった。あと1つだと」

 

 あと1つ。

 その言葉は、とても軽い。今までできたことだろうという既知の風をまとって、その言葉はミホノブルボンに届く。

 

「つまり君は挑戦者ではなくなった。君自身も、あと1つだと思っている。自分に自信がある。今や夢に向かって明瞭な、明確な道を描ける。宇宙の暗中を駆ける必要はなくなった。そんな無茶をする必要はなく、用意された航路を駆ければ勝てる。だから未知と挑戦の象徴である宇宙は縮小をはじめている。そうではないか」

 

 そうだ、と。ミホノブルボンは思った。

 未知が輝く星の海を征く。闇の中を、見えない航路を辿って星へと進む。少なくとも、皐月賞のときはそうだった。

 

「無論これは、単なる劣化ではない。これまで君が抱いてきた夢――――未知によって形作られ、挑戦によって踏破してきた宇宙を、君は狭く感じている。それはつまり、君が成長したということに他ならない」

 

「蛹を破ることが必要、ということでしょうか」

 

「そうだ。だが、今は蛹を破れない。理由はわかるか?」

 

「クラシック三冠になっていないから、であろうと推測します」

 

「そうだ。二冠とはいえ、君はまだ夢の果てへ到達していない。蛹の中を窮屈に感じても、君はまだ羽化できるほどではない。つまり君は今、一番脆い状態だ。蛹に守られているがその中身たるやお粗末なもので、ぐちゃぐちゃのシチューのようになっている。故に君は間違いなく、菊花賞をこれまでのどのレースよりも最悪の状態で迎えることになる」

 

 なるだろうではなく、なると断言するあたりに、この男の美点と欠点が表れていた。

 

 それはともかくとして、夢を叶えるということはどういうことなのかを、ミホノブルボンは知っている。

 目指すことすら叶わなくて、目指せても達成できる保証などない。完走できる保証もない。最後の最後に少しでも躓けば、それまで積み上げてきたものが瓦解する。

 

 夢は、そういうものだ。

 

「今言っても無駄だろうが、焦る必要はない。菊花を勝てば自ずと身体は固まり、蛹は割れる。菊花賞を、長距離を駆けることによって、君はまた一歩前へ進める」

 

「では、今は何もできないということでしょうか」

 

「そうではない。蛹が空を夢見るように、君も新たな空を目指す夢見る権利がある」

 

 クラシック三冠以外の夢を、ミホノブルボンは見たことがない。

 だが、その夢はもうすぐ終わる。あと数ヶ月で、結末の良し悪しこそあれ必ず終わる。

 

 たった1年、たった1回の挑戦。泣いても笑っても、次はない。

 

「君はクラシック三冠の夢が終わったあと、何をしたいのか。そのあたりを考えれば、窮屈さも多少マシになるだろう」

 

 だろう。つまり、たぶん、ということである。

 

「マスターは、私になって欲しいものはありますか?」

 

「お前が望むものこそ、俺のなって欲しいものでもある」

 

 補佐することはできても、主導することはできない。

 一言で表すならば、それが彼の限界だった。補佐に特化しているのである。目標への道を舗装することはできても、目標を与えることはできない。

 

 ミホノブルボンは実直を通り越して愚直な、極めて意志の強いウマ娘である。

 その献身、命令に対しての絶対服従は忠誠という言葉が似合う程で、反面主体性に欠けるという欠点があった。

 

 ミホノブルボンにとって一緒にいて一番楽な相手は間違いなく、『ああせい』『こうせい』と指示をくれる人間である。

 その点、彼は的確な指示をくれた。想像の余地がないほどの管理体制を敷いた。朝ごはんは何を食べようか、と小一時間悩んだ経験のある彼女にとって、一挙手一投足指示してくれるのは有り難かった。その根拠を示して反論の余地を封殺してくる理屈っぽさも、彼女の性格に合っていた。

 

 ああしろ、と言う。こうしろ、と言う。知りたいことを問えば答えをくれるし、わからないと言えば教えてくれる。

 

 だが、向かうべき場所は示してくれない。

 それだけは自分で決めろ。そういうことなのかと、ミホノブルボンは思った。

 

 なぜ、自分は三冠ウマ娘になりたいと思ったのか。

 それは、日本ダービーを見たからだ。

 

 なぜ、日本ダービーを見てそう思ったのか。

 それは――――

 

 それは、何故だったか。

 

「ルドルフ会長は、どう思われますか」

 

 それがわからなくて、ミホノブルボンは生徒会室に足を運んだ。

 手元の書類に走らせるペンを止めて、シンボリルドルフは紫陽花の瞳を上げた。

 

 似ている。凪いだ瞳も、静かな雰囲気も。底の知れなさも。人格に一本通った芯をひたすら守り抜こうとする狂直さも。

 魂というものに型があるならば、あの二人は同型ではないが相似型だ。そういう確信が、ミホノブルボンにはある。

 

「君は私に、結論を聴きに来たのかな?」

 

「いえ」

 

「うん、それはよかった。参謀くんと君は、以心伝心。よく理解し合っていると思っていたからね」

 

 ペンをあるべきところへと戻し、シンボリルドルフは静かな笑みを湛えたままに手を組んだ。肘を机に付き、顎を沈める。

 いかにも、観察しているといった風情のある姿勢になって数秒後。皇帝の名を冠するウマ娘は口を開いた。

 

「君は、私がどうやって三冠後を見据えていたか気になった。参考意見を求めたくなった。そんなところかな」

 

「はい」

 

「だが……そうだな。私は、その質問に答えることができない。これは私が、彼の意図を汲んだからというわけではないよ。君は彼の想定したであろう最良の行動をとった」

 

 つまり、私はクラシック三冠を目指していなかったんだ。

 ミホノブルボンにとっても、おそらくはトウカイテイオーにとっても驚愕に値することを、シンボリルドルフは何でもないことのように言った。

 

「菊花賞には出ないつもりだった。当時の私の目指すべきはジャパンカップ。一意専心の心持ちであり、それ以外にはなかった」

 

「では、なぜ出られたのですか?」

 

 ついでに獲っておきたかったからとか、思いつきで、とか。そういう衝動的な理由ではない。

 浅い付き合いではあるが、それくらいはわかる。

 

「望まれたからさ。ファンや、君にはあまり馴染みがないかもしれないが、連枝や一門の方々。三冠ウマ娘となっていた方が通りも良かった、ということにして、私は菊花に臨むことにした」

 

 

 

 菊花賞からジャパンカップまでの間隔は、中1週。普通に考えて、無理である。当時から既に日本の宝であった彼女に、そんな無茶はさせたくない。

 

 トレーナーであった東条ハナは、当然止めた。怪我というものが輝かしい才能を曇らせ、あるいは破壊することを、彼女はよく知っている。シンボリルドルフの才能を誰よりも理解するからこそ、彼女は無茶を止めた。

 

 ジャパンカップは、1年に1度開催される。ここで回避しても、必ずしも致命的ではない。そんな理論立てをした現場指揮官であるライスシャワーのトレーナーも、同じだった。シンボリルドルフの力を信じていたからこそ、彼女ならば来年のジャパンカップでも問題なく勝てると信じていた。

 

 参謀役の男は、ただ黙って聴いていた。リギルという急速に勃興しつつあるチームを率いる女傑がわざわざ連れてきたこの甥は、この頃のシンボリルドルフにとってどうにもよくわからない存在だった。

 

 東条ハナも『将軍』も、シンボリルドルフの三冠を望む人間たちの持つ力を知っていた。ファンたちの熱意を知っていた。

 そんな中で、ある意味空気を読まない男が挙手した。

 

「菊花賞の手続きをミスした、ということにしましょう。そうすればシステム的に出走できませんから、直接ジャパンカップに出さざるを得ない。手続き役はもちろん私がやります」

 

 ごめん、ミスしちゃった。

 言葉にすればこれだけだが、それをすることでどうなるのかわかっているのか。

 

「……サブトレーナーに危ういことをやらせておいて、私が安穏とするわけにもいかない。監督不行届ということで、私が責任を負う」

 

 いや、発案者がやります。

 いや、本来は私が言うべきことだ。

 

「頑固者め……!」

 

「師匠譲りです。諦めてください」

 

 壮絶な責任の取り合いを見て、そのあまりの果断さに若干引いていたシンボリルドルフも正気を取り戻した。

 

「……菊花賞に勝つ、その後ジャパンカップでも勝つ。そう言った方法はないだろうか」

 

 そう問うたとき、どうする、と。

 二人は、そういった戦略を立て準備することを生業とする『参謀』を見た。

 

「知らん」

 

「そ、そうか……」

 

 断言された。3文字で。

 このときそれなりに、シンボリルドルフは凹んだ。彼女は自分の実力に自信があり、現にここまで無敗だったのである。

 

 今の彼女としては、彼からすれば本当にわからなかったから『知らん』と言ったとわかる。

 だがこのときの彼女は、異様な程親身になってくれたと思ったらいきなり突き放された、という感じだった。

 

「師匠。こいつ」

 

(こ、こいつ……?)

 

 シンボリルドルフは、ハイパー名門の出である。こんな雑な扱いを受けたことも、雑な呼ばれ方をしたこともない。

 

「何割の力を出せばジャパンカップで勝てると思われますか?」

 

「お前が私に訊くとは珍しいな」

 

「外国のことまでは知りませんでした。自身の無知を猛省するところです」

 

「そうか。……そうだな。やはり万全の状態でないと難しいだろう」

 

 万全なら勝てる。

 そう断言するところは、東条ハナが彼女たる由縁だった。

 

「わかりました」

 

 一礼して、向き直る。鋼色の眼がシンボリルドルフの頭の先からつま先までをつらりと眺めて、戻った。

 

「今知った。方法はある」

 

 冷徹な男は、そう言った。

 そしてその通り、シンボリルドルフは菊花賞を制した。ジャパンカップも有馬記念も、圧倒的な走りで制した。そしてついでに、宝塚記念も。

 

 故にこそ彼女はクラシック級において一切の負けを経験しなかった。

 彼女が負けたのはクラシック路線を終えた数年の冬。リギル三頭制解体の1ヶ月前に終わった、海外遠征においてである。

 

(懐かしきかな……っと)

 

 シンボリルドルフは、過去への追想をやめた。

 

「――――私は当時の彼に中1週間でのレースが万全の内にできるかどうか、万全で臨むにはどうすればいいかを訊いた」

 

「勝つための、ではなくですか」

 

「万全で挑めば勝てるさ。私はシンボリルドルフなのだから」

 

 自然と備わったような、無理のない自信がそこにはあった。

 ミホノブルボンは、わかった。自信を持てと彼が言ったのは、半ば騙し討ちのような形でホープフルステークスに出走させたのは、この人の姿を見てきたからだろう、と。

 

「少し、話が逸れた。ともかく私にとって三冠は通過点だった。そして今も私は通過点にいる。君の質問に答えることができないというのは、そういうことだよ」

 

「……ありがとうございました。ルドルフ会長」

 

「いや、何も力になれずすまない。これに懲りず、また来てくれ。なぜか他の娘は、私を避けがちでな……」

 

「それはルドルフ会長の実績が飛び抜けていること、更には威厳ある顔つきであることが原因であろうと推察します。少し知れば、印象は変わってくる。しかしその少しが踏み出せない。そういうことではないでしょうか」

 

「となるとやはり、アレが必要だな……」

 

 アレ?

 そう、ミホノブルボンは訊きそうになった。

 ミホノブルボンは、シンボリルドルフに対して尊敬の念を抱いていた。豊富な実績を鼻にかけず、真摯に対応してくれる。その姿勢は、彼女が好むところである。

 

 もっと親しくなりたいとは、思う。そのために必要なことは内面を知ることだとも思う。

 だがなんというか、『アレ』。そこに触れてはいけないような、そんな気がした。

 

 もう1回頭を下げてその場を後にする、その途上。

 

「ああ、ミホノブルボン。会長はまだ生徒会室にいるか?」

 

「はい。エアグルーヴ副会長」

 

 エアグルーヴと、ミホノブルボンはすれ違った。

 なんとなく嫌な予感がして振り返ってみれば、エアグルーヴは生徒会室に無事に入っていく。

 

(気のせい、でしょうか)

 

 取り敢えず彼女は、そう思うことにした。




123G兄貴、乱丈兄貴、さけきゅー兄貴、終焉齎す王兄貴姉貴、狐霧膳兄貴、超重星兄貴、ガンバスター兄貴、はらっぴ兄貴、踊るモルモット兄貴、タスコ兄貴、主犯兄貴、障子から見ているメアリー兄貴、咲さん兄貴、スコスコ兄貴、zenra兄貴、パイマン兄貴、ステンレス傘兄貴、ありすとてれーす兄貴、石倉景里兄貴、N2兄貴、zexi兄貴、fumo666兄貴、星ノ瀬竜牙兄貴、サガリギミー兄貴、JORGE兄貴、パンダメント兄貴、KJA兄貴、ミケ兄貴、イヌキ兄貴、ラース兄貴、ライセン兄貴、必勝刃鬼兄貴、KAIKI兄貴、感想ありがとナス!

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サイドストーリー:憧れ追いつき

 ライスシャワーにとって、ミホノブルボンはヒーローだった。

 

 強くて、冷静で、かっこいい。その全てが当てはまっているかどうかはともかくとして、ライスシャワーはミホノブルボンに憧れた。

 

 デビューしてからしばらく。ミホノブルボンとそのトレーナーの評判は、悪かった。悪罵に塗れていた、と言っていてもいい。

 

 ライスシャワーには、非難される苦しさがわかった。彼女は人の痛みがわかる優しさを持っていたし、実際経験したことがあるからである。

 

 

 ライスシャワーは、小学校を卒業してすぐにこのトレセン学園を受験した。中学から高校までの勉強を必修とする、ウマ娘のための学園。その最高峰。

 圧倒的なという程ではないが、良家の生まれである彼女にはそこに挑むだけの才能も財産もあった。

 

 入試レースのときにも、彼女はその実力を遺憾なく発揮した。好位に付けて追走し、レースに勝った。

 ライスシャワーは、祝福されると思っていた。よくやった、と。よくがんばった、と。いい走りだった、と。

 

 だが、違った。彼女に飛んできたのはため息であり、失望の声だった。

 彼女が抜かしたのは、寒門の出のウマ娘だった。然程才能はなかったが愛嬌があり、何より地元の星だった。

 

 入試レースで1位をとれば、トレーナーがつく可能性が高まる。特待生になれる。

 その希望を打ち砕いたライスシャワーは、このとき間違いなくヒールだった。

 

 その失望と罵声にも、ライスシャワーはめげた。怯んだ。だが怯んでも、一向にその実力を衰えさせることはなく、彼女は入試レースの全てに勝った。そして負かした相手は殆ど、地元の星というべきウマ娘だった。

 

 祝福は、得られなかった。得られたのは、非難と失望。

 トレセン学園に入ってからも、そうだった。彼女は別に悪くないが、めぐり合わせが致命的に悪かったのだ。

 

 トレセン学園では、退学処分は珍しくない。才能がない、努力が足りない、実力がない。そういった理由で退学処分を受け、地方のトレセン学園に飛ばされるか、あるいは飛ばされすらしないか。

 そういった崖っぷちの相手を、ライスシャワーは容赦なく――――彼女からすれば一生懸命に走っているだけなのだが――――叩き落とした。

 

 どうすれば良かったのか。

 そう考えても、答えは出ない。

 

 手を抜くという選択肢は、彼女にはなかった。彼女はあくまでも、レースに対しては真摯だったのだ。

 

 だが、所詮中学生である。勝つたびに非難されていては、流石に心が傷つく。

 

 ライスシャワーはあるとき、レースを休んだ。ほんの少しだけ、嫌になったからだった。崖っぷちのウマ娘が、また出走する。その娘の後援会が来ている。自分の調子は、すこぶるいい。

 

 出れば勝つ。それがわかるから、ライスシャワーは休んだ。彼女には全力を尽くして負けるか、全力を尽くして勝つかの二択しかない。

 だから、休んだ。次のレースも、そのまた次のレースも。

 

 走るのが嫌になっていた。非難されるのが、嫌になっていた。それは裏返せば、勝てるからだった。勝つということは、誰かを負かすということだ。負けた誰かを、不幸にすることなのだ。

 

 ライスシャワーは、勝って祝福されたかった。誰かにとってのヒーローになりたかった。

 だが彼女は、ヒールになっていた。勝てるから、強いから、目立つから、応援を一身に受ける娘より強いから、ライスシャワーは非難される。

 

 そう。おどおどとしながらも、彼女は実力相応の自信家だったのだ。

 そんな彼女に手を差し伸べたのが、リギルのサブトレーナーをしていたという男だった。

 

 そう。リギルの両翼として活躍していたこの明るそうな男は、たった今この冬の寒空の下に放り出されたのだ。

 

 シンボリルドルフが海外遠征を行っている。しかもアメリカでGⅠを3つとって、今4個目に向かっている。その背中を刺すようなことはしたくない。終わるまで待とう。

 だがリギルは一人でトゥインクルシリーズの環境を破壊している。魔導書の神判を持った征竜みたいなあのチームを、どうにかしなければならない。

 ちょうどよくあの東条の甥――――果てしなく扱いにくいが故に信頼ができるやつ――――が個別に面倒を見はじめたウマ娘が結果を出しつつあるし、分離独立させようか。

 

 でもあいつ、誰も担当していないと言ってたぞ。嘘をつくようなやつではないが。

 

 それはない。あれだけ頼られておいて。

 

 じゃあ4勝目をあげて帰国するであろうシンボリルドルフがまた海外遠征に乗り出したらどうするんだ。

 

 その時は選抜チームを作って同行させるということにしよう。そういうルールも作ろう。

 

 そういうことで、解体の話は進んでいた。

 しかし東条の甥に任せるはずだったウマ娘にレース後の骨折が判明したり、シンボリルドルフが負けたりと色々あって、解体は結局冬になった。

 

 ライスシャワーにとっては、中等部2年の冬。彼女は、差し伸べられた手をとった。

 

「君は悪くないよ。ただ、巡り合わせが悪かっただけだ」

 

 自分の撒き散らす不幸を受けながら、そう言って笑ってくれたひとの手を。

 そのひとは、気にかけている人がいた。本来なら、同時に誰かの担当をするはずだった、優秀な人。

 

「故障の原因は、あいつにはないのにな」

 

 その言葉から、なんとなく察せた。

 自分の失敗じゃないのに、背負い込んでるんだ。その人は、苦しんでるんだ、と。

 

(だから、かな)

 

 だから似てるライスを見て、手を差し伸べてくれたのかな。

 

 そう思える程度には、ライスシャワーはポジティブになれていた。周りの不幸は自分のせいではないと、自分は背負いこみすぎていたのだと、そう思える程度には。

 

 半年後。

 ライスシャワーの『お兄さま』は、嬉しそうな顔をして言った。

 

「あいつ、やっと担当を持ったよ!」

 

 ライスシャワーは、嬉しかった。自分の大好きなお兄さまが喜んでいることが。昔の自分が、誰かに救われたという事が。

 

 だがそのあと程なくして、お兄さまの顔はすぐに暗くなった。

 

「どうしたの、お兄さま?」

 

「……決裂したらしい。契約破棄ってことだな」

 

「……お兄さまの言う、その人は」

 

 どんな人なんだろう。どうやって立ち上がって、歩いてきたんだろう。

 今、大丈夫なのかな。

 

 それからしばらくして、その人はもう一回担当を持ったということが告げられた。

 そして同じくらいの時をおいて、再び決裂したとも。

 

「不器用なやつが輪をかけて不器用になってやがる」

 

 お兄さまは、そう言った。

 たぶんもうその人は、あと1回失敗したら次はないのだと、ライスシャワーにはわかった。

 

 その、3ヶ月後。

 

「契約したらしい。ミホノブルボンだ」

 

「すごい人、だよね?」

 

 どこを走るかは、知らない。だが、これまでお兄さまの友達が契約した相手は名前も知らない人たちだった。

 だがミホノブルボンという名前は、聴いたことがある。高等部から入ってきた、期待の新星だとか。

 

 今年高等部に進学するライスシャワーも、小耳に挟んだことがある。

 

「ライス、一緒に走れるかな……?」

 

 最後に選ばれた人を、見てみたかった。どんな人かを知りたかった。一緒に走ってみたかった。

 だが、お兄さまは首を振った。

 

「ミホノブルボンはマイル路線に行くと思うよ。ライスは長距離を軸にして王道の中距離に足を伸ばす形になるから、難しいかな」

 

 嘘である。

 

 ミホノブルボンはクラシック路線に進むと公言し、三冠ウマ娘になると嘯いた。

 

「バカなのかあいつ」

 

 お兄さまは、天を仰いだ。

 仰いで、嘆息して、立ち上がりかけて、止まる。

 

「…………まぁ、バカと真面目にバカやってる方があいつらしいかな」

 

 そのバカがおそらくはお兄さまのことだろう、と。言葉に含まれる憧れと、懐かしさが伝えてきた。

 

「よ、よかった……のかな?」

 

「いや……ただ……」

 

 非難はされるだろう。

 その予想は、的中した。

 

 死ぬほど非難された。また潰す気かと、またウマ娘の貴重な時間を奪うのかと。

 誑かしただとか、夢という言葉で釣っただとか、あれは虐待だとか、そういうことを言われていた。

 

 ミホノブルボンも、非難された。なぜ、短距離路線じゃないのか。なぜ、マイル路線じゃないのか。なぜ、適性にあった道を進まないのか。

 

「お兄さま」

 

 ライスは、助けになってあげたい。

 そう言いかけたライスシャワーを、彼女のトレーナーは手で制した。

 

「大丈夫だ」

 

 ――――あいつは必ず、結果で見返す

 

 そう、お兄さまは言った。そして、ミホノブルボンとそのトレーナーは見返した。ジュニア級の王者を決めるレース、朝日杯FSにおいて。

 

 圧巻の走りだった。圧巻の逃げだった。

 何故か顔が引きつっているお兄さまに抱きつくほどに、ライスシャワーは喜んだ。

 

 また逃げか……といううわ言のような呟きが、妙に耳に残っている。

 だがそれよりも、ライスシャワーは大歓声に耳を灼かれた。

 

 ミホノブルボンというウマ娘が見せた、圧倒的な走り。クラシック路線の踏み台、ジュニア王者を決める朝日杯FSを制覇した彼女の大言が寝言ではなかったのだと、観客たちはこのときに知った。

 

(すごい……)

 

 ライスとは、違う。

 勝って、批判をねじ伏せた。非難を踏み潰した。これが力だと武威を示し、異見を服属させた。

 

 ライスシャワーはその後、ミホノブルボンに会った。すごかったですと、自分の感動を噛みながら伝えた。

 

「はい。ありがとうございます」

 

 やや無感情な声だった。

 だがとても冷静でかっこいい人だと、そう思った。自分のおどおどとした態度も、すごく聴きづらかったであろう噛み噛みの言葉も気にしない。器の大きな人だとも。

 

「ミホノブルボン。いくぞ」

 

「はい、マスター」

 

 そうして、去っていく。

 どこか冷たげなあの人がお兄さまのお友達なんだと、ライスシャワーはそんなことを思った。

 

(ミホノブルボンさんは、すごい)

 

 ホープフルステークスで共に走って、ミホノブルボンへの尊敬の念は更に強まる。

 

 全く追いつけなかった。ライスシャワーは、負けると思ったことはなかった。走るのが怖いと思ったことも、負けるのが怖いと思ったこともなかった。

 彼女が怖いのは、勝って罵声を浴びることだけだった。

 

 だが、負けた。相手にもされなかった。罵声も浴びなかった。誰も、ライスシャワーなど見ていなかった。

 

「マスター」

 

 走って上気した頬を少しほころばせてそう言って、ミホノブルボンは控え室へと消えた。心も身体も預け切ったような、絶対的な信頼に溢れた、そんな声だった。

 

(なにか、超えたんだ。ミホノブルボンさんはこのホープフルステークスでまた、すごくなったんだ)

 

 だからライスシャワーは、皐月賞でレースそのものを初めて怖いと思った。

 負けるかもしれないと、そう思った。

 

 ミホノブルボンは、強かった。強過ぎた。驚異的な速度で2000メートルを駆け抜けた。レコードが世界記録を更新するほどの速度だった。

 

 

 ――――すごい、じゃだめなんだ。そこで止まったら、だめなんだ

 

 ライスシャワーは、気づいた。

 追いつきたいじゃなきゃ、だめなんだと。




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サイドストーリー:追いつき追い越し

 追いつきたいと、そう思った。

 そしてそのためにどのレースに出ればいいかも、ライスシャワーはわかっていた。

 

 だがそれ以上に、ライスシャワーには実戦経験が必要だった。

 ライスシャワーは、自分に自信を持っていた。まともにやれば勝てるという前提に立って、『勝って非難を受けるのがいやだ』ということでレースを棄権していた。

 

 彼女に足りないのは、なによりも格上とのレース経験である。

 

 ミホノブルボンは、格上としか戦ってこなかった。彼女は天性のスプリンターである。その才能もスプリンターとして研ぎ澄まされたものであり、中距離の土俵に上がった時点で彼女はそこらに転がる十把一絡げの石ころと似たようなものに成り下がる。

 そこから努力して、戦って、打ち勝ってきた。

 

 ライスシャワーは、ミホノブルボンを格上として見ている。

 だがミホノブルボンは、ライスシャワーを格下として見ていない。自分こそが挑むのだと言う、そんな気概を持って駆けている。

 

 ――――このままでは、勝てない

 

 そう判断した『将軍』は、GⅡ、NHK杯に狙いを定めた。

 そこにはナリタタイセイとマチカネタンホイザがいる。ライスシャワーより格上として扱われている、クラシック戦線二番手と三番手がいる。

 

 そこでライスシャワーは、敗けた。

 2着。勝ったのは、ナリタタイセイ。瞳に闘志を燃やした元天才。

 

 今年のクラシック戦線は、ナリタタイセイかマチカネタンホイザだろう。

 ミホノブルボンが頭角を現すまでは、誰もがそう思っていた。

 マチカネもナリタも、中距離王道を得意とする名門である。学内の模擬レースでも、順調な結果を出している。

 

 一応名門の端っこに連なるライスシャワーに注目するものもいたが、やはりレースをサボっていたということが影響してそれほど多くはない。

 

 然程結果も残せていない短距離血統の母から生まれたウマ娘がほざいた『クラシック三冠になる』という夢は、見向きもされていなかった。

 短距離じゃなかったんだ。なんで短距離じゃないんだろ。トレーナーも無茶させるなぁ。有識者を除く世間からはその程度の認識で、名前すらあまり知られていない。

 

 当時は、ほんの数ヶ月前までは、そう言われていた。

 だがサボっていたウマ娘は出会うべきトレーナーと出会ってトラウマを克服し、ホープフルステークスから皐月賞にかけてゆっくりと結果を積み上げてきた。

 

 才能をドブに捨てていると言われたウマ娘は、今や名前を知らない人間の方が少ない。皐月賞でワールドレコードを叩き出したミホノブルボンである。

 

(ナリタタイセイさんも、そうなんだ)

 

 ミホノブルボンしか、見えていない。好位追走型のウマ娘だというのにハナを走り、架空のミホノブルボンを追って、追って、多分彼女の頭の中では差し切った結果、NHK杯に勝った。

 

 好位に潜みながらも差しきれなかったライスシャワーは、ナリタタイセイにシンパシーを感じた。

 

(この人も、追ってるんだ)

 

 ミホノブルボンを。誰をも眼に入れず、ただひたすらに時を刻むサイボーグを。ライスシャワーにとってのヒーローを。

 

 そして迎えた日本ダービー。

 傍から見てもわかるほどに、ナリタタイセイはミホノブルボンのことを意識していた。

 

 凄い目だと思った。自分にはあんな目できないとも、思った。

 その眼差しの根源が志の質にあるということを、このときのライスシャワーは知らない。

 

 ナリタタイセイは、追い越してやると思っていた。

 ライスシャワーは、追いつきたいと思っている。

 

 如何にライスシャワーに天性のステイヤーとしての才能があっても、追いつきたいとしか思わないならば良くて同着止まり。ナリタタイセイの燃えるような瞳は、勝ちたいと思うからこそのものなのである。

 

 一方でミホノブルボンは、孤高の姿勢を保って虚空を見つめていた。

 すごいと、ライスシャワーは感心した。あんな眼で見られて、意識されて、それでも気づいていないがごとく振る舞う。そうすることでナリタタイセイの意志の炎を過剰に煽り、掛からせる。そういう策なのか、と。

 

 まぁ実際はこのときのミホノブルボンは何も考えていなかったわけだが、見事にナリタタイセイは掛かった。

 

 私の力を見せてやる、という意志ばかりが強くて、身体に伝わりきっていない。

 

(第4コーナーまでもつかな……)

 

 そんなことを思いつつ、ライスシャワーはナリタタイセイを風除けにして追走する。

 ちらりと、観客席を見た。

 

 お兄さまを見たい。それもある。だが、それだけではない。

 『将軍』は、いつものように指示を出した。腕組んで足組んで待ってるだけの『参謀』とは違い、彼はこういうことをこそ得意とする。

 

 おハナさんが何事も行える予算を引っ張ってきて、最良の環境を整える。

 『参謀』が練習メニューを組んで、勝つためのお膳立てをする。

 『将軍』が実地での調整と指示を下す。

 

 『将軍』には、嵐の種が見える。このレースでの主役は誰か、誰をマークするべきか。どこで仕掛けるか。機を見て、それら全てに適切な解答を下す。

 スタイルの差こそあれ、現場指揮官としての力量は『準備をしたらあとは走っている当人に任せる』と公言する『参謀』を遥かに凌駕すると言っていい。

 

 『参謀』が主に面倒を見ていたのは勝手に先頭を突っ走って自然と勝ってる例のアレと、勝手に機を計って勝手に仕掛けるシンボリルドルフ。

 現在のミホノブルボンにしたって、先頭に立ってレコードクラスのタイムを淡々と刻むだけ。そこに駆け引きの要素はない。

 

 

 勝てるだけの戦力をレース前までに揃えてゴリ押す。

 

 

 それが、『参謀』の基本思想である。

 

(シンプルさを突き詰めた強さは、単純に強い。攻略するのが難しい。だが強いて言うなら臨機応変さに欠ける)

 

 これまで『参謀』が面倒を見てきたのは、ミホノブルボンを除けば二人。ひとりはミホノブルボンと同じくゴリ押すだけだったので放っておく。

 残る一人こそが、皇帝ことシンボリルドルフである。というか『参謀』が最初に面倒を見たのが、彼女だ。

 

 そのときの『参謀』は、基幹となる作戦を事前に何種類か作って、走る当人に選ばせる方法を取っていた。

 そして選ばれれば現場で走っているときに起こる事象、事故、天候、バ場の状態など多岐にわたるパターンを想定したいくつものプランを提出し、シンボリルドルフに覚えさせる。

 

 と言ってもあくまでも、『こういう可能性がある』と伝えるくらいなものだった。

 なにせレースというのは、とにかくイレギュラーが多い。

 敵陣営の意図を正確に読んだとしても、その陣営のウマ娘がコーナーを、スタートを失敗したらどうか。それは、予測したとは言えなくなる。

 

 ゼロコンマの世界で周りを見て、刻一刻変わる状態を確認して、走る。

 当然事故は起こるし、そのせいで事前に取り決めていたような展開にならない、ということもあり得る。

 

 故にシンボリルドルフは、事前に取り決めていた作戦を即座に放棄して別のプランに乗り換えることが結構あった。仕掛けろとサインを出したのに仕掛けない、みたいなこともあった。

 だが、それは常に正しかった。それを見て『参謀』は、走っている当人が一番レースをわかるのではないか、と思ったらしい。

 

 だから彼はいくつか大枠だけ決めて、あとは当人に任せる。そういうスタイルをとっている。

 

 だが実のところ、そうではない。大抵のウマ娘は、周りを確認して走ることにいっぱいいっぱいなのだ。

 

 現場指揮を采らない。実戦に至るまでは実に緻密なくせに、現場のことは現場が一番わかるだろ、と言わんばかりに大枠を決めて予測を伝えたらあとは放任する。

 そのあたりに、活路がある。臨機応変さというものがレースにおいて最も大事だということを、『将軍』は他ならぬシンボリルドルフから学んでいた。

 

 だからこうして、サインを出す。

 

 ――――だめだ。もたない。行け。少し早めだが、行ける

 

 ――――うん、お兄さま

 

 ライスシャワーは、自分のトレーナーの判断に全幅の信頼を置いていた。過去の実績がどうこうではなく、信じたいから信じていた。

 

 隊列は、極端な縦長になっている。

 先頭をミホノブルボンが突き進み、ナリタタイセイが無茶を重ねながら最終直線で差しきれるだけの射程に入れ続ける。その後ろにピッタリと、ライスシャワー。

 

 スタートして程なくから常に維持されてきたその定位置が、ついに崩れるときが来た。

 

(追いつくんだ)

 

 ナリタタイセイの影が反乱を起こし、大外に飛び出し本人を抜く。

 ギョッとしたようなナリタタイセイをちらりと見て、ライスシャワーはスパート態勢に入った。

 

 ミホノブルボンは、まだスパート態勢には入っていない。それどころか、ややスピードが落ちている。

 

「追いつくんだ!」

 

 いつものおどおどとしたライスシャワーとはかけ離れた、闘志溢れる叫び。

 漏れ出た闘志が声となった瞬間。ほんの一拍だけ、景色が暗転した。

 茨の蔦が大地から伸び、前を走るミホノブルボンを絡めとる。

 

(え……?)

 

 振り向く。どんなときにも振り向かなかった、絶対者が。先頭を駆け、他者を関与させない不動のレース展開を行うサイボーグが。

 

 ミホノブルボンの星を散りばめたような青い瞳が、ライスシャワーを捉えていた。

 というより見られていたことに、ライスシャワーは今気づいた。

 

(見た、こっちを)

 

 なんで?

 蔦は千切られ、ミホノブルボンはいつものように駆けていく。

 

 追い縋った。追いつこうとした。だがライスシャワーは、日本ダービーでも追いつけなかった。

 

 彼女は、2着。8バ身差の2着。

 善戦した、と言ってもいい。これまでミホノブルボンは大差で勝ち続けてきたのだ。大差とはつまり、無限である。

 

 ミホノブルボンとその他には、数値では表せないほどの差がある。それを具体的に数値化したのは、偉業と言っていい。

 

 だがその偉業は、やはりミホノブルボンの二冠目という光の前にかき消された。

 かき消されたと、ライスシャワーは思っていた。頑張った。差を縮めた。でも、負けたのだ。

 

「よく頑張ったぞー! ライスシャワー!」

 

 知らない声が、東京レース場に響いた。

 ウマ娘は、耳がいい。圧倒的なブルボンコールの中でも、ライスシャワーはその声を聴き逃さなかった。

 

「ライスシャワー! すごかったぞー!」

 

「ミホノブルボンだけかと思ってたけど、ライスシャワーも出てきた! この世代は強いんじゃないか?」

 

「菊花でも頑張れよー!」

 

 悔しい。

 ライスシャワーの心の中にぽつりと一滴、そんな感情が滴り落ちた。

 

 悔しい。声援を受けたのに。

 悔しい。祝福されたのに。

 悔しい。憧れの人に振り向かれたのに。

 悔しい。昨日より、前のレースよりいい結果を出したのに。

 

 几帳面に声援を送ってもらった方向に何度も頭を下げて、ライスシャワーは控え室へと駆けた。

 

「ライス」

 

「お兄さま……」

 

 悔しい。期待に応えられなかったことが。

 

「いいレースだった、って。あと一歩だったって。声援を受けて、祝福されて、ライス……」

 

 でも、敗けた。負けた。勝てなかった。

 

「ライス、嬉しいはずなの。勝っても祝福されなかった。声援を受けられなかった。だけど今、祝福されて。声援をもらって」

 

「ライス」

 

「なのに、全然嬉しくない! ライスは……ライスは……」

 

 勝ちたい。勝ちたい。勝ちたい。

 

 何度も何度も、嗚咽と共にその言葉は繰り返された。

 

(勝つ。勝てるさ。ライスは勝てる)

 

 ライスシャワーの勝利を疑ったことはない。ライスシャワーは、ミホノブルボンに勝てる。必ず勝てる。

 だが、そのいつかを先延ばしにしてくる怪物がいる。

 

(俺は、あいつに勝てるのか)

 

 出会った頃は、対抗意識があった。

 トレーナー養成の世界的名門、パリ教導院を飛び級して卒業した男。自分より5個も年下の男。

 寒門からの叩き上げが、エリートに負けてたまるかと。そういう意識が確かにあった。

 

 わずか21歳で一時的にとはいえ、皇帝の杖を預かった男。

 周りはコネだといった。ルドルフはトレーナーを成長させる。だからこそ、東条ハナは甥可愛さに贔屓しているのだと。

 

 だがそんなものは、嘘だった。単純に、そのときからあいつの実力は突出していた。たぶん天才というのはああいうやつだと、半ば呆れながらも認めていた。

 

 グラスワンダーとエルコンドルパサーの担当を任せられたとき、やっとその対抗意識に折り合いをつけて頭を下げた。助けてくれと。

 

 ああ、いいよ。

 

 それだけ言って、彼は助けた。受けないでもいい罰を共に受けて、経歴に傷をつけてまで協力した。

 その時から、対抗しようという気持ちは消えた。年下であるということも忘れ、純粋に敬意を持った。隣を歩きたいと、そう思った。この天才に欠けている部分を及ばずながら支えてやろうと、そう思った。

 

(俺はあいつに勝てるのか)

 

 最大の味方であったあの男に。

 いつか勝つではなく、次のレースで。

 勝たなければならない。ライスの信頼を、裏切りたくない。ウマ娘からの期待に全て応えてきたあの男のように、勝つべき道を拓いてやりたい。

 

 胸の中で泣きじゃくるライスシャワーの背中をそっと撫でながら、『将軍』は覚悟を決めた。




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サイドストーリー:静謐の残響

 覚悟をして追いつきたいと思っても、その気持ちだけでどうにかなるものでもないと、『将軍』は知っている。

 彼は、現場指揮官である。全体を統御する君主より、絵図面を描く参謀より、一層現実的な視点を持っていた。

 

 菊花で勝つ。そのためにはやはり先行して好位に立ち、最終コーナーから直線にかけてスパートをかけて差し切る。これしかない。

 

(俺はつくづく、予測が苦手だ……)

 

 予測を立てるのは、全部あいつがやっていた。

 

 前日までの調子はこうだから、当日の調子はこう。だからレースはこうなる。出遅れる可能性は誰それ。そいつが出遅れたらこうなる。同時に二人出遅れたらこうなる。

 

 たぶんボートレースの予想屋あたりが天職であろう『参謀』の立てた未来図を持って現場に赴き、細かいところを修正してより現実に即した指示を出す。

 それが、『将軍』の仕事。校正する人であって、書く人ではない。

 

 つまり何が言いたいかといえば、だいたいの戦局はわかるが、あいつのような予測はできない。これまでの通例から言って、ミホノブルボンがハナに立ってレースを作る。

 距離の壁には期待できない。そんなもの、あいつが超えさせてくるだろうから。

 

 流石に不可能だろうと言う人もいる。短距離血統のウマ娘が3000メートルを駆けるのは常識的に考えてみれば無理だと。

 だがよく考えてみれば、気づくはずなのだ。あいつが常識を味方につけたことなど一度だって無いのだと。その上で勝ってきたからこそ、恐ろしいのだと。

 

(ライスは自分でレースを作るタイプじゃない)

 

 他人の作ったレースの中に潜み、終盤に塗り替える。典型的な先行型といえるタイプ。

 自分もそうだ。今まで、他人が引いた図面をちょこちょこと塗り替える形で指揮をしてきた。

 

 ここまで考えて、『将軍』は勘付いた。

 

「……だから逃げなのか」

 

 逃げは、序盤のレースを形造る。中盤にその形を崩され、終盤に負ける。それが、一般的な逃げである。

 

 あいつは自分の手で序盤を作ることができれば、確実にレースそのものを管制下におけるだろう。

 前提条件のない予測よりも、前提条件のある予測の方が精度が上がる。それは全く当たり前のことだ。

 

 あいつが担当したウマ娘は、皇帝を除いて全部逃げウマ娘である。それは偶然なのかもしれないが、あいつと『逃げ』が抜群のシナジーを発揮することは間違いない。

 

 どうしたものかと考える『将軍』の耳に、目下最も懸念すべき男の声が届いた。

 

「おい」

 

「おぉ!?」

 

「リギルの夏合宿にいかないか?」

 

 他人の驚愕など意に介さずに話を進める、この図太さには懐かしさすら覚える。リギルにいた時は、いつもこうだった。

 

「お前も行くのか?」

 

「ああ。リギル全体の練習メニューを考えることになる」

 

 その代わりに施設を借りられる。そういったところかと、『将軍』は納得した。

 そして同時に、ふと気づいた。

 

「それは……俺が行けばライスのも用意してくれるわけか」

 

「お前が嫌だと言うならばやらないが、今のところはそのつもりだ」

 

「……お前、良いのか。お前のメニューをこなせば、ライスは飛躍的に成長する。俺はそこのところがあまり、得意じゃないからな。その分伸びしろがあるから、より成長するのはライスの方だ。菊花で勝つかもしれないぜ?」

 

「いや、ブルボンは勝つよ」

 

 ――――こういうところだ

 

 自分の勝利を、自分が信じたウマ娘の勝利を疑わない。狼狽えない。揺らがない。一番の対抗バの前でも、一切曲げない。強直を通り越して狂直と言える精神性。

 

 その摩天楼のような精神的堅牢さに、あの皇帝ですら寄りかかったことがあるのを知っている。

 

「…………ああ。手抜きをするわけではないぞ」

 

「そこは一切心配してねぇよ。ただ、その、本人はどう思うんだ。ミホノブルボンは」

 

 ライバルに手を貸す。それも、全力で。

 実際のところ、彼からすれば『ウマ娘にとって大事な夏を預かる以上は全力でやる』という認識なのだろう。だが、不和とか不信の芽を生み出すには充分な土壌だ。

 

「俺があいつを信じているように、あいつは俺を信じている。お前が心配することでもない」

 

「……そりゃ、そうだな」

 

「ついでに言えば、こちらとしても利益があるからお前を誘っている。今のブルボンに必要なのは技術でも地力でもないからな」

 

 一拍だけ間を空けて、『参謀』は卓上にクリアファイルを置いた。

 

「まあ、考えておいてくれ。手の内を晒すのが嫌だというのなら、こなくてもいい。一応練習メニューの草案は渡しておくから、納得がいったら参加する。それでどうだ?」

 

 じゃあな、という言葉にまたな、と返してカリキュラムを見る。

 

 慨嘆した。

 なんでこんなに精緻に、しかも迅速に組めるのか。

 

(ここ、どういう理屈で時間配分決めたんだろうか……ライスのメニューの組み方、教えてもらうかな)

 

 トレーナーとは、複合職である。スポーツとしての指導者だけにとどまらず、医療、メンタルケア、ダンス、科学など多岐にわたる素養を要求される。

 

 それほどまでに優秀な人間は、正答を導くことができなくとも正答を見たら『これは合っている』とわかる。一見したらわかる。

 ライスシャワーというほぼ初見であるはずのウマ娘のために組まれた練習メニューは、これまで自分が組んできたどのメニューよりも優れている。それを素直に認められる器の広さが、『将軍』にはあった。

 

 鳴り響くチャイムにつられて、歩き出す。

 とりあえずこのメニューを参考にして今日は練習させてみようという気にはなっていた。

 

「いやいや、ライバルと一緒に夏合宿はやめておけよ。というか下手な練習メニューを組まれて、調子を崩されたらどうするんだ?」

 

 夏合宿を共同でやるかもしれない。

 そのことを聴きつけて、そんなことを言ってきた人もいた。

 

 東条ハナの甥であるが故にコネで中央トレセンに来た――――と、当初は思われていた――――男を嫌う人間は、それなりにいる。

 なにせ無愛想であるし、結果を出し続けている。今や叩く隙すらない。

 

「あいつ、人の心がないんか?」

 

 そういう言葉もある。だが『将軍』は、なによりも『参謀』を信頼していた。

 無論、敵である。クラシック戦線において、最大最強の敵である。故にレース中、かき乱しに来るかもしれない。ハイペースの逃げで潰しに来るくらいのことはするかもしれない。

 

 ――――だが、あいつは公正なやつだ

 

 策を立てる。策を仕込む。切り札を作る。レース中にはそれらを容赦なく切って、全身全霊で勝ちに来るだろう。

 だが、あくまでも正々堂々としている。練習を邪魔するとか、非効率なことをさせるとか、そういうことはしない。指導を任せられた以上、全力を懸ける。

 

「最大の敵を信頼してるってのも、我ながらおかしなものだと思うが……」

 

 そう、おかしい。この世界は夢を追う者ばかりの、綺麗なものじゃない。担当ウマ娘がGⅠを勝てば、大金が手に入る。三冠ウマ娘になればCMやグッズなどのインセンティブも手に入る。

 

 地方ですら、勝つために下剤を混ぜたりとかそういうことをしていたやつがいた。

 これが中央なら、どうか。賞金が跳ね上がるどころの騒ぎではないのだ。魔が差さないとも限らない。

 

 だがそんなことを、全く心配していない自分がいる。

 

「……信じていいって、ライスは思うな」

 

「おぉ……ライス、聴いてたのか」

 

「うん。お兄さま、なにか考えてたみたいだったから」

 

 ぬっと、影のようにライスシャワーが現れた。

 練習終わりだからか、頬が若干土で汚れている。

 

「だって、ブルボンさんのトレーナーさんだもん。無理だって言われて、無茶だって言われて、無謀だって言われて、それでもブルボンさんの意志を尊重したあの人は、たぶん、いい人だよ」

 

「…………いい人、か」

 

 いい人とか、わるい人とか、そういう言葉で人間は表せない。朝起きるまではいい人だったのに、夜寝るときはわるい人になっている。そういう人間もいるのだ。

 

 だがそれをわざわざ、ライスシャワーに伝えたくはない。

 

「うん。それにあの人は、ブルボンさんを信じてるだろうから」

 

 それはなんとなく、理解できた。

 あいつは、ミホノブルボンを信じている。彼女の積み上げてきた努力を、夢のために全てを捧げる献身を、そして自分の才能を。

 

 汚いことをするのが、人間だ。それまでを裏切れるのが、人間だ。

 

 だが『参謀』は努力を、献身を、才能を裏切るようなことはしない。

 自分もそうなりたいと、『将軍』は常に思ってきた。

 

 ――――だがこのウマ娘を、ライスシャワーを、俺はあいつほど信じているのか。

 ミホノブルボンを信じるほどに、疑っていないのか。人智を尽くしたと言えるのか。

 

「……ライス」

 

「なぁに、お兄さま?」

 

 本当に嬉しそうに、顔がほころぶ。

 幼くて、無邪気な信頼。その信頼に自分は応えられているのかと、彼は度々疑問に思っていた。

 

 そう、思ってきたし、思っていた。このときまでは。

 

「俺も、勝ちたい」

 

 今信頼に応えると、そう決めた。

 

 あいつに勝ちたい。

 ミホノブルボンに、ライスシャワーが勝ちたいように。

 

 ライスシャワーは、ミホノブルボンの背を追った。周りの批難や意見に己を曲げず、夢へ突き進む背中に彼女にとってのヒーローを見たから。

 

 彼も、かつて年下の同僚の背を追った。強烈な行動力と、捨身の覚悟を持った男を眩しく思った。外国人枠撤廃のとき、実質的に運動を率いた男の背を追った。

 

 

 ライスシャワーは、背を追って歯牙にもかけられなかったとき、気づいた。追うだけではなく、追いつかなければならないのだと。

 だがそれでも、駄目だった。皐月賞でのミホノブルボンは、やはり歯牙にもかけてくれなかった。

 

 彼も、追いつきたいと思った。だが、無理だった。グラスワンダーと、エルコンドルパサー。ふたりの――――そう、ふたりの極めて優秀なウマ娘を預けられて、あいつはイマイチ伸び悩むウマ娘を預けられたとき、追いつけると思った。

 だがその背は遠かった。初めての激突となった毎日王冠でも、絶対勝てると思っていた。

 

 金鯱賞での勝ち方を見た。だが、差せると思った。正直その時点では、ただの逃げウマ娘だったから。

 

 評論家たちも口を揃えて言っていた。

 リギルにしては珍しい非情さだと。近しい実力を持つ二人の対決に、やっと復活しかけてきた伸び悩むかつての天才を混ぜるのはどうなんだ、と。

 これは例えるならば、怪我から復活しかけている三冠ウマ娘に、これまで走ったこともない短距離・高松宮記念を走らせるようなものだ、と。

 

 ――――できるな

 

 ――――はい

 

 そういう会話を聴いた。策があるだろうことも察した。

 だが、あいつが担当した逃げウマ娘はそれほどでもなかった。サニーブライアンという生粋の逃げウマ娘と一緒に走ることになって、逃げという戦法を捨てさせられたのがその証拠だと思った。

 

 勝てる。捨ててしまえるような逃げは、敵じゃない。そう思っていた。

 

 だがそのウマ娘の逃げは、普通の逃げではなかった。

 あいつと同じく常に遥か先を行く逃亡者は影すら踏ませず、グラスワンダーとエルコンドルパサーを圧倒した。

 

 

 それからが、違った。ライスシャワーはすぐさま思い直した。勝ちたいと。追うのではなく、追いつくのでもなく、追い越すのだと。勝つのだと。

 だが、『将軍』はくすぶった。

 

 ミホノブルボンと『参謀』が組んだと聴いたとき、三冠ウマ娘を狙うと聴いたときも、あいつならまあなんとかするだろうとしか思わなかった。

 ……正直に言えば、組んだのが栗毛の逃げウマ娘と聴いた時点で、ちょっと震えるくらいに怖かったのだ。

 

「今、君と勝ちたい。あいつに」

 

「うん、お兄さま。ライス、勝つよ」

 

 なんでもないように、ライスシャワーは言う。笑って、楽しみだとでも言うように笑う。その小さな身体を、期待と不安で震わせながら言う。

 

 勝つ。追って、追いついて、追い越して勝つ。

 

「勝とう、ライス。菊花賞で。今ここから、あいつらの全てを糧にして」

 

 思い悩むミホノブルボンに比べて、ライスシャワーは単純だった。狙うところが明確だった。単純化され研がれた、刃のように澄んでいる。

 ライスシャワーの眼は、静かだった。闘志を湛えた眼は、静かに静かに、凪いでいた。

 

 名門のトレーナーと、寒門のウマ娘。

 寒門のトレーナーと、名門のウマ娘。

 

 何もかもが反対の二人は、ここでようやく向かい合った。




123G兄貴、終焉齎す王兄貴姉貴、ペンタ兄貴、ガンバスター兄貴、マイマイY@兄貴、ベー太兄貴、CATrain兄貴、タイヤキ兄貴、八咫烏兄貴、寒苦鳥兄貴、TEL92兄貴、レンタカー兄貴、必勝刃鬼兄貴、流星の如く兄貴、tamatuka兄貴、初見兄貴、ビックベアー兄貴、主犯兄貴、障子から見ているメアリー兄貴、ほっか飯倉兄貴、パンダメント兄貴、すまない兄貴、バスカレー兄貴、ダンデライオン兄貴、水月兄貴、ころに兄貴、にゃるおじさん兄貴、※あくまで個人の感想です兄貴、新宿のショーター兄貴、星ノ瀬竜牙兄貴、ESAS兄貴、k@ins兄貴、レギ兄貴、KAIKI兄貴、ブブゼラ兄貴、サガリギミー兄貴、11兄貴、損師兄貴、石倉景理兄貴、薪木兄貴、Hey,sorry兄貴、Carudera兄貴、一般通過ガバ息子兄貴、黒兄貴、さけきゅー兄貴、Hakuou兄貴、タスコ兄貴、光金目鯛兄貴、とくほ兄貴、ライセン兄貴、祝部零兄貴、ヘビビンガー兄貴、秒速1mm兄貴、ハガネ黒鉄兄貴、ヘイトリッド兄貴、ざぶざぶ兄貴、狐霧膳兄貴、感想ありがとナス!

きょーらく兄貴、那覇太郎兄貴、かりちん兄貴、fickle兄貴、けれすけ兄貴、kotokoto13兄貴、緑茶アイス兄貴、まーか兄貴、涼介三等兵兄貴、mfukawa2000兄貴、apba35兄貴、prinny兄貴、85312兄貴、人間廻答兄貴、イワシ【キリッ】兄貴、Tパック兄貴、20歳手前の水おいしい兄貴、ハガネ黒鉄兄貴、評価ありがとナス!


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サイドストーリー:トレセン三狂

 リギルと夏合宿に行く。

 そう伝えられたときのミホノブルボンの心中は複雑だった。

 

 原因不明のエラーが発生し、もやもやする。

 それと共に理性的な部分は『これは必ず身になる』と喜ぶ。

 

 取り敢えずミホノブルボンは、色々と荷物を詰め込んで荷造りを終え、トレーナーの黒い車のトランクに入れる。

 

「世話になるなぁ、毎度毎度」

 

「こちらのセリフだ、それは」

 

「翻訳機として、だろ?」

 

「そういうお前は足としてだろうが」

 

 彼らしからぬ――――と言えばすごく失礼だが――――軽いやり取り。

 

「仲、良いね……」

 

「軽妙洒脱。マスターにあのように親しい友人がいて、私は安堵しています」

 

 四字熟語ダジャレマン(皇帝)の喋り方をインストールしてしまったミホノブルボンは、ほぼ反射でそんなことを言った。

 

「ミホノブルボンさん、変わったね」

 

 ライスシャワーもまた、反射に任せてポツリと言った。

 少し悔しそうな色が、顔色から見える。

 

「私が?」

 

「うん。無敗同士、意識するのは当然だと思うけど……」

 

 言葉を濁す。

 ミホノブルボンは最近、人の心の機微を読み取ろうと頑張っている。現に四六時中一緒にいる彼女のマスターの心の動きは、たいていわかるようになった。

 

 だがライスシャワーの心の動きは、どうにもよくわからない。

 

 弱々しそうで、芯が強い。

 自信がなさそうで、自信家。

 

 表面と中身の乖離が激しい。それが、ライスシャワーというウマ娘なのだ。

 

「ライスは……」

 

 何かを言おうとして、口を噤む。黒い帽子を深くに被り直し、首を振った。

 

「――――ううん。なんでもない」

 

 なんでもないことはないでしょうと、ミホノブルボンは思う。

 

 なにか言いたいことがあるなら、言えばいい。

 

「ライスシャワーさん。貴女には実力があります。その裏付けとなる努力もしています」

 

「えっ……あ、ありがとうございます……」

 

「はい」

 

 言うようになったじゃないか、と。

 コミュニケーションにおいて没交渉すぎたかつての姿を知っているミホノブルボンのトレーナーは、思った。

 

 それだけの実力があり、努力をしている。そのことをわかっているから、遠慮なんてしなくていい。言いたいことがあるならば、言ってほしい。

 

 そういうことだと、ミホノブルボンとそのトレーナーは思った。ついでに言うならば、ライスシャワーのトレーナーも察した。

 ついで言うならば、ライスシャワーのトレーナーは更に察した。この意味をライスシャワーが汲み取れていないということをである。

 

「そういうことじゃねーかな、ライス」

 

「……えっ、そ、そうなの!?」

 

「はい」

 

 そういう人だ、と察したらしいライスシャワーがおどおどとしながらも積極的に話しかけ、物怖じしないミホノブルボンが消極的に(彼女にとっては積極的に)答える。

 

 そんな中で、車は静かに発進した。

 それは人間よりも遥かに感覚が鋭敏なはずのミホノブルボンとライスシャワーが気づかないほどに静粛なものだった。

 

「着いたぞ」

 

 ライスシャワーが話す。ミホノブルボンが聴いて、少し話す。

 どこかで見たような光景をチラチラと――――微笑ましそうに見ていたライスシャワーのトレーナーが酔ってグロッキーになったのを尻目に、ミホノブルボンのトレーナーは事務的な通達をした。豪華な宿泊施設の相応しい駐車場に機械のような正確さで駐車し、外に出る。

 

「ブルボン、手を前に」

 

「お気遣い感謝します、マスター」

 

 車が止まってから不動のままでいた――――車に直接触れないためのガード、毛布がある場所にライスシャワーが居るため動けなかったとも言う――――ミホノブルボンの扉を外に回って開け、手をとって外に出す。

 キザではなく単純にコケられたら困るからであるが、ライスシャワーはその光景を少し羨ましそうに見た。

 

 そしてちょっと羨ましそうなライスシャワーは、ちらりと自分のトレーナー――――お兄さまの方を見た。

 

(見られている……! 求められている……!)

 

 お兄さまは、車に酔っていた。将軍などと大層な渾名をつけられたこの男は、微笑ましいライスとブルボンの姿を見ることに熱中して、後ろを見続けた結果、したたかに酔っていた。 

 

「だが俺は覚悟を決めた! ……全力でお兄さまを遂行すると!」

 

「三半規管諸共脳もイカれたか」

 

 割と辛辣な友のツッコミにもめげず、動くお兄さまを他所に、ミホノブルボンは尻尾と耳をピコピコさせながら宇宙に思いを馳せている。

 

「さあライス、おいで」

 

「うん、お兄さま!」

 

 酔っているのに無茶をするなよ。というかお兄さまってなんだよ、と。

 ぴょんと跳び出したライスを抱えてくるくると回している友を見て、参謀はそんなことを思った。

 

「来たか」

 

「お久しぶりです、師匠」

 

「ああ。お前もなんというか……うまく行っているようで何よりだな」

 

 最近のクラシック三冠は、リギルの独壇場となっていた。

 だが去年のクラシック路線はトウカイテイオー擁するスピカが席巻。今年は今のところ、ミホノブルボンの一強。

 

 リギル最強の風潮は薄れ、政権交代というべき新風が吹いている。

 これはURAとしては歓迎すべきことだったが、リギルとしては看過できない。

 

 URAの持っていた、『参謀』とその担当――――当人としては担当ではないと言い張っていたが――――にシニア路線を荒らさせるという当初の目論見は外れた。

 しかしその1年後、ミホノブルボンと彼の存在はまさに新風を巻き起こしたのだ。

 

 結局歴史の古い名門が勝つ。メジロ、シンボリ、ナリタ、アグネスなど、帝王になるべくして生まれてきたウマ娘が勝つ。

 リギルの一強は終わったが、それでも勝ったのはトウカイテイオー。シンボリ系に属する連枝の家。

 

 そんな定石と、勢力図を覆す。革命というべき事件が、ミホノブルボンの躍進だった。

 彼女はなんてことない生まれである。遡れば名門と言っていい血が入っているが、今では凋落しきって久しい。その程度のもの。母親もウマ娘ではあるが、実績はないに等しい。

 

 どんな生まれでも、まるっきり名門でなくとも、適切な指導を受ければ才能は花開く。世代最強を決める祭典、日本ダービーを圧巻の走りで制覇できる。

 

 URAとしては、これほど広めたい事実もない。故にウマッターなどでミホノブルボンの練習風景の切り抜きや試合の切り抜き、解説などをちょこちょこと上げ、積極的にスターとしての道を歩ませようとしている。

 最近上げた『【誤差0.1秒】冷徹なるサイボーグ、ミホノブルボン』の再生数は既にミリオンに到達している。

 

「めんどうなことです。トレセンの坂路を拡充してくれたことに関してはありがたいと言えますが」

 

 これまで坂路施設の拡充は、彼の給料からちょこちょこと工面して行うくらいなものだった。

 自腹の理由はその効果が証明されていなかったからであるが、今となっては坂路練習はフィーチャーされた。その結果、この合宿期間を使って大幅な拡充工事が行われる予定である。

 

「図面を送ったらしいじゃないか」

 

「ええ、幸いなことに、案があれば聴くと言っていただけましたので」

 

 (予算は)あげません!状態だったのが予算あげるよぉぉぉお!状態になったのはやはり、実績を上げたからだろう。

 すごいことなのだ。サブトレーナーとして実績を上げていたとはいえ、新人トレーナーがいきなり皐月とダービーを勝つというのは。

 

(なんてことを言っても、どうでも良さそうだな……)

 

 その性格を知っている。自分の名誉、栄光。そういったものに無頓着で、他人の夢のために全てを懸けられる男。

 

 無欲なやつは、強い。邪念が無いから感情に振り回されず、理性的に物事を進められる。

 

 智者の慮は必ず利害を雑うと言う。これは要は、物事は必ず両面的に見なければならないということである。

 感情は、両面的に見るということを阻害する。理性的で無欲なやつが誰しも有能というわけではないが、有能なやつが理性的で無欲だと手がつけられないと、東条ハナはつくづく思うのだ。

 

「そう言えば、将軍はどうした」

 

「一足先に宿に行きました。車に酔ったようで」

 

「なるほど」

 

「一応全員分の練習メニューは渡しておきましたから、酔いが直るまでに覚えて来るであろうと思います」

 

 全員分のメニューを、もう作ったのか。

 かつては慣れていたはずのその仕事の速さに、東条ハナは驚いた。

 

「……ああ、無論ここに移動するまでに体調の変化があるということは理解しています。1日目の練習でそこを見極め、適宜修正していく予定です。私の練習メニューの作り方はリギルのときと変わっていますから、師匠が削るべきところを削って余白を作っていただければ」

 

 幸いにして、私が陣頭指揮を執らなければいけないというわけではありません。時間がある以上、それくらいはします。

 

 平然と言い放つ参謀を見て、東条ハナはつくづく思った。

 あのときのリギルは間違いなく最強であった、と。

 

「直接指導はまだ慣れないか」

 

「物を的確なタイミングで、適切な言葉で伝える。それができないと思う程度には、自己分析ができているつもりです」

 

「……まぁ、そうだろうな」

 

 言っていることは正しい。厳密に言えば、言うタイミングも正しい。

 だが、その正しさというのは、技術的な正しさなのである。

 

 『将軍』は、指導する相手が一番受け入れやすいタイミングで粗を指摘する。

 『参謀』は、指導する相手が最も克服しやすいタイミングで指摘する。

 

 その結果として疎まれる、ということがある。ここに集まったリギルのウマ娘たちは慣れているが、彼の自己分析は結果的に正しいと言えた。

 

 そんな挨拶とも言えない挨拶を終え退室して早々、トレーナーは後ろをとことこと付いてきたブルボンの方に向いた。

 

「ブルボン。取り敢えず君は荷物をおいてこい。同室はシンボリルドルフだ」

 

「ルドルフ会長ですか」

 

 少し、意外だった。シンボリルドルフの同室はエアグルーヴかナリタブライアンとか、その辺りだと思っていたのである。

 そして自分の同室はライスシャワーであろう、とも。

 

「ライスシャワーはグラスワンダーと同室にした。お互いに学べるところもあるだろうからな」

 

「学べるところとは、なんでしょうか」

 

「最強無敵の逃げウマ娘を如何にして倒すか、という手段をだ」

 

 そう言えばこういう人だったと、ミホノブルボンは思った。

 最善を尽くす。最良を極める。だが、ズルはしない。相手の成長を阻害するのではなく、自分を高めて突破することを好む。

 

 冷徹なまでの、公正さ。

 裏を返せば、それは自分と自分のウマ娘に対する絶対的な信頼であると言っていい。

 

 ミホノブルボンは、言わなかった。貴方は私の味方ではないのですか、とは。

 彼女のトレーナーも、言わなかった。文句のひとつも言わないのだな、とは。

 

「私はルドルフ会長から、何を学べば良いでしょうか」

 

「気位」

 

 言っておくが、ああなれというわけではないぞ。

 そう前置きして、彼は続けた。

 

「あいつは狂人だ。ウマ娘たちを幸福に、というあやふやで果てのない夢を目指し、立ち止まらない。振り返らない。迷いながらも進み続ける。自分の信念と心中する覚悟がある」

 

「マスターに似ていますね」

 

「ん……まあ、そうかもしれんが、もっと似ているやつがいる」

 

「ライスシャワーさんですか」

 

 文字通り閉口したトレーナーを見て、ミホノブルボンは自分の導き出した答えが彼の想定と違うものだと言うことを知った。

 

 ――――誰だろう

 

 その答えが導かれる前に、閉口した口が再び開いた。

 

「彼女の光は新たに飛ぶ空を捜さなければならない今の君には眩しいだろう。だが、見つめ直すには絶好の光源になることもまた確かだ」

 

「はい」

 

「君は今、過去を見ている。原点を探している。だが実のところ、原点などというものはあやふやでもいいのだ。今を原点にしても構わない。要は、何を目指すか。その手段として何に向かうか。それは他ならない君が証明している」

 

 三冠ウマ娘になりたい。

 

 なぜそう思ったかはわからないが、ミホノブルボンは立派にその意志を貫き通している。

 三冠ウマ娘になりたいから、トレーニングをする。皐月賞を目指す。トレーニングをする。日本ダービーを目指す。トレーニングをする。菊花賞を目指す。

 

 ミホノブルボンは何故目指すかを知らなくとも、これまで立派にやってきた。ひたすら真摯に、地獄のようなトレーニングをこなしてきた。身体がちぎれるような緊張を超えて、レースを走ってきた。

 

「マスターは、私が何を目指すべきかを知ってらっしゃいますか?」

 

「ああ」

 

 お前が何を目指すかは、なんとなく予想がつく。

 だが具体的なことは、言わなかった。




123G兄貴、拓摩兄貴、天須兄貴、奈子兄貴、ラース兄貴、さけきゅー兄貴、proxyon兄貴、fumo666兄貴、八咫烏兄貴、レンタカー兄貴、SA0421兄貴、禪院家次期当主兄貴、障子から見ているメアリー兄貴、ビッグベアー兄貴、べー太兄貴、お祈りメール兄貴、ガリガリ君コーラ味兄貴、B.I.G兄貴、め玉ル玖兄貴、ジェミニブロンズ兄貴、しがないタオル兄貴、バスカレー兄貴、ゴンSAN兄貴、alt兄貴、ブブゼラ兄貴、めろだっく兄貴、石倉景理兄貴、終焉齎す王兄貴姉貴、zenra兄貴、晴読雨読兄貴、必勝刃鬼兄貴、がんも兄貴、星ノ瀬竜牙兄貴、ハガネ黒鉄兄貴、サガリギミー兄貴、九条幻楽兄貴、角行兄貴、タイヤキ兄貴、ESAS兄貴、Carudera兄貴、すまない兄貴、KJA兄貴、くお兄貴、主犯兄貴、バナナバー兄貴、eveneru兄貴、狂花水月兄貴、白髭の宦官兄貴、感想ありがとナス!

さるべじょん兄貴、クレメンス兄貴、sig4115兄貴、左衛門太郎兄貴、サザナミ兄貴、kaku兄貴、AC9S兄貴、Tパック兄貴、こくえんD兄貴、ハイネケン兄貴、KTDB兄貴、kotokoto13兄貴、白桜太郎兄貴、パイポ兄貴、夢憑き兄貴、カニ怪人兄貴、隣の野郎兄貴、nyurupon兄貴、ボルボール兄貴、のいであ兄貴、泉茜兄貴、25manganum兄貴、光の爪牙兄貴、織葉 黎旺兄貴、神坂圭一兄貴、弓ヶハマー兄貴、俺YOEE兄貴、九条幻楽兄貴、lakuda兄貴、ソラ0224兄貴、xxりゅーせいxx兄貴、評価ありがとナス!


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サイドストーリー:寒波至る

 夏合宿といえばやはり、普段よりも厳しいトレーニングを行うと思われがちである。

 現に、リギルメンバーにとってはそうだった。彼女らは1日目で体力の限界を、2日目で適した練習を見極められ、3日目からはひたすら体力を刮ぎ落とされた。

 4日目からは自主練習の時間が設けられ、今に至る。

 

 朝から夕方までひたすら練習。こう聴くと『疲労がコツコツと溜まっていくんだろうなぁ』という予想が立つが、違う。

 

「あぁ……今日も元気デース……」

 

 死んだ目をした二冠ウマ娘、エルコンドルパサーはデスソースをふりかけた朝食を食べつつ、彼方を見ながらそう呟いた。

 

 そう、元気なのだ。異様な程に。

 

 ウォームアップ、食事、クールダウン、マッサージ。全てが各々によって違い、各自の疲労回復のための最適解を極めている。

 だから、疲労が残らない。よく寝て翌日を迎えれば常にフルパワーで練習に臨める。

 

 キツいのは、心だけ。

 走るのは楽しい。トレーニングも楽しい。強くなっているという実感がある。だが、限界の壁に正面衝突するようなトレーニングは、ひたすらにキツい。

 

 キツいが、最善であり最良であることはわかる。身体がそう言っているし、夏合宿では付き物の故障者は出ていない。

 料理のメニューも全員が同じでないし、ウォームアップも違う。クールダウンもマッサージも、ウマ娘によっていちいち異なる。

 

 ぐうの音も出ない正論で無抵抗にぶん殴られているこの感覚を、リギルの面々は久々に思い出していた。

 

「ミホノブルボン。今日はこの皇帝が淀の坂の高低をうまく乗り越える術を教えよう」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「そう、皇帝が坂の高低をうまく乗り越える術を!」

 

「……?」

 

 そんな中でケロッとしている、化け物2人。

 シンボリルドルフがケロッとしているのはわかる。なぜなら彼女は皇帝だから。

 

 ミホノブルボンは、なぜ耐えられるのか。

 確かに、あの鬼は言った。『ブルボンはトレーニングを控えめにして、ルドルフにレースの知識、経験を教えてもらう。そちらの方がためになる。そして君たちも良ければ、手ほどきしてやってほしい』、と。

 

 それを聴いて、リギルの面々は思った。

 そりゃあそうだ。こんな地獄の夏合宿について来れるクラシック級ウマ娘など存在しない。体力の限界も自分たちより早く来る。

 だからトレーニングを早めに切り上げさせ、知識をつけさせるのはごく自然なことだ、と。

 

 

 無論、自然ではなかった。

 

 

 ミホノブルボンはリギルの面々と同じか、それ以上の練習をする。負荷の小さめ、いわば能力を増設するというより身体がよりキレを増すような、調整というべきメニューからはじまり、砂浜でひたすら走ったり、トモを鍛えるべくデッドリフトを担いだり。

 それらをなんでもないような顔でこなし、同じくあくまで調整気味のトレーニングに励むシンボリルドルフの授業を受ける。

 

 現場を指揮するのは、ライスシャワーのトレーナーである。彼は練習メニューの作成や調節などにかけては参謀役の男に負けるが、ウマ娘のやる気や調子をキープさせることにかけては天才的であると言えた。

 

 その天稟は今も欠かさず発揮されている。

 

「……会長は何故あのように一部を強調されるのだろう?」

 

 皇帝が坂の高低差をうまく乗り越える方法を教える。

 それはたしかに、ミホノブルボンには必要なことだろう。シンボリルドルフはそれほど京都レース場での経験が豊富ではないが、菊花賞と春の天皇賞を勝った。

 

 つまり、出走経験は少ないものの、勝利経験は豊富であると言える。だから教師役としては決して不適当な相手ではない。

 

 だが、なぜ繰り返すのかがわからなかった。

 恩着せがましいような言動をとるような方ではない。それがわかるからこそ、繰り返した理由がわからない。

 

「そりゃ、洒落だろ」

 

「……どこがだ?」

 

「皇帝が高低……」

 

「――――なるほど! しかし……」

 

 気づけなかった。

 エアグルーヴに、『将軍』が暗に指摘したその事実が重くのしかかる。

 

「女帝さん」

 

「なんだ、将軍」

 

「なぜ皇帝がダジャレを言うのか。その理由はわかるだろ?」

 

 それは、わかる。

 

「親しみを出すため、だと聴いている」

 

「そう。そして何故、皇帝は親しみを感じさせようとしているか、わかる?」

 

「……わからない」

 

「うん、それはつまり、ウマ娘全体のためだ」

 

 シンボリルドルフは、間違いなく有史以来最強のウマ娘の一角である。

 そんな彼女が走れて語れる全盛期なのに、他のウマ娘たちは神威と言うべき威圧感を恐れてアドバイスを求めに来ない。

 

 それは、損失である。皇帝の目の届く範囲は所詮ひとりぶんでしかない。だからアドバイスをするにしても、限界がある。

 しかし、皇帝を見るウマ娘の目はそれこそ何百、何千。そんな彼女らが自ら分析し、アドバイスを求めにいけばどうなるだろうか。

 

 シンボリルドルフはより多く、より適切で親身になった助言を行える。

 

「そういう壮大な計画がある、と俺は思うわけよ」

 

「くっ……私は副会長でありながらそんな遠大な計画の一端に気づかなかった、ということか……」

 

 普段ならばここで、やる気がちょこっと下がるところである。

 だがここからが、『将軍』の『将軍』たる由縁だった。

 

「違うな、女帝。貴女は気づかなくていいんだよ」

 

「……どういうことだ?」

 

「つまり、貴女と皇帝とは既に親しい。相談を持ちかけ、し合う間柄だ。そうだろ?」

 

「それはそうだが……」

 

「だからこそ、皇帝は君に気づかせないように巧みにダジャレを混ぜ込んでいる。ダジャレに気づくのは、彼女と親しくない相手でいいんだ。だから君が気づかないのは――――」

 

「会長の思惑通り、ということか!」

 

 私は会長の掌の上で踊らされていたということか……!

 

 そんな戦慄を覚えるエアグルーヴに駄目押すように、『将軍』は口を開いた。

 

「つまり貴女が会長の洒落を気づかなかったと悔いるのではなく、対象を絞ることに成功し、君に気づかせなかった会長を讃えるべきだ。そうだろ?」

 

「確かにそうだ……! 私は唐突に意味のわからない言葉をぶつけられ戸惑い、意味を解せず悔しく思っていた……だが、それはリトマス試験紙だったのだな!」

 

「そうそう」

 

 嘘である。

 エアグルーヴがダジャレの被験体になるのは単に思いついたときに側にいる確率が高いから。ダジャレの精度を下げることによって対象を絞るような高等技術を、あの皇帝ができようはずもない。

 

「気づけばダジャレの精度を指摘する。気づかなければそれはそれとして気に負わず、皇帝を讃える。それでいいと俺は思うな」

 

「確かに……!」

 

「ただ、精度の指摘にはどことどこがかかっているか、くらいにしておいた方がいい。下手に深いことを言うと、皇帝の進歩を阻害することになる」

 

「わかった、そうしよう」

 

 モチベーターとして極めて有能なこの男は、エアグルーヴがシンボリルドルフのダジャレに気づけなかったときに己を責めるクセがあることを知っていた。

 

 取り敢えずこう言っておけば、巧く噛み合うだろう。

 

 そう判断して、全体を見渡す。

 疲れもない。やる気の減衰もない。あとは練習中の然るべきタイミングに褒めて、なだめて気性を制御し、『参謀』に指定されたタイミングでぴったりやる気が尽きるように練習させる。

 

 そんなふうに頑張っている男と対になっている『参謀』は今何をしているかと言えば、映像を見ていた。

 

「……」

 

 首を回して骨を鳴らし、アイマスクをつけて椅子の背に身体を預ける。

 

 ――――今、俺にやれることはない

 

 彼は、そう割り切っている。基本的に自己完結した目標を夢にしてきたミホノブルボンというウマ娘が成長するには、自分以外のウマ娘という存在がどうしても必要なのだ。

 

 正直、合宿に行く気はなかった。その心理的成長はあくまでも、菊花のあとでやればいいと思っていた。だからこの夏は暑さ対策で休みをこまめに挟みながらいつも通り坂路を走らせる予定だった。

 

 だが思ったよりも、ミホノブルボンの成長は早い。

 その早さは決して歓迎できるものではないが、乗り越えれば更に強くなる。

 

 ――――ダービーで、布石は打った。菊花を勝つだけならば、できる。問題ない。だがその勝ちがミホノブルボンの成長に繋がるかと言えば、そうではない。

 

 ライスシャワーは、同格である。同格を倒すために、一々奇策を用いているようではこれから――――古豪ひしめくシニア級ではやっていけない。

 逃げウマは、勝つか負けるかのどちらかしかない。勝つときは自分の戦術を押し通せたときで、負けるときは相手の戦術に押し切られたとき。

 

 クラシック級での敵は、ライスシャワーくらいなものである。だがシニア級では、各世代のライスシャワー枠が研磨された姿でゴロゴロいるのだ。

 

(限界ギリギリまで待つか……)

 

 期限は菊花賞1週間前、そのあたり。そこまでに自分の新たなる目標を導き出せなければ、一旦やめさせて無理矢理にでも勝たせる。

 

「参謀くん、お疲れのようだね」

 

「見ての通りだ」

 

 アイマスクを額の方へ押し上げ、椅子ごとくるりと振り向く。

 焦げ茶の髪につられるように、一房の白い三日月のような髪がふわりと揺れる。

 

「どうだ、あいつ」

 

「ん……自己完結している強さが裏返ってきているという感じかな。これまでのレースで、なにか思うことがあったのだろうとは思うが……」

 

 長所とは、短所でもある。

 ミホノブルボンは、あらゆる面で自己完結している。目標にも、走法にも、他者の存在を必要としない。

 

「現状、どうにも集中し切れていない。自分でも足りないことがわかっていて、それが単なる練習で得られないことを知っている。君の『トレーニングは最低限にとどめ、座学に専念させる』という判断は正しかったと思うよ」

 

「そうだろうな」

 

 シンボリルドルフはリハビリ中、とでも言おうか。

 なんの比喩もなく日本の至宝である彼女は、リハビリに慎重を期すことを強いられている。去年から今までずっと、ゆっくりじっくり身体を練り上げているのだ。

 

 この夏合宿でも、ハードなトレーニングは課されなかった。その余暇の時間を、後輩の教育に当ててくれているわけである。

 

 もともと、シンボリの家と東条の家は仲が良い。西宮の家がメジロの家と共にあるように、東条はシンボリの家と共生関係にある。

 とはいえこの厚意には、いずれ何らかの形で報いたい。

 彼としては、そう思っていた。

 

「彼女の暗記力は目を見張るものがある。クイズ形式で何問か確認テストを行ってみたが、全問正解だった」

 

 多くのウマ娘の悩みのタネである中間テストも問題なく通過していた。

 それどころか、学年でも五指に入るほどの成績だったのである。

 

「読解問題をすべて落としてこの成績はすごいと、先生たちが褒めていたぞ。君の指導の賜物かな?」

 

「いや、もともとだな。あの暗記、力は――――」

 

 スッ、と。鋼鉄の瞳から光が消える。

 所謂ハイライトオフ、何を考えているかわからなくなるそんな眼差しが、シンボリルドルフは好きだった。

 

 この瞳を見ると、初めてあった頃の得体の知れなさとか、そういった懐かしいものが思い出される。

 

「……そうするか」

 

「考えは纏まったようだね、参謀くん」

 

 それは話し相手を放っておいて一人の世界に没入し、数分の後に帰ってきた男に対して使うには、優しすぎるほどの声音だった。

 

「…………そうだ。話をしていたな。何か言いたげな雰囲気だった。なんだ?」

 

「単刀直入に言うが、この際だ。目指すべきものを与えてしまってはどうかとも思う。君が後々のことを考えているのもわかるが、やはり大切なのは今ではないかな」

 

 お前はここを目指せ。

 

 そう命令するだけで、ミホノブルボンは精神的な安定を取り戻すだろう。それは極論を言えば、菊花のあとにあることであれば何でもいい。

 それだけで、ひとまずの安定は買える。

 

「大切なのは今だ。それは間違いない。だから一応、策は施してある」

 

「第4コーナーの失速がそれかい?」

 

 こいつやっぱり賢いな、と。そんな当たり前なことを、改めてトレーナーは思い直した。

 

「相手のスパートを早め、相手の視野を狭めるいい手だとは思うが……」

 

 あの失速を見た仮想敵は、思うはずだ。

 菊花賞でのミホノブルボンとの争いは、2400メートル地点か、その付近からだと。あのあと速度を取り戻したとはいえ、一度限界が来たという事実がそうさせる。

 

 条件が決まれば必然、対策範囲も狭まる。2400メートルまで脚を溜めて、最後の600メートルで差す。オーソドックスな逃げウマの対策法をより京都レース場にあった形にチューンして、各陣営は仕掛けてくるだろう。

 

 視野を狭めるとは、そういう意味である。

 

「目下最大の敵は、そこまで君たちを侮らない。そうではないかな」

 

「無論のこと、あいつは距離の壁など問題にしてもいないだろうな。ステイヤーとの勝負だと思ってくるはずだ」

 

「うん。そしてそうなれば、実質的な一騎打ちだ。そこまでして他陣営を牽制する意味は――――」

 

 失速したことは、多少なりとも負けの可能性を生んだ。

 日本ダービー。世代最強を決めるレース。ミホノブルボンにとっては、夢の中腹。そこでわざわざ、敗北に繋がりかねない行動を取らせる。

 

 無論それが、未来の敗因への対策になるならば話は別だ。だがこの場合、リスクとリターンが繋がっていない。

 

「――――ない。うん、ないはずだ。君がそれを知らないはずがない」

 

 他の目的があったのか、と。

 話しながら、シンボリルドルフは気づいた。

 

「となると理由は他にある」

 

「俺には臨機応変の才能がない。思考があまり速いとは言えないからな。だから君みたいなのは、天敵だ。戦いたくはない」

 

 じっくりと観察し、分析し、情報を集めてから煮詰めて考える。

 だからこそ先の先まで物事を読めるが、長くても3分程度しかないウマ娘のレースでは考えている間に取り返しのつかないくらいの差をつけられかねない。

 

「だからまあ、色々考えているわけだ。そういう相手をどう倒すか、ということをな」

 

「なるほど……打った布石はひとつだが、策は1個ではなく布石の意味も1つではない、ということか」

 

 思うに、と。

 

 鋼鉄の瞳を眠たげに瞬かせた男は、腕を組みながらルドルフを見た。

 

「俺のことをよく知っている君すら、事態が動き出さない今の状態ではここまで気づかなかった。もっともこれは、君の能力が低いわけではない」

 

 シンボリルドルフの恐るべき能力は即応力である。

 事前にそれなりに考えて、対策を立てる。たとえそれが外れても、周りの動きから真意を察して駆け引きを仕掛けてその意図を破滅させる。まさしく、参謀からすれば味方にすればこれほど頼もしい者もなく、相手にすればまさしく天敵と言っていい。

 

「だから、菊花賞は勝てる。別に信頼してるから言ってるわけじゃない。勝算という裏付けがあって、俺は口にしているのだ」

 

「なるほど……」

 

 少なくとも、この人を心配する必要はなさそうだ。

 シンボリルドルフは、そう思った。




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サイドストーリー:掌に余る栄光を

 一挙手一投足すらも含めて、全てを管理したい。負荷も、成果も、過程すらも。そうすればどうしようもなく人智に余る結果も、運命すらも支配できる。

 

 完璧なトレーニングを用意した。

 万が一にも私心が入らないように、師匠――――東条ハナに時間を割いてもらって、確認を求めた。

 

 ライスシャワー。天性のステイヤー。実力相応の自信家。間の悪い少女。影と共に潜み、刺客の如く差しにくる最強の敵。

 

 そんな敵を、研究した。研究して研究して研究して、だからこそ会心の練習メニューを作れた。

 

 将軍の作るメニューには、無駄が多い。削るべきところを削らず、削らなくていいところを削る。いびつな能力の伸び方をする。筋肉や骨が、偏って消耗する。

 

 成長限界は、わかる。

 成長曲線も、わかる。

 

 だがそれは、あくまでも予想である。

 そこでこの際参謀は、ライスシャワーの育成に全力を尽くすことにした。

 

 任された以上、虚心で行う。無駄なことはやらせない。絶対に、怪我はさせない。消耗した筋肉や骨は均衡を取るように回復させ、磨き上げる。

 

 ――――何事も、最悪を極めた方がいい

 

 参謀は、そう思っていた。

 どれほどの実力なのかとやきもきするよりも、相手が最高に最悪の状態でも勝てるように育てる。それがもっとも確実で、もっとも有効な手段なのだ。

 

 その最悪を、この目で見たい。

 

 行動に、嘘はない。なんの遠慮もなく全力で、ライスシャワーというウマ娘の限界を極める。そのために動く。

 

 だがその経験はいずれ必ず、ミホノブルボンのレースに生きてくる。

 互いの利益になるといったのは、嘘ではない。その真意を、『将軍』は正確に推察しているだろう。

 

 『参謀』は、ライスシャワーの現状と到達点を知れる。

 『将軍』は、ライスシャワーにとっての最適を知れる。

 

 『参謀』はそれによって、より正確な予測を立てられる。

 『将軍』はそれによって、より広範な戦術を立てられる。

 

 ギブアンドテイクとはつまり、そういうことだ。

 

(それに……)

 

 怪我をされては、困る。

 

 ライスシャワーは身体がいびつだと、ひと目見てわかった。特に右脚の消耗が激しい。身体の左右の均衡が取れてない、というのか。

 

 ミホノブルボンに阿呆のように坂路をやらせているのは、鍛えるに効果的だというのもある。負担が少ないからというのも、勿論ある。

 だが坂路をやらせ続けている最たる理由はと言えば、消耗が鍛えるべき場所に均等に行くからである。

 

 ただ坂路練習と言っても、コースがある。左回りか右回りか、それとも逆走してみるのか。降るのか、登るのか。どこで止めるのか、何メートル走るのか。何本やるのか。脚をどちらから繰り出すのか。

 

 それらを完璧に管理することで、ミホノブルボンの身体を均一に消耗させる。

 消耗が集中すれば、無意識に庇うようになる。ライスシャワーで言えば、右脚をかばって左脚を使うようになる。

 

 こうすれば何が待っているのか。それは言うまでもなく、故障だ。

 

 ライスシャワーの走りには、致命的にキレがない。スプリンターにも好位追走型にも必須と言える、ダッシュ力。加速力。そういったものが、決定的に欠けている。

 ならばどうするかと言えば、ロングスパートしかない。スタミナに物を言わせた、本気を出しての長駆。その戦術を取るのは必然であり、文句をいう気もない。その権利もない。

 

 だがロングスパートは、どうしても消耗する。本気の走りを長時間継続するというのは、思ったよりも遥かに身体に掛かる負担が大きい。それを彼は、身を以て知っていた。

 

(同じようなロングスパートをできたやつを、俺は知っている)

 

 と言っても彼女の走りは到底、ロングスパートには見えなかっただろう。

 

 初っ端から先頭に立ち、徐々に加速しながら、短距離並みの速度を維持してゴールする。

 かつて師匠から任された――――と言っても、練習の管理などは自分の未熟もあってあまりやらなかったが――――ウマ娘は、ライスシャワーとは違い天性のキレがあった。ありすぎるほどにあった。

 

 ――――本気を出させ続けると、こいつの脚は明日にも自壊する

 

 そう思う程に。

 だから、一瞬のキレを極めさせた。スタートから即座に0から100へと一気に加速できる脚を必死になだめて、徐々に加速していくようにした。

 その『徐々に』の中で息をため、最後の一瞬だけ本気の速度を出せるようにもした。

 

 それでも、怪我からは逃れられなかった。考えうる限りのケアはした。戦術にも間違いはなかった。

 練習もそうだ。走ることを止められることが――――枷に嵌められることが嫌だった彼女に合わせつつ、折り合いを付けてもらいながら柔軟と体幹トレーニングを入念にやった。身体に負荷がかからないように、と。

 

 それでも、怪我をした。大ケヤキを超えて、第4コーナーを超えて、速度の壁も超えて、レコードを超えて、そして肉体の限界という壁を超えた。

 

 最後は、やや失速していた。それでも彼女は、レコードを出した。解放されたように一瞬で加速して、頂点を超えて、超越を保って、転げ落ちる。そんな走りだった。

 

 故障した理由はわからない。今でもわからない。故障させておいて理由はわかりませんというのはトレーナーとしてどうかと思うが、わからない。

 考えても考えても、わからない。

 

 本人は言った。『理由はわからないのでなくて、ありません。だからそんなに気にしないでください』と。だがそんな事を、認められると思うのか。

 走った本人はそういう権利がある。わからないのではなく、ないのだと。だが、健康を管理することを仕事にしている人間は、信じてくれるウマ娘の命に責任を負う人間は、そんな理不尽を絶対に認めてはならない。

 

 あんな速度が出た理由も、あんな速度を出した理由も、あれほどの軽症で済んだ理由も。それが全て理由が無いなど、認められるはずもない。

 

 ゴール後に躓きかけたのを驚異的な体幹で支えて、首を傾げながらとことこと歩く。

 明らかにおかしい挙動の原因は、芸術的とすら言える骨折の状態にあった。

 

 医者が感嘆するほどの、完璧な骨折。あまりにも見事に折れていたそれは、逆にくっつきやすかったと聴いている。

 たぶんそれと似たようなことが、ライスシャワーにも起こる。しかしあの時のように、無事で済む保証はない。

 

(余計なお世話だろうな)

 

 あいつなら、直前に気づくだろう。レースのドタキャンで叩かれようとも、キャンセルするだろう。

 だが、なんの前兆もなく故障する例もある。

 

 自分と同じ十字架を背負ってほしくない、というのは、おそらく余計なお世話なのだ。

 

 砂浜を削るような音に、瞑っていた眼を開く。

 視界の端に、栗毛が揺れた。薄い橙色の混ざった栗毛ではなく、赤みがかった栗毛。胴が短く詰まって脚が長く見える、典型的なスプリンターの体型。

 

「マスター」

 

 ミホノブルボン。忠誠心すら感じる程に従順で癖のない、そしてなにより頑丈なウマ娘。

 腰に紐を括り付け、恐ろしく巨大なタイヤを引き摺りながら彼女は来ていた。

 

「お話があります」

 

 これまでの不調が嘘のように迷いのない、透き通った星空のような眼。

 

「……ブルボンか」

 

 星は、晴れ渡った夜にしか見えない。

 やや光を失いつつあった眼に再び光が灯ったということはつまり、そういうことだろう。

 

「目指すべきものは、決まったか」

 

「はい。ライスさんと話して、気づきました」

 

 ライスシャワーさんと、それまでは言っていた。

 何も言わなくとも何かしらあったのだろうとわかるほどに、身体が英気に満ちている。

 

「私は、三冠達成後はマスターの為に走りたいと考えていました。私の夢を実現可能な物へと変えてくださったのは、マスターです。私の夢を叶えた後は、マスターを栄光で彩りたいと考えていました」

 

 それはなんとなく、気づいていた。

 夢を叶えたあと、恩返しをしたいと考えていることは。

 

「マスターがそれを望まれないことも、理解していました。ですが私は、マスターが貶められたことを知っています。私のために貶められたことを、知っています。そのぶんの栄光を、私はマスターに受け取っていただきたいと思っていました」

 

 ミホノブルボンは、他人から何を言われても気にしない精神を持っている。

 参謀のそういった見立ては正しかった。彼女は自分が何を言われても、図太さすら感じる神経の太さでやり過ごせる。

 

 三冠ウマ娘になりたい。目標を訊かれたときにそう言って、その度にそれは無理だと理路整然に反論されたり、笑われたり。

 そういう体験を経ても、彼女の夢はいささかも曇らなかった。父という夢の肯定者がいたということもそうだが、彼女は他者の批判を一切意に介さない特異な精神構造をしていた。

 

 本来ウマ娘とトレーナーの間に結ばれる信頼とか絆とか、そういったものとはまた別な忠誠と呼ばれるものを感じるほどに、彼女は指導者に対して従順である。

 坂路という肉体的負荷を減らすという理屈の上では最適な練習は、並のウマ娘では耐えられないほどの肉体的苦痛を伴う。

 

 脚の筋肉が、腰の筋肉が悲鳴を上げる。肺が破れる。呼吸ができない。横腹が食いちぎられたかと思うほどに痛む。

 

 ミホノブルボンは、フォームを正しく整えて走った。フォームが崩れたまま練習しても意味がないと知っていたから。

 

 ミホノブルボンは、苦悶の表情1つ顔に出さなかった。この練習が自分の為に組まれたものだと知っていたから。夢のためだと知っていたから。

 

 ミホノブルボンは、文句の1つも言わなかった。これが、これこそが自分の望んでいることだと知っていたから。

 

 普通のウマ娘ならば、揺らぐ。

 短距離路線に行けば、楽になれる。自分の才能に適したレースに挑むと、夢を諦めると決めれば楽になれる。

 退路がないわけではないのだ。自ら振り返ることをしなかっただけで、退路はあった。手を差し伸べてくれる人もいた。

 

 だがそんなことは、気にならなかった。様々な感情はあったが、それを呑み込んだ。

 

 その中で唯一呑み込めなかったのが、彼女にとってのマスターへの批判だった。

 彼女のマスターも他者の批判を気にしないという、非常に似通った精神構造をしていたから、彼女は別に気にする必要はなかった。

 

 だが、ミホノブルボンは気にした。彼女は誰しも自分と同じ価値観を持っているわけではないということを知っていたのである。

 

「俺が栄光を求めているなら」

 

 黙って聴いていた男は、少しからかうように口を開いた。

 

「君は最も選ぶべきではない相手だ。違うか?」

 

「その通りです」

 

 大成できるであろう方向に進まない。

 夢を諦めさせようにも意志が硬い。

 描いた夢に対して多少なりとも適性があればいいが、そんなものはまるっきりない。

 

「そのことに、君はようやく気づいたわけだ」

 

「はい」

 

 ぱたぱたと、尻尾が揺れた。腰に括り付けた紐に触れ、ぱすんと力無く跳ね返る。

 

「マスターはなぜ、私を選んでくださったのですか」

 

 耳がピンと立ち、聞き逃さないような姿勢を取るその前に、参謀はさっさと口を開いた。

 

「お前がバ鹿だからだ。俺は」

 

 ――――考えてみると、バ鹿なやつが好きらしい。

 

 笑う。呵々大笑というわけではない。夜の雲からほんの少しだけ月が顔を出したような、そんな笑顔。

 冷たげな顔立ちが、笑うだけでこうも変わるのかと思うほどの、優しい笑顔だった。

 

「――――ああ、正気でない夢を正気のまま追う狂人が、俺は好きなんだろうな」

 

 他人に聴かせるような音量ではない。独白というべきだろう。自分の知らない自分に気づいたとでも言うような、囁き。

 しかしそれを聴き逃すほど、ウマ娘の耳は悪くなかった。

 

「ブルボン」

 

 暫く何も言わず突っ立っていた――――改めて言われて自分のバ鹿さに気づいたのか、もっと劇的な選ばれ方をされたと信じていたのかだろうとは思うが――――サイボーグウマ娘の名を呼ぶ。

 ぴょこんと、挙動不審な感じに栗毛の耳が動いた。

 

「―――――――エラーを起こしていました。申し訳ありません」

 

「いや、いい。それで、ライスシャワーに何を教わった。何を聴いた。どう思った。そのあたりを、君の口から聴きたい」

 

 暫くぱちぱちと目を瞬かせて、ミホノブルボンは話しはじめた。




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サイドストーリー:風は天涯へ

 ライスシャワーというウマ娘がなぜ自分を目指すのか。それが、わからなかった。

 

 一緒に走れるのが嬉しい。彼女には、そう聴いた。皐月賞前夜、深夜22時43分。寮に帰るところでばったりと会って、そんなことを言われた。

 

 正確に言えば、『あ、明日、ね。一緒に走れるから、その、その、ね。嬉しくって』。今でも、口調や間を含めてリピートできる。

 

 一緒に走れて嬉しい。その感覚は、いまいち理解し難いものがある。

 ライスシャワーと一緒に走れて嬉しいとは、ミホノブルボンは思わない。マチカネタンホイザもナリタタイセイと走ってもそうだ。

 

 いずれも中距離を得意とするウマ娘。中距離を得意とするように生まれ落ちた、天与の才能を持つウマ娘。当然格上だと、ミホノブルボンは思っている。

 

 彼女ら3人の実力は恐れない。努力は恐れない。実力も努力も、勝っている自信があるから。

 ミホノブルボンはただ、その才能を恐れる。自分にはないものを持っているという事実があるだけで、格上であると思う。

 

 だがそれでも、一緒に走っても嬉しくはない。

 

 嬉しいとは、なにか。

 

 それを、ミホノブルボンは聴いた。練習の合間、雑談というべき時間中に。

 

「ミホノブルボンさんは、ライスのヒーローだから」

 

 なにかしただろうかと、ミホノブルボンは過去のデータベースを探った。

 

 ヒーロー。変身したり、ロボットに乗り込んだり、宇宙を駆ける戦闘機に乗り込んで敵を蹴散らす、すごい人たちの総称。

 なるほど、ライスシャワーはヒーローというよりもヒロインといった儚さがある。自分にないものに憧れるのは、ある種当然でもあるだろう。

 

 だが、彼女にヒーローと讃えられる何かをした記憶が、ミホノブルボンにはなかった。

 

「ブルボンさんは、負けなかった。周りの人の言葉に。無理だって、無茶だって言われて、色んなことを書かれて、メイクデビューで好走したあとも短距離に進めって言われて、それでも曲げなかった。それは、ライスにはできなかったことだから」

 

「ライスさんは、スプリンターになりたかったのですか」

 

 それは自分以上の無茶であろうと、ミホノブルボンは思った。

 ライスシャワーには一瞬のキレがない。ライスシャワーは飛行機のようなもので、真の実力を発揮するには滑走路がいる。

 

 スプリンターにとって必須とされる、ミホノブルボンのような爆発的な加速はない。ある程度の距離を走り、徐々に速度を高めていくことしか彼女にはできない。

 

「私にできることは少ないでしょうが、応援します。なにか手伝えることがあれば、遠慮なく言ってください」

 

「え、あ、ううん! そうじゃなくってね。ライス……勝っても、がんばっても、駄目で。お兄さまに会うまで、レースに出るのが嫌になってたの。ライスが勝っても、誰も幸せにならないって……」

 

 君は、間が悪かっただけだ。その証拠が、俺だ。

 君が走ることで周りが不幸にしかならないなら、なぜ俺は君をスカウトに来たと思う?

 

 君の走りに魅せられた。粘り強い末脚、飽くなき勝利への執念に。

 断言する。君の勝利で、俺は幸せになると! 

 

 ライスシャワー! 俺を幸せにしてくれ!

 

 将軍がそう言い終わる頃には、ライスシャワーは泣いていた。

 泣いて、泣いて、その間におろおろしている泣かせた当人――――何も知らない人から見れば圧倒的な不審者――――がかわいそうな子を泣かせたということでヒシアマゾンに連行されていく。

 

 アンタは顔の圧がすごいんだよ!などと言われてアーマーゾーン……などと返している未来のお兄さまを慌てて追っかけて、ライスシャワーの今がある。

 

「……お兄さまにはそう言ってもらって、でもライス、怖くて。そんな中で、ブルボンさんを見たの」

 

 お兄さまは、前に向き直る勇気をくれて。

 ブルボンさんが、前に進む勇気をくれたの。

 

 そう微笑むライスシャワーには、今までにない強さがあった。

 

(……私にとってのマスターが、ライスシャワーさんにとっての私)

 

 だから、追いかける。執着する。憧れる。

 その気持ちは、わかる。

 

 ミホノブルボンは、憧れているのだ。自分の夢を肯定して、夢へと続く路を拓いてくれたマスターに。

 

(私は……)

 

 私は、マスターのことをどう思っているのか。

 憧れている。一緒にいるととても落ち着く。ずっと一緒にいたいと思う。

 

 

 ――――ブルボン。自分のことを理解してくれて、夢を肯定してくれて、共に歩んでくれる。そんな相手に恵まれるのは、とても幸運なことだ。誰もがお前みたいな幸運を持ってはいない。

 自分のことを理解してくれても、夢を肯定してくれない。夢を肯定してくれても、自分のことは理解してくれない。

 理解して、肯定してくれたとしても、共に歩むことを選ぶとは限らない。

 トレーナーくんのことを、大事にしなさい。信じてやりなさい。仲良くしなさい。お前に降りかかった幸運を、当たり前のことだと思わないようにしなさい。

 

 

 お父さんは、そう言った。ウマ娘は誰しもが夢を持っているが、トレーナー側は理解してやれない可能性もある、肯定してやれない可能性もある。そしてその上で、叶えることは更に難しい、と。

 三冠ウマ娘は、そもそも1世代に1人しか存在し得ない。そしてそれなりに長い日本ウマ娘史においても、現在4人しか存在しない。

 

 

 セントライトとシンザンは、神話の世界の住人だ。

 

 

 そんな中で現れたミスターシービーは、神話の世界の出来事が現実に起こりうるのだと証明し、人と神の時代を繋いだ。

 

 確かに彼女は1年後に出てきたシンボリルドルフとの直接対決でジャパンカップ、有馬、大阪、天皇賞春、宝塚と5連敗とまるで歯が立たなかった。まさしく、完敗と言っていい。

 たぶん唯一勝ち目があったのは菊花から中1週間の強行軍で挑んだジャパンカップだっただろうが、ルドルフは何故か生涯最高の出来と呼ばれる走りをした。

 王道で、完璧な正攻法。なんの変哲もない、しかし圧倒的な走りをされて敗けた。

 その後もルドルフには負け続けた結果として色々と言われているが、偉大なウマ娘である。

 

 

 接してみると気さくで話しやすいシンボリルドルフは、神の時代にしかなかったクラシック三冠という単語を完璧に人の時代のものへと引き戻した。

 未熟だったクラシック級での戦い――――あくまでも、当人曰くであるが――――を乗り越えたシンボリルドルフに不可能はなく、シニア級になってからはまさに無敵。

 

 『私が絶対だ』とでも言うような王道のレースを貫き通し、日本のウマ娘が他国のGⅠでも勝てることを証明した。今やレジェンドの湯に頭まで浸かって浮かんでくる気配すらしない。

 とにかく安定感と言うものを体現したような走りで、レース自体が驚異的なスローペースで進んだ菊花賞を除いては観ている者をハラハラすらさせなかった。

 

 その伝説に自分がなりたいと、思わないウマ娘がいるのか。

 それは、居ない。でも成長するにつれて折り合いをつけて生きていく。

 

 無論、折り合いをつける気配すらないウマ娘たちはいただろう。だがそれでもトレセン学園に入って、自分以外の天才を見て、あるいは負けて、夢は儚く散っていく。

 

 だがミホノブルボンは、負けなかった。なにせ、現在無敗の二冠ウマ娘。

 これだってトキノミノル、コダマ、シンボリルドルフ、トウカイテイオーしか達成していない。朝日杯FSでジュニア王者になってホープフルステークスを制覇した無敗の二冠ウマ娘とすれば、初だ。

 

 つまり早くも、デビュー2年にしてレジェンドの湯に足元まで浸かっている。菊花を控え、温泉に沈められたレジェンドたちからおいでーされてる状態ですらある。

 かぽーん、と。その極上のお湯につかれるかどうか。今はそんなところにいる。

 

 更に言えば、レジェンドの温泉に浸かっていたり床を突き抜けて別次元にワープしたりしているウマ娘はいずれも名門の出。

 その点でもミホノブルボンは、異質の存在と言えるのだ。

 

 ――――こんなことを他に、誰ができる

 

 誰にもできないだろうというのが、ミホノブルボンの結論だった。

 

 ミホノブルボンは、アイドルウマ娘である。ファンレターも届く。無論名門の子弟からも来たが、やはり特に多いのは雑草のようにひょっこりと生まれ落ちた寒門のウマ娘たちからだった。

 

 貴方のようになりたいです。夢を諦めずに頑張ります。

 生来生真面目なミホノブルボンは、時折時間をとっては頑張ってそれらの返事を書いている。最近爆増して困っているが、とにかくも目を通している。

 

 だがその度に、思うのだ。この後に続くウマ娘たちの夢を肯定してくれるトレーナーは出てくるのか、と。

 ミホノブルボンは変異種で、まぐれであると言われはしないか。

 

 背中に続こうとするウマ娘がいても、続くための道を舗装してくれるトレーナーがいなければはじまらない。

 

(……私は)

 

 私の夢は。やるべきことは。

 その答えは、自然と出てきた。実力相応の巨大な夢を持つ先輩が近くにいて、憧れて後を追ってくれる存在が近くにいて。

 

 やっとミホノブルボンは、自らの望みに気づいた。

 

「ライスさん」

 

「え、う、うん! なに、ブルボンさん!」

 

「ありがとうございます。貴女のお陰で、私は『夢』のアップデートを完了しました」

 

 曇り空だったミホノブルボンの青い瞳は、すっかり晴れ渡っていた。

 それがライスシャワーには嬉しかった。自分の言葉で憧れの人の背中を押せたことが嬉しかった。

 

 それはライスシャワーがお兄さまと慕う彼に、やってもらったことだったから。

 

「そして、失礼します。私はアップデートした『夢』の次第を、マスターへと報告しなければなりません。協力を、仰がなければなりません」

 

「きっと、協力してくれるよ」

 

「はい。私もそう信じています」

 

 そう笑って、別れた。

 そしてミホノブルボンは、ちょっと行ったところで戻ってきて、休憩前までつけていた紐を改めて腰に巻き直し、ズルズルとタイヤを引き摺りながらマスターの元へと向かったと、そういうわけである。

 

「『夢』のアップデートが終わった後に報告すべしというのは、マスターの指示です。そしてこの練習もまた、マスターの指示です。故に同時に実行すべく、私はタイヤを牽引してここへ来ました」

 

「なるほど。過程はわかった。結果もまあ、わかる。だが今一度、君の口から聴きたい。君はクラシック三冠の栄冠を掴んで、何を目指す」

 

「私は『切り開く者』になります。マスターが私にそうしてくださったように、夢への道を照らす標となります」

 

 一息おいた一瞬の内にミホノブルボンは不安そうに耳を畳み、ピンと立てた。

 

「これは、血統主義への革命です。ウマ娘にとっては血統が全て。そういう論調が、常識です。ですが私は、未来に存在するかつての私のために常識を敵にしたいと考えています。そのためにはどうしても、マスターの助力が要ります。マスターは――――」

 

 ぎゅっと、拳を握りしめる。

 ふらふらと所在無さげに尻尾が揺れて、止まった。

 

「――――マスターは、私の味方でいてくださいますか」

 

「ああ」

 

「常識を敵にしても、ですか」

 

「勘違いするなよ、ブルボン」

 

 名家の次期頭領。皇帝の杖。リギルの参謀。理詰めの脳筋。スパルタの軍師。

 

 それらのどれでもない生身の、ミホノブルボンのマスターとして。

 東条隼瀬は、傲岸なまでの自信を鋼鉄の瞳に宿して吐き捨てるが如く言った。

 

「俺たちに常識が味方してくれたことなど、それまでのただの一度も有りはしない。今までの当たり前がこれからも続く。ただそれだけのことが、俺達にできないと思うのか?」




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サイドストーリー:風声鶴唳

 見違えたな。

 

 大仰な表現を好まないシンボリルドルフがそう言うほどに、ミホノブルボンは変わった。元に戻ったわけではない。どこか定まっていなかった瞳は明確に遠方にあるなにかを見つめているし、心と身体の均衡が取れている。

 

「いいかい、ブルボン。領域というものは原点・現在・未来を強く意識しなければ入ることができない。そして意識しても、必ず入れるとは限らない。君が今まで入っていた領域は浅かった。浅い故に入りやすかった。だが今の君ならばもっと深く、もっと精巧な領域を構築できる。しかしこれには、クセを付ける必要がある」

 

「クセ、ですか」

 

「そうだ。自分の中でクセを付けてルーティーン化することによって、より深層の領域に踏み入ることができるんだ」

 

 そう説明するルドルフは中間を少し超えた地点から3人を抜くことによって領域を構築できる。差しを得意とする彼女にとって、これは信じられないほど緩い条件だと言えた。

しかもその割に、いとも簡単に深層領域を構築できる。誰よりも深く、強い領域を。

 

「君には領域を構築した経験がある。つまり、今までに付けてきたクセがあるはずだ」

 

「…………?」

 

 首をかしげる。かしげて、ぽけーっと空を見る。

 考えて、わからなかった。そんな顔。

 

「……まあ、私も構築のためのクセに気づくまでには時間がかかった。ただ、君の場合は他人が関係するものではないかもしれない」

 

 無論、2位を大きく突き放した状態で最終コーナーに入る、というルーティーンである可能性もある。

 だが彼女の原点というべき精神構造からして、また描く未来が『誰』ではなく『何』であるあたり、クセに誰かが関与するとも考えにくい。

 

「君が領域を構築できたときは、いつかな」

 

「ホープフルステークスのときです」

 

 明確に思い出せる。

 あのときは、世界から切り離されたような気がした。自分だけの世界を、自分のリズムで駆ける。究極の自己完結感のままに、ミホノブルボンは駆けていた。

 

「その時の感覚は覚えているかい?」

 

「はい」

 

「では当分は、その感覚から探し出していくしかないだろうが……」

 

 進化した領域は、鍵穴も変わる。内装も変わる。同じやり方で構築できるとは限らない。

 

「君はそのとき、自分の中に答えを見つけた。だが今回は少し違う。他人の中に答えを見つけた」

 

 ライスシャワーというライバルとの関わりがなければ、ミホノブルボンの領域は新たな一歩を踏み出すことはなかった。

 ライバルというライバルがいなかったシンボリルドルフからすれば、その感覚はぜひとも味わってみたいものでもある。

 

 だが味わっていないからこそ、具体的なアドバイスを送れない。

 

「……うん。やはり、走ってみるしかないだろうな」

 

 ぶっつけ本番というのも悪くないと、ミホノブルボンは思った。

 彼女のトレーナーは、あまり多く走らせない。故に彼女は、GⅠ前のトライアルレースに出たことがない。

 

(余計なお世話かもしれないが、言っておくか……)

 

 今回ばかりは、トライアルレースに出したほうがいい、と。

 

 ――――芝のレースでは脚を消耗する。だから、必要なレース以外は走らせる気はない

 

 何よりも怪我を恐れる彼らしいやり方だが、領域に関しては一部のウマ娘にしかわからない。

 

 レースを主目的にした学園に入れるウマ娘も、全体からすれば上澄みである。

 その上澄みの更に上澄みがここ、トレセン学園に入ることを許される。

 更なる上澄みがトレーナーと契約し、その上澄みがメイクデビューに出れる。

 

 メイクデビューに出れた上澄み、そのまた上澄みが重賞に出ることができ、その上澄みがGⅠに出れる。

 領域とは、GⅠに出れる数少ないウマ娘の中でも更に厳選された怪物たちが階梯を登り、到れる極地なのだ。

 

 トレーナーにはどうしても感じられない、そんな理不尽なものでもある。

 

「と言うことで、トライアルレースに出したほうがいい。そういうことを、お節介ながら言いに来た」

 

「わかった。出そう」

 

 判断が速い。

 レース中の自分並みだと、シンボリルドルフは呆れ気味に感嘆した。

 

「は、速いな。その迅速果断さに感嘆した私が言うのも何だが、そう簡単に計画を変えていいのか?」

 

「お、今のは君には珍しく巧かったんじゃないか?」

 

「…………なにが――――」

 

 思わずといった反応を返した参謀に向けてそう言いかけて、はたと気づいた。

 

「感嘆と簡単、か! 我ながらいい出来だ! そうじゃないか、参謀くん!」

 

「嘘こけ、偶然のくせに」

 

 真面目な話をしているときにぶっこんでくるようなやつでもない。

 そういうことを、彼女の参謀を務めたこともある男は知っていた。

 

「偶然も実力の内、と言うだろう?」

 

「君の実力は全て必然だった。偶然を実力だと言い張ってよいわけがなかろう」

 

 挨拶代わりの軽口を叩きあったところで、素早く空気が変わった。

 

「で、簡単に計画を変えていいのか、だったな。答えはもちろん否だ。よくない。だが、トレーナーという目線で見るのでは気づかないことに、ウマ娘としての視線で気づけることがあるということを俺は知っているし――――」

 

「し?」

 

「皇帝様が態々臨御あそばされ、手ずからの訓戒を賜ったのだ。それに君の言うことは、たとえ何であれ信頼に値すると確信している」

 

 感情のままに変わりかけた表情を慌てて引き締め直したが故に管制下から離れたのか、ぱたぱたと鹿毛の尻尾が揺れる。

 ほんの少しの沈黙とすら言えない一瞬の後に、シンボリルドルフは口を開いた。

 

「まあ我々は、同じ志で結ばれた同志だからな」

 

「俺には目の届く範囲の理不尽しか糺せないし、糺そうとは思わない。それだけの人間だよ」

 

「君は輔弼するものだ。眼となり、翼となり、脚となり、杖となる。視座を高めるには――――」

 

 いや、と。

 シンボリルドルフは、少しだけ耳を伏せさせながら頭を振った。

 

「とにかく、未知とは怖いものだよ。私の敗けもまた未知故だから――――これはあくまで祝賀代わりだ。先人としての私から、やっと誕生した同類への、ね」

 

「……お前、聴いていたのか? それとも、訊いたのか?」

 

「予想しただけだよ、参謀くん」

 

 フフッと破顔一笑し、くるりと踵を返して歩き出す。背に靡く赤いマントが幻視できそうな、見事な挙措。

 

「相変わらず頭が切れるようだな、あいつ」

 

 そう呟いて、少し前のシンボリルドルフと同じく頭を振る。

 

「というよりは理性的……賢明というべきだろうな」

 

 いずれにしても、レースで相対したくはない。正面衝突からの正攻法では押し切られ、迂回しても策を看破してくる正真正銘の怪物。

 

 とはいえ、戦いたくはないからといって戦わないで済むとも思えない。

 レースを決めるのはあくまでもブルボンである。彼女が望めば策を立てて、勝てるようにしなければならない。できなければ、トレーナーとしてここに存在する意味がない。

 

「――――相変わらず俺を過大評価しているようだし、勝ち目があるとしたらそこかな」

 

 あとは、万全の状態で来ないことを祈る。彼にできるのはそれくらい。

 だがそれはまあ無理だろうということは、参謀は知っている。究極の万能型と言える叔母――――東条ハナがトレーナーをしている限りは、万全の状態で出てくるだろう。

 

 皇帝唯一の敗戦は、アメリカという慣れない海外で連戦連勝してしまったばっかりに帰国する予定を変えてフランスに行って敗けた、というもの。

 

 だがその陣容は、後世のファンから見れば飛車角落ちと言っていいものだった。

 

 本来ならば9月と共に終わったはずの遠征が1ヶ月伸びたことにより、東条ハナこそ残ったものの将軍も参謀も日本に残したリギルの面々のために帰らざるを得なかった。

 日本の秋のGⅠラッシュとかぶるこの時期に、オンラインだけで直接指導を行えないというのも拙かったのである。

 

 ――――俺だけでも残ろうか?

 

 将軍は直接見て調子を判断・上昇させ、その上で戦術構築をする必要があるが、俺はオンラインでもまあなんとかなる。

 

 信頼する参謀にそう言われたルドルフは、言った。

 

 ――――いや、大丈夫だ。私の遠征が長引いたからと言って、チームのみんなに迷惑をかけるわけにはいかない。

 

 シンボリルドルフとしては、彼が担当していると言っていいウマ娘が心配だった。

 秋の天皇賞という大舞台。GⅠにはじめて、勝機を手にして登る。それが決まっているのに、絶不調状態から引っ張り上げてくれた立役者が担当でもないウマ娘のわがままに付き合って海外にいると言うのは、良くない。

 

 ――――そうか。まあ、君が言うなら大丈夫なんだろうな

 

 元々俺の仕事はそんなにないし。

 そんな思いで帰国したのだが、無論大丈夫ではなかった。

 

 結果論になるが、参謀が帰ったのは痛かったのだ。

 たぶん今の日本に存在するトゥインクルシリーズ関係者の中でもっともフランスに詳しいはずの男は、リギルの運営のため、そして半ば担当していたと言っていいウマ娘が秋の天皇賞に出るということで帰らざるを得なかったのである。

 

 帰った男は、割と広範な職域を任せられていた。そしてなによりも、フランスのバ場を知り尽くしていた。

 置土産として情報とフランスで培った微細な人脈を活かして結構頑張っていいスタッフを揃えたのだが、それでも即席チームである。本気の本気で来ている他の陣営に勝てるわけもない。

 

 ――――でもルドルフなら勝つだろ

 

 シンボリの家も、URAも、東条ハナも将軍も、かつて『こいつが敗けるとしたら後ろから刺されたからだろうな』と予測した参謀すらもそう思っていた。

 国内ではエアグルーヴらも信じていた。シンボリルドルフというウマ娘が持つ【絶対】を。

 

 シンボリルドルフは、あまりにも強すぎた。勝つために用意された最適解を王道とするならば、その王道の走りを完璧に実行できる技術と知性と肉体を持っていた。

 そして実績だけではない、人を信じさせるだけの何かも持っていた。期待に応えたいと励む責任感と、責任感に伴う実力を持っていた。

 しかしあの時だけは、本来ならば長所と言えるそれら全てが裏返って短所になってしまったのだ。

 

 国内では無敗、全く隙のないレースで全戦全勝。皐月-ダービー-菊花-ジャパンカップ-有馬-大坂-天皇賞(春)-宝塚と勝って八冠。

 アメリカでも初戦こそバ場の対応に遅れて危うさを見せたものの、3戦3勝。

 

 ならフランスでも勝てるだろ、と。そう思っても、全く不思議ではない。

 

 菊花賞を回避すると決めたのに民意――――無敗の三冠を見たい、という――――に負けて挑戦せざるを得なくなったのを見て、かつて参謀は思った。

 

 『こいつが敗けるとしたら後ろから刺されたからだろうな』、と。

 それはシンボリルドルフが敗けたと聴くまで本人すら忘れていた予言だったが、奇しくも異国の地で成就したのである。

 

 そして敗けるだけならばともかく怪我をしてしまって、今に至る。

 

 参謀の中には、怪我と敗戦の報にショックを受けたような記憶はあまりない。

 それはたぶん、自分が居合せなかったということもあるし、信じられなかったというのもあるだろう。

 

 だが最も大きいのは、その後色々あったからだ。

 だから今でもなんとなく、あのシンボリルドルフが負けたのだという認識がない。まさか本人に、『お前、敗けたよな?』というわけにもいかない。

 

「……」

 

 思い出したように、参謀は目の前のパソコンにROMを差し込んだ。

 渡されたときに、一度だけ見た。だがそのときは他のことで手一杯で、まともに見ていなかった記憶がある。

 

 暫しの読み込み期間を置いて、映像は出てきた。

 色とりどりのウマ娘が重そうな芝の上を駆けていた。シンボリルドルフは、ひと目でわかる。映像の中ですら、それ程の存在感が彼女にはある。

 

 好位追走。王道の走り。いつものルドルフ。

 

 だがどこか寂しげで、焦っている。自分ではない何かを見ている。

 無理をして距離を詰め、歯を食いしばって駆ける。そんな彼女の姿を、参謀は知らない。

 

 いつも余裕綽々といった風情で、勝ちを我が物のように取っていく。レースに出ていない今も、その強さの片鱗は常に感じる。

 

(何だ、この脆さは)

 

 いつもなら踏ん張れるところで踏ん張れない。頭がうまく回っていないのか、コース取りもおかしい。気が散っている、というのか。

 

 常に周りを見ている。周りを見て瞬時に状況を把握して、自分の判断と心中するほどの果断さで走る彼女の姿は、そこには無かった。

 

 そんな走りでも2バ身差の2位だったことが彼女の強さを表しているが、そんなことは彼の記憶に残らなかった。

 

(シンボリルドルフですら、こうなるのか)

 

 ――――未知の戦いの怖さとは、これか

 

 トライアルレースとは何故存在するのか。ぶっつけ本番でも勝てるように育てればいいだろうに。

 そんな疑問が解消され、映像の中でも轟く歓声が止む。

 パチリとPCの電源を消して、参謀は立ち上がった。




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サイドストーリー:しあーはーとあたっく

 ミホノブルボンは、機を窺っていた。

 

「見たかい? 参謀くん」

 

「見た。まさかだったよ、本当に。未知とは恐ろしいものだな」

 

「未知もそうだが、あれが失わざるべきものを失うということだ。これまで当たり前にあったものが、唐突に消える。その結果があのざまだ」

 

 何を見たんだろう。

 そんなことを思いつつも、彼女の関心はそこにはない。緊張によって起動した発汗機能によって少し汗ばむ手を握ったり放したりしながら、ミホノブルボンは『機』を待っていた。

 

「領域とはそれほどか。つまりお前もあの時、領域とやらに入れなくなっていたのだな」

 

「……いや、そうではないが」

 

「じゃあなんだ」

 

「…………我が領域たる宮城に入れぬ我が身の窮状を――――」

 

「違うということだな。お前は何かを隠している。なんだ」

 

 ――――なんだもなにもない

 

 ――――俺は直接言わんことにはわからんぞ

 

 朝食のトレーを両手で引っ掴んで立ち上がるシンボリルドルフ、追う参謀。

 全力疾走でシンボリルドルフに振り切られたらしき男が首を傾げながら戻ってきて、席に座る。

 

 ――――今です

 

 ミホノブルボンは、そう確信した。

 

「よぉ、参謀。今日のトレーニングのことなんだけどさ」

 

「お前か。なんだ?」

 

 確信は嘘だった。

 おとなしくペタンと席に座り直し、黙々と食べる。

 

 美味しい。これはたぶんマスターの味だろうと、ミホノブルボンは思った。

 

「――――てことで、ちょっと緩められないかね。モチベーション維持のためにも」

 

「お前が言うなら必要なのだろうし、そうしよう。トレーニング量の不足は、質で補えばいい」

 

「聞き分けが良くて助かるよ。ありがとな」

 

 そう言って、手をひらひらさせながら去っていく『将軍』。

 

 ――――今です

 

 ミホノブルボンの中のミホノブルボンが、そう確信した。

 

「……あいつのことだから連絡はしてないだろうし、俺から師匠に報告しに行くか」

 

 ササッと少量の朝ごはんを胃に詰めて、彼女のマスターは食堂を後にする。

 暫しの逡巡の後に、トレーを持ったままミホノブルボンは後に続く。ミホノブルボンの中のミホノブルボンは、虚偽報告の咎でデリートした。

 

 彼女のマスターが東条ハナの私室に入ってから、待つこと暫し。

 

「祭りがそんなに好きかね……」

 

 ぬっと、長身が出てきた。いつも通りの冷徹さを湛える端正な顔立ちを見て、ミホノブルボンの中のミホノブルボン2号機――――ブル・ツーが指示を下した。

 

 ――――今です

 

 慌てて距離を詰め、ようとして。

 

「あ、いたいた。トレーニングの時間だよ、ブルボン」

 

 後ろから猫を引っ掴むような気軽さで、フジキセキの細腕がミホノブルボンの全身を持ち上げ、前進を阻んだ。

 

「フジキセキ寮長。私は現在、最難関ミッションへ挑戦中です。しかしトレーニングがはじまるまであと1時間16分。時間は充分に――――」

 

「繰り上がったんだよ。今日は夏祭りがあるからね」

 

 可愛いというよりは格好良い顔立ちをしたフジキセキの瞳には、非日常へのワクワク感がある。

 

 それは知っています。

 そう言いかけた口を閉じて、ミホノブルボンは取り敢えず食事を味わって食べた。

 

 それからやや時間は離れ、昼休み。

 

 ポンコツAIブル・ツーのデリートと共に生まれた高性能ミッションクリア補助AI、ブルスリーが言った。

 

 ――――マスターを探しましょう

 

 そう。昼休み中、マスターはどこかへ行っている。練習中は将軍に改善点を伝えたり、しきりにメモをとったりしていたし、そもそもミホノブルボンも真面目に練習に取り組んでいたから話しかけることができなかった。

 

 だが、昼休みならば別である。好きに話しかけることができるし、迷惑にもならない。

 

 最近アップデートによってマスターセンサーと化した長大なアホ毛を駆使して、ミホノブルボンは昼休み終了11分27秒前にマスターを発見することに成功した。

 

「エアグルーヴ。最近、あいつはどうだ」

 

「頓に元気だ。貴様も私を通じて心配するくらいなら、直接連絡なりなんなりしてやれ」

 

「いや。その資格は俺にない」

 

「資格云々の問題か、このたわけ。あいつは――――」

 

「云々の問題だ」

 

 ――――今です?

 

 断じて今ではない。

 エアグルーヴと、マスター。あまり想像できなかった組み合わせの会話をメモリに記録しないようにしつつ、ポンコツAIブルスリーのデリートを完遂すると同時に昼休みは終わった。

 

 

 そして、夕方。練習が終わり、ミホノブルボンは気づいた。

 

 そろそろ拙い。もうはじまる、と。

 いよいよもって、なりふり構っている余裕はない。

 

 練習おわりに、マスターがどこにいるかはわかる。いつもの通り私室にいる。今も、私室にいた。

 

 だが、今の彼は忙しそうだということがひと目見てわかる。

 フジキセキ寮長が言っていたように、今日この日の夏祭りを楽しませるために、将軍共々マスターは練習を短く切り上げた。

 

 だがその皺寄せがどこに行くかと言えば、練習メニューを考えている彼であると、明晰なミホノブルボンの頭脳はわかっていた。

 

(夏祭り……)

 

 マスターと一緒に行きたい。マスターと一緒にお店を回りたい。マスターと一緒に遊びたい。マスターに、見てもらいたい。

 

 浴衣。母親が着ていたというそれを、ミホノブルボンは持ってきていた。

 

「ブルボン」

 

 扉越しに名前を言われて、心臓が跳ねた。尻尾もピーンと斜めに伸び、へたりと戻る。

 

「足音の質でわかる。どうした?」

 

「……マスター」

 

 おずおずと、ミホノブルボンは足取り重く扉を開けて信頼するマスターの私室の中へとはいった。

 練習で疲れているからではない。自分の存在が、願望が、敬愛するひとの重荷になることがわかっていることが、彼女の脚を重くした。

 

(……バグが発生しています)

 

 ここは、退くべきだ。夏祭りは一人で行けばいい。もっと言うならば、行かなくていい。三冠ウマ娘になりたいと思うなら、未知を切り開く者になりたいのならば、本来予定されていた練習を聞き出してその通りに励むべきだ。

 

 そんなことは、わかっている。わかっているのに、止まらない。止められない。

 

 夢を肯定されて、一緒に歩むと言ってくれて。

 

 ――――俺たちに常識が味方してくれたことなど、それまでのただの一度も有りはしない。今までの当たり前がこれからも続く。ただそれだけのことが、俺達にできないと思うのか?

 

 そう言われて、嬉しかった。かっこいいと思った。メモリの一隅を焼き切る程強烈に残っている、その言葉。

 

 その言葉を聴いてから、おかしい。マスターの顔を見るたびに、声を聴くたびに心臓が基準値を逸脱した動きを取る。

 一緒にいたいと、ずっと思っている。今、マスターは何をしているのだろうかと、つい考えてしまう。

 

「マスター。夏祭りが開催されるとのことです」

 

「無論聴いている。君も早く行ってきたらどうだ?」

 

 耳がしょぼんと垂れて、尻尾が地面につかんばかりに下がる。

 パチパチと意味もなく星空のような瞳を瞬かせて、ミホノブルボンはうろうろと歩いて止まり、歩いて止まった。

 

「どうした」

 

「いえ」

 

 とは言いつつも、明らかにミホノブルボンの意思決定機構には揺らぎが見えた。

 行ってきたらどうだ、と言えば行く。それが傍から見れば愚かしさすら感じる程の従順を持つ、ミホノブルボンというウマ娘の特徴である。

 

 ――――言い方が悪かったかな

 

 そんな彼女が命令――――というほど強い口調ではなかったが――――を受けたのにうろうろとして実行してないところを見るに、相当言い方の方に問題があったと思わざるを得ない。

 

「別に俺は、夏祭りに行くことに反対しているわけではない。将軍がここでリフレッシュして、残り1週間を全力で駆け抜けられると言った。ならばそれは正しく必要なことだ。だから是非、行ってほしいと思っている」

 

「……マスターは行かないのですか」

 

「行く意味がない」

 

 そう、意味はない。全くもって意味がない行為だということを、他の誰でもないミホノブルボンがわかっている。

 ミホノブルボンは、これから自分がする行為が全く意味のない行為だと知っている。

 

「……マスター。私はマスターと一緒にお祭りに行きたい、です。遅くなっても、短くても構いません。お仕事が終わってからでもいいので、一緒に行っていただけませんか?」

 

 言い終わる。辺りに闇の帳が落ちたような暗さ、寒さ。息苦しさ。

 それが自分が息を止めていたからだと気づいて、ミホノブルボンは慌てて大きく息を吸った。

 

 くるりと、背もたれに隠れた背中が裏返る。少し驚いたような色を持つ鋼鉄の瞳に、やや濡れた灰色の髪。風呂上がりだからか、着ているのは濃紺の着流し。

 やや不健康さを感じさせる程の白い肌が、着流しの色の濃さに合っていた。

 

「…………」

 

 沈黙。胡乱げな眼差しがつま先から頭のてっぺんまでを撫で回し、首が右に傾く。

 少し言葉を選ぶように赤い舌がちろりと覗いて、口の中に戻る。

 

「俺と行きたいのか」

 

「はい」

 

「……珍しいこともあるものだ」

 

 それはどちらの意味なのだろうか。

 誘われることが珍しいのか、あるいは自分がここまで意志を発露させることを指して言っているのか。

 

 あるいはどちらもかも知れないと、ミホノブルボンは思った。

 

「結論から言おう。構わない」

 

「それは……本当、でしょうか」

 

「ああ。俺は夏祭りに行く意味は全く無いから個人的な仕事をしていただけで、意味が生まれた今となっては行くのもやぶさかではない」

 

 心臓が、早鐘を打つ。早鐘と同じリズムで尻尾と耳が上下に動いていることを、ミホノブルボンは知らない。こいつ面白い挙動をするな、と見られていることも、知らない。

 

「ありがとうございます、マスター。感謝いたします。用意して待っていますので、いつでもお声がけください」

 

 丁寧に一礼してからドアを閉め、いつもの表情のまま拳を握りしめてその場でぴょんぴょんと跳ねる。

 

 足の先を持ってぐるりと回し、足首の可動域を広げる。手元に引っ張って、反らす。

 

 彼女のマスターが怪我防止として飽きることなく繰り返したストレッチによって後天的に得た足首の柔らかさを無意識にバネのように活かして、ミホノブルボンは最大2.9メートル程跳躍した。

 

 ミホノブルボンの身長、160センチ。

 跳躍距離、290センチ。足すと綺麗に450センチ。これはもちろん偶然ではない。

 

 ゴチン、と。思いっきり天井に頭をぶつけて、ミホノブルボンはそのまま蹲った。

 

 痛い。

 

「ブルボン! 転んだのでは――――あ?」

 

 物音を聴きつけて出てきたマスター――――おそらくはこのアホみたいな不覚を一番見られたくなかった相手――――に意味不明な物を見る目で見られながら、ミホノブルボンは立ち上がった。

 

「問題ありません、マスター。先程の衝撃音は、私の跳躍によるものです。ご心配をおかけして、申し訳ありませんでした」

 

「頭か」

 

「はい。では、私は着替えて――――」

 

 ぐいっと襟首を掴まれ、ミホノブルボンは吊り上げられた。フジキセキに続いて、本日だけで2回目である。

 クレーンゲームのぬいぐるみのように軽々吊り上げられ、ゆっくりと尻から床に下ろされる。

 

 意外と力持ちなことに驚きつつ、ミホノブルボンは回り込んできた冷徹な男の顔を見上げた。

 

「こちらを向け。俺の指を見ろ」

 

「はい」

 

「どう見える?」

 

「指に見えます」

 

 という実にバ鹿な事故の検査と軽い手当を終え、ミホノブルボンはやっと解放された。

 

 だから彼女は彼を待っている時も、着替えているときも、実に律儀に氷嚢を頭の上に乗っけていた。

 耳が寒いという、割と切実な悩みを抱えながら。

 

「マスター、お待ちしていました。コース取り、位置取り、露店の巡り方。空き時間に巡り、事前に計算しておきました。最上の効率をお約束いたします」

 

「氷嚢はそのまま頭に付けておけ。約束することはそれだけだ。わかったな」

 

「はい」

 

 何はともあれ。

 ミホノブルボンにとって初めての夏祭りがはじまった。




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調味料の味醂兄貴、かけそば兄貴、ニジリゴケ兄貴、しろくま2兄貴、Kaiser_W兄貴、よみよん兄貴、アマネ009兄貴、転猫3兄貴、kotokoto13兄貴、LCAC兄貴、wax兄貴、おたけさん兄貴、かさかささん兄貴、紫苑601兄貴、木葉0708兄貴、ゆかり@1925兄貴、エッショ兄貴、おきな兄貴、ayayama兄貴、ふすまや兄貴、mtys1104兄貴、y8H2ahnr兄貴、評価ありがとナス!


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サイドストーリー:晩夏秋風

一ヶ月記念です。記念と言っても特になにかあるわけではないですが、毎回の感想や評価のおかげで毎日投稿を行えました。ありがとうございます。


 ブルボンロケット事件から十数分後、ミホノブルボンにとっての夏祭りははじまった。

 

「そう言えば、その浴衣はどうした。用意していたのか?」

 

「はい。お父さんに送っていただきました。移動には不向きですが、『場の空気に合った』ものであるかと」

 

「確かに。股の可動域の狭さといい下駄といい、著しく歩行に向いていない格好だが場の空気には合っている」

 

 割と辛辣な物言いである。

 別に怒っているわけではないとはいえ、少なくとも夏祭りで、おめかししてきた少女に対して言うべき言葉ではない。

 

「ブルボン」

 

「はい」

 

 差し出された手を見て、ミホノブルボンは固まった。

 自分の手をごしごしと意味もなく浴衣にこすりつけ、パチパチと目を瞬かせる。

 

 それにつられて尻尾がピーンと立ち、ふちゃりと萎びてブンブンと揺れた。

 

「俺は先程学んだ。お前は時折、著しく知能が落ちると。そして、そんな格好で転びそうになったら危ない。つまり、あらゆる面から見て、今の君は信用できない」

 

「……はい」

 

 それは全く、否定できない。

 差し出された手に申し訳なさそうにおずおずと伸ばされた少女の手を、東条隼瀬は自ら掴んだ。

 

「申し訳なく思わず、これからも好きなように動いて、死ぬほど迷惑をかけろ。意のままに駆けろ。転びそうになった時は俺が支えてやる」

 

 ――――俺はお前のトレーナーだからな

 

 少し目を逸らしながら言う、一番信頼できる人。ずっと側にいてほしい人。

 その人から掴まれた手を握り返して、ぎゅっと掴む。

 

「よろしくお願いします、マスター」

 

「ああ。で、プランは?」

 

「まず主食たる焼きそば、お好み焼き、たこ焼きを食べて腹を満たします。その後はゴミ箱に寄って包装を処分。その後は比較的嵩張らない綿飴、りんご飴。その後は舌をリセットし、くじらのベーコン、あさりのフライ、ピーナッツのソフト――――」

 

「わかった。その都度聴くことにする」

 

 焼きそばは紅しょうがをたっぷりとかけて食べ、お好み焼きは豚バラを3枚。たこ焼きも2箱平らげる。

 

(金をおろしてきて良かった……)

 

 普段の買い物をカードで済ませている弊害、と言うべきだろう。彼はあまり、多くの現金を持ち歩かない。

 だがこういった屋台ではなるべく小銭を用意しなければならない。無論カードなど使えるわけもない。

 

「ブルボン、こっちを向け」

 

「はい」

 

 ソースで汚れた口元を使わなかったお手拭きで拭ってやり、包装やプラのパック共々ゴミ箱に捨てる。

 

「ブルボン――――」

 

 じーっと、ミホノブルボンは何かを見ていた。美しい青色の中に煌めく星をいくつも宿した、宝石のように無機質な瞳。

 

(ぬいぐるみか)

 

 射的である。景品が木の板の上にずらりと並び、それを子供やその親が頑張って狙い撃っている。

 

「お前、ああいうの得意だろう。やったらどうだ」

 

 触れた精密機械を爆弾に変える能力者――――致命的に致命的な静電気をバリバリと出しているだけだが――――である彼女は、その代わりに機械顔負けの精密動作を得意とする。

 家庭科の授業でもいくつかのミシンを破壊した末に手編みでミシン顔負けの精密な縫いっぷりを披露し、課題を見事(ほぼスペックに任せたゴリ押しだが)クリアしていた。

 

 だから彼女は本来、射的やらなにやら、計算しようと思えばできそうなことは得意なのである。

 

「見てください、マスター。恐らくあれは、私が触れたら爆発するたぐいのものです」

 

 指差した先では、力のない子どもたちがやりやすいようにか、結構機械的な――――エア・ガンに近い銃がそれなりの速度でコルクを吐き出している。

 

 ……まあ、機械といえば機械。そう言えなくもない。少なくともバネで動いている従来の簡単な作りのものではない。

 

「……親父さん、一回分お願いします」

 

「あいよ!」

 

 威勢のいい声と共に渡された銃とコルク。

 なるほど、確かに重かった。コルク銃がどれほどの重さかというのは知らないが。

 

「で、どれが欲しいんだ」

 

「上から2番目、左から8番目のぬいぐるみが」

 

 欲しい、ということらしい。

 上から2番目、左から8番目には真っ白なうさぎが堂々と鎮座している。長い耳は左右に垂れ、米のような口はちんまりとしていて服は着ていない。オーソドックスなうさぎ人形。

 

 右隣には度重なる銃撃を受けたらしき現在大人気の二冠ウマ娘の人形が時計を抱え、ニコニコ笑って座っている。そしてこの人形のモデルがこんなにニコニコしないことを、現在いい年こいて射的に挑戦しているこの男ほど知っている人間もいない。

 

(絶対に然るべき場所で買ったほうが早いだろうな)

 

 ――――思っても、口に出さないことは大事だよ。

 

 あまりにも火の球ストレートな物言いにそんな苦言を呈された経験もあって、流石にそんなことは言わなかった。

 

 必要なコルク弾は、3発。それ以上はいらない。

 

 隣の時計持ち二冠ウマ娘ニコニコ人形を狙った流れ弾を受けたのか、白いうさぎの人形は右肩が少しズレている。普通ならば垂直に座らせられているところを、右に斜行して座っている、とでも言うのか。

 

 1発目で、右肩を打った。勢いに押されて少し後ろに沈み、止まる。

 2発目で、左肩を打った。右への斜行が収まり、ギリギリのところで踏みとどまっているような姿勢になる。

 

 3発目は、額を捉えた。指でひょいと押されて倒れるように、白いうさぎ人形が落ちていく。

 

 ついでに残りの弾で右隣の人形も落として、ゲーム終了。それぞれを違う袋に詰めてもらって、振り向く。

 

「ほら」

 

「ありがとうございます、マスター」

 

 白いうさぎ人形。おそらくはワンコインくらいの、特に上等でもないやつ。

 それを実に嬉しそうに受け取って、ミホノブルボンはぎゅっと袋ごと抱き締めた。

 

「大事にします」

 

「……とっておいてなんだがお前、繊維系のアレルギーはないだろうな」

 

「はい、問題ありません」

 

 そのまま歩き出そうとして、くいくいと袖を引っ張られる。

 振り向いてブンブンと振られている右手を見て、『ああ』と気づいた。

 

「ブルボン、手を前に」

 

「はい」

 

 左手に袋、右手は繋ぐ。

 じゃあ転んだときはどうするんだと思って、東条隼瀬は自分が勝ち取ったぬいぐるみを持っている手の方を見た。

 

 ―――――帰る必要がありそうだ。少なくとも、一旦は

 

 その見解は二人の間でなんとなく一致していたらしい。

 カラコロと、舗装された石造りの道の上を叩く下駄の歯が、軽い音を鳴らす。

 

「このあとはりんご飴と……あとはくじらのベーコンとあさりのフライだったか。くじらのベーコンは人気だから、順番を繰り上げたほうがいいかもしれんな」

 

「マスターは食べないのですか?」

 

「リンゴを食べたよ、俺は」

 

「朝に、それも一個であったと記憶しています」

 

「……人間だからな」

 

 パタパタと尻尾を振ってご機嫌アピールをするブルボンの、リラックスの極みにあった耳が少しへたれた。

 

「マスターは、なにか食べたいものはありますか?」

 

 袋を手首にかけて空いた手で、帯の中に挟んでいた地図を出して器用に片手で広げる。

 よくやるものだと感心している男を他所に、ミホノブルボンは器用に地図を腕に乗せた。

 

「いや、特にはない」

 

「マスター。マスターに健康を管理されている私が言うのもおかしな話ですが、ご飯は食べるべきだと思われます」

 

「君、俺を心配しているのか?」

 

「はい」

 

 いえ、そんなとか言われれば、『そうか』とか言って流せたのだが、ブルボンは基本的にどストレートである。

 そんな駆け引きなど頭にあるわけもなく、頭にあればレースでああも逃げを打たない。

 

「俺は小さな頃ずーっと寝ていたんだ。それでその頃からあまり物を食べなかったもんだから、今でもあまり食わない。だから心配しなくていい」

 

「病気、ですか?」

 

「ああ」

 

「私は病気にかかったことがありません」

 

「そうだろうな……」

 

 ミホノブルボンより速いウマ娘はいる。

 ミホノブルボンよりスタミナのあるウマ娘はいる。

 ミホノブルボンよりパワーのあるウマ娘はいる。

 ミホノブルボンより根性のあるウマ娘もいるかも知れない。

 ミホノブルボンより賢いウマ娘は、勿論いる。

 

 だが、ミホノブルボンはとにかく頑丈なのである。精神にも肉体にも、脅かされざる強靭さがある。

 

「病気は、快癒されたのですか?」

 

「ああ。でなければトレーナーなどできようはずもない」

 

 たぶんああも長期的に病気にならなければ、対人関係の拙さもいくらかマシになっていただろうと思う。というか彼としては、そう思いたい。

 

「俺とルドルフはほぼ同年代と言っていい。歳は俺の方が上だが……どちらもまあ、天才と形容される才幹を持っていた。その2人がなぜ組まなかったか、幼少の頃から面識がなかったかと言えば――――」

 

「マスターがトレーナーになれないほど身体が弱かったから、ですか」

 

「そうだ。シンボリの家には悲願がある。相応の覚悟もある。だがその為に、共生関係にある家の嫡子に『お前の寿命を削って、うちの天才のために才能を傾けろ』と言うことはできなかったのだろう。ルドルフを見ればわかるが、あの家の連中はノリがいいと言うか、優しいからな」

 

 十歳になる頃には快癒したが、遅すぎた。

 いくら才能があっても、幼少から英才教育をしなければ皇帝の杖にはなり得ない。

 ついでに言えば治った頃には、分家にあたる東条ハナのところにルドルフは預けられると決まっていた。だから彼は、フランスの教導院に進んだのだ。

 

 シンボリの家は、悲願の関係もあって国際派だった。海外で勝つには、海外で学ぶ必要があることを知っていた。

 だからそのための知識を付けさせる。その為に派遣されたのが参謀こと、東条隼瀬。

 

 現地のトップチームからの誘いを断って帰国し、教官としてシンボリの家に就職する。

 その筈だったのだが、思ったよりも元気だということでリギルに合流して今に至る。

 ということで、彼が中央トレセンのトレーナー免許をとったのはかなり遅い。フランスでの免許をとってから3年後、21歳の頃である。

 と言っても、充分エリートと呼べる年齢ではあったが。

 

「マスターが対人関係に難を抱えているのは、幼少のみぎりに経験を積む機会を逃したからだったのですね」

 

「……お前、割と直截的に言うじゃないか」

 

「はい。私と同じですから」

 

 同じ、と言うのはわかる。彼女も小さい頃から夢に向かって膨大な基礎訓練を積んでいたばかりに、対人関係の経験を積む機会を逃したからだ。

 だがそれを何故嬉しそうに言うかが、東条隼瀬にはわからない。そう、対人関係の経験を積む機会を逃したから。

 

「……話を戻そうか。で、何が言いたかったかと言えば、だ。俺は小さい頃に食べるということをしていなかったこともあって、もともと少食なのだ。だから心配する必要はない」

 

「はい」

 

 ――――病気は、苦しいことだ

 

 そんなことはぼんやりとわかる。

 驚異的な頑丈さを持つお前に反して母は病弱であったと、ミホノブルボンは父から聴いていたからだ。

 

 だからとても、嫌だと思った。マスターが病気でいてくれて良かったと、そんなことを思った自分が。

 

 マスターが小さな頃から病気でなければ、会えなかった。トレーナーになってもらえなかった。

 そんな事実を突きつけられて、無意識にミホノブルボンは掴んだ手を離すまいと強く握った。

 

 石造りの道が終わり、下駄の歯が砂利を噛み締める。

 

 ――――お前に降りかかった幸運を、当たり前のことだと思わないようにしなさい

 

 父の心からの言葉が改めて身に沁みて、ミホノブルボンはゾッとした。

 幸運だということは、漠然と理解していた。日本ダービーは、最も運のいいウマ娘が勝つ。逆説的な話になるが、ダービーを勝ったのだから、ミホノブルボンは幸運だったということになる。

 

 だが、会えなかった可能性もある。そのとき自分は、どうしていたのか。都合よく夢を理解してくれて、共に歩んでくれる人が出てきたのか。

 

「マスターでも、病気は辛かったのですか」

 

 こいつ、俺のことを機械かなんかだと思ってんのかな。

 そんな思いをササっとしまい込み、彼は顎を下げてため息をついた。

 

「まあな。だが別に、悪いことばかりでもない。良いこともあった」

 

「それは……」

 

「お前に出会えた。心血を注ぎ、全知全能を傾けるに足る至高の素材に。実現不可能な夢を抱き、それを貫徹する意志を持ち、夢に殉じられる強さがある。甘い夢を見ながら、苦難に耐え抜く精神力がある」

 

 氷嚢を挟むように耳がピコピコと動き、聴き逃すまいとしきりに動く。

 打ち上がりはじめた花火が、ミホノブルボンの青色の瞳に様々な光彩を広げていた。

 

「俺には夢が無い。将来の選択肢も無かったようなものだ。別にそこを恨む気はないし、嘆きもしない。何度生まれ変わってもトレーナーを目指すだろうと思う程度には気に入っているし、ひたむきに夢を追うウマ娘たちの助けになれることを誇りに思っている。だがやはり、憧れはある」

 

 それはたぶん、将軍などと呼ばれる男へ抱く感情の内のひとつでもあった。

 茨の道を自ら選択して突き進む。なんの補助もなく、誰の助けも必要とせずに望んだものへと駆けていく。

 

「夢への路を切り開いていく者たちへの、憧れはある。だからルドルフも、あいつも、お前も。無茶な夢を持つバ鹿共を笑う奴らが許せなかった。見返してやろうと思った。それは――――そうだな。ヒーローに憧れる、子供のような感情だ」

 

 繋いだ手が、揺れた腕が、ミホノブルボンの腿に触れた。鍛えて鍛えて、強く柔らかく、靭やかに収斂された脚。

 

「勝てよヒーロー。夢を叶えろ」

 

 ――――マスター。貴方が、私のヒーローです。

 貴方が切り開いてくれたから、道を拓いてくれたから、私は今ここにいます。

 

 貴方が翼になってくれたからこそ、夢の続きを見ることができた。

 貴方が覆いになってくれたからこそ、周りに流されることなくここまでこれた。

 貴方が支えてくれたからこそ、ここまで挫けずに来れた。

 

「勝ちます、マスター」

 

 ――――絶対に

 

 決意を新たに。

 夏が終わり、秋がはじまる。




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アナザーストーリー:私たちに翼はない

選べなかった者、失った者。


前の話の最後らへんをもう一度読んでからこの話を読んでいただけると、より楽しめると思います。


 ライオンと呼ばれていた。

 小さな頃から一度たりとも、誰にでも、後塵を拝した覚えはない。そんな記録記憶もない。だからかわいらしい幼名のあとに、百獣の王じみた渾名を与えられたのだと思っていた。

 

 生まれてすぐに立ち上がり、それによって期待されて、その期待以上の成果を出して応えてきた。

 

 それが、おかしくなった。年齢が2桁に載ったとか、そんなときだ。

 身体が伸びてきたというのがわかった。成長痛に悩まされたし、脚と手がぐんぐん伸びた。

 

 理想的なウマ娘。そう呼ばれるにふさわしい体躯になって、ライオンは不調に陥った。

 駆ければ、無敵だった。誰も追いすがることすらできなかった。

 

 町内の大会で、ではない。国内の、年上のウマ娘も混ぜたレースでもだ。

 走っている相手が考えていることがわかる。躱し、或いは正面から喰らいつく。罠ごと噛み砕く。すり抜ける。叩き潰す。無敵の名は私にこそふさわしいと、証明するかのようなレースをしてきた。

 

 今もそれは変わらない。だが、成長しているはずの身体が妙に窮屈に感じられて、ライオンは苛立っていた。

 教官の言うことを聴く。GⅠウマ娘を輩出した、やり手。そんな彼も、自分が感じている窮屈さに気づいてはくれなかった。

 

 だから、我武者羅に走った。走れば殻が取れ、風に流れて消えていく。

 一定のリズムで揺れていた三日月型の一房の白髪が、明らかに調律を失った動きをしはじめたとき、そいつは現れた。

 

「お前、窮屈そうに走るな」

 

 つまらないものでも見るような目だった。無味乾燥とした声だった。誰もが羨望の眼差しを向け、誰もが期待の色を浮かばせる。

 

 期待と羨望に慣れていた彼女にとって、それは一番見たくない感情の色をしていた。

 

 ――――期待に応えられなくなる

 

 このままではそうなると、彼女自身が一番よくわかっていたからかもしれない。

 

「なんだ、お前」

 

「お前、バカだな。自分の家の予定も把握してないのか」

 

 そう言えば今日お付きの一族が来るとかそんなことを、言っていた。そんな気もする。

 バカ呼ばわりされたことは相当頭にきたが、ライオンは訊いた。

 

「私が窮屈に感じてることが、わかるのか」

 

「お前、バカだな。わかるから言ったんだ。そんなこともわからないのか?」

 

 かるく一発蹴ってやろうとした内なる自分を食い止めて、ライオンは更に問うた。

 

「……じゃあ、解決策は。わかるのか」

 

 訊いてみて、実にバカなことだと思った。

 自分はGⅠウマ娘を何人も輩出した元トレーナーとほぼマンツーマンで練習している。

 

 聴くならば、教官に聴けばいい。

 問いを投げるだけ投げて翻しかけた身体が、止まった。

 

 ――――窮屈さに気づかなかった教官に?

 

「お前」

 

 もう続く言葉がわかった。

 

「バカだな。わかるから口を出したんだ。わからないのに否定だけするやつに、俺が見えるか?」

 

「見える」

 

「……そうか」

 

 ちょっと傷ついたらしきその姿に支配する快感を覚えつつ、ライオンは腕を組んで膨らみかけの胸を張った。

 してやったりと思った気持ちが露骨に出た尻尾が、何よりもの雄弁さを示し豊かな勢いで左右に振れる。

 

「お前、最近手脚が伸びたろ。なのにフォームを変えてない。いや、変化しそうなフォームを必死に枠にはめて制御してる。大した努力と才能だが、それは浪費だ」

 

 ドキリと、心臓が動いた。尻尾もピーンと立ち、耳がへたりと畳まれる。

 誰が見ても、図星。そんな様子の少女を無視して、少年は続けた。

 

「お前、今ちょっと休んだな。軽く走ってみろ」

 

 嫌だ。

 そう言いたくなったが、なんとなくライオンは彼の言葉を聞いた。

 

 走る。走る。2ハロンを超えたところで、『止まれ』と声がかかる。

 驚異的な体幹でピタリと止まった身体に、少年の冷たい手が触れた。

 

「首を下げる。背中を下げる。この状態で、軸脚の重心を2歩分後ろにしろ」

 

「そんなことを、したら、前に倒れる、だろう」

 

 一本足で立つのは、それなりに苦しい。そんな苦しさなど全く無視したように、少年は例の驚異的な冷静さで指示を下した。

 

「倒れる前に脚を出せ。はい、再開」

 

 何故か素直に、ライオンは駆け出した。

 重心が後ろにズレる。つんのめる。支えるために、やけに大きく脚が出る。

 

 繰り返して、繰り返して、夢中になった。

 圧迫感が、ない。四肢を曲げながら縛られているような窮屈さがない。

 

 地の果てまでも、天の極みまでも。走っていけそうだと、ライオンは思った。

 

「どこまでいく気だ」

 

 微かに聞こえる、そんな声。ぜぇぜぇと息切れをする情けなさをからかってやりたくて、ライオンは習った通りのフォームで駆けた。

 

「お前、遅いな」

 

「人間だからな……」

 

 意趣返しというべき言葉を華麗にスルーされ、少年の息が整うのを待つ。

 

 ――――もっと走りたい

 

 手脚が伸びてから、そんなふうに思うのは初めてだった。

 そして、そんな欲望を誰か特定の個人を待つために制御してやろうと思うのは、生まれて初めてだった。

 

「……マシな顔になったな」

 

「それまでひどかったとでも言いたげだな」

 

「お前、バカだな。そう言ってるんだよ」

 

「アドバイスをしてもらったから、その恩を返そう。バカバカバカバカ言っていては、担当になってくれるウマ娘なんて現れないぞ。まあ、問題はなさそうだが」

 

「ほぉ、慧眼だな。なぜそう思った」

 

「お前、私のトレーナーになりに来たんだな。そうだろう?」

 

 なってやってもいいぞ。

 そう言って、無感情男の感激の顔を見るために薄目を開けると、いなかった。

 

 さっさと、母屋の方に歩き出している。

 

「おい! 私の! 私のトレーナーになれるんだぞ! シンボリの家の最高傑作――――」

 

「俺はトレーナーになれん」

 

「? なぜだ。才能に貴賤はなく、年齢もない。分家であろうが――――」

 

「本家だ。しかし、身体が弱い。二人三脚、人バ一心。そんな激務に就くにはよろしくない」

 

「じゃあ私のさんぼーにしてやろう。隣に立って扇でぱたぱたーってして、適当に助言してくれればいい」

 

「死んでも嫌だ。……いや、これはホントにその内死ぬかもしれないやつが言うと軽かったかな」

 

 とんでもないブラックジョークを吐きながらテクテク歩く少年の後をまた追って、前に立つ。

 

「じゃあなんで私に助言したんだ! なりたいんじゃないのか、トレーナーに!」

 

「そりゃあなりたい。なるべくして生まれたからな。だが無理だ。トレーナーは練習メニューを組み、健康を管理し、レースに於いては作戦を立てる。そんな存在を失えば、鳥が翼を失うに等しい。俺が死ぬだけならともかく、担当するウマ娘に迷惑がかかる。そんなことはしたくない」

 

 あまりにも現実的すぎる意見に、ライオンは閉口した。

 傍若無人と我儘を絵に描いて額縁に飾ったような振る舞いだったからこその『ライオン』という渾名が、いっそ滑稽に思えるほどのおとなしさである。

 

 ――――こいつには才能がある。やる気もある。なのに、先天的な、どうにもならないことで夢が潰れるのか。

 

 少女はなんとなく、自分がいかに恵まれているかを理解した。才能もある。やる気もある。健康で、環境も最良のものが用意されている。

 自分のワガママが、全てを持たせて生んでくれた母に胡座をかいたものだということを、少女は察した。

 

「そしてなぜ助言をしたのか。それはお前が苦しそうだったからだ。走ることが好きなのに、嫌いになりかけている。才能もあるし努力もしている走りをしているやつが、潰れかけている。だからトレーナーは無理としても、せめて助言を――――」

 

「この世に無理はない!」

 

「あ?」

 

「無理はない! 無茶と無謀で無理を押せ! 押して押して押しまくって、無理の範囲を縮め続けて、やってやったと呵々大笑すればお前の勝ちだ! 無理じゃない! 無理はない! 無理なんてない!」

 

 叫んで、叫んで、使用人が来るまで同じことを繰り返し続けて、泣く。

 泣いて、泣いて、泣いて。

 

「会長」

 

 目が覚めた。先代の生徒会長が使っていた豪奢な革張りの椅子は、疲労した身体を時折唐突に睡魔に引き込む。

 

「……エアグルーヴか」

 

「お疲れのところ、申し訳ございません。復帰レースの日程が決まりましたので、連絡が来ております」

 

「わかった」

 

 右腕を天井に向けて上げ、左腕を首の後ろに回して伸びをして、眠気を振り払ってからシンボリルドルフは口を開いた。

 いかにも眠たげだと言わんばかりの緩慢な動作に、エアグルーヴの耳が垂れる。

 

 たぶん彼には、同一人物だと思われていない。性格も随分変わったし、見た目もあれから随分変わった。何より彼はあれからすぐにフランスに行ったから、ずっと会えなかったのだ。

 

 ずっと、なんとなく頭に引っかかっていた。そんな自分ですら、再会したときに気づかなかった。それなのに、他者への関心が薄い彼が覚えているわけもない。

 

「エアグルーヴ」

 

「はい」

 

 思考をまとめ、目を瞑り、啓いた。

 幼さが残る目の光が消え、絶対と信じられる皇帝の英気と覇気が代わりに灯る。

 

「私は、なにか言ったかな」

 

「……? いえ」

 

 バカだな。

 そう言われて、賢くなった。だが、バカのままだったらどうなったのか。

 

「そうか」

 

 なんの縛りもなかったあの頃を心の奥底にしまい込んで、永遠なる皇帝は頷いた。

 

 

 

■■■

 

 

 

 遠く異国の空から思いを馳せる。

 あのとき何かが違っていれば。そう考えるのも、もう何度目かわからない。

 

 ただ、飽きない。飽きはしない。飽きてはならない。今も自分を責め続けているあの人のために。

 原因はない。走っている自分が、一番よくわかっていた。

 

 ただ、彼がそれでは諦められないこともわかっていた。

 気まぐれに走りたくなる。ずっと走っていたい。そんな自分を管理しようと、おハナさん――――東条ハナは試みた。

 

 おハナさんは正しかったと、今では思う。でもそれはとても窮屈で、辛くて、耐え難いものだったのだ。

 

 駆け引きをするのが、うっとおしい。

 先に駆けるものを追うことが、うっとおしい。

 後から駆けてくるものを気にすることが、うっとおしい。

 仕掛け時を見極めることが、うっとおしい。

 隣を誰かが走っていることが、うっとおしい。

 

 なにもかもがうっとおしい。

 走ることが好きだった。それも景色の美しい春ではなく、光り輝く夏でもなく、四季を彩る秋でもない、何もない冬に走ることが好きだった。

 

 彩りを添える花。ギラつく陽光。空を埋める紅葉。何もいらない。何も見えない銀世界で走ることが好きだった。

 

 何も考えないで走れるから。何も、何者もいない自分だけの世界を走れるから。

 

 レースが嫌いだ。

 走ることは好きだ。

 

 それが自分だったのに、走ることすら嫌いになりつつある。

 そんな自分に翼を与えてくれたのは、如何にもな管理主義者だった。

 

 突発的に走りたくなる欲求を満たすため、相当な余白をとって練習をさせる。1日1日、どれくらい走ったかを言う。それによってその都度プランを変更する。

 自分は彼にとんでもない、バカげているほどの負荷をかけていたのだと、ここに来て知った。

 

 それでも、彼は付いてきてくれた。あの時までは。

 

「永遠。スピードの向こう側に、か?」

 

「はい。たぶんそこには、永遠があると思うんです。永遠の静けさと、静けさの中の自由が」

 

 永遠。永遠だ。永遠の静寂。

 誰も追ってこない。誰も前にいない。駆けても音が出なくて、何も視界を遮らない。

 誰もいない自分だけの景色を、世界を、自由に駆ける。そんな自分になりたかった。

 

「永遠ね。まあ速度を極限まで高めると、時を止められるらしいからな。ある種の永遠があるかもしれん」

 

「そ、そういうことでは……」

 

「あ、そう」

 

 ちょっとヘンな人だった。感性が独特というか、理屈っぽいというか。

 その人と一緒にあのとき、スピードの壁を超えたのだ。

 

 速度の壁を超えた。確かにそう感じた。あの東京レース場を踏みしめた脚が、肌を切る風が、無音の世界が告げていた。

 

 お前は永遠を得たのだと。

 観客の声も、追ってくる娘たちの声も、何も聴こえない。

 

 永遠の自由。この瞬間が、求め続けていたものなのだと。

 

「トレーナーさん」

 

 ゴールして、笑った。最高の笑顔がこぼれた自信があった。

 私、スピードの壁を超えました。夢を叶えました。あなたのおかげです。

 

 そう言おうとした身体が、ふわりと宙に浮いた。

 景色が彩りを取り戻し、喧騒が世界を包む。

 

「ウイニングライブはキャンセルだ! すぐに待機させてた救急車を呼べ!」

 

 ゆっくりと、背中が柔らかな芝につく。

 左脚だけを優しく支えられたまま、彼女は静かに時を待った。

 

(……なんで?)

 

 翼になってくれたトレーナーは、悲しそうな顔をしていた。夢を叶えて、祝福されるはずだったのに。これからも一緒に、歩いていけるはずだったのに。

 

 左脚の骨が、綺麗に折れていた。膝関節にも足首にも異常はない。

 リハビリも、すぐに終わった。あまりにも芸術的な――――破片すら飛び散らない骨折は、それほどの治癒期間を必要としなかった。

 

「すまない」

 

 何度も何度も、謝られた。

 どこかがおかしかったはずなんだ。練習メニューが悪かったはずだ。直前になにか気づけたはずなんだ、と。

 

 何度も何度も謝って憔悴しきった彼に、言った。

 

 ――――もう、大丈夫です

 

 黙る。続きを言わなければならないとわかっていても、彼女は言いたくなかった。だが彼女は、自分の夢のせいで、ワガママのせいで、彼が日に日に憔悴していくさまを見ていた。

 見ていたからこそ、見ていられなくなったのだ。

 

 ――――怪我も治りました。もう私は、ひとりで歩けます。もともとあの後は海外に行く予定でしたから、これっきりにしましょう

 

 ――――すまない。俺は無能だ。どうしても、どうしても原因がわからない。わからないなど許されないとわかっているが、どうしてもわからない

 

 昔イカロスというヒトがいた事を、彼女はこの異国の地に来て初めて知った。

 蝋で固めた翼を手にし、大空に飛び上がる。その興奮が、自分にはわかる。あのときたしかに、翼はあった。

 

 今はない。失われた。手放してしまったわけではない。しっかり掴んでいたはずなのに、溶け落ちた。永遠を駆けて、自由を得て、翼を失って、彼女は孤独を得たのだ。

 

 速さの先にあるのは永遠だった。自由だった。そしてそのあとに待っているのは、孤独だった。

 

 やや高め、片言の声が自分を呼ぶ。

 振り返るとそこにはやはり、孤独があった。

 

「もうすぐレースがはじまるわよ。今度のGⅠは流石の貴女でも、ちゃんと準備をしないと……」

 

「勝ちますよ、私は」

 

 ――――あいつは勝つよ。

 

 毎日王冠の前に、圧倒的に不利な中でそう言ってくれた人は、もういない。

 

「勝ちます。私は、勝ってあの人の正しさを証明します。だから」

 

 そうしたら。

 勝ったら。勝って、勝って、勝って、勝って。

 勝ち続けたら、きっと。きっと、彼は気づいてくれる。自分の正しさに。共に駆け抜けたあの道に、間違いなんて無かったと。

 

 間違えたとすればトレーナーの自分ではなく、限界を超えて走ったあいつだと。

 彼女はそんな、叶わぬ夢を見ている。

 

「勝ちます。私は、サイレンススズカですから」




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オペレーション:菊近し

アンケートの結果、ブルボン視点→ライスシャワー視点→菊花賞となりました。ご協力感謝いたします。


 情に流されて禁忌を犯したRTA、はーじまーるよー。

 ……はい。前回は……ちょっとこう、RTAとはなんなのかというような人為的ガバが起きました。というか私が起こしました。時間にして5分のロスです。つらい。

 

 『これただのせっかちプレイだろ……』、『RTAの姿か? これが…』など様々な意見がありましたが、生放送してタイマーつけて完走すればRTAだって、それ一番言われてるから……

 

 ついでに言えば信頼度が上がれば能力に補正が掛かりますからね。

 芝の差によっていくらか能力値にデバフがかかる凱旋門賞を勝つには基礎ステータスカンストはもちろんのこと、如何に多いバフをかけられるかが大事なので、安定チャートをとったとも言えます。

 

「疲労感知。マスターはステータス『疲れ気味』と判断。プラン『休憩』を提案します」

 

 ロボっぽさを頑張って出そうとしてるミホノブルボンさんですが、私は彼女が前回の花火CGで小さく、しかし確かに笑ってた姿を忘れていません。

 

 なんかロボっぽくないよなぁ!?

 

 なにがサイボーグじゃい!と怒ってもしょうがないので、黙って賢さ練習を3回して夏合宿終了。

 フジキセキは最後まで掴まらなかったですが、カイチョーがずーーーーっと賢さにいたので、かなり稼げました。カイチョーisゴッド。

 

 ささっとおハナさんに挨拶して、連打すること7秒くらい。ブルボンと脹相とライスシャワー乗っけて帰ります。

 

 さて、菊花賞は10月4週に行われます。現在は合宿が終わった直後、9月1週。

 つまりあと8ターン、24フェイズ後にはミホノブルボンが三冠ウマ娘になれるかがどうかが決まるわけです。

 

 いつもの私ならばここで『かと言ってやることは変わりません。坂路練習をします』というところですが、今回は違います。

 

 10月の3週にある京都新聞杯。これに出ます。つまり10月2週までひたすら練習して、そこからレース2連走。そういうチャートです。

 京都新聞杯はGⅡ。得られるスキルポイントも、プラスされる能力値もGⅠと比べて低いです。

 

 じゃあなんで出るんだということですが、ミホノブルボンに限っては出なければならない理由があるのです。

 それが、固有イベントの存在です。

 この京都新聞杯はアプリ版では神戸新聞杯という名前で存在しています。この時点でアプリプレイヤー兄貴たちは『あっ(察し)』となるかもしれませんが、ミホノブルボンでこのレースに出走した上である条件を満たすと特殊実況を聴くことができます。

 

 それが名実況としても名高い、『菊近し、淀の坂越え、一人旅』という名句ですね。

 夏祭りに加えて特殊実況を回収するためにロスるとかRTAってなんだよ……となるかもしれませんが、今回はちゃんと実利があります。今回はね。

 

 てことで、京都新聞杯にイクゾー!

 

「京都新聞杯……分析完了。菊花賞のトライアルレースですね」

 

 ブルボンが陣内ばりの説明をしてくれていますが、京都新聞杯は芝2200メートル。開催場所は菊花賞と同じ京都レース場。

 まぁ、マジで予行演習みたいな感じですね。800メートル短い予行演習に意味があるかどうかはともかくとして。

 

「ミホノブルボン、始動します」

 

 ということで出走ウマ娘にはライスシャワー。ついでにナリタタイセイ、あと原作的には色々と因縁があるキョーエイボーガン。このあたりが顔を並べてます。

 ミホノブルボンは一番人気。当たり前だよなぁ!?

 

 ということでスキップ。タイムは2:08:2で1位。このタイムだと成功したかな?

 

【京都新聞杯(GⅡ)に出走した】

【ライスシャワーは2着だった】

【ミホノブルボンは《単騎行》のコツを掴んだ】

 

 はい。成功しました。

 説明しますと、この『ウマ娘 ワールドダービー』では育成中に特定の条件を満たして特殊実況を発生させることで金スキルのコツを得ることができます。

 

 例えば、シンボリルドルフ。

 彼女の場合は『天候が曇りの状態で菊花賞を勝つ』という条件を満たすことで《曇天走破》という金スキルを得られます。

 これは天候が曇りか雨であるか、バ場が良以外の時にスタミナとパワーがすごく上がる金スキル。発動条件を満たせば確実に発動するので、めちゃめちゃ強いスキルです。

 

 このミホノブルボン版が、《単騎行》。

 第3コーナーまでに後続を4バ身離して先頭に立つことで特殊実況が発生し、その後コツを得られるというわけです。

 効果は単純。第3コーナーに突入する前に先頭だと、怪物的な力で速度が上がる。単純な速度アップスキルですが、これがあるとないとでは大違い。

 中盤〜終盤に他ウマ娘が仕掛けてくる差し切りから逃げ切る確率がかなり上がります。なので非効率なレースとわかっていて出したわけです。

 

 まあたぶん勝てますけどね。天才型トレーナーに恵まれたスキル、同じ練習の繰り返しにより坂路練習のレベルはMAX。ただ高低差のある坂が1本伸びるばかりだった景色は拡張工事により角度も様々な3本に増え、ウッドチップも完備されてるわけで、最効率での練習が可能。

 

 ここまで公表してこなかったブルボンのステータスは夏合宿を経て、

 

スピード:A スタミナ:A パワー:A 根性:C 賢さ:C

 短距離適性:C マイル適性:B 中距離適性:A 長距離適性:A

 【先手必勝】【コンセントレーション】【単騎行】【登山家】【先頭プライド】【束縛】【地固め】【逃げ直線○】【逃げコーナー○】

 

 となっています。

 これがどれくらい強いかと言えば、これはチームを組めるようになって因子継承が解放された凡才トレーナーががんばって3年間育て切ったときくらいのステータスです。

 因みに今は2年目の中盤。もちろん因子継承はなし。強い(確信)。こんなん菊花賞はもらったようなもんですわ。

 

 んじゃ、練習しましょ。

 相変わらずの坂路ですが、都合よく師匠が居るのが嬉しいですね。カイチョーも賢さにずっといましたし、最近練習運が向いてきたような気がします。

 

 ここで2回練習してから休んで、おわりっ!

 

「マスター。よろしいでしょうか?」

 

【扉が引かれ、すっかり聴き慣れた声が夜風と共に流れてきた。ミホノブルボンだ】

 

 おっ、これはイベント【決戦前夜】ですね。担当ウマ娘の信頼度100以上&とある条件を満たせば目標レース前に発生するこのイベントは、今やエメラルドより貴重な信頼度を稼ぐことができます。

 

 おっ、待てぃ。トレーナーがウマ娘の寮に入れないように、逆もまた然りだったはずだゾ、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

 

 確かにトレセン学園では不純異性交遊――――もっと言えばうまぴょい目当てなトレーナーが然程素質がないウマ娘を勧誘する条件としてうまだっちするみたいな不祥事を防ぐために(邪推)、トレーナー寮とウマ娘寮はめちゃくちゃ遠くにありますし、行き来することは禁止されています。それが夜ならば尚更です。

 

 ではなぜ風呂から上がったあとに来たであろうブルボンと、ほもくんが対面できているのか。

 それはほもくんがホモで女性に興味がないから――――ではなく、ここが部室だからです。

 

 部室は重賞を50勝するかGⅠを3勝したトレーナーに《チーム結成許可証》と共に与えられるウマ娘との交流施設。

 ミホノブルボンは朝日杯FS、ホープフルS、皐月賞、日本ダービーとGⅠを4勝しているので、部室が与えられたわけです。

 

 先程言ったとある条件とはつまり、専用の部室があること、だったわけですね。

 

「状況分析完了。ステータス『忙殺』を確認。お仕事中でしたか」

 

 ここで立ち去ろうとしたミホノブルボンの髪にカーソルを合わせて会話のヒント【風呂上がり】を取得。

 すぐさま使用して【湯冷め】の情報を得て、その上で引き止める選択肢を選びます。

 

「その程度では私のステータスに変調は見られないと予測しますが……よろしいのですか?」

 

 要は湯冷めで風邪引いて菊花賞を回避、みたいなことにはなりませんよと言ってるわけですが、ここは更に引き止め。部室に招き入れます。

 

 もっともこの部室には多くの本が挿された本棚に机と3面テレビ、パソコンと、必要最小限の設備しかないわけですが。

 ちょこんとベッドに腰を下ろしたミホノブルボンですが、こちらがなにをするでもなくしばらくすると話してきます。

 

 割とロスいイベントですが、出てしまったものは仕方ないので我慢です。

 

「マスターは最近、ここに寝泊まりされていると聴きました。トライアルに出走するというのも、今までなかったことです」

 

 はい、来ました。トライアルに出たのは金スキルが欲しかったからじゃ……とか言っても説得できない(そしてそんなことはシステム的に言えない)ので、ここは相槌を打ちます。

 

「やはり難しいと、そうお考えでしょうか」

 

 (難しいとは思って)ないです。

 というかこのステータスならほぼ負けません。負けたら事故です。事故は防げないからこそ事故と呼ばれるわけで、事故ったら諦めてまた走る。それだけのこと。

 

 とも言えませんので、ここは否定しておきます。変に自信を無くさせて、やる気が下がっても嫌なので。

 

 というかなぜ今更こんなに篤実に選択肢を見ているかと言えば、絶好調をキープしたいからなんですよ。

 いつもは記憶力を頼りにリズムゲーみたいなスピードで十字キーでカーソル動かして○ボタン連打を繰り返しているわけですが、ここでガバってやる気が下がって負けでもしたら最悪ですからね。

 

 ということでパパッと返答して、おわりっ!

 

【ミホノブルボンに勝つには……】

 

 ん? なんかイベント起こりましたね。

 正直私はこういった突発的なイベントに弱いです(今更)。事前に覚えたことに関しては忘れませんが、ゲームの最中に起こったイベントの結果として今どうなっているか、というのをちょくちょく忘れます。

 

 あの夏祭りガバも、動画を見返すと起こり得ないガバですからね。ついでに言えばたぶん、試走していれば……(言い訳)

 

 ということで注意深く見てきましたが、別になんてことのないイベントでした。

 発生条件は京都新聞杯でキョーエイボーガンに勝つこと。

 内容としては勝つためには普通の逃げでは勝てない、と言うことを自覚したということ。

 結果、キョーエイボーガンが特殊脚質【破滅逃げ】を獲得。次回の菊花賞で使ってくることでしょう。

 

 この【破滅逃げ】ですが、すごく端的に言うとツインターボ師匠がもっとも得意とする脚質です。

 定位置は逃げより更に前。マスクデータ的には後方にいるウマ娘を掛かりやすくさせ、スタートと同時に体勢がスパート状態に変化。自身のスタミナ消費が2倍になります。

 

 ここでお気づきの方もいらっしゃると思いますが、ブルボンにとってはライスシャワー級の天敵です。本人の実力が怖いライスシャワーとは反対に、【破滅逃げ】という脚質自体が怖い。

 ブルボンは出遅れたり掛かったりすれば固有スキルが出なくなります。現在は【コンセントレーション】によって出遅れる確率はほぼ0となっていますが、掛かりは別。賢さを上げるくらいしか解決策はなく、ひたすら祈るしかありません。

 

 キョーエイボーガンが逆噴射してバ群に呑まれるまで、掛からずにいられるか。

 ライスシャワー特有の爆発力が発揮されないか。そのあたりが菊花賞のキモです。

 

 私は【単騎行】と覚醒キョーエイボーガン有りで掛からずに菊花賞を獲った後のイベントがめちゃくちゃ強いので、思い切った攻めチャート――――京都新聞杯に出るチャートを採用しました。

 ですがその代価として、ライスシャワーに並んで敗因になりかねないウマ娘を生み出してしまったというわけですね。

 

 まあここで三冠ウマ娘になれなくとも、一応凱旋門賞まではやるつもりです。何しろここまで非常にタイムがいいので。

 ただ三冠ウマ娘になれないと回復ソースとしてアテにしていたものが取れなくなるので、ちょっと出走レースを増やすかもしれません。

 

 さて、菊花賞が○ボタン1つではじまるというところで、今回はここまで。ご視聴、ありがとうございました。




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サイドストーリー:一路京都へ

「……これまた懐かしい夢を」

 

 あくびをして、髪をかきあげる。左腕を空に伸ばして右腕を頭の裏に回し、東条隼瀬は伸びをした。

 

 菊近し、と言うべきだろう。

 夏が終わり、唸りあげるような暑さが去り、そして熱狂の季節がやってきた。秋のGⅠラッシュのはじまりである。

 

 部室に備え付けられた仮眠用のベッドから起き上がってみれば、ミホノブルボンが椅子にちょこんと座って待っている。

 

「……起こしても良かったんだぞ」

 

「マスターがお疲れのようでしたので」

 

 心配の眼差しが、瞬きに閉ざされてまた開く。なんというか随分、最近のブルボンは感情が豊かになってきた。

 

「そうか。まあゴタゴタ言ってる暇もないから、作戦会議をはじめよう」

 

 秋のGⅠ。嚆矢となる中山のスプリンターズステークスではミホノブルボンと同世代のサクラバクシンオーが制覇。

 今年の桜花賞を制したニシノフラワーとの熾烈な同期対決を、サクラバクシンオーは制した。

 

 今年の世代は、短距離が強いと言われていた。サクラバクシンオーとニシノフラワーで双璧、成長次第ではミホノブルボンも含めて三強を形成するだろう、と。

 一方で、こうも言われていた。だが花形である中・長距離の層が薄い、と。

 

 人気で言えば中距離>長距離>>>>>短距離=マイル>>>>ダート。短距離がいくら強いと言われても、たとえ歴代最強クラスになりうる逸材が2人いても、やはり目を引くのは王道の距離を走るウマ娘たち。

 

 中・長距離において世代を代表するとされていたのは、マチカネ家のマチカネタンホイザ、ナリタ家のナリタタイセイ。

 マチカネタンホイザはこれといった長所がないものの高く纏まった王道の好位追走型。ナリタタイセイも再来年にメイクデビューする予定のナリタブライアンの威名に隠れているものの逸材であるとの評価があった。

 

 この二人が、クラシック三冠を分け合うだろう。そんな風聞があったものの、実際は短距離に進むはずだったミホノブルボンが現在二冠を占めている。

 

 ドラフト5位指名された野手に、世代ナンバーワン投手の座を掠めとられた。彼らの陣営が感じている屈辱は、これに近いものがある。

 

 皐月賞のときは、どちらの家も屈辱を感じていた。血筋の大したことない短距離ウマ娘に負けるなど、ありえんと。

 だが日本ダービーでその考えを改めた。認めよう。強い、と。

 

 そして雑草をあそこまで育てられる、レースで勝たせる育成メソッドを持つ東条隼瀬を危険視し、名門の優位性を覆されると思い排除に動いた――――わけではなかった。

 

 むしろ彼らは、こう考えた。

 

 ――――そのメソッドを我らが使えば、もっとURAのレベルは向上する。そうすれば外国にも追いつける。

 

 ルドルフは、日本を席巻した。そして海外遠征を企図したあの時、日本は世界に届いていた。

 だがそれは特異的な――――東条隼瀬の言葉を借りれば天才的な頭のキレ、駆け引きの妙によるものであるらしい。

 

 ならば、ルドルフの強さは遺伝しない可能性が高い。やや足早な思考になるが、それではまずい。ならば、実力を物理的に向上させる手法が要る。

 

 幸いにも東条隼瀬は閉鎖的な人間ではない。全ウマ娘のため、と称して定期的に研究の成果や練習メニューの組み方、体調管理の術などを体系立てて発表している。

 

 ――――何言ってんだこいつ。秘伝は秘匿したほうが自分のためだろうに

 

 今まで大抵がこういう反応ではあったが、その情報管理の緩さに彼らは今更ながら感謝した。

 

 ――――坂路を作ろう。作らないことには話にならない

 

 それらを見てまず、彼らはそう思った。

 

 これは彼の理論が無課金向けと称した課金者向けの攻略動画に近かったからである。

 人権キャラを持っている前提で話が進む。それと同じように、まず坂路がある。そういう前提で話が進む。

 だからまず、人権キャラというべき坂路がいる。そしてその優秀さの解説も、くどいほどにしている。

 

 そうして今まで房総で暴走していたシンボリ家の独占状態であった坂路は各家に輸出された。

 そしてこの夏、各名家――――特に今まで後塵を拝していた関西勢は一気に坂路を導入して特訓の夏を過ごした。

 

 そして殆どの家が、坂路練習の優位性を実体験として経験した。これはすごい。故障しないし、かかる負荷がすごい割に関節に負荷がいかないから体調管理が楽だ、と。

 

「だがそんなものはお遊びのようなものだ」

 

 バッサリと、坂路練習の伝導者はあとに続く者たちのひと夏の苦労を切り捨てた。

 

「坂路とはあくまでも、長期的にやってこそ価値がある。ひと夏でどうこうなるものではない」

 

「つまりマスターはライス以外は相手にならないと思っている、と言うことでしょうか」

 

「そうは言っていない。特にマチカネタンホイザ。あいつは夏、一気に伸びた」

 

 ホワイトボードに付けた写真――――マチカネタンホイザがにぱーっと笑って手を振っているという、月刊トゥインクルのベスト・ショットと呼べる一枚――――をパンパンと指示棒で叩く。

 

「彼女からはマックイーンに近い何かを感じる。クラシック時代のマックイーンは春から夏にかけては故障もあって大したことのないウマ娘だったが、夏から秋にかけて急激に伸びた。所謂夏の上がりウマ娘だと思われる」

 

 次に、と。一拍間をおいて、指示棒が気の強そうな瞳を持つウマ娘の写真を叩いた。

 

「ナリタタイセイ。彼女もまだまだ侮れない。菊花賞のトライアルである京都新聞杯にエントリーしているところを見るに、出てくるだろう。やつには執念がある。根性もある。到底侮れる相手ではない」

 

 その練習のスパルタさもあって、彼は根性論を唱えていると思われがちである。

 だが実のところはフランスで吸収してきた最新情報をもとにした練習メニューを組み、暇さえあれば世界各国の論文に目を通し、これだと思うものは積極的に受け入れるという、生粋の理論派。

 

 だから、『根性だ! 根性が大事だ!』とは言わない。

 ただ実力が拮抗した場合、決めるのは根性であることを知っている。

 

 ――――勝負を最後に決めるのは、執念だ。

 

 勝つために、走る。その裏により質の高い理由を、信念を持った者が勝つ。彼は、そう信じていた。

 

「君は皐月賞に続いて日本ダービーも勝った。枠は優先されるだろうし、賞金額も足りているから間違いなく菊花には出られる。だが今回はその前に、京都新聞杯を走ってもらう」

 

「京都新聞杯……分析完了。菊花賞のトライアルレースですね」

 

 京都新聞杯は芝2200メートル。開催場所は菊花賞と同じ京都レース場。

 夏を超えてからいきなり菊花賞、というのではなく、ワンストップを置く。それは全く以て正しい。

 

 なにせミホノブルボンは5月の日本ダービー以来、レースを走っていないのだ。勘を取り戻すという意味でも、現状の実力を確認するという意味でも、菊花賞に向けてのリハーサルという意味でも、あらゆる意味で京都新聞杯に出走する意味はある。

 

「マスター。やはり菊花賞は厳しいものになると、そうお考えですか?」

 

 だが、ミホノブルボンには自信があった。皐月賞もダービーも、ほぼぶっつけ本番で勝ってきたのだ。

 レースに勝る練習はないという言葉がある。だがミホノブルボンは、レースに勝る練習があることを知っていた。

 

「そう見えるか」

 

「はい」

 

「なら良かった」

 

 ミホノブルボンは、頭にはてなマークを浮かべた。

 マスターの意図するところが、わからない。ただ別に、彼女はわからなくてもいいと思いはじめている。

 

 人には役割というものがあり、何でも自分1人でやろうとしてもうまくいかない。走ることが自分の役目で、走るまでの場を作るのがマスターの役目。ミホノブルボンはそのあたりを、さらりと割り切るのがうまかった。

 

「マスター。なにか気をつけること、作戦などはありますか?」

 

「ぶっちぎってやれ」

 

 それはとても簡単なことだと、ミホノブルボンは思った。

 少なくとも、世代一を決める日本ダービーの最中――――第3コーナーで力を抜いて呼吸を入れるより余程簡単なことは確かだった。

 

 

 ――――ミホノブルボンが京都新聞杯に出る。

 

 

 このニュースは、ミホノブルボンを仮想敵にするあらゆる陣営を驚かせた。

 GⅠにしか出ない。というか、必要最低限のレースにしか出ない。あいつはそう言っていたではないか、と。

 

 この一報を聴いたのか、すぐさま月刊トゥインクルから取材の申込みが入った。

 

「京都新聞杯に出られるということは、必要と感じられたからであろうと思います。その理由を伺ってよろしいでしょうか?」

 

 こいつ、頭いいな。

 相変わらず漠然としていない、いい質問だ。

 

 こっそりとこの乙名史という記者の評価を上げながら、参謀は用意していた答えを言った。

 

「まず、京都レース場に慣らしたいというのがひとつ。ふたつめに、レースの間隔が空きました。試運転が必要だというのもひとつ。そしてみっつめに、夏を超えての実力を実戦で測ってみたいというのがあります」

 

 京都レース場は高速バ場として知られるし、坂も多い。ブランクのある状態でぶっつけ本番で挑むには、なかなかハードルが高い。

 そういうことなのだろうと思いつつ、乙名史記者は質問を新たに組み立てた。

 

「ありがとうございます。では、最近他陣営では菊花賞に向けてミホノブルボン対策が練られていると思われます。レースの予測と、対策の対策をお訊きしてもよろしいでしょうか」

 

「菊花賞はいつになく高速化するでしょう。ブルボンの勝ちがフロックではなく、普通の逃げとは違って直線で速度が落ちることはない。そのあたりに気づいているはずですから、序盤から距離を離されないようにレースを運んで、終盤に差す。これが予測です」

 

 大雑把な予測だったが、記者としてもそうであろうとは思っていた。

 ミホノブルボンが引っ張り、他のウマ娘が追従するいつもの形になるだろう、と。

 

 そしてその形になってからというもの、ミホノブルボンを負かしたウマ娘はいない。故に、更なる高速化が起こるだろうということも理解できた。

 

「ありがとうございます。では、対策は?」

 

「対策は高速化するレースそのものです。菊花賞3000メートルは、他のクラシック級ウマ娘たちにとっても未知の距離。血統的に長距離での活躍が担保されている娘も多いでしょうが、実際走ってみないことにはペースも掴めない」

 

「確かに……」

 

「だからこそ、ブルボンを目印に付いてこようとするでしょう。ですが、付いてこれるなら付いてくればいい。全員潰しきって勝ちますよ」

 

 ダービーでもそうだった。ミホノブルボンは悠然と、本当に何事もないように先頭を走るだけ。それだけなのに、速度に付いてこれない他のウマ娘たちがスタミナを切らして沈んでいく。

 

「まあ兎にも角にも、バ場の確認が第一ですね。多分マスコミさんならわかると思います。ここまで気にする理由が」

 

 乙名史悦子は、少し考えた。

 バ場の具合。報道。これまでのレース。

 

「……こういうことですか」

 

 聞かれていないことを確認して、口に出す。

 頭の回転の速さに感心しながら、参謀は頷いた。

 

「そう。まあ、オフレコで頼むよ。勝ったら載せてくれていい」

 

 この記事が公開されてからの反響は速かった。

 

 つまり京都新聞杯は、ミホノブルボンにとって必要なレースであるということ。

 ここで『やはり3000メートルはスプリンターには無理だな』とのたまうような阿呆はいなかった。今や誰も、ミホノブルボンが3000メートルを走り切ることを――――しかも、上位に食い込むであろうタイムで――――疑っていない。

 

 だが今までトライアルを無視していたのにバ場の確認をするあたり、不安なのか。

 その事実は、各陣営を勢いづかせた。

 

「不安じゃねーよ、あいつ。いつも通りだ」

 

 ただひとつ、ライスシャワーと将軍のコンビを除いては。

 参謀がミホノブルボンをGⅠにしか出さないと言うのならば、12月後半のホープフルステークスに出て、そこから直接皐月賞に出るはずである。なのにわざわざ皐月賞直前にあるスプリングステークスに出した。

 

「つまり、調整のためのレースは必要最低限の中に入るんだよ。今回もそうだ」

 

「お兄さま。ライスも出る?」

 

 ミホノブルボンはホープフルステークスから今まで、全てのレースで既存のレコードを更新してきている。

 

 当然菊花賞でも、レコードの更新が期待されていた。だが、京都新聞杯に出るという。

 連続レコード更新記録という珍妙な記録がかかっているのだ。京都新聞杯への期待は、否が応でも高まっている。

 

「……んーむ」

 

 出るか、出ないか。

 ライスシャワーの前走も、ミホノブルボンと同じく日本ダービー。というかこの二人はレースがバッティングし過ぎて、『ミホノブルボンが出るならライスシャワーも出るだろ』みたいな風潮が出来つつある。

 

 メイクデビューは別として、朝日杯FSとNHK杯以外の全走で激突しているのだ。

 だから実は、ライスシャワーは重賞未勝利である。信じがたいことに。

 

「出る。出るが、仕掛けない。ひたすら『見』に回る。出走する目的はまず、ライス自身が京都に慣れること。そして、ミホノブルボンの動きの癖を見ること。俺も見るが、実際にレースをしている娘からの意見がほしい。やってくれるか?」

 

「うん、お兄さま」

 

 菊花賞で勝つために、今を捨てる。

 こうしてライスシャワー陣営が出走を決意した、その頃。

 

 ――――【皇帝】シンボリルドルフ、秋の天皇賞で復帰か

 

 そんなニュースが、世間を賑わせた。




123G兄貴、白河仁兄貴、バナナバー兄貴、主犯兄貴、雷城龍也兄貴、レイヴン兄貴、がんも兄貴、立花ちーふ兄貴、ワットJJ兄貴、ばぶみ兄貴、パンダメント兄貴、ヘイトリッド兄貴、リチウム兄貴、かたなし兄貴、lightacenoah兄貴、アリサ兄貴、雪ねずみ兄貴、CONPACU203兄貴、ESAS兄貴、黒色兄貴、ハガネ黒鉄兄貴、かささぎ兄貴、一般トレーナー兄貴、狂花水月兄貴、ぽよもち兄貴、星ノ瀬竜牙兄貴、RS隊員ジョニー兄貴、タイヤキ兄貴、ベルク兄貴、ゆきうらん兄貴、ガトリング・ゴードン兄貴、フェイスレス兄貴、カラテン兄貴、しがない眷属兄貴、サガリギミー兄貴、すらららん兄貴、志之司琳兄貴、シャーマンファイアフライ兄貴、くお兄貴、夕莉兄貴、アドナイ兄貴、湿気てるのに爆発しそう兄貴、黒兄貴、ピノス兄貴、fumo666兄貴、化猫屋敷兄貴、無兄貴、葵い兄貴、Carudera兄貴、すまない兄貴、JORGE兄貴、レンタカー兄貴、なのてく兄貴、鳩代くに兄貴、青タカ兄貴、ましゅーう兄貴、魚クライシス兄貴、ピノキオ兄貴、薪木兄貴、必勝刃鬼兄貴、11兄貴、rigu兄貴、終焉を齎す王兄貴姉貴、ブブゼラ兄貴、ボルボール兄貴、Eddie_Sumile兄貴、心紅兄貴、ぷみぽん八世兄貴、蒸気帝龍兄貴、じゃもの兄貴、raglaner兄貴、tukue兄貴、障子から見ているメアリー兄貴、初見兄貴、やわたん兄貴、狐霧膳兄貴、ガンバスター兄貴、まだない兄貴、tamatuka兄貴、やぬやぬのやぬ兄貴、天須兄貴、小倉ひろあき兄貴、シガラキ兄貴、石倉景理兄貴、なまにく3兄貴、焼肉帝国兄貴、さけきゅー兄貴、七夜四季兄貴、感想ありがとナス!

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サイドストーリー:仔獅子への便箋

モンクエルコンがエッッすぎる


 シンボリルドルフは秋の天皇賞を勝っていない。これは意外な事実である。

 

 彼女はクラシック路線の合間、夏合宿前の走り納めとして宝塚に出走し、シニア級ウマ娘たちを蹴散らしてから菊花、ジャパンカップ、有馬記念と歩を進めた。

 そしてシニア級に入ってからは大阪杯、春の天皇賞、宝塚(2回目)に出て、海外へと飛んだ。

 

 そこで1敗して帰国し、脚の具合を悪くして今まで休養していたものの、現在の戦績は国内外合わせて15戦14勝1敗。国内では未だ負けを知らない。

 

 ――――秋の天皇賞は呪われている

 

 そんな噂が、まことしやかに囁かれている。

 一番人気がろくな目に遭わない、と。数年前のサイレンススズカによって一番人気必敗の法則は打ち破られたものの、そのスズカは故障。

 故障自体は1年かからず全力で走れるようになる程度には軽かったものの、栄光の日曜日の終わりはあまりにも暗いものだった。

 

「あいつ、秋天に出るのか」

 

「心配ですか」

 

「いや。トゥインクルシリーズに絶対はないが、シンボリルドルフには絶対がある。ルドルフは勝つよ」

 

 参謀は、ソファにぽいと新聞を置く。

 声音からはシンボリルドルフに対する全幅の信頼が窺えて、ミホノブルボンは少し嬉しくなった。

 ミホノブルボンは、シンボリルドルフのことを尊敬していた。実績だけ見ても尊敬できる人であることに違いはないが、その中身を知るにつれてその念はより深まった。

 

 シンボリルドルフは、名家中の名家の出身である。

 だが真実、すべてのウマ娘の幸福を祈っている。見下しもせず、哀れみもせず、対等な眼差しで手を貸すことを許してくれと言ってくれる。

 そんな人には、負けて欲しくなかった。栄光を侍らせて仁王立ちしているのが、シンボリルドルフには合っている。

 

 ――――この人が勝てると言ったら、勝てる。

 

 そんな信頼が、ミホノブルボンの脳裏にはあった。

 

「さて、目前に迫った京都新聞杯。注目株はライスシャワー、ナリタタイセイだ」

 

「そう言えば、マチカネタンホイザさんはどうされたのですか?」

 

「あいつはカシオペアあたりで調整してくると思う。1800メートルと距離は短いが、より菊花に直近だからな」

 

 マチカネタンホイザも実は重賞で勝っていない。府中ジュニアステークス以来、勝ち星のない状態である。

 この世代の有力ウマ娘は、案外重賞勝ちを収めているものが少なかった。誰のせいかというのは置いておいて。

 

「あと今回。キョーエイボーガンが出走する。知らないだろうから言っておくが、彼女は逃げウマ娘だ。ハナを奪われないようにしろ」

 

 ミホノブルボンのラップ走法は、1ハロンを地形の起伏やバ場の状態などで更に細かく分割し、決められた時間で走り抜けることによってのみ成立する。

 

 故に、ハナを奪われてはならない。

 

 ミホノブルボンよりも高速で走り続けられるウマ娘は、現在いない。つまり開始早々にハナを奪われれば、レースが展開されるに連れて垂れてくるウマ娘に蓋をされる形でミホノブルボンの速度も自ずと落ちる。

 大外に寄って抜くにしても、どのみちラップ走法は維持できない。彼女のラップ走法はハナを進むから――――先頭を行き最短距離の経済コースを進むからこそ、成立するのだ。

 

「マスター。同じ逃げであれば能力の高い方が勝ちます。すなわち、私の勝ちは揺らぎません」

 

「その通り。史上最高に頭のいい発想だな」

 

「はい」

 

 むふー、と。少しドヤっと胸を張ったブルボンの調子はいい。かつてないほどに良い。抑えて走らせても坂路のタイムがバンバン更新されていく。

 

「じゃあ、行ってこい」

 

「マスター。ライスはどうしますか」

 

「仕掛けてこない。最終コーナー1個前。これを忘れるな」

 

「はい、マスター」

 

 尊敬すべき友のトラウマをほじ繰り返すのは、人としてどうなのか。

 だが今の彼は、人である前にトレーナーである。勝つために、全てを擲つ覚悟がある。

 

(勝つために利用できるものは、全て使う)

 

 たとえそれが、自分の傷であろうとも。

 控室を出て外に出ると、見覚えのある鹿毛がそこに居た。

 

「やあ、参謀くん」

 

「なんだ、ただのGⅡなのに天覧試合か」

 

「なに、個人的な興味さ。君が何を考えているのか。どんな策を立てて臨むのか。それにこれは、私が勧めたことでもあるしね」

 

 シニア級に進んだときの、強敵。いや、強敵では済まない、それ以上の存在。

 

「お前、秋の天皇賞で復帰するらしいじゃないか」

 

「ああ。心配してくれているのかな?」

 

「お前を心配したことなど一度もない」

 

 充分な実力と、充分な準備をした人間を心配する。それは積み重ねてきた努力の否定だ。

 

「そういう言い方は良くないな」

 

 少し眼を横に流して、シンボリルドルフはたしなめるような口調で静かに言った。

 

「じゃあ、どう言うべきだ?」

 

「……君の思ったことを直接、余すことなく伝えれば案外問題は起こらないと思うが」

 

 お前、グラスワンダーに直接言ったときにもう少し手心を加えろと言っただろうが。

 そう思わないでもないが、なんとなく聴いておいたほうがいい。そんな気がした。

 

「お前ならば秋の天皇賞など楽勝だ。呪いなど存在しないし、しても君の前ではなんの枷にもならない。シンボリルドルフというウマ娘は、運や状況に左右されて勝敗の天秤が傾く程弱くはない。だから一度たりとも心配したことはない。これでいいか」

 

「よろしい」

 

 しっとりと落ち着いた色の鹿毛の尻尾が僅かに揺れる。

 

「案外心配していたのか」

 

「君が、かい?」

 

「お前が、だ。自分の実力を低く見積もっているのか、あるいはブランクを過剰に高く見積もっていたのか。他者からの承認が欲しかったと見える。お前は勝つよ、とでも言ってほしかったのか?」

 

「……やはり君はなんというか、0か100かの調節ネジをこそ直すべきだな」

 

 シンボリルドルフというウマ娘には、威圧感がある。バターに対して熱したナイフを使うが如く、海に対してモーセを使うが如く、歩けば自然に人の波が分かたれていくのだ。

 

「皇帝だ……」

 

「やっぱりミホノブルボンが気になるのか……」

 

「かっこいい……!」

 

 そんな囁きをも切り裂きながら進んで、ふと気づく。隣にも後ろにも、彼がいない。

 

「ルドルフ。お前は勝つよ」

 

 声に釣られて慌てて振り返ると、陽を背にして階段の上に悠然と立っていた。

 

「ちょっと考えてみたがやはり、負ける方が難しい」

 

 何事もなかったかのように降りてきて、さらりと座る。

 心配したんだぞと言いかけて、ルドルフはやめた。

 

「相変わらず便利だな、この機能」

 

「機能ではないが……」

 

 周りから人が消える。遠ざかる。

 強烈な存在感と、かわいいというには綺麗すぎ、綺麗というにはかっこよすぎる美貌と、独特の存在感がそうさせることを、シンボリルドルフはなんとなく自覚していた。

 

「じゃあ特殊能力と言うべきかな。快適に見れていい」

 

「原因は何だろうか。もっとこう、気軽に話しかけてくれてもいいと言うのに……」

 

 反応なし。ノーコメント。

 それが果たしてミホノブルボンがレース前のパフォーマンスに入ったからか、それとも答えたくなかったからなのか。

 それを訊く気は、ルドルフにはなかった。

 

「お前、どう見る」

 

 それが自分の周りに人が寄り付かないことを指しているのではないと、シンボリルドルフにはわかっている。

 パフォーマンスが終わり、パドックに入るその瞬間、唐突に話が降ってきた。そしてその唐突さも、流石にルドルフは慣れていた。

 

「ミホノブルボンがハナを取る。そしてそのまま押し切るだろう。波瀾があるとしたら、キョーエイボーガンか」

 

「その心は?」

 

「君の育てる逃げウマ娘は駆け引きを力で破壊する。それは君の弱点を補ういい手ではあるが、同時に自分以上の力同士のぶつかり合いでは勝てない、ということになる」

 

 ぐっ、と。自分の両拳を打ち合わせるようにして前に構えて、シンボリルドルフは話を続けた。

 

「トゥインクルシリーズは当初、こうだった。力と力の比べ合い。速度・持久力に秀でた強者が必ず試合を制する」

 

 右手に押し負けた左手が、花弁でもイメージしているのか、はらはらと開いて膝の上に戻る。

 

「だが、程なくして駆け引きが生まれた。Aが強い。なら、Bはどうするか。負けを受け入れるほどの潔さがあれば競走などしない。

例えば力を抜いてみる。相手を押せ押せにして、疲れたところをこう、押す。すると弱者でも勝てる。これが試合の駆け引きだ」

 

「そして君は強者の癖に駆け引きを多用するわけだ」

 

 ふわりと宙を舞う右拳。それを膝の上に戻して、シンボリルドルフは笑った。

 

「それはそうだ。弱者が強者を倒すための術は、なにも弱者だけに味方するものではない。弱者の技を、強者がものにする。死活のかかった弱者がさらなる進化を遂げる。よって駆け引きは精錬されていき、トゥインクルシリーズはより頭を使う競技になった」

 

 だから、逃げは嫌われた。

 駆け引きの何たるかを学んだエリートトレーナーであればあるほど使いにくいのだ。自分の色を出しにくいのだ。

 逃げは道を外れている。徒花であるとすら言える。

 

 トゥインクルシリーズの発展は、駆け引きの発展。逃げはその道から外れ、逆行しているのだ。

 

「現に君と……」

 

 ちょっと言い淀んで、シンボリルドルフは少し咳払いをした。

 

「君が出てくるまでは、逃げは寒門が好んで使う戦法だった。寒門のトレーナーやウマ娘には、積み重ねてきた駆け引きの妙がない。戦術に幅がない。同じ土俵で積み重ねのある名門のエリートと戦っても勝てない。だから逃げを好む。セイウンスカイはある種駆け引きを孕んだ逃げだがそれは性格によるもので、やはり彼女も寒門出身だ」

 

 ついでに言えば、ミホノブルボンもキョーエイボーガンもそうである。

 サイレンススズカは見た目相応の良家から出ている。だからこそ、東条ハナは歴代の積み重ねを活かそうとしたのだ。

 

「ともあれ逃げには、戦術の幅がない。強者がより強い武器を持ってしまったがために、まともに戦うことを放棄して武器すら捨てて駆けていく。追いつかれたら差し殺される。そういう戦法だ。だからミホノブルボンよりもキョーエイボーガンが……」

 

 口籠り、顎に手を当てる。顎から口に手をスライドさせて、シンボリルドルフは何かに気づいたように隣の男を見た。

 

「……今思いついたのだが」

 

「うん」

 

「例えば、キョーエイボーガンが全力で走り出したらどうする。ブルボンは常に80%の速度で走ることによって均一の速度を出せているし、身体への負担を減らしている。だが、能力差があってもキョーエイボーガンも一流のウマ娘だ。100%を超えた全力を出せればハナは取れる。そうすればミホノブルボンの戦術は潰れる。そうではないか」

 

「流石」

 

 パチパチパチ、と。気のない拍手と言葉でもって、参謀は皇帝の慧眼を褒めた。

 

「…………だが、そこまでの覚悟を決めるには負ける必要がある。完膚なきまでに。自分の実力ではなく、運否天賦に任せようと思うまでに。なら――――」

 

 立ち上がって、座る。

 せわしなく動く皇帝を他所に、参謀は軽くあくびをした。

 

「参謀くん。これはやはり出走すべきではない」

 

「今更なことを……」

 

 もうほぼ全員が、ゲートに入っている。入り渋っているウマ娘もいるが、時間の問題だ。

 確かにここでブルボンが不調を訴えれば出走を回避できなくもないが、そんなサインは決めていない。送る気もない。

 

 小声で叫ぶという中々に味な真似をする皇帝の必死さとは無縁のところにいるように、もうひとつだけあくびを漏らした。

 

「勝つつもりだろう、君は」

 

「そりゃあ場合にもよるが、レースってのは勝つために走るもんだろ」

 

「勝ったらどうなる。菊花は!」

 

 シンボリルドルフは、ミホノブルボンに対して結構情が湧いている。

 無敗の三冠。自分だけが手にしていたその栄誉を共に分かち合いたいと思う程度には、自分と同じ夢を見れると思う程度には、彼女はミホノブルボンのことが好きなのだ。

 

「なるようになるよ」

 

「…………参謀くん」

 

「なんだ」

 

「君は……今私が気づいたことを予測していた。そうだろう?」

 

「ああ。皐月の前には」

 

「……対策はある、と」

 

「お前、バカだな。塗装工が塗りムラを残さないように、トレーナーは負け筋を残さないものだ」

 

「久々に聴いたな、その言葉! やめろと言――――」

 

 驚いたような瞳が、皇帝を射た。

 基本的に冷静さの範疇から飛び出さない鋼鉄の瞳が、いつにない真剣さでルドルフを見ている。

 

 まずい。

 例の驚異的な頭の回転の速さを発動し、ルドルフはなんの違和感もなく取り繕った。

 

「――――われなかったか?」

 

「言われた。お前、やはりあの子の知り合いか」

 

「…………やはりとは?」

 

「走り方が似ている。多少変わっているから見て学び、自分に合うようにアレンジしたのだろうと思っていた。それに、同族だ。才能もまあ、あの時点では君と互角であったろうし、知り合いであろうとは思っていた」

 

 皇帝などと呼ばれる君にとって、並び立つ評価をされては嫌かもしれないが、と。

 肝心なところで回らない気を利かせて、東条隼瀬はルドルフをフォローした。

 

「……なるほど」

 

「かなり失礼な話、ダービーの前に初めてあったときはお前かもしれないと思わないでもなかったんだ。見た目は似てたしな。だがあまりにも、あまりにも性格が違うから、そうではなかろうと思った。快傑ライオン丸と永遠なる皇帝には無機物と有機物くらいの差がある」

 

「か、快傑ライオン丸……」

 

 ライオン。

 

 ルナという幼名――――かわいくて結構気に入ってる――――を塗り替える程の、的確なネーミング。圧倒的な才能を持て余して暴君をしていた頃の渾名を当てられて、ルドルフはちょっと怯んだ。

 

「言い得て妙だろう。君は生まれながらにして皇帝だったろうからわからないかもしれないが、あの時のあの子は人を蹴りそうな勢いだった。君がいたら止めていただろうが、そういう子だったのだ」

 

「うん……わかるが……」

 

 ルドルフの耳と尻尾が理性の箍を破壊して徐々に萎れていくのを見ても何も思わない程度には、東条隼瀬は冷静さを欠いていた。

 

「やはり友人だったのか。君は気性難相手でも苦にしないだろうとは思っていたが」

 

「……何かこう、嫌な思い出でもあるのか?」

 

「いや、ライオン丸は俺の生き方を変えてくれた。だから一度会って、礼を言いたかったんだ」

 

 もっとも、向こうは憶えていないだろうが。

 

 その言葉に、もう完全に理性という騎手を振り落とした気性難な尻尾と耳がピーンと天を向いた。

 

「そんなことはない! 彼女は言っていた! おま――――君と……そう、君と出会って生き方を変える決意ができたと。うん」

 

「……そうか」

 

 どことなく遠い目をしている隼瀬を余所に、ルドルフはぱったぱったと自由奔放に横に振れる尻尾の音に気づいた。

 そろーっと手を伸ばして引っ掴み、腰巻きのように腹側に持ってきて、押さえる。

 

 ――――勝手は許さん

 

 それは彼女にしては実に珍しい暴君らしい圧政だった。圧政を受けているのは自分だが。

 

「ルドルフ。これ、渡しておいてくれないか」

 

「……これは、便箋か」

 

「そうだ。だいぶ前に書いたものだが……一応持ち歩いていた。どこで会えるともしれなかったからな。君から渡しておいてくれ」

 

「うん。私から渡しておこう」

 

 沈黙。

 ルドルフの耳が動く音だけが妙に耳に入ってくる程の静寂が、皇帝と参謀の間を満たした。

 

「…………サラッとぶち込んでくるな、お前。ある意味尊敬するよ」

 

「ん? …………あ、あぁ! どうだ、参謀くん!」

 

「俺は隙を見逃さない慧眼、隙あらば突撃してくる機智を褒めただけであって、内容を褒めたわけではない」

 

 白けたような眼差しをサラッと皇帝に向けたあと嘆息し、視線を戻す。

 久々のレースがはじまろうとしていた。




123G兄貴、白河仁兄貴、天須兄貴、ナカカズ兄貴、ベー太兄貴、初見兄貴、にゃるおじさん兄貴、tamatuka兄貴、レンタカー兄貴、T.C兄貴、障子から見ているメアリー兄貴、ゼリン兄貴、あなかなか兄貴、FROSTY=BLAKK兄貴、六道ハイラ兄貴、志之司琳兄貴、スクート兄貴、noxlight兄貴、zenra兄貴、Carudera兄貴、なのてく兄貴、五穀米兎兄貴、もっちゃま兄貴、fumo666兄貴、め玉ル玖兄貴、RTA系のネタよくわからん兄貴、サガリギミー兄貴、石倉景理兄貴、ESAS兄貴、ブブゼラ兄貴、たきょ兄貴、必勝刃鬼兄貴、チマ兄貴、KAIKI兄貴、終焉を齎す王兄貴姉貴、ハガネ黒鉄兄貴、寒苦鳥兄貴、まーか兄貴、夏野彩兄貴、Hakuou兄貴、一般トレーナー兄貴、パンダメント兄貴、JORGE兄貴、ガトリング・ゴードン兄貴、アメーバ兄貴、主犯兄貴、仁和寺兄貴、柿乃藻屑兄貴、雷城龍也兄貴、星ノ瀬竜牙兄貴、バナナバー兄貴、感想ありがとナス!

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サイドストーリー:前哨戦

15時にヘッドスライディング


 視線を感じる。

 観客席から、他のウマ娘たちから。

 観客席からは声援と、期待。左右に居並ぶウマ娘たちからは、畏怖と闘志。

 

(マスター)

 

 ゲートに入ってアホ毛の指し示す方向に従って客席を見ると、何故か周りがガッツリ空いた席で快適に座っているマスターがいた。

 隣には、なぜかお腹の前に引っ張ってきた尻尾を片手で掴んでいるシンボリルドルフ。手に持つ便箋を鞄にしまったり、取り出して空に翳し、日光に当ててみたりとせわしない。

 

 夢を舗装してくれたヒーローと、夢のその先を行くヒーロー。

 ひとりは相当挙動不審だが、そんな二人が自分を見てくれて、ミホノブルボンは嬉しかった。

 

 ――――システム点検完了。調子、極めて良好と判断。いけます

 

 復活のブルツーが保守点検を終えてあげてきた報告を脳裏から消す。

 

 腕を組んで、目を瞑る。首を左右にゆっくりと振って、ミホノブルボンは静かに構えた。

 

 しみじみと、調子がよかった。1ハロン11秒を切れるかもしれないと思う程に。

 1ハロン10秒台。間違いなくいける。確実に走れる。なにせ、2200メートルなのだ。

 

 ウマ娘にとって、速度への魅力は抗い難いものがある。ピッチャーにとっての球速と同じく、無意識に求めてしまう。最高を目指してしまう。

 

 ――――勝つためには、勝つための最低限の速度があればいい。スパートでむやみに速度を上げれば、身体に負担がかかる。体温の変化が身体を損なうように、な。君は常に平熱で走れ

 

《さあ、菊花賞前哨戦、京都新聞杯! 10人のウマ娘たちが挑みます!》

 

《3番人気は復帰してここまで逃げで4連勝! 4枠4番! キョーエイボーガン!

2番人気は重賞未勝利ながら対ミホノブルボンの急先鋒、1枠1番! ライスシャワー!

一番人気はここまで無敗、二冠ウマ娘! 8枠10番! ミホノブルボォォオン!!》

 

 実況のテンションに釣られるように、京都レース場が凄まじい騒音と熱気に包まれた。

 周囲全方向から放たれる歓声が落ちくぼんで溜まり、出走を今か今かと待つ幾人かのウマ娘の耳を直撃する。

 

 それほどの、大歓声。誰もが、ミホノブルボンの勝ちを望んでいた、そんな中。

 

 

 熱狂を他所に、あくまでも静かにゲートが開いた。

 

 

 逃げウマ娘、キョーエイボーガンは狙ってこの場に参加した。自分のみがきあげた武器が通用するのか、否か。

 彼女も逃げを得意とするだけあって、スタートには自信がある。ミホノブルボンのスタートの巧さを何度も見たし、その上でこのレースに出てきた。

 

(まず、ハナを奪う!)

 

 4枠4番は、8枠10番よりも有利である。

 ダートならばともかく、芝では走るにあたって内側を走る方が圧倒的に楽なのだ。

 なぜならば、外に回れば回るほど、走る距離が大きくなるから。だが何よりも、逃げにとっては4枠と8枠では大きく差がある。

 

 逃げは、単純に先頭を走るだけの戦術だ。

 故にいち早く、もっとも優位に立てる経済的なコース取りをした逃げウマ娘が勝つ。

 

 しかしキョーエイボーガンは、そんな決意に反してやや遅れた。世代最強の――――ともすれば日本最強かもしれない逃げウマ娘と対決することへの緊張が、彼女の身体を強張らせたのである。

 

 一方でミホノブルボンは、緊張とは無縁だった。

 彼女はこれといった指示を下されなければ『指示なしでも勝てる程に強くなった』と安心し、細かい指示を下されれば『この指示をこなせば勝てる』と安心するという――――絶対的な信頼に裏打ちされた、ある種無敵のメンタルを持っている。

 

 3ヶ月のブランクなど感じさせない、リプレイされたかのようないつも通りの完璧なスタートを決めて、ミホノブルボンがあっさりとハナを奪った。

 

(見ると感じるのでは、まるで違う!)

 

 キョーエイボーガンは、ひと目見てわかった。逃げウマ娘だからこそ、あるいはライスシャワーよりもその脅威がわかった。

 

 速い。頭がおかしいレベルのロケットスタート。足首、膝、腰。あらゆる関節の柔軟性を一瞬だけ全開にして、低い姿勢から電撃のようにハナを奪う。

 

 聴いたことのないほどの歓声に怯んでほんの少しだけ出遅れたが、それでも速い。

 ハナを奪ったら即座に、関節の柔軟性を活かすフォームから常と変わらぬ走行姿勢に変化して、ただ淡々と駆けていく。

 

 ――――普通、その柔軟性を捨てることなんてできないだろうが!

 

 後ろを駆けるほとんどのウマ娘が、そう思った。

 ミホノブルボンのフォームは、最も怪我に繋がりやすい関節への負荷を可能な限り軽減させたものである。故にその特異なまでの柔軟性――――参謀のしつこいまでのウォームアップとクールダウンによって後天的に備わったわけだが――――を活かしきれないものとなっている。

 

 その柔軟性だけでスカウトされてもおかしくないほどの武器なのだ。

 関節の柔軟性の代名詞であるトウカイテイオーには大きく劣るが、それでも極めて滑らかで強靱な柔軟性を持っている。

 

 それを、ミホノブルボンはパージした。スペースシャトルが宇宙に上がっていくにつれて余計な部品を棄てていくように。

 

 ハナを奪われれば負けに直結するキョーエイボーガンと、意地を見せたナリタタイセイが上がっていく。不気味に大外に付けるのは、ライスシャワー。

 

「ああ……」

 

 開始して程なく、シンボリルドルフは少し興味を無くしたように呟いた。

 エンジン音を聴いただけでセスナ機なのか、プロペラ機なのか、ジャンボジェットなのか、戦闘機なのか。それが自ずとわかるように、シンボリルドルフには誰が抜きん出ているかわかる。

 

 ――――勝つな、これは

 

 レースは全くなんの危なげもなく、淀みなく進んだ。

 ミホノブルボンはハナを進む。常と変わらぬフォームで脚を動かし、1ハロンを11秒で進む。

 

 後続が追い縋っては疲れて沈み、疲れて沈む。駆け引きそのものを拒否しているような、圧倒的なスペックの差。

 キョーエイボーガンがスタミナを切らして沈み、ナリタタイセイも沈む。

 

 中盤で既に差は開き切り、ミホノブルボンは余裕とばかりに第3コーナーで力を抜いて息を入れる。それくらいの差があった。

 

 唯一ライスシャワーだけが追従する気配を見せず自分のレースに終始。

 その不気味さすら感じさせる冷静さ故に2位に食い込んだものの、ミホノブルボンは結局一度も影すら踏ませなかった。電撃的なスタートでハナに立ち、中盤には既に追従しようとした者全ての心を圧し折り、勝つ。

 

 それはあらゆる逃げウマ娘が夢想する勝ち方だった。見ていた小さなウマ娘たちに逃げへの憧憬を持たせるには、充分過ぎるほどの輝きだった。

 

 逃げ損ねたキョーエイボーガンは9着。距離が離される前に仕掛けたナリタタイセイは10着。

 

 悠々ゴールしたミホノブルボンは事前に鏡の前でインプットしておいた笑顔を再現しながら静かに手を振り、大きく息を吸って吐く。

 観客たちが織りなす三冠コールとブルボンコールが響く中で、シンボリルドルフは呟いた。

 

「実力はもうシニア級だな。それも上位だ」

 

 喧騒の中でも、不思議と彼女の言葉はよく通る。いや、もはや喧騒というよりも熱狂とか狂騒とかが似合うだろう。

 ミホノブルボンというウマ娘がURAによって推されているから、では済まないほどの熱狂。

 

 推されている理由はわかる。URAとしては、新風が欲しいのだ。

 

 名門のウマ娘と寒門のウマ娘の間には、まず環境の差がある。それまで積み上げてきた歴史による差がある。

 

 名門のウマ娘は小さな頃から身体の成長にあった有効な練習を行える。

 名門のウマ娘は、身内に重賞経験者がいる。故に直接、本人の口から経験談や教訓を聴くことによって肉感のある知識を得られる。

 

 積み上げてきた歴史の差は、幼少期から既にその他と比べて大きな差をつけるのだ。

 つまりトレセン学園に入る頃、例え才能が同質同量であったとしても名門と寒門では完成度に差が出ている。

 

 しかもそれだけならばともかく、寒門のウマ娘は正されずに放置された変なクセを持っていることが多い。

 

 つけられた差を埋める。

 クセを矯正する。

 

 寒門のウマ娘と組むトレーナーは、この2つのハンデを乗り越えなければならないのだ。

 

 ここで優秀なトレーナーの身になって考えてみれば、わざわざ寒門のウマ娘を選ぶ必要もない。

 名門のウマ娘は悪いクセがないことが多いし、身内内でのレースで経験を積んでいることが多い。

 更に言えばそこで結果を出して名門の信頼を勝ち取れば、担当していたウマ娘の妹や縁のあるウマ娘をも担当できる。

 

 ブラッドスポーツと呼ばれているトゥインクルシリーズにおいて、このアドバンテージは計り知れない。強いやつの一族は強いと、言い切ってもいいくらいなのだ。

 

 その風潮は無論、声高に喧伝されているわけではない。ただ見ている方もなんとなく、代わり映えのしなさを感じている。

 

 だからこそ、ミホノブルボンは人気なのだ。母はあまり実績のないウマ娘で、父は桜花賞ウマ娘をひとり出したくらいの実績しかないトレーナー。

 そんな寒門のウマ娘が一流の――――少なくとも名門出身であり、父親はトレーナーとしてチームを率い、通算でGⅠを17勝している――――トレーナーに見込まれて夢の舞台へ駆け上がる。

 

 その物語は、弱い者を応援しがちな日本人の性質に噛み合っていた。

 ついでに言えば、適性のなさを努力でなんとかするという成り上がりも、日本人の好みには合う。

 

「まだとっていないのに三冠コールか。呑気なものだ」

 

 自分の担当を、【皇帝】に褒められる。

 並みのトレーナーであれば欣喜雀躍してもおかしくないような状況にあっても、あくまでも参謀はその職名が示す通り冷静だった。

 

「違いない。だが、弾みはついた。そうだろう?」

 

「まあな」

 

 またもブルボンはレコードを出した。2200メートルの新レコードを、だ。

 だが、別にそこは驚くべきところではない。ミホノブルボンには1800-2500メートルまでのすべての距離でレコードを出せる実力がある。

 

「控え室に戻る。手紙のこと、くれぐれも頼むぞ」

 

「ん、ああ。任せてくれ」

 

 そわそわしている皇帝に背を向け、関係者用の通路に入る。

 階段を下って少しすると、近々また見ることになるであろう控え室がズラリと並んでいた。

 

「マスター」

 

 とことことこ、と。後ろからゆるく駆けてきたミホノブルボンは一歩分だけ斜め後ろに付け、パタパタと尻尾を振った。

 

「なにか気づくことはあったか」

 

「走りやすい、と感じました。分析の結果、『バ場が非常に固められている』と推測。普段の京都がどうかはわかりませんが、これまで走ってきたどのバ場よりも固く、芝が手入れされていたことは確かです」

 

「まあ、そうだろうな」

 

 控え室に戻って早々ミホノブルボンを座らせ、ほんのりと熱くなった脚から熱を引かせながら、丹念に疲れをほぐす。

 

 ミホノブルボンは皐月とダービーをレコード勝ちしている。となれば三冠最後の菊花賞でもレコード勝ちしてほしいと思うのが、URAとしての本音だと思われる。

 なにせそちらの方が、色々と宣伝しやすい。例えば『過去全ての記録を塗り替えた完全三冠』、とでも喧伝すれば、普段はそこまでトゥインクルシリーズに興味のない層もミホノブルボンという怪物の走りを見にくるだろう。

 

 そうすれば収入が増える。そのまま定着してくれれば継続的なコンテンツの発展に繋がる。零細の続く地方トレセンにも予算を回せる。

 

 既に国民的なスポーツであるトゥインクルシリーズは、マルゼンスキー時代→シンボリルドルフとミスターシービー時代→オグリキャップ時代→スペグラエルの黄金世代→トウカイテイオー、マックイーン時代と、立て続けにスターが生まれている。

 

 既存のスターを軽々と超えていくぶっ壊れ共は、いつだって文句を言われつつも歓迎されてきた。

 実際に走っているウマ娘やそのトレーナーとしてはたまったものではないが、いつだってぶっ壊れた力を持つ怪物たちは観客を喜ばせる存在なのだ。

 

 たぶんURAとしては、その後も考えている。新旧無敗の三冠対決という蠱毒の術を。

 だから、ミホノブルボンに負けてほしくない。だからといって贔屓する気もない。だからできることをやる。だからウマ娘たちが走りやすいように、環境を完璧に整える。そんなところだろうと、参謀は考えていた。

 

「マスター。どうかされましたか?」

 

「……いや」

 

 勝ってくれ。多くのひとからそう思われていることは知っている。無論勝つつもりではいる。なによりも、ミホノブルボンの夢のために。

 だが他人がどう思おうが、ターフに立ったウマ娘たちは勝利を求めて駆け抜けるものである。

 

 そう都合良くはいかんだろうよと、東条隼瀬は天井を見た。




123G兄貴、白河仁兄貴、バナナバー兄貴、名無屋兄貴、アジの開き兄貴、ワットJJ兄貴、ESAS兄貴、fumo666兄貴、パンダメント兄貴、ガトリング・ゴードン兄貴、Carudera兄貴、レイヴン兄貴、ハガネ黒鉄兄貴、くお兄貴、クリストミス兄貴、サガリハラミコブクロ兄貴、ヘビビンガ-兄貴、黒兄貴、必勝刃鬼兄貴、石倉景理兄貴、ユーギ兄貴、ころに兄貴、曼陀羅兄貴、サガリギミー兄貴、何足道兄貴、朱ザク兄貴、ゼル@兄貴、フラダリジシ兄貴、寒苦鳥兄貴、zenra兄貴、すらららん兄貴、ほっか飯倉兄貴、がんも兄貴、葵い兄貴、化猫屋敷兄貴、脳筋兄貴、星ノ瀬竜牙兄貴、ライカヨー兄貴、ガンバスター兄貴、ヘイトリッド兄貴、RS隊員ジョニー兄貴、なのてく兄貴、はやみんみん兄貴、ベルク兄貴、ヒツジん28号兄貴、tamatuka兄貴、タイヤキ兄貴、まだない兄貴、リアルSCM兄貴、すまない兄貴、障子から見ているメアリー兄貴、レンタカー兄貴、mtys1104兄貴、風呂兄貴、名無し兄貴、ゼリン兄貴、なまにく3兄貴、天須兄貴、l日兄貴、べー太兄貴、KJA兄貴、夕莉兄貴、初見兄貴、しろくま2兄貴、FROSTY=BLAKK兄貴、感想ありがとナス!

五波コウ兄貴、アメスピン兄貴、凰牙(猫)兄貴、mtys1104兄貴、グルル兄貴、豆鯖兄貴、評価ありがとナス!


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サイドストーリー:貴方と

犬っころ感あるウマ娘ランキングTOP3に確実に入るであろう逸材


「……これはひどい」

 

 これは戦いではない。一方的な虐殺だ。そんな感想が出てくるほどの圧勝だった。

 

 ……いや、違う。そもそも、勝負にすらなっていない。

 シニア級。同年代同士で鎬を削るジュニア級とクラシック級を乗り越え、心身ともに鍛えられたウマ娘たちが戦う年齢不問の無差別戦。

 

 ジュニア級とクラシック級では圧勝というのはある。なにせ、同年代しか出てこないのだ。そもそも一流と呼べるウマ娘の総数が限られ、その一流も距離適性によって更に細分化されるから、ライバル不在というのもあるにはある。

 

 ライスシャワー本格化前のブルボンがまさにそうだった。覚醒前のライスシャワーとマチカネタンホイザ、ナリタタイセイでは相手にならなかった。

 

 例えば、皐月賞。圧勝だった。誰も相手にしなかった。する必要もなかった。意識する必要すらなかった。

 

 シンボリルドルフは今、それをやった。

 

 世界でもトップクラスと呼んでいい日本のトゥインクルシリーズの最高峰であるシニア級の最高の舞台、GⅠで。

 

 誰かが言った。

 先行・差し。王道の戦いをするウマ娘のための教科書を作りたければ、シンボリルドルフの走行写真を教科書に貼っておけと。

 

 負け筋を減らし、勝ち筋を通す。王道を進み、全く隙のないレース運びで勝ちを当たり前のように持っていく。

 

 ――――憎たらしい程の強さ。

 

 その通り。

 序盤は前に出て周囲を焦らせ、わざと抜かせてから自ら下がりつつ好位に付け、中盤からペースを上げて終盤一気にハナを奪う。

 全く以て面白みのない、しかし優美で芸術的なまでに鮮やかなルドルフ戦法。

 

『1年という帳を破り皇帝復活! シンボリルドルフ、これで日本の中・長距離GⅠ全制覇! 国内外合わせて11個目の冠を手にしました!』

 

 濃い深緑の軍服の如き勝負服には、胸に3個、ベルトに7個。10個の勲章が誇らしげに踊る。赤いマントを靡かせながら、画面の中の皇帝は改めて1本だけ指を立てた。

 

 凄まじい大歓声の中、彼女は胸元からひとつの勲章を取り出し腰のベルトに自ら付ける。

 更に勢いを増した大歓声の中、皇帝はファンの声に応えるように東京レース場を一周し、控室の方に消えていく。

 

 それと同時に、隣で今までパチパチパチパチと完璧なリズムで鳴らされていた拍手が止んだ。

 拍手の主は、ミホノブルボン。現在無敗の三冠に最も近い存在である。

 

『最も強いウマ娘が勝つと言われるレース、菊花賞。ここ京都で、新たな伝説が生まれ――――』

 

 見飽きたCMが流れてきたのを見て、電源を切る。

 少なくともこれから相手にする好位追走型、その理想と呼べる走りを見たあとで見たいものではない。

 

「大丈夫でしたか、マスター」

 

「……ああ」

 

 レースがはじまる前からなんとなく顔色がよろしくないことを察知していたミホノブルボンは、隣に座っている青年に対してそう問うた。

 レース中盤には顔色が戻っていたものの、終盤で再び悪化。今はやや戻りつつあるものの、顔色自体は未だに良いとは言い難い。

 

「それにしても果てしなく調子がいいな、あいつ。何かあったのか?」

 

「出発前のルドルフ会長はエアグルーヴ副会長に『調子は最高だ。さぁいこう!』と仰られていました。何があったかはわかりませんが、その言葉に偽りはなかった、ということではないでしょうか」

 

「…………あいつも可哀想に」

 

「ルドルフ会長が、ですか?」

 

 いや、と言葉を濁す。

 菊花賞の頃のルドルフはそれはそれはかっこよかった。威圧感のある、精悍な風貌。女性に対して使うのはアレだが、性格的にも容姿的にも実にイケメンと言っていい存在だった。

 

 その頃に、シンボリルドルフとエアグルーヴは出会った。かっこいいシンボリルドルフに憧れ、理想に魅せられ、エアグルーヴはルドルフに自分のすべてを捧げることを決めた。それが今ではあのザマである。

 

 ――――中央を無礼るなよ

 

 調子は最高だ。さぁいこう!

 

 これ、同一人物の発言である。信じがたいことに。

 中身は変わらず――――多分、生まれ落ちたときからあんな感じだったであろうと東条隼瀬は信じている――――立派なままだから特に非難するわけにもいかないが、それにしたって変化がすごい。

 

「シニア級になれば、私もルドルフ会長と戦うときが来るのでしょうか」

 

「やりたいのか」

 

「はい」

 

 やりたくなくとも望まれるだろう戦いである。そして望まれていなくとも、いずれくる戦いでもある。

 ブルボンが望んでいるのであれば、それに越したことはない。

 

 最短であればジャパンカップか有馬記念。

 故障明けということを考えれば大阪杯か、或いは宝塚記念。そのあたりだろう。

 

 そんなことを、練習を見ながら考えていたことに驚いた。

 シンボリルドルフ。11種のGⅠを12勝した永遠なる皇帝。その輝きの影に潜むのが、ライスシャワー。漆黒のステイヤー。やや短めの背丈の中には、いかにもステイヤーといった風な粘りのあるスタミナが隠れている。

 

(考えたくない、というのが本音なのか)

 

 【将軍】。自分と並び立っていたあの男。

 やたら自己評価が過小ですぐ一歩後ろに立とうとするが、やつはウマ娘と信頼関係を築くことにかけては並ぶものがない。

 

 将軍という渾名が示す通り、彼は戦術家である。レース展開を察知し、台風の目を観測し、対処するための手を打つ。

 だが実際に実行に移すのはウマ娘たちだ。故に、その戦術を信じてもらわなければはじまらない。戦術を信じてもらうには、やはり当人が信じられなければならない。

 

 だからだよ、と将軍は言う。だが、だからだよで済ませていい才覚ではない。

 なによりも信頼を築くことに苦心している自分だからこそ、やつの偉大さがわかる。

 

 そしてその強敵を倒したとしても、夢を叶えたとしても。

 夢を叶える。本来は祝福されるべきその瞬間が何をもたらしたのかを、東条隼瀬は知っている。

 ミホノブルボンの夢は、クラシック三冠だった。その夢を叶える前から、自分は求めた。次の夢を。

 

 それはきっと、共に夢を駆けたことがあるからだ。駆け抜けて、ゴールテープを切ったことがあるからだ。

 夢を果たして後に、それからがあることを知っているからだ。

 

 だから、懸念が抜けない。ミホノブルボンにとって最後のレースが菊花賞になるのではないか、と言う。

 夢の終着駅が即ち破滅であったことを、東条隼瀬は知り過ぎるほどに知っている。

 

 怪我をする。

 燃え尽きてしまう。

 走るのが嫌になる。

 走る意味をなくす。

 

 様々あるが、抜け殻のようになったミホノブルボンを見たくはない。申し訳なさそうにする彼女を見たくはない。

 

 物理的な最効率を求めるならば、ミホノブルボンが三冠になった後のことを迷っていたあのときに、すぐさま次の目標を与えればよかった。

 

 例えば、とジャパンカップを目指せという。そうすれば、11月までは駆けられた。

 ジャパンカップに負ければ、次の年まで。ジャパンカップに勝ったなら、有馬記念を目指せばいい。逐次目標を与え続ければ、ミホノブルボンは愚直に走ったことだろう。素直に従ったことだろう。

 

 だがそれではだめだと、なんとなく感じた。怖かった。自分の夢を抱き続けて欲しかった。

 

 達成した、という顔をして。本当に綺麗な、透き通ったような笑顔を向けられて。

 その笑顔を本当のことにできなかった、その笑顔の裏に不幸が忍び込む余地を与えてしまった自分の未熟さを思い知る。

 

 たぶん、2回目は耐えられない。菊花賞を勝って夢を叶えたら、ミホノブルボンが故障してしまうのではないか、と。

 何度も何度も、そんな夢を見た。だから、夢を持つことを求めた。自らの手で、新たな夢を見つけることを強いた。

 

「マスター」

 

 少し身をかがめて、ミホノブルボンは真っ直ぐこちらを見ていた。

 青い、ひたむきな美しい瞳が向いている。

 

「なにかお悩みですか?」

 

「悩み。悩みではない。ただ少し、菊花賞を迎えるのが怖い。そういう話だ」

 

「夢の終わりを迎えるのが、ですか」

 

 ちょこんと、ミホノブルボンはベンチに座った。近頃様々なウマ娘たちに踏みつけられ、賑やかになった坂路の中でも、このベンチだけは奇妙な静寂を保っている。

 

「菊花賞で勝っても敗けても、君の夢は終わる。良い形であるか、悪い形であるか。どちらの目が出ても、終わりは終わりだ。それが少し寂しくなった。そういうことだ」

 

「マスターもですか」

 

「お前もか」

 

「はい。13年間、追い続けてきた夢ですから」

 

 少し微笑みながら、胸元に重ね合わせた両手を当てる。

 そこで何かに気づいたのか、ミホノブルボンはパチリと青い瞳を瞬かせた。

 

「お父さんと13年間。マスターと2年間。ルドルフ会長と3ヶ月。他にも多くの方に、私の夢は支えられています」

 

 後輩から色紙や靴にサインを求められました。

 変な方からオムライスへのサインを求められました。

 街で応援をいただきました。

 

 ――――よかったな。

 

 ――――そいつと関わるのはやめておけ。

 

 ――――ちゃんとお礼を言っておけよ。

 

 ミホノブルボンは、時折そんなことを報告をしてくる。彼女宛てに送られてくるファンレターにも一応目を通しているから、彼としても実感している。ミホノブルボンは応援されている、ということを。

 

「私は幸せ者です。お父さんに背中を押していただきました。マスターに導いていただきました。ルドルフ会長に、夢を肯定していただきました。今もきっと、多くの方に応援されています。ですが誰しもがこうなれないことを、知っています」

 

 ミホノブルボンは、恵まれている自分を見つけた。奇しくも、いつかのシンボリルドルフがそうであったように。

 

 だから『切り開く者』になると決めた。夢を諦めざるを得ない人間の、夢を諦めかけている人間の偶像になる。道を拓くと。奇しくも、いつかのシンボリルドルフがそうであったように。

 

「マスターは全力を尽くしてくださいました。私もまた全力を尽くしています。その結果で負けても仕方がないと思えるほどに。ですがマスターは多分そう考えないであろうと、私は思います。競技者と指導者では考え方が違うことを、私はお父さんを見て知っています。一応、理解できているつもりです」

 

 ミホノブルボンは、東条隼瀬をまっすぐ見た。

 今まで一度たりとも間違えていないトレーナーではなく、自分を導いてくれるマスターでもない、ただの東条隼瀬を見た。

 

「……ああ。そうだな。俺は思うだろう。あのときもっと何かやれたのではないか、と。俺ではない誰かならもっとうまくやれたのではないか、と」

 

「私は、そうは思いません」

 

 少し言葉を選ぶように俯いてから、彼女は再び凪いだ湖水のような瞳で向き直った。

 

「あのとき、もし。そう考えるのはトレーナーのサガです。否定するわけではありません。ですが私は、例えば菊花賞で負けても、やり直したいとは思いません」

 

 たどたどしく。少しずつ言葉を紡いでいくようなゆっくりさ。

 

「たとえ負けたとしても、私のマスターはそのとき共に負けを経験したマスターです。私が求めているのは、無敵のマスターではなく、間違えない導き手ではなく、あのときに――――私が夢を諦めなければならないかもしれないと思ったあのときに、手を差し伸べてくださったマスターです」

 

 絶対的な信頼を置く相手に自分の言葉がちゃんと届くように。すれ違いが、誤解が発生しないように。

 

「だから、私は判断ミスをしたとしても責めません。トレーナーとウマ娘は、ミスを補い合うものです。私たちは喜びも、悲しみも、栄光も、凋落も、共に分かち合うパートナーです。なのでご自分を責められるときは、ご自分を責められるのと同じように、私を責めてください」

 

 少しずつ、しかし確かに、自分の意志を紡いでいく。

 それはたぶん、出会ったときには考えられないようなことだった。たったひとつの夢を抱き、他者のオーダーを受けるだけのミホノブルボンでは考えられないことだった。

 

「――――たとえミスをしても、なにをしても。私は、あの日手を差し伸べてくれた、貴方と夢を駆けたいと思っています。だから、手放さないでください。どこにもいかないでください」

 

 あの、ミホノブルボンが。

 パタパタと揺れる尻尾とへたりと不安げに垂れる耳に目をやって、赤みがかった栗毛に手を乗せる。

 

 最初は、ただ信じて従うだけの子だった。

 それが自分で色々考えるようになり、求められて自ら目標を描いた。

 そして今、意志を出した。求められたからではなく、自分から。

 

「……成長したな」

 

「? はい。身長は3.2センチ伸びました」

 

 そういうことではない。

 だがまあ、そこはそのままでもいい。

 

 目を閉じて気持ち良さそうにするブルボンの頭を、頑張ってフリスビーをとってきたわんこを褒めるような感覚で撫でながら東条隼瀬は笑った。




因みに原作(史実)のミホノブルボンは菊花賞のあと、ジャパンカップに向けての調整中に故障。
次の年のダービー前日には自分を育て上げた調教師を病気で失い、それに伴い厩舎を移籍。復帰に向けて何年もの間リハビリを重ねますが、結局叶わず引退しています。
やっぱり神ってゲイのサディストだわ(忍殺)


123G兄貴、白河仁兄貴、天須兄貴、迫る影兄貴、葵い兄貴、咲さん兄貴、ユーギ兄貴、初見兄貴、必勝刃鬼兄貴、七七七七兄貴、ガンバスター兄貴、mtys1104兄貴、tamatuka兄貴、FROSTY=BLAKK兄貴、レンタカー兄貴、レイヴン兄貴、相対的貧困兄貴、ブブゼラ兄貴、光に目を灼かれたペニーワイズ兄貴、はやみんみん兄貴、槍持兄貴、曼陀羅兄貴、zenra兄貴、tukue兄貴、通りすがり兄貴、超兄貴、化猫屋敷兄貴、fumo666兄貴、志之司琳兄貴、五穀米兎兄貴、夕莉兄貴、RS隊員ジョニー兄貴、書記長は同志兄貴、ガトリング・ゴードン兄貴、鋼月兄貴、サガリギミー兄貴、Carudera兄貴、spare9兄貴、星ノ瀬竜牙兄貴、ライセン兄貴、立花ちーふ兄貴、noxlight兄貴、終焉を齎す王兄貴姉貴、raglaner兄貴、ハガネ黒鉄兄貴、バナナバー兄貴、ESAS兄貴、主犯兄貴、何足道兄貴、消波根固塊兄貴、感想ありがとナス!

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サイドストーリー:終わりのはじまり

いろいろ考えた結果、話の順番を入れ替えました。


 菊花賞。秋の京都で行われる、クラシック路線の終着点。

 距離にして、3000メートル。この長距離を駆け抜けるには、膨大なスタミナが要求される。

 

 それはしかし、スピードを疎かにしていいというわけではない。長距離故に良い位置を取り続けるためのパワーも、何よりも勝負に勝つための運も要求される。

 

 速度があれば勝てた皐月賞。

 運を要求された日本ダービー。

 

 そういうふうに、他2つのクラシック路線を、蔑ろにしているわけではない。皐月賞も日本ダービーも、そもそも確かな実力が無ければ勝てないのだ。その中でも特に要求されるのが速度であり、運であるというだけで。

 

 だが菊花賞では、特に突出したものは要求されない。ただひたすらに、高い能力のみが求められる。

 

 だから、こう呼ばれるのだ。

 

 ――――菊花賞は最も強いウマ娘が勝つ、と。

 

「あと12分だな」

 

 控え室で、トレーナーは常と変わらない様子で口を開いた。

 

「はい」

 

 ――――そしてその3分後には、全てが終わっている。勝っても敗けても、幼いあの頃に抱いて駆け抜けてきた『今まで』が終わる。

 

 短い返答の中に僅かな硬さを滲ませて、ミホノブルボンは彼を見た。

 本当に、本当にいつもとかわらない。その不変こそが、何よりも今の自分にとって頼もしい。

 

「流石に緊張しているか」

 

「……はい」

 

「まぁ、無理もない。控室から出て、パドックに入って3分後、全てに決着がつくのだからな」

 

 ――――だから言うべきことを言っておこうと思う

 

 なんでもないようにそう切り出して、トレーナーは口元に手を当ててから膝の定位置に戻した。

 

「お前は実によくやった。他の誰にも耐えられないトレーニングに耐え抜いた。弱音も不満も、お前は一言半句たりとも口にしなかった」

 

 それは当然だと、ミホノブルボンは思った。

 自分から、言ったのだ。クラシック三冠になりたいと。そのために与えられたメニューをこなすのは、至極当たり前なことである。

 自ら求めた上で不満を漏らすなどということ、理屈に合わない。

 

「マスター。それは、当然のことです」

 

「当然ではない。俺は『当然』を取り上げて、殊更褒めるような男ではない」

 

 そう。だから今の今まで、ミホノブルボンは褒められてこなかったのだ。

 こういう言い方をすると恨みがましいような雰囲気が出て語弊があるが、褒められてこなかったことに対して、ミホノブルボンは当然だと受け止めている。

 

「俺は2度、同じことを言うのが嫌いだ」

 

 だからよく聴け。

 そういうことだろうと、ミホノブルボンは察した。

 

「君に逢えてよかった。君を選んで、選ばれて、駆け抜けたこの2年弱は紛れもなく俺にとっての最良の時間だった。ひたむきで、愚直で、従順で、そして頑固で強固な意志を持つ君と追いかけた夢を、俺は一生忘れない」

 

 たとえそれが、どんな終わりを迎えようとも。

 

 言わなかった最後の言葉を、ミホノブルボンは知っていた。わかっていた。

 心からの感謝に対して、なんて言えばいいかわからない。どういう表情をすればいいのかわからない。

 

「15分後に何が起こるか。予言してやろう」

 

 そんな少し困ったような感情の機微を察したのか、東条隼瀬は殊更に笑ってみせた。

 笑うというほどではない、口の端を僅かに上げるだけの微笑。だがそれでも充分、ミホノブルボンには美しく見える。

 

「レース後。俺達は次の夢へと駆けていく。自分たちが進むと決めた道を信じて、駆けていく。15分後に待つものはつまり、それだけのことだ」

 

 栄光が付き纏うか、それとも栄光を振り払ってしまうか。

 ただそれだけのことでしかない。

 

「だから、楽しんでこい。駆け抜けてきた果ての景色を」

 

「はい」

 

 反射で、ミホノブルボンはそう言った。

 勝てるか、どうか。その狭間で定まらなかった心から出たとは思えない程の、確信に満ちた返答だった。

 

「夢の終わりはやはり、勝利に彩られるべきなのだ」

 

 立ち上がる。

 常に冷たげだった鋼の瞳が、静かに赤く燃えていた。

 

「楽しめ、と。俺は言った。だがこれはお願いだ。命令ではない。好きにしろ、ということだな」

 

「マスター。私は――――」

 

 そう、あの時から。夢を追うことを肯定してくれたあの時から。夢への道を指し示してくれたあの時から。

 

 とっくに、そう決まっていたのだ。決めていたのだ。

 

「貴方の『お願い』に応えます」

 

 

■■■

 

 

 勝つと決めた。勝利を得るために、勝利を捨てた。

 京都レース場は、その決意を照らし出すような快晴に包まれている。大方の人間は、この快晴を無敗の三冠達成には具合のいい日だと感じるだろう。

 

 【将軍】は、緊張していた。

 超える。超えられる。自分の前にある、絶対的な壁を。

 

 【参謀】は、絶対を押し付けてくるタイプのトレーナーである。

 

 それは例えるならば、シンボリルドルフに似ている。彼女は状況判断の迅速さと駆け引きの巧妙さ、理想と呼べるレース展開によって常に自身を優越させ、他者を下風に立たせることで専制君主の如き智性ある【絶対】を現出させる。

 

 あの男は鍛えて鍛えて、弱点を補填して長所を伸ばし、負け筋を潰してひとつの勝ち筋を用意する。

 やつの【絶対】の正体は、暴君じみた能力の差による。多少の駆け引きも罠を無視してぶっちぎれるような――――例えるならば罠も縄も引き千切る、獅子の如き豪傑の爪。

 

 これをやられると、狩人としてはどうにもならない。だからこそ、どこかで檻に閉じ込めてしまう必要がある。

 

 その檻を、どう作るか。

 

 その答えは出ない。出していない。第一、事前に作っておいたらあの鋼鉄の瞳の目に止まり、破壊されるに決まっている。

 

(いや寧ろ、逆用してくるかな……)

 

 極めて単純な、だからこそ覆し難い絶対的強さ。猛獣のようなそれを、ミホノブルボンは持っている。

 この絶対的な強さに過信してそのまま突っ込んでくるような相手であればここまで恐ろしくはない。

 だがあいつは、必ずなにか仕込んでくる。こちらの臨機応変を可能な限り予測して、ミホノブルボンに策を授けて突っ込ませてくる。

 

 単純な強さは、恐ろしい。

 それがわかっていて、なぜ他のトレーナーはウマ娘をそう育てないのか。

 

 無論、指導力の差もあるだろう。だがたぶんこれは、発想の差なのだ。

 

 ……例えば、先発投手を育てろと言われたとする。

 となると普通の指導者はエース候補の若手――――スタミナが豊富な投手をスカウトする。そしてその上で、変化球やコントロールを教え込む。

 

 だが【参謀】は、クローザー候補をスカウトする。そして最強のクローザーにした上で、そいつが9回をフルパワーで投げられるようにする。これは実に頭のおかしい発想である。

 スタミナがないからクローザー候補と呼ばれているのに、そこらへんを軽く無視する。そういう常識の裏街道を歩いているところが、やつにはある。

 

 どちらができるかと訊かれれば、前者だ。

 どちらが王道かと訊かれれば、前者だ。

 だがどちらが強いかと訊かれれば、後者なのだ。

 

 ミホノブルボンは、それだ。サイレンススズカもそうだ。

 スプリンターの速度を維持したままに距離の壁を超えさせ、引き伸ばした怪物。

 

 ミホノブルボンもサイレンススズカも、スプリンターとしては中の上の才能である。

 だが、中距離でスプリンターにとって中の上程度の速度を維持できれば誰も敵わない。

 

 やつは、そういうことを言っていた。

 

 サイレンススズカという気づけば勝手に走っているような気ままさ。

 そんな彼女が好む逃げという――――初っ端から脚を全力全開にせざるを得ないが故の脚の消耗と、序盤にミスしたら終わりという崩れやすさへのリスク。

 

 そのあたりを懸念して先行型に育てようと苦心していたおハナさんに対して、あいつは言ったのだ。

 

 ――――スピードの絶対値を底上げした上で抑えながら逃げさせて、最後に差せば脚の消耗も先行並に抑えられると思います。駆け引きを無視できるくらいにぶっちぎれば勝てますよ、と。

 

 スピードの絶対値はそう簡単に底上げできない。

 抑えながら逃げさせるって何?

 そもそも逃げウマ娘は差せない。

 

 ざっと上げるだけでこれくらいツッコミどころはあったし、その場に居た全員が(何言ってんだこいつ……)となったが、最終的におハナさんはあいつに任せた。

 言った内容を信じたというよりも言った人間の才能を信じたという感じだったが、結果的にうまくいった。

 

 あいつにこれを言うと『うまくいってない』と言うだろうが、秋天のアレは走っていた当事者を含めて、本人以外の全員が事故だと判定する程の事故だった。

 そして過程について言及するならば間違いなく、ルドルフのあとの最強はサイレンススズカだった。

 

 そういう怪物を相手にしながら常に、背後にいる男のことを考えなければならない。

 

 どこまで読まれているのか?

 どこまで読んでいるのか?

 

 考えながら、好機を逃さずに指示を下す。

 

 これではどうにも先祖返りしたようなレースだと、将軍は思った。

 

 圧倒的な、原初の強者。単純に強い。何しても強い。誰が相手であろうが強い。駆け引きなどいらない。正面を駆けてぶっちぎる。

 そんな相手を倒すために、駆け引きは生まれた。

 

 本来弱者のために生まれた駆け引きは、今や強者の強さを底上げするためのものになっている。

 それが本来の位置へと帰ってきた。つまりは、そういうことなのだ。

 

「いい日だね、お兄さま。どこからでも、どこを走ってても、よく見えそう」

 

 思考が終わったのを見計らったように、ライスシャワーは隣に座る強面のお兄さまに向けて微笑んだ。

 

 3つ目の、絶対。絶対的な信頼。

 雲間から漏れ出る光のように、ライスシャワーの笑みが緊張という闇を払っていく。

 

(勝ちたい。勝たせたい)

 

 菊花賞。もっとも強いウマ娘が勝つ、この場所で。少しずつ詰めてきた今までの総決算として。

 

 だがそんなことは、皆が皆思っている。

 ミホノブルボンの脅威的なハイペースに追従すればスタミナを喰い潰される。ハイペースへの参加を拒否してスタミナを温存すれば差しきれない彼方へ逃げられる。

 

 そのウマ娘、難攻不落。

 

 CMが言っていた。大差勝ち、大差勝ち、大差勝ち、大差勝ち、大差勝ち。6回続いてやっとダービーで8バ身にまで詰めて、京都新聞杯で5バ身にまで詰めた。

 だが5バ身など、本来は笑ってしまう程の大差である。大差と5バ身の間にあるのは、『今まで攻めかかることすらできていなかったけど、攻めかかれてすごいね』という、それくらいの差。

 

 それでも、ウマ娘たちはトレーナーと共に菊花賞に向かう。

 負けるためではなく、勝つために。

 

「ライス。基本戦術は檻を作って、壊され切る前に差し切る。この一点に尽きるんだ。どのような形であれ、ミホノブルボンの脚を鈍らせる。時計の針を止める。勝つにはこれしか無い。俺は檻が作れると思ったら、即座にサインを出す。常に少しだけ、意識をこちらに向けていてほしい」

 

「うん。お兄さま」

 

 

 ――――こうして。

 

 様々な思惑の中で、菊花賞ははじまった。

 

 URAがこの日のために工場をフル稼働、デスマーチを繰り広げて用意した大量のぬいぐるみミホノブルボンは制服Verも勝負服Verも完売。

 団扇、メガホン、弁当、時計、お守り、ブルボンモデル靴、耳飾りなどの関連グッズもまたたく間に完売。

 

 クソ儲けましたわ。

 濡れ手で粟ですわ。

 これで決まりですわ。

 ガッポガッポですわ。

 

 そんなURAの呵々大笑ぶりを他所に、粛々とパドックでのアピールが終わった。

 

 目の前に坂が広がる第3コーナー。最多動員を更新したらしい観客。

 それらを未だ入っていないゲート越しに見つめながら、18人のウマ娘たちがレースがはじまるのを待っている。

 

(ブルボンさん……)

 

 ライスシャワーは、ミホノブルボンを見た。

 彼女はいつも通りに、ぽけーっと空を見ている。周りの囁きとか、畏れとか、対抗心とか、歓声とか、期待とか。そういうものをすべて自分から切り離して、不動のままにそこにいる。

 

(勝つんだ)

 

 続々と、ウマ娘たちがゲートに入っていく。

 

《もっとも強いウマ娘が勝つと言われる菊花賞! 栄冠を手にするのは誰だ!》

 

 もっとも強いウマ娘。

 速く、持久力があり、力があり、根性があり、賢さがあり、運がある。

 

 もっとも強いという一言にどれほどの意味が詰め込まれているのか、この場に詰めかけた観客の大半が理解していない。

 だがそれでも、同じくらいの量の人間がこう思っていた。

 

 ――――もっとも強いウマ娘は、ミホノブルボンだと。

 

 そんな観客の思いを他所に、残った3人のうち、まずはマチカネタンホイザがゲートに入った。

 

《3番人気はこの娘。5枠10番、マチカネタンホイザ! カシオペアステークスでは、シニア級にも引けを取らないレース運びを見せました》

 

 小さな歓声が上がる。

 

 シニア級が入り混じるカシオペアステークスで2着と大健闘を見せた――――そして何よりも、夏からもっとも成長を見せつけたウマ娘。

 普段ならばトレーナーや観客に和やかに手を振ってみせる彼女は、らしくなく前のみを見つめていた。

 

《2番人気は4枠8番、ライスシャワー! 得意の距離で生粋のステイヤーが実力を証明するか!?》

 

 続いてライスシャワーがゲートに入ると、少し大きな歓声が上がった。

 

 ゆっくりと首を回し、顔の前で拝むように手を合わせる。

 覚悟を決めたようにアメシストの瞳を大きく見開いて、ライスシャワーは立っていた。

 

《さあ、主役の登場です》

 

 実況の声が聴こえたわけではない。

 だがここで空を見るのをやめて、坂を見つめて息を吐く。

 美しい瞳を星のように瞬かせて、そのウマ娘はゲートに入った。

 

《ここまで無敗、7戦7勝!》

 

 メイクデビュー。

 朝日杯FS。

 ホープフルステークス。

 スプリングステークス。

 皐月賞。

 東京優駿。

 京都新聞杯。

 

 そのいずれも圧倒的な勝利を収めてきた、間違いなく世代ナンバーワンのスターウマ娘。

 

《――――4枠7番、ミホノブルボン!!》

 

 天を劈く大歓声が、比喩表現でなく京都レース場を揺らした。

 音と熱気が渦を巻き、応援に来ていた一般ウマ娘たちが遅まきながら耳をぺたんと髪にくっつけて防音体勢に入る。

 

 見たい。シンボリルドルフ以来の無敗の三冠を。トウカイテイオーが叶えられなかった夢の輪郭を。

 

《【皇帝】シンボリルドルフ以来の無敗の三冠を賭けて! ここ、京都でクラシック路線最後の戦いに挑みます!》

 

 ガチャリと、ゲートが閉まる。完全な個室となったゲートの中で、隣り合うライスシャワーとミホノブルボンは視線を合わせた。

 

《さあクラシックロードの終着点、菊花賞!》

 

 18人のウマ娘たちがゆっくりと、各自の信じるスタート姿勢に入る。

 

《最強の名を証明するレースが、今!》

 

 観客たちも、信じていた。

 凄まじく出遅れたメイクデビュー以来、ミホノブルボンは一度たりともハナを奪われたことはない。常に先頭を維持して、そのまま押し切って勝ってきた。

 

 今回もそうなるだろうと、なんの根拠もなく信じていた。

 

《――――スタートしました!》

 

 理想的なフォーム、理想的なスタート。

 ミホノブルボンはいつもより上くらいの最上のスタートを切る。

 

 観客の視線は、ミホノブルボンに向いていた。逃げという脚質は、他のどの脚質よりもスタートの是非によって結果が左右されてしまう。

 そのことを彼らは知っていた。だからこそ、ミホノブルボンが完璧なスタートを切ったとき思った。

 

 勝った、と。このままハナを奪って内側により、いつものように圧倒的な逃げ切りを見せてくれるだろうと。

 

 だがこのレースで、ミホノブルボンはハナを譲った。

 

 ――――キョーエイボーガン。同じ、逃げ脚質のウマ娘。

 

 ハナに立ったのは、彼女だった。




123G兄貴、白河仁兄貴、夕莉兄貴、ユーギ兄貴、なのてく兄貴、もんが兄貴、アイルリッヒ兄貴、はい。兄貴、黒兄貴、レイヴン兄貴、はやみんみん兄貴、カッシ兄貴、軟民兄貴、終焉齎す王兄貴姉貴、初見兄貴、raglaner兄貴、必勝刃鬼兄貴、石倉景理兄貴、レンタカー兄貴、zenra兄貴、乱丈兄貴、たきょ兄貴、障子から見ているメアリー兄貴、橋本兄貴、拓摩兄貴、光に目を灼かれたペニーワイズ兄貴、ブブゼラ兄貴、ツインバー兄貴、何足道兄貴、葵い兄貴、通りすがり兄貴、mtys1104兄貴、FROSTY=BLAKK兄貴、アドナイ兄貴、モランボン田中兄貴、サガリギミー兄貴、みったん兄貴、化猫屋敷兄貴、まだない兄貴、スクート兄貴、ガトリング・ゴードン兄貴、すまない兄貴、Al-Lail兄貴、主犯兄貴、fumo666兄貴、上造兄貴、氷雪兄貴、星ノ瀬竜牙兄貴、お祈りメール兄貴、ハガネ黒鉄兄貴、パンダメント兄貴、初男兄貴、青タカ兄貴、例の兄貴兄貴、角行兄貴、Xres兄貴、セロリ畑兄貴、ESAS兄貴、N2兄貴、三田六郎兄貴、バナナバー兄貴、セーフ?兄貴、ヌバチ兄貴、感想ありがとナス!

湯気1324兄貴、レオーネ兄貴、1000yen兄貴、AtAr兄貴、紅ノ弥生兄貴、たまらない鍋兄貴、糸コン兄貴、かぶと兄貴、うにゃりん兄貴、ラディカル・グッドスピード兄貴、蜜柑01兄貴、カナハナ兄貴、ましす兄貴、評価ありがとナス!


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サイドストーリー:狂奔

アニメでは22秒で終わったレースを10000文字以上かけて書くがやつがいるらしい


 ざわっ、と。

 明らかにこれまでとは違うレース展開に、観客がざわめいた。

 

《先頭はキョーエイボーガン! 先頭はなんとキョーエイボーガン! 全力全開で突き進みます!》

 

 開始と同時に、スタートダッシュの域を超えたブーストでミホノブルボンと並び、キョーエイボーガンはちらりと外枠を見た。

 彼女の外枠には、ミホノブルボンが居る。全力でスパートをかけてもなお追い縋ってくるミホノブルボンに恐怖を感じたのか、更に加速して一気に斜行。ギリギリを攻めてハナと内を奪い、経済コースを突き進む。

 これに対してミホノブルボンはなんの感情も見せず、キョーエイボーガンの後ろについた。

 

 波乱が起きた。このことに対して驚く者もいれば、顔を歪める者もいる。そして、予測していた者もいる。

 その反面、喜ぶ者もいた。将軍である。

 

 ライスシャワーの中のミホノブルボンは、常にハナを走っているウマ娘だった。誰にも追いつかれない、無敗無敵のウマ娘だった。

 それが今、初めて崩された。その波乱を感じ、ライスシャワーは客席に掛ける将軍を見た。

 

(ライス)

 

(うん)

 

 身体を低くし、軽いスパート体勢に入って一気に先頭集団へと駆けていく。

 

《ライスシャワー動いた! ライスシャワーも早々に仕掛けた!》

 

 ライスシャワーも、キョーエイボーガンに釣られたのか。

 そんな空気に牽引されるように、好位につけようとする中群が一気に上がっていく。

 

 ――――殺人的なハイペース。

 

 後にそう呼ばれる菊花賞は、静けさと無縁の喧騒を纏って幕を開けた。

 

 先頭、キョーエイボーガン。その後ろ、少し離れてミホノブルボン。その斜め後ろにライスシャワー。その後ろに、15人のウマ娘たちが続く。

 

 菊花賞は向正面、第3コーナーを前にしてスタートする3000メートルを走るレースである。

 出発して即座に高低差4.3メートルにもなる淀の坂にぶち当たり、スタート直後に坂を登ることを要求される。キョーエイボーガンは、登り坂に向かって全速力で突っ込むという、坂路に慣れきったミホノブルボンでも中々やらないような道を選択した。

 

《ライスシャワー、ミホノブルボンの外、斜め後ろを維持! 風を避けなくていいのか! あるいは自分を見せるためか、他に目的があるのか! 不気味にマークしています!》

 

 そもそも後ろにつけるのは、風の抵抗を避けるためである。だから、ミホノブルボンはキョーエイボーガンの後ろにつけている。

 

 ではライスシャワーは、何故ミホノブルボンの後ろにつけなかったのか。

 それはそもそも、目的が違ったからである。

 

 将軍は、キョーエイボーガンの狂奔を歓迎した。キョーエイボーガンを天井にして、ミホノブルボンを内に押し込んでライスシャワーで蓋をする。

 

 キョーエイボーガンが仕掛けた理由はわかる。逃げウマ娘同士の戦いは、能力が高い者が勝つ。あらゆる面で、ミホノブルボンはキョーエイボーガンに優越している。だから普通に100回走ったら、ミホノブルボンが100回勝つ。

 だが、最初から全力で走ってそれを維持する破滅じみた戦法であれば、勝てる可能性がある。99%負けるが、1%の可能性がある。

 

 だから、キョーエイボーガンはその1%に賭けた。

 その気持ちは、痛いほどわかる。

 

 わかった上で、将軍はその限界を悟っていた。スタミナが足りない。圧倒的に足りない。

 最近同じような戦法を得意とする(というか、それしかできない)ツインターボが校内の模擬レースで最初から最後まで全力のまま1200メートルを走り切ったが、菊花賞は3000メートル。2倍以上の開きがあるのだ。

 

 だからどこかで、スタミナが切れて垂れてくる。垂れて、ミホノブルボンのラップ走法を阻害する壁になる。

 その壁を、ミホノブルボンは外に出て躱そうとするだろう。躱してハナを奪い返し、変わらず時を刻み続ける。だからこそ、ライスシャワーは上がってきた。

 

 常に斜め後ろに位置し、ミホノブルボンが外に出ようとする進路を塞ぐようにプレッシャーをかけ続ける。

 

 それが、将軍が即興で組み立てた檻。

 

 垂れてきたな。じゃあ抜くか。

 言葉にすれば簡単だが、誰しもができることではない。機を窺う卓越した眼とレースセンスが必要である。

 だが参謀は、ミホノブルボンならばできるだろうと思っていた。

 将軍もライスシャワーも、そう思っていた。

 

 キョーエイボーガンがほんの少し外へ膨らみながら第3コーナーを曲がり切り、第4コーナーの下り坂へと駆けていく。

 それに比して完璧なハンドリングで無駄なく曲がりきったミホノブルボンは、視線をチラリと大外方向へ向けた。

 

 ――――君の負け筋はふたつある。しかし、敗因は同じだ。それは、ラップ走法を捨てること

 

 マスターは、言った。

 負け筋は、ミホノブルボンがミホノブルボンたる所以を捨てるところにあると。

 

 捨てるか、捨てざるを得ないか。

 

 どちらにしても、そうなれば負ける。

 

 ――――京都新聞杯でキョーエイボーガンはわかったはずだ。まともにやったら勝てないと。なら、そのまま挑むか。そうではない。なら、まともではない方法で来る

 

 それが、今。破滅的な逃げ。最初から最後まで全力、100の内120を出してミホノブルボンとの間にある隔絶した実力差を埋める。

 

 ――――九割九分九厘、キョーエイボーガンはスタミナが尽きる。力を使い果たして垂れてくる。それが予測できた上で君の取れる選択肢は2つ。キョーエイボーガンの後ろにつくか、つかないか

 

 つけば、スタミナの消耗を抑えられる。

 つかなければ、選択の幅を増やせる。

 

 ――――菊花賞3000メートルを走るにあたって、スタミナを温存するに越したことはない。今回は最も内側、経済コースを走るであろうキョーエイボーガンの後ろに付き、防風壁にして走る。これは春天への布石でもある

 

 となると、展開はどうなるか。

 

 キョーエイボーガンが垂れてきて、外から抜こうとすればすかさず前に進出してきて進路を狭め、塞ぐ。ライスシャワーの意図を、トレーナーはそう予測した。

 

 ――――おそらく、そこで初めてあいつは安心する。どうしようもない猛獣を倒すには檻に入れるしか無いことを、あいつは身を以て知っているはずだ。キョーエイボーガンというウマ娘が巻き起こしたハプニングを味方にしたことに、できたことに、安堵する

 

 そこまで聴いて、ミホノブルボンは思った。

 言っていることはわかる。未来予知じみているが、少しずつ今ある情報、作り上げてきた状況を積み重ねて得た台座に立って遠視しているに過ぎないからだ。

 

 それが誰にでもできるか。

 そう言われればそうではないが。

 

 ――――君は今思っているな。予測できていても、キョーエイボーガンをどうするのか、と。垂れてきたキョーエイボーガンは、無論君のペースに付いていけない。となれば外から抜きに行く必要があるわけだが、ライスシャワーの牽制とブロックで抜けない。つまり、ラップ走法が使えなくなる、と

 

 1ハロンを何秒でではなく、疲れて垂れてきたキョーエイボーガンに合わせて走らなければならない。

 そうなれば、ライスシャワーと将軍の思う壺である。

 

 ――――その通りだ。たぶん将軍は、中段に位置するウマ娘たちが上がってくるまで疲弊したキョーエイボーガンに合わせたスローペースでライスシャワーを走らせる。

 そして終盤、まくって上がってくる中段の群れ……たぶんマチカネタンホイザが率いる形になると思うが、それに君とキョーエイボーガンに突っ込ませ、自分の代わりの蓋を任せてハナに立つ。そんなところだろう

 

(たぶん、そうなります。マスター)

 

 ライスシャワーの目線が、ちらりと後ろを向いている。今まで自分のことしか――――ミホノブルボンしか見てこなかったライスシャワーの眼が。

 つまりそれは後ろに目的があるということ。

 

 ライスシャワーは、これと決めて腹を括る。つまりミホノブルボンを追うことしか考えていないならば、こういう動作は取らない。

 

 ――――では、どうするか。無論、策はある。だが、使うタイミングは最終的に君に任せる。流石にどこで仕掛けるのが適切かまでは、俺にはわからないからな。

 

 

 ただ俺は、坂後のコーナーが狙い目だと思う。

 

 

(マスター)

 

 徐々に、キョーエイボーガンとの差は縮まってきている。

 全力というものは初っ端から出していいものでもなければ、坂を登るときに出していいものでもない。脚に負担がかかり、負担をカバーするために上体が理想から少しずつズレていく。それでも前に、前に行こうとするからフォームの地軸そのものがズレる。

 

 ――――無理なく抜かせる

 

 ミホノブルボンは、彼女のマスターの如き冷徹さでキョーエイボーガンのがんばりを見ていた。

 

《さあ、淀の坂を超えてコーナーに入ります! その殺人的なハイペースに流されず、減速しつつうまく曲がることができるか!?》

 

 まず3人が、坂を下る。少し遅れて、15人が続いた。

 体勢を思い切り低く保ったキョーエイボーガンはノンストップノンブレーキで、淀の坂を駆け下っていく。

 

 下って、そのままコーナーに差し掛かった。

 速度とは、諸刃の剣である。当然ながら速度があればあるほどコースを速く駆けられる。だがその一方で、コーナーを曲がることが難しくなる。

 キョーエイボーガンは、そこのところを理解していた。だからコーナーを曲がるための練習を特にした。

 

 淀の坂の下りでは、速度を緩めることが鉄則である。常識である。

 なぜならば、コーナーを曲がり切れないから。慣性の法則とやらが悪さをして、大外に膨らんでしまうから。

 

 ――――ミホノブルボンが常識など知らないなら、私も知らない!

 

 そんな決意で、キョーエイボーガンは無理矢理に速度を維持したままコーナーを曲がった。

 やや横に膨らみながらも、曲がり切った。

 

 そんな彼女の右側を、何かが通った。

 

《さあ曲がった! 曲がれた! 変わらず先頭はミホノブルボ――――えっ?》

 

 常に話していなければならない実況の脳の動きが停止した。目の前の景色を理解する、そのためだけに。

 

《ミホノブルボン!?》

 

 そのウマ娘は重力を無視したようなバランス感覚で、キョーエイボーガンが速度を維持したままに曲がったが故にできた膨らみと内柵の間を縫うように駆ける。

 最効率の、最短距離。一歩でも間違えれば危険行為と判断されて失格・降着になるかもしれない狂気のハンドリング、コーナーでの加速。

 

《か、変わりました! 先頭が変わりました! キョーエイボーガンではありません! 先頭はミホノブルボン! コーナーで加速してワープしてきましたミホノブルボン! ハナに返り咲いたのはミホノブルボンです!》

 

 ――――お前を超える速度を遮二無二に出すキョーエイボーガンは、コーナーを曲がるのをしくじる。少なくとも、大きく膨らむだろう。その内を突け。そうすれば、外のライスシャワーを気にする必要はない

 

 ライスシャワーの位置ではあくまでも、外からの追い抜きを牽制できるだけ。

 ではなぜ、それを許したのか。将軍ともあろうものが、その可能性を無視したのか。

 

 その理由は、『どちらかの対策しかできないから』これに尽きる。

 これは内を走るウマ娘の、その更に内から抜き去るようなことは、普通起こらない。故にその可能性は捨て、外からの抜き去りを警戒する。その選択肢しかなかった。

 

 だから将軍にとって、内をブチ抜いてミホノブルボンが進出してくるのは全くの想定外。そして、想定してもどうにもならないことだったのである。

 

 しかし、誤算は起こった。

 

 ここまでの図面を正確に書いた男の想定より遥かに、キョーエイボーガンはうまくやったのだ。会心の走りで曲がり切った。

 

 膨らんだが、ギリギリ。なんの無駄もなくコーナーを曲がり切れば、差せる。コースの最内とキョーエイボーガンとの間には、その程度の間隙しか空かなかった。

 だがその会心を超える実力を、ミホノブルボンは示した。

 

 ――――曲がれる

 

 これまで、坂路を走ってきたから。

 マスターが、曲がれると言ったから。

 今ここを走るのは、夢を叶えられる自分だから。

 

 ミホノブルボンは、仕掛けられると確信した。

 参謀は、仕掛けるなら次のコーナーだなと思った。

 ライスシャワーは、嫌な予感がして将軍の方を向いた。

 将軍は、絶対に仕掛けてくるであろうことを直前に察知した。

 シンボリルドルフは走るミホノブルボンの意図を汲み取り、成功するだろうと頷いた。

 

 そして、ミホノブルボンは成功させた。

 参謀は仕掛けるミホノブルボンを見て危うさを感じたものの、何もできないし何もする気がないので脚組んで腕組んで座っている。

 

 

 ――――自分の現場における判断は、一流のそれと比べて半歩遅い

 

 

 そして、超一流と比べれば一歩遅い。だから予測するだけしたあとは現場に任せて何もしないという、ある意味清々しい割り切りだった。 

 

(いつ! どこから!?)

 

 キョーエイボーガンにとっては、時を止められたような衝撃だった。時を止めて、止めた時の中をミホノブルボンだけが動けた。

 前だけを見ていたキョーエイボーガンにとって、一瞬でミホノブルボンが前に――――それも封じていたはずの内枠から出てきたのは、それくらいの衝撃だった。

 

《ミホノブルボン! 第4コーナーを抜けて、遂にハナに立ちました! やはり彼女は、先頭を駆けるのが似合います!》




123G兄貴、白河仁兄貴、咲さん兄貴、ナカカズ兄貴、天須兄貴、ガンバスター兄貴、zenra兄貴、がんも兄貴、結晶兄貴、病んでるくらいが一番兄貴、はせがわわわわ兄貴、white2兄貴、べー太兄貴、おきな兄貴、秘密の馬兄貴、初見兄貴、なまにく3兄貴、レイヴン兄貴、区星兄貴、はらっぴ兄貴、B.I.G兄貴、ユウれい兄貴、終焉齎す王兄貴姉貴、必勝刃鬼兄貴、夕莉兄貴、mtys1104兄貴、torin兄貴、レンタカー兄貴、仁和寺兄貴、kawasemi兄貴、みさち兄貴、障子から見ているメアリー兄貴、Shinya769兄貴、石倉景理兄貴、クラシア兄貴、ピノキオ兄貴、新宿のショーター兄貴、ゴンSAN兄貴、fumo666兄貴、TEL92兄貴、I’mgoing兄貴、剣豪将軍初段兄貴、道遊庫塒兄貴、coookyuon兄貴、tukue兄貴、月原兄貴、進化兄貴、光に目を灼かれたペニーワイズ兄貴、バナナバー兄貴、ブブゼラ兄貴、ながもー兄貴、星ノ瀬竜牙兄貴、狐霧膳兄貴、ガトリング・ゴードン兄貴、化猫屋敷兄貴、主犯兄貴、クリストミス兄貴、無理真珠Aion兄貴、チマ兄貴、あっちゅうまだったなぁ兄貴、なのてく兄貴、Carudera兄貴、一般トレーナー兄貴、ESAS兄貴、はやみんみん兄貴、タマゴタケ兄貴、ハガネ黒鉄兄貴、サガリギミー兄貴、感想ありがとナス!

微笑みのアルベルト兄貴、すもももももももものうち兄貴、武士道ラーメン兄貴、ましゅーむ兄貴、isono兄貴、ごはん粒兄貴、R@in兄貴、にじファン難民兄貴、daybreaksnow兄貴、kotokoto13兄貴、神高那岐比売命兄貴、komatinohu兄貴、評価ありがとナス!


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サイドストーリー:どこからでも

 キョーエイボーガンとの攻防を制し、ミホノブルボンはいの一番にスタンド正面に差し掛かる。

 そんな彼女を横殴りの雨のような大歓声が叩いた。

 

 がんばれ、と。

 勝ってくれ、と。

 

 言葉の体をなしている言葉は勿論、言葉にもならない言葉、熱、語気。それら全てが、上昇気流の如く背中を押す。

 

 まだ速くなれる。もっと頑張れる。

 

 そんな気分になる。なってしまう。

 だがそうなることが自分の敗北に繋がると、ミホノブルボンは知っていた。

 

 ――――ルドルフですらかかり掛けた。あいつは菊花賞でここを通るとき、ギリギリとはいえ最後尾だったからな。頑張ってくれと言われて、頑張りかけた。だから、気を引き締めろ。声援に応えることは、目の前で全力を出すことではない

 

 

 勝つことだ。

 

 

(謝罪します。貴方たちの期待には、今は応えられません)

 

 ――――ただ、いずれ応えます。このレースが終わる、その時には。

 

 ブルボンがんばれー!、と。小さな身体で目一杯息を吸って声を上げる小さなウマ娘を視界の端に捉えながら、ミホノブルボンはスタンド正面を駆け抜けた。

 

《ウマ娘たちが大歓声を受け、正面スタンド前を駆け抜けます。先頭はミホノブルボン。続いてキョーエイボーガン、ライスシャワー》

 

 栗毛の超特急が駆け抜けたすぐ後にキョーエイボーガンが続き、その内側を漆黒の髪を靡かせた刺客が続く。

 

 キョーエイボーガンは、未だ全力を出せている。彼女にとっての100%を出している。

 

 この事実こそが何よりも雄弁に彼女の努力を、そして彼女がミホノブルボンに勝つつもりであったことを語っていた。

 

 120%を出せたからこそ、ミホノブルボンの前を行けた。110%でも、差を維持することはできた。

 だが彼女の100%よりも、ミホノブルボンの80%の方が速かった。

 

 コーナーをぶち抜かれ、靴を並べて走っていたのは一瞬だけ。

 ミホノブルボンの方が速い。ミホノブルボンの方が内側にいる。

 

 速度差と地形の有利さで、キョーエイボーガンは徐々に離されていた。

 ミホノブルボンは、徐々に外へ外へと押し込んでくる。キョーエイボーガンには、その追い出しに抵抗する力がない。

 

《キョーエイボーガン、徐々に離されていきます。しかしそれなりのペースです!》

 

 実況の言うよりも遥かに、キョーエイボーガンはハイペースを維持できていた。なにせ、ミホノブルボンを射程に捉え続けようとしているライスシャワーに抜かれていないのである。

 だがその速度を、キョーエイボーガンは利用された。

 

 ――――キョーエイボーガンの内から抜いたら横に押し出して、ライスシャワーの蓋にしてやれ

 

 たぶんやる前に気づかれるだろうが、それでも成果はある。

 外に若干押し出すように走りつつ、ミホノブルボンは視線を後ろに走らせた。

 

 ライスシャワーはいない。

 

 ――――居たら、大外からの追い抜きを強いることができる。居なかったら、君の後ろにいる。大した意味はないが、牢屋番が牢屋にぶち込まれるわけだ。これはなかなかに頭にくるだろう

 

 まだ、参謀の参謀たる由縁は発揮されていた。

 

《ライスシャワー! ミホノブルボンの後ろにつけました。かつてライスシャワーが居た位置にはキョーエイボーガン、かつてのキョーエイボーガンの位置にはミホノブルボン! ひっくり返った形になります!》

 

 ミホノブルボンに蓋をしていたライスシャワーは、気づけばミホノブルボンに蓋をされている。

 

 と言っても、ミホノブルボンが垂れてくることはない。即ち、大して意味のない檻。

 だが、圧迫感はある。そして、大外へ打って出る選択肢を潰せる。それだけでも、これからの予想がしやすくなる。

 

 深く考えることを全て信頼するマスターに任せたミホノブルボンは、見慣れた景色のその先を見ていた。

 

《さあ、全体が縦に伸び切りながらも一周目の直線に入ります! ミホノブルボンはどう動くか! ライスシャワーはいつ仕掛けるのか!》

 

 

 ――――正直、あとは流れで押し切れる。何故ならば、駆け引きする気のない相手と駆け引きをするには、複数人のウマ娘が必要だからだ

 

 

 駆け引きする気のない相手は、あらゆる誘いを無視する帰宅部のようにゴールに向かって突っ込んでいく。何をしようが関係なく、前に突き進む。

 そういう手合を駆け引きに引きずり込むには、駆け引きせざるを得ない状況に引き込むしかない。

 

 この場合、キョーエイボーガンがその状況を生み出した。机と椅子、駆け引きのためのカードを作り出した。

 そしてライスシャワーとミホノブルボンは、机を挟んでカードを並べるところまで来たのだ。

 

 さあ、駆け引きだ。戦術だ。遅延して、盾を割って、少しずつ削ってとどめを刺すぞ。

 ライスシャワー側がそう思っていたところに、ミホノブルボン側は言った。

 

『私はこれから、2ターン連続で動きます。この2ターンで決められなかったら私の負けでいいです』

 

 そんなルールはないよ。

 

 そう言う前に2ターン連続で動かれ、駆け引きするための場は吹っ飛んだ。それが、今である。ついでにライスシャワーは、簡易の檻にぶち込まれている。

 

 

 ――――だがまあ、あいつのことだからな。そう簡単に諦めないであろうと思われる。ライスシャワーは本来、単純な力比べでも君と互角にやれるから……適当にやれ。仕掛けてきたら、教えておいた対策を必要に応じて思い出せ

 

 

 そんな前途洋々に突き進むミホノブルボンを他所に、将軍は半ば呆れていた。

 

(暴力だな、こりゃ……)

 

 ミホノブルボンの強さの根っこにあるのは、それだ。ミホノブルボン本人の単純な気質と、効率厨と最強厨の悪魔合体、単純化厨と呼べる参謀の気質が絶妙に噛み合ったがゆえの単純な暴威。

 

 暴力的な速度を暴力的な力で御し、暴力的な持久力で保たせる。それだけ。それだけだからこそ、恐ろしい。

 

 ――――俺はあの子に、ウマ娘としての理想を見た。どんな策も、駆け引きも、最短距離で噛み砕く。あれが、あれこそが、競走者としての到達点なのだ

 

 参謀がはじめて生で見たウマ娘。シンボリの家にいたらしい、才能と力の化身。呼吸するハリケーン。

 熱く語る当人も名前すら、今どこで何をしているかも知らないらしい、シンボリルドルフに伍する才能を持っていたであろう怪物。

 

 ――――汝、暴君の猛威を見よ。

 

 参謀の理想となったその娘を例えるならばそんな感じか。多少美化されているとは思うが、誇張したり嘘をついたりするやつではない。

 

 あんまりにも強いその娘に理想を見て理想とする偶像が――――スペックゴリ押し厨という意味で――――変な方向に曲がり。

 あんまりにも賢いルドルフを見てトレーナーとしての役割認識が――――指導・事前予測特化という――――変な方向に曲がる。

 

 シンボリの家のウマ娘たちこそが、あいつをこんな怪物に仕立て上げたのだ。

 

 将軍は、切に思う。おかげでとんでもないやつが生まれたぞ、と。

 しかし、嘆いてばかりもいられない。

 

(まだ手はある)

 

 ただそれは、なるべくならば切りたくない手でもある。

 

《1バ身、2バ身、3バ身! ミホノブルボン、どんどんと差を広げていく! 先頭はミホノブルボン、続いて差が開いてライスシャワー。その後ろ、キョーエイボーガン。キョーエイボーガンのすぐ後ろに、8人からなる集団が続きます》

 

 スペックでは他を圧倒しているミホノブルボンが、地力の差を見せて京都レース場の直線を駆けていた。

 

 誰も相手にしない彼女の走りは、まさに圧倒の二文字が似合う。

 後にピッタリと付くライスシャワーを抜かして中段のバ群から仕掛けてくるウマ娘も居るには居たが、視線を向けられず、相手にもされずに振り切られていく。

 

 ――――せめて付いていかなければ

 

 そんな思考が、マチカネタンホイザら中段のウマ娘たちの頭にはある。

 

 二度目の坂を超えて最後の直線、約400メートル。ここで差し切るしか勝ち目がないことを、彼女たちは知っている。

 だが、ミホノブルボンが刻む高速のラップ走法はレースを大気圏外にまで押し上げていた。

 

 並のウマ娘であれば窒息してしまう程のハイペースに付いていけば、菊花への切符を掴んだ選ばれしウマ娘である彼女らでも潰れてしまう。

 だが自分のペースを守るだけというのも、いけない。たった400メートルでは差し切れない程の物理的な距離を空けられてしまう。

 

「……例年の菊花賞より3秒は速いぞ、これ」

 

 そんな中で誰かが、そう言った。ストップウォッチを持っているあたり、熱心なファンなのだろう。

 

 だがその熱心なファンが感じることは当然、走っているウマ娘たちはわかっていた。

 3000メートル。クラシック級ウマ娘たちにとっては未知の距離。ライスシャワーなど明らかに長距離適性のあるウマ娘――――ステイヤーたちもこのレースに参戦してはいるが、それでも3000メートルのレースを走ったことがある者は居ない。

 

 ただでさえ未知の距離でペース配分がわからないのに、高低差のある地形が彼女らの思考能力を削いだ。

 平面だけが続くレースならば、計算もできる。だが、坂を2度超えるような経験も彼女らにはないのだ。

 

 ――――このペースはおかしい

 

 そう。それはあっていた。間違いなく、ミホノブルボン以外の全員がこのハイ・ペースのおかしさを認識していた。

 いずれどこかで減速すると思っていた。

 

 ――――まさか、普通の逃げに戻る気なのかな

 

 そんな思考も、走るウマ娘たちの一部にはある。

 体力をギリギリ残して坂を下って、あとは勢い任せでヘロヘロになりながらゴールする。本来の逃げウマ娘の姿に戻る気なのか、と。

 

 だが、そうではないと考えるウマ娘も居た。彼女らは高速道路に合流しようとする素人のように早めに仕掛け、見事に失敗してペースを乱され、後方に沈んでいく。

 

 ただ悠然と走っている。それだけなのに、他のウマ娘たちが次々に仕掛けを誤ったりついていけなくなって潰れていく。

 

 その中で平然と――――徐々に差を広げられてはいるが――――ミホノブルボンを自分が差し切れるであろう射程距離に入れ続けながら走っているライスシャワーというウマ娘の異常さに、今のところ誰も気づいていない。

 

 どこで息を入れるか、どこで急ぐか。

 ミホノブルボンが平熱の走りをしているならば、ライスシャワーは緩急を入れた走りでなんとかぶっちぎられるのを防いでいた。

 

 ただ、差は広がっている。当初はミホノブルボンを風除けにすることで防いでいた余計な体力の消耗を、今のライスシャワーは防げていない。

 ただここで無理に差を詰めれば、風を受ける以上の体力を消耗することになる。

 

 

 今はギリギリまで耐える。

 

 

 動かないことこそ、将軍のとった戦術だった。

 

 思うがままの単騎行を楽しむミホノブルボンは、ちらりと再び振り返る。

 この振り返りの多さこそが彼女が如何にこのレースにかけているか、ライスシャワーを警戒しているかの証左であろう。なにせ日本ダービーまで、彼女は後ろを気にしたことがなかったのだ。

 

 

 ――――動かない。そう判断して余裕をこくのはよろしくない。だが、動かない場合は仕掛け時を探っている。あるいは、決めてある【その時】を待っている

 

 たぶんそこは、坂だ。

 淀の坂。本日二度目、計三度目になる高低差4メートルの長大な坂。

 

 そこで来る。

 ミホノブルボンは、背中に突き刺さる茨のような視線を感じながら、己に課したペースを守る。

 スタートした地点を眼の前にしてもう一度ライスシャワーの方を見て、その眼に宿った光を見て、ミホノブルボンは無意識の中で少し笑った。

 

 首を下げ、上げる。

 いついかなる時も全く見せない不敵な笑みと、その笑みを拭い去り心を切り替えたようなその動作は、或いは覚悟に見えたのかも知れない。

 

《さあ、どこからでも! 何でもこいという感じか、ミホノブルボン!》

 

 踏みしめるバ場は良好。視界は広く空気は澄み切る、世界が三冠ウマ娘の誕生を祝福するかのようなこれ以上ない程の快晴。

 

 祝福の名を持つ黒い刺客が肉薄する、二度目の坂が待っている。




123G兄貴、白河仁兄貴、ガンバスター兄貴、べー太兄貴、みさち兄貴、海野もくず兄貴、ピノキオ兄貴、tukue兄貴、志之司琳兄貴、ホワイトロリータ兄貴、よしの兄貴、すまない兄貴、障子から見ているメアリー兄貴、光に目を灼かれたペニーワイズ兄貴、風呂兄貴、レンタカー兄貴、じゃもの兄貴、初見兄貴、なのてく兄貴、Spinel兄貴、tamatuka兄貴、夏野彩兄貴、なぎ兄貴、葵い兄貴、SDHRS兄貴、ラース兄貴、魚クライシス兄貴、通りすがり兄貴、終焉齎す王兄貴姉貴、迫る影兄貴、夕莉兄貴、はやみんみん兄貴、さけきゅー兄貴、サガリギミー兄貴、ピノス兄貴、リアルSCM兄貴、くせもの兄貴、ぷちぶるぼん兄貴、拓摩兄貴、必勝刃鬼兄貴、曼陀羅兄貴、ぽよもち兄貴、ジョージ・ジョースター兄貴、主犯兄貴、卵掛けられたご飯兄貴、うたい兄貴、松田高雄兄貴、アドナイ兄貴、消波根固塊兄貴、更新お疲れ様兄貴、がんも兄貴、化猫屋敷兄貴、ニキータの店兄貴、クリストミス兄貴、いちご酒兄貴、何足道兄貴、非水没王子兄貴、ガトリング・ゴードン兄貴、JORGE兄貴、青タカ兄貴、ドンド・コドーン兄貴、きょーらく兄貴、ナナシ兄貴、fumo666兄貴、Carudera兄貴、ナカカズ兄貴、momo_momo兄貴、星ノ瀬竜牙兄貴、ライセン兄貴、黒兄貴、rairairai兄貴、ESAS兄貴、zenra兄貴、ヒツジん28号兄貴、吹風兄貴、ながもー兄貴、ハガネ黒鉄兄貴、銃陀ー爐武兄貴、バナナバー兄貴、感想ありがとナス!

ヴォル=フラン兄貴、ニュルナ兄貴、itikazu兄貴、nagatuki兄貴、ハレルヤ3852兄貴、Matsuken兄貴、くろばる兄貴、イソノ兄貴、翁さん兄貴、エパルレスタット兄貴、モモンガー兄貴、volfshtein兄貴、ろむ兄貴、ほたる967兄貴、16兄貴、みったん兄貴、焼きすぎトースト兄貴、瀬戸 内海兄貴、myst兄貴、佐賀茂兄貴、リフレックス兄貴、sevenstar兄貴、キッコーマン@兄貴、寒ブリ兄貴、チマ兄貴、kotokoto13兄貴、みかん団長兄貴、シャチQ兄貴、めそひげ兄貴、アイアンメイデ兄貴、サリトス兄貴、評価ありがとナス!

感想・評価いただければ幸いです。


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サイドストーリー:色彩反転

活動報告に参考にしたサイトまとめを投稿しました。ウマ娘SS書きたい兄貴はよろしければどうぞ。


 坂を登る。言うだけならば簡単なそれの難しさを、ミホノブルボンほど正確に把握しているウマ娘はいない。

 

 京都レース場の坂はゆっくり登り、ゆっくり下る。そうしなければ、勝てない。

 かつて常識とされたそれを破ったのは、神の時代にしかなかった『三冠ウマ娘』という存在を現代に蘇らせた偉大なるウマ娘、ミスターシービーだった。

 

 天衣無縫、豪快な追い込みを得意とした彼女はかつて、高速の坂路超えによって菊花賞を制した。

 そして同じ京都レース場で迎えた春の天皇賞。後輩の三冠ウマ娘、シンボリルドルフが他を突き放して先頭を疾駆する中で、ミスターシービーは再び坂で勝負を仕掛けた。高速で登り、高速で降りる。

 

 菊花賞の再現だと、観客たちは湧いた。そして、シンボリルドルフがどうするかを見た。

 

 ――――シンボリルドルフは、仕掛けなかった。振り返りすらしなかった。あくまで常識的にゆっくり登って、ゆっくり下る。

 そして当たり前のように栄冠を手にした。

 

 完封勝ちだった。ミスターシービーが持つ追い込みの、直線一気の華を枯死させる程の、冷気すら感じる完璧な勝ちだった。

 当たり前のことを当たり前にやる。適切な環境で育ち、適切な予想のもと、適切な判断を下す。それだけで、シンボリルドルフは勝利を手にした。

 

 ――――常識を破り切れれば、それは偉業だ。だが中途半端に終われば、非常識の一言で片付けられる。

 

 ライスシャワーは、偉業を為すのか。それとも、非常識で片付けられるのか。

 

 多くの人間が、あまりにも絶対的な走りをするミホノブルボンにシンボリルドルフを重ねた。実際、指導しているやつは同じ男だから、これは全く間違いではない。

 

 ミホノブルボンは勝つだろう。

 ミホノブルボンは無敗の三冠ウマ娘になるだろう。

 リードは7バ身。確定した勝ちを眺めるような気持ちになった観客の心に、黒い影が差した。

 

《動いた!! ライスシャワー仕掛けた!》

 

 低く保っていた姿勢をさらに深く。自分の影と同化するのではないかと思うほどに、深く、深く。

 

 ライスシャワーは、限界まで風の抵抗を潰しながらスパート体勢で淀の坂に入った。

 

 ――――あの娘、諦めてないんだ

 

 そう驚いた観客の殆どは、ミホノブルボンを見に来ている。ミホノブルボンの無敗の三冠を、歴史に蹄跡を残す姿を見に来ている。

 だが、それだけではなかった。キョーエイボーガンのファンも居た。マチカネタンホイザのファンもいた。ライスシャワーのファンもいた。

 

 何度負けても、何度負けても強くなって立ち上がる。そんな小さなウマ娘に、心を動かされた人間は確かにいた。

 

 ――――差し切る

 

 ライスシャワーは、そんな覚悟を持って走っている。

 ミホノブルボンが応援されていることを知っている。彼女が求める夢が、偉業が目の前にあることを知っている。努力してきたことを知っている。その偉業を為すに相応しいウマ娘であることも知っている。

 

 でもそれは、敗けてもいい理由にはならない。

 ライスシャワーは、勝ちたかった。負け続けて悔しいからではない。全力を出して、勝ちたかった。万全のミホノブルボンに勝ちたかった。

 

 ミホノブルボンに会うまで、ライスシャワーは勝ちたくないと思ったことはあっても、勝てないと思ったことはなかった。

 なのに、ホープフルステークスで、皐月賞で、日本ダービーで。ライスシャワーは勝てないと思った。

 

 勝てなかった、ではない。勝てないと思った。それが悔しかった。だから、勝つと決めた。

 その先に、どんな罵声があろうとも。たったひとりだけは絶対に、祝福してくれるだろうから。

 

 下り坂に入る。

 未体験のスピード、未体験のスタミナ。キョーエイボーガンを蓋にしてペースを落とさせることもできず、ミホノブルボンを風除けにすることもできなかった。ライスシャワーのスタミナは、もうそれほどない。

 

 ――――ライス、いけ

 

 ――――うん、お兄さま

 

 下り坂へ。

 栄光へ、そして罵声と失望の声へ。

 一歩踏み出した彼女の背を、声援が押した。

 

「ライスシャワーがんばれ!」

 

「頑張ってー!!」

 

「ブルボンに勝て!」

 

「俺たちは、お前が勝つところが見たいんだ!」

 

 圧倒的な、20万人からなるミホノブルボンへの応援。そんな中でも声を嗄らして応援する、数百人。

 

(ライス、勝つよ。がんばるよ)

 

 決意と共に、ライスシャワーは傾いた大地を滑り落ちるように降った。

 

 あれほど遠かった背が、近い。

 近くて、近くて。手が届きそうで。

 

(射程距離に……入った……!)

 

 登りより遥かにキツい下りを抜けて。

 

 彼女の領域の構築条件は、追う相手が自分の射程距離に、差し切り圏内に居ること。追いつくことでもなく、追い越すことでもなく、諦めずに追って追って追って、追い詰めること。

 

 ――――鐘の音が鳴る。

 ライスシャワーにとっては、祝福するような。ミホノブルボンにとって、夢を弔うような重い鐘の音。

 

 茨が教会の外壁を覆い、咲き乱れるは青い薔薇。不可能を意味していた小さな花弁。

 

 マルゼンスキー。シンボリルドルフとまともにやりあえる唯一のウマ娘。

 彼女の手ほどきを受けて完成しかかっていた領域は、ぶっつけ本番で開花した。

 

 逃げる相手に絡みつく蔦、茨。相手のスタミナを吸い取って咲き誇る薔薇。

 包まった絨毯がミホノブルボン目掛けて伸び、ヴァージン・ロードが敷かれる。

 

 速度の鈍った標的目掛けて、黒い刺客が懐剣を抜いた。

 

 ――――差し切る!

 

 息を吸い、新鮮な酸素で肺を満たしてライスシャワーは駆け出した。

 

 天から差すのは、祝福するような星の光。常闇の中に、たったひとつの星が不動のままに輝いている。

 

 迫る。迫る。5バ身、4バ身、2バ身。

 走るごとに、脚を前に出すごとに、息をするごとに、ライスシャワーという存在が削れていく。

 

 とっくにスタミナは尽きていた。執念が、根性が彼女の身体を動かしていた。

 

(ブルボンさんに、勝つんだ!)

 

 無音を駆ける。

 

 無音の世界に、違和感はない。残り電池の少ないパソコンが余分な機能を停止して作業を続行するようなものだろうと、ライスシャワーは思っていた。

 

 星明かりがある。ひたすら前に、ゴール地点に輝く、星明りが。

 ライスシャワーは、ふと腰元を見た。青い薔薇があるはずのそこには、赤い薔薇が咲いている。黒かったはずの自分の勝負服が、白くなっている。

 

 常識が裏返る音。色彩反転。

 

 この現象には、覚えがある。ホープフルステークスで知った。皐月賞で、日本ダービーで体験した。

 

 青い空を赤く染め、黒い教会を白く染め、気に入らないものを塗り直し、常識という色をひっくり返し、叩き壊して自分の望む世界を作る。

 

 これは、予兆だ。

 

 ――――なんの?

 

 ミホノブルボンの【領域】の。彼女が誰よりも速く探究し、常識を作り出す未知の空の。

 

 普通の人間は地球の常識を語る。重力と雲に紛れた空を飛ぼうとする。

 そんな中でミホノブルボンは、ひとりだけ宇宙を駆けていた。

 あの宇宙は、非常識の象徴だ。常識の通じないものの象徴だ。常識を無視するという決意だ。一度無視して戻らないという、覚悟の象徴だ。

 

 その無音の闇が、ライスシャワーを冷たく包んでいた。

 駆けていた青黒い絨毯、色彩が反転して赤く染まったそれがひび割れて崩れ、吸い込まれるように消えていく。

 

 ミホノブルボンの領域。発動条件に他人を一切必要としない、究極の自己完結と呼べる宇宙。

 

 ミホノブルボンは、進んでいく。彼女だけを照らす星に向けて。

 

 その星は夢であり、目的であり、目標であり、道標。

 船乗りにとっての北極星のように、彼女にとっての不動の象徴。揺らいだときにも自分を照らしてくれる。迷ったときに見れば、いつも答えをくれるヒーロー。

 

 無音の闇の中に、ただのその星だけが浮かんでいる。

 

 ライスシャワーは、無我夢中で脚を動かした。水の中で足掻く犬のように、必死に脚をバタつかせた。

 

 暗闇を抜けて、景色が戻る。

 3バ身の先に、ミホノブルボンはいた。もう後ろは見ない。見てくれない。すべての手札を出し尽くしたことを察したのか、真っ向から粉砕した手応えがあったのか。

 

(勝つ! 勝つ! 勝つんだ! ライスは――――)

 

 失速しながらも、ライスシャワーは駆けた。

 ミホノブルボンは、最後までペースを崩さなかった。

 

 《ミホノブルボン! ミホノブルボン! やはりミホノブルボンです! 真昼に星が見えそうな程に晴れ渡った、雲一つない空の下!》

 

 ゴール板を、白い影が横切る。スタートしてからゴールするまで、一度たりとも自分のペースを崩さなかったサイボーグ。

 

 ミホノブルボン。

 

《3分の壁を超えて! 記録の壁を超えて! 距離の壁を超えて! 常識の壁を超えて! ミホノブルボン! 我が国の歴史に燦然と輝く蹄跡を残す、クラシック三冠が達成されました!》

 

 少し息を吐いて、まるで負けたように俯いて、胸を張って前を見る。

 控えめに、今にも爆発しそうな嬉しさをこらえるように手を振って、ミホノブルボンはゆっくりと歩いて、止まった。

 

《勝ち時計2:59:27! 時計はレコード! なんと、またしてもレコード!》

 

 今見た走りに。

 夢の結実したその瞬間に。

 そして、感動を具体化したような数字に。

 

 伝説の成就と勝利の興奮に湧き上がる観客の中で息を大きく切らしながら、ライスシャワーはミホノブルボンに近寄った。

 

「ブルボンさん」

 

「ライス……」

 

 宇宙のような深みのある青色の瞳に、心配の色がさっと差して、消えた。

 ミホノブルボンは、敗者になったことはない。だが、勝者がかける不要な情けが敗者を深く傷つけることは知っていた。

 

「おめでとう、ブルボンさん」

 

 次は。

 次は、勝ちます。そう言いたかった。だがあまりにも、力の差があった。見せつけられた。

 

「ありがとうございます。ライス」

 

 一言だけ。本当に端的にそれだけ言って、ミホノブルボンはライスの脇を抜けた。

 

「次も勝ちます」

 

 次がいつかは、言わなかった。

 だがミホノブルボンの言葉には、いつもはない色があった。

 

 闘争心。ライバルに勝つという、対抗心。

 

「今度は……ライスが……」

 

 両手で、黒いスカートを掴む。

 紫色の混じった生地の中に編み込まれた茨の模様を摑むように握りしめながら、ライスシャワーは叫んだ。

 

「今度は勝ちます! ライスが、ライスが……勝ちます! ブルボンさんに!」

 

「いえ。負けません」

 

 振り返らずに、ミホノブルボンは言った。

 追ってくるなとは、言わなかった。相手にならないとも、言わなかった。

 

 そのことが嬉しくて、嬉しさを感じる自分が悔しくて、ライスシャワーは静かに泣いた。

 

 

 ――――三冠ウマ娘

 

 

 それは、夢想だった。ダービーを走る誰かを見て、決めた。ただそれだけの、幼子の夢。夢に至る道も計画もない、打算すらもない妄想。

 

 ――――やりました、お父さん

 

 どこかで見ていてくれるはずの父に、そう語りかける。

 だが、実感がない。勝った。声援を受けた。だが三冠ウマ娘になった自分は、なる前と何が変わったのか。

 変わったはずだ。だがそれが何か、わからない。

 

「ブルボン」

 

 そんな思考の堂々巡りをかき消す声が、ミホノブルボンの聴覚機能を刺激した。

 

「マスター」

 

 ありがとうございます。そして、質問があります。

 そう言おうとした瞬間に、ミホノブルボンの視点がくるりと回る。

 

 ひどく手慣れた手付きで膝の裏と背中に手を回して抱き上げられたのだと、ミホノブルボンはしばらくして知った。

 

「確かに俺は言った。3分で走れと。走れると」

 

「はい」

 

「しかし、3分を切れとは言っていない」

 

 控え室に連行されて脚を触られ、痛いか痛くないかの診察の後に氷水の中にぶち込まれ、ミホノブルボンはパチパチと眼を瞬かせた。

 

「……だが切り札も切らずに済み、脚にそれほど負担もない。なにせ1ハロン11秒台後半を守り続けただけだからな。加速して全力を出すよりも、8割の力で等速で走ることの方がずっと消耗は少なく済む」

 

 なんでそれがわかっているのに、こんなにも厳重な診察を受けたんだろうか。

 宇宙に思いを馳せるような顔で思い悩むブルボンの中に存在するAI、ブルツーがピコンと発言した。

 

「マスター」

 

「なんだ」

 

「心配してくださったのですか?」

 

「……悪いか」

 

 いえ。

 そう答えて、なんとなく脚をブラつかせる。連動して当然の権利のように尻尾が揺れる。

 控え室を氷水でビチャビチャにしながら、ミホノブルボンは呟いた。

 

「マスター。勝ちました」

 

「ああ。見てたからわかるよ」

 

「はい」

 

 ミホノブルボンには、実感がなかった。

 夢に見たあの頃、夢を叶えた自分は何か違ってくるだろうと思っていた。進化とまではいかないが、何かが変わるだろうと思っていた。

 

 だが、あの頃と何も違わない。夢が終わっても、まだ夢を見ている。

 

「マスター。私は夢を叶えたのでしょうか」

 

 表情こそ変わらないが、ミホノブルボンには漠然とした違和感があった。

 三冠ウマ娘。ずっと目指していた果てに今辿り着いて、手を掛けて、掴み取った。

 

 達成感はある。ただそれ以上の、飢餓感がある。

 

「降着はなかったからな。そういうことになる」

 

「私は、何かが変わると思っていました。三冠ウマ娘になって劇的に強くなると思っていたとか、そういうことを思っていたわけではありません。ですが漠然と、何かが変わるだろうと」

 

「君は変わらないことによって強さを示した。君のままで三冠ウマ娘になることによって、偉大さを示した。変わらず夢を持ち続けるために、変わらぬ夢を果たすために、努力した。その果てとして、大して変わらないままの今がある。そうじゃないのか」

 

 そうかもしれない。

 昨日の三冠ウマ娘でない自分と、今の三冠ウマ娘になった自分。明日の三冠ウマ娘として目覚める自分。

 

 たぶんどれも、大した差はない。ただその変わらなさを積み重ねてきたのだから、それでいいだろう、と。

 

「ブルボン。これは経験則になるが、その衝撃が大きければ大きいほどに、実感と体感はズレてやってくる」

 

「はい」

 

「君は今、体感した。三冠ウマ娘になったのだと。声援を受けて、着順を見て、レースに勝ったことを知っている。ただそれは、肉体が知っているだけだ。心にまで沁みいってはいない」

 

「ではいつ、心に沁み入るでしょうか」

 

「それは人による。俺は現実を見てから実感した。君も周りから祝福を受けたり、あるいは朝起きたら唐突に感じるかもしれない」

 

 睡眠。

 脳を切り替える。気持ちを切り替える。肉体を再起動する。

 様々な効能を持つそれを試してみようとするミホノブルボンの考えを読み取ったように、東条隼瀬は口を開いた。

 

「今君は、俺に夢を叶えた旨を伝えた。となると次に報告すべきは、誰かな」

 

「お父さんです」

 

「たぶんそのあたりで、実感できるだろうと思うよ」

 

 大盛況に終わったウイニングライブの後。

 心の底から信頼するマスターの車に揺られて、ミホノブルボンは眠気を我慢しながら学園に戻った。

 

 眠かった。だが、寝たくなかった。なんとなく、勝ったままの自分でお父さんに電話をしたかった。

 

 番号を押す。受話器を耳に当てる。

 しばらくして、懐かしい声がした。

 

『ブルボン』

 

「はい、お父さん」

 

 そう言って、言葉に詰まる。

 言いたいことは、考えていた。事前に準備してあった。なのに、口が動かない。言うことを聞かない。

 

『よくやったな、ブルボン。本当によくやった』

 

「……はい」

 

 絞り出すような声だった。いつも完璧にコントロールできているはずの声色が、調子が、制御下にない。

 

『がんばったな』

 

「はい」

 

 ぐちゃぐちゃに滲んだ声が、深夜の廊下にポツリと垂れた。

 

『トレーナーくんから電話があったよ。彼女の夢を最初に信じたのは貴方だから、貴方が最初に褒めてやってください、と。自分ではなく、貴方こそがふさわしいと』

 

「マスターが」

 

『いいひとに出会ったな。夢を信じて、導いてくれた。本当によかったよ、ブルボン』

 

「はい。とても、とても、いい方です。優しい方です。お父さんに、たくさん知って……聴いて、ほしいです」

 

『話してごらん』

 

 話して、相槌を打つ。

 話して、相槌を打つ。

 廊下をぽつりぽつりと濡らしながら、親子の会話は長く続いた。




 第一部完結。

 第一部完結記念になにか書きたいと思いましたが、特に思いつきませんでした。
 カイチョーの秋天とかカイチョー過去編とか選択肢はありましたが、カイチョー√やるならいりませんし、ターボ師匠のアナザーストーリーも今挟むかと言われればアレですし、ライスシャワーも書き尽くした感がありますし。

 さて、ここまで休まずに投稿できたのは私が頑張ったからというのもありますが、なぜ頑張れたかといえばやはり感想やら評価が毎回のように来たからだと思います。
 感想と評価は執筆の養分になりますし、やる気を起こさせてくれます。中には深い考察で唸らせてくれる人や、曖昧に書いた文から真意をサラッと読み取ってくれる人もいました。思いもよらない視点からネタをくれる人もいました。
 特に固定で感想くれる人が40人くらいいます。そのうち1人は1話からずっーーと欠かさず感想をくれています。そういう熱心な兄貴たちに支えられた結果の毎日投稿であり、第一部完結です。
 第一部完結した翌日に第二部(RTAパート)がはじまるわけですが、まあ何卒これからもよろしくお願いいたします。


123G兄貴、白河仁兄貴、ガンバスター兄貴、土蜘蛛兄貴、天須兄貴、五穀米兎兄貴、べー太兄貴、くろいぬこ兄貴、さけきゅー兄貴、上造兄貴、叶叶兄貴、光金目鯛兄貴、障子から見ているメアリー兄貴、レンタカー兄貴、サザンガルド兄貴、青タカ兄貴、ヴィーノ兄貴、長船兄貴、石倉景理兄貴、迫る影兄貴、夕莉兄貴、クロタワロタ兄貴、私は歩行者兄貴、必勝刃鬼兄貴、かぶと兄貴、無駄無駄無駄ァ!兄貴、kawasemi兄貴、空箱兄貴、リチウム兄貴、サガリギミー兄貴、I’mgoing兄貴、Deros兄貴、化猫屋敷兄貴、ESAS兄貴、光に目を灼かれたペニーワイズ兄貴、酔いどれ地蔵兄貴、終焉齎す王兄貴姉貴、名無しの通りすがり兄貴、がんも兄貴、ストライクノワール兄貴、ユーギ兄貴、Spinel兄貴、くさり卵兄貴、ラース兄貴、venomous兄貴、主犯兄貴、初見兄貴、仁和寺兄貴、KNR兄貴、noxlight兄貴、消波根固塊兄貴、ブブゼラ兄貴、mitt兄貴、八咫烏兄貴、サパタ兄貴、すまない兄貴、小名掘天牙兄貴、フェイスレス兄貴、アペイリア兄貴、路地裏佐々木兄貴、アナログ兄貴、星ノ瀬竜牙兄貴、パンダメント兄貴、fumo666兄貴、ハガネ黒鉄兄貴、ガトリング・ゴードン兄貴、雪ねずみ兄貴、すーぱーもも兄貴、なのてく兄貴、zenra兄貴、ライセン兄貴、吹風兄貴、KAIKI兄貴、ベルク兄貴、R.C兄貴、バナナバー兄貴、感想ありがとナス!

土蜘蛛兄貴、みーこれっと兄貴、ギフィ兄貴、瑠璃時雨兄貴、kotokoto13兄貴、arcana兄貴、咲夜兄貴、raglaner兄貴、AC9S兄貴、もこさん兄貴、アルフォード兄貴、日陰者の長兄貴、そら豆イキリ豆兄貴、笹太郎兄貴、アムネシア兄貴、さーくるぷりんと兄貴、fourgetter兄貴、桜うどん兄貴、カロナ兄貴、かぶと兄貴、すいへいりーべー兄貴、のいぢん兄貴、あめかさ兄貴、ittuki兄貴、路地裏佐々木兄貴、赤い羊兄貴、A.Vic.Ko兄貴、Una 39兄貴、mitt兄貴、ネツァーハ兄貴、ガトリング・ゴードン兄貴、コール兄貴、そき兄貴、xtora兄貴、rakutai兄貴、評価ありがとナス!

感想・評価いただければ幸いです。


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第二部 シニアロード
オペレーション:淀の坂を超えて


前回:迫真の日程調整

15:16分追記
更新までに今回の感想・評価者感謝リスト書ききれませんでした!! 今は全部かけました!! 申し訳ございません!!


 更新を催促され続けたRTA、はーじまーるよー。

 お前1ヶ月間更新がねぇんだよ! 早く出してくれ!という怒涛のコメントが付きましたので、頑張って編集をしていきます。

 

 えー……そう、菊花賞。菊花賞までやりました。はい。

 取り敢えずレースですね。レース開始してスキップを――――ファッ!? なんでハナ奪われとんねんポンコツ! スペックでは圧倒しているはずなのに!(ルル山)

 

 ……はい、勝ちました。(能力は基準値を大きく上回ってるんだから)当たり前だよなぁ!?

 

【菊花賞(GⅠ)に出走した】

【ミホノブルボンは1着だった】

【ライスシャワーは2着だった】

【ミホノブルボンは《切り開く者》を取得した!】

【ミホノブルボンは《コーナー加速》のコツを掴んだ】

 

 はい、メイン回復ソース無事ゲットです。一応ここでライスシャワーに負けてもその後の購買部(要は運ゲ)でリカバリできましたが、やはり勝つにこしたことはありませんからね。

 

 (コーナー加速は)ナオキです。まあ育成ウマ娘がGⅠでいい挙動をするとそれに合わせたコツがこうして手に入りますが、とってもとらなくてもいいです。凱旋門前にポイントが余ったら取るということで。

 

 さて、ウイニングライブを終えてターンが経過。夜イベ【褒める】を発動してもよかったですが、もう信頼度は高いっぽいのでスルー。褒めてほしいなら親父さんに頼みな!

 

 そして、次のターン。インタビューイベントが起こります。

 ここの選択肢によって世間の評判が変わりますが、これから起こすイベントで評判を気にする必要がなくなるので調整は放棄。ひとまずウマ娘側に立つような発言を繰り返し、学園側の人物の評価を上げていきましょう。

 

 最速を狙うならブルボンに会話コマンドのカーソルを合わせて発言を促し、【次も勝ちます】と言わせればイベント自体が終わります。しかしここでは最速は狙いません。

 

 いつもより長くね?と感じた方もおられるでしょうが、まあお待ちを。これでも一応やることがあるから無駄にインタビューを長引かせてるわけで。

 

『キョーエイボーガンが実力も弁えずにくだらないことをしたばかりに、負けかけた。あれがなければもっといいタイムが出せていました、残念と思われませんか?』

 

 よし、来た。お前みたいなバカが好きだったんだよ!(大胆な告白)

 ということで、ここはぶちキレておきます。穏やかに質問に答え、質問を誘っておいてキレる……普通だな!(感覚麻痺)

 

 ということで、キレました。俺のヘアァスタイルがサザエさんみてェだとォ!?って感じにキレました。

 ちなみに、ガチモンの放送事故です。このインタビューはゲーム内では生放送、LIVEですからね。

 

 私もこのときはニコ生で生放送していたわけで、テレビの中で見ているテレビの中でテレビを見る、みたいなマトリョーシカみたいになってますが。

 

 ということでこれで月刊ターフとの関係が険悪になり、世間での評判が2年間《Light》で固定されます。ウマ娘のためを思う熱い男、みたいに思われるわけですね。

 (まあ実際はそんなことを思って)ないです。ただ速く駆け抜ける! それだけが充足感よ……!

 ……え、夏祭り? それはほら、ブルボンがかわいそうだったし……(ダブスタ)

 

 とにかく。評判が《Dark》になると結構色々な妨害を受けかねない、そして現在なぜか《Dark》になりかけだったので、月刊ターフさんには役立っていただきました。ゴミはゴミとして役に立つ。適材適所とはこのことだな!

 

 それにしてもなぜほぼ《Dark》なんだ……ミホノブルボンを日々虐待じみた練習でしごいたり、突発的な思いつきでレースを走らせたり、金が欲しいがためにレースに出したり、自由時間をほとんど与えずに練習させまくったくらいしか心当たりがないぞ……?(充分)

 

 これで最大3ターン、1ヶ月分の謹慎になりますが、練習自体はできます。ミホノブルボンに指示を与えて適当にやらせておきましょう。

 愛嬌以外は性能の高いほもくんの練習バフがかからなくなりますが、まあ想定内です。

 

 えーっと、謹慎ターンは……1ターン!? うせやろ? メディアと喧嘩したんやで!?

 

 圧力をかけて消させたな。あの闇の権力者が……『闇』は俺たちの想像より遥かに深いってことだ……

 

 知っているのか秋山!?

 というライアーゲームごっこはここまでにしておいて、やはりほもくんはたぶん名家なんでしょうね。これが権力。僕の求めていた力。

 

 あ、会長!

 カイチョーが何言ってるかは読んでないけどたぶん会長がなんとかしてくれたのかな? ありがとナス!

 

 ということで、ブルボンは休ませますか。体力スッカラカンですし、2回休ませて1回坂路やらせまひょ。

 

 という操作を考えつつカイチョーのお話を○連打し終えたらイベントが来ました。

 

 あ、脹相(デジャヴ)!

 へー、謹慎中の練習見てくれるのね。そして坂路練習を一緒にさせてくれと。

 

 …………ま、いいか。相互親愛ウマ娘同士の練習は効率が上がるし、ブルボンは春天出ないし。

 言っていませんでしたが、ライバル補正がかかったライスシャワーとの激突は菊花賞が最後です。厳密に言えばURAファイナルズ決勝であたることがありますが、別に決勝までいけば負けてもいいので。

 

 ミホノブルボンの育成目標に春天があるだルォォ?と言うことについては、後で話します。

 

 ちなみに親愛ウマ娘同士で練習すると能力アップに1.2倍の補正がかかります。一番親愛が多いのはスペちゃん、次がテイオーだったかな?

 ブルボンはライスシャワー、サクラバクシンオー、ニシノフラワーとかそのあたりのみ。

 

 能力的にはシンボリルドルフの完全下位互換なテイオーチャートがなぜ存在するかといえば、この相互親愛の多さです。しかも長距離適性を補えるマックイーンやら、差しテイオーには必須のウオッカやら、足りなくなりがちな(クッソ失礼)賢さに補正かけてくれるダスカやらクッソ有能なメンツ。

 え? カイチョーと相互親愛? 相互親愛は、うん。ほら、エアグルーヴとかブライアンとか。いっぱいいるじゃん。うん。

 

 ということで我が愛バを、兄を名乗る不審者に任せます。頼むで脹相。

 

 そして謹慎ターン中は特にやることはありません。ほもくんを操作する必要もないので、適当に遊ばせたり休ませたりしておきましょう。

 

 それでは遊ばせ――――ました。都合よく三冠直後に遊ばせると三冠おめでとうイベントが出るのでね。トレーナーの体力はMAX。なぜか調子が下がってるけどヨシ!

 ということで早速ミホノブルボンが不審者の手によってどう育ったか見に行きます。

 

 ……うん、まあまあ想定内。ただし調子がすこぶる良い、と。

 実はこれ結構想定外なんですけど、結果的にキレておいて良かったですね。二重三重にいいことがありました。

 

 そして、ここでこれからのことを説明しようと思います。

 まず現在クラシック級なわけですが、ここからジャパンカップ→有馬記念と出走します。ジャパンカップは凱旋門賞に出るのに必須だから、有馬記念は単純にお金が欲しいからです(人間のクズ)。

 

 実際、ステータスの伸びは想定より遥かに順調です。だからレースに出走しても……バレへんか……ということでオリチャーを組み込んだわけですね。

 

 ということで、購買部を覗きます。

 怒りの255倍速で飛ばしていましたが、私はそれなりの頻度でここを覗いていました。サボっていたわけではない(戒め)

 

【購買部には5冊の本が並んでいる……どれを買おうか?】

【☆影すら踏ませぬ逃亡者】

【包囲網を抜けて】

【一人焼き肉の極意】

【孤高の狼】

【必見逃走術】

 

 ……運やばくね?

 いやこれ、すごいでしょ。取り敢えず【☆影すら踏ませぬ逃亡者】は確保――――って、あれ?

 

【所持数オーバーです】

【所持数オーバーです】

【所持数オーバーです】

【所持数オーバーです】

【所持数オーバーです】

【所持数オーバーです】

 

 ちなみにここ、コメントで「うるさい」「やかましい」「連打やめろ」「現実を見ろ」「お前バグ起こしすぎじゃね?」「まーたデバッグしたのか……」「ロバロバ確認しろ」「サイレンスガバ」とか言われてました。動揺したんだから仕方ない(開き直り)

 

 ということで【孤高の狼】と【必見逃走術】を購入。【一人焼き肉の極意】は……《おひとり様》というスキルなんですけど、どうしますかね。

 

 《おひとり様》の効果は自分と同じ作戦のウマ娘がいないと能力を少し発揮しやすい、というもの。

 

 これ、他の逃げウマ娘でやってるときジュニア〜クラシック級に来たら確実に買うんですよ。逃げウマ娘があまり居ないので。

 ただ、ブルボンの場合最大の鬼門になる菊花賞にキョーエイボーガンがいる、シニア級に進んだら出走レースにはほとんどダイタクヘリオスとメジロパーマーのどっちか、もしくはどちらもいるので、絶望的に噛み合いがよろしくありません。

 ただ凱旋門賞に出ると役に立つ可能性もあるんですよね……たぶん凱旋門ではカイチョーとぶつかるはずなので。

 

 ……決めた。買いません。温存しておきます。金も無限じゃないのでね。

 

 ということで購買部にある横穴から出て、一応持ち物欄を確認。

 うん。ないね。だって最初確認したもん。ランダム生成初期アイテムがないって。だからたいてい初期アイテムとして入ってるスカウト教本を買ったんだもん。

 

 …………待てよ。

 ちょっと部室に入って、パソコン起動。ロバロバ――――ではなく保管庫を呼び出します。

 

 すると、はい。ありました。【☆影すら踏ませぬ逃亡者】。金スキル【逃亡者】を覚えられるやーつです。

 

 初期アイテムはカバンの中、パソコンの保管庫、ロッカーのいずれかに付与されるということを忘れてましたね。ゴメンゴ・メンゴ・アルメンゴ。ほんのジョーダンよ。

 

 と言うか、だからサイレンススズカさんがいなかったんですね。アニメのヒシアマ姐さんが看板に封印されてたよろしく、金スキル本にディオガ・ゴルゴジオされちゃったわけか……

 という冗談はおいておいて。このほも、サイレンススズカさんと何らかの関係はあると思われますが、まあ当たるとしたらURA決勝とか。

 

 別に負けてもいいから記憶から消しときますね。ここからのレースは凱旋門に勝ちさえすればいいので、途中で負けようが勝った後に負けようが(どうでも)いいです。

 

 ということで、ジャパンカップに予約を入れて練習。新たなライバル・トウカイテイオーとの戦いに挑むべく走りはじめます。

 このライバル設定ですが、信頼度を上げすぎない限りはデフォルトで設定されます。ミホノブルボンの場合はライスシャワー→トウカイテイオー→マルゼンスキーが正規ルートです。

 

 ライスシャワーとのライバル期間はメイクデビューから菊花賞、ルート次第では春の天皇賞まで。

 トウカイテイオーとのライバル期間はこれまたルート次第では菊花賞後から3年目のジャパンカップまで、ということになっています。

 

 このチャートでは海外ルートを選択して凱旋門に行くので3年目のジャパンカップには出られません。

 ということでトウカイテイオーとのライバル期間は3年目の6月、宝塚までということになるとチャートに書いてあります。

 

 まあトウカイテイオーには勝てるであろうと(皇帝トレーナー並感)。

 そんな確信を抱きつつ、今回はここまで。ご視聴、ありがとうございました。




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サイドストーリー:怒髪衝天

 彼が冷たく燃える人間であることを、ミホノブルボンは知っていた。

 

 現実主義者に見える、理想主義者。思考は現実的だが、視座は常に理想と同じ高さに据えられている。

 

 トレーニングは厳しい。そう聴けば、大抵の人間は怒声が付きまとっているような印象を抱くだろう。

 だが、そんなことはない。あくまで彼はできることしかさせないし、怒ったところは見たことがなかった。

 

 ――――この日の、7時57分までは。

 

「お前、吐いた言葉は呑めんぞ」

 

 自分が怒られているわけではない。わかっていても、彼が常に身に纏う冷気が一斉に形をなし、攻撃態勢に入ったことがわかった。

 

 ぺたん、と耳が畳まれる。

 ここは生放送中、記者会見の場。シンボリルドルフ以来となる無敗の三冠ウマ娘の誕生を祝福し、これからの目的を聴く場。

 

 だから当初は、和やかに進んでいた。

 

 ――――どうやって距離の壁を克服したのか。

 ――――どうしてできると考えたのか。

 ――――これからの目標は。

 

 そう言った細々な質問に――――多少前までの質問と重複するような質問にも根気強く、参謀は答えていた。

 

 ミホノブルボンは、水を向けられたときだけ端的に答えるだけ。

 そういった応答が得意ではないからこそ、ミホノブルボンは参謀が事前に用意した『答教』という応答集を暗記し、暗記したそれらを組み合わせたり分離させたりすることで答えることに徹していたのである。

 

 場の空気が変わったのは、ある記者の質問からだった。

 

「キョーエイボーガンの走りについてはいかがですか?」

 

「彼女の走りは明らかに勝ちを意識したものでした。状況的にも実力的にも、最善手であったと思います」

 

 ある程度予想していたのか、これに対して参謀は滑らかに答えた。言い方にやや棘があるものの、それの口調からは理解と敬意が見えていたし、特に何が起こる質問でもなかった。

 

 この時点では。

 

「他になにか思うところはありませんか?」

 

「ありません」

 

「例えば、キョーエイボーガンは勝ちを目指していなかったのではないか、という言説もありますが」

 

「勝ちを目指さないウマ娘などいませんよ」

 

 この時点で、生徒会室のテレビで熱心に――――子供の巣立ちを見るようなにこやかさで――――見ていたルドルフは何かを察して生徒会室の扉を蹴破るように開け、廊下を全力で駆け出した。

 

 ――――ああ、これはまずいかもしれない

 

 そういう世話焼きお父さんのような気質が、彼女にはある。

 

「ですが、彼女の走りはどう考えても最後まで保つものではありませんでした」

 

「無理かもしれない。ただ、最後まで保たせなければ勝てない。その認識は正しいものですよ」

 

「キョーエイボーガンが実力も弁えずにくだらないことをしたばかりに、負けかけた。あれがなければもっといいタイムが出せていました、残念と思われませんか?」

 

 ミホノブルボンは、ピキッときたのを感じた。

 共に走った自分こそが、キョーエイボーガンの必死さを知っている。

 彼女の破滅への逃走は、捨鉢の決断ではない。勝つという目標に向けての、やむを得ざる覚悟からなる決断だった。

 

 ――――彼女は本気で勝つ気でしたよ

 

 マスターと一緒に編纂した一問一答集――――『答教』に反した答えを言おうとしたミホノブルボンの反射神経より早く、机が両手で叩かれた。

 

「お前、吐いた言葉は呑めんぞ」

 

 パイプ椅子が後ろに倒れ、けたたましい音が鳴る。

 普段はウマ娘という種族の特性――――耳と鼻が普通の人間より利く、という――――を慮って大きな音を立てないように振る舞ってきた彼がこんなことをやらかすことこそが、事の異常事態を何よりも雄弁に表していた。

 

「敗者を貶す権利は勝者にすらない。夢に向かって努力し、GⅠという舞台に上がったウマ娘を、支援してきたトレーナーをくだらないと断じる権利は、お前にはない」

 

 くだらないミスをして、負けた。

 そのことを、ミスをしたことを笑うのは、まだわかる。それは無神経ながら、人の本能だ。

 

 だがそれでも、そのミスがあったからどうせ勝つ気がなかったのだとか、努力が足りなかったのだとか、ガヤガヤと言い募るのは許せない。

 周りの人間が言うのはいい。そのミスした人間の過程をつぶさに見てきた人間が言うのは、正当な権利だ。

 

 だが過程も見ずに結果だけで論じ、断ずる。これほど悪しきこともない。

 

 助けを求めるように周りを見回す質問を投げた月刊ターフの記者。

 やりやがったこいつ……と目を逸らすテレビ関係者、仲間の記者。なぜか乙名史という馴染みの記者だけが、顔を輝かせて東条隼瀬を見つめていた。

 

「弁えずに、と言ったな。ではキョーエイボーガンは、負けることがわかっていた上でブルボンのために弁えるべきだとでも言いたいのか」

 

「そうでは……」

 

「お前はまず、キョーエイボーガンを侮辱した。彼女の真摯さと、夢への熱意を侮辱した。そして勝者のブルボンをも侮辱した。彼女の得た栄冠は、他でもない彼女の力で勝ち得たものだ。誰かの忖度や、遠慮で勝ち得たものではない。負けたウマ娘たちも、ブルボンを勝たせるために走ったわけでもなければ、負けるために走ったわけでもない」

 

 全員が、勝つために走った。

 99%破滅するとわかっていても、1%にかけたキョーエイボーガンも。

 ブルボンの脚を鈍らせることで駆け引き勝負に持ち込もうとして、最後の最後の力押しに負けたライスシャワーも。

 最後まで自分を曲げず、ミホノブルボンを最終直線で差し切ることに殉じた結果大差の3着になったマチカネタンホイザも。

 仕掛け、敗れていったウマ娘たちも。

 

 ミホノブルボンの三冠のために控えていたわけではない。忖度したわけでもない。

 彼女らはただ、過去の自分のために走っていた。今の自分のために走っていた。未来の自分のために走っていた。

 

 キョーエイボーガンは弁えなかったと、この記者は言った。ならば、他のウマ娘は弁えていたとでもいいたいのか。ミホノブルボンは弁えていたウマ娘の中で走り、なんの苦もなく三冠目をとったと言いたいのか。

 

「ミホノブルボンはお前ごときの下賤な気遣いを必要とするような強さではない」

 

 割と驚異的な運動神経を披露して机を一足飛びに飛び越え、東条隼瀬は立ち尽くす記者の前に立った。

 

 ――――どけ! 俺はお兄さまだぞ!

 

 なんか聞き覚えのある声がして、ミホノブルボンは左の耳をぴょこんと立てた。

 続いて響く足音にも、聞き覚えがある。

 

「わかったら、今すぐ出ていけ。自分の足で出ていくのが嫌なら、俺が出て行かせてやろうか」

 

 頭1つ分は大きい男に――――しかも殺意に近い眼差しに見下され、記者の動きが止まる。

 宣誓した言葉が実行に移されるその前に、深緑の閃光が記者と隼瀬との間に割り込み、黒いなにかが後ろから突っ込んできた。

 

「……間に合ったな」

 

「待て! 待て隼瀬! 冷静になれ!」

 

 ふぅ、と息を吐くシンボリルドルフと、後ろから警備員に羽交い締めにされながら、参謀を後ろから羽交い締めにする男。

 まごうことなき皇帝とまごうことなき不審者の乱入に、記者陣がざわついた。

 

「……何故止める、お前らが!」

 

 ちらりと視線を交わした両者は、素早く意思疎通を計る。

 その末に口を開いたのは、将軍だった。

 

「お前の気持ちはわかる。敗けた俺のほうが、あいつの言う言葉の意味はわかる。だがお前、これからどうするんだ。ここで記者をぶん投げて、お前が謹慎になったあとのブルボンはどうするんだ」

 

「確かにそうだ。だが、あいつはウマ娘が尋常でない努力を積んで、必死に目指そうとしている心を! ……侮辱したんだぞ」

 

 心を!で怒りのボルテージが上がり、侮辱したんだぞで下がる。

 努めて理性的であろうとする男の自制心の乱高下を感じながら、【将軍】はジリジリと後ろに下がって問題の記者との距離を離した。

 

「俺はお前に負けた! ブルボンにライスは負けた! その敗北を、全身全霊での負けを! 正統な勝者を! ライスと並ぶ堂々たる敗者を! こいつは侮辱した! 俺のほうがキレてる!」

 

 記者の言うことは、ライスシャワーにも当てはまる。必死に走っての負けが、空気を読んだ負けに貶められている。

 

「そんな俺が止めているんだ。こんなくだらないやつの為に、外にぶん投げたら謹慎何ヶ月かを喰らうかもしれないお前を止めているんだ。そこを、察してくれ」

 

 確かにそうだと、東条隼瀬は冷静さを取り戻した頭で考えた。

 勝者を持ち上げるために、敗者を侮辱する。そうしようとしたのがこの記者で、自分はまず負けたウマ娘たちへの言いようでキレた。そして、ブルボンの栄冠に薄汚い手で触ろうとしたことにキレた。

 

 前者は義憤で、後者は私憤。義憤より私憤のほうが、遥かに感情の目方は重い。

 その私憤を抑えて、この男は止めに来たのだ。

 

「………………俺が悪かった」

 

「よし。離すぞ」

 

「ああ」

 

 くるりと身を翻して戻る間に警備員に連行されていく将軍と入れ替わるように、皇帝が来た。

 

「みっともない姿を見せたな」

 

「いや」

 

 短い返事。事が収まったことを感じたのか、シンボリルドルフは記者をジロリと見てからその場を駆けつつ去っていく。

 

 ――――何かするつもりか

 

 沈黙が支配する会場の中で、倒れたパイプ椅子が再び立ち上がる音だけが響いた。

 

「ブルボン。晴れの舞台をこんなにして悪かった」

 

「気になさらないでください、マスター」

 

 あそこで笑って済ませるのが大人だと、ミホノブルボンにはわかっている。そっちのほうが賢いと、ミホノブルボンは知っている。

 

「私は、『嬉しい』と感じました。マスターが私の走りを真に見て、感じて、私とライバルたちとの戦いを見てくださっていた。でなければ、ああいう反応はできないと思いますから」

 

 正直な、だからこそ一部の人間にはキツい物言いをして、ミホノブルボンは続けた。

 

「あそこで怒ってくれるマスターで、『良かった』です」

 

 尻尾がふわふわと、きつく握りしめられた男の拳を撫でる。

 

 自らの短慮と、それを発端とした余波――――主に親しい人にかける迷惑――――を苦慮しているのだろう男は、しかし後悔自体はしていなかった。

 言うべきことは言った。ただ、親しいひとに迷惑をかけるのが心苦しい。

 

 その親しいひとの最たる存在が、よくやったと撫でるように尻尾を動かしているのを感じて、東条隼瀬は少しだけ心が軽くなった。

 

「……そうか」

 

「はい」

 

 その後は件の記者が退室を命じられ、少し気まずい空気が流れながらも質疑応答が続いた。

 

 ――――このあと、出たいレースはありますか?

 ――――ジャパンカップです。有馬記念にも興味があります

 

 このように主に質問者は月刊トゥインクルの乙名史記者であり、回答者はブルボンだったが、それなりに続いてお開きになった。

 

 そして、謝罪行脚――――テレビ関係者や他の記者、なによりもブルボンの父への――――をし終えた翌日の朝。

 東条隼瀬は呼び出しを受けて理事長室へと向かった。

 

「処罰!! 謹慎1週間! 罰金!」

 

「罰金と1週間。それだけですか」

 

 ちびっこ敏腕理事長の秋川やよいに告げられた判決は、思ったよりも遥かに軽いものだった。

 前似たようなことをやったときは、将軍共々それなりの期間の謹慎だったというのに。

 

「うむ! 一応、体面というものがあるからな!」

 

 URAは、新しいスターの誕生に水を差されたくない。

 トレセン学園としては、あの怒りは正当な物だと唱えている。

 メディア関係としても、もはやとやかく言う気も失せている。なによりも傘下の企業やメディア共々徹底抗戦の態勢に入った四方名家の一角とやり合いたくはない。

 ただでさえ、丸外騒動の際に一戦ふっかけてものの見事に敗けているのだ。

 

 全部月刊ターフが悪い。実際そうだし、そういう風にしよう。

 そういうことで、そういうことになった。

 

「URAからも、この件に関しては何も言ってきません。ただし……その、なんと言いますか」

 

「ジャパンカップ、有馬。どちらか、あるいはどちらも、ですか?」

 

「的中! ジャパンカップに出てほしい、という対案……お願いが来ている!」

 

「別にそれは構いません。ブルボンも興味があるようでしたし」

 

 ただ、解せないところがある。

 なぜ、ジャパンカップに出させたいのか、である。

 

 もし1つだけという縛りで対案を出すなら、参謀であれば有馬記念に出てくれと言う。

 有馬記念は国内最大のレース。当然、この年もっとも注目を集めるウマ娘の出走があれば否が応でも盛り上がるだろう。

 

 それなのに何故、ジャパンカップなのか。

 

「国際GⅠになるんですよ。それも、今年から」

 

 理事長に促され、秘書の駿川たづなが代わりに答えた。

 

 スペシャルウィークが世界的なスターウマ娘、欧州最強クラスのブロワイエをジャパンカップで負かしてから3年。

 やっと格式が認められ、国際GⅠ――――日本だけでなく、世界が認める権威ある競走へと変わった。それはわかる。

 

「それはわかります。国際GⅠとなってから初の競走は国内勢に勝って欲しいということでしょう。ですが、トウカイテイオーがいます。なんならルドルフもいる。マックイーンは骨折していますが、充分な陣容で臨めるはずです」

 

「トウカイテイオーは最近浮き沈みの激しい、安定感に欠けるレース展開を繰り広げています」

 

 春天で無敗の夢が破れた。

 まあそれは長距離適性に問題があったから、トウカイテイオーの射程が2400メートルくらいまでだったからとか、そういうことで説明はつく。

 だが怪我明けの秋の天皇賞2000メートルでも、全くいいところがなかった。シンボリルドルフに続く2番人気に推されたものの、ダイタクヘリオスとメジロパーマーの超高速ペースに巻き込まれる。

 そして後ろにピッタリ付いたシンボリルドルフの圧に負けて早めに仕掛けて7着惨敗。

 

 シンボリルドルフが最後までレース展開を読み切って、テイオーと逃げコンビが下がってきたところで3人まとめてぶち抜いて圧勝したのとは、対照的な負け方をしてしまった。

 

 逃げコンビはその数週間後に行われた菊花賞のキョーエイボーガンのように逆噴射して沈んで惨敗。

 収穫と言えば11番人気のウマ娘が生涯最高クラスの走りを見せたことだが、結局皇帝の神威を前に普通に振り切られて負けた。

 

 そんなこともあって、必勝体制を敷きたいジャパンカップに出走してくる日本のウマ娘たちの中には、安定感のある娘がいない。

 

 外国からくるメンツが相当豪華なだけに、不安だと言うのがURAの本音なのだろう。

 

「相手が悪かっただけで、トウカイテイオーならなんとかするでしょう。というか、あいつ。あの安定感の化身は、ルドルフはどうしたのですか?」

 

「貴方が『皇帝の走ってるところ見たーい!』と言えば出るとは思いますが、現状出走登録されていません。つまり、出ないものと思われます」

 

 ――――俺が駄々をこねたぐらいじゃあいつは動かんよ。

 

 余程そう言ってやりたかったが、理事長とたづなさんは今回のことでもっとも迷惑をかけた相手である。茶化す気にはならない。

 

「話し合いをして、体調を見てから決めます。怪我する可能性が高いと思ったら出走させることはできません。それを先方に伝えてください」

 

「URAも無理はさせたくはないと思いますから、構わないと思いますよ」

 

 ――――それはそれとして、罰金は払ってくださいね。

 

 ――――はい。

 

 天引きお願いしますという言葉と共に頭を下げ、迷惑をかけたことを謝罪して、参謀は取り戻した冷静さと共に理事長室を後にした。




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サイドストーリー:ルドルフとクリスエス

メッセージでアンケートの取り方についてご指摘をいただきました。肯定的な意見と否定的な意見(みたい/みたくない)の二択でアンケートをとるのはあまり効果がない、ということです。
これを受けて詳しく書き直しましたので、申し訳ないのですがまたアンケートに協力していただければ幸いです。


 暇。

 小人閑居して不善をなす、という言葉の意味を真に理解できそうなほどの、暇さ。

 

 優雅にコーヒー豆を削りながら、トーストをオーブンに2枚敷く。

 謹慎中だからと言っても、やることは変わらない。いや、増えないと言ったほうが正しいだろう。

 

 元々あまり身体が強くないだけに、自分がいつ倒れても問題なく練習をこなせるようにという想定のもと、負荷なく実力を維持できるだけの練習メニューは組んである。

 だからこうして、半ば趣味のような複雑な手順を踏んでコーヒーを淹れているわけである。

 

 謹慎。そう言えば聴こえは悪いが、実際のところは働き詰めの人間がお休みをもらったようなものである。

 ミホノブルボンの練習こそ見れなくなるが、元々疲弊し切った彼女の身体には休息が必要だった。

 

 その期間はちょうど1週間程。

 元々練習の虫である彼女にはある程度身体を動かしつつ休めと言うよりも、『俺が指導できない間はそこそこの練習だけして休んでいろ』という方がより説得力があるかもしれない。

 

(と、考えてはみたものの……やはり後先考えていない行動だったと自戒すべきだろうな)

 

 あのとき、あそこで怒る。その選択に後悔はない。

 

 必死に、ひたむきに夢を追ってきたウマ娘が、夢を叶えるためには――――自分の実力ではたった1%にかけなければならないと自覚する。

 その苦しさを、無念さを、決断の尊さを。あの記者は軽い言葉で侮辱した。

 

 ――――時代遅れのスパルタ

 ――――従順さにかこつけて好きにやっている三流

 

 別にそう言われても腹は立たない。

 スパルタと言えばそうだし、データ全盛期の現在、スパルタ式は古い。それは事実だ。

 従順さにかこつけて好きにやっているのも事実。

 有望なウマ娘を預かっておきながら怪我をさせ、その原因を特定できないようなトレーナーはまさに三流だ。

 

 どれも、ある意味では事実であるのだ。だから別に何も思わなかった。その通りだと受け入れた。

 だがキョーエイボーガンに対するあの言葉は、一言半句の真実もなかった。

 

 ――――ミホノブルボンのことを考えるなら、言うべきではなかった。それはわかる。

 

 謹慎期間は下手をすれば月単位になっていただろうし、そうなればミホノブルボンがジャパンカップや有馬記念に出たいと言っても叶わない。彼女の能力の伸びも悪くなる。それは、事実だ。

 

 だが、言わずにはいられなかった。これも事実なのだ。

 

(何が正解だったのか……)

 

 また答えのない問いに埋没しつつある彼の耳朶を、軽いノック音が揺らした。

 

「やあ」

 

 朝食の用意をしていたら、ドアの前に皇帝がいた。

 やあ、と。文字にするとおよそ威厳が感じられない言葉から、なんとなく静電気じみたものを感じる。

 

 ――――あぁこいつ、機嫌悪いな

 

 そんな感覚が、皮膚感でわかるとでも言うのか。瞳の裏に、隠し切れない激情があった。

 ただ、シンボリルドルフはそんじょそこらの感情で動く愚物ではない。怒りを向けるべき相手と、向けない相手を明確に区別できる鋼鉄の理性を持っている。

 

「どうした、いきなり」

 

「……ん、まあ。沈んでいるかもしれないと。そう思っただけさ」

 

「そうか。まあ、入れよ」

 

 取り敢えず思考中も休まず手を動かしていたがために挽き過ぎたコーヒー豆を消費すべく、大きめのマグカップに熱めのコーヒーを注ぎ、差し出す。

 ウマ娘は、たいてい健啖家である。あのちっこいライスシャワーですら将軍の3倍、参謀の5倍は食べていた。

 

「邪魔だったかな」

 

「いや、誰かが来ないものかと思っていた」

 

 コーヒーを挽き過ぎたから。

 こんな量のコーヒーは、ひとりでは処理できない。頼みのミホノブルボンはコーヒーを飲まない。

 トレセン学園のコーヒー党人口は、割と少ないのだ。

 

「色々考えてみると、来てくれたのがお前で良かったというべきなんだろうな」

 

「……そうか。そうかそうか」

 

 18秒前まで不機嫌に耳を逆立てていたのに、今はぴょこんと元気に椅子に座る。

 

 ――――案外単純なのか

 

 参謀としては、そう思わないでもなかった。

 

「懐かしいな。君の珈琲を飲むのは……凱旋門前の朝食以来か。あのあとは色々あったからな」

 

 挙措から察せられる品の良さ、育ちの良さ。

 香り立つような高貴さを無意識に放ちながら、シンボリルドルフはコーヒーを一気にぐいっと飲んだ。

 

「もう一杯いただけるかな」

 

「好きに飲め」

 

「悪いね、参謀くん」

 

 マックイーン並みにゴクゴクですわ!をしているシンボリルドルフは、なんというか普段の威厳が剥がれかけていた。

 友達の家に行って濃いめのカルピスを飲めて喜んでる感覚。なんとなく、そういう既視感がある。

 

「……お前、何しに来たんだ?」

 

 コーヒーは7杯目に突入し、ついでに焼いたトーストを4枚たいらげる。

 いちごジャムの甘さ、バターのなめらかさ、コーヒーの苦味。

 

 それらをシンボリルドルフは24分間、好き勝手に堪能していた。

 

「……………そう。忠告がひとつ。あとは、君を励ましに来たんだ」

 

「口元。いちごジャムが付いているぞ」

 

 そう言われてナプキンでゴシゴシやっているが、無論いちごジャムなど付いていない。勝手に人の部屋に来て勝手に(トーストもコーヒーも)食っている同志を、ちょっとからかってやりたかっただけである。

 

 そして、何故シンボリルドルフは24分58秒もの間、何も話さずに食べたり飲んだりしていたのか。

 

 それはズバリ、件のことが起きた原因からの現実逃避だった。

 

 そもそも、月刊ターフとルドルフ陣営は、元々仲がよろしくなかったのだ。

 

 まず第一に、オグリキャップのクラシック路線出走問題でやりあってボコボコに負けた。

 身勝手だ、とか。伝統だ、とか。

 そういうことを叫ぶターフに対抗するように、ルドルフは自称三流の記者に月刊トゥインクルという雑誌を作らせ、世論をうまいこと誘導して『追加料金を払えばクラシック登録ができる』ということにした。

 そしてついでに、オグリキャップの追加登録料金を肩代わりした。

 

 第二に、エルコンドルパサーとグラスワンダーに端を発する丸外改定戦争で負けた。

 ここでは翼を手にした皇帝に皇帝たる所以を見せつけられて完膚なきまでに叩きのめされた。

 

 最後。非公式ながら第三戦。

 皇帝の羽翼であったトレーナーが才能ある従順なウマ娘に対して地位と血筋を利用した虐待――――地位と血筋を利用して造った坂路を使っているわけだから、割と正当な評価――――をし、明らかな無理――――スプリンターにクラシック路線はどう考えても無理である――――をさせているところを見て目敏く動いた。

 

 記事でしきりにミホノブルボンは短距離戦に専念したほうがいい、と主張した。ありとあらゆる証拠を上げた。ミホノブルボンは寒門故に後ろ盾がないから、誰かが救うべきだとも書いた。

 それを本人がまっったく気にしていなかったとしても、月刊ターフ陣営は全力で事に臨んだ。

 そして、皇帝の歯牙にもかけられずに敗けた。

 実際、歯牙にもかけなかったというわけではなかった。ルドルフは内心苛立っていたし、かつて羽翼となってくれていた参謀に『なんかあることないこと言われてるから、なんとかしてくれ』と言われれば動ける態勢を整えていた。

 だが、やられている本人が気にしていないので動けなかっただけなのである。これで3連敗。

 

 東条隼瀬になんかすればシンボリルドルフがぬっと――――スタンドかなんかのように――――出てくることを知っている。

 どうやらあいつらは共通の目的を持っているらしい。

 

 となると、もう動きようがない。

 そして、歯牙にすらかけられず負けたことが彼らのプライドをえらく傷つけた。

 

 今回の記者の粗相は、そんなどうしようもない敗北感、何もできない無力感、おもねるしかないところにまで追い詰められた社内に澱む苛立ちの空気を吸ったが故に起こった事故。

 と言うか、必然的な事故だ。

 

「今回のことは、なんというか――――」

 

「別にお前のせいではない。他人が感じた怒りまでも、自分のせいにするな」

 

 耳をぺたんとさせてへの字口になったルドルフをちらりと見て、東条隼瀬はため息をついた。

 

「お前、全てのウマ娘が幸せな世界を、といったろ」

 

「うん」

 

「俺はそれができると本気で思っていた。だからその一歩として、目の前にいるウマ娘の夢を叶えられるように、と。ささやかながら力を貸してきたわけだ」

 

 ルドルフには、何事かを発言するに足る実績が必要だった。だから、シンザンを超える数の栄冠を捧げた。

 それが、果てしない理想への第一歩。そう考えていた。

 

「俺は真の意味でクラシック路線を戦うのは今年が初めてだった」

 

 ルドルフの菊花賞はクラシック路線と言えばそうだったが、初めての環境に適応することに必死で、余計なことを考える暇もなかった。

 サイレンススズカの担当っぽいものになったのは、彼女がシニア級になってからのことである。

 

 だから東条隼瀬にとって、共にクラシックロードを駆けるのはミホノブルボンが初めてだった。

 

「だから今年、今更ながら知った。クラシック路線の重さというものを」

 

 ウマ娘はたった1年だけしか、クラシック路線への挑戦はできない。

 デビュー契約を交わして、2年目。1年目で勝てなくとも、怪我をしても、たった一度、1年しかない。後戻りができない。

 

「俺はブルボンの夢を叶えた。だが、多くの夢を壊した。これは確かに、ミホノブルボンのトレーナーとしては正しい。しかし、理想とはかけ離れていると、俺は考えたわけだ」

 

「……そうだな」

 

「皐月賞を取りたい。ダービーウマ娘になりたい。菊花賞を勝ちたい。彼女らの夢をすべて叶えるのは、簡単だ。全員が足並みをそろえて同着すればいい。だが誰ひとり、そんなことを望んではいない」

 

 ――――勝ちたい

 

 それが、ウマ娘の本能。どんなに気弱そうに見えても、理性で縛り付けていても、人間を遥かに凌駕する闘争心が彼女らには備わっている。

 

「俺は君の言う幸福とは即ち、夢を叶えることだと思っていた。だが夢を1つ叶えるたびに、いくつかの夢が散っていく。同時にそのことを、なんとなく察してもいた」

 

 シンボリルドルフは、実感としてその事を知っていた。

 彼女はより直接的に、自分の夢のために他人の夢を散らしてきた。

 

 彼女の同期には、三冠ウマ娘になりたいと思うウマ娘が居ただろう。ダービーウマ娘になりたいと思うウマ娘が居ただろう。

 

 それを踏み越えて、シンボリルドルフは11個の冠を手にした。

 

「参謀くんは、その答えを手にしたのかい?」

 

 努めて冷静に振る舞いながらも、皇帝の心は高鳴っていた。

 自分と同じ結論に達しているかもしれない。自分よりも上の結論かもしれない。

 

 自分の理想は正しいものだと、皇帝は確信している。

 だが、理想の実現に至る方法がこの上なく完成度の高いものだとは考えていない。常に、常に、考えている。もっといい方法はないのか、と。

 

「元々漠然と思っていたことを言語化できた、という感じだがな。

俺は、昔のことを思い出した。『無理』を否定されて、無茶を貫けと言われたことを」

 

 ドキリと、シンボリルドルフの心臓が鳴った。

 覚えていたのかと言いかけた口が、理性の針に貫かれ、縫い付けられて止まる。

 

「あのとき、例えようもないほどに嬉しかった。自分を肯定してくれることが。自分の挑戦が笑われないことが。スタートラインに立つことを許されたことが」

 

 無理ではない。無茶と無謀でこじ開けろ。

 暴論だ。普通に考えて、まったくもって暴論だ。だが、無謀でも挑んでいいと、無茶していいのだと、あのときの何者でもない東条隼瀬は知ったのだ。

 

「俺は、万人に与えられるべき幸福とは挑戦する権利だと思う。勝てなくとも、無謀でも、無茶でも、どうしてもと言われれば夢を追っていいと肯定してやれる。道を示してやれる。そういう人間がひとりだけでも、挑戦者の傍らにいてやれることが、誰にでも訪れるべき幸福だと思う」

 

 だからこそ、と。

 ものすごくがんばって冷静さを保ちながら、東条隼瀬は言った。

 

「だからこそ、キョーエイボーガンの挑戦を笑われたことに怒りを覚えた。キョーエイボーガンの挑戦だけではなく、ブルボンの挑戦とその結果も、彼女を通して見た俺が見た理想も、バカにされた気がした。だから怒ったのだとさっき気づいたわけだ。だから、あれは君のせいではない。単純に、俺のせいだ。キョーエイボーガンにもその旨をよろしく伝えておいてくれ」

 

「……わかった。君と同じ視座に至れたことを、誇りに思うよ。ありがとう」

 

「その礼はあの子に言え。ライオン丸に」

 

「ぅ……うん。ライオン丸にな……」

 

 いかにも皇帝らしい笑みから、途端に歯切れが悪くなったシンボリルドルフ。

 そんな彼女の様子を無視してしまう程度には興奮して、隼瀬はそう言えばと口を開いた。

 

「そう言えば、ライオン丸はなんて言う名前なんだ? シンボリなんたらか、なんたらシンボリか、それともシンボリは付かないのか。どれ系列だ?」

 

「……んん」

 

「おい」

 

「……シンボリなんたらだ」

 

 急かされて、せっつかれて、やっとルドルフは渋々とばかりに答えを言の葉に載せた。

 

 シンボリ……なんだろうか。シンボリライオンとかだろうか。

 比較的壊滅傾向にあるネーミングセンスを炸裂させつつ、東条隼瀬は目の前の優柔不断な皇帝を急かした。

 

「で、名前は?」

 

「………………ル……ではなく、うん。クリス……エス。クリスエス。シンボリクリスエスだ」

 

「シンボリクリスエス――――素晴らしい名だ。勇ましさを感じる、美しい名だ。背が高く脚が長く、煌めく猛獣の如く気高く、気が強く、勇猛で、美しい。名前だけでその高貴さが想像できるようだ……」

 

「……参謀くん。これはなんというか単純な興味なのだが、ルドルフとクリスエス。どっちが美しい名だと思う? もしくはこう、親しみを感じる、とか。頼れる名前だとか、好きな名前だとか。やはりルド――――」

 

「クリスエス」

 

 ムッとして耳を絞り、尻尾を逆立てたルドルフはその後コーヒーを7杯飲んで、そこらの魔法瓶に残りのコーヒーを詰めて帰った。

 

 ――――……参謀くん。これ、苦くないのか?

 

 ――――お前、バカだな。だから砂糖とミルクはどうだと言っただろう

 

 ――――それっ……うん、まあ、その通りだが……

 

 そんな、ルドルフがまだたった三冠だった頃の、菊花賞後の会話。

 

(会ったときは苦さに耐えかねたような顔をして結局カフェオレにしてたくせに、飲むようになったもんだ)

 

 それにしてもあいつ、珍しくダジャレを言わなかったな。

 すっかり飲み尽くされたコーヒーを新たに淹れ直して口に運ぶ。

 

(もしかしたらあのときの、あの反応。ライオン丸はあいつかもしれない、とも思ったが)

 

 ――――私は一度見た相手の顔は忘れないんだ

 

 そんなことを事あるごとに、自慢げに言ってくるシンボリルドルフである。

 それはおそらく嘘でも誇張でもないだろうから、昔会ったことがあるならば忘れているということはあり得ない。つまり、会ったことがない、ということになる。

 

 シンボリクリスエスという大層な名前もあることだし、やはり別人か、と。

 

 思った瞬間、バタンと再びドアが開いた。

 

「どうした?」

 

「……忠告を忘れていた。ミホノブルボンのことだ」

 

 わざわざ戻ってきてくれた皇帝の話に耳を傾ける。

 謹慎初日の朝は、まだはじまったばかりだった。




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サイドストーリー:領域干渉

アンケートが思いのほか拮抗しているので期限を延ばし、本日の0時までで締め切ろうと思います。


「領域の弊害について、教えておこうと思ったんだ」

 

「領域ね」

 

 懐疑的に見ている、というわけではない。見たことはないがあるのだろうとは思うし、プレッシャーのようなものが膨れ上がる感覚を感じたことはある。

 だが実際、トレーナーの殆どは領域の存在に否定的である。ゾーンという超集中状態があることは肯定しているが、領域はそれとはまた違った趣きがあるのだ。

 

 ――――エクリプス。世界最高のウマ娘と呼ばれる彼女が、最古の領域構築者だとウマ娘たちは言う。

 

 18戦18勝。単走8回。

 残りの10回を彼女と共に走ったウマ娘は、決まって同じ幻覚を見た。太陽が翳り、なにかに覆われ、闇に鎖される世界を、だ。

 

 そしてやっと晴れた世界に戻ったと思えば、エクリプスは遥か彼方にいた。

 

 

 【一着エクリプス、二着はなし/Eclipse first, the rest nowhere.】

 

 

 彼女が構築した原初の領域の名は意訳され、ところを変えた日本のトレセン学園の校訓として採用されている。

 唯一抜きん出て、並ぶ者なし、と。

 

 そう呼ばれたのは、エクリプスが速かったからだ。だがそれ以上に、突き放す術を持っていたからだと彼女らは言う。

 

 敗けたウマ娘たちがあまりにも同じような幻覚を見るため薬物検査が行われたが、薬物の反応は無かった。

 そして敗けたウマ娘たちは、薬物を使うなどあり得ないと否定し続けた。

 

 

 あれは、もっと異質な別のなにかだと。

 

 

 エクリプスが走ったのは18戦と言われている。だが実際のところはよくわからない。20戦か、もっと多いのか。

 

 わかっているのは、ただひとつ。

 エクリプスは、敗けなかった。ただそれだけ。

 

 それからエクリプスは、領域と言うものを広めた。極まったウマ娘は、自分の奥底にある世界を現実に溶け込ませることによって走りやすい環境を構築できるのだと。

 

 彼女は走らなくとも領域を広げることができた。そこから徐々に領域構築を行える者が出てきて、今に至る。

 

 日本初の領域構築者はセントライトであるという。だが彼女は激化する戦争の中の空襲でその命を落としてしまったがために領域を他のウマ娘に伝えることはできなかった。

 

 そこから時代の混乱とともに領域構築を行えるものは消え、そしてようやくシンザンが出てきた。

 大鉈で大地をぶった斬るという単純明快にして意味不明な領域を持つ彼女は、その切れ味鋭い豪脚で神となった。

 

 そしてそこからポツポツと、領域構築者たちは少しずつ日本に現れるようになった。

 だがそれを体験できるのは、走行中のウマ娘。それも、極一部の限られた強者のみ。

 

 そんな環境で、研究が進むわけもない。

 

「そう言われるものの歴史は知っている。俺も一応トレーナーだからな。だが実際のところ、よくわからんというのが本音だ」

 

「そうだろう。だから、少しだけ君を連れて行く」

 

 そう言うと、シンボリルドルフは洗練された手付きで右手を取った。

 

「眼を閉じてくれ。繋いだ手が離れたら、開けていい」

 

 その言葉に従い、閉じる。

 シンボリルドルフが出るレースでいつも感じる威圧感が広がって収縮するのを感じて、身が縮こまるのを感じた。

 

 そして、ふっと。繋いだ手の感触が消える。

 

「眼を開けていいのか、ルドルフ?」

 

 ああ。

 

 遠くから聴き慣れた声が鳴り、瞼を開く。

 大きな――――そう、とても大きな赤い鉄扉。金装飾がどことなく古城を思わせるそれが、音も無く開く。

 

 ――――そこには、王がいた。支配者がいた。皇帝がいた。神を引きずり下ろした、ヒトがいた。

 普段もっぱらダジャレを言うことに費やされている口は冷たく引き締められ、温かみのある紫陽花色の瞳から熱は引き、威圧感のある鋭い眼差しは狻猊の如く。

 

 肘掛けに肘を突き、手を頬に添える。

 絶対の支配者。その名が、彼女には相応しい。

 

「参謀くん」

 

 そう、呼ばれて。

 暫くの間、磔されたように動けなくなった身体に熱が戻った。

 

 ――――心からの信頼、確かな自信、絶対的な強さ。

 言語化が不要な程に、それらがわかる。

 

「これが、領域だ」

 

「……なるほど」

 

 度々頻発していた謎の事象の原因が、なんとなくわかった。

 彼女とレースで戦ったウマ娘が、一時的に、とはいえ鹿毛を恐れるようになった理由。

 

 強さ。隔絶した差。

 それをダイレクトに、刷り込まれるように叩きつけられては、怯むだろう。走り、競い、争うことを本能とするウマ娘ならば尚更。

 

「お前、予想より遥かに俺を信頼してたんだな」

 

「そうだ。何となく、伝わるものがあったろう?」

 

「ああ。なんとなく、な」

 

「うん。なんとなく、でいい」

 

 なんとなく、わかった。

 領域に引き込まれるだけでそれなりに、相手のことがわかるのだ。

 これを真剣に、ぶつけ合ったらどうなるか。

 

 たぶんお互いのことが、わかりすぎるほどにわかる。そして必ず、影響を受けるだろう。

 ライスシャワーをライスシャワーたらしめている、あの執念とすらいえる闘争心の影響を。

 

「私が今構築した領域は、ごく簡易的なものだ。走るときに造るそれとは彩度も精緻さも異なる、ハリボテ。実際のところなんの効果もない。だがそれでも、伝わるものはあった。それを真剣勝負の場で、ぶつけ合う。そうなれば」

 

「影響を受ける、ということか」

 

「その通り」

 

 ピッ、と。人差し指で銃を作って正解、とでも言うように参謀を指し、バーンと撃つように上に上げて、シンボリルドルフは続けた。

 

「ミホノブルボンとライスシャワーの領域の競り合いは、シニアでもそうない規模のものだった。おそらく……互いに互いの領域の影響を受けている。互いのことを、理解し過ぎているほどに理解してしまっている」

 

「なるほど」

 

 なんとなく、感覚的に理解した。

 一方的にぶつけられるだけでもそれなりにシンボリルドルフという存在の本質、その表面を撫でることができたのに、これがぶつかり合えばただではすまないだろう。

 

「それにしてもお前、無条件で構築できるようになったのか?」

 

「いや。領域は固定化させたルーティーンによって発動し、一般論で言えばルーティーンが困難であればあるほど、状況が限定されればされる程に強固なものになる。今の私の領域は極論、何をしていなくても発動するものだ。だから効果は無に等しい」

 

「お前の場合、真の領域を構築するためのルーティーンは後半で3回抜くこと。それは変わっていないわけか」

 

「そうだ。よくわかったな、参謀くん」

 

「ちゃんと見てきた。それくらいわかる」

 

 そんなルーティーンになったのは通常ならば目標とされる三冠を足蹴にしてジャパンカップへ飛翔したからだろう、ということも。

 

 ジャパンカップが創設されて以来はじめてとなる、日本勢による優勝。

 シンボリルドルフは理想に至る中間目標として、本来は三冠ではなくそれを目指していたはずだったのだ。

 

 ――――永遠に勝てないのではないか

 

 第一回の開催時、アメリカではパッとしなかったウマ娘にコースレコードを1秒縮められたときからずっと、URAの関係者はそんなことを思っていた。

 

 

 何が永遠だ。永遠は私だ。

 

 

 中一週間を、苦もなく制す。一着ルドルフ、二着はなしという圧勝で。

 永遠なる皇帝の姿に、そのとき人は絶対を見た。

 

「お前、今年のジャパンカップには出ないのか?」

 

「出ないよ。見たいものがある」

 

 それは残念だ。

 そんな言葉は、口に出さなかった。

 

「今年のジャパンカップは、テイオーが出る。無敗の夢を立て続けに砕かれたテイオーが」

 

 砕いたのは春天のマックイーンだが、立て続けに砕いたのは秋天のお前だ。

 

 ミホノブルボンと共にテイオーの理想――――無敗の三冠、憧れの皇帝を再現してみせるという割と残酷なことをしてみせた男は、自分を棚に上げてそんなことを思った。

 

 すごく他人事というか、突き放したように語るシンボリルドルフの声色には、期待がある。

 

「彼女は夢を探している。無敗の三冠に代わる夢を。それはきっと、座して手に入るものではない」

 

 シンボリルドルフは、知っている。

 ミホノブルボンがジャパンカップに出たいと思っていることを。ライスシャワーの闘争心に影響を受け、次なる挑戦を心待ちにしていることを。

 

「だがあいつはブルボンに勝てんよ」

 

 そのことを、隼瀬もなんとなく察していた。だからこそ、断言した。

 

 トウカイテイオーの才能はブルボンの5倍ある。だが、とにかく怪我が多い。

 怪我とは、才能を曇らせるには一番効率のいい方法である。能力は低下し、レースから離れれば勘と経験がリセットされる。

 

 彼女は強かっただろう。そして今も強いだろう。何度怪我をしても立ち上がる心の強さもある。

 だが、怪我をすれば能力が落ちる。練習に費やせる時間が減る。レースに出れる機会を逃す。

 

 身体を動かすための練習。

 落ちた能力を取り戻す為の練習。

 

 日本ダービー後のトウカイテイオーがやっている練習の殆どは、これだった。

 ダービー前の能力に戻す、という埋め立てのような行為。それでも勝てているというところにトウカイテイオーの偉大さがあるが、能力的な成長はその才能と費やされた期間に比べてひどく小さい。

 

 トウカイテイオーが皐月とダービーを制して自らの実力で城を建てた頃、ジュニア級だったミホノブルボンには何もなかった。建物すら立っていなかった。ただの、丁寧に整備された空き地でしかなかった。

 

 だがダービー後、その城は倒壊した。その間にミホノブルボンはやっと、土台を造った。

 そして大阪杯でテイオーは城の補修が終わったことを示した。その頃ミホノブルボンは骨組みを組み立てていた。

 

 そして、今。

 テイオーの城はまたもや崩れかけていて、ミホノブルボンの城は難攻不落のものとなっている。

 

「トウカイテイオーはすごい。お前以上になる素質はあった。それこそ、いくらでもな」

 

 だから、順調に歩けていたら。走れていたら。帝王は皇帝を超えていたかも知れない。

 

「だが、そうはならない。なっていない。なれていない。残酷なようだが、これが全てだ」

 

 トウカイテイオーのレース経験は3年で9戦7勝。ミホノブルボンのレース経験は2年で8戦8勝。

 回数においては似たようなものであり、トウカイテイオーが最初のGⅠ、皐月賞に至るまでに4戦していることを考えると、経験の質を考えると似たようなものだと言う見方もある。

 

 参謀はそうは思わないが、世間はミホノブルボンの方が上だと思っている。

 本来ならば、世間が論評することをバカバカしく思うような天才だったのに。

 

「……ああ。そうだな」

 

 三冠を怪我で阻まれ。

 無敗を実力で阻まれ。

 

 夢を亡くした抜け殻のままに、トウカイテイオーはシンボリルドルフとぶつかった。そしてものの見事に負けた。

 自分の走りができなかった。そんな、言い訳のしようがないほどの敗北。

 

 シンボリルドルフは、何も考えずに秋の天皇賞に出たわけではない。

 

 普通にやるだけで、その先がない。練習に身が入っていない。目標を失い、夢の残骸だけを見ている。

 そんなウマ娘たちを多く見てきたからこそ、そしてそんなウマ娘たちがどうなったかを見てきたからこそ、シンボリルドルフは彼女の原点となった自分の走りを見せることにしたのだ。

 

 春天の敗北と2度目の骨折の後。

 ただ練習を言われるがままに、普通にやるだけの抜け殻になってしまったトウカイテイオーを奮起させるため――――他にも色々理由はあったが――――シンボリルドルフは秋の天皇賞に出て、そして完膚なきまでにテイオーを叩きのめした。

 

 このままでは目標には、私には届かないぞ、と。

 それでもなんというか、トウカイテイオーは湿っていた。いつもの彼女らしい揮発性がなかった。

 

 ならば遥か遠くに座す目標ではない、自分とは違って夢を叶えたウマ娘と戦うことによってなにかが得られるのではないか。

 

 そう。それでこそ、なにかを感じてまた立ち上がってくれるのではないか。

 シンボリルドルフは、そう考えていた。




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感想・評価いただければ幸いです。


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サイドストーリー:闘争本能

【スノーホワイトの本】
・在りし日の日常を共に過ごしたウマ娘の持つ技術が克明に記された本


 この人、怒るんだ。

 ミホノブルボンは、そんなことを思った。

 

 マスター。自分のすべてを預けるほどの信頼を示す言葉として適当だと思ったそんな呼び方で、東条隼瀬というひとのことを呼んでいる。

 

 お父さん。優しくて、穏やかで、沈着なひと。

 マスター。優しくて、落ち着いた、怜悧なひと。

 

 ――――似ている

 

 そう思って、ミホノブルボンは彼を見てきた。

 だがミホノブルボンは、怒っている父を見た記憶がなかった。触れた機械を破壊しても、無茶な夢を抱いても、頑としてそれを曲げなくても、怒られたことは一度もなかった。

 

 代わりに、父からたしなめられたことはある。それはよくないよ、と。こうした方がいいよ、と。

 割と人の心がない物言いをしていた――――というか、心の機微に理解を示さない――――ミホノブルボンは、そうしてなんとなく人格とか、情という不定形なプログラムをインストールすることに成功した。

 

 ――――怒る。マスターでも、怒る。

 

 その怒りは正当なものだというのはわかる。怖いとは思わない。単純に、意外だった。

 ただ、お父さんとマスターは違うんだと、明確にわかった。最初は完璧に同一視していた。お父さん、と呼び間違えかけることすらあった。時を、日々を、記憶を重ねていくところがあったのが、昨日完璧に乖離した。

 

『お父さんと夏祭りに行くと決まったとき、あなたはぴょんぴょんして頭をぶつけたりしませんでした。もともと明確に違う感情を抱いていたのを、対人関係の貧弱さから同一視していただけでしょう。わたしの方がうまくやれますよ、マスターブルボン』

 

 恥をほじくり返した挙げ句に造反を試みたブルツーver3が『あー』という断末魔を残してさっくりと粛清される中で、ミホノブルボンはコンコンとドアを叩いた。

 

「ブルボンか。入れ」

 

 足音でそれとわかったのだろう。

 誰何するでもなく名を呼ばれ、ぴょこんと尻尾を振りながら、ミホノブルボンは部室に入った。

 

「身体はどうだ」

 

「状態、疲労(中)。やや疲れが残っていると推測されます」

 

「そうか。代わりの指導はあいつがやってくれるということだから、今は身体を動かすにとどめて休息に励むことだ」

 

「はい」

 

 休息と言っても、練習をしないというわけではない。

 朝練と昼練をやめて、放課後の練習を少しする。身体が動きを忘れ去らないように、走り方を思い出すように、程よい運動をする。

 

 その指揮を及ばずながら代行させてくれと将軍に言われ、参謀は頭を下げて感謝し、任せていた。

 だからこの一週間は、将軍の指揮を受けることになる。

 

 ではなぜここに来たのかと言えば、今後の相談のためである。

 本来は記者会見の後にやるつもりだったが、色々あって翌日の昼、つまり今に流れた。

 

「さて、このあとのレースだが……我々はクラシック三冠を目指していた。故にその後の予定を一切立てていない。まず、ブルボン。君の意見を聴こう」

 

「私はジャパンカップに出たい、と考えています」

 

 昼休み、本来ならばトレーニングに精を出しているはずの時間に部室に顔を出したミホノブルボンは、偽らざる気持ちを言葉にした。

 

「ジャパンカップ。なぜだ?」

 

「はい、マスター。私が目指すべき理想は、ルドルフ会長に近いものがあると感じています」

 

 シンボリルドルフは、万人が否定されず挑戦を選べる世界を作ろうとしている。

 ミホノブルボンは、挑戦者を阻む否定材料の尽くを切り伏せ、道を開くことを理想とする。

 

 手段も目的も違うが、それら2つは非常に似通ったところがあった。主に、誰かのための光明であろうとする、というところが。

 

「ルドルフ会長はジャパンカップに挑み、そして勝ちました。これは、まさしく偉業です。その偉業を、私でもできると証明したいと考えています」

 

 ルドルフの偉業は、かつて必然だと受け止められた。

 血統、才能、戦法。それら全てが、完璧。王道の中の王道。彼女は当時――――今もだが――――それほどに、圧倒的な存在だったのだ。

 

 ミホノブルボンは、その対極にある。

 大したことのない血統、然程ない才能、邪道と呼べる戦法。

 

「――――なによりも私は今、重大なエラーを抱えています」

 

 常に凪いでいたはずの青く深い瞳には、闘争心がある。対抗心がある。自分の力を試してみたいという、成熟したウマ娘ならば誰でも持つ本能がある。

 

(……ライスシャワーにあてられたか)

 

 【領域】というものは、自分の心の一部を表出化させて構築するものらしい。

 シンボリルドルフと領域をぶつけ合ったとあるウマ娘はしばらくの間、鹿毛のウマ娘を見ると道を譲ってしまう程に畏れることになったという。

 

 領域をぶつけ合うというのは心をぶつけ合うと言うことでもあるらしいから、シンボリルドルフと激突した彼女は、その強さに、絶対たる力にあてられて怯んだ。そう考えられる。

 

 ――――ミホノブルボンとライスシャワーの領域の競り合いは、シニアでもそうない規模のものだった。おそらく……互いに互いの領域の影響を受けている。互いのことを、理解し過ぎているほどに理解してしまっている

 

 皇帝からのそんな忠告を受けているからこそ、わかる。

 ミホノブルボンは、ライスシャワーの執念とも呼べる闘争心にあてられているのだと。

 

 勝ちたいという感情は、ミホノブルボンにもある。むしろ、彼女はその気持ちが強い方だ。

 だが彼女は、特定の誰かを意識したことはなかった。

 

 なのに今、本質的に……言語化を必要としない程に深く理解してしまった。

 だから、

 

「勝ちたい、と。戦いたい、と。そう感じています」

 

「ライスシャワーの勝利への執念が伝染った、というべきだろうな。それは」

 

「……無用なものでしょうか」

 

「いや。いずれ、必要になるものだ」

 

 実力が同等ならば、最後に勝敗を決めるのは執念の差になる。

 

 勝利への渇望の質と、量。

 リギルにはまだデビュー前ながらそのどちらも持ち合わせたテイエムオペラオーという怪物の卵がいる。

 

 そういうやつらはなんというか、接戦に強い。というか、接戦でしか勝たない。ハナ差とかクビ差とか、傍から見ていてハラハラする勝ち方をする。

 そういうのがあまり心臓によろしくないというのもあって、参謀は力でゴリ押して勝つ方を選んだ。そちらの方が指導しやすい、というのも勿論あるが。

 

「今年のジャパンカップは国際GⅠとなって初の開催となる。国外から有力なウマ娘が来るだろう」

 

「マスターは海外で学ばれたと聴きました」

 

「……ああ。ルドルフか」

 

「はい。ルドルフ会長にはマスターの話をたくさん喋っていただいています」

 

 ――――エアグルーヴも似たようなこと言ってたな。

 そんなことを思い出しつつ、参謀は遅くなった朝食を頬張った。

 

 皇帝臨御、第2次皇帝臨御、その後すぐに将軍が来て、そのあとに無敗の三冠の一般ウマ娘が来る。

 そういうこともあって、彼は結局朝食を食べていない。今はもう昼だが。

 

「外国のウマ娘はどうなんだ、とか。そういう事が訊きたいのだろう」

 

「はい」

 

「舐めるべきではない。ただ、恐れることもない。日本で戦うならば、君ならば勝てる」

 

「一般的には海外の方がレベルが高い、と呼ばれていますが」

 

「ん……NPBとMLBのような差だな。やっていることは同じだが、環境が違う。レベルと言うより、要は適応できるかできないかだ」

 

 彼が留学して感じたことは、日本の芝は世界一だということである。

 やたら高速バ場だ、とか。だから怪我が多いんだ、とかそういうことを言われるが、実際のところ高速バ場と故障率の間にはそこまで相関関係はない。

 

 綺麗に整えられた日本の芝は軽く、ウマ娘たちにとってこの上なく走りやすい。だから速度が出る。それだけのことなのだ。

 一方で海外の芝は、割と自然なままにされている。だから重い。

 

「日本で尊ばれるのは、なにか。3つ挙げてみろ」

 

「スピード、スタミナ、パワーです」

 

「では、最も重要視するべきものは?」

 

「スピードです」

 

「そうだ。しかし海外では、脚に絡みつく重い芝を踏みしめるパワー、パワーを維持するにたるスタミナが要求される。スピードはまあ、3番目だな」

 

 重要なことには代わりはない。だが、その順序は変わる。

 

「この傾向は、フランスが特に顕著だ。ロンシャンなどは芝が重いくせに高低差が最大10メートルもある。だから俺は無意識に、評論家からは不必要だと言われるほどに足腰の出力の高さに拘ってしまう」

 

 海外に行くとは限らない。日本国内で満足することもあり得る。

 だが可能な限り広汎な選択肢を与えてやりたい。

 

 東条隼瀬は、そう考えていた。

 

「そのための坂路ですか」

 

「そうだ。君の場合は本質的にはスプリンターだから、スピードの絶対値は足りている。だからそれを維持する為のスタミナとパワーを何とかすればいい。そのために、坂路で走らせ続けた」

 

 虐待施設扱いされたこともある坂路だが、無敗の三冠ウマ娘の製造に成功した今となってはすっかり最新鋭の設備として市民権を得ている。

 

「だから……そうだな。芝の違いも加味して、海外勢が出せる実力は8割ほどになる。ならば勝てる」

 

「ダートのウマ娘が芝で走るようなものでしょうか」

 

「ああ。感覚としてはそれに近い」

 

 国際GⅠ認定後初のレース。日本という国でトゥインクルシリーズがはじまって以来、はじめての国際GⅠ。

 集まってくる海外のメンツはどれも見たことのあるものだが、真に恐るべき相手は別にいる。

 

(トウカイテイオー……)

 

 絶不調なら楽勝。不調でも快勝。普通でも圧勝。好調でも勝てる。だが、絶好調で突っ込まれると負ける可能性がある。

 

 秋の天皇賞でとんでもなくひどい負け方をしたことから評価は下がっているが、ホームアドバンテージを得たハイパー絶好調ルドルフに勝てるウマ娘は地上に存在しない。

 

(となるとやはり、今年の大阪杯くらいの実力にまで戻してきていると考えるべきだろうな)

 

 春の天皇賞で敗けて骨折し、秋の天皇賞で復帰。そこでエクストリームハイパー絶好調ルドルフに粉砕されて2連敗。

 

 だが、実力自体はある。

 春の天皇賞は距離適性を克服できなかったが故に負けただけ。

 怪我明け同士がぶつかった秋の天皇賞は、相手が悪かったとしか言いようがない。

 

 ただそれでも、ミホノブルボンに負けはない。

 

「ジャパンカップへの調整メニューは作っておく。だがわかっているだろうが、俺はこれから一週間謹慎になる。一応謹慎と言っても外を出歩いたりできるし、おそらく君を指導しても文句は言われないだろう。だがやはり、謹慎の形は守るべきだと思う」

 

「はい」

 

「なので君には、その間休養を命ずる。菊花賞での走りは素晴らしいものだった。しかし、脚を著しく疲弊させるものであったこともまた、確かだ。ジャパンカップに出たいならば休み、言われた通りのメニューを如何に質良くこなせるかを競え」

 

「了解しました。マスター」

 

 退室していくミホノブルボンには、切り札がある。ライスシャワー相手にも切らなかった鬼札が。

 

 ――――いや、切らなかったのではない。切れなかったのだ。

 

 あの切り札を切るために必要なのは、異常とも言える闘争心。

 絶対に先頭は譲らないという、手段の目的化とも言うべき執念。それが、ミホノブルボンには足りなかった。

 

 何故ならば、ミホノブルボンにとって先頭を駆けるのは手段だったからだ。

 

 三冠ウマ娘になりたい。

 だから、レースに勝たなければならない。

 そのためには、ラップ走法をしなければならない。

 だから、先頭を駆ける。

 

 これはとてもマトモな、健全な思考だと言える。

 

 しかし例えばライスシャワーは、手段を目的化するほどの執念があった。

 

 勝つためにミホノブルボンを追い抜くのではなく、ミホノブルボンを追い抜くために勝つ。

 レースに勝つという本来の目的を手段にしてしまう程の、執着があった。

 

 中には誰よりも速く先頭を駆けたいという、本来ならば勝利のための近道でしかない手段にやたら拘るウマ娘も居た。

 

 そういうウマ娘たちを傍から見れば、手段が目的化しているように見えるだろう。

 ただそういう手合いは、時に恐ろしいほどの力を発揮する。それはひとえに、執念故だ。

 

 闘争心は諸刃の剣。

 闘争心は自分より強い相手と戦うときは武器になる。奮い立たせ、実力の差を覆す一助になる。

 だが力押しと冷静沈着なレース運びこそが信条のミホノブルボンにとって、闘争心は毒になりうる。

 

 ミホノブルボンは自分でも、剥き出しになった闘争心に戸惑っているようだった。つまり、まるで制御できていない。

 そんな彼女に『休め』とただ言っても、最悪勝手に練習してしまうことが考えられる。

 

 だから、言ったのだ。『休み、言われた通りのメニューを如何に質良くこなせるかを競え』と。

 こう言えばミホノブルボンの闘争心は、限られた練習を如何に質の良いものにするかという方向に向く。

 

(闘争心を御せれば、ブルボンは強くなる。ルドルフを力押しで倒せる程に)

 

 ――――ただまぁ、御せるまでは相当掛かりやすくはなるだろう

 

 そして、御せたその時には。

 積もった埃を撫でて払い、スノーホワイトの表紙を広げた。

 

 ――――好きなんです。雪は音を吸って、静かな世界を作ってくれるから

 

「……使いどきを間違えるなよ、東条隼瀬」

 

 静寂の色をした本を閉じる。

 まだ口の中に残る、苦い味がした。




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オペレーション:天才の登場

皆様のおかげでお気に入り8000件いきました。完結までに10000の大台に乗れたらいいなと考えております。

次回は接戦の末に掲載が決まったトウカイテイオー回です。


 ジャパンカップで日本総大将になるRTA、はーじまーるよー。

 

 前回は金スキル本を手に入れたり、買い物したりしました。あと、菊花賞にも勝ちました。

 てことで今回は、ジャパンカップでテイオーと戦います。

 

 と言っても、正直テイオーさんは強くないです。アプリ版やっている兄貴ならわかると思いますが、バ群に呑まれて下から数えたほうが早い、みたいな順位になりがちなんですね。

 これに関しては豊富に持っているポジション系スキルが悪さしているとかなんとか言われてますが、よくわかりません。とにかく、強くない。大事なのはこれだけです。

 

 もっともこれは先行・差しのウマ娘全般に言えることです。ぶっちゃけ安定感がない。

 

 ではなぜ皇帝チャートが主流なのかと言えば、第一に皇帝専用AIが組まれててバ群に呑まれてもぶち抜いてくるから。第二に何かの間違いが起きてもCPU皇帝と戦わずに済むから。第三に本体とも言える固有スキルを最初からフルパワーで使えるから。第四に、ライバルキャラが最後のマルゼンスキー以外あまり強くないから。以上です。

 

 ほんじゃまーいくどー。

 

 ということで、謹慎期間が終わりました。

 ちっ、うっせーな。反省してまーす(してない)。

 

 さて、これからの話をしますが、ここからミホノブルボンはリアル馬で言うところの本格化を迎えます。

 

 メタ的な話をすると、能力をバリバリ上げていく態勢が整った、ということです。

 なぜかと言えば、ライスシャワーやターボ師匠やらボーガン姉貴やら友情タッグトレーニングを組んでバリバリステータス上げていけるから。

 

 ボーガン姉貴は【対抗意識】【先駆け】【空回り】【全開】というスキル構成を見ればわかる通りに然程有用なスキルは持ってないものの、あのブチギレイベントを起こせば即座に友情タッグトレーニングを組めるチョロい子。

 3回一緒に練習すればブルボンと相互親愛になって練習性能がそれなりの有能になるので、ボロ雑巾のように使い倒しましょう。

 

 凱旋門までにはスピード・スタミナ・パワーはカンスト近くまで持っていきたいですからね。坂路に次ぐ坂路でひたすら能力を上げ、上げ切れたら賢さ連打。そんな感じで行きます。

 効率を考えれば坂路が光ってるときは坂路、その他は賢さとかやっていくべきですが、それだけだと時間がかかるので却下。

 

 はい、坂路連打坂路連打。ミニキャラブルボンが走っている間、特に話すこともないので全く別な話をしますが、原作(史実)のテイオーはこのジャパンカップを勝っています。

 アニメだと……んにゃぴ、(描写がないので)よくわからないです。たぶん勝ってるんじゃないかな。

 

 なので人気のない史実モード(通称・廃校モード)だと、ジャパンカップテイオーは強いらしいです。

 シンボリルドルフ以来の日本勢によるジャパンカップ制覇を目指す、という明確な目標ができると共に勝者補正がつくらしいので。

 ですがこれはドリームモード。シンボリルドルフが普通に現役で生徒会長してますし、なによりもスペちゃんが普通にジャパンカップを勝っています。

 なので、今回のレースではテイオーさんに補正はございません。

 

 なんでこんなにらしいが多いのかと言えば、史実モードは容赦なくウマ娘たちが引退していくのが寂しいからという理由であんまりやってないからです。

 なので、強いらしいですという言い方になりますが、アプリ版のネイチャシナリオにおける若駒テイオー並だとか。

 

 というかテイオーこないっすね。ライバルキャラならそろそろ来るはずなんですけど。もうジャパンカップはじまるんすけど。

 

 あ、来た来た。と思ったらカイチョーでした。RTAにも関わらずちょくちょく顔を出してるこの人、これでも一応結構な権力を握っている生徒会長です。暇なのかな?

 

 テイオーを頼むよ、とか言われてますが、別に何をする必要もありません。警戒する必要もありません。

 

 現在のテイオーさんは無敗の三冠ウマ娘になりたかったのに怪我して菊花賞に出られなくて三冠ウマ娘にはなれない。

 だから無敗のウマ娘になろうとしてたら、マックイーンに春天で負けて夢がなくなっちゃったよーという感じです。

 

 ハァー、スッゴイカワイソ(棒)。でもこれからはもっと辛いゾ(未来予知)。

 というかなんでほもくんに頼るんですかね。沖野Tが居るだろ沖野Tが! 自主練習効率を含んだ練習効果をモリモリ上げてくるチートが!(なお怪我率ダウンスキルの持ち合わせはない模様)

 

 あまりにもテイオーが来ないのでザックリとしたこれからのネタバレをしますが、ミホノブルボン√のテイオーは史実通りこのあとの有馬記念で怪我をします。

 そして史実とは違って故障明けの練習中に骨折することなく、フルパワーで宝塚記念に出てブルボンと戦うわけですね。

 

 この宝塚テイオーは強いです。というか、ライバル補正がかかった絶好調テイオーは普段のテイオーの比ではありません。別個体レベル、皇帝を超えた帝王の強さを発揮します。たぶん、このゲームで2番目に強いです(1番は復活の有馬テイオー)。

 ビワハヤヒデ√の有馬記念テイオーにボコられた兄貴たちならばわかるはずです。レース前に絶好調だとわかったときのあの絶望感。

 

 リアルのトウカイテイオーを見てた兄貴ならわかると思うんですけど、テイオーってここぞって時に本気を超えた本気を出せるから強いんですよ。このゲームでは、そのあたりがちゃんと再現されてます。

 

 まあミホノブルボン√では宝塚記念以外は絶好調にはならないんですけどね。だから別に怖くない――――と、ようやく来ました。現在、ジャパンカップ1週間前。

 焦らしやがって……なんかよくわからん変なルートに突撃したのかと思ったじゃねぇか……(戦々恐々)

 

 会話は例のごとくスキップ。というか、○連打。

 

「……キミはさ。なんで走ってるの?」

 

 誰よりも早く駆け抜けたいからです(本音)。

 

 あっ、というか急に全角テイオーになるのやめてもらっていいすか?(戦慄)

 そしてなんだこの選択肢……チャートによればこれは選択肢無しのイベントで、「サンカンウマムスメニナッタミタイダケド、コノテイオーサマガカッチャウモンネー(日本語訳:三冠ウマ娘になったみたいだけど、このテイオー様が勝っちゃうもんねー)」って空元気を張って終わりなはずなんですけど。

 

 マックイーンに負けて「ボクガマケルナンテー(日本語訳:ボクが負けるなんてー)」ってなってたトウカイテイオーが、自分が目標としてきた皇帝に近づいたミホノブルボンというウマ娘の存在を意識し、新たなライバルとして再び闘志を燃やす。

 

 カイチョーですら3回負けたんだ! 2回負けちゃったけど、ボクだって立ち上がる! カイチョーみたいに! 立ち上がって、勝つ!

 

 ……ってなり、アニメシナリオより早く立ち直る。そのはずなんですけど、なんでこの娘はこんなにシットリしてるんですかね。

 

 候補その1。皇帝が3回負けてない。

 候補その2。なんか変なルートに入った。

 候補その3。ブルボンが無敗の三冠ウマ娘になったから変わった。

 候補その4。テイオーさんになんかあった。

 

 まず候補その1。まあこれはまずないと思われます。ドリームモードとはいえ、ゲーム内ではプレイヤー(この場合自操作のトレーナーキャラ)が何かしない限り、たいてい原作通りに進みます。

 プレイヤーの挙動によって過去が自動作成されるこのゲームは『プレイヤー視点だと関わってないのに関わってることになってる(通称:存在しない記憶現象)』ということが結構あります。

 

 最近発掘された初期アイテムを見るに、今回のプレイだとその対象はスズカ。ルドルフではありません。

 別に存在しない記憶現象が起こるのがひとりと決まってるわけではありませんが、それにしたってルドルフとスズカって全然関わりがありませんからね。これがスズカとスペちゃん、もしくはエルコンとかグラスとかならわかりますが、ルドルフはないであろうと。

 

 そしてドリームモードの原作はアニメなので、よっぽど関わりが深くない限りアニメのとおりに進む。つまり、カイチョーは7冠ウマ娘で、ジャパンカップ、秋天、海外遠征できっちり3回負けててもう走らない、はず。

 

 候補その2。考えたくないので次。

 

 候補その3。これが1番有り得ます。私はこのチャートを自己流にアレンジした皇帝チャートと、物好きな兄貴が公開・走っていたミホノブルボンチャートをはんだ付けして作りました。

 で、その人は負けてたんですよ。朝日杯FSで。だから三冠ウマ娘であっても、無敗の三冠ウマ娘ではなかったんですね。

 

 だから、イベントが変わった。自分の夢である無敗の三冠ウマ娘を、皇帝の伝説を継ぐという夢をたった1年後に果たされてしまった。

 心の整理がついた頃ならともかく、たった1年後。だからシットリしてる。

 

 最後に候補その4ですが、これもまぁまぁ有り得ます。

 これまたミホノブルボンチャートの先駆者兄貴の動画の話になるんですが、先駆者兄貴の世界のライスシャワーは春天でマックイーンに勝てていませんでした。

 先駆者兄貴は『ライスシャワーとのイベントをスルーし続けて菊花賞で勝ったから経験値が足りなかったのではないか』という推論を立てていましたが、これは別のウマ娘にも当てはまります。

 

 つまり、ブルボンが頑張っている裏では当然たくさんのウマ娘たちが頑張っているわけです。その頑張っている中のひとりに……天皇賞秋は負けるのが既定ルートだから、大阪杯あたりで負けた、とか?

 このテイオーの戦績を探るすべがないのでわからないのですが、これだと怪我して以来1回も勝ってないということになり、このシットリ具合もなんとなく納得できます。

 

 ただまあ、あのトウカイテイオーが大阪杯で負けるか?って話です。

 私はさんざんテイオーはたいしたことないとか言ってましたが、それはクソチートキャラのルドルフと比較した上での話です。

 アプリ版と同じく、役割とか固有スキルの性能がルドルフと被りまくってるからそれほど使われませんが、テイオー自体は普通に強いんですよ。

 

 つまり何が言いたいかというと、わかんない。言いたいことはそれだけでやんす。

 

 てことで、ブルボンに投げます。お前のセンスに任せる(逃げ)

 

「夢を叶えるためです」

 

 三冠ウマ娘になったのに、他になんの夢があるというのか。

 

 まあ私としてはブルボンが何考えてようがフランスに強制連行して凱旋門に出てもらい、勝つ。

 それさえやってくれればなんでもしますけどね。

 

「夢……」

 

 という、なんとも後味の悪い感じでイベントが終了。

 テイオーさんは早くいつもの元気なクソガキに戻って、どうぞ。

 

 ということで、レースをクリック。マイルCSに吸い寄せられているカーソルを下に動かし、ジャパンカップを選択。

 

 さあ出走――――というところで、今回はここまで。ご視聴、ありがとうございました。




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アナザーストーリー:夢破れ

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 トウカイテイオーには、夢を叶えた経験がなかった。

 

 かつて彼女は、憧れに向かって言った。貴女のような――――シンボリルドルフさんのような、強くてかっこいいウマ娘になります、と。

 

 日本ダービーのあと。まだ皇帝の側に、羽翼となる参謀が居なかった頃。

 

 誓った。シンボリルドルフのようになると。

 憧れた。シンボリルドルフのようになりたいと。

 

 その後ほどなくして、トウカイテイオーはトレセン学園に入った。

 ルドルフに挨拶しに行くと、皇帝はなんかよくわからん男――――極めて無愛想な芦毛の男――――を侍らせながら、とても楽しそうに話している。

 

「次のレースだが、知っての通り京都だ。難敵となるのはミスターシービー。師匠にこれまでのレース結果を用意してもらったから、俺なりに分析してみた。ある程度だが、予測もな」

 

「……流石だな、参謀くん。仕事が速い」

 

「やることが決まっているからな。お前の判断の果断さ、迅速さに任せているが故だ。別に褒められる謂れはない」

 

「ふふ……その期待、この資料に応えるような走りを、見せなければな」

 

 恐ろしく広いリギルの部室、その一角で隣に座りながら話し込む2人。

 

「まただ」

 

 それを見たナリタブライアンが、半笑いながらボソッと言った。

 

「まるで恋人同士だ」

 

 こちらはエアグルーヴが、対照的に苦々しく言った。

 

「朝から晩まで参謀くん参謀くん。食事をするのも参謀くんと一緒。私が彼を得たのは、魚が水を得たようなものだとも言っておられた。ブライアン。少し行き過ぎてるとは思わないか?」

 

「別にいいだろ。アイツも自分を預けられる杖を得たってところだろうし」

 

 事前準備を整え、不敗の態勢をとってから正攻法でゴリ押す。

 それしかできない参謀と、それ以外ならできる皇帝。

 

 いいコンビじゃないかと、ナリタブライアンはそう見ている。

 

 皇帝と呼ばれるには幼く思える程に、彼といる時に笑う姿は子供っぽく映る。

 ナリタブライアンとしては、別にああいう相手がいても問題はないであろうと思っていた。

 

「だが」

 

「嫉妬か、アンタらしくもない。いや、アンタらしいのかな」

 

「な……」

 

「水になれなくて悔しいわけだ。副官としては」

 

「そんなことはない! 私は会長がトレーナーとしてなんの実績もない男にほれ込み過ぎだということを――――」

 

「実績がないのは私もだし、アンタもだ。それに、アンタも充分ほれ込まれてるよ。役割が違うだけだ」

 

 隣の机で話すエアグルーヴとナリタブライアンにそんな呆れ気味の愚痴を叩かれているあたり、いつもこうらしい。

 

 耳をピコピコして収集したところ、話している内容は次のレースについてという色気の無いものだったが、何となくもやもやしたトウカイテイオーはそこに近づいた。

 

 その3歩目を踏み出したところで、青年の鋼鉄の瞳がテイオーを射た。

 

「おい」

 

「うん?」

 

 皇帝に――――あの大阪杯を勝ったばかりの最強無敵の7冠ウマ娘に対して、青年は軽く顎で指示した。

 

「ファンだぞ。相手してやれ」

 

 それだけ言って、資料を残して去っていく。

 空気が読めるんだか読めないんだかわからない男――――まだ20代になったばかりくらいの若造――――に感謝する心と対抗心を同時に抱きつつ、トウカイテイオーは挨拶をした。

 

「シ、シンボリルドルフさん!」

 

「君は、ダービーのときの子だね。連枝の家の子だったとは驚いたよ。名前は……トウカイテイオー」

 

 ――――覚えられている!

 

 憧れのヒトに認知されている。

 そのことで更に自己肯定感を高めながら、トウカイテイオーは精一杯胸を張った。

 

「ボ、ボクも……じゃなくて、わたしも!」

 

「ふふ……」

 

 頑張って張った虚勢を可愛いものを見るような微笑みで見透かされ、少し凹む。

 そんな感情をも見透かしたように、シンボリルドルフはトウカイテイオーと視線を合わせた。

 

「ありのままで、君のままで言ってごらん。私はそういうところを気にしないよ」

 

「あ……は、はい! ボクは、シンボリルドルフさんみたいな強くてかっこいい――――無敗の三冠ウマ娘になります!」

 

 その宣言通り入って早々、彼女は学園内のレースで経験を積んでたちまち有望株となる。

 彼女には才能があったのだ。他の誰にもない才能が。

 

 メイクデビューすらできない。

 メイクデビューをできても、勝てない。

 未勝利戦で勝てても、OP戦で勝てない。

 OP戦で勝てても、重賞を勝てない。

 重賞で勝てても、GⅠでは勝てない。

 

 日本全国からやってきた優駿たちは、様々な壁にぶつかる。その中には乗り越えられる者もいるが、乗り越えられない者もいる。

 

 ――――三冠ウマ娘になってやる。

 

 それはもっとも、ポピュラーな夢だった。

 

 だがそんな普遍的な夢を叶えると決意して入学しても、たいていのウマ娘たちは現実を知る。そして彼女らの目標は、徐々に下方修正されていく。

 

 ――――GⅠを勝ってやる。

 

 ――――GⅠに出てやる。

 

 ――――重賞を勝ってやる。

 

 ――――重賞に出てやる。

 

 ――――せめて、勝ちたい。

 

 そうして、一勝もできずに消えていく。走るのをやめる。地方に移籍させられる。そんなウマ娘は、全体の75%を占める。

 

 だがトウカイテイオーは、その75%ではなかった。

 

 リギルと並んでトレセン学園の双璧と呼ばれるスピカに入り、メイクデビューを勝った。相手にならなかった。

 重賞ではないながら、3つのレースを獲った。話にすらならなかった。

 皐月賞を制した。重賞未勝利ながら、完勝だった。彼女は初の重賞制覇を、皐月賞で果たした。

 日本ダービーを制した。圧勝だった。

 

 ――――菊花賞も勝てる。

 

 誰もがそう思った。明らかに突出した実力、今すぐにシニアクラスに放り込んでも勝てるであろう才能。

 

 ――――シンボリルドルフ以来の、無敗の三冠ウマ娘の誕生だ!

 

 ――――無敗の三冠ウマ娘同士の、しかも同門の戦いだ!

 

 だが、その後。彼女の運命は暗転した。

 

 骨折。全治半年。

 

 これから幾度もトウカイテイオーの道を遮る悪夢。

 どうしようもない事故によって、トウカイテイオーの夢は終わった。

 

 スピカのトレーナーは、トウカイテイオーの復帰に向けて尽力した。

 

 勝負服を改造し、タイツにサポートのような機能を組み込んだらどうか。

 靴を変え、負担を減らしてみたらどうか。

 

 それでも、トウカイテイオーの力は戻らなかった。骨はくっ付いたが、走れる状態ではない。

 もっとも、いい勝負はできただろう。それほど、彼女の才能は同期の中で傑出していた。

 

 だが菊花賞3000メートルは――――地獄の坂を2度乗り越えなければならないコースを、骨がくっついたばかりの脚で走れるのかと言えば、そうではない。

 

 走行中の骨折は、転倒に繋がる。完璧に骨折しているにも関わらずトランスしたような涼しい顔で転倒しないまま走り切ったウマ娘も居たが、あくまでもあれは奇跡。

 栄光の日曜日ではなく、沈黙の日曜日でもなく、奇跡の日曜日と呼ばれているのは伊達ではないのだ。

 

 時速70キロでの転倒は、命に関わる。それが坂ならば、なおさら。

 後続のウマ娘も巻き込んでの大事故という可能性も、大いにありえる。

 

 だから、トウカイテイオーは夢を諦めた。

 そして、夢を下方修正したのだ。

 

 怪我は、事故だ。そこには誰が悪いということもなく、責められるべき何者もいない。

 

 無敗の三冠ウマ娘にはなれない。だけど、無敗のウマ娘にはなれる。

 大阪杯で凱旋と言うべき勝利を挙げて、トウカイテイオーは、下方修正した夢を高らかに掲げた。

 

 ――――もう、誰にも敗けない。自分にすら。

 

 その頃、聴こえてきた名前があった。

 

 ミホノブルボン。

 当時の彼女は、短距離かマイルでそれなりのところまでいけるのではないか、と評されていた。

 

 同期のサクラバクシンオーやニシノフラワーとは一枚劣るが、従順で癖のない気質などを加味すればあるいは、と見られているウマ娘。

 

 ――――私は、三冠ウマ娘になります

 

 そんなふうに完全な短距離路線に進むと見られていたミホノブルボンへの評価は、このトチ狂ったような発言で壮絶な変化をたどった。

 

(結構言うんだ……)

 

 物静かで、冷静で、頭の良さそうなウマ娘。それが、ミホノブルボンの外見を見て下した評価。

 そんな彼女が大口を叩いたことで、トウカイテイオーは興味をそそられた。

 

 元々彼女は、こういう大口を叩くタイプの方が好きなのである。現実を見て堅実に進む人よりも、大口を叩いて空を征く人間の方が、見ていて楽しい。

 故にちょろっと練習を見に行くことにした。自分に後輩ができるという感覚を味わってみたかったということもあるが、どんな練習をしているかが気になったのだ。

 

 ――――そこには、地獄があった。

 

 坂路。権力と金に物を言わせて造らせたそれを使って走らせ、走らせ、走らせ。

 傍から見ても疲れている状態から更に坂路を走らせる。ミホノブルボンも文句も言わず、恨めしそうな目も向けず、やめていいと言うまでフラフラになりながらも坂路に向かう。

 

(本気なんだ……)

 

 クラシック三冠に輝くという夢を抱くウマ娘は、星の数ほどいる。だが、夢を見続けられるウマ娘となれば一気に少なくなり、夢を見る資格があるほど努力をしているウマ娘となれば両手の指の数に満たない。

 

 

 ――――距離適性。

 

 

 それは、絶対的な壁である。常識も慣例も、今も過去も否定して、あの2人は距離の壁を破壊しようとしている。

 

 そしてその【距離適性】という絶対は、トウカイテイオーにとっても無縁ではなかった。

 

 ――――大阪杯の次は、春の天皇賞。

 

 ライバルであるメジロマックイーンと戦い、勝つ。そのために、トウカイテイオーが自身で決めたローテーション。

 春の天皇賞は長距離。それも、菊花賞よりも長い3200メートルを走ることになる。

 

 トウカイテイオーの経験している最長距離は、東京レース場の2400メートル。菊花賞を経験していないが故に、一部では距離が長すぎるのではないか、トウカイテイオーに長距離は無理なのではないか、という論評があった。

 

 そして、春の天皇賞1週間前。

 今年の皐月賞は、大抵の人間からすればまさかの結果で終わった。

 玄人であればあるほど、陥りがちな常識という名の陥穽。一部を除いた殆どの業界人が、一様に予想外だと口にした。

 

《1:59:7! レコード! レコードです! ミホノブルボン圧勝ォォオ! 最初から最後まで、減速なしのノンストップ! 影すら踏ませませんでした!》

 

 実況は叫ぶ。世間はどよめく。ウマ娘たちも驚く。

 

(まあ、勝つよね)

 

 トウカイテイオーは、別段驚かなかった。

 死ぬほど練習していたことを知っている。そして彼女を担当しているトレーナーが、直接関わったレースで一度も負けていないことを知っている。

 

 ――――敗けさせない。

 

 そのことに特化した男だということを、尊敬するシンボリルドルフから聴いている。

 

 シンボリルドルフに関わったのは、日本ダービー後からアメリカ遠征終了まで。

 サイレンススズカに関わったのは、マイルCSから天皇賞秋まで。

 

 もともと最強であったシンボリルドルフはともかくとして、悩める天才であったサイレンススズカ。

 才能だけは確かにあったが、どうにもちぐはぐな彼女を天皇賞秋の6着からマイルCSまでの約1ヶ月間で立て直し、初GⅠ勝利に導いた手腕には評価すべきところがあると、世間では言われている。

 

 敗れざるというのはなんたるかということを、トウカイテイオーは知っている。そのプレッシャーも、期待の重さも。

 

 ――――今度は、ボクの番だ。

 

 マックイーンに勝つ。

 長距離という距離の壁を超える。

 

 その目標を達成するために、トウカイテイオーは春の天皇賞に臨んだ。

 新たな、修正を強いられた夢に向かっての二歩目。そこに大きな落とし穴が空いていることを、トウカイテイオーはまだ知らない。




※カイチョーは再会できてウキウキしています(調子:ハイパー絶好調)


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アナザーストーリー:どうどうめぐり

※修正前のやつをそのまま投稿してしまいました。15:07分に直しました。申し訳ございません。

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 結論から言えば、彼女は負けた。しかも惜敗の2位とかではない。

 5着惨敗。そして右脚を剥離骨折し、またリハビリの生活へ。

 

 ここで、つまり敗けたあと、悔しさの赴くままに次走――――宝塚記念あたりに出走できたならば、また違っていたかもしれない。

 だがトウカイテイオーは、怪我をした。夢を失い、怪我をして走ることもできず、ただ考えることしかできなくなった。

 

 ブルボンが自分と同じように日本ダービーを無敗で制したときも。みんなが夏合宿に行っている間も。

 

 トウカイテイオーは、何もできなかった。

 

 気が滅入っているときの思考ほど無意味で、ドツボにハマりやすいものもない。

 

 ――――なんのために走るのか

 

 その問いに確たる答えを出すこともできず、トウカイテイオーはリハビリメニューを普通にこなした。

 菊花賞に間に合わせるんだという熱意もなく、ライバルに勝つんだという闘争心もなく、無敗の夢もない。

 

 惰性と言うには熱心過ぎたが、今までの彼女を見てきた者ならば惰性でやってると言われかねない程のペースで、トウカイテイオーは復帰に向けて仕上げていた。

 

 そんな中で、トウカイテイオーの心に少しだけ火を灯すようなニュースが降ってきた。

 

 ――――【皇帝】シンボリルドルフ、秋の天皇賞で復帰

 

 奇しくも、と言うべきではないだろう。トウカイテイオーの復帰レースとかぶせてきたのは、敢えてのことだった。

 

 レースには、走る姿には、その魂のすべてが映る。

 自分の走る姿がテイオーの原点と言うならば、その原点を思い出させてやればいい。

 

 ――――ほかに することは ないのですか

 

 参謀くんパペット11号にそんなことを言われながらも、シンボリルドルフはそうして秋の天皇賞への出走を決めた。

 

 ――――秋の天皇賞という物に対して抱く、参謀くんの苦手意識を払拭するにも、テイオーに改めて目標を意識させるにも、ちょうどいい

 

 世間が騒ぐような――――唯一取り逃した忘れ物を取りに来たという理由ではない。

 シンボリルドルフは、あくまでも自分の大切な人のために走ることを決めた。

 

 秋天。秋の天皇賞。

 

 ――――皇帝再臨/帝王復帰

 

 ポスターにデカデカ書かれた四語が示すように、2人の天才の復帰場となったこのレース。

 復帰戦となったのはトウカイテイオーもであるが、やはり観客の目はシンボリルドルフに注がれている。

 

 【皇帝】シンボリルドルフは8枠17番の出走になった。

 

『貴女には、感謝の言葉の申しようもありません。

 与えられた宿命から、期待から逃げることを許可された私は、あのままでは逃げているという自覚すら持たずに運命から遁走していたことでしょう。

 貴女の言ってくださった【無理】を乗り越えるための言葉は、今も私の胸にあります。おかげで、歴史に名を残す偉大なる皇帝の覇業の一助になることができ――――』

 

 抽選によって決まった枠番を見直しながら与えられた控え室のドアが、2度3度鳴る。

 読み返していた手紙がそのリズムに乗って2度3度宙を舞い、床に落ちる前に磨いたブーツの甲で拾う。

 

 ふー、ふー、と。

 汚れたかもしれない手紙を息で吹きつけて埃を飛ばしつつ便箋の中にしまい、シンボリルドルフは咳払いをした。 

 

「構わない。入ってくれ」

 

「カイチョー復帰おめでとー!」

 

 入ってきたのは、トウカイテイオー。

 

 明るい。だが、心の明るさではない。心の陰から発された明るさ。

 憧れのひとを祝っている。復帰を嬉しいと思ってもいる。だが、自分の復帰へ向けられる明るさがない。

 

「君もな、テイオー。もう脚の方は大丈夫なんだろう?」

 

「うん! バッチリな走り、カイチョーにも見せちゃうから!」

 

「……そうか」

 

 ――――カイチョーにだって勝っちゃうから!

 

 本当のトウカイテイオーならば、こう言うだろう。

 

「テイオー」

 

「なに、カイチョー?」

 

「ちゃんと付いてこい。私を見て、学び、そして負かしてみろ」

 

 走れば折れる骨との付き合い方、練習の仕方に苦慮していることは知っている。

 だが強さとは、練習によって鍛え上げることだけでしか得られないわけではない。

 

 その辺りを、シンボリルドルフはこのレースで伝えたかった。

 

「……うん」

 

 静かに笑って、トウカイテイオーは去っていく。

 そんな背中を見つめながら、シンボリルドルフは瞑目した。

 

 ――――パドックへ、行かなければならない。

 

(こわい)

 

(こわい)

 

 16番、18番。シンボリルドルフのお隣さん。

 もともと不利な外枠に埋められたふたりのウマ娘は、同じことを思っていた。

 

 腕を組んで、目を瞑る。ご機嫌と不機嫌が混じった、しかし心配そうな複雑さを表に出したこのお方。

 シンボリルドルフ。永遠なる皇帝。

 

《ウマ娘たちが追い求める一帖の盾。鍛えた脚を武器に征く栄光への道! 天皇賞秋!》

 

 聴こえないはずの実況、迫るスタート。

 その風に触覚を撫でられたように、シンボリルドルフがゆっくりと瞼を上げていく。

 

 切り離していた聴覚、視覚、触覚。

 手袋に包まれた手を握り、開く。

 

《今、スタートしました!》

 

 横一線、ウマ娘たちが跳び出す。

 先陣を切るのはメジロパーマーか、ダイタクヘリオスか。

 

 どちらかの逃げウマ娘だと予想していた観客の予想を、ふたりのウマ娘が裏切った。

 18番、16番。ふたりは熊に追われる人間のように、狼に追われる羊のように、一気に全開までギアを上げてハナに立った。

 

 気怠げな勢子のように、その後をシンボリルドルフが追いかける。

 皇帝は一瞬だけトウカイテイオーの隣を走り、そのままずるずると落ちていった。

 

《16番、18番、いきなり全開、先頭に立ちます! 続くようにダイタクヘリオス、メジロパーマー。シンボリルドルフは1、2――――15番目。トウカイテイオーは7番目と好位で追走!》

 

 ――――これはまずい

 

 メジロパーマーもダイタクヘリオスも、状況の拙さを悟った。

 逃げウマ娘とは、先頭に立ってこそ意味がある。だというのに先頭に立つのは掛かったらしい王道戦法のウマ娘。

 

 急に戦法を逃げに変えた理由は、わからない。最近逃げが環境を席巻しつつあるから宗旨替えしたのか。

 

 ――――違う。掛かったんだ。なら外枠に……!

 

 掛かった。理由はわからない。スタート直後に掛かるとなれば、たぶん好スタートを切りたかったが故、だろうか。

 

 先頭を目指す。横から降ってきた思わぬ敵に反応、分析、追い抜きを目指す。

 しかし、外から内に来るまでの距離を活かして加速しきったふたりは――――少なくとも序盤では――――差して先頭を奪うのは無理と判断。

 掛かっていると判断し、外に抜けて進路を確保しようとする。

 

 見る者が見ればわかる、判断の的確さ、迅速さ。さすがはメジロの家のものだと褒める程の判断。

 

(も、もう外に来てる……ペース速くない!?)

 

 進路が塞がれている。

 それは7日後に行われた菊花賞序盤のミホノブルボンのような感じだった。

 

(これで厄介な逃げは封じた)

 

 逃げは、厄介だ。単純なパワーというものは、小細工が通じない。だからこうして、事前にそのパワーの全容が現れないように手を打っておく。

 

 両脇を掛からせ、足を緩めながらやや内側に斜行。視線を飛ばして焦らせ、脚音と視線で幾人かを強制的に掛からせてパーマーとヘリオスのコースを塞ぐ。

 シンボリルドルフがやったのは、中盤からの盤面操作だった。

 

(俯瞰は――――)

 

 脚を溜めつつ後方に下がり、高台に立っているかの如く戦局を見渡す。

 

(――――よし)

 

 前に12人。後ろに2人。

 勝てる。

 

 ――――かと言って、油断しないことだ

 

 確信した瞬間、心の中でぴょこんと人影がポップアップした。

 

 わかってる。

 

 ――――必要に応じて脚を緩める。それは長期間走り続けるために必要な技術だ。故障を防ぎ、消耗を避ける。それは正しい。が、それは今に全てをかけていない、とも言える

 

 それはそうだ。だが、無闇に力を発揮することを全力とは呼ばない。適切な地点で、適切な力を発揮することを、不測の事態に備える力を残していることを、全力と呼ぶ。そうだろう?

 

 ――――そうだ。その適切さで、まず前を封じた。だが後ろはどうだ?

 

 問題ないさ

 

 ――――だといいがな。牽制を入れておけ

 

 それもそうかと、紫電の残光を残して振り返る。

 追っている2人の歩幅、息、顔。それらから、意志は読み取れる。

 

(少なくとも今ではない)

 

 いつかは、わからない。だが、そのいつかには直前で対応すればいい。

 

(テイオーは……好位につけている。だが)

 

 どうにも、覇気がない。こちらを一回も振り向かない。

 勝とう勝とうと思えば思う程、ウマ娘は前を睨んで後ろを振り返る。菊花賞のミホノブルボンにも、その兆候は現れていた。

 

(前を睨んでいるだけなら、それでいい)

 

 だが、そうではない。

 とうに捨て去ったはずの動物の部分が、直感がそう告げている。

 

 大きく、息を吸った。距離を詰め、前へと伸びていく。大ケヤキがすぐそこに迫る、仕掛け時。

 

 シンボリルドルフの脚の回し方が本格化したことは、前方集団に恐怖を与えた。

 

 ――――奴が、来る

 

 ひとりが、ペースを上げる。それを見たひとりが、負けじとペースを上げる。

 あとは、連鎖だった。その連鎖にトウカイテイオーも巻き込まれ、スパートをかけるべきではないところでスパートが強制的に掛かった。

 

 焦った先頭集団が抜け出すとともに、垂れてきた18番と16番がパーマーとヘリオスごと置いていかれていく。

 全力を出しきれず垂れてきた、4人のウマ娘。彼女らの向かう先は、皇帝の顎門。

 

《さあ目覚めるか、シンボリルドルフ! ここから一気に差しにいくのか!》

 

 一瞬で領域を開く条件を満たし、シンボリルドルフは距離を詰めた。

 

 ――――雷鳴が、轟く。

 

 ここでようやく、トウカイテイオーは振り向いた。支配の象徴たる雷霆を身に受け、積んでいるエンジンの差を感じさせるような加速を手に入れた皇帝が、すぐそこにまで迫ってきている。

 

 踏み込みで抉れた芝を踏みつけ、空を駆けるがごとき速さで。

 

(カイチョー……)

 

 勝ちたい。

 その気持ちはある。だが、できないことはわかっている。

 

 走れば怪我をする。負荷を上げて練習をしても、怪我をするだろう。

 走って、経験を積む。練習して、強くなる。トウカイテイオーにとって、それ以外に強くなる方法はない。

 

 それ以外の方法を――――実績と駆け引き、歩法、音、視線で牽制し、掛からせ、レースを支配する。

 それらの手札を、皇帝は帝王に見せた。負荷をかけられない身体でも強くなれる術があることを示した。

 だが、帝王はそれらから学ぶことができなかった。

 

 ミホノブルボンを通して己の今を強く見たからこそ、今の自分に必要なものを見ることができなかった。

 

 早めのスパートの弊害を受けて垂れてくるウマ娘たちを一足でぶち抜き、残りを脚に負荷のかからない走りで駆け抜けて、皇帝は凱旋を果たした。

 

『圧勝! まさに圧勝! これが皇帝の走り! これが世界のルドルフの走りです!』

 

 それが本当に手に入れたかったものが手に入らない、虚しい勝利だったとしても。

 勝者は、胸を張る義務がある。

 

 11個目の冠を手にした皇帝は、失意の内に改めて指を一本掲げた。

 

(テイオー……)

 

 掛かりに巻き込まれて逃げるように走り、沈む。闘争心が掻き消されたような無様な走り。

 それは、着順以上の敗戦だった。

 

 視線が交わり、離れる。

 こんなところで終わるウマ娘ではない。必ず、立ち上がる。1度目の怪我を乗り越えたのだから、2度目もある。3度目もある。

 

 やればできるだろうと、シンボリルドルフは信じている。そしてそのことをテイオーは感じてくれているとも、信じている。

 

 ――――自分は、信じられている。

 

 立派な走りをできるウマ娘だと。立ち上がってくるウマ娘だと。

 そのことを、トウカイテイオーは知っている。

 

 だが今は、その期待が重かった。期待に答えるための力が、夢がない。果たせなかった夢の残骸が、身体に纏わりついている。

 シンボリルドルフの期待に応えるだけの強さが、自分にはない。そのことを、テイオー自身が一番よく知っていた。

 

 ――――どうすればいいんだろ

 

 ぼんやりと、皇帝コールと大歓声が起こる中でトウカイテイオーは何かを見た。

 過去でも現在でも、未来でもない、どこかを。



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アナザーストーリー:諦観の憧憬

ど ん 底

123G兄貴、白河仁兄貴、天須兄貴、名無し兄貴、yumeinu兄貴、ガンバスター兄貴、志玖兄貴、たきょ兄貴、ヌバチ兄貴、サガリギミー兄貴、T.C兄貴、レイヴン兄貴、朱鯉兄貴、l日兄貴、光に目を灼かれたペニーワイズ兄貴、初見兄貴、white2兄貴、さんまたべたい兄貴、障子から見ているメアリー兄貴、ノグノグ兄貴、zenra兄貴、石倉景理兄貴、tamatuka兄貴、レンタカー兄貴、ふれんち兄貴、ノッカー兄貴、ながもー兄貴、金曜日兄貴、かぶと兄貴、迫る影兄貴、めだろっく兄貴、かけそば兄貴、はやみんみん兄貴、ニキータの店兄貴、なのてく兄貴、ヘイトリッド兄貴、葵い兄貴、力の差って怖い兄貴、Spinel兄貴、蒸気帝龍兄貴、新宿のショーター兄貴、すまない兄貴、ラース兄貴、夕莉兄貴、仁和寺兄貴、終焉齎す王兄貴姉貴、ユウヨコヤ兄貴、fumo666兄貴、鋼月兄貴、くお兄貴、ブブゼラ兄貴、主犯兄貴、星ノ瀬竜牙兄貴、夏野彩兄貴、化猫屋敷兄貴、ワットJJ兄貴、ガトリングゴードン兄貴、ハガネ黒鉄兄貴、ヘビビンガー兄貴、カラテン兄貴、パンダメント兄貴、noxlight兄貴、ライセン兄貴、必勝刃鬼兄貴、Jupiter兄貴、ESAS兄貴、バナナバー兄貴、RS隊員ジョニー兄貴、感想ありがとナス!

JACKs兄貴、黒村 白兄貴、xoyouox兄貴、クマノス兄貴、カールセーガン兄貴、ファビラウ兄貴、yuuki100兄貴、モニュコナイ兄貴、鋼月兄貴、ネツァーハ兄貴、羊と手紙兄貴、りりーん兄貴、Amber bird兄貴、評価ありがとナス!


 天皇賞秋の敗戦後。

 トウカイテイオーは、輪をかけてボケーッとしていることが多くなった。

 

 いつものようにレースを見返して敗因の分析をするでもなく、練習の虫であったかつてのように走るでもない。

 

 練習はする。サボらない。真面目にやる。

 だが、トウカイテイオーらしくはない。

 

 そんな姿を、スピカのメンバーたちは遠巻きに見ていた。

 

 スピカのメンバーの殆どは、未だ正式なデビューをしていない。

 となればアドバイスをするのはデビュー済みのスペシャルウィークとメジロマックイーンしかない。

 そしてメジロマックイーンは現在、故障療養のためにメジロの家に帰っている。実質スペシャルウィーク一択なわけだが、彼女は叶えたいと思った夢は2つとも叶えた。

 

 ――――何をどう言えばいいのか

 

 そういう空気が、スピカにはあった。

 そんな中でなんとなく、テイオーは空を見ていた。青く澄み渡った、高さを感じる無垢な空を。

 

(もう菊花賞かぁ……)

 

 ――――勝てるのかな。

 

 無敗の夢が破れてから、ミホノブルボンを見ることがなんとなく嫌になった。

 ミホノブルボンになにかされたわけではない。無邪気な自慢をされたこともない。それどころか、話したことすらない。

 ただなんとなく、嫌だった。苦手だと言い換えたほうが適切かもしれない。

 

 だからダービーも、直接見たわけではない。勝ったことを聴いただけ。

 長距離の壁を超えることの難しさを、トウカイテイオーは知っている。だからこそ、今更のように思い出したのかもしれない。

 

 ――――ミホノブルボンは勝てるのか

 

 そんな思いが、ぐるぐると回る。

 

「あのさ、トレーナー」

 

「おっ、どうした。テイオー」

 

 散々悩んだ挙げ句に、トウカイテイオーはトレーナーに話しかけた。

 スピカのトレーナーは、なにかに期待するような顔をしていた。

 

(あんまり、喋ってなかったもんね)

 

 春の天皇賞に負けて、剥離骨折で入院して。

 こまめに、時間の合間を縫ってお見舞いに来てくれたこのトレーナーと、最近トウカイテイオーはあまり話していない。

 

 秋の天皇賞に臨むときも、トレーナーはどことなく上の空なテイオーに向かって盛んに話しかけてくれてはいた。

 だが肝心のテイオーが話す姿勢をとっていなかった。

 

 軽い掛け合い、夢への展望。

 語り合って、信頼を築き合っていたあの頃と比べて、随分と口数が減った自覚がある。

 

「あのさ」

 

 言いかけて、止まる。

 菊花賞を見にいきたい。言葉にすれば、それだけのこと。

 

 黙っている時間、トレーナーは根気強く待っていた。いつも鳴っている、口に銜えた棒付き飴を口の中で転がす音もしない。

 

「今度の菊花賞。見に行きたいんだ。だから、お休みが欲しいなって……」

 

「――――そうか。そうか、見に行きたいのか! いいぞ! ほら、入場券だ!」

 

 待ってましたとばかりに渡された新幹線のチケットと、菊花賞の入場券。

 それらを渡されて、トウカイテイオーはなんのお咎めもなく送り出された。

 

 ――――ボクはもう、練習しなくていいってことなのかな

 

 ――――ボクがいると、邪魔なのかな

 

 そんなことを思うトレーナーではないとわかっていても、鬱々と暴走する思考。

 堂々巡りの果てに密林に突っ込みかけたところで、憧れの声が聴こえた。

 

「テイオー」

 

「あっ! カイチョー……」

 

 垂れ続けていた耳がピンッと天を向き、そして下がる。

 テンションが上がって下がる、見事な感情の起伏を隠しもせずに表に出してみせたトウカイテイオーは、軽く走って憧れへと近づいた。

 

「……カイチョーも見に行くの?」

 

「ああ。君が来ると、昨日聴いたからね」

 

 心配してくれてたんだ。

 夢を叶えられなかったのに。誓いを果たせなかったのに。春の天皇賞で負けてから、合わせる顔がなくて避けてたのに。秋の天皇賞で、あんなに無様に負けたのに。

 

 付いてこいと言われた。よく見ろとも、言われた。そのどちらも、今のトウカイテイオーはできていない。

 

「……いくぞ、テイオー」

 

「う、うん!」

 

 相席に座り、新幹線に揺られる。

 京都への道程の間、シンボリルドルフは無理に話を振ることはなかった。トウカイテイオーもまた、話さなかった。

 

 新幹線も、相席だった。ちらりと見た京都レース場の座席券も、隣の席だった。

 

 ――――見に行きたいと思うって、わかってたんだ

 

 じゃあ、カイチョーにはわかるのかな。なんで、見に行きたいって思ったのか。なんで、それを言い出せなかったのか。

 そんな疑問が噴出したのは、京都に着いてからだった。

 

「……いいのかな」

 

 京都レース場を前に立ち止まって、トウカイテイオーは口を開いた。

 自分でも、自分の何がだめなのかわからない。なぜ、見ていいのかなどと思うのかわからない。

 

「君には見る資格がある。そして、見届けるに足る理由もある」

 

 シンボリルドルフの言葉には、穏やかさがある。そして、甘えを許さない厳しさもある。

 はぐれないように親の後ろを必死で追う子供のように、トウカイテイオーはずんずんと進んでいく皇帝の後ろ姿を追った。

 

(あ、ブルボンだ)

 

 これから挑む坂を、ミホノブルボンは見つめていた。不安もなく、力みもない。理想的な待ち姿。

 

 惜しみなく浴びせられる歓声のやかましさに耳をぺたりと畳んで防音対策を施しつつ、トウカイテイオーは席に座った。

 

「……勝てるかな」

 

 思わず、そんな言葉が口から出た。

 

 ミホノブルボンとライスシャワー。

 スプリンターとステイヤー。

 

 その対比に、自分とマックイーンの姿が重なる。場所も同じ、京都。

 ミホノブルボンがスプリンターでありながら中距離まで完璧に射程に捉えきったことを、今更疑う者はいない。

 

 だが、ステイヤーとしてはどうなのか。長距離を走り切れるのか。最後、脚は鈍らないのか。

 

 ――――距離適性の差が出た

 

 春の天皇賞におけるトウカイテイオーとメジロマックイーンの差を、評論家たちはそう評した。そのことが、今回も起こるかもしれない。

 

「勝てるかどうかは、ライスシャワー次第だ」

 

「五分五分ってこと?」

 

「いや」

 

 ――――ただ、敗けないようにはしているだろう。どちらに転んでも避けようのない選択肢を叩きつけて

 

 誰を指していった言葉なのか。

 それを訊く前に、レースがはじまった。

 

 先頭には、見知らぬウマ娘が立つ。

 彼女がキョーエイボーガンというらしいことを、トウカイテイオーは後に知った。

 

 観客席がどよめきたって揺れるが、走っているウマ娘たちは動揺の色すら見せない。ただひたすらに、ひたむきに、自分にとっての最善を極めて駆けていく。

 

(速いなぁ、あの子)

 

 誰だろう、と思った。

 無論彼女は他ならぬキョーエイボーガンなわけだが、トウカイテイオーはそれを知らない。

 

 ほぼ最高速で突っ走り、第3コーナーを曲がり切る。

 

「キョーエイボーガンの天下は第3コーナーまでだな」

 

「え?」

 

 そういう名前なんだ。そんな思いが吹っ飛ぶほどの、静かな断言。そして、あっという間に第3コーナーに差し掛かるウマ娘たち。

 第4コーナーと同じく、今回もまだキョーエイボーガンが先頭だろう。

 

 そんな観客の予想は、見事に砕かれた。

 

「いけ」

 

 シンボリルドルフは誰よりも早く意図を察して笑い、一言だけ呟く。

 そしてそれに半拍遅れて、トウカイテイオーも気づいた。

 

「いける……」

 

 第3コーナー。

 ミホノブルボンがするりと、内に内にと突っ込もうとしている。

 

「おいおい、仕掛ける気か!?」

 

「あんな速度では最短距離のコーナリングは無理だ! 内に行き過ぎて柵にぶつかるか、外に膨らんで他のウマ娘たちと接触するぞ!」

 

「まだ早いだろ! ボーガンはどうせバテるんだから――――」

 

 否定。否定。否定。

 それらは全て、常識に則った悲鳴だった。因みにミホノブルボンのトレーナーも、このときは組んだ脚がぴょこんと動いた。なにやってんの、と。

 

 彼には戦術眼がない。正確に言えばあるが、判断がおそい。

 巧遅は拙速にしかずという言葉が当て嵌まるレースでは、割と致命的な弱点である。

 

 そんな人々の思いを他所に、サイボーグはその渾名に恥じない正確さでコーナーを曲がり切った。

 なんの無駄もないコーナリング。0.1秒遅くても、0.1秒早くても失敗したであろう完璧なタイミング、理想的な制動。

 

 ミホノブルボンが、先頭に立った。

 

「すごい……」

 

 実力相応の自信。自信相応の実力。

 誰も、彼女が長距離を走り切れるのかなど心配しない程の圧倒的な走り。

 

「テイオー、ここからだ」

 

 もう勝った。

 誰もが確信した瞬間、シンボリルドルフは言った。彼女が本当に見せたいものは、この先にある。

 

 ライスシャワー。執念に燃え、勝利に飢える漆黒の刺客が猛追する。

 夢ではない。目標であり、目的であり、標的であり、壁。打ち砕き、追い越す為だけに走る。

 

(なんで、あんなに……)

 

 あんなに、必死に走れるのか。

 それが、トウカイテイオーにはわからない。かつてわかっていたはずのことが、わからない。

 

 夢。その甘美で残酷に加工された言葉が、彼女の本質を曇らせている。

 

 7バ身。

 6バ身。

 5バ身。

 4バ身。

 

 3バ身。

 

 2バ身。

 

 ――――トウカイテイオーの頭の中で、何かが開いた音がした。

 

「――――来たか」

 

 シンボリルドルフは、笑った。

 ライスシャワーの在り方を見てほしい。それはもちろんながら、目的はもうひとつ。

 

 ――――これで、この世代の領域構築者は3人目。

 

 長距離のライスシャワー、中距離のミホノブルボン、短距離のサクラバクシンオー。

 

 ミホノブルボンは死ぬほどの特訓で、ライスシャワーはミホノブルボンとの土壇場で、サクラバクシンオーはニシノフラワーとの激闘で。

 

 ――――世代の中で1人が目覚めれば、連鎖的に目覚める。

 

(テイオーの世代は、まさしく一強だった)

 

 ミホノブルボンもライスシャワーも、才能ではトウカイテイオーに及ばない。だがライスシャワーにはミホノブルボンがいて、ミホノブルボンにはライスシャワーがいる。

 

 テイオーの世代には良くも悪くも、テイオーの相手になるウマ娘は居なかった。ミホノブルボンにとってのライスシャワーが、トウカイテイオーには居ない。

 

 だからこそ、テイオーは同世代の誰かではなく、マックイーンをライバルに選んだ。しかし対戦経験はたった1回のみ。

 彼女は才能をぶつけ合う、死闘の経験がない。

 

 自分のようなものだと、シンボリルドルフは思う。だからこそ、こうやっていらない世話をやいている。

 生まれたときからある程度は領域に入れていた自分とは違い、テイオーはその片鱗こそ見せているが確固たる領域を持たない。

 

(走れ、テイオー。遮二無二、ライバルと呼べる相手を追え。目的など後で付いてくる。君は本来、そういうタイプだ)

 

 シンボリルドルフというウマ娘に夢を見た。だから走りはじめた、わけではない。

 テイオーは、もともと走っていた。走って、いくつか見えてきた景色の中で、シンボリルドルフを選んだのだ。

 

 だからこそ、ライスシャワーを見て、色々学べるところがある。

 追って、追って、追い縋って。その末に勝っていても、敗けていたとしても。

 

 ライスシャワーの一途すぎる在り方は、トウカイテイオーの為になる。

 似ているのだ。個人を標的にひたすら駆けるその姿が。

 

《3分の壁を超えて! 記録の壁を超えて! 距離の壁を超えて! 常識の壁を超えて! ミホノブルボン! 我が国の歴史に燦然と輝く蹄跡を残す、クラシック三冠が達成されました!》

 

 自分以来の、無敗の三冠。

 思わぬところから生えてきた自分の後継者を祝福するように拍手しながら、シンボリルドルフはトウカイテイオーの方を見た。

 

《勝ち時計2:59:27! 時計はレコード! なんと、またしてもレコード!》

 

「……すごい」

 

「ああ。ライ――――」

 

「カイチョーみたいだった」

 

 ん、と。

 シンボリルドルフは、背中に少し冷や汗をかいた。

 

「テイオー……?」

 

「あ、走り方は違うけど。違うけど、なんか……絶対的な実力差で圧し切る感じが。カイチョーもダービーのとき、囲まれたよね。囲まれて、でも圧し切って。鍵のかかったドアを蹴破るような感じが似てるっていうか……」

 

「テイオー?」

 

「すごいなぁ……」

 

 すごいなぁ、と。ボクにはなれなかったなぁ、と。

 僅かな諦めが含まれたため息が、シンボリルドルフの心に突き刺さる。

 

「テイオー。私はこのレースで、ライスシャワーを見てほしかったんだ。彼女の戦術、彼女の本質こそ、君の新たな走る理由に――――」

 

「……でもボクは、ミホノブルボンになりたかった」

 

 三冠ウマ娘に。

 無敗のウマ娘に。

 力でねじ伏せるウマ娘に。

 距離の壁を超えたウマ娘に。

 

(助けてくれ参謀くん)

 

 ――――無理

 

 参謀くんはそんなこと言わない。

 心の中の参謀くんパペット11号が未来のブルツーのごとく粛清される中、シンボリルドルフは決めた。

 

 ――――これはちょっと、自分の手には負えない

 

 自分なりに考えて、テイオーの夢の原点である自分の走りを見せた。まだまだ未開拓の戦術の幅を見せた。新たな夢と、新たな希望のために。

 

 スピカのトレーナーとも相談した。そして、菊花賞を見たいと言ってくれれば見させてやろうということになった。ライスシャワーの特定の個人を追いかけ回すやり方が、テイオーの原点そのものだったから。

 

 ――――しかし、参謀くんはミホノブルボンのトレーナーだ。テイオーはブルボンにとって油断ならない相手。そんな相手が不調だから手を貸してくれと頼むのは、どうなのか。

 

 だから、シンボリルドルフはがんばった。

 自分にできることはないか。手を変え品を変え、思考を変えて頑張った。ちょっとしたやけ食いもした。

 

 その間にも月刊ターフの乱だとか参謀謹慎だとかあったが、シンボリルドルフはひとりでなんとかしようと頑張った。

 思考の切り替えというものが巧みな彼女は、誰にも悟られずに悩んだ。そして、その結果。

 

「助けてくれ参謀くん……」

 

「お前がそうなるということは、つまり相当まずいところまで来ているんだろうな」

 

「うん……」

 

 色々考えたであろう、ションボリルドルフの威厳のなさ。

 そもそも、ジャパンカップで鉾を交える相手の調子を取り戻すために力を貸してくれというのは、尋常ではない。無論、テイオーの様子が尋常なものではないからこそ、こんなことを言い出したのだろうが、それにしてもおかしい。

 

 問題発生が菊花賞のあと。

 それから今までの間には、マスコミ関連の問題とか謹慎とか色々あった。

 

 その間、努めて表には出さないように、悟られないようにとがんばった結果、無理だったのだろう。

 

「…………」

 

 耳ぺた尻尾ぺた、明らかに元気のないこの皇帝。

 

 無理。そういうのは簡単だ。

 第一なぜ覇を競う相手に、直前に塩を贈らなければならないのか。普通のトレーナーならばそういう。意地悪とかではなく、責任感からそう言う。

 

 助けたいのはわかる。それにしたって越権行為になるが、自分もその一助にはなりたい。

 だがそれも、ジャパンカップやら何やらが終わってからやるべきだ。それが、ミホノブルボンのトレーナーとしての最低限の義務だ。

 

 そのことを、シンボリルドルフが知らないはずはない。なのに、頼んでくる。

 

 ――――これは相当まずいんだろうな

 

 その時点で、なんとなく事態のまずさが察せた。それを、一言で切り捨てるのは気が引ける。

 

「…………俺は今、ミホノブルボンのトレーナーだ。だから直接的になにかをすることはできない。本人はたぶん気にしないだろうがそれでもブルボンに義理を欠くし、スピカのトレーナーに対する越権行為でもあるからな。だが……なぜああなったかの分析くらいなら、してやるよ」

 

「……うん。テイオーを頼むよ」

 

「…………お前も、少しは休め」

 

 こうして、決して別に暇ではない参謀の仕事が増えた。




評価人数が1500人を突破しました。2000人目指して、これからも毎日投稿頑張ります。

感想・評価いただければ幸いです。


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アナザーストーリー:灰の中で

50話目にして正式にナカヨシ√突入

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「参謀くんは大丈夫だろうか」

 

「最近それしか言わないな、アンタ」

 

 ナリタブライアンらしいぶっきらぼうな言い方ではあるが、言っていることは正しい。

 エアグルーヴは、特に何も言うことなく心の中で頷いた。

 

 ここは、生徒会室。専らひとりの生徒会長と、ふたりの副会長が詰めている。

 

「頼んでおいてこんなことを言いはじめるのもおかしな話だが、参謀くんとテイオーの相性は最悪と言っていい」

 

(イイやつがいたか?)

 

 ある程度好意的だったルドルフですら、最初の頃は怪訝な顔をしていた。

 エアグルーヴはサイレンススズカを復活させるまではずっとその手腕を疑っていたし、ブライアンもなんとなく扱いづらいような印象を抱いていた。

 

(まあ、悪いやつじゃないが……)

 

 偏食極まるナリタブライアンの食生活を本人に無理させることなく正道に戻し、自分の身体を破滅させかねない力を制御できるようにする。

 客観的に見て、めんどくさかっただろうと思う。だが、不味いと言って食膳を下げても文句を言わず、食べられるようにして出してくるその根気と献身には一目を置いていた。

 

 だが、好きか嫌いかで言えば嫌いであるという自負がある。

 

 ――――アンタ、いつかは独立するんだろ。私を担当したいから、こういうめんどいことをしてるのか?

 

 才能に耐えうる身体を作る。

 その名目で、かなり早い段階でトレセン学園に入りながらも才能を嘱望されるに留まっているナリタブライアン。

 

 リギル時代のあるとき。

 自分が食べられるように工夫をこらして調理された野菜を口に運びつつ、からかい気味に問うたときにやつは言った。

 

 ――――効果が些細だとしても、それが僅かでもウマ娘のためになるならば『めんどいこと』を避ける理由にはならない。それがトレーナーというものだ

 

 ――――そうかよ

 

 ――――ついでに言えば、担当するなら安定感抜群の姉の方がいい。運命的な何かを感じるし、お前には安定感が無いからな

 

 ――――……そうかよ

 

 いつでもどこでも安定して力を出せるウマ娘が一番強い。そう言っていたし、主張はわかる。

 

 姉を褒められて嬉しい。怪物怪物と持て囃された自分のオマケみたいな扱いを受けることもあった姉を正当に認めるこの男は、実に見る目があるとも思う。

 

 だがそれはそれとして、ぶん殴りたくなる言い回しだった。

 

 そういうやつに、トウカイテイオー――――しかも、凹んだトウカイテイオーとの良好な関係を短期間に築けるとは思えない。

 

 そんな時に、生徒会室の扉をぱかーんと開けて参謀は入ってきた。

 雑な開け方に注意の1つでもしてやろうとして思いとどまるエアグルーヴと、いつものことに動じないが、尻尾だけは少し動いたナリタブライアン。ぴこんと耳が立つシンボリルドルフ。

 

「結論が出た」

 

「はやいな、参謀くん」

 

「早くして欲しかったんだろう。こんな忙しいときに、お前が頼んでくるということは」

 

 ぴょこん、と。またへたれていた鹿毛の耳が天を向く。

 

「結論。お前は別に悪くない。ただ、だめなときは何をやってもだめ。そういうことだ」

 

「私は自己の正しさを証明するために、君にテイオーの調査を頼んだわけではないよ」

 

「知っている。だから、俺なりに原因を調べてきた。スピカの面々にも色々訊いたりしたし、シンボリの家にも訊いた。その結果として言うが、あいつは別に無敗の三冠ウマ娘になりたいわけではない」

 

 ほんまかいな、とでも言うように、シンボリルドルフの尻尾がクエスチョンマークを描く。

 耳と尻尾が完全に管制下から逸脱している珍しい皇帝を見ながら、参謀は口を開いた。

 

「あいつはお前になりたいのだ」

 

「……うん?」

 

「お前が三冠ウマ娘でなくてもいい。お前が皐月賞ウマ娘なら皐月賞ウマ娘に、ダービーウマ娘ならダービーウマ娘に、菊花賞ウマ娘なら菊花賞ウマ娘に。憧れて仰ぎ見たお前になりたいだけだ。ある種のヒーローへの憧れに近い」

 

 だから、ライスシャワーとは違う。

 そう言った参謀に対して、エアグルーヴが口を開いた。

 

「ライスシャワーも似たようなものではないか。あいつも菊花賞ウマ娘になりたかったわけではない。ミホノブルボンに勝ちたかったのだろう?」

 

「違う。ライスシャワーは本人を追っているが、テイオーは影を追う。ライスシャワーは勝ちたいが、テイオーは勝てる自分になりたいのだ」

 

 ライスシャワーは、勝ちたい。無論相手が全力であることに越したことはないが、自分から有利を捨てるような真似をしない。

 

 ――――勝つ。追いつく。追い越す。そのための機会も、場所も選ばない。それが、ライスシャワーの願望の形。

 

 だがテイオーは、場所に拘る。状況にこだわる。こだわってこだわって、その上で勝てる自分でありたいと思っている。

 

「理想を越したいのがライスシャワー、自己を理想に近づけるために走るのがテイオーってことか」

 

「頭いいな、ブライアン」

 

「……フン。まあな」

 

 ?という顔をしているエアグルーヴを他所に、参謀は話を続けた。

 

「スピカのトレーナーに聴いた。あいつは菊花賞に出走できなかった時、こう言ったらしい。無敗の三冠ウマにはなれないけど、無敗のウマ娘にはなれる」

 

 Aにはなれないけど、Bにはなれる。

 これはつまり、Aより落ちるけどBにならなれる、ということである。

 

「無敗の三冠ウマ娘になるのと、無敗のウマ娘であり続けること。これはどちらの方が難しいか。その答えはルドルフ。お前が持っている」

 

「私は無敗の三冠ウマ娘ではあるが、無敗のウマ娘ではない」

 

「そうだ。お前は負けた、凱旋門で。つまり、テイオーはお前が達成した限定的な無敗とお前が達成できなかった永続的な無敗を見て、前者の方が偉大だと思っているわけだ」

 

 これは言葉のあやであると言えるかもしれない。だが、トウカイテイオーにとっては無敗のウマ娘よりも無敗の三冠ウマ娘の方が重かったのは確かである。

 

 どちらも偉大な存在であることは変わらない。

 だが極論三冠ウマ娘になったら負けていい無敗の三冠ウマ娘と違って、無敗のウマ娘は敗北そのものが許されない。

 テイオーが普通に無敗の三冠を目指すだけのウマ娘であれば、無念はあれども無敗であろうとする目標を誇りに思えるだろう。無敗の三冠になり損ねたことを悔いつつも、過ぎ去った夢以上に。

 

「だが、そうはならなかった。それはなぜか」

 

「私が達成したから、か」

 

「そう。あいつはつまり、お前の事績を追いたかったのだ。無敗の三冠になりたかったのではなく、夢見た憧れになりたかった」

 

 ――――シンボリルドルフさんみたいな、強くてかっこいいウマ娘になります!

 

 参謀は知らないだろうが、ルドルフの日本ダービーのあとにトウカイテイオーはそう言った。トレセン学園に入学してすぐ、訪ねてきたときにもそう言った。

 そのどちらにも、彼は居合わせていない。

 

 トウカイテイオーはシンボリルドルフさんみたいな強くてかっこいいウマ娘になりたいわけであって、三冠ウマ娘はそのための手段に過ぎない。

 

 ここが、ミホノブルボンとは違う。

 ミホノブルボンは三冠ウマ娘になりたい。そこに他人は関わらない。誰と戦おうが、なれればいい。

 

 当然ながらライスシャワーとも異なる。ライスシャワーはミホノブルボンのようなヒーローになりたいと思ってはいるが、ミホノブルボンみたいになりたいわけではない。

 

「だがもうクラシック三冠には挑めないだろ。どうするんだ、あいつ」

 

「ブライアン?」

 

「そうだ。なれない。強請っても挑戦権は手に入らんから、あいつは一生シンボリルドルフにはなれないわけだ」

 

「参謀くん?」

 

 思ったことを割とハッキリ言うタイプのナリタブライアンと、単純に人の心がない参謀。

 常識人枠に入る2人が止めるが、参謀は止まらなかった。

 

「で、どうしようとしたか。大阪杯に勝って、トウカイテイオーはたぶん気づいた。このまま勝っても、シンボリルドルフにはなれないと。彼女にとっての『シンボリルドルフみたい』の定義は、無敗でのクラシック三冠が必要不可欠なはずだからな」

 

 であればわざわざ、無敗の三冠ウマ娘などと言わない。

 極端な話、皇帝になりたければ10冠ウマ娘――――今は冠が更にひとつ増えたが――――になればいいのだ。どちらが難しいかはまた別の問題だが。

 

「で、俺はここでテイオーは成長しかけたと思っている。あいつはここで、マックイーンと戦うことを選んだ。初めて、一途に憧れを追う脚を休めて隣を見たわけだ」

 

 無敗の夢を見ているならば、クレバーになるべきだった。マックイーンと戦うにしても、2400メートルか2500メートルまでで戦うべきだった。

 だが、そうしなかった。トウカイテイオーは無敗の夢を達成するよりも、負けるかもしれないマックイーンとの対決を選んだ。

 

 つまり、意識が変わった。トウカイテイオー的には下方修正した無敗の夢を安全に追う自分よりも、夢を追いつつライバルと戦う自分であることを選んだ。

 

 憧れを追う。

 それだけで、トウカイテイオーはダービーまでを駆け抜けた。

 その点では、トウカイテイオーはミホノブルボンに似ている。彼女はダービーまでを、自己完結した世界のままに駆け抜けた。

 両者の差は追うものが生物か、概念であるかというものでしかない。

 

 そんな彼女が、別の道を見た。

 ミホノブルボンにライスシャワーがいるように、トウカイテイオーにはメジロマックイーンがいた。そのはずだったのだ。

 

「だからたぶん、テイオーに挑みかかってくるやつがいれば、あいつが歯牙にかけられるやつがいれば、また変わっていた」

 

「そう確信するわけは?」

 

「ライスシャワーが居なければブルボンは新たな夢を見つけられなかった。おそらくはそれが答えだろうと思う」

 

 ひたすら追うだけの世界に、色が加わった。自分を追ってくる影が差した。

 たったそれだけのことだが、『それだけ』の差は思ったよりも遥かに大きい。

 

「ライスシャワーが居なかったら、菊花賞をもっと楽に勝てていた。だがそのときはおそらく、勝つたびに俺が逐一目標を与えることになっていたと思う。目標を達成しても隣を走る相手を見れば、追い抜かれまいと走る。だがいなければ……」

 

 止まることもある。

 トウカイテイオーの今はそれだと、参謀は思っているらしい。

 

「だから、私ではだめだったわけか」

 

「そうだ。トウカイテイオーの世界に、既にお前はいた。他でもない目標として。だから、他のウマ娘が必要になる。

隣を見ることができれば、偶像化されていない他人を意識することができれば、あいつはすぐに立ち直るだろうと思う。だからマックイーンと走れば立ち直るだろうというのが俺の結論だ」

 

「だが骨折ってるぞ、あいつ。療養のために実家に帰ってるし、まさかテイオーのモチベーションのために治りきってない脚で走れ、ってわけにもいかないだろ」

 

「そう。それはありえない。故障明けの三冠ウマ娘が春天に出て、次に短距離を走るくらいのあり得ん無茶だ」

 

 それはあり得るんじゃないか。

 なんとなくの嫌な予感を感じつつ、ナリタブライアンは思った。

 

「テイオーにはたぶん、色々な経験が足りていない。別にこれは誰のせいでもないし、敢えて言うならば怪我のせいだ。怪我は事故みたいなものだからな」

 

 その言葉を聴いて、ピコンと耳を立たせたエアグルーヴが机を叩くように立ち上がった。

 

「貴様、やっと割り切れたのか! なら……」

 

「いや、スズカのアレは俺のせいだ。謹慎中に色々検証してなお結論を得られなかったが、責任は俺にある。彼女の健康をつきっきりで管理していたし、食事もそうだ。色々と制限した末に何もできないのだから俺が悪――――」

 

「わかった。悪かった。嘴を突っ込んで悪かった」

 

 ならスズカにマトモな手紙でもやれ。謝罪の手紙しか送ってないだろう。そして謝罪の手紙を断られてからは送ってすらいないだろう。

 

 そう言いかけたエアグルーヴの言葉の切っ先を、参謀は平手でハエのように叩き墜とした。

 

「…………そうか」

 

 まだ言い足りないとばかりにやや不満げに謝罪を受ける参謀を見て、思う。

 

 責任から逃げるようなトレーナーより余程好感が持てる。それは確かだ。

 担当ウマ娘が怪我をして、『ああ、運が悪かったね』と。俺のせいじゃないみたいにほざくやつを、エアグルーヴは死ぬほど嫌っていた。カメラのフラッシュとか虫くらいには嫌いだった。

 

 だが思う。やはり、自責の念は時と共にある程度風化させるのも大切だと。

 

「とにかく、テイオーにはライバルが必要だ。別に誰が悪いというわけでもないが、マックイーンが怪我をしたことにより精神の成長が固まりきらない蛹のようになっている」

 

「超えるべき壁でもなく、目指すべきものでもなく、超えたい壁が必要だということか」

 

 テイオーにとっての目指すべきものは、納得したようにそう言った。

 

「この際だから不敬極まりないことを言うが、スペシャルウィークがジャパンカップで負けていたら話は早かったんだ。テイオーはジャパンカップで勝手に復活していただろうからな」

 

「私以来の――――日本勢によるジャパンカップ制覇、か」

 

「そう。そういうシチュエーションのトウカイテイオーはたぶん、強い」

 

 走る理由が、これ以上ないほど明確に与えられる。

 『皇帝以来の』という言葉は、無敗の三冠を為せなかった、無敗ですらいられなくなったトウカイテイオーに走る目的を思い起こさせるだろう。

 その後はどうなるかといえば、多分また燃え尽きることになるだろうが。

 

「で、どうするか。俺はスピカのトレーナーに訊いた。そして、彼の方針が正しいであろうと思う」

 

「……待つこと、か」

 

 待つことがおそらく正しいであろうということは、シンボリルドルフにもなんとなく察せていた。

 だが、ウマ娘の全盛期は短い。不調の海に浸かり過ぎると、身体が不調状況を基準にしてしまうこともありうる。スランプになり、更に悪化することもある。だから、シンボリルドルフは動いたのである。

 

 動き、道を示す。立ち上がれと喝を飛ばす。それが信頼の形であるならば、待つこともまた信頼の形なのだ。

 

「才覚のある人間はなまじ自分に自信があるものだから、待たない。自分の手で状況を打開しようとする。これは如何にもベテランらしい正しい選択ではある、が」

 

 才覚のある、と。

 本来ならば自分の才能を誇るような言葉が、この場の3人には妙に自嘲気味に聴こえた。

 

 それがこの才覚のある人間――――参謀が一度、大きな失敗をしているからだということと決して無関係ではないだろう、と。

 

 もじもじと気まずそうに身をよじるエアグルーヴは、思わずといった感じに耳を畳んだ。

 

「それがいつかは、わからないということだな?」

 

「そうだ。本人が参って、復活する前にやめてしまう。そういうこともありうる」

 

「対策は」

 

「ある。だがその前に、聴きたい。テイオーは菊花賞を見て、なんと言っていた?」

 

 シンボリルドルフの右耳だけが器用に畳まれ、彼女の耳につけられた明哲な智性を表しているような水晶が鳴る。

 自分の失敗を悔いているのか、或いは痛々しくてみていられなかったのか。

 

 たぶんどちらもだろうと、ふたりの副会長は察する。

 一方、参謀はシンボリルドルフの表情にあまり興味がなかった。彼の注意と興味は、シンボリルドルフの言葉に集約されていた。

 

「ミホノブルボンみたいになりたかった、と。そう言っていた」

 

「ボク、ライスシャワーみたいに頑張るよ、とは言わなかったんだな」

 

 妙に独特の韻を踏んだ声真似がうまい。

 たぶん歩く蓄音機のような正確なリピートをするミホノブルボンの影響だろうと、シンボリルドルフは看破した。

 

「そう言っていたら、私は君に頼まないさ」

 

「言葉を返すようで悪いが、そう言っていたら割と取り返しがつかなかったと思うぞ」

 

「……どういうことだ?」

 

 シンボリルドルフが思考に耽っている中で、エアグルーヴは思わず疑問を口に出した。

 

「つまりそれは、次の目標を見つけられた。ウマ娘が走るには、夢が要る。その足りなかった物を得られた。そういうことだろう?」

 

「お前、バカだな」

 

 かつての口癖がポロッと口をついて出た。

 ムッとするエアグルーヴから視線を流してルドルフの方を見るが、無反応。余程熱心に思考をしているらしい。

 

「……本質が変容する可能性があった、ということか」

 

 パチン、と。妙に乾いた音が鳴る。

 参謀が、指を鳴らした音だった。

 

「その通り。頭いいな、ルドルフ」

 

 パタパタと、もう大反乱を通り越して無政府状態の尻尾が揺れて耳が立つ。

 

「トウカイテイオーの本質は、理想を追いかけること。理想の自分に躙り寄り、肉薄し、己の夢を極めることだ」

 

「現実の物を追いかける夢とテイオーのそれに、貴賤はない。だがテイオーの理想へのこだわりは、たった一度のレースを見て覆せるほどのものではない。それが変化したとなれば――――」

 

 それは、諦めである。今の自分には今までの夢を追うのは無理だと言う諦めから生まれた、明確な劣化だと言える。

 そうすればトウカイテイオーはそんな思いを無自覚に抱えながら走ることになる。

 

 そして、一度砕けた理想は戻らない。覆水が盆に帰らないように。

 

「となると、案外解決は早い。つまり――――」

 

 ミホノブルボン。自分には為せなかった無敗の三冠ウマ娘。ライバルにするには、これほどふさわしい相手もいない。

 主戦とする距離も同じ。となればうまくすれば、トウカイテイオーはミホノブルボンに勝てる自分という理想を目指して駆け出せるかも知れない。

 

 ――――ミホノブルボンになりたかった

 

 シンボリルドルフには絶望と諦めとしか見えなかったそんな言葉の中には、トウカイテイオーがトウカイテイオーたる所以が、理想への尋常ならざる執着が未だ健在であることが見え隠れしている。

 

「それで! ブルボンの調子はどうなんだ!?」

 

「聴きたいか」

 

「ああ!」

 

 頷くルドルフ。

 

 ミホノブルボンが好調であればあるほど、トウカイテイオーが復活する可能性は高くなる。今の自分では叶わないと思えば思うほど、彼女は努力の方向性をより具体的に定めることができる。

 

 ――――高い理想に挑むことこそ、トウカイテイオーの本質なのだから。

 

 そんな彼女に言って聞かせるように、参謀は言った。

 

「目下、【サイボーグ】ミホノブルボンは史上最高に絶不調だ」

 

「……絶不調」

 

「そう、絶不調。だが絶不調なら絶不調なりの戦い方がある」

 

 そう言って、資料を卓上に置いて身を翻す。

 

「参謀くん!」

 

「なんだ?」

 

 振り返る、その横顔。

 

 たぶん寝る間も惜しんでいたであろう彼の背中に、シンボリルドルフは心からの感謝の言葉を投げた。

 

「ありがとう。心から、君に感謝する」

 

「お前は俺の皇帝だろう」

 

 理想に先鞭をつけたもの。思想の共有者。

 おそらくその意味で言われたであろう言葉に、シンボリルドルフの身が引き締まる。

 

「臣下というものは、主君のために身を擲つことを躊躇わないものだ。今はそれはできないが……それでも多少の献身くらいは、な」

 

「……ああ。私は、君に相応しい皇帝でいよう」

 

「元々だろ」

 

 目に強さが戻った皇帝と、去り行く参謀。

 

(なんでなんだろうな)

 

 二人を改めて思ってから、ナリタブライアンはそう思った。



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サイドストーリー:弊害

前回のあらすじ:皇帝ナカヨシ√突入
今回のあらすじ:がんばれブルボン君2号

123G兄貴、白河仁兄貴、光に目を灼かれたペニーワイズ兄貴、ゴンSAN兄貴、朱鯉兄貴、すまない兄貴、志玖兄貴、ホモ兄貴、ぺろぺろんちーの兄貴、宗谷みさき兄貴、Hotateman兄貴、kayui兄貴、mtys1104兄貴、さんまたべたい兄貴、レイヴン兄貴、初見兄貴、raglaner兄貴、ホルムズ海峡兄貴、うまだっち兄貴、ガンバスター兄貴、zenra兄貴、tukue兄貴、金曜日兄貴、烏のつぶらな瞳兄貴、ブブゼラ兄貴、ありゃりゃりゃ兄貴、ベルク兄貴、みさち兄貴、とーか兄貴、T.C兄貴、RS隊員ジョニー兄貴、asai_n兄貴、かぶと兄貴、夕莉兄貴、ダンシング・オブ・超兄貴、レンタカー兄貴、サガリギミー兄貴、百面相兄貴、夏野彩兄貴、ニキータの店兄貴、FROSTY=BLAKK兄貴、ワットJJ兄貴、必勝刃鬼兄貴、乱読する鳩兄貴、yumeinu兄貴、蒸気帝龍兄貴、がんも兄貴、春都兄貴、クリストミス兄貴、石倉景理兄貴、Jupiter兄貴、星ノ瀬竜牙兄貴、ピノス兄貴、Prem兄貴、あqswでfrgt兄貴、fumo666兄貴、ラース兄貴、ESAS兄貴、ローレス兄貴、ぬー$兄貴、rairairai兄貴、葵い兄貴、名無し兄貴、なのてく兄貴、ピノキオ兄貴、曼陀羅兄貴、ライセン兄貴、ユウヨコヤ兄貴、hnzr兄貴、たきょ兄貴、迫る影兄貴、マイクだゴルァ‼兄貴、ハガネ黒鉄兄貴、さか☆ゆう兄貴、ふれんち兄貴、ガトリング・ゴードン兄貴、ととと兄貴、主犯兄貴、一般トレーナー兄貴、くさんちゅ兄貴、アパラッチ兄貴、通りすがりの鳥兄貴、すらららん兄貴、バナナバー兄貴、雪ねずみ兄貴、感想ありがとナス!


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 ――――どうにも、調子がよろしくない

 

 自分で自分が制御できないという感覚を、ミホノブルボンは今まで味わってこなかった。

 

 走る相手が気になる。隣を駆けられると気が散る。ただひたすらに前を見つめる『いつも』ができない。

 

 隣を走るウマ娘が気になる。ペースを維持できない。燃え上がるような闘志が、彼女の身体を灼いている。

 

 ミホノブルボンは、絶不調に喘いでいた。

 ぜぇぜぇと苦しげな息こそ漏らさないものの、明らかに苦しんでいる。自分の戦い方を見失っている。

 

 それが闘争心――――本来ならばウマ娘にとっては生まれたときからの隣人であり良き友であり、味方になってくれるはずの感情――――によるものだということを、殆どのウマ娘は知らない。

 知らないが、知っているべき人間は完璧に把握し切っていた。

 

 ――――これは難しいだろうな

 

 たぶん掛かるし、最悪出遅れる。

 

 坂路でキョーエイボーガンとミホノブルボンが抜きつ抜かれつ走っている様を見て、参謀は冷静にそう思った。

 

 ミホノブルボンが抜かされればキョーエイボーガンを抜かし返し、抜かし返されたキョーエイボーガンはスタミナが尽きる前までまたもや抜かし返す。

 結局スタミナに勝るミホノブルボンが抜かし合いを制したものの非常に疲弊したようで、息が荒い。

 

 ツインターボと、ライスシャワーと、キョーエイボーガンと。

 3人分の坂路練習をこなしていたとはいえ、ミホノブルボンにしては疲労の色が濃い。

 

「マスター。坂路併走、完了しました」

 

「ああ、見ていたからわかる。キョーエイボーガンもな」

 

「は、はいっ!」

 

 疲労で尻尾を下げながらもギッコギッコと帰っていくキョーエイボーガンとそのトレーナーに練習レポートを持たせて見送り、ミホノブルボンにはいつも通りにクールダウンさせてマッサージを施す。

 

 明らかにおかしいミホノブルボンに対して、参謀は何も言わない。

 ミホノブルボンも、何も言わない。

 

 そんな二人を見かねて、とある男が参謀を呼び出した。

 場所は、行きつけのバー。落ち着いた雰囲気のそこは、トレセン学園関係者に好んでよく使われている。

 

「お前さ。大丈夫なわけ?」

 

 将軍はあまりにも不動を貫く男に――――釈迦に説法するようなもんだと思いつつも、問うた。

 

「シンボリルドルフの頼みを聞くのもいい。トウカイテイオーのために東奔西走するのもいい。だが一番大事なのは、担当ウマ娘のことだろ」

 

 別に責めてるわけではない。ただ単純に、この男には抱え込みすぎる悪癖がある。

 

 少年的万能感、とでもいうのか。自分の限界を決めず、やればできると考えている。

 実際、そうだ。この男がやる気になれば大抵のことはできるだろうし、時間さえあれば皇帝の補佐とトレーナー業の二足のわらじを履けるだろう。

 

 だが時間、如何な超人であっても一日として与えられる時間は24時間、1440分である。

 ミホノブルボンのために使う時間を削る、ということはしないはずだから、必然的に睡眠時間を皇帝の補佐のために捧げていることになる。

 

「お前はそんなに身体は強くない。ある程度優先順位をつけて動いても、誰も責めやしないさ」

 

 これが平常時ならば、こんなことは言わない。ただ、ジャパンカップの前である。

 至極当たり前なことだが、ジャパンカップとはGⅠなのだ。しかも国際GⅠ――――国際的にそのレベルと価値が認められた最高峰のレース。

 

 そんな一大決戦を前にして、トレーナーが倒れでもしたらミホノブルボンの無敗伝説はそれまでである。

 

「お前は何でも一人でやろうとするが、そんなことではなんにもできずに消耗するばかりだぞ」

 

 少年的万能感の最たるものが、サイレンススズカの一件だろう。

 

 あれは、完璧に事故だった。

 

 東条ハナ、スピカのトレーナーも、カノープスのトレーナー。トレセン学園でチームを率いる一流どころが、この男の管理体制に間違いなかったと太鼓判を押したし、だからこそあまり気負いすぎるなと助言したりもした。

 

 だが、参謀はそうは考えなかった。自分のせいだと思った。

 無論それは、悪いことではない。担当ウマ娘が怪我をすれば――――交通事故とか自分ではどうにもならないところで怪我をしない限りは――――重みの多寡の差こそあれ責任を感じる。トレーナーとはそういうものだ。

 

 だが、それにしても度が過ぎている。

 連闘させた、身体が弱いのに無理をさせた、練習をさせ過ぎた、調子が悪いのに走らせた。そういうことならば、自分を責めるのもわかる。

 

 だが、そうではない。レースに耐えうる身体を作って、連闘など無論させていない。練習も適切なものだったし、調子は限りなく最上と言ってよかった。

 

 それでも自分に責任を求めるところに、将軍としては危うさを感じる。自分で何でもできてきた男の、そして何でもできかねない男の危うさを。

 

「別に手を抜いているわけではないぞ」

 

「知ってるよ、それは」

 

「それに、何でもできるとは思っていない。できる範囲に、やれることが多くある。だからやっている。それだけだ」

 

「それを言われると返す言葉もないな」

 

「そういうお前は、どうなんだ」

 

 菊花賞で無理をしたツケがきてるんじゃないか。

 

 近頃併走を早めに切り上げていたからか、それとも単純に洞察したのか。

 そのあたりはわからないが、参謀の見る通りにライスシャワーがやや調子を落としているのは確かである。

 

「ライスはちょっと実戦はお休みだ。菊花で全力を出し過ぎた」

 

「まあ……ジャパンカップは無理だろうな」

 

 後先を擲った決意の直滑降。

 小さく可憐で愛くるしい見た目とは裏腹の勝負への情熱、勝利への執念、最後まで競り合って名勝負を生み出した――――彼女は勝つためにやっていたわけで、実に上から目線の評価だが――――ことへの評価も相まって、ライスシャワーの人気はかなり高くなっていた。

 

 まあブルボンとの兼任ファンというのが多い形になるが、街で声をかけられることも増えて、ライスシャワーは少し喜んでいる。

 

「だが、有馬はどうだ」

 

「ファン投票で出られそうなところ悪いけど、出ない」

 

「余程か」

 

「……無理させたくないんだよ。なんかミョーに落ち着いてるし、色々と足りないところもわかったから、今年いっぱいは休み。次はたぶん、目黒記念かな」

 

 11月8日の菊花賞から、2月21日の目黒記念まで休み。

 結構思い切った判断に、参謀は思わず言いかけた。

 

 ――――休むのはいいが、久々の実戦で脚を掬われるなよ、と。

 

(釈迦に説法だな……)

 

 久々の酒で、東条隼瀬は喉を潤す。

 寝れないとき、酔わない程度に程々に飲むくらいだったが、最近寝れないことは少なくなった。

 

「で、ブルボンはどうなんだ」

 

「ああ……見たらわかるか。お前なら」

 

「当たり前だ。ラップ走法、最近できてないだろ」

 

 いつでもできないというわけではない。ひとりで走っているときは、相変わらず正確な時を刻んで走れている。相変わらずどころか、正確さは増していると言っていい。

 

 だがそれはあくまでも単走だとの話。併走になると、乱れる。

 恐ろしく当たり前なことだが、レースとは単走というよりも併走に近いわけで、このままでは実戦でラップ走法を使用できない、ということになる。

 

「そうだろうが」

 

「まあ、そうなるだろうな」

 

 別にしなくてもいいじゃん。

 何も知らない人間ならば、こう言うだろう。

 

 東京芝2400メートルのレコードを保持しているのはミホノブルボン(ダービーのすがた)なのだから、ラップ走法に拘らずとも先頭を走らせてガンガンいけば勝てるだろ、と。

 

 だが、そうではない。

 ミホノブルボンがいつもはスタミナ上限値『100』の内『5』を使ってスピードの上限値『100』の内、『80』を出しているとする。

 

 では彼女は、スタミナを『10』使えば『160』出せるのか。

 答えはノー。『100』すら出せない。『100』とはつまり上限の上限であり、『100』を出すには『20』くらいのスタミナを必要とするのだ。

 

 ミホノブルボンは、効率厨である。というかミホノブルボンのトレーナーが効率厨である。だから彼女は常に、勝てるであろうタイムを導き出し、逆算して最も燃費のいい速度で走る。故に結果的にタイムがある程度一定になり、これを人はラップ走法と呼ぶ。

 

 だが今は、その最効率を維持できない。

 追いつかれそうになればスタミナを湯水の如く注ぎ込んで逃げ、注ぎ込んでは逃げる。

 併走でのミホノブルボンは、それを繰り返していた。

 

「あんな走り方してると、2400メートルでもスタミナが尽きるぞ」

 

「まあ、そうだろうな」

 

「そうだろうなってお前……負ける気か?」

 

 別にこの男は、負けを忌避するわけではない。負けが糧となるなら、負けるかもしれないレースにも出す。

 それが東条隼瀬という男ではあるが、そう一筋縄ではいかないやつでもある。

 

「負けね。まあ、負ける可能性が高いのは確かだ。だが勝てないわけではない」

 

 くいっと、実に上品に小さなグラスに満たされた酒を飲み干す。

 

「なんでラップ走法ができなくなったか。そのあたりもわかるし、解決策もある。というか、俺はあいつの体内時計を信じているが、絶対視はしていない。人間だから不調もあるし、掛かる時もある。好調ならまず狂わないし、信頼できる。その程度さ」

 

「最強の走法だとか言われてるけどな。世間では」

 

「フフ」

 

 笑うのは、珍しい。酔っているのか、そうでないのか。

 病理的な肌の白さを持つこの男は、酔っても肌に赤みが差さない。

 

「最強など存在しない。長所が反転すれば短所になるように、短所も反転させれば長所になる」

 

 ラップ走法の弱点は、格上に対応できないことである。

 事前に設定したタイムを達成すべく逆算して1ハロンごとにかかる時間を割り出す。割り出し、ひたすらにそれを遂行する。

 

 それは、自己完結した走りだと言える。ライバルを見ない、他者を必要としない走り。

 ミホノブルボンは、立て続けにレコードを出した。それは無論彼女の傑出した実力によるものだが、決してそれだけではない。

 

 ――――安定感。それによるものだ。

 

 日々の調子。ライバルの調子。心持ち。闘争心。ミホノブルボンはそういったものに左右されない。いつどこで誰と走っても、似たようなタイムを出す。出せるように、この男がした。

 

 本来ならばそういったもので、ウマ娘たちは実力以上の力を発揮することがある。直近の例では菊花賞のライスシャワーなど、明らかに実力を逸脱した力を発揮していた。

 

 これは、不安定だと言える。ライスシャワーの場合、ライバル認定した相手が不調だと自分もそれに合わせて不調になり、共にズルズルと沈んでいく。

 だがライバルが絶好調であった場合、ライスシャワーは自分の身の丈を超えて飛翔できる。

 

 つまりライスシャワーには、相手次第なところがあるのだ。

 安定感に欠け、負けるときには信じられないくらいコロッと負ける。だが、格上には実力以上の力を発揮して立ち向かう。

 圧倒的な格上キラーというべきか、それとも主人公タイプというべきか。

 

 一方で、ミホノブルボンにそれはない。彼女は絶対に格下相手のレースを取りこぼさないが、自分の実力以上のものは出せない。自分より強い相手には勝てない。

 

 ――――自分の実力を超えない。無理をしない。

 

 それが、今までのミホノブルボンの――――ラップ走法の弱点。

 この弱点を、参謀は力技で解決した。自分より弱い相手に確実に勝てるならば、ミホノブルボンを一番強いウマ娘にすればいいのである。

 

 その単純極まりない理論に、ライスシャワーは敗れた。

 

「あいつは今、自分の中で生まれた闘争心に戸惑っている。俺が与えたラップ走法という武器を信じていても、闘争心が影響を及ぼす自己の体内時計、時間感覚を信じられていない。これらは無論、ラップ走法の根幹となるものだ。だから、めちゃめちゃな走りをしている」

 

 追加の酒を一口飲み、参謀は半ば笑ったようなため息をつく。

 

「ラップ走法は結果から逆算する走り方だ。故に出遅れたり掛かったりすると計算が狂い、タイムが狂い、負けに直結する。そして今のあいつは掛かりやすい。ま、ラップ走法の使用は難しいだろうな」

 

「じゃあどうすんだ」

 

「お前ならわかるよ」

 

「俺はレースに際してじゃないと頭が回んな――――」

 

 先を話せと急かしかけ、黙る。

 これまでの、ミホノブルボンの走り。不自然な片鱗。

 アレは、自分を惑わすためだと思っていた。勝つために最善を傾けるこの男が自分の心を揺らがせるために、かつてのトラウマを想起させるためだけに仕込んだ牽制だと。

 

「……向き合うのか、お前」

 

 ダービーで、ミホノブルボンはその予兆を見せていた。しかしあれは、ブラフだろうと思った。現に、菊花賞では使ってこなかったことから、ほぼ忘れかけていた。

 

「あの走法自体は、間違っていない。謹慎期間中に見返して、そう思った」

 

 問題はそれを、如何に運用するか。ウマ娘自身の負荷を減らせるか。

 確かに、ミホノブルボンは今調子を崩している。長所たるラップ走法が使い物にならない。短所が剥き出しになっている。

 

 だが、だからこそできることもある。

 

 傍らに置かれたブックケースから無垢なホワイトスノーの色が、ちらりと顔を覗かせていた。




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サイドストーリー:MT対決!

前回のあらすじ:がんばれブルボン君2号
今回のあらすじ:ヒクツテイオー

123G兄貴、白河仁兄貴、さんまたべたい兄貴、ナカカズ兄貴、大迫傑がんばれ兄貴、ガンバスター兄貴、にじ好き兄貴、ホルムズ海峡兄貴、yumeinu兄貴、佐伯 裕一兄貴、べー太兄貴、済まない兄貴、夏野彩兄貴、レイヴン兄貴、ほっか飯倉兄貴、ラプソディ兄貴、ユーギ兄貴、hnzr兄貴、にゃるが兄貴、ポニー級兄貴、かぶと兄貴、ブブゼラ兄貴、夕莉兄貴、七夜兄貴、ワットJJ兄貴、レンタカー兄貴、なのてく兄貴、光に目を灼かれたペニーワイズ兄貴、必勝刃鬼兄貴、はやみんみん兄貴、ライセン兄貴、fumo666兄貴、A-10 thunderbolt Ⅱ兄貴、卵掛けられたご飯兄貴、zenra兄貴、ニキータの店兄貴、クランプ兄貴、すらららん兄貴、ころに兄貴、torin兄貴、終焉齎す王兄貴姉貴、バナナバー兄貴、蒸気帝龍兄貴、Eddie_Sumile兄貴、ガトリングゴードン兄貴、修羅場になりそう兄貴、初見兄貴、くぅらる兄貴、レオニ兄貴、ピノキオ兄貴、mtys1104兄貴、障子から見ているメアリー兄貴、大蛇丸兄貴、ハガネ黒鉄兄貴、サガリギミー兄貴、ESAS兄貴、主犯兄貴、ザコーネ兄貴、ラース兄貴、葵い兄貴、迫る影兄貴、KAIKI兄貴、ながもー兄貴、はせがわわわわ兄貴、星ノ瀬竜牙兄貴、ウツロイド兄貴、志玖兄貴、noxlight兄貴、感想ありがとナス!

cot兄貴、Gr0ssu1ar兄貴、ばんとけん兄貴、カシナートの剣兄貴、かめいまる兄貴、rakun兄貴、サージ兄貴、カールセーガン兄貴、紋白兄貴、きょーらく兄貴、tyofez兄貴、炭田兄貴、ナーバス兄貴、評価ありがとナス!


 トウカイテイオーは、毀誉褒貶が激しいウマ娘である。

 

 なにせ、実力が評価しにくい。

 シニア級1年目でそう判断するのも早計というものだが、彼女の世代がどうやら弱いらしいというのは、なんとなく観客たちにもわかってきた。

 

 もっともこれは現在の環境が地獄以外の何物でもない(そして地獄を統べる皇帝もご帰還あそばされている)ことから、仕方ないと言う意見も多い。

 

 そして、トウカイテイオーは世代の中で間違いなく傑出した存在である。彼女の実力は、シニアに蔓延る化け物共と比較しても遅れを取らない。

 現にトウカイテイオーは、復帰戦で大阪杯を勝っているのだ。

 

 その後は最強のステイヤーと名高いメジロマックイーンに春の天皇賞で負けて怪我をし、怪我明けには皇帝ことシンボリルドルフに秋の天皇賞で負けた。

 これは、相手が悪いとしか言いようがない。だが、真に一流のウマ娘は相手を選ばないというのもまた確か。

 

 よってトウカイテイオーは、過大評価と過小評価しかされていない。

 

 しかし1つだけ、過大評価する者も過小評価する者も、口を揃えて言うことがある。

 

 それは彼女が、人気者だということ。

 そして、ミホノブルボンと――――菊花賞まではテイオー以来の無敗の二冠、と持て囃されていた後輩と、否が応でも比べられるということだった。

 

 TM対決。

 

 それは春の天皇賞前、トウカイテイオーとメジロマックイーンの対決を――――無敗のウマ娘と天皇賞連覇のかかるウマ娘の対決を劇的なものとするためにつけられた呼称。

 MTではなくTMなところに、トウカイテイオーへの期待が感じられる。

 

 では今回のジャパンカップは、なんと呼ばれていたのか。

 猛者揃いの外国勢が来たが、その強さは一般人たちには伝わり難い。宣伝には使いづらい。故に、MT対決。

 

 Mの中身が変わったが故か、それともトウカイテイオーへの世間の評価が変わったが故か、或いはアルファベット順という規則に則ったのか。

 トウカイテイオーとミホノブルボンの対決は、ひっくり返してそう呼ばれていた。

 

「俺はお前を信頼しているし信用している」

 

 国際GⅠとなって初。

 いろいろなお題目が掲げられているが、ミホノブルボンとしてはやることはいつもと変わらない。

 

 ただ、走る。それだけのことである。

 

「だが、盲信はしていない」

 

 掌を教杖でリズム良く叩きながら、参謀は言い切った。

 本日行われるレースはジャパンカップ。ここはその控え室である。

 

「ブルボン」

 

「はい、マスター」

 

 闘争心を御しきれていない。そんな不安はありつつも、ミホノブルボンはこのレースの先行きをあまり不安視していなかった。

 

「お前は今、ラップ走法を使えない」

 

「はい。現在の私には体内時計の狂い及び、闘争心の増大による冷静さの欠如が確認されています」

 

「その通り。しかし、闘争心が無駄なものであると思うか?」

 

 闘争心。

 ミホノブルボンにとっては、邪魔ではある。信頼するマスターと二人三脚で作り上げたラップ走法を阻害するバグデータ。

 

「過剰な闘争心は邪魔だと感じています。しかしライスを見るに、無駄なものであるとは思いません。マスターが仰っていたように、削減が必要になるにしてもいずれ必要になるものだと信じます」

 

「過剰、邪魔か」

 

「はい。マスターは、そうは思われないのですか?」

 

「ああ。むしろこれは、天恵だと考えている」

 

 コンコンと控え室に設置されたホワイトボードを教杖で叩き、参謀は常と変わらないミホノブルボンを見下ろした。

 

「君は格下には負けない。だが、格上には絶対に勝てない。それはなぜか。それは、俺が君の身体にあった限界を規定し、その範囲で走らせているからだ」

 

 ウマ娘に限らずアスリートは、ライバルを目の前にすると今までの自分を超えられる。

 調子、モチベーション、対抗心。加えて、天候や運。それらをすべて兼ね備えてスタートラインに立ち、走る中で自分を超えて、やっと出せるのがレコードというものである。

 

 それを、ミホノブルボンは地力をひたすら伸ばすことによって獲得した。

 

 ――――1ハロン何秒。全体で何秒。

 

 ミホノブルボンは参謀からのその指示を、工作機械のように守ってここまで走ってきた。

 その理由はたった一つ。レコードを叩き出せば負けないから。歴代で1番速く走れば、負けないから。

 

 だが、その想像をライスシャワーは超えてきた。菊花賞でのライスシャワーのタイムは、ミホノブルボンに僅かに及ばない。及ばないが、それまで刻み込まれてきたどのレコードより速かった。

 というか最後まで自分のペースを守り、自身の戦法に殉じた――――そしてゴールと同時にぶっ倒れる程に駆けた3位のマチカネタンホイザですら、菊花賞の旧レコードより速かった。

 

 つまり、今年の菊花賞での3位はイコール、日本トゥインクルシリーズ史における3000メートル歴代3位の記録でもあったのである。

 

 GⅠで2位に終わったチャレンジャーを指して、去年なら勝ってるとファンが言うのはよくある。

 去年の菊花賞がトウカイテイオーという主役不在のレースだった、ということもあるだろうが、3位を指して、去年ならぶっちぎりで勝ってたと言われるのも珍しい。それくらい、レベルが高いレースだったのだ。

 

「身体が出来上がっていなかった。リスクを踏む必要を感じなかった。怪我をしてほしくなかった。だがウマ娘にとってなによりも大事なことは、勝利だ」

 

 走り、戦って勝つ。

 不屈の精神、闘走本能。走って勝つことを、ウマ娘たちは何よりも至上のものと捉えている。

 

 それはミホノブルボンという感情が希薄なウマ娘にとっても変わらない、絶対不変の原則だ。

 

「菊花賞で、レコードを出せば勝てるという戦法は根底から崩れた。そしてこれからシニアクラスに進めば、自分の走りをさせてくれない、できないという場合も出てくる」

 

「秋天でルドルフ会長がやっていたようなことが横行している、ということでしょうか」

 

 両隣を意図的に掛からせてファンネルミサイルのように逃げウマ娘の前に飛ばし、開幕のスタートダッシュを封じて中盤からレースを支配する。

 

「あんな世紀末を現出できるのはあいつだけだ。だがまあ、それに近いことをできるやつもいるし、単純な実力で焦らせてくる相手もいる」

 

「あれはシニアにおける日常ではなかったのですね。少し安心しました」

 

「まあ、シンボリルドルフの日常ではある」

 

 ルドルフの本質が支配であることは、なんとなくわかる。無意識な君臨者。天然の絶対者。

 その本質を自覚しながら、併せ持って生まれたであろう鋼鉄の理性で他者のために献身する姿を美しいと思った。

 

 勝利し、支配する。幼い頃に見た、理性の欠片も感じられず本能のままに走る姿と同じくらいに。

 

 ともあれ、彼女は存在自体が世紀末なウマ娘である。

 そんなやつがいるシニアクラスに挑む以上、これからはラップ走法一本槍では勝てない。誤算無しで突っ走れたクラシッククラスとは違い、これからは海千山千のシニアクラス。誤算でも出てくるだろうし、そのための対処法を確保しておかなければならない。

 

「話が逸れたので戻すが、君に必要なのは二の矢だ。これから長く走るにあたって出遅れることもあるし、掛かることもある。ペースを守れなくなるような状況に陥ることもある。或いは、ペースを守っても勝てないこともある」

 

「私は誂え向きに、得るべきときに得るべき武器を手にした、ということでしょうか」

 

「ああ」

 

 実のところ、今でなくとも良かった。

 だが彼女が闘争本能をいやなものとして見ている以上、まずは肯定してやらなければならない。

 

 拒否している限り、忌避している限り、闘争本能を従えることなどできはしない。

 

「君に芽生えた闘争本能……いや、闘走本能、かな。これを利用した、作戦を説明する」

 

 闘走本能への忌避感。嫌悪感。拒否感。

 この世界で一番信頼するひとから肯定されたことに、それらの異物を押し出すような悪感情が消えていく。

 

 天性の単純さで、ミホノブルボンはまっしろな心で作戦を聴いた。

 

 

■■■

 

 

 ジャパンカップ。

 シンボリルドルフがかつて制覇し、日本のトゥインクルシリーズが世界に通用するものだと証明したそのレースに際しても、トウカイテイオーの心は浮かなかった。

 

 無敗の三冠。ジャパンカップ、有馬。

 かつて皇帝が歩んだ道を駆ける、寒門出身のシンデレラ。

 

 皇帝のトレーナー、リギルの総帥、東条ハナ。彼女の甥に導かれて、同じような道を歩む。その姿には、民衆の好むストーリーがある。

 

 ひとりで、パドックに続く暗い通路を進む。

 

(あ……)

 

 暗さの中で、青い瞳が瞬いた。

 通路を抜けた先に居るのは、ミホノブルボン。

 

「おはようございます、トウカイテイオーさん。本日の天気【快晴】。芝の状態【良好】。やや肌寒いですが、走るには快適な環境かと」

 

「う、うん」

 

 律儀に先輩――――学年ではなくメイクデビューした順、という意味で――――に頭を下げて挨拶するミホノブルボンの眼には、闘志がある。誰にも負けないという意地がある。

 

 夢を叶えたからかな、と。トウカイテイオーはそんなことを思った。

 今の自分にはない闘志は、夢を叶えたからこそのものだろうか、と。

 

「……あのさ」

 

 パドックまでの道程。観客の大歓声を受けながら芝を踏み、歩く。

 そんな最中で、トウカイテイオーはおずおずと口を開いた。

 

「三冠ウマ娘になって、どういう気分?」

 

「【達成感】を得られました」

 

「うん……そりゃまあそうだろうけどさ……」

 

 話すのは、これが初めてになる。

 質問の内容がよろしくなかったとはいえ、トウカイテイオーとしては三冠ウマ娘になって変わったこと、見える景色の変化を聴きたかったのだ。

 

 達成感を感じた。それは全くそのとおり。夢を叶えていない自分にだって想像がつく。

 だが、それ以外になにかあるのではないかと、トウカイテイオーは思っていた。

 

「夢をさ。叶えたじゃん」

 

「はい」

 

「ブルボンも、小さい頃からの夢だったんでしょ?」

 

「はい」

 

「じゃあ、なんで走るの?」

 

 言っておいてなんだが、これはまずいんじゃないか。トウカイテイオーの常識的な部分が、そう諭す。

 夢を叶えたのになんで走ってるの?という風にも聴こえるし、なによりも言葉に棘がある。コミュニケーション強者の彼女からすれば、その機微は当然感じられるものだった。

 

「夢があるからです」

 

「……叶えたでしょ。クラシック三冠」

 

「夢は形を変えていきます。トウカイテイオーさんも、そうだったのでは?」

 

 去年のだいたい今頃、表彰式のとき。

 

 ――――私は春の天皇賞、連覇を目指しますわ!

 

 そう言ったマックイーンの方を見て、自分は言った。

 

 ――――僕も目標は無敗でーす

 

 確かに、変わった。そう言えるかもしれない。だがそれは、変わったというより変えざるを得なかったのである。

 翼の生えた夢が片翼だけになり、よちよちと歩くだけの存在に成り果てた。だから、それでもできる夢を語った。

 

 それが変化ではなく劣化であることを、他でもないトウカイテイオーが一番よく知っている。

 

「夢って、なに?」

 

「私は然程恵まれた血統ではありません。それは生まれる以前に積み上げられたものがないということです。そして、才能にも然程恵まれていません」

 

 ――――お前には才能がない。

 

 一途に夢へとがんばっている人間が聴いたら割と心にダメージを喰らうようなことを、ミホノブルボンは8日に1回は聴いている。

 

 ミホノブルボンには、スプリンターとしての才能しかない。故に中・長距離ウマ娘としての才能は皆無、絶無であるというのは全く以て事実ではあるのだが、真実は時に人を傷つけるものである。

 

 反発とか、悔しさとか、怒りとか。

 

 そういったものとミホノブルボンは無縁だった。

 そうだろうなと思うし、持って生まれなかったものを残念だとは思いつつも、悔しいとは思わない。それは自分にはどうしようもないことだから。

 そして、怒りもしない。なぜならそれは誹謗でも中傷でもなく、事実だから。

 

 たとえ良家に生まれ直していいと言われても、ミホノブルボンは『別にいいです』と言うだろう。

 彼女はとても、父のことが好きだった。全く以て不可能な夢を全力で応援してくれる、世界一のお父さんだと思っていた。

 

 才能は全くない。血統もどうしようもない。

 だがどうしようもないところ以外の全てで、ミホノブルボンは恵まれている。

 

「ですが私は、クラシック三冠を獲得しました。そして、ジャパンカップにも勝つでしょう」

 

「…………言うね」

 

「マスターが勝てるとおっしゃいました。つまりこれは私が普通に走れば勝てる、ということです」

 

 ライスシャワーじみた――――走れば勝てるけど、勝ってもブーイング喰らうから嫌だ、とナチュラルに口にする――――自信。

 無論それは事実であり、実力相応の自信なわけだが。

 

「私は有馬記念にも出ます。私ほど環境に恵まれているウマ娘はそうはいませんが、私ほど才能に恵まれないウマ娘もそうはいません。そんな私が勝つことで、寒門のウマ娘も夢が見られるようになる。夢を追えるようになる。私はそのために走ります」

 

 マスター。自分のトレーナーのことを、ミホノブルボンは世界一のトレーナーだと思っている。とても好きだし、割と理不尽な命令を受けても忠実に、黙って従う。

 

「でもさ。君のあとに続くウマ娘が全員、環境に恵まれることなんてあり得ない。君ががんばっても、だめかもしれないって、そうは思わないの?」

 

「環境に関してはマスターとルドルフ会長がなんとかします。なので私がすべきことは、私なりの最善を尽くすこと。切り開く道をより長く、より快適なものとすることです」

 

 するでしょうではなく、します。

 2人への絶対的な信頼が窺えて、トウカイテイオーは俯いた。

 

「私はひとりでは何もできません。お父さんと、マスターと、ライス、ルドルフ会長。多くの方に支えられ、やっと夢を叶えられた。故にこれからも、それが続くと思います。トウカイテイオーさんは、そうは思われませんか?」

 

「……ボクがカイチョーを疑うわけないでしょ」

 

「……? はい」

 

 ――――では、いいレースにしましょう

 

 拭いきれない敗北感。それよりも更に強い、なにか。

 

 それらを振り切れずに、トウカイテイオーはミホノブルボンに続いてパドックに向かった。




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サイドストーリー:燃え尽きればこそ

123G兄貴、白河仁兄貴、noxlight兄貴、天須兄貴、yumeinu兄貴、あいうえおーん!!兄貴、さんまたべたい兄貴、Eliot_Singer兄貴、志之司琳兄貴、raglaner兄貴、夕莉兄貴、ガンバスター兄貴、mfukawa2000兄貴、white2兄貴、なのてく兄貴、白河仁兄貴、光に目を灼かれたペニーワイズ兄貴、例の兄貴兄貴、初&見兄貴、アイルリッヒ兄貴、障子から見ているメアリー兄貴、レンタカー兄貴、金曜日(うんのよさ)兄貴、げま~兄貴、迫る影兄貴、Jeci兄貴、レギ兄貴アリサ兄貴、鋼月兄貴、サガリギミー兄貴、陵戸紫苑兄貴、ニキータの店兄貴、Zenra兄貴、じゃもの兄貴、がんも兄貴、fumo666兄貴、ながも~兄貴、胸囲の格差社会兄貴、夏野彩兄貴、青タカ兄貴、風呂兄貴、朱ザク兄貴、ライセン兄貴、ホルムズ海峡兄貴、Hakuou兄貴、葵い兄貴、spare9兄貴、必勝刃鬼兄貴、朱鯉兄貴、ESAS兄貴、小名掘天牙兄貴、無駄無駄無駄無駄ぁ!兄貴、ファンタン饅頭兄貴、Carudera兄貴、ガトリング・ゴードン兄貴、主犯兄貴、星ノ瀬竜牙兄貴、N2兄貴、佐賀茂兄貴、レイヴン兄貴、ハガネ黒鉄兄貴、ふれんち兄貴、正太郎兄貴、ビッグベアー兄貴、志玖兄貴、白い未栄兄貴、バナナバー兄貴、ピノス兄貴、ワットJJ兄貴、蒸気帝龍兄貴、感想ありがとナス!

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 東京レース場。地名からとって単に府中とも呼ばれるここは、ミホノブルボンにとっての得意コースである。

 というより、ミホノブルボンは参謀に『坂が多いからお前はここが得意だ』と言われた。だから得意だと思いこんでいる。そして、結果的に得意になった。

 

 今回のジャパンカップ。日本勢の出走メンバーは、割と微妙なメンツである。

 今年の春には双璧として日本総大将を務めるだろうと思われていたトウカイテイオーとメジロマックイーンだが、トウカイテイオーは春の天皇賞でまた怪我をして怪我明けの秋の天皇賞で惨敗。メジロマックイーンは宝塚前に怪我して辞退。

 

 今年がはじまった頃には頭角を現していなかったミホノブルボン・ライスシャワーのコンビも、ライスシャワーは疲労で辞退。

 

 メジロパーマーとダイタクヘリオスのバカ逃げコンビも有馬記念への調整のために不在。

 秋の天皇賞で素晴らしい走りを見せ、シンボリルドルフについで2位となった――――レッツゴーなんたらという威勢のいい名前のウマ娘が3番目に強いであろう日本勢という始末。別にレッツゴーなんたらが弱いわけではないが、辞退組――――メジロマックイーン、ライスシャワーに比べると見劣りする。

 

 それに比べて、外国勢は人材豊富だった。

 主軸となるイギリス勢に、オーストラリアの二冠ウマ娘など隙のない陣備え。

 

 だがそれでも、1番人気はミホノブルボンだった。

 

《世界のウマ娘が栄光を求め、ジャパンカップの府中に集う! 日本勢は対抗できるのか!》

 

 2番人気も3番人気も、外国勢。

 なによりも強さが尊ばれるトゥインクルシリーズらしい、実力重視の人気。

 

「ここがあいつの……」

 

 8枠14番に位置された、トウカイテイオーの隣。尾花栗毛を靡かせた外国のウマ娘が、興味深げに周囲を見回し、ある一点を見た。

 

 ――――あれ、カイチョーの……

 

 そして、ブルボンのトレーナー。

 薄色の芦毛をしたトレーナーは、テイオーの隣のウマ娘からジロリと冷たい視線を向けられている。

 

 奴はむやみやたらに因縁を買うタイプだろうと、そういう確信がトウカイテイオーにはある。然程関わっていないが、愛想のなさが彼女にそういう印象を抱かせていた。

 

 ――――ラップ走法って、どうやったら勝てるんだろ

 

 機械のような正確さで、時を刻む。誰も必要としない、だからこそハイレベルに安定した強さを誇る単純な戦法。

 

 付け入る隙がない。

 ビデオで見た結果、そのことがわかった。だから何をしたというわけでもなく、普通の練習をしていただけだが。

 

(単純な強さは、単純だからこそ強い。だけど、単純だからこそ罠にハマりやすいってのもあるし……)

 

 波乱が起きること。

 例えば、スタートが遅れる。かかってスタミナが削れる。そういった自滅によってのみ、ミホノブルボンは敗れるだろうという確信がある。

 

(ま、なるようになるよね)

 

 春の天皇賞の前ならばひっくり返っても思わないであろうそんなことを、トウカイテイオーは思った。

 ある種の諦観。それに伴って得られるのは競りの弱さと、冷静さ。

 

 この冷静さが、このレースのトウカイテイオーを救うことになる。

 

《さあ、我が国の国際GⅠ初戦、ジャパンカップ!》

 

 周囲のスタート姿勢に従って、或いは釣られて。トウカイテイオーは不死鳥のような勝負服を揺らしてスタート姿勢をとった。

 

(1ハロン11秒中盤。ミホノブルボンの速度はそのあたり……今のボクじゃたぶん、そんな速さは出せない)

 

 でも勝つ。ボクは無敵のトウカイテイオーだから。

 現在の彼女はそうやって自分を鼓舞することもできなければ、自分を信じ切ることもできない。

 

《今、スタートしました!》

 

 ゲートが開く。

 スタート。総毛立つような戦慄も、高揚も、なにもない。ただ走る。それだけのために、トウカイテイオーはスタートを切った。

 

 彼女はスタートが得意な方である。というかトウカイテイオーは、レースにおける全ての技術で得意でないものの方が少ない。

 

 だがそれよりも、そしてこの府中に集まった世界の強豪の中でも、ミホノブルボンが最速のスタートを切った。

 ゲートが開くと同時、大地を踏み固めているかのような瞬間加速。かかっているのかというほどの、気の急いたスタート。

 

 それを走りながら眺めていたトウカイテイオーの隣で、闘気とも言うべき威圧感が膨れ上がる。

 アメリカのウマ娘。尾花栗毛。というか、単純な金髪か。彼女の目が、明らかに変わった。

 

《ミホノブルボン、素晴らしいスタート。一息で先頭に立ちました!》

 

 ミホノブルボンは、スタート時に一気に速度を上げる。これは長距離ウマ娘や中距離ウマ娘にはできない、スプリンターとしての天稟を活かし切ったスタート。

 府中芝2400メートル。長距離寄りの中距離コース、左回り。

 ここに集まった強豪の中で、スプリンターから中距離ウマ娘に成り上がったものはいない。なりたかった者もいない。自分の才能に忠実に、ひたむきに向き合った者ばかり。

 

 フィールド駆け抜ける世界一のスプリンター。

 ウッキウキでマックイーンが鼻歌交じりに言っていた謎の歌が、ふとトウカイテイオーの中で鳴った。

 

(こうやって、活かしてるんだ)

 

 自分の才能を。

 スプリンターとしては同期のサクラバクシンオーに遥か劣り、一流半くらい。だがスプリンターとしては一流半の才能は、中距離ウマ娘が持っていい物ではない。

 

「ニホンの逃げは……」

 

 やや片言な呟きが、左から聴こえた。

 

 闘走心。今の自分にはないもの。それをなんの因縁もないであろうミホノブルボンに見つけて、駆ける。

 そんな外国のウマ娘に、何故か眼が惹かれた。

 

(……なんでだろ)

 

 視線を戻す。左右に振る。

 トウカイテイオーがついたのは前から5番目。好位といっていい位置。ミホノブルボンの頭のおかしいスタートに動揺したウマ娘は、ほとんどいなかった。いないが、慣れているかといえばそうではない。

 

 芝。環境。空気。

 レースに付随する要素の全てが、外国勢にとっては未知である。ミホノブルボンの2番手にはイクノディクタスが追従。ミホノブルボンを風除けにするために駆ける彼女は、たぶんこの中の誰よりもミホノブルボンを知っている。

 

 マチカネタンホイザ。疲弊し切って現在お休み中の、GⅠに勝てそうで勝てなそうなミホノブルボンの同期。菊花賞3着。

 マチカネタンホイザもイクノディクタスも、学園ナンバー3のチーム、カノープスに所属している。

 

 同じチームの好で彼女の応援にも来ていたし、その走りを何回も何回も見てきた。だからこそ、置いていかれたら二度と追いつけないことを知っている。

 

 マチカネタンホイザは、自分を貫いた。貫くことによって勝とうとして、そして自分の実力以上の強さを発揮してもなお負けた。その反省を踏まえての戦術であろうことは想像がつく。

 

(追いつくことは、たぶんできるけど)

 

 一度追いつくのでは、いけない。追いつき続かなければならない。そのスタミナが続くのかどうか。

 ミホノブルボンがレースで見せる最高速は、追いつけないほどではない。頑張れば追いつく。

 だが一流の中距離ウマ娘が頑張れば追いつく程度の速度を涼しい顔で常に維持するからこそ恐ろしいのである。

 

 トウカイテイオーがイクノディクタスならば追いつけるだろうと判断したその時を同じくして。

 一方、イクノディクタス当人は違和感を覚えた。

 

(追いつかない……?)

 

 カノープスのトレーナーと、最近寝てばっかいるマチカネタンホイザ――――比喩表現でなく、彼女は死ぬほど疲れていた――――を叩き起こして行った、分析は完璧だった。

 今年の5月、日本ダービーでのタイムにこれまでの成長を掛け算してラップ走法を紐解く。

 

 ラップ走法とは、逆算の走法だ。勝つまでのタイムを逆算して履行する、一度走り出せば二度と計算を修正することはできない数学的な走法。

 つまり、絶対に勝てるか絶対に勝てないかの二択。接戦はない。意地もない。冷徹の計算通しの戦いになる。

 

 菊花賞は、激しいレースだった。

 ライスシャワーもマチカネタンホイザも、疲弊し切ってお休み期間に入っている。

 ならばミホノブルボンも疲れているであろう。そういう予想は容易に立つし、立ててもなんらおかしいものではない。だがイクノディクタスは、自分に都合のいい仮定を極力排除した。

 

 彼女自身が尋常ならざるタフさを持っているから、というのもある。

 タフなウマ娘は寝ればケロッと体力が回復していたり、疲労が抜けきっていたりする。ミホノブルボンもそうであろうと、イクノディクタスは自分に都合の良くない予測をした。

 

 彼女は本質的にマイラーであるから、2400メートルもの間ミホノブルボンに追従できるかと問われれば、難しいかもしれない。

 だが、追いつけるとは判断していた。そしてその判断は正しかった。ミホノブルボンが時を刻む機械だったならば、彼女は追いつけていただろう。

 

 だが、ミホノブルボンは加速していた。イクノディクタスよりも速く。前に傾き、重心を低く保つスタートダッシュの姿勢が、いつもより長い。

 その違和感はあったが、ラップ走法は最強の方法である。

 

 ――――ラップ走法に弱点はない

 

 そう、誰かが言っていた。

 それは必ずしも正しくはないが、弱点は少ないのは確かなことなのだ。

 

《ミホノブルボン! グングンと飛ばしていきます! このハイペース、果たして最後まで保つのでしょうか!?》

 

 とは言いつつ、保つだろう。誰もがそう思っていた。

 何故なら、ミホノブルボンは今まで完璧に保たしてきたから。出遅れたことはあったが、かかったことはない。

 その安定感こそ、彼女がサイボーグと呼ばれる所以でもある。

 

(いや、走り方を変えてきた!)

 

 イクノディクタスは、即座に気づいた。

 ミホノブルボン陣営は、これまで彼女を導いてきた無敵の戦法を擦り切れた洋服のように棄てた。

 その思い切りの良さ――――思い切りではなく強いられただけだが――――に感嘆しながらも、あまり感嘆してばかりもいられない。イクノディクタスがマイラーだとすれば、ミホノブルボンはスプリンターである。速度の上限値は当然、ミホノブルボンの方が高い。

 

 つまり加速し続ける現状、追いつけない。

 どうしようかと悩んでいる暇もない。イクノディクタスはミホノブルボンに追いつき、防風壁にし、無理矢理付いて行って最後に差す。そういう戦法を採択したわけで、他に今更選べるものもないのだ。

 

(あれ、イクノ……)

 

 追いついていない。

 俯瞰するのと後ろから見るのでは、得られる情報の質が大きく異なってくる。観客が即座に気づいたそんな事象を、トウカイテイオーはやや遅れて――――それでも走っているウマ娘の中では1、2を争う程早く気づいた。

 

(てことは、走り方を変えてきたってことだよね)

 

 寧ろそれならありがたい。試してもいない戦法をぶっつけ本番でやられた方が、挑む側としては楽なのだ。

 強者は挑まれる姿勢を崩さないから強者なのだということを、トウカイテイオーは知っている。完成された強さを誇るシンボリルドルフを見て、知っている。

 

《さあ、先頭はひとり、ミホノブルボン! 続くイクノディクタス、》

 

 チッ、と。

 やるじゃないかと言わんばかりの嬉しそうな、悔しそうな舌打ちが隣で鳴った。

 脚に翼が生えたかの如く速度が出る日本の芝に少し走りにくそうにしていた序盤から、現在。慣れたように、その金髪のウマ娘は走っている。

 

 レース中盤。疲れてきたであろうイクノディクタスは、それでもある程度の距離を一定に保ちながら駆けている。流石はタフネスの化身、鉄の女。

 そんなことを思っているトウカイテイオーの視界の端で、金髪が靡いた。

 

 仕掛けた。なぜだか見るべきだと思った、アメリカのウマ娘が。

 

 ――――続くべきだ

 

 眠りかけていた本能に弾かれるように、トウカイテイオーはそのウマ娘に追従した。驚いたような顔で振り向かれ、やるなと笑いかけられて、ちょっと視線を逸らす。

 

(でもたぶん、追いつけない……)

 

 イクノディクタスの全力でも追いつけなかった。それどころか中盤に入って疲れ、垂れつつある今も一定の距離を保ち続けている。

 戦法の変更があったとしても、相手に影すら踏ませない完璧な速度管理は失われていない。それを示すような現状を、トウカイテイオーは後ろから見ていた。

 

 だから自分たちがスパートをかけても、たぶんその分加速するだけ。

 ラップ走法が速度を一定に保つ走法なら、今回のは距離を一定に保つ走法だろう。

 

 セーフティリード走法。

 それにしては全く振り返る素振りを見せないが、そんなところだろうとトウカイテイオーは考えていた。

 

 距離が詰まる。ミホノブルボン、イクノディクタス、金髪のウマ娘、トウカイテイオー。

 ミホノブルボンとイクノディクタスとの間が徐々に開いていく以上に、スパートに入った二人の方が距離を詰めていく。

 

(安全圏は――――)

 

 どれくらいか。シンボリルドルフならばわかっていたと、トウカイテイオーは確信していた。

 

 だが、トウカイテイオーにはわからない。そして、シンボリルドルフにもわからなかっただろう。

 

 

 なにせセーフティ距離とか安全圏とかというものは、最初から存在しないのだから。

 

 

 ミホノブルボンとの付かず離れずの距離。イクノディクタスが近づき過ぎて突き放されたのならば、その微妙な距離を推し量って、府中の顔と言うべき500メートルの長くて広い最終直線で差し切る。このアメリカのウマ娘はそうするつもりだ。

 トウカイテイオーは、そう予測していた。

 

 如何にスタミナが豊富であっても、出せる速度には上限がある。

 付かず離れずの距離でミホノブルボンのスタミナを余らせつつ、最後の直線で速度で勝り差し切る。

 

 今仕掛ければ、一気にスパートに入られかねない。トウカイテイオーは、そう見ていた。

 

 しかし、彼女の予測ではしばらく控えることを決めたはずの、隣の名も知らないウマ娘の気配が膨れ上がる。

 

 

 閉ざされた扉が開かれかける、そんな感覚。

 

 

 ――――領域。何かが広がる感覚。ミホノブルボンが振り向き、金髪のウマ娘と目があった。

 

 瞬間、金髪のウマ娘は加速した。トウカイテイオーの前を走って、風除けとなってくれていたそのウマ娘は、一気に、飛ぶように駆けていく。

 

(詰めたら広げられるじゃん!)

 

 せっかく勝てそうだったじゃん!

 若干昔のトウカイテイオーが顔を出して、叫ぶ。

 

 愚かなりー、と。

 なにやってんのこの金髪、と。

 

 だが、ミホノブルボンは加速しなかった。ぐんぐんと、距離が更に詰まる。詰まっていく。

 金髪のウマ娘と、ミホノブルボンの距離が。そして、トウカイテイオーとミホノブルボンの距離が。

 

(……なんで?)

 

 第3コーナー、直線の前。がくんと、ミホノブルボンの速度が落ちた。胸が空気を孕んで大きく膨らみ、元に戻る。

 

 ――――チャージしてたんだ! 今まで!

 

 序盤を全力で走り、中盤に力を抜き、第3コーナーで息を入れる。やけに手慣れた――――同じ場所、同じレース場でやったことがあるようなスムーズな動き。

 

 それを、金髪のウマ娘はわかっていた。見抜いたのだ。まるで、どこかで似たようなウマ娘を見たことがあるような判断の速さで、正確に。

 

 第3コーナーを回って、トウカイテイオーと金髪のウマ娘は猛追していた。手を伸ばせば届くところに、ミホノブルボンはいた。

 明らかに、減速している。スパートの準備に入っている。それがわかる。近いからこそ、距離を詰めたからこそ、わかる。

 

 あと少しで届く。

 

(――――あ、なにかまずいかも)

 

 その刹那、がくんと金髪のウマ娘の速度が落ちた。

 

 この年のジャパンカップは、強烈な加速の波を受けていた。いつぞやのオグリキャップがとあるウマ娘と一騎打ちを行ったジャパンカップのような超高速の世界に突っ込んでいた。

 

 強力なウマ娘の存在は、レースを加速させる。

 そのことを、金髪のウマ娘はわかっていた。身を以て知っていた。

 

 迂闊についていけばぺしゃんこに潰される。実体験と強烈な対抗心が、強力な逃げウマ娘への対策を練らせた。

 そしてその計算は完璧だった。中盤、逃げウマ娘が息を入れるタイミングで一気に最高速に達するように調整し、距離を詰めて差し切る。おそらくここがアメリカならば、成功したであろうその策は、日本で行われたジャパンカップだったからこそ失敗した。

 

 それこそ自分の限界に気づかないほどに、加速し過ぎたのだ。上がり過ぎる制御に気が取られ、彼女はスタミナの浪費を強いられた。

 

 そんな内情を皮膚感で察知したトウカイテイオーは瞬時に横に避け、スパートをかける。

 

 それと同時に、ミホノブルボンは加速した。例のハンドリングの巧さで加速しつつコーナーを曲がり切り、一気に突き放しにかかる。

 

(直線500メートル! 直線500メートルは――――)

 

 長い。日本国内でも最大の直線だ。逃げウマ娘にとってダービーが不利と言われる最大の理由が、これだ。

 終盤に長くて広い直線が広がる故の、好位抜け出し型ウマ娘の仕掛けやすさ。スパートのかけやすさ。

 

(短すぎる。500メートルは短すぎる……!)

 

 あと1000メートル欲しい。

 そう考えた瞬間、思わず笑った。

 

(バカだな、ボク。勝ちたいんだ)

 

 勝ちたい。夢をかけて戦うことすらできなくても。敗けても、敗けても。

 自分とは違って夢に挑めた、敗れざるウマ娘に勝ちたい。ミホノブルボンに勝てる自分でありたい。

 

(勝ちたい……)

 

 勝ちたい。勝ちたい。勝ちたい。

 何回も、今まで忘れていた感情を噛み締める。

 

 追い縋ってくるオーストラリアの4冠ウマ娘、今年と一昨年のイギリスダービーウマ娘。

 振り向いて、睨みをきかせて、加速する。

 

 ――――ブルボン!!

 

 走りながら、叫ぶ。感情を剥き出しにして、加速する。

 トウカイテイオーは、直線500メートルでミホノブルボンとの距離を詰めた。

 

 自分より1秒速くゴール板を駆け抜けようとする、無敗の三冠ウマ娘。自分の後輩。目指すべき目標でもなく、超えるべき壁でもない、超えたい壁。

 

 青い瞳が、ちらりと向いた。

 

《ミホノブルボン、一着でゴール! 並み居る刺客に影すら踏ませず、我が国初の国際GⅠの栄冠を齎しました! 2着、トウカイテイオー! 3着は――――》

 

 ミホノブルボンに降りかかるのは祝福の拍手。大歓声。

 

 トウカイテイオーにとって初めての2着。

 春の天皇賞のように上に何人かいるのでなく、秋の天皇賞のように上に沢山いるわけでもない。上に、たった一人がいる。

 

 ――――勝ちたい

 

 上に居る存在に、勝てる自分になりたい。勝てる自分でありたい。

 トウカイテイオーは、心からそう思った。




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サイドストーリー:片鱗

123G兄貴、白河仁兄貴、サガリギミー兄貴、迫る影兄貴、かぶと兄貴、障子から見ているメアリー兄貴、蒸気帝龍兄貴、鋼月兄貴、松竹梅型駆逐艦兄貴、秒速1mm兄貴、てりか兄貴、きよよ兄貴、ワットJJ兄貴、サパタ兄貴、卵掛けられたご飯兄貴、なのてく兄貴、はやみんみん兄貴、すまない兄貴、咲さん兄貴、レイヴン兄貴、雪ねずみ兄貴、がんも兄貴、何がとは言いませんが大きい方が好きです兄貴、クリストミス兄貴、石倉景理(爆死のすがた)兄貴、ふれんち兄貴、よういん兄貴、Carudera兄貴、新宿のショーター兄貴、たきょ兄貴、七七七七兄貴、ドドド読者兄貴、Tukue兄貴、ガトリング・ゴードン兄貴、青タカ兄貴、さんまたべたい兄貴、火無月兄貴、夕莉兄貴、終焉齎す王兄貴、槍持兄貴、七夜四季兄貴、消波根固塊兄貴、アリサ兄貴、きょーらく兄貴、Jupiter兄貴、ブブゼラ兄貴、ぽんかん兄貴、トーリス・ガリ兄貴、3n19m4兄貴、主犯兄貴、志之司琳兄貴、ぽよもち兄貴、まだない兄貴、街泡星兄貴、初&見兄貴、Fukki兄貴、ねむネコ兄貴、ニキータの店兄貴、レンタカー兄貴、乱読する鳩兄貴、め玉ル玖兄貴、sqlite*兄貴、すらららん兄貴、通りすがり兄貴、無(む)兄貴、光に目を灼かれたペニーワイズ兄貴、夏野彩兄貴、タイヤキ兄貴、ボルボール兄貴、金曜日(うんのよさ)兄貴、例の兄貴兄貴、志玖兄貴、天須兄貴、ガンバスター兄貴、Noxlight兄貴、しょう兄貴、Zenra兄貴、佐伯 裕一兄貴、ロキ@読専兄貴、white2兄貴、asai_n兄貴、fumo666兄貴、ルル家兄貴、寒苦鳥兄貴、ハガネ黒鉄兄貴、ハムred↑兄貴、必勝刃鬼兄貴、星ノ瀬竜牙兄貴、なわた兄貴、ESAS兄貴、ライセン兄貴、葵い兄貴、ハヤト・コバヤシ兄貴、バナナバー兄貴、感想ありがとナス!

寝てた先輩兄貴、yuuki100兄貴、コウノ兄貴、たくた兄貴、echo10兄貴、槍座兄貴、夜警兄貴、鰯だよ兄貴、黒雛兄貴、しおむすび兄貴、つじっち兄貴、wing417兄貴、Amber bird兄貴、璃狗兄貴、fomalhaut兄貴、yoritori兄貴、くさんちゅ兄貴、評価ありがとナス!


 GⅠの2位。本来ならば祝福されるべきその成績を、トウカイテイオーは悔しさと共に噛み締めていた。

 

「トーカイテイオー」

 

 片言の日本語。

 テイオーの前を走り、手本を見せてくれた金髪のウマ娘が、後ろから近寄ってきていた。

 

「あの、ニゲ。ブルボン」

 

「あ、ボク、英語話せるよ?」

 

「そう? では、英語で」

 

 流暢な英語で話しかけるとやや訛った――――たぶん、アメリカ訛り――――英語が返ってくる。

 

「いい走りだったわね。あの逃げウマ娘への対策は、自分で思いついたのかしら?」

 

「ううん。キミの真似させてもらっただけ」

 

「なるほど。アナタは聡かったわけね」

 

 金髪のウマ娘は、ぽけーっとしているミホノブルボンをちらりと見て、視線を戻す。

 そのタイミングを計って、トウカイテイオーは思っていた問いを投げた。

 

「あの戦法って、一朝一夕で編み出したものじゃ……ないよね。つまり、他にも居るの?」

 

「ええ」

 

 短く、金髪のウマ娘は答えた。

 悔しさと、憧憬と、怒り。それらが混ざった、複雑な眼の色。

 

「最強だったと思うわ。ミホノブルボンも強かったけれど、遥かに及ばない」

 

「まあたぶん、あれは付け焼き刃だからだけど……」

 

 なんとなく反論したくなって、トウカイテイオーは反論した。

 その反論に少し笑い、頭を振る。

 

「たぶん、見なければ……いえ、見たことはあるかもしれないから、走らなければ、かしら。そうでなければ、彼女の恐ろしさはわからない」

 

 白い指が、掲示板を指した。レコードという赤文字が、ミホノブルボンの横で踊っている。

 

「優れた逃げウマ娘は、ペースを支配する。彼女に付いていこうとしたウマ娘がスタミナを使い果たして潰れていくのは、それが原因よ」

 

 ――――だけど真に優越した逃げウマ娘は、レースそのものを加速させる

 

 苦渋を漏らすような声音だった。

 それは、苦い経験。高速化したバ場、丁寧に刈り揃えられた芝、長距離偏重。ガラパゴス的な発展を果たしてきた日本という島国から、その怪物はやってきた。

 

「それはさ。ブルボンもやってるじゃん」

 

「GⅠで。それも、たかが10ハロンで。全員がスタミナを使い果たして、たったひとりが世界を駆ける。そんなことがあると思う?」

 

 本当に軽く、速く駆ける。体感時間が、心が急く。追わずにはいられなくなり、身体の温まりきらない序盤から無理矢理に速度を出さざるを得なくなり、加速度的にスタミナが減衰する。

 

「その娘は、競う相手を見ていなかった。追う者に影すら踏ませなかった。たった2年で伝説になり、残りの1年で神話になった。あのミホノブルボンという娘もまた、走るときに他者を必要としない。必要としないように、育てられている。どこでもベストな力を発揮できるように」

 

 ――――よくやった。疑いの余地のない不調の中、あくまでもサブプランではあるが不調なら不調なりの戦い方があると見事に証明してのけたな

 

 ――――はい、マスター

 

 耳をすませば聴こえる程度の声量、距離。不調でもよくやったと褒めてるのか、不調になどなるなと詰っているのかよくわからない、あの芦毛の男。

 彼女は彼をたったの1度だけ、見たことがある。あのウマ娘がゲートの中で見ていたペンダントの中の写真。

 

 何者をも視界に入れない走りをしていた彼女の世界に住まうことを許された、数少ない人間。

 

「アナタの最後の咆哮が心底からのものならば、逃さないようにしなさい。追っているひとから相手にされないほど、悲しいものもないのだから」

 

「キミは、これからどうするの?」

 

「鍛える。究極の速度が導く世界を知る彼女を打倒するために、彼女の原点を知るためにここにきた。そこで負けていては、ね」

 

「でも、ここの芝に慣れてなかったでしょ? 負けたって言うのは……」

 

 違うんじゃないの。

 そう言いかけたテイオーの視線を、白い手が遮った。

 

「勝って言い訳をするのはいいでしょう。もっと巧く勝てた、と。それは向上心だから。だけれど、負けて言い訳はしたくないわ」

 

 負ける。

 その言葉は、トウカイテイオーにとっての軽いトラウマである。ライバルのマックイーンに敗れ、目指すべきシンボリルドルフに敗れ。

 

 マックイーンに負けたのは、距離適性が足りないから。病み上がりだから。

 シンボリルドルフに負けたのは、経験が足りないから。病み上がりだから。

 

「……うん。そうだね」

 

「ま、がんばんなさい。応援してるわ。見れないけど」

 

「キミもね」

 

 名も知らぬウマ娘は最後にジロリとどこかへ視線を向けて、背を向けて去っていく。

 

「勝つ、かぁ……」

 

 勝つ。勝利する。誰よりも速く、ゴール板の前を駆け抜ける。

 簡単だった。ジュニア級でもクラシック級でも、負ける気がしなかった。そして、1度たりとも負けなかった。

 

 シニア級に行っても、負ける気はなかった。

 大阪杯。いきなりのGⅠにも勝った。春の天皇賞でも、勝てる気でいた。

 

 だが大阪杯から、トウカイテイオーは勝つという経験をしたことがない。

 

 控え室には、トレーナーがいた。チームを率いているが故に、普通のトレーナーよりも何倍も忙しいはずのトレーナーは、トウカイテイオーを待っていた。

 

「テイオー……」

 

「トレーナー。今までごめん」

 

 テールヘアーが、下げられた頭につられて揺れる。

 

「ボク、今までわからなかった。なんのために走るのか。なんのために、なんのためにって考えて、考えて、わからなかった。でも、走ってみてわかった。ボク、負けず嫌いなんだ」

 

 手を伸ばす。

 練習をなんとなくこなし、なんとなく話を聞き、なんとなく生きる。そんな腑抜けた自分を、見放さなかったトレーナーに向けて。

 

「三冠の夢も、無敗の夢も、もうボクは掴めない。だけど、ボクは勝ちたい。誰にでも勝てる自分でありたい。だからもう一回、走り出す。そのための、力を貸して」

 

「……ああ。お前は、負けず嫌いなやつだったよ」

 

 手が取られた。信頼と、情熱。興奮と歓喜、安堵。あらゆる感情が込められた、熱っぽい掌がトウカイテイオーの手に触れる。

 

「よろしくな、テイオー」

 

「うん。よろしく、トレーナー」

 

 こうして。

 かつての無敗のウマ娘が立ち上がったとき、現在の無敗のウマ娘は何をしているか、と言えば。

 

「で、どうだった」

 

「お互い万全であれば私が勝ちます」

 

 彼女は、助手席にちょこんと腰掛けていた。いつものように後ろの席に座るのではなく、しっかりとシートベルトをして手を膝に。精密機械の群れである車に触れないように、最大限努力して座っている。

 

「なるほど。意味の無い仮定だが、真理でもあるな」

 

 どうだったと訊くこと自体が、ナンセンスなのだ。

 実力は不変ではなく、調子は変動する。今日の対戦における感想が、次回の対戦に活かされるとは限らない。得られた情報が先入観に変じて、足枷になる可能性すらある。

 

「マスターは、どう思われましたか?」

 

「思ったよりは巧くいった、というのが正直なところだな」

 

 トレセン学園は、府中にある。東京レース場の別名が府中であるように、両者の距離は非常に近い。

 だからといって車に乗って移動するというところは変わらない。故にやること自体は変わらないわけだが、いつものような長時間運転にならないところに参謀は感謝していた。

 

「俺は菊花賞あたりでラップ走法の限界が来ると思っていた。だから日本ダービーと京都新聞杯で息を入れる練習をさせた」

 

 ラップ走法は勝てる相手には絶対に勝てるが、負ける相手には絶対に勝てない。

 だから勝てる相手にはラップ走法、負けると思ったら息を入れて全力での差し切り。

 

 その所の判断をミホノブルボンに任せる。そのために、わざわざ2回ほどリハーサルをさせたのだ。

 

「だが、俺の予想は外れた。君の弛まぬ努力は、俺の予想を覆した。だから、一応やっておくかという感じなサブプランが主軸になった」

 

 菊花賞もあっさり勝てるかもしれない。

 となれば、壁にぶつかるのはいつか。シニア級に進んだら、どうなるか。出るのはジャパンカップか有馬記念か。或いは年を越して大阪杯か、春天か。

 

 ジャパンカップは、日本ダービーと同じ距離、同じコース、同じ場所。故に、ダービーで余裕ができればリハーサルをさせよう。

 

 京都新聞杯など、菊花賞で差し逃げを使えるようにするためにエントリーをしただけだが、春天にも応用が効く。

 

 大阪杯は、2000メートルという短い距離である。ミホノブルボンにとっての確実に勝てる射程は2400メートルまでだから、ラップ走法でも余裕で勝てる。

 

「よくやったと思う。本当にな」

 

「マスターのご指導の賜物です」

 

「お前には中距離ウマ娘としての才能はない。長距離ウマ娘としての才能も、当然ながら勿論ない。だがお前は、求道者としての資質がある」

 

 才能とは、言わなかった。

 天性の才能を、血統による距離の壁を覆すために努力を続けているミホノブルボンの姿を、努力する才能があるという一言で片付けたくない。

 

「確かに、指導したのは俺だ。しかし、実行したのはお前だ。絵図面を描いた者よりも、絵図面を現実に起こした者の方が遥かに優れている」

 

「マスターは、私の功績だということを仰りたいのでしょうか」

 

「ああ」

 

「私は、そうは思いません。絵図面を現実に起こせる者は確かに偉大かもしれませんが、その者が絵図面を描けるとは限りません。逆も然りです。両者の間に立場の差異はなく、責任も報奨も功績も分かたれるべきだと考えます」

 

 ミホノブルボンはこういうところで妙に頑固なところがある。

 

 ――――いえ。私はこう思います

 

 自分の考え……というより、信念か。そういうところを、彼女は度々譲らない姿勢を見せてきた。

 

「お前は言っていたな。判断ミスをしたとしても責めない。トレーナーとウマ娘は、ミスを補い合い、喜びも、悲しみも、栄光も、凋落も、共に分かち合うパートナーだと」

 

「はい」

 

「だがそれはそれとして、俺はお前の方が偉大だと思う。ひたむきさを、努力する困難さを、継続させる難しさを知っているからな」

 

「それは【隣の芝生は青く見える】という言葉の通りだと思われます。実のところ私も、私にできないことを行えるマスターの方が偉大であると考えていますから」

 

 こいつ言いおるわ。

 そんな視線が、運転中の参謀からミホノブルボンに突き刺さった。

 

「お前、言うようになったな」

 

 出会った頃は立派なサイボーグだったのに、最近言動に人間性が垣間見られるようになった。

 

「そのがんじがらめな理屈っぽさはルドルフ。或いはその直接的な物言いはエアグルーヴかブライアンか……」

 

「マスターです」

 

「俺はもう少し人の心が無い物言いをする」

 

「……そうでしょうか」

 

「ああ。他人の心を斟酌して表現を変え、正しく意図が伝わらない。そういうことが起こっては事だからな」

 

 そしてそれが癖になっている。そういう自覚が、参謀にはある。

 というか時間をかければ深く考えられるし感情もわかるという彼の頭の構造がそもそも、反射で行う会話というシステムにマッチしていないのである。

 

 だから話すたびに一定の――――数秒の空白を開ければ、参謀も他人の心に沿った物言いができる。しないが。

 

(マスターのステータスに、変化を確認)

 

 なんとなく、寂しそうな。後ろめたそうな。

 そんな感じが、伝わってきた。ややネガティブな、と言うのか。

 

 頑張っておしゃべりして、少しだけマスターの機嫌が上向いた。悪かったのが良くなったのではなく、沈んでいたのが浮かんできた。

 

「ブルボン」

 

「はい」

 

「ありがとよ」

 

 多分今までなら、悪いな、だった。

 他人の感情に疎い――――というか、自分の感情すらよくわかっていないブルボンは、なぜだか彼の心の動きがわかった。

 

 それが何故かは、今の彼女にはわからなかった。




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サイドストーリー:耳ピト

RTAパートを書くのが難しいねんな……

123G兄貴、白河仁兄貴、yumeinu兄貴、raglaner兄貴、サピエンスだけどホモではないです兄貴、すまない兄貴、white2兄貴、初&見兄貴、メリィ兄貴、レイヴン兄貴、Noxlight兄貴、タイヤキ兄貴、化猫屋敷兄貴、ヒイラギ兄貴、mtys1104兄貴、何足道兄貴、ホモ兄貴、ろむ兄貴、光に目を灼かれたペニーワイズ兄貴、かぶと兄貴、すらららん兄貴、発狂ポテト兄貴、名無し兄貴、迫る影兄貴、ほっか飯倉兄貴、Fukki兄貴、Falc兄貴、ワットJJ兄貴、無(む)兄貴、レオニ兄貴、明日川兄貴、はやみんみん兄貴、障子から見ているメアリー兄貴、私は歩行者兄貴、ユウヨコヤ兄貴、Zenra兄貴、レンタカー兄貴、サヨリ兄貴、さんまたべたい兄貴、なのてく兄貴、アドナイ兄貴、酔いどれ地蔵兄貴、金曜日(うんのよさ)兄貴、ブブゼラ兄貴、せりせり兄貴、曼陀羅兄貴、Hey,sorry兄貴、夕莉兄貴、Guardi兄貴、パンダメント兄貴、ガトリング・ゴードン兄貴、夏野彩兄貴、Jupiter兄貴、斑ピクミン兄貴、主犯兄貴、Tukue兄貴、がんも兄貴、fumo666兄貴、サガリギミー兄貴、ライセン兄貴、青タカ兄貴、葵い兄貴、アペイリア兄貴、星ノ瀬竜牙兄貴、ハガネ黒鉄兄貴、風呂兄貴、白い未栄兄貴、クリストミス兄貴、朱ザク兄貴、FROSTY=BLAKK兄貴、ESAS兄貴、Hnzr兄貴、ふれんち兄貴、KAIKI兄貴、Jeci兄貴、必勝刃鬼兄貴、消波根固塊兄貴、バナナバー兄貴、蒸気帝龍兄貴、感想ありがとナス!

Lemon兄貴、エイブラース兄貴、水銀にーと兄貴、Dragases兄貴、yuuki100兄貴、rumjet兄貴、葵い兄貴、SPEW兄貴、zenra兄貴、彗星のカービィ兄貴、愛などいらぬ兄貴、智原愛兄貴、バタ水兄貴、師匠と弟子兄貴、PARKER兄貴、縊死兄貴、patvessel兄貴、評価ありがとナス!


「バーン! トウカイテイオー様だぞよー!」

 

 雷霆一閃。要は雷のようなうるささと稲妻のような速さで、トウカイテイオーは生徒会室に入った。

 エアグルーヴが居たらキレてるところだが、幸いにも副会長ふたりは留守にしている。

 

「カイチョー! カイチョー! ボクね――――」

 

 盛りのついた犬のような元気さで突撃をかましてきたトウカイテイオーは、ピタッと止まった。

 嗅ぎ分けたのは、医者と並ぶ天敵の香り。

 

「東条隼瀬……!」

 

「……ああ」

 

 突然突っ込んできた年下のガキ(面識:アリ)に、突然呼び捨てにされる。

 そんな状況にあっても、その芦毛の男は全く動じずに曲げわっぱの弁当箱の中に収められた料理を口に運び、咀嚼した。

 

「ガキか。どうした」

 

「が、ガキ……!? ガキ呼ばわりしないなら言ってあげてもいいけど!?」

 

「ああ……」

 

 もう色々めんどくさくなって、彼はすべての思考を放棄して弁当に向かった。

 非常に茶色いその弁当は、実に美味い。ボリュームも多すぎず少なすぎず、味も濃すぎない。

 

 ウマ娘の常として量は多く味は濃いというのが多いがあいつはそうでもないらしいと、東条隼瀬は密かに感心した。

 

「いいけど! いいけど!」

 

「別に言ってもらわなくともいい。先程の言葉は社交辞令だ。俺としては、お前に興味はまったくない。故に、言わなくとも構わない」

 

「…………実はね。ボク、カイチョーに」

 

「よし、俺の言い方が悪かった。うるさいから黙ってほしいんだ。わかるかな」

 

 ほしいんだ。わかるかな、というところに史上最高クラスの煽り――――というよりも心底からガキだと思われ、そういう扱いをされているという感覚――――を察知し、トウカイテイオーはピキッときた。

 

「ボクね! ありがとうを言いたいんだ! カイチョーはボクに色々気を使ってくれたからさ!! もうスピカのメンバーには言ったし、ネイチャとかにも言った! だからあとは、カイチョー! マックイーン! ブルボン! そのあたりかなーって!」

 

「それにしても春巻きは美味い」

 

「聴いてる!?」

 

 わざと大声で――――ウマ娘特有の強靭な心肺機能を活かした大音量で喋り散らかすトウカイテイオーをちらりと見て、参謀は気づいた。

 

(重心が纏まってきている)

 

 左脚を日本ダービーで折り、右脚を天皇賞春で折る。だからといって、『あら、両足が折れてバランスが良くなりましたわね』とはならない。

 

 かつてとある野球選手は、アキレス腱を切ったときにいった。どうせならもう片方も切れたほうがバランスがよくなる、と。

 しかし無論、そんなことはない。アキレス健も骨も、折れないことに越したことはない。

 

(流石、やるな。いや、年上のトレーナーに思うことではないが……)

 

 トウカイテイオーの利き脚は、右である。

 それが当初は妙に、左脚が鍛えられていた。たぶんそれはルドルフがウマ娘では特に稀有な左利きだったからだろうが、そのせいで負荷が左脚にかかって、ダービー後に折れた。

 その結果折れていない右脚――――本来の利き脚を鍛えて大阪杯に臨み、ダービー以前より強い走りで勝った。そしてそのまま春の天皇賞に臨み、右脚を折った。

 

 常にどっちかに傾いていた重心がここに来て矯正されたのは、ひとえにスピカのトレーナーが組んだ練習メニューとそれを忠実に守るトウカイテイオーの努力の成果であろう。

 

「ねぇ聴いてる?」

 

「聴きたくない。今気づいたが、俺はうるさいやつと話すと耳が痛くなる」

 

 理性的な初代、名前通りの二代目、おとなしい三代目と、彼と関わってきたのは全員静かなウマ娘である。

 一番うるさいのが比較法でシンボリルドルフだという時点で、改めてそれまで恵まれていたことをひしひしと自覚した。

 

「あのさあのさ。さっきのレースでミホノブルボンが不調だったってホント?」

 

「本当だ」

 

 割と律儀なところを発揮して、参謀は答えた。

 

 肉体的にはともかく、感覚的には不調であったことに変わりはない。

 URAはいつから機械が走ることを許可したんだい?などというコメントをされることもあるが、ミホノブルボンは立派なウマ娘である。きっと、たぶん。

 

 更に言えば最近、自我も出てきた。それが競技者として良いことなのかどうかはともかくとして、個人としては良いことなのだろうと参謀も思う。

 

 あまりにも抜けているというか、ポケーっとしているというか、歳の割りに幼いというか。

 当初はそれほどでもなかったが、最近は娘を心配するような心持ちになりつつある。

 

「走ってるところを見ると、不調には見えなかったけど。なんでラップ走法を捨てたのさ」

 

 お茶――――なんの変哲もないただの麦茶――――をガラスのコップに注ぎ、口を濡らす程度に飲む。

 

「淹れる人間でこうも差が出るものかな。たかが麦茶だというのに」

 

「ねえ。ひょっとして無視しようとしてる?」

 

 何が悲しくて仮想敵にこうもペラペラと好不調がどうたらこうたらと話さなければならないのか。

 不調であったことをバラすのはいい。ブラフに使えるから。だが、有益になるであろう情報を話す気にはならない。

 

「好不調の波が激しくないというのはある。だがそれは、不調が存在しないということではない。いつか来るだろうと思っていた」

 

「それインタビューで言ってたことじゃん! というか答えになってないしさぁ!」

 

「お前、見てたのか」

 

「そりゃそうだよ。このテイオー様を負かした相手のインタビューなんて、そう何回も見られるもんじゃないしね」

 

 自信8割虚勢2割の二八蕎麦ウマ娘。

 そんなことが頭に浮かび、春巻きを頬張る。皮はパリッと、中はしっとり。実に外面と内面の差が鮮やかで、中身の彩りも美しい。

 

「ねぇ聴いてる!?」

 

 机に両手が叩きつけられ、弁当が5ミリジャンプした。

 遠目に見たことしかないし、まともに関わったこともあんまりない。だがそれにしても、元気になったものである。

 

「お前、調子良さそうだな」

 

「あ、わかる? わかっちゃう?」

 

 そう、ボク調子がいいんだよ。朝起きたらなんというか天気が快晴ッ!て感じでさ。晴れ上がった空を久々に見たなぁというか、新しい目標を手に入れることの重要さを見たというか。

 ミホノブルボンも言ってたけど、夢は形を変えていく。ボクにとっての夢はカイチョーだったし、今もそれは変わらない。

 だけど夢って、ひとつだけにしなきゃいけないわけじゃない。カイチョーみたいなウマ娘になる。カイチョーに認められるウマ娘になる。カイチョーに勝てるウマ娘になる。それに加えて、マックイーンに勝てるボクになる。んで、ミホノブルボンにも勝つ!

 

 そんなことを瀑布の様な勢いでまくしたてる、この子供。

 

(ライオン丸に似ている……)

 

 テールヘアー。尻尾と同じように髪を後ろで1つに括って垂らす髪型を、ライオン丸――――シンボリクリスエスはしていた。

 初恋の――――そして未だに崇敬の対象である彼女の影をこんなちんちくりんに見てしまい、参謀は心の中でため息をついた。

 

「だから勝つから! ミホノブルボンに!」

 

(元気そうで何より)

 

 ツインターボに近い何かを感じる。このやかましさ。

 

 そんなことを思いつつ、参謀は少しだけ思考を真面目なものに寄らせた。

 このトウカイテイオーというウマ娘にライバル扱いされるというのは、この上なく光栄なことである。なにせ、才能だけならばシンボリルドルフに勝るとも劣らない――――いや、劣る。

 まあ劣るが、それでもブルボンのよりも遥かに優れた質と量の才能を持つ。中距離ウマ娘の完成形のような存在が、このトウカイテイオーというウマ娘なのだ。

 

「ボクはジャパンカップでは負けたけど、有馬記念では勝つよ!」

 

「本人に言ったらどうだ」

 

「……『そうですか』としか言われなかったんだもん」

 

「なるほど。言いそうだな、それは……」

 

 好戦的ならば、『負けません』とか言うだろう。『次も勝ちます』ともいうかもしれない。

 

 しかし宣戦布告されて『そうですか』と流すのは、いかにもブルボンじみている。

 

(……ということは闘走心に折り合いを付ける術を掴んだ。もしくは掴みかけている。そういうことなのか)

 

 いつものブルボンという概念は、今となっては貴重である。闘走心を身につけてから急速に情緒的な成長を見せている彼女のいつもは、かつての『いつも』とは大きく異なる。

 

「とにかく! ボクは新しい戦法も閃いたんだから!」

 

「ほう」

 

 これまでのトウカイテイオーは、好位抜け出し――――所謂、王道の中の王道たる『ルドルフ戦法』しか使わなかった。

 ルドルフ本人は割とその戦法をポイ捨てすることが多かったが、やはり彼女の軸には王道たる好位抜け出しの戦法がある。

 

 抜群の駆け引きセンス、ずば抜けた洞察力、俯瞰するような状況把握能力。何よりも、圧倒的な基礎能力。

 開幕からの逃げも、王道たる好位抜け出しも、脚を溜めての差し切りも、最後方からの追い込みもやろうと思えばできるからこそ、シンボリルドルフは王道をとった。

 

 そのことに気づいたからこだわりを捨てたのか。あるいは、気づいていないがこだわりを捨てることに成功したのか。

 前者であればまだ与しやすいが、後者であれば厄介である。

 

「このテイオー様にしかできない変幻自在の戦法で、ボクはカイチョーがほんの少しでも衰える前にカイチョーを倒すんだ!」

 

「衰え。ルドルフが?」

 

「そう。カイチョーは絶対だし永遠だけど、それでもやっぱり限界はある。その前にボクが――――」

 

「いや、ルドルフは劣化なんてしないよ。あいつは永遠に全盛期だ」

 

 ――――ユタカは劣化なんてしませんわ! 永遠に全盛期なのです!

 

 ひどく凡庸な守備ミスをしたとある選手を見て「衰えたな……」とか言ったおっさんに向けて、マックイーンはそう言った。

 

 そのあとは気圧されたおっさんを巻き込んで大応援――――このときなぜトウカイテイオーがいたのかと言えば、連続安打記録がなんたらということでマックイーンに野球観戦に誘われたからである――――をして事なきを得たが、割と鮮烈な記憶として残っている。

 

 なんたらユタカと言う野球選手の熱狂的ファンであるマックイーンと、東条隼瀬は同じ目をしている。

 

(あれ……もしかしてこのひと、カイチョーのファンなのかな)

 

 そう考えると何となく、親しみが湧いてきた。

 今まではカイチョーのそばにいるよくわかんない無表情な男という認識だったし、なんとなくな苦手意識があった。

 今回話しかけたのだって、他に誰もいなくて暇だったからだ。

 

「あのさ。キミって、カイチョーのこと好きなの?」

 

 訊き方がまずかったかな、と。

 言った瞬間、トウカイテイオーは自戒した。割とこう、誤解を生みそうな質問である。

 

 その細かい表現のミスを正そうと口を開きかけた瞬間、生徒会室の豪奢な樫の木のドアの向こうで、何かがピトッとくっついた。

 

「ああ、好きだよ」

 

「え」

 

「その心も、立ち振る舞いも。ああいう大きな夢を描き、他人をその絵の中に載せられる。ああなりたいと思うが、俺にはああはなれない。だからこそ、その在り方を美しく思う」

 

 ――――今は尊敬に変わったが、初恋がクリスエスなら、2番目はあいつだろうな。中身だけ見て見た目をまったく見ないのもどうかと思って、言わなかったが

 

 樫の木の硬い部分に額をゴツンとやったような音が、廊下と生徒会室の中に響いた。




設問1
以下の問いに答えなさい。
Q:なぜこいつは生徒会室で弁当を食べているのか
Q:なぜ生徒会室にルドルフがいないのか
Q:なぜ生徒会室に副会長二人がいないのか

答え:次回


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サイドストーリー:トリ娘キッチンダービー

待たせたな!(カイチョー並感)
昨日だけでTwitterのフォロワーが20人くらい増えてて草。まあこれからも進捗についてはTwitterで発信しますのでフォローしてくれた期待は裏切らないと思います。

123G兄貴、白河仁兄貴、114514兄貴、障子から見ているメアリー兄貴、sleif兄貴、ラース兄貴、noxlight兄貴、raglaner兄貴、l日兄貴、拓摩
兄貴、Fukki兄貴、ナノックス兄貴、ユウリ兄貴、レイヴン兄貴、護民官ペトロニウス兄貴、初&見兄貴、メリィ兄貴、夕莉兄貴、ライト層兄貴、ホモ兄貴、私は歩行者兄貴、ライセン兄貴、金曜日(うんのよさ) 兄貴、光に目を灼かれたペニーワイズ兄貴、ベー太兄貴、たわしのひ孫兄貴、青タカ兄貴、white2兄貴、秒速1mm兄貴、初男兄貴、通りすがり兄貴、七夜四季兄貴、レンタカー兄貴、asai_n兄貴、バラガン兄貴、ハモンα兄貴、卵掛けられたご飯兄貴、あqswでfrgt兄貴、かぶと兄貴、白い未栄兄貴、書記長は同志兄貴、人喰い羊兄貴、ワットJJ兄貴、金曜日(うんのよさ) 兄貴、寒苦鳥兄貴、はやみんみん兄貴、かつぴよ兄貴、迫る影兄貴、ニキータの店兄貴、丈鳥置名兄貴、焼肉兄貴、ストライクノワール兄貴、がんも兄貴、石倉景理(爆死のすがた) 兄貴、バナナバー兄貴、まだない兄貴、ブブゼラ兄貴、さか☆ゆう兄貴、損師兄貴、サガリギミー兄貴、小倉ひろあき兄貴、Jupiter兄貴、はよ告れや兄貴、終焉齎す王兄貴、曼陀羅兄貴、無(む) 兄貴、すらららん兄貴、すくれーぷ兄貴、蒸気帝龍兄貴、lightacenoah兄貴、なのてく兄貴、オースチン兄貴、観客s兄貴、くさんちゅ兄貴、葵い兄貴、主犯兄貴、JORGE兄貴、mtys1104兄貴、shirokuma兄貴、光金目鯛兄貴、鋼月兄貴、
ふれんち兄貴、Carudera兄貴、fumo666兄貴、エビヌマ兄貴、一般大蛇丸兄貴、志之司琳兄貴、zenra兄貴、ぬー$兄貴、レイナ兄貴、トローチ兄貴、てりか兄貴、ユウヨコヤ兄貴、ESAS兄貴、ハガネ黒鉄兄貴、消波根固塊兄貴、デジタルアグネス兄貴、通りすがり兄貴、星ノ瀬竜牙兄貴、RollingCorn兄貴、めさ兄貴、夏野彩兄貴、化猫屋敷兄貴、白モツ兄貴、ガトリング・ゴードン兄貴、必勝刃鬼兄貴、KAIKI兄貴、感想ありがとナス!


ただてる兄貴、齊藤BOY兄貴、ドローミ兄貴、マグロノーム兄貴、迫る影兄貴、緑のライダー好き兄貴、ヨシイ兄貴、lazio1900兄貴。iku16兄貴、シンシンゴ兄貴、ガゼル@球磨提督兄貴、cyber trd兄貴、ラインメタル兄貴、明月記兄貴、表の月面兄貴、評価ありがとナス!


「こ、ここ」

 

(トリ娘になったか)

 

 芦毛とか鹿毛とかではなく、鶏タイプのトリ娘。

 

 ゴツンという音に意識を傾けながらも特に興味が湧かない男と、ゴツンという音が耳に入っていない少女。

 男の方が麦茶を口に含んだ瞬間、少女――――トウカイテイオーは激発した。

 

「恋してたの!? カイチョーに!」

 

「ああ。だが恋が熱を伴うものならば、どちらかといえば愛ではないかな」

 

 別に恥ずかしがる風もなく、誤魔化す気もない。ある意味堂々と、東条隼瀬は頷いた。

 

「簡単に認めないでよ! そこはちょっと恥ずかしがったりとするところでしょ! いや、そんなことは……とかさ! 駆け引きがあるでしょ!」

 

「好きになって恥ずかしくなるような女ではないだろ、あいつは」

 

 人格も立派なものだし、そんなに気にしたこともなかったが、見た目もおそらく立派なものである。

 実はくだらない相手に惚れてた、とかならば恥ずかしがる必要も感じるが、この場合その必要を感じない。

 

「当たり前じゃん! カイチョーなんだから!」

 

「それに、過去の話だ。今は女性としてではなく、人間として惚れている」

 

 異性としての愛と、友人としての愛の融合体。さほど恋愛経験はないが、おそらくは普通の愛よりも上質なものであろうということは感じている。

 

「……ねぇ、恋ってなんなのさ」

 

「それにしてもこの春巻きは美味い」

 

「ねぇ! 愛ってなんなのさ!」

 

 何故、よく知らん相手と色恋の概念について話さなければならないのか。

 よほどそう言ってやりたかったが、ブルボンの調子の変化を言外に告げてくれた恩もある。

 

「恋とはその人を尊重したくなる気持ちだ。少なくとも、俺はそうだ」

 

「尊重?」

 

 恋はダービー。

 その持ち歌の通り、トウカイテイオーにとって恋は競走だった。誰よりも速く、誰よりも魅力的な走りで手に入れるべきものを自分の物にする。

 

 惹きつけて、離さない。

 それが恋というものだし愛というものだと、トウカイテイオーはなんとなく感じている。

 

「相手の気持ちを識り、沿い、護る。手となり脚となり、雨風を防ぐ覆いとなり、羽翼となる。そういうことだ」

 

 それはまさしく、彼がシンボリルドルフにやっていたことだった。

 トレーナーとしての当たり前以上の熱心さと献身を、彼は彼女と彼女の夢の為に傾けていた。

 

「それはさ。夢とか色々なことを肯定してあげる、っていうこと?」

 

「ああ。だが、肯定するだけではいけない。時には諌めもするし、間違っていれば正す。そういうことをしてやりたくなるのが、愛という感情ではないのか」

 

「自分の物に、自分だけの物にしたいとか、ないの?」

 

「ないな。お前はあるのか?」

 

 トウカイテイオーは、答えに窮した。

 自分の物にしたい。好きな人には、自分だけ見てほしい。

 

 執着。独占欲。

 トウカイテイオーが持つ感情の泉の底には、それがある。恋人にもライバルにも憧れにも、自分だけを見てほしい。

 

 だがその感情がひどく子供っぽいものに思えて――――真に相手を想っているのかと疑問に思えて、彼女は少女らしい青さで口籠った。

 

「ホントに自分の物にしたいとか、そういうことはないの?」

 

「俺は人付き合いが苦手だし、病弱だ。天才とは言い難いし、後々に迷惑をかける可能性が極めて高い。結果的に不幸せにしてしまう可能性が高い以上、そうすべきではない。だから、しない。そういう思考だな」

 

「……すごいね。ボクにはできないや」

 

「すごくはない。このトレセン学園では誰しも与えられた役割に応えようとしているし、それ以上の働きを見せようとしている。俺のこの思考は、トレーナーとしての教育が根底にあるだけだ」

 

 運命というものを、信じている。

 貴門に生まれた以上、信じざるを得ない。

 

 トレーナーに必要なのは、私心の無さと献身だ。そう教えられた。そのためには、何もかもを惜しむべきではないと。

 

「君の独占欲はウマ娘として正しい判断だ。いかに優秀なトレーナーと言えども、1日は24時間しかない。睡眠時間や食事を加味すれば20時間。俺はこの20時間のうち殆どを、ブルボンのことを考えて生きている」

 

 体調。心理状態。精神の成長具合はどうか。肉体の成長具合はどうか。その日の性質を見極め、機嫌を見極め、食事メニューを考える。練習メニューを調整する。

 

 考えだせばキリがない。それこそ、20時間では足りないほどに。

 

「……す、すごいね、それ」

 

「それもすごくはなく、当然のことだから話を戻そう。では、これが二人になればどうだ。10時間ずつになり、その娘に割けるリソースは半分になる。無論質を向上させる努力をするだろうが、それにしたって限度がある。チームを率いているトレーナーは、掛け値なしに優秀だ。だが、一時間あたり『100』の性能を持ったトレーナーが10時間かければ『1000』。凡人というべき『50』でも20時間かければ追いつける、ということになる。

無論、チームを率いていることのメリットもある。併走トレーニングのしやすさ、ノウハウの流用。だが単純に考えれば、ウマ娘としてはトレーナーを独占した方が強くなれる。即ち」

 

「ボクの感情はウマ娘として当然、ってこと?」

 

「そうだ。だから別に反省したり、改めたり、比較して凹むことはない」

 

「なるほどー……」

 

 耳を左右にピコピコやってしきりに頷くちんちくりんが黙ったのを見て、続ける。

 

「それに別に、理屈があろうとなかろうと自分の感覚を卑下することはないのだ。君は俺の意見を正しく思ったのかもしれないが、別に答えというものはないんだからな」

 

 そうして、白米を口に入れた。

 今、相談には本気で答えた。しかし乗ったのは、あくまでも答えを諭して黙ってくれないかな、という下心からである。

 

 この平穏は、6分4秒続いた。

 

「あのさー」

 

「やかましいやつだな、お前は」

 

「なんでクラシック路線で勝てたの?」

 

(こいつ、この短時間で進化している……)

 

 こっちの文句を無視して質問を投げてくるようになった。キャッチャーが構えるのをボイコットしてるから豪速球を腹に向かってぶん投げて、無理やりに捕球させるかの如き会話術。

 

 やはり天才か……と、その底知れぬ才能に戦慄しつつ、取り敢えず参謀は冷静にぶん投げられた言葉を捕球した。

 

「本人の努力だ」

 

「でも、ボクも努力してたよ」

 

「ああ……」

 

 そういうことかと、薄々勘づいていた疑念が確信に変わった。

 ここで『実力の差だ』と言えばそれはそれで会話は終わるのだろうが、それは答えとして適切ではない。

 

 耳も尻尾もしゅんとしているあたり、常々疑問に思っていたらしい。

 いつかどこかで訊こうとしていて、いつかが今で、どこかがここだったのだろう。

 

 トウカイテイオーの長所は、関節の柔さ。バネの強さ。

 関節の柔さが可動域の広さに繋がり、関節の柔らかさと可動域の広さがバネの強さに繋がる。バネの強さはスパートに入った時の加速力に繋がり、それらすべての長所が骨に多大な負担をかけた。

 

「ルドルフより速いウマ娘はいる。ルドルフより持久力があるウマ娘はいる。ルドルフよりパワーのあるウマ娘はいるし、ルドルフより根性のあるウマ娘はいる。だが、それらすべてを兼ね備え、かつ自分を最大限活かせる頭と、頑丈な身体を持っている」

 

 すべてがトップクラスではあるが、トップではない。それらを複合させ、敵に勝つ。

 

 ブルボンもそうだ。

 ブルボンよりもサクラバクシンオーの方が速い。ブルボンよりライスシャワーの方がスタミナがある。ブルボンと同じくらいの根性を、ライスシャワーは持っている。ブルボンより賢いやつも勿論居る。総合力では全く以てトウカイテイオーに及ばないが、特化させればトウカイテイオーに勝てる。

 

「お前は長所によって夢を叶える寸前まで来て、その長所によって夢を叶えることはできなかった。ウマ娘とは誰しも長所によって栄え、長所によって滅ぶのだ」

 

「短所によって、じゃなくて?」

 

「短所とはつまり、長所の裏側だ。お前の長所である関節の柔らかさがなければ、お前の短所たる骨の脆さは発生しなかった」

 

 トウカイテイオーは自分の長所も短所も、指摘される前に知っている。

 バネがありすぎて、ぴょんぴょんと跳ぶように走ってしまうのだ。その結果として、骨に負荷がかかってよく折れる。

 だがそれを今から矯正するとなればそれは即ち、短所ごと長所を消すことになりかねない。

 

 そこらへんは、割とどうにもならないのだ。

 どうにかなるならスピカのトレーナーがやっているし、怪我をしないために本気を出さないで負けるというのも本末転倒だと言える。

 

 短所の克服は埋め立てのようなもので、克服するために長所という山が削れていく。その点で、スピカのトレーナーの方針は正しかった。

 

 ただまあこれからも、トウカイテイオーは怪我はするだろう。

 シンボリルドルフやミホノブルボンにはない強さを、トウカイテイオーは持っている。

 その強さの裏側にあるのは、怪我しやすさ。自分の力が暴走気味になって自らを損なうというところを見れば、サイレンススズカやナリタブライアンに近い。

 

 その結果、怪我して能力を元に戻し、怪我して能力を元に戻す。その繰り返しになってしまっている。

 

「長所で身を滅ぼすっていうのは、ブルボンも?」

 

「いや、幸いにしてあいつにそこまでの才能はない」

 

 これは嘘であり、真実でもある。

 ミホノブルボンの長所はメトロノームの如き抜群の精度を誇る体内時計と、メジャーの親戚としか思えない程の距離感覚、ゲームボーイのような耐久性、修行僧じみた精神力、犬のような忠実さ。

 だがそれらは、単体で身を滅ぼす類の長所ではない。

 

 ゲームボーイのような耐久性、修行僧じみた精神力が組み合わさればオーバーワークに繋がり、裏返りかねないが、無論彼はそうさせる気はない。

 そうさせない従順さを彼女は持っているし、他の長所に関してもいくつか手を打っているのだから。

 

「待たせたな、参謀くん!」

 

 パカーンと、話の終わりを見計らったようなタイミングで生徒会室のドアが開いた。

 精悍な立ち姿を見ればかっこいいことはかっこいいが、片手でむんずと掴んだ日本茶がそのかっこよさを減衰させている。

 

「随分遅かったな」

 

「うん……」

 

 テイオーが何かを言う前に、文句とも言えないような文句――――たぶん、単純な感想――――を言われ、ちょっとしょんぼりしたルドルフは淹れてきたであろう日本茶のポットを置く。

 早速注いで飲み始めた男をチラチラと見ているカイチョーから言われた言葉を飲み込みながら、トウカイテイオーは耳をぴょこんと立てて、また伏せた。

 

「で、お前はどこで道草食ってたんだ」

 

 微妙に日本茶冷めてるし、ほっぺたになんかの模様がついているし。

 そんな言葉になっていない言葉を察したのか、シンボリルドルフはいかにも予想していましたと言った風に髪を靡かせ、答えた。

 

「三献茶、という逸話がある。私は淹れた日本茶が君の飲みやすくなるような温度になるまで、そこらへんをフラフラしていたんだよ」

 

「なるほど。それはそれは愉快な光景だっただろうな。お茶ポットを片手に徘徊する生徒会長というのは」

 

 たぶんこいつ、嘘ついてるな。

 そんな感覚を覚えつつ、東条隼瀬は注いだ日本茶を一気に飲み干した。

 

 ちらりとトウカイテイオーを見て、シンボリルドルフを見る。

 ちょっとしっとりしているトウカイテイオーに比して、シンボリルドルフはルンルンとしていた。

 顔はやや上気しているし、最近管制下を離れることが多いとはいえ、尻尾がとんでもないことになっている。

 

(ははぁ……感想を求めているのか)

 

 最後の春巻きを食べて、文字通り噛み締めて味わう。

 美味しかった。掛け値なしに。彼女は弁当を作ると茶色くなるとかなんとか言っていたが、色など気にならないレベルの美味しさである。

 

 彩りとはつまり、見た瞬間に料理を美味しく感じさせるためのもので、実際のところ美味しければ彩りが地味でも構わないのだ。

 

「実に美味かった、ルドルフ。腕を上げたな」

 

「うん。君の舌にあって良かったよ」

 

「え?」

 

 トウカイテイオーは、カチーンと固まった。

 今まで食べていたものを指して、美味しかった、と感想を言う。その相手がカイチョーということは、つまり。

 

「礼としては不相応だと思ったが」

 

「いや、相応の物だ。繰り返しになるが、実に美味かった。ついでに言えば、最近金欠なものでな」

 

 トレーナーってどいつもこいつも金欠なのかな。

 そんな場違いな感想を浮かべつつ、トウカイテイオーはフリーズした。

 

 ――――これ、両想いなんじゃないの?

 

 という疑問がぐるぐると頭の中を回り、気づいたときには去っている参謀。

 

「それにしても、元気になったようでなによりだ。テイオー」

 

「う、うん。カイチョーはさ……」

 

「まさにテイオーの体を為す、だな」

 

 ははッ、と。妙に調子が良さそうに笑うシンボリルドルフを他所に、トウカイテイオーは再び固まった。

 無論先ほどとは違う意味で、である。




感想・評価いただければ幸いです。


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オペレーション:テレレレレレレー↑

123G兄貴、白河仁兄貴、すまない兄貴、障子から見ているメアリー兄貴、とーか兄貴、Goriffindor兄貴、宗谷みさき兄貴、WallBlister兄貴、mtys1104兄貴、ごうけん兄貴、夏野彩兄貴、黒(仮)兄貴、むむまっふぁ兄貴、陵戸紫苑兄貴、志之司琳兄貴、化猫屋敷兄貴、レイヴン兄貴、光に目を灼かれたペニーワイズ兄貴、猫背のキタロー兄貴、かぶと兄貴、七足兄貴、レンタカー兄貴、ヌバチ兄貴、カッシン兄貴、丈鳥置名兄貴、夕莉兄貴、一般トレーナー兄貴、りんご焼きのおじさん兄貴、ガチタンはロマンだ兄貴、必勝刃鬼兄貴、zenra兄貴、Fukki兄貴、主犯兄貴、ワットJJ兄貴、初&見兄貴、はやみんみん兄貴、観客s兄貴、sqlite*兄貴、烏のつぶらな瞳兄貴、星ノ瀬竜牙兄貴、御米兄貴、終焉齎す王兄貴、緒方兄貴、朱ザク兄貴、百面相兄貴、サパタ兄貴、やわたん兄貴、ブブゼラ兄貴、七夜四季兄貴、プルータス兄貴、ピノス兄貴、仁和寺兄貴、レオニ兄貴、百万石兄貴、深山兄貴、がんも兄貴、fumo666兄貴、ヤーマ兄貴、三丁目の夕陽兄貴、ガトリング・ゴードン兄貴、ナノックス兄貴、秒速1mm兄貴、名無屋兄貴、レイナ兄貴、金曜日(うんのよさ) 兄貴、ハイパー扇風機兄貴、カラテン兄貴、サガリギミー兄貴、なのてく兄貴、lightacenoah兄貴、迫る影兄貴、ほっか飯倉兄貴、バナナバー兄貴、名無し五郎兄貴、小倉ひろあき兄貴、ニキータの店兄貴、なわた兄貴、His@gi兄貴、なまにく3兄貴、風呂兄貴、shirokuma兄貴、yumeinu兄貴、ライセン兄貴、佐賀茂兄貴、ふれんち兄貴、RS隊員ジョニー兄貴、ESAS兄貴、hnzr兄貴、蒸気帝龍兄貴、koredeiiyo兄貴、雪ねずみ兄貴、志玖兄貴、ユウヨコヤ兄貴、Jupiter兄貴、くさんちゅ兄貴、感想ありがとナス!

レクハナ兄貴、tomoteru兄貴、なめざえもん兄貴、咲屋コウ兄貴、lemon兄貴、koyfe兄貴、鼓腹撃壌兄貴、Fukki兄貴、sennmetu兄貴、haruo兄貴、シンシンゴ兄貴、ロ・ジカル兄貴、縛種桃源卿兄貴、蜃気楼06兄貴、評価ありがとナス!


 お金のためにすべてを擲つRTA、はーじまーるよー。

 ということで、ジャパンカップに出走。目標レースではないためステータスの伸びはイマイチですが、スキルポイントとお金が貰えました。スキルポイントはともかく、お金は嬉しいですね。

 

 まず、インタビューイベントをこなします。と言ってももうやるべきことはありませんので、○連打。

 下ネタを言おうがセクハラをしようがブルボンをいじめようが、耳をつんつんしようが、尻尾を引っ張ろうが、なにやっても評判はLight固定。

 よって選択肢を見る必要すらありませんので、これからはひたすらに連打していきます。1秒間に24回○ボタンを押します。24fpsこそ至高。お主もそう思わんか?

 

【ミホノブルボンは《洋芝》のコツを掴んだ】

【ミホノブルボンは《コーナー加速》のコツを掴んだ】

 

 はい。外国勢と戦うことで掴みました、洋芝のコツ。そしてこの時点で、凱旋門√へのフラグが立ち、ミホノブルボンの適性欄に洋芝の項目が追加されます。

 これはエルコン、フェスタ、ゴルシあたりを除けば完全にランダムなので、祈りましょう。

 

 ……適性はC。普通だな!

 ということで、いずれスキルポイントを注ぎ込んでAにまで上げておきます。個人的に適性Cが1番信用ならないので。

 マイル適性C、生徒会長、無敗の皇帝、カブトムシ、サウジアラビア、カブトムシ……(悪夢)

 

 とにかく適性Cでは入着はしますが本RTAでは一着以外に価値はございません。大事なのはつまり、勝てないということです。

 

 さて、インタビューイベントが終わりました。これからの予定は冬のイベントラッシュと有馬記念出走。ということで、体力半分切るまで練習、半分切ったら休みます。

 

 皇帝ちゃんから呼び出しイベがあり体力が回復しましたが、これはトウカイテイオー関連のイベントですね。トウカイテイオーも出てましたし。

 取り敢えず適当にイベントを進めて、シンボリルドルフとトウカイテイオーの信頼度が15アップ。ついでに体力30回復。

 

 このイベントがルート確定前――――つまり菊花賞前に起きてたら発狂するところでした。

 本RTAでは何故か、初期信頼度が妙に高いシンボリルドルフ。彼女の信頼度をうかつに上げちゃうと、強制的にカイチョー√に突撃することになります。

 

 シニア級1年目で皇帝と戦うのは、正直言って無理ゲーです。アプリ版で言うストーリーブルボン並みのステータスを誇り、スキル面も隙のない皇帝は強制的な負けイベントみたいなもんです。

 天才型を使えば太刀打ちできますが、どのみち徳川家康が三方ヶ原の戦いで武田信玄に勝つくらいの無理ゲー。

 その分リターンも大きいわけですが、あまりにもクソデカなリスクを抱えることになります。

 

 TKGW様、逃げてはだめですよ?と言われても、逃げます。だって勝てないんだもん。

 

 そしてサラッとクリスマスイベントが起こりました。つーかこれが起こるということは相当信頼度高いな……これ3年目クリスマスでやっと発生するようなイベントなんじゃが……

 

 ここでちょろっと説明を入れますと、このゲームはまともにやっていれば3年間で担当ウマ娘との信頼度が200にいくようになってます。

 なので季節イベント――――正月、バレンタイン、誕生日、ハロウィン、クリスマス、年末――――などが3年目にドバーッと発生するように、発生条件が年数ではなく信頼度で仕切られているんですね。

 

 つまり、なにが言いたいかといえば。

 

 ブルボン、お前……俺のことが好きなのか?(勘違い)

 

 ということで、クリスマスイベントでもやりますか。と言ってもあんまり工夫はありません。チャートをちゃーんと読んで、そのとおりに進めます。

 

 料理をして、一緒に食べて、プレゼントを渡す。そんなところです。

 

 ということでここでは【俺が料理を作るよ】を選択。幸いにして料理スキルは高いのでそこまで酷いことにはならないでしょう。

 

「マスター。お料理であれば私もできます」

 

 と思いきやミホノブルボンさんサイドからやんわりとした断りがありました。

 ここでの選択肢は3つ。

 

【いや、俺がするよ】

【じゃあ、任せるよ】

【じゃあ、一緒にやろうか】

 

 の、どれかになります。

 お前の料理不味くて食えないんじゃい!ということかもしれませんが、料理スキルはAあるのでそうではないと思われます。たぶんきっと、メイビー。なのでたぶん、2個目の選択肢はハズレ。

 【いや、俺がするよ】では体力回復と信頼度上昇。【じゃあ、一緒にやろうか】はスキルポイント獲得と信頼度上昇。

 

 ここでは年末イベが起こることを想定してスキルポイントを優先し、【じゃあ、一緒にやろうか】を選択します。

 

【何を作ろうか?】

 

 ここでズラッと保有レシピが表示されます。

 まじめにプレイすればトレーナー同士の交流やウマ娘との交流でレシピを増やして、チームを作るときに備えて各ウマ娘の好みの料理を作れるようにしておくのですが、幸いにしてミホノブルボンは何でも美味しく食べてくれるいい子なのでそこらへんの配慮はいりません。

 低料理ランクから繰り出される失敗料理でも、なんの文句も言わず食べてくれます。

 

 好みにうるさいのはメジロ家系ですね。ゴルシも含めて、ツボを抑えないと食べさせても割としょんぼりしたりします。それでもパクパクですわ!してくれてお残しはしませんが。

 

 というかこれ、デザート欄の最後にある【いちご大福】と【ブッシュドノエル】ってなに?

 最後の欄に表示されてるってことはたぶん直近覚えたらしい。そして私ははじめて以来レシピの類を買っていない。ここから導き出される答えは――――やはりサイレンススズカさんがURAでラスボスとして立ちはだかるっぽいですね。

 

 熟練度の星の数を見るにかなりの得意料理らしいですが、シニア級になって1着と5着を繰り返した挙げ句に最後は15着という綺麗なオチを付けられても困るので、ここはいちご大福ではなくブッシュドノエルを作ります。ワシの馬券を返せ。おかげで宝塚直前で嫌な予感がして負けを回避したけども……

 

 とにかく、ブッシュドノエルはスピードがもりもり上がるし、実際悪くないです。むしろ良い。

 

 というかミホノブルボンが料理したら片っ端から触れたものを爆破させていきそうなんですけど、ミニキャラの動きを見るに電子機器の操作はほもくんにやってもらってるっぽいですね。触れるのは包丁とフライパンとか、そういう精密機械とは言い難い無機物の類いのみ。噂通りいい割り切りだ! ついていこう!

 

 ということで、クリスマスイベントが終わりました。ゲーム内時間では丁度8ヶ月前(ブルボンの誕生日:4月25日、現在はイベント的に12月25日)の誕生日に立てたフラグが作用し、ここでジャパンカップの賞金を費やして買った絶縁手袋一式を渡します。

 

 ミホノブルボンが機械を破壊しまくる理由はズバリ、手から発する静電気の一種。それが悪さして触れた精密機械を爆弾に変えてるわけです。

 この一連のイベントは来年の4月4週まで続きますが、ひとまずこれで機器の破壊を原因とするやる気ダウンイベントの発生を大幅に抑えることができます。まあ、まだ引いたことないけどね。

 

【ミホノブルボンのスピードが68上がった】

【ミホノブルボンのスタミナが34上がった】

【ミホノブルボンのスキルポイントが34上がった】

【ミホノブルボンの信頼度が上がった】

 

 おー、ええやん。流石料理スキルA。

 完全ランダムなのでステ計算にはいれてませんが、ホワイトデーでもそれなりの製菓が期待できそうですね。

 

【ミホノブルボンは《リスタート》になった】

 

 それはいらない。圧倒的にいらない。

 《リスタート》は夏合宿で解説した《束縛》と同じく、据え置き版になって性能が上方修正されたスキルの1つです。

 効果はレース序盤に逃げに失敗した時前がわずかに動揺する。それだけ。つまり、逃げに失敗した瞬間、前を走るやつを同じように失敗させる、氏なば諸共、地獄へ道連れ、負けて氏ねといった感じなスキルです。

 

 アプリだと発動する瞬間を見たことがない人が大半であろうこのスキルは、流石に調整ミスということで発動条件がかなりガバガバになりました。

 ですが、スタートに失敗しなければ発動しないという時点でうんこです。スタートに失敗するな。私はそう言いたい。

 

 まあコツを掴んだわけではなく習得しちゃったんだから仕方ないですが。

 

 そして勝っても敗けてもいい有馬記念に出走。このとき私はトイレに行くためにコントローラーの連射機能をオンにして画面から目を離していたのですが、ちらっと見たところトウカイテイオーがイベント画面にちゃんと居ました。

 着順も勝ち負けも確認してないですが、チャートによればテイオーライバル√に入っているので、このときバチクソ絶不調なテイオーは有馬記念11着に終わるはず。そして悔しくなって復活する。そんな流れです。

 

 もう復活してたら? もう復活してたら、そりゃあカイチョー√でしょうよ。でもちゃんと調整してありますから問題ありません。

 

 ということで、トイレから戻ってきたら年末イベントが起こってました。

 ここからは年末、正月、福引きとイベントラッシュです。取り敢えず年末イベについてですが信頼度は約200くらい溜まっているはずなので、取れる選択肢はふたつ。

 

 ひとつめ。

 放牧√。これは正月休みとして実家に帰らせ、体力を回復させつつ信頼度を上げるという方法です。

 まあ彼女らも夢に向かって一筋に駆けるアスリートとはいえまだ思春期の子供。実家の暖かさに触れさせ、のびのびとさせてリフレッシュさせる。これは1ターン(練習3回)分が消え去りますが、信頼度が足りない場合悪くない選択肢です。

 

 ふたつめ。

 スパルタ√。実家への帰宅を許さず、ひたすら練習させます。運が悪いと信頼度が下がりますが、1ターン消費で全能力+30はとても美味しい。

 

 ということで、ふたつめを選びます。減ってもたかが10。この時点で100あればよかった信頼度が200くらいあるのですから、それくらい誤差です。

 

 お前とうまぴょいするのは、俺だと思ってた……

 今夜は帰したくない……(テレレレレレレー↑)

 

 お茶の間を唐突にザ・ワールドさせたところで、現在時刻、朝の5時!(編集時刻)

 ということで、練習しますさせますさせません。朝早くから叩き起こして夜遅くまでじっくりねっとりやります。

 

 そして限界まで体力を減らし、初詣イベント(2回目)に突撃。当初のチャートではここで1回目の初詣イベントが起こるはずだったのですが、計算が外れました。

 ンッンー〜! 実に清々しィー気分だ! 歌でも1つ歌いたくなるような、いィ〜気分だ!

 

 ということで、皆様の為にぃ……例の動画をぉ――――なんてことはなく、普通にやります。前作のRTA(天下無敵皇帝チャート試走)での厳選作業中にひたすらクッキー☆を流し続けていたところ、badが1万(goodは3)に達したので、流石に反省しました。

 

 俺は反省するとどうたらこうたら。ということで、初詣ではキモノブルボンと共に体力を回復する選択肢を選んでから福引券を引きます。

 

 この福引きはアプリ版と仕様変更はありません。ただ、正月にリセットペナルティが発生しないオートセーブが挟まったことでリセマラすることができるようになりました。

 無論これはRTA。これまで一切セーブしていないことからわかるとおり、そんな無粋なことはいたしません。というかレギュレーション的にロードは禁止されています。

 

 福引きの景品は以下の5通り。

 

 ・特賞:温泉旅行券

  効果:体力30回復、やる気2段階UP、全ステータス+10。3年目終了時に温泉イベントが確定発生。

 

 ・一等:にんじんハンバーグ

  効果:温泉イベント抜きの温泉

 

 ・二等:にんじんやま盛り

  効果:体力20回復、やる気UP、全ステータス+5。

 

 ・三等:にんじん

  効果:体力20回復。

 

 ・四等:ティッシュ

  効果:やる気ダウン

 

 と、このようになってます。

 イベント飛ばすのに時間がかかる温泉旅行券以外なら何でもいいよ。温泉旅行券以外ならなんでもね。

 おっ、待てい。肝心なとこ(ティッシュ)忘れてるゾ、という兄貴たちもいらっしゃるでしょうが、ティッシュでもいいです。ミホノブルボンの場合、下がったやる気はライスシャワーが上げてくれるので。

 

【なんとっ! おめでとうございまぁぁぁす!! 特賞『温泉旅行券』、出ましたぁ〜〜〜〜!!】

 

 KMR嬉しいかー?(現実逃避)

 

 というところで、今回はここまで。ご視聴、ありがとうございました。




最近尋常ではないほど時間が無いので、前書きのスペシャルサンクスもどきを休止いたします。申し訳ございません。


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サイドストーリー:来年も

 寒くなったことを、肌で感じる。

 今年は、やや暖かめの冬だった。秋からの移り変わりが感じられない程度には。

 

 秋というのは、中途半端な季節である。春でもなく夏でもなく、冬でもない。だからこそ、多くの人間が好きな季節に秋を挙げるのだろう。何かが始まるわけでもなく、終わるわけでもなく、熱くもなく寒くもない。何気ない日常を過ごせる、そんな季節。

 

 だが今は、ちゃんとした冬になっている。

 出会いを控えた、別れの季節に。

 

「マスター。夜から降雪予報がされています。確率は78%。雪への対策が求められると思われます」

 

「なるほど。たしかに降りそうな空をしている」

 

 練習を終え、風呂に入って帰ってきたミホノブルボンが部室の扉をガチャリと開け放ちながら天気予報士じみた報告をした。

 

 時は12月25日、クリスマス。

 分厚いカーテンのような灰色の雲が幅を利かせる曇天を見ながら、参謀は頭の中で予定を書き換えた己を褒める。

 

 早めに練習をはじめて、早めに切り上げてよかった、と。

 ミホノブルボンは相変わらず自分の意志、感情、理性の三方が折り合いをつけられていないようだが、それでも一時期と比べると、遥かにマシになってきた。

 

「マスター」

 

 耳を萎れさせた、ミホノブルボン。尻尾は力なく左右に揺れ、目線がやや下を向いている。

 

 なにか悩みがあるのだろう。となれば、闘走心との折り合いが、未だについていないという話か。

 

「どうした、ブルボン」

 

「未だ、私のもとにはサンタさんからプレゼントが届いていません。これは私がステータス【いい子】を失った、ということなのでしょうか」

 

 真剣に、かつ親身に。ミホノブルボンの悩み相談に応じる姿勢を見せた東条隼瀬は、拍子抜けした。

 彼にしては珍しく、オウム返しに問いかける。

 

「サンタ?」

 

「はい。お父さんは言っていました。ブルボンがいい子にしていれば、クリスマスにはサンタさんがいいものを持ってきてくれるよ、と。朝起きた時、そして現在。部屋に帰っても、プレゼントは置かれていませんでした」

 

 淡々としながらも、どこか物悲しさ漂う語り口。出会ったときのサイボーグじみていた声色とは全く違う、感情の色が色濃く反映された独白。

 

「昨年はサンタさんサイドにもなんらかの事故があったということが考えられたため、私は我慢しました。こんなこともあるだろうと。ですが今年も来ないということは、私に問題があるのではないでしょうか」

 

「……ああ」

 

「マスターは、私は【いい子】ではないと思われますか?」

 

 川に突き落とされてずぶ濡れになった犬みたいにしょぼーんとしている。

 もとから強かった犬っころ感が更に強調されているミホノブルボンを見て、参謀は割とエグいことを言った。

 

「サンタの理屈は、方便だ。行事の続く家庭的な繁忙期と言える年末付近で、子供に色々な問題を起こされればたまったものではない。だから一時的にでも子供をおとなしくさせるために、『いい子にしていればいいものが貰える』と餌で釣って行動を制御しようとする」

 

「つまりサンタさんはお父さんのために動いている。故に私はお父さんと離れてからプレゼントをもらえない。そういうことでしょうか」

 

 ここまで言っても、サンタなどいないという理屈に辿り着かない。

 そんな姿を見て、参謀は迷った。思考こそすれども基本的に迷わないこの男には珍しく、迷った。

 

 サンタなどいない。その証明はできる。だが赤子がキャベツ畑で拾えたり、コウノトリが運んできたりすると信じているような純真さを持つミホノブルボンにその事実を突きつけるのは、どうなのか。

 

「……それに加えて、餌で釣る必要がなくなった、ということもあるのではないか」

 

「なるほど。サンタさんはステータス【いい子】を持たない子供たちを対象にプレゼントをあげる。そしてそのことによって一時的にステータス【いい子】を付与している。ですが、私はステータス【いい子】がデフォルトプログラムにインストールされているため、その必要を感じなかった、ということでしょうか」

 

「……ああ。たぶんな」

 

 釣った魚に餌をやらないサンタさん。

 なんてひどいやつなんだ、と。知能レベルをミホノブルボンに合わせた頭でそんなことを考えながら、参謀は頭を切り替えた。

 

 世の中にはサンタからのプレゼントに『この日だけでも、全ウマ娘にささやかな幸せを』とか言って困らせるやつもいれば、蹄鉄付きスニーカーを7年連続7回要求して買い溜めさせていたやつもいる。

 

 そのどちらも、割と早期にサンタの不在に気づいていた。

 気づいてからは願いを変えたやつと変えないやつに分かれたが、そもそも気づいていないやつは初めて見た。

 

「まあその代わりと言ってはなんだが、今夜の食事は豪勢なものにしてやろう」

 

「それはマスターご自身で調理してくださる、ということでしょうか?」

 

「ああ。外食が良かったか?」

 

「いえ」

 

 まだ食材は買っていないから、取り返しが付くぞ。

 軽い嘘をつく前に否定してきたミホノブルボンは、すぐさまぴょこんと立ち上がった。

 

「最近、マスターはお疲れ気味だと推察します」

 

「ああ。秋冬は特に、働かなければならないからな」

 

 秋から冬のはじめにかけては、ミホノブルボンの主戦場たる中長距離のGⅠが多い。ちなみに春から夏にかけてもGⅠがそれなりにあり、冬を超えてどれほど強くなったかを測らなければならないために忙しく、夏は合宿があるので忙しい。

 

 話を戻すが、GⅠに出走するのは口に出すのもバカらしいながら、当然有力なウマ娘である。

 そしてミホノブルボンはクラシック級を卒業し、来年からシニア級に突入する。

 

 今までは、同世代との戦いが中心だった。気をつける相手と言えばライスシャワーくらいなものだった。

 だが、これからは違う。クラシック級を勝ち抜き、戦い抜いてきた歴戦の猛者たちが集まるのがシニア級なのだ。謂わば全員が全員、ライスシャワー級。警戒する相手は何倍にも増える。

 

 だから、研究しなければならない。成長曲線、長所、短所、得意とする戦法、どこで仕掛けられると嫌なのか。

 

 正確に、精密に、推論の余地も、疑問の余地もないほどに集め切る。

 正しい情報の元にこそ、正しい推測は成り立つのだから。

 

 ジャパンカップでは意表を突いて勝てたが、ミホノブルボンは常に意表を突き続けられるほど手札の多い、器用なウマ娘ではない。

 いつか必ず、意表を突ききれない時が来る。17人のうちの数人が気づく。気づいて対策してくる。

 

 全員を騙し切る策はあるが、そう何回も使う気はないし、タネが割れれば意味を成さない。

 それを使う相手はただひとりだと決めていた。

 

「ですので今回は、私が料理をします」

 

「部屋ごと料理しかねないだろう、お前は」

 

「問題ありません。実家では私が料理を担当していました。機器に関しては木のヘラなどを通して操作することで解決しています」

 

「ああ……確かにその方法ならなんとかなるだろうな」

 

 一応、その厄介極まる体質を改善するために色々と試してきた。

 間に木を通せば、確かに電子機器やら機械やらを破壊せずに触れることができるだろう。

 

 ――――もう渡してしまおうか

 

 そう思わないでもないが、やはりプレゼントを渡すのは食事のあとだと相場が決まっている。少なくとも、親はそうしていた。

 ご丁寧に何故プレゼントにこれを選んだか、どのような挙措に心の動きが表れるかの解説と共に。

 

「……そうだな。なら、二人で作ろうか」

 

「はい。はい」

 

 なぜ二度言った。

 そんな疑問がちらりと頭をよぎるが、ブルボンは耳をピコピコと左右に動かし、パタパタと尻尾を振っている。

 

(ごきげんだな、こいつ……)

 

 隣で料理してると時折、ブルボンの意識外で勢いよく振られているであろう尻尾が太腿の裏をひっぱたいてくる。

 地味に痛いが、別に我慢できないほどではない。ここで痛いと言って凹ませるのも大人気ない。

 

 殆どの仕込みを終え、あとは焼くだけ煮るだけよそうだけ。

 極めて慣れた動作でおかずの準備を終えたミホノブルボンは、おたま――――機械ではないから爆発しない――――で味見をし、コクリと頷いてふと気づいた。

 

「マスターは何を作られているのですか?」

 

 木にチョコレートで装飾しているようにしか見えない。そんな問いを投げてきた少女の青い瞳と視線を交えて、少し口籠る。

 

「ブッシュドノエルだ」

 

 やや躊躇いながら、参謀は口を開いた。

 出来合いのものを使えば簡単にできるそれを、東条隼瀬は1から作っていた。無論すべてを今日作ったわけではなく、昨日から準備していたものを使ったりしているわけだが。

 

「フランス留学中に覚えた。ウマ娘には、スイーツが好きな連中が多いからな」

 

「なるほど。だから手慣れているのですね」

 

「……まぁ、そうだな」

 

 いつもは無慈悲な程に明快な声音、語尾、口調をしている彼の様子が、どこかおかしい。

 

 ――――触れないでおいたほうがいいかも知れない

 

 意外とその手の感情に聡くなりつつあるミホノブルボンは、耳をぺたんと畳んで疑問の扉を閉じた。

 

「なんだ、訊かないのか」

 

「マスターが望んでないと推察しました。私の疑問はごく軽量なものであり、マスターの反応とは釣り合わないものと考えます」

 

「……そうか」

 

 かつて。

 本当に思いつきで、このケーキを作った。クリスマスの日に降る雪を見て、『雪は走っている時に音を吸うから好きだ』と言ったウマ娘に対して。

 そのウマ娘は、今まで走ることにしか興味を示さない感じがあった。だからこれから走りに行くであろうことを察して、先んじてカロリーを与えておこうと思ったのである。

 

 クリスマスだし、どうせなら。そんな気持ちで作ったケーキ――――ブッシュドノエルを、彼女は美味しいと言った。

 ここまでは、よくある話である。中流のお嬢様家庭生まれの彼女は、基本的に美味しい美味しいと物を食べる。

 だが、彼女は言ったのだ。来年も食べたい、と。

 

 目の前のこと。走ること。レースのこと。

 それくらいにしか興味を示さない彼女の、非常に珍しい未来への言及。

 彼女の言う来年は来なかったが、そのときに備えて練習していた結果、うまくなった。

 

「無論、聴きたくない、ということではありません。マスターが話したいと思ってくれたときに話してくだされば、私は嬉しく思います」

 

「そうか」

 

 慎重に言葉を選んでいるであろうミホノブルボンは、心配そうにゆっくりと揺らす尻尾の勢いを緩めながら僅かに微笑んだ。

 

 ――――落ち着く、と。

 

 そう思ったのは、雪が音を吸っているかの如く静かだからというわけではない。

 ズカズカと踏み込んでくるときと、踏み込まないところがはっきりしていて、妙に噛み合うこの少女が側に居ることは、決して無関係ではないだろう。

 

「来年も、再来年も。このままでいいと思います。マスターが口にしにくいことを、無理に聴きたいとは思いません。マスターの事を知りたいという気持ちより、私はマスターが傷つかないことを優先します」

 

「……来年も、再来年も、か」

 

「……? はい」

 

 シニア級に上がって、1年保たないウマ娘がいる。2年保たないウマ娘も居る。たいていのウマ娘は、シニア級で3年目を迎えられない。

 世代のスターと呼ばれようとも、だ。

 

 来年も再来年も、迎えたい。心から――――参謀に心はあるのかと、結構な人数から疑われているが――――そう思う。

 

 しかし、来年や再来年のことを考える前に、食卓を見るべきだろう。

 眼の前の――――ウマ娘2人前では済まないくらいの、明らかに多い料理をどう食べるか。食べられるのか。

 

 がんばる姿は、美しい。ひたむきに、愚直に、ひたすらに。がんばる姿は、見る人間の心を打つ。

 

 しかし、3皿分のラザニアが焼き上がる音を聴いて、東条隼瀬はいそいそと頑張って作っていたミホノブルボンのがんばる姿を微笑ましく思って止めなかった自分の判断を激しく後悔した。




ビーハイブZ1兄貴、久隆裕兄貴、草と風兄貴、Clementine兄貴、GAR兄貴、緑ノ縁兄貴、rindo125005兄貴、GG兄貴、シンシンゴ兄貴、さうすものりす兄貴、評価ありがとナス!


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アナザーストーリー:雪は音を吸い

全盛期フルアーマールドルフ=スズカ(世界)>全盛期ルドルフ=速度超過スズカ>ションボリルドルフ(今)>スズカ(怪我前)>ブルボン(ナチュラル)>テイオー>>>>>ネームドの壁>>>>>ライオンルナちゃん>>モブ

キャンサー杯についての活動報告を投稿しました。よろしければごらんください。


 雪は音を吸う。吸われた音は大地に沈んで、空に大きく響かない。

 だから、雪の日が好きだった。静寂を与えてくれるからこそ、サイレンススズカは雪の日を愛していた。

 

「相変わらず熱心なのね、スズカ。こんな日に」

 

「こんな日?」

 

 雪の夜の、パリの街を走る。

 と言っても、ウマ娘の全力疾走は景観保護の観念から禁止されている。だからゆっくりと――――それでも並のウマ娘が見たら才能に嫉妬しそうな程に軽やかに――――走る。

 

 スズカの言う『トレーナーさん』の、フランスでの同期。

 奴のことは死ぬほど嫌いだったと宣言する女性の下で、サイレンススズカは走っていた。

 

「今日、なにかあったかしら。レースは……」

 

「……クリスマスよ」

 

「…………ああ、クリスマス」

 

 自分が出るレース以外にはあまり興味を示さないサイレンススズカには、日付感覚がない。曜日感覚もない。

 

 あと何日でレース、だからこんなメニューを組む。

 もうボロボロのノートを捲って自分でカリキュラムを組み上げ、無理をせず走る。その程度の認識。

 

「そう言えば、クリスマスでしたね。ええと……」

 

 どんな挨拶をすればいいのかしら。

 フランス語を話せはするが、それはあくまでも日常レベルでのこと。行事に合わせた挨拶を、サイレンススズカは覚えていない。

 

「そういうのはいいわよ。で、また走りに行くの?」

 

「いえ。でも少し、行きたいところがあって」

 

「行きたいところ? レース場とか?」

 

「あの……私ってやっぱり、走ることしか考えてないって思われていますか?」

 

 答えは沈黙。つまり、そういうことだった。

 走るために、勝つために来た。そう言って憚らない彼女は、事実アメリカで異次元の成績を残してここへ来た。

 

 そして芝に脚を慣らすや否や、怒涛の5連勝を上げている。

 来年には、凱旋門へ。そんな声もあった。

 

「で、レース場じゃなかったらどこに行くのよ。鍛冶場にでもいく?」

 

 蹄鉄を打っている、昔ながらのところに。

 そんな問いに微笑みながら、サイレンススズカは答えた。

 

「少し、ケーキを食べたくて」

 

「へー……めずらし」

 

 行事に興味なし。食べることにも興味なし。友達付き合いはするが、積極的に遊びに行くわけでもない。

 

 無趣味。

 学生ながら走ることを仕事にしているウマ娘たちからは、彼女はそう思われていた。

 

「ええ。クリスマスですから」

 

 すっかりぽんと忘れていたくせに何を抜かすか。

 そんな言葉を吐きかけたのを引っ込めて、トレーナーはスズカを送り出した。

 

 ――――風邪、ひかないようにしなさいよ

 

 トレーナーとしてはそう言えばよかったとも思うが、サイレンススズカは生まれてから今まで、全く風邪をひいたことがないらしい。

 それは当人の資質によるものが大きいだろうが、ウマ娘としては得難い才能であるのは間違いない。

 

 スズカは、ゴムのような身体をしていた。速度、瞬発力、柔軟性。どれをとっても超一流の、怪我をしにくい身体。

 

 その柔軟性は、あの憎たらしいあんちくしょうと組んでからの初戦で実証された。

 マイルチャンピオンシップで5枠10番のゲートに入ったはいいものの、レース前の緊張で作戦を忘れてきょろきょろとした挙げ句ゲートの下をくぐって抜け出し、観客席に駆け寄って『あの、どこで息を入れればいいでしょうか……』と問う。

 

 ――――わかった。なら序盤はひたすら楽に走って、その楽が続かなくなったら息を入れろ

 

 そういう助言を受けてからURAの職員たちに連行され、怪我がないかという身体検査を受けて無事だと判断されるや大外枠に移されて、普通に勝ったとかいう謎。

 

 ハナを奪わなければならない逃げウマ娘が、何故大外枠に回されて勝てるのか。そして何故、狭いゲートの下を潜り抜けられるのか。潜り抜けられたとして、なぜ関節を痛めたりしないのか。

 

「……アイツ、こんな逸材をほっぽりだして何やってるのかしら」

 

 1年前。

 アメリカを震撼させたサイレンススズカが移籍先を探しているらしい、というニュースが欧州ウマ娘界を揺るがしていた頃。

 

「スズカがフランスに行くらしい。エアグルーヴから聴いた。お前のところで受け入れてくれないか?」

 

 エアグルーヴって誰だ。

 朝っぱらからいきなり国際ビデオ通信を送ってきた男にそんな疑問を投げる前に、思わず感情が、不満が口をついて出た。

 

「なんで私がアンタのお手伝いをしなきゃいけないのよ」

 

「お前が同期の中で一番マシだったからだ」

 

「アンタ、ブツ切りされたいの!?」

 

 選んだ理由は消去法です。それはわかる。消去法も立派な思考法のひとつだから。だがそれを、正々堂々と口に出すことをコミュニケーションとは言わない。

 

 回線切ってやろうか。

 そんな殺意がピリッと剥き出しになったことを察知してか、鋼鉄の瞳が虚空を向く。

 

「お前、デビューしてから担当ウマ娘を怪我させたことがないだろう」

 

「まあ、そうだけど?」

 

 ドヤドヤドヤ。

 

 なんでこいつ、フランスのことを詳しく知ってんだろ。そんな疑問が浮かぶ前に、感情が先に立つ。それは、彼女の特質と言ってよかった。

 

「だからこうして頼んでいる」

 

「アンタあれで頼んでたわけ……?」

 

「ああ。スズカにとって必要なのは、怪我をさせないトレーナーだからな。お前の了承をとり次第、エアグルーヴがそれとなくスズカの移籍先として推挙する。そういう流れになっている」

 

 流れを勝手に作ってんじゃないわよ。

 余程そう言ってやりたかったが、サイレンススズカはいい。とてもいい。

 

 極めて――――そう、極めて優秀なウマ娘だ。なにせ、日本でのマイルチャンピオンシップで覚醒して以来負けていないのだから。

 アメリカにはたしかに、彼女の得意とする左回りのコースしかなかった。だがそれでも、無敗はすごい。

 

 ――――1着サイレンススズカ。2着は誰だ!?

 

 新大陸の名物実況は、彼女がアメリカで走る最後のレースが開始されて早々、やけくそ気味にそう叫んだ。そこに誰も、なんの非難を浴びせないほどに、赤みがかった栗毛の超特急は誰にも止められなかった。

 

 危なげなく圧倒して勝ち続けるその様から『接戦には弱かろう』と接戦にまで持ち込もうにも、持ち込めない。持ち込めるウマ娘はひとり居たが、それでも鬼気迫る再加速によって完膚なきまでに叩きのめされた。

 

(こいつが育てたって時点で、能力は高い。戦績がそれを証明してる。それに、アメリカのダートにいきなり適応してみせた。なら洋芝への適応はそれなりにできるはず)

 

 そんな算段で、彼女はサイレンススズカを受け入れた。従順でおとなしい――――しかし、芯の強いウマ娘。

 練習メニューを自分で組み立てられるほどの頭もある。

 

 彼女に足りていないものは、なかった。臆病なほど慎重に、身体を大事にして走っている。

 それはたぶん故障の影響だろうと、彼女は考えていた。

 

 そんな彼女を、補佐する。性格とは正反対の放任主義的信頼で、彼女はサイレンススズカを御していた。

 

 任せられた理由は、今となってはわかる。無能なトレーナーであればあるほどに、自分が自分がと前に出る。ウマ娘に任せることを――――指導者として立っているはずの自分が競技者であるウマ娘に劣ることを認められない。

 

 最低限の健康管理を除いた放任。それが、完成を迎えたサイレンススズカというウマ娘に必要なことである。

 

 学生だった頃、常々言った。主流である管理主義は、その軛を緩めるべきだと。

 管理主義の権化だったあの男は、その論説を聴いていたらしい。

 

 自分の主義に、自分の主張に拘泥しない。ウマ娘のためであれば、自分の何もかもを擲てる。

 

「……アイツ、来んのかしら」

 

 サイレンススズカは最強だ。間違いなく。強さという階を、登りつめた先端、突き立った塔の果てに、孤高に佇んでいる。

 

 暗い外を眺めながら、サイレンススズカを思う。片翼で、誰よりも速く飛翔するウマ娘のことを。

 

 自由の果て、孤独の先の強さを得た彼女はひたすらにストイックで、だからこそ隙がない。

 

 そんな隙のない孤高の存在はと言えば、現在迷っていた。

 迷いウマオーバーランと言った感じに、パリを大外からくるくると左回りに走る。

 それは何らかの儀式かと問われれば、そうかもしれないと思える程度には不可思議な光景だった。

 

 緑の耳当て、白いマフラー、黒い手袋。

 それなりの防寒対策を施された服を着て、パリの路地に突っ込んでは戻り、突っ込んでは戻り、しらみつぶしに探索しながら範囲を狭めていく。

 

 向かいたい場所は、決まっている。だが、向かう場所は決まっていない。

 

 ――――どこのケーキ屋さんにしようかしら

 

 彼女が盛大な左回りを見せている理由はと言えば、その程度なものだった。

 

 できれば、美味しいものがいい。ちゃちな、安い味であってほしくない。クリスマスに、雪の降るあの夜に食べたあの味を汚されたくない。

 

 マフラーを鼻のあたりまで深く巻きながら、サイレンススズカは駆けた。どこまでも、いつまでも走れそうなほどに脚は軽い。

 今の彼女を見て、そしてそれまでの彼女を見ても、脚の骨が折れたことがあるなどと誰も思わないだろう。それほどまでに、後遺症というべき症状の何物もない。

 

 骨折したときの記憶が蘇り、踏み込む脚が鈍る。走ることが怖くなる。そんな心理的な影響もなければ、寒くなると痛んだり、走って痛むなどという、肉体的な影響もない。

 

(トレーナーさん。元気ですよ、私)

 

 クラシック三冠を、ミホノブルボンという娘と共にとったらしい。

 その知らせを聴いて、サイレンススズカは心の底から喜んだ。

 

 執着とか、嫉妬とか、そういうものから解き放たれたのだ。究極の速度が齎す真実の世界に脚を踏み入れて。

 

 また歩きだしてくれて嬉しい。自分のことを、いつまでも引きずってほしくはない。

 共に駆けたあの時のことを覚えていてほしい。忘れないでほしい。そんな気持ちはあるが、傷になってまで残ろうとは思わない。

 

 治ることを知らない膿んだ傷を抱えたまま、苦しんでほしくはない。

 そしていつかは、わかってほしいのだ。あのときの判断に、それまでの積み重ねには何一つ、間違いなどなかったのだと。

 あれが事故だということは、走っていた本人である自分が一番良くわかっている。なんの兆候もなかった。不調なのに無理矢理走らされたというわけでもなく、完璧な絶好調。

 

 絶好調だからこそ、速度の壁を超えられた。究極の速度がもたらす新たなる世界の片鱗を見れた。

 そう。その時は片鱗だけだった。だが今は、違う。片鱗ではなく、くっきりとした輪郭を捉えている。領域の裏側に侵出している。

 

(他の誰にもできなかったことをすれば)

 

 誰にも至れなかった地平に立てば、証明になるかもしれない。あの理由なき怪我があってこその今の自分だと言えば、救いになるかもしれない。

 その先を考えることはしなかった。分厚いガラスのウィンドウの中で、色とりどりのケーキが並んでいる。

 

 考え事をしながらも鍛え抜かれた冷静な部分は無意識に、獲物を捉える鷹の如く働いている。熱意と集中力の裏側にはびっしりと、冷静な判断力が敷き詰められているというのが、サイレンススズカの長所だった。

 

「いらっしゃ――――」

 

 から、ころ。

 赤い木の実とひとめで針葉樹とわかる葉っぱに彩られたベルが鳴り、うつむいていた店長らしき男が面を上げた。

 

「さ、サイレンススズカ!?」

 

「え」

 

 なんで知ってるんだろう。

 自分の評判というものにひどく無頓着な――――とある男と僅かな相似を感じさせる反応を示してから、栗毛の彼女は黒い手袋を口元に当てた。

 

「あ、ファンの方ですか?」

 

「いや……まあ、うん」

 

 今年のムーラン・ド・ロンシャン賞とジャック・ル・マロワ賞をぶっちぎりで勝ったウマ娘を知らない人間はいない。

 彼の推しを粉砕したこのウマ娘。アメリカ人から自嘲気味に《黒船》などと呼ばれた彼女の走りは、あまりの無双ぶりにアメリカのトレセンに『逃げウマ娘育成専属コース』なるものを新設させたらしいという噂に真実味を帯びさせるに充分なものだった。

 

 一挙手一投足も逃すまいと左右に揺れた耳を他所に、サイレンススズカは濁された返事への興味をすぐに無くした。もともとが、走り以外には淡白な質なのである。

 

「ブッシュ・ド・ノエルをふたつ、いただけますか」

 

 はい、2つですね。

 すっかりと商売人のよそ行きの顔に戻った男性からケーキを2つ収めた紙箱を受け取り、ぴったりのお金を渡す。

 どこかさみしげな、でも嬉しげな横顔を見せながら、ゆっくりと優しく駆けながら寮に戻る。

 

 マフラーをほどき、手袋を外す。お皿を2つ用意して対面に置きながら、サイレンススズカはコーヒーを入れた。

 緑と白、好きな色。太極図のように配色されたその銀製のペンダントを開き、中の写真に語りかける。

 

「私、喜んでいるんですよ。本当です」

 

 何も答えないし、なんの反応も示さない冷たげな顔。信頼と愛情を感じさせる、妙な色気のある声色を可能な限り明るくして、栗毛の少女は宙を向いた。

 

「でも、約束しましたよね。来年もって」

 

 その手を離したのは、自分だ。一人でも大丈夫だと、来年から海外遠征をするつもりだったからと言って、苦悩する彼から離れた。

 そんな彼が約束を果たせなかった理由も、わかる。ウマ娘の命とも言える脚の故障中にクリスマスなど祝えない。だからこれは、ほんの冗談だった。

 ブッシュ・ド・ノエル。一緒にまた食べようと言った、約束の象徴。

 

「うそつき」

 

 ――――トレーナーさんの、うそつき

 

 ――――私の、うそつき

 

 その声も、ゆっくりと。外に降りしきる雪が吸っていった。




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サイドストーリー:アナザー・ワン

 ――――エアグルーヴに言われてから、ずっと考えていた。

 

 サイレンススズカ。彼女のことを。

 二度と現れないであろう、特異な戦法を編み出した不世出の天才。

 

 そして、自分が潰したウマ娘。

 女の命が髪ならば、ウマ娘の命はガラスの脚。その脚を、折った。折ってしまった。

 

 ――――健康管理は任せろ。ただ、走った距離、時間はおよそでいいから伝えること。いいな?

 

 ――――はい。わかりました

 

 儚げな、陽に触れると溶けてしまいそうな雪のような笑みを覚えている。

 従順で、自信家で、自負心が強くて、負けん気もある。理想と言っていい心理と、怪我のしにくいしなやかな肉体を持った天才。

 

 それが、サイレンススズカだった。

 

 ――――では、走るのは任せる。どうにも、俺が口を出さない方がいいらしいからな

 

 ――――どうにも?

 

 ――――ルドルフもそうだった

 

 ――――ああ……会長は、そうですね。でも私は……

 

 美しいエメラルドグリーンの瞳をパチリと瞬かせて、笑う。

 

 ――――お前、よく笑うようになったな

 

 ――――はい。トレーナーさんと編み上げた戦法が、とてもしっくり来て。走るのがとても楽しいんです

 

 マイルチャンピオンシップでも、香港でも。彼女は、実に楽しそうに走っていた。

 心から、楽しんでいる。その姿はともかく、そのためにすべての苦難を甘受できる。そんな、努力を惜しまぬ精神性を評価してはいた。

 

 ――――それは構わないが、スズカ。他にも趣味を見つけろよ。ずっと走り続けられるわけでもないんだ

 

 ――――……読書、とか。でもやっぱり、走ることが一番ですね。引退しても、走る意味がなくなっても、私は走っていると思います

 

 ……そんな彼女が走れなくなったら。

 あの時はただただ、行く先になんの障害もない道が拓けている気がして、そんなことは考えもしなかった。

 

 ――――引退後も、か

 

 その疾駆する姿が鮮やかであればあるほど、美しければ美しいほど、走れなくなる。

 限界を超えて、決められた距離を駆け抜ける。競い、争い、鎬を削って、不用意に全力を超える全力を出してしまって脚が壊れる。それまでの全力が出せなくなる。

 

 そんなウマ娘を、数多く知っている。

 

 ――――難しい、でしょうか

 

 逃げはただでさえ、脚に負担が掛かる。

 特に彼女の走り方は、加速→減速→溜め→加速と言う手順を踏む。

 つまり2度の加速を行う都合上、負荷も相当なものになるのだ。

 

 そのことを理解して、スズカは難しいかどうかを訊いた。

 彼女もスターウマ娘が引退したあと満足に走れなくなる、みたいな話を聴いている。怪我をして歩けなくなるし、最悪死ぬ。

 

 それが自分に振りかからないとも限らないことも、理解している。

 

 ――――まあ、なんとかしよう

 

 その答えのどこが気に入ったのか。彼女は微笑んで、言った。

 

 ――――はい。なんとかしてください、トレーナーさん

 

 柔らかい笑みに込められた期待を、信頼を。

 自分は見事に裏切った。夢を叶えると約束したのに、完全に叶えさせることもできなかった。

 

 走ることを生きがいにしているスズカから、走ることを奪いかけた。他でもない自分の無能さで。

 

 死んでしまいたいと思った。彼女の夢を支えられないくせに、信頼にすら応えられないくせに、トレーナー面して偉そうな口をきく。

 

 死ぬべきだ。こんな無能は。それが贖罪だ。せめてもの義務だ。

 そう思って瞑目して、身体の動きを止めた。

 

 まだ、やれることがある。

 死ぬのは、逃げだ。彼女の故障の原因を解明し、リハビリに付き添うことこそが、最後までトレーナーとしての義務を果たすということだ。

 

 ――――トレーナーさんのせいではありません

 

 優しい彼女は、言った。

 

 周りも言った。同じようなことを。

 だがその優しさが、辛かった。トレーナーさんと呼ばれるたびに、そう呼ばれる資格がないと思った。

 

 ともあれ、その後もサイレンススズカのリハビリに付き添った。持てる全知を、全能を尽くして彼女の実力が戻るところまで付き添った。

 

 だが、こうも思う。

 このリハビリ期間があれば、サイレンススズカはもっと強くなれた。速くなれた。夢を叶えられたかもしれない。スピードの向こう側へ、完全なる一歩を踏み出せていたかも知れない。

 

 ――――トレーナーさん

 

 そんなある時。

 見た目にも出るほどに疲れていた身体を引きずるようにして、呼び出された教室に赴いた。

 茜色の夕焼けが彼女の明るい栗毛を照らし、溶け込むように柔らかな光を放っている。

 

 ――――すみません。忙しいところを

 

 ――――いや

 

 ――――ここ、覚えていますか。私が作戦を忘れてしまったとき、記憶力のトレーニング代わりに、ふたりで神経衰弱をしたりして。私、負けっぱなしでしたけど

 

 ――――ああ。覚えているよ

 

 短く返す。顔も見られず俯いたままの自分に何を思ったのか、サイレンススズカはゆっくりと切り出した。

 

 ――――私、海外へ遠征しようと思っています。だから……

 

 髪が揺れる音がした。上体の動きから、俯いたことがわかる。

 

 ――――だから、現地の方に指導をお願いしたいと思うんです。ですから

 

 口籠る。

 彼女には、言い出すべき権利もある。怪我を防げなかった無能を相手に言い出しづらさを感じる必要など無い。

 

 だからその言い淀みが彼女の本質的な善性から出ていたことを知っていた。

 その善性に甘えていた。彼女の才能を輝かせるのは他ならぬ自分であると、分不相応なことを思っていた。

 

 ――――契約終了か

 

 ――――…………はい

 

 終わりを言い出すのは、自分であるべきだ。何となく、そう直感した。言い出しづらそうにしているが、彼女は結局のところ言うだろう。

 だが、その間に苦しむ。言ったあとも、苦しむ。優しすぎる程に優しい娘だから。

 

 だからせめて、その苦しみを取り除くのが義務だ。そう思った。

 

 ――――アメリカのトレーナー、だったな。性別にこだわりはあるか?

 

 ――――できれば、女性をお願いします

 

 ――――わかった、探しておく。いや……探しておいて構わないかな、サイレンススズカ

 

 ――――はい。お願いします

 

 お願いします、トレーナーさん。

 いつものそれを、言わなかった。

 それはたぶん、彼女なりの決別だったのだろうと思う。

 

 ――――私のこと……

 

 彼女は何かを、言いかけた。言いかけて、やめて、仄暗くなってきた沈みかけの夕焼けにあわせるように、笑う。

 

 それは久しぶりに見た、彼女の笑顔だった。

 

 ――――ありがとうございました。今まで

 

 ――――ああ。迷惑ばかりかけて、申し訳なかった。間違え続けて、申し訳なかった。これは俺の本心だ

 

 挨拶を交わして、一方的に謝罪を叩きつけて、一足早く教室を出る。

 廊下をしばらく歩いてから振り向いても、サイレンススズカは後ろにいない。

 

 実にバカらしいことだが、このとき自覚した。

 そうなったのだ。これが、契約を終えるということなのだ。

 

 終わった。どこまでも広がっていたと思っていた道が。

 未練たらたらに、残念だと思った。しかし同時に、こうも思った。

 

 彼女にとっては、ここで終わってよかったのかもしれない、と。

 天才には、天才を。自分はどうやらスズカ――――もうそうやって呼ぶ資格もないから言い方を変えるが、サイレンススズカには釣り合わなかった。

 

 

「マスター」

 

 

 トレーナーさん、ではない。

 静かな声が、沈んでいた意識を浮上させた。

 

 ぼやけた視界いっぱいに、ミホノブルボンの顔があった。無表情の中に心配を孕んだ、どこか優しげな顔。

 

「……寝てたのか」

 

「はい。食べ終わった直後、倒れるように。怖い夢でも見ていたのですか?」

 

「俺は、なにか言ったか」

 

「泣いていました」

 

 目尻を拭うと、確かに濡れている。

 心配をかけたのだろう。なぜかエプロン――――灰色の、上の辺りに蹄鉄とpaka−pakaと白い刺繍が施されたやつ――――を使われていることに気づきつつ、わしゃわしゃと栗毛を撫でた。

 

「バカな夢を見たんだよ。笑い泣きだ」

 

「バカな夢、ですか」

 

 心配そうなものからいつものサイボーグフェイスに戻ったブルボンは首を傾げ、尻尾が揺れる。

 純粋で、裏表がない。パチパチと瞬く瞳の青さが、膿んで熱を持った傷口を冷やした。

 

「そうだ。然程才能もないくせに自分なら天才をもっと輝かせられると、天才について行けると、自分の実力を過信して背伸びしたバカの夢だ」

 

 なんとか完食した食事と、デザート。おそらく食べ終わったあとに体力を使い果たして寝たのだろう。

 

 そんな考察している男を他所にブッシュドノエルの欠片がちらほら見受けられる皿を片付けながら、ミホノブルボンは淡々と述べた。

 

「過信も背伸びも自信に繋がります。過信とは過ぎたる自信のことであり、背伸びは届かないものに手を伸ばす、ということです。自信はないよりも、あるにこしたことはありません。背伸びをしなければ、進歩もありません。凡そ偉業を為した人間は、自分に自信がある者です。進歩をするために身体を伸ばした者です」

 

「……唐突に知能を上げてきたな、お前」

 

「お父さんが励ますときに言ってくれました。私の言葉ではありません。この言葉でマスターが少しでも元気になったならば、父も喜ぶと思います」

 

 マスター。

 

 その呼び方を、なんの違和感もなく受け入れた。マスターというのは、明らかにおかしい呼び方だ。普通、トレーナーと呼ぶ。あるいはトレーナーくんとか………トレーナーさんとか。

 

 それなのにミホノブルボンの呼び方を糺そうとしないのは、無意識になんとなく歓迎しているのかもしれない。

 

 トレーナーと呼ばれないことを。

 

 食器を手際よく洗い、ぬぐい、拭く。

 そんな彼女を、黙って見ていた。食洗機を使わずにアナログなやり方で一枚一枚片付けていく姿には、篤実さがある。どんな物事も一歩ずつ進んでいこうという性格が、そのまま表れていた。

 

「マスター」

 

 夢で見た記憶が整理できる程度の時間。

 そんなそれなりの時間で洗い物を終えて、ミホノブルボンはトコトコとやってきた。耳が不安げに垂れているあたり、何かをやらかしたのだろうか。

 ものが爆発した時に出る特有の、鼻をつくような煙の匂いはしないが。

 

「プレゼントです」

 

 綺麗に洗った手で、ミホノブルボンは2日前くらいから部室の一角に鎮座していた茶色の紙袋からマフラーを取り出した。

 黒い。好きな色を知っていたのか、知らずに黒にしたのか。どちらにせよ、嬉しかった。

 

「マスターは大人ですので、私がサンタさんの代わりになろうと思いまして」

 

「ありがとう、ブルボン」

 

 軽く巻いてみると、温かい。肌触りもいい。

 手袋でなかったことを感謝しつつ、ふと疑問を持った。

 

「これ、どこで買ったんだ?」

 

 上質なマフラーである。そして、手触りもいい。デザインもシンプルで癖がない。

 

「申し訳ありません。手縫いです」

 

 手縫いとは思えない精密な出来に感嘆しつつ、おもむろにミホノブルボンの頭を撫でた。

 最近なんというか、わんこ感が増してきている。オーダーを聞き逃すまいと耳をピコピコさせて、なぜか尻尾をブンブン振り回して、どこにでもトコトコと付いてくる。

 

 実家の犬にやるような感覚で、東条隼瀬はミホノブルボンの頭を適当に撫でていた。

 

「これは返礼だ。君の言うところの、サンタさんの代わりだな」

 

「ありがとうございます」

 

 自分が渡したのと同じような紙袋を受け取り、開く。

 その中には、ミホノブルボンの勝負服と同色の手袋が入っていた。

 

「君の体質があるだろう」

 

「はい。機械に触れると、もれなく何故か爆発します」

 

「そう、それ。それはなんというか……機械をレンチンしてしまうような静電気が出ているかららしいのだ。だからその静電気を遮蔽するような造りになっている」

 

 こくこくとバカっぽい動作で頷くブルボンに犬感を感じつつ、参謀は続けた。

 

「一応2セット用意してある。ひとつはよそ行き用。ひとつは室内用。まだ試作品だが、少なくとも今よりはマシになるはずだ」

 

「……ありがとうございます、マスター」

 

 すぐさま付けて、スマホを触る。

 度重なる小規模な爆発で画面がバキバキになっているスマートフォンは、なんとびっくり耐え抜いた。

 

「マスター、壊れません」

 

「ああ」

 

 部室中の機械に触れまくるブルボンの無邪気さに救われるような思いになりながら、クリスマスの夜は更けていく。

 

 ――――あいつは今、何をしているのだろうか

 

 そんな、引っかかるような思いを抱えながら。




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サイドストーリー:今再び

 有馬記念は、クリスマスのたった2日後である。

 結局のところ、ミホノブルボンは闘走心と理性の間で折り合いをつけることはできなかった。

 

 であれば、無理に折り合いをつける必要もない。2500メートルは長距離に分類されるが、限りなく中距離に近い。全力で逃げ切りを図っても、スタミナが切れることはないだろう。普通にやれるなら、だが。

 

 そう。問題はそこなのだ。果たして普通にやれるのか。

 ミホノブルボンの最大の長所である掛からなさ、無用にスタミナを使わないという部分がこのレースに限っては失われていると考えたほうがいい。

 

 無駄な期待はしない方が良いのだ。最悪を極めた予想をした方が、却って事前に対策できる。

 

 現在、トレセン学園は閑散としていた。

 年末のレース――――有馬記念やら――――を控えていないウマ娘たちは実家に帰省し、骨休めの期間に入っている。無論残ってトレーニングに励む者もいるが、ウマ娘にとっては休むのも立派な仕事である。

 ミホノブルボンも出走したGIホープフルステークスが12月の28日。これが今年最後のレースになり、新年の初レースは1月の5日。京都と中山で行われる金杯が、トゥインクルシリーズの開幕を告げる。

 

 だが実際のところ熱心な、それも古参のファンであればあるほどホープフルステークスが1年の最後を締めくくるレースであることを認めない人間が多い。

 1年の最後は、有馬記念。そういう固定観念のあるファンは、未だに多い。というか、それほどの人気と伝統のあるレースなのだ。

 

 これまで無敗の三冠ウマ娘・ミホノブルボンの対抗ウマ娘は、宝塚の覇者メジロパーマー。次いで、ジャパンカップで底力を見せたトウカイテイオー。

 

 トウカイテイオーについては置いておくとして、メジロパーマー。

 彼女は宝塚記念の覇者だが、続く天皇賞秋で大惨敗をかました。

 

 このせいで『逃げは安定感がない。パーマー、ヘリオスは博徒みたいなもん』『宝塚はフロック。マックイーンが出たら勝ってた』という見方が多くなった。

 しかし、『逃げは安定感がある。覚醒したあとのサイレンススズカも、初戦で出遅れかまして以降のミホノブルボンも全く危なげなく勝ってる』『宝塚はフロックで制せるほど安くない。2200ならパーマーはマックイーンに勝てる』という論調もある。

 

 もともと、トゥインクルシリーズのファンたちは逃げという戦法を愛していた。大半のトレーナーが不安定で自分の介在の余地がないそれを嫌うのに対し、ファンたちは面白いものを見るような目で見ていた。

 

 ファンからすれば、低打率ロマン砲を見るような感覚だったのである。

 勝ったら『うおぉぉおお! 珍しいもの見た!』となるし、敗けても『あー、またスタミナ尽きて沈んでる』と笑えるし、駆け引きなしの全力で走る姿は見ていて感動できる。

 

 そう、それは、弱小球団を応援するファンの心理だった。負けてもいつものこととして流せるし、勝ったら珍しいから嬉しい。

 ある種の無敵さを持つファンたちに、逃げは細々と支持され続けてきたのである。

 

 そういう手合に加えて、最近は逃げという戦法そのものが見直されつつあった。

 これひょっとして強いんじゃないか、と。

 

 まあそんなことはないわけだが、逃げというだけで評価が下がる時代から逃げというだけで評価が上がる時代になりつつあった。一種の流行りである。

 

 更に、有馬記念の開催場所がよかった。

 なぜメジロパーマーがトウカイテイオーを抑えて対抗一番手であるか。その理由はたったひとつ。それはここが中山レース場だから以外にはない。

 

 中山の直線は短い。

 そして直線が長ければ長いほど、後続から差し切るタイプのウマ娘が有利になる。

 逃げの黄金の負けパターンが最終コーナーから直線にかけて差し切られるというものだから、逃げにとっては直線は短ければ短いほどにいい。

 

 故にここでは、トウカイテイオーよりもメジロパーマーの方が勝ち目がある。そう考えられていた。

 しかし、大半が思っていた。短い直線に、直線前の短く急な上り坂。これらの地形は、間違いなくミホノブルボンに有利に働く。だから、ミホノブルボンが勝つであろうと。

 

 そんなミホノブルボンはと言えば、最後の作戦会議に入っていた。

 

「作戦を説明する」

 

「傾聴いたします」

 

 自戒の念の塊のようになっていた男は、弛まぬ努力によって得たメンタルリセット術を駆使してすっかり元に戻っていた。

 ミホノブルボンも、いつもの右手を突き出す例のポーズ。信頼するマスターの過去を知りたいと思いつつも、特にその後は追求することなく通常のまま。

 

 これに勝てば、ミホノブルボンはクラシック級の終わりまでにGⅠを7勝したことになる。

 シンボリルドルフはクラシック級終わり時点でGⅠを6勝しか(今は倍くらい勝っている)していなかったから、一応超えたと言ってもいいかもしれない。

 

 もっともミホノブルボンの2勝はジュニア級のものであり、シンボリルドルフはシニア級に混じって宝塚を勝ったという――――勝ち数では単純に計れない差異がある。

 だが、何はともあれ大多数のファンはミホノブルボンのGⅠ7勝、或いは無敗伝説の終わり――――どちらにせよ歴史に蹄跡を刻む様を見たくて有馬記念を見ている。

 

 皐月賞以来の中山レース場である。奇しくも、控え室はあのときと同じ場所。

 同じ場所であるが、走り競う相手は大きく異なる。ライスシャワーはいないし、全員が全員人気のウマ娘。

 

 人気者、というだけではない。無論人気の裏には、確かな実力がある。

 

「まず、今回の有力ウマ娘はトウカイテイオー、メジロパーマー、ナイスネイチャの3人だ」

 

 ホワイトボードに貼り付けられた3枚の写真。教杖で指し示されたそれを見ながら、ミホノブルボンはやっとまともに触ることができるようになったデバイスを操作した。

 

 参謀自作のウマ娘データベースアプリが、このデバイスにはインストールされている。

 

「まずナイスネイチャ。彼女は頭のいい、駆け引きのうまいウマ娘だ。自分の基礎能力が超一流とは言い難いことを自覚し、それでも超一流どころに喰らいつけている。それはつまり、どういうことか」

 

「ルドルフ会長のような戦法を取る、ということでしょうか」

 

「まあ、そうだ。あいつのように中盤からレースを支配することはできないが、後方から前方のウマ娘の調子を乱す。届かない星があるならば引きずり下ろして勝つ、というのが彼女の戦法だ。力勝負では君は勝てるだろうが、駆け引きではとても及ばない」

 

 よーいどんの徒競走で100回走れば、ナイスネイチャはトウカイテイオーに100回負ける。

 なぜならば、トウカイテイオーはナイスネイチャよりも遥かに強いからである。

 だが、レースでは異なる。状況に応じて作戦を変え、掛からせ、消耗させ、最後に勝つ。そんなレースを行える力がある。

 

「だがそれもこれも彼女を近づけなければ問題ない。つまりナイスネイチャを恐れるべきは好位置をキープして一気に仕掛ける王道のウマ娘であり、無視して先頭を行く君には関係がないと言える」

 

「ルドルフ会長のように、両脇を掛からせて蓋をするということをしてくる可能性があるのではないでしょうか?」

 

「あれはルドルフの持つ威圧感を利用したものだ。それに反して、ナイスネイチャに威圧感はない。というか、彼女は威圧感がないことを利用して場を撹乱するタイプだ。その恐れはない」

 

 なんでもない与しやすいウマ娘と思わせて、早めに仕掛けて焦らせたりする。それがナイスネイチャである。

 一方でシンボリルドルフは、自分の側に謎の空白空間を作り出すが如き威圧感を利用して焦らせ、掛からせるのだ。

 

 両者は駆け引き上手と言う点では同じだが、即効性の駆け引きを行うルドルフと遅効性のネイチャという大きな差がある。

 だから開幕で掛からせて逃げを潰す、ということはルドルフにしかできない。

 

「次はメジロパーマーだ。彼女は典型的な逃げウマ娘と言っていい。逃げるために走りを作り、逃げることしかできない。開幕からスパートをかけて中盤までにリードを広げ、へろへろになりつつも最後まで先頭を譲らない」

 

 ミホノブルボンは自分の機械的なペースを乱れさせないために逃げている。だから自分より速いウマ娘がいれば、先頭を奪われても全く問題はない。

 だが逃げるために走りを作っている典型的な逃げウマ娘は、先頭をとらなければペースがドンドンと崩れていって自滅する。それは、秋の天皇賞を見ても明らかである。

 

「楽逃げという言葉もあるように、逃げというのは単騎であればあるほどいい。なぜなら、逃げウマ娘は先頭を取れなければ崩れていくからだ。だが、君のラップ走法は一般的な逃げと共存できる。君は必ずしも先頭であることを必要としないし、そうなると互いに干渉しあわないからな」

 

「では、今回はラップ走法でいきますか」

 

「いや、今回はジャパンカップと同じ戦法で行く。正攻法でメジロパーマーに勝て。どちらが上かを証明しろ」

 

 スタートに全力を注ぎ、中盤で息を入れ、終盤で突き放す。これまでも度々試してきた、そしてジャパンカップで一応モノになった二の矢。

 

 闘走心を煽るような発言に、ミホノブルボンは頷いた。

 

「最後に、トウカイテイオー。彼女は、進化したと言っていい。一皮むけたというべきかな」

 

「ルドルフ会長へのこだわりを捨てた、ということでしょうか」

 

「そうだ」

 

 好位抜出、ルドルフ戦法。

 憧れの人と同じ戦法で勝つ。そのことにこだわって、トウカイテイオーは走ってきた。ひたすらに、愚直に駆けてきた。

 

「あいつは、こだわりを捨てた。誰しもが捨てたからと言って強くなるわけではないが、トウカイテイオーは捨てることによって作戦の幅を増やした。それはつまり、対応できる状態が増えたということだ」

 

 基本的に逃げという枠組みの中で手札を増やしていくのがミホノブルボンである。

 彼女には先行で好位をキープしたり、差しで周りを気にしながら臨機応変にスパートを掛けたり、追込で一気に差し切るといった才能はない。だから、ひたすらに1つのことを極めることに注力している。

 

 トウカイテイオーは、持ち合わせていた幅広い才能を狭く深く使っていた。だが今や、広く深く使おうとしている。

 彼女が目標としていた日本ダービー時のシンボリルドルフという枷から解き放たれ、こだわりを捨て去った結果、却ってよりシンボリルドルフに近づきつつあるのは皮肉と言う他ない。

 

「故に今回は、確たる戦術は立てない」

 

 立てても実行できる精神状態ではないしな、という言葉は口に出さなかった。

 将軍は掛からせないように育てることはできないが、掛かっても対応できる。その場で修正できる。

 だが、参謀としては掛からせないように育てられるが、掛かられるとこれと言って有効な手を打てない。

 

「スタートでハナを奪って加速し、中盤に息を入れて中山の坂を超えろ。今のお前ならば、平押しでも勝てる実力はある」

 

 参謀の未来予知的な先読みは、序盤をミホノブルボンが支配できるという前提でのものである。今の掛かりやすいブルボンでは、序盤を支配できるかどうかも怪しい。

 

 よって先読みはできても当たるとは限らない。当たらない予想を長々語っても、どうしようもない。

 

「乗り越えろ。再びここ、中山で。去年の今頃と同じように」

 

 去年の今頃行われたのは、ホープフルステークス。有馬記念と同じここ、中山で行われたレース。

 あのときは、今の自分を信じられていない状況を打開するために。そして今は、信じられる自分に戻るために。

 

 ――――いや、信じられる自分に戻るのではない。受け入れて、糧にして、新たに半歩でも進めるように。

 戻るのではなく、新しい自分を信じるために。

 

 ミホノブルボンは、8枠16番。最も不利な大外に設置されたゲートに入った。




83人の兄貴達、感想ありがとナス!

tank7兄貴、yuuki100兄貴、しうきち兄貴、トマセイダー兄貴、何かの缶詰まーくつー兄貴、抹茶ラーメン兄貴、ぴかいち兄貴、時雨讃歌兄貴、帝釈天兄貴、ノルン兄貴、フエール兄貴、むむまっふぁ兄貴、評価ありがとナス!

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サイドストーリー:伏兵

ラップ走法は捨てた。
100万UAいったから記念投稿です。


 ここからひとつ、普通の話をする。ごく常識的な話をする。

 クラシック級のウマ娘――――Aとする――――がシニア級にいくとき、メディアはこういう。『Aは、シニア級の強豪たちに勝てるのか?』、と。

 

 だがこの場合は、違った。かつてのシンボリルドルフのときもそうだった。トウカイテイオーのときもそうだった。

 

 シンボリルドルフに、シニア級のウマ娘たちは勝てるのか?

 トウカイテイオーに、シニア級のウマ娘たちは勝てるのか?

 

 絶対的な強さは、自分の世代を征服し支配する程の強さは、立場すら換える。

 

 挑戦者であるはずの自身を、君臨者に。

 君臨者であるはずのシニア級のウマ娘たちを、挑戦者に。

 

 かつてそうであった自分を見るような気持ちで、トウカイテイオーはミホノブルボンを見ていた。

 

 東京2400メートル。525メートルもの長大な直線で差しきれなかったトウカイテイオーが――――射程距離が中距離までの彼女が長距離、それも中山の310メートルしかない短い直線でミホノブルボンを差しきれるとは思えない。

 

 それが、評論家たちの統一見解だった。

 だからこそ、メジロパーマーが対抗ウマ娘に挙げられたのだ。メジロパーマーは今のところ、シニア級最強のウマ娘である。

 

 セイウンスカイが怪我をして療養に入ったあとは、サニーブライアンが継いだ。

 彼女は覚醒前のサイレンススズカをボコボコにし故障。そしてそのバトンは覚醒を果たしたサイレンススズカへ。

 サイレンススズカが故障して外国に渡って程なく、メジロパーマーは出てきた。

 

 王道の戦法に固執して伸び悩んだり、障害に転向したり。色々あって吹っ切れた彼女は、現在逃げウマ娘最強の座を保守している。

 メジロ家の中でも異端扱いされる彼女は、ある意味ではメジロ家のウマ娘らし過ぎる程にはらしかった。

 

 つまり、逃げと言う邪道に転向しても王道だったのである。最初から全力、徐々に力が落ちていき、なんとかかんとか走り抜く。

 

 盤外戦術を含めた駆け引きで、時に中盤はバ群に埋もれることを善しとするなど緩急自在の逃げを見せたセイウンスカイ。

 

 彼女の衣鉢を継ぎ、逃げウマ娘にしては珍しく他の逃げウマ娘への牽制を積極的に行い、単騎逃げのスタイルを確立したサニーブライアン。

 

 逃げつつ脚を溜めて最後の直線で差すという、天才的な感覚と爆発的な加速を生み出す柔軟性が可能にした理解不能な逃げを打ったサイレンススズカ。

 

 精密な体内時計と距離感覚――――彼女に配られた数少ない手札を最大限に活かした、正確無比なラップ走法。『レコードを出せるレベルのラップをひたすら刻み続ければ勝てる』という最高に頭がいい戦法をとるミホノブルボン。

 

 彼女ら邪道の横道を行く逃げの異端児――――異端の異端児たちと比べて、実にお行儀のいいのがメジロパーマーだった。

 

 ――――逃げのハナの奪い合いは、殴り合いだ

 

 スピカのトレーナーは、そう言った。

 

 どちらが速いか。どちらが理想のコースをとれるか。そして、どちらが有利な位置でスタートできるか。

 理想のコースと言えば頭が良さそうに聴こえるが、要は力でもぎ取れるかという話である。

 

(ブルボンは8枠16番大外枠。パーマーは2枠3番。ヘリオスは4枠8番。間違いなく、ハナはパーマー)

 

 そう予想するトウカイテイオーは3枠5番。パーマーとヘリオスの間。

 

 パーマー、ヘリオス、ブルボンの3人の逃げウマ娘。実力で言えば間違いなく、ブルボン、パーマー、ヘリオスになる。

 だがこのレースに限っては、パーマー、ブルボン、ヘリオスだ。

 

 つまりトウカイテイオーがマークするべきはメジロパーマー。そんな彼女の少し外に配置されたのは、まさに僥倖。好位置も好位置と言っていい。

 しかし、ミホノブルボンを監視するには遠すぎる。それが、ほんの少しだけの不満。

 

 わぁ、と。観客が湧く。

 瞬間、トウカイテイオーは察知した。もうすぐ、レースがはじまることを。

 

《3番人気は春のグランプリ覇者、メジロパーマー。シニア級最強の逃げウマ娘です》

 

 メジロパーマーは、ちらりと視線を外に走らせた。視線の先にはジャパンカップで復活を果たしたトウカイテイオーがいて、盟友であるダイタクヘリオスが居て、ミホノブルボンがいる。

 

《2番人気は無敗の二冠ウマ娘、トウカイテイオー。ジャパンカップで見せた、鋭い末脚がここ中山ではどう出るか!》

 

 トウカイテイオーは、落ち着いていた。

 大阪杯のときのように、闘走心をむき出しにしてこれから行われるレースが楽しみだとばかりに笑うことはしない。だがその眼には、熱がある。

 

 春の天皇賞で負けて走る意味を失ったときのような冷めきった静けさと、走りへの熱を共存させるだけのセンスが彼女にはあった。

 

《1番人気はここまで無敗、三冠ウマ娘、ミホノブルボン。クラシック級でのGⅠ勝利数記録更新となる7勝目を掛けて、有馬記念に挑みます》

 

 敗れざることを誇りとしてミホノブルボンがここにいるならば、敗れたことを糧にしてトウカイテイオーはここに居る。

 

《さあ、16人のウマ娘たちの夢とプライドがぶつかり合う年末のグランプリ、有馬記念!》

 

 バタン、と。歓声を鎮めるような重い音と共にゲートが開く。

 

《今、スタートしました!》

 

 真っ先に飛び出したのはメジロパーマー、ダイタクヘリオスのバカ逃げコンビに、ミホノブルボン。この中ではミホノブルボンのスタートが最も速いが、メジロパーマーも速い。

 

 両者の速度差は確かにあったが、大外の不利を覆す程ではない。経済コース――――もっとも体力を消耗しない内枠のコースを取り、その横にダイタクヘリオスが並ぶという、いつもの形。

 

 前に立ち塞がるウマ娘もいない。秋の天皇賞――――メジロの悲願たる盾を得るための戦いではものの見事に蓋をされたが、今回は蓋を作れる者はいない。

 

《先頭はメジロパーマー、2番手、ダイタクヘリオス。ダイタクヘリオスの後ろにトウカイテイオーが続きます》

 

 メジロパーマーの隣で追従するダイタクヘリオスの後ろ。そこがこのレースの好位であると、トウカイテイオーは見抜いた。

 ダイタクヘリオスは、マイラーである。2500メートルでは当然ながら彼女の射程距離ではない。

 

 距離適性の怖さというものを、トウカイテイオーは知っている。

 

 春の天皇賞で敗けた時に、トウカイテイオーは知ったのだ。距離適性というものの嶮岨さを。それを乗り越えるための苦難を。

 間違いなく絶好調だったのに最後に伸び切れなかった自分を見返して、改めてトウカイテイオーは理解した。ミホノブルボンの偉大さを。

 

 トウカイテイオーには、2500メートルはやや長い。

 それは事実だ。だが、ミホノブルボンの射程は精々1800メートルまで。だがそれを、彼女は3000メートルにまで伸ばした。あの菊花賞を見るに、3200メートルも走れるだろう。

 

(たった100メートルくらい、ボクなら超えられる!)

 

 ちらりと、外を見た。

 大外は、基本的に誰にとっても不利な位置である。だが実力のある先行や差しであれば、誤差で済む。あくまでも仕掛けるのは中盤以降であり、仕掛けるまでは極論、好位に付けなくとも勝ち目があるからだ。

 序盤は不利な位置にいても、立ち回りで徐々に挽回することができる。どうしようもない運に左右されない強さ。それが先行や差しが王道の戦法と言われる所以。

 

 だが、逃げは違う。逃げは端から仕掛けていくが故に、序盤の立ち回りが重要になる。

 

(おっ、と)

 

 良バ場の芝に滑りかけた脚を止めて、トウカイテイオーは息を入れた。気が急いている。その自覚がある。だからこそ彼女は瞼を閉じて一度視界を切り、意識を完璧にリセットした。

 後ろには好位につけず臍を噛むイクノディクタスら他のウマ娘、中盤後方でバ群に潜むナイスネイチャ。内には好調らしいウマ娘。前にはメジロパーマーとダイタクヘリオス。

 そして外にはミホノブルボン。内に視線を向けることもせず、ひたすらに前へ前へと進んでいく。

 

(ブルボン……どうくるのかな)

 

 そろそろ来る。頭ではわかっているが、勘がその理論的な予測を否定している。

 大外に回された逃げウマ娘は内に向かって斜行し、なんとか最効率のコースを取ろうとする。でなければ風の抵抗を受け続け、スタミナ消耗の激しい逃げウマ娘は途中でスタミナが尽きてしまう。

 

 だがミホノブルボンはひたすらに愚直にまっすぐ駆けている。大外だとかそういうことがまったく関係ないといわんばかり真っ直ぐに、不利なコースを突っ走っている。

 

 ――――自信があるんだ

 

 ミホノブルボンの意図に気づいたのは、やはりトウカイテイオーだった。

 彼女は、鍛えに鍛えた自分のスタミナを信じている。2500メートルを余裕で走りきれるという確信がある。少しくらい無駄な走路をとったからと言って、走りきれるという確信が。

 

 力に任せた、積んでいるガソリンの容量に任せたスタミナ勝負。逃げウマ娘同士の戦いは、殴り合いに似ている。

 パワーとスピード同士のぶつかり合いなのだ。肉薄しながらドンドンと速度を上げていく、メジロパーマーとダイタクヘリオスのように。

 

《ミホノブルボン! 大外から一気に上がっていきます! どうやら完全に、ラップ走法を捨てた様子!》

 

 スプリンターとしての才能しか持ち合わせていなかったちっぽけな寒門のウマ娘を、三冠へと押し上げた戦術を捨てる。

 

 何も知らないファンはその果断すぎる決断に疑義を挟むだろう。それは今年やっとブレイクした期待の若手が、フォーム変更の旅に出かけるというニュースを聴いた野球ファンの如く。

 

 だが、共に走っているウマ娘たちは知っていた。貪欲に進歩を求めなければ、現状維持すら不可能だということを。

 

 メジロパーマーと、ダイタクヘリオスが、焦ったように大外を見た。

 並んで抜かしてきたミホノブルボンの、勝利に飢えてるかの如く闘走心が迸る貪欲な眼差し。視線が交錯し、離れる。

 

(喉笛に喰らい付かせたら負ける)

 

 メジロパーマーは、咄嗟にそう判断した。絶好調の身体を動かし、限界に近い速度の壁を超える。

 マイラーであるダイタクヘリオスの速度上限は、メジロ家らしく本質的にはステイヤーであるメジロパーマーのそれよりも高い。

 

 更に突き放しにかかったバカ逃げコンビに合わせて速度を上げるミホノブルボン。

 トウカイテイオーは、その景色を冷静に見ていた。

 

(絶対、これは続かない)

 

 なぜなら、ミホノブルボンはラップ走法を捨てたから。

 

 彼女は勘がいいから天才と呼ばれているのではない。誰にもできない走り方をできるから天才と呼ばれているのではない。

 

 それら2つを兼ね備え、自分の才能を疑いなく信じ、不確かな勘が導く結論となんの躊躇いもなく心中できるから天才と呼ばれているのである。

 

 この場に集まったウマ娘は、皆一流だった。だが天才ではなかった。第一、1番人気からして天才ではない。

 

 皆、わかっていた。こんな殺人的な――――もはや虐殺レベルのハイペースでレースは終らないと。そんなことはできやしないと。

 

 メジロパーマーとダイタクヘリオスが逃げているだけならば、いつものことかと流すこともできた。

 だが、『できやしない』を覆してきたミホノブルボンが、正確なコースレコードを刻むサイボーグが同じペースで走っている。

 

 

 ペースが速い。

 それはわかる。それはわかるが、どれくらい速いのかがわからない。ミホノブルボンであればわかることが、彼らにはわからない。トウカイテイオーにもわからない。

 身体にメトロノームを仕込まれたような精緻極まる時間感覚をもつのは、ミホノブルボンだけなのだ。

 

 何秒速い。そう断言されれば、彼女らは気が急くくらいで済んでいただろう。

 だが、断言してくれる人間はいなかった。中盤を構成するウマ娘たちは、皆他人の顔を見て走っていた。

 

 正しいよね、と。

 私達のペースがおかしいんじゃなくて、あいつらのペースがおかしいんだよね、と。

 

 その時までは、皆が保証してくれた。あいつらがおかしい、と。誰も追わない。急がない。だからこそ、この均衡は保たれていた。

 

 だが、わからないことに変わりはない。そしてわからないことほど、恐ろしいものもない。

 ヒトが闇を恐れるのは、害獣が潜んでいるからではない。お化けがいるからではない。

 居ることが確定しているならば、ヒトは恐れを抱かない。ヒトが闇を恐れるのは、わからないから。何がいるか、何が起こるかわからないから。

 

(仕掛けようかな)

 

 トウカイテイオーは、思った。

 

 パンパンに膨らんだ風船のような恐怖心。このままレースが淀みなく進み、自分たちはなんの良いところもなく、控えたまま負けてしまうのではないかという恐怖。

 その心理を察して、トウカイテイオーは一歩前に踏み出した。中盤のみんなを掛からせて追わせて、逃げ3人組を更に焦らせる。消耗したところを、まとめて差す。

 

 そうするためには、どうすればいいのか。

 少し考えればわかる。彼女は、そうされた経験があるから。シンボリルドルフに、掛からされた経験があるから。

 

 掛からせ。焦らせ。牽制。

 少女の頃には思いもしなかったし、見向きもしなかった。王道しか見えていなかったし、見る必要もなかった。だが今では、それなりに機微を察することができるようになった。

 

 それはたぶん、トウカイテイオーが弱さを自覚したからこそ。

 自分の弱さを発見し、自覚し、向き合って、克服したからこその、進化。

 

 だがこの場には、トウカイテイオーの何倍もの時間を自分の弱さに向き合うことに費やしたウマ娘がいた。

 王道で勝ちたい。キラキラになりたい。そんな思いを持ったまま、自分の実力と適性を見極め、敵の弱所をついて勝つという道を選んだウマ娘が居た。

 

 レース序盤と、レース中盤の間。皆が――――トウカイテイオーすらも作戦を頭の中で組み立て直している、思考の間隙。

 

《ナイスネイチャ、仕掛けました!》

 

 その隙を逃さず、伏兵が現れた。




42人の兄貴たち、感想ありがとナス!

たきょ兄貴、潰された暇兄貴、冬基兄貴、黄瀬輝夜兄貴、鳥っ火ー兄貴、小言成兄貴、hiroti兄貴、干された柿兄貴、8823兄貴、コーンフィシュ兄貴、天乃兄貴、評価ありがとナス!

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サイドストーリー:発想反転

機動戦士ブルボン〜閃光のブルツー〜


 ナイスネイチャは、まともにやれば自分に勝ち目がないことを知っていた。

 

 無敗の二冠であるトウカイテイオーは、まごうことなき天才だ。

 春のグランプリを制したメジロパーマーは調子の差こそあれど、絶好調であればとても歯が立つ相手ではない。

 無敗の三冠ウマ娘、ミホノブルボンは気狂いじみた努力を必死に積み上げてここまでのし上がった、真の怪物。

 

 ナイスネイチャにはトウカイテイオーのような閃きもない。パーマーのような絶好調時の出力の高さもない。ミホノブルボンのような練習もできない。

 

 ナイスネイチャは、天才ではない。だから、トウカイテイオーのような閃きに任せたレースをすればろくでもないことになる。

 ナイスネイチャは、爆発力がない。良くも悪くも安定した出力を出せる彼女は、裏を返せばそれなりの出力しか出せない。

 ナイスネイチャは、頑丈ではない。トウカイテイオー程ではないが、ミホノブルボンのような練習をこなせば脚が砕け散るだろう。

 

 だからといって、負けを認めるわけではない。口では勝てないというし、負けますよねー、勝てるわけないよーともいう。キラキラには勝てないと、天才たちには勝てないと、怪物たちには勝てないと言う。

 

 でもナイスネイチャは一度だって、勝つために必要な最善手を怠ったことはない。

 諦めを口にしても、諦めたことは一度だって無い。

 

 差し。それは後方から一気に捲る、王道の戦法。ナイスネイチャはそれ以外できない。

 

 シンボリルドルフは、王道に選ばれたウマ娘だった。

 トウカイテイオーは、王道を選んだウマ娘だった。

 ミホノブルボンは、王道を選べなかったウマ娘だった。

 

 そしてナイスネイチャは、王道以外を選べなかったウマ娘だった。

 

 才能豊かな英雄豪傑犇めく王道の中で、邪道への道も選べないウマ娘だった。

 だから、ナイスネイチャは王道の中で邪道へと至った。メジロパーマーが邪道の中で王道を志したように。

 

 ナイスネイチャはこのレースを徹底的に掻き回し、混戦にして勝つ気だった。

 彼女は自分と同じことをトウカイテイオーが考えているとは露ほども知らない。知らないからこそ、大胆に動いた。

 

 大外に回って、いかにも焦ってますと言わんばかりの顔でやや速く駆け出す。

 スタミナを無駄に消耗しないように、ほんの少し。緑と赤、黒。割と目立つ配色した勝負服が前を見て走るウマ娘の視界にちらりと入り、ひとり、またひとりと釣られて駆けていく。

 

 ――――やっぱりペースが遅かったんだ!

 

 彼女たちは、間違っていないという確信のもとにみんなで走っていたわけではない。みんなが同じペースで走っているからこそ、安心して走っていたのである。

 

 ナイスネイチャが抜け出した。それに釣られてもうひとりが抜け出した。その釣られたウマ娘を見て、もうひとり。

 あとはもう、ドミノだった。雪崩を打つように、みんながみんな無茶苦茶なペースで駆けていく。

 

 ――――やっぱり遅かったんだ!

 

 そう思って釣られたウマ娘を見て、横を走っていたウマ娘は思う。

 

 ――――やっぱり遅かったんだ!

 

 釣られた彼女に釣られたウマ娘は、追う。ナイスネイチャではなく、自分を釣ったウマ娘を。

 そんな追ってくるウマ娘を見て、釣られたウマ娘は更に加速する。

 

 ――――追いつかれないようにしなきゃ!

 

 ――――置いていかれないようにしなきゃ!

 

 こうなるともう、収拾がつかなかった。シンボリルドルフでも統制不可能な大混乱。暴走する集団心理。

 集団によって肯定されていたものが、集団によって否定される。となるともう、信じられるのは自分だけしかない。

 

 トウカイテイオーはこの大混乱に思いっきり巻き込まれた。

 彼女は中盤集団の先端に居たが故に、集団後方から起こった雪崩に突き上げられ追い越され、邪魔だとばかりに追い抜かされ、とんでもなくもみくちゃにされて掛かりかけた。

 

 次々に抜かされていくという、中々の屈辱。

 かつての無敵のトウカイテイオー様ならば無理矢理にでも仕掛けていき、なんの得もないデッドヒートを繰り広げていたかもしれない。

 

 トウカイテイオーは、ナイスネイチャを見ていなかった。ナイスネイチャはトウカイテイオーの後ろにいたから、物理的に視認することができなかった。

 だから、彼女はこの大混乱が誰によって引き起こされたのか知り得ない。

 

 だが、トウカイテイオーは知っていた。今仕掛けてはいけないことを。

 だから、雪崩に巻き込まれながらも不安に苛まれることはなかった。

 

 ミホノブルボンも、メジロパーマーも、トウカイテイオーも、ナイスネイチャも、端から自分のことしか信じていない。

 周りを見て、お行儀よく走ろうだなんて思っていない。皆に肯定されて走ろうだなんて思っていない。自分のレースに引きずりこむことしか考えていない。

 

 ナイスネイチャは、抜かさなくていい。急がなくていい。ほんの一瞬だけ、恐怖を煽るだけでいい。そうすれば、勢いがつく。個人の統制力を超えた恐慌が起こる。

 

 最後尾。

 ナイスネイチャは雪崩に巻き込まれながらその威容を小揺るぎもさせなかったトウカイテイオーの姿を見て特に驚くこともなく、しれーっと減速してペースを保つ。

 そのままするりと、トウカイテイオーの影に潜行した。

 

(アタシにミホノブルボンを差し切る方法はわからない。わかったとしても、仕掛けるタイミングがわからない)

 

 だから、トウカイテイオーに任せる。同期の天才に。

 

 勝ち筋を見出す。機を見る。仕掛ける。それらを瞬時に判断できるからこそ、トウカイテイオーは天才と呼ばれているのだ。

 ナイスネイチャは、信じていた。トウカイテイオーを信じきることを決めた自分を。

 

(アタシが起こした雪崩に巻き込まれて、テイオーはペースを崩した。テイオーのスタミナは、ほんの少しだけ削れた)

 

 ナイスネイチャは、トウカイテイオーが仕掛けるのを見てから動く。つまり、トウカイテイオーよりどうしてもスパートに入るのが遅くなる。

 

 ナイスネイチャは最高速ではトウカイテイオーに及ばない。なのにスパートに入るタイミングも遅くなるとなれば、勝ち目がない。

 だが、先程の雪崩でテイオーのペースが落ちた。そしてその後、ペースを戻した。つまり、確実にスタミナは削れた。

 

 その削れた分。それが、最後のスパートでの差になる。

 

(勝つ!)

 

 常に自分の3歩先をいく天才を、ナイスネイチャは誰よりも評価していた。復活することを疑わなかった。復活してからの実力を過小評価しなかった。

 

 ナイスネイチャは、命運をトウカイテイオーの才能に委ねた。委ねることを決めた自分を信じた。

 

(この足音、ネイチャ? つまりあの雪崩の仕掛け人はネイチャ……かな)

 

 横にも居ない。前にも居ない。しかし、やや小柄なナイスネイチャは他のウマ娘にまぎれている可能性がある。

 だがたぶん自分の後ろにいると、トウカイテイオーは判断した。

 

(……こんなことができるなら、ボクなら一気に勢子みたいに走る。スパートをかけて、後ろから押して押して押しまくって、ラインを上げる。中盤の娘たちの破滅に、逃げてる3人を無理矢理に巻き込む。そりゃあボクのスタミナも削れるだろうけど、できる。ボクなら、その後勝てる)

 

 少し考えた。

 なぜ、やらなかったのか。判断ミスか、実力不足か、わざとか。

 

 判断ミスであれば、ナイスネイチャはここまでの雪崩を起こしながらその利用価値を真に理解していなかったということになる。

 

 それはない。トウカイテイオーは、ナイスネイチャの実力を信じていた。そこのところを見逃すようなうっかりをやらかしてくれるなら、トウカイテイオーはナイスネイチャの名前を覚えることはなかっただろう。

 

 ――――老練とも言えるしたたかさ。自分にはないそれを持っていることを見抜いたからこそ、トウカイテイオーは自分の心にナイスネイチャの名前を刻んだのだ。

 

 実力不足。この場合、本当に実力が無いのか、あるいは自分にはそこまでの実力がないと判断しているのか。

 あるとしたら後者だろうと、トウカイテイオーは推察する。ナイスネイチャは、自己評価が矮小なところがある。

 

 トウカイテイオーが瞬時に『自分ならやれる』と判断したのは、やったことがあるからではない。できるからでもない。

 彼女が自信家だから、である。他にはない。

 

 ナイスネイチャは、一見して控えめな性格に見える。自分の能力を正確に見極めていると思っているフシがある。

 控えめに見えて結構な自信家であるライスシャワーとは違って、本当に自信がないタイプ。

 

(ネイチャなら、やろうと思えばできたのに)

 

 冒険をしないことが、ナイスネイチャの強みである。それはすなわち大崩れしないことに繋がり、彼女の叩き出す結果が常に安定していることに繋がる。

 まごうことなく、それは長所だ。トウカイテイオーにはない長所だ。

 

 だが一方で、短所でもある。自分の実力以上の力を出せない。爆発力がない。

 トウカイテイオーには、冒険心がある。なんの躊躇いもなく博打を打てる。だからこそ、爆発力がある。

 

 実際のところ、できたかどうかは不明である。できたとしても、勝てたかどうかも不明である。

 だがナイスネイチャはできないと判断して、トウカイテイオーはできると判断した。

 

 このあたりに、両者の違いが表れていた。そして、ナイスネイチャは自分との違いを理解していたが、トウカイテイオーは理解していなかった。

 

 どちらの能力が上とかそういうことではなく、単純な性格の問題である。

 

 さて、トウカイテイオーは雪崩に襲われた。そしてスタミナがすり減り、精神的にも多少疲弊した。

 しかしこの雪崩の被害を最も受けたのはトウカイテイオーではない。

 

 ダイタクヘリオスである。

 彼女は最内、経済コースを進むメジロパーマーと大外を突っ走るミホノブルボンとは違い、内側に寄った――――それでも真ん中に近いコースをとっていた。

 

 ミホノブルボンとメジロパーマーが同着の1位。ついでダイタクヘリオス。線で結べば三角形になる感じで、3人の逃げウマ娘たちは逃げている。

 

(ん?)

 

 異変に気づいたのは、メジロパーマーだった。大外を爆走するミホノブルボンを半ば呆れたように観察していた彼女は、観客の大歓声に紛れようもない程の、急速に迫ってくる音の群れを察知した。

 

「うげっ」

 

 メジロ家のお嬢様の姿か……これが……と嘆かれそうな、本質的な悲鳴。

 逃げウマ娘は、序盤に強い。リードを広げるだけ広げてレース中盤を迎え、あとは捲られながらも、なんとか逃げ切る。

 

 そして今は、序盤から中盤に至る中間地点。

 

 ――――仕掛けてきた!

 

 メジロパーマーは、そう判断した。

 逃げウマ娘がバ群に呑まれれば、どうなるか。答えは、どうにもならないことになる。秋の天皇賞でシンボリルドルフにしてやられてから、その認識は一層濃くなっている。

 

(こ、これをやったら、保たないかも……いや、保たせる! 保たせてみせる!)

 

 メジロパーマーは、スパートを掛けた。終盤、競り合いになったときに残すつもりだった切り札を切った。

 

 彼女は、生粋のステイヤー一族であるメジロ家の一員である。2500メートルはホームグラウンド。むしろ、やや短いとすら言える。

 彼女のめざすものは、天皇賞。特に、春の天皇賞。

 

 天性備わっていた3200メートルを走れるスタミナを、どう2500メートルで分配するか。

 ミホノブルボンであれば即決でできるその数学的思考を終えて、メジロパーマーは速度を上げた。

 

 それにダイタクヘリオスも追従し、雪崩となってくるバ群から必死に逃げる。逃げて、逃げて、逃げまくる。

 背から迫りくる。追いつかれたら負ける。精神的負荷が、メジロパーマーとダイタクヘリオスの肉体的負荷を加速度的に増加させた。

 

 一方でミホノブルボンは、涼しい顔をして大外を走っていた。

 

 雪崩となったバ群は、追い越そうとしていない。ただ、置いていかれるのが怖いから無理に加速し続けている。

 そのことがわかっていたのだろうと評論家は言う。ミホノブルボンの慧眼にはそれがわかっていて、最初から腹をくくって大外コースをとったのだ。

 精神的負荷と肉体的負荷は乗算である。だからミホノブルボンは、敢えて不利を承知で肉体的負荷のみに留めた。

 

 ――――なんて賢いウマ娘だ! いや、トレーナーの智略か!

 

 

 そんなことはない。

 

 

(私は他のウマ娘と併走すると、闘走心が燃え上がってしまう。無茶な加速をしてしまう)

 

 これは、最後の競り合いでは役に立つ。実力を超えた力を出せる。

 心の力が時に肉体を凌駕するということを、ミホノブルボンはライスシャワーを見て知っていた。

 自分にはそれはできないと思っていた。だが、マスターが肯定してくれた。だから、たぶんできる。

 

 となると、道中でやたらめったら掛かってしまってはスタミナが尽きる。

 

 ――――どうしよう

 

 困った。メジロパーマーもダイタクヘリオスも、いずれ振り切れる。だが、いずれだ。そのいずれが来る前に、たぶん自分は掛かってしまう。

 

『では、誰もいない大外を走ればいいのでは? マスターブルボンは自己管理もできないあほなのですから、物理的な解決をはかるしかないでしょう。自己管理もできないあほなんですから』

 

 その後すぐ『あー』と粛清された今は亡きブルツーver.7の天才的な発案により、そういうことになった。

 

 かしこい。我ながら、とても冴えている。

 焦っているメジロパーマーとダイタクヘリオスとは対照的に、自信満々の涼しい顔でミホノブルボンは逃げていた。




40人の兄貴たち、感想ありがとナス!

ひよす兄貴、meko兄貴、霧崎時雨兄貴、レギオ兄貴、カマンベールチーズ一世兄貴、黄瀬輝夜兄貴、影者兄貴、がしま兄貴、ライト層兄貴、フォックス兄貴、RRR17320508兄貴、イクバール兄貴、評価ありがとナス!


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サイドストーリー:雑草

 なにかと舐められがちなメジロパーマーは、非凡なものをもっている。それはスタミナであり、パワーであり、メジロ家から施された知識と、それを活かせる聡明さ。

 

 一時期は障害走という――――言い方を取繕わなければ三軍に回されていたわけだが、彼女はそこで芝を踏みしめるパワーを得て見事に芝に返り咲いた。

 

 芝一軍、土二軍、障害三軍。

 別にそれらの競技の間に上下があるわけではないが、観客はそう思っている。

 先発ができないなら中継ぎをやらせるかという感じに、芝ができないならダートに、ダートも無理なら障害に回すか、という空気があるのだ。

 

 メジロパーマーは名家の出でありながら、障害走から這い上がってきた雑草でもあった。

 故に根性というものを、人一倍備えていた。

 

 だから、ミホノブルボンのことを尊敬してすらいた。無理を乗り越えて表舞台に這い上がった、自分と同じ逃げウマ娘のことを応援していた。

 

 無理などない。そのことを、ミホノブルボンを見て知ったから。

 だがそれでも、思う。

 

(あんな無茶な走り方して保つの!?)

 

 大外で誰に追われることもなく、誰を追うわけでもなく。ただひたすらに、先頭に立って走る。それしか考えていないような走り姿。

 

(何考えてんだろ……)

 

 メジロパーマーは、思考した。

 彼女は、メジロ家の者である。当然シンボリ家ゆかりの家である東条家との関わりもあるし、ミホノブルボンのトレーナーの人柄も実績も知っている。

 

 戦略的な優位に立ち、常々理不尽な二択を突きつけてくる男。

 シンボリルドルフと組んでいたからこそ、切れる手札が多いからこそ活きると言われていた才覚。

 切れる手札がずば抜けて多いシンボリルドルフだからこそ、正確なレース予測を完璧に活かせる。

 

 予測できても対処できない男と、予測できれば対処できる女の組み合わせは、まさしく悪夢だったと言ってよかったのだという。

 海外遠征に行く前の国内最後のレースに選んだ宝塚記念でマルゼンスキーと戦って勝てたのはあのコンビであればこそだと、誰もが認めるところだったのだ。

 

 シンボリルドルフに東条隼瀬が必要かどうかはともかくとして、東条隼瀬にはシンボリルドルフが必要だ。ルドルフと戦術幅の広さがあってこそ、奴の才能は活きる。

 

 そう思われていたのが、サイレンススズカと組んで変わった。

 

 絶対の戦略的優位を提供し、駆け引きに勝つ。

 

 それしかできないと思われていた男は、駆け引きの悉くを無視してのゴリ押しもできると、多くのトレーナーが知った。

 

 戦略的に勝つこともできるし、戦術で盤面を破壊することもできる。少なくとも、対面したトレーナーはまだ若き奇才を見てそう感じた。

 

 だが、マシだったのだ。

 シンボリルドルフには戦略的優位しか提供しないし、サイレンススズカにはゴリ押ししかさせなかった。

 

 ある種の戦術的狭さが、東条隼瀬の御すウマ娘にはあった。その狭さがあったからこそ、迎え撃つ側のトレーナーたちは割り切ることができたし、対策を――――勝てたかどうかは別として――――確立させることができた。

 

 しかし、今は違う。

 菊花賞で見せた、破滅逃げへの対処。あれは実に見事な戦術、駆け引きだと称賛するものもいた。

 だが見る者が見れば、キョーエイボーガンがミホノブルボンに勝つために取れる選択肢は実質的に破滅逃げ一択だったのだ。

 

 それを選択するかどうかはともかくとして、東条隼瀬はミホノブルボンを鍛え抜くことによって他のウマ娘がとれる戦術の幅を狭めることに成功した。

 

 戦略的優位に立って敵の勝ち筋を限定させることで、レースを管制下に置く。

 それは、シンボリルドルフと組んでいたときにとっていた彼の常套手段だった。

 

 ミホノブルボンは、ゴリ押し系のウマ娘である。だから東条隼瀬は戦略的な優位を作らないし、作れない。そう思われていたのが、あの一戦で変わった。

 

 つまりやろうと思えば、彼はミホノブルボンに戦略的優位を提供できる。そして、そういうのを無視して単純にゴリ押すこともできる。

 

 事実彼は、サイレンススズカと組んでいたときも戦略的優位を築くことができた。だが、やらなかった。サイレンススズカが、そういうめんどくさいことを好かなかったからである。

 逆に、シンボリルドルフは力でねじ伏せることを明確に好まなかった。だから、ゴリ押しさせなかった。

 

 しかしミホノブルボンに、そういうこだわりはない。マスターの言う事ならば、と無邪気に信じて実行する。文句を言わないし、好みにうるさくない。

 

 だから東条隼瀬は、ミホノブルボンという器に自分の全経験と全知全能を傾けた。傾けることができた。

 

 ラップ走法も逃げ差しも、駆け引き無用の理不尽な戦術だが、無敵ではない。

 対策はある。それがうまくハマれば勝てる程の、確固たる対策が。

 だが、どちらが来るかわからない。現にメジロパーマーは、未だにミホノブルボンがどちらを選択しているのかわかっていない。

 

 両者とも無敵ではない。だから、対処法はある。だが両者とも、対処法は異なる。

 リザードン検定のような厄介さを持つこの二択だけでも死ぬほどめんどくさいのに、戦略的に勝ち筋を限定させられているかもしれない。

 

 ラップか、逃げ差しか。戦略的に嵌められているのか、嵌められていないのか。見つけ出した勝つための一手が、舗装された敗北への道ではないのか。

 

 早々にそれを見極めなければ、勝負にすらならない。ミホノブルボンがなーんにも考えず走っているだけで、頭のいいウマ娘たちを戸惑わせることができる。

 存在そのものが、牽制になる。彼はミホノブルボンを、そんなウマ娘にした。

 

 現に、頭のいいメジロパーマーは悩んでいる。

 

 ラップ走法ならば、このままでいい。このまま走り続けて、地力で圧し切る。できなければ、ラップ走法が完璧な逆算の走法であることを利用する。

 

 利用して、崩す。

 

 信じがたいことに、ミホノブルボンは1ハロン何秒という具合にラップを刻んでいるのだ。

 スタミナを100とする。この場合2400メートル――――12ハロン――――を走るのであれば、1ハロンにつきスタミナを8.3使用することが許される。

 その8.3のスタミナを、1ハロンの中で最も効率的に使い、最良のラップタイムを出す。それが、ラップ走法。

 

 精密機械のような完璧な噛み合い、狂いのなさ。その精緻さこそがラップ走法の武器だが、ほんの少しでも歯車がズレればおしゃかになる。

 つまりラップ走法とは逆算の走法なのだと、名家特有のネットワークを持つエリートトレーナーの方々は気づきはじめていた。

 

 多くのウマ娘とトレーナーにとって初見のものだった戦法が、なぜここまで速く解析できたのか。

 

 それは調べに調べ抜いた結果、前例があったからだった。

 

 ――――ピュアーシンボリというウマ娘が似たようなことをやっていたな。

 

 そう言い出すベテランがいたことから、ラップ走法というものは紐解かれた。

 彼女は結果を出せたとは言えないウマ娘。調べてもよくわからないし、そもそもあまり知られていないから、大体のトレーナーからすればラップ走法なる代物は初見だった。

 だが、見たことがある人間が居た。そして、ピュアーシンボリの自ら崩れることの多さを知ってもいた。

 

 つまり、ほんの少しでいいからミホノブルボンの歯車を狂わせる。一瞬でもいいから、闘走心を煽って掛からせる。

 それだけで終盤の伸びが失われる。つまり終盤に限っては、ミホノブルボンをスタミナの尽きた二流の逃げウマ娘に変えられる。

 

(つまり、どこかで接近して仕掛ければ勝てる。なんか最近、掛かりやすくなってるっぽいし)

 

 だから大外を走っているのだろうと、メジロパーマーは察していた。他のウマ娘に近寄ると、掛かる。掛かりたくないから、離れる。そんな単純な思考だろうと。

 

 掛からせる。それが、ラップ走法に対する勝ち筋。

 

 だから本来ならばこの時点で、メジロパーマーの勝ちは決まっていた。

 

 ――――有馬記念で勝つ。不敗を、私が終わらせる

 

 その覚悟もあった。決意もあった。

 

 だが対策が確立されかけた時に、東条隼瀬は爆弾を投下した。

 

 それは、ジャパンカップで見せた逃げ差し。真実、前例のない戦法。サイレンススズカと彼が、1から編み出した固有戦術。

 

 最終コーナー1個手前のコーナーで息を入れ、スタミナを回復させてぶっちぎる。単純に強いという恐怖の戦法。

 これに対しての対策は、一応ある。サイレンススズカへの対策は皆が頭を悩ましていたから、一応用意自体はしてある。

 それはつまり彼女が息を入れる脚のチャージ期間に――――わずかな減速に入る前に脚をなんとか工面して溜め、減速に入った瞬間加速して差し、最短の進路を塞ぎつつそのまま逃げ切る、ということ。

 

 そのためには、掛からせないということが重要になる。

 

 掛かる。つまり、焦る。焦れば、速度が上がる。闘走心が煽られる。

 無用なスタミナを消費し、対抗心が燃えてペースが崩れる。ラップ走法を打ち破るための速度の上昇と、闘走心の向上。これが、逃げ差しを対策するには致命傷になる。

 

 チャージしている期間に、追いつく。追い越す。そして、最短の進路を塞ぎ、自分の物にする。それくらいしか勝ち筋がないのに、後先考えなく掛かられるとチャージ中に追いつけないのだ。振り切られるのだ。

 

 掛からせることが勝ち筋の戦法と、掛からせないことが勝ち筋となる戦法。

 そのふたつの札を、ミホノブルボンは持っている。

 

 どちらの札を切るのか?

 切ることを決めるのはミホノブルボンなのか、東条隼瀬なのか?

 

(わからない……ペースを守っているのか、それとも守っていないのかがわからない)

 

 メジロパーマーも、ミホノブルボンも走っている。速度を測る方も、測られる方も動いている。こんな状況では、まともな測定などできようはずもない。

 更には、大外。メジロパーマーの走る最内とは距離がある。その距離が、コーナーを曲がるときに要する距離の差が、ミホノブルボンの速度が一定であるのかどうかを測ることを至難にしている。

 

 メジロパーマーは、全力を出して走っていた。その全力を維持していた。

 だからこそ、その全力に追従してきているミホノブルボンもまた、全力を出していると思わないでもない。

 

 だが菊花賞を見るに、ミホノブルボンは3000メートルを3分切るくらいの速度でラップタイムを刻むことができる。2500メートルであれば、もっと速くなってもおかしくない。

 

 1ハロン11秒を切る。それくらいできるかもしれない。

 疑心が暗鬼となって、メジロパーマーを悩ませていた。

 

 自分の全力が、ミホノブルボンの12.5分割した上での全力なのかもしれないという悩みに、彼女は苦しんでいた。

 

(……対処は)

 

 どっちをとるか。掛からせるのか、掛からせないのか。

 

 ――――いや、そもそも、対処をしに行く必要があるだろうか?

 

 絶好調だ。自分は、疑いなく絶好調。今年1、いや、生まれてからこの方味わったことのない絶好調。脚が動く。肺も喉も痛まない。いくらでも空気を吸える。いくらでも走れる。

 

 絶好調のメジロパーマーは、ミホノブルボンに負けるのか。

 

(負けない)

 

 戦歴も、努力の総量も、自分の方が上だ。

 負けているのは、努力の密度。1年後には総量でも負けているかもしれないが、今は負けていない。

 

 2500メートルは、長距離だ。長距離の覇者になるのは、メジロ家だ。自分はメジロ家の一員、メジロパーマー。春のグランプリ覇者。

 

 ライアンにも、アルダンにも、ドーベルにも、そして、マックイーンにも。

 負けない。負けたくない。

 

(勝負だ、ブルボン!)

 

 生粋のステイヤーが長距離で、スプリンターを最大の敵として認識する。対抗心を燃やす。

 総帥からは、らしくないと言われるかもしれない。ライバルではなくゴールを見ろと、言われるかもしれない。

 

 メジロパーマーは、後ろへ向けていた意識を切り捨てた。追ってくるバ蹄の音をシャットアウトして、大外を見た。

 

 不利の大外に回され、調子の悪化した元スプリンター。自分より遥かに練習していて、自分より多くのレースに出ている。

 今は年末、積み重なった疲労はピークに達しているだろう。

 

 ブルボンにとって不利が――――自分にとっての有利が積み重なったこの状況で、ごちゃごちゃと考える必要はない。

 有利な自分が、自分のレースをして勝つ。考えることは、それだけでいい。

 

(力比べだ!)

 

 そんな決意が秘められた視線を一瞬だけ横に目を向けて受け取り、ミホノブルボンの青い瞳はすっと前を向いた。

 

(……? ステータス【闘志】を感知)

 

 サイボーグウマ娘のミホノブルボンは、メジロパーマーの闘志溢れる眼差しを認識して、どうやら対抗心を燃やされているということを理解した。

 

 ――――申し訳ないな、と。ミホノブルボンは、そんなことを思った。

 正直、今の自分はその闘志に応えられるような走りをできているとは言い難い。どうせならば、全力には全力で応えたいのに、自分にはそれができない。

 

 全力とはつまり最内。経済コースを取りに行くことだが、今の自分には掛かってしまうからそれができない。

 ラップ走法という長所を発揮するために、最善が尽くせないという状況にある。

 

(……はっ)

 

 その時、ミホノブルボンの頭脳に電流が奔る。

 

 ――――最内を走る。他のウマ娘に近寄らない。最善の方法と、全力を出すための条件。それらを同時に満たす方法がある。

 

(パーマーさんを2バ身引き離せば斜行できる。斜行しつつ加速して、引き離し続ければ。そのためにはマスターの仰っていた――――)

 

 接近すると掛かってしまう。掛かるのはよくない。だから、最内のポジション争いには加われない。

 

 ならば。

 

 とある逆転の発想を持って、ミホノブルボンは1度目の直線前の坂を超えて3度目のコーナーに入った。

 有馬記念は6回のコーナーを超えた末に終わる、変則的なレースである。故に再びここに戻ってくるとき、勝負は決している。

 

(戻ってくるときも、このままで!)

 

 メジロパーマーが1番に通過し、それとほぼ同時にミホノブルボンが考え事をしながら通過。1バ身ほど離されてダイタクヘリオスが若干ペースを落としながら通過し、ヘリオスとの6バ身をなんとかして詰めようと集団心理に突き動かされるバ群が群れながら通過。

 

(ここで抜くんだ)

 

 そんな決意と共に、その暴走気味の集団から7バ身離されたトウカイテイオーと、その後ろを駆けるナイスネイチャが軽やかに通過。

 

 ――――あと一周。

 

 大きく集団から引き離されたトウカイテイオーに、黄色い声援が飛ぶ。

 

 頑張れ、追いつけ、追い越せと。

 普段なら奮起して足早になるところで、あくまでもトウカイテイオーは冷静だった。




89人の兄貴たち、感想ありがとナス!

まりあな兄貴、くろばる兄貴、智原愛兄貴、ふがふがふがしす兄貴、mocca兄貴、ろむ兄貴、どこ2兄貴、akkey357兄貴、ノッカー兄貴、豆腐ユナイテッド兄貴、鳥尾読解兄貴、天衣無縫兄貴、志玖兄貴、アリサ兄貴、評価ありがとナス!


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サイドストーリー:ICBM

【朗報】お気に入り9000件突破
お気に入り10000件はガチで選ばれし者だと思うので完結までに達成できるよう、目指していきます。


 有馬記念というレースは、前半後半ではわかれない。序盤中盤終盤という3つにわかれる。

 

 序盤。スタートして直後のコーナーがある。ここでメジロパーマーは内枠の利点を活かしてハナに立った。

 有馬記念の鉄則として、序盤は高速で進む。即座にコーナーが待っていて、それを超えてもまた近くにコーナー。

 直線を走るならばともかく、曲がるならば位置取りは大切になる。故に皆が皆効率のいい立ち位置に立とうとしてペースを上げ、相乗効果でペースがぐんぐんと上がる。

 

 その立ち回りを研究していたからこそ、ナイスネイチャはものの見事に大半のウマ娘を掛からせ、実質的にこのレースから脱落させた。

 

 この時点で勝ち目のあるウマ娘は絞られた。

 メジロパーマー、ミホノブルボン、ダイタクヘリオス、ナイスネイチャ、そしてトウカイテイオー。

 

 しかし明らかにスタミナが続きそうにないダイタクヘリオスが遠からず脱落するだろう。

 そしてメジロパーマーとミホノブルボンのどちらかが残る。

 

 トウカイテイオーは、そう考えていた。

 レースがはじまる前の彼女であれば、メジロパーマーとミホノブルボンのどちらか、ではなくミホノブルボンが残ると断言していただろう。

 だが断言できないようにさせたのは、他ならぬミホノブルボンだった。

 

(ブルボンはなにしてんだろ……)

 

 まだ大外にいる。もう中盤なのに、一番不利な場所から動かない。

 

 大外でひたすら走り続ける理由が、何かあるのか。

 ラップ走法というには速すぎるし、逃げ差しにしては遅過ぎる。これまでの付け入る隙がない、なんの迷いもないミホノブルボンとは思えない中途半端な走り。

 

 ――――あいつが何を考えてるかは、俺にもわからん!

 

 目の下に作った隈に似合わず、スピカのトレーナーは力強く言い切った。

 

 ――――だから、勝つことしか考えない。勝てる状況しか、考えないことにした! それ以外は全部負け筋だ!

 

 どういう状況ならば勝てるのか。どういう状況ならば仕掛けるべきなのか。仕掛けないで、我慢するべきなのか。

 

 ラップ走法をしていれば、勝ち目は1つ。本来ならば到底仕掛ける場所ではない場所でロングスパートを仕掛ける。

 あのときのミホノブルボンは、何回も何回もライスシャワーを振り向いていた。逃げウマ娘であれば後続を確認するのは本能ともいえる動作だが、ミホノブルボンに限ってはそうではない。そうではなかった。少なくとも、日本ダービーまでは。

 

 そうではないのに、菊花賞ではやった。つまり、同じロングスパートをかけてくるウマ娘を見たら、迫られたら。

 今のミホノブルボンであれば、おそらく掛かる。掛かってしまって電池切れした精密機械を、最後の直線で抜き去る。

 

 そして、逃げ差しならば。

 

 後方に控える――――というよりも、影に潜航するかのごとくピッタリと付いてきているナイスネイチャが起こした雪崩は、収まりつつある。

 集団心理によって動いているものは、個人ではどうにもならない。川と同じで、凪いでいる時はある程度制御することはできるが、一度氾濫が起きるとどうにもならない。ただ、収まるのを待つしかない。

 

 その収まる時が、今だった。掛かって雪崩と化した彼女たちが本来持っていた『自分のペース』というものは木っ端微塵に吹き飛ばされ、もはや立て直しが効かない。

 『自分のペース』とはつまり、それまでの経験から導き出した最適解である。その最適解がわかっていても、できない。掛かった11人のウマ娘たちは、もはや敵ではない。

 

 それでもペースを戻そうと足掻き、必死に急く気持ちを抑えて好位に――――現在トウカイテイオーが付いている、差し切り圏内ギリギリまで下がって脚を溜めようとする。

 

(その気持ちはわかるよ。でも、固執してもいいことない気がするけどな……)

 

 その努力は称賛に値するが、もう11人の雪崩軍団は無駄にスタミナを消費してしまった。ならばそれはそれだと受け入れて、腹をくくって追いつくために更に加速するべきではないのか。

 

 今彼女たちがやっているのは、投資で言うところの損切りだ。間違ってしまったから、その被害を最小限に留める。そんな思考。

 確かにそれは、マイナスが引き継がれるものに対してならば正しいと言える。だがレースは一回きり。どんなに負けても、次走で不利になるといったことはない。

 

 だったら、博打を打つべきだ。99%負けるとしても――――しかも5着とかそういう話ではなく、11着とかいう無様を晒しても、勝つための一手を打つべきだ。

 

 この場合、ミホノブルボン、メジロパーマー、ダイタクヘリオスが逃げ、その他が追う。このレースの基本形はそう決まっている。

 そう決まったレースという枠を壊さずに、ナイスネイチャは11人を掛からせてライバルのプランを破壊した。

 だったら私たちは、私達の思惑を破壊したナイスネイチャの思惑をこそ、破壊してやる。破壊して、勝ってやる。それくらいの気概と覚悟があって、ミホノブルボンやメジロパーマーを追いかけ続ける。そうするべきではないのか。

 

(まぁこれは他人事だから言えるのかも、だけどさ)

 

 ――――ボクだったらそうしてた

 

 あのときの、キョーエイボーガンのように。ライスシャワーのように。

 すべてを擲たなければ、勝てないのだから。

 

 

 あのとき。

 

 

 あのときシンボリルドルフが、敬愛するカイチョーが菊花賞を見せた理由。

 それを、トウカイテイオーは理解した。言葉を聴いたあのときではなく、立ち上がると決めたジャパンカップが終わって、耳ではなく心で理解した。

 

(逃げ差しでくる)

 

 トウカイテイオーは、確信していた。

 あの何を考えているかよくわからないやつは、策士だ。だけど、奇術の種には限りがある。

 作戦の幅が広く器用なカイチョーとなら奇策を無限に繰り出せただろうが、ブルボンはそこまで器用じゃない。故に、とれる戦術は多くない。

 その多くない戦術を、本領発揮できない外国のウマ娘たちに、ヘタれてしおれてた自分に切った。

 

 初見で対応するのは不可能に近い。そんな戦法を、ラップ走法さえできれば楽に勝てる場面でわざわざ解禁した。

 

 それはつまり、掛かるからラップ走法が難しいとかではなく、掛かるからラップ走法ができない。そう考えるべきだろう。

 

(じゃなんで大外を走ってるのかは……わかんないけど)

 

 腕の振りも脚の回り方も乱れが無い。疲れていない。

 掛かることがメリットになる逃げ差しをするつもりなのに、何故掛かることを恐れるのか。

 

 ――――何も考えてない、とか

 

 いや、流石にそれはない。

 トウカイテイオーは、自分の才能が感覚的に察知したその閃きを否定した。

 

 カイチョーが言っていたのだ。勝てるだけの地歩を固めてから、参謀くんは勝負に臨むと。

 

(それが、まさか無策なはずはないでしょ)

 

 無策である。

 

(……ダイタクヘリオスさんとの距離、2バ身に到達)

 

 ところかわって、思いつきと無策で何もしていないのにこの場を掻き回しているサイボーグは、勝負に出た。

 

 最速で最短を走るために、内を走る。

 内を走るために、斜行する。

 これらは、1→2といった感じの踏むべき手順である。

 

 斜行時に失格をとられないために、距離を空ける。

 掛からないために、近づかない。

 これらが、ミホノブルボンにとっての注意事項。

 

 ふたつもある注意事項をどうクリアするか。そのことを考えていたわけだが、彼女は気づいた。このふたつは競合しないし、何なら同じことを言っているのだと。

 

 つまり、斜行しつつ高速で走り、斜行が終わる頃までにメジロパーマーの2バ身先に付くように走る。そしてその後は付かず離れずのペースを保って内につく。

 そして最終コーナー前で息を入れる。ここでメジロパーマーに追いつかれてもいい。追いつかれれば掛かるだろうが、ここなら掛かってもなんの問題もない。

 

 掛かるに至るほどの焦燥と闘走心。それらを逆用して、着火剤にする。

 

 ――――完璧な作戦。どこにもなんの穴もない。

 

(出力87%。ミホノブルボン、加速開始)

 

 やや身をかがめて、動く。思っきり斜めに、そして高速で。

 

(きたー!)

 

 心の中で悲鳴を漏らすメジロパーマーだが、これ以上の加速はできない。

 メジロ家のウマ娘であればこその、ステイヤーとしての天稟。長く良い脚を使い、トップスピードを持続できる。そういう才能を、彼女は確かに受け継いだ。

 

 だが、メジロ家のウマ娘は一瞬の切れ味に欠ける傾向があった。長距離で長く持続する脚を使って差し切る様はまさに横綱相撲であり、どすこいですわ!と長く力強いロングスパートで押し切る。

 

 ミホノブルボンの本質はスプリンターである。

 といってもスプリンター並の速度を出せるわけではない。彼女が走っている距離が、それを許さない。スプリンターの速度を出すには、スタミナの全てを燃やし尽くす必要がある。

 

 だからこれまでも、ミホノブルボンはスプリンターとしての天稟を活かして中距離ウマ娘の中で上位クラスの速度を出すに留まっていた。

 しかし今回、ある意味で吹っ切れているミホノブルボンは中距離ウマ娘でも最上位の――――シンボリルドルフ・トウカイテイオークラスの速度を見せた。

 

 差は、縮まる。縦の差、横の差。徐々に徐々に、標的を設定されたミサイルのように迫ってくる。

 ミホノブルボンがメジロパーマーの2.1バ身前に着弾した、3秒前。

 

 その加速を見て、動き出しかけたウマ娘がいた。トウカイテイオーである。

 

 ――――仕掛けた!? でも早い!

 

 追従しかける。トウカイテイオーの前はウマ娘たちがずらりと並んで垂れている。彼女たちはもういよいよ疲弊してきて、もはやどう転んでも脅威にはならない。

 そんな中で、トウカイテイオーは大外を見ていた。前に向けた視線を左に向けて、ミホノブルボンを見ていた。だから、気づいた。その加速に。

 

 だが、わからないことがある。それはつまり、ミホノブルボンはどうやって勝とうとしているのか、である。

 彼女には豊富なスタミナがある。だがそれでも、あの速度を維持することはできない。

 

 ――――まだ、まだだ! まだ我慢する!

 

 トウカイテイオーは、脚を溜め続けている。距離は離れているし、ミホノブルボンの速度にはこのままゴールしてしまうのではないかと思わせるほどの速さがある。

 

 ――――限界、ギリギリまで待つ

 

 待つ。待つ。待つ。ミホノブルボンが下り坂に差し掛かって、降り始めた、瞬間。

 スパイラルカーブを曲がり切り、緩い下り坂。

 

 この緩い下り坂であれば、脚が保つ。ライスシャワーのように、淀の坂を駆け下ることはできないがこの中山の内周り、緩い坂であれば。

 

「――――さぁ、いくぞぉ!」

 

 自分を鼓舞するように呟いて、トウカイテイオーは大外に出た。




次回、決着。


62人の兄貴たち、感想ありがとナス!

豚バラ煮込み兄貴、みっちぇる兄貴、Zeffiris兄貴、へたれぷれいやー兄貴、でうあ兄貴、ネツァーハ兄貴、トムワイヤット兄貴、手持ち豚さん兄貴、TCG好き兄貴、名もなきrlkn兄貴、さえみりん兄貴、評価ありがとナス!


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サイドストーリー:無敗と無敵

《トウカイテイオー仕掛けた! テイオー動いた!》

 

 興奮気味の実況。その声を聴いたわけではないだろうが、メジロパーマーは明らかに加速を計っていた。

 

 しかし、中山では下り坂を抜けた瞬間にコーナーがある。下り坂で加速の絶頂に至れば、コーナーを曲がり切ることができない。

 

 普通なら。

 

(普通じゃない!)

 

 メジロパーマーは、叫んだ。

 コーナーで、更に加速。重心を下げつつ右脚を踏み出し、身体を右側に傾斜。

 転倒寸前の姿勢を驚異的な体幹で支え、左脚を出して重心を元に戻す。

 

 時速70キロ近い速度を持った肉体に遠心力が作用し、ミホノブルボンの肉体が外に振れる。

 振れた瞬間に右脚を出して、内側に重心を引き戻す。

 

 一歩間違えれば転倒、故障。下手をしなくとも、生命の危機。ビルとビルとの間に掛けられた鉄骨の橋を渡るような危険に自らの身を晒しても、一切動揺しない機械のような精神。

 練り上げられた肉体。頑丈さを活かした膨大な反復練習が根底にあるであろう――――誰にでもできる基礎技術の極み。

 

(すごい……)

 

 見惚れた。ここがどこかを忘れてしまうほどに、ミホノブルボンのコーナリングは極められていた。

 才能のきらめきではない。断じて、そうではない。あれは才能があるからできたのだとは、誰にも言わせない。

 

 メジロパーマーだから、わかる。メジロ家の落ちこぼれだからこそ、わかる。あれは才能も何もなくて、ただ努力するしかなかったが故に得られた技巧だと。

 

 そんな彼女を、一陣の風が抜き去った。ぶっつけ本番、去年の皐月賞以来の中山。ブランクを感じさせない走り。

 遠心力を制御するミホノブルボンとは違い、その風は遠心力を利用して外に膨らみながら、無駄なくメジロパーマーを躱していく。

 

 ――――トウカイテイオー。一瞬の閃き、瞬時の加速。才能溢れる彼女は泥臭く歯を食いしばり、悲鳴を上げる脚を駆る。

 

 もう、2度折れた。癖がついているだろうし、脆いことは証明されている。なのに、トウカイテイオーは本気で走っていた。

 怪我をしたウマ娘は、本気で走れないと言われる。それはなにも実力が落ちたからだけではない。

 

 問題はむしろ、心にある。

 

 ――――あの時のように全力を出せば、また折れるのではないか。

 

 骨が折れる音。肉を裂く痛み。一歩踏み出すたびに、リフレインする恐怖の記憶。

 トウカイテイオーは2度とも、骨が折れていることに気づかなかった。日本ダービーでも春の天皇賞でも、骨が折れているのに走り切った。

 

 では、トラウマはないのではないか。

 知覚していないのだから、恐怖を感じることはないのではないか。理解のない人間は、そう言う。

 

 だが、メジロパーマーは知っている。

 京都ステークスと函館記念を骨折したことに気づかず走りきった彼女は、レース後に骨折が判明した彼女は、知っている。

 

 折れているという自覚がない骨折の方が、恐ろしいと。

 自分では、わからない。だから、ふとした時に思うのだ。

 

 ――――もしかしたら折れているかも、と。

 

 脚が疲れた。脚が回らない。ちょっと痛い。違和感がある。

 レース中によくあるそれらを感じる度に、思うのだ。

 

 もしかしたら。

 骨折しても、自分は気づかない。気づけなかった。だからこそ、思う。ひょっとしたら折れているのではないか、と。

 ずっと、ずっと。その不安を抱えて、呑み込んで、メジロパーマーは走っている。だから、トウカイテイオーの偉大さがわかる。

 

(私だって――――!)

 

 同じ雑草だった。

 同じ挫折をした。

 

 その二人を追う。ミホノブルボンを追う。トウカイテイオーを追う。

 

 だが、メジロパーマーはついぞ追いつくことはできなかった。

 少なくとも、このレース中は。

 

(……いける。やれる。勝てる)

 

 身体から、トモから奏でられる危険信号を無視して、トウカイテイオーは駆けていた。自分の脚のバネ、諸刃の剣であることを自覚したそれを最大限活かして、彼女はミホノブルボンを追っていた。

 

 ――――スタートしたとき、少し滑った。あれかな

 

 トモの痛みに見当をつけて、忘れる。無視する。瞼を開く。

 

(勝つ!)

 

 遠い。まだ、4バ身くらいの差がある。

 だが、きっと。いや、必ず。ミホノブルボンのこの速さは続かない。どこかで必ず、息を入れる。入れた瞬間に抜き去って、差し切る。

 

 下り坂を下りきって、ミホノブルボンの姿が僅かに近づいた。

 それは本当に、ほんの僅かな減速。メジロパーマーを抜き去って安堵したのか、あるいはスタミナが尽きたのか。そう疑われることすらない、ほんの僅かな速度の目減り。

 

 それは油断でも安堵でもなかった。下り坂で付き過ぎたスピードを削ぎ落とし、脚への負担を減らす。ミホノブルボンが耳にタコができるほどに何回も刷り込まれた癖。

 その癖を未来のために息を入れる動作に繋げて、ミホノブルボンは独走態勢を崩しつつあった。

 

 芝。程よく手入れされたそれを、思い切り踏む。弾むような柔軟性のある膝と足首。芝の弾みを以てそれらを更に稼働させるためのバネにして、トウカイテイオーは左脚で芝を削り、天へ跳ねた。

 

 大外を爆走していたミホノブルボンによって剥げた芝は、思ったほどのバネにはならない。ならなかったが、本命はそこではない。

 

(楽しい……!)

 

 自分より強いウマ娘。メジロマックイーンと、シンボリルドルフ。

 トウカイテイオーはその二人にしか、負けたと思ったことはない。自分より強いと、思ったことはなかった。

 

 ――――目標でもない。無敗に向けて超えるべき壁でもなければ、2度敗けた今となっては超えなければならないわけでもない。

 

 超えたい壁。それが、トウカイテイオーにとってのミホノブルボン。自分ができなかったことを達成したウマ娘。

 

 ステイヤーとしての才能はおろか、中距離としての才能はこれっぽっちもない。そんな状態から、無敗の三冠を自ら戴いた君臨者。

 

 走るのが楽しい。競うのが楽しい。

 春の天皇賞以降、ずっと考えていたことが――――なんのために走るのかと考えていた自分がバカらしく感じてしまう程に、今が楽しい。

 今の瞬間、トウカイテイオーはウマ娘としての幸福の極みにあった。

 

 遥かなる蒼穹、届かない高みに手を伸ばし、掴み取る。

 迫る。追い詰める。追い抜く。ライスシャワーと同質であり、異質な領域。ライスシャワーのそれが直接的に個人を追い抜くものであるならば、トウカイテイオーのそれは追い抜く自分になるためのもの。

 

 

「できるよね」

 

 

 自信がある。今までできなかったことが、土壇場の今になってできるという、確信がある。

 

 果てのない大空に飛び上がる。届かないものに手を伸ばす。ただそれだけの領域。

 簡潔で無駄のないそれを、トウカイテイオーは即興詩のごとく瞬時に完成させた。

 

 距離が縮まる。最後の直線に入る直前。スパート態勢をとるトウカイテイオーの半身が、ミホノブルボンの影と重なる。

 

 これまで誰一人として――――ライスシャワーですら捕捉できなかったミホノブルボンの影を捉えたのは、トウカイテイオー。

 

 だが。

 

(縮まらない……!)

 

 雲と雲の間を跳ねるように空を駆けるトウカイテイオーに対して、ミホノブルボンは更に突き放すように、弾かれたように加速した。

 

 息を入れ終えたミホノブルボンは、スプリンターとしての脚を使ったのだ。長距離を走るために全開というわけにはいかないが、それでもトウカイテイオーより少し遅いくらいの速度は出ている。

 少し遅い。ならば、時間をかければ縮められる。

 

 だが、前に待っているのは坂。中山の短い直線を守るための防壁のように聳え立つ高低差2.2 メートルの坂。

 そこで、差が開く。坂路の申し子に、坂路で勝つことはできない。

 

 更には、ミホノブルボンは内にいる。トウカイテイオーは外。内と外の差となっている微妙なロスが、ミホノブルボンとトウカイテイオーの差を一定に保っていた。

 

 ミホノブルボンの領域は、開かない。開けないのか、まだ札を切ることを渋っているのか。

 

(勝つ)

 

 ――――絶対に!

 

 決意が心を染め上げ、景色が変わっていく。

 青い空は赤く染まり、燃え上がるように熱が増す。整えられた芝から活火山のように溶岩を噴き出す、荒れ果てた大地へ。

 

 領域の向こう側ではなく、領域の二階層目へ。トウカイテイオーは到達した。

 

 

 ――――不死鳥のように、復活してくれ。

 

 

 去年の今頃。年度代表ウマ娘に輝いたとき。まだ骨折を1度しかしていなかったとき。

 新しく作り上げられた勝負服には、復活を祈願するような思いが込められていた。立ち上がれと、怪我に負けるなと、背中を押されるような気持ちだった。

 

 その気持ちは、右脚と共に春の天皇賞で折れた。だが今再び不死鳥のように、鍛え直された剣のように、炎の中から新生した。

 

 赤い翼。焔のようなそれで空を駆け、勝つ。自分の上をいくミホノブルボンに勝つ。

 

「テイオー伝説は――――」

 

 奥歯が砕けそうな程に食いしばって、心の枷を噛み砕く。

 負荷を掛け続けている脚で芝を更に踏みしめて、トウカイテイオーは2度目の加速に入った。

 

 両脚が砕けてもいい。圧し折れてもいい。絶対にまた立ち上がる。だから、走り切らせろ。全力を超えた全力で。

 

「――――ここからだぁぁぁあ!!!」

 

 その咆哮は、観客の大声援に打ち消されて消えていく。それでも聴こえたのか、気迫に押されたのか、ミホノブルボンはやっとトウカイテイオーの方を向いた。

 

 同色の、青い瞳。ミホノブルボンの深みのある青とは違い、トウカイテイオーのそれは青空のように透き通っている。

 

 ミホノブルボンは、掛かっていた自分が落ち着いていくのを感じた。トウカイテイオーの瞳には、調和があった。自分にはない、闘志と冷静さの調和が。

 自分を闘志で染め上げ、制御を将軍に任せているライスシャワーとは違う、自力による調和。

 

(これが、私の目指すべき、理想)

 

 漠然とした理想が、わかった。だが、わかって即座にできるほどの才能はミホノブルボンにない。これから何度も、何度も、併走する中で自分の中に染み込ませて、やっと習得できるかどうか。

 

 だが、今はできない。トウカイテイオーが当たり前のように行った、2段階進化。コツを掴めば一瞬で極致まで至るなどということは、できない。

 

(そして、今の私では領域すらも造れない)

 

 掛かった。振り向いたときに。たぶん、掛かったらダメなのだ。領域を構築するには、掛かってはならない。

 だから、その原因になる焦燥や闘走心を厄介なものと感じて遠ざけていた。本能的に察知していたからこそ、忌むべきものとしてしか見られなかった。

 

 ――――現在、90メートルに渡る坂の中腹。ゴールまで167メートル。迫るのはトウカイテイオー、その後ろにはメジロパーマー、ナイスネイチャ。リードは1バ身。残り128メートル地点で追いつかれると推定。となると、最終直線70メートル内では、追いつけない。

 

 総合的なポテンシャルでは勝っている。だが、局地的なポテンシャルで負けている。だから負ける。そう思った。

 

 ――――時に精神は肉体を超越する

 

 菊花賞のあと、そう言われた。なぜライスシャワーがあそこまで追い縋れたのか。それがわからないから訊いて、聴いた。実に合理的でないその言葉を。

 

 ぐっと、胸を張るように身を反らす。空気抵抗が大きくなって、更に縮まる差。

 縮まる。焦る。危機感が募る。当初の想定を超えてきたトウカイテイオーが、更に想定を超えて迫る。

 

 無理はしない。それをモットーに、ミホノブルボンはレースをしてきた。

 ラップ走法だってスパート時にかかる溜めと加速による緩急がもたらす身体への負荷を軽減するためのものだ。

 

 ピシリと、音が鳴った。

 それまでミホノブルボンをミホノブルボンたらしめてきた、鋼鉄の仮面。どんなときも涼しい顔をしていると、楽勝を続けてきたと言われる由縁。

 

(いやだ)

 

 負けるのが嫌だ。

 子供のような、そんな感情。トウカイテイオーが思わず笑みを溢すほどの、凄絶な闘走心が眼から白雷となって迸る。

 

「――――思考停止。全リソース、走行機能へ譲渡」

 

 距離を測る。時を計る。

 精密機械のような計測能力。最大にして唯一の長所の為に割いていた能力を、維持の為に脳に送っていた酸素を全て走行機能へ回す。

 

 スタートのときにしか使うなと言われた、擬似的な諸刃の剣。膝と足首の柔軟性を再起動させ、痛む肺を無理矢理膨らませる。

 

 自分の身体なのだから、言うことくらい聴け。

 ミホノブルボンはそのとき、精神が身体の外へ流出する音を聴いた。

 

「点火」

 

 燃やし尽くす。残っているスタミナの全てを。余力がどうとかこのあとはどうするかとか、一切排除して全てを燃やす。

 

 坂を越えた。ミホノブルボンとトウカイテイオーとの差は、坂を経ても縮まらなかった。そして、広がりもしなかった。

 

 1バ身。

 クラシック級であった頃、その距離は一瞬だった。一息一足のもとに詰められるものでしかなかった。トウカイテイオーにとっては、そうだった。

 

 2分の1とか、そういう細かいのはいらない。一瞬で抜き去れるのだから。

 

(直線だ――――!)

 

 70メートル。ゴール板が、手を伸ばせばすぐ掴めるほどに近くに見える。

 30メートル前から、トウカイテイオーの脚は重かった。脚は疲労で重く、疲労で重い脚を動かすためのトモは痛む。

 

 自分の領域に、引きずり込んだ。トウカイテイオーの闘志が焔と燃える領域に。

 だが、ミホノブルボンは抗っている。感情という重力とは無縁の宇宙でしか飛翔できないはずの彼女は、重力が全てを支配するトウカイテイオーの領域の中でも飛行を続けていた。

 

 お互い、消耗していた。実力者同士の叩き合いは精神を損耗させ、肉体の疲労を加速させる。

 

 疲れ切った2人にメジロパーマーとナイスネイチャが迫る。少しずつ、少しずつ、2位までとそれ以下との差が縮まる。縮まっていく。

 

 ――――50メートル

 

 トウカイテイオーは浮き上がりがちな身体を更に低くして、大きな一歩を芝に刻んだ。

 空気抵抗を減らし、一歩を大きくすることで脚の回転数を減らしてトモにかかる負担を和らげる。

 

 ――――40メートル

 

 ミホノブルボンは、変えなかった。

 スタートダッシュ。彼女が一番自信を持つ走法。見事な出遅れをかましたあの時から、彼女のマスターと共に研究して得た武器。

 

 ――――30メートル

 

 メジロパーマーを躱して、ナイスネイチャが迫る。迫ったナイスネイチャを再び、苦悶の表情を浮かべながらもメジロパーマーが差す。

 もつれるようにして、差し差されながら上位を目指す。

 

 ――――20メートル

 

 トウカイテイオーは息を吸いかけ、荒く大きな息を吐いた。ミホノブルボンは、肺が破裂するほど大きく息を吸った。

 

 ――――10メートル

 

 ミホノブルボンの影を踏みしめて、トウカイテイオーは飛翔した。残っている全てを賭けた、正真正銘最後のスパート。

 ミホノブルボンはそれを横眼で見て、つんのめるような姿勢を鋼鉄の体幹で維持したままにゴール板へと突き進む。

 

 

 大外の芝が荒れていなかったら。

 スタート時に滑りかけて、トモを痛めなかったら。

 適性外の100メートルがなければ。

 

 

 間違いなく、トウカイテイオーが勝っていた。

 そう言われ続け、ミホノブルボンは頷き続けた。そうなれば、私が負けていただろうと。

 

 だがトウカイテイオーは、そのもしもを認めなかった。彼女が見ていたのは、揺らぐことのない真実。覆し難い事実。

 

 1着、ミホノブルボン。

 2着、トウカイテイオー。

 

 差は2分の1バ身。それまで影すら踏ませなかった無敗の三冠ウマ娘は、影を踏ませてもなお底力を見せて勝ち切った。




※骨は折れてません







64人の兄貴達、感想ありがとナス!
sekisei兄貴、eveneru兄貴、わかるか?たかふみ兄貴、ドラグーン型兄貴、maru114兄貴、マグネリボン兄貴、アスモおばさん兄貴、深層心理兄貴、パッケージ兄貴、評価ありがとナス!


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サイドストーリー:トゥインクルスピリッツ グランドスラム

 中山レース場を、大歓声が包んでいた。

 

 トウカイテイオー。ナイスネイチャ。メジロパーマー。そして、ミホノブルボン。

 日本トゥインクルシリーズの隆盛が感じられるほどに見事な――――玄人にも素人にも楽しめる、そんなレースだったのだ。

 

「ブルボン。おめでとう」

 

「テイオーさん」

 

 赤い、不死鳥のような勝負服。

 差し出された手を握って、ミホノブルボンは息を整えた。

 

「……色々、言いたいこととか訊きたいこととか、あったんだけどね」

 

 眼を瞑る。青色の中で渦巻いていた様々な思いがリセットされ、蒼穹のような澄み切った色に戻った。

 

「次は、ボクが勝つから」

 

 アドレナリンが出続けているような、しかしあくまでも冷静な青色の瞳。

 自分の理想である闘走心と理性の融合を果たしたトウカイテイオーの眼差しを臆せずに見返すミホノブルボンは、瞬き一つしなかった。自分の到達点である境地へと一足飛びに跳躍した姿から、眼を離したくなかった。

 

 一瞬でも長く、深く、見る。見て、視て、観る。

 ミホノブルボンは、理想へ跳躍することはできない。農夫のような篤実さで、一歩ずつ進んでいくしかない。

 

「テイオーさんの次のレースはいつでしょうか」

 

「……たぶん、大阪杯かな」

 

 トモがそろそろ痛んできた。興奮と競争の快楽が麻薬のように怪我を忘れさせていたが、トウカイテイオーはそろそろ本格的に、怪我を自覚しつつある。

 

 大阪杯。来年の4月1週にあるそれは、春の中長距離GⅠの嚆矢である。

 大阪杯、春の天皇賞、宝塚。大抵のシニア級中長距離ウマ娘は、春の三冠と呼ばれるそれらを目指す。

 

 トウカイテイオーが日本ダービーで骨折したとき、復帰レースに選んだのも大阪杯だった。

 故障時期こそズレるが、今回のはそこまでひどいものではないという自覚があった。経験豊富だからこそ――――悲しいことに、と言えるが――――わかる。たぶん、来年の春頃には復帰できると。

 

「はい。では、大阪杯で」

 

「うん。今回は負けたけど、次は負けないよ」

 

 ウイニングライブに出たい。

 そんな気持ちを抱いたままにぴょんぴょんと跳ねて身体の調子の良さをアピールしつつ、トウカイテイオーは去っていく。

 

「ブルボン」

 

 その声を聴いて、ぱたぱたと尻尾が揺れた。耳が声のした方向に向き、くるりとそちらへ向き直る。

 

「掴んだようだな。何かを」

 

「はい、マスター。ミホノブルボン、到達すべき《理想》を掴んで帰還しました」

 

「ならあとは俺の仕事だ」

 

 ひょい、と。ミホノブルボンの膝の裏と背中に手を回し、抱き上げながら参謀は言った。

 

 目指すべき場所がわかっているならば、舗装してみせる。

 1年前は誰もが笑った、三冠ウマ娘という夢への道程を見事に舗装しきったあの時のように。

 

「はい。舗装され次第、駆け抜けてみせます」

 

「ああ。だが、今は休むことだ」

 

 回した腕から伝わる体温は、極めて高い。その熱から、菊花賞以上の激戦だったことがわかる。

 消耗の度合いは距離では測れない。無論最有力の指標にはなり得るが、それだけではない。

 

(少なくとも年内まで休養だな……)

 

 始動は新年。徐々に身体を動かして行って、3月からレースに出て、グランドスラムでも目指そうか。

 無論ブルボン次第ではあるが、クラシック三冠並みの偉業となるのは春シニア三冠・秋シニア三冠の全勝、グランドスラムくらいなものである。

 

 一年の締めくくりとなるウイニングライブ――――トウカイテイオーとナイスネイチャを左右に侍らせての『NEXT FRONTIER』をつつがなく終え、ミホノブルボンは完全なる休養に入った。

 完全休養と言っても、何も動かないというわけではないが、坂路のような高負荷な練習はしない。ゆるく、なまらない程度に身体を動かす。

 

 そんな日々を過ごす中で、ミホノブルボンは問うた。

 

「マスターは、ご実家に帰られないのですか?」

 

「仕事がある」

 

 にべもない。そして、たいていの社会人に突き刺さるであろう切実な理由。

 参謀こと東条隼瀬は、現在論文を書くことに精を出していた。

 

「では、マスターは大晦日もトレセン学園にいらっしゃるという認識でよろしいでしょうか?」

 

「いや、大阪に行く。だから一日中いるわけではないな」

 

「大阪、ですか」

 

「ああ。学会での発表がある」

 

 トレーナーというのは、死ぬほど忙しい。死ぬほどというのは比喩でなく、事実である。

 

 1月。

 ウマ娘が実家から帰還。実家に行っていた間の体型の変化、疲労度の変化を加味し、一年間のおおまかのトレーニングスケジュールとレースローテーションを作る。ちなみに新年はじまって1週間経たずに重賞レースが開催されるため、陣営によってはここから既に実戦がはじまる。

 

 2月。

 続々と始動しはじめる他陣営のウマ娘たちの偵察、分析。他ウマ娘のローテーションの確認。自分たちが担当するウマ娘たちの新年ボケを確認し、トレーニングスケジュールを調整。ダートのGⅠがあるため、ダートウマ娘を抱える陣営の活動が活発化する。

 

 3月。

 本格的に重賞レースがはじまる。クラシック初戦に向けてのトライアルもはじまるため、王道を行く巨大陣営――――リギルとかスピカとかカノープスとか――――は、ここから本格化。

 

 4月から6月。

 皐月賞、大阪杯、春の天皇賞、宝塚記念など、前半期のGⅠラッシュが開始。怪我への対応、勝つことを前提に出したレースでの敗北による賞金額の調整など誤算が頻発し、ローテーションの変更及び調子の調整、トレーニングの変更などを強いられる。

 

 7月から8月。

 夏合宿。濃密なスケジュールを組むことが要求され、大きく実力を伸ばすウマ娘も出てくる。そのため、成果によってはスケジュールの調整がまた必要となり、ローテーションとトレーニングプランを柔軟に変更していかなければならない。

 

 9月から12月。

 疲労がたまり、怪我が頻発する。そのためトレーナーの仕事も加速度的に増え、それまで結構楽をできていたサブトレーナーたちの眼が死ぬ。怪我もそうだが、出走登録ミス、賞金額の調整ミスなど、シャレにならないミスも頻発する。

 

 そして、12月4週。有馬記念が終わると、やっとトレーナーたちは一息吐けるのだ。

 もっとも年末から三が日が終わるまでの僅かな期間だが、とにもかくにもレースは無くなる。

 

 あぁ、暇だ。

 ということで、ここから学会。一年間の経験をもとに論文を書いたり、レポートにしたり、新規のトレーニングプランを提唱したり、三が日って何?って感じでひたすら続く。

 

 その学会で最も盛んなのが、シンボリ派閥。その中核が東条一門であり、東条一門のナンバー2が東条隼瀬である。

 20代中盤の若造がナンバー2にのし上がれる東条一門とは……?となるが、中長距離ウマ娘としてはなんの才能もなかった寒門のウマ娘を2年間無敗でGⅠを7勝した三冠ウマ娘とした実績は大きい。

 

 そして何よりも、このクソ忙しい仕事に就きながらレポートを書いて論文を発表して……とできる人間がそもそも少ない、というものもある。

 

 つまり何が言いたいかといえば、東条隼瀬は相変わらず死ぬほど忙しかった。

 

「……」

 

 ぱた、ぱた。

 ゴロゴロと転がっていたベッドを、力なく尻尾が叩く。

 まだ若干疲労している脚を掛け布団で包みながら、ミホノブルボンは不満を感じた自分に気づいた。

 

「マスターは、テイオーさんの走りを見て何を思われましたか?」

 

 それは別に今訊かないでも良いことである。

 必要とあれば東条隼瀬はミホノブルボンに話すだろうし、どのみち大阪杯の前に聴くことになる。

 

 それに、自分の意見もまとまっていない。相手に意見することを求めるのならば、最低限自分の意見をまとめ、別の視点を提供する必要がある。なのに、今の自分はそれをしていない。

 

 だがあえて、ミホノブルボンは問うた。訊いた。それは理屈ではなく、感情。マスターとお話ししたいという、欲望という感情からきたものだった。

 

「末恐ろしい、と感じた」

 

「末恐ろしい、ですか。今ではなく」

 

「今? まあ今も恐ろしいだろうが、真に恐るべきところは才能の底が見えないことだ。だから、末恐ろしい」

 

 しかし。

 万年筆を左回りにくるくると回しながら、ぐるりと椅子を回して背後に居る質問者に向き直る。

 

 こっちを向いてくれたことが嬉しくて、ミホノブルボンはちょっと胸のあたりがポカポカした。

 

「だが、その末が来るかと言えば、たぶん来ない」

 

「それは、底がないからでしょうか」

 

「いや、怪我だ。あいつは巨大な才能に比して著しく身体が脆い。というより、あの才能をまともに扱える頑丈さを持つ身体が極めて稀少だ。だから3歩進んで2歩下がるということを繰り返す羽目になる」

 

 現にトウカイテイオーは、また怪我をした。

 左中臀筋の損傷。これまでの怪我の歴史――――左足首の骨折と右脚の剥離骨折――――よりは遥かに軽症だし後遺症も残らないが、それでもミホノブルボンがピンピンしていることを考えるとやはり脆いと言わざるを得ない。

 

「負けたとでも思ったか、お前は」

 

「……負けたくないとは、思いました。つまり、負けかけていたという認識があったものと思います」

 

「まぁ、あいつはお前が1年かけて得た物をたった1回のレースでものにできる。しかもより精緻に、よりグレードアップさせたものを、だ」

 

 領域の2段階目。

 本能と理性の融合。

 

 ミホノブルボンが求めても得られなかったものを、トウカイテイオーは一足飛びに獲得した。

 練習した時間は、確実にミホノブルボンが上である。トウカイテイオーは怪我をしていたし、そもそもそんなに負荷をかけた練習をすることができない。

 

 無論これは比較対象が悪いというのもある。トウカイテイオーは平均以上の練習をしているし、制限された短い時間の中でこの上なく集中してこなしている。

 しかしミホノブルボンほど長く、集中して練習しているウマ娘もいない。

 

「だがそれを嘆いていても仕方がない。一歩一歩進んでいく。それしかできないのだからな」

 

「はい」

 

 超高速でグルグル回っている万年筆を再び握り、論文を書いていく。

 ミホノブルボンには、一足飛びに跳躍する才能はない。だが、歩き続ける精神力と歩き続けても壊れない脚がある。

 

(……大阪杯)

 

 本能と理性の折り合いが付けば、マスターが策を講じられる。

 自分が策を実行できれば、必ず勝てる。その確信がある。

 

 現在は12月28日。大阪杯は4月4日。

 ほぼ3ヶ月の間を使って、自分はトウカイテイオーに追いつけるのか。

 そんなことを考えながら、購買部で買ってきた『瞑想〜ヨガの真髄〜』という謎の本から精神力を鍛える術を学ぼうとするなど、ミホノブルボンは思っきり迷走していた。

 

 迷走していたが、彼女の懸念は杞憂で終わる。

 大阪杯。トウカイテイオーとの第3次対決となるはずだったこの戦いに、彼女は有馬記念での怪我の治療が長引いて現れなかったのである。

 

 となると2000メートルでミホノブルボンに敵うウマ娘がいるわけもないが、そんな未来は誰も知らない。

 

 論文を淡々と書き終えた男は、瞑想に入ろうとして寝入ってしまった栗毛の少女を見て少し笑い、顔に覆いかぶさった本をベッドの脇に置いた。

 

「……もう1本書くか」

 

 引き出しに仕込んだ二段底からスノーホワイトの本を取り、表紙を撫でる。

 凝った首を回して鳴らし、東条隼瀬は疲れを見せずに机に向かった。




76人の兄貴たち、感想ありがとナス!

切絵兄貴、You078兄貴、タイヤキ兄貴、cesil兄貴、の氏兄貴、Cafe俺兄貴、まっしゅムール兄貴、かねと兄貴、rumjet兄貴、倉西彰平兄貴、ざっし兄貴、めさ兄貴、ハクタイの森兄貴、ちよ兄貴、評価ありがとナス!


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サイドストーリー:ついてる

マックイーン好き。

今回のお守りネタはタマゴタケ兄貴の感想からアイデアをお借りしました。ありがとナス!
次回はRTAパートになります。


 その日は、雪が降っていた。

 色素の薄い肌に似合う、黒い手袋。防水性はないが見た目は美しい――――雪合戦には向かないであろうそれをパンパンと音を鳴らすように合わせて、頭を下げる。

 

 論文の発表を半分くらい終えた男は、めずらしく神妙に祈った。

 

(全員とは言わない。俺の関わった全ての娘が、健康に1年を過ごせますように)

 

(マスターの願いが叶いますように)

 

 白いコートを着た長身の男と、着物を着た栗毛の少女。

 女性にしてはそれなりの身長がある彼女の頭の上には耳、お尻には尾っぽ。

 

 誰が見てもウマ娘だとひと目でわかる、そんな彼女の尻尾は機嫌良く振られていた。

 

「マスター。マスター。暖かいですか?」

 

「ああ。いいマフラーだ、これは」

 

 出発時、歩行時。そして現在、参拝時。

 ミホノブルボンには珍しい、計三回に渡って同じことを問いかけるというバグ。

 

 2回目で(こいつは自分が作ったマフラーを褒めてほしいのか)と察して褒め、満足したかと思いきや3度目が来た。

 

 袖の端っこをつまむように持った少女から投げかけられる問いを無視するような冷酷さは、さすがの彼にも無い。

 

 縦横無尽に振り回される尻尾を恐れてミホノブルボンの側から離れていく人混みの構成者たちに心の中で詫びつつ、東条隼瀬は真の意味で尻尾制御術の意味と意義を理解した。

 

 ウマ娘は、どんなに弱くても成人男性の3倍程度の力を持つ。

 それ故、それなりの力で尻尾は揺れているのである。当たれば当然、とても痛い。

 

 これは余談になるが、ミホノブルボンはその中でも特別力が強い。特にレースに役立つこともないが、怪力であると言っていい。

 ライスシャワーの帽子が木の枝に引っかかってしまったとき、ブルボンは木を引き抜こうとした、らしい。

 最終的には帽子の引っかかっている箇所にライスシャワーを上げるように両手で放り投げ、放り上げられたライスシャワーが帽子を手で捕獲。軌道そのままに直線に落ちてくるところをキャッチするという荒業で解決しようとしていた。

 

 あれは忘れもしない。ルドルフの秋の天皇賞を控えた10月のこと。

 窓から見える景色をボケーっと見ていた参謀は、いきなりライスシャワーが下から視界に突っ込んできて【ひゅーっ】と落ちていったので、心臓が止まりかけた。本当の意味でライスシャワーになりやがった、と。

 

 そして『すわ、いじめか』と思ったら違ったという、そういう経験がある。

 

 ――――あと横にちょっと! 頑張ってブルボンさん!

 

 ――――了解しました。約右へ24センチ、力を27%減らし調節。迅速且つ合理的な解決を果たします

 

 とかノリノリでやっていたので、たぶん本人たちの間では至極真っ当な解決策だと思っていたのだろう。

 

 その時はとにかく静止を呼びかけ、事情を聴いてから有り合わせの材料でマジックハンドを作成。それを将軍――――奴は妙にこの手の物の扱いが巧い――――に操作させて帽子を回収、事なきを得た。

 その時に珍しくブルボンを叱った時に、言っていたのだ。では木を引き抜いた方がよかったでしょうか、と。

 そしてブルボンは、尻尾だけで身体全体を何回か浮かせられる。そんなパワーを秘めた一撃が当たると本当に、本当に痛い。

 

 ともあれそういうことで、名門のウマ娘は、たいてい感情が尻尾に反映されないように頑張っているのだ。

 

 ――――ルドルフを見よ。あの泰然とした佇まいを。

 

 あれが名門のウマ娘というものである。

 そうやってルドルフの感情操作の巧みさを誇る参謀は知る由もないが、西の名門ことメジロ家のトラキチはらぺこクソ映画お嬢様も尻尾制御術が抜群にうまい。驚くとピーン!となるが、普段は緩やかな律動で揺れているだけという見事さである。

 

 

 閑話休題。

 

 

「お前、その服装で寒くないのか」

 

「……? はい」

 

 雪が本格的に降りはじめたこともあり、流石に着物のままで歩くのは危険極まりない。ウマ娘は、転んではいけない生物なのである。

 そういうことで、早々に車で帰ってきた参謀は、結構見慣れたブルボンの和装をササッと着替えさせ、また出かけようと誘った。

 

 福引でも引きに行こう。

 そう言われて、ブルボンは着替えてきた。そう、着替えてきたわけだが。

 

 ウマ娘は体温が高い。そういう事実は確かにあるが、それにしてもミホノブルボンはとてもラフな格好をしている。

 細い脚のラインにピッタリと吸い付くような黒いズボンと、《HANRO》と書かれた白地のシャツ。上は黒、下は白の二色ジャケット。

 

(どこで買ったんだ、このシャツ……)

 

 胸のあたりに印刷された、水色の文字。《HANRO》。しかも微妙に左にズレているから、ジャケットを着ると《HAN》しか見えない。

 

「どうかされましたか?」

 

 我ながら似合っていると自負しているのですが。

 

 そう言うブルボンだが、まあ……似合ってはいる。これまで走ることしかしてこなかったが故に絶望的な私服センスを持つウマ娘も多い中ではマシ――――いや、結構いい方ではある。

 

 なにせ割と完璧超人なルドルフですら、上に羽織った緑の上着を前でぴったりと止めていたのだから。

 普通、ボタンは止めない。前は開けておく。そうすることで下に着ている黒と緑のコントラストが映えて、ラフながら気品を感じさせる色合いになるのに。

 

 ――――前で止めるな。ダサい

 

 もう他に言う術を知らずにそう言ったらやめてくれたが、ウマ娘は自分の美しさを服で加工することがへたくそである。

 仕方ないことだと思いつつも抵抗し、近頃はほとんど諦めていたが、ミホノブルボンの私服はいい。確かに子供っぽいが、それが妙に似合っている。

 

「そのHANROのTシャツ、どこで買ったんだ」

 

「URAから送られてきました」

 

 ミホノブルボングッズの展開は速い。

 これはURAがトゥインクルシリーズの寡占化――――名門による独占を防ぐため、在野の人材が埋もれることを防ぐため、なによりもコンテンツの発展のためにやっているからであるし、旬な内に売り出してしまえ、というのもある。

 

 そしてこの迅速さはなによりも、とある男がミホノブルボンに注目していたからだった。

 

「……あいつ、相変わらず動くのが速いな」

 

「マスターの御令弟ですか」

 

「ああ」

 

 トレーナーとしての名門の家は、基本的にスペアを用意している。それが分家であり、東条の家の場合は東条ハナだった。

 

 本命は産まれてから才能の片鱗は見せつつも、生来の病弱で寝込み続けトレーナーは無理だということになったので、東条家としての人脈は基本的に東条ハナに移譲された。

 

 だが寝込んだり起きたり寝込んだりしてたやつが急に元気になって留学したり、そこそこの貴門の令嬢に大逃げを薦めて活躍させたり、寒門のウマ娘と組んで好き勝手やりだした。

 

 普通ならば「トレーナーになれるなら貴門と組め。家を継げ」というところだが、東条家の当主は一度変えた本命=東条ハナ、スペア=東条隼瀬の体制を崩さなかった。

 

 何度もコロコロ変えるのは、よろしくないからである。

 ということで東条隼瀬の持つ人脈は狭い。狭いわけだが、無いわけではない。

 

 その数少ない手札の1枚が、24という若手ながら広報販売部のエースにまで駆け上がった弟。

 兄がトレーナーになるべくして生を受けた存在であるならば、URAに入るべく生を受けた存在だった。

 

 兄は、チームを率いるトレーナーとして。

 弟は、URAを支配する官僚として。

 

 互いが互いを支え合い、権力を盤石のものにする。名門らしい思考である。

 

「やはりあいつは優秀なやつだ。君に目をつけるとは。才能はないが、類まれな精神力と頑丈さがあることを察知したんだろうな」 

 

(マスターの才能を信じていた、ということだと思いますが)

 

 弟から兄へ向けられていた純粋な尊敬の念。

 棘を無くしたマスターのような人だと、ミホノブルボンは思っていた。

 

 シミュレーションゲーム的な数値。統率・武力・知力・政治・魅力のステータスのうちのいくつかがカンストしているのが東条隼瀬だとすれば、カンストはしていないがまんべんなく高いのが弟。全部80後半くらいある、そんな感じの印象だった。

 

(ですが、こう言うとマスターはたぶん、しゃべるのをやめてしまうでしょう)

 

 マスターが一番しゃべってくれるのは、自分が好きな人が褒められたとき、認められたとき。

 

 ここは、黙っておこう。

 珍しく計算高いところを見せて尻尾をブンブンしながら『努力しているところが――――』とか、『ひたむきな愚直さが――――』とか、次々降りかかる褒詞をうれしいうれしいと味わいながら、ミホノブルボンは歩いていた。

 

 マスターと話すのは、とても楽しい。褒められるのは、すごく嬉しい。一緒に歩いていると、胸がぽかぽかする。

 

(来年も)

 

 黒い手袋。なんの装いもなく、飾りもなく、ただ黒い。温かみのある色。造り。

 触れようとしても、なんとなく気が引ける。

 

 ミホノブルボンに霊感はない。時折ピキリーンとくるが、そういうスピリチュアルなのは、校内で占い屋を開いているマチカネフクキタルとメイショウドトウに任せればいい。

 だがそれでも何か、その手袋からは強い想いを感じた。悪意でも執着でもない、ただ寄り添い護るような暖かな感情。

 

 それに自分は触れていいのか。

 そんなことを漠然と思ってしまい、ミホノブルボンは袖をちょっと掴むだけにとどめていた。

 

「ブルボン」

 

「はい」

 

 その手袋が、あるものを指した。

 

「あれ、お前じゃないか?」

 

 指された方に目を向けると、そこには商店街内の神社に設けられた特設のお守り販売所。

 初詣で行った由緒正しいそれとは違い、商店街の一隅にあるそれは割と俗な空気がある。

 

 そんな俗な空間の中で派手に掲げられている看板――――《無敗のGⅠ七冠ウマ娘! ミホノブルボンにあやかろう!》などと書いてあるそこで売られているのは、おそらく受験とかそういう勝負事に効能のあるお守りの販売。

 

 URAくんの商魂の逞しさに呆れつつも、驚きはしない。現にルドルフお守りもあったわけで。

 

 トゥインクルシリーズのレースには、事前に人気投票がある。

 勝敗を予想するという意味で投票する人間や、単純に推しに投票する人間もいるので、一番人気=最有力ウマ娘ではない。

 

 だが購入した入場券に同封されるかたちで付いてきているそれを入場するときに提出し、半券を渡されるわけである。

 その半券を加工してお守りにしてくれる施設もあるし、加工しないでそのままお守りにしているファンもいる。

 

 だから別に、目新しいことをしているわけではないのだ。

 ファンがやっていたことを目ざとく察知し、公式で販売し始めた。それだけのことで、要はまたやってやがるという感想である。

 

「一応私も持っています」 

 

「URAから送られてきたわけか」

 

「今も一応所持しています。自分自身を頼るというのは、どうかとも思いますが」

 

「自分を頼るのは、他人を頼るより余程健全だと言える」

 

 明らかに受験を控えてそうな少年少女に、ちっちゃな耳と尻尾を無軌道に揺らしているウマ娘たち。

 ミホノブルボンは、寒門のスターである。だから寒門の――――普通の格好をしたウマ娘たちが買い求めるのは容易に想像がつくし納得もできる。

 

「名門の方々も買い求められているようですね」

 

「ファンレターも来たのだろう?」

 

「はい。他に応援するウマ娘が、いくらでもいると思うのですが」

 

 名門のウマ娘には必ず、現在トゥインクルシリーズで活躍している身内がいる。

 なんの縁もゆかりもない自分よりも、そちらを応援する方がらしいのではないかと、彼女はそう思っているらしい。

 

 確かにお守りを求めるあの群れの中には、明らかに名家っぽいウマ娘もいる。単純な業績にあやかろうとしているのか、勝負事に強く在りたいというのは名門も寒門も関係ないということなのか。

 まあミホノブルボンは間違いなく、去年のトゥインクルシリーズの主役だった。1年でGⅠを7勝する存在は居なかったのだから当然と言えるが、ドラマ性もあった。元々あったものにURAの全・力・宣・伝の効果があってこそのものだが。

 

 PakaTubeのURA公式チャンネルは4時間に1回というハイペースで動画やレースの切り抜きなどを投稿しているし、公式ウマッターではジュニア・クラシック・シニアの3階級に登録されているウマ娘の誕生日を紹介したり、本日開かれる重賞レースの展開の解説など、熱心にファンを引き込もうと頑張っている。

 URAの広報は優秀なのである。月刊ターフをおそろしく無慈悲に切り捨てたが、既に新しいメディアを作っているし。

 

「まあ、GⅠを勝つというのは本来凄いことだからな。GⅠでなくとも、重賞7連勝でも本来はすごいことだ」

 

 ジュニア級GⅠを2勝、クラシック級GⅠを3勝、シニア級GⅠを2勝。GⅠを7連勝。重賞9連勝。デビュー以来10連勝、連対率100%。

 

 それが数値で見るミホノブルボンというウマ娘である。

 2年でやっと2桁かぁ……とか思う人もいるだろうが、本来名門寒門問わず、重賞で1回勝つというのがすごいことなのだ。

 

 1世代の中でトレセンに入学するウマ娘は4500人くらい。その中で中央のレースで勝てるウマ娘が100人くらい。地方トレセンとの入れ替えは結構頻繁に行われるが、大抵は重賞どころか未勝利のままでキャリアを終える。

 

 GⅠとなれば、更に間口が狭くなる。近頃は化け物クラスのウマ娘がポコポコ生えてきているから、GⅠの競合率も凄まじい。

 

 ひとりで13回勝つ女も居るが、GⅠを1勝というのは凄まじいことなのだ。ひとりで13回勝つ女も居るが。

 

「はい。重賞レースについての常識は知識として、インストールを完了しています」

 

 GⅠを3回勝つ。もっと言えば、クラシック三冠に含まれるGⅠレースに勝つ。

 そう決めていたので、ミホノブルボンは1回勝ってもあんまり喜ばなかった。すごさも実感しなかった。

 

 だが、知識としては備えている。

 

「となると、福引券はお前が引くべきかな」

 

 お守りになる程度の勝ち運があるのだから。

 そう言いつつ、からかい気味に揺れる福引券を目でふらふらと追いながら、ミホノブルボンはふるふると首を振った。

 

「マスターが引いてください。私の業績は、マスターあってこそのものです」

 

「それは正しくもあり正しくもないが……まあ、雪の日だからな」

 

 その言葉は、よくわからない。

 よくわからないが、東条隼瀬は福引券を使ってガラガラを回した。

 

 黒い手袋で取っ手を掴んで回す。何かを狙っているとは思えないほどに無造作で無作為な、軽い回転。

 ガラガラの中で多くの玉がぶつかり、回り、そして口からポロリと金色の玉が転んで出てきた。

 

「なんとっ! おめでとうございまぁぁぁす!! 特賞『温泉旅行券』、出ましたぁ〜〜〜〜!!」

 

 温泉旅行券、2名用。

 それを受け取って、参謀は口元をほんの少し上げた。自分の強運を信じているというより、運を引き寄せた何かを誇るような。

 

「今年もお前に迷惑をかけない程度には運が良さそうだ」

 

 レースは実力勝負である。だが、実力が拮抗すればするほどに運が絡んでくる。

 枠番、ちょっとした正の誤算、ちょっとした負の誤算。

 

「正月から練習だったからな。この温泉旅行券はお前にやる。来年の今頃、お父上と一緒に行くといい」

 

 ――――やはり雪の日はいい。ついてる

 

 福引きという、小さな運試し。

 その中での最上を見事引き当てた右手で拳を作りながら、参謀は呟いた。




一方、カイチョーは鯛をあげていた。


65人の兄貴たち、感想ありがとナス!

hawkins兄貴、ヴァント兄貴、fuhga兄貴、きたきた兄貴、たりお兄貴、NOT FOUND兄貴、GG兄貴、Una兄貴、Sirocco兄貴、評価ありがとナス!


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オペレーション:M00

 固有スキル二刀流でいく凱旋門RTA、はーじまーるよ。

 

 ということで、正月返上して賢さ練習。残り体力的にもちょうどいいですし、坂路に集まってくれるウマ娘連中が皆実家に帰ってるからね。仕方ないね。

 

 さて、正月特訓を終えて1月の1週が終了しました。

 普通ならここからイベントが起こるまで、あるいはレースのある週になるまで怒りの64倍速で流すわけですが、そうはいきません。

 

 そう。1月7日と言えばJRA賞の発表。ということで、ウマ娘世界内にもURA賞なるものがあります。

 

 リアルでは最優秀2歳牡馬、最優秀2歳牝馬、最優秀3歳牡馬、最優秀3歳牝馬、最優秀4歳以上牡馬、最優秀4歳以上牝馬、最優秀短距離馬、最優秀ダートホース、最優秀障害馬が発表され、その中から年度代表馬が選ばれるわけですが、ここは牝馬も牡馬もないウマ娘世界。

 

 故に選ばれるのは最優秀ジュニア級ウマ娘、最優秀クラシック級ウマ娘、最優秀シニア級ウマ娘、最優秀短距離ウマ娘、最優秀ダートウマ娘、その中から選ばれる年度代表ウマ娘だけです。

 障害ウマ娘は設定でしか存在しない(設定上、パーマー姉貴が障害やってたらしい)ので省かれてます。南無。

 

 ということで、最優秀クラシック級ウマ娘と年度代表ウマ娘にミホノブルボンが選出されました。

 (クラシック級期間だけでGⅠを5勝してるし)当たり前だよなぁ!?

 

 ということで、大幅な能力アップイベントが起きました。

 最優秀ジュニア級ウマ娘を受賞しても特に何もありませんが、最優秀クラシック級ウマ娘からは違ってきます。

 

 三冠達成ボーナス、無敗ボーナス、最優秀クラシック級ウマ娘ボーナス、年度代表ウマ娘ボーナス。

 初年度担当ウマ娘という補正も合わせると、なんと全能力が+103! スキルポイントも+103!

 

 やっぱ……URAくんの表彰を……最高やな!

 というかあれですね。ちゃんと有馬記念勝ってたんですね。

 まぁあの有馬記念ではライバルというライバルはメジロパーマーくらいなもんですからね。そら勝つわな。

 ナイスネイチャはプレイヤーが介入しない限り3着固定、テイオー√に入ればトウカイテイオーは確定11着なので当たり前と言えばそうですが、楽勝だったことでしょう。レース見てないけど。

 

 最後に理事長の挨拶でURAファイナルズを今年の末に開催するよー、ということが告げられ、閉幕。

 URAファイナルズに関しては、特に語ることもありません。予選落ちしようがしまいが、どのみちレギュレーション的には問題ないので。

 ただまあ、レギュレーション的にはどうでもよくても、このゲーム的には3年間の集大成をぶつけるラスボス戦にあたりますからね。

 

 最近発掘された初期アイテム的にサイレンススズカVer2……あたりが来ると予測しています。まあ負けてもいいからどうでもいいですけどね。

 

 というのも束の間、これからがほんへ。

 

 ここでミホノブルボンには新しい勝負服が授与されます。アニメ2期でもありましたね。

 と言っても、URAくんが仕立てた勝負服が授与されたわけではありません。

 勝負服の変更申請――――設定的にはウマソウルなるものの進化が許可された状況になる。そんな感じです。

 

 テイオーであれば例のフェニックスモード、マックイーンの場合は白くなり、カイチョーであれば勲章が増えたりマントが豪華になる。

 オペラオーの場合は篭手とソードビットが付きますし、スズカの場合は緑のストールと白いマフラーが付きます。

 

 ライスシャワーはイーブイみたいなもんで、戦績によって変わります。白くなったり黒くなったり灰色になったりと、忙しいです。

 今日もどこかでお兄様たちによるライスシャワー進化論の研究が行われている――――というのは嘘のようで本当の話。

 

 閑話休題になりますが、これ一応3段階目もあります。

 所謂アルティメットテイオー、V3マックイーン、杖持ちルドルフ、ペンダントスズカですが、まあおそらく出てくることはないので説明はカット。

 

 因みに今挙げたウマ娘たちは判明している第3段階ウマ娘の中でのトップ4なわけですが、一番厄介なのはV3マックイーンですかね。ホームグラウンドである長距離にしか出てこないので勝てない。

 アルティメットテイオーは『ウマ娘のテイオーは弱い』という風説を覆すレベルで強いですが、長距離にも出てくるので勝とうと思えば勝てます。中距離では……ナオキです。

 

 ついにマイルにも出没するようになった杖持ちカイチョーは災害なので、諦めましょう。災害に喧嘩を売る人間はいない。

 ペンダントスズカは、こちらの担当ウマ娘が脚質:逃げでないと勝てません。

 固有を発動されたら100%負けるので、先頭の景色を見せてはいけない。ですが、モブの中にペンダントスズカと叩き合える逃げウマ娘はいない。つまり、先行・差し・追い込みは詰みです。ザ・エンドってね。

 

 ペンダントスズカさんは得意の左回り、速度の出やすい和芝、2200メートルまでの距離のどれかが当てはまる条件下なら無敵です。

 なのでよく稼ぎプレイに使われてます。なにせ負けないので。

 

 とにかく、無印ウマ娘では3段階目のウマ娘には勝てません。旧ザクでガンダムに殴りかかってはいけないし、グラスゴーで紅蓮聖天八極式に挑んではいけないし、竹槍でB29に挑んではいけない。

 

 だから、2段階目にまで引き上げていく必要があったんですね(様式美)。

 

 では、勝負服のデザインを決めます。と言ってもマックちゃんやテイオーのようにゴリゴリ変わるわけではありません。ブルボンからの要望を受け入れる形で装備が増設される、という感じですね。

 今回は肩の横で浮遊する……畳まれた翼みたいな白い盾っぽいなにかと、壊れた時計の盤を手の甲に付けた手袋が追加されました。

 

 ……これどうやって浮いてんの?とは言ってはならない。腰のGNドライヴ、尻尾の輪っか、簪みたいなアンテナと同じ技術でしょ(適当)

 

 さしずめブルボンMk.2――――ブルツーと言ったところかな……とか私は思っていましたが、コメント欄にエクシアブルボンという直球過ぎるアレがあったので、そう呼称します。

 

 このエクシアブルボンの固有スキルは《M00-G1st:F∞/L.O》。効果は『出遅れることなくレースを運ぶと、最終コーナー手前で全ての力を加速力に換える』。

 

 全プログラムを停止し、リミッターを外して1着へ無限の速度で突き進む、的な意味だと思われます。

 

「マスター、どうでしょうか」

 

 謎の技術だなーと思った(率直)

 右手を前に突き出すいつものポーズをしているブルボンですが、ゲームの処理速度向上のためにミニキャラ化されているからちょっとこう……かわいい。

 

【ミホノブルボンはどうやら感想を求めているようだ……】

 

>【かっこいいな】

【かわいいな】

【似合っているな】

 

 提示された選択肢は3択。

 【かっこいいな】ではスピードが、【かわいいな】ではパワーが、【似合っているな】では信頼度が上がります。

 ここはまぁ……成長補正のないスピードで。ブルボンの成長補正はスタミナに+20%、パワーに+10%。序盤は中長距離適性上げのために優先的にスタミナを上げましたが、本来優先すべきはスピードです。

 

 ということで、【かっこいいな】でスピード+20。うん、おいしい!

 

「はい。私もかっこいいものに仕上がったと自負しています」

 

【ミホノブルボンのスピードが20上がった!】

【ミホノブルボンのやる気は絶好調をキープしている】

 

 ということで勝負服を改めたエクシアブルボンさんですが、実際の出走レースは大阪杯。つまり新勝負服の受領はしたものの、3ヶ月間は幽閉することになります。すまんな、ブルボン。

 

 ということで、練習風景をバックにこれからの予定を、ご説明します。

 まずこれから大阪杯に出て、トウカイテイオーと戦います。

 このテイオーは正直あんまり強くないので勝てるとして、春天はスルー。宝塚テイオーと最終決戦し、凱旋門に向かいます。

 

 正直春の三冠をとればまた来年の1月に能力が振り込まれるので春天には出ておいたほうが良いのですが、凱旋門は今年の10月1週。私は来年の1月を迎える気はありませんので、無駄。よって勝ってもあんまり美味しくない春天はスルーするというわけです。

 

 というところで、2月の2週。

 バレンタインイベが起こり、一緒にチョコを食べたことによって固有スキルのレベルが上がりました。カカオ豆から作った手作りチョコは愛が重い……重くない?(震え声)

 

 というかバレンタインで固有スキルのレベルが上がるってなんだよ(今更)。

 でもブルボンからチョコをもらえるのは普通に嬉しいです。本来のチャートならもらえないまでありましたからね。

 

 運がこう……向いてきてる。そんな気がする。凱旋門賞を楽に勝ち、ワールドレコードを出せる……そんな風を感じる。

 というところで、体力が減ったので休みます。

 

「マスター。お休みということでしたら、行きたいところがあります」

 

 なにかなぁ?(久々)

 おとなしく休んでくれた方が良かったのですが、イベントが起こりました。

 

 2月3週のイベント……ってなんじゃらほい。

 

「目黒記念です。ライスが出る、とのことでしたので」

 

 あっ、これかぁ!

 これはあれですね。ミホノブルボンとライスシャワーの間の信頼度が一定以上に達すると起こるイベントです。

 

 まさか菊花賞でミホノブルボンとあそこまでいい勝負をしたライスシャワーが負けるわけがない!

 まだ重賞未勝利だけど実力的にはGⅠクラス! 目黒記念にいるので目ぼしいのはマチカネタンホイザくらい! 勝ったなガハハ! 重賞初勝利! そしてそのまま春天でマックちゃんと激突!

 

 Vやねんライスシャワータイガース!

 

《競った! 寄った! 躱した! 抜いた! マチカネタンホイザ! マチカネタンホイザです!》

 

 はい。何がVやねん。

 ほもくんは何やってんだこいつ……となってますが、ミホノブルボンは尻尾と耳がしゅんとしてます。かわいい。

 

【ミホノブルボンは少し心配しているようだ。ライスシャワーと練習をさせてみるのもいいかもしれない……】

 

 とかなんとか言ってますが、別に狙ってはいきません。かといって坂路練習にいるからやめるか……みたいな感じで避けもしません。

 要はライスシャワー関連のイベントは起こってもいいし、起こらなくてもいい。そんな感じです。

 

 このイベントが最後まで進むと春天に出る羽目になりますが、そこで勝つと金スキルをゲットできて嬉しい。

 最後まで進まなくても、元々春天には出ないからどうでもいい。

 

 そんなどっちに転んでも美味しいイベントが起こったところで、今回はここまで。ご視聴、ありがとうございました。




76人の兄貴たち、感想ありがとナス!

エリスヴァイン兄貴、12時丁度兄貴、タコよっちゃん兄貴、コーンフィシュ兄貴、@こなみかん兄貴、志方疎兄貴、ムカウ兄貴、鬼神 勇義兄貴、評価ありがとナス!

感想・評価いただければ幸いです。


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サイドストーリー:Most ValuaBourbon

レーン・エイエイムン「ガンダムだと!?」

アンケートやってます。締切は本日22時です。詳しくは後書きにあります。よろしければご参加ください。


 年度代表ウマ娘というものを目指すウマ娘は、意外と多い。

 

 そんな彼女らは、年度代表ウマ娘とはなんぞや?と問われればこう答えるだろう。

 

 ――――直前に過ぎ去った1年の主役だ、と。

 

 要は、MVPみたいなものである。

 そしてこのMVP賞に参謀が直接関わっていたウマ娘が選出されたのは、これまでに3回。

 1回目。クラシック級時代のシンボリルドルフ。2回目。シニア級1年目のシンボリルドルフ。それまでになかったこの連覇にはMVP(Most Valuable Player)ではなくMVR(Most Valuable Rudolf)にするべきだと呆れられたが、それほどまでにあの時のルドルフはあまりにも圧倒的だった。

 

 3回目が、シニア級1年目のサイレンススズカ。彼女は無敗でこそ無かったが、年間を通して無敗だった。最後の最後で、どこかの無能のせいでケチが付いたが。

 

 そして4回目は、ミホノブルボン。寒門の出である彼女だった。

 

「……で、勝負服を新調したわけか」

 

「はい。マスター、どうでしょうか」

 

 事前に新デザインを提出していたらしい新勝負服を早速、部室で装備してみせたミホノブルボン。

 誇らしげに、嬉しそうに。彼女はくるりと回って片足で立ついつものポーズをして、右手をひょいと突き出した。

 

 肩付近を浮遊する、2枚の盾。翼?

 まあどちらでもいいが、謎の物質。それがふわふわと、彼女の周りを浮遊している。

 ブルボンの勝負服は、割と物理法則を無視する傾向にある。

 

 流星のような形をした簪のようなパーツ、尻尾を囲む複数のリング、腰をくるりと覆う謎の部品2つ。

 全部、謎の力で浮かんでいる。彼女自身が謎の電磁波を出しているから、それを利用しているのだと思われるが、ともかくURA驚異のメカニズムが使用されているのは間違いない。

 

「かっこいいな」

 

 ミホノブルボンはちょっと抜けてる感じの仔犬みたいなかわいい顔と、精悍で冷静且つ智性溢れる顔のふたつを持っている。

 持っているが、このメカメカしい勝負服はどちらの顔をしていてもとても似合っていると言えた。

 

「はい。私もかっこいいものに仕上がったと自負しています」

 

 むふー、と。

 まあ実際にそういったわけではないが、どやっとしている。そんなミホノブルボンは、妙に庇護欲をそそる。

 庇護欲というか、疲れて帰ってきたときにちっこい仔犬がおかえりー!と尻尾をふりふりして突っ込んできて、足元にまとわりつくあの感じ。

 

 明らかに無邪気に邪魔なことをされても、なぜだか微笑ましくて許してしまう。

 

 マスターマスター、と。

 後ろからとことこ付いてくるウマ娘。冷静で無表情、クールで口数が少なそうに見えて結構たくさん喋ってくるウマ娘。

 

「表彰されるのもいいだろう。新しい勝負服を喜ぶのもいいだろう。栄光を振り返るのもいいだろう。だが明日からは、来年もここに立てるように努力する。栄光は過去の扉に置き捨てて、未来に向かって走れ」

 

「はい、マスター。勝って兜の緒を締め、がんばります」

 

 突き出した右手には、壊れた時計。あげて早々に壊してしまい、凹んでいたそれを勝負服につける。

 大事にしていたのだろうと言うことが伝わってきて、東条隼瀬はなんとなく嬉しくなった。

 

 プレゼントなど、あげて終わり。大事にしようが何をしようが、気にならない。

 何故ならば、贈呈とは所有権を移す行為だから。だからその後がどうなろうと、知ったことではない。

 

 ……そのはずだった。

 

「その時計、俺が渡したやつか」

 

「はい。生きてるならば許可はできないが壊れているならば、と。URAも許可してくださいました」

 

「そうか」

 

 ぱたぱたと尻尾が振れて、耳が左右にぴこぴこと揺れる。

 チカチカと白い光が瞬く青い瞳の中には具体的な感情というものは読み取れないが、なんとなく温かい光があるように見えた。

 

 そんなミホノブルボンがちょこんとベッドに座ると共に、腰のあたりで浮く謎の機械が2つシーツの上に沈む。

 

 東条隼瀬が、椅子の向きを逆に変えてベッドの方を向く。

 ミホノブルボンが、ベッドに腰掛けて机の方を向く。

 

 この二人が部室で話すときは、大抵こうだった。

 

「それにしてもその勝負服はかっこいいが、何故そういうデザインにしたんだ?」

 

「はい。これは――――」

 

 一生懸命、身振り手振りを交えてミホノブルボンは話す。

 耳と尻尾の動きから、説明するという――――ともすれば面倒くさい行為を楽しんでいるということを確認しながら、参謀こと東条隼瀬は頷き、返事をして相槌を打った。

 

 東条隼瀬は、実に話しにくい相手である。

 第一に表情に乏しく、第二に眼の強い光がある。要は、何を考えているかわかりにくいし、独特の圧がある。

 

 だが、彼はこの上なく聞き上手だった。相手の理想、意見、思考法。これを茶化さず否定せず肯定し、間違えた理解をすることなく自分なりの見方を伝え、新たな側面を話し相手に見せる。

 

 ――――話している内に、髪を結うかのように考えを纏めさせてくれる

 

 シンボリルドルフはそう言ったがまさにそうで、東条隼瀬は全身で聴こうとしてくれる人間だったし、全身で『どうか理解させてほしい』と言う態度をとる人間だった。

 

 ――――決して愛想は良くないが、必要以上に喋ってしまう。喋りすぎたかなと思う程に喋ってしまう

 

 そう評したシンボリルドルフの言葉は、正しい。東条隼瀬は、他人の話を聴くことが好きなのである。

 見ず知らずの無愛想な人間に、いきなり熱心に話しかける人間はいない。だからこそこの長所は数少ない友人たちにしか発動しないわけだが、それでも彼の長所だと言えた。

 

「時計は、マスターにいただいたものです。だから付けたいということもありましたが、その思いは有馬記念後により強くなりました。動機は不明ですが、願望に従った形になります」

 

「なるほど。それは時計というものが、君のこれまでの象徴だったからではないかな」

 

「象徴……ラップ走法のこと、でしょうか」

 

「ああ。ラップ走法を超越する。無論君は俺からもらった時計を勝負服につけたい、という思いはあったのだろうが、その時計をつけたいという欲望にはいくつかの原因が推察できる」

 

 第一に、これまで二人三脚で築き上げてきたラップ走法ができなくなったことへの罪悪感。

 第二に、破壊されたラップ走法を受け入れて前に進むと言う決意。

 第三に、正確な時を刻んでいた自分の象徴である時計を見て、見るたびに思い出されるいつかの正確さを取り戻すという決意。

 第四に、時計など必要としないなにかを探っているという深層心理。

 

「なるほど……」

 

「まあ必ずしもあっているとは言えないだろうが、そういう可能性もあるのではないか」

 

「そうかもしれません」

 

 寧ろそうだろうと思っていたが、ミホノブルボンは彼が自分の意見を鵜呑みにされることを嫌うことを知っている。

 かもしれないで一旦喉元に留めて、咀嚼して飲み込む。そうしてほしいと思っていることを、知っている。

 

「マスターは、私と話していて楽しいですか?」

 

「ああ。君は一生懸命話してくれるから、とても楽しいよ」

 

 そして何よりも、話し方や話の切り口、好みからは人格を知ることができる。

 大抵はそれらを無視して最効率の方法をとるが、理解しておいて無視するのと理解せずに無視するのでは大きな差があるのだ。

 

 尻尾の揺れる速度が加速し、明瞭な発音と機械的な話の組み立てで実にわかりやすいお話がミホノブルボンの口からノンストップで話される。

 

 そんな中でふと出てきたのが、ライスシャワーの話題だった。

 

「最近、ライスの調子がおかしいようです。冷めている、というか」

 

 外食に行ったら常にご飯が冷えている、というわけではない。ミホノブルボンの数少ないお友達であるライスシャワーがなんとなく冷えているということである。

 

 一緒に練習しているからこそわかることもあるらしい。或いは、ライバル同士だからか。

 ライスシャワーは菊花賞以降、レースに出ていない。理由は単純、疲れていたから。

 

 マチカネタンホイザも菊花賞以降出走登録をしておらず、菊花賞でレコードを叩き出した3人のうち2人が疲れ切って年内いっぱい休んだ、ということになる。

 

 ミホノブルボンもジャパンカップでこそレコードを出したものの、有馬記念ではレコードとまではならなかった。

 これはやはり、疲労していたからではないかというのが評論家たちの主な意見である。

 

「あいつならなんとかするだろ」

 

 将軍への信頼というものが、その単純な返答には表れていた。

 

 展開が高速化してしまったレースに出たウマ娘は、故障しやすい。それはよく言われていることである。

 ウマ娘たちには、本能的な闘走心がある。ひとりのウマ娘が絶好調でレースを牽引すると、その負けたくないという気持ちが限界を超えた速度を出して付いていき、結果としてこれまで更新されていなかったレコードが一気に更新されることがある。

 

 例えばミホノブルボンの菊花賞であればミホノブルボン、ライスシャワー、マチカネタンホイザの3人が一気に菊花賞3000メートルのレコードを更新した。

 

 だが限界を超えているわけだから、当然かかる負荷は半端ではない。故にその後故障したり、脚に残ったダメージからか本気が出せなくなる。そういう例があるからこそ、将軍はライスシャワーを、カノープスのトレーナーはマチカネタンホイザを休ませたのである。

 

 

 ――――実力以上の物を見せたウマ娘は、それを忘れないうちに走らせたほうが良い

 

 

 その方が、壁を超えやすい。身体が覚えた経験が染み込みやすい。そういう論調もある。

 その論旨を支持する評論家たちはミホノブルボン陣営の決断を支持した。菊花賞での勢いそのままにジャパンカップと有馬記念を制覇したのはこの論理を補強するものだ、と。

 

 だが実際、ミホノブルボンは実力を超えた力を出したことは1回しかない。そしてそれは有馬記念であり、菊花賞ではないのである。

 菊花賞はあくまでも、レコードを出せる程度の速度を刻み続けるラップ走法を貫いた。その結果、実力通りに勝てたのだ。

 

 だから、ミホノブルボンは春の重賞戦線をほぼ休むことになる。彼女が新年度のシニア戦線に顔を出すのは、4月。大阪杯でのことになる。

 休暇期間は3ヶ月。これはライスシャワーの去年最後のレースである菊花賞から、出走を公言している目黒記念までの3ヶ月半と似たような期間である。

 

「闘志に欠けるというのだろう」

 

「はい。冷静さこそが信条の私とは違い、ライスの持ち味は燃え上がるような闘志です。理性を溶かし切る蒼い焔のような闘志こそが、ライスシャワーの長所なのです」

 

 だが今は、とても理性的になっている。元々通常時は理性的なウマ娘であったから、今のところはそれほど変に思われてはいない。

 ミホノブルボンであっても、11月からちょこちょこと一緒に練習していたにも拘わらず、気づいたのは現在、1月。

 

「ですが現在はどうも燻っているというか、湿っているというか、そんな感じがします」

 

「まあ、言わんとすることはわかる。だがライスシャワーは才能豊かなウマ娘だし、将軍も極めて優秀なトレーナーだ。第一、俺などお話にならない程の戦術眼を持っている。だからまぁ、なんとかなるさ」

 

 とは言う。

 だが、参謀は知っていた。ライスシャワーは互角の相手と、自分より強い相手には強い。自分より弱い相手にも、もちろん勝てる。

 

 ライスシャワーの強みは、勝負根性。勝ちたいという気持ちの強さ。

 自分よりも格上に対する対抗心、闘走心が肉体を超えて実力として発揮される。その脅威を、誰よりも参謀とミホノブルボンは知っていた。

 

 だが自分よりちょっと強い相手には、割とコロッと負けるだろう。特に、精神的優越を失った今となっては。

 なんとなく、そんな気がした。




87人の兄貴たち、感想ありがとナス!
イツイチ兄貴、yuuki100兄貴、牛肉popopo兄貴、Windowegg兄貴、グルタミン酸素評価ありがとナス!

感想・評価いただければ幸いです。

因みに目黒記念の描写多めだとバレンタインが少なめ、目黒記念の描写少なめだとバレンタインが多めになります。


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サイドストーリー:成長したな

アンケートの結果、2行で済ませるはずだった目黒記念をそれなりに書くことに決まりました。よって、今回はバレンタインとコミュ回、次回目黒記念になります。


 ミホノブルボンはライスシャワーのことを信頼していたし、ライバルだと思っている。

 

 そもそも彼女は、基本的に敬語で話す。

 マスコミ、トレーナー、同期、後輩。社会人――――彼女は身分は学生ではあるがアスリートであり、現に並の社会人の何倍も稼ぎ、何倍も注目されている――――として、話し方はちゃんとしなければならない。

 

 つまり砕けた話し方をする場合、人に応じて言語のリソースパックを起動し直さなければならないのである。

 だがその点、敬語はいちいち人に応じて喋り方を変えなくともよい。自分より立場が上でも下でも誰であっても、基本的に敬語で済む。

 

 だから、ミホノブルボンは特定の人物を除いてフルネーム+さんで呼んでいる。

 ともだちであるサクラバクシンオーもサクラバクシンオーさんであるし、ルームメイトであるニシノフラワーもニシノフラワーさん。

 

 マスター、ルドルフ会長など、目上で親しい人間には特別な呼称や下の名前+役職名で対応しているわけだが、単純に下の名前を呼ぶこともある。

 

 数少ない例外のひとりめが、最近追加されたトウカイテイオー。全ウマ娘でも屈指のコミュニケーション能力を駆使して、彼女はテイオーさんと呼ばれている。

 そして唯一呼び捨てにされるのが、ライスシャワーだった。ミホノブルボンは彼女のことを、単にライスと呼ぶ。

 

 そんな親しいウマ娘が、不調に悩んでいる。

 その原因が自分にあるであろうことも、自分が陥っている状況に近いということもわかる。

 

 だが、ミホノブルボンは特にこれと言った解決策を見いだせなかった。

 闘志を湧き出させるには、どうすればいいか。そんなことは考えたこともなかったからである。

 

 たぶんわかるであろう彼女のマスターは、求められない限り動かない。参謀という渾名の通り、彼は訊かれたら答える、求められたら動くというスタンスを貫いていた。

 トレーナーとして指導するときは自分から口を出すじゃないか、と言われるかもしれないが、それは『指導するということを求められているからトレーナーとして契約している』からであって、自分からしゃしゃり出てきているわけではない。

 

(ですがライスならなんとかするでしょう)

 

 あの、身を灼かれるような闘志を知っている。日本ダービーから感じはじめ、菊花賞で完成した感のある蒼い焔。

 あんな熱いものを持っているウマ娘が、コロッと負けることなどあるだろうか。

 

 マチカネタンホイザとライスシャワーは、実数値的にはまあ互角であると言っていい。ライスシャワーの方が強者に強いと言うか、数値化できない部分で優れているので世間の評価はライスシャワー>>マチカネタンホイザとなっているが、実力は拮抗している。

 

 拮抗しているなら、精神的優越を勝ち取れるであろうライスシャワーが勝つ。

 ミホノブルボンは、そう考えていた。だからある程度心配しつつも、彼女は自分のやりたいことをやっていた。

 

 それはつまり、チョコ作りである。

 カカオ豆を買ってきて、水で洗う。ひたすらに洗う。何度洗っても濁る水を入れ替えて洗う。

 

 ミホノブルボンは、こういう単純作業に向いていた。何も考えていないことが多いからである。

 数時間かけてひたすら洗い、十数分洗っても一切水が濁らない程に綺麗にしてから干す。水気が抜けるまでひたすら干す。

 

(干し飯……)

 

 ニシノフラワーの『光合成をして何を考えているんだろう』という視線に気づくことなく、ぽけーっと干されたカカオ豆を見る。ひたすらに見る。ついでにライスシャワーのことも考えて、連想ゲームじみた着想を得ながらカカオ豆を焼き、火を通す。

 

 触れた物を爆弾に変えるタイプのウマ娘が無造作に機械に触れたことに軽くビクッとしたニシノフラワー。

 豆がパチパチ爆ぜる音を聴くたびにビビる彼女の反応に気づくことなく華麗にスルーしつつ、手袋をすることで機械に触れることができるようになった少女は次にカカオ豆の皮を剥いてすり鉢に入れた。

 

 ライスシャワー(43キロ)をかるーく上空10メートルくらいぶん投げられる程の怪力でゴリゴリと勢いよくすり潰していき、無表情のままにひたすらゴリゴリゴリゴリ。

 ものすごく凄まじい粘り気を発揮するようになったカカオ豆のペーストをぺろりと舐める頃には、ニシノフラワーはスヤスヤと寝ていた。

 

 ということでひとまず手を休めてすり鉢の中のカカオ豆ペーストをゴムベラで小さな金属ボウルに移し、お風呂に入ってミホノブルボンは寝た。眠かったのである。

 

 そして翌日の練習後、ミホノブルボンはすり鉢をお湯につけてカカオ豆ペーストを温めつつ、ひたすらに混ぜた。鬼のように混ぜて、カカオ豆の残滓、つぶつぶが消え去るまで混ぜ終えて、ミホノブルボンは寝た。

 

 さすがのブルボンも、坂路練習のあとに8時間ゴリゴリし続けるのには疲れた。 

 ということで翌日、ミホノブルボンはゴリゴリを再開してしばらくしたあとに砂糖をドバーッと混ぜてチョコレートもどきを作り出した。

 

 指に付けたチョコレートをぺろりと舐めるが、やや苦い。なのでその度に砂糖を継ぎ足して、いい感じになった時、しばらく混ぜてから一粒だけチョコレートを作る。

 

 このとき、ミホノブルボンは集中力が極限まで高まっていた。なにせ、やることがない。考えることもない。虚無でいるのにも限界がある。

 なので必然的に、ミホノブルボンはチョコを作りながら自分を見つめ直すことができた。

 

 ただひたすらに、目の前のことに打ち込む。例えばカカオ豆をひたすらにすり潰す。

 その何もすることの無い虚無さが、ミホノブルボンに精神的成長の余地を与えていた。

 

 闘走心の制御。その完成形が有馬記念のときのトウカイテイオーだということを、ミホノブルボンは知っている。

 

 ――――末恐ろしい

 

 基本的に過大評価も過小評価もしない――――と、ミホノブルボンは思っている――――マスターが、そう言った。

 末恐ろしい。つまり、未来がある。あそこから更に、トウカイテイオーは飛翔できるのだ。

 

 そのためには、まず追いつかなければ話にならない。

 

(闘志と理性の共存)

 

 ライスシャワーは、焔だ。

 最初からスタミナという酸素を喰らい尽くすように燃え盛り、その熱で相手を疲弊させ、射程に入れば焼き尽くす。

 

 トウカイテイオーは、鳥だ。

 理性と言う卵の殻で最大限消耗を防ぐ。

 だが最終局面になると闘志の翼で殻を打ち砕き、空高く舞い上がる。

 

 では自分は、どうすればいいのか。

 自分の行き場のない闘志は、どうすればいいのか。

 その答えは、出ない。そう簡単に出るほどの才能があれば、彼女はここまで努力をしなくとも三冠ウマ娘になれていただろう。

 

(そのヒントはやはり――――)

 

 ライスシャワー。白と黒、理性と本能、氷と焔。正反対ながら、尊敬できる好敵手。

 彼女にこそ、ある。

 

(目黒記念を、見たい)

 

 ライスシャワーの新年度初レース。彼女の闘志が焔となるところを見られれば、何かをつかめる。そんな気がする。

 

 ミホノブルボンの力は今、ズレている。歯車が少し、噛み合わない。指針と実働が違うところを向いている。そんなことはわかっているのだ。

 

 だが、その直し方がわからない。ライスシャワーを見れば、菊花賞のときの自分には脅威にしか、異物にしか見えなかったそれを感じれば、何かが。

 

 何かが得られる。そう思っていた。

 

 だから、言ったのだ。バレンタインのチョコを一緒に食べたあと。

 

「マスター、私はライスのレースを見に行きたいです」

 

 少し驚くかな、とは思っていた。

 本来、目黒記念があるその日は練習をする予定だった。そしてミホノブルボンは、どんなに厳しい練習を課されても拒否したことはない。逃げたこともない。彼女はただひたすらに、愚直に挑んできた。

 

「そうか。では行こうか」

 

「……よろしいのですか?」

 

「よろしくないことをしようとしていたのか?」

 

 質問を質問でサラリと返す。

 だがその言葉からは、ミホノブルボンへの信頼が窺えた。

 

「お前が練習ではなくレースを見に行きたいというのだから、それなりの理由があるのだろう」

 

 自分の人差し指についた溶けたチョコレートを舌で舐めとって、参謀は怜悧な相貌を崩さないままに言葉を続ける。

 

「であれば、受け入れてやるのがトレーナーというものだ」

 

「……マスターは」

 

 ミホノブルボンは、基本的に人の心を斟酌して話す。サイボーグ扱いされても、目からビームを撃てると噂されてビビられても、ロケットパンチをしてくると思われても、彼女が思ったのは『周りを怖がらせてしまって申し訳ない』ということだけだった。

 

 だからしばらく、ミホノブルボンは黙っていた。その沈黙に何かを感じたのか、東条隼瀬も何も言わない。

 

「マスターは、私のために計画を立ててくださいます。それは精密で精緻で余白のない、だからこそ完璧なものです。だからこそ私がこうやって……自分の欲望に従った動きをすることを、好まないだろうと推察していました。誤解をしていたことを、深く陳謝致します」

 

「謝る必要はない。事実その通りなのだから」

 

 ぴこん、と。ミホノブルボンの尻尾が器用にクエスチョン・マークを描いた。

 

「その通りならば何故今回、観戦の許可をいただけたのでしょうか?」

 

「最近、わかった」

 

 東条隼瀬は、ミホノブルボンを自分の管制下に置きたかった。そうすることで事故を、偶然を、運命すらも支配下におけると思ったからだ

 

 それは傲慢であるかもしれない。

 だが、日々を全力で生きれば生きるほど、日々の最善を極めれば極めるほど、人は運命を乗り越えられると、そう信じたくなるものである。

 

 その最善が、自分にとっては管理することだった。夢を叶えるための『能力』と『経験』を推察して逆算し、第三者的な視点で見て正しいトレーニングと正しい休息と正しい食事をさせる。

 自主性もいらない。個性もいらない。あのときは、本気でそう思っていた。ただ、自分の指示を従順にこなしてくれるウマ娘が欲しいと思っていた。

 

 無論それは、最効率だからだ。完璧な管理下においてこそ、夢への最短距離を歩めるからだ。

 

 だが、私心もあった。今となっては、わかる。

 個性も何もなく完璧に管理することこそが正解なのだと、証明したかった。

 

 あのとき。自分の才能に自信を持ち、好き勝手に走ることを許して、失敗したあのとき。

 誰もが、被害者であるはずの彼女すら『貴方は悪くない』と言うあのときのミスを、逆説的に証明してほしかった。

 

 完璧な管理をしていなかったから。自信を持ちすぎていたから。傲っていたから。

 そう結論づけてほしいがために、夢を持つひたむきさを持つウマ娘を完璧な管理下に置くことで、彼女が持つ夢を叶えることで――――ミホノブルボンが三冠の夢を果たすことで、証明してほしかった。

 トレーナーが最善を極めれば、運命や事故など乗り越えられるのだと。偶然が牙を剥く余地など無いのだと。

 

 ――――果たして。ミホノブルボンは三冠ウマ娘に輝いた。そして最後まで、怪我をしなかった。今も元気に走っている。

 

 完璧な管理をした。その自信が、自負がある。一瞬たりとも気を緩めなかった。その自覚がある。

 

 だからこそ。

 だからこそ、事故は起こらなかった。自分が完璧に、適切に、労力を惜しむことなく管理すれば運命を、怪我を、偶然を、事故をねじ伏せられる。ミホノブルボンが、そのことを証明した。

 

 あのときの自分は、ミスをした。自分に、才能があると勘違いしていた。サイレンススズカという気づけば走っているかのような破天荒な天才を補佐できると思っていた。彼女を好きにさせた上で、管理できると傲っていた。

 

 驕慢だ。度し難い悪だ。

 才能のない人間の自信ほど、質の悪いものもない。

 彼女の――――サイレンススズカの才能を、美しい翼を、身の程知らずの無知蒙昧の徒がへし折った。

 

 もっと高く、速く。彼女は翔べていたはずだった。

 アメリカで無双して、フランスに行って。今の時点でも、充分に強い。何も知らない人間が見ればそう思うかもしれない。

 だが、違う。今の彼女は、楽しそうではない。単に放映されていないだけかもしれないがあの恍惚とした求道者の笑みを――――狂気すら感じる最果てを目指す彼女が彼女たる由縁を、ここ2年のサイレンススズカは見せていない。

 

 控えめに。

 そう、本当に控えめに笑うだけ。笑って、俯く。ただそれだけ。

 

 ――――俺は間違えた。それは揺るぎのない事実だ。だからこそ、もう二度と間違えない

 

 そう思っていたからこそ、ミホノブルボンを管理した。食事からトレーニングのすべてを。

 

 だが、有馬記念。

 管制下から解き放たれたミホノブルボンは、立派に走った。自分だけでトウカイテイオーという天才を打倒した。

 

 ――――それほどの才能がないものが、放任をするべきではない。俺には臨機応変の才能がないから、なにもかもを管理しなければならない

 

 有馬記念以前は、そう思っていた。疑いすらしなかった。

 だが、今は思うのだ。

 

「完璧に管理するという思想こそが傲慢なのではないか、と。そう思った。だからこそ、負荷のかからない自由ならば許すべきではないか、本人の意志を尊重するべきではないか、と」

 

 もっと練習したい。その希望は想定の範囲内であれば許可できるが、想定の範囲を一歩でも踏み出せば絶対に許可できない。

 何故なら、それを許可できるほどの有能さは自分に無いから。

 

 だが、観戦ならば。少なくとも、肉体に負荷はかからない。故障のリスクはない。

 

 少しだけ、思う。

 たぶん単純に、嬉しかったのだ。夢への固執以外の意志を見せるという成長を果たしたミホノブルボンが。

 

 管理の中で育った仔犬が、自分の意志で外へ踏み出そうとしている。

 

「……成長したな、ブルボン」

 

 それが嬉しくもある。だが。

 ぴーんと立った耳と耳の間を縫うように手を伸ばして栗毛に触れながら、東条隼瀬は少し寂しげに笑った。




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サイドストーリー:GⅡ 目黒記念

 目黒記念。2月21日、東京芝2500メートル。長距離のレースである。

 このレースに参加する主なウマ娘は、ミホノブルボンのライバルライスシャワーと、不運のウマ娘マチカネタンホイザ。

 

 人為的な突然変異を果たしたサイボーグと、それに互角の漆黒のステイヤー。

 このふたりの化け物がいなければ菊花賞を勝ってた。

 無論レースはそんな単純な話で済むものではないが、そう言われるだけの実力はある。

 

「……こんなところがあったのですね」

 

「権力とは、こういうときに使うものだ」

 

 関係者用の観戦場所。観客席の更に上、突き出すように作られた側面ガラス張りの特等席。

 本来ならば中等部のウマ娘たちが実際のレースを見て学ぶという目的のために作られたそこに、ミホノブルボンと参謀は居た。

 

「とれなかったからな。チケットが」

 

「人気ですね。トゥインクルシリーズは」

 

「そうだな。元々に加え、誰かさんのおかげで更に火がついた」

 

 尻尾でクエスチョン・マークを描くミホノブルボンは、自分が人気者であるという自覚はない。

 人気に驕らないのはたいしたものだが、世間の評判を気にしないのも考えものだと、東条隼瀬は思う。

 

 アスリートとアイドルの複合と言う近頃の声優もビックリな兼業を強いられているのがトゥインクルシリーズのスターウマ娘である。

 スターでなければそれほど歌や踊りに力を入れずに済むが、上に上がれば上がるほど、要求される実力に比した歌唱力・ダンス力を求められる。

 

(そう考えると、とんでもない世界だ)

 

 自分が怠惰でも熱心でもなく、普通に働いているだけで過労死しかねないほどの激務を強いられているトレーナーであることを棚に上げて、参謀はウマ娘という種族の頑丈さ、精神的強靭さに感嘆した。

 

「マスター、ライスが来ました」

 

 左手で袖を引っ張り、右手でライスシャワーを指す。

 小柄ながら存在感のある漆黒の髪を靡かせるウマ娘は、体操服姿。GⅠ以外のレースでは、基本的に――――当人の希望が強くない限りは――――体操服で走ることになる。

 

(やはり勝負服というのは大切だな)

 

 遠目に見下ろしているからかも知れないが、凄みを感じない。

 あの、黒いウェディングドレス。懐剣を携えた黒い闘気を底上げするような衣装が無いからか、少し気が抜けたような立ち姿だった。

 

(いや……普段はこんなものなのか?)

 

 どこを見ているのか、虚空を見つめてゲートに入らずにぼーっとしている。

 日本ダービーのとき、京都新聞杯のとき、菊花賞のとき。いずれもライスシャワーは恐ろしかった。標的を定めた刺客のような、見ていて震えてくるような冷たい闘志がない。

 

 軽く首を俯かせて、アメシストの瞳を暗く燃やして目の前を見据える。それが、ライスシャワーというウマ娘であったはずだった。

 

「どうにも」

 

 不安げに尻尾を揺らしながら、ミホノブルボンは首を傾げる。

 

「気が抜けているようですね」

 

「ああ。調子のいいときのお前のようだ」

 

 張り詰めすぎるのも良くない。

 緩めすぎるのも良くない。

 

 要は、レース前とはその中間がいいということになる。だが張り詰めた中でこそ強さを発揮できる者もいるし、緩めた中でこそ強さを発揮できる者もいる。

 

 ライスシャワーは前者で、ミホノブルボンは後者だ。

 そしてミホノブルボンは前者になりかけて苦しんでいる。

 

(ライスシャワーも、ということなのか)

 

 そういえば、ルドルフも言っていた。

 ミホノブルボンとライスシャワーの領域の競り合いは、シニアでもそうない規模のものだった。おそらく、互いに互いの領域の影響を受けている。互いのことを、理解し過ぎているほどに理解してしまっている、と。

 

 理解してしまった結果としてミホノブルボンが闘走心を得たのならば、ライスシャワーは何を得たのか。

 

(冷静さか……)

 

 冷えた水に熱いスープをぶちこむような、熱いスープに冷えた水をぶちこむような。

 そういうことが、菊花賞で起こったということなのか。

 

「勝てるでしょうか」

 

「……さあな」

 

 ライスシャワーのことを、よく知っているとは口が裂けても言えない。自分より深く、強く、彼女のことを知っている人間を知っているから。

 

 だが、わかることがある。それはライスシャワーはひとりでは走れない、ということである。

 

 相手が完全試合をしていると負けじと完全試合に抑える。ノーヒッターをしていればノーヒッターに抑える。相手が燃えれば自分も燃える。ポストシーズンだと全く点をとられない。

 それがライスシャワーだとすれば、ミホノブルボンは必ず8回1失点に抑えるピッチャーのようなものである。

 エラーがあろうがファインプレーがあろうが、援護があろうとなかろうと8回1失点。抑えが3連投中でも中継ぎが暇していても8回1失点。完封も完投もないが、機械的に試合を作る。

 

 ライスシャワーの短所は、安定感の無さ。

 ミホノブルボンの長所は、抜群の安定感。

 

 ライスシャワーの長所は、圧倒的な爆発力。

 ミホノブルボンの短所は、爆発力の無さ。

 

 短所は長所に裏返る。長所は短所に裏返る。短所を埋めれば、長所が消える。

 ライスシャワーの今は、それだ。

 

「難しいレースになるな」

 

「マチカネタンホイザさんですか」

 

「ああ。あいつは強い。お前やナイスネイチャに近い強さだ」

 

 常に善戦する、とでも言うのか。調子に左右されることが比較的少なく、最低限1着を狙える実力は出せる。

 

 マチカネタンホイザは菊花賞を終えるまでは流石に掲示板外に落ちることもあったが、菊花賞を終えてから完全に覚醒している。

 菊花賞(GⅠ)3着、日刊スポーツ賞金杯(GⅢ)1着、ダイヤモンドステークス(GⅢ)1着。そしてここ、目黒記念に挑む。

 

 怒涛の重賞2連勝。シンボリルドルフ(GⅠ13個を含む重賞14連勝)、サイレンススズカ(GⅠ3勝を含む重賞9連勝)、ミホノブルボン(GⅠ7勝含む重賞9連勝)を見たら感覚がおかしくなるが、重賞を連勝するというのはすごいことなのである。

 

「ライスシャワーの実力は間違いなく高い。実力的にはマチカネタンホイザに勝っている。だが地力ではマチカネタンホイザの方が上だ」

 

 単純な強さを、地力という。

 メンタルを含めて、実力という。

 

「どうなるかな」

 

 続々と、12人のウマ娘がゲートへ入っていく。ライスシャワーは5枠5番。マチカネタンホイザは3枠3番。

 

 マチカネタンホイザの方が内枠だが、有利なのはライスシャワーの方だ。スタートした瞬間、1番人気、目黒記念最有力候補のウマ娘であるマチカネタンホイザのマークに付ける。

 

 徹底的なマーク、ロングスパートによる差し切り。それがライスシャワーの必勝パターン。

 

《さあ、府中芝2500メートルに12名のウマ娘たちが挑みます。中央トゥインクルシリーズ最古のレース、目黒記念!》

 

 ぽけーっとしているのがミホノブルボンなら、ぽやーっとしてるのがライスシャワー。

 新米から古米になった彼女は、どことなくゴールではない何かを見ているようだった。

 

(そう言えばライスシャワーは、王道のウマ娘をマークしたことがあるのか?)

 

 ――――ある。ナリタタイセイだ

 

 自分の問いかけに自ら答え、参謀は『未経験だからなんとなくぼーっとしている』と言う線を消した。

 

 ただ、ナリタタイセイをマークしたレースでライスシャワーは負けた。

 先行・差し。王道と呼ばれるウマ娘をマークして勝ち切った経験が、ライスシャワーにはない。

 

《今、スタートしました!》

 

 芝2500メートル。それを聴いて思い出されるのはやはり、ミホノブルボン対トウカイテイオーによるハイペースの壮絶な叩き合いが繰り広げられた有馬記念。

 

 だがこのレースは思いの外、スローペースで進行した。

 ペースの牽引車になる有力な逃げウマ娘がいなかったこともそうであるが、やはりGⅡ。GⅠに比べるとメンバーの質が落ちる。

 

 メジロパーマーもダイタクヘリオスも、ミホノブルボンもいない。両脇のウマ娘をファンネルミサイルの如く掛からせ発射してくるウマ娘も居ない。

 

 目黒記念は順当な――――去年から見始めたファンからすれば極めてゆったりとした幕開けだった。

 

「相変わらずマークが巧いですね、ライスは」

 

 元々よかった枠番を活かし切り、マチカネタンホイザの斜め後ろにスッと付く。

 ずっとスパートをかけているような逃げウマ娘とは違い、マチカネタンホイザは名門らしい好位抜出型。ライスシャワーは序盤中盤にかけて緩く後ろを付いていき、スパートにかかった瞬間に追従して勢子のように追いたて、差し切ればいい。

 

「ああ。杞憂だったかな」

 

 将軍とライスシャワーのことだ。

 或いはミホノブルボンが苦慮している折り合いをさっさと付け終えていたのかもしれない。

 

 常に闘志を撒き散らすのではなく、限界のギリギリまで溜め込んで、押し込んで、バックファイアのように最後の最後で爆発させる。

 ライスシャワーの闘志にあてられるウマ娘は多い。そういった手合いは掛かって消耗し、自滅していく。

 

 だが序盤で掛からなかったウマ娘たちはその異様な闘志に多少なりとも慣れて、中盤は割と落ち着いたレース運びを見せる。

 

 その、慣れ。それを克服するために、敢えて闘志を封じ込めている。そして中盤で解放し、掛からせてより直接的で克服しようのない消耗を強いる。

 序盤での消耗は、中盤に息を入れれば克服できる。だが中盤での消耗は、息を入れることができないだけに致命傷になる。

 

 終盤に息を入れていいのは、序盤中盤でリードを確たるものにしたウマ娘。つまり、逃げだけなのだ。

 

(となるといつ仕掛けるか、だが)

 

 そのあたりのタイミングを逃すのは、戦術的に無能なやつだけである。つまり、あいつに限ってそれはない。

 

(そろそろ……いや、まだかな。もういい気もするが、もう少し様子を見てから――――)

 

 中盤。序盤から変わらない形を維持するレースを観察しながらそんなことをちんたらと考えている間に、ちらりと観客席を見たライスシャワーはさっさとロングスパートに入った。

 

 同じくロングスパートに入ったマチカネタンホイザの後ろを追う。

 

「もう少し様子を見てからでも良かったんじゃないか、と思ってしまうあたり俺には指揮官としての素質がないな」

 

「マスターの判断自体は正しいと推測します」

 

 中身は正しい。ただ、決定が遅い。

 つまりは、そういうことである。

 

「巧遅は拙速に如かず、と言うからな」

 

「謝枋得ですか」

 

「そうだ。俺は巧遅を好むし得意とするが、時間がないときはやはり、拙速の方がいいのは間違いない」

 

 と話している間にも、レースは進む。

 内を駆けるマチカネタンホイザを躱し、並び、追い越す。コーナーの前で、ライスシャワーが先頭に立った。

 

「どうやら勝ったな……」

 

(別にそうと決まったわけでは……)

 

 ない。

 そう言いかけたミホノブルボンの言葉が、遮られた。

 

「いや、まだだ」

 

「はい。まだです」

 

 参謀でもなく戦略家でもなく、単純な観客として見ている東条隼瀬は、ちょっと判断が早くて見る目のある素人くらいなものだった。

 彼の優れた点は事前準備の周到さと、周到な事前準備の全容を勘付かせないこと。そして事前準備をした上での未来予知じみた予測であり、漠然とレースを見ている中での予測ではない。

 

 要は彼の長所はまず、正攻法で勝てる状況を用意できること。そしてそこに敵を引きずり込んで正面から激突させることができるということ。そして正攻法に強い戦力を用意できるというところにあり、なんの準備もできないぶっつけ本番に極めて弱かった。

 

(マチカネタンホイザには、まだ脚が残っている)

 

 だが、ライスシャワーには爆発力がある。多少の計算など粉砕してしまうだけの破壊力がある。

 

 だがその闘志が、未だ見られない。そろそろ鎌首をもたげていても良さそうなところなのに、まだ潜んだまま、凪いだまま。

 

「少し考えてみるに」

 

 あまりにも長い3秒の後に、参謀は口を開いた。

 

「マチカネタンホイザは直線の終わりギリギリで差し切るつもりだろう。ライスシャワーの長所は焔のような闘志であり、単純故に対策法は少ない。つまり最も有効な方法は、前に立たないこと。起爆させないことだ」

 

 闘志への導火線に火が付き起爆した瞬間、100メートルでもあればマチカネタンホイザは逆に差し返されてしまう。

 だから速度を緩めて、わざと抜かさせた。だが本来のライスシャワーならば、一度抜いた瞬間に起爆する。

 

 ――――勝ち切る

 

 その闘志が、今のライスシャワーにはないのかもしれない。今のライスシャワーにあるのは、差し切るという闘志だけか、あるいはそれすら無くしたのか。

 

「ライスシャワーが脚を緩めれば、確かに再び追う姿勢には入れる。だがその場合再加速にまで時間がかかるし、この距離だ。そのまま差し切られてしまうから減速はできない。減速ができなければ、そのままマチカネタンホイザが加速して差し切る」

 

「投了ですか」

 

「さあ。ライスシャワーというウマ娘はとにかく調子のバイオリズムが激しいというか、読み辛いやつだからな」

 

 読み違えたということもあるが、嵌められたということもある。普段のライスシャワーならばできることが、できない。絶好調でも好調でも、普通であっても不調でも、絶不調であっても、ライスシャワーには常に底知れぬ闘志があった。

 

 それが根こそぎ消え去るというのは、歩兵という歩兵が武器を無くし、弓兵という弓兵が矢を無くしたことに等しい。要は、どうにもならないということである。

 

 瞬間、ライスシャワーが大きく息を吸い込んだ。

 

「なるほど」

 

 単なる減速ではなく、息を入れてスタミナを増強させつつの減速。一瞬だが確かに減速し、ライスシャワーとマチカネタンホイザが並ぶ。

 ライスシャワーの得意とする追う形ではないが、並ぶ形である方が逃げている今の姿勢より遥かにマシである。

 

「流石だ。粘り強い」

 

 参謀の感嘆と時を同じくして、マチカネタンホイザは一瞬戸惑った。彼女は、ライスシャワーの脚を見ていた。回転を、歩幅を見ていた。だからこそ、呼吸に気づかなかった。

 

 残り128メートル。ギリギリの場所。

 

 マチカネタンホイザは、ここで仕掛けた。ライスシャワーに背中を見せた。

 競って、わずかに外に寄る。ライスシャワーが最短距離で追ってこられないように工夫をこらしながら完全に躱し、抜く。

 

 最後の最後。突き放されつつある自分を省みて、ライスシャワーに火がついた。

 だが、遅かった。最短距離で走れればまた違っていただろうが、彼女は少しだけ躱さなければ差し切れない立ち位置に変化させられていたのである。

 

 それはマチカネタンホイザの賭けが成就したことを示していた。彼女は斜行をとられない程度わずかに、外へコースをブレさせた。

 

 そのひと工夫が、功を奏す。

 

 ライスシャワーは、差し切れなかった。ほんのクビ差。だが着差以上の差をつけて、マチカネタンホイザは目黒記念を制した。




52人の兄貴たち、感想ありがとナス!

うぇるうぇる兄貴、クティ333兄貴、くろばる兄貴、Reipia3230兄貴、すずひら兄貴、おでんくん兄貴、セレス2648兄貴、ヘクトール兄貴、白大福兄貴、トリ兄貴、Eddie_Sumile兄貴、ハレルヤ3852兄貴、さごく兄貴、liquid600兄貴、Yang-Mike兄貴、CHeF兄貴、パンディオン兄貴、評価ありがとナス!


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オペレーション:発覚

 米上……重賞に勝つのはそれ程たいそうなものでない。なRTA、はーじまーるよ。

 

 (実際は大したこと)ありますねぇ!

 でも哀しいかな、これはゲーム。勝ったことを褒めるのではなく、負けたことを責められます。

 

 ということで、目黒記念は原作通りマチカネタンホイザが勝ち、ライスシャワーの重賞初勝利はお流れになりました。まあしゃーない。数打てばいつか勝てるよ(パチンカス理論)

 

 因みに原作でのライスシャワーの初重賞制覇は菊花賞。そこでブルボンが勝ったということは、つまりそういうことでござる。

 

 ということで、練習を進めていきます。ライスシャワーは……いない。まあ居ないなら居ないで結構。居たら居たでそれまたオーケー。

 

 (つまり特に意識する必要は)ないです。

 ざっくり説明すると、ライスシャワーとの練習イベントの最後で、春天に出走するかの選択肢が出てきます。これを受けて勝つと長距離適性が上がり、【決意の直滑降】のコツをいただけます。

 

 おいおい、その金スキルは先行専用だゾ。

 アプリ版の兄貴たちはそう思うかもしれませんが、このゲームでは自由度を増すためにスキルの制約が緩くなってます。

 これは【束縛】や【リスタート】の解説のときにも言いましたが、逃げじゃなきゃだめ、先行じゃなきゃだめ、差しじゃなきゃだめ、追い込みじゃなきゃだめ、というスキルは、アプリ版と比べてそこまで多くありません。

 

 例えばアプリ版では追い込み限定だった【冷静】【後方待機】は差しと追い込み限定になりました。

 そして直滑降は誰でも使えるようになったと。そういうわけです。まあ効果からして【下り坂が少し得意になる】だけ。逃げでも先行でも差しでも追い込みでも一向に構わなそうなスキルですからね。

 

 ということで、練習します。まあ来ないならいらない。ということで相変わらず坂路坂路坂路休み坂路坂路坂路休み。

 そして来ました大阪杯。正直出走しなくてもいいのですが、凱旋門賞出走イベの発生確率はこれまで稼いだ賞金額に依存するので、稼げるレースには出ていきます。

 

 つまり、GⅠですね。

 正直ここまでステータスが育ったら事故とライバル補正がかかったキャラ以外では負けません。

 ウマ娘というゲームのシステム上、もっと言えば競馬という競技上事故は起こるのでたまに負けます。負けますが、それでもリターンを鑑みてGⅠに出ます。

 

 ジャパンカップで海外との繋がりができたおかげで、現在強制出走レースは6月2週の宝塚記念のみ。これは海外ルートに入ったことを意味しますが、これは謂わば行ける場所が広がったというだけのこと。

 問題は宝塚後、【凱旋門賞への招待状】イベが起こるかどうかです。

 

 そう! 結構ここまでうまく行ってると思われるこのRTA、結局のところ凱旋門に挑戦できるかは運です。凱旋門で勝てるかどうかも運です。なんだこの地獄みたいなRTA……(戦慄)

 

 ということで大阪杯に出走し、危なげなく勝利。大差勝ちです。2位はマックちゃん。

 中距離に出てきてるということはマックちゃんはV3マックイーンじゃないな! まあ春天3連覇で覚醒だから当たり前だけども……

 

 はい。ここで私、ちらっとコメ欄を見ました。

 なんかコメビュの流れ速いなーと思ったので、何かあったのかと思ってみたわけですね。

 どうせチラッとマックイーンが出てきたのでネタコメの嵐か阪神の試合速報でも流れていると思ったのですが、違いました。

 

『マックちゃん好き過ぎ定期』

『ボクガマケルナンテー』

『テイオーは?』

『テイオーいた?』

『ジュークボックスマックちゃん好き』

『テイオーいなかったぞ』

『白マックちゃん弱くてかわいい。たべちゃいたい』

『パクパクですわ!』

『今年の阪神はサトテルですわ! 今年こそ本塁打王ですわ!』

『ブルボンかわいい』

『【悲報】ドラグーンオブレッドアイズ準制限』

『テイオーどこ?』

『テイオー見ろ』

 

 テイオー? いない?

 

『いないよ』

『テイオー√入ってなくね』

『テイオー√では大阪杯出走してくるぞ』

『なんか変な√入ってる』

『ブルボンテイオー√だと前イベ起こるはずだぞ』

『再走しろ』

『カイチョー√じゃね。秋天出たみたいなメッセあった』

 

 ……いや、しかし……いや、まだわからないし。うん。どうせこんな時代にニコニコ生放送でRTAやるようなやつを見に来てるような奴らだし……と現実逃避もいいですが、実際前イベが起こらなかったことは事実。思えばジャパンカップイベもなんか変でした。

 

 そっかぁ……カイチョー√かぁ……

 

 あああああああもうやだああああああ!!! な、なんで俺ばっかりこんな目に……理不尽! 理不尽すぎる!

 と、嘆いていても仕方ありません。カイチョー√と決まったからにはカイチョーに勝ちましょう。これまで散々ガバしてきて言うのもアレですし、生放送してる都合上ミホノブルボン√を試走せずにはじめたので更にアレですが、ガバは起きます。

 

 きかんしゃトーマスも言ってました。

 『ガバはおこるさ』と。

 

 問題はいかにそのガバから目を逸らさないか。どう対処するか。どうリカバリーするか。そこがガバを単なるガバで終わらせるか、雄飛のために屈んだことにするかの分かれ目です。

 

 で、なんだっけ。そう、大阪杯に勝ったところです。逆にここで知れたことをラッキーと思いましょう。

 えー、会長ね。会長は強いです。まあこのことに関しては皆さんわかりきってると思うのでいちいち説明しません。600族と同じく、7冠馬が弱いわけがないのだ。

 

 で、何が一番ヤバいか。

 固有スキル。勿論やばいです。ですが固有スキルがヤバイのは他にもいっぱいいます。

 問題はこれ、デバフスキル。通常ならば逃げならまだなんとかなりがちなこのスキル群。

 逃げに作用するデバフは少ないし、そもそも差しのカイチョーは中盤まで後ろにいるので、バ群にいない逃げウマ娘には効果が少ない。

 

 このゲームではデバフを撒ける範囲――――視野ゾーンと仮称しますが、これが賢さ依存です。

 なので、ステータス(特に賢さ)が充分に育った逃げウマ娘であれば視野ゾーンから抜けるように動けます。つまり、いくら賢くてもカンストしない限りは逃げウマ娘に対してはデバフなど恐るるに足らない。そういうことです。

 

 はい。野良ならともかく、ライバル補正カイチョーの賢さは1500(カンスト)です。

 他のステータスは場合によります。海外遠征前なら1200くらい。後ならスピスタパワーが1000くらいで根性Aくらい。

 

 つまり、何が起こるか。

 出走と同時に発動条件を満たしたデバフスキルが前にも後ろにも外にも内にも乱射し、疲弊したモブを3人抜いて固有発動して勝つ最高に頭のいい皇帝が見られます。よかったね。

 

 ですがアプリ版プレイヤーはこう思うはずです。でも前が垂れてきてそのまま一緒にズルズル下がっていく事故も起こるんじゃないの?と。

 これに関しては結構前のパートで説明したんですが、シンボリルドルフさんには専用AIが積まれています。これはアルティメットテイオーにも積まれているもので、要は事故が起こらなくなるAIです。

 

 でも、事故はおこるさ。そういう方もおられるかもしれませんが、起こりません。ブロックすり抜けルーチンが組まれているので、するっと抜けてきます。

 

 はい、では対策を話します。

 偉い人は言いました。『化け物には化け物をぶつけんだよ!』と。なので主にオンライン対戦ではシンボリルドルフにはシンボリルドルフをぶつけます。

 

 賢さ1500だと大抵のデバフを弾けますが、それでも完璧に弾けるわけではないのでこれが案外有効なわけです。

 ルドルフを使わないのはナメプというのは、嘘のようでホントの話。

 

 ですがこれはできません。当然ながら、シンボリルドルフは二人いないので。 

 

 そして自操作キャラの中にナイスネイチャもエアグルーヴもグラスワンダーもいない。

 では、どうするか。

 

 まず現在のブルボンの賢さはBですが、これをAにまで持っていきます。これでデバフを弾いてくれることを祈りつつ、運ゲーで勝ちます。綺麗な言葉を使うと、ブルボンを信じます。

 

 ということで、一時停止解除。

 大阪杯後のテイオーイベントはないです。悲しいが、これが現実。代わりに大阪杯でのミホノブルボンを見てもう一回ライスシャワーに火種がつくイベントが起きました。

 

 これからは坂路坂路で体力を減らし、賢さ練習で体力を回復しつつ練習フェイズを消化していきます。

 ……もうこの際、ライスシャワーイベント狙っていきましょうか。多少ロスりますが、坂路か賢さにライスシャワーがいたら突っ込んで【決意の直滑降】を取りに行きます。

 問題は春天勝てるの?ということですが、勝ちます。

 

 正直、ライスシャワーにもシンボリルドルフにも負けていいっちゃいいです。勝てなくても運次第で凱旋門にはいけます。

 

 ですが凱旋門の出走・勝利を確固たるものとするためには、最低でもどちらかは勝っておきたい。

 

 ということで、ライスシャワーストーキング開始!

 間にブルボン誕生日イベを挟んで、坂路で一緒に練習して吹っ切れライスがブルボンをストーキングして春天に出てください! って乙女特有の大胆な告白をするイベを起こし、春天が強制出走化したところで、今回はここまで。ご視聴ありがとうございました。



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アナザーストーリー:皇帝の夢

 ミホノブルボンが、大阪杯に出る。

 それを聴いたトウカイテイオーは、臍を噬んだ。

 

 軽い筋損傷。本気を出し切った有馬記念のあとに得た負傷。

 無論、後悔はない。後悔はないが、それでも大阪杯に出たかった。

 

 芝2000メートル。お互い得意とする距離。そこで雌雄を決したかった。

 だが、トウカイテイオーは知っていた。自分の身体が無理のきかないものであると。

 

 デビューするまでは――――日本ダービーで骨折するまでは、そんなことを思いもしなかった。自分は無敵で、どこまでいつまでも走っていけると、毛ほどの疑いも抱いていなかった。

 

 今は、違う。自分が決して頑丈ではないことを知っている。

 若さ故の全能感、万能感。それらを失い、大地をしっかりと踏みしめる現実感覚を得た。それは進化なのか、あるいは退化なのか。

 

 トウカイテイオーには、わからない。

 

「それは変化だよ、テイオー」

 

 もやもやを解消するべく、相談を持ちかけた相手。

 シンボリルドルフは、断言した。

 

「君は強くなり、弱くなった。レースを観測する冷静さを得て、思い切りの良さが失われた。進化と退化は、表裏一体。そしてこれを人は、適応と呼ぶ」

 

 鳥が飛ぶことを必要としなくなればエネルギー効率のために翼を収縮するように。

 人間の小指が徐々に縮んでいくように。

 

「君は今の自分のために最適化した。長所は失せ、それと同時に短所も消えた。だがそれは恥じるでも誇るでもなく、当たり前に受け止めるべきものだ」

 

「短所を消すのはいいけどさ。長所は消えて欲しくなかったよ」

 

「長所と短所は裏返しだよ、テイオー。長所を裏返せば短所に見える。短所を裏返せば長所に見える」

 

 そう言うシンボリルドルフの機嫌は、妙にいい。豪華ではないが重厚な、歴史を感じさせる机に両肘をついた『皇帝』には、その異名にふさわしい雰囲気がある。

 

「でもカイチョーは、ずっと強いままじゃん」

 

「私も最初からこの通り強かったわけではないよ」

 

 無論、最初から強くはあった。

 だがそれは今とは似ても似つかない、異質なもの。

 

「カイチョーも短所を克服した、ってこと?」

 

「そうだ。そして、長所を失った。だがそれは私にとって、失ってもいい長所だった。だから、そう見えるのかもしれないな」

 

 そう、という意味は『完璧なように』ということであろうと、トウカイテイオーは解釈した。

 それは他ならぬトウカイテイオーが、シンボリルドルフほど完璧なウマ娘もいないと考えている証拠でもある。

 

「捨ててもいい長所を選んで捨てられるのが、すごいよね。ボクには選択権なんてなかったのにさ」

 

「そうだな。確かに私は選んだ。自分の捨てるべき長所を、短所を。それで私は強くなったと思うし、理想に近づいたと思う。だがそれによって失ったものが、ないとも限らないさ」

 

「それが、凱旋門賞?」

 

「それも、そのひとつだ」

 

 いいかい、と。

 ひとつ前置きして、シンボリルドルフは愛すべき愛弟子に話しかけた。

 

「私は幸いなことに、選べる立場に常にいた。それは天性の才能でもあるし、努力でもある。だが選べる立場にいるというのは、何かを選ばなければならない立場にいるということでもあるんだ」

 

「選べるからこその苦しさもある、ってこと?」

 

「そうだな。これは傲慢な言い方になるかも知れないが、私なりの経験則だ」

 

 選べない人間には選べないが故の、選べる人間には選べるが故の。

 そういう悩みが、必ずある。それもカイチョーの言った、長所と短所は表裏一体ということに繋がっている。

 

 物事には必ず、裏がある。どんなものでも、表一辺倒では存在し得ない。

 そんな当たり前のことを、トウカイテイオーは改めて気付かされた。

 

「……大阪杯は、どうなるかな」

 

 メジロマックイーン。トウカイテイオーのライバル。

 ミホノブルボン。トウカイテイオーのライバル。

 

 ライバル同士の、戦い。そこに居ない自分に耐え切れず、トウカイテイオーはここに来た。

 それを見透かしたかのように、シンボリルドルフは目を瞑った。

 

「試走になるだろうな」

 

「天皇賞の?」

 

 シンボリルドルフは眼を開けて、薄く怜悧に微笑んだ。同性でも見惚れる程の、氷のような凄絶な美貌。

 

「春の天皇賞であれば王道は、阪神大賞典だ」

 

 そう言えば、と。トウカイテイオーは思い直した。

 自分は大阪杯から春の天皇賞へとコマを進めた。だがそれは、故障明けだったから。故障明けだから、最も得意とする距離を試走として選んだ。

 

 万全で、本気で春の天皇賞に挑むというのならば、本来ならば去年のマックイーンのような阪神大賞典を経由したローテで臨むべきなのだ。

 

「じゃあなんで、ブルボンは……」

 

「その理由は君にあり、そして私にもある」

 

 その言葉が鼓膜を揺らし、脳に至る。

 そして瞬時に、トウカイテイオーのもやもやは晴れた。

 

「宝塚! ボクの次のレース!」

 

「そうだ」

 

「じゃあ、カイチョーも――――」

 

 宝塚記念は、ファン投票で選出されたウマ娘が出走を許されるグランプリである。

 しかしこの二人であれば、出走を表明さえすれば選ばれることは疑いようがない。

 

「私は今年の前半戦、脚の回復に努める。前回はやや急いでしまったから本調子ではなかったが……」

 

 それは今阪神レース場に居るはずの男のためでもあり、目の前にいるトウカイテイオーのためでもあった。

 その目論見はうまくいったりいかなかったりした訳だが、ともあれシンボリルドルフは走ってみてはじめて、自分の力がやや落ちていることに気が付いていた。

 

「宝塚では、テイオー。君に本気の皇帝を見せよう」

 

 本気じゃない? あれで?

 

 何処かの誰かではないが、うそでしょ……とも言いたくなる。

 だがトウカイテイオーが圧倒されたのはあくまで、技術面での話。秋の天皇賞におけるシンボリルドルフの勝ち方とはつまり位押しのようなものであり、力押しではない。

 

 あの時の彼女に、力押しできる程の実力はなかった。少なくとも、シンボリルドルフ自身はそう思っている。

 

「……カイチョーには、言ったよね。ボクはシンボリルドルフさんみたいな、強くてかっこいいウマ娘になります、って」

 

「ああ。覚えているよ」

 

「あれを言ったのは、昔のボク。だから、今のボクならこう言う」

 

 ――――ボクは皇帝を超える帝王になる

 

 もやもやを振り払った晴天の瞳。

 それを見て、シンボリルドルフは心の中で胸をなでおろした。

 

(今度はうまくいったぞ! 参謀くん!)

 

 旗鼓堂堂、勇往邁進、英気溌剌。傍から見ればそんな彼女は、結構気に病む質だった。

 だから未だに――――弁当の差し入れという形で迷惑を贖ってからも、結構気にしている。

 

 トウカイテイオーから発せられた相談という単語で、ぴょこんと心臓が跳ねたのだ。

 どうしよう。うまくやれるだろうか。そんなふうに思ってそわそわとした。だが、うまくやった。やり遂げられた。

 

「ブルボンにも勝つ! マックイーンにも勝つ! で、カイチョーにも勝つ!」

 

 耳が風を孕んだ帆のように張り、尻尾が活発に動く。

 明らかに絶好調となったトウカイテイオーを見て、微笑ましくなる。

 

 思想的後継者ではないが、自分の技術を余すことなく継承できるはずの天才が他ならぬ自分を超える為にやる気を出す。

 それは他に例えようもない、ひりつくような嬉しさをシンボリルドルフに与えていた。

 

 ひとりでガンガン盛り上がっていたトウカイテイオーと、それを優しい眼差しで見つめるシンボリルドルフ。親子のような柔らかい雰囲気は、トウカイテイオーのやや遠慮気味な一言が発せられるまでゆっくりと続く。

 

「……あのさ」

 

「うん?」

 

「カイチョーはさ。ブルボンを応援してる?」

 

「ああ。私は個人的に、ミホノブルボンを応援しているよ」

 

「それは……なんでかって、訊いていい?」

 

「もう訊いているじゃないか、テイオー」

 

 えへへー、と。

 人の懐に転がり込むことがうまい少女がずっと抱えていたであろう疑問に、シンボリルドルフは少し考えてから答えた。

 

「テイオー。我々は、何故走るのだと思う?」

 

「それは、ウマ娘の本能だから……」

 

「確かにそれはそうだ。だが、私は思う。ウマ娘たちが何もかもを擲って走るのは、その先に夢を見ているからだと」

 

 それは、トウカイテイオーにとっても納得できる理屈だった。

 彼女は本能的に走るのが好きだった。それは間違いがない。だが何故ここまで、遊びもせずにひたむきに、苦しいリハビリとトレーニングに打ち込めるかと言えば、それは目指すべきものがあるから。

 

 シンボリルドルフ。

 メジロマックイーン。

 ミホノブルボン。

 

 トウカイテイオーは目指すべきものを見据えて走り出し、走る最中にまた超えたいものを見出して、今もなお駆けている。

 

「夢が必要なんだ、テイオー。君にとっての私のような夢が、全てのウマ娘に必要なんだ」

 

 そして夢を追うには、希望が要る。それは或いは、世間という光かも知れない。世間が個人の夢を後押しし、道を照らす。

 本来であれば、それが理想だ。特定の個人に依らない体制。今のトウカイテイオーが、まさにそれだ。ジャパンカップで復活の片鱗を、有馬記念で復活を見せた彼女の復帰を、誰も彼もが待ちわびている。彼女の夢への道を、ファンの応援という声が照らしている。

 

 だがそれは、現実的ではない。

 

 ――――全てのウマ娘に幸福を

 

 その現実的ではない夢を描くために、現実的ではない絵の具は選べない。

 誰しもが、テイオーのような人気者になれるわけではない。彼女は特異的な――――後にも先にもないような、ファンを惹き付ける引力がある。

 

「幸福とは、私は夢への挑戦を祝福されることだと思う。夢への道を舗装してくれる誰かが、暗闇の中に一筋続く道を探り当てるために杖にはなってくれる誰かがいれば、どんな不可能な夢でも追っていける。実現できる」

 

 才能もある。財力もある。血統もある。

 それでも追えない夢があった。それでも無理だと言われる夢があった。

 

 

 ――――任せたぞ、ルドルフ

 

 ――――ああ、任された

 

 

 ――――参謀くん。準備はどうだい?

 

 ――――万事抜かりなく

 

 

 波長が合う。同じものを見れる。

 それだけでいい。そんなパートナーがいれば、どんな夢でも掌の中に掴み取れる。

 

「ミホノブルボンは、恵まれないウマ娘たちの希望になれる。目指すべき夢になれる。駆けていく先に輝く星になれる。そしてその星に焦がれるのは、ウマ娘だけではない」

 

 トレーナーもだ。

 自分の手で、歴史を覆す怪物を作り上げる。夢に向かって二人三脚で歩む。

 

 東条隼瀬とミホノブルボンは、その嚆矢になれる。

 

「さて、そろそろレースがはじまるようだ」

 

 ――――見ていくだろう、テイオー?

 

 腰に佩いた白い軍杖を触りつつ放たれたその言葉に、トウカイテイオーは頷いた。

 ミホノブルボンが、冬を超えてどうなったのか。冬の間リハビリに励んでいた自分との差が、どうなのか。

 

 画面の前のミホノブルボンは、その答えを持っているはずだった。




55人の兄貴たち、感想ありがとナス!

berylllium9012兄貴、nnoi兄貴、蒸気帝龍兄貴、さくらんぼの味噌煮兄貴、アキラァ!!兄貴、評価ありがとナス!


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サイドストーリー:実力相応

 ライスシャワーが負けるのは、実のところそう珍しいことでもない。

 こう言うと語弊があるが、無論彼女は極めて強いウマ娘である。だが強さというのは相対的なもので、ライスシャワーより強いウマ娘がいれば負ける。そして実力が同等であれば運のいいウマ娘が勝つ。

 

 彼女が初重賞制覇を果たしたのは偶然ではなかった。

 彼女が目指す春の天皇賞を目指す前哨戦として定めた、日経新春杯。その中で、ライスシャワーより強いウマ娘はいなかった。

 

「そう言えばあいつ、重賞勝ってなかったのか」

 

 たぶん全トゥインクルシリーズファンの総意であったソレを、参謀は口に出した。

 

 ――――それはお前らのせいだよ

 

 常識的な神経を持つ人間がいればそうツッコんだだろうが、この場に常識的な人間は居ない。

 

「やっと実力に相応しい結果が出てきた、というところでしょう」

 

「まぁ、本来はGⅠを勝っていても何らおかしくはない。本来は」

 

 そう、本来は。

 本来の実力が出せれば、重賞初勝利など祝うに値しない。

 だがライスシャワーは現在、本来の実力が出せていない。

 

(まあそれはこちらも同じこと、か)

 

 GⅠ、大阪杯。

 阪神レース場、芝2000メートル。芝は稍重。

 不調なウマ娘を国内最高峰のレース、GⅠに出走させるのもなかなかにすごい。そして、新年初の調整レースに使うというのも。

 

 尻尾をゆっくりと左右に揺らしているミホノブルボンは、明らかにぽけーっとしている。

 徐々に――――ほんの少しだが、闘走心の暴走が改善されてきた。

 

 それが2つのGⅠレースを走ってみたことで折り合いをつけられたからなのか、或いは心境に変化があったからなのか。

 それはわからないが、少なくとも新年度を迎えた彼女は、去年の秋からの彼女よりも明らかに調子がいい。

 

「ブルボン」

 

 まず耳がぴこりと声のした方を向いて、身体ごと向き直る。

 星と光を湛えた蒼色の瞳が、1つ瞬いて光った。

 

「作戦を説明する」

 

「はい、マスター」

 

「まず今回の舞台は阪神レース場。お前にとっては未体験のコースだ。距離は2000メートル。これは然程苦にはならない。なので細かい策は必要ない」

 

 策を弄さずとも、勝てる。

 正攻法で勝てるならば、それに越したことはないのである。

 

「お前は今、スタートからラップ走法を行うことはできない。だが、この有力な逃げウマ娘がいない状態ならば、序盤で突き離せる。そうだな?」

 

「はい」

 

 メジロパーマーも、ダイタクヘリオスもいない。となれば、序盤先頭に立つのはミホノブルボン以外にいない。

 それは、誰もが知るところだった。

 

「では突き放した瞬間、かからないと判断してから計算を行い、1900メートルまでに全てを出し切るようなラップを刻め」

 

「1900。100メートルで突き放せ、ということでしょうか?」

 

 100メートルで突き放し、残り1900メートルの間にすべてを出し切るようにスタミナを分割してラップを刻む。

 そういうことか、と思ったミホノブルボンの予想を、参謀はあっさりと否定した。

 

「違う。最後の100メートルを考えずに走れ、ということだ」

 

 意図するところは、わからない。

 だがマスターは勝てると思っているから指示を下している。この先のなにかに通じるから、そう指示している。

 

「オーダー、拝命しました」

 

 ミホノブルボンは、頷いた。

 参謀は、様々なことを考えていた。それを言うこともできた。だが、言わないことを選んだ。

 

「今回の主目的は、メジロマックイーンというウマ娘に君の姿を焼き付けることだ。2000メートルでは、彼女の持ち味は活ききらないからな。謂わばこちらのホームグラウンドだ」

 

 本来ミホノブルボンのホームグラウンドは1600メートルまでである。

 

「私の全力を出し切れるのは、2400メートルまで。メジロマックイーンさんの全力が出るのは、2500メートルから」

 

「そうだ。つまり我々は、勝てる環境で走れる。ではなぜ、スピカのトレーナーはメジロマックイーンを阪神大賞典ではなく、大阪杯に出したと思う?」

 

「復帰戦、だからでしょうか」

 

 骨折からの復帰。宝塚記念を前にした全治半年の骨折からの復帰レースだからこそ、脚に負担のかかる長いレースはさせたくない。

 なら、得意の阪神レース場で短いコースを。そういう思惑が、スピカのトレーナーにはある。少なくとも、ミホノブルボンはそう思っていた。

 

「そうだ。スピカのトレーナーは、去年も怪我で半年を棒に振ったウマ娘の初実戦として大阪杯を選んだ。だから今回は阪神大賞典ではなく、大阪杯に来ると思っていた」

 

「テイオーさんですか」

 

 その発想はなかった。

 ミホノブルボンは、素直にそう思った。

 

 1。骨折したあとは、いきなり長いレースは走らせたくない。

 2。どうせなら、得意のコースで走らせてあげたい。

 3。どうせなら、得意の距離で走らせてあげたい。

 4。春の天皇賞を3連覇させてあげたい。

 

 スピカのトレーナーの考えていることをミホノブルボンなりに推理してみて、この4つ。

 この4つすべてが合うレースはない。メジロマックイーンの得意とするのは長距離であり、1と3を同時に満たすことができないからだ。

 

 だが3つなら、ある。それが大阪杯と、阪神大賞典。

 世間ではたぶん、阪神大賞典に出るであろうと言われていた。阪神大賞典こそが春の天皇賞の前走として相応しいことを、他ならぬメジロマックイーン自身が証明していたから。

 

 彼女は過去2年、阪神大賞典を経由して春の天皇賞に臨んで連覇した。今回もそうなるだろうと、大抵の関係者・ファンは思っていた。

 

 だが、選んだのは大阪杯だった。それはたぶん、マスターの言った通りの理由だろう、と。

 ミホノブルボンは、納得した。

 

「これからのことも考えて、ですか」

 

「そうだ」

 

 怪我明け。

 それは何もかもが新鮮に見える、不安と期待の入り交じる瞬間。

 

 怪我前の自分に戻れたのか。或いは、怪我前よりも強くなったのか。やはり、実力が落ちてしまっているのか。

 それは、走ってみなければわからない。たとえ皇帝と渾名されるウマ娘であっても。

 

 不安と期待を乗り越えた先に得られる感情が添付されて、このレースは復帰戦として記憶に残るのだ。

 そして復帰戦を彩った走りは、否応なしに脳に刻まれる。

 

(俺が光り輝く暴君に枷を取り払われたときのように。俺が異次元へと飛翔する逃亡者の翼を折ったときのように)

 

 脳に残るのは、記憶だ。記録ではない。記録では、単なる事象ではいけないのだ。

 そこに、感情が絡まなければならない。鮮やかで烈しい、感情が。そうして初めて、目の前で起きた事象に色がつく。記憶になる。

 

「俺がこれから布石を打つ相手は、お前の天敵になりうる覇者たちだ。ライスシャワーはいい。お前を充分に意識している。だが、メジロマックイーンは違う。そして第三者としての視点に立ってレースを見ているやつらの冷静さは、この際剥がしておきたい」

 

「意識された方が、策に嵌めやすいということですか」

 

「そうだ。俺はこの大阪杯というレースに勝つためだけに来たわけではない。一歩、二歩、三歩。君が歩むべき道に立ちはだかる敵手を与しやすくする布石を打つためにこそ、このレースに来た」

 

 マスターは、少し申し訳なく思っている。

 ミホノブルボンは、そう察した。

 

 それが何かと言えばやはり、敗退行為に近い命令を下したことだろう。残り100メートルを、スタミナの尽きた状態で走る。それは負けかねない状況をみずから作り出す、ということだ。

 

 オーダーの表面を見れば敗退行為に近い。負けろ、と言っているように見える、そんな指示。でもその裏には、信頼がある。

 

 ――――お前なら、残り100メートルでへろへろになっても差し切れないほどのリードをとれるだろう

 

 その期待に、応えたい。いや、応えるのが、役目だ。

 

「マスターが様々なことを考えてレースに臨むのは、今にはじまったことではありません。今回も、その一形態です」

 

 鋼の瞳が、少し崩れた。少し驚いたような、そんな眼差し。

 

「成長したな。本当に」

 

「はい」

 

 ちょっと胸を張り、放熱板みたいな盾の如き物体がふわふわと浮く。

 新勝負服を着ての、はじめてのレース。ミホノブルボンからすれば、やはり思うところがあるのだろう。

 

 彼女には実家の犬みたいな忠実さというか、忠誠心というか、近づけば尻尾をブンブンして近づいてくるような愛らしさがある。

 だが最近は、それだけではない。こちらを気遣うというのか、がんばって元気づけようとしている感がある。

 

「私を信じてくださっていることを、嬉しく思います。ですからマスターは迷いなく、自分の判断を信じてください」

 

「……ああ。そうしよう」

 

 ぱたぱたと揺れる尻尾の音だけを残して、ミホノブルボンは控室をあとにした。

 

(自分の判断を、か)

 

 これまでの自分を、ではなく。

 これからの自分を、ではなく。

 今ミホノブルボンと共に歩む自分を。

 

 ――――信じていいのかもしれないな

 

 観客席に出て、席に座る。

 ゲートの中で相変わらずぼけーっと空を見ているミホノブルボンからは、緊張というものが感じられない。

 気負いもない。坂路でも併走でも折り合いは完璧につけられていなかったが、或いは。

 

(いけるかもしれないな)

 

 今回のレースで、ミホノブルボンはかつての冷静さを取り戻すかもしれない。かつて手にしていなかった、闘走心を得たままに。

 

 鳴り響くファンファーレを聴いてか、ミホノブルボンの耳がぴこりと動き、ぼけーっとしていた顔が勝負を前にしたアスリート特有の引き締まったものに変わる。

 

 スタート。相変わらずの素晴らしいスタートを決め、そして物の見事にバ群から突出したミホノブルボンは久々の散歩に喜ぶ犬のように一直線に駆けていく。

 

(やはりメジロパーマーがいないと楽だ)

 

 逃げウマ娘が少なければ少ないほど、序盤のポジション取りが楽になる。

 瞬時に加速を終えたミホノブルボンは1ハロンを何秒という見当を付けたのかはわからないが、とにかくとんでもない速度で走る。

 

 序盤では4バ身。

 中盤では10バ身以上。

 そして終盤では明らかな大差を付けて走るミホノブルボンは、誰が見ても明らかに強かった。

 

 ――――この娘に敵うウマ娘はいるのか!?

 

 実況の言うとおりの結果だった。

 

 最後の0.5ハロン、100メートルで失速していなければどれほどのタイムが出たのか。

 自分が打ち立てた皐月賞でのレコード、そして阪神レース場のレコードを更新して、ミホノブルボンは大阪杯を制した。

 

 ジュニア級王者になったウマ娘は、早熟する。

 クラシック級で激戦を繰り広げたウマ娘は、疲労がぬけ切らずシニア級では活躍しない。

 

 そんな噂を払拭するような走りを、ミホノブルボンは見せた。

 影すら踏ませない。その走りは、無敗の名に相応しい。

 

 

 最強。

 

 

 その名に相応しいのはミホノブルボンなのではないか、と。

 そんな風が吹いてきていた。




46人の兄貴たち、感想ありがとナス!

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サイドストーリー:皇帝と杖

「八冠目。おめでとう」

 

 威風堂々。

 皇帝の名に相応しい威容を漂わせて、シンボリルドルフは思想的後継者の打ち立てた偉業に対して賛辞をおくる。

 

 ここは生徒会室。皇帝の居城。

 そこに当たり前に、専用に誂えたインテリアのような自然さで、東条隼瀬は座っていた。

 

「お前にとっては中腹みたいなものだろう」

 

「八という数字はともかく、七を超えるのには運命的な何かを感じる。それに、私を抜きにしても偉大なことだ」

 

「抜きにすれば、ぶっちぎりで偉大だっただろうな」

 

 ルドルフの左耳が思案するようにペタリと伏せ、右耳がピコピコと興味深げに動く。

 

(おや)

 

 しかし水晶を模したイヤリングが涼やかな音を鳴らした瞬間には、彼女の耳はいつも通りのものになっていた。

 それは紛れもなく、彼女の優れた理性の証明であると言えるだろう。話していて唯一感情を乱す相手に対しても、こうもうまく取繕える、というのは。

 

(少し明るくなった、かな)

 

 元々、東条隼瀬という人間は軽口を叩かない。思っているより多弁だが、無駄口を叩かない人間なのだ。

 そんな彼も、対等な同志である自分と話すときは軽口を叩くし冗談も言う。

 

 そのことはよく、とてもよくわかっていた。

 だが、ギアの上がり方が早い。テンションが上がっている、とも言う。

 

「シニアへの一歩で躓く。そんなウマ娘は多い。いくらジャパンカップと有馬記念で勝ったとは言え……」

 

「心配していたわけだ、お前は」

 

 言い淀みを見て取ったのか、参謀という渾名らしからぬ怜悧さの無い瞳が少し笑った。

 

「……勝つか負けるかの、ではないよ。心配はしていたが、勝つことは疑っていなかった」

 

 変化した。明らかに。

 その変化が自分を相手にしているからなのか。つまり、素が出ているからなのか。そう考えられれば、シンボリルドルフはもう少し楽に生きていけたことだろう。

 

 シンボリルドルフには、ある種の鈍感さがある。

 彼女は自分の勝利を疑ったことはなかった。誰もが目指し、そして諦めていく三冠ウマ娘という存在を踏み台に飛翔しようなどと考える程度には、自己の力に対する正当な評価を下している。

 

 デビュー前から、思っていた。勝てるだろう、と。

 負けるかも知れないと思ったことなど、一度しかない。そしてその時は負けたわけだから、それもまた正当な評価だったと言える。

 

 だがその正当さから、彼女は一歩も外に出られなかった。

 

(私と話しているから、ではないな)

 

 これまた、実に正当な評価を彼女は下した。

 ここで自己過信に陥れるような愉快な性格をしていたら、彼女は14個目の栄冠を手にしていたに違いないのだ。

 

(となると、ブルボンか)

 

 東条隼瀬とミホノブルボンの帰校は、昨日。予定としては、1日遅れた。それは計画というものに拘り抜いてきた――――すべてを自分の管制下に置こうとしてきたここ3年の彼らしからぬ行動ではあった。

 

 だがそんな予定の変更などは、よくあることである。

 だからそれほど、シンボリルドルフは気に留めていなかった。

 

「疑ったことはなかった。まあ、いつも正確な判断を下すお前のことだからそうだろうな」

 

 ――――これ、お土産。

 

 そうして渡されたのは、お好み焼き。

 わー! やったー!とは思ったが、顔に出すほど子供ではない。

 

「ありがとう」

 

 ほんの少しだけ尻尾を揺らして、シンボリルドルフは謹厳さを崩さずに礼を述べた。

 

「……だが、珍しいな」

 

「昨日は勝利祝いに二人で食いだおれていたのだ。だからついでにお前も巻き込んでやろうと思ってな」

 

 巻き込み事故。

 

 そんな言葉が脳に浮かんで、シャボン玉のようにパチンと消える。

 

「昨日のうちに色々な人に渡してきて、お前が最後だ。ああ、テイオーにも渡したよ」

 

 ――――お前がいなかったおかげで楽に勝てたよ

 

 そう言ったらしい。リハビリをほぼ終わらせて、少しボーッとしていた彼女に向けて。

 

「気張ったことだろうな、それは」

 

「ああ。それはそれは」

 

 ――――ボクもう予定消化して動けないからビデオで復習するから! 次はボッコボコのメッタメタに勝つから! 覚悟しててよね!

 

 そう言ってシアタールームに突撃していったらしいことを聴いて、シンボリルドルフは得心がいった。

 シアタールームでバクスイテイオーになっていたのはそれが理由だったのか、と。

 

 伸び切った脚と背中にひょいっと手を回してから起こすかどうか少し悩んで、おぶって寮まで運んであげる最中も、トウカイテイオーは死んだように眠っていた。

 

「すごいやつだよ、あいつ」

 

「ああ。知っている」

 

 彼の言うあいつが誰を指すのか。

 彼の言うあいつのすごさはなんなのか。

 

 シンボリルドルフは、よく知っていた。

 

「まあともあれ……ただいま、ルドルフ」

 

 パチリと、血族であり容姿のよく似たテイオーのそれとは違う――――どちらかと言えばライスシャワーのような紫水晶の瞳を、シンボリルドルフは瞬かせた。

 

 ――――ただいま。

 

 それが何を指すのか。

 それは、わかった。彼が誰をすごいと言ったかわかったときのように。

 

 単に、大阪から帰っていた。そういうわけではない。

 彼は昨日の昼頃、帰ってきた。そして自分をスルーしてあいさつ回りをして、おそらく最後にここに来た。

 

 その意味を、シンボリルドルフは明哲な頭脳で理解していた。

 

「――――おかえり」

 

 参謀くん、とは言わなかった。

 昔の彼ではない。そして今までの彼ではない。大阪杯で何かがあって。そして新たな自分になって、彼は帰ってきたのだ。

 

「心配かけたな」

 

「たしかに。だが、君が他者に向けていた程ではないさ」

 

「それは……そうかもしれんな」

 

 自然に笑う。そんな彼を見て、彼女も自然に笑みがこぼれた。

 

 吹っ切れたわけではない。吹っ切れることは、おそらくない。サイレンススズカが再び彼と共に走らない限り、彼は未来永劫、異次元の逃亡者のことを引き摺り続ける。

 

 だが彼は引き摺るのではなく、背負うことを決めたのだ。誰もが挑んだことを、どうやってブルボンが達成したのかはわからない。

 わからないが、たぶんあの底知れぬ善良さと単純さで、するりと懐に入って難なく心に染入ったのだろう。

 

(それは、私にはできないことだ)

 

 無邪気に、無謀に突っ込む。

 かつてはできたことが、今はできない。

 

 ライオン丸とか――――一方的に、だが――――彼に言われていた頃の自分にはできた。そして、できる。

 だが、今はできない。それはウマ娘という種族全体の為に立ち上がると決めたときに、捨てたものだから。もう二度と、拾いあげられないものだから。

 

 無邪気さと無謀が彼の心を救ったことを知っている。何度も何度も読み返した手紙に書いてあった。

 自分ではない、ライオン丸の中の人。シンボリクリスエスに向けられた、誠心誠意を傾けて書かれたであろう文の中に、どうして救われたのかは書かれていた。

 

 そして、わかった。突発的な暴発が、自分が捨てたはずの本能が、人を救うことがあるのだと。

 

「嬉しいよ、とても。君の幸福は、私の幸福でもある」

 

「自分が立ち直ったことを他人から祝福されるのは幸せなことだ。それが親しいと感じていた人間ならば、なおさらな」

 

 おかえり。

 そして、ただいま。ただそれだけを、彼は言いに来たわけではない。

 

 無論その為ではあるだろうが、それだけではない。

 

「お前、出るんだろう。宝塚に」

 

「選ばれればの話だが……そうだ」

 

「ブルボンもそうだ。あいつと決めた前半戦のローテの終着駅が、宝塚記念になる」

 

 戦う。参謀くんと。

 共にではなく、相対する。

 

「そして君とブルボンの無敗伝説の終着駅も、そこになるわけか」

 

 思わず上がる口角。

 自分の上を行くかもしれない。そう認めた相手と干戈を交える。

 

 押し込めていたはずの本能が、彼女に闘走の悦楽を、歓喜の予感を感じさせていた。

 

「そうだ」

 

 ぴくりと、耳が立つ。

 負けを認めるような言説を向けられれば、たとえそれが軽口であろうが否定する。

 東条隼瀬は、今までの彼ならば決して行わなかった肯定を、シンボリルドルフに向けた。

 

「俺とブルボンの伝説が終わるならば、それはお前の手によってだろう。それがもっとも、相応しい」

 

 シンボリルドルフという、貴門の中の貴門。日本トゥインクルシリーズの血筋の結晶。

 ミホノブルボンというウマ娘の下剋上がおわるとすれば、その幕引きを行うにこれ以上の役者はいない。

 

 だがそれを蕭々と認めて負けを受け入れ、座して動かない人間であれば、シンボリルドルフはここまで惚れ込んでいない。

 無理を撥ね除け続けた精神性こそ、彼女のもっとも評価するところなのである。

 

「だが、逆も然りだと。君は、そう思っているだろう」

 

「ああ、そうだ」

 

 お前なら、俺のことはわかっているだろうと思っていた。

 そう言わんばかりの眼差し。

 

「そして壮麗なる皇帝の伝説を終わらせるに相応しいのは、なんでもない寒門の出のウマ娘であるべきだ」

 

 シンボリルドルフは、凱旋門で負けた。それは外的要因による負けであったが、負けは負け。

 それを一番認めているのは、負けた当人であるシンボリルドルフ自身だった。

 

 だが、伝説は続いている。明らかに調子がおかしかった彼女を指して負けたと言うのは、他ならぬ彼女自身のみである。

 

「勝てると言うのか。この私に」

 

「ああ」

 

 断言した。それは彼らしい、実に彼らしい端的な言葉。

 

「俺はお前のことを誰よりも知っている。誰よりも理解している。強さも、その偉大さも。だからこそ、言える。一度だけならば、確実に勝てる」

 

 その言葉に、闘走心が掻き立てられるのを感じた。抑えつけていた本能が、目を覚ます。そんな感覚。

 しかしそれらを抑えつけて、シンボリルドルフは僅かに笑った。

 

「私も、そうだ。君のことを知っている。理解している。その上で、言おう。私は君に負けることはない、と」

 

 鋼鉄の瞳が不敵な光を宿し、瞼に閉ざされる。

 

「ならば、見破り、打ち破ってみるといい」

 

 宝塚で。

 阪神レース場。芝、2200メートル。距離的にはミホノブルボン有利。経験から言えば、連覇した経験があるシンボリルドルフが有利。

 

 実力的には、シンボリルドルフ。

 しかし勢いがあるのは、ミホノブルボン。

 

 ミホノブルボンの『次』は、宝塚だ。

 誰もがそう思っていた。だからこその、大阪杯であろうと。

 

 だが、その予想は裏切られた。ひとりのウマ娘によって、である。




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サイドストーリー:宿命のふたり

 ――――強い

 

 心からそう思った。

 鮮やかな逃げ切り。閃光のような速度。影すら踏ませぬラップ走法。

 

 眠っていた闘走心が、目覚める音がする。

 湿っていた薪がミホノブルボンの鮮烈さによって乾き、燻っていた蒼い焔が空気を孕んで燃え広がった。

 熱を帯びた心に触れた蛇のような執念が冬眠から目覚め、鎌首を擡げる。

 

 ――――勝ちたい

 

 それは、勝てないと思えばこそ。

 ライスシャワーは、勝てない相手に挑むことをこそ好む。

 

「お兄さま」

 

 その一言だけで、将軍はすべてを察した。

 大阪杯。ライスシャワーが走るには短すぎる2000メートルのレースを見に来たのは、こうなって欲しいからだった。

 

「ああ。用意はしてあるよ、ライス」

 

 君が春のあけぼのに眠り続けていたときに。

 ライスシャワーがライスシャワーであり続けるためには、ミホノブルボンが必要になる。

 彼女に勝つにはやはり、長距離。それも長ければ長いほどいい。

 

「凡人であっても、半年あれば用意できる。たった1つのレースに向けての最適解を」

 

 これまで。菊花賞のときに指摘された危うさを改善するための練習を積んできた。それは体幹であり、脚への負担を効率よく分散するための適切なフォームへの改造。

 地味な、しかし必要な練習の連続。そしてこれからは、派手で熾烈な、たった1つを目指しての練習。

 

 

 ――――こうして鬼神は、目覚めた。

 

 

 だが目覚めたとしても、彼女の実力が天皇賞の盾を得るに相応しいものであろうとも、勝てる場所におびき寄せられなければ意味がない。

 

 如何に、ミホノブルボンを引きずり出すか。

 

(いや、それ自体は大した問題ではない。要は――――)

 

 勝てるか、だ。

 

「いやだ」

 

 そう、こいつ。

 秋に限ってだが、天皇賞という名前を聴くとアレルギー反応が出るこの男。こいつに、勝てるのか。

 

「トレーナーを射止めんと欲するならばウマ娘を射よという。今のお前はその逆だな」

 

 ウマ娘とは、独占欲がものすごく強い種族である。一途であるとも言うが、ものすごく極端で激烈な縄張り意識を持つ。

 古来より身体能力に優れたウマ娘は、様々必要とされてきた。その様々さに応えてきたのがトレーナーというものである。

 

 彼らは他者の心理を掴み、その指向性をつけることに長けている。そんな相手を説得するには、周りから攻めるべき。

 要は外堀から埋めた方がいいよ、というのがこのことわざの意味するところなのだ。

 

「俺は殊更歴史を軽んじるわけではないが、重んじもしない。天皇賞春は歴史のあるレースではあるが、主流からはズレている。いや、ズレつつある」

 

「そうなのか?」

 

「ああ。いずれ世界では2400メートルまでが主流になる。そしてこれは短くなることはあっても、長くなることはないだろう」

 

 こいつが言うならそうなんだろうな、と。

 然程積極的に世界へ目を向けているわけでもない将軍は思った。

 

 将軍は、基本的に古典を愛する男である。

 

 意外なことだが、良くも悪くも情報通である貴門出身のトレーナーは柔軟性の富んだ頭脳があれば一般人よりも伝統の枷から逃れやすい。

 

 参謀には、柔軟性に富んだ頭脳があった。

 そして加えて言えば、彼の出身は日本ではじめて海外遠征を企図したシンボリ家という切っての国際派と共生することを選んだ東条家である。

 貴門は伝統を墨守する習性がある。それは東条の家も変わりなく、『世界を目指す』という伝統を遵守することを求められていた。

 そしてそのための教育も受けている。

 

 だからこの場合、より日本トゥインクルシリーズの伝統に忠実で敬虔な信仰を持つのは寒門の出である将軍の方だった。

 

 春の盾こそ、最高の栄誉。そんな意識は、寒門出身のトレーナーやウマ娘の共通認識でもある。

 

「今が春の天皇賞にとっての全盛期だ。だからこそこれからがない。これからが無いものに、拘泥しようとは思わない」

 

「適応する必要がない、ということか」

 

「そうだ」

 

 菊花賞すら長い。

 そう考えている節のある男は、自分の好き嫌いを理論武装しているように見えて、そうではない。少なくとも彼が嫌っているのは秋の天皇賞であって、春のそれではないのだから。

 

 

 ――――世界に通用するウマ娘を

 

 

 それが、東条家の人間の信念。

 だが階段の一段目として日本を席巻することを目指したシンボリルドルフには春秋の天皇賞を制覇させたし、走ること以外に興味の食指が動かないウマ娘には世界に通用する力をつけさせた。

 

 要は、彼の指針は明確に確立されている。だがそれを貫くかどうかは、ウマ娘による。そういうことである。

 

「だがこれは俺の理屈だ。俺の理屈に、無理に従わせようと思わん」

 

 ――――ブルボンに言え。

 

 そういうことだと、将軍は理解した。となるとやはり、ライスシャワーに任せる他ない。

 というか任せる他ないことを、将軍は最初からわかっていた。

 

 東条隼瀬は、参謀である。その実情は軍師と言ってよく、軍師は君主の方針を受け入れて実現可能なものに修正し、輔弼することを職務とする。

 自分が目指したいものをウマ娘と共有する男ではない。それは君主型であったり、将帥型のトレーナーがやることなのだ。

 

 だが、ライスシャワー1人にぶんなげるのも、どうなのか。そういう責任感で将軍はここまで来て説得を試みたわけだが、やはり無理なものは無理だった。

 

 

 そして本命、ライスシャワーはと言えば。

 

 

「ま、待って……」

 

 目元、そのまま。というか口から上はいつものまま。しかし口元が明らかににやけている、そんなミホノブルボン。

 サイボーグと渾名される彼女は上半身も、下半身すらも動かすことなく、凄まじい速度で廊下を駆ける。

 

 そう。言葉をかき消す程の爆音を鳴らしながら。

 

「ぶ、ブルボンさん……!」

 

 ライスシャワーの声をかき消す爆音と共に逃げる彼女の座乗艦……艦?は、セグウェイ。

 それもただのセグウェイではない。やたら多才な男が作り上げた、ハイパーセグウェイである。

 時は4月某日。ミホノブルボンの誕生日の2週間前。改良された試作型手袋を手にした彼女は、はじめて自分の手で操作する乗り物にハマっていた。ドハマリしていた。

 

「ブルボンさーん!」

 

 ひとり爆走兄弟レッツ&ゴーでトレセン学園を駆ける、無敵の八冠ウマ娘。それなりの実力社会であればこそ、この爆走は止めにくい。

 

 ミホノブルボンは、ウキウキしていた。心がぴょんぴょんしていた。

 

 それは、今朝のこと。

 

 ――――ここに3つのセグウェイがある。速度特化、バランス特化、頑丈さ特化だ

 

 ――――はい

 

 ――――八冠目のお祝いだ。ひとつやろう

 

 最近、マスターが柔らかい。元々優しかったひとが、更に優しくなった。

 

 ミホノブルボンは、機械が好きである。触れられないものだからこそ好きになったのか、好きなのに触れられなかったのか。それは卵が先かニワトリが先かという話で、正直よくわからない。

 だが正確でかっこいい――――素晴らしく速い戦闘機とかそういうものに憧れて、ミホノブルボンはこんな感じになっている。

 それを見抜いて、マスターは乗り物――――座乗艦と、彼女はカッコつけて言っている――――をくれた。

 

 だから、ミホノブルボンは爆走していた。ただひたすらに、目的もなく爆走していた。それこそ、ライスシャワーを振り切るほどに。

 

「ぶ、ブルボンさーーん!!」

 

 脳に染み入るようなか細い声と、それをかき消す戦闘機のような太く、高い轟音を鳴らしながら爆走するミホノブルボン。

 

(なにやってるんだろ……)

 

 カフェテリアではちみーに舌鼓を打つトウカイテイオーは、口を窄めて糖分を補給しながらその光景を見ていた。

 あのスタミナお化けのライスシャワーを疲弊させる程の爆走。いや、走っている最中に喋っているからかもしれないが。

 

 ちゅーちゅーしてはちみーを空にしたあと、一息つく。一息ついて併設されたゴミ箱にぽこんとはちみーの容器を捨てて、彼女は背伸びをしてからバテたライスシャワーの方へと歩み寄った。

 

「どうしたの、ライス?」

 

「あ、テイオーさん……」

 

 息を入れてスタミナを多少回復させたライスシャワー。

 自販機でドリンクを購入してハンドルの中央、ドリンクを入れるためのケースに装填して走っていくミホノブルボン。

 

 両者を交互にちらりと横目で捉えつつ、天性のコミュニケーション能力で彼女は困っているであろうライスシャワーに手を差し伸べた。

 

「実は……」

 

 かくかくしかじか。

 

「うんうん。春の天皇賞に出て欲しいけど報道的に多分出る気がない。お兄さまによるとアレもブルボンを春の天皇賞に出す気がない。だから追っかけて出てほしいとお願いしたい、と」

 

「うん……」

 

「春天かぁ……」

 

 春天。それはトウカイテイオー、初の敗北。

 トウカイテイオーと同じく、ミホノブルボンはクラシック級を無敗で終えた。そしてこれまた同じく、シニア級初のレースに大阪杯を選んだ。

 

 結構、被るところがある。

 ミホノブルボンにとっても、春天は初敗戦の場になるのではないか。

 

 そんな思いを、トウカイテイオーはかき消した。ミホノブルボンを負かすのは、自分だ。自分であってほしい、と。

 

(でもライスもそうだけど、何よりマックイーンがいるしなぁ)

 

 やりますわねあの娘……と。

 表面上は冷静さを装ってミホノブルボンを讃えながら、確実に闘走心をメラメラですわ!にさせているマックイーン。

 

 多分なんの根拠もなしにミホノブルボンが春天に出てくるだろうと確信している、トウカイテイオーにとっての初のライバル。

 メジロマックイーンは、今もメジロパフェを燃料にして闘志をメラメラさせているはずである。

 

 そんな状況でミホノブルボンが出ないとなれば、闘走心の赴く先を見つけられない、ということになりかねない。

 

「わかった。じゃあ二人で挟み撃ちにしよう!」

 

「え……て、手伝ってくれるんですか?」

 

「うん、まあ……まあね!」

 

 ということで、トウカイテイオー発案のミホノブルボン挟撃作戦が発案された。

 

 まず、スタミナを消耗したライスシャワーをカフェテリアと学校を結ぶ外通路に立たせ、トウカイテイオーがなんとかしてそこに追い込む。

 トウカイテイオーが追いつけばその場で捕獲し、ライスシャワーに連絡を入れて呼び寄せる。そういうことになった。

 

「じゃあ、いっくぞー!」

 

「お、おー!」

 

 と言っても、ミホノブルボンは既に発進している。あの魔改造セグウェイの速度はウマ娘より速く、従って下手な車よりも速度が出る。

 

 ――――追いつけない。

 

 そう思いつつも弱音は吐かない。そんな強さを持ち合わせるトウカイテイオーは、翔ぶように駆けた。

 

「待てー!」

 

 妙にうまいハンドリングで最内で角を曲がり切ったミホノブルボンのグレーのセグウェイの外を、モスグリーンのセグウェイが通過する。

 

「テイオー」

 

 セグウェイの上に立ち、片手を振るのはシンボリルドルフ。何故か勝負服を着てご機嫌そうな憧れの人は、珍しくウキウキと尻尾を揺らしながら止まった。

 

「あれ、カイチョー……それ、どうしたの?」

 

 ブルボンもセグウェイ。カイチョーもセグウェイ。

 これまでセグウェイを乗り回すのはそれこそ、ゴールドシップくらいなものだった。なのに今日は、ふたりが新たに乗り回している。

 

 そんな疑問が、口を突いて出た。理性ではなく、本能による行動。それを、トウカイテイオーは後悔することになる。

 

「ふふ……これか? これは――――」

 

(あ、これ長くなるやつだ)

 

 昨日の昼。生徒会室に忍び込んだとき、お好み焼きを食べているシンボリルドルフに向けて話しかけたときもそうだった。

 立て板に水、疾風怒濤、メイショウドトウ。ものすごく流暢にお好み焼きについて熱く語られた。そんな経験がある。

 

「これはトレーナーくんがくれたんだ。修理用パーツを買ったら色々付いてきたからお前にもくれてやるといって、素直すぎるというのか。お前には色々世話になったから、と。だから私もこうしてお弁当をだな――――」

 

(トレーナーくんって誰だろ……カイチョーがルンルン気分になってるってことは、あの参謀と同一人物なのかな……)

 

「あの人は元々器用なんだ。この勲章の彫金も彼が――――」

 

 こうして、追い込み役が謎の皇帝に堰き止められた追い込み漁。うざ絡みしてくる上司みたいなシンボリルドルフに絡まれ、トウカイテイオーの策はおしゃかになった。

 その先に待っているライスシャワーは、このことを知らない。知らないが、何はともあれミホノブルボンはぐるりと一周して戻ってきたのである。

 

 これはまったくの運だった。だが、ライスシャワーは思った。

 

(すごい、テイオーさん!)

 

 姿は見えないが、うまくやってくれたのだろう。

 そう思って、ライスシャワーは目一杯手を横に伸ばしながらミホノブルボンの前に立ちはだかった。

 

 その頭上を一回転してセグウェイが通り過ぎ、くるりと向き直る。

 セグウェイの新月面が描く放物線は、栄光への架け橋だ。そんな感じの、優美な回転。

 

「どうかしましたか、ライス」

 

「……え、あ! うん!」

 

 かっこいいから、ということで付けられたエンジン音発生装置を切り、場に静寂が流れる。

 大事故一歩手前みたいな曲芸を見せられて固まるライスシャワーは、慌てて自分を取り戻してミホノブルボンを見た。

 

「ブルボンさんは……春の天皇賞に、出ないの?」

 

「はい。今のところは」

 

 春の盾。それは、ウマ娘にとってダービーに比肩する栄誉。寒門の出であるミホノブルボンはその伝統を尊重していたし、純粋に信じていた。

 

「ライスは出ると聴いています」

 

「うん……」

 

「がんばってください。貴女ならば、メジロマックイーンさんに勝てるでしょう」

 

「う、うん。ライス、がんばるよ」

 

 言いたいことは、そうではない。

 がんばるよ、ではない。一緒に走ってほしい。そう言いたい。

 

 ライスシャワーはそれらに突き動かされてるように、覚悟を決めて口を開いた。

 

「ライスはブルボンさんも、春天に出てほしいの。ええと……春天は、セグウェイと同じくらい楽しいと思うから……」

 

「私と共に走りたいのですか」

 

「ライスは……」

 

 一緒に、走ってほしい。テイオーさんと、マックイーンさんと、シンボリルドルフ会長。ミホノブルボンには、多くのライバルがいる。

 

 でも、ミホノブルボンを追うのは、追いつくのは、追い越すのは。他の誰でもない、自分でありたい。

 

「ライスは、ブルボンさんに勝ちたい。テイオーさんでもなく、マックイーンさんでもなく、会長でもなくて、ライスがブルボンさんに勝ちたい。だから、一緒に――――」

 

 一度狙いを定めたら決して離さない。そういう執念深さ、執着。蒼い焔のような熱意と闘志。

 彼女が失っていたそれらを瞳に宿しながら、ライスシャワーは言い切った。

 

「一緒に、春天を走ってください!」




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サイドストーリー:折り合い

「で、出走したいと」

 

 ライスシャワーの懇願を受けて。

 ……いや、懇願とは言えないほどの強い眼差しを受けて、ミホノブルボンの心は揺れた。

 

 春の天皇賞に出たい。走ってみたい。勝ちたい。春の盾を得たい。

 メジロ家のように、天皇賞をとることが宿命付けられているわけではない。他の名門のように、非主流となりつつある距離に注力するのはちょっと……と、及び腰になっているわけではない。

 

 寒門だからこそ、無邪気な憧れがある。

 日本ダービーを制した者が世代1の名を得られるとするならば、春の天皇賞の制覇は最強の名を得ることを意味する。

 

「はい」

 

「春の天皇賞。ライスシャワーに誘われたのだな」

 

「はい」

 

「そうか。俺は反対だ」

 

 ライスシャワーと走る。それ自体はいい。

 ミホノブルボンの不調の原因は、闘走心の芽生えにある。それを齎したのはライスシャワーで、彼女と走ることによってより深く闘走心を感じることで折り合いをつけることができるかもしれない。

 

「宝塚でいいだろう。そこなら確実に勝てる」

 

「宝塚ではルドルフ会長とテイオーさんとのレースになります。まとめて3人を相手どるのは――――」

 

「まとめて?」

 

 心の底から疑問を浮かべて、ああ、と頷く。

 

「まとめて、とはならない。宝塚ではルドルフに如何に勝つか。それが全てだ」

 

「テイオーさんもライスも、侮り難い敵だと思いますが」

 

「だがルドルフよりは下だ。あいつの上はいない。だからこそ、あいつは皇帝と呼ばれている」

 

 心からの信頼を警戒に換えて、東条隼瀬は言い切った。

 

「トウカイテイオーもライスシャワーも素晴らしいウマ娘だ。優秀さも、侮りがたさも、強さも、弱さも。俺は知っている。だが、ルドルフが不動にして絶対のナンバーワンだ。だから宝塚でいくら難敵が増えようと問題にはならない。我々はルドルフに勝つことのみを考えればいいし、ルドルフに勝つということは即ち、レースを制することだ」

 

 ミホノブルボンとしては、シンボリルドルフの強さを知っている。

 だが、ライスシャワーとトウカイテイオーの強さを皮膚感で知っていた。それに比べてシンボリルドルフとは、相対した経験がない。

 

 一方で東条隼瀬は、シンボリルドルフの強さを皮膚感で知っている。それが、両者の見解の相違に繋がっていた。

 

「ルドルフと五分でやり合うには、駆け引き抜きで逃げ切るしかないし、俺はそれができるやつをたった1人しか知らない。それも、彼女が理想的な成長曲線を描けばと言う仮定が付く」

 

「それほどですか」

 

「それほどだ。まあこれは、俺がルドルフのことを信じているからということもあるが、下方修正する必要はないと思う」

 

 自分にルドルフ信者的な側面があることを、彼は自分自身で理解している。だが信者特有の絶対視をするに相応しい実力を持っていることを疑ったことは一度もない。

 

「先行、差し、追い込み。どんなに強くとも、この3脚質ではあいつには勝てない。あいつは3手先を読める。あいつより強く、あいつより頭がいい。そんなウマ娘は見たことがない」

 

 そういうふうに力強く演説して、少し目を逸らして咳払いをする。

 

「話が逸れたが、宝塚でいい。そうではないか」

 

「……それは」

 

 その通りだと思った。

 長距離3200メートルは、ライスシャワーのホームである。自ら不利な場所に踏み込んで戦う必要は、全くない。

 ライスシャワーが誘ったのも自分が有利だからではない。勝ち目が増えるからではない。

 彼女にとって闘志を燃やす相手はやはりミホノブルボンなのだ。だからこそ、次に走るレースに誘った。それがたまたま、春天だった。それだけのことでしかない。

 

「マスターの仰ることは、正しいと思います。私の次の出走レースは宝塚記念。新年度がはじまったとき、私とマスターで決めた事です」

 

「そうだ」

 

「ライスの実力は、ルドルフ会長より劣る。ルドルフ会長に勝つことを、宝塚記念に勝つことを目指せば、自然と勝てる。それも、仰るとおりだと思います」

 

「当たり前だ」

 

「ですが私は、春天に出たいです。私は――――」

 

 私は、なんなのか。何故、理屈の通ったマスターの言説に反抗しているのか。反論を企てているのか。それは、わからない。

 わからないが、嫌なのだ。このままでは、宝塚記念でライスシャワーと相対するのは嫌なのだ。

 

「――――私は、片手間でライスと戦いたくはありません」

 

 はじめての。

 

 そう、はじめてのライバルだから。三冠に立ちはだかった、執念と闘志で喰らいついてきた好敵手だから。

 

 自分にとっての、はじめて。個人を意識して走る。そういうことを、してこなかった。

 それが間違っているとか、正しいとかではない。目標を、夢を、概念的な形があるようでないものを目指してきたミホノブルボンというウマ娘がはじめて意識した形あるもの。

 

「私は、ライスシャワーと戦いたい。戦うならば、全力を傾けたい。だからこそ、春の天皇賞に出たいです。マスター」

 

「事前に建てた計画をおしゃかにしても、か」

 

「はい。難しいでしょうか」

 

 どいつもこいつも、似たようなことを。

 栗毛。疵になって久しい、最強になれたはずのウマ娘が、ふと頭を過ぎった。

 

「なんとかしろというのだな」

 

「はい。なんとかしてください」

 

 どいつもこいつも。

 

 そんな言葉が、二度頭に浮かぶ。

 かつて自分は、柔らかい笑みに込められた期待を、信頼を見事に裏切った。夢を叶えると約束したのに、完全に叶えさせることもできず、走ることすら奪いかけた。他でもない自分の無能さで。

 

 死んでしまいたいと思った。彼女の夢を支えられなかった自分の無能さを嘆いて。

 

 だが、こんな自分をまだ信じてくれるやつがいる。似たようなわがままを言って。

 

 ミホノブルボンが、情動的な反応をして『何故』を考える。感情で動く。それは、確実な成長だ。

 

 

 ――――その言葉が聴きたかった。なんとかしよう。

 

 

 そう言おうとした寸前で、ミホノブルボンは決意で満ちた青い瞳を滾らせて言った。

 

「マスターだけに、任せません。マスターだけに、なんとかしてくださいとは言いません。私がまず、なんとかできるよう努力します。なので、マスターの智慧を貸してください」

 

「……ああ。いくらでも貸してやる」

 

 本気で拒否するつもりはなかった。

 ミホノブルボンが自分の行動の不合理さを解析できなくても、出たいと言った以上春の天皇賞に出させてやるつもりだった。

 

 大阪杯から春の天皇賞、春の天皇賞から宝塚というローテーションは、そうおかしいものではない。

 余裕を持って作っていたローテーションからして、東条隼瀬は春の天皇賞に出たいと言い出してもなんとかなるようにしていたのである。

 

 だがミホノブルボンに必要なこととはすなわち、自分の感情を自覚すること。

 闘走心との折り合いが付けられないのは、自分の心の動きというものに鈍感だから。そこで自覚したことが、いつか大きな意味を持つ。

 

 それが春の天皇賞で起きるとは限らない。負けてから得るかもしれないし、あるいは勝ってから得ることになるかもしれない。

 だが、これからを――――ミホノブルボンが唯一絶対の強者になるには、必ず必要になってくる。

 

「ありがとうございます、マスター。そして、ご迷惑をおかけして申し訳ございません」

 

「いや」

 

 そうではない。

 たぶんこれが大阪杯の前だったら、このおバカなわんこっぽい少女に『私を信じてくださっていることを、嬉しく思います。ですからマスターは迷いなく、自分の判断を信じてください』などと言われなければ、彼は絶対にローテーションの変更を認めなかっただろう。

 

 彼はローテーションを作るにあたって結構な余裕、機械的な言い方をすれば拡張性を持たせて作っていた。しかし拡張性があるのと拡張を許可するというのは別問題である。

 事前に建てた計画を変更する。臨機応変に相対する。それはかつて彼がサイレンススズカにやったことで、そして失敗したことだった。

 

「俺に変更を認めさせたのは、他でもないお前だ。つまりお前が礼を言うべきは過去のお前にであって、俺ではない」

 

「それでも、です。マスターはいつも、私のわがままを聞いてくださいます」

 

 三冠ウマ娘を目指したい。

 今となってはおかしなことだが、彼女の抱いたそんな夢は荒唐無稽と謗られることが多かった。不可能であると。どうせならば天性のスピード――――一流のスプリンターになれるであろう脚を活かすべきである、と。

 

 それなのに、ミホノブルボンは聞かなかった。ひたすらに、三冠ウマ娘になりたいと言い続けた。

 その結果として夢を叶えたのだから美談になったと言えるが、失敗したら洒落では済まなかっただろう。単にウマ娘のわがままを正すことができず、才能をドブに捨てたということになっていたはずだ。

 

「ウマ娘のわがままを叶えてやれるのが、真のトレーナーというものだ」

 

 俺はそうなりたい。

 言葉にこそしなかったが、ミホノブルボンにはそれがわかった。

 

 そして、挑戦すると決めてからはやることがある。つまり、勝つための算段をたてる、ということである。

 春の天皇賞は日本のGⅠでは最長距離。3200メートルの芝コース。開催場所は京都レース場。要は、ちょっと距離が伸びた菊花賞みたいなものである。

 

 しかし200メートルというのは実際走るウマ娘からすればちょっとでは済まない。特に、距離が長ければ長いほど逃げウマ娘は不利になる。

 何故かと言えば、逃げウマ娘とは先頭を走ってこそのものだからである。先頭を走れば必然的に風の抵抗を受けることになり、距離が長ければ長いほどに受け続けなければならないからである。

 

 だから、長距離での逃げは現実的ではない。少なくとも、有馬記念のように大外を爆走するみたいなことはできない。

 

(だがどのみち逃げ切る他に勝ち目はない)

 

 出走登録をした後。ミホノブルボンのわがままを聴き入れて2週間後に発行された出走表を見て、しみじみ思う。

 

(……運がいいのやら悪いのやら)

 

 1枠1番は、ミホノブルボン。

 2枠3番にライスシャワー。

 3枠5番にマチカネタンホイザ。

 5枠9番にメジロパーマーがいて、8枠14番にメジロマックイーン。

 

 春の天皇賞最有力候補のメジロマックイーンが一番不利な大外に置かれたのは素直に嬉しいし、何よりも1枠1番は嬉しい。これで勝率が12%上がった。

 上がったが、2枠3番に嫌な名前がある。これであれば大外に置かれたほうがまだ良かったと思う程度には、最悪な配置。

 

 ミホノブルボンがスタートダッシュ、ライスシャワーが斜めからスッとマークにつく。

 たぶん自然な流れで、そうなる。メジロマックイーンとライスシャワーが逆だったらまだ、楽に勝てたのだが、そうはいかない。

 

 ライスシャワーは、マーク型である。先行脚質ではあるが好位につくというより、台風の目になると見たウマ娘を差し切れる位置を常にキープしようとする。

 だから――――例えばとんでもなく調子が悪いウマ娘をマークしてしまうと、諸共沈む。

 

 それに対してメジロマックイーンはあくまで王道を行く好位追走型。豊富なスタミナを活かしてか仕掛けのタイミングが若干早く、中盤の終わりから終盤にかけて逃げウマ娘の如く突出することが多い。

 

 要は両者ともロングスパートを得意とするが、仕掛けるタイミングが異なる。

 この二人を両方とも相手取っていては、消耗が半端ではなくなる。相手だけタッグマッチを仕掛けてくる、というような状況になりかねない。

 

 それはスタミナの問題ではなく、心理的消耗の問題である。いつだって追う者より、追われる者の方がキツいのだ。

 追う者は相手を見て走るだけでいいが、追われる者は詰められている距離だとかゴールまでの距離だとか、そういうことをいちいち考えなければならない。

 

(……メジロパーマーだな)

 

 軽くなった机横の引き出しを3回叩いて、引き出す。

 そこには今や、日記帳しか入っていなかった。




次回、天皇賞春。


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サイドストーリー:勝ってきます

出走表が欲しいみたいなことを言われたのでほんへ中に書いてみました。


 ウマ娘の脚ほど、精密に扱うべきものもない。

 ガラスの脚。

 それは一度砕ければ、二度と元には戻らないというのもそうだが、時速70キロ近い速度で走るウマ娘であればこそ砕け散るような骨折が多いからこその、皮肉めいた比喩だった。

 

 

 ――――ただ、走る。

 

 

 それだけで、大金を稼ぐ。栄光を掴む。夢を叶える。夢を見せる。

 金というものに困ったことがない東条隼瀬からすれば大金というものは魅力的に映らないし、ふーんってな感じである。

 だがそれはともかく後ろ3つは魅力的に映る。栄光を掴み、己の夢を叶え、観客やあとに続くウマ娘たちに夢を見せる。

 

 無論誰もの脚が、大金を稼げるわけではない。栄光を掴めるわけではない。夢を叶えられるわけではない。夢を見せられるわけではない。

 

 だがミホノブルボンの細い脚には、それら全てがかかっていた。

 

 高価で美しい宝石を扱う研磨師のような手付きで脚に触れ、爪先にネイルを施す。

 走っている最中、爪が割れないように。アクシデントが起こらないように。

 

 ネイルアーティストもかくやという丁寧さで爪を補強し、乾かす。

 トレーナーという職業が如何に多才であることを求められるのか。その象徴のような一事を終えて、東条隼瀬は顔を上げた。

 

 祈りを捧げる神官のような、優美な所作。

 

 ――――ああ、この人はやっぱり貴門の出なんだ

 

 彼が以前担当していたと言っていい二人であればさらりと流しそうな何気ない所作。

 

「乾いたぞ」

 

「はい」

 

 洗練されている、というのか。トレーナー→執事→教官→トレーナーという複雑な将来像の変遷を辿った彼の動作には、シンボリルドルフと同じような香り立つような気品がある。

 

「一応細かく場合に分けて立てるには立てたが、作戦はあまりアテにするな。急造だし――――」

 

「長距離だから、ですか」

 

「そうだ」

 

 誤算というものは突発的に起こるものではなく、積み重なった結果起こるものである。

 東条隼瀬が「計画通り」と思っても、ミホノブルボンが「計画通り」と思っても、どこかで誰かが齟齬を起こす。

 その齟齬は、1ハロン200メートルごとに少しずつ、少しずつ積み重なっていく。

 

 その積み重なっていく齟齬が、誤算に至るまでにレースが終われば確実に勝てる。だが、今回のレースは最長距離GⅠ、天皇賞春。齟齬は絶対に積み重なるし、必ずや誤算にまで至る。

 

 そう。なにもライスシャワーがステイヤー――――長距離専門ウマ娘と呼ばれているのは、彼女自身の実力だけではない。

 長距離を走らせるトレーナーに必須のスキル、調整力。積み重なった齟齬を掃除する能力。臨機応変の才能。祝福の名を冠する少女の横には、その才能を持った人間がいる。

 

「長距離では、誤差が起こる。その誤差をなんとかするのがトレーナーだが、俺は一般的なトレーナーではない。基本戦略以外、無視しても構わない」

 

 だから予測できるだけ予測して、場面に分割して伝えた。予想すべきは全体の流れではなく、場面的な対処法。

 それは自分が立てた全体予想よりもミホノブルボンの判断を信じる、ということでもある。

 

「任せたぞ」

 

「はい、マスター」

 

「そして……」

 

 言い淀む。

 基本的にコミュニケーションを反射ではなく思考によって行う――――その場に合わせるというよりは自分の組み立てた会話に乗せていく形で行う彼にしては、珍しい言葉の濁し方。

 

 ミホノブルボンはそれをおかしいと感じつつも、指摘はしなかった。

 

「トレーナーとは、様々な仕事がある。だが本質的には勝負師だ。勝つことこそが本分だ」

 

 時には無理を押してでも、勝たせる。

 それが、トレーナーという仕事。全盛期の短いウマ娘たちに可能な限りの燃焼を。可能な限りの栄冠を。

 

「だが俺は今から、最低なことを言う」

 

 ちょっと顔を逸らしつつ、息を吐く。

 

 緊張しているらしい。らしくなく。

 常に冷静な彼には珍しい、そんなことが感じられる動作。

 

 跪くような体勢から立ち上がり、ミホノブルボンの手を取る。まるで懇願するように、東条隼瀬は言った。

 

「負けてもいい。無敗伝説が続こうが破れようが、そんなことはどうでもいい。無理して走り切らなくてもいい。無事に帰ってこい」

 

 パチパチと、ミホノブルボンの瞳が瞬いた。

 

 ――――勝ってこい

 

 今回も、同じような言葉が聴けると思っていた。疑っていなかった。

 

 どんな状況でも、たとえ不利でも。彼は勝ってこいと言い続けた。自分はそれに応え続けた。

 いや、違う。これまでずっと、不利だったのだ。今では中距離こそがミホノブルボンの本領発揮できる射程だと言われているが、彼女の本質はあくまでも短距離専門のスプリンターであり、そこから1ミリも変化していない。

 

 その不利が極限まで、つまり、行くところまで行ったから、こういうことを言っているのか。

 たぶん、そうではない。彼はおそらく、名前が気に食わないからそう言っている。

 

 天皇賞という、彼の心に深く刻まれたその名前が。

 

(スズ……サイレンススズカと会ったのは秋だった。そして、夢は秋に終わった)

 

 となると、春に会ったブルボンとの夢は春に終わるのでないか。

 全くもって根拠のないことだが、そんな妄想のような考えが浮かぶ。

 

 それを、ミホノブルボンは推し量ることはできない。彼女が推し量るには、あまりにも材料が足りない。

 ミホノブルボンは、過去を知らない。彼の過去を、サイレンススズカのことを知らない。

 

 知らなくていい。そう思っていた。いずれ話してくれるときが来るから、そのときに話してくれればいい、と。

 

 だから彼女は、東条隼瀬が何故ここまで思い悩んでいるかを知らない。だが理由はわからなくとも、思い悩んでいることは見てわかった。

 

「マスター。私はいつも通り、ちゃんと帰ってきます」

 

 そして。

 

「そしていつも通り、勝ってきます」

 

 驚いたように、鋼色の瞳が広がる。

 髪の色とマッチしているそれがいつも通りの大きさになると共に、ミホノブルボンの栗毛に大きな掌が乗った。

 

「――――ああ、勝ってこい。いつも通り」

 

「はい、マスター。いつも通り」

 

 僅かに笑い合って、二人は別れた。

 次に会うときも、笑い合って。このレースに、勝利して。

 

 ミホノブルボンは、パドックに向かった。

 通路を歩いているだけなのに身体を揺らす大歓声が、この一戦が特別なものであることを示していた。

 一部からコアな人気を博している新勝負服での2戦目。それだけではない。ミホノブルボンが、射程距離がもっとも短いスプリンターが、最長距離のGⅠ、天皇賞春に勝てるのか。

 

 いや、出れること自体が異常なのだ。

 そういう一般論が幅を利かせず、『勝てるのか』という議論に終始するあたりに、ミホノブルボンの積み上げてきた実績が表れていた。

 

「ライス」

 

 静かな。

 本当に静かに、影に溶け込むように。ライスシャワーは、佇んでいた。

 

「ブルボンさん。ありがとうございます。そして、ごめんなさい」

 

 挑戦に乗ってくれて。受け入れてくれて。

 将軍から、言われた。これは本来異常なことなのだと。いくら余裕を持たせているとはいえ、ローテーションを崩してまで挑戦に乗ってくれるなど有り得ないのだと。

 

 ――――そして、それほどまでにライバル視されている。特別視されている。それを踏まえて、挑まなくてはならないのだと。

 

 だからこその、ありがとうだった。ごめんなさいだった。

 

「本来、勝つのは貴方か、メジロマックイーンさんか、メジロパーマーさんか。或いはマチカネタンホイザさんか。この天皇賞春は、そういうレースでした」

 

 無機質な、サイボーグの名に相応しい眼。

 その奥にほのかに灯る闘志の焔を見て、ライスシャワーは察した。

 

 氷の理性と燃えるような闘志との間に、折り合いがついている。ミホノブルボンを掛からせることはできないのだと。

 

「ですが、私が出る以上、勝つのは私です。貴方は自らを不利にした。ですから、礼を言う必要はありません」

 

 ――――気にするな。ローテーションを崩したことも、3200メートルが得意だということも、京都レース場が得意だということも。こうして自分の得意なレースに引きずり込んで決戦するという形になったことも。

 

 ミホノブルボンは、暗にそう言っていた。

 気に病むことなどないのだと。礼を言うならば、謝罪するならば、余計なことなど考えずに全力を出すことのみを考えてくれ、と。

 

「勝つのは……ライスだよ」

 

「それでこそです」

 

 新年に入って腑抜けた――――その腑抜けの原因が誰の影響か、という話だが――――ライスシャワーではない、力強い断言。

 それを肯定し、光指す場所に立つ。暗い、ターフまでの通路の終わり。

 

「……ブルボンさんから出る?」

 

「いえ、ライスから」

 

 観客の歓声を先に受けるのは、どちらか。

 

 ライスシャワーは不利を承知で出てきた王者こそ――――ミホノブルボンこそ相応しいと思った。

 ミホノブルボンは闘志を漲らせて戦う挑戦者こそ――――ライスシャワーこそ相応しいと思った。

 

 どちらも、他者の心理を洞察することに長けている。ライスシャワーは先天的に、ミホノブルボンは無表情・無感情の男と関わるにつれて後天的に。

 

「では同時に、というのは」

 

「うん」

 

 ゴールまでは、同時とは行かない。

 ならば、最初の一歩くらいは。

 

 共通の認識のもと、二人は一歩を踏み出した。

 このレースが終わる頃には、どちらかが先に一歩を印す。どちらかが遅れて、一歩を印す。

 

(次は)

 

(次は)

 

 私が。

 ライスが。

 

 静かな闘志を胸に秘め、慣れた感じに、或いはにこやかに観客に手を振る。

 そしてパドックでのアピールを終えて、ミホノブルボンはゲートに入った。

 

 1枠1番。これほど、最も早くゲートに入るに相応しい枠番もない。

 

 1枠1番ミホノブルボン

 2枠2番トーワツカサ

 2枠3番ライスシャワー

 3枠4番ムッシュシュガー

 3枠5番マチカネタンホイザ

 4枠6番タケノビロード

 4枠7番ゴールデンアンク

 5枠8番シャコーハイパー

 5枠9番メジロパーマー

 6枠10番レットイットゴー

 6枠11番アイルトンシンボリ

 7枠12番ザムシード

 7枠13番イクノディクタス

 8枠14番メジロマックイーン

 8枠15番キョウワウィナー

 

 有力なウマ娘があちこちに散らばった形になる枠番。バ群に紛れることが少なくなったとはいえ、メジロマックイーンが最も不利な位置にいる。

 京都芝3200メートルをスプリンターが走るという絶対的な不利に目を瞑れば、この場合最も有利なのはミホノブルボンだった。

 

《メジロマックイーンに続いてキョウワウィナー、ゲートに入りました。最長距離GⅠ、天皇賞・春。最強の名を手にするのはどのウマ娘か!》

 

 メジロマックイーンの3連覇か。

 ミホノブルボンの、シンボリルドルフに続いての無敗での天皇賞制覇か。

 

《誰もが求める一帖の盾を求めて――――今、スタートしました!》

 

 0から1へ。

 電撃のような反応で、ミホノブルボンは飛び出した。




29人の兄貴たち、感想ありがとナス!

妖魔夜行@兄貴、銀鯖兄貴、さろmon兄貴、マッさん兄貴、ムーヒロ兄貴、量産型通行人AB兄貴、評価ありがとナス!

感想・評価いただければ幸いです。


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サイドストーリー:臨界へ

次回の投稿は翌日以降の17時になります。


《先頭はミホノブルボン! 続いてやや外にメジロパーマー、ブルボンの後ろにライスシャワー、バ群の先頭にメジロマックイーン》

 

 先陣を切ったのは、ミホノブルボン。ついでメジロパーマーが追従する、誰もが予想した形。

 ミホノブルボンの最初の1ハロンは、12秒ジャスト。機械のような抜群の感覚と、それを維持するに足る精神力。色褪せていて使い物にならなくなったそれらを、彼女はすっかり取り戻していた。

 

(来た)

 

 メジロパーマー。頭を立てた、胸を張ったような走行フォームで走る奇異なウマ娘。

 空気抵抗を全身に受ける、異端というべきそのフォームを、ミホノブルボンのトレーナーはおそらく、誰よりも高く評価していた。

 

 

 ――――あれは変なフォームだが、フランスでは似たようなのをちょこちょこ見た。頭を高く保てば、空気抵抗を受けやすいがバランスを取りやすくなる。あいつは安定的に速度を出せるし、それを維持できるスタミナもある。だがバランス感覚に問題を抱えているのだろう

 

 

 完璧に悪いフォームというものは存在しない。

 総合的に見て短所が目立つから『悪い』とされるフォームと評される。

 それが代々印象として残っていき、悪いとされる理由も知らず印象論だけで『悪い』と決めつけられる。

 

 だがどんなフォームにも長所と短所がある。今のメジロパーマーのフォームは短所ばかり目立つが、長所もあるのだ。

 

 ミホノブルボンには自身の本質――――スプリンター由来のスピードがあるが、それを維持できるスタミナもなければバランス感覚もなかった。

 その2つを坂路によって増設したわけだが、メジロパーマーは短所を埋める努力よりも長所を伸ばすことを優先し、フォームを変則的なものに改造することで短所を埋めたのだろう。

 

 首を左右に振って、ミホノブルボンはレースの全容に軽く触れた。

 と言っても彼女が知覚したのは先頭集団のみ。自分のやや外寄りの位置にメジロパーマー。後ろにピッタリとライスシャワー。メジロパーマーのやや外寄りの後ろにメジロマックイーン。

 

(待たれてる……?)

 

 やや遅い。そう感じて、メジロパーマーはミホノブルボンの走りの変化を察した。

 彼女がミホノブルボンと共に走ったのは、有馬記念の1回のみ。そのときのブルボンは大外をぶん回るという意味不明な作戦をとっていたため、距離があった。だからこそ、皮膚感としての経験がない。

 

 ミホノブルボンは大外で、ラップを刻んでいたらしい。そう聴いたし、ラップタイムを見た。だが実際体感したのは、これが初めて。

 彼女がミホノブルボンの走りを近くで見たとき、ミホノブルボンはラップタイムなど投げ捨てて加速しながら走っていた。だからこそ、彼女は感じた。ちょっと手を抜いているのでは、と。

 

 実際、手は抜いていなかった。だが、待っているというのも嘘ではなかった。

 

 ライスシャワーとメジロマックイーン。

 二人の、傑出したステイヤー。その二人の注意がミホノブルボンだけに向けば、精神的損耗はバカにならない。

 

 逃げとは、常に後ろを気にして走る戦法である。世の中、追われる者よりも追う者の方が強い。レースが進むにつれて貯金が切り崩されていく感覚に陥るのが逃げであり、貯金を続けていくのが先行だったり差しだったり。

 

 それはメジロパーマーも同じこと。だからこそ、自分を追ってくるメジロマックイーンとライスシャワーの間に何人かのウマ娘を噛ませたい。そこにミホノブルボンが入ってくれれば、ベスト。

 

 メジロパーマーの後ろに何人かの壁。その壁でメジロマックイーンとライスシャワーの猛追してくる気配とプレッシャーを薄らげつつ、逃げ切る。彼女はそうしたかったし、そうするつもりだった。

 

(そうさせないつもり……ってことなのかな)

 

 枠番の不利を覆す爆走でミホノブルボンに迫るメジロパーマーは、ほぼ併走している形になった。だが弾かれたように差をつけには来ない。あくまでも自分のペースを守っている。

 堅固な精神が感じられる走り、機械的で画一的な脚の動き、手の振り。

 

 ミホノブルボンの後ろには、ライスシャワー。

 メジロパーマーのやや後ろに、メジロマックイーン。

 

 京都の外回りコース特有の、緩やかで大きなカーブ。コーナーでの巧みさでやや差を広げられながら、メジロパーマーは出力を徐々に広げていく。

 

(第3コーナーでの下りからの直線で突き放す!)

 

 2ハロンを越えて、残り17メートルの間でそんなメジロパーマーの急くような思惑を察しているのか、どうなのか。

 ミホノブルボンはちらりと自分と同じ逃げウマ娘の闘志に燃える眼を見て、前を見据える。

 

 徐々に、メジロパーマーがトップスピードに到達して駆けていく。それに引きずられるようにメジロマックイーンがやや脚を速めたのをちらりと確認して、ミホノブルボンは心の中で頷いた。

 

 ミホノブルボンは、ライスシャワーにマークされること自体は受け入れていた。諦めていた。それはもうどうしようもない、と。

 だが、メジロマックイーンにマークされることだけは避けたかったのである。

 

 だから、最初は緩めに走る。このレースの牽引車となるのは自分ではなく、メジロパーマーであると思わせる為に。

 

 メジロマックイーンはメジロパーマーと同門である。同門であればこそ、その異端な強さを知っている。長距離を主戦場とするメジロ家に生まれて、敢えて長距離では不利になる逃げという戦法を採る。

 その覚悟は、並大抵のものではない。そして、その実力も。

 

 だからこそ、メジロマックイーンは迷った。どちらがこのレースを牽引するのかと。

 彼女はぴったりとマークをしてレースを進めていくわけではないが、それでもレースの軸となるウマ娘にプレッシャーをかけていく走りをする。

 

 ミホノブルボンか、或いはメジロパーマーか。

 現在先頭に立ったのは、メジロパーマー。だが彼女のペースはおよそ3200メートルを走り切ろうとするような勢いではない。2400メートルで燃え尽きるような速さ。

 

(ですがパーマーなら、保たせるはずですわ)

 

 2000メートルでその凄さを知ったウマ娘。

 同じ窯の飯を食って過ごしてきたが故に強さも弱さも知っている、同門。

 

 メジロマックイーンは、レースの軸となるのは後者だと判断した。

 

《第4コーナーから続く直線を抜け、先頭はメジロパーマー。メジロパーマーが大逃げであります》

 

 僅かに。着差で言えばハナかアタマ。その程度の差だが、実況は瞬時に判断してメジロパーマーの優位を告げた。

 

 では優位をとられたミホノブルボンはと言えば、さほど動揺していなかった。

 

(よし)

 

 メジロマックイーンの眼を、自分以外に擦り付けることに成功した。

 

 大阪杯で打った布石。本来はマックイーンと対決するときに有利に働くはずだったそれが、今回に限っては不利に働きかねない。

 その不利を、彼女は今打ち消した。

 

 まず最初の試練を乗り越えたミホノブルボンは、相変わらず最内。メジロパーマーが反則をとられることなく最内に斜行してくるには、それなりの差を付けなければならない。

 だが差は『もう少し』から動くことはなかった。メジロパーマーは最内に入ることができず、やや消耗を加速させながら先頭を駆ける。

 

(涼しい顔しちゃってさぁ……!)

 

 後ろを振り返り、メジロパーマーは笑った。

 違い過ぎる。マシンポテンシャルが。自分の全力に、ミホノブルボンは8割くらいの出力で付いてきている。

 

 付いてきていると言っても、徐々に引き離しつつある。引き離しつつあるが、そのペースが遅すぎるのだ。

 徐々に引き離せたとしても、引き離した先の結果を得られなければつまり、意味がない。

 

 しきりに振り返り、焦りを見せるメジロパーマー。彼女のエメラルドグリーンの瞳と視線を合わせ、ミホノブルボンはちらりと左後ろを見た。

 外枠の、後ろ。そこには春の天皇賞を連覇した最強のステイヤー、メジロマックイーンが居る。

 

 彼女の視線の先には、メジロパーマー。

 

(あとは……)

 

 後ろを振り返る。

 ライスシャワーが、そこに居た。息すらしていないのではないかと思うほどの静けさで。

 

 影と同化するような黒い勝負服。スタミナの損耗を避ける、そしてプレッシャーをかけ続けるその姿。

 動かないことが正解であると示すような不気味な存在感を持つライスシャワーだが、彼女はぴったりとミホノブルボンの後ろから動いていないわけではない。

 

 時折ちらりと観客席を見やり、その都度ミホノブルボンが視界に入れやすいように位置を調整する。

 

 闘志というものが感じられない熱の失せた静けさ。菊花賞では感じられなかったこの静けさこそが、ライスシャワーの成長だった。

 常にどこかに闘志を感じるのが、ライスシャワーというウマ娘。そんな彼女と走ることに慣れているミホノブルボンだからこそ、強烈な違和感が背中を刺す。

 

 ――――喰らいつく

 

 ライスシャワーの行動は、何よりも雄弁にその執念が健在であることを示している。だからこそ、その静けさが一層不気味だった。

 

 菊花賞で見事な直滑降を見せた第4コーナーに繋がる坂から直線にかけてのコースを越えて、戻ってくるべきゴールラインを越えて。

 ここに来て、メジロパーマーはやっと最内につけた。

 

 既に中盤戦は越えている。この歴史的なハイペースで進むレースをなおも牽引するウマ娘――――メジロパーマーは、息を荒く吐き出して差を広げにかかる。

 

 4バ身。欲を言えば5バ身。後ろから圧をかけてくるマックイーンと自分を隔てる空間が、それくらい欲しい。

 ミホノブルボンとは、3バ身でいい。機械のようなラップを刻んでいることは、もうわかった。耳を後ろに向けて必死に音を拾って、わかった。どんな地形でもどんな状況でも、ミホノブルボンの走るペースは変わらないのだと。

 

 ――――今日は、そういう日だ。

 

 メジロパーマーは、腹を括った。

 今日のミホノブルボンに、有馬記念の時のような爆発力はない。あるかもしれないが、彼女はそれを考慮することをやめた。キリがないからである。

 あの時は、途中から長く息を入れていた。だが、今回はその兆候が見られない。

 だから、考える。自分が失速したときのことを。どれくらいで追いつかれるのかを。

 

 メジロ家という名門だからこそ、学業に力を入れている。

 寒門のウマ娘の中には『レースに勉強は不要』というものもいるが、彼女はそうは思わない。コースの特徴、特質、共に走るウマ娘のデータ、走るレースの歴代ラップタイム。それらを頭に入れ、自分の全力も数値化しておく。

 

 そうすれば、体感をおおよその数値として弾き出せる。そして、体感を数値化して弾き出せることの有利さを証明しているのは、他でもない寒門の星・ミホノブルボンなのだ。

 ちょっと抜けたところがあるが、ミホノブルボンは正答の出る問題には強い。数学も物理も、ぶっちぎりの学年トップである。

 

 正答なき答えを求めてくる国語に関しては例題や過去問を丸暗記するというパワープレイでぶん殴っていたが、ともかくミホノブルボンは頭がいいのだ。

 

 そしてそれには劣るが、メジロパーマーも頭がいい。その結果導き出されたのが、まあ3バ身あればハナ差で勝てる、ということだった。

 

 先行も差しもそうだが、彼女は個人的な考えとして、逃げが最も頭を必要とすると考えていた。

 とにかく、考えることが多い。ファンは『逃げは頭の悪い力押し戦法』というが、頭の悪い力押しの裏にはそれなりの計算が必要なのである。

 

(うぅ……根性根性根性!)

 

 3回繰り返す程度には限界を感じつつあるメジロパーマーがリードを広げていく。

 そんな中でスタートラインに再び至っても、ライスシャワーは不気味な程に静かだった。

 

 メジロパーマーの爆逃げ。常軌を逸したハイペースを『いずれ落ちてくる』と見ていたウマ娘たちも、中盤で更にリードを広げに来た様を見て流石に焦り、先頭集団のペースがやや早まった(ように見えた)ことに釣られ、今の内に距離を詰めておかなくてはとアクセルを入れる。

 

 そんな中でも先頭集団の最後方を走るライスシャワーには焦りなどなかった。

 わざと急くような脚の運びをして後方のウマ娘たちを釣り上げはしたが、内心は肝が据わり切っている。

 

 

 ――――外れたら、諸共

 

 

 予想が当たらなかったら、負ける。ライスシャワーのレースはここで終わり。それだけのこと。マークするというのは、そういうことだ。

 

 ミホノブルボンを信じる。必ず彼女こそがこのレースの軸になるのだと。いずれ絶対、彼女こそが先頭に立つのだと。

 

 ミホノブルボンが駄目だったら、ライスシャワーも駄目。ミホノブルボンがスタミナを切らせば、スタートをしくじれば、バ群に阻まれれば、ライスシャワーも終わり。

 

 

 それでいい。

 凋落を共にする。その覚悟がある。

 そして、栄光を掠め取る覚悟もある。

 無敗の伝説を終わらせる。ライスシャワーがミホノブルボンにただ勝ちたいから、寒門の希望を潰えさせる。歴史に蹄跡を残すであろうウマ娘の戦績に一滴の黒点を描く。

 

 春の天皇賞で勝つ。宝塚でも勝つ。全てに勝つ。その一歩が、どこであろうと構わない。

 

 徐々に速度が下がっていくメジロパーマー、変わらぬミホノブルボンと、姿勢を低く保つメジロマックイーンにライスシャワー。

 春の天皇賞の主役4人は様々な思いを抱え、中盤戦を終えた。




44人の兄貴たち、感想ありがとナス!

元ヒカセン兄貴、ずまさ兄貴、ラピーマン兄貴、海淵兄貴、Agaty兄貴、cycle兄貴、まっちゃっちゃ兄貴、yucris兄貴、rr2兄貴、羅船未草兄貴、鈍一郎兄貴、酒井遼太郎兄貴、評価ありがとナス!

感想・評価いただければ幸いです。


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サイドストーリー:青薔薇の庭

次回投稿は翌日18時になります。


 同一GⅠ3連覇とは、シンボリルドルフすらも為していない偉業のひとつである。

 彼女は宝塚記念を連覇したが、その後は海外遠征に赴き、負傷して帰ってきたので3回目の宝塚記念には参加できなかった。

 

 だが今でも、出られれば3連覇も4連覇もできたという意見が根強い。だがそれを詮無きことだと殊更強く主張したのが、当の本人だった。

 

 ――――3連覇するにあたって真に重要なこととは、怪我をせずにレースに出続ける持続力。私にはそれが足りなかった

 

 出れば勝てた、ではない。

 出られなかった、のだ。

 

 だからシンボリルドルフは、トウカイテイオーの菊花賞について訊かれた時も同じように答えた。その仮定に意味はない、と。勝利とは、仮定を挟ませないからこそのものだと。

 そして今やその3連覇という頂に手を伸ばしているウマ娘がいる。

 

 そのウマ娘の名は、メジロマックイーン。

 彼女の真に偉大な点は、実力差が明確に出難い長距離で3連覇に王手をかけているというところだった。

 

 距離が短ければ短い程、駆け引きや運の絡む要素が少ない。即ち長距離とは、駆け引きや運など、どうしようもない要素が大いに悪さする可能性が極めて高いレースなのだ。

 それをマックイーンは、連覇した。それはつまりどうしようもない要素をねじ伏せるほどの圧倒的な力と実力相応の運を持っていることを意味する。

 

 だからこそ、彼女は言われるのだ。

 メジロマックイーンこそ、史上最高のステイヤーであると。

 

 そして彼女は3連覇をかけたレースがはじまり中盤を終えた今になって最も、その偉業に近づいている。

 逃げるウマ娘たちを視野に入れられる理想的な位置取り。外枠に回されたと知ったときから、無理に内に進路を取らないことは決めていた。

 

 彼女は、言うまでもなく今年の春の天皇賞における最有力候補である。

 そんな彼女が無理に内に入れば、ブロックされる可能性がある。

 

 自分のペースを多少乱しても、強者の自由を奪うことで勝ってやる。そういうウマ娘たちの餌食にならないためには、外枠というのはちょうどいい。

 

(パーマー)

 

 流石に、速度が落ちてきた。3200メートルとは思えないペースをミホノブルボンと共同で作り出した彼女の走りを、メジロマックイーンは冷静に見ていた。

 

(流石の走りですわ。とはいえ、ここからの奮起はないでしょう)

 

 加速し切って、あとは落ちる。

 それが、逃げウマ娘の本来の姿。近頃は終盤で加速したり同一ペースで逃げ切ったりという変わり種が続々と出てきているが、あくまでもメジロパーマーは王道の逃げを打つウマ娘である。

 

 その減速までの期間が来るまで、異様に粘る。要は、圧倒的に速度を維持する力に秀でる。それが、メジロパーマーの力。愚直なまでの基礎訓練によって得た力。

 だからこそ、メジロパーマーはミホノブルボンのスペックのおかしさを察した。マシンポテンシャルが違いすぎると臍を噬んだ。

 

 一方で、マックイーンは晩成した大器である。本格化を迎えるまで怪我続きで、それでもなお不屈の意志で歩みを進めた結果、クラシック級にはほとんど関与することなく大成した。

 

 彼女は、ミホノブルボンの恐ろしさの内情を知らない。それは、同じ経験をしたメジロパーマーでなければわからない。

 だがマックイーンは、その恐ろしさの外面を知っていた。大阪杯で、教え込まれたから。

 

(だからこそ)

 

 早めに仕掛ける。その判断に、間違いはない。

 彼女には、自負があった。自分こそ、京都3200メートルをもっともよく知るウマ娘であると。その裏付けとなる実績もあった。

 

 だが彼女は、ライスシャワーを知らなかった。ミホノブルボンの影のようなウマ娘。ひたすらに静かに穏やかにミホノブルボンを追尾する漆黒。

 レースとは、反射の世界である。悠長に観察している暇はない。だからこその瞬時に観て、察することが求められる

 

 メジロマックイーンが観客としてこのレースを観ていれば、ライスシャワーの異常性に気づいただろう。だがこのときのメジロマックイーンは、気づかなかった。

 これは彼女の能力が低いわけではない。彼女のリソースはメジロパーマーとミホノブルボン、両者の観察に割かれていて、他に回しようがなかったのである。

 

 ミホノブルボンというここまで無敗で天皇賞まで駒を進めた鮮烈な光が、ライスシャワーという影を黒く、暗く、そして目立たないものにしている。

 

 メジロマックイーンは、メジロパーマーとミホノブルボンを。

 メジロパーマーは、ミホノブルボンとメジロマックイーンを。

 ミホノブルボンは、ライスシャワーを。

 ライスシャワーはミホノブルボンを。

 

 それぞれ、観ていた。

 不気味な程に、ライスシャワーは注目されていなかった。

 

 

 注目はいらない。

 栄光もいらない。

 歓声もいらない。

 勝利が欲しい。今はただ、それだけが欲しい。

 

 

 ライスシャワーは、燃え盛る焔に蓋をしたような静けさで苦もなく追ってくる。

 それはつまり、どういうことなのか。このレースの中で最も、優れた能力を持っている。このレースに適した力を秘めている。そういうことではないのか。

 

 ライスシャワーの本領は長距離でこそ発揮される。距離が伸びれば伸びるほどに、彼女は力を発揮するのだと。

 

 ――――あいつの適性距離は4000メートルかもしれないな

 

 ミホノブルボンは、知っていた。ライスシャワーを入念に、丹念に観察していた男から、そう知らされていた。

 

 迫りくる登り坂を目にしたメジロマックイーンが、やや前に傾く。スパートをかけるのは下り坂を越えてからだが、ステイヤーの脚は瞬時に最高速を出せるわけではない。故に彼女は、最高速に到達するための姿勢に入ったのである。

 メジロマックイーンとライスシャワーは似ている。お互いに、一瞬の切れ味とは無縁の脚をしている。速さが長く持続する、鈍い脚。それこそが、彼女たちが共通して持つステイヤーとしての資質、その象徴。

 

 シンボリルドルフに代表される中距離ウマ娘は、ステイヤーの持つ長く持続する鈍い脚とスプリンターの持つ短く爆発するような鋭い脚の中間である。

 そしてミホノブルボンの資質は、スプリンターのそれである。短い距離であればこそ本領を発揮する、一瞬に全てを注ぎ込むかの如き爆発的な末脚。

 

 彼女がこれを十全に発揮するには、天皇賞春は2000メートルくらい長かった。疲労があり、そして出そうとしても満足な末脚を出せないことを察知していた。

 やはり、3200メートルは長い。

 それは無論、勝てないわけではない。だが、有馬記念の時のような爆発力は出せない。

 

(それでも)

 

 勝ちたい。

 

 その気持ちは、ライスシャワーも同じだということはわかっている。それどころかこのレースに参加するすべてのウマ娘が思っているだろう。

 

 だがそうわかっていても、勝ちたいと。そう思わずにはいられない。思っても何も変わらないし、誰もが思っていることだとわかりつつも、そう思わずにはいられない。

 

 目の前には、坂がある。菊花賞の時も越えた坂が。

 

(ここで)

 

 背筋が灼けるような闘志が、フラッシュバックした。

 忘れもしない去年の11月8日。ライスシャワーは、この坂を登り切ったところで襲いかかってきた。

 

 今は不気味なほどに静かなライスシャワーの方へ、あの時のようにちらりと振り返る。

 

(淀の坂)

 

 あのときと同じ、高低差4.3メートルの淀の坂。

 あのときは駆け下ってきたライスシャワーから逃げ切れた。危なげなく勝てた。

 

 ――――たった200メートルしか伸びていない。

 ――――たった半年しか経っていない。

 

 無責任な外野は、こんなことを好き勝手にいう。

 だがミホノブルボンからすれば、200メートルも伸びたのだ。半年も経ったのだ。

 

 彼女は才能のない自分が半年間で成し得た努力を、その結果としての成長を知っている。

 ライスシャワーには、才能がある。ミホノブルボンにはない才能が。そしてその才能は、明らかに長距離に向いている。

 

 警戒の針を後ろに向けたミホノブルボンは、速度が固定された脚でメジロパーマーを抜き去った。徐々に速度を上げてくるメジロマックイーンと、ライスシャワー。二人を突き放しにかかったように見えて、そうではない。自分の走りを貫いた結果、メジロパーマーを抜き去った。ただそれだけのこと。

 

 登り坂では、速度が落ちる。この実に当たり前の現象は、メジロパーマーにもメジロマックイーンにもライスシャワーにも降りかかった。

 

 淀の坂は、ゆっくり登ってゆっくり降りる。

 幾人かのウマ娘によって破られているとはいえ、依然として鉄則は鉄則としてそこにあった。

 

 そしてミホノブルボンが先頭に立った、その瞬間。

 

 空気が、変わった。

 

 後ろで、必死に抑え込まれていた焔が爆発した。

 刹那、振り向く。

 

 ――――振り向いた先には、鬼がいた。

 

 理性という扉の奥で閉塞され飢えていた焔、抑え込まれていた焔。

 3バ身の向こう側。氷のような冷徹さに満ちていた瞳に、目的に向けて極限まで研ぎ澄まされた身体が、燃え尽きよとばかりの熱を持つ。

 

(これだ)

 

 ミホノブルボンは、閃光の速度で感じた。

 闘走心の使い方の手本が、すぐそこにある。折り合いをつけた。その一言で済ましながら、ミホノブルボンはやはり心のどこかで闘走心を使い倦ねていた。

 

 空の青が、ターフの緑が伸びてきた影色の蔦に捕獲され、染まる。粘り気のある、暗い色。

 それはおそらく、勝利への執念。これまでのライスシャワーの領域が追いつき差し切ることを目的としたものならば、これは追い越し差し穿つ為の領域。

 

 青薔薇の蕾に囲まれた箱庭の中を見回し、マックイーンはすぐさま紅茶をキメて息を入れ、本格的に発動する前にさらりと脱出した。

 ライスシャワーの領域――――ゾーンは個人に勝つ為のものであり、マックイーンは巻き込まれ事故のようなものである。

 だがそれにしても、迅速な判断だった。

 

 通常ならば、終盤の直線終わりまで保つようにマックイーンは自身の領域を構築する。ゾーンに入る。

 だが今は淀の坂の降りはじめ。明らかに、領域を構築するタイミングとしては早い。最後の直線が終わるまで保たないだろうと自分でも確信してしまうほどに早い。

 

 だがそれは、的確な脱出だった。

 

(なんなんですのあれは……)

 

 脱兎のごとし。

 領域内で息を入れ、メジロの悲願――――天皇賞春へと突き進むマックイーンは、内心の動揺を必死に収めて前を向いた。

 

 前には、ミホノブルボン。そして、僅か先にライスシャワー。

 今の彼女にライスシャワーを抜かすだけの速度はない。ライスシャワーは淀の坂から急降下して、足りない速度を無理矢理補って走っている。

 

 それは、何もかも擲つような走りだと言えた。選手生命をすり減らしても勝ちたい相手がいる。黒く小さな背中が、そう言っている。

 

(凄まじい覚悟、それを悟らせない心の強さ……!)

 

 見事。本当に、本当に見事。

 メジロマックイーンは、激賞した。心の底からライスシャワーと言うウマ娘に敬意を払った。

 

 メジロマックイーンには、それがない。全てを賭して勝つのではなく、トータルで勝つ。個人ではなく、レースに勝つ。

 名門メジロ家の教育の真髄はまず、己の身を保護することにある。だから、無理はしない。できないように、育てられる。

 

(ライスシャワーさん。謝ります。心から)

 

 メジロパーマー、ミホノブルボン。

 自分とはタイプの異なる二人こそ、メジロマックイーンは注視していた。

 

 他のレースではいざ知らず、春の天皇賞においては負けない。自分と同じタイプに、敵はいない。

 去年この場で、彼女はトウカイテイオーに――――無敗を誇った当世最強のウマ娘に勝った。

 だからこそ、今回負けがあるとすれば違うタイプのウマ娘だと考えていた。そしてそれは逃げの二大巨頭である、メジロパーマーとミホノブルボンのどちらかになるだろうと。

 

 メジロマックイーンは、自分の実力を信じていた。自分の実績を信じていた。

 トウカイテイオーが比類なき天才であることを、そして少なくとも京都芝3200メートルではその比類なき天才に勝った自身の力を信じていた。

 

 そのトウカイテイオーへの信頼が、彼女の視界からライスシャワーというウマ娘を消した。

 

 ――――王道の型をとるウマ娘の中で、トウカイテイオー以上はいない。

 

 彼女はなんの疑いもなく、それを信じていた。

 

 そして、トウカイテイオーに勝ったウマ娘は、この場にもう一人いる。

 

(来るでしょう)

 

 ミホノブルボン。ライスシャワーの難攻不落の領域に囚われた、歴代でも屈指の逃げウマ娘。大阪杯の覇者。

 

(終わりません。このままでは、終わりませんわ)

 

 でなければ、トウカイテイオーに勝てるはずがない。

 大外からの1バ身差。そこまで詰めながら、軽々に抜きにかからない。

 

 ライスシャワーの見落としというやらかしをしたが故の慎重さを見せるメジロマックイーンは、警戒の糸を緩めていなかった。




39人の兄貴たち、感想ありがとナス!

心太者兄貴、カロチノイド兄貴、kanichan兄貴、すいか2580兄貴、評価ありがとナス!


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サイドストーリー:挑戦の果てに

 時はマックイーンが心の中でライスシャワーに自らの不明を詫びてから、やや遡る。

 電撃のような反応で弾かれたように脱出を果たすメジロマックイーンに続こうとしたミホノブルボンの行く手を、蔦が阻んだ。

 

 ――――逃さない。逃げさせない

 

 脚に絡みつく蔦からは、ライスシャワーの想いが感じられる。

 

(私も、入るべきでしょう)

 

 領域に。自身の領域を構築し、ライスシャワーのそれを打ち消す。討滅する。

 ライスシャワーの領域。ライスシャワーの世界というべきそれを、自分で塗り替える。環境を己に適応させる。

 

 それは自分にもできることだ。

 わかっている。わかっているが、ミホノブルボンはもう少し、この世界を見ていたかった。

 

 ライスシャワー。ステイヤーとして芳醇な才気に溢れた、貴門の出のウマ娘。闘志を最大の武器とする、密やかな自信家。

 何もかもが自分と対極の、だからこそ心から尊敬できる好敵手。

 

 トウカイテイオーが闘走心と理性を共存させた極致にいるとすれば、ライスシャワーは闘走心で自らを染め上げている。自らの身体を自らの闘走心で焼き尽くしながら突っ込んできている。

 

 薔薇が、厳しい冬の雌伏の期間にしっかり剪定され、切り戻しをして春の目覚めへ備えるように。

 これまで理性によって雌伏を強いられ、凝縮された青い焔が、僅かの乱れも漏れもなく、ただミホノブルボンだけを追う。

 ライスシャワーというウマ娘の真髄、マーク屋としての極まった本質がここにあった。

 

 いつまでも、見ていたかった。自分には持ち得ない才能と、執念の煌めきを。

 

 だが、そう悠長をしていてもいられない。ミホノブルボンの脚に絡みついた青薔薇の蔦はスタミナを貪欲に吸い取り、蕾を膨らませつつある。

 

(開花させてしまっては拙い)

 

 だが、このまま領域を構築しても返り討ちになる気がする。

 普段ならば気にしない直感的な部分が、ミホノブルボンに語りかけていた。

 

 有馬記念のあと。

 もう少しで、新たな地平が見える気がしていた。それはきっと、闘走心を巧く使えてこそ見える景色。

 

 しかしそのもう少しを埋められる程の才能は、ミホノブルボンにはない。

 ギリギリまで粘ったが、彼女は結局見切りをつけた。新たな地平を己の力のみで見ることを諦めた。

 

 だがこの時、ミホノブルボンは自分の中の歯車と歯車とが見事に噛み合うのを実感した。

 ライスシャワーという強力極まりない激流を真正面から受け止めて、その背を押されたのである。

 

 その押されたことによって踏み出した一歩が、闘走心と理性の折り合いを付けさせた。

 天に浮かぶ紫陽花色の瀟洒なランタンに宿る鬼火が、ミホノブルボンのみを見つめている。

 

 ――――来い、とでも言うように。

 

 蒼い焔に彩られた青薔薇の庭に、無骨で無機質な歯車が浮く。

 あくまでも有機的で生物的な彩りを見せるライスシャワーの領域に対して、ミホノブルボンのそれはいかにも機械じみていた。

 

 浮かぶ歯車と歯車とが噛み合い展開される、高雅な庭を貫くサーキット。焔を宿しながらも不気味な冷たさの漂う庭が無慈悲な工事によってぶち抜かれ、外へと続く加速路が伸びる。

 

 加速路を走り抜け、そして宇宙に至る。一貫性のある領域。

 2段階目への進化で手に入れた領域を飛躍にではなく、あくまでも前座で使うというあたりにミホノブルボンの堅実さ、思考的な飛躍のなさが表れていた。

 

 即座に歯車に蔦が絡みつき、加速路の展開を妨げる。

 

(これは勝てませんね)

 

 凄まじく他人事な、そして果てしなく冷静な判断。

 加速路がぶち抜いてくれた領域の外へ繋がる道を、ミホノブルボンはとっとと駆け出した。

 

 ミホノブルボンの新たなる領域の真髄は、展開され切った加速路でブーストして速度を上げ、そのまま宇宙を征く領域へと繋げられる。

 だがこの場合宇宙へと続く路は展開しきらず、加速を与えてくれる歯車も蔦に絡め取られて動けない。

 

 故にほんの僅かな――――それこそつんのめるような微弱な加速をだけを、ミホノブルボンは得た。

 

(アニメでは新必殺技は絶対に決まるというのに……やはり現実は厳しい)

 

 関節を引っ張って無理矢理外したかのような異音と共に破壊されていく歯車をちらりと振り返りつつ、ミホノブルボンはなんとかライスシャワーの領域を抜け出した。

 

 領域のぶつけ合いに勝ったのは、ライスシャワー。

 目的を果たしたのは、ミホノブルボン。

 

 少しだけ持っていかれたスタミナを嘆くこともなく、ミホノブルボンは外への素早い首振りで状況を把握した。

 スタミナを回復させたメジロマックイーンが加速し、大外から迫りつつある。

 

 同じくライスシャワーもスタミナを回復させていることだろう。

 

 ちらりと、ミホノブルボンは首を内側に回してライスシャワーを見ようと、感じようとした。常に影のように後ろにいるはずの彼女は、死角に居る。

 故に首をいくら振っても、見えるのは影だけ。片鱗だけ。それだけのはずなのに、本体が見えた。黒いウェディングドレスが見えた。

 

 ――――しまった

 

 ――――もらった

 

 そう思うのは、同時だった。

 1バ身を空けてミホノブルボンを追うライスシャワーの身体は、最内にある。

 ミホノブルボンがメジロパーマーを抜くときに行った、外への移動。そのために生じた間隙を、ライスシャワーは見逃さなかった。

 

 先頭に立った時点で即座に領域を構築し、ミホノブルボンの思考を『最適なコースへと向かうこと』ではなく『ライスシャワーの領域から抜けること』へと偏らせる。

 偏らせて、領域の突破に専念させる。専念させて、突破されなければそれはそれで良し。問題なく勝てる。

 

 ――――だけど、突破してくる。ブルボンさんなら、きっとそうなる

 

 だから、二の矢を番えて待っていた。突破した安堵を、突破するまでの思考の空白をついて、ミホノブルボンの戦法が実行されることを防ぐ。

 

 その戦法とは即ち、最効率のレース。最内を走り最短距離を最高速で勝つ、ということ。

 ミホノブルボンは常にそうだった。道中大外を行っても、常にゴール板を駆け抜けるときは最内の経済コースにいた。それは単純に、効率がいいから。ミホノブルボンというスプリンターがより長い距離を戦場にするにあたって、効率を求めることが必要だったから。

 

 坂を降り終えた3人。

 続くパーマー、マチカネタンホイザ。

 

 最内にライスシャワー。隣にミホノブルボンとメジロマックイーン。

 彼女らには一様に、最後の直線――――404メートルが待っている。

 

 メジロマックイーンが外から。ライスシャワーが内から。

 それぞれ、迫ってくる。当初避けたかった最悪の状況とはつまり、これだった。

 

 最強クラスのステイヤー二人に、マークされること。しかも最悪としていた想定とは違い後ろからではなく、両隣から。

 その想定はしていた。だからこそ、東条隼瀬は参謀としてミホノブルボンにマークの外し方を教えた。序盤でなすりつけろ、とも言った。

 

 その目論見はうまく行っていた。本来の彼の想定であれば、ミホノブルボンはメジロパーマーを抜いて即座に最内に付けるだろうと予想していたのだ。

 その後はロスなく走ることのできる技術があるから、ライスシャワーはやはり外から仕掛けることになるだろう、とも。

 

 となれば、マックイーンの注意はライスシャワーに向く。

 ライスシャワーがミホノブルボンを、マックイーンがライスシャワーを。これが本来、終盤戦の形になるはずだった。だが、そうはならなかった。

 

 ライスシャワーは内から仕掛け、そしてその結果1バ身にまで詰められた。2バ身以上であれば最内に身を寄せて進路を塞げたが、1バ身では反則がとられる。このレースではもう、最内は走れない。

 

 影はとうに踏み荒らされた。そして、追いつかれるだろう。あとは、落ちるだけ。

 一定の速度を保つだけで精一杯なミホノブルボンに対して、二人はこれからも加速する。

 

(負ける)

 

 いつだって、勝つことを疑いはしなかった。今だって疑っていない。だが現実として、そういう予想が頭に浮かぶ。

 自分と自分を信じてくれる全ての人を信じる心の部分と、理性的な部分とが相克を起こしていた。

 

(負ける)

 

 いやだ。負けたくない。

 それはほとんど、子供の駄々のような感情だった。

 

 負けたくない。負けたくない。信じてくれたのに。勝ってくると言ったミホノブルボンを、あの人は信じてくれたのに。夢想ばかりで現実の裏付けがなかったミホノブルボンというウマ娘を、多くの人が信じてくれているのに。

 気持ちが急く。機械的な走りから、猛獣じみた走りに変容していく。

 

 だがそれは進化ではなく、退化だった。追い縋られ、焦って駆けていく。構築しようとした領域が霧散していく。

 重なりかけていた影が離れ、そしてミホノブルボンは再びライスシャワーの前に立った。

 

 迫って、迫って、迫り過ぎた。

 ライスシャワーは、そういうミスをしていた。彼女が最初に発現させた領域は、ライスシャワーがミホノブルボンへ迫り過ぎたが故に、追いつきかけたが故に構築することができていなかった。

 

 その満たされないはずだった条件が、今満たされた。他ならぬミホノブルボンの焦りによって。

 

 ――――今度は、逃さない

 

 まとめて絡め取る。

 必殺の、必死の思いで構築された領域は、またしても二人を呑み込んだ。

 庭ではなく、教会のような荘厳さが漂う暗い建物。

 

 勝つ。

 

 鬼火を宿した双眸が揺れるようにひときわ光り、前に立つ二人に襲い掛かる。

 

 蔦に絡め取られ、加速の尽きたマックイーンのスタミナが減っていく。ミホノブルボンもまた、翼を絡め取られた鳥のように地へと落ちていく。

 

 ライスシャワーも、必死だった。そしてメジロマックイーンもこの期に及んでの余裕などなかった。スタミナを吸い取る蔦に身体を任せ、条件を満たす。

 

 メジロマックイーンの2段階目の領域の発動条件は、非常に厳しい。

 ギリギリまでスタミナを削り取られた瞬間に発動するそれはまさに起死回生。空を翔ぶような軽やかな脚で、残り300メートルを駆ける。

 

 そしてミホノブルボンには、切るべきカードがなかった。ここに来て先頭に立ったメジロマックイーン、それを追うライスシャワー。

 ミホノブルボンはまだ辛うじてライスシャワーの前に居るが、本当に居るだけ。既にスタミナも残り僅か。頼みの綱のスピードも不用意に加速したせいで落ちつつある。

 

 ――――負けるのは、嫌だ

 

 俯く。目の前が暗くなったミホノブルボンは、それでも前を向いた。

 負けるとわかっていても、最後まで走り切る。勝つための最善を尽くす。

 

(これ、は)

 

 そんな彼女の前に、扉が現れた。蹴り壊されたような穴から、冷たい風と光が漏れている。

 

 本能的に、わかった。

 この扉は、勝つために開くべき扉だと。自分ならば、極限まで追い込まれた自分ならば、開ける扉だと。

 

 扉に触れる。ゾッとするほど冷たい。体温が根こそぎ奪われていくような、孤独を感じさせる冷たさ。

 それでも、腕で扉を押す。開きかけた扉が、何かに押されるように閉じた。

 

 ――――この扉を開くということは、スピードの向こう側にいく、ということですよ

 

 誰かが、言った。

 スピードの向こう側に。その速度を得ることで、勝てるなら。マスターの期待に応えられるなら。

 

 ――――負けてもいい。無敗伝説が続こうが破れようが、そんなことはどうでもいい。無理して走り切らなくてもいい。無事に帰ってこい

 

 誰かが凭れている。扉の前に、背中を預けている。扉に両手をつけてその誰かを押しのけるような勢いで押そうとした腕が、止まった。

 

(無事に)

 

 ひとりではない。

 自分は、ライバルと走っている。強敵と走っている。だが、たったひとりで立ち向かっているわけではない。

 

 ――――ライスシャワーの領域を破る方法の仮説がある。そして、勝つ方法もな

 

 いつも通り。

 そう言い合ったあと、彼は口を開いた。

 

 ――――これは博打だ。うまくすれば1着になれるが、下手をすれば4着まで転げ落ちる。だが、博打でしか打開できない状況に至ったときに、役に立つはずだ

 

 ミホノブルボンは、扉から手を離した。

 瞬間、彼女の眼に映し出される景色はライスシャワーの領域に戻る。

 離して大きく、息を吸う。迫るライスシャワーに向かって、自ら減速して近づいていく。

 

 影が重なり、過ぎ去る。

 そして、ライスシャワーの領域は弾けた。霞のように、ミホノブルボンを囚えていた領域は霧散した。

 

 ――――あいつはお前に迫り、追いつき、追い越すために走っている。それは間違いない。だが、追い越したあとはどうかな

 

 そこまで考えられるのか。

 ライスシャワーの最大の長所は、その一途さ。向こう見ずさ。マークの相手を信じ切り、命運を委ねてしまうほどの果断な決断力。

 栄光も凋落も共にする。その姿勢は間違いなく、美点だ。長所だ。未来への不安を考慮することなく、覚悟で以て道を切り開く。

 

 それはシンボリルドルフにもミホノブルボンにもできない。だから一瞬の決断力においては、ライスシャワーが誰よりも優れている。

 だがその一瞬が過ぎ去ったあとは、どうか。覚悟で切り開いた道を歩む為のコンパスを、彼女は保持しているのか。

 

 ――――断言しよう。持っていない。彼女はその果断な決断力故に、優れた割り切り故に、未来への指針図を描けない。だから極論、抜かせてしまえば彼女の強みは消え去る

 

 スノーホワイトの本。

 渡されたそれに書いてあった、極意。本来全力で走るべきところで、走ること以外は考えるべきではない勝負所で息を入れて態勢を立て直す。

 

 正気ではない。残り300メートル地点で、息を入れるなど。

 ライスシャワーもメジロマックイーンも、実況も観客も誰もかも。

 

 とある二人を除いた誰もがこのとき、ミホノブルボンの伝説の終わりを感じた。

 

 負ける。逃げウマ娘は、垂れたら終わり。減速して、抜かれたら終わり。その鉄則は、古今東西どのウマ娘にも適用されてきた。

 

 

 そう、たったひとりを除いて。

 

 

「物にしたな。最後の最後で」

 

 息を入れる。メジロマックイーンが最初にミホノブルボンを捉え、次いでライスシャワーが抜き去った。

 同時に役目を果たした領域が消え去り、ライスシャワーは油断なく視線を外へ向ける。

 

《外からメジロマックイーン! 内からライスシャワー! 内からライスシャワー!》

 

 もはや誰もが、ミホノブルボンを見ていなかった。メジロマックイーンの3連覇か。ライスシャワーの悲願の初GⅠ制覇か。

 

《ライスシャワー来ている! 今年だけ! 今年だけ! もう一度頑張れマックイーン!》

 

 ターフの名優。

 どんなときでも涼し気で、余裕すら漂っていた芦毛のウマ娘。メジロマックイーンの顔には、明らかに疲労があった。去年にも一昨年にもなかった、濃い疲労の色があった。

 

 だがライスシャワーに、それはなかった。疲労を超越する意志の強さ、精神力によって、彼女は脚を動かしていた。

 

 もはや、真っ直ぐ走るだけ。マックイーンは内に進路をとらない。とれない。

 自分に匹敵するステイヤーと双方の牙が折れ砕けるほどの激戦を交えている彼女には、そんな細かいことを考えている余裕はない。

 

 そんな二人の激闘の隙間に、一陣の風が通り過ぎた。

 眼から白い焔を帯のように揺らして、全身に白い粒子を纏いながら。

 

《ミホノブルボン突っ込んできた! ミホノブルボン、息を入れて再び差し返す! マックイーンを躱した!》

 

 ミホノブルボンは、加速した。

 スピードの向こう側になど、いかなくていい。

 ただこの場を勝つだけのスピードが、加速があればいい。そのためには一か八か、息を入れるしかない。

 

 元々失速しかけていたのだ。腹を括って落ちたように見せかけて、息を入れる。そして差し返せるだけのギリギリまで息を入れ続けて、爆発させる。

 

《ライスシャワーか! ミホノブルボンか!》

 

 ライスシャワーは、ミホノブルボンから目を離した。メジロマックイーンに目を向けた。

 それは、正しい判断だった。そうでなければ彼女は、メジロマックイーンを差せなかっただろう。

 

 そのほんの一瞬の間隙、僅か数度の死角を、ミホノブルボンは突いた。

 

《食い下がるミホノブルボン! ブルボンが差すか! ライスシャワー差されるか! マックイーン差し返すか! 勝つのはメジロの誇りかブルボンの意地か、ライスシャワーの執念か!》

 

 いつも冷然とした無表情のミホノブルボンが、目を見開く。口を一文字に結ぶ。

 残り10メートル。マックイーンがハナ差に迫り、ライスシャワーが僅かに先に居る。

 

(あと一歩を……!)

 

 全員が、同時に、同じことを思った。

 

 不自然なまでの前傾姿勢。崩れ切ったフォームで、ミホノブルボンは文字通り突っ込んだ。

 ライスシャワーも、メジロマックイーンも、疲労でめちゃめちゃになったフォームで最後の力を振り絞る。

 

 猛練習でインストールされたデータも、幾重にも積み重ねてきた修練も、名門にふさわしい優雅さも。全てをかなぐり捨てて三者は走る。

 

 最後の100メートルで、何度も何度も入れ替わった順位。

 三人の内、一人が僅かに突出してゴール板を駆け抜けた瞬間、歴史に残る春の天皇賞は終わりを告げた。

 

 内柵に手を掛けて俯いて激しく息をするライスシャワー。

 最後の力の残滓でかろうじて脇に逸れ、ターフに突っ伏して上下にしか動かなくなったマックイーン。

 そして、肩で息をしながら空を見つめるミホノブルボン。

 

《驚異的なハイペース! 激戦に次ぐ激戦を制したのは――――》

 

 ――――ミホノブルボンの差し返しは、誰もが感嘆するほどに完璧なタイミングだった。

 

 評論家たちは、口を揃えてそう言った。

 1秒遅ければ、ライスシャワーを差せなかった。1秒早ければ、メジロマックイーンに差し返されていたと。

 

《――――最強の名を我が物としたウマ娘は、ミホノブルボン! スプリンターが3200メートルを駆け抜けた! 限界を超越する努力を以て、距離適性の無意味さを証明しました!》

 

 そんな実況の大興奮の声を、ミホノブルボンは上の空で聴いていた。

 

 ――――立っている。すごい

 

 そんなふうな声も聴こえるが、既に歩く元気もなく、座る元気もない。だから他に選択することもできず、立っている。ただそれだけの話なのだ。

 

「ブルボン」

 

 その声を聴いて、ミホノブルボンは安心した。無事に帰ってこられた。このひとを、悲しませずに済んだ。喜んでもらえた。

 そしてその安堵が、彼女の張り詰めた緊張の糸をプッツリと切った。崩れ落ちそうになった身体をなんとか支え、とこ、とこと歩き出す。

 

「ちゃんと帰ってきました、マスター」

 

「ああ」

 

「蓄積疲労97%、【疲労甚大】と呼べるステータスですが……私は今も元気です」

 

「ああ」

 

 ――――よかった

 

 その万感の思いを感じる一言を聴き終えて、ミホノブルボンは一歩一歩、東条隼瀬との距離を詰めた。

 

「マスター。私は疲れています。正直今、いつ倒れてもおかしくないほどの状態です」

 

「……まあ、見たらわかる」

 

「なぜ倒れなかったのかといえば、マスターに心配をかけさせたくなかったから、に他なりません。なのでいつも通り――――」

 

 ひょい、と。

 疲れ切った脚が、宙に浮いた。

 

「いつも通り、こうして運ぼう」

 

「……はい。そうしてください」

 

 鳴り止まない歓声の中で、ミホノブルボンは笑った。




65人の兄貴たち、感想ありがとナス!
rumjet兄貴、zin8兄貴、フタグラ兄貴、阿弥陀兄貴、ませう兄貴、麒麟0809兄貴、海扇@兄貴、ブルボンヌ兄貴、wahakamaboko兄貴、hogget兄貴、ジノン01兄貴、評価ありがとナス!

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サイドストーリー:ラブコメの波動を感じる

今日は私の誕生日なのでラブコメを書きました。


 レースとは基本的に、日曜日に行われるものである。

 そしてウマ娘たちは一応学生ということになっているし、それ相応の学力を身につけるための授業を受ける必要がある。

 

「お休みですか、マックイーンさんも」

 

「も。ってことは、ライスも?」

 

「はい。どうやらお疲れのようです」

 

 お疲れになるべきはキミもでしょ。

 そう言いかけたトウカイテイオーは、ずぞぞーっとコーヒーをすすって、顔をしかめる。

 

 それは、昨日のこと。

 

 ――――マックイーン、お疲れさま

 

 ――――疲れましたわ……本当に疲れましたわ……

 

 ねぎらいに……そして、敢闘を讃えにきたトウカイテイオーを前に、メジロマックイーンは濃い疲労を吐露した。

 

 ライバル相手に、弱みは見せない。

 あくまでも最強のウマ娘としてトウカイテイオーの前に立ちはだかっていた最強のステイヤーらしからぬ、でもマックイーンらしいと言えばらしい正直さ。

 そう言いながらも、春風のようにふわりと笑うメジロ家の令嬢の微笑みには、悔しさと同じだけの満足さがあった。

 

 ――――前三人が3分11秒台はヤバいと思うよ、ホントに……

 

 ――――あら、そうでしたの

 

 超高速の戦い。

 バ場が最高に良かったという環境もあるし、カラリと晴れていたこともある。

 だがやはり、なによりも三人の実力は突出していた。

 

 芝に突っ伏したまま寝始めたマックイーンは担架に担がれて、ライスシャワーは彼女のトレーナーにおんぶされて、ミホノブルボンはお姫さま抱っこされて、それぞれターフを後にした。

 

 ――――でも……

 

 ――――でも?

 

 ――――楽しかったですわ。本当に。自分の全力を出して、全力で立ち向かい、それでも負ける。わたくし、これまで負けたときは何かしら理由がありました

 

 宝塚、天皇賞秋、ジャパンカップ、有馬記念。

 メジロマックイーンが負けたレースの代表格たるこの4つのレースでは、己に負けるにたる理由があった。

 

 ――――全力を、全力で叩き潰される。初めての経験です

 

 ――――ああ……なんていうか、わかるよ

 

 相手の力の全てを引き出す。引き出した上で、勝つ。

 ミホノブルボンには、そういうところがある。

 

 ――――別にそう志しているわけではないと思いますけれど

 

 疲れ切って震える脚を撫でながら、マックイーンは笑った。その笑みにつられてトウカイテイオーも笑い、言ったのだ。

 

 ――――たぶん不器用なだけだと思うよ

 

 と。

 

「で、何食べてるのさ」

 

「まんま肉まんです」

 

「……肉まん?」

 

「はい。まんま肉まんです」

 

 ああ、そういう商品名なのかと。納得したトウカイテイオーは、いずれ自分が通うであろう高等部の教室をくるくると見回して、特に目的もなくここへ来た自分に気づいた。

 

 参加者としてではなく、観戦者として。彼女は、春の天皇賞を眺めなければならなかった。

 春の天皇賞。自分の無敗が打ち破られたレース。そこで、自分の無敗を打ち破った相手に勝つ。

 

 データ化すれば、微差だ。アタマ差とか、そのあたりだ。

 だがあの3200メートルという長距離でその少しを詰めることが如何に難しいかを、トウカイテイオーは理解している。

 

「今朝、坂路での練習はありませんでした。しかし午後、座学を行う予定です」

 

「今日くらい休めば?」

 

 メジロマックイーンもライスシャワーも、疲れ切って寝ている。多分起きるのは今日の夜とか、そこらへん。

 だがたぶん誰よりも疲れているのにピンピンしているミホノブルボンは、疲労回復力がずば抜けているのだろう。

 

「いえ。才能のない者は、努力するしかありません。宝塚記念で勝つためには、弛まぬ努力が必要です」

 

「言っておくけど、カイチョーは強いよ。ボクは一回だけ一緒に走ったことがあるけど、尋常じゃなかった」

 

 才能の差で負けたわけではない。肉体、精神、技術、経験、全てで負けた。言い訳のしようもなく完璧に負けた。

 別に心が折れているわけではないが、トウカイテイオーはちょこっと凹んでいた。

 

「そうでしょう。ですが、勝てます」

 

「なんでさ」

 

「マスターが勝てるとおっしゃいました。つまりそれは、策を実行する力が私にあれば勝てるということです。そしてその力に、私は努力で到達します。到達するためのトレーニングを、マスターが考えてくださるでしょうから」

 

 レースでの勝者は、たったひとり。

 何を背負っていても、何を思っていても、何が懸かっていても、何を信じていても。ただひたすらに、残酷なまでに、実力だけで優劣が決する。

 

 ミホノブルボンの無敗も。

 マックイーンの3連覇も。

 ライスシャワーの勝利への執念も。

 

 どれも、叶えられるべき想いだった。だがそれでも、叶えられるのはたったひとつだけ。

 

 ほんの少しだけの、疎外感。天皇賞春。ライバルたちの鬩ぎ合いに立ち会えなかった敗北感。

 

「ボクも、信じてるから」

 

 自分の力を、心を。才能を。そして、トレーナーを。

 その裏にあるものを察したのか、ミホノブルボンは頷いた。

 

「それでこそです。このままいけば宝塚では、貴女を警戒することになりそうですから」

 

 トウカイテイオーの耳が、ぴょこんと上がった。

 ライバルとして見られている。そのことが、単純に嬉しい。嬉しいが、それ以上の疑問がある。

 

「……カイチョーはいいの?」

 

「ルドルフ会長を相手にできるのは、マスターだけです。マスターはそう思っていないでしょうが、私はそう感じています」

 

 あの二人の間には、特別な絆がある。無二の信頼がある。

 それはなんとなく、わかる。雰囲気とか、交わす言葉の少なさとかで。

 

 トウカイテイオーは、コミュニケーション能力のおばけである。だから常に誰かと喋っているし、とにかく明るい。

 だが最近、親しいからこそ賑やかになるとも限らないことを彼女は知った。

 

 いつものように生徒会室に忍び込んだとき、あの二人はほぼ「君」とか「お前」とか「おい」「ああ」「これ」「それ」とか、とにかく短い単語だけで仕事をしていたのだ。

 なんとなく、お互いの言うことがわかる。だから、別に喋らなくてもいい。

 

 エアグルーヴにも、ナリタブライアンにも、時折お手伝いさんとして来る自分にも、カイチョーは的確で細やかな指示を出す。

 それは疑問の余地も思考の余地も残さない程の適切で、無謬なもの。だがそう言った細やかさとは程遠い大雑把さで、カイチョーは彼に接していた。

 

 それはたぶん、彼もそうだ。基本的に口うるさい――――一挙手一投足に注文をつけるタイプのあの男が、カイチョー相手にはほとんど何も指示していなかった。

 

 そういう関係を築けている相手は、トウカイテイオーにはいない。これは天性のお喋りであるということも大いに影響しているが、少なくとも彼女はそうは思っていなかった。

 

「……そうかもね」

 

 個人的な好き嫌いは別にして、有能であることは間違いない。

 そんな複雑な感情を他所において、トウカイテイオーはミホノブルボンの話を聴いて少し気になった部分に触れた。

 

「はい」

 

「でもさ。アレにも計算間違いはあると思うよ。その間違いを修正するのはブルボンで、実際に走るのもブルボンなわけで。だから……なんていうのかわからないけど、カイチョーのこともちゃんと見た方がいいって、ボクはそう思うな」

 

 パチリと、青い瞳が瞬く。

 深みを増して少し紫がかったようにも見えるそれにじっと見つめられて、トウカイテイオーは少し肩をすくめた。

 

「……ご指摘、感謝します。テイオーさんのおっしゃる通りです」

 

 信じる。頼る。そして、頼られる自分でいる。それは当たり前のことで、やるべきことの範疇でしかない。

 だがより、マスターの役に立つには。マスターの負担を減らすには。その答えを思わぬところから得て、ミホノブルボンはまんま肉まんを嬉しさと共に頬張った。

 

(観察、観察、観察……)

 

 座学が終わったあと、マスターにルドルフ会長のレース映像を借りて観察しよう。

 そんな計画を自ら立て、ほんのりと成長を見せるミホノブルボンは、パチパチと眼を瞬かせた。

 部室の前に、誰かいる。

 

(あれは……)

 

 サクラバクシンオーさんのトレーナーさんだ、と。彼女は記憶内にあるデータベースから引き出して照合し、導き出した。

 

 何度も何度も頭を下げて去っていく彼は、サクラ軍団――――シンボリ家・メジロ家・トウショウ家・ナリタ家のように貴門・名門というよりも、急速に成り上がったコンツェルンというべき一門――――のウマ娘を統御する、お抱えのトレーナー。

 

「マスター」

 

 セグウェイからぴょんと降りて、ミホノブルボンは少し後ろを振り返った。

 視線の先には実に嬉しそうに、跳ねるように去っていくサクラバクシンオーのトレーナーが、るんるんと走っている。

 

「早いな、ブルボン」

 

「はい。あの方は……」

 

「お前の友達のトレーナーだ。長距離を走る為の手ほどきをどうすればいいか、ということを相談されたのでな。くれてやった」

 

 これまでの研究成果を、気前よく分け与えていた。そういうことらしい。

 

「努力と研究をすれば、いずれ誰にでもわかることだ。距離の壁の克服方法が俺の編み出した方法だけ、ということになるのも良くないが、集積知による改善に期待しよう、と思ったわけだ」

 

「道が1つであればあるほど、その道を通る者は苦戦することになる、ということですか」

 

 これだけしかないと決めて覚悟を決められる者もいれば、諦めてしまう者もいる。

 だがやはり、選択肢というものは多く用意されるべきだろうというのが、東条隼瀬の持論だった。

 

「そうだ。俺としては、彼らがあの理論を踏み台にして新たな横道を開拓することに期待したい」

 

「はい。きっと、私が打ち立てた天皇賞春のレコードを更新する程の走りを見せるウマ娘が生まれる要素の1つになりうるはずです」

 

「そうなれば俺としても骨を折ったかいがあるし、この上なく嬉しいことだ」

 

 ミホノブルボンはぱたぱたと機嫌良さそうに栗毛の尻尾を揺らしていた。

 かつての自分みたいなウマ娘を、夢を無理だと切って捨てられるウマ娘を一人でも少なくするために。

 

 そしてなにより、全てのウマ娘に挑戦を祝福される環境が、目指して努力すればなれるほどの環境が与えられる幸せが降りかかるように。

 

「マスターのその利他的な姿勢を、私は心から尊敬します」

 

「利他?」

 

 利他ではない。この上なく利己的な目的で、東条隼瀬は動いている。

 この技術の無償提供は、シンボリルドルフというウマ娘が抱き、自分と共有している至上の夢を成就させるために必ず役に立つ。

 

 古くからの名家は同じような貴門との繋がりを豊富に持つが、新興の家――――サクラ軍団などとのコネクションを持たない。寧ろ対抗心に近い感情がある。

 ここで技術を無料でくれてやることで、恩を売れる。そして貴門から提供された技術を導入したという前例がある以上、それはこれからも続くだろう。

 

「と、思い返してみても俺は相当利己的な男だと思うが」

 

「はい。私のデータベースによれば、マスターはとても利己的な方です」

 

「お前、言うようになったな。あった時は従順で純真無垢な、見ていて不安になるほどにかわいらしいウマ娘だったというのに」

 

「では、実に利他的な方です」

 

「こいつ」

 

 撫でてくれとばかりにぺたんと畳まれた耳と耳の間の栗毛をぐしゃぐしゃっとかき乱して、口の端を上げる。

 

「祝福すべきであるが悲しいことでもあるな。成長というのは」

 

「マスターもなかなかに愉快な方になられました」

 

「そういうところだよ全く……」

 

 かなしいかなしい。

 からかい気味にそう呟きながら足早に歩く、ちょっと寂しそうな背中。

 しょんぼりした彼に追いつきながら、トコトコとした歩幅を広めてミホノブルボンは追従した。

 

 ――――私はマスターのものです。ずっと、それは変わりません

 

 心から、そう思う。

 たぶん、これからも少しだけ成長した姿を見せると思いますが、それだけは変わらないと。

 心の底でそんなことを言いながら、ミホノブルボンは敬愛するマスターの隣に並んだ。

 

「マスター。実は、テイオーさんから新たなプログラムをインストールしました。座学の休憩時に、それを報告したく思います」

 

「またろくでもないことを吹き込まれたんじゃなかろうな」

 

「はちみ・ナメツキー行進曲とは違い、今回は有用なものです」

 

 側に立つだけで浮き立つような気持ちになり、心が熱を持つ。

 手と手が触れ合うような距離をずっと共有できるこの時間が、ミホノブルボンは幸せだった。




91人の兄貴たち、感想ありがとナス!

sashimi兄貴、マッスルマッソー兄貴、メイヘム兄貴、はせがわわわわ兄貴、samin117兄貴、モジャゲール兄貴、ゴリちゃん兄貴、チキーン兄貴、ころじ兄貴、餅パン兄貴、木刀+兄貴、みした兄貴、ゆっぴー!兄貴、量産型通行人AB兄貴、寒ブリ兄貴、マイテン兄貴、瀬戸 内海兄貴、かもねぎ86号兄貴、もりくま兄貴、評価ありがとナス!

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オペレーション:宣戦

(心が折れる音)


 春天を超えるRTA、はーじまーるよ。

 さて、春天3ターン前に初期アイテムをブルボンに使います。

 初期アイテムなのにパート1で紹介してなかった? それは君の錯覚だよ……(HMGC)

 

 ということで、使います(確定事項)

 そして今までちょこちょこと購買部に反復横跳びをして集めたスキル本のことですが、これはまだ使いません。ブルボンのやる気が下がったときのリカバリー策として残しておきたいので。

 

 でもぶっちゃけ、ここで《コーヒーカップで一息》くらいは使っても良かったかなと、後で見直して思いました。長距離に挑むのに回復スキルがデュアルディスプレイ師匠からコツをもらった《勢い任せ》だけというアレな状況になっていたので。

 

 ということで、春の天皇賞です。3200メートルとかいうクソ長距離を走るアプリ版屈指の事故ポイントですが、それはこのワールドダービーでも変わりません。

 特にライスシャワーシナリオだと1着を強制されるのでノーコンクリアを目指すプレイヤーにとっては地獄になります。

 

 正直ここでは1着をとってほしいですが、まあ事故なら事故なりのチャートがあるのでセーフ。要は気楽にボタンを連打できるということです。

 

【天皇賞春(GⅠ)に出走した】

【ミホノブルボンは1着だった】

【ライスシャワーは2着だった】

【ミホノブルボンは《決意の直滑降》を取得した!】

【ミホノブルボンは《右回り》のコツを掴んだ】

【ミホノブルボンの長距離適性が《天才的》に上がった!】

 

 はい、勝ちました。ここまでノー事故の安全運転。素晴らしいことです。

 そして《決意の直滑降》と《右回り》をゲット。

 特に《決意の直滑降》は発動条件が厳しい固有スキルを持つライスシャワーの真の宝具――――ではなく真の固有スキルと言っていいぶっ壊れスキルです。ありがたく受け取っておきましょう。

 

 《右回り》は一応1段階目、《右回り○》になるまでは取っておきます。地固めを発動させるにはやはり、常に発動する緑スキルを多く獲得するのが一番なので。

 ◎にはしません。ただ、凱旋門賞前にスキルポイントが余ったらします。洋芝の適性共々、忘れないようにしましょう(自戒)

 

 あと長距離GⅠ全制覇記念として適性が上がりました。もう長距離に出ないから別にどうでも良い(本音)

 

 ということで……はい。宝塚記念に向けて始動します。

 相手は皇帝ことシンボリルドルフさん。言うまでもなくチートです。最初の3年間でぶつかった場合勝ち目はぶっちゃけ薄いのですが、勝った時のリターンも大きいいい女。それなりに全力を傾けます。

 

 それなりとはつまり、凱旋門賞用のスキルカスタムを崩さない程度に、ということです。

 例えば宝塚記念はウマ娘でいうところの非根幹距離に相当します。なのでこの場合《非根幹距離》のスキルを取ったほうがいいわけですが、凱旋門賞は2400メートル。即ち根幹距離に分類されます。

 なのでこの場合は、宝塚記念には役に立つにしても凱旋門賞に役に立たないから《非根幹距離》は取らない。そういうことです。

 

 と、解説をしている間にイベントが起きました。これはアレですね。バクシンオーの長距離挑戦イベントです。

 普通ならば短距離の王として君臨し続けるはずだったサクラバクシンオーが友達のミホノブルボンが距離の壁を完全に克服したことで、改めて全距離制覇の野望を抱く。

 そういうイベントなわけですが、このイベントではバクシンオーさんサイドからデータの提供を求められます。

 

 代わりに《スプリントギア》の金スキル本をもらえるわけですが、これは短距離専門の金スキル。ぶっちゃけいらないので、【礼はいらない】の選択肢を選び、体力を回復します。

 これでサクラ軍団系列のウマ娘をスカウトしやすくなりました。まあ体感相殺くらいかな……(愛嬌×)

 

 今表示されてるスカウト表のサクラ系と表示されてる部分。ここに【↑】という表示があると思いますが、これがスカウト確率アップしてるよーということです。シンボリ系の横に【↑↑↑】というのがありますが、見なかったことにしましょう。

 

 ということで、シンボリルドルフさんのもとに行きます。1フェイズを消費しますが、この宣戦布告イベを起こさないと対戦後に金スキルが得られません。ついでに言えば、うまくいけば練習を一回潰すだけのリターンは得られます。

 この場合の皇帝に勝てば【曇天走破】という晴れ天候以外ならそれなりに仕事してくれる金スキルをいただけます。

 これは緑スキルの上位互換なのでブルボンが持ってる地固めとの相性も抜群。まあ、勝てれば、ゲットできればの話になりますがね。

 

 選択肢は【俺を見ろ】、【ブルボンを見ろ】、【俺たちを見ろ】のみっつ。上から《切れ者》《注目株》《愛嬌○》が確率でトレーナーのスキルとして付きます。

 

 《切れ者》は指導しているウマ娘がスキルを取るのに必要なポイント消費を10%軽減。

 《注目株》は指導しているウマ娘が理事長・記者・ファン・後輩との絆ポイントが貯まりやすくなる。

 《愛嬌○》は本RTAを生み出した現在進行形での戦犯、《愛嬌×》の上位スキルです。要はウマ娘に好かれやすくなります。

 

 このワールドダービーというゲームはチーム運営を主目的としています。

 要は今やっている最初の3年間はチュートリアルのようなもの。長い目で見れば短所を克服できる一番下一択です。

 ですがここは《切れ者》を狙いに行きます。『未来』のことを考えていて勝てる程、『今』はなまっちょろくないので。

 

「……ああ。私を討ち滅ぼす者がいるとすれば、それは君であろうと思っていた」

 

【スピードが8上がった】

【《切れ者》になった】

 

 あ、やった。これは普通に嬉しい。そして抜群に運がいい。

 トレーナーのステによって結構減免されてたスキルが更に安くなりました。足りないだろうからオリチャーで安田記念出ようかなーとか思ってたんですが、その必要はないわ(HMHM)になったみたいですね。

 

 ということで、ステータスを上げました。

 固有スキルを2つ(【G00 1st.F∞;】【M00-G1st:F∞/L.O】)。これは変わらず。

 

 そして金スキルが6つ(【コンセントレーション】【先手必勝】【単騎行】【切り開く者】【逃亡者】【決意の直滑降】)。これも変わらず。

 

 緑スキルは5つ(【右回り◎】【良バ場◎】【雨の日○】【徹底マーク◎】【逃げのコツ◎】)。これはターボ師匠にもらったコツ(徹底マーク)と、ライスシャワーからもらったコツ(良バ場)、レースでとったコツ(右回り)、あとは上げたら美味しそうなスキルを上げました。

 ◎にはしないって言ってたって? そりゃあの時は切れ者が付くって思ってなかったから(掌神砂嵐)

 

 黄スキルは今までの7つ(【地固め】【先頭プライド】【登山家】【勢い任せ】【逃げ直線○】【逃げコーナー○】【束縛】)に加えて、【コーナー加速】と【急ぎ足】を取りました。

 

 洋芝もAにして、ヨシ!

 あとは直前に本を読ませれば完璧だな!

 

 ということで、練習に戻ります。ツインマキシマム師匠が頑張ってビックリマークを出してコツあげるよぉぉおお!(チケゾー)してくれてますが、もう君のコツは絞り尽くしたからステータス上げてくれよなー、頼むよー(懇願)

 

 と懇願しながら練習していたところで、ストップ。5月4週という中途半端なタイミングで、やる気が絶好調なのにとあるアイテムを使います。

 使うのは《コーヒーカップで一息》。【コーナー回復】を得られるスキル本です。

 

 ちなみに、スキル本は読み終えるまでに何ターンかかかるものと一瞬で終わるものがあります。

 例えば【登山家】の本なんかは一瞬で読み終えられますが、この【コーナー回復】の本など汎用性のあるスキルや金スキルの本などはそれなりにターンがかかります。これによって所謂、チームが成長しきってからの大正義プレイに歯止めをかけてるわけですね。

 

 因みに《コーヒーカップで一息》は2ターン。つまり宝塚記念のターンがきた瞬間に読み終える、ということになります。

 さて、これはもちろんレース直前にやる気が下がるというアプリ版あるあるネタを起こさないため、ということもあります。

 ですがそれだけではありません。それがこれ、トウカイテイオーの骨折イベントです。

 

 宝塚記念に向けて調整していたトウカイテイオーが原作通りトレーニング中に骨折して休養。これで3度目の骨折になります。

 3度骨折したウマ娘とか引退やろなぁ……って、海のリハクも三浦大先輩もそう言ってました。

 

 さて、トウカイテイオーが出走回避し宝塚記念を前にしたところで、今回はここまで。ご視聴、ありがとうございました。




61人の兄貴たち、感想ありがとナス!

猫の手もかりたいぬ兄貴、カッター・コンナ・ハズジャナ兄貴、にじ好き兄貴、シンプリシオ兄貴、SA0421兄貴、フォルツァ兄貴、ジュラルミン兄貴、KONOHASAN兄貴、こじゅん兄貴、Zeffiris兄貴、平部員兄貴、神洋一兄貴、惣名阿万兄貴、黒亮兄貴、雨に濡れた犬は臭い兄貴、評価ありがとナス!


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サイドストーリー:全知を懸けて

 次の敵は、シンボリルドルフ。

 皇帝の名を持つ、神に最も近いウマ娘。神すらも讃えるウマ娘を超したとすら謳われる最強にして絶対の存在。

 

 シンボリルドルフと勝つためには、ではない。シンボリルドルフに勝つためには、ということを考えなければならない。そのことを予想していたと言えば、嘘になる。

 だが、どうやったら勝てるかということは常に考えていた。そしてそれが彼女を敗北から救うことになると信じていた。

 

 シンボリルドルフに、勝つには。

 彼女が出走するレースに於いては、全陣営、全ウマ娘はそのことのみに注力せざるを得ない。だからこそ、彼らの集合知に負けないだけの全知を以て洞察に専念していたし、最悪を極めた予想を立てていた。

 

 結局その最悪を極める陣営は現れなかった。それは喜ぶべきことではあるが、拍子抜けでもあったと、当時は感じたものである。

 当時は、相当な自信家だったのだ。今はそれなりに丸くなり、自身を憂慮することもできるようになったが、少なくともあの頃はそうではなかった。

 

(凱旋門……)

 

 シンボリルドルフが、負けたレース。

 正直なところあまり見たくはないレースである。自分が関われていないが故に現実感がない。

 見ているにつけて積もっていく無念さもあるが、その無念さを押し殺すほどの現実感のなさはやはり、シンボリルドルフが全くもって『らしくない』走りを見せていたからであろう。

 

(どうにか利用できないものかな)

 

 最強の盾と、最強の矛。それらを同時に保持している。少なくとも全盛期はそうであったし、彼はシンボリルドルフが永遠に全盛期だと信じてもいた。

 となると、まともにやっては勝ちようがない。勝つには即ち、どちらかを取り上げてしまうか、全力を出させないかの二択しかないのだ。

 

 取り上げることは、困難である。であれば全力を出させないことに、こちらの全力を出す。それしかない。

 

(春の天皇賞は予想外だった。手の内がバレた。だがこれを、大阪杯での布石と組み合わせてうまく逆用できないものかな)

 

 次善の策。それを切らざるを得なかった。ならば、逆用する。そういう発想の転換が必要なのではないか。

 少なくとも既に切ってしまった手札、見せてしまった手の内に汲々として縋っても仕方がない。他のウマ娘を相手にするならば、惜しんで一度使った廃物を再利用して提供するのも選択肢の1つとして取り得るが、相手が相手である。

 

「マスター。お悩みですか?」

 

「ああ。配られたカードで来たるべき状況をなんとかしようと、無い知恵を絞っているところだ」

 

「いえ。その点に関してはいずれ解きほぐされる類のものであろうと推察します。私が触れた悩みの中身は即ち、ルドルフ会長と対決するにあたって思うところがあるのではないか、ということです」

 

「それは間違いなくある。だが、そういうものを抱えて挑むのは、あらゆる方向に対して礼を失することだ」

 

 勝利へ全てを傾けられないトレーナーに命運を託さなければならないミホノブルボンに対しても。

 そして、こちらが全てを懸けて挑んでくるであろうと信じているであろうシンボリルドルフに対しても。

 

「君は勝利を望んでいる。であれば、俺は戦うからには全力を尽くす。全知を懸ける。そうでなければ君に対しても、そして君と栄冠を争う相手にも、義理を欠く」

 

 シンボリルドルフは、自分の杖が己に挑んでくることを責めはしない。

 シンボリルドルフは、自分が討ち滅ぼされても責めはしない。

 だがシンボリルドルフは、手加減して勝利を譲られることを決して許さないだろう。

 

「それにしてもお前は、結構俺のことを信じているらしいな。それはいいことだが、盲信したまま走れば転んだ時に手が出なくなる。そのあたり、少し気をつけておけよ」

 

「ですが私が全幅の、という言葉では足らない程の信頼の念をマスターに抱いていなければゴール前286メートル地点で息を入れるなどできようはずもありません。となると、天皇賞春では負けていたでしょう」

 

 それはまったく、その通り。

 普通の神経をしていれば、息を入れれば更に突き放されると感じるだろう。そして二度と追いつけないだろう、とも。

 

「なので、私はすってんころりんと転びかねない短所を把握した上でマスターを信じ抜くことにしています。マスターのよく言われる、裏返しの短所を見た上で、そう決めている。そういうことです」

 

「お前、出会った頃からそんな立派なことを考えていたのか」

 

「理由は後付けです。或いは言語化に成功したのが今、と言うだけかもしれませんが」

 

 ――――まあそうだろうな

 

 内心で、東条隼瀬は納得した。

 

 出会った頃の何も考えなさ――――純粋さ、忠誠心の高さ、従順さとも言う――――の裏でそんなご立派なことを考えているとなれば、相当な曲者である。

 

「ですが」

 

「ですが、なんだ」

 

「最近、自分でも考えるようにしています。マスターであればどうするのか、私であればどうするのか。その作業は、無駄にならないはずですから」

 

 ただ信じて待つ。実行できるだけの自分を作り上げて待つ。

 それだけのウマ娘ではなくなったミホノブルボン――――なんとなくかまってほしい犬のように隣に移動してきた――――の頭を、彼は仔犬でも褒めるように撫でてやった。

 

 ルドルフが誇り高い狼だとするならば、ミホノブルボンは人懐っこい大型犬の仔というべき性質をしている。

 

 私がこうすることで喜ばぬ犬はいなかった。

 4年前に虹の向こうへと行ってしまった実家の犬のことを思い出しながら撫でると、パタパタと機嫌良さそうに尻尾が揺れる。

 

 褒められて、嬉しい。最近少し柔らかい風味が現れはじめてきたポーカーフェイスを少し緩ませ、その気持ちを尻尾で全力で表現するミホノブルボンを見て、東条隼瀬は思わず納得した。

 

(ブルボンの父御が溺愛するのもわかるというものだ)

 

 その後、ミホノブルボンが登校したのを見送って――――これが本当の部室登校か、などとくだらないことを思える程度にはメンタルを回復させつつ、東条隼瀬は纏めた思考を文にした後、二重底に隠して外へ出た。

 かつてスノーホワイトの本があったそこは、ブルボンに貸し出してからというもの空白だった。

 

 そのスノーホワイトの本はと言えば、黒革のカバンの中。なんとなく、持ち歩いているという格好になる。

 

「……会うか」

 

 声に出したから、何だというのか。

 そういう気持ちは、確かにある。だが実際やった上で相対すのと、なんとなく逃げたまま切所になって相対するのとでは心構えが違ってくる。

 

 二重の意味を持つそれを口にしながら、取り敢えず東条隼瀬は目前の課題に立ち向かうことを決めた。

 このときの彼の精神性は、期限3日前にやっと『レポートに手をつけるか』と覚悟を決めた学生のそれに似ている。

 

 要は、可能ならば先延ばしにしたいという気持ちがまたどこかにある、ということである。

 

 そんな気持ちで生徒会室に向かって、いつものように扉を開けられるのか。

 答えはもちろん、ノーだった。扉の前まで行ったはいいものの、あの絶対皇帝に向けての宣戦はこれでいいのか。

 そういう、いくら考えても正答が湧いてこない答えを求めてうろうろしている芦毛の不審者を急かすように、扉の内から声がかかった。

 

「入ってきたらどうだい、トレーナーくん」

 

「……よくわかったな。流石は皇帝といったところか」

 

 少々バツの悪さを漂わせながら、だがあくまでも皇帝と相対するに相応しい堂々とした佇まいを崩さず、彼は扉を開けて入室した。

 週明け、月曜日。生徒会長としての色々な仕事が舞い込みがちなその日は授業を選択していないことを、東条隼瀬は知っていた。

 

「君の足音はわかる」

 

「ああ、それは俺もだな。考えてみれば、当たり前のことだった」

 

「そ、そうかな」

 

「ああ。君ほど耳は良くないが、君の足音はたとえ静かだとしてもよくわかる。完全な無音にされたらわからないが、普段なら近寄ればわかる。その程度だ」 

 

 茶目っ気のあるからかいに、その洒落ごと噛み砕くような破壊力のあるマジレスで返され、ものの見事にカウンターを喰らいながら、シンボリルドルフはこほんと咳払いをして気持ちを切り替えた。

 

「で、私と話しに来たというわけでもないだろう。何か用かな?」

 

「いや、お前と話すために来た」

 

「そ、そうか……」

 

 会話のキャッチボールの返球が2度連続で鳩尾に直撃したシンボリルドルフは、今度こそ正中にグラブを構えた。

 山なりの会話で来るな……と思ったら、ストレートを連続で投げられた形になる彼女からすれば、これは実に自然な心理の動きである。

 

「ああ、実はな」

 

「うん」

 

「宣戦布告をしに来た」

 

 言葉の寒暖差で風邪を引きそうになりながら、シンボリルドルフはへの字になった口を慌てて一文字に結んだ。

 

 今更ではあるが、彼女は精神年齢が後退すると『うん』と言う。いつもの姿勢を維持できていれば、『ああ』と言う。

 つまりこの時は、そういうことだった。

 

「ほう」

 

「一応、けじめとしてな」

 

 目を瞑り、開く。

 ほんの少しだけだが、喋り始めるには充分な時間。その間、彼は口を開かなかった。

 

 新たに現れたのは、彼を導く皇帝の眼。そしてその中にあるのは、敵を完膚なきまでに叩き潰す強者の眼。

 

「俺は君を心から尊敬している。実力、人望、性格、そして立ち振る舞いに至るまで。その全てが尊敬に値する。それが本質であればその高貴さを、本質でなければ自己を律する精神の堅牢さを。俺は辿る道筋こそ変わるが、質量共に変わることなく、君を尊敬するだろう」

 

 ゆっくりと、椅子の隙間から顔を出して揺れていた尻尾が一瞬だけピンと張り詰めた。

 

「君に会えてよかったと思う。君の帝道に関われたことを俺は生涯の誇りにするだろう。君と夢を共有できたことは、君に夢を与えられたことは、俺にとって何よりも幸福であったと、断言できる」

 

 築いてきたのだ。伝説を。

 無論二人だけで築いてきたわけではない。他に多くの人間の協力があって、為せた。だがその中心に居たのは、紛れもなくこの二人だった。

 

 朝日に照らされる窓を背に、後光のような輝きを、見る者を畏怖させるような雰囲気を持つシンボリルドルフですら、ひとりだけではできなかったことなのだ。

 

「俺は君といつまでも共に歩めると思っていたし、事実今までもそうだった。だが、今日を境にそうではなくなる。少なくとも、宝塚記念が終わるまでは」

 

 鋼鉄の瞳に宿るのは、静かな……そして熱のある闘志。

 それらが他でもない自分に向けられていることに、シンボリルドルフは背筋が震えるのを感じた。

 

 ――――我ながら、度し難い

 

 恐怖でも戦慄でもなく、歓喜。尊敬する相手が、自分と同じ視座に立つ相手が、全てを賭して自分に挑んでくるのだという事象に踊り喜ぶ闘争本能のなせる業。

 

「俺は、君に勝つ。戦う以上、勝つために全力を尽くす。全知全能を奮って君に向かう。だから、俺を見てくれ。後ろに続く俺ではなく、隣にいる俺でもない、君に立ちはだかる俺を」

 

 それは宣戦布告だった。そしてあくまでも、対等に戦うための宣言だった。

 味方であるとは思うな。これまでと同じであると思うな。この日を境に、少なくともしばらくは敵なのだと。

 

 自分がルドルフを最大の味方であり最高の同志であると思うように、相手もそう思っているだろう、と。

 そう信じているからこそ、彼はわざわざここに来たのだと、シンボリルドルフは察した。

 

「俺は今、ミホノブルボンのトレーナーだ。だから、戦う以上。栄冠を競う相手になった以上、君を倒す」

 

「……ああ。私を討ち滅ぼす者がいるとすれば、それは君であろうと思っていた」

 

 シンボリルドルフは、かっこいいと形容される女性である。だが顔だけを見るとあくまでも可愛い。少しあどけなさが残る、そんな顔をしている。

 だがそれを覆い隠して変質させる程の雰囲気が、彼女にはあった。

 

「互いに気兼ねなくぶつかり合おう、トレーナーくん。君は君と共に歩んできた存在がどういうものなのかを、真に知るべき時がきた。私は私と共に歩んできた存在がどういうものなのかを、真に知るべき時がきた。つまり、そういうことなのだから」

 

 ――――皇帝を無礼るなよ

 

 全盛期の――――丸くなる前の威圧感そのままに凄まずに凄むシンボリルドルフを見て、東条隼瀬は笑った。

 難攻不落の敵であればある程、敵手にする甲斐がある。そんなセンチメンタルな心理とは無縁だと思っていたし、なるべくならば楽に勝ちたいと今でも思う。

 

 担当を相手より強くなるまで鍛えて、有利な条件で主導権を握る。これまでできていたことの内、ひとつは確実にできない。

 だがそれが何故だが、脳を刺激される。有利な位置を占め続けていたことによって膠着していた脳の一部が、刺激される感覚。

 

「楽しみにしているよ、ルドルフ。こういうことを、言うつもりはなかったのだが」

 

「それはこちらもだ、トレーナーくん。楽しみにしている」

 

 1段階、上った。確実に高く、賢く、強かになった。

 敵の進化を自覚しながらも、シンボリルドルフは手を打たなかった。その程度の才能の伸びしろが、成長するに足る余白があることくらい、知っている。わかっている。

 

 去り行く白色の後ろ姿を見送って、シンボリルドルフはアメシストの視線を中空に彷徨わせながら呟いた。

 

「……あのとき」

 

 手を離さなかったら、今も君は私の隣にいてくれたのだろうか。

 

 幾度も思い直したその言葉に、今付け加えるべき言葉ができた。

 

 私の隣で、今のようになってくれていたのだろうか。

 

 それはないだろうと、わかってはいる。あのときの自分たちは、要は互いに甘えていたのだ。

 信じて、用いる。信じて、頼る。その先へ行ってしまった。互いに、互いを無条件に信じ過ぎていた。互いの強さに甘え、互いの弱さが曖昧になるほどに溶かし合っていた。

 

 そして頼るべきものがなくなったとき、頼られ、そしてまた頼る。そういう精神の変遷をたどったからこそ、今の彼が居るのではないか。

 

「考えても詮無きこと、だな」

 

 やや湿った涼風が心を吹き抜け、そして闘争への高揚が身体を包む。

 理性から漏れ出た隙間風。忌避してきた本能からの熱風を感じて、一瞬。

 

 その一瞬だけ、シンボリルドルフの心は暖かった。




42人の兄貴たち、感想ありがとナス!

pirobo兄貴、托鉢兄貴、ナオnao兄貴、マグロ3号兄貴、キリン0809兄貴、評価ありがとナス!

もう完結が近いので宣伝しておきます。
新作(これは完結してからのことになりますが)やら次話投稿やらは私のツイッター(@LLUMONDE)で発信しています。他にはウマ娘のことくらいしかツイートしないので基本的に無害です。

凱旋門におけるラストバトルあたりはいつもの出来次第投稿ではなく、一気に書いて分割して投稿という手法を取りますので、日が開く可能性がございます。
そのあたりの進行報告もするつもりですので、気になる方はよろしければフォローよろしくお願いいたします。


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サイドストーリー:暗雲低迷

「ビワハヤヒデ」

 

 それは脊髄反射じみた即答だった。

 トレーニングを終えて、お風呂から出たミホノブルボンは部室備え付けのソファに座って適当にテレビを点けたのである。

 

 そこで《今年のクラシック級の主役! BNWに迫る》などという番組を見て、ミホノブルボンは問うた。

 

 ――――マスターは、今年のダービーはどなたが勝つと思われますか?

 

 そして返ってきた答えが、冒頭のもの。

 まあそうだろうなと、ミホノブルボンは思った。自分もそう思うからとかそういうことではなく、彼には割と恵体信仰なところがある。そのことが、なんとなくわかってきたからである。

 

「私の記憶が正しければ、マスターは皐月賞のときもそう仰っていました」

 

 そして皐月賞は、ナリタタイシンがとった。ミホノブルボンがクラシック路線で打倒してのけた――――より現実に則して言えば歯牙にかけてすらいなかった――――ナリタタイセイと同門の子である。

 余談ではあるが、ビワハヤヒデもビワ家の名跡を継いだだけでナリタ家のウマ娘である。故に、二人はほぼ親戚であると言えた。

 

「その記憶に間違いはない。だが今度こそ、俺の予言は真実になることだろう」

 

 無論、ならない。1日後の日本ダービーを勝つのはBNWの残り1人、ウイニングチケットである。

 

「なるほど」

 

「なにせビワハヤヒデはBNWの中でも頭一つ抜けているからな」

 

 今年がはじまってから飽き飽きするほどに聴いたそれを、ミホノブルボンは辛抱強く聴いていた。

 と言っても傍から見たら「こいつよくもまあ同じようなことを聴いているな」と思うだけで、彼女自身からすればマスターがおしゃべりしてくれる、ということだけで嬉しい。

 

 欲望の閾値が低いのである。

 

「ナリタタイシンは素晴らしい末脚を持っているが、素質に比して身体の頑健さが足りていない。足りていないがこれは単なる短所ではない。身長が低い、体重が軽いからこその末脚の鋭さが彼女の長所で、その裏側が頑健さの欠如として表れているのだ。なによりも健康が必要となるシニア級では致命傷になり得る」

 

「ウイニングチケットさんはどうですか?」

 

「あいつは完成度が極めて高い。ビワハヤヒデが20なら、ウイニングチケットは80はある。クラシック路線に挑戦しながらシニア級のGⅠに挑戦することも可能だし、善戦もするだろうとは思う。思うがやはり、これという長所にかける。癖も粗もない強さと言えるし、なによりもトレーナーとしては扱いやすい。だからこそ、勝つも負けるもトレーナー次第だな」

 

 ビワハヤヒデに関しては、もう聴いた。

 身体がデカい。出力に耐えうる頑健さと、頑健さを活かすに充分な出力を持っている。

 

 身体がデカいのがそんなに偉いのか。

 答え、偉い。何故なら、小さなウマ娘が100%の力でしか出せない力を、大きなウマ娘は70%の力で出せるから。

 無論、ひとつのレースで明確に有利になるというわけではない。それはライスシャワーを見たらわかる。

 

 彼女はミホノブルボンと同年代とは思えない程に小柄なウマ娘だが、その出力は決してミホノブルボンに劣らない。

 問題は、その劣らない出力を出すための負担にある。小柄なウマ娘は、100%の力を出すことを強いられる。それが続けば負担は積もり、怪我という形になって表れる。

 いや、表れる前に100%の力を出すこともできなくなる。

 

 これは単純に好みの問題ではあるが、東条隼瀬はなによりも安定した出力と頑丈さを至上のものとする。これらを高度に兼ね備えたウマ娘こそがシンボリルドルフであることは、『奇しくも』と言うべきではないであろう。

 ともあれビワハヤヒデというウマ娘は、彼にとって如何にも垂涎の存在だった。主に出力が安定している、という点においては。

 

 何かと妹――――ナリタブライアンの怪物ぶりに比して色褪せて見られがちなビワハヤヒデは、確かに安定感においてしかナリタブライアンに勝っていない。

 だが明確に劣っているのは爆発力くらいなものであり、ほぼ互角と言っていい。

 

「ナリタタイシンで思い出したが、ライスシャワーは休養するらしいな」

 

「はい。疲労に対する方法には様々ありますが、休養が単純ながら最も有効な手段であろうと信じます」

 

「まあ天皇賞春は良質化したバ場、京都レース場という高速環境において行われたとはいえ、いくらなんでも速すぎた」

 

 3200メートルを3分11秒台というのは、常軌ではない。無論偉大な記録ではあるが、その偉大さの裏には想像を絶するほどの負荷がある。

 ミホノブルボンに関しては日々骨の強化トレーニングや筋肉の柔軟性の保持などで疲れが溜まらないように、そして疲れが怪我に直結しないようにしているから宝塚記念にも出られるが、メジロマックイーンですら軽い炎症で休養に入った。

 

 天皇賞春において、ミホノブルボンはメジロパーマーとメジロマックイーン、そしてライスシャワーを蹴散らした。そしてその蹴散らされた三人は宝塚記念にも出走するはずだったし、出走できるはずだったのである。

 だが天皇賞春の激闘の影響で、或いは所為で、三人は出走を取りやめた。無論出走するであろうと思われていただけだから、誰にも迷惑はかけていないわけだが。

 

 もう、ファン投票ははじまっていた。

 特別登録されたウマ娘の中にメジロマックイーンもライスシャワーもいるし、メジロパーマーもいる。そして順調に票を集めてはいるが、おそらくは出ることはないであろう。

 まあ気が変わったときのためにファンは頑張っているのだろうが、やはり人気はシンボリルドルフとミホノブルボンだった。それぞれが2位と1位を占めている。

 

 何故シンボリルドルフが2位かと言えば、それはやはり人気の差であろう。彼女の戦法は堅実で王道で、だからこそ面白みがない。そういう論調は、確かにある。

 おそらくは近頃の三冠ウマ娘――――ミスターシービー、シンボリルドルフ、ミホノブルボン――――の中で、彼女は一番人気がない。

 

 トゥインクルシリーズの華は、追込と逃げ。豪脚を発揮して一気に抜き去る追込も、端から先頭を譲らずぶち抜く逃げというのは、要はわかりやすく強いのである。

 トゥインクルシリーズにおけるプロのファンは、シンボリルドルフの偉大さがわかる。その強さがわかる。三人を比べて一番強いのは、疑いもなくルドルフだと答えるだろう。

 

 だが素人がミスターシービーとシンボリルドルフとミホノブルボンのレースを見比べさせられた上で

 

「どれが一番強い?」

 

 と訊かれた時、おそらく最後に上がるのはシンボリルドルフだった。

 なぜなら、よくわからないから。大差をつけるでもなく、派手に抜き去るでもなく、端から圧倒するわけでもない。出力を必要最低限に抑え、身体に負荷をかけずに勝利する。

 

 これは衰え切ったベテランがイメージだけでゴールドグラブ賞を受賞する珍現象の類似である。素人とはつまり、見かけだけの華やかさを好む。その点では、シンボリルドルフは如何にも重厚で堅牢で堅実で、悪く言えば地味。

 派手に勝てるが、派手に勝つ必要を感じない。そういうことである。

 

「となるとトウカイテイオーだ。負けるとしたらあいつに、だな」

 

「ルドルフ会長に勝てば即ち他のウマ娘に勝つことになる、ということだったのでは?」

 

「98.6%はそうだ」

 

 だが怖い、というのが本音である。

 トウカイテイオーには、ここぞで1%を引けるだけのレース運の強さがある。

 レースに出るための運を削って、レースにおける運を増設した。それくらいには運がいい。そして強運をねじ伏せる程の実力差もない。

 

「トウカイテイオーは、確かに手強い相手だ。だがこれが単なる強敵であれば問題はない。持っているのが単純な強さだけであれば、ルドルフの下位互換だと言える。だがやつの強さはメジロパーマー、メジロマックイーン、ルドルフとはまた別のものだ」

 

 言っていることはふわふわしているが、その意味するところはわかる。どちらかと言えば、ライスシャワーに近い。そういうことであろう。

 ミホノブルボンは、無言で頷いた。

 

「マスターはルドルフ会長に専念してください。テイオーさんに関しては、私がなんとかします」

 

「ああ。そうせざるを得ないだろうな」

 

 ルドルフを上回る閃きと勘で勝負してくるトウカイテイオーは、正直に言って東条隼瀬の手に余る。

 より、現場主義的なルドルフ。トウカイテイオーとは、そういうウマ娘である。

 

 

 だがこの心配は、結局のところ杞憂に終わった。

 

 

 トウカイテイオーは、宝塚記念に出走できなかったのである。これはファン投票で落選したから、というわけではなかった。彼女はミホノブルボン、シンボリルドルフに次ぐ三位につけていた。

 

 というより、ファン投票で落選したからという理由の方がマシだったであろう。実力はあるけど人気がないから出られませんでしたと言うのは、あまりに不憫で少し笑える。

 

 ――――まあ、来年頑張ればいいさ

 

 そう言ってトウカイテイオーの背中をポンポンと叩いて、それで終わり。

 だが、そうはならなかった。それどころか、トウカイテイオーには来年という選択肢があるかどうかすら怪しくなった。

 

 つまり、彼女は怪我をしたのである。それも軽い肉離れとか炎症とかではない。

 骨折。それも、リハビリのためのレースとかではなく、トレーニング中の骨折。

 

 同じ骨折と言えばそうだが、結果は同じでも過程が大きく異なる。

 日本ダービー、天皇賞春。トウカイテイオーはこれらのレース中に骨折した。骨折したが、それは全力を超えた全力を出したからである。

 

 だがそれは、全力を超えたから折れた、ということだけなのだ。

 トレーニングでは、全力を超えることはない。超えることがないように、トレーナーが組んでいる。なのに、折れた。

 

 レース中に全力を超えたら折れるかもしれないから、普通に走っているだけでも折れるかもしれない。

 トウカイテイオーの骨はレースだけでなく、普段のちょっとした動作でも折れる程度の耐久力しかなくなってしまった。今回の骨折は、そういうことなのだ。

 

(まあ、2度あることは3度あると言うしな)

 

 骨折も復活も2度あったのだから3度ある。というかどうせ復活してくるだろう。あのクソガキ。

 折れることなき不屈の精神の強靭さを、東条隼瀬はそれなりに信じている。

 

「マスター」

 

「見舞いに行きたい、とでもいうのか」

 

「はい」

 

 ちょっと考えて、東条隼瀬は結論を出した。

 少なくとも今は、見舞いに行く必要はない。トウカイテイオーのためにもならないし、ミホノブルボンのためにもならない。

 

「それは許可できん。お前がトウカイテイオーにしてやれる一番のことは、脇目も振らず走ることだ。やつが走るはずだったレースに全力を賭すことだ。シンボリルドルフに勝つことだ。あいつが戻ってくる世界を、戻ってくるべき世界を、輝かしく見せることだ」

 

 しばらく考えて、ミホノブルボンは頷いた。

 シンボリルドルフと戦うにあたって、よそ見することは許されない。

 

 7日後の宝塚記念を前に起きた事件は、このレースの行く先を暗示しているかのような波乱の予兆を示していた。




35人の兄貴たち、感想ありがとナス!

寧寧亭屋兄貴、ヤマちゃん兄貴、みずくらげ@兄貴、くるみん@クラピ推し兄貴、猫魂兄貴、タフデント兄貴、ろーとる兄貴、沙枝兄貴、だんだんだんご兄貴、yf6兄貴、Maveric兄貴、評価ありがとナス!


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サイドストーリー:布石

 2度あることは3度あって然るべきだ。

 禍福は糾える縄の如し、という。禍が3度あったならば、福も3度あるべきだ。3度なければならないのだ。

 

 シンボリルドルフは愛弟子の3度目の骨折の知らせを聴いて、そう思った。

 彼女が皇帝であることを自らに課している。だからミホノブルボンとの決戦が迫っても、生活の軸を変えなかった。

 

 生徒会の業務を適切に処理し、請われれば――――いつもの如く請われなかったが――――後輩にアドバイスをする。

 そして彼女は、トウカイテイオーの見舞いの手紙を書いた。少なくとも彼女の心が落ち着くまでは、顔を出すべきではないと思ったから。

 

 春の天皇賞から宝塚記念までの期間、珍しく。本当に珍しく、ナリタブライアンは真面目に仕事をしていた。今までサボることの方が多かったのに、である。

 どこかでその気まぐれが途切れると思ったが、意外や意外。その『気まぐれ』は、宝塚記念1日前の今日まで続いている。

 

「らしくないな、ブライアン」

 

「そういうアンタはいつも通りだな。今くらい、休んでもいいだろ」

 

 夢と現実の両立。生徒会長としての業務と、競技者兼偶像としての仕事。

 その夢に無垢な賛成票を投じているエアグルーヴが言えないことを、ナリタブライアンは言える。

 

「脇目を振って、勝てる相手じゃない。それはアンタが一番よくわかってるはずだ」

 

「評価しているんだな、ブライアン」

 

「…………まあな」

 

 食生活の改善だの、体質改善だの、出力と頑健さの均衡だの。

 リギルでサブトレをやっていた参謀に様々世話を焼かれた結果、『お前が独立したら、自分のトレーナーにならないか』と。

 暗にそういう誘いをして『姉の方がいい』と言われてからというもの、ナリタブライアンはひそやかにムキになっている。そういうところはあるが、それでも現実としての参謀はしっかり見ていた。

 

「アンタに勝てるやつがいるとは思わない。だが、あいつが負けるとも思えない」

 

「勝算の無い戦いはしないからな、彼は」

 

「そうだ。ついでに言えば1割の勝機があれば挑むような博徒だとはいえ、その1割を最初に引く。そういうやつだ」

 

「ふふ」

 

 笑う。淑やかな声だが、雰囲気が淑やかさとは対極にある。

 

「評価されたものだな、トレーナーくんは」

 

「隣に立っていたアンタでは見えないものが、他人には見える。そういうもんだろ」

 

「……ああ、過大評価として笑って流した、というわけではないよ。単純に、嬉しかった。それだけのことだ」

 

「嬉しい……?」

 

 それはいつもの惚気か。

 軽口を叩こうとした口が止まり、背筋が凍った。

 

「彼が望むのは、いつもの皇帝だ。だからこそ、私はいつもの姿勢を崩さない。安定感こそが、この私の最大にして最高の強みなのだから」

 

 テスト終了5分前になって必死こいて答案を埋めていく受験生のような、あるいは定期試験1週間前までぐうたら過ごし、1日前になって徹夜で頭に知識を詰め込む。

 そのような姿勢は、シンボリルドルフには似合わない。

 

「飲み慣れない水をいきなり飲むと腹を壊すという。私がいつもと変わらないペースを保つのは、最善を尽くすことを怠っているからではない。いつもと変えないことでこそ、最善を尽くせるものだから」

 

 ルドルフは、笑う。だがそれはどこまでも好戦的な、獲物を前にした微笑み。

 

 ――――お前はどーにも勇に偏るな

 

 とある年の、夏の1コマ。

 骨を鍛えるためと称してリフティングをしているナリタブライアンを見守りながら、東条隼瀬はそう言った。

 

 ――――そういうアンタは智に偏ってるだろうが

 

 ――――俺はその智を投げ捨てられる。君はどうだ?

 

 それは無理だと、そう思った。

 

 勇。つまりそれは、攻めっけが強いとか、才能やスペックに頼るとか、暴力的な力で敵をねじ伏せるとか、そういうこと。要は、頭を使った走りを好まない、ということ。

 切羽詰まって、知略戦を挑めるか。それはたぶん、無理だ。

 

 ――――ルドルフは均衡が取れている。本質的にはどちらなのか、そこまではわからないが

 

 ――――本質的には智だろ、あいつは。あの強さは、天性の理性の賜物だ

 

 ――――俺もそう思わんでもない。が、あそこまで見事に荒々しい勝負根性を、後天的に得られるものかな。どうにも、あの理性は後付けなんじゃないか?

 

 ――――得られてるから今年までで宝塚記念2連覇含む9冠を得てるんだろ

 

 それはそうだ。

 あの男はそう言って、疑問を振り払うように頷いた。

 

(アンタの言ってることは正しかった)

 

 シンボリルドルフの本質は、暴力的な才能にこそある。それを本質かと見まごうばかりの鋼鉄の理性で縛り上げ、統御している。

 

(……このことを知ってたら、あいつが勝つ。正しい情報を得て、正しい推測を立てられたときのあいつは負けない)

 

 だが、知らなかったら。

 それは、蟻の一穴になる。

 

(古代のやつも偉そうに、『天下の難事は必ず易きよりなり。千丈の堤も螻蟻の穴を以て潰ゆ』と言っていたじゃないか)

 

 ナリタブライアンは、どっちに勝ってほしいのかわからなかった。

 自分の行いを省みると、珍しく生徒会の仕事に精を出している。

 つまり見るにシンボリルドルフに勝ってほしいのだろう。

 だが、今彼女の本質を見て懸念を抱いた。となると、あいつに勝ってほしいのか。

 

 ――――私はあいつらの対決を、万の一の綻びもない堂々とした対決を見たいらしい

 

 自分が心から敬愛する、世界を見渡しても数少ない者たちによる直接対決。その対決が、運や天、環境などに左右されてほしくないのだ、と。

 だからこそ、自分はその環境を整備すべくらしくないことをしているのだ、と。

 

 そのことに気づくまで、ナリタブライアンはしばらくかかった。

 

 

 そして、17時。仕事を終え、シンボリルドルフはターフに歩いていく。

 レースの前日にやることは、そう多くはない。前日こそ熱心に詰め込むべき(と、彼女は思っている)勉強とは違い、レースの前日は試運転くらいな勢いでいい。

 

 シンボリルドルフもそうである。彼女は自分の脚が奏でる直前の調子に耳を傾け、風呂に入って身体を休める。

 

(明日か)

 

 手持無沙汰とばかりに脚をバタバタと上下に揺らして、ナリタブライアンは両手を左右に伸ばして大の字になって寝転ぶ。

 

 ――――戦うのか。あの二人が

 

(柄にもない)

 

 他人のレースで緊張するなど。

 止まっていた息を吐いて緊張を解きほぐし、テープを外して風呂に入り、寝る。

 

 

 決戦前夜。

 

 

 この日、柄にもなく、緊張する資格もないのに緊張するウマ娘は、多かった。

 そして起きてなお、緊張するウマ娘も多かった。それくらい、この一戦は注目を集めていた。

 

 そして、誰がどれだけ緊張しようとも日は昇る。

 

(今日……)

 

 緊張する資格を得ていたはずのウマ娘は、そして今やレースの行われる明日に向けて緊張する資格を失ったウマ娘は、折れてギプスに包まれた脚に触れた。

 

(今日、走るはずだったんだ)

 

 朝起きて、朝ごはんを食べる。鉄のフライパンにベーコンを敷いて、上に卵を落とす。それをぱふんと畳んで黄身を閉じ込め、パンに挟んで頬張る。

 食べることは大切だが、レースの前で過剰の摂取は禁物。だからそれくらいに留めて、レースの後――――勝った後に好きなだけ食べるのだ。

 

 宝塚記念で、勝ったあと。シンボリルドルフとミホノブルボンに――――カイチョーとブルボンに勝ったあと。はちみーを舐めて、ケーキを頬張って、そのあとはスピカのみんなでご馳走を食べて。

 

 そううまくはいかないかもしれないと、覚悟は決めていた。だがそれは、負ける覚悟だった。

 シンボリルドルフと、ミホノブルボン。日本トゥインクルシリーズの歴史に残る二人と戦う以上、勝つ覚悟と同じ質、同じ量の負ける覚悟が必要になる。

 

 覚悟を決めた。レースに備えた。それなのに、そもそも走れないとは、思わなかった。

 

「は、ははは、はは……!」

 

 乾いた、乾き切った笑い声。

 朝にふさわしい乾いた快活さと、朝にふさわしくない乾き切った絶望。

 

「なんで……」

 

 菊花賞もそうだった。積み上げて、積み上げて、最後になって勝負の場に立つことすら許されずに崩される。

 レースどころか、トレーニングにすら耐えきれなくなった脚を硬く覆うギプスに爪を立てて、静かに泣いた。

 

 泣いて、泣いて、泣いて。

 それでも逃げずに、テレビを点ける。

 

「逃げない。逃げてやるもんか」

 

 テレビの中には、阪神レース場が溢れるのではないかと思うほどの大観衆。余剰利益で頑張ってウイング席を作っていたが、それでもなお足りない。

 詰めかけ、立ち見でもいいからとやってきた観客たちに対して入場規制がかけられた程の大盛況が映し出されていた。

 

 もうすぐ、レースがはじまる。

 トウカイテイオーがいない、レースが。

 トウカイテイオーが走るはずだった、レースが。

 

 シンボリルドルフ対、ミホノブルボン。これから実現するのかどうかも怪しい、無敗の三冠同士の争い。互いに国内での黒星は無し。両者の頭上に掲げられた冠は20を越える。

 

 主な勝ちレースで表示されたものがGⅠで埋め尽くされスクロールする。

 普通は戦績にスクロールが必要になるほど、重賞を勝てない。それも、両者ともほとんどがGⅠ。ミホノブルボンは京都新聞杯以来、シンボリルドルフはサウジアラビアロイヤルカップ以来、低ランクの重賞に見向きもしていない。

 

 歴史に冠絶したウマ娘同士の戦いが、自分抜きではじまる。

 ギプスを握る手の力が強まるのを感じながら、トウカイテイオーは食い入るように画面を見た。

 

 実際感じられないなら、出走できないなら。その代わりになんとしてでも埋め合わせをする。それがリアルタイムで観戦するということ。二人の走りから目を離さないということ。

 

《時代に冠絶した両者! 時代を組み伏せ、従え、征服した両者が覇を競う宝塚記念!》

 

 一方は日本トゥインクルシリーズ界切っての選良。

 一方は本当にどこにでもいるような雑草。

 

《歴史に残るであろうレースが今――――スタートしました!》

 

 ガタン、と。喧騒に紛れて、重い音が鳴る。ゲートが開き、走り出す。本来は自分がいるはずだった枠番を見つめてしまう自分の未練を首を振って、トウカイテイオーは現実を見た。

 

 先頭に立ったのは、ミホノブルボン。珍しく、彼女はマークされていない。先頭集団をも突き離して、前へ前へと駆けていく。

 

 ――――相変わらず、速い

 

 トウカイテイオーは、そう素直に思った。

 だがなんの波乱もなくレースを20秒程見て、ちらりと画面全体に目をやる。

 

「……え?」

 

 疑問符が浮かぶ。そして彼女は骨折してから初めて、笑った。

 浮かんだ疑問を発声したときには既に、わかっていた。ミホノブルボンが何をするつもりなのか。

 

 この電撃的な理解力こそが、彼女が天才たる所以。

 

「布石だったんだ。全部……」

 

 その呟きは、テレビから流れる喧騒に消えていく。

 レースを走る全員。あるいは直接見ている全員。誰もが、ミホノブルボンの思惑に気づいていなかった。




36人の兄貴たち、感想ありがとナス!

心葉詩兄貴、第13号海防艦兄貴、オオカワ兄貴、yuke4159兄貴、評価ありがとナス!


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サイドストーリー:虚空に轟く

 嵐のようなプレッシャーに弾かれることなく、ミホノブルボンは完璧を更に極めたスタートを切った。

 誰よりも速くゲートを出て、誰よりも速くゴール板を駆け抜ける。逃げウマ娘の考えることは、これだけでいいとよく言われる。

 

 だが、そうではない。逃げウマ娘の真髄は、主導権を握ることにある。

 少なくとも序盤は、逃げウマ娘を基準にしてレースは展開されるのだ。

 

 それが強大な存在であればあるほど、後を追うウマ娘たちはその逃げウマ娘を追い抜くことを最終目的までのマイルストーンにして走る。

 正確無比なラップタイムを刻み続けるミホノブルボンはスタートに成功した瞬間、レースを間接的に支配する基準値になれる。

 

 シンボリルドルフは、そうやすやすとそうなることを許さない。

 平常を保つことを許さない威圧感と、左右に振れて迫り来るような揺らぐ歩法。

 

 弾かれたように、シンボリルドルフの両横のウマ娘が強制的に逃げ体勢に入った。

 

 ――――逃げなければ

 

 ――――この怪物から、距離を取らなくては

 

 抜群のスタートを切ったミホノブルボンを視界に入れず、二人のウマ娘は駆けていく。

 

(よし、完成)

 

 領域を構築するための導火線。連鎖のラインは整った。

 後は事がどう推移しようと、先頭集団の2番手につくことを心がけていればいい。そうすれば半分を越えたあたりでマーク対象と掛かって疲れた二人を抜き去り、領域を構築。

 加速し、ミホノブルボンを抜き去って勝つ。

 

 彼女の領域は神聖不可侵、無敵にして絶対の雷撃の帝城。発動している領域を雷神の鎚で打ち砕く無敵の領域。発動した時点で、勝利は決まる。

 

 故に開始4秒で、シンボリルドルフは一気に盤面を進めた。

 所謂、チェック。メジロパーマーやダイタクヘリオスに通用した頭を塞ぐという戦法が通じるなんて思っていない。そもそもあれは初見殺しであって、メジロパーマーあたりなら2度目で対応できる。

 だから、即座に頭を塞いでチェックメイト、とはならない。だが、どうにもならない状況は作れる。

 

(さぁ、どうする)

 

 『このまま』を維持できれば、私の勝ちだぞ。

 

 ミホノブルボン目掛けて駆けていく二人。差しウマ娘のふたり。

 掛かった――――スタミナの損耗を度外視した速度相手では流石に分が悪いのか、ミホノブルボンの影が踏まれる。

 

 どっちでもいい。掛からせた二人が抜こうが、抜くまいが。

 どちらを選んでも勝てるという、理不尽な二択を突きつけることが大事なのだ。そのことを彼女は、他でもない東条隼瀬から学んだ。

 

 ――――参謀くん。これは貴方が教えてくれたことだ

 

 シンボリルドルフは古い呼び名で彼を親しげに呼んで、そう思った。

 

 ――――如何にもそれは、俺が教えてやったことだ

 

 東条隼瀬は、いかにもな顔をしながらそう思った。

 

 ――――だから、予想がつく。なにをやってくるか

 

 というか、レースでは事前予測くらいしか役に立たない男が序盤で読み違えていたら存在価値というものがない。終盤はまあ、仕方ないとして流せもするが。

 

 ミホノブルボンがやったことは、シンプルだった。

 加速も減速もしない。ただ外に目をやり、掛かり切ったウマ娘と目を合わせた。それだけ。

 

 ミホノブルボンは、安定感の代名詞である。それはトゥインクルシリーズに登録されてから1着しかとっていないから、ではない。

 人は1着しかとらないウマ娘の代名詞には『化け物』を使う。あるいは『シンボリルドルフ』。

 

 では何故安定感の代名詞であるかと言えば、そのラップ走法にこそ秘密がある。

 ミホノブルボンのレースを見る。見ると、ラップタイムはほとんど均一な値を刻んでいる。

 菊花賞後はシニアへの適応のためか一時ラップ走法を捨てて新しい衣を身に纏ったが、その後ある程度は通用すると見るやすぐに古い衣をその上から着た。

 

 そのことによって、彼女は幻惑する術を手にした。ラップ走法か、逃げ差しか。その偽装はたいてい天才と呼ばれるウマ娘たちから一瞬で看破されたものの、わかりやすすぎるほどにわかりやすいミホノブルボンの戦法が、多少なりともカモフラージュされたことは確かである。

 

 確かであるが、その印象は強烈だった。サイボーグだのガンダムだの言われる程度には、ミホノブルボン=正確無比なラップを刻んで走るウマ娘、というイメージは定着している。

 

 そんなウマ娘が、加速もしない。それどころかしれーっと冷めた目で――――彼女はデフォルトでこんな目である――――見てくる。

 

 

 やばい。

 

 

 掛かった2人は、冷水をぶっかけられたように正気に戻った。少なくとも彼女たち自身はそう思った。

 実のところそれは、プラス方面に突っ走る掛かりからマイナス方面に突っ走る掛かりへ変容しただけに過ぎない。

 

 自分の圧倒的な速度を利用し、抜き去りに来るウマ娘たちを牽制する。

 それは東条隼瀬とサイレンススズカが組んでいたときの最大の仮想敵、サニーブライアンが得意とする戦法だった。

 

 ――――恐るべきは、サニーブライアン。逃げウマ娘を逃げさせない達人

 

 東条隼瀬は相対したこともないサニーブライアンをそう高く評価していたし、自分が成長させた――――と思うほどに、彼は当時自信家だった――――サイレンススズカの前に立ちはだかるならばあいつだろうと確信していた。

 結局サニーブライアンは故障から復帰できずに引退した。そして本来継承すべきサイレンススズカは変な方向に進化し、ごちゃごちゃ技術を使うよりラッシュで押し切る生粋のパワー系の方向に行ってしまった。

 

 だがその研究は無駄になっていない。

 

 セイウンスカイ以外に後継者がいないと断言できる程に断絶傾向にあったサニーブライアンの戦法は、息づいている。

 

 ミホノブルボンという、ウマ娘によって。

 

 ずるずると、落ちていく2人。落ち着きを取り戻したかに見えて、そうではない。落ち着きすぎるほどに落ち着いてしまい、勝負勘が眠ってしまった。

 

(流石、やるな)

 

 その動作は、ミホノブルボン本来のものではない。増設されたプログラム。おそらく、サニーブライアンあたりの戦法か。

 そこまで読み切って、シンボリルドルフは次の策に打って出た。それは相手の視界を挑発するように掠めて抜き去り、挑発するというものである。

 

 闘争心を刺激されてシンボリルドルフを追い始めた瞬間、加速する。そしてムキになって抜き去りに来た瞬間、更に加速。

 

 ウマ娘は、抜く相手を常に見ているわけではない。見ながら抜くことはすなわち、進行方向から目を切るということである。かなりの速度で動くウマ娘は、本能的に進行方向から目を切ることを嫌う。

 それは本能というべきものだった。進行方向から目を逸らして、転ぶ。ぶつかって怪我をする。その恐怖が、本能と幼い頃の教育によって刷り込まれている。

 

 故に、どうやって抜き去るのか。それは抜き去り態勢に入る前の速度を頭に入れ、ある程度移動先を予測してから動く。

 シンボリルドルフは、それを予想していた。だからこそある程度加速した上で、挑発に乗り抜き去ろうとしたウマ娘の予測を超える速度を出してわざと並ぶ。

 

 ――――遊ばれている!

 

 並んでしまったウマ娘は、シンボリルドルフが醸し出す威圧感に怯み、その怯みを怒りへのバネにして憤怒した。

 自分を使って遊んできたシンボリルドルフに怒り、シンボリルドルフに怯んだ自分に怒る。

 

 その憤怒は即ち、速度につながった。

 それを見たシンボリルドルフは少しだけ、これみよがしに加速してみせたのである。

 

 その加速を見て弄ばれた手品のタネを看破したのか、勝ったとばかりに笑って更に速度を上げて抜き去りにかかるウマ娘。

 彼女を横目でチラリと見て、シンボリルドルフは『あとは勝手にやってくれ』とばかりにすーっと逆噴射してバ群に飲まれていく。

 

 意図的で芸術的な、そしてバ群の好位置にすっぽり収まるように仕組まれた逆噴射。視野の広さ、俯瞰風景。それが、シンボリルドルフにこの芸術的な移動を可能にさせた。

 

 後続集団をもその加速に巻き込み、万が一にも後ろから背中を差されないように消耗を誘う。

 そして自ら『ルナ間違えちゃった』とばかりに減速し、徹底的に振り回す。振り回すだけ振り回して、消耗を強いる。

 

 遊ばれた。そう確信していたウマ娘は、内心舌打ちして臍を噬んだ。

 無理に加速した結果、ミホノブルボンに近づき過ぎた。そうなればこのまま追い抜いてハナを奪って逃げ切るか、ここまでの消耗の対価として得たリードを徐々に切り崩して元の鞘に戻るか。

 

 考え込む彼女は、ギョッとした。ミホノブルボンが減速でもしたかのように、近くに居る。抜こうと思えば抜きされるほど近くに。

 

 これが数秒後のことであれば、彼女は迷いなく抜き去っていただろう。

 だがシンボリルドルフに挑発された挙げ句振り回され、そしてこのざまになっているという自覚が彼女の決断を鈍らせた。

 

(抜くか。だが……)

 

 そう逡巡している間も、好機は不気味に彼女の前で動かない。相変わらず抜こうと思えば抜きされるほど近くに、ミホノブルボンはいる。

 

(……いや、これ以上ペースを乱されては)

 

 そうして、彼女は後退を決断した。決断した瞬間に、ラップタイムの埋め合わせでもするようにミホノブルボンがやや加速して去っていく。

 

 これらに代表されるような大小無数の駆け引きが、前半4ハロン、800メートルまで続いた。

 シンボリルドルフと、東条隼瀬。同じ視座に立ち、互角の力量を有する二人の作戦立案能力は当然ながら全くの互角であった。

 

 シンボリルドルフが立てた作戦を事前に予想し、ミホノブルボンに伝える。伝えられた通り、ミホノブルボンが動く。

 大きく分けて7度目の激突の末でも、ふたりの状況は変わらない。ミホノブルボンは逃げ、シンボリルドルフは好位に付けてとどまる。

 

 観客にはわからない駆け引きの末、彼女らを包む状況は刻一刻と疲労の色を濃くしていたが、読み合い自体に変化はない。

 互いが互いの動きを見事に洞察して捌き切る。その繰り返しであり、状況は表面上変化を見せなかった。

 

 シンボリルドルフを囲むように配置されてしまったウマ娘たちは網にされたりミサイルにされたりと忙しい。だが徐々に徐々に、武器を鈍らされていく。身体のキレを落とされていく。

 

 シンボリルドルフは、遊んでいるようにみえた。自分と一緒に遊んでくれる相手を見つけた童女のように天真爛漫に遊んでいるように見えた。

 だがそうではなかった。彼女にとって、膠着こそが望みなのである。繰り返しになるが、彼女は前半4秒で勝つための盤面を整えてある。

 その整えた盤面をひっくり返されないために彼女は積極的に動き、対局相手の頭とミホノブルボンの頭を現状への対処へと向かわせる。

 

 細々と動き続け、最終局面までひたすらに膠着状態を維持し続ける。相手に、回天の機を与えない。それこそがシンボリルドルフの勝機である。

 

 ――――あと400メートル

 

 半分を越したら、3人抜く。そうすれば領域を構築するための条件が満たされる。

 そしてミホノブルボンを抜いて勝つ。

 

(このまま息をつかせないことだ。対処に奔走させることだ)

 

 東条隼瀬に頭を使われると負けかねない。

 だからひたすら奔走させる。その隙を与えない。

 

(これが理不尽な二択というやつだよ、参謀くん)

 

 前と同じことを、彼女は思った。

 奔走しなければ罠にハマる。奔走すればこの自分に有利な状況を崩せない。

 

(勝てる)

 

 勝てる。

 その後に、こんな言葉が続いた。

 

 ――――こんな簡単に?

 

 ――――私の杖に。最愛のひとに。こんなかんたんに勝てるのか

 

 有能だから愛しているのではない。

 見た目がいいから愛しているのではない。

 そのわかりにくいが繊細で優しい心根を、万難を排して無理を貫く信念を、理想に共鳴し献身してくれる精神を愛している。

 だからここであっさり勝っても、シンボリルドルフの愛は揺らがない。多少自分が彼のことを過大評価していた。時の運が自分に向いた。それだけのこと。

 

 だが、そうではない。

 

(私は勝てると思っている。その予測が正しければつまり彼は今、負けると思っているはずだ)

 

 その負けを粛々と受け入れるのか。そんなに諦めのいい人だったか。

 そもそも、おかしい。ただ単に受けに回っていることが。彼の戦法は主導権を握ることに重きをおいていたはずではないか。それがシンボリルドルフという小娘に主導権を握られっぱなしでいるのはおかしい。

 

 膠着こそが勝ち筋。シンボリルドルフはそう思っていたし、それは正しいと考えていた。だがそれこそが陥穽だとすれば、どうなる。

 

(私が何か、見落としている)

 

 自分の判断力よりも、シンボリルドルフは心からの信頼を預ける、刎頚の仲の男のことを信じていた。

 

 考える。考えて、考えて、背筋に戦慄が奔った。

 

(そういうことか)

 

 固めたはずの、踏みしめていたはずの大地が崩れるような感覚。

 自分にとって有利であったはずの膠着が反転して、色を変える。自分にとって有利な色から、自分にとって不利な色へ。

 

 彼女は正直、気分が高揚している。

 だからこそ、本来の攻めっけの強さが出てきていた。

 4秒で勝利への道筋を描き、駆け引きを仕掛け続けて膠着させ、勝つ。主導権を握り続けて相手を振り回す。

 

 その作戦の前提を、彼女はミホノブルボンに置いていた。ミホノブルボンの安定感。彼女の正確無比なラップ走法。

 逃げ差しという冷却期間を経て一層その正確性を増したそれを、評価していた。信じていた。

 

 彼女は、自らが戦局を用意したと思っていた。膠着させればさせるほど、有利になるであろう戦局を用意したと思っている。

 

 その戦局で、彼女は度々理不尽な二択を突きつけた。

 それを彼は事前に予測し、ミホノブルボンはそれに従って回避し続けてきている。

 

 おそらくミホノブルボンは答案用紙を与えられていたのだろうが、その答案を使うべき状況を適切に洞察して正答となる動きを取っているミホノブルボンの実力は、やはり極めて高いと言わざるを得ない。

 

 シンボリルドルフの仕掛ける駆け引きは、一つ間違えれば即座に総崩れになるほどに切れ味の鋭いものである。

 普通のトレーナーなら、ウマ娘なら、対応し切るだけでも素晴らしいと両手を上げて褒めるに足る。

 

 だが、相手は東条隼瀬である。対処のついでにクロスカウンターじみた逆撃を仕掛けてきても何らおかしくない。逆に、そうでなければおかしい。少なくともシンボリルドルフはそう思う。

 

 実のところ当人は、事前準備の段階で『これは隙がないな』とか思っている。

 

 逆撃を喰らわせる隙もない。利用できる切っ掛けもない。だから防衛に専念しよう。

 東条隼瀬は内心シンボリルドルフの怒濤の攻勢に舌を巻いていた。彼は実のところ洞穴に籠もる熊のように引っ込んでいるだけだった。

 

 

 要は、過大評価である。

 

 

 だが膠着こそが彼の望むことだというのはその通りだった。

 

 ――――ああ、これは無理だ

 

 現場レベルでは勝てない。裏をかけない。戦術レベルで太刀打ちできない。

 東条隼瀬は端から自分の能力の低さを自覚していたし、シンボリルドルフの能力の高さを認めていた。だからさらっと、切り捨てた。

 

 駆け引きに勝ち切るのは無理だ。一手先、ルドルフの仕掛けてくることは予測できるが、三手先――――ルドルフに逆撃を食らわしたその後を予測できない。

 だが、仕掛けられる駆け引きをいなすことだけならなんとかなる。あらゆる仕掛け方を洞察して、事前のその全てに回答を付けておけばいい。

 

 一問一答なら、なんとかなる。それ以上は無理。

 

 そんな潔すぎる割り切りこそ、彼の非凡さだった。要は、彼は現場レベルの智を捨てたのである。

 現にこのレースがはじまって以来続いている駆け引きに綿々と続くものはなく、単発が連続して放たれているだけに過ぎない。

 

 性質が智に傾くものならば、自分の智慧に自信があるものならば、一問一答に際して答えを出すのではなく、裏の裏をかこうとする。

 

 それを、彼はしなかった。ある程度、自分の才能を冷めた眼で観ていた。

 まあ、こんなもんだろうと。ルドルフには勝てないと。それは別に恥じることでもないと。

 

 ――――どう足掻いても、できないものはできない。ルドルフには勝てない。ただ、できないでは済ませられない。なら、別の角度から切り込めばいい

 

 

 だから東条隼瀬は、事前に勝つことにした。

 

 

 裏をかけないから、一問一答を続けることで勝てるような盤面を整えた。

 そしてその上に、シンボリルドルフは自分の理想の盤面を描いた。

 

 つまり、どういうことか。

 ミホノブルボンは、端から本気で走っていなかった。高速でのラップ走法を行ってきた過去の実績と大阪杯での圧倒的な走りを土台にして、彼女は自分以外の全員をだまくらかしたのだ。

 

 シンボリルドルフを騙し切ることはできない。

 東条隼瀬はそのことを知っていた。だが、彼女を取り巻く環境そのものを騙せば、擬似的に彼女を騙し切れる。

 

 彼女の出力は、現在57.3%。いつもより大体3割減。

 最初の1100メートルは流す。頑張って騙す。ミホノブルボンはいつも通り圧巻の速度で走ってるよーと思わせる。そのための牽制であり、そのための実績。

 

 ミホノブルボンはラップ走法の使い手だと、阪神レース場の芝2000メートルのレコードを叩き出せるスピードを持つと、天皇賞春を3分11秒で走り切れるほどの化け物じみたスタミナを持つと。

 彼女が阪神レース場2000メートルで見せた走りは、隙のあるものだった。無敵に近い速度で走りながら、直前で失速する。それもわざとらしさのない、完璧なスタミナ切れ。

 

 故にルドルフ以外のウマ娘は、スタミナ切れした残り200メートルで差し切ることに主眼を置いた。というか、置かざるを得なかった。なにせ、それ以外勝ち筋がないのだから。

 

 そしてミホノブルボンは残り1100メートルを、全力で走る。

 前半をスタミナ温存に費やしたミホノブルボンの全力と、前半それなりに動いて消耗したルドルフの領域込みでの全力。

 ルドルフの優れた頭脳は、2秒とかからずに結論を出した。たぶんギリギリで、差しきれない。あと100メートルあれば差しきれるが、仁川の坂込みの1100メートルならば無理。

 

 

 問い。

 普通にやればどんな相手でも差し切る脚の持ち主に勝つにはどうすればいいですか?

 

 答え。

 物理的に差しきれないほどのリードを開けばいい。

 

 問い。

 物理的に差しきれないリードとは、なんですか?

 

 答え。

 (相手の最高秒速−自分の最高秒速)で相手に必要な距離を見定めましょう。

 

 それが1100メートル。たぶん彼は求めたのではなく、1100メートルになるように調節したのだろう。

 だったら1000メートル地点で領域を広げて勝てばいい。そういう人もいるだろうが、そうはいかない。

 

 シンボリルドルフの領域は、レースの後半になって三人を抜くことが発動トリガーである。

 1000メートル地点でスパートをかければ、領域を構築することができない。つまり最高速が落ちる。最高速が落ちれば、残り1200メートルでも差しきれない。

 

 あっぱれ。君は真実、サイレンススズカのトレーナーだ。

 そう言い切ってしまえるほどの脳筋戦法。

 

 あの皇帝陛下には、まともに戦ったら勝てない。特に領域を構築されれば勝てない。

 なら、二択を差し上げればいい。

 

 

 過半を超えてスパートをかけ、領域を広げても勝ち目のない戦いに挑みますか?

 

 過半を超えずにスパートをかけ、領域抜きで勝ち目のない戦いに挑みますか?

 

 

 どちらを選んでも負ける。選ばなくとも負ける、真に理不尽な二択。チェックではなく、チェックメイト。

 彼女が真に俯瞰できれば――――空撮したり、テレビで見たりして横からの風景を見られれば、気づけただろう。だが彼女は後ろからしかミホノブルボンを見れない。

 

 横から見ると、どれくらいの速度で走っているかはわかりやすい。

 だが後ろから見ると、どれくらいの速度で走っているかはわかりにくい。

 

 

 ――――ルドルフ。これは俺が教えてやったことだ

 

 

 選択の余地を奪う。進むべき道を固定化して予想を容易くし、どちらを選んでも負ける、選ばなくとも負ける状況を突きつける。

 そんな声が、聴こえて。

 シンボリルドルフは、心から笑った。不敵に、楽しげに。

 

 ――――貴方が理不尽な二択を解錠するなら、私は壊してみせよう

 

 残り1200メートル。前には3人。

 シンボリルドルフは、本気でスパートをかけた。低姿勢で、大きく脚を踏み出す。それは小さな頃、彼と作り上げた走る形。

 

 ライオン丸だとか、そう言われていた頃。

 

 大きくなる身体、長くなる脚にしっくり来るように誂えた靴は、今でも完璧にフィットしている。

 

 残り1187メートル。1人抜く。

 残り1164メートル。2人抜く。

 残り1126メートル。3人抜く。

 

 全力で走らなければ差しきれない。全力で走れば過半は超えない。憎たらしいほど完璧な計算式。

 半分を超えていない。だから、領域は構築できない。確かにそうだ。合っている。貴方たちに、皇帝の神威を見せることはできない。

 

 貴方が知っている私の領域は、もう使えない。だから、貴方が知らないわたしの領域を使う。

 

「轟け雷霆、暴威を見せろ」

 

 本来ならば打ち砕くべき領域に対して降り注ぐはずの3対の雷霆が、シンボリルドルフの躯体を直撃する。

 

 曇天覆う暗闇の中。自らの雷霆を受けて帯電する身体の中で、アメジストの右眼だけが不気味に光っていた。




60人の兄貴たち、感想ありがとナス!

智原兄貴、eqria兄貴、riku0724兄貴、悪魔のしらたま兄貴、ラメ兄貴、M@TSU兄貴、うまいどん兄貴、ケフェウス兄貴、ヨピ兄貴、ヨシノ368兄貴、フレミング兄貴、兄貴、Zeffiris兄貴、ゴレム兄貴、JinG3兄貴、ルンダン兄貴、  abcmart兄貴、評価ありがとナス!


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サイドストーリー:300メートルの勝機

 雷とは、神と深い繋がりを持つという。

 生まれて数時間で立ち上がり、走れば年上を苦もなく負かす。誰もがシンボリルドルフを、神の後継だと噂した。

 シンボリルドルフは、言うまでもなく天才であった。自然と自らが選ばれし者であることを自覚し、それを誇りにし、他のウマ娘を無自覚に足蹴にすることになんの躊躇いも覚えなかった。これが世の摂理だとすら思っていた。

 

 プライド、誇り、意地。

 天才ではないウマ娘が必死に築いたそれらを無自覚に無反動に粉砕しながら、かつてのシンボリルドルフは生きていたのである。

 

 それが変わったのは、彼女が不調に喘いでからのことだった。

 不調と言っても、シンボリルドルフは負けなかった。年上にも同年代にも年下にも勝った。だがどうにも本気が出ない。出していないのではなく、出ない。そういう時期に、奴は現れた。

 

 

「お前、バカだな」

 

 

 このクソガキ、蹴り飛ばしてやろうか。

 そういう気持ちを抱かせた少年は、自分と互角の才能を持っていた。少なくともその頃の自分はそう思っていた。今は、そうではない。自分に勝ることはあっても劣ることはない。そう確信してすらいる。

 

 彼には、才能があった。悩める自分を正しい方向へ、より相応しい未来へ導く才能が。

 それは自分の持つそれとは違う色をしていたが質的には同一であると、幼い頃のシンボリルドルフはその慧眼で見抜いた。

 

 だが彼は、自分にはその才能を活かせないのだと言った。自分には才能はあってもそれを支える土台が無いと。

 シンボリルドルフは、才能を振るうにあたってまったくなんの支障を感じたこともなかった。だから自然に、思っていたのだ。才能に恵まれた者は、必ず才能を活かせると。そのための環境も土台も、用意されているのが当然だと。

 

 子供であるが故の、常識の押し付け。

 自分を取り巻く環境が地平線の向こうにも広がっていることを疑っていないし、疑うということを知らない。

 

 その疑いを抱かせたのが、東条隼瀬という男だった。その名前を知ったのはそれからずいぶんあとのことになるが、顔はずっと覚えていたのである。

 シンボリルドルフは、一度見た顔を忘れない。

 

 疑って、世界を知って、真実を知って。そして自分の愚かさに気づいて、自分が恵まれていることに気づいた。

 だからせめてこの恵まれた境遇を活かして、世の機会に恵まれない存在に還元したい。最初は自分と同じウマ娘に。

 

 そしていずれは。

 

 自己改革、自己変革。それを志すにあたって、そしてまた貫徹するにあたって、シンボリルドルフは誓いを立てた。

 

 生まれたときから開くことのできた領域を、そして自分の暴君じみた――――暴君というより幼いが故の無知というべきだが――――本質は鎖をつけて鍵をして仕舞っておこうと。

 

 走っている内に、ふとした瞬間に自分にめがけて雷が落ちる。しかしそれは決して恐るべきものではないということを、彼女は端からわかっていた。

 そしてそれが領域と呼ばれるウマ娘にとって極限の技術であることを、彼女は知った。そしてそれを誇りにし、当然だと思った。だからこそ、封じたのだ。かつての自分の象徴として。

 

(私は)

 

 勝ちたい。無論、その気持ちはある。だが遥かに勝る感情が、彼女にはある。

 

(私は、常に未来を見て歩いてきた)

 

 周りを見回し洞察し、勝てるだけの力を出して、ほんの少しだけ他者に優越して勝つ。

 相手が99なら101を。103なら105を。

 

 身体への負担を少なくする。

 自分の力の上限を隠す。

 手札を見せきらない。

 

 ざっと挙げればこの程度。故にシンボリルドルフは、勝てるだけの力を出してきた。目の前の勝利と、次の勝利を掴むために。

 そしてその最善・最効率を目指す姿勢と相反するようだが、自らに架した誓いを守ってきた。

 

(だが今日、このときだけは)

 

 何も考えない。未来も、過去も、何もかも。

 全てを擲つだけの勝ちが、ここにはある。全てを擲つだけの相手が、目の前にいる。

 

 彼は、言った。俺を見ろと。

 

 ――――俺は、君に勝つ。戦う以上、勝つために全力を尽くす。全知全能を奮って君に向かう。だから、俺を見てくれ。後ろに続く俺ではなく、隣にいる俺でもない、君に立ちはだかる俺を

 

 そう、彼は言った。だから私も戦う以上、勝つために全力を尽くす。全知全能を奮って貴方に向かう。だから、私を見てほしい。前を征く私ではなく、隣にいる私でもない、貴方に立ちはだかる私を。

 

 

(そうだ。これもまた、私だ)

 

 

 鍵を開け、鎖を解く。

 中に入っていたかつての武器は、錆び付く様子は些かもない。シンボリルドルフという日本トゥインクルシリーズはじまって以来の怪物の才能とたゆまぬ努力に磨き上げられ、究極の力を秘めてすらいた。

 

「――――さあ、私を見てくれ」

 

 雷霆が身体を打つ。実に数年ぶりに。そして、二度とないであろうと思っていた力が、身体を包んだ。

 

 その効果は単純な自己強化。領域が領域と呼ばれる所以、自分に有利な環境を構築しない、世にも珍しい領域。

 

 ――――私が何故、自ら相応しい環境を用意せねばならないのか。そんなものはいらない。どこであろうと、私は無敵だ

 

 そう言わんばかりの傲慢さ。そして、自分が強化されればそれ以上の力など必要ないという圧倒的な自信。

 まあその傲慢さは幼いが故のものであったり、自信に関しても実力相応と言うべきで恥ずべきことではないのだが、少なくともシンボリルドルフは自分の過去を黒歴史扱いしていた。

 

 今では優しい生徒会長をやったりダジャレを反射で言ったりして日々周りを和ませて――――彼女には珍しく圧倒的にして絶対的な自己過信である――――いるが、かつてはそうだったのだ。自信と傲慢が服着て走っていた。

 

 その過去を思い出すようで嫌な気持ちになる。だが自分の共にあるべき影は、愛すべき杖は、心から信じられるパートナーは、過去を見据えることを決意していた。そういう目をしていた。

 

(なら、私もそうしよう。でなければ、共に歩けない。私だけが、置いていかれてしまう)

 

 さあ、轟け雷霆。暴威を見せよう。皇帝ではなく、暴君の威を。原初にして起源、後悔と恥にまみれた嘗てのシンボリルドルフの姿を。

 

 そして知るがいい。その過去は恥ずべきではあるにせよ、力だけならば今に勝るとも劣らないことを。

 黒歴史を、恥ずべき姿を。鋼鉄の理性と磨き上げた智慧で噛み砕き、咀嚼し、呑み込み、受け入れる。

 

 彼が過去を受け入れることを決意した以上、自分もそうすべきなのだ。

 

 不気味に、アメジストの眼が輝く。

 知恵と理性の煌めきが奥の間に引きずり込まれ、才能と獣性が表に出る。彼女らしからぬ、冷静さの欠けたギラつくような光。

 

 一度だけ。

 そう、一度だけ上下の瞼が閉じられ、再び開く。

 

 理性を獣性で雁字搦めにするのではなく、理性を獣性で牽引し、獣性を理性で御する。

 あまりにも理想的な合一。ミホノブルボンのそれを遥かに超え、しかしトウカイテイオーのそれと比べれば完成度に於いてやや落ちていた。

 

 しかしトウカイテイオーより優れた理性が、本能よりも遥かに凶暴で獰猛な獣性を統御している。となると質に於いては優越していることになり、つまり安定的な出力においてはシンボリルドルフに軍配が上がると言える。

 

 それは、暴力的な才能。血統がどうこうではすまない程の才能だった。

 

(君の隣にいるに相応しい、共に理想を駆ける相応しい自分で有り続けるために)

 

 ある種の病的な一途さ、と言うべきか。普通ならば勝つためだけに動くところに、理性的な歯止めがかけられている。

 その一途さの向かう先こそどちらかに振り切れない――――中途半端な中間を指しているとはいえ、噛み合わざるべき自分の強さ同士を損なうことなく、シンボリルドルフは天にふたつの太陽を輝かせていた。

 

「なんともならないかな、これは」

 

 明らかな進化を果たした彼女を見て、東条隼瀬は独りつぶやく。

 

 自分の想定の範囲内に収まる相手ではないことは知っている。だからもとから、膠着を続けて計算どおりにこのまま勝つことなどできないことは知っていた。

 

 少し考えて、目の前を見る。予測とは違う圧倒的な質量を誇る現実の中で、シンボリルドルフは駆けていた。それも、想定を遥かに超えた速度で。

 

「いや、なんとかなるかもしれないな、これは」

 

 しかし俺の手ではどうにもならない。やるのはあくまでも、ミホノブルボンなのだから。

 1100メートル地点。異変が起こるならそこのあたりだろうと、ミホノブルボンには伝えていた。逆に1100メートル地点を超えれば後は流れで勝てるとも。

 

 ――――どうしますか

 

 深さを湛える蒼い瞳にしっかりと映り込むように、東条隼瀬は肩をすくめた。

 

 ――――当初の予定通り

 

 ――――わかりました

 

 まだ3バ身程度の差があるが、そのままの速度ではおそらく軽々追いつかれる。

 1000メートルを越えたあたり。雷鳴が轟いた辺りで、ミホノブルボンはゆっくりと脚を回し始めている。

 

 故に彼女は、1100メートル地点を89%の速度で駆け抜けることに成功した。

 だが僅かに、シンボリルドルフの方が速い。天性のスプリンターである彼女は無論、普通の中距離ウマ娘よりは速い。だがシンボリルドルフは普通ではないし、彼女の構築した領域も普通ではない。

 

 そんな普通ではないもの同士の掛け算の結果、ミホノブルボンは徐々に追い詰められてきている。

 

(さて)

 

 どうしよう。

 ミホノブルボンはレースがはじまって以来、はじめて自分としての頭を動かした。

 

 彼女の頭は本来、誰かの指示に従うことに特化した形をしている。故にシンボリルドルフが感嘆するほど見事に参謀の描いた答案を現実に書き起こせたわけだが、それはつまり独創性に乏しいということである。

 

 独創性を多分に含んだ――――豊潤に栄養を含んだ土のような才能をしていれば、彼女はこの時点でシンボリルドルフの駆け引きに振り回され続けた挙げ句、逆撃を仕掛けようとして消耗しているだろう。

 だがそういった謀反気が無いからこそ、彼女は忠実に指示をこなせた。

 だから現在、辛うじて有利に立っている。だがこれから不利に転落するのは、その忠実さが故であろう。

 

 ちらりと、後ろを見た。

 そこにはただでさえ強いのに、更に強くなった――――過去に彼女が経験した、誰にも知られることがなかった全盛期に回帰した皇帝がいる。

 

(私には、できない)

 

 シンボリルドルフもトウカイテイオーもライスシャワーも、何も唐突に覚醒したわけではない。

 努力によって積み上げてきたこれまでに一滴の閃きを垂らした結果、覚醒を果たしてきたのだ。

 

 積み上げてきた努力なら、ミホノブルボンにもある。だが閃きと呼べる一滴が、彼女にはない。

 99%どころか、99.9%の努力をしても、閃きがなくては意味がない。

 

 

 ――――申し訳ありません。マスター

 

 ――――ポットを壊したのなら魔法瓶に詰めてある。パソコンを壊したのなら、バックアップはとってある

 

 この通り。

 そう言いながら人差し指と中指で摘まれたのは、SDカード。

 確かにそれらは前科のあることだが、そのときはそうではない。これは春の天皇賞後、ほんの一幕。

 

 ――――私は飛躍することができません。ライス、テイオーさん。そしておそらくルドルフ会長。彼女らができることが、私にはできません。そのせいで、マスターにはいつも苦労をかけています

 

 ――――なんだ、そんなことか

 

 鼻で笑う。

 たぶん反射で繰り出されたであろうその動作を見てなんとなく、ミホノブルボンは彼が妙に誤解される理由を理解した。

 結構深く理解しているはずのミホノブルボンですら、それを見てちょっと凹んだのである。

 

 ――――いいかブルボン。長所の裏には短所がある。何回も話したな

 

 ――――はい。47回目です

 

 ――――そうだ。つまりお前は覚醒できない。それが短所だとすれば、長所は何か。それはつまり、実力の目算が立てやすいということだ。俺ができるのはその場に揃った素材で最適解を作ることであって、覚醒に適応した策を即興詩のように奏でることはできないのだ

 

 例えば『坂の前で他のウマ娘に追いつかせたい』と思ったとする。そして『そのために段階的に出力を絞る』と決めてレースに臨んだとする。

 しかしそこで覚醒してしまえば、策はおしゃかになる。出力を絞っても、覚醒前の全力になる。そういうことが起こりうるからだ。

 

 ――――お前はそういうことが起こらない。それは俺にとってこの上なくありがたいことだ

 

 

 『起こせない』と思うのではなく、『起こさない』と誇れ。

 

 

 ――――覚醒と言えば聞こえはいいが、覚醒を前提にして策を立てるなど愚か極まりない。そして俺は対応できるだけの実力も、才能も能力もない。だからつまり何が言いたいかと言えば、才能のないお前に相応しいのはやはり才能のない俺だと言うことだな

 

 ――――自薦ですか

 

 ――――ああ。もう3年間も終わる頃だからな。そろそろよかろうと思う

 

 自薦界のレジェンド・郭隗には劣るが、中々の自薦だと思うぞ。

 

 そうやって言葉を結んだ彼を、ミホノブルボンは愛しく思った。

 一度たりとも、契約を解消したいと思ったことはない。言ったこともない。

 なのに不器用にも『これからも一緒にやろう』と言ってくる。

 

 その、なんというか、普段の洞察力をトラッシュしたかのような心の読めなさ。

 

 ――――ああ、3年間が終わるというのは、出会ってから2年半が経過しているという意味ではない。デビュー前ウマ娘とトレーナーが最初に結ぶ契約は、3年間だ。これを更新しようという意味だな

 

 ……読めていないというより、裏付けがほしいだけかもしれない。

 言わないでも伝わることを長々と言った彼を見て、ミホノブルボンは微笑んだ。

 

 ――――ずっと一緒です、マスター。貴方が望む限り、私が望む限り、ずっと

 

 マスターとして。

 そしてなにより、ひとりの人間として。この高くそびえる断崖のような才能を持った彼のことを愛おしく思っている。

 

 ――――これからもよろしくお願いします、マスター

 

 ――――そうか

 

 端的に、そっけなく。だがどこか嬉しげに。

 そう言って、契約の延長は約束された。

 

 約束されてからの初戦が、これ。早速相手は――――たぶんこれまでで最も才能があるであろう相手は、あっさりと覚醒を果たした。そしてミホノブルボンは、覚醒することはできない。彼女は少しずつ地歩を固め、次へと歩いていくしかない。

 

 ミホノブルボンは、後ろを見る。

 帯電した有翼の獅子は、その才能に比して堅実なまでに少しずつ、少しずつ迫ってきていた。

 

 覚醒を必要としないで勝つ。覚醒できなくとも勝つ。

 そのための方策を、彼女のマスターは立ててくれた。

 

 だが問題は、距離である。その最後の秘策の発動をするには、距離が足りない。残り1000メートル地点では仕掛けられない。

 

 当初の予定通りと、マスターは言った。シンボリルドルフを知っていることに関しては彼以上の人間はいない。

 あくまでも自分でタイミングを計るが、策そのものは変更しない。

 

(しかしそれにしても)

 

 仕掛けが早い。シンボリルドルフはこれ以上ない、完璧なタイミングで仕掛けてきた。

 宝塚記念は仕掛けの早いレースである。最後の直線が短いからこそ、第3コーナーで早々に仕掛けてくることは珍しいことでもない。

 

 だがシンボリルドルフは、向正面付近で仕掛けた。そして端から脅威的な末脚を解放した。

 彼女は中・長距離ウマ娘の中で勝てる者がいるのかと思うほどに鋭い脚を繰り出せる。勝てるのはトウカイテイオーとかそのあたりしか居ないだろうと思われる程に。

 だが今回、出力が更なる上をいっていた。他でもない自分を超越して、シンボリルドルフは最速の脚を最大限持続させる術を得たのだろう。

 

 第3コーナーを回り切って、シンボリルドルフとの差はもはや1バ身程。

 徐々に、徐々に。無理せず、しかし確実に詰めてくる。理性的な猛獣の狩りというべき追い込みを受け続け、精神が削れていく。

 

(流石だ、ブルボン)

 

 それでも掛からないミホノブルボンに、シンボリルドルフは惜しみない称賛を送った。左眼で参謀を、右眼でブルボンを。

 注意割合としては7:3だが、シンボリルドルフはミホノブルボンの短所も長所も研究し尽くした上でレースに臨んでいる。

 

 ――――私が知っている中で2番目に強いウマ娘

 

 その評価に、狂いはない。ミスはない。本質的にはスプリンターである彼女を、シンボリルドルフはこれ以上ないほど極められたミドルステイヤーとして認め、対策していた。

 

 そんなミホノブルボンには、称賛を受ける余裕などなかった。いっそ、掛かってしまいたい。一刻も早く、一尺でも遠くに駆け去りたい。

 才能はない。全くない。まるでない。ぶっちぎりでない。だが精神力だけはある。あるというか、鍛えて作り上げた。

 

 ミホノブルボンは、一事が万事それである。元から持っていたのは、頑丈な身体だけ。今ある武器の一部はお父さんと、そして殆どは東条隼瀬と作り上げた。

 元から持っていた武器など、ありはしない。唐突に降ってくることもない。計画的に作り上げていって、そして作り上げていった武器を使って勝つ。

 

 彼我の空間を表す数字が目減りし、分数になり、そして消える。

 ハナとかアタマとか。そういう世界に至って、ミホノブルボンはやっと第4コーナーに――――自らの領域を形造れる地点に辿り着いた。形造れる冷静な自分を運び切った。

 

 そして、開く。領域を構築する。

 メインプラン。それは領域打ち消し効果を持つシンボリルドルフの領域を構築させず、一方的に領域を広げて勝つこと。

 シンボリルドルフは二の矢――――というより生来持っていた領域を広げることで、そのプランを打ち壊しにかかった。

 

 かかったが、それでもシンボリルドルフの恐るべき領域――――自身の能力を向上させ、ついでに他者の領域を雷撃で粉砕、新規構築をも阻害する力を持つそれ――――は、封印した。その事実に変わりはない。

 

「ほぉ……」

 

 底知れない強さを見せるシンボリルドルフのやや低めの声が、虚空に鳴った。

 

 青空を、ターフを、観客席を、レース場全体を覆っていく、星の燦めく大宇宙。

 歯車が噛み合い、開かれていくサーキット。ライスシャワーには開ききる前に破壊されたそれは今度こそその全容を宇宙の中に現し、ミホノブルボンを射出する。

 2段階目の領域とコーナーでの加速という十八番も合わせて圧倒的な加速を得て、1段階目の領域に繋げて速度を上げて逃げ切る。

 

「私の勝ちです、ルドルフ会長」

 

 何度も掛かりかけたが、耐えた。耐えてここまで持ち込んだ。その時点で、そして前半戦で勝負はついていた。

 

 そのことを言われるまでもなく、シンボリルドルフは領域が構築されて即座に察知した。畳まれたサーキットが出てきた瞬間に看破した。そして敢えて、何もしなかった。

 

(なるほど、確かにこれはどうしようもない)

 

 だがそれはあくまでも、領域を広げられないから。対処法はあるが、対処法を実行するための手段を没収されている、そんな状況。

 

 シンボリルドルフは加速を得て宇宙へ進もうとするミホノブルボンを見据えて、息を吸った。

 

(半分を越えた地点で3人抜く。それは達成できていない)

 

 だが、3人は抜いた。達成できていないのは、『半分を越えた地点で』という位置条件。3人抜くという実績条件は満たした。

 シンボリルドルフは、自ら定めた誓約を緩めた。普通ならばできないことを、彼女はした。できるだけの才能を持っていた。

 

 なによりもひっそりと、シンボリルドルフは条件を緩めるための訓練を重ねてきたのである。

 それはレースのためというよりとある男を自分の領域内に招くための訓練だった。とある男に領域というものを理解させ、ミホノブルボンの役に立たせるための訓練だった。

 

 それが今、ミホノブルボンに牙を剥く。

 

 条件は半分だけ満たした。ならば条件を完全に達成したときに構築できる領域の効果を半分だけ引き出す。

 

 自己強化はいらない。展開阻害もいらない。

 ただこの目の前に広がるこの宇宙を、目の前の領域を消し飛ばすための領域を。

 

 誓約を軽減して条件を緩め、そして効果を大幅に削ぐ。

 

「さあ轟け、我が力よ」

 

 星の大海、2つの領域が重ねられた美しき闇の虚空の中に閃光が迸る。

 

 しばし拮抗し、歯車が悲鳴のような軋みを上げる。虚空が上映を終えたプラネタリウムのように明滅し、宙空に罅が奔る。

 

 砕け散る空を、威力の減衰を見せない雷神の鎚が穿ち抜いていく。

 

 青空とターフが、世界に舞い戻る。虚空が吸い込んでいたはずの観客の大歓声が身体を打つ。

 

(勝った! 予想を超えた!)

 

 東条隼瀬は、気づくだろう。シンボリルドルフがもう一枚だけ切り札を用意していたことに。

 トウカイテイオーもそうだった。メジロマックイーンもそうだった。ライスシャワーもそうだった。ならば、と。

 

 自分と歩んだシンボリルドルフというウマ娘は、彼女らと同列かそれ以上に座しているはずだと。

 

 封じられたのは想定外だった。だがその瞬間、思った。2段階目の領域で何もかも打ち砕こうと。

 だが、読み切られていると瞬時に理解した。何故なら、彼には対戦経験があるから。2段階目の領域があることを、彼は知っているから。

 

 勝つために、一番厄介な領域を封印する。

 そのために、彼はここまでの策を立てた。

 

 ならばそれはつまり、そういうことなのではないか。

 

 第4コーナーを曲がり、最後の直線へと向かう。

 ウマ娘にとっての頂、極み。それが領域。それを組み込んで策を立てる。誰にでもできることではない。

 

 ゴール板。その付近の観客席に、彼が見える。ミホノブルボンが勝つ姿を見るために陣取っている彼に、見せつけてやる。自分が、他ならぬシンボリルドルフが勝つ光景を。

 

 均衡がやや、本能へと傾斜を深めた。

 直線勝負では、理性はいらない。むしろごちゃごちゃと考えていては邪魔にすらなる。

 

「ありがとう、ルドルフ」

 

 先頭は変わらず、ミホノブルボン。しかしシンボリルドルフとの差はわずか2分の1バ身。300あれば充分に差しきれてしまう、そんな僅かな差。

 

 ――――想定すら不可能な程に強大で、絶対的な皇帝でいてくれて。

 

 東条隼瀬は知っていた。自分の立てた策の尽くが振り切られ、噛みちぎられ、打ち砕かれることを。

 彼はシンボリルドルフを、この上なく過大評価している。それでいて、この上なく正当に評価をしている。

 

 過大評価をしても、しすぎることはない。

 シンボリルドルフとはつまり、そういう存在なのだから。

 

 絶対の皇帝。その称号に嘘はない。

 だからこそ。

 

「俺は君に、同じ質量の絶対をプレゼントしよう」

 

 ――――ミホノブルボンというウマ娘が持つ、唯一の絶対を。

 

 レースを遅延させた。それは、領域を封じるためか。

 そうではない。そもそも彼は領域というものを切り札に据えたことが無い。

 

 彼にとって領域はどこまでも手札の一枚でしかない。ラミネート加工されて燦めく、有効で強力な――――そして兎にも角にも目立ち、ウマ娘の注意を集める数少ない手札。

 

 シンボリルドルフは名門のウマ娘である。

 だからこそ領域の重要さを知っている。領域と領域が激突して、勝負が決まる。そういう古典的な戦いを愛している。

 

 では、なんのためか。

 それはミホノブルボンが本来持つ資質を、この上なく最高の状況で発揮させるためだった。

 

 ミホノブルボンは、スプリンターなのである。

 その本質は、変わらない。弛まぬ努力で他の距離へ挑戦することができるようになった今も、ミホノブルボンの本質はスプリンターなのだ。

 

 それは、絶対的で覆しようのない事実である。

 そしてシンボリルドルフは、ミドルステイヤー。主流である中・長距離を駆けるために精緻に整えられた才能をしている。

 これもまた、絶対的で覆しようのない事実である。

 

 シンボリルドルフは、油断をしない。2200メートルを走る以上、中距離を走る以上、『中距離での最悪』を必ず想定してくる。そして必ず上回ってくる。

 

 東条隼瀬は、レース前に言った。

 

 

 ――――お前はどこまでいってもスプリンターだ。今回は、ここに頼る。この作戦はつまり、1100メートルまでをだらだら走って脚を溜め、残りの1100メートルの内、最終直線までの743.5メートルをなんとかしてやり過ごす。そして最後の直線で徒競走をすることを目指す。最後に決めるのは俺の策ではない。お前の天稟だ

 

 

 この二人が単純に356.5メートルで争えば、ミホノブルボンが勝つ。なぜなら彼女はスプリンターだから。短ければ短いほどに強いウマ娘だから。

 

 だから、ここまで持ってきた。

 

 シンボリルドルフは、強い。最強と言っていい。だがそれは、王道の距離でこその最強である。

 しかしその強さは、距離が長ければこそ。356.5メートルの徒競走では、ミホノブルボンに軍配が上がる。

 

 2分の1が3分の2に。

 3分の2が1に。

 

 それ以上は、開かない。だが、縮まりさえしなければいい。

 坂を越えての356.5メートルを、ミホノブルボンはスプリンターとして全力で――――そして一番に駆け抜けた。




101人の兄貴たち、感想ありがとナス!

まめころさん兄貴、カマンベールたうより兄貴、一郎さん兄貴、concre63兄貴、太陽光兄貴、障子から見ているメアリー兄貴、よむひと兄貴、うみんちゅ26兄貴、エルティグレ昆布兄貴、つよちゃん兄貴、Kai-Li兄貴、しょうがない者兄貴、カペレ兄貴、平部員兄貴、型落ち兄貴、くわー兄貴、評価ありがとナス!


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サイドストーリー:ごんぎつね

ごんぎつね(ライオン(ウマ))

アンケート終了しました。
執筆時間が取れない&毎日投稿したい都合上普段の投稿はこのまま18時になります。
が、アンケートの結果時間をとって書く凱旋門賞のレースは15時に投稿します。


「なんとか勝ったか……」

 

 当初の計画では、強制的にスプリント戦に引き摺りこむなどという予定は無かった。あくまでもスローペースの中でリードを保ったまま騙し続け一人勝ちする。

 

 だがミホノブルボンからスノーホワイトの本を返してもらったとき。

 引き出しを開けて日記帳を取ったあと、下からボールペンの芯を差し込んで二重底となっている扉を開けたときに、気づいた。

 

 これは作戦に使えるかもしれない、と。

 前半をスローペースに保ち、余ったスタミナで後半を圧倒する。

 それに加えて、もうひとつ。何かあった方がいい、と。

 

(なにせ相手はシンボリルドルフだ)

 

 警戒してもしすぎることはない。自分の策は全て見抜かれる。その前提で動くべきだ。

 なら、最後はブルボンに頼る。そういう発想で、今回の勝利は生まれた。

 

 刻まれたタイムは、当然レコードではない。前半のタイムは、歴代でも屈指のトロさである。

 だが後半のタイムは、これから10年は抜かれようがない程に圧倒的なものだった。

 

「負けたか」

 

 自滅以外での、初敗戦。

 全知全能を懸けて全力を出させないことに注力された。そしてその罠を食い破った頃には相手に有利な形態で戦わざるを得なくなっていた。

 

「……」

 

 天を仰いで、息を吐く。

 勝つことが当たり前になっていた。そして成長が頭打ちになっていた。だからこそ最近は競技者と言うより運営者として、トレセン学園に関わってきた。

 

 だが、違う。まだまだ伸びる。それが、わかった。わからされた。他でもない彼と、彼の技術の粋を集めて育てられたウマ娘によって。

 

「ブルボン。ありがとう」

 

 自ら滅びた哀れな敗者としてではなく、全力を尽くしてなお届かなかった堂々たる敗者として。

 シンボリルドルフは、いつも差し伸べていた手を高みへ伸ばした。

 

「私は他の誰でもなく、君にこそ敗れた。そのことを心に刻ませてもらう」

 

「いえ。ルドルフ会長に勝ったのは、あくまでもマスターです」

 

「参謀くんならこう言うだろう。立案者よりも実行者の方が遥かに価値があると。確かに罠を張り巡らせたのは、彼だ。勝利への道筋を立てたのは彼だ。だが計画の齟齬を現場でその都度修正し、信じ抜き実行した者の方が偉大だと」

 

 それは、自分にできることとできないことを弁えている彼らしい言い草だった。

 

「確かに、そうかもしれません」

 

「まあ真実は君たちだからこそ勝てた、というところだろう」

 

 基本的にお互い、自己評価が低い。低いというより、自分にできないことをできる相手を評価しているからこそ、比較法で自己評価が下がると言うべきか。

 

「また走ろう。共に」

 

「はい」

 

 これから、どうなるか。

 シンボリルドルフは予測できるこれからを――――多少なりとも時間を重ねあった仲であるからこそわかる強さを、厳しい未来を予測したように顔をしかめた。

 

「私を打倒した後……」

 

 そこまで言って、口を噤む。

 これは自分ではなく、彼こそが言うべきだ。そう思ったのかも知れない。

 

「ルドルフ会長?」

 

「ん……いや、ともかく、頑張れ。君に孤独は似合わないからな」

 

 触れ合っていた白と白の手袋が離れ、シンボリルドルフの視線が後方へ向く。

 つられて向いた先には、彼が居た。

 

「勝者はその勝負を讃え合ったあとは、勝利をこそ讃えられるべきだ」

 

 勝利。

 自分と常に共にあったそれが、今やミホノブルボンの手にある。

 

 少し上の空気味な参謀と、飼い主を見つけた犬のようにぱたぱたと尻尾を振って突っ込んでいくミホノブルボンの背中を見つめながらそんなことを思って、シンボリルドルフは身を翻した。

 

 宝塚記念を勝った。これでミホノブルボンは、GⅠ10勝目。

 重賞10勝ではなく、GⅠ10勝である。この上に立つのはシンボリルドルフしかいない。

 

 そしてミホノブルボンは今回、そのシンボリルドルフに勝ったのだ。

 シニア級に昇格してから大阪杯・天皇賞春・宝塚記念を立て続けに勝利。名だたるウマ娘たちを連破し、これで春の三冠達成となる。

 

 このまま秋の三冠も獲り、前人未踏のグランドスラムを達成するのではないか。そんな声すら上がっている。

 

 シンボリルドルフとは、何もかもが対極の存在。それがミホノブルボンだった。

 

 ミドルステイヤーとしての才能は皆無。

 圧倒的な寒門出身。

 父はトレーナーではあるが実績は少なく、名門でもなければ連枝の家でもない。

 

 短距離路線に進むべき。そんなふうに言われていたことが忘れられる程に――――某掲示板では『ミホノブルボンは短距離路線に進むべきと言ってた無能ww』という過去の発言の蒸し返しスレや自虐スレが立ったりするが――――彼女は立派なミドルステイヤーとしてやれていた。

 

 だが業界に詳しい人間であればあるほど、シンボリルドルフに勝つのは無理だと思っていた。少なくともシンボリルドルフが衰えはじめなければ無理だろうと。

 

 だが、勝った。

 

 シンボリルドルフの強さはわかりにくい。見てて強いだろうなーとはわかるが、圧倒的だ、とは見られない。

 

 逃げ、追い込み。それがトゥインクルシリーズの華である。

 なにせ、この2つの脚質は観ていて派手で強さがわかりやすい。

 

 逃げは、最初から最後まで先頭を走る。つまり、そのウマ娘は最初から最後まで誰よりも強かったということがわかりやすく理解できる。

 追い込みは、ぽつんと最後尾に居る状況から一気に捲って上がってきて最後に全てぶち抜くハラハラ感、爽快感が堪らない。

 

 だから素人であればあるほど――――特に寒門の才能に恵まれない娘が頑張って名門貴門の恵まれた強者を圧倒するというカタルシスに惹かれて大量に流入した新規ファンであればあるほど、ミホノブルボンの勝利を疑っていなかった。

 

 こういった意味でも宝塚記念は、見る人間によって大きく意味が変わってくるレースだったのである。

 

 

 ――――前人未踏のグランドスラムに挑戦されますか?

 

 ――――未定です

 

 

 ――――トレーナーとしての見解をお訊きしたいのですが、勝因はどのあたりにあったのでしょうか?

 

 ――――他の強豪あたりの不在です。特にメジロパーマーとトウカイテイオー。強い逃げウマ娘がふたりいると、単純な実力勝負になります

 

 ――――では、トウカイテイオーは?

 

 ――――シンボリルドルフは私というフィルターを通してミホノブルボンを見ます。その被写体の歪みを利用して、今回は勝ちました。ですがトウカイテイオーは逆です。ミホノブルボンというフィルターを通して私を見る。彼女ならからくりを早期に見破っていたでしょう。となると、やはり展開が違ってきます

 

 

 ――――そのふたりが居れば勝てなかった、ということでしょうか?

 

 ――――それならそれでやりようはありますが、勝率は下がっていたであろうと考えます

 

 

 ――――皇帝を倒し、ミホノブルボンは最強のウマ娘になった。そう考えてもよろしいでしょうか?

 

 ――――今のところは。ですが今回は別に偶然勝ったわけでもなく、実力で勝ったわけでもない。よく言っても精々なんとか勝ったというあたりで、次に同じことをやったら負けるでしょう。1枚しかアタリが混ぜられていない10枚の中から、たまたまアタリを引けた。無論引くための努力はしましたが、結局はそれにつきます

 

 ありがとうございました、と。

 ひとりでほぼ全部訊きたいことを訊いて、月刊トゥインクルの記者は下がった。

 そしてその後の質問は、たった一つ。

 

 ――――トウカイテイオーは引退報道も出てきていますが?

 

 ――――2度あることは3度あると言うでしょう。怪我を補えるだけの才能があるし、才能を活かすための努力ができる。彼女がそういうウマ娘であることを一番よく知っているのは、他ならぬ貴方がたなのではないか、とも思いましたが違うようですね

 

 

 そんなライブ後のインタビューを終えて、東条隼瀬はミホノブルボンと新幹線に乗ってその日の内に学園へ帰還した。

 珍しく車ではなかった理由は皇帝との戦いの前に余計な頭を使いたくなかったと言う、ただそれだけの理由である。

 

「マスター。今日はこれからどうしましょうか」

 

「風呂に入って寝ろ」

 

 双方の牙が折れ砕けるほどの戦いであったし、精神力が相当消耗した。

 しかし、走った距離はあくまでも2200メートルである。春天3200メートルに比べれば肉体的疲労は薄い。

 

「了解しました。オーダー、実行します」

 

 そんなふうにとことこと帰っていくミホノブルボンの後ろ姿に、東条隼瀬は声をかけた。

 

「明日、空いているか?」

 

「? はい」

 

 脳内でカレンダーアプリを起動し、スケジューラーを閲覧してから答えを返す。

 明日は、練習はお休み。そのことは予定を立てた他ならぬ彼自身が知っているはずだった。

 

「では、付き合ってくれ。行きたいところがあるのでな」

 

「了解しました。集合時刻・場所はいかがしますか?」

 

「正門に17時でよかろうと思う」

 

 授業が終わり、少しして後。身だしなみを整える時間も充分にある、そんな時刻。そして正門に集合するのはやはり、車を使ってどこかへと行くからだろう。

 

「復唱します。正門に17時。これで間違いありませんでしょうか?」

 

「ああ、問題ない」

 

「わかりました。おやつの持参は可能ですか?」

 

「300円までならな」

 

「予算の増額を要求します」

 

 それはまさしく、才能のきらめき。脊髄反射の抗議だった。

 

「お前は3年生だから300円までだ」

 

「まけてください」

 

「まからん」

 

 今日1日で3億5000万(内訳:宝塚記念で1億5000万、春シニア三冠の賞金で2億)稼いだコンビとは思えない程低次元な会話を繰り広げながら、この銭闘は432円で決着した。

 

 まさしく、宝塚記念に勝るとも劣らない激戦であった。

 

「で、その激闘の後に君たちは駄菓子屋に行っていたと」

 

「いかにもそうだ」

 

 夜。呼び出されていることを今更ながら――――帰ってきたら部室の扉に突き刺さっていた矢文で知った男は、結構な深夜に生徒会室の扉を潜った。

 

「トレーナーくん。カロリーはまあ別にして、金銭の制限はいるのか? もう立派に自分で稼いでるわけだし、いいのではないかと思うが」

 

「お前……駄菓子屋とは金銭制限を設けてこそのものだということを知らないのか?」

 

「……うん。知らない」

 

「知らないのか、あの限られた予算の中で最善を尽くすという行為がもたらす効能を」

 

「と、と言うか君も金銭感覚については私のことを言えないだろう?」

 

「俺はやったことがある。限られた手札の中で目標を達成する。経済感覚を養う。トレーナーに必要なそれらの訓練になると、父は言っていた」

 

 これだからお嬢様は……という深いため息をつかれ、シンボリルドルフはちょろっと凹む。

 それこそホームランボールを食らった車のボンネットの如く凹んだが、同じくボンネットと同じようにバコンとその凹みを跳ね返した。

 

「……それにしても帰ってくるのが遅くはないか?」

 

「駄菓子屋に車で行くのは礼節に悖る。自転車で行こうかとも思ったが、やはりここは堂々たる徒歩でと決めた結果、こうなった」

 

「そ、そうか。礼節なら仕方ないな……」

 

 そうとしか言えない。なにせシンボリルドルフは、駄菓子屋に縁がない生活をしていたのである。

 何も知らない人間は、その場をよく知る人間が正しいと信じる礼儀にとやかく口を挟めるものではない。

 

 このとき、シンボリルドルフは崩れていた。彼女の本質を覆う防壁を硬軟織り交ぜた攻撃で打ち砕いた男は、何気なく言った。

 

「まあトレーナー業のために駄菓子屋に行ったりしていたが、その後病気が重くなってな」

 

「うん。大変だったらしいね」

 

「ああ。だがお前のおかげでこうしていられる。ありがとう、ライオン丸」

 

「ああ。私は確かに貴方を激励した。だが実際にトレーナーになったのはひとえに貴方の努力の――――」

 

 ぴたりと、ふふんと胸を張りながら誇らしげに言うシンボリルドルフは、ピタリと止まった。

 

「やはりか……」

 

 だが、間抜けは見つかったようだな。

 そう言わんばかりの参謀を前に、シンボリルドルフは耳をペタリと萎れさせた。




 その明くる日もるなは、だじゃれを持って、参謀の家へ出かけました。参謀は物置でなわをなっていました。それでるなは、うら口から、こっそり中へ入りました。
 そのとき参謀は、ふと顔を上げました。と、うまむすめが家の中へ入ったではありませんか。こないだ勲章をぬすみやがった、あのうまむすめめが、またいたずらをしに来たな。
 「ようし。」
 参謀は、立ち上がって、納屋(なや)にかけてあるかなだらいを取って、ドリフをつめました。
 そして足音をしのばせて近よって、今、戸口を出ようとするるなの頭を、ドンとうちました。るなはばたりとたおれました。参謀はかけよってきました。家の中を見ると、土間にだじゃれが固めて置いてあるのが目につきました。
「おや。」と、参謀はびっくりしてるなに目を落としました。
「るな、お前だったのか。いつもクソくだらないだじゃれをくれたのは。」
 るなは、ぐったりと目をつぶったまま、うなづきました。

「しょうががないなんて、しょうがないなぁ……」

 参謀は、かなだらいをばたりと取り落としました。面白いだじゃれが、まだ口から細く出ていました。

(おわり)




76人の兄貴たち、感想ありがとナス!

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サイドストーリー:変わればこそ

 気づいたのは、いつからだったか。

 それはたぶん、初めて見たときだった。どこか、脳に引っかかっていた。

 

「君がおハナさんが言うところの参謀くんかい?」

 

 白い手袋をした手が差し伸べられる。手足が長くて、背が高い。頑丈というより、靭やかな身体。

 骨に負担が掛かるほどの柔らかさはない。だが骨に負担が掛かるほどの硬さもない。

 

「シンボリルドルフだ。よろしく」

 

 ――――爆発力ではなく、持続的な強さを

 

 遮二無二鍛える。我武者羅に上を目指す。

 ウマ娘もトレーナーも、そういうタイプが多い。後先を考えていない、今を生きることしか考えていない身体を作ることが多い。

 

 それは、正しくはある。今しか考えていないウマ娘と戦うのだ。こちらもそんな余裕はないし、未来を考えて今手を抜けば勝てるものも勝てない。

 だがシンボリルドルフは、そうではなかった。日本ダービーでも、常に余力を残して勝っていた。なにより鍛え上げられた身体の質が、彼女の視野の広さ、志操の高さを物語っていた。

 

「ああ、よろしく」

 

 映像で走るのを見てから、握手をして。

 そしてしばらくは、何もなかった。菊花賞までは、練習するところを見るだけだった。

 

 走るところを見れば見るほど、ライオン丸なのではないかと思った。自分にとっての原点、ヒーローなのではないかと。

 だが他のウマ娘と接する姿を見れば見るほど、ライオン丸ではないのではないかと思った。あの傍若無人、傲岸不遜の化身らしからぬフレンドリーさだと。

 

 そして、今。疑念は確信に変わった。

 

「お前だろう。ルドルフ」

 

 しおれた耳をぴーんと立たせて、パチパチと眼を瞬かせる。挙動不審に瞬かせて、また耳が垂れた。

 

「……うん。今更になるが、今日ここに君を呼び出したのもつまり、そういうことだ」

 

「だろうな」

 

 薄く勘づいていた。だが確信に変わったのはやはり、今日のレースを見てのことである。

 

「何故隠していたのかはよくわからないが、あの才能の持ち主が出てこないのもおかしい。そして君のちっこい頃の評判がなかったというのも、おかしい。同一人物だから当たり前だが、君はあの娘と互角の才能だ。なのに小さい頃の噂は聴かなかったし、濁されていた」

 

「それは私がやった。知られたくなかったんだ」

 

「そう、そこだ。何故知られたくなかったのか。そこがわからない」

 

 再会して即座にとはいかないにせよ、会っていたならば言って然るべきではないか。

 なにせこちらは名前を知らなかったが、ルドルフは名前を知っていたはずなのだ。

 

「……あまり、褒められたものではなかったからな」

 

「子供の頃の言行が、か?」

 

「ああ。貴方には立派になった私だけを見てほしかった」

 

 再会して、やはりあの時の少年だと知って。

 理想に賛同してもらって、打ち明けようとしたことは何度もあった。

 だが、振り返ってみると自分の理想と自分の過去は相剋している。自分の過去は今の自分の理想にそぐわないし、今の自分の理想は過去にそぐわない。

 

 失望されるのではないか、と。

 志を、在り方を認められている。そうわかっているからこそ、志が無く、在り方が正反対と言っていいほどに異なる過去を知られることを恐れた。

 

 だがそれを、口には出さなかった。ほんの少しだけ。ほんの少しだけでも、彼が自分のせいだと思ってしまうような要素を口には出したくなかった。

 

「過去の理想に反していた自分を見られたくなかったというわけか」

 

「私は貴方の理想でいたかった。ずっと」

 

 生まれながらの皇帝であったと。生まれながらに高邁な理想を抱いてきたのだと。

 そうでなければ、生まれながらのハンディキャップを克服してここまで来た、来てくれた。そんな彼の隣には立てない。

 

 両親からは、笑い話にされている。

 仕方ないよ、と。そういうこともあるよ、と。傑出した、傑出し過ぎた才能は幼い頃の君の人格には支え切れなかった。

 

 領域。生まれた頃からどうかはともかく、走れるようになってからは常に共にあった強大無比な雷撃が、人格に作用していたのではないか。

 人格が形成されるにつけて生成され、実力がつくと共に固定化し、決意と共に具現化する。

 そんな正しいプロセスを吹き飛ばす程の才能が彼女にはあった。故に人格形成が不充分なのに、領域を作れてしまった。

 

 だがそんなものは、言い訳だ。あの頃の自分に無自覚に踏み潰されて消えていった夢はいくつあったことだろう。

 だから、彼が苦しんでいた時に声をかけることができなかった。サイレンススズカのあれは、どう見ても事故だった。仕方なかった。

 

 しかし、その『仕方なかった』と言われることの苦しさを、救われなさを。そしてなによりも覆し難い過去の重さを、シンボリルドルフは知っていた。

 

「……失望したかい?」

 

「いや」

 

 鋼鉄の瞳が閉ざされ、首を振られる。

 

「生まれた時から傑出した人格を持っていることも、それを維持し続けることも、勿論素晴らしいことだ。不変であることは俺の理想でもあった」

 

 変わらないことこそが強さなのだと。

 頑なに、そう信じていた。だからこそ、ミホノブルボンにもそれを求めた。

 

 ラップ走法。普遍なる強さを刻み続ける走り方。

 逃げながら加速する、進化する、変化する強さを持たせることを恐れ、逃げた。

 

 だが、今は違う。

 

「自己を変化させることは、容易いことではない。俺の変化など小さなものだと、心から思う。だがそれでも変わるには色々なやつの助けを必要とした。それをお前は幼い頃に、ひとりでやり抜いた」

 

 ――――俺はお前を、心から尊敬する

 

 その言葉は、今まで彼に関わった誰が欠けても口に出せなかったことだった。

 

「理想を求め、自分を変えていく。過去を否定し、ここまで来て。そして今日、向き直って受け入れた。やはりお前は俺の全てをかけて仕えるに相応しい皇帝だ」

 

 やや虚空に目を向けながらそう言い切って、そして笑う。

 

 ――――まあ、一度反旗を翻し君の戦歴に泥を塗りつけた男の帰参を許してくれるならば、の話だが

 

「……変わったな、君も」

 

「ああ。だが、悪くないだろ」

 

「うん。好きだよ」

 

 ふふっ、と。いつもの皇帝に戻ったような余裕のある笑み。

 だがほんの少しだけ幼さが前に出ているような、今の彼女はそんな印象を与える顔をしていた。

 

 元々パーツだけ見れば可愛いと言える顔をしているのである。それを意志と雰囲気で引き締めて、かっこいいとか綺麗とかが似合う顔にしている。

 つまり今は、意志か雰囲気が欠けている。あるいは、どちらもか。

 

「俺も、君のことが好きだよ。もっとも俺は、変わる前も変わった後も、どちらも同じ質量の好きを向けているわけだが」

 

「それは私もだ。出会ったときも、変わる前も、変わった後も」

 

 似たもの同士というわけだ。

 ほぼ同時にそんなことを言って、笑う。片方はやや不器用そうに、片方はやや儚げに。

 

 卓上に置かれていた双子のティーカップにコーヒーを注ぎ、彼と彼女はカップの口を重ね合わせて同時に一口含んだ。

 夜に飲むにふさわしい暗さが、白いカップの中に満ちている。

 

「……君はこれから、過去に向き合うのだろう?」

 

「ああ。あいつは、俺のわがままを聞いてくれるかな」

 

「聞いてくれるさ。気質が善良で根が素直な子だから」

 

 それはわかっているさと言わんばかりに笑って、東条隼瀬はまた一口コーヒーを飲んだ。

 

「俺はトレーナーは無私であるべきだという信念に従って、これまで動いてきた。だがそれを今破ろうとしている。挑むのもそうだし、相手が相手だ」

 

「策が通じない、か」

 

「その通り」

 

 というか、そういうふうにしたのだ。なにせ走っている間は肉体を地上に残したまま、意識だけを高次元に上らせる――――要は何も考えないやつだったから。

 

「だが通じないなら通じないなりに、やりようはあるだろう」

 

「なんだそれは」

 

「信じる、ということさ」

 

「それで勝てたら苦労はせんだろうに」

 

 だが、そういう発想で事に当たるしかないというのも事実である。

 自信を持ったって勝てるというわけではない。自信を持っただけで勝てるならば、この世界で一番強いのはなんの努力もしない、根拠のない自信を持つうぬぼれやということになる。

 

「そう。苦労はしない。だからこそ貴方は今まで苦労をしてきたわけだ。だからこの際、信じ切ってみるのも手だと思う」

 

「自分でやってくれと言っておきながら、勝つべき方法を全く用意しないというのはな」

 

「トレーナーとウマ娘は二人三脚、持ちつ持たれつだよ」

 

 とは言っても限度があるだろうと思うし、なによりもミホノブルボンには日々迷惑をかけている。

 策を用意する。勝つ為の場を整える。だがその整えた場においても見通し難い霧が発生することがあるし、その霧の中を見通して齟齬を解消してくれたのは他ならぬ彼女自身である。

 

「迷惑をかけてもいい、と。君はそう言いたいわけか」

 

「この際、私の方が彼女の気持ちはわかる。これまで何度も勝つ為の場を整地し、勝機を作り、迷惑をかけられてきた。そんな人にやりたいことができた。となれば、今まで自分がやってきたように、迷惑をかけてほしい。恩を返したい。そう思うはずだ」

 

「そんなものかね」

 

「そんなものさ」

 

 シンボリルドルフは、笑った。

 東条隼瀬もまた、つられて笑った。

 

 そして夜が明け、6月14日の放課後。

 正門の少し横、路肩に止めた車の中。東条隼瀬は黙々と考えていた。

 

 どうするか、ということである。

 フランス語で書かれたニュースペーパーは、少し前に送られてきたもの。

 

「まだ時間はある。延ばしてどうにかなるものでもない。しかし性急に話を持ちかけるのも憚られる、か」

 

 自分の願望と、彼女の願望。どちらを優先させるべきかということなど、考えるまでもなく決まっている。

 ここはまず彼女の意見を聴く。その上でお願いしてみる。そうすべきだろう。

 

「マスター」

 

 こんこんと、窓が叩かれる。

 本気で叩けばぶち破れるであろう怪力の持ち主は、私服には着替えずそこにいた。

 

「早かったな」

 

「はい。マスターはわざわざ、私のために誘ってくださいましたから」

 

 自分の要望を一度断ったことを、マスターは少し気にしていらした。

 ミホノブルボンはそのあたりを察して、手に持った駄菓子を振った。

 

「なんだ、知っていたのか」

 

「はい。ですからこの通り、あんずぼーを」

 

「ああ……」

 

 あれはお出かけのためのというより、ご褒美というべきジョークだった。

 そんなに派手に遊ぶことはできないが、軽く遊びに行こう、という感じの。

 

 だが今回俺が枇杷を買ったのと似たような意味で買ったのか、と妙に納得して、車を発進させようとして、止まる。

 

「マスター」

 

「あれ、拾うのか。俺が?」

 

 歩道でわーわーと手を振ってアピールしている女。というか、少女。片手にメロンと何かのお菓子が入っているであろう箱、片手に箱詰めはちみー。いつも脚に使っているリムジンはどうしたとツッコみたくなる、そんな存在。

 

「おそらく、行き先は同じですから」

 

「まあ、それもそうだが……話したのか、お前」

 

「はい。今日言われました。『彼女、会いたがっていましたわ』と。そして返しました。おそらく今日、マスターが連れて行ってくださいます、と」

 

 声はともかくアクセントが酷似しているあたり、さすがの蓄音機性能というべきか。

 わーわー腕を振る芦毛――――色褪せたような色をした自分のそれとは違い、絹に紫陽花の色素をうっすらと混ぜ込んだような色の髪をした少女の前で、後ろの席の扉を開く。

 

「やはりお見舞いですのね……いつ出発いたしますの? 私も同行いたしますわ」

 

「はよ乗れ」




×:「はよ乗れ」
○:「メジロマックイーン」
◎:「目白魔区院」


79人の兄貴たち、感想ありがとナス!

鮭丸兄貴、rumjet兄貴、beg兄貴、higeyarou兄貴、プラズマデンの子兄貴、雲畑兄貴、ヘキサ兄貴、ドーナツの穴兄貴、我田引水兄貴、ねりやま兄貴、冶葛兄貴、評価ありがとナス!



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サイドストーリー:激烈!メジロ見舞団!

感想返信は明日やります。申し訳ないです。


 賑やかさというものを感じたのは、リギルというチームに加入してからのことだった。

 それなりにデカい家に生まれた東条隼瀬は、やはりそれなりに親戚が多かった。そして本家と呼ばれる家に生まれた以上、親戚の会合に使われることも多かった。

 音を音で塗り替えてやろうという子供たちのキンキンとした、あるいは腹から出るような声の大合唱。そういうものを常に、『うるさい』と感じていた。だが今は、違う。

 

「ひもQです」

 

「おお、懐かしいですわね……」

 

 ――――ひもQは端っこから食べるのも単純に美味しいけれど、コーラとソーダのコントラストを楽しみ、いっぺんに食べるのもまた通なのですわ!

 

 ――――なるほど

 

 そんなにぎやかな会話が繰り広げられる、後ろの席。

 色々と言いたいことはある。なんでメジロ家のお嬢様がそんなにも駄菓子に詳しいのかとか、太りやすい(らしい。スピカのトレーナーが言っていた)のにパクパクしてていいのか、とか。

 

「他にどんなものを購入なさったのですか?」

 

「こんな感じです」

 

「むっ……しょっぱさと甘さ。異なる味をバランス良く混ぜ込み、そして予算以内に抑える。まさしく達人の技ですわね……」

 

 キャベツ太郎に代表されるしょっぱい駄菓子。

 ひもQに代表される甘い駄菓子。

 あんずぼーに代表される中間の駄菓子。

 

「そういうマックイーンさんも駄菓子道を極めてらっしゃいますね」

 

「ふふ……答える必要はありませんわ」

 

 妙に所帯じみた――――庶民的なお嬢様とガチガチの平民を乗せた車を運転していく。

 天皇賞春のあと、仲良くなったとは聴いていた。だがこのふたりが絡んでいるところをあまりイメージできていなかったのもまた事実。

 

 だがなんというか、今わかった。

 

「抜けている者同士、仲が良いわけだ」

 

 ――――大概だぞ、トレーナーくん

 

 ワイワイと話す2人に聴こえない程度の声量も、車のバックミラーにぶら下がるしょんぼりたぬキーホルダーには届いたらしい。

 もっとも、運転する彼には聴こえていないわけだが。

 

「あそこ、ですわね?」

 

「はい。あそこの駄菓子屋で買いました。帰りに寄りますか?」

 

「…………いえ。駄菓子屋さんに行くときに許される乗り物はセグウェイまでですわ。車ではいささか……かなり、礼を失するというものです」

 

「さすがです。マックイーンさん。さすがメジロ家」

 

「ふふ……自分の家を褒められて悪い気はしませんわね」

 

 正統派の旧家の令嬢・トウカイテイオーがいたら八面六臂、阿修羅の如き働きを見せていたであろうこの空間。まさしくツッコミ不在の恐怖。

 

 レイギッテナンナノサー!!→メジロケッテソレデイイノ!?→ワケワカンナイヨーの黄金コンボが炸裂していたことに疑いはないが、本人がいなくてはどうしようもない。

 その点では、レースと同じである。

 

 そうこうしている内にも車は静かに駐車場に止まり、首に紐をくくられて吊り下げられているしょんぼりたぬきがぐわんぐわんと揺れた。

 

「着いたぞ」

 

「今までスルーしていましたけど、貴方運転が抜群にうまいですわね」

 

「まあ一応、そういう職業に就こうとしてたこともあったからな」

 

「ああ……そう言えばそうでしたわね」

 

 聴いたことありますわ、と。

 左耳だけを器用にピコピコと動かしながら、メジロマックイーンは自ら降りた。

 

「じゃあ、見舞い予約を確認してくるから待っていろ」

 

「了解いたしました」

 

「わかりましたわ」

 

 車のキーを指にはめてクルクルと回しながら去って行く男の可聴範囲から自分たちが外れたのを確認して、ミホノブルボンは口を開いた。

 

「そうだったのですか?」

 

「え? ……ああ、ええ。彼は小さな頃病気がちだったのですわ。だから執事にしようという、そういう話もあったのです」

 

 結構主語やら何やらをすっ飛ばすあたりに、ミホノブルボンらしからぬ積極性が窺えた。

 なにせ彼女はそういったことをあまり知らず、ここまでの2年半を駆けてきたのである。

 

 急かしはしないものの、知りたいという気持ちはある。

 

「そこまで知ってらっしゃるということは、マスターはメジロ家ゆかりの方なのでしょうか?」

 

「ゆかり。まあゆかりと言ってもいいかもしれませんわね。なにせ旧家や貴門というものは遡っていけばどこかしらで血を混ぜているものですから」

 

 要は劉氏だから漢王朝の末裔だ、と名乗るくらいのガバガバさではあるが、繋がってはいる。そんな感じ。

 

 背が高くて病弱なあたりはらしい特質と言えば特質ですわ、と。

 自分の家の共存共栄の仲の家の者を思い浮かべながら、メジロマックイーンは答えた。

 

「私などは分家ですし、最初は怪我がちでしたから西園寺の方からお声がけされることはありませんでしたが、ライアンやパーマーなどは名門らしく小さな頃からゆかりの家のトレーナーが付いていましたわ。思い返してみるにこれは名門の有利な点、その最たる例だと言えるかもしれませんわね」

 

 寒門のウマ娘は基本的に小さな頃はひとりで自分を鍛え、学校に入ってからは教官による十把一絡げな教育を受けて育つ。

 

 それはトレーナーという職業が極めて能力の高い人間しかなれない上に、門外不出の蓄積されたノウハウが幅を利かせるものであるからして、仕方ないことでもある。

 トレーナーとしての力がつくための血を紡ぎ、百年単位の積み重ねを教え込まれ、名門としての教育を受けてもなお、重賞に勝てない。そういうことが頻発するのが、この世界なのだ。

 

 どんなに努力しても、生まれてからこの方トレーナーとしての教育を受け続け、努力を続けても、勝てない。そういう残酷な世界であればこそ、そんな勝てないトレーナーのもとにはウマ娘も集まらない。

 名門ならばそれなりのバックアップやこれからの進化を期待して集まることもあるが、実績のない寒門出身のトレーナーであれば集まる理由が見つからない。

 

 本来は『優秀なトレーナーであれば複数のウマ娘を担当できるだろう』という感覚で作られたチーム制が、戦力の一極化と一流とその他だけという歪な分布を引き起こしている。

 

「最初に担当したウマ娘でなんとかして重賞を勝つ。そしてチームを組んで自分なりのノウハウを見つける。名門であればここで自分の家のノウハウを組み合わせて、チーム全体でGⅠをひとつ勝つことを目指す。これがいわば王道の流れなのですわ」

 

 ほんの数年前まではリギル・スピカ・アンタレスなどの群雄が割拠していた。だからこそ新規のチームが食い込む要素もあったし、近頃GⅡの雄になりつつあるカノープスなどは新興チームの代表格である。

 しかし今や強豪リギル・スピカの連合軍対ブルボン=バクシンオー枢軸という図式が描かれつつある。

 

 海外に積極展開しているが故に国内がやや空き気味になったリギルの版図を食いつつあったスピカが後ろからブルボン=バクシンオー枢軸にふっとばされる。

 中長距離はミホノブルボンが、マイル短距離はサクラバクシンオーが。

 

 そういう同盟でもしているのではないかと思わせる程見事に、この同期の両者はGⅠを効率的に取り続けている。

 そもそも負けなしのブルボンと、短距離で負けなしのバクシンオー。両者が強いのは当然と言うべきだが、それにしても環境を支配しすぎている。前者は苦戦こそしても負けはしないし、後者は短距離1200メートルで5バ身差勝ちとかいう意味不明なことをしている。

 

 サクラバクシンオーは唯一の空白地帯であるマイル路線への侵出を決めたようだし、もはや天下は統一されつつあった。

 

 チームではない個人軍がここまで環境を支配するというのは、ある種異様なことである。

 

「その点でも貴方がたは、特異的と言えるのでしょうね。GⅠを10個勝つというのは、歴史に残る偉業ですわ」

 

「はい。ありがとうございます」

 

「新人トレーナーの記録としても傑出したものが――――」

 

「はい。マスターはすごい方です」

 

 自分が褒められても淡白ながら、飼い主――――もといトレーナーが褒められたことで胸に手を当ててふんすふんすと尻尾を振り回す姿は、まさに犬。

 

「まあ、すごい方と言えばそうなのでしょうけれど……」

 

 貴方も同じくらいすごいと思いますわよ、と。

 そう言いかけたところで、予約していた面会の確認を終えた男が帰ってきた。

 

「確認してきた。一人増えても問題ないようだ」

 

「色々とお手数おかけしました」

 

 ターフの名優などという愛称にふさわしい涼やかな顔で一礼し、右手にメロンと菓子折り、左にはちみーボックスをがっしと掴んで歩いていくマックイーン。

 

「話し相手が増えたようだな」

 

「はい。お父さんからのオーダー『社会性の向上』を達成できたものと自負しています」

 

 ライバルのライスシャワー、ルームメイトのニシノフラワー、同じクラスのサクラバクシンオー、あとはテイオーやらマックイーンやらのレースで対局した猛者たち。

 

「社会性の向上ね」

 

「はい。三冠ウマ娘とはすなわち、スターウマ娘です。私は別にスターになりたいわけではありませんが、お父さんのオーダーにはそのような裏があったと思われます」

 

 別にそんなに深い意味はないのではないか。単に乏しいコミュニケーション能力を改善させるために、友達を作りなさい。人生の財産になるような、大切な人をつくりなさいと言うことなのではないか。

 

(まあコミュニケーション能力に関しては俺もひとのことは言えんが)

 

 隣を歩くミホノブルボンの栗毛の尻尾がバッシンバシンと膝裏を叩く。

 別に破壊的な威力ではないが、普通に痛い。そんな感じである。

 

「お見舞いに来ましたわ、テイオー」

 

「マックイーン!!」

 

「お見舞いにきました。テイオーさん」

 

「ブルボン!」

 

「やあ、クソガキ」

 

「げ……」

 

 そうこうしている内に、トウカイテイオーの寝るベッドの横、机の上にはちみーボックスがドン。はちみーボックスの上にメロンがドン。

 苦手なものを見るような眼で見ていたトウカイテイオーがその異音に釣られて視線が誘導され、ええ……みたいな眼でとんでもない量の見舞い品を見る。

 

「ほら、枇杷だ」

 

「……枇杷。なぜ枇杷!?」

 

「テイオーさん。あんずぼーです」

 

「え、ええ……ありがと」

 

 メロンからの落差が凄まじい。

 それでもなんとかお礼を言って凍ったあんずぼーをチューチューしはじめるトウカイテイオー。

 

「テイオーさん。これ、メジロ銘菓のお饅頭ですわ。メロンとはちみーは冷蔵庫に入れておきますが、これは机の上でそのままにしておきますわね」

 

「メジロ饅頭?」

 

「ええ。メジロ防衛隊の中でしか流通していないレア物でしてよ」

 

 メジロ防衛隊ってなんだ。

 そう思わないでもなかったが、メジロ防衛隊は実際存在する組織である。メジロ王国とメジロシティはないが、メジロ防衛隊は存在する。

 

 『食べだしたら止まらない永久機関! パクパクですわ!』という宣伝文句が包装紙に踊る長方形の箱の中には、8個の饅頭。

 

(あれ……おかしい……)

 

 なにかおかしい。このお見舞3人衆のまとう空気が自分とは違う、そんな気がする。結構真面目に頑張ってきた自分とはまた違った空気を、この3人は纏っていた。

 

 なんか3人が同じ方向を向いている。そして放っておくと変な方向に突撃してきそうな気もする。

 

「マックイーン?」

 

「ええ、わかっています。ちゃんとメロンは切ってきますわ」

 

 メジロ流包宰術をご覧あれですわー!と。

 性能的には2番目に頼りになりそうな人物が早々に離脱したのを見て、トウカイテイオーは必要のない使命感に燃えた。

 根はいい子なのである。唐突に煽ってきたりする――――それでいて自分の尊敬する人に信頼されてた男に嫌悪感をいだきつつも、枇杷をくれたことやお見舞に来てくれたことに関しては感謝しているし、その実力を認めてもいる。

 

「ええーっと、そうだ、ブルボン! 宝塚記念、見たよ! すごかったね!」

 

 カイチョーを倒すなんて、とは言えなかった。シンボリルドルフに勝つのは自分だと、そういう思いがあったからである。

 ブルボンの勝利と偉業を祝福しつつも、やはり心のどこかで『自分こそが』と悔しがる思いはあった。

 

「私の力ではありません。マスターによるものです」

 

「いや。お前の力だよ、ブルボン。お前でなければ勝てなかった」

 

「確かにそうですが、マスターあっての私です」

 

「いや、それは逆だな。お前あっての俺だ」

 

「いえ。主はマスター、従は私です」

 

「うん。どっちも必要だったってことだよね。わかるよ」

 

 打ち切りの鬼と化して無限会話編をぶった切ったトウカイテイオーは、真面目な空気を放った。

 どうにもちゃらんぽらんしているこのふたり――――マックイーンはメロンを切りに行っている――――とは、真面目に話したいという気持ちがあった。

 

「あの宝塚記念の策、すごかったよ。ほんとに」

 

「お前、見抜けなかったのか? 俺としてはお前なら容易に見抜けると思ったのだが……買いかぶりだったかな」

 

「見抜けてたよ! でもそれはそれとしてすごいよねってこと! なんでこっちが素直に褒めたら即座にそう喧嘩を売ってくるわけ!?」

 

 どうにも噛み合いが悪いのか、あるいはいいのか。

 あんずぼーをチューとやりながら、ミホノブルボンは虚空を見た。




52人の兄貴たち、感想ありがとナス!

こもにうむ兄貴、くろばる兄貴、zs6008兄貴、しを兄貴、凍幻兄貴、評価ありがとナス!


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サイドストーリー:無責任にも

「やはりか。まあ、お前ならそうなるだろうということはわかっていた」

 

「ボクにバレるかもしれないっていう前提で動いてたわけ?」

 

「出走してないやつの眼までいちいち気にしていられるほど生易しい相手でもない。お前たち二人を相手にする策はあるにはあったが、成功率は低かった」

 

 にやにや、と。

 そんなんでカイチョーに勝とうだなんて甘いよ、と言わんばかりの顔をしていたトウカイテイオーは、『出走してないやつ』という言葉でしたたかな逆撃を被った。

 

 それは全く正しい。レースに、それもシンボリルドルフという偉大なる敵を相手にするに際して他の、それも出走すらしていないウマ娘の存在を勘案して策を立てる必要はないし、そんな余裕もない。

 ただ、もう少し言い方というものがあるのではないか。

 

「ぐっ……やっぱ嫌いだ……」

 

「そうか」

 

「すっごくどうでもよさそうだね!」

 

 どうでもよくはない。だが、優先順位が著しく低いのは確かで、低すぎてステータス『どうでもいい』に片足突っ込んでるのは事実である。

 

「お前は私的な場面で関わる相手ではないからな。気になるとしても、お前が抱く好悪の情をいかに利用してレースに勝つか。それくらいなものだ」

 

「へぇー。ずいぶん立派じゃん」

 

「そうだろう。なにせ感情というのは本質的には制御できないもので、だからこそ確実に利用できるものだからな」

 

「ボクは皮肉で言ってるの!」

 

「ああ、知っているよ。だから真面目に返してやったんだ」

 

 ――――なにせ、ルドルフと関わること10年を超えることが発覚したからな。言語的お遊びに対する理解力はある方だ。

 

 そう続けられた言葉には、『お前よりルドルフと仲良しだぞ』という意味が隠されているように見えた。少なくともトウカイテイオーはそう思った。

 

「カーッ!」

 

 憤懣やる方ない。そう言わんばかりに鳴くトウカイテイオー。そんな彼女をちらりと見て、ミホノブルボンはすっくと立ち上がった。

 

「テイオーさん。カラスの真似でしたら、私にも一家言あります」

 

「いや、真似じゃなくてね」

 

 口をモゴモゴとやって、喉に手を触れる。

 そうしてパクッと口を開け、ミホノブルボンはどこからか実に見事なカラスの鳴き声を披露した。

 

 カァーアァ、と。序盤から終盤に至る音量の微妙な上がり具合も再現された――――それでいてどこか無機質な鳴き声。

 

 どこから出てるのかすらわからないが、それは紛れもなくブルボンの声質をしたカラスの鳴き声だった。

 

「どうでしょう」

 

「え、うん……なんであそこまで似てるのか意味わかんないくらいすごいね……どこから出てるのかすらわかんないし……」

 

「お前も時折ああ言う奇音を出すじゃないか。その経験を活かして探ってみたらどうだ?」

 

「ねぇ、ひょっとして喧嘩売ってる?」

 

 出すけどさ、と。そういう自覚はある。

 ある種他人事のような冷静な理性が感情に塗り潰されないのが、トウカイテイオーの長所であった。

 

「いや。それにしてもすごいだろう。常々思うが、ブルボンは中長距離を走る才能が無いだけで実に多才な娘なのだ」

 

「え……なんでこの人、娘を褒められた親みたいな感じになってるの?」

 

「お褒めいただきありがとうございます、マスター」

 

「え、褒めてた? 才能ないって言われてなかった?」

 

 ツッコみをかろうじて追いつかせながら、トウカイテイオーは喋りすぎて嗄れた喉をはちみーで潤した。

 一昨日マックイーンが持ってきてくれたそれから得られる潤いに友の『頑張りなさい、テイオー。貴方しかこの場を引き締められる方は居ませんわ』という意図を感じながら、トウカイテイオーは心の炎を燃やした。

 

「テイオーさん。私に才能はありません」

 

「……そ、そうかな」

 

 君、才能ないよ。

 面と向かってそう言うことの残酷さを、トウカイテイオーは知っている。彼女が豊潤な才気を有しているからこそ、直接言わずともその事実を突きつけてしまうことがあるのだ。

 

 そういう社交感覚の鋭敏さが、凡人から疎まれかねないほどの天才である彼女を誰からも好かれるスターにしている。

 これはシンボリルドルフにもない、彼女だけの才能である。言うまでもないが、東条隼瀬にもないしミホノブルボンにもない。

 

「はい。才能はありません。マスターは私が自惚れないように釘を刺しつつ、才能の無さを補うほどの努力をしてきたことを讃えてくださっているのです」

 

「ブルボン。流石というのが相応しくないのはわかっているが、やはりお前は俺の意図をよくわかってくれているな」

 

「マスター」

 

「ブルボン」

 

 無言の内に意志の交換を行う二人を見て、トウカイテイオーは思った。

 

 あれ、おかしいぞ。なんでここはボクの部屋なのに、こんな圧倒的な疎外感に苛まれてるんだろう……と。

 

「メロンが切れましたわよー」

 

「マックイーン!!」

 

 これで敵だけがタッグマッチしているみたいな不利極まる現状から抜け出せた!

 キラキラと輝かしく光る目に何を見たのか、メジロマックイーンは『お任せなさい』とばかりに不敵な笑みを浮かべた。

 

「テイオー。勿論第一回選択希望メロンを選ぶ権利はあなたにありますわ。お見舞いの主役ですもの」

 

「マックイーン?」

 

 あれ、おかしい。マックイーンまでも腐海――――もといこの謎空間に呑み込まれつつある。

 まあ、実際は彼女が発生源なわけだが。

 

「さあ、ご覧あそばせ!」

 

 ドン、と置かれた皿。その上のメロン。

 特大、大、中、小。どうやったらそう切れるのかわからないが、置かれたメロンには凄まじいサイズの格差があった。

 

「あれ、メジロ……」

 

「テイオー」

 

 メジロ流包宰術ってなんだっけ、と。

 思わず見たままを言いそうになった彼女の鹿毛の耳を、宿敵と言うべき男の諌めの声が静かに揺らした。

 

(はっ……そ、そうだ。マックイーンは確か煮込むことも知らないような料理音痴……それが包丁を満足に使えるはずもない。特にメロンって大きいから切りにくいし、なおさら。だからここはそうやすやすとツッコんじゃいけないんだ!)

 

 シンボリとその連枝の家に代々伝わるアイコンタクトで意志を交換しながら、トウカイテイオーと東条隼瀬は作戦を決めた。

 

「メジロマックイーン。これをいただいていいだろうか?」

 

「あら、でもテイオーが最初に……」

 

「ボクは構わないよー!」

 

 ささっと即座に、違和感の発生源たるクソ小さいひと切れを回収し、何とか皿上の均衡を保つ。

 

 ――――次は特大の処分かな?

 

 ――――ああ

 

 両者合意の上(他2人は宇宙を見たりニコニコしている)でトウカイテイオーが特大に手を伸ばした瞬間、マックイーンの耳がしゅんと萎れた。

 

 ――――これは……どう思う、参謀?

 

 ――――いや、間違いないと思うが……もう一度やってみたらどうだ

 

 特大に手を伸ばす。紫がかった芦毛の耳がしょんぼりする。

 間違いない。マックイーンは、がんばって切って――――自分なりにうまくやった末に生まれたちょっとお得なひと切れをあわよくば食べたいと、そう考えている。

 だがそれを表情には出していない。なぜならば、これはあくまでもテイオーのものだから。だから顔はニコニコしたまま、尻尾も普段と変わらず一定のペースで揺れているのだ。

 

「ぼ、ボクこれにしようかな……」

 

 大に手を伸ばすトウカイテイオー。いい子である。自分の食欲よりマックイーンの笑顔を優先した、とも言う。

 

「ブルボンさんはどうされます?」

 

「このメロンはマックイーンさんのものです。そしてなによりマックイーンさんが切り分けたのですから、ここはマックイーンさんからどうぞ」

 

 

 ブルボンがいい子で良かった。

 

 

 果てしなくどうでもいいところで頭を使う羽目になった二人の内一人は、そうして胸を撫で下ろした。

 だが、一人はそうではなかった。

 

 ――――まずいぞテイオー

 

 ――――え、なんで?

 

 ――――お前が大を取ったのはいい。主役だからな。だが残った二切れが問題だ

 

 残ったのは特大と中。明らかに格差のある2切れ。そしてこの格差を生み出したのはマックイーンである。わざとではないとはいえ、彼女にはその自覚がある。

 

 ――――そうか、マックイーンには責任感がある。だから自分からは特大を取れない! 中を取らざるを得ない!

 

 ――――ああ。俺の得意技、理不尽な二択だ。ブルボンの気質の善良さがこの際は裏目に出ている。このままでは……

 

 ――――えぇ……なんとかしてよ参謀!

 

 なんとかしてよと請われることに定評のある男は、パチンと指を鳴らしてブルボンの方を向いた。

 

「ブルボン。あんずぼーをちゅーちゅーしてたし、君はそれを取ったらどうだ」

 

「はい、マスター」

 

「悪いな、マックイーン。こちらの都合で2度も選んでしまって」

 

 いいだろうかではなく、悪いな、と言って確定事項にしてしまう。

 シンボリルドルフが頼るほどの駆け引きの巧さに内心舌を巻きつつ、トウカイテイオーは援護射撃に出た。

 

「ごめんねマックイーン。持ってきてくれた上に切ってくれたのに、最後に選ばせちゃってさ」

 

 ――――相手に選択権がなかったように見せることで罪悪感の軽減を図り、『仕方なかった』と言う免罪符を渡す。いい手だ

 

 ――――君もやるじゃん

 

 ――――なんとかすると言ったろ

 

 一時共同歩調をとった二人は、こうしてすんなりと決裂した。

 と言うよりも取り合った手を離したという方が現実に近いが、少なくとも両者はそういう認識でいた。

 

「マスター。メロンとは美味しいものですね」

 

「俺のぶんも食べるか?」

 

「いいのですか?」

 

「ああ」

 

 ミホノブルボンはこちらの都合で本来手に入るはずだった特大を逃したわけである。

 故にくれてやるのは損失補填というべきで、大したことではない。

 

 敢えて食べずに残しておいたメロンを渡して、東条隼瀬は水を飲んだ。

 その後は何があるわけでもなく、軽い談笑をして、面会時間は終わった。5時間くらいに感じる1時間であった。

 

「ありがとね、マックイーン」

 

 松葉杖をつきながら病院の玄関まで出てきて、トウカイテイオーは手を振った。

 車椅子でもいいのに意地でも歩いているのは、やはりプライドがあるが故か。

 

「いえ、テイオー。またきますわ」

 

 なにせ一昨日も来ていたのである。いくら休養中とはいえ、実に高頻度で見舞いに来ていると言える。

 

「ブルボンも……あと参謀も。ありがと。また来てね」

 

「はい」

 

「俺はまたは来ない。次会うときはターフで、だな」

 

 ぱちぱちと青い瞳を瞬かせて、トウカイテイオーは笑った。

 

「うん。今度こそその鉄仮面に吠え面かかせてやるから」

 

「そうはならんさ」

 

「なるもんね。ボクは無敵のテイオー様なんだから!」

 

 じゃあねー、と。先程よりやや大仰に。

 見舞い3人衆が車に乗り込んで角の向こうに消えていくまで、トウカイテイオーは手を振っていた。

 

「ありがとうございます。元気づけてくださって」

 

「いつものことだろ、あいつ。元気とやかましさの混合物みたいなやつじゃないか」

 

「ファンの方に」

 

 少し眼を逸らして、再び戻す。

 

「今までお疲れ様でした、とか。そういうことを言われたようで、元気を無くしていたようなのです」

 

 面と向かって、というよりSNSでのことらしい。東条隼瀬はどうかと言えば、そんなもの見るなと言いたい。

 ミホノブルボンと打つとサジェストにガンダムと出る、その程度のものなのである。普通速いとか強いとかだろ、と思う。

 

「昨日、貴方のインタビューを聴いたようで少し喜んでいましたわ。そういうメッセージが来ましたから」

 

「なるほど、あいつも素直じゃないわけだ」

 

「ええ。私自身も3度目は少し……」

 

 難しい、と。そう考えていたらしい。

 まあ事実である。脚を骨折するというのはピッチャーが肩をやるくらいの致命傷で、一度であれば復活はできなくもないが、2度3度繰り返すと、やはり不可能の度合いが増してくる。

 

「レース中ならわかります。力を限界まで引き出し、あるいは超える。それがレースというものですから。ですが練習中に折れたということは、全力を出すことすらできない程の耐久力しかない、ということです」

 

「ああ……ウマ娘らしい発想だな」

 

「と言うと?」

 

 哀れにも吊り下げられていたしょんぼりたぬきと遊びながら無言を守るブルボンをちらりと見ながら、メジロマックイーンは問うた。

 

「全力を出すことすらできない、という発想がそれだ。レースというのは全力で走らなければ勝てないわけではない。単純に、一番最初にゴール板の前を駆け抜ける。それだけでいい。だから別に、全力を出せなくとも勝てるのだ」

 

「まあ……そうですけれど」

 

「あいつはかつて160キロ出せたが、今や150キロ出せないピッチャーのようなものだ。出せるが、出したら壊れるから出せない。だったら変化球を投げればいいし、緩急をつければいい。やりようはいくらでもあることくらい、お前ならわかるはずだ」

 

「確かにそうですわね……」

 

 俺が、と。

 一拍置いてから、東条隼瀬は続けた。

 

「俺があいつが復活してくるだろうと思うのは、無論あいつの精神性を見てきたからだ。だが何よりも、レース前に故障したからさ。これはウマ娘を見ていたらわかることだろうし、ウマ娘ならばわかることだろうが」

 

「くすぶっている、ということですか。確かに私もその気持ちはわかりますわ」

 

 メジロマックイーンは天皇賞春で、全力を出した。全力を出して、そして脚が軽く炎症を起こして休養に入っている。

 このまま悪化して走れなくなっても、メジロマックイーンはそれなりに満足して現役を終えられるだろう。自分の全力を出した。出し切った。現役を終えるに相応しいレースだった。

 

 間違いなく、自分は全力を出し切った。そして後先考えなかった。脚がぶっ壊れても勝ちたかった。

 

 だがこの炎症が治って、そして再び新しい目標を――――天皇賞春を目指しだして、その途中で故障したとしたら、絶対に引退することを受けいれられないだろう。

 

「燃え尽きることが必要なのだ。トウカイテイオーがいつ燃え尽きるか、それはわからない。だが、あいつはブルボンとルドルフに挑む途中で道を絶たれた。自分の無力さでではなく、事故によって。それによってこそ、トウカイテイオーというウマ娘の闘志は完遂される」

 

「闘志の完遂というのは、難しいものです。たぶん貴方にも、わかっていることでしょうが」

 

「それはそうだろうな。大抵のウマ娘は、進退を自らで決められない。だがトウカイテイオーはそれができる力がある。そうではないか」

 

「ええ……そうですわね」

 

 やけに晴れやかな空から、夕陽が溶けるような橙色が伸びてきている。

 ウマ娘というものの、競技人生の短さ。残酷さ。だからこその、鮮烈さ。トウカイテイオーはその象徴になりつつある。

 

「だから俺は、あいつに『お疲れ様でした』と言う連中同様の無責任さで思うわけだ。あいつは復活するだろう、とな」

 

「私も、そう思いますわ。今は、そう思いたいと。そう思います」

 

 軽い炎症に悩む左脚をさすりながら、メジロマックイーンはそう言った。




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オペレーション:Stairway to Heaven

サイレンススズカの乳を盛るな高校に行ってたので遅れました(スマホが壊れてたので遅れました)


 ラスボスにひのきのぼうで挑むRTA、はーじまーるよー。

 

 前回はトウカイテイオーが骨折(1年ぶり3度目)をしたところで終わりました。

 甲子園出場感覚で骨折させるのはやめて差し上げろ(建前)

 まあこのテイオーは今年の有馬記念に出走して確定で生き返るのでほっときます。他のウマ娘だったらプレイヤーが見舞いに行かないとそのまま消えたりとかそういうこともありますが、トウカイテイオーは3回目までなら確定でリレイズしてくれます。

 三度落陽を迎えても(物理)なわけです。ということで無視します。まあなんとかするだろ。

 

 ということで、心優しいミホノブルボンからのお出かけ提案は却下。怪我したテイオーより目の前の皇帝を見て、どうぞ。

 

 さて宝塚記念ですが、これがURAを除けば本RTAでの国内最後のレースになります。

 そしてURAはウィニングランみたいなものなので除外すると、実質国内最後のレースです。別に何が起こるわけでもないですが、心して臨みましょう。

 

 ここから出走するのは宝塚記念を除けばフランスで2戦、URAファイナルズ3戦。『負けろ』というコマンドがないので負けることはできませんが、URAファイナルズ予選落ちが最速になります。

 予選落ちできれば1分から2分くらいの短縮になりますが、予選落ちするくらいのステータスでは凱旋門賞には勝てないという。

 

 前にデトロイト変異体兄貴がURAファイナルズ直前でわざと怪我して芝適性を下げて予選落ちするという変態プレイを見せていましたが、かわいそうなのでやりません(RTA走者のクズ)

 まあぶっちゃけ怪我するかどうかも運、芝適性が下がるかどうかも運、負けるかどうかも運なのでその運3連チャンを超えられる気がしないです。

 

 ということで、宝塚記念へ。コメントで『カイチョー杖持ってね?』というのがあったことに、編集時初めて気づきました。まあこの時気づいても何もできなかったわけですが。

 

 アーイキソ(絶望)。でもここで逝くわけにはいかないのでレースに出ます。

 暴れんなよ……暴れんなよ……(懇願)というメンタルです。その結果、はい。勝ちました。

 

 こマ? 戦績に比べてステータスが貧弱すぎるだろ……(スピスタパワーSS、根性C賢さB)

 因みに皇帝さんはこれに賢さ700くらいとスキルを盛ってます。絶望の化身かな?

 

 早くドリームリーグ(禁止制限リスト)にぶち込まれて、どうぞ。

 

【宝塚記念(GⅠ)に出走した】

【ミホノブルボンは1着だった】

【シンボリルドルフは2着だった】

【トウカイテイオーは出走しなかった】

【ミホノブルボンは《曇天走破》を取得した!】

【ミホノブルボンは《末脚》のコツを掴んだ】

【ミホノブルボンの中距離適性が《天才的》に上がった!】

 

 《曇天走破》は《曇りの日○》の金スキルです。シンボリルドルフさんがなぜこのスキルを持っているのかと言えば、たぶん菊花賞の実況由来ですね。

 赤い大輪が薄曇りの京都レース場に大きく咲いた。三冠馬、8戦8勝〜の件からだと思われます。まあこの宝塚記念では曇りじゃないので、このスキルがもらえるのはおかしいと言えばおかしいわけですが。

 

 《末脚》はあれですね。普通に強いです。発動タイミングさえ間違えなければ最強クラスのスキルです。

 

 そして本命、中距離適性。本来はトウカイテイオーを倒して《一陣の風》と共にもらうはずだったわけですが、何とかゲットすることができました。

 

 ということで、凱旋門までの準備が整いました。洋芝Sを狙いたいと言えばそうですが、一応凱旋門前哨戦で狙います。本来ならばエルコンドルパサーあたりと絆を結んで確実にゲットするところですが、今回は愛嬌×なので除外してます。

 

 さて、これからですがレースには出ず凱旋門への招待状イベを待ちます。これはパワプロサクセスにおけるダイジョーブ博士みたいなもので、8月4週までの毎ターンがはじまる前に確率で発生します。

 なのでこれからやることは練習、そして購買部への突撃、そして発生しかねないイベントを事前に潰す。その3つをやります。

 

 なので手始めにお見舞いイベントを潰します。金が惜しいから見舞い品は一番安い枇杷! 花言葉は治癒! これでええやろがい!

 途中でマックちゃんと出会ったのでハイエースして連れていきます。断ると『そんな……そこをどうかお願いしますわ』の無限ループを繰り出してくるからね。仕方ないね。

 まあ信頼度が上がるのでヨシ! メッセージクソ長いけどな!

 

 ということで見舞いヨシ! あとは……座して待つ。そういうことで、坂路と賢さを繰り返してなるべく休まずにやっていきます。

 

 さて、練習風景と購買部への凸を256倍速で流していますが、これからは金に糸目をつけません。いいと思ったスキル本はノータイムで買っていきますし、やる気が下がった時用の何冊かを残して買った側から使っていきます。

 

 現在のステータス的にスピスタパワーのカンストは可能なので、後はいかに賢さを上げられるかにつきます。根性は別にそんなに……いらないですね。はい。

 

 さて、フランスに行ける前提で話をしますが、まず凱旋門賞は10月1週に行われるレースです。

 本RTAではこのレースに勝つことを目的にやってきました。そしてこれまで相当うまく行っていますが、残念ながらここで負ければすべてが終わりになります。

 

 まあもっとも、ほぼ負けません。海外の許可が下りなかったのか、凱旋門賞に出るのは強いモブだけ。出れば勝てます。一部例外もありますが、その例外には当てはまってない、はず。例えばエルコンドルパサー√ではモンジューことブロワイエとぶつかりますし、スペちゃん√だと強化ブロワイエとぶつかります。

 ゴルシの場合ナカヤマフェスタやらジャスタウェイやらと戦うことになりますが、ミホノブルボンにそういう因縁はありません。

 

 あとは所謂存在しない記憶に気をつければいいわけですが、それはシンボリルドルフさんに使いましたからもうないでしょう。というか、そう信じたいです。

 まあ誰が来ても勝てるステータスにはしていますけどね。そもそもモブと言っても名前が付いてないだけでクソ強いので、そこらへんの油断はしていないつもりです。

 

 というところで、夏がはじまりました。あと8回しかチャンスがないんですがそれは……

 というか冷静に考えて、ここまでうまくいっても最後は運ゲー2連チャンって頭おかしいわ(今更)

 

 ですが編集しているということは、もっと言えばこれが投稿されているということは即ち運ゲーに勝ったということです。

 

 はい、来ました。時は8月1週。まあ首の皮3枚くらい残ってたな!

 ということで、早速使用。ミホノブルボォン!!(実況)にアイテム:凱旋門への招待状を使い、目標レースを《天皇賞秋》から《凱旋門賞》に変更。ここに来てやっと、凱旋門賞に挑む資格を得ました。

 

 そしてここで目標レースの確認がてら、フォワ賞を予約レースに追加。

 凱旋門賞と同じレース場、同じ距離で行われる前哨戦を踏むことでややステータスに上方補正がかかります。まあほんの少しですけどね。

 

 ということで、フランスに行きます。

 ここでは今まで関係を結んできたウマ娘たちの中から同一レースに出走した娘たちが来てくれます。ミホノブルボンの場合はライスシャワー、カイチョー、あとテイオー。なぜ?

 まあなぜ?と言ってもわかることではないので無視します。

 

 カイチョーから【焦り厳禁!(逃げ)】と【心理的束縛】、ライスシャワーからは【闘志100%!】、テイオーからは【ハヤテのごとく!】をもらいました。

 カイチョーだけなんで2個?と言う方、多分これはあれですね。ミホノブルボンとの信頼度で一冊、プレイヤーとの信頼度で一冊ということだと思われます。

 

「ブルボン。私の力、巧く活かせよ」

 

 思えば。

 そう、思えば全てはかっこよくそんなことを言ってるシンボリルドルフからはじまりました。愛嬌×でチャートが崩壊し、そして楽勝に終わるはずの宝塚でもしゃあしゃあと出てきてチャートを破壊。なんとかミホノブルボンが勝ってくれたことにより事なきを得ましたが、彼女はまさしくチャートの破壊者でした。このまま凱旋門賞まで付いてくるかと思い戦々恐々としていましたが、そんな心配は杞憂に終わったようです。

 

 2度あることが3度あってたまるか。そういうことで、フランスに到着!

 もうガバの根源たるカイチョーもいない! レースに2回出て勝つだけ! それも一回は別に負けてもいい! なんて気が楽なんでしょうか!

 

「おひさしぶりです、トレーナーさん」

 

 うおっ、すげぇ胸……ビートバンかな?

 …………うん。まあ色々言いたいことはあるけれども、ここで最初に言うべきはひとつ。

 

 な ん で サ イ レ ン ス ス ズ カ さ ん が こ こ に 居 る ん で す ?




53人の兄貴たち、感想ありがとナス!

JUM兄貴、ソロモンの悪夢兄貴、えいぱす兄貴、流流棲兄貴、siyoneko兄貴、cometttt兄貴、境木兄貴、たっきん兄貴、コマツナ兄貴、生駒山 夜宵兄貴、フラワーボックス兄貴、桜海老兄貴、うづうづ兄貴、一星龍兄貴、評価ありがとナス!

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サイドストーリー:執着

 6月というのは、多くのウマ娘たちにとって忘れ得ぬ経験をする。そんな季節である。宝塚記念がどうとか、安田記念がどうだとか、そういうことではない。

 

 ――――メイクデビュー。

 ウマ娘として。その中でも一部の選ばれし者のみが参加できる中央のトゥインクル・シリーズに足を踏み入れる。蹄跡を残す。

 無論、そんなことを目標にしてトレセン学園の門を叩く者はいない。いないが、在籍しているうちにそうなる、そんなウマ娘達がいるというのもまた、確かなことなのである。

 

「おめでとう、ブライアン。少なくともお前は、トゥインクル・シリーズに蹄跡を残したわけだ」

 

「ふん」

 

 休み時間に呼び出されて、何かと思えば。

 エアグルーヴが手入れしているプランターの隣であり、ひっそりとブライアンが自家栽培している枝の隣。木製のベンチに座りながら、その男は真の意味で適当に見繕ってきたであろうブーケを手渡した。

 

 参謀。無表情無感情無感動を絵に描いたような男だったはずの男から祝福を受けて、胸の下で腕を組んで突っ立っている彼女――――ナリタブライアンは、短く返事とも言えない返事をした。

 寝不足気味で挑んだ――――自分の尊敬する数少ない者たちの決戦が少しでも良いものとなるようにと努力した結果であり、断じて蹄鉄を整備していたら日が昇っていたからというわけではない――――メイクデビュー。

 

 鳴り物入り、という言葉は彼女のためにある。

 なにせ説明不要の『皇帝』シンボリルドルフの下で、トリプルティアラを果たした『女帝』ことエアグルーヴ。その彼女に素質だけで肩を並べ、生徒会副会長をやっているのである。

 

「どうだった?」

 

「アンタがいたらまたしょっぴかれていただろうな」

 

「フラッシュか、やじか?」

 

「前者だ」

 

 パドックに入ったエアグルーヴに向けて勝手にフラッシュ焚いて撮影していたカメラマンの腕をハイキックで蹴り飛ばし、酒に酔ってやじを飛ばしていたおっさんをぶん投げた実績のある男。ウマ娘が自分と関係ないところで道を阻まれたり、邪魔をされたりという理不尽を無理矢理にでも突破する男。

 前者は暴行罪と器物損壊罪のWパンチ、後者は暴行罪でしょっぴかれかけている。どちらも一応何度か「やめろ」といった末のことだったとは言え、まあやったことは事実である。

 

 ルドルフとおハナさんの「あいつやりおったわ」という顔が、今でも脳裏に残っている。

 

「大変だったな」

 

「ああ。笑いを堪えるのに必死だった」

 

 まあ、暴力は良くない。とても良くない。だが理不尽には理不尽の熨斗をつけて返す――――それも自分に降り掛かったものではないのに――――姿を見て、よくやったと思わなかったといえば嘘になる。

 不躾なフラッシュを受けても苛立たず、何となくあのときのいつも微笑んでるような温和さを持つルドルフの周章狼狽した顔だとか、エアグルーヴの驚きと快哉と批難が入り混じったような顔を思い出して、なぜか笑えた。

 

「あのときの俺は若かった。周りに迷惑をかけたことをとても反省している。今は……そうだな。もう少しうまくやるよ」

 

「やったことを、でないあたり変わらんな」

 

「そこに関しては後悔する余地はない。別に俺がどうこうしたからというおかげでもないだろうが、事実勝っているわけだしな」

 

 実に彼らしい結果論である。

 結果がよければ、基本的に過程を好意的に見る。だがこの男を苦しめていたのはこの正反対というべき負の結果論なのだ。

 

 結果が悪ければどこかにミスがあったはず、そしてそのミスは自分にあるはず、という。

 最近彼はとても明るくなったが、本質的には変わっていない。

 

「変わらないな、アンタも」

 

「変わるべきところと、変わるべきでないところがある。忘れるべきことと忘れるべきでないことがあるようにな」

 

 それは、あれのことか。

 そう言いかけて、ナリタブライアンは頭を振った。

 

「そうだな。何も環境に適応し切る必要はない。要は折り合いだ」

 

 逃げ環境。

 世界的にそうなりつつある。アメリカでも、フランスでも、そしてここ日本でも。

 だがそれに合わせて自己を変革する必要はない。真に必要とされるのは、逃げへの対策。自分のやり方を根底から変えるのではなく、環境に適応する衣を纏うこと。

 

「その通り。それがわかっているならば言う必要はないかもしれんが……」

 

「手を抜け、ということか」

 

「ああ。お前の世代のレベルは高い。だがそれはある種、燃え尽きるような走りをしてこその強さだ。お前が巻き込まれることは、ないさ。周りの家が火事だからといって、合わせて火を付けなければならないという理由もないだろう」

 

 皮肉めいた言い方である。そしてなによりも、勝負の世界に身を置いて鎬を削ることを何よりの快楽にするナリタブライアンにとっては、やや受け入れ難いことでもある。

 

「相手の実力を見極め、自分の有する戦力をどれくらい投入すればいいかを見極める。ルドルフも、かの神の名を冠するウマ娘もしていたことだ」

 

 まあ、とにかくおめでとう。力を絞ることについても少し考えておいてくれ。

 

 そう言い残して、東条隼瀬はこの話を打ち切った。担当でもないウマ娘の方針に口を出すのは、やはり越権行為というものである。かつてチームごと面倒を見ていたから少し口を出したくなったわけだが、やはりそういうことはよろしくない。

 

「……まあ、考えておこう」

 

「ああ、考えておいてくれ。結局はお前自身がどうするかだからな。俺としては、後悔しないように願うだけだ」

 

「やはりアンタは変わったよ」

 

 かつてなら、こうしろ、と言っていただろう。何よりも怪我を恐れていたはずだから。

 出会ったときは怪我を警戒しつつも恐れていなかった。そして怪我を恐れるようになってある程度行動を矯正するようになり、そして戻った。

 戻ったと言っても、少し行って帰ってきたわけではなく、ぐるりと回って帰ってきたのだ。歩いていた距離は、無駄ではない。そこで得た経験も、無駄ではない。

 

「そうかね」

 

「そうさ」

 

 目の前には、多くのウマ娘がいる。多くのトレーナーがいる。メイクデビューのためには、トレーナーと組まなければならない。あるいは、チームに所属しなければならない。

 この時期になると、両者から浮ついたような気持ちはなくなる。夢も理想も消え果てて、ウマ娘はメイクデビューのためにトレーナーを探し、トレーナーは重賞をひとつでも勝てそうなウマ娘を探す。

 

 互いに互いを経由して結果を出そうとする。そういう利害の一致を目的としたペアは無論、多くが結果を残せずに終わる。信頼関係もないというのもそうだが、有り体に言えば互いに売れ残り同士が組むのである。

 素質で負け、そして信頼関係においても負ける。ついでに言えば早く契約したウマ娘たちと比べて練習するための時間においても負ける。

 トレーナーとは練習メニューの作成、食事をはじめとした栄養管理や健康管理、練習場所の確保、レースの把握と出走登録など、細々した雑事を一手に引き受けてくれる存在である。そういう補佐的な役割をこなしてくれる人間がいない以上、自分でやるしかない。そうなれば当然、練習に割ける時間も減る。

 

 ミホノブルボンは12月11日に契約を済ませた。高等部への編入が決まってすぐに、彼女はトレーナーを見つけた。あるいは見つけられた。

 それはやはり、恵まれていると言えるだろう。生まれはどうあれ、今必死に自分を売り込んでいるウマ娘たちと比べれば。

 

「足りな過ぎるな、人手が」

 

「だからこそのチーム制だが……根本的な解決にはなっていないということを実感するよ」

 

 優秀なトレーナーの手でひとりでも多くのウマ娘を見てほしい。大成させてほしい。そういう意図から生まれた制度だが、今となっては一部のチームが素質的に優秀なウマ娘を大量に抱え込むという格差社会の生きた見本のような感じになってしまっている。

 優秀なチームは、優秀なトレーナーが運営している。優秀なサブトレーナーがいる。これまで積み重ねられてきたノウハウがある。多くの先輩からより実情に即したアドバイスを得られる。予算が多いから、より高度な設備を得られる。

 

「アンタ、これからのことは考えてるのか?」

 

「これから?」

 

「そうだ。チームを作るんだろ」

 

 おハナさんが率いるリギルは、東条家のチームである。実績的にも彼女の正統後継者である彼こそがいずれそれを受け継ぐにしても、すぐ引退するというわけでもない。

 となるとひとまずは自分のチームを作って、統合する形で引き継ぐ。そうなるだろうというのが、彼女の所属するナリタ家の見立てだった。

 

「いや、俺は来年教官になろうかなと思っているよ」

 

「教官?」

 

 ジロリと、琥珀の瞳が奇異なものを見るように東条隼瀬を見た。

 教官とは、広域型トレーナーのような職業である。メイクデビュー前のウマ娘たちをまとめて面倒を見る。その職務は膨大で煩雑で、だからこそ薄く広くになりやすい。あくまでも基礎を教える、それだけの存在。

 

 トレセン学園に入って即座にトレーナーとの契約を結んだ者が多いリギルの面子の中では、教官にお世話になった経験を持つもののほうが少なかった。

 

「……ブルボンはどうする気だ」

 

「無論、引退するまで共に歩む。教官といっても、あれだ。見習いだよ。将来に備えて実地教育を受けようと思っているわけだ」

 

「しかし労力に比して収入は……ま、気にしないか。アンタは」

 

「ああ。幸いにして金に困ったこともなければ、困る予定もないのでな」

 

 古い家と言うのは、それにふさわしい貯えがあるものである。特に金の消費が激しいトレーナーを多く輩出する貴門は土地を転がしたり、貴金属を転がしたりで莫大な潜在的資産と現金化された資産を持っている。

 

 それはウマ娘の名門も同じことだった。謂わばナリタブライアンも、似たような生育環境で育ってきたのである。金に困ったことはないし、困ることもない。

 

「それに、俺は人望が無いからな。チームを組もうとしても組めんだろう。最低3人は必要なわけだし」

 

「居るかもしれないだろう」

 

 脳裏に浮かべた中にいた自分の姿を頭を振って消し去っているナリタブライアンを見て、何を思ったのか。

 やや微笑みを浮かべて、東条隼瀬は遠い空を見た。

 

「能力と実績に惹かれるものはな。だがそうして惹かれた者との決裂を、俺は2度ほど経験しているのでね」

 

「私から言わせれば、別にアンタの人格はそれほど劣悪なものでもない。なにせ世の中、人格・能力共に劣悪な連中がほとんどなのだから……まず、『マシ』と言うべきじゃないのか」

 

「思ったより評価されているようで嬉しいな」

 

「やかましい。……問題は、アンタと組むにあたっては人格的相性の壁を乗り越えた狭い範囲のやつしかまともにやれない、ということだ」

 

 多くのトレーナーは、それほど人格的相性を気にしないで組める。だがアンタはそうではないということを、ナリタブライアンは珍しく多弁になって言った。

 

「まあ教官の職につくものは、大抵がチーム運営の経験者だ。そのあたりをよく考えて見るんだな」

 

 ブーケを肩に担いで去っていく未来の三冠ウマ娘の背中を目線で追いながら、東条隼瀬は堂々と両手を背もたれと手すりに広げた。

 

「2人目に、アテはある」

 

 そう言って、頭を振る。

 まだ、何も決まっていない。自分の力の及ぶところではない。

 

 慢心だ。そして、冒涜でもある。

 そこまで考えて、再び空を見る。今日の天気は、晴れ。フランスではどうかは知らないが。

 

「――――いや。これは、執着と言えるだろうな」




81人の兄貴たち、感想ありがとナス!
rerocklockon兄貴、ニヤニヤ@ハーメルン兄貴、評価ありがとナス!


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サイドストーリー:1年後の今/1年前の今

感想返信はまとめて明日行います。申し訳ございません。


 最近、マスターの様子がおかしい。

 不安げに尻尾をゆらゆらさせながら、ミホノブルボンはライスシャワーに自分の悩みを打ち明けた。

 

「思い悩まれているようなのです」

 

「あの人が?」

 

 ライスシャワーにとっての東条隼瀬とは偉大なる敵将といった感じで、それ以外にはない。あとは、自分のお兄さま(トレーナー)の親友。水と油のように見えて、あれでなかなか噛み合わせがいい。そんなところか。

 

「悩む、ということをしない人ではありません。おそらく常に悩まれてたでしょう。ですがそれを、わかりやすく表に出す人でもありませんでした」

 

「ブルボンさんの前でわかるように悩むとなると、すごく重い悩みなのかもしれないね……」

 

 虚勢をはるのが巧い。

 誰にとっての幸せなのかはわからないが、幸いにも東条隼瀬とは弱みを見せない人間である。大胆不敵でありながら堅実に、繊細に物事を進められる慎重さを併せ持つ、そんな男。

 

 ライスシャワーには、彼のことがよくわからない。

 東条隼瀬という男には、第一印象の壁がある。冷たげで何を考えているかわからない、感情の色が見えない鋼鉄の瞳に見つめられると、身がすくむ。

 おそらく単純な身体能力ではライスシャワーの方が上だが、なぜか怯えてしまう。そういう不思議な雰囲気が、彼にはある。

 

 そしてそれを乗り越えてもなかなかに毒舌な――――悪意なく本音を常に言い続けているだけだが――――第二の壁があり、そこを乗り越えてやっと本質が見える。

 その本質に触れてやっと、彼の本質的な愉快さ、優しさ、繊細さが見える。そして、ライスシャワーは第一の壁に弾かれていた。

 

 と言うより無意識的にか有意識的にかはともかく、あえて弾かれたと言うべきだろう。

 彼女は他のウマ娘よりも大きな耳に象徴されるように、優れた危機感知能力を持っている。それは主にレースで使用されてきたわけだが、彼女はその優れた感覚器官で東条隼瀬という男の持つ魔力的な魅力の危うさに勘づいていた。

 

 

 ――――私だけがこいつを理解してやれる。

 

 

 わかりにくい本質。

 他人の夢に容易く人生を賭せる危うさ。

 そして何よりも自分の夢に能力に留まらず人生全てを擲って貢献しようとしてくれるその献身。

 

 彼は、心からの善意でそれをやっている。そこに裏はない。見返りも求めない。

 だがその一挙手一投足から、彼の本質に触れたひとは感じるのだ。

 

 

 俺は君の為にすべてをかけられる。君はどうだ?

 

 

 本人であれば決して言わないはずの、そんな問いを。彼はそんなことを言わないと知りつつも、見返りなど求めないとわかりつつも、その無欲な献身に対して惹かれてしまう。どうしようもなく惹かれて、魔力に呑まれてしまう。

 

 私だけがこいつを理解してやれている。なら、私はこのひとを抱きしめてあげよう。どんな苦境に立っても見捨てないようにしよう。ずっとではなく、彼が望むだけ側にいよう。

 

 シンボリルドルフが、まさにそれだった。

 ライスシャワーから見たシンボリルドルフの第一印象は偉大な皇帝でもなく、優しい会長でもない。

 東条隼瀬という危うい人間を守護し擁護する、絶対的で不変の理解者。たとえ世界全てが敵に回っても、絶対にたった一人を見捨てないという信念。それがウマ娘の形をして歩いている。

 

 依存している、というわけではない。自立した理想と思考を持ちながら、確固たる己を確立しながら、それでもなお惹きつけるような引力の軛から脱しようとしていない。

 

 それは個人の感情を、誰かからの祝福を求めていたライスシャワーであればこそ気づいたことだった。

 

 そして、もうひとりくらい、そういうのがいるかも知れない。近寄れば近寄るほど、惹かれてしまうのだから。

 そしてそのもうひとりに、ミホノブルボンが追加されないとも限らない。

 

 ミホノブルボンは今のところ、持ち前の精神的鈍感さ(あどけなさや、おさなさとも言う)で彼の引力をいなし、それとは別に献身に対する感謝の念と個人的な淡い恋慕の情を抱いている。

 

(んんん……)

 

 その引力をどうこうすることはできない。東条隼瀬という男の本質がそういう――――重さを引き寄せやすい感じになっているのだから、ライスシャワーにはどうしようもない。

 とても危うい均衡の上に、ミホノブルボンと東条隼瀬の関係はある。それを崩してしまうような助言を、するわけにはいかない。

 

 本音を言えば、放っておくのが一番である。

 だがこういう相談を持ちかけているということは、相談者は行動を起こそうとしていて、その後押しを相談相手に求めている。そういうことだ。

 ライスシャワーはシンボリルドルフとは違い、あくまでもミホノブルボンを第一にするし、大事にする。

 

 

 ――――この人は、悪い人ではない。見た目と雰囲気に反して、いい人ですらある。だけど、怖い人だ。

 

 

 そのライスシャワーの見立ては、実に正鵠を射ていた。

 

「……あくまで話してくれるのを待った方がいいと思うけど、一人で抱え込むのもよくないから……ブルボンさんが見て危うく感じたら、行動を起こしてみたらどうかな?」

 

 あくまでも彼をよく知らない自分の意見は参考程度にして、この2年半でよく見てきたはずのミホノブルボンの洞察力に自信を付けさせる。

 実に巧妙な助言者としての役割を果たし、ライスシャワーは耳をぱたぱたと上下させた。

 

「ありがとうございます、ライスさん」

 

「うん。なんの助言にもなってないと思うけど……」

 

「いえ。確かに新たな光明を得ることはできませんでしたが、決断への後押しをしていただきました」

 

 東条隼瀬は別な視点から新たな光明を照らしてやるような助言をする。

 ライスシャワーは既存の考えを精査し、後押しするような助言をする。

 

 タイプは違うが、どちらも優秀であることに変わりはない。

 暑さというものがよりその獰猛さを増しはじめたような空を、ミホノブルボンは星の瞬くような美しい瞳で見つめた。

 

 カフェテリアでのライスシャワーとのひとときが終わり、一礼して立ち上がる。

 今日のミホノブルボンは、身体を休めがてら様々なことを学ぶことになっている。それは戦術の組み立て方であったり、ウマ娘特有の癖であったり、各国のレース場の特徴であったりと多岐にわたる。

 

 東条隼瀬は戦術家としてはあまりにも決断が遅かった。土台となる知識も洞察力もあるし決断力はあるが、判断を下すのが遅い。

 そういう人間だけに、教えることはうまかった。彼に足りないのはつまり、考えないこと。ある程度で思考を収めて切って捨てること。

 

 そのあたりを自覚しているだけに、彼の教導は型に嵌まらない、やや大雑把なものだった。

 様々な過去のレース展開、レース場の地形的特徴、特徴を活かした戦術。それらをたいてい頭に入れているからこそ、要約して伝えることがうまかったのである。

 

「今回のトレーニングはここまで」

 

「ありがとうございました、マスター」

 

 あくまでも、悩みなど無いかのように彼は冷徹に自分の知識を噛み砕き、個人の好悪の情を脱色させて無味乾燥とした情報として伝える。

 自分の言説に感情を一切載せることのないその姿勢は、ある種理想的な教師の姿だった。熱は感じられないが、どこまでも的確で第三者としての俯瞰に徹している。

 

 知識量が豊富であればあるほどいい。

 ミホノブルボンなどは自らの寒門故の無知さを振り返ってそう思っていたが、彼を見ると知識をつけすぎてもよろしくないということがわかるだろう。

 もっとも、やはり個人の資質によるところが大きいわけだが。

 

 タイプライターで打ったかのように精密なノートをさらりと見返して、ミホノブルボンは改めて彼を見た。

 

「なにか言いたげな顔をしているな」

 

「……マスターのお悩みが私に関連することであれば、ぜひお聞かせ願いたいと。そう考えています」

 

「関連、か」

 

 まあ関連していると言えばしているし、していないといえばしていない。

 

「していると言えばそうだ。だが、まだ早い」

 

 そう言われてから、1ヶ月。

 その時がいつ来るのかということを、ミホノブルボンは待っていた。

 

 暑さが一瞬の寒さを経て本格化し、夏合宿。

 去年の千葉ではなく、ミホノブルボンは北海道の札幌に居た。

 

 感情の制御と体温調節がやや苦手なのが、ウマ娘という人間の亜種(逆かもしれないが)の特徴である。

 故にクラシック級やシニア級に関わらず、前期で疲弊したウマ娘はたいてい、過ごしやすい気候の札幌あたりに送られる。元気なウマ娘はどこぞの合宿施設に移動して更に鍛えるわけだが、ミホノブルボンは大阪杯、天皇賞春から宝塚と言うレベルの高いレースを過酷なローテでこなしてきた。

 

 鈍らない程度に身体を動かすというのが主目的だろうと、ミホノブルボンは思っていた。

 やや疲れている。少なくとも、前年の夏よりは遥かに疲れている。

 

 去年。

 レベルの高いレースを短期間にいくつも――――それも夢を賭けて戦うという経験を、ミホノブルボンは初めて経験した。だがその慣れない初体験よりも、濃密なシニア級の3連戦が遥かに、彼女の身体に疲労を蓄積させていた。

 

 やや肌寒く過ごしやすい気候の中で、ミホノブルボンは疲労を徐々に抜いていった。無論その間なにもしていないわけではなく、日々レースというものの奥深さに触れている。

 それは今までを省みるならばともかく、これからを考えれば絶対に必要なことだった。

 

 ある程度の理屈の通った行動を、東条隼瀬はとっている。ミホノブルボンとしてはややその行動の曖昧さに疑義を挟みながらも、別段反抗することも疑問を投げかけることもなかった。

 

 なかったが、少しだけ気にはなっていた。

 そのほんの少しの気がかりが解消されたのは、一月半後。

 

 ミホノブルボンが『切り開く者』として走ることを決めてから、ちょうど一年後のことだった。




44人の兄貴たち、感想ありがとナス!

悠久.兄貴、ラヴェン兄貴、嘆きの大平原兄貴、伯楽天兄貴、評価ありがとナス!

感想・評価いただければ幸いです。


アンケートについてですが、カイチョー√では主人公続投は決まっています。やるとすればスズカ√でもそうなります。
他のウマ娘(まだ未定)と組むSSを書くにあたってどうするか、というアンケートです。


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サイドストーリー:静かな水

典型的なINFP


 あのとき。智慧が研ぎ澄まされる音を、聴いた気がした。

 シンボリルドルフという傑出した智性と人格を持つ存在に勝つ為に最適化されたのだと、あのときはそう思った。自慢ではないが、シンボリルドルフと言うウマ娘のすべてを知っている。これは、だからこそのものだろうと。

 

 レースを前に、いつもはいくつかの選択肢が見える。Aが起きればこうなる、Bが起きればこうなる。その先の分岐は。偶然を加味すれば、どうなるのか。

 それらを可能な限り予測して、ミホノブルボンに託す。託された情報・予測を元に、ミホノブルボンはその図面を実際に書き起こす。

 

 だがあの時は、わかっていた。

 シンボリルドルフは、予想を超えてくる。そのことがわかって、本来ならば予測し得ないはずの最終局面が――――どんな道を通っても必ず辿り着くであろう因果と運命の交差路が見えた。

 

 車から降りたときに道に沿って敷かれるビロードの絨毯のように。行くべき道と進むべき方角を、集積された智性から生まれた何かが指し示してくれた。

 ほんの遊びのつもりで、ここ1ヶ月間で開催されたレースの事前情報を集積し、ある程度予測を立てて見てみた。

 

 

 ――――ルドルフが相手であればこそ。

 

 

 その反証のつもりであったはずのそれはしかし、思わぬ結果をもたらした。

 確かに、偶然はあった。予測に反する事故は起きた。だがその事故は一度敷き詰められた道を完全に崩し切るほどのものでもなければ、勝敗予想を左右するほどのものでも無かった。

 

(成長した、と言えるのか)

 

 過去へ向き直る。立ち向かう。そう決めた。

 それはルドルフに向けられたものであり、そしてなによりも過去の負債を押し付けてしまった相手と直接顔を合わせる覚悟でもある。

 

 そしてその力は、告げていた。

 これからお前が挑むべき相手は、お前の愛バに挑ませるべき相手は、お前の干渉を受け付けないだろうと。

 

 圧倒的な、超人的な逃げには戦法が通用しない。

 

 

 ――――走る。先頭を駆ける。そのまま押し切る。

 

 

 言葉にすればなんと簡単で、なんと甘美な響きだろうか。だが実際にそんなことをできるウマ娘はいない。いなかった。

 それは、ある種の理想型。素人が思い描く最強の姿。

 その最強の所以は、揺らがないこと。純粋に正面切っての決戦に勝たないことには、そもそも勝負にすらならないこと。

 

 無敗というものの偉大さを、東条隼瀬は理解しているつもりだった。それに対しての価値は人それぞれだろうが、維持するための努力を見てきたし、称える人々の姿を見てきた。

 

 そして、進化した智性は告げていた。

 もはやあの娘は、自分のもとを巣立っていったあの傑出した天才は、策でどうにかなる範囲を超えているのだと。

 

「ブルボン」

 

 何も訊かない、問わない、静かな少女。かけがえのないパートナー。今立っている現在を共に紡いできた、そんな存在。

 

「話がある。聴いてくれるか」

 

 隣に座って尻尾を揺らす、そんな少女を自分の過去への清算に付き合わせることの罪悪感をいだきつつ、東条隼瀬は口を開いた。

 

「はい、マスター。なんでも」

 

 無表情。ともすればそう捉えられがちな少女は、僅かに口の端を緩めて笑った。

 とにかく考え込みがちな男に『自分の罪悪感がそう見せているのではないか』と思わせないほどの、そして明るすぎて気後れさせない程度の中間の笑み。

 

 意識せずに最適解を選べるあたり、ミホノブルボンは相当このめんどうくさい男に慣れてきていた。意識というより、肉体が。

 

「俺の過去を知っているか」

 

 この質問に意味は無かった。彼は少女が自分の過去を知らないことを知っていたからである。

 この手のわかりきった念押しをあまりしない男には珍しい問いだったが、そのあたりには突っ込まず、ミホノブルボンは頭を振った。

 

「では話そう。つまり……俺には君以前に担当していた――――わけではないが、実際はそう見られていたし、そう見られるだけの事実もあった。つまり」

 

「実質的にはそうであったウマ娘がいたということですか」

 

「そうだ」

 

 このひとは緊張すると言い方が冗長に、より寒門らしい言い方をすれば長ったらしくなる。それは本質を悟らせないための自己防衛本能なのかもしれないが、ひとまず彼女はその冗長さを両断した。

 

「その娘。仮にS、いや、Sとするが」

 

 なぜ言い直したか意味がわからない。同じSではないか。

 それがミホノブルボンの偽らざる本心であったが、当人にとっては大事なことらしい。そういうある種の鈍感さ、即座にツッコミに動かない鈍さが、奇跡的に噛み合って会話を正道に進ませていた。

 

「つまりその娘は、怪我をしたのだ。俺のせいで」

 

 ――――マスターはそう思われているということでしょうか、と。

 

 ミホノブルボンは彼の会話の癖をパターン化して保存させている部分を励起させながら、そう悟った。

 俺のせいで怪我をしたのだ、と言えば彼が信奉する客観性が薄れる。だが私見を付け加えたい。だから変則的な倒置法を用いたのだろう、と。

 

 なるべく客観性の高い情報を伝えて判断してほしい。でも自分のことであるから、自分の思いも知ってほしい。

 そういうことだろう、と。そしてそれはかなりの確率で符合していた。

 

「俺はその娘のリハビリに付き合わせてもらって、それは当人の努力もあり順調に進んだ。だが……」

 

 やや表情に陰りを見せて、彼は続けた。

 

「契約は解消されることになった」

 

「それはマスターから言い出したのですか?」

 

「いや」

 

「では、そのウマ娘の人から言い出したのですか?」

 

「そう見るのが正しいであろうと思う」

 

 ものすごく客観的な言い方をした自分のマスターを見て、ミホノブルボンは少し首を傾げた。

 珍しく散々私見を混ぜていた割には、妙に頑なな第三者としての俯瞰。その辺りが核心か、と。

 だが一気に突っ込むような真似を、ミホノブルボンはしなかった。

 

「話の腰を折ってしまい申し訳ありません、マスター。質問にお答え下さり、感謝します」

 

「うん。まあそれで、あれだ。その娘は天才だった。思考能力をすべて走ることに回したトウカイテイオーのようなもので、先鋭化され切った天才と言える。よって、ものすごく速くてものすごく強い。わかるな」

 

「私をここまで鍛え上げたマスターが才能のあるウマ娘と組んだとなると、そうなるという予測はできます」

 

 論理的思考の極致のようでそうでない回答を受けて、東条隼瀬はひどく曖昧に頷いた。

 

「うん。それでその彼女は……なんというか、とても楽しそうに走る娘だった。本当に、心からな」

 

「はい」

 

「といっても想像するのが難しいだろうから、これを見てほしい」

 

 鍵穴に鍵を2メモリ分差し込み、旅行鞄の留め具を3度押す。

 そうしてカパッと開く二重底を見て、ミホノブルボンはその器用さと謎の改造技術、そして二重底というものに対しての精通している様に感心した。確か部室の引き出しにも、こういう仕掛けがあった。

 そしてそこにはスノーホワイトの本が鎮座していたことを、彼女は後に彼から聴いたのである。

 

「これだ」

 

 そうして出てきたディスクをパソコンに差し込み、再生されたのはとあるレースの動画。場所はおそらく、京都レース場だろう。

 ミホノブルボンにはサイボーグという渾名が目立つが、他にも栗毛の超特急と渾名されている。

 

 そしてそれはまさに、栗毛の超特急だった。ぽつんと隔離されたような大外から進発し、重力すら振り切って推進していく銀河鉄道の超特急。スタートから一定のペースで走っていく自分とは違い、次第に加速していく流線形の超特急。

 

 後ろを全く振り向かず、ゴール板の前を駆け抜けてからもしばらく走り続け、客席に手を振ることすら忘れて大きく息を吸って吐き、笑う。

 心から幸せそうな、無くしていた何かを取り戻したような達成感と快感に満ちた顔。

 

 その顔から自分の身を預けるトレーナーへの確かな信頼が感じられて、ミホノブルボンは口を開いた。

 

「このとき、この方はマスターと組まれていたのですか?」

 

「ああ。だが、初戦だ」

 

「ありがとうございます」

 

 ミホノブルボンは、知っていた。大抵の人間は第一印象から良くなることは極めて少ないが、知るにつれて悪くなることは極めて多いと。

 ミホノブルボンは、知っていた。その大抵に自分のマスターが当たらないことを。彼ほど第一印象から上がっていく人間も少ないということを。

 

 そしてたぶん、この栗毛のウマ娘は第一にして最大の関門を突破している。だからこそ信頼をおいている。初戦なのに。

 となるとこれから信頼は加算されていく一方で、減ることはない。少なくともミホノブルボンはそう思って、ひとつの結論を出した。それは考え込むことの多い男が、3年経っても出せなかったものだった。

 

(契約解除は、この栗毛の方の本意ではない)

 

 最初が底なだけに、上がることはあっても下がることはない。

 この理屈の根っこに膨大な感情を隠し持つ男を、ミホノブルボンは言語化することはできない。だがやや抽象的な感覚で、彼女はその輪郭を捉えていた。

 

 澄み切った湖水のような、そんなひと。海のような底知れなさはない。底は見えるが、澄み切った水が底と湖面との距離感の正確な測定を拒む。

 

 

 ――――ブルボン。静かな水は深いものだよ。気をつけなさい

 

 

 小さい頃。

 湖に遊びに行って、ずんずんと進んで溺れかけた自分を引き上げてくれた父は、そう言った。

 

 

 ――――海というものは暗く、深く、底が知れない。見えないことが恐怖になって、人に警告を与えてくれる。だけど静かな水というのは底が見える。だからこそ人は底が知れたと判断して奥へ奥へと進んでしまう。見えたからと言って、知れるわけでもないのにね

 

 

 見えるだけで理解できるというのならば、人間とはもう少し楽に生きられる。

 そんな理屈は根底ではわかっているはずなのに、人間はあらゆるものへ適応させることをしない。

 

 

 ――――危ないことを前面に押し出したものは実のところ、こちらが扱いさえ弁えれば然程危なくはならない。真に恐るべきは、危なくは見えないのに危ないものだ

 

 

 明晰な記憶力で父の言葉を思い起こしながら、ミホノブルボンは意識を目の前に引き戻した。目の前に座る男から、問いが投げかけられたからである。

 

「見て、どう思った?」

 

「確かに楽しそうではありました」

 

 ですがそれ以上の信頼が感じられました。

 そういう余計なことを、ミホノブルボンは言わなかった。

 レースでは常に先手を取るが、会話ではあくまでも後手に回って相手の言葉を待つ。

 

 そういう辛抱強さが、彼女にはあった。

 

「で、これが今の彼女だ」

 

 体型的にも、走り方も、然程成長していない。いや、この場合は変化していないというべきだろう。その身体が生み出す速度は圧倒的に向上している。

 そしてなによりも、本格化を終えて嘗てと何も変わっていないはずの彼女は、あわや別人かと思わせるほどに変わっていた。

 

 何がと考えてみれば、雰囲気が、としか言いようがない。走り方も変わっていない。それこそ意地でも張っているかのように1ミクロンのズレもない。

 それはそのフォームが身体に対しての最適解だったということで納得できるにしても、どことなく鬼気迫る雰囲気があるというのは否定し難いところである。

 

(言うべきでしょうか)

 

 自分の感想を。

 どう思う、と。直接言われていない。だが予測できる問いではある。

 ここは言うべきかと考えた末に、ミホノブルボンは口をつぐんだ。多少の才気があればすぐさま反応を返すところを、やや鈍感に構える。

 

 あくまでも、相手の反応を待つ。先読みこそすれども、先手は取らない。彼女は、そういう忠犬めいたところがあった。

 リードを引かれれば大喜びで走り出す。だが、引かれなければ走らない。

 

「俺は、鬼気迫る何かを感じた。あいつはぽやーんと走ることしか考えていなかった。その純粋さこそが彼女の本質で、そこに誰かのためにだとか、そういう副次的な目的を介在させるべきではない。そう見ていたし、おそらくそれは間違っていない。なのに今の彼女は、何かを思って走っている。自分以外のなにかのために走っている」

 

 自分から先走って話を始めなくてよかったと、159秒の沈黙を乗り越えたミホノブルボンは思った。

 

「君はどう思う?」

 

「私はマスターほど、彼女のことを知りません。なにせ名前すら知りませんので」

 

「サイレンススズカだ」

 

 今のは前置きであって名前を知りたいわけではない。

 そういう会話の――――というよりは感情の機微に妙に疎い不器用なところを愛しく感じながら、ミホノブルボンはあえて無視して続けた。

 

「ですが、変容したことはわかります。それをマスターが言語化されたのですから、正しい見立てであろうとも思います」

 

「そうか」

 

 マスターほど明確な理屈立てができる人ならば、そしてこのウマ娘との経験を積んだ人ならば、別に他人に肯定されなくても反証することはできただろう。

 少なくとも、シンボリルドルフなら自分の力だけでこの説を自己肯定できたはずで、そしてその上で自説が確固たる前提のような話しぶりで話すことができただろう。

 

 ここで『どう思う?』と聴く、即ち他者の後押しを必要とするところに、そして『そうか』と納得してしまうところに、彼の繊細さが表れていた。

 

「その不純物とは、何だと思う?」

 

「先程も申しました通り、私はマスターほど彼女の……サイレンススズカさんのことを知りません。マスターには、なんとなくの思案があると思われますが」

 

「……これは自意識過剰であると思わないでもないのだが」

 

 これを聴いて自意識過剰とは対極に位置する表現が適切だと、少女は自分には珍しい即断を下した。

 

「俺なのではないか、と思うのだ」

 

「というと」

 

「もしかしてス……サイレンススズカは、俺のために走ろうとしているのではないか、と。そう思うのだ」




32人の兄貴たち、感想ありがとナス!

mozzy5150兄貴、プロヴィデンス吉村兄貴、評価ありがとナス!


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サイドストーリー:あなたのために

本日のスペシャルサンクスは16:00頃に活動報告にあげております。いつものように後書きに載せられず、申し訳ございません。


 何も知らずに聴くと果てしなく自意識過剰なことを、東条隼瀬は口に出した。

 

「あいつはどこまでも自分のために走る。そういうやつだった。自分が走りたいから走っていた。そういうやつが誰かのために走るというのは、いかにも異常だ。見間違いであるという可能性の方が高い」

 

「マスターもかつては、そう思っていたわけですか」

 

「そうだ。思いたかった」

 

 端的ながら、自分の現実逃避を認めるような言葉だった。短いながら意味を孕ませた言葉は、如何にも彼らしい言い方である。

 

「だがそうではない。彼女は今、誰かのために走っている。それはきっと俺のためだ。なにせ……」

 

 やや沈毅な面持ちで顎を下げて眼を暗く光らせながら、東条隼瀬は覚悟を決めたように言った。

 

「あいつは、俺を信じてくれていたから」

 

(サイレンススズカという人が心から信じてくれていたからこそ、それを知っていたからこそ、その期待と信頼を裏切ったことがお辛いのでしょう)

 

 無神経だが無責任ではない。だからこそ、自分に原因を求める。そういうことなのであろうと、ミホノブルボンは思った。

 

「彼女が何かのために走るとすればそれはすなわち俺のためだというのは、間違いではないと思う。彼女は俺の指導力不足もあってレース中に怪我をした。だが彼女はその怪我を事故のようなものだと言っていた。ひいては自分のせいですらあると」

 

 それは実に競技者らしい発想だと、ミホノブルボンは思った。

 実際に自分でやってみて、その結果として怪我をした。となれば周りが何を言うかはともかくとして、競技者当人は責任を自分に求める。

 トレーナーが自分の計画になにか問題があったのではないかと思うのと同じくらい、そう思う。

 

(第三者としての俯瞰に徹することができれば、マスターであればこのことに気づけたはずですが)

 

 そうはならなかった。能力的にはできたが、性格的にはできなかった。

 

「あのとき、俺は自分を否定した。そう思っていたし、今も否定とまではいかなくとも、批判している。だが彼女には、俺が彼女と歩んできた道そのものを否定しているように見えたのではないか」

 

「あり得ることです」

 

「だから、彼女は走っている。過去に俺と作り上げた合作としての自分が結果を出すことで、過去の俺を肯定しようとしてくれている。彼女は俺が結果を重視することを知っているから」

 

 そうして見せられた戦績は、ものすごいの一言に尽きる。

 この4年間、負けはなし。1年間で10回前後のレースを走り、すべてを圧倒して勝っている。その内容からは選り好んだ質が感じられない。どちらかと言えば、手当たり次第といった感じか。

 

「結果をどうこうはわかりませんが、それもあり得ることです」

 

「わからない、というと?」

 

「サイレンススズカという方には、選択の余地があったのでしょうか」

 

 サイレンススズカというウマ娘が何かしらの目的があって走っていたのだろうということはわかる。彼と合うのは明確な目標がありながらその過程が暗闇に包まれているウマ娘だ。

 そして彼の好みとしても、届かないものに手を伸ばす莫迦を好む。

 だからサイレンススズカにも、なにか求めるものがあった。

 

「マスターは彼女が自分の夢を曲げたのではないか、と思ってらっしゃるのですか?」

 

「……いや、無くしたと考えている」

 

 なるほど、と。

 ミホノブルボンは得心いった。その発想は違和感を綺麗に拭い去るスポンジのように、彼女の思考に彩度を取り戻させていた。

 

「アメリカでGⅠを勝ち続ける。32戦走って全てに勝つ。これはすなわち、結果を出したと言える」

 

 確かにそうだと、少女は頷いた。

 シリウスシンボリの海外遠征でも、善戦止まり。国内外のレベルの差というものが騒がれつつあったちょっと後に、これほどの結果を叩き出した。

 それは疑いようのない偉業である。

 

「つまり、マスターの方針を勝利によって肯定しようと決めて節を曲げられたのであれば、次の段階へと進むはず、ということですか」

 

「1年間ではフロックかもしれない。2年目を越えても、対策が間に合っていないからかも知れない。だが3年目というのは、ケチがつけようがない。疑いようもなく、去年までアメリカのトゥインクルシリーズの支配者はサイレンススズカだった。であれば、証明は完了したと見ていい。俺はそう思う。彼女がどう思っているかは知らないが」

 

 彼女の目的に先があるならば、戻ってきて言ったはずだ。貴方は間違えていなかったと。私がそれを証明したと。

 だからもう一度共に走って、導いてほしいと。

 

 そこまで論理的な思考を行えて、なぜ今まで表に出さなかったのか。

 一瞬だけそう考えて、ミホノブルボンは首を横に振る。

 

 こんなことを、マスターが言えるわけはない。もともと自罰的で感情が内に向く。そんな人が、サイレンススズカという天才に怪我という罅を入れた――――少なくとも彼視点ではそう――――男が、『あいつが俺のもとに戻ってこないことはおかしい』、などと。

 理屈でわかっても、感情が許さない。

 

 そしてその先を言うべきは自分だと、ミホノブルボンは悟った。

 

「無論、私が居たから戻ってこられなかったという可能性はあります。ですが来年のマスターはチームを率いることができます。となれば日本トゥインクルシリーズへの復帰交渉もあるはずですし、何よりもマスターへの事前交渉があってしかるべき。そういうことですか」

 

「……ああ。そしてそんな知らせも交渉もない」

 

 少しの沈黙の後に東条隼瀬はそっぽを向いてから、ミホノブルボンに向き直った。

 

「悪かった」

 

「いえ」

 

 自分が言えないことを、言いにくいことを言わせてしまって、悪かった。

 その意味をおそらく、ミホノブルボンは理解できたと感じていた。

 

「俺はサイレンススズカが正しさを証明するために走っているのではなく、正しさを証明し続けるために走っていると思っている。そしてその終わりは、そう遠いことではないとも、感じた」

 

 終わり。

 

 それはサイレンススズカの中から罪悪感という信頼の残骸が消え去ることを意味しない。

 その残骸が消え去り、そして新たな一歩を踏み出せるとするならば、東条隼瀬は素直に祝福したはずだ。たとえそれが、自分のもとから離れていくということだとしても。

 

 約4年間背負い続けてきた信頼の残骸を脱ぎ捨てて、新たな目標へ走り出す。

 そうではない。

 

「目的の無い血を吐くようなマラソンを走り切ることはできない」

 

 なにせ、ゴールが存在しないのだから。

 

 東条隼瀬が誰に何を言われてもサイレンススズカを怪我させたことに対しての責任を感じ続けたのと同じように、サイレンススズカは自分の夢を追い続けた結果、信頼するひとに取り返しのつかない傷を負わせた責任を感じ続けることになる。

 

 夢を追うための関係だった。だから、夢を追った。スピードの向こう側へと行こうとした。その行動は身勝手に映るかもしれない。

 だが東条隼瀬だけはそれを肯定するし、『トレーナーの未来を考えるべきだった』とか、『怪我の可能性を考えるべきだった』とか、そういう否定意見でサイレンススズカが責められるたびに自分の実力不足を痛感するだろう。

 

「彼女は走れる内は、生きていられる。だが走れなくなって、目的が果たせなくなったとき」

 

 それは呪いのように彼女を蝕むだろう。過ぎ去っていった道に置き捨てられた栄光がいかに輝かしいものであっても、彼女が見ているのは過去に続く暗黒の未来だけなのだから。

 

「俺は今から、身勝手なことを言う。お前のトレーナーとして、最低なことを言う。トレーナーとして落第と言えるほどの、私情にまみれた言葉を放つ。聴いてくれるか」

 

 ミホノブルボンはひとつだけ瞳を瞬かせて、頷いた。

 頷いて、前を見る。これまで常に、自分のためだけに動いてくれていた利他的なひとを。

 

「…………俺は、あいつを止めたい。過程が永遠に続くマラソンを敗北によって打ち砕きたい。俺の責任によって発生した妄執を拓き、サイレンススズカの前に広がる未来を明るいものへと戻したい。そのために、お前の力を借りたい。お前の脚は、他ならぬお前の夢を叶えるためのものだ。そのためだけのものだ。それを承知で、頼みたい。俺のために、走ってほしい」

 

「はい」

 

 そのふた文字には、無限の慈愛がこめられていた。

 そのふた文字には、無限の信頼がこめられていた。

 

「私は、言いました」

 

 ――――私は、三冠達成後はマスターの為に走りたいと考えていました。私の夢を実現可能な物へと変えてくださったのは、マスターです。私の夢を叶えた後は、マスターを栄光で彩りたいと考えていました。マスターがそれを望まれないことも、理解していました。

 ですが私は、マスターが貶められたことを知っています。私のために貶められたことを、知っています。そのぶんの栄光を、私はマスターに受け取っていただきたいと思っていました。

 

 彼女は去年の今頃、そう言った。

 切り開く者となる、と。その決意を披露する前置きとして、そんな本音を彼に言った。

 

「その言葉に、変更の余地はありません。私の言葉はマスターとサイレンススズカさんが紡いできた過去と同じように不変で、不動のものです」

 

 ぱちりと。星のような瞳が瞬く。

 優しく微笑みながら、ミホノブルボンは小さな口を開いた。

 

「オーダーを、マスター。自発的にそうせよ、と言われるのであればそうします。ですがこの過程はおそらく、マスターにとって必要なことです」

 

「……ああ、そうだな」

 

 本人の意思によるのではない。

 頼むのではない。

 そういう方式にすれば、後悔が残る。

 

「ミホノブルボン」

 

「はい、マスター」

 

「命令だ。俺のために走れ」

 

「オーダー、受領しました。私は私のためではなく、あなたのために。あなたの未来をより良いものとするために、あなたの未来を切り開くために、走ります」



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第三部 エクストラロード【逃亡者】
サイドストーリー:隣に


お気に入り10000人いきました! ありがとうございます!
あ、ラストルナちゃんです。


 自分の弱みとか、わがままとか。

 そういうのを曝け出したらどうなるのだろうかと、東条隼瀬は考えていた。

 

 シンボリルドルフの隣に立つ自分は、完璧であるべきだと考えていた。それをある程度流用する形でブルボンに接してきたし、そのことに関しての後悔はない。

 だがその姿勢が時と共に崩れてきたというのもまた、確かなことである。

 

「ブルボン」

 

 犬のような忠実さを持つウマ娘に、東条隼瀬は声をかけた。

 緩みきって横にたれた、リラックス状態の耳がピコンと立つ。

 

「はい、マスター」

 

 ほんとうに綺麗な瞳をしている。つねづね思っていたそんなことを、この時にまた彼は思った。

 すぐ隣に少女はいた。ホテルから貸し出された浴衣のような寝間着を着て、ソファの真ん中――――右端に詰めて座った男の隣に座っている。

 

「俺は君に訊いた。個室がいいか、と」

 

「はい」

 

 声が発せられると共に、少女よりも頭ひとつかふたつぶんは高い男の肩が微弱に揺れた。

 

「そして君は言ったな。うっかり機械を壊しかねないから個室ではなく、いつものようにマスターと同じ部屋にいたいですと」

 

 札幌レース場の近くの豪華なホテルに、東条隼瀬とミホノブルボンは泊まっていた。

 自分のためならばともかく、誰かのために金銭を使うことに躊躇いを覚えない男と、金銭感覚が鈍い少女。その結果として一泊約2万円程の一室に2ヶ月間逗留する予定で宿泊計画は組まれ、そして約1ヶ月が経過している。

 

「はい」

 

「俺はそれを承知した。そして今や宿泊すること1ヶ月に及ぶ。1ヶ月といえば、情報が集積されるには充分な時間だ。だからその上で言うのだが」

 

「はい」

 

「近くないか」

 

「いえ」

 

 ぎゅ、と。

 トレーナーとしての激務に耐えるために鍛え上げられた身体――――筋肉で引き締まった腰に回された栗毛の尻尾が、自分の方へと引き寄せるように動いた。

 

 部屋備え付けの露天風呂にかぽーんと入り、口でぶくぶく泡を発生させて遊んでいた彼女は、やや湿った髪を男の肩に乗せている。

 声を発生させる度に彼の肩が揺れたのは、つまりそういうことであった。

 

「いえ。つまりお前にとってこれが適切な距離だと。そういうわけか」

 

「はい」 

 

 掻き抱くように腰に回された栗毛の尻尾をちらりと見る彼には、ふと思い出されるものがあった。

 

 それは多分、5歳くらいのこと。

 ウマ娘の耳と尻尾の生態に慣れ、なによりもトレーナーとして体調を管理し身体の調子を見極めるという訓練の試金石として、親から小さな仔犬が与えられた頃のことだった。

 

 ――――いいか隼瀬。ウマ娘の感情を見るには耳と尻尾を見るのだ。だがしかし、触ってはいけない。耳も尻尾も我々にはないものだし、気になるのもわかるが、だめなものはだめなのだ

 

 散歩で疲れ切って膝の上で寝ている仔犬をそのままにしている息子に向けて、父はおもむろに口を開いた。

 

 ――――耳と尻尾を持つというと、やはり犬でしょう。私の犬は喜んでくれます。耳も尻尾も触れます。なのに駄目なのですか

 

 ――――お前の犬は優しいから我慢しているのであって、喜んでいるわけではない。あと犬は所詮犬。知能が低い。だがウマ娘は我々人間と同じく、高度な知能を持っている。そんな存在の耳や尻尾を触るのは、良くない。お前も知らない人間に触られるのは嫌だろう

 

 ――――なるほど、耳はわかります。私にもありますから。ですが尻尾はどうなのですか? あれは髪の延長みたいなものなのでは?

 

 ――――尻尾は尻の延長だ。女の尻を触るのは、言うまでもなく良くない。わかるな

 

 ――――わかりました

 

 あの頃は、色々未熟だった。世話をしていた仔犬を単に『犬』としか呼ばなかったあたりに、それが表れていた。

 そして人間とウマ娘という似ているようで非なる生物というものとの距離感というか、関係性をうまく飲み込めないでいた。

 

 そして、今も距離感を測りかねている。犬でもウマ娘とでもなく、ミホノブルボンと。

 

 この尻尾はなんだ?

 

 そう言うのは簡単だし、そう言えばおそらくブルボンは尻尾を引っ込めるだろう。

 だが耳と尻尾はウマ娘の感情をダイレクトに反映する部位である。

 

 彼女の心がそうしたい、というのだから、させてやればいい。

 

(こいつは俺のことをどう思っているのやら)

 

 3人分の座るスペースがある。そして端っこに座った。

 親しい異性であっても、多少の照れや遠慮があれば一個分の席を空けて座る。彼女にそういう常識があるかないかは別にして、少なくとも照れてもいないし遠慮もない関係を築けている、ということである。

 

(会った時にお父さん、と言い間違えていた。となると第二の父のような感覚なのか)

 

 ブルボンの父。まあURA関係者ではなくなったようだから実名を出さず、仮称でパパボン(第2候補:ブルパパ。不採用理由:パパボンの方が語呂がいいから)とする。

 そのパパボンは疑いようもなく優秀な父親である。男手ひとつでこんなにも善良で無垢な娘を育てられるというのは、素直にすごい。どうすごいのかはわからないが、ブルボンは娘としては世界でも屈指の存在であることは間違いない。

 そんな立派な父と影を重ねられるのは、とても光栄なことだと思う。

 

(なんにせよ、こいつの中で俺が家族カテゴリに編入されているのは間違いない)

 

 ブルボンは今、どこを見ているのかわからない。強いて言うならば虚空を見ている。

 

「ブルボン」

 

「はい」

 

 夕方の問答で言語リソースパックを使い果たした――――繰り返し使うものであり、使い切りのものではないはずだが――――感のあるミホノブルボンは、それでもいつも通りの規律ある言葉を返してくる。

 

「お前、本でも読んだらどうだ。ただ座っていても、つまらないだけだろう」

 

「いえ」

 

 やることなく虚空を見ているよりは、本を読んだ方が楽しいだろう。

 そんな発案を、ミホノブルボンはふるふると首を振って拒否した。

 

「じゃあ、テレビでも見るか」

 

「いえ」

 

「夜食として果物でも食べるか」

 

「マスター」

 

 はい、いえ、マスター。

 この3種しか言語を知らないロボットのようなミホノブルボンの静かに虚無を見つめていた瞳が、東条隼瀬を捉えた。

 

「私はマスターのお側にいられることで幸せを感じられます。本もテレビも果物も、薦めていただけるのは嬉しいですが、不要です」

 

 ふわふわと、風に揺られるすすきのように揺れる尻尾が右腕を撫でる。

 そうであれば、と。取り敢えず放っておいて、東条隼瀬は本を読む作業を再開した。

 

 札幌レース場は、国内では珍しい洋芝を備えたレース場である。気候も10月頃――――すなわち、凱旋門賞に行く頃のパリに似ている。

 なにも彼は、ミホノブルボンを無計画に連れ回しているわけではなかった。

 天皇賞春、宝塚記念などの激戦の疲れを癒やすための避暑地として連れてきたというのも嘘ではない。

 だが、主目的はミホノブルボンに海外遠征の了承を得られた際、即座に洋芝への適応を促すためだった。

 

 口を半開きにしてぽけーっとしている少女を見ると、あれほど頼もしいことを言ってくれた皇帝を超えしウマ娘と同一人物とは思えない。

 

「洋芝はスピードと言うよりも、パワーとスタミナが重要視される。日本とフランスのトゥインクルシリーズはやっていることは同じだが、中身は全く異なると言っていい。そこらへんは、問題ないと思うが」

 

「はい」

 

 相変わらずの言語リソース不足だったが、それは全くの事実だった。

 洋芝。ある者は脚に絡みつくようなと評する、クッション性の高い弾むような芝。坂路で鍛えまくった効果でスタミナとパワーを豊富に身に付けていたミホノブルボンにとって、それはあるいは日本の短く硬い芝よりもかえって走りやすかったのかも知れない。

 

 夏が終わるまでひたすらに脚を洋芝に慣らし、その後は坂路で脚に力と粘りを付け、外国のトゥインクルシリーズの概要をさらりと学ぶ。

 

 そうして、9月初旬。

 

「行くか。修羅の道を」

 

 札幌から帰ってきて早々、ミホノブルボンは生徒会室へと向かった。彼女のトレーナーは理事長に海外遠征をする旨の報告に向かっている。

 気を利かせたナリタブライアンがエアグルーヴを呼びにするりと生徒会室から抜けていく背中をちらりと見て、訪問者は頷いた。

 

「はい。マスターの望まれたことですから」

 

(望まれたこと、か)

 

 思えば、ルドルフは公的にこうせよとかああせよとか言われることはあったが、私的にこうしてくれと言われることはなかった。

 

「彼の望みはだいたいわかる。わかっているつもりだ。そして君が挑むべき壁の高さも、私は直接見たことがあるだけに知っている。それでも君は、挑むわけか」

 

「実行の困難さであれば、私のクラシック三冠も似たようなものでした」

 

 そう言えば、ミホノブルボンはスプリンターだったのだ。その本質を見間違って負けただけに、シンボリルドルフの中にその認識は常にある。常にあるが、それでも意外に思ってしまうのもまた、確かである。

 

「私は無謀な挑戦をさせてくださるトレーナーを求めていました。普通のトレーナーであれば、スプリンターをクラシック三冠へ輝かせるなど不可能です」

 

 そちらの才能があるウマ娘ですら、クラシック三冠をとることは難しい。才能が無くては土俵にすら立てず、努力しなければすぐさま引き擦り降ろされ、運が無ければ無残に敗れる。

 同期の質、怪我の有無。自分ではどうにもならないところで道を阻まれる嶮岨な道。それが、クラシックロードなのだ。

 

「私にはスプリンターとしてならば才能がありました。そんなウマ娘をクラシックロードへ進ませれば、トレーナーも無謀の誹りを免れないでしょう。そして高確率で、一冠も得られず失敗するでしょう。そうなれば、そのトレーナーの経歴は傷つきます。私はそれでも、無謀な挑戦をさせてくれる人が現れることを願っていました」

 

 果たして、その待ち人は現れた。

 

 君はどんなウマ娘になりたいんだ、と。そう聴かれた時。そのときに、ミホノブルボンは無謀を許されることの嬉しさを、難しさを知ったのだ。

 

「……私はマスターに、無謀を許していただきました。無謀を貫くための力添えをしていただきました。ならば今度は私がマスターの無謀を許し、貫くための力添えをする番だと。そう思います」

 

 ああ、よかったと。シンボリルドルフは心の底から安堵した。

 このふたりなら、大丈夫だと。どちらに何があっても、もう折れることはない。支え合うのでもなく、片方が支えるのでもなく、自然に寄り添っている。

 

「君が」

 

 自分がそうなれなかったことへの悔しさと、それを上回る喜び。それらをこめながら、『皇帝』ではなくなった少女は祝福の言葉を発した。

 

「あのときに彼の前に現れたのが、君でよかった。これからもどうか、彼を頼む。あれで少し、脆いひとなんだ」

 

「はい。私の力が及ぶ限り、全力で」

 

 伸ばされた手。宝塚記念のあとのように手袋に包まれているのではないシンボリルドルフの素手に、ミホノブルボンは触れた。

 

 パチリ、と。乾燥し始めた空気の中に静電気が散る。

 

「……そしてこれは、少し余計なことかもしれないが」

 

 まだわかる必要はない。

 そう言わんとする瞳を見て、ミホノブルボンはただ頷いた。

 

「さあ、他にも挨拶すべき相手がいるだろう。君はそう思っていないかもしれないが……君にぜひ挨拶したい、と思う者も扉の向こうに待っている」




66人の兄貴たち、感想ありがとナス!

sai31兄貴、Collret兄貴、arukaito兄貴、くろばる兄貴、@gill兄貴、走る兄貴、タイヤキ兄貴、タイフォンデロガ兄貴、とっとっと兄貴、黒蜜蜜柑兄貴、エパルレスタット兄貴、あこうど兄貴、悠遊兄貴、槍持兄貴、小鳥音兄貴、ねこのくつした兄貴、ゆきちー兄貴、違う!違うんだエレン・・・・!兄貴、ねぎ蔵兄貴、勝浦坦々麺兄貴、白兎兄貴、大海鮮兄貴、もともとの兄貴、perry兄貴、それは大きなミステイク兄貴、量産型通行人AB兄貴、洒落兄貴、外崎兄貴、raveny兄貴、かえむ兄貴、amane兄貴、ジーナ兄貴、めさ兄貴、mirage61x兄貴、ラディカル・グッドスピード兄貴、Zeffiris兄貴、nofloor兄貴、評価ありがとナス!


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サイドストーリー:無敗をかけて

これまでフューチャーしたウマ娘全員出せてよかったと思ってますわ! メロンパフェが止まりませんわ! あと100話ですわ! くそなげぇですわ!

100話記念で質問箱設置しました。気軽にどうぞ。今のところ100%答えてます。
https://peing.net/ja/llumonde


「エアグルーヴはどうなった?」

 

「あいつを頼む、とさ」

 

 エアグルーヴとサイレンススズカは友達だ。親友だと言っても良かったかもしれない。

 サイレンススズカは基本的に静かで交友関係の狭いウマ娘だった。だからナリタブライアンには彼女がどう思っていたかはわからないが、少なくともエアグルーヴは親友だと思っていた。

 

 だから珍しく廊下を走ってきたエアグルーヴは生徒会室から出てきたミホノブルボンの手をとって、頭を下げて頼んだのだ。

 

「まさしく友情だな。我々としては、うまく行くことを祈ろうか」

 

「こんなときにも他人の心配か」

 

「こんなとき。エアグルーヴに何かあったか?」

 

 はぁ、とふぅ、と間。

 生徒会室の扉に背を預けたもうひとりの生徒会副会長は、天を仰ぐように顔の角度を上げた。後ろでまとめたテールヘアーが擦れて、頭が少し痛む。

 

「私が言ってるのはアンタのことだ。好きだったんだろ」

 

 シンボリルドルフがこれを機に――――というか最近はずっとそうだったが、自分が彼の隣にいるということへのこだわりをなくしたことを、そして自分の中に蟠るある種の感情の制御を果たしたことを、ナリタブライアンは知っていた。

 

「だった、ではない。今も好きだ」

 

 予想していたからか、あるいは今も思っていたからか。シンボリルドルフは即座に信頼する副会長の片割れが言わんとするところを察して返した。

 

「なおさらだ。言わなくてよかったのか?」

 

「言うことによって彼が幸せになるなら、言うさ」

 

「すればいいだろうが」

 

 男らしい、そしてナリタブライアンらしい言い草に、ふふっと笑う。

 

「私はね」

 

 それがシンボリルドルフらしくない喋り方だと気づく前に、次の言葉はやってきた。

 

「自分の善意が無条件に他人を幸せにするとは思えなくなったんだ。盲目ではなくなった、というのかな」

 

「だが、好きなんだろう」

 

「好きだ。だがそれ以上に愛している。彼が選んだ結果であれば、私は無条件に誰よりも祝福する。彼が幸せであれば、別に隣にいるのが私でなくとも構わない」

 

 愛というやつが恋より上であるとか、上質なものであるとは思わない。思わないが、より見返りを求めないものらしい。

 

「言ってくれるなよ、ブライアン」

 

「……私にその気持ちはわからんが、アンタの決断の苦しさもアンタにしかわからんだろうからな」

 

 理解できないし、する必要もない。されることを、シンボリルドルフは求めていない。

 だがその心の美しさは、向ける感情の清らかさは、無条件で尊敬に値する。

 恋をしたことのないナリタブライアンからすれば、少なくともそう思えた。

 

 そして譲られた側――――こう言えばシンボリルドルフは『勝ち取った側だ』と訂正するだろうが――――はエアグルーヴからの真摯な頼みを聴いて、画面の中でしか存在を感じられなかった存在が実像を結んでいくような感覚に囚われていた。

 

 本当に、あの栗毛の逃げウマ娘はここにいた。ここにいて、走っていた。マスターの隣にいた。

 その感覚が、他人から語られるにつれてどんどんと身に沁みていく。

 

「やあ、ブルボン」

 

 片手に松葉杖、片手に本。

 図書館で借りてきたらしいそれらを手に抱えたトウカイテイオーは、手の代わりに軽く右耳を高く上げて振った。

 

「退院おめでとうございます、テイオーさん」

 

「それはありがと。だけど、どうしたの?」

 

「フランスに行くことになりました」

 

 まあ座りなよ、と。

 図書館から延びる廊下を抜けた先にあるラウンジの一席を顎で指し示して、トウカイテイオーは自らも座った。

 

「……ああ、この時期にってことは凱旋門賞?」

 

 そのレースの名は、日本トゥインクルシリーズに刻み込まれている。

 スピードシンボリ、シリウスシンボリ、シンボリルドルフらが挑み、そして近年ではエルコンドルパサーが挑戦して2位に食い込んだ。

 

 エルコンドルパサーとトウカイテイオーの間に直接的な交友関係はないが、彼女の友達のスペシャルウィークと深い交友関係がある。

 

「はい。そうらしいです」

 

 そうらしいってことは、これまでみたいにレース自体に明確な目的があるわけじゃないのかな、と。

 トウカイテイオーは、持ち前の鋭い感覚で察した。

 

 クラシック三冠は、ミホノブルボンの夢だった。

 天皇賞春は、彼女がこれまで積み重ねてきた距離への挑戦の集大成だった。

 宝塚記念は、彼女がこれまで覆してきた血統というものへの最後の挑戦だった。

 

 そして今度は海外遠征を行い、日本のトゥインクルシリーズに所属する全ウマ娘の悲願である凱旋門賞に挑み、勝つ。

 そのあたりが目的かと思ったが、そうではないらしい。

 

「ま、なんだろーといいけどさ。あんまり主体性がないというか、いまいちレース自体を見てないというか。君らしくないのは確かだね」

 

 それは『ふわふわした意識のままに挑んで、自分以外に負けるな』という激励であったかもしれない。

 トウカイテイオーにとってのミホノブルボンは越えたい壁だった。

 だがそれは誰かにボロボロにされてもいいからとにかく越えたいというものではなく、自分の力で越えたいというものなのである。

 

「そうでしょうと思います。私が挑むのは私の意思ではありますが、マスターのオーダーによるものですから」

 

「へぇ……規律と献身を友にしてきた神父が急に無道を進んで虚名を目指す邪教の司祭になったくらいの宗旨替えだね。そんな欲があるようにも思えなかったけど」

 

 理性的には性格も性質も性能も認めてるけど、それはそれとして嫌い。

 そんな彼女らしいと言えばらしい、好悪の情がハッキリ出たような表現だった。

 

「欲というより、贖罪ですから」

 

「ふーん……まあなんにせよ、勝って帰ってくるんでしょ?」

 

「そう在りたいと思います。ですがそう簡単でないのもまた、確かです」

 

「それさ。3度骨折したウマ娘が復活するのと、どっちが難しいかな」

 

 それは単純な揶揄ではなかった。自分の道の困難さを知って、そしてミホノブルボンの目指す道の困難さも知って。

 それでいて、ミホノブルボンは勝つとトウカイテイオーがそう信じているが故に、ふと表に出たのである。

 

「3度骨折したウマ娘がトウカイテイオーでなければ、私の目指す道のほうが易しいものであろうと洞察します」

 

「……無邪気に期待してくれるのは嬉しいけどさ。される方の身にもなってほしいね」

 

 自分を知り尽くしたライバルからの期待は、無責任な観客やファンたちから向けられるそれらとはその性質が大きく異なる。

 要はこれは、言葉とは裏腹の照れ隠しだった。耳がぺたりと伏せて頬が赤らんでいるあたりからも、それがわかる。

 

「ですが、されないよりはマシでしょう。それにこれは期待ではありません」

 

「じゃあ、なにさ」

 

「確信です。2度あることは3度ある、とも言いますし」

 

「ふふ……」

 

 シンボリルドルフと同じ三日月型の一房の白い毛が、肩と連動して上下に揺れる。

 大きく笑わないものの、腹からは笑っている。そんな彼女はギプスをした方の脚を見て、ミホノブルボンの方を真っ直ぐ見据える。

 

「勝つよ、君は。トウカイテイオーに、メジロマックイーンに。そしてなにより、シンボリルドルフに勝ったんだから」

 

 ボクに、ではない。あくまでも、トウカイテイオーに。

 そのあたりに彼女の複雑な心境を感じつつ、ミホノブルボンはふと気づいた。

 

「ありがとうございます、テイオーさん。それにしても」

 

「それにしても?」

 

「マスターみたいなことを言いますね」

 

 口がパカーンと開いて、舌がグニャーンと曲がる。それは菊花賞直前に骨折を告げられて叫んだときのような――――例えるならばえぇーーー!!という音にならない言霊が伝わってくるような顔をたっぷり2.309秒維持してから、トウカイテイオーは苦虫をかみ潰した顔を経由してもとに戻す。

 

「すっごく嬉しくないよ。ありがと」

 

 そんなお礼の言葉を受けて、ミホノブルボンはトウカイテイオーと握手して別れた。となるとあとは、目指すべき場所は決まっている。

 

「そうか。あいつ、ようやく目の前の段差にわざと躓き続けるような自傷行為に終止符を打つ気になったか」

 

 将軍。

 参謀と呼ばれていた頃の同僚。そして自他共に認める東条隼瀬の親友は、ミホノブルボンの意図するところを正確に把握した。

 

「ライスなら表にいる。東京レース場の模擬グラウンドにな」

 

「ありがとうございます」

 

 礼儀正しく頭を下げて駆けていくその姿の背を見て、将軍はひとつ呟いた。

 

「……それはこっちが言いたいくらいだ」

 

 と言っても、本人には聴こえてはいないだろう。

 

 あのウマ娘の妙な幼さとか無邪気さが、度々不器用な友人の心を救っていたことを知っている。

 その傷に沁み入るような無垢さが、どうやら傷の奥深く、膿んで熱を持った核にまで触れたらしい。

 

「よかったなと言いたいし、実際そう思っているわけだが……となると俺とライスはあいつとブルボンをどうやって倒せばいいのかな」

 

 まあ人事を尽くして天命を待つというように、やることをやり切った上ではなるようにしかならんか、と。将軍は、彼らしい楽観で肩をすくめた。 

 

「んなことをどうこう論じる前に、ジャパンカップのことを考えるべきだろうな」

 

 天皇賞秋は距離が短い。後半戦で走るべきはジャパンカップと有馬記念。対抗バ的存在のトウカイテイオーも怪我でいないこのあたりで、GⅠを一つくらいとっておきたい。

 そしてその実力がライスシャワーにはあると、将軍は信じていた。

 

 そして信じられている側はと言えば、一旦走るのをやめて迫りくるライバルを見ていた。

 

「ライス」

 

「ブルボンさん」

 

 一応、言いたいことはあった。用意してもいた。お互いに、色々話してきた。

 日常生活を共有する友として。だがいくら仲が良くとも、話題や思考を共有することができても、栄光を共有することだけはできない。

 

 ミホノブルボンはライスシャワーに度々栄冠を脅かされ、ライスシャワーはミホノブルボンに手に入れるはずだった栄冠を奪われた。

 だがそれでも両者の間には変わらない絆があって、互いがいてこその自分だという自覚がある。

 

 ライスシャワーは、訊かれることがあった。ミホノブルボンがいなければもっと勝てていたと思わないか、と。

 

 彼女自身も優秀でGⅠを勝つにふさわしい実力を有しているからこそ。

 そしてなによりも戦略で負けている盤面でミホノブルボンという絶対的な存在と対局し、戦術的な攻勢で度々あと一歩のところまで追い詰めているからこそ。

 そしてなによりも、可憐な姿とそれに不釣り合いな闘争心に魅せられているファンが多いからこそ。

 

 彼女にも。いや、彼女にこそ勝ってほしいと思うファンがいる。

 

 だがそういった手合の質問に、ライスシャワーはこう答えた。

 

 ――――ブルボンさんがいてこその私です、と。

 

「行くの?」

 

「はい」

 

「じゃあ勝って帰ってきて、ブルボンさん。ライス、今度はブルボンさんが望むレースで、また一緒に走りたいから」

 

「天皇賞春でなくていいのですか?」

 

 日本のトゥインクルシリーズのGⅠレースには、ライスシャワーにとって短すぎる距離しかない。

 適性からやや外れているものの、一番マシなのが天皇賞春だった。

 あの3200メートルは、全力を出すならば2400メートルまでのミホノブルボンには長すぎて、全力を出すには4000メートルからのライスシャワーには短すぎる。謂わば、両者が平等に不利を受けるレースなのである。

 

「ブルボンさんは一回、挑戦を受けてくれたから。だから今度は」

 

「ではまた、京都で。貴方と鍔迫り合うにはやはり、あそこがいいと思っています」

 

 肉薄された京都新聞杯。追い詰められた菊花賞。追い越され、そして追い越した天皇賞春。

 ライスシャワーとの激闘の記憶は、すべて京都レース場に眠っている。

 

 二人は、無言で歩み寄った。

 

 いつかのように、ライスシャワーは手を伸ばさなかった。ミホノブルボンから手を伸ばしてくると、わかっていたから。

 

「うん。また、無敗をかけて」

 

「はい。また、無敗をかけて」




56人の兄貴たち、感想ありがとナス!

しば00兄貴、おあん兄貴、ヨーマンの橋兄貴、硝子格子兄貴、ピノス兄貴、まめだいず兄貴、Hiirooon兄貴、rumjet兄貴、カーネル18兄貴、Spooky16兄貴、nofloor兄貴、評価ありがとナス!

感想・評価いただければ幸いです。


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アナザーストーリー:ガルフストリームの怪物

アンケートの結果、完結まで15時投稿です。


 サイレンススズカが走る前に緊張したのは、日本ダービー以来だった。

 自分より速いウマ娘に会ったことがなくて、身体を雁字搦めにするような何かが怖くて。

 

 彼女は、サニーブライアンから逃げた。正確に言えば、逃げることすら許されなかった。

 自分の長所を封じられて、鉛のように固められたのである。

 

 それからは自分の走り方がわからなくなった。実況から『悩める天才』などという不名誉な――――彼女自身はそう呼ばれていることを知りもしなかったが――――呼ばれ方をするほどに低迷した。

 

 そのスランプから救い出してくれたひとは、もう隣にいない。

 異国の地、異国の風。異国の土。二人で踏むはずだったこの地にひとりで降り立ったのは、自分のせいだ。

 

 叶えられて砕け散った自分の夢のカケラで心を傷つけてしまった彼を見て、自分が側にいてもその傷を抉るだけだと気づいて、そう思って、逃げた。 

 彼女には、その自覚がある。

 しかし、それ以外に現状を打破する方法を思いつかないというのもまた確かなことだった。

 

 アメリカ。全コース左回りという、サイレンススズカにとっては有利な土地。しかし、これまでに経験のないダートのコースを走ることになる。

 アメリカのダートは、日本のそれとは大きく異なる。土は乾燥して硬く、ともすれば芝よりもスピードが出るという。

 ダートは、芝より速度が出ない。だからこそ、サイレンススズカは日本では主に芝を走っていた。

 

 だが単純に速度を求めるにあたっては、全コースが得意の左回りで、芝よりも速度が出やすいアメリカのダートで走る方がいい。

 だから、アメリカへの遠征計画が組まれていたのだ。怪我してその計画はやや遅れはしたものの、すっかり治って今に至る。

 

 そう。これは復帰戦なのだ。

 ここで情けない走りをするようなら、あのひとが更に罪悪感を深めてしまう。

 

 自分のせいで、才能に傷をつけてしまったと。二度と治らない傷をつけてしまったと。

 

 トントンと、爪先で乾いた土を叩く。

 脚に不安はない。すっかり、前と同じような具合に戻っている。

 怪我前と同じように走れるはずだ、と。サイレンススズカは思っていた。

 

 ――――走れなければならないと、サイレンススズカは思っていた。

 

 次負けてもいい。次の次に負けてもいい。だが、今負けてはならない。

 やや遅れながらスタートし、乾いた土を踏みしめる。かろうじて影を踏まれることなく、先頭に躍り出る。

 

 そのままなんとか、サイレンススズカは逃げ切った。

 外国のレース場になれていないという経験不足を、勝利への執念で補った形になる。

 

(なんとか、勝てた)

 

 勝ちたい。そう思ったレースは、そう多くはない。彼女は勝つというより、先頭の景色を、速さを求めていた。その結果として勝利があった。

 

 人の為に走るのは、なんと苦しいことか。期待を、夢を、罪を背負って走る。足が重くなり、吸う空気にも粘りがある。

 彼女は考えることを、トレーナーに任せていた。目的も手段も、すべてをトレーナーさんが考えてくれた。ただどう走るかを考えていれば良くて、走ることについて考える必要なんてない。

 

 ひとりで走るということがどういうことであるかを、サイレンススズカはこの時に知った。

 

 何回も、何回も、何回も。

 何回も走って、一年経つ頃にやっと慣れた。

 

 孤独に。そして、何かを背負いながら走る、ということに。

 

 自分の夢を追った結果。追って、砕け散った夢のカケラを隣に立つ人、立ってくれていた人の胸に刺してしまった結果。

 走って、勝つ。走って、勝つ。自分をここまで育ててくれたひとの実力を、才能を、努力を、正しさを証明する。

 

 その繰り返しの果てに、栄光が影のようについてきた。

 彼はどこかで見てくれているのか、どうなのか。見てくれているなら、彼の指導の正しさを証明する証拠の一助にしてほしい。私の栄光を、自己肯定のために使ってほしい。

 見てくれていないなら、それでいい。彼が負ってしまった心の傷は、絶対に治らない。そういう顔を、彼はしていた。ならば忘れてもらう他に痛みを感じなくなるすべがない。

 

 究極の速度、新たな地平に立って、静寂と孤独を得た。静かな世界に至り、速度を極めることとは究極の個になることで、究極の個になるということは孤独になるということ。

 

 ペンダントの中の写真を見て、どうか彼の傷が癒えてくれるように祈る。無理だとわかっていても、そう祈る。

 会いたい。そう思っても、自分が現れることによって、顔を見せることによって、傷からまた血が流れ出すかもしれない。

 

 だから、彼女は日本に帰らなかった。

 初年度は11戦走り11勝、合計27バ身。アメリカ版年度代表ウマ娘――――エクリプス賞を獲て、そのままアメリカで、一年を終えた。

 

 2年目。全陣営が、サイレンススズカへの対策を構じてくる。それらの対策すべてを、サイレンススズカは正面から迎え撃ち噛み砕いた。

 12戦走って12勝。合計着差は39バ身。2年連続2回目のエクリプス賞。

 

 あまりにも、あまりにも強い。最初から先頭、最後も先頭。単純明快に、豪快に。

 しかし豪快という形容をするにはあまりにも儚く、そしてなによりも疾くサイレンススズカは走った。

 

 アメリカのトゥインクルシリーズでは、ドーピングやらサイン盗みやらが横行している。

 

 隣を走っている娘が、実は筋力増強やら何やの薬を使っていたらしい。

 隣で走っていた娘は、他人のトレーナーから伝達されるサインを解析して先読みしていたらしい。

 

 無論そんな中で勝ち続ける彼女も、2年目になると結構な頻度で検査を受けた。

 だが、彼女からそういった類いの物は検出されなかった。そして彼女には、サインを盗むという発想がそもそも存在しなかった。良くも悪くも、彼女は自分が走るときは自分と、遠く日本にいる人のことしか考えていないのである。

 

 これに対してほとんどの人間は快哉を叫んだ。

 

 金銭やら、闘争本能やら、誇りやら。

 そう言ったものをかけて、剣山の上で走るような心理状況でウマ娘たちは走る。

 クリーンであろうとしても、努力で打ち破れない壁を目の前にしたとき。他のウマ娘にあって、自分にはない何かを見つけてしまったとき。

 その壁を越えるためのものがすぐ側にあって、その上で使わないと判断できるほどの心の強さを、誰もが持ち合わせているわけではない。

 

 だが、サイレンススズカはそういった類いのものとは無縁だった。常に走り、練習し、休み、寝て、映像を見て研究し、レースの前では誰かに祈ったり、入念に事前準備をしたりする。

 あまりにも、あまりにも静かでストイックなその姿。レースに出ればまさしく無敵の豪快な勝ちっぷり。

 

 そのギャップに、鮮烈な閃光の如き速さに。異国からの来訪者であることなど忘れて、アメリカのトゥインクルシリーズのファンは夢中になった。

 それは彼女の容姿、性格、性質、実力があってこそのものだったが、なによりも受け答えが卑屈なほどに謙虚で、私生活がクリーンだったことが大きい。

 

 彼女が起こしたスキャンダルといえば、借りた部屋の床を謎の円運動ですり減らしたりとか、突発的に走り出して道の一部を破壊したりとかそういうもので、謂わばそれは子供の――――自分の力を制御できない小さいウマ娘がよくやらかす、そういう可愛げのあるものだった。

 

 彼女がすり減らした部屋は今や半ば観光名所化しつつあり、破壊した道は自分で弁済する。

 天才だから仕方ない。むしろ、あれだけの才能がありながら走ることしか求めないなら、合わせられなかったこちらも悪い。

 

 この上なく偉大なウマ娘に、天才に合わせるべきだ。

 

 そういう寛容さで、アメリカのトゥインクルシリーズファンたちはサイレンススズカという異才を受け入れた。

 無論排他的な――――国内のウマ娘たちがボコボコにされてレベルが低下するからある程度規制すべきだという意見もあったが、それは『弱いのが悪い』というあまりにも直截的なファンの怒りで蹴散らされた。

 

 3年目。サイレンススズカにとってアメリカでは最後になる年に、彼女は伝説になった。

 2年目までで加速の極みに到達した彼女は、より楽に、より負荷をかけず勝つ方法に気づいたのである。

 

 普段の、普通の彼女であれば到達し得なかった地平に――――自分以外の誰かのために走るという意識を得て、何かを背負うことの重さを知ったからか。あるいは、覚悟が決まったからか。

 サイレンススズカは、彼女らしくなく考えた。万が一にも、怪我をするわけにはいかなかったから。万が一にも、負けるわけにはいかなかったから。

 そして彼女は、最強を得た。

 アメリカでの最後の年、最後のレースで、疑うことのない最強を。

 

 自分は、加速の限界にいる。そしてこの限界を超えると、怪我をしてしまう。

 ならば、世界そのものを加速させればいい。もっと言えば、レース場の時の流れを支配してしまえばいい。そしてその方法は、既に掌中にある。

 年明け初戦を8バ身の圧勝で飾り、14戦走って14勝。合計着差は不明。

 

 

 そして置土産がわりに残したブリーダーズカップ・クラシックでの、9バ身差の衝撃。

 

 

 後ろを突き放す。影すら踏ませない。完膚なきまでに叩きのめす。

 逃げるとは、こういうことだ。勝つための理想型とは、これだ。

 

 ――――あの怪物には日本に帰ってほしい。

 

 それはある種の皮肉と羨望であり、『相手にすれば勝ち目がない』という掛け値なしの称賛だった。

 そう言われた彼女は、ある種の結論をアメリカのトゥインクルシリーズに突きつけてフランスへ移った。

 

 メジロマックイーンの応援する球団のファンが外国人打者にかつての偉大な三冠王の影を見るように、俊足の日本人打者に赤い彗星の幻影を見るように。

 そしてそれらの呪いが30年近く経過した今も続いているように、アメリカのトゥインクルシリーズのファンたちは逃げウマ娘たちにサイレンススズカの幻影を見続けることになる。

 

 そんなことは知らんとばかりに――――現に彼女は知ったこっちゃなかったし、知らなかった――――フランスへ移ったサイレンススズカの目指すものは、凱旋門。

 もう、やれることはやった。3年連続3回目のエクリプス賞。なら、次は。

 

 そんな思考で、サイレンススズカは更に進む。彼が彼自身のことを許すまで。自分のことを忘れるまで。彼の傷が癒えるまで。

 

 それを果たして、どう確認するのか。

 許せましたか、と。忘れましたか、と。癒えましたか、と。そんなことを訊けるはずもないのに、彼女は終わりなき道を進む。

 

 その道の先に、誰が立ちはだかろうとも。

 

 ――――貴女が良ければ、空港に来てほしい

 

 貴女という他人行儀さにちょっと安堵したり傷ついたり左回りにぐるぐるしたりして、空港に着いたり空港から逃げたり、来てからも左回りにぐるぐるしたり。

 

 左回りにぐるぐるしながら空港の出口に向かうところで、聴き慣れた足音がしてサイレンススズカはそちらの方を向いた。

 

「おひさしぶりです、トレーナーさん」

 

「……ああ。ひさしぶり」

 

 懐かしさ、嬉しさ、愛おしさ、そしてなによりも罪悪感。それらが一気にこみ上げてきて泣きそうになる。

 隣に立つウマ娘――――彼の心を救うか、補綴してくれたであろう彼女に軽く頭を下げてから、サイレンススズカは駆け出した。

 

 失礼します、と。

 そんな言葉だけを、虚空に残して。




48人の兄貴達、感想ありがとナス!

お手軽昼食兄貴、NNN22兄貴、はny兄貴、花篝兄貴、免罪符兄貴、きゅひょに兄貴、Grimoire兄貴、rumjet兄貴、フラッパ兄貴、danann_scp兄貴、Asrael兄貴、銀河兄貴、xX やけ酒 Xx兄貴、セレス2648兄貴、ソフィア兄貴、えらぎ兄貴、評価ありがとナス!


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オペレーション:ピキーン(絶望)

もし1から読み返してる兄貴がいたら、誤字報告で競バ場からレース場に変えてくれると嬉しいです。


 存在しない記憶に苛まれるRTA、はーじまーるよ。

 はい、前回はフランスに着くところまでやりました。

 

 よく考えたらブルボンをフランスに突撃させるって落鳳坡に龐統を突撃させるくらいの死亡フラグな気もしますが、そこはまあうまくやってくれることに期待しましょう(勢い任せ)

 

 という現実逃避はそこそこにします。問題はこの死角からカッ飛んできて後頭部にぶち当たったまな板です。

 

「失礼します」

 

 おい待てェ、失礼すんじゃねぇ。お前の動き次第でそれぞれの今後の立ち回りをきめなきゃならねぇだろうが(風柱)

 

 と言ってみたものの、もはやここまで来てどうこうできるものでもありません。

 というか、天才型の弱みがここに来て大きくなってきましたね。

 

 存在しない記憶現象は、初期能力が高ければ高いほど起こりやすくなります。まあ当然能力が高い方がウマ娘と深く関われますし、当然でしょう。

 そして、最近DLCで配信された騎手ビルド(苗字を特定のものにすることで特定のウマ娘相手のスカウト率を上げたりできるアレ)を使うと確定で起こります。

 騎手ビルドで走ってる兄貴もいるから見てね。見ろ(豹変)

 

 というか存在しない記憶でガバったり、先任ウマ娘のイベントを把握し切るのがめんど――――嫌で岡部化するのを諦めたのにこいつホンマ……辞めたらこの仕事? こんなアホらしい……

 まあ辞めませんけどね。完走しないとRTAじゃないって、それ一番言われてるから。だから道中いくらガバってもいい。いいよね?

 

 コメ欄で三浦大先輩が大量発生しているであろうことを予測して先に進めますが、サイレンススズカさんはとてもすごくつよいです。説明終わり。

 

 まあ固有スキルは終盤、ないし中盤で先頭をとってないと発動しません。自分が逃げウマ娘でなければほぼ確定で発動するので目の前が真っ暗になるところですが、幸いにしてミホノブルボンは逃げウマ娘! 命を運んでくると書いて運命! すばらしい!と、幸運に感謝したところで、ステータスの暴力でサイレンスな鈴鹿山脈(ない)姉貴を叩き潰します。

 

『過去からの刺客に二度も刺されてるあたり素直に岡部化してもよかったのでは?』

『DLCとして押し寄せる時代の波に適応できない古物商の鑑』

『もう一回無印三國志走れ』

『シュタインズゲートの選択やね』

『失敗しそう』

『なつきやすくてさみしがりのスズカにあそこまで当たり前のように嫌われるって、なかなかできることじゃないよ』

 

 ほとんどが役立たずなコメですが、最後のバスに乗ってそうなやつには同意しますね。愛嬌×でもスズカに嫌われるって何したんすか?(自問自答)

 

 まあそんなことに興味を持ってたらこのゲームでRTAなんて走れません。そもそもなんでカイチョーがあんなになったのか、私はそこから既にわかってませんからね。

 自慢じゃないですが、気にしないことも大事です。いわゆる鈍感力ですわ!

 

 まあ色々なことは置いておいてフランスについたわけですが、ここで大事なことがあります。

 それは目標のゆるさです。これ、画面上にぴょこっと目標出てますよね。凱旋門賞に出走っていうやつ。

 

 

 これ、出走しなくてもゲームが進みます。

 

 

 は? と思われる方もいらっしゃるかもしれません。ですがこれ、残りターンの表示が無いんですよ。なのでプレイ時に凱旋門賞√に分岐、その年のレースには出走せずに1年間フランスで遊ぶ、みたいなこともできます。

 つまり、URAファイナルズをすっぽかすことができるんですね(理事虐)

 

 これを利用して色々悪さができます。例えば出走しないまま日本にとんぼ返りすると、目標レースを凱旋門賞にしたまま新規にチームを作ったりできます。

 例えばスズカ。スズカの育成目標にはあんまり旨味のないGⅡレースが複数含まれます。ですが目標レースというものは、通常上書きができません。ですがこれを使えば、毎日王冠とかに出ずにすみます。

 

 ここでミソなのはまさに上書きができないというところで、ミホノブルボンを凱旋門賞に出走させる目標が達成されていないので、新しい目標が発生しない。だけど新しくスカウトしたウマ娘はレースに出れるという状態が発生します。

 

 なのでスカウトして2年目のスマートファルコンで有馬記念に出たりできます。普通は出れません。東京大賞典があるからね。

 

 つまり適当なウマ娘で賞金を稼いでフランスにいく、とんぼ返りして新しいウマ娘をスカウトして本来ならば出られないレースに出たり、本来ならば出なければいけないレースをサボる。

 これを通称『フランス旅行』といいます。いい子はあんまり真似、しないようにしようね(変態糞土方)

 

 なのでここまで来て何やら裏がありそうなスズカを放置して引き返す、みたいな鬼畜プレイもできます。ひさしぶりにRTAっぽい解説したな!(本道を見失うクズ)

 で、ここまで私はゲーム長々と説明してきました。そしてこの動画はウマ娘ワールドダービー解説動画ではない。

 

 そこには明確な落とし穴があるからこそ、私は解説したというわけです。

 ここまで説明すれば勘のいい方ならわかると思いますが、改めて言います。

 

 RTA目的にフランスに来たけど凱旋門賞に出るの忘れちゃった☆みたいなミスが起こる、ということです。

 実際、このゲームが発売されて1ヶ月後、発売されて2年も経つのに未だにランダムイベント数が発見されているガバの化身ことゴール・D・シップで本ゲーム、本レギュレーションのRTAを走っていたキ○ガイ……もとい奇人、あるいは偉人は凱旋門賞に出走させるのを忘れて1年間の延長戦を余儀なくされました。

 

 ふざけたロスタイムですねぇ。

 

 この動画のせい(おかげ)で、『フランス旅行』というバグ……というか仕様が発見されたわけですが、あれは悲しかったですね(他人事)

 

 ということで、きっちり予約します。私は自分をあんまり信用してないので。

 さてこれからの予定ですが、自由惑星同盟の守護神こと大魔神フォークの神託に従い、高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対処します。

 

 もらったアイテムを使いつつ、賢さ練習。フォワ賞に出て勝ちつつ、サイレンススズカさんからなにかしらのモーションがあればそれに従い、凱旋門賞に出る。

 

 そういう感じにします(適当)

 

 ということで、カイチョーの本を使います。逃げで【独占力】が役に立つとも思えないけども、据え置きになってから発動条件が緩くなったし、刺さったら強いからね。

 

 はい、9月2週になったのでフォワ賞のお時間です。

 勝てば凱旋門賞時のステータスに補正がかかり、負けても何も起きないやり得のレース。当然出ます。

 

 はい、勝ちました。これで凱旋門賞時限定で1.1倍補正がかかる、らしいです。ソースはファミ通の攻略本。

 残るレースは4つ! 凱旋門、URA予選、URA準決勝、URA決勝! うち3つは負けてもヨシ! 気が楽だな!(錯覚)

 

 と、ここでイベントが起こりました。スズカさんがレースに出るので見に来てください、とのこと。

 ……まあ、行きますか。断ってもいい気がしますし、何が起こるかわかりませんが無視するとヤバい気がしますので。

 

 ということで来ました、どっかのレース場。サイレンススズカさんは……うわぁ、これは進化してますね。間違いない(冷静)

 ストールスズカは……まずい……だが開幕から固有スキルブッパしてくるペンダントスズカよりはマシ……富士山と北岳くらいの差でマシ……

 

 当然のように1位と。おー強い強い。

 

「すごい走りでしたね、マスター」

 

 でもこの風、少し泣いてます……(幻聴)

 

 そんなミホノブルボンのセリフ(ボイス付き)で締めくくられましたが、その割にはぽやーんとした顔してますねぇ!

 

 緊張感感じるんでしたよね? とかアホなこと言ってる暇はないので無視して会話を打ち切ります。もういくつ寝ると凱旋門なんじゃい!

 

 前夜イベもおなじみ○ボタン連打で飛ばし、やって来ました凱旋門。スキル欄で取れるもん取った! トイレにも行った! 朝ごはん食べた! ふっとばされたチャートは箪笥にしまった! イクゾー! デッデッデデデデ!(カーン)デデデデ!

 

 ピキーン!(例のスキル音)

 

「先頭の景色だけは――――譲らない……!」

 

 ……は?(絶望)

 え、なんでレースはじまって即座に固有スキルが発動してるんですか?




61人の兄貴たち、感想ありがとナス!

夢無き庭園の管理人兄貴、評価ありがとナス!


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サイドストーリー:ふたりだけの

 まるで妻に逃げられた夫のようだと、ミホノブルボンは思った。

 

 どこかそわそわしている。

 そんなマスターとお手てをつないで、ミホノブルボンはフランスの地に降り立った。

 

 左手で手を繋ぎ、尻尾でキャリーバッグを引きずる。

 

 ――――転んだときに手を突けるように、片手は空けておけよ

 

 そう言われてから、ミホノブルボンは極力利き手を空けるようにしていた。

 

 そこで、出会った。自分と同じ、栗毛のウマ娘と。

 同じ栗毛でも、随分色が違う。色が濃く艶のあるミホノブルボンのそれとは違い、視線の先でしきりに左回転しているウマ娘のそれは色が薄く、どちらかと言えば橙に近い。

 

(綺麗な人)

 

 素直に、そう思った。手も脚も細く長く、無駄な筋肉も贅肉もない、すらりとしたモデル体型。

 深窓の令嬢といった雰囲気のある彼女は、ガラスのような儚さとうちに秘めていた熱いものを完璧な比率で同化させている。

 

「マスター」

 

 くいくいと繋いだ左手を引き、空いた右手で指をさす。

 気づいた彼が一歩踏み出した瞬間、左回転が生み出す天文学的遠心力に弾かれたような具合に、栗毛のウマ娘はこちらを向いた。

 

 いや、違う。

 

 ミホノブルボンは、すぐさま自分の認識の誤りを認めた。

 彼女が見ているのは、マスターだけ。東条隼瀬という芦毛の青年だけ。隣にいる自分には、文字通り目もくれていない。

 

「おひさしぶりです、トレーナーさん」

 

「……ああ。ひさしぶり」

 

 沈黙。

 いっそこれはもう、絶技なのではないか。そう思う程の沈黙。互いの目には、互いのことしか映っていない。なのにまったくもって会話が進まない。

 

 利口な犬のようなところがあるミホノブルボンは、自己の存在を完全に無視されていることを理解し、かつ受け入れていた。仕方ない。ここは空気になろう、と。

 

『空気であるとも言えるし、そうでもないとも言えるわけですね』

 

 こいつ、根絶したはずでは――――

 

 そんな戦慄に近い感覚が、ミホノブルボンの頭を射抜いた。

 

『根絶したとも言えるし、そうでもないとも言えますね』

 

 そう。ヤツの名はブルツー。バージョンは8。先代がジャパンカップで粛清されてからというもの、鳴りを潜めていたミホノブルボンのバックアッププログラムである。

 基本的にマスターよろしく単純化厨な彼女は、余計なことを考えて体力を消耗しないため、知識をジャンル分けして個別に管理するプログラムを作り、それらを横に繋いでプログラム・アドバンスとして運用していた。

 

 それが唐突に自我を持ったのが、ブルツーである。その自我をこれまで取り上げていたわけだが、どういうわけか蘇ったらしい。

 

『マスターの過去ログは参照しました。あのふたり……一筋縄では行かないようです』

 

 それは、見たらわかる。

 

『決裂とは立ち去ることであり、和解というのは歩み寄ることです。どちらも一歩引くタイプですから、あのままでは和解は成立しません』

 

 そうだろうか、と。ミホノブルボンは思った。

 確かにマスターはあれで臆病というか控えめなところがあるが、案外大胆なところもある。人格というものを一言で定義できないように、その予測も当たらないという可能性が高い。

 

『私のハイテックー頭脳が導き出すに、マスターブルボン。あなたの無神経さがあのふたりの絡まった人間関係を解きほぐす為の刃になるでしょう』

 

 それを言うならば、鍵ではないのですか。

 

『あなたに鍵を使いこなせる知能があるとは思えま』

 

 あー、と。

 8回目の消滅を迎えたプログラム・アドバンスことブルツーのことをきれいさっぱり忘れた。

 やはり人間関係というのは、当人同士で解決するのが一番である。

 

 たとえそれがたっぷり538秒間の沈黙の後に『失礼します』と言われて終わったとしても。

 尊敬し、そして無自覚に愛しているマスターが妻に逃げられた情けない夫のように手を伸ばし、力なく肩を落としても。

 

「さすがに見事な逃げっぷりですね」

 

「ああ……」

 

「対人能力に著しい不調を抱える私が言うのもおかしな話ですが、マスター。何かしら話した方がよかったのでは」

 

「ああ……」

 

 マスターがこわれちゃった。

 まあいずれ治るだろうしそれはそれとして、ここは立ち尽くしていい場所でもない。

 

「マスター。あちらに都合よくふかふかの椅子があります。背もたれはありませんが、ひとまず腰を落ち着けることを提案します」

 

「ああ……」

 

「では、行きましょう。私が先導します。よろしいですか?」

 

「ああ……」

 

 はい。いえ。マスター。

 基本的にこの3種で会話を成立させることができるミホノブルボンよりも更に貧困な語彙。

 

 その突発性語彙貧困症から立ち直ったのは、871秒後のことだった。

 

「……ルドルフに、着いたよ連絡を送らねば」

 

 着いたよという連絡ではなく、着いたよ連絡。カエルコールみたいなものだと解釈して、ミホノブルボンは黙ってパタパタ尻尾を振っていた。

 

 そしてその更に29秒後。

 

「情けない姿を見せたな。我ながら情けないことだ」

 

「マスター。完了形で言うには早すぎる気もします」

 

 一文に2回同じ言葉を使っているあたり、完璧に精神的ショックから立ち直っているとは言い難い。

 

「そうかな」

 

「そうです」

 

 そうかも知れない……と軽く押されてしまうあたりに、彼の極めて深刻な知能の劣化が窺い知れる。

 

「それにしても、マスター。私はサイレンススズカさんのことについて個人的に調べてみました」

 

「ほお」

 

「当人がどう思っているかは窺い知れませんが、彼女のライバルを名乗るウマ娘たちがインタビューに答えていました。彼女はレースを加速させると。終盤となると加速し切り、付いていくのがやっとの世界で彼女だけが自在に動けたと。私は今のところ、この謎の現象を解析できていません。マスターはどう思われますか?」

 

「別にそんなものは大して恐ろしいものでもない。お前は自分だけを見つめて走ればそれでいい」

 

 世界を加速させる領域への対策が、それだけでいいのだろうか。

 8割くらいは彼の言葉を信じつつもどうしても頭から離れない、アメリカのウマ娘たちの悲壮な表情。

 

 それはなによりも歯牙にもかけられていないことに対してのものだったが、ミホノブルボンとしてはそれらを察し切ることはできなかった。

 ミホノブルボンは単純に、彼女らはサイレンススズカという現在世界最強であろうウマ娘の実力を畏怖していると思っていたのである。

 

「お前、それに近いことをしているだろう。何を恐れる」

 

 その畏れを見抜いたのか、彼には珍しく一度言った言葉に追記・修正を加えた。

 それに近いことを、と。そう聴いて閃き、思う。このひとはいつから、サイレンススズカと言うウマ娘を止めることを、そしてその止めるすべが彼女に純粋なレースで勝つこと以外ないとわかっていたのだろうか、と。

 

「そういうことですか」

 

「そういうことだ。それよりも……」

 

「はい」

 

「この際はそれをやれる実力こそが脅威だ」

 

 頭を使った策を仕掛けてくれば、いくらでも対応できるしそれを逆手に取って嵌め殺すこともできる。

 

 真に恐るべきは、そんなものに頼らなくとも勝てる者。それはつまり、本来のシンボリルドルフであり、本来のサイレンススズカである。

 

「そのあたりは私が受け持ちます」

 

「ああ。実に無責任なことを言うが、期待している」

 

 その知恵が切れ味を取り戻しはじめたところで、立ち上がった彼を下から見つめてミホノブルボンは問うた。

 

「このあとは、どうしますか」

 

「今日は休み、そしてフォワ賞までは走ることになる。まあ一応札幌で脚を慣らしていたとは言え、それも所詮はジェネリック洋芝だからな」

 

「それで負けていたのでは、笑い話にもなりません」

 

 ライスシャワー、トウカイテイオー、メジロマックイーン、そしてシンボリルドルフ。

 実力で負けるならばともかく、事前準備の不足で負けるなどこれまで勝ってきた相手に申し訳が立たない。

 

「その通り。笑える勝ち方ならともかく、笑える負け方などごめんこうむる。ただでさえ負ける公算の方が大きい以上、やれることはやるべきだ」

 

「まあ、負ける公算が大きいのは今にはじまったものでもありませんが」

 

「そうだな。悲しいことに世間一般が言う程、我々は楽に勝っていたわけでもないし圧倒していたわけでもない」

 

 逃げと言う戦法の特性上、そう見える。それだけのことである。

 経過を見れば圧倒と言うよりも苦戦に近く、結果を見ても楽勝と言うよりも辛勝に近い。

 

「虚像が実像に近ければ、マスターはもう少し楽をできていたはずです」

 

 東条隼瀬は、ウマ娘のスペックを高めることに秀でている。そしてそのゴリ押しで勝っている。事前の駆け引きも、現場の駆け引きも不得手である。

 

 彼が自ら策の中身を開示しなかったおかげで、そういう言説が最近主流になりつつある。

 

「それは全くその通り。だが虚像から遠ざかるのではなく、一歩一歩虚像に近づいているのだから、その努力は褒められるべきだろうな。お前はそうは思わないか?」

 

「自分のことを高らかに褒めたたえるには、現状の満足が必要です。私の心は、その要件を満たしていません」

 

「それはいいことだ。それに、そういった虚像は利用しがいがあるからな」

 

 アメリカから来たらしいやかましい団体客の群れに目をやりながら、ため息をつく。

 

「どうも、話すには向かないな。さっさとホテルに行こうか」

 

「はい」

 

 札幌に居た時と、似たような気候。だが全てが同じというわけでもない。

 気候や環境の変化に敏感なところがあるウマ娘にはめずらしい鈍感さでそれらの微細な違いを無視しつつ、ミホノブルボンはフランスへの第一歩を印した。

 

「今更になるが、ブルボンという名は不吉だな。別に王朝を築いた記憶もないが、革命でも起こされそうじゃないか」

 

「ミホノボルボンでも、ミホノバーボンでも構いませんよ」

 

 名前を間違えられてやる気が下がりそうだからやめておく。

 他言語での発音をそれなりにうまくやっているミホノバー……ブルボンの頭をくしゃくしゃと撫でながら、東条隼瀬はそんなことを思った。




70人の兄貴たち、感想ありがとナス!

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サイドストーリー:来訪者

 フォワ賞。凱旋門賞が行われるのと同じロンシャンレース場、同じコース、同じ距離で行われる、まさしく前哨戦に相応しいレース。

 

『圧勝! まさに圧勝! オリエンタルエクスプレス、ミホノブルボン! フランスでも充分にやれることを示しました!』

 

 圧倒的と言っていい走り。無策での、地力による圧勝。

 挑戦者を歓迎する喝采に包まれて、ミホノブルボンは控室に戻った。

 

「マスター。一着、達成いたしました」

 

「当たり前だ」

 

 端的で断定的なその言葉の中にあるのは、いちいち言うな、とか。いちいち誇るな、とか。そういうことではない。

 彼の言葉の底にあるのは、これが普通だというミホノブルボンの実力への信頼だった。

 

「思えば日本はおかしかった。シンボリルドルフ、ルドルフ、ライオン丸、クリスエス……」

 

 シンボリルドルフと書いて差しルドルフと読み、ルドルフと書いて先行ルドルフと読み、ライオン丸と書いて本能に傾斜したルドルフと読み、クリスエスと書いて知恵と本能を合一させたルドルフと読む。

 それは同一人物ではあったが、あまりにも多彩すぎる戦い方だけを見れば、とても同一人物には見えないのもまた、確かなことだった。

 

「数年前と比べると、改めておかしいと言わざるを得ないな」

 

「あのときは確か、海外のトゥインクルシリーズとはレベルの差があり過ぎると、と言われていたのでしたか」

 

「そうだ。重賞ひとつ勝っても偉業。そんなふうに言われたものだ」

 

「関わっていたのですか?」

 

「いや。しかし、見たことがある」

 

 その頃、彼はフランスで学生をしていた。だから多少道案内くらいはしたが、実際は何もしていないに等しい。

 だが、見たことはある。日本から来たウマ娘とトレーナーが負ける光景を見て、レベルの差を感じたことは、ある。

 

「うちの一門、爺様連中が勝てなかったと泣くところを見て、子供の頃の俺は思ったのだ。情けないと。この屈辱を拭い去るのは俺だと。その頃の俺は恐るべきことに……なんというか、誇大妄想癖があったからな。知己を未来に求めることに狂奔していた」

 

「マスターにとっては単なる恥で終わることかもしれません。しかし、世界からすれば真に恐るべきはその誇大妄想が順当に現実を侵食しつつあることだと思いますが」

 

 至極まっとうなツッコミに閉口し、最近知恵をつけはじめたミホノブルボンの方を向く。

 

「お前、最近物言いが俺に似てきたな。憎たらしくなってきた」

 

 出会った頃の、言葉を額面上にしか受け止められない純粋無垢なミホノブルボン。

 幼児のような精神性をしていた相手には絶対に言えなかった揶揄を、東条隼瀬はぺろりと吐いた。

 

「白糸は染められるままに何色にも変ずる、と言います。私がこのように成長したのはマスターのおかげ。言い方を変えれば、所為です」

 

 若き天才をマスターにしていればぽややーんとしたままになっていただろうし、誓って殺しはやってなさそうな人をマスターにすれば表情筋が劇的な進化を遂げていたであろう。

 そしてこのやや露悪的で自己評価が厳しい皮肉屋をマスターにした結果、こうなった。

 

 ミホノブルボンはサイボーグウマ娘である。というか、そう言われている。

 しかし実態としては、ソフトの入っていない筐体という方が近かった。そして性能は抜群だが変なソフトが差し込まれた結果、こうなったのである。

 

 まあ筐体の特質というべきぽやーんとした雰囲気や、間違えて蹴っ飛ばされても無邪気に足元にじゃれついてくる仔犬っぽさは隠し切れていないが。

 

「さしずめ俺は孔明か」

 

「似たようなものではないでしょうか」

 

 実に自分らしい言い方を目の前の少女がしたことにため息を吐き、東条隼瀬はこめかみを抑えた。

 

「……思えば君の父君は偉大だった。汚泥の煮込みハンバーグの如き俺の性格の悪さを伝染させてしまって、果たしてどのように謝罪したものかな」

 

 15年か、16年かのどちらか。

 まあとにかくその実に長い年月、あの純粋無垢で培養液から生まれたような白無垢ブルボンの純真さを保ってきたのだ。どこかの誰かのセリフではないが、なかなかできるものではない。

 

「ですが私は今の自分のバージョンをかなり気に入っています。慕っている人の性質の一部をインストールできたわけですから。マスターはどう思われますか?」

 

「答えにくいことを言うなぁ、お前」

 

 共に歩んでくれたミホノブルボンという奇特なサイボーグウマ娘の変化を否定することは、できない。

 過去の自分を否定するということがどういうことかをやっとわかって、そして向き直ろうとしているところなのだ。

 

「一応、ロールバックも可能ですよ。マスター」

 

「せんでいい。これまで歩んできた道を否定するのは、一度だけで充分だ」

 

「はい。そう仰ると思っていました」

 

 サイレンススズカと言うウマ娘と歩んできた道程を肯定しきることはできない。今の自分から見たらあのときは随分と未熟で、根拠のない自信に満ちていた。

 それでも否定するのではなく、従容として受け入れるべきだと。結果を見て全てを否定するのではなく、冷静に分析して反省し、改善する。

 

 肯定する必要はない。だが、否定する必要もない。ただ受け入れ、土台にする。その過ちを受け入れた上で、その土台の上により上質なものを打ち立てる。

 

 尊敬すべき皇帝は――――シンボリルドルフは、そうした。自分が無邪気に、才能の暴威であまたのウマ娘の心をへし折っていたことを受け入れて、その上で己を変革し、改善し、進むことを決めた。

 幼い頃など、善悪美醜の区別もつかない。あれ程の才能があるのであれば――――大鵬のような翼があれば、広げてみたいと、飛んでみたいと思うのは当然のことであろう。その結果小鳥が少々飛ばされても、気付く方が珍しい。

 

 その気付きを独力で得て、自己を変革した。

 やはり、だからこそ皇帝なのだ。

 

 自分は気付くのに遅れ、自己変革も中途半端なままにここにいる。だがそれでも、やらないよりはマシであると信じたい。

 

「……かわいくて純粋無垢な娘が口が悪いだけが取り柄の変な男に汚されて、俺は悲しいよ。少なくとも俺が君の親だったら、そんな男は刺し殺しているだろう」

 

「大丈夫です、マスター。お父さんはそんなことをしませんし、しようとしていたら私が守ってさしあげます。それに私はマスターの言うところの汚れを結構いい装飾だと見ています。要は見方次第です」

 

「物は言いようだな」

 

「はい。物は見ようです」

 

 会話が一段落した瞬間、脚のケアが終わる。

 夏の半分以上休みに費やしただけあり、ミホノブルボンの脚からは前半戦のGⅠ3連戦がもたらした疲労が完璧に抜けていた。

 

(洋芝と相性がいいのか。あるいは、よくなったのか)

 

 天性のスプリンターにスタミナとパワーを増設したのが、ミホノブルボンである。

 

 もとから素質のあったスピードと、てんで才能のなかったスタミナとパワー。ならば、スタミナとパワーを以てステイヤーにしてしまおう。

 近頃はそういう、短所を長所に裏返す育成方針が徐々に導入されているらしい。もっともそれは、一流のスプリンターとしての素質がある娘にスタミナとパワーをつけるという、本来想定されたものと違う用法ではあるが。

 

 個人的には『スプリンターとして伸ばそうにも才能が足りず、マイルや中距離に挑ませようにもスタミナが足りない』という中途半端な娘にこそ使ってほしかったのだが、一度渡したからには使用方法にとやかく言う気もない。

 

「じゃあ、帰るか」

 

「はい。ホテルが近いというのは、便利なものですね」

 

 ミホノブルボンの予定されている遠征期間は1ヶ月ほど。走るレースは2戦で、どちらもロンシャンレース場で開催される。

 

 となればロンシャンレース場付近のホテルに泊まるというのが、ある意味では当然のように思えた。

 

 だが実のところ、東条隼瀬はかなり悩んだ末に宿泊するホテルを近場にすることを決めたのである。

 

(便利なだけではないさ)

 

 人の耳にも聴こえる大歓声と、ウマ娘の耳ならば聴こえる蹄鉄の音。

 それらを聴いてレースに思いを馳せ、はじまる前から掛かってしまう。そういうことも、ありえる。

 

 ナリタブライアンなどは、そういうタイプだった。レースが近づくと気が立ち、無闇に消耗する。

 姉がそうでもないことを考えると、血ではなく気性の問題だろう。あれで臆病で繊細なところがあるから、扱いには結構苦労していると師匠が言っていた。

 

 だがその点、ミホノブルボンの神経はワイヤーロープでできている。

 菊花賞後の一時期ならばともかく今は問題ないだろうと、そう判断しての選択だった。

 

「まあ、このぶんでは平穏に過ごせそうではないか」

 

(そうでしょうか)

 

 それは別に、口にするほども無い疑問だった。口にしてもどうしようもならないし、口にしなくても結果はさほど変わらない。

 

「俺は少し買う物があるから外へ出てくる。別に外出するなとは言わんが、連絡手段を持っていけよ」

 

「はい。ちゃんとお留守番を務めます。ご心配には及びません」

 

「勝手に鍵を開けるなよ。まずモニターで来客が誰かを確認して、チェーンをかけてからだ。わかるな」

 

 わかるな、と言うところにいかにも信用されてない感じを悟りつつ、ミホノブルボンは頷いた。例えばシンボリルドルフ相手なら、別にこんなことをいちいち言うまでもなく、さっさと出かけていただろう。

 どうにも、日常生活における常識への信頼が薄い。こんなにも――――とまではいかないが、最近はとみに成長しているというのに。

 

「オーダー、復唱します。モニターで来客を確認。チェーンをかけ、施錠を解除。それでよろしいですか?」

 

「そのとおり。ではな」

 

 犬にやるように頭にぽんと掌を乗せられて、ミホノブルボンの尻尾がご機嫌に揺れる。

 豊かな感受性に比して感情表現に乏しい顔に反比例してにぎやかな反応を示す栗毛の尻尾を見て口の端を上げて、東条隼瀬は立ち上がった。

 

「帰ってきたら、自分で鍵を開ける。別に気を張っていなくていいからな」

 

「わかりました。お帰り、お待ちしています」

 

 釣られるように立ち、胸に手を当てて首を俯かせ了解の意思を示すいつものポーズ。

 玄関を開け放ちながらその背中が消えるまで見送って、ミホノブルボンはぺたんと玄関付近に座った。

 

 別段、ひとりでやりたいこともない。年頃の娘としてはひとりで居たいと思うこともあるだろうと、少し長めに出てやろうとしている男の気遣いは、まったくもって無駄打ちだったということになる。

 

 そして折角の行動が無駄打ちに終わったのは、東条隼瀬ひとりではなかったのである。

 

 ピー、と。鈴のような音がなり、ミホノブルボンは座り込んでいた玄関から膝で歩いてリビングまで行き、モニターをつけた。

 

(……この方は)

 

 見たことがある。映像では何度も。肉眼では少し前に一度。

 別に警戒する必要もなかろうとモニターを消し、チェーンを外して鍵を開ける。

 

「はい」

 

「え? ここ、あの……」

 

 戸惑ったように目を伏せ、メモと部屋番号の間で視線をシャトルランさせながら、サイレンススズカはまとまらない言葉を吐いた。

 それなりに聡いところがあるミホノブルボンとしては、なんとなくこのコミュニケーションとも言えないコミュニケーションが意図するところを察した。

 

「ここはマスターの居室です。何か用がお有りでしたら、上がってお待ちください」

 

「えっと……貴方は?」

 

 名前を聴いているのか、それとも役儀を聴いているのか。それはわからないが、おそらくは後者であろうと判断して、同じ栗毛の三冠ウマ娘は、実に端的に事実を伝えた。

 

「同居人です」

 

「うそでしょ……」




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サイドストーリー:求道者

「うそでしょ……」

 

 それは彼女の口癖であった。

 基本的には現実の解像度を敢えて下げ、逃げ切りたいときにそんな言葉が漏れる。

 だがそんなことを、ミホノブルボンは知らない。

 

「いえ、嘘ではありません。私の人格的美点は素直なことだと、マスターも仰っていました。私としては認められた長所は墨守したいと考えています」

 

「うそでしょ……」

 

「ほんとうです」

 

 そんな低知能な言葉の応酬を終えて、サイレンススズカは導かれるように部屋へ上がった。

 がちゃりとチェーン付きで丁寧に鍵が閉められ、退路が絶たれる。

 

「貴方のことは、マスターから聴いています。自分が彼女の夢を絶ってしまったと。怪我をさせてしまったと。そして、嫌われているだろう、と」

 

「あなたはそれを……信じているの?」

 

「私はマスターを信じています。ですがその長所も短所も、把握しているつもりです」

 

 ですが、が無ければ。その逆接の接続詞がなければ、サイレンススズカは正しい認識を――――自分にとっての事実をこの栗毛のウマ娘に投げつけなければならなかっただろう。

 

「ですがひとまずは今まで通り、その認識を共有しようと思っていました。そして、今もそれは変わりません」

 

「でもそれは、違うの。間違っているのよ、それは」

 

 走った当人が、それを一番知っている。

 彼女は、当初は自分のせいだと言っていた。それをおもねるというか、彼とすり合わせる形で事故だったのだという言葉を使った。

 そして自分のせいだというのは、庇って言ったわけではない。単純に、それが事実だったから言ったのだ。

 疑う余地のなく最高の状態だった。最高の走りをできた。そして柵を踏み越えようとして跳躍し、失敗した。

 

「私のせいなの。あのひとは、何も悪くありません」

 

「貴方から見ればそうであろうと思います。そしておそらく、第三者から見てもマスターが負うべき責任の比重は少なかったのでしょう。だからマスターの周りには第三者的な視点での真実を告げる方が大勢居られた。貴方のせいだとか、事故だったとか。そうでしょう?」

 

「それは……ええ」

 

「しかしその結果としてマスターの頑なさを助長させているのですから、ひとりくらいその幻想を共有してあげる存在が居ても良いのではないかと思うのです」

 

 それは、盲点だった。そしてこの手法は当時の関係者の誰かが思いついたとしても、実行に移せないであろう方法だった。

 

 しかしミホノブルボンは、当時全くの無関係だったのである。

 なんなら天皇賞秋当日は正月に向けてお父さんと凧を製作し、風にふっとばされたそれを追っかけていた。要は、レースを見てすらいなかった。

 

 だからこそ、『俺が悪いんだよ』と言っても『ああそうですか』と返せる。

 

 ミホノブルボンは基本的に過去を詮索しないし、それほどの興味もない。

 彼女が信じる材料にするのは自分と彼が歩んできた記憶や記録そのものであり、たとえ彼が自分に会う前に過去に殺人を犯していたとしても見る目を変えることはしないだろう。

 

「でもそれを肯定すると、あのひとは地中に埋まってしまわないかしら」

 

「他の方がこぞって否定しているのですから、地表へ引き擦りだされる力の方が強いのではないでしょうか」

 

 そして別に、地中に埋もれるのが悪いこととも思わない。

 だが当事者とそれ以外とでは見てきたものが違う。となると同じものを見ても反応が違ってくるのはいわば当たり前のことである。

 

 ミホノブルボンが『別にいいだろう』と看過してしまう変化。

 その類似の変化を実際に見たのがサイレンススズカだとするならば、やはりあのときのようにはなってほしくないと思うのではないか。

 

 その辺りを察して、ミホノブルボンはサイレンススズカの心配性を笑うことも咎めることも、茶化すこともしなかった。

 ただ、肯定することもしなかった。

 

「……少し考えてみたのですけれど、貴方が正しいと思います。むやみやたらに彼の責任がないのだと否定してみても、何も変わらなかったわけですし」

 

 ずーん、と。湿度を漏らしはじめる異次元の逃亡者を見て、ミホノブルボンは率直に『似ている』と感じた。

 それが生来のものなのか、あるいは人格的影響を受けたから――――彼ならば、人格的汚染と言うだろうが――――なのかはわからないが、自分の悪さと責任を率直に認めて抱え込んでしまうのはよく似ている。

 

「別に私は、貴方よりも正しいことをしている気はありません。ただ、貴方の上で正しいことをしている気はあります」

 

「……それは、どう違うのかしら?」

 

「つまり私の行動は単体として正しいものではありません。少なくとも私はそう思っています」

 

 ミホノブルボンの思考は謂わば『彼の抱える地獄を共有してあげるし、なんなら一緒に落ちてあげよう』というやつである。

 それは現実に対する作用をほとんど持たない代わりに、心に大きな作用を持つ。

 

「私の行動は、貴方がたの現実的なアプローチがあってこそのものです。昔のマスターが交通事故に遭われたようなものだとしたら、貴方がたは外科的な手法で治した。私は外科的に問題が見受けられなかったので、心療内科的な手段を用いた。ですから、貴方の選択の上に私がいる、ということなのです」

 

 だから、それほど否定なさらないでください。貴方が認めた正しさは決してかつて貴方が抱いた正しさと相対するようなものではなく、それを土台にしたもので、土台を否定するということはすなわち、貴方が今正しいと認めたものをも覆すことになる。

 

 ミホノブルボンの徹底的な論理的骨格の内側にある温かなものに触れて、サイレンススズカは少し笑った。

 

「あなたは、とてもいいひとですね。ええと……」

 

「ミホノブルボンです」

 

「ミホノブルボンさん。ブルボンさんで、いいかしら?」

 

「はい。それはとても、呼ばれ慣れた呼称ですから」

 

 無表情ながら、少しだけ笑う。

 そんなミホノブルボンを見て、サイレンススズカは安堵した。

 このひとが側にいれば、大丈夫だ。剃刀のような怜悧さといかにも動揺しなさそうな冷静沈着な見た目に反して、とても繊細で傷つきやすい彼の心が傷ついても、このひとなら治せる。

 

「ありがとう、ブルボンさん。これは、私が言えることでもないけれど」

 

 ――――あのひとのことは、いつだって大切に思っていました

 

 でも触れれば、私は壊してしまうから。

 自嘲気味に笑って、彼女は静かに席を立った。

 氷のような儚さと、白雪のような行儀の良さ。ひと目でいいところの令嬢だと――――モニターを見に行くのがめんどくさくて膝立ちで移動するとか、そういうものぐさな行為とは無縁の存在だとわかる。

 

「どうか、これからもよろしくお願いします。とても繊細な方なんです。ああ見えて」

 

「傷つくというよりも傷つけるのが似合っていそうでいて、脆い。そういう認識で、よろしいでしょうか」

 

「はい。あなたと幻想を共有できるというのは、とても嬉しいものですね」

 

 その言葉はからかうようで、その実惜しみない称賛であったかも知れない。

 

「よろしければ、見に来てください。私、これでも少しだけ、速い方なんですよ」

 

 1枚のチケットを残して、そう言って帰っていく。その後ろ姿には危うさがあった。

 間違いを認め、受け入れ、そしてそれでも止まれない。自分が決めた方法を、自分が選んだ道を進むことに躊躇いがない、求道者としての傑出した才能。

 その裏側にあるのがなんなのか。それを東条隼瀬はほとんど完璧に読み取っていたし、少ししか関わり合いのないミホノブルボンにもそれがわかった。

 

 心から喜んでいる彼女の喜色が後ろめたさから発せられたものであることを、ミホノブルボンは知っていた。

 

(マスターが貴方を責めないのは、自分以外を責めないのは確かに、そういう性格だからです。そういう性質だからです。ですがそれは感情的な理由であって、論理的な理由はまた別にある)

 

 やや肌寒い、乾いた空気の中に消えていく彼女の背中に、その理由を告げることもできた。

 そうなれば、彼女は動揺するだろう。凱旋門賞でも、確実に勝てる。それは彼女にとって認めるしかなくて、そして今まで彼以外の誰もが気づかなかった――――ともすれば彼すらも見て見ぬふりをして記憶の奥底に追いやっていた、思考が導き出した恐るべき真実の刃。

 

(それを振るう資格があるのは、存在に気づくことが許されるのは、この世界でたったひとり、マスターだけのはずですから)

 

『バカですね。メンタルを崩せば、彼女はぐしゃぐしゃになる。となれば、楽に勝てたというのに』

 

 唐突に。

 そしてある種必然的に復活したそれは、またも唐突に理性的で現実的な冷や水を浴びせた。

 

「私は勝つためにだけ走るわけではありません」

 

『知っていますよ、マスターブルボン』

 

 左に曲がって消えていったサイレンススズカを見送り切って、ドアを閉めてチェーンをかける。

 

『私が茶々を入れるに足る精神性でなくなって、残念です。それなりに、楽しかったというのに』

 

 いつものように粛清するまでもなく、それは消えた。

 

 領域への自覚、目覚め。それらを果たした、あの夏。

 その頃の幼さ、あどけなさ、無垢さ、愚かさ、弱さ。そういうものを守るために魂――――自分に宿るウマソウルなる正体不明のものによって作られたであろうそれらの人格は、かつてのミホノブルボンにとって欠くべからざるものだったのだろう。

 

「私も楽しかったですよ、それなりに」




84人の兄貴たち、感想ありがとナス!

逃擲煙瓶兄貴、サフランc兄貴、白髪大老兄貴、rumjet兄貴、うづうづ兄貴、音子兄貴、げんとう兄貴、久住大河兄貴、マチュピチュ改兄貴、評価ありがとナス!


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サイドストーリー:観戦者

唐突な自分語りになりますが私は前日の夜までにある程度次話を書き終え、皆さんの感想を見て参考にし、朝にちょこっと直してから投稿しています。
そして明日、私は2回目のワクチンを刺しに行きます。つまり何が言いたいかというと、明日の更新はないとも言えるしあるとも言えるということです。よろしくお願いします。


 帰ってきたら、ドアの前が局所的なハリケーンにでも襲われたかのような痕跡を残していた。

 

「……」

 

 指の腹で痕跡に触れ、まだやや熱を持った削られて剥がれた床の粒子は左回りに輪動している。

 

 この光景を見て、東条隼瀬は今更ながら少しだけ覚悟を必要とした。誰が無意識にこういう痕跡を残すのかを、彼ほど知っている者もいない。

 

「よし」

 

 鍵を入れ、開ける。覚悟と共に開け放つ。

 その覚悟の腕振りは、無慈悲なチェーンに阻まれた。

 

「……」

 

 がちゃ、がちゃ。

 無機質な音が鳴って、ドアは精々どう頑張っても半開き。

 

 あ、と。

 そんなバカっぽい声を出すのはひとりしかいないと断言できるほどに間の抜けた声がして、これまた聞き慣れた足音が鳴る。

 玄関前でスタンバっていたのか、音が妙に近かった。

 

「おかえりなさい、マスター」

 

「ああ、ただいま。で、他に言うことがあるんじゃないか?」

 

 来客があった時はモニターを確認して、それでも一応の対策としてチェーンをかけてからドアを開けろ。

 そう言ったが、閉めるときにチェーンをかけてくれとは言っていない。なにせチェーンをかけられると、鍵を開けて入ってくるであろう東条隼瀬が部屋に入れなくなるのである。

 

「申し訳ありません」

 

「まあいいさ」

 

「言い訳をさせていただきますと、我が家で鍵をかけた経験が台風に直撃された数日間しかありませんでしたし、チェーンなども備え付けられていなかったのです」

 

「長閑だったんだな」

 

「はい。のどかでした」

 

 別に彼女の生育環境にごちゃごちゃと文句をつける気もない男は、早々にこの会話を切り上げた。

 いつもならばくだらない話をくりひろげてもいいのだが――――ここらへん、我ながら変わったと述懐するところである――――今回はそれよりも何よりも優先すべきものがあった。

 

「スズカは来ているか」

 

 サイレンスはつけなくて良いのですか。

 

 いつもならば気軽にこう返すところだが、彼女の優れた聴覚は彼がドアの前でうろうろしていたことも、覚悟を決めて入ってきたであろうことも察していた。

 

 自分はそれをチェーンによって一度阻んでいる。それをこれ以上、阻むべきではない。

 

「来ました」

 

「来ています、ではないのか」

 

「過去形です。つまり、お帰りになりました」

 

「……そうか」

 

 覚悟がフイになった、では済まされないほど凹んでいらっしゃる。

 そんな感情を読み取って、少女は持ち前の優しさでフォローに走った。

 

「マスターと会いたくない、というわけではないと思いますよ」

 

「そうかな」

 

「はい。そうでなければ、空港にも来なかった。見つめ合うこともなかった。そうではありませんか」

 

「見つめ合うといっても9秒とかそこらだろう。2桁すらいっていない」

 

「マスターにとっての1日が24分だと仮定するならば、その時間感覚は正しいということになります」

 

 貴方は自分で思っているよりもサイレンススズカさんに入れ込んでらっしゃいますよ。

 言外にそう言われて、東条隼瀬は口をへの字に曲げた。

 

「で、何か言っていたか。別に話したくないなら話さなくともいいが」

 

「マスターを心配していらっしゃいました。あとは物事の見方などについて話しました。過去ログデータを再生しますか?」

 

「頼む」

 

「はい。では」

 

 青空の中に瞬く星を孕む瞳。

 それを2度3度瞬かせて、ミホノブルボンは口を開いた。サイレンススズカ特有のささやくようなウィスパーボイスを見事に再現しているそれは、誰が話しているのかということを一々問わずともわかる、それほどの精度。

 

 第三者に徹しきった一度目のログデータの再生を終え、ミホノブルボンは私見を交えた二度目の再生を行う。

 そしてそれを、東条隼瀬は黙って聴いていた。

 

「私の推察は、どうでしょうか」

 

「正鵠を射ている」

 

「ありがとうございます。ですが、わからないこともあります」

 

 ぴっ、と。両手の指で左右それぞれの端を持って広げる。

 それは、凱旋門賞のチケットだった。それも、かなりいい席の。

 

「これは、どういうことでしょうか」

 

「これは推論になるが、俺に見て欲しかったのではないかな」

 

 ミホノブルボンとしては、そのことは理解していた。自分の存在がおそらく認識されていないこと――――文字通り視界に入っていないということも、である。

 

「それはわかります。ですが、私を見てこれを渡すというのは……」

 

 一応、出走登録はされている。そして、報道もされている。トレーナーからも同じ逃げウマ娘として注意するように――――とまではいかなくとも、頭に入れているように指示はあったはずである。

 

 空港のときには視界に入っていなかった。それは先程初対面のような反応を示したから、わかる。

 だが、対面して話した。この時点で、気づくのではないか。気づいていたとしたら、その意図は何なのか。それとも気づいていないのか。

 

「それに関しては簡単だ。スズカが他人の顔を覚えているわけがない。そしてトレーナーからの具体的な作戦指導もないだろう。あいつはルドルフとはまた違った意味で、トレーナーを必要としないウマ娘なのだ」

 

 狭く、深い。

 サイレンススズカは、そういう人間関係を得意としている。そして、広く浅くができない。興味を持てる範囲と、持てない範囲が極端なのである。

 

 ウマ娘は顔というより色とか声とか匂いとか雰囲気とかで人を認識する。

 シンボリルドルフは一度見た顔は忘れないが、あれは結構頑張った末のことなのである。

 

 それどころか暴君としての全盛期には同族のシリウスシンボリ――――の、幼き頃――――の顔を12回見てついぞ覚えることができなかった。

 

 シリウスシンボリとは、後のダービーウマ娘である。幼い頃からそれなりに才能の光輝を示していた。それでもなお、シンボリルドルフにとっては有象無象のひとりでしかなかった。

 

 ――――よくも、そんなすっとろさで偉ぶれたものだな

 

 これが、初めて会って共に走ったとき。名前は聴いてすらいない。

 

 ――――トカゲは龍には勝てん……!

 

 これが、12回目の同族レースでの出来事。ちなみに、シンボリルドルフには珍しい辛勝であり、シリウスシンボリには珍しい惜敗だった。

 無論、名前を覚えてはいない。

 

 ――――あのときはすまなかった。謝って済むものでもないが、シリウスシンボリ。君と共に再び走れることを嬉しく思う

 

 で、これが13回目。

 なんだこいつ……と。

 イキリ散らかしていた――――もっとも、相応しい実力は持っていたし、だからこそシリウスシンボリとしては自分が在るべき理想像としてこの暴君を見ていたわけだが――――シンボリルドルフがいきなりおとなしくなったのを見て、シリウスシンボリは恐ろしくなった。脚が初めて縮こまった。そして見事に負けた。

 

 こういう所業にも表れているように、天才というのはそれなりの人格的欠落を併せ持つものである。

 なにせライオン丸時代の彼女が覚えた人はと言えば、両親とクソ生意気な芦毛のガキくらいなものなのだから。

 

 クソ生意気な芦毛のガキを認識してからは厳密に言えばライオン丸ではないのだが、他人を明確に認識することを覚えてから、彼女の変化ははじまったと考えた方が収まりが良いので、そういうことにする。

 

 何が言いたいかと言えばそれはつまり、ウマ娘は人を覚えるのが苦手。

 そして天才的なウマ娘は輪をかけて人を覚えるのが苦手。だが、本人の意識次第では改善することもある。

 

「つまりサイレンススズカさんは顔を覚えるのが苦手、ということですか」

 

「やろうと思えばできる。ただ、そのための労力を、差し当たり走ることに向けている。そういうことだ」

 

 その差し当たりが直るのはいつ頃になるのか。

 それは誰にもわからない。だが、たぶん治らないだろうなと誰もがなんとなく察していた。基本的に、走ることしか考えていないウマ娘なのである。

 

「つまり、天然ですか」

 

(お前が言うのか……)

 

 総天然色ウルトラBみたいなウマ娘なのに、などと思いつつ、言っていることはまっとうである。話を円滑に進めるためにも、東条隼瀬は華麗にスルーした。

 

「まあそのチケットは有効活用できないが……見ることはできるだろう」

 

「隣で、ですか」

 

「ん、いや。これだ」

 

 東条隼瀬は、外出した理由を上着の内ポケットから出した。

 チケットが、2枚。

 

「スズカが出るレースのチケットを取ってきた。まあ、凱旋門賞前の流し運転といったところかな」

 

「映像で見るのと実地で見るのは違ってくる。そういうことですか」

 

「そうだ。今のところ世界最強の走りを直接見るのは、お前にとっても悪いことではないはずだ」

 

 悪いことではない。直接見て、あわよくばその領域を感じたい。感じて、対策を立てられるなら立ててみたい。ミホノブルボンとしてはそう思うが、不思議なこともある。

 

「それにしても、なぜフォワ賞に出てこなかったのでしょうか」

 

「雨が降るかもしれなかったからじゃないか?」

 

「雨」

 

「そう。あいつはなんというか……重いバ場が苦手でな。だから回避したのではないかな、と思う」

 

 だが最近、天候は悪い。ぐずぐずしている。凱旋門賞でも似たような天候になるのではないかと思われている。

 

「典型的なスピード型、というわけですか」

 

「そうだ。こういうことを言うのもアレだが、彼女自身が望み、俺がそうした」

 

 ミホノブルボンがスプリンターとしての天性のスピードを半ば放置してスタミナとパワーを伸ばすことだけに注力したのとは対照的である。

 

「それにしてもなんというか……スズカも解き放たれたようだな」

 

「と言うと」

 

「いや、スズカはお前の口を通じて俺の変化を知ってくれただろう。となると、彼女は俺という呪縛から解き放たれる。なにせ、走る目的がすでに達成されているわけだからな。そうではないか」

 

 ミホノブルボンというウマ娘によって、多少なりとも前を向けた。過去を見据え、立ち向かう覚悟を決められた。

 そのことを、サイレンススズカは知った。ミホノブルボンというウマ娘が、やや脆いところのある男の心を補綴したと言う事実を聴いた。

 

 となれば必然、解き放たれるのではないか。ミホノブルボンという存在が自分の代わりにやりたかったことをしてくれた。

 彼女が自分の走りによって過去の東条隼瀬の走りを肯定しようとしてくれることは、なんとなく察している。

 

 だからこそ、東条隼瀬はミホノブルボンに渡された凱旋門賞のチケットが本来は自分に向けられるべきものであり、その意図が『私の走りを見てください』というところであろうと考えていた。

 それを、捨てた。見せる必要がないと感じたのなら、あるいは東条隼瀬という男の心を救ったミホノブルボンにこそ自分のレースを見せたいと感じたのか。

 

 どちらにせよ、サイレンススズカは前を向いた。少なくとも東条隼瀬はそう思った。

 そこに内心、忸怩たる思いはある。自分のせいで壊れてしまったサイレンススズカを、自分の手で――――なんの因縁もないミホノブルボンの力を借りてでも自分の手で振り向かせたかった。自分のせいで呪われた彼女を現実に引き戻したかった。

 

 だが、自分の手でなくとも立ち直った。解き放たれた。それは嬉しいことであると、素直に思う。

 そして、ありがたいことだとも。これから挑む凱旋門賞の制覇は日本トゥインクルシリーズの悲願。その悲願を掴むためにあらゆる手段をとってもおかしくないし、敵に塩を贈る必要などない。

 呪いから解き放たれたサイレンススズカは、必ずその本質を取り戻して強くなっているはずだ。そして本質を取り戻せば強くなるであろうということは、ミホノブルボンならわかるはずなのだ。

 

 なのに、ミホノブルボンはサイレンススズカの呪いを解いた。敵に塩を贈った。自分の勝利のためではなく、自分のパートナーのために動いてくれた。

 となれば東条隼瀬としては思うのだ。これからは全力で、全霊で、ミホノブルボンを勝たせることを考えるべきだと。

 

 しかしその思考を、冷静な声が否定した。

 

「マスター」

 

「なんだ」

 

「確かに会話だけ見たら、そう見えるでしょう。しかしこれは直接見ての私の印象なのですが、解き放たれてはいないと思います」

 

 ――――そしてそれは、マスターがあのひとの走りを見たらわかるであろうと思います

 

 そしてその言葉は、証明されることになる。

 東条隼瀬がどこかで感じていた懸念が、実証されるという形で。




69人の兄貴たち、感想ありがとナス!

赤土 かりゅ兄貴、エルグライト兄貴、rumjet兄貴、読み専絶対に書かない人兄貴、零崎飛織兄貴、ルル家兄貴、っゲッテムハルト様!?兄貴、評価ありがとナス!

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↑これで次回投稿や次回作について報告しています。たぶん副反応キツくても1週間は開かないかなと思います。


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サイドストーリー:到達者

Q:スズカさんの領域何個?
A:3個


「このレースは」

 

 観光案内人のような口調で、東条隼瀬は喋った。

 

「ウイニングライブというものが存在しなかったときは、お前が勝ったフォワ賞と同日に行われていたようだ。だが同じレース場、同じライブ会場で1日に2度行うというのは」

 

「時間が厳しく、効率の無駄、ということですか」

 

「そうだ。集客力のない地方だと1日に2回のレースとライブを組むのは珍しくないが、これはGⅠだからな」

 

 フォワ賞も凱旋門賞の前哨戦としてそれなりの注目度があり集客力がある。

 森の中をくり抜いてできたようなレース場の空気はよく、日本にはない雰囲気があった。

 

「ゲートに入ったか」

 

 1枠1番1番人気。どこかで見たような並びに目を細め、空を見る。

 日にちがやけに近いこともあってか、脳裏には嫌なものが思い出された。

 

 周りの騒がしさと隣で尻尾をゆっくりと振るミホノブルボンの存在をまるきり無視しながら、男はやや持ち直した空を見ている。

 バ場はそれでもやや重めだが、充分に良バ場と言えるのではないだろうか。

 

「来てくださったんですね」

 

 ささやくような、霧のような声がした。

 隣で座るブルボンの指で袖が引っ張られ、迫る危機を知らせてくる。

 ざわめきが、より一層勢いを増す。

 

「スズカ……」

 

「トレーナーさん」

 

 相も変わらず儚げな雰囲気をまとった彼女は、走ることしか意識を向けていないようなある種の狂気的な一途さを孕んだ翡翠の瞳を向けていた。

 

「今日も、勝ちますから。見ていてください」

 

「それは」

 

 一瞬、黙る。訊いていいものか、悪いものか。第一その資格が、自分にはあるのか。

 そんな思考がよぎり、煮えたぎるような感情を覆って、そして消えた。

 

「お前のためにか」

 

「……いいえ。これからは、誰の為にでもなく」

 

 栗毛を風に靡かせながら、身を翻す。

 ゲートの下からぬるっと脱走してきたらしい彼女が職員に連行されていくのを見送りながら、鋼鉄の瞳を一度瞑目して開く。

 

「必要なようだな」

 

「やはりマスターも、そう思われますか」

 

「……ああ。君のリプレイは優れた精度を持っていたが、本人の雰囲気を完全に再現できていたかといえば、そうではなかった。だからわからなかった、が」

 

 目的がすでに達成されている。それでも、止まれない。ゴールを失ったと自覚したからこそ、なおさら。

 

「ブルボン」

 

「はい」

 

「見よう」

 

 無言で頷く。大外にポツンと設置されたゲートにサイレンススズカが半ば収監されるように入り、扉が閉まる。

 

 バン、と。硬質のゲートが弾かれるように開く。ファンファーレのない出走は無骨で、唐突で、更に加えるならばまさしく、闘争心同士の殴り合い、本能のぶつかり合い、競争の開始という印象を与える音だった。

 

(速い)

 

 外に開く扉とほぼ同時に、右脚が外に出ている。大外枠に回されてもなんのその。やることは変わらない。そう言わんばかりの、見事なスタート。

 サイレンススズカを見つめるひとりのウマ娘は、そのスタートの見事さに感嘆した。そしてその感嘆はすぐさま緊張と迎撃に向けて引き締められ、硬質化する。

 

(……逃げと相対するには、気を張るのが早い)

 

 ミホノブルボンは、そう思った。

 

 開幕からハナを奪われることを阻止しようとしているのならば、彼女はもっと前に出ていかなければならない。だが、そんな素振りは影もない。

 明らかにサイレンススズカを注視している彼女は、それなりの交戦経験があるはずである。ならばこそ、行動と表情の齟齬がひどい。

 

 彼女のことを、ミホノブルボンはジャパンカップで見たことがある。自分の行った中途半端な逃げ差しを見抜き、そして対策を完成させていたウマ娘。辛くも勝ったものの、それは彼女に運が向かなかっただけであり、その手腕に疑いはない。

 

(なぜ)

 

 その疑問が氷解したのは、0.8秒後のことだった。もっとも氷解というよりも、圧倒的な暴威によって消し飛ばされたという方が表現としては正しい。

 

「譲りません」

 

 一歩ごと、内枠の有利を利用して先頭へと躍り出たウマ娘に迫る。観戦者たるサイボーグウマ娘のような、肉体の頑健さを利用した0から100への加速ではない。

 あくまでも身体に配慮した0から80への加速。

 

「誰にも――――」

 

 言葉に、熱意も気合もない。静かで淡々とした、目の前にある自分の物をひょいと掴むような、所有権を改めて主張するような気負いのなさ。

 

 一歩。いや、半歩。

 正当な持ち主のもとに返ってきた、先頭でこそ見ることのできる世界を抱きしめながら、サイレンススズカは微笑んだ。

 

 色彩が、ズレる。

 緑生い茂る森に覆われたロンシャンレース場が、枯葉剤でも撒かれたかのように赤茶け、生命がその色を無くす。

 

 その広域さをほんの一瞬だけ保持して、その世界は瞬時に縮んだ。

 

「これは……」

 

 領域なのだろうか。

 あまりにも異質なそれを感じ取って、ミホノブルボンは首を傾げた。

 流石に映像を見て、領域を感じ取ることはできない。だがその場に居合わせれば、観戦者であっても感じ取ることはできる。

 

 それは無論素質のあるもの、ごく一部の選ばれしウマ娘たち、領域構築者だけに限ったことではある。だがそのごく一部に、ミホノブルボンは努力だけで踏み入った。

 そしてそのミホノブルボンから見て、サイレンススズカの広げた領域は瞬時に広がり一瞬で消えた。より正しく表現するならば収縮したわけだが、その表現の間には咎められるほどの距離があるとも思えない。

 

 サイレンススズカの領域は発動された。しかし、その効力を発揮する間もなく消えた。

 

 少なくとも、ミホノブルボンはそう判断した。

 

 サイレンススズカがゆっくりと、そして迅速に斜行して内に食い込み、すぐさま逃げウマ娘にとって最も有利なコースを取る。

 取ったコースを邪魔する者は、いない。しかし後ろから徐々に、徐々に。他のウマ娘たちが高速で迫ってくる。

 

 追う。追う。サイレンススズカを追う。

 追わなければ、負けるから。彼女には逃げウマ娘特有の、終盤の失速がない。故にいつもの逃げウマ娘を相手にするようにしたら、まず逃げ切られてしまう。

 故にサイレンススズカが逃げ、他11人は追う。それも一般的な逃げウマ娘を相手にするように序盤から放っておくのではなく、それなりに本気を出して走る。

 

 必然として、レースのペースは通常のそれよりも加速した。

 サイレンススズカが走るだけで、後ろを走るウマ娘たちのペースは崩される。

 

 彼女がレースを加速させるというのはそのあたりか、と。ミホノブルボンは納得した。

 これは、どうにもならない。彼女はペースを遅くするということをしたが、それはあくまでも技術的なもの。気づけさえすれば、単純な力量で覆すことができた。

 

 しかしこれは単純な力技なだけに、地力で勝らないことにはどうにもならない。

 

 レースのペースは、加速していく。サイレンススズカは一定の速度で走っているわけではない。少しずつ、少しずつ加速していく。

 トゥインクルシリーズの本場、フランスのGⅠである。出走する他のウマ娘も一流と言っていい実力の持ち主であり、それに気づく。

 

 加速に釣られる。どのみち釣られなければ、差し切れる位置に居続けられない。釣られないということは、仕掛けないということ。仕掛けないということは、負けるということである。

 トライアルレースであれば、入着のみを目指すこともある。手の内を晒さずに本番に繋げるというのは、立派な戦術のひとつである。

 

 だが、ここはGⅠ。入着のみを目的にするウマ娘はいない。入着のみを目的にする意味もない。

 

 ――――少しはこちらを見ろ!

 

 悪態をつきたくなるような単騎行だった。サイレンススズカの辞書には、駆け引きもけん制も存在しない。そんなまどろっこしいことを考えてすらいない。自分の物であるハナを取って、走るだけ。勝利は影のように、あとからついてくる。

 

 彼女に相対するには、圧倒的なスペックがいる。ジェット機にプロペラ機が勝てないように、そもそも土俵に立つための地力がいる。

 

 最高峰と言っていいこの場においてもそれを備えるのは、たったひとりだけだった。

 遥々辺境の日本くんだりまでやってきて、サイレンススズカの息吹を感じて帰っていった、アメリカのウマ娘。

 

 2400メートルの半ばに来たあたりで、彼女はそろそろだと察知した。

 序盤から少しずつ、少しずつ。避けることも相手をしないことも許さない、サイレンススズカの理不尽な二択。圧倒的なカタログスペックを完璧に活かした、駆け引き封じ。

 

 ここらで仕掛けなければ、取り返しがつかなくなる。

 

(あいつの領域はひとつだけ)

 

 開幕から自身を加速させる。そのことによって、レース自身を牽引して世界そのものを加速させる。その単純な、そして使いこなせなければ自分のスタミナをも劇的な損耗に引きずり込むそれを、極めている。

 前半戦としては異常とも言えるペース、全く未経験の加速世界の迅速さに呑み込まれ、既に幾人かはそのスタミナの底を覗かせつつあった。

 

(何故そんなものに目覚めたのかは、想像がつく)

 

 シンボリルドルフ、サイレンススズカ、そしてミホノブルボン。

 例の芦毛のやつが関わったウマ娘は、基本的にその能力が限界にまで鍛え上げられている。

 

 圧倒的な能力差を活かした、戦略的優位を用意する。詭計奇策は用いないが、それらをも凌駕した物量で押し流す究極の脳筋作成者。

 それが東条隼瀬という男であろうと、彼女は予測していた。

 

 如何にも生来理知的そうなシンボリルドルフにはその戦略的優位性を十全に活かす傑出した頭脳があった。

 これまた透き通るような明哲な知恵を持っていそうなサイレンススズカには細かいことはやらないが、自分の優位を認識し、保持し、理不尽な二択を仕掛けてくることで相手全てを引き潰すという単純にして無敵の戦術を発想する思考の余白があった。

 

 ミホノブルボンは、サイレンススズカのノウハウの流用であろう。

 

 つまりサイレンススズカがああなったのは、信じているからだ。生来の自分と、おそらくは無上の信頼を置いているであろうトレーナーと作り上げた自分を。

 

 だから自分が潰れる前に相手を潰すチキンレースのような領域に目覚めたし、それを使いこなせるのだと。

 

(ならば……)

 

 身を潜める。仕掛けるには適切なタイミングであっても、今は必殺の一撃を喰らわせるには早すぎる。

 

 急いたウマ娘たちが必死に領域を広げようとして霧散していくのを横目に見て、待って、待って、待つ。

 

 そして、他のウマ娘たちの影に潜み、風を受けてもらい、スタミナを温存していた身体を外に振れさせ、彼女は一気に対サイレンススズカ統一戦線の最前線へと躍り出た。

 

(美しい。本当に)

 

 ウマ娘には、二面性がある。競技者としての面と、アイドル的な面が。

 故に勝負服にはたいてい、どちらかにより過ぎないように細心の注意が払われたデザインがされている。だがサイレンススズカの勝負服は、あくまでも競技者としての面に終始したデザインをしていた。

 

 走ることしか考えていない。流線型を思わせる理想的なフォームで、サイレンススズカは滑らかに大地と空の狭間を駆ける。

 

 そのあまりにも一途で、故に他のウマ娘など相手にしないというあまりにも極端すぎる姿勢を、彼女は心から美しく思った。

 たとえ自分の生まれ故郷のアメリカを、その誇りたるトゥインクルシリーズを、彼女が支配しようとも。

 

 ――――サイレンススズカを倒せ! サイレンススズカを倒せ! サイレンススズカを倒せ!

 

 日本で言えばリギルに当たるチームのトレーナーは、個人の圧倒的な力に支配された中でそう絶叫した。せめて、一回でもいいから土をつけろと。

 

 これが単なるウマ娘であれば、こうはならなかった。しかし、あの異次元の逃亡者は『サイレンス』の名を持っていた。それはアメリカで生まれて活躍しても認められず、そして日本へ去っていったウマ娘の名だった。

 

 その血と命を、名を。彼女は継いでいた。

 

 見た目の問題で忌まれ、日本に去っていった娘に意趣返しとばかりにボコボコにされて、悔しくないのか。

 お前らもアメリカのウマ娘ならば、正々堂々と力で打倒してみろ。

 あまりにも絶対的な跳梁を許すな。

 3年連続3回目のエクリプス賞を取られた挙げ句に『飽きた』とばかりに帰られたとあらば、アメリカのトゥインクルシリーズのレベルが疑われる。

 

 本人的には正当な実力を示すには3年はいるという意識があったからなのだが、たいていの人間はこれを『自分たちが不甲斐ないからだ』と受け取った。

 相手にならない、ライバルのひとりもいやしない。そんな専制を許したのは、自分たちの指導力不足だと。

 

 そしてウマ娘たちも、自分たちの実力のなさを呪った。呪い、立ち上がり、強くあらんと努力をした。

 

 だが、サイレンススズカは誰にも倒せなかった。影を踏むことすらできなかった。

 

 だから、というわけではない。アメリカの誇りとか、意地とか、そういうものを他所に、彼女はサイレンススズカに勝ちたいのだ。

 

(猛禽なら猛禽らしく――――)

 

 迫る。距離を詰める。

 その領域を構築する為には長ったらしい条件も、駆け引きもない。

 

(――――籠に囚われていな!)

 

 単純な、サイレンススズカの脚を止めることに特化した領域が放たれた。

 それは、鎖。大地と空の狭間を駆ける彼女を地表に縫い付けるためのもの。本来ならばゆっくりと対象に絡みつくはずのそれは、極めて迅速にサイレンススズカの脚を捕えて減速を強いる。

 

 ちらりと、汚れを拒む清い湖水を思わせるエメラルドグリーンの瞳が彼女を捉えた。

 

(そうだ。私を……私を見ろ!)

 

 その念は通じず、知らぬとばかりに彼女は先頭へ、先頭へ、そしてその先へと駆けていく。

 サイレンススズカ。影すら踏ませぬ逃亡者。その影へ一歩を踏み出した瞬間、白銀の鎖に錆が湧く。

 

 急速に錆が増殖し、銀の鎖を風に吹かれれば粉と消えるかのような弱さにまで腐食させる。

 引きちぎられるまでにゼロコンマ何秒。おそらくは、半秒もない。

 だがその一瞬未満の停滞こそが、彼女の望みだった。

 

 消え去り霧散した鎖に代わる二の矢となる荒涼とした領域を広げ、赤く大きな太陽に照らされた荒野に濃く写し出された影を踏む。

 積もりはじめた新雪のように、誰にも踏み荒らされなかったサイレンススズカの影が、蹄鉄によって凹み、荒らされていく。

 

(よし、このまま――――)

 

 あと、数百メートル。

 他のウマ娘たちは疲れ果て、下がりつつある。こうなるとサイレンススズカの思うつぼである。自分のペースに巻き込み、疲弊させ、楽に勝つ。これが、単純な実力由来の力技。

 

 そうはさせないために、単純な実力の底上げと新たな領域の開発をした。

 サイレンススズカに勝つためだけに、魂を磨き上げた。

 

 勝負するための、土俵に立った。

 

 その瞬間、荒野に日が陰る。

 陰り、昇り、陰り、昇り、そして、落ちる。

 

 全てを使い果たしたように砕け散る領域の廃墟の中を、サイレンススズカだけが駆けていった。

 

(……あの人、どこかで見たような)

 

 ゴール板を駆け抜け、大きく息を吸って吐く。

 そんな疑問は霧散して、見慣れた先頭の景色が瞼の裏に消えた。

 

「トレーナーさん。私」

 

 ――――強くなりました

 

 その言葉に異論を唱えられる者は、誰もいない。これまでの実績と今得た栄光。そしてなによりも、これからの栄光が、サイレンススズカを照らしていた。




42人の兄貴たち、感想ありがとナス!

Aries兄貴、ワレアオバ兄貴、茶輪子兄貴、やまかうら兄貴、田中なやは兄貴、ddd32兄貴、ロット兄貴、rumjet兄貴、mowちゃん兄貴、モツタケ兄貴、Cad兄貴、ししゅう兄貴、cot兄貴、評価ありがとナス!


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サイドストーリー:命令者

「すごい走りでしたね、マスター」

 

 ホテルに帰る道の最中。沈黙に耐えかねたように――――というにはあまりにも自然に、ミホノブルボンは感想を吐露した。

 

 本来ならばそうだなと返して、どこが凄かったかを具体的に詰めていく。

 

 しかし今の彼としてはそうだな、ととても素直には言えるものではない。

 確かに、強かった。GⅠで2位と6バ身。3位と2位の間に大差。幾人かのタイムオーバーも出したという、圧勝。

 タイムオーバーしたらどうなるかと言えば、まあ色々ある。手当が出ないとか、1ヶ月くらいレースに出れない、とか。

 

 だがそんなことは、普通起こらない。しかもGⅠで起こるなど、有り得ない。

 

「凄まじかった」

 

「歯牙にもかけていませんでしたね。あのアメリカのウマ娘も、相当な強者でした」

 

「ライスシャワーと、同等くらいだな」

 

「はい」

 

 同等か、それ以上。

 そう口に出さなかったのは、せめてもの気休めであったかもしれない。

 

「全部」

 

 こういう単語のみを声に出す時は彼が窮しているからこそだと、ミホノブルボンは知っていた。

 

「全部当たり前のようにうまく進められたら、勝てる」

 

「全部、ですか」

 

「ああ」

 

 勝てない、とか。

 全部では収まらない形容詞を使わないあたり、それは実に【参謀】だった。あくまでも現実感覚という大地に足をつけて、立っている。

 

「俺はルドルフのおかげで多少、そういうものに詳しくなった。ライスシャワーの指向性に特化した領域を君が何度も受けるにつれて、薄っすらと見えてきて、そして宝塚記念である程度感じられるようになった。そしてその上で言うのだが」

 

「はい」

 

「あれは、スズカがかつて使っていたどの領域とも異なる」

 

「どの」

 

 呆れが思わず、口をついて出た。ホテルの従業員が、異国の異音にさらされてビクリと肩を揺らし、こちらを向く。

 

「どの、という言葉が正確であるとすると……サイレンススズカさんは領域を複数。それも、3個以上持っている。そういうことで、間違いありませんか」

 

「お前が俺を疑うのは、珍しいな」

 

 少し申し訳なさそうに眉を下げたミホノブルボンを見て、少し申し訳なく思う。

 やや、皮肉が過ぎた。彼としては、そう思わないでもない。

 

「……ルドルフ会長ですら、2つでしたから」

 

「まあ、多いからと言ってどうこうという話でもない。領域が生まれるには、目的がいる。その目的を通過するために領域を構築し、それを過ぎ去って、どうする? そこで立ち止まるか、或いはまた新たな目標に目掛けて駆けていくか」

 

 ミホノブルボンの領域は、自ら崩れることなく道半ばまで進むことによって発動する。それは速度の向上という、純粋な強化。

 それはスプリンターとして、無理を無理のままに抱えた自分のままで夢の終わりへと進みたいという純粋な願望の具現化。

 

 果たしてその夢は叶った。叶い、その先に駆けていく為の手段としての領域を、彼女は新たに手にした。

 

 そしてその領域を構築しても、目的を果たせなかったらどうなるか。

 

 ライスシャワーなどが、最も顕著な例だろう。

 迫る。差し切る。目的の為に研ぎ澄まされた刃から逃げ切られた。ならば、逃げ切られないように拘束する。目的を達成する為に、更に具体的な手段を追加する。そのための新たな領域。

 

「お前、漫画を読んだことはあるか」

 

「……? はい」

 

「そういうのに例えると、皆が電撃出したり盾出したり龍を出したりする中で……なんというか、段階的な肉体強化しか覚えないやつなのだ。あいつは」

 

 ギアを少しずつ上げていく、肉弾戦特化キャラ。

 そういう感じか、と。ミホノブルボンは理解した。

 

「あいつの夢は、速度の向こう側に行くことだったのさ。となると、領域はどうやって形造られるか、わかるか」

 

「走っている内にギアを上げ、自分の限界速度を少しずつ上げていく。段階的なリミッター解除ですか」

 

「そうだ。最初は終盤に、速度のリミッターを外す。それだけの領域だった。そして次は中盤にリミッターを外す、それだけの領域を得た」

 

 1度目の領域で、速度上限を+100する。

 2度目の領域で、速度上限を更に+100する。

 彼女の領域を抽象的に数字化するならば、それだけのことに過ぎない。

 

「加速はしないのですか」

 

「そこは自力だ。夢を叶えるのはやはり、自分の脚でということなんだろう」

 

「なるほど。しかし、それでは」

 

「そうだ。おかしい」

 

 言葉を奪うような迅速さで、東条隼瀬は言った。直接見て、直接感じて、強烈な違和感として残ったのがそれだった。

 

「あいつが領域なんぞで加速するわけがない。そんなものにリソースを割くくらいなら、速度上限をなんとかするはずだ。現に今まではそうだった」

 

「マスターが行う今までに関しての洞察に異論はありませんが、少なくとも今のところ事実として異なっています。何かしらあったと考えるべきではないでしょうか」

 

 それは、不自然さが残る進化だった。

 サイレンススズカであれば、3個目の領域でも間違いなく速度上限を破壊することを選んだはずなのだ。

 

「あれは4個目ではないか、と思う」

 

 またこのひとは、思考から逃げたな。

 

 彼が常と変わらない様子であれば、ミホノブルボンはそう思っただろう。そしてその精神的脆弱さを愛おしく思いつつ、正道に引き戻しただろう。

 だが、今は様子が違った。東条隼瀬の顔には明らかに真剣さがあり、向き合うための覚悟があり、無意識下でも己が逃げることを許さない決意がある。

 

「なるほど。2個目があった以上3個目がある。すなわち4個目もある。その考察に異論はありませんが、その根拠は何でしょうか」

 

「俺は3個目の領域を見たことがある。気がする」

 

「いつですか」

 

「俺は言ったな。怪我をしたのだと」

 

 ――――その娘。仮にS。いや、Sとするが。つまりその娘は、怪我をしたのだ。俺のせいで

 

 彼は、そう言った。そしてその意味が、今では正確に読み取れる。

 最初に彼は、スズカと呼んだのだ。そしてその資格がないと思い直して、サイレンススズカと呼んだのだ。イニシャルが全く変わらなくとも、彼にとってはとても、とても大きなものだったのだと。

 

「天皇賞秋のことだ。彼女は2回加速した。そして3回目の加速を経て、一瞬――――時間にして3.8秒くらい、全てから解き放たれた。そしてその代償として、脚が折れた」

 

 加速域を広げる。速度上限を取っ払う。

 サイレンススズカが望んだのは、それだけの領域だった。

 上限を取り払いさえすれば、辿り着けると信じていたのだろう。自分のわがままを許してくれて、自分の長所を伸ばしてくれて、自分を暗闇から救い出してくれたひとと、どこまでも共に行けると信じていた。

 

「つまり、マスターはサイレンススズカさんが正当進化した領域を捨てた、と。そして新たに得たのがあれだと考えている、というわけですか」

 

「そうだ」

 

「となると、それは私にとっての幸運でしょうか」

 

「ああ、間違いなく」

 

 基礎的な能力。つまり、カタログスペックでは、ミホノブルボンはサイレンススズカに負けていない。最高速度で言えば、中位くらいのスプリンターと最高位のマイラーということもあってやや勝る。スタミナもそうだし、パワーもそうである。

 だがそういった領域外の物事で勝っているからと言って、どうにもならないこともある。

 

「だからといって、油断していいものでもない。あれは、それなりに厄介なものだろうと思うしな」

 

 少なくとも、ミホノブルボンにあのようなことはできない。それだけで、充分警戒に値する。

 

「それにしてもわからないのは、なぜそうなったかだ」

 

 東条隼瀬としては、領域をわざわざ転換する理由がわからない。できた理由もわからないが、彼としては半分自分の管理不足、半分運の悪さで――――実のところ彼は6:4だと思っているが――――あの事故は起こったと思っている。

 

「それは、夢を諦めたからではありませんか」

 

「諦めたなら、使えなくなるのが道理だろう」

 

 サイレンススズカの領域は、勝つためのものではない。強くなるためのものではない。

 あくまでも、夢への通路を開くための領域である。だからこそ勝利し支配する本能的暴君が荒れ狂う反則じみたシンボリルドルフのそれとは違い、性能としては落ちるところがある。

 

 それ故に、夢を諦めたのならばむしろ領域は閉ざされてしかるべきではないか。

 

「……そうですね」

 

 怪我。3段階目の領域へ踏み入っての、怪我。

 それに似た感覚を、ミホノブルボンは味わったことがあった。天皇賞春のとき。負けると思って、思ってしまって、そして速度の限界を超えようとしたとき。

 

 あのとき、本能的にわかったのだ。

 この扉は、勝つために開くべき扉だと。極限まで追い込まれた自分ならば、開くことのできる扉だと。

 

 ゾッとするほどに、身体から温もりという温もりが根こそぎ奪われていくような、孤独を感じさせる冷たさを、ミホノブルボンは感じた。

 そして、それでも勝ちたいと思って、開こうとして。

 

 

 ――――この扉を開くということは、スピードの向こう側にいく、ということですよ

 

 

 そう、囁くように言われたのだ。

 その声は、どこかで聴いたことがある。

 

「それはおそらく、限界を超えないためではないでしょうか」

 

「つまり、俺のためか」

 

「マスターのためでもあると思います。ですがそれだけではありません。無論、これは私の推論ですが」

 

 そしてそのあやふやな推論を言う必要はない。ここまで言って察せないほど、今の東条隼瀬は鈍感ではない。

 

「にしても状況的にはともかく、実力的には不利な戦いをさせることになるな」

 

「はい。ですがそのあたりは、私がなんとかします」

 

「ああ。期待している」

 

 領域というものを多少感じ取れるようになったにしても、その感度は本家本元のウマ娘と比べて大きく劣る。

 

「俺ができることと言えば、お前のカタログスペックをあいつ以上にすることくらいなものだ」

 

「みっちりと、お願いします」

 

「ああ、みっちりと」

 

 やはり気が高ぶっているのだろう。まあ、あんな走りを見せられては仕方のないところでもあるが。

 

 勝算を他者に託しきらなければならない情けなさに苛まれながらも、東条隼瀬は最善を尽くした。

 

 サイレンススズカは、強い。それも理屈があっての強さでもなく、駆け引きによる強さでもなく、単純に強いだけなのである。

 

 単純な強さ。それは単純な強さでしか覆し得ない。

 そのための強さを得る為のメニューでミホノブルボンの身体を徹底的にいじめ抜きながら、フランスでの日々は過ぎていった。

 

 そして、10月3日。

 世界最高峰のレースが行われる日であり、歴史に刻まれるであろう日。

 

「ブルボン」

 

「はい」

 

 いつもならばその時間は、作戦を説明するための時間だった。

 いつもならばその時間は、ライバルとなるウマ娘の分析結果を説明するための時間だった。

 

 だが今は、作戦はない。作戦と言えるようなものは、ない。

 そして分析結果は、たった一言。『異次元の強さ』。それだけ。

 

「勝ってくれじゃない。勝ってこい。お願いじゃない。命令だ」

 

 参謀はその渾名らしさを全て放棄し、最高のパートナーに向けて、最後の命令を下す。

 

「承りました、マスター」

 

 ――――勝利を、捧げます

 

 そう言い残して、ミホノブルボンはパドックへ向かう。




56人の兄貴たち、感想ありがとナス!

むぎはむ兄貴、めうっ!兄貴、爆弾ボール兄貴、三歩進んで二歩下がる兄貴、評価ありがとナス!


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【逃亡者】:矢は放たれた

Twitter(@LLUMONDE)で告知した通り、これから凱旋門賞が終わるまでスペシャルサンクスは活動報告で行います。申し訳ございません。


 勝つ。勝って、サイレンススズカという傑出した才能を持つウマ娘の脚を止める。止まるに止まれなくなった濁流のような意志の奔流を堰き止め、一種の空白状態を作る。そのためだけに、走るのだと。

 

 ミホノブルボンは、世界でも有数の格式あるレースを前にそう考えていた。

 考えられないことである。少なくとも3年前のミホノブルボンの眼差しはクラシック三冠に向けられていたし、当時のトゥインクルシリーズ関係者がこの見事なまでのスプリンターこそ『史上二人目の無敗でのクラシック三冠達成者になり、あまつさえ偉大な前任者を打ち倒し、無敗のまま世界最強を決めるレースに挑むことになるのだ』と言われても、たちの悪い冗談か、自己神格化が激しい妄想癖もちの夢物語にしか聴こえないだろう。

 

(そう。夢物語でした)

 

 あのひとがいなければ。

 

 ミホノブルボンには、この際なんの勝算もない。策はあるが、それだって不確かな感覚の上に建てられた楼閣。すなわち仮定に仮定を重ねた――――彼いわく策とは呼べないものであり、極言すれば彼女は、勝算も策もなしの丸腰であの天才に挑む。

 

 

 無敗のまま、引退する。

 

 

 その言葉の、なんと甘美なことか。隆盛から絶頂へ、そして絶頂から退嬰へ。

 甘さに惹かれかけて我に返り、自分の思考がそちらに向きかねないことをわかって、ミホノブルボンはあらためて自分が凡人であると知った。

 

 国内に留まっていれば、そしてレースを選べば。ミホノブルボンは無敗のまま引退できたかもしれない。

 シンボリルドルフは、無敗であることにこだわらなかった。トウカイテイオーも、進むことを決めた。ライスシャワーは、挑み続ける不屈を示した。

 

 肉体的にも、そして精神的にも非凡。

 そんな天才たちの中で、ミホノブルボンだけが凡人である。負けたくないというより、無敗であることにこだわってしまう。

 

 正しく言えば、こだわりかけた。

 彼女を無敗の三冠に仕立てた――――これまた非凡人と言える魔法使いの苦悩が、彼女を凡人から羽化させた。

 

(敗けが無いことでなく、敗れざることを)

 

 敗けが無いこと。無敗。

 敗れざること。不敗。

 

 無敗とは、結果だ。しかし不敗とは、そうではない。不敗は逃げない。どんなとき、状況でも戦い、そして敗れない。

 まあ勝つ為に自分は逃げざるを得ないわけだが……そういう言葉のあや、お遊びはルドルフ会長あたりに任せればいいのだ。どうやら、そういうことが好きらしいし。

 

 勝つ。如何に困難なレースでも。

 勝つ。如何に偉大な敵手にも。

 

 逃げることができた。いやです、と。勝てる気がしません、と。そう言えば、ミホノブルボンはここに居ない。

 

 

 そうか。無理を言って、悪かった。

 

 

 誰を恨むでもなく、誰を責めるでもなく彼は言って、申し訳なさそうに頭を撫でてくれて。

 そして天皇賞秋をスルーしてジャパンカップの調整に入る。マスターはおそらく、そうしてくれた。

 

(在るべき自分に、帰るだけ)

 

 勝った。勝ったのだ。夢を叶えた。自分はもう充分過ぎる程に夢を見た。マスターに出会わなければ、皐月賞出走も叶わなかったようなスプリンターが、ここまでどうにか駆けてこられた。

 クラシック路線を目指すことを承知してくれる誰かが居たとしても、菊花賞で負けていた。天皇賞春で、宝塚記念で負けていた。

 

 泥人形が魔法使いの技によって生命を得て、綺麗なおべべを着て立ち上がった。称賛を受けた。

 だが結局は、泥人形のままなのだ。魔法使いがそうしてくれたのだから、魔法使いのために泥に還る覚悟をするべきだ。

 

 思慕、敬愛、共感。

 その他多くの感情が混じり合って、このひとまず忠誠としか言いようのない気持ちを育てていた。

 

 そしてこの内心を彼女が言葉にすれば、東条隼瀬は言うだろう。『栄冠は君自身に帰するもので、俺はその余慶を被っているに過ぎない』と。

 だが、ミホノブルボンがどう思うかは彼女自身が決めることだった。そして彼女はこの忠誠心に近い感情を、生涯改めることはないだろう。

 

(勝てたならば)

 

 それはそれでいい。

 しかし負けても負けたなりに、夢の残骸に向けて一途に駆け続けるサイレンススズカの脚を止める。引き潰されても、それだけは果たす。

 

 その一瞬の意識的空白を活かせない、マスターではない。

 

 この、目的も走る意味もなくした――――なくなってしまった天才の心を救うことは、マスターにしかできないのだということを、ミホノブルボンは知っていた。

 

 

 ――――いいえ。これからは、誰の為にでもなく

 

 

 サイレンススズカは、そう言った。

 彼女はかつて、速さの向こう側に行くために走っていた。マスターと離別してからは、マスターの正しさを証明するために走っていた。

 

 その正しさを証明して、どうしたかったのか。それをミホノブルボンは、正確に類推することができた。

 

 サイレンススズカは、迎えに来てほしかったのだ。

 

 

 ――――今のお前を見るに、俺が正しかった。俺は間違っていなかった。運がほんの少しだけ足りなかったがために、ああなったのだろう。だから再び、俺と走ってくれ

 

 

 そんなことを彼が言うはずがないとわかっているのに、決定的に分かたれた道を見て、そこに希望を見出すしかなかった。

 だが一方で理性的な面が、『そんなことはありえない』と知っていたから、彼女は思ったのだ。自分が彼にとって決して癒えない傷になるくらいなら、忘れてほしいと。

 

(愛)

 

 サイレンススズカのそれは、愛だ。

 直感的に、ミホノブルボンにはそうだとわかった。

 

 よくわからない概念。父が、自分に注いでくれたもの。そして、マスターが自分に注いでくれたもの。

 そして、自分が父とマスターに向けているもの。

 

 父とマスターが注いでくれた感情。温かく、優しく、抱きしめ、背中を押すようなそれは同じものだとわかる。

 だが自分が父に向けているものとマスターに向けているものは、同質ではない。

 

 だから断言はできないが、そうであろうと思う。

 目の前で壁に身体を凭れさせている彼女は、そういう人だと。

 

「貴女、すごいひとだったんですね」

 

 胸の上で、ペンダントが揺れる。やや短めのマントのような趣きのある鮮やかな緑色のストールが、地下道から吹き込む風に揺れていた。

 

「知りませんでした」

 

 ともすれば皮肉にしか聴こえない程のその言葉はまるっきり邪気のない、本心からの物である。

 

 本当に知らなかったし、本当にすごいひとだったんだなぁ、と思っている。

 

 このひとは相当な天然なんだ、と。ミホノブルボンは改めて知った。

 

「ありがとうございます。知っていただいて」

 

 自分の返しもよくよく考えると皮肉にしか聴こえないかもしれない。

 だがこの栗毛の令嬢に迂遠な言い方をしても通じるとも思えないし、それこそ誤解の種になるような気もする。

 この人とマスターはよくやれていたようだが、彼は皮肉――――ルドルフ会長の洒落に対して『うつくしい! すばらしい!』と喝采を浴びせるような――――だけでなく相反する直言をも――――ルドルフ会長の洒落に対して『すごいな。卒倒するほどにつまらん』と断言するような――――友として生きているような人である。このぽややーんとした天然さを、強かな直言で切り裂いてコミュニケーションをとっていたのだろう。

 

「あ、でも。私もそれなりのものなんですよ」

 

(それなり)

 

 アメリカのウマ娘が聴いたら卒倒しそうな言葉の選び方を、サイレンススズカはしている。おそらくそれは彼女なりの理屈があってのことであろう。

 例えば、左回りのレース場であれば自分に有利なのだから勝つのも当然のことだ、とか。まあそのあたりを推理できるほどに、ミホノブルボンはサイレンススズカを知らない。

 

「貴女は私が得られないものを、色々と持ち合わせているようですね」

 

 パドックに続く、地下道の終わり。光差す道から続くどこかを見つめながら、異次元の逃亡者は目を細めた。サイレンススズカ自身もミホノブルボンも知り得ないことだが、彼女は明らかに多弁になっていた。

 

「それは私にはもう手に入らないものです。ですから、見せてあげます。孤独であればこそ手に入れられるものもあることを」

 

「私はその鏡像を、このレースでお見せできますよ」

 

「ええ。そうだろうと、思います」

 

 それから、両者の間に言葉は交わされなかった。その必要がなかったし、それ以上の量を要求する程に、二人の関係は濃く深いものではなかったのである。

 

 パドックでの大歓声に包まれても、一顧だにせずゲートに入る。

 日本にある、ファンファーレはない。あれがどうやらガラパゴス化した環境特有のものであるらしいことを、ミホノブルボンは最近知った。

 

 

 乾いた音がやや唐突に鳴る。

 

 

 そう感じたのは、あまりにも先鋭化した集中力あってのものかも知れない。

 サイレンススズカの利き脚が不確かな大地を確かめるように伸び、踏みしめる。

 

 長く伸びた芝が、芝を支える大地が、まるで湖面のように波紋を描いた。

 ふわふわとした、浮き立つような感覚を固める。はじまったばかりのレースのハナを切るとは、そういうこと。

 

 色彩が、ズレる。

 かつて見た時とさほど外観の変化を見せない緑生い茂る森が赤茶けていく。芝が飛蝗が潜むに相応しい褐色に変わっていく。

 

 本来ならば恐るべきそれを、ミホノブルボンは余すところなく受け止めて、思った。

 サイレンススズカは生命が色を無くした世界に住んでいるのだと。

 

 一歩目の速さでは、ミホノブルボンはサイレンススズカに劣る。それは純然たる才能の差であり、練度がどうこうの話ではない。

 しかし彼女が勝るものもまた、あった。それは、加速の幅である。

 

 サイレンススズカの身体は、脆い。少なくとも本人はそう思っている。故に0から100への加速ができない。

 

 異次元の逃亡者。ひとたび走り出せばどうにも止まらず、旧次元に取り残した他のウマ娘を振り返りもしない。

 そんな天才には珍しく、彼女は後ろを振り向いた。

 

 その弱点を正確無比についた二の矢が自分を狙い貫いたのがわかったのか、何者かの威風を感じたのか。

 

 あるいは。

 

 ともあれ事実としては、サイレンススズカによる先頭の景色の独占状態にはピリオドが打たれ、すぐさま寡占へと移行した。

 ミホノブルボンが、先頭を占めたのである。



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【逃亡者】:逃げ切れぬもの

 サイレンススズカから先頭を奪うのは快挙である。少なくともこの4年、それができた者はいなかった。

 影を踏めた存在すら、前のレース――――ヴェルメイユ賞まで現れなかったくらいなのだ。

 

 観客たちの全員が、必ずしもサイレンススズカのファンではない。無論彼女の横綱相撲を見に来た者も多く居る。

 だがここはフランスである。フランス出身のウマ娘を応援する機運もあったし、分布で言えばスズカ親衛隊遠征分隊とその他の戦力比は3:7くらいなものだった。

 

 だが、彼女を好むと好まざるとに関わらず共有していた幻想がある。それは、サイレンススズカがハナを進む。先頭の景色は彼女のものだという幻想だった。

 そしてそれは、あながち幻想とも言い切れない色彩と奥行きを持っている。なによりもそれは、確かな実績に裏付けされたものなのだから。

 サイレンススズカが先頭を走るというものは太陽が東から昇って西に沈むくらいの常識的な運動で、誰もがそれを前提に作戦を立てていた。

 

 少なくとも、過去4年間は。

 ミホノブルボンはスプリンターがどうたら、距離の壁がどうたらという常識を倒した。勝利が影のように付いてくるとまで言われた皇帝をも倒した。

 そしてこのとき、それらより遥かに歴史が浅いながら、彼女は再び常識を倒した。たった4年のことでありながら、歴史深き距離の壁と同じかそれ以上の密度で以て君臨していた常識を、である。

 

 しかし状況としては、そうそう浮かれても良いものではなかった。

 ミホノブルボンとしては領域を発動されてしまったし、サイレンススズカとしては必要欠くべからざる物を――――先頭を奪われた。これはお互い一発殴り合ったという感じであって、これでは地力で劣るミホノブルボンが不利である。

 

 一発の重みも、立っているための体力も、どちらもサイレンススズカの方が上だと。

 少なくともミホノブルボン自身はそう考えていた。

 

 となると、このまま容易に押し切れるとも思えない。彼女は平素からぽやーんとした顔をしている如何にもな楽天家ではあるが、それほど自分の実力を信じていなかった。

 

 

 ――――お前には才能がない。だから、死ぬ気で考えろ。油断をするな。自分の信じるところは信じて、あとは疑え。疑うというのは、観察することだ。観察すればすなわち、見えてくるものもある

 

 

 サイレンススズカから、先頭を奪う。

 ミホノブルボンを知っている者にも、知らない者にも壮挙と讃えられるべき偉業をなしながらも、あくまでも彼女自身は冷静だった。

 

 今更な話になるが、ミホノブルボンの持ち味はラップ走法である。一定の時計を刻んで駆けていくこの戦法は、世界でもできるものは限られる。だが前例がないわけではない。

 

 つまり、ただの変則的な逃げである。

 彼女は常に8割くらいの出力で走る。そんな彼女がハナを奪えたのはつまり、サイレンススズカが加速し切っていないから。それだけのことなのだ。

 

 現在、差は少しずつ広がってはいる。

 しかしその1秒ごとに広がる距離は時間が経つごとに減ってきている。これがマイナスに転じたとき、ミホノブルボンがリードする距離は縮まりはじめ、そしてそれから広がることはないであろう。

 

 

 私のものを。

 

 

 そう思っているかどうかは定かではないが、サイレンススズカの眼差しは前を駆けるミホノブルボンに向けられていた。

 

 先手必勝とばかりに飛び出した彼女に、勝算はある。か細く、一筋の勝機が。

 だがそれは、このままでは掴めないものである。

 

 ロンシャンレース場で勝つ為のセオリーは、よく整備された内を通ること。その点でミホノブルボンはまさに、教科書通りの走りを見せていた。

 

 スタートからの長い長い直線を駆け抜け、登り坂に入る。曲がりながら上る、高低差の大きな坂がふたつ。

 

 7メートルの勾配と3メートルの勾配。

 フォワ賞で経験したそれを、ミホノブルボンはほぼ減速なしに容易く越えた。

 

 そんなことをすれば、どうなるか。消耗し尽くして、スタミナがすり減る。ではなぜ彼女が超高速で登りきれたのかといえば、それはひとえにパワーがあるからで、もっと簡単に言うならば慣れているからだった。

 

 如何にも楽そうにひとつめの坂を越え、ふたつめの坂も同じく楽そうに越えていく。

 そんなミホノブルボンを見ても焦ることなく、サイレンススズカは自分の中にある鉄則を遵守した。

 

 つまり、無理はしないということである。

 だがそれにしても後続の14人から見れば充分に速いことに変わりはなく、彼女らは必然的にこの2人の逃げウマ娘に引っ張られるように加速した。

 

(釣られた)

 

 となると、あとはもう潰れるだけだ。

 

 そう判断して、ミホノブルボンはこの時点でサイレンススズカ以外の後続、14人を意識から切り離した。

 

 そしてこの坂で、意識し合う両者の距離はやや離れた。目と鼻の先にあったサイレンススズカのエメラルドグリーンの瞳が、やや後ろにスライドしたのである。

 

 こと坂の登り降りに関しては、ミホノブルボンに敵う者はいない。

 

 しかし少しずつの加速は続き、ほぼロスなくコーナーを曲がり切ったあたり――――1200メートルを越えて下り坂に入ったあたりで、サイレンススズカが先頭に立った。

 

 そして瞬間、領域が開く。不気味な程静かで、外観の変化もない。ただ空気が澄み切ったような涼しさと静けさが増したような気がする。

 

 実のところこのとき、サイレンススズカは無茶をしていた。

 心の中で無理をしないと言いつつも、サイレンススズカはかなりのストレスを溜めていたのである。本来自分のものであったはずの先頭が、奪われたまま1200メートル。

 そろそろ奪い返しておこう、と。彼女は自分の加速するペースを維持するよりも、敢えて崩して領域を開くことを優先したのである。

 

(流石に速い)

 

 過ぎ去っていく明るい栗毛を横目に見て、ミホノブルボンは感嘆した。

 そして同時に、サイレンススズカもミホノブルボンが無理にでも加速しない様を見て感嘆した。

 

(どうにも、天敵と言えるかもしれません)

 

 自分にとってミホノブルボンと言うウマ娘は、天敵というものに分類されるらしい。

 他人を気にしない彼女にしては珍しく、舌を巻く。

 

 ラップ走法。計算など眼中になく加速していく自分とは違って、ゴールからスタートまで逆算し、最初から等速で走っていく走法。

 

 この走法を使う両者の実力が拮抗しているとすれば、中盤までは確実にラップ走法の使い手が先頭を駆ける。

 そして先頭を駆けなければ、サイレンススズカは領域を構築することができず、トップスピードになることもできない。

 

 なによりも一定の速度を保つ走法は、サイレンススズカの開幕から展開した領域――――無理矢理に加速させるそれとの相性が最悪だった。

 抜き去るだとか、仕掛けるだとか。そういうことを頭の片隅に置いているウマ娘相手であればこそ、そのペースを無理矢理に底上げし、加速させ疲弊させ、潰し切ることができる。

 

 しかしラップ走法には、それがない。彼女はペースを保つことこそが勝機なのである。仕掛ける為の距離とか、そういうことをごちゃごちゃ考えない。だから、加速させようとする思惑通り掛かってくれない。

 

 故にサイレンススズカは攻めた。

 

 下り坂を前にして、ギリギリ。肌と肌が触れそうな程の間隔で外から追い抜きにかかり、そしてそれを成功させる。

 スタミナもパワーも、単純な速度でねじ伏せる。条件を満たすのではなく、屈服させる。才能を活かした一撃に、ミホノブルボンは見事にしてやられたのだ。

 

 単純な最高速度に関しては、ミホノブルボンもサイレンススズカも大した差はない。ややミホノブルボンが勝るくらいである。だが領域を発動されてしまった以上、その優位は明確にひっくり返った。

 

 しかし、ロンシャンレース場の坂――――淀の坂よりも更に急峻な登り坂の次には、更に急峻な下り坂が待っている。

 その下り坂を活かすことが抜群に巧いウマ娘のことを、ミホノブルボンは誰よりも深く知っていた。

 

 ――――ライスには、ブルボンさんみたいなスピードがないから

 

 だから、下り坂で速度を無理矢理増設するのだと、ライスシャワーはそう言った。

 菊花賞。そして天皇賞春。ライスシャワーは地形をうまく利用して、足りない能力を補強・増設することに長けていた。そしてその要訣を、ミホノブルボンは知っている。

 

 大事なのは、減速しないこと。

 脚取りの運び、身体への負荷を減らす技術。

 そして何よりも、勇気。

 

 直滑降。下り坂を一気に駆けおりるそれを、ライスシャワーは『駆けくだる』と言っていた。なるほど、そちらの表現の方が迅速さに勝る。

 そして彼女には、決意があった。覚悟があった。ミホノブルボンに勝ちたい、という単純極まりなく、だからこそ純粋な決意と覚悟が。

 

「セーフティロック、解除」

 

 そしてそれは、今のミホノブルボンにもある。大きく息を吸って頭を下げ、一気に坂を駆け下りサイレンススズカから先頭を奪い返す。

 足を取られそうな程に長い芝、高低差の激しい下り坂。

 

「本番は、ここからです」

 

 そこを越えると、残るは2本の直線。ゴールへ続く530メートルの長大な最終直線と、下り坂と最終直線を結ぶフォルスストレート。

 

 そのフォルスストレートに入り直滑降による加速の勢いが薄れてきたところで、サイレンススズカはまたも先頭を奪い返した。

 奪い、奪い返し、鍔迫り合う。未だ完全に前に立つというわけにはいかないサイレンススズカは、やや不利な外寄りのコースを走らざるを得ない。

 

 そして、その時はやってきた。

 

 やや前を走るサイレンススズカの細身の身体から雰囲気が膨らむように弾け出し、リミッターが再び外れる。

 領域。その3段階目。加速を終えきった刹那、即座に箍が外れて加速がはじまる。

 

 フォルスストレートの終わり、カーブと言うよりはスライドしたような角を曲がる前に、ミホノブルボンは自分の土台となるべき領域を構築する腹を決めた。

 サイレンススズカは、完全に抜け出しつつある。明確で、残酷な速度の差。肉体的な限界を超越しかねない程の速度を、今の彼女は叩き出し続けている。

 

(ヴェルメイユ賞で、見た)

 

 領域が領域として構築され、展開され、そして即座に消える様を。

 あれは、焦りから構築を失敗したとか、そういうことではない。シンボリルドルフの領域が他者の領域を打ち砕き、支配する効果を副次的に持ち合わせているように、彼女の領域には他者のそれを加速して早期に終了させる力を持つ。

 

 領域とはつまり、ゾーンである。意識をゾーンに入れ、走りやすい環境を整える。

 そのゾーンを強制終了させるのがシンボリルドルフなら、発動時間を早期終了させるのがサイレンススズカだった。

 

 そして、それはミホノブルボンにとって望むところだった。

 

 彼女の第2領域は、未だに完全に展開できたことがない。

 本来ならば歯車を噛み合せ、カタパルトを敷設し、サーキットを広げて、宇宙――――第1領域の構築に向けて射出する。

 ライスシャワーに破壊され、シンボリルドルフに破壊され、これまで一度たりとも成功したことのないそれは、このとき初めて成功した。

 

 つまり、歯車が噛み合い、カタパルトが敷設され、サーキットが広がりという邪魔してくださいと言わんばかりの長ったらしい工程が、サイレンススズカの領域のおかげで瞬時に省略されたのである。

 

 故にミホノブルボンはこの第2領域に目覚めてはじめて、完璧な加速を得た。

 

 ――――この加速で以て、勝負が決まるか。

 

 そんな甘い考えなぞ、持っちゃいない。

 抜き去り、そして瞬時に差し返される。最終直線に入った異次元の逃亡者は、まさしく次元の壁を突き破らん程の加速を得ていた。

 

 こうなることを、知っていた。そしてこのまま第1領域に繋げても到底勝てないということも。

 

 だから。

 

 

「ライス。少しだけ、力を借ります」

 

 

 領域と、領域の激突。その後遺症として自分の魂に根ざしたとある領域を、ミホノブルボンは引き出した。

 青薔薇の庭園も、全天式の教会もない。たった一部だけ、限定的に使うことを許された、それだけのもの。

 

 祝福を意味する青い薔薇の蔦が、サイレンススズカの脚に絡みつき、その速度を吸う。

 

「こんなもの……!」

 

 苛立つようにサイレンススズカの耳が動き、思わずといったように言葉が漏れた。

 

 先のレース。ヴェルメイユ賞でも、似たようなことをしたやつがいた。だが、それはどうだ。0.7秒で打ち負かされた。そしてこの青薔薇の蔦の練度は、それに遥かに劣る。

 ミホノブルボンが持つ本来の領域でないからこその、深刻な劣化。しかし続いて放たれた束縛の雷が、二重にサイレンススズカの身体を縛った。

 

 だがそれでも、そのふたつを合わせても、0.7秒はかからない。あの鎖が錆びて風化するより速く、この蔦を枯らして原子に還る。雷も無論、霧散させる。

 

 だがそのゼロコンマ何秒があればこそ、ミホノブルボンは再びサイレンススズカを抜き去ることができた。

 

 また、抜き返す。

 あらゆる拘束を加速のみで無に帰した異次元の逃亡者は、わずか前方にいるサイボーグを捉えた。

 

 視界の中に、捕捉した。となれば、抜き去れる。

 それは誇張であっても虚構ではなかった。

 

 だがその誇張を虚構に変える一撃は、曇り空から降ってきた。

 

 

 ――――そしてこれは、少し余計なことかもしれないが

 

 

 出発前の、生徒会室でシンボリルドルフがそういった意味がわからなかったが、今はわかる。

 宝塚記念での激闘によって魂に根ざし、そしておそらく、あの時にかたちになった皇帝の領域。

 

「轟け、天下無双の嘶き」

 

 かつて恐ろしかった、尻尾を取られると信じていた――――敬愛する生徒会長、皇帝の力の象徴たるそれ。

 青い雷を身に纏って、ミホノブルボンは駆け出した。

 

 そしてそのまま、流れるように自己の領域を構築し、展開する。加速し切ったサイレンススズカに呑まれるように星が尾を引いて雨となった星の大海へ。

 

 サイレンススズカの思考の埒外にある加速。だがそれでも、彼女には切り札があった。

 追い越されたその瞬間、僅かに加速して並ぶ。そのゼロコンマ1秒もない瞬間、彼女は失われていたはずの領域を開けることがわかったのだ。

 

(もう一段)

 

 もう一段、外せる。リミッターを、外せる。加速できる。速度の向こう側に、辿り着ける。勝てる。この、今までの全てを賭けて挑んできた挑戦者に、勝てる。

 

 彼女がただの先頭至上主義を唱える単純な先頭民族であった頃ならば――――怪我をする前ならば、なんの思考を挟むこともなくリミッターを外し切っていただろう。

 そしてミホノブルボンのこれまでを――――紡いできた激闘の歴史を、経験を、絆を、全てを込めた走りを正面から撃砕できていたに違いない。

 

 撃砕する確率は、50%ほど。決して分の悪い賭けではないし、賭けなければそもそも負けるのだから他に選択のしようもない。

 東条隼瀬は領域と言うあやふやなもので作られた土台の上に立ってもなおそこまで引き上げるのが限界だった。

 

 3度目のリミッター解除のあとは、なんとかしてくれ。たぶん51%くらいの確率で勝てるから、分の悪い賭けではない。

 それが、東条隼瀬の策とも言えぬ策。

 

 だが今の彼女は、そうではなかった。

 

(トレーナーさんは、見ている)

 

 きっと、見ている。自分が彼女に渡したチケットで、きっと観ている。

 その前で、また同じことをするのか。

 

 リミッターを外し切れば即座に骨折するわけではない。だが可能性が少しでもあって、そして彼が見ていて。

 

 骨折するのはいい。その結果歩けなくなっても、まあ仕方ないと諦めもつく。

 自分の行動の結果で、自分が傷つくのはいい。だが、この場合はそうではない。

 

(私は)

 

 夢よりも。

 本能よりも。

 拘りよりも。

 

(私は、二度と)

 

 あのひとを、傷つけたくない。

 あのやさしいひとを、泣かせたくない。

 

(すみません)

 

 全力できてくれたのに。

 こちらの全てを勘案して、挑んできてくれたのに。

 

 全力でかえせなくて、すみません。

 

 やや俯き気味に、ゴール板を過ぎる。

 全てから逃げ切れてもただ1つ、自分の思いからは逃げ切れず。

 サイレンススズカは実に4年ぶりに、敗北の土を踏み抜いた。



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【逃亡者】:うそつき

 勝ったのか。

 東条隼瀬はその事実を受け入れるまでに、しばしの時間を必要とした。

 

「マスター。勝利、達成いたしました」

 

「ああ……」

 

 おめでとう。そう言う前にミホノブルボンはいつものように、そしていつもとは違う空気をまとって、利き手を前に突き出した。

 

「今。マスターのやるべきことは、私を祝福することではないはずです」

 

 それはお前のトレーナーとしてどうなんだ、と。そう言いかけて、レースが終わったあとの彼女の背中が――――何の寄る辺もなくした、やけに寂しげな背中が思い出されて、口を噤む。

 

「……そうだな」

 

 頷き、瞑目し、口を開く。

 

「ブルボン、助かった」

 

「お互い様です」

 

 凱旋門賞。一族の悲願にして、日本トゥインクルシリーズ関係者の目標。今まで数多の英傑たちが挑んでは弾かれてきた難攻不落の要塞を攻略したにしてはあまりにも簡素に見えるやり取りを交わして、ふたりは離れた。

 

 短いやり取りに、限りない親愛の情を込めて。

 

(言うこと自体は決めているとはいえ)

 

 構想と実行では使うエネルギーの量がかなり違ってくる。無謀も無茶も望むところだが、それにしても程度というものがある。

 しかしどちらにしても、やらねばならないことなのだ。

 

 かつてよく見ていた、そして最近は見ることがなくなった、アルファベットで記された名。

 扉に掛けられたそれなりに豪奢なネームプレートの下を少し叩く。

 

 この控え室に戻っているのか、どうなのか。覚悟を決めているとはいえ、そして実行するためのエネルギーに不足はないとはいえ、扉の前で待機させられ続けては緊張が深まり、意志が目減りする。

 

「はい」

 

 かつて聴き慣れていた、湿潤な声。かすかに揺れるような、独特の色彩を持つそれを聴いて、背筋と意志が揺れた。

 

「入って、いいだろうか」

 

「どうぞ」

 

 鍵がかかっていない扉を開けて、入る。向かい合う。勝負服のままのサイレンススズカは目を伏せ、椅子に腰掛けて誰かを待っていた。

 

 少なくとも彼には、そう思えた。

 

「どうぞ」

 

 同じ言葉を、サイレンススズカは繰り返した。ただし今回は、目と目を合わせて。

 明確な意図が感じられるそれが『話すことがあるならば』ということなのか、それとも椅子に座ってください、ということなのか。

 そのどちらもだろうと判断して、東条隼瀬はひとまず腰掛けた。

 

「私、負けてしまいました」

 

「……ああ。惜しかったな」

 

 話そうとしていた不意を突かれたからか、言わんでもいいことをわざわざ口に出す。

 その惜しさで負けた相手は発言者の育てたウマ娘で、その惜しさの発生源は発言者その人である。

 

「はい。とても」

 

 そのとてもはおそらく、『すごく惜しかった』ということではない。

 惜しかったというより、とても大きな差があった。そういう訂正であろう。

 

「ブルボンさんは、今のトレーナーさんを信じていました。だから私、これでも勝ちたいと思っていたんですよ」

 

「君が信じているのは、過去の俺だからか」

 

「はい。ちょうどいいと思ったんです。今のトレーナーさんが過去のトレーナーさんを否定して形造られたものだとしたら、いい証明になると考えていたんです」

 

 過去の正しさを証明するには、どうすればいいか。

 それは、過去の間違いを土台にした現在を過去の正しさでもって否定してやればいい。

 

「そうは見えないがな」

 

「はい。やめました。そう考えたことがあって、やめた。そういうことも、言っておくべきだと思ったので、言った。それだけです」

 

 ミホノブルボンと言う相手を見て、感じたのだ。

 今の彼は、過去の全てを否定してこの娘を育てたわけではない、と。

 

 その風韻がサイレンススズカの中に残っていて、そして過去でもって現在を打ち倒すという動機を停止させた。

 

「お前は俺の過去を肯定したかったのであって、現在を否定したかったわけではない。そのあたりに気づかなければ、また違った結末があっただろうな」

 

「ええ」

 

 たぶん、勝てていたと思います。

 自信がありつつも明確な言葉にしないのは、敗者としての矜持というものだろう。

 

「スズカ」

 

「はい」

 

 ふにゃりと先っぽがしおれていた耳がピンと張りを取り戻し、尻尾が跳ねる。

 何かを期待するように跳ねたそれらを否定するように強く膝を握って、サイレンススズカは短い言葉を返した。

 

「俺はまず、過去を清算するためにここに来た。聴いてくれるか」

 

 無言で頷くのを見て、頷き返す。

 息を少し吸って肺に溜めて、東条隼瀬は改めて口を開いた。

 

「俺は間違えた。あの時の事故に対しての対処を、だ」

 

 栗毛がふわりと空気を孕み、跳ねそうになった肩がもとの撫で肩に戻る。

 

 ああ、乗り越えたんだ。

 

 たった一言だけだったが、彼女としてはこの言葉だけで目の前の男の成長を何よりも感じる。

 その成長をもたらしたのが自分ではないということへの悔しさはある。ほんの少しだけ、ある。

 だがそれよりも何よりも、サイレンススズカとしては彼がトラウマ――――自分を起因とした心的外傷を乗り越えられたことへの喜びが強かった。

 

 この喜びは、ミホノブルボンと少し話したときにも感じたものである。だが他者から人づてに聴くのと、本人から直接聴くのではその喜びの質が、与えられる安心の度合いが大きく異なる。

 心理的な折り合いは完璧についていないだろう。だが、口に出せたということが大きな一歩であることを、サイレンススズカは知っていた。

 

「あのときの俺がやるべきは責任の重さによって潰れることではなく、怪我した君の夢を叶えることだった。なんとしてでも、そうすべきだった」

 

 そう言いつつ、彼は心底から納得していない。自分にやれることがあったのではないか。ああしていたら、こうしていたら、怪我することはなかったのではないか。

 その後悔は尽きない。尽きないが、その上で。怪我をした、させた。その事実を受け止めた上で、やるべきことがあった。逃げるべきでもなければ、逃がすべきでもなかった。そう言っている。

 

「俺がそうしなかったことによって、君に罪悪感を植え付けてしまった。君の夢は速度の向こう側に行くことで、その為には速さを極めることを、求めることを躊躇うべきではない。君は正しい選択をして、その結果として事故が起きた。俺は怪我をさせたことにではなく、夢を実現させるための頑丈さを与えられなかったことにこそ、罪を感じるべきだった」

 

 事故だと認めつつも、責任を感じてしまうところは変わっていない。誠実で、真摯で、頑固で、責任感の強い本質は変わっていない。

 だが明確に変わったところがある。それは感情的で漠然とした責任を負うのではなく、その明哲な知性で分析し、負うべきところを負い、諦めるべきところを諦めているところである。

 

「俺は逃げた。自分が全力を傾けて、それでもなお発生した事故を恐れて、君の夢を共に叶えると言う約束から逃げて、破棄した」

 

 少し、黙る。

 そこまでが、彼にとっての謝罪であり、清算だった。そのことを、サイレンススズカもわかっていた。

 

 だから、言おうとした。わかっています、と。私にはもうできることはなくて、貴方には未来がある。

 私のことは忘れて、あの娘と輝かしい路を歩んで欲しいと。

 

「俺は逃げた。そして、忘れようとしたこともあった。そうした方がいいと言われたからだ。だが、できなかった。忘れられなかった。忘れたくなかった。

忘れようとしても、忘れられないというのはつまり、忘れてはいけないことだということだと、思う」

 

 お前は、どうだ。

 そんな鋭い、鋼鉄の視線がサイレンススズカを射る。

 

 忘れることなどできるはずもない。

 彼女がミホノブルボンに負けたのは、そうだ。その通りだ。そこを否定することを、彼女はしない。

 だがその内訳としては、サイレンススズカはまさにサイレンススズカに負けたのだ。

 

 彼女は孤独故に、最強だった。だが最後の直線の最後の競り合いで、孤独であることを捨てた。孤独であることを拒否した。

 

 真に孤独であるならば、彼女は目の前にいる男のことなど考えずに走り、そして敗れなかったはずなのだ。

 

「こんな嘘つきを許してくれるなら、共に歩んでくれるなら、また俺の手をとってくれ。今度こそ、俺はお前を速度の向こう側に連れて行ってやる」

 

 今度は、必ず。

 決意を湛えた鋼鉄の瞳を見て、俯いて、また顔を上げる。

 

「嘘つきさんは、私にまた信じてほしいんですか」

 

「反論の余地もないが、そうだ」

 

 バカらしいことだ、と。サイレンススズカは思った。

 信じていなかったことなんて、ないのに。出会って、道を示してくれて、信じると決めてから、ずっと、ずっと、ずっと、信じていたのに。

 

 そのことを、このひとはまだ知らないんだ。

 

「でしたら、もうひとつの約束を果たしてください」

 

「もうひとつの?」

 

「ええ。ちゃんと約束しました。クリスマスにまた一緒に――――」

 

 ブッシュ・ド・ノエルか。

 ここまで言われてやっと、東条隼瀬は電撃の煌めきを見せた。

 

「わかった。必ず、今年中に果たそう」

 

「はい。信じています」

 

 うそつき。

 いつか繰り返したそんな言葉が、心の中で溶けていく。

 

 差し出された手を取って、サイレンススズカは立ち上がった。

 

「それにしても、なんというか……よく憶えていたな」

 

「ええ」

 

 ずっと、ずっと。

 

「ずっと、待ってたんですよ。私」



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サイドストーリー:当たり前に

 凱旋門賞後、熾烈な挨拶回りが予想された。

 サイレンススズカ自身が「また組みましょう」と言ってくれたものの、本人の意志だけでどうにかなるものでもない。なにせ自分から預けていたのに、今更また縒りを戻したので返してくれというのだ。

 あくまでもスズカの本籍は日本のURAにあり、所属チームたるリギルから貸し出されるような感じ、すなわち出向しているような形である。

 

 だから出向をやめさせますといえばそれで終わりなのだが、それではあまりに義理を欠く。

 

「だから貴方の帰国が遅れたわけか」

 

 助手席に乗せた男のそれ――――哀れにも日本においていかれた天色の車――――とは異なる白色の車のエンジンを入れて発進させながら、シンボリルドルフは納得したように頷いた。

 

「そうだ。まあ、色々あったからな」

 

 預け先に挨拶し、フランス版URAにも挨拶を入れる。

 もっとも預け先は『まあそうでしょうね』といった感じで、実にシームレスに手続きは進んだ。

 

 向こうでスズカがどういう態度でいたのか気になるところではあるが、それは預け先として選んだ同期の『あの娘がトレーナーとして見ているのはアンタだけだってことはわかってたわよ』と言う言葉でなんとなく窺い知れる。

 

 ともあれ、時間はかかった。

 じっくりと腰を据えて交渉する為にも、そして単純に追加で帰る便が取れなかったという意味でも、東条隼瀬はとっていた2枚のチケットをミホノブルボンとサイレンススズカに渡して先に帰らせたのである。

 

『着いた』

 

『勝った』

 

『勝った』

 

『スズカも一緒に帰る』

 

『やっぱり先に二人で帰らせる』

 

『着いた』

 

 ここ1ヶ月で目の前の男から送られてきたメッセージのあまりの簡素さを思い出しつつ、シンボリルドルフはため息をついた。

 

「こっちでも色々あった……本当に色々とな……」

 

 運転しながら遠い目になるシンボリルドルフの横でアイマスクをしてシートを倒し、完璧な睡眠モードに入ろうとしていた男は、目にあてがわれていた布を上にずらした。

 

「なにかあったのか?」

 

「内部でも、外部でも」

 

「賑やかなことだ。エンターテイメントとしては申し分ないな」

 

「当事者としては堪ったものではないよ」

 

「違いない」

 

 その当事者が指すものは『生徒』ではなく、『生徒会長』としてのものである。先代の時代も先々代の時代も、生徒会長というのはそれなりに立場と責任のある地位だった。

 だがシンボリルドルフが就任してから、かなりその権勢は増している。だがやれることが増えたぶん、仕事も増えるし責任も増す。

 

 あくびをして、軽く首を振った。

 時差ボケというのか、飛行機の中で眠って見てもまだなお眠い。

 

「チームというのは」

 

「うん?」

 

 ひやりと、シンボリルドルフの背筋が凍る。

 心が読まれたのか、あるいは何も知らないふりをしているが実は知っているとか、そういうことなのか。

 

「確か5人からだったか」

 

「あ、ああ。だがチーム戦が休止されて久しい。故にその規則も形骸化していると言ってもよかったはずだ」

 

 距離別のチーム戦というものが、かつてあった。

 なぜそんなものが生まれたのかと言えば、フランスなどではチームで以てレースを勝つという思想――――ラビット戦法なるものがあり、そして日本国内にはそういうものがなかった。というか、卑怯だとか言われて禁止されてきた。

 

 だが事実として世界では横行しているし、卑怯だとか言っても現実は変わらない。

 となると世界に進出するためには、そういうことをする、される経験も必要になる。

 

 つまり簡潔に言えば世界に慣れるため、あるいは世界に通用するウマ娘を育むために、生まれたのである。

 

 だから長距離・中距離・マイル・短距離・ダート。それぞれのチームレースに参加する為の最低人数=5人がチーム結成の最低ラインになっているのだ。

 

「カノープスは3人だものな」

 

 トレセン学園の中でも強豪と言える代表的なチームですら、ナイスネイチャ・イクノディクタス・マチカネタンホイザの3人しか所属していない。

 というより、色々と技術やら駆け引きやらが進歩した現在、5人もいっぺんに担当するのは不可能に近いのだ。

 

「2人では無理かな」

 

「難しいだろうな、それは」

 

「となるとやはり元の鞘に戻らざるを得ないか……」

 

 またなんか仕組みの穴を突こうとしているな、と。

 そんなことを思いつつも、別にそれを非難する気にはならない。巻き起こるエンターテイメントの当事者になるのはともかく、彼が巻き起こすエンターテイメントを傍観し、あるいは助けるのは嫌いではない。

 

「ルドルフ」

 

「うん?」

 

「また来年から、よろしく頼む」

 

「それはこちらも望むところではあるが……随分と早い挨拶だな。まだ有馬記念も終わっていないというのに」

 

「有馬記念。有馬記念か」

 

 復帰がそこになるだろうと言っていたやつを、ひとり知っている。スズカと互角、ブルボンの何倍もの才能を持った存在。

 

(そういえばあのクソガキ、何をしているのやら)

 

 静かに、白色の車は駐車された。

 関係者用の駐車場にはずらりとそれなりに高価な車やバイクが並んでいる。

 ちらりと隣にある自分の車を目に入れながら、東条隼瀬は伸びをしてから扉を開けた。

 

「じゃあな、ルドルフ。助かったよ」

 

「君と一緒に居るのは嫌いじゃない。なにをするにしても、また誘ってくれ」

 

「わかった」

 

 この『わかった』の中には、具体的な予定が書かれていたわけではない。単にまた何か一緒にやろう、と言ったような返事である。

 だがこの空白の予定表の中にすぐさま予定がかきこまれることを、このときの彼は知らない。無論、ルドルフも知りはしない。

 

 ひとまず彼としてはこれからやるべきことはフランスで購入したブッシュ・ド・ノエルの材料が送られてくるのを待つこと。

 今のところ、それ以外にはなかった。

 

「おかえりなさい、マスター」

 

「ああ、ただいま。で、2つほど訊きたいことがあるのだが、いいかな」

 

「どうぞ」

 

「なんで部室に居るんだ、お前」

 

「座学のためです」

 

 確かに、彼女の手には本がある。勉強していたかはともかくとして、していそうなのは事実である。

 

「なるほど。ではなぜこの深夜に寮から出ているんだ?」

 

「私が寮で寝起きすると、皆さんに迷惑がかかりますので」

 

「……ああ、マスメディアか」

 

 ルドルフが言っていた『外部』とはこれかと理解して、同時に納得もした。

 本来そういうインタビューに答えるべき自分が様々なことがあってフランスに拘束されていただけに、コメントを取りたい連中は学園に押しかけざるを得なかったのだろう。

 

「はい。虚空から湧き出したらしき親戚の方々も忙しなく蠢動しているようです」

 

「わかった。それに関しては処理しておく。お前は茨城、俺は千葉だから近いしな。メディアの対応も明日弟に連絡して、URAの広報部から記者会見の席を作る旨を伝えさせよう。それで、ひとまず静かになるはずだ」

 

「ありがとうございます」

 

「いや、親戚はともかく、メディアに関しては俺のせいだ」

 

 虚空から現れた架空にして虚構の親戚連中に関しては、どうにもならないことである。

 これがそれなりに大きな家の出身ならばともかく、ミホノブルボンは寒門の生まれ。ここ3年で20.95億円稼いだ以上、そういうよくわからん連中は湧いてしまう。これは別に、誰のせいでもない。

 

 だがメディアに関しては、東条隼瀬の責任である。やるべきことが他にあったとはいえ、後回しにしていい問題ではなかった。

 なにせ、日本トゥインクルシリーズの悲願を達成したのだ。なんの報告もなしにスルーできようはずもない。

 

「排除してほしくない、自称でない方々はいるか?」

 

「いえ、そういう付き合いはありません。お父さんはなんと言うか……孤独を愛される方でしたので」

 

「そうか。ではこれからのことも考えて、根こそぎやってしまおう。背後関係の洗い出しや動機、実際のところはどうなのか。事後処理も含めて、URAにも協力してもらおう」

 

「URAに、手伝っていただけるものでしょうか」

 

「制度化された組織というのは自分より弱い物には徹底して強いから、まず負けはない。会見の……そうだな。独占配信を対価にして利用できるものは利用しよう」

 

 ミホノブルボンは、スターだ。それもとびきりのスターである。

 URAとしては余すところなくその知名度や、業績を利用したいだろう。

 となれば醜聞の発生源になりかねない自称親戚の方々を、当事者以上の責任感を持って排斥してくれる。

 

「まあ、安心しろ。お前の将来にも関わることだし、全力は尽くすさ」

 

「将来、ですか」

 

「ああ。引退してからのな。まだそれなりに時間はあるが、一応考えておくにこしたことはない」

 

 ミホノブルボンが考えなくとも、東条隼瀬としては今からかなり考えている。

 ウマ娘とは、アスリート兼アイドルという危うさを秘めた存在である。そしてアスリートには影のように、その後の人生の失敗がついてくる。

 

 若いうちから名声と富を得て、感覚が狂ってしまって破滅する。そういう例も、少なくない。

 トレセン学園ではそういうことにならないための教育を施しているわけだが、教育するだけでそういうことが起こらなくなれば苦労はしないのだ。

 

 3年が終わり、また新たな3年がはじまる。

 そんな中であって、ミホノブルボンはそうそう喜んでばかりもいられなかった。

 

(マスターと、お別れする)

 

 3年前までは、いないことが当たり前だった。

 3年後には、居るのが当たり前になっていた。

 

 あくびをしながらケーキの仕込みをしはじめる男の背中を見て、ミホノブルボンは思った。

 

 では自分がトゥインクルシリーズの第一線から引退して、この人と別れて。

 そして3年後、居ないのが当たり前になっているのだろうか。

 

 将来。ミホノブルボンにとっては漠然としすぎてよくわからないもの。

 そんなふわふわしたものに思いを馳せて、少し考えるのが嫌になって。

 

 そして、ミホノブルボンはごろりとベッドの上で横になった。



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サイドストーリー:今は笑って

これでほんへのサイドストーリーは終わりです。
次回はRTAで完走した感想して、そして番外編としてのURA編(サイドストーリー)が続きます。
昨日忘れてたスペシャルサンクスは今日まとめて出します。申し訳ございません。



「東条隼瀬、帰還しました」

 

「うむ! ご苦労!」

 

 明らかに十代前半。ブルボンよりも、当然ながらルドルフよりも幼そうな少女の前で見事な一礼を見せ、東条隼瀬は帰還報告を行った。

 

「何かと苦労をかけているようで。申し訳ございません」

 

 愛想の無さも相まって、それはいっそ白々しいくらいの謝罪であった。

 

 そもそも彼がフランスで1週間ほどちんたら――――その地の関係者に義理を通していたという仕方ない側面もあるとはいえ――――しているから、マスコミが『会見はまだか』と押し寄せてきているわけである。

 

 これが一日二日のことであれば、押し寄せてくるマスコミが悪い。明らかにモラルが欠けていると言える。しかし1週間放置となると――――しかも、日本トゥインクルシリーズ開闢以来の悲願である――――これは明らかに放置した側が悪かった。

 

「無用! 我々としても力の及ばなさを痛感するところだ!」

 

「オグリキャップさんの時のようなことは、したくなかったんですが……」

 

 オグリキャップはもともと国民的スポーツエンターテイメントであるトゥインクルシリーズの間口をさらに広げるような、一大ムーブメントを巻き起こした。

 その結果当人の食事中に激写されたり、私生活にまで入り込まれたりという怒涛の取材攻勢の中で、あの健啖家の食欲が落ちた――――どんぶり飯10杯食べるところが5杯になった――――ほどのストレスを抱えることとなった。

 今起こっているムーブメントはそれに勝るとも劣らない。やはり人間、エリートがエリートらしく勝つことを楽しむよりも、雑草が次々と下剋上を決めていくストーリーを好む。

 

 別に貧家ではないが、寒門ではあるミホノブルボンと言うウマ娘が血統と距離の壁を打ち砕いて為してきた業績は巨大で、しかも段階的であるが故に感情移入のしやすいものだった。

 

 1400メートルが限界と思われていたようなスプリンターが、朝日杯FSの1600メートルで勝ち。

 皐月賞の2000メートルで勝ち、日本ダービーの2400メートルで勝つ。

 三冠路線最後を阻むは、それなりの貴門に生まれた漆黒のステイヤー、ライスシャワー。挑戦し続けてきた者と、挑戦し続けてきた者に挑み続けてきたウマ娘の決戦、菊花賞3000メートル。

 

 皐月賞、ダービー、そして京都新聞杯で少しずつ着差を縮められて挑んだ決戦に辛うじて勝利し、寒門としては初めてのクラシック三冠の栄誉を――――それも無敗で――――掴む。

 

 距離の壁を少しずつ破壊していった軌跡は、とてもたどりやすいものだった。だからこそ、人々はわかりやすく感動できた。

 

 そして強敵難敵揃いのジャパンカップでスランプに陥りながらも日本を背負った走りを見せ、グランプリ・有馬記念では復活した天才トウカイテイオーと激闘の果てに勝利。

 シニア級になってからは大阪杯から始動し、最強のステイヤーことメジロマックイーンと最大のライバルライスシャワーとの戦いに終止符を打つ。

 

 そして宝塚記念では無敗の三冠対決という、もう二度と見られないかもしれない夢のレースの果てに、最後の直線でスプリンターとしての天稟を活かして勝ち、海外へ。

 そこで日本トゥインクルシリーズの悲願を手にし、帰ってくる。

 

 ミホノブルボンは、ちゃんと段階を踏んで下剋上をしていた。だからこそ観客も『次こそだめか』『だがいけるんじゃないか』と信じられたし、少しずつ自分のできる範囲を広げていくさまに自己投影ができたのだ。

 

 これは地方で無双して中央へ殴り込みをかけ、そのまま無双し、ライバルとの激闘を繰り広げて有馬記念で奇跡を見せるオグリキャップの描いた軌跡に勝るとも劣るものではない。

 

「私としても、少し負担をかけすぎてしまったと思っています。理解してくれていることに甘えていた」

 

 サイレンススズカにとって、そして何よりも自分にとって、義理を通すことは大事だった。だがミホノブルボンにとってはどうか。

 そんなことよりもこの騒ぎを鎮めてほしい――――とまでは思わないにしろ、2番3番に回されていたのは確かである。

 

 よそ行きの一人称を使いながら、東条隼瀬は複数のウマ娘を担当するということの難しさに気づきつつあった。

 なにせ、たった一回でこれなのだ。行動に優劣をつけることは仕方ないにしても、ケアや配慮が必要になるし、年単位、あるいは月単位でその優先順位の優劣が均等になるようにしなければならない。東条ハナという彼の師匠の偉大さを痛感するところである。

 

「うむ……まあ、仕方ないと思う。なにせ君が為した業績は巨大で、しかも前例がないものだからな! 優先順位をつけること自体ができない。そういう意見もある」

 

 サイレンススズカの所属に関して有耶無耶にすれば国外との関係がこじれる可能性があった。あの偉大な、アメリカの誇るウマ娘――――実際の彼女はハーフであるわけだが――――を適当に扱うな、と言われる可能性もあり、フランスのURAから『勝手に持ち帰るな』と抗議が来る可能性もあった。

 

 東条隼瀬の選択は、全体を俯瞰して見るとベターだった。ただミホノブルボンを通してみると、ベターですらない。

 身体が2つあったらどうにかなっただろうが……と益体もない考えをし、彼はふと納得した。

 

(こう考えてみるとサブトレーナーという制度は理にかなっているな)

 

 たとえ今サブトレーナーが居てくれたとしても、巻き起こったことの対処を委ねることはできなかった。多分指示する時間もなかっただろうから。

 だが、それでもマシになっていたのではないか、と思うのだ。

 

「ともあれ、身体を休めるように! 新年度からは――――いや、まだ言うことではないが、君の持つ役割は更に重要度を増す。問題解決に勤しむのもいいし、それは当然のことだが、資本たる身体を静養して病気の無きように頼むぞ!」

 

「承知しました。では私は千葉に行ってまいります」

 

 理事長からの結構な無理難題――――義務を果たすべく頑張ってくれ。だけど無理はするな、という――――を再確認させられながらも、東条隼瀬はめげることない機械のような冷静さで次にやるべきことのために動き出した。

 

 まあ静養するにしても、アテはある。そして埋め合わせにもなる、はずだ。自意識過剰でなければ。

 

「千葉。御実家に帰られるのですか?」

 

「はい。いやまあ、他にも色々と……やることがありまして」

 

 自分の質問をのらりくらりと躱しつつ去っていく背中を見て、秘書のたづなは理事長の方を振り向いた。

 

「当事者でもなく利益も求めず、趣味で革命戦争を二度も引き起こしたときは凄まじい人だと思いましたが、結構常識的なものですね」

 

 オグリキャップの変、マル外の変。

 要はクラシック登録の是非に関して、東条隼瀬はめざまし過ぎるほどの活躍を見せたということを、彼女たちは先代から聴いていた。

 

 あいつとルドルフは敵に回すもんじゃないよ、ということも。

 

 そしてどんなことがあろうが自分の正しさを貫き通すその姿は暴走したら相当に厄介なことになるであろうことも。

 

 無論彼がウマ娘を大事に思っているからこそキャリアをなげうつ勢いで革命戦争を起こしたことは知ってはいる。

 そしてその動機に賛同できるし、行動も支持する。しかしそれはそれとしてどうにも危なっかしい、というのが駿川たづなの下した評価であった。

 

「しかし! 能力に関して疑いの余地はない! 人格はともかく! 切り札とするには申し分ないほどに!」

 

「私が危惧するのはその正しさと正しさを貫く狂気じみた意志力で、復活しつつある彼女の精神が粉砕されてしまうのではないかということです」

 

 彼は世間で言われているような弱者の味方でもない。そして強者の敵でもない。

 東条隼瀬は、理不尽の敵である。

 

「それはまあ……うむ……」

 

 来年、どうなるか。

 二人の思考に影が差すが、考えてどうにかなるものでもない。

 極めて優秀であり、そしてウマ娘に対して誠実で真摯な男は信用できるが、その人格的な危うさから信頼するにまでは至らなかった。

 

 まあその懸念は懸念のままに終わるわけだが、メディアが望んでいるものを察知して対応し、クリスマスまでに丸く収めてみせたその手腕は傑出している。

 オグリキャップのときにも、マル外騒動のときにも、世間を巻き込んでからマスコミを一時的に管制してのけた手腕からもわかるとおりに。

 

 それもまた、確かなことだったのである。

 

「なんとか終わった」

 

「おつかれさまです、トレーナーさん」

 

「ああ……」

 

 無論目の前にいる栗毛のウマ娘との約束があったからこそ無理にでもクリスマスまでに片付けられるように、なんとか頑張った。

 

 それに、クリスマスには有馬記念があり、有馬記念には主役が居る。

 それまでにはなんとか収拾をつけたかった。別にあのクソガキがクソガキ自身のしくじりのせいで主役になれないならばともかく、自分のヘマでその座を追いたくはない。

 

 スズカから渡されたおしぼりを目蓋に乗せかけてその灼熱地獄というべき熱さに気づき、摘んで空気を孕ませて冷ましながら畳み直して改めて乗せる。

 

「すみません。私のことで色々、苦労をおかけして」

 

「もう一度」

 

「はい?」

 

「俺はもう一度でいいから、君がもたらす苦労を背負いたかった。それこそ、買ってでもな。だから疲れているように見えて、結構いい気分なんだよ、俺は」

 

 『私のことで』というより、これは俺の尻拭いというべきだと反論を用意する前に、そんな本音が口をついて出るあたり、相当疲れていたのだと、後に彼は自らの言動を省みて思うことになる。

 

 ともあれスズカが尻尾を揺らしながら耳をぺたんと伏せさせ、やや俯いてもじもじしているのを完璧に見逃していた――――目蓋を閉じてタオルを乗せていたため――――男は、ガチャリという扉の開閉音を聴いて身体を起こした。

 

「マスター。ミッション『お買い物』コンプリートいたしました。引き続き『お料理』に入りますか?」

 

「ああ……じゃあやるか……」

 

 伸びをしながら喋るとき特有の途切れ途切れな発声を終えて、東条隼瀬は思いついたように隣を見た。

 

「そう言えばスズカ。お前、それなりにできたはずだな」

 

「一応……ですが、トレーナーさんほどではありません。あれからあまりそういう機会もなかったので……」

 

 料理を、という主語を頭の中に置き忘れた問いにもかろうじて対応してみせる臨機応変さを見せ、立ち上がる。

 

「じゃあ――――」

 

「でも」

 

 他のことをやってもらおうかな。

 あるいは、そこらへんを走ってきたらどうだ。

 

 そう言おうとした彼の言葉を遮ったサイレンススズカは手を口元にまで持ってきて、いたずらっぽく笑った。

 

「私も、この苦労を買いたかったんです。いくら出しても、どれだけかかっても。だから、手伝わせてください」

 

「となると、実に遠回りをしたな。お互いに」

 

「ええ。ですがそれがたぶん、一番の近道だったと。そう思います」

 

 それはその通りだと、東条隼瀬は思った。

 すべての物事が――――運すらも味方につけた過程を走ってきた結果、今がある。

 

(俺はかつて、全てを支配したいと思った)

 

 運すらも、管理したい。その欲望は限りなかったし、今も心の奥底にある。

 

(だが案外、できているのかもしれないな)

 

 少なくとも、今は。

 怪力を活かして材料をキッチンに積んでいくミホノブルボンと、あまりの大量さに『うそでしょ……』してるサイレンススズカを見て、笑う。

 

「マスターの表情からステータス『笑顔』を確認。なにか嬉しいことがあったと推定」

 

「え!?」

 

 くるっと振り返るサイレンススズカの視線の先には、いつもの彼の顔。

 

「うそでしょ……」

 

「うそではありません。後に画像データとして出力、共有を図ります」

 

 ああ……これはその、口癖で……みたいな説明をしている二人を見て、また笑う。

 

「そろそろ、はじめるぞ。もうそんなに、時間はないんだからな」

 

 ブルボンの頭をくしゃくしゃと撫でて、スズカの手を引く。

 目の前に積まれた大量の食材をどう処理するかを考えながら、東条隼瀬は不敵に笑った。



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オペレーション:計測終了

 いよいよ最終回!なRTA、はーじまーるよー。

 さて、前回は凱旋門賞スタートまでやりました。

 

 そして!

 

 今回!

 

 遂に!

 

 完走です……やっと完走した感想を言える。エアグルーヴも喜んどるわ(気のせい)

 

 ということで、凱旋門賞です。スズカ姉貴が開幕固有ブッパと言う許されざることをしました。到底許されるべき行為ではないと思いつつ、動じずスキップ。

 

 これで負けたら日程スキップ(パート2参照)で一年後にジャンプしなきゃいけないからキツい。

 あれウマ娘と契約する前ならともかく、したあとにやると地獄みたいな時間が掛かります。

 なぜかと言えば、このゲームはプレイヤーがウマ娘と契約する前はともかく、したあとは設定された過去や史実に沿ってウマ娘ひとりひとりが自律したAIによって動くからです。

 

 もっともHoiのように、たいていが史実に沿ったような動きを見せます。BNWはたいていクラシック三冠を分け合いますし、テイオーは3回骨折します。

 ですが、これまたHoiのように時折とんでもないことをしでかすのもいます。

 例を挙げると、ナリブが怪我しなかったり、エアグルーヴがトリプルティアラしてたり、マックちゃんが春天3連覇したり。

 

 なのでひとり育ててその後はフリーになり、10年単位でスキップして年表を見てニヤニヤする、みたいな奇特な楽しみ方もできるわけです。

 

 以上のように、このゲームは色んな楽しみ方ができる神ゲーです。

 ですが唯一の欠点はクソ長いロード時間、実質スキップとも言えない程に長い処理の多さ。まあストーリーの補完機能がどうたらこうたらをしているんでしょうが。

 

 と話している間に勝ちました。長く苦しい戦いだった……(マジで)

 競馬は運ゲーだからウマ娘は運ゲーとは結構言われることですが、据え置きになってから因子周回という苦行から解放されました。

 購買部で地固めやら尻尾上がりやらの必須スキルも高確率で買えるようになりましたし、コミュで距離適性を伸ばすこともできます。

 

 要は運要素がかなり、少なくともうまく立ち回れば結構回避できるようになったのですが、RTAではそんなことありません。古き良き運ゲーのウマ娘が楽しめます。

 

 楽しめない? せやな。

 

【凱旋門賞(GⅠ)に出走した】

【ミホノブルボンは1着だった】

【サイレンススズカは2着だった】

【ミホノブルボンは《勝利への執念》を取得した!】

【ミホノブルボンは《地均し》を取得した!】

【ミホノブルボンは《根幹距離》のコツを掴んだ】

 

 はい、食い下がりの金スキルと地固めの金スキルをゲットしました。

 このように海外GⅠを勝つと金スキルがもらえます。凱旋門賞などの内部データ的に格式が高いレースだと2個までもらえます。

 

 なぜこれを今まで説明しなかったかと言えば、RTAには関係ないからです。むしろいらないとすら言えます。ぶっちゃけこのあとのURAファイナルズでは負けたいので、強くならないに越したことはありません。

 

 となるとこの2つの金スキルは……運が悪い(良い)。

 勝利への執念は追い抜かれたらかなりの確率で負ける逃げの弱点を補ってくれます。お前差しか?と思うくらい差し返します。

 地均しは地固めの金スキルであり、オンライン対戦における必須スキル。要はクソ強いということです。

 

 と、解説している間に野良ライバル特有のスカウトイベが起こってます。これは最初の3年間を頑張ったプレイヤーへの準備イベントみたいなもので、チームを結成するにあたってコアとなる強力なウマ娘を事前にひとり確保できるというやつですね。まあ大抵のプレイヤーは有馬記念でこのイベントを迎え、Aランクくらいのウマ娘をゲットするわけですが、ここは凱旋門賞。Sランクくらいはあるでしょう(なお出番はない模様)。

 

 ここでどうするかですが、サイレンススズカさんのスカウトいいえにカーソル合わせるのがめんどいのではいを連打します。

 過去に因縁あるのが確定してるし、どうせ失敗するでしょ(愛嬌×)

 

「ずっと、待ってたんですよ。私」

 

【サイレンススズカのスカウトに成功した!】

【※来年度のチーム結成時、サイレンススズカがメンバーに編入されます】

 

 成功するのか……(困惑)

 ま、ええわ(寛容)。このあとURAファイナルズまでにスズカのイベントが起こるかもしれないけど、誤差だよ誤差!

 もう完走できることが嬉しい。しかも大幅なタイム短縮に成功しつつあるし、言うことなし!

 

 と言うことで、クリスマスやらURAファイナルズやらをやってる裏でやや早めながら完走した感想を言っていきます。

 

 さて、完走した感想ですが……何度やってもやり飽きない神ゲーでしたね。サイゲ開発の謎AIによる高精度なキャラの立ち回りは圧巻の一言。これだけで最大容量のメモリーROM(3TB)を全部食い尽くすクソデカ容量と、それに恥じないクソ長ロードさえ無ければ文句はありません。

 

 私が結構前に【練習風景のロードの関係でミニキャラにします】みたいなことを言って、事実ミニキャラでこれまで練習させていたのには、こういうクソ長ロードへの警戒があったわけです。まあ焼け石に水ですけどね。

 

 あ、URAファイナルズ突破しちゃった。決勝まで行ってるということは、最後の最後にクズ運が来ましたね。残念。

 まあここまで(4時間22分14秒)一緒に走ってきたウマ娘が負けることを祈れなかったということもあり、祈祷力が足りなかったのかもしれません。無念。

 まあ次回があれば祈祷力を鍛えてまた挑戦します。来年。

 

 で、完走した感想を続けますが、このウマ娘ワールドダービーは運ゲーです。皆さん結構私のチャートがガバガバだという指摘をなされていましたが、実際あれで結構成功した方です。ある程度の史実補正があるとはいえ、バタフライエフェクトが起きてとんでもないことが起こる、みたいなのが頻発します。

 

 え、なんでそんなゲームでRTAするのか?

 それはまあ、趣味と実益といいますか。楽しいからです。それ以外にはありません。

 

 と、URAファイナルズが終わり、温泉イベとエピローグ閲覧も完了。理事長の扇子が閉じたので、タイマーストップ。

 

 タイムは4:25:00! 短すぎィ!

 まあ、ぶっちぎりのレコードです。この要因ですが、まず練習について悩む必要がなかったことですね。残りターンと相談して能力を計算して……と、ゲーム外のことで時間を使うことが多いです。

 ついでに言えば、愛嬌×だからという理由でコミュを一切無視したのも良かったですね。これまたクソ長い時間が必要になるので。

 

 このゲームのRTAは慣れないと平気で10時間を越えてきます。はやくても6時間。4時間台はまさに速度の向こう側と言えます。

 

【3年間のゲームシナリオをテキスト化しますか?】

 

 これは迷わず反射ではい。というかもう急ぐ必要もありませんが、癖です。

 このテキスト化はかなり時間がかかります。主人公やらウマ娘やらがどういう意図で、どういう背景で行動したのかというのを全部テキストデータ化するのですから当然ですが……まあ長いです。

 

 このテキストデータは私が読みやすいように再編集してどっかにあげておくとして、クッソ長時間のご視聴、ありがとうございました。

 次はトウカイテイオーを使った1時間タイムアタック(香川県民TA)か、スズカ秋天制覇こと【栄光の逃亡者】称号獲得チャートか、カイチョーで【神をも統べる皇帝】称号獲得チャートをやります。要は未定ということです。

 

 では、またどこかで。




はい、これにて完結です。毎日投稿での完結という当初の目的は果たせませんでしたが、それなりの高頻度で更新できてそれなりに満足しております。
これは無論私のやる気があったというのもありますが、このやる気を保てたのは毎日読み、毎日感想をくれた兄貴たちのおかげだと思っております。
最初から70話くらいまで欠かさず感想をくれた123G兄貴、中盤から終盤にかけて私の好みの長文感想をくれた白河仁兄貴と踊るモルモット兄貴。
朱鯉兄貴、必勝刃鬼兄貴、ブブゼラ兄貴、ニキータの店兄貴、white2兄貴、白い未栄兄貴、障子から見てるメアリー兄貴、ガンバスター兄貴、すまない兄貴、笠松兄貴、レンタカー兄貴、うにゃりん兄貴、ペニーワイズ兄貴、星ノ瀬竜牙兄貴、サガリギミー兄貴、藤原妹紅兄貴、ワットJJ兄貴、蒸気帝龍兄貴、ナカカズ兄貴、ハガネ黒鉄兄貴、かぶと兄貴、ユウヨコヤ兄貴、ESAS兄貴、べー太兄貴、眠るひと兄貴、His@gi兄貴、fumo666兄貴、タイヤキ兄貴、天須兄貴、noxlight兄貴、ピノキオ兄貴、長船兄貴、物干竿兄貴ら、常連として感想をくれる方々には多くのアイディアやモチベーションをいただきました(ここであげた方々の全員に許可とってるわけではないので、名前晒すのやめてくれというメッセージをいただければ即座に削除いたします)。

後はこの作品は最高だ!という10評価を付けてくれた750人の兄貴たち、それに準ずる評価をくれた1166人の兄貴たち、私のTwitterをフォローしてくれている425人の兄貴たちも、本当にありがとうございました。

スズカ√はアンケートをとっておいてなんですが、感想欄で《新規が入りやすくなるから別作品にしたほうがいい》という最もな意見があったので別作品にしようと思います。
別作品を投稿するときはこの作品で最新話更新のついでに告知しますので、あとがきをご覧いただければ嬉しく思います。

さて、最後に。
54人の兄貴たち、感想ありがとナス!

急須のお茶兄貴、arukato兄貴、Joker4869兄貴、fstax兄貴、たわしのひ孫兄貴、常夏blue兄貴、八幡悠兄貴、ネツァーハ兄貴、アスモおばさん兄貴、るり316兄貴、Suzu0927兄貴、暇人兄貴、勇次兄貴、久住芥兄貴、kiri1120兄貴、ユウキ58兄貴、論理テノール兄貴、火鷹兄貴、断頭台の罪姫兄貴、ESAS兄貴、ケンネン兄貴、生人兄貴、レモンティー兄貴、チャボくん兄貴、評価ありがとナス!

感想・評価いただければ幸いです。
4ヶ月間の短さでしたが、今までありがとうございました。明日も投稿します。


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エピローグ
エピローグ:今年のルドルフは若い


 隼瀬は激怒した。必ず、かの邪智暴虐のURAを除かなければならぬと決意した。

 隼瀬には人の機微がわからぬ。隼瀬は、愛嬌×である。言葉の毒を吐き、野生のライオン丸と遊んで暮らして来た。けれども理不尽に対しては、人一倍に敏感であった。

 

 蠱毒としか言いようのないURAファイナルズを終えた男が何故こうも怒っているのか。それには彼なりの理由があった。

 

 理由はあったが、まずは発端から見ていこう。

 

「年度代表ウマ娘は、ミホノブルボンですか」

 

 東条隼瀬なる人格的歪曲の甚だしい兄を持ったことを恨むでもなく、その才智を心から尊敬している弟――――東条鵲瀬は、東条家らしい青みがかった黒髪を撫でながら言った。

 

「当然だろう。春シニア三冠、しかも凱旋門賞制覇。URAファイナルズは日本シリーズのようなものだから勘案するわけにはいかないが、なんの疑いの余地もない」

 

「それに関してはまあ、よろしいかと思います。ですが、この……」

 

 兄の狂直というべき理屈への固執を思いながら、東条鵲瀬は口を開いた。

 

「授賞理由が凱旋門賞というのは、どうなんですか」

 

「それ以外になかろうよ。なにせ凱旋門賞というのは我が国のトゥインクルシリーズの悲願なのだからな」

 

「しかも銅像を建てようとしているらしいじゃないですか」

 

「ああ。京都レース場がいいと思うのだが、どうだ」

 

「銅像なんかを建てられて喜ぶのは、精神に贅肉を蓄えて自己が肥大化しているからだ!、と言うでしょうね。まあやるならやるでいいと思いますが、やらない方がいいかと」

 

「お前も結構言うなぁ……!」

 

 剣呑な――――人間関係の潤滑油たる愛嬌というものがおよそ存在しなさそうな雰囲気をまとう兄とは違い、この弟は如何にも温和そうな雰囲気を纏っている。初対面の人とうまくやれるという、広報部としては喉から手が出るほどにほしい能力を持っている。

 だが、サラリと毒を吐く。こういうところはやはり、血なのか。

 

 などという話をしたあと咳払いをして、東条鵲瀬は改めて脳内で言葉をまとめた。

 

「おとなしく春シニア三冠を授賞理由にして、特別報奨金という形で大々的に凱旋門賞というものの意味を大衆に理解させる。そういうわけには、行きませんか」

 

「だが年度代表ウマ娘の発表への注目具合は群を抜いている。そこで視聴をやめる層も多い。そこでバーッと発表してしまった方が宣伝効果を見込める。そうではないか」

 

「そりゃあそうですけどね。我々は日本のトゥインクルシリーズのウマ娘を対象に表彰しているわけです。現に過去4年間、サイレンススズカは年度代表ウマ娘には選ばれていません。過去を見渡してみても、欧州三冠のウマ娘が我が国の年度代表ウマ娘に選ばれた試しはありません」

 

 世界で一番偉大な業績を残したウマ娘を表彰するのではなく、日本で一番偉大な業績を残したウマ娘を表彰するというのは、日本のトゥインクルシリーズを主催するURAとしては当たり前のことである。

 第一、トゥインクルシリーズ開催国としては辺境もいいところの日本で表彰されて嬉しいとも思えない。

 

 そんな辺境の地平から化け物たちが漏れ出しつつあるわけだが、URAの職員たちからすれば未だに日本は辺境だと自認するところだった。

 

「君の言葉を借りるが、そりゃあそうだ。だがミホノブルボンはデビューから国内で走っているじゃないか。春シニア三冠も達成し、その上で凱旋門賞に挑み、勝った。となると受賞資格は充分にあるだろう」

 

「ありますよ。そりゃああります。ですがそれに至った理由が国外のレースというのは、やや矛盾している。あくまでも国内の実績で受賞者は決めるべき。でなければ過去4年との整合性が取れない。少なくとも兄はそう思うでしょう」

 

「整合性どうこうというのはひとまずそうだが、思うにしても行動に移すものかな。年度代表ウマ娘とは歴史と権威ある神聖なものだし、2年連続での受賞となればあのシンボリルドルフに並ぶ。自分が育てたウマ娘が栄誉を得られるというのに、自らそれを叩き壊しに来るだろうか。自分にも栄誉と利益があり、そして自分の育てたウマ娘にも栄誉と利益があるのに」

 

 ああ、この人はわかっていないのだな、と。東条鵲瀬は嘆息した。

 そんな一般的な――――理性的で利益を求めるような物の尺度で動いているのならば、兄はもう少し器用に生きられたはずなのである。

 

 シンボリルドルフの夢を曖昧に肯定しつつその夢の後押しとなる栄光を共に掴む。

 掴んだあとはそういう厄介なものからは距離を置き、シンボリルドルフと共に建てた実績を喧伝して回る。そしてURAとコネを作って間違っても反抗などせずに立ち回る。

 

 愛嬌というものがなくとも、兄が徹頭徹尾理性で動く人間ならばそれができた。

 だが、どうだ。世間はシンボリルドルフのトレーナーは東条ハナであるという認識のままだし、URAとは2度も衝突しているし、夢の実現のために最大限協力している。

 

 サイレンススズカに関しても、そうだ。

 理性的であれば怪我した時点であれ程気に病むこともない。

 そしてアメリカで復活したと言うニュースを聴いて『俺が翼を折らなければ、こんなことにはならなかった』などとつぶやく暇があれば、再度スカウトをかけるはずである。

 

 理性的に見える感情の人。

 

 人格的な得体のしれなさ、梱包と中身のブレ。彼を見て感じる不快感とかそういったものは、この一言で言い表せる。

 

「やめたほうがいいと思いますが」

 

「だが、凱旋門賞制覇自体がもう無いかもしれないのだぞ。少なくとも初の凱旋門賞制覇はもうやってこない」

 

「初に関してはそうですが、案外近くまた制覇するかもしれませんよ」

 

 そう言いつつも根拠はなく、かつ反論したとしても覆すだけの権力がない。

 その場を辞して、東条鵲瀬は『兄は怒るだろうなぁ』と思い、かつ覚悟した。そしてその覚悟を必要とする現実は、即座にやってきたのである。

 

「許せん。バカにしている」

 

「うん……」

 

 お前ならわかるだろう、ルドルフ。

 そう言わんばかりの愚痴に、ルドルフはひどく曖昧に頷いた。

 

 シンボリルドルフは東条隼瀬の味方である。たとえ世界全てが敵に回っても味方でいてやりたいし、そうありたいと思っているし、現に今までそうしてきた。陰に日向に、気づかれることもなく。

 

(しかし難しいところだ、これは)

 

 東条隼瀬は、正しい。

 

 何故バカにしているというのか。なぜここまで怒るのか。

 それはURAが他国のレースを嫌に高く見て、国内のレースを低く見ているのがありありと、この事前に通達された授賞理由には表れているからである。

 

 URAは、日本のトゥインクルシリーズを開催している。それなのに、自分たちが抱えるウマ娘たちの強さを信じていない。最も自らが抱える人という宝の重要さを知り、誇るべき機関が、誰よりもその誇りを貶めている。

 

 なにせ、凱旋門賞よりも、春シニア三冠が劣ると。無自覚に、かつ当たり前に、彼らはそう断じたのだ。

 

 大阪杯は楽勝だった。

 だが天皇賞春はどうか。ライスシャワーと、メジロマックイーンと競い合って、そして勝った。ライバルを打倒して得たあの栄冠が、凱旋門賞に負けるとは思わない。

 宝塚記念における皇帝との戦い。日本最高クラスの実力を持つ両者が繰り広げたレースは、凱旋門賞に劣るものではない。

 

 楽勝だった大阪杯はともかくとして、2つを合わせれば、当然凱旋門賞にも勝る難易度であるし、より優れた輝きを放つ栄冠であるはずだ。なにせ、2個なのだから、1個より上であろう。

 

 バカにしている。

 ミホノブルボンが得た栄冠を、そしてなによりも春シニアのGⅠ戦線に勝利を期して挑んだウマ娘たちの努力を。

 

 正当に栄誉を掴んだミホノブルボンを、間違った理由で表彰する。それは、理屈に合わない。

 正当な栄誉は正当な理由のもとに、正当な表彰を受けるべきなのだ。歪んだ表彰を受ければ、正当であったはずの実像そのものが釣られて歪みかねない。

 

 そういうひどく理屈的ながら根底は感情的で繊細な感性は、実に彼らしい。そもそも彼は無神経に、外部から価値の上下を決められるのが嫌いなのだ。

 

(なるほど、深く見てみれば腹は立つ。だがこれは私が敗者であるからかもしれないが、理屈を並べ立てられたのみならば納得もできる。しかし感情の面では……)

 

 納得し難い。

 

 だが聡明なシンボリルドルフには、わかっていた。日本トゥインクルシリーズが海外への挑戦の歴史であり、その集大成が凱旋門賞だということを。

 そしてその集大成を大々的に表彰したいというURAの心理を。

 

 まあただ、やり方がまずかったのは事実である。あの色褪せない激闘の記憶を無自覚に、無意識に踏みにじられたというのは、当事者であればこそ許せるものではないのだろう。

 

 これはうがった見方であるとすることもできるが、どうなのか。実際のところはわからない。

 

「その事前情報は誰から聴いたんだい?」

 

「弟」

 

「なるほど、となると一次情報か……」

 

 そして今自分が聴いているのは、二次情報ということになる。

 そう言う空気があったことをそれとなく伝えられたのか、あるいは直接聴いたのか。彼は推論に推論を重ねて根拠なく悪意を信じるタイプでもないから、おそらくはそのあたりだろう。

 

(それにしても怒っている。しかもいつもより深く。おそらく……いや間違いなくこれは単にURAの無神経さに対してのものだけではない)

 

 少し頭を回して、シンボリルドルフは閃いた。

 

「まあ、発表されていないことに対して大規模な抗議運動を起こすわけにもいかないだろう。俺のつてからそれとなく意向と意思を伝え、再考を促す。俺にしたって現在URAを利用しているわけだから、そう強く出るのも義理を欠く」

 

 なるほど。どうやら、結論を出すためではなく、出した結論を検討してもらうために――――あるいはもっと単純に誰かに聴いてほしかったがために、彼はここに来たらしい。

 

「そのあたりだろうな……と、それにしても」

 

「それにしても?」

 

「君がそんなに怒ってるのは、あれだな。無神経さもそうだが、ミホノブルボンの栄光を汚されたからだろう。違うかい?」

 

「……そうかもしれないな。いや、そうだ。おそらくは」

 

 君が特定の個人のために怒るのはそう珍しいことじゃない。だが今回はその色彩がいささか異なるのではないか。

 君は今まで理不尽に抗うとき、必ず第三者として加勢していた。冷静さを欠かないように配慮していた。だが、今回は違う。ミホノブルボンという特定の個人が打ち立てた業績に感情移入し、そして汚されたくないものだと個人的に思っている。

 

 それはURAの広報に使われつつある凱旋門賞が、ミホノブルボンの意思に拠らない――――他ならぬ彼自身のための挑戦だからこそ、神聖視しているのではないか。

 自分のワガママのせいで、ミホノブルボンが自ら選択して走った結果が色褪せてしまう。少なくとも、URAからは色褪せたものとして見られている。

 

 それがたまらなく悔しくて、ここに来て吐露したのではないか。

 

(いや、それは理屈だな。それよりももっと単純に……)

 

 より詳しく思考しかけて、やめる。思考の口を塞いだ、というのが正しい。

 割り切っていても、祝福する心構えはできていても、悔しさはあるのだ。その特別な何かになる可能性は、自分にもあったはずだから。

 

「まあ、私からもそれとなく伝えておくよ」

 

「すまんな、いつも」

 

「お互い様だよ、トレーナーくん。それに君は、これからやっと休暇だろう」

 

「相伴に与るだけだがな」

 

 温泉旅行からの、3年目を終えてこれからのプランを説明するための親への挨拶。

 そういうことに、なっている。

 

「それにしても君には君なりの考えがあったのなら、なぜ私に相談しに来たんだ? 無論相談してくれるのはありがたいし、頼られるのは悪い気分じゃないが」

 

「お前と話していると思考がまとまる。それに――――」

 

「それに?」

 

「来年は……いや、もう今年かな。とにかく、次はお前がそうなる」

 

 相変わらずなんの根拠も示さない断言である。だが『東条隼瀬が無責任にも保証する』というそれ自体がシンボリルドルフにとっては大きな証拠であり、確証を持てる材料になりうる。

 

 それを彼は知っているのか、どうか。

 

「まあ、現在図らずも全盛期を迎えつつあるから、私は。もっとも――――」

 

 衰退前の最後の余光というべきだろうが、と。

 もう結構な期間第一線で活躍していることと、うちに秘めた爆発的な力と折り合いをつけるためには精神的な若さが必要であることを知っているシンボリルドルフは、少し寂しげに呟いた。

 

「いや、お前は永遠に全盛期だよ」

 

「相変わらずだな参謀くん!」

 

 結構いい感じに変化したのにそこは変わってないのか!

 キレッキレなツッコミを披露しながら、彼女は笑った。

 

 底抜けに信頼されているというのは重みにもなるが、その重みが今は心地よかったのである。




141人の兄貴たち、感想ありがとナス!
198人の兄貴たち、評価ありがとナス!

エピローグは短いです。


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エピローグ:3年後の私

 以前手に入れた福引の特賞の消費、3年間を駆けてきたが故の疲労の解消。

 このあたりを目的に、温泉旅行は計画された。

 

 当てたのだから、使わないともったいない。そういう世帯的な感覚は、金銭面において鷹揚さを見せる東条隼瀬にもある。

 

「どうやらこの温泉は単純温泉……一般適応症、神経痛、 筋肉痛、健康増進などに有効らしいです」

 

 サイトを閲覧してその効能などを確かめながら、ミホノブルボンは耳を外内に動かし、パタパタと尻尾を揺らしながら言った。

 

「マッサージ、アロマサロンなど全9種類のリラクゼーション施設が併設。夕飯は季節の食材を使った懐石料理です。 目玉は特選和牛の鉄板焼きとなっています」

 

 そんな彼女をちらりと見て、参謀はライスシャワーの初GⅠ制覇となったジャパンカップのレース映像から目を離して、ちらりと見た。

 いつもの柔らかそうな鉄面皮とは違い、やや口角が上がっている。

 

「楽しみか、ブルボン」

 

「はい」

 

 尻尾を見ればわかることをわざわざ訊く。そんな自分を見つめ直して、東条隼瀬は自らを笑った。

 

「俺も随分、口数が多くなったものだな」

 

 パチパチと、こちらを見る青い瞳の中で星が瞬く。

 ミホノブルボンはこの三年というもの、比喩でなく毎日、四六時中この男の側にいた。彼の変化はある日突然変わったと言うよりも徐々に変わっていったものであるから、彼女はそういった人格的変化に鈍感にさせられていたのであろう。

 

 パソコンから視線を逸して虚空に向け、口を半開きにした――――どうにもアホっぽい顔を晒しているミホノブルボンはおそらく過去ログを漁っているのだろうが、そうでもしないと気づかないほどゆっくりと、彼は変化してきたのだ。

 その変化をもたらしたのはきっと――――いや間違いなく、時折表情から爆裂に知性を喪失させる少女だった。

 

「過去ログデータ、出力完了。確かにマスターは私と出会ったときよりも表情の柔らかみが34%、口数が29%上昇しています。この変化は『三年間の経験』がもたらしたものと推定」

 

「結構明らかな結果が出たな」

 

「はい。ですが、私も同じく表情の柔らかみ・口数において指標の上昇を確認。自己を俯瞰できないため具体的な数値は出せませんが、これは……」

 

 少し、目をそらす。

 並の人間ならば気恥ずかしくなるほどまっすぐ、本当の意味で人の目を見て話す――――これは彼女が幼い頃、父に受けたオーダーを頑張って墨守しているのだろうが――――彼女にしては珍しい視線の動きだった。

 

「これは、マスターと私をつなぐ『目に見えないもの』。絆、信頼、言語化できない不確かなものが深く、濃く、太くなったからと……推測します」

 

 これまた珍しく、語尾が縮む。

 彼女は基本的に一本調子で話す。抑揚がないというわけではなく、必要な抑揚をつけつつ、話しているうちに声が大きくなったり小さくなったり、緩急をつけるということをしないのである。

 ルドルフなどは、それを良くする。しかも、意識的に。伝えたい箇所の前で音を絞り、伝えたいところでほんの少し音を上げて緩急を効かせる。大声で傾聴状態に入っている脳を驚かすことなく、沁み入るように話すのだ。聴かせている誰かの頭に強く残るように。

 

 シンボリルドルフは、言いたいことがわかりやすい。演説じみている。

 ミホノブルボンは、言っていることが聴きやすい。システムメッセージじみていた。このときまでは。

 

「推測か」

 

「はい。マスターは……どう思われますか?」

 

「俺は推測ではないと思う。というか、今思った。なぜなら、俺もそう思っているからだ。これが第三者を巻き込んだ問題であるならばともかく、一対一の人間関係ならば互いが同じことを推測しているのであれば、確信を持っていいのではないか」

 

 俺は推測ではないと思う。と言ったあたりでしょぼんとなった耳が、ハリを取り戻してピンと立つ。かなり激しく、凶器と形容していいほどの威力があると推測される尻尾がベッドをひっぱたいている。

 

「仲良しですね、マスター」

 

(精神年齢の退行が著しいな、こいつ。緊張から解き放たれたから、なのか)

 

 パソコンをベッドに置き、もう完璧に犬っころと化してトコトコ寄ってくる栗毛の少女の本来の姿がこれなのだろうと思うと、その精神的負荷が相当なものであったと推測できる。

 

 そう、これは推測だった。

 飼い主が帰ってきたときの犬のようなミホノブルボンの頭をわしゃわしゃと雑に撫でながら、温泉旅行の概要を見る。

 

 一泊二日である。

 泊まる旅館と日程が決まっているだけで、それ以外に特に決まっていない。

 

(骨休めに行くのだからそう予定を詰め込んでもよろしくない、か)

 

 旅館でだらだらと過ごす。

 彼には珍しい余白の多い計画を立てて、二人は夕方頃に旅館に到着した。

 

「マスター。鳥が飛んでいます」

 

(何故こいつは度々口をぽかーんとするのだろうか)

 

 バグかな。

 

 そんな思いと共に、『はえー』とでも言うように開いた口の中にバス内で食べるためのじゃがりこを突っ込んで、鳥を見る。

 やはり田舎だからか空は高く、空気は澄んでいる。実に楽しそうに、鳥が飛んでいるのもわかろうというものだった。

 

「ごちそうさまでした、マスター」

 

 カリカリもぐもぐとやっていたブルボンが、右手を前に突き出すいつものポーズで報告を終える。

 『HANRO』とプリントされたシャツの上から一枚白い上着を羽織り、脚のラインがよくわかるズボンを穿く。まるで中学生男子のようなファッションだが、醸し出される精神年齢との均衡が取れているからか、実によく似合っていた。

 

「今日の行動目的は?」

 

「疲労を抜くこと。羽を伸ばすことです」

 

「その通り。我々は実に頑張ってきた。これは自他共に認めるところだろう。したがってここでは成果に見合った蓄積を強いられた疲労を抜き、羽を伸ばし、来年からに備えることだ。わかるな」

 

「はい。オペレーション『疲労回復』を実行します」

 

 ひとつ頷く。

 ミホノブルボンは今季、8レース走った。去年に比べて1つ増えたことになり、なによりも海外遠征したという事実が疲労に拍車をかけている。

 彼女は実に頑丈な身体をしているが、それは疲労がたまらないということでもなければ怪我をしないということでもない。

 

 怪我につながる閾値が高いというだけなのである。

 

「よろしい。では風呂から出たら部屋で会おう。荷物は俺が運んでおく」

 

「では、帰りの荷物は私が」

 

「そうしたいならそうするといい」

 

 ガラガラと両手に荷物を持って旅館の一室に向かっていく背中を見つめて、ミホノブルボンは左手に抱えた着替え一式を見てから温泉の方へ歩き出した。

 無垢なままにここに来ては『ステータス:迷子』になる可能性もあったが、ちゃんと色々調べてから旅館へ来ている。その部屋割・温泉への道はきちんと頭に入れていた。

 

「身体はどうだ」

 

「少し軽くなったような気もしますし、重くなったような気もします。現在のステータスは『眠気』と推定」

 

「では寝るといい。食事になったら起こしてやろう」

 

 敷かれた布団の上で胡座をかき、パソコンを開いてなにやら書き始める男の隣に布団を敷いて、ミホノブルボンは掛け布団をミノムシの蓑のようにして横たわった。

 

「マスター。ここで寝てもよろしいでしょうか」

 

「お前、断られることを想定していないだろう」

 

 散々無断で用意しておいてよくもまあ。

 半ば笑いながらそう思い、視線をちらりと部屋を区切る障子に向ける。

 一応この部屋は障子で区切られている。だから障子を挟んで左でミホノブルボンが、右で東条隼瀬が寝られるようにと、そうなっているわけである。

 

「……マスターの側にいたいと、そう思っています」

 

「まあ別にいい。好きにしろ」

 

 ぺこりと頭を下げて、もぞもぞと布団の中に顔を埋めていくミノムシブルボンの耳だけがぴょこりと布団の蓑から顔を出している。

 耳にオーダーが入れば即座に意識を覚醒させることが出来る彼女なりの配慮だろうと知りつつも、いかにも奇妙な光景ではあった。

 

(3年後)

 

 布団にくるまれながら、ミホノブルボンは思いを馳せた。

 3年前の自分は、今の自分の姿を予想してはいなかった。だから3年後の自分を、今の自分が予想できるはずもない。

 

 マスターは言っていた。引退後のことも考えておこう、と。

 彼はトレーナー。自分はアスリート。引退したら、関係はそれで終わり。卒業して、時々会う。それだけの関係になる。

 

 それは、想像できない。したくない、と言い換えたほうが適切かもしれない。

 

「起きろ」

 

 ぐるぐると埒もない思考を回しながら寝入ったミホノブルボンは、その一言で意識を覚醒させた。ごろごろと横に転がって布団の蓑を解き、立ち上がる。

 

「マスター。ミホノブルボン、起床しました」

 

「あと30分程度で食事だ。起き抜けで食事するよりも、多少身体を動かしてからのほうが良かろう」

 

「お気遣い、感謝します」

 

 布団に包まれていたが為にちょっと乱れた浴衣を直し、窮屈さに耐えかねたように尻尾が揺れる。

 

「少し散歩にでも行こう。旅館をぐるりと回るくらい、軽くな」

 

「はい、マスター」

 

 ぎゅっと、手を握る。

 自分の手を握ってくれたこの手は、いつまで握り続けてくれるのか。自分はいつまで、この手を握り続けられるのか。

 

 透き通るような黒曜色の空を見ながら散歩をしても、豪華な料理を食べても、ミホノブルボンのそんな疑問と不安は晴れなかった。

 

 ずっと一緒にいたい。

 その心が、家族としての――――父に向けてるそれと同じものなのか。そうではないと、ミホノブルボンは思っている。だがそこに確証はないし、確信もない。

 

 その気持ちに気づくとき、あるいは同一視をやめるときは、刻一刻と近づいていた。




59人の兄貴たち、感想ありがとナス!

hamu兄貴、7777777733兄貴、指ホチキス兄貴、gishi兄貴、ビステイン兄貴、JACKs兄貴、FRISK01兄貴、umasika兄貴、tm2兄貴、jon兄貴、ノック2317兄貴、羅船未草兄貴、タッツ24兄貴、瀬戸 内海兄貴、くろばる兄貴、ポイジ兄貴、マグロ3号兄貴、ジャイル兄貴、うぃってぃー兄貴、nekoneko兄貴、評価ありがとナス!


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ラストオーダー:貴方はマスター

18時に新作投稿します。
あと、この話を読み終わったあと、ぜひデルトラクエストのed『ユビキリゲンマン』をフルで聴いてほしい。それがこの作品の個人的なエンディングテーマです。


 茨城県のやや辺鄙な田舎。

 穏やかさとおおらかさが窺い知れる起伏に富んだ路を走破しながら、青い車がウマ娘の形をしたカーナビの指示に従いながら目的地へと進む。

 

「前方24メートルを右折です。マスター」

 

 言葉と共に指がさされるたびに、突き指するんじゃないかとヒヤヒヤする。それほどの揺れに耐えながら、東条隼瀬は言われた通り右折した。

 尻が浮くほどの原初のままの坂を越えて、タイヤで水を吸い込むための金属の網を踏む。

 盛大な金属音と共に、グレーチングを浮かせながら久方ぶりにアスファルトを踏み、そして着いた。

 

「安全運転がモットーだったのだがな」

 

「実際マシな方だと思いますが……いえ。マシで満足できるならば、マスターはもっと器用に生きられていますね」

 

「言っている途中で対話相手の人格的特徴のリバイバルに成功したようで何よりだ」

 

 電車で行こうか、と。

 そう誘って、見事に断られた。ミホノブルボンとしては、車がよかったらしい。まあ思い返してみれば1回目の夏合宿のときもそうだった。車が好きなのか、あるいは人混みが嫌いなのか。

 

 どちらにしても、充分理解を示せる理由である。

 

「ブルボン、おかえり」

 

「ただいま帰りました。お父さん。こちら、マスターです」

 

「隼瀬くんも。時間通りだね」

 

「お久しぶりです」

 

 自分のマスターが深々と頭を下げたのを見て、ミホノブルボンはやや驚いた。

 

「まあ、上がってください。ブルボンも、おいで」

 

 そう言って、趣と温かみのある古民家――――バルコニーがついているそれに入っていくやや小さめの体躯を見送って、ミホノブルボンは隣を見上げて話しかけた。

 

「面識がお有りでしたか」

 

「3回な」

 

「3回」

 

「契約すると決めたとき。クラシック三冠を取ったとき。あとは、海外遠征に向かう前。挨拶、報告、交渉と、それぞれ訪ねた意味は違うがな」

 

 ずいぶん熱心な人だ。

 心の中でこれ以上上げようがない彼への評価を底上げして、ミホノブルボンは素直な感想をポロリとこぼした。

 

「意外でした。マスターはお忙しいですし、電話のみであったかと」

 

「お前、俺を非常識人間だと思ってるんじゃないか? 娘の夢を預かるとき、達成したとき、そして海外くんだりにまで連れ回すとき。礼儀の面でも義理の面でも、やはり直接挨拶をすべきだろう」

 

「いえ。少なくとも私は、マスターのことを非常識人間だとは思っていません。ただ、マスターの従う常識が果たして世間一般のそれと同等同質のものではないだろう、とは思っています」

 

 靴を脱ぎ並べて、肩をも並べて廊下を歩く。

 ミホノブルボンから感じられる自分の影響、自分の影に辟易しつつ、東条隼瀬はため息をついた。

 

「俺は悲しい。あの純真無垢だったブルボンが悪い男の影響を受けて……」

 

「私としては、そう悪い気分ではありませんよ。そしてまた、娘にとってもそうであろうと思います」

 

 右ではなく、前。廊下の終わりの広間から、その声はした。

 予想外のところからカッ飛んできた返事に肩を揺らして、東条隼瀬は頭を下げる。

 

「申し訳ない。品行方正とは程遠い素行に加えて、この通り口が悪いもので」

 

「品行方正な方もいいでしょう。ですが貴方と娘のやり取りは聴いてて飽きない。エンターテイメントとして、中々のものです」

 

 それに、と。前置きしてから心から嬉しそうな柔らかい笑みを見せて、娘の成長を喜ぶ父親は言った。

 

「娘を成長させていただいて、本当に嬉しいのです。私はなんと言うか……娘に他人との関係を紡ぐすべを教えられなかった。ニュースで度々見ましたが、今や娘には多くの友がいて、尊敬すべき先輩もいる。それはまぎれもなく、貴方のお陰です」

 

「そうですよ、マスター。誇ってください」

 

 ドヤ顔。というか、フフン顔か。まあどちらにしても、実家に帰ってホームアドバンテージを手にし、気が大きくなっているらしかった。

 

 そんなレアブルボンを見て、穏やかながら巌のような固さのある顔が緩む。

 

 ――――ああ、やはりこのひとはミホノブルボンの親なのだ。

 

 それは、そう思わせる表情の緩み方だった。

 

「まあ、お座りください。ブルボンも、好きなところに座りなさい」

 

 家の広間に通され、机を挟んで向かい合う。

 お座りくださいと指し示された席の隣に当然のようにちょこんと腰を下ろしたミホノブルボンをちらりと見て、東条隼瀬は座布団の上に座った。

 

「お父さん。依頼されていたお土産です」

 

「ありがとう、ブルボン」

 

 ブルボンが渡したのは、特選にんじんパン。

 

 それなりに高かったはずである。確か、ワンコインに収まる範疇ではあったが。

 にんじんパンというだけあって、ウマ娘の味覚に合うように作られている。尤も人間の料理がウマ娘の舌に合うように、にんじんパンも人間の舌には合う。

 

 だが、好んで食べるかといえば、違う。

 

(妹でもいるのかな)

 

 見たこともないし、聴いたこともないが。あるいは親族にいるとか、そういうことかもしれない。

 

「まあ、くつろいでいてください。飲み物を持ってきますから」

 

「感謝します」

 

 その言葉に軽い会釈が返され、特選にんじんパンを持ったブルボンパパは駆けていく。

 その背を見送って、東条隼瀬は隣のブルボンの耳にこそこそと寄り、問うた。

 

「お前、妹でもいるのか。それか、親しい親類でもいるのか」

 

 親しい親類はいない。

 ミホノブルボンはそう言っていたが、もし万が一言い忘れた、とかなら間違えて処理してしまったかもしれないのである。

 

「いえ。マスターがそう訊かれるのは、特選にんじんパンが気になったから、でしょうか?」

 

「そうだ。別に他人の味覚に文句をつけるわけではないが、あれはウマ娘に合うように作られたものだろう」

 

 ピコピコ揺れる耳に鼻先をかすめられながら、東条隼瀬はなおも続けた。

 学者肌というか、気になったものをそのままにしてはおけない性分をしていたのである。

 

「お父さんのお嫁さん。つまり、私の母に当たる、今は亡き女性の好物であったそうです。レースに勝った時――――もっとも、片手の指が余る程の勝利しか挙げられなかったそうですが、そのときに買ってあげていた、とか」

 

 となると最高でも、4勝。

 残酷な世界だと、つくづく思う。文明の発展と共に理性と制度によって塗り固められた原初の残酷さが、レースにはある。

 

 弱肉強食、優勝劣敗。全力を賭してもなおあまりにも覆し難い、そんな論理。

 

 そんな論理に屈さず戦い抜き、そのご褒美として買い与えたのだろう。そしておそらくは、勝利と同じく、パンを分かち合ったのだ。

 

 そしてもう、分かち合うことはできない。

 決定的なものが、勝利と敗北を分かち合ってきた二人の間を引き裂いたから。

 

「……悪いことを訊いたな」

 

「いえ。記憶に有りませんので、お気になさらず」

 

「それでもだ。無神経だった」

 

 俯いた顔、握り締められた手。

 悔やんでいるであろうゴツゴツとした手に触れて、握る。

 

 驚いたような鋼鉄の瞳と星の瞬く青い瞳が交錯したところで、家主がゆっくりと帰ってきた。

 

「寒いですからね。緑茶でもどうですか」

 

「ありがとうございます」

 

「ありがとうございます、お父さん」

 

 両者同じく礼を言い、湯呑を取る。飲んで一息ついてから、二人はほぼ同時に机の上に緑茶を置いた。

 

「さて、今回はどんなご用件でしょうか」

 

 その言葉が自分に向けられたものではないという事を、ミホノブルボンは知っていた。

 

 ついでに帰っておいで。

 あと、そのまたついでに特選にんじんパンを買ってきてほしい。

 

 そういう頼みを、彼女はお父さんから受けた。あくまでも主眼は彼に置かれているのだ。

 

「まずは、お詫びを。私のための海外遠征でご迷惑をおかけしたこと、申し訳ございません」

 

「ああ、それは構いませんよ。私もトレーナーの端くれでしたから、いなし方も慣れています。ブルボンも納得して、貴方の頼みを実行したのでしょうし」

 

「ありがとうございます。本当にこの娘は、私には勿体ないウマ娘です。人の心の機微に細やかで、普段はともかく肝心なところでは間違えない。どんな苦しいことも、夢の為に貫徹する意志力がクローズ・アップされがちではありますが、私としてはこの細やかさに救われました」

 

「その細やかさは娘本来のものですが、磨き上げたのは貴方です。貴方の行動の結果が、貴方をより良い方向に導いたのでしょう。むろん、ブルボンの努力あってのものですが」

 

 お父さん。

 マスター。

 

 マスター。

 お父さん。

 

 お互いがお互いを尊重し、敬っている。

 そんな二人の会話は終始穏やかに進んだ。

 これからも担当させていただく、という報告では二人とも深々と頭を下げ合い、釣られてブルボン自身も下げてしまったくらいである。

 

 陽が昇りきってから落ちはじめ、話もそろそろ尽きようかというところで、東条隼瀬は彼にとっての本題を切り出した。

 

「……今日は個人的な願いを聞き届けていただきたいと思ってきたのです」

 

「なんでしょう」

 

 ぴょい、と。ミホノブルボンの心臓が跳ねた。無論物理的に普段の動作から逸脱した反応をしたわけではなく、緊張のあまりそう感じただけである。だが彼女には、その緊張の理由がわからなかった。

 

「トレセン学園で、教鞭をとっていただけないでしょうか。ブルボンが栄光を掴み得たのは、貴方が無私の心で基礎を固めていたからです。私などは、極論貴方の功績を剽窃したに過ぎません」

 

 そしてマスターのこの言葉に少しがっかりした理由も、わからなかった。

 

「評価していただけて光栄ではありますが、それは言い過ぎというものでしょう。ブルボンの栄光は、貴方あってのものですよ。それに私は、古い人間です」

 

「では、無理でしょうか」

 

「ええ。私が30年若ければ、望まれなくとも貴方の力となることを使命にしたでしょう。もっとも大した才能もありませんのでお邪魔かも知れませんが」

 

 少しおどけて見せて、微笑む。

 枯れかけの大樹のような重厚さと淋しさが入り混じった独特の風韻を見せられ、まだまだ20代のひよっこは少し怯んだ。

 

「ですが……今の私は、ここに居たいのです」

 

「それは……」

 

 貴方の妻のことか、と不躾に口にしない程度の気づかいは、彼にもできる。というか、できるようになった。

 

「どうやら、ご存知のようですね。私がここから離れると、妻が悲しむ。寂しがる。そして私も、トレセン学園に行けば悲しくなるし寂しくなります。18年で、やっと家に染み付いた悲しみに慣れました。ですがトレセン学園は……」

 

 だからか、と。思った。

 これほど娘を愛していながらも、決して直接見に来なかった理由。

 

 ミホノブルボンは、お父さんとダービーを見に行ったのだという。だがそれ以外に、レースを見ただとか、そういう経験談は聴いたことがない。

 これほど娘の為を思う親であれば、レースを直接観戦させるはずだ。空気を感じさせるはずだ。そうすれば経験になり、モチベーションにもなる。

 

 それはつまり、そういうことなのだ。

 

「さあ、話も済んだことですし、バーベキューでもしましょうか。食材と機材はもう、バルコニーに運んであります。食べ終えましたら、今夜は泊まっていかれるといいでしょう」

 

 話は終わりです、とやんわりと切られ、それに従う。

 その後はバーベキューを楽しみ、ブルボンがパックパックもっきゅもっきゅと食べる姿を見つつ大いに愛で、就寝し、そして夜が明けた。

 

 挨拶を交わし、別れる。

 自分がこの家まで赴いたとき、教官としての教えをつけていただけませんか、という願いを快諾してくれたのは、断ったことへの罪悪感があったからだろうか。そうしたら自分は、その罪悪感を利用したことになるのか。

 

「惜しい」

 

 駐車場へ進む途中。

 遠ざかっていく手を振る姿を、一瞬見返して呟く。

 

 そう口にするのが侮辱であり、不躾であり、無神経であるとわかっていても、そうとしか言えない。

 肉親を教育するのは、他人を教育するよりも難しい。そんな中でミホノブルボンと言うウマ娘の強靭な心身を鍛え上げたその手腕には、瞠目すべき点がある。

 

 隣でおとなしくしているミホノブルボンはその言葉に気づいたのか、あるいは気づいていないのか。どちらにしても、彼女は受け流していた。

 

「大切なものを喪うというのは、やはり大変なことなのだろうな」

 

「マスターは、経験がお有りですか?」

 

 実感のこもった言葉に問いを投げて、ミホノブルボンは少し不躾かな、と自らを恥じた。

 だが不躾の本家本元である彼は特に気にすることもなく、だが悲しげに一言もらした。

 

「ああ。犬がな」

 

 子供が生まれたら犬を飼いなさい。

 子供が赤ん坊の時、子供の良き守り手となるでしょう。

 子供が幼年期の時、子供の良き遊び相手となるでしょう。

 子供が少年期の時、子供の良き理解者となるでしょう。

 そして子供が青年になった時、自らの死をもって子供に命の尊さを教えるでしょう。

 

 誰かがどこかで、そんなことを言った。そしてたいていのトレーナーの名門は、これを実践している。

 死に別れではないにしろ、ウマ娘とトレーナーには別れが待っている。

 

 3年間を終えて、結果が出せずに別れることもある。

 3年も保たずに、怪我などで別れることもある。

 

 そしてどんなに理想的なキャリアを描いても、10年、20年と共に過ごすことはできない。それほど、ウマ娘が全力で走れる時間は長くはない。

 

 東条隼瀬は、共に育った犬を失った。老いて手の施しようがなく、今日明日だと言うときに一緒に寝て、起きた。今日も一日生きていられるかななどと言ったときに、犬は頬をひと舐めして、笑って死んだ。

 笑って死んだのは、感傷的に見ているからかもしれない。だが、そう思った。そう思わなければやっていけなかったのかもしれないが。

 

「ブルボン」

 

「はい」

 

「お前は、俺より長く生きろ」

 

「それがオーダーであれば」

 

「命令じゃない。お願いだ」

 

 それはいつかのレースの前。勝ってこいと言われたその時の言葉を、そっくりひっくり返したものだった。

 

「努力します」

 

「それでいい。我ながら、少し――――」

 

 感傷的になり過ぎた。

 

 色々なことを、想像しすぎた。重ね過ぎた。はじまりがあれば終わりがある。そのことを強く意識し過ぎたのだ。

 

「さみしいだろうに、悪いことをした」

 

「お父さんは……たぶん、少し時間を置いたらトレセン学園に来ると思います。マスターに会いに。きっかけを作ってくれたことに、感謝していると思います」

 

「自ら傷口をえぐるようなものだろう」

 

「痛くても、泣きたくても。それでも、忘れてしまうよりは遥かにマシです。それは、マスターも知っていると思います」

 

 心当たりは、2つほどある。

 だが彼はそれを口にする気には、ならなかった。

 

「マスター。話したいことがあります。はじまりを通り過ぎ、そして終わりにつく前、今だからこそ。言っておくべきことがあります」

 

「どうした」

 

「私は、マスターとお父さんの違いがわかりませんでした。どちらにも同じくらいに、同じように愛されていると思っていました。なぜなら」

 

 何かを言いたいのだと察して、東条隼瀬は合いの手を入れることすらせずにちらりとミホノブルボンを見た。

 蛹から脱皮しようと身をよじる蝶のように、少女は女性になりつつある。

 

「私は、マスターのことをお父さんのようだと思いました。初めて会った、あの日。私の夢を肯定してくださったあの日から、私はマスターとお父さんを重ねていました。なので私は一歩後ろで、マスターについていくことを選びました。お父さんは、私の前に居てくれたからです。私はそれ以外の付き合い方を知らなかったということもありますが、それが正しいと思ったのです」

 

 少しだけ、後ろに。

 歩くときも、車でも。ほんの少しだけ後ろを歩く。

 

 お父さんにしていたように。お父さんとしていたように。

 

「ですが私は、マスターの隣を歩きたいと思うようになりました。そして今、そうしています。やはりマスターとお父さんは、違うと。私は、そう思います」

 

 パチリと、眼が瞬く。

 少女としての煌めきが消え、女性としての光が灯る。

 

「どうか、これからも。私と歩調を合わせて、歩いていってください。置いていかず、置いていかれず。貴方の隣を歩く事を、許してください」

 

「……当たり前だ。俺はお前のマスターだからな」

 

 こくり、と頷く。

 先に行こうとする彼の裾を握って、押しとどめて、そして並んで。

 

「はい。貴方は、マスター。たったひとりの、大切な。とても大事な、マスターです」




東条隼瀬とミホノブルボンはこれからも不器用に一歩ずつ歩き続けることでしょう。
ですが一旦、物語はこれで終わりです。


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日常編
アフターストーリー:休眠


過去編IFことスズカチャート(https://syosetu.org/novel/270068/)の息抜き投稿。アオハルと言いつつ、不定期更新の日常編です。


「大した精神力だ。自分の管理不足でウマ娘を故障させ、あまつさえ引退に追い込む。俺だったら自決しているところを見事に生き延び、新たなウマ娘を担当している。管理の手腕に於いても、その緩急の付け方に於いても負ける気はしないが、再び立ち上がる精神力にかけては俺の負けだろうな」

 

 それはおそらく、純粋な称賛だった。心の底からの、自分が持ち合わせていない長所に対する称揚。

 だがそれが100%、表に表れるとは限らない。

 

「なるほど、わかりました」

 

 新たに着任した理事長代理の、徹底した管理主義をこそ至高とする挨拶を聴き終えての一言。

 それを聴いて、ミホノブルボンは耳を左右に揺らしながら頷いた。

 

「なにがだ?」

 

「マスターが絶好調である、ということがです。それもあらゆる面で」

 

「そりゃあ新年度くらいは絶好調にもなろうというものだろう。なにせ休みを終えた状態。すなわち、疲れていないのだからな」

 

 星の瞬くような瞳に冷気を満たして、ミホノブルボンは斜め前に立つ男の背中を刺し穿つように見た。

 温度にしてマイナス17度くらいありそうなそれを華麗にスルーするあたり、参謀と呼ばれる男の背中の皮の厚さが窺い知れる。

 

「論文の発表で各地を飛び回ることを休みというのは、寡聞にして知りませんでした」

 

「これから学べばいいことだ、ブルボン。お前はまだ若いのだからな」

 

「マスター。これは皮肉と言うものです。オペレーション『お休み』を提案したのに、マスターは午睡を貪ることすらしませんでした」

 

 ブルボン。休むために、俺の言う通りにタイプしてくれないか?と言われて、ミホノブルボンはふんすと了承した。

 その間、少なくとも身体は休めてくれると思ったからである。だがそんなことはなく、彼は口から一本目の論文の内容を話し、そして手では二本目の論文を書くという雑技団の曲芸じみた行為に及んでいた。

 

「鉄は熱い内に打て、と言うだろう。来年はちゃんと休むさ」

 

 来年も同じことを言ってそうだなぁと、ミホノブルボンは瞬時に思った。

 彼女はマスターとして仰ぐ彼のことを、能力的にも人格的にも信頼している。しかし信頼しているからこそ、見えることもある。信頼と盲従はイコールではないのである。

 

「マスター。私は今年休んでほしかったのですが」

 

「大丈夫だ、今年は暇だからな」

 

「サブトレーナーに戻るからですか」

 

「そう。二人ではチームは作れない。組織としては例外をそう簡単に認めるわけにもいかないであろうから、これは必然というべきだろう」

 

 見た目は吸収合併された形になるが、実質的には去年通り、個人に対する専属トレーナーのままである。もっともその個人が、今年はひとり増えるわけだが。

 

「ですがカノープスなどは3人でしたし、スピカも数年前は1人であったとか。2人でも問題ないのではありませんか?」

 

「結成時には5人だったのだ。例年ならお目溢しがあったかもしれないが、今年はな」

 

 アオハル杯がある。

 そもそも5人以上いないとチームを組めないというのが、アオハル杯があることを前提とした制度だった。

 その制度はアオハル杯が無くなってからというもの骨すら残らないほどに形骸化しきっていた――――5人未満になれば解散というルールは、今や公然と無視されている――――わけだが、今年からアオハル杯が復活した。

 

 よってその骨すら残らない制度がにわかに肉付きを取り戻し、墓から生き返ってきたわけである。

 

「……で、スズカは?」

 

「多分どこかを走っていると思われます。現在地の特定は不可能と推定」

 

 くるくると、謎の動力で動いている髪飾りが回り、右手を前に突き出すいつものポーズを取る。そんなブルボンはいつも通り、後ろからてこてこと付いてきていた。

 

「だろうな。まあ別に困ることもないし、それでよかろうさ」

 

「管理しなくてよろしいのですか?」

 

「誰にとっての不運かは知らんが、あいつは他者に管理されるような才覚をしていないのでな」

 

 まあそれはそうだろうなと、ミホノブルボンは思った。管理されるにも、才能が要る。少なくともその方面の才能に関しては、自分の方に軍配が上がる。

 

「昔の俺はよくもまあ、こんなことをやろうとしたものだとつくづく思う」

 

 日々、彼女の自由意思によって変化する脚の消耗具合や状況を常に把握し続けてプランを柔軟に変更する。

 まあできなくはないが、普通はやろうとは思わないだろう。管理する方が遥かに楽である。少なくとも、今の自分にとっては。

 

「ですがかつてのマスターにできていたのですから、今もできるのではないですか?」

 

「できないとは言っていない。やるさ。引き受けたのだからな」

 

 サブトレーナーは常に、トレーナーになることを夢見て働く。そしてトレーナーとして担当したウマ娘が重賞を勝つことを、ひいてはGⅠを勝つことを、更にはいずれかの三冠をとることを求めるものである。

 

 だが現実は必ずしも、夢のようにはいかない。トレーナーとして独立してもうまく結果を出すことができず、それを繰り返す都度心が折れ、サブトレーナーとしてトレーナー人生を終える。あるいは、地方に左遷される。

 そういうトレーナーも多いのである。故に彼が選んだ道は――――つまり、トレーナーとして成功を収めながらもリギルのサブトレーナーとして再び帰ってくるというのは、極めて稀なことだった。

 

「ということで、今季から新任のサブトレーナーになった。東条隼瀬だ。東条、挨拶」

 

「東条隼瀬です。よろしくお願いします」

 

 公私を分けるタイプの東条ハナのキッパリとした語気に押し出されるように一歩前に出て、東条隼瀬は4人のサブトレーナーと少数精鋭を謳う、見覚えのあるウマ娘たちの前に出て挨拶をした。

 

「彼には実績もあり、経験もある。更に言えば、これまで担当してきたウマ娘を引き連れての加入だ。故に彼にはそれなりの規模の分隊を率いてもらうこととする。異論があるならば聴きたいが……」

 

 ぐるりと、左右に視界を振る。

 サブトレーナーにもウマ娘にも、さしたる異論はなさそうである。こういうときはトレーナーというものが先輩後輩をあまり気にせず、ただ実績によって目上目下を決める残酷な世界であることが役に立つ。

 

 少なくとも未知を切り開いたという点において彼に勝る実績を持つ者はこの場にいないし、重賞勝利数にしても通算4桁を目指す東条ハナくらいしか対抗できるものはいなかった。

 

「ないようだな。ではルドルフ。お前がお目付け役をして、暴走すれば防げ。身体のこともあるからな」

 

「わかりました」

 

「そしてアオハル杯についてだが、さすがに私もそこまでは手が回らん。東条、お前に任せるぞ」

 

「安んじて、お任せあれ」

 

 頷き合う。ただそれだけで自分の職権の一部を移譲した東条ハナは、ルドルフを除いたウマ娘たちを朝練に送り出した。

 サブトレーナー内2人を残し、あとの2人は朝練に向かったウマ娘たちの監督に赴いたのだろう。

 

 聴く分には実に珍しいルドルフの敬語。

 興味深げに耳をピコピコさせるミホノブルボンを後ろに引き連れながら、東条隼瀬はいつも通りの部室に戻った。

 

 ワインを入れる革袋を変えただけ。あるいは、表札を変えただけ。

 ミホノブルボンと言う個人でトゥインクルシリーズという大海原を荒らしまわった戦艦が、リギル無敵艦隊の分艦隊の旗艦になった。その程度の変化であった。

 

「おかえり、参謀くん」

 

「ああ、ただいま」

 

 オフの間にそれなりに広くなるように改築された部室には、リギル本隊の部室と比べてもその広さからして遜色はない。

 しかし、ミホノブルボンとの3年間を過ごした面影が未だ多分に残っている。

 

 改築というよりも、増設と言ったほうが適切であろうその工事は、改築を提案された彼があえて頼んで行ったものだった。

 その理由は、よくわからない。なんとなく嫌だった。そんなふわふわとした理由である。

 

「アオハル杯の初戦は12月か。遠いな」

 

 因みに今は3月である。本来のアオハル杯は半年に1回、すなわち6月と12月に開催される。

 

「仕方ないだろう。半年でチーム戦をできる程の規模にせよと言われてできるチームはそう多くはないし、そのそう多くはないチームにしてもチーム戦のなんたるかは半年では叩き込めまい」

 

「事前に戦略を立てればいい。要は3つの個人プレーが相互にうまく交錯するようにしてやればいいのだ。違うか?」

 

「それができるトレーナーは、そう多くはないよ」

 

 教え諭すようなルドルフの言葉に首を傾げつつ、参謀らしさを取り戻しつつある男はペンをくるくると左に回した。

 

「取り敢えず、有馬記念に出ないウマ娘を出走登録させるべきだろうな。負担がバカにならん」

 

 1年のはじめにローテーションは考えるが、その通りに行くことなど滅多にない。

 参謀としては無論その通りにいかせることが自分の使命だと思っているが、実のところ彼はそれほど自分の才能を信じていなかった。

 

「では、長距離は私がやろうか。自薦になるが、なかなかのものだぞ」

 

「助かる。が、いいのか?」

 

 有馬記念は。

 そういう意味を含めた言葉を正確に読み取って、シンボリルドルフはクスリと笑った。

 

「3度目を欲する程飢えてはいないよ、私は。今年の予定は海外挑戦くらいなものだし、アオハルの最長距離は2500メートルから3600メートルだと聴く。どうブレても、私であれば対処できると思う」

 

「そうか。ではあとはどこで2勝するか、だな」

 

「あと2勝でいいのかい?」

 

 どうせなら全勝しようじゃないか。

 そういった意味を含めた問いだったが、参謀は珍しくその意味を取り違えた。

 

「誰かさんのおかげで長距離の勝ちが確定したからな。あと2つでいい」

 

「おや。これは万が一にも負けられないな。君の信頼を裏切ってしまう」

 

 からかい気味に言った皇帝のアメシストの瞳に、鋼鉄の瞳から漏れ出る絶対的な信頼が触れる。

 少し緩んだ頬を引き締め直し、彼女はぐぐっと口角を下げた。

 

「万が一を許さないからこそお前は絶対なんだろう、【皇帝】」

 

「――――ああ、もちろんだとも。私は【皇帝】シンボリルドルフ。万が一を潰す杖も、今や我が手の中にある」

 

「おや。これは万が一にも負けられないな。お前の信頼を裏切ってしまう」

 

 彼女が言ったことをそのまま返し、意趣返しとばかりに笑い合う。

 

 ではな。

 ああ。

 

 軽妙に挨拶し合い、それぞれの仕事へと別れる。

 入れ替わるように入ってきたサイレンススズカは、やや頬を上気させながら脚を緩めた。

 

「おはようございます、トレーナーさん」

 

「おはよう。では、見せてもらおうか」

 

「はい」

 

 差し出されたのは、バンドで脚に括り付けていた万歩計めいた機器。何歩ではなく、何キロ走ったか。

 数値化されたそれを見つつ、スズカの脚を触診する。

 

「よし、わかった。今日のメニューは昼にでも渡そう。それまでは座学だ。お前がいない間に出てきたマイル路線の豪傑たちの情報はまとめてあるから、見直しておけ」

 

「わかりました……けど」

 

「けど?」

 

「自由に走っても、いいんですか? 少し抑えることもできますけど」

 

 それはまったくもって彼女らしくない気遣いだった。少なくとも参謀としてリギルに所属していた頃の東条隼瀬と組んでいた彼女は、自我と欲求を抑える気など微塵もなかった。

 

 走りたいから、走る。

 悩むことはあっても、基本的な行動原理は揺らがなかった。

 

「これ以上、俺のせいでお前からお前らしさを奪いたくない。好きにやれ」

 

「……はい」

 

 嬉しそうに。

 しかし少し遠慮がちにそう返事して、増設された部室内のパーソナルスペースに帰っていく。

 

「で、ブルボン。お前は今年出せるレースは多くて4つだ。そして3つは既に出た。つまり残りはひとつとなる。理由は言わなくともわかるだろうが」

 

「脚の疲労ですか」

 

「そうだ。お前はジュニア王者になり、クラシック三冠になり、春シニア三冠になり、そして凱旋門を制し、URAファイナルズも走った。お前だからこそ、このローテーションをこなせたと言える」

 

 酷使に耐え得る頑丈さというものを、ミホノブルボンは持っている。もっともその天性と思われがちな耐久力は、彼女のお父さんとの二人三脚によって得られたものであるわけだが。

 

「しかもただ走ったわけではない。ダービー以後は死闘に次ぐ死闘の連続で、それはただ走るだけでは語り尽くせない負荷となっている。練習は現状の維持に努めて、身体を休める1年になる。それでいいな?」

 

「はい」

 

 ライスシャワーは菊花賞と天皇賞春の死闘の後にかなり休んだ。

 しかしミホノブルボンは同じ死闘を経験しながらも平気な顔して走っていた。それはひとえに彼女が頑丈だからであるが、それは疲労がたまらないというわけではないのだ。

 

「俺は最初の2年間でお前に相当無理な練習をさせた。それはクラシック三冠を達成するために必要な無理だったから、今更後悔する気はない。が、今のお前には粗が多いのも事実だ。ここらで脚を止めて、基礎をしっかり固め直す。それも、お前にとっては必要なことだろう」

 

「わかりました、マスター」

 

 頷く。

 休むということを知らなかった彼女にとっては、またも未知の1年になりそうだった。



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アフターストーリー:結成

「マスター。なにかお悩みですか?」

 

 ミホノブルボンはやや唐突にそう問うた。

 これまで部室は沈黙に包まれていた。シンボリルドルフは生徒会室を長く空けたくないからということで生徒会室に戻り、サイレンススズカの行方は杳として知れない。

 

 勇気を振り絞って相談に来てくれた娘たちに2度目を要求するのは難しい。

 何かが変わるかもしれないと来てくれる娘たちの勇気を無下にしたくないということで、基本的にシンボリルドルフは生徒会室を空けたがらない。

 サイレンススズカは部屋でジッとしているタイプではない。

 

 結果として、リギル分艦隊部室(仮称)にいるのはミホノブルボンとそのトレーナーである東条隼瀬だけ、ということが多かった。

 

「……悩み。悩みか」

 

「はい。具体的な問題解決能力はルドルフ会長には劣りますが、私でも聴くことくらいはできます。そして悩みとは案外、他者に漏らすことで解決したりするものです」

 

 確かにそれはそうである。悩みというのは本人の視野を狭め、思考を硬直化させる。しかし本人にとっては死ぬほど重要なことでも、他人からすれば驚く程に小さなものであったりするし、他人が違う角度から見た場合思いもよらない解決法が浮かんできたりする。

 

「……娘がな」

 

 マスターは結婚していたのですか。

 そしてあまつさえ娘もいたのですか。

 

 そんな砂嵐のような情報の津波にミホノブルボンのデータベースが押し流され、ド派手に大破した。

 

「思考内にエラー発生を確認。エラーが発生していると判断」

 

「大丈夫か、お前」

 

 普段はチカチカと光るいくつかの星を宿している青い瞳の中で、ブラウン管のようなスノーノイズが往来している。

 

 アグネスブルボン。

 そんな単語が湧いて、消えた。頭にいい感じな角度でチョップを入れたら直るだろうか、このポンコツサイボーグのエラーは。

 

「……はい、大丈夫です。どうぞ」

 

 頭をひっぱたかれずとも勝手に直ったポンコツサイボーグの眼はまだスノーノイズがスクランブル交差点のごとく縦横無尽に往来している。

 しかしまあ言動はともかく意識は元に戻ったということで、東条隼瀬は話を続けた。

 

「娘が欲しいんだ」

 

「娘、ですか」

 

「そうだ。お前みたいな娘が欲しいなぁ、と思っている。だが実際問題、俺の娘はとんでもない性格になるだろう」

 

 実際、この純粋培養サイボーグはたった3年でおおいに人格的影響を受けてしまっている。

 別にその成長を否定するわけではないが、『こいつ俺に似てきたなぁ』と思うのは一度や二度ではない。

 

「そもそも、マスターは結婚されていたのですか」

 

「いや。だから悩んでいるんだ。結婚する理由はやはりその相手を好きになり、一生を添い遂げたいと思ったからこそだろう。だが俺は娘が欲しいがために結婚したいと考えている。これは因果が逆だし、結婚する相手にも失礼だ。お前はどう思う?」

 

「……?」

 

 多少マシになったとはいえまだまだ精神的に幼いミホノブルボンがぽけーと口を半開きにしているのを見て、彼は相談を続けることを諦めた。

 構想力も実行力もないが事務処理能力は抜群なミホノブルボンというウマ娘を、これ以上エラー地獄に突き落とすわけにはいかない。

 

 そして悩みをぶつけた(本当にぶつけただけだが)が故に、東条隼瀬はそれなりに思考の余白を手に入れていた。

 

「犬でも飼うか……」

 

 十数年後にまた別れが来るのは辛いが、やはり犬はいい。とてもいい。

 前飼っていたのと同じ犬種で、できれば似たのを買ってこようかな……と思案する男の前に、再びエラーから復帰したサイボーグがぬるっと立ちはだかった。

 

「マスター」

 

「なんだブルボン」

 

「はい、マスター。私は常日頃からマスターの後ろについて歩いているからか、四足歩行イヌ科の生物……『犬』に同類として見られ、懐かれるということが多く発生しました。つまり実質犬のようなものです。なので新たに犬を飼わなくとも、私がいます」

 

 フンスフンスと犬宣言をするブルボンの頭をワシャワシャと撫でると、耳がご機嫌にピンと立ち、尻尾が縦に大きく揺れる。

 

「しかも、私の寿命は長いです。先代のように、マスターを悲しませることもないと思われます」

 

「確かに。理に適っている」

 

 第三者がこの場にいれば確実に『理に適っているのか?』とツッコミを入れたくなるような無法地帯っぷりの中で犬っぽい動作で甘えるブルボンと飼い主ムーブをする参謀。

 

「そーれ、とってこいー!」

 

「オーダー、受領しました。ただちに捕捉、返却動作を行います」

 

(なにをやっているんだあの二人は……)

 

 フリスビー代わりのCDROMをぶん投げて遊興にふける、ポンコツふたり(主な勝鞍:なんか色々)。

 そんな二人を見て呆れた眼差しを向けつつ尻尾を揺らしながら、シンボリルドルフは威風堂々とした貫禄を崩さないまま近寄った。

 

「トレーナーくん」

 

「どうしたルドルフ」

 

 どうしたもこうしたもない。

 余程そう言ってやりたかったが、この二人を混ぜてやらなければならないことがある。

 

「そろそろ会議の時間なのだが……」

 

「……ん、お、そうか。遊んでいると早いな」

 

「はい。とても有意義な時間でした」

 

 ちなみに、ミホノブルボンは3年間の授業を受け終えている。

 あとは取りたい授業を取りたければ取ってください、みたいなものである。ルドルフのように様々学びたいものがある場合は取るが、ミホノブルボンの場合はそこらへんにあまり興味がない。故に一週間の全部が全部というわけではないが、それなりに彼女は暇だった。

 暇でなければ授業をサボってトレーナーと犬ごっこをしていたことになり、割ととんでもないことになる。

 

「スズカは?」

 

「エアグルーヴが捕まえに行った。間に合うかどうかはわからないが」

 

「まあ仕方ないだろう。自由人だからな」

 

 自分の担当ウマ娘と犬ごっこしてるフリーダムさと比べると遥かにマシである。

 だがそんなことを言っても詮無きこと。シンボリルドルフは極めて大人な精神性を発揮して、何も言わずに芝にまみれたミホノブルボンと無数のCDを装備したアホを生徒会室に案内した。

 

「……はぁ、はぁ、会長……ゴホッ、はぁ……つ、連れてきました……!」

 

「おはようございます。ルドルフ会長」

 

 死ぬほど息を切らしたエアグルーヴが入室し、息どころか言葉の音程すら乱れを見せないサイレンススズカが後ろに続く。

 

「ご、御苦労。大丈夫……大丈夫か?」

 

「……は、い」

 

 右には疲弊しきった副会長、左には今の今まで遊んでいた参謀こと東条隼瀬。彼の横にはミホノブルボンとサイレンススズカ。あとはグラスワンダー、エルコンドルパサーらの姿もある。

 

 取り敢えずアオハル杯に出ると決まった連中を集めて、会議ははじまった。

 

「では、会議をはじめる。進行役は私、シンボリルドルフ。書記は……」

 

 疲弊しきって机に突っ伏しそうなエアグルーヴから視線を外して、シンボリルドルフはミホノブルボンの方を見た。

 

「ブルボン。頼めるかな?」

 

「はい。オーダーをいただければ、その通りに実行いたします」

 

「では、書記はブルボン。トレーナーくんは私の補佐に入ってくれ」

 

「わかった」

 

 エアグルーヴの実質的な脱落という中々なアクシデントにもめげずに役割を振り直し、咳払いを一つして話し始めるその姿には、まさしく【皇帝】と呼ばれるに相応しい臨機応変の才が見られた。

 

「では本日の議題だが……ズバリ、『チーム名』だ。諸君らの活発な意見と討論を期待する」

 

「会長」

 

「エアグルーヴ、なにか案があるのか?」

 

「はい。ユメガ・ヒロガリングスというのはどうでしょうか」

 

 瞬間、空気が凍った。

 エアグルーヴ。生徒会の苦労人担当。副会長の苦労性な方。2年前までルドルフの壊滅的なギャグセンスの下敷きにされ、しょっちゅうやる気を目減りさせられていた被害者。

 

 そんな彼女が出した案を、一同は無言で聴き入った。いや、何も声を出せなかったのかもしれない。

 

「……もう一度、いいかな? ブルボンも書き取れなかったようだし」

 

「いえ、書き取れています」

 

 空気の読めなさをしっかりとトレーナーから継承したミホノブルボンは、そう言ってしっかりとノートを見せた。タイプライターのような正確さ、字と字の間の均一さは読みやすいが、実に機械的であり個性がない。

 

 と言ってもそれは『均一生産品のようだ』という感想が浮かぶからこそで、機械的な人間という個性はバリバリ発揮されてはいたが。

 

「じゃあ私が聴き取れなかった。エアグルーヴ。もう一度頼む」

 

「ユメガ・ヒロガリングスです。夢が輪(リング)のように広がっていく、という高度にして瀟洒なギャグであると自負しています」

 

 シンボリルドルフのやる気が下がった。

 それは彼女が渾身にして懇親のギャグを言おうとし、見事に噛んだとき以来のやる気ダウンだった。

 

「あらー……」

 

「副会長こわれちゃったデース……」

 

「うそでしょ……」

 

 困ったように笑うグラスワンダー、正直なエルコンドルパサー、いつものサイレンススズカ。

 真面目に書記としての職務を果たすブルボンは無反応。となると、頼みの綱は。

 

「トレーナーくん! 君の意見を訊こう!」

 

「銀河帝国がいい」

 

「え?」

 

「チーム名は銀河帝国がいい」

 

 あーもうルナしーらない。

 

 そう投げ出したくなった己を厳しく律して、彼女はひとまずブルボンの方へ視線を向けた。

 

 それはあるいは、救援を頼むものであったかもしれない。しかしこのサイボーグは『ちゃんと書けています』とサムズアップをするだけで、何もしようとしなかった。

 基本的に性質がロボのそれなだけに、彼女は自分の職責を全うすることを考える。それはこの際、美点ではなく欠点だった。

 

「えー……そうだな。では、エルコ――――」

 

「ケッ!?」

 

「――――は、用意できてなさそうなのでグラスワンダー。どうだ?」

 

 流石の対応力を見せたシンボリルドルフに水を向けられて、グラスワンダーは迷った。基本的に彼女は自分で発案するよりも、よりベターな方を推進する立場にいるつもりだった。

 

 だが、それがこの体たらくである。

 推進者。なにが推進者か。自分の中にあったそれをビリビリと引きちぎり、事前にチーム名を考えてこなかったことを後悔しつつ、彼女はあくまでも当初の方針通りに動いた。

 

「ここは日本なのですから、やはり漢字はどうでしょうか?」

 

 ユメガ・ヒロガリングスだけはない。

 日本文化に傾倒しているだけにその意見の3割程は本心であったが、7割くらいはユメガ・ヒロガリングスへの恐怖が彼女を動かしていた。

 

「賛成してくれるのか、グラス」

 

「ええ。消……極的ながら」

 

 消去法ながら、と言いかけたのを慌てて軌道修正しながらも、ちょっと嬉しそうな参謀に向けてお愛想の笑いを向ける。

 こんなんでも彼女の脳はフル回転していた。もっとマシな名前はないものか、とである。

 

「ハイハイハイハイ! 半熟たまご! 半熟たまごがいいと思うデース!」

 

「エル。お昼ごはんの記憶からチーム名を引っ張り出すのは……」

 

 半熟たまごと納豆を混ぜ合わせ、そこにサルサソースをかけて食べる。

 文化の冒涜(※グラス視点)の極みをしていたそんな少し前の記憶が蘇り、そう窘めかけて止まる。

 半熟たまごは、ユメガ・ヒロガリングスと比べてどうなのか。

 

「……いいんじゃないでしょうか。ええ。身近で」

 

「ケ!?」

 

 グラスワンダーからのツッコミ待ちだったエルコンドルパサーが変な声を出しているのもつかの間、満を持してシンボリルドルフは手を挙げた。

 

「ターフクイーンズはどうだろうか。ターフに君臨する女王たち。

私達は、勝ってきた。そしてこのアオハル杯でも、栄冠も栄光も手に入れる。これから打ち立てるべき実績に相応しいと思うのだが」

 

「ルドルフ会長は……ターフクイーンズ。理由は――――」

 

 せこせこと書いていくブルボン。

 このカオスの権化のような会議の中において唯一不干渉で働いている彼女を引きずり込むように、シンボリルドルフは彼女を指し示した。

 

「ブルボンはチーム名を考えてきたかい?」

 

「はい。しかしその前に、訊きたいことがあります。マスターのチーム名の由来が、まだ発表されていません。他の皆さんは基本的にチーム名とその由来をお話しになりました。マスターにはそれがありません」

 

「……確かに」

 

 ユメガ・ヒロガリングスは、夢が輪(リング)のように広がっていく様子から。

 半熟たまごは、お昼ごはんから。

 ターフクイーンズは、これまで栄冠を掴んできた女王たちの連合だから。

 

 だが銀河帝国だけ、由来がない。

 

「マスター。由来をお聴かせ願います」

 

「中央トレセンのチーム名の由来は星から来ている。沖野トレーナーのスピカ、南坂トレーナーのカノープス、北原ジョーンズのシリウス。それら全てを呑み込み、内包する銀河こそがこのトレセン学園だ。そして我らはそこに無敵にして最強の帝国を打ち立てる。故に銀河帝国。これ以上はないと思った。皇帝がリーダーなわけだしな」

 

「それでいいんじゃないかしら。ユメガ・ヒロガリングス以外なら何でもいいと思っていたけれど、私はトレーナーさんを支持します」

 

「スズカ!?」

 

 まさかの親友の裏切りに差し切られるエアグルーヴを他所に、エルコンドルパサーも手を挙げた。

 

「チームの徽章はマンボ――――じゃなくて鷹がいいデース!」

 

「いいんじゃないか。鷲でも鷹でも」

 

 割とそこらへんを気にしない男が適当に認可を出したのを受けて、エルコンドルパサーは大きく頷いた。

 

「じゃあエルも賛成デース! グラス?」

 

「まあ、私も漢字を推していましたから……」

 

 ということで、賛同者は半数を超えた。

 そして議会には、皇帝と言えども逆らえないものである。

 

「……我ら銀河帝国、か。思い切り宣戦布告だな」

 

「勝てるだろう。お前と俺なら」

 

「そういう言い方は、ズルい。賛成せざるを得ないじゃないか」

 

 ユメガ・ヒロガリングス……となおも未練を残して議会に逆らわんとする女帝を宥めている皇帝を横目に見たあと、東条隼瀬は最後の一人へ目をやった。

 

「ブルボン。お前はどうだ?」

 

「賛成です。私はもともと、宇宙が好きなものですから」

 

 頷く。

 そしてこの瞬間、チーム名は決まった。改めてその名を口にし、【皇帝】が口を開く。

 

「では、我らはこれより【銀河帝国】だ。絶対的な専制で、並み居る諸侯を叩きのめそう」

 

 オー、と。

 なんだかんだ結構ノリのいい連中が腕を上げている、その最中。

 

「ユメガ・ヒロガリングス……」

 

 まだ諦めていない女帝の呟きが、熱気に溶けて消えた。




84人の兄貴たち、感想ありがとナス!

ピコッピコ兄貴、くるくるる兄貴、月城 無月兄貴、りー!兄貴、彗星のカービィ兄貴、大秦王安敦兄貴、評価ありがとナス!


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アフターストーリー:左遷

 時は三冠ウマ娘が生まれそうな気配漂うナリタブライアンクラシック時代。これまでやや無法地帯の趣のあったトレセン学園は理事長・秋川やよいの海外出張に伴い着任した運動神経バツグンの理事長代理、樫本理子によってその色彩を大きく変えた!

 自由意思を尊重し、うまぴょいだのうまだっちだの隠語飛び交うトレセン学園から厳格堅実な監獄の如きトレセン学園へ。

 

 アスリートとしては一流であっても精神的未熟故の無計画・情動的さによる怪我を恐れた天性の運動神経の持ち主、樫本理子理事長代理による理論的な言説と実績を盾にした改革は放埒なだけの弱小チームたちを呑み込みつつあった――――

 

「どう思う、トレーナーくん」

 

「理が多いな」

 

「いや、そういうことではなくてね」

 

 同じような小学生並みの感想を抱いていただけに、シンボリルドルフは彼の意図するところを即座に察した。

 樫本理子理事長代理というのには、理が多い。うまくやれば連鎖で消せるのではないかと思う程に。

 

「俺が言った『理が多い』というのは物理的なものではない。その主張に理が多いということだ」

 

「あ、ああ……うん。その通り」

 

「全体的な管理主義への転換。アオハル杯の実施中止か。3年前だったら、俺は賛同していたかもしれんな」

 

「かも、かい?」

 

「お前が止めていただろう」

 

 カーテンを開け、生徒会室の窓から東条隼瀬は外の校門を見た。

 そこにはアオハル杯――――かつて一世を風靡したチーム戦。欧州では基幹となりながら、日本では然程主流でもないチーム戦を楽しみにしていて、そして参加することを望んでいたウマ娘たちがアオハル杯の中止を中止させるための署名運動を展開している。

 

「この場合、無理に中止してもウマ娘にとっての幸せには繋がらない。どうにかしてこのキツすぎるスケジュールに折り合いをつけさせ、適切な管理によって夢を実現させる。それこそが、トレーナーとしてやるべきことだ。少なくとも、俺にとってはな」

 

「気づけたかな、あの時の君は」

 

「気づけないだろう、間違いなく。だが俺は基本的に自分の判断よりもお前の判断をこそ優先する質なのでな。だから暴走しても、お前が間一髪で引き戻してくれるだろうと好き勝手やれているわけだ」

 

 無上の信頼にパタパタ揺れ、反逆するレジスタンスと化してきた尻尾を物理的に抑えつけつつ、シンボリルドルフは必死に頭を理性的なそれにシフトさせ切ることに成功した。

 

「どうする? 打ち砕くこと自体は、簡単ではあるが」

 

 熱心に署名運動が行われているアオハル杯だが、ひとまずお試しとして3年間は行われる。

 そしてその『お試し』を永続させる術を、【皇帝】は知っていた。というより、学園の誰もが知っていた。

 

 それは、3年間の間に樫本理子理事長代理率いるチームファーストを打倒すること。

 そうすれば学園を包む管理主義は一掃され、アオハル杯は存続する。

 

 問題は、打倒する力を持つチームがそれほどないことなのだ。

 そしてその数少ない打倒できるチームがリギルだった。樫本理子理事長代理のもとには彼女がかつて率いていたチームの流れを組むウマ娘たちが集結している。そしてリトルココンやビターグラッセといった今年のクラシック戦線の有望株も新たに加入した。

 

 しかしそれでも、リギルは強い。

 だからこそ無上の信頼を向ける彼に対して、やや挑戦的に問うたのである。

 

 やろうと思えば、いつでもやれるのだぞ、と。

 

「迅速な対処をしてもいいが、秋川理事長から言われたこともある。それに一応3年間は猶予期間があるのだし……」

 

 そこで、彼は煙に巻くように言葉を途切れさせた。

 

 

 なぜ3年間の猶予があるのか。それはウマ娘とトレーナーの関係が基本的に3年1周期で更新されているからであり、先一昨年に秋川やよい理事長が発案し、そして3年間かけて実行したURAファイナルズが成功を収め、その結果をもとに着手した――――もっとも、アオハル杯自体は廃止されていただけで、昔存在していた――――新しい企画だからである。だからこそ、アオハル杯は3年間は続く。

 

 理事長代理としての権力・権限があればその猶予をも消し去れたはずではあるが、樫本理子はそうしなかった。おそらくは本人すら自覚していないであろう奥底に揺蕩うその理由を、シンボリルドルフと東条隼瀬は正確に推察することができた。

 

 そして、なによりも。

 

(昔の君と似ているから、か)

 

 力で叩き潰すことは簡単ではあるが、それではなんの解決にもならない。別に管理主義それ自体が悪ではないのだ。

 

「ひとまず自由を善しとする放任主義派はスピカを軸に結束させよう。そうすることでそれなりの勢力にもなるし、自分の思想を貫けるだけの後ろ盾を得られるはずだ。管理主義派閥に関しては理事長代理からノウハウの支援もあるし、ひとまず放っておいてもいいだろうと俺は思う。お前はどうだ?」

 

「私もそれでいいと思う。私は管理主義を善しとするが、管理主義というのは放任主義あってこそのものだ。統制されることで活きるウマ娘もいるし、逆も然り。どちらかが廃滅するまでやり合うのは本意じゃない。主義主張というのは、並び立ってこそのものだからな」

 

「さすが、皇帝陛下は寛大であらせられる」

 

「そう言う参謀くんも、ずいぶん冷徹さが薄れたようだね。硬軟併せ持ち、人間的な深みが増した」

 

 かつての東条隼瀬は、樫本理子理事長代理以上の徹底した管理主義を敷いていた。その成果がミホノブルボンであり、その結果が無敗の三冠である。

 別にそれを後悔しているわけではないし、ミホノブルボンには徹底した管理こそが合っていたのだろうと思う。しかし誰しも、朝から晩まで、練習から食事まで徹底した管理主義へ適応できるとは思えない。

 

 樫本理子理事長代理が行っているそれは彼がミホノブルボンにしたそれよりも遥かに緩いが、それでもあぶれる者は出てくるだろう。そしてその受け皿が無くなるというのは、防がなくてはならない。

 

「取り敢えず、勝負は3年目か、2年目か。そのあたりだろうな」

 

「だろうな。私としても、その間放任主義派が好き勝手やれるように計らってみよう」

 

「俺からも、トゥインクルの乙名史記者を通じて発信してみよう。最近巷で流布している管理主義こそが至高であるなどという妄言が持て囃されている原因は俺にもある」

 

 管理主義の権化たるリギルの指導者と、その実質的な後継者。

 東条ハナと、東条隼瀬。管理主義の信奉者たるこの叔母と甥の二人しか、外国勢には歯が立たない。

 謂わばこの二人は衛青と霍去病のようなもので、そう断言してもいい程に他に海外に対抗できる人材がいない。

 

 となると日本が世界に追いつくには管理主義こそが尊ばれ、放任主義など淘汰されるべきではないか。才能のあるウマ娘が放任主義の甘い誘いに乗り、才能を浪費させることを阻止するべきではないか。

 ミホノブルボンに中・長距離を走るための才能が全くなかっただけに、そんな見方は日に日に強くなっている。

 

「俺があいつに才能がなかったと言ったのは、まずそれが事実だからだ。実は才能があってどうたらと言うのは、あいつの努力を侮辱している」

 

 ミホノブルボンは持っていた才能を活かして勝ってきたが、中・長距離を走るための才能が眠っていたわけでもないし、眠っていた才能を起こしたわけでもない。

 努力で中・長距離を走るための才能を作り上げ、乗り越えた。それが『実は才能がどうたら』と扱われるのは、聴く者が聴けば憤死しかねない程の侮辱であった。

 

「俺が伝えたかったのは誰でも正しく努力すれば夢を叶えられるし、血統による壁を乗り越えられると言うことだ。それがこうも曲がって、管理主義の勝利のように語られようとはな」

 

「正しく努力すれば夢を叶えられるというだけで、その正しさを与えられるのは別に管理主義だけではない。今思えば、君はそのあたりまで言うべきだったかもしれないが……」

 

 それは流石に読み切れないだろうと、シンボリルドルフは思った。

 別に責められるべきではない、とも。

 

「まあ、君が責任を感じるのもわかるから、私としては協力するよ」

 

「ありがとう」

 

 ここで君のせいじゃないと言っても、無駄だろうな。

 それがわかりすぎるほどにわかっているからこそ、シンボリルドルフは敢えて理解を示してその打開に協力する意思を示した。

 

 肯定もしない。否定もしない。理解はする。

 理性的に見えて感情が持つ熱の振れ幅が大きい彼をうまく出口に誘導するために必要なのは肯定して背中を押すわけでもなく、否定して出口まで牽引することでもない。

 理解して同行者となることだということを、シンボリルドルフは知っていた。

 

 そして基本方針を定めた後のこと。

 放課後、チームとしての方針を伝えるべく開かれた会議の中で、東条隼瀬はひとまず参加者を見回し、気づいた。

 

「おや」

 

 文字に起こすとふわりとした風韻を感じさせるその言葉は、声音と視線が悪い具合に作用して実に冷たげな印象を与えた。少なくとも、向けられた当人はそう感じた。

 

「ブライアン。なぜここに居るのかね」

 

「アンタのところに左遷されてきた。島流しと言ってもいい」

 

「ああ?」

 

 先程の『おや』とは違って、文字に起こすと冷たい風韻を感じさせるその言葉は、声音と視線が怪訝さをうまく伝える感じに作用して彼が実に困惑しているような印象を与えた。

 

 ナリタブライアンは、実のところ無敗ではない。去年、すなわちジュニア級においてGIを勝利してはいるが、何度か負けている。

 その点においては彼女はシンボリルドルフにもミホノブルボンにも劣るが、それでも左遷を喰らうほどダメダメというわけでもない。むしろ朝日杯FSを勝っているのだから、今年のクラシック路線一番手であるとすら言える。

 

「アマさんも今年だからな」

 

 顎をクイッと上げながら、『わかるだろう』と言わんばかりの態度に一定の理解を示し、東条隼瀬はなんとなく理解した。

 ヒシアマゾンも、今年いよいよティアラ路線に挑むことになる。数年前、所謂黄金世代のクラシック期を境に外国籍のウマ娘――――いわゆるマル外、留学生としてトレセン学園にやってきたウマ娘たちのクラシック路線参戦が許可された。そのおかげでエルコンドルパサー、グラスワンダーたちは多少なりとも恩恵を受けたわけだが、後に続くウマ娘たちにとってもそれは同じことなのである。

 

(そう言えば同一世代を大量採用したことはなかったな)

 

 リギルは、極めて古典派なチームである。重視されるのは中長距離王道、ティアラ路線よりクラシック路線。基本的に日本トゥインクルシリーズの花道を進むウマ娘を育てる。だから短距離やダートを走るウマ娘の層が中長距離を走るウマ娘と比して薄い。

 

 尤もこれは比較対象が悪いの一言で片付くが、そういう傾向があることは否定できない。

 故にリギルは【この世代はこの娘】といったウマ娘のみをチームに迎え入れる。そしてエルコンドルパサーとグラスワンダーは極めて例外的な事例である。

 

 その例外が、この世代でまた起きた。そして都合よく、預け先があった。

 で、預けられたのはナリタブライアンだったというわけなのだろう。

 

(いや、ティアラ路線はエアグルーヴ以来だったはず。その経験の薄さを師匠自らが担当することで補おうとしているわけか)

 

 つまり、そういうことなのか。

 自らの師匠であるおハナさんの深謀遠慮に感嘆しているこの男は、実情がもっと単純であることを知らない。

 

 つまりナリタブライアンは、来たいから来た。それだけなのだ。

 

「よし、わかった。取り敢えず三冠ウマ娘にでもなるか?」

 

「ああ。私としては強いやつと走れればそれでいいが……取れるもんは取りたい。アンタの手腕に期待する」

 

「任せろ。実は一昨年、俺は三冠ウマ娘の手伝いをさせてもらった経験がある。一昨年よりちょっと前にも手伝いをさせてもらったりしたし、こと『三冠ウマ娘』を誕生させることにかけてはそれなりの経験がある、はずだ。で、会議に話を戻す。まず――――」

 

 よく言うよ、このキングメイカーは。

 

 誰もがこのとき、そう思った。




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アフターストーリー:猛禽

 コツンコツンと、窓を硬い何かが叩く音がした。

 

(なんだ?)

 

 珍しく部室に泊まり込みしていない男は、ムクリと立ち上がった。何分割かされたパソコンの画面には、いずれもナリタブライアンが走っている景色が映されている。

 

 どう勝ったか。どう負けたか。

 その分析のために時間を費やしていた男は、凝った腰に手を当てて窓に向かった。

 

「……マンボ?」

 

 窓枠。そこに爪を器用に引っかけて留まっているのは、鷹。東京都内に野生の鷹が闊歩しているわけもなく、必然的に誰かに飼われていることになる。となると、その候補者はひとり。

 

 エルコンドルパサー。ターフの怪鳥、黄金世代最強のウマ娘。

 

 また脱走か、と彼は思った。そしてこの後どうなるかもわかった。

 一旦自室内の引き出しから革の防護具を引っ張り出し、右肩に着ける。

 

「マンボ、おいで」

 

 筋肉の確かさを示すような強い音。バサバサとした羽音を立てて入室を決めた大鷹は、我が物顔で右肩に着地した。

 

「どうした。怖い怖いグラスに解放されたのか、あるいはただのいつも通りのうっかりミスか」

 

 知らんとばかりに首を左右に振って、服をかけるためのポールの枝に飛び移るマンボの軌跡を目で追って、ふぅとため息をついた。

 

「お前、心配されるぞ?」

 

 かん高い鳴き声が返ってくる。心配いらないということなのか、或いはそんなことは知っているということなのか。

 

「マンボ。ペットがいなくなるというのは飼い主にとってとても辛いことなのだ。わかるかな」

 

 知らんとばかりに首を傾げるマンボがパソコンのフチに飛び乗り、鋭い爪がカバーを削る。

 

「仕方ないやつだな」

 

 突き出した腕に優しく着地したこの鳥を、どうするか。ひとまずエルコンドルパサーに連絡をいれておくべきか。

 そう思案して、窓を見た。その先にはヒシアマゾンが寮長を務める美浦寮がある。今の時間であれば消灯時間であるから、もう電気は全て消えている。

 

 その、はずであった。

 しかし一室だけ、電気が点いている。そしてしばらくして消え、その隣が点く。

 

「ふむ?」

 

 人語を介さない猛禽類と顔を合わせながら、東条隼瀬はなんとなく事態を察した。

 

 ――――エルコンめ、企んだな

 

 たぶん、持ち物検査が行われている。夜食を勝手に食べないようにとか、そういうことのために。

 これも理事長代理による、例の管理主義の一環だろう。勝手に夜食を食べて体重が増えたりすれば不調につながるし、加えて言えばなんか変なものを持ち込んでいる可能性もある。

 正しいこととは思うが、それにしても性急だという誹りは免れない。

 

 そしてペット禁止の寮で勝手にペットを飼っていたエルコンドルパサーは、その矛先が自分に向きかねないことを察してペットを――――この割とデカい鷹、マンボを逃したのだろう。たぶん、預かれるやつが起きていることを信じて。

 

「なるほど、お前は賢い子だ」

 

 首のあたりを掻いてやりながら、ひとまず腕を軽く振ってマンボを空へ逃がす。

 そして突っ込んでこないのを確認してから、東条隼瀬はトレーナー寮から出た。

 

「となると、やはりあるだろうな」

 

 もう、慣れた感じがある。

 春の陽気とは正反対の肌寒さに髪を揺らされながら、東条隼瀬はある地点へ向かう。

 

「それにしても、ぐんぐんと来るな。まあ、違反しているのは確かだが」

 

 エルコンドルパサーの部屋の下あたりにまで行くと、あった。

 紐に吊るされたマンボのお世話用具やら、お菓子やら。たぶんお菓子は、グラスワンダーのものだろうが。

 

 軽く2回引いてやると、スルスルと紐が窓枠に消えた。

 代わりにぴょこんと出てきたエルコンドルパサーが両手を拝むようにしてペコリと謝ってきたのに手を振って返す。

 

「なるほど、夕食はまだ、と」

 

 メモ用紙に書かれたやってほしいことを読み、部屋に帰って早々右肩へと強襲を仕掛けてきたマンボをいなしつつ、餌を取り出す。

 取り出した餌を鳥籠の中に入れて、彼は毎度恒例の理不尽な二択をこの招かれざる猛禽類に与えた。

 

「ほれマンボ。欲しければ籠の中に入れ」

 

 やりおるわ、このヒト耳。

 

 そう言いたげに振り返ったマンボがおとなしく収容される中で、彼はやっと本来の仕事に向き合うことに成功した。

 

「やはり課題は安定感……何だマンボ」

 

 本当の意味でガタガタうるさいマンボ。餌の残骸を回収したし、毛づくろいもしてやった。あとは、他に何を望むというのか。

 

「……水。水か、マンボ」

 

 これは俺の失策だったな。

 割と素直に自らの誤りをこの鳥に謝し、水をエルコンドルパサーから渡された皿に入れて差し出す。

 

 遅いわい、このヒト耳。

 我が物顔で振る舞い、プンプンするマンボに謝りつつ水をくれてやる。

 

「懐かしいなぁ、この心地よい面倒くささ」

 

 犬。そう名付けられた犬を、彼は飼っていた。

 このマンボとかいう畜し――――猛禽類より遥かに賢くおとなしかったが、それでも老衰しきった末期は辛そうで、自分のことを自分でできなくなっていた。そのときは、何かと世話を焼いたものである。

 

「いかん、悲しくなってきた」

 

 おとなしくなってきたマンボのやかましさがあれば、また違ってきたのだろうが。

 

 仕事に打ち込むことで蘇ってきた悲しみを消し去りつつ、彼は寝て、起きた。

 

「おはようブルボン」

 

「…………似合っていますね、マスター」

 

 結構いろんなことを言いたかったがこらえた感じのあるブルボンは、じろりと彼の肩を見ながら取り敢えず褒めた。基本的にいい子な彼女は、これまた基本的に否定から入らない。何事も肯定から入り、いいところを探す。

 

 自分の信頼するトレーナーが唐突に鷹をつれて現れても、取り敢えず褒める。彼女の状況への従順さが表れたような反応に鷹揚に頷き、自分の服装を省みる。

 ローテーション通りで、然程変化はない。しかし、決定的に違うものがいくつかある。それが肩に着けた防護具であり、肩を占領している猛禽類の存在だった。

 

「……ああ、マンボのことか」

 

「マンボ。エルコンドルパサーさんの愛鷹との名称の一致を確認。過去ログを参照し、個体差を確認します」

 

「これは本物のマンボだから確認せんでいい。預かっているんだよ、いつまでかは知らんが」

 

 案外長引くかもしれないし、今日で終わりかもしれない。

 そのあやふやさ、計画性のなさに彼らしくなさを感じたミホノブルボンは、この猛禽類の存在が状況の変化によってなされたものであることを察した。

 

 となると。

 

「抜き打ちチェックの影響ですか」

 

「なんだ、あのあと栗東にも来たのか?」

 

「いえ、同時に」

 

「なるほど、抜かりないことだ」

 

 翌日に回せば、対策する時間が生まれる。となると抜き打ちの意味が無くなる。

 

「で、誰か何か没収されたのか?」

 

「マックイーンさんがお菓子を取られていました」

 

「然程かさばりもしなかっただろうに、隠せなかったのか」 

 

「いえ、モンブランを複数個持ち込んでいたようで」

 

「…………それはまあ、隠せないだろうな」

 

 彼がイメージするお菓子は駄菓子であり、マックイーンのお菓子はケーキであった。

 それは実に、かさばる。そんな納得と哀れみを覚えた男は、ふわりとあくびを朝の空に上げた。

 

「マスター。幸い理解を得られたようで、私に被害はありませんでした」

 

「お前、なにか変なのを持っていたのか?」

 

「カカオの苗を育てていました。来年のバレンタインデーに向けて頑張っていたので、個人的には認めてもらい感謝しています」

 

 ペット禁止の寮であるが、植物に関してはその限りではない。

 

 そういうことなのか、その健気さに打たれたのか、あるいは植物を育むということが管理主義的計画性へつながると考えたのか、どれであるかは定かではない。

 

 それにしても。

 

「相変わらず謎の多才さだな」

 

「はい。マスター譲りです」

 

「譲った覚えはないが、正の方向へ影響を受けているなら何よりだ」

 

 そんな穏やかな会話をしている中で、旋風がドアを通過した。アメリカを壊滅状態にしたそのタイフーンは、当たり前のように走り、そして帰ってきたのである。

 

「昨日の夜と、今日。どれくらい走った?」

 

「これくらいです」

 

「……うん」

 

 腕を左右に伸ばしてニュアンスで伝えようとするスズカに付けた万歩計もどきとデバイスを同期させ、出力する。

 下限から上限までの数値を見比べ、最も多く走った場合の距離を導き出して脚の消耗の度合いに見当を付け、触診で確認する。そうしてから、今日のトレーニングメニューに調整を加えて脚へと無理な負荷がかからないように、しかし最大効率で練習ができるように調節する。

 

「よし、今日のメニューは昼に渡す」

 

「お願いします」

 

「ああ、任せてもらおう」

 

 朝昼夜と勝手に走っていた全盛期のスズカに比べて、今のスズカは朝と夜にしか走らなくなった。おかげで随分、トレーニングメニューの調整もしやすいというものである。

 

「それにしても、トレーナーさんってすごかったんですね」

 

「ああ?」

 

 思考の海から引き戻された男は、走りの天才から唐突なお褒めの言葉をもらって変な声が出た。胡乱な眼で明るい栗毛を見て、首を傾げる。

 

「アメリカの方は驚いていました。こんなんではトレーニングメニューは組めないと。フランスの方は放任主義だったので疲れたときに諌められるくらいだったのですが」

 

 こういう実体験を聴くと、東条隼瀬としては放任主義のありがたさというものを実感せざるを得ない。

 外国は、管理主義の本場である。ウマ娘がレースを組み立てることはなく、何から何までトレーナーが決める。作戦もトレーニングメニューも脚質も、あるいは勝つか負けるかまで。

 

 本命たる旗艦を守る護衛艦のような形で走らされるウマ娘もいるし、レースの勢いやペースを本命のウマ娘に合うように調節・維持するための走りをさせられるウマ娘もいる。

 ミホノブルボンは逃げたから関係なかったが、あの凱旋門賞にもそういうウマ娘は結構出ていた。逃げたからまるきり関係なかったが、これが先行や差しなどの王道を往く脚質であれば突破にそれなりの苦労を要しただろう。

 

 現にルドルフの海外遠征の際には、シリウスシンボリあたりにこの役割をさせようという意見もあった。ルドルフ本人が拒否したのでおしゃかになったが。

 

「その負荷を慮って昼に走るのをやめてくれたわけか」

 

「……それもあります」

 

「前も言ったが、別に遠慮することはない。俺としてもサイレンススズカという偉大な才能を管理させてもらっているのだからそれなりに苦労もするだろうと考えているし、覚悟もしている。そしてその苦労や覚悟は多少なりとも、偉大な才能の完成に貢献したという満足感に繋がるわけだ」

 

 耳を萎れさせ、文字通りお外を走ってくるために外へ消えていくスズカを見送る。

 見送った側から、グラスワンダーとエルコンドルパサーがやってきた。

 

「相変わらず速いですねぇ」

 

 栗毛が出て行ったらまた栗毛が来た。メラメラエガオな表情をして。

 語尾を穏やかに伸ばしながらも、数年前の敗北――――毎日王冠で完膚無きまでに叩きのめされた苦い記憶を忘れていないことが窺える闘志。

 

「デース……」

 

 闘志ギラギラな同居人に若干ビビったような感じのある、毎日王冠で完膚無きまでにボコられたウマ娘の片割れ。ひょっとすると……いや、ひょっとしなくともグラスワンダーより強いかもしれない彼女は、肩から降りて卓上を闊歩するマンボを見て太陽のような笑顔で駆け寄った。

 

「マンボー!」

 

 知らん、なんだこのウマ耳。

 つれない態度で翼をバタつかせながら逃げるように卓上を走るマンボを追い回して追いついて抱きしめたエルコンドルパサーは、はたと気づいたように、自分のペットを匿ってくれた無愛想な男に向けて頭を下げた。

 

「いつもありがとうございます、参謀さん!」

 

「まあそれはいいが、いつまでになりそうだ?」

 

「それはわからないデース……」

 

 腕から抜け出したマンボが空を舞い、またも我が物顔で男の右肩に止まる。 

 

「だとさ。かなしいなぁマンボ。もううちの子になるか?」

 

 鋭い嘴で自分の羽を繕っているマンボは、人語を解しているかのように鋭く鳴いた。

 その鳴き声をどう理解したのかは知らないが、エルコンドルパサーの顔色が若干引きつる。

 

「ちょ……待ってください! マンボはうちの子! うちの子デース!」

 

「あら、素直なのをいいことに誘拐しようとしていたらおっそろしい怪鳥が来たな。逃げろマンボ」

 

 伸ばした手からするりと逃げていく鷹。

 あー、マンボぉぉ!という、妙に聴き慣れた声がする中で、グラスワンダーに賄賂でも渡すようにお菓子を突き出す。

 

「グラス。最近体重をキープできているようだし、息抜きに食べたいなら食べるといい。だが、太るなよ」

 

「あまりにも直接的な表現での忠告ありがとうございます」

 

「ああ。伝わりやすかろう」

 

「ええ、とても」

 

 能力と誠実さを認められつつ、そのあまりのデリカシーの無さから苦手に思われている相手からの皮肉を華麗にスルーしてお菓子を渡した。

 羽ばたくし鳴くし騒ぐマンボと違ってそれほどかさばらないし、もうよかろうと思ったのである。

 

 マンボはあれで結構賢い。だからこそ、トレセン学園の敷地から出ることはない。

 

 そして脱走しても、割かし戻ってくる。

 そんな飛行欲を満たしたであろうマンボを今度は右腕に載せ、東条隼瀬は部室から出た。

 

 既に学生であるウマ娘たちは校舎へと向かい、頑張って授業を受けている。

 そんな中、だだっ広い校庭で遊ぶ男と一羽。

 

「マンボ。お前も狩猟本能を満たしたいだろう」

 

 犬と、あるいはブルボンとフリスビーで遊ぶような感じに空に餌を投げて捕食させるという貴族の遊び。

 マンボが避難してくるたびにしていたそれをまたするべく餌を掴み、驚異的な肩で彼方へ投げる。

 

 投げたそれが落ちてくる前に鉤爪でかっさらって帰ってくるマンボと戯れているところで、後ろから声がかかった。

 

「相変わらず少数の人間にしか好かれない割に、大多数の動物には好かれるようだな、アンタは」

 

「お、左遷されたブライアンじゃないか。授業はどうした」

 

「フケた」

 

 初っ端から挨拶代わりの皮肉の応酬を繰り広げて、ナリタブライアンは物珍しそうに空を舞う鷹を見た。

 

「アンタのだったのか、あれ」

 

「別に俺のものではない。昨日部屋に向かって飛んできたので、軽く面倒を見ている。そんなところだな」

 

「へぇ……」

 

 エルコンドルパサーが鷹を飼っていることをバラさず、かつ嘘もつかない。

 その微妙な綱渡りを見事に達成したところで、獲物を捕らえたマンボが腕に戻って餌を食べはじめた。

 

 その光景を興味深そうに見る、ナリタブライアン。黄金の瞳が、瞬きもせずにマンボを見ている。

 

「好きなのか?」

 

「ん、ああ。何者も恐れず飛んでいる姿が、な。天敵のいない空を飛ぶこいつを、私はかっこいいと思う。思った。あんたはそうは思わないのか?」

 

「ま、わからんでもない。だが俺としては天敵のいない動物よりも、天敵がいつつ堂々としているやつの方が好きだね」

 

 恐れを知らないのではなく、恐れを知り、呑み込む。動物がそんな高尚な考え方をしているとは思えないが、そういう生き方をしているのだから、本能が即ち高貴なのだろうと思う。

 

「というと?」

 

「恐怖が無いやつより、恐怖を乗り越えたやつの方が好き、ということだ」

 

 だから姉貴の方を気に入っているのか。

 そうは、口に出さなかった。

 

 超えるべきものを、ではない。

 超えたいものを超えるために努力を続けている人を知っている。

 

「確かに、そうだな。少なくとも、そちらの方が尊敬できる」

 

 話は終わった。鷹の運動も終わった。

 そう言わんばかりに帰っていく男の背を見て、ナリタブライアンは呟いた。




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アフターストーリー:蹄跡

「ウマ娘というのは、2種類いる。勝ちやすい走りをするやつと、負けにくい走りをするやつ。これは脚質ごとにどうこうではなく、本人の気質の問題だ。駆け引きの癖、というのかな」

 

「癖、ですか」

 

 座り込んだバランスボールの上で一切微動だにせず、ミホノブルボンは隣に立つ男の顔を見上げた。その視線の先にはシンボリルドルフとナリタブライアンがいる。

 

「たとえばお前は、調子が崩れていても負けにくい。しかし、決め手に欠けるから勝ちにくい。スズカは決め手が強く勝ちやすい。しかし、調子が崩れると負けやすい。長所というのは裏返せば短所であるわけだ。これは攻めて勝利を奪う攻撃型と、守って結果としての勝利を手にする守備型と言い換えてもいい」

 

 ライスシャワーは間違いなく勝ちやすい、攻撃型であるとミホノブルボンは思った。あの後方からの追い上げ、一歩間違えれば即座に負けかねない刺客の如き一閃は、勝利へ手を伸ばしているが故のものだ。

 

 他のウマ娘も、だいたい区分がわかる。トウカイテイオーなどは、攻撃型。自分から勝利を手にするために仕掛けていく典型と言える。

 メジロマックイーンは、守備型。2年前の天皇賞春でも圧倒的なスペックでトウカイテイオーの仕掛けを完璧にいなし切って勝った。

 

 しかし、わからないのが一人いる。

 尻尾を伸ばしたり丸めたりしてうまくバランスを取りながら、ミホノブルボンは首を傾げた。

 

「ルドルフ会長はどちらでしょうか」

 

「本質的には攻撃型だ。だが守備型であることを好む。見てみろ」

 

 ハナ差。

 併走の結果、シンボリルドルフはほんの僅かな差でナリタブライアンの上を行った。

 

「……もう一本!」

 

「ああ、構わないよ」

 

 息を荒げ、血を吐くような懇願に近い再戦の願い。ナリタブライアンの本質の一部、強さへの渇望。彼女の中にいる怪物が、皇帝に向けて牙を剥く。

 

 そして次の併走でも、ハナ差。

 明らかに疲れているナリタブライアン相手に、結構余裕のありそうな――――少なくとも疲れを顔に出していないシンボリルドルフが、また互角。

 

「あいつは終盤に脚を緩める。最後まで本気で走り切ったのは菊花賞とジャパンカップと……あとは凱旋門賞くらいか。凱旋門賞に関しては負けていたから当然だと言えるが」

 

 レースを俯瞰的に把握し、ゴール板が見えると後続との差や距離を逆算して手を抜く。

 手を抜くと言うと聞こえが悪いが、ウマ娘の脚は消耗品。抜くべきところで抜けなければ、多くのレースは走れない。

 

 シンボリルドルフは取り敢えずクラシック三冠を手始めに、中長距離GⅠを制覇したかった。となると長く走る必要があり、本気を出すべきところで出し、出す必要のないところでは出さない。そういう技術がどうしても必要だったのである。

 

「まあそのせいで併走で鍛えることが難しくなったがな」

 

「……差がわかりやすいからですか」

 

 永遠に詰まらないハナ差。ほんの僅かな差に込められた、隔絶した実力差。

 彼としてもこれは伝聞になるが、皐月賞で共に走ったウマ娘の中には、あまりの差に自信を喪失してしまった者もいたらしい。

 

「そうだ。差は少しだと希望を抱かせ、そしてその差は永遠に縮まらない。あの独特の雰囲気もあるし、併走相手の心が折れてしまうからな。ただ……」

 

「この場合、そうではないというわけですか」

 

「……お前、頭いいな」

 

 その通りだった。

 シンボリルドルフは併走中、《仕掛けるぞ》という雰囲気を度々出している。

 それは傍から見ているならばともかく、共に走っているぶんには勘が鋭く、走る為に研ぎ澄まされた才能を持っていないと感じ取ることのできない兆候ではある。だがそのどちらも、ナリタブライアンは持っていた。そしてその度に仕掛けられても大丈夫なように加速し、そして肩透かしを食らうというのを繰り返していた。

 

 その肉体的な消耗と精神的な消耗。怪物じみた集中力と、研ぎ澄まされた勘と圧倒的な才能。最強の矛たる彼女の長所を駆け引きだけでひっくり返し、自らを傷つけさせている。

 

「単純なスペックならルドルフにも負けないだろう、が」

 

 経験の差はいかんともし難い。そしておそらく、ナリタブライアンはああいう細かさのある駆け引きに向いていない。頭の出来が、という意味ではなく、性格的に向いていない。

 

 4度の併走を見終えて長所と短所を見極め、東条隼瀬は作戦を決めた。

 

「ルドルフ、ありがとう。ブライアン、そこまでだ」

 

「まだ――――」

 

 そう喰ってかかるように言いかけて、止まる。雰囲気に反して小さな体躯を満たす闘争心の暴走を間一髪で抑えて、ナリタブライアンは首を振った。

 

「……いや、わかった。これまでだ。だが、明日もやらせてくれ」

 

「ああ、調整しよう。ルドルフもいいか?」

 

「私は構わない」

 

 ストレッチに向かうナリタブライアンの背を見送って、シンボリルドルフは小さく呟いた。

 

「私は長く走ってきたが、当人から併走を望まれたのは初めての経験だよ」

 

 シンボリルドルフの走りは、相手に畏怖の念を植えつける。

 

 畏敬するならばともかく、畏怖してしまっては直接対決に勝てようはずもないし、恐れて怖がるようでは次を望むわけがない。

 

「そして、君に併走を指示されるのも初めての経験だ。相手を慮って、君は決してやらせなかったからな」

 

「併走は確かに効率的な練習ではあるが、相手の心が折れかねない。それはお前の本意ではないだろう?」

 

「まあ、そうだ。だからこそ驚いたものさ。ブライアンと併走してくれないか、というのは」

 

「あいつは折れんさ」

 

「評価しているんだね、ブライアンを」

 

 そんな半音上げたような発声に参謀は疑問の視線を向けた。

 

(疲れているのかな、こいつ)

 

 シンボリルドルフはいつも落ち着いた調子で話す。演説するときにつける緩急を際立たせる為に、そして自分が纏う無意識の威圧感を薄らげる為。彼女はひどく落ち着いた、穏やかさを表に出した話し方をする。

 

 故にこういったほんの少しの変化でも、彼からすれば珍しいことであり、だからこそ気になった。そしてその結論として導き出されたのが、《疲労》だった。

 

 ガッツリ余裕ぶってはいるが心肺機能を酷使したのか。

 そんな勘違いをしている彼の視界の外で、ストレッチをしているナリタブライアンの耳がピクリと動いた。

 

「当たり前だ。あいつの才能は本物だし、心も強い。贔屓目に見なくともどちらもお前に比肩するだろう。第一、才能だけなら間違いなく姉を超えている。そんなのがなんの間違いか俺なんぞを頼ってきたのだから、俺としては使えるコネをすべて使い、振り絞れる労力をすべて振り絞る」

 

 才能を傷つけることなく、調子を落とさせることなく、怪我させることなく羽ばたかせるのが自分の仕事だということを、東条隼瀬は知っていた。

 トレーナーとしての色気――――自分の色に染めたいという本能的な欲求を自制し、才能の荒ぶるままに成長させる。それだけで、ナリタブライアンは歴史に蹄跡を残す優駿になれるだろう。

 

「改めて言っておくが、俺はお前の信者だ。その信者が御神体に比すると言っているあたりで、その評価の高さを感じてほしいね」

 

「言い切るな、随分と」

 

「言い切るに足る相手だからな。今競えば間違いなく、ブライアンはビワハヤヒデに負ける。なにせ経験が足りないからな。しかし、最後に勝つのはあいつさ」

 

「そうか。私としてはぜひ、それを本人にも言ってあげてほしかったな」

 

「別によかろう。伝わっているはずだ」

 

「うん。そうだね」

 

 うんうんと頷くシンボリルドルフから意識を離すと、ナリタブライアンはぬるりと立ちあがってその場を去りつつある。

 その背中を見て彼女のストレッチ内容を反芻し、東条隼瀬は声をやや大きくして飛ばした。

 

「ブライアン。1セットやってないぞ」

 

「……向こうでやる」

 

「まあ、ならいいが……」

 

 振り向きもせずにそう吐き捨てて早歩きで去っていく。

 そんな彼女はやる、と言ったらやるだろう。律儀に走って去るのではなく、早歩きで去っていくあたりを見ればわかる。

 

 野菜を食えといったときも『わかった』と言って拒否するのではなく、『いやだ』と言って拒否してきたウマ娘である。

 良くも悪くも正直で、嘘をつかないのだ。

 

「よく見ていたな」

 

「そりゃあそうだ。俺はあいつのトレーナーだぞ。向こうはどう思っているかは知らんが、完全に目を離すようなことはしな――――ブライアン!」

 

 視界の端っこ、若干前屈気味になってスパートをかけそうになった黒鹿毛が、ビクリと揺れた。竿立ちになり、手がステレオタイプなお化けのように前に突き出されたままに固まる。

 

「な、なんだ?」

 

「走るな。今加速しようとしていただろう」

 

「どういう視野をしてるんだコイツ……」

 

 ブツクサ言いながらスルッと角の向こうに消えていく。そんな背中を改めて見直して、東条隼瀬は少し申し訳なさげに呟いた。

 

「走り足りないのかな、あいつ。だがこれ以上走らせると、故障に繋がる。許可することはできない」

 

「そのことは彼女も理解していると思うよ。走りたかっただけで、走り足りなかったわけではない。私としてはそう思うな」

 

 その走りたくなった理由を作ったやつが良くも白々と。

 ブライアン本人がいればそう吐き捨てたであろう一言をさらりと言いながら、シンボリルドルフはバランスボールの住人となったミホノブルボンの方を見た。

 

「で、ブルボンは何をしているんだ?」

 

「私は体幹を鍛え直しているところです、ルドルフ会長」

 

「体幹。だが君は入学時点で固まった基礎をしていたし、体幹にも不足はなかっただろう?」

 

「マスターより『若干右に傾いている』という指摘がありました」

 

 そうなのか?、と。視線だけでそう問われた東条隼瀬は鉄面皮のまま、その意を察して頷いた。

 

「別に悪いことではないが、それでも放置していると傾き過ぎる。そして、傾き過ぎれば故障に繋がる。ということで、ここらで直しておこうというわけだ」

 

「右回りに適応しすぎるのもよくない、ということか……」

 

「そうだ。この写真を見ろ。右のすり減りが大きい。こうなると負荷が片方に集中する。集中すれば痛みが発生し、慣れない左に負荷を集中させるだろう。となれば、両方の足がおかしくなる」

 

 取り出したミホノブルボンらしき蹄鉄の写真。1年目3月、と書かれたものは均等にすり減っているが、時を経るごとに右のすり減り方が増している。僅かではあるが、そう見えないこともなかった。

 

「これは多くの強敵を右回りのコースで迎え撃ったからこそのものだ。彼女は右回りが得意になりたいと思い、得意になるべく身体が適応した。しかし、その結果特定の部位に負荷が強まることになった」

 

「よく見ているものだな」

 

 その裏には『私の世話をしていた頃はそういうことを言わなかったじゃないか』という疑問がある。

 別にサボっていたのかと疑いを向けたわけではなく、なぜ言われなかったのだろうという純粋な疑問。

 それに答えるように、彼はもうひとつの画像ファイルを開いた。

 

「これがブライアンの蹄鉄だ。履き潰されかけたものだが左右同時に、ほぼ均等に潰されている。謂わばこれが、負荷の分散における理想型なのだ。そしてそれはお前もそうだった」

 

「なるほど」

 

「ブルボンが故障するとしたら脚だ。だがブライアンが故障するとすれば股関節だろう。それもおそらく利き脚の右寄り。だからストレッチを習慣化させるべく、うるさく言っているわけだ」

 

「……もう少し引き止めるべきだったかな」

 

 これまでなんとなく言葉の裏を理解できていた参謀だが、その言葉の裏は理解できなかった。




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アフターストーリー:信頼

「俺はブライアンを信用しているつもりだ。だが信頼はせん。俺が信頼していたのは凱旋門賞のときのお前と、あとはルドルフくらいなものさ」

 

「マスターは、ルドルフ会長を常に信頼していたわけですか」

 

「当たり前だろう。第一あいつには本来の意味でのトレーナーはいらないのだ。あいつは自己管理できるし交渉もできる。事務処理能力もある。練習メニューも組めるしどのレースに出るべきかもわかる。賞金計算も、勝つのだから細々とした調整は必要ない。現場の指示も必要としないし、全体的なレース展開をも予測できる。どこにトレーナーの仕事がある?」

 

 これを聴いたら、ルドルフ会長は困ったように笑うのだろう。

 ミホノブルボンには、その光景がありありと見えた。信頼されることの嬉しさと、手放しにされる悲しさ。

 

 君が思っているほど、私は一人では強くないよ。

 

 たぶんそう窘め、認識の齟齬を修正しようとするだろう。

 だがミホノブルボンとしては、この話が前座であることを知っていた。より正確な表現をすれば、これはかつての彼の失敗を話しているのだとわかっていた。

 

「だがあいつに与えられる時間は、俺のような凡人と同じ量だ。だからあいつに必要なのは自分と同じ視座に立てる、自分の分身だ。俺はそれを、それなりにこなしてきた。あとは話し相手をすればいいのだから、気楽なものさ。あとは頼んだと頼ってしまえる」

 

 割と、その話し相手というのが大きかった気もする。そしていくら自分で全てができる能力があるとは言っても、実際やっていくうちに疲労は溜まるだろう。そうすれば作業効率は落ち、思考は鈍る。

 そして、たった一人で黙々と課題を解決するというのは、寂しい。故に彼の存在価値は彼が思っているよりも遥かに、シンボリルドルフと言う傑出した存在の中で大きいだろう。

 

 だがそれを言っても反論が返ってくるだけである。そして彼の言わんとするところは、そこにはない。

 

「ブライアンさんは、ルドルフ会長と伍する才能を持っています。信頼するに足る相手だと思いますが」

 

「反省したのさ、これでも。頼りすぎたり信じ過ぎたりすると、現実が見えなくなる。俺はあいつの長所を知る。そして活かす。だが頼らない。ブライアンは強いから勝てる、という盲信をしたくない。信じるだけの才能があっても、信じ切らない。俺は、そう決めた。お前を信じ頼ると決めたときに、これ以上もうするまい、とな」

 

 ナリタブライアンは強い。まず、血筋が良かった。次に、環境がよかった。幼少期は姉の背中を追い、トレセン学園中等部に入って早々リギルに加入する。つまり彼女は少なくとも、国内では考えうる限り最高の環境で育った。

 そして、才能も並外れている。全国のトレーナーが思う理想像、中長距離を軽く走れることを血統が保証し、スピード・スタミナ・パワーを兼ね備える。身体も柔らかく、爆ぜるようなバネもある。先行・差しの王道の走りができる。

 

「となると、ルドルフ会長に対してもそうするわけですか」

 

「俺はあいつの才能を信じているわけではない。信じたいから信じているんだ。今更それは変えられん」

 

「まるきり宗教ですね」

 

「そこは否定しない。俺は信者だ」

 

 信じられるから信じるのは、科学と同じである。実証されてるから、信じる。信じるにたる何かがあるから、信じる。それは理屈というもので、信じるものが持つ数値化された何かを信じる、ということである。

 

 しかし彼は信じるに足る数値を持つものを信じていながら、理屈ではなくその本質を信じたいと思って信じている。

 

 ある意味一途であると言えるし、裏表がないと言える。理屈で信じる者は理屈が成り立たなくなれば離れるのに対し、信じたいから信じている者は決して見捨てないし、離れない。

 

 その在り方はある種の忠誠であるし、美しい主従関係ではある。互いを尊重し、信頼し合う紐帯で結ばれているとも言える。

 

 しかし、健全なものでもない。シンボリルドルフでなければ、その無邪気な信頼に押し潰されるかもしれないのだ。

 

「では私を信頼してくださったのは、どういうわけですか?」

 

「……俺の為に、遠い異国で走ってくれる。前人未踏のグランドスラムも、無敗の誇りも投げ捨てて。そんなやつを信じたくならなきゃ、俺は人間じゃない。そうだろ?」

 

 それは、まるきり理屈ではなかった。サイレンススズカに勝つ公算もなく、確率もない。だがミホノブルボンを信じたいから、信じている。

 

 信じるべきだから、信じているのではない。信じたいから、彼は信じたのだ。

 

「やはりと言うと聞こえが悪いかも知れませんが、マスターは案外と感情論で動きますね。理屈と感情が対立したとき、結構な確率で感情が勝つ。そんな気がします」

 

「だからわざとらしく、理屈を並べ立てて生きているんだ。

生まれたときから感情と理屈をせめぎ合わせて理屈を勝たせられる。そんなやつはこんなわかりやすく理屈っぽく見えないんだよ。やつらはうまーく偽装できる。そっちの方が生きやすいのが理屈だからな」

 

「なるほど、その通りです」

 

 なんとなく注文してみたコーヒーをひとくち含み、苦さに眉をひそめる。

 なんとかそのひとくちを喉の奥に通してから、ミホノブルボンはミルクを入れた。

 

「苦いか」

 

「はい。味覚受容体、即ち舌を苦味が侵食中。口内がステータス【苦味】に占拠されています」

 

「まだまだ、味覚は子供だな」

 

「お言葉ですが、私は近頃炭酸水を飲むことができるようになりました。なにも苦味を受容するための器官が整備されることのみをもって、味覚の年齢は判断されるものでもないでしょう」

 

「そうだな。まあお前もあと……3年か、4年。卒業する頃には、飲めているかもしれん。ルドルフも最初の頃は――――」

 

「ルドルフ会長も?」

 

 黙った彼の話の続きを聴きたくて、ミホノブルボンは先を促すように短く問うた。

 しかし答えは返ってこない。返ってきたのは、とある古代の話だった。

 

「いいかブルボン。古代、自身の才能で時流を読み、時代の熱気に吹かれ凧のように農民から王まで立身した男がいた。あるときそいつのもとに、農民時代の友人が現れた。そいつはその友人を歓待したが、しばらくすると殺してしまったのさ。なぜだかわかるか?」

 

「……仲違いをした、のでしょうか。やはり暮らしぶりの変化とは、人格を変節させるものですから」

 

「いいや違うな。その友人が邪魔になったのさ。そいつは王の昔の話をして回った。その昔の話には都合のいいこともあれば悪いこともあった。自分の威厳を損ねる、ということで殺されたのだ。俺はそうなりたくはない。だからあいつの昔の話はしないことにする」

 

「別に殺されることはないと思いますが」

 

「それはそうだ。しかし嫌われるのは嫌なんでね」

 

 そんな風で誤魔化され、この話は終わった。ミホノブルボンは情報の授業に向かい、そして東条隼瀬は中山へと向かう。

 

 ミホノブルボンという少女に彼が吐露した心境は、正真正銘の事実であった。ナリタブライアンなら、と思うのはいい。現実に、それだけの実力がある。しかし油断し切るわけにもいかない。

 

 皐月賞は、内枠も内枠。

 東条隼瀬は鉄面皮のままで、しかし心の奥底を面倒なものを見るように歪めた。

 

 これがミホノブルボンであれば喜ぶべきだが、ナリタブライアンとなると話は別になってくる。内枠で待機し続けるというのは、ともすれば仕掛け時を逃し、進むべき道を阻まれることになりかねない。

 

 負け、勝ち、負け、勝ち、負け、勝ち、勝ち。

 文字通り勝ったり負けたりと安定感がないところが不安視されているものの、勝つ時は圧倒的な勝ちっぷりを披露しているだけに注目度は高い。

 

 こういう世代最強クラスと目されている相手には、マークが集中する。逃げウマ娘はマークされようがされまいがやることは変わらないが、好位抜出型のウマ娘はマークされるとそれを振り切るのが大変である。

 

 しかも今回は1枠1番1番人気。好機を待って好位に居た結果、反則にならない程度に道を塞がれる。そういうことも有り得る。

 これまで気にしてこなかったが、こう言った反則にならない程度の妨害、進路を塞いで敵を不利にし、自分を有利にするという戦術はトレーナーとして腕の見せ所ですらあった。

 

 菊花賞のとき、キョウエイボーガンとライスシャワーが作り上げた檻に叩き込まれた経験のせいで、警戒心は確かにある。

 

「……よし」

 

 取り寄せた中山レース場の情報を参照しつつ、そして現地に赴いて見て得た情報を見る。

 どう走らせるか。その大枠を決めたのは、皐月賞の3日前のことだった。

 

 そして、その頃のミホノブルボンはと言えばということの前に、前提を少し確認しておきたい。

 

 ミホノブルボンは、スターウマ娘である。一応、とかそういう枕詞が必要なのは平時の態度がそう思わせないからだが、彼女は紛れもなく歴史にその名と蹄跡を残すに足る力を持っている。

 

 そしてなによりも寒門出身者からの人気がある。もっともそれは話しかけられるという類いの人気ではなく、仰ぎ見られるという類いのものだった。

 

 これは彼女のトレーナーがかつて担当していたウマ娘にも言えることだった。シンボリルドルフというそのウマ娘は慕われるというより敬意を持たれるタイプの人格をしている。

 一方ミホノブルボンの人格は別にそれほどの孤高さを持っているわけではない。しかしそれでもなおそう見られるのは、圧倒的なまでの実績をあげているからに他ならない。

 そして見た目からすれば、彼女はクールで機械的な麗人である。その2つが絶妙な噛み合いを見せ、彼女はある種のカリスマになっていた。

 

 そんなカリスマは慕われていることをファンレターくらいでしか知らないだけに、本人にその自覚はなかった。

 直接的な触れ合いがないだけに、実感が湧きにくかったというのもある。そして本人が正直ちやほやされることに興味がなかった、というのもある。

 

「あの、ミホノブルボンさん!」

 

 故にこの出会いは、ミホノブルボンにとって新鮮な驚きで満ちていた。

 

「はい」

 

 おや、尾花栗毛だと、ミホノブルボンは反射で思った。

 人間で言うところの、金髪。人間であれば割と見慣れた、そしてウマ娘であれば見慣れない、レアな毛色。彼女の知り合いの中では、タイキシャトルくらいしかしらない。

 

 夕陽に照らされた稲穂のような暖かな色をした尾花栗毛は、それだけで好かれる。

 ゴールドシチーというウマ娘が《100年に1人の美少女ウマ娘》、という走りに全く関係のない面での称賛を受けているのも、本人の努力という土台の上にその特異な毛色が存在していたからこそだった。

 

 ともあれその色素の薄い髪がミホノブルボンの眼に入った。少なくとも、見たことはない。彼女のデータベースは、そう訴えかけている。

 

「今年はその、あまり走らないとのことですが……どこかお悪いのですか?」

 

「いえ。現在のフェーズは《課題の洗い出し》と、《休養》。即ち、来年以降を見据えてのことです」

 

「そうですか……よかったです」

 

 薄緑色の瞳が喜色に満ちる。

 このひとも寒門出身者なのかな、と。例の虚空を見つめる顔をしたまま、ミホノブルボンは漠然とした予測を立てた。

 

「貴方のお陰で私はどうやって立ち上がればいいか、進んでいけばいいかを知りました。ありがとうございます」

 

 去年は、迷走していましたから。

 そう続けた彼女の言いぶりが少し気になる。

 

「移籍したのですか?」

 

「はい。強くなるには、速くなるには……やはり放任よりも管理こそが望ましいということを、日々実感しているところです」

 

 それは別に管理主義が優れていたわけではなく、運用者が優れているだけなのでは。

 根っこのところが聡明であり、そして何よりもトレーナーの影響力の中に――――ないしはその汚染力の中にいるだけに、ミホノブルボンは比較的管理主義に対して批判的とすら言えるほどの中立的な視点を持っていた。

 

「貴方のお名前を訊いてもよろしいでしょうか?」

 

「リ、リトルココンです!」

 

 尾花栗毛のウマ娘は慌てたように姿勢を正して、叫ぶように自分の名を言った。




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アフターストーリー:待機

『どうだ、ブライアンとは』

 

「今回で2回目のクラシック級になりますが、似たような結果になりそうです」

 

 皐月賞。誰もが恋い焦がれるクラシック路線の初戦を前にして、東条隼瀬は何でもないように答えた。

 電話の先には、彼の直接的な上司がいる。つまり、リギルを束ねる東条ハナが。

 

 彼女は文字通り、死ぬほど忙しい。だがそれでも時間を割いて連絡したのは、やはりナリタブライアンというウマ娘が持つ非凡すぎる素質故だった。

 適切でない自己評価を自らに下している男が、その圧倒的な才能の前に気後れしているのではないか、と思ったのである。

 

『似たような、か』

 

「ええ。あれ程の才能と気質の持ち主を預かっておいてなんですが、2年前から然程進歩はなさそうです」

 

『……そういう軽口が叩けるなら大丈夫そうだな』

 

 彼が2年前のクラシック路線で残した実績を超えるとすれば、宝塚記念あたりを勝たなければならない。

 クラシック級のウマ娘がシニア級が集う宝塚記念を制覇した例は、ひとつしかない。

 

 シンボリルドルフという前例しか。

 

「まあ彼女は平押しでも勝てる程度の実力は持っています。こちらとしては万が一を防ぐことに集中すればいい。即ち、実力差を覆さなければ話にすらならない他陣営と比べて非常に楽と言えるでしょう」

 

『弱点には、気づいているわけか』

 

「一応、現実を見ているはずです」

 

 ――――なら、それでいい

 

 そう言い残して切れた電話の画面をしげしげと見て、親指と人差し指でスマートフォンを摘んでくるりと回す。

 

「さて、言うか。言わんでもいいことを」

 

 何もしなくても勝てる。極論、寝てても勝てる。

 2年前の皐月賞のときにはなかった適切な余裕を心の一隅に宿しながら、彼は与えられた控え室に入った。

 

「どうだ、調子は」

 

「悪くない。良くもないが」

 

「だろうな。では、作戦を説明する」

 

 化け物じみた末脚を、身体が走ることに慣れきっていない春先に使えば故障する可能性が出てくる。

 その辺りを考慮して、ナリタブライアンの調子は絶好調とは言い難いところに落ち着かせられていた。

 

 本人に抑える気がないのであれば、より外的な方法で抑え込む。春から上り秋に頂点になるような調整を、彼はこの怪物に施していた。

 ものすごくひょっとすると、負けるかもしれない。だが何よりもまず、怪我をしないことを重視するが故の調整である。

 

 そしてその本調子でない部分は、自分の作戦で補えばいい。

 

「聴こう」

 

「まずこのレースを支配するのは、サクラエイコウオーだ。弥生賞を勝ったやつだな。こいつがおそらくは、逃げる。逃げてペースを握り、そしてレースの主導権を握るだろう」

 

「競っていくか? 逃げを放置しておくと、厄介だろう」

 

 サクラエイコウオーという名前に心当たりはなかったが、ナリタブライアンは逃げという戦法についてほんの少しの危機感があった。

 

 最近、逃げウマ娘たちの伸長が著しい。

 シンボリルドルフをあと一歩のところまで追い詰めた――――尤も彼女は常にあと一歩のところまで追い詰められ、そして無傷で帰ってくるわけだが――――カツラギエース。

 皐月とダービーを制した戦略系逃げウマ娘のサニーブライアン。

 シニア級になってから目立った成績は残せていないが黄金世代の中で二冠を占めたセイウンスカイ。

 そしてダイタクヘリオスとメジロパーマーのバカ逃げコンビに、サイレンススズカとミホノブルボン。

 

 近年、強い逃げが増えている。故にレースのトレンドも変化し、ミスターシービー以来脈々と受け継がれてきた後方待機の戦法が廃れた。

 そして前を取り合うような先行策が幅を利かせているわけである。

 

「昨今そのような言説があるが、逃げは放置する。レースというのは本来、スタートしてから終わる1秒前まで主導権を握らせてしまっていてもいい。要は最後の1秒でお前が勝っていればそれでいいんだ。序盤から終盤まで気張って主導権を握り続ける意味がない」

 

「傍から聴くぶんには、それはアンタが言うべきことじゃないな」

 

 そう言うナリタブライアンの目の前にいるのは、逃げウマ娘育成のスペシャリストと言える男である。

 そのスペシャリストたる所以――――ノウハウや逃げる意味、どう走るか、どう戦略を組み立てるかというのを彼は誰にでも知れるように公開してしまったわけであるが、それでも本家本元であることに変わりはない。

 

 そんな彼が語る逃げの特質にして長所、【序盤からレースを支配できる】というのを完璧に否定するとは思わなかった。

 

「まあな。だが、これは事実だ。スズカは趣味で先頭を取り、主導権を手にしても握らなかった。そしてブルボンに関しては、握らなければ勝てなかった。しかしお前はそうではない」

 

 【序盤からレースを支配できる】というのは逃げウマ娘の長所である。しかしそれが長所であることと、その長所がなくてもいい、というのは矛盾しない。

 長所ではあるが、必ずしも必要ではないということなのである。

 

「まず今回の大枠の流れを説明する。後方で待機して脚を溜め、第3コーナーから進出。第4コーナーにかけて内を通ってごぼう抜きしてゴールする。これが基本構想だ」

 

「内? 外じゃないのか」

 

 大外強襲が、ナリタブライアンの必勝戦法である。これまでの勝ちレースはほとんど全て、怪物じみたスペックに任せた大外ブン回しで捻じ切って勝ってきた。

 そして負けた時は脚をうまく使えなくなったとき、あるいは進路をうまく取れなかったときである。

 

 故に朝日杯FSでは大外強襲で勝ちをもぎ取ったのだ。実力を完璧に出し切れるように。

 

「外は荒れているからよもやがあるかもしれないし、無駄に距離がかさむ。内の状態の良さは確認済みだから、こちらの方が事故は少ない」

 

「だが塞がれる可能性もあるだろう」

 

「それはない。具体的なことを問うが、塞がれるとすれば誰にだと思う?」

 

「逃げ、サクラエイコウオーだろう」

 

 中段を構成するウマ娘たちが進路を塞ぐよりも速く走り、ブッ千切る自信はある。

 が、その中段を突き放すように先頭を走る逃げであれば、斜行を取られない程度の余裕ある距離を取りつつ最適な進路を塞ぐことができる。そうなれば、また1から進路を取り直さなければならず、時間が足りずに負ける可能性が出てくる。

 

 であれば普通に前目の先行策をとり、外に抜け出しての大外強襲でいいのではないか。そちらの方が、リスクなく勝てるのではないか。

 ナリタブライアンの思っていることは以上であり、そしてその思考は実に正しかった。少なくとも皐月賞に勝つことを目指しているだけならば、間違いなく彼女の方が正しい。

 

 しかし東条隼瀬には彼なりの理屈がある。

 その為に後方待機を、もっと言えば脚を溜めるということを身体に憶えさせようとしているのだった。

 

 それはナリタブライアンの数少ない弱点を、長所を殺すことなく補強するためのものである。しかしそのことは、彼女自身には話していない。

 そしてついでに言えば、勝ちを蔑ろにしているわけではない。塞がれる可能性が限りなくゼロに近いからこそ、この皐月賞という大舞台で試してやろうと思っていたのである。

 

「そのサクラエイコウオーが逸走したということは知っているか?」

 

「……ああ、激突しかけたアレか」

 

 サクラエイコウオーはジュニア級の頃、メイクデビューでコーナーを曲がり損ねて明後日の方向に駆け出し、壁にぶつかりかけて止まったということがあった。

 

「その欠点が、この際は我々の有利に働く。サクラエイコウオーには走ることの才能があり過ぎる程にある。4ブルボンくらいはある。が、それだけにレースという狭い表現場所に投影し切ることができていない」

 

 曲がる。駆け引きする。コースに沿った走り方をする。レースとはただ走る場ではなく、走りながら競い合う。走るのがうまいだけで、レースには勝てない。例外としてサイレンススズカがいるが、サクラエイコウオーにはサイレンススズカ程の才能はない。

 

(4ブルボン……?)

 

 それは44冠ウマ娘になれるということだろうか、とナリタブライアンは思った。

 因みにトウカイテイオーは15ブルボンくらいである。結構な間【これほど怪我をしてこのレベルの走りを……やはり天才か】と言ってきたが、昨年の有馬記念での激走でビワハヤヒデを下してからその株は更に上がった。

 

「彼女はコーナーを曲がるとき外に膨れる。膨れ、そしてなんとか曲がり切ろうとするから細かいことを考えている暇がない。つまりブライアン、お前の道を遮る者はない」

 

「なるほど」

 

 自分の考えはあった。しかしそれを表には出さず、しっかりとトレーナーの話を聴いてから納得して頷く。

 バンカラな見た目にそぐわない冷静で沈毅な精神性を発揮しながら、ナリタブライアンは頷いた。

 

「大枠はわかった。で、細かいサインはどうする?」

 

 アンタの指示に従おう。

 ほんの少しだけ辛いピリ辛ラーメンを注文したつもりが死ぬほど辛いヒリ辛を注文してしまったときも黙って食い切った程の、ある種度を越えた――――例えば胃とかが破裂してもしばらくは自我を保ち続けて平気な顔してそうな我慢強さでもって、彼女は彼の指揮に従うつもりだった。

 

「高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に処してくれ。一応、読み間違えはないはずだ。あと、終盤は皆が皆外に膨れると思う。なにかあって大外強襲を行うならば、中盤から仕掛けるといい」

 

「わかった。つまり読み外したらどうにかこうにか中盤から終盤にきて大外に抜けだせばいいんだな」

 

 登山のエスケープルートのような大外強襲案を聴き、ナリタブライアンは確認のために繰り返してから頷いた。

 

「そうだ。じゃ、勝ってこい」

 

「ああ。そうする」

 

 他の陣営が緊張に浸されて気張りに満たされる中で、この陣営は平静を保っていた。

 

「それにしてもあいつ、聴いてたのと随分違うな」

 

 レース前になるととにかく気が立つ。精神的に消耗してしまう。

 彼の師匠である東条ハナからは、そう聴いていた。だが気が立っているような素振りもないし、精神的にも安定しているように見える。

 

「俺の見る目がないのかな」

 

 そんな独り言が、空気に溶けて消えた。

 

 じゃ、勝ってこい。

 

 そう言ったが、本来は怪我せずに帰ってこいと言いたかった。

 しかしあの性格である。彼女の親からは、急性虫垂炎になりながらも学校まで歩いて行って授業を受け、普通に走ったりなんだりしてから若干顔色を変えながら帰ってきて初めて、『姉貴。腹が痛いかもしれない』といった程だと聴いている。

 その我慢強さ、意地っ張りさで『怪我をするなと言われた。したら怒るだろう。ならなんとか誤魔化して怪我を隠そう』などと考えられてはたまらない。

 

「それにしても、怪我をしないで帰ってきて欲しいものだ」

 

 およそGⅠに挑む若手トレーナーとは思えないほどに野心のない呟きと共に。

 彼にとって二度目の、皐月賞がはじまる。




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アフターストーリー:怪物

「本来三冠ウマ娘というのは、もっと伝説的なものだったんだぜ」

 

 現在イギリスにいる男は、練習を終えたライスシャワーの方を見ながらそう呟いた。

 彼の目の前のスマートフォンには、日本で開かれている皐月賞が映し出されている。

 

「一生の中で、一度見ることができれば幸せ。そういう気配すらあった。それをあいつは、数年に1度は見ることができる程度のものにまでしてみせた」

 

「お兄さまは、そうなるって思うの?」

 

「それはわからない。ただ俺から言えることは、あいつが負けたところは見たことがないってことだな」

 

 トゥインクルシリーズに絶対がないと言われるのは、どんな強者でもめぐりあいと運次第で容易く負けるからだ。

 

 東条隼瀬は謂わば、その運負けを防ぐことが極めて巧みだった。シンボリルドルフと組んでいたときも、サイレンススズカと組んでいたときも。

 彼は実力的に勝てる勝負に、当たり前のように勝つ。

 

 それができないことが多かったミホノブルボンと組んでも最初から勝ち続けられたあたりそれだけではなかったらしいが、劣勢な相手に順当に勝つ、というのは彼の本領が発揮される場面である。

 そして今年のクラシック路線には、ナリタブライアンが当たり前に勝てる相手しかいない。

 

(やりようはあるが、それでもな……)

 

 まともに走ってもかなわないなら、檻に叩き込んで逃さなければいい。しかし勝ち筋がそれくらいしかないなら、防ぐこともまた容易いというものである。

 

「そう言えばライス。芝には慣れたか?」

 

「うん。だいぶ慣れてきたよ、お兄さま」

 

「うんうん。ならいいんだ」

 

 最大4000メートル走るのである。前提として芝に慣れていないと、思わぬ事故をまねきかねない。

 東条家の二人に比べれば管理能力に劣る部分があるとは言っても、並よりは遥かに有効な管理を行える『将軍』たるこの男は、やや大仰に頷いた。

 

 そんな男の予想を、世間は計らずも共有していた。もっとも将軍の予想の根拠となる情報も論理もなく、単に雰囲気を目ざとく察知したくらいなものだが、歴戦のファンたちのそういう嗅覚は侮れない。

 

 皐月賞の一番人気は、当然というべきかナリタブライアンだった。

 

 三冠ウマ娘が出るのではないか。

 世間には、そんな声がある。業界の中でも若い世代にも、そういう声がある。

 しかし神の如きシンザンを知る古い世代にとって、三冠ウマ娘とは神聖不可侵なものである。だからこそ、ミスターシービーは神と人の時代をつなぐ三冠ウマ娘として、ルドルフをも超える人気を獲得したのだ。

 

 その翌年に三冠ウマ娘という概念を完璧に人の時代へと引きずり出したシンボリルドルフが栄光を自ら冠り、トウカイテイオーが続かんとした。

 天才たる彼女の挑戦は不幸にも怪我によって絶たれたものの、菊花賞に出れさえすれば勝てていたであろうというのが関係者・ファンの共通見解である。

 

 そしてその翌年、ミホノブルボンが出てきた。彼女は血統が全てを決めるトゥインクルシリーズの分厚い常識に風穴を開け、ついでとばかりに悲願たる凱旋門賞の栄光までも手にした。

 

 ミスターシービーによって存在が改めて確認され、シンボリルドルフによって存在するのが当たり前になった三冠ウマ娘は、ミホノブルボンによって努力次第で誰にでも得られる栄冠へと変質した。

 

 無論その努力次第というのが曲者で、血統に恵まれないウマ娘たちはミホノブルボンという精神的怪物を超えなければならない。

 

 しかしそれでも、希望が無いよりはマシだった。努力する意味を証明してくれたことが、寒門出身のウマ娘たちの努力を助長した。

 自己規定の矮小化を防いで挑戦心を喚起したのである。

 

 だが翌年のクラシック路線は有り体に言えばBNWと言う3強の時代であり、彼女らには食い込む隙がなかった。

 そんなときに降ってきたミホノブルボンが凱旋門賞を制したという一報が、どれほど彼女らを助けたことか。

 

 今年こそは。

 そんな思いを胸に皐月賞へ挑み、精神的怪物へ続く遥かなる道を歩まんとする彼女らは、肉体的怪物を打ち倒すことを強いられていた。

 

 その肉体的怪物こそが、ナリタブライアンである。

 

 色とりどりの勝負服の中で、ひときわ目立つバンカラな服。裾が意図的に千切られたそれを纏うウマ娘の黒いテールヘアーが風に揺れていた。

 

 この怪物を正面切って打ち倒す術を、この場にいる15人のウマ娘は持ち得ない。

 怪物の怪物たる所以は、その圧倒的な能力である。これが駆け引きに強いウマ娘であればじゃんけんのようなまぐれの勝ちもあるが、グーでパーを突き破られては勝ちようがない。

 

 ここで、即ち『勝ちようがない』で止まるような諦めのいい人間でも、トレーナーにはなれる。

 しかし『勝ちようがない』で止まるような諦めのいい人間は、GⅠに出られるようなトレーナーにはなれない。

 

 そしてここはGⅠで、無論みんな勝つためにここに来ていた。

 

 作戦は、ひとつ。そしてそのひとつの作戦を、15人のウマ娘とそのトレーナーたちは共有していた。

 これは、集まって作戦会議した結果というわけではない。

 

 向こう岸にある勝ちという果実をもぎ取るには、同じ橋を渡ることを強いられる。ただそれだけのこと。

 

 ――――これは東条の甥が言うところの、理不尽な二択というやつだ

 

 彼がこの策に気づかなければ、勝負の土台に登れる。気づいても、対策のしようがない。

 そんな確信とともに、15組のコンビはこの大舞台に臨んでいた。

 

 ナリタブライアンの弱点。それは気性が律儀すぎるところである。

 そしてそのことを、トレーナーたちは正確に見抜いていた。

 

 勝負を仕掛けられれば序盤でも中盤でも応じてしまう。それを利用し、繰り返す。

 そして疲労と消耗を蓄積させて、最終直線で抜け出す為の脚を使い果たさせる。

 

 それが唯一にして無二の、そして回避しようのない勝ち筋である。

 数週間かそこらで、気性は改善されない。菊花賞後のミホノブルボンのかかり癖が思いの外長引いたことからも、それはわかる。

 

 気性の改善に対しては、彼も常識の埒外にはいないのだと。

 

 

 そしてこれまでのことは、東条隼瀬が既に見抜いているところだった。

 

 

 ゲートが開く。ほぼ完璧なスタートを切ったナリタブライアンは、いつもの位置につこうとして意図的に緩めた。

 理由はわからないが、後方待機からの末脚勝負で勝てと言われているのだから、そうする。

 

 律儀さ、あるいは素直と形容していいその気質の長所を発揮して、彼女はおとなしく最後尾についた。

 

『さあ、はじまりました皐月賞! ハナはサクラエイコウオー。サクラエイコウオーがレースを引っ張ります。注目の一番人気、ナリタブライアンはポツンと1人最後方からのスタートになりました』

 

 ナリタブライアンがいつもの好位につけなかったことに若干驚きつつも、実況は努めて動揺を見せずに正確な情報を発信した。

 

『ナリタブライアン、スタートに問題はありませんでした。これにはどういった意図があるのか!?』

 

 その意図は、走っている本人すら知らない。

 知るのは観客席でお行儀良く座り、コーヒーで一杯やっている男のみである。

 

(言うとおりに、動いてくれたか)

 

 よかったと、ひとまず東条隼瀬は安堵した。

 ナリタブライアン自身に、彼女の負け筋と弱点を伝えてもよかった。そちらの方がより臨機応変に動けただろう。

 

 しかしあのバンカラな見た目に反してとても賢く、繊細なところがあるウマ娘である。自身の弱点を過大に捉えてしまい、却って長所が削がれる可能性があった。

 

 ナリタブライアンの長所は、勝負への躊躇いのなさである。そして短所も、勝負を迂闊に受けてしまい消耗するところにある。

 これを指摘すれば、彼女はなるほどと思って余計な勝負に迂闊に乗らなくなるだろう。だが一方で、ここぞという場面で『ここは乗っていい場面か』と思考して一拍遅くなってしまう可能性があった。

 

 それは賢くなったと言えるし、付け込まれる隙がなくなったとも言える。

 

 そして無論その一拍を埋められる程の才能は、彼女にはある。その怪物的な末脚であれば、一拍の間など問題にもならない。

 しかしその才能に『躊躇い』という一抹の影が差してしまうのもまた、確かなことなのだ。

 

(長所と短所は紙一重。長所を見るのは、ブライアンがやればいい。短所は俺が見る。そして気づかせずに補填する。それでこそ、あの才能を十全に活かせるというものだ)

 

 そんな彼の深く、そしてすっトロい思考が長く感じない程に、皐月賞はスローペースで進んでいた。

 サクラエイコウオーと幾人かの逃げウマ娘たちは文字通りエイコウに向かって驀進しているが、他の先行・差しのウマ娘たちの動揺は甚だしかった。

 

 いつもの――――そして絶好の好位。

 そこに、ナリタブライアンが来ない。トレーナーと共に導き出した答えが正確であればあるほど、トレーナーを信じていれば信じているほどにその動揺は深く、濃かった。

 

 ある者は当初の計画に固執してナリタブライアンがゆったりと走っている後方まで行こうと脚を緩め、ある者は思考を切り替えて前へ行こうとする。

 それでもやはり当初の計画が覆されたという動揺は濃く、その上がっていく脚は遅かった。

 

(なんだ? 妙にトロいな)

 

 前を見たナリタブライアンは一番ゆったり走っているウマ娘とは思えない感想を抱いた。

 妙に、ごちゃごちゃしている。意図が見えない。

 

(私をマークしたかった。後方にいたからそれができずに動揺している。そんなところか)

 

 レース展開とコース取りを主眼において頭を使いつつ、妙にごちゃっとした現状を見て片手間で一息の間にそこまで思考できた頭の冴えこそが、ナリタブライアンの恐れるところである。

 しかしナリタブライアンは、ここで思考を止めた。

 

(またアイツがなんかしたな)

 

 考える作業は、考えることが好きなやつに任せればいい。

 自分はただ、走る。それだけに集中すればいいのだ。

 

(そうだろう)

 

 薄い黄金の瞳が、コーヒーを飲んで呑気してる芦毛の男を捉えた。

 軽く手を振ってきた悠長さを見て苦笑しかけ、心が弛緩する。

 

 最後方。

 いつもならまずありえない位置を、大舞台ではじめて経験する。そのことへの緊張がなかったと言えば嘘になる。だがあいつがあんなクソ呑気してるのであれば、自分が最善を尽くせば勝てるのだろう。

 

 ナリタブライアンは自然と、そう思えた。

 

 そんな彼女の精神的均衡がほぼ完璧に整ったのと時を同じくして、脚を緩めたり速めたりしている中盤のウマ娘達の動きがやっと沈静化した。

 

 彼女たちと、その後ろにいるトレーナーの前には理不尽な二択が突きつけられていた。

 

 ――――前へ行って自分の走りをするか、当初のプランどおり後ろに下がるか。

 

 前へ行けば実力勝負になり、負ける。

 後ろへ行けば末脚勝負になり、負ける。

 

 ナリタブライアンはポツンと1人で走っているが、アレができるのは彼女の怪物じみた末脚があってこそである。彼女たちにそれがあれば、わざわざ消耗と疲労を蓄積させようなどと考える必要はなかった。

 

 そして何よりも致命的なのが、スタート後の動揺だった。明らかにペースを乱し、脚が鈍った。思考も依然、まとまりを見せない。

 即ち、彼女らはスタートしてほどない地点で既に、実力を出し切れないことが確定したのである。

 

 一方でナリタブライアンは、当初の予定通りとばかりに悠々と脚を溜めている。

 実力差がある。そして、全力も出せない。相手は出せる。

 

 つまりこの時点で、先頭を走るサクラエイコウオーと逃げウマ娘以外はチェックメイトをかけられたのだ。

 となれば、まともなトレーナーであればする指示は一つである。

 

 ――――自分の走りを見せてやれ

 

 その決断の裏には、それまでの積み重ねがある。信頼がある。

 まともな勝負であの怪物を撃砕してやれという軒昂たる意気がある。

 

 だがその意気でも埋められない程の実力差があった。

 

 第3コーナーを曲がり、侵出をはじめるナリタブライアン。彼女がそう決断する前に、他のウマ娘たちは仕掛けた。

 

 早めに仕掛けなければ、勝てない。スタミナが枯れ果てないことに賭けるしかない。

 なによりも、ナリタブライアンと言えば大外からの急襲である。早めに自分が仕掛けることで、理想的なコースを取れなくなる。そうすれば勝ち目も出てくる。

 

 それは実に正しい判断だった。だが正しいからこそ、容易に予想がつくものだった。

 

(本当に空いたな……)

 

 内が、ガラリとしている。未来予知じみた作戦立案能力に半ば呆れるような思いを抱きながら、ナリタブライアンは溜めに溜めた勝負へのフラストレーションを解放した一撃で大地を蹴り揺らして内を急進した。

 槍で串刺しにされるように差し切られていくウマ娘たちをぶち抜き、最終コーナーを曲がるためにやや左に膨れたサクラエイコウオーの視界には、影が横切ったようにしか見えなかっただろう。

 

 誰も、『無理』とは言わない。歯を食いしばって、走る。

 

(やはり、GⅠだ)

 

 質が高い。むりだなんだと諦めるようなやつに勝っても、満たされない。全力を振り絞ってくるからこそ、勝負というのは楽しいのだ。

 

 地を飛翔し獲物をその鉤爪に捕らえんとする猛禽のような、頭を限界ギリギリまで地に這わせた独特のフォーム。

 空を掻くような大きな一歩で、ナリタブライアンはこれまでの約1分半を支配してきたサクラエイコウオーを隷下に置いた。

 

『先頭はナリタナリタナリタ! ナリタブライアン! 抜け出した抜け出した! 完全に抜けた! ぶっちぎり! 追う者は誰も居ない! 圧勝! やはり怪物は強かった! おそるべし、ナリタブライアン! まずは1冠です!』

 

 カメラが頑張って引いても2着の姿すら見えない圧倒的な結果で、黒いテールヘアーが過ぎ去った後に2着のウマ娘がゴール板を駆け抜ける。

 

 それは圧倒的な、もう怪物としか言いようのない末脚がもたらした圧勝劇だった。




58人の兄貴たち、感想ありがとナス!

yrsdi368兄貴、Hiiru meridian兄貴、琴葉K0T0H4兄貴、そどん兄貴、隣の自由人兄貴、寝んねんごろり兄貴、luminous19兄貴、縦書きまちまち兄貴、きさらぎ兄貴、評価ありがとナス!


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アフターストーリー:疑似

 ナリタブライアンが皐月賞を勝つというのは、謂わば既定路線だった。

 ファンからしても、評論家からしても、他のウマ娘からしても。そして、東条隼瀬からしても、である。

 

「当たり前だ、こんなもの。勝つに決まっているではないか」

 

「言うものだな、アンタも」

 

 ウイニングライブを終えて記者会見に向かう男が言った傲岸とすら言える一言。

 それをシンボリルドルフが聴いたら、そんなことは言うべきではないと窘めたことだろう。

 だが、ナリタブライアンとしても負ける気はなかったし、負けると思ったこともない。

 

 それにしても飾らなすぎる言い方であるが、彼女自身も言葉に装飾や含みを持たせない質である。

 自分の本音をそのまま言う、あるいは言ってしまうこの男の癖を理解することは容易かったし、自分が言葉への加飾を嫌う以上、窘める気にもならなかった。

 

 第一、この真っ直ぐすぎる言葉の選び方こそが、彼女が彼を信頼する所以でもあるのだから。

 

「調子を整えて実力さえ出しきれれば勝てる。実力以上の物を要求されないなら、誰がトレーナーをやっても同じさ。それくらいお前は強かった」

 

「当たり前だ。誰に管理されてやってると思ってる」

 

「……管理ね」

 

 まあ確かに、それに近いことはしている。

 だがそれは怪我をしないための大枠を作る、ということである。

 ミホノブルボンにやったような一挙手一投足に渡る主導的な管理主義を、今の彼は使っていない。

 

 サイレンススズカに対しても、ナリタブライアンに対しても、彼がやっていることは願望を聴き、やりたいことを問い、そしてメニューを臨機応変に組み立て直して全体のバランスを取っていくという、放任主義に首輪をつけたような塩梅の代物である。

 

 昨今の好ましくない風潮の確認をする為に幾人かの――――最近放任で結果を出せていないベテランの指導方法を見学したが、あれは管理というよりも強制に近かった。最北から最南に転向しても、極端なところが変わらない。

 

 流石と言うべきか、その本家本元たる理事長代理の行っているチーム運営は理に適ったものだった。

 

 才能が損なわれること。

 夢に挑むことができなくなること。

 アスリートとしての生を終えてからの日常生活に影響が残るような大怪我を防ぐことを第一に置いた徹底的な管理主義。

 

 なぜ徹底的な管理ができるのかと言えば、それは樫本理子という女性の経験と才能が管理主義の鉄壁に柔軟さを与えているからである。

 だが誰もがそうできるわけではない。理事長代理は寝食を惜しむような熱心さで他の結果が出ていない放任主義者たちを教育しているわけだが、教育だけでできるようになるとも思えない。

 

「管理というのは、何だと思う?」

 

「駄目なものに駄目だということ。そしてその理由を言い、代案を出すことだろう。具体例を上げれば、アンタはいつも完全に否定し切らない。今日はだめ。なぜならこうだから。その代わりに明日やらせてやる、という。こういうのが、管理だ。違うのか?」

 

「いや」

 

 違わない。

 その短い答えをブルボンやルドルフが聴けば根底にある疑問に気を向け、内包物を察知しただろう。

 

 だがナリタブライアンの場合、そこまで気は回さなかった。

 

「それにしても、私に手を貸してよかったのか?」

 

 アンタは寒門の味方だろう。希望を与えておいて自ら摘む。そういうことはいいのか?

 少なくとも世間的なイメージは、そうである。本質的には、彼には寒門も名門もない。手を貸してくれと言ってきたウマ娘の味方である。

 

 だが自分と共に三冠の覇道を突き進むことは、彼がミホノブルボンと共に舗装した道を自ら破壊するものではないか。

 ナリタブライアンとしては、そう思わないでもない。

 

「俺は魚を釣る方法は教えたし、ブルボンが誰にでも釣れるところを見せた」

 

 学会で彼が発表した坂路トレーニングの有用性とトレーニングの管理理論は、なんの隠し事もなく、なんの奥義も隠していない公明正大なものである。

 そしてミホノブルボンはそこに書いてある通りに鍛え、身体が破壊される限界線を反復横飛びするような過酷なトレーニングで三冠に至った。

 

「だから俺は、釣ったものを与えてやる気はない。ブルボンは努力し、自ら勝ち取った。ならば後に続く者もそうすべきだ。立ちはだかる者が、遠慮してやる必要はない。そうではないか」

 

「まあそうだが」

 

 量、質、密度の掛け算。

 才能が皆目ないミホノブルボンは、努力でその全てを補った。

 

 普通のウマ娘なら7回は壊れてもおかしくない量を、一流のウマ娘の数倍の精神力でやり切る。ただやり切るのではなく、目的意識と集中力を途切れさせずにやり抜く。これは、真に偉大なことである。

 

 それはミホノブルボンのトレーナーとして過酷すぎる練習を与え続けた東条隼瀬自身が一番わかっていた。

 彼女らがその先達に追いつこうとするならば、それこそ手を抜くことなどあり得ない、と。

 

「それに、寒門の誰かが無敗で三冠を制するとなると、俺とブルボンのそれまでに並ばれるということになるからな」

 

「アンタはそれが気に食わないわけだ」

 

 ミホノブルボンの夢を全力で応援する。寒門でもやれることを示す。

 示しつつ、自分とミホノブルボンが歩んだ3年間が唯一輝く特別のものであってほしい。

 

 そこを詳しく洞察したわけではないが、ナリタブライアンは野生的な勘でこの理性的に見える男の単純ならざる心境を見抜いた。

 

「気に食わないわけではない。ただ」

 

「ただ?」

 

「俺を超えるくらいはしてもらわなければ、ブルボンの栄光に並ばせるわけにはいかないな」

 

(気に食わないんじゃないか)

 

 厳しすぎる父性愛、というべきか。

 

 しかもこれの厄介なことは、抱く本人が感情としての複雑さを自覚していないにも拘わらず、『レースに挑むからには全力でやらざるを得ない』というトレーナーならば誰もが頷く性分で理論武装してしまっていることである。

 

 ミホノブルボンは、親友のライスシャワーとの忖度なしの激闘の末に無敗と三冠をその手に掴んだ。

 そんなウマ娘の後継者になりたいのならば、忖度を必要とするはずがない。ならば、彼が大人気ないほどの全力で叩き潰しにかかるのも何らおかしいことではない。

 第一、手加減を必要とするならば後継者になどなり得ない。ついでに言うならば、ミホノブルボンがそれを望まないだろう。

 

 そもそも彼女はあくまでも、自分と同じように信頼できるトレーナーと共にどこまでも夢を追いかけていけるための道を切り開きたいだけであり、別に自分の他の寒門ウマ娘にクラシック三冠の栄冠を得てほしいわけではないのだから。

 

 

 ――――二度目の皐月賞制覇ですが、ご感想は?

 ――――順当な結果を得られたと思っています

 

 ――――クラシック三冠は狙えそうでしょうか?

 ――――レースを終えた時点で今年の有資格者はブライアンひとりだけになったのですから、狙えると言えるのではないですか

 

 ――――次のレースは?

 ――――日本ダービーでしょう

 

 ――――これは管理主義の勝利であると言えるでしょうか?

 ――――ナリタブライアンの勝利であるとしか言えないでしょうね

 

 そして記者会見の最後に、月刊トゥインクルの記者が締めとしてはやや不適切ながら、それでも必要な質問を投げかけた。

 

 ――――東条トレーナーは、管理主義が放任主義に優越しているとお考えですか?

 ――――両者の間に適性はあっても優劣はない。問題はむしろ運営者の手腕にあります。放任主義は運営者の優劣が色濃く出やすく、管理主義は出にくい。そういうことです

 

 基本的にインタビューを受けるはずのナリタブライアンが死ぬほど無愛想でリップサービスをしないが故に、比較法でまともな部類に分類された男は質問の集中砲火を食らった。

 

 『ああ』、『そうだ』、『違う』、『しつこい』くらいしか返答の選択肢を持たないナリタブライアンは、見た目通りのつっけんどんぶり。要は、マスコミ嫌いである。

 

 記者会見を終えたあと、ナリタ家へ向けて『2年連続皐月賞制覇』という偉業を称える祝電を送り、東条隼瀬はコーヒーをぐびぐびとやりながら車を運転して府中に帰ってきた。

 

「長々と喋ることが嫌いなのは性分なんだから、言っても無駄さ。喋ることによって走るのがうまくなるならそうさせるが、そうではないからな」

 

「その寛容さはマスターの美徳ですね」

 

「めんどくさいだけさ」

 

「その露悪的な言い口はマスターの欠点ですね」

 

 ポンコツロボ(いぬ)の星の散りばめられたような瞳の平熱ぶりが、このわざと自分を悪く見せるような言い方に慣れていることを示していた。

 

「どうでしたか、今年の世代は」

 

「今のところではあるが、お前に続くやつは現れそうにないな」

 

 レッグプレスを一定のペースで上げ下げしているにも拘わらずなんの澱みもなく続けられる言葉に、ミホノブルボンというウマ娘が練習に練習を重ね鍛え抜かれていることが察せられた。

 

「見たところ、あの出走者たちの中に私に劣る才覚の持ち主はいませんでした。それでもですか」

 

「お前の長所は驚異的な精神力にある。そう簡単にブルボン二世が現れるというわけにもいかないだろうよ」

 

 サボらず、音を上げず。

 ただひたすらに彼女は身体を鍛え上げた。

 坂路とは、身体を早熟させる施設である。素質のままに圧倒できる才能がない彼女は自分の能力を一気に上げざるを得なかった。

 

 早熟した身体を粘りと持続性のあるものに作り変え、そして疲労を抜いてこれからに備える。

 そのために丸々1年を要すというのは、彼女が如何にこれまで無理をしてきたかの証左だった。

 

「よくやるよ、お前は」

 

「マスターが居てこそです」

 

「そうだな。俺が居てこそのお前で、お前が居てこその俺さ」

 

 シンボリルドルフにも、サイレンススズカにも、そしてナリタブライアンにも、必ずしも自分の力が必要だとは思わない。

 完成度には左右のブレがあるかもしれないが上下のブレは起きなかっただろうし、あの才能であれば放っておいても三冠なりなんなりになれたことであろう。

 

 しかしミホノブルボンに関しては自分がいてこそだと言う若干の自信が、彼にはあった。

 

「その通りです、マスター」

 

 むふーっと。

 眉毛を左右にピーンと上げ、口元が短い弧を描く。

 

 基本的に自己評価の低い2人だからこそ、互いが支え合ってこその栄光であるということを正しく理解することができていた。

 

「それにしてもマスターはやはり、管理主義の伸長を快く思わないのですね」

 

「伸長は喜ぶさ。なにせ管理主義というのは凡人が画一的な優秀さを育てあげるには最高の方式だから、主流ではあるべきだと俺も思う。だが問題はその主流が濁流となって支流を呑み込まんとしていることだ。このままでは、天才や個性派の行き場がなくなる」

 

 個性的で天才肌な連中をそういう型に嵌めてしまうと、お互いにとっての不幸になる。

 そういうやつらには放任主義があっていて、そういうやつらのために、放任主義は残されるべきなのだ。

 

 ミホノブルボンからすれば、管理主義は歓迎すべきものである。

 自己を改革していく想像力に乏しい彼女からすれば、次々に『ああせい』『こうせい』と言ってくれる管理主義は合い過ぎるほどに合っていた。

 

「それにしても、管理主義は天才に合わないのですか?」

 

「凡人の管理主義には、な」

 

「ではマスターはどうなのでしょうか」

 

「俺は本人たちの要望を汲んで、管理を最低限にとどめている。謂わば天才の天才ぶりを借りて運営する疑似天才というべきだろうな」

 

 そうですかね。

 そう思ったが、ミホノブルボンは賢かった。

 スズカがうんたらーとか言いはじめることが容易に想像できるだけに、彼女は口をつぐんだのである。

 

「疑似天才、ですか」

 

「そうだ。今回俺は相手の動きを完璧に読んだ。だがそれだって、俺が優れていたからではない。ブライアンの実力が相手の勝ち筋を限定させたからこそだ。サクラのトレーナーなどが『読み切られた。あいつは天才だ』などと言ったが、俺は所詮パチモンさ」

 

 そうかな、と。

 ミホノブルボンは、また思った。




57人の兄貴たち、感想ありがとナス!

ギアスター兄貴、みね兄貴、Emmanuel兄貴、カンタラ兄貴、サイドン兄貴、評価ありがとナス!


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アフターストーリー:餡蜜

「ルドルフ」

 

「ん」

 

 ブルボンに口述筆記をさせるためにブツブツと言っていた口を休めるように閉じて、自分が書いていた書類をルドルフに渡す。

 予算配分の見事さ、更にはその配分に沿うように生徒側からの要望を取捨選択するまでの迅速さ。ちらりと見ただけでわかるそれらを吟味した上で、シンボリルドルフは頷いた。

 

「これでいい。次も頼む」

 

「わかった。ブルボン、続きだ」

 

「はい、マスター」

 

 口で別なことを言いながら、書類を処理していく。

 

「普段ならこの時期は戦場じみた雰囲気になるもんだが」

 

 ぺらりと一枚だけ、プリントされた要望書に目を通して分類する。

 副会長とは思えないほどの単純作業に従事するナリタブライアンは、その金色の目線を唯一の男とそのウマ娘の方に向けた。

 

「楽でいいな、今年は」

 

 楽を単に楽として捉えて気楽に単純作業に興じるナリタブライアンに反して、もう一人の副会長ことエアグルーヴの表情はそう単純に楽を甘受するような、そんな喜びに満ちてはいなかった。

 

 生徒会室が戦場じみた忙しさになるのは、ナリタブライアンの言った通りいつものことである。

 しかしこの楽さは、いつものことではない。その原因はシンボリルドルフの補佐官としてついているのがエアグルーヴではなく、東条隼瀬であることにある。

 少なくともエアグルーヴはそう思った。そして自分がまだまだ尊敬すべき皇帝の視座に届かないこと、これまで足を引っ張ってしまっていたのかもしれないという点に思いを致らせ、少し凹んでいた。

 

 シンボリルドルフの仕事は、去年のそれよりも更に速い。それは彼女の能力が爆裂に上がったからではなく、補佐に付く者が彼女の意図するところを正確に察知し、やってほしいことを言われる前に行い、望んでいるところを察知しているからであった。

 そしてそんなことができる理由はひとえに、その補佐官が補佐する相手と同じものを見て同じものを感じているからに他ならない。

 

「だが……」

 

「あの働きを見て忸怩たるところがあるわけだ、アンタは」

 

「……追いつくさ、すぐにでもな」

 

 ブライアンは生徒会の仕事に対してやる気がない、というわけではない。死ぬほど向いていないだけである。

 そのことを、東条隼瀬は知っていた。

 故にナリタブライアンにはその動体視力と我慢強さを活かしたひたすらな単純作業を任せる。

 

 ――――無理をさせずに活かすべきところを活かす

 

 それは無論彼がナリタブライアンのぶんの仕事をこなせるからであるが、人を使うと言う点においても劣っている、とエアグルーヴが感じてしまうのも無理からぬことだった。

 別にそれは、能力の優劣ではなくやり方の違いに過ぎない。だがエアグルーヴからすれば、『うまく使いこなしている』と見てしまう。

 

 東条隼瀬はあるがままの能力と気質を鑑定し、使えるところを使う。

 エアグルーヴはやってほしいことに必要な能力を伸ばすような仕事の振り方をする。

 

 効率がいいのは前者だが、長い目で見れば優秀なのは後者であった。

 

「ブルボン、次は?」

 

「リギル執事喫茶についてです」

 

「またやるのか。それならテンプレートがあったはずだから、今回借りた教室に適用させておいてくれ。席と出口が重ならないようにな」

 

「わかりました」

 

 リギル執事喫茶は、かなりの人気企画である。しかし借り受ける教室がくじ引きによるランダムである以上、席の配置や厨房の設置を調節しなければならない。

 そういった細かい作業は、事務処理能力にかけては一流であるミホノブルボンにとっては容易いことだった。

 

「ルドルフ、確認と裁可を頼む。あとこれ、資料だ。そろそろ要る頃だろう」

 

「ありがとう。ちょうど探そうとしていたところだった」

 

「だろうな」

 

 阿吽の呼吸、というのか。

 あくまでもシンボリルドルフという企画の創出能力・調整能力・事務処理能力の三冠ウマ娘に依存して様々な学園の企画や問題を処理してきたのが現在の生徒会である。

 だがその直属にナンバーツーというべき絶対の補佐役を置くことで依存度が薄れ、もともと極めて優秀な組織力が加速度的に研ぎ澄まされていくようだった。

 

 東条隼瀬という男は、もともとシンボリルドルフのような理想や気宇の壮大さを持っていたわけではない。

 しかしその理想に触れて共感し、視座を合わせることを決めた。そしてその瞬間から、同じ視座に立つために能力と気宇を成長させていったわけである。

 

 彼が共有する理想に合わせて能力を充実させていく男だということを、シンボリルドルフは知っていた。

 そしてエアグルーヴにもそれができるであろう、と。

 

「よし、ファン感謝祭の準備は完了した。発注の後、様々な事故が突発するだろうがそのときはその時と考えていていいだろう。ありがとう」

 

「……何だ、もう終わったのか」

 

 分類の仕事を終えて提出書類の運び屋に転職していたナリタブライアンは、いささか拍子抜けしたようにそう言った。

 ダービー前のお祭りというべきファン感謝祭までには、まだまだ猶予がある。故にあと二日、いや三日くらいはかかってもおかしくなかったし、事実去年や一昨年はそれくらいかかっていたのである。

 

「規模を縮小したのか?」

 

 そんなブライアンの疑問は、当然のものだった。

 剛毅なところがある彼女は、参謀とブルボンという事務処理能力の鬼どもの加入によって数時間単位で効率化されることは想定していた。しかし、日にち単位の効率化は流石に想定外だったのである。

 

「いや、今回は寒門のウマ娘がたくさん来るだろうから規模は増大させてある。トレーナーくんに助っ人を頼んだのも、そのためだよ」

 

「へぇ。じゃあ規模の増大より事務処理能力の増大を差し引いて、大きな黒字になったわけか」

 

 エアグルーヴの能力も、参謀に食らいつくことで一気に増大した。彼女は皇帝と参謀が何を考えているか、どういうところで思考を読み合っているかを仕事の合間の観察によって洞察し、そしてそれをほぼ自分のものにしつつあったのである。

 

「エアグルーヴ、本当によくやってくれた。期待通りの成長をしてくれて嬉しいよ」

 

「いえ、会長の意図を察することにおいてまだまだ未熟であることを認識しました。これに満足せず、精進していく所存です」

 

「ああ。それと、流石だねトレーナーくん。ああも私の思考を読んで先回りしてくれるとは」

 

「でなければブルボンの無敗伝説の終点は宝塚記念だっただろうな。俺は誰よりも、お前を知っている。知ろうとしてもいる。知りたいと思っている。同じ視座に立つ者でありたいと足掻くからこそできることがある、そういうことだ」

 

 シンボリルドルフのルナなところにクリティカルヒットを喰らわせ、何度目かの再建を果たした『何か』をこれまた何度目かの瓦礫の山に変えた男は、あくびを一つ漏らしてから立ち上がった。

 

「よしブルボン、帰るぞ。手伝ってくれたお礼に、甘いものでも食わせてやろう」

 

「では、あんみつを所望します」

 

「ああ、いいぞ」

 

 バタン、と生徒会室の樫の扉が閉まる。

 犬と飼い主、あるいは娘と父親、年の離れた妹と兄。そんな感じの二人を見送って生徒会室に残ったのは、どストライクな直球を胸に喰らって尻尾に反乱を起こされている耳が萎れた皇帝と、皇帝に褒められて喜びを噛みしめるエアグルーヴと、あとはナリタブライアン。

 

「謎だ」

 

 樫の扉の向こうに去っていった男と皇帝を見比べ思いながら、いつかのように。

 

 ナリタブライアンは呟いた。

 そして一方、能天気ポンコツ二人組はと言えば。

 

「あんみつ。あんみつか。好きになったのか?」

 

「はい。マスターもお食べになりますか?」

 

「いや、最近食欲がな……」

 

「最近というより、食欲旺盛であった試しがないのでは」

 

 春は季節の変わり目だから食欲がない。

 夏は暑いから食欲がない。

 秋は温度差がひどくて食欲がない。

 冬は寒いから食欲がない。

 

 じゃあ一体、食欲不振でないときはいつなのか。

 年単位で続くスランプをそれ即ち実力というように、彼の食欲不振は不振と言うにはふさわしくない。言うなれば、通常運転である。

 商店街の外れ、侘び寂びの利いた甘味処に徒歩で向かい、席につく。

 

 ミホノブルボンがいつものようにあんみつを頼んだのを見て、東条隼瀬はサラリと見たメニューの中で一番胃に優しそうなものをチョイスした。

 

「じゃあ俺は抹茶をいただこうかな」

 

「アイスですか」

 

「ノーアイス。俺は今日弁当を食ったからあんまり食欲がないのだ」

 

「珍しいですね。買ったのですか?」

 

 彼は基本的に朝夕二食の男である。

 ウマ娘は間食を含めて四食で生活することも珍しくないのに比して、エンゲル係数に優しい男だと言えた。

 

「ああ……対価を払ってはいるから、買ったと言っていいかもしれないが」

 

「なるほど」

 

 提供者の存在とその内訳を察知して、ミホノブルボンは頷いた。彼女の脳の半分はあんみつへの期待で、そして半分はなんか色々なものに占められている。

 それだけに、彼女の反応は淡白だった。

 

「マスターはファン感謝祭のとき、何か御用がお有りですか?」

 

「オペラオーの演劇公演に参加することになっている。だから毎日16時から30分間は拘束されることになるな」

 

「となると、ピアノですか?」

 

「そうだ。というか、それくらいしかできん。あとはまあ、リギル関係で色々だな。執事喫茶のときは厨房にも入るし、講演もある」

 

 そう言いつつ、東条隼瀬は脳裏にある担当ウマ娘たちのスケジュールを引っ張り出した。ナリタブライアンに関してはダービー前ということで予定はガラガラだが、ブルボンとスズカは忙しい。なんだかんだで人気で、実績もあるウマ娘だけに。

 

「スズカは昼間の模擬レースやらライブやらがあるし、お前にしたって今回案内役を仰せつかったわけだろう」

 

「はい。学園内の案内パンフレットのインプット完了。いかなる質問にも対応できるように事前インストールは済ませています」

 

「それはなにより。クラスの出し物は何をやるんだ?」

 

「お化け屋敷です。ポスト:幽霊を仰せつかりました。事前準備に関しても、それなりに貢献しているつもりです」

 

 へー、じゃあターミネーター役でもするのか。

 そう言いかけた口を抹茶ですすぐ。

 

「お前は暗いところでやたら光るから、気をつけろよ」

 

「心します」

 

 どう気をつけるのか。

 そういう詳しいことをゴタゴタと言わないあたりに、この二人の関係が精緻で画一的なものではなく、雑で適当なものであることが窺えた。

 

「執事喫茶で」

 

「うん」

 

「マスターは執事服を着るのですか?」

 

 それは彼女自身が見たいとかそういうことではなく、クラスメートから言われたからであった。

 

 あの鉄面皮な毒舌家は、執事喫茶の執事として出てくるの!?と。

 やや掛かり気味に言われて、ミホノブルボンはその疑問を氷解させるために、今なんとなく問うたわけである。

 

「いや。リハーサルでは着るが、その予定はない。需要もないだろう」

 

「需要に関してはあります。マスターの見た目は私のクラスメートの間でも人気ですので」

 

 基本的に良い子が多いウマ娘たちである。

 わざわざ応援グッズを買ってミホノブルボンのレースをテレビや現地で観戦していた者は多い。更に言えば、日本トゥインクルシリーズの悲願である凱旋門賞に挑戦するときなど、授業すら止まった。

 

 そしてミホノブルボンのレースを見れば必然的に、見た目だけならばシンボリルドルフと互角なこの男を見ることになる。

 

 人格的円満さを生贄に捧げて手に入れたに違いない隼のような冷たく鋭い美貌は、目元の精悍さと病理的な白い肌がかもし出す儚さを巧みに同居させていた。

 

 要は、彼は顔が良かった。

 かっこいいとか綺麗とかではなく、顔が良かった。

 

「なるほど。しかし俺が膝を屈したいと望むのはこの世に2つの人格があるだけだ。そしてその2つの人格は結果的に1人のものだった。すなわち、真似事と言えどもそいつ以外に仕える気はない」

 

「わかりました。伝えておきます」

 

 あんみつの汁にひたしたさくらんぼを最後に食べ終えて、ミホノブルボンは自分にも運ばれてきた抹茶を口にして、顔を歪めた。

 

「あら、苦いか」

 

「余計に」

 

「しかたないな」

 

 くいーっと2杯目の抹茶をかっさらうように飲み干して立ち上がり、座っているミホノブルボンの肩をぽんと叩く。

 

「外で水を買ってやる。出るぞ」

 

「はい、マスター」

 

 甘いものを食べたあとは、喉が渇く。

 その渇きを苦味のある抹茶で潤すことこそ至福と信じている彼ではあったが、できないことを強いる気はない。

 

 天然水でも買ってやるかと思いつつ会計とカロリー計算を同時に行いながら、彼の財布からそれなりの金銭が羽ばたいた。




58人の兄貴たち、感想ありがとナス!

gbliht兄貴、tiel兄貴、arukaito兄貴、闘夜兄貴、シルフィードAS兄貴、てんてんてんてん兄貴、きさらぎ兄貴、評価ありがとナス!


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アフターストーリー:ブルボンの野望 全国版

戦国群雄伝、武将風雲録と続く


 ミホノブルボンは彼がどこに行くにしても、てこてこと後をついてくる。

 雛鳥が初めて見たものを親だと思って付いていくように、ミホノブルボンは初めて担当してくれた――――肉親以外で初めて自分の夢を応援してくれた男をマスターと認識したのか、てこてこと忠実についてくるわけである。

 

 鳥がピーチクパーチクと鳴くように、犬がワンと吠えるように、ミホノブルボンはマスターマスターと言って付いてくる。

 

 そして無口そうで結構しゃべる質のミホノブルボンは隣に座って一生懸命に、今日あったことを熱心に話す。

 

「今日はサクラバクシンオーさんとウィークリーミッション『カフェへバクシーン』を行いました。摂取したカロリーは約700キロカロリーと推定。細かいメニューの提出を行いますか?」

 

「いや、いつものだろう。それならば構わない。楽しかったか?」

 

「はい」

 

 こういった無表情で無口そうなウマ娘が尻尾をブンブンと振りながら拙くも一生懸命なお話をしてくれるというのは、東条隼瀬からすればとてもありがたいことだった。

 

「マスターは、私の話をよく聴いてくださいます」

 

「ああ」

 

「そして私は他者にステータス『楽しい』を付与するような喋り方ができません。マスターは楽しんでいらっしゃいますか?」

 

 暗闇で何故か発光する耳飾りを着けていない方の耳を不安げにへたれさせて、ミホノブルボンは問うた。

 声色は依然としてアナウンスのような平坦な秩序が保たれているものの、その目線にはほんの少し窺うような色がある。

 

「無論だ。お前と話し、時間と空間を共有する。言葉の内容だけではなく、雰囲気と風韻を楽しむ。俺はそういうふうに、結構こういう時間を楽しんでいるんだがな」

 

「そうですか」

 

「そうさ。お前といると、俺は落ち着くんでね」

 

 ホワイトチョコレートに覆われた棒状の菓子を頬張る男は、脚を組み直して冷やされたコーヒーを一口飲んだ。

 

「それはルドルフ会長といるときも同じことではありませんか?」

 

「あいつと居ると安心する。それは当然だ。俺が気づかないことに彼女は気づくだろうし、その判断に従っていればまず間違いはない。だがだからこそ、俺としては失望されないように色々と気を張っているわけだ」

 

 そういう絶対的な信頼があるからこそ、シンボリルドルフは決断前に必ず、彼に意見を求めるのだろう。

 決断したあとでは、自分の導き出した正答を肯定するような答えしか返ってこないから。

 

「お前は俺を必要としてくれている。それがわかるからこそ、遠慮なくお前の側に居られるわけだ」

 

「はい。私はマスターを必要としています。マスターが私を必要としてくださっているのと同じくらい多く、それよりも深く、私はマスターの存在を必要としています」

 

「うん」

 

 うん、と言った瞬間、撫でられることを察知したミホノブルボンの栗毛の耳が撫でられやすいようにぺたんと頭に溶けるように畳まれる。

 その代わりにやや遠慮というものに欠ける男の手が少女の頭の上に乗せられ、犬にでもやるようにわしゃわしゃと撫でた。

 

 ――――お父さんとマスターは、違う

 

 それは、わかっている。自分に対して向けられている感情が僅かに異なり、自分が向けている感情は大きく異なる。

 だがこの、大きな手で撫でられる感覚。包み込むように優しい、安心を与えてくれる行為。

 

 人格的な温かみがそうさせるのか、あるいは単に手の動かし方が似ているということなのか。

 

 撫でられ終わって耳がぴょこんと立ち上がっても、ミホノブルボンはわからなかった。

 

「いい子だ、お前は。本人の資質もそうだが、親の教育が良かったのだろうな」

 

 自分に加えて大好きなお父さんが褒められたことを受けて、鍛えられた栗色の尻尾がパタパタと揺れる。

 意味もなく彼のコーヒーを持っていない方の手をぎゅーっと握ったりして、手持ち無沙汰とばかりに虚空を見た。

 

「口」

 

 ズボッと、彼が頬張っていたものと同種の菓子が半開きになっていた口を強襲する。

 ホワイトチョコレートのしっとりとした甘さとクッキー生地のサックリ感がハーモニーをもたらしたあたりで、ミホノブルボンは星の瞬く瞳を隣に向けた。

 

「どんなに偉業を打ち立てても速くなっても変わらんな。ぽけーっと口を開ける癖は」

 

 見てて面白いから別に直さんでいいが。

 おそらくはこのあと続くであろう言葉をマスターとの過去ログ倉庫から引っ張り出してきたミホノブルボンは、次の言葉に耳を疑った。

 

「お、当たった」

 

「何がですか?」

 

「いや、お前のブロマイドがな。ほら」

 

 名前繋がりのコラボ商品である。

 闘走本能と不敗の誇りを剥き出しにして走っている姿を激写し、編集を施されたそのカードは暗闇でも見える特殊加工をされたものらしかった。

 

「かっこいいだろう。集めているんだ」

 

「だからリギルのお茶請けがブランド統一の憂き目にあっていたのですか」

 

「旨かろうが」

 

「そこは、否定しませんが」

 

 げっ歯類のようにポリポリやってからこくりと呑み込むイヌ科のウマ娘は、それでも納得しかねるように首を傾げた。

 

「なぜ、そんなものを集めるのですか?」

 

「俺は担当ウマ娘のグッズは基本的に全て揃える主義なんだ。老後なんの能もなくなって過去を楽しむことしかできなくなったときに、暇にならないようにな」

 

 棒状のクッキーを包むホワイトチョコレートのように、『現在が遠くなってしまったときに過去を色褪せずに思い出したい』という本音を皮肉でコーティングした言葉の本音と建前を正確に把握しつつ、ミホノブルボンは耳をピコピコと左右に揺らした。

 

「マスターはおそらく、死ぬ寸前までルドルフ会長に酷使されるのでその心配には及ばないと思います」

 

「そりゃあありがたい」

 

 あの皇帝は、死ぬまでこの露悪的で皮肉屋な助言者を手放さないだろう。

 ミホノブルボンは、自分と彼の間に破り難い絆があることを知っている。だがそれと同じかそれ以上の絆がシンボリルドルフと彼との間にあることもまた、知っていた。

 

「それと」

 

「うん?」

 

「本物が側に居る以上、そういうものは他の人に譲ってあげてはいかがですか」

 

 こいつ、恥ずかしいのか。

 確かに、本人の前で本人のグッズを自慢げに披露するというのは、いささかデリカシーにかけていたかもしれない。

 

「それはそれ、これはこれだ」

 

 わざわざ誂えたケースの中に収めたブロマイドをしまいつつ、東条隼瀬は凪いだ表情を見せるイヌ科のウマ娘の顔を見た。

 

 怒っている、というわけではない。ただ、恥ずかしがってるようにも見えない。

 

「嫌か、こういうのを集めるのは」

 

「嫌ではありません。私もマスターと初めて会ったときの靴をまだとっておいていますし、まだ履いてもいますから」

 

「ああ、あのボロか」

 

 死ぬほどデリカシーのないことをポロリと口からこぼしている男を割と諦めたような目線で見て、ミホノブルボンはボロ呼ばわりされた靴を思い浮かべた。

 

 確かに、ボロボロではある。しかし歩くのに支障はないし、見た目もそれなりのものである。

 

「なんでとっておいているんだ?」

 

「マスターと会えたことも、担当していただけたことも奇跡のようなものです。どこかで何かが違っていれば、会ってなかったという可能性すらあります。その幸運を思い出し、その上であぐらをかかないようにしているのです」

 

「臥薪嘗胆というわけか」

 

 お前は関羽か。

 そんなツッコミをおくびにも出さず、彼は世間一般的な四字熟語で話を〆る。

 

 屈辱を、というわけではないが自分を戒めてはいるわけだからそうなのかもしれない。

 そんなミホノブルボンは、取り敢えず曖昧に頷いた。

 

「あの頃着ていた服はもう着れなくなってしまいましたから、靴だけが最後の拠り所です」

 

「だが実際、靴の破損は事故に繋がる。保管しておくのはいいが、使うのはやめるべきだろうな」

 

「…………はい」

 

 非常に現実的な意見をぶつけられて自信満々にキリッとしていることが多い眉がしゅーんとなったのを見て、東条隼瀬は慌てて口を開いた。

 

「だから明日にでも、靴屋に行こう。これもそれなりの思い出になると思うが、どうだ」

 

「はい」

 

 眉がキリッとなり、尻尾がうるさいくらいに振られはじめたのを見て、思わずクスリと笑いを漏らす。

 

(かわいいやつ)

 

 わかりにくい癖に、わかりやすい。

 耳も『ワクワク』とでも言うように左右にゆらゆらと揺れているあたり、とった選択は間違いではなかったらしい。

 

「わかりやすいな、お前は」

 

「いえ、私は表情に乏しいと指摘されたことがあります。よって、表情はわかりにくいはずです」

 

「まあ表情と声の抑揚にはやや乏しいが、感情の機微とはそれだけで知るものでもないからな」

 

 それまでブンブンしていた尻尾でクエスチョンマークを作る程度にはわかっていないらしいブルボンの頭を軽く撫でる。

 

「お前、そろそろ門限だろう。帰りなさい」

 

「はい、マスター。また明日」

 

「ああ、また明日」

 

 栗毛の少女は、疑っていない。昨日も今日もそうだったように、明日も明後日も側に彼がいることを。

 

 だが男の方は、必ずしもそうとは限らないと言うことを知っていた。

 個人にとってのこれまでというものが有限なのだから、これからというのも有限であることを。

 

「ブルボン」

 

「はい」

 

 くるりと振り返った、青い瞳。

 美しく、純朴なその光を真正面から受け止めながら、東条隼瀬はなんとなく切り出した。

 

「お前、卒業してなりたいものとか、そういうのはあるのか?」

 

「……?」

 

 卒業してもこれまでがずっと続く。

 割と無邪気にそう信じていたミホノブルボンは、ぽけーっとした顔をして立ち止まった。

 

「指導者になりたいとか、地方で何かをやりたいとか、そういうことはあるのか?」

 

「……取り敢えず、マスターと一緒にいたいと思っています」

 

 マスターがいて、ライスがいて、ライスの側には将軍がいて、そして生徒会室に行けばルドルフ会長がいる。

 そういう日常を、そういう日常が作り出す小空間を、ミホノブルボンは愛していた。その終わりを考えることができないほどに、このまま続いてほしいと思っていた。

 

「私は、マスターの側に居ることが好きです。マスターと、マスターの周りの人が織り成す空間の中にいつまでも居たいと、そう思っています」

 

「そ、そうか。なら、卒業したら俺の補佐をしないか? お前は手袋必須とはいえ最近電子機器も扱えるようになった。俺の意図も汲めるし、事務処理能力も高い。補佐役としては適切だと、思う。別に今返事をする必要はないから、将来の選択肢として覚えておいてくれ」

 

「はい。メモリーに保存しておきます」

 

 パチパチと、両者の瞳が瞬く。

 無限にも感じられる沈黙の後に、ミホノブルボンの方が口を開いた。

 

「ですから、マスターも忘れないでください」

 

「ああ。忘れないさ」

 

「お願いします。忘れてしまった、ということになると」

 

「なると?」

 

「冷静さを欠いてしまうかも知れません」

 

 そりゃ怖い。

 そんな呟きが、春の風に吹き消されて消えた。




43人の兄貴たち、感想ありがとナス!

あぴおー兄貴、えんどま兄貴、ベルスニカ兄貴、ぷに丸4620兄貴、瀬戸 内海兄貴、harricon兄貴、評価ありがとナス!


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アフターストーリー:ブルボンの野望 戦国群雄伝

 アオハル杯が復活した、というのは学園関係者にとってビッグニュースだった。

 

 アオハル杯というのはルドルフのデビュー以前は行われていたが、ルドルフのデビュー以後は行われていない。

 特に彼女が何をしたというわけでもないが、アオハル杯に出走したウマ娘で現役なのはマルゼンスキーくらいなもので、そのマルゼンスキーにしてもドリームリーグで年に1回走るくらいなもの。

 

 チーム戦というもののノウハウを持っているウマ娘が、ほぼいない。そしてトレーナーとしてそのノウハウを持っている者も、数少ない。

 度重なる激務で辞職したもの、夢を後援しきることができなかったが故に責任を感じて辞めた者、成績が残せずに地方に飛ばされた者。

 

 あるいは寿退社した者。

 

 トレセン学園のトレーナーほど、入れ替えの激しい職種もないのだ。

 完全に足を洗う者も多い。しかしその中で一旦は辞めつつも、心の態勢を整え直して戻ってくる者もいる。

 

 その代表格が、チームスピカのトレーナーだった。

 

「リギルと、か……」

 

 口に含んだ棒付き飴が前歯に当たり、カチカチと音を鳴らす。

 

 アオハル杯の復活は関係者にとって衝撃であった。

 しかし関係者ならざる者たち――――即ち一般的なトゥインクルシリーズのファンたちにとってもビッグニュースだったのである。

 

 となれば自然、衆目は集まる。その集まった衆目に対してより劇的な方法で、アオハル杯初戦の告知をする場は、どこか。

 どこで告知すればより多くの人々により的確でセンセーショナルな知らせが届くか。

 

 URA広報部の考えがそういう方向に向かうのは当然であり、その発表の場にファン感謝祭が選ばれるのは必然だった。

 そしてその組み合わせのオオトリがリギルVSスピカという学園内最強チームのぶつかり合いになるのもまた、必然であろう。

 

 だから、スピカのトレーナーとしてもその可能性は承知していた。だが発表されるとなると、あの巨大戦力を前に怯んでしまうのもまた無理からぬだった。

 

「トレーナー! チーム名決まった?」

 

 そんなやや陰鬱気味な雰囲気に清風を吹き込むような変な声が、スピカの部室に鳴った。

 

「ああ……」

 

「スカーレットとウオッカのユメガ・ヒロガリングスか、ボクとマックイーンのガンバルゾか、スペちゃんとゴルシのステゴ・ステイゴールズか! どれ!?」

 

 そう。鉄の結束を誇るスピカは現在、古代中国よろしく三国に分かれて覇を競い合っていた。

 

 宿敵たるリギルからの援助を受け南方で独立を果たしたダイワスカーレットとウオッカのユメガ・ヒロガリングス。

 北方の雄、王道を往くテイオーとマックイーンのガンバルゾ。

 買収されたスペシャルウィークをゴールドシップが操る、天険に拠った傀儡政権のステゴ・ステイゴールズ。

 

 そういうわけで、スピカは仮称として『チームスピカ』と出している。しかしあくまで仮称であり、変更可能。つまりこの覇権争いは、変更の権利を誰が行使するかというところがミソだった。

 

「ああ……」

 

 うんとも、すんとも言わない。

 そんなトレーナーの様子に、クソガキのように見えてやっぱりクソガキながら、結構人の心に寄り添うことのできるクソガキ――――トウカイテイオーはひょいと机の上を覗いた。

 

「なんだ、対戦相手決まったんだ」

 

 リギルと、他2チーム。

 リギルに関してはメンバーの提出こそされていないものの、米印の横にサブトレーナーが指揮を取りますという一文があるあたり、誰が出てくるかは予想がつく。

 

(アレが出てくるってことはつまり、カイチョーも絶対出てくる! カイチョーと一緒に走れる!)

 

 初の手合わせ、いや足合わせとなる秋天ではおっそろしく情けない走りをしてしまった、と。少なくともトウカイテイオーはそう思っている。

 

 だからこそ、トウカイテイオーはメラメラエガオで闘志を燃やした。

 彼女にとってチーム戦というのは、連立した個人戦に過ぎない。

 

「大丈夫だよトレーナー! マイルはともかく、中距離はボク、長距離はマックイーンでなんとかするからさ! あ、あとゴルシも」

 

 リギル。

 スピカ。

 カノープス。

 

 これらが学園内のトップスリーなわけだが、いずれもその組織内にダートウマ娘や短距離ウマ娘を豊富に抱えているとは言えない。

 特にスピカとカノープスには、ダートを走れるウマ娘も短距離を走れるウマ娘もいなかった。

 

 言葉を選ばずにいえば、ダートと短距離とはそれほどまでに人気がなかったのである。

 そして、クラシック路線やティアラ路線といったたった一度の世代に依る花形決戦みたいなものもなく、毎年新規戦力を獲得する意味も薄い。

 

 短距離とダートは、スペシャリストに任せればいい。

 そんな風潮があり、事実大手と呼べるチームは短距離やダートのウマ娘を育成するために必要とされるリソースを自チームから割くよりは、より上質な中・長距離ウマ娘を育てるためにこそリソースを費やしていた。

 

 ともあれそんな感じで、トップチーム同士のチーム戦ともなると主戦場はマイル、中距離、長距離の所謂王道の距離になる。

 つまり、3戦2勝でいいのだ。マイルに関してはもうどうしようもならないのが一人いるから諦めるとしても、中距離と長距離では対抗できる。

 

 そしてこの時点で、シンボリルドルフが長距離を任せられることを知る者はリギルの中でも極少数だった。

 故にトウカイテイオーはシンボリルドルフを自分の得意とする、そして同じく相手も一番得意とする中距離で迎え撃てると信じて疑っていなかったのである。

 

「だけどなぁ……」

 

「なんだよー! 信じてくれないってわけ!?」

 

「い、いや! そうじゃなくてな!」

 

 沈黙。

 それを鬱陶しいといった空気を微塵も感じさせない大きな目に屈したようにため息をついて、スピカのトレーナーは口を開いた。

 

「シンボリルドルフとあのおハナさんの甥が組むと、なんと言うか……勝てる気がしなくなるんだよ」

 

「なんでぇ?」

 

「それは……まあ、叩きのめされたから、だな。4度ほど」

 

 それも、完膚無きまでに。

 天才的と言っていいほど、シンボリルドルフは勝つのが巧い。彼女の名を冠したルドルフ戦法とは即ち、中盤から終盤にかけて最小の出力で抜け出して、最高の結果を得る最効率の戦法である。

 

 勝ちに行くことが芸術的なまでに巧みなウマ娘と、敗けを防ぐことが芸術的なまでに巧みなトレーナーが組むと、どうなるか。

 それは両者の戦績が示している。

 

(なにかあったんだ)

 

 確かにあの二人が組んだレースは、ほとんど全てシンボリルドルフの僅差圧勝で終わった。

 シンボリルドルフが勝ちパターンを押し通す強さを、東条隼瀬が勝ちパターンへ引きずり込む強かさをそれぞれ発揮して、なんの危うさもなく先輩三冠ウマ娘が支配するシニア級を我が物としたのである。

 そして一度君臨してからは、神の子による挑戦をなんの問題もなく撥ね除けていた。

 

「でも、だいじょーぶだって! 最強無敵のテイオー様が、ばっちり勝ってあげるからさ!」

 

 トウカイテイオーの朗らかさ、明るさ。

 彼女の言は基本的に、自分の才能という根拠しか持たない。だからこそそういった、単純にして楽観的な思考に救われる者も多かった。

 

「そうだな。まあ悩んでも仕方ないかぁ……!」

 

 と言いつつも、思考することはやめない。リギルに勝つには、人事を尽くす他ないのである。だがそれでも現実を悲観することを、彼はやめた。

 

「その通り! ガンバルゾ、いくぞ! おー!」

 

 事実として、この3度目の復活を果たした天才は自らの有言を実行した。何度も何度も怪我をしてもその度に立ち上がってきた彼女は、この年の冬、偉大なる皇帝を打ち倒すことになる。

 

 しかしそれは今のところ、夢物語でしかなかった。

 有馬記念のあと4度目の骨折をした彼女は今のところ、実力を回復させるのに忙しかったのである。

 

 そしてその敵手はと言えば。

 

「マスター。厚かましいながら、2つほどお願いがあります。よろしいでしょうか」

 

「おお、なんだ」

 

「私と手でハートマークを作っていただけますか」

 

 お父さんから言われたのです。これからもあのトレーナーくんと心を一つにがんばれ、と。なので一緒に写真を撮ってください。

 

 そう言われて、まあいいかと東条隼瀬は思った。

 別に嫌ではないし、ブルボンの願いは可能な限り聞き届けてあげたい。

 

「よかろう。で、誰に撮ってもらうんだ?」

 

「彼女です」

 

「……別にそれはいいが、死んでないか? あいつ」

 

「問題ありません。統計によると彼女は私の入学以降1615回ほど亡くなっていますが、いずれも復活を果たしています。今回もそうなるはずです」

 

「なるほど。2度あることは3度あるのだから、1615回あったことは1616回あるだろう。それにしても」

 

 なかなかにショッキングな色の髪をしている。

 撮影までに2度3度死にながらも、その写真の腕は見事だった。多分日常的に写真を撮っているのであろう。どこで何を撮っているのかは知らないが。

 

「ありがとうございます」

 

「こ、ごちらごぞ、ありがたきじあわせぇ!」

 

 基本的にいつも何かしらを考えている男に対して思考を停止させるほどの凄まじいほどの強烈な印象を残しながら、謎の変態は消えた。

 

「そしてマスター。より厚かましいお願いなのですが」

 

「ああ?」

 

「マスターは私のレアなブロマイドを獲得するべく、企業の策略に乗ってらっしゃいました。先日見事お目当ての物を獲得したようですが、それには多大の犠牲があったはずです。違いますか?」

 

 気の抜けた時特有の返答にもめげずに話しかけてくるデカい犬の耳の動きを追いながら、東条隼瀬はその意図するところを推察する為に頭を再起動して思考をはじめた。

 

「いや、違わない。果てしなくダブったが……それがどうかしたか?」

 

「それをいただきたいのです」

 

「なるほど。サイン色紙の代わりにでもするつもりか」

 

 ファン感謝祭を前にした今という時期からして、一見ミホノブルボンが彼女にとって使い道がなさそうな自分のブロマイドを求めるという奇異な現象を解釈するにはそちらの方がしっくり来た。

 

「はい。よろしいでしょうか?」

 

「ああ、よろしい。後でエルコンあたりに運んでもらおう。このあたりで負債を返済してもらってもいいだろうからな」

 

 この時点でミホノブルボンは、それなりの量があることを察知した。それは彼女の思惑からして喜ぶべきことではあるが、ここぞとばかりに借りを返せと迫られるであろうエルコンドルパサーに対して思うところがないと言えば嘘になる。

 

「まだ預かっていたのですか」

 

「まあな」

 

 カフェテリアの一角。

 彼にとっての指定席というべき奥まった場所で見ているのは、やはりというかパソコンに収められた資料だった。

 

「対戦相手が決まったのですか」

 

「ん、ああ。一応作戦も立ててある。というか、ルドルフに長距離を頼んだあたりからもうほとんど勝ちのようなものだ」

 

「となると、私は中距離で走ることになりそうですね」

 

「だろうな」

 

 パタン、と。作戦案が入力されていたファイルが閉じられる。

 その軽い音が契機になったのか、トレーナーとしての怜悧な眼差しが消え去り、ほんの少しだけ色の違う光が鋼鉄の瞳の中に見えていた。

 

「そう言えば、ブルボン。お前、そろそろ誕生日だろう。なにか欲しいものはないのか」

 

 相変わらずの直截的な言い方である。

 もう少し情緒が育った相手であれば『そこを含めて考えてほしい』というめんどくさい考えを抱くところだが、女というよりは犬に近い心理を持つこのウマ娘にとっては、何よりもそう言う私的な話を振られたことが嬉しかった。

 

「昨年のようにマスターと2人で小規模なお祝いの席を作っていただければ、特に求めるものはありません」

 

「なんだ、張り合いがないな。ビルとか、そういうものを要求してもいいんだぞ?」

 

「では、来年も同じようにパーティーをしてください。それが私にとってはなによりの贈り物です」

 

 当たり前のことを言うなよ。

 そう言いかけて、彼ははたと気づいた。

 

 これは、あれか。自分で考えろということか。女特有のアレなのか。

 しかしこのわんこみたいなウマ娘に、そんな高度な心理的駆け引きを行える情緒と知能があるとも思えない。

 

(単純に、親しい相手に側に居て欲しいだけなのか)

 

 長大なアホ毛と耳をペタリと伏せさせて『撫でてくれ』というポーズを取る犬科ウマ娘目のサイボーグの頭をわしゃわしゃやりつつ、東条隼瀬は珍しく答えの出ない思考の海へと漕ぎ出した。




Q:1615回ってなに?
A:感想欄でデジタル殿が出てきた回数

72人の兄貴たち、感想ありがとナス!

leu128兄貴、さすらいガードマン兄貴、yusuke1109兄貴、カミカゼバロン兄貴、赤LARK兄貴、あんころもち兄貴、Kkま兄貴、zin8兄貴、アトフェ兄貴、ウツボン兄貴、あくろ兄貴、野菜射撃兄貴、評価ありがとナス!


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アフターストーリー:ブルボンの野望 武将風雲録

やっとスコーピオンブルボン完成したので初投稿です。


「ガション、ガション、ガション……」

 

 セルフ駆動音を声帯で奏でながら、ミホノブルボンは学園棟の階段を下っていた。

 それを見た幾人かの後輩――――大抵はミホノブルボンを尊敬している彼女ら――――を『なにやってるんだろ……』という疑問の海に突き落とす。

 しかしそれを自覚することなく進んでいき、イヌ科ウマ娘目のサイボーグはロッカーについた。

 

「ジー、ジー、ジー、ガチャン」

 

 右回りに4、右回りに2、左回りに5。

 ダイヤル式の鍵を解錠し、取り出したメタリックな靴に履き替える。

 

 ガション。

 

 一歩踏み出す度にそんな音が鳴るこの安っぽくない鋼鉄色の靴は、彼女のトレーナーが作ったものである。重さは通常のものと変わらないが、歩くと自動で効果音が鳴る。方向転換すると『ぐぽーん』と音が鳴る。

 

 セルフ効果音を自動で流してくれるそれをウッキウキで踏みしめながら、ミホノブルボンは学園棟からトレーナー寮へと向かった。

 

「マスター。履き心地・運用、共に異常無し。私のステータスは『うきうき』であると推定します」

 

「だろうな。音がガションガションと近づいてきたあたり、お気に入りらしい」

 

「はい。これで私もロボミンです」

 

 ロボミンであるかどうかはともかく、お気に入りであることは確からしい。

 3日前にサイボーグ戦士ロボミンなるアニメを見てからひたすらに『ガション、ガション……』と言いながら歩くこのデカい身体した幼女を見兼ねて、東条隼瀬は市販のロボミンモデルの靴を改造して音が出るようにしたのである。

 あとついでに色を塗り替え、安っぽく光るような塗料から重厚感のある――――よりアニメに描かれているそれと近くなるようにしたのだ。

 

 セグウェイの件といい、無駄な器用さを持つ男である。

 

「嗅覚に反応あり。マスターが飲んでいる液状物質は紅茶であると推定。ステータス『驚き』を認識しました」

 

 マスターがコーヒーを飲んでいないというのは珍しいですね。

 最近ロボっぽい感じが薄れてきたブルボンにロボっぽさが戻ってきた理由は、サイボーグ戦士ロボミンなるアニメーションであることは疑いない。

 

(しかし、こういうこともあるさ)

 

 ミホノブルボンは、学習能力豊富なウマ娘である。授業を一発でインプットするから復習をせずに練習に明け暮れているのに、テストではいつも学年トップ。

 そして側にいる人間の質によって色々と個性がついてしまう質である。

 

 東条隼瀬という露悪趣味の皮肉屋の側に居たから時折皮肉を口にするようになったが、誓って殺しはやってなさそうなトレーナーに預けられれば表情と感情の畝が耕されて豊かになるだろう。

 

 つまり、サイボーグ戦士ロボミンに嵌まればロボ的な喋り方を取り戻す。出会ったときから持っていたそれの原型が、どこにあるのかはしらないが。

 

「まあ、試飲という感じだな。そしてこれから試食もはじまる」

 

 その瞬間、栗毛の尻尾がピーンと伸びた。

 嗅覚を別な方向に向けた瞬間、気づいたらしい。

 

「この匂い。材料にバラ科リンゴ属の落葉高木、またはその果実、正式名称:セイヨウリンゴが含まれていると推定。調理形式は焼き上げ、アップルパイであると確信します」

 

「この4年で172回くらい聴いたからな。朝はリンゴをおすすめします、というのを」

 

「それはマスターが172回朝ごはんを食べなかったからです」

 

 迅速果断なツッコミである。

 しかし彼からすれば、食欲が湧かない朝に食べ物を食べる意味がわからない。

 

「まあそれはそれとして。そろそろ来るだろうと思っていたからな。焼いていたわけだ」

 

「マスター。本日、何を食べられましたか?」

 

「お好み焼き」

 

 それは、嘘とは思えない速度の返答であった。しかしミホノブルボンは、彼が必要とあらば尋常でなく巧みに嘘をつけることを知っている。

 

「ステータス『欺瞞』を感知。マスターが朝からそんなものを食べられるわけがありません」

 

「食ったのは事実だ。0時6分にルドルフとお好み焼き屋さんに行き、0時25分に1枚食べた。この通り、レシートもある。立派に本日だ」

 

 2時間食べ放題コース、という文字が踊っているそれの会計時間は午前2時17分。確かに、お好み焼きを食べたのは『本日』である。

 その『本日』はミホノブルボンが意図したものとは全く違った意味を持っていたが。

 

「なるほど。では質問を変更します。朝起きてから、何か食べられましたか」

 

「お豆腐を食べた。お湯で温めてネギを載せて、ポン酢をかけてな」

 

「……マスター。これは本気の話なのですが、それで大丈夫なのですか?」

 

「俺からすればお前たちウマ娘が食べ過ぎなんだ。ルドルフなんかお好み焼きを食べたあと、朝から卵4個ぶんのオムレツとベーコン6枚、パン7枚を食べて生徒会室にウキウキで向かったんだぞ」

 

 それは、普通では。

 中学生男子が女子の弁当箱を見て驚くような気持ちで彼の少食ぶりを見てきたミホノブルボンは、そんなことを思った。

 

 ちなみにブルボン自身も、ルドルフのそれと似たような量を食べている。

 そしてそのことは、未だに彼女専用の食事メニューを組んでいる東条隼瀬の知るところであった。

 

「ま、それはそれとして。焼き上がったぞ」

 

 ぴょこん、と耳が動く。

 りんご大好きミホノブルボンにとって、目の前に置かれた焼き立てのアップルパイは大いに食欲を刺激されるものだった。

 

「少し小さめだが、これはお前用だからな。紅茶と共に味わってみてくれ」

 

「はい、マスター」

 

 アップルパイを一個まるまる食べてみたい。

 そんな、多くの子供が類似の願いを抱いているであろうほんの少しだけ贅沢な願いを見透かしたような、小ぶりのパイ。

 

 サクリ、と。香るような甘い匂い漂うアップルパイが一口サイズに切り分けられ、すぐさまその一口サイズのひと切れがサイボーグの動力炉に続く口の中に消える。

 

 パクパクですわ!

 そんな感じに次々とアップルパイを口へ運んでいくミホノブルボンは、向かいに座る男が温かな眼差しでこちらを見ていることに気づいた。

 

「マスターは食べないのですか?」

 

「ん? 俺はまあ、そうだな。お前が食べているのを見ているだけで、いいさ」

 

 パチパチと、綺羅星を宿すように深い青い瞳が疑問を提示するように、瞬く。

 

「俺は小さい頃病弱でな。大抵家で寝ていた。その時両親は忙しかったはずだというのに、1日の内1度は、共に食事をする時間を作ってくれていた。その頃はその意味がわからなかったものだが……」

 

 一人で食べても、二人で食べても、食べるものが変化しない限り味など変化しないし摂取カロリーも変わらない。

 そのあたりが疑問であり、そしてその疑問は珍しく解読困難な命題として残っていた。

 

「今はわかる。他人が食べているのをただ見るというのも、いいものだ」

 

「……?」

 

「わからんか。まあお前もいつか、わかるときが来るさ。それがいつかは知らんがね」

 

 ミホノブルボンはずっと、食事は誰かと一緒にとってきた。

 彼女がわからないのはむしろ、何故彼がそんな簡単なことを疑問に思っていたか、というところにある。

 しかしそこを敢えてほじくり返すようなことを、彼女はしなかった。

 

「で、味はどうだ?」

 

「ステータス『至福』を確認。お金を取れるレベルであると思います。マスターは紅茶も淹れられたのですね」

 

「まあな。想像しにくいことだが、ルドルフは最初コーヒーが飲めなかったのだ。だからこうやって紅茶を淹れる機会が多かった。今となってはコーヒー党に転向してくれて結構なことだが」

 

 などと言いつつ、東条隼瀬は内心満足げに頷いた。ミホノブルボンの味覚は、子供である。なにせ最近炭酸水を飲めるようになったくらいなのだ。

 

 そんな子供にも堪えうる味を出せたことに、彼は内心喜んでいたのである。

 

「そう言えば、マスター。ナリタブライアンさんの日本ダービーはどのような策を用いられるのですか?」

 

 ファン感謝祭の準備に忙殺されているものの、それが明ければ程なく東京優駿こと日本ダービーが開催される。

 制覇すればトレーナーにとっても、そしてもちろんウマ娘にとっても最大の栄誉とされるそれは東京レース場、左回り、2400メートルで行われる。今年のクラシック戦線の主役であるナリタブライアンが、どう出てくるのか。

 

 皐月賞で内のギリギリを強襲して急進するという奇策に打って出たこともあり、そして圧倒的過ぎる末脚を披露したこともあり、衆目が集まっていた。

 

「別に用いるというほど特別な手順は必要としない。大外に回って差し切る。それも、できるだけ派手にな」

 

「……派手に。ということは、派手にしなければならない理由がある、ということですか」

 

 アップルパイの最後の一欠片を口に入れ、ほっぺたに付いたりんごの破片を人差し指で拭って口に放り込みながら、ミホノブルボンはインプットにかけては優秀な頭を働かせた。

 

「まあ、そうだな」

 

「手札の多さをあえて示し、相手に対策をさせる余地を与えない。そのあたりだと推測します」

 

 内を突くことが勝ちパターンのウマ娘を相手にするならば内を固める。

 外を回ることが勝ちパターンのウマ娘を相手にするならば外へ出て進路を膨らませる。

 

 ナリタブライアンの勝ちパターンは単純なものであり、そしてそれらには単純であるが故にこれまた単純な対策がある。

 しかしこの2つの勝ちパターンの対策を両立させることはできない。少なくとも、全体を俯瞰できずに走っている一個人には。

 

「その通り。しかし付け加えるんだったら、もう少し思考に深みがあると相手をうまく嵌められるだろう。つまり、皐月賞と日本ダービーを見たウマ娘はどう動くか。どうなるか。もっと言うならば、ナリタブライアンが負けるならどういう場合か。負ける状況を偶然とは無関係に作り出せる相手とは、誰か。そのあたりをな」

 

「…………なるほど」

 

 対戦相手が誰なのか。であればこそ、この手は有効に作用するのか。

 そのあたりをヒントのように提示されて、ミホノブルボンは気づいた。

 

「力で押し切れるようになるまでは幻影に苦しめられ、幻影が薄れる頃には力で押し切られてしまう。どちらを選んでも、周りに影響されざるを得ない当人にはどうしようもない。凄まじいやり口ですね」

 

「これが、あらゆる布石を惜しまないということだ」

 

 だがこの悪辣な八方塞がりの陥穽は、あくまでもナリタブライアンが日本ダービーに勝てるという前提に立っている。

 そこを疑わず、また事故を防ぐことに全力を挙げられるあたりにこの人の強かさと脆さがあるのだと、ミホノブルボンは思った。

 

 しかしその脆さに、組んでいるウマ娘は気づくだろう。自分がそうであったように。

 となるとその脆さの中にあるもの――――冷徹な理性の計算の中にある激情家というべき感情の豊かさ、信頼の固さに気づくだろう。

 

 そうなれば――――そう、これほどまで冷徹な計算で布石を打ってくる男に無邪気に信じられているとなれば、なんとしてでも応えたくなる。

 その気持ちはやる気に繋がり、実力以上の実力を発揮させてしまう。

 

 そこをまったく計算していないあたり、ずるい。

 ミホノブルボンは、そう思った。




77人の兄貴たち、感想ありがとナス!

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アフターストーリー:ブルボンの野望 覇王伝

おしるこ!!


「感謝している人……すなわち、マスター」

 

 ミホノブルボンに、羞恥心というものはないのかも知れない。

 ファン感謝祭で紡がれた1つのシーンで、誰もがそう思った。

 

 それは、ポーカーフェイス大会。優勝者の所属するクラスには、気づけば消え去っている学食の大目玉、パフェが振る舞われるという。

 そんなポーカーフェイス大会は熾烈を極めた。まずお化け屋敷での決戦で大半が驚愕と怯みの顔を見せてしまい落選し、次回の辛い物食べ競争でもまた多くが落選した。

 

 そして、最後。2つの難関を乗り越え身近な人への感謝を伝えよう!という自爆テロのような企画に挑んだブルボンは、迷わずにその名を口にした。

 

「マスターは私の夢を応援してくださいました。周りが無理と言っても、あのトレーナーは言う事を聞くのをいいことに無理なトレーニングを課している。またウマ娘を故障させる気かと言われても、マスターは揺らがず、私を応援してくださいました。三冠を目前にしたときは夢を自ら見つけることの大切さを説いて下さり、私は繋げていくことの重要さを学びました。

私は、マスターに感謝しています。夢を叶えられたのも、私には過分の名声を得られたのも。それはひとえに、マスターのおかげであると」

 

 それに対して、たいていのウマ娘が羨望の眼差しを向けた。

 ここまで深い信頼関係は、そう築けるものではない。

 

 自分たちも。そう思っている中で、一人の男が立ち上がった。

 

「俺もお前に感謝している。俺が立ち直れたのも、ブルボン。お前が側に居てくれたおかげだ。お前が俺を信じてくれたおかげだ。俺の指し示す道を疑うことなく駆けてくれる。そんなお前だからこそ、夢を果たせたのだ。これからも、共に夢を駆けていこう」

 

「はい、マスター」

 

 これまたこの二人に対して、たいていのトレーナーが羨望の眼差しを向けた。

 ここまで深い信頼関係は、そう築けるものではない。

 

 そう。それは、かけがえのない絆を感じるひとときだった。

 

 しかし、翌日。

 

「マスター。それはなんですか」

 

「犬。捨てられていたから拾ってきた」

 

 老いた感じのある、茶色の犬。

 そのボロ犬は彼女のマスターの腕に抱かれ、だらーんと尻尾を垂らしてハッハッハッと息を吐いている。

 風呂から出たばかりだから、だろう。おそらく汚れていた犬を洗ってあげていたであろうマスターの優しさ。

 

 それをごく自然に『自分に向けられるべきものだ』と思っていたミホノブルボンは、やや不機嫌に耳を絞った。

 

 ブルボンは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の他所犬を除かなければならぬと決意した。

 ブルボンには恋慕の情がわからぬ。ブルボンは、サイボーグである。田舎で父と共に遊んで暮して来た。けれどもマスターのペット事情に対しては、人一倍に敏感であった。

 

(おや)

 

 と、東条隼瀬は勘付いた。

 このイヌ科のウマ娘は何やら不機嫌らしい、と。

 

 人間は眼や口元、表情などに感情が出る。

 それに加えてウマ娘は、耳と尻尾にも感情が出る。

 ミホノブルボンは表情や眼、口元などに感情が出にくい。出にくいが、そのぶん耳と尻尾に感情が如実に出てくる。そして彼女は基本的にぽややんと穏やかな気質をしているから――――少なくとも、彼自身はそう思っている――――ブルボンは常に機嫌が良さそうな感じに耳をピコピコして尻尾を振っていた。

 

 しかしその耳を左右にピコピコさせる動作はなくなり、今は耳が絞られている。

 耳を絞るとはなんぞや、という話ではあるが、つまり耳を後ろに向けているという感じだと思ってくれればよい。

 

(こいつ、怒る機能があったんだな)

 

 そして、尻尾。蛇が威嚇するようにゆらりと上げたまま、ゆっくりと左右に振れている。

 緊張し、そして怒っている。今のブルボンは、そんなところである。

 

 ――――ブルボンって、怒るんだ

 

 ミホノブルボンが結構前、記者会見で怒った彼を見て思ったこととほぼ同じようなことを、彼もまた思った。

 

 基本的に、ミホノブルボンは怒らない。常に機嫌がいいとすら言っていい。

 それは飼い主――――もといマスターである東条隼瀬の側にいられるだけで嬉しい。だからご機嫌、という実に犬っぽい理由なわけであるが、もともと気質が善良で穏やかだからというのもある。

 

 名ウマ娘は、気性難が多い。

 というより気性難と形容される性格の激しさを走りの推進力に換えて走ることができる者が、名ウマ娘になれると言えるかもしれない。

 

 しかしミホノブルボンにはそういうところがなかった。非常に穏やかで、安定している。

 だからこそあれだけ過酷な――――普通のウマ娘であればトレーナーを蹴り飛ばして逃げかねないような――――トレーニングを平然とこなせたのだろう。

 そしてそういう性格が、ラップ走法という一定の速度を保つという彼女独特の走法にも表れていた。

 

 そんな平坦な気質、善良で穏やかな性格をしている彼女が、怒っている。心做しか眉もピーンと上がっている。

 

「犬ツー。そこでおとなしくしていろよ」

 

 ワン、と。覇気のない鳴き声と共に、大地に降ろされた犬はブルブルと身を震わせて水を飛ばした。

 

(まったく、覇気がない)

 

 私であればもっとハリのある鳴き声を繰り出せる。勝った。

 

 それは他人(というか、犬だが)と自分を比べて優越感に浸るということをほとんどしない、ミホノブルボンにしては珍しい思考の巡りである。

 

 取り敢えず、ブルボンの機嫌は放置すれば直るだろう。

 そんな安直な思考でフキゲンブルボンを放置することを決めた男が犬ツーの餌を作りに台所に消えたのを見た後に、ミホノブルボンは犬ツーを見下ろした。

 

 感心に、座って待っている。もともと飼い犬であったのを、老いたから捨てられたのか。

 ともあれ、なかなかの知能である。だが。

 

(私の方が頭がいい)

 

 当たり前である。

 

「マスター、お手伝いします」

 

「おお」

 

 そんな密やかな優越感と共に、ミホノブルボンはマスターが薄く切っている鶏肉を見て作業に加わった。

 鶏肉を薄く切って、煮込む。柔らかくなるまで煮込み、煮込み、煮込む。

 

 それを冷ましたのをいくつか使い古された餌入れに載せ、東条隼瀬はハッハッハッと息を漏らす犬の前に差し出した。

 

「犬ツー、お食べ」

 

 ワン、と鳴く。しかし覇気がない。

 ワン。口の中で高らかに呟いてみて、ミホノブルボンは少しだけ口角を上げた。

 

(ステータス、『勝利』を確認)

 

 その勝利になんの意味があるのか?

 誰が勝利を判定するのか?

 

 それは勝ったと判定したミホノブルボン自身にしかわからないが、ともかく勝ったらしい。

 そんなミホノブルボンは、料理するべく戻っていったマスターの背中を反射でてこてこ追いかけかけて、止まった。

 

「犬ツー」

 

「ワン」

 

「あなたの餌は私とマスターで作りました。しかし、私とマスターの食事をあなたは作れません。つまり、私の方が上です。わかりますか」

 

「わふ?」

 

「わふ?ではありません」

 

「ワン!」

 

「ワン。でしたらマスターの1番は私。2番はあなた。それもわかりますね」

 

「ワン!」

 

「わかった、ということですね?」

 

「ワン?」

 

 犬にマウントを取るウマ娘。

 彼女が18戦18勝、総獲得賞金額28億。トゥインクルシリーズの歴史に残る、傑出した存在であることをこの犬は知らない。

 だが、このクソデカい同種の匂いのする存在が自分の同系統の格上であることを理解したのか、柔らかく煮た鶏肉を呑み込み終えて腹を見せた。

 

「ワン……」

 

「よし」

 

 よくないよ、ブルボンさん!

 イギリス在住のライスシャワーさん辺りがそうツッコむであろうそんな適当極まりない解決の果てに、ミホノブルボンはてこてこてこてこと台所に歩いていった。

 今日は久々に、マスターとお夕飯を共にする。お相伴にあずかる。そんな日である。

 

「おや」

 

 さっきまで怒ってたのがもうご機嫌になった。

 

 そんな子供じみたブルボンのミホーっとした顔を見て少し笑い、東条隼瀬は手早く切った食材を鍋に入れた。

 

「来ないと思いましたか?」

 

「いや、今思ったのは違うことだ」

 

「……?」

 

 だらーんと弛緩した尻尾がパタパタと揺れる。そんなゴキゲンブルボンは割り振られた仕事をコツコツと的確にこなしていく。

 

 基本的に言われたことをやるぶんには極めて有能なのがミホノブルボンである。

 こうした平時には、迅速な指示こそできないものの時間さえあれば正確で的確な指示を下せる男の右腕としてそのサイボーグのような正確さを存分に活かすことができた。

 

「夕食を誰かと食べるのはいいことだ」

 

「はい。マスターと食べるご飯は、普段よりも美味しく感じます」

 

 こういうことをサラリと言えるあたり、愛娘ポイントが高い。

 豚汁をずずーっとやっているミホノブルボンが器を机に置いたのを見て、東条隼瀬は左手を伸ばしてわしゃわしゃと収まりの悪い栗毛を撫でた。

 

「お前はかわいいな」

 

「あの犬はどうですか?」

 

「かわいい」

 

 かわいいというのには、二種類がある。

 しかしこの場合、ブルボンと犬に与えられた『かわいい』は同一のものだった。

 

 ぷくーっと左頬を膨らませたブルボンは気づかれないように、足元をぐるぐるしていた老犬を見た。

 食事を終えたのか、ブルボンが座っている椅子の周りをぐるぐると走り、疲れれば歩き、荒く息をしている。

 

「いやに懐かれているじゃないか、ブルボン」

 

「同族だと思われているのかもしれません」

 

「ああ。それか……」

 

 この犬を捨てた家族の中に、ウマ娘が居たのか。

 まあそのあたりは完全な想像にはなるが、そう考えると物悲しさがある。

 

 ミホノブルボンも何かを察したのか、その言葉の続きを問おうとはしなかった。

 

「犬と言うのは、かわいいものだ」

 

 そして捨てられてもまだ懐いてくるというのは、哀れでもある。

 そんなノスタルジックな雰囲気を破壊するような問いが、ミホノブルボンの口から発せられた。

 

「マスター。私の方がかわいいと、そうは思われませんか?」

 

「……お、おお。そうかな。まあやはり個人の観点、要は好みに準ずるのではないかな」

 

「私が問題にしているのはマスターの好みです」

 

「犬……」

 

 尻尾がピーンと伸び、くるっと耳が絞られる。そして眉はしょぼぼぼぼーんと下がっている。

 怒ってもいるが、凹んでもいる。そんなところだろう。

 

 私は怒っています。そんなサインが無意識に出たのを見て、東条隼瀬はあっさりと掌を返した。

 

「……じゃなくてお前かな。似たようなもんだし、喋れるぶん勝つ」

 

 するりと、耳が戻る。尻尾が垂れるような感じになり、そして下がっていた眉がつり上がった。

 

 一応彼としては、嘘を言った覚えは無かった。正直なところどっちでもいいと言うのが本音だっただけに、その場の雰囲気に従った形になる。

 

(それにしても、こいつ……)

 

 心が成長しているのか、どうなのか。

 そのあたりはわからないが、少なくとも出会ったときのブルボンであればこういう話の振り方はしてこなかっただろう。

 

 そのことだけは、わかる。ただの犬みたいなものだと思っていたし、忠誠に近い感じがあるとすら思っていた。

 しかしそれにしても、今回は質が違うもののように思える。

 

(そのあたりは、よくわからん)

 

 だが変わっているのは、確かだ。

 ウキウキで魚に箸を伸ばしているブルボンを見ても、大して成長したようにも思えない。だが毎日の殆どを一緒にいることもあって、成長に気づくことも難しい。

 

 どうなんだろうか。

 そんな視線に気づくこともなく、ウキウキブルボンは一緒に作った料理を食べていた。




46人の兄貴たち、感想ありがとナス!

キラーエルモア兄貴、仙庭工兄貴、荒木ラキ兄貴、キッコーマン@兄貴、mowちゃん兄貴、1192兄貴、くあ兄貴、評価ありがとナス!


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アフターストーリー:ブルボンの野望 天翔記

首 切 り 官 兵 衛

というのは置いておいて、Twitterで報告したことを一応報告します。メジロブライト実装まで一時、サイレンススズカチャートの更新を休止します。理由はスズカチャート読んでたら「あ、あのガバかぁ!」ってわかる、はず。
多分近々くるはずなので……


 犬ツーの前脚をとって、二足歩行させる。

 そんな遊びをして暇を潰していたミホノブルボンは、ごそりとこの部屋の主が動いたことを耳聡く察知して犬ツーの前脚をゆっくりと床に戻した。

 

「よし、できた」

 

「と言いますと」

 

 東条隼瀬、ミホノブルボンのマスター。彼は、基本的に平坦で静かな話し方をする。

 感情は感じられるもののその起伏は感じられない、平静を保つような感じのある彼の話し方が、ミホノブルボンは好きだった。

 

 聴いていて、落ち着く。多分そのあたりが理由だろうと思うが、理由なんてないかもしれない。

 

 そんな彼が珍しく勢いのある語気で手にとったそれを見て、ミホノブルボンはアホ毛を怪訝に歪ませた。

 

「お前がいっつも着けている手袋に代わる電子機器破壊防止装置ができたのだ」

 

 ミホノブルボンは、触れた機械を破壊する力を持っている。触れたもの尽くを、というわけではないが結構な確率で破壊する。

 これは彼女の意思によらないものであり、正直なところミホノパパボンも困っていた。

 

 

 お父さん。何もしていないのに壊れました。

 

 

 小さな頃の舌足らずブルボンからのそんな報告を聴いて、パパボンはまず思った。子供の言うことだから実際はなにかしてしまったのかもしれない、と。

 だがそれと同時に、こう思った。ブルボンは嘘をつくような子ではない、と。

 

 そして、娘に謎の機械破壊能力があることに気づいたのである。

 気づいてからというもの、パパボンは彼なりの努力をした。しかし原因は突き止められず対処法も無く、『電子機器を使わない』という抜本的ならざる方法によって娘の度を越した機械音痴ぶりに一定の対策を施した。

 

 そのおかげ、あるいはせいで、ミホノブルボンは機械というものに大いなる憧れを抱き、現在のサイボーグっぽい感じになっている。

 

 これは、トレセン学園に入ってからも続くだろう。

 そう思ったパパボンは素直で従順な娘にやむにやまれぬ事情以外での機械類への接触を禁止した。

 

 が、それはあっさり解決した。一昨年の春、東条隼瀬が生み出した金に飽かせた執念の産物――――生体電波シャットアウトビニールで作った手袋でミホノブルボンは、機械を壊すことなく機械に触れられるようになったのである。

 

 そんな感じで、ミホノブルボンは基本的にこの薄い皮膜のような手袋をして過ごしている。

 

「その名も――――」

 

 あっ、溜めたいんだ。

 そう察したミホノブルボンは、後のウマドル活動でも大いに発揮されるノリの良さをここでも発揮させた。

 

 デレデレデレデレー。

 テレビでよく聴くそんな効果音を、一音半句の乱れもなく発声してのけたのである。

 

「レルガン300!」

 

 ドラざえもんか、パフパフーというファンファーレか。

 そんな葛藤の後に、ミホノブルボンは前者を選び声帯で奏でた。器用なイヌ科ウマ娘目の生物である。

 

 有り体に言えば、珍獣。

 そんな彼女の前に出されたのは、彼女の心を笑死させる程にくすぐる銃型の装置と、長方形の形をした15個のカートリッジだった。

 

「……!! 形状確認完了。ロボミン300をモデルにしたものと推測します」

 

「そうだ。ではまず、使い方を説明する。手袋を外せ」

 

 指示に従い、ミホノブルボンは手袋を外した。一見白くて小さな少女の手には、どんな機械も爆発させる謎としか言えない力が宿っている。

 

「まず、お前が触れた機械はなぜ爆発するのか。俺はお前がリモコンを操作して遠隔でテレビを爆破していたのを見て、生体電気に問題があるのではないかと考えた。リモコンを通じてお前の生体電気が発射され、爆破しているのではないか、とな。そこで絶縁グローブを開発して防いできたわけだが……その原因となるものを吸い取ってしまえばいい」

 

 ブルボンがよくやる、掌を前に突き出す例のポーズ。

 その掌からみょーんみょーんと独特な電波を出しているのを観測し、彼はそれをカートリッジに吸い込ませることで抜本的な解決を図れるのではないかと勘付いた。

 

「ということで、カートリッジのプラグ部分を持ってくれ。横についているメーターがMAXになったら手を離す。わかったな?」

 

「はい、マスター」

 

 カートリッジのプラグを手で持つと、ものの数秒でメーターがMAXまで近づく。

 それを6個ほど繰り返し、ついにメーターが止まった。

 

「これで吸い込みは完了したはずだ。つまり、機械に触れても爆発することはない。理論上はな」

 

「なるほど」

 

 ぺたぺたと、ひっそりとマスターから距離をおいて携帯しているスマートフォンを触るブルボン。

 確かに、爆発することはない。彼女は彼女自身の爆発で怪我をしたことはないが、それでも自身の引き起こす現象が平穏とは程遠いものであることを知っている。

 

「そしてこのカートリッジを装填する。そして……」

 

 というところまで言いかけて、東条隼瀬は立ち上がった。

 

「ここでは場所が悪い。移そうか」

 

「……? わかりました」

 

 わからないけど、わかりました。

 そんな犬っぽい彼女がまた立ち上がったのを察知して、すわ散歩かと犬ツーが脚にまとわりつく。

 

「犬ツー、オーダー。おすわり」

 

 そんな動物を一言で静かにさせ、ミホノブルボンはガチャリとケージの中に搬送して座ったままの犬ツーを安置した。

 

「ここらでいいだろう。誰もいないし」

 

 やってきたのは、坂路施設。ミホノブルボンにとっては見慣れた、そして久しく行っていない、そんな風景が目の前にある。

 

「懐かしいですね、マスター」

 

「ん……まあ、そうだな。懐かしい」

 

 まだちゃんとサイボーグやっていたころのミホノブルボンとの思い出が、ここには詰まっている。

 最初から結構犬っぽかったが、少なくとも今ほどではなかった。

 

「では、実演試験を開始する。まずここにストップウォッチを置く。ブルボン」

 

「はい」

 

「お前は照準を合わせて狙ってみろ。俺が離れてからな」

 

「了解しました、マスター」

 

 結構な――――ブルボンアイによると425メートルくらい離れたストップウォッチ。

 それにロボミンサイトで狙いをつけ、引き金を引いた。

 

 ミーン。

 

 そんな軽い電子音と共にカートリッジのメーターが1つ消え、ストップウォッチが爆発する。

 

「おお、やはり。リモコン爆撃と同じことができるわけか」

 

「ロボミン300……!」

 

 カチカチと連打してカートリッジを空にしたブルボンがそそくさと装填し直してまた空にするのを見て、東条隼瀬はうんうんと頷いた。

 

 ミーン、ミーン、ミーン、ミーン、と。

 彼女にとっては結構聞き覚えのあるであろう音が、静かな坂路施設に鳴る。

 

「その調子で、撃ち切ってくれ。明日になったらまた、カートリッジに触れて充電。そうすることで、お前の機械音痴はなんとかなるはずだ。あと、念の為人に向けるなよ」

 

「危ないからですか?」

 

「まあ、そうだな」

 

 ブルボンの謎生体電気は、機械にしか作用しない。いつぞやも言ったとおり、彼女は触れることで電気を流し、電気を流した機械をレンチンするような感じに破壊する。

 謂わば極端に静電気がたまりやすい体質のようなもので、その静電気の発生は睡眠によってもたらされる、とのことだった。

 

 だから、起きた瞬間にカートリッジへの充電を行えばこれまでのように手袋にお世話にならなくても済む。

 

(実のところ、銃型にしなくてもよかったわけだが、こういうかっこいい形にしたほうが日々のルーティーンを楽しめるだろうからな)

 

 悪用すると割とシャレにならないブツであるが、このわんこ型サイボーグウマ娘がそういうところに気を回せるとは思えない。

 

「それにしてもマスターは器用ですね」

 

「本来、俺はシンボリの家の執事になるはずだったんだ。それくらいはできるさ」

 

「なるほど。私は上流階級のことをよく知りませんでしたが、執事というのはすごいのですね」

 

「ああ。主人の求めるところをある程度こなせなければな。特にウマ娘はランニングマシンとか、そういった機械系のものを使うだろう。最後の追い込み中に機器が故障したとなれば、業者を呼ぶ時間の余裕もない。そういうときにちょこっとでも直すことができれば、主人の役に立つ」

 

「なるほど。概念『執事』をインプットしました」

 

 運転、料理、裁縫、掃除、模様替え、日曜大工、機械修理、改造、あとトレーニングメニューの作成と敵チームや敵ウマ娘の情報収集、ダンス、歌唱、弱点をつく戦略の立案。

 

 ウマ娘の名家の側に仕え、役に立つ為にできることのすべてを、彼はある程度こなすことができた。全てにおいて重要視される対人関係の構築能力が壊滅的なだけに、他の能力は恵まれていたのである。

 

 ストップウォッチの残骸を手に持つビニールで回収するのも、ある種手慣れたものだった。なにせ、触れた機械を爆弾に変えるミホノブルボンがその弱点を克服するまで、結構な確率で彼がその後始末をしてきたのだから。

 

(ただ……)

 

 少し、ミホノブルボンは疑問に思った。

 彼女は彼が自分の失敗を過大に、それも露悪的に言う反面、自分の能力を過小評価することを知っている。

 というわけで、彼女は公明にして正大な視点を持っている人の下にその真相を訊きに行くことにした。

 

「ということなのですが、執事とはそんなにもすごいのでしょうか」

 

「そんなわけはない。執事とは国家における宰相のようなもので、主から投げかけられた質問の内容に通じている人間を答えられればいい。必ずしも全てに精通している必要はないし、実際できる必要もないのだからね」

 

「なるほど」

 

「それにしてもお祖父様は……なんでも飲み込んで理解するものだから、加減ができなかったと見えるね。困ったものだが……飲み込んでしまえる方も大概か。なんでもできるから、なんでもやる。それでは結局立ち行かなくなるというのに」

 

 こののろけのような愚痴に、エアグルーヴは眉を困ったように顰ませた。

 

(なんでもできるから、なんでもやる。それは他ならぬ、会長もなのでは……)

 

 腹心がそんなことを思っているとは露知らず。シンボリルドルフはなにか思うところのありそうなエアグルーヴに話を振った。

 

「エアグルーヴ。君もそう思わないかい?」

 

「ええ……? え、ああ……そうですね。なんでもできるのはいいことだとは思いますが、志を共有する者からすれば、頼ってほしい。そう思うのもまた確かです」

 

「まったく、その通りだ。参謀くんは何より、休むことを覚えるべきだな」

 

 困ったものだ、困ったものだ。

 そう言いつつその優秀さと勤勉さを好まずにはいられない。

 

 そんなルドルフは、ほんの些細な生徒同士の諍いごとや食事メニューの味の注文などに目を通して素早く要約した後にパソコンに打ち込んだ。

 

「エアグルーヴ。次の投書を持ってきてくれ」

 

「……会長。何も隅から隅まで見る必要はないと思われます。重要な投書は私の判断で取り分けておきますので、少し自分の時間を持たれてはいかがでしょうか?」

 

「いや、私や君からすれば些細なことかもしれないが、投書した当人からすれば重要なことかもしれない。直接見なかったことによってその些細ならざるものを感じ取れないとすれば、それは私の怠慢になる。私は無能と言われるのはいいし、怠惰であるのもまあ、いいだろう。だがそれによって他のウマ娘に迷惑をかけるのは、嫌だ」

 

 そんなわけでまたも山と積まれた投書に集中力の大半を割きはじめたルドルフを見て、エアグルーヴはため息を吐いた。

 

 憧憬、尊敬、忠誠。そして心配。

 そんな4種の色が混じった視線を【皇帝】に向ける【女帝】に同情するように、ミホノブルボンはポツリとこぼした。

 

「……似た者同士ですね、副会長」

 

「わかってくれるか、書記」

 

「はい。マスターは、基本的に自分の仕事を他人に任せません。自分以外信用していないというのでは……ないでしょうが」

 

「私もそうだが、基本的に会長という基軸あっての生徒会だ。会長ならどうするか、というのを第一に考えてしまうし、その思考には本人ではないが故のズレが出る。そのズレを見越した上で、任せられないと言うよりも自分でやりたい、というのが本音なのだろうが……」

 

 そんな二人の鬱々とした会話になんの反応も示さないほどに集中していたルドルフの鹿毛のギザ耳が、ピクリと動いた。

 

 バカみたいに規則正しい、足音。それがしばらく続いて、樫の木の扉が開いた。

 

「ルドルフ、今日は投書箱の開封日だったな。忙しかろう」

 

「ああ。それなりにね」

 

「だろうな。皇帝陛下はなにせ、一人で抱え込む癖をお持ちでしょうから。で、手伝わせてもらえるかな?」

 

「うん。君の思う通りにしてくれ」

 

「では、そうさせてもらおう」

 

 人格的にはともかく、能力的にはルドルフの分身。

 対人関係やカリスマなどに致命的な欠陥を抱えているものの、その視座や見識は【皇帝】に並ぶ。

 

 本人はなんとなく臣下ムーブをしているが、実質的には友人と言ったほうが近い、そんな二人である。

 エアグルーヴもこうなりたいとは思いつつも、まだ並び立てそうになかった。

 

 第一彼女には、まだ任された仕事があるのである。それは投書ほどルドルフ的な視座を要求されないものではあるが、それでもエアグルーヴにしかこなせない仕事ではある。

 

 その点で、シンボリルドルフは実にうまくタスクを割り振っていると言えた。




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アフターストーリー:剪定

 芝、3200メートル。

 去年、メジロマックイーン対ライスシャワー対ミホノブルボンという凄絶な三つ巴戦が行われたレース、天皇賞春。

 今年は長距離で逃げ切り勝ちをしかけるというひっそりとやばいことやっていたメジロパーマーがURAファイナルズ後の調整に失敗し、右脚の脚部不安で回避。

 長距離の王者メジロマックイーンは屈腱炎のリハビリ中。トウカイテイオーも有馬記念後の骨折(1年ぶり4度目)のリハビリ。

 ライスシャワーはステイヤーズミリオンの挑戦に行って不在。ミホノブルボンは開店休業サイボーグ状態で、完璧に勢力図が空白となった感じのある、そんなシニア戦線で輝きを放つのは、次世代の星と期待される去年のクラシック世代。

 

 すなわち、BNWと呼ばれる三人だった。

 そしてその中でも頭一つ、いや二つ、あるいは三つ。デカいというか、存在感を示すウマ娘がいる。

 

「さあ、各ウマ娘ラストスパートに入った!」

 

 実況が、そう叫ぶ。地獄としか形容しようのない昨年と違って、今年の注目ウマ娘は少ない。故に彼女の負担もいくらか軽減されていた。

 ナイスネイチャ、マチカネタンホイザ、ナリタタイシン、そしてビワハヤヒデ。注目されるのはこのあたり。

 

 特にナイスネイチャやマチカネタンホイザあたりは実力はあるというのにめぐり合わせが悪く、GⅠの栄冠を獲得するに至っていない。

 彼女たちからすれば、言い方は悪いがこういうときこそチャンスなのである。かつて天皇賞春を制覇したウマ娘の参加もない。となれば、チャンスは通常よりも大きいと言える。

 

 しかし彼女たちカノープスの面々が持つめぐり合わせの悪さは、ここに来てもしっかりと働いた。

 

 ナリタタイシン――――怒涛の末脚で皐月賞を差し切り勝ちした彼女は、その小さな身体に見合わない豊富なスタミナで3000メートル近い距離を難なく駆け抜けて前へ迫った。

 

 そこには彼女の同期で仲間でライバル、ビワハヤヒデがいる。

 

 ナリタタイシンの持ち味は、爆発力である。一瞬の切れ味、末脚。そういったものにかけては、彼女は同期の二人に負けているとは思っていなかった。

 春の天皇賞、3200メートル。彼女にとっては未知の距離。しかしビワハヤヒデに勝つには、どうすればいいか。彼女はそれを事前に知っていた。

 

 ――――仕掛けることだ。ハヤヒデより早く!

 

 ビワハヤヒデと、自分との間。これを詰めるだけの切れ味を、彼女の脚は持っている。その自覚もある。しかしその差は大きいと言えるようなものでもなく、ビワハヤヒデに早めに仕掛けられたら差しきれない。

 

 だが早めに仕掛ければ、スタミナが尽きる。

 つまり、ビワハヤヒデの仕掛けるタイミングと、スタミナの尽きるタイミング。そのほんの僅かな間に、仕掛ける。それも、スタミナが尽きないギリギリのタイミング、ゴール板を駆け抜けた瞬間、倒れるほどの限界まで研ぎ澄まさなければならない。

 

 信じなければ、勝てない。自分の才能を、勘を、センスを信じなければ。

 

 トレーナーとの、何度も繰り返したトレーニング。ビワハヤヒデに勝つための一瞬を掴むための訓練。

 

 

 ――――今だッ!

 

 

 ナリタタイシンは、ほぼ完璧に近いタイミングで仕掛けた。ゴール板を二、三歩駆けて倒れそうなほどのスタミナしか残らないようなスパート。

 ほぼ最後尾から一気にごぼう抜きし、前方中程の好位につけていたビワハヤヒデに迫る。

 

 勝った、と。ナリタタイシンは思った。まだ、ハヤヒデはスパートをかけていない。両者の間は3バ身。今この瞬間からハヤヒデがスパートをかけても、ゴール板までにはクビ差で差し切れる。

 くるりと、芦毛の向きが変わった。三冠の栄光を掴まんとしている妹と同じ黄金の瞳がナリタタイシンを見つめる。

 

「そう。ここだ」

 

 静かで、冷たい言葉。実際に証明された数式を見つめる数学者のような。

 そうして、ビワハヤヒデは限界ギリギリまで力を温存した上でスパートをかけた。

 

 彼女に引きずられるように、そしてナリタタイシンの影のような圧に押し出されるように。ビワハヤヒデの後続でピッタリとマークしていた幾人かのウマ娘がスパートをかけて外に膨らむ。そしてその膨らんだぶんだけ、ナリタタイシンは進路の変更を余儀なくされた。

 

 ナリタタイシンとそのトレーナーの予測より、ビワハヤヒデの末脚はすごかった。

 ビワハヤヒデとそのトレーナーの予測より、ナリタタイシンのスタミナは豊富だった。

 

 お互いに、誤算があった。しかしこの場を制したのは、ビワハヤヒデとそのトレーナーだったのである。

 

(見たか、ブライアン)

 

 観客席にいる妹を見つめ、指をさす。

 姉は妹の背を追い、妹は姉の背を追う。そんな関係を、隠しもしない。

 

 天皇賞春は限界ギリギリでの、ビワハヤヒデの勝利。

 ナリタタイシンとの差は、ほんのクビ差。その差はビワハヤヒデでもナリタタイシンでもなく、彼女たちの間にいたウマ娘たちによってもたらされたものだった。

 

 少なくとも、だいたいのウマ娘とトレーナーは、そう思った。

 そしてそう思わなかった数少ない者も居る。

 

「アンタに訊きたいことがある」

 

「どうぞ」

 

 ナリタブライアン。今年の三冠ウマ娘であろうと期待されている、そんな有望株の怪物は練習を終えて、重たい口を開けた。

 明らかに今日、彼女はトレーニングに身が入っていなかった。ダービーが迫っているからだろうかと思いもしたが、どうやらそうではなかったらしい。

 

「私は、姉貴に勝てると思うか」

 

「ビワハヤヒデか」

 

 芦毛のウマ娘。頭がデカく、肉体的には競り合いに強い。

 去年、つまりブルボンが春シニア三冠を達成したり凱旋門賞を制覇したりと忙しかった、そんな年のクラシック世代の中核、BNWのひとり。

 

 彼女は、強い。

 

「いずれはな」

 

「そのいずれは、いつくる」

 

「それはわからん。ナリタタイシンとウイニングチケットに関しては、底が見えた。だがビワハヤヒデに関しては底が見えん」

 

 B(ビワハヤヒデ)

 N(ナリタタイシン)

 W(ウイニングチケット)。

 

 そう並び称されるこの三人の実力は、必ずしも同一のものではない。

 ウイニングチケットは、完成度が高い。脚質からして優等生というべき王道の走りを見せるが底知れ無さはなく、いわば相当強いというだけでしかない。反則気味に強いナリタブライアンには、敵わない。

 

 ナリタタイシンに関しては、勝つ事自体は一番容易い。彼女は身体が小さく、自らの出力に耐えきれない。そしてそれにより、調子を保つことが不可能に近いのだ。

 つまり絶好調のときにはやり過ごし、普通から不調に転落するときにレースで相対すればなんの工夫もいらないほどに楽に勝てる。

 

 そして、ビワハヤヒデ。

 このBNWという三人は、夏前までは互角だった。ダービーを制した完成度のウイニングチケット、皐月賞で見事な差し切り勝ちを見せた爆発力のナリタタイシン、皐月とダービーでどちらも連対した安定感のビワハヤヒデ。

 だが彼女は、夏に化けた。どんなタイプを相手にしても安定して善戦できるウマ娘から、どんなタイプを相手にしても安定して勝てるウマ娘へ。

 

 その結果、彼女は菊花賞を制した。つまりビワハヤヒデは、地力が高すぎるがゆえにそう見えなかっただけで、いわゆる夏の上がりウマ娘だったのである。

 

「先日春天を勝ったからな。メジロマックイーンが不在だったとはいえ」

 

 そう、先日。

 京都レース場で行われた芝3200メートルでの大レースにおいて、ビワハヤヒデはナリタタイシンのスパートが来るのを待ってからスパートをかけて勝つという圧倒的な強さを見せた。

 

「あれは強かった。実に強かった。俺はナリタタイシンの末脚を過大評価していたわけではないが、差し切られてもおかしくないと思っていた。しかし、最後は手数の多さが勝負を決めたな」

 

「手数?」

 

 怪訝な眼差しが、東条隼瀬を射抜いた。

 ナリタブライアンはビワハヤヒデを見ていた。彼女のみを見ていて、そして最終局面に至ってようやくナリタタイシンを見た。

 

 故にその視野は深く、そして狭い。

 

「視野の広さと言ってもいい。ナリタタイシンは自分の力でビワハヤヒデを抜かすことを考えていた。だがビワハヤヒデは自分の力のみを頼りにしていたわけではない。最後、彼女は確かに状況を動かした。そして他のウマ娘を使ってナリタタイシンの猛攻を防いだ。見事なものだと思うよ」

 

「現状私と姉貴が競ったら、勝てる確率はどれくらいだ」

 

 そう訊くこと自体が、ナリタブライアンらしからぬ行動だった。

 彼女は、自信家である。そんな彼女が勝利への確率の計算を他人に求めるというのは、いかにもらしくない。

 

「勝てない。先日のレースを見て確信した。お前は全力を出せれば誰にも負けないが、要は全力が出せなければ負けもあり得る。そしてビワハヤヒデは、お前が全力を発揮することを許さないだろう」

 

「じゃあ、いつなら勝てる」

 

「いつ勝ちたいんだ」

 

 そう問われた瞬間、ナリタブライアンの脳裏には姉のローテーションが過ぎった。

 

 京都記念、春天、宝塚。

 そしてオールカマー、秋天、有馬記念。

 

 オールカマーには出られるが、対決の舞台としては不足。秋天は菊花と近すぎる。有馬記念は8ヶ月後と、遠すぎる。

 

 自然、選択肢は絞られた。

 

「――――宝塚」

 

「なるほど。宝塚記念でビワハヤヒデに勝ちたいんだな?」

 

「ああ」

 

 クラシック級のウマ娘が、シニアの強豪入り乱れる春のグランプリ、宝塚記念を制す。

 それを果たしたのはシンボリルドルフのみで、他には居ない。ミホノブルボンだって、そんなことは無理だった。

 

 シンボリルドルフの宝塚記念。三冠ウマ娘として最強の名をほしいままにしていたミスターシービーを打ち破り、ほんのクビ差で勝った大レース。

 現在のシニア戦線最強格に、クラシック戦線最強格が挑む。その形勢は、如何にもシンボリルドルフの時と似ていた。

 

 挑む側のトレーナーに至っては、同一人物である。

 

「ビワハヤヒデのトレーナーは、22歳だったな」

 

「ああ。それがどうかしたか?」

 

 22歳。怖いものも知らないような、そんな歳。飛び級で試験に合格し、そして採用試験にも受かって、ビワハヤヒデという逸材に巡り合う。

 果断な手をなんの躊躇いもなく打ってくる思い切りの良さと、豊かな才能があるだろう。

 

 いや、だろう、ではない。ある。

 

(才能に経験が追いついた脂の乗り切った全盛期のトレーナーと、俺が読み合うのか……)

 

 これは年寄りにはキツいと、率直に東条隼瀬(28)は思った。

 これまでの対局相手は、基本的にベテランだった。だからデータが豊富に集まったし、予測も簡単にできた。

 

(分かれ道のない思考の袋小路に追い込むしかないか……)

 

 相手の手が過去の蓄積を参照しても読めないなら、道を限定してしまえばいい。

 そしてそれは、さほど難しいことでもない。問題はその袋小路を飛び越えていかないかということだが、そのあたりを考慮するとキリがない。

 

「……わかった。ビワハヤヒデと競うことは予測していたし、そのための策もあった。だから、負けないような態勢を整えることはできる。しかし、時間が足りないから勝つところまでは持っていけない。よーいどんの……いや、よーいどんでビワハヤヒデが躓いたような状況を作るから、あとはお前がなんとかしろ」

 

「ああ。なんとかするさ」

 

「そしてその為に日本ダービーに勝て。本気でブッチ切れ」

 

 宝塚記念に勝つために、ダービーを勝て。

 その指令は相当無茶苦茶なものだった。日本ダービーは、生涯に一度の夢舞台。数多のウマ娘が挑んで敵わず、挑めない者すらいる。

 ウマ娘に比して遥かに長く多くの挑戦権を持つトレーナーの中にさえ、ダービー制覇の夢を果たせない者もいる。

 

「ああ。で、作戦は?」

 

「お前は普通にやれば勝てる。よって、進路がどうのこうの、駆け引きがどうのこうのという策はいらん。大外強襲で仕留め切れ。嫌いじゃなかろう」

 

「ゴリ押しか。なるほど、嫌いじゃない」

 

 そして、日本ダービーはその通りになった。

 だがこの時はまだ、ナリタブライアンが日本ダービーを勝てるかどうかは誰もわからない。

 

 ダービーを2週間後に控えた1日は、ナリタブライアンの宝塚記念挑戦という大ニュースに相応しい決定が下されたのとは反比例して静かに、あくまでも何事もなかったかのように過ぎ去っていった。




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アフターストーリー:二冠

ノーカット版


 ミホノブルボンがダービーを終えて完全なる寒門の星となってからは 【ウマ娘大陸】や【プロジェクトU〜挑戦者たち〜】 などといったテレビ番組の取材がついた。

 

 東条隼瀬はこういった連中の対応をめんどくさがる傾向にあるが、その時期は夏合宿後、菊花賞前。ミホノブルボンが切り開くものとして歩むことを決めた以後である。

 故に彼は全身全霊でミホノブルボンというウマ娘のかかえる現実とその乗り越えていくさまを過不足なく伝えられるように協力を惜しまなかった。

 

 つまり、何が言いたいのか。

 要は大レースの前、有力なウマ娘の前には必ずと言っていいほど記者が現れる。 最有力ならば、テレビ局まで来たりする。そういうことである。

 

「もうすぐ日本ダービーですね!」

 

「そうですね」

 

 そして、来た。有象無象が。

 と言ってもやかましいから、対応がめんどうくさいからと言って邪険に扱うわけにもいかない。彼ら彼女らはそれが仕事で、他に余計なことをしたわけでもないのだから。

 

「隼瀬トレーナーは今回も秘策がお有りですか?」

 

 というこの記者と彼は、さほど親しいというわけではない。単純に、叔母のほうがより有名な『東条トレーナー』だからである。

 

 東条隼瀬は、古参の記者やファンからすれば東条ハナの甥だった。

 

「その有無を、聴きたいというわけですか」

 

「ええ。是非、お聴きしたいと思います」

 

「……ふ」

 

 少し笑い、くるりと身を翻す。

 そのままレース場に向かうであろうと思っていた記者たちは面食らい、慌てて止まった。

 

「無い」

 

「……へ?」

 

「無い。前進あるのみ。以上!」

 

 これはある意味で、正しい言葉だった。

 ナリタブライアンに与えた指示は、簡潔である。大外から強襲してブッチぎる。それだけ。

 

 しかしそれは、いかにも彼らしからぬ乱暴さだと記者たちは思った。

 ミホノブルボンとの3年間の総括として『このレースはこう来るだろうと思った。だからこうした』という一々もっともな解説をしてくれたこの男が力押ししたレースは、GⅡやメイクデビューなどの大舞台とは言い難いレースのみ。

 

(これはまた、なにかあるな)

 

 何もないが、ベテランの記者はそう思った。

 

 東条隼瀬は、策士である。和洋東西合わせてもトップクラスに頭がキレるウマ娘、シンボリルドルフの行動を完璧に読み切って嵌め切った程の男が、無策でダービーという大舞台に来るだろうか?

 

「東条トレーナーはかつておっしゃいました」

 

 口を開いたのは、新人と言っていい若い男の記者だった。後ろにはお目付け役なのか、同じ会社の先輩――――乙名史記者がくっついている。

 

 東条隼瀬は、古参の記者やファンからすれば東条ハナの甥だった。しかし新参の記者やファンからすれば、東条ハナこそが東条隼瀬の叔母だった。

 

 要は、認識が逆転している。それがそのまま、呼び方に出た。

 

「レースの前にいかに情報を集められるか、集めた情報のもと如何なる作戦で動くか。それによって大方の勝敗は決まる、と。レース場でのウマ娘の努力は怠慢や過失を犯したトレーナーの損失を埋め立てるほどの効力を持つと考えない方がいい、と。それが今回に限っては、埋められるとお考えですか?」

 

「埋めてもらわなければ困る」

 

 それは冷厳とした、謂わば彼の本質的な欠陥と呼べる愛嬌のなさが表に出た一言だった。

 あまりにも、放り投げ過ぎている。ナリタブライアンは天才であるし怪物でもあるが、それでもトレーナーが怠慢に陥っていい、ということにはならない。

 

 そんな思考がこの若い記者の脳裏を過ぎった瞬間、後ろで袖が引かれた。

 

 ――――これは、続きがありますよ

 

 先輩。乙名史記者の制止に含まれたそんな意図を察して、黙る。

 黙って続きを待とうとしたその刹那に、東条隼瀬の口が開いた。

 

「宝塚記念でビワハヤヒデに勝ちたいなら、そしてあいつほどの才能があるなら、このくらい圧勝してもらわなければな」

 

「……宝塚記念?」

 

 え、出るの?

 記者連中は一様に、そう思った。

 宝塚記念は、人気投票によって出走ウマ娘が決まる春の総決算、グランプリである。

 故に出ようと思って簡単に出られるものではない。しかし確かに、ナリタブライアンはファン投票の有力な対象ではある。かなりの票も入っている。しかし投票されたからと言って、出てくるとも限らない。

 

 特に、クラシック期のウマ娘は。

 

「姉ビワハヤヒデと妹ナリタブライアンとの間には絆がある! 共に走り、共に競おうという約束がある! 故にこそ、ビワハヤヒデの絶頂期たる今にぶつける! そういうことですね!」

 

「そう、そういうことだ」

 

 辛抱たまらんとばかりにものすごい早口でまくし立てた乙名史記者を軽く肯定し、彼は身を翻した。

 東京レース場。日本ダービーが行われる、会場の方へ。

 

「今のところクラシック戦線で最も強いウマ娘が、最も努力をして、最も高い目標を見据えている。なら、勝てる。なにもおかしなところのない、当たり前のことだ」

 

「ダービーは一番運のいいウマ娘が勝つ、という先人の言葉もありますが……」

 

「運によって左右されるような実力をしているなら、そうだろうな。だがそうではない」

 

 一昨年とは違い、観客気分で楽しむさ。

 そう言い残して去っていく男の背を追いかけることはせず、記者たちは一様に携帯電話を取り出して本社に連絡を入れた。

 

 明日の一面を、差し替える必要ができたからである。

 

「そうだ。ブライアン三冠王手と同じくらいのデカさで、宝塚記念挑戦も盛り込め! 姉妹対決だってこともな!」

 

 一方。

 そんな騒ぎが起こっていることを、ナリタブライアンは知らなかった。

 

「遅かったな」

 

 黒鹿毛の耳をピコピコと揺らす。

 やや不満げな動作だが、顔には出ていない。少し遅れたのかな、程度の苛立ちにも満たない感情を察知して、東条隼瀬は安堵した。

 

 彼女はバンカラな見た目をして、案外と繊細なところがある。その繊細なところを余計に刺激して走りに集中できなければ、負けもありうる。

 

 ダービー。世代ナンバーワンを決める、生涯に一度の夢舞台。

 その魔力は、時にウマ娘を狂わせる。前途有望なウマ娘がダービーに全てを賭し、全力中の全力を、あるいは全力を超えた全力を振り絞って怪我をして消えていく。

 そういう相手は、集中力を欠いた6割ブライアンには荷が重い。

 

 しかし今の集中力のある6割ブライアンならば、そういうダービーに酔ったウマ娘たちの全力を超えた全力を相手にしてもなんとかなるだろう。

 

「色々と、対応すべきことがあったからな。で、調子はどうだ」

 

「悪くない。普通に走るさ」

 

 そりゃあそうだろうなと、東条隼瀬は思った。

 そういう、悪くない調子にしたのは彼自身なのである。

 

 当初の予定では、可もなく不可もない調子にする気だった。菊花賞で最高のパフォーマンスを見せ、ジャパンカップに出して有馬記念かアオハル杯に出す。

 それが当初の予定ではあったが、予定と都合が変わった。故にそれなりに苦労して調子が上がるように仕向けた。

 

 だから、本来普通であったはずの調子が悪くないところまできたのだ。

 

「そうか。まあ、行ってこい」

 

「ああ。そうする」

 

 あまり、並んでやるなよ。なるべく優しく、突き放してやれよ。

 

 短い言葉のやり取りを終えてパドックへ向かうその背中にこの言葉をかけるかどうか、最後まで彼は迷った。

 ダービーである。やや昔ではサクラチヨノオー、近いところではサニーブライアンとトウカイテイオーも、ダービー後に骨折した。

 

 ダービーは、実力以上の何かを出させる力がある。

 今のナリタブライアンは、実力の6割くらいしか出せない。そう聴けば、他のウマ娘たちは欣喜雀躍するだろう。怪我とかそういうことならば反応もまた変わってくるが、この実力を出し切れない原因は調整の仕方にあるのだから。

 

 サイボーグでもない限り、全力を長期に渡って出し続けることはできない。だからこその思い切った調整なのだが、これは他のウマ娘たちにとって不幸になるかもしれない。

 

 追いつける。そういう幻想を抱かせてしまうかもしれない。となると彼女たちは無理に無理を押してナリタブライアンと並んで、そして脚をやってしまうのではないか。

 

(だがこれは俺の先走りであると言えるかもしれないな)

 

 まず、既に勝てると決まったわけではない。

 そして、無理に並ばせないようにすればナリタブライアンの悪癖がまた顔を出しかねない。となると、負ける確率が上がってしまう。

 

(皐月で本人に気づかれぬままに治したのだから、あえて意識させることでもないか……)

 

 理想と現実の両立は、難しい。

 ただ現実に向き合って、目の前に立ち塞がるナリタブライアンという怪物を打倒せんとする者たちからすれば随分悠長な悩みを抱えて、東条隼瀬は観客席に向かった。

 

 向かう先の観客席。彼ら彼女らの注目の向かう先はやはり、ナリタブライアンだった。

 ブライアンは、当然と言うべき一番人気。それもただの一番人気ではなく、二番人気の娘に8倍くらいの差をつけての一番人気である。

 

 これは、常軌を逸していた。

 基本的に観客は、強いウマ娘が好きである。極論すれば観客は、強いウマ娘が強い勝ち方をするのが楽しみでレースを見る。だから、一番人気は必然的に一番強いと思われるウマ娘が名を連ねる。

 

 しかしその強いウマ娘というのはあくまでも主観で、なかなか一致するものでもない。

 それがここまで一致するというのは、言葉を選ばずに言えばおかしかった。

 

(決して、世代のレベルが低いわけではない)

 

 シンボリルドルフの同期は、正直弱かった。彼女にライバルというライバルはいなかったし、並び立てるどころか追い縋ってくるものもいなかった。

 ナリタブライアンも、そうである。しかし同期のレベルは高い。少なくとも、シンボリルドルフの同期よりは。

 

 左右に首を振ってそんな同期たちを視界に入れて、ナリタブライアンは外寄りも外寄りのゲートに収まった。

 

(8枠17番か)

 

 悪くない位置だ。

 他の誰がどう思おうと知らんとばかりに、ナリタブライアンはそう思った。

 

 日本ダービーが行われる東京2400メートルは、統計的に内枠有利である。雨でも降っていれば内枠がやや不利に傾いたかもしれないが、あいにくの晴れ模様。

 

『8枠18番、ゲート収まりました。さあ、一生に一度の大舞台。東京優駿、日本ダービー』

 

 ガタン、と。

 目の前が開けた。

 

『今、スタートしました!』

 

 1人、露骨に遅れた。集中力が切れたのか、どうなのか。

 その事実を捨て去っていいものとして認識しつつ、ナリタブライアンは前寄りながらポツンと外側の位置に付けた。

 

 下手に好位置をキープすることに拘ると、包まれるかもしれない。となると、外に抜け出しにくくなる。故に後続のウマ娘が抜け出そうとした時用の道を作ってやった形になる。

 

 多少の、おそらくは100メートルくらいのロスは承知の上である。ひとりだけ2500メートル走ってもなお、勝てる。彼女にはその自信はあったし、裏打ちするだけの努力もしていた。

 

 そしてそのポツンと一人外に位置するのを見て、他のウマ娘は自身の疑念を確信に変えた。

 

 ナリタブライアンの弱点は、改善されたわけではない、と。

 彼女の弱点は、強過ぎることである。故に仕掛けられれば応じ、体力と残すべき脚を無駄に消耗する。

 

 それを防ぐための奇策として、彼女は皐月賞では最後尾に陣取った。

 最後尾に陣取ったウマ娘へ仕掛けにいけるわけもない。となると全体の勢いを緩めて最後尾を最後尾で無くせばいいわけだが、そうなると結局序盤から脚をためていたナリタブライアンが勝ってしまう。

 ならば、逃げ切るしかない。そんな思考回路で皐月賞は進み、そして当たり前のようにナリタブライアンが勝った。

 

 この奇策にしてやられた他の陣営は考えた。

 まだナリタブライアンの弱点は改善されていない。その時間を稼ぐためであろう、と。

 

 そして、ほぼ一ヶ月後。ダービーにまでなっても、ナリタブライアンはポツリと距離を空けて、わざと不利な道を走っている。

 

 その理由は、何か。

 それは、不利を受け入れなければそれ以上の不利が襲いかかるからであろう。

 

 つまり好位置でスタミナの消耗を防ぐという利益よりも、繰り返される駆け引きに呑まれて消耗してしまう損失を恐れたのだ。

 それは実にマトモな思考であり、理屈に合っていると言える。

 

 

 なぜナリタブライアンは最適なコースを取らないのか?

 

 それは最適なコースを取れない理由があるからだ。

 

 理由とはなにか? 周りのウマ娘が仕掛ける度に挑戦に応じ、消耗してしまう癖が抜けていないからだ。

 

 

 トレーナーとしてはあくまで王道と呼べる、論理的な思考。

 よって大半のトレーナーは、ナリタブライアンに向けて第2コーナーの時点で仕掛ける素振りを見せることを指示した。

 

「仕掛けたか」

 

 妹の雄姿を見に来た姉――――ビワハヤヒデは、一匹狼よろしく外にポツリと一人で走るブライアンの後ろと内側からウマ娘たちが仕掛けに来たのを見て、そう呟いた。

 

「君はどう思う?」

 

「よくないですね。一度やろうとしたものを見抜かれて、もう一度やる。それ自体は間違いではありません。ですがそれも、打つ手が有効であればという話です」

 

 かつて有効であったものが、今も有効であるとは限らない。

 ビワハヤヒデのトレーナーは、言わないでもわかることをわざわざ口に出すタイプではなかった。

 

「対策はできている、と?」

 

「ええ。皐月賞の時、ナリタブライアンさんは必要以上に脚を溜めることを強いられていました。恐らくあれで、上書き保存させるような形で学習させたのでしょう。溜めるときは、溜めることにのみ集中すればいい、と」

 

 その証拠に。

 そう指を差された先には、胡乱げな目で周囲を見回すナリタブライアンが居た。

 

(ん)

 

 仕掛けが早いな。

 瞬時にそう思い、低く位置していた首を傾げる。

 

(アガッたのか、こいつら。ダービーだからか?)

 

 黄金世代。大半がもうドリームリーグへ進んだそんな5人組の中に、キングヘイローというウマ娘がいる。

 彼女は良血と言っていい有望なウマ娘だったが、そんな彼女にしてもレース直前に得意とする差しではなく、逃げで挑むという奇行に及んだ。

 

 それはひとえに、アガッたから。ダービーという舞台で、判断力が鈍り冷静さを欠いたから。要は、掛かったということなのだろう。

 

(まあ、あることか)

 

 と思いきや、すんなりと掛かりを収めて大半が引っ込む。

 

(なんなんだ、こいつら)

 

 賢いのか、どうなのか。そのあたりの判別がつかず、取り敢えずナリタブライアンは保留にした。

 こういう相手の意図を読むとかそういうことは、適任のやつがいる。

 

 しかし、これは困ったとナリタブライアンは思った。

 ここまで外に進路をとれば、外から包まれることはないと思っていた。しかしこういう掛かり癖のあるウマ娘には、理屈が通じないらしい。現に後ろから外に回って仕掛けようとしていた気配が、いくつかあった。

 

「早めにやるか」

 

 理屈が通じないらしい相手には、理屈が通じない強さを。

 大きく息を吸って、ナリタブライアンは更に姿勢を低くした。

 

 第3コーナー。ここで仕掛ける。先頭までの8バ身を詰め切って、第4コーナーからブッ千切る。

 

 そして、大きく息を吐く。酸素が脳から消え去り、視界が暗く染まる。

 

 自分の内部へ、領域へ。

 深く、深く、ナリタブライアンの意識は沈んでいく。

 

 影。闇。黒。

 そういったものが、苦手だった。自分と同じだけの速さで付いてくるそれが、ナリタブライアンは苦手だった。物心ついて初めて恐れたのが、自分の黒ぐろとした影だった。

 

 或いは彼女にとって影とは、恐怖の象徴だったのかもしれない。そしてあるときに、知った。恐怖からは、影からは、逃げ切れないのだと。

 

 故に、逃げない。迎え撃ち、打ち砕く。

 影を、恐怖を、それに付随する敗北を。

 

「――――散れッ……!」

 

 影と闇に呑まれている、世界。

 振り下ろした拳で自分が踏みしめていた世界が砕かれ、影が消える。

 

 

 領域を広げ、そして恐怖共々自身の力で打ち砕く。

 

 

 豪快にして繊細な領域を構築し、ナリタブライアンは地を飛翔した。

 猫科の肉食動物が飛びかかる寸前に見せるような低空の構え。肉体の柔らかさ、バランス感覚、瞬発力。全てを備えていなければとても、そんなフォームでは走れない。

 

 そんな第3コーナーまでの短い距離で先頭に追いつき、第4コーナーからもう一段ギアを上げてブッ千切る。

 

『一人だけ違うのか!』

 

 そんな実況のとおり。まさしく、一人だけ格の違うレース展開。

 彼女しか映らない、映せない。

 そんな幾台かのカメラを映し出しつつ、ナリタブライアンは圧巻の勝利を見せた。

 

「フッ」

 

 そんな勝利の余韻も他所に、ナリタブライアンは周囲を見渡した。

 そして、あっさり見つけた。幼い頃から見覚えのあるモコモコとした芦毛を。

 

「やはり見てたのか、姉貴」

 

 自分がそうされたように、指を一本伸ばしてさす。

 

 やっとやってきた後続をチラリと見て、ナリタブライアンは控え室に戻った。

 

「どうだ」

 

「悪くない」

 

「ああ、そうだろう」

 

 とは言いつつも、彼の表情は微妙なままだった。

 短い言葉の応酬は、不機嫌の証ではない。単純に、互いに本来は無口な質なのである。

 

「どうかしたか?」

 

「……いや」

 

 まあ、なんとかするさ。

 暗にそんなことを言われたような気がして、ナリタブライアンは敢えて踏み込まなかった。

 

 そして。

 

「私は、ブライアンに勝てると思うか?」

 

 怪物の去ったあと。

 完膚無きまでに叩き潰されたウマ娘たちを見ながら、ビワハヤヒデは隣のトレーナーに問いかけた。

 

 圧倒的な。

 そう、彼女が見せた天皇賞春の完勝が薄れる程の圧倒的な勝利。

 それを見て特に驚くふうな素振りもなく、ビワハヤヒデのトレーナーは頷いた。

 

「今のままなら、そうですね」

 

 ビワハヤヒデは、去年の有馬記念でトウカイテイオーに負けた。

 負けるはずのないレースに負け、勝利の方程式が圧倒的な才能に打ち砕かれたのを感じ、そして再び立ち上がった。

 

「恐怖を乗り越えた、君が勝ちますよ」




30人の兄貴たち、感想ありがとナス!

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アフターストーリー:憧憬

ウマ箱安くなってるからみんな買おう!
ちなみに私は欲しいけどお金がないので買えません。南無。


「彼は宝塚記念を4度勝っている。これは現役のトレーナー中、2位ということになっています」

 

 シンボリルドルフ、シンボリルドルフ、サイレンススズカ、ミホノブルボン。

 ついでに言えば、彼が日本に来てはじめてトレーナーとして活動したのが、宝塚記念でのことである。

 

 神の時代にしか存在しなかった三冠ウマ娘という栄光を手にしたミスターシービー対、無敗での三冠という前人未踏の道を自ら切り開かんとする皇帝。

 2戦目と3戦目は力押しでの圧勝であったが、グランプリを力押しできるのもそれはそれで頭がおかしい。

 

 そしてミホノブルボンの宝塚記念は、短いながら濃密なあのサイボーグウマ娘の中でもベストレースと名高い。

 

「阪神レース場、ないしは2200メートル。あるいはどちらもが得意だ、ということか」

 

 そしてそんな得意とするレースで、妹を迎え撃つことになるのか。

 ビワハヤヒデはやや緊張した面持ちで、あくまでも落ち着いたふうな自分のトレーナーの言葉に相槌を入れた。

 

「ええ。それもあります。だけど、そうではない。単純に彼の真の意味での適性距離――――つまり、計算上の齟齬なしにレースを進められる距離が、2400メートルなのだと思う。しかもこれは、短ければ短いほど良いというようなものでもない。1800から2400。そのあたりが、彼の得意とするところです」

 

「なるほど。その根拠は?」

 

「彼が学んだフランスでの主要レースの殆どはこの距離に収まります。ついでに言えば世界を俯瞰すると、長距離の需要は細まりつつありますから」

 

 生粋の中距離専。

 なるほど確かにあの東条の甥は、王道というべきレースにしか出てこない。例外となるのは、サイレンススズカと組んだ時くらいなものである。

 

「私は彼の初戦を見る前は、正直なところ侮っていました。東条ハナという超一流のトレーナーでも情に流されてしまうことがあるのかと失望した。そう言ってもいいかもしれません」

 

 ダービー後からコネ採用のような形で合流させた甥に、無敗の三冠がかかっているシンボリルドルフを任せる。

 親心ならぬ叔母心。この界隈は身内のコネ採用が珍しいことではないとはいえ、ここまで露骨なのは然う然うない。

 

「しかし、彼は勝った」

 

「そうです。しかも、皇帝への負担を減らしつつ、楽に勝った。あの、ミスターシービーを相手に、です」

 

 宝塚記念でのシンボリルドルフは、これまでの4戦で見せた【好位に位置し続けて最後の瞬間に突出して差し切る】という、所謂ルドルフ戦法とは全く違った走りを見せた。

 

 ルドルフ戦法は、楽して勝つための戦法である。最後の瞬間にだけ本気を出して、脚への負担を減らす。

 しかしそれでも、精神的・肉体的な消耗はゼロではない。それは当たり前のことであり、間違いなく東条ハナとシンボリルドルフは考えうる限りの楽をしていた。

 

 だが彼は、位置取りを保つという無駄を省いたのである。

 それは本来、楽に勝つ為に必要なことであった。しかし宝塚記念でシンボリルドルフがミスターシービーを相手にするには、不要なことだった。

 

 いつも好位置から勝つシンボリルドルフは、最後尾。ミスターシービーの後背にピッタリとついて回ったのである。

 他のウマ娘からしても、『皇帝』シンボリルドルフは警戒対象だった。故に考え、結論を出した。

 

 ――――皇帝は、実力を隠している

 

 半ば公然の事実であったそれを、今更ながら他のウマ娘たちは意識した。

 そしてその隠された刃の長さを見誤るまいと、レースのペースを上げた。

 

「その結果が、これです」

 

 映像を点けた。そのゲートの中にはミスターシービーがいて、シンボリルドルフがいる。

 

 ゲートが開く寸前、さあ来いと身構えるウマ娘たち。

 しかしそんな身構えを他所に、シンボリルドルフはニヤリと口元に笑みを浮かべて最後尾についた。

 

 彼女は今まで、するりと抜け出すために好位置につけるということしかしてこなかった。

 だと言うのに、中々どうしてなめらかに動く。

 

 シンボリルドルフは、無敗の二冠ウマ娘で、そしてクラシック級のウマ娘である。

 クラシック級のウマ娘がシニアの祭典である宝塚記念を制した例は、この時点ではない。

 

 ――――シニア戦線を無礼るなよ

 

 そんな気持ちがあり、だからこそ衆目はルドルフの一挙手一投足に気を取られた。

 だからこそこの宝塚記念は当初全ての脚質のウマ娘たちが牽制されたように速度を落とし、必然的にスローペースで進んだ。

 

 そしてそのスローペースは、後ろに位置するウマ娘にとっては有利であった。

 差し、追込。所謂後方待機のウマ娘にとって恐れるべきは、ハイペースにつぐハイペースによってレースが縦に伸びきり、最後の末脚では差し切れないほどのリードを取られてしまうことである。

 

 

 ――――そういうつもりか

 

 

 流石に百戦錬磨のシニア級のウマ娘である。故に彼女らとそのトレーナーは、その意図に気づいた。

 クラシック戦線とシニア戦線では、レベルが違う。レースを構成するウマ娘のレベルが高いだけに、その平均ペースも速いのだ。

 

 クラシック戦線でのハイペースは、シニア戦線での平均ペース。その言葉は誇張であっても虚構ではない。

 当然ながらシンボリルドルフは、その激流というべきシニア戦線のハイペースを経験したことがない。

 

 

 ――――そして、ハイペースになる根拠もあった

 

 

 ミスターシービー。現役最強のウマ娘。彼女は最後尾から直線一気に差し切る追込型のウマ娘であり、彼女を相手にするにはハイペースを作り出すしかやりようはない。

 だがそのシンボリルドルフは、ハイペースに慣れていない。だから敢えて最後尾に立つことで動揺を誘い、スローペースに落とし込む。

 

 そのスローペースとはつまり、ルドルフにとっては手慣れたペースである。

 

(ウマ娘を環境に適応させるのではなく、環境をウマ娘に適応させる。そのあたりに、勝機を作り出すつもりか)

 

 各トレーナーたちは新人らしからぬ大胆不敵なそのやりようを驚き看破し、そして認めた。この、血統とコネでやってきた新人トレーナーの実力を。

 

 そしてレースは序盤がスローペースに陥っただけに、反動をつけて加速した。

 これに臍を噛んだのは、ミスターシービー陣営である。実際のところ彼女のトレーナーが噛んだのは臍ではなく飴であったが、彼は――――後にスピカのトレーナーとなる男は、早めに仕掛けざるを得ない現状を把握してサインを出した。

 

 それを見て、ミスターシービーが素早く頷く。

 彼女は、焦っていた。彼女には、追いかけられる経験がない。それも、自分かそれ以上の実力を持つウマ娘に追いかけられるという状況に追い込まれ、そして前を駆けるウマ娘たちとの距離はいつになく離れている。

 

(いつ仕掛ける?)

 

 天衣無縫。

 そう形容されるほどに楽天的で闊達なミスターシービーは、珍しく周りを見回した。環境を作り出してきた彼女が、自己を環境に適応させようとした。

 

 そして血統とコネで皇帝の栄光を折半しに来た盗人――――東条隼瀬はここまでの展開を推測し、かつ対処のために動いていた。

 

 そしてその意思に沿い、シンボリルドルフが動く。

 紫水晶の瞳に雷光を満たした若き皇帝は、最終コーナーの少し前に、ことさら大げさに大地を蹴り上げた。

 

 同時に、ターフで紫電の欠片が走る。

 

 領域。その片鱗。

 限られた者しか持ち得ないそれを、ミスターシービーは持っていた。だからこそ、この『掛からせ』に見事に引っ掛かった。

 

 シンボリルドルフが仕掛けてくると、感じてしまった。

 

 この『見せ領域』は東条隼瀬の策にはなかった。

 だがこうした方がよりうまく行くと判断したシンボリルドルフは独自の判断で策にさらなる切れ味を加味してみせたのである。

 

 かくして見事に、ミスターシービーは掛かった。ついでシービーが仕掛けたのを見た前方のウマ娘も、まるごと焦燥のうちに末脚を繰り出さざるを得なくなった。

 

「24……保たないな。勝ったか」

 

 シンボリルドルフの、参謀。リギルのサブトレーナー。

 彼はなんの感慨も見せず、初陣故の照れも焦りもなく、そう呟いた。

 

 ミスターシービー。神の如き尊崇を受けるシンザン以来の、三冠ウマ娘。疑いなく、シニア最強と呼べる存在。

 その肩書きと彼女自身が培ってきた直線一気の末脚の鋭さ。これまで長所として使えたものが反転し、すべてルドルフの味方となった。

 

 ミスターシービーは、その末脚を繰り出すタイミングが天才的だった。そしてその天才をシニア戦線のウマ娘たちは信頼していたし、尊敬していた。

 

 そしてその信頼と尊敬を、東条隼瀬は利用したのである。

 

 

 ――――シービーの仕掛け時に間違いはない

 

 

 そう信じ、感じたウマ娘たちは雪崩を起こすように一斉に仕掛け、そしてゴール直前で行動の限界を迎えた。

 

 これには短絡的と言う批判もあったが、当事者からすればシービーが仕掛けてきた以上、この場に踏みとどまってもどのみちバ群に呑み込まれてしまうし、呑み込まれた後に差し返せるような末脚があれば、そもそも前にはつけないで済むというのもある。

 つまり、彼女たちは詰んでいたのである。二択のうちのどれを選んでも詰み。

 どう動こうが勝ち目がないようにさせられた被害者であるとすら言えた。

 

 シンボリルドルフは最初から最終コーナーに至るまで、最後尾を走っていた。そして他のウマ娘たちをトレーナーと共同で作り上げた重層的な罠の中に引きずり込んで沈黙させ、最後の2秒間だけ先頭を駆けた。

 そして勝利を手にしたのである。

 

 いつも通りの、1バ身差。

 しかしその1バ身を、この後もついぞミスターシービーは埋められなかった。

 

 ジャパンカップでも、有馬記念でも、そして最期の春天でも。

 

 ――――皇帝を無礼るなよ

 

 鋭い眼差しで倒れ伏すシニアの強豪たちを見下ろして、シンボリルドルフはマントを靡かせて指を二本立てた後に、改めて人差し指の一本だけを天に伸ばした。

 

「皇帝。おめでとうございます」

 

「他人事だな、参謀くん」

 

 この時が、ルドルフが死ぬまで長らくそう呼び続けることになるその呼称の初出であった。

 

「参謀くん?」

 

「ああ。これからもその智慧で、私を支えてほしい」

 

「それはできません」

 

 少し前まで毛ほどの動揺も見せず誇らしげに観客席に向けて高らかに指を掲げてみせたシンボリルドルフは、この言葉に面食らった。

 

「な、なぜだ。こういうことを言うのもあれだが、君は私のために来てくれたんだろう?」

 

「それはそうですが、私は理想を追う方を補佐したいと思っています。理不尽を敵とし、無理を打ち砕こうとする人をです。貴方の理想として掲げる旗が高らかに仰ぎ見られるようなものでない場合、その約束は致しかねます。それに、貴方は強い。勝つだけならば自分でなんとかできるでしょう」

 

 その言葉を聴いて、シンボリルドルフはきょとんと目を丸くした。

 雰囲気と立ち振る舞いからして美人ムーブをかましているこの皇帝は、実のところ幼いというか、可愛い感じの顔立ちをしている。

 

 そのきょとん顔はまさにその顔立ちを際立たせるものであったが、すぐさまそのかわいさを収め、皇帝らしさを取り戻したシンボリルドルフは納得したように頷いて、笑った。

 

「私の理想は、君が高らかに仰げるであろうものだ。そしてその理想を、私は行動で示してみせよう。だから今は、この手を取ってほしい」

 

 伸ばされた手からは、白い手袋が外されている。

 それは本来の自分を見てほしいと言うことであったかもしれない。だがそんな細やかな機微を察せられるようならば、この男から愛嬌が死にかけているようなハメにならない。

 

「……そうですか。では、期待させていただきます」

 

 その行動を、彼女は普段の立ち振る舞いとオグリキャップの一連の事件で立証することになる。

 

「それにしても、スローペースで進んだらどうするつもりだったんだい?」

 

「貴方の負けるパターンは予測し、把握しています。なのでミスターシービーより早く仕掛けさせるつもりでした。スローペースとなれば、後方待機のウマ娘の方が有利になります。消耗は激しくなるでしょうが、負けることはなかったはずです」

 

「負けるパターン、か」

 

 ズケズケとよくも言うなぁと、シンボリルドルフは内心驚いた。

 皇帝。無敗の三冠という偉業に挑む者。それがシンボリルドルフであり、彼女にとって最も忌むべきものが敗北だった。

 

 敗北を想起させる言動をするあたり、歯に衣着せぬ男であるらしいと、皇帝は思った。因みにこれはまったくもって正鵠を射ている。

 

「知りたいですか、皇帝」

 

「ん、いや。自分で考えることにするよ」

 

 それは即ち、スプリンター並の鋭さを持つ末脚を残り数百メートル地点で繰り出されることである。

 スプリンターを相手にした互いに全力な状態での単純なスピード勝負であれば、生粋の中距離ウマ娘であるルドルフといえども負けないとも限らない。

 

 そのことを、シンボリルドルフは思いつかなかった。そしてこの洞察は、意外なところで活かされることになる。

 

 その『意外なところ』とはすなわち、初の共闘を果たしたこの場所で皇帝と参謀が敵として相まみえたときのこと。

 

 こうしたように何かと因縁のぶつかるのが、宝塚記念という場所である。

 

 そして再び、因果は巡りぶつかり合う。

 

「この宝塚記念は、東条さんの傑作だ。新人とは思えない大胆不敵。思い返せば、ミスターシービーに心理的動揺を与えられるというただ一点においても後ろにつけるというのは有効でした。芸術と言ってもいい」

 

(そういう勝ち方をしたいのか)

 

 ビワハヤヒデは、己のトレーナーの目の中にある陶酔を見て取った。

 それは、尊敬と言い換えてもいい。確かにレースにおける勝利の方程式を追い求める彼女としても、東条隼瀬の立てる作戦の美しさは瞠目するほどである。

 

 だが、陶酔するほどではなかった。少なくとも、彼女にとっては。

 

「私は何度も何度も、彼の立てた作戦を見ました。そして、気づいたのです。つまり彼の勝ちパターンは、相手に理不尽な二択を押し付けることにある。有利な状況に引きずり込んで、勝つ。絶対的な勝ちパターンです」

 

「二択にさせる意味はあるのか? 私などからすれば、用意すべき道は一択でいいと思うが……」

 

「そうですね……おそらくは相手に最善の手を選んだ、と思わせるためでしょう。そうすることで自分が手中にあることを悟らせない。悟らせなければ、軛から脱することもできませんからね。実に合理的です」

 

 軛から脱するということはつまり、遮二無二走るということである。思考も何もなく、ただスペックでゴリ押す。

 そうすれば、理不尽な二択を回避し三択目――――『どちらも選ばない』という道を選ぶことができる。

 

 しかし思考を捨てて走るというのは難しい。最善の選択をできる選択肢が目の前に吊り下げられていれば、尚更である。

 

「彼の戦術は、相手の長所で相手を刺す。相手の長所で長所を砕く。理不尽を押し付け、行動を縛る。そこが徹底されています。相手の長所はつまり、翻せば短所になる。そういうことでしょう」

 

「ではやはり、先に押し付けていくつもりか」

 

「ええ。彼のレースには意味があります。前のレースは今のレースの布石であり、今のレースは次のレースの布石。連綿と繋がっていく。無駄がない。ハイペースに呑まれた宝塚記念があってこそ超スローペースの菊花賞が生まれ、宝塚記念と菊花賞で脚の消耗を防げた。防げたが故に、シンボリルドルフは伝説的なジャパンカップを走れた。実に芸術的です」

 

 疑いなく全盛期と呼べる知略のキレ、判断の果断さ。やや堅実な守りに入った今とは色彩の異なる鋭さと迅速さが、この頃の東条隼瀬にはあった。

 

 そして現在。ナリタブライアンのレースを見るに、彼は手札を見せてきている。内からも外からも確実に差せることを見せている。つまり、どちらかに誘引して空いた方を突破する。

 それを防ぐことは、できない。そう見える。

 

「芸術的かどうかはともかくとして、理想的ではあるな」

 

「ですが、それを防ぐ方法はあります。そしてその上で、理不尽を押し付ける。要は、先手先手を打つこと。すなわち、主導権を握らせないことです。細かな調整は、貴方に任せます」

 

 ビワハヤヒデは、頭がキレる。ルドルフ以来とすら言っていい。

 つまるところ、彼女のトレーナーはこう言っているのだ。

 

 君ならルドルフと同じことが、そしてそれ以上のことができるでしょう? と。

 それに対してビワハヤヒデは、不敵に笑う。自分の選んだ、自分を選んでくれたトレーナーの信頼に応えるために。

 

「無論、やってみせるとも」




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アフターストーリー:揺籃

ニヤニヤしながら感想欄を見ていましたところ、レースに関してのもっともな疑問がありましたので、口にせずともこの疑問を持った読者様方は多かっただろうと思い、ここに返事を書かせていただきます。

それはつまり、実際の競馬におけるスローペースの有利とハイペースの有利がひっくり返っている、ということです。

私は基本的に、実際のレースを見てから作中のレースを書いています。しかしそこまで競馬に詳しくないこともあり、またRTAというジャンルということもあり、基本的に作中の表現はウマ娘アプリ内におけるレースに即して書こうとしてきました(できてないこともあります)。

なのでマックイーンがレース中に紅茶をグビーしたわけですが、ウマ娘のレースはざっくり言うとハイペースだと逃げとか前めの脚質が有利、スローペースだと差しとか後ろめの脚質が有利、ということになります。
これはポジションキープという仕様が関係しているのですが、詳しく説明するととんでもないことになるので省きます。
逃げが競り合えば競り合うほどハイペースになって逃げが有利になり、差し追込が不利になる。
単逃げであればあるほどスローペースになって差し追込が有利になる。

本作のウマ娘世界はアプリ版同様の、そういう世界だと思ってください。

追記になりますが、一応もっともらしい理由は考えてあります。
逃げ二人の方が強いのはハナを取らせまいと競り合い、実力以上の力が出せるから、前めのウマ娘がスローペースに弱いのは瞬発力に欠け末脚勝負になってしまうからとかです。

あと、時間が足りなかったので更新までに感想返信できませんでした。申し訳ございません。明日まとめて行います。


「マスターはVRウマレーターというものを使用した経験はお有りですか?」

 

 やや唐突に、ミホノブルボンは問うた。

 VRウマレーター。仮想現実に入り、なにか色々なことができる機器。

 

 触れた機械のことごとくを破壊するミホノブルボンにとっては文字通り触れることすらかなわなかった代物である。

 絶縁グローブをしていれば触れられることには触れられるが、フルダイブ時に手だけが読み込めないという世紀末景色を現出させることになる。

 

 故に彼女が機械を破壊する根幹的な原因である電波をどうにかしない限りは、結局彼女はVRウマレーターを使うことはできなかった。

 そして、最近。そのどうにかすることができたのである。これでも結構好奇心旺盛で機械好きミホノブルボンは、VRウマレーターというものに大いに興味を惹かれていた。

 

 故に、彼女はもっとも身近でもっともお話をたくさんしたい相手に話を振ったのである。

 

「……いつもの生徒会メンツと、乱入してきたクソガキ+メジロマックイーン含めての毎年恒例のゲーム大会の時、変わり種としてやってみたことがある。正月休みが全部潰れたが、面白かったぞ。ルドルフと作ったシンボリジャジメントで裏面より世界を征服できたから、達成感もあった。メインシナリオも終わったからやめたが」

 

「なるほど。それは、経済戦争のようなゲームなのですか」

 

 ルドルフ会長とマスターであれば、割と何でもできるだろう。現実でもURAという巨大組織に度々掣肘を加えて制度の変更を強いているわけだし、それがゲームであればなおさら楽にできるはずだ。

 そんな謎の信頼感が、彼女にはある。そしてそういう難しいゲームを彼が好むことを、ミホノブルボンは特有の嗅覚で察してもいた。

 

「いや、野球ゲームだったはずだ。現にエアグルーヴとブライアンとクソガキとマックイーンは野球をやっていた。俺とルドルフは配役が謎だったんだよ」

 

 殆どが高校の野球部員なのにルドルフはあいも変わらず人の上に立つ仕事をしていたし、この男はその直属にいた。

 そういう星のもとに生まれたのかもしれないと、彼はこのときに思ったものである。

 

「だから好き勝手やっていただけで、本筋にはほとんど絡んでいない。時折観戦しに行ったくらいで」

 

「……よくわかりませんが、テイオーさんがメインシナリオというものにおける主人公格を務めたであろうことはわかりました」

 

「まあピッチャーやってたからなぁ、あのクソガキ。主人公だったんだろうな」

 

 ピッチャーがテイオー、キャッチャーはマックイーン。ショートはエアグルーヴ、サードはブライアンだったからまあ、たぶんテイオーが主人公だったんだろう。

 そんな安直な考えで、東条隼瀬はミホノブルボンの推測を肯定した。

 

 カッチャウモンニ-!していた試合やボクガマケルナンテーしていた試合を、ルドルフのお付きで度々観戦しにいっていただけに、どこを守っているか、どういう役割をこなしていたかというポジションに関しては知悉している。

 

「ブルボン。お前、VRウマレーターとやらを使いたいのか?」

 

「はい。私はこれまで機械に嫌われてきましたが、最近頓に関係改善に成功しているという自負があります」

 

 それはどうなんだろうかと、東条隼瀬は思った。

 ミホノブルボンは、機械が好きである。勝負服のモチーフからして『宇宙を駆ける戦闘機』であるというのだから、いわゆる少年的なメカ好きの感性を持ち合わせていると思っていい。

 

 しかしまあなんというか、彼女は触れれば何故か機械を壊す。

 スターウマ娘が病院を回ってファンサービスする、みたいなことは結構よくあることではあるのだが、彼女は片っ端から病院の機器を破壊しかねないと思われているからか、一切お呼ばれはしていない。

 

 実のところ彼女の体質は、変わっていない。つまり、改善はされていないのだ。外部装置によって目立ちにくくなっただけで。

 

「まあそれはそれとして、見ろブルボン。これは楽に勝てる相手ではない。そう思わないか?」

 

 皐月賞、日本ダービー、菊花賞。

 そして直近の、天皇賞春。それらの映像を飽きるほどに見返している姿を飽きもせずに見ているミホノブルボンは、彼に問うた。

 

「マスターは、勝ちにくいとお考えですか?」

 

「ああ。相手はどう来るかな、と思ってな。あと1年間分データが溜まればほぼ完全に近い予測を立てられるだろうが、彼はサブトレーナーとして他のウマ娘の育成に参画したことすらないときた」

 

「初めてで、菊花賞を勝ったわけですか。優秀ですね」

 

「そうだ。まったくバカげている優秀さだな。トレーナーも、そのウマ娘も。大した安定感だ」

 

 しかも皐月賞も日本ダービーも2着。他のレースでもすべて連対。

 新人にしてこの安定感は、彼とて瞠目するほどである。

 

「マスター、マスター」

 

「どうした。何か気づいたか?」

 

「私もすべてのレースで連対していますよ」

 

 むふーっと自分の戦績を誇る――――というか、褒められたいがために尻尾ブンブンしている犬科のウマ娘の頭をヨシヨシヨシヨシと撫でつつ、浮き上がってきた左耳をポリポリと掻く。

 

「すごいなぁブルボンは。えらい!」

 

「はい。マスターのおかげです」

 

 というたわむれを終えて、たぶんVRウマレーターについては忘れてくれたであろうイヌ科のウマ娘を撫でて精神的にリセットされた男は天皇賞春の映像を見た。

 終盤。ナリタタイシンの炸裂した末脚を真っ向から受け止め、受け止めてから押し切る。

 

 素直に、強い。BNWと呼ばれているが、明らかにひとりだけ格が違う。

 

「マスターは、何にお悩みなのですか?」

 

「ん、いやまあ、思い通りに動いてくれるだろうか、というところがな」

 

「……ですがそのために、皐月賞であざとい手を使った。そうではありませんか」

 

「まあそうだが、用心するに越したことはないからな」

 

 そう言ってからコーヒーを一口飲んで、東条隼瀬は一息ついた。

 

「それにしてもお前、気づいたのか」

 

「思い通りに、というくだりで。マスターはレースがはじまる前、あらゆるパターンをデータ化して私にインストールさせてくださいました。無論それはこういう成長を期待したのではなく、現場レベルで発生する齟齬に対応するためだということは承知していますが、それでもわかることはあります」 

 

「となると、相手にも読まれているかな。それはそれで構わないんだが」

 

 情報収集は、確実にしてくる。

 この場合の彼の思考回路は『ブルボンに読まれる程度の作戦ではだめかな』、ということではなく、単に『情報収集によってたやすく察知される戦術ではだめかな』というたぐいの懸念だった。

 

 それに対して、ミホノブルボンは第三者から見ればこその即断を下した。

 

「いえ。おそらく、それはないと思われます」

 

「うん。理由は?」

 

「マスターはレース1つにしても多岐にわたる思考をなさいます。それはひとえにマスターが現場レベルでの臨機応変さに欠けるからです。ですが実際に日の目を見るのはひとつだけ。即ち私が得ているマスターの思考パターンは、実際に使われたそれの28倍にも及ぶと考えられます」

 

「まあ、そうだな」

 

 こうしたらこう。こうしたらこう。

 

 面白いほどにインプット能力の高いブルボン相手に、スズカショックから抜け出せずにいた東条隼瀬は安定性を求めるために徹底的に自分が予知する危機や展開を叩き込んだ。

 それは彼の精神がミホノブルボンというセラピストによって改善されるにつれて量を減らしていったものの、ミホノブルボンはそれらをまだ律儀に記憶していたのである。

 

「更に言えば、私はマスターから解説付きでの説明を受けています。他の方はあくまで結果から推論を立てただけで、必ずしも正答を導き出しているとは限りません。となると、私が読めた理由となる情報を、相手方は正しく取得できていない。となると、正しい推測はできないのではないでしょうか」

 

「確かに、その通りだ。名プレイヤーは名コーチたりうるかという論争はあるが、お前はいいトレーナーになるだろう」

 

「光栄です、マスター。ですがこれは、環境に恵まれただけだと思われます。私はマスターの思考をトレースして『どう考えるか』を推測しただけであり、そこに成長する余地は存在しません。つまり、ステータス:独自性が欠如している。即ち、二番煎じにしかなりえません」

 

 それもそうかと思うが、それにしたってすごい。

 成績優秀で暗記が得意なこのサイボーグウマ娘の意外でもないはずの一面に驚かされながら、取り敢えず頭を撫でる。

 

「ブルボン。逆に訊くが、お前は勝てると思うか?」

 

「マスターは負けた経験がありません。それに、ルドルフ会長、スズカさんと組んで負けないというのもすごいことですが、何よりも私と組んで負けなかったという実績は讃えられるべきです。ブライアンさんの才能は私の97倍はありますから、勝てるのではないでしょうか」

 

 昨日勝てたから今日も勝てる。今日も勝てるのだから、明日も勝てる。

 それを今まで繰り返してきたわけだが、その理屈はあくまでも理屈でしかない。

 

「強いて不安点を挙げるとすると、どちらも封じられた場合どうするか、ということです。その場合進路だけでなく、レースにおいてもっとも貴重な、時間を失うことになります」

 

「そのあたりに関してはちゃんと考えてある。相手が一筋縄でいかなくなり、勝負が早まった時点でな」

 

 こくりと、ミホノブルボンは頷いた。

 思い返せば自分程度が思いつく危機を、このひとが見逃すとも思えない。

 

 余計な確認だったとミホノブルボンは思ったが、実のところその慎重な確認を、彼は結構ありがたがっていた。

 

「というかブルボン。ブライアンさんというと、仲良くなったのか?」

 

「はい。マスターがどう考えるか、といったあたりを少し教導いたしました。多少力になれたようで嬉しく思っています」

 

「俺がどう考えるかを知ろうとしたのか。あいつがね」

 

 ルドルフと併走しているブライアンを窓から眺めつつ、ため息をつく。

 

「どうにも、気を回しすぎているな。あいつ」

 

 ナリタブライアンの全盛期が来るのは、おそらくは2年後。今は才能の全容が目覚め切っていないし、無理矢理に叩き起こそうとも思わない。

 今は蛹なのだ。それが羽化したビワハヤヒデと競おうとしている。

 

「俺としては別に、あいつが全力を出して負けるならそれはそれでいいんだ。無論手を抜くというわけではないが、勝ちたいならこれからいくらでも機会はある」

 

「ですがブライアンさんは、今勝ちたいと思っている。そうではないのですか?」

 

「おそらくは。とはいえ本人は、そう思っているんだろうな」

 

 勝ちたいと思っていると、思っている。

 

 その表現の仕方にクセを感じつつ、ミホノブルボンは首を傾げた。

 

「とはいえ、俺もやるからには勝ちたい。だが願わくばあいつには、自分の本心がどこにあるかというところに気づいてほしいもんだ」

 

「そうでなければ、勝てないからですか」

 

「いや、どのみち勝つさ」

 

 春天の、ラストスパート。

 ナリタタイシンを迎え撃った、最後の場面。その意味を完璧に理解した男は自信を取り戻したような横顔を見せつつ、ミホノブルボンにそう言った。

 

「こちらの情報を掴んでいるということは、相手に手の内がバレているということだ。となると自然、対策は限られてくる。ここまではいいか、ブルボン」

 

「はい。こちらの手が封じられているということすなわち、相手の手を限定させるということに繋がる。つまりマスターは自分のいつもの手を封じられながらも、相手の手は読めている。そういうことですね」

 

「そうだ。読めている。だがどうしようもできない。それはその通り。しかしその対策を引き出してから、どうしようもできないのは俺だけさ。将軍ならなんとかできる。ルドルフなら更にうまくやる。つまり、俺は俺であることを捨てることで、この局面を打開できるだろう。

別に覚えておいてほしいわけでもないが、いついかなる時も不意を打つというのは有効なんだよ。そして不意を打つというのは相手が殴ってきた手を掴んで引きずり込むことによって発生する。あとは、うまくやるさ」

 

 この場にスズカがいれば、少し驚いたかも知れない。彼女との秋天の一件からややその性格と才能の色彩を変えた男が、徐々に色を元に戻しつつあったのである。

 

 今年の宝塚記念は、ビワハヤヒデ一強だと言われる。

 ビワハヤヒデ一強で、これまでそれを許さなかったウイニングチケットは肩を負傷し、ナリタタイシンは右脚を骨折。

 去年までから様変わりした戦況から更なる様変わりを見せ、空白地と化したシニア戦線に殴り込みをかけるには都合のいいタイミングだというのは、確かだった。




41人の兄貴たち、感想ありがとナス!
euthanasia.0110兄貴、エマノン兄貴、さえみりん兄貴、touya兄貴、さんらいん兄貴、評価ありがとナス!


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アフターストーリー:休眠

芝2200メートル(右回り)、フルボイス「中央を無礼るなよ」記念


「ブライアン。今日は、ここらで終わりだ」

 

「……チッ」

 

 皇帝との、併走トレーニング。ある程度心身共に成熟していなければできないそれを軽々こなし、しかしルドルフのルドルフたる由縁の威圧感、駆け引きの迅速さ。

 威圧感で精神がすり減り、息をつかせぬ駆け引きを受けて対応に追われる。そんな中で弱音を吐くことすらできず、なおも『まだだ』という挑戦者の闘志を燃やすような顔。

 

 そんな可愛い後輩が漏らした吐き捨てるような舌打ちが自らの不甲斐なさに向けられたものであることを、シンボリルドルフは知っていた。

 

「ビワハヤヒデは疲れた状態で走って勝てる相手ではない。今日は風呂に入ってご飯を食べて、すぐに寝ることだ」

 

「……アンタは」

 

 ナリタブライアンは、気が立っていた。

 それは別に珍しいことではない。彼女は元々レースへの執着が人一倍強く、したがって入れ込み具合も他とは一線を画す。

 

 故にレースとレースの間を空けても空けなくても、肉体的な消耗はさほど変わらない。

 それは、最近改善されてきた癖であった。しかし今、再び顔を出してきている。

 

 姉と走る。

 それはナリタブライアンにとっては、念願だった。強い相手と、激しいレースをしたい。だがそれと同じくらい――――いや、それ以上に、姉と走りたい。勝ちたい。

 

 だから、今を極めたい。後悔を残したくない。最後のトレーニングを終えた今も、脳裏に過るのは『ああしていれば』『こうしていれば』という思い。

 

「ん?」

 

「アンタは、レース前に焦らない。乱れない。焦ったところも、乱れたところも見たことがない。去年の今、アンタは私以上にヤバい相手を迎えていたはずだ。だがアンタは動揺しなかった。何故だ」

 

 その後悔とか、そういうもの。

 そういうものとは無縁の、絶対的な皇帝。かつて自分をより高みへ導いてくれた翼とのレースを控えたあのときも、シンボリルドルフは毛程の動揺も見せなかった。

 

 ただ泰然自若と警戒に値する相手を迎える。

 彼女にとって、シンボリルドルフは日常のシンボルのようなものだった。なんとなく生徒会室にいれば必ず居て、必ず整然として仕事をこなしている。

 その場に東条隼瀬がいても、然程羽目を外すこともない。いつどんなときも、三冠のかかったレースの前も、ジャパンカップで日本の国威を背負って挑んだときも、まったく動揺は見せなかった。

 

 実のところ、彼女は動揺したことはあった。だがそれはフランスでのことで、ナリタブライアンは見ることができていない。

 

「それは、私を絶対と信じてくれるひとがいるからさ。私はそのひとの期待に応えたいし、応えてきた。ある一点を除いてはね。そしてその一点も、来年埋まる……というのは、建前だよ」

 

 本当にそれは、建前なのか。

 ナリタブライアンはそう訊こうとしたがなんとなく訊き難い雰囲気があり口をつぐんだ。

 そしてその間に、シンボリルドルフは話を続ける。

 

「基本的に私の側には参謀くんが居たからね。目の前に用意されている選択肢は2つしかなかった」

 

「勝利か敗北か、か」

 

 開き直っていた。いや、開き直れていたのか。

 どのみちレースの結末は二択しかないのだから、時間いっぱいで準備をしたあとはレースで全力を尽くすのみ。

 

 そういうことか。

 そう思ったナリタブライアンの黄金色の瞳に獰猛な――――獅子のような、獲物を爪に捕らえることが当たり前とでも言うような豪傑の笑みが映った。

 

「勝利か敗北か、ではないよ。圧倒的な勝利か、完全な勝利かだ」

 

 理性的で、明哲で。

 走り、競うという本能に突き動かされる自分とは正反対に見えた、『皇帝』。

 

「ジャパンカップは失策だった。必要以上の差をつけて勝ってしまったからね。ウマ娘の脚は、ガラスの脚。使えばすり減り、元に戻らない。つまりは、無駄な消耗だ。有馬記念のときもそう。『神の子』相手に少し昂ぶってしまった。これも、無駄な消耗だ。これ以外は、私は完璧な勝利を収めている。だからこれは、別に誇張じゃない」

 

 その本質の獰猛さを垣間見たような気がして、そしてその物言いの実力相応の自信家ぶりを見て、ナリタブライアンは笑った。

 

「ハハッ! アンタらしくない、随分身勝手な言い草じゃないか。相手には相手の都合があっただろうに!」

 

 勝利か、敗北か。

 この二択であれば、相手に勝ち目があることになる。しかし、皇帝の皇帝らしい言い草では、それすらない。

 

「そうだね。だが、こちらにはこちらの都合がある。だから負けてやる必要もないし、負ける可能性を残す理由もない。そうだろう?」

 

「……ああ。その通りだ」

 

 シンボリルドルフの強さ、憎たらしいくらいの強さと形容される。

 それはひとえに彼女の勝ちパターンが最後だけちょこっと前に出てそのまま勝つという、良く言えば効率的で悪く言えば地味なものだったからである。

 

 確かに、レースを見ても然程圧倒している感じはない。だが、最後はなんだかんだでサラッと勝つ。

 だが併走してみると、常に圧倒されている。掌の上で踊らされている。そんな感覚しか感じない。

 

 その認識の齟齬がどのあたりにあるのか、ナリタブライアンには意味がよく理解できなかった。

 確かに、基本的にシンボリルドルフは1バ身差で勝っている。先輩三冠ウマ娘のミスターシービーとの4度の内3度は、判で押したように1バ身差。

 

 ああ、惜しい。そう感じるほどの、僅差だった。

 

「それに、ブライアン。ああは言ったが、私も菊花賞からジャパンカップまでの1週間は結構緊張していたんだよ」

 

「嘘だろ、それは」

 

「嘘じゃないさ。負ける気はしなかったが、宝塚記念と、菊花賞。私は参謀くんに負担を少なくして、しかも勝ちたいとのたまった。そして彼はそれを叶えてくれた。あのときの私は、中1週の強行軍だなんだと言われながら、実のところほぼ万全だったんだよ。それで敗けたら自分への怒りのあまり泣いて喚いて、自室を破壊していたかもしれない。だからやはり、大一番には昂ぶるものさ」

 

 弱みを笑いながらあっさりと見せる、あっけらかんとした強者の心構え。

 やや精神の均衡が落ち着きを取り戻しつつあるのを感じつつ、ナリタブライアンは思った。

 

 ――――かなわないな、アンタには

 

 ナリタブライアンは今のところ、凄まじいパフォーマンスを見せている。

 一昨年ミホノブルボンは凄まじいパフォーマンスを見せたが、それは逃げという脚質もあって過去の三冠ウマ娘たちと比べられることはなかった。

 

 しかしナリタブライアンのそれは、ミスターシービーやシンボリルドルフのそれとかぶる。

 

 全部1バ身で勝ってきたルドルフと、差を付けるだけ付けるナリタブライアン。

 ファンたちはこれをもってナリタブライアンこそルドルフを超えると言っているが、本人はそうは思わなかった。

 実力にしても、精神面にしても、である。

 

 これは年季の差もあり、正しい評価とは言えない。しかし少なくとも、ナリタブライアン自身はそう思った。

 

「……アンタとの併走は、疲れる。風呂に入って、寝ることに決めた。じゃあな」

 

「ああ、そうするといい」

 

 風呂に入って、何ごともなく寝る。

 そのことを決めた。なんの不安もなく、決められる精神状態になった。

 

 ブライアンの短い言葉からそのあたりを読み取って、シンボリルドルフは笑って彼女の行動を促した。

 礼が欲しくて話したわけではなかった。だから、シンボリルドルフは比較的雑な挨拶で可愛い後輩が去っていっても、ニコニコと見送っていた。

 

 そしてこのあと何もなければ、バンカラな彼女の背中がトレセン学園の寮に消えるまで見送っていたことだろう。

 だが、ナリタブライアンはくるりと彼女の方を向いた。まだこちらを、見ている。見てくれている。そのことを確信しているかのように。

 

「……ありがとう、皇帝。助かった。楽になった」

 

「おや。素直にお礼を言う君を見るのは、なかなかに新鮮だな」

 

「やかましい。それだけだ」

 

「わかった、わかった」

 

 末っ子気質なブライアンの弱点を奇しくも――――あるいはわざと突いたシンボリルドルフは、小走りで去っていくナリタブライアンを見送ってから、グラウンドの掃除にかかった。

 

 定められた練習量を、如何に濃密にするか。

 ナリタブライアンの思考はまだそのあたりを彷徨っていて、量を増やそうとする方向へはシフトしていない。

 あの小走りからは、それが読み取れる。

 

「少し不安になったが、信頼しているじゃないか」

 

「らしいな」

 

 鹿毛の尻尾が、ピーンと跳ねる。しかしそれでも、情けない声を上げなかったのは流石に皇帝と言うべきであろう。

 あっさりと、実にあっさりと後ろを取られたシンボリルドルフは、ブリキの木こりのようにギギギと後ろを振り向いた。

 

「よ、ルドルフ」

 

「……参謀くん。どこから聴いていたんだい?」

 

「いや、なにも。で、ジャパンカップの前に緊張していたというのは本当か?」

 

「…………このうそつきめ」

 

 聴いてるじゃないか。

 そう呟くほどに幼さの残る口調になりかけた自分を巧みに律して、シンボリルドルフはいつもの自分らしい自然体な気品を保つべく右手をしゃなりと外へ振った。

 

「まあ、本当だよ。緊張していた。だがこれは別に、君を信頼していなかったわけではない」

 

 が、自然体な気品は自然体だからこそのもので、作れるものではないのである。ごく当たり前に、その不自然さは東条隼瀬にバレた。

 

「へー。腹出して寝てたのにな」

 

「……腹?」

 

「腹。出してたろ、腹。しかも割とだらしなく寝ていた」

 

「………………」

 

 正直、心当たりはあった。

 お腹を出して寝て、腹痛に苦しむ。そういうことは幼い頃に結構よくあった。そういうこともあり、彼女の勝負服は腹は言うに及ばず、全体の露出が極端に少ない。

 

「……私がリギルの部室で寝たのは唯一、ジャパンカップ前日のときしかない」

 

「流石だな、皇帝。抜群の記憶力だ」

 

 そして抜群の生活能力である。

 ウマ娘がトレーナー室や部室で疲れのあまり寝てしまうのは、さほど珍しいことではないのである。それが一回しかないというのは、純粋に称賛されるべきことなのだ。

 

「あのとき。私は深夜に起きた。そして毛布がかけられているのを見ておハナさんに申し訳なく思ったものだった、が……」

 

「残念ながら、それをやったのは俺だ。外国勢の映像を見に来たら信じがたいことに。そう。実に信じがたいことに! そこには風呂を出たあとのパジャマ姿でお腹を剥き出しにし、顔に本を載せたまま寝るとあるやんごとなきお方の姿があった。その余裕綽々な姿に、俺は心底痺れたよ」

 

 無論、皮肉だろう。シンボリルドルフはそう受け取った。実際のところ彼は心から痺れていたのだが、その本心を察知するだけの余裕は今の彼女には無かった。

 

「い、いや。それはおかしい。私は君の歩行音には気づく。どんなに集中していても、だ。となると例え寝ていても、必ず起きたはずだ!」

 

「だから、緊張の弦を外していたんだろうと言っている。俺はあのとき思った。こいつは精神的にタフだなぁと。だから凱旋門の時の送還命令を受け入れたんだ。結果的に失策だった……というのはまあ、いい。ブライアンのこと、ありがとう。それを言いに来たんだ」

 

 突如湧いて出てきた(ルドルフ視点)挙げ句、皇帝をいじめるのに飽きたらしい(あくまでもルドルフ視点)男は、さらりと感謝を口にした。

 

 ああいうことは、実際の競技者にしか言えないことである。あくまでも東条隼瀬はトレーナーであって、競技者ではない。

 

「ブライアンは」

 

「声が上ずってるぞ。具体的にいうと0.4オクターブ分ズレている。つまり、高くなっているということ――――」

 

「うるさい」

 

 本人的には単に事実を指摘しただけなのに暴君ライオン丸の一閃によって黙らされた男は、なんとなくおとなしくなった。幼少の頃のしつけが効いたのかもしれない。

 

「ブライアンはトレーニングはトレーニングとして、健気に君の課題をこなそうとしている。恐怖を飲み込む、ということを」

 

「別にそこまで深く考えなくてもいいんだが。おそらく、ブライアンは気づくだろうし」

 

 その、言い方。

 最近の彼らしからぬ言葉選びの軽さに驚きつつ、シンボリルドルフはアメシストの瞳を向けた。

 

「なぜそう言える」

 

「手本がある。それに、別に明日のレースで気づかなくてもいいさ」

 

「それは、負けるということかい?」

 

「目覚めなくても勝てる、ということだ。たぶん」

 

 なるほど。君がそこまで自信満々に言い切るなら、何かもっともらしい理屈があるのだろうな。

 そんな言葉が喉から出かかったところで、シンボリルドルフは意外な言葉につんのめった。

 

「たぶん?」

 

「ああ。たぶん」

 

「たぶんか……」

 

 自信満々に、たぶんと言う。

 

 この変化を喜んでいいのか、どうなのか。

 いそいそとグラウンドの整備に精を出す男を見続けているわけにもいかず、シンボリルドルフは同じように整備に動きはじめた。




41人の兄貴たち、感想ありがとナス!

mozzy5150兄貴、きさらぎ兄貴、yucris兄貴、IronWorks兄貴、評価ありがとナス!

感想・評価いただけると嬉しいです。


今回の元ネタ
ジャパンカップ負けたら部屋破壊→原作で馬房破壊した
ジャパンカップ前腹出して寝てた→ジャパンカップ前、原作ではお腹の調子がよろしくなかった


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アフターストーリー:激突

レースに関しての疑問がありましたので、口にせずともこの疑問を持った読者様方は多かっただろうと思い、再びここに返事を書かせていただきます。

ばれてないからいいけど指弾く音で意思疎通ってダメじゃないの?
これは黒よりのグレーだろ

との感想がありましたが、アニメ(確かマックちゃんの天皇賞)でレース中の沖野Tがペースに関するアドバイスをしてたのでやってもいいと判断いたしました。


「という作戦だ。何か質問は」

 

「いや、ない。やろう」

 

 実のところ、彼が提示した作戦は結構な無茶振りであった。

 しかしその無茶への嫌悪や忌避を一切顔に出さずに、ナリタブライアンは頷いた。

 

「結構危険ではある。勝率はやや下がるが他のプランもあるが……」

 

「アンタの策に従うと決めたから、ここに来たんだ。やるさ」

 

 この精神的な安定は、事を前にして落ち着く本人の資質のおかげでもある。だが少なからず、シンボリルドルフの言葉が影響しているのもまた確かなことだった。

 

「3人で繋がれてきた無敗のバトンを、きっちり繋いできてやる」

 

 ブライアンのこの言葉に、東条隼瀬は眉をひそめた。

 無敗。つまりそれは、彼自身の戦績のことである。少なくとも彼が担当している期間、負けさせたことがない、という。

 

 チームを担当するトレーナーで、3割。

 よっぽど優秀な個人を担当するトレーナーであっても、4割。それくらいの勝率があれば超一流であると言われる。

 そんな中での無敗、即ち勝率10割。それは彼自身が思っているよりも遥かに、偉大なものであると見られているらしいことに気づいたのだった。

 

「無敗ね」

 

「ああ」

 

 ナリタブライアンからすれば、無敗というものには価値があった。

 人間は自分が持っていないものを必要以上に尊ぶものである。ムラっけのあるナリタブライアンからすれば、いついかなるとき、どんなウマ娘と組んでも敗けない驚異的な安定感は尊敬に足るものだった。

 

 そしてそれを殊更言うということが、どういうことか。

 皐月賞でも日本ダービーでも言わなかったのに、今言ったのはどういうことか。

 

 そのあたりを、東条隼瀬は目敏く察知した。

 ポン、と。軽く、チョップが頭の上に入る。叩くというよりも揺らす、揺らすというよりも乗せる。そんな柔らかなチョップを喰らって、ナリタブライアンは面食らったように黄金の瞳を揺らした。

 

「生意気言うなよ、子供のくせに」

 

「こ、子供だと……?」

 

「そうだとも、野菜嫌いなブライアン。お前は何も背負うな。ただ自分が楽しむ為に、自分の心を満たす為に自らを鍛えて、才能を振るえ。俺はそのためにお前の手伝いをしているんだからな」

 

 第一。

 

 何かを言おうとしたブライアンの口をつぐませるような形でそう一拍おいて、東条隼瀬は肩をすくめた。

 

「ただ敗けたくないだけならば、俺がこの宝塚記念出走を許可するわけがないだろう。お前の姉は強い。2年後なら楽に勝てるだろうが、今やれば苦戦は必至だ。それでも挑むということがどういうことか、わかるか」

 

「アンタのことだ。私を勝たせる自信があったからじゃないのか」

 

「そこまで自信家じゃないさ。俺が出走を決めたのはお前なら勝つであろうという目算があって、例え敗けても糧にするだろうという確信があったからだ。無敗であることで担当ウマ娘が怪我をしなくなるとかだったら拘りもするが、そんなものにはなんの価値もない」

 

 

 ――――それとも。価値のないガラクタを背負いながら走って勝てるほど、お前の姉は弱いのか?

 

 

 そう言われては、彼女としてはもはや笑うしかなかった。

 飢えた、猫科の肉食獣のような獰猛な笑みで。

 

「姉貴は強い。だから、アンタの力を借りるんだ」

 

「知っている。だから……そうだな。楽しんでこい」

 

「ああ。そうするさ」

 

 いつもとは違う言葉に送り出されて、ナリタブライアンはパドックへ向かった。

 そこには、背を追うべき姉がいる。背を追ってきた、姉がいる。

 

「思ったより、早かった。いや――――遅かった。考えうる最速だとわかっていても」

 

「アンタらしくない言い草だな」

 

 感覚的な物言いに終始している。アンタの頭脳であれば終始理性的に、来年の対決を見据えていたんじゃなかったのか。

 天皇賞春。そこでのパフォーマンスといい、わずかに掛かっている。そんな気もする。

 

 そんな思惑をほぼ正確に把握する抜群の姉力を発揮したビワハヤヒデは、笑って頷いた。

 

「身を灼くようなこの闘志は、理屈ではない。ブライアン。お前ならそれがわかるはずだ」

 

 そして、この闘志の元は。

 そこになにがあるのかを、ビワハヤヒデはわかっていた。

 

「……ああ。わかるさ」

 

 魂が、求めた。そうとしか形容しがたい何かが、この姉妹の間にはある。

 

「ブライアン。お前の言い草ではないが……私はどうしても、お前と走ってみたかった。そして私と彼の全知全能を以て、お前に勝つ」

 

「そうか。私も――――」

 

 勝つ。

 そう言いかけて、ナリタブライアンは頭を振った。長い黒鹿毛のテールヘアーが揺れ、ほんの僅かな風を切る。

 

「楽しませてくれ、姉貴。レースへの渇望が、満たされるような。そんな景色を見せてくれ」

 

「全力と全力が鍔迫り合う。そんな期待には添えないかもしれないぞ」

 

「ならば罠ごと噛み砕く。そこから先は、私の時間だ」

 

 ナリタブライアンは、知っていた。レースとはそんな単純な速さ比べではないことを。姉がそうさせないであろうことを。

 そして、噛み砕いた後の力勝負ですら互角でしかないことを。

 

 ビワハヤヒデは、知っていた。レースとはそんな単純な速さ比べではないことを。妹が、そんな常識ごと打ち砕く怪物であるということを。

 そして打ち砕かれた方程式で以て、怪物と言うべき妹を返り討ちにする術を。

 

『さあ、はじまろうとしています。クラシック戦線からの刺客、ナリタブライアンを迎えての宝塚記念。シニアの王者、ビワハヤヒデがその実力を証明するのか。あるいはシンボリルドルフ以来のクラシック級での宝塚記念制覇が見られるのか!』

 

 8枠13番1番人気。ビワハヤヒデ。

 2枠2番2番人気。ナリタブライアン。

 

 白と黒。髪色が対になれば、入った枠番も対になる。そんな両者の間を、テレビカメラが右往左往して動き回る。

 

『トゥインクルシリーズ前半戦の総決算、宝塚記念!』

 

 ゲートが開く。ナリタブライアンはやや遅れてスタートし、ビワハヤヒデは抜群のレースセンスを発揮して一直線に前へと。

 

『さあ、ゲートが開きました。1番人気ビワハヤヒデ、いいスタート。ナリタブライアンはやや遅れ気味ですが、これはわざと遅れさせた形になるか』

 

 ナリタブライアンは皐月賞と同じように、あるいはシンボリルドルフの宝塚記念と同じように最後尾についた。

 東条隼瀬が宝塚記念に勝つときは極端に前を走らせるか、極端に後ろを走らせるか。

 

 この場合当然というべきか、ナリタブライアンは後方についた。

 

 ちらりと、ビワハヤヒデはそんなナリタブライアンを振り向いて視認する。

 

(察知された。囲まれるのを嫌ったか、あるいはトレーナーの指示か)

 

 内枠は、基本的には有利である。なにせ、最短距離を進めるのだ。外枠に配置されれば無駄な距離を走らされることになり、実力が拮抗すれば内枠が勝つことになる。

 

 だからこそ、ビワハヤヒデは開幕から必殺の罠を用意していた。自分と同じく好位から抜け出すつもりなら――――去年のナリタブライアンの得意とした好位抜け出しの戦法をとるようなら、バ群の中に完全に封じ込めるつもりでいた。

 

 これは何も彼女の独創ではない。シンボリルドルフが――――永遠なる皇帝が、有馬記念にて優勝候補と目された『神の子』ミホシンザンに仕掛けた戦法の流用である。

 

 

 ――――序盤の流れが予測しやすい状況ならば、できる

 

 

 皇帝のように中盤も中盤、一番ごちゃごちゃとした乱戦の中で――――しかも有馬記念という一流のウマ娘の集まる中で他のウマ娘を糸で操作するように列を再編し、檻の中に追い込んで、外に出て蓋をするといった曲芸はできないが、序盤ならば。

 

 ビワハヤヒデには、その確信があった。そしてその檻を持続させるための術も身に着けていた。

 しかしそれは、発動されることなく終わった。

 

 だが別に、ビワハヤヒデは悔しいとも思わなかった。通用すればいいなというだけで、別に通用するとも思っていない。

 

(それにしてもお前が後ろから来るというのは思いの外怖いものだな、ブライアン)

 

 後方の妹に通じるはずもないそんな思いが眼に出そうになって、姉は瞼を一瞬閉じて気持ちを切り替えた。

 

 威圧感がバカにならない。こうなると早仕掛けをするウマ娘が出かねないし、早仕掛けされると全体が雪崩を打ったように仕掛ける羽目になる。

 となると、ゴール直前で脚が尽きる。尽きてしまえば、後方からナリタブライアンが悠々差し切ってくるだろう。

 

 そうなると、シンボリルドルフの宝塚記念(1回目)を再現してやることになる。

 ハイペースになると、逃げなどの前めのウマ娘が有利である。しかしあまりにも度を越したハイペースになると、一周回って後方待機の追込ウマ娘に勝機が巡ってくる。

 

 つまりビワハヤヒデはスローペースにならない程度に、このともすれば恐慌状態になりかねない程のレースを制御しなければならなかった。

 

 今回の宝塚記念には、ウイニングチケットもナリタタイシンもいない。メジロパーマーなどベテランの逃げもいない。

 シニアの古豪ナイスネイチャはいるが彼女はペースを作る側ではなく、作ったペースの上で走る側だった。

 

 シンボリルドルフ。

 サイレンススズカ。

 セイウンスカイ。

 メジロパーマー。

 トウカイテイオー。

 ミホノブルボン。

 

 ペースを規定してくれる実力者が、この場にはいない。この宝塚記念に出走しているウマ娘たちにとって、彼女たちはどうしようもなく高い壁だった。

 だがその高い壁が作り出すペースへの信頼をもとに、彼女たちは走っていたのである。

 

 故にそういった絶対的な存在が空白になった宝塚記念の序盤のレースは、ペースは速いながら展開としてはやや停滞した。

 

 故にこそ、ナリタブライアンに主導権は渡りかけていたのである。

 

 しかしそれくらいのことは、ビワハヤヒデとそのトレーナーは予測していた。

 あらかじめわかっていれば、対策は立てられる。

 

 ビワハヤヒデは、好位から外れない程度にやや外に出て殊更自分の平静さを見せつけた。

 ナリタブライアンを知ることにおいて、ビワハヤヒデ以上のウマ娘はいない。なによりもビワハヤヒデは、シニア戦線で確固たる地位を築きつつある実力者である。

 

 東条隼瀬は、敵のウマ娘の知名度を利用する。ミスターシービーがそうだった。

 だから利用される前に、釘を刺す。

 

 ビワハヤヒデのいつも通りの涼しい顔を見て、少しずつウマ娘たちは平静を取り戻した。ナイスネイチャとナリタブライアン以外の全員が、徐々にビワハヤヒデのペースを認識してそこに身を委ねていく。

 そして最後にしれーっとした目で主導権争いを観察していたナイスネイチャがビワハヤヒデのペースに乗ったことで、主導権はビワハヤヒデのものになった。これからのレースは彼女がどう動くかで展開が決まる。

 

 それは、彼女が他のウマ娘の意思決定に積極的に、そして有効に介入できるようになったことを意味していた。

 

(さすが姉貴だな)

 

(さすがビワハヤヒデだ)

 

 無愛想で、ビワハヤヒデを評価している。

 

 そういったところに共通項を見いだせる東条=ブライアンペアは、同時に『やるな』と思った。

 

 したたかで、焦らない。博打を恐れない。

 

 今の外への移動は、危うかった。好位抜け出しのウマ娘が外に移動すること。それは即ちペースアップのサインである。

 

 レースがはじまったばかりなだけに一斉にスパートをかけるところまでにはならないだろうが、むやみやたらに前に出ようとして好位置を取り合い、消耗する。その結果、消耗を恐れてペースを落とし、スローペースになる。

 スローペースになり、ブライアンを有利にする。そんな未来図もあった。

 

 かと言って何も動かなければ、どこかで暴発していただろう。

 だから、即座に時限爆弾の解除に動いた。判断が早く、機敏で、的確。厄介な相手である。

 

(姉貴は、うまく躱したな)

 

 ――――そしてアイツは、開幕から必殺の罠を贈呈されたお返しの品を送ったら、つっかえされたわけだ

 

 門前払いされてブスッとした顔をしてそうな、参謀。

 そんな状況に面白みを感じつつ、ナリタブライアンはわざとらしく大きく立てていた足音を絞った。

 

 威圧感、圧倒感。

 そういうものを正確に伝える為の小細工も、こうなると無駄な消耗になる。

 

(絞るぞ)

 

(任せる)

 

 絞るぞと首を左に振り、任せると頷く。

 

 よく見えるウマ娘の視野を活かした目配せで、ナリタブライアンは余計なことへと割いていた出力を一本化した。

 しかしビワハヤヒデもリスクを犯した。そして、何より対応のために外へと出た。彼女が占めていた好位は平静を取り戻した他のウマ娘に埋められ、戻ることはできない。つまり、継続的な消耗を強いることができる。

 

 一進一退。

 クラシック戦線では味わう事のできなかった緊迫した読み合いが、ナリタブライアンの頭の上で行われていた。

 

(流石に東条隼瀬だ)

 

 ビワハヤヒデは爆速で丁寧に梱包された返礼品――――時限爆弾――――をつっかえしたことに少し安堵し、自分と自分のトレーナーとの読み合いをしている男の読みの深さを称賛した。

 

(だが私のトレーナー君も、そう悪くはない)

 

 皐月、ダービー。

 いずれも2位に甘んじていた彼女の弱点――――守りに入ってしまって博打をしないことを見抜き、菊花賞で見事に修正してみせた。

 

 

 世間がどう言おうとも、少なくともビワハヤヒデだけはそう信じている。

 トレーナーと自分であれば、あの無敗の男に並べると。あの無敗の男を越せると。

 

 そして両者の駆け引きは、無音のうちにはじまっていた。

 影のように、ナリタブライアンが距離を詰めてきたのである。これはビワハヤヒデが自分の有利なペースを――――そしてブライアンに不利なペースを作ったが故の止むをえぬ措置だと、ビワハヤヒデはそう思った。

 

 ブライアンとバ群の距離は、開きつつある。それはビワハヤヒデが苦心しつつ理想的なペースにしているからで、彼女の心はなんとかペースをキープさせることに向いていた。

 

 そしてそのペースに、妹が合流しようとしている。

 

(こちらのペースだ)

 

 そう思った彼女の耳に、指を弾く音が聴こえた。歓声の中でも聴き逃しようのないように、彼女のトレーナーが仕込んだ音。

 

 2回。

 

(微加速! 何故だ、トレーナー君?)

 

 そう疑問を抱いたと同時に、彼女の身体はペースを速めた。

 

 疑問より遥かに、相棒への信頼が勝る。

 頭ではなく、ビワハヤヒデは心で動いた。そしてその反射に近い信頼が、彼女の身を救った。

 

 ナリタブライアンが、ほぼ無音で迫ってきたのである。そしてそのことに、迫られた後尾のウマ娘は直前になって気づいた。

 

 静かに獲物を見据えるような息遣いが、知性で満たされた姉のそれと色を同じくしながらも、色彩を異ならせる獣性を満たした黄金の瞳が。

 

 すぐ、側にある。

 そのことは彼女に、首に怪物の爪が添えられている程の衝撃を与えた。そして遮二無二加速しようとしたのである。

 

 しかし気付きから加速に至る少し前にビワハヤヒデがやや加速をした。そして彼女のペースに引っ張られるだけのナイスネイチャ以外のウマ娘は脚を速めた。

 

 そして速めてできた分の隙間と、前との継続的な速度差。

 即ち、時間が掛かったウマ娘に安心を与えた。

 

 ――――要は、詰められただけ

 

 パニックは、周りに伝播すると更に深みを増す。

 しかし周りが平静であれば、案外すぐに収まるものである。大多数のウマ娘の意識が外、即ちビワハヤヒデに向かっていたことが、掛かった彼女を救った。

 

 詰められただけ。

 本当にそれだけなだけに、落ち着くのも早かったのである。

 そしてビワハヤヒデがペースを上げたことの原因を探そうとした幾人かは振り向いてナリタブライアンの姿を見て、納得した。

 

 しかし、ナリタブライアンは損失を埋める為の行動でビワハヤヒデに若干の消耗を対価に要求し、そして風除けを手に入れた。

 この風除けは迫られて掛かった経験があるだけに、慎重に進路を取るだろう。となれば、不用意な動きをしないことになる。

 

 傘のように、ナリタブライアンに向かってくる風を受け止めてくれる。

 

(ありがとう)

 

(いえ。対応が遅れました。君は君の仕事に集中してください)

 

 

 ――――そろそろです

 

 

 過ぎ去っていく景色の中で、ビワハヤヒデとトレーナーは短い意思のやり取りを終えた。

 

 そう。これまでは所詮、小競り合いに過ぎないのだ。

 

 第3コーナー。

 ここが、全てを決める。

 

(予想通りだ。東条さんは、ナリタブライアンの威圧感を長所として活かしてきた。だからこそ、この罠が生きる。幾度か見せてくれた彼の素晴らしい長所の押しつけを、私たちは武器にしてみせましょう)

 

 ビワハヤヒデのトレーナーは、頷いた。

 ナリタブライアンが、外へ振れる。姿勢を低くする。

 

 それだけで、絵になる。

 

(ああ、彼女は歴史に残る)

 

 見ただけで、ビワハヤヒデのトレーナーはそれとわかった。

 

(だが、今回はハヤヒデが勝つ!)

 

 未完の大器。未完。底が知れない。伸びしろの果てが見えない。

 だからこそ、なればこそ。

 

 風除けのウマ娘から外へ出てきた瞬間、ビワハヤヒデが明らかに脚を速める。そしてそれが何を意味するか、他のウマ娘たちはわかっていた。

 序盤、ブライアンの威圧感という幻影に追いかけられた。落ち着くまでに時間を要すほどに。

 

 そんな中で、ペースメーカーたるビワハヤヒデが速度を上げればどうなるか。

 

 

 ――――来る!

 

 

 他のウマ娘たちは、察知した。ビワハヤヒデの動きで。そして何よりも、後方での爆発するような踏み込みで。

 

 外から来るか。

 内から来るか。

 

 それは、振り向く距離的余裕のない彼女らにはわからない。ナリタブライアンは、どちらでも勝ちに行けると知っているからこそ、わからない。

 

 故に、彼女たちはビワハヤヒデの思惑通りに動いた。

 怪物の進撃を防がないと、勝ち目がない。そのことを、これまで散々感覚的に圧倒されてきた彼女らは知っていた。

 

 鳥が翼を広げるように、外へ内へ。恐怖に動かされ、勢いよく開く。

 ナリタブライアンの向かうべき進路は、塞がれた。

 

 

 内も、外も。

 

 

「お前の勝ちパターンは2つ。外から襲うか、内から差すか。だが内から差すのは、正直難しい。皐月賞のときは、内のバ場の状態が良かった。だが今回はそうでもない」

 

 レース前、講義する教授のような穏やかさで、東条隼瀬はそう言った。

 

「つまり外か」

 

「いや、それはビワハヤヒデとそのトレーナーにはわかっているはずだ。外の効率のいい進路を塞いでくる。大回りになれば抜けないこともないだろうが、その場合はビワハヤヒデを差しきれない」

 

「じゃあ内か」

 

「うん。だが一応、内も塞いでくるだろう。第一、内にいくのは負けの目の多い博打だ。完璧に進路が塞がれかねない。つまり、我々は詰んでいる。残念だったな」

 

 そんなもったいぶる男を、ナリタブライアンは冷たい眼差しで見た。

 敗けを敗けとして受け入れられる男ならば、ミホノブルボンと三冠ウマ娘への道を歩きはじめすらしない。

 

 なのにこいつは、踏破した。ウイニングランで凱旋門の栄光も手にした。

 

 つまり。

 

「アンタは、死ぬほど諦めが良くないだろう。勿体ぶってないで、打開する策を出せ」

 

「揺さぶる。このレースは、負けだ。理不尽な二択を突きつけられている。だが、二択を突きつけるに必要な土台そのものを陥没させれば新たな道も見えてくるだろう」

 

 ナリタブライアンには、圧倒的な集中力がある。

 ナリタブライアンには、一度経験したことを寸分の狂いなく実行できる学習能力がある。

 ナリタブライアンには、爆発するような末脚がある。

 

「外も内もない。まっすぐ、正面から叩きのめせ」

 

 ――――道は、それまでの駆け引きでこじ開ける

 

 果たして、道は開いた。

 誤算に誤算を積み重ねて、恐怖に恐怖を掛け合わせて。

 

 ビワハヤヒデの想定よりもわずかに、他のウマ娘たちは外に広く振れた。

 ビワハヤヒデの想定よりもわずかに、他のウマ娘たちは内を突いた。

 ビワハヤヒデの想定よりもわずかに、ナリタブライアンが速かった。

 

 ナリタブライアンは、進路を変更することを必要としなかった。

 

 

 空いた道に、滑り込む。

 一瞬一拍の怯みが、戸惑いが、不慣れが。どれかがあれば、ナリタブライアンの前には道は無かった。

 

 しかし、どれも無かった。

 彼女は、皐月賞の時にそれをしていた。だからより完璧に、より圧倒的に、より迅速に、姉の背を捕捉した。

 

「姉貴」

 

 すぐ後ろから、声が聴こえた。

 小さな頃から、聴いてきた声。ずっと後ろにあって、ある時から聴こえなくなった声。

 

 その声が聴こえるということは、自分が用意した罠に食いついた筈の妹が罠ごと噛み砕いてきたことを意味している。

 

 餌を差し出した腕を、肩ごと喰いちぎられた。

 

「さあ、力勝負だ」

 

 しかしまだ、負けたわけではなかった。




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アフターストーリー:迫撃

 餌を差し出した手を、肩ごと喰いちぎられる。そうなることを、ビワハヤヒデのトレーナーは想定していなかったわけではなかった。

 

 東条隼瀬は、怪物である。

 ナリタブライアンは、怪物である。

 

 怪物とは、何か。それは恐らく、他者の追随を許さない何かを持った者たちのこと。

 東条隼瀬には、未来予知じみた展開予測能力が。ナリタブライアンには、暴力的な末脚がある。

 

 それに引き換え自分とビワハヤヒデは、才能こそあれども怪物ではない。

 だから周密に、そして精緻に策を施した。総合力の勝負に持ち込んだ。しかしその上をいかれた。

 

 いかれないはずの、上を。

 このいかれないはずの上をいかれたという感想は、実に正しいものだった。

 事実、策の根底となる地盤を崩させることでしか、上を行けなかったのだから。

 

 東条隼瀬の思考は、守りに入っているはずだった。しかし今回の思い切りの良さはまさしく全盛期のソレだった。

 

 逃げ。端から一気にかっ飛ばし、リードを守るという守り気味の脚質。

 そこでもあくまで、東条隼瀬は攻めた。サイレンススズカと組んだときは一流の差しウマ娘が先頭を走っているようなものだった。

 

 この戦術は、普通ではない。息切れする可能性の方が遥かに高い。

 

 だが、ミホノブルボンと組んだときはあくまでも危険な橋を渡らなかった。あくまでも継続的な速さで、リードを継続的に広げ続ける。継続的に守り続ける。

 サイレンススズカの怪我から、彼は変わった。石橋を叩いて壊して、鉄橋を掛けてから渡るようになった。

 

 だから本来、彼が予測していた東条隼瀬のとる戦術は日本トゥインクルシリーズの『神』、あるいは『最強の戦士』よろしく視界外に至る程の大外に回っての強襲。

 ナリタブライアンは神にはなれない。時代が違う。だが、最強の戦士に届きうる素質はある。

 

 そう見ていたからこそ、駆け引きの間も仕掛けるタイミングを計っていた。

 大外も大外。そこまで回って、全力を出す。ダービーにおけるスパートに入ってからゴールまでのタイムを計り、レース場の違いと成長の度合いから仮説のタイムを導き出し、そこに念を入れた余白を入れる。

 

 そうした地道な――――東条隼瀬に劣らない情報集積能力と情報剪定能力を駆使した作業を経て、ビワハヤヒデの能力を向上させる。

 現に彼の施策は正しかった。彼の導き出したタイムは正しかった。大外に回って差しに行けば、ビワハヤヒデが1バ身程残して逃げ切っていただろう。

 

 『領域』という不確定要素はあるが、ダービーのナリタブライアンはその『領域』を見せている。そしてなにも、『領域』とは魔法ではない。全力を効率的かつ高水準で長時間引き出す。その為の術なのだ。

 

 故に、彼の計算は正しかった。その計算となる根幹を崩されるまでは。

 

 ビワハヤヒデと彼の計算は、ナリタブライアンという難敵の手を借りてより完璧に作用した。

 恐怖によって大きく外に広がった他のウマ娘たちは、ナリタブライアンの大外強襲を防ぐ壁となる。

 

 この分では余裕を持って2バ身程度引き離すことができるかもしれない。

 そう思った刹那、ナリタブライアンが薄くなった中央をなめらかに、滑るように穿ち抜いた。

 

 ほんの、一瞬。ほんの一瞬だけ、その道は現れた。そうなる可能性があることは、ビワハヤヒデのトレーナーにはわかっていた。

 しかしあまりにも一瞬であることと、その一瞬に開かれる道が狭いものであろうこと、そしてそんな一歩間違えれば担当ウマ娘を事故の危険に晒すような危うい橋を、東条隼瀬が渡るのか。

 

 その考えが、彼に対策を取らせなかった。

 いや、取らせなかった、ではない。現実的に、そこまで対策を取るリソースがなかった。

 つまり、どうしようもなかったのだ。数年前の宝塚記念のミスターシービーよろしく、どうしようもない状況に追い込まれていた。

 

 

 果たして、道は拓かれた。

 

 

 ビワハヤヒデのトレーナーは、思う。

 おそらく東条隼瀬は自分より周密で精密な計算のもとに他のウマ娘を威圧し、圧倒し、そして横に長く広がらせた。

 

 そのことによって、ナリタブライアンの前にはタイミングさえ間違えなければ怪我をすることのないほど広い道ができた。

 

 ビワハヤヒデと彼にとって、ナリタブライアンが他のウマ娘を威圧することは最終的には利益になる行為だった。

 そう思っていた。だからこそ、気づかなかった。

 

(しかし、タイミングは……)

 

 間一髪、いや三髪。

 実にギリギリなタイミングを、ナリタブライアンは通してきた。

 だがそれを、予測できるものだろうか。いかに才能が豊かだとしても、こういうのは経験が物を言う。

 

 そこまで考えて、ビワハヤヒデのトレーナーは気づいた。

 

 

 皐月賞。

 

 

 あそこで、ナリタブライアンに経験させたのだ。同じ条件での、タイミングを間違えないための練習を、彼はGⅠでしたのだ。

 内を突く。それは内のバ場の調子がいいから。そして、内と外、2つの決め手を持っていることを示して翻弄したかったから。

 

 そう、思っていた。

 だが、そうではなかったのだ。

 

(ここまで読み切っていたということ、ですか……)

 

 智謀、神の如し。

 知性溢れる横顔でリンゴをシャクシャクしている男をかなり離れた観客席に見つけて、ビワハヤヒデのトレーナーの心を敗北感が満たした。

 

(しかし……!)

 

 このままでは、終わらない。

 自分が読み負けただけで、ビワハヤヒデが負けたわけではない。

 まだ、レースは続く。勝ち負けが決まるまでは、最善を尽くす。

 

 が。

 そう決意した彼の予測するほど、東条隼瀬は万能ではなかった。

 正直なところ、東条隼瀬はそこまで読んでいたわけではなかったのである。

 

 余裕そうに見えるのは事実であった。彼の内心は『あー勝った勝った。今回もなんとかなった』という程度で、なぜそんなにも優雅に構えているのかと言えば、彼はレース中は無職の観客おじさんになるからである。

 

 色々考えていた手をレース前までに集めた情報や対戦相手のレース動画などを見て剪定していき、伝える。

 ブルボンならボツ案まで、ルドルフならサブプランまで伝える。

 

 その後の彼は、何もやることがない。ぶっちゃけ、ただの観戦客と大差ない。

 

 第一、この宝塚記念自体が突発的なものなのである。4月にあるレース前に6月のレースの展開を予測しきれるわけもないし、決まってなかったものなど知りようがない。

 

 彼としては『育ちきるまでの時間稼ぎとして勝ち目を2つ用意しておこう』と言う思惑から負けるパターンを予測し、内と外を封じられたときの対処をいくつか考え、そしてその内のひとつを『皐月賞で無理をせずに試せるから』ということで経験を積ませていただけに過ぎない。

 

 彼は、決して未来予知はできない。予言の入った封筒をいくつも予め用意しているインチキ占い師のごとく、予想外のことが起こっても大丈夫なように予め色々と手を打っているだけである。

 そしてその色々と打った手は大抵が無駄になり、風化する。だがその色々の中に当たるものがある。

 

 こうなるかもしれない。

 そういうのを事前に10個考えついたら取り敢えず手を打ち、なんとかなるようにしておく。

 しかしその10個の中に、たいてい1個くらいは当たるものが出てくる。

 

 だから、当たっているように見えるのだ。

 そのことを一番よくわかっているのは、役に立たないデータを散々詰め込まれたミホノブルボンであろう。彼女は自分のトレーナーの予測精度が1割くらいであることを知っている。

 シンボリルドルフも、まあだいたい4割くらいかな、と思っている。

 

 直前も直前。即ち情報が集まり切るまで、東条隼瀬は延々と考え続ける。そしてなんとかレース前までに結論を出す。

 

 故に褒められるべきはむしろ、この針の穴に濡らしてもいない糸を通すような難行を直前に『やれ』と言われ、文句も言わずに『やる』と決めて軽く成功させたナリタブライアンの方であった。

 

 

 さて、場面はレースに戻る。

 

 

 優れた学習能力を持つが故に負の経験――――怪我を学習させることの恐ろしさを予測した男によりゆるいローテで回されていた黒鹿毛の彼女は、いつもの如く大地を潜航するが如き低い姿勢でスパートに入った。

 

 追うべき姉の背中は、彼女としてはずっと追ってきたつもりの姉の背中は、指呼の間にある。

 しかし、彼女にはまだ実行するべき指令が残っていた。ネコ科の猛獣のようでありながら猟犬じみた脚で、彼女は姉の背を圧していく。

 

 無論物理的に圧したわけではない。ピッタリと、減速しないように付いていく。

 第3コーナーで使っていいのは2段階あるスパートのうち、1個目だけ。

 

 

 なぜなら。

 

 

(私の領域を潰す気か……!)

 

 彼女の領域の構築トリガーは、最終コーナー付近で抜き去ることにある。

 だから少なくとも、前に1人はいなければならない。だがこのペースでは、最終コーナーに着くより早くビワハヤヒデは先頭に立ってしまう。

 

 この条件を、東条隼瀬は知らない。正直なところ彼が予測しているのは、『ルドルフ型の領域だな』ということくらいである。

 つまり、ミホノブルボンの領域のように他人に依存せずに発動する型ではなく、追い抜きにより領域を構築するタイプ。

 

 正直、ルドルフ型の領域は見分けるのが楽なのだ。

 誰かをどこかで抜いた瞬間に、明らかにパフォーマンスが上がる。故に彼が特別優れた観察眼を持っていたとか、そういうことはない。

 だがここからが、彼は非凡だった。あるいは、悪辣というべきか。

 

 ――――なら、ビワハヤヒデの手でビワハヤヒデの前のウマ娘を一掃してもらおう。ブライアンの外から突っ込まなきゃならない領域は、今回は使えない。なら、相手にも同じ土俵に立ってもらおう。そしてついでに、不確定要素を消し去っておこうか

 

 そんな思惑で、ナリタブライアンはスパートをかけつつ本気になるための脚を溜めつつ姉を追う。

 姉は全力で逃げる。そして彼女の全力は非凡で、前を走るバテ気味の逃げウマ娘より遥かに速い。

 

 ここにメジロパーマーのような有力な逃げウマ娘がいれば、そううまくはいかなかっただろう。だが有力な逃げウマ娘は不在で、故にこそビワハヤヒデは深刻な自縄自縛に陥ってしまった。

 

 逃げウマ娘を抜けば、領域を構築できない。領域がなくては、勝利の方程式は起動しない。

 逃げウマ娘を抜かなければ、ブライアンが悠々と抜かして末脚を爆発させてブッちぎるだろう。

 

 理不尽すぎる二択が、彼女の前に立ちはだかっていた。

 

 どうする。

 考えれば考えるほど抜け道のない、そんな疑問が彼女の頭脳を支配した、その瞬間。

 

「ハヤヒデ!」

 

 丁寧語の取れた彼女のトレーナーの声が、視線が、彼女に刺さった。

 

 ――――思い出してくれ!

 

 そう言わんばかりの、眼差し。

 頭が真っ白になった彼女は、笑った。

 

(ありがとう、トレーナー君)

 

 理不尽な二択を突きつけられたら、どうするか。

 それを事前に、彼女は告げられていた。

 

 影が、迫ってくる。黒ぐろとした、彼女が誇りとする強さを誇る妹が迫ってくる。

 それを敢えて、ビワハヤヒデは速度を緩めて迎え撃つ姿勢をとった。

 

(緩んだ……何故だ。姉貴が諦めるはずがない。となると、脚を溜める気か)

 

 その僅かな緩みを、ナリタブライアンは瞬時に見抜いた。しかしその真意までは、わからない。

 

 無論、見抜いた者もいる。

 

「思惑はわかる。だが思い通りにいくかな」

 

 二択の隙を突く一手に、春天のアレかと東条隼瀬は唸った。

 進んでも敗け。退いても敗け。ならば敗けない程度に退いて脚を溜め、敗けないほど遥かに進んでみせる。

 

 そういう戦術であることを察知して、そして気づいた。ビワハヤヒデとそのトレーナーの迅速な判断力が、一瞬鈍ったことに。

 

 考えすぎたのか、あるいは躊躇ったのか。

 

 どちらかと言えば 考えすぎたと言えるだろう。そしてこの事態は、東条隼瀬からすれば最悪を極められた形になる。

 新しい領域を発現するかもしれないというのは、予想に組み込んではいる。

 

 春天の時にナリタタイシンのスパートを敢えて受け止めてからスパートをかける。

 

 そういうリハーサルをしたのを見てから、何かを仕掛けたということは察知している。そしておそらくそれが、ビワハヤヒデ自身が自己の能力の壁を越えるためであろうということも。

 

 即ちそれは、新たなる領域。

 

 しかし、領域とは不確定要素が多い代物なだけに予測しきれているとは言えない。

 

「……まあ、なんとかなるだろ」

 

 領域を新たに構築されても3バ身で勝つのがクビ差でなんとかなる。そういう目算を、彼は立てていた。

 それはナリタブライアンならなんとかするだろうという信頼でもある。

 そのやや無責任ともとれる信頼をぶん投げられた当人はと言えば、目の前の減速した姉が溜めた脚を使って何をするのかを観察していた。

 

 抜き去ることも、できた。しかし抜き去ると負ける気がする。

 彼女の天才的なレースセンスが、そう告げていた。そして現に、ここで無邪気に抜き去っていればナリタブライアンは抜いた瞬間に抜き去り返されて負けていたことだろう。

 

 だがブライアンは、爪先でギリギリまで堪えた。

 

 そして、見た。姉の黄金の瞳――――自分と同色のそれが、静かに自分を見つめているのを。

 限界ギリギリまで、引きつける。引きつけて、引きつけて、引きつけて。そして。

 

 

 空気が、変わった。

 

 

(なんだ?)

 

 それはウマ娘にとっての秘奥と言うべき『領域』と呼ばれるものだった。ナリタブライアンは『領域』を構築したことはある。しかし開かれた『領域』をレース中に体感したことはない。彼女の同期で展開できるかもしれないサクラローレルというウマ娘は怪我をしまくり、クラシック路線はまさに一強。

 

 食物連鎖の頂点にいる動物が危険に鈍感になるように、その一強ぶりがナリタブライアンの危機感知センサーを曇らせた。

 1年後の彼女であれば、敏感に危険を察知できていたであろう。だがこのときの彼女は経験不足故の鈍感さを持っていた。

 

「ブライアン。私はお前を超えていく」

 

 冷静さを取り戻した瞳が言葉と共に、ブライアンを見据えた。

 ブライアンとしては、別に超えた覚えはない。むしろ自分が姉に挑んでいるつもりでいる。

 

 だがそんな違和感は、圧倒的な質量の前に押し潰された。

 空間いっぱいの、計算式。勝利へ続くためのあらゆる事象を計算しきったそれが、電脳空間というべき光の中に浮かぶ。

 

(このままでは、ブライアンが勝つ。おそらくは、4バ身差で)

 

 迫りくる影。それを一旦受け止めてわずかに脚を溜めたビワハヤヒデは、低くとった姿勢から漏れ出るそれを振り切るように光へ向けて駆け出した。

 

(そして、私は負ける。しかし)

 

 だがそれを覆す自信が、今の彼女にはあった。

 恐怖に駆られず立ち向かい、迫りくる妹に抜かれてしまう土壇場で踏みとどまり、呑み込む。

 

 そのことによって発現した領域は、影を恐れぬ怪物を倒し得る力を秘めていた。




55人の兄貴たち、感想ありがとナス!

フリードリヒ・シェーンブルク兄貴、七紬八千代兄貴、桜海老兄貴、くあ兄貴、ミカアシ兄貴、マハニャー兄貴、brabhambt46兄貴、評価ありがとナス!

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アフターストーリー:迫影

 領域によって開いた差は、すぐさま2段階目のスパートを解放したナリタブライアンによって埋められつつあった。

 だがその歩みは、牛歩のそれである。空を駆けるように加速した姉には届かないかもしれない。

 

 ナリタブライアンは、そう思っていた。

 

 領域、その2段階目。深度を増したからと言って性能が1段階目より増したというわけでもない。

 

(流石は姉貴。見事なものだ)

 

 細胞が沸き立つ。ギリギリのせめぎ合い、攻防。そういったものが好きで、ナリタブライアンは走っていた。

 だが、彼女の豊潤な才気が――――事実としてはこういう優しげな表現には到底似つかわしくない、暴力的な怪物じみた才能であったが――――覚醒してからは誰も彼女には太刀打ちできなかった。

 

 まともに相手ができたのは姉や皇帝などの、ごく一部。クラシック戦線でも、彼女の相手になる者はいなかった。

 

 孤独感すらある圧倒劇に変わりはなく、これまでと違ったのは、相手が諦めないことだけ。

 これまでであれば心が折れて諦めてしまうウマ娘たちが、最後まで無理などと言わずに迫ってくる。

 それは喜ぶべきことではあった。だがやはり、自分を脅かすような相手はいなかった。

 

 そのことが、退屈だった。世代の頂点を争うはずの日本ダービーですら、彼女にとっては楽勝も楽勝だったのだから。

 

(だが、これは違う)

 

 楽しい。

 幼い頃、才能が鎌首を擡げていなかったあのときのような無邪気さで、ナリタブライアンは笑った。

 

 勝ちたい。

 敗けたくない。

 そんなことは、頭にすらない。ただこの時が終わってほしくない。

 

 自分に常に付きまとっていた影を恐れて、泣いたことがあった。

 水たまりに映った自分を見て泣いたこともあった。

 

 あの頃の自分を思い出して、笑って。

 思えばあの頃と、何ら変わっていない。そのことに思い至って、ナリタブライアンはまた笑った。

 

(なんてことのない)

 

 姉を追う。才能と努力でもって恐怖を打ち砕いても、その本質は変わらない。やっていることは変わらない。

 未熟だった頃の自分を克服し、打ち砕く。そのための領域を持っている。

 

 影。闇。黒。

 水たまりとか、鏡とか。

 

 そういったものが、苦手だった。自分と同じだけの速さで付いてくるそれが、ナリタブライアンは苦手だった。物心ついて初めて恐れたのが、自分の黒ぐろとした影だった。

 だがそれに気づいたとき、姉は側にいなかった。泣いた自分に気づいて慰めるためにやってきてくれるのが、姉だった。

 

 彼女にとっての影とは、恐怖の象徴だった。恐怖からは、影からは、逃げ切れない。

 

 鏡に映る自分は、ひとりだった。

 影を見る自分は、ひとりだった。

 水たまりに浮かぶ自分は、ひとりだった。

 

 世界に自分ひとりだと認識させるもの悉くを、ナリタブライアンは嫌っていた。

 

 逃げない。迎え撃ち、打ち砕く。

 影を、恐怖を、それに付随する敗北を。

 

 そのための領域を持っていた。しかし、それは違う。

 

 恐怖は、打ち砕くべきものではない。

 孤独とは、遠ざけるものではない。

 

(アンタの言う恐怖を呑み込むとは、こういうことか)

 

 受け入れる。自分の弱さと、ありのままを。

 姉はそうした。今そうして、迫る自分との一騎打ちから転換し、トレーナーを含めた複合的な個人となった。

 

 だから、強い。これほどまでに。

 

 前を駆ける姉を見て、ナリタブライアンは空を見た。

 

 影が、空を覆っていく。

 大地は青々としたターフが枯れ果て、彼女の領域の根幹に存在する荒涼たる枯野が顔を出した。

 

 その荒野を渦巻くように染め上げるが如く、影が中央にいる彼女に迫る。

 

 それは、大外から回る時にのみ見ていた景色だった。影を引きちぎるほどの遠心力を自分のものにする。孤独を振り回し、弾き飛ばし、打ち砕く。そのための領域でしか見られないはずのものだった。

 

 影が、迫る。足元までせり上がってくる。

 そしてそこで、止まった。いつものように打ち砕かないのかと、問うように。

 

「いや、しないさ」

 

 ざわりと、影がうごめく。

 今まで恐怖としか感じられなかったそれが戸惑うようにさざめくのを、ブライアンは少し微笑ましく見ていた。

 

 影の動きからはいつものようにしてくれないのかと戸惑う、稚気すら見て取れたのである。

 

「来い」

 

 散れ、と。

 いつも言われてきて、そして命令通りに散ってきた影が勇躍し、ナリタブライアンの四肢に纏わりつく。

 

「アイツの言う通りにしてみよう」

 

 恐怖を呑み込んだ、姉のようにしてみよう。

 恐怖を乗り越えた、姉のようにしてみよう。

 

 恐怖を纏い、黄金の瞳に黒い焔を灯して。

 迫りくる影を供として、ナリタブライアンは暗闇を抜け出した。

 

 姉との距離が、縮む。ぐんぐんと、縮んでいく。

 

 影を纏いし怪物。恐怖を我が物とした怪物は、姉を直線一気に差し切らんと加速した。

 

 迎撃するのは、ビワハヤヒデ。妹に劣らぬ強さを持つ英才。

 しかし彼女の立てた勝利への方程式は影に浸食され、蝶の鱗粉のように影に呑まれて消えていく。

 

 迫る。

 迫る。

 迫る。

 

 黒い風がビワハヤヒデの内を突いて、坂へ。

 

「くそ……」

 

 半分笑うように。

 幼い頃、覚醒めた妹に彼女が初めて抜かれたときのように。

 負けるのが嫌だとか、勝ちたかったのに、とか。そういうのではなく、圧倒的な才能を見て感嘆したようになってしまったあのときのように。

 

「ブライアン。お前は、すごいよ」

 

 常識をも噛み砕いて坂を一気に登っていく妹の背を追う。

 追いつけない。機能しなくなった方程式が、かろうじてそれだけを告げていた。

 

 だがそれは、目の前の妹を追わない理由にはなり得ない。

 最後まで、最後の最後まで。絶対に、諦めない。自分を信じてくれたトレーナーのため、自分の努力を知っている自分のために。

 

 3バ身の差をつけて、ナリタブライアンはただひとりゴール板を駆け抜けた。

 そのあとにビワハヤヒデが続き、それからしばらくしてナイスネイチャがしれっと3位入着。

 

 観客に手を振るでもなく両腕を見つめるナリタブライアンは、しばらくして無言で空を見て右腕を突き上げた。

 地鳴りのような歓声の中、妹の影を姉が踏む。

 

「ブライアン」

 

「姉貴……!」

 

 上気した頬、楽しくてたまらなかったと言わんばかりの笑顔。

 その無邪気さに昔を思い出して、ビワハヤヒデはくすりと笑った。

 

 レース中の彼女とは、あまりにも別人じみていたから。

 

「すごい走りだった。私はお前のことを知ったつもりでいたが……どうやらそうではなかったらしい」

 

「姉貴もすごかった。私は……またアンタと走りたい。何度でも、何度でも」

 

 飽くなき執念、強さへの、そしてレースへの渇望。その対象に、その眼の先に自分がいる。

 そのことへの喜びを抱きつつ、ビワハヤヒデは焦燥感の消えた心で頷いた。

 

「有馬記念だ、ブライアン。そこでまた走ろう」

 

「ああ……!」

 

 結論から言えば、この約束は果たされなかった。ビワハヤヒデもナリタブライアンも、この年の有馬記念には出なかったからである。

 だがこのときに、それを知る者はいない。

 

(そして来季からは――――)

 

 シニア級に、ブライアンは来る。おそらくは、6人目の三冠ウマ娘として。

 そこで何度でも、何度でも競い合おう。

 

 その言葉を、ビワハヤヒデは敢えて口に出さなかった。

 口にした全ての願いが叶うことはない。そのことを、ビワハヤヒデは知っていた。故にこそ、彼女は鬼に笑われることを防ぐために口にはしなかったのである。

 

 その判断がどういう結果を生むのか。それもまた、今は誰もが知る由もない。

 こうして、姉妹はそれぞれの控室へと帰っていく。レースが終わったからといって、何もかもが終わるわけではない。

 

 レースを見て、応援してくれたファンに対する感謝の意を示す為の行事――――ウイニングライブが待っている。

 

「おい、勝ったぞ」

 

 バターンと扉を開けて早々、開口一番にナリタブライアンはそう言った。

 若干口角は上がり、言わなくともわかるようなことを言う。その事象自体が、ナリタブライアンが心からこのレースを楽しめた。そのことを示していたと言えるだろう。

 

 しかしそれでもなお、念を押すところは念を押す。彼女のトレーナーは、そういう性質をしていた。

 

「そうか。で、楽しかったか?」

 

「ああ。最高だった」

 

「ならよかった。きっとその楽しさは、何よりも価値あるものだろうからな」

 

 流れるような動作で座り、靴と靴下をポーンと飛ばすブライアンの脚を触診し、熱を持った部分にアイシングを施す。

 ブランコに乗った子供のように放り出した靴と靴下を回収して丁寧に揃え直し、東条隼瀬はいそいそとタオルとドリンクを用意し終えた。

 

 無職からトレーナーへとランクアップした男は、流石に仕事が早い。

 世話を焼かれるのを割とすんなり受け入れる末っ子ムーブを発揮して脚をゆらゆら揺らしているナリタブライアンは、チューチューとスポーツドリンクを吸った。

 

「蹄鉄の前側の磨り減りが著しいな」

 

「見ていたらわかるだろう」

 

 本気で走ると蹄鉄が駄目になる。それは別に珍しいことではない。少なくとも、ナリタブライアンにとっては。

 しかしその駄目になり方が異常だった。前側が異様に磨り減り、即ちこれは自分の脚の持つ出力を抑えつけていた期間があったことを意味している。

 

 いつもの彼女であれば全てが均等に磨り減っていただろう。

 これは理想的な力の分散であり、脚へかかる負担が分担されていることにも繋がる。

 しかし今回は、今まで天性のセンスで脚への負担を減らしてきた彼女らしからぬ磨り減り方だった。

 

 ナリタブライアンの言う『見ていたらわかるだろう』というのは、それがいつ起こったことであるか、なぜ起こったことであるかわかるだろう、ということである。

 

「ああ。説明はしないでいい。対策は考えてある」

 

「そうだろうな」

 

 そんなやり取りの後に、お互いにとって心地良い沈黙が室内を満たす。

 その沈黙を破ったのは、ストローと氷が奏でる鈍い異音だった。

 

「おい」

 

「だめ」

 

「もう一杯」

 

「だめ」

 

「もう一杯くれ」

 

「だめ」

 

「半分」

 

「だめ」

 

 取り付く島もないあんまりなやり取りを終えてそっぽを向くブライアンと、ダンス用の靴を現在の脚の消耗具合に合わせて調節する男。

 

 再びそんな沈黙を破壊したのは、1度目に破壊した彼女の姉と、そのトレーナーだった。

 

「失礼します」

 

 やや緊張の面持ちを見せるビワハヤヒデのトレーナーを視線で一瞥し、東条隼瀬は口を開いた。

 

「なにか?」

 

「無愛想だな、アンタは」

 

「お前にだけは言われたくない」

 

 飲み物の怨みとばかりに突撃してきた担当ウマ娘に綺麗なカウンターを食らわせつつも、思うところはあったのだろう。

 

 丁寧な所作で椅子の方を指し示すが、ビワハヤヒデのトレーナーは黙って頭を振ってそれを固辞した。

 

「では、手短にということかな」

 

「はい。つまり、今回のレースについてです」

 

 三度。少しの沈黙が、場を包んだ。

 なんとなく保護者のような形でついてきたであろうビワハヤヒデはブライアンと同色の瞳を忙しなく移動させている。

 一方でブライアンはスポーツドリンクのサーバーに手を伸ばしかけ、ピシャリとやられていた。

 

 甘いわ。そんな横顔をチラリ見て視線をそらし、ブライアンは心の中で毒づいた。

 

(クソ、相変わらずかわいげのない……!)

 

 そんな暗闘の果てに、ようやくビワハヤヒデのトレーナーは口を開く。

 

「今回のレースは、私が貴方に劣っていただけです。ビワハヤヒデとナリタブライアンは、互角でした」

 

「トレーナー君、それは……!」

 

 ビワハヤヒデの言葉が続く前に、彼の真意を察した東条隼瀬はなるほど、と頷いた。

 

「……知っている」

 

 それは、俺がお前より上だということを、知っている。そういう意味だった。

 相手のミスを突くような、そして自分の実力を誇示するような。

 

 そんな返答に『何っ』という顔をしたビワハヤヒデと反対に、その短い言葉に含まれた真意をビワハヤヒデのトレーナーはこの上なく正確に読み取った。

 そしてまずナリタブライアンの方を見て深々と頭を下げ、再び東条隼瀬の方に向かって頭を下げる。

 

 去っていく姉と、そのトレーナー。

 どういうことかと、ナリタブライアンは首を傾げた。

 

「あれは」

 

 ビワハヤヒデの足音が完全に消えた、そのあと。

 説明する相手の姉に聴かれないように気を使って黙っていた男は、ようやく口を開いた。

 

「自分のせいにしたかったんだ。自分の信じたウマ娘が実力で負けたことを、認めたくなかったのさ。そうとわかってはいても、自分のせいにしたかった。つまり、若さだな」

 

「ああ……だから私にも頭を下げたのか」

 

「そうだ」

 

 間接的に、ナリタブライアンというウマ娘の実力を低く見てしまうことになる。

 本人からしてみれば『私一人の勝利ではない』と思っていたから別に不満にも思っていなかったから見当外れというべきだが、気を使われて悪い思いはしない。

 

「それにしてもアンタは、なぜそれを言ってやらなかったんだ。たぶんいずれ気づくだろうが、姉貴はアンタのことを悪く思っただろう」

 

「別に嫌われても構わん。慣れている」

 

 そうかな、と。

 ナリタブライアンは思った。

 

 嫌われるのは慣れているから、別にいい。それだけではないだろう。

 たぶん彼は姉貴のトレーナーのことを知っていて、目をかけていた。あるいは今回で、目をかけた。だから、生きやすいようにしてやったのではないか。

 

 あるいは単純に、甘いだけか。

 

「甘いな、アンタも」

 

「経験があるからな。優しくもなる。ああ言うときは責められたいものなんだよ」

 

「そうか」

 

「あと、ビワハヤヒデには言うな」

 

 姉貴には、後でそれとなく言っておこう。

 そう思考したのを読んで釘を刺すような一言を受けて、脚のブラブラが止まる。

 

「何故だ」

 

「知られたくないだろうからな」

 

「アンタ、案外繊細な気遣いができるんだな」

 

「そうでもないさ。第一、ビワハヤヒデならいずれ気づく。指摘されるよりも円滑にな。そのあたりが読めているから、放置するんだ」

 

 それはたぶん、負け惜しみに近いものだった。負け惜しみというより、強がりか。別に負けたわけでもないのだから。

 

(ただ、愉快なもんじゃないな。背中を預けているやつが、誤解に基づく評価をされるのは)

 

「お前にも悪いな」

 

 アンタ、心が読めるのか?

 そう言いかけて、ブライアンは黙った。黙らされた。続けられた言葉が、あんまりにもあんまりなものだったからである。

 

「大好きな姉が誤解に基づいて人を悪く思うというのは、嫌だろう」

 

「……まあ、それもそうだが」

 

「なんだ、他にあるのか?」

 

 あるけど、ない。その辺を察せ。

 そんな気も知らず、東条隼瀬は首を傾げた。




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cless兄貴、CURURU兄貴、浜田ライダー兄貴、yuuki100兄貴、ゴゴゴ兄貴、ひつき兄貴、評価ありがとナス!


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アフターストーリー:昼餉

頼ってほしいブライアンVS頼られるのが当たり前すぎて気づかないトレーナー


 今日は特別に奢らせてやる。

 そんな空気をかもし出すナリタブライアンを引き連れて、東条隼瀬は阪神レース場から程近い蕎麦屋に入った。

 理由は無論、近かったから。あとは、馴染みの店だからである。

 

「で、何食いたい? 月見そばか、力うどんか」

 

「カツカレー」

 

「鴨そばもあるぞ」

 

「カツカレー」

 

 まあ、勝ったしいいか。

 そんな感じでこの黒鹿毛の怪物のオーダーに応えながら、東条隼瀬は店員を呼び止めてオーダーを通した。

 

 ちなみにカツカレー(サイズ:ウマ)は2890円である。普通に安い。

 

「3杯くれ。3杯食う」

 

「……まあ、いいか」

 

 今夜のご飯が野菜まみれになることが確定したことも知らずにウキウキで運ばれてくるのを待つナリタブライアンは、やっと(腹減りブライアン基準)やってきたカツカレーに飛びついて食べはじめた。

 

「別に文句を言うわけではないが、よくもまあそんなに食えるものだな」

 

「アンタこそ、そんなに食わずよく動けるな」

 

 本日の朝ごはん、リンゴ。

 昼ごはん、蕎麦一杯。

 夜ごはん、多分なし。

 

 そんな驚異的な低燃費ぶりを示す男を見たウマ娘が持つ感想は、それぞれである。

 

 シンボリルドルフは、慣れているからスルーする。

 ミホノブルボンは、もっと食べさせようと思う。

 ナリタブライアンは、別に好きな量を食べればいいと思う。

 

 ということで、カツカレーの持つ質量からすれば圧倒的にささやかな量の蕎麦を見ても、ナリタブライアンは特に何も思うことはなかった。

 

 まあ、そういうのもあり。そう思うだけである。

 

「まあ、俺の専門は頭脳労働だ。走ったりなんだりすることはないからな」

 

 かつおの利いた出汁を飲み干しながら、東条隼瀬はパンと手を合わせた。

 

「食うのが速いな。少食な割に」

 

「ま、絶対値が少ないだけだからな」

 

 そうかとでも言うように頷いたナリタブライアンを見ながら、東条隼瀬は目を伏せた。

 

(それにしても、計算が狂った)

 

 春天のレース映像を見た、そのとき。

 ナリタタイシンの豪脚をビワハヤヒデが受け止め切ってからスパートをかけるという余裕綽々な映像を見たその時から、ビワハヤヒデが何をしたいかは見抜けた。

 単純に、すごい。そう思う自分はどこかにいたが、トレーナーとしての自分があのとき素直に褒めさせなかった。

 

 まるで、デモンストレーションのような。

 ビワハヤヒデの強さを示す映像を見た瞬間そう思い、そこにブライアンの姿が重なった。

 

 ビワハヤヒデは、あそこで経験を積んだのだ。脚を緩め、ほんの少しだけでも脚を溜める。そして溜めた脚を、爆発力に転換するすべを。

 

(領域と言っても、才能を限界まで引き出すだけだ)

 

 だからそこまで計算して、プランを立てた。事実、タイムを計算してみたがナリタブライアンであれば領域抜きにクビ差で差し切れていただろう。

 

 だが、ブライアンは覚醒めた。

 まったく、バカげた才能だった。ルドルフに領域へと連れ込まれてからその片鱗を察知することができるようになったものの、あれほどまでにくっきり見える、というのは。

 

 残り100メートルで、3バ身引き離した。ビワハヤヒデを、だ。

 

(クビ差で勝ってほしかった)

 

 そうすれば彼女の優れた学習能力は、全力を出すことと調節して勝つことを覚えてくれるはずだった。

 無論、いつもいつもクビ差で勝たせるわけではない。そんなことをすれば、個性を殺すことになる。

 

 ただ、『やれるけどやらない』のと『やれないからやらない』のでは大きな差がある。

 かつて聴いたことのない大歓声が、阪神レース場を包んでいた。それは観客が――――無知で、だからこそスターを嗅ぎつける嗅覚を持つ彼らがナリタブライアンの圧倒的な走りに魅せられたことを意味している。

 

 だがその圧倒感を連続して叩き出すのは、難しいと言わざるを得ない。正確に言えば、できるがやれば脚がもたない。

 

 そんな時に、ハナ差勝ちは役に立つはずだった。

 

(それに、ブライアンのあの領域は予測できていた。ビワハヤヒデという光輝がブライアンの影を濃くすることは予測していた。だがあえてそこを計算に入れなかった。入れていればもっとやりようがあっただろうに)

 

 少なくとも、蹄鉄に見られる無茶をせずに済んだ。

 前側が、異様にすり減る。それはつまり、ビワハヤヒデの領域に対する本能的な警戒心を察知し、彼女は爪先で加速を踏ん張り踏ん張り踏ん張りぬいたということである。

 

 脚に残って離れないタイプの疲労ではないが、それでも無用な負荷であったことは確かなのだ。

 

(爆発力の恐ろしさ、偉大さ。敵にしたことしかなかっただけにそういう面ばかり見てきたが、なるほど。これは諸刃の剣だ)

 

 シンボリルドルフは、飛び抜けた爆発力を冠絶した理性で制御できていた。

 サイレンススズカは、常に爆発しているようなものだからある意味安定していた。

 ミホノブルボンには、爆発力が無かった。故に抜群の安定感と自在性があった。

 

 だがナリタブライアンは優れた知性に由来する学習能力によって、爆発力を若干制御できる。だからこそ前提とした策も立てやすいというものだが、爆発するときはとんでもない範囲を巻き込んで木っ端微塵にしてくる。

 

(真なる意味で、諸刃の剣。火山みたいな才能だ)

 

 しかもその噴火は、軽々空を穿つ。

 定期的に爆発する、ナリタ連山。そんな感じ。

 

「不満か」

 

「ああ?」

 

 虚を突かれて素っ頓狂な声を出した瞬間、頭が結論を出す。

 ここは取り敢えず、正確に自分の意思を伝えるべきだ、と。

 

「いや、不満なのは自分に対してだ。もう少しうまくやれた。今となってはそう思う。そんなところだ」

 

「アンタにはアンタの目算があったんだろう。私がぶっ壊したが」

 

「まあ、それに関してはいいさ。爆発力の予測はつかない。うまくすれば追い縋っている相手に勝てる、ということくらいしかな」

 

 そう言って、東条隼瀬はパチンと指を弾きかけて止まった。

 

「そうか、そうだな。そうすればいい」

 

(こいつ、また悪辣なことを考えていやがる)

 

 何やら思考に耽り外的な察知能力を喪失した男の隙を突いて4杯目を注文しつつ、ナリタブライアンはこっそり皿を下げさせた。

 私は最後の一杯を食べているだけですよー、と言う涙ぐましい偽装工作をしようとしたのである。 

 

 割と金銭に無頓着なところのある男がいつもの通りクレジットカードで全てを解決したのを見て、ナリタブライアンはちょっと心配になった。

 

「おい。明細を見た方がいいんじゃないか」

 

「どうせ払うのは学園だ」

 

「なるほど。気前がいいわけだ」

 

「それに、明日見てみればわかる。どれくらい食べたのかもな」

 

 ギクリとした怪物を横目にすら見ることなく、東条隼瀬は釘を刺した。

 そして刺された側はと言えば、実にふてぶてしい態度を崩さない。

 

 ブライアンは、こういう駄目なことと甘えのラインを見極めて引くことが天才的にうまかった。

 

 するりと車の後部座席に乗り込んで、シートベルトをしておとなしく座る。

 座った上で、彼女は前に座る男に問いを投げかけた。

 

「これで私の前半戦のレースは終わりか」

 

「ああ」

 

「夏はどうする?」

 

「お前、後ろめたいことがあると多弁になるな」

 

 いつもであれば、スケジュール管理について口出しはしないし興味も持たない。

 そんなブライアンがやけにこれからを気にするということは、他に目的があるということである。

 

 そしてその予測は、正鵠を射ていた。

 

「まあいい、問われたからには答えよう。夏は休む。休んで……京都新聞杯にでも出るかな」

 

「ブルボンと同じローテか」

 

「ん、いや。菊花賞には出るが、ジャパンカップから有馬記念とはいかない」

 

「アオハルの関連か」

 

 ジャパンカップを休んで、有馬記念に直行。そこから連闘でアオハル。

 そういうローテかと納得したところで、東条隼瀬は彼女の想定を否定した。

 

「それは関係ない。どのみち有馬記念に出たらアオハルには出さないからな。俺が問題にしているのは、クラシック三冠を走ったあとジャパンカップから有馬記念に行くのはややキツイのではないか、ということだ」

 

「アンタはアイツの中1週を成功させただろう。期間が空いたブルボンの時も成功させている。なぜ今年は無理なんだ?」

 

「ウイニングチケットだ」

 

 姉貴の友達か。

 そう思ったが、ナリタブライアンはここで昨年のダービーウマ娘の名が出てくる理由がわからなかった。

 

「わからないと見えるな」

 

 車のミラー越しに、鋼鉄の瞳が黄金の瞳と視線を合わせる。

 明哲なその瞳は彼がいつも通り、憎たらしいほどの冷静さを持っていることを示していた。

 

「ウイニングチケットは去年ブルボンと似たようなローテーションで走った。そしてその結果、今現在まともに走れる状態ではない」

 

 シンボリルドルフには、クラシック三冠からジャパンカップ→有馬記念と行くローテーションが必要だった。

 ミホノブルボンは、過酷なローテーションを平気でこなせるほど頑健だった。

 

 だがナリタブライアンにとって、このローテーションは必要ではないしそれほど頑健であるわけでもない。

 耐久性は高いが、それを上回る出力があるだけに脆さがあるのだ。

 

「肩の脱臼だったか」

 

「ああ。あと、脚に疲労が残っている」

 

 その言い方の普通さに、ナリタブライアンは少し意外に思った。

 ウイニングチケットのローテーションは、シンボリルドルフやミホノブルボンのそれと酷似している。そして過酷の中から成功例を作り上げたのがこの男である。

 

 ブライアンからすれば、彼が良くない先例を作った、などと思っているのかと思っていたのだ。

 

「自罰的なアンタなら余計な責任を感じているかもしれないと思ったが、そうでもないんだな」

 

「俺は俺の決断には責任を持つ。だが他のことに関してはそうでもない。そこまで責任を感じては、却って迷惑にもなるだろう」

 

「ああ、それがいい」

 

 狭く、深い。

 彼の持つのは、そんな責任感である。少なくとも、トレーナーとしての個人レベルにおいては。

 

 これがルドルフと組めばまた違ってくるからややこしい人格をしているが、こういう割り切りの良さはある種わかりやすくていい。

 

「で、どこに出る」

 

「有馬記念だ。姉貴が出てくるからな」

 

「わかった。そうしよう」

 

 こいつ、アオハルで私がいなくともスピカに勝てるのか。

 あんまりにもあっさりとした返答に『担当ウマ娘の希望を第一に考えるやつだ』ということを知っていても、ナリタブライアンは少し不満を覚えずにはいられなかった。

 

 真の意味で彼が頼るのは、シンボリルドルフくらいなものである。そのことを知っていても、釈然としない。

 これは強さへの、自信がある。だからこその不満だと、ナリタブライアンは思っている。

 

「アオハルのことを心配しているのか」

 

「……ああ」

 

「心配するな。お前が居なくても普通に勝てるだろうからな」

 

「ああ、そうか」

 

 なんか怒ってるな、こいつ。

 自分に向けられる悪意には聡く無頓着で、自分に向けられる好意には鈍い男は、なんとなく黙り込んだ。




Q:スズカは?
A:食べてるときも走ること考えてるから気づかない

44人の兄貴たち、感想ありがとナス!
ちくわぱん兄貴、Gr0ssu1ar兄貴、評価ありがとナス!


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アフターストーリー:不穏

 ビワハヤヒデが極めてわかりにくい男の真意に気づいたのは、自分のトレーナーが寝食を忘れるような勢いで研究と練習メニューの構築に打ち込みはじめてからしばらくしてのことだった。

 

 となると、動くのは早い。

 

「申し訳ありませんでした。私は貴方と、貴方の意図を誤解していたようです」

 

 お前の能力が低いから、負けた。そのことを知っている。

 自分の大事なトレーナーをそう言われたと、ビワハヤヒデは思っていた。

 

 対局相手、東条隼瀬。彼の行った指摘、あるいは認識。

 それ自体は正しいかもしれない。しかしそれをあからさまに認めるのは、勝者としての傲慢さではないかと。

 

 唐突ににゅっと出てきて謝ってきた――――しかも衆目の前で――――ビワハヤヒデの方へと、視線が揺らぐ。

 その隙を逃さず、野菜フルコースと言うべきナリタブライアンの皿からバレないラインとバレるラインを反復横飛びしかねない程の量が隣の男の皿に移籍した。

 

「別に不快に思ってはいない。誤解に関しても、それを招くような言動をしたのはこちらだ」

 

「そうだぞ姉貴。クソわかりにくいこいつが悪い」

 

 ここ最近朝昼と野菜地獄に落とされてブーたれていたナリタブライアンからの鋭い援護射撃が飛ぶ。

 だがこの援護射撃がやや本心から屈折した上で放たれたものであることを、百戦錬磨の姉であるビワハヤヒデは悟っていた。

 

 そもそも、これは偶発的なものではない。謝りたいから適当な時間に連れ出してくれと頼んだのはビワハヤヒデなのである。

 ブライアンが本心から『自分のトレーナーが悪い』と思っているならば、この要請を拒否していたことだろう。もちろん、悪いのはあいつだから、という理由をつけた上で。

 

 それを『わかった』と――――やや尻尾を揺らしながら二つ返事で承諾した。大抵の面倒ごとには『めんどうだな……』と言う反応を隠しもしないこの妹が、である。

 

(つまりブライアンは本心では、発言の通り自分のトレーナーが100%悪いとは思っていない。少なくとも、和解が必要な程度には責任が分散されていると考えている)

 

 姉の姉たる所以、察しの良さと細やかな心理の読み取り。

 それを発揮して、ビワハヤヒデは妹の本心ならざる発言には否定を返した。

 

「いや、感情に流されることなく冷静に見ていれば、状況と会話の流れを鑑みて真意を推察できたはずだ。やはり、私が悪い」

 

「まあ、そういうことにしておこう。人の目もあることだし」

 

 取り敢えず、座れ。

 そんなふうに指し示された席に着席し、ビワハヤヒデはまっすぐ東条隼瀬の方を見た。

 

「で、昼飯は。食べたのか?」

 

「いや、まだだが……」

 

「じゃあ、食べたらどうだ。話も終わったことだし、食べることもまたウマ娘にとって必要なことだ。なあブライアン」

 

 そうだな。

 若干目を逸らしながらも、野菜を移籍させた下手人の声は揺らぐことはない。

 

 そんな妹をちらりと見て、ビワハヤヒデは今日指し示された献立通りのメニューを買って席に帰還した。

 

「ところで、ブライアン。俺の皿、野菜が増えたと思わないか?」

 

「錯覚だろ」

 

 おそろしく白々しい吐き捨てを聴いて、ビワハヤヒデはくすりと笑った。

 ナリタブライアンの行った凄まじいコストカットを、彼女は確かに見届けていたのである。指摘する場面ではなかったからしなかったが。

 

「なるほど、錯覚か。そう言えばお前の皿、野菜が減っているようだが」

 

「ああ。頑張ったからな」

 

 ここまでブライアンは、見事なまでに嘘はついていない。しらばっくれてはいるが、見事な韜晦。

 成長したな……と、妹の正負どちらかわからない進化を喜ぶ姉バカなビワハヤヒデは、このあとすぐに自分が巻き込まれることを知らない。

 

「おお、すごい。咀嚼無しで食べられる程に成長したわけだ」

 

「…………アンタも食べる量を増やしたほうがいいと思ってな。身銭を切って与えてやったんだよ」

 

「それはそれは、有り難い。担当ウマ娘に食事の心配をされるというのは、トレーナー失格だな。反省すべきところがある。なあ、ビワハヤヒデ」

 

「……え?」

 

 この質問は、どうなんだ。

 

 失格だと言うと、謝ってきたくせにどの口で言うのかということになる。

 失格だと言わなければ、おそらく彼の意図に反することになる。

 

 深刻な自縄自縛に陥ったビワハヤヒデは、取り敢えず誤魔化すことにした。

 

「失格かどうかはともかくとして、食べる量が多いに越したことはない。そう思います」

 

 失格という点に答えることを回避しつつ、意図に沿う。

 さすがの頭のキレを見せた回答に満足したように、東条隼瀬は頷いた。

 

「そうだぞ。もっと食え。食えば食うほどいい。姉貴の言うとおりだ」

 

 ブライアン、それは墓穴だ。

 そう思ったが、口には出さない。ビワハヤヒデは実に賢明なウマ娘だった。

 

「そう。食えば食うほどいい。だから、ブライアン。それは君もそうだ」

 

「…………ん?」

 

 雲行きの怪しさを察知した怪物は無意識に情報収集能力を高めんとしたからか、横に垂れていた耳をピンと立たせた。

 

「だからこそ、心苦しい。君から食べ物を奪う、というのは」

 

「苦しい、そうか。だが大丈夫だ。アンタに心はない」

 

「そうだ。だからこういうこともできる」

 

 パチン。指が鳴る。

 ドサン。野菜が乗った。

 

「ありがとう、ブライアン」

 

 ブライアンの死角、背中に立っていたのはシンボリルドルフ。彼女が移籍させた野菜とだいたい同じ量を無造作に載せて、ありがとうとだけ言ってスッとどこかへ歩いていく。

 

(こ、皇帝……! いつの間に……)

 

 ビワハヤヒデは、強かに驚いた。

 ブライアンの死角は、ビワハヤヒデの視界の内である。なのに、シンボリルドルフを視認できなかった。

 

 あの、激烈な存在感を放つ【皇帝】を。

 

(やはり、ものが違う……!)

 

 ビワハヤヒデのレーススタイルは、頭脳戦に分類される。故に同じく頭脳戦を得意とするシンボリルドルフと結構比較されたりするし、彼女自身としても理想としていたし、近づいている感覚もあった。

 

 だが、まだ遠い。

 そんな敗北感を感じている姉と同じく、妹も強かな逆撃を被り悲嘆にくれていた。

 

「……クソ」

 

 なんだかんだで、完食する。

 そんなブライアンの食事風景を見つつ、東条隼瀬はビワハヤヒデに話を向けた。

 

「別に答えたくないならば答えなくともよいのだが、これからどういうローテーションで動くつもりだ? ブライアンが君と競い合いたいと言っている以上、参考にしたいのだが」

 

「夏に身体を絞って作り直し、秋に向かうつもりです。今のところは、オールカマーから秋天、有馬と進むつもりでいます」

 

「……なるほど」

 

 もとより、近々発表するつもりであったローテーションである。今伝えても問題はないだろうとビワハヤヒデは判断し、素直に伝えた。

 

 シニア最強のウマ娘は、怪我をしない限りはジャパンカップに出る。

 それが暗黙の了解であり、ビワハヤヒデのローテーションはそれに違反していた。無論出ないと決めた理由は『勝ち目がないから』ではなく『2年連続夏に目一杯追い込むビワハヤヒデの疲労を考慮して』であるわけだが、そこに対する賛否が噴出することだろう。

 

 ミホノブルボンは昨年ジャパンカップに出なかったが、それには凱旋門賞に挑戦するからだという理由があった。それに、一昨年はきちんとシニア最強のウマ娘としての責務を果たし、ジャパンカップで勝っている。

 そういうわけで批判は出なかったが、今回はそうも行かないだろう。

 

 そんなことを予期して、ビワハヤヒデとそのトレーナーは早期の発表を予定していた。

 

 それにブライアンが――――妹が、直接対決を望んでいる。また共に走ろうと思ってくれている。

 そのこと自体が嬉しかったというのもあるが、ブライアンの調整が自分のローテーションが発表されてからというのは、強制的に後手に回すことになる。

 

 それは、不公平だ。

 ビワハヤヒデはスポーツマンシップに則った意識のままに、ブラフも何もなく伝えた。

 

 それに対して返ってきたのは『なるほど』という言葉と、それまでの沈黙の時間。

 

「どうかしましたか?」

 

「いや」

 

「こいつは秋天アレルギーなんだ、姉貴。秋天では、アレがあっただろ」

 

 ああそういうことかと、ビワハヤヒデは察した。

 天皇賞秋で、彼の担当していたサイレンススズカは故障した。一歩間違えれば死んでいた、それくらいの故障だった。

 思えば国内の中長距離GⅠをほぼ制覇したミホノブルボンは、天皇賞秋には出ていない。それは時期が悪かったというのもあるだろうが、やはり、そういうことなのではないかという憶測はあった。

 

 実のところ、ビワハヤヒデの推測は半分しかあたっていなかった。

 彼女の思考が複雑化するのを止めたのは妹からの一言であったが、どのみち彼女は彼の沈黙の原因の片割れを察することはできなかっただろう。

 

 なぜかと言えば、東条隼瀬という男がトレーナーとウマ娘という一対一の関係を神聖視しているが故に、察されまいと心のガードを固くしたからである。

 

 いくつかのやり取りの後に、ビワハヤヒデは妹よりも遥かに早く食べ終わった。

 

「では、私はこれで」

 

「ああ。次は有馬記念になるだろうが、またいい策を見せてくれ。君たちとの読み合いは、実に切迫して楽しかった」

 

「伝えておきます。貴方からそう言われたと知れば、彼も喜ぶでしょうから」

 

 そう言って席を立ち、背中を見せるとわかる、凄まじい毛量。白が膨張色であるというのもあるが、単に色の問題ではない、そんな気すらする。

 

 そんなもこもこが、くるりと振り向く。

 

「東条トレーナー。妹をよろしくお願いします。気難しそうに見えますし、好き勝手の激しいところはありますが、おそらくは構ってほしいだけなのです」

 

「なぁっ!?」

 

 野菜を押し付けることに失敗して逆撃を被り、振り向きざまにグサッとやられた形になるナリタブライアンは黄金の瞳を大きく開けて唸った。

 逆撃を喰らうところまではまあ、予測できていた。エルコンドルパサー的に言えばプロレスだった。しかし姉からのこの一撃はまさに不意打ち、バックハンドブロウである。

 

「ああ、わかっている」

 

「わかるな」

 

 そんな反撃にしては弱々しすぎる言葉しか選べないくらいに追い詰められたナリタブライアンは、自分としては平静を保つべく――――傍から見れば平静を取り戻すべく、目の前の野菜に立ち向かった。

 

 そしてその、無限にすら感じられる戦いを終えて後。

 

「おお、偉い。食い切ったじゃないか」

 

「残しはしない。姉貴との話の最中、何か言いたげだったが、あれはなんだ」

 

「まあな」

 

「何かを言いたげなアンタは、あまり見ない。言いたいことを好き勝手言うアンタは、よく見るが」

 

 らしくない。

 

 要はそう言いたいらしいブライアンの意図を察して、東条隼瀬はくるりと振り向いた。

 今度は彼の皿の上は空であることもあってか、理不尽な移籍は起こっていない。

 

「俺が口を挟むべきことではないからな」

 

「姉貴のローテーションが、不満ということか」

 

 声を低くして、周りに聴こえないように音を絞る。

 他人の担当ウマ娘に口を出したりするのは、横槍。即ち、絶対的なタブーであった。

 

 無論、例外はある。チームに所属しているウマ娘ならば、そしてそのウマ娘が明らかな不調に苦しんでいるようならば、まだ情状酌量の余地はある。

 

 だがビワハヤヒデとそのトレーナーは専属契約であり、関係は良好で実績も申し分ない。

 

「それに、俺が秋天を苦手にしているというのは周知の事実だ。口を挟んでも、個人の好悪の情で他人に意見する、と取られかねない」

 

「アンタを知っているやつで、そういうことをすると思っているやつはいないだろ」

 

 人の心がないだとか、そういう冗談を冗談として言い合える程度には信頼し合っている。

 そんなナリタブライアンからの一言に対し、東条隼瀬は極めて曖昧な頷きを返した。

 

「それはそうかもしれない。だが他者への説得力がなくなるというのもまた、事実だ。根拠としても2年連続夏に休まずみっちりと鍛えてシニアの秋に向かうのはキツいのではないかという感覚的なものだし、俺がこれをお前に漏らしたのも嫌な予感がする、という更に感覚的な理由による。とにかく、夏を越えないことにはな……」

 

「…………まあ、そうだな」

 

 夏を越えないことには。それは、そうだ。

 だがどうにも、胸が騒ぐ。

 

 そんなナリタブライアンは、気づくべきであった。夏合宿という行事を控えたウマ娘に対して、心を乱すようなことを彼が言うだろうか、ということを。

 

 ウマ娘のトレーニングは、過酷である。過酷であるが故に、散漫な注意力のままに臨めば事故が起こる。

 夏合宿という長時間に渡る、疲労と消耗を蓄積させて経験に変換する地獄であれば、なおさら。

 

 真実とはいえ、そんな地獄へ向かう相手の心を乱すようなことを言う理由は、ただ一つ。

 

「あ、あと。お前、夏は休みな。トレセン暮らししててもいいし、実家に帰ってもいいし、リギルの合宿について来てもいい。好きにしろ」

 

「…………は!?」




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アフターストーリー:勇壮

「ルドルフ」

 

 合宿地の確保もできないほどの零細チームにコネなどの紹介状やら、土地の紹介を行うためのメールや手紙やらを整え終えた男は、この世で最も敬愛する皇帝の方を向いた。

 

「ん?」

 

「おそらく近い内に――――いや、それにしても年単位での話だが」

 

 スズカと別れ、ブルボンと出会う前。

 つまり昔の彼っぽい言い草に言いようのない懐かしさを感じつつ、シンボリルドルフは曖昧に頷いた。

 

 書類を捌く手を休めず、【皇帝】は異名に相応しい勤勉さで生徒会としての仕事やトレーナーたちから提出された夏合宿のスケジュールの打ち込みをこなす。

 何かあればどこに誰がいるか、すぐにわかる。そういったシステムを整備することに余念がない彼女は、半ば趣味としてこういうことをやっていた。

 

「トレーナーをやめることになると思う」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「マスター、なにかお悩みですか?」

 

 生徒会の書記としてせこせこと記憶したデータを書き起こす作業にひと区切りをつけたブルボンは、とことこと寄ってぼけーっとしている男に声をかけた。

 

 目の前のパソコンには、地図が映し出されている。

 

「そろそろ夏合宿の場所を決めようと思ってな。今年は暑くなるようだし、本家から土地を借りようか、などと考えていた」

 

「マスターの実家からですか」

 

「いや、本当の本家から。つまり京都の東条本家から、だな」

 

 ちょっと冷たいところでやろうか。

 そんなことを、彼は考えているらしい。

 

「マスターは分家だったのですか?」

 

 おハナさんが分家で、マスターが本家。そんなことは聴いていたが、それはあくまで出先機関の本家、ということだったのか。

 そんなことを思いつつ、ミホノブルボンはピコリと耳を揺らした。

 

 京都の東条家というのは、トレーナーとしては有名ではない。少なくとも、彼女はお父さん(パパボン)から聴いてはいなかった。

 

「まあな。分家したというか下向したというか、拉致されてきたというか……平安を壊す乱でなまじ活躍したばかりに目を付けられたというのか……」

 

「なるほど、よくある話ですね」

 

 中世まで、騎バ隊。すなわちウマ娘たちは軍事的な最強ユニットだった。

 そういう時代だからこそ生まれたロマンスというのは、ある。

 

 お父さんと仲良く見ていたドラマで数多く描かれてきたそれらをリフレインさせつつ、ミホノブルボンは頷いた。

 

「マスターの本家は武闘派な貴族だったわけですか」

 

「いや、別に。なんの教育もなく戦火に巻き込まれて、なんとなく勝った。それだけの話だ」

 

 その結果貴族としては辺境もいいところに飛ばされているのだから実質負けているのでは。

 

 かしこいブルボンは、敢えて口には出さなかった。

 

「別にどことは言わないが、両家の付き合いはそれから現在に至るまでずーっと続いているわけだ」

 

「勝ってしまったが故に、ですか」

 

「そう。勝ちすぎるのも良くない。担当にも余計な精神的負荷がかかるからな。だから適当なところで負けたいんだが、そうもいかない」

 

 勝つためにレースをするからには、全力で。

 そういう思考は、無論のこと彼にもある。

 

「しかしまあ、使い道もある」

 

「本番に向けての布石としての敗戦、ですか。普通のトレーナーであれば無敗の記録は伸ばしたいと考える。記録の偉大さを逆手に取り、盲点をつく。マスターの考えそうなことです」

 

「そうだ。お前、頭いいな」

 

 むふーっと二足歩行型の犬が褒められて嬉しくなったところをすかさず撫で、耳を掻く。

 パタパタと嬉しそうに揺れる尻尾をちらりと見て、東条隼瀬は一瞬だけ笑った。

 

 そう、一瞬だけ。

 

「それにしても暑くなる、というのはな……」

 

「対策はできると考えますが」

 

「できる」

 

 基本的に、東条家は裕福である。

 裕福な東条家と名声を得ているリギルであれば、大抵のことは実行できるしなんとかなる。だからこそリギルという多士済々、綺羅星の如きウマ娘たちを管理・育成できるのである。

 

「俺はな」

 

「あちらにはあちらの思案があると思われます。マスターがもし何事かが起こることを予測していらっしゃるのだとしても、その思案を妨害することは過干渉というものです。ここは結果だけ予測しておき、何が起きても即応できるようにしてみてはいかがでしょうか」

 

 また何か、自分ではどうにもならないところに考えを巡らせている。

 そんな気苦労を友としている人の新たな思案を察知し、ブルボンはやや声色を高くして言った。

 

「……まあ、そんなところだろうな」

 

「はい。そんなところです」

 

 俺の立てた予測はほとんどが外れるわけだし、そうなることを願ってみるか。

 そんな彼の緩やかな願いと共に、夏合宿ははじまった。

 

 チームでの夏合宿は、トレセン学園の恒例行事である。しかし無論、全員参加というわけではない。

 クラシック級で悠長に夏合宿にいけるのは、春に結果を残したウマ娘のみ。夏にもレースはあり、春で結果を残せなかった――――あるいは何らかの事情で出遅れたウマ娘たちは夏の上がりウマ娘となるべくレースで場数を踏んだりする。

 

 そしてシニア級に進めたウマ娘にとって、夏に休息を挟むことは珍しいことでもなかった。

 これはクラシック級よりもシニア級のスケジュールがタイトで過密だからというわけではない。

 単純に1学年の最強を競うクラシック級と全学年での情け無用の争いをするシニア級とではレースの平均タイムなどが大きく違ってくる。レベルの違う争いに巻き込まれれば、当然消耗は加速するし故障のリスクも高まる。

 

 そういうわけで、リギル所属のウマ娘たちの約半数はお休みをとっていた。

 

「いい気候じゃないか」

 

 口に咥えし自家栽培の枝。

 トレセン学園の所在地、東京の暑さにイラついていたナリタブライアン(練習不参加枠)は腕を組みつつ不敵に笑った。

 

「ルドルフ」

 

「わかっているよ」

 

 ナリタブライアンには、辻斬りじみたデュエル癖がある。暇な時はトレセン学園内のウマ娘と野良レースを開催したりしていた。

 

 ルドルフをこの札幌くんだりまで連れてきたのは、お目付け役という側面での期待、というのもある。

 無論、それだけではないわけだが。

 

「予定はズレて来年になったが、用心するに越したことはない。お前は一度、ロンシャンで怪我をしているわけだしな」

 

「まあそれはなんというか……」

 

 君がいなかったからだよ、とは言えない。

 余計な気苦労をかけることになるし、余分な責任感を抱いてしまうかもしれない。

 

 そんなシンボリルドルフの内心を知るよしもなく、東条隼瀬は次の言葉を待った。

 基本的に、ルドルフの言葉は鮮やかで、淀むことがない。それだけに、この歯切れの悪さに続く何かがあるだろう。

 

 彼は、そう思っていた。

 

「ともあれ、慎重な調整は嫌いではない。どのみちレースは勝てるだろうからね」

 

「一度敗けた。その上で勝てると思うわけか、皇帝」

 

 少しからかうようで、諌めるような言葉。

 入念な準備は必ずしも結果に直結しない。結果を出すには必要な要素ではあるが、やったからといって結果が出るか、と言えばそうではないのだ。

 

「無論だとも」

 

「勝算は?」

 

「ない。だが君と私が組んで、為せなかった何事かがあるか?」

 

「ない。これまでは」

 

「そう。これからも」

 

 パン、と。

 手を合わせて、それぞれの持ち場へと駆けていく。

 

 おハナさんがサブトレーナーと居残り組の監督をしている間、実質的な監督者は東条隼瀬――――ではなくルドルフである。

 実力人望共に豊かな皇帝を参謀が支える。リギルのメンツからすればよく見る光景だった。

 

「グラスワンダー。どうだ」

 

「悪くありませんよー」

 

 スプリングドリームトロフィー(京都3200)を制覇し、サマードリームリーグトロフィー(阪神2200)へと向かうグラスワンダーなどは軽めである。

 

 彼女は、走ることに関しては比類ない。しかし調整が下手なところがあり、フルパワーでレースに臨めたことより、よろしくない調整で挑んだことの方が多かった。

 

「春のドリームトロフィーではスペちゃんに勝てましたし、この調子で夏も制覇したいですねー」

 

「エルコンとの対戦でもあるし、な」

 

「ええ」

 

 獣じみた、いい笑顔だ。

 そう思いつつ、グラスワンダーなどを見ると管理主義の有効性を感じずにはいられない。

 

 彼女は百戦錬磨である。

 故におハナさんからの管理から一時離れ、新人のサブトレーナーに任せられていたここ1年。

 レースは善戦続きだった。果てしなく調子が悪そうでもなんとか戦えていたというのもすごいが、やはり万全の状態だとその末脚には恐ろしいものがある。

 

 サブトレーナーにしても無能ではないが、グラスワンダーという実力実績伴う闘争心剥き出しのウマ娘を管理するには経験と精神の太さが足りなかった。

 

「それにしても……やはりお前の末脚には素晴らしいものがあるな。普段は出せない本気さえ出せれば」

 

「相変わらずですねー」

 

 一言多い。

 だが体重に関してもズケズケと言ってくるこの男の腕を、グラスワンダーは信用していた。

 

「……暫定だが、アオハルでは長距離を走ってもらいたい。できるか?」

 

「ええ。ですが、会長がいるのではありませんかー?」

 

「ん、まあそうだが……切り札は必要だ。お前の末脚は、秘しておくにふさわしい。問題は……」

 

「メニューこなしてきますねー」

 

 こうして思考の深部にダイビングしていく男を放置していくグラスワンダーは、素直で従順な方だった。

 掛け値なしに、能力だけを信じている。故に彼女は、忠実にトレーニングメニューをこなす。

 

 エルコンドルパサーも、基本的に癖がない。

 そして輪をかけて従順なのが、ブルボンだった。

 

「ブルボン。お前は柔軟のあとランニングだ。砂浜の端から端まで。指で弾くように、脚をよく上げて走るんだ。わかるな」

 

「はい、マスター」

 

 ミホノブルボンは、実に素直と言っていいウマ娘である。

 坂路だけでは補い切れなかった微妙な瞬発力と足の感覚を養うための練習とはいえ、砂浜という走るには苦行そのものの環境にぶち込まれてもなんの文句もなく走っていく。

 

 その一方で、素直と言うには相応しくないウマ娘もいる。

 

「おい、暇だ。なんとかしろ」

 

「実家に帰ればよかっただろう」

 

「輪をかけて暇になる」

 

「じゃあ柔軟をすればどうだ。脚と腕に負荷をかけない練習なら許可できるが」

 

 ウマ娘は、時速70キロ近い速度で走る。

 故に脚の消耗も激しく、走る時に振ることになる腕、特に肩も負荷がかかる。

 この肩をやったのが、彼女の姉の同期であるウイニングチケットである。

 

「フン」

 

 自分の鎖骨の下あたりを親指でトントンと叩く。

 見ていろとでも言うべきその動作の後、ナリタブライアンはぺたんと地面に脚を広げた。

 

 ほぼ一直線、そのまま胸が地面につくほどに身体を折り、フフンと鼻で笑う。

 

「どうだ」

 

 アンタが毎日やれやれと言ったから、やってやったぞ。

 つきたての餅のような柔らかな筋肉をしている反面、関節が硬い。特に股関節に負荷が掛かり、あんなバカみたいな出力を出し続けるとぶっ壊れる。

 

 そう言われてからブライアンは泣く泣く――――彼女としては、走ることができなくなる方が嫌だった――――風呂後の柔軟と酢の摂取を続けていた。

 

「おお……やるな。知ってたが」

 

「なんだ、驚かしがいのない」

 

「走りを見ればわかる。毎日少しずつ、無理せずに可動域を広げていったことも、休まず頑張っていたことも」

 

 そうか、と。

 やや顔を背けなからつぶやくナリタブライアンを見て、東条隼瀬は情報を伝えるべきか否か迷っていた。

 

 幼い頃は繊細で、臆病だったらしきナリタブライアン。三つ子の魂百までというわけでもないが、その面影は今もある。

 それに、彼女には優れた学習能力がある。故に余計なことを吹き込むと、心理的な枷になりかねない。本当は柔軟をする理由も言いたくなかったくらいなのだ。

 

「まあ、いいか。走りたがりだしな」

 

「あ?」

 

「休め、といった理由を教えよう。まず俺は、宝塚記念に出す気がなかった。出る意味もないと思っていたからな。だから春先は有り余る出力の制御法を身体に叩き込むために不調にさせ、秋にピークが来るように持っていこうとしていたんだ」

 

「……私がアンタにとって予定外の事態を招来させたことが原因、ということか」

 

「別に責めているわけではない。しかし事実として、無理なく緩やかに上げていくような身体に、俺はした。そして宝塚記念前、その身体を無理やり叩き起こしたんだ。だからお前は今、より疲れている。そんな状態で夏、トレーニングをするわけにはいかない。いや、やろうと思えばできるし、伸びるだろう。だが……」

 

「だが?」

 

「万が一にも、怪我をしてほしくない。今のところお前が、俺の最後の担当になりそうなんでな」




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アフターストーリー:知悉

 沈黙の帳が、比較的快適とはいえまだまだ暑い砂浜に降りた。

 

 ――――万が一にも、怪我をしてほしくない。今のところお前が、俺の最後の担当になりそうなんでな

 

 その言葉が、ブライアンの左耳から入ってきて脳内でリフレインし、右耳から抜けていく。

 

「あぁ!? やめる。28でか!」

 

「さあ、それはわからんが……たぶん30は超えるのではないかな」

 

 実に他人事じみた言葉に、若干ナリタブライアンの冷静さが戻る。

 しかしそれでも、彼の放った言葉が衝撃的であることは間違いなかった。

 

「なんで自分のことなのに自分で決めてないんだ、アンタは」

 

「そりゃあ俺だけのことじゃないからさ。担当ウマ娘がいつ引退するのかというのは、流石に予想できないしな」

 

「……ああ、そういうことか」

 

 唐突に廃部を突きつけてくるようなものだと思っていたが、部員の新規募集を停止する、ということらしい。

 ひとまずタイムリミットが限られているようなものではないとわかって、ブライアンはひとまず安心した。無論表には出さないように振る舞っていたが。

 

「それに関してはまあ、いい。会長には言ったのか?」

 

「無論伝えたさ。了解もとってある」

 

「ブルボンには?」

 

「言った。スズカにも伝えてある」

 

 『伝えた、了解もとってある』というところにそこはかとない上下関係を感じ、『言った』で済むところにまたそこはかとない上下関係が見える。

 

 そんなちょろっとした機微を感じつつ、ブライアンはなんとなく納得した。

 

「私はアンタがリギルに戻ってきたのはこのチームを継ぐためだと思っていた。そうじゃなかったのか」

 

「リギルを継ぐのは俺よりも師匠の跡を継ぐに相応しい、実力と人望と実績のあるトレーナーがいいだろう」

 

 人望はともかく、実力と実績においてアンタに勝るやつが出てくるとも思えない。

 そんなことを言ってもしょうがないので、とりあえずブライアンは流した。

 

 第一、シンボリルドルフやミホノブルボンやサイレンススズカに覆せなかった意思を、覆せるとも思えない。

 

「で、辞める理由は」

 

「やりたいことができた。そして道筋も立った。だからだ」

 

「……シンボリの家に帰って執事でもするのか」

 

「いや、教官をやる」

 

 教官。

 それは、より広域な意味でのトレーナーである。チームに入れないウマ娘や専属契約を結べないウマ娘を指導する。

 

「物好きだな。進んで降格するわけか」

 

「降格ね。まあ一般論からするとそうだろうな」

 

 一般的に、教官はトレーナーのなり損ないがなる職業である。

 教官は全体的にとらえて指導する。故にテンプレートがあり、それを滞りなく実行すればいいだけなのだ。

 

 無論これは『いいだけ』で済むほど楽な仕事ではない。だが個々人に沿ったカリキュラムを整備してトレーニングメニューを組み立てなければならない専属トレーナーや、チームを運営するトレーナーと比べて柔軟性や観察眼に欠けていてもなれる。

 

 多少の勉強、あるいはコネでなんとかなる地方のトレーナーと違い、中央のトレーナーになるには日本一難しい試験を突破しなければならない。

 しかも上から10%を採用するとかそんなことはなく、採用者ゼロも珍しくはない。

 

 それに比して教官は、(トレーナー志望からすれば)割と簡単になれる。

 資格取得難易度は地方トレーナーより上、中央トレーナーより遥かに下。そんなところである。

 

「せっかく中央トレーナーの試験に受かったのに、惜しくはないのか」

 

「厳密に言うなら俺はトレセン学園でトレーナー業務に従事し始めるとき、試験に受かっていないからな。というか、受けてすらいない」

 

 フランスに留学したときに、試験は受けた。しかしそれはあくまでもフランスのものであり、日本のものではない。

 

「フランス留学で資格取得して帰ってきて、コネで入ったんだったか」

 

「ああ。独立するときに改めて日本の試験を受け直した形になるな」

 

 それくらい、リギルを率いる東条ハナという女傑がもつコネ力は大きかった、ということである。

 基本的に他国のトレーナー資格を持っている者には、期間限定のライセンスが付与される。短期免許のような形である。しかしそういうのを無視して、彼は働くことができていた。

 

「じゃあ、結局は受かったのか」

 

「一応首席だった」

 

「そういえばフランスではどうだったんだ」

 

「入学試験から資格試験までずっと首席だった。俺は名門らしく座学の方が得意だから、日本より実践形式が多いフランスの方が難しかった記憶がある。受けた回数が違うからかもしれないが」

 

 こいつ、普通にスペックが高い。

 ブライアンはそんなことを改めて思い知らされつつ、思うところは1つだった。

 

「なんだ。じゃあいつも通りか」

 

 生徒会室にはルドルフがいて、東条隼瀬がいる。

 それがナリタブライアンにとってのトレセン学園の日常であり、ひいてはトレセン学園というものの在り方だった。

 

「まあ、そうだな。役職は変わるかもしれないが、似たようなものだ」

 

「ならいい」

 

 皇帝と参謀。

 姉以外の他人に対して初めて抱いた感情――――尊敬の念を向けるに足る二人。

 

 宝塚記念の前夜に、ナリタブライアンは思った。あの二人の対決を、万の一の綻びもない堂々とした対決を見たいと。

 

 自分が心から敬愛する、世界を見渡しても数少ない者たちによる直接対決。

 その対決が運や天、環境などに左右されてほしくないと。

 

 そしてそれと同じくらい、皇帝と参謀は共にあるべきだと思っていた。

 ミホノブルボンがそうであったように、彼女もまた現在の環境に帰属意識と維持願望を持っているのである。

 

「……それにしても、ミホノブルボンに憧れてアンタの指導を受けたいと思ってトレセン学園の門扉を叩くウマ娘もいるだろう。そういうやつは、いいのか」

 

「それに関しては申し訳ないと思わないでもない。だが実際、そこまでは責任を持てない。教官になればより広範なウマ娘を指導できるようになる。そこは自分でなんとかしてもらうしかないな」

 

 実際、そういったウマ娘は多い。

 東条隼瀬は今のところ、負けていない。今年1年とかではなく、4人を担当して負けていない。つまり5人目になれば――――なれれば、負けないかもしれない。

 その発想はまったく以て甘っちょろい考えではあるが、そう思っても仕方ないというのもまあ、ある。

 

 事実、彼がチームを作るということを公表すれば入ろうとするウマ娘はあとを絶たなかっただろう。

 

「……ああ、そう言えば。アンタがチームを作らなかったのは、そういうことだったのか」

 

「そうだ。ルドルフを引き抜いてチームを作ることも考えたが、新規メンバーの募集をするのかしないのかということを訊かれることになる。ついでに言えば、リギルへの義理を欠く。だから戻ってきたんだ」

 

 義理がどうかとか言っているのは、これはアオハル杯以前の構想を語っているからであり、あくまでも心理的な理由を伝えようとしているからである。

 アオハル杯が復活して5人必要となった時点で義理や何やらに関係なく、彼の取れる選択肢は新たに複数人を担当に迎え入れるか、あるいはどこかしらのサブトレーナーになるしかなかった。

 

 となると実質、取れる選択肢は1つしかない。

 そこまで推測すると、ブライアンの中には思うところが出てくる。つまり、なぜ新規メンバーの募集を停止しようとしていたこの男が自分を新たに担当してくれたのか、ということである。

 

「新たに受け入れる気はなかったなら、なぜ私を受け入れた。おハナさんに言われたからか」

 

「いや。それは単純にトレーナーとしての本能だ」

 

「本能?」

 

「ああ。俺はあくまでも教官になりたいと思っていた。ミホノブルボンというウマ娘を担当してからというもの、俺の夢は教官になることであり、その夢はルドルフの理想にも適う。故にそれ以外のすべてを切り捨てるべきではあったのだが……」

 

 ナリタブライアンというウマ娘に、請われた。自分の担当にならないか、と。

 一時代を築けるほどの、冠絶した才能。シンボリルドルフともサイレンススズカとも違う趣のある才能。

 

 怪物。そう形容するにふさわしい才能の輪郭を、東条隼瀬は感じていた。

 まだまだ未熟で、影のように揺らぐ。本体が未だ、姿を見せない。そんな巨大過ぎる才能は、彼のトレーナーとしての本能を刺激した。

 

「俺もトレーナーだ。未完に過ぎる巨大な才能の完成に、関わってみたい。そういう欲に負けた。だから受け入れたのだ。断じて、言われたからではない」

 

「…………そうか」

 

 プイッと視線を逸らしたブライアンは、それだけを呟くようにこぼした。

 ひょっとすると、強制されてのことなのかもしれない。彼の夢の実現を、阻んでしまったのかもしれない。

 

 そう考えるだけの精細さが、彼女にはある。だがそんな懸念は懸念のままに消えた。

 

「ならいい」

 

「だから、怪我をさせたくないんだ。窮屈だろうが、選んだのはお前だ。我慢しろ」

 

「ああ。我慢してやる」

 

 憮然としたような感じに歩いて去っていく。

 黒鹿毛のテールヘアーが揺れるさまを見て、東条隼瀬はほっと一息をついた。

 

(よかったよかった)

 

 ひょっとすると、自分が最後の担当だということでより無敗に拘ってしまうかもしれない。

 彼としては、そう思わないでもなかった。現に宝塚記念の前、彼女はそんなことを言っている。

 

 だがそれを、乗り越えた。宝塚記念で姉に勝ち、無敗への拘りを飲み込めた。

 彼としてはそう見ていたし、担当ウマ娘の中で彼女だけに伝えないというのも、フェアじゃない。そういうことで伝えたわけだが、うまくいった。

 

(精神的な成長をもたらしてくれたとなると、やはり宝塚記念に出走させてよかったというものだな)

 

 ブライアンは放っておいても強くなる。彼女の秘めたる才能と、強さへの渇望がそうさせる。

 問題は怪我をしないかということと、心理的なこと。怪我に関してはマージンを設け、徹底的に健康を管理すればなんとかなる、と思う。

 

 だが心理的な成長に関しては、本人に依るところが大きい。

 

 良かった良かったと思いつつ、東条隼瀬はバスケットからサンドイッチを出して食べた。

 一方に辛子、一方にマヨネーズが塗ってある、食べる者の好みを知り尽くした味付け。

 

(相変わらず、なぜかあいつの料理はするりと喉を通る)

 

 そんな謎を解明すべく頭を働かせながら、東条隼瀬はファイルを手にした。




36人の兄貴たち、感想ありがとナス!
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アフターストーリー:ブルボンの野望 将星録

愛嬌×がトレーナーやめるという報告を聴いて一番驚いたのはURAです。やめるのをやめてほしいのもURAです。


「マスター。遊びに行きましょう」

 

 あ、犬だ。

 とことこと入ってきたウマ娘を見て、東条隼瀬は自然とそう思った。

 

 尻尾がブンブンと揺れて、耳もピコピコと揺れている。そのさまはまさしく、知恵をつけてリードを自ら咥えて散歩をせがむ犬のごとし。

 本日は夏合宿の最終日である。ミホノブルボンというウマ娘からすれば3回目の夏合宿。1回目は夏祭りに行き、2回目は札幌でなんとなく過ごし、そして今回も場所は違うと言えども北海道。

 

 故に一回目のような夏祭りは開催されず、たいていのウマ娘は疲れ果てて寝ている。シンボリルドルフですらハチャメチャに疲れている。

 だというのにこうも平然と遊びに誘えるというのは、流石にミホノブルボン。タフでスタミナ豊富なサイボーグと言ったところか。

 

「で、何がしたいんだ」

 

「花火をしたいと考えています」

 

 お父さんから夏に花火をすることでマスターとの仲を深められるという情報を得ました。

 そんな内心を悟られることなくむふーっと口元を緩めている大型犬の手には、ペットボトル。

 

 他者に預けてしまうことになんとなく気が引けた老犬との散歩を終えたあとらしい。

 

「ま、よかろう。買いに行くか」

 

「マスターの手を煩わせるのもよろしくないと思い、準備は万端に整えてあります」

 

 この時この場に彼女のお父さんが居たとすれば、これまた眉毛をピーンと立たせてむふーっとドヤ顔をのぞかせた情緒が幼い大型犬を見て微笑ましく思いながらもこめかみに手を当てて残念がっただろう。

 

 花火をすると仲を深められる、というのは本当に花火に火をつけて景色を満喫すること――――だけではない。その事前準備も含めてのことなのだ。

 無論、そんなことはミホノブルボンにはわからない。彼女の中にあるのはなんとなくもっと仲良くなりたいという単純な感情だけだからである。

 

「明細は」

 

「私の願望に付き合わせるのですから、私が出すべきだと判断しました」

 

「それはそうだ。だがこれから楽しみを共有するというのだから、やはり折半が妥当ではないかな」

 

 星が瞬く瞳が、チカチカと光る。

 脳が活性化し思考の海に沈んだミホノブルボンは、しばらくしてからゴソゴソとレシートを引っ張り出した。

 

「64でお願いします」

 

「よかろう」

 

 一通り種類をずらりと揃えているあたりに、花火初心者感が大いに出ている。

 

(最近思考にキレが増したとは言え、まだ幼いからな、こいつ)

 

 これからそういうことも経験して、少しずつ大人になっていけばいい。

 完璧な親目線、あるいは飼い主目線で東条隼瀬はレシートを眺めた。

 

「一応訊くが、犬ツーはどうした」

 

「はい。散歩の後、ステータス『疲労』及び『満足感』を確認。後に来るであろうバッドステータス『空腹』に備えて餌を用意し、ケージへと案内しました」

 

「うんうん、慣れたものだな」

 

「親分ですから」

 

 犬に対してしたたかなマウントポジションを確保していることをひそやかに自慢している。そんな幼さをかわいく思いつつ、栗毛を撫でる。

 

「マスター。お仕事は大丈夫ですか?」

 

「問題ない」

 

 パチパチと、真偽を問うように瞬く瞳。

 あまりにも真っ直ぐなそれを正面から受け止めても怯むことなく、東条隼瀬は沈黙を楽しむように見返した。

 

「質の如何にもよりますが、私もお役にたてると思います。マスターさえよろしければ、何なりとご指示を」

 

「いや、本当に問題ない量だ。だからいい」

 

「……そうですか」

 

 細い眉毛がしゅんと山を描き、口元が下がる。

 まともな愛嬌を持ちし者であれば、『ありがとう』とか、『好意だけは受け取っておく』とかそういうことを言っただろう。

 だが彼は、まともな愛嬌を持ちし者ではなかった。

 

「マスターは教官になられると聴きました。父の影響ですか?」

 

 そんなしょんぼりブルボンは、42.5秒の沈黙の後に口を開いた。花火を了承されてからのキリリ眉ではないが、山を描いた眉でもない。

 すなわち、ミホノブルボンのテンションは平静に戻っていた。

 

 この驚異的な立ち直りの速さ、切り替えの迅速さは間違いなく、彼女がこの付き合うに難しい男とうまくやれている原因であり、美点であろう。

 

「そうだな。だがお前を育てたという経験が、より加速させたというべきだろうな」

 

「それは父との出会いがより俯瞰的に見ると、私の育成に包括されているからでしょうか」

 

「そうではない。例えお前のお父さんと会わなくとも、お前と関わった時点でそうなろうと思っていただろう、ということだ。志すタイミングの差こそあれ、な」

 

 夜の海。

 昼の自ら光を放つような明るさとは違い、ただ星の光を反射し、重い音を立てる。

 

 明るさも怖さも、感じさせない暗く深い水。

 それを前にして、ミホノブルボンはふと隣の人を見た。

 

「マスターは去年の年末から今年の年初にかけてお休みをとりませんでした。それはトレーナーとして現役の間に自分のノウハウを発信したい、という動機からですか?」

 

「そうだ。実績とは熱された鉄のようなもので、自分からなにか行動を起こさない限りは一見変わることはない。ただ冷えていくだけだ。しかし放置していれば徐々に埃をかぶり、忘れられてしまうものでもある」

 

 無敗の名声の続く限り。いや、無敗の名声が効果する間に、自分が編み出したレースにおける戦法や育成の方法を伝えてしまいたい。そういう意図があったことを、ミホノブルボンは彼に近い将来教官になる、ということを伝えられてしばらくしてから悟った。

 

「マスターは名門の出身です。秘伝として後に持ち越す、というのも悪くない選択肢であるように思いますが」

 

「確かにそうだ。だがそんなことをしていては、全体に進歩が見られない。日本のトゥインクルシリーズを活性化させる為にも、ちょっとした技術であっても、汎用化されてどこでも使われるべきだ。それが将来きたるべき危機に役に立つことになるだろう」

 

「将来の危機。コンテンツの縮小、ということでしょうか」

 

「縮小は、まだ早い。問題はトゥインクルシリーズというものが飛躍的な膨張を果たしつつあるところにある。その結果といえば変だが、将軍が地方から来た」

 

 そこまで聴いて、ミホノブルボンはなんとなく察知した。

 これまで中央だけでまかなえていた人材が、足りなくなりつつある。故に地方から引き抜きが行われた。

 将軍。加賀トレーナー、ライスシャワーのトレーナー。彼の成功を皮切りにこれまで暗黙の了解で行われていなかったことが、今や常態化しつつある。

 

 嚆矢となったのは、北原トレーナーだった。しかし彼はオグリキャップのために来た、という側面が強い。だが将軍はなんの縁もゆかりもない中央に、腕だけで乗り込んできた。

 

「この膨張が進めば、どうなるか。外国から名うてのトレーナーが来る、ということもあり得る。日本のトゥインクルシリーズは、他国に比して金銭を生み出す能力が高い。それに、トレーナーとしての手腕を振るいやすい」

 

「金銭に関しては、わかります。データとして出ていますから。ですが手腕を振るいやすいというのは、どういうことでしょうか」

 

「判断の自由度が高い、というのかな。欧米のトレーナーとは、既製品であり歯車なのだ。強いウマ娘を、順当に勝たせるための強さを身につけるための教育を施される。だが日本のそれは職人というのか……一種の芸として育てられる」

 

 そういう国だということを、東条隼瀬は知っていた。

 既製品より、職人技。工場より、工芸。そういう発想で、トレーナーを育てる。その結果、著しく腕の立つトレーナーがものすごいチームを率いて、他のトレーナーの出番がない、ということにもなっている。

 

「まず欧州では名門というのが結構ある。貴族社会だった頃の流れだな。そういう場合、実家側が作戦を立てる。そしてトレーナーがそれを現場レベルで調節する。ただそれだけの仕事をするだけの人なのだ」

 

 勝手に情報収集して剪定して、時に実家の意向を無視して勝つことに専念する。

 そういうことを東条隼瀬はやってきたし、程度の差こそあれ日本のトレーナーはそれをやっている。

 

「弟から聴いたが、そういう風土に憧れている欧米のトレーナーは多い。特に欧州。これは俺も実感しているから、わかる。そういう連中は、不満を抱くだけあって能力は高い。今のトゥインクルシリーズを牽引しているトップトレーナーたちが引退したあと、その席に座ることを望んでいる。言語の壁など、とうに克服してな」

 

 金銭面でも、待遇面でも異国の方が上。

 何よりも、能力を充分に活かせる。となると、黒船来航もさほど遠い未来ではないだろう。

 

「俺がチームを作るのか、という問い合わせがひっきりなしに来た。そのことでわかるとおり、やはり勝つことが第一だ。そうなると、草刈り場になるかもしれない」

 

「短期免許を延長して臨時を肩書だけのものにする、ということですか」

 

「いや、正式に日本のトレーナー免許を取る、ということだ。だから正直、情報を絞って国内で足の引っ張り合いをしている余裕などないんだ。だから俺は積極的に発信しているわけだ」

 

「ですがその場合、マスターが迎え撃てばいいのではありませんか」

 

「身体がもたない」

 

 それはもうどうしようもないなぁと、ミホノブルボンは納得した。

 シンボリルドルフとしても、そうあって欲しかった。一番信頼できる相手に、トレーナーとしてのトップに立って迎え撃ってほしかった。だが、身体の問題を口にした瞬間旗幟を翻したのである。

 

「ナリタ家もこの流れに参画してくれるらしいからな。あとはメジロ家だが、ここは俺が個人的に嫌われているからどうにもできない」

 

「……それはわかりました。しかし」

 

「しかし?」

 

「マスターのなさっていることは、手の内を明かすということです。その結果、いずれ負ける。そういうことにはなりませんか」

 

「そうなれば、俺の戦法で俺は超えられない。そのことに気づくことになるだろう」

 

 教条的に捉えるのではなく、セオリーを無視するための踏み台にして飛翔してほしい。

 そういうことなのかと納得したミホノブルボンの横に、東条隼瀬は水で満たしたバケツを置いた。

 

「それに、手の内がバレているなら却って予想がしやすい。相手の思考を俺の戦法の弱点をつくように誘導できる、ということだからな」

 

「……したたかですね」

 

「まあ、さしあたり俺は担当ウマ娘を勝たせつつ、そういったことをやらねばならないからな。したたかにもなる」

 

 あくまでも、東条隼瀬は自身を補助輪に過ぎないものであると思っていた。

 だから手の内をバラしても、然程の痛痒も感じない。

 

「いいかブルボン。レースに勝つには、相手をいかにこちらの思い通りに走らせるかというのが重要なんだ。こちらの思い通りのペースで、思い通りの場所を走らせれば、勝てる。そのために正確無比な推測が必要であり、正確無比な推測を行うために必要なのが、正確な情報だ。俺は正確な情報をばらまくことで、ある程度の支配権を得たのだ。わかるかな?」

 

「はい、マスター」

 

「加えて言えば、俺は最悪の事態を想定して動きたいと思っている。あくまでも俺は補助輪だから、転倒防止のために動く。育ちきり、どんな戦術や戦法も力で押し切れるようになるまでは、な。トレーナーが死んで補佐を亡くしても、次戦でなんなく勝てるようなウマ娘を作る。それがトレーナーの仕事、ひいては育成というものの本来あるべき姿だと思う」

 

 その極みがサイレンススズカであろう。彼女に、戦術は必要ない。そして彼が居なくとも、彼女はアメリカとフランスで勝ち続けた。

 

 だから東京1600メートルで行われたスプリングドリームトロフィー(マイル)でも、東条隼瀬は彼女に戦術を授けなかったのである。

 ただ思いっきり走れば勝てると、知っていたから。

 

 不安げな顔をした栗毛のサイボーグをわしゃわしゃと撫でて安心させてから屈んで、ビニール包装された花火を浜に並べる。

 

「さあ、難しい話はやめて遊ぼうか。まずはなにからやる?」

 

「線香花火をしたいです、マスター」

 

「それは……どうなんだ?」

 

 派手なものを先に、静かなものを後に。

 そういったセオリーを無視することにならないか。

 

 そんなことを思いつつも、基本的に東条隼瀬はミホノブルボンのお願いに弱い。

 

「マスター、ロケットが飛んでいます」

 

「ああ。飛んでるな」

 

 アニメを見ているときもそうだが、何かしらが空を翔ける時、ブルボンの口はぽやーんと開く。

 そんな口にパピコの片割れを突っ込んで、花火が終わると共に二人でアイスを嗜む。

 

 線香花火で静かにはじまった二人だけの花火大会はド派手なロケット花火とアイスで終わった。




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アフターストーリー:憂鬱

アンケートの結果、掲示板形式をやることになり、ついては今回題材を募集することにしようと決めました。
しかし感想欄に書くと多分規約違反なので、それ用の活動報告を用意させていただきました。よろしければユーザーページに飛んで活動報告へのコメントお願いします。


 東条隼瀬が、トレーナーをやめる。

 そのことは、URAにすぐさま伝わった。もっともこの知らせを受けたのはごく限られたものだけであり、世間に公表されてはいない。

 

 ただ、近々辞める。そしてそれに伴い、新たに担当するウマ娘を受け入れることを停止する。

 

 恐ろしく業務的なその知らせの裏には、それを前提にした広報戦略を用意してほしい。という意味が含まれていた。

 

「辞めるのをやめさせられないか、東条くん」

 

「それは……無理だと思いますよ」

 

 URAのお偉方が顔を突き合わせて密談する場に招待された理由は、それか。

 無論事前に兄の思惑を聴いていた弟は、やんわりと翻意をさせることを諦めさせようとした。

 

 東条隼瀬は、若い。度々叛乱を起こされていただけに、URAは死ぬほど扱いづらい相手であることを承知していた。

 しかしそれだけに、その能力の高さを理解してもいたのである。

 

 外国からやってくる脅威というものを、URAは薄々感づいていた。だからこそ規制によって環境をガラパゴス化させ、日本のトゥインクル・シリーズを守ろうとしていたのである。

 これは自分たちのレベルが本場であるイギリスやフランス、アメリカなどに比べて劣ることを認めるようなものだが、彼らの頭脳はかつて日常であったジャパンカップでの連敗で焼き切れていた。

 

 日本というホームで行われたレースですら外国勢に負けまくる。歯が立たない。

 そんな現実から逃げずに直視していたが故に、シンボリルドルフ以後続々と勝ち始め、そして世界最高峰の芝のレース、凱旋門賞をどこともしれない寒門のウマ娘が勝った今でも、なんとなく受け入れがたい。

 

 

  ――――だがあいつがいる限り、現場はそうひどいことにはなるまい

 

 

 受け入れがたいが、そんな思いを共有しつつあった、そんなとき。

 

 あ、辞めます。

 そんなふうに言われたURAの上層部は、驚いた。

 性格はともかく、顔はいい。キョウエイボーガン関連のインタビューなどで印象づけられたのか、世間の受けもいい。

 

 

 ――――これから担当ウマ娘共々ガンガン押していくぞー!

 

 

 そんな思惑を知ってか知らずか、彼はあっさりやめると言う。

 

「まだ28だろう。成功するとも限らないし、トレーナーの方が実入りもいいし栄誉も得られる。そのあたりで説得を試みられないか?」

 

 教官には教官の適性が必要になるし、トレーナーにはトレーナーの適性が必要になる。

 どちらかで成功したからといってどちらの適性も持っているとは限らない。

 

「ですが辞めるときは30代になっていると思いますよ。それに兄を翻意させることの難しさは、貴方がたが一番よく知っていらっしゃる。そうではありませんか」

 

 その通りだと、URAのお偉方たちは一斉に思った。

 やや思考が硬直化しがちとはいえ、彼らは優秀であればこそ昇進した。そしてある程度の変化を許せる柔軟さがあればこそ、叛乱を喰らっても地位を保てているのである。

 

「だがそれにしても引退が早い。ビワハヤヒデのトレーナーやサクラ軍団のトレーナーなど有望株が育つまではさしあたり現場に彼以上の若手はいないのだから、教官は教官になった者に任せてもらいたい。カリキュラムの変更案があるなら、提出してくれれば迅速に検討する。海外遠征カリキュラムの新規実施を早める。40歳くらいまでやってもらって、そのあとは教官試験免除の推薦状を出すようにしよう。試験勉強で時間を浪費させるのもバカらしいからな。これでどうだ」

 

 悪くはない。ただ、だめだと思うなぁ。

 なんとなく、弟はそう思った。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 リギル分艦隊(仮称)の部室内でぺらりと、手紙をめくる。

 極めて珍しいことに、そのときこの場にはスズカがいた。基本的にどこかしらを走り回っている彼女が、室内でおとなしくしている、というのは珍しい。

 

「チェックメイトです、スズカさん」

 

「うそでしょ……覚えたばかりの娘に負けるなんて……」

 

 スズカは、一人遊びが好きである。

 他人といるのが嫌というわけではなく、マイペースで進められる遊びが好きなのだ。

 だから1人で七並べをしたり、1人で神経衰弱をしたりする。

 

 そしてそんな彼女がアメリカに行って覚えたのが、チェスだった。詰将棋ならぬ詰めチェスをひたすら1人でやり、もともと出来のいい頭を使って対人戦でも結果を出す。

 だからそこそこ、彼女はチェスに自信があったのである。

 

「も、もう一回……! もう一回やりましょう……!」

 

「承りました。ですが今回の一戦で私のデータバンクにスズカさんのデータは蓄積され、現在の私の勝率は前戦比+14%と推定。困難な戦いが予想されますが……」

 

「そんなのは問題にもならないわ。もう一回……」

 

「ステータス『不屈』を感知。こちらも相応の覚悟で臨みます」

 

 楽しそうだなぁと、後方親面で二人の対局を見つめる男は手紙から視線をそらした。

 さほど重要なことが書かれていなかった、というのもある。

 

「また売り込みかい?」

 

「ん、まあな」

 

「大変だね、君も」

 

 売り込み。

 即ち、ウチのウマ娘を担当しませんか、という誘いである。

 

 これまでのレース結果や、先祖代々の実績。得意とする脚質。身長や体重に至るまで事細かに記され、最後辺りに契約金が提示されたそれを読んで、閉じる。

 そして半ば定型文化した返信を、そのウマ娘におすすめのトレーナーの名前を添えて送る。

 

 そういうことを、彼はしていた。

 

「そうでもないさ。この情報はしっかりと、使うべきときに使わせてもらう。俺に情報を与えるということがどういうことか、知らない者が多いらしいからな」

 

「だから申し訳ないと思って、その子の適性を伸ばしてあげられそうなトレーナーの名前をいくつか挙げて送り返してあげるわけだ」

 

「……暇だからな。それに、一方的に情報を受け取って利用するというのは、心に良くないものを残す。だからだ」

 

 はいはい。

 

 口には出さないにしても、動作でそれとわかるような温かい眼差しで、シンボリルドルフはこの人格的複雑骨折を起こしている男を見た。

 

「それにしても、一流のトレーナーになると黙っても金が入ってくる。そう聴いてはいたが、なるほど。噂だけではなかったらしいな」

 

「まあ親からすれば、優秀なトレーナーに娘を任せたいと思うだろう」

 

 彼のもとに来る売り込みは、たいていが新興の家か、寒門からである。

 これは別に年季を重ねた名門からの人気がない、というわけではない。

 

「君は負けていないし、寒門に寛容らしい。となると、順当な判断だ。少なくとも相手の視点に立てば、そうなる」

 

「別に寒門だけに寛容になった覚えはないが、そう見えるだろうな。それにしても俺の家はこういった申し出を受けたことがないというのに、困ったものだ」

 

「相手はそれを知らない新参だから、仕方ない。そう思えばどうだい?」

 

「別に怒っているわけではないが、そうしよう」

 

 東条隼瀬は、基本的に自分の師匠である東条ハナから託されたウマ娘を担当する。

 シンボリルドルフも、サイレンススズカも、ナリタブライアンもそうである。自ら見出したのはミホノブルボンくらいで、それ以後もそれ以前もない。

 

 そして引き継いだウマ娘は、いずれも東条ハナやシンボリルドルフが見出してきた娘たちである。

 この二人が見出してスカウトに失敗したのはトウカイテイオーくらいなもので、彼女は二冠ウマ娘になった。

 

 つまり、見出したこと自体に間違いはなかったということになる。

 

「で、ブライアンはどうした。なんであいつは死んだように寝てるんだ」

 

「トレーニングを再開したときに、『併走をできる限り実戦形式での本気で』と言われた。だから本気でやったら……疲れてしまったようだ」

 

「ああ……」

 

 東条隼瀬が管理するのは、あくまでも量である。質に関してもなるべく担保しようとするが、質を上げようとする行為に関しては個人の自由と成長の基盤になると思い見逃している。

 

 このあたりが単なる管理主義とは違ったところだった。

 

 その結果、ナリタブライアンは肉体よりもむしろ精神が大幅に疲弊したらしい。まあ無理からぬことだが。

 シンボリルドルフと併走できたのは、シリウスシンボリくらいなものだった。色々あったが、彼女はダービーウマ娘である。

 

 つまり併走というトレーニングの相手になることにすら、GⅠを勝つくらいの実力を要求される、ということになる。

 それはひとえに彼女の放つプレッシャー、併走というトレーニングの中に含まれる駆け引きや実戦に近い雰囲気に耐え切れないから。

 

(よく耐えられるものだ)

 

 ルドルフの攻略法は、相手にしないことである。

 具体的に言えば、駆け引きを仕掛けられても無視する。無視できるだけの実力をつける。それが一番楽に勝てる。

 

 一度、いや二度。

 マトモに相手にしたからこそ、到達した結論。

 

「チェックメイトです」

 

「…………」

 

 遂にうそでしょとすら言わなくなった負けず嫌いの逃亡者は、無言で頭を下げて負けを認めた。

 そして瞬時にチェスの駒を整え直し、再戦をせがむ。

 

「ひょっとして、ほんとにデータを取られてる……?」

 

「はい」

 

 そしてしばらくしてまた敗けて、アメリカで無敵を誇ったガルフストリームの怪物は自分の敗因を見つめ直した。見つめ直したからと言ってどうにかなるものでもないが、一応は進歩である。

 

「それに、私は厳密に言えば初心者ではありません。マスターとルドルフ会長の指し合いを見たことがあります」

 

 ちなみに勝率は6:4で東条隼瀬有利であった。

 彼はこういう、じっくり思考していいルールに強いのである。無論、早指しになると勝率はそっくり逆転する。

 

「マスターは序盤クイーンを動かします。ルドルフ会長はキングを動かします」

 

「え……なんでかしら?」

 

 本気で意味がわからない、という感じなサイレンススズカの反応は、至極当たり前のものであった。

 実際、この二人の1手に特に意味はない。1手を捨てているようなものである。

 

「具体的な理由はわかりませんが、あの二人はああ見えてかなりのロマンチストです。なので理屈にあった理由は無いと思われます」

 

「ああ……らしいですね、それは」

 

「はい」

 

 ――――あいつら、本人が聴いてることわかってんのかな

 

 ――――どちらも天然だからどうかな……

 

 眼だけでそんな会話をして、互いに肩をすくめ合う。

 そんな緩やかな時間の流れを、実は寝ていなかったブライアンは好んで感じていた。

 

 彼女は本をアイマスク代わりにしてソファーから手をだらんと伸ばして寝ているようにしながら、半分だけ意識を覚醒させて体力回復を図っていたのである。

 

「お、エアメールだ」

 

「フランスからかい?」

 

 山と積まれた手紙の中でひときわ大きな物理的存在感を放つそれを指でつまんだ後に開封し、東条隼瀬は中身を改めた。

 

「いや、アメリカだ」

 

「おや、珍しいな。訳そうか?」

 

「できるできる」

 

 ルドルフの父は、アイルランドの出である。

 それだけに、彼女は流暢に英語を操れた。別にこれはきっかけに過ぎず、実際は彼女の努力によるものだが、ともあれシンボリルドルフは日本語、英語、アイルランド語、あとはフランス語もできる。

 天は彼女に二物も三物も与えたらしく、つくづく万能の人であった。

 

「スズカ」

 

「うそで……はい?」

 

 名ウマ娘は、連敗をしない。そういう格言がある。

 だが、うそキャン(うそでしょキャンセル)を喰らったサイレンススズカは、ものの見事に連敗していた。負けず嫌いが変な方向に出ていた。

 

 そんな彼女に舞い込んだこの知らせは朗報であったのか、どうか。

 

「なんでしょう、トレーナーさん」

 

 そうやってくるりと身を翻したサイレンススズカは、続けて放たれた彼の言葉を聴いて一瞬きょとんとしたあと、僅かに笑みを浮かべて頷いた。




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ちん竹林兄貴、Akazaki兄貴、かみサーモン兄貴、403兄貴、完熟メロン兄貴、うりうり兄貴、評価ありがとナス!

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メモリー:0/12/13~1/12/8

掲示板回です。0年目(入学前)の12月13日から1年目12月8日までになります。
コメントで時系列順にやってくれというのがあったので、そうしました。スズカの秋天の反応を見たいというのもありましたが、個人的に書くべきではないと判断したので省きます。
掲示板のネタに関しては活動報告で募集しておりますので、見たい場面がある場合はお申し付けください。

あと2月15日からはじまる短編企画で参謀タキオンのプランB(たぶんブルボンと会わなかったIF)を投稿?寄稿?する予定です。一応単体でも楽しめるようにするつもりであります。
なぜタキオンなのかといえば、Twitter(@LLUMONDE)の固定ツイートにしてあるリクエスト募集とDMで複数の方からリクエストがあったためです。
ちなみにわざわざ告知したのは退路を断つためです。よろしくお願いいたします。



【速報】東条早瀬ミホノブルボンと契約

1:尻尾上がり名無し ??/12/13 18:22:01 ID:YJ/xgG7bm

取り急ぎ

 

2:尻尾上がり名無し ??/12/13 18:22:23 ID:A8IDfta89

誰です?

 

3:尻尾上がり名無し ??/12/13 18:22:39 ID:VyQb/4mES

スズカ壊したやつやで。ミホノブルボンはしらん

 

4:尻尾上がり名無し ??/12/13 18:22:53 ID:fc7w7sI8X

壊した(アメリカで無双中)

 

5:尻尾上がり名無し ??/12/13 18:23:14 ID:/klpNNmOy

>>4

壊れなかったらもっと強かった定期

 

6:尻尾上がり名無し ??/12/13 18:23:29 ID:gPYOscu0J

東条ってことはおハナさん系列のなにかか

 

7:尻尾上がり名無し ??/12/13 18:23:51 ID:EkbaXzlhS

甥だね

 

8:尻尾上がり名無し ??/12/13 18:24:11 ID:mGv6WbTDu

トレセン学園DB見るに短距離っぽいな

 

9:尻尾上がり名無し ??/12/13 18:24:25 ID:i0mwrIoQf

よりにもよってバクシンオーと同期なの芝

 

10:尻尾上がり名無し ??/12/13 18:24:47 ID:fg5RdceiC

でも大島Tがバクシンオーはステイヤー路線行くって言ってた

 

11:尻尾上がり名無し ??/12/13 18:25:05 ID:s8MFdrJ5s

>>10

冗談は指揮だけにしろ

 

12:尻尾上がり名無し ??/12/13 18:25:22 ID:zT7ljRDWP

6人立てでなぜああも詰まらせられるのか

 

13:尻尾上がり名無し ??/12/13 18:25:39 ID:PBfTfpF1h

大島は時々神になるから……

 

14:尻尾上がり名無し ??/12/13 18:25:56 ID:082qrVu0o

チヨちゃんのダービーは神だった。チヨちゃんも神だけど大島も神だった

 

15:尻尾上がり名無し ??/12/13 18:26:13 ID:+o1UMTdin

あの体調完璧やる気MAXオグリをあそこまで追い詰めたのはまごうことなき名トレーナー

 

16:尻尾上がり名無し ??/12/13 18:26:28 ID:ksz+ML9h7

>>13

結構な確率でクソ指揮さらすのやめろや

 

17:尻尾上がり名無し ??/12/13 18:26:44 ID:DUQxDylvF

チヨちゃんのレースではあんまりクソ指揮さらさなかったから……

 

18:尻尾上がり名無し ??/12/13 18:27:04 ID:FtIooQwbR

ヤマトオー「あの……」

 

19:尻尾上がり名無し ??/12/13 18:27:21 ID:apt7ZwbZZ

この時期の契約ラッシュ好き

 

 

 

◆◆◆

 

 

【悲報】ミホノブルボンクラシック路線へ

1:尻尾上がり名無し ??/7/11 13:03:34 ID:OEv71C/lX

ソースはメイクデビューの勝利インタビュー

 

2:尻尾上がり名無し ??/7/11 13:03:49 ID:OxHhWK858

誰?

 

3:尻尾上がり名無し ??/7/11 13:04:11 ID:wrkgBtwNh

あのすごい出遅れした子か

 

4:尻尾上がり名無し ??/7/11 13:04:26 ID:AZK91MGM0

後方差しであの脚使えればバクシンオーに勝てるかもしれないと思ったらこれだよ

 

5:尻尾上がり名無し ??/7/11 13:04:43 ID:rNwY4tVAv

いけてティアラ路線でしょ

 

6:尻尾上がり名無し ??/7/11 13:05:04 ID:wfYe4B9AR

トレーナーに振り回されてかわいそう

 

7:尻尾上がり名無し ??/7/11 13:05:21 ID:Hg7blNI+B

【マイル戦は目指さないんですか?】→【あくまで目標はクラシック三冠であると、そうお伝えしたはずですが】

【ミホノブルボンは明らかにスプリンターです。クラシック三冠を目指す理由は?】→【当人との相談の末そう決めました。既に目標に向けて進行中であり、目的の変更はありえません】

【クラシック三冠に出て、勝てるとは思えませんが】→【わからない方にはわかってもらわなくとも結構】

らしい

 

8:尻尾上がり名無し ??/7/11 13:05:39 ID:KO/D61N59

これどうなんだ……?

 

9:尻尾上がり名無し ??/7/11 13:05:54 ID:ofAw2lbfk

本人が望んでたとしても止めるべきやろ。ブルボンの母親からしていけてマイルまでやんけ

 

10:尻尾上がり名無し ??/7/11 13:06:13 ID:BK1dKd6XM

案外皐月までならいけるかもしれん

 

11:尻尾上がり名無し ??/7/11 13:06:30 ID:XD0yTGwtz

>>10

無理。1600でも長い。メイクデビューだから勝てただけ

 

12:尻尾上がり名無し ??/7/11 13:06:53 ID:j7+mkEgPm

ナリタタイセイに勝てへんやろ

 

13:尻尾上がり名無し ??/7/11 13:07:15 ID:wZjtNUb1v

ナリタタイセイ→ナリタタイシン→ナリタブライアンの3連三冠ウマ娘や! Vやねん、ナリタ家!

 

14:尻尾上がり名無し ??/7/11 13:07:31 ID:Woc1buN6w

まあ今季のクラシック路線はスプリント路線より手薄だからありっちゃあり

15:尻尾上がり名無し ??/7/11 13:07:34 ID:OVgTt00/E

というかスプリント路線が豊富すぎ。バクシンフラワーサンダーと群雄割拠が過ぎる

 

16:尻尾上がり名無し ??/7/11 13:07:51 ID:Nao0Ao2ro

隼瀬くんならやるで

 

17:尻尾上がり名無し ??/7/11 13:08:08 ID:B/pEsnEY9

>>16

所詮リギルのサブトレでしょ

 

18:尻尾上がり名無し ??/7/11 14:17:31 ID:Nao0Ao2ro

>>17

お前ごときが隼瀬くんを語るなやドブカス 殺すで

 

19:尻尾上がり名無し ??/7/11 14:18:53 ID:B/pEsnEY9

>>18

ヒエッ……

 

 

 

◆◆◆

 

 

【ジュニア王者】朝日杯FS実況スレ

1:尻尾上がり名無し ??/12/8 15:20:34 ID:cYoKI7Ohg

出走ウマ娘

1枠1番ビーキューターボ

2枠2番マチカネタンホイザ

3枠3番マイネルモルガン

4枠4番ミホノブルボン

5枠5番シャートアイアン

6枠6番ヤマニンマーベル

7枠7番ハヤテシー

8枠8番ハイパーソヴリン

 

1番人気ミホノブルボン

2番人気ヤマニンマーベル

3番人気マチカネタンホイザ

 

2:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:rRjDVdis7

立て乙

 

3:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:R1NDLmjfA

立て乙!

 

4:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:Xp0zWkDDA

 

5:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:L09FvXpLz

一番人気ブルボンか

 

6:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:hqnFgcFtn

かわいいし歌も踊りもできるからな

 

7:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:ruVP3jIzf

マチタンの方が可愛い

 

8:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:ruVP3jIzf

マチタン俺の方見て手を振ってくれた

 

9:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:Rr+SxdZhn

偶然だぞ

 

10:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:LgXEXBxYE

相変わらず冬の象みたいにボーッとしてるな、ブルボン

 

11:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:aGsgu3Yhj

冬の象は芝

 

12:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:GtEKQjmJE

地獄のトレーニング課されてるらしい

 

13:尻尾上がり名無し ??/12/8  ID:1zp7WYECa

スズカ壊したのになんも反省してないのか……

 

14:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:Nao5xjZoe

>>13

反省しとるで だから隼瀬くんは頑丈な娘を担当することに決めたんや

 

15:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:7ELTSwSE3

関係者湧いてて草

 

16:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:sAYv5LR4V

(妄想)

 

17:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:Nao5xjZoe

>>16

あんま煽ると殺すで

 

18:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:8zbH31Ry/

ヤダこの人……鎌倉武士みたいな思考ルーチンしてる

 

19:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:t5MWomWK2

ブルボン差しかな、先行かな

 

20:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:920AboDkD

速上がりの先行型な気がする

 

21:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:ruVP3jIzf

はー、マチタンかわええ

 

22:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:jtoLcMvKx

ブルボンは何を見てるんだろ

 

23:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:8BF0O374q

刻の涙

 

24:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:k1CbnLoMc

宇宙

 

25:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:wgmpAi6pL

未来

 

26:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:lpoPSlwfW

過去

 

27:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:iAkelLJJB

星とか

 

28:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:jgtzGafbE

ブルボン実家の犬に似てる

 

29:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:BXw7ct7Sy

栗毛のウマ娘、犬っぽく思われがち

 

30:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:G0Z4DwVrE

ヤマベルここまで既に3勝してるあたり、走って仕上げていく感じなのかな

 

31:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:ruVP3jIzf

ちなみにマチタンは2勝してるよ!

 

32:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:TM7lYf8uH

ブルボンは鍛えに鍛えるけどレースにはあんま出てないのな

 

33:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:4MqqvITdP

というか出走ウマ娘少なくね

 

34:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:Nao5xjZoe

隼瀬くんはもともとレースにあんま出さへんよ 実戦の方が遥かに消耗するから言うて

 

35:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:pnVA/DvGT

>>33

今年からクラシック路線に進むことを決めたウマ娘しか出走できんくなったからじゃね

いきなりやし、ジュニア級の冬時点で選択肢狭めるのはきついやろ

 

36:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:q1MAmcad4

そういやそんなこと言ってたな

 

37:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:ugXWEZl+4

マ? 知らんかった……シチーみたいなことはもうできんのか

 

38:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:1fCrUXURk

>>35

出走したけどやっぱティアラ路線に行きたい!って言ったらどうなんの?

 

39:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:Kzhgtx33m

>>38

行けない。朝日杯FSに出走したウマ娘はティアラ路線にはいけない

挑戦する形になる逆はええけど都落ちはだめ

 

40:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:b///0LvL3

はえー、そうなんやね

 

41:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:LYaipYLfs

URAは情報の周知が下手すぎる

 

42:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:InGyBiHYb

お、ゲート入りはじまったな

 

43:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:9RtixT2pP

こうして見てるだけでも緊張するのに実際に待つウマ娘たちは死ぬほど緊張するんやろな

 

44:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:uVXTwCP5k

それはそう

 

45:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:VU5rkkYqW

ブルボンあいかわらずボケーッとしてて芝

 

46:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:87SawOE8d

よっぽどの大物か、圧倒的なバカか

 

47:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:Nao5xjZoe

1枠の娘キリキリしとるね。内枠は物理的には有利になることが多いけど、精神的にはそうでもないんよ。一長一短やね

 

48:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:LbbrMn6w+

すげぇ知ったような口聞いてて芝

 

49:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:Nao5xjZoe

>>48

知っとるもん

 

50:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:xOzoy1S42

まじで関係者なのか……?

 

51:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:Nao5xjZoe

>>50

そう言っとるやろが

 

52:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:kywf+ixMt

ゲート入るだけでも結構個性出るもんやね

 

53:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:zMgDbC6PO

そろそろスタートか

 

54:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:ACzEZzmv0

あー、緊張する

 

55:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:OHfod8TrZ

実況もよう盛り上げるわ

 

56:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:KLvZxy2Dz

ファッ!?

 

57:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:93Hxy4beR

は!?

 

58:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:x2KclhFK+

お前が逃げんのかい!

 

59:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:suOiWzeVr

ブルボン逃げんの?

 

60:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:poSGHcEtV

スタミナ死ぬ!

 

61:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:oObOP2oZK

これにはマイネルモルガンもびっくり

 

62:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:FMkGu6Ckn

もうハナに立った

 

63:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:yQ5I/17/i

ペース速くね

 

64:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:jvkxKUZZ8

とんでもない時計でそう

 

65:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:fHJI2uY5/

俺未来人だけどブルボンは三冠ウマ娘になるよ

 

66:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:PByBZfU8j

(なら)ないです

 

67:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:EJtItuFmM

なろうと思って、そう簡単になれるものじゃないぞ

 

68:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:fHJI2uY5/

あと凱旋門も勝つよ

 

69:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:y6/S5V3E4

嘘乙

 

70:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:/yBq1L0kO

>>68

ブルボンが凱旋門賞勝ったらクソ会社に辞表叩きつけて道頓堀に飛び込むわ

 

71:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:w1nHH0uUd

というかグングン離していくな

 

72:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:tRuJ9lGJ6

ペース配分という概念が頭になさそう

 

73:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:Nao5xjZoe

時計一定やね。ちゃんと配分できとる、隼瀬くんに相応しい賢い子や

 

74:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:hqTcFmHY1

鬼みたいなハイペース

 

75:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:swZemES0q

後ろのウマ娘たちめちゃめちゃ戸惑ってるな

 

76:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:mdGPNvj7e

ブルボンのスタミナが未知数すぎる。このペースで保つなら前に行かないと話にならないし保たないなら後ろで待ってた方がいい

 

77:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:KESn3XCnJ

保つわけがない

 

78:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:/eC0FtyQz

そう考えたウマ娘多いみたいだね

 

79:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:WcSthlQp6

マチタン!?

 

80:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:tgGjupoeZ

マチタンじーっと待ってる

 

81:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:TEOUbd4Oz

ヤマベルさんもいかんのね

 

82:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:C1/LyQqRF

でも実際この二人だけが後ろ残っても風除けがなくてキツくね

 

83:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:Nao5xjZoe

『終わり』やね。どのみち詰んどる

 

84:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:/4vWbvnxd

どうせ減速する

 

85:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:j1+a/uFWd

序盤無敵、道中最強、終盤瀕死、逃げとはそういうもん

 

86:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:izfmWNt4A

>>85

スズカ以外な

 

87:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:FsOCMd+RX

ものすごい逃げてるな

 

88:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:TiuDk3DA7

走ってるときのウマ娘の眼って怖いこと多いけどブルボンはそうでもないな

 

89:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:CjV0Sq+mS

そしてあんま振り返らないのね

 

90:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:CjTcjm0jO

そいえばなんで逃げって振り返るの?

 

91:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:0NBND1NvH

>>89

後続との距離を確認して脚を緩めて溜めるため

 

92:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:Fz+critiW

>>89

スタミナ管理のため

 

93:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:re4z+SH7g

コーナー曲がるのうまいな。ロスがない

 

94:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:udejYoBK3

少しでも外行ったらスタミナもたないんでしょ

 

95:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:HJO0bJ3yx

ひょっとしたらこのまま逃げ切る?

 

96:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:HPrtjE8L9

無理でしょ

 

97:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:NlPslVrHh

素人かな

 

98:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:YFUo3+saI

逃げはたいてい逃げ切れないんだよなぁ……

 

99:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:5ECWBw8jx

ブルボンのフォーム全然変わんないね

 

100:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:bgWgKifBZ

基本的に一定のペースで動いてんのかな

 

101:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:tGjtCo424

無理。ウマ娘は走ってる最中基本酸欠気味になるから

 

102:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:YEe7eRs/W

酸欠になると判断力が低下したり斜行したりする。そんな中で一定のペースを保つのは無理に近い

 

103:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:PGutZLu8Q

おいおいおい

 

104:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:MYRhP+i9a

最終コーナーまで結局追いすがれてすらないんだが?

 

105:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:fiS5b/OLO

ひょっとしてほんとに逃げ切る?

 

106:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:Mu3vLW0vX

1800メートル逃げ切りか

 

107:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:XiFb0zqiL

>>1600な

 

108:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:7VHg2dMcJ

前列崩れたな

 

109:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:VNDrwcjkx

お前らが垂れてくるんかい

 

110:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:AFJtFFKsC

マチタンとヤマベルは正しかったんやね

 

111:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:FL+kbLerx

クッソ差があるけどここから差しきれんのか

 

112:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:o7WwwPdfR

こりゃ逃げ切りか

 

113:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:ruVP3jIzf

マチタンがんばえー!

 

114:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:/ZOYwdl7Y

20バ身くらいありそうなんだが

 

115:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:muvTXT3DV

中山の直線きたぁああああ!

 

116:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:+PJTWCyap

中山の直線は短いぞ!

 

117:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:f1qvaGYV/

中山の直線は短いぞ!

 

118:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:KEU5vuS/r

中山の直線は短い!

 

119:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:No6WDY0nq

中山の直線のどこがスレ民の心を惹きつけるのか

 

120:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:eRkfj1roA

直線短い中山ってひょっとして逃げ切りしやすい?

 

121:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:OwlKKTlF4

マシではある

 

122:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:jw65LZis7

府中が後方天国すぎるところはある

 

123:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:rlz7AI3K6

こりゃ逃げ切りだわ

 

124:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:t8n+nNZMn

この差は埋まらんな

 

125:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:ruVP3jIzf 

マチタン……!

 

126:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:gstYU7f5g

GⅠ大差勝ちとか久々に見たな

 

127:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:zYNLUuRLf

強い(つよい)

 

128:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:5BZG3MdQV

これは最強マイラーですわ

 

129:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:fGblwL6Es

結構ポーカーフェイスなあたりまだ余裕あるのか

 

130:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:ghIjL7pwI

スプリント路線にいくのはやめるにしてもマイル路線いったらGⅠの1つや2つは勝てそう

 

131:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:QEAF3eQ5x

血統がね……優秀な血を持ってる娘は経験を積むたびに能力が目覚めていくけどブルボンはここが限界な気がする

極端な早熟というか

 

132:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:sUbwlazM5

>>たしかにジュニア王者は大成しないみたいなジンクスあるしな

 

133:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:L8Gwixi/p

ブルボンとことこで芝

 

134:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:1FOtLQLpp

逃げるだけ逃げて勝つだけ勝ってさっさと帰るレースロボブルボン

 

135:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:m8owTsl2x

今年のマイルCS楽しみだわ。スズカはアメリカに行っていなくなっちゃったし、タイキ一強はよろしくない

 

136:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:NbRkQ11LW

ロボボンこれで初重賞制覇か

 

137:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:4yCdIo8wY

初重賞制覇がGⅠってすごくね

 

138:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:DuEGr5Fwi

大抵のウマ娘が重賞勝てないし、GⅠなんかもっとだからすごくはあるけどさほど珍しくはない

 

139:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:1colXwtMU

初重賞制覇がGⅠは珍しいな

 

140:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:BNTxd3ZOc

今季のジュニア王者はどこまでいけるかな

 

141:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:PCrDU6VgL

去年の朝日杯FS勝った娘って誰だっけ

 

142:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:EpRieYVfm

留学生のリンドシェーバーちゃん。ちなレコード出した

 

143:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:PCrDU6VgL

>>142

今何やってんの?

 

144:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:n33R8oSqk

弥生賞後骨折して引退

 

145:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:PCrDU6VgL

>>144

あー、惜しかったな

 

146:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:isnJnytag

ブルボンレコードか

 

147:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:zWS0x6hnn

リンドシェーバーちゃんの蹄跡が……

 

148:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:BRoFYkBot

ブルボンは1600ならいいところまでいけるかもな

 

149:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:MVRQmZ1qQ

レコードはすごいな。ただリンドシェーバーちゃんも逃げだったんよな

 

150:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:t2TKbnxzv

ひょっとしたら皐月勝てるかもしれんね

 

 

 

 




34人の兄貴たち、感想ありがとナス!
キャサリウス兄貴、RitterSchild兄貴、銀之助兄貴、ねがてぃぶ兄貴、ヘビビンガー兄貴、zero213sw兄貴、おーの兄貴、gbwj兄貴、焼きそば兄貴、デイジー@物書き見習い兄貴、Moon Lain兄貴、ヴォル=フラン兄貴、評価ありがとナス!

感想・評価いただけると幸いです。


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メモリー:1/12/13~1/12/22

【悲報】ブルボン、連闘

1: ??/12/10 19:25:09 ID:yY6DmmVmT

ホープフルステークスにも出る模様

 

2: ??/12/10 19:25:22 ID:j67SdkJhV

マ?

 

3: ??/12/10 19:25:34 ID:LiiGCTwR7

ソースハラディ

 

4: ??/12/10 19:25:48 ID:cgvkOZAfQ

URA公式サイト見ろ

 

5: ??/12/10 19:26:02 ID:dm1mqCbTn

スズカ破壊したのにまだこりてない模様

 

6: ??/12/10 19:26:13 ID:V2jmBoNF7

言うてスズカはゆるゆるローテだったけどな

 

7: ??/12/10 19:26:26 ID:SEYZjme7y

マチタンも連闘;;

 

8: ??/12/10 19:26:38 ID:SEYZjme7y

マチタンの身体が心配だ……いつも俺に向けて手を振ってくれるええ子なのに

 

9: ??/12/10 19:26:48 ID:aWiuF3Iu9

マチタンが手を振ってる相手は俺なんだよなぁ

 

10: ??/12/10 19:27:02 ID:EnvTvRXe8

は? 俺だが?

 

11: ??/12/10 19:27:16 ID:YEXY2Yb2u

ワシじゃよ

 

12: ??/12/10 19:27:30 ID:fHJI2uY5/

俺未来人だけどマチカネタンホイザは引退まで怪我はしないよ

 

13: ??/12/10 19:27:44 ID:fVfx6Ncu8

なんか朝日杯FSだかなんだかのスレにも自称未来人ニキいたな

 

14: ??/12/10 19:27:57 ID:IUgGkQbyf

こいつか

 

65:尻尾上がり名無し ??/12/8 ID:fHJI2uY5/

俺未来人だけどブルボンは三冠ウマ娘になるよ

 

 

15: ??/12/10 19:28:07 ID:lt5tjHulI

>>12

怪我はって、なんか含むところがありそうやな

 

16: ??/12/10 19:28:18 ID:fHJI2uY5/

鼻血でレース回避したり蜘蛛食って蕁麻疹出て回避したりする

 

17: ??/12/10 19:28:29 ID:LjOp8rymG

鼻血くらい止めて走ればええやん

 

18: ??/12/10 19:28:44 ID:Nao3c4hx3

鼻血なめんな、走行中に再発したら最悪死ぬで

 

19: ??/12/10 19:28:59 ID:0KsRZvLEp

>>18

なんで?

 

20: ??/12/10 19:29:12 ID:Nao3c4hx3

ウマ娘が全力で走ってるときはただでさえ酸欠気味なのに、鼻使えんくなったらぶっ倒れるに決まってるやろ

時速70キロでぶっ倒れたら選手生命どころか物理的な生命が危うい、他のウマ娘を巻き込みかねない だから普通トレーナーは出走回避させるんや

だからお前らも出走前ウマ娘に異変を感じたら適当なスタッフつかまえて言え

 

21: ??/12/10 19:29:23 ID:iR4GJztxT

はえー、知らなかった

 

22: ??/12/10 19:29:34 ID:2s84odw9/

>>20って自称関係者か?

 

23: ??/12/10 19:29:46 ID:Nao3c4hx3

自称やない言う取るやろドブカス 殺すで

 

24: ??/12/10 19:29:58 ID:pp5kwkCCa

殺意が高すぎる

 

25: ??/12/10 19:30:13 ID:J4txOxflY

この殺意……やはり本物か

 

26: ??/12/10 19:30:25 ID:DTNsmKU8L

>>14

改めて見てもほらふき過ぎる

 

27: ??/12/10 19:30:37 ID:k7cTPrJBG

というか>>20が関係者だとして、異変を感じて対処するのはトレーナーとかサブトレがやるんじゃないの?

 

28: ??/12/10 19:30:48 ID:Nao3c4hx3

>>27

ウマ娘は意地はったやつが多いからトレーナーでもわからんことが多いんや 近い関係だから余計にな

 

29: ??/12/10 19:31:00 ID:Qc+fjveg0

(こいつ本物なんじゃ……)

 

30: ??/12/10 19:31:13 ID:Nao3c4hx3

本物や言うとるやろ

 

31: ??/12/10 19:31:23 ID:mjfw4FJI6

じゃあ関係者ニキはなんで連闘させると思うわけ?

 

32: ??/12/10 19:31:35 ID:QUd5uMig5

中山2000メートルだからやろ 皐月と同じやんけ

 

33: ??/12/10 19:31:49 ID:bQDWKQ/XA

じゃあなんで朝日杯FSに出たの? ホープフル直行じゃだめなの?

 

34: ??/12/10 19:32:03 ID:odO2JAzFl

ブルボンマイル路線行った方が絶対いいと思うけど本職から見てどう?

 

35: ??/12/10 19:32:16 ID:odBgDqz0X

実際のところブルボンってどうなの?

 

36: ??/12/10 19:32:30 ID:Nao3c4hx3

>>33

朝日杯はGⅠという舞台を体感させるため、ホープフル直行だとGⅠのプレッシャーに加えて適性外距離への挑戦もいっぺんにこなすことになるから負荷がデカい思ったんちゃうか

>>34

本人の願望無視すればマイル行くのがええとは思うで。実際限界を超えなきゃあかんやろうし

>>35

今日トレセンに納入されたジュークボックスぶっ壊してた。隼瀬くんの言うこときくエエ子やで

 

37: ??/12/10 19:32:45 ID:AhyNwWImG

 

今日トレセンに納入されたジュークボックスぶっ壊してた

 

ええ……

 

38: ??/12/10 19:32:58 ID:Y97lZMDBI

やさしい象みたいな感じして意外とバイオレンスなのか

 

39: ??/12/10 19:33:11 ID:mPbkBg59d

なんで壊したの?

 

40: ??/12/10 19:33:25 ID:Nao3c4hx3

なにもしてないのに壊れたいうとったで

 

41: ??/12/10 19:33:40 ID:M4M3JxF9I

パソコン初心者みたいな言い訳で芝

 

42: ??/12/10 19:33:52 ID:tzEqZjPYx

あれ本人はほんとに何もやってないと思ってるからたちが悪い

 

43: ??/12/10 19:34:04 ID:KrEb9uIrK

機械音痴なのかな

 

44: ??/12/10 19:34:18 ID:Nao3c4hx3

音痴ですめばいい方よ

 

45: ??/12/10 19:34:28 ID:L0rPBi/r7

ホープフル出る娘でおすすめは? ブルボンマチタン以外で

 

46: ??/12/10 19:35:59 ID:Nao3c4hx3

>>45

ライスシャワーやね

 

 

 

◆◆◆

 

 

【年末〆】ホープフルステークス感想スレ【レコード】

1: ??/12/22 12:18:10 ID:ezCR6fM/k

出走ウマ娘

1枠1番 ミホノブルボン

2枠2番 タイフウ

3枠3番 ライスシャワー

4枠4番 ラガーハリケーン

5枠5番 マロンロード

5枠6番 ハヤノシュート

6枠7番 マチカネタンホイザ

6枠8番 ツルマルテイオー

7枠9番 ナリタヒロイン

7枠10番 マイネルリーダー

8枠11番 トキオチャンプ

8枠12番 スーツアクター

 

一番人気マチカネタンホイザ

二番人気スーツアクター

三番人気ライスシャワー

 

一着ミホノブルボン

二着マチカネタンホイザ

三着ライスシャワー

 

2: ??/12/22 12:18:21 ID:VttHx5uI9

立て乙

 

3: ??/12/22 12:18:35 ID:gvE8cXxfc

立て乙

 

4: ??/12/22 12:18:47 ID:dvYQ9nH+e

立て乙!

 

5: ??/12/22 12:18:59 ID:72lyYgCYM

いいレースだった

 

6: ??/12/22 12:19:13 ID:6S1mppBwQ

なお勝ったのは4番人気ミホノブルボン

 

7: ??/12/22 12:19:24 ID:QOsD5JT7U

2000メートルは長いおじさん「2000メートルは長い」

 

8: ??/12/22 12:19:36 ID:pMBgc5xyA

レコードだしたウマ娘に対して距離が長いとか言ってた節穴wwww

 

9: ??/12/22 12:19:51 ID:7E6pH/NXd

実際しょぼい血統だったからしゃーない

 

10: ??/12/22 12:20:01 ID:KzlVThXRK

マチタン前目につけてたけど追いつけなかったな

 

11: ??/12/22 12:20:12 ID:tvYaK8hI9

2戦連続大差勝ちなあたり早熟傾向なのか

 

12: ??/12/22 12:20:23 ID:MBX06dMnG

普通に強くて芝

 

13: ??/12/22 12:20:24 ID:sdAy5qFjt

>>8

芝生やすな

 

14: ??/12/22 12:20:46 ID:mO0BDj+K8

言うてスプリンターやしいけて2000メートルまでだろうな

 

15: ??/12/22 12:20:58 ID:pxm95sWb7

まあマイルウマ娘が秋天でるのはそう珍しいことじゃないし

 

16: ??/12/22 12:21:11 ID:fwCNXY9Ya

2000メートルは中距離だけどギリマイルみたいなところある

 

17: ??/12/22 12:21:22 ID:ekzc8AUWr

これでGⅠ2勝ってすごくね

 

18: ??/12/22 12:21:34 ID:+ZmYX60O2

重賞勝つのも結構すごいことだからな

 

19: ??/12/22 12:21:47 ID:+2aM/qyw3

スターウマ娘は平気でGⅠ勝つけど大半のウマ娘はメイクデビューとか未勝利戦も勝てないしな

 

20: ??/12/22 12:22:02 ID:OXZZ3D9eo

親戚にトレーナーがいるけど、重賞勝ったときめっちゃ嬉しそうだった

 

21: ??/12/22 12:22:16 ID:hKfLs905d

>>20

リーディング載ったことある?

 

22: ??/12/22 12:22:28 ID:OXZZ3D9eo

>>21

ない。4人目に担当したウマ娘の引退年に手薄なGⅢ勝って、そこからしばらくして地方に飛ばされた

 

23: ??/12/22 12:22:43 ID:7k80lM6aK

リーディング上位3人とかいう発表する必要すらない連中

 

24: ??/12/22 12:22:53 ID:I16o1Q6wG

東沖南定期

 

25: ??/12/22 12:23:05 ID:ob4ax78fv

東条沖野南坂定期

 

26: ??/12/22 12:23:16 ID:uS8jwCAJV

4位が実質1位みたいなもん

 

27: ??/12/22 12:23:27 ID:KgSLeMIbt

>>24

>>25

クソ定期

 

28: ??/12/22 12:23:41 ID:hKfLs905d

>>22

そうか……やっぱ厳しいんだな

 

29: ??/12/22 12:23:54 ID:5Z15cB9k6

GⅠ勝つのってすごいことだからな

 

30: ??/12/22 12:24:08 ID:5XB0LdKWA

言うてジュニア限定GⅠ

 

31: ??/12/22 12:24:20 ID:R7AvBRgrF

東条甥って逃げ育成が得意なのかな

 

32: ??/12/22 12:24:31 ID:vblmeO5+G

スズカを開花させたのも甥だしな

 

33: ??/12/22 12:24:41 ID:0nn/nfuOn

今回はどんな逃げをするのやら

 

34: ??/12/22 12:24:56 ID:NaoiVWqSr

たぶん定速逃げやね

 

35: ??/12/22 12:25:06 ID:EhG9Zuv6c

>>34

定速逃げって?

 

36: ??/12/22 12:25:19 ID:NaoiVWqSr

一定のペースで淡々とラップ刻んで逃げる。全力で走るよか脚の負担がマシになるんや

 

37: ??/12/22 12:25:34 ID:rqgGPKgB+

はえー、スズカのときもそうやったけど変なことを思いつく能力は高いのか、甥

 

38: ??/12/22 12:25:49 ID:DP13g6pIJ

逃げて差すとかいう史上最高に意味不明な戦法好き

 

39: ??/12/22 12:26:00 ID:sQg9vuj9G

なお負荷かかり過ぎで壊れた模様

 

40: ??/12/22 12:26:13 ID:NaoiVWqSr

>>37

能力高いのはホントやけど隼瀬くんはピュアーシンボリ言うウマ娘がやってたところから着想得たんやろうから独創やないで

すごいのは規則的な逃げをできるメンタルがある言うことを見抜いたってことや

 

41: ??/12/22 12:26:25 ID:ZTBYoOSAf

ピュアーシンボリで誰ぞ

 

42: ??/12/22 12:26:36 ID:Kq6QB+0PC

シンボリの一門であることは間違いない

 

43: ??/12/22 12:26:50 ID:28WGTwX6v

メジロアサマ(出身:シンボリ家)とかもあるから案外そうでもないかもしれん

 

44: ??/12/22 12:27:02 ID:63biEem2A

シンボリ家とメジロ家とかいう腐れ縁好き

 

45: ??/12/22 12:27:15 ID:6Ro30oW4Q

東西の巨頭だぞ

 

46: ??/12/22 12:27:28 ID:CxR0fmCEO

幼名しか付いてなかったときにメジロ家嫡子に見初められラブラブになって嫁ぐとかいうラブコメ展開

 

47: ??/12/22 12:27:42 ID:NaoiVWqSr

>>41

現当主の娘や

 

48: ??/12/22 12:27:55 ID:Z8mDR5TqM

調べたらGⅠ勝ってないんだね

 

49: ??/12/22 12:28:10 ID:hJNj72/mR

39戦←すごい

9勝←おお……

重賞3勝←ん?

 

50: ??/12/22 12:28:21 ID:kRWZUWXX2

あんま強くなくて芝

 

51: ??/12/22 12:28:33 ID:dxnEpyERp

というかなんでID:NaoiVWqSrはぱっとこんなのがでてくるんだ

 

52: ??/12/22 12:28:46 ID:TtLqajrbd

関係者ニキだからじゃね

 

53: ??/12/22 12:28:56 ID:NaoiVWqSr

やっとわかったんかバカども。血の巡りがトロいわ

 

54: ??/12/22 12:29:07 ID:IAoBDgpoP

こいつ半コテ化しつつあるな

 

55: ??/12/22 12:29:21 ID:UaCfqrRTZ

やっぱ息をするようにGⅠ勝つルドルフってすごかったんだな。宝塚まで王道の走りをして伏線貼って、そこから手を抜きつつ全勝するって天才すぎる

 

56: ??/12/22 12:29:35 ID:6hq8ossDs

そんなことよりマチタンは今日もかわいかった

 

57: ??/12/22 12:29:48 ID:OXZZ3D9eo

>>49

重賞3勝って本当にすごいんだけどね

うちの親戚は四六時中勝つために頑張ってたけど勝てなかった

 

58: ??/12/22 12:30:01 ID:NaoiVWqSr

頑張る必要なんてないわ 勝ちゃええねん

 

59: ??/12/22 12:30:15 ID:ikv0doVuN

>>55

そんなルドルフでも勝てなかった凱旋門も勝つという予言を受けたウマ娘がいるらしい

 

60: ??/12/22 12:30:26 ID:4oXryeROz

誰?

 

61: ??/12/22 12:30:39 ID:Csuex4HKH

>>60

ブルボン

 

62: ??/12/22 12:30:52 ID:+PsZXaRl+

無理だろ

 

63: ??/12/22 12:31:05 ID:fHJI2uY5/

俺未来人だけどルドルフも凱旋門賞勝つよ

 

64: ??/12/22 12:31:16 ID:xQSqN8ELa

>>63

来年?

 

65: ??/12/22 12:31:29 ID:fHJI2uY5/

ブルボン制覇の翌々年。ミホノブルボン→カーネギー→シンボリルドルフ

 

66: ??/12/22 12:31:42 ID:5CYH4Nsvq

ルドルフが勝つのはまあいいとして、ブルボンだけは絶対にないわ

 

 




57人の兄貴たち、感想ありがとナス!
b2兄貴、日本2兄貴、しゃね兄貴、HRN hirona兄貴、評価ありがとナス!

感想・評価いただけると嬉しいです。


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メモリー:1/12/22〜2/4/12

んこにゃ(@Nkonya0529)兄貴からファンアートいただきました!
ブライト実装まで更新予定がないのでこっちで載せさせていただきます!

【挿絵表示】



【皐月前】今年のクラシック戦線を語ろう

1: ??/4/12 19:22:46 ID:iwqPoe9Ia

ナリタタイセイはいいぞということをお前達に伝える

 

2: ??/4/12 19:22:57 ID:Fr+X35afk

ナリタの娘か

 

3: ??/4/12 19:23:10 ID:71HzKAvp8

優勝歴は?

 

4: ??/4/12 19:23:21 ID:/68Ovs46s

>>3

メイクデビュー、若駒S

 

5: ??/4/12 19:23:35 ID:gRAPW4Kf9

テイオーを思い出すローテ

 

6: ??/4/12 19:23:45 ID:OeyUW7nwx

テイオーの大阪杯すごかったな。楽勝だった

 

7: ??/4/12 19:23:57 わID:Ef2ri/ZIn

するっと勝っちゃうあたりすごいわ

 

8: ??/4/12 19:24:07 ID:6lSgFZxlm

骨折したら普通引退もありうるんだよね?

 

9: ??/4/12 19:24:17 ID:E+2VEC5Nz

>>8

折れた場所によるけど、テイオーは結構なところ折ったからその通り

 

10: ??/4/12 19:24:28 ID:RuFiv8h9k

今年のクラシックレースでは三冠ウマ娘生まれるんだろうか

 

11: ??/4/12 19:24:41 ID:wpEofwYtg

去年のテイオーは本当に惜しかった

 

12: ??/4/12 19:24:54 ID:5EnTl02I8

菊花賞出れてさえいればね……

 

13: ??/4/12 19:25:08 ID:gya/plXii

勝ったリオナタールはダービーで手も足も出てなかったからな

 

14: ??/4/12 19:25:21 ID:gya/plXii

>>13

テイオーは3000メートルきつそうだから出れば勝てるとはいかないと思うわ

 

15: ??/4/12 19:25:28 ID:GbbiHx/ag

>>13

まあ勝てるだろうけど苦戦はするだろうな

 

16: ??/4/12 19:25:41 ID:751vjt1M0

今回のクラシック予想

皐月賞:ミホノブルボン

日本ダービー:ナリタタイセイ

菊花賞:マチカネタンホイザ

 

17: ??/4/12 19:25:55 ID:Tz6LCd4VQ

マチタン長い脚使えるからステイヤーっぽいよな。今までは距離が短すぎた感ある

 

18: ??/4/12 19:26:05 ID:px2WBgMwI

無敗でGⅠ2勝してるのに妙に評価が低いブルボン

 

19: ??/4/12 19:26:17 ID:fNXQLAuXd

トレーナーとしてはダービー勝ちたいだろうけど皐月賞→NHKマイル→安田のマイル路線に進んでほしいわ

 

20: ??/4/12 19:26:28 ID:8TNiJWuVC

NHKマイルからダービーの連闘とかしそう

 

21: ??/4/12 19:26:40 ID:vc4C6zRen

朝日杯FSからホープフルステークスのローテを見るにありそうで怖い

 

22: ??/4/12 19:26:51 ID:wPYLXfeFw

俺はブルボンはダービーまで勝てると思うわ。菊花は無理

 

23: ??/4/12 19:27:02 ID:dJH4+V6uC

今の圧勝ぶりを皐月賞でも見せられればダービーも逃げ切れそうではある

 

24: ??/4/12 19:27:16 ID:Nb5JMtbB8

スプリングステークス勝ったしな

 

25: ??/4/12 19:27:29 ID:zFnMiTvfq

基本大差勝ち&レコードだから残り400メートルは道中の貯金で勝てそう

 

26: ??/4/12 19:27:40 ID:GvuCBPO09

>>25

府中の直線は長いぞ

 

27: ??/4/12 19:27:54 ID:AMtjdtiJL

>>26

中山の直線は?

 

28: ??/4/12 19:28:27 ID:HUmUne2OJ

>>27

短いぞ!

 

29: ??/4/12 19:28:37 ID:qKT1Dcylw

>>27

短いぞ

 

30: ??/4/12 19:28:38 ID:A7XPeiZYT

>>27

短い

 

31: ??/4/12 19:28:42 ID:ZflaCY41E

>>27

短いぞ

 

32: ??/4/12 19:28:54 ID:sHGGa6EGj

実況ワラワラで芝

 

33: ??/4/12 19:29:07 ID:flw8T7DKb

というかダービーの逃げ切り勝ちは難しいから普通に無理だろうな

 

34: ??/4/12 19:29:18 ID:RJeIntC6G

アイネスフウジン勝ったじゃん

 

35: ??/4/12 19:29:32 ID:p/GV5iB94

勝ったあとがね

 

36: ??/4/12 19:29:44 ID:cidxmqPzC

今アイネスなにしてんの?

 

37: ??/4/12 19:29:56 ID:SjjaNPR6+

故障治してドリームリーグ進んだ

 

38: ??/4/12 19:30:09 ID:/t2kMSrFw

>>34

アイネスフウジンは言うて中距離得意だったからな。レース少なすぎてよくわからんけど

 

39: ??/4/12 19:30:21 ID:4WucmUh4K

>>37

はやくね

 

40: ??/4/12 19:30:32 ID:HymUpkE4C

>>39

ドリームリーグの方が稼げるからしゃーない

 

41: ??/4/12 19:30:46 ID:dvg/rlTnT

そういえばなんでダービーで逃げは不利なの?

 

42: ??/4/12 19:30:56 ID:DgngY/OfK

直線が長いから後方脚質の方が有利なだけ

 

43: ??/4/12 19:31:08 ID:Fvmrdw6dc

ちなみに長距離でも逃げは不利だぞ

 

44: ??/4/12 19:31:19 ID:z2fJzgQ6z

もうないじゃん……

 

45: ??/4/12 19:31:31 ID:lMcBJyypg

三冠ウマ娘はいつ生まれるんだろ

 

46: ??/4/12 19:31:43 ID:Mt7NUfVXa

再来年じゃね。来年はBNWが拮抗してるし、今年は2000メートルの中山ならブルボンが勝つだろうし

 

47: ??/4/12 19:31:55 ID:UeZKX8ze+

ブライアンか……

 

48: ??/4/12 19:32:07 ID:IMeuuwKX9

ブライアンかっこいいから好き

 

49: ??/4/12 19:32:17 ID:p/CYHECbD

無敗の三冠また見たいなぁ……

 

50: ??/4/12 19:32:30 ID:1CeSrTsnP

未来人ニキブライアンとブルボン間違えた説

 

51: ??/4/12 19:32:43 ID:yQsUEkWYV

同じブからはじまるしその可能性もあるな(適当)

 

52: ??/4/12 19:32:54 ID:rrgabgoDV

三冠ウマ娘はマチタンだよ!

 

53: ??/4/12 19:33:06 ID:JpHlHIgNL

マチタン狂信者兄貴もよう来とる

 

54: ??/4/12 19:33:19 ID:7Ip7Jlfak

狂信者と言えば半コテドブカスニキ来てないな

 

55: ??/4/12 19:33:31 ID:UnDP4D2Ng

忙しいんじゃね。そろそろスプリングドリームリーグだし

 

56: ??/4/12 19:33:43 ID:Y4wezzlkF

マジで関係者なのか……

 

57: ??/4/12 19:33:54 ID:ssUopgiGm

実際言ってることはもっともらしくはあった

 

58: ??/4/12 19:34:06 ID:hC2hguowS

【朗報】東条隼瀬さん、レコードを意図的に叩き出させていた

 

59: ??/4/12 19:34:16 ID:LPt2UMOiS

>>58

ファ!?

 

60: ??/4/12 19:34:29 ID:BdYCEcjVL

意図的に叩き出せれば誰も苦労しないんだよなぁ……

 

61: ??/4/12 19:34:39 ID:rPljlwPZc

ソースは?

 

62: ??/4/12 19:34:50 ID:4IkoZtQ+f

皐月賞1週間前インタビュー記事

 

63: ??/4/12 19:35:00 ID:/TptzNmkd

ちなマチタンの南坂Tは「今回は隼瀬さんが出てきますので、どう出てくるかというところに警戒していきたいですね」とのこと

 

64: ??/4/12 19:35:12 ID:9MkXP0la2

油断はしないリーディング常連の鑑

 

65: ??/4/12 19:35:25 ID:m4PB8ID2Z

リーディング常連というかリーディング3位常連というか

 

66: ??/4/12 19:35:35 ID:UFFDyLoQL

???「おなじみ3着ー」

 

67: ??/4/12 19:35:49 ID:aEEYvZgmq

>>66

普通にすごい定期

 

68: ??/4/12 19:35:59 ID:oDY16JxMp

>>66

GⅠ勝ってないから一流とは言い切れないけど一流並みに強い。長持ちしそうだしこれからのシニアで勝てるだろうから期待

 

69: ??/4/12 19:36:11 ID:YfbJLUsDf

で、東条甥はなんて言ってたんだ

 

70: ??/4/12 19:36:22 ID:NaoVvf8aA

隼瀬くん相変わらず顔がええわ。鷹瀬さんに似とる

 

71: ??/4/12 19:36:35 ID:hXwsdiBOY

>>69

「事前にコースレコードとレースレコードを調べ、1ハロンごとに分割する。ラップタイムから逆算して、それを超えられるように鍛えれば勝てる」

 

72: ??/4/12 19:36:49 ID:7HKhfjHZX

それはそう

 

73: ??/4/12 19:37:01 ID:WYvkLrubC

なるほど完璧な作戦っスね―――ッ 不可能だという点に目をつぶればよぉ~~~

 

74: ??/4/12 19:37:13 ID:bAfkAr0h7

それされたら無理ゲーだけどやる方も無理ゲーだろ

 

75: ??/4/12 19:37:24 ID:Ud3DOJ1vN

>>70の鷹瀬で思い出したけど、あいつ引退後はどこで何やってんの

 

76: ??/4/12 19:37:35 ID:4eJQDkzMK

シンボリ家の教官

 

77: ??/4/12 19:37:46 ID:NaoVvf8aA

>>75

お前ごときが呼び捨てにしてええお方やないねんドブカス 殺すぞ

 

78: ??/4/12 19:37:57 ID:92zPRFFb1

うわ出た

 

79: ??/4/12 19:38:08 ID:ujuhVjEVF

息をするような殺害予告。俺じゃなきゃ見逃しちゃうね

 

80: ??/4/12 19:38:19 ID:hPaI+J8ns

六平の爺と奈瀬の親父をして「天才としか言いようがない」と言われた鷹瀬さん。映像でしか見たことないけど

 

81: ??/4/12 19:38:30 ID:NaoVvf8aA

>>80

ほんま天才やったんやで

 

82: ??/4/12 19:38:41 ID:ZazPQ9cbc

まあ確かに天才だった。ウマ娘の横にぬっと出てきただけで(あ、負けたな)ってなるくらいには

 

83: ??/4/12 19:38:52 ID:hZMV+dBun

仕掛けるタイミングがすごいというか、バ群に突っ込ませた瞬間に取らせた進路にスーッと道ができるのは意味わからんかった

 

84: ??/4/12 19:39:03 ID:VIeYNhxBa

1秒速くても1秒遅くてもだめなタイミングで突っ込ませるあたり天才

 

85: ??/4/12 19:39:15 ID:DdoEU5LCg

おかげでバ群に突っ込ませるだけ突っ込ませて捌ききれないやつを大量に生んだ模様

 

86: ??/4/12 19:39:28 ID:qKpNlaUQq

>>85

かっこよすぎたからしゃーない

 

87: ??/4/12 19:39:38 ID:wV3Z/+woV

今6人立てでサクラヤマトオーの進路詰まらせた大島の話した?

 

88: ??/4/12 19:39:50 ID:xwxV9c9ez

したようなもんだね

 

89: ??/4/12 19:40:01 ID:t/6QS52JS

指パッチンで指揮するのが最高にかっこよかった

 

90: ??/4/12 19:40:13 ID:NaoVvf8aA

>>89

わかっとるね、君

 

91: ??/4/12 19:40:27 ID:t/6QS52JS

>>90

ニキはトレーナーなんやろ? ニキと比べてみてあれはどうなん

 

92: ??/4/12 19:40:40 ID:NaoVvf8aA

>>91

俺と比べるのもおこがましいわ。でもいつか並び立って見せるで

 

93: ??/4/12 19:40:50 ID:FQRDdeoIF

普通に向上心あるいいトレーナーで草

 

94: ??/4/12 19:41:04 ID:NaoVvf8aA

鷹瀬さんは天才というか、結構感覚派なところがあったからなんで勝てたのか見ててもわからんのや。わざわざ教えてもらったのに何も理解できんかったときは死にたくなったで

 

95: ??/4/12 19:41:15 ID:hRmbFg2HH

普通に東条鷹瀬だったからじゃないのか

 

96: ??/4/12 19:41:26 ID:NaoVvf8aA

>>95

せやね。ファンからしたらそれでええ。尊敬するだけでええ。ただ、でもそれじゃ進歩がないやろ

 

97: ??/4/12 19:41:38 ID:clJRcoMVU

あの人は勝利の女神に愛されてたとしか言いようがないと思う。その割によく負けてるけど、それは頼まれたら基本面倒見てたからだし、今のリギル率いさせたらたぶん全勝してた

 

98: ??/4/12 19:41:50 ID:3fPQqWCVV

>>96

がんばってクレメンス

 

99: ??/4/12 19:42:03 ID:NaoVvf8aA

最短最速でタイムセール行ってくるで

帰ってきたら久々に鷹瀬さんのレース映像見るわ。隼瀬くんの宝塚も

 

100: ??/4/12 19:42:14 ID:jWCboDmAz

>>99

久々ってどれくらい?

 

101: ??/4/12 19:42:16 ID:NaoVvf8aA

18時間も見とらん

 

102: ??/4/12 19:42:22 ID:jWCboDmAz

ええ……(困惑)

 

103: ??/4/12 19:42:29 ID:3fPQqWCVV

というか東条甥って宝塚記念出たことなくね

 




34人の兄貴たち、感想ありがとナス!

tooma1122兄貴、Kouya@消滅都市兄貴、黒雪09兄貴、狂った海図兄貴、ムーヒロ兄貴、ズバ兄貴、評価ありがとナス!

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メモリー:2/4/12〜2/4/19

【ミホノブルボン】皐月賞感想スレ【3戦連続レコード】

1:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:19:12 ID:cZVoAHv+2

出走ウマ娘

1枠1番 スーツアクター

1枠2番 ユキグニギンガ

2枠3番 アワードガルソン

2枠4番 ミホノブルボン

3枠5番 ナリタタイセイ

3枠6番 ヨカリジェンド

4枠7番 マヤノペトリュース

4枠8番 マーメイドターバン

5枠9番 ライスシャワー

5枠10番 マイネルカート

6枠11番 ダッシュムドウ

6枠12番 セキテイリュウオー

7枠13番 ゴッドエルフ

7枠14番 クリトラフ

7枠15番 マチカネタンホイザ

8枠16番 ウエスタンオー

8枠17番 マイネルトゥルー

8枠18番 セイショウメンタル

 

一番人気ミホノブルボン

二番人気ナリタタイセイ

三番人気マチカネタンホイザ

 

一着ミホノブルボン

二着ナリタタイセイ

三着ライスシャワー

 

2:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:19:23 ID:huiNB8feD

ブルボンは2000メートル無理とはなんだったのか

 

3:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:19:35 ID:CoYbTK0M8

強い走りだった

 

4:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:19:48 ID:S0gDmY0td

ナリタタイセイたいしたことなくね

 

5:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:20:01 ID:9zmeeER6e

マチタンきょうもかわいかった

 

6:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:20:13 ID:mKGQfXOsR

マジで精密機械みたいな逃げだったな

 

7:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:20:24 ID:DCeuYxPCz

リアルユキノテイオー

 

8:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:20:36 ID:gmGBc5dzW

作中で勝利描写ないやつはNG

 

9:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:20:48 ID:5igyA5Efq

ミホノブルボンさんのラップタイム

11.9-11.7-11.6-11.6-11.7-11.7-11.9-11.5-11.9-11.9

 

10:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:20:58 ID:y4KTUI/8S

機械かな

 

11:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:21:11 ID:nIGIMOSAB

最後若干息切れしてね

 

12:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:21:23 ID:18lHA+23u

ブルボンは2000メートルが限界

 

13:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:21:34 ID:ld3jgfQQZ

前までは1600メートルで限界だったとか言われてたんだから2400メートルもいけるだろ

 

14:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:21:44 ID:YitaQgpWj

まあやること自体は変わらないからな

 

15:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:21:56 ID:py7qEc3b1

適性距離を400メートル伸ばすだけ(無理)

 

16:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:22:08 ID:uYmHiKbaI

出走取消された娘は大丈夫なんだろうか

 

17:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:22:19 ID:JcEbAxMcf

テイオー以来の無敗で皐月賞制覇

 

18:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:22:32 ID:Ba+6MqqPZ

普通に強くてビビった

 

19:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:22:45 ID:zj7Vg1ooN

>>17

直近すぎる

 

20:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:22:58 ID:Qsi7sP8fK

テイオーの皐月賞を見た記憶がない

 

21:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:23:09 ID:SvpvNktfe

……アレ?

 

22:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:23:22 ID:dqcta24fG

確かに何故か記憶がない

 

23:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:23:36 ID:zPCPOxuEt

ちゃんと見てやれよ……貴重な全盛期のテイオーだぞ

 

24:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:23:49 ID:z/DcT8OJw

ダービーとその後が衝撃すぎて記憶から消し去られた皐月賞

 

25:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:24:00 ID:W22ySaXZr

日本ダービーの勝ち方のほうが強かったからな

 

26:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:24:12 ID:rgwJOA/+R

似たような形で勝ってたし

 

27:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:24:22 ID:ok9RVlZsP

マックイーンの天皇賞と似たような時期に行われてたから説

 

28:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:24:35 ID:qQuPLGq16

ダービーのテイオーは強かったわ

 

29:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:24:49 ID:uxDPb2Wks

今も強いだろ

 

30:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:25:02 ID:OcdwvwQD5

TM対決ホント楽しみだわ

 

31:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:25:16 ID:g6GCshPEg

勝つのはマックイーンだろうな

 

32:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:25:26 ID:7vVYICRg6

俺未来人だけどテイオーの無敗伝説は続くよ

 

33:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:25:36 ID:IvG9PONTv

>>32

マ?

 

34:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:25:48 ID:UMojuJP6b

>>32

偽物乙

 

35:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:26:01 ID:FjXZh4l/K

未来人ニキはIDが変わらないから偽物だぞ

 

36:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:26:14 ID:1qCHO/khU

なんで日を跨いでるのにIDが変わらないんですかね

 

37:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:26:25 ID:kBGIuYdPb

謎のハッキング能力を持ってる説

 

38:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:26:38 ID:8VSIebzAM

この時点で今季も何人かの夢が破れたんだなぁと思うと感じるものがある

 

39:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:26:50 ID:Voa7Yaykg

ナリタタイセイ「目標は三冠ウマ娘です!」

 

40:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:27:04 ID:edEBzPcIZ

かなC

 

41:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:27:16 ID:42+INZlI4

ナリタタイセイ姉貴はタイムは良かったから……

 

42:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:27:28 ID:kJRMtBkUo

3位までテイオーの皐月賞でのタイムと似たようなもんだったからな

 

43:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:27:40 ID:4xUJlVmhg

ひょっとして今年の世代のレベルって高い?

 

44:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:27:53 ID:8stHSK6/9

>>43

テイオーは無駄な脚使ってなかった説

 

45:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:28:05 ID:nvO4ZMVzr

>>43

テイオー世代は有力な逃げウマ娘がいないからタイムが高速化しない

 

46:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:28:16 ID:T2sdBtm2d

オグリのジャパンカップもそうだったけど、レコードタイムを出すには強い逃げウマ娘が不可欠だもんな

 

47:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:28:27 ID:dD3+0k0hG

テイオー世代の逃げウマ娘はリンドシェーバーがいた。彼女が無事ならね……

 

48:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:28:39 ID:RupFfM2Nv

朝日杯の娘だっけ

 

49:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:28:52 ID:77Ee4OUCg

>>48

そう

 

50:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:29:03 ID:NaoYuLiCB

さすがの隼瀬くんやったな。2000メートル普通に逃げ切りおった

 

51:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:29:16 ID:na+p5Vaxm

関係者ニキやん

 

52:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:29:29 ID:vt7p2p5LZ

トレーナーって暇なのかな

 

53:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:29:42 ID:NaoYuLiCB

お前らドブカスに知識を授けに来てやってんねん。感謝しろや

 

54:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:29:55 ID:32jIJIyXA

実際割とありがたいから反応に困る

 

55:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:30:08 ID:JrFdJ+QAQ

関係者ニキがすごいと思ったのはどこなん

 

56:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:30:20 ID:NaoYuLiCB

レース後、ライスシャワーの息が乱れとらんかった

 

57:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:30:33 ID:X0/vXHYen

そうだっけ

 

58:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:30:43 ID:Jf75NJsFS

というかライスシャワーって誰だ

 

59:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:30:56 ID:RPVZxl74G

関係者ニキ前もライスシャワーおすすめしてたな

 

60:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:31:06 ID:NaoYuLiCB

>>59

物覚えええやんか あれはいいステイヤーになるで

 

61:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:31:20 ID:4CI9afVyV

マックイーンに勝てる?

 

62:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:31:31 ID:NaoYuLiCB

勝てるんちゃう ウチのジャリガキの方が上やろうけど

 

63:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:31:45 ID:bF5LW83Vr

マックイーンに勝てるライスに勝てるジャリガキとは

 

64:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:31:56 ID:iKXa+8g4n

マックイーン調子悪いの?

 

65:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:32:09 ID:NaoYuLiCB

>>64

トレーナーの差で俺が勝つ言うとんねん

 

66:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:32:22 ID:+LwQqRSdY

ニキはそんなに優秀なのか? ライスのトレーナーってエルグラとかの指揮してたトレーナーだろ

 

67:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:32:36 ID:NaoYuLiCB

地方のトレーナーごときに負けるわけ無いやろ

 

68:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:32:49 ID:G+rMng5Is

(負けそう)

 

69:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:33:01 ID:wPxTOjbdM

油断からサクッとやられそう

 

70:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:33:12 ID:1NESLjj8N

最近のムーブだよな、地方からの腕利きトレーナー

 

71:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:33:25 ID:6NPKyTMdP

まあ地方なんて中央の二軍だからな

 

72:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:33:36 ID:j7bCqsD4q

なおオグリ

 

73:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:33:47 ID:NaoYuLiCB

オグリンと北原さんは普通にええコンビやと思うわ

 

74:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:33:59 ID:UH7ga6a34

ええ……(困惑)

 

75:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:34:12 ID:NaoYuLiCB

オグリに必要なのはコンディションを管理するトレーナーやから、あのコンビは強いで 結果出しとるしな

 

76:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:34:23 ID:JHu0Ecu/U

地方と中央はさほど差もない気がする

 

77:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:34:34 ID:Ow31PXte0

関係者ニキは結果出してるやつには甘いのかな

 

78:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:34:44 ID:0r9cvQVmL

まあ中央のトレーナーが地方のトレーナーに対して格上意識持ってるのは割とあることだし

 

79:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:34:56 ID:WHa27ZN7s

>>76

オグリ、イナリとかな

 

80:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:35:08 ID:QWyloCnM7

あれは本人が怪物だっただけな気もする

 

81:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:35:19 ID:NaoYuLiCB

地方には中央の娘を超える娘もいるのは確かや 学費の関係もあるしな

 

82:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:35:29 ID:k483GGs+O

学費か

 

83:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:35:41 ID:uCoFWIVOR

中央の学費ってどんなものなんだい

 

84:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:35:51 ID:0n5+fn1Km

年1000万くらい。奨学金制度もあるけど最近作られたばっかであんま知られてない

 

85:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:36:05 ID:kTGRWS9Ju

たっか

 

86:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:36:18 ID:NaoYuLiCB

ただトレーナーに関しては中央の方が絶対に上や 中央に受かったやつがわざわざ地方に行く理由がないやろ

 

87:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:36:30 ID:9XQHeKDR7

まあそれはそう

 

88:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:36:43 ID:TLkxfJiTI

別に地元を盛り上げたいっていうことで地方に残るのもありだろ

 

89:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:36:56 ID:SBt3/ui0l

中央で負けまくったトレーナーが地方に行く話はよく聞くけど、地方で負けまくったトレーナーが中央に行く話は聞かんもんな

 

90:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:37:08 ID:NaoYuLiCB

>>88

志は立派やけど中央での切磋琢磨は地方の比やないから緩やかに劣化していくだけやと思うで

 

91:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:37:21 ID:K6ESNyWgn

と言うか関係者ニキは地方を案外見てるんだね。だからこそトレーナーのレベルの低さに気づいたってことなのか

 

92:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:37:34 ID:NaoYuLiCB

>>91

貧乏のせいで埋もれそうになった才能見たら地方も見ざるを得んやろ

 

93:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:37:47 ID:/Dj3zO3RG

>>92

その娘今も走ってる? 地元のトゥインクルシリーズにいるんだったら応援したいんだが

 

94:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:37:58 ID:NaoYuLiCB

3000万出して中央に引っ張ってきたからおらんで

 

95:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:38:10 ID:o8ZgEhvld

たっか!

 

96:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:38:23 ID:NaoYuLiCB

3年でなんとかなる思ったから金出したんや 適正価格やで

 

97:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:38:36 ID:b68nT+USb

で、結局ニキは3000万回収に成功したの?

 

98:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:38:47 ID:NaoYuLiCB

なんで貧乏人から金持ちの俺が巻き上げなきゃアカンねん あんな端金くれてやったわ

 

99:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:38:57 ID:6ViEpQ4E0

ツンデレかな

 

100:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:39:08 ID:NaoYuLiCB

金出した時はしおらしかったのに今はクソうるさくてかなわんわ 先週もタイムセールで大根買いそこねただけでギャーギャー言っとっ

 

101:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:39:21 ID:GtFZdNbZh

そう言えばタイムセールがどうとか言ってたな

 

102:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:39:33 ID:vcfEkXdhy

あれ、ニキ?

 

103:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:39:44 ID:7MYtA5NiU

死んだか……

 

104:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:39:56 ID:XuVAubxmE

トレーナー過労死定期

 

105:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:40:09 ID:h47un7Cfd

アレ、逝った?

 

106:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:40:19 ID:5JrRoojMu

食事に呼ばれたのかもしれん

 

107:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:40:32 ID:Q18Igk4RJ

寝落ちやろなぁ

 

108:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:40:45 ID:d6b+W7slU

>>106

ニキあんな偉そうなこと言って実家に住んどるんか

 

109:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:40:57 ID:dC4+3TBuM

たいていがトレーナー寮に住んでるけど、名門の人は実家に済むこともあるらしいからな。ニキの供述を信じると四名家の系列だろうしあり得る

 

110:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:41:11 ID:9jo82j9at

3000万を端金と言い切りたい人生だった

 

111:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:41:22 ID:4ABFHp0nN

ニキがいなくなったから話戻すけど、ライスシャワーってほんとに息きれてなかったんか?

 

112:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:41:36 ID:wdkm9B311

映像班、よろ

 

113:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:41:46 ID:Gsw43ZP7Q

ブルボンしか見てなかったわ。なんだあの勝負服

 

114:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:41:58 ID:qvIX6o2+z

ガンダムかな

 

115:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:42:10 ID:5cz/tX7/I

マクロスかな

 

116:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:42:24 ID:qvIX6o2+z

>>115

あ?

 

117:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:42:34 ID:5cz/tX7/I

>>114

あん?

 

118:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:42:44 ID:KE2H0/iMl

やるならスレ変えてやれ

 

119:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:42:58 ID:kft3VxmAt

確認したけど切れてなかったわ

 

120:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:43:10 ID:/FSU2BFWm

やっぱ本職なのか

 

121:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:43:22 ID:MixZwshQo

言うて見れば気づくことだろ

 

122:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:43:36 ID:9b3ML2rzA

コロンブスのたまごだな

 

123:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:43:47 ID:R83s9zkke

じゃあライスシャワーはステイヤー?

 

124:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:43:58 ID:3SUJ7Ow1a

単に残した脚使うのが下手なだけかもしれん

 

125:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:44:10 ID:EztdCeHZ5

スタミナ管理が下手ってことか

 

126:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:44:22 ID:TrjRFhkwS

距離が2倍ならライスシャワーが勝ってたかもな

 

127:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:44:32 ID:80948QEXt

そもそも4000メートル走り切れるウマ娘ってそう居ないだろ

 

128:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:44:46 ID:f/GOqGd/p

生まれてから4000メートルも歩いたことすらないわ

 

129:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:44:56 ID:KUUUlpXgu

本質的にはステイヤーで、脚を使い切るのが下手ってことかもしれない

 

130:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:45:08 ID:gUbMk9UVI

どっちもってことか

 

131:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:45:18 ID:6BFjxuaxx

今は亡きドブカス関係者ニキなら答えてくれたのだろうか

 

132:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:45:30 ID:HbLPdOHza

あいつの担当誰なんだろ

 

133:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:45:40 ID:39UvZJJuu

口調からして実績はありそうではある

 

134:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:45:53 ID:mG32iEJIw

口調からして若そうではある

 

135:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:46:04 ID:nNH67YUrD

ステイヤーってダービーの距離どうなん

 

136:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:46:17 ID:FpPBzYmWH

ステイヤーって言ってもマックイーンみたいに適正距離じゃなくてもスタミナをうまく使いきれるようなやつもいれば、ズブくて切れ味勝負にならない長距離でしか話にならないやつもいるからなぁ

 

137:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:46:27 ID:8kiqIDy72

ライスシャワーはタイムを見るにそれなりにキレはありそう

 

138:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:46:37 ID:CbRSGHVLo

まあメジロのブライトさんよりはありそう

 

139:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:46:50 ID:r84lzNTuZ

伝説のメイクデビュー好き

 

140:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:47:01 ID:Ohc5JpPTK

言うてアレは強い勝ち方だったけどね

 

141:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:47:13 ID:EdXWYZgc5

スズカと同期なのに謎の古豪感あってズブさの代名詞になるブライトさん好き

 

142:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:47:24 ID:/Cjd+F4Sg

というかメジロは大丈夫なのか。高速化が進む環境と逆行してないか

 

143:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:47:34 ID:9il+KsaUn

マックイーン→ブライトならメジロ大丈夫か?ってなったけどブライト→マックイーンだからたぶん大丈夫だろ

 

144:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:47:46 ID:rUFteLbXM

ファン感のVSスズカ100メートル走とかいう悪魔の企画好き

 

145:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:47:57 ID:b473/nInD

でも3200メートルならブライトが勝つから……

 

146:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:48:10 ID:bdSDD2I9q

それと同じことが菊花で起こるんだろうか

 

147:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:48:23 ID:xJSXY5Tpi

ライスシャワーがステイヤーならいよいよブルボンの三冠はないな

 

148:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:48:35 ID:wYaVSO9qR

>>144

無慈悲なスズカさん好き

 

149:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:48:49 ID:qaH0O6BRA

地元のちっこいウマ娘相手に自費で競走教室開く←やさしい

自分も参加する←素晴らしいファンサ

お遊びでも負けない←まあわかる

一度もハナは譲らない←あのさぁ……

 

150:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:49:01 ID:rmSu4C9bD

ウマ娘界のオリバー・カーン

 

151:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:49:14 ID:6BYk8QwjC

骨折しても平気で完走してハナを譲らなかったあたり真性

 

152:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:49:26 ID:EHK+EdUrn

骨折してから更に着差を広げてゴールするの史上最高に芝

……笑えてよかったね

 

153:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:49:38 ID:HY/GcdpVs

一歩間違えれば大事故だったからね……

 

154:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:49:51 ID:LG5go/Clv

今も元気に走ってるし気づかなかったあたり先頭民族が過ぎる

 

155:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:50:03 ID:/dJJSuWzn

強いのにネタキャラと化したスズカさんはアメリカではようやっとる。たぶんそろそろ負けるだろうけど

 

156:尻尾上がり名無し ??/4/19 20:50:13 ID:fHJI2uY5/

俺未来人だけどスズカはアメリカでは1回も負けないよ

 




Q:なんで途中でドブカス消えたの?
A:「ご飯やでー」を3回無視した挙げ句「飯や言うてるやろ! はよ来んかい!」「やかましいわジャリガキ! 俺は忙しいねん!」からの連行食らったから


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アフターストーリー:擬態

 昔の人間にとって、東条の名は特別な意味を持つらしい。

 そのことを、ナリタブライアンは今更ながら知った。調べたとかではなく、両親への連絡によって、である。

 

 夏合宿でかなり身体を絞ってきた姉から、言われた。そろそろ父さんに連絡を入れたらどうだ、と。

 そういうことは、アイツがやるだろう。そんな彼女の認識は全く正しかった。現に東条隼瀬はこまめに育成レポートを提出していたし、具体的な目標レースを記して彼女の実家に送っていた。

 

 だがそれはそれとして、親からしてみれば娘の生の声を聞いてみたいというのもある。

 

『クラシック二冠に宝塚記念! すごいじゃないか!』

 

「ああ」

 

『特に皐月賞でのイン突きは――――』

 

 どこがすごいのか。

 元トレーナーだけに、その褒め言葉は的を射ていて的確である。

 

 それに基本的に無口な質のナリタブライアンは、肯定の意味で2文字限定の返答を送っていた。

 その無愛想さに慣れている、あるいは、慣らされている。そんな父親はいつもの調子であることを確認するように言葉をつむぐ。

 

 自分のことをわかってくれている相手には結構甘える質のブライアンは、父親に付き合うようにうんうんと話を聴いていた。

 報告すべきことはない。そういうことは、既に行われているだろうから。

 

 つまりこれは子離れできない親との交流時間である。そしてそれはやや厄介ではあるが、嫌いではない。

 

『そして宝塚記念! さすがは鷹瀬さんの息子だな。バ群に突っ込みに行ったときは悲鳴を上げかけたものだが、するりと道が開いた』

 

「鷹瀬……?」

 

 ――――ああ、アレの親父か

 

 歴史というものに無頓着なところのあるこの怪物の認識は、実に現在の世相を反映したものだったと言える。

 かつて東条鷹瀬の子、東条ハナの甥だった男は今や、真の意味で東条隼瀬になったのだ。

 そして東条鷹瀬は東条隼瀬の父と呼ばれるようになりつつある。

 

『天才の子もまた、天才というべきだな』

 

「そんなものか」

 

『ああ。鷹瀬さんは時の女神に愛されていた。仕掛ければ道が開き、そして勝った。そしてその息子もまた、時の女神に愛されていると見える。これからの活躍が楽しみだよ』

 

 これからはない。

 ナリタ家の者としてはそう伝えておくべきだっただろうな。

 

 寮の電話をガチャリと元の位置に戻しながら、ふとナリタブライアンはそんなことを思った。

 現在のところ、最も有能なトレーナー。それが引退を決意し、そして確実に新規のウマ娘の受け入れを停止する。

 

 そのニュースは少なからず界隈に影響を及ぼすだろうし、その情報の有無で立ち回りも変わってくるだろう。

 無頼漢の如き風体や振る舞いとは裏腹に、根っこが聡明なのがナリタブライアンというウマ娘である。その聡明さは諸刃の剣というべき短所を内包した長所であるわけだが、この場合彼女の判断力に一定の指針を与えた。

 

 つまり、わかった上で言わないということを決めた、ということである。

 

「……まあ、いいさ」

 

 シンボリ家に一時帰省している男の顔をぼんやりと浮かべて、首を振って思考の霧を払う。

 そんな霧の発生源が帰ってきたのは、翌日の昼のことだった。

 

「いやぁ、疲れた疲れた」

 

 首をバキバキとやって、即座に仕事に取り掛かる。

 疲れたとは思えない男を乗せた車は、鹿毛の中に三日月のような一房の髪を垂らしたウマ娘の操縦に導かれてトレセン学園の関係者用駐車場へと消えていく。

 

「で、何かあったか」

 

 トレセン学園の敷地内に立って早々やってきた大型犬の頭を撫でつつ、東条隼瀬はそう問うた。

 おそらくは、できれば何も起こってくれるなという期待を込めて。

 

「ご期待にそえるかどうかはわかりませんが、マスターの不在時は特に何事も起こりませんでした」

 

「朗報だな」

 

「それと。現在は帰還してらっしゃいますがスズカさんが群馬県に現れたとのことです」

 

「それはそれは、いつも通りで何より。触診の後に必要に応じた走行制限をかけて部室に缶詰にしよう。ボードゲームあたりでボコり続ければ負けん気を発揮して、うまく休ませられるだろう」

 

 なぜ府中から前橋まで走ったのかを問うより、現実を受け入れ、対処してしまう方がいい。

 これまた慣れた、あるいは慣らされている男は目の前に現れた現実を甘受した。別名、諦めているとも言う。

 

 帰って早々休みもせずに淡々と積もった業務を処理し、日常に歯車のように溶け込む。

 そんな男に訊きたいことがある、そんなウマ娘がいた。

 

 ナリタブライアンである。

 しかし意外と空気を読める彼女は、一段落がつくまでおとなしくしていた。

 

 無論やっと解禁されたトレーニングではヒシアマゾンやフジキセキなどと併走をし、色彩の異なる才能と競い合う経験を豊富に積む。

 だがめずらしく、彼女は『もっと練習させろ』とゴネなかった。

 

「で、なにか訊きたいことでもあるのか?」

 

「……何故、わかった」

 

「らしくないからだな。で、なんだ」

 

 それなりに信頼できる父親は、あの宝塚記念での中央突破を天才由来のひらめきによるものだろうと言っていた。

 だが、ブライアンからすればそうは思えない。しかしそれは理屈立てて、順序よく説明されているからである。

 

 今回の戦術は一足飛びの閃きが結果としてあり、そしてそこから逆走じみた形で理屈で舗装したのではないか。

 父親の話を聴いて、ナリタブライアンはそう思った。そしてそれが正しければ、目の前の無敗の男は別方面へ才能を開花させていることになる。

 

 才能が開き切る前に引退を決めるというのは、不本意ではないのか。

 そのあたりを単刀直入に訊きたい。だからこそ、ナリタブライアンはシンボリルドルフやミホノブルボンといった彼の思想的同志が居なくなるのを待ち続けていたのである。

 

 あの二人に、『もしかして』と思わせたくない。もしかして、彼は自分たちの為に才能を眠らせてしまおうとしているのではないか、と思わせたくない。

 

 自分が言い出さなければ、シンボリルドルフもミホノブルボンもその可能性に気づかない。

 なぜなら、あの二人は本質的には競技者ではないから。いや、単なる競技者ではない、というべきか。

 

 これは一競走者として、才能を発揮し勝負に勝つことを至上とするナリタブライアンだからこそ見出し得た疑問なのだ。

 

「……今、何をやっているんだ」

 

「それが訊きたいことか。そうではないだろう」

 

「会話には前座というものがいる。知らんのか」

 

「知ってる。だがお前、前菜を無視して肉から食うタイプだろう」

 

 そう言いつつ、答えてやる気はある。

 そんな男は、一瞬口をつぐんで書類をぴらりと見せた。

 

「奨学金制度を作ろうと思っている」

 

「あるだろう、そんなものは」

 

 というか、特待生制度すらある。

 トレセン学園の学費は高い。その問題点をURAも認識しているし、学園側も認識している。

 だからURA側からは奨学金が、学園側からは特待生制度が整備されていた。

 

「お前は特待生だ」

 

「ああ」

 

「ルドルフもそうだ。エアグルーヴもな」

 

 当たり前のことだろうと、ナリタブライアンは思った。

 特待生というのはつまり、レースの強いやつを優遇するための措置である。学費を減額、あるいは無償化し、加えて何らかの特典を加える。

 

 そうして、地方との待遇の差を明らかにして中央へと呼び込む。

 中央が中央たり得ているのは、その競技レベルの高さである。そしてその競技レベルの高さは、圧倒的な設備と高待遇によって支えられていた。

 

「奨学金の貸与条件は知っているか?」

 

「知らん。気にしたことがない」

 

 1位を取る。

 彼女に、そういう意識があったわけではない。ただ、負けないだろうという自信があって、それは確信になった。それだけのことである。

 

「ま、だろうな。答えは入学前の模擬レースを集計し付けられたレートの、トップ10に入ることだ。トップ5は特待生扱いになる」

 

「思ったより多いな」

 

 同世代でターフの華になれるのは、片手に余るほどの人数しかない。

 これは常識であり、その常識を覆したからこそスペシャルウィークらの世代は黄金世代と呼ばれた。

 

「まあ、多い少ないはともかく、お前。学費に困っていたか?」

 

「いや」

 

「まあ、結論から言おう。特待生と奨学生になったウマ娘の内、どれくらいが学費に困っているか。答えると、実際そんなに困っていない。なぜならレートトップ10に入れる優秀なのはたいてい名門の出だし、名門の出のウマ娘は金に困らないからだ」

 

 URAとしては、奨学金を確実に回収したい。だから成績優秀者に貸し付ける。

 レースで勝てば、割と早期に完済できるからである。

 

 奨学金とはつまり、借金なのだ。返済能力のあるものに貸し付けたいと思うのは当然のことで、その対象が故障すれば潰しが利かないトゥインクルシリーズへ所属するウマ娘であれば当然のことである。

 

「こうなると、寒門のそれなりの力を持った者や、晩成型ながら才能のあるものがあぶれる。晩成型は、特に悲惨だ。何年か在籍して開花を待てば花開くだろう。だが、それを誰が待つ?」

 

 待とう。こいつの才能を正しく見抜けない哀れな弱者、強さを知り得ないアホどもに代わって、正しく強い者に機会をやろう。

 そう考える者は、確かにいる。だが例は少なく、それも成功したのはタマモクロスくらいなものである。

 

「アンタはそれを解決しようとしているわけか。だが財産も無限ではないし、長い目で見れば一時的な解決にしかならないだろう」

 

 アンタが見れば、才能のあるやつはわかるだろう。活躍させることもできるだろうから、奨学金の回収もできるだろう。

 だがそれも一代のことで、先がない。東条隼瀬亡き後、その後継者はウマ娘の才能を見抜けるのか。

 

 個人の能力に拠ったシステムは、つまるところその個人亡き後存続し得ない。

 

 そのあたりに即座に気づけるナリタブライアンは、やはり聡明であった。

 

「その通り。だから、俺は金を出さん」

 

「じゃあどうする。学費はバカにならんのだろう」

 

「そう。年1000万はバカにならない。だが年10万、5万なら負担することはできるものは多くいる。俺はより多くの人間を奨学金制度に巻き込むつもりだ。トゥインクルシリーズのファンは多いし、夢を共有したいと思うものもいる。もっとも、投資のような形になるかもしれないが……」

 

 そう考え、実現に移そうとする。

 そんな東条隼瀬の姿は実に楽しそうだった。トレーナーとしてこの上ないほどの才能を宿しながら、別にこだわりを見せない。

 

(そう言えば、そういうやつだった)

 

 自分の懸念が懸念で終わったことを嬉しさ半分寂しさ半分で受け止めながら、ナリタブライアンは頷いた。

 

「で、メインディッシュはなんだ」

 

「ん……私の宝塚記念を見た親父が、言っていた。アンタはアンタの親父に近づいてきていると。そのあたりは、どうなんだ」

 

「父は天才だった。天才の思考は理屈の外で動く。それを理屈の中で生きる者は閃きと呼ぶわけだが……俺の思考は理屈の外にあったか?」

 

「ないな」

 

「そう。だから同じようなことをやっているように思えて、俺は理外の閃きを理屈の通じる者にまで落として再現させたに過ぎない。近づいているように見せているだけだ。そう見せることができれば俺を過大評価させて受け身にさせ、思考を誘導することができる」

 

 ――――大した才能もないから、天才に擬態するために使えるものは何でも使うわけだ

 

 そう言った男を見て、怪物は思った。

 

 ――――アンタも質が違うだけで、充分天才のたぐいだろう、と。



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メモリー:2/4/19〜2/5/31

【タマモクロス】スプリングドリームトロフィー(ステイヤーメモリー)感想スレ【三連覇】

1:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:29:11 ID:G8Q5iYo/c

つよい

 

2:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:29:23 ID:Cbrz2do5Y

春天でマックイーンとの対決見てみたかった

 

3:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:29:35 ID:pemCyRXkI

極めて優秀(月並みな感想)

 

4:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:29:47 ID:0NeAcC5kf

疾風迅雷で芝

 

5:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:30:00 ID:UWb//EefU

こんなスターがトレセン学園に入れなかったかもしれなかったという事実

 

6:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:30:12 ID:7JTH/3Pls

中距離でオグリとの戦いが見たい

 

7:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:30:26 ID:WndlK6AtQ

唯一対抗できそうなクリークは奈瀬T共々フランス行ってるからなぁ

 

8:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:30:38 ID:NvmBA6NOQ

>>5

これマ? あれで特待生じゃなかったの?

 

9:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:30:52 ID:ByRvcxeg8

マジ。タマモクロスは漬けてたら覚醒したタイプだから

 

10:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:31:05 ID:q7yRYYx6k

タマモクロスTがやったこと

・模擬レース会場で才能を見出して、見抜けなかった他のトレーナーを煽る

・2年間身体作ればものになると判断して学費を負担する。無謀と止めにきた相手を煽る

・親の入院代を代わりに出してメンタルの安定に努める。こんなんで揺らがせへんでと煽る

・ボロ家を引き払わせて自分の持ってる土地に引っ越させて面倒を見る。もう何も心配ないから言い訳できへんやろと煽る

・見事開花したタマモクロスの才能を見いだせなかった他のトレーナーを煽る

 

11:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:31:18 ID:5Bz1EgRIF

聖人定期

 

12:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:31:30 ID:qkjY+vT+Z

業績聖人、言動小物

 

13:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:31:42 ID:dK8oaTP8b

事あるごとに「雑魚どもは強さを理解できんのが罪やね」とか言うのを除けば聖人

 

14:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:31:56 ID:2fTDGBoV5

トレセン学園でも屈指の煽りの呼吸の使い手

 

15:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:32:08 ID:efGEgn34k

ミドルディスタンスでオグリとの再戦を!という月刊ターフの煽り記事に「俺は金稼ぐこと望んでんねん」と現実(嘘)を突きつける模様

 

16:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:32:22 ID:7i+eXw8AI

>>15

タマ「嘘やで。お金欲しいんはウチや」

 

17:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:32:35 ID:9xUPbTMw6

普通のウマ娘が言えば銭ゲバ扱いされるだろうけどド貧乏のタマが言うと凄まじい切実感あるから納得せざるを得ない

 

18:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:32:47 ID:dt6vP6oUU

でもオグタマ対決見たい

 

19:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:33:00 ID:yRZhEkNNs

>>18

それはそう

 

20:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:33:13 ID:5LqyxNbKI

金稼ぐならクリーク去りし後の長距離出たほうがいいってのはそのとおり

 

21:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:33:27 ID:Cc4nhc0+Y

でもトレーナーが金出してくれるんだからそこまで追い求めなくてよくね

 

22:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:33:41 ID:pfVoa/HHF

パートナーに金負担させてばっかって逆にキツいだろ

 

23:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:33:54 ID:OfgGi4s1J

しかもウマ娘の全盛期って短いからな。走りにロマン見るのは勝手だけど、本人の意志が最優先

 

24:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:34:07 ID:Crx38BXA8

というかタマの両親は大丈夫なのか?

 

25:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:34:20 ID:1GUcMK4wG

母クロスは京都の最高クラスのウマ娘病院にぶちこまれて治ったけどリハビリ中

 

26:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:34:32 ID:1GUcMK4wG

父クロスは普通に治った

 

27:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:34:45 ID:YkD3wPjtc

明らかに本格化し終わっててる実力なのに若干身長伸び続けているの闇を感じる

 

28:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:34:59 ID:ROi/UbpQo

栄養がね……

 

29:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:35:12 ID:sZFONgHsl

タマが春天かったあとのファン感でのタマプロデュースメニューがはんぺんまみれだった

 

30:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:35:25 ID:M7yakaGez

でも美味しいし安いから……

 

31:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:35:39 ID:YFWakC/yG

反省したのか何かあったのか知らないけど、秋のファン感ではおでんだったからセーフ

 

32:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:35:52 ID:owPha9xFK

>>31

ああ逃れられない!(はんぺん)

 

33:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:36:05 ID:XXTtqsoi4

オグリに有馬で負ける→ドリームリーグへの移籍撤回して有馬で逆襲からの移籍→オグリ復活!からのドリームリーグ移籍の流れがライバル対決として美しすぎるのが悪い

 

34:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:36:17 ID:eO/AvhqES

ここまでやられるとドリームリーグでもやれ!ってなるのはわかる

 

35:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:36:31 ID:RRoSVW8yW

トレーナーとの漫才が面白いから引退したあと二人で解説やれ

 

36:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:36:45 ID:E9UclSCBa

白熱した挙げ句放送コード引っかかりそう

 

37:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:36:58 ID:6FFvUVPwL

タマのレース見てて面白いから好き

 

38:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:37:11 ID:+GY/BECNz

毎度毎度バ群の隙見つけてジグザグと雷みたいにぶち抜いて勝つのよーやるわ

 

39:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:37:24 ID:GtPHEjPMt

見つけられなかったときは外から回っても余裕で間に合うのがひどい。

こいつの分家の鷹瀬とかいうやつが最速最短でまっすぐぶち抜いてたけど

 

40:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:37:38 ID:cEZuPmxRh

それに対抗してたオグリもおかしい

そして鷹瀬は頭がおかしい。避けるんじゃなくて避けさせるんですよ、とか意味わからん

 

41:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:37:50 ID:UiWdNucRY

オグリがおかしいのはローテ

あっ、東条家の鷹瀬さんはもちろん頭おかしいッス

 

42:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:38:03 ID:daH/Yi/Bz

クソローテすぎる。もうあんなローテで走るウマ娘現れんやろなぁ

あ、鷹瀬さんは言ってることがおかしいです。ハイ

 

43:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:38:16 ID:fHJI2uY5/

俺未来人だけど今年の秋に現れるよ

 

44:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:38:30 ID:4d8yCU/CO

出たわね

 

45:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:38:43 ID:1rCoHRpOx

>>43

なんでこいつはID変わらないんだ

 

46:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:38:56 ID:eHbqOzSvW

今年の秋ってことはシニア級の誰かか

 

47:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:39:08 ID:f4fNZQZGf

テイオーかな

 

48:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:39:21 ID:W05j9njH6

テイオーであんなことしたら脚が無くなるわ

 

49:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:39:33 ID:gxP0Qnc2W

>>48

トゥインクルシリーズにわかだからテイオーしかしらないんだ。ごめん

 

50:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:39:47 ID:6KY3NZmBB

と言うかテイオーは復帰できんのか? 春天でまた折れたけど

 

51:尻尾上がり名無し ??/4/30 17:39:57 ID:W05j9njH6

もう二度目だよ。無理

 

 

◆◆◆

 

 

【東京優駿】日本ダービーを語ろう【ミホノブルボン二冠】

1:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:12:00 ID:J3BY3rXZA

1枠1番ゴッドエルフ

1枠2番オースミコマンド

2枠3番サクラセカイオー

2枠4番マーメイドターバン

3枠5番マヤノペトリュース

3枠6番キャッチドリーム

4枠7番マチカネタンホイザ

4枠8番ナリタタイセイ

5枠9番ユキグニギンガ

5枠10番ヒューストンゲート

6枠11番カミヤマ

6枠12番セキテイリュウオー

7枠13番ライスシャワー

7枠14番ゴールデンヘラ

7枠15番ミホノブルボン

8枠16番ヤマニンマーベル

8枠17番ブレイジングブルー

8枠18番スーツアクター

 

1番人気ミホノブルボン

2番人気ナリタタイセイ

3番人気ライスシャワー

 

1着ミホノブルボン

2着ライスシャワー

3着マチカネタンホイザ

 

 

2:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:12:10 ID:8xhYmCcGo

ナリタタイセイ飛んだな。悪い意味で

 

3:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:12:19 ID:UxgPaxgAE

まさかあそこまで脆いとは思わなかった

 

4:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:12:27 ID:GchnbaE9T

今日もマチタンが可愛い

 

5:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:12:35 ID:cLnKZ8hzm

マチタン、すっかりカノープスらしくなりつつあるな

 

6:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:12:44 ID:1cr88gHe9

らしくなってきたな

 

7:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:12:55 ID:r1YFun63a

なんでカノープス連中はここまで惜敗が多いんだ

 

8:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:13:05 ID:DljG8bGdA

惜敗(大差)

 

9:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:13:13 ID:VxuNBz3Gw

【悲報】ナリタタイセイ故障

 

10:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:13:23 ID:d5cvf+WvZ

あんな無茶な先行策したらそうなるわ

 

11:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:13:30 ID:QQ06AMxlD

トレーナーが無能

 

12:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:13:41 ID:o29tce6xN

なお無茶と形容される先行策よりも遥かに無茶なペースで逃げてたブルボンさんは

 

13:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:13:51 ID:n5RnyNR/W

まさかあそこまで強いとは思わなかった

 

14:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:14:02 ID:sVu4OGBQe

府中の直線は長いとか中山直線民が言ってたのに騙されたわ

 

15:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:14:13 ID:jU+1fM9oH

マチタンはNHK杯でも3着だったあたり実にカノープス

 

16:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:14:21 ID:oY51fmOPi

一着ブルボン二着米か

 

17:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:14:29 ID:d56zUkYje

>>16

いや、一着はナリタタイセイ

 

18:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:14:36 ID:IsXHn65p1

ナリタタイセイ強いやんけ

 

19:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:14:45 ID:+HsnAFJu4

と言うかそんな強いナリタタイセイを潰したトレーナーにブライアン任せていいのか?

 

20:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:14:52 ID:SiPpwSx2t

ビワハヤヒデも縁もゆかりもない寒門のトレーナー選んだあたり任せる気はないんじゃないか

 

21:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:15:02 ID:qTBgYQp0c

そもそもブライアンはリギルなんだからおハナさんがやるだろ

 

22:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:15:13 ID:tCpO4DT0a

>>21

なら安心。怪我しないでほしい

 

23:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:15:21 ID:lqvJO19n3

というかビワネキが違うトレーナー選んだのはタイシンの方に家のトレーナーがついたからであって、無能とかではないぞ

 

24:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:15:30 ID:b8QGHoI/h

結果見たら無能やろ

 

25:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:15:39 ID:8columIpZ

ここまでブルボンの話なし

 

26:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:15:48 ID:OmWFZ4x0q

あるんだよなぁ……

 

27:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:15:56 ID:E3bZfAbnY

実はブルボンは中距離だったのかもしれない

 

28:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:16:07 ID:DJx4uuva5

他のトレーナーが節穴だったパターンか

 

29:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:16:15 ID:vhXHgHRNA

スピードがある中距離タイプってことか

 

30:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:16:25 ID:NaoCIDgwk

アホコケコたちが囀りよるわ アホちゃう

 

31:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:16:35 ID:QwSd2kkTT

普通にスプリンターが距離延長しただけだろ

 

32:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:16:45 ID:TUDdsZqx7

アホコケコは芝

 

33:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:16:55 ID:A5hNZ84F0

アホコケコってなんだ

 

34:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:17:03 ID:NaoCIDgwk

>>33

鳥並みの知能ってことや

 

35:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:17:12 ID:VVa45NZ8B

と言うか関係者ニキか

 

36:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:17:12 ID:kNEU/iJq/

消えたドブカスニキじゃん。1ヶ月ぶりか?

 

37:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:17:30 ID:NaoCIDgwk

>>36

鳥にしてはええ記憶力やね

>>31

それ、正解やわ

 

38:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:17:40 ID:YQgQ6t3gj

全方位に煽るあたり本物だろな

 

39:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:17:49 ID:mPIKrdevM

ドブカスニキなにしてたん

 

40:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:17:59 ID:NaoCIDgwk

レース出とった。その後色々あったから暇がなくてな

 

41:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:18:09 ID:vlJLElKJu

勝った?

 

42:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:18:16 ID:NaoCIDgwk

あたりまえやろ

 

43:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:18:25 ID:J5w/jPEUo

と言うかブルボンはドブカスニキから見てどうなの? スプリンター?

 

44:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:18:36 ID:K0Y0nN1lx

2400走れるスプリンターがいるわけないだろ

 

45:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:18:45 ID:NaoCIDgwk

スプリンターやね ただ、脚の維持調節が巧いから長く走れるんやろ

 

46:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:18:52 ID:HobGck0up

スタミナがあるってこと?

 

47:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:19:02 ID:NaoCIDgwk

それだけやないけど、まあそうやね

 

48:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:19:09 ID:LeNM3bGAn

他にもあるの?

 

49:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:19:17 ID:NaoCIDgwk

たぶん回復が早いんや。全部本気ださんで走るからやろうけど

 

50:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:19:26 ID:X63pNloPA

はえー

 

51:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:19:35 ID:teIj5CSip

ライスシャワー出てきたし、このニキ見る目あるな

 

52:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:19:46 ID:NaoCIDgwk

>>51

言い方ムカつくけどええ勝ち方できて機嫌いいから見逃したるわ

 

53:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:19:54 ID:KfujtfihI

ナリタタイセイどう思う?

 

54:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:20:03 ID:1R3ZD9EB4

菊花賞勝てる?

 

55:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:20:11 ID:NaoCIDgwk

タイセイちゃんはあんなもんや。実力の見極めが下手やから無理を気づかず無理しちゃったんやね

その点タンホイザちゃんはわきまえとる。わきまえて勝てるとは思わへんけど

 

56:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:20:21 ID:GchnbaE9T

マチタンバカにすんな

 

57:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:20:29 ID:NaoCIDgwk

事実を言っとんのや

地力で負けとんのに博打せんで勝てるわけない。順当に勝てるのは順当に勝てる実力持っとるやつだけやで。今んところ順当に負けとるもん

 

58:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:20:36 ID:LjWmZQJUx

ニキだったらどうするん?

 

59:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:20:47 ID:NaoCIDgwk

終盤うまくコース取る。逃げを封殺するために頭を抑えるとか、色々あるで。成功するとも思えんけど

 

60:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:20:54 ID:aiVyZIrDt

南坂Tの手腕に期待か

 

61:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:21:05 ID:44E7pxBTe

なんで成功しないの?

 

62:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:21:14 ID:NaoCIDgwk

相手隼瀬くんやし

 

63:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:21:22 ID:BQcPIUeBy

南坂Tどうすると思う?

 

64:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:21:31 ID:NaoCIDgwk

あの人は良くも悪くも安定しとるから頭抑えるみたいなことはしないやろな

コースをうまく取って迫るとか、そんなところちゃうか

 

65:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:21:39 ID:6gms0JOE7

博打しないわけか

 

66:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:21:48 ID:NaoCIDgwk

安定した強さは極まらないと怖くないんや。爆発してくるやつには敵わへん

 

67:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:21:56 ID:WNuNdcVyQ

>>66

例えば?

 

68:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:22:06 ID:NaoCIDgwk

オグリン

 

69:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:22:15 ID:wsf+pEbyf

確かにオグリはすごい

 

70:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:22:24 ID:Q424dRz9b

>>64で博打しないって言ってるけど、なんで?

今回もだけど、博打しなきゃ勝てないよね?

 

71:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:22:33 ID:NaoCIDgwk

それ結果論やん。ブルボンちゃんが2400無理やったならタンホイザちゃんは博打せん方が勝てるし

 

72:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:22:41 ID:9WVmmf4D+

あー、南坂Tは2400は無理だと思ってたのか

 

73:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:22:49 ID:NaoCIDgwk

んなもん知らんわ。想像や

 

74:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:22:57 ID:QwSd2kkTT

ブルボン最後失速してるけど、関係者ニキから見てどう?

 

75:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:23:06 ID:NaoCIDgwk

ふつーに失速しとるね。でも秋までには仕上げてくるんちゃう

 

76:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:23:13 ID:BuCMF2skF

まあ800メートル伸ばしたんならこっから600メートル伸ばせるかもしれないな

 

77:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:23:22 ID:fFoe8GpLA

と言うかニキはなんで距離延長できると信じてるの? 普通無理だし、延ばせないのが常識だよね?

 

78:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:23:32 ID:NaoCIDgwk

生粋のマイラーに長距離で後ろから差された経験があるからや。絶対能力を伸ばせば距離は伸ばせる。知ったときには後の祭りやったけどな

 

あと隼瀬くんやし

 

79:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:23:42 ID:gjFZizoHr

なんやそのマイラー

 

80:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:23:53 ID:NaoCIDgwk

まあ言うて長距離にしては短かったんやけど、そんなん言い訳にもならん

 

81:尻尾上がり名無し ??/5/31 16:24:00 ID:KP2cuPuUD

ニキ信者かと思ったら普通に冷静な分析してて芝ですよ

 




34人の兄貴たち、感想ありがとナス!

感想・評価いただけると嬉しいです。


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アフターストーリー:未踏

UAを見るにサイドストーリー:擬態(12/25更新分)を挿入投稿したことを半分くらいの読者が気づいていないみたいなので、章分けを廃止し最新話=更新された話という形にします。
完結したら掲示板回は別途後ろにまとめて隔離します。よろしくお願いいたします。

なお前書きを非表示設定にしている読者兄貴たちもいるかと思いますので、これは後書きにも掲載します。
3日経ったら消しますので、もし読み返すときの邪魔にならないと思います。


 京都新聞杯。

 かつてミホノブルボンが出走したそのレースに、東条隼瀬はナリタブライアンを出走させるかどうか悩んでいた。

 

 実戦の前に一叩きしておく。

 つまり、大レースの前に前哨戦を挟む。そのことは謂わば常識であり、鉄則だった。

 

 だからこそ――――優先出走権を得るために、という側面もあるが――――GⅠへの前哨戦としてのレースは複数開催されている。

 

 ――――レースでの経験は、同量のトレーニングの4倍にあたる

 

 昔誰かがそう言って、それに対して反論する者はいなかった。

 そんな言葉を具体的な倍率を導き出せないまでも、トレーナーの多くが皮膚感として認識していたからである。

 

 そしてその言葉は習慣となり、URA自らが喧伝することで伝統となった。

 URAからすれば、有力なウマ娘には1レースでも多く走ってほしい。そして極一部の人気のトレーナーにも、多くのウマ娘と組んでレースに出てきてほしい。

 

 だってその方が、儲かるから。

 

 そんなわけでトレーナーたちは前哨戦や叩きのレースを挟むという伝統を墨守してきた。

 URAの思惑こそあれども、その行い自体は至極当然で、しかも有効なことだったからである。

 

 だがリギルでは、そうでもなかった。

 優秀な人材を蒐集し管理することに長けた東条ハナのもとにトレーニングメニューや調整法に工夫を凝らし、レースで消耗させずとも同程度の経験を積めるようになっている。

 

 そんなわけで、東条隼瀬は京都新聞杯への出走を見送った。

 

 これが1トレーナーとしてナリタブライアンと組んでクラシック戦線に殴りこむ、とかだったら迷わず出走していただろう。

 宝塚記念以来、出走したレースはない。ついでに言えば夏中は歩く重機みたいなお手伝いさんとして働いていただけのブライアンである。

 調子の確認のためにも走らせるというのは、間違ったことではない。

 

 だが、そうしなかった。彼を取り巻く環境の優秀さが、そうしなくとも菊花賞へ万全の体制を築けるものであったから。

 

(こりゃ、出走させないでよかったな)

 

 エアダブリン。

 ダービー2着のウマ娘。彼女は強い。無論、ナリタブライアンには及ばないが、強い。

 

 それを、やすやすと打ち破った者がいた。

 皐月賞と同日開催のれんげ賞にて覚醒し、白藤ステークス、神戸新聞杯と3連勝で初重賞制覇。

 

 そしてこれで、4連勝。

 

「スターマンか」

 

 面白そうだ。

 獲物を見つめた猛禽類のように見下ろすとなりの怪物くんをちらりと見やりつつ、東条隼瀬は口元に手を当てた。

 

 それは、彼が何かを思考するときの癖というべきものだと言えるであろう。

 

 絶好調。

 調子がいいというただそれだけで、警戒すべき理由になる。

 

「出走したら、案外楽しめたんじゃないか?」

 

 辛抱たまらんと言わんばかりの飢えた怪物は、人参焼きをもくもくと食べていた。

 彼女が抱えているのは物理的な飢えではなく精神的な飢えであるわけだが、それはともかくレース場飯は食いたいということらしい。

 

「負けたかもしれないな」

 

「それほどか?」

 

「ああ。今のスターマンは、領域に近い状態だ。110%程の出力を常に出せている」

 

 120%の力を一時的に引き出すのが、領域である。

 それに比して、領域前に佇んだ状態では常に110%程度の力が出せる。

 

 ディクタストライカや、タマモクロス。

 領域に目覚めた者たちは、連勝がトリガーになって覚醒したパターンが多い。

 

 これは因果が逆で領域に目覚めるほど絶好調だったので、結果的に連勝したというべきかもしれない。

 しかし、事実として連勝中のウマ娘は怖い。領域前に佇むウマ娘は、怖い。

 

「じゃあ、そのまま目覚めない方が強いんじゃないか」

 

「いや、身体がもたん。だから身体を守ろうと脳が学習して、調子の良さを認識した上で封じ込め、一時的に引っ張り出せるようにチューンする。それが、領域と呼ばれるものだ」

 

 ピコンと、黒鹿毛の耳が畳まれた。

 ブライアンがこういった面倒で理屈っぽいことに興味深く反応するのは、東条隼瀬としては少し意外である。

 

「学説か」

 

「自説だ」

 

「なるほど。なら信用に値するな」

 

 本当にそうか?

 他者に承認された学説よりも、自己完結した自説の方が正しいというのは、ありえない。

 そう言いたかったが、彼はやめた。言っても詮無きことだからである。

 

「で、目覚めそうか。ヤツは」

 

「目覚めてもらわなければ困る」

 

「アンタは相変わらず、領域というものを重視しないな」

 

「いや、重視しないのはそうだが……目覚めなければ壊れてしまうからな。好事魔多しというのは、そういうことさ」

 

「なるほど」

 

 ウマ娘のトレーナーをするというのは、担当ウマ娘を勝たせる為に全力を尽くすということである。

 そして担当ウマ娘を勝たせるということは、それの十数倍のウマ娘を負けさせる、ということでもある。

 

 その矛盾に一定の折り合いをつけているのが東条隼瀬であり、シンボリルドルフだった。

 負かす。勝つ。だがやはり、怪我はしてほしくないらしい。

 

「お前の姉。ビワハヤヒデ。夏を越えてさらに強くなったな」

 

「ん? ああ。流石は姉貴だ」

 

 突発的な賞賛を訝しみつつも、それはそれとして姉を褒められたのは嬉しい。

 そんな突発的な賞賛を送った相手はぼんやりと空を見て、そしてすぐさま話を戻した。

 

「純粋な競技者と言っていいお前に言うのもアレだが、領域というのはあくまでも手札の一枚だ。領域を持っている者が持っていない者に絶対負けないというのなら切り札と言えるだろうが……実際のところはそうでもない」

 

「まあ、そうだな」

 

 持っている者が持っていない者に絶対負けないというのなら。

 彼の言葉を反芻して、ナリタブライアンはあくまでも彼が明哲にして沈着な参謀であることを再認識した。

 

 切り札として認識しているなら、『持っている者が持っていない者に絶対負けないというのなら』という言葉は使わない。

 その場合使うべきは、『持っている者が持っていない者に絶対勝てるというのなら』だ。

 

 そのあたりが、ナリタブライアンと東条隼瀬の認識の差異である。だがその差異をすり合わせる気もないし、同調する必要もないと、彼女は考えていた。

 つまるところ、認識の相違は視点の相違である。自分では見えない物が、彼には見える。逆もまた然り。

 

「それに自分の実力の120%を一時的に出すより、対戦相手の実力の120%を無理なく出せるようにする方が安定した結果を得られるだろう。相手の120%の実力を、自分のウマ娘は80%の出力で出せる。そこにまで持っていき、対等の読み合いに持ち込めば勝てるんだからな」

 

「それができるやつは、少ないだろう」

 

「そうかな」

 

「そうだ」

 

「そうかな……」

 

 それは現場レベルでなんとかしようとしているからじゃないのか。レース場に行く前に勝とうとしないからじゃないのか。

 人参焼きを持っていた3本の指の腹を舐めて塩っ気を補給しながら、ブライアンはゴシゴシとスカートで指を拭いた。

 

「で、勝てそうか」

 

「絶好調とは、なにか」

 

 ――――それは精神と肉体が完璧に連動し、連動した肉体を正しく動かすための眼が備わっている。そういう状態だ

 

 今まで雰囲気で理解してきたものを、文字に直されると違和感がある。だが何かが違っているとも思えない。

 

「歯車が完璧に噛み合っている。疑いなく、それは長所だ。だが要は、それを裏返してやればいい」

 

「心配はなさそうだな」

 

「最近、調子がいい。普通は目の前に広がる可能性という名の数多の道が、一本に収束しつつある。ルドルフと戦う前の感覚を取り戻しつつある、いや、ものにしつつあるのかな。だからそれなりに自信はある」

 

 だがそんな彼の本願は、無理なく、相手の120%を上回るというもの。

 

 脳筋の極みの如き発想であるが、その絶対的で絶望的な強さは結構なファンを獲得していたりもする。

 駆け引きも領域も破壊する肉体の強さ。ロマンのない、だからこそ浪漫に溢れたこの脳筋戦法。

 

 相手の駆け引きをすべて砕いて、相手の領域をすべて踏み潰してステータスでゴリ押す。

 

(まあ、嫌いじゃない)

 

 力で全てを捻じ伏せる、というのは。

 その戦法はサイレンススズカにはじまり、そしてミホノブルボンがそれを継承した。そして継承者の敵はことごとく――――先代の継承者ですら粉砕されてきた。

 

 そしてその継承者は今のところお休みロボと化して休んでいるわけであるが、実のところナリタブライアンはミホノブルボンの圧倒感が好きだった。

 淡々と、時を刻む。独りよがりな走りだ、などと月刊ターフが批判していたこともあったが、自分を究め続ける求道的な走りは尊敬に値する。

 

「よしよしよし」

 

 犬にやるように顎の下に手を添えて頭を撫で、撫でられるたびに栗毛の尻尾が左右に揺れる。

 

 声と共に撫でる手が止まると尻尾がだらんと垂れて元気を無くすが、またよしよしよしとされるとブンブンと揺れる。

 

(まるきり大型犬だな、これは)

 

 完全に飼い主に反応を遊ばれている大型犬。

 京都新聞杯の観戦を終えて一晩を越し、そんな彼女の走りを見るために来たわけであるが、そこに居たのはただの犬。

 

「よしよし……よしよしよし」

 

 パタパタ、ダランダラン、パタパタパタ。

 

 なんかの楽器じゃないのかと思うほど機敏に反応する尻尾は、ミホノブルボンが機敏に反応する神経と、神経と優れたリンクを果たしている肉体を持っている証左である。こんなところで発揮されるべきものではないが。

 

「よし、走ってこい。A-C-B-E-D-Fだ。わかるな」

 

「はい、マスター」

 

 天性のものではない、作り上げられた静から動への変化。それに天性のスプリンターとしての速さが加わり、ミホノブルボンは駆け出した。

 東条隼瀬が作り出し、ミホノブルボンが固定化させた理想的なフォーム。そのまま2ハロンを駆ける様を見て、犬と飼い主のたわむれを見に来た形になったブライアンの眼に光が戻った。

 

 素晴らしいと、素直に思う。弛まぬ努力と鍛練によって鍛え上げられた強さ。才能だけでは決して届かない高みに、このサイボーグはいる。

 

(ん……?)

 

 そんな賞賛の眼差しで見てきたからこそ、ナリタブライアンは気づいた。

 2ハロンごとに、若干フォームが変わっている。頭を上げ、下げ、重心が変わる。

 

 フォームが変化しても、速度は変わらない。

 最後の2ハロン、400メートル。ここでは流石に速度が衰えた。

 これは、当たり前である。スパートというものは一時的なもので、長く続くものではない。

 しかしミホノブルボンは10ハロン――――2000メートルの間持続させてみせた。

 

「どうだ、見事なものだろう」

 

「……ああ。あれがアンタの理想形か」

 

「いや、まだだな。2400メートルはもたせたい」

 

 目標が高い。全力で2400メートル走れるのは、とんでもなく射程距離の長いステイヤーでも無理難題である。

 

「お前を見ていて、気づいてな」

 

「なにをだ」

 

「お前、スパート時に身体を低く保つだろう。あれは使う脚の筋肉を変化させて更に出力を上げているんだ。それを人為的にやろうと思ってな。お前の場合出力が高すぎて抑える側に回ったが、あいつの場合出力はそうでもないから万全に活かせる」

 

 なるほど、とブライアンは思った。

 彼女は、嘗ては徐々に身体を傾斜させていくように走っていた。それはなんとなくやりやすかったからで、それを『出力に身体が追いついてない』とフォームを改造させたのが彼であった。

 

 変えるときは『速さが落ちるのではないか』と思っていたが全然そんなことはなく、その結果かどうかは知らないが、今まで怪我せずに走れている。

 

 怪物がなんとなくで行っていたことを言語化し、体系化し、理屈として整備して他に活かす。

 らしいと言えば、彼らしい。

 

「それにしても、2400メートルか。無理難題じゃないのか、それは」

 

「そうなんだい」

 

「……アンタ昨日の夜、ルドルフの側にいたろ」

 

 そして昨日の夜、たぶん寝てない。寝ないで仕事をしていたから、若干脳が壊れている。 

 

「確かに俺はルドルフにヒモの如きお願いをしていた。やりたいことがあるから金出してくれ、と。で、なぜわかった?」

 

「…………いや」

 

 金を出してもらう代わりに、だじゃれ100連発の贄になったのか。

 ちょっとかわいそうになって、ナリタブライアンは追求の手を優しくほどいた。

 

「似てるな、と」

 

「おお、嬉しいな。尊敬すべき相手と似ている、というのは」

 

 似通わざるべきところが似ているんだよ。

 そう言わないのはおそらく、ナリタブライアンのせめてもの情けだった。

 

 天皇賞秋まで、残り2週間。10月17日のことである。




UAを見るにサイドストーリー:擬態(12/25更新分)を挿入投稿したことを半分くらいの読者が気づいていないみたいなので、章分けを廃止し最新話=更新された話という形にします。
完結したら掲示板回は別途後ろにまとめて隔離します。よろしくお願いいたします。

なお後書きを非表示設定にしている読者兄貴たちもいるかと思いますので、これは前書きにも掲載します。
3日経ったら消しますので、もし読み返すときの邪魔にならないと思います。

42人の兄貴たち、感想ありがとナス!

RWtabby兄貴、仙-sen-兄貴、ミスター超合金兄貴、くお兄貴、touya兄貴、いりまめ兄貴、かはつ兄貴、樹木兄貴、評価ありがとナス!

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メモリー:2/5/31~2/11/7

【菊近し】菊花賞予想スレ

1:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:11:12 ID:VZNgTIo0w

語ろう

 

2:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:11:23 ID:XzNiB4fhy

ブルボンが3000メートル走れるかの勝負

ちなウマスピAではスピAスタBパワA長距離C

 

3:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:11:36 ID:5uGF1/V5n

走れれば勝てるだろうな

 

4:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:11:48 ID:bp7ogByZ7

それより何よりステイヤーらしいライスシャワーがホームグラウンドに来てどうなるかよ

 

5:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:12:00 ID:BRn4jjN0r

実際関係者の見解はどうなん

 

6:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:12:14 ID:fKbPVuZsd

沖野T「走りきれるだろうけど、ライスシャワーに勝てるかどうか」

南坂T「今まで射程の長いマイラーとして認識していました。今回は高速のステイヤーとして対策します」

東条T「できる」

 

7:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:12:26 ID:imJ8GQDPE

東条ってどっち?

 

8:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:12:39 ID:PShkBfm2R

分家のじゃないじゃない方

 

9:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:12:52 ID:oye/24dgb

おハナさんか

 

10:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:13:05 ID:ArjE5FfUA

おハナさんは甥のこと目にかけすぎなところはある

 

11:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:13:17 ID:h1HX+mfnP

ルドルフを任せてたりしてるもんな

 

12:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:13:29 ID:zxT2IoTsE

ルドルフを任せたと言うか、ルドルフに任せたと言うか

 

13:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:13:42 ID:+oWDB+sPc

新人サブトレーナーというリュック背負っても負けなかったルドルフって神だわ

 

14:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:13:54 ID:9ReMlB05j

神聖ローマ帝国の皇帝だからな

 

15:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:14:07 ID:HDdbwHBTO

神聖でもローマでも帝国でもない定期

 

16:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:14:18 ID:C/Y9Cc5u/

まあ流石に作戦立てたのはおハナさんだと思うが

 

17:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:14:32 ID:MpiCRb9i8

あんまおハナさんっぽくなかったからルドルフが勝手に考えたとかそんなところじゃないの

 

18:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:14:45 ID:/fIRbC2j4

確かに宝塚記念の作戦はおハナさんっぽくなかった

 

19:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:14:58 ID:AAE0/5jq2

あの人割と脳筋だからな

 

20:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:15:11 ID:VERSEGafk

基本中段待機からの押し切りがちだもんな

 

21:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:15:24 ID:U6b2caBgs

3大勝ちパターン

・奈瀬Tの後方待機からの捲り

・おハナさんの中段押し切り

 

あとは?

 

22:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:15:36 ID:Be77PVhVF

タマTのバ群裂き

 

23:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:15:48 ID:ze3HZxHuX

鷹瀬のワープ

 

24:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:16:02 ID:OGJ2yIP3p

隼瀬の逃げ切り

 

25:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:16:16 ID:zGLs5l/me

そう言えば東条甥って名家らしくなく逃げ好きだよな

 

26:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:16:29 ID:ZGerE/+vC

そもそもなんでブルボンは逃げてるの?

スタミナに不安があるなら中段待機で脚温存したほうが勝つ確率上がるんじゃない?

 

27:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:16:40 ID:TGdj4sRXr

気性

 

28:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:16:52 ID:EZOOxnwob

メイクデビューでは普通に差し切ってたから気性ではない

 

29:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:17:06 ID:LQ3qeLBJE

強いウマ娘って気性難が多いけどブルボンはそんな話聴かないし、気性の問題じゃないんだろうな

 

30:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:17:19 ID:+rOkDgcGf

>>29

なんで強いウマ娘って気性難が多いの?

気性が素直で操縦性いいほうが強くない?

 

31:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:17:30 ID:pAxrPcWbd

>>30

鷹瀬やらタマTとかが異常なだけで普通長くても3分しかないレース中に指揮することは無理

事前に相手の思惑と事故要素察知して作戦決めるのも不可能

だから操縦性よりも気性が荒くて負けん気ある方が強い

 

32:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:17:43 ID:HLFa7byK1

操縦性高いのは決まられた作戦をきっちりこなせるけど、トレーナーははじまる前から不確定要素を察知しきれない

だから作戦守るより臨機応変に動ける(というか勝手に動いちゃう)方が良い

 

33:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:17:57 ID:7JMTgBo/K

>>31

>>32

なるほど 事前に未来予知じみた読みで展開を洞察しないと活かしきれないのね

 

34:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:18:10 ID:JMR5qBuo3

3000メートルどうこうは置いておいても菊花賞は逃げでは勝てない

 

35:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:18:22 ID:TtjbIjlB8

セイちゃんもそう思います

 

36:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:18:33 ID:FmUSsDHwg

ハククラマ以来の逃げ切り勝ちは普通にすごい

 

37:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:18:47 ID:AYIJFcHr/

そう言えば最近セイちゃんなにしてんの?

 

38:◆ちなスピ ??/11/7 23:18:58 ID:g7FNWwddJ

>>37

屈腱炎

 

39:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:19:10 ID:hjqs1t+9D

屈腱炎はきつい

 

40:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:19:23 ID:A/prCifuq

俺逃げ好き民、贔屓が屈腱炎まみれでキツい

 

41:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:19:35 ID:d2ETiFHpB

そういや似たようなタイプのサニブも屈腱炎か

 

42:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:19:48 ID:hzQ/FFzol

>>41

希望はスズカさんだけだよ……

 

43:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:20:00 ID:NMipC/sFP

>>41

サニブ骨折して引退じゃなかった?

 

44:◆ちなスピ ??/11/7 23:20:11 ID:g7FNWwddJ

>>43

骨折治してから屈腱炎のフルコンボ

 

45:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:20:24 ID:ml4nyz9p9

それは……お辛い

 

46:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:20:37 ID:WTYVsEzP0

スペグラエル頑丈すぎ

 

47:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:20:51 ID:NLglJZ7qs

グラスは定期的に壊れてるけど普通にパワーアップして帰ってくるサイヤ人だから……

 

48:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:21:04 ID:Ax4Ivr04Q

というかブルボンは無事に夏を越せるかどうかよ

越えた今距離適性なんか問題にもならん

 

49:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:21:16 ID:diBXiIq0Y

テイオーの無敗の三冠見たかったわ

 

50:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:21:29 ID:rzlHq/oOP

せめて菊花賞出てほしかったな。テイオーが出てたら勝ってただろ

 

51:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:21:42 ID:K4ZY0seOQ

リオナタール「」

 

52:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:21:53 ID:4NwoZVlo0

そういうお前はなにしてんねん

ネイチャ結構見るけど、リオナタール全然見ないんだが

 

53:◆ちなスピ ??/11/7 23:22:05 ID:g7FNWwddJ

>>52

 

 

 

54:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:22:16 ID:5F4vos3G/

クソ定期

 

55:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:22:30 ID:IIZUTGxqn

ブルボンはスプリンターにしてはよくやってると思うけど長距離はまた別だろ

テイオーですら越えられなかったんだぞ

 

56:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:22:43 ID:D3Dsw7Z4N

あれ普通にマックイーンが強かっただけだろ

 

57:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:22:54 ID:IIZUTGxqn

>>56

沖野Tが戦後のコメントで距離適性の差が出たってコメントしてる

 

58:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:23:07 ID:vceQBBnwu

というかテイオーは世代レベルが低かっただけだろ

別にそんな強くないわ。ルドルフ相手とは言え秋天で惨敗してるし、シニアにいってから連対したの大阪杯だけじゃん

 

59:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:23:19 ID:kSdL9cu3l

ネイチャ……

 

60:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:23:30 ID:+511V6fZA

>>59

ネイチャさん夏の上がりウマ娘だから言うほどテイオーと一緒に走ってない

 

61:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:23:43 ID:Q1kH1qcIo

三冠ウマ娘の世代レベルが低いと言われがち説

 

62:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:23:54 ID:dYRptOJG4

シービー世代……強い

ルドルフ世代……弱い

 

63:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:24:05 ID:LfuDJgdOQ

サンプル少なすぎる。ルドルフ世代は疑いの余地なく弱いけど

 

64:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:24:18 ID:kNLV3giEV

ブルボン世代は?

 

65:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:24:29 ID:8jatGcXLd

マチタンがかわいい

 

66:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:24:42 ID:dnuSQa05S

短距離路線の充実具合が尋常じゃない

 

67:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:24:53 ID:5D+l0918x

ナリタタイセイさんが京都新聞杯で最下位だった上に骨折したからクラシック路線の層は薄い

 

68:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:25:04 ID:/i47MvY+3

>>63

サンプルが豊富になる頃にはここの住人全員死んでそう

 

69:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:25:16 ID:pirmSARFM

テイオーは強いと思うけどな。春天出したほうが悪いわ

 

70:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:25:28 ID:Wvsh46X02

言うてあれ盛り上がったじゃん

 

71:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:25:40 ID:pirmSARFM

>>70

おとなしく宝塚いってほしかった

 

72:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:25:52 ID:UeqWFq+v5

というか春天出たのはテイオーの希望だから沖野T叩くのは筋違いみたいな所ある

 

73:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:26:06 ID:RsLN/mpMv

まあ走ってみないと距離適性ってわからんからな

 

74:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:26:18 ID:J6ZGwzEO0

あとブルボンが普通に距離延長してたからできても全然おかしくはなかった

 

75:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:26:30 ID:1pxDxNuBI

ひょっとして東条甥って有能?

 

76:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:26:42 ID:l3hmLu9Vc

スズカのアレとか今のスパルタトレーニング見るに健康管理が下手だけど育成は上手いタイプ

 

77:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:26:53 ID:uucs9+jCi

沖野T型か

 

78:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:27:07 ID:kIGXkgQEh

というかブルボンってテイオーができなかったことを結構背負ってんのね

 

79:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:27:18 ID:+qT+CbV2o

無敗三冠と距離延長か

 

80:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:27:30 ID:5gH4Z57fQ

どう考えてもブルボンにテイオーが勝てるとは思えん

 

81:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:27:43 ID:zlFr2nkLV

>>80

去年のダービー後、マックイーンに対して同じようなこと言ってそう

 

82:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:27:57 ID:zuhTEPz76

ブルボンは秋天行ってくれないかなと思ってたけど無理だからおとなしく応援するわ

 

83:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:28:08 ID:xqODyfRgt

皐月ダービー勝って菊花スルーするわけ無いだろ

 

84:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:28:21 ID:Ds8ATT67M

ブルボンなら普通に逃げ切ってくれそう

 

85:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:28:33 ID:hEtxcMK0o

皐月で400、ダービーで400伸ばせたんだからもう一回やればいいだけ

 

86:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:28:44 ID:EFdeKSJoB

2400から800伸ばすのか……

 

87:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:28:57 ID:AzSzYQGoI

スプリンターが3200走るとかトゥインクルシリーズ壊れるわ

 

88:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:29:08 ID:qeWrGw1XO

もうなんでもいいからブルボン勝ってほしい。無敗三冠みたい

 

89:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:29:19 ID:E28eAL5ym

無敗三冠対決とか史上最高に熱そう

 

90:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:29:32 ID:G6IKA8day

ブルボン血統がアレなのに頑張ってるから応援してる

 

91:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:29:43 ID:mnF66gdUg

京都東条家「ウマ娘は血統」

 

92:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:29:55 ID:ndroD9dwG

>>91

なお嫡子はタマモクロスと組んでる模様

そして分家はブルボンと組んでるし

 

93:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:30:08 ID:r2JkE7HN/

そんな事言いつつタマにお金出すあたりツンデレかな

 

94:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:30:22 ID:qpokYi5BR

>>93

アレは嫡子ことタマTのポケットマネーだぞ

 

95:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:30:33 ID:b488x+ckF

ブルボンの活躍でレース教室でも血統イマイチな娘を受け入れるようになってくれて嬉しい

 

96:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:30:45 ID:4msxprwKp

>>95

最近元気なかった近所の娘がブルボンのレース見て元気になってくれておじさん嬉しい

 

97:尻尾上がり名無し ??/11/7 23:30:57 ID:QpK0V2I2I

通報した

 




31人の兄貴たち、感想ありがとナス!

Meron_兄貴、toCandy兄貴、heine兄貴、究極生命体兄貴、兄貴、shinon4225兄貴、小魚兄貴、幽霊潜孔兄貴、評価ありがとナス!

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メモリー:2/11/8

【菊花賞】ミホノブルボンの無敗三冠を見守るスレ【残り一冠】

1:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:33:32 ID:Xjd/f/qJr

達成すればシンボリルドルフ以来となります

 

2:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:33:37 ID:vRvid8Af0

二人目かぁ

 

3:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:33:44 ID:ew9aNyhWI

テイオーで見られなかった夢を見せてほしい

 

4:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:33:50 ID:mVVua2v3b

よくあんなスパルタトレーニング受けて無事にたどり着いたもんだ

 

5:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:33:57 ID:N1cRnI20E

ノーノーを見守るスレに近い物を感じる

 

6:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:34:02 ID:Vql29w8sQ

>>5

それ大抵が達成されないんですがそれは

 

7:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:34:08 ID:Nao6J0TfG

キョウエイボーガン陣営が不気味やね

 

8:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:34:14 ID:alM/f228+

逃げ宣言のやつか

 

9:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:34:21 ID:NlGIpvFd7

出走表ハラディ

 

10:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:34:26 ID:PGVJUrqG3

出走表みたいなら本スレいけ

 

11:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:34:32 ID:Nao6J0TfG

4枠7番、4枠8番、5枠10番、6枠12番だけ注目しといたらええ

 

12:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:34:38 ID:isecNOZDB

ライスシャワー、ミホノブルボン、マチカネタンホイザ、キョウエイボーガンか

 

13:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:34:43 ID:PSxhAdtdP

そろそろ出走か

 

14:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:34:49 ID:sWzAkl6zR

くる

 

15:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:34:54 ID:26qWJImU9

あー、無敗三冠! 無敗三冠見たい!

 

16:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:00 ID:yMe7e4AAF

はじまった!

 

17:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:05 ID:iPNExnS2x

うおおおおお!

 

18:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:06 ID:k68MpB565

!?

 

19:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:07 ID:BTQvsgIwx

ブルボン2番手か

 

20:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:09 ID:T8WOpfwPe

ボーガンかよ

 

21:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:10 ID:ARBR4sYMl

ブルボンの方が内枠だからハナ奪えると思ったんだが

 

22:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:12 ID:HTbVcSFyo

暴走だなこれ

 

23:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:13 ID:xjf5An8Wv

これ保たんだろ

 

24:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:15 ID:Nao6J0TfG

保たへんやろけど、それ以外に勝ち目ないんちゃう

 

25:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:16 ID:NjdECA79u

うわ、完全にハナ奪われた

 

26:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:18 ID:vyH/9NmPJ

はえーなボーガン

 

27:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:19 ID:mnsCycz8Q

頭抑えられた逃げに勝ち目はないんだが

 

28:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:21 ID:MNu65Vdl6

現地勢ワイ、すげえ非難轟々で耳が痛い

 

29:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:23 ID:wn9BQIN5r

残当

 

30:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:24 ID:pJKzuQk1J

邪魔すぎる

 

31:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:25 ID:jPjCtm8Q+

ライスも来た!

 

32:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:26 ID:lEXe3ZpCy

ライス前に構える気か

 

33:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:28 ID:Nao6J0TfG

アカンねこれ。塞がれとる

 

34:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:30 ID:OpZgtsYwA

ライス先行策か

 

35:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:31 ID:4ibpmWNx3

結構後ろ気味にいるイメージだったのにきたな

 

36:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:33 ID:DC+QKUs+l

ボーガン絶対保たんな

 

37:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:34 ID:nKzb6bYAx

マチタンは中段待機か

 

38:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:35 ID:iUnsVXlK4

ライスなんで外走ってんだろ

 

39:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:37 ID:s8zbBuWby

3000メートル余裕で走りきれるスタミナがあるからとか

 

40:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:39 ID:+CpsTX/E4

殺人的ハイペースだな。タイムが尋常じゃない

 

41:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:41 ID:ChbHO1T/w

普通にマークする姿を見せるためとか

 

42:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:43 ID:5eQotD7/Y

プレッシャーかけてく気か

 

43:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:45 ID:78g7PinWt

ブルボン二番手に収まってんな

 

44:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:47 ID:s7pAWyPw+

これ前に出れないんじゃないか

 

45:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:48 ID:fQik67Sq4

ライスといいボーガンといい早仕掛けだな

 

46:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:49 ID:YaKphDIKD

ちょっとまった>>33これどういうこと?

 

47:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:51 ID:GRjpdAtKm

進路塞がれてるってことか

 

48:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:53 ID:B7xktAa3T

なんで?

 

49:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:54 ID:Nao6J0TfG

外からボーガン抜こうとすればライスが前に出て塞げるってことや

 

50:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:56 ID:fCmIfR/W9

もうないじゃん

 

51:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:57 ID:AccokicD6

初手詰みか

 

52:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:58 ID:Nao6J0TfG

別にそんなにすごい手ちゃうわ

ブルボンちゃんは速度緩めてボーガンちゃんとの距離を広げたらええねん。したらライスちゃん1人じゃ塞ぎきれへん距離が空くやろ

 

53:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:35:59 ID:6/pJqgRMu

なるほど

 

54:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:01 ID:FvyjotYh6

なんだ、まだあるじゃん

 

55:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:03 ID:Y2k6KFRlQ

で、それに東条甥は気づけるのか?

 

56:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:05 ID:WBjV19s7Q

と言うかあいつがブルボンに指示したところ見たこと無いんだが

 

57:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:07 ID:wXjPRDssh

気づけー!

 

58:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:08 ID:Nao6J0TfG

俺に気づけることを隼瀬くんが気づかんわけないやろ

 

59:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:10 ID:FEdEaKTFe

ブルボンでもいいから気づいてくれないかな

 

60:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:11 ID:Il6TTrbJo

減速する素振りがないんだが?

 

61:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:13 ID:sAhitKU8Y

ただ前との距離は伸びつつあるから減速する必要もないんじゃない

 

62:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:14 ID:e/E7+aYUl

ボーガンの自滅気味の速さが助けてて芝

 

63:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:15 ID:Nao6J0TfG

ボーガンちゃんはあそこらへんが限界やからこれ以上は広がらんで

 

64:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:17 ID:MsopyDGdh

ブルボン横チラチラ見てるな

 

65:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:19 ID:A7sakqosP

外から追い抜こうとしてるのか

 

66:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:20 ID:nN6hIB5yg

まあセオリーだけどさぁ……

 

67:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:22 ID:/zw2l28GZ

減速したらバ群に包まれるから減速しないのか?

 

68:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:23 ID:Nao6J0TfG

包まれないギリギリを突けばええ

 

69:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:24 ID:mQFuG9ReA

できんのかそれを

 

70:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:26 ID:2r5OLVzga

すっげぇハイペース

 

71:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:27 ID:shgrZPM2Y

先頭集団とそれ以外が離れ過ぎ

 

72:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:28 ID:fcsBpgHqr

ブルボンなんとか勝ってくれないかな

 

73:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:29 ID:hbIfRQqHG

ボーガンこのまま逃げ切りそうで怖い

 

74:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:31 ID:T/gs4RglD

>>73

それは無理

 

75:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:32 ID:qqH40QWIW

>>73

脚が壊れるほうが先

 

76:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:34 ID:vf3oOmDg9

!?

 

77:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:36 ID:VtWKi5KTQ

ブルボン加速しはじめてて芝

 

78:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:38 ID:7gN9n2q80

ボーガン垂れてきてるしコーナーすぐそこなんだが?

 

79:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:39 ID:Nao6J0TfG

淀の坂で全速で走るのやめろや

 

80:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:41 ID:yT80iu222

は!?

 

81:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:43 ID:MRHcnJlIj

そのまま突っ込んだ!

 

82:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:45 ID:93nIxIN7r

ノー減速で内埒ぶち抜くのか……

 

83:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:46 ID:Ir7Da38bB

これは三冠ウマ娘ですね

 

84:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:48 ID:w2RirmESk

コーナーで膨れること読んでたのか

 

85:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:49 ID:Nao6J0TfG

読めへんかったわ

 

86:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:51 ID:WtURM/768

やっぱブルボンつええわ

 

87:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:52 ID:qhqZa8uD3

絶対勝ったろこんなん

 

88:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:53 ID:sfTt00SCs

よくあんな狭いところ突っ込むわ

 

89:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:54 ID:ppUAhNqen

コーナーうっっま

 

90:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:56 ID:uAACQo8UR

キチガイコーナリング

 

91:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:58 ID:Z0n6ZDINg

内か!

 

92:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:36:59 ID:YrQM8BzLg

内ブチ抜いたな

 

93:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:01 ID:saTsDekvW

うお

 

94:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:02 ID:3lQf3MRDA

これでライスは消耗しただけか

 

95:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:03 ID:n0tuQFVLi

すごい声援

 

96:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:04 ID:fp52xru8C

そりゃあんなもん見せられたらそうなるわ

 

97:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:06 ID:pNUO0gWV5

こんなコーナリングできるやつシニア級にもいないわ

 

98:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:07 ID:TAs9ZZ6wL

ボーガン落ちはじめたな

 

99:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:09 ID:+Ig9+VE5i

 

100:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:10 ID:1CJUAS/Wt

ライスシャワー以外相手にならんな

 

101:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:12 ID:TUK18PMLl

ボーガンギョッとした顔してるあたり予想外だったんだろうな

 

102:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:14 ID:avrwBBuWV

ライスピッタリか

 

103:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:15 ID:U384OY5YR

風除けにして脚溜める感じかな

 

104:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:16 ID:A+Rl2sSAW

よくライスもついて行けるわ

 

105:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:18 ID:g/jNfBqVQ

徐々に離されつつあるけどな

 

106:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:20 ID:Ip3KVJ3Ku

これ例年のより3秒は速いな

 

107:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:21 ID:/MYw8xO84

何人か脚壊れそう

 

108:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:22 ID:DfRB2Glrx

殺人菊花賞じゃん

 

109:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:24 ID:PZyqzpLQF

なんか決着感あるけどまだブルボン勝ってないからな?

 

110:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:26 ID:fSrSV3z1P

勝ったようなもんだろ

 

111:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:27 ID:cFG4W2XEY

あんな突破しといて負けるとか嘘だわ

 

112:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:29 ID:fAT3baWhA

うそでしょ……するかもしれない

 

113:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:30 ID:Od5WeEk2n

どこからでも! なんでも来いと言った感じか!

 

114:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:32 ID:ppX4hPsJ2

かっこいいわ

 

115:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:33 ID:X9qduxKV2

ライス動いた!

 

116:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:34 ID:TT0NIxcn6

進路は外、抜き去る気か

 

117:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:36 ID:VZvkdIJfX

すげぇ直滑降

 

118:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:37 ID:T+h61UvJg

転んだら大惨事だな

 

119:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:38 ID:kexxcAW0w

淀の坂のセオリー、無視されがち

 

120:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:40 ID:iv1M2Aj2A

スプリンターのくせに3000メートル走り切ろうとしてる存在そのものが常識無視してるやつを相手にするには無視するしかないんだろな

 

121:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:42 ID:CMScG9AEk

さあ直線勝負!

 

122:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:44 ID:XMcuY5gno

逃げ切れるだろこれは!

 

123:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:45 ID:1gPjPIV5p

ライス頑張ってるけど苦しいか

 

124:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:47 ID:bolkFRbJp

勝った勝った勝った!

 

125:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:48 ID:DzIa4UIOM

マジで逃げ切るのか……

 

126:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:49 ID:IA1DrbrGQ

マチタン流石に届かんな

 

127:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:51 ID:URK1Q3/ki

減速しないのほんとにすごいわ

 

128:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:53 ID:6cr8CoLo5

一人旅!

 

129:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:54 ID:U56U3y0FG

ライスあかんか

 

130:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:55 ID:ZPhg/V15g

ライス離れた!

 

131:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:57 ID:x4OjeUrKW

ブルボン!

 

132:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:58 ID:Nao6J0TfG

疾風迅雷やね

 

133:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:37:59 ID:DAvUteaX+

クラシック三冠だぁぁぁあ!

 

134:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:01 ID:ixe2hNj9O

無敗の三冠ウマ娘の誕生だぁぁあ!!

 

135:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:02 ID:Jpl1c+DAM

マジで強かったわブルボン。無理とか言ってごめん

 

136:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:03 ID:6uoVL2sGL

レース前にきっちり距離延長してくるあたりすごいわ

 

137:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:05 ID:4A6lzc8cF

パーマーとの対決楽しみ

 

138:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:07 ID:PYiU6mAqa

ブルボンが3000メートルとか言ってた節穴wwww

私です。申し訳ありませんでした

 

139:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:08 ID:l7xVhauyQ

ごめんなさい

 

140:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:10 ID:EnGjD6HES

ごめん

 

141:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:11 ID:hOc6eppCw

最初から信じてたわ

 

142:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:13 ID:S3OwH8yuc

ブルボンニコニコでかわいい

 

143:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:14 ID:dvEMZ10wk

ニコニコロボ

 

144:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:16 ID:gPkQXnfpL

ごめんなさい

 

145:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:17 ID:1KFwVJiJ4

すいませんでした。ブルボンのぱかプチ買います

 

146:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:19 ID:js6vbdo5f

すげぇ面白いクラシック路線だった。あとごめんなさい

 

147:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:20 ID:2aR3m2Vcu

皆見る目なさ過ぎだろ。すんませんでした

 

148:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:21 ID:yzJ10OVQo

皐月すら無理だと思ってました(小声)

申し訳ない

 

149:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:23 ID:CRnrTnOpy

本当に申し訳ない

 

150:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:24 ID:mi5otBITE

すいませんでした。ブルボンのサイン大事にします

 

151:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:25 ID:0hRJpowSO

>>150

サインもらっておきながら信じてなかった人間のクズ

 

152:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:26 ID:dydjouOvo

>>151

サイン求めたのこっちなのにありがとうございますって言ってくれた。いい子だったよ

菊花賞は無理だと思ってたけど

 

153:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:28 ID:x5Yk3beZT

まあ大抵の人間が信じてなかったからしゃーない

 

154:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:29 ID:luJkds5+K

未来人兄貴の言うとおりになったな

 

155:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:31 ID:lSMeYVjNl

誰や未来人兄貴って

 

156:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:33 ID:eBKKmuJYy

>>155

春くらいにブルボンが無敗三冠とって凱旋門勝つっていったやつ

 

157:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:35 ID:Hs0zd4Y32

いい加減凱旋門勝ってほしい

 

158:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:36 ID:wd+jtE2BM

ブルボンなら勝てるかもしれんな

 

159:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:38 ID:Xr1wwfnsg

>>158

なんで?

 

160:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:39 ID:NvfeEqKxx

>>159

名前

 

161:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:41 ID:MmgIz1aFH

名前は芝

 

162:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:42 ID:mMg7kFfqX

確かにフランスっぽくはあるけど処刑される側やんけ

 

163:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:44 ID:YIYelgtQn

まあ無敗三冠したんだから凱旋門には行ってほしいな

 

164:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:46 ID:vEWsR1RV/

そのまえにシニアで実力見せてから行ってくれ

 

165:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:47 ID:gK7hlYMWu

マックイーン、テイオーあたりと戦ってから海外行ってほしい

 

166:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:49 ID:wmJVJErG8

あとルドルフとの無敗の三冠対決な

 

167:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:51 ID:KhjOXUdJl

無敗の三冠が並び立つ景色とかもう二度と見られないだろうから一刻も早くレースしてほしい

 

168:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:52 ID:ct/By8Ct0

ブルボンすごかったわ。今年はブルボンの年だな

 

169:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:54 ID:2B2+ntIb+

年度代表ウマ娘不可避

 

170:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:55 ID:UWayey1Ea

無敗の三冠が年度代表ウマ娘逃すとかある?

 

171:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:57 ID:TLjDhAj0P

というかこっからのローテどうするんだろ

 

172:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:38:59 ID:6D9NvQPrc

ルドルフローテならジャパンカップからの有馬記念か

 

173:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:39:01 ID:DBkBHos9S

こんな殺人ペース走ったんだから消耗酷いだろうし、普通に有馬記念出てくれればいいわ

 

174:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:39:02 ID:38Z22Xrvv

むしろ今年1年寝てていいわ。下手に怪我されても困る

 

175:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:39:04 ID:6f6xUNu2u

ブルボン強いねやっぱ

 

176:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:39:06 ID:d0TUlBFXo

一言インタビューきた

 

177:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:39:07 ID:q3pbqtvkJ

なんて?

 

178:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:39:08 ID:vwuYp0nA7

ウマ娘の速さは力。減速でも対抗できたが、最速最短でぶち抜くのが一番いいと思った

 

179:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:39:10 ID:vwuYp0nA7

あとは夢を叶えられてよかったとか

 

180:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:39:12 ID:W1O288ZqT

これは親子ですわ

 

181:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:39:13 ID:ETMQ/xfCy

鷹瀬じみたこと言ってて芝

 

182:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:39:15 ID:z6SlhSnpl

ひょっとしてこいつ有能なのか?

 

183:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:39:16 ID:IodznajDm

指示してないように見えるんですがどういうことなんですかね

 

184:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:39:18 ID:YmPBJZspQ

事前に予測しておいたとか?

 

185:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:39:19 ID:oGoA5f/Sf

>>184

できるわけない

 

186:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:39:20 ID:JSe6wKrlb

まあそんなこと言ってもスプリンターが無敗の三冠とることもできるわけないわけで

 

187:尻尾上がり名無し ??/11/8 15:39:22 ID:Nao6J0TfG

おめでとさん。やっぱまだ遠かったわ

 




39人の兄貴たち、感想ありがとナス!

Aireal兄貴、えlも兄貴、yuuki100兄貴、ないんて兄貴、わかりまθ兄貴、WARM152兄貴、kaiman兄貴、評価ありがとナス!

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メモリー:2/11/9

https://syosetu.org/novel/259565/42.htmlのスレ


【次走JC?】ブルボン三冠インタビュー実況スレ【有馬?】

1:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:30:00 ID:3vwEQGigL

はじまったので

 

2:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:30:23 ID:BNNbboQOb

流石にこの時間は人いないな

 

3:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:30:48 ID:9DnUSx2Zf

次走JCかな。有馬かな

 

4:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:31:12 ID:EjsNYgmOk

ジャパンカップだったらテイオーとやり合うのか

 

5:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:31:36 ID:cd3XZHrvA

テイオー最近調子良さそうだからいい勝負見れそう

 

6:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:32:01 ID:JyJdRJWPb

そうなるとMT対決か

 

7:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:32:27 ID:YWJDXXI00

どうやって適性距離を延長したのですか?って、訊いても答えるわけ無いだろ

 

8:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:32:49 ID:YulmHydKW

秘伝のタレみたいなもんだもんな

 

9:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:33:14 ID:9LiJ+RCLc

って答えるんかーい

 

10:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:33:40 ID:Mz1ieZ4bN

普通に答えるの芝

 

11:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:34:06 ID:MwpZulq2x

これ以外にまたなにかあるのか、別に披露しても問題ない程度のことなのか

 

12:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:34:27 ID:nvvsUGfD4

ブルボン尻尾ブンブンでワロタ

 

13:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:34:48 ID:KQrx6Rty4

ひょっとしてブルボンってかわいい?

 

14:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:35:13 ID:S+kTAuKY7

隣の無感情っぽいのにあどけなさそうな仔犬っぽい娘がすごい信頼の眼差し向けてるのいい……

 

15:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:35:39 ID:YT670LMX8

>>13

今年はじまってから寝てたのかな?

 

16:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:36:03 ID:U5LKBozTU

ブルボンの声透明感あって好き

 

17:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:36:26 ID:q9HhiJEnH

歌うまいよな

 

18:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:36:53 ID:dWschRrvC

ダンスもうまい

 

19:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:37:14 ID:NDlQOfqEj

走るのもうまい

 

20:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:37:40 ID:IhJzC4O9K

ブルかわ

 

21:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:38:01 ID:3GRIpkko1

入場してきたときもそうだけど、後ろをトコトコついてくるのかかわいい

 

22:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:38:25 ID:YtbQz5eH4

父性が刺激される

 

23:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:38:48 ID:sgCESP8pc

坂路ってなんや

 

24:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:39:11 ID:NAA5/mujm

トレセン学園のお知らせの工事欄にそんな施設建てるみたいなのあったな

 

25:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:39:32 ID:y9Uyxe4i8

坂路使えば誰でも距離延長できるってマ?

 

26:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:39:59 ID:V1bmstB3e

バクシンバクシンバクシーン!!

 

27:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:40:22 ID:Ha3DTG0AS

バクちゃんのマイル路線侵略がはじまっちゃう!

 

28:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:40:45 ID:XuKbRvDH3

ブルボントレーナーのことマスターって呼んでるのか……

 

29:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:41:09 ID:LkxBguy22

ここ切り取って素材にしよう

 

30:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:41:34 ID:kp+Ua856i

ひょっとして東条甥って変態なのでは

 

31:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:41:55 ID:Ou/H5V4ZQ

勝負服からしてね……

 

32:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:42:15 ID:Blr1yoyNg

あれはブルボン発案だからたぶんマスターもブルボン発案だぞ

 

33:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:42:37 ID:rQWWrBKlE

あんな娘感あるのにあんなエッッッな!?

 

34:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:43:02 ID:bOa2caWj1

>>33

ウマシコ警察だ!

 

35:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:43:24 ID:YGXMCxRXj

>>33

デトろ! 開けロイト市警だ!

 

36:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:43:52 ID:IE5733kTa

Q.どうしてスプリンターが菊花賞を制覇できると考えられたのですか?

A.時間さえかけられれば距離適性は克服できる。今回は時間がなかったが、芯が強い娘だから耐えられると思った

 

37:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:44:16 ID:m+/VSnmR7

耐えられるっていうあたりスパルタな自覚あるのね

 

38:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:44:36 ID:Vm9ARF3sl

がんばりロボ

 

39:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:45:00 ID:6zsa6fNbp

時間が必要ならではなぜ今年のデビューを選ばれたのですか?は芝

 

40:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:45:28 ID:GG1NdlQpN

まあそれはそう

 

41:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:45:55 ID:A1TnPSQ40

去年契約してこれなんだから来年でも再来年でもいいもんな

 

42:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:46:15 ID:qEWE4JdQo

A.来年も再来年も三冠候補のビワハヤヒデやナリタブライアンがいる。彼女らにはたぶん勝てないだろうし、それから先は予想がつかない。今年はライスシャワーがいるとはいえ、脅威になるのは菊花賞でのこと。それまでに対策は立てられるし、ベストではないにせよベターな選択をした

 

43:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:46:40 ID:mOe9L77s2

 

44:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:47:06 ID:qiu1Lc567

正直者かな

 

45:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:47:27 ID:fj9TfLxzU

こいつ意外と天然なのでは……

 

46:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:47:48 ID:O4tt8wBqx

ナリタタイセイ……

 

47:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:48:11 ID:zNHpqBGGk

割と正しい認識ではある

 

48:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:48:35 ID:Q6Kw1f4Qn

まあ勝てるまで待つのは定石だしね……

 

49:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:48:57 ID:Z86QEbjf3

ビワハヤヒデとナリタブライアンとか言う最強の姉妹

 

50:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:49:18 ID:hb34rDHG/

あまりにも正直すぎる

 

51:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:49:38 ID:dHGF3srmu

記者たちもちょっと笑ってて芝

 

52:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:50:04 ID:7yQcX7eQ2

無愛想だからどうなるかと思ったけどなごやかに進んでてイイネ

 

53:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:50:29 ID:JszVTKrwB

Q.次走は?

A.ジャパンカップ、その次は有馬記念。来年の始動は大阪杯から

 

54:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:50:55 ID:Wj1n1uf9E

GⅠしか狙わない機械かよぉ!

 

55:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:51:19 ID:kdZlDfaAk

ルドルフローテじゃねーか

 

56:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:51:44 ID:u/Qc10Qie

トレーニングメニューを作ることに力を注ぎすぎてローテを流用に頼らざるを得ない男

 

57:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:52:04 ID:TeZw5Uf/Q

まあ金銭的にも栄光的にもベストではある

 

58:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:52:24 ID:OPbH5lZPE

東条甥「ただ有馬記念に出られるかどうかはわからない。人気投票なので、そこらへんは皆さんに任せるしかないですね」

 

59:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:52:51 ID:R2Gag5uaT

まかせろ

 

60:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:53:18 ID:+7OFOziwL

一人で10万票いれてやるぞ

 

61:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:53:44 ID:dxjbvSTV2

dos攻撃やめろ

 

62:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:54:11 ID:MXNCFoZLW

URAの投票サイト落ちてて芝

 

63:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:54:36 ID:VCFYYLkYA

まだはじまってない定期

 

64:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:55:01 ID:89WWUCRBX

一人でURAの鯖を破壊する男

 

65:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:55:23 ID:ANKGlxqtb

おや

 

66:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:55:49 ID:jjrZdBI3a

ボーガン姉貴がんばったんだよなぁ……

 

67:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:56:14 ID:bU6LfLK6A

Q.キョーエイボーガンの走りについてはいかがですか?

A.彼女の走りは明らかに勝ちを意識したものでした。状況的にも実力的にも、最善手であったと思います

 

68:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:56:37 ID:s4e9tbJYj

勝者の余裕

 

69:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:56:57 ID:mKCdGgFq0

これは皇帝お気に入りのリュック

 

70:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:57:00 ID:q9l0WgBdl

クソ邪魔でしたわ、とは言えんだろな

 

71:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:57:04 ID:IZM524Zz0

皇帝のリュックらしい優しい言い回し

 

72:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:57:08 ID:3t3+oJ2UQ

とてもさっきまで鯖攻撃を使嗾してたやつと同一人物だとは思えん

 

73:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:57:12 ID:ZfqtTkaTU

使嗾してないんだよなぁ……

 

74:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:57:17 ID:g0fw52wYH

ボーガン姉貴ちゃんと走っててかっこよかったんだけどな

 

75:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:57:21 ID:OmiVW/dIc

まあ空気読めとは思った

 

76:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:57:25 ID:NaofLLTHu

>>75

なんで空気読まなアカンねんカス

囲まれても対策されても強いやつは勝つねんドブカス

弱いやつが気を使ったから勝てたとか変な言い訳つけられる方がよっぽどイヤやわカス

隼瀬くんの強さもわからんドブカスがよう言うたもんやわ

 

77:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:57:30 ID:kdS1s85iX

ケシカスくんかな

 

78:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:57:34 ID:mO1ilCBy/

俺たちは強いウマ娘が強い勝ち方をするのが見たいのであって強いウマ娘が無条件に勝つのを見たいわけではない

 

79:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:57:39 ID:v2Jbc00xK

Q.他になにか思うところはありませんか?

A.ありません

Q.例えば、キョーエイボーガンは勝ちを目指していなかったのではないか、という言説もありますが

A.勝ちを目指さないウマ娘などいませんよ

 

80:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:57:44 ID:eVsLx5KDH

引き出したいコメントを引き出すまで似たような質問を繰り返すのやめろ

 

81:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:57:49 ID:NaofLLTHu

ホンマわかっとらんわこのドブカス 消したろか

 

82:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:57:53 ID:l1iksWrP+

>>76

というかそう言うニキはわかってたん?

 

83:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:57:57 ID:NaofLLTHu

わからへん

 

84:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:58:02 ID:aOeVrFgRr

すっごい素直!

 

85:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:58:06 ID:NaofLLTHu

悔しくはあるけど別に恥やないわ

あの人の強さわかってんのルドルフさん、鷹瀬さん、おハナさんくらいやろ

 

86:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:58:11 ID:F18iAzKwI

Q.ですが、彼女の走りはどう考えても最後まで保つものではありませんでした

A.無理かもしれない。ただ、最後まで保たせなければ勝てない。その認識は正しいものですよ

Q.キョーエイボーガンが実力も弁えずにくだらないことをしたばかりに、負けかけた。あれがなければもっといいタイムが出せていました、残念と思われませんか?

 

87:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:58:15 ID:VMOLHcZPS

うお

 

88:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:58:20 ID:GUKlz2B7g

ビビりロボかわいい

 

89:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:58:24 ID:SY2dGOZHq

ブチギレ隼瀬さん怖

 

90:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:58:28 ID:MmYfZyof7

怒られてないし怒ったところなんて見たことないんだろうなぁ……っていうロボの反応かわいい()

 

91:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:58:33 ID:NaofLLTHu 

そら怒るわ

 

92:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:58:37 ID:6kEXwfLOV

お前、吐いた言葉は呑めんぞ←こわい

 

93:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:58:42 ID:xSKeM46k9

名門のトレーナーらしからぬブチギレ具合で芝枯れた

 

94:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:58:46 ID:5cW8jnbG1

くだらないことは普通にいかんだろ

 

95:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:58:50 ID:vHISlt91b

ボーガン姉貴が頑張ってたのはレース見ればわかるのに

 

96:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:58:55 ID:fg8e9QWBr

まあ邪魔するメリットがないわな

 

97:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:59:00 ID:GkKTWTjbv

うんこ漏れた

 

98:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:59:05 ID:NaofLLTHu

この尖ってる感じ、思い出すわー。好きやわー

 

99:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:59:09 ID:6GSLHfyrE

ホモかな

 

100:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:59:14 ID:NaofLLTHu

お前同性好きになったことないんか? 尊敬できるやつを好きになるのは当たり前やろ

 

101:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:59:19 ID:Vn3uLDY3g

機能停止してるビビりロボが唯一の救いだよこれ

 

102:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:59:23 ID:utMJYspUm

敗者を貶す権利は勝者にすらない。夢に向かって努力し、GⅠという舞台に上がったウマ娘を、支援してきたトレーナーをくだらないと断じる権利は、お前にはないらしい

 

103:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:59:27 ID:bkmhMignl

正論正論&正論

 

104:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:59:32 ID:y+pMl3Rp3

でもここに書き込んでるやつ大抵そういう経験ありそう

 

105:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:59:36 ID:73BrxnRdY

まあ直接言うのはいかんでしょ

 

106:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:59:40 ID:DzbK+ew4M

結構熱いやつだったんだな、こいつ

 

107:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:59:45 ID:Fyjc3yoN7

感情なさそうな顔してるのに、よりにもよってボーガン姉貴の弁護で爆発させるの芝

 

108:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:59:49 ID:d03d4sHxH

ビビりロボ再起動したな

 

109:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:59:54 ID:lp2iDH3hL

眉毛ピーンってなったブルボンかわいい

 

110:尻尾上がり名無し ??/11/9 7:59:58 ID:z6e5tWYH+

よくやったみたいな顔してるな! 俺は詳しいんだ!

 

111:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:00:03 ID:Ih5xq0/Z3

まあブルボンからすればねぇ

 

112:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:00:07 ID:Isk7kDwSN

一緒に走ってたんだからわかるでしょうよ

 

113:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:00:12 ID:xl4o4kIiZ

!!??

 

114:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:00:20 ID:0aY0kAiQP

どけ! 俺はお兄様だぞ!

 

115:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:00:21 ID:W+nf0wEMW

どけ! 俺はお兄様だぞ!?

 

116:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:00:22 ID:4NosCROfe

どけ! 俺はお兄様だぞ!ってなんや

 

117:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:00:30 ID:/Srtcir+K

ライスシャワーのトレーナーじゃん

 

118:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:00:35 ID:8P6825K6+

皇帝!?

 

119:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:00:39 ID:AGdr0ATG4

皇 帝 降 臨

 

120:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:00:44 ID:nXiUOXUj7

自分のお気に入りのリュックがすごいことして、嬉しくなって会見見てたらこんなことになった皇帝の内心を答えよ

配点:70点

 

121:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:00:48 ID:8hq/U+7Zn

そう考えると普通にかわいそう

 

122:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:00:53 ID:w9VrOf5H6

ガチで羽交い締めにされてるあたりほんとに首根っこ掴んでぶん投げかねないんだろうな

 

123:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:00:57 ID:qD3IlZG0c

ライスシャワーのトレーナー好きだわ

 

124:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:01:02 ID:V4fDj0QmP

そら悔しいわな

 

125:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:01:06 ID:aVcpdihSO

ボーガン姉貴の言われてたことほぼライスシャワーにも当てはまるもんな

 

126:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:01:11 ID:evMAAkA1B

ライスシャワーはよく走ってたわ。ライスシャワーがいなければブルボン一強過ぎてつまらんかったし

 

127:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:01:15 ID:wIILE0zeu

ルドルフさんの眼が怖い

 

128:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:01:19 ID:VL2jcl7ev

皇帝怖い

 

129:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:01:24 ID:u4Gwaopsy

いろんなこと起こってて混乱してるけど皇帝の眼差しが学生のそれじゃない

 

130:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:01:28 ID:NaofLLTHu

ルドルフさん、隼瀬くんと会う前の昔に戻ってるやん

 

131:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:01:32 ID:YIEq27AYL

>>130

お前関係者ニキやろ。止めにいけや

 

132:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:01:37 ID:NaofLLTHu

あの状態のルドルフさんに言う事訊かせられるの隼瀬くんくらいやから無理や

それに、もうちょっとビビらせたってもええやん

 

133:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:01:41 ID:d9OF11KsU

それはそうわね

 

134:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:01:45 ID:4cDjK9hXS

自分の夢を叶えた会見を破壊されてあそこで怒ってくれるマスターで、『良かった』ですって言えるロボって天使なのでは?

 

135:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:01:50 ID:R0NV+0IS4

ウキウキロボかわいい

 

136:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:01:54 ID:liBoANBe8

ミホノブルボン天使説

 

137:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:01:59 ID:lJAk9isRC

ぱかプチ買います。買ってた

 

138:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:02:03 ID:W9qZSD4QJ

もう一個買え

 

139:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:02:08 ID:lJAk9isRC

はい……

 

140:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:02:12 ID:CcSRbo526

なんか隼瀬好きだわ

 

141:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:02:17 ID:DNeN0+RPy

なんとなく嫌だったけど普通に好きになりつつある

 

142:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:02:22 ID:XNhbIpOkM

ブルボンの反応見れば不器用なだけで良い人なんだなーってわかる

 

143:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:02:26 ID:wRZ9gUtRi

今まで月刊ターフに騙されたからお礼に今度本社ビルに火炎瓶投げ込んどくわ

 

144:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:02:30 ID:EEi7hhEXy

流石に通報した

 

145:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:02:35 ID:wRZ9gUtRi

なら普通に購読契約解除したろ

 

146:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:02:40 ID:bwae6M7ZZ

かしこい

 

147:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:02:44 ID:JCF7NRLmB

退場喰らってて芝

 

148:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:02:49 ID:NaofLLTHu

この業界からパスアウェイさせたる

 

149:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:02:53 ID:htjlKQGea

直接的な表現を用いない元華族の鑑

 

150:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:02:57 ID:EIc/snK65

散々カスカス言ってたんですがそれは

 

151:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:03:01 ID:/7dLbbUCM

まだ会見続くのか……

 

152:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:03:06 ID:oOQA4Z1sA

乙名史記者、ここで何事もなかったかのように荒れる前と同じ話題を降って話を引き戻すファインプレー

 

153:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:03:10 ID:peddPv0Rm

そういう意図か。なんで同じこと訊くのかと思ったわ

 

154:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:03:15 ID:5LRY2lLRF

Q.ボーガン姉貴の逃げ宣言を聴いて作戦を変更されましたか?

A.いえ、むしろ利用しようと考えました

 

155:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:03:19 ID:xSrAtK4Gr

したたか!

 

156:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:03:24 ID:DKAVoqBvw

自分の作戦を開示することでボーガン姉貴の全力が逃げることであると証明し、別に邪魔になってないことを示す男

 

157:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:03:28 ID:mtwYYfz7D

こんなにペラペラ喋っていいのか? いや、ボーガン姉貴をかばいたいのはわかるけど、それで負けたら世話なくね

 

158:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:03:32 ID:0GCOms94T

作戦の開示!! 本気だね

 

159:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:03:37 ID:NaofLLTHu

この記者ええ仕事するわ記者の割に。カスばっかやないんやね

 

160:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:03:41 ID:BSDecaeu/

ペラペラ喋って思考回路さらけ出していいんだろうか

 

161:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:03:46 ID:Ylx81OILm

まあ勝てるからやってるんだろ

 

162:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:03:50 ID:lVnY/inaR

ルドルフニコニコでワロタ

 

163:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:03:55 ID:QESlfzQYw

ニコニコ皇帝かわいい

 

164:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:03:59 ID:yNe6kpAgY

雰囲気で騙されるけどルドルフは顔だけ見れば普通にかわいい系のパーツしてるよ

 

165:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:04:04 ID:NaofLLTHu

>>164

別嬪さんやけどそれはないわ

 

166:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:04:08 ID:5nn5Jp/l9

コイツ事前にそこまで予測してたのか

 

167:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:04:12 ID:wHC/10Pw8

皇帝のリュックとはなんだったのか

 

168:尻尾上がり名無し ??/11/9 8:04:17 ID:09e8n4bLb

サンキュー東条解説員。レースの組み立て方がよくわかったわ。公苑受けたいからためになった

 




39人の兄貴たち、感想ありがとナス!

Birman兄貴、エイシンチャンプ兄貴、狩人ナメクジ兄貴、teriyaki兄貴、ワルザック兄貴、評価ありがとナス!

感想・評価いただけると嬉しいです。


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アフターストーリー:秋風

 その日は晴れとは言い切れないが雨でもない、中庸の気候だった。

 要は、曇り。ビワハヤヒデは曇りの日のレースが得意である。

 

 菊花賞もそうだった。天皇賞春もそうだった。

 

「気のせいだったか……」

 

 正直あんまり天気は良くない。

 だがビワハヤヒデが勝ったGⅠのレースはすべてが曇天の下で行われたものであり、彼女にとっての好天とはすなわち、曇天のことであろう。

 

 なんとなく、茫漠とした不安がある。

 それを振り払うように窓を閉めようとした東条隼瀬の視界の端から端を、栗毛が過ぎった。

 

 恍惚とした横顔の残像を見ればおそらく、いや完全に予想がつく。彼女が誰なのか、ということは。

 だがなんとなく、嫌な予感がこみ上げてくるのをこらえた。甚だ失礼と思いつつも、連想ゲームのような感覚で、頭の中の思考が組み立てられていく。

 

「あ、トレーナーさん。おはようございます」

 

 キュキューっと巧みなコーナリングで戻ってきた、その走ることに最適化された姿。

 一見儚げな深窓の令嬢、その実は生粋の先頭民族。その名を、サイレンススズカという。

 

「嘘でしょ……」

 

「うそでしょ……」

 

 天皇賞秋。

 そう呼ばれるレースを苦手とするようになった原因のウマ娘。いや、苦手になったのは自分のいたらなさ故なわけだが、やはり連想がするりと繋がる。

 

 そういう意味での嘘でしょ……が漏れ出た東条隼瀬の言葉を口癖をパクられたと認識したのか、サイレンススズカもなんとなくうそでしょした。カエルの輪唱のようなものである。

 

「スズカ」

 

「はい?」

 

「なんかこう……嫌な予感がしないか?」

 

「いえ……」

 

 たぶん今日行われるレースの名前を認識してすらいない彼女からすれば、唐突に嘘でしょされた挙げ句スピリチュアルなことを言い出した、ということになる。

 

 ――――頭が良すぎると、そういうふうに傾くのかしら

 

 優秀な科学者は、幽霊の存在を否定しないという。

 それと同じで頭が良いからこそ、先が見えるからこそ、運などのスピリチュアル的な要素に傾倒してしまう。そういうことかもしれない。

 

「トレーナーさん」

 

 そんな彼の認識を憂いて、サイレンススズカは無い胸を張った。彼女にはそういったスピリチュアルなものに傾倒する意味がわからない。だが思考を空にする方法は知っていた。

 

 それを今から、伝えようというのである。

 

「取り敢えず、走りましょう。そうしたら予感も何も頭から消し飛びますよ?」

 

「まあ、それも悪くないかな。今日の天気はどうだ?」

 

「夜から雨になるそうです」

 

 そうか、と。東条隼瀬は言った。

 現在時刻、午前5時。冷たさを増しつつある秋の風が季節の移ろいを感じさせる、そんな時節である。

 

「思ったんだが」

 

「はい」

 

 歩調を合わせて、河原を駆ける。

 人間にしては速い、ウマ娘にしては遅い。そんな速度で。

 

「お前、置き去りにしないんだな。昔は一緒に走りましょうと誘った挙げ句、5分で置き去りにされたものだが」

 

「そのときは、知りませんでしたから」

 

 なにをだ。

 そう言いかけて、やめる。いちいち何でもかんでも訊くというのは、人格的な程度が知れる。サイレンススズカというウマ娘の性格を理解したいというのなら、自分で考えて結論を出した後、改めて訊くべきだろう。

 

「でも今は、知っています。だから一緒に走りたいんです」

 

(平常運転だな)

 

 ぽややんとした雰囲気、言い回し。

 なんとなく独自の世界に住んでいる、そんな風がある。そんな彼女の才能を預かって、育てて、そして折った。

 折ってしばらくしてやっと折り合いをつけて追いついて、そしてここまでやってきた。

 

 それが過去を埋め直しただけなのか、あるいは埋め立てた過去の上になにがしかを積み上げられているのかは、わからない。

 

「スズカ」

 

「はい」

 

「追いつかせてくれて、ありがとう」

 

 主語も何もない。

 だがその言葉が何を示すかを、サイレンススズカは察した。

 そして傷と向き合って折り合いをつけてほぼ1年。やっと、元に戻れたのだと。

 

「別に、本気を出していなかったというわけではありませんよ」

 

 ムキになっているわけではなかった。単純に、事実を伝えただけである。

 凱旋門賞で、サイレンススズカは負けた。ミホノブルボンの決死の走りの前に負けた。たったひとりの孤高の王者は、足りないところを補い合いながら二人三脚でやってきたなんでもないウマ娘に負けた。

 

「知ってるさ」

 

「トレーナーさんとブルボンさんは、お互いの足りないところを補い合っています。ルドルフ会長とは、お互いの長所を高め合えます。ブライアンさんは、お互いの才能を完璧に引き出せます」

 

 ジョギング開始から2時間ほど。

 隣を走る、走ってくれるひとの体力が折り返し地点に差し掛かったのを察知して、サイレンススズカはくるりと身を翻した。

 赤褐色のジャージの上に、橙がかった栗毛が舞う。

 

 秋風を孕んだそれを靡かせながら、異次元の逃亡者は振り返った。

 

「でも、私の方が速いですよ。私とトレーナーさんが、一番速い。そう思います」

 

「ああ」

 

 ――――かもな

 

 それを証明するのは、これからだ。

 近づきつつある、大一番。ブライアンの三冠をとってから向かうであろう場所をイメージして、東条隼瀬は嘯いた。

 

「さて」

 

 嘯いてから2時間くらい。正確に言えば2時間13分27秒後。

 トレセン学園まで一緒に帰ってから爆速で走りに行ったサイレンススズカの後ろ姿を見送って、東条隼瀬はあくび混じりの伸びをした。

 

 確かに走るというのは、いい。頭がクリアになる。思考が巡る。脚に刺激が来て、血がめぐるからか、あるいはその最中に行った他者との会話がそうさせたのか。

 

 それはわからない。だが、まあなんとかなるさ。そんな気分になっていた。

 

 しかしそんな気分になろうがなるまいが、事実として本日行われるのは天皇賞秋。中距離路線の頂点を決める、そんな大レースである。

 東条隼瀬はこういった大レースを、欠かさず見に行く。なにもウマ娘のレースが好きだからということではなく、彼は自分の強さが情報集積・剪定・予測の3工程に支えられていると知っていたからである。

 

 俺に、さほどの才能はない。

 彼は心からそう思っている。事実彼のイメージする才能あるトレーナーとは父であり、将軍。つまり古典的な現場で指揮を振るい、走るウマ娘と一心同体になれる存在。

 

 そういうのを、トレーナーという。

 だが自分にそれができないことを、東条隼瀬は知っていた。下手にこだわるとウマ娘側に大きな負担がかかることも。だから、それはそれと諦めて事前準備に手腕を振るう。

 

 そんな自分が事前準備の根底となる情報集積をおろそかにして、日々全力でトレーニングに励みレースに臨むウマ娘に顔向けできるものだろうか。

 

 答え。できない。

 だから、天皇賞秋は見に行こう。彼はとうとう、そう決意した。

 

 ビワハヤヒデは強い。ただ、ナリタブライアンの方が強い。しかし、胡座掻いて迎え撃って勝てるかと言えばそうでもない。

 いや多分勝てる気もするが、もし負けたら切腹ものである。負けて悔しいとかそういう次元ではなく、ナリタブライアンというシンボリルドルフくらいしか比肩し得ない才能を持つこの上なく偉大になれるであろう生粋の競技者の戦績を汚すのは、ごめん蒙りたい。

 

「ルドルフー」

 

 一緒に観戦に行ってくれと、そう言いたい。

 

 一人で寝るのが怖いから一緒に寝てほしい子供並みのメンタルで、東条隼瀬は生徒会の門を叩いた。

 だが全ての出来事がうまく行くとは限らない。

 

「ああ、ちょうどいいタイミングに現れたな、参謀くん。私は少し用事があって、実家に帰る」

 

「……明日じゃだめなのか」

 

「え、ああ。君の発案した奨学金制度。あれをねじこもうと思ってね」

 

 一口奨学金制度と暫定で名づけられたそれは、前途有望ながら特待生になれず奨学金もとれないウマ娘の学費を一口数万円から負担するというものである。

 

 これは本来の奨学金とは違い、借金ではない。どちらかと言えば金融商品に近く、ウマ娘側に出資者への金銭の返済義務は生じない。

 

 無論その代わり出資者たちにもメリットがあり、ウマ娘側に入るレースの賞金のいくらかを配当される。

 

「私も裕福な個人から融資を引き出すといった構想は持っていた。しかしそうなると出資者側の意見が強くなり、ウマ娘やトレーナー側の意見を押しつぶす結果になりかねない。だがこの制度の場合出資の度合いを分散化することでスポンサー側の権利を分断することに成功している。君らしい、強かないい手だ」

 

「ああ……ありがとう」

 

「では、行ってくるよ。挨拶もそこそこに悪いが、時間がない」

 

 俊足を飛ばして去っていく皇帝の背中を見送って、東条隼瀬は思考を巡らせた。

 こうなると、頼りがいのある者を同伴させることはできない。ならば。

 

「ブルボン! 散歩に行くぞ!」

 

「はい、マスター。どこへ向かいますか?」

 

「府中。出発は正午だ」

 

「承知しました。身嗜みを整え、正門へ集合します」

 

 手を前に突き出すいつものポーズ。

 そんなブルボンの頭をわしゃわしゃと撫でつつ、東条隼瀬はこのイヌ科のサイボーグのありがたみを今更ながら実感した。

 

 ルドルフは仕事、スズカはいつも通り行方不明。だがこのわんころは基本的にいつも後ろからトコトコついてくる。

 ブライアンについては行くことが確定しているため敢えて誘うこともしないが、なんの関係もないのに付いてきてくれるブルボンには安定感がある。

 

「ブルボン、俺は過去を乗り越える。付き合ってくれるか」

 

「マスターの行かれるところであれば、地の果てまでもお供します」

 

 ということで、本日の東条隼瀬府中ツアー御一行様は決まった。

 GⅠ勝利は15個という、なかなかなパーティーであった。




43人の兄貴、感想ありがとナス!

五里兄貴、じーさん兄貴、生肉兄貴、くどー兄貴、小麦粉20000兄貴、はふん兄貴、ニャッキ男爵兄貴、ささみ250g兄貴、悪義兄貴、闇夜に浮かぶ半月兄貴、harricon兄貴、むき甘栗信者兄貴、紅月白兎兄貴、にのまえはじめ兄貴、評価ありがとナス!

今年最後の投稿になります。1年間ありがとうございました。感想・評価いただけると幸いです。


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メモリー:2/11/7~2/11/28

【MT対決】ジャパンカップ予想スレ

1:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:02:17 ID:UD66K9HBw

日本勢

ミホノブルボン(個人勢、担当東条解説員)

トウカイテイオー(スピカ、沖野T)

イクノディクタス(カノープス、南坂T)

など

 

外国勢

ユーザーフレンド(英ダービー覇者、GI4勝)

レッツロープ(オーストラリア年度代表ウマ娘)

ディアプロフェッサー(アーリントンミリオン)

など

 

2:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:02:25 ID:scnWnftqO

あれ、マックイーンは?

 

3:◆ちなスピ ??/11/28 14:02:33 ID:paKSz6pB5

>>2

骨折

 

4:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:02:40 ID:RDVhQ4sfb

外国勢が強すぎる

 

5:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:02:48 ID:4U2MNybzw

ルドルフが2回、あとはタマとかエルスペくらいしか勝ってないんだが?

 

6:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:02:55 ID:9awdHpZWO

いつぞやのブロワイさんほどの質じゃないけど層が厚いわ

 

7:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:03:03 ID:KsbUijRMS

ブルボンなんとかしろ

 

8:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:03:11 ID:Ti1FcLMwa

東条解説員を信じろ

 

9:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:03:19 ID:lemRqY+V1

マックイーンはなぜ肝心なときにいないのか

 

10:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:03:27 ID:AE0GRbwQ7

というかなんでこんなに陣容が豪華なの?

 

11:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:03:36 ID:dX8UIXjPE

>>10

国際GIに昇格した初年度だから

 

12:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:03:43 ID:V1oWP4oEG

昇格できるほどに日本のトゥインクルシリーズが評価されたのはいいけど、草刈場になるのを見せつけられるのは嫌じゃ

 

13:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:03:52 ID:qzxvtwpBQ

というかマックイーンも骨折とかスピカの体調管理はどうなってるんだ

 

14:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:04:00 ID:IzLNzkQbT

ろくすっぽ怪我しないリギルが異常定期

 

15:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:04:08 ID:yrhd2txP1

あとアメリカでスズカにボコられた娘も来てるよ

 

16:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:04:16 ID:k5g8qKsJ8

スズカに負けたウマ娘とかいう実力がよくわからん指標

 

17:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:04:24 ID:MGkDSFntQ

スズカ以下であることは確か

 

18:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:04:32 ID:cGViUYdbb

というかリギルはなんでJCに出ないの?

 

19:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:04:40 ID:0Ia2TbQQG

エルグラの主軸が海外遠征してる

 

20:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:04:48 ID:GhaICzQ0/

ならしゃーない

 

21:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:04:57 ID:i3wk2mMOE

イクノディクタスクソローテ過ぎんか

 

22:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:05:06 ID:eIv0ym9mF

予言通りになってて芝も生えない

 

23:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:05:13 ID:R5V9KnD7K

イクノディクタスの脚をテイオーに移植できんかな

 

24:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:05:21 ID:N+/MiTwWn

そもそもジャパンカップの賞金って世界でもトップクラスだからな

 

25:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:05:30 ID:syQWpdQcK

日本総大将は誰?

 

26:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:05:38 ID:G+/GF5H+f

たぶんブルボン

 

27:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:05:46 ID:hfFO5wYOy

流石にテイオーでしょ

 

28:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:05:53 ID:fugb7z3n7

テイオー民は過去の栄光に囚われすぎ

 

29:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:06:01 ID:V5yV8J0Pw

秋天ボロ負けしてるし総大将はブルボンだろ

 

30:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:06:10 ID:LH3euY0To

あれ病み上がりだったろ

 

31:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:06:19 ID:bvyDO0u4I

病み上がりでも大阪杯では勝ってるし、普通に劣化

 

32:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:06:26 ID:K1sGCovcG

休養期間は2回目の方が短かったし、距離も2000メートルで同じだしな

 

33:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:06:34 ID:arjHrdtNh

大阪杯と秋天ではレベルが違うだろ

 

34:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:06:41 ID:gcyhkEdaq

>>33

同じGIだろ

 

35:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:06:48 ID:arjHrdtNh

>>34

中距離路線の王者を決める秋天とステップレースもどきの新設GIではレベルが違う

 

36:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:06:56 ID:jZhCetZMb

テイオー復活してくれんかな

 

37:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:07:05 ID:fHJI2uY5/

俺未来人だけどテイオーは復活して有馬記念勝つよ

 

38:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:07:13 ID:lVByf95S2

でたわね

 

39:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:07:21 ID:wg7CicjJy

うわでた

 

40:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:07:29 ID:tIngPPxWZ

相変わらずID変わってなくて芝

 

41:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:07:37 ID:+PIA/fzSk

じゃあブルボンの無敗伝説終わりじゃん

 

42:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:07:44 ID:jRWyScjC4

ブルボン今何連勝だっけ

 

43:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:07:53 ID:2/bOF1MJg

8連勝(GI5勝)

 

44:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:08:01 ID:ZSi0KkwVl

クラシックまでにGI5勝ちってすげえな。ルドルフ以来か

 

45:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:08:10 ID:b+/qyy9+u

ルドルフは6勝

 

46:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:08:18 ID:X2XO+peIT

しかもルドルフジュニアGI勝ってないからな

 

47:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:08:27 ID:lWO3qRdIb

というか未来人ニキは無敗で三冠とって凱旋門もとるとか言ってなかったか

 

48:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:08:35 ID:vRtxuLsTA

確かに。矛盾してるな

 

49:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:08:43 ID:/njZJiGDO

ブルボン有馬出ないとか?

 

50:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:08:50 ID:qp3H5jtl+

あんだけ煽っといてそれはないだろ

 

51:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:08:59 ID:Zn0Rs2S4q

というか三冠ウマ娘はJC有馬といくもんだし、前哨戦を踏むもんだ

 

52:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:09:06 ID:NaoSs3Iz2

>>51

おは老害。時代は変わったんやで

 

53:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:09:15 ID:5dNpYBqTU

実際ブルボンは勝てるの? ライスなんかは疲労で回避してるが

 

54:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:09:23 ID:pnJluxFqp

ライスって出走数ブルボンと同じようなもんだろ。疲労大丈夫なのかな

 

55:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:09:31 ID:NaoSs3Iz2

ライスちゃん一回骨折してるから大事を取ってるんやろ

 

56:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:09:39 ID:oXrPWUgtb

2400走れるだろうけど全力では走れんのかね

 

57:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:09:48 ID:+J+vfmm1W

無敗三冠取った後の取りこぼしそう感は異常

 

58:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:09:56 ID:LI3iAHsFy

>>57

ルドルフ「一理ない」

 

59:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:10:03 ID:08Cb4esxx

ブルボンは良くも悪くも他人の走りに左右されないから全力出せれば普通に勝てそう

 

60:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:10:12 ID:z9hbBp6lt

遠征してくるわけだしな

 

61:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:10:21 ID:eo3eN1OcM

遠征してくるとはいえ海外と日本じゃレベルが違うだろ

 

62:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:10:29 ID:NaoSs3Iz2

>>61

バカ外人に隼瀬くんが負けるわけないやろカス

 

63:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:10:37 ID:JYmDTSHGJ

バカ外人は芝

 

64:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:10:45 ID:/tLqs9AND

あまりにも直球すぎる差別、俺でなくとも見逃さないね

 

65:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:10:53 ID:NaoSs3Iz2

バカをバカっていうて何が悪いねん どいつもこいつもビビり過ぎなんじゃボケ

 

66:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:11:01 ID:rj8KjD7gk

こいつほんとにトレーナーなのか? うちの親戚のトレーナーは外国のウマ娘はレベルが違うって言ってたけど

 

67:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:11:09 ID:NaoSs3Iz2

>>66

しょぼいトレーナーと一緒にすんなや 誰やそいつ

 

68:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:11:17 ID:GHmjHG3fK

実名開示請求は芝。無理だろ

 

69:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:11:26 ID:BzL/Vsnpf

まあエルグラコンビは明らかにスペとかウンスとかより強いから間違いではない

 

70:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:11:34 ID:3/WbTKQ/I

キング……

 

71:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:11:42 ID:yP50yGyMO

最近ダート走ってるらしいな

 

72:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:11:50 ID:9sPqP7GHl

今は短距離な

 

73:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:11:58 ID:vxS3LN/5g

ウンスそろそろ復活してほしい。ドリームトロフィーでのスペとの対決見たい

 

74:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:12:07 ID:F3poemGy4

エルグラも来年ドリーム行きらしいな

 

75:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:12:14 ID:geWSwWFtV

やっと4強対決見れんのか

 

76:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:12:23 ID:UnMiYQx8i

テイオーは秋天は相手が悪かったとこあるからなんとか復活してほしい

 

77:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:12:32 ID:9cGOyHUL4

東条解説員「脅威になるのはトウカイテイオー。トウカイテイオーに勝てるウマ娘はいくらでもいるが、トウカイテイオーが勝てないウマ娘はいない」

 

78:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:12:39 ID:/dYtOi9O+

解説員の言ってることはどういうことだ

 

79:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:12:47 ID:j1Kk+ABR9

意味不明で芝

 

80:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:12:55 ID:VfyGgf6cE

【悲報】解説員、仕事をサボる

 

81:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:13:03 ID:JoxSNGrQ1

というか外国勢を問題にもしてないのはなにか策があってのことなのかな

 

82:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:13:12 ID:mzkUiaRJn

これで外国勢怒らせてかからせるとか?

 

83:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:13:19 ID:uPVohRKL9

解説員はもっと言葉を尽くして説明して。やくめでしょ

 

84:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:13:28 ID:EIuVLRtEH

トウカイテイオーに勝てるウマ娘はいくらでもいる←わかる

トウカイテイオーが勝てないウマ娘はいない←わからない

 

85:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:13:35 ID:NaoSs3Iz2

なるほど、オグリンみたいなもんやいうことやね

 

86:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:13:43 ID:ULD3Q3uFG

知っているのか雷電!?

 

87:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:13:51 ID:EgugJ97O7

トウカイテイオーに勝てるウマ娘はいくらでもいる……春天とか秋天とかで散々先着されてる

トウカイテイオーが勝てないウマ娘はいない……じゃあなんで春天とかで勝てなかったの?

 

88:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:14:00 ID:5g473mY15

まあ言わんとする所はわからんでもないけど警戒しすぎじゃないか?

 

89:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:14:08 ID:NaoSs3Iz2

アホやなぁキミら

ブルボンちゃんにとっての天敵がテイオーみたいな奴ら言うことやろ

 

90:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:14:15 ID:iR+uLqy2E

でもブルボンがテイオーに負ける姿が見えんわ

 

91:尻尾上がり名無し ??/11/28 14:14:22 ID:SmOo5WUc5

まあダービー勝った後のテイオーも他のウマ娘に負ける姿が見えなかったから無敗のウマ娘ってのはそういうもんなのかもしれない

 




51人の兄貴、感想ありがとナス!
マラカス0107兄貴、評価ありがとナス!

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アフターストーリー:影光

影光(えいこう/栄光)

あと、誰がとは言わないけど本編初出演(2回目)です。


 こいつ、大丈夫なのか。

 正門前で仁王立ちして待っていたナリタブライアンは、老人の如き歩幅でやってきた男を見て眉を下げた。

 

 ヨボヨボのジジイのような危うい歩調で前へ進む男は、これまた老人のように補導ウマ娘を伴ってこっちにきている。

 

「間に合ったな」

 

「……ああ。だが」

 

 珍しいな。アンタが私を待たせるというのも。

 そんなふうな軽口を叩く気も失せる、この男の調子の悪さ。

 

「大丈夫ですか、マスター」

 

「大丈夫じゃない。だが、大丈夫だ」

 

 弱さを隠さないのはいいことだ。

 そう思いつつ、ナリタブライアンは割と本気で心配した。この敗れざる男がここまでグロッキーな顔をしてるのは、あんまり見ない。

 そもそも、弱味を見せない質なのだ。それがここまで無様を晒しているとなると、何かを感じているのか。あるいは、本気で心的外傷に苦しんでいるのか。

 

「大丈夫じゃないだろう。悪いことは言わんから、寮に帰って寝ていろ。姉貴のレースは録画を見ればいいし、なんなら私が後々紙芝居にして放映してやる」

 

(お前、絵、下手だろ……)

 

 不調も吹っ飛ぶこの衝撃。

 

 ナリタブライアンは、絵が下手である。3歳児にしてはうまいというレベルから固定されている、そんな絵。つまり、絵から成長性は感じられるものの、本人の年齢と照らし合わせてみてみると成長性が微塵も感じられない、そんな絵。

 

「ブライアンさんは絵がお上手なのですか?」

 

「ああ。姉貴や父や母から言われたことがある。この上なくうまい、他の誰にもない個性があると」

 

「なるほど。私も3歳の頃に言われたことがあります。まるで写真だな、と」

 

「私も確かそんな歳だった。奇遇だな」

 

「はい。やはり絵というものを描くにしても、三つ子の魂百までということでしょうか」

 

 家族の愛によって産まれ落ちたポジティブモンスターブライアンと、産まれた頃からサイボーグ――――尤もこれは性能的な意味で、小さな頃はちゃんと人間らしく泣いたりしていたらしいと彼女の父から聴いたが――――なブルボン。

 

「いや、俺はトレーナーだ。自分のトラウマなど問題にしてはならない。数多のトレーナーが羨むであろうナリタブライアンという傑出した才能を預かっている以上、全知全能を傾け、人事を尽くす。それが義務であり、礼儀であり、俺の意地だ」

 

 ピコン、と。黒鹿毛の耳が左右に揺れる。

 フフンと満足げに緩んだ頬の持ち主は、この言葉が心からのものだということをなんの疑いもなく信じていた。

 それはまあ、事実である。東条隼瀬は自分のトラウマを目の前の怪物のために克服しようとしている。

 

 しかしより副次的な表現を用いれば、彼が意地でも直接見ようと決意した原因は紙芝居放映中に笑いをこらえきれないであろう、ということにあった。

 

 自分のために頑張って描いてくれた(出来はどうあれ)。

 自分のために頑張って放映してくれた(出来はどうあれ)。

 それを見て笑うというのは、人間的に極めてよろしくない。出来はどうあれ。

 

 2種類の本心の内より俗物的な面をトレーナーとしてのプライドやらなにやらでラッピングし、東条隼瀬は大地に立った。

 

「ということで心配をかけたが……いくぞ、ブライアン」

 

「ああ。中々に、アンタらしくなってきたじゃないか」

 

 当然の権利のように後部座席に座って豪快に背もたれを倒して寝はじめるブライアン。

 そんなネコ科の肉食獣のような自由さを持つ彼女とは対象的に、イヌ科のサイボーグは丁寧に助手席に座った。

 

「行きましょう、マスター。ナビゲートは必要ですか?」

 

「いや、いい。腹は括った」

 

 なんだかんだ、土壇場に強い男なのである。

 車の運転はいつも通り、いやいつも以上に気を遣った発進で静かに公道へ乗り出し、車の作り出す流れに乗った。

 

「混んでいますね」

 

「ああ。おそらく、もっと酷くなる」

 

 酷くなるといっても、そう忌むべきばかりなことでもない。この混み具合はすなわち、トゥインクル・シリーズというものが人気であるという何よりの証なのだから。

 

 中距離の王者を決める、天皇賞秋。

 芦毛のウマ娘としてはタマモクロス以来、単にウマ娘としてはスペシャルウィーク以来の、天皇賞春秋連覇へ。

 

 これから2時間後、ビワハヤヒデはそういう偉業へ駆けていく。

 その偉業をひと目見ようとする人たちが、こんなにもいる。これはトゥインクル・シリーズというものに関わる人間として、幸いなことだった。

 

「姉貴は」

 

 後ろの席、寝ていたと思っていたやつ。

 怪物と呼ばれるウマ娘は、渋滞の中でポツリと呟いた。おそらく、こういった質問を向けるにはこの上なく最適で、無上の信頼を置くに値する男に。

 

「勝てると思うか」

 

「9割9分、勝てる。だがトゥインクル・シリーズに絶対はない」

 

 トゥインクル・シリーズに絶対はない。

 それは、至言だった。金言だった。それを覆し得たものは、シンボリルドルフただ1人だけ。

 

 トゥインクル・シリーズに絶対はない。だが、そのウマ娘には絶対がある。

 シンボリルドルフ、永遠なる皇帝。神話の世界にしかなかった三冠ウマ娘という単語を人の世界にまで引きずり下ろした常識破りの大英雄を完膚無きまでに叩きのめし――――そして、断崖のように聳えていた日本と世界のレベルを近づけた者。

 

 日本からはじまりアメリカを経由した彼女の無敗の航路はフランス、凱旋門で敗れた。しかしそれでも、彼女には絶対がある。

 そう信じさせる、何かがある。

 

「9割9分か」

 

「ああ」

 

 ――――アンタならそれを、10割にできるのか

 

 詮無い質問を投げかけようとした頭を振って、窓の外を見る。

 曇天だった。とても、いい天候には見えない。

 

 姉には、この空がどう見えているのか。

 姉妹として多くの、産まれてから殆どの時間を共有してきた。それでも、わからないことはある。

 

「有馬記念。勝とうな」

 

 自分の態度で余計な不安をかけさせた、とでも思ったのか。

 敢えて先を見据えさせる、そんな言葉。

 

「……ああ」

 

 私のトレーナーが、こいつでよかった。

 ナリタブライアンはそう思った。

 

 そしてたぶん姉貴も、そう思っているだろう。あの優男を前に、今も。そして、これからも。

 そう思うだろう。自分が選んだトレーナーと組んで、歩んで。

 

 そこに、後悔はないはずだ。

 

(クソ)

 

 胸騒ぎがする。

 東条隼瀬が、自分のトレーナーがどうこうというのではない。態度に感化されたわけではない。

 

 ただ、嫌な予感がした。朝起きて、歯を磨いて、あくびをして。

 そんないつもどおりの日常を構成する一部に、罅が入る音がした。そんな気がした。

 

 だから、訊いたのだ。姉貴は勝てると思うか、などと。

 

「午後から、雨が降るそうです」

 

 ミホノブルボンの透き通るような声が、耳朶を打つ。

 

 嫌な空だと、そう思った。

 

 

◆◆◆

 

 

 ――――ブライアンに勝ちたい

 

 その思いが日に日に強くなるのを、ビワハヤヒデは感じていた。

 それはおそらく、ウマ娘の本能。そして、姉としての意地。更には、競技者としての憧憬。

 

 ブライアンには、自分にはない何かがある。

 幼い頃。妹の才能が目覚めてから常に、ビワハヤヒデはそう思っていた。

 

 だから、夏をトレーニングで埋めた。

 才能の乏しい自分が、才能の豊かな妹に勝つ。その為には、努力するしかない。より多く、より良質な努力をするしかない。

 

 宝塚記念で、相対したとき。

 

 経験では勝っていた。

 妹には、苦戦した経験がない。ライバルと鎬を削り合うという経験がない。

 自分には、タイシンが居た。チケットが居た。皐月ではタイシンの末脚に敗れ、ダービーではタイシンの背を追ってチケットに敗れ、そして夏休みを返上して坂路で鍛え抜き、菊花で遂に勝った。

 

 練習量でも勝っていた。

 坂路トレーニングの有効性を、彼女は去年の夏に身を以て知ったのだ。ミホノブルボンというウマ娘を最強にまで押し上げた双璧のうちの一つの、有効性を。

 1年産まれるのが早かったというアドバンテージを、自分は持っているのだから。

 

 では、なぜ負けたのか。

 

 ――――怪物

 

 妹は、そう呼ばれていた。

 そう、過去形である。そしてそれを過去形にしたのは、ビワハヤヒデだった。

 

 ナリタブライアン。その才能が再び目覚めたことによって発生した第二の領域。

 影とは妹にとって恐怖と孤独の象徴だった。故に彼女は影を砕き恐怖を打ち砕いてきた。だがあの葦毛のトレーナーが側に立ち、彼女の強さを恐れず跳ね返してみせるウマ娘たちが周りにいて、ナリタブライアンはそれを受け入れた。

 

 彼女は、自らの恐怖と孤独を飼い慣らしたのだ。

 黒は、闇は、人間の根源的な恐怖の色である。

 だからだろうか。ビワハヤヒデには、あのときの妹が黒い波を、霧を纏っているように見えた。

 

 ――――姉妹対決となりましたが、あらためて。対戦相手として見るナリタブライアンは、どうでしたか?

 

 ――――影を纏っているように見えた

 

 自分と同じ黄金の瞳が、その中で光っていた。

 

 このインタビューの後、怪物は単なる怪物ではなくなった。

 恐怖を呑み込み纏う、影纏いの怪物。

 

 故に、【シャドーロールの怪物】。

 

 その怪物に勝つには、その差を埋めるには、多くの努力をするしかない。

 その結論に達して、ビワハヤヒデは直談判した。

 

 天才を凡人が打ち砕く為に必要なものは諦めではなく努力であると、証明したウマ娘がいたからである。

 そのウマ娘は、無敗で三冠の栄冠を得た。今年ステイヤーズミリオンを完全制覇した歴代でも最高峰のステイヤーを相手に菊花と春天という長距離でも負けず、ジャパンカップと有馬記念では自分では勝てなかったトウカイテイオーを連破し、宝塚記念では皇帝に土をつける。

 そして凱旋門ではアメリカで無敵を誇ったサイレンススズカを敗って日本トゥインクル・シリーズの悲願である凱旋門賞制覇を果たした。

 

 彼女と比べて自分は遥かに才能に恵まれている。自惚れではなく自虐気味に、ビワハヤヒデはそう思った。

 中距離を、長距離を、当たり前のように走れる。ミホノブルボンより遥かに、恵まれている。なのに、諦めるわけにはいかない。諦めるには、早すぎる。

 

 故にビワハヤヒデは、夏を返上した。妹が夏の間ほぼ雑用しかさせられていなかったことを訝しみつつも、喜んだ。

 この夏が勝負だ、と。この夏で実力を埋め、有馬記念で勝ってみせると。

 

 

「お前は、隼瀬くんやない」

 

 

 夏の中頃。トレーニングから坂路を一本減らした頃。また坂路を増やしてくれてかまわないと言いに行こうとした彼女の視線の先で誰かが、相当人相の悪い男がそう言っているのを見た。

 

 

「偽物は偽物なりに身を弁えんと痛い目見るで」

 

 笑うような言葉、笑っていない瞳。その言葉を放った男は、そう言って手をひらひらさせて去っていく。

 

 トレーナー。

 自分の無茶を受け入れてくれた、自分が選んだトレーナー。

 そんな彼が侮辱とも言うべきその言葉を黙って受け止めているのを見て、ビワハヤヒデは決意を深めた。

 

 

 ――――結果で、この脚で黙らせてやる

 

 

 夏の期間、怪我しないギリギリを攻めた。

 途中から坂路トレーニングが一本減らされたことには後悔が残ったが、それでも確かな成長を得られた。

 

 その結果が、オールカマーで出た。

 復帰を果たしたウイニングチケットを相手にしての、勝利という形で。

 

 二言、三言。

 天皇賞秋。中距離最強を決めるレースを前にそれだけの言葉をトレーナーと交わして、ビワハヤヒデはパドックへ続く通路に入った。

 

「チケット」

 

「ハヤヒデ! 久しぶりー!」

 

 脱臼。

 癖になりやすいその怪我をじっくりと――――あの老練という言葉が服を着て歩いているようなトレーナーのもとで治してきた親友は、パドックに続く道の光を背に待っていた。

 

 別に、久しくはない。

 実に1年ぶりの復帰となるオールカマーでは、顔は合わせた。だがお互いに思うところがあり、言葉を交わしたわけではない。

 

 そしてついでに言うなら、私生活では結構な割合で一緒にいる。だから本当に、久しくはない。

 

 だからチケットが言いたいのは、実戦の前に話すのが、ということなのか。

 そこまで解釈して、自分を納得させ、ビワハヤヒデはふと思ったことを口に出した。

 

「そ、そんなに振って大丈夫なのか、肩は……」

 

「え、あー!!」

 

 気づかなかったくらいなら、大丈夫なのか。

 そう安堵したビワハヤヒデとは対象的に、肩を覆うように意匠が変更された勝負服を着たウイニングチケットはにぎやかに表情を変えた。

 

「い、言わないでね、ハヤヒデ……」

 

「ああ。すっかり治ったようだしな」

 

「うん! もうバッチリだよ!! だけど……」

 

 BNW。

 1年前、クラシック路線に挑んでいた頃。

 レース前の会話を、この二人は数え切れない程にした。そしてその会話には決まって、もう一人がいたのだ。

 

「タイシン、屈腱炎だって」

 

「ああ、聴いている」

 

 屈腱炎。それはウマ娘にとっての不治の病。発症原因もわからないし、完治はしない。精々寛解するくらいで、常に再発のリスクが付きまとう、そんな病。

 

「だが、タイシンだ。例の負けん気を発揮して、すぐにでも復帰してくるさ」

 

「うん……うん! そうだね!」

 

 そう信じたかった、だけなのか。その後もまた見舞いに行ってやろうなどと言葉を交わしてから、二人は肩を並べてターフに出た。

 

 真ん中を、ほんの少し。

 小柄なウマ娘ならば通れるだけの間を空けて。

 

「ここからは」

 

「うん。ここからは」

 

 ここからは、単に友達というだけではない。

 そのあたりの線引きを見誤る二人ではない。チケットはトレーナーに向かって脱臼した方の手をブンブンやってどやされ、ビワハヤヒデは視野を広く持つように首を左右に振った。

 

 機能的な減量を果たした身体が軽い。

 そしてなによりも、調子がいい。未踏の領域に、踏み込める。そんな感じがする。

 宝塚記念を終えて夏を越えて、そしてオールカマーを経てここに至るまで、あと一歩というべき状態が続いている。

 

 観客席を見た。そこにはブライアンがいて、ミホノブルボンがいて、そしてなんだか体調がよろしくなさそうな東条隼瀬がいる。

 

(見ていろ、ブライアン)

 

 あと一歩を、ここで詰める。切り札たる必殺の領域を得て、有馬記念でお前に挑む。

 純粋な闘志に満たされたその視線が血を分けた妹の同色の瞳に突き刺さり、そして返ってきた。

 

 少しの安堵が含まれた、返礼じみた闘志と共に。

 

「ブライアン! 夏休みを満喫していたそうだが、大丈夫なのか!」

 

 その訝しさを解消するために、ビワハヤヒデはことさら大きな声で呼びかけた。

 

「隣のやつに訊け、姉貴」

 

「いけるいける」

 

 水を向けられた男は、即座に言った。死ぬほど適当な返しである。

 しかしその死ぬほど適当な言葉の裏には周密な計算があることを、ビワハヤヒデは宝塚記念で知った。

 

「マスターは、休むことで得られる強さもある、と仰せです」

 

 翻訳ロボ(GⅠ11勝)の翻訳に頷き、ビワハヤヒデはなんとなく会話を続けた。

 

「前哨戦には出なくて大丈夫なのか?」

 

 夏に死ぬほど休んだ挙げ句、前哨戦をブッチして菊花賞に直行。

 割かし非常識なローテーションである。なにせ最近まで前哨戦、即ちトライアルレースを挟んでGⅠに挑むのが当たり前だったのだから。

 

「おい」

 

「いけるいける」

 

「マスターは、ブライアンさんの出力に負けがちの脚を無駄に消耗させない為、ひいては前哨戦でよくわからない伏兵に討ち取られるリスクを減らす為、出る必要はない。ここは情報を収集し、剪定し、本番たる菊花賞に挑む。これこそが最善の手である、と仰せです」

 

「だそうだ」

 

 翻訳ロボ(欧州ウマ娘以外で初の凱旋門賞制覇)の八面六臂の活躍により、どうにか成立する会話。

 

 大丈夫なのか。死にそうだが。

 そんな言葉が洒落にならないほど、彼は病弱であったらしい。

 

 だから、結構空気を読める質のビワハヤヒデは口をつぐんだ。

 

「見ていろ」

 

「ああ」

 

 挑む側が、挑まれる側に。

 挑まれる側が、挑む側に。

 

 春のあのときと構図を同じくしながらも、立場が違う。その変化を楽しむような余韻を残して、ビワハヤヒデはゲートへと向かった。

 

「いけるいける」

 

「マスターは、無論観戦するために来た、と仰せです」

 

 そっちには言ってない。

 趣味も嗜好も結構異なる二人の姉妹が、ほぼ同時にそう思った。




33人の兄貴、お年玉感想ありがとナス!
kafual兄貴、レッドブル兄貴、ジェガンB型兄貴、金兵衛兄貴、ポートピア兄貴、兎の足兄貴、citruscitrus兄貴、お年玉評価ありがとナス!


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アフターストーリー:暗転

 天皇賞秋。

 1年の中距離最強を決めるこのレースは、大歓声と共にはじまった。

 

 無論1番人気はビワハヤヒデ。宝塚記念で妹に負けたものの、その強さへの信頼は揺らがない。

 

 他の有力なウマ娘はと言えば、GⅠを勝ったような者はウイニングチケットくらいなものである。

 しかしミホノブルボンと覇を競い合ったウマ娘たちが故障やらドリームリーグ移籍やらで離脱していく中で、古豪と言うべきナイスネイチャやマチカネタンホイザなどのカノープス組は驚くべき耐久力を発揮して生き残っていた。

 

 ナイスネイチャになんとしても、GⅠを勝たせてあげたい。

 ドリームリーグへ移籍しないのかという問いに対して返した南坂トレーナーの言葉は、切実な願いに満ちていた。

 

 彼は、GⅠで勝ち星を挙げたことがない。それはつまり、カノープスというチームがGⅠで勝てたことがないということを意味する。

 だが彼は、自分の栄光を求めているのではなかった。純粋に、自分の担当したウマ娘にGⅠ勝利という栄冠を掴んで欲しかったのだ。

 

 一方、GⅠ勝利がさほど珍しくもない男はというと。

 

「いけるいける」

 

「なるほど……流石マスターですね。マチカネタンホイザさんやナイスネイチャさん、ここには居ないもののイクノディクタスさん。彼女らカノープスの主力はGⅠを勝つための何かが足りない。その何かとはすなわち、末脚であったり速度であったりというもの。控えて見るに南坂トレーナーはウマ娘を長期的に活躍させることに長ける。それはすなわち、無理をさせないこと。健康に配慮すること。故にギリギリが攻められず、結果としてあと一歩が埋まりきらない。ジレンマですね」

 

「いけるいける」

 

「故にこのレースはウイニングチケットさん、あるいはビワハヤヒデさん。前走を見るにビワハヤヒデさんであろう、と」

 

 お前、それは本当に翻訳しているのか。ホントはお前が思ってることを言ってるんじゃないのか。

 そしてなんでこいつらはこれで会話が成立しているんだ……と。

 

 なんとなく嫌な予感が払拭されていくのを感じながら、ナリタブライアンは始まったレースに目を移した。

 

 姉貴、ビワハヤヒデはいつも通りの好位につけている。前から2、3番目。その後ろにウイニングチケット。

 

「いけるいける」

 

「ウイニングチケットさんは肩を負傷していました。その影響は無さそうですが、トレーナーとしてはバ群に突っ込ませたくはないはずです。故にビワハヤヒデさんとはやや距離を置かせている、ということですか」

 

「いけるいける」

 

「バ群の中では肉体的接触が起こるというのもめずらしくはない。時速70キロで走るウマ娘が負傷した肩に触れれば、再発するかもしれない。さすがはベテランということですか」

 

 秋の天皇賞の第1コーナーは魔境である。スタート直後にコーナーがあり、バ群前方につける先行勢はハナから全力で走って効率のいいコースを取ろうとする。

 生粋の、そして傑出した逃げウマ娘であるサイレンススズカはそんなことを気にしたこともなかったが、ビワハヤヒデやウイニングチケットには関係があった。

 

 そんな魔の第1コーナーを抜けても、ビワハヤヒデは好位につけていた。これは彼女に心身共に高い能力があることの証明である。

 

 だが、審議のランプが点っている。

 

「いけるいける」

 

「さほど問題にならないそうです」

 

「……なあ。どこを翻訳したらそうなるんだ?」

 

「心です」

 

 自分の問いに答えとも言えない答えを返してきたドヤ顔ロボから目を逸らして、ナリタブライアンは2分に満たないであろう激闘のターフへと視線を戻した。

 

 ビワハヤヒデのレースは、王道のレース。常に好位につけ、最終コーナーで抜け出す。

 逃げるウマ娘の後ろを精緻に追う。そんなビワハヤヒデはこのレース中、2位か3位につけていた。

 

「さすが姉貴だ」

 

 思わず、そうこぼす。

 今のところナリタブライアンの戦法は無駄が多い。圧倒的な力で敵をねじ伏せる。無駄に5バ身も6バ身もつける。少し出てサラリと勝つ。そういう器用なことが、彼女にはできない。

 

 これはシンボリルドルフじみたことができているビワハヤヒデが異常であるわけだが、普通に走るだけで5バ身も6バ身もつけられる方も中々に異常だった。

 

「いけるいける」

 

「マスターは、勝てそうだな、と仰せです」

 

「ああ。さすが姉貴だ」

 

 徐々にウイニングチケットが近づいてくる。しかしレース全体を管制下に置いたビワハヤヒデは他のウマ娘の意識を誘導し最効率の進路を取れないように阻む。

 ナイスネイチャが上がっていく。

 マチカネタンホイザが内から迫る。

 

 それらをいなしてビワハヤヒデが勝ちきるまでの姿を、東条隼瀬は既に見ていた。

 

 そうして、第3コーナーを越える。

 大ケヤキが見えた、その瞬間。

 

「いかん」

 

 突如、眼が死んでいた男は正気を取り戻した。

 

「ブルボン。当初予定通り、控え室から2台分の氷を車椅子に乗せて引っ張ってこい。あと、行く道で職員捕まえてURAに連絡」

 

「わかりました、マスター」

 

 なんでですか。

 そういうことを訊かず、ミホノブルボンは座って観戦する客の間を巧みに抜って消えていく。

 

 その背中を追い切る前にスマートフォンが取り出され、そしてワンタッチで電話をかける。

 これまたワンコールで、誰かが出た。

 

「弟よ、これから問題を起こす。そう、乱入する。処分の準備をしていてくれ。あと、医師の準備だ。わかるな」

 

 ――――わかったよ、兄さん。仕方ないな

 

 ウマ娘特有の優れた聴覚でそんな返事を聴き取り、ナリタブライアンは目を逸らしたい現実を見た。

 

 大ケヤキを越えて、加速した。確かに、姉は前を走る1人を差し切るべく、そしてスパートをかける周りに呑まれまいと加速した。

 

 だが、鈍い。ズブい。

 なにかあった。あんなに弱い、姉貴は見たことがない。

 

「ブライアン、行くぞ」

 

「わかった。だが、訊かせろ。何があった」

 

「故障だ。おそらくは」

 

「治るのか」

 

 その問いがこれまで自分がしてきた脊髄反射での質問の中でもとびきり愚かなものであると、普段の彼女であればわかっただろう。

 

 だが、そうわかるほどの余裕もなかった。

 

「わからん」

 

「わか――――」

 

 昇りかけた血を沈静化し、早足になりながら息を吸う。

 

「わからないというのは、どういうことだ」

 

「脚が微妙に膨れている」

 

「骨折か。治しただろう、アンタは」

 

「違う。骨折したときの走り方ではなかった。あれはもっと別のものだ」

 

「何故わかる」

 

「何回も見たからだ」

 

 スズカのことか。

 少し考えればわかることをわざわざ訊いて、古傷に触れた。ナリタブライアンには、そのことがわかった。

 わかれる程度には、分別を取り戻していたのである。

 

「じゃあ、なんだ」

 

「繫靭帯炎かと思った。だが膝自体の稼働に問題はなかった。だが動きづらそうにしている。おそらくは、屈腱炎だ」

 

「治るのか」

 

「冷やして症状の進行を止める。病院で診断し、断裂していれば縫合する。幹細胞での治癒も狙える。今そこまで持っていくために動いている。お前は姉を動かさないようにその場に止めろ。あと、深刻そうな顔をするな。別に死ぬわけではない」

 

 つまり、走れなくはなるのか。

 そう思い、嫌な想像を振り払う。

 

「動きが早かったが、予想していたのか?」

 

「嫌な予感がしたからな。もっとも、死蔵気味ではあったが一応用意自体は常にしていた。整備もな。それに……」

 

 ――――スズカのアレがあったから、何かあったときの対処はできるように学んでいた

 

 そう言った男から目を逸らした先の、通路の闇の奥にピカリと光る耳飾り。

 耳飾りのよろしく光る勝負服から散々ガンダムガンダム言われてきたウマ娘が、氷と水で満たされた箱を積載した車椅子を片手ずつ持って立っていた。

 

「マスター」

 

「早かったな」

 

「搬入を手伝っていただきました。名は教えていただけませんでしたが」

 

「なるほど。とにかく、急ごう。おそらくは問題になっているはずだ」

 

 ウマ娘の耳には、聴こえる。

 脚音が止んでいるから、レースが終わっているだろうということ。

 そしてどよめくような多数の声から、レースの結果が観客の予想したそれとは違ったであろうということが。

 

「それはよろしいですが……マスター。心情を斟酌するのもわかりますが、ブライアンさんは置いていかれるべきかと。最悪、菊花賞に出られなくなります」

 

 レース中、ウイニングラン中の部外者の侵入は禁止である。これは無論競技中の乱入による混乱や事故を防ぐためにあるわけだが、この禁止期間はウイニングランが終わりウイニングライブの座席抽選発表が行われるまで続く。

 

 

 菊花賞など、いらん。

 

 

 そう言おうとした瞬間、緊張で汗をかいていた手が掴まれた。

 

「いや、そこに関してはいい。俺が無理矢理引っ張っていったことにする。トレーナーの命令で乱入したウマ娘が出走停止にならなかった判例もあるから、問題はなかろう」

 

「なるほど。流石マスター。過去を墨守するURAの習性を熟知した完璧な計画ですね」

 

「そう褒めるな。さあ、ブライアン。お前は車椅子の片割れを持て。これが後々結構意味を持ってくるはずだからな」

 

「わ、わからんが、わかった。持てばいいんだな?」

 

「ああ」

 

 ミホノブルボンがひとつ、そしてナリタブライアンがひとつ。車椅子とそこに積載された氷水で満たされたプラ箱を抱えて、3人は駆けた。

 ビワハヤヒデと、顔を白色にした彼女のトレーナーのもとへ。

 

「姉貴!」

 

 ドンと車椅子をおろして声をかける。しかしそれ以上、言葉が続かなかった。

 

「ブライアン……と、隼瀬さんとブルボンさん。トレーナー君を止めてくれ。私は――――」

 

 まだ走れる。

 そう言いたかったのだろうか。隣では彼女のトレーナーが、なんとか座らせて触診を試みようとしている。

 

 そしてその隣には、何が起きたかわからないとばかりに混乱するウイニングチケットとそのトレーナー。

 ビワハヤヒデとそのトレーナーの悶着を片目に捉えながら白髯ながら矍鑠とした彼に一礼し、東条隼瀬はブルボンが抱えてきた車椅子を手で指し示した。

 

「老公。僭越ながら用意させていただきました。ご自分で処置なされますか?」

 

「ああ。こちらは任せてもらおう」

 

 結構素直に座って処置を待っているウイニングチケットを車椅子に乗せ、そして勝負服のまま脚だけを氷水につける。

 

 慣れた手付きからは、経験が伺い知れる。やはりこういうときは、ベテランが強い。未知と既知に1億光年からの距離があるように、経験しているというのは大きいのだ。

 

「ハヤヒデ、君は怪我をしています。車椅子に――――」

 

「違う! 私は……今も2着だった! 抜かっただけだ。伸び切らなかっただけだ。あと一歩で、何かが掴めるんだ……! 怪我はしていない。怪我をすれば……」

 

 追いつけない。

 約束を果たせない。

 

 続く言葉がどちらだったかは、わからない。どちらもだったかもしれない。

 

「ビワハヤヒデ」

 

「隼瀬さん。貴方も見ていただろう。私は怪我などしていない。ただほんの少し、運と実力が足りなかった。それだけだ。私はまだ走れる。有馬記念で――――」

 

「ああ、走れる。だが君のトレーナーはどうだ? 心配しているだろう。俺とブライアンに勝つにはパートナーとの折り合いをつけることが大事だ。ここは自分を曲げて、彼の心配を拭ってやればいい。怪我していないのならば、できるはずだ。違うか?」

 

「それは……」

 

「怪我人扱いされるのが嫌なのはわかる」

 

 ――――ここだけの話、俺も怪我はしていないと思っているんだ

 

 囁くような声でそう言った彼を、ビワハヤヒデのトレーナーが弾かれるように見た。

 東条隼瀬が、あの天才が言うならばそうかもしれない。垂らされた蜘蛛の糸にすがりつくように、そう思ったのである。

 

「しかし、ブライアンは菊花賞を目前にしている。あいつは栄光とかそういうものに興味がない癖に、菊花賞だけはとりたいと言っていたな」

 

 認識に同調を示し、そして話をずらす。

 時間がないからこそ、時間を使う。こういうときの為に溜め込んでいた知識を大量放出して、東条隼瀬は臨機応変の才能を無理矢理に引き出した。

 

「……それは、なぜですか?」

 

「そりゃあ、君が勝ったレースだからだ。君に並びたい。そして勝ちたい。それがブライアンの行動原理で、それ以上はない。だから菊花賞を落とすわけにはいかないんだ。だが見ろ、心配しているようだろう?」

 

 ちらりと、ビワハヤヒデの眼が自分と同色の妹の瞳と交わった。そこに立っている妹は蒼白で、何も言えなくて、幼い頃に戻ったように自信無さげに立ち尽くしている。

 

 宝塚記念で自分を真正面から打ち砕いた、シャドーロールの怪物。それと同一人物とは思えないほどに、頼りなげな姿。

 

「………ええ」

 

「だから、助けてほしいんだ。ブライアンを。俺を。そして、君のトレーナーを。頼む」

 

 ……わかりました。

 

 か細い声を残して、ビワハヤヒデは車椅子にかけた。そしてすぐさま脚を氷水にひたし、熱を持った患部を冷やす。

 

「マスター。来ました」

 

 ウマ娘用の、救急車。近隣の病院への直通となるであろうそれを、URAの職員が呼んでくれたらしい。

 

「わかった。ウイニングチケットは?」

 

「先に。おそらく、同じ車輌に乗り込んだほうが」

 

「そうだな。そうしろ。いや、そうしてもらおう。交渉を頼めるか?」

 

 滅多に頭を下げない名門のトレーナーらしく命令形でそうしろと言い終わってから、救急車が自分の管制下にないことに気づく。

 彼らしからぬミスだった。それはつまり、彼も完璧に平静であるというわけではない、ということであろう。

 

「やってあります」

 

「よし。運んでくれ」

 

「はい」

 

 自分がやる。

 そう言わんばかりに前に出たビワハヤヒデのトレーナーを、東条隼瀬が手で制す。

 ミホノブルボンが二言三言をビワハヤヒデにかけて、そのままターフへと入ってきた車輌に向けてコロコロと運ばれていった。

 

「ああは言ったが……」

 

「怪我をしていない、というのは……嘘、ですよね」

 

 やるな、と。東条隼瀬は思った。

 普通の神経の太さをしているならば、ここで信じたくなるものである。そしてビワハヤヒデは怪我をしていないのですよね?と言ってくるだろう。

 

 そう彼は思っていたし、ちゃんと『いや、嘘だ』と言うつもりだった。そして、なんなら殴られてやるつもりだった。

 

 担当ウマ娘が怪我をした、あのとき。

 スズカの脚が折れた、あのとき。

 寝て起きれば骨折など起きていないのではないかと何度も思った。骨折の診断が下るまで、どうか折れていないでくれと思った。

 

 冗談でも『いや、折れてなかったんだよ』と言ってくれる人がいれば信じていたし、そのあと『それは嘘だ』などと言われればぶん殴るどころではすまなかっただろう。

 

「そう、嘘だ。すまない」

 

 深く頭を下げる。

 そして下げたまま、言葉を続けようとした彼に『頭を上げてください』という言葉が届いた。

 

「では。これからのことだが、君は心を多少切り替えねばならない。そのために今、止めたんだ。心を整え、深呼吸をして合流し、そしてそのあとは好きにしろ。距離を取るなり何なりな。ただ、トレーナーとしての責任は果たせ。せめて彼女が復帰するまでは、側に居てやれ」

 

「わかりました」

 

 白かった顔をやや青いくらいにまで回復させた若きトレーナーの、駆けていくその背。

 それを見送り切る前に、見覚えのある制服が見えた。

 

「東条隼瀬トレーナーですね」

 

「いかにも」

 

「……なんというか、私としては非常に気が進まないのですが、これも規則でして。その……ご同行願えますか?」

 

「まあ、そうなるでしょうね。ミホノブルボンとナリタブライアンに関しては、労働力として必要だったので同行を命じました。車椅子を持っていたでしょう?」

 

「……ああ、なるほど」

 

 そういうことか、と手を打つURAの職員。

 そしてそれと同時に、ナリタブライアンも気づいた。

 

 ――――さあ、ブライアン。お前は車椅子の片割れを持て。これが後々結構意味を持ってくるはずだからな

 

 彼は、そう言った。

 

「あ、マスター。何度目ですか?」

 

「いちいち数えていられるか」

 

「まあ、そうでしょう。なにか伝言はありますか?」

 

「忙しいだろうしルドルフには伝えないようにしてくれ。あと、菊花賞の作戦についてはカバンの二重底の下、メモリーカードに入っている。これが一番重要なことだが……勝った娘に謝っておいてくれ。正式な謝罪は後でするし行動自体には後悔はないが、場を乱したことは事実だからな」

 

「承知しました」

 

 空気を読んで待ってくれていたURA職員――――状況を把握したらしい観客からのブーイングがひどい――――と共に詰め所に歩いていく背中に、やっと声の出るようになったナリタブライアンは声をかけた。

 

「おい!」

 

「なんだ」

 

「その侵入を命令したトレーナー、どうなったんだ」

 

「ライセンスを剥奪された。それがどうかしたか?」

 

 事もなげにそう言うと、東条隼瀬は何かに気づいたかのように再び絶句したナリタブライアンの方を向いた。

 

「あ、そうだ。チーム所属のお前は菊花賞に出られるだろうが、このとおり俺はたぶん指揮は取れん。逆スカウトをしてくれて悪いが、俺はこういうやつだ。まあ、自分の見る目が無かったと諦めてくれ」

 

「アンタを選んで後悔したことなんか有りはしない。見る目が無かったと思ったこともない。今もな」

 

 だから、早く戻ってこい。

 

 その言葉に返ってきたのは、皮肉めいた微笑みだけだった。




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アフターストーリー:忠犬

ブル公


「貴方はなんというか、トレーナーライセンスを英検5級程度にしか思っていないようですね」

 

「ええ。そんなものでしょう」

 

 中央のトレーナーライセンスは一応、国内最難関の大学かそれ以上の試験を必要とする資格である。

 外部生向けに開かれている門戸、年に1回のトレーナー試験は合格者が出ないこともそう珍しいことではない。

 

 もっとも国立ウマ娘公苑で経験を積んでチーフトレーナーに採用されたり、トレーナー学校などを卒業すればライセンス自体は簡単に(卒業率10%程度)とれる。

 

 そんな狭き門を潜り抜けてもそこで待つのはサブトレーナーとしての下積み期間。

 それが終わっても結果が出なければ資格を剥奪されたり、地方トレーナーライセンスへ降格されたりなどの生存競争。

 

 その激しい競争社会、いや競走社会を知っているからこそ、URA職員はこれを冗談であると解釈した。

 

「……冗談はこれくらいにして」

 

「冗談ではないさ」

 

 勘弁してください。

 職員はそう思い、そして口に出しそうになった。

 

「……これくらいにして! 一応貴方の行動は規範に反した行いです。ご存知でしたか?」

 

「自慢ではありませんが、俺は規範を知らないで反したことは一度たりともないですよ。罰則規定やなにやらを、わかった上でやっている。つまり、ご存知です」

 

 つまり、真なる意味での確信犯である。

 

「だが別に規範を破るのが楽しいからやっているのではなく、破らなければならない状態だったから破ったに過ぎません。そこのところは誤解しないでいただきたい」

 

「……まあ、それはわかります」

 

 エアグルーヴハイキック事件とか特にそうだ、と思った。フラッシュを焚きまくっていたカメラをパコーンと蹴り飛ばしたアレ。

 今回もそう。故障発生となれば、迅速な対応が求められる。

 

 ただ、それをやるべき人間は他に居たのである。

 5着になり、明らかに様子がおかしかったウイニングチケットならともかく、2着に入ったビワハヤヒデが故障していることに気づいた医療スタッフはいなかったが。

 

(そもそも、気づくのは難しい)

 

 そう、職員は思った。

 

 ウマ娘の故障は、わかりにくい。基本的に強靭な精神力を持っている上に強がりの多いウマ娘は、明確に――――テンポイントのような事例にならない限りは気づかれないように振る舞う。

 そういったときに気づくのはたいてい、そんな強がりなウマ娘と二人三脚してきたトレーナーの方である。

 

 だからトレーナーから通報がいって医療スタッフが出動する、という流れになる。その流れになるまでに乱入してきたのが、今回の事件であるわけだ。

 

「とにかく、ご説明いただけますか。まず、なぜあそこまで迅速な対応ができたのか」

 

「なんとなく嫌な予感自体はしていたので、備えていたのです」

 

「なるほど、だから車椅子やらなにやらがあったわけですか」

 

「いや、それは3年前からやっていました。父が占領していた部屋があったでしょう。あそこに色々と持ち込んだわけです」

 

 あー、あの会議室かと、職員は納得した。

 押しも押されもせぬスタートレーナーであった、東条鷹瀬。彼が名門パワーでねじ込んだ、府中倉庫などと渾名される個人部屋。

 

 ――――あ、これ。僕の部屋になったから

 

 そんな一言でねじ込まれたという、そんな部屋。

 頼まれればどんな――――引退寸前のウマ娘の『最後のレースでなんとしても勝ちたい』という願いでも聞き入れる男だっただけに、連日連夜トレセンと府中を行き来するのが辛かったらしい。

 

 だからそのへんを、当時の上層部が気を利かせた。あるいは、仕方ないなぁ、と絆された。

 そしてその部屋は、ずーっと空いていた。なんとなく、あの伝説のトレーナーの居室を荒らすのが憚られて。

 

「一応許可は取りましたよ」

 

「そうでしょうね。で、あそこにあった小道具とかはどうしたんですか?」

 

「動員した父が親戚の子にあげるとか言ってました。一応調べたところ私物であったようだったのですが」

 

 備品じゃないよーとか言ってましたが、個人的に信用ならないので。

 そんな彼に曖昧な頷きを返しつつ、職員は少し残念に思った。別に備品とかではなく、いらないなら欲しかったのである。

 

「ゴミを押し付けられた親戚の子とやらには同情しますが、まあそんなところです」

 

 東条隼瀬の知らぬことだが、押し付けられた当人は幸せなのでオーケーである。

 

「で、どのあたりで故障だとわかったのですか?」

 

「第3コーナー付近ですね。走り方がおかしかった」

 

 そうは見えなかったが、そうなんだろう。

 そんなある種諦めに似た寛容さで、職員は調書に書き込んでいく。

 

「なるほど。ではレースが終わるまでは、待っていただけたわけですか」

 

「まあ、走っているウマ娘たちが意識をこちらに取られたら危険ですから。一応その間は電話したりで時間の調節はしていました」

 

「なるほど。ではウイニングランが終わるまでは待っていただけなかったのは……」

 

「ウイニングランと言ってもほとんどの子は減速していますし、集中力は分散されています。つまり、視野が広がっている。となると乱入してもこちらに気を取られて怪我する可能性は低いと判断しました。それに、故障には迅速な処置が必要です」

 

 他のウマ娘に直接故障に繋がるような迷惑をかけず、そして可能な限り迅速なタイミング。

 それが、ウイニングランだった。そういうことかと納得し、そして頷いた。

 

「ですがウイニングランを含めてレースです。規定違反は免れないでしょうね」

 

「まあ、いいですよ。それでビワハヤヒデなりウイニングチケットの症状が少しでも緩和されたなら」

 

「……なんというか、もう少し待つことはできなかったのですか? 一刻を争うとはいえ、ほんの数分でしょう。この数分を争うということを具体的に説明していただければ、こちらとしても動きようがあるのですが」

 

 できれば、庇いたい。

 そんな気持ちが感じられる言葉に首を傾げ、一考する。

 

 しかし本当に一考しただけで終わり、東条隼瀬は沈着な顔のままに口を開いた。

 

「ないですね。ただ、炎症を起こしていた脚は一刻も早く冷やすべきではあります。それが気のせいだとしても、あるいは数分見逃していても結果が変わらなかったとしても、動いたことに後悔はありません」

 

「と言うと」

 

「変わるか変わらないか、わからないでしょう。そのときには。その中で最善をとったつもりです」

 

 それはわかる。ただ、もう少しこちらが動きやすいようにしてほしかった。

 

 URAは、詰んでいた。

 東条隼瀬は、久々に出てきたスタートレーナーである。

 

 なにせ、顔が抜群に良い。名門だけあって気品のある振る舞いは、多くの女性ファンを獲得している。

 外国勢にボコボコにされてばかりの日本のトゥインクル・シリーズを臍を噛んで見てきた古参ファンは彼を見て快哉を叫ぶ。

 

 日本勢のジャパンカップ初勝利、アメリカでの初勝利、凱旋門賞初制覇など、海外を敵に回して圧倒し続ける姿は、彼らからすれば胸のすく思いだったからである。

 

 名門の出故に古参の勢力にも顔が利き、寒門出身のミホノブルボンを三冠ウマ娘にまで押し上げたが故に寒門からの支持も厚い。

 ブルボンが巻き起こしたムーブメントで獲得した新規ファンなどは、東条隼瀬くらいしかトレーナーを知らないというのも珍しくもない。

 

 そんな奴を処分すれば、ものすごい反発を喰らうだろう。

 これが犯罪とかをやらかしたとかそういうのならいっそマシだったが、やったことと言えばウマ娘の故障を察知し応急処置を施しただけである。

 

 だから、レース場に詰めかけたファンからはブーイングが飛んだのだ。なんで正しいことをしたのに、しょっぴかれるんだと。

 

 しかし、処分しないわけにもいかない。規定には違反しているわけだし、これをいいよいいよと許せば組織の箍が緩む。

 ついでに言えば、故障発生と勘違いした自称関係者が乱入してくる可能性すらあった。

 

 罰さなければならない。

 しかし、罰するべきではない。

 

 菊花賞が迫っているのだ。いくらナリタブライアンとはいえトレーナー無し、所謂空ウマ娘で勝てるほどGⅠは甘くない。

 さらに言えば、彼はアメリカのトゥインクル・シリーズから招待されている。しかも11月中旬の大レースに。

 

「後先とか、考えられなかったのですか?」

 

「ブライアンとスズカに申し訳ないとは思いますよ。ですが彼女らはチームに所属していますから、代打を見つけることは容易い。加えて言えば、情けないことに俺が現場レベルでできることなどたかが知れています。まあ、なんとかするでしょう」

 

 そう。こうして彼も申し訳ないとは思っているわけだが、しかしおそらく、二人は言うだろう。

 

 ――――下手にこちらの事情に斟酌して遠慮してらしくなくなられる方が嫌だ、と。

 

「ともかく、URAさんサイドには組織として適切な判断を下してほしい。それが望みです」

 

「……はい」

 

 どっちが譴責される立場かわからない。

 その後もひとつふたつ質問を浴びせられ、彼としては誠実に答えてこの場は収まった。

 

 URA監査室からぬっと出て、併設されているウイニングライブ会場の方に集まっている客の波をちらりと見て、東条隼瀬はレース場から出た。

 

 秋深し。時を経れば経るほど暗くなりがちな闇の中に、ピカリと光る耳飾り有り。

 

「なんだ、待ってたのか」

 

「お勤めご苦労さまです、マスター。ですが少しお待ちください」

 

 ブルボンのサインをもらった客から驚いたような目で見られたり励ましの言葉を送られたりした東条隼瀬は、それらに丁重に言葉を返しながら即席サイン会生成ロボがサインを書き終えるまで待つ。

 

「お待たせしました、マスター」

 

 ブライアンは?とは訊かなかった。ビワハヤヒデさんのお見舞いに行きました、という答えが返ってくるのはわかりきっていたからである。

 

「よく行かせてくれたな」

 

「はい。マスターが出てくるまでここで待つと仰られていましたが、マスターを待つことに意味はありません。それよりもビワハヤヒデさんの側にいるほうが役に立つと考えました」

 

 意味はないのに、何故ブルボンは待っていたのか。そういう益体もないことは、さすがの東条隼瀬も訊かなかった。待ちたかったんだろ、くらいな思考である。

 

「そのとおり。偉いぞ、ブルボン」

 

「はい。偉いです」

 

 だから褒めてくださいと胸を張る姿はまさに犬。

 そんな犬を撫でて、東条隼瀬は自然に前に出た。その斜め後ろから、てこてこブルボンは付いてくる。

 

「なにか食べて帰るか……なにがいい?」

 

「たこ焼きが食べたいです」

 

「たこ焼き。まあいいが、なぜだ?」

 

「助けてくださった方が食べてらっしゃいました」

 

 まあ、そんなところだろうな。

 基本的に何でも食べるブルボンが【オーダー:食べ物リクエスト】をこのように容易くこなせる。それはつまり、誰かが食べていたものを食べたいと思ったからであろう。

 

「じゃあ、銀だこにでも行くか」

 

「マスター。銀だこは邪道だそうです」

 

「あ、そ。美味いんだがな」

 

 じゃあ他のたこ焼き屋にするか……と、スマートフォンを取り出して検索し、ふと気づいた。

 

「そうだ、ブルボン。俺は今担当している娘達が引退するまでトレーナーを辞める気はないといった。だが辞めざるを得なくなるかもしれない」

 

「データベース内にレース中侵入規定違反の前例を確認。そのトレーナーはレース中特定のウマ娘の進路を妨害させるべくウマ娘に行動を強いたが故に、トレーナーライセンス剥奪に至った、と」

 

「そう、それ。ということで、俺は日本ではトレーナーを首になるかもしれない。だからそうなったら、ライセンスのあるフランスに拠点を移す。そこで経験を積んで、なれれば日本で教官になる。そうなるとまずお前と、たぶんスズカは来るだろうと思っていたんだが、来るか?」

 

「マスター。私は本日8時21分に音声データの提出を行いました」

 

 ――――マスターの行かれるところであれば、地の果てまでもお供します

 

 まっすぐ見えてくる、星の瞬くような美しさを持つ深い青の瞳。

 美しい。あまりにも中身が子供だからそう思ってこなかったが、東条隼瀬は極めて素直にそう思った。

 

「その言葉に、偽りはありません」

 

「そうか。そうだろうな」

 

「あとたぶん、スズカさんだけではないかと」

 

「ああ、ブライアンか。あいつの場合1年予定が早まるだけだから、別にいいのかな」

 

 ルドルフは忙しいだろうし……と続けた瞬間、ミホノブルボンは若干シンボリルドルフに同情した。

 

 皇帝で居続けるのも大変なことだ、と。

 その点自分はペット枠だから、そこらへんが楽でいい、とも。

 

 

 一方そのころ。

 

 

「……どうしたものか」

 

 額を突き合わせる勢いで悩む、URA上層部の皆々様。

 

「処分はしなくてはならないでしょう。悪しき前例を作る」

 

 そういう彼も、なにも東条隼瀬が嫌いだからこういうことを言うのではなかった。

 有能だから、正しいことをしたから。そういうことで許していては、いずれ特別扱いの誹りを免れないし組織が機能しなくなる。

 

「ですが処分するにしても、ウマ娘の故障を助けに行って不利益を被ればそれはURAとしての精神に反しますよ。人命救助して痴漢扱いされるようなものではありませんか」

 

 URAの精神とはつまり、健全に公平に、ウマ娘たちのレースを主催するということである。

 健全にというのはなにも組織的な汚職をせずということではなく、健康に配慮しながら、ということも含まれる。

 

 その点で、東条隼瀬は間違ったことをしていない。憲法を遵守して法律に違反したようなものである。

 

「ここで処罰すると上り調子の人気に水を差す可能性もある。我々がそれの責任をとって辞任するのはまあいいとして、トゥインクル・シリーズ自体が下火になるのは見過ごせない。ここは適切な処置があったからこそという医師の診断書をとってきて、その証拠を下地に許すという形にしてはどうだろうか。無論、問題となった規定には後々から手を加える形で」

 

「よろしいですか」

 

 末席に座った男が手を上げた。

 少し前ならば出しゃばるなと嫌な目で見られたであろうが、月刊ターフごと闇に葬られた先代の敗戦処理をし続けてきた現上層部のお歴々は頭が柔らかかった。

 

「なんだね、東条くん。思うところがあるならば、言ってみたまえ」

 

「確かにここで単に処罰すると一時的に非難をされるでしょう。ですが処罰しなければ将来の禍根を残しますし、個人に忖度して制度を曲げるのは組織として健全な有り様ではありません」

 

 おい、お前の兄のことだぞ。

 上層部の大半がそう思ったが、彼らは口に出さなかった。

 

 この眼鏡をかけた弟が身内に忖度するタイプではないことを、知り過ぎるほどに知っていたからである。

 

「ここは罰するべきです。しかし罰するだけでは規則を遵守するばかりで柔軟性が失われてしまうのもまた、確か。ならば同時に行うべきだと考えます」

 

「つまり、どうするのかね」

 

「つまり――――」




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アフターストーリー:謹慎

本日の被害者:シンボリルドルフ


 URAの要望は、簡単に言えば以下の通りである。

 

 スタートレーナーである東条隼瀬のトレーナーライセンスを剥奪したくない。

 なぜならば彼は父と同じく、唯一外国勢に対抗できるトレーナーだからである。

 

 だが組織の健全性を保つために処罰をしなければならない。

 個人の実力に忖度して賞罰を弛くしたと言われれば、将来的に禍根を残すからである。

 しかし、隆盛著しいトゥインクル・シリーズに水を差さないために大事にはしたくない。

 

 そしてなにより、ウマ娘のために設立されたURAという組織がウマ娘を助けた者を罰するという捻れた矛盾を引き起こしたくない。

 

 東条隼瀬は、正しい処罰をしてほしい。

 彼は個人レベルの正義が組織レベルの正義と相反することを知った上で、個人の正義を貫いたのだ。別に罰されたくないわけではないし、やや過大に罰されても恨みはない。

 

 その上での結論が、これだった。

 

「東条トレーナーの処分についてお伝えします。今回の彼の行動はレース規定の禁止事項における許諾無き者の侵入・侵入の指示にあたり、その行為は規定違反であると言わざるを得ません」

 

 こういった場合の処罰とはつまり、前例主義である。

 つまり、トレーナーライセンスの剥奪。しかしそうはいかないとばかりに、URAの広報は続けた。

 

「前例を参照するに、この場合の処罰はいずれもトレーナーライセンスの剥奪となっていました。

しかし過去あった前例のすべてがレースの進行を阻害するという意思に基づいた行動であり、今回のケース。すなわち『URA所属の医療班より前に怪我に気づき、迅速な対処が必要と判断したため』という人命救助に基づいた行動とは根幹が大きく異なります。更には当人から事情聴取したところ、レースが終わりウイニングランに移行するまで待つという気遣いもみせていました」

 

 観客たちが認識していた行動から見える情状酌量の余地。

 それに加えて全部録音させていた会話からなんとか抽出した情状酌量の余地を加え、広報官は用意された原稿に目を通して更に続けた。

 

「更には、彼の起こした行動はURAの掲げる精神、健全に公平にウマ娘たちのレースを主催するという理念に合致します。ひいてはなによりもウマ娘の健康を第一に考えるべきトレーナーとして当然の行動であり、これを罰するのはなによりもURAという組織の根幹を否定することに繋がります。しかし規定を破ったのもまた事実。信賞必罰は組織の拠って立つところです」

 

 更にはビワハヤヒデ、ウイニングチケットはエコー検査の結果、共に軽度の屈腱炎の症状が認められました。

 医師によると発症をしてから適切かつ迅速な対応が炎症を抑えたとのこと。

 我々の不手際も踏まえ――――

 

「本来は謹慎半月のところ、URAの不手際から縮めて5日間の謹慎と、規定いっぱいの減俸。また、URA医療班を改革。元トレーナーを最低3人常駐させ、故障の予兆があれば医療班へ報告させることとします」

 

 

◆◆◆

 

 

「甘いな」

 

 実のところ、ライセンス剥奪まではいかないだろうな、とは思っていた。フランスに行くというのはあくまでも最悪にして最後の手段である。

 

 しかし思ったより改革が早く、罰則が軽い。

 そしてギリギリ菊花賞に出られる程度の謹慎期間というのは、やや忖度が感じられなくもない。

 

 しかしURAとしてはそのぶん罰金を重くし、そして自らの非を認めることで『東条隼瀬に甘いのではないか』という矛先をそらした。

 

 だからこそ、『制度の欠陥を見過ごしていた自分たちのミス』ということにしたのだろう。

 

(まあ、府中の医療班はスズカのときもテイオーのダービーの時も怪我の発見に至らず、役に立たなかったわけだが)

 

 スズカが骨折しながらも走り切り、ニコニコしながらこちらによってきたときも。

 トウカイテイオーがダービーで骨折しながらウイニングライブを敢行したときも。

 

 府中、即ち東京レース場の医療班はウマ娘の異変に気づかなかった。即ち、負の実績がある。

 

 しかし負の実績があるとはいえ、URAという大組織があっさりと自らの不手際を認めるというのは珍しい。

 責められるべきは医療班の使えなさ、と責める声もあるが、彼らは怪我を治すことのプロである。怪我を察知することにかけてはトレーナーの方が上で、気づかないのもまあ多少は仕方がない。

 

 だがそこに現役を引退したトレーナーを雇用すれば、雇用の口も広がるし怪我の早期発見にも繋がるだろう。

 なにせ、サイレンススズカを骨折させた男にすら気づける程度のことなのだから。

 

「俺としては、ブライアンはともかく俺は菊花賞は出場停止になると思っていた」

 

「というと?」

 

 謹慎を喰らったいつぞやのように、朝ごはんを食べているとシンボリルドルフがやってきた。額に青筋を浮かべて。

 

 まさにプンプンルドルフであったわけだが、そこは割とすぐに機嫌の治る皇帝。こうして一緒に朝ごはんを相伴し合っている。

 

「そちらの方がURAとしてはやりやすいだろう。個人に遠慮はしない、という組織としての姿勢を明確にできる」

 

「私が思うに、そういった組織のメンツのような都合でウマ娘に影響を与えたくなかったのではないかな」

 

「俺も頭が冷えて思った。ブライアンには申し訳ないことをした、と」

 

 あのときは、必死だった。観戦しているだけなのに、精神的に限界なところがあった。

 サイレンススズカ。故障で才能を潰しかけた天才。あの再来になるかもしれないと咄嗟に思って、まさにトラウマに突き動かされたと言っていい。

 

 心が沸き立つような熱意に動かされ、しかし頭は奇妙な程に凍るような冷静さを保っていた。

 だから、必死にやった。あの時できなかったことを、贖罪のように。

 

「俺はスズカのとき、冷静さを欠いていた。現実を直視できていなかった。正しい判断ができなかった。だから今、動いてしまった。少し考えると、URAに連絡して現地の医療班に繋いでもらい、こちらが事前に用意していた器具を提供して処置してもらう。そうすればブライアンには迷惑をかけなかっただろうに」

 

「ただその場合、対応は遅れていただろうね」

 

「……まあな」

 

「そして、君はそのことに気づいていたはずだ」

 

「まあな……」

 

 基本的に割とその場の最適解を行えるが、後々グチグチと気にする。

 シンボリルドルフは、彼のそういうどうにもめんどくさいところが好きだった。

 

「まあ、菊花賞に出れてよかったじゃないか」

 

 それはルドルフとしては、単純な励ましだった。最後の担当ウマ娘、最後の菊花賞。出られればそれに越したことはない。

 

 シンボリルドルフにトレーナーとしての彼の気持ちはわからない。経験したことがないからである。

 しかし自分の現役の最後の1年のどこかで彼が不在のままにレースに臨むのは、正直なところ嫌だった。

 

 そうなる場合たぶん、いなくなるそれなりの理由があるから仕方ないなぁと許すだろうが。

 

「そう。正直良かったと思っている。実のところ、試したいことがあるんだ」

 

「試したいこと?」

 

「そう。お前の最後の有馬記念のとき、ミホシンザン相手にやったことがあっただろう」

 

 ミホシンザン。神の子孫。

 シンザンという神の血統を継ぎ、そしてその領域を継いだ者。

 

 大鉈を振るい自分の前を走るウマ娘を纏めて差し切る、最強クラスの領域。その対策の為に、彼の知恵を借りたものだった。

 

 そしてそのとき、彼はこともなげに言ったのだ。

 

 ――――要は、発動させなけりゃいいんだろ

 

 そして彼は、発動させなかった。ミホシンザンの幼少期から今までのレースをすべて観察し、領域の発動トリガーを丸裸にして。

 

 その頃の彼は、領域を知覚できなかった。

 だが彼は領域というのは要は速くなるための技術であると的確な定義をし、そしてミホシンザンが加速した瞬間、あるいはその前に何をやっていたかをすべて洗い出して『何をもって領域を構築するか』を発見したのである。

 

「領域のキャンセルか」

 

「そう。それの亜種をやりたい。というか、試してみたい」

 

「ふむ……」

 

 シンボリルドルフは、彼が単なる好奇心で動く人間ではないことを知っていた。

 好奇心は猫を殺す、と言う。己の好奇心を優先して勝率を下げるような真似を、彼はしない。

 

「覚醒封じ、か?」

 

「御名答」

 

「なるほど、君の唯一の弱点をどうにかできないかと言うわけか」

 

「そうだ。俺はあのクソガキのような爆発力に淘汰され続けてきた。だが、ここらで何とかしておきたいのさ」

 

 彼が自分不在時にと用意していた菊花賞の作戦プランはシンボリルドルフも見た。それはある意味王道の――――謂わばナリタブライアンの強さに絶対的な信頼を置いているが故の、そして直前まで情報を集められないが故の力押しというべきもの。

 

 細かい調整ができない場合に備えて現場での自由が利くような作戦を事前に立てておくのはさすがと思ったものだが。

 

「俺の父は本家の嫡子に向けて自分のゴミを送りつけるようなところがあるが、優秀だった。現場レベルでなんとかすることができた」

 

 東条隼瀬の優秀さは、事前に勝負を決めておくことである。充分な時間があれば確実に勝つための算段を立てられる。少し足りなくとも7、8割で勝てるくらいの算段は立てられる。

 

「情けないことに、俺は現場でどうにかすることができない。担当ウマ娘が頑張っているというのに、なにもできない。だから多少なりともなんとかできないかなと思っているわけだ」 

 

 だから現場レベルでなんとかできるウマ娘と組んできたのである。

 シンボリルドルフは本来トレーナーを必要としないほど優秀だし、サイレンススズカは現場での指揮の必要が皆無だし、ブルボンはあらゆるパターンを全部詰め込んでおけばプログラム通りに動いてくれる。

 

 そしてブライアンは、勝手にゴリ押しで勝てる。

 

(事前に勝ちが決まっているくらいに詰めてくれるというのは、こちらとしてはかなりありがたいことなんだが)

 

 典型的なトレーナーを父親に見ているのだから、納得しないだろうな。

 そんな冷静で的確な分析で理解を示しつつ、ルドルフは話を反らすことにした。

 

「そう言えば、参謀くん。記者会見は開かないのかい?」

 

「URAから駄目だと言われた。ま、謹慎期間中だから仕方ない」

 

「まあ、そうだろうな……」

 

 URAが頑張って取り繕ったものを本音と正論で破壊しかねない。

 東条隼瀬という男を知っているだけに、シンボリルドルフは深く深く頷いた。

 

 そして、ふと頭に浮かぶのはとあること。

 

「理事長代理はなにか言っていたかい。処分の通達は理事長が行っていた。今海外出張中だから、おそらく代理が行ったのだろう?」

 

 何故、ウマ娘であるルドルフがトレーナーに対する処分の通達者に妙に詳しいのか。

 それはたぶん、説明する必要もないだろう。自分の分身のようなトレーナーが処分ガチ勢だからである。

 

「ああ。規定は守りましょうと言われた」

 

「そうだろうね」

 

「あと、怪我に気づく眼力を褒められた。やはりなんと言うか、彼女もトラウマから完全に抜けきれてはいないようだな」

 

 理事長代理。つまり、樫本理子。

 彼女は昔担当ウマ娘の意思を尊重した結果、トゥインクル・シリーズとアオハル杯のレースを全力でこなすという過密な出走スケジュールを容認してしまい、故障・引退させてしまったという過去を持つ。

 その過去故にトレーナーからURA本部へ転身していたわけであるが、URA内部の改革に目処が立ったが故に学園に戻ってきた――――ということになっている。

 

 本人の心を読んだわけではないからわからないが、事実URAは改革された。今回の対応の迅速さを見れば、わかる。

 そしてついでにわかること。それは少なくとも、嘗て寛容な管理主義者であった彼女はトラウマによって徹底的な管理を標榜している、ということである。

 

「同族だからわかる、と?」

 

「いや、同族ではないさ。スズカは復帰したが、あの人のウマ娘はそうはならなかった。だからこそその傷は深いだろうし、その傷に根ざした反動的な管理主義の根は深く、幹も太い」

 

 スズカが、あのまま引退していたら。

 この人はどうなっていたんだろうかと考えかけて、シンボリルドルフは頭を振った。

 

 考えたくない未来が見えたからである。

 

「そう考えると、俺は心が脆いのかな。今回もそうだが、相変わらず成長のない感じであるわけだし」

 

「……成長しているさ。日々自分と向き合っているから気づかないだけで、私からすれば大きく成長しているよ、君は」

 

「…………そうか」

 

 納得したような、安心したような、あるいは、嬉しそうな。

 そんな笑みを浮かべた彼を見てなんとなく嬉しくなって尻尾を振り、シンボリルドルフは皿の上に視線を戻した。

 

「……参謀くん」

 

「ん?」

 

「目玉焼き……新しく焼いてくれないか?」

 

「ああ、構わないが……」

 

 あるだろ。

 そんな彼の眼差しがおしゃべりにうつつを抜かして、ある時から一切手を付けられていないルドルフの皿に刺さった。

 

 そこにはパンがあり、サラダがあり、黄身の固まった目玉焼きがある。

 本来5枚あったそれが。

 

「…………ああ、固まったからか。そういえばお前、トロトロのやつが好きだったな」

 

「うん……」

 

「仕方ないな、皇帝陛下の思し召しだ」

 

 ヒョイっと、参謀の箸が一閃した。ルドルフの目玉焼きがかっ攫われ、参謀の口に消える。

 彼としては、これは善意だった。限られた摂取カロリーの中で最上のものを、より美味しいものを食べてほしい。

 だが自分のわがままで食べ物を捨てるようなことを彼女はしないだろうし、押し付けるようなこともしないだろう。

 

 だから、奪ってしまう。それが一番いい。その判断は、正しかった。ある意味で。

 

 

 そして、ある意味では致命的に間違っていた。

 

 

「あ、あーっ!!!!」

 

 皇帝らしくないなっさけない悲鳴を『私の目玉焼き! 私の目玉焼き!』というような、オグリキャップじみた、あるいはスペシャルウィークじみたあげません的悲鳴と感じたのか、東条隼瀬はちょっと肩をすくめた。

 

「なんだ、2枚がいいのか」

 

「い、いや、それは……私の……付けてるというか……」

 

 ブツブツブツブツと言っている皇帝を無視して、サラリと作って帰ってくる愛嬌×無神経男。

 

「おい、また固まるぞ」

 

 そんな言葉と共に、やや頬を赤く染めた皇帝は目の前のご飯をもそもそと食べはじめた。

 

 菊花賞まで、あと6日。




74人の兄貴たち、感想ありがとナス!

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メモリー:2/11/29〜2/12/3

Twitterでの厳正な投票の結果、今日の投稿は掲示板回となりました。今夜もやります。

https://syosetu.org/novel/259565/53.html
↑ここらへんのスレ


【国際GI】ジャパンカップ感想スレ【MT対決】

1:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:28:00 ID:8euImr7fg

ブ ル ボ ン 最 強

 

2:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:28:08 ID:I+osYD+BZ

東 条 最 強

 

3:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:28:15 ID:NQ6nNatd9

東条家とかいうジャパンカップキラー

 

4:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:28:23 ID:XiCIUQ1CC

というか外国人キラー

 

5:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:28:30 ID:QvOYZwkIP

全自動海外撃退マシーン

 

6:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:28:37 ID:yx+QkTUlB

スペシャルウィーク以外の勝ちウマ娘全部東条家関連で芝なんだ

 

7:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:28:46 ID:KTarwFHXV

タマは?

 

8:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:28:54 ID:DrUvcVZVf

>>7

あいつ一応本家定期

 

9:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:29:02 ID:BYdUgPeOZ

ラップ走法捨てててよかったのかな

 

10:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:29:10 ID:j7+FTrTIi

まあラップ走法って格下殺しの走法だって関係者ニキが言ってたし、今回は単純に通用しなかったのかもしれん

 

11:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:29:18 ID:deikmkllq

格下殺しってどういうことや

 

12:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:29:25 ID:NaoPilfVi

スタートしてからの1ハロンでそのレースで叩き出すタイムが決まるようなもんやから、爆発力のある天才型には対応できへんねん

 

13:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:29:32 ID:83dqw4rSi

>>12

なんで?

 

14:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:29:40 ID:NaoPilfVi

>>13

ドブカスアホコケコ

 

15:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:29:49 ID:hlCiEi1j6

事前予測から勝てる為のタイムを弾き出してるわけだから、その場で成長してその想定乗り越えられたら勝てないってことじゃね

 

16:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:29:57 ID:NaoPilfVi

15はわかっとるね

 

17:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:30:04 ID:yJtSqmfX4

そういうことだったのか

 

18:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:30:12 ID:bE+fqS8Ye

スタートした瞬間から全力だったから頭おかしくなったのかと思った

 

19:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:30:20 ID:rndlBQMmP

普通に逃げられるんだね、ブルボン

 

20:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:30:28 ID:DjjZx6Opo

スズカみたいでやんした

 

21:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:30:36 ID:D2GQN45g5

確かにスズカに似てた

 

22:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:30:44 ID:CBOGbPvuI

スズカから逃げてきたアメリカ勢にジェネリックスズカを見せる鬼畜

 

23:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:30:53 ID:lZiyv6dNg

鬼かな

 

24:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:31:01 ID:29u2jvE5x

何故逃亡先によりにもよって日本をチョイスしたのか

 

25:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:31:08 ID:Mh0ymbRTq

でもまあスズカのほうがすごかったな

 

26:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:31:16 ID:GgIpXU8YX

日本晩年のスズカは負ける気しなかった

 

27:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:31:24 ID:brNZksX+o

晩年(全盛期は1年半)

 

28:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:31:33 ID:6xuq+pcTw

と言うかラップ走法に弱点はないとは何だったのか

 

29:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:31:41 ID:L2aj8FWw+

あれ誰が言ったの? 解説員?

 

30:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:31:49 ID:/eXbMQ7Sm

東条解説員そんなこと言ってたっけ

 

31:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:31:56 ID:NaoPilfVi

そんなこと言うわけ無いやろ

 

32:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:32:04 ID:SXBTsMzs9

東条解説員は特に言及なかったけど他の解説者とかが言ってた

 

33:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:32:11 ID:d4WTKQDwe

解説者、無能

 

34:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:32:20 ID:gowL5LtgT

解説員は解説しながら出走させろ

 

35:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:32:29 ID:4DxfgPztK

無理定期

 

36:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:32:37 ID:tIayhalDP

まあ朝日杯から全部レコードだろ? 無敵に近いんじゃないの

 

37:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:32:45 ID:w8NmE5yOs

そう考えるとブルボンって地味にすごいんだな

 

38:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:32:53 ID:vdgIrtFsG

派手にすごい定期

 

39:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:33:00 ID:9ugXmDGPX

派手定期

 

40:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:33:08 ID:tF6kuWDfz

派手にすごいんだよなぁ……

 

41:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:33:16 ID:LF20TQIPJ

まあ実際テイオーに迫られてるからな

 

42:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:33:24 ID:STdZIfvZq

迫られてる(5バ身)

 

43:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:33:32 ID:t9zCTnahU

ただ末脚はすごかったな

 

44:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:33:41 ID:iZjUpswHV

やっぱトウカイテイオー強いわ

 

45:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:33:48 ID:FzJvPzKkk

東条解説員の解説キター!

 

46:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:33:56 ID:XNkZZl0X0

解説員まだ働いてんのか

 

47:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:34:04 ID:gQanPmaOL

あれ、記者会見?

 

48:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:34:12 ID:GleA03te1

>>47

URA公式ウマッター

 

49:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:34:19 ID:Drcfx56Ac

はえー、フォローしとこ

 

50:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:34:28 ID:NaoPilfVi

お前らは知らんやろうけどトレーナーに休日なんて無いし定時もないで

 

51:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:34:35 ID:RsB7vGiFY

トレーナーの給与体系どーなってんの

 

52:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:34:44 ID:JI97IlNEJ

年俸制+出来高

 

53:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:34:52 ID:WFSdiliL7

さらっと職場のブラックを告発する関係者ニキ

 

54:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:35:01 ID:cXmqx+KZd

出来高って?

 

55:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:35:09 ID:tm7OR/glq

>>54

ウマ娘の獲得賞金の一部(契約内容による)

レースに出るたびに貰える手当て(出走手当て)

担当しているウマ娘の人数によって増える手当て(担当手当て)

あと他にもちょこちょこ

 

56:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:35:17 ID:SKt5jbpGl

解説員死ぬんじゃない

 

57:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:35:25 ID:NaoPilfVi

縁起でもないこと言うなや

 

58:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:35:34 ID:AZKakhp0R

解説員

・今回はトウカイテイオーがいた。爆発力のある彼女を相手にすると勝つための時計を予想し切ることができないから力で押し切った

・これからもちょくちょくやっていく

 

59:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:35:43 ID:Jy+8tdGcb

短いな

 

60:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:35:51 ID:SX4D5fxlW

まあ力押しだしね

 

61:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:35:59 ID:i5+7gn2Wr

じゃあトウカイテイオーと出るときはラップ走法しないのか

 

62:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:36:07 ID:6jxIOIVRk

解説員トウカイテイオー恐れすぎ問題

 

63:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:36:16 ID:vrAvlCDov

というかブルボンはシニアにも通用するのすごいな

 

64:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:36:24 ID:CkZrmNQnS

ブルボンの逃げが通用するのはクラシックまでとは何だったのか

 

65:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:36:33 ID:F9AMgflok

クラシックウマ娘がシニアのGⅠ勝つのすごくね?

 

66:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:36:40 ID:D/A6daC9G

ルドルフ以来かな

 

67:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:36:48 ID:yNUmkfNB0

クラシック級なのに宝塚記念、ジャパンカップ、有馬記念勝つルドルフさん

 

68:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:36:56 ID:Gy1CvjFWc

果たしてブルボンは有馬記念を勝てるのか

 

69:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:37:05 ID:yfCX5xvhM

勝てるだろ

 

70:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:37:13 ID:6d6Xe0VK5

ただ未来人ニキが勝てないとかなんとか言ってたな

 

71:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:37:21 ID:WHEeaJwPh

マ?

 

72:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:37:29 ID:ZCCupovIJ

 

73:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:37:37 ID:wJlrQc5hI

勝てないというよりトウカイテイオーが勝つって言ってたな

 

74:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:37:44 ID:KFbUfM990

ただブルボンが負けないとも言ってるからな

 

75:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:37:52 ID:Tiw5kWDB4

>>70

この未来人

こと勝敗に限り虚偽は一切言わぬ

勝つ……!勝つが……今回まだその時の指定まではしていない

そのことをどうか諸君らも思い出していただきたい つまり…我々がその気になればテイオーの有馬記念勝利は10年20年後ということも可能だろう………ということ……!

 

76:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:38:01 ID:U5i0afOuO

脚がなくなるわ

 

77:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:38:09 ID:AOP6e9jB+

3年で2回骨折してるんだから20年やってたら14回くらい骨折してそう

 

78:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:38:18 ID:JXRWQjCYD

というかブルボンはいつ凱旋門賞に挑戦するんだろうか。未来人ニキがガチだとすると、凱旋門賞に挑戦しない限り負けないことにならないか

 

79:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:38:25 ID:rULmfRIRY

>>78

この未来人

こと勝敗に限り虚偽は一切言わぬ

勝つ……!勝つが……今回まだその時の指定まではしていない

 

そのことをどうか諸君らも思い出していただきたい つまり…我々がその気になればブルボンの凱旋門賞勝利は10年20年後ということも可能だろう………ということ……!

 

80:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:38:34 ID:I3JpGv8t9

俺らが死ぬまでに凱旋門賞勝ってくれればいいわ

 

81:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:38:42 ID:pjHnmu1za

スピードシンボリからはじまった呪いだからなぁ

 

82:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:38:50 ID:HP5XO7KSb

ルドルフですら勝てなかったんですがそれは

 

83:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:38:59 ID:qm0ADEISu

じゃあブルボンは最短でも来年の10月まで負けないのか

 

84:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:39:08 ID:mZDW7tStF

まあ普通にやりそうではある

 

85:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:39:17 ID:uASb7+B2l

つよつよロボ

 

86:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:39:25 ID:jlGSF/FMi

と言うかテイオーのあの走りはなんなの? 思い出したの?

 

87:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:39:32 ID:TD2Ctcm/T

テイオー「思い出しました」

 

88:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:39:39 ID:g6yWTeHKf

もう忘れるな

 

89:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:39:47 ID:nl6r2zmJt

最近落差大きすぎるからなー、テイオー

 

90:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:39:54 ID:twJlTonsU

勝ったり負けたりは仕方ないけど連対どころか入着すらしないのは謎

 

91:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:40:01 ID:NjQvKHGQb

要はスイッチが入るか入らないかなんだろうな

 

92:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:40:09 ID:ytwD0Or34

女心は秋の空か

 

93:尻尾上がり名無し ??/11/29 21:40:17 ID:MyOl3W+Jv

マジで復活してほしいわ、テイオー。終わった終わった言われてたけどこんなもんじゃないはず

 

 

 

ミホノブルボンの名前間違えるの楽しすぎワロタww

1:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:50:00 ID:0HZ8aCxt1

はい、ミホノブルボンですって言ってくれるのかわいい

 

2:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:50:08 ID:oYKkCXBzj

クソ定期

 

3:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:50:18 ID:6uE+XJn3y

お前さっきめじょまっきーんスレ立てたやつだろ

 

4:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:50:27 ID:VlblVkXHp

つーかミホノブルボンとか名前間違えようがなくね

 

5:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:50:36 ID:MvlSkUFv5

ミホノバーボン

 

6:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:50:47 ID:uJTRfIC3C

ミホノボルボン

 

7:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:50:55 ID:cLOz9KN7Y

ミホノベルボン

 

8:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:51:04 ID:YA2wN6zBg

ミホノバルボン

 

9:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:51:15 ID:8tsxkTEy9

めじょまっきーん定期

 

10:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:51:24 ID:UQh5NDRjK

はいはいめじょまっきーんめじょまっきーん

 

11:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:51:33 ID:CQzgFe1SG

メジロ家の芸人好き

 

12:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:51:42 ID:+aqHiV22K

あれでクソ強いの笑う

 

13:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:51:50 ID:eaTAuMg5F

ラストスパート時のマジ顔には惚れるね

 

14:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:51:59 ID:fSBKzVfjY

グルメ番組でのとろとろまっきーんどこ……?ってなる

 

15:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:52:09 ID:+jRlOs+vK

はい、ミホノブルボンです←言いそう

 

16:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:52:19 ID:me57pv74C

これマ?

 

17:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:52:27 ID:CPU8zCzHi

ネタだぞ

 

18:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:52:37 ID:Mmukv0Yg3

まっきーんスレ立ちすぎだろ

 

19:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:52:45 ID:EPc/Lt1ZA

阪神大賞典後のマスコミの悪ふざけで化けの皮が剥がれたまっきーん好き

 

20:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:52:56 ID:a9VpK4c1S

今季のビクトリーズはどうでしょうか?とか言うパンドラの箱を開けた鍵

 

21:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:53:06 ID:8HFMn0tza

ネタ振りだったのに……

 

22:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:53:17 ID:sctZ63fQ/

タマモクロス「うんうん今季は……って、ウチのことちゃうんかーい!」

まっきーん「今季の注目選手はユタカ……と普通のファンなら言うでしょうけど今季はやはり新助っ人のロベルトさんですわ! あれはいいリリーフになりますわ!」

 

23:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:53:27 ID:gvl1AG8BF

あれでロベルトさんのフォロワーが爆増したの草

 

24:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:53:37 ID:l9hV2ZhwD

ちゃんと活躍もしてるのほんと草

 

25:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:53:46 ID:NB7Y0ppGi

トゥインクルシリーズ長距離最強スレの王にしてやきう板のアイドル

 

26:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:53:56 ID:z3LI/0F2L

今季も阪神大賞典後にめじょまっきーんのおすすめやってくれないかな

 

27:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:54:04 ID:feZITKR+0

そういえばなんでめじょまっきーん呼びなの? メジロマックイーンでよくない?

 

28:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:54:15 ID:rKzC1erid

>>27

はいイメ損

 

29:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:54:23 ID:2We3qYQoL

メジロ家分家の星にして名家のお嬢様のメジロマックイーンと熱狂的ビクトリーズファンめじょまっきーんは別人

 

30:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:54:31 ID:vqkeESKSD

>>27

通報した

 

31:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:54:40 ID:gVWC8iRe9

まっきーんとよく似てるからマックイーン応援してるわ

春天3連覇頼むで!

 

32:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:54:48 ID:ZsuhPJqMj

ブルボン「させません」

 

33:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:54:59 ID:xMdWFtBnz

お前の連勝記録も楽しみだから困る

 

34:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:55:08 ID:XFjSsY001

春天の同一GⅠ3連覇の何がすごいって、距離長くて事故りやすい長距離レースの最高峰で安定した強さを発揮し続けられてるってことよ

 

35:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:55:17 ID:wg3e2HWkv

と言うかブルボンに3200は無理だろ

 

36:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:55:28 ID:T4TasM+/M

解説員も3000に挑戦させたのは本人の希望。それよりも2400を完璧にしたいって言ってるしね

 

37:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:55:36 ID:HnvRh7vLm

長距離が廃れてるらしいもんな

 

38:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:55:44 ID:4fYuYkbw5

国際化の波がトゥインクルシリーズにも……

 

39:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:55:54 ID:kCJDu196B

実際長距離ってどれくらい廃れてるの?

 

40:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:56:04 ID:8aPZ0/HSa

2番に雑魚置くくらい

 

41:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:56:14 ID:SvCEY7AXZ

なるほど、あんま廃れてないのね

 

42:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:56:23 ID:k7tSY0aWR

日本では珍しくもないけどMLBでは珍しい、そういうことだぞ

 

43:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:56:33 ID:zVs7WPVXr

なる

 

44:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:56:42 ID:GBlTG6a3R

長距離はウマ娘への負担が大きいとか言われてるけど短距離の方が故障率高いぞ

 

45:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:56:51 ID:yfl+0yIIR

そんなデータあったっけ

 

46:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:57:01 ID:3dt8WdGeO

と言うかあったとしても短距離とかダートを見るやつ自体が少ないから目立たないのじゃ

お前らも2軍戦見ること少ないだろ

 

47:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:57:11 ID:50gWxf0Cv

かなC

 

48:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:57:20 ID:LCGskcUWn

まあやっぱクラシックディスタンスよ

 

49:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:57:28 ID:2bwPquGR+

短距離も面白いんだけどね

 

50:尻尾上がり名無し 2021/12/3 15:57:38 ID:4JJAWH4wm

短距離ペース速くて好きよ

 

 




53人の兄貴たち、感想ありがとナス!
ottan03兄貴、ドーナツの穴兄貴、いるま兄貴、danann_scp兄貴、宇々字兄貴、ノア_ネコ兄貴、ネツァーハ兄貴、評価ありがとナス!

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アフターストーリー:直情

「いいでしょう」

 

 メジロの総帥。

 マックイーンらにはお祖母様と呼ばれて尊敬される――――シンボリの本家で産まれて嫁いでいった彼女は、厳かな雰囲気を崩さずにそう言った。

 

 謹慎と言ってもウマ娘の指導を禁止されただけということもあり、東条隼瀬は謹慎期間を有益に過ごしていた。

 つまり前途有望なトレーナーとウマ娘の未来をより良いものとするために、そしてトゥインクル・シリーズにおける名家の付き合いに有用な前例を敷くために働いていたのである。

 

「こちらとしても医療のノウハウを共有することに否やはありません」

 

 メジロの医師団は、有能揃いである。

 ステイヤーというのは、長い距離を走るだけに負荷も多く、したがって怪我も多い。

 その怪我に対処し、そして昨年はメジロマックイーンの繫靭帯炎を寛解にまで持っていった。

 

 そして屈腱炎にしても、メジロライアンやメジロアルダンといった面子に対して復帰にまでこぎつけた実績がある。

 

 故に、ビワハヤヒデやウイニングチケット、ナリタタイシン。彼女らの治療にメジロ家の医師団の助力を得たいと、そう請うた。

 

 ウマ娘の医療技術とは、経験の蓄積である。トレーニングメニューの組み方やレースの使い方、領域と同じく相伝的な側面が強く、やすやすと開示できるものではない。

 それだけに、この申し出があっさり承諾されることは意外だった。

 

「よろしいのですか?」

 

「無論です。私とて嘗てはトゥインクル・シリーズに参加した身。怪我によって道が絶たれる辛さはわかります。ですが、そう簡単に秘伝を明かすわけには行きません。貴門の出の貴方なら……いえ、貴方だからこそわからないかもしれませんが」

 

 東条隼瀬は、秘伝をばら撒いてきた男である。

 シンボリ家伝来の物はともかく、東条家伝来の物や自分が編み出したものを秘匿したことは一度たりともない。

 

「名門というのは、風通しの悪いものです。そのことはわかっております」

 

「そうですか。私は貴方がそのことを知らないと誤解していました。申し訳ありませんね」

 

 無論、言うまでもなくこれは皮肉である。

 知っていて無視するのがこの男だということを、このメジロの総帥は知っていた。

 

「……私は老境も老境です。そう長くはありません。今のうちに閉鎖的なメジロ家の家風を切り開いておきたい」

 

 メジロ家は、天皇賞を制覇する為にある。

 嘗ての長距離全盛の世で、メジロ家は天皇賞の為に存在していた。そしてそれは今も変わらない。むしろメジロマックイーンなどが居る今が全盛期とすら言える。

 

 だが全盛期のあとが衰えるばかりであることを、この老人は知っていた。

 だからこそ、メジロ家の舵取りをここらで緩やかに転換していく必要があることも、彼女は知っていた。

 

「後に続く、ライアンのためにも」

 

「メジロ家の天皇賞路線を保持しつつ、クラシックディスタンス軸にしようと言っておられるとか。正しい見識であると考えます」

 

「……さすがに、耳が早いですね。名家の中でも切っての国際派だけはある」

 

 メジロライアンはその意志を公言したことはない。個人的に相談しに来たことはあったが、公には今でもメジロは【天皇賞のメジロ】である。

 

 それを掴むとはさすがの情報網だと、総帥は表情を変えないまでも感嘆した。

 かつて国際派の双璧であったメジロ家とシンボリ家。今となってはメジロ家は国際派とは言えなくなり、そして時代の流れにも疎くなった。

 

(その疎くなった結果が、この情報網の正確さと機敏さの差として出ている、ということですか)

 

 疎くなったことで、結果は出た。天皇賞といえばメジロ家であると言われるまでになった。

 

(しかし、この差は大きい)

 

 そう思った総帥であるが、これは実のところ東条隼瀬個人の才覚から生まれ、これまた個人の才覚で運営しているものに過ぎない。

 

 ルドルフは、正しい情報があれば正しい判断を下してくれるだろう。

 そういう思いのもとに生まれた情報網が数年やそこらで作り上げられる程度のものなのだとは、彼女は思わなかったのだ。

 

 現にライアンのクラシックディスタンス志向を伝える情報は、玉石の中にあった。

 障害レースだけでなく短距離へ翼を広げようとしているとか、マイル路線のために政略結婚を企てているだとか、天皇賞を捨てることはありえないだとか。

 

 そんな中から一々裏を取って照らし合わせた結果が、【本家のホープであるメジロライアンはクラシックディスタンスへの傾斜を強めようとしている】というものだったのである。

 

(何世代かかけて、追いつくしかありませんね)

 

 総帥としては、そう思っている。

 しかし彼の情報網は東条家のものでもシンボリ家のものでもなく、傑出した個人を補佐する為に作られたという、ただそれだけのものだった。

 

 だから思っているよりも溝は小さい。思っているよりも深いかも知れないが。

 

「国際派どうこうは置くにしても、大丈夫なのですか? 他者との協調路線はメジロ家の総意ではないでしょう」

 

 この男は、どこまで知っているのか。

 そう問えば半ばハッタリで、『すべてを』という言葉が返ってきたであろう。

 

「彼らが棺桶に文句を垂れても何にもなりませんよ」

 

「彼女らも、でしょう。むしろ栄光を築いてきた者たちの方が誇りは強く、そして固い」

 

「ええ。ですから、貴方に手を貸すのです」

 

 嘗て共に栄光を築いてきた者たちと、反目しつつある。

 そのあたりも知られていることを察して、総帥はあっさりと事実を認めた。

 

「前例を作るということですか」

 

「それだけではありません。貴方に貸しを作っておくことは、後のメジロ家にとって大きな意味を持ってくる。そういうことです」

 

「ご期待に添えますかどうかはわかりませんが、求められれば最善は尽くしましょう」

 

「それで構いません。私は未来を見れませんが、私ではない誰かが未来を見て、そこに貴方を巻き込むことでしょう」

 

 派遣する医師団を決め、日程を定め、礼と共に深々と一礼して去っていく。

 そんな男の背を見送って、総帥は後ろに隠れたウマ娘に声をかけた。

 

「ライアン。そういうことです」

 

「お祖母様……」

 

「心配はいりません。あの男は騙しもしますしハッタリも効かせます。言っていることは真実でも、その裏に蛇を潜ませることもあるでしょう。しかし、約束を破ることはできません」

 

 なにせ、取るに足らなかったはずの寒門のウマ娘との約束すら守ってのけたのだから。

 

(どのみち、断るという選択肢はなかった)

 

 断るとシンボリ家とナリタ家を消極的にせよ積極的にせよ、敵に回すことになる。

 そうなるといよいよメジロ家は時代に取り残されることになるし、追いつけなくなるだろう。

 

 はいかYESしかない理不尽な二択を突きつけられ、そして総帥は可能な限りの最善を尽くした。

 この会談はつまり、そういう意味を持っていた。

 

「ライアン。あの二人がいる限り、シンボリ家がどうにかなることはあり得ません。依存しない程度に指針として利用することです。

連衡は構いませんが、一心同体になってはいけません。貴方のトレーナーにも、そう言っておくように」

 

「はい。ですが、こうも簡単に約束を取り付けられるというのは……意外でした」

 

 もっと曲者かと思っていました。

 そう言わんばかりのライアンの顔を見てクスリと微笑み、メジロ家の総帥は彼女の肩書らしからぬ気軽さで口を開いた。

 

「あの男は、賢い。過去も広く知っていますし、未来も遠く見れる。今のこともよくわかっているでしょう。ですが気質が直情的で善良なので、交渉的に自ら追い詰めた相手であっても窮鳥のごとく頼まれれば断り切れない。そういうことです」

 

 あの二人。

 その片割れは、メジロ家の門の前に車を走らせた。

 そしてベストなタイミングで、門から見慣れた芦毛が出てくる。

 

「やあ、頑張るね」

 

「ああ。俺とお前の志のためでもあるからな」

 

 なんの驚きも躊躇いもなく助手席に座り、ちらりと車の内装を見る。

 シンボリルドルフはいつものように、東条隼瀬の車を運転してきたわけではなかった。これは立派な新車であり、彼女自身の持ち車である。

 

「メジロ家はどうだった?」

 

「大変そうだったよ。その点こちらは楽でいい。なにせ皇帝専制だから」

 

 それは皇帝を眼の前にして言うことなのか。

 それはともかく、シンボリルドルフはちょっと胸を張って新車を発進させた。

 

「一強すぎるのも考えものだが、権限を分散し過ぎるのもよろしくない。とはいえ私の後継者は家内にはいないだろうし、そこそこに分散するべきかな」

 

 シンボリの家は、傑出した個人に名家としてのリソースを注ぎ込んで指導体制を敷く。

 つまり個人の資質を見極め損ねると割と大惨事になりかねないわけだが、少なくとも今のところはうまくいっていた。

 

「というかお前、運転手なんかしないで休んだらどうだ。30歳で死ぬぞ」

 

「いや、私は85歳まで生きることになっている。君こそ身体が強くないのだし、しまいには早死にするぞ」

 

「俺はこれまで何回も病気で死にかけている。だから死は隣人のようなもんさ」

 

 それにしても、と。

 いつもの如く軽口を叩きあって、東条隼瀬は車の内装を見回した。

 

「お前、新しく買ったのか」

 

「ああ。名前も付けてある」

 

「聴こうか」

 

「パーソロンだ」

 

 なんでそうしたかはわからないが、何となくしっくりくる名前である。ついでに言えば語呂がよくかっこいい。

 

「普通にかっこよくてびっくりした」

 

「君のはなんと言うか……乗り物につけていい名前ではないからな」

 

「言っておくが、俺がつけたんじゃないぞ。父がつけたんだ」

 

 

 さて、そんな会話のあった3日後。

 

 

 その日に行われるレースは無数にあるが、やはり注目されるのはクラシック三冠レース最終戦、菊花賞。

 紙面やテレビニュースなどはナリタブライアンの三冠成るかということばかり報じているあたり、トゥインクル・シリーズというものが如何に日本の中で熱狂的な人気を持つものであるかわかるだろう。

 

 しかしURA運営としては、なるべくナリタブライアンの勝利を前提として喧伝するような報道を避けた。

 レースに勝つ前から銅像を建てたり、運営組織自らが勝利を予想するような真似をするあざといやり口は一部から批判を被り、なによりもひたむきに努力していた現場のトレーナーやウマ娘に不本意な毀誉褒貶を与えかねないことを知っていたのである。

 

 だがそれでも、菊花賞を勝つのはナリタブライアンだと思っているものは大半であった。

 

 誰が、どのように勝つか。

 

 皐月賞前まではそう思っていた世論はダービー前には『ナリタブライアンに如何に喰らいつけるか』に変わり、そして宝塚記念前には『ブライアンがどのように勝つか』というところへと変化した。

 

 そしてクラシック級の身の上にしてシニア級最強クラスのウマ娘であるビワハヤヒデを粉砕してのけた今となっては『ブライアンが何バ身つけるか』というところにばかり注目が集まっている。

 

 これは本来は群雄割拠的な側面を持つトゥインクル・シリーズ本来の楽しみからは外れている。

 しかし観客はいつだって、群雄割拠の果てに生まれ出るであろう時代を支配する絶対的な強者の誕生を心待ちにする物なのだ。

 

「お」

 

「なんだ」

 

「いや、めずらしく」

 

 他のサブトレーナーの言うことを聴いて、感心にもメニュー通りにこなしていたらしい。

 観察による身体的なバランスの確認。そして、触診による筋肉の柔軟性と付き方の確認。

 

 それを経て、東条隼瀬はナリタブライアンが精神的に変質したことを悟った。

 

「素直になったじゃないか」

 

「アンタが居ない間は、我儘も無茶もせん」

 

「反抗期の娘のようなことを言う」

 

 と言いつつ、彼は自分が甘えられているのを察知していた。

 まあこいつならいいや、という感じの甘え。それは言い方を変えれば信頼でもある。

 

「で、反抗期ガール。なにか言いたいことがあるのか」

 

 黒鹿毛の尻尾が、立ったままに揺れている。警戒しているときの猫のような尻尾の動きになんとなく疑問の気配を感じた彼の、その感覚は正しかった。

 

「姉貴たちが、メジロの医師団と共にフランスに渡った。心当たりはあるか」

 

「あると思うか?」

 

「だから訊いている」

 

 どうしたものかな、と。東条隼瀬は思った。

 これを言うべきか、あるいは言わないべきか。

 

「ある」

 

「……だろうな」

 

 だがお前、言いふらすなよ。

 普通ならそういうことを言うところ、彼は特段言う必要を感じなかった。

 

 そんなことはせん。

 

 そういう答えが返ってくることはわかりきっていたからである。

 

「安心したか、ブライアン」

 

「とっくに、アンタに背中は預けている」

 

 それに、と。

 

 やや屈折した精神の中に確かに宿る純粋な姉への愛を感じさせる言葉を、ナリタブライアンは続けた。

 

「姉貴はレースの中で怪我をした。全力を尽くした最中でだ。例え引退することになっても、死闘の果てならば本望だろう。本来なら、そこにどうこうと口を挟む必要はない。

だが必ず、姉貴は出てくる。いつのかは知らないが、有馬記念に出てくる。約束を果たしに、そして私に勝つ為に」

 

 あまりにも純粋な姉への信頼。

 必ず来る。復活する。自分を倒す為に。脚が折れようと、不治であろうと。

 

 姉のすべてを懸けて向かってくるだけの、すべてを擲つ躊躇いもないほどの価値が自分にあると、ナリタブライアンは信じていた。

 

「戦士だな、お前。ついでに言えば、不器用なやつだ」

 

「アンタに言われたくはない」

 

 一瞬の、沈黙。

 謹慎明け、一瞬すらも無駄にしたくないはずの男が、本当に一瞬だけ黙り込んだ。

 

 不器用なやつだということは、自覚というものがあるらしい。

 故に、だろう。

 

「……作戦を説明する」

 

 やや憮然としながら、東条隼瀬はホログラムディスプレイを起動した。




33人の兄貴たち、感想ありがとナス!

メスガキだいすきの会兄貴、人権派格闘漫画の金字塔兄貴、はぐれメタボ兄貴、いちごチーズ計器兄貴、恋し石兄貴、評価ありがとナス!

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アフターストーリー:無敵

作中の時間経過はRTAの設定的にアニメに準じてます。
故にスズカ世代→黄金世代→テイオー世代って感じです。なのでオペラオーはデビュー前です。

※間違った誤字報告が多発したので解説しますと、本文中の『ミスターシービーすれば』はマティリアルと言う馬がスプリングステークスで最後方から差し切り勝ちしたときの鞍上岡部幸雄のコメント『ミスターシービーしちゃった(直線一気に追込んで勝つことの意味)』をもじったものであり、誤字ではありません。


 ファンファーレが、京都レース場に響き渡る。

 空には雨雲。湿気が多いからなのか、音が微妙に揺れていた。

 

「雨か」

 

 鼻に落ちた、水滴。軽く首を振って空を見て、黒鹿毛の怪物はつぶやいた。

 

 パドックでのアピールを終えてファンファーレが鳴れば、ウマ娘たちは次々にゲートに収まっていく。

 ナリタブライアンは、3枠4番。東条隼瀬が注目するスターマンは1枠1番。

 

 全員が収まるまで、内枠に近いウマ娘たちは狭いゲート中での待機を強いられる。中には閉所恐怖症ぎみなウマ娘もいるが、ブライアンに関してはそういうこともなく落ち着いていた。

 

『さあ、全員がゲートに収まりました。ナリタブライアンの三冠が成るかどうか。もしくは、目下絶好調4連勝のスターマンが連勝を伸ばすかどうか』

 

 最後の1人、外枠のゴートゥーゼットがすんなりと収まる。クラシック級だろうがシニア級だろうがゲート入りを拒んだり怯んだりするウマ娘がいるものだが、このレースに関してはいやに大人しかった。

 気性が素直なウマ娘が多いのか、あるいはナリタブライアンの醸し出す雰囲気に呑まれているのか。

 

『さあ、クラシックロードの終着点、菊花賞。世代の中で、最も強いウマ娘は誰かを決めるレースが――――』

 

 ガタンと、ゲートが開いた。

 その瞬間。いの一番に、ひとりのウマ娘が飛び出した。

 

 黒鹿毛。しかし、ナリタブライアンではない。

 

『――――今、はじまりました! いいスタートを切ったのはスティールキャスト! たった1人でレースを牽引していきます! 最後尾にはポツンと1人ナリタブライアン。自らの影を引き連れてバ群に続きます』

 

 先頭は黒鹿毛。

 最後尾も黒鹿毛。

 

 オセロであればたぶん中段のウマ娘の尽くが黒鹿毛になりそうな展開で、菊花賞ははじまった。

 

(単逃げは恐れるに足らん)

 

 逃げウマ娘は、多ければ多いほど良くないというわけではない。ただ、単騎ではその本領が発揮できない。

 ウマ娘の根源、闘争心。逃げウマ娘と逃げウマ娘同士が競り合い、闘争心が喚起されあってこそ本当の強さが発揮される。

 

 東条隼瀬は、基本的に古い感性を持っている。クラシックディスタンス至高主義であるし、先行・差しといった王道の戦法を得意とする。

 だが実績を見ると確実に、逃げを育成することにかけては当代随一だった。

 

 その男が脅威がないと言っているなら、そうなのだろう。

 そういう眼で、ブライアンは黒鹿毛の逃げウマ娘を見ていた。どことなく、ミホノブルボンに近い匂いを感じるウマ娘を。

 

(親戚? いや、どうでもいいか)

 

 意識外に置き、そして最内枠を運で勝ち取ったウマ娘へと視線を移す。

 1枠1番スターマン。運もある。調子もいい。

 

(負ける可能性があるならばと、アイツが言うのもわかる)

 

 だが、その対策も立ててある。アイツが。

 脚を早めつつ、ナリタブライアンは向こう正面、正面スタンド前を通過した。これまで声を潜めていた観客から放たれた大歓声が横殴りに浴びせられ、外を走っていた身体が内に揺れる。

 

(そんなに急かさなくとも勝ってやる)

 

 ゆっくりと、ゆっくりと。

 徐々に加速していき、そして中段に追いつく。それが、中盤までのレース運び。

 

 迫ってくる怪物の足音に気づいたのか、群れを為す中段がゆっくりと撓んでいく。

 

 包囲。

 ほぼすべてのウマ娘が、そうすることを考えていた。現実的にそうする他に勝ち目がなかったのである。

 

 クラシック級に進んだナリタブライアンが最も苦戦したのは、宝塚記念のとき。姉貴ビワハヤヒデがその広い視野と傑出した頭脳で包囲を完成させ、そして最後の最後には突破された。

 

 しかし突破されたと言っても、それは自ら進路を開けてしまったからだ。

 

 内か、外か。

 ナリタブライアンの進路は2つ。その2つを塞ぎにいって、そして中央を突破された。それだけのこと。

 

 だから、各陣営は対策をする。

 他の陣営も同レベルの思考を持っていることを信じて。

 

 しかしこれにも、穴があった。

 つまり、終始後方に位置取られたり終始大外を走られたりすると包囲し損ねた挙げ句に差し切られてしまう。

 

 それはかなり大きな欠陥であった。つまり、なんの駆け引きもなんの勝算もなく、【ナリタブライアンが前に進出して来ること】を願わなければならないのである。

 だが他陣営には、ここまで詰みかけている状態にも拘わらずそれなりの勝算があった。つまり、菊花賞とは長距離レースなのである。

 

 

 ナリタブライアンの末脚は、常軌を逸している。

 ステイヤーとはもっとこう、脚がズブい。彼女にはそれがない。鋭過ぎる。

 

 ナリタブライアンは、マイルでメイクデビューを飾った。

 そしてホープフルステークスではなく朝日杯FSをジュニア級最後のレースに選んだ。

 

 本質的には、マイラー。あるいはクラシックディスタンスあたりが適性。

 担当トレーナーが東条隼瀬に替わったのは、距離を延長させたいから。つまり菊花賞では、あまりにも外を回り過ぎるとスタミナが尽きる。

 

 つまり、好位を狙って前目に付けなければならない。

 その考えは、まったく正当なものだった。ナリタブライアンの実力が最も出る距離が3000メートルである、ということを除けば。

 

 だから、東条隼瀬は言った。

 

 ――――正直、無視して外を回れば勝てる

 

 ホログラムディスプレイによる精緻なレース予測を再生し終えて、そう言った。

 

 こいつ、また変なのを作ったな。

 ブライアンは走る前にそんな謎の技術力に感心したものだが、今感心するのはそれにではない。

 

(見た通りのレースだ)

 

 予想、予測。

 そういった言葉で表せるのか、どうか。それすらわからない精緻な予知。

 

 それはナリタブライアンという傑出した実力を持つウマ娘が手札を開示することによって相手の選択肢を狭めていったからこそであるわけだが、狭める為に利用され尽くした当人は素直に感心し尊敬した。

 

 ――――見たか。お前が外を回ると、こうなる。回らない場合は、こうなる

 

 なった。となると、これからもなる。

 

 そうしてナリタブライアンは、重層的な罠の中に飛び込んだ。

 つまり、バ群の中に突っ込んだのである。

 

 

 ――――俺は来年、お前と日本で取れるGⅠを全て取る。だから、普通に勝つのではない何かがいる

 

 

 そんなことをしたやつは、いない。1年でできるものではない。だが、アンタはできるという。

 

 ああ、そうか。なら従ってやる。アンタが信じた以上の力を見せてやる。

 そんな獰猛な心で、罠を噛みちぎる気で、ナリタブライアンは罠の中に突っ込んだのである。

 

 その何かとはつまり、どんな状況でも勝てるところを見せること。

 確かにこのレースは包囲を回避すれば勝てる。ミスターシービーすれば――――後ろから豪脚爆発させて追い込めば勝てる。

 だがそうなると、ナリタブライアンの唯一の弱みが包囲されることであるとわかってしまう。

 

 それにいずれ、前目に付けなければならない時が来るのだ。となると、包囲は避けられない。

 一瞬一瞬が命取りになる互角の相手と戦うその時までに、包囲策を取ろうとする思考自体を、脳自体を潰しておく必要がある。

 

 鮮烈に黒く輝く雷霆のような、中央突破で。

 そしてそれができるのが、菊花賞。即ち、今だった。

 

 何故ならば、このレースは誰もが見ているから。6代目の三冠ウマ娘を決めるこのレースは、きっと誰もが見るはずだから。

 

(VIP待遇だな)

 

 周りに広がる、ウマ娘の輪。

 普通の有力ウマ娘であれは青ざめそうな程に進路を塞がれている光景を見て、ナリタブライアンは不敵に笑った。

 最内に近い、隣。腕を横に伸ばせば届くほどの距離に、スターマンがいる。

 

 才能を爆発寸前にした、常に110%の力を出しているであろうウマ娘。

 彼女は領域に届くのか、否か。それはわからないが、少なくとも東条隼瀬は届くとは思っていない。

 

 空よろしく暗雲が立ち込めてきたレース模様を見て、実況は状況を手早く纏めて解説に話を振った。

 

『ぐんぐんと逃げていくスティールキャスト! 後続との差は20バ身ほどあるでしょうか! ナリタブライアンはバ群の中。これはどう見えますか?』

 

『隼瀬の考えてることなんて僕にわかるわけないでしょ。これまで考えないで生きてきたんだから』

 

 ええ……貴方の息子でしょう。

 そんな声が漏れ出そうになってもなんとか締めたのは、流石主要レースをほとんど実況しているだけはある。

 しかしそんな彼女の若干呆れたような頬を張るように、久々に解説席に呼ばれた男は言葉を続けた。

 

『ただまあ、似てるなぁとは思うよね』

 

『と言いますと?』

 

『いや、僕に。やっぱ……血かな。血は水よりも濃いって言うし』

 

『つまり……中央突破ですか』

 

『たぶん!』

 

 そんなに自信満々に自信なさそうな答えを言われても困る。

 そんなふうに思う実況だが、実際そうするしかない状況であるのもまた、確かだった。

 

『確かに前走の宝塚記念では見事な中央突破を見せました。しかし今回はどうでしょう。同じことを再現できるものでしょうか?』

 

『できないだろうねぇ……』

 

 じゃあ無理じゃん。

 そう思う状況であったが、隣に座る解説者の顔には余裕がある。

 

 天才。

 そう呼ばれた者だけに見れるものが、あるのか。

 

『でも別に、方法が違っても結果が同じであればいいわけだから』

 

 そう言った言葉の真意はおそらく、訊いても答えてはくれないだろう。

 なるほど、と。1つ相槌を打って、彼女は目まぐるしく変わるレース展開に目を落とした。

 

 その展開を言語化するのが、彼女の仕事だったからである。

 

 現在の状況は、変わりつつある。というかこれだけ話しておいて状況が変わらないほど膠着したレースというのは存在しない。

 だがそれは、物理的に俯瞰で見れる解説席なればこその話。

 

 誰かが抜き、抜き返し。

 本来はそう言ったことなど、実際走っているウマ娘たちからすれば些細なことでしかない。

 

 中盤を越えて順位が変動するというのはさほど珍しいことでもない。だがこの場合、逃げているスティールキャスト以外がこの些細な変動に一喜一憂していた。

 包囲する。それはつまり、いつかは包囲を解くということである。包囲を解いた瞬間、いかにうまく抜け出すか。それがレースの勝敗を決める。

 

 合議して包囲することを決めた訳ではない以上、どこで包囲を解くかも決めていない。故に一々気にすることで意識が行き、そして消耗していく。

 

 だがそれにしても、中段を構成するウマ娘たちの疲労は尋常ではない。

 その理由はひとえに、ナリタブライアンとの力の差にある。側で走れば走るほどに、彼我の能力の差がわかる。

 

 気を抜けば一瞬で食いちぎられる、と。

 

(そろそろだな)

 

 包囲している側より強く包囲されている側、ナリタブライアンは冷静な眼差しで位置取りを見回した。

 

 スターマン。

 

 いくぞ、いくぞ、いくぞ。そんな前へ前へと突き進む、そんな気質が見え隠れしている。

 

 爆発する。覚醒する。予想外の力が発揮される。そんな、寸前。

 

 ――――絶好調とは、なにか。それは精神と肉体が完璧に連動し、連動した肉体を正しく動かすための眼が備わっている。そういう状態だ

 

 スターマンがその寸前にあることを、そしてその対策を、東条隼瀬は知っていた。

 

 

 ――――本家のやり口をパクる

 

 

 白い稲妻、タマモクロス。

 彼女がオグリキャップに対して行った対策のうちの1つ。それを使い方を変えて転用する。

 

 ナリタブライアンは包囲されている。しかし包囲されているとはいえ、動けないわけではない。ただ、抜け出せないだけなのだ。

 

 

 ――――歯車が完璧に噛み合っている。疑いなく、それは長所だ。だが要は、それを裏返してやればいい

 

 

 即ち、歯車を狂わせる。

 では、どう狂わせるか。精神には干渉できない。肉体に干渉すれば反則である。

 

 となると、環境を狂わせる。

 

 ナリタブライアンはこの時、無駄な行動をした。

 自分のすぐ隣、内側を走るスターマン。彼女の視界に自分の影を被せるように急進したのである。

 

 スターマンは、絶好調だった。領域に踏み込めそうで、踏み込めない。その瀬戸際にいた。

 精神が肉体を動かし、肉体が環境に適応している。その環境が、色を変えた。

 

 絶好調だった。なまじ先を読むための感覚が研ぎ澄まされていた。そして、連勝中の彼女はまさしく無敵だった。思い通りにならないことがなかった。

 その無敵感が、ナリタブライアンの放つ威圧感がもたらす精神的消耗から彼女を救っていた。

 

 だがここで、予定外が起きた。起こされた。

 何もかもうまくいっていた。菊花に至るまでの4戦の間、そして今回のレースも含めて5戦。

 

 時間にして実に半年もの間。彼女は予想外とは無縁だった。

 そしてその無縁さが、絶好調だったという事実が、彼女の判断を遅らせた。内ラチによれ、内側の他のウマ娘を前へ押し出す形で隊列を縦長にする。

 

 

 長所が、短所に裏返る。

 無駄な行動がその無駄さ故に、有効な行動へと裏返る。

 

 

 その音を、ナリタブライアンは聴いた。

 眼の前、斜めに伸びる空白の道を見た。

 

 時が止まったような、高速の停滞。自分だけの時間。進むべき道がわかる。事前に見た景色だからか、あるいは自分は新たな領域への道を啓いたのか。

 

 自分だけの時間の中で、ナリタブライアンは突き抜けた。バ群の中、強制的なスローペースで溜められた脚が大きく息を吸い、吐き出す。

 

(予定通りの、最短距離)

 

 ギアを上げつつ外を回るのではなく、脚を溜めつつ内を突く。

 

(最高速度でブッ千切ってやる)

 

 第3コーナー。いつもの彼女からすれば、やや早めの仕掛け。

 

 ――――誰も抜け駆けていないのに、何故空いた!?

 

 驚愕。第3コーナーという、彼女らの仕掛け時の遥か手前に抜け出され、包囲していたウマ娘たちとそのトレーナーらは驚いた。

 

 ブライアンの進むところを、わざわざ開けてやった。そうとしか思えない、卓犖とした指揮。その指示をしたであろう芦毛の男は、ぼんやりと片膝を立てて観客席に座っている。

 

 誰の邪魔をすることもなく、誰もいない空間を走る。

 一瞬で、置いていく。置いていかれる。そして、ナリタブライアンの影がスティールキャストを捉え、引きずり落として更に加速する。

 

『ナリタブライアン1番内! ナリタブライアン1番内!』

 

 するりと、影も無く。

 なんの予兆もなく抜け出して、そして圧倒的な存在感で駆けていく。

 

 第4コーナーから直線にかけて突き放し、突き放し、突き放す。

 

『妹は大丈夫だ! 妹は大丈夫だ! 妹は大丈夫! これが6代目の三冠! ナリタブライアン! これは楽勝だ! 強い強い強い!!』

 

 スタートしたばかりの逃げのような、大きな大きなリード。

 ブライアンのその影だけがゴール板の前を通過して、そしてその後に続く者は無し。

 

『更に更に加速して大差勝ち! 先代のレコードを更新しての圧勝です!』

 

 ――――妹は大丈夫だ!

 

 その後も改めて2度繰り返されたその言葉こそが、トゥインクル・シリーズファンの安堵だった。




33人の兄貴たち、感想ありがとナス!

◇空◇兄貴、daisann兄貴、レミュオール兄貴、shirakami_rei兄貴、唐野葉子兄貴、ジェラルド兄貴、Bily兄貴、エイバン兄貴、評価ありがとナス!

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アフターストーリー:破戒

友人枠として出てきてスピード上限値を上げ、ついでに相手の固有スキルを封印する金特ばらまいて去っていく男


 菊花賞って、こんなに簡単に勝てるのか。

 東条隼瀬は、そんなことを思った。いや、思い出した。

 

 彼が経験した菊花賞は3回。シンボリルドルフ、ミホノブルボン、そして今回、ナリタブライアン。

 いずれも勝っているし、いずれも三冠ウマ娘となっている。

 

 ルドルフは、楽勝だった。ドスローだったが、なんとかなった。

 ブルボンは、苦しかった。切れる手札をほとんど切ってなんとかした。

 だが今回は、なんの制約もなかった。切った手札より、持ったままの手札の方が多い。

 

「おい、勝ったぞ」

 

 めずらしく。

 そう。本当にめずらしく、東条隼瀬は最前列に近い――――所謂トレーナー席に座って観戦していた。

 いつも高みから見下ろすように深い位置にある座席に座っていることが多いのだが、今回はたまたまいい席が取れたのである。

 

 だからこうして、ナリタブライアンが話しかけに来られる。

 大歓声とブライアンコールをものともせず、そして愛想よく手を振るようなこともせず。柵の向こうの程近くに黄金の瞳があるのを見て、少しだけ彼は驚いた。

 

「どうだった」

 

「レコードが出るとは思わなかった」

 

 ちらりと、掲示板を見る。

 1着から5着までの番号と着差が表示されているその下にある数字。その上に踊る、レコードの赤文字。

 

「別に不思議ではないだろう」

 

 スティールキャストは、物凄い速度で逃げていた。他の逃げウマ娘と叩きあって闘争心を喚起し合えれば逃げ切れていたのではないか、と思う程に。

 そのスティールキャストに吊り上げられるかたちで、あるいは包囲しているはずのナリタブライアンの威圧感に圧される形で中段の集団もそれなりの速度で走っていた。

 

 少なくとも、東条隼瀬にはそう見えた。

 

「逃げも含めて、スッとろかっただろ。第3コーナーまで」

 

「いや、そんなことはないはずだ」

 

「……そうか? 妙に遅く思えたが」

 

 二人は同時にブルボンがいればな、と思った。死ぬほど正確な体内時計を持っているミホノブルボンであれば、疑いの余地のないほど精密な時計を出してくれるはずなのだ。

 

「逃げの子のタイムは感覚で計っていたが、上がり3ハロンに関しては34秒台だった。つまり、ブルボンの菊花賞のそれと遜色ない。最後に失速したが、現に中盤までに19.6バ身くらい開いていただろ。その後縮めていったが」

 

「…………縮めていたのか。広げられているのかと思っていた」

 

 遅い。

 このレースはバカらしいほどに極端なスローペースだと、ナリタブライアンは思っていた。

 

 そして逃げも大したことないと、そう思っていた。一足飛びに追いつける、その程度の位置にいると。

 

「考えられる可能性はいくつかある。宝塚記念でのお前は濃密な時間を過ごした。だから、レース中の空白を長く感じた」

 

「それは、あるかもしれん」

 

「あるいは、俺が見せた再現映像。それとほぼ同一にレースが推移したから、再放送を見ているような気になって感覚がズレた」

 

「それもあるかもしれん」

 

 そしてそれらが重なり、なにかに目覚めたということもあるかもしれない。

 第3コーナーからはまさに、箍が外れたような走りだったのだから。

 

 領域。過集中状態に陥ることで、実力以上の力を解き放つウマ娘にとっての奥義と呼ばれているもの。

 

 ブルボンが領域に目覚めたときにシンボリルドルフの領域に招き入れられてから、なんとなくその片鱗は感じられるようになっていた。

 

 だから、わかる。今回ブライアンの構築した領域は、たどり着いた境地は、これまで見せた2つのどれでもないものだと。

 

(あるいは非凡過ぎる学習能力が悪さしたとか、そういうことなのか)

 

 繰り返し大外ブン回しをさせていると、ブライアンは外専用の領域を覚えた。

 内をブチ抜く戦法を取らせると、次戦では内を突く領域を覚えた。

 そしてバ群を突破させる戦法を繰り返した今、それに適した領域に目覚めつつある。

 

(そういうこと、か……?)

 

 それにしてもクラシック級で領域を3つと言うのは、少し聴いたことがない。

 引退したウマ娘は割と赤裸々にそういった奥義――――と、彼女らは思っているもの――――について語ってくれる。そこに多少の誇張はあっても虚構はないはずであり、そんな誇張の話の中でもクラシック級で領域を3個持っていたという例はなかった。

 

 最大でも2つで、それも苦戦の果てに追い詰められて手に入れたもの。

 

 ひとつめは、絶好調時に。

 ふたつめは、苦戦の時に。

 体験談の中でも、これらは共通していた。

 

 ブライアンは、苦戦らしい苦戦をしていない。まあ強いて言うなら宝塚記念だが、明らかに楽勝が多い。

 それで、3つ目。ビワハヤヒデが手に入れられそうで、手に入れられなかった3つ目の領域。今、それを掴み取った。

 

「どうした?」

 

 それをいとも容易く手に入れるこの怪物の底は、未だ知れない。

 早熟の代名詞である朝日杯FSを取りジュニア王者に輝き、クラシック三冠を取りながらも、未完の大器。

 

「いや。ともあれ、戻ってこい。俺も戻る」

 

「アンタより私の方が戻るのが早かったらステーキを食わせろ」

 

「走らずに戻ってきたら奢ってやるよ」

 

 東条隼瀬は、ブライアンが身体が出来上がる前に全力を出そうとしても出せないように調子という名のリミッターをかけていた。

 

 菊花賞にピークになるようにしたというアレである。

 だがそれはビワハヤヒデとの対戦を望んだが故の宝塚記念出走で崩された。

 

 故に彼は急ピッチで調子を上げた疲労を慮って夏を休養に当て、有馬記念がピークになるようにしたのである。

 だが、その調子による強制的な枷をナリタブライアンは明らかに食い破っていた。想定以上の力を見せた。

 

 となると喜ぶより先に、心配が出てくる。ウマ娘というのは痩せ我慢の種族なのだ。

 

「3枚だぞ」

 

「わかったわかった」

 

「5枚だぞ」

 

「わかったわかった」

 

「7枚だぞ」

 

「だめ」

 

 子供が小遣いをねだってきたのを突っぱねる親のようなガンとした態度で却下し、東条隼瀬は自然に観客が作ってくれた人混みの中の通路を通って帰還した。

 無論お礼を言ったり、全体に向けて一礼してから帰還しただけに帰ってくるのはブライアンより遅い。

 

 その遅さに飽きていたのか、扉を開けたその瞬間にブライアンは三冠への感慨をぶち壊すような言葉を放ってきた。

 

「おい。GⅠを勝った数だけ肉を1枚食べられるというのはどうだ。つまり今回は5枚でいい。だが次回は6枚になる」

 

「だめ」

 

「なんでだ。モチベーションも上がるいい提案だろう」

 

「近い未来にGⅠ勝つ度に2桁食っている姿が見える。栄養バランスが崩れるから、不可」

 

 不満そうな眼とは裏腹に、嬉しそうに黒鹿毛の尻尾が揺れる。

 そんなふうにずっとブンブン揺れていた尻尾が収まった頃、触診が終わった。

 

「どうだ」

 

「思ったより遥かに疲労していない。少し脚を冷やしたらインタビューに移ってもいいだろう」

 

 筋肉が柔らかいからか使い方がいいのかは知らんが、疲労が分散されている。

 相変わらず蹄鉄は凄まじいすり減り方を見せている。脚の消耗もバカにならないだろうと思うくらいに。

 だが、そうでもない。そのあたりに天才の天才たる所以というか、自分の身体を最大限効率よく活かせる才能の片鱗が感じられた。

 

 ウマ娘の勝利インタビューは、レースとウイニングランを終えればそのまま行われることもある。

 しかし東条隼瀬に限っては必ず脚の調子を確かめてから改めて、即ち一拍を置いてインタビューが行われる。

 

 これはその間にインタビューの内容を整えられるという利点もあるが、観客の熱が冷めるかもしれないという欠点がある。

 しかし、彼と彼のウマ娘のレースには劇的なものが多い。口々に今見たレースについて感想を言い合ったりして、この欠点は実質無いようなものだった。

 

「では、見事6人目の三冠ウマ娘に輝きました! ナリタブライアン選手です!」

 

 間を空けてからのインタビューとは思えない程に熱のある大歓声が場を包み、ブライアンの黒鹿毛の耳がパタンと閉じる。

 

「今回、三冠のかかったレースでした。スタート時の感触というものはいかがでしたか?」

 

「普通だった」

 

 これは素っ気なくはあるが、事実でもあった。

 逃げウマ娘ならばともかく、ブライアンのような後方待機のウマ娘はよっぽどしくじらない限りスタートの上手い下手は問題にならない。

 

 インタビュアーとしては、正直そこらへんのことは理解していた。

 では理解していたならば、何故訊いたのか。それはナリタブライアンが三冠ウマ娘への最後のレースをどういう心で迎え、どういう心で幕を開けたのか。

 そのあたりを聴きたかったわけだが、ブライアンはそのあたりに疎かった。ついでに言えば、正直なところ菊花賞についての思い入れもない。

 

 東条隼瀬はビワハヤヒデにさも思い入れがあるように言ったが、それは無論嘘だった。ブライアンは強い相手と強いレースをできればいいのである。

 

「な、なるほど。では、東条トレーナー。今回のレースでは後方からの捲りではなく、好位からの抜け出しを図っているように思われました。これはどう言う意図からでしょうか?」

 

「再来年、ブライアンは海外に挑戦することになるでしょう。海外は同じレースに同一チームから本命を含めた複数のウマ娘が出走します。となるとこちらは包囲される可能性が高くなる。そのための対策です」

 

「なるほど。では来年は日本で走る、ということでよろしいでしょうか?」

 

「そう思っていただいて構いません。今年はアオハル杯を含めて2戦、来年は6戦ですね」

 

 まともに答えてくれる相手のありがたさを痛感しながら、インタビュアーは話を向ける先を変えた。

 

「ナリタブライアン選手。見事な包囲突破でしたが、バ群を抜ける前に焦るようなことはありましたか?」

 

「焦ることはなかった。こいつが」

 

 ぐい、と。ブライアンは無造作に隣に立つ芦毛の男を指す。

 

「抜け出すタイミングとか作り方を予め教えてくれていたからな」

 

 焦っては居なかったが、結構暇してはいた。

 そんな態度は隠さなかったものの、信頼は感じ取れるその言葉。

 それに満足して、インタビュアーは質問を続けた。ブライアンのコメントを取るのは難しいだけに、この流れをうまく続けておきたかったのである。

 

「バ群を抜ける際、まるで道が開けたように思われました。狭い道を一瞬で駆け抜けるその姿には慣れのようなものを感じましたが、二度目となるとやはり習熟するものでしょうか?」

 

「習熟したかどうかは、わからん。だが、世界が止まって見えた」

 

 あ、明日の見出しこれにしよう。

 大抵の新聞記者がそう思った。威張るでもなく、強がるでもない。ただ淡々と、事実を述べる。

 ナリタブライアンというウマ娘が虚飾どころか装飾すらも嫌うことを、このインタビュアーは事前に調べて知っていた。

 

 同時に、少し震える。それは自分がインタビューしているこの相手は、歴史に深く蹄跡を残す存在なのだということを、改めて自覚したからかもしれない。

 

「東条トレーナー。よろしければ、バ群の突破法というものをお聞かせ願えますでしょうか?」

 

「スターマンというウマ娘が居たでしょう」

 

 『はい』も『いいえ』もなく語りだす、芦毛の男。

 だがこういったトレーナーに対して手の内を開示するように迫るような質問は、本来はタブーというべきものだった。

 

 トレーナーが答えればそれは自分の奥義や思考の癖をバラすことに繋がり、答えなければ答えないで『勝ったくせに器量が狭い』と批判されてしまう。

 マスコミが特定のトレーナーを潰すためによく使う手であったわけだが、東条隼瀬に関しては答えてくれるから問うている。それだけのことであった。

 

 そんな彼の度を越した寛容さは、いまや他のトレーナーにも無形の圧力となって迫りつつある。そして幾人かはその圧力に耐え切れず自分の思考の癖や戦術を開示している。

 それは他のトレーナーに共有され、研究され、そしていずれより洗練された上質な戦術を生み出すだろう。

 

 そしてついでに言えば、東条隼瀬の戦術決定の資料にもなる。

 公益と私益を同時に満たすあたり、彼はいかにも曲者だった。

 

「はい。目下連勝中だったウマ娘ですね」

 

「彼女は、絶好調でした。絶好調とはつまり、環境、肉体、精神。レースにおいて必要となるこれらの3要素が完璧に噛み合っている、ということになります」

 

「なるほど。絶好調を定義づけするというのは、斬新ですね」

 

 絶好調とは、絶好調である。

 理由はない。調子がいい。最高に近い。それを再現しようとする試みは無論あるし、成功してもいる。

 

 だが具体的に定義づけるのは、如何にも研究者気質の彼らしかった。

 

「そうらしいですね、というのは置いておいて、これを利用しました。つまり、1つ歯車を狂わせる。この場合ズラしたのは環境ですが、そうなると肉体と精神の噛み合いも悪くなる。そうすると、どうなるか」

 

「絶好調状態が強制的に解除される、ということですか」

 

「そうです。スターマンは、擬似的な領域状態にありました。つまり、こちらとしてはその爆発力が怖かったのです。故にこれを、強制解除した。そして思考と環境との噛み合いを失った肉体は、どうなるか。答えは内ラチに突っ込む、ということです」

 

 基本的にウマ娘は、レース中斜行するものである。

 なぜかと言えば、高速で走れば酸素が欠乏し、思考がまとまらないから。そしてその結果、肉体が統制を失う。斜行する。

 

 スターマンは、それになった。精神と環境から切り離された肉体が本能に従った。

 

「となると、どうなるでしょうか。そのまま突っ込まれるような娘はGⅠには出られない。他のウマ娘はスターマンを避けるように動きます。後ろに下がる。あるいは、前に出る。そうすると、ブライアンの前に道は開けると見ました。事実そうなりましたから、運が良かったと思っています」

 

「……運、ですか?」

 

 そうじゃないと思いますが。

 これまでの解説を聴いた誰もが思ったことを、インタビュアーは思った。

 

 包囲されているのである。となると動く位置は限られる。スターマンは最内となる1枠1番であり、その動きは1番読みやすい。

 となると、動きから何から何まで読めていたのではないか。

 

 その推測は、当たっていた。事実彼は読めていたのである。

 それは何よりも、彼が事前にホログラム出力できるように作ったレースの予想映像が証明している。

 

「ええ」

 

「ええと……領域。つまり、ウマ娘の奥義ですよね。それの強制解除というのは、これからもできるものなのでしょうか? 再現性があるならば、何故これまではその手法を使ってみなかったのでしょうか?」

 

「ルドルフはそもそも、発動させないように立ち回れました。彼女は極めて賢く、レース自体を支配することができます。つまり相手の好きなように動かさない。そういった――――」

 

 あ、ルドルフ大好きおじさんが出た。となると死ぬほど長くなるな。

 

 そう思ったインタビュアーは、この発言を強制解除することに決めた。

 

「なるほど! では、サイレンススズカ選手とミホノブルボン選手のお二人のときはどうでしょうか?」

 

「え、はい。逃げウマ娘の2人に関しては、位置が遠すぎて干渉できませんでした。ですがブライアンの場合位置は自在」

 

 ――――98%の確率で領域の強制解除を行えます

 

 そうこともなげに、東条隼瀬は言った。

 

「となると、スペック勝負になる。スペック勝負になると、どうなるか。つまり、こうなる。そういうわけです」

 

 大差。ゴール板付近を映していたカメラからブライアンの尻尾が消えるまで後続が来ない程の大差勝ち。

 それが即ち、スペックの差だった。

 

 そしてそこに、ブライアンの領域も乗る。彼はそんなものをハナから計算に入れていないようではあったが。

 

「いやー、なるほど。それにしてもすごかったよね。僕を超えたんじゃない?」

 

 実に軽薄そうな、そしてなんとなく聴いていて嬉しくなってしまうような独特の律動。

 パンパンと手を叩きながら現れた父に向けて向き直った息子は、インタビューの段から降りて頭を垂れて呟いた。

 

「ご冗談を」

 

「冗談じゃあないさ」

 

 あ、親子だな。

 なんとなく言い回しが似ていて、ナリタブライアンはそう確信した。




52人の兄貴たち、感想ありがとナス!

べべベイベ兄貴、rammer兄貴、びわこおおなまず兄貴、planet兄貴、評価ありがとナス!

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メモリー:2/12/27

https://syosetu.org/novel/259565/61.html
から
https://syosetu.org/novel/259565/67.html
まで


【第二次MT対決】有馬記念実況スレ【ブルボン大外】

1:尻尾上がり名無し ID:CaOjN+QnL

1枠1番ナイスネイチャ

1枠2番ホワイトストーン

2枠3番メジロパーマー

2枠4番リオナタール

3枠5番トウカイテイオー

3枠6番レガシーワールド

4枠7番レッツゴーターキン

4枠8番ダイタクヘリオス

5枠9番オースミロッチ

5枠10番フジヤマケンザン

6枠11番イクノディクタス

6枠12番ムービースター

7枠13番サンエイサンキュー

7枠14番ヒシマサル

8枠15番ヤマニングローバル

8枠16番ミホノブルボン

 

2:尻尾上がり名無し ID:9niVl0h3U

さすがのメンツ

 

3:尻尾上がり名無し ID:Oc0S6y1hk

大外枠の逃げは勝てない。これはテイオーが勝ちますわ

 

4:尻尾上がり名無し ID:CgAIx/ev6

テイオーが勝つときはなにがあっても勝つくらいな圧勝だからブルボンがどこの枠にいようがあんま関係ないだろ

 

5:尻尾上がり名無し ID:mrW8yEKOk

負けるときはド派手に負けるからな

 

6:尻尾上がり名無し ID:nhiBhOrP6

クラシック級の頃の優等生テイオーどこ……? ここ……?

 

7:尻尾上がり名無し ID:SjvPi1cTx

大阪杯 完勝

春天  完敗

秋天  完敗

JC   完敗

有馬←今ここ

 

8:尻尾上がり名無し ID:HLRLF2PZA

コレは勝つやろなぁ

 

9:尻尾上がり名無し ID:NaoQ054Lr

ドブカス共はわからんやろうけど、テイオーはハイペースに弱いから負けるで

 

10:尻尾上がり名無し ID:i8eGWfQRU

うわ出た

 

11:尻尾上がり名無し ID:8GoyDUKfI

今回はやかったな

 

12:尻尾上がり名無し ID:IT/WPGjgg

テイオーってハイペースに弱いのか?

 

13:尻尾上がり名無し ID:NaoQ054Lr

と言うか逃げがハイペースに強いんや

 

14:尻尾上がり名無し ID:P5uA8Fsn7

>>13

はえー、そうなんだ

 

15:尻尾上がり名無し ID:NaoQ054Lr

ついでに言えばテイオーは王道の好位抜出型だから、脚質的には別にハイペースに弱くないはずやで

 

16:尻尾上がり名無し ID:wdARwTh8e

確かにテイオーの初敗戦もパーマーがいたしな

 

17:尻尾上がり名無し ID:eKDrY0izE

でもルドルフに負けたときは普通気味のスローペースだったじゃん

 

18:尻尾上がり名無し ID:NaoQ054Lr

>>17

あれは得意とか不得意とかじゃなく普通に負けただけや

 

19:尻尾上がり名無し ID:eNL4V7yqP

後方待機の差し追込がハイペースについていけずに置いていかれるってのはわかるけど、テイオーは先行型なのになんでハイペースに弱いのか

 

20:尻尾上がり名無し ID:xADQbqDjK

確かにテイオー世代に有力な逃げウマ娘居なかったな

 

21:尻尾上がり名無し ID:w4s5KN0Ou

リンドシェーバーがいたんだけどね

 

22:尻尾上がり名無し ID:5KkRBI0K/

そのリンドシェーバーって娘どんな感じ?

 

23:尻尾上がり名無し ID:G1JyY0LIC

>>22

結構な逃げウマ娘。主な優勝レースは朝日杯FS

 

24:尻尾上がり名無し ID:bYQBoufY1

強いじゃん。なんでクラシック戦線出てこなかったの? マイラーだったから?

 

25:◆ちなスピ ID:WaFPIRqha

弥生賞で骨折して引退

 

26:尻尾上がり名無し ID:tBVUOZhWt

かなC

 

27:尻尾上がり名無し ID:NaoQ054Lr

>>19

テイオーちゃんは本来差し型なんやと思うで

 

28:尻尾上がり名無し ID:kceXBqyxx

じゃあなんで沖野Tは先行させてんの?

 

29:尻尾上がり名無し ID:doJnm78F4

というか関係者ニキが誰かは知らんけど沖野Tより上のトレーナーなんてダブル東条とか奈瀬とかキタハラジョーンズ、あと解説員くらいしかいないのに、批判していいのか?

 

30:尻尾上がり名無し ID:NaoQ054Lr

ウチのジャリガキはスピカの連中を背中からまとめて差せるからええんや

それにテイオーちゃんが後ろから仕掛けたほうがええっていうのは批判やない。後ろからグサグサやってきた経験者から見た忌憚のない意見ってやつや

 

31:尻尾上がり名無し ID:fSkObTw6n

ジャリガキつっよ

 

32:尻尾上がり名無し ID:mrLQ9DCGg

担当ウマ娘を信じるトレーナーの鑑

 

33:尻尾上がり名無し ID:tl8U2/Wwv

実際できるかどうかはともかく自信を持つのはいいことだ

 

34:尻尾上がり名無し ID:NaoQ054Lr

複数のウマ娘を管理する運営能力と怪我の対処では負けるけど実地での指揮では負ける気せーへんわ

 

35:尻尾上がり名無し ID:X66TNspgs

わからされそう

 

36:尻尾上がり名無し ID:8FfewlEt/

解説員と沖野Tって指揮レベルどんなもんなん? ウマスピだと解説員の方が上だけど

 

37:尻尾上がり名無し ID:NaoQ054Lr

隼瀬くんも沖野さんも現場で指揮するタイプやないからわからへんけど、隼瀬くんちゃうんかな

 

38:尻尾上がり名無し ID:MBcIgH7wk

なんでわかりますのん?

 

39:尻尾上がり名無し ID:NaoQ054Lr

>>38

沖野さんはレースでの戦術はウマ娘に任せるタイプやから 隼瀬くんはレース前に作戦考えてそれを実行させるタイプやけど

 

40:尻尾上がり名無し ID:sa+Wg/7dq

解説員未来人説

 

41:尻尾上がり名無し ID:gG7Bf496o

未来人ニキは解説員だった……?

 

42:尻尾上がり名無し ID:KYAVobFkb

というか最近増えてきてるよな、直接指揮するトレーナー。ライスのトレーナーとか

 

43:尻尾上がり名無し ID:pAGMp+/sR

あれよっぽど思考が速くないと脚引っ張るばっかだから、沖野Tとかおハナさんのスタイルが圧倒的に多数派なんだけどね

 

44:尻尾上がり名無し ID:+jk6sabDg

解説員みたいなことしてるやついないの?

 

45:尻尾上がり名無し ID:NaoQ054Lr

いるっちゃいるけどあそこまで当たる人はおらんのちゃう

 

46:尻尾上がり名無し ID:cI+ucJlrC

解説員ウマスピで強いから好き

 

47:尻尾上がり名無し ID:9QkX71hOV

SSR解説員相性値悪いことを除けばクソ強いわ。覚醒ルドルフ持ってる廃課金の味方過ぎる

 

48:尻尾上がり名無し ID:lh9jj8IT9

現実では寒門の味方してるのにゲームでは名門の血統とか才能で殴ってくる解説員好き

 

49:尻尾上がり名無し ID:VSLsO43J6

天井したわ。ルドルフと組むと強すぎる

 

50:尻尾上がり名無し ID:Jv0o53F7u

自分の智力以下の相手に確定でスキル通すやつと自分の智力以下のスキル完封するやつを組ませてはならない

 

51:尻尾上がり名無し ID:UDDDVxYDZ

あれ実際どうやって勝つの?

 

52:尻尾上がり名無し ID:aQqNpVyYi

>>51

オグタマの加速ガチャ、アイネスパーマーの逃げロケットガチャ

 

53:尻尾上がり名無し ID:CQWa5g/W/

>>52

正攻法での勝ち目は……?

 

54:尻尾上がり名無し ID:aQqNpVyYi

>>53

ありません!!

 

55:尻尾上がり名無し ID:b7e5zy0vV

よよよー

 

56:尻尾上がり名無し ID:gXtsjldWz

ヨヨヨー

 

57:尻尾上がり名無し ID:/oXsqu3Ab

よよよー

 

58:尻尾上がり名無し ID:dFgIrF33P

ヨヨヨー

 

59:尻尾上がり名無し ID:vHks2pc5Q

そろそろ皇帝禁止にしてくれないかな

 

60:尻尾上がり名無し ID:avl0v7nSb

まあそろそろレギュレーション改定されるから……

 

61:尻尾上がり名無し ID:zUGKLKb1j

これで相性が悪かったらレースのときにどっちかが仕事サボって、『自分の智力以下の相手に確定でスキル通すだけのやつ』or『自分の智力以下のスキル完封するだけのやつ』になるかもってのがあるのに

 

62:尻尾上がり名無し ID:YMm3fLv4Q

相性◎どころか相性◉だからなぁ……解説員逃げ◉、先行○、他△だから皇帝側が本気出せないけどそれでも普通に強いし

 

63:尻尾上がり名無し ID:dmFFwW7km

あまりにもオンラインでやりたい放題だけど実物もたいていやりたい放題してるから別に贔屓してないのが怖い

 

64:尻尾上がり名無し ID:o1vg+bvZj

本当にそうか?

 

65:尻尾上がり名無し ID:NaoQ054Lr

本物はあんなもんちゃうで

 

66:尻尾上がり名無し ID:zULqxNdcx

トラウマになってて芝

 

67:尻尾上がり名無し ID:23dtWq3aj

前に出没したスレでも怖いとか言ってたし、わからせられたんだろうなぁ……

 

68:尻尾上がり名無し ID:NaoQ054Lr

あの二人は向こう側の人間やからね

 

69:尻尾上がり名無し ID:+riM2r5hY

 

70:尻尾上がり名無し ID:R2a/2eIm8

 

71:尻尾上がり名無し ID:WYN9c+kk6

おっとぉ

 

72:尻尾上がり名無し ID:Nw2tYLkc2

きたきたきた

 

73:尻尾上がり名無し ID:kTEPSqO81

そう言えばこれは実況スレだったわ

 

74:尻尾上がり名無し ID:9o8jv8N4t

ウマスピスレ、終わる

 

75:尻尾上がり名無し ID:srw6B950R

やっぱこれだね(ファンファーレ)

 

76:尻尾上がり名無し ID:lXNf7CsC1

やっぱ有馬記念よ

 

77:尻尾上がり名無し ID:J72yejV0d

今年最後のGⅠの時間だぁぁぁあ!

 

78:尻尾上がり名無し ID:6FQnFYCTq

やっぱり年末最後のGⅠは有馬記念よ

 

79:尻尾上がり名無し ID:qZybsepSJ

>>77

>>78

ホープフルステークス「あ、あの……」

 

80:尻尾上がり名無し ID:hP7myYi8A

みんなの本命誰?

 

81:尻尾上がり名無し ID:8fAbCB/EF

テイオー

 

82:尻尾上がり名無し ID:tVpq178WA

ネイチャ

 

83:尻尾上がり名無し ID:CLxnCUmU0

ブルボン

 

84:尻尾上がり名無し ID:PoGMlCzS5

トウカイテイオー

 

85:尻尾上がり名無し ID:E3V+IboNe

リオナタール

 

86:尻尾上がり名無し ID:4UKRmfe+q

パーマー

 

87:尻尾上がり名無し ID:2oiEH3sVi

っぱメジロよ

 

88:尻尾上がり名無し ID:J0CjyLfnF

ヘリオス

 

89:尻尾上がり名無し ID:WV/UIIgiJ

ブルボンかなぁ、やっぱ

 

90:尻尾上がり名無し ID:aX+cYBWNQ

テイオーでしょ

 

91:尻尾上がり名無し ID:NaoQ054Lr

ブルボンちゃんやね

 

92:尻尾上がり名無し ID:z5ltaiuib

ミホちゃん

 

93:尻尾上がり名無し ID:4b9qy2WEr

ロボ

 

94:尻尾上がり名無し ID:V0Ez9/T8Z

テイオーなんだよなぁ……

 

95:尻尾上がり名無し ID:XYY/AfZkI

ヘリオス民とかいう開幕でレースの結果がわかる民

 

96:尻尾上がり名無し ID:zIRSr4+gb

ヘリオス民はヘリオスが逃げた瞬間ウイニングライブで光のギャルを見ることを諦め、先頭に立つヘリオスを見ることに全てを賭けるという……

 

97:尻尾上がり名無し ID:OU69dNcQA

パーマーしか勝たん!

 

98:尻尾上がり名無し ID:ZdKn6HEAj

マイルのヘリオス……一切の隙のない好位抜出

他のヘリオス……バカ逃げ自爆型

なぜなのか

 

99:尻尾上がり名無し ID:445ona+ST

距離が変わると頭の中身も変わるのかな

 

100:尻尾上がり名無し ID:9JonPVsSb

ヘリオスゲート内でわちゃわちゃしてるから好き

 

101:尻尾上がり名無し ID:ieWUI+9nM

テイオー落ち着いてるな

 

102:尻尾上がり名無し ID:xArw6YY9i

テイオー好き

 

103:尻尾上がり名無し ID:SviO7+EYT

なんだかんだテイオーだよ

 

104:尻尾上がり名無し ID:9yFI11F9G

ネイチャはいつも通りかな

 

105:尻尾上がり名無し ID:EDE98GynP

マチタンおらん……

 

106:尻尾上がり名無し ID:FH4HvHwrC

マチタンは菊花賞でレコード出したから……

 

107:尻尾上がり名無し ID:3WVp7LGkw

レコード出した(勝てたとは言ってない)

 

108:尻尾上がり名無し ID:VroHuUmvY

同世代のウマ娘2人に同日同時刻にレコード叩き出されただけだぞ

 

109:尻尾上がり名無し ID:7yj486BEK

ほんと理不尽だけどこれぞカノープスよ

 

110:尻尾上がり名無し ID:GLvdlS5yi

カノープスファンはGⅠ勝ちたいと思いつつ勝てないことも楽しんでるから業が深すぎる

 

111:尻尾上がり名無し ID:gz2VEfFsx

無敵かな

 

112:尻尾上がり名無し ID:VU6yZ9YTa

テイオー初有馬かぁ……ダービー見てたときは有馬までノンストップだ!と思ってたけど、色々あったな

 

113:尻尾上がり名無し ID:Fvdad+lxU

と言うかヘリオス民はパーマーに加えてブルボンもいると言う開幕から終わったレース見て楽しいのか?

 

114:尻尾上がり名無し ID:0gl7oyxq/

まだ好位抜出してくれるかもしれない

 

115:尻尾上がり名無し ID:R8Zh7Sydw

というかヘリオスが笑いながら走る姿見るだけで楽しい

 

116:尻尾上がり名無し ID:7mKgneSox

それな

 

117:尻尾上がり名無し ID:i/U6cRrj6

それはそう

 

118:尻尾上がり名無し ID:b+nLZMKGl

ほんそれ

 

119:尻尾上がり名無し ID:m8ApPnTZ/

光のギャル好き

 

120:尻尾上がり名無し ID:rflsU0DLe

光のギャルって字面見るたびに思うんだけど、闇のギャルっているのか?

 

121:尻尾上がり名無し ID:FPiwT363h

マジで大外で芝

 

122:尻尾上がり名無し ID:kYe6XsyAH

URAくんさぁ……空気読んで?

 

123:尻尾上がり名無し ID:yCCb4FgKH

無敗の三冠ウマ娘を一番不利な枠に押し込んでいくスタイル

 

124:尻尾上がり名無し ID:NaoQ054Lr

大外いったからと言ってどうにかなる強さやないわ

 

125:尻尾上がり名無し ID:4N+troDfS

やっぱ1番人気ブルボンか

 

126:尻尾上がり名無し ID:DWbj+crgG

2番テイオーは芝

 

127:尻尾上がり名無し ID:PRJa2ryNZ

テイオーファン多すぎ定期

 

128:尻尾上がり名無し ID:nF5AVUWOG

結構拮抗してるの芝ですわ

 

129:尻尾上がり名無し ID:5VjwR4DEx

まあ実際解説員も高く評価してたしな

 

130:尻尾上がり名無し ID:ssCyppSYF

3番人気パーマーかぁ……出世したな

 

131:尻尾上がり名無し ID:5Ws3hSFw2

ライアン>>>>>パーマー>>>>>>>マックイーンくらいな評価だったのが綺麗に逆転したな

 

132:尻尾上がり名無し ID:3mCwy8Ytr

障害行ったときはもう戻ってこないだろうなぁ……って思ってたけど、割と速攻帰ってきたよね

 

133:尻尾上がり名無し ID:cQiwvIVx9

やっぱ平地走る才能があったんじゃないの

 

134:尻尾上がり名無し ID:NaoQ054Lr

障害跳ぶの下手すぎてボロボロになってたから帰ってきただけやで

 

135:尻尾上がり名無し ID:6bMuVXBhl

……まあ、多少はね?

 

136:尻尾上がり名無し ID:dVvXqSwXJ

結果が良ければヨシ!

 

137:尻尾上がり名無し ID:4HwrgTXvw

スタート!

 

138:尻尾上がり名無し ID:G7dX8MM9s

ヘリオス逃げた!

 

139:尻尾上がり名無し ID:SaaZuSz5o

【悲報】ヘリオス民、逝く

 

140:尻尾上がり名無し ID:VwcVzrcBj

ウイニングライブからヘリオスが消えることが確定した瞬間

 

141:尻尾上がり名無し ID:iyK6mVuvX

ブルボン!?

 

142:尻尾上がり名無し ID:AooGKi7T6

ブルボン淡々と外走ってて芝

 

143:尻尾上がり名無し ID:lQTSRT0P6

ロボかな? ロボだった……

 

144:尻尾上がり名無し ID:4OKG0eXA2

テイオーすごい前に付けてるな

 

145:尻尾上がり名無し ID:xZyDUB+A2

ヘリオス民逝ったぁぁあ!

 

146:尻尾上がり名無し ID:r40nDn2F4

テイオー民ワイも逝きそう

 

147:尻尾上がり名無し ID:Z04Y6oByb

ちなみにテイオーはハイペースに弱いらしい

 

148:尻尾上がり名無し ID:lLUwkmRlP

これマジでラップ走法捨てたくさいな

 

149:尻尾上がり名無し ID:pAuPJL5Yf

テイオーこれスタミナ持つのか?

 

150:尻尾上がり名無し ID:EbMUxyUa9

2400のダービーでは余裕だったから2500でもいける、はず

 

151:尻尾上がり名無し ID:x18ZLvVxO

でもダービーではこんなキチガイペースじゃなかったよね

 

152:尻尾上がり名無し ID:nCf5X6pcg

ネイチャもきたぁ!

 

153:尻尾上がり名無し ID:nHazW71R4

ネイチャ他のウマ娘を引きずってきてて芝

 

154:尻尾上がり名無し ID:NaoQ054Lr

カノープスの娘はこういうのうまいから調子悪いときも安定してそこそこ戦えるんやろな

 

155:尻尾上がり名無し ID:KY/aS98iO

仕掛け早いな

 

156:尻尾上がり名無し ID:iiO2gzh5b

ネイチャこれスタミー保つ?

 

157:尻尾上がり名無し ID:NaoQ054Lr

>>156

保たなやらんやろ

 

158:尻尾上がり名無し ID:IVwTGBw/V

ブルボンこの雪崩読んでたのかな

 

159:尻尾上がり名無し ID:KmR/MdGs2

精神的な消耗を抑える代わりにスタミナ消耗が半端なさそう

 

160:尻尾上がり名無し ID:Solg7hRlG

解説員の解説期待

 

161:尻尾上がり名無し ID:5NQY7Q5pT

バカ逃げコンビは焦ってるっぽいけどブルボン余裕そうだな

 

162:尻尾上がり名無し ID:PP5RNxiyx

顔だけ見たらすごい有利そうなブルボン

 

163:尻尾上がり名無し ID:fuPzlgoQ7

なお走ってるのは死ぬほどロスの多い大外

 

164:尻尾上がり名無し ID:6bXJw05by

スプリンターとはなんだったのか

 

165:尻尾上がり名無し ID:tkT/Fcuf7

スタートしたときは色々あったけど安定してきたな

 

166:尻尾上がり名無し ID:qT1fdLA0j

平和よのー

 

167:尻尾上がり名無し ID:4JHRzhJez

ブルボンきたぁぁあ!

 

168:尻尾上がり名無し ID:9ZNOuOoCm

これ斜行じゃね。審議ランプ来るか?

 

169:尻尾上がり名無し ID:JuXpSkCX0

後ろ走るウマ娘とそれなりに差をつけてれば斜めに走っても審議にはならない

 

170:尻尾上がり名無し ID:1y0B79XJO

テイオーもきた

 

171:尻尾上がり名無し ID:HTvk5ilgl

平和よのーとはなんだったのか

 

172:尻尾上がり名無し ID:yMPa9XYAI

一気にレースが動いたな

 

173:尻尾上がり名無し ID:NqvT3xK0e

!?

 

174:尻尾上がり名無し ID:bks/n1LE0

え、止まんの?

 

175:尻尾上がり名無し ID:AvdmVxH/N

何だ、来ないのか

 

176:尻尾上がり名無し ID:1fPDAKn/M

やっぱ直線勝負なのかな

 

177:尻尾上がり名無し ID:+8VsNoKwN

今一瞬行きかけたな

 

178:尻尾上がり名無し ID:msuDB6ZaZ

ほぼ行きかけました

 

179:尻尾上がり名無し ID:kSj7QiqiK

ブルボンって、ほんと下り坂で減速しないよな

 

180:尻尾上がり名無し ID:Omcsm6BGa

頑丈なんだろ

 

181:尻尾上がり名無し ID:NaoQ054Lr

強靭な体幹しとる

 

182:尻尾上がり名無し ID:x4d12Caoh

テイオーきた!

 

183:尻尾上がり名無し ID:s6ocjFOKB

今度こそ来た!

 

184:尻尾上がり名無し ID:XkA3vGDgg

テイオーこっから差し切れんのか?

 

185:尻尾上がり名無し ID:4xkZL2Tig

ブルボンのコーナリングクソうまい

 

186:尻尾上がり名無し ID:kU7Cn34Od

神定期

 

187:尻尾上がり名無し ID:QWSwWUfwS

コーナー巧者どころか弧線のプロフェッサーレベル

 

188:尻尾上がり名無し ID:NaoQ054Lr

こういう誰にでもできるところを極めてるから強いんやね

 

189:尻尾上がり名無し ID:vZcykFb2B

さあ直線だ!

 

190:尻尾上がり名無し ID:DY50VA7us

坂きたぁ!

 

191:尻尾上がり名無し ID:5PxtP7pL2

テイオーやっぱり強い

 

192:尻尾上がり名無し ID:wM/BLe8wN

テイオー差し切るか

 

193:尻尾上がり名無し ID:h+SV80tXK

くんなくんなくんな!

 

194:尻尾上がり名無し ID:oFz4wm+st

こいこいこいこいこい!

 

195:尻尾上がり名無し ID:q/bnAW0sa

差せ! 意地見せろ! 二冠ウマ娘だろ!

 

196:尻尾上がり名無し ID:rjldRH/JR

逃げ切れブルボン!

 

197:尻尾上がり名無し ID:dWu3yMqjT

こちとら無敗の三冠だぞ

 

198:尻尾上がり名無し ID:i8K13lEw4

どっちも強いわ

 

199:尻尾上がり名無し ID:3kcjHtapT

ああ……

 

200:尻尾上がり名無し ID:OUPZ0Xvq6

届かんかったか……テイオー……

 

201:尻尾上がり名無し ID:NaoQ054Lr

どっちもようやっとる。ええレースやったわ

 

202:尻尾上がり名無し ID:B++opLXDs

3着ネイチャか

 

203:尻尾上がり名無し ID:rmlF9xdlu

カノープスらしい(褒め言葉)

 

204:尻尾上がり名無し ID:2KtspOajL

1位2位と3位以下みたいなレースだったな

 

205:尻尾上がり名無し ID:iLU2Jm6+R

ネイチャまた3着か

 

206:尻尾上がり名無し ID:fHJI2uY5/

俺未来人だけどネイチャは有馬記念3年連続3着になるよ

 

207:尻尾上がり名無し ID:9G0a0s2CP

勝つとこみたいんだからやめてくれよ……

 

208:尻尾上がり名無し ID:2g2IXjcHl

ID定期

 

209:尻尾上がり名無し ID:GFlQOonWY

いや、これは来年は3着だけど再来年は勝つとかそういうことかもしれん

 

210:尻尾上がり名無し ID:Awrb27mQc

おい、ネイチャは通算二桁勝利できるのか教えろ

 

211:尻尾上がり名無し ID:L4ty/fFYr

3年連続3着とかあるわけないだろ。そんなことあったら逆立ちしてスカイツリーのまわり一周してやるわ

 

212:尻尾上がり名無し ID:26wsRJxgh

カノープスってGⅠ勝てるの?

 

213:尻尾上がり名無し ID:33MOSMvFt

テイオー惜しかった

 

214:尻尾上がり名無し ID:/GD+gc8t9

つまりテイオーは来年勝つのか?

 

215:尻尾上がり名無し ID:eOdWqUjWm

まあ怪我してこれだし、この走り維持できるならいつか勝てるでしょう。流石に骨折3度目はないわ

 

216:尻尾上がり名無し ID:tx9pAFG0i

それフラグ……

 




61人の兄貴たち、感想ありがとナス!

死にたがり兄貴、mikoya兄貴、第3大隊兄貴、おあん兄貴、なまちゃ兄貴、hambrk兄貴、NNN22兄貴、評価ありがとナス!

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メモリー:3/1/7

【速報】年度代表ウマ娘、ミホノブルボンに決定

1:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:32:00 ID:ZHqrhI8OV

ルドルフ以来の満票はならずとのとこ

 

2:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:32:05 ID:qhpho4K0S

なんで満票じゃないの?

 

3:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:32:11 ID:Gor/JGlNM

マックイーンにちょっと入った

 

4:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:32:17 ID:cHQeAxIdQ

まあ年度代表ウマ娘エルコンドルパサーより納得できる

 

5:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:32:32 ID:eh73WsDOZ

グラスワンダーだよな

 

6:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:32:32 ID:/FV6NnErB

スペシャルウィークだよな

 

7:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:32:32 ID:FgHffw439

エルコンドルパサーだろが

 

8:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:32:44 ID:/FV6NnErB

シニア王道全連対のスペなんだよなぁ……

 

9:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:32:50 ID:eh73WsDOZ

スペの民は直接対決でグラスにボコられてくるくせによく言うわ

 

10:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:32:56 ID:FgHffw439

日本よりレベルが上の海外で実績上げたエルコンがナンバーワン

 

11:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:33:02 ID:+QANOLhg5

これだよ

 

12:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:33:10 ID:/+tQQkxNU

別スレでやれ

 

13:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:33:15 ID:OUIDwEbiH

クソ定期やめろ

 

14:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:33:20 ID:fTrtAsQMh

御三家みたいな関係だからこうもこじれる

 

15:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:33:28 ID:kR1A+PNyz

解説員「エルコンドルパサーは日本で走っていないのに日本の年度代表ウマ娘に選ぶというのは意味がわからない。実績を重視するならスペシャルウィーク、戦績を重視するならグラスワンダーが選ばれるべきで、エルコンドルパサーを選ぶというのは日本のトゥインクルシリーズを主催しているURAが何よりも自身の価値を貶めている。年度代表ウマ娘はスペシャルウィーク、一歩譲ってグラスワンダー」

 

16:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:33:35 ID:XGMA+UWv6

サンキュー解説員

 

17:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:33:42 ID:doQskQ3Id

解説員の中ではスペ>グラス>エルコンなのかな

 

18:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:33:49 ID:PRLxt/XJk

スペ≒グラス>日本で走ってない壁>エルコンじゃね

 

19:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:33:56 ID:7v+Muwg0e

自分の所属チームを贔屓しない男

 

20:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:34:03 ID:dYPzai11m

というか選出方法も悪いわ。選択肢を2つに絞るための有識者投票で落ちたグラスに入れたやつが再投票でスペに入れるわけない

最初の投票でスペが勝ったんだからスペでいいじゃん

 

21:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:34:09 ID:n2vbHNtvz

グラス推しはスペに勝ったグラスがナンバーワンって思想なんだから必然的にエルコンに流れるわな

 

22:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:34:15 ID:/ZerMruie

ここってなんのスレだっけ

 

23:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:34:21 ID:Qzrpr/cQS

ブルボンの年度代表ウマ娘のスレだぞ

 

24:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:34:29 ID:uqfZFWClK

当然だからあんまり話すことがない

 

25:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:34:36 ID:PGE0MtzOj

無敗の三冠で年度代表ウマ娘を逃すやつがいるわけない定期

 

26:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:34:43 ID:ef/0neoaL

ついでにジャパンカップと有馬記念も勝ってるしな

 

27:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:34:48 ID:BhjrTKZKH

ついで……?

 

28:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:34:55 ID:JmXUa7n+t

おまけでもいい

 

29:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:35:01 ID:SMSIgcZbJ

おまけの中身がデカ過ぎる

 

30:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:35:07 ID:aMgLS/EQm

でもこれで三冠ウマ娘のローテは決まった感あるな

 

31:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:35:12 ID:GtArn/GrY

三冠→JC有馬か

 

32:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:35:17 ID:xpncCXIYT

シービー「あの」

 

33:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:35:24 ID:nUmxymk0w

シービー姉貴は体質がね……

 

34:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:35:30 ID:vFs/4Ey2e

シービー姉貴は次の年に三冠ウマ娘が出てきたのが悪いみたいなところがある

 

35:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:35:35 ID:375P8lCpe

格付けついちゃったもんな

 

36:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:35:42 ID:zKVxzDnVO

ルド山が悪い

 

37:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:35:49 ID:wdInonZ+Q

強すぎてつまらん

 

38:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:35:56 ID:SGLMnxvHt

善戦させておきながら最後にスーッと抜けてくの鬼過ぎる

 

39:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:36:03 ID:oNAOpUcnd

あれわざとやで

 

40:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:36:09 ID:ND2N0TRlE

ルド山さんは皐月は普通に斜行してたしダービーは普通に苦しかったから『ああ……ちょっと不安定だけど普通に強い二冠ウマ娘だな……』って思ってたのに、宝塚記念あたりからおかしくなった

 

41:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:36:15 ID:31ng0MCvh

宝塚記念から死ぬほど安定してきたよな

 

42:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:36:21 ID:fNx5CtjUT

宝塚記念はマジで付け入るスキがなくてどうした?ってなった

 

43:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:36:28 ID:taE7Dcr/V

夏越えてああなるのはわかるけど、ひと月でああなるのは謎

 

44:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:36:36 ID:Dl09Iuzpo

あそこでシービー姉貴が負けるの『え?』ってなったわ

 

45:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:36:41 ID:Qjcw/Lbgo

宝塚記念でそれまでの着差つけないテイオーが皇帝になった

 

46:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:36:47 ID:Hm+oCNGbD

着差つけないテイオーは言い得て妙

 

47:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:36:53 ID:c1yJXOtFx

ということはブルボンに挑戦する三冠ウマ娘出てくるのかな

 

48:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:36:59 ID:oNAOpUcnd

隼瀬くんはビワハヤヒデがええと言っとった

 

49:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:37:07 ID:V5MCMQJHv

ニキは誰がええと思うんや

 

50:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:37:14 ID:oNAOpUcnd

ナリタタイシンやな。ちっこくて末脚ヤバいのは使いやすくてええ

 

51:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:37:20 ID:eNhlb1bwm

ニキってタマモクロスとか好きそう

 

52:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:37:25 ID:ccKom2OFY

チケゾーは?

 

53:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:37:30 ID:oNAOpUcnd

誰や

 

54:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:37:37 ID:onJTnFPON

たぶんウイニングチケット

 

55:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:37:44 ID:zJ4y7ElY7

ウイニングチケットのことじゃね?

 

56:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:37:50 ID:oNAOpUcnd

ナリタタイシンの良いところと悪いところと、ビワハヤヒデの良いところと悪いところを足して割った感じやね

そこそこ安定感があってそこそこ爆発力があって、普通に強いと思うで

 

57:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:37:55 ID:7fHLLlfsm

というかニキから見て今回の年度代表ウマ娘はどうなの? 俺からすれば満票かなって思ってたんだけど

 

58:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:38:02 ID:oNAOpUcnd

満票でもおかしくないけどマックイーンちゃんが春天連覇しとったし、そっちに票行ってもおかしくないと思うで

天皇賞マニアってどこにもおるしな。特に春

 

59:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:38:09 ID:pQRXeLut+

まあ別格感あるもんな

 

60:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:38:15 ID:t2+rT6Vwa

おっさんファンのルドルフはシービーより上っていう主張の根拠が『春天勝ってるから』だったのにはビビった

 

61:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:38:21 ID:Fp0qOUaCo

昔気質の人は春天好きよな

 

62:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:38:26 ID:oNAOpUcnd

周りにも天皇賞好きおるから別にことさら否定はせんけど、ふつーのGⅠやと思うで

 

63:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:38:33 ID:95cvETN4M

長距離は時代遅れみたいな話聴くけどどうなんだろ

 

64:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:38:41 ID:jgx9PtwBG

まあ長距離レースそのものが絶滅することはないだろうからそれなりに価値は維持されそう

 

65:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:38:47 ID:FMvuoNnu9

まあ時代っていつの間にか変わるもんだから、なんとなく無視される日が来るんだろうな

 

66:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:38:55 ID:zSZPRCtzT

長距離見てて面白いから好き

 

67:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:39:02 ID:5JpI715b8

見てて飽きない?

 

68:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:39:08 ID:zSZPRCtzT

飽きたことはないなぁ。距離長いとウマ娘同士の読み合いとかそういうのを感じられて面白いよ。負担はデカいだろうけど

 

69:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:39:16 ID:IEJMsRQst

短距離は一瞬過ぎるし長距離は長すぎるから、中距離がクラシックディスタンスなんて呼ばれてんだろうな

 

70:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:39:23 ID:Ic3TTANVl

というか満票で取るためには天皇賞春勝たなきゃならないってブルボン無理じゃね

 

71:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:39:29 ID:WCTvNmbNU

3200は無理だろ

 

72:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:39:36 ID:SKDD6Qspq

出たよ距離限界おじさん

 

73:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:39:44 ID:8bSfIqZBl

距離限界おじさん何回殺されたら成仏するん?

 

74:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:39:50 ID:A+jrzbESN

朝日杯で死んでホープフルで死んでダービーで死んで菊花で死んでるからもう4回は死んでる

 

75:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:39:58 ID:vVbI9KwcW

5回目はあるのかな

 

76:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:40:04 ID:ZL5Pju84Q

マックイーン相手はキツいんじゃないか

 

77:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:40:09 ID:mHpwXUZ38

ライスシャワーの実力がわからん

 

78:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:40:14 ID:a3Re2NhAP

ブルボンより下、マチタンより上というガバガバ判定

 

79:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:40:22 ID:nXTxRajg/

というかああも上位が固定されると世代の層が薄いんじゃないか疑惑がね

 

80:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:40:28 ID:83bVPHSEH

マチタンはネイチャ感ある

 

81:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:40:33 ID:sX+4TbD01

それはカノープスだからでは……

 

82:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:40:41 ID:O8U4tEiHU

言いたいことはわかる

 

83:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:40:48 ID:M/Bprkv61

でも菊花でレコード出してるやつが3人いるんだし、普通に強いんじゃない?

 

84:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:40:56 ID:1FZbATrDT

でもライスとかマチタンがクラシック級のマックイーンと菊花走って勝てるかと言えばそうじゃないだろうし

 

85:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:41:02 ID:JHeqqpwo5

ブルボンというか、強い逃げウマ娘はレースを加速させるからな……

 

86:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:41:07 ID:L2G3TRH3L

ライスシャワーは見たところ強そうなんだよなぁ……中距離は正直ブルボン相手はキツそうだけど、長距離ならブルボンどころかマックイーンにも勝てそう

 

87:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:41:14 ID:bqNl89hrM

負けてるんだよなぁ

 

88:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:41:20 ID:OHVHq53ms

菊花賞で負けてる定期

 

89:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:41:28 ID:R80XQhGXX

やっぱマックイーン>>ブルボンなのね。そう思ってるのがワイだけじゃなくてよかった

 

90:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:41:33 ID:ZQ++h3y5x

天皇賞制覇の為に生きてるメジロ家が春天で負けるっていうのはね……

 

91:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:41:39 ID:be2jaSROH

しかも歴代最強ステイヤーだからな、マックイーン

 

92:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:41:46 ID:OHoa0pgdq

マックイーンは強いよ、マジで。長距離版ルドルフみたいな走りする

 

93:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:41:54 ID:GR2M8ZwSo

退屈な強さな

 

94:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:42:00 ID:SDmGGQa1n

それはそう

 

95:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:42:07 ID:pPbAAjB0k

ルドルフとか言う強さの代名詞

 

96:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:42:14 ID:TTnNQsjxW

というか天皇賞春にそもそも挑戦するのかって話ですよ

 

97:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:42:21 ID:vErhrRppK

まあする意味はないわな

 

98:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:42:27 ID:GRZw+pfh1

菊花賞に出たのだってブルボンが三冠ウマ娘になりたかったからだって言ってたもんな

 

99:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:42:33 ID:HgwzIyEOi

>>98

別にそれだけで出ないって決まったわけではないんじゃない?

 

100:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:42:38 ID:H1aPrNN6T

>>99

インタビューみたらわかるけど言外に『じゃなきゃ長距離に出ない』って感じが出てる

 

101:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:42:46 ID:ro/OHjOME

やっぱりブルボンって中距離が1番強いんだろうね

 

102:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:42:51 ID:jjJ3WStLl

解説員って芝マイル中距離のプロっていう時流に最適化された能力してるからそれ以外にあんま興味ないのかもね

 

103:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:42:58 ID:Ht9djBs+E

あいつ顔がいいし血統からしてスター性あるしダートとか短距離とかのウマ娘担当してほしい。盛り上がると思うし

 

104:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:43:05 ID:UQ2H1Z5J9

解説員というか東条家って1世代1人しか担当しないみたいな縛りあるから、正直短距離とかダート担当するなら中距離ウマ娘担当してほしいわ

 

105:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:43:10 ID:atWwKJBAw

もうひとりくらい三冠ウマ娘作ってから引退してほしい

 

106:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:43:18 ID:M+vaTwwS5

それは無理だろ

 

107:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:43:26 ID:+kBG+hHHC

最近ポンポン出てきてるけどシンザン以来出てなかった伝説のポケモンみたいなもんだからなぁ

 

108:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:43:31 ID:veDUxl3B+

あいつがダートウマ娘担当するとなったら初手でアメリカ行きそうだし短距離ウマ娘担当するなら香港行きそう

 

109:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:43:39 ID:U85esrBcw

>>108

 

110:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:43:46 ID:tXKYRThWb

>>108

あいつはそういうとこある

 

111:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:43:51 ID:aAk6sy07U

マジレスすると本人が短距離は無理だって言ってる

 

112:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:43:59 ID:Ht9djBs+E

なんで? 地味だから?

 

113:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:44:06 ID:aAk6sy07U

いや、距離が短いから自分が力になれないとかそういうことらしい

 

114:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:44:13 ID:DPvd1yMSo

じゃああいつ長距離向きなのか

 

115:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:44:20 ID:LNYq7rJnU

長距離は時間長くて誤差が出まくるからキツいって言ってたで

 

116:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:44:28 ID:Kd8BtIxiQ

じゃあマイルか中距離じゃん……

 

117:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:44:34 ID:Ht9djBs+E

でも今の短距離は面白いよ。というかサクラバクシンオーっていう娘が強い

 

118:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:44:41 ID:CFjclWIH4

名前からして強そう

 

119:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:44:48 ID:WTXo/SZIr

野球選手に球児って名前つけるようなもんじゃんそれ

 

120:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:44:54 ID:LEd17Gkx9

サクラバクシンオーって娘強いの?

 

121:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:45:01 ID:Ht9djBs+E

短距離だと無敵かな。レース映像見ればわかると思うけど、ただただ強い

 

122:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:45:08 ID:8U1X2Psir

はえー、見てみようかな

 

123:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:45:15 ID:NzzQPFbd+

サクラバクシンオーってシニアの娘?

 

124:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:45:23 ID:Ht9djBs+E

いや、クラシック級。ブルボンと同期

 

125:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:45:30 ID:J23KhuC+f

へー

 

126:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:45:36 ID:nKtotSkoY

なんで香港行かないの?

 

127:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:45:42 ID:Ht9djBs+E

体質があんまり良くないらしい

 

128:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:45:48 ID:i3TKIsgsM

そりゃ残念だね

 

129:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:45:54 ID:X8+ExvOU1

正直日本の短距離GⅠってあんまり整備されてないからフランスでも香港でもいいけど外国行ってほしい

 

130:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:46:01 ID:/Zoxo2gTp

こうしてみるとブルボンは短距離行っても微妙だったかもな

 

131:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:46:09 ID:Ha6DT0suu

ブルボンを短距離に行かせるとクラシックディスタンスがつまらなくなるから成功しようがしまいが行ってほしくない

 

132:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:46:17 ID:rGtAw6YhP

皐月がナリタタイセイ、ダービーと菊花賞がライスかな

 

133:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:46:22 ID:7gVGfUu5+

よわい(確信)

 

134:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:46:28 ID:9wLo52p1h

ライスシャワーのインタビューを見るに強くなったのはブルボンさんのおかげって言ってたからダービー取れてないんじゃないかな

 

135:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:46:33 ID:qV8Hhah4h

皐月ナリタタイセイ、ダービーナリタタイセイは暗黒どころ騒ぎじゃないな

 

136:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:46:40 ID:teMirPo7V

まあ俺らはブルボンがいるのが当たり前になってるからそう見えるだけで、二冠ウマ娘が出てきたらうおおおお!ってなってたと思うわ

 

137:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:46:46 ID:oNAOpUcnd

>>136

弱いこと自覚して努力してたやつにあんま弱い弱いと言ったるなや

本人も弱いのわかってて、それでも頑張ってんねんで

俺もそうやって頑張っとるし、お前らの中にもそういうのおるやろ

 

138:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:46:53 ID:v035gkaPR

すまんな

 

139:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:47:00 ID:tCw2PjhDT

すまんのか?

 

140:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:47:06 ID:khlPOLDe6

ごめん

 

141:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:47:13 ID:n13CvDcGh

(これトドメさしてないか……?)

 

142:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:47:18 ID:fHJI2uY5/

俺未来人だけど無敗の三冠とっても年度代表ウマ娘になれない娘出てくるよ

 

143:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:47:26 ID:ZSIeb3H1k

んなわけない

 

144:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:47:31 ID:0U19U8fMB

ブルボン凱旋門賞の方がまだ信じられるわ

 

145:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:47:39 ID:AEsuHJAMv

なんや? GⅠ二桁勝ったんか?

 

146:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:47:47 ID:LgIghPPDS

>>145

無理無理無理のカタツムリ

 

147:尻尾上がり名無し ??/1/7 23:47:54 ID:zV1Mjj61f

年度代表ウマ娘になれない無敗の三冠もGⅠ二桁勝利も有り得ないわ。ホントになったら競艇に全財産賭けてもいい

 




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アフターストーリー:天然

 そのウマ娘は、わずか26度の戦いで神話になった。

 嫉妬すら追い付かない、憧れすら届かない。「後ろからは何にも来ない」と、アナウンサーは3度叫んだ。

 速さは、自由か孤独か……絶対の強さは、時に人を退屈させる。

 緑のメンコ。速さの象徴。そのウマ娘の名は――――

 

「スズカ」

 

「はい?」

 

 サイレンススズカ。

 アメリカを特に何も思わずに粉砕したウマ娘は、再びアメリカの地を踏んだ。

 

「お前、どっかいくなよ。流石に土地勘がないところでは探せんからな」

 

「今度は私が探してあげますよ、トレーナーさん」

 

 フフッと笑う、緑のメンコをしたウマ娘。オレンジがかったこの栗毛が空港に着く前に何をしたのかを、東条隼瀬は知っていた。

 

「走ってる最中のお前がそんなことを気にするわけ無いだろぉ、スズカさんや」

 

 ぺたんとなりかけた左右の耳を両手の指で挟んでぐいーっと引っ張って吊り上げる。

 

「この東条隼瀬、無理を承知で言いますが……空港での待ち時間くらいはじっとしていただきたかったですね」

 

「い、一応間に合いましたし……」

 

 死ぬほど他人行儀な言葉遣いに何かを感じたのか、掴まれた耳の先をピコピコさせて俯く。

 

「1日単位で遅刻するところだったけどな」

 

「うそでしょ……」

 

 ところがどっこいそうではない。

 悲しいことに、スズカは彼が売店から帰ってきたら消えていたのである。

 

 まあ普通に帰ってきたからアメリカに航れたわけだが。

 

「ノットうそ。だが……まあ仕方ないからいいとして、取り敢えず荷物をおろそうか」

 

「あ、はい。ちゃんと付いていきますね」

 

 ――――まずい。心の底から信用できない

 

 これがルドルフなら、迷子になっても普通に帰ってくるだろう。

 ブルボンなら信用どころか全幅の信頼を置ける。隕石が降ってきても付いてくるだろうし。

 ブライアンでも、あれで結構人見知りなところがあるから付いてくるだろう。

 

 しかし、このサイレンススズカ。この娘は深窓の令嬢めいた雰囲気を持っているくせに物怖じをしないし気がついたら消えている。

 

「スズカ、手」

 

「はい」

 

 おそらくは勝負服のものをそのまま流用しているらしい黒い手袋とほぼ同じ意匠、同じ色の手袋が重なる。

 

 一回り大きい手に包まれたのを見て、なんとなくスズカは尻尾を振った。

 

「私の手袋、まだ着けてくれていたんですね」

 

「ああ。壊れるまで着けるつもりだ」

 

「壊れたら、また作りますよ」

 

 やや寒い、アメリカの街。ケンタッキー州チャーチル・ダウンズ。

 BCターフに招待される形で、サイレンススズカと東条隼瀬はやってきた。

 

「壊さんよ。大事に常用しているからな」

 

「もしも、です。もしもに備えておくことは、大事ですから」

 

「まあ、それはそうだな。先の天皇賞秋でも俺はもしもに備えておいたが故にうまく立ち回れたわけだし」

 

 天皇賞秋と聴いたあたりで前にヘタれた耳が元の位置に戻る。

 彼女としては、レース自体にトラウマがあるわけではない。正直、別に怪我したこと自体はどうでもいい。

 しかしどうでもいいにしても、自分が与えたトラウマに関してはちゃんと責任を感じていたし、申し訳なくも思っていた。

 

 だからこうして彼の口からその単語が出てきた瞬間に申し訳なく思って凹んだわけだが、思ったよりも声音は明るい。

 

 成功体験が上書きしたのかもしれない。

 頭先頭民族なだけでこれでも一応頭はいいサイレンススズカは、きちんと察した。

 

「よかったですね、トレーナーさん」

 

「ああ。今度はしくじらないから安心してくれていいぞ」

 

「はい。安心して走りますね」

 

 このしくじらないからというのは、骨折させないし事故にもさせないという意味だということも、無論サイレンススズカは知っている。

 繋いだ手を握り直して大きく息を吸い込み、吐く。

 

「冬ですね……」

 

「いや、まだ一般的には秋だったはずだ」

 

 吐いた息が白くなったのを見て風流を感じ、季節のうつろいを感じた先頭民族は、あまりにも現実的すぎる男のセリフに眉をひそめた。

 だが、それでも嬉しい。尻尾は揺れるし耳は左右にピンと向く。

 

 なにせこの新大陸にはじめて降り立ったとき、こんなときが来るとは想像もしていなかったのだから。

 

 ――――あのことがなければ、4年前にこうしていたのかもしれませんね

 

 そう言おうか、言うまいか。

 そんな微妙な逡巡を切り裂くように、沈着さを感じさせる重みのある声が彼女の名を呼んだ。

 

「スズカ」

 

「はい」

 

 自分の心を読み取ったのか。

 あんまりにもピッタリなタイミングに驚いたスズカは、弾かれるように俯きがちだった顔を上げた。

 

「なんでしょう、トレーナーさん」

 

「着いた。荷物を置いたらチャーチル・ダウンズレース場に行く。一応言っておくが、最初はゆっくり歩いて、早歩きになって、そして走る。これは脚を慣らすのが目的であって、速く走るのが目的ではない。わかるな」

 

「はい」

 

 恐ろしく事務的な通知に片頬を膨らませつつ、サイレンススズカは肩に掛けた小さなカバンを改めて手に持った。

 チェックインとか、そういう細やかな業務。走ることしか考えてなさそうなサイレンススズカにはできないと思われがちなそれらを、東条隼瀬は淡々とこなした。

 

 ――――部屋はひとつでいいな?

 

 ――――はい

 

 そういうやりとりは、飛行機の中で済ませている。周到な用意を旨とする男なだけあって、その手続きは鮮やかな速さだった。

 

 ひとつの部屋と言っても、流石は一泊とは思えないほどの大金が飛ぶ高級ホテル。

 部屋は広く、風呂やら厨房やらも完備されている。

 

 そこに荷物を置いて、トレセン学園の校章付きのジャージに着替える。

 そうして2人は、チャーチル・ダウンズレース場に繰り出した。

 

「最初はゆっくり。歩いて、早歩きになって、そして走る。これは脚を慣らすのが目的であって、速く走るのが目的ではない。わかるな」

 

「はい。トレーナーさん」

 

 それ、二度目ですよ。

 たぶんそう言っても『知っている』とかそういう感じの答えが返ってくるので、サイレンススズカは特に指摘せずに頷いた。

 

 そう。チャーチル・ダウンズレース場に向かうのはスズカの走行欲を満たしたいというのもあるが、彼女の脚をアメリカの雑然とした芝に慣らさなければならないからである。

 無論一度慣れているわけだから思い出すだけでいいのだが、それでもぶっつけ本番となっては万が一がある。

 

 そういうことで、サイレンススズカは柔軟して軽く身体を作った。

 

「最初はゆっくり歩いて、早歩きになって、そして走る。これは脚を慣らすのが目的であって、速く走るのが目的ではない。わかるな」

 

「あの。3度目ですよ」

 

「ああ。何度でも言うぞ」

 

 東条家本家に所属するGⅠ未勝利一般トレーナーの口癖をそのままトレースしたようなセリフに、サイレンススズカは首を傾げた。

 

 ひょっとして、と思ったのである。 

 

「ひょっとして……トレーナーさんは私のことをターフがあれば走り出す娘だと思ってませんか?」

 

「思っているが」

 

「うそでしょ……」

 

 ちなみにアメリカについてから2回目である。

 

「嘘ではないさ」

 

「みんな言うんです。スズカは走ってない普段でも走ることしか考えてない先頭民族なんじゃないかって……」

 

 なるほど。しかし走ってる時でも走ることを考えているからそれは嘘だな。

 そう言いかけて、東条隼瀬は思いとどまった。

 

(普段でも、ということは無論走ってる時は走ることを考えていると理解されているわけか。となると嘘ではないな)

 

「フクキタルもドーベルもスペちゃんも同じようなことを言うし……なんでなのかしら」

 

「そりゃ、それが事実だからさ」

 

 思考中に問いかけてきて答えてやったら頬を膨れさせてぷくーっとなったスズカ(フグ娘)を見て、東条隼瀬はふと思った。

 

「じゃあお前、他に何を考えていると言うんだ」

 

「トレーナーさんのことを考えています」

 

 コンマ何秒の間もなく、サイレンススズカは答えた。

 それはおそらく本当にそれくらいしか考えることがないからで、それだけにド天然なところがある彼女の偽らざる本音だった。

 

(結局は走ることじゃないか)

 

 トレーナーとは、彼女にとって走りを指導する存在であろう。おそらくは、世間一般のそれと乖離はない、はず。

 

「えー、えーっと……あ、あと! 天気とか……そういうことも考えていますよ」

 

「なんでお前はそんなに焦ってるんだ」

 

 今のを文にするなら語尾にビックリマークが付いているであろう、スズカの言葉。あと若干頬も赤い。

 なんでコイツはそんなにらしくないほど焦っているのか。そう思いつつ、冴えてる男隼瀬は気づいた。

 

(なるほど……結局自分が走ることしか考えてないと自ら開示してしまったことに気づいたわけか)

 

 ならばその焦りようもわかる。しかしそれで追加で出したのが天気というのは、笑える。

 天気も走りに関係することである。彼女は雨が走りにくいというただそれだけの理由で、嫌いなのだから。

 

「大丈夫だ、スズカ。俺はお前が年がら年中走ることしか考えていないことを、無論知っている。走っている最中にも走ることしか考えていないことを知っている。だが知った上で俺はお前のストイックなところが好きなんだ。いや、尊敬すらしている。だから隠さなくてもいいんだぞ」

 

「うそでしょ……」

 

 ハットトリックである。

 

 まあそんな何の意味もないうそでしょハットトリックは置いておいて、スズカはなんだかんだで走ることが好きなウマ娘の鑑であった。

 

 周りのウマ娘たちから畏怖の眼差しを向けられながら何も気にせず、走る、走る、走る。

 脚が慣れるまでどころか満足するまで走って、そうしてスズカはぐるりと回って帰ってきた。

 

 ――――いやあ全く、彼女の母を追い出したマスコミ共を射殺したくなるくらいの国家的損失ですよ

 

 ――――お互い、マスメディアには苦労しますね

 

 ――――まったくです。スズカさんがいないアメリカのトゥインクルシリーズは平和でした。しかし、つまらなかった。なのでこうして招待したわけでして

 

 風の音の中から徐々にハッキリとしていく、英語での会話。

 なんとなく英語もフランス語もできるスズカは、更に加速して自分のトレーナーと偉そうな(つまり、母が見れば無条件で噛みつきそうな)相手が話している場に近づいた。

 

「平和は謳歌できるときに謳歌しておいたほうが良いと思いますよ。来年は到底平和にはならないでしょうから」

 

「おお……では!」

 

「はい。本人の了承があれば、そうなります」

 

 ありがたい、と言いつつ去っていく偉そうな人を見送っている背中に向けて、サイレンススズカは突撃をかけた。

 

「トレーナーさん」

 

「見ていた」

 

 話していましたけど、私の走りはちゃんと見ていてくれましたか。

 そう言おうとした彼女の心理を完璧に読み取って、東条隼瀬は去っていく後ろ姿に向けて礼を尽くすのをやめて振り返った。

 

「加速が速い。日本のとは違うまとわりつく芝への嫌悪感がそうさせるのかもしれないが、脚への負担がバカにならんな」

 

「そうですね……少し違和感があったのは確かかもしれません。なにせ芝の長さが違うものですから」

 

「まあ欧州のトゥインクルシリーズが貴族の社交場としてできたように、アメリカのトゥインクルシリーズは民衆の娯楽としてはじまった。それ故に整備の必要がないダートが主流になり、そして芝も比較的管理の容易なものになっている。そのせいだろうな」

 

 とは言いつつも、サイレンススズカは何回か走ると加速にも慣れた。

 レースの天才ではないが、走りの天才。

 そう呼ばれるだけのことはある、抜群の適応能力。

 

「相変わらずだな、スズカ」

 

 え?という顔をしたサイレンススズカを見てふと笑い、東条隼瀬は口元に手をやった。

 

「今日はこれくらいでよかろう。何か食べたいものはあるか?」

 

「作ってくれるんですか?」

 

「ああ」

 

 東条隼瀬としては、アメリカのトゥインクル・シリーズの清潔さをそのまま信じる気にはなれない。

 文化の違いというのもあるだろうが、要は薬によるドーピングが顕著なのである。最近も栄光のダービーウマ娘がドーピングで検挙された。

 

 テストステロンなどを増加させるタンパク同化薬や、筋肉に送られる酸素量を増やす血液ドーピングは無論禁止されている。その点では人間が中心となって作り上げるスポーツ、野球などとも同じである。

 一応、禁止されてはいる。だが尋常じゃなく破っている者たちが多い。最近も大規模なチームを抱えていた管理担当トレーナーが継続的にウマ娘にドーピングしていたというニュースが入ってきている。

 

 スズカは、アメリカにいたとき絶大な人気を誇っていた。本人が誇っていたかどうかはともかく、誇っていた。

 それは彼女の母がアメリカのメディアやら何やらから大規模なバッシングを受けて追放され、そしてその娘がかたきを討つかのごとく戻ってきたという背景も一因としてある。しかし何よりも、彼女はクリーンだった。薬物のやの字もなかった。

 

 そんなクリーンなウマ娘が、薬物で強化しているウマ娘たちやらなにやらを純粋な暴力でぶっちぎる。

 それは国内のウマ娘を『こいつもどうせドーピングしてるんだろ』という目でしか見れなくなったアメリカのトゥインクル・シリーズのファンからすれば痛快で、爽快で、見ていて楽しいものだったのであろう。

 

 だから万が一にも、過ちを起こすわけにはいかない。ルドルフやブルボンやブライアンの名誉にも関わるかもしれないことなのだから。

 

「……ノエル」

 

「ん?」

 

「ブッシュ・ド・ノエルが食べたいです。だめですか?」

 

「まあデザートとしてはそれでいいが、一晩寝かせないと然程うまくはならんぞ。材料も満足にあるとは言えないしな」

 

「食べたいんです。ぜひ」

 

 いつになく、押しが強い。

 まあそんなに食べたいならいいか。そういう思考で、東条隼瀬は持ち込んだ食材や事前に輸送しておいた食材をパッチワークのごとくつなぎ合わせてなんとかかんとかブッシュ・ド・ノエルを作るに足る材料を揃えた。

 

「トレーナーさん、私も手伝いましょうか?」

 

「いや、休んでいろ」

 

「わかりました。手伝いますね」

 

(こいつ……)

 

 押しが強い。

 会話が成立しないほどの押しの強さ、ド天然さ。

 そんなド天然な彼女と共同で作ったブッシュ・ド・ノエルは、それなりだった。事前に色々用意した上でブルボンと作ったそれとは全く異なると言っていい味。

 

「確か前にも、お前とこれを食ったことがあったな」

 

「はい。その時トレーナーさんは言いました。『来年も一緒にこれを食べよう』と」

 

 

 ――――うそつき

 

 

 くすりとたおやかに笑って、サイレンススズカはつぶやいた。




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アフターストーリー:疾風

当初予定ではこれ全部カットして実況だけ冒頭に挟んでジャパンカップはじめるつもりだった


「最も警戒すべきはこの娘、ティカネン。アメリカに生まれ、欧州のトゥインクルシリーズで今年7戦し、フランスとアイルランド2カ国のダービーに参戦。欧州では合わなかったのか、故郷のアメリカに帰国。ターフクラシック招待ステークスで初GⅠを制覇した。つまり彼女の脚はアメリカ向きで、留学しないほうが良かったということになる。あまりアメリカで走っていないだけに人気は中堅止まりだが、侮れない」

 

「でも、私のほうが速いですよ?」

 

「まあそれはそうだな。次に行こう」

 

 ペラリと資料が捲られたのを見て、スズカも卓上に置かれた資料を捲る。

 

「次に恐ろしく感じるのは、パラダイスクリーク。今フランスにいるアレとはなんの関係もないが、実力は本物。今年に入ってからGⅠ3勝含む8勝を挙げている。バーナードバルークHでは取りこぼしたものの2着だし、現在のところアメリカ最強と言っていいだろう」

 

「トレーナーさんが好む感じの安定感ですけど……でも私のほうが速いですよ?」

 

「確かにそれはそうだな。次に行こう」

 

 米製ビワハヤヒデみたいなウマ娘だなーと思うが、こういう安定感抜群なタイプは爆発力を発揮するタイプに弱い。

 

「これからは順不同で行くが、オンリーロイヤル。去年の凱旋門賞での5着だ。覚えているだろう」

 

「後ろに目は付いていないので……」

 

 私より前を走る人は覚えていますけど、他の人は覚えていないですね。

 

 一応掲示板に載った相手であるが、彼女からすればそういうことである。

 

「あ、そ。まあ、彼女は高速逃げに弱い。だから勝てるだろうと思う」

 

「はい。私のほうが速いですしね」

 

「なるほど、理にかなっている。次に行こう」

 

 ブルボンとスズカが作り出す高速逃げを得意とする者はいるのか。そういうことを言い出すとおそらくこの世の中に高速逃げを得意とする者はいなくなるであろう。

 

「次のウマ娘はエルナンド。誕生日は2月8日。毛色は鹿毛。メイクデビューこそ2着と惜敗したものの次戦、ロンシャンでのブランジー賞で勝利。そこからロンシャンで3連勝を挙げレース場での適性を見せた。その後はフランスダービーを制し、アイルランドダービーでは2着」

 

 あれ、詳しい。

 基本的にボケーッと聴いていたサイレンススズカは、死ぬ程長い説明にやや意識を覚醒させた。

 

「去年は凱旋門賞で16着。BCターフからジャパンカップに参戦している」

 

「凱旋門賞で負けてる人って多いんですね」

 

「まあ勝ったやつより負けたやつの方が多いからな」

 

 おそらくなんの悪意もないド天然な発言だが、サイレンススズカも一応負けている。負けて強しの2着だったわけだが。

 

「今年は凱旋門賞に向けて調整していたのか出ているレースこそ少ないが、その成果あってか2着と好走。去年のローテーションと同じく、BCターフにも出てきている。ジャパンカップにも出るだろう」

 

 凱旋門賞2着。素晴らしい成績である。

 しかし何故それでもあんまり重く見られていないのかと言えば、ミホノブルボンとサイレンススズカの地獄のハイペース凱旋門賞であまりにもあんまりな結果を出したからに他ならない。

 

「でも私のほうが速いですよ」

 

 こんなにも詳しいのは、ジャパンカップに出てくるからか。

 

 なんでこんなに詳しいのかという疑念を確信に変えながら、サイレンススズカは取り敢えず思ったことをそのまま口に出した。

 

「……うん」

 

「……え……速くないですか?」

 

「いや、速いがね」

 

 なんとなく釈然としないような顔に小首を傾げるサイレンススズカにジェスチャーで資料を捲ることを示し、次の説明に移る。

 

「次、ハトゥーフ。引退宣言が出ているが、今年GⅠを制覇。去年も似たようなローテーションを用いているから慣れがあるだろうし、侮れないぞ」

 

「でも」

 

「私のほうが速いですよと言うんだろう」

 

「え……すごいですね、トレーナーさん。昨日はわからなかったのに今日は私の心を読めるなんて……」

 

 昨日はの件は皮肉。

 今日はの件は天然。

 

 要は皮肉半分天然半分な言葉をぺいっと吐きつつ驚いた顔をしているサイレンススズカのほっぺたをむにーっと左右に伸ばしたあと、パチンと離して東条隼瀬はため息混じりに言った。

 

「お前はbotか。サイレンスbotか?」

 

「うそでしょ……」

 

「ノットうそ。まあ、いいや。勝てるだろうからな」

 

「え、はい。勝てますよ。私の方が速いので」

 

 サイレンススズカアメリカ最後のレース。

 今年に招待状が来るまで、そして遠征を決めるまで。それはガルフストリームパークレース場でのBCターフだった。

 

 そこで2着を着外に追いやる程の圧倒勝ちを見せた――――もっとも次元を超えたタイムを叩き出したというより2着以下が無理に付いてこようとして失速した結果そうなったわけだが――――ことにより、サイレンススズカは『ガルフストリームの怪物』なる異名を奉られた。

 

 自分の速さに対する、絶対的な自信。

 ライスシャワーもそうだが自分の強さを信じられるそのメンタルを、東条隼瀬は尊敬していた。彼には持ち合わせがなかったからである。

 

「でも……」

 

「ん?」

 

「勝ち負けはともかく、アメリカの皆さんは私を覚えているかどうか。そのあたりが気になります」

 

 あれだけ好き勝手荒らし回されたら、忘れようがないんじゃないか。

 まったく誰に似たのか、自分を取り巻く環境や評価に対して無頓着すぎるところがある。

 

(困ったものだ)

 

 お前が言うなの極致である。無論ツッコミは不在中なので誰も何も言ってくれなかったが。

 

「で、レース前インタビューは締め出し形式でいいのか?」

 

「はい。アメリカの古参メディアは相手にするなという家訓なんです」

 

「まあ……お前の母親の現役時代のことを考えれば無理からぬことだが」

 

 色々あった。本当に。

 だがその不遇さや周りに死ぬほど叩かれたり認められなかったりしたことが、あの母親の狂気的な勝負根性を生んだことは間違いない。

 

 ドーピングしているウマ娘が狂気じみた走りを見せることはままあるし、アメリカではそういうものはよく見られる。トレーナーもウマ娘もそれぞれ薬をやっているのもまあ、よくあることである。

 

 だが母サイレンスのあの狂気的な負けん気は薬で得られるものではなかったし、影に潜航する豹の如きしなやかで理性的な走りは母サイレンスが極めて強靭な――――ドーピングなど必要としない程の強さを持っていることを示していた。

 

「私としてはどうでもいいんですけど、一応」

 

「わかるわかる。因縁とは厄介なもので、俺も日経新春杯に出ることが禁止されているんだ」

 

 そんなことを言いつつもトレーナーさんが親になったら秋天禁止令出しそうだなーと思うスズカであった。

 

「トレーナーさんも母親に止められたくちですか?」

 

「いや、父親がな。不吉だなんだと言って」

 

「なるほど、親子ですね」

 

 感覚が鋭敏すぎるからこの世にはびこるものを感じて、スピリチュアルなものをも感じてしまう。

 頭が良すぎるからどうにもならないことの多さを察して、スピリチュアルなものを信じてしまう。

 

「そのたぐいのことを結構言われるんだが、言うほど似ているかな」

 

「私はこの世で信用できない最たるものの例がトレーナーさんの自己評価だと思っていますよ」

 

「そうか……そうか……?」

 

 僕は天才さ!と言って憚らない父親に、指導を受けてきたわけである。そしてその言って憚らなかったのは全くもって事実であったわけで、自己評価が相対的に低くなるのもわかる。

 

 わかるが、実際のところそう悪くはない。むしろ良い。ウマ娘との巡り会いがいいだけと本人は言っているが、無論それだけではない。

 

 ――――そうかな

 

 ――――そうです

 

 そんな応酬をいくらかし合った後に、二人はそれぞれ床についた。

 そして、翌日。アメリカのトゥインクルシリーズ運営者たちにとっては歓喜の、参加者たちにとっては絶望のレースがはじまった。

 

 チャーチル・ダウンズレース場は、珍しく満員。大レースでも満員にならないことが珍しくもなくなってきたのだが、今回に限っては席と席の合間を縫っての立ち見すらもいる。

 

 サイレンススズカ、アメリカのアイドルの帰還。彼女は逃げという駆け引きもクソもない圧倒的な暴力、速度によってねじ伏せる。

 

 トゥインクルシリーズの王道は、先行と差し。その認識に間違いはない。しかしだからこそと言うべきか、直線で一気に捲る追込と初っ端から全開で走る逃げには不思議な魅力があった。

 

 東条隼瀬は、めずらしく観客席にはいなかった。関係者席でおとなしく観戦者として見守っている。

 

 癖でぎゅっとペンダントを握りかけて、やめる。関係者席の方に微笑んでから手を振って、サイレンススズカは1枠1番のゲートに収まった。

 

 第11回BCターフ、1枠1番1番人気。

 不吉だなんだと騒ぐスピリチュアルおじさんをなだめてすかして黙らせて、彼女はここに立っている。

 

 枠順の関係で真っ先に収まったサイレンススズカを、他の13人は畏怖とも恐怖ともつかない眼差しで見ていた。

 

 ――――レースにではなく、走ることに特化したウマ娘

 

 そう呼ばれるに足る実力があることを、彼女たちは過去から学んでいた。

 

『さあ、満員という言葉では言い表せない程のお客様がたの視線の中、枠入りがはじまっています。注目のサイレンススズカは1枠1番。かつてアメリカを席捲したその逃げ脚が今回も発揮されるのかどうか』

 

 砂混じりの風に、細く長い栗毛がなびく。

 その威圧感を欠片も感じさせない佇まいに怯む者もいれば、安堵する者もいる。

 

 そんな彼女たちの作戦は、無論個人によって多種多様に異なる。

 しかし共通するのが、サイレンススズカに好き勝手をさせないということだった。

 

 楽に逃しては、負ける。

 楽に逃さないためには、あの開幕の領域――――ゴールまで加速し続ける無限の領域の構築を阻害しなければならない。

 

 遥か空を飛ぶ鳥を、大地に引きずり下ろす。

 それが、彼女たちの勝ち筋。爆発物を、爆発させない。必殺技としてではなく、起爆剤として使われる領域を防ぐ。

 

 それは日本でタマモクロスがオグリキャップを相手に辿り着いた結論だった。

 つまり、集中する。圧倒的に、絶対的に集中する。そして空気が変わった瞬間に反射で発動トリガーのゆるい領域を構築して相手の領域と相殺する。

 

 それはまさしく、天才にしかできない天才対策。

 

「さあ、はじめて」

 

 スタート。

 その直前、一瞬前。サイレンススズカは呟いた。

 

「すぐ、終わらせましょうか」

 

 ゲートが開く。ハナを切る。

 そしてその瞬間、青々とした草原を両脇に控えた畦道が14人の出走者の前に現れ、消えた。

 

 それからゼロコンマ2秒だけ遅れてふたつの領域が同時に放たれ、そして相殺される。

 狙いこそ違えども、結果は同じ。サイレンススズカ対策を考えていたウマ娘の中に領域を使える者が2人居て、そして同じ結論に至った。それだけのこと。

 

 領域とは、構築したあと維持しなければならない。維持しなければ、最大限の効果は得られない。それが、常識。

 

 しかしサイレンススズカの領域は、世界の軛から脱する為の領域である。

 

 逃げは逃げらしく。

 先行は先行らしく。

 差しは差しらしく。

 追込は追込らしく。

 

 トゥインクルシリーズのレースは、脚質ごとに決まったセオリーがあり、その上で行われる。

 サイレンススズカの初動の領域。彼女が目覚めた第三の領域は、世界の理を加速させ、風化させ、壊す神業。

 

 故に一瞬でも構築できれば、彼女は世界の理に触れることができる。

 そして触れた理を、変質させることもできる。

 

 ゼロコンマ何秒の世界でのハナ差を競うウマ娘。その世界でも特に傑出した速さを持つのが、サイレンススズカというウマ娘だった。

 ゼロコンマ半秒で領域を構築して世界の理を破壊し、同速で引っ込める。

 

 他のウマ娘たちは身構え、対策し、反射神経を鍛えた。

 しかしそれより、サイレンススズカは速かった。

 

(反応が遅い)

 

 自分か、自分に類する者。

 その初動を叩く為のトリガーがゆるく精度の粗い領域が相殺されて壊れていく残滓の降りしきる中を、栗毛が尾を引いて駆けていく。

 

 左回り。

 芝状態良。

 天候晴れ。

 開催地アメリカ。

 

 環境のすべてが、サイレンススズカの加速要因となりうる。問題は距離のみである。

 

 逃げた。そして、おそらくは捕らえられない。

 それを察した後続のウマ娘たちは、一気に加速してサイレンススズカに迫る。

 序盤で付けられた差が埋まらないままに負けていった先達たちの姿を、彼女たちは見てきた。故にこそ、なんとかレースという形に持ち込まなければならない。

 

 アメリカのトゥインクルシリーズの脳を破壊した、隔絶の感がある異次元の大逃げ。

 それを見た観客たちから圧倒的な大歓声を受けて、サイレンススズカが逃げる。

 

 やや、距離が長い。

 

 サイレンススズカの得意距離は2200メートルまで。BCターフは2400メートル。残り200メートルで捕捉して差す。

 そのための加速。そのための控えなしのレース。

 

 しかし13人のウマ娘たちは、忘れていた。スプリンター、限界距離1400メートルのウマ娘を3200メートルで勝たせるようにした男が、彼女の背後にいることを。

 

 サイレンススズカはいつも通り、最終コーナーで更に加速し。

 

 

 ――――そして残り200メートルで、更にもう一段加速した。

 

 

『サイレンススズカ先頭。先頭はサイレンススズカ。速い。強い。止まらない。もう誰も追いつかない、追いつけない。これがサイレンススズカ。後ろからは誰も追ってきません。完璧な横綱相撲です』

 

 日本の実況が声を興奮で荒げないでいい、それほどの圧勝。完勝。

 

『勝ち時計はレコード。レコードであります。後からゆっくり、他のウマ娘たちもゴールイン。完全にバテさせられた形になりました』

 

 会心の走りをしてのけたスズカは、ニコニコしながら観客席に向かって手を振った。

 サイレンススズカは、アメリカにとってはストイックの代名詞であった。薬もしない。浮いた話もない。スキャンダルもない。ひたすらに、職人のように自分を極める。

 

 だからこそ、ウイニングライブが人気だった。そんな彼女が笑っている姿を見られるから。

 だがそんなファンたちがこの場で見せられたのは、彼ら彼女らがウイニングライブで見てきた笑顔とは輝きが一段も二段も違う、心からの笑顔。

 

「美しい……」

 

 観客の誰かが、つぶやく。

 

 また違った意味で脳を破壊し、サイレンススズカの第二次アメリカ遠征はともすれば1度目のそれよりも大きな影響を波及させて終わった。




Q.なんでスズカさんこんなに強いの?
A.速いから

Q.なんでスズカさんこんなに速いの?
A.速いから

82人の兄貴たち、感想ありがとナス!
キッコーマン@兄貴、笹谷爽兄貴、サンナン兄貴、評価ありがとナス!
感想・評価いただけると嬉しいです。


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メモリー:3/3/25〜3/4/4

https://syosetu.org/novel/259565/75.html
ここらへんのスレ


【速報】リオナタール引退

1:尻尾上がり名無し ??/3/25 20:52:00 ID:htQCFJKLG

取り急ぎ

 

2:尻尾上がり名無し ??/3/25 20:52:14 ID:qK04OJIpj

はやくねぇか

 

3:尻尾上がり名無し ??/3/25 20:52:31 ID:nmIpTWdzc

テイオーの菊花賞の娘か

 

4:尻尾上がり名無し ??/3/25 20:52:48 ID:VrEmHwFzg

はっや、有馬記念出てたじゃん

 

5:尻尾上がり名無し ??/3/25 20:53:05 ID:DDcS0n2eX

有馬記念出てたよね??

 

6:尻尾上がり名無し ??/3/25 20:53:20 ID:z09ZU58Po

前走何?

 

7:尻尾上がり名無し ??/3/25 20:53:36 ID:8a2ZxIMsQ

アメリカJCC

 

8:尻尾上がり名無し ??/3/25 20:53:50 ID:6oExj3XGP

そこで何かあったのかな

 

9:尻尾上がり名無し ??/3/25 20:54:04 ID:A+b69IfEd

いや、普通に負けただけ

 

10:尻尾上がり名無し ??/3/25 20:54:21 ID:AgQ6xoxtu

有馬記念何着だっけ

 

11:尻尾上がり名無し ??/3/25 20:54:38 ID:ZDtOJEJVM

13着

 

12:尻尾上がり名無し ??/3/25 20:54:55 ID:lU7+jZdNF

13着かぁ……

 

13:尻尾上がり名無し ??/3/25 20:55:12 ID:I28gi2ul9

なんで菊花賞ウマ娘がそこまでボコられたのに話題にならなかったん?

 

14:尻尾上がり名無し ??/3/25 20:55:29 ID:JcthyugDu

屈腱炎からの復帰したあとの初戦だったから

 

15:尻尾上がり名無し ??/3/25 20:55:46 ID:qbujnU3f8

復帰初戦で有馬記念出れるってことは人気あったんだな

 

16:尻尾上がり名無し ??/3/25 20:56:00 ID:xm8ksZyC1

と言うか菊花賞後屈腱炎で有馬記念ってことは1年以上休んでたのか

 

17:尻尾上がり名無し ??/3/25 20:56:13 ID:lhHF4lXSZ

まあ1年以上の間隔開けてぶっつけ本番の有馬記念は勝てんわな

 

18:尻尾上がり名無し ??/3/25 20:56:27 ID:k6bIY5Khs

しかも相手はブルボンテイオーパーマーというオールスターだし

 

19:尻尾上がり名無し ??/3/25 20:56:44 ID:tz29EhzK1

で、なんで引退?

 

20:◆ちなスピ ??/3/25 20:57:02 ID:w9yc3CqYe

屈腱炎の再発。次走に備えた練習中に、とのこと

 

21:尻尾上がり名無し ??/3/25 20:57:18 ID:QTxGO3F4/

うわ……

 

22:尻尾上がり名無し ??/3/25 20:57:34 ID:1h66qPkQz

屈腱炎くんはもっとこう……手心というものを……

 

23:尻尾上がり名無し ??/3/25 20:57:52 ID:NaorxTthY

復帰しても即再発って人の心とかないんか?

 

24:尻尾上がり名無し ??/3/25 20:58:09 ID:Tses/glsP

まあ病だし

 

25:尻尾上がり名無し ??/3/25 20:58:23 ID:nBZcrMm0V

アメリカJCCで復活してたの?

 

26:尻尾上がり名無し ??/3/25 20:58:40 ID:2x6SyfXt7

>>25

いや、11着

 

27:尻尾上がり名無し ??/3/25 20:58:54 ID:Ek2x0JHLV

あー、アカンかったか

 

28:尻尾上がり名無し ??/3/25 20:59:09 ID:JgKlNCnHj

一回治して帰ってきたけど全然全盛期の力が出せなくて、再発して心折れたのかな

 

29:尻尾上がり名無し ??/3/25 20:59:22 ID:1tVt4y+j8

きついなぁ……

 

30:尻尾上がり名無し ??/3/25 20:59:39 ID:5t8gsDP7y

2回怪我してもクソ強いテイオーって地味にヤバいんだな

 

31:尻尾上がり名無し ??/3/25 20:59:57 ID:tZ1hiaqQc

派手にヤバい定期

 

32:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:00:11 ID:ydbxpBwJc

派手だぞ

 

33:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:00:27 ID:fKGnjA6rK

おもいっくそ派手にやばいやつよ

 

34:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:00:43 ID:1itBGyGVB

あいつは怪我さえなければの代表格になりつつある

 

35:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:00:58 ID:3KqlVKus2

リオナタールが2度で心折れたんだからテイオーは3度で折れるのかな

 

36:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:01:11 ID:NaorxTthY

>>35

人の心とかないんか?

 

37:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:01:29 ID:Urkc+tyBI

骨折と屈腱炎ってウマ娘にとってどっちが強いの?

 

38:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:01:47 ID:7IisAiboQ

アスリートとしてのウマ娘からすれば頚椎損傷と脳挫傷みたいなもん

 

39:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:02:01 ID:YrANOE03R

テイオーってすごかったんだな

 

40:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:02:18 ID:6f6bZitMR

あのメスガキ元気でいてほしい

 

41:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:02:32 ID:uSnu/5QT6

そういえばテイオーの次走は?

 

42:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:02:48 ID:lNFTVXEEu

大阪杯だったはず

 

43:◆ちなスピ ??/3/25 21:03:05 ID:w9yc3CqYe

トウカイテイオーは有馬記念後筋損傷しているのが発覚したから大阪杯は回避して宝塚記念に直行とのこと

 

44:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:03:19 ID:wVk+CixBz

スペランカーすぎる

 

45:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:03:35 ID:QKoZNgkw5

経験値リセットの擬人化

 

46:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:03:53 ID:6lgsv/hXg

贔屓の投手陣思い出すなぁ

 

47:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:04:10 ID:u83/ZY8VT

これで宝塚記念前に怪我とかしたら絶望するわ

 

48:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:04:26 ID:8sa2SJ98C

それはない、と思いたい

 

49:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:04:40 ID:MFDZ0Nt1g

リオナタールもそうだけど、怪我なくならないかなぁ……

 

50:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:05:00 ID:dgJGa4XbI

というか屈腱炎ってなんで治らないの?

 

51:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:05:11 ID:T7dwyHEtv

対症療法はあっても原因を取り除くことができないからとかそんな感じだった気がする

 

52:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:05:22 ID:+MaxEnnxF

屈腱炎で引退する娘多いよなー

 

53:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:05:32 ID:Khu55na5U

有名なウマ娘の引退理由でよく聴くくらいなんだから、俺らが知らないウマ娘が屈腱炎を発症するってのもよくあることなんだろうな

 

54:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:05:43 ID:hpJVYBKvC

屈腱炎が治ったって話聞かないしそもそも手術するという話すら聞かないのは何故なのか

 

55:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:05:55 ID:NaorxTthY

金や

 

56:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:06:06 ID:Syq1BlLmg

あー、治療費高いのか

 

57:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:06:16 ID:s57DwIFcw

レーザー治療とかするんだっけ?

 

58:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:06:28 ID:Xvd6Y46f/

昔は足焼いてたらしいな

 

59:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:06:40 ID:pmRGZiAeR

死ぬわ

 

60:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:06:51 ID:NaorxTthY

治療費クソ高い、完治せーへん、再発しやすい。日常過ごすぶんには特に問題ない。だから引退する娘が多いし、治療に臨む娘も有名なウマ娘が多いんや

 

61:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:07:03 ID:84WwRb1RX

治れば治療費をペイできる力があるからか

 

62:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:07:16 ID:AmKfXkDj5

かなしいなぁ

 

63:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:07:29 ID:4qCF0cyob

やっぱり寒門って不利なのね

 

64:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:07:39 ID:NaorxTthY

寒門が不利なのは

1、小さい頃に経験が積めない

2、目指す物はあってもノウハウがない

3、優秀なトレーナーは名門に囲われてることが多い

4、金が無い

からや

 

65:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:07:51 ID:b3SdhpkGT

夢の舞台だけど嫌に現実的だわね

 

66:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:08:02 ID:NaorxTthY

>>65

夢見せるのは現実あってこそやろ

お前らに夢見せるためにこっちは頑張って現実生きとんじゃい

 

67:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:08:15 ID:ZrrLyW6V5

解説員とブルボンには頑張ってほしいな

 

68:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:08:27 ID:Xu/8MIXkl

というかこう考えるとブルボンってそれなりに環境に恵まれてるんだな

 

69:尻尾上がり名無し ??/3/25 21:08:38 ID:1naQzRCmk

それでも名門の方が遥かに上だけどな

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

【シニアブルボン】大阪杯感想スレ【MM対決】

1:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:09:00 ID:B8Ow09O8A

いきなりシニア最強同士の対決だったけどあっさり決まったわね

 

2:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:09:05 ID:eFgrqmmxp

そうわね

 

3:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:09:11 ID:wgm/t8uYK

そうよね

 

4:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:09:16 ID:XO0SwiF6n

と言うかなんでマックイーンは阪神大賞典じゃなくて大阪杯なの? オリックスに寝返ったとか?

 

5:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:09:22 ID:6gQ73yd2T

>>4

やってるとこ同じ定期

 

6:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:09:28 ID:8EVgSPp+0

確かになんで阪神大賞典じゃないんだろうな

 

7:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:09:33 ID:iInEbWmQM

骨折明け初戦で3000メートルはマックイーンと言えどもキツいのでは

 

8:◆ちなスピ ??/4/4 17:09:38 ID:80Qs2Yxpm

ちなみにスピカ本スレではテイオーの骨折明けが大阪杯と天皇賞秋だったことから沖野Tは『骨折明け初戦=2000メートルのレース』と決めているのではないかという説が有力です

 

9:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:09:44 ID:ztnhyHMFi

あー

 

10:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:09:50 ID:o38Qmf/Mb

確かにその可能性はあるな

 

11:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:09:56 ID:/Pbd651fU

まあマックイーンにとって大事なのは天皇賞春3連覇であって阪神大賞典3連覇じゃないから負けてもいいや

 

12:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:10:01 ID:7zmrRdilh

2000メートルではブルボンには勝てんわな

 

13:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:10:06 ID:RuzuncLWW

去年の今頃だと考えられないようなレスで芝

 

14:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:10:12 ID:61Pc1RetX

距離限界おじさん「ブルボンに2000メートルは無理」

 

15:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:10:17 ID:AKOYCosdr

距離限界おじさんとか言う無能

 

16:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:10:23 ID:dR7H5Ao41

距離限界おじさんが無能というのはもちろんなんだけど、ブルボンがすごいだけな気もする

 

17:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:10:29 ID:1IyX5KvOT

それな

 

18:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:10:34 ID:TVQcRHTVR

>>16

無能なのは否定してなくて芝

 

19:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:10:39 ID:qLEVCgPD4

ホントだ、芝

 

20:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:10:45 ID:LFqjBFRRh

ブルボンはやっぱりラップ走法捨てたんだね

 

21:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:10:51 ID:9FdYRSPya

まあ明らかに菊花賞以前と違った走りをしてたわけだし、何らかの理由や意図はあるわな

 

22:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:10:57 ID:B3PM/l+Pl

解説員のやることだしな

 

23:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:11:04 ID:KpJxwaE32

というかラップ走法捨てたことに対して非難がなかったのが謎

 

24:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:11:10 ID:jWu7lctMt

ラップ走法というものを思いつけなかった奴らが批判できるはずもなく

 

25:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:11:17 ID:wD9onbUGz

結局逃げの完成形はスズカなんやなって

 

26:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:11:23 ID:WPCwNj060

と言うかカノープスにGⅠ取らせてくれや

 

27:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:11:29 ID:0TbPpekah

今回割と総力戦だったのに……

 

28:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:11:36 ID:5ytqr7ePn

3着ネイチャ4着イクノかぁ

 

29:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:11:42 ID:KdUPSWG8U

1着東条2着沖野3着南坂に既視感を感じる

 

30:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:11:49 ID:T0ldkTjWc

はいはいクソ定期クソ定期

 

31:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:11:54 ID:e6j0eAiBo

そう言えばリーディングトレーナーは解説員じゃないんだな

 

32:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:12:00 ID:m7dOIPz6t

解説員勝ち星自体は少ないからな

 

33:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:12:07 ID:mEdEZ8Pgz

解説員はチームを率いるようになって無敗続けられたらすごい

 

34:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:12:13 ID:poICv9ign

チーム率いるようになっても無敗続けられたらそれはそれで恐ろしい

 

35:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:12:19 ID:/d1d3lCFi

解説員 勝率1.00

おハナさん 勝利0.37

 

36:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:12:25 ID:6rWQ90x7y

おハナさんもおかしいよ……

 

37:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:12:31 ID:jjDOrZxp1

カノープスはスピカリギルに負け続けてるのが永遠の3番手感ある

 

38:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:12:38 ID:fpJeAUQ3e

カノープスのウマ娘に勝てる→超一流

カノープスのウマ娘と競り合える→一流

カノープスのウマ娘に負ける→それ以下

 

39:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:12:45 ID:gfbIypDT1

リトマスカノープスやめろ

 

40:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:12:51 ID:LJvo8yRPf

南坂Tはなにか一歩足りないがもう10年くらい続いてる

 

41:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:12:58 ID:naS6rYHNV

カノープスがGⅠを取れる日は来るのか

 

42:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:13:04 ID:8LCLNR53Q

GⅠとれないことを除けば極めて有能なカノープス

 

43:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:13:09 ID:l01j6npnW

現地だけどブルボンクソ強かったわ

 

44:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:13:16 ID:dj3NcVZzy

いいなー

 

45:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:13:22 ID:lYW0PIKKb

ブルボンは勝負服がかっこいい

 

46:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:13:28 ID:lQ9R5f2RL

かっこいいのはそうだけど尻尾のあれ何?

 

47:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:13:34 ID:xkpUx5eVM

さあ……

 

48:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:13:40 ID:5pO5K6+dS

わからない。俺たちは雰囲気で勝負服を作っている

 

49:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:13:46 ID:NaOo7TyH9

ブルボンちゃんは謎の生体電波を放ってるからそれを利用して浮かんでるんやで

 

50:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:13:52 ID:rzUWcPji0

謎生物ブルボン

 

51:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:13:58 ID:D3KbODy/8

謎の生体電波ってなに?

 

52:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:14:04 ID:NaOo7TyH9

謎や

 

53:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:14:10 ID:kRfxhAlYw

というか阪神大賞典恒例のマックイーンのインタビューがなくなっちゃって悲しい

 

54:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:14:17 ID:ciNSCnkl6

まあ春天後にやってもろて

 

55:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:14:23 ID:YLUSuxIHB

と言うかマックイーンがいつものルーティン崩したの不吉で嫌だわ

 

56:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:14:29 ID:xuXXui3oJ

阪神大賞典→天皇賞春のルーティンか

 

57:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:14:36 ID:G6xUiDc7+

ちょっちゅねーも試合前のルーティン崩して負けたしな

 

58:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:14:41 ID:jT8W7sS8E

ライスシャワーが重賞初制覇したのも不吉

 

59:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:14:47 ID:IjneWzNWk

マチタンも復帰したし、ブルボン世代は怪我が無いようで何より

 

60:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:14:54 ID:NaOo7TyH9

あと100メートルで失速しとったからなんか試したのかもしれへんな

 

61:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:15:00 ID:hgw8bxkHZ

してたか?

 

62:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:15:06 ID:3KlBW4ZVg

芦毛伝説第3章対距離延長伝説の最後は普通に見たい

 

63:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:15:12 ID:m4PDHQLPJ

テイオー春天出れそう?

 

64:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:15:18 ID:l1OzuxS21

無理

 

65:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:15:25 ID:i0rWrNItM

たぶん無理

 

66:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:15:31 ID:m4PDHQLPJ

そっか……

 

67:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:15:38 ID:2cYfF9yPB

テイオーは宝塚記念での復帰を目指すとかなんとか

 

68:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:15:45 ID:NaOo7TyH9

というか見返したらちゃんとラップタイム刻めてるやんけ 大丈夫かと思ったけど気のせいだったわ

 

69:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:15:51 ID:u5A2j4Tll

マ?

 

70:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:15:58 ID:K+ev7yg4S

じゃあジャパンカップと有馬記念はなんだったのか

 

71:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:16:03 ID:NaOo7TyH9

有力な逃げウマ娘対策ちゃうの。ラップ走法って要は事前やることを決めてその通りにトレースして動かなアカンのやから、前抑えに来る逃げウマ娘は天敵やん

 

72:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:16:10 ID:1EgG/wSkV

そう言えば解説員ってパーマーを評価してたな

 

73:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:16:15 ID:NaOo7TyH9

パーマーちゃんは普通に強いで

 

74:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:16:21 ID:U0II/T5OT

グランプリウマ娘だもんな

 

75:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:16:27 ID:lcrZLV1AC

ブルボン対マックイーン対ライスシャワーか……

 

76:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:16:33 ID:WVv7hD99S

ライスシャワーとかいうダークライ枠

 

77:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:16:39 ID:WsDkIp732

スプリンター、ステイヤー、ステイヤー

 

78:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:16:45 ID:gQpv8dCj4

場違いで芝

 

79:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:16:51 ID:BEclQB1bg

やっぱりブルボンっておかしいわ

 




100人の兄貴たち、感想ありがとナス!

Absinthe兄貴、外道学生兄貴、ぬぬのハンカチ兄貴、ji1qgm兄貴、イヌキ兄貴、リュー@兄貴、評価ありがとナス!

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アフターストーリー:河豚

 ――――さようなら、サイレンススズカ。語り継ごう、お前の速さを

 

 空港に詰めかけたアメリカの一般トゥインクル・シリーズファンが掲げた日本語の横断幕に送られて、サイレンススズカは飛行機に乗った。

 

 約一ヶ月後のジャパンカップには、ナリタブライアンが出る。

 そうゆったりとアメリカで勝利の余韻に浸っているわけにもいかなかった。

 

 サイレンススズカが制したのはBCターフ。すなわち、ブリーダーズカップターフ。アメリカの芝レースの最高峰。

 日本とは違いダートが主流のアメリカであるが故に芝のレースの最高峰とは言えないが、それでも押しも押されもせぬ国際GⅠ。

 

 普通のトレーナーや普通のウマ娘であれば1週間ほどは勝利の余韻に浸りそうなものだが、東条隼瀬が勝利の余韻に浸った時間は約3分。

 インタビューを終えると、彼の頭はさっさとジャパンカップにシフトしていた。

 

「さようならとか」

 

 離陸する寸前、よよよーと泣いているアメリカの信者たちを窓から見た教祖(無自覚)は、ボソッと呟く。

 

「語り継ごうとか」

 

 自分の速さに魅せられた――――と、サイレンススズカは思っている――――ファンたちが未練がましく見送りに来た風景に向けて手を振りながら、サイレンススズカは隣に座っている男へ振り返った。

 

「そう言っていただけるのはありがたいんですけど、来年また来るんですよね」

 

 というか、3ヶ月後くらいに。

 

「まあ、まだ発表するわけにもいかんからな」

 

「そうですね……」

 

 まあまだ発表されていないのだから仕方ないが、スズカとしてはこれほどまでに騒がれるとは思わなかったし、自分と同じイニシャルを持ちし母親を死ぬほど叩いていたメディアが死ぬほど叩かれるとは思いもしなかった。

 

 ――――お前らがまともに仕事をしていれば、サイレンススズカはうちの国にいたんじゃい!

 

 そんな怒りをすべてぶつけられたメディアには個人的には哀れさを感じるし、その言い分はまあわかる。

 

「それにしてもお前、人気者だな」

 

「はい。そうみたいですね」

 

 スズカの父は日本人だが、分業制が進んだアメリカのトレーナー制度を学びに来た留学生であった。

 分業制とはつまり、育成担当と戦術担当と医療担当が手を取り合ってシステム的にチームのウマ娘を運用していく、というシステム。

 

 ――――日本のトレーナーはこれら三役を一人でこなしているが、これではあまりにも個人の資質に頼りすぎる

 

 そう判断したスズカの父は単身アメリカに留学してきた。

 故に彼女の母と出会った場所はアメリカで、時期としては新米医療担当トレーナーとして母が死にかけていたとき、らしい。

 

 ウイルス性の腸疾患でぶっ倒れていたとき、あまりにも治りが遅くて匙を投げた先輩の医療担当から引き継いで粘り強く治療したからだ、とか。

 

 献身的で粘り強い治療でなんとか母を冥界から引っ張り戻した父に対して、救われた側はケロリとした顔で言った。

 

 ――――よく私を助けた。だからテメーに、栄光をくれてやろう

 

 その後も母の乗った送迎バスの運転手が心臓麻痺で操縦不能となり大事故を起こした結果怪我したりなんだりしたが、アメリカの三冠の内二冠を占めた。

 そしてその後もメディアに叩かれたりなんだりして、父の出身国である日本に追放されるような形で渡ってきたのである。

 

 まあ長くなったが、つまり母がまともな扱いをされていればそのままアメリカにいただろうし、となるとスズカ自身もアメリカ人となっていたということになる。

 

「お前の母の走る姿は、それはそれは美しかった。しなやかな豹のようで……まあ、お前に似ている、というのは因果が逆なんだろうが」

 

 影に沈む豹。

 

 そう形容されるスズカの母は何回か理不尽な怪我をしたり病気をしたり先天的に走るのに向いていなかったりと、とにかく才能以外に恵まれていなかったような感がある。

 

 しかしそれでも、強い。走る姿を見ればひと目でわかるほどに。

 それが走る以前の状態で評価されないというのは、彼が彼の皇帝と共有する志に反する。

 

 ――――すべてのウマ娘に幸福を

 

 それの願いは即ち、すべてのウマ娘に挑戦する権利が与えられ、正しく評価されることを望むもの。

 その理想と現実はあまりにもかけ離れていて、その現実の象徴の1側面がスズカの母だった。

 

「ともあれ、正しいものが正しく評価されたのはいいことだ。1世代前に評価されなかったのは残念だが」

 

「でもその場合、私は日本に居なかったかもしれませんよ」

 

「ああ。かもな」

 

 死ぬほど軽い発言に、スズカはちょっとムッとした。

 最近距離が縮まった。というか、元に戻った。なのに居なかったかもしれませんと言われて『かもな』で流すのはどういうことなのか。

 

「いいんですか?」

 

「なにがだ」

 

「だから……私がいなくて、トレーナーさんはいいんですか?」

 

 そう言って、少し気づく。

 あれ、私って居ない方がいいんじゃないかと。

 

 秋天での怪我は、彼の心に重篤な怪我を負わせた。あれは自分が絶好調すぎたが故の、そしてその調子を制御せず速さを追い求めたが故の失策であり、トレーナーさんは何も悪くない。

 

 少なくとも、結構頑固なところがあるサイレンススズカは今もそう思っている。無論口には出さないが。

 

 となると、彼はもう少し自信を持っていただろう。自己評価が沈み切ることもなかったはず。

 

(うそでしょ……)

 

 いつものアレを心の中で呟き、これまでの3年間、あるいは4年間とかもっと長く彼を苦しめていた大半の物事が自分が居なくなることによって解決されることに思い至ってしまったサイレンススズカは、ちょっとナーバスズカになった。

 

 ちなみにここまで僅か1秒。私の方が速いですよ……と言い続けた彼女は、思考も速かった。

 

「いいんですか?と聞きたいのはこちらだ」

 

「え?」

 

「え? ではない。お前の母が正しく報われていれば、お前はアメリカで育ちアメリカのトゥインクルシリーズで走ることになっていただろう。それより、俺と走っている今はマシか?」

 

「はい。比べるまでもなく」

 

 0.1秒もない――――即ち彼女がBCターフで発揮した神業的な領域の構築速度を凌駕する速さでの返答。

 それに対して、東条隼瀬は凪いだように穏やかな鋼鉄の瞳で頷いた。

 

「そうか」

 

 驚きもしない。

 否定もしない。

 ただ、サイレンススズカを尊重する瞳。

 

 4年前であったなら。

 いや、1年前であったなら、ここで間髪入れない否定が飛んできたことだろう。

 

 お前を怪我させるような無能の俺と出会ったというのは、比べるまでもないどころか疑いようもなくお前の人生における損失だ、と。

 

 それくらいは言っていたかもしれない。

 

 だが彼は静かに現状を受け入れ、また現状を受け入れたサイレンススズカの判断を柔和に受容した。

 

(変わったんですね。私が居ない間に)

 

 ちょっと悔しいような、嬉しいような。

 東条隼瀬は、自分のトレーナーさんは、進歩した。進化した。どこか感情的で幼かった彼は、確実に一皮むけた。羽化したと言っていいかもしれない。

 だがその場面に居合わせたのは、自分ではない。そのことがスズカとしては悔しくもあり、嬉しくもある。

 

「お前が夢想と現実を見比べてなお、現実の方が比べるまでもなくいいと思ってくれるのは、トレーナーの端くれとして幸せなことだ」

 

「あ、やっぱりあんまり変わってないかもしれませんね」

 

「あ?」

 

 端くれという言葉をわざわざ付け加えたりするところが、旧隼瀬ポイントが高い。

 思えば基本的に、彼は天才らしい天才である父と天才らしからぬ天才である己を比べて自己評価を埋没させていく癖があったのではなかったか。

 

「なにがだ」

 

「いえ、別に」

 

 ――――あ、そ

 

 基本的に会話を続ける努力を皆目行わない男は、その『らしさ』を全開にして追及の手を緩めた。

 

「トレーナーさん」

 

「ん?」

 

 フランツ・カフカ著、変身。

 理不尽が製本機にかけられたようなカフカ作品の中でも特に理不尽なそれに目を通していた東条隼瀬の眼が、一瞬スズカの蒼緑の瞳と交差する。

 

 その一瞬を長引かせたくて、彼女は思ったことを素直に言った。

 

「私を忘れないでいてくれて、ありがとうございます」

 

「…………皮肉か?」

 

 忘れようもないだろう。あんなことをしておいて。

 あくまでも『自分が悪い』というスタンスを持っている男は、ものすごく考えた結果結論を出した。

 

 サイレンススズカの思考回路は、なんというか走ることを主軸に置いているが故にプリミティブである。

 

 メジロドーベルに対して『スペちゃんがいつもお腹を鳴らしていてかわいそうだから、お腹が減らなくなるアロマはないか』と聞いた時は実にサイレンススズカやってると思った。

 

 普通なら、『お腹がいっぱいになるような』という発想をする。

 だが彼女は『お腹が減らなくなる』という発想をした。

 

 それはおそらく『お腹が鳴っている→お腹が減っている→お腹が減っていると走れない→かわいそう』という思考が展開された結果なのだろう。

 ついでに言えば、『お腹がいっぱいになる→満腹感がある→走る気にならない→かわいそう』という思考も働いたことと思われる。

 

 つまり何が言いたいかというと、彼女は結構常人には理解し難い思考をすることが多いのだ。

 

「え?」

 

「いや、いい」

 

 本当に純粋に、忘れないでくれて嬉しい。そう言いたかっただけなのだろう。

 サイレンススズカ検定があれば結構なところまでいけるだろう男は、勝手にそう解釈した。

 

「それよりお前、帰ったらなにか食べたいものはあるか?」

 

 強引な話題転換はトレーナーの特権。

 

 これ以上プリミティブスズカワールドの片鱗を浴びせられると人格的影響を受けかねないと判断した男は、取り敢えず話題を一般的なものへと戻した。

 

「特に何も。トレーナーさんはどうですか?」

 

「……フグかな」

 

「ふぐ。また珍しいものが食べたいんですね」

 

「ああ。それに近い物を見てからなんとなく食べたくなった。お前、フグは嫌いか?」

 

「いえ。嫌いじゃありませんよ、ふぐ」

 

 じゃあ、食いに行くか。

 はい。

 

 そういうことで、無事に着陸した飛行機から降りた二人はなんとなく近場のふぐ料理店に入った。

 

「トレーナーさんがふぐを食べると知ったら、会長さんは心配するかもしれませんね」

 

「ああ……かもな。だが俺は幽霊4世だからな。死んでるようなもんだ。だから当たらんさ」

 

 相当に高級なふぐ料理店で繰り広げるべきではない会話をサラッとしているあたり、二人はプリミティブな価値観を共有していた。

 

「自分を含めて4代もの間母方の先祖が代々死にかけてると言うのを自慢するのは、トレーナーさんくらいだと思いますよ」

 

「確かにそうだ。だが死にかけてて死んでないんだから、しぶとい。これは結構自慢できることだ。違うか?」

 

「確かにそうかもしれませんね。私の母も5、6回死にかけてますけど、今日も元気に母国嫌いを拗らせてましたから」

 

 たぶん、母親は母国アメリカを愛していたのだろう。とてもそうは思えないが、彼女なりに。

 だからこそ、好きだったからこそ、嫌っている。拗らせている。

 

 割とよくできた娘のサイレンススズカは、なんとなくそこらへんも察していた。

 

「確かに俺は病弱だ。だがこの通り、最近は倒れていないし風邪をひいてもいない。つまりはバニラモンスターのフレーバーテキスト化しつつある。これはもう克服したと言ってもいいんじゃないか」

 

「なるほど」

 

 曖昧な相槌を打つ、サイレンススズカ。

 時差ボケなのか、普段沈着な彼女のトレーナーは妙にテンションが高い。

 

 あるいは、単に食べたいものを食べているからかもしれないが。

 

「人間とウマ娘は、知恵がある。知恵があるということは、成長を許された生き物だということだ。つまり、短所を克服することにこそ人の本懐がある」

 

「トレーナーさん」

 

「なんだ」

 

「これは直感なんですけど、それくらいにしておいた方がいいと思いますよ。なんかそう遠くない未来、しっぺ返しが来るような気がします」

 

 これは全く以て事実であった。

 近いようで遠い未来、しっぺ返しはやってくることになるのである。

 

 しかしそのことを、サイレンススズカは確信していたわけではなかった。

 彼女のトレーナーが言うところの、嫌な予感がしていたから、止めた。

 

 つまりこのときに表れた兆候は、その程度の物だった。




35人の兄貴たち、感想ありがとナス!

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メモリー:3/4/24

天皇賞前夜


【マックVSブルボンVS】天皇賞前日予想スレ【ダークライ】

1:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:49:00 ID:+jarUoauv

実際誰が勝つと思う?

 

2:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:49:08 ID:YiaGIMj7h

マックイーン

 

3:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:49:17 ID:nFemp+9MV

メンツは?

 

4:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:49:27 ID:XiOTHbZsZ

 1枠1番ミホノブルボン

 2枠2番トーワツカサ

 2枠3番ライスシャワー

 3枠4番ムッシュシュガー

 3枠5番マチカネタンホイザ

 4枠6番タケノビロード

 4枠7番ゴールデンアンク

 5枠8番シャコーハイパー

 5枠9番メジロパーマー

 6枠10番レットイットゴー

 6枠11番アイルトンシンボリ

 7枠12番ザムシード

 7枠13番イクノディクタス

 8枠14番メジロマックイーン

 8枠15番キョウワウィナー

 

5:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:49:35 ID:Euxx/5b+A

もう発表されてたか

 

6:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:49:44 ID:uWnh3CAkU

そら(前日だし)そうよ

 

7:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:49:52 ID:gR2wzVIoH

やっぱりマックイーンだろ。去年も勝ってるし一昨年なんか春秋連覇してるんだから

 

8:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:50:00 ID:yHkbW6ycH

ん?

 

9:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:50:09 ID:UQKUTs7a7

ん?

 

10:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:50:18 ID:hrsVy424T

ちょっとここ消えてますね

 

11:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:50:28 ID:dtSfD49xX

ぶっちぎりの2着の天皇賞ウマ娘なんていなかったんや!

 

12:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:50:36 ID:kK8HgnfiN

あれほんと悲しかった

 

13:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:50:45 ID:ms7kG6RS5

マックイーンはまあ笑い事で済むとして、6バ身ぶっちぎられて一着って……

 

14:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:50:53 ID:r6TZf3lKG

>>13

済まない定期

 

15:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:51:02 ID:hSR4fjmom

マックイーンは斜行しなくても勝ってたと思うけどね

 

16:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:51:11 ID:LHLb9lOVW

まあそうわね

 

17:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:51:20 ID:7KhJnYnAh

3200ならマックイーンでしょ

 

18:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:51:30 ID:y9Wb+IBuD

ブルボンのライバルと言えばライスだからライスを応援する。でも最終的にはブルボンに勝ってほしい

 

19:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:51:40 ID:MovAlDZmn

ブルボンならなんとかしそう

 

20:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:51:48 ID:jwyLZVQvc

ロボちからがつよいからね

 

21:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:51:58 ID:T+9gXsHxI

実際3000メートルレコードで走れたんなら3200はいけるべ

 

22:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:52:06 ID:xDbgOxGKz

さすがに3200は無理。走ることならできるだろうけど、最強のステイヤーマックイーンと生粋のステイヤーライスシャワーにスプリンターが勝てるはずがない

 

23:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:52:15 ID:daCB7Ffm5

>>22

おは距離限界おじさん。今日も元気やね

 

24:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:52:24 ID:D68ofGDFv

口を開けば距離限界距離限界と、他に言葉を知らないのかな?

 

25:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:52:33 ID:dtlLOFgeE

まあ普通は無理だわな

 

26:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:52:42 ID:6MnS3uA3X

ブルボンは普通じゃないからな

 

27:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:52:51 ID:cCx6v14KV

純粋にライスに勝ってほしい

 

28:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:52:59 ID:prpzZw5wA

頑張ってるもんな。そりゃあ他の娘も頑張ってるんだろうけど

 

29:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:53:09 ID:7ZCgFXXQU

ブルボンにボコられ続けてるからいい加減ここらへんで勝ちをもぎ取ってほしい

 

30:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:53:18 ID:FOeevCatG

勝てるとしたらライスシャワーよな

 

31:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:53:27 ID:am/PKEeQE

マックイーンなんだよなぁ……

 

32:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:53:36 ID:2yzKoK7sc

明らかにライスシャワーよりマックイーンの方が強いだろ

 

33:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:53:45 ID:4AH4nMj6S

姪っ子が応援してるからミホノブルボンに勝ってほしい

 

34:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:53:54 ID:dlr2mNT/2

ブルボンここ勝ったらすごいよな。全部の壁を努力でねじ伏せたことになる

 

35:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:54:03 ID:hhF8D/mCY

ステイヤーズステークス「やあ」

 

36:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:54:11 ID:B1HS7muNm

>>35

出る意味無い定期

 

37:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:54:20 ID:SIJiAolro

クラシック三冠と春天は普通にすごいわ

 

38:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:54:28 ID:qH8Oqj2QK

寒門が栄誉ある春の盾を得るのはロマンがある。前例がないわけじゃないけど

 

39:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:54:37 ID:i/leINoJl

春天勝てたら年度代表ウマ娘あるかな

 

40:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:54:46 ID:bwr4N7xIb

秋のGⅠ戦線次第だな

 

41:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:54:56 ID:3e/HfQi9K

でも春天勝てたら顕彰ウマ娘は間違いなさそう

 

42:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:55:05 ID:bYv53yzet

春天は今でもこだわる人多いしな

 

43:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:55:14 ID:gt9iiH3Rf

こうなるとブルボンの春ローテは春シニア三冠なんだろうけど、よく春天出ようと思ったよな

 

44:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:55:23 ID:90Qf8XA+4

解説員の口ぶりからして出ないと思ってたわ

 

45:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:55:32 ID:K77uslot0

わかるわかる

 

46:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:55:40 ID:qVoTqQMZY

菊花賞出たのはブルボンが三冠取りたかったからだろうけど、今回はなんでなんだろ

 

47:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:55:49 ID:7W5pts/aS

普通にブルボンが出たかったからだろ

 

48:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:55:58 ID:SjBIkDkz+

まあそれ以外に無いしな

 

49:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:56:07 ID:YL/1V3RRm

なんでブルボンは出たいんだろうか

 

50:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:56:17 ID:vMWmGGxGr

普通に最高峰のGⅠだからだろ

 

51:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:56:26 ID:7QLBFoAbv

最高峰って言ってるのは名門の連中だろ

 

52:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:56:36 ID:+NfF9/oBw

メジロとかな

 

53:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:56:44 ID:NaOWSgRmY

お前らは知らんやろうけど、名門は良くも悪くもアンテナ張ってるから春天はどーでもええかーってなってきてるで

こういう伝統は案外寒門の娘の方が大事にしたりするもんなんや

 

54:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:56:53 ID:4bMp7sV6I

春天ってなんでどうでもいいの?

 

55:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:57:03 ID:d8oAUuw1u

>>54

国際化していく中でステイヤーの需要がない

外国の有用なレースはたいてい2400メートルまで

 

56:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:57:12 ID:NaOWSgRmY

長距離走れるスタミナがあるならその分速さに転換できた方が広く活躍できるんやで

 

57:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:57:21 ID:TPzeMUEw/

はえー

 

58:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:57:29 ID:K2qMNle4G

じゃあメジロってヤバいの?

 

59:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:57:37 ID:E/exUTrnG

と言うかシンボリさんところもやばくね

 

60:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:57:47 ID:8MoBGU12i

シンボリにはマティリアルくんちゃんがいるぞ

 

61:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:57:55 ID:bcXw0Ej/P

なぜかシンボリの本家本元なのに家名が付いてないマティリアルくんちゃんかわいそう

 

62:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:58:03 ID:IhY1nBcx9

マティリアルくんちゃん今イギリスで頑張っててかわいい

 

63:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:58:12 ID:NaOWSgRmY

マティリアルくんちゃんはコイツは世界に通用するウマ娘にするんや!っていうので家名省いたんやで

 

64:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:58:21 ID:tSvunzISr

外国だとあんまないもんな

 

65:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:58:29 ID:NaOWSgRmY

親の名前の一部継いだりとかはあるけどずーっと続く感じじゃないわな

 

66:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:58:39 ID:5RyIgU0Z8

シンボリルドルフ……シンボリ

サイレンススズカ……サイレンス

トウカイテイオー……トウカイ

メジロマックイーン……メジロ

 

ブルボンは?

 

67:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:58:49 ID:opHR0LYa7

ない

 

68:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:58:58 ID:lSP8NSn9c

ブルボンの娘が

なんたらブルボン

ブルボンなんたら

 

 

ミホノなんたら

なんたらミホノ

 

になる。娘も活躍したら家名になる

 

69:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:59:08 ID:oM5eYbhGC

シリウスシンボリとシンボリルドルフみたいなレパートリーあるもんな

 

70:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:59:17 ID:MDaY8n3fZ

米は?

 

71:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:59:26 ID:G2n9h7KKt

ライスはマティリアル型

 

72:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:59:34 ID:AdOrskKhm

ああ、あれ普通に祝福的なライスシャワーから来てるのね

 

73:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:59:44 ID:QAZaqyMwF

ならそろそろ祝福したいしされてほしいんだが?

 

74:尻尾上がり名無し ??/4/24 19:59:52 ID:pndLQ7oxn

相手が悪すぎる

 

75:尻尾上がり名無し ??/4/24 20:00:02 ID:7PLbRN8/G

ミホノブルボンに勝てなかったステイヤーがマックイーンに勝てるわけがない。あいつスプリンターだぞ

 

76:尻尾上がり名無し ??/4/24 20:00:10 ID:2iTwgCCcZ

ちょっと距離伸びてるだけだしな

 

77:尻尾上がり名無し ??/4/24 20:00:19 ID:RYmvsLudR

ちょっと……?

 

78:尻尾上がり名無し ??/4/24 20:00:29 ID:c4ZLkCLuo

ちょっと(+1600メートル)

 

79:尻尾上がり名無し ??/4/24 20:00:37 ID:T6VluQZ9Z

そして明日の今頃には+1800メートルになるであろう……

 

80:尻尾上がり名無し ??/4/24 20:00:46 ID:QxqyXWxhS

未来予知かな

 

81:尻尾上がり名無し ??/4/24 20:00:55 ID:aZHFlEEAj

定期的に預言者現れるよな

 

82:尻尾上がり名無し ??/4/24 20:01:05 ID:ts2nJ1Q3+

>>79見て思い出したんだけど、未来人ニキはなんか言ってないの?

 

83:尻尾上がり名無し ??/4/24 20:01:15 ID:8quoh57Py

アイツ外したよ

 

84:尻尾上がり名無し ??/4/24 20:01:25 ID:ts2nJ1Q3+

マ?

 

85:尻尾上がり名無し ??/4/24 20:01:34 ID:/kIWI7jFW

有馬記念のことならアレは何年経ってもテイオーが勝てば成就するから外したとはならんだろ

 

86:尻尾上がり名無し ??/4/24 20:01:43 ID:1/PT6Uxpi

そもそもあの未来人ニキ曰くブルボンは凱旋門賞まで負けないらしいから、つまりここも勝つって思ってるってことだろ

 

87:尻尾上がり名無し ??/4/24 20:01:52 ID:KF0HmRUVu

安心したわ。ブルボンには負けてほしくないし

 

88:尻尾上がり名無し ??/4/24 20:02:01 ID:R8P63ywaM

姪が応援してるから負けてほしくない

 

89:尻尾上がり名無し ??/4/24 20:02:10 ID:d+RCV2IQ7

ブルボンの無敗もすごいけどマックイーンの3連覇見たいわ

無敗での天皇賞制覇はルドルフがやってるし

 

90:尻尾上がり名無し ??/4/24 20:02:19 ID:9yWiHwmS/

同一GⅠ3連覇はまだないんだっけ?

 

91:尻尾上がり名無し ??/4/24 20:02:28 ID:WtAdLVzFG

そう

 

92:尻尾上がり名無し ??/4/24 20:02:38 ID:fYpWjfWjK

ブルボンの無敗天皇賞制覇でもマックイーンの3連覇でも祝福するわ

 

93:尻尾上がり名無し ??/4/24 20:02:47 ID:Ex2t8Y89S

ライスのGⅠ初制覇……

 

94:尻尾上がり名無し ??/4/24 20:02:55 ID:fYpWjfWjK

初GⅠ制覇なんてGⅠ勝ったウマ娘なら誰でもやってるだろ

 

95:尻尾上がり名無し ??/4/24 20:03:04 ID:7yX6WN4vx

記録とかどうでもいいからライスに勝ってほしい

 

96:尻尾上がり名無し ??/4/24 20:03:14 ID:lXMmZlAMP

ここまで来たんだからブルボンには距離限界を極めてほしいわ

 

97:尻尾上がり名無し ??/4/24 20:03:23 ID:2++fLC0mQ

天皇賞春の価値が下がってるんならもう出ないかもしれないし、マックイーンの天皇賞春3連覇見たい

 

98:尻尾上がり名無し ??/4/24 20:03:32 ID:czVg9yg7U

逆に層が薄くなって勝てるかもしれんよ

 

99:尻尾上がり名無し ??/4/24 20:03:41 ID:+Rx0B2bev

そんな3連覇嫌だわ。どうせやるならミホノブルボンという強敵を破って達成してほしい

 

100:尻尾上がり名無し ??/4/24 20:03:50 ID:/w3/bZBrR

明日か……

 

 



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メモリー:3/4/25

https://syosetu.org/novel/259565/79.html
から
https://syosetu.org/novel/259565/82.html
まで


【ステイヤーズVSスプリンター】天皇賞春実況スレ【マックイーン3連覇VSブルボン無敗】

1:尻尾上がり名無し ID:CPikI5O6E

1枠1番ミホノブルボン

2枠2番トーワツカサ

2枠3番ライスシャワー

3枠4番ムッシュシュガー

3枠5番マチカネタンホイザ

4枠6番タケノビロード

4枠7番ゴールデンアンク

5枠8番シャコーハイパー

5枠9番メジロパーマー

6枠10番レットイットゴー

6枠11番アイルトンシンボリ

7枠12番ザムシード

7枠13番イクノディクタス

8枠14番メジロマックイーン

8枠15番キョウワウィナー

 

1番人気 ミホノブルボン

2番人気 メジロマックイーン

3番人気 ライスシャワー

 

2:尻尾上がり名無し ID:Y0KFtHXBy

ブルボン1番人気はすごいな

 

3:尻尾上がり名無し ID:tkDpbfwiX

マックイーンに勝つのか……

 

4:尻尾上がり名無し ID:SQUDe1+dW

マックイーンが一番人気外すの久しぶりじゃね?

 

5:尻尾上がり名無し ID:Qf6jcI9xE

いや、前走でも2番人気だった

 

6:尻尾上がり名無し ID:0aXTQmQ0t

あと去年の春天でも2番人気だったな

 

7:尻尾上がり名無し ID:abd1HbVcT

一番人気誰???

 

8:尻尾上がり名無し ID:YxknMqVJm

テイオー

 

9:尻尾上がり名無し ID:abd1HbVcT

ああテイオーか……ならわかる

 

10:尻尾上がり名無し ID:TN+sxbVl5

テイオーはクソ人気だからな

 

11:尻尾上がり名無し ID:dxbF5oFgZ

俺あのメスガキ好き

 

12:尻尾上がり名無し ID:4+ze1uAgP

ガキが……って言いたくなる

 

13:尻尾上がり名無し ID:4FY4PBfW6

メスガキメスガキ言われてるけどファンサ神のいい子だぞ

 

14:尻尾上がり名無し ID:Mm6gPLuxB

本人が出走しないところでこれほどのレスを……

 

15:尻尾上がり名無し ID:0s3RboihA

やはり天才か……

 

16:尻尾上がり名無し ID:9bss51Sxr

マックイーン外枠かぁ

 

17:尻尾上がり名無し ID:tkW2v8/G6

マックイーン外枠ってのはキツイな

 

18:尻尾上がり名無し ID:4CE0GaDuQ

暗雲立ち込めてきたわね

 

19:尻尾上がり名無し ID:OrdDt15Jd

外枠っていうほど悪いか? 普通にマックイーンならなんとかするだろ

 

20:尻尾上がり名無し ID:dnEQJsPxu

なんとかするだろうけど相手が悪い

 

21:尻尾上がり名無し ID:E02zZi+y4

マックイーンって自分と同レベルのステイヤーと走ったことないし、今回に限っては外枠の不利がダイレクトにくるかも

 

22:尻尾上がり名無し ID:Ha/yjMZCS

同レベルのテイオーがいるだろ

 

23:尻尾上がり名無し ID:mZ5IvBuT1

テイオーさんは中距離専門なので……

 

24:尻尾上がり名無し ID:dxbF5oFgZ

俺あのメスガキ好き

 

25:尻尾上がり名無し ID:cntqXeMMY

ガキが……宝塚記念は期待してるぞ……

 

26:尻尾上がり名無し ID:CFLwNWBzx

ガキが……焦るなよ……

 

27:尻尾上がり名無し ID:MV71S6TEi

ガキが……怪我には気をつけろよ……

 

28:尻尾上がり名無し ID:EOC7amEtY

ガキが……張り切りすぎるなよ……

 

29:尻尾上がり名無し ID:kITLHiqh9

ガキが……宝塚でブルボンに勝てよ……

 

30:尻尾上がり名無し ID:viPanePNU

テイオー人気すぎ定期

 

31:尻尾上がり名無し ID:fHJI2uY5/

俺未来人だけどテイオーの次走は有馬記念だよ

 

32:尻尾上がり名無し ID:FsRXBt8R6

うわ出た

 

33:尻尾上がり名無し ID:XMC2psP9e

リアタイで見るのはじめてだわ

 

34:尻尾上がり名無し ID:bCuLTp4gX

同じく初遭遇。ほんとにID変わらんのね

 

35:尻尾上がり名無し ID:YDH67wHiq

沖野Tは次走宝塚記念って言ってるけどまだなにかあんのか

 

36:尻尾上がり名無し ID:96vsL4AaS

メスガキに厳しい三女神さんはさぁ……

 

37:尻尾上がり名無し ID:BUe/jZeD1

まあ……偽物かもしれないし……

 

38:尻尾上がり名無し ID:KVBBw/9wG

>>31

おい、これからなにかあんのか?

 

39:尻尾上がり名無し ID:TIBa8dGJs

こいつ基本的に質問には答えないよ

 

40:尻尾上がり名無し ID:wW80MgIjz

というかマックイーンの不利ってどんなもんなんだろ

 

41:尻尾上がり名無し ID:NAozqSCuj

長距離やから枠順不利は誤差や

 

42:尻尾上がり名無し ID:3xUA8x9ct

なんで誤差なん?

 

43:尻尾上がり名無し ID:NAozqSCuj

長距離は長くてペースも遅いからスタート時の有利不利は然程でもないんや

 

44:尻尾上がり名無し ID:tBT86vE2V

じゃあ外枠不利って嘘なのか

 

45:尻尾上がり名無し ID:NAozqSCuj

嘘とは言うとらんやろちゃんと読めやドブカス

なんでボケ共は書いてあることすら読めないんや

 

46:尻尾上がり名無し ID:NyXALUm9p

瞬時にキレてて芝

 

47:尻尾上がり名無し ID:q7Yn7ZtpL

そう言えば最近ドブカスニキの姿見てなかったな

 

48:尻尾上がり名無し ID:NAozqSCuj

スプリングドリームトロフィーで忙しかったんや

 

49:尻尾上がり名無し ID:uQMibIaQI

まあドブカスニキの言いたいことは長距離は短距離ほどスタート時の不利は影響しないけど、ないわけじゃないってことだろ

 

50:尻尾上がり名無し ID:NAozqSCuj

せやね

 

51:尻尾上がり名無し ID:KkKbja9+z

要約の民有能

 

52:尻尾上がり名無し ID:6ikauu2Vm

(言ってることがわかりにくい)

 

53:尻尾上がり名無し ID:Z4BFejZtz

血統だからしゃーない

 

54:尻尾上がり名無し ID:vvzRqhx6M

じゃあマックイーンは相対的に不利なのね

 

55:尻尾上がり名無し ID:q00xekv0p

最適な位置にいるのは米とロボ。特にロボ

 

56:尻尾上がり名無し ID:jH9GcsBrh

幸運ロボ

 

57:尻尾上がり名無し ID:qVZVcIHu5

ロボ1枠率高いよね

 

58:尻尾上がり名無し ID:D3LE1ef0m

ロボというより解説員は結構な確率で1枠引く

 

59:尻尾上がり名無し ID:SYZJXXdSx

スズカの時もそうだったな

 

60:尻尾上がり名無し ID:NAozqSCuj

そらブルボンちゃんは幸運やろ。隼瀬くんを引けたんやから

 

61:尻尾上がり名無し ID:0bmKbc96a

いっつも思ってたんだけど、ドブカスニキはなんでそんなに前から解説員のこと注目してたの?

 

62:尻尾上がり名無し ID:HVK0b4t6V

スズカじゃないの

 

63:尻尾上がり名無し ID:Mf0l9T8Fp

スズカはトレーナーを必要としないだろ

 

64:尻尾上がり名無し ID:NAozqSCuj

宝塚からジャパンカップまでのルドルフさんのレース見てりゃわかるやろ

 

65:尻尾上がり名無し ID:uhdOWx0oA

宝塚から?

 

66:尻尾上がり名無し ID:NAozqSCuj

宝塚で餌撒いて菊花賞をスローペースに落とし込んで体力温存して中1週のジャパンカップに全力を出すって発想からして頭おかしいわ

普通シニア混じりのグランプリレースを餌にしようとは思わんし、菊花賞は普通にやるだけで勝てるのに敢えてドスローに持ち込んで楽に勝たせとるし

 

67:尻尾上がり名無し ID:l/haAjrzu

あれ解説員がやってたのか?

 

68:尻尾上がり名無し ID:eb0bjT5to

おハナさんらしくないと言えばそうだったけども

 

69:尻尾上がり名無し ID:X5MGXSk2I

おハナさんは公務員の如く普通に勝つもんな

 

70:尻尾上がり名無し ID:NAozqSCuj

当時初陣のトレーナーやで?

んで無敗の三冠かかってるウマ娘相手にこんなんできるかって、できひんもん

 

71:尻尾上がり名無し ID:ppdEBGN45

解説員ってひょっとしたらすごい?

 

72:尻尾上がり名無し ID:4CC0SemUA

解説員は普通にすごい定期

 

73:尻尾上がり名無し ID:kejlDLbfO

解説員はMADだとフリー素材の如くツッコミキャラにされてるけど実はすごいよ

 

74:尻尾上がり名無し ID:H2NytTsPQ

スプリンターで春天挑む精神してるあたり常人ではない

 

75:尻尾上がり名無し ID:LAh5gfr4O

というか新人がよくもまあルドルフに作戦提案しようと思ったな

 

76:尻尾上がり名無し ID:NmECmD2fB

なんで? 聴いてくれそうだし優しそうじゃん

 

77:尻尾上がり名無し ID:NAozqSCuj

ルドルフさんは本当の意味でトレーナーがいらん頭のキレしとるから下手に提案しても正しさに心折られるだけやで

 

78:尻尾上がり名無し ID:LAh5gfr4O

>>76

その提案が受け入れられて無敗の三冠逃したら自分のせいになるんだぞ

 

79:尻尾上がり名無し ID:01xt/sFT1

それは確かに怖いわ

 

80:尻尾上がり名無し ID:NAozqSCuj

そういう責任から逃げるような退嬰的な精神してるやつは勝てへんわ

 

81:尻尾上がり名無し ID:7CKR3QlzX

ぐう正

 

82:尻尾上がり名無し ID:asbbLJk6A

やっぱりトレーナーって化け物揃いなんだね……自信なくすわ

 

83:尻尾上がり名無し ID:NAozqSCuj

>>82

トレーナーになる前になくすような自信がないことに気づいてよかったやん

自己過信してる凡人より自己認識してる凡人のがいくらかマシやで

 

84:尻尾上がり名無し ID:c+D3XZdfN

ぐう畜

 

85:尻尾上がり名無し ID:Olk8Kdkvp

まあ正論であるけど畜生

 

86:尻尾上がり名無し ID:NAozqSCuj

メシ

 

87:尻尾上がり名無し ID:U9pabWjV2

食うの遅くね

 

88:尻尾上がり名無し ID:qyASxBs3b

忙しかったんやとか言ってたからそういうことじゃね

 

89:尻尾上がり名無し ID:KsDGdFpIW

というかそろそろじゃねーか

 

90:尻尾上がり名無し ID:wl8znolok

スレ民誰が勝つと思う?

 

91:尻尾上がり名無し ID:OG1HH2IhD

ロボ

 

92:尻尾上がり名無し ID:yQu6svUDe

ブルボン

 

93:尻尾上がり名無し ID:mUeAWsx92

 

94:尻尾上がり名無し ID:OuFuxBXdt

マックちゃん!

 

95:尻尾上がり名無し ID:Rr51J7lZW

マックイーン!

 

96:尻尾上がり名無し ID:jVzMYJI3j

おしるこ!

 

97:尻尾上がり名無し ID:AKNfHZ6iF

真面目にライスは生粋のステイヤーだと思ってるから米

 

98:尻尾上がり名無し ID:vW/9g9FFp

マックイーンは最強のステイヤーだぞ

 

99:尻尾上がり名無し ID:IP+2lCPXf

ロボでしょ。負けてないし

 

100:尻尾上がり名無し ID:Q5OighWCe

マックイーンも春天では負けてないぞ

 

101:尻尾上がり名無し ID:McdJBG9Pc

ライスも春天は負けてないぞ

 

102:尻尾上がり名無し ID:s7ykOE9KI

負けてない(11-11)

負けてない(2-2)

負けてない(0-0)

 

103:尻尾上がり名無し ID:HnVU2rwlO

ロボこれ勝てば12連勝か

 

104:尻尾上がり名無し ID:eO2UYSCcT

ブルボンは距離がね

 

105:尻尾上がり名無し ID:ZVnCmxQrS

距離限界おじさんはいい加減成仏しろ

 

106:尻尾上がり名無し ID:Lspr4Ev6K

まあ一番不利な距離ではあるだろうけど、言い訳にもせんだろ

 

107:尻尾上がり名無し ID:8CdP2mih8

解説員曰くライスと尋常な決着をつけたかったとのこと

 

108:尻尾上がり名無し ID:V8ajEsWc9

不利な地へ赴く王者の鑑

 

109:尻尾上がり名無し ID:BXkF5t7c+

解説員は勝つ算段あんの?

 

110:尻尾上がり名無し ID:NAozqSCuj

隼瀬くんは無きゃ出さんわ

 

111:尻尾上がり名無し ID:I4HulSkx8

はっや

 

112:尻尾上がり名無し ID:/PL0Z6hFw

まだ5分も経ってないのに帰ってきたの芝

 

113:尻尾上がり名無し ID:asbbLJk6A

解説員は負けたときも解説してくれるんだろうか

 

114:尻尾上がり名無し ID:yov4EGTlh

解説員は解説するのが仕事なんだからするだろ

 

115:尻尾上がり名無し ID:hVVeBXOwv

君たちが勝手に解説員呼ばわりしてるだけで実はあいつはトレーナーと言って、レース後解説する為にいる人間じゃないんだ

 

116:尻尾上がり名無し ID:DCGEdxb57

そうなのか……知らなかった

 

117:尻尾上がり名無し ID:D4N/Lkhhj

>>115

サンキューオグリン

 

118:尻尾上がり名無し ID:fl42OYVM9

サンキューキャップ

 

119:尻尾上がり名無し ID:asbbLJk6A

トレ志望としては結構ためになるから負けても解説してほしい

 

120:尻尾上がり名無し ID:xmqA9P7gA

解説なんてできないねぇ!って言いそう

 

121:尻尾上がり名無し ID:asbbLJk6A

しろ(強制)

 

122:尻尾上がり名無し ID:Yg4ayQ3mx

誰も注目してないけど俺はパーマー推す

 

123:尻尾上がり名無し ID:HLECG3BM/

マチタン推しだけど流石にマックイーンはキツイかなってなってる

 

124:尻尾上がり名無し ID:ZqRjJGpo9

実際強い逃げに勝つには強い逃げが必要らしいからパーマーは重要

 

125:尻尾上がり名無し ID:KID21r4GR

パーマーとか言うテイオーの天敵

 

126:尻尾上がり名無し ID:porothUCQ

長距離の逃げはキツいぞ

 

127:尻尾上がり名無し ID:5ew+HNee0

スプリンターが3200走るのもキツいぞ

 

128:尻尾上がり名無し ID:YKvxRwy2V

もうそこらへんはどうしようもないというか

 

129:尻尾上がり名無し ID:L+rG/Ye0R

ここでメイクデビュー以来の差しブルボンとかされたらビビる

 

130:尻尾上がり名無し ID:G0silc1rm

やりそう

 

131:尻尾上がり名無し ID:MjXOMtYva

解説員ならやりかねないのが怖い

 

132:尻尾上がり名無し ID:cLExmblXs

逃げにはロマンがあるからそこは崩さないでほしい

 

133:尻尾上がり名無し ID:aidBTuqWY

血統と環境と距離限界覆してるブルボン自体がロマンの塊なんだから少しくらい我慢しろ

 

134:尻尾上がり名無し ID:cLExmblXs

それはそう

 

135:尻尾上がり名無し ID:rnp18oCfr

ファンファーレきたー!

 

136:尻尾上がり名無し ID:RfrdEqX49

うわ、はじまらないでくれ

 

137:尻尾上がり名無し ID:KwMqLsKl1

キター!!!

 

138:尻尾上がり名無し ID:pxRMHvEqv

春天の時間だぁぁぁぁあ!

 

139:尻尾上がり名無し ID:pQUpUCnTl

レースの時間だぁぁぁぁ!

 

140:尻尾上がり名無し ID:EctjT7txg

マックイーンの3連覇が無くなるのもブルボンの無敗がなくなるのも見たくないのー

 

141:尻尾上がり名無し ID:j+iq3JFf/

同着しろ

 

142:尻尾上がり名無し ID:qo5C3qH2N

同着したら決着のためにもう一回走ってほしい

 

143:尻尾上がり名無し ID:MyHaKwoGp

>>142

MLBみたいな発想だな

 

144:尻尾上がり名無し ID:dhhQW+iTJ

同着やだ。決着つけてほしい

 

145:尻尾上がり名無し ID:sewpj0S/S

ライス勝て!

 

146:尻尾上がり名無し ID:rpEmuGw5F

ざわ……

 

147:尻尾上がり名無し ID:rOEzG36UU

くるぞ……

 

148:尻尾上がり名無し ID:eC5q/Mltj

枠入り順調やね

 

149:尻尾上がり名無し ID:wYM/jsH3a

マックイーン普通に入った

 

150:尻尾上がり名無し ID:uSf0ERxiv

>>142

さすがのブルボンも壊れるわ

 

151:尻尾上がり名無し ID:gz+DE+Mdn

ひとつの伝説が終わり、ひとつの伝説が続く! 天皇賞春!だって

 

152:尻尾上がり名無し ID:5Yf+h0eor

やっぱ実況的にはマックイーンVSブルボンなのね

 

153:尻尾上がり名無し ID:bOaMfGhaO

そんなこと言った?

 

154:尻尾上がり名無し ID:bv/1huj1L

局が違うんやろ

 

155:尻尾上がり名無し ID:hxT4zPcA1

はじまったー!

 

156:尻尾上がり名無し ID:AkgJb9l3q

うわぁぁあ

 

157:尻尾上がり名無し ID:MQX0LKOsh

ブルボンスタートはっや

 

158:尻尾上がり名無し ID:0TXyLak/Q

ブルボン速いな

 

159:尻尾上がり名無し ID:DPpQ2GGHt

やっぱりスタートうまいよな

 

160:尻尾上がり名無し ID:ezofTv9bL

技術でなんとかできるところは全部なんとかしてる感じあって好き

 

161:尻尾上がり名無し ID:/tkNkUIMw

だから強いんだろうな

 

162:尻尾上がり名無し ID:3pf5GX5S1

パーマーきたぁぁあ!

 

163:尻尾上がり名無し ID:tsjCl0z+2

やっぱ開幕はこの二人か

 

164:尻尾上がり名無し ID:8e/dO75Ic

パーマーも結構ブルボンと走ってるよね

 

165:尻尾上がり名無し ID:qC42Y7WZE

結構というか有馬記念だけな

 

166:尻尾上がり名無し ID:tc+3hCQMm

あれ、パーマーちょっと足緩めた?

 

167:尻尾上がり名無し ID:rsdp8Dbef

言うほど緩めたか?

 

168:尻尾上がり名無し ID:svKV7iBO8

気のせいじゃね

 

169:尻尾上がり名無し ID:tc+3hCQMm

気のせいだったわ

 

170:尻尾上がり名無し ID:NAozqSCuj

気のせいちゃうわ、一瞬やけどちゃんと緩めとる

 

171:尻尾上がり名無し ID:+SGRlKao+

ハナ奪いに行かないのか

 

172:尻尾上がり名無し ID:U6NGVbbT3

いった

 

173:尻尾上がり名無し ID:xWa0JrZzb

うお、奪われた

 

174:尻尾上がり名無し ID:SRhGzr84P

ブルボンらしくないな

 

175:尻尾上がり名無し ID:AhXwjUDvI

やっぱ距離の壁か

 

176:尻尾上がり名無し ID:NAozqSCuj

マーク散らす為に奪わせたんやアホ共。マックちゃんがパーマーめがけて上がってくるからよう見とけ

 

177:尻尾上がり名無し ID:74mEfdXew

ほんとぉ?

 

178:尻尾上がり名無し ID:zprY68+9M

マジで上がってきて芝

 

179:尻尾上がり名無し ID:HmUJbtZYD

ドブカスニキってひょっとして有能敏腕トレーナーなのでは……

 

180:尻尾上がり名無し ID:61y+BNhyM

ブルボン前の走り方に戻った?

 

181:尻尾上がり名無し ID:JJY5NBZ2J

突き放しにいかないのか、いけないのか

 

182:尻尾上がり名無し ID:QAO0QtM5a

いかないんだろ。長距離3200だし、先は長い

 

183:尻尾上がり名無し ID:JpmYdu2kn

いけないんだろ。長距離3200だし、先は長い

 

184:尻尾上がり名無し ID:7xIkMk/Nc

>>182

>>183

 

185:尻尾上がり名無し ID:EGlaHbHLM

>>182

>>183

 

186:尻尾上がり名無し ID:OwggkWOsi

仲良しか

 

187:尻尾上がり名無し ID:NAozqSCuj

ブルボンちゃん1ハロン12秒でコマ打ちしとるな

 

188:尻尾上がり名無し ID:S5vfIGhHS

結局戻したのか

 

189:尻尾上がり名無し ID:NEK5UYTqD

単に3000以上はラップ、それ以外は逃げ差しのほうが強いとかそういうオチだろ

 

190:尻尾上がり名無し ID:YTicumhY0

ハイペースだなこれ

 

191:尻尾上がり名無し ID:B8PTQ7Vi0

中央集団上がってきたな

 

192:尻尾上がり名無し ID:NAozqSCuj

ライスちゃんに釣られたんやね

 

193:尻尾上がり名無し ID:W8rvRexLF

どう釣ったん?

 

194:尻尾上がり名無し ID:NAozqSCuj

見てりゃわかるやろ、脚運びや

 

195:尻尾上がり名無し ID:asbbLJk6A

(わからん)

 

196:尻尾上がり名無し ID:Y+jiHkfXE

(俺も)

 

197:尻尾上がり名無し ID:58uZKRPpe

ライスはブルボンにピッタリついてるな

 

198:尻尾上がり名無し ID:1G+ijJIeK

慣れたもんだしな

 

199:尻尾上がり名無し ID:+bFMgosTi

マーク屋気質だよな

 

200:尻尾上がり名無し ID:NAozqSCuj

死なば諸共のええ腹の括り方や

 

201:尻尾上がり名無し ID:IIYobpwZU

展開早いな

 

202:尻尾上がり名無し ID:n4JfiYquN

あと何百メートルしかない……

 

203:尻尾上がり名無し ID:iQXRovIp5

パーマー落ちてきたな

 

204:尻尾上がり名無し ID:IKnntKkhb

淀の坂かぁ……

 

205:尻尾上がり名無し ID:rhgT4OUVq

ブルボンほんと落ちないね

 

206:尻尾上がり名無し ID:rC1vADQpi

ブルボン先頭!

 

207:尻尾上がり名無し ID:kx4C131Td

やっぱブルボンには先頭が似合うわ

 

208:尻尾上がり名無し ID:0ACASNo22

そろそろ来るか

 

209:尻尾上がり名無し ID:SwejpRNb2

ライスシャワーきたぁぁあ!

 

210:尻尾上がり名無し ID:h/AjHVV2T

強襲!

 

211:尻尾上がり名無し ID:66RjcyR0f

まじで宿敵だな、ライス

 

212:尻尾上がり名無し ID:hlLwrNAwN

坂駆け下ってくるの怖い

 

213:尻尾上がり名無し ID:877ybkMT1

淀の坂はゆっくり登りゆっくり降りるとはなんだったのか

 

214:尻尾上がり名無し ID:NAozqSCuj

常識を敵にしてるブルボンちゃんを相手にするには常識を敵にしなきゃ勝てへんよ

 

215:尻尾上がり名無し ID:q3Eky0uYM

一気に距離詰めてくるな

 

216:尻尾上がり名無し ID:Kw3fO4w5e

これブルボン大丈夫なのか

 

217:尻尾上がり名無し ID:CMfLsTE7C

アカン(アカン)

 

218:尻尾上がり名無し ID:oExk5BAn8

逃げ切れ!

 

219:尻尾上がり名無し ID:Y4rf9GLnn

差し切れライス!

 

220:尻尾上がり名無し ID:8UgQH68Ly

今度こそ勝て!

 

221:尻尾上がり名無し ID:HG6iemcUa

マックイーン押せ!

 

222:尻尾上がり名無し ID:Au7qqkXEt

ブルボン勝て!

 

223:尻尾上がり名無し ID:s3cZAURR0

ライス内、マックイーン外!

 

224:尻尾上がり名無し ID:h3rZ6eYPx

これアカンか

 

225:尻尾上がり名無し ID:8MBmxTU4d

ブルボン負けたか

 

226:尻尾上がり名無し ID:tqkoGVaCX

まだ並ばれただけ

 

227:尻尾上がり名無し ID:w9oOE6t8C

がんばれマックイーン!

 

228:尻尾上がり名無し ID:TQ1KcdT9h

あかん沈んだ

 

229:尻尾上がり名無し ID:msLbZb/4O

!?

 

230:尻尾上がり名無し ID:fee2tBJyt

なぜあそこから加速できるのか

 

231:尻尾上がり名無し ID:pIItVxiVg

とんでもない勝負根性で芝

 

232:尻尾上がり名無し ID:gJIQ1V/dX

ブルボン!?

 

233:尻尾上がり名無し ID:0oqHdAu4R

差し切ったと思いきや差しきられてて芝

 

234:尻尾上がり名無し ID:menYJslD3

うわ……

 

235:尻尾上がり名無し ID:4gGYaZbOQ

ブルボン!

 

236:尻尾上がり名無し ID:fXKC+uoXh

ライスなんとかしろ!

 

237:尻尾上がり名無し ID:364k1tnqJ

ブルボン勝て! 逃げ切れ!

 

238:尻尾上がり名無し ID:myjuSNt+K

ライス!

 

239:尻尾上がり名無し ID:3UZie3Wci

ブルボン!!

 

240:尻尾上がり名無し ID:XyBg52Gfk

ブルボン勝った!

 

241:尻尾上がり名無し ID:LH1NRgUaZ

終わったかと思ったわ

 

242:尻尾上がり名無し ID:uMsMXIVJV

姪が泣いちゃったけど勝てばヨシ!

 

243:尻尾上がり名無し ID:ReL1lZIL/

マックイーンの3連覇が……

 

244:尻尾上がり名無し ID:YvP3qrtV7

ブルボンやっぱり強いわ

 

245:尻尾上がり名無し ID:u7YxSHJuG

長距離でここまで強いんなら普通に中距離専念するなら無敵だろ

 

246:尻尾上がり名無し ID:giROCCUkj

3200でマックイーンとライス相手にして勝てるなら中距離で勝てるやついないだろ

 

247:尻尾上がり名無し ID:uTnu0zYT0

あ、解説員だ

 

248:尻尾上がり名無し ID:rSjWfi8nl

疲れロボかわいい

 

249:尻尾上がり名無し ID:tqu5B3Xlb

おは解説員、暇そうやね

 

250:尻尾上がり名無し ID:SbDZzt/l1

仁王立ちロボかわいい

 

251:尻尾上がり名無し ID:Q8wtBWeIv

これじゃ搬送ロボじゃん

 

252:尻尾上がり名無し ID:C8aO9jiFk

怪我!?

 

253:尻尾上がり名無し ID:8QZerSuwg

普通に疲れただけじゃね

 

254:尻尾上がり名無し ID:kI3ZHVAr3

トレブルてぇてぇ

 

255:尻尾上がり名無し ID:YkS5OBES9

解説員にお姫様抱っこされたい

 

256:尻尾上がり名無し ID:2R8LDDZi4

ウマ娘に転生してから物言え

 

257:尻尾上がり名無し ID:0k9IrXVGr

解説員ってやっぱりこう見てみると母親に似てるな。貴公子然としてる

 

258:尻尾上がり名無し ID:i7LGUoQqq

芦毛だしな

 

259:尻尾上がり名無し ID:0K70I4P7l

飼い主に甘える犬みたいで可愛い

 

260:尻尾上がり名無し ID:Hgbk8GHS/

あのねあのねって話してきそう

 

261:尻尾上がり名無し ID:DTQQQSCkq

仕留めた獲物を枕元にひっそりと置いてきそう

 

262:尻尾上がり名無し ID:SiZpSc4rK

>>261

それはマジでやめろ

 

263:尻尾上がり名無し ID:LBVbA8YKF

よくやったわこのロボ

 

264:尻尾上がり名無し ID:rYlx25m3h

1600メートルが限界おじさん、2000メートルが限界おじさん、2400メートルが限界おじさん、3000メートルが限界おじさん……終わったよ……

 

265:尻尾上がり名無し ID:l5o8cKibz

距離限界おじさんが多すぎる

 

266:尻尾上がり名無し ID:D7zn+Egit

それにしてもライスがこんなに強いとは思わなかった

 

267:尻尾上がり名無し ID:fMv4k1y8Y

それな

 

268:尻尾上がり名無し ID:Q273HkK4+

マックイーンとブルボンのどっちかが1位と2位、3位ライスだと思ってた

 

269:尻尾上がり名無し ID:IZjr+WX4G

ひょっとしてブルボン世代ってレベル高い?

 

270:尻尾上がり名無し ID:zhzbQFeLE

ひっそりとマチタンも掲示板入ってるしな

 

271:尻尾上がり名無し ID:Ro/4OHVYq

カノープス定期

 

272:尻尾上がり名無し ID:aumxHeQcs

カノープスくんはなぜこんな感じなのか

 

273:尻尾上がり名無し ID:g6KPG0eNG

ライスとマックの枠が変わってたらどうなってたかな

 

274:尻尾上がり名無し ID:3IdO0c0qL

順位変わってたかもな

 

275:尻尾上がり名無し ID:ZFEGE7CbI

変わってない気がする

 

276:尻尾上がり名無し ID:w0Av2I0MS

ブルボンいなかったらたぶんライスが普通に春の盾取ってた

 

277:尻尾上がり名無し ID:JM4ENZjcO

ロボつよい

 

278:尻尾上がり名無し ID:74qkAsskc

というか距離限界おじさんは何に転生すんの?

 

279:尻尾上がり名無し ID:GDUwD2Vom

ステイヤーズステークスの3600おじさんかカドラン賞の4000おじさん

 

280:尻尾上がり名無し ID:kLb8iw7dv

流石に無理がないか

 

281:尻尾上がり名無し ID:vuX4LQTNo

成仏するときが来たのかもな

 

282:尻尾上がり名無し ID:/HRHb4BAr

マックイーンよくやったわ。これからまた3連覇してくれ

 

283:尻尾上がり名無し ID:BN5zOx3Ad

ライスシャワー全部出し切った感じだけど大丈夫なのか

 

284:尻尾上がり名無し ID:amyCBLt0g

ブルボンの次走どこだろ

 

285:尻尾上がり名無し ID:gqxMED1SC

マックイーンの3連覇残念だけどブルボンに負けるならいいわ

 

286:尻尾上がり名無し ID:TX1iNIraX

ライス本当に強かったな

 

287:尻尾上がり名無し ID:kHm00L+Gj

>>282

マックイーンこわれる

 




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弥紀兄貴、有馬良男兄貴、評価ありがとナス!

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アフターストーリー:ブルボンの野望 烈風伝

 ブルボンは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の犬ツーを除かなければならぬと決意した。

 

 ブルボンには恋慕の情がわからぬ。ブルボンは、サイボーグである。トレセンでマスターと共に二人三脚で暮して来た。けれどもマスターのペット事情に対しては、人一倍に敏感であった。

 

「よしよし犬ツー。かわいいなお前は」

 

 一方、アメリカから帰ってきた男は自分が帰ってくることを察知して玄関前に座って待っていた犬が飛び込んできたのを受け止めて、よしよしと顎の下を撫でる。

 

「マスター」

 

「ああ、ブルボン。居たのか」

 

 撫でられるたびにうれしいうれしいと言うように息を吐く犬ツーを地面に降ろし、東条隼瀬は遠征中のお世話を任せていた自分の担当ウマ娘の存在にようやく気づいた。

 

 お留守番役のミホノブルボンはマンボと犬ツーと言う1羽と1匹のお世話を任せられ、そしてその為にトレーナー寮のカードキーと自室の部屋の合鍵を預けていたのである。

 

 ブルボンは基本、感情が顔に出ない。だからこそロボだのサイボーグだの言われているわけだが、案外と眉毛やら耳やら尻尾には出ていた。

 

 そして今回に関しては眉毛には出なかったが、耳がきゅっと絞られているし尻尾がピーンと立っている。

 

「はい、マスター。実は居ました」

 

 ものすごく淡々とした声色の中に、ひそやかな怒りが感じられないこともない。

 事実、ミホノブルボンは怒っていた。マスターおかえりなさいと言いつつ、犬ツーのようにぴょーんと飛びかかりたかったのである。

 

 しかし犬ツーに先を越され、その後にやっては犬ツーを怪我させてしまうかもしれない。

 だからこそ、彼女は理性的に我慢した。心中で犬ツーは子供ですね……とかなんとか言ってマウントを取りつつも黙って見逃してあげたのだ。

 

(……ん?)

 

 足元にしきりにじゃれついてくる犬ツーを蹴っ飛ばさないようにゆっくりと歩きながら、上着を脱いでハンガーラックにかける。

 

 少し声色が硬い。

 そんなことを思いつつも、彼はふぐを食べて帰ってきたばかりであるし、時差ボケがひどい。

 

 適当に片付けたあとソファーに寝転び、彼は寝た。珍しく夕方から爆睡した。

 そして、起きる。腹の重さに耐えかねて。

 

「犬ツー……」

 

 腹の上で寝ていた犬ツーをなるべく起こさないようにうまく身体を起こし、ソファーの空いた部分に移送する。

 移送してから、窓から外を見た。暗い。おそらくはもう夜であろう。

 

「ブルボンは帰ったかな。まあ、合鍵は後で返してもらえばいいか」

 

 敏腕トレーナーと言えども一人暮らしの男が発症する独り言の多用からは逃れられない。

 軽く右腕を伸ばして凝り固まった身体をほぐしながらくるりと振り返ると、居た。

 

「お呼びですか、マスター」

 

「いや、合鍵をな」

 

「はい。お返しします」

 

 その為に待っていたのだろうか。別に机あたりに置いてくれればよかったのだが。

 そんなことを思いつつも、一人より二人の方がなんとなくいい。少なくとも、寂しくはない。

 

 しかしなんとなく、目の前に立っているミホノブルボンからは違和感が感じられた。

 いつも通りのような、そうでないような。

 

「お前、俺のトレーニングメニュー通りに練習していたか?」

 

「はい」

 

「そうか……」

 

 となると、この違和感を感じるのは何故だろう。

 そう思い、爪先から頭のてっぺんまで2度に渡って見渡す。見渡すが、立ち姿や身体のでき方に故障の影はないし自分の予測通りに仕上がっている。

 

 だが、謎の違和感があった。

 そして何度かに渡ってブルボンを見て、東条隼瀬は気づく。

 

(耳だな、これは)

 

 耳と尻尾は、ウマ娘の感情を映し出す鏡である。

 

 そして基本的に名ウマ娘は気性難が多い。

 これは性格が悪いということではなく闘争心が旺盛過ぎるとか、無駄なこだわりがあるとか思春期の少女特有の反骨心があるとかそういうことだが、ミホノブルボンは珍しくそういうものがなかった。

 

 旺盛な闘争心はレースの時くらいにしか発揮されないし、無駄なこだわりはないし、反骨心もない。

 思春期を拗らせたような、反抗期もない。もっともこれは反抗期を迎える程度にまで精神が成熟していないということかもしれないが。

 

 まあとにかく、ミホノブルボンは従順な気性をしている。だから耳も基本ピンと立っているのだが、今日は後ろに絞っている。

 

「ふむ」

 

 無造作に絞られた耳を掴み、くるりと柔らかくひねって立たせた。

 しかし手を離すと、元に戻る。

 

 触っているうちはピンと立っているが、離すと絞られる。そんなことを何回か繰り返し、寝ぼけから覚めた男はミホノブルボンの栗毛の耳から手を離した。

 

 これまた当然のように、耳が絞られる。

 

「お前、怒っているのか?」

 

「……?」

 

 いつもの若干アホっぽい顔を晒してるサイボーグは、一見怒っているようには見えない。

 しかし耳と尻尾は、ウマ娘の感情を映し出す鏡である。耳と尻尾を感情の連動から切り離す技術は割と簡単にできる(らしい)が、耳と尻尾を意図的に動かす技術はかなり難しいとのこと。

 

 この目の前のイヌ科のウマ娘は【……?】となっている間に尻尾をはてなマークになるように動かすが、耳に関しては基本素直に感情を映している。

 

「怒っていません」

 

「……本当か?」

 

「はい。マスターに嘘はつきません」

 

 むふーっと胸を張りつつ気を吐きながら自分の誠実さをアピールするブルボンの愛らしさを見てなんとなく頭を撫でつつも、東条隼瀬は思った。

 

 じゃあなんでこいつ、耳を絞っているんだと。

 撫でるのをやめた瞬間に絞られた耳を見ながら、東条隼瀬はなんとなくまた撫でた。

 

「ブルボン。何か食べに行くか」

 

「はい。お供します」

 

 そういった瞬間、耳がピンと張る。

 やはり一時的に嬉しい気分になると戻るが、基本怒っているという感じなのだろう。

 

 ――――何に怒っているかは知らないが、自分に怒っていないのならばいいか

 

 東条隼瀬は、そういう単純な思考で行動していた。

 なにせ相手にしているのは、自分のことを慕ってくれているイヌ科のウマ娘である。素を出せるし、多少雑に扱ってもいいし、ほっといても付いてきてくれる。

 

 ブルボンに対するそういう甘えが、彼にはあった。

 事実ブルボンは基本的にどこにでもテコテコと付いてきてくれるだろうが、それが怒りの原因を精密に突き止めようとしない思考に繋がっていたのである。

 

「何が食べたい」

 

「お魚を」

 

「魚以外で頼む」

 

 たらふくフグを食べた後にまた、魚を食べようとは思わない。

 『煮魚を食べたいです』と書いてある顔から目を逸らしながら、東条隼瀬は後出しの条件を突きつけた。

 

 突発的にフグを食べたいなどと言い出したが、実のところ彼が自ら食事をリクエストすることは少ない。無いと言っても間違いではない程に。

 つまり逆に言えば、彼は提案された食事の中身を変えるように要求することも少ない、ということである。

 

 それだけにやや驚きつつ、ミホノブルボンは尻尾を軽く揺らしながら考えた。

 たぶん、マスターは疲れている。海外遠征もそうだし、時差ボケもある。何よりも即座に寝ていたあたり、結構見えない疲れが蓄積しているのだろう。

 

 となると、なにか温まるものを食べさせるべきだ。

 IQ1億を誇るブルボンヘッドは冷蔵庫に今ある材料を照らし合わせ、すぐさまその結論を導き出した。

 

「でしたら、お鍋などはいかがでしょうか。身体も温まりますし、季節にもあっています」

 

「それはいいな。よし、そうしよう」

 

 じゃあどこに行こうかな……と。

 おそらくは接待とか密談とかそういうものに使った料亭の内から鍋の美味しかったもの、そしてウマ娘の食事量に対応できるものを導き出そうとしているであろう彼の思考を遮るように、ミホノブルボンは口を開いた。

 

「では、ミッション【鍋作成】を起動します。マスターは休んでいてください」

 

「何だ、作るなら手伝うが」

 

「休んでいてください、マスター」

 

 方向性こそ真逆ながら同じく圧倒的な圧しに再び屈した哀れな男は、しょぼーんとしてソファーに座った。

 

「なんの鍋にする気だ」

 

「豚生姜鍋です」

 

 髪を後ろで一房に括り、いつものPaka-Pakaエプロンを着込んでいそいそと厨房に向かう後ろ姿を見送って、なんとなく思い出される母の姿。

 

(そう言えば、栗毛率が高い……)

 

 その確率、実に50%。面影を求めている、ということも無いだろうが。

 起きてきた犬ツーと遊んでやったあと、東条隼瀬はすっかり元気になったこの老犬を撫でた。

 

 流石に老いているだけあって、遊んで遊んでとせがんできても体力の減りが早いだけにすぐ疲れる。

 

 再びソファーに飛び乗って横になった犬ツーと入れ替わるように、両手に鍋を抱えたブルボンがやってきた。

 

 肉5割、野菜5割。そんな感じな塩梅である。

 

「美味そうじゃないか」

 

「はい。鍋は得意ですので」

 

 得意も何もない料理を得意という。

 そんな渾身のブルボンジョークを華麗にスルーして、東条隼瀬は頷いた。

 

 鍋の見た目はこう、見目麗しいと言うのか。

 彼が個人的に食すぶんには食べられればそれでいいと思う質なだけに、鍋をやることはあっても盛り付けを綺麗にしようという努力はしない。

 

「確かに、上手いもんじゃないか。しらたきは?」

 

「野菜の下です」

 

「豆腐は?」

 

「お肉の下です」

 

 用意されたつけ汁にひたして食べる。

 結構ガッツリと使われた生姜は、身体を温めると言うよりむしろ燃やすようだった。

 

「熱いな。窓を開けるか?」

 

「マスター。それは本末転倒というものです」

 

 確かにそれはそうだが、熱いものは熱い。

 芯から温められているような生姜の効能に舌鼓を打ちながら、口に水を含む。

 

「熱い。が、美味いな」

 

「マスターに喜んでいただけて何よりです」

 

 隣でものすごい量を食べているブルボンは流石にウマ娘と言ったところだが、彼もそれなりに食べていた。

 少なくとも、この年で一番食べていただろう。朝は軽く済ませたとはいえ、昼はふぐの刺身で夜は鍋である。

 

「やはりこういう料理を食べると、帰ってきた感じがするな」

 

「はい」

 

 実直に。

 星の瞬くように煌めく青色の瞳を瞬かせながら、限りない親しみを込めて。

 

「おかえりなさい、マスター」

 

 そう言った頃には、絞られていた耳はピンと立っていた。




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アフターストーリー:圧倒

 ナリタブライアンのローテーションほど、変遷の激しかったものもない。

 

 当初は契約後最初のレースがGⅠと言うのはやや不安が残るということで叩きのレースであるスプリングステークスを挟み、皐月賞→日本ダービー→京都新聞杯→菊花賞と続き有馬記念で終わるものだった。

 これは、ミホノブルボンのローテーションからジャパンカップを取り去ったものである。

 つまりこのローテーションを組んだ男からすればナリタブライアンはミホノブルボンより脆く見えた、ということになる。

 

 まあそれは事実――――というより、ミホノブルボンが頑丈すぎると言ったほうが正しい――――なのだが、これは皐月賞後早々に変更を余儀なくされた。

 

 ナリタブライアン当人が宝塚記念に出たい、と言い出したのである。

 基本的にウマ娘第一主義の男は、調整スケジュールを粉微塵にされながらも微塵の動揺も見せずローテーションを再建した。

 

 つまり、京都新聞杯を抜いたのである。

 スプリングステークス→皐月賞→日本ダービー→宝塚記念→菊花賞→有馬記念。

 よし、これでいいだろうと彼は思った。

 

 だがまた、状況は変転する。

 ビワハヤヒデ、秋天の呪いにやられ戦線離脱。故に有馬記念に出る意味が無くなり、そしてジャパンカップでの総大将枠が不在になった。

 

 強いて言えばマチカネタンホイザが日本総大将ではあったが、やはり格が落ちる。

 ということで、ナリタブライアンはジャパンカップに出たあとアオハル杯に出ることになった。

 

「勝ったな……」

 

「ああ……」

 

 白いのと黒いのはそう言いつつ、東京レース場の控え室にいた。

 これは油断ではなく、余裕である。そう思えるほどの勝算が、この二人にはある。

 

 何故、そうなのか。

 その理由となった出来事は、少し前にあった。

 

 

 それは今から15分前、控え室でのこと。

 

 

 いつものように、作戦説明――――所謂ブリーフィングを行っていた時のことだった。

 

「――――最後になるが、今回参戦する外国勢の中で白眉はエルナンド。だがエルナンドには心理的ノックバックを喰らわせてあるから前に意識が向きペースが速まる。となると、東京レース場の特性を活かしきれまい」

 

「後方勝負のウマ娘が強い、ということか」

 

「その通り。東京レース場では長い直線を活かしたものが、勝者となる。これが鉄則だ」

 

 アンタはその鉄則を何度破ってきた?

 そう訊きたかったブライアンだが、数えるのもバカらしかったのでやめた。

 

 東京レース場、府中。

 特定のウマ娘がここに籠城を決め込むと難攻不落になる程に、向き不向きがはっきりとしたレース場である。

 

「本当に強いウマ娘というのは、どんなバ場、どんなレース場でも勝てる。お前はまず、ここでそれを証明しろ」

 

「言われるまでもない。ブッちぎってやるさ」

 

「だろうな。だが、カノープスからナイスネイチャとマチカネタンホイザが出てきている。あの二人は才能で負けながらも常にその差を埋めて互角の戦いを演じてみせている。気を抜かないことだ」

 

 特にマチカネタンホイザは初めて右回りの重賞を勝つなど、今年に入って成長著しい。

 ここ東京レース場は左回りだが、弱点を克服したということはその分成長したということである。

 

「舐めはせんさ」

 

「ならいい」

 

 そんな会話が一区切りついたそのときに、コンコンと扉が鳴らされた。

 

「どうぞ」

 

 ブライアンが『入れ』と言う前に、東条隼瀬が口を開いた。

 

 控え室は、ウマ娘とトレーナーだけの空間である。

 当初は八百長やら何やらの対策の為に設けられた隔離部屋が控え室と名を変えたわけであるが、それだけによその人間が立ち入ろうとしないし、それは親であっても例外ではない。

 

 ここに入れるのはウマ娘と、トレーナーと――――

 

「失礼します」

 

 ――――あとは、URAの職員くらいなものだった。

 秋天後に見た顔をチラリと2度見して、ブライアンと顔を見合わせた男の中には、なんとなくの嫌な予感が蟠っていた。

 

「どうか、しましたか?」

 

「はい。5枠8番マチカネタンホイザさんの競走除外についての知らせを持ってまいりました」

 

「除外。怪我でもしたのか? 具合は?」

 

 敬語が剥がれる程度には動揺した男を見て、職員は謹厳さを崩さず、しかし的確かつ迅速に応対した。

 

「いえ。怪我ではありますが生命はもちろん、競走能力に影響はありません。ですがなんというか……走れなくなったと言いますか。つまり……」

 

 ああ、と。

 東条隼瀬は心の中で胸をなでおろした。そういうことなら、まあよくある。そしてよくあっても然程悲しくもないことである。

 無論そうなった当人の心情を慮ると心苦しくはあるが、怪我よりは遥かにマシと言わざるを得ない。

 

 簡潔にこちらの疑念や心配を否定し、そしてその後言葉を濁す。

 その濁したのは不手際というわけではなく、おそらく今回出走除外されたウマ娘の名誉とか尊厳とか、そういうものに気を使ったためであろう。

 

 しかしそういうことを察せられる人間は、多くはない。

 

「つまり、なんだ」

 

 このときのナリタブライアンは、察せられない多数派だった。

 これは鈍感とか察しが悪いとかではなく、姉への心配が彼女の知恵の鏡を曇らせたというべきであろう。

 

 ともあれ察せられなかったことを認識した隼瀬係のURA職員は、少し目を逸らしながら口を開いた。

 

「鼻血です」

 

「鼻血? 鼻から血が出るアレか」

 

「はい。なんというかこう、えいえいむんと気を張った時に出血してしまったらしく」

 

 走っている最中にまた出ると酸欠でぶっ倒れる可能性があり、時速70キロで走っているときに酸欠で倒れると下手すれば死ぬ。

 周りにも迷惑をかけるし、出走除外はまあ仕方ないと納得もできる。

 

 しかし鼻血とは、大したことはないな。

 そう考えたブライアンだが、口をついて出た言葉は別の物だった。

 

「むんか」

 

「むんです」

 

 えいえいおーじゃないのか。

 

 確かにそれはまったくおかしくはないツッコミであったが、重要なのはマチカネタンホイザと言う日本総大将になりかけた副将が出走除外されたことである。

 

 そしてその後いくつかの話をしたあと、『むんです』と言ったURA職員はしめやかにその場を後にした。

 

「マチカネタンホイザには不運ではあるが、正直なところ、こちらとしては幸運だと言える。マチカネタンホイザには爆発力はないが粘り強い。平均して強いと言うのはつまり、どんな状況でも自分の実力を出せるということだ」

 

 そして、時間は戻る。

 ややおどけたような『勝ったな……』には、彼なりに姉の怪我を思い出したかもしれないブライアンの不安とか緊張とかを払拭してやろうという気遣いがあった。

 

「ああ……」

 

 やや曖昧に、頷く。

 ビワハヤヒデのトレーナー、木場。彼曰く、手術は成功したとのことである。

 メジロの武田医師とフランスの施設やノウハウを使う以上間違いはないと思っていたが、やはり成功したと聴くのと聴く前とでは大きな差がある。

 

「…………アンタらしくない言い草だな」

 

「ナリタブライアンと言うウマ娘の持つ力が、それほどに規格外だということだ」

 

「フッ……」

 

 ――――物は言いようだな

 

 目の前の男が油断ぶちかますような男ではないことを、無論ナリタブライアンは知っていた。

 

 それが敢えてそのような口ぶりをした。せざるを得なかった。その辺りの理由も、ナリタブライアンにはわかっていた。

 姉の怪我を想起させられることによって曇った知恵の鏡は、もう既に輝きを取り戻しているのだから。

 

「なら見せてやる。用意周到を絵に描いて額縁に飾ったようなアンタが油断するに足る力を、私が持ってるということをな」

 

「ああ。期待している」

 

 アイツ(皇帝)みたいな言い方をする。

 そう思いつつも振り返らず、ナリタブライアンは控え室から出ていった。

 

 向かう先は無論、パドックである。

 ナリタブライアンは3枠4番。良くもなく悪くもない、そんな位置。

 

《さあ、日本の世代を代表するウマ娘たちに外国勢が挑む! 国際GⅠとなってから3回目、ジャパンカップ!》

 

 初代、ミホノブルボン。

 二代目、ライスシャワー。

 そして、三代目が誰になるのか。

 

《同世代による3連覇を目指して出走登録をされていたマチカネタンホイザは残念ながら出走除外されましたが、国際GⅠになってからの制覇者二人は海外でその蹄跡を残しています》

 

 ミホノブルボンはフォワ賞と凱旋門賞。

 そしてライスシャワーはステイヤーズミリオン完全制覇。

 

 質のミホノブルボン、量のライスシャワー。

 では三代目は誰がなるのか。海外でどんな実績を残すのか。

 

 シンボリルドルフが作った海外挑戦の潮流はサイレンススズカに受け継がれ、そしてミホノブルボンによって中興され全盛期を迎えつつある。

 

《さあ、世界がその強さを見せつけるか! あるいは日本勢が初の3連覇を果たすか! 国際GⅠ、第3回ジャパンカップ、スタートです!》

 

 ガタンと、ゲートが開く。

 冷静に、ナリタブライアンはエルナンドの後ろに付けた。その周りを外国のウマ娘たちがするりと包囲し、ナイスネイチャがその後ろにつく。

 

 ――――お前は菊花賞で包囲されたが、あれはかわいいもんだ

 

 日本より、外国が上。

 そういう言説は、決して珍しくはない。特に追いつくことを目指しつつも追い抜くことなど考えもしていなかったトゥインクル・シリーズの関係者たちは日本を低く見て世界を高く見る。

 

 今となってはやや改善されつつあるが、やはり染み付いた伝統というのは簡単には拭いされない。

 しかしそれでも、東条隼瀬がそういうことを言うのは珍しいと言えた。

 

 ――――アオハル杯というものがあるだろう。これからやるチーム戦のことだ

 

 それに、ブライアンは『ああ』と頷いた。

 チーム戦。それは複数のウマ娘が連帯することを前提に繰り広げられるであろうレース。

 個人レベルでの勝った負けたを繰り返すのではなく、チーム全体の勝ちを目指す。

 

 それが、チーム戦というものである。

 

 ――――向こうでは、それが一般レースでも行われている。1つの陣営が本命の他に複数のウマ娘を出し、勝たせるように補佐をする。逃げウマ娘にはペースを作るためだけに走らせ、相手の有力ウマ娘を反則スレスレのブロックで進路を塞ぐ。それは珍しいことではないし、狡くもない。だから俺は、外国で勝ちたいなら逃げに限ると思っている

 

 確かに、そうである。

 サイレンススズカもミホノブルボンも、極端に前につけるウマ娘――――つまり、脚質適性逃げのウマ娘。

 先頭を取るがゆえにペースを自ら作り、そして包囲もされない。

 

 ――――そして今回もそうだ。何故か俺は外国勢に睨まれているから、お前は包囲されるだろう

 

 何故もクソもないだろ。

 ナリタブライアンとしてはそう思わざるを得なかったが、その後に続いた言葉の方が衝撃という点では勝っていた。

 

 ――――だから今回、お前はエルナンドの後方に付け。あいつらの戦法を、利用してやろうじゃないか

 

 そう言った男を疑いもせずに信じて、ナリタブライアンはエルナンドの後ろにつけた。

 エルナンドは中盤の中でも後方気味のところに付ける差しウマ娘であるが、今回はやや前へ前へと進もうとしている。

 

 序盤、レースを支配するのはサンドピット。ブラジルで強さを示しアメリカへ渡ってきた彼女は、猛烈な逃げで後続を突き放すように駆けていた。

 

 その姿は、アメリカを震撼させた怪物に似ている。同じ栗毛であるということもそうだが、なによりもその走りっぷりが似ていた。

 

《いつも通り、包囲されていますナリタブライアン。もう慣れたという感じでしょうか》

 

 実況の言うとおり、必死さすら漂うサンドピットに反して悠々とナリタブライアンは駆けていた。

 

 ――――第3コーナーだ。第3コーナーで、エルナンドは逃げを捕捉しに抜け出してくる

 

《さあ、第3コーナーです!》

 

 するりと、エルナンドが滑らかに動いた。

 サンドピットの表情は苦しい。前から見ればわかるほどに苦しい。

 しかしエルナンドの中にあるのは、サイレンススズカ。あの、涼しい顔をして逃げ切るガルフストリームの怪物。

 

 何度も見た。苦しさの欠片も感じさせずに逃げ切るサイレンススズカの姿を、何回も見た。

 

 後ろ姿では、表情がわからない。そしてエルナンドは、サンドピットを通してサイレンススズカを見ていた。

 だから、彼女は早めに抜け出したのである。そしてその動きは想定通りの動きなだけに滑らかではあったが、それだけに見事にナリタブライアンを封じ込めていた壺の蓋を開けてやる形になった。

 

 そして蓋が開いた先には、道があった。

 サンドピットが先行勢をまとめて引っ張っていったがために、先頭集団と中段との間には大きな亀裂ができていたのである。

 

(そして)

 

 ――――サンドピットはスズカではない。第3コーナーまで先頭を走れば疲れるし、疲れれば外によれる

 

 よれたサンドピットがエルナンドの最適な進路をつぶし、そしてブライアンにとって最適な道を与えた。

 

《さあ仕掛けた! あとは距離だ!》

 

 仕掛ければ、勝つ。

 そう疑っていないからこその実況の言葉は、ある種の残酷な真実を示していた。

 

 ブライアンに進路がある時点で、そしてブライアンが仕掛けた時点で、レースは誰が勝つかでなくどれくらいの差をつけて勝つかに変質する。

 

 実況のソレは、早合点ではなかった。

 長い直線の利を活かし、ナリタブライアンはジャパンカップを制したのである。

 

 9バ身という差をつけて。




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アフターストーリー:前夜

「頭がおかしい戦力ですわ!」

 

 スピカの部室。

 少数精鋭の具現化のようなチームスピカの総員を集めた作戦会議というこの場所で、メジロマックイーンは打線のようにズラリと並べられたチームリギルのメンツを教杖で指し示した。

 

「1番センターにアメリカで3年連続首位打者・盗塁王・最多安打を獲得したスズカさんがいるだけでも脅威なのに2番ショートのブルボンさん、3番キャッチャーの会長、4番サードのブライアンさんと三冠王が3人! 5番6番には外野の両翼を固めるエルコンドルパサーさんとグラスワンダーさんの助っ人コンビ! 全員打てて守れて足もあるダイナマ――――史上最強打線ですわ!」

 

 1番。一番脚早いひと。

 2番。一番出塁率高いひと。

 3番。最強打者。

 4番。ホームランたくさん打てるひと。

 

 マックイーンの打線を組む趣味が開示されながらも、スピカの作戦会議は続いていく。

 

 そんな中で、トウカイテイオーは思った。

 

 あれ、これってトレセン対抗野球大会での作戦会議だっけ、と。

 

 そう。野球大会――――ではなく、いよいよアオハル杯が迫ってきていた。

 

 アオハル杯は基本的にアオハルチームという摩訶不思議な単位で――――リギル、スピカ、カノープス、シリウスなどの中央トレセン内の有力チームとは別物――――参加する一大大会である。

 

 これはかつてのブルボンや現在のライスシャワーのように専属契約を結んだウマ娘たちも参加できるようにという配慮だった。

 つまり、なにも学園内での制度としてのチームの枠で参加する必要はないのだ。極論、適当に友達同士で組む、というのでもいい。

 

 アオハル杯は1つのチームが中距離、マイル、長距離、短距離、ダートの5部門にそれぞれ3人までのウマ娘を送り込んで開催される。

 

 枠をいっぱいに使うなら、15人。

 全部門にウマ娘を出走させるなら、最低5人。

 無論全部門に出走させる必要はないわけだが、一応チーム戦という形式の手前チームの最低結成人数は2人となっている。

 

 そしてチームが上げた勝利数に応じてランキングが設けられ、そのランキングを参照して来年6月に再びアオハル杯が開催され、6月の結果を踏まえて12月に――――といった具合である。

 

 つまり今回に関しては、各チームには順位というものが振られていない。

 なので完全にランダムに6チームが1つのレースに押し込まれ、最大18人立てのレースが行われる。

 無論全チームが3人のウマ娘を用意できるわけではないから、18人立てになることの方が少ないだろうが。

 

 そしてこの5レース、同一場所・同日開催である。

 日本では流行らないが香港などでは主流なレースの同日開催という形式を試してみようという思惑も、アオハル杯を復活させようとしたURAさんサイドにはあった。

 

 まあ何が言いたいかというと、2人以上15人以下のチームを作ってうまく得意分野のレースを勝ち、勝てば勝つほど順位が上がる。そういう複数年に跨がる競争。

 

 それが、アオハル杯というシステムである。

 

「よし。当分、ギラギラエガオとは当たらないな」

 

 ギラギラエガオ。

 

 チームシリウスのオグリキャップと、東条本家のトレーナーと専属契約を結んでいるタマモクロスによって結成された最少人数を満たしただけのチーム。

 

 タマモクロスが長距離、オグリキャップがマイルを担当するらしいそのチームは、二人ながらもランキング上位候補レベルの強さを持つと言っていい。

 

 当たらないことを幸いと喜ぶ芦毛の男に向けて、栗毛のウマ娘は耳をピコピコと動かしながら問うた。

 

「どちらかが苦手なのですか?」

 

「ああ。オグリキャップが特にな」

 

 オグリキャップ。疑う余地のない天才。

 疲労と故障でほぼ終わりかけていたのに、復活の有馬記念で並み居る強豪を爆発力でなぎ倒したという、東条隼瀬が一番苦手とするタイプであった。

 

 今は何故かピンピンしてドリームリーグのマイルを荒らし回っていたが、最近はタマモクロスとの対決を行える中距離へとシフトしつつある。

 だから今年、春夏秋とマイルのドリームリーグを制したサイレンススズカとのマッチは無かった。

 

 ファンたちは無邪気にそのことを残念がったが、東条隼瀬はそのことに心の底から安堵していたりする。

 

 ――――勝ち筋は無数にある。だがいくら頑張っても負け筋が消えない。そんなやつは、心の底から相手にしたくない

 

 それが、彼の偽らざる本音だった。

 

「思ったのですが」

 

 IQ1億のブルボンヘッドをフル回転させてとある結論を導き出したミホノブルボンは、ふと思ったことを口に出した。

 

「マスターは主人公的というか、ヒロイックな相手に弱いですね」

 

「あぁ……そうだな」

 

 ヒロイックなウマ娘。

 それ即ち、オグリキャップやらクソガキ(トウカイテイオー)やら。

 

「そしてマスターはどちらかと言えばラスボスチックな相手と組んできました」

 

 最初から言うなれば、ミスターシービーVSシンボリルドルフ。

 

 疑うことなく、ラスボスはシンボリルドルフであった。

 隙が結構あって派手に勝ったり負けたりする邪道を操る新世代の旗手たるスピカのエースVS、隙無き無敗の王道の皇帝。

 

 あまりにも強過ぎるルドルフの前にミスターシービーは完膚無きまでに叩きのめされたが、人気ではシービーの方が上だった。

 

 次に、ミホノブルボンVSライスシャワー。

 人気で言えば間違いなくミホノブルボンだが、このサイボーグの得意技はラップ走法という相手に関係なく時を刻むラスボスじみたものであり、挑み続けるライスシャワーとそれを跳ね返し続けたミホノブルボンのどちらが主人公か、どちらがラスボスかと言われれば、ミホノブルボンがラスボスでライスシャワーが主人公であろう。

 

 そしてサイレンススズカとナリタブライアンは、ライバルの存在すら許さない圧倒的な強者だった。

 脚質こそ正反対ではあるが、スペックでぶん殴り続けるその姿や、どうにも防ぎようのない破壊力は共に魔王じみている。

 

「確かに。スズカやブライアンは魔王じみている。基礎スペックでぶん殴ってくるあたり絶望感がある」

 

「うそでしょ……」

 

 この言葉を聴けば100人のうち100人が『そうでしょ……』と言いそうな程に魔王じみた強さを誇るスズカ。

 というか『うそでしょ……』はアメリカのウマ娘が言うべきセリフである。

 ちなみに今、スズカは神経衰弱をやっている。ひとりで。別にハブられているとかそういうのではなく、一人遊びが好きな子なのである。

 

「魔王か……悪くないな」

 

 猛禽類に憧れを抱いたりと若干そういう気のある黒鹿毛の――――あるいは黒影の魔王は、ボソリと呟いた。

 

「王は皇帝(わたし)の下だよ、ブライアン。君はそんなところで留まる器かい?」

 

「悪くなくないな」

 

「そうだ。それでいい」

 

 ――――期待しているよ

 

 臨戦態勢にあるこの勝負服を着た皇帝は、まごうことなくラスボスであろう。もはや議論の余地がないほどに。

 

「ブルボン」

 

「はい」

 

「お前、ラスボスか?」

 

「はい」

 

 むふーっと胸を張るイヌ娘。

 いいところマスコットなこの少女は、実は凱旋門賞を勝っていたりする。

 

「ルドルフはわかる。怖いからな」

 

「え?」

 

「スズカとブライアンもわかる。だが、お前は……ラスボスじゃないな。うん」

 

 いぬ。いぬ。いぬである。

 全く怖くないというのか、逆に親しみが持てるというのか。

 

「参謀くん」

 

「ん?」

 

「私は……怖いのか?」

 

「ああ」

 

 私怖い?と妖怪みたいなことを言い出した皇帝の言葉を、東条隼瀬はあっさりと肯定した。

 

「俺はそうは思わないが、何故お前がダジャレというものに手を出したのか。それは後輩やらなにやらから話しかけられないからだ。実績充分、成績も並ぶものがない程にすごい。性格もいい。ではなぜ話しかけられなかったのか。それは消去法的な考え方になるが、怖いから。そうではないのか」

 

 正直、走っているときは怖い。

 

 まあその怖さは真剣であるが故に本質的な強さが漏れ出て怯んでしまうから、というのもわかる。

 しかし彼からすればそう恐れるものでもないと思っていた。

 

「怖い……」

 

 凹む皇帝、ひとり神経衰弱に勤しむ逃亡者、撫でられて尻尾を振っている犬。

 なんだこの状況……と部屋を見回してから軽くため息をつきつつ、ナリタブライアンは本当に犬の相手をするような感じに適当に撫で回しつつ片手で何やらパソコンのキーボードを打っている男に声をかけた。

 

「おい。色々試行錯誤していたようだが、アオハル杯の出走メンバーの振り分けは終わったのか?」

 

「ああ。一応最終変更期間が1ヶ月前だからな。なんとか変更も間に合った」

 

 なにせ、今年からの復活である。参加者側も運営者側もノウハウも少ない。

 割と駆け込みでの参加者も多いし、辞退者も多い。

 

「対戦相手は5チーム。その中で気にするべきはスピカだ」

 

 復活した皇帝と撫で回しから解放されて少しシュンとなったブルボン、神経衰弱を続けるマイペースなスズカ。

 

「当初、俺はトウカイテイオーが中距離に来ると思っていた」

 

 トウカイテイオーにとって、長距離はやや長くマイルは明確に短い。まさにクラシックディスタンスの申し子というべきであろう。

 そんな彼女がその本領を発揮できる距離に来るというのは、謂わば当然の帰結だった。

 

「だからスズカと」

 

「はい」

 

「呼んでいない。スズカと、ルドルフとブライアン。この3人を中距離に放り込んでテイオーを力でねじ伏せるつもりでいた」

 

 神経衰弱のカードが広げられた机からくるりと移動した視界が、再び戻る。

 

 そんな中で、『鬼だな』と。

 意識のほとんどが神経衰弱に向かい、残りはうそでしょ空間に飛んでいるスズカ以外の全員がそう思った。

 

 三冠ウマ娘二人に加えてスズカというのは、過剰戦力もいいところである。

 

 マイルにエルコンドルパサー。

 中距離にサイレンススズカとシンボリルドルフとナリタブライアン。

 長距離にミホノブルボンとグラスワンダー。

 

 当初はこの予定で挑む予定であったが、ブライアンの有馬記念がどうとかで外したりとかなんとかあり、そしてまたも事態は変わった。

 

「だが、情報を集めるにつれてわかった。トウカイテイオーはルドルフとやりたいらしい。となると、どこでどう走るかの選択権はこちらにある」

 

「だから君は私に長距離を走ってくれないかと言ってきたわけか」

 

「そうだ。これによってテイオーをこちらにとって有利な距離に引き込んで戦える。だが、問題がある」

 

 それは、長距離ではサイレンススズカが使えないということである。

 スピードの絶対値の差でなんとかなるかも知れないが、そんな博打はしたくない。

 

「だからブルボンに走ってもらおうかと思っていた、が」

 

 ――――だが、あのガキがいくら爆発しても関係のない勝ち方を思いついた

 

 結構自信有りげな顔。

 スズカはいい顔してるなぁと思い、ブルボンとブライアンはじゃあ勝てるんだろうなぁと思い、そしてシンボリルドルフだけは一歩退いた視点を持って問いかけた。

 

「君が思いついたと言い切る以上はおそらく、その作戦に間違いはないだろう。だがやはりここは保険として逃げウマ娘を必要とするのではないかと思うのだが……」

 

「いや、ルドルフ。リギルの逃げウマ娘は居ない方がいいんだ。実力実績共に豊かな逃げウマ娘がいると先頭集団は逃げウマ娘のペースに支配される。中段から後方はお前が支配できるだろうが、それでも分割支配の形になる」

 

 支配者はひとりでいい。

 そういうことなのかと思いつつも首を傾げるルドルフの前に、パソコンの画面が示された。

 

 そこに映るのは、具体的な作戦案。

 逃げが必要ではないと言うことが理論的に示されたそれを見て、シンボリルドルフは少し笑った。

 

(なるほど。頼り過ぎない、ということか)

 

 そう思いつつも、わざとらしく頷く。

 どこかで誰かが聴いていても問題ないように、彼女は無上の信頼を受け止めたような声をあげた。

 

「なるほど。そこまで私を信頼してくれている、と。そういうことか」

 

「ああ。もちろんだ」

 

「では、そうだな。期待に応えるとしよう」




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メモリー:3/5/18~3/6/2

短距離チャンミがはじまりますが、私は元気です。
今、マミークリークとクリスマスオグリとエルコンとバクシンとカレンチャンとファルコで迷っています。
ブルボンは固定です。


【速報】《皇帝》シンボリルドルフさん、宝塚記念へ

1:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:20:01 ID:xicj7D0Xn

あとテイオーとブルボンも

 

2:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:20:05 ID:BZAuQRNf0

マ?

 

3:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:20:09 ID:RrOeHunJv

ブルボンの史上二人目の春シニア三冠の夢、逝く

 

4:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:20:15 ID:4vP4aifm8

投票の伸びやばくて芝

 

5:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:20:20 ID:fkCItAzmE

ソースは?

 

6:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:20:25 ID:vDBEsY+jt

URAの投票サイト見ろマヌケ

 

7:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:20:32 ID:T9jQcfVIn

ホンマや芝

 

8:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:20:37 ID:GvvjinjnH

いよいよブルボンの無双もここまでか

 

9:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:20:43 ID:QAhJ9k28U

別に負けが決まったわけじゃなくね

 

10:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:20:50 ID:uZhLrztpF

ルドルフは歴史に残るウマ娘だぞ

 

11:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:20:55 ID:rgYCKLmAX

ブルボンもな

 

12:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:21:01 ID:pyqvFNx44

無敗の三冠だし

 

13:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:21:06 ID:rgYCKLmAX

ブルボンもな

 

14:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:21:13 ID:TZh0ao7oM

獲得賞金10億越えてるし

 

15:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:21:19 ID:rgYCKLmAX

ブルボンもな

 

16:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:21:25 ID:7bkXa6+IQ

あらゆるレース場で勝ちまくってるし

 

17:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:21:30 ID:rgYCKLmAX

ブルボンもな

 

18:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:21:35 ID:kIAxhjBRL

あれ、ひょっとしてブルボンってすごい?

 

19:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:21:40 ID:XIhhwLy9+

>>18

今生まれたのかな?

 

20:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:21:45 ID:Dhx7vCbRj

>>18

ここ2年寝てたのかな

 

21:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:21:51 ID:YWABpcRz3

>>18

無能

 

22:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:21:56 ID:ft4JV8Fne

>>19

生まれて即座にトゥインクルシリーズファンになるのは精鋭すぎる

 

23:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:22:00 ID:g6L7SFvWc

テイオー復活か。まあなんとか勝ってほしいが

 

24:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:22:06 ID:kZWlwin3x

秋天だけとってドリームリーグ行きかと思ってたわ

 

25:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:22:12 ID:nxvKfSjBE

それはそう

 

26:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:22:18 ID:lgi69TX03

なんで宝塚に行くんだろ

 

27:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:22:25 ID:V+njARwIw

普通にブルボンとやり合いたいからじゃないの

 

28:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:22:31 ID:wCgiKOsI3

>>27

テイオー……

 

29:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:22:37 ID:xtX47+nh3

>>27

カイチョー?

 

30:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:22:42 ID:BAwdnm4Lw

>>28

>>29

君とは秋天で格の違いを見せたでしょ

 

31:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:22:47 ID:6GUePcGoL

あれは病み上がりだったし

 

32:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:22:53 ID:RJJBSttBu

テイオーさんって病み上がりじゃないレースのほうが少ない気もする

 

33:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:23:00 ID:qzoy1FRpP

そんなことはない……はず

 

34:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:23:05 ID:NOiVDEGFw

それにしてもブルボンは勝てるのかね

 

35:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:23:11 ID:3yaqiXKr9

さあ

 

36:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:23:15 ID:271BxVGsD

勝ってほしいなぁ

 

37:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:23:19 ID:cOj7ObAox

実質これブルボンの旅路の最終決戦じゃね

 

38:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:23:23 ID:0zOgeNF9C

国内切っての名門VS寒門だもんな

 

39:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:23:28 ID:13w0/3h8a

【悲報】3600メートルおじさん、逝く

 

40:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:23:34 ID:fPcGvF6DK

逝ってよし

 

41:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:23:38 ID:icd5xTXeY

ステイヤーズステークスに挑戦する意味ない定期

 

42:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:23:44 ID:o+7lha/3A

カドランとかメルボルンならまだしもね

 

43:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:23:49 ID:yb78UIpFO

それにしてもルドルフってなんであんまり走らないの?

 

44:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:23:54 ID:nosD2lR5J

>>43

性格が競技者というよりも運営者向きだから

 

45:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:24:01 ID:6eNh1C+Ni

あと海外遠征で怪我してたしな

 

46:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:24:08 ID:vxLVu3fcD

再発の可能性もあるし、国内GIでとれるものはとったし、これを重賞の範囲にまで伸ばすとね……

 

47:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:24:13 ID:inJx81v63

GⅡとかGⅢとかに皇帝が出てきたら死ぬわ

 

48:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:24:19 ID:YPr7eCAT/

発走前から勝者がわかるレースやめろ

 

49:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:24:23 ID:rXaPewhob

>>46

国内GIでとれるものはとったって地味にすごいよな

 

50:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:24:30 ID:hx+ApihUY

派手定期

 

51:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:24:35 ID:ahbtoDfEH

ド派手なんだよなぁ

 

52:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:24:41 ID:RLSVjo56W

前人未踏の記録だぞ

 

53:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:24:47 ID:1C7ZNNL3V

今年ブルボンがやりそうだけどな

 

54:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:24:52 ID:o6sIMR1QY

でもブルボンって言うほど一強感無いからできなさそう

 

55:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:24:57 ID:uHXwL2VkE

パーマーとかテイオーあたりに負けそう

 

56:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:25:02 ID:WplX/vAWW

というかダートは? 一応外国では走ってたよね?

 

57:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:25:07 ID:sc5txrM47

日本のダート重賞とってもね

 

58:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:25:12 ID:u0Krdtioe

日本のダート路線は未開の地すぎる。クラシック路線すら整備されてないし

 

59:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:25:18 ID:dbYhyCRRp

しかもアメリカのダートは下手な芝よりタイム出るから日本のダートとは環境違うしな

 

60:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:25:22 ID:DMD/lnReS

そうなん?

 

61:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:25:28 ID:ijfJBq5KC

日本は砂、アメリカは土、中東は砂と木屑を混ぜたのをダートと呼ぶ

 

62:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:25:33 ID:YV2an8U8/

はえー、結構違うんだね

 

63:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:25:39 ID:oBZfoSXSh

>>58

整備されてないと言うよりしてないんだぞ。地方のパイを奪うことになるからな

 

64:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:25:43 ID:YokrVK9at

ルドルフの走りは地味だけど無敵感あって好き

 

65:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:25:48 ID:Hp3BHt81t

ほんとに最後ちょこっと出るだけだもんな

 

66:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:25:52 ID:moHkA5U8T

シービーとは正反対だったなぁ

 

67:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:25:59 ID:+sEzMsS+U

実際ブルボンは勝てるの?

 

68:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:26:03 ID:tydFlPwIt

今まで皇帝と戦った誰よりも勝ち目はある

 

69:尻尾上がり名無し ??/5/18 19:26:08 ID:v4iYdV60U

史上最強の三冠ウマ娘がどっちか決まるな

 

 

 

◆◆◆

 

 

【三帝会戦】宝塚記念予想スレ【常勝VS無敗】

1:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:13:01 ID:Goggan9IZ

未だ無敗のブルボンか、国内無敗で常勝のルドルフか、テイオーか

 

2:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:13:07 ID:X6YBUV3GL

テイオーに何もないの悪意無い?

 

3:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:13:12 ID:n7CilXjoh

じゃあ未だ無敗のブルボンか、国内無敗で常勝のルドルフか、無敗の二冠ウマ娘テイオーかってことで

 

4:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:13:18 ID:eyNWBYA8o

三帝会戦って語感が好き

 

5:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:13:23 ID:L+gpHEy8t

ブルボンフランス、ルドルフドイツ、あとロシアテイオーか

 

6:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:13:28 ID:q99dVNROJ

ロシアテイオーは似合わなくて芝

 

7:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:13:35 ID:bUAIBvx3d

ルドルフが勝つところは容易に想像つくけどブルボンが負けるところは想像がつかない

 

8:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:13:40 ID:cEEEIKXub

古参ファンとしてはそろそろ王道戦法の強さを見せてほしい

 

9:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:13:46 ID:NAoBILRFk

今のトレンドは逃げやでおっさん

アメリカでもそうなっとるし欧州でも流行りはじめとる

 

10:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:13:52 ID:m+2Fcvhro

実際最近王道戦法不遇だよな

 

11:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:13:57 ID:mGF+fE/Xk

でも実際シービーは常識破りの追込で三冠ウマ娘になったし、ブルボンは邪道って言われてた逃げで三冠ウマ娘になった。

やっぱり教科書通りでは限界があるんじゃない?

 

12:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:14:04 ID:7vtR28w1N

ルドルフは教科書の具現化みたいな先行差しだぞ

 

13:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:14:09 ID:NAoBILRFk

ルドルフさんは存在そのものが常識から外れてるから教科書通りにやってたら三冠ウマ娘にはなれへんってのも正しいかもしれへんな

 

14:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:14:14 ID:2Knj40wJ3

実際ルドルフって何が強いの?

合計着差も大したことないし、結構辛勝してるイメージなんだが

 

15:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:14:18 ID:NAoBILRFk

力いっぱい出し切って大差で勝つよりも相手の力と展開を洞察して力絞って勝つほうが何倍もすごいんやで

 

16:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:14:25 ID:hXv60Phj9

というか最後の有馬記念でブッちぎってたろ

 

17:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:14:30 ID:2Knj40wJ3

なるほど。やろうと思えばできるけどやらないのね。でもなんでやらないの?

 

18:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:14:37 ID:NAoBILRFk

足に負担がかかるからや

 

19:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:14:43 ID:61PmdyXRM

本気で相手にされなかった他のウマ娘かわいそうだな

 

20:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:14:47 ID:nQbffXdJ4

無慈悲にブッちぎられたミホシンザン姉貴の絶望顔に……なんていうか...その...下品なんですが...ふふ..下品なので言うのやめときますね...ふふ

 

21:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:14:52 ID:OJQaRgVh+

かしこい

 

22:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:14:56 ID:NAoBILRFk

>>19

本気出す必要ないくらい弱い方が悪いわ

 

23:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:15:01 ID:dA3fzz7Jp

ドブカスニキは自分のウマ娘が手抜きされた上に負けてもムカつかないの?

 

24:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:15:07 ID:NAoBILRFk

本気を引き出せなかった自分にムカつくことはあっても勝者を恨むことはせんわな。筋違いやろ

 

25:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:15:11 ID:vOjOPEto2

実際ブルボンとルドルフはどっちが強いんだろ

 

26:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:15:16 ID:oy0NFgzxt

ルドルフもブルボンも安定感あるから地力の高いほうが強そう

 

27:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:15:23 ID:8H/qfW9+g

解説員いわくテイオーに勝てるウマ娘は無数にいるけどテイオーが勝てない相手はいないらしいからテイオーにも普通に勝ち目があるんだろうな

 

28:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:15:28 ID:DyRfikuZD

テイオーは病み上がりなのがね

 

29:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:15:34 ID:LS99LHkRq

いうて骨折してないから大丈夫でしょ

 

30:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:15:40 ID:zbbHQsTmi

骨折してないからマシという風潮

 

31:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:15:45 ID:OuPCnYgnL

実際テイオーさんは折れ過ぎみたいな所ある

 

32:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:15:52 ID:TDaoUg4NA

ブルボンという頑丈の代名詞とテイオーというスペの代名詞見てるから脳が混乱する

 

33:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:15:56 ID:REkEuqXSJ

ブルボンは頑丈すぎるしテイオーはスペすぎ

 

34:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:16:01 ID:pAamoD09K

スペってなに? スペちゃん?

 

35:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:16:06 ID:xVQtsHMBy

スペランカー

 

36:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:16:13 ID:7XaO5Lr2Z

スペランカー。ざっくり説明すると怪我しやすいアスリートのこと

 

37:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:16:18 ID:hdIC9DgRM

スペちゃんは頑丈よな

 

38:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:16:24 ID:or759JXKt

エルコン並の頑丈さ

 

39:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:16:30 ID:/vNi55aNe

後キングも結構頑丈

 

40:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:16:36 ID:L5NWYU6c+

テイオーのことだから勝っても負けても怪我しそうでね

 

41:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:16:42 ID:e0AX0p9XR

それはあるだろうな

 

42:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:16:49 ID:L96cnhlya

あってほしくないんですがそれは

 

43:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:16:56 ID:MTyCHE7Yx

ブルボンは四六時中坂路走ってるしさしてスペでもない米とかマチタンが休むくらいの激戦を続けてるのにGIに出続けてるのがやばい

 

44:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:17:01 ID:T4PG4aoBJ

耐久値と回復力がすごいタイプなんだろうな

 

45:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:17:07 ID:VJtMlmA9V

ブルボンがこの頑丈さを活かせてるのは路線が整備されてる中長距離王道に挑んでるからだという事実

 

46:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:17:14 ID:4adf7GN33

短距離GI少なすぎ問題

 

47:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:17:18 ID:T0grUREo5

というか実際ブルボンはきつくね。マックとライスはレースの疲労で後半戦からの復帰になるらしいし

 

48:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:17:23 ID:YGmKNI3xX

やっぱりあの春天そんなにきつかったのね

 

49:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:17:29 ID:OxxytM6S0

スーパーレコードだしな

 

50:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:17:33 ID:1o2FTOTF+

自分と競った二人を競り潰してるあたりブルボンは強いよ

 

51:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:17:40 ID:VLZr9HXSN

カブラヤオーかな

 

52:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:17:45 ID:4A6jz+xtQ

あいつは競り潰すどころか競技そのものからパスアウェイさせてるからな

 

53:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:17:51 ID:kNEmBb33y

付いていかなきゃ負けるのに付いていったら脚がぶっ壊れるという

 

54:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:17:58 ID:Eug+2i8gc

ブルボンは菊花でも春天でもライス競り潰して勝ってるから実際尋常じゃなく体が強い

 

55:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:18:04 ID:GKBge6P/y

あるいはライスがあんま身体強くない

 

56:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:18:08 ID:gGa4Q+/9Q

>>55

ブルボンボデーは菊花賞で芝3000メートルのワールドレコード出した上でJC有馬連投で勝ってるキチガイボデーだからライスは普通に頑丈

 

57:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:18:13 ID:ii6Tcvynr

サイボーグ定期

 

58:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:18:19 ID:KhRSsVhWN

やはり消耗した部品を換装していたのか

 

59:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:18:23 ID:0Jj+k0t5o

ロボっぽいしな

 

60:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:18:28 ID:BiCRP+ui/

ブルボンの換えの脚ください

 

61:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:18:34 ID:UDOY1DpuT

冗談じゃなくほしいやついそう

 

62:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:18:40 ID:s07+M0Y4/

脚ぶっ壊れたウマ娘からすれば垂涎の品

 

63:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:18:46 ID:GOPFXqBNW

一億円で故障しない肩があったらローンを組んでも絶対に買った。

そのお金を返せる自信があった。

 

64:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:18:53 ID:orJowXyHZ

63はやきうだけど実際故障しないことって大事だからな

 

65:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:18:58 ID:VpgJSbOaA

テイオーが怪我してリハビリしてる間もブルボンは練習できてたからな

 

66:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:19:04 ID:vP/qQf+yQ

というかテイオーの出走レース<ブルボンの出走レースだからな

 

67:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:19:09 ID:4crOevb8f

マ?

 

68:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:19:14 ID:vP/qQf+yQ

ブルボン12戦12勝(重賞11勝GI9勝)、テイオー11戦7勝(重賞3勝GI3勝)

 

69:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:19:19 ID:HuFXAXe0s

テイオーの残りの4勝は何?

 

70:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:19:24 ID:qb9ODToAE

OP戦とか

 

71:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:19:30 ID:vCYiSNTma

じゃあ経験でもブルボンが上か

 

72:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:19:34 ID:+/t/huB1b

GIもそうだしライバルとの対決という経験値的な意味でもブルボンの方が上だぞ

 

73:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:19:41 ID:MWL6lWxtz

ルドルフのライバルは存在しないから経験値的にはブルボンが上かもしれない

 

74:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:19:45 ID:Y35BbOmrh

シービーは?

 

75:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:19:51 ID:QQ5t8jkt6

シービーは強いて言うならレベル

 

76:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:19:55 ID:KGYs+HqVW

宝塚記念 シービー2着

ジャパンカップ シービー10着

有馬記念 シービー3着

春天 シービー5着

 

なおルドルフは全部1着

 

77:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:20:01 ID:WyAB12U7k

善戦してるじゃん

 

78:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:20:07 ID:aH4GzMtNY

こう見ると常に2位を死守するライスってすごいんだな

 

79:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:20:12 ID:U1mnqurvw

シービーさんはバ群にブロックされて不運にも負けるパターンが多すぎる

 

80:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:20:19 ID:NAoBILRFk

君たちはアレが不運だと思えてるんやから生きるの楽でええね

 

81:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:20:24 ID:8GsNIhd25

不運以外の何物でもないんだよなぁ……

 

82:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:20:31 ID:GuQRb8Av3

ブルボンはライスがいてよかったね。ライスにとってはどうかは知らないけど

 

83:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:20:37 ID:28XDM4v1Z

ライスシャワーさんの被害

日本ダービー

京都新聞杯

菊花賞

天皇賞春

 

なお同期だからこれからも続くと思われる

 

84:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:20:44 ID:pETx3DSQA

無慈悲

 

85:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:20:50 ID:yyyVAg5kY

天皇賞春でマックイーンに先着できるバケモンが今年はじまるまで重賞未勝利だったという事実に震えるわ

 

86:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:20:56 ID:9iSbKrejQ

救いはなさそう

 

87:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:21:00 ID:FyHqacFPP

本人は「ブルボンさんがいてこその自分だと思ってます」って言ってたから……

 

88:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:21:04 ID:w3RicuCSt

ぐう聖

 

89:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:21:11 ID:bWTgtI2i0

まあいなけりゃよかったとは言えないだろ

 

90:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:21:15 ID:g4mvHNYGB

普通に仲いいぞ

 

91:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:21:21 ID:OmEMHJ3qF

ウマ娘たちはみんないい子すぎる

 

92:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:21:26 ID:tYj3BmJaj

ルドルフ前哨戦でないの?

 

93:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:21:30 ID:DtwjQXEya

出ない

 

94:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:21:35 ID:MI7fcrnHw

なんで出ないんだろ

 

95:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:21:41 ID:/fDdoS75x

ブランクなんて問題にもならないとか

 

96:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:21:47 ID:NAoBILRFk

前哨戦なんて出たら情報を隼瀬くんに渡してあげるようなもんやろ

皇帝に限ってそんなアホなことせんわ

 

97:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:21:51 ID:tYj3BmJaj

そっか……ならテイオー前哨戦でないの?

 

98:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:21:56 ID:/0WiB/g5S

 

99:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:22:00 ID:XAt2SizFc

 

100:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:22:04 ID:AMbq+0KWX

 

101:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:22:11 ID:HTqMKF3xQ

 

102:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:22:15 ID:cXoqkTj4I

謎の一体感

 

103:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:22:19 ID:qjexAyXnC

というかあまのじゃくスレ民の共通認識になるくらい怪我しておいてまだGIに有力ウマ娘として出走できるテイオーってやっぱ天才だわ

 

104:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:22:25 ID:tYj3BmJaj

強いウマ娘が走るところ見たいんだが……

 

105:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:22:32 ID:davbH4AtA

そんなあなたにブルボン

 

106:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:22:36 ID:tYj3BmJaj

ブルボンはいつもいるから好き

 

107:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:22:42 ID:ZPT8LDFbb

ブルボンの何が人気って、寒門からの下剋上ってのもそうだけどいっつも走ってくれるからだからな

 

108:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:22:48 ID:UlQkICUF2

主要GI全部好走してくれるしストーリー性もあるから推しやすい

 

109:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:22:54 ID:O5kspWVFp

好走……?

 

110:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:23:01 ID:hDGRYsQzP

まあ好走には違いない。好走というには強すぎるが

 

111:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:23:07 ID:E8m2rWM5m

というか前半のテイオーローテとかマックイーンのローテ見るとわかるけど、沖野Tって基本前哨戦をきっちり踏むんだよ。

それがいきなりGIに挑ませるってあたり、テイオーの実力を完璧に信用してることとテイオーの脚の耐久性を全く信用してないことがわかる

 

112:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:23:12 ID:z0A51JR+a

沖野Tはマックイーンを阪神大賞典→春天で出してほしかった

 

113:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:23:17 ID:4Wa+KX7wR

ブルボンと対戦経験がないまま春天出てたらペースについていけずに掲示板外してたかもしれないし言いっこなしよ

 

114:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:23:22 ID:tYj3BmJaj

にわかだから聞きたいんだけど、ルドルフとブルボンの無敗の三冠対決もそんなにないことでしょ?

 

115:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:23:29 ID:DITNjvJHh

そんなにというか無い

 

116:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:23:36 ID:e0U5uoLeF

三冠ウマ娘っていうのがそもそも生まれないからな。それが無敗ならなおさら

 

117:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:23:41 ID:Dc3qewy2X

無敗の三冠っていう例がそもそも2例しか無いはず

 

118:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:23:45 ID:7ngICAE44

そっか……テイオー見るの楽しみだなぁ

 

119:尻尾上がり名無し ??/6/2 22:23:51 ID:UCUfOztNC

【速報】テイオー怪我

 

 




58人の兄貴たち、感想ありがとナス!

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メモリー:3/6/3〜3/6/13

ブルボンクエストⅢ〜そして凱旋門へ〜

https://syosetu.org/novel/259565/87.html
の後半から
https://syosetu.org/novel/259565/89.html
までのスレ


1:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:31:00 ID:Yx9SdRcRy

いつもの

 

2:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:31:07 ID:AUSWQyRur

ウマッター民お通夜で芝

 

3:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:31:13 ID:tlUAYFDTf

まあ3度目だからね

 

4:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:31:21 ID:EFGIQSuti

骨折?

 

5:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:31:27 ID:ndYA3G+pE

YES

 

6:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:31:36 ID:JhnCffBp0

左脚の剥離骨折

 

7:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:31:44 ID:HFBmW+o0c

あーそう。まあまた頑張れ

 

8:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:31:48 ID:vnf62WciN

>>7

訓練され過ぎている

 

9:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:31:54 ID:tE3PT4a4j

練度の高いテイオー民は怪我に動じないもんだ

 

10:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:31:59 ID:Cn6D8mEZ8

しゃーない、当日はエア実況スレ立てるか!

 

11:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:32:06 ID:gqdQlpthF

エア実況スレってなに……?

 

12:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:32:13 ID:89Q8PVDKt

エア日本シリーズみたいなもんだろ

 

13:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:32:17 ID:V57MMmGOx

テイオー民は難民化しつつあるな

 

14:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:32:22 ID:AYQVpT6VF

うろたえないィ! テイオー民はうろたえないッ!

 

15:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:32:31 ID:ge6EpeCoe

まあ復活するだろうしせいぜい難民になることだ

 

16:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:32:39 ID:LHwgTtprf

解説員のコメント

「果てしなく恐ろしい相手が居なくなって安心したというところ。戻ってくるいつかに備えておこうと思います」

 

17:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:32:47 ID:GPMptbaBT

素直でよろしい

 

18:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:32:53 ID:5y0oByLBl

素直っ!

 

19:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:32:58 ID:zzwiY7MvT

素直定期

 

20:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:33:04 ID:SQ9mKxaeE

素直な解説員たすかる

 

21:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:33:09 ID:M815iP4Pl

解説員って割とテイオー信者なところあるよな

 

22:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:33:14 ID:JgLRK/sCB

果てしなく恐ろしい相手が居なくなって安心したというところ←有馬以来の怪我明けでも実力自体は認めてるし警戒してる

戻ってくるいつかに←3度目の骨折だけど戻ってくると思ってる

備えておこうと思います←3度目の骨折を越えても実力自体はあるだろうと思ってる

 

23:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:33:23 ID:dNA8/fA2e

解説員がURAの設置した記者会見にしか出ない理由がわかった気がする

 

24:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:33:32 ID:AsaIcVhJ5

悪意ある切り抜きされたらとんでもなく燃えそう

 

25:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:33:40 ID:xNKrQRG54

本人気にしない定期

 

26:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:33:49 ID:yGMzIETrj

URA「気にして(懇願)」

 

27:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:33:56 ID:YwtMwgUb2

スタートレーナーなのに言葉遣いがあけすけすぎる

 

28:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:34:02 ID:cfzXRA32X

テイオーは実際戻ってこれるの?

 

29:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:34:08 ID:V5eAkMQEC

さすがに3度目は無理でしょ

 

30:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:34:12 ID:fKj7Zw9F1

>>29

ブルボンに3000メートルは無理とか言ってそう

 

31:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:34:17 ID:lVKW98H4y

>>29

おはおじさん。距離限界見えてるぞ

 

32:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:34:23 ID:G47pjQJvJ

>>29

2度あることは3度あるんだよなぁ

 

33:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:34:32 ID:qfajB3rGv

戻ってくること自体はできるけど実力は落ちるだろうな

 

34:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:34:40 ID:x7ghLaqgl

まあね

 

35:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:34:46 ID:DUpnqiU0f

まあそれはそう

 

36:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:34:51 ID:CCHPyJg+o

沖野Tは怪我させるけどリカバリーうまいから

 

37:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:34:58 ID:Rmi13hS0n

RTA走者かな

 

38:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:35:07 ID:49cWn4F44

ガバを起こすな定期

 

39:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:35:15 ID:wfKGEMspQ

これもうマッチポンプだろ

 

40:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:35:24 ID:NAozthQHc

実際ウマ娘の怪我はしゃーないんやで。事故みたいなもんや

 

41:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:35:32 ID:IHmENUQkK

その事故を無くすのがトレーナーの仕事ダルォォォ!?

 

42:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:35:39 ID:NAozthQHc

せやな

 

43:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:35:46 ID:PUj26q+Bg

素直!

 

44:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:35:52 ID:Mo+u8cgA4

素直なドブカスニキ

 

45:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:36:01 ID:n3VOjH2Kn

解説員信者だからか素直なところも似ている

 

46:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:36:05 ID:NAozthQHc

照れるわ

 

47:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:36:12 ID:Udo6bXuVK

実際ニキから見て復帰はどうなの?

 

48:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:36:20 ID:NAozthQHc

ふつーに無理やろうけど、そもそも2度の骨折からの復帰もふつー無理やからな

 

49:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:36:26 ID:C9/1lsKSs

骨折も3度あったんだから復活も3度ある!

 

50:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:36:30 ID:f5SoIT542

しかし>>49、よくわかったな

 

51:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:36:36 ID:C9/1lsKSs

? そんなことすぐわかるだろ?

 

52:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:36:41 ID:C9/1lsKSs

なぜなら俺はトウカイテイオーを信じている!

俺たちは選ばれし神の子!

テイオーの民だ!

 

53:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:36:49 ID:ZhblRX+YS

うおおおおおお!!!!

 

54:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:36:56 ID:i9rZqOppU

うおおお!!!

 

55:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:37:02 ID:YG4jSQr8K

うおおおおお!!!!

 

56:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:37:07 ID:Wip54Wo4e

うおおおお!!!

 

57:尻尾上がり名無し ??/6/3 19:37:16 ID:NAozthQHc

なんやこいつら、頭おかしいんちゃうか

 

 

 

◆◆◆

 

 

【ルドルフVSブルボンVSテイオー】宝塚記念実況スレ【テイオー抜き】

1:尻尾上がり名無し ID:kGno8F24F

1枠1番オースミロッチ

2枠2番イクノディクタス

3枠3番ミホノブルボン

4枠4番アイルトンシンボリ

5枠5番ロンシャンボーイ

6枠6番シンボリルドルフ

6枠7番ニシノフラワー

7枠8番ホワイトアロー

7枠9番セキテイリュウオー

8枠10番アラシセ

8枠11番シャコーグレイド

 

2:尻尾上がり名無し ID:YkSHimCBr

ライダー抜きライダーみたいなスレタイ

 

3:尻尾上がり名無し ID:SLTOWkdGp

ガキが……

 

4:尻尾上がり名無し ID:JGGk950Xo

メスガキの顔が見れなくて……俺はがっかりした

 

5:尻尾上がり名無し ID:lYEdhCOch

ニシノ神が萎縮しておる

 

6:尻尾上がり名無し ID:YmSEOfMeS

枠入り速いな

 

7:尻尾上がり名無し ID:enQS6P7bY

テイオーのパドックアピールがないからな

 

8:尻尾上がり名無し ID:Pcd6LrxJc

ああ……

 

9:尻尾上がり名無し ID:kIQ5+nImH

だから半端に11人なのか

 

10:尻尾上がり名無し ID:JAP+px79X

これもうマッチレースだろ

 

11:尻尾上がり名無し ID:WwkD+dvmd

たぶんそれ全員が思ってる

 

12:尻尾上がり名無し ID:QpZ01OqYD

無敗の三冠対決とか次はいつ見られるのやら

 

13:尻尾上がり名無し ID:fHJI2uY5/

俺未来人だけど今見ようとしてたところだよ

 

14:尻尾上がり名無し ID:mP/WS9C2T

そうは見られんやろ

 

15:尻尾上がり名無し ID:8xX8UHVNr

ん?

 

16:尻尾上がり名無し ID:fZthn6jSW

でた

 

17:尻尾上がり名無し ID:e6Wlyxmeh

うわでた

 

18:尻尾上がり名無し ID:/y4su+G54

未来人ニキそう言えばテイオーの次走は有馬記念とか言ってたな

 

19:尻尾上がり名無し ID:VGU18nx1u

こいつ結構な頻度で当てるよな

 

20:尻尾上がり名無し ID:BlZT+4Ovm

次走有馬記念予想とか疫病神かな

 

21:尻尾上がり名無し ID:9QmqKU7QK

こいつのいる未来っていつなんだ?

 

22:尻尾上がり名無し ID:sZvmq3P/+

嘘乙

 

23:尻尾上がり名無し ID:NibuSOOpu

ID変わってないから何かしらの技術を持ってることは間違いない

 

24:尻尾上がり名無し ID:ANu4Nppxz

枠入りはじまった

 

25:尻尾上がり名無し ID:L1fgtEx9o

枠入りか……

 

26:尻尾上がり名無し ID:4jVTn7mlK

くるか

 

27:尻尾上がり名無し ID:FWC6H66xL

テイオーがいればなぁ

 

28:尻尾上がり名無し ID:M2NW3B4CS

>>27

言っても仕方ないし楽しもうぜ

 

29:尻尾上がり名無し ID:gbe4yqgis

そうそう

 

30:尻尾上がり名無し ID:FWC6H66xL

そだね

 

31:尻尾上がり名無し ID:k/FZO0F9m

ブルボンのスタートがどうなるか

 

32:尻尾上がり名無し ID:/F4qXsNeX

解説員は勝ち目あるのかな

 

33:尻尾上がり名無し ID:NaoaMPRRz

なきゃ出さへんし、出す以上作る

 

34:尻尾上がり名無し ID:GPHeZBUlo

ブルボン勝ってくれ

 

35:尻尾上がり名無し ID:LbwlVaf9M

世代交代か、帝政が続くか

 

36:尻尾上がり名無し ID:f41Y9frz5

ルドルフが負ける姿を見たくないわ

 

37:尻尾上がり名無し ID:6U/sywNx4

あそこまで無敵だったんだから最後まで無敵でいろ

 

38:尻尾上がり名無し ID:14ree5S/d

シービーを一方的に倒したんだからブルボンにも勝て

 

39:尻尾上がり名無し ID:Hg/LdQx51

スタート!

 

40:尻尾上がり名無し ID:NaoaMPRRz

出たわファンネルミサイル

 

41:尻尾上がり名無し ID:ltNHTWfq8

相変わらず両脇がすっ飛んでいくの芝

 

42:尻尾上がり名無し ID:XFBWG/5Jr

あれホントどうやってんだろ

 

43:尻尾上がり名無し ID:kXd/jeGbh

両脇のウマ娘が爆逃げしていくのホント謎

 

44:尻尾上がり名無し ID:NaoaMPRRz

牽制でスタート鈍らせて、その後位置取りと歩法で焦りを誘発させるんや

焦りとプレッシャーで押し出した相手はスパートした感じになるから、スタミナが尽きるまで逃げ切るくらいしか勝ち目がなくなる

 

45:尻尾上がり名無し ID:ik0IEtudO

なんで勝ち目なくなるの?

 

46:尻尾上がり名無し ID:NaoaMPRRz

後方脚質なら脚溜められへんから逃げるしかなくなる、前方ならそのまま逃げる

要は選択肢のない一択を押し付けるようなもんや

 

47:尻尾上がり名無し ID:6wtzEwXbf

それほんとにやれるのか?

 

48:尻尾上がり名無し ID:xCJVMorlI

やれてるんだよなぁ……

 

49:尻尾上がり名無し ID:fILfYezIn

ブルボン、ハナ奪われるか

 

50:尻尾上がり名無し ID:1upt+M5yU

おっ

 

51:尻尾上がり名無し ID:T6Ge0fsEs

今減速した?

 

52:尻尾上がり名無し ID:vatYN+Ww1

抜きに行かなかったな

 

53:尻尾上がり名無し ID:NaoaMPRRz

ブルボンちゃんが安定の代名詞やからやろな

抜き去る前に、変化した状況に脳が対応しに行こうとする前に変に落ち着いてまったから、もとの作戦を実行しようとしてるんや

これはたぶん先行策の位置にまで下がっていくと思うで

 

54:尻尾上がり名無し ID:bewLjx0zZ

トレーナーってここまで考えてやるのか……

 

55:尻尾上がり名無し ID:gSvapdbkc

皇帝やべーわ

 

56:尻尾上がり名無し ID:0kI0BkeI7

でも平和に戻ったな

 

57:尻尾上がり名無し ID:v1xskjF/F

!?

 

58:尻尾上がり名無し ID:YG7w/XluT

なんかきた

 

59:尻尾上がり名無し ID:vaAyh4oIF

仕掛けるの早くね

 

60:尻尾上がり名無し ID:nWfUu6cvv

まーたルドルフがなんかしたのか

 

61:尻尾上がり名無し ID:NaoaMPRRz

競り合いを装って仕掛けさせたんやろな

 

62:尻尾上がり名無し ID:uZQU1QOHo

このレースって団体戦だっけ

 

63:尻尾上がり名無し ID:CdyPOwC9U

いえ、個人戦です

 

64:尻尾上がり名無し ID:tIHYPi4Z7

ルドルフスーッと下がっていくの芝

 

65:尻尾上がり名無し ID:L3s//QJWd

好き勝手しすぎだろこいつ

 

66:尻尾上がり名無し ID:Les9H6xT2

我皇帝ぞ

 

67:尻尾上がり名無し ID:0uUJJijX1

はい……

 

68:尻尾上がり名無し ID:ssTvlLrGZ

そのとおりです……

 

69:尻尾上がり名無し ID:KhskoqjVJ

こいつ脚早いな

 

70:尻尾上がり名無し ID:fT22MmqTD

仕掛けたやつはっや

 

71:尻尾上がり名無し ID:NaoaMPRRz

ブルボンちゃんが下がっとる

 

72:尻尾上がり名無し ID:ed9zPCJ06

なんで?

 

73:尻尾上がり名無し ID:Vv2fPqg/U

序盤で減速する逃げとは

 

74:尻尾上がり名無し ID:Kj4rXZRP3

今回も抜きに行かなかったな

 

75:尻尾上がり名無し ID:8eg23TGDm

これ他の全員がブルボンとルドルフの駒みたいなもんだろ

 

76:尻尾上がり名無し ID:3ILXhSt10

理不尽極まる

 

77:尻尾上がり名無し ID:Lw/8iKlAP

ブルボンの駒ってブルボン一人だろ

 

78:尻尾上がり名無し ID:NaoaMPRRz

たぶんブルボンちゃんはわざとらしく敢えて下がって抜き去りやすいようにしたんやろな

ルドルフの手中にいただけに、ブルボンちゃんの掌の上には乗りたくなかったとか、そこらへんちゃうか

 

79:尻尾上がり名無し ID:FQCv4mUcH

はえー

 

80:尻尾上がり名無し ID:ZzuqGu2xf

ルド山つえーわ

 

81:尻尾上がり名無し ID:s/cpLWHhU

というかルドルフの強さって解説無いとわかりにくいな

 

82:尻尾上がり名無し ID:w8aIWaj4a

なんかまたきた

 

83:尻尾上がり名無し ID:SPBErbdBh

ルドルフを包むバ群がめくれて上がっていくの芝

 

84:尻尾上がり名無し ID:D5qtEyyjj

何をやってるんですかね……

 

85:尻尾上がり名無し ID:gf9L1tETW

ドブカスニキ、解説

 

86:尻尾上がり名無し ID:SZJ+wbkUQ

あれ?

 

87:尻尾上がり名無し ID:ITaDwCyim

消えた

 

88:尻尾上がり名無し ID:+FmI5TK1T

というかこれブルボンを半包囲して閉じ込める気か

 

89:尻尾上がり名無し ID:HzArLwkxI

空撮カメラから見ると三日月みたいできれい

 

90:尻尾上がり名無し ID:1t+NwFpnI

ほんとだ

 

91:尻尾上がり名無し ID:bi2bRmSoX

ブルボンコーナー曲がるの下手になった?

 

92:尻尾上がり名無し ID:NaoaMPRRz

コーナー時にゆるく曲がることで外に持ち出して包囲されるのを防いだんやろ

内側にいるから包めるけど外にいるやつは包めん

 

93:尻尾上がり名無し ID:YSOvP2NTE

勢子みたいに追いかけてたルドルフが後退していくあたり対応は正しかったんだろうな

 

94:尻尾上がり名無し ID:2j94qlDAA

ルドルフ楽しそう

 

95:尻尾上がり名無し ID:sDkqHr4xW

ニコニコ皇帝

 

96:尻尾上がり名無し ID:qe8TfsEwj

イケメン皇帝

 

97:尻尾上がり名無し ID:zxAIQctMx

まあ読み合いは楽しいんじゃないの

 

98:尻尾上がり名無し ID:ajbT2T7dk

付き合わされる周りは……?

 

99:尻尾上がり名無し ID:icrbOlCCH

付き合うのが悪いみたいなところあるし

 

100:尻尾上がり名無し ID:C/YqJYwlV

ブルボンなんとか逃げてるな

 

101:尻尾上がり名無し ID:NaoaMPRRz

時計がおかしい

 

102:尻尾上がり名無し ID:znRGcWLZC

ドブカスニキどうしたん

 

103:尻尾上がり名無し ID:F4WGn8W9+

時計?

 

104:尻尾上がり名無し ID:shlx4WBt8

ルドルフ仕掛けた?

 

105:尻尾上がり名無し ID:L2fxYDH/B

いつものフリじゃね

 

106:尻尾上がり名無し ID:P+gOqYSst

みんな邪魔しに来ないの芝ですよ

 

107:尻尾上がり名無し ID:0CnNlR9CM

散々利用されてるからな

 

108:尻尾上がり名無し ID:u8uiH5mfO

皆道を開けてあげててやさしい

 

109:尻尾上がり名無し ID:M1OPMTzqc

これマジじゃね?

 

110:尻尾上がり名無し ID:A6ASS8bWf

おいおい、まだ半分くらいだぞ

 

111:尻尾上がり名無し ID:ESH9Tsc0f

ん?

 

112:尻尾上がり名無し ID:vg/SktP+g

皇帝の最速仕掛けってどれくらい?

 

113:尻尾上がり名無し ID:lsNoMm80L

知らんけどいつも最終の方から仕掛けてちょこっと抜け出す

例外は春天と有馬

 

114:尻尾上がり名無し ID:/RIRSBhqw

これマジだろ

 

115:尻尾上がり名無し ID:7YvLApN2B

速い速い

 

116:尻尾上がり名無し ID:b7LLIuyNR

結構な差があったのになぜこんなに爆速で詰められてるんですかね

 

117:尻尾上がり名無し ID:F1ymkxTKp

と言うかブルボン遅くね

 

118:尻尾上がり名無し ID:omg11bDHL

ブルボンがというよりレース自体がすごいズブいじゃん

実況が状況説明しかしてないから気づかなかったけど

 

119:尻尾上がり名無し ID:po11jBtPu

ブルボンの連続レコード記録逝きそう

 

120:尻尾上がり名無し ID:vAtBxPz/n

ドブカスニキの時計がおかしいってこれか?

 

121:尻尾上がり名無し ID:pMjHCs8yt

ブルボン加速したな

 

122:尻尾上がり名無し ID:Ia5Ciy7YE

やっぱちんたら走ってたのか

 

123:尻尾上がり名無し ID:3R+ohU8W2

序盤から広げていけばもっと楽に勝てたんじゃないの?

 

124:尻尾上がり名無し ID:s4soL1F3j

さあ……

 

125:尻尾上がり名無し ID:d5gX03U3y

脚溜めたかったとかじゃね

 

126:尻尾上がり名無し ID:NaoaMPRRz

ルドルフさんが仕掛けやすいくらいの位置に居続けるために速度を緩めて、緩めた速度を利用して脚溜めてたんや

スローペースに気づかれないために読み合いとか駆け引きを必死にやってるように見せてたんか

 

127:尻尾上がり名無し ID:BDU1iVs+G

意味がわからんくらいの読み

 

128:尻尾上がり名無し ID:TEpI5k6yF

それは気のせいなのでは……

 

129:尻尾上がり名無し ID:wea6DMIG3

解説員ならやりかねないという負の信頼がある

 

130:尻尾上がり名無し ID:hl98gkKEN

負……?

 

131:尻尾上がり名無し ID:ELsVCeRts

ブルボンもよく速度緩めてたわ

 

132:尻尾上がり名無し ID:X06vtBmBf

となるとお互いの信頼感ヤバいな

 

133:尻尾上がり名無し ID:KmEyO9L/K

うわ、もうすぐ終わる

 

134:尻尾上がり名無し ID:DxLZ3NCyM

第4コーナー回った

 

135:尻尾上がり名無し ID:O+b7p0f9a

ルドルフ差せ!

 

136:尻尾上がり名無し ID:74jjPJ98c

逃げ切れブルボン!

 

137:尻尾上がり名無し ID:LZwVf3uRJ

完全なマッチレースですねこれ

 

138:尻尾上がり名無し ID:713C8ACRu

ブルボン!

 

139:尻尾上がり名無し ID:Oatuq+C1C

ブルボンはっや

 

140:尻尾上がり名無し ID:dRvwSVqSU

ブルボン速すぎる

 

141:尻尾上がり名無し ID:qqQaw4DOt

ルドルフもやべぇな

 

142:尻尾上がり名無し ID:7InusUIe7

末脚すげぇええええ!

 

143:尻尾上がり名無し ID:xTgHtrYRS

さすが元差しウマ娘

 

144:尻尾上がり名無し ID:7eFhmEUEU

スプリンター並みの速さで芝

 

145:尻尾上がり名無し ID:JfC9gkAdK

ルドルフ離されてるじゃん

 

146:尻尾上がり名無し ID:BI3U/W+8C

うわぁぁああ! やだやだやだ! 皇帝が負けるところなんて見たくないよぉ!

 

147:尻尾上がり名無し ID:bnQstHN9f

ここからなんとかしろルドルフ

 

148:尻尾上がり名無し ID:l9O+AzMy8

え、ひょっとしてマジで逃げ切る?

 

149:尻尾上がり名無し ID:fMjmSPL7h

うわ、ルドルフも意地だな

 

150:尻尾上がり名無し ID:EkVHGNI+7

2分の1が縮まらん

 

151:尻尾上がり名無し ID:R/NISrume

広がっていくの絶望感ある

 

152:尻尾上がり名無し ID:3MoUZLJm7

3分の2……

 

153:尻尾上がり名無し ID:FtXuvyfiq

ブルボンつえぇわ

 

154:尻尾上がり名無し ID:m8a2BIz4a

ミホノブルボンさんってこんなに強かったんですね……

 

155:尻尾上がり名無し ID:56Lbg0xtq

1バ身差か

 

156:尻尾上がり名無し ID:+IYfBX7oU

いつもやってきたことをやり返されたな

 

157:尻尾上がり名無し ID:+UOOIOVw4

勝ちやがった

 

158:尻尾上がり名無し ID:+vQkWSJcj

ブルボン勝ったとかうせやろ?

 

159:尻尾上がり名無し ID:AgUfuoSRv

強いわこいつ

 

160:尻尾上がり名無し ID:OxGqDPV4s

つっよ

 

161:尻尾上がり名無し ID:usVm3oSev

というかルドルフはあそこから仕掛けられるような脚あるならもっと前から見せてくれよ

 

162:尻尾上がり名無し ID:+TMlmYzA1

ブルボンの最終直線のタイムスプリンター並だな

 

163:尻尾上がり名無し ID:J/qw/AKMk

え? ブルボンってステイヤーじゃなかったんですか?

 

164:尻尾上がり名無し ID:jFUh1rBf8

クラシックディスタンスやで

 

165:尻尾上がり名無し ID:OyDgMz8Ph

全ウマ娘は本質的にマイラーだぞ

 

166:尻尾上がり名無し ID:grzrR88dw

まるでスプリンターみたいだぁ……

 

167:尻尾上がり名無し ID:WMGN4JJYY

お前ら知らなかったみたいだけど実はブルボンってスプリンターだったんだよ

 

168:尻尾上がり名無し ID:d0PdahCZT

知らなかったわ

 

169:尻尾上がり名無し ID:B/c/U17JM

最後の最後に自分の本質で皇帝をねじ伏せるの熱すぎる

 

170:尻尾上がり名無し ID:TbzJmO6Nk

これ本質的にはスプリンターのブルボンにしかルドルフ打倒はできないってことじゃね?

 

171:尻尾上がり名無し ID:ONm7P965e

自分の弱点を使って皇帝を倒すの熱い

 

172:尻尾上がり名無し ID:kwb1UhezB

皇帝強かった

 

173:尻尾上がり名無し ID:Nucn2ghL1

序盤中盤はどうなるかと思ったわ

 

174:尻尾上がり名無し ID:nZ1NbxRBu

なんで勝てたのか謎

 

175:尻尾上がり名無し ID:YHEIF3Cx8

解説員解説しろ

 

176:尻尾上がり名無し ID:/ETGvE6Um

なんで勝てたって末脚勝負で勝ったんだろ

 

177:尻尾上がり名無し ID:KEfKH7aS7

末脚勝負できる逃げウマ娘って一体……

 

178:尻尾上がり名無し ID:uwSXWRRPT

サ イ レ ン ス ス ズ カ

 




50人の兄貴たち、感想ありがとナス!
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アフターストーリー:僚戦

Q.使える駒1人ぶんだけでレースを支配してたやつが3人分の駒を与えられるとどうなりますか?
A.どうにもならないことになる


 有馬記念は、ヒシアマゾンの勝利に終わった。

 クラシック路線に比べて必要となる距離限界が短いが故にレベルが低いとの誹りを受けている――――そんなティアラ路線を主戦場にしたウマ娘による有馬記念制覇は、今や一般化した三冠ウマ娘という存在よりも更に珍しい。

 

 ミホノブルボンがいないからだとか、ナリタブライアンがいないからだとか、ライスシャワーがいないからだとか。

 そういう雑音すら黙らせる圧巻の追い込みで封殺してのけた今季のトリプルティアラのウマ娘は、『ヒシアマゾン』というウマ娘がシニアにも通じるティアラの雄だということをこの一戦で示したのである。

 

 

 2着はシンボリの古豪。3着は4年連続いつものひと。

 

 

 そんな有馬記念が終わると、ライトなトゥインクルシリーズファンたちはホープフルステークスで来年に向けての夢を見て、冬が明け大阪杯が来るまで眠りにつく。

 だがそんな惰眠を貪るファンたちに向けて、起床のラッパが吹き鳴らされた。

 

 

 アオハル杯の開催である。

 

 

 ブルボンの偉業によって、トゥインクル・シリーズは大量の新規ファンを抱えた。

 そしてその新規ファンたちはブライアンの傑出したパフォーマンスによる三冠奪取で定着しつつあるが、その定着しつつあるファンたちが一番離れやすいのがこの有馬後から大阪杯までの空白期間である。

 

 通であれば来季を占うこの時期も無論楽しめるのだが、通でなければGⅠでないと見ない、ということもままあるのだ。

 

 そんなときに、アオハル杯を行う。

 1月から2月まで、各レース場で順繰りに。

 それはまさしく、新規ファンの完全定着――――というかむしろ完全固着を狙った方式だった。

 

 そしてついでに、短距離とダートにも目を向けてもらう。

 なにせ同日同レース場でダート、短距離、マイル、中距離、長距離のレースをやるのである。中長距離の華やかさに隠されて見向きもされないことが多い短距離とダートにも自然と目が行くし、そこで興味が惹かれれば人気になることもあるだろうという施策である。

 

 そして、アオハル杯を運営するにあたってURAは工夫をこらした。つまり、スピカVSリギルの対戦カードをどういう日程で行うか、ということである。

 トリにするのもいい。中盤に置くのも中弛みを防ぐ方法としては悪くはない。

 

 だが、やはり。

 

「ということで、我が銀河帝国はURAから先鋒を仰せつかった。皇帝陛下、なにか一言お願い致します」

 

 作戦会議用にホワイトボードを背にした、半円型の長机。

 短い直線に面している皇帝と参謀は、半円の弧に面して腰掛けている出走メンバーを見渡してから声をかけた。

 

「銀河帝国たる所以は星の名を冠すチームの尽くの上に立ち、統治し支配するが故にある。有馬記念では、ヒシアマゾンが勝った。我々もこれに続こうじゃないか」

 

 !?と。

 隣からの唐突なフリに若干虚を突かれながらもきっちりそれっぽいことを言った皇帝ルドルフは、おーっ!と気を入れるチームメンバーたちを見回してから話のバトンを傍らの参謀に投げた。

 

 視線でなんとなく投げられたことを察知し、指で軽く卓上を叩いて注意を集める。

 

「事前に発表していたが今回の開催場所は東京レース場。マイルは1600メートル、中距離は2000メートル、長距離は2500メートル」

 

 一応どのチームがどこで走るかというのは、くじで決まるということになっている。

 しかしこれはおそらく、くじによるものではないだろう。

 

 日本の看板レース場たる東京レース場で、日本の看板チームが走る。

 まあ多分普通に最初はくじじゃなくて人為的に決めたんだろうな、と。

 

 関係者の殆どがそう思っていたし、ファンも一部の純粋無垢な連中以外はそう思っていた。

 

「改めて出走区域を通達する。長距離はルドルフ、ブライアン。中距離はブルボン。マイルはスズカ、エルコン、グラス。短距離ダートは不出走だ」

 

「中距離はブルボンさんだけでよろしいのですか?」

 

 そう問うたのは、グラスワンダー。

 

 相手の中距離には、スペシャルウィークがいる。対スペシャルウィーク決戦兵器みたいなところがあるグラスワンダーは、決戦兵器だからこそその強さを知っていた。

 スペシャルウィークは、ジャパンカップで見せたように格上食いなところがある。

 ライバルなだけに、そして天敵呼ばわりされているだけに、グラスワンダーはブルボンも脅かされかねないということを知っていた。

 

 無論、グラスワンダーはミホノブルボンの強さを間接的にせよ知っている。

 そして、評価もしていた。あるいは実像以上に。

 

 自分とエルコンドルパサーを完膚無きまでに叩きのめしたサイレンススズカに勝った。

 その事実が独り歩きしている感は否めない。なにせグラスワンダーはミホノブルボンと対決したことがないからである。

 

 しかし彼女がミホノブルボンに与えた評価は誇張であっても虚構ではなかった。

 つまり比較的、彼女は正確な目でミホノブルボンを見ていたのである。

 

「2000メートルだから問題ない。それに」

 

「それに?」

 

「少し宣伝したいことがある」

 

 また何か企んでいるというわけですか。

 そこらへんを察して、グラスワンダーはおとなしく引き下がった。

 

「ということで、ブルボン」

 

「マスター、私はνブルボンです。新勝負服のロールアウトにより進化しました」

 

「そうか。じゃあ中距離は頼んだぞ、ブルボン」

 

「νブルボンです、マスター」

 

「……エヌ、イー、ダブルユーか?」

 

「いえ、ギリシャ文字です。逆襲のブルボンです」

 

 お前は負けていないんだし、されることはあってもすることはないんじゃないか。

 そう思いつつ、東条隼瀬は曖昧に頷いた。

 

「わかった」

 

 おそらくわかってない。

 まあそんなことは置いておいて、参謀は彼らしく話を軌道修正して本旨に戻す。

 

「次、マイルについて。注意するべきはウオッカだ。デビューはまだだが、いい脚を使える。現時点でも直線の長い東京であればGⅠの1つや2つ取れるかも知れない」

 

「……でも、私の方が速いですよ?」

 

 いつもの。

 

 マイル戦線の総大将の不遜とも言える言葉に、副将二人は顔を見合わせた。

 奇しくも、毎日王冠の面子である。

 

「そうですねー」

 

「デース……」

 

 あのとき、年間無敗を貫いていた二人。

 ノリにノリ、ちゃんと対策した上で挑んだ二人を子供扱いして競り潰したウマ娘。それがサイレンススズカ。

 そんな相手の言うギャグみたいなセリフにこの二人は『あんたほどのウマ娘がそう言うなら……』と頷く他なかった。

 

「まあ、一応これまでの模擬レース結果を踏まえて、ウオッカが差し切る為の限界距離みたいなものを出してみた。つまり直線時にどれくらいの距離離していれば勝てるか、という距離だな。参考にしてくれ」

 

「ありがとうございますー」

 

「ありがとデース!」

 

 グラスワンダーと、エルコンドルパサー。

 普通ならば同時に運用しないし、別距離の大将格となっても全く問題ない二人。

 それをいっぺんに投入したのは、リギルが如何に層が厚いか、ということを示していた。

 

 そしてその層の厚さを示すような布陣を改めて見直しながら、ルドルフはふと気がついた。

 

(ウオッカが怖いのかな)

 

 ダイワスカーレットの方が強い。

 だが、ウオッカの方が怖い。

 

 彼らしい言葉で言えばたぶん、そういうことなのかと、ルドルフは思う。

 彼の『強い』という概念は、イコール安定して強いことである。

 そして彼の『怖い』という概念は、イコール爆発力があることである。

 

 トレーナーとして着任して早々安定感があれば強い!と思わせるように脳を破壊してのけた当人(無自覚)は、恐ろしく他人事のようにそう考えた。

 

 スピカの中距離担当ことスペシャルウィークは基本的に優等生的なところがある。学業成績とレース成績が相反している、というのか。

 だから、それほど警戒していないのであろう。安定感の強いウマ娘は、あくまでも彼の想定内で推移するから。

 

(たぶんそうなんだろうな……)

 

 そう思うシンボリルドルフの予測は当たっていた。

 

 エルコンドルパサーというウマ娘を評価しているグラスワンダーからすれば『スペちゃんと互角か少し上だったエルを倒したブロワイエは強い』という認識だったが、東条隼瀬からすれば『府中のスペシャルウィークなら不慣れな外国のウマ娘など相手にもしない』と評価している。

 

 つまり、スペシャルウィークはトップクラスに強い。今の怪我の三連単を食らったトウカイテイオーより断然強い。

 だが、参謀からすれば怖くはなかった。いつでも脳天気というか、スペッとした顔をしているからかもしれないが。

 

「あの、トレーナーさん。その予測表って私にはないんですか?」

 

「お前、そんな器用なことができるならピーキーの極みみたいな大逃げ専用機になってないだろ」

 

「あ……そうですね」

 

 一般トゥインクル・シリーズファンでも気づくようなことを今更気づいたスズカが若干しょんぼりしている中、話は長距離レースの話題に移った。

 

「ルドルフ。長距離に関しては、うまいことやってくれ」

 

「ああ。任された」

 

 極めて端的なやり取り。

 その後に、パンと柏手を叩く。

 

「では、3勝してここに戻ってこよう」

 

 一斉に立ち上がり、ガタンと音がして椅子がズレる。

 非常に統率の取れた動きからは、基礎を基礎から叩き込む東条ハナの薫陶が感じられた。

 

 最初に行われるダートと短距離のレースが終わると、はじまるのはマイルである。

 

「懐かしい……」

 

 東京レース場。たぶん最後に走ったのは、秋の天皇賞2000メートル。

 あのときとは違う空気を吸い込みつつ、スズカは1枠1番のゲートに入った。

 

「エル」

 

「わかってますよーグラス!」

 

 3枠と、5枠。

 それぞれ隣り合わないゲートに入り、左右を見回す。

 

 全くもってチーム戦を理解していないし、する必要もない。中盤までは、そんなサイレンススズカの補佐をする。そして勝つ。

 それが、この二人に与えられた役割だった。

 

 ゲートが開くと同時に、エルコンドルパサーが前方を、グラスワンダーが後方を見る。

 二人とも、海外遠征の経験者である。封じ込められたこともあるし、それを突破したこともある。

 

 チーム戦に慣れていないであろう他のウマ娘たちがめいめい好き勝手に走る中、チーム戦の本場にいた男に指示された経験豊富なこの二人は、実にうまく立ち回った。

 

「エル」

 

「はいはーい!」

 

 線で結ばれたように速度を合わせ、ウオッカの前を走る。

 グラスワンダーが外側、エルコンドルパサーが左側。

 

 外に持ち出そうとすればグラスワンダーが防ぎ、内を抜こうとすればエルコンドルパサーが締める。

 二人が見事な連携で即席の檻を構成する中、サイレンススズカはたぶん何も考えずに走っていく。

 

 それぞれが意思と目的を持って動くレースにおいては、これほど完璧な檻を作ることは難しい。共謀することができないからである。

 

 だが統一した意思のもとに息のあったコンビが運用されると、ほぼ完璧に対象のウマ娘を完封することができた。

 

(うげ……)

 

 突破する道が見えねぇ。

 こういうことをされたらどうするかっても、考えていかねぇとなぁ、と。

 

 新たな課題を得たウオッカだが、実際のレースでここまでバッチリブロックされることはない。たぶん。

 なにせやられていることは、互いに互いの意図を察してちょこちょこ調節し、爆発物でも扱うように徹底的に封殺するということなのだ。

 

 彼方へカッ飛んでいくサイレンススズカを差し切ることは、もうおそらくはたぶん無理。

 

(一旦下がって距離広げて、外から抜くか)

 

 バカっぽくかっこよさに憧れるところがあるが、決してバカではない。

 そんなウオッカは、レースがはじまって44秒でさっさとこの状況を前進によって解決することに諦めをつけた。

 

 どのみちこのまま封殺されると、勝つのはサイレンススズカ、即ちリギルが銀河帝国。

 

(なら、下がるに限る)

 

 ウマ娘のレースとは、如何に前にいくかである。有力な逃げウマ娘がいるならば、特に。

 まだまだ未熟ながらここであっさりと後退を選べるところが、ウオッカの非凡さだった。

 

 しかしその非凡さと同質のものを、前を走るこのエルグラコンビの二人は持っていた。つまり、後退した瞬間に一気に加速をかけたのである。

 スパートではない、半加速。するするとバ群を抜けて、やや減速ペースに移行したサイレンススズカの背中を捉える。

 

 その光景は実質的に三人の叩き合いになった毎日王冠の光景に似ていた。

 グラスワンダーが仕掛けるも粉砕され、続いて追いかけたエルコンドルパサーも子供扱いされて負けた、あのレースと。

 

 しかし、違うこともあった。

 この時先に仕掛けたのは、エルコンドルパサー。

 

 毎日王冠ではグラスワンダーが掛かった形になり早仕掛けする羽目になったが、今回は順当にエルコンドルパサーが仕掛けたのである。

 そしてエルコンドルパサーが仕掛けたのに僅かに遅れ、脚を溜め終えたグラスワンダーが仕掛ける。

 

 ウオッカをガッチリとブロックしつつもキッチリと勝ち目を残しつつ、最後に仕掛ける。

 二兎を追って二兎を仕留めようとするような、ここらへんの見極め、塩梅は流石であった。

 

 しかしやはり、サイレンススズカは片手間で打倒できるような相手ではない。

 

 ――――第一回新アオハル杯マイル戦。

 一着、サイレンススズカ。

 二着、エルコンドルパサー。

 三着、グラスワンダー。

 

 いずれ再びアオハル杯というこの場で仁義なき戦いを繰り広げることになるこの3人の再戦は、1チームが三着までを独占する完勝で終わった。




49人の兄貴たち、感想ありがとナス!

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アフターストーリー:復帰

Q.なんでこのロボいきなりガンダムにハマったの?
A.新勝負服発表生放送で視聴者のコメにνガンダムじゃんとか言われたから


 ――――復活したアオハル杯の初戦、勝利おめでとうございます

 

 ――――ありがとうございます

 

 ――――殆どのトレーナーからすれば初めての、東条トレーナーからしても久しぶりのチーム戦になりましたが、なにかしらの方針を立てて臨まれたと思います。よろしければ、お聞かせ願えますでしょうか?

 

 ――――まず、ウオッカ選手ですね。彼女は怖い脚を持っています。その切れ味についてある程度の目算は付けていましたが、予測し切れるものではありません。まずは数の優位を活かしてその切れ味を封じることを第一に考えました

 

 ――――ウオッカ選手は未デビューのウマ娘としては最先着となる6着でしたが、封じ込めは成功したと考えられますか?

 

 ――――彼女はもう少し長く、前進で突破することにこだわると考えていました。それをさっさと見切りをつけてするりと下がったところに燦めくような才能が感じられます。しかし一応どう動いても対応できるようにはしていましたから、成功したと言えるでしょうね

 

 ――――即座に下がられた場合、どうするおつもりでしたか?

 

 ――――単純な話ですが、序盤で下がられたらエルグラコンビにも下がってもらう予定でした。するとウオッカ選手は更に下がらざるを得ませんし、となるとスズカは差せません

 

 ――――なるほど……東条トレーナーがそこまで対策する、ウオッカ選手はこれからの注目株と?

 

 ――――自分の才能と長所を認識しつつも、冷静に立ち回れる。心の底から対戦したくない、怖い相手です

 

 ――――やはりそういった怖い相手を封殺しつつ本命を通すというのが、チーム戦の理想といったところなのでしょうか?

 

 ――――いえ。三冠ウマ娘クラスの力を持つ逃げ、先行、追込のエースを3枚用意して力押しするのが理想ですね。なにもしなくていいので

 

 ブルボン、ルドルフ、ブライアン。

 序盤、中盤、終盤、隙がないよね。でもオイラ負けないよ。

 ブルボンルドルフブライアンを相手にしてそう言える相手は、たぶん居ない。

 

 ――――な、なるほど。戦略的に優位な状態で挑んだ先のレースよりも深い事前準備で勝負を決する、ということですか

 

 ――――そうですね。事前に相手がどう動こうが勝てるだけの強さに仕上げておく。それが理想です

 

 ――――ありがとうございます。東条隼瀬トレーナーでした!

 

 そんなインタビューを終えてもなお、レース場は慌ただしく動いていた。

 やや、発走時間が遅れている。まあコースをいちいち切り替えなければならないのだから当たり前と言えばそうだが。

 

 そんな慌ただしい景色を控室のテレビで見ながら、傍らのブルボンの方を向く。

 

「テーテー、テッテテー」

 

 次の出走ウマ娘は、なんか鼻歌かましているこの犬。

 最近、ブルボンの奇行がエスカレートしつつある。

 

 元々そんなにまともな行動を取る娘ではなかったが、最近のこと。

 ブルボンを放っておいて犬ツーと戯れ続けていた翌日に、『捨てウマ娘 拾ってください』というダンボールに正座した状態でいつもの散歩コース――――余談だが犬ツーを拾った場所と同じようなところである――――に鎮座していたこともあった。

 

 東条隼瀬は朝早く起きたあと、少し散歩をしてから仕事に取り掛かる。

 その早暁の頃に行われる人気の少ない中での散歩コースの最中に、ミホノブルボンはダンボールに入って待機していたのである。こんな堂々たる奇行をしていたら、いつか誰かにばれる。

 見つけた瞬間にひっ捕まえて散歩を中断して連れて帰ったから何事もなかったが、自分の知名度というものに全く頓着しないというのも考えものだと言える。

 

「マスター」

 

「なんだ」

 

「ブルボン出ます! ブルボン発進!と言ってください」

 

「……なぜだ?」

 

「解析によればそれにより個体:νブルボンはステータス【うきうき】を獲得できます」

 

「そうか。そんなステータスは別にいらないから言わないことにする」

 

「言わなかった場合、バッドステータス【がっくり】を獲得することになります」

 

 最近小賢しくなってないか、こいつ。

 

 そんなことを思いつつも、遅れてきた反抗期……反抗期?を引き起こしたロボ犬の頭をポンポンと叩く。

 

「大丈夫だブルボン。絶不調だろうとバッドステータスがあろうとお前の性能に影響は出ないと、俺は信じている。良くも悪くも常に安定しているのがお前の強みだからな」

 

「はい、マスター。その信頼に応えてみせます」

 

(よし)

 

 ちょろい。

 直接的にはそう思わなかったが、似たような感想を抱いて撫でるのをやめる。

 

 うきうきロボになって出ていくのを見送って、東条隼瀬はさっさと関係者席に戻った。

 

「私達の勝利デース!」

 

「そうですねー」

 

 見事なコンビネーションを見せたエルグラコンビと、首を傾げるスズカ。たぶんこの先頭民族はチーム戦だという認識を異次元の彼方へ放逐してしまったのだろう。

 

 チーム戦というものは、勝利という曖昧な概念を目指しての乱雑な個人プレーの集合体ではない。

 どのように勝利するかという絵を描き、そのために駒になる。そしてその上で、最善を尽くす。そういうことが求められる。

 

(ウマ娘というのは闘争心が高い。潰れ役になるのはどうかとも思ったが、うまいこと動作してくれたようだな)

 

 チームとして勝つ、という方向に闘争心が作用している。

 これまで個人競技の側面が強いトゥインクル・シリーズにずっと参加しながらも即座にチーム戦としての頭脳に切り替えられるのはやはり、この二人がベテランだから。

 そしてなによりも、個人戦の中でチーム戦を行うことが常識の海外での遠征を経験したからであろう。

 

(その点では、いい手本になってくれた)

 

 どう動くか。どう勝つか。

 エルグラコンビの見事なやり口は、これからのチーム戦の基礎になる。

 

「エルコン、グラス。よくやってくれた。完成度は落ちるにしても、お前たちの動きがこれからの主流になるだろう」

 

「光栄です」

 

「デース!」

 

 淑やかにしかし勝利の栄誉を噛み締めたようなグラスワンダーと、単純にとにかく明るいエルコンドルパサー。

 

 え、私は?といううそでしょ顔をしてるスズカに取り敢えず声をかけようとしたところで、横槍が入った。

 

「その主流を利用するのが、君か」

 

「なんのことかな」

 

 すっとぼける参謀だが、シンボリルドルフは知っていた。

 彼が仕掛けた戦術は、確かに完璧に見える。しかし相手にサイレンススズカはいないし、それに近いものを見せても前に進みつつ解決するすべを彼は見つけることだろう。

 

 彼を模倣するものが生まれても、それは決して彼以上にはなりえない。

 模倣した上で独自の工夫をこらしてこそ、模倣元を上回れる。

 

「……まあ、言いたくないならいいさ。私にもいくつか、あのブロックをかいくぐる思いつきはあるしね」

 

 ――――今は、ブルボンの走りを見よう

 

 自分の出るレースが迫りつつあることに高揚している様子を隠しもせず、シンボリルドルフは眼下で行われつつあるレースに目を落とした。

 

 中距離。スピカからの主な出走ウマ娘はスペシャルウィークとダイワスカーレット。

 逃げと差し。ある意味ではチーム戦においての王道の組み合わせである。

 

 マイルで逃げられる人材がスピカにはいなかったからウオッカ単騎ということになったが、基本的に沖野Tは古典的な、王道なトレーナーである。

 おハナさんと同じくレース前まではトレーニングメニューを組む。もっとも彼は放任主義なのでおハナさんのように徹底的にトレーニングメニューに従属させるわけではないが、要はレースまでは主導し、レースでは当人の意思を尊重する。それが、古典王道のトレーナー。

 

 この古典王道のやり方は素質ある名門のウマ娘を預かるが故にその脚質や戦法を尊重しつつ育てるということに尽きる。

 それは育てるのが上手ければ素質で勝ち切れるが故の、王道の戦法だったのだ。

 

 しかしその王道を崩したのは東条鷹瀬という男だった。

 彼は貴公子然とした顔の軍服の如き装いのよく似合う栗毛のウマ娘を担当するまでは固定の担当を持たず、基本的にお助けキャラのように引退レースの代打などを買って出ていた。

 

 そして素質の差を現場で指揮を行うという細やかな戦術で覆し、数多くの夢を叶えてきたのである。

 勝率は、6割。明らかに能力が劣るウマ娘を指揮しながらこの勝率というのは、いかにも怪物じみている。

 

 そんな中で生まれたのが現在東条本家や地方のトップトレーナーに見られるようなハンドサインや音を使って現場で指示を下すトレーナーだった。

 しかし現実問題、0.1秒を争い合うようなウマ娘のレースの中で的確な指示を下せるトレーナーは少ない。

 

 故に依然として、王道は一大派閥を形成していた。

 そしてその王道を分かつ二大派閥、管理主義派と放任主義派。

 

 その放任主義派の領袖と言うべき存在が、スピカのトレーナーこと沖野Tである。

 故に、彼の取る布陣は王道を踏襲したものだった。

 

「ガション、ガション、ガション」

 

 ネクタイで隠していたとはいえ、そして放熱のためとはいえ、前まではガバッと開いていた胸元。

 それを装甲のようなパーツで塞いだ代わりに放熱を代行してくれる放熱板を勝負服の肩に増設されたミホノブルボンは、その放熱板自体を謎の生体電気パワーで浮かばせながら、入場した。

 

 

 大歓声が、東京レース場を包む。

 

 

 国民的スポーツエンターテイメントである日本トゥインクル・シリーズの悲願、凱旋門賞制覇。それは即ち、日本の悲願でもある。

 尻尾を鎧う謎のリング軍団と放熱板をふわふわと浮かばせながら、瞳をチカチカと明滅させるこのウマ娘が成し遂げた悲願を、栄光を、観客たちは鮮烈に、それこそ昨日のことのように思い出すことができた。

 

「ガション、ガション……」

 

 彼女のマスターが作った、生体電気の備蓄装置。

 それを応用して作られた空飛ぶ円盤ならぬ空飛ぶ放熱板を元の位置に合体させて、軽く手を振ってゲートに入る。

 

 無論、レース中の放熱板アタックは禁止である。

 タイキシャトルはピストルを撃たないし、ライスシャワーは短剣を抜かないし、グラスワンダーは背負った薙刀を振り回さない。これらと同じことであった。

 

「せんぱーい! 頑張ってくださーい!」

 

 隣に立つ鹿毛から若干引いた眼で見られる尾花栗毛の後輩。

 彼女の記憶をデータベースから引き出してきたミホノブルボンは、軽く手を振って応えた。

 

 娘だったり犬だったり、とにかく他者の指示を聴く立場に自ら好んで就いていた彼女からすれば、自分を見上げてくれる存在は新鮮であり、そして大切にしたいとも思うのだ。

 

 暴動が起きそうな程の人入り。ダートが終わってマイルがはじまるあたりから明らかに多くなった観客たちを見回して、ミホノブルボンは一息ついた。

 

 昨年の、URAファイナルズ決勝戦以来。時間にしてほぼ1年ぶりのレース。

 

『さあ。我が国初の凱旋門賞ウマ娘、ミホノブルボンがゲートに入り、後続も続々と入場していきます。新設第一回アオハル杯4戦目、中距離芝2000メートル。大ケヤキを超え、中距離を制すのはリギルの銀河帝国か、スピカのガンバルゾか。無論他のチームにも勝ち目はありますが、ほとんど一騎打ちの様相であります』

 

 スタートを邪魔しないようにという気遣いか、あれだけの大人数が醸し出す雑音が減り、熱気と雑気に包まれた空間が透明感を孕み静謐さを増す。

 

 その透明度が極限に達した瞬間、ゲートが開いた。

 

『――――さあ、スタート!』

 

 そして、一歩踏み出すか出さないかという、その瞬間。

 

「全出力アップ。ミホノブルボン、発進」

 

 均されたように拓いた道にカタパルトが出現した瞬間に放熱板が指針のようにくるりと道を示し、ミホノブルボンを弾き飛ばす。

 逃げウマ娘同士のハナ差争いを無視したような領域を開幕からぶちかまし、ミホノブルボンはスタートからスパート姿勢で先頭を取った。




ブルボン新領域
先頭に立つことが縛りのスズカとは違い、出遅れないことが縛り。そのぶん早く出るがスズカより加速期間が短く、加速性能も低い。

71人の兄貴たち、感想ありがとナス!

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アフターストーリー:連戦

 いやー、感じ取れんだろうなぁ! こう……オーラ的なやつ!? と。

 重賞制覇していることが珍しくもないメンバーの中で圧倒的な不利を受けて6着と非凡なところを見せたウオッカ(ライバル)を見て、ダイワスカーレットはほぼ反射で憎まれ口を叩いた。

 

 アンタ6着だったじゃない、と。

 

 まあ、ウオッカの言いたいことはわかる。育成面においてもレースにおいても当世最強のトレーナー、日本の歴史で6人しかいないクラシック三冠ウマ娘を3人輩出したキングメイカー。

 

 そんなトレーナーに警戒され、対策され、そしてその判断力を褒められる。

 

 どれかひとつでも、ウオッカは光栄だと思っていただろう。ウマ娘にとって一番の屈辱はなんの対策も警戒もされず視覚外に置かれることなのだ。

 そんな中で、全力で抑えに来られた。そして封殺されたとはいえ、ある程度応えられた。そのことは、敗北の味を拭い去る程度の満足感を彼女に与えていたのである。

 

 無論これは敗北をヘラヘラと受容したわけではない。次は素質ではなく、実力を褒めさせてみせると燃えてすらいる。

 だが海外への飛翔を狙うウオッカにとって、日本のトレーナーの中で傑出した遠征実績を叩き出している男に褒められたということは、より大きな意味を持っていた。

 

 だがそれでも、ダイワスカーレットとしては6着で喜ぶようなウオッカでいてほしくない。

 現実というものを段階的に捉えているウオッカと、現実というものを飛躍的に捉えているダイワスカーレット。

 

 それはおそらく彼女たちが抱く夢の性質の違いからくるものだったが、あるいは単にいつものじゃれ合いの延長戦のようなものであったかもしれない。

 

 しかしダイワスカーレットからすれば、負けん気が刺激されたのは確かだった。

 その負けん気がどこに向いているかは知らないが、ウマ娘というものが持つ闘争心がライバルを褒め称えられ、称揚されて刺激されないわけもない。

 

 だからこそ、だったと言えるだろう。

 常に何かの一番でありたい彼女が、ハナを奪われたくないと思ったのは。

 

(よし、釣れた)

 

 関係者席の男は、それなりに正確な体内時計と観察眼でダイワスカーレットの意志の高揚を感知した。

 

 やる気が上がってる。それは間違いない。

 実力以上のものが出ている。それは間違いない。

 だが、長所とは裏返れば即ち短所である。

 

「そうだ。単純な2連戦と言うなら恐れる理由もない」

 

 ブルボンなら勝てる。なにせ、マックイーンとライスシャワーという長距離で本気を出せる2人との地獄の2連戦を、春天でやって勝ったのだから。

 

(やはりか)

 

 眼下で行われるレースを、シンボリルドルフは見ながら頷いた。

 

「開幕からのスパートはなんだと思えば……ハナから全力で競り潰し、後半のスペシャルウィークに備える。各個に撃破していく気か」

 

「それだけではない。が、そうなっている」

 

 参謀の、右隣。優雅耽美に座っている皇帝がん?という顔をしたのを、豪快粗雑に脚を組んで座っているナリタブライアンは見逃さなかった。

 

(見てないのか)

 

 ミホノブルボンの、独自の走法。

 あのスパートを持続させるすべを持っている、ということを。

 

 ナリタブライアンは、見た。

 しかし、シンボリルドルフは見ていない。

 

(なるほど。情報ってのは大事だな)

 

 現状という一枚絵を見て、より正確に推察の手を伸ばせるのは、疑いなく皇帝シンボリルドルフであろう。誰が描いた絵か、どのように描いたのか。そのあたりをパズルのピースのように嵌めていくに違いない。

 だが、ナリタブライアンには裏を見た経験があった。確定した情報を知っていた。

 

 たった一度の目撃の有無が、シンボリルドルフというウマ娘に判断ミスをさせた。

 しかし彼女ならば、いずれ気づくだろう。伊達に皇帝ではないのだから。

 

 しかしそれでもこの一瞬は、彼女は遅れを取った。

 

「おい」

 

「ん?」

 

「アンタが情報を重視する理由がわかった」

 

「それはどうも」

 

 正確な判断は、正確な情報のもとにのみ成立する。

 

 何かあるな。

 そう考えたシンボリルドルフが眼を移し、そして気づいたちょうどその時。

 

「スカーレットちゃーん! 2000メートルですよー!」

 

 どうしようと悩んだ末に、スペシャルウィークは大歓声の中でそう声をかけた。

 首に鈴をつけるようにピッタリと追従する。

 やや離され続けてはいるが、これをできるウマ娘がどれほどいるのか。

 

 たぶんそれは、意気がアガっているからだ。

 スペシャルウィークには、その経験があった。エルコンドルパサーに負けた、そして日本総大将として責任を負って挑んだジャパンカップでの彼女は、実力以上のものが出せた、と。

 

 少なくとも彼女当人はそう述懐している。

 東条隼瀬からすればそれは本来スペシャルウィークが持っていた実力を出し切っただけ、となるわけだが、その認識はダイワスカーレットへの声掛けをためらわせるには充分だった。

 

 ロケットスタート。

 セイウンスカイという曲者の逃げウマ娘を相手にしていたスペシャルウィークには、逃げというものはスタートを重視するものだという認識がより強力にある。

 

 だから、開幕スパートをそこまでおかしいとも思わなかった。

 

(隼瀬さんは、ウオッカちゃんにエルちゃんとグラスちゃんをマークにつけるような人だから)

 

 エルコンドルパサー。

 グラスワンダー。

 

 同期で、共に数多の激戦を繰り広げてきた豪傑2人。その実力は無論、スペシャルウィークの脳内にある。

 自分より、上。その認識もある。そしてそんな自分が各距離の司令官で、あの二人は分隊司令官。

 

 スズカさん。

 異次元の逃亡者、サイレンススズカ。

 同室なだけに、無論その強さは知っている。併走したことも100度もある。

 知覚し、実体験があってもなお、スペシャルウィークにはエルちゃんとグラスちゃんをデビュー前のウマ娘を牽制するために使うのかという衝撃が残っていた。

 

 

 その衝撃が、錯覚させた。

 

 

 自分をいくつかの赤点から救ってきた隼瀬さんはダイワスカーレットというウマ娘の実力を正確に測り、素質を正確に見定め、スタートから振り切れと厳命したのだろう、と。

 

 無論、そんなことはない。そう思われようとメンバーを選出したが、そんなことはない。

 

 

 観客の皆さんは、毎日王冠の続きが見たいでしょうから。

 

 

 彼は、メンバー登録について問われたときにそう言った。しかし、横浜高校ストーリー打線じゃないのである。そんなセンチメンタルな選出はしない。

 

 だから、気づくのが遅れた。

 スペシャルウィークは序盤、ダイワスカーレットを見ていた。ミホノブルボンを追うダイワスカーレットを見ていた。

 

 だから、遅れたのである。

 

(……おか、しい?)

 

 そう気づくのに、遅れた。

 ダイワスカーレットは、本当によく粘っていた。ある種驚異的な根性を見せた。

 νブルボンは伊達ではないが、ダイワスカーレットの根性も伊達ではなかった。

 

 ズルズルと下がってくる、ダイワスカーレット。

 そしてそこからミホノブルボンを見て、気づいた。

 

(変わった?)

 

 テストの解答欄のズレに気づかずに0点を取ったスペシャルウィークは、鋭敏なレースセンスでそれに気づいた。

 

 ミホノブルボンのフォームのズレに。

 これがミホノブルボンでなければ、スペシャルウィークは気にもしなかっただろう。競り合えばフォームはズレるし、なんなら理想的なフォームを長時間維持できるウマ娘の方が少ない。

 

 だが、相手はミホノブルボン。

 誰にもできないような才能はないが、誰にでもできる技術を極め尽くし、再現可能な強さの理論値を叩き出したような、リギル系列二代目の三冠ウマ娘。

 

 初代は、肉体的にも精神的にも怪物だった。

 三代目は、初代をも上回る天与の肉体を持っていた。

 

 だが二代目は、誰にでもできる技術を誰にでもできる努力で積み上げ、再現可能ながら誰にもできないような結果を出した。

 

 つまり、コーナーは限界まで内をついて曲がる。直線はまっすぐ走る。

 膨れないし、よれない。つまり、ロスがない。

 

 そしてそれは、走行フォームも同じ。

 自分の身体と適性にあったフォームを、なんの狂いもなく再現し続ける。

 それが崩れたのは唯一、春天でのライスシャワーの追撃を躱したときのみ。

 

 そんなウマ娘のフォームが、ズレている。

 

(ズレたんじゃない! 変えたんだ!)

 

 じゃあ、なんのために?

 そこから気づいたスペシャルウィークの行動は早かった。ブロックされかけている現状を大外に持ち出して回避し、そしてロングスパートで一気に上がる。

 

「スカーレットちゃん!」

 

「スペ、先輩! スパートが……」

 

 スパートが終わらない。

 

 『なんでスパートがあんなに持つのよ!?』という思考からさっさと『そういうものだ』と受け入れたダイワスカーレットは、息を切らしながら、おそらくこの状況を打開できるであろう先輩に現状を伝えた。

 

「スカーレットちゃん。もうひとつだけ、頑張ってください!」

 

 フォームを変化させているのは、後々使うべき筋肉を温存し、使うべき筋肉に負荷をかけきるため。

 一部を集中的に疲労させるフォームを切り替え、負荷を与える部位を変え続けることによって、理論上はいつものよりも少し遅いくらいのスパートを常に維持することができる。

 

「なんですか? なんだってやりますよ!」

 

 勝負根性が服着て歩いているような、そんな返答。

 しかしそんな言葉とは裏腹に疲れていることを承知で、スペシャルウィークは思いついた対策を言葉に出した。

 

「今は離されてもいいので、息を入れて。第3コーナー付近で仕掛けてください。私も後で行きますから」

 

「わかり、ました!」

 

 すぐ近くにある。

 大きな心肺器官の飢えを満たすように大きく息を吸って、脚を若干溜める。

 

 そして、ダイワスカーレットは仕掛けた。

 スペシャルウィークが外に進路を取るように見せかけて好位置を取られないように防壁になっている間に溜めた脚を、ここで使う。

 

 離されるばかりだった距離が若干詰まる。足音からして、ミホノブルボンは気づく。

 

(次は……!)

 

 ダイワスカーレットの脚がその出力を放出し終える直前。

 息を入れる暇を与えないような連撃を、スペシャルウィークは仕掛けた。

 

 これからの第4コーナー、そして長い東京の直線。そこまで、ダイワスカーレットの脚は持たない。消耗している。

 それを瞬時に理解し、そしてスペシャルウィークは仕掛けたのだ。逃げというものはどこかで息を入れなければならないことを知っているから。

 

 サイレンススズカ。

 例外的な逃げウマ娘を、スペシャルウィークは知っていた。

 

 

 そしてスペシャルウィークがサイレンススズカを知っていることを、東条隼瀬は知っていた。

 

 

(落ちない?! いや、ここから?)

 

 第4コーナー、直前。

 そこでも落ちない。だったら、直線で息を入れるのか。

 

 しかしそれは効率が悪い。サイレンススズカがコーナーで息を入れるのは、距離を詰めさせないためなのだ。

 逃げウマ娘は、ロスのない最内を通る。逃げウマ娘を抜きに来るウマ娘はロスのある外を通る。

 

 そのロスの区間に息を入れる。詰めさせすら、影すら踏ませない。

 心理的ダメージを同時に与えるからこそ、だからこそ、逃げ差し戦法は無敵だったのだ。

 

 そして直線半ばで、ミホノブルボンは更に走る姿を変えた。それはナリタブライアンを思わせる地を這う猛禽類のような走行フォーム。

 

 これは止まらないと、スペシャルウィークは悟った。そして同時に、理解した。

 たぶん1ハロンごとに、フォームを変えているのだと。

 

(息を入れずに……!)

 

 ずーーっと。同じ速度で走る。

 駆け引きも何もいらない、自分より弱い相手には絶対に負けない、そして自分より強い相手には負けるある種の完成形。

 

『残り200メートル! 外からダービーウマ娘が襲ってくる! 襲ってくるがしかし、三冠ウマ娘だミホノブルボン! これが未だ無敗のウマ娘!』

 

 少しずつ詰められる。徐々に、徐々に詰められる。

 しかし詰め切る前に、白い勝負服が流星のようにゴール板前を通過した。

 

『凱旋門制覇は伊達じゃない!』

 

 悠々とゴール板前を通過し、ギアでも切り替えるように少しずつ減速してからぐるりとレース場を一周し、手を振る。

 

「すごい……」

 

 ダイワスカーレットは、見た。

 常に1番を取り続けるウマ娘。通過順は無論どれでも1番。

 

 それは、彼女にとって理想の姿でもあった。

 

 膝に手をついて荒く息をする中で、常に1番を取り続けるそんな理想の姿が、観衆の声に応えて手を振りつつそれなりの速度でやってくる。

 

「てんてーん、てっててーん、てーてーてーてってってー」

 

 そんな鼻歌混じりに、余裕たっぷりに。

 スペシャルウィーク以外全員のウマ娘が死んだような顔で疲れ果てていく中で過ぎ去っていく、このサイボーグ。

 

 ――――ほんとうにロボなんじゃないか

 

 3枚の放熱板を手で操るように空を舞わせて再び肩の定位置に順次着地させ、接合させる。

 勝負服の機構を活かした勝利ポーズを見せたミホノブルボンの去りゆく姿を見送った誰もが、そう思った。




72人の兄貴たち、感想ありがとナス!

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アフターストーリー:不変

マスターデュエルはじめました。フォローされる意味もフォローする意味もわかってない初心者ですが、一応ID晒しておきます。対戦のときは手加減してください。

768-439-848です。


 ――――新アオハル杯中距離路線初戦、勝利おめでとうございます

 

 ――――ありがとうございます

 

 ――――ミホノブルボン選手の1年ぶりの復帰戦でもありましたが、不安はありませんでしたか?

 

 ――――不安はありませんね。1年間の休養は身体を作り直すためで、怪我をしたわけではありませんから

 

 ――――よろしければ、何故1年間もの間の作り直しが必要だったのかお聞かせ願えますでしょうか?

 

 ――――ブルボンは三冠を取ることが夢でしたが、それ故にデビューを急ぐ必要がありました。つまり、完成を待って挑んでも多士済々のBNWは警戒対象が多すぎて負けかねない。ブライアンとまともにやれば負ける。しかしライスシャワー世代では、菊花賞のライスシャワーを警戒し、そこをゴールにしていけば三冠は取れると判断したわけです

 

 ――――なるほど

 

 ――――なので当然、2年で菊花賞で勝てるように即効で基礎を仕上げていきます。ですが速さを優先せざるを得なかったという都合上、基礎工事が不充分なところがありました

 

 ――――な、なるほど?

 

 ――――凱旋門賞とURAファイナルズは辛くも勝ちましたが、思いました。ここらが限界だろうな、と。なので1年間かけて基礎工事をやり直したわけです

 

 ――――その結果が現在ですか

 

 ――――ええ。今のブルボンは1400から3400まで、芝の和洋不問、バ場状態不問で安定した強さを出力できます。ミホノブルボンというウマ娘は、寒門出身です。故に、傑出した才能がない。つまり必殺の勝ちパターンでの対決になると負けます

 

 ――――ステイヤーズミリオンを制覇したライスシャワーを相手に長距離を走ると負ける、ということでしょうか?

 

 ――――はい。なので誰にでもできる技術を極めることによって、どこでも、誰とでも、どんな環境でもある程度戦えるようにしました。スペシャリストがその傑出した才能を発揮する場では不利になりますが、他では相対的に有利に立ち回れる。スペシャリスト相手の不利は私がなんとかするとして、有利な相手には普通に勝ってくれるでしょう

 

 ――――それが、今回というわけですか

 

 ――――はい。ダイワスカーレット選手の勝負根性とスペ……シャルウィーク選手の歴戦の豪傑らしい対応力には驚きましたが、ブルボンの対応力が勝ちましたね。実況さんの言うとおり、伊達ではない強さでした

 

 ――――これから1日目最終戦、長距離がはじまりますが、3連勝。期待してもよろしいでしょうか?

 

 ――――ブルボンのように環境に適応するのではなく、環境を支配すべく恐竜的進化をした3人のうち2人が出ますからね。勝てる目算はあります

 

 ――――ありがとうございます! 東条隼瀬トレーナーでした!

 

 

 そう、勝てる目算はある。

 なにせ、皇帝が出てくるのだ。

 

 ミホノブルボンは、古代で言えば人間的な進化をした。対応力を上げた。上げざるを得なかった。傑出した決め手というものに欠けるが故に、である。

 

 だが確かな決め手というものがあるウマ娘は、その勝ちパターンを通せるような成長をする。

 

 例えばサイレンススズカなら、逃げてから差す。

 シンボリルドルフなら、レースを支配して有力なウマ娘の勝ちパターンを潰しつつ打つ手を無くさせ、ハナ差で勝つ。

 ナリタブライアンなら、末脚を爆発させて圧勝する。

 

 そういう連中は得意なペースがあり、そして得意な距離がある。そして長距離というのはその距離が長いが為に駆け引きが多発する。即ち、シンボリルドルフにとっては有利なフィールドであると言えた。

 そしてスペックゴリ押しが信条――――というわけではないが基本的に圧倒的なスペックで圧殺するような勝ち方をするナリタブライアンにとっても、長距離は有利なフィールドである。

 

 なにせ、距離が長ければ長いほどスタートからゴールまでの時間は長くなり、時間が長ければ長いほどに彼我の戦力差が積み上がり続けるのだから。

 

「おい、アイシングが控えめなんじゃないのか」

 

「お前がそういうことを気にするのは珍しいな」

 

 ミホノブルボン。

 当世最強と呼ばれるウマ娘。その強さの源とはすなわちレース前後の入念な準備にある。

 

 それを知っているからこそ、そして自分の姉とその仲間が怪我に泣かされたからこそ、ナリタブライアンは少しその、手抜きとも取られかねないアイシングの短さが気になったのである。

 

「言葉遊びはいい。それでいいのか?」

 

「いい。触ってみたらわかる」

 

 なるほど、確かに熱が抜けている。しかも冷たいわけではなく、平熱といった感じ。

 

「何かしたのか」

 

「ブルボンの勝負服を見なかったのか?」

 

「ああ……あの格好いい翼がどうかしたのか?」

 

「ブライアンさん。これはフィンファンネルです」

 

「違う。放熱板だ。屈腱炎はウマ娘が走るときに生まれる熱エネルギーが脚に悪さをして起きるから、熱を逃がすことで事前に防ぐ。そのための放熱板だ」

 

 だから、アイシングが少なくて済むのだ、と。東条隼瀬はそう言った。

 

 確かに分離した上でそこらに転がっているブルボンの翼のようなパーツは、相当な熱を持っている。

 

 そしてその発言は、ブライアンにとって聞き捨てならないものだった。

 

「そんなものができていたのか」

 

「ああ。作った」

 

「効果は立証されているのか?」

 

「さあ……屈腱炎の原因にしたって、仮説だからな。患部が走ることによって発生する熱に度々晒されることによって発症するのではないか。競技による再発リスクが高いのは、走ることによって熱を持つからではないか。普通にしていれば再発しないのは、走ることによって熱を保たないからではないか。そういう仮説がある。だから、一応放熱板をつけた。そういうことだ」

 

「フィンファンネルです、マスター」

 

「はいはい」

 

 それは誰にでも使えるものなのか。

 そういうことを訊こうとして、ブライアンは首を振って部屋の外に出た。

 レースの前に、これ以上深入りすべきではないと思ったのである。

 

 大きく息を吸い、吐く。

 

(アレがあれば、姉貴も再発を防げる……のか?)

 

 そんな思いをため息とともに吐き出して、頷く。

 

 まずは、勝つことだ。

 そういう認識が、ブライアンにはあった。

 

 

 そして一方、室内では。

 

 

「勝てると言っておきながら、微妙な顔をしているね」

 

「まあな」

 

「私からすれば、君の策は別に悪くないと思うが」

 

「俺も悪くはないと思うが、どうにも」

 

 釈然としない。

 思いついたときはテイオーを封じられるいい案だと思ったし、勝てると思った。

 今も勝てるだろうと思ったのは変わらないが、テイオー封じを思いついたと喜んでいたあのときの高揚感はない。

 なんとなく嫌だという、得体のしれない嫌悪感がある。

 

「まあ、君の予想外に関しては私が対処してみせるさ。前は、ずっとそうだったじゃないか」

 

「それはそうだがな」

 

 スピカは長距離に戦力を傾けている。

 トウカイテイオーとメジロマックイーンのダブルエースに、なんかよくわからないゴールドシップ。

 

 トウカイテイオーに関してはよく知っているからこそ、怖い。

 ゴールドシップは知らないからこそ怖い。

 

 マックイーンに関してはやや力が落ちているから、さほど警戒はしていなかった。

 そもそも不治の病である左脚繋靭帯炎から復帰するというのが驚異的であるから仕方ないとも言えるが、メジロマックイーンに爆発力はない。

 彼女の戦法は豊富なスタミナを活かして先行策をとり、ハイペースを作り出して競り潰すという極まった逃げに近いものである。

 これはずば抜けた安定感こそあれど、安定感がずば抜けているからこそ爆発力に欠ける。

 

 爆発力のあるウマ娘が力を目減りさせるのは、まあよくある。しかし力を爆発させるときに結局戻ってくるから、それは預金みたいなものである。

 しかし安定感のあるウマ娘が力を目減りさせるとなると、それは明確な劣化だと言えた。

 

 故に完調を果たすであろう2年後ならともかく、今のマックイーンはさほど怖くない。無論、今年のウィンタードリームリーグ長距離を制した実績を見るに、今もその力が傑出していることは間違いない事実でもあるのだが。

 

「で、ゴールドシップについての情報はなにか掴めたのかい?」

 

「いや、なにも。しかしわかることはある」

 

 それは非常に、珍しいことだった。

 ルドルフは彼がその情報網をどうやって作ったのか、どうやって維持しているかは知らないが、その正確さは知っている。

 そんな彼が何も掴めないというのは、不気味を通り越して異様ですらあった。

 

「というと?」

 

「あいつの身体はメジロマックイーンに似ている。背丈とかではなく、構造的にな。つまり一瞬の切れ味ではなく、ロングスパートで勝負するタイプ――――いや、勝負をせざるを得ないタイプだ」

 

 ふむ、と。

 頷いて、思考を回す。ロングスパートを仕掛けられない脚質というのは、ない。

 身体構造がロングスパートに向いていると言って道中どこで待機しているか、どこで仕掛けるかを見極めるのは至難である。

 

「で、今のスピカのメンツ。トウカイテイオーもメジロマックイーンも先行策を得意とする。つまりゴールドシップがメジロマックイーンと同じような身体構造をしているからという理由で脚質が先行であると読めば、前に固まりすぎていることになる」

 

 ではマックイーンをより前にした感じ、即ち逃げかといえばそうでもない。これも前に固まりすぎているからだ。

 ロングスパートを逃げに転用するといえば、メジロパーマーであろう。彼女は宝塚記念を制すなど、メジロとしては異端な逃げ戦法で多大な成果を上げている。

 

「となると差し、追込。後方脚質か」

 

「そうだ。で、ここからは正直どちらか見極めることはできない。故にトレーナーの方に目を移すと、スピカの沖野T。彼は追込の名手だ。一時期どこかへ行っていた彼が戻ってきたのは、第二のシービーを見つけたからではないかと思う」

 

「なるほど。だが……」

 

 脚質こそ同じだが、タイプが違う。

 ミスターシービーはロングスパートというより、一瞬の爆発力で突き抜けるタイプだったのだ。

 

 話半分に聴いておこう、と。

 シンボリルドルフはそう思いつつ、彼の立てた戦略に則した戦術を組み立て終えてからふと呟いた。

 

「それにしても、君が何も掴めないというのはめずらしいな」

 

「登録もマル外ではないし、国内出身であることに間違いはない。となると、掴めないはずはないのだが」

 

「では、未来からでもやってきたかな。となると、私としては君と共有する夢がどうなったのか聴きたい気もする」

 

 シンボリルドルフにしてはキレのいい冗談を聴いて、曖昧に東条隼瀬は頷いた。

 情報を掴めなかったというのは、彼の失策である。それを冗談めかしく茶化して負い目や引け目を感じないようにしてくれているの言うのは、わかる。

 

「だが、未来など存在しないさ。ファンタジーやメルヘンじゃないんだから」

 

「ん……そうかな」

 

 殊更存在を肯定しないが、否定もしない。

 そんな中庸の立場に立ったシンボリルドルフは、断定形の言葉に首を傾げた。

 

「そうさ。過去はあるし現在はあるが、未来はこれから俺たちが作るものだ。まだ作り終えていない料理を、そこにあるとは言わないだろう?」

 

「確かに。君らしい言い草だ」

 

 そう考える方が、生きる活力も湧いてくる。

 壁に立てかけられた時計に素早く目をやり、シンボリルドルフは椅子から立ち上がった。

 

「さあ、いこうか」

 

「仰せのままに」

 

 恭しく一礼し、東条隼瀬は扉を開けた。

 既に扉の横の壁に凭れるように、ナリタブライアンが待機している。

 

「いくぞ、ブライアン」

 

「ああ」

 

 なんの気負いもなく頷く。

 天下無敵の三冠ウマ娘と参謀を引き連れて、シンボリルドルフは戦地に赴いた。

 

 これまでとは違い、参謀は観客席へ。

 そしてふたりの三冠ウマ娘はターフへ。

 

 そこで、トウカイテイオー、メジロマックイーン、あとはゴールドシップを迎え撃つ。

 ゴールドシップは知らないが、トウカイテイオーの恐ろしさとメジロマックイーンの強さは知っている。しかしそれを知った上で、彼女の杖は作戦を立案した。

 

 そして彼女がその右手に杖を握っている限り、レースに負けることなどあり得ない。

 

「カイチョー」

 

「やあ、テイオー」

 

 万感の思いが、両者の間にはある。

 初の激突となる天皇賞秋ではトウカイテイオーの調子が最悪を極めていた。その後ぶつかるはずだった宝塚記念では3度目の骨折に激突を阻まれ、そしてURAファイナルズでも4度目の骨折で競い合うことはできなかった。

 

 そして4度目の復活を果たして、トウカイテイオーはここにいる。

 

「ボク……負けないから」

 

 無邪気の中に確かにある、静かな闘志。

 何度も何度も折れて、そして復活してきたが故に得られた不屈の闘志。

 

 それを感じて、ルドルフはやや獰猛に口の端を上げた。

 

「いいレースにしよう」

 

 念願のレースだというのに、一言二言の短い会話を交わすだけ。

 そんな皇帝と帝王を見て、ナリタブライアンはふと空を見た。

 

(覚醒を果たした姉貴を病み上がりの身で倒した、トウカイテイオー)

 

 今回も病み上がりではあるが、まるで油断できない。なにせ、彼女は病み上がりでない時より病み上がりであることの方が多い、稀有なウマ娘なのだから。

 

(仇というわけではないが)

 

 潰えた姉との有馬記念で得られなかった競うことの愉悦を、ここでもらう。

 冷静そうな顔の内に闘志を秘めて、ナリタブライアンはゲートに入った。

 

 レースがはじまるまでの微妙な時間を呼吸を整えることに費やし、ゲートが開いたその瞬間に外に出ることのみを考える。

 そこからはあいつなり、ルドルフなりが考える。

 

(待つことだ)

 

 それが今回の自分に課せられた役割であることを、この聡明で繊細なウマ娘は知っていた。

 

『さあ、アオハル杯1日目、最終戦。リギル、銀河帝国からはまさに銀河レベルのスターである二人、シンボリルドルフとナリタブライアンが出走登録されております。対抗バであるスピカはメジロマックイーンが1枠1番、トウカイテイオーが大外。未デビューのゴールドシップも、ウオッカとダイワスカーレットの奮闘から見ても経験を積むためにここに来たわけではないでしょう』

 

 スター揃いの対決。メンバーだけならばおそらくは有馬記念すら凌駕するレベルの質と量。

 

『さあ、スタートしました!』

 

 そのスタートは、その質と量の重みに耐え切れなかったウマ娘の暴走からはじまった。

 シンボリルドルフの両隣が与えられるプレッシャーに耐えかねて逃げ出すように加速し、1枠1番という好位置を与えられたメジロマックイーンの進路を潰すように駆けていく。

 

 そしてシンボリルドルフはスタートが重要な東京レース場の特性を知り尽くしているが故に、むしろわざと脚を緩めた。

 

 スタート後、すぐにコーナーがある独特の形状。序盤の位置取りが順位に直結しかねないここで、わざと脚を緩める。

 それは、自殺行為である。

 

 しかしこの場合、そうではなかった。

 弾かれたように急進する皇帝の両隣のウマ娘の異様さもあり、他のウマ娘たちはなんだとばかりにルドルフを見たのである。

 

 そして瞬間、彼女らは速度を感知する感覚を狂わされた。

 

 ルドルフのスタートが遅い。

 無論それはシンボリルドルフ自身が脚を緩めたからなのだが、他のウマ娘たちは勢いよく急進していくふたりのウマ娘とシンボリルドルフを見比べて速度を錯覚した。

 

 というか、ルドルフが錯覚させた。

 シンボリルドルフが、敢えてセオリーを無視して不利を甘受するとは思えない。

 

 ならば自分たちが速く走ろうとしすぎている。

 無茶なスタートをしたあの二人、皇帝の隣の二人に釣られる形で速度を上げすぎている。

 そう、彼女たちは考えた。

 

 長距離レースで速度を上げすぎれば、スタミナが尽きる。スタミナが尽きれば、絶対に負けることになる。

 この瞬間、シンボリルドルフは杖をひと振りした。即ち、彼女はレースのペースを決める信頼を得たのである。

 

 大外で不利を受けているトウカイテイオーも、進路を潰されたメジロマックイーンも、そのペースに反することはできない。テイオーは現在の極端に横に広がった状態での外枠であるが故に、マックイーンは頭を抑えられているが故に――――どちらも、進むべき道がない。

 故にこの二人は、皇帝のペースに従うことを強いられた。

 

 結果、このレースで皇帝に叛するものは二人。

 バ群の後尾につけたナリタブライアンと、そして大出遅れをかましたゴールドシップだけである。

 

「やだー、ゴルシちゃんうっかり! 遅刻遅刻ぅー!」

 

 わざとらしい自分の出遅れをバカみたいに笑いつつ、ゴールドシップは心の中で不敵さを失わない程度に頬を引きつらせ、笑った。

 

(にしてもやべーな開幕から。昔のことは美化されるって言うけど、あいつらの強さは不変だわ)




86人の兄貴たち、感想ありがとナス!

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アフターストーリー:決着

 本物のゲート難なのか、それとも頭がキレるのか。

 やや遅れてスタートしたブライアンより後ろに、謎の黄金船は漂っていた。

 

(わざとなら、曲者だな)

 

 皇帝の支配圏内から逃げた。そういうことになる。

 東条隼瀬は、唯一わからない存在であるゴールドシップを注視していた。だからこそ、わかる。

 

 サイレンススズカのような天稟も、ミホノブルボンのような修練も、辛抱たまらんとばかりに踏み出すダイワスカーレットのような早仕掛けの気性も、あの芦毛のウマ娘にはなかった。

 単純に、スタートをちゃんと切る才能がない。ついでに言えば練習も不充分で、気性的にもスタートを切るという行為に向いていない。

 

 それは明確に短所ではある。だが。

 

(一応打つ手を用意しておくか)

 

 事前に起こるべきことを予測して対処する。見てから即座に、すなわち臨機応変に対応することは無理だが、長距離だからこそ思考をまとめる時間もある。

 

 視界良好とばかりに視界を揺らして後方につける謎の存在をちらりと見つつ、東条隼瀬はゴールドシップから目を切った。

 

(気づかれたな、ありゃ)

 

 切られた瞬間に、ゴールドシップはそう悟った。

 わざと出遅れて大局観を得る。皇帝の支配から逃れる。出遅れ癖という短所を活かして、視野の広さという長所に変える。

 

(アンタなら、まあ気づくわな……)

 

 言い出しっぺなわけだし。

 そしてたぶん、対策も打ってくる。そしてその内容はわかっている。ミスターシービーに使った手だろうと。

 

 東条隼瀬がミスターシービーに抱いていたのは、紛れもない脅威の念。

 だから初戦では利用し、2戦目と3戦目では封じ、そしてじっくりデータをとった4回目でやっとまともに勝負した。

 

 しかもまともと言っても、それはミスターシービーがこれまでの3連戦で自分の持ち味をいかせなかった反省から早仕掛けをしてくると読んで――――というか誘導してのもの。

 ハイペースの中で早く仕掛けさせて消耗を誘い、本質的にはスプリンター並の脚の持ち主であるミスターシービーを天皇賞春という距離の防壁によって防いでから叩くという、入念さがあった。

 

 それくらいの警戒はされていると、ゴールドシップは踏んだ。

 となると使われる手は、使える手は限られてくる。

 

(となると……)

 

 1回だけ経験のある、あれをするか。

 そう決めてから、脚の調子を確認するようにゆるゆると最後尾をポツリと走る。

 脚の長さを活かした大きな歩幅で跳ねるように、黄金船はターフの上を駆けていた。

 

 そしてその頃先頭集団ではというと、熾烈な駆け引きが繰り広げられている。

 

 

 トウカイテイオーは、東条隼瀬のチーム戦における戦術の癖を見抜いていた。そしてその癖を逆手に取って数多ある選択肢をある程度まで絞ることに成功している。

 それはつまり、彼は核になるウマ娘を軸にして戦術を立てる、ということであった。

 

 サイレンススズカという核の為に、エルコンドルパサーとグラスワンダーを補佐に使った。

 これは、ウオッカというウマ娘が持つ、自分に似た爆発力を警戒したから。

 一方では爆発力に欠ける反面、安定感のあるスペシャルウィークとダイワスカーレットには核となるミホノブルボンをそのままぶつけてきた。

 

 そしてこのレースにおいては、トウカイテイオーにとってはシンボリルドルフこそがその核であり、その軸であろう。

 

 この考えは全く以て間違ってなどいなかった。このレースの軸はシンボリルドルフであり、このレースの核はシンボリルドルフである。

 重度のルドルフ信者である東条隼瀬はそれとは別なところにある冷静さで、シンボリルドルフほど核に据えるに相応しい存在はないことを知悉していた。

 

 つまり、皇帝を。シンボリルドルフを抑えられればトウカイテイオーは勝てる。

 言うは易しというように、それはその通りではあるができるとは限らない。

 

 しかし現実問題、この先行制圧が服着て歩いているようなウマ娘をどうにかしない限り勝ち目はない。

 どのみち、一本道なのである。

 

 そして案の定シンボリルドルフは、メジロマックイーンを封じ込めた。両隣のウマ娘が弾かれるように急進し、前への進路を塞いだからだ。

 そしてそれに伴い減速してみせることで、シンボリルドルフは他のウマ娘から『流石にこの人は冷静だ』と言う評価を得て、支配権を手にした。

 

 今やペースを決めるのはシンボリルドルフであり、彼女の顔色を見て他のウマ娘たちはペースを定めている。

 この状況にそろそろ、埒を明けなければならない――――と、考えるだろう。普通は。

 

(このまま……)

 

 だが、トウカイテイオーからすればこのままで良かった。

 シンボリルドルフに『トウカイテイオーはこのままで良いと思っている』と思わせることこそが、彼女の狙いだったのである。

 

 シンボリルドルフ。百戦錬磨の皇帝。彼女に、トウカイテイオーが最も尊敬する歴戦の戦士に、読み勝とうとは思っていない。

 しかしだからこそ、読み負けないことに徹した立ち回りをした。

 

 即ち、大外という位置を活かしてコーナーを曲がる都度、徐々に内ラチに詰めていく。

 少しずつ少しずつ、バ群の横幅を縮めて縦に伸ばす。即ちそれは、バ群中央に位置してレース展開を支配しているルドルフの動きを拘束することに繋がるのだ。

 

 ド派手に出遅れたゴールドシップによって後ろは防げなかったが、まあいい。

 後ろに下がったウマ娘に差し切りを許すほど、トウカイテイオーは弱くないのだから。

 

(ゴールドシップなら、好きに動かした方がいいだろうし……)

 

 計算に入れることが、というか計算に入れていたことが間違いだった、みたいなところがある。

 ゴールドシップは良くも悪くも期待と言うコースを逸走するウマ娘なのだから。

 

 そんな感じで、トウカイテイオーは特にサインを出さなかった。ちょっとの出遅れならば『すぐに後ろについて』というサインを出しただろうが、結構な出遅れである。

 これを修正することに精神を割いている余裕は、テイオーにはない。

 

 なにせ、相手は皇帝なのだ。

 そしてそんな皇帝はといえば。

 

(なるほど、未熟だが理に適っている)

 

 読み合いで勝てないなら、読み合いの余地を潰す。回避する。大外による距離の不利を、展開の有利に変換する。

 

 それは、見事な手ではあった。

 シンボリルドルフは、トウカイテイオーを直接ラジコン操作できるわけではない。トウカイテイオー、メジロマックイーン、あとはゴールドシップ。

 それ以外ならラジコン操作できるし、その『それ以外』を使って作り出した状況で間接的にトウカイテイオーとメジロマックイーンを操作してきた。

 

 そんなシンボリルドルフの耳に、指で鳴らされた音が届く。

 

(なるほど)

 

 事前に取り決められた通りのサイン。

 路線を修正する。その知らせを受けて、シンボリルドルフは頷いた。

 

 となると、第3コーナーに程近い位置まで待つ。つまり、テイオーの思惑に乗る。

 

(だがそれだけでは芸がない)

 

 東京レース場でのレース序盤によく見られる、横長の隊列。それをコーナーでやや強引に、トウカイテイオーは圧迫した。

 そしてそのことにより隊列は押し出される形で縦長になり、大外枠であるトウカイテイオーの隣、即ち左隣にいたウマ娘たちは前に進むか後ろに下がるかを強いられた。

 

 いつもであればこうも団子にはならないのだが、このレースはシンボリルドルフを軸に動いている。

 それであるが故に、ほとんどのウマ娘はルドルフに程近い場所にいることを選択した。

 

 つまりそれは、包囲網になる。

 

 そんな包囲網の中で、シンボリルドルフは動いた。やや空いている内に切り込むように進み、最内となるメジロマックイーンの左に出る。

 

 トウカイテイオーとしてはこの動きをすぐさま察知した。

 そして内へ内へと歩を進めて、自分の左隣のウマ娘をルドルフが内側に潜ったが故に空いたスペースに滑り込ませようとしたのである。

 

 だがその前に、つっかえ棒のような形でひとりのウマ娘が落ちてきた。

 ルドルフが強制的に掛からせたウマ娘2人の内、1人。開幕から全力で走り、しかも前に行こうとするマックイーンの圧を受け続けて肉体的にも精神的にも疲労した彼女は、道半ばにしてすでに限界に近づいていた。

 

 そんな心身両面の疲労の為かするすると落ちて、かつてシンボリルドルフがいた場所に――――包囲網の中心にスライドしていく。

 

 そしてそのことによって空いた道を、シンボリルドルフは掠めるようにして辿って前へ出た。

 

(さすが会長。だけど……!)

 

 シンボリルドルフの前には、ウマ娘は2人。掛かったウマ娘の片割れと、マックイーン。

 3人抜かなければ、皇帝の神威を発揮することはかなわない。

 

 しかし自分の領域は、そういう数による縛りがない。肉薄すれば即座に構築できるものばかりである。

 

 トウカイテイオーは、領域を必殺の技術だと思っている。ある一定の条件を満たすことをトリガーに、自分の限界を超えた力を出す。

 確かにそれは、必殺技というべき強力な一手だった。同じ実力であるならば、領域の有無、発動の如何が勝負を分ける。

 

 これは、間違いのない事実である。

 

(蓋ももうすぐ剥がれる。となると、マックイーンはそう簡単には抜かれない)

 

 シンボリルドルフがトリガーを完全に満たさずとも領域を構築できることを、トウカイテイオーは知っていた。

 

 自分が参加できず、無念の臍を噛んだ宝塚記念でやっていたから。

 あのとき、シンボリルドルフは抜かす地点というトリガーを省略して発動した。であれば、抜かす人数も省略できる。そう考えるのが自然であろう。

 

 しかし、メジロマックイーンは、落ちてこない。

 そのことを、トウカイテイオーは知っている。前を抑えられてはいるが、それが逆にマックイーンのスタミナを温存する結果に繋がっている。

 

 スタミナ万全のマックイーンほど、恐ろしいものもない。友達だからこそ、仲間だからこそ、ライバルだからこそ、それがわかる。

 

(会長が抜き去る前に肉薄して領域を2つ繋げて勝つ!)

 

 それは、充分に計算され尽くした勝ち目だった。

 そして、第3コーナー。疲労によって膨れながらコーナーを曲がり切ったマックイーンの蓋となっているウマ娘が、剥がれる。

 

 そして、マックイーンのロングスパートがはじまった。

 

(……何もしなかった?)

 

 前に誰もいない状態での、マックイーンのロングスパート。それを、シンボリルドルフはたやすく許した。

 

 無論少しだけ外へと進みかけたが、テイオーの視界内にもたらされた影響はない。

 

 そして、コーナー時横に膨れるウマ娘がシンボリルドルフの進路を一瞬遮ったからかもしれない。

 

(新領域がある、のかな)

 

 ボクの知らない、新たな地平が。

 しかしそういうわからん殺しを気にしていてもどうしようもないというところはある。

 

 トウカイテイオーは持ち前の切り替えの速さを存分に活かして、膨れたウマ娘を抜き去って前へ出るシンボリルドルフの背を、当初の予定よりも迅速に追った。

 

 そして、その瞬間。

 雪崩を打つように、後ろが一斉にスパートをかけた。

 

 この被害を一番多く受けたのは、誰か。

 それは、ゴールドシップだった。

 

「うげっ」

 

 進路が塞がれた現状を見て、顔を引きつらせて呻く。

 無論、こうなることは予測していた。

 

 

 ――――次は、追込の対処だ。トップスピードに至ったところで翼を広げるように他のウマ娘を横に伸ばして進路をブロックする。そして、一度ついたスピードを他のウマ娘を避けるという労力を割かせることによって漸減させて、邀撃する。こうすることで、前のウマ娘はリスク無く後方のウマ娘の脚を無駄に消耗させ、そして余計な神経の消耗を強いることができるわけだ

 

 

 ――――追込のウマ娘とは、スパートに入った瞬間視野が狭くなる。これは序盤中盤と最後尾に位置することで視野を広く持つためだ。広い視野で集積した情報である程度の道順を組み立て、走ることのみに集中する。だからこそ、加速した追込相手の対応は難しい。だが、この脅威的な集中力の裏には弱点がある

 

 

 ――――長所は、短所だ。このことを覚えておくといい

 

 

 覚えている。覚えていた。

 だからこそ、自分がトップスピードになった瞬間に潰しに来ると考えていた。

 だから、ある程度加速したら観客席ギリギリに航路を取り、ブロックされない位置から追い込む。

 

 そのつもりでいたのだが、尋常じゃないくらい仕掛けが早かった。

 

(まだスピードの半分も出せてないぜ、ゴルシちゃんは……)

 

 ルドルフを横に振れさせたのは、スパートをかけ始めると後方のウマ娘に伝えるため。

 そして自分を見にくい外のウマ娘にはトウカイテイオーのスパートした姿が鮮やかに映るように仕向けた。

 

 そして、雪崩を打たせた。

 トウカイテイオーに追いつくためには、シンボリルドルフに追いつくためには、急がなければならない。だからこそ、無理に追い抜きに来た。外へ外へと。

 

 結果、ゴールドシップの進路は横殴りに前に出てきたウマ娘たちによって塞がれた。

 スパートに入って狭まった視野を広げ直し、辛くも捌ききったものの、そのロスは大きい。

 

「面白くなってきたぜ……!」

 

 なんとか捌き切り、そして追う。

 バ群の中にできた一瞬の道を、ゴールドシップには――――メジロ系列のウマ娘にはない優れた瞬発力で突き抜けていったシャドーロールの怪物の姿を。

 

(あいつ、本当に未デビューのひよっこか?)

 

 唐突に観客席からの砲撃を喰らった黄金船がその不沈艦ぶりを示したのを見て、東条隼瀬は舌を巻いた。

 

(捌ききりおった。よくわからんやつは早めに封殺しておくかと思ったが、やっておいてよかったな。沖野さんも流石だ……)

 

 撃沈はしなかった。だが結局のところ、戦艦というのは戦場に到着させなければどうということもない。

 

 視線の先の鉄火場は、まさにスター同士の激戦という体をなしていた。

 マックイーンが非効率なまでに速度を求め、スタミナを浪費しながら逃げる。それを追うルドルフ、直線で抜き去るための脚を残す調整をしつつ肉薄せんと迫るトウカイテイオー。

 

(よし、射程圏内!)

 

 迫った。ここから領域を繋げる。

 ミホノブルボンとの有馬記念のように。まずは第一の領域から造り上げ、そして入る。

 

「勝つのはこのボク――――」

 

 領域を満たすのは、遥か遠くを目指すための極みのない青空。

 その蒼穹の中でひときわ輝く夢という星を掴まんと手を伸ばし、そして掴みかけたその瞬間。

 

「捉えた……」

 

 空が、果てしなく黒い影に覆われた。

 振り向くとそこにあるのは、闇。影で形作られた三冠を戴く王虎が、自分の喉元に爪を当てて唸っている。

 

 かつて自分が今と同じ2500メートルという距離で抜き去ったウマ娘と同色の黄金の瞳が、闇の中に輝いていた。

 

「散れッ!」

 

 世界そのものが影ごと砕け散り、そして怪物が破壊した世界が産む出力を推進力にして駆けていく。

 

 瞬時に、トウカイテイオーは悟った。

 シンボリルドルフに勝つことが、このレースに勝つことではないのだと。

 

 鳴りを潜めていたシンボリルドルフに勝つ為レースで調整された爆発力では、ナリタブライアンを差し切れない。

 

 第二領域たる炎の翼を展開するも、届かない。

 

「私たちの、勝ちだ」

 

 ぶっちぎられた、二着。

 三着のシンボリルドルフとのデッドヒートをハナ差で辛くもしのぎきって皇帝との勝負には勝ったトウカイテイオーには、一瞬その私たちが何を示すのかわからなかった。

 

 姉貴と、私の勝ちだということなのか。

 それとも、自分たちのチームの勝ちだということなのか。

 

 おそらくはどちらもだろう、と。

 皇帝に勝ち、怪物に敗れた帝王は芝を掴んだ。




前話のやり取り訳
「私からすれば、君の策は別に悪くないと思うが(私の指揮官としての適性を活かし、囮にするというのは勝ちへの最善手だよ)」
「俺も悪くはないと思うが、どうにも(お前をデコイにして確実に勝つというのは最善だとわかりつつもお前が負ける所は見たくない)」


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マルメル@兄貴、クマクマ兄貴、慈恩愛兄貴、豆腐ユナイテッド兄貴、悠燭狐日兄貴、kumori兄貴、こうもりがさ兄貴、評価ありがとナス!

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アフターストーリー:暴走

死ぬほど読みにくいルドルフ大好きおじさんの戯言はあとがきにまとめておくので安心してください(読者に優しい作者の鑑)
まあちゃんと読むと特典として、これからの作戦とかテイオーに足りないものとかなぜ負けたかとかちゃんとわかるようになってます。

あと我がトレセン学園にもνブルボンがロールアウトされました。
カプリコーン杯プラチナとったところであれですが、これからブルボンには新型機を使かわせていこうと思います。


 アオハル杯後。

 未デビューのウマ娘にしては見事な4着を確保したゴールドシップは、不自然に少しだけ人が疎らな観客席の柵に手をついて話していた。

 

「負けたみたいですね、ゴールドシップ」

 

「おう。やっぱあのコンビはつえーわ」

 

 負けた、と。

 ひとり敗北の味を噛み締めているゴールドシップの耳に、聞き覚えのある足音が鳴った。

 

 芝を踏みしめるその音に反応しようとした瞬間、今の今まで話していた相手がパソコンを手放して立ち上がりかける。

 

「まあ、仕方のないことですよ。これからぁぁぁあ!? うおおお、若い! 若い芦ッ!?」

 

 それまでの丁寧な口調はどこへやら。

 無言のゴルシパンチ(9000AP)を喰らった謎のウマ娘が客席に沈む中、ゴールドシップは彼女らしくなく若干頬を引きつらせながら、来訪者に応えた。

 

「ゴールドシップ」

 

「……あらー、なんですのぉ? トレーナーさん?」

 

 定まらないキャラ、というか口調。

 唯一定まっているのは、人工的な狂気を宿していること。

 

 そんなゴールドシップから繰り出された突然の、そして流暢なお嬢様口調を無視して、東条隼瀬は言葉を続けた。

 

「お前、俺たちの手の内を知っていたようだな」

 

 手の内を知ってるような、挙動。

 

 スタートを遅らせたことなのか。

 ロングスパートをいつもより早く仕掛けたことなのか。

 それとも、ロングスパートの加速がそれなりに達したところで観客席ギリギリの大外を攻めるつもりだったのがバレたのか?

 

 あるいは、この全てか。

 会話に違和感が起こらないほどの微弱な沈黙の後に、米食いたそうに目を細めながらゴールドシップは本来の口調に戻して答えた。

 

「…………まーな。ゴルシちゃんレーダーは、警戒すべき相手を間違えねーのさ」

 

 ゴールドシップの所属チームは、スピカ。

 スピカのトレーナーは、沖野T。

 

 確かに彼は目下対参謀11連敗中――――シービーの宝塚、ジャパンカップ、有馬記念、天皇賞春で4回、テイオーのジャパンカップ、有馬記念で2回、マックイーンの天皇賞春とURAファイナルズ決勝で2回、そして今回のアオハル杯で3回――――である。

 故に沖野Tが警戒するのもまた仕方のないことであるが、そんなことは東条隼瀬の気にするところではない。

 

 彼は自分がどうたら、というより自分のウマ娘が勝った、と思っている。だから、そういう連勝とか連敗とかを認識していなかったのである。

 

 そして沖野Tとしても、そう思う質だった。

 だからこそ、彼は負けた理由を自分と東条隼瀬との差に求めていたのである。

 

 そんな中で珍しく若干警戒心を露わにするゴールドシップから少し目を逸らしたあと改めて視線を戻し直し、東条隼瀬はこれまた珍しく対抗心を燃やしながら言った。

 

「次は情報戦でも勝つ」

 

「あ?」

 

 あ、怪我したかもしんねぇ。

 そう感じた時のような素っ頓狂な声を、ゴールドシップは出した。まあその時は筋肉痛だったわけだが。

 

(ああそういや、こういうガキっぽい負けず嫌いさ、あったわ)

 

 しかしその素っ頓狂さを、そんな納得が打ち消す。

 冷静な顔と行動の中身が結構負けず嫌いだったり感情的だったりするのを、ゴールドシップは知っていた。

 

 そんなふうに一方的に宣言して去っていく芦毛のトレーナーの背に、ゴールドシップは声をかけた。

 

「おいおいおいおいおいおいおい。ゴルシちゃんの時間をとっ捕まえて奪っておいて、それでサヨナラじゃあるめぇな?」

 

「なんだ。訊きたいことがあるのか」

 

「うおっ変わらねぇ……愛嬌を母ちゃんの腹の中に置いてきたのかな?」

 

 唐突に江戸っ子と化したゴールドシップを見事にスルーして振り向いた男の氷のような反応に対して反射で煽りコメントを打ち込みながら、黄金の不沈艦は更に続けた。

 

「アンタ、どこでわかった?」

 

「さあな。ただ、最悪を予想しただけだ」

 

 あの場合の最悪とは、シンボリルドルフの支配領域から脱されることである。

 それはつまり、この黄金船が抜錨した後に無意味に大外に出てから強襲してくること。

 

 流石に一旦大外に急進してそこから斜めに突っ込まれては、ルドルフの支配も及ばない。意味不明すぎて。

 だから、東条隼瀬はルドルフを輔弼すべく動いたのだ。

 

「手の内が読まれてるなら、それはそれとして行動を限定することができるってやつか。手持ちの能力を向上させて最悪の手を限定させ、予め対処法をいくつか立案しておく……」

 

「お前、頭いいな。やはりスタート時はわざとか」

 

 一見本気でスタートが苦手だと思われたからこそ、東条隼瀬は確信を持てないでいた。

 

 出遅れたから、開き直ったのか。

 開き直って、出遅れたのか。

 

 前者であれば主導権はゴールドシップにはなく、後者であればある。

 

「ンンンン! ゴルシちゃんなんのことかわかんなーい! あはん!」

 

「まあわからないなら結構」

 

 頭がいいことを自覚していない、切れ者。

 つまり精神的に頭がいいのではなく、肉体的な頭がいい。

 

 そういうことかとプロファイリングした男をしれーっと見て、ゴールドシップはツッコんだ。

 

「ツッコミ待ちだよ。あたりめぇだろ」

 

「あ、そ。で、訊きたいことはこれで終わりか?」

 

 ならインタビューの準備も終わりそうだし、帰るが。

 そう言いつつ、本当に帰りそうな男に向けて。ゴールドシップは真面目な顔をして問うた。

 

「……どうすれば1番、勝ち目があったと思う?」

 

「それを敵に訊くのか」

 

「アンタ、他人に教えるの好きだろ? 需要を満たしてやってるのよ、ゴルシちゃんは」

 

 確かに、東条隼瀬からすれば教え導くのは嫌いではない。

 それが向いているか、そしてちゃんとできているかは別として。

 

「……そうだな。見たところお前は、ただの未デビューウマ娘ではない。だが、それを感じさせすぎた。故に俺も早期に抑えに行ったし、全力を向けた。だから……俺に無理なく情報を与えればよかった。互いにある程度知っているが故に、何も知らない。そういう関係であれば、お前の存在は伏兵になり得たはずだ」

 

 未知に過ぎた。

 そういうことだ、と説明する男の話に頷いて、納得する。

 

「なるほど。あんがとな」

 

「一つ余分に答えてやったから、一つ。こちらも問おう」

 

「あによ」

 

 頭の後ろに両手を回す謎のポーズで左右に揺れている不沈艦に向けて、東条隼瀬はなんとなく問うた。

 

「お前、どこかで会ったか?」

 

「……んにゃ、会ったことはねぇよ。会う予定はあったかもしれないけどな」

 

「そうか。いや、そうだろうな。変なことを訊いた」

 

 中々に、強烈な人格をしている。一度見れば、忘れないはずである。

 そんな納得のいく、しかしどこか釈然としない感覚。

 

 そんな思いを胸に、東条隼瀬はインタビューに応じた。

 

「復活アオハル杯初戦長距離部門。そして、第一回アオハル杯初戦の勝利、おめでとうございます」

 

「ありがとうございます」

 

「レースだけを見れば当代の三冠ウマ娘、ナリタブライアンの見事な差し切り勝ちに終わりました。しかし東条トレーナーが見る、今回の勝因は何でしょうか?」

 

 そしてこの瞬間、『参謀』だとか『クソゲー王』だとか『鬼畜』だとか『皇帝の杖』だとか、そしてあるいは一部では『解説員』と言われていたこの男のあだ名がほぼ一本化されるインタビューが敢行されることが確定した。

 

「いやぁ、まずルドルフですね。三冠ウマ娘だと言うのに、チーム勝利を優先して潰れ役を担ってくれた。トウカイテイオーというウマ娘が私にとって脅威だったからこそ、そして対処しきれないからこそ頼んだ苦渋の決断だったわけですが、彼女はその意図を察してくれました。ウマ娘の本能である『勝ちたい』という気持ち。それを傑出した頭脳と理性で制御する。これだけでもすごいはずなのに、勝機を見ても焦らずにこちらの作戦に沿ったレース展開にしてくれました。過信してもいい実力がありながらも自分の力を過信せずに、徹頭徹尾勝ちにこだわる。最終的に勝つことを目的に進める。栄光と実力を兼ね備えるウマ娘でありながら、今年一年走っていたブライアンの負荷も考慮して敵の戦力を漸減することに注力してくれる。これは誰にもできることではありませんよね。もちろん一人の競技者として素晴らしいのは間違いありませんが、何よりも素晴らしいのは隣に立つことを許したトレーナーを立て、そしてレースを支配し仲間を慮る指揮官としての、上に立つ者としての適性ですよ。旗艦が自ら敵戦艦を撃沈しにいく必要はない。大将が自ら敵将を討ちにいく必要はない。これこそまさに将の将たる器ですよね。レースの途中で視野が狭まりトレーナーの指示に気づけないウマ娘も多い中、ルドルフはちゃんと瞬時にそれに気づく。その上でより完成度の高い対案を示し、実行してくる。これはもはや皇帝としか言いようがありませんよね。レースには絶対はありませんが、シンボリルドルフには絶対があるんですよ。トウカイテイオーという比類ない爆発力を秘めた相手を不発弾に終わらせつつ、ブライアンにも本気を出すことを強いることなく無理なく、楽に勝つ。やはり皇帝ですよね。ルドルフはすごい。陳腐な言葉ですが、天才ですよ。安定感のあるウマ娘は自分のルーティンを遵守してこその強さ、というのがあります。ブルボンであればラップ走法、スペシャルウィークであれば4角からの仕掛け。ですけど、ルドルフは状況に応じて対応を変えながら安定感を維持できるんですね。これは彼女が本質的には爆発力を秘めながらもその爆発力に頼ることなく安定して勝てるように修練した結果なので後天的なものなのですが、それにしても見事です。序盤の展開から既に主導権を握る。自分に意識を集める。そのことによって不利になると知りながら、逆用する。これ、前提条件からして誰にでもできるかといえば、そうではないですよね。時速70キロを超えて走り酸欠になりつつ、その現状を維持して、高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対処する。口で言うほど簡単では有りませんし、自分の能力を信じつつ現実を見ていなければできない。この両立はトレーナーの中でもできる人は少ないでしょうし、私にはできていません。やっぱり最強なんですよ、ルドルフが。まあ今年凱旋門賞に挑戦して勝つのでわかると思いますけど、やっぱりルドルフ。やっぱりルドルフですよ。今回にしたって追込んできたゴールドシップを封殺してくれました。こちらの指示は簡潔なものしか送れなかったのに、完璧に意図を察して動いてくれる。やはり頭がいい。ずば抜けている。冠絶している。いや、私などが褒めるということすら不敬かもしれませんが、これはもう褒めるしかありませんよ。やはり頼りになるというか。宝塚記念から1年半、トレーナーのようなものとして彼女と共に駆けてきました。そこからいくらか間が空いて今再び組んだわけですが、まさに皇帝万歳(ジーク・カイザー)としか言えませんね。レースそのものを管制下におくそのスタイルは彼女独自のもので、他にはありません。これは本人の資質にもよりますが、3000メートル級の長々距離レースを制すと視野が広まり、展開予測能力や展開誘導能力が身につくといいますしそれは事実ですが、ルドルフは別格です。それに――――」

 

 処理しきれないほどの情報を叩きつけられ、いつまでたっても情報が完結しないという地獄に叩き込まれた哀れなインタビュアーくんの悲哀は置いておくとして。

 

 このインタビューの罪深いところは、ほとんどが惚気みたいなルドルフ大好きおじさん成分で構成されながら、ちゃんとレースの解説もしているしその解説が割とためになるものであったことであろう。

 

 このインタビュー中ちゃんとその話を聴いていたナリタブライアンは、傍らのケロッとした顔をしている皇帝の方に顔を向けた。

 

「……相変わらずだな、あいつ。アンタのことになると口数が多くなる。にしてもよくあそこまで褒められるものだ」

 

「そうかな。私も彼をあれくらい褒められるし、普通じゃないか?」

 

 尻尾ブンブン、耳ピコピコ。理性という箍から外れた尻尾と耳の反乱軍と一緒になって焚き火を囲んでコサックダンスを踊ってそうな皇帝を見て、ナリタブライアンは思った。

 

 こいつら似た者同士だ、と。

 

「君は口下手だからな。しかし、口数が多ければいいというものでも、ないさ」

 

「サラッと心を読むな」




ルドルフ大好きおじさんの戯言要約
・ルドルフすごい
・今回のレースのMVPはルドルフ
・戦力の漸減を買って出てくれた
・レース支配してた
・追込封殺してた
・指示ちゃんと聞いてくれた
・ルドルフ最強
・今年凱旋門勝ちます
・3000↑の長距離レースを制すと展開を予測したり支配したりする力がつくよ


85人の兄貴たち、感想ありがとナス!

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メモリー:3/7/3

【ロボ】ミホノブルボンについて語るスレpart114【現在13連勝中】

1:尻尾上がり名無し ??/7/3 19:59:00 ID:WTtSZqOki

◆レース実況はスレチと言って、専スレでやるものなんだ

◆荒らしはスルーと言って、無視するものなんだ

◆続きは次スレと言って、950が立てるものなんだ

 

2:尻尾上がり名無し ??/7/3 19:59:10 ID:huxFCVYfv

立て乙

 

3:尻尾上がり名無し ??/7/3 19:59:17 ID:p3AIOwbQr

立て乙

 

4:尻尾上がり名無し ??/7/3 19:59:28 ID:n7N87qWWR

フォーエバーオグリ

 

5:尻尾上がり名無し ??/7/3 19:59:39 ID:3QnK/VHWu

おつおつ

 

6:尻尾上がり名無し ??/7/3 19:59:44 ID:ZlYG2ifps

サンキューオグリン

 

7:尻尾上がり名無し ??/7/3 19:59:53 ID:MD/APGpEj

オグリン酷使定期

 

8:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:00:00 ID:cynjdY2xA

現実ほどは酷使してないぞ

 

9:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:00:11 ID:y7T5aib3z

百利ある

 

10:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:00:22 ID:FqiVvTuVt

サンキューキャップ

 

11:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:00:28 ID:nGCz3HjIv

次走発表はいつ?

 

12:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:00:34 ID:qlsq1nMbQ

普通にグランドスラム狙いだろ

 

13:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:00:42 ID:5L2BarEq1

ルド山さんやってなかったんか

 

14:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:00:48 ID:DzKjnlx+l

ルド山さんは最近まで秋天出てなかったからな

 

15:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:01:01 ID:LDC5sYc/Q

秋天JC有馬か

 

16:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:01:11 ID:S1jtxbQOo

秋天か

 

17:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:01:21 ID:fpPLJg8PW

秋天一番人気の呪い

 

18:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:01:26 ID:U93l6XLsl

呪いは一応皇帝が倒したぞ

 

19:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:01:39 ID:xLdeFiyXw

その皇帝が倒されたんだから復活したんじゃね

 

20:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:01:51 ID:1eZgLt6Zd

ゾンビかな

 

21:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:01:56 ID:/LED1MBwh

解説員は秋天嫌いだから出さなそう

 

22:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:02:08 ID:6y+ymCz07

ブルボンが出たいって言えば出すんじゃね

 

23:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:02:19 ID:sFVZoXTuX

基本的にウマ娘第一主義だもんな

 

24:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:02:26 ID:y7PCzBzvZ

管理主義とウマ娘第一主義って矛盾しないのか?

 

25:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:02:38 ID:NaoLnNTgt

目標をウマ娘に決めさせて過程は管理するんや

 

26:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:02:50 ID:pGNo9hroh

あーなるほど

 

27:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:03:01 ID:RmxF4qs0D

グランドスラムは頑張ってほしいな

 

28:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:03:08 ID:739rx+FMY

グランドスラムやったらなにするの? ドリームリーグにでも行くの?

 

29:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:03:20 ID:/+lNeoMjO

たぶん

 

30:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:03:26 ID:qzoBL+uRh

まあまだグランドスラムどころか次走発表すらしてないけどな

 

31:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:03:33 ID:tDE+s1yOz

みんな気が早いわ

 

32:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:03:43 ID:7R307OqPH

というか激戦続きだしそろそろ休養挟まないとやばくね

 

33:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:03:54 ID:uhX7ZirrT

ミホノブルボンさんのこれまで

ジュニア期:メイクデビュー後、朝日杯からホープフルステークスへ連投

クラシック期:クラシックレースを完走後、秋シニアの二冠を荒らす

シニア期:春シニア三冠。そして伝説へ……

 

34:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:04:02 ID:ihMpuQ3Ni

頭おかしい

 

35:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:04:11 ID:MMC3pCiNa

なぜ壊れないのか不明

 

36:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:04:16 ID:g+1FIAikI

替えパーツ定期

 

37:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:04:27 ID:hwx61da3T

ドーピング説

 

38:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:04:35 ID:tqiM7WQl3

アメリカのウマ娘はドーピングしてるらしいけど、ドーピングしてもこんなクソローテ身体が持たんわ

 

39:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:04:45 ID:B/3qqYDEP

ちなみに夏休みは3年連続なさそう

 

40:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:04:50 ID:GXQZFtBzZ

夏って合宿するもんじゃないの?

 

41:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:05:00 ID:jjKi67gl4

しないこともある

 

42:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:05:13 ID:LEGzKTBbf

というか昔はしないことの方が多かった。今は色々進歩してできるようになったけど

 

43:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:05:25 ID:Ne2w2ilEB

いつ休んでいるんですかね

 

44:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:05:33 ID:g/wHo7bHA

ビワハヤヒデも休まず合宿するらしいな

 

45:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:05:45 ID:uafRIE5pi

いまいち勝ちきれてないもんな

 

46:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:05:51 ID:VyAvl0WHH

2着ばっかだもんげ

 

47:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:06:01 ID:Rsu6mwklS

もんげ?

 

48:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:06:14 ID:NaoLnNTgt

あの娘ら姉妹揃ってあんま丈夫やないから夏は休ませたほうがええと思うで

 

49:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:06:23 ID:TJX5pTfx4

本当にそうか?

 

50:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:06:32 ID:hMQ7zY+0x

というかいつもならホイホイ次走発表してくれる解説員が言わないあたり何かしらのサプライズがあるのかな

 

51:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:06:41 ID:2GWHrsgEz

怪我説

 

52:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:06:47 ID:CKxHeG5Fn

やめてくれよ……

 

53:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:06:56 ID:+ugT1ptHo

怪我はありそう

 

54:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:07:06 ID:agTebpyEJ

怪我とは行かないまでも違和感はありそう

 

55:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:07:12 ID:e62Ruqyb4

というかなきゃ怖いわ

 

56:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:07:23 ID:NaoLnNTgt

それはないと思うで

 

57:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:07:32 ID:yKyRY+jld

なんで?

 

58:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:07:40 ID:NaoLnNTgt

今日も元気しとったからや

 

59:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:07:50 ID:oBKXvfa64

なら安心だな!

 

60:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:08:01 ID:1Vvtxf6DU

ヨシ!

 

61:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:08:14 ID:5lfZgx1UE

怪我はドラマを生むけどなんだかんだ怪我しないのが一番よ

 

62:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:08:20 ID:X48dU7bMq

テイオーもそうだそうだと言っています

 

63:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:08:28 ID:mXOu7N0SU

天皇賞イヤイヤ病だけなら別にいいんだけどな

 

64:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:08:40 ID:iVlzE0tQL

おい公式サイト見ろ

 

65:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:08:48 ID:dn7zx+EIw

あ?

 

66:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:08:57 ID:Qo7O8F32o

ん?

 

67:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:09:06 ID:YaVohRXKp

お?

 

68:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:09:17 ID:GP9IKQrKx

こマ?

 

69:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:09:26 ID:wjUGq5/W9

ええ……凱旋門いくのか……

 

70:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:09:32 ID:Fo2oSh+pk

凱旋門キター!

 

71:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:09:38 ID:KeWaOE4Y9

呪いから逃げて呪いに突っ込むのか……

 

72:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:09:44 ID:2IvOi2q0H

秋天一番人気の呪いから逃げて凱旋門の呪いに突っ込んでいくスタイル嫌いじゃない

 

73:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:09:56 ID:MT9sw2hb0

凱旋門いくのやめてくれ

 

74:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:10:08 ID:/V+dVo6Qm

これはついに凱旋門勝てるか?

 

75:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:10:14 ID:JKDSEqgra

普通にグランドスラムしてほしかった

 

76:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:10:26 ID:j7joc7z6A

海外行くと調子崩すからやめて

 

77:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:10:36 ID:elF1eoYRw

日本の悲願キター!!

 

78:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:10:48 ID:2d3q2NXfe

まあ皇帝倒したし日本に敵いないもんな

 

79:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:10:56 ID:OaQTM/qN2

 

80:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:11:07 ID:rO68UKXT1

そいつはライバル

 

81:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:11:19 ID:MIYLfh4xl

ブルボンのライバルは皇帝なんだよなぁ……

 

82:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:11:30 ID:pN9f2eWCI

皇帝にライバルが居なかったからそういうことになっただけだぞ

 

83:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:11:38 ID:5ejw/o+em

このまま日本で無双して来年挑むのかと思ったわ

 

84:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:11:46 ID:5Eljcz5Gv

>>83

新年度から1年かけてのエルコン・メジロムサシ方式かと思ってた

 

85:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:11:56 ID:2yFW3S5Rb

スピードシンボリ式か

 

86:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:12:06 ID:0n4cS/4NH

そういえば解説員ってシンボリの人でしたね……

 

87:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:12:15 ID:Fn5mMuvZ7

まーた皇帝が身内に背中刺されたのか

 

88:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:12:23 ID:9MHousN0P

スピードシンボリも宝塚記念から凱旋門いったの?

 

89:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:12:31 ID:Z6xHnslwc

いや、アルゼンチン共和国杯からキングジョージ挟んで凱旋門

 

90:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:12:38 ID:Dezw8YZ3p

シリウスシンボリは?

 

91:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:12:45 ID:8bNj7MJGH

あいつはまんまスピードシンボリ式。クラシック級だったからダービー後にキングジョージに遠征した感じだけど、その後一応1年間かけてフランスに慣れて、そっから凱旋門

 

92:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:12:57 ID:FGmRJxsC7

宝塚記念→フォワ賞→凱旋門か

 

93:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:13:03 ID:xFZa14ylE

成功すればこのローテがスタンダードになるかな

 

94:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:13:08 ID:YRyd34agJ

勝ち目はあるのかな

 

95:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:13:13 ID:NaoLnNTgt

前につけられて重いバ場も苦にしないから適性はありそうやね

 

96:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:13:22 ID:uHpe/PGzA

後ろからいくタイプは無理なの?

 

97:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:13:34 ID:NaoLnNTgt

バ場が重いと脚を取られて瞬発力が落ちるんや。落ちるとどうなるか。速度が上がらんやろ。速度が上がらんと前を抜けへん。だから末脚勝負のウマ娘はキツいんや

 

98:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:13:46 ID:t9ccuICSQ

はえー

 

99:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:13:54 ID:RG6ggtAkY

普通にためになる

 

100:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:14:00 ID:PSzjTJy9W

だからエルコンは前につけたのか

 

101:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:14:09 ID:NaoLnNTgt

あとは普通に包囲されるからやな

 

102:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:14:20 ID:ZX2mn1FFu

バ群に呑まれるってこと?

 

103:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:14:31 ID:NaoLnNTgt

フランスのレースは実質チーム戦みたいなもんやって隼瀬くんが言っとった。

同じトレーナーからペースメーカーとマーク屋で護衛して本命を通すのが主流なんやと

 

104:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:14:39 ID:+7/DHWbrs

それ違反じゃね

 

105:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:14:47 ID:5+LLpCZEf

八百長じゃん

 

106:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:14:58 ID:NaoLnNTgt

俺らからしたらそうやけど向こうがそうしてるんやから文句言ってもしゃーないやん

 

107:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:15:10 ID:kqljeTlph

まあそれはそう

 

108:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:15:18 ID:VwqDIzIU6

ドブカスニキって口悪いけど切り替え早いよな

 

109:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:15:23 ID:XKa0+Oio2

じゃあ差しウマ娘に勝ち目は無いのか

 

110:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:15:36 ID:NaoLnNTgt

キングヘイローちゃんの母君は後ろから差してたから、よっぽどな怪物にならできるんちゃう

 

111:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:15:43 ID:uMIKn3YUx

まあ逃げウマ娘のブルボンが敢えて後ろにつける意味もないわな

 

112:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:15:53 ID:NaoLnNTgt

せやね

 

113:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:16:04 ID:u/qQ1vKQZ

凱旋門賞は無理だろ

 

114:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:16:16 ID:7zSUEhyMA

そうそう。洋芝は無理

 

115:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:16:27 ID:nnuKhfk1f

>>113

>>114

 

116:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:16:35 ID:ReabhubMg

>>113

>>114

 

117:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:16:48 ID:sVOlnBVoN

>>113

>>114

 

118:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:16:56 ID:CjfMs+21a

>>113

>>114

距離限界おじさん!? なぜここに! まさか自力で脱出を?

 

119:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:17:05 ID:W6KY9BvJt

>>113

>>114

おは距離限界おじさん。距離限界見えてるぞ

 

120:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:17:18 ID:T3cHQOR5I

>>110

????『ワシなら差し切れる』

 

121:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:17:29 ID:YfqaEpCI3

おはシンザン鉈見えてるぞ

 

122:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:17:40 ID:Bs6zr0H7A

全盛期のシンザンは時速170キロで走ってたからな

 

123:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:17:52 ID:Lbr/zGM8R

あまりにも人間的な神

 

124:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:17:59 ID:7KKxNKOAw

>>122

脚壊れる

 

125:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:18:11 ID:v2xXYnyi5

謎の神はともかく、ブルボンが凱旋門勝てたらこれはえらいことだと思うよ

 

126:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:18:23 ID:Irze0gX6z

ブルボンの挑戦は終わったと思ってたけどまだあったというわけか

 

127:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:18:30 ID:Hrt51JSqS

秋シニア三冠って最近スペちゃんがやってたしな

 

128:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:18:43 ID:OyQwexafi

ん?

 

129:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:18:51 ID:v3RW0VYXH

ん?

 

130:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:18:56 ID:O2DyOhsSA

グラグラしてきた

 

131:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:19:08 ID:YASTCY3W9

歴史が……

 

132:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:19:14 ID:QqXHgmtDV

このスレって定期的に歴史修正主義者湧くよな

 

133:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:19:20 ID:1C871TJ3H

スペシャルウィーク(有馬記念制覇の姿)

 

134:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:19:29 ID:OOEj3OdKr

あれはグラスワンダーさんがガッツポーズしないのが悪いみたいなところある

 

135:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:19:37 ID:6NC4++A3c

グラスが無言でトコトコしてて、スペちゃんがニコニコで手を振ってウイニングランする。

さて、どちらが勝ったでしょうか?

 

136:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:19:49 ID:o8uwTFwKR

スペちゃん

 

137:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:19:58 ID:sCmdwxAih

スペやろなぁ……

 

138:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:20:03 ID:hch6+JwaS

ライスシャワーも初重賞制覇のとき掲示板に出るまで無言でトコトコしてたし、勝負に執着しすぎるとああなるのかもしれない

 

139:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:20:11 ID:ggRsqmfMV

あの二人どこか似てるよな

 

140:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:20:20 ID:70RFcXXna

雰囲気がね

 

141:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:20:30 ID:Mf7Ktn0oH

将軍「走りきった後に手を振るとあぶない。転んだときに手を付けないかもしれないし、第一着順確定までは誇るべきじゃない。だから確定まではあまりさせていない」

 

142:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:20:36 ID:Zmr0E5ygd

サンキュー職人

 

143:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:20:43 ID:8adIfQlbx

言われてみればそれはそう

 

144:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:20:49 ID:bvbAYIYpc

ブルボンは勝った時に笑ってくれるから好き

 

145:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:21:01 ID:9nqBuEg9y

結構ニコニコしてるよなあのロボ

 

146:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:21:07 ID:Q8A5dndAb

ニコニコロボは凱旋門勝てるのか

 

147:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:21:13 ID:x1twGtkKN

どのみちフランスに行くわ

 

148:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:21:25 ID:e49xKaJVB

仕事やすも

 

149:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:21:38 ID:dUS0J2Mkr

ワイも

 

150:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:21:43 ID:vq+Y5vKRX

ワシも

 

151:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:21:52 ID:apLZ9ie4W

おいどんも

 

152:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:21:57 ID:goptKyw4I

拙者も

 

153:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:22:09 ID:NaoLnNTgt

もう二人分ツアー予約したわ

 

154:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:22:16 ID:1IZg5LXjR

疾風迅雷かな

 

155:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:22:26 ID:IBlYg9QDG

ほんとにもう旅行会社からツアー企画出てて芝

 

156:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:22:38 ID:s4cjT9BDN

皇帝の凱旋門挑戦のときも出てたよな

 

157:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:22:50 ID:KfM/rWiKV

これ旅行会社とかには事前通告あったのかな

 

158:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:22:56 ID:NaoLnNTgt

隼瀬くんはあれで結構そこらへん気を回すからあったと思うで

 

159:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:23:06 ID:Ro8K/9YF5

へー

 

160:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:23:18 ID:wMUdwgN+u

もっと傍若無人な自信家かと思ってた

 

161:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:23:24 ID:AF9sVis+P

わかる

 

162:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:23:32 ID:hFIXIjDIo

ブルボン担当してすぐのときは報道とかのイメージで暴君感あった

 

163:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:23:41 ID:NaoLnNTgt

傍若無人な自信家だとしても実力相応やわ

 

164:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:23:50 ID:pfMAw2yCz

は? あいつは寒門の出のスプリンターにジュニアGⅠ独占させて無敗のクラシック三冠達成させたあとシニアを相手にJCと有馬勝って春シニア三冠取らせて、無敗の連勝記録を伸ばしただけのトレーナーなんだが?

 

165:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:23:55 ID:XZ8UaCYmA

充分定期

 

166:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:24:00 ID:7pFufKZZN

つよい

 

167:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:24:06 ID:1aHmk0UPt

やっぱブルボンってやべーわ

 

168:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:24:16 ID:VpiCUfYtB

鬼みたいな実績

 

169:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:24:26 ID:Awf5RR55X

密度が濃い

 

170:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:24:32 ID:CJjhNZt7F

シンボリとメジロがはじめた呪いに終止符を打つのが寒門出身のロボとか偉いこっちゃ

 

171:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:24:38 ID:4jbzWWIea

まだ勝ってないけどな

 

172:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:24:48 ID:F52JT+9W8

ブルボンが負ける姿を見たことないから勝つよ

 

173:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:24:56 ID:c7srh64FR

当たり前なんだよなぁ……

 

174:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:25:09 ID:5iH+3optQ

勝ったことしか無いからな

 

175:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:25:18 ID:2P5VWNnDM

最近死闘続きだから真面目にこの秋全休して来年から海外遠征したほうがいいと思う

 

176:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:25:29 ID:VNFJs6JKF

皇帝も凱旋門で怪我して休んでたしな

 

177:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:25:38 ID:lYePA2/KP

でも勢いが違うだろ

 

178:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:25:51 ID:070Jg33UQ

主人公みたいな道のりだしな

 

179:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:25:58 ID:IYjdICrC0

URAくんとしては絶対に休んでほしくないだろうな

 

180:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:26:08 ID:Ttkw5GPes

鉄は熱いうちにってやつか

 

181:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:26:16 ID:luJBw9Lev

クラシック三冠! 春シニア三冠! 最強無敵のウマ娘テイオー様を有馬で撃破! ライバルライスシャワーを相手に有利なレースで撃破! 皇帝シンボリルドルフ撃破! のあとに続くならやっぱ凱旋門よ

 

182:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:26:26 ID:WS4pVsrfC

おはテイオー民

 

183:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:26:39 ID:Jsgt95kJd

巣に帰って治癒の祈祷でもしてろ

 

184:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:26:51 ID:luJBw9Lev

もう祭壇作ったし祈祷もしたぞ

 

185:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:26:58 ID:OftFOtOgF

ひえっ……

 

186:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:27:10 ID:JPo2smFQ3

やっぱテイオー民って隔離すべき存在だわ

 

187:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:27:16 ID:/8ARnEeL3

引退報道出てるけどそこらへんどうなの?

 

188:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:27:27 ID:luJBw9Lev

? テイオーは引退しないよ

 

189:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:27:36 ID:URYevUgYa

ア、ハイ

 

190:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:27:45 ID:JJMelKnI8

遠くない未来に暴動起こしそう

 

191:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:27:58 ID:+eukXsnba

でもこいつ現実を認識してるから生粋のテイオー民じゃないぞ

 

192:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:28:03 ID:7WbzRYIIX

本物はテイオー参戦報道が出たレースの実況スレの裏でエアレース実況し始めるからな

 

193:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:28:12 ID:luJBw9Lev

俺もエアレースはどうかと思ってたけど、思っていたようにレースが進むから楽しいよ。

 

おいでよ

 

194:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:28:20 ID:qwZ0KDDJB

いやです

 

195:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:28:30 ID:UbcKQHUaG

お前精神状態おかしいよ……

 

196:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:28:35 ID:jdg6G1OoB

ここまで散々怪我でファンの精神を虐待したテイオーは責任を取れ

 

197:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:28:46 ID:FqJDWIEmP

【速報】サイレンススズカ凱旋門参戦

 

198:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:28:52 ID:hvD4ewzUp

は?

 

199:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:29:03 ID:8A78xiQYu

皆さんブルボンブルボン言ってますけど、でも私の方が速いですよ

 

200:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:29:14 ID:nWTKSoU+M

なぜ言ってないのに言ってたような気がするのか

 

201:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:29:24 ID:luJBw9Lev

これ普通にまずくね

 

202:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:29:35 ID:jdg6G1OoB

いきなり正気に戻るな




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メモリー:3/10/3

https://syosetu.org/novel/259565/109.html
から
https://syosetu.org/novel/259565/110.html
まで


【凱旋門賞】ミホノブルボンによる日本の悲願達成を見守るスレ【逃げウマ娘対決】

1:尻尾上がり名無し ID:+zvWsXbNv

無敗の凱旋門賞達成なるか

 

2:尻尾上がり名無し ID:0kNipH8rm

縁起スレやめろ

 

3:尻尾上がり名無し ID:xu/Yp3etC

うかつに縁起スレを立てるな

 

4:尻尾上がり名無し ID:eYSsPVUdJ

これで凱旋門賞勝てなかったらイッチを殺す

 

5:尻尾上がり名無し ID:341aZ/y8e

まあ実際フォワ賞ブッち切ったし勝てるだろ

 

6:尻尾上がり名無し ID:Yl08CQ37A

前哨戦は前哨戦だぞ

 

7:尻尾上がり名無し ID:S5ljC3Phn

でもあそこまで走れるとは思わなかった

 

8:尻尾上がり名無し ID:D0ijQzIij

エルコンも初戦は結構苦戦してたのにな

 

9:尻尾上がり名無し ID:QfUZHQr7L

苦戦してた(2着)

 

10:尻尾上がり名無し ID:l7H/V/8wM

イスパーン2着は普通にすごい定期

 

11:尻尾上がり名無し ID:ztfT6h8m8

今エルコンの成績見たけど全連対してるのね。すげー安定感

 

12:尻尾上がり名無し ID:enHJzjZHA

黄金世代で一番強いと思う

 

13:尻尾上がり名無し ID:Ej/VdM2/H

うかつに燃料を投下するな

 

14:尻尾上がり名無し ID:enHJzjZHA

すまぬ

 

15:尻尾上がり名無し ID:JbCwzEl8z

普通に殺害予告してるやついて芝ですよ

 

16:尻尾上がり名無し ID:mKHEI+Ui6

今日会社休みだわ

 

17:尻尾上がり名無し ID:augCOo2ul

俺も

 

18:尻尾上がり名無し ID:oHG52/Aea

日曜に仕事……? 妙だな……

 

19:尻尾上がり名無し ID:/BXNx9/lT

塾も休みだわ

 

20:尻尾上がり名無し ID:2N0SULdST

国民的スポーツエンターテイメントだからな

 

21:尻尾上がり名無し ID:NRLkrs096

ブルボンが勝たなきゃ誰にも勝てんわ

 

22:尻尾上がり名無し ID:w9GIHBN3t

未来人ニキまじで頼むよ

 

23:尻尾上がり名無し ID:j3+f5ywIw

逃げウマ娘って実際有利なのかな

 

24:尻尾上がり名無し ID:/31W+zy0Y

エルコンも逃げてたし有利なんじゃない

 

25:尻尾上がり名無し ID:I+nwXaz6u

バ場重いの得意だよな、ブルボン

 

26:尻尾上がり名無し ID:VHUWCtONH

クソ環境に適応するのがうまいから相対的にそう見えるだけで別に得意ではないのでは

 

27:尻尾上がり名無し ID:VCuHt4k1c

軽いところでも走れるもんな

 

28:尻尾上がり名無し ID:140FMZ/NJ

問題は凱旋門賞を勝てるかではなくサイレンススズカに勝てるか

 

29:尻尾上がり名無し ID:nrDwZwXWe

スズカさん最近なにやってたの?

 

30:尻尾上がり名無し ID:BlI/hSoj2

アメリカを破壊してた

 

31:尻尾上がり名無し ID:nrDwZwXWe

アメリカの何を?

 

32:尻尾上がり名無し ID:EpW6KW7jR

>>31

常識

 

33:尻尾上がり名無し ID:HwxoCSs0M

>>31

レース

 

34:尻尾上がり名無し ID:+orlsowVB

>>31

伝統

 

35:尻尾上がり名無し ID:oUhEGY3mS

>>31

 

36:尻尾上がり名無し ID:bf1kv86N5

ブルボンは3年間負けてないけどスズカさんも4年間負けてないからね

 

37:尻尾上がり名無し ID:F1nnhRvw7

同じ逃げなのがな……

 

38:尻尾上がり名無し ID:u/kVLqtDV

つらそう

 

39:尻尾上がり名無し ID:8i7uMaeoq

脚質違ってたらまた違ってたかもな

 

40:尻尾上がり名無し ID:NaO1ePXID

脚質同じやからなんとか勝負になるんやで

 

41:尻尾上がり名無し ID:oJbvU+42d

そういうもんか?

 

42:尻尾上がり名無し ID:NaO1ePXID

逃げウマ娘は極論頭を抑えれば勝てるんやから、逃げウマ娘を潰すには逃げウマ娘が一番

 

43:尻尾上がり名無し ID:uNdG2U1li

へー、そうなんだ

 

44:尻尾上がり名無し ID:8MWRiWb8T

極まった逃げはホント強いよな

 

45:尻尾上がり名無し ID:+K7Kc72xZ

普通に強い逃げは最後に差されるまで含めて芸人みたいなところあるけど、本当に強い逃げは最後まで勝ち切るからな

 

46:尻尾上がり名無し ID:NaO1ePXID

ほんまそれよ

 

47:尻尾上がり名無し ID:dd89iaJOL

ルド山さんがなんか両隣を射出してたけど、あれで頭抑えればよくね

 

48:尻尾上がり名無し ID:le0NFvEg7

ファンネル呼ばわりされてたの芝

 

49:尻尾上がり名無し ID:mi83XMUL1

あれビビった

 

50:尻尾上がり名無し ID:NaO1ePXID

>>47

あんなん誰にもできへんわ

 

51:尻尾上がり名無し ID:JjQzVz3e1

ブルボンかわいいから勝ってほしい

 

52:尻尾上がり名無し ID:yaDCGxMMz

そういえば道頓堀ニキは元気してるんだろうか

 

53:◆道頓堀 ID:SoyENCWlz

元気だよ

 

54:尻尾上がり名無し ID:FgP7+6EZp

コテハン芝

 

55:尻尾上がり名無し ID:THq6gjjF+

でも道頓堀ニキ以外にもなんか他のこと言ってたやついたよな

 

56:◆道頓堀 ID:SoyENCWlz

あいつは逮捕された

 

57:尻尾上がり名無し ID:cZumNJbxZ

そういえばそんなニュースあったな

 

58:尻尾上がり名無し ID:YDWCabnMM

道頓堀ニキはブルボンが勝ったらほんとにやるの?

 

59:尻尾上がり名無し ID:YW+C22HjY

というか勝ってほしいのかな

 

60:◆道頓堀 ID:SoyENCWlz

>>58

言ったからにはやるよ

>>59

勝てば嬉しいし負けても道頓堀ダイブ回避だからどっちでもいいかな

 

61:尻尾上がり名無し ID:VGtnGiK5m

無敵かこいつ

 

62:尻尾上がり名無し ID:t5XRJDLgk

たしかにどっちに転んでもおいしいな

 

63:尻尾上がり名無し ID:O0JDCWUqd

ブルボン王朝復活なるか

 

64:尻尾上がり名無し ID:x0eI7DefI

ツアー民は現地観戦できていいな

 

65:尻尾上がり名無し ID:LWZISWE/1

俺旅行会社社員だけど収益ヤバいわ。ブルボンには頭上がらん

 

66:尻尾上がり名無し ID:xK9CWC3LO

せやろな

 

67:尻尾上がり名無し ID:NtZTE9K8D

どれくらい?

 

68:尻尾上がり名無し ID:j6hqrwVay

1ヶ月で年間売上並

 

69:尻尾上がり名無し ID:Iov2jxauB

そんなにロンシャンに入るんですかね

 

70:尻尾上がり名無し ID:HwVsu1eNV

ホテルとかから見るとか

 

71:尻尾上がり名無し ID:HIENEOUrX

現地にいたいんだろ

 

72:尻尾上がり名無し ID:Xfe64c2AR

達成されたら伝説の場に居合わせたことになるもんな

 

73:尻尾上がり名無し ID:rq2hDhaTG

ロンシャンから書き込んでるけど客が入りがすごい

 

74:尻尾上がり名無し ID:6K609wQ/+

日本人多い?

 

75:尻尾上がり名無し ID:ARsFxxqNO

多い。けどアメリカ人も多い

 

76:尻尾上がり名無し ID:Vfr2qqEbR

なんでアメリカ人ってわかんの

 

77:尻尾上がり名無し ID:ARsFxxqNO

国旗とスズカの旗振ってるから

 

78:尻尾上がり名無し ID:sB4P0eQbx

スズカさん大人気だな

 

79:尻尾上がり名無し ID:ZJplwTtrq

まあ現地でアメリカ歴代最強のウマ娘とか言われてからな

 

80:尻尾上がり名無し ID:346DCsMUD

スズカママを冷遇したトレーナーが射殺されたってマ?

 

81:尻尾上がり名無し ID:Wj7mARMxi

 

82:尻尾上がり名無し ID:Xxxgw+OhX

ちゃんと生きてるんだよなぁ……護衛がついてるのは事実だけど

 

83:尻尾上がり名無し ID:me1rnN+yw

護衛つけられるの芝

 

84:尻尾上がり名無し ID:o+QbhAjaK

ほんとに殺されかねないからな

 

85:尻尾上がり名無し ID:8ETQQYN0+

というかスズカママがシンプルにひどい扱いされてから義憤にかられてるのもあると思う

 

86:尻尾上がり名無し ID:sWhaQu20x

それはそう

 

87:尻尾上がり名無し ID:u7cJ/HIDt

まあスズカさんが一大ムーブメント起こしたから掘り返されたのはある

 

88:尻尾上がり名無し ID:OtDQ2j0vm

冷遇した元トレーナーが私は理不尽に狙われているみたいなことをウマートしたら殺害予告まみれになったのホント芝

 

89:尻尾上がり名無し ID:VbZ3wpmdD

俺が狙ってるぞとか言われてて駄目だった

 

90:尻尾上がり名無し ID:pMRYuwkOf

スズカさんSNSやらないから完全に蚊帳の外なのも芝

 

91:尻尾上がり名無し ID:vfWkMWwsB

スズカさん「うそでしょ……ただ走ってただけなのに……」

 

92:尻尾上がり名無し ID:FLvB29sH3

言いそう

 

93:尻尾上がり名無し ID:HRCNilOSZ

ホントに走ってただけだからね

 

94:尻尾上がり名無し ID:RflwlRYsI

謎のミステリアスガールなのにギャグキャラ扱いされてるスズカさんかわいそう

 

95:尻尾上がり名無し ID:yfGaxRkYa

まあスズカさんが走ることにしか興味がない天然っていうのはこっちの勝手なキャラ付けだからな

 

96:尻尾上がり名無し ID:mg1Jypx61

露出が少ないのが悪いみたいなところある

 

97:尻尾上がり名無し ID:cwracE8Cx

というかそれならブルボンはなんでロボ扱いされてるの?

 

98:尻尾上がり名無し ID:MEQnxkm1X

1ハロンを同じ時間で走り続けて勝つから

 

99:尻尾上がり名無し ID:1tzXLPj1c

見た目

 

100:尻尾上がり名無し ID:Esh/Y/vfd

どう考えても頭のおかしいローテーションを耐え切ってるから

 

101:尻尾上がり名無し ID:UBsrYxh7k

あの死ぬほどハイペースな春天を走ったあとの主要ウマ娘さんたちの動向

 

ライスシャワー……疲労により戦線離脱。夏全休。オールカマーで復帰。次走はJC

 

メジロマックイーン……同上。復帰時期は京都大賞典

 

メジロパーマー……同上。復帰時期は京都大賞典

 

ミホノブルボン……休まず宝塚記念で皇帝と対決し粉砕、夏を洋芝への適応に使い渡仏しフォワ賞を勝利。凱旋門賞へ

 

102:尻尾上がり名無し ID:cMxegjpug

うーん、これはロボ

 

103:尻尾上がり名無し ID:yHxcUIei6

瞬間的に耐久限界を超えない限り壊れないロボ

 

104:尻尾上がり名無し ID:RfKzYjcjJ

やっぱり頑丈さって神だわ

 

105:尻尾上がり名無し ID:IE/twePmy

今テイオーの話した?

 

106:尻尾上がり名無し ID:Qf4rqaEQc

(して)ないです

 

107:尻尾上がり名無し ID:jMIUdZJdN

ヒエッ……

 

108:尻尾上がり名無し ID:CrOSWY9Dl

巣へ帰れ定期

 

109:尻尾上がり名無し ID:A4u2knUK5

ロボは凱旋門賞に勝てるのか

 

110:尻尾上がり名無し ID:eShgXwsJS

そろそろだから緊張ヤバいわ

 

111:尻尾上がり名無し ID:X04YZZhxY

冗談じゃなく誰も仕事してなくて芝ですよ

 

112:尻尾上がり名無し ID:cnnCqQjFf

こんなときに仕事してるのはアホ

 

113:尻尾上がり名無し ID:LbpdD+wgQ

コンビニの店員がガッツリスマホでレース中継を見る日本

 

114:尻尾上がり名無し ID:Dk9ZOf0Ss

平和でいいじゃん

 

115:尻尾上がり名無し ID:RWvXUnUL0

某生で勝手にミラーしてるやついて芝

 

116:尻尾上がり名無し ID:SsZuG/tq2

ミラーのミラーもいるぞ

 

117:尻尾上がり名無し ID:KQHAVpVAk

視聴率90%いきそう

 

118:尻尾上がり名無し ID:Afj0tO6uV

うわ、枠入はじまってるじゃん。ファンファーレは?

 

119:尻尾上がり名無し ID:dr4ohPGUn

そんなもの……うちにはないよ

 

120:尻尾上がり名無し ID:iIG+RX8dB

ファンファーレは日本特有のアレだから

 

121:尻尾上がり名無し ID:bKsyh0VBV

というかフォワ賞見てなかったのか

 

122:尻尾上がり名無し ID:Afj0tO6uV

勝てると思って……

 

123:尻尾上がり名無し ID:38jzvXuBp

これは模範的なブルボンの民

 

124:尻尾上がり名無し ID:OhTqSB7eZ

ロンシャンレース場が破裂しそうなほどの人が集まってますねこれは

 

125:尻尾上がり名無し ID:vX8kc9TvT

外もすげー囲まれてて笑う

 

126:尻尾上がり名無し ID:15w1rtH0Y

どんだけ見たいんだ

 

127:尻尾上がり名無し ID:Bq1zgcxzZ

見たいです……叶うなら観たいです……

 

128:尻尾上がり名無し ID:ussxLCCmq

くるぞ

 

129:尻尾上がり名無し ID:fuailBMiI

きた……きた……

 

130:尻尾上がり名無し ID:VpiwXcr/g

うおおお!

 

131:尻尾上がり名無し ID:FhaQ4id+i

うおおおおはじまったぁぁぁあ!

 

132:尻尾上がり名無し ID:vUKlRf3Uk

はじまったー!

 

133:尻尾上がり名無し ID:mzFnLQ5Y2

スズカさんはっや

 

134:尻尾上がり名無し ID:9/a9WwPiF

見慣れたスズカさんのスタートダッシュだ……

 

135:尻尾上がり名無し ID:GPkAy8464

エルグラがボコられる姿が見える見える

 

136:尻尾上がり名無し ID:ukVqlh8my

ブルボンはっや

 

137:尻尾上がり名無し ID:pf8TcM29g

極悪とは言わないけど重いバ場なのに普通に追いついてくるの強すぎる

 

138:尻尾上がり名無し ID:K/hRk49vG

スズカさんがハナ奪われるの初めて見たかも

 

139:尻尾上がり名無し ID:MLQ/WZOMn

スズカさんがハナ奪われるの初めて?

 

140:尻尾上がり名無し ID:ZS06vR6SY

スズカさんがハナ奪われるのっていついらいだ? ダービー?

 

141:尻尾上がり名無し ID:AxDPMMKbJ

果てしなく久しぶりなのは確か

 

142:尻尾上がり名無し ID:skkTQm+pt

勝てるんじゃねこれ

 

143:尻尾上がり名無し ID:rGlXp0H0R

出る以上負けるつもりはない定期

 

144:尻尾上がり名無し ID:cB92+vdVW

開幕からクソ長直線のあと鬼みたいな坂があるのやべーな

 

145:尻尾上がり名無し ID:OEhE+X7LU

坂とかブルボンのホームみたいなもんじゃん

 

146:尻尾上がり名無し ID:D03ZO/kob

坂はブルボンの庭

 

147:尻尾上がり名無し ID:F5c7OXzdZ

坂なら勝てる

 

148:尻尾上がり名無し ID:9fgyGx3mQ

これマッチレースだな

 

149:尻尾上がり名無し ID:LrDXRdpyw

こんな初っ端からのマッチレースってOP戦でも見たことないんですがそれは

 

150:尻尾上がり名無し ID:r7Rq2xmLt

凱旋門賞なのに二人だけでレースしてるのすごい

 

151:尻尾上がり名無し ID:B/8t8n41c

スズカさん掛かってない?

 

152:尻尾上がり名無し ID:jf/NDHUQm

若干ペース上げてるな

 

153:尻尾上がり名無し ID:nQYqqq+w4

こんなに長期間ハナ奪われてたことないだろうしな

 

154:尻尾上がり名無し ID:rNHBk5Cu7

あれ、ひょっとしてマジで勝てる?

 

155:尻尾上がり名無し ID:+EScgzxH1

右回り2400メートル芝稍重だからブルボン有利でスズカ不利だし勝てる可能性は全然ある

 

156:尻尾上がり名無し ID:B79JF0OxZ

洋芝の稍重って日本の激重だからなぁ

 

157:尻尾上がり名無し ID:NEFfHAWV9

次はすげぇ下り坂か

 

158:尻尾上がり名無し ID:C0W752LaF

流石に減速したほうがいいわこれ

 

159:尻尾上がり名無し ID:vsKfExXkR

これ転んだら死ぬだろ

 

160:尻尾上がり名無し ID:WJBR2drpV

転んだら死ぬから坂はゆっくり登ってゆっくり下るのが

 

161:尻尾上がり名無し ID:UQxu5QMIQ

うお

 

162:尻尾上がり名無し ID:BkrKqtXzU

ほんと坂路の鬼

 

163:尻尾上がり名無し ID:N1eVTkqMb

駆け下るのか……

 

164:尻尾上がり名無し ID:5NyKEn690

ライスシャワーを感じる直滑降

 

165:尻尾上がり名無し ID:XWQsjcQEK

あー、ライスか

 

166:尻尾上がり名無し ID:CZxyxUcuL

春天ライス思い出した

 

167:尻尾上がり名無し ID:RThf462RN

菊花ライス思い出した

 

168:尻尾上がり名無し ID:x2zYsSDBM

ライバルの力を借りるのいい……

 

169:尻尾上がり名無し ID:tuXyDHBAL

ライバルの巧さをモノにしたのか

 

170:尻尾上がり名無し ID:Ja6bMYWfL

抜かされかれかけたけど離したな

 

171:尻尾上がり名無し ID:9MYQChFRu

下り坂での勢いのままスズカさんを抜き去るのすごいな

 

172:尻尾上がり名無し ID:b3nczAlCm

逃げ合いやべーわ

 

173:尻尾上がり名無し ID:Blb/6da1T

で、なんでゆっくり降りたスズカさんが追いつきつつあるんです?

 

174:尻尾上がり名無し ID:1mcMo0q6V

速いから

 

175:尻尾上がり名無し ID:I+vSYFTjK

やっぱりスズカって速いわ

 

176:尻尾上がり名無し ID:qNkNQ9TPf

さすがにスズカさん天才だわ

 

177:尻尾上がり名無し ID:wBHQQuK7B

スズカさん勝ったな

 

178:尻尾上がり名無し ID:ag2sMDYoo

流石にスズカの勝ちか

 

179:尻尾上がり名無し ID:JwKTeLlOs

ブルボンがんばれ

 

180:尻尾上がり名無し ID:lNeT3kDqb

ブルボンが地形利用しても勝てないのか……

 

181:尻尾上がり名無し ID:v/CQ6dkTg

ブルボン!?

 

182:尻尾上がり名無し ID:sowAofQwj

なぜそこで加速できるのか

 

183:尻尾上がり名無し ID:d5DeVMau2

3度も抜き去りかけてるのすごい根性

 

184:尻尾上がり名無し ID:Thujohco3

タイムがヤバい

 

185:尻尾上がり名無し ID:P4O0G8Od5

見てなかったけど二人と後続がものすごい差がついてるんですが……

 

186:尻尾上がり名無し ID:DcuICpuET

ブルボン抜いた!

 

187:尻尾上がり名無し ID:cHWc1H5JJ

スズカさん!?

 

188:尻尾上がり名無し ID:e/cam1umM

ブルボンのこんなに必死な顔はじめてみた

 

189:尻尾上がり名無し ID:JTUNEwQXB

最後の直線だ

 

190:尻尾上がり名無し ID:vRiy3fVm3

いけ!

 

191:尻尾上がり名無し ID:oSlhJXGSW

実況すごいな

 

192:尻尾上がり名無し ID:Y+O5/41JP

後方から差されるとか考えなくていいレベルの差

 

193:尻尾上がり名無し ID:gC8IjFFD2

後方きた!

 

194:尻尾上がり名無し ID:wfMRfOlsU

仕掛けが遅いわ

 

195:尻尾上がり名無し ID:TLgihybSJ

スズカ……

 

196:尻尾上がり名無し ID:rB8UYqjOi

スズカが直線で離されていくの初めて見る

 

197:尻尾上がり名無し ID:fqm0BujGh

ブルボン強いわ

 

198:尻尾上がり名無し ID:sLtc8exxa

ブルボンつえええええ!

 

199:尻尾上がり名無し ID:do2UN+4/k

凱旋門賞勝てるのか……?

 

200:尻尾上がり名無し ID:lnHFLb9OH

つよいつよいつよい

 

201:尻尾上がり名無し ID:2KnBWT7to

ブルボンすげぇ

 

202:尻尾上がり名無し ID:b9+zjYPfL

くそつええわこれ

 

203:尻尾上がり名無し ID:j2aIjhSe5

死ぬほど強いな

 

204:尻尾上がり名無し ID:h9EjGoRjg

スズカさんも速いのにブルボンがヤバすぎる

 

205:尻尾上がり名無し ID:wfFerW1sU

うわ

 

206:尻尾上がり名無し ID:ikdPDMRzT

ついに勝つのか

 

207:尻尾上がり名無し ID:rmtUGI01w

それいけブルボン余力は要らぬ! 押し切れミホノブルボン先頭だ! ミホノブルボン先頭!

 

208:尻尾上がり名無し ID:xduPhJxBv

実況すごい贔屓

 

209:尻尾上がり名無し ID:g4BLRXRT9

まあ気持ちはわかる

 

210:尻尾上がり名無し ID:wke6NzEsS

ブルボンの旅路が終わる……

 

211:尻尾上がり名無し ID:GxJcRTbX4

勝ったろこれ

 

212:尻尾上がり名無し ID:bKp7Ns/dY

勝った!

 

213:尻尾上がり名無し ID:KsBQWCeHK

勝ったぁぁぁぁあ!!

 

214:尻尾上がり名無し ID:+YQNBRpal

勝ったぁぁ!

 

215:尻尾上がり名無し ID:bXBxspHtU

ブルボンつええええええ

 

216:尻尾上がり名無し ID:r44oeaC+m

スズカさん2着か

 

217:尻尾上がり名無し ID:jiMyOpO5m

本当に逃げ切るのヤバいな

 

218:尻尾上がり名無し ID:I+8+2qUnJ

おめでとおおおおおお!

 

219:尻尾上がり名無し ID:+lyVVur+l

歴史に残るわこれ

 

220:尻尾上がり名無し ID:9igXDecZF

現地勢いいなぁ!

 

221:尻尾上がり名無し ID:XQYekK0Ti

ほんとに二人だけのレースだったわ

 

222:尻尾上がり名無し ID:M8IseQfl1

つよぉぉぉい!

 

223:尻尾上がり名無し ID:VfUZdjXgF

三冠ウマ娘は伊達じゃないな

 

224:尻尾上がり名無し ID:q0nWCtN+5

こんなに強いとは思ってなかった

 

225:尻尾上がり名無し ID:adeplP4vF

ハナ奪われるたびに奪い返して最後突き放して勝つのはやばい

 

226:尻尾上がり名無し ID:glC7PpJkU

※彼女はスプリンターです

 

227:尻尾上がり名無し ID:QOYLhqFK9

負けない理由がわかった

 

228:尻尾上がり名無し ID:jki4LdV+5

あの最後の直線での突き放し皇帝じみてた

 

229:尻尾上がり名無し ID:fHk3NDpkM

全部の戦いの経験を糧にしてきたんだな

 

230:尻尾上がり名無し ID:ZPB7t3e+l

スズカさんに唯一死闘の経験だけが勝ってたんだろうな

 

231:尻尾上がり名無し ID:eofPN3ZgG

死闘慣れしてるのは強いということがわかった

 

232:尻尾上がり名無し ID:WqthQdXix

覚醒してからのスズカさんはここまで詰められたことないもんな

 

233:尻尾上がり名無し ID:GvA3taHX/

ほんとにすごいわブルボン

 

234:尻尾上がり名無し ID:cLLhwFsvZ

俺もがんばろ

 

235:尻尾上がり名無し ID:sYuWGi7k3

よくやったわブルボン

 

236:尻尾上がり名無し ID:FUDvqDl6T

これ年度代表ウマ娘だろ

 

237:尻尾上がり名無し ID:MfXdrTeKv

日本の悲願達成したしそらそうよ

 

238:尻尾上がり名無し ID:Gwze1TrCP

ブ ル ボ ン 王 朝 復 活

 

239:尻尾上がり名無し ID:YjFpso/sH

これは王政復古

 

240:尻尾上がり名無し ID:zkqil3Ybp

ニュース速報がうるさい

 

241:尻尾上がり名無し ID:rv7q4HKhR

レース見てるからわかるわ

 

242:尻尾上がり名無し ID:BN9O6C9Mi

最後まで逃げ切るとは

 

243:尻尾上がり名無し ID:H43bHUpeF

テロップ死ね

 

244:尻尾上がり名無し ID:IbSgiogo2

ブルボンよくやったわ

 

245:尻尾上がり名無し ID:/5qlrGl92

寒門の希望だろこれ

 

246:尻尾上がり名無し ID:P24IRK08i

テロップやかましい

 

247:尻尾上がり名無し ID:A9/axO6kw

いや、よく勝ったわ

 

248:尻尾上がり名無し ID:U3xXmJ6Th

全部死闘の末に勝ってるの主人公感ある

 

249:尻尾上がり名無し ID:obVnqvns7

映 画 化 決 定

 

250:尻尾上がり名無し ID:Qej6cDuWg

次走有馬かな

 

251:尻尾上がり名無し ID:R5Nec51y7

流石に休みだろ

 

252:◆道頓堀 ID:SoyENCWlz

じゃ……ダイブしますか……

  

253:尻尾上がり名無し ID:YgJV6prfv

次走有馬ほんとにやりそうで怖い

 

254:尻尾上がり名無し ID:NaO1ePXID

おつかれさん

   




48人の兄貴たち、感想ありがとナス!

anhel兄貴、アナスタシア@兄貴、以水 漏助兄貴、オルドーフ兄貴、麒麟草兄貴、きっかあ兄貴、みぞれ雪兄貴、錆缶鐙武兄貴、ルカーシェンカ兄貴、ですてに兄貴、6Pチーズ食べてる兄貴、評価ありがとナス!

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メモリー:3/10/4〜3/11/12

【悲報】ミホノブルボンさん、音沙汰なし

1:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:34:00 ID:1kAXGRU4V

今日も記者会見なしとのこと

 

2:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:34:06 ID:GYKn7JTRs

あの場で勝利インタビューやってたじゃん。結構遅れてたけど

 

3:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:34:11 ID:rz0ZeH8rw

あの遅れてる間何があったんだろ

 

4:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:34:16 ID:vtrOV890/

怪我とか?

 

5:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:34:23 ID:aI5Gmt4cy

ありそうで怖い

 

6:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:34:29 ID:V77NuZ5PK

次走発表もなしか

 

7:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:34:35 ID:gOAwpMkuO

解説員はレスポンス速いからこっちとしても見てて楽しいんだけど、そのぶん遅れると心配しちゃうな

 

8:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:34:41 ID:/WR/+Xmcs

宝塚後の沈黙期間も普通の陣営なら沈黙期間とすら言えない程度の長さだったもんな

 

9:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:34:47 ID:5CH7GGOGu

解説員はレース走った翌日に次走発表してくれるからな

 

10:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:34:54 ID:8IA9vw5VX

くれるというかくれたというか

 

11:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:34:59 ID:GQjde1tEd

記者会見なしとかじゃないの

 

12:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:35:04 ID:5s6JkBukm

日本の悲願達成したのにそんなことある?

 

13:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:35:11 ID:Hga7VY/lC

まあ記者会見して今更なに話すのって話だから別になくてもいいや

 

14:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:35:17 ID:OuK299jki

勝利インタビューで言うことは言ってたしな

 

15:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:35:24 ID:c+JdQOD+a

解説してくれたし別にもう記者会見はいいや

 

16:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:35:31 ID:32BejHgRg

まあ体裁として必要というのはある

 

17:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:35:36 ID:yYsLbtWwM

大レース制覇したあとは基本するもんな

 

18:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:35:42 ID:QiZYnSVAX

というか解説員は記者会見でやらかした前科があるからやらないんじゃないの

 

19:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:35:47 ID:6+t1kF0Xf

あー

 

20:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:35:53 ID:4SwmX4QCS

ありそう

 

21:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:35:58 ID:BExOzsdnX

ブルボンが怪我したってことよりはるかに信憑性あるな

 

22:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:36:03 ID:H6K/RxJZV

月刊ターフとかいううんこ

 

23:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:36:10 ID:yjQiT8+rp

やタ糞

 

24:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:36:16 ID:io//H3aDq

あの記者テレビ局から殺されるんじゃね

 

25:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:36:21 ID:8TjxziLJL

視聴率稼げたのに……

 

26:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:36:28 ID:xjg87V3H3

というか凱旋門賞の視聴率いくつ?

 

27:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:36:33 ID:NwZ07B/cl

92.6%

 

28:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:36:39 ID:X5OZTLypn

最高視聴率更新してて芝

 

29:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:36:45 ID:Bp2rDUrxt

最低でもこれの半分くらいは見てくれる記者会見が一人のやらかしでなくなったってマ?

 

30:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:36:51 ID:Wdjb58kD/

許されざるですよ

 

31:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:36:57 ID:5cBXHMrMT

怪我してるのかしてないのかだけでもいいから聞きたい

 

32:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:37:03 ID:MU+KqEX42

マジレスすると理化学検査とかそういうのは1日じゃ終わらないから無理

 

33:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:37:10 ID:uC72cOIC1

ならしゃーないな。待つか

 

34:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:37:15 ID:coA9D1xfr

URAくんは速く記者会見セッテイングしろ

参加記者はトゥインクルの変態乙名史だけで

 

35:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:37:21 ID:Zv+0An4Yx

URA「フランス主催のレースなので……」

 

36:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:37:27 ID:dQYc4c1HO

まあフランスの記者会見すら出てないのにURAくんが乗り込むわけにはいかんわな

 

37:尻尾上がり名無し ??/10/4 21:37:33 ID:edvMEDGvq

座して待つ

 

 

 

◆◆◆

 

 

【速報】ブルボン帰国【スズカも】

1:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:21:00 ID:HIHdeutVw

以下引用

トゥインクル・シリーズにおいて二人目の無敗の三冠に輝き、日本初の凱旋門賞ウマ娘に輝いたミホノブルボン選手が帰国していたことが10月12日、わかった。

ミホノブルボン選手は国外遠征で日本を留守にしていたサイレンススズカ選手と共に10月11日にはフランスを発ち、トレセン学園へ帰寮したとのこと。

大偉業を打ち立てながらあまりにも静かな帰国に、業界の注目が集まっている。

 

2:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:21:05 ID:f/8UI1y3W

帰国してたなら言ってよ!

 

3:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:21:11 ID:WPWfZQt+j

>>2

お前は誰だよ

 

4:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:21:17 ID:mgnmrUybx

おかボン

 

5:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:21:24 ID:k1IuXLhqn

おかえりー

 

6:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:21:30 ID:I7TlBQU+0

まあ疲れてるだろうし静かに帰ってくるのはわかる

 

7:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:21:36 ID:tn3QulJ41

次走は?

 

8:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:21:42 ID:nFzKRFk4N

記事の続き読め。まだ未定

 

9:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:21:47 ID:CyXWLCKBo

教えてあげるスレ民優しい

 

10:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:21:53 ID:BZcjzUhEn

というかここまで次走発表ないってことは秋天はないか

 

11:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:21:58 ID:kV+6kv3hp

解説員がトレーナーな時点で秋天出ることはないと思われる

 

12:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:22:05 ID:xnS4j5ksh

トラウマ持ちだもんげ

 

13:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:22:10 ID:kmcoP0wEj

というかスズカも?

 

14:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:22:16 ID:AGc8F3PFn

何故スズカ? もしかして日本で走ってくれたりする?

 

15:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:22:21 ID:rh3eEhkSG

URAファイナルズのアメリカ招待枠じゃね

 

16:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:22:28 ID:hey/SvxZ4

日米野球のアメリカ代表の中に日本人がいるみたいな違和感がある

 

17:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:22:35 ID:exYu8b90D

スズカってハーフだっけ。国籍は?

 

18:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:22:41 ID:a1LA8CdRn

日本

 

19:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:22:46 ID:U8neELNr2

というかスズカ母も今は日本人

 

20:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:22:53 ID:jBCr1YEST

アメリカ国籍捨てたのか

 

21:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:22:59 ID:N6GDx+Jps

もったいないな。アメリカ国籍とか世界中の結構な人が欲しがってるらしいのに

 

22:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:23:04 ID:U8neELNr2

嫌いだから捨てたらしい

 

23:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:23:10 ID:sp5kxtO9Y

ロックだなおい

 

24:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:23:16 ID:XXgHla0w7

というかURAファイナルズってなんだっけ

 

25:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:23:22 ID:0ogROU201

年末の新たな総決算。出走資格を有すウマ娘たちにどこを走らせたいか投票して、予選・準決勝・決勝をやる

 

26:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:23:27 ID:0p+0zMpmR

へー、スズカは中距離に出るのかな

 

27:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:23:32 ID:E9jwx2jUp

マイルだろ

 

28:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:23:37 ID:DXY0aPtKD

スズカはマイラーだろ

 

29:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:23:43 ID:J14vdVnNu

宝塚も勝ってるし凱旋門2着だし中距離だろ

 

30:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:23:49 ID:gYKTEniey

喧嘩はURAファイナルズ投票スレでやれ

 

31:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:23:56 ID:FDgqA9vb/

というか投票とか言ってたけどブルボンはどこ走るの?

 

32:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:24:02 ID:mVM6cNoZT

気軽に戦争を起こすな

 

33:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:24:09 ID:FDgqA9vb/

ごめん

 

34:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:24:14 ID:1nxt+TJRs

ブルボンをURAファイナルズでどこに走らせるかに関してはスレ内で三國志を引き起こして専スレに隔離されるくらいデリケートだから話題に出すのはやめようね

 

35:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:24:21 ID:d5lezAonk

専スレから専スレに隔離されるのか……

 

36:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:24:27 ID:dNbBB/CDA

核燃料処分場みたいな扱いで芝

 

37:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:24:33 ID:uRWpMPcKN

なんにせよスズカさんが日本で走るのをまた見られるとは

 

38:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:24:38 ID:0i80n5ER0

秋天はぶっちぎりで勝ったからな……

 

39:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:24:45 ID:4VvHIN+HK

脚折れてたけどな

 

40:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:24:50 ID:EtC6hZylJ

レコード出してたもんな

 

41:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:24:56 ID:4VvHIN+HK

脚折れてたけどな

 

42:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:25:02 ID:1HnaZJpjt

マジでサイレンススズカここにありってレースだったわ

 

43:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:25:08 ID:4VvHIN+HK

脚折れてたけどな

 

44:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:25:14 ID:jaQBbA1V7

ルドルフVSスズカVSブルボンVSライスが見られる……?

 

45:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:25:20 ID:2+vuFPoC8

このメンツ揃えるには中距離しかないな

 

46:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:25:26 ID:xgoQPpGeW

中距離はライスにとっては短すぎるしスズカさんにとっては長すぎるだろ

 

47:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:25:32 ID:1hhPfW1Pd

スズカさんは絶対能力が高いからなんとなく走れるだけで実際は2000メートルが限界

 

48:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:25:39 ID:IlSCgl49/

距離限界おじさんに死者蘇生打ったの誰?

責任持って処理しとけよ

 

49:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:25:45 ID:1hhPfW1Pd

お前らバカ共にはわからんかもしれないが、距離限界ってのあるんだよ。ブルボンも絶対能力の高さでなんとかしてただけ。

ライスシャワーは3000メートルからだね。GⅠレベルのメンツとやり合うには超長距離じゃないと勝てんわ

 

50:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:25:52 ID:NaOfGNnzI

素人をバカ呼ばわりするドブカスにはわからんかもしれへんけど、ライスちゃんはジャパンカップ勝つと思うで

 

51:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:25:58 ID:pB2BqrJar

ドブカスニキキター!

 

52:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:26:04 ID:Gena5cfG9

なんで勝てると思うの?

 

53:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:26:09 ID:NaOfGNnzI

ライバルが相手のホームで外国勢蹴散らしたのに、自分のホームで外国勢に負けるってダサすぎるやろ。そういう屈辱を甘受するほど甘くないわ、あの娘

 

54:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:26:16 ID:k8lMjx50c

ああ、そう言えばライスシャワーが日本総大将か………

 

55:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:26:22 ID:oHL7FdC3c

マックイーンがいるぞ

 

56:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:26:28 ID:ksORbLcpg

マックイーン秋天からジャパンカップいくの?

 

57:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:26:34 ID:/KCCEsh3V

沖野Tはそう言ってた

 

58:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:26:41 ID:Bw/aCMesX

はえー、頑張ってほしいわね。たしか京都大賞典でレコード勝ちしてたし、ここに来て全盛期迎えつつあるもんな

 

59:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:26:47 ID:ysj+ZXWFi

レコードと言えば今年樹立された凱旋門賞のキチレコは更新されることがあるんだろうか

 

60:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:26:53 ID:7tWsUPK8u

2:22:22だっけ

 

61:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:27:00 ID:GuoSFfpKA

実際あのタイムすごいの?

 

62:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:27:05 ID:pWYKXSMDK

去年のレースレコードが2:39.00

ちな一昨年は2:31.40

 

63:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:27:10 ID:CuG9xeEAn

おっそ

 

64:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:27:16 ID:0QOIlpeop

今年が異常定期

 

65:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:27:22 ID:XsbgJeUwm

スズカさんがまだ日本にいた頃にパンなんたらさんが2:24.60出してレコードになったけど、そこから数年で2秒更新はヤバいわな

 

66:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:27:28 ID:KJjBTMJgt

というか去年から15秒違うって何があったし

 

67:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:27:34 ID:NaOfGNnzI

凱旋門賞はバ場の重さでまったく違うレースになるんやで。エルちゃんのときはクソ重バ場やったから今年のより17秒近く差があるんや

 

68:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:27:41 ID:7UJGMIltA

じゃあ今年のバ場って軽かったんだ

 

69:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:27:46 ID:NaOfGNnzI

いや、重かったで。クソ重バ場やないけど、かなり重かった

 

70:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:27:52 ID:6Y9ye1u/i

そんな中でレコード出すってすごいな

 

71:尻尾上がり名無し ??/10/12 12:27:58 ID:fHJI2uY5/

俺未来人だけど今年のレコードは少なくとも向こう20年は更新されないよ

 

 

 

◆◆◆

 

 

【悲報】マックイーン怪我

1:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:29:11 ID:rU50vNqPl

秋天回避とのこと

 

2:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:29:19 ID:FBHTjhCgF

まーた秋天がやらかしたのか

 

3:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:29:25 ID:jd8quU8yv

なんなんすかこれ

 

4:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:29:33 ID:cGp/9iwQ1

なんの怪我?

 

5:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:29:39 ID:Ymo0Hde8N

繋靭帯炎とのこと

 

6:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:29:44 ID:4yOWcOqNG

繋靭帯炎って治るの?

 

7:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:29:51 ID:55b+VbjzG

テイオー民召喚するか……

 

8:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:29:58 ID:HAfFynReQ

5ch三大博識民(怪我限定)

・ちなヤク

・スピカ専

・テイオー民

 

9:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:30:05 ID:c7tEtYRmw

テイオー民はテイオーがどんな怪我したってガセ流されても「でも〇〇ってウマ娘はこの怪我から復活した」って言ってくるから怖い

 

10:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:30:10 ID:lK89Fpdx0

テイオー民の巣窟で聞いてきた

 

11:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:30:19 ID:S2MSRym5m

勇者かな

 

12:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:30:27 ID:jLdwgdZYD

オーケー、>>10。最強のウマ娘は?

 

13:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:30:33 ID:lK89Fpdx0

>>12

? トウカイテイオーだろ?

 

14:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:30:42 ID:rAZaaELlv

あっ(察し)

 

15:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:30:50 ID:wc7DoyVtE

ダメみたいですね(冷静)

 

16:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:30:56 ID:e0NPZ0Umv

洗脳ちからが高すぎる

 

17:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:31:02 ID:lK89Fpdx0

繋靭帯炎は不治の病と言われているがオグリキャップはちゃんと復活して今も元気に走ってるからセーフとのこと

 

18:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:31:10 ID:aYKVn4WFy

なんだ、じゃあマックイーンも大丈夫だな!

 

19:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:31:16 ID:aX5V4eQRv

前例オグリキャップとかいう世界一当てにならない存在

 

20:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:31:23 ID:D4AbVyg5K

オグリキャップという前例にするには不適当なウマ娘

 

21:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:31:31 ID:ot1AKEejX

あいつはなんか特別な所あるし……

 

22:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:31:38 ID:I3dK21NAJ

まあ秋天は無理か

 

23:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:31:45 ID:kxKic5+Hy

全治最低でも一年くらいか

 

24:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:31:54 ID:vWlz6A2gr

◆◆◆「あれは繋靭帯炎といって、発症から3ヶ月でトレーニングに戻れて5ヶ月でレースに出れるものなんだ」

 

25:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:31:59 ID:ZRSRzDTxd

全治一年が半年? 明らかに異常じゃねーか

 

26:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:32:07 ID:wsGTziWo4

オグリンはなんかおかしい

 

27:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:32:16 ID:Rk1uzPnCt

まあ少なくとも復帰は来年の春か

 

28:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:32:21 ID:qqEyInnkH

JC無理そうかな

 

29:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:32:26 ID:wSnU97syK

まあ確実に無理

 

30:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:32:34 ID:g79jYatbY

日本総大将ライスシャワーかぁ

 

31:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:32:42 ID:5vMzWUp0A

重賞1勝が日本総大将かよ

 

32:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:32:48 ID:GrqP7TFBG

言うてミホノブルボンが悪いし

 

33:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:32:55 ID:QLGQSpueO

2着何回?

 

34:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:33:03 ID:jwJVu30Wc

6

 

35:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:33:10 ID:exCyuX/+1

全ブルボンか

 

36:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:33:17 ID:RbHZU+d6a

全ブルボンじゃないな。マチタンが一回

 

37:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:33:23 ID:IKfUhDtV9

ひょっとしてマチカネタンホイザってすごいのでは……

 

38:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:33:30 ID:sthMVWuj/

三強だからな

 

39:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:33:38 ID:ba+9GS+0q

ここちょっと消えてますね

ナリタタイセイって娘がいたはずなんですけど

 

40:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:33:46 ID:JJC/uP1I4

タイセイさん今何しとん

 

41:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:33:52 ID:5uTMvut/b

リハビリ終えて復帰戦に向けてのトレーニング中

 

42:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:34:00 ID:v+t6Ks7sn

あー、京都新聞杯からレース出てないもんな

 

43:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:34:07 ID:oiDQKZmcT

復帰戦いつ? 見に行くわ

 

44:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:34:13 ID:uN1drzFHR

JCと同日のシリウスS

 

45:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:34:21 ID:oiDQKZmcT

中京は無理だからやっぱJC見に行くわ

 

46:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:34:26 ID:bLmx55e5w

おい

 

47:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:34:34 ID:wByMOME8K

これは畜生

 

48:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:34:41 ID:n4D5UG8Bz

まあしゃーない

 

49:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:34:50 ID:oiDQKZmcT

けどタイセイさんは1番期待してたから復活嬉しいのはホントよ

マックイーンもこんな感じに復活してほしいね

 

50:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:34:55 ID:UwnatWJ/o

節穴やんけ

 

51:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:35:02 ID:LHOT+q+mV

でも実際ライスも無名だったしブルボンは身の程知らず扱いされてたし、混戦だったな

 

52:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:35:10 ID:Ow7DwAHEs

あそこでブルボンを推してたやつはよっぽどな慧眼かロマンチストかバカか

 

53:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:35:18 ID:oiDQKZmcT

まあJCと同日開催だから観戦にはいけないけど、タイセイさんの次戦は見に行くよ

 

54:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:35:24 ID:HXOA5uIY6

みんなあんまりマックイーンの心配してないの芝ですよ

 

55:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:35:32 ID:OQ078jUx2

なんかなんだかんだでなんとかなるだろ

 

56:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:35:41 ID:/aTN8UohY

テイオーは三回も骨が折れたのよ! 繋靭帯炎くらいなによ!

 

57:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:35:50 ID:A6u2JGh0h

>>54

不治の病を治して今も呑気してるオグリが悪いみたいなとこある

 

58:尻尾上がり名無し ??/10/27 18:35:55 ID:SXYtnvPX7

それはそう

 

 

 

◆◆◆

 

 

【朗報】記者会見、組まれる

1:尻尾上がり名無し ??/11/12 11:17:00 ID:5Wa9Jhs4b

皆さんは月刊ターフがどうこう言ってましたが、事実無根でした。みんなで月刊ターフに謝りましょう。私は別に謝りません

 

2:尻尾上がり名無し ??/11/12 11:17:05 ID:dZbzsPuca

ターフの手先かと思ったら別にそんなことなくて芝

ちな謝らない

 

3:尻尾上がり名無し ??/11/12 11:17:11 ID:/atT1gjVl

騒いだことは悪いと思うけどターフのせいにしたのは謝らない

 

4:尻尾上がり名無し ??/11/12 11:17:17 ID:dda7a4QFA

何も無条件で疑いの目を向けているわけではない

我々も「これは誰のせいだろうか」と事前に思案を巡らせている

どういった疑いをかけられるかというのはメディアさん方の過去の実績にある

その上でご自分の意志で火に突っ込むようなことをしていらっしゃるのだからすなわち責任は月刊ターフさんサイドにある

 

なぜ我々が責められなければならないのか

 

なぜ我々が月刊ターフさんに謝罪せねばならないのか

 

むしろ月刊ターフさんこそが我々に謝罪すべきではないだろうか

 

5:尻尾上がり名無し ??/11/12 11:17:24 ID:fWdzu73Nj

そのとおり

 

6:尻尾上がり名無し ??/11/12 11:17:30 ID:UuCXSfY81

ターフが悪い。てことで不買運動はまだ続けます

 

7:尻尾上がり名無し ??/11/12 11:17:37 ID:qZARKicJt

ネットリンチですねこれは

 

8:尻尾上がり名無し ??/11/12 11:17:43 ID:DGsBKQ28w

記者会見楽しみだわ

 

9:尻尾上がり名無し ??/11/12 11:17:49 ID:g0zraAspF

ブルボンの顔久々に見れるな

 

10:尻尾上がり名無し ??/11/12 11:17:55 ID:w5Sw2/IZj

あなた……恋してるわね?

 

11:尻尾上がり名無し ??/11/12 11:18:00 ID:xE3l7+1Ys

当たり前だよなぁ!?

 

12:尻尾上がり名無し ??/11/12 11:18:05 ID:pg96dpoVp

ブルかわ

 

13:尻尾上がり名無し ??/11/12 11:18:12 ID:Da7/lSOiO

犬みたいでかわいい

 

14:尻尾上がり名無し ??/11/12 11:18:17 ID:NqMYHoeaw

あのミホーっとしたアホヅラまた見たい

 

15:尻尾上がり名無し ??/11/12 11:18:23 ID:h7ZSrfjq1

記者会見いつ?

 

16:尻尾上がり名無し ??/11/12 11:18:29 ID:Pu/Z9Bf7x

今日の12時

 

17:尻尾上がり名無し ??/11/12 11:18:36 ID:0VMD6yf4g

41分24秒後やんけ!

 

18:尻尾上がり名無し ??/11/12 11:18:41 ID:8NIlU902z

秒数が正確過ぎる

 

19:尻尾上がり名無し ??/11/12 11:18:48 ID:fMJ7zwRui

実況スレ一応立てたから実況するならここ→

 

20:尻尾上がり名無し ??/11/12 11:18:54 ID:d4oPba6Ia

あいー

 

21:尻尾上がり名無し ??/11/12 11:18:59 ID:MByAlakvB

いくかぁ

 

22:尻尾上がり名無し ??/11/12 11:19:05 ID:r5tJ8FDtE

結局最後まで謝られない月刊ターフさんカワイソス

 

23:尻尾上がり名無し ??/11/12 11:19:11 ID:l/Bl9mYWT

月刊ターフさんって何がそんなにだめなの?

 

24:尻尾上がり名無し ??/11/12 11:19:17 ID:tiZDsHQH7

一言でいうとブルボンのハードトレーニングのバッシングを主導して未来の凱旋門賞ウマ娘の誕生を潰しかけた

 

25:尻尾上がり名無し ??/11/12 11:19:22 ID:l/Bl9mYWT

○ね

 

26:尻尾上がり名無し ??/11/12 11:19:27 ID:7xAnqDhmI

豹変してて芝

 

27:尻尾上がり名無し ??/11/12 11:19:34 ID:fzwDoSKO6

まあ歴史が変わるどころじゃないからしゃーない

 




61人の兄貴たち、感想ありがとナス!

Karinyue兄貴、ここここ⌒兄貴、どら猫8492兄貴、ryo505兄貴、えちて兄貴、ないんて兄貴、評価ありがとナス!

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メモリー:3/11/29~3/11/30

勝つ者がいれば、負ける者もいる。


ライスシャワーとかいう日本総大将wwww

1:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:32:21 ID:jm4pq+Ite

つよい

 

2:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:32:29 ID:wyBzF664M

ブルボン以外には負けないという強い意志を感じる

 

3:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:32:37 ID:QGSBr5WEE

ブルボンにも勝ってどうぞ

 

4:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:32:42 ID:WcZtEe+FC

勝とうと思って勝てるような相手なら凱旋門賞勝ててない

 

5:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:32:49 ID:8niFZrxdI

ライスやっと初GI制覇か

 

6:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:32:56 ID:yVglPZKx/

ほんと遅かったな

 

7:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:33:01 ID:MM/DdaXt1

やっぱりブルボンがいないと勝てるね

 

8:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:33:07 ID:OjTStN2Dk

やブ強

 

9:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:33:13 ID:sx7plFWDC

ライスシャワー今年に入って重賞2勝か。すごいじゃん

 

10:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:33:18 ID:2uT5jHPgI

ミではじまってンで終わるロボ「私は前半戦だけで3勝しました」

 

11:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:33:25 ID:yyRVn+7aU

しかも全部GI

 

12:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:33:31 ID:u7Ixo2c+s

すげぇよロボは……

 

13:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:33:40 ID:IZ4A7nUIp

ロボはメイクデビュー以外重賞にしかでてないよね

 

14:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:33:49 ID:rRrMGIavX

みんな感覚麻痺してるけど重賞勝ちってすごいことだよ

 

15:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:33:57 ID:NrD+BgxCk

生まれたウマ娘の中から選りすぐられた2000人がトレセン学園に入って、138個の重賞を取り合うわけだからな

 

16:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:34:02 ID:ox6Jsyg7m

確率ひっく

 

17:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:34:10 ID:+JP6Nnya4

でも結構実力が物を言うから単純な確率だけではない

 

18:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:34:15 ID:Z4bsBh1w/

最近勝者総取り傾向が強いもんな

 

19:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:34:23 ID:lg+DYVdKc

というかライスシャワーってやっぱり強かったんだね

詰めが甘いイメージあったわ

 

20:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:34:32 ID:SwsgUiCOG

詰めが甘いイメージはひどすぎる

 

21:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:34:39 ID:/oYWiYMVU

詰めが甘いって言われるまでブルボンを毎回のように追い詰めてるのすごすぎる

 

22:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:34:48 ID:dPSnMd65m

なんだかんだ勝つブルボンもすごい

 

23:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:34:55 ID:Z5J61Uq5M

ライスシャワーは悲壮感ある追い込みで突っ込んでくるから心配になる

 

24:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:35:03 ID:z4I3/ptoH

いつか壊れそうよな

 

25:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:35:11 ID:lU4AR4tq+

いつか壊れるって連呼され続けて結局壊れてないミホノブルボンってのがいまして

 

26:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:35:19 ID:bs4yS13YE

でもあいつロボじゃん

 

27:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:35:24 ID:QfCLDHrB8

ロボにしては可愛すぎる

 

28:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:35:30 ID:hj6OWWNrB

親しみやすいロボを目指してんだろ

 

29:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:35:36 ID:/bnpE3x0o

ロボ次走発表されたな

 

30:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:35:44 ID:MnJybzqXY

URAファイナルズだろ?

 

31:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:35:50 ID:mitLCvnB+

URAくんとしては主要行事にきっちり参加してくれるミホノブルボンはホントありがたいだろうな

 

32:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:35:57 ID:kHuImb9hC

ミホノブルボンが出るってだけで見る層もいるしな

 

33:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:36:05 ID:FFnbPG8G6

というか来年どうするんだろ

 

34:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:36:13 ID:CObUL8Y9V

流石にお休みとると思いたい

 

35:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:36:18 ID:PGac2bPqc

でも普通に春シニア三冠に突撃しても別に驚かない

 

36:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:36:25 ID:rDvnvOlWf

そしてライスシャワーと春天で覇を競うのか

 

37:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:36:31 ID:mRspwhk1C

マックイーンいないし普通に負けそう

 

38:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:36:38 ID:rSTw5SBte

なんで? 勝てそうじゃない?

 

39:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:36:47 ID:ne4CsTmud

ライスのトレーナーが言ってたけど、強い逃げを相手にするには息をつかせないように強力なウマ娘が仕掛け続けるしかないらしい

つまり仕掛けてくれるはずだったマックイーンがいないぶん今年より不利になる

 

40:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:36:53 ID:pG0DABbFl

はー

 

41:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:37:00 ID:We2wfw1ht

そんなこと考えてるんだな

 

42:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:37:05 ID:NgcZSkU8Y

うちの親戚の地方トレはあんなんにあったら台風にあったと思って諦めるって言ってたわ

 

43:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:37:13 ID:NaOHxVypy

勝手に一人で諦めんなやドブカスが

諦めるんだったら死ね 死んでから諦めろや

 

44:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:37:22 ID:xMUtT6c75

唐突に強襲してくるのやめろ

 

45:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:37:28 ID:MG+DVFmM3

久々にブチ切れてて芝

 

46:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:37:36 ID:JSLr0OZGI

なにがあったん

 

47:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:37:44 ID:NaOHxVypy

諦めたらそいつが担当してるウマ娘はどうすんねん

トレーナーってのはウマ娘本人が諦めても往生際悪く足掻いて足掻いて勝機を探すのが役目やねんで それができんアホは死んだらええ

 

48:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:37:52 ID:mR7uamQAL

一理ある

 

49:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:38:01 ID:oP1dJAfiv

まあ個人競技でやる当人が諦めるのはいいけど、指導者が諦めちゃいかんわな

 

50:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:38:07 ID:gr8a1SeGh

ドブカスニキ中央所属っぽいし、やっぱ中央の方が優秀なんだね

 

51:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:38:13 ID:NaOHxVypy

地方でもええひとはおるで

ウマ娘を金のために使うダメトレの比率が高いだけや

 

52:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:38:20 ID:ViKXKi34P

たとえば?

 

53:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:38:27 ID:NaOHxVypy

迷惑かけるとあれやから実名は伏せるけど、こっちがまんまと連敗させたったのに負けたウマ娘をひたすらに信じて、鼓舞して、心に火を灯して突っ込んできた人がおったで

 

54:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:38:34 ID:YTuTFoJib

それは有能

 

55:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:38:43 ID:oTcrtk2oS

ドブカスニキ割とそういうとこあるよな

 

56:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:38:49 ID:mX/zRHjGM

割と負かした相手には素直というかね

 

57:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:38:57 ID:jtCaA5S8T

というかドブカスニキはライスのJCどう思ったん

 

58:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:39:03 ID:NaOHxVypy

勝つとは思っとったけど予想よりちょこっとだけ強かったわ

 

59:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:39:11 ID:2Gyjb8i65

ライスって東京得意だと思う?

 

60:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:39:20 ID:NaOHxVypy

ライスちゃんがどうこうというより、後方脚質の娘は基本東京得意やと思うけど、高速展開になると不安やな

 

61:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:39:27 ID:Z+rk+7AoE

でも割と結果出してない?

 

62:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:39:33 ID:QGzPEQu+L

対ブルボンは基本全部ハイペースだもんな

 

63:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:39:40 ID:NaOHxVypy

いや、脚がキツいやろなーって。あの娘最大速度が低いからロングスパートに頼らざるを得ないやろ

 

64:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:39:46 ID:ahrbbxU0t

やっぱりライスって最高速度はそんなに速くないのか

 

65:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:39:52 ID:JyIVz5sU8

俺はクソ速いと思ったけどな

 

66:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:39:58 ID:NaOHxVypy

ライスちゃんは自分の弱点をよく知っとるから地形活かして誤魔化してんねん

 

67:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:40:04 ID:MonUguqQT

あー、だから直滑降するのか

 

68:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:40:12 ID:ehD1iYG48

普通にブルボンに追いつくためだと思ってた

 

69:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:40:18 ID:NaOHxVypy

それも間違いないと思うけど、やっぱりブルボンちゃんは速いやろ。追いつくためには外付けエンジンが必要やねんな

 

70:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:40:26 ID:3Vt5qzaCi

そうだな

 

71:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:40:34 ID:UvdgxmyK0

今回もロングスパートかけてたもんな

 

72:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:40:42 ID:8wwG8WDd9

ライスシャワーって末脚勝負のウマ娘かと思ってたけど別にそうじゃないのね

 

73:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:40:50 ID:NaOHxVypy

どちらかと言えば前方脚質よりやね

 

74:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:40:58 ID:1yQ4i4Hmf

逃げライスある?

 

75:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:41:06 ID:NaOHxVypy

日本ではないやろうけど、バ場重かったらあるんちゃう?

 

76:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:41:15 ID:BU8qTrI6+

ブルボンとの逃げ対決見てみたいわ

 

77:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:41:21 ID:NaOHxVypy

ふつーに負けるからやらんやろ

 

78:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:41:29 ID:EHmeHI/yf

シビアッ

 

79:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:41:35 ID:L9GfJof/P

まあそうわね

 

80:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:41:43 ID:X4E8XVj1D

ドブカスニキの解説わかりやすいから解説者してほしい

 

81:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:41:49 ID:9sdqX9tre

解説員とセットで聴きたい

 

82:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:41:55 ID:NaOHxVypy

隣に並ぶとかおこがましいわ

 

83:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:42:01 ID:eRKJHKeVJ

実際ドブカスニキはどれくらい勝ってるんだろ

 

84:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:42:07 ID:AlzajCePI

重賞2桁くらい勝ってるといいな

 

85:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:42:15 ID:T5whBwW/c

言うことに説得力あるし3桁は勝ってるんじゃない?

 

86:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:42:22 ID:iiVJ3meD0

重賞を?

 

87:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:42:29 ID:VsIRx6jz6

いや、関係なく通算で

 

88:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:42:34 ID:/zS/VCuJ7

まーそれくらいならあるかもな

 

89:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:42:39 ID:zxM5szB2w

100勝とかはチーム運営してないと無理そう

 

90:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:42:48 ID:tcornbr/Y

ドブカスニキ運営してるの?

 

91:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:42:57 ID:s+JGCwqC7

流石に話さないだろ

 

92:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:43:03 ID:tcornbr/Y

まーそうか

 

93:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:43:11 ID:37Mmdn/JI

一応名前伏せてたもんな

 

94:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:43:17 ID:pgAwVkfHJ

それにしてもライスのロングスパートって諸刃の剣なのね

 

95:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:43:25 ID:7gytHRHH/

全力で長く走るなど身体に良かろうはずもない

 

96:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:43:32 ID:14KN3oWgP

逃げウマ娘って一体…

 

97:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:43:39 ID:qS5GDbgal

まあ負担が大きいから邪道って言われたわけで

 

98:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:43:46 ID:IXIK49CaZ

先行策って見てるぶんには没個性的だけど勝つのは楽だもんな

 

99:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:43:54 ID:x7ac4R8mp

ルドルフ見てりゃわかるわ

 

100:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:44:01 ID:szzFFBTM1

前方を見つついい感じのタイミングで抜け出すには最適だもんな

 

101:尻尾上がり名無し ??/11/28 20:44:10 ID:IGLIFMmZk

それにしてもいいレースだった

 

 

 

◆◆◆

 

 

ナリタタイセイ引退

1:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:27:11 ID:7GfYGZ8i3

ブルボン世代のクラシック三強

 

2:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:27:19 ID:bxbE3Fxqj

まだ早くね

 

3:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:27:36 ID:Pf+dBQbMv

いたなぁ

 

4:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:27:49 ID:WHfiUJ+Os

前走なんだったっけ

 

5:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:27:58 ID:rqwB1gp65

菊花賞じゃなかった?

 

6:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:28:14 ID:DNYgx3Ur8

京都新聞杯だったはず

 

7:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:28:29 ID:upfL94Tl5

あー、そうかも

 

8:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:28:42 ID:OAVttObJF

ブルボン世代のクラシック三強って誰だっけ

 

9:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:28:55 ID:D7JKNeYgf

ノーザンコンダクト、マチカネタンホイザ、ナリタタイセイ

 

10:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:29:03 ID:bf7f4npwn

全員名門だな

 

11:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:29:13 ID:wqpIVwvKs

ノーザンマチカネナリタか

 

12:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:29:30 ID:m/YJ1hOii

ミホノブルボンライスシャワーマチカネタンホイザかと思ってた

 

13:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:29:39 ID:B7+5d0Uqn

ダービー以降はそう

 

14:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:29:55 ID:nxzkhxFBx

ライスも評価低かったんだ

 

15:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:30:05 ID:dN2YZuPJL

骨折してたからよくわからんかった

 

16:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:30:19 ID:FUF5eC1yM

へー、ライス骨折してたんだ

 

17:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:30:34 ID:s57miKSwC

まあ報道されるほどの存在でもなかったんだな

 

18:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:30:49 ID:Zycqm6cPP

なる

 

19:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:31:04 ID:Tdi4JJxyB

これ見ると事前評判というものは当てにならないというのがわかるな

 

20:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:31:13 ID:mcskAlmtB

ドラフトの論評に近い物を感じる

 

21:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:31:27 ID:XNPxFixKT

コンダクトちゃんは今何やってるの?

 

22:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:31:37 ID:OULnJ2t20

ホープフル、スプリングSとブルボンに連敗して休養、今年の春に復帰して9着惨敗で引退した

 

23:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:31:54 ID:5ZuQtZ43a

ロボの被害者か

 

24:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:32:07 ID:BcRXxRK2s

コンダクトさんはトレーナーがすげぇコロコロ変わっててうまくいってなさそう感あった

 

25:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:32:17 ID:ImnKTnlTz

結局スプリングS負けた後の長期休養はなんだったのか

 

26:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:32:27 ID:T3GsLxSqN

普通に怪我じゃね

 

27:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:32:42 ID:JiKDOBneC

というかトレーナーって結構変わること珍しくないしな

 

28:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:32:57 ID:l914UjD0x

まあ成功するやつはほぼ変わらないけどな

 

29:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:33:06 ID:9nyBnG/Jq

まあうまくいってたら変える理由もないわけで

 

30:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:33:22 ID:pI7JOWP2O

ビワハヤヒデのTは皐月前にクビにされかけたあと、改めて皐月2着ダービー2着でクビにされかけたけどな

 

31:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:33:30 ID:sKkbRBLFS

ビワTって新人でしょ? 新人で皐月2着ダービー2着ってすごいけど後任誰にするつもりだったん

 

32:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:33:38 ID:LRz+Y8mr4

解説員

 

33:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:33:48 ID:sKkbRBLFS

相手が悪すぎる

 

34:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:34:04 ID:bJBy30ZgE

まあそれで勝ち切れなかった感じのビワハヤヒデが菊花勝ったんだからカンフル剤としては良かったのかもな

 

35:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:34:13 ID:j0ucrdpRb

解説員断ったの?

 

36:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:34:26 ID:44icRxdxa

凱旋門挑戦でオファー出すの辞めた

 

37:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:34:41 ID:wmutf3fLb

それはしゃーない

まあクラシック三冠とりたいなら解説員が一番ってのはそうだしな

 

38:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:34:56 ID:FI+lNRCkb

というか誰も触れてなかったけどタイセイさんの前走はシリウスSな JCと同日の

 

39:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:35:13 ID:a1DUAWb+B

ブルボンが凱旋門賞勝って、ライスがJC勝ったその裏で復帰戦頑張ってたわけか

 

40:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:35:26 ID:lS2Wz7zj1

勝負の世界だなぁ

 

41:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:35:40 ID:OuliIC5mU

で、復帰戦の着順は?

 

42:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:35:57 ID:FI+lNRCkb

14着

 

43:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:36:12 ID:/q1VfH4Yh

まあ……復帰戦ならそこまで悪くもないだろ

 

44:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:36:27 ID:FI+lNRCkb

JCブッチして見に行ってたけどなんか出し切った感あったからもしやと思ってた

 

45:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:36:36 ID:u8XReeTV3

どっかのスレで復帰戦見に行こうと思ってたけどJCと同日ならJCに行くって言ってたやついたけどお前はそうしなかったんか

 

46:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:36:52 ID:49yBLveSi

ファンの鑑

 

47:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:37:07 ID:FI+lNRCkb

それ俺。JCは何回も見れるけど推しの復帰戦はもう見れないからな

 

48:尻尾上がり名無し ??/11/30 12:37:16 ID:xpq0GVLXk

ファンの鑑じゃん

 




ビワハヤヒデの実家主導のトレーナー変更イベント(未遂)は原作再現です。結末は違いましたが。

45人の兄貴たち、感想ありがとナス!

ぶくま兄貴、凍匠兄貴、far777兄貴、燐々兄貴、Karinyue兄貴、ここここ⌒兄貴、どら猫8492兄貴、ryo505兄貴、えちて兄貴、ないんて兄貴、評価ありがとナス!

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メモリー:3/12/29〜4/1/30

4年目突入
あといつもTwitterでやってたアンケートをやってみました。締切は23時くらいです(そこを越えると毎日投稿が無理そうなので)。


年度代表ウマ娘はミホノブルボンに決定だろ

1:尻尾上がり名無し ??/12/29 12:20:00 ID:EbLaCLasK

凱旋門賞勝ったし

 

2:尻尾上がり名無し ??/12/29 12:20:05 ID:TkkCV8/Bw

残当

 

3:尻尾上がり名無し ??/12/29 12:20:12 ID:GLgNTF1Sp

他にいる?

 

4:尻尾上がり名無し ??/12/29 12:20:19 ID:5bIYVWPon

>>3はテイオー民召喚の儀式をやめろ

 

5:尻尾上がり名無し ??/12/29 12:20:27 ID:eoiJsyABO

テイオー民は復活のテイオーに焼き殺されて死んだからもういない

 

6:尻尾上がり名無し ??/12/29 12:20:34 ID:8V5yunIiG

有馬記念は壮絶でしたね……

 

7:尻尾上がり名無し ??/12/29 12:20:39 ID:Gpvx0Hw+k

昨日立てられた歴代最強スレとかいう高等儀式術使っても湧いてこないあたりガチだな

 

8:尻尾上がり名無し ??/12/29 12:20:45 ID:ozLFCNCD7

クラシック全連対のビワハヤヒデも悪くないけどね

 

9:尻尾上がり名無し ??/12/29 12:20:51 ID:NaOiEsnFX

まあ春シニア三冠しとるしそうやろな

ライスちゃんが秋シニア三冠したらわからへんかったけど

 

10:尻尾上がり名無し ??/12/29 12:20:58 ID:acYA0YO0W

それより凱旋門賞だろ

 

11:尻尾上がり名無し ??/12/29 12:21:04 ID:NaOiEsnFX

日本の年度代表ウマ娘は日本でのレース結果で決めるもんや

 

12:尻尾上がり名無し ??/12/29 12:21:11 ID:50Am1SIhI

確か前にも解説員がそんなこと言ってたな

 

13:尻尾上がり名無し ??/12/29 12:21:18 ID:pJzisREr0

あー、確かにエルコンの年度代表ウマ娘に文句つけてたな

 

14:尻尾上がり名無し ??/12/29 12:21:23 ID:SRy74yLGq

スペちゃん推してたもんな

 

15:尻尾上がり名無し ??/12/29 12:21:31 ID:7wi6Ytgq9

正論スレは伸びない

 

 

 

◆◆◆

 

 

【悲報】ミホノブルボンのトレーナー東条隼瀬さんと三冠ウマ娘ミホノブルボン、東条隼瀬トレーナーの特別賞受賞報道とミホノブルボンの年度代表ウマ娘選出報道に苦言

1:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:20:00 ID:lO7o/BUDd

凱旋門賞が受賞理由だということにご立腹

 

2:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:20:06 ID:vwgyFrhQ3

まーた解説員がやらかしたのか

 

3:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:20:14 ID:SpLyaaAAt

何が不満なの

 

4:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:20:22 ID:6DJdR7SI2

日本の年度代表ウマ娘は日本でのレース結果で決めろとのこと

 

5:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:20:30 ID:D1O7JwaOy

実際凱旋門賞勝ったらそれで年度代表みたいなところあるだろ

 

6:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:20:37 ID:e5H8+F57H

もらえるもんは大人しくもらっておけばいいのに

 

7:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:20:45 ID:sDy6/hG0J

解説員は原理主義的なところあるから言いかねないと思ってた

 

8:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:20:52 ID:PZY1x/Nqh

理屈は正しいけど世相を無視してる男

 

9:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:21:00 ID:y5yKaomMC

これ理由付けが気に食わないだけで春シニア三冠が理由だったら普通に受け取ってただろ

 

10:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:21:07 ID:CMp50bwTN

まあ凱旋門賞単体だけで春シニア三冠の価値を超えるかどうかと言われれば微妙

 

11:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:21:16 ID:vHz+qpVCK

まあそれはそう

 

12:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:21:24 ID:BrY2x3zqD

しかもこれURAが自分の国のレースより他国の方が上って認めたことになるからな

 

13:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:21:31 ID:kKnXNSRJZ

上を上と認めることはいいことじゃないの?

 

14:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:21:38 ID:j2h2emx4a

いや、主催者としては参加者を貶めるようなことをすべきじゃないだろ

 

15:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:21:47 ID:Ls7OA4kbF

大阪杯はともかくライスマックとの春天+ルドルフとの宝塚が凱旋門賞より下って言われるのはやだわ

 

16:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:21:53 ID:tcfadALXX

気持ちはすごくわかる

 

17:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:22:00 ID:E75WYIEnw

あー、そういう見方か

 

18:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:22:07 ID:ociD/nK4Z

ルド信だもんな

 

19:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:22:13 ID:7RvPoTSrF

ルド信以前に前提唱した理屈に則ってるだけとも言える

 

20:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:22:22 ID:08V3nr11/

最強世代年度代表騒動の時のか

 

21:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:22:31 ID:VxL2ZcFqJ

ブレないなこいつ

 

22:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:22:39 ID:M3jrtxlOJ

でも日本の悲願だしURAが正しい気もする

 

23:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:22:46 ID:KG4PCKe5E

そうなんだよな

 

24:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:22:55 ID:1LlfG1iLy

これまでの積み重ねがあるからね……

 

25:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:23:01 ID:sKIC1hG/9

2大巨頭のメジロとシンボリが初めた夢(というか呪い)を叶えた功績はデカいわな

 

26:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:23:08 ID:pj8hCBena

春三冠もすごいことだけどね。2000→3200→2200は頭おかしい

 

27:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:23:14 ID:HJxkW/4vM

2000→2200→3200ならまだあるかもしれないけど真ん中が春天なのがね

 

28:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:23:21 ID:UGXgYxzf2

マックとライスは世界レベルのステイヤーだし、解説員の言うことに賛成だわ

皇帝は世界レベルが当たり前なところあるから何も言わん

 

29:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:23:27 ID:sKoZUqnVJ

俺は理由:凱旋門賞でいいと思うわ

もう勝てない可能性すらあるし

 

30:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:23:34 ID:vqgovV6rP

まあ満票だろうなとは思ってたけどこういう意味で話題になるとは思わなんだ

 

31:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:23:41 ID:r9jHpKXJq

大阪杯にせよ春天にせよ宝塚にせよ、そのレースを勝つウマ娘は毎年国内から出てくるわけだし、凱旋門賞勝ったら年度代表ウマ娘でいいと思う

 

32:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:23:48 ID:8Nhjci3Yo

でも三冠はそうはいないぞ

 

33:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:23:55 ID:XTKhtwD4H

というか春シニア三冠は初じゃないのか。前任者誰?

 

34:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:24:02 ID:FpxA29yC3

ルド山

 

35:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:24:08 ID:vnkL2OGp0

どのみち解説員じゃねーか

 

36:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:24:17 ID:FJV4oT9fC

まあ0を1にした功績はデカイわな

 

37:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:24:23 ID:8WtXkeOAs

まあ解説員は解説員の意見を言ってるだけだし良いも悪いもないんじゃないの

 

38:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:24:32 ID:sSyYagKDO

最近海外遠征にも成功してるし、いつまでも旧世代の価値観でいるなって意味にも見える

 

39:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:24:41 ID:6DFGDkoPd

ブルボンだけじゃん

 

40:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:24:48 ID:RKzVontoG

スズカルドルフタイキ

 

41:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:24:56 ID:6DFGDkoPd

リギルだけじゃん

 

42:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:25:04 ID:51EZPPQSM

パールさんとクリーク

 

43:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:25:10 ID:CJEPZxL0s

これは論破ですわ

 

44:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:25:18 ID:R6RLIrtfc

でも実際一部のウマ娘が強いだけな気がする

 

45:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:25:24 ID:dEXouLy43

海外の強い一部のウマ娘を相手にしてボコったんだから同条件なんじゃないの

 

46:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:25:33 ID:F28yTvza6

あとバクシンも香港スプリント勝ったろ

 

47:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:25:40 ID:3S4BDgkNg

あー確かに

 

48:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:25:47 ID:q2pZ+Hrtn

あれ短距離版凱旋門賞みたいなもんだからな

 

49:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:25:53 ID:Ggjz9BQF8

国内で出れるレースがなくなった系委員長

 

50:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:26:01 ID:YFAwVcyFu

あれ、高松宮とかって昔の天皇賞みたく勝ち抜き制だっけ?

 

51:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:26:10 ID:X4bJJcVq8

立ち塞がるもの全部殴り倒したからだろ

 

52:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:26:18 ID:8CUAPYuDG

あー、なるほど

 

53:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:26:25 ID:SltgEdxnm

バクシンがマイル行こうとする→ニシノ神、雷神トロットにボコられる

ニシノ神、雷神トロットが短距離に行こうとする→バクシンにボコられる

ニシノ神が中距離に行こうとする→ブルボンにボコられる

 

54:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:26:31 ID:s9XcGMkUn

長距離ライス、中距離ブルボン、マイル雷神、短距離バクシンとかいう地獄みたいな世代

 

55:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:26:39 ID:MZ9DRqRyQ

1世代なのに各距離の王を輩出してるのすごい

GⅡはボーガン姉貴とマチタンが仁義無き殴り合いしてるし

 

56:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:26:46 ID:j8BUrOgxL

ブルボン世代はレベルが低いとは何だったのか

 

57:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:26:54 ID:8YIVrYjI7

ブルボンが強いだけでしたね……

 

58:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:27:00 ID:YnBNcWCFI

というかバクシンがいなきゃニシノ雷神あたりは短距離の王になれたしブルボンがいなきゃライスは中距離の王になれたわ

 

59:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:27:08 ID:Y2nyCC4Rj

ダート……

 

60:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:27:16 ID:gwsoGsi1W

ダート見てないからわかんない

 

61:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:27:23 ID:tYhV5wdxg

今年は空前の海外遠征ブームだったな

 

62:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:27:30 ID:w9NV5NaCP

バクシンブルボンだけ定期

 

63:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:27:37 ID:hdfrfdDxi

ひょっとして去年って歴史に残る年なんだろうか

 

64:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:27:45 ID:vjcPeoZSK

ひょっとしなくてもそうだぞ

 

65:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:27:53 ID:A+/EcZdGv

香港スプリント勝つだけでもすごいのに凱旋門賞だからな

 

66:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:28:00 ID:BeYUwgzRc

米あたりがステイヤーズミリオン挑戦しに行ってたら最高だった

 

67:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:28:06 ID:+SXFNW267

そうだけどそれだと春天出られないんじゃね

 

68:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:28:13 ID:BeYUwgzRc

やっぱなしで

 

69:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:28:22 ID:9oBO0SkAx

正直!

 

70:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:28:30 ID:sFXuqvV/4

正直でよろしい

 

71:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:28:38 ID:71G/qQKBu

実際春天が一番好きな民は多いと聴く

 

72:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:28:46 ID:mfpJkeycl

凱旋門賞後に月刊トゥインクルが実施した3000人に聴いたブルボンベストバウトアンケートだと宝塚が1位だったけどな

 

73:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:28:53 ID:HBwGgiQP4

2位は?

 

74:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:29:00 ID:mfpJkeycl

凱旋門賞、3位春天、ちな4位は菊花

 

75:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:29:06 ID:R+6hpv2Tr

凱旋門賞2位か

 

76:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:29:12 ID:K0Hua6KvE

まあ日本のファンにはルドルフの方が有名だし

 

77:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:29:19 ID:fDiBGksv/

ブルボンって中距離レースのイメージあるけど長距離レースの方がファンから見ると名レース多いのな

 

78:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:29:26 ID:k7zcpUJ7L

というかライスが絡むと名レースが多くなる

 

79:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:29:33 ID:0y7ONREVJ

あーたしかに

 

80:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:29:42 ID:x9mFM3ap8

じゃあやっぱり名レース2個>>名レース1個じゃね

 

81:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:29:50 ID:FYFHKsQ5L

得票数だと2倍くらい差があるもんな

 

82:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:29:56 ID:IygQU/LS5

言うほど世相を反映してないわけでもないのか

 

83:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:30:04 ID:UwgsC6u5s

でもライトファンなら凱旋門賞の方が受けがいいんじゃない?

 

84:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:30:11 ID:accuRppZp

俺自他共に認めるライトファンだけどライスシャワーミホノブルボンくらいしか知らないから凱旋門賞って聴いても?だった。

すごいことはわかったけど、何がすごいかはわからない。ブルボンが勝つって割と当たり前のことだし

 

85:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:30:18 ID:BkWdXiAQw

あー、そうなんだ

 

86:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:30:25 ID:vpMLlo02g

ちょっとでも知ってると凱旋門賞こそ!ってなるけどブルボンから入った新規からしたらライスシャワーVSブルボンの方が受けがいいのか……

 

87:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:30:33 ID:1dBBUMSoP

それは普通に知らなかった

 

88:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:30:41 ID:Ca8Q/AYyf

まあ凱旋門賞がどうたらこうたら言われてるのって歴史が関係してるもんな

 

89:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:30:50 ID:u6RwyeLV6

解説員はこういう世相も見えていた……?

 

90:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:30:58 ID:RLc7DOmG3

解説員そこまで考えてないと思うよ

 

91:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:31:06 ID:NAOGGrG47

さすがや隼瀬くん

 

92:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:31:13 ID:POKKsoMlI

いや……解説員が言うならそうなのかもしれん……

 

93:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:31:20 ID:wTgRCvHj2

俺再来年からトレーナーになるけど国内のGⅠレースが海外より下に見られるのはあんまり好きじゃない

 

94:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:31:29 ID:xVmI2lnzp

>>93

なんで?

 

95:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:31:36 ID:wTgRCvHj2

研修で国内の娘が頑張ってるのを見てきて、それでも届かないのがGⅠ、というか重賞だから。

だからそういうのを無碍にされるのが嫌だっていうのは、本職のトレーナーであればあるほど強いと思う

 

96:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:31:44 ID:geMlJnS4R

解説員もそう思ってるかもな

 

97:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:31:51 ID:LBiz2+SNl

ドブカスニキどうなん

 

98:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:32:00 ID:NAOGGrG47

レースで見せてるやろ。観てるお前らは、日本のレースが外国に負けてると思うんか?

 

99:尻尾上がり名無し ??/1/2 9:32:09 ID:9TO6yv947

思わない

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

【悲報】ミホノブルボンさん、やっぱり製菓会社の手先だった

1:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:01:00 ID:qziPsXr4C

CM出演決定

 

2:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:01:07 ID:TrmeXqCMt

 

3:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:01:14 ID:YHCXO0JVA

うそだろブルボン……信じてたのに……

 

4:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:01:20 ID:qzv1hDu07

今スズカの話した?

 

5:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:01:27 ID:YHCXO0JVA

してない

 

6:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:01:32 ID:qzv1hDu07

そうか

 

7:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:01:38 ID:nIcAFnC1r

ミホノブルボンが勝つと無関係に株が上がる謎の製菓会社きたな……

 

8:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:01:43 ID:f1eqPpt9M

製菓会社B許さねぇ!

 

9:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:01:48 ID:ILTbBfzxy

メディアでブルボン見れるの嬉しい

 

10:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:01:56 ID:VKcTYOThz

前回のメディア露出いつ?

 

11:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:02:02 ID:tWHxK9X+m

URAファイナルズとかでズレた年度代表ウマ娘の発表

 

12:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:02:08 ID:FL9EiJVYk

あーあれか

 

13:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:02:14 ID:tuYhnGksS

マジでトゥインクル・シリーズ関係以外のメディアに出ないよな

 

14:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:02:21 ID:FgdQ/Mgqx

パーマー姉貴は出てくれるのに……

 

15:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:02:29 ID:MCiYNX7Kw

ウマ娘大陸出てたろ

 

16:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:02:34 ID:esoywNm/q

それもトゥインクル・シリーズ関連じゃん

 

17:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:02:40 ID:AVgmyYr2L

ブルボンがルマンド持ってデーーーーン!ってするってマ?

 

18:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:02:47 ID:WBOQfpfnr

ル マ ン ド ー

 

19:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:02:54 ID:VqFQ/2TO4

スズカさんはアメリカで生まれました。日本のウマ娘じゃありません

 

20:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:03:01 ID:AlXVdXb4K

SS「面白いことを言うやつだ。殺すのは最後にしてやる」

 

21:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:03:09 ID:cmqCPNVEq

こんなの凱旋門賞じゃないわ! 二人だけの徒競走よ!

 

22:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:03:15 ID:3DExXytoU

だったら追いつけばいいだろ!

 

23:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:03:20 ID:6PfVr8mS9

そんな……

 

24:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:03:26 ID:+7AL/R9qn

>>22がひどすきる

 

25:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:03:33 ID:HedpSkiJs

鬼畜

 

26:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:03:40 ID:a4OsB9BJ0

そりゃそうだけどさぁ……

 

27:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:03:48 ID:G2+CpHe9m

見てこいライス

 

28:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:03:55 ID:5jSBYJOzK

日本総大将をパシるな

 

29:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:04:03 ID:Gwsp8Cn9k

というかそりゃ「そんな……」とも言いたくなるわ

 

30:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:04:09 ID:vwWoexYqz

というかスズカさんのくだりは元ネタの車にしても蒸気自動車ならフランスだしガソリン自動車ならドイツだからどのみち嘘という

 

31:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:04:15 ID:aT525TIMB

知らなかったわ

 

32:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:04:22 ID:NE8Ycj+/e

で、なんでこの時期?

 

33:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:04:30 ID:mjY0/S//g

あっ……

 

34:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:04:38 ID:YiaeakWmk

かなしいなぁ

 

35:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:04:44 ID:s2/jpp382

バレンタインデーとか、ご存知ないんですか?

 

36:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:04:51 ID:grqGu4368

資本主義の犬でない高潔な>>32なのかもしれない

 

37:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:04:56 ID:Aei2BSdzu

たしかに

 

38:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:05:02 ID:jbHPboQko

>>32を讃えよう

 

39:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:05:09 ID:Kld97C7he

バレンタインデーでブルボンからチョコもらえるのって解説員くらいだろ

 

40:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:05:14 ID:NQjP4vFaA

ブルボンはお父さんっ子らしいからお父さんもたぶん貰えてる

 

41:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:05:21 ID:Wl8xID7cl

ブルボンのお父さんになりたい

 

42:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:05:26 ID:JzrfsQdyw

贅沢言わないからブルボンみたいな娘からチョコもらいたい

 

43:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:05:32 ID:Qh3Y1g74G

贅沢定期

 

44:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:05:39 ID:HzY4yioqX

酒池肉林定期

 

45:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:05:47 ID:kVdWM+Cr2

死ぬほど贅沢なんだよなぁ……

 

46:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:05:54 ID:ugwHlMwxy

国民的スターだぞ

 

47:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:06:02 ID:cSpX1F2sG

メディア露出少ないからもっと出てどうぞ

 

48:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:06:09 ID:DjRbNL3in

それがいいんじゃあないか

 

49:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:06:15 ID:NJ9zZOFpH

迂闊に露出してイメージ崩れるよりこのままでいてほしい

 

50:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:06:22 ID:Tn8gJTcFn

スズカさんのウマッターフォローしてるけど天気のことしか呟かないよ

 

51:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:06:28 ID:K3hnr3jeh

一応英語版もつけてくれてるのスズカさんの優しさを感じる

アメリカの民が日本の天気知ってどうすんだってのはともかく

 

52:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:06:35 ID:6acdUpAhV

スズカさんとかいう世界一フォロワーの多いお天気bot

 

53:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:06:41 ID:t7cebDZGq

クールでおとなしい人だから何呟けばいいかわからないんじゃないかって思ってる

 

54:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:06:47 ID:9PWQ5lRAp

この板にいるとスズカさんは走ることしか頭にない先頭民族に見えるけど、実際はガチのお嬢様だからな

 

55:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:06:55 ID:rp5/nA8qm

イメ損ですよこれは

 

56:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:07:03 ID:+yoUBr25k

でも走ることは好きだと思う

 

57:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:07:08 ID:bKH1WC6kP

それは見てたらわかる

 

58:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:07:16 ID:DkYXgceVn

ブルボンも実際はロボじゃないからな

 

59:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:07:23 ID:D1MlGQ/k6

嘘松

 

60:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:07:28 ID:7d3uo9IAU

真実の中に嘘を混ぜるのやめろ

 

61:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:07:35 ID:5v9M7wbWj

はい嘘

 

62:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:07:41 ID:fhSgGUGy2

あんなにかわいい子がウマ娘なわけがない

 

63:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:07:47 ID:Io5efGqUY

ライスから「ブルボンさん、コーヒー飲んでるんだ。おいしい?」って言われて「はい。コーヒーの味がします」っていう娘がロボじゃないわけない

 

64:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:07:53 ID:NzApPvAZn

肯定してから返事にかかるあたりガチのプログラム感ある

 

65:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:07:59 ID:Qb8wEFdso

プログラムコード教えてほしい。あと材料も

 

66:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:08:07 ID:/0sfZ16cZ

水35L

 

67:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:08:12 ID:5otDa/1pn

炭素20kg

 

68:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:08:19 ID:q1JD2m2sb

アンモニア4L

 

69:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:08:25 ID:aZWwgRSpH

石灰1.5kg

 

70:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:08:32 ID:OvX/u+8zQ

リン800g

 

71:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:08:39 ID:+AgWDWIBo

塩分250g

 

72:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:08:45 ID:R3r07Krg8

硝石100g

 

73:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:08:51 ID:Wv8EWdITK

硫黄80g

 

74:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:08:56 ID:6SmJCDgjc

フッ素7.5g

 

75:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:09:03 ID:DkXMpf3uk

鉄5g

 

76:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:09:08 ID:4YUW9Zm0m

ケイ素3g

 

77:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:09:14 ID:LTo4sVqaW

その他少量の15の元素及びその個人の「遺伝子の情報」

 

78:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:09:20 ID:sdH1xjVaw

スレ民特有の謎の結束力

 

79:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:09:26 ID:wfIaGW1m0

プログラムコードは解説員あたりが公開してくれてるだろ

 

80:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:09:33 ID:yA0Xehmqk

練習メニューの組み方とか全部公開してたからな

 

81:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:09:38 ID:zguC55Wer

CM見てきたわ、かわいかった

一応うらる貼っとく

 

82:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:09:45 ID:N/9MFcaGz

あーもうはじまってんのか

 

83:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:09:51 ID:yoKMA5RSk

たしかにあれは可愛かった

 

84:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:09:58 ID:+LWx8x+No

まあトレセンホームページでの告知文が「本日より当学園所属のミホノブルボンさんが出演したCMが放送されます!」だからな

 

85:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:10:03 ID:7eH37iihl

かわええ

 

86:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:10:11 ID:dlWu45ROa

勝負服より露出が少ないのなんか安心する

 

87:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:10:19 ID:1EhjOFj8t

この大ジャンプ素か?

 

88:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:10:25 ID:LMDcfs+zr

ウマ娘ならできるんじゃね

 

89:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:10:33 ID:erYiU73lO

やウ凄

 

90:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:10:38 ID:gRn2kqrNb

このCM保存しておこ

 

91:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:10:45 ID:0Xyyf/48K

この衣装かわいいな

 

92:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:10:51 ID:CAKdg+5jN

ミホちゃんかわいい

 

93:尻尾上がり名無し ??/1/30 21:10:58 ID:YZ/XXQCby

クソ、かわいいなこのロボ……

 




31人の兄貴たち、感想ありがとナス!

麻婆豆腐(礼装)兄貴、akasakasu兄貴、評価ありがとナス!

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メモリー:4/2/3〜4/3/1

ダートブルボン作成が地獄


【悲報】ミホノブルボンさん、完全に製菓会社の手先になる

1:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:24:00 ID:ICkFds/QD

コラボ商品が発表された模様

 

2:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:24:05 ID:7Wde/la2M

1カートン買う

 

3:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:24:10 ID:QC95R2oYb

何がついてくるの?

 

4:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:24:17 ID:g+J7iYhiN

ブルボンのブロマイド

 

5:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:24:23 ID:+jRKSk857

買うわ

 

6:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:24:27 ID:xPcNJkrOj

これ転売ヤーの餌食にならないか

 

7:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:24:33 ID:ojbxwhUgf

通常販売とは別に専用サイトで受注生産もやるってさ

 

8:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:24:38 ID:rJcMlMW3Z

ガチじゃん

 

9:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:24:43 ID:/ZV3yVLd9

ミホノブルボンさんの初タイアップだからしゃーない

 

10:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:24:49 ID:zdx0woYD5

お前ら知らないかもしれないけどブルボンは落ち目のテレビで視聴率94%を叩き出すアイドルウマ娘だからな

 

11:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:24:53 ID:i5QeHLCB4

なに!? ミホノブルボンはサイボーグではないのか!?

 

12:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:24:58 ID:GxpDI/A76

なに!? ミホノブルボンはロボではないのか!?

 

13:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:25:04 ID:7kKyuiY4v

なに!? ミホノブルボンは製菓会社の手先ではないのか!?

 

14:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:25:08 ID:Fg+FmT0C7

なに!? ミホノブルボンはガンダムではないのか!?

 

15:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:25:14 ID:A3X95MEc1

ガンダムだと!?

 

16:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:25:19 ID:nRJ3IvjUh

 

17:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:25:24 ID:+yhSbJoRa

 

18:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:25:30 ID:9DOuXBI0l

 

19:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:25:36 ID:D6RTnAjiV

 

20:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:25:40 ID:LgAsJazAm

それ以上いけない

 

21:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:25:46 ID:dP76kR4CV

まあ転売ヤーの餌食になることがわかりきってるからそれなりに対策するわよ

 

22:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:25:53 ID:tgMnVLFf4

ミホノブルボンのサジェストが『ミホノブルボン 買えない』とかになったら悲惨だしな

 

23:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:25:58 ID:EkaqAjOFD

URAくん迫真の推しだぞ

 

24:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:26:03 ID:3YldnQB0g

URAくん推してるやつの背後にいる男から爆破されてないか?

 

25:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:26:08 ID:Jdt5PK0vF

最近陣容変わったからセーフ

 

26:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:26:13 ID:NAO/OW446

隼瀬くんのブロマイドはないんか

 

27:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:26:18 ID:DZ064In+X

トレーナーズコレクションあるじゃん

 

28:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:26:24 ID:NAO/OW446

新しいのがほしいんや

 

29:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:26:30 ID:yJ29w9/eK

公式サイトにチラッと解説員が写ってるのあったよ

 

30:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:26:34 ID:NAO/OW446

5カートン買うわ。ほなまた

 

31:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:26:39 ID:lBIQHkliZ

豪遊!

 

32:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:26:44 ID:jPs2oiuBM

こいつホントはものすごいトレーナーなんじゃ……

 

33:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:26:50 ID:XfaGYDVai

コテハンつけてほしいけど関西弁がわかりやすいからいいや

 

34:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:26:56 ID:lXpvQcdC+

というか何種あるの?

 

35:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:27:02 ID:IINpmxpu8

解説員監修だから100種くらい

 

36:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:27:07 ID:8OBPdhmi3

100か……いけそうかな

 

37:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:27:11 ID:AQSb5Io4j

ブルボンのサイン付きもあるぞ

 

38:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:27:16 ID:a11kAxVo1

何枚?

 

39:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:27:22 ID:9sWjbaGZ2

全部

 

40:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:27:28 ID:V1iglUR9z

足元見てきやがって……

 

41:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:27:34 ID:YlvLQrXh9

ブルボンの腱鞘炎にならないかそれ

 

42:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:27:39 ID:5I17naew3

ブルボンが書いたサインを上からくっつけて印刷するだけだからそんなことにはならんだろ

 

43:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:27:44 ID:IejxA1UFg

今月の朝ごはんはお菓子になりそうですわ! パクパクですわ!

 

44:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:27:48 ID:1Z8PLESyb

スイーツパクパクギガントやめろ

 

45:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:27:52 ID:bhVycMbf1

スイーツパクパクギガントさんは復活できそうですか……?

 

46:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:27:57 ID:68hpdJOj7

順調だってさ

 

47:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:28:01 ID:bhVycMbf1

そりゃよかった

 

48:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:28:07 ID:oHBkeZnph

ぐぁぁぁぁあ! かわいい! ほしい!

 

49:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:28:12 ID:NnTdmVQfH

というかこれノーマル、サイン付き、直筆サイン付きの三種なのね

 

50:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:28:17 ID:1dqcWYvTH

人の心とかなさそうな販売方法

 

51:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:28:23 ID:16FHd7mRY

専用サイトのサーバーが鬼で芝ですよ

 

52:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:28:28 ID:Dg3obHtT7

今とんでもない負荷かかってるのに普通に耐えきってるの本気を感じる

 

53:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:28:35 ID:Tmym4gQm1

予約してきたわ

 

54:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:28:41 ID:9h3HGui/f

わしも

 

55:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:28:47 ID:fSj1vQ15D

予約しつつそこらのコンビニ覗いてちょこちょこ買っていこ

 

56:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:28:52 ID:jZyZKBjuD

もちろん受注生産はありがたいんだけど、やっぱり自分の手でとって当てたい

 

57:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:28:59 ID:9gWR6hzgh

わかる

 

58:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:29:04 ID:lZXcRuZCf

なんか特別感あるもんな

 

59:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:29:08 ID:Rf+FrI8Ki

なお当たらん模様

 

60:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:29:13 ID:jZyZKBjuD

やめろ

 

61:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:29:20 ID:uWmcJGvHu

特別なお菓子買わなきゃ付いてこないの?

 

62:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:29:26 ID:45j/TIvwe

そうだね

 

63:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:29:32 ID:Si2Ebm+wy

まあどうせうまいだろうし買うか

 

64:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:29:37 ID:VUQkl1od1

テキトーに買うわ

 

65:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:29:42 ID:PV4fUj3iT

買いだめしておこ

 

66:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:29:47 ID:dczA7bdzL

これ需要の先食いにならないか

 

67:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:29:52 ID:TzyUF+ezx

なるかもしれないけどそれでもなお利益半端ないと思うぞ

 

68:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:29:56 ID:dczA7bdzL

それもそうか

 

69:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:30:01 ID:Q9IYmOHca

協賛:月刊トゥインクルは芝

 

70:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:30:06 ID:1hYwsyiqG

乙名史ィ!!

 

71:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:30:12 ID:e8fvfE1EI

まあレアな写真取りそうだもんね

 

72:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:30:19 ID:YM/P5Js1r

ライスのはないの?

 

73:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:30:25 ID:G7otaJTE/

菊花賞後の授賞式でライスの隣に座ってるのはあるよ

これ

 

74:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:30:29 ID:JEIlPxDn+

ああああ!

 

75:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:30:35 ID:Kr6JLS4W+

ミホライキテル……

 

76:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:30:40 ID:7H3cnfmE7

がわいいいよおおおおお

 

77:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:30:44 ID:jIe3qI/G8

買うわ 今決めた

 

78:尻尾上がり名無し ??/2/3 22:30:51 ID:7Rtsip77z

買いますぅ!

 

 

 

◆◆◆

 

 

【朗報】製菓会社さん、1週間で今年度分の売上を叩き出す

1:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:28:00 ID:l99ICdK4I

これが三冠ウマ娘です皆さん

 

2:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:28:04 ID:4VLRvlhZG

つよい

 

3:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:28:09 ID:47xQJ5dy/

そらそうよとしか

 

4:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:28:14 ID:sUJFqGzGu

地獄だった

 

5:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:28:20 ID:oIajxLqWR

社員かな?

 

6:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:28:24 ID:N5cjp8V5n

まあ地獄でしょうね

 

7:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:28:29 ID:1vediQOGi

売ったぶんだけ捌けるんだからいいじゃん

 

8:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:28:34 ID:sUJFqGzGu

作り過ぎて生産終わった瞬間機械が壊れるんじゃないかと

 

9:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:28:41 ID:EhcKysb96

CMでいっつも壊れてんだろ

 

10:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:28:48 ID:1MggpUzhI

あれ気づいてから死ぬほど笑った

 

11:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:28:54 ID:nahOn8vl5

なぜ生産ラインを破壊するCMが許されたのか

 

12:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:28:59 ID:9s9Y7kQuX

原作再現じゃん

 

13:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:29:03 ID:H2nE8+PvL

ブルボンは触れると機械を破壊する。つまり……

 

14:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:29:08 ID:3U4w4+UOn

あれは……バイト戦士!?

 

15:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:29:14 ID:kPOFwQGyB

バイトする時間で配信したほうが遥かに稼げそう

 

16:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:29:18 ID:77XrW2oB/

俺らの5時間は5500円だけどブルボンの2分半は3億7000万だからな

 

17:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:29:24 ID:GDJdExcCz

たかい

 

18:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:29:28 ID:O9f1qDuHS

あのクソデカチョコってガチで作ったの?

 

19:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:29:34 ID:sUJFqGzGu

CG

 

20:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:29:39 ID:iyNTKf0js

まあそうだろうな

 

21:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:29:44 ID:isPkgACww

ブルボンかわいかった?

 

22:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:29:49 ID:sUJFqGzGu

解説員の後ろをトコトコついてきて雛鳥みたいだった

挨拶もちゃんとしていい子だった

 

23:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:29:53 ID:rZ5rCwyN7

【悲報】ブルボン、ロボじゃなかった

 

24:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:30:00 ID:PyGLWKynA

ブルボンは犬派ワイ、憤慨

 

25:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:30:05 ID:acMe2WxT2

ジャンプはガチ?

 

26:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:30:10 ID:sUJFqGzGu

金型手にしてのジャンプはほんとにやった

 

27:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:30:16 ID:J1/Rjm5ap

美人だった?

 

28:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:30:23 ID:sUJFqGzGu

映像で見るより眼が綺麗だったけど、若干あどけなかった

 

29:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:30:27 ID:SGnXjNDHy

ほー

 

30:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:30:33 ID:w8VP+ui73

ブルボンって美人系の顔なのに実際見ると可愛さが先に立つのな

 

31:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:30:38 ID:FqC5/3r2f

俺たちはレースの凛々しいブルボン見てるだけで日常生活はそうでもないのかもしれぬ

 

32:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:30:42 ID:9cNSYp07i

そうかな……そうかも……

 

33:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:30:47 ID:0B9wPoF/v

気の抜けた顔してるときはかわいい

他は美人

 

34:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:30:51 ID:B7RurNUSX

ミホーってしてるとき好き

 

35:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:30:57 ID:KOSa+Ob9o

解説員が側にいる時たいていミホーってしてる

 

36:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:31:04 ID:Gr6fgaF7b

安心してるんだろうなぁ

 

37:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:31:08 ID:CYFlOKq0T

実際俺がウマ娘になったら解説員に担当してほしいわ

 

38:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:31:14 ID:CjpNenmNm

わかる

 

39:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:31:20 ID:Ss4nn3uGZ

解説員は実際人気すごいらしいな

 

40:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:31:26 ID:shu5GczSs

新入生歓迎レースに観戦に出てきたときのざわめきすごかった

 

41:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:31:33 ID:xBKaiN9rT

新入生歓迎レースって実質的な品評会なんだっけ

 

42:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:31:39 ID:+ieg1Xon+

うん。解説員がブルボン見つけたのもここでだったはず

 

43:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:31:43 ID:SirM3zL1Q

はー、そうなんだ

 

44:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:31:49 ID:NGpWGk4QC

ただ名門の娘は入学する前から決まってることもある

 

45:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:31:54 ID:L7sQ76dMR

じゃあリギル内定で入ってくる娘もいるの?

 

46:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:31:59 ID:kORQEDox8

リギルは基本そういうのしない

入部テストでスカウトする

 

47:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:32:05 ID:lZwmLUPRM

例外はグラスくらいだっけ

 

48:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:32:10 ID:UphrU5BW6

あとスズカ

 

49:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:32:16 ID:CTT7A3B1X

まあリギルから声かけられたウマ娘は例外なく成功するわな

 

50:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:32:22 ID:Ns3VP87ZZ

リギルは1年1路線1人までだからな

例外はエルグラコンビくらいなもん

 

51:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:32:27 ID:ltCdsJmYE

解説員は今年新しいウマ娘担当するんだろうか

 

52:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:32:34 ID:8ToV+6ANb

今年デビューになる娘で有望なのいる?

 

53:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:32:40 ID:lak1T3c4A

フジキセキ(リギル)

 

54:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:32:47 ID:RzEqkm4WS

まーたリギルか

 

55:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:32:54 ID:Uq3VVfnba

実際三冠ウマ娘候補だからな

 

56:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:32:58 ID:wsxZ0R5Cq

解説員には是非フジキセキを倒していただきたい

 

57:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:33:03 ID:Foe+d7Z/v

リギルのサブトレ粒揃いだし勝てそう

 

58:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:33:09 ID:nsYiG5YYN

あとはナリタキングオーとか

 

59:尻尾上がり名無し ??/2/11 20:33:16 ID:g2THKl2pf

まーなんにせよ怪我なく走りきってほしいわね

 

 

 

◆◆◆

 

 

【速報】URAの公示、やばい

1:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:27:00 ID:yW6Iy9uQr

見ろ

 

2:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:27:04 ID:dx4zmkHt9

なに?

 

3:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:27:11 ID:lQkjAKc+g

ハラディ

 

4:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:27:16 ID:cI/BGyhcd

本日、昨年度より変更された人事を発表いたします。

東条隼瀬 無所属→リギル(サブトレーナー)

※東条トレーナーが担当していたウマ娘はリギルに編入されます

 

は?

 

5:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:27:22 ID:7vC8KXo9x

なんなんすかこれ

 

6:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:27:28 ID:pOucs8coF

解説員!?

 

7:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:27:35 ID:iBAgVx6V+

元鞘に収まったの芝

 

8:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:27:41 ID:d7RGFVuYs

禁止制限ガバガバじゃねえか

 

9:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:27:48 ID:9GphYiyUD

征竜版魔導書の神判の釈放を許すな

 

10:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:27:53 ID:P+dmMqNei

まーた環境が壊れるのか

 

11:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:28:00 ID:QupYQEcBU

やめてくださいしんでしまいます

 

12:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:28:06 ID:Abh6eyZH8

これ後継見据えての動きか?

 

13:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:28:11 ID:Ch6t4WijU

というか個人トレーナーって無所属表記だったのね

 

14:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:28:17 ID:nzOzQ/9vn

これやばくね?

 

15:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:28:22 ID:bn56r0XMs

やばいぞ

 

16:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:28:29 ID:UhYYEEeSw

これおハナさん引退近い?

 

17:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:28:34 ID:C2oOsq8/q

かもしれん

 

18:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:28:38 ID:OGgikN19G

解説員にリギル率いらせちゃいかんでしょ

 

19:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:28:43 ID:0MIzF7vLS

絶対勝てないじゃんこれ

 

20:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:28:47 ID:zXYE6nDnH

ちゃんと信長包囲網しろ

 

21:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:28:52 ID:H8OuJjjQQ

ブルボンの次走発表遅いと思ったらこれだよ

 

22:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:28:56 ID:47E10k34H

解説員以外と組むブルボンなんか見たくない

 

23:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:29:02 ID:Zyp17asCR

それは流石にないだろ

 

24:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:29:07 ID:Ob3eoxTWA

それだけはないから安心しろ

 

25:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:29:13 ID:wirXzydah

編入と言っても実質専属だろ

 

26:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:29:19 ID:N3c6FSg3G

じゃあなんで編入したんです?

 

27:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:29:24 ID:8EWTz8WF9

おハナさん引退説

 

28:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:29:30 ID:/jEVXP1Hv

リギル後継か

 

29:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:29:34 ID:++ll3utOy

まあ東条家のチームだもんな

 

30:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:29:40 ID:SZ+Q14UtU

パパ瀬の時えらく所属ウマ娘多かったよな

 

31:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:29:44 ID:he5xqvSLf

死に水とってたからね

 

32:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:29:49 ID:0QqUe61fB

パパ瀬→雑多な多国籍軍

おハナさん→少数精鋭の無敵艦隊

解説員→???

 

33:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:29:56 ID:zYXxUFdbQ

三冠ウマ娘軍団とか

 

34:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:30:00 ID:OKYGhaqMS

この世の地獄やめろ

 

35:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:30:06 ID:1JsGXoGCe

更に先鋭化させるのか……

 

36:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:30:13 ID:4AzH5WXzE

解説員はカノープスに編入させろ

それで勢力均衡とれるだろ

 

37:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:30:19 ID:fA4hHzwSb

カノープスのアイデンティティこわれる

 

38:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:30:24 ID:Sl3MVaN8S

カノープスのアイデンティティ(GⅠ勝てない)

 

39:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:30:30 ID:+rbXLuEQr

スペシャルウィーク……GⅠ4勝(ダービー春天秋天JC)

トウカイテイオー……GⅠ4勝(皐月ダービー大阪有馬)

メジロマックイーン……GⅠ3勝(菊花春天春天)

合計11勝

 

ミホノブルボン……GⅠ11勝(朝日杯ホープフル皐月ダービー菊花JC有馬大阪春天宝塚凱旋門)

合計11勝

 

まじで拮抗するの芝しか生えない

 

40:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:30:35 ID:bZ5s7o+i5

スペテイマクのパワカ3人に1人で対抗するな

 

41:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:30:41 ID:zzyElqFi+

リギルに入る意味がわからん

 

42:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:30:46 ID:84xaygxqX

後継以外にある?

 

43:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:30:50 ID:gDvtnqRO1

サブトレへの顔見せとかか

 

44:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:30:56 ID:2xVeu3bMS

今季リギルのクラシックメンツはブライアンとヒシアマ姐さんだからどっちも三冠やりかねないのが怖い

 

45:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:31:03 ID:xQSJtw/WG

スズカも編入してるじゃん! 理由これじゃね?

 

46:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:31:08 ID:mzoQhPw1u

これそういうことか

 

47:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:31:13 ID:2A3Pz8RJd

あー、スズカ担当するためか

 

48:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:31:17 ID:6DH5km/Ts

チーム作んなきゃ複数人担当NGだっけ

 

49:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:31:21 ID:qhztUodXY

そうだったはず

 

50:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:31:27 ID:mdLWCUE+W

だからかぁ

 

51:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:31:32 ID:IRFI23kYy

なるほどね

 

52:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:31:39 ID:3kqgRzzF9

スズカとブルボン担当するために間借りしたのか

 

53:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:31:43 ID:Mite67o2T

解説員ならテキトーに5人集められたんじゃないの

 

54:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:31:48 ID:6tVZyJfYo

テキトーに集めるようなやつじゃないだろ

 

55:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:31:52 ID:Mite67o2T

そうでした

 

56:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:31:58 ID:NaOmGsP6O

やったぁぁあ! これでルドルフさん隼瀬くんコンビ見れるやん! クソ嬉しいわほんま!

 

57:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:32:04 ID:jUdXM75he

ドブカスニキ?

 

58:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:32:08 ID:wexqkGXU0

この世の終わりを祝うあたりドブカスニキの精神はすごい

 

59:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:32:15 ID:Vsmitbd4x

ルドルフ隼瀬コンビとかウマスピで死ぬほど見たわ

 

60:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:32:19 ID:qXqTM+1D5

そしてもう二度と見たくない

 

61:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:32:23 ID:SGQc4+dat

ウマポでも見た

 

62:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:32:28 ID:qChcFrF72

解説員が

・若い

・主要レース制してる

・クソチート固有スキル持ち

・担当のスキルを他に伝授させる教導スキル持ち

・担当ウマ娘が少なく枠がガバい

というプレイヤーがトレーナープレイ選んでもウマ娘プレイ選んでもウマポの王たる要素を満たしまくってるから悪い

 

63:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:32:32 ID:cigffTKWv

ウマポは解説員が宝塚からルドルフと組んでたという事実だけで唐突にルドルフの移籍イベントを発生させるのをやめろ

 

64:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:32:38 ID:hem8RR8W5

ブルルドスズ

 

65:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:32:42 ID:+ofrAy6tG

地獄の呪文やめて

 

66:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:32:48 ID:/4LAuL5dF

勝てない勝てない勝てないよぉ!

 

67:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:32:54 ID:a2wmNT9Nn

交友コマンドでスズカさんあたりを唆して解説員を海外レースに拉致するしか解決策がないのホント世紀末

アメリカくんは犠牲になった

 

68:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:32:58 ID:CdRtwM44+

時代を戻したら親父がいるし

 

69:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:33:04 ID:BGy/W4i2o

あー、地獄地獄!

 

70:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:33:09 ID:NbSVl5Zop

トレーナープレイでのラスボス、ウマ娘プレイでの神。それが東条隼瀬

 

71:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:33:15 ID:QnNAe3xVG

どんなクソ能力でも拾ってくれるのホント助かる

 

72:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:33:21 ID:FYEm/si/y

天才型ウマ娘プレイで他チーム所属にすると解説員陣営所属のよくわからん同期のモブにぶち抜かれる絶望が味わえるぞ

 

73:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:33:28 ID:AIQzfX1Yi

原作再現じゃん

 

74:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:33:32 ID:rxffj4iBS

4年前からプレイするとちゃんとブルボンが雑魚能力で流れてきて誰にも相手にされてないのを見てスタッフのこだわりを感じた

 

75:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:33:39 ID:UNol3S1bE

解説員拾う?

 

76:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:33:43 ID:rxffj4iBS

こっちが介入しない限り解説員は何年前からスタートさせても枠一個は必ず開けてるし、最速で拾うよ

 

77:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:33:47 ID:7xIvaY8VP

よかった。なんとなくブルボンは解説員に渡しちゃうわ

 

78:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:33:52 ID:gdEzF17+4

わかる

 

79:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:33:58 ID:sB2WttG/u

わかる

 

80:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:34:04 ID:FjtjH3Ye4

わかる

 

81:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:34:11 ID:56VR1PCZr

実際こっちが育ててもあんまり強くならないしね

 

82:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:34:17 ID:VKwpxd0EW

やっぱりブルボンには解説員だわ

 

83:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:34:23 ID:nlAsPQDmJ

解説員編入の理由がわかって安心したわ。寝よ

 

84:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:34:28 ID:Uak32z5Im

ブルボンと解説員が離れなくてよかった

 

85:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:34:32 ID:jINwdxsyV

これからリギルの時代が続きそうだな

 

86:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:34:37 ID:Fj57hS96s

今にはじまったことじゃない定期

 

87:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:34:43 ID:/706DVLRb

なんだ日常か……

 

88:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:34:47 ID:iavv1RziO

じゃあやっぱりフジキセキと組むのかな

 

89:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:34:52 ID:FKl2r8gQ6

三冠ウマ娘が生まれるジンクスできそう

 

90:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:34:58 ID:omFp9sebV

ブライアンは三冠になるだろうしシービールドルフ現象になるかも

 

91:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:35:03 ID:R2oTIZTum

あー、それもあるか

 

92:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:35:09 ID:9I92VnvRZ

三冠ウマ娘のバーゲンセールだな……

 

93:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:35:14 ID:HbTrWuk66

解説が3年周期で担当増やすなら3年に一度は三冠ウマ娘拝めるのか

 

94:尻尾上がり名無し ??/3/1 12:35:19 ID:2GVOVFo2b

とんでもない時代になったもんだ

 




83人の兄貴たち、感想ありがとナス!

ひょうあられ兄貴、タッツ24兄貴、MI8兄貴、紅炎兄貴、ping25兄貴、とっちゃ兄貴、プリンの蜂蜜漬け兄貴、音石兄貴、米粉パン兄貴、ッゲッテムハルト様!?兄貴、評価ありがとナス!

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メモリー:4/3/4〜4/3/16

昨日の投稿に致命的なミス(本来3月にすべきところを4月にしてた)があったので直しました。ごめんね。


【ロボ報】ミホノブルボン休養へ

1:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:01:00 ID:sLOxeoaxa

身体作りの為に今年いっぱい休むとのこと

 

2:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:01:04 ID:uoh6Dd1Bc

解説員がそう言ってんの?

 

3:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:01:07 ID:sLOxeoaxa

URA広報によると解説員から身体作りの為に休むって連絡があったってさ

 

4:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:01:09 ID:6y4JZIVHS

あー、じゃあ怪我じゃないのか

 

5:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:01:12 ID:imqv4xNoi

そろそろ休まないとさすがのロボも壊れるか

 

6:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:01:15 ID:wLoTvlRae

3年間フル稼働したんだから当たり前

 

7:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:01:18 ID:DlXf2inZV

みんな大抵どこかで夏休みとったりするのにそれすらなかったからな

 

8:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:01:21 ID:yA1/H7LBA

ブルボンがいないトゥインクル・シリーズをどう楽しめばいいんだ……

 

9:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:01:24 ID:83ZMWrBfy

どうせ新しいスターが出てくる

 

10:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:01:26 ID:y5ZsGufyr

>>8はそれトゥインクル・シリーズファンの習性みたいなもんだから気にしなくていいと思うよ

 

11:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:01:28 ID:iNQMihbgx

何がヤバいかって海外遠征から帰ってきてURAファイナルズの予選準決勝決勝を戦い抜いて勝ったことですよ

 

12:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:01:33 ID:j1U8lBuM+

頑丈すぎる

 

13:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:01:36 ID:otZD/hhLl

身体作りってなに?

 

14:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:01:39 ID:w6gcOnBBM

νブルボンが拝めるのかもしれない

 

15:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:01:43 ID:kAkYtP5qV

勝負服変更ある?

 

16:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:01:46 ID:s3SSgliJX

あるかも

 

17:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:01:49 ID:Sa2nzxkAN

復帰時期いつ?

 

18:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:01:53 ID:pn1Pin3yt

来年春か今年冬

 

19:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:01:58 ID:/vUUZCdWP

あー、まだわからない感じなのか

 

20:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:02:01 ID:aU03dNncr

まあ身体作りってやってみないとわからないこともあるしね

 

21:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:02:05 ID:Ia99OCUim

これブルボンもっと強くなって帰ってくる?

 

22:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:02:09 ID:TtJQEwUQH

もっと強くなってどこに行こうというんですかね

 

23:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:02:13 ID:Rt1PPNbDK

おつかれ。また来年よろしくね

 

24:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:02:16 ID:JROnEDajZ

おつかれー

 

25:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:02:19 ID:56I8Hc8/0

3年間よくやってくれたわ、ほんとに。ゆっくり休んでまた走ってください

 

26:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:02:24 ID:cVz61/p1o

今季解説員お休み? もったいないな

 

27:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:02:28 ID:Sq4gU5TsJ

スズカの担当するんだろ

 

28:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:02:32 ID:2QgQ4GKXK

あー、なるほど

 

29:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:02:37 ID:ZdtNwibSF

これ発表遅れたのはコラボ商品の関係かな

 

30:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:02:40 ID:NtYTtCbQp

あーあるかもな

 

31:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:02:42 ID:2fWhg4lVm

アニメ放送中に原作が終わるようなもんだしね

 

32:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:02:46 ID:YFT3gTar6

まあ休載なわけだが

 

33:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:02:50 ID:QE2Zb/PwM

NEOブルボンを座して待つわ

 

34:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:02:53 ID:WNUsa7mqN

復帰レースの客の入りすごそう

 

35:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:02:57 ID:QXRHzwVSk

URAファイナルズはブルボンのレースだけ客入りがやばかったもんな

 

36:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:03:01 ID:00yZoUueo

他のレースも満員なのに輪をかけて満員だったな

 

37:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:03:06 ID:LZ55xBsWf

まあ凱旋門賞を勝った英雄の凱旋ですしおすし

 

38:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:03:11 ID:0nhGclytY

今季のシニア戦線どう?

 

39:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:03:15 ID:XtD71qsGI

テイオー骨折してるしマックイーンはリハビリ中だしライスシャワーの天下になりそう

 

40:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:03:18 ID:rDXigTZC/

パーマーは?

 

41:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:03:20 ID:eftEePgOa

日経新春杯後屈腱炎

 

42:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:03:24 ID:t/7Rp3d3y

うわー

 

43:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:03:29 ID:/upJycjN4

マジでライス無双じゃん

 

44:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:03:31 ID:sHdDRO2bv

ビワハヤヒデ……

 

45:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:03:36 ID:gZezalot7

なんか地味だよな

 

46:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:03:38 ID:ltWmtF7LI

ひどすぎる

 

47:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:03:41 ID:5SjhkaWWQ

まあトウカイテイオーミホノブルボンと続いたからね

 

48:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:03:44 ID:HMplD+kSx

トウカイテイオーに勝ってたらまた違ったかも知れない

 

49:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:03:47 ID:OWu02tAc5

ネイチャそろそろ勝とう

 

50:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:03:52 ID:AjAhASv1C

GⅠでなぁ!

 

51:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:03:56 ID:2K2HosJul

いや、単純に12連敗してるからさ……

 

52:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:04:01 ID:Gv5EfhSdn

AJCC7着だもんな

 

53:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:04:06 ID:ZHFz5MuGM

そろそろ限界か

 

54:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:04:10 ID:+V+absiQv

まだだ! まだ終わらんよ!

 

55:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:04:13 ID:jVzwcHwbR

強豪たちが次々に消えていくの時代の変化を感じる

 

56:尻尾上がり名無し ??/3/4 12:04:18 ID:XaKe4lbt2

ブルボンにもこういうときがくるのだろうか

 

 

 

◆◆◆

 

 

【驚報】ライスシャワー海外遠征へ

1:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:08:00 ID:OxATuoYyX

ライスシャワー「俺より強いやつに会いに行く」

 

2:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:08:07 ID:bGil/o2Kp

これもう完全にビワハヤヒデの時代じゃん

 

3:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:08:13 ID:XNcIFzNY6

去年までブルボンと殴り合ってた強豪が軒並みどっかいったな

 

4:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:08:19 ID:L9V4t1wHl

ミホノブルボン:お休みロボ

ライスシャワー:海外遠征

シンボリルドルフ:あんまり出てこない

トウカイテイオー:いつもの

メジロマックイーン:繋靭帯炎

メジロパーマー:屈腱炎

ナイスネイチャ:実力衰退傾向

マチカネタンホイザ:元気

 

5:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:08:25 ID:Mici/FT26

これはビワハヤヒデの天下

 

6:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:08:32 ID:KuO9dG41i

BNWの時間だぁぁぁあ!

 

7:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:08:38 ID:YvrbhDuPu

これビワハヤヒデ春シニア三冠あるな

 

8:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:08:45 ID:l7aJ463el

春天米固定みたいなとこあったもんな

 

9:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:08:51 ID:/XxuEUPMh

これカノープス何年かに一度のGⅠチャンスじゃね

 

10:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:08:58 ID:ir89oCYdo

GⅠウマ娘マチカネタンホイザあるぞ

 

11:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:09:05 ID:lBGlaGLuK

ライスシャワーどこいくの? メルボルン目指してオーストラリアとか?

 

12:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:09:11 ID:f1W5bakkO

ステイヤーズミリオンじゃね

 

13:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:09:17 ID:pegUArkEH

じゃあイギリスか

 

14:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:09:24 ID:Vvi8/SXHv

ほんとブルボンしか見てないのね

 

15:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:09:30 ID:xfj7zgAvZ

ブルボンを追い抜くために頑張ってきた娘が追い抜く対象なくなってどうなるかと思ったけど、そうきたか

 

16:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:09:37 ID:UjwHtwMyk

ライス春天とらないの?

 

17:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:09:44 ID:Rl8dsXp5w

ブルボンを倒して取りたいんだろ

 

18:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:09:50 ID:587Smr7Tq

あんな可憐な見た目なのに闘争心バチバチなの好き

 

19:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:09:55 ID:FqLZ/K3uk

でも仲良し

 

20:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:10:03 ID:6pUOcgi9v

友達以上仲間で好敵手

 

21:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:10:10 ID:1VEOFNiWC

ロボ亡き今ライスが天下取ると思ってたけど天下手放して海外に突っ込むの男らしい

 

22:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:10:16 ID:H4NcH5uk+

解説員が「ブルボンには長い、ライスには短い。だから春天はあくまで対等な戦場だった」とか言ってたのガチだったのか

 

23:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:10:23 ID:nZaHt/H2m

3200ってクソ長いけどな

 

24:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:10:30 ID:6Fhb9/H5p

ステイヤーズミリオンってどんな感じ?

 

25:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:10:36 ID:tn2DM4/Z/

3月から6月初旬までの対象長距離レースのうち、どれかを1勝

そのあとゴールドカップ、グッドウッドカップ、ロンズデールカップを勝利で完全制覇

 

26:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:10:42 ID:V2bhXeLGM

ライスVSブルボン楽しかったからまーしゃーないな

 

27:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:10:48 ID:yNHmpBck6

ライスシャワーさんも結構頑丈ね

 

28:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:10:55 ID:pLHjMch+5

ブルボンとは違ってちょくちょく休んでるからな

 

29:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:11:00 ID:DYgBW1si9

菊花後来年春まで、春天後同年秋までか

 

30:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:11:07 ID:T4j0OtzQy

ほぼ1年走ってないのか

 

31:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:11:13 ID:CusiKnUb+

じゃあやっぱりブルボンの休養1年は適切なんな

 

32:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:11:18 ID:8uNXgAamQ

凱旋門賞勝った以上ブルボンより強いウマ娘は世界にいないんだから勝てるんじゃね

 

33:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:11:26 ID:4dsRKIVUi

ここで負けなかったらライスは本当に強いウマ娘だな

 

34:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:11:33 ID:bVQ5Bc3uv

ステイヤーズミリオンに挑戦した日本のウマ娘っている?

 

35:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:11:40 ID:RtbIsDfTt

いない

 

36:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:11:48 ID:57+zayIsh

いなかったはず

 

37:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:11:54 ID:wiUwjO91y

ステイヤーズミリオンは世界の長距離最強決定戦みたいなところあるから、これでライスが世界でどのレベルのステイヤーかわかるな

 

38:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:12:02 ID:ffBTdMqzl

中継ある?

 

39:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:12:07 ID:qE53uzfuQ

まああるんじゃね

 

40:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:12:14 ID:VqRwyP9n8

ライスシャワーも海外遠征して力を高めようとするのは向上心を感じてイイネ

 

41:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:12:21 ID:0Hmg5Q4ZL

というかこういうときは海外遠征じゃなくて海外挑戦って言ってたもんだが、日本のウマ娘も強くなったもんだ

 

42:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:12:28 ID:NaOdAu64O

おー、ええやん。向上心を失わずブルボンちゃんに勝とうと海外で経験を積もうとするのはええことや

 

43:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:12:34 ID:himMliHPH

よく考えるとブルボンに挑み続けるってメンタルヤバいな

 

44:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:12:40 ID:kmAqRehTl

何回も負けてるのにそのたびに立ち上がって挑むライスはかっこいいよ

 

45:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:12:46 ID:lFnTEl+RE

いつか勝ってほしいけどブルボンに負けてほしくない

 

46:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:12:52 ID:K8iUFoBZw

ジレンマですなぁ

 

47:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:12:58 ID:mfE7PPT/Y

どちらにせよブルボンに勝つならライスだろうな

 

48:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:13:04 ID:TzlWePQZI

そうあってほしいね

 

49:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:13:09 ID:NIiftUg/0

それにしても今年のシニア戦線はどうなるんだ

 

50:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:13:14 ID:kHLxk6LoO

クラシック級ウマ娘が暴れるかもね

 

51:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:13:20 ID:eA01C84qi

ありそう

 

52:尻尾上がり名無し ??/3/11 19:13:27 ID:pTSru9fF7

最近トゥインクル・シリーズの人気が更に上がってるけど、これを機にブルボン以外に目を向けてほしいな

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

【速報】ナリタブライアン担当交代

1:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:05:00 ID:0VZPWJto3

記事によれば未来の三冠ウマ娘の持つムラっけへの特効薬だ、とのこと

 

2:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:05:05 ID:FbntFHZ9X

マ?

 

3:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:05:11 ID:sbskcqWEi

他の陣営からすれば今年のクラシック路線がはじまる前から終わったってことかな

 

4:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:05:19 ID:oMfuZx8wD

因みに次走はスプリングステークス

 

5:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:05:26 ID:6lT0wukY8

解説員スプリングステークス好きね

 

6:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:05:31 ID:gYojWOwnq

解説員って後方脚質のウマ娘担当できるの?

 

7:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:05:38 ID:ZW8fNo6oy

別にできないことはないんじゃないの

 

8:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:05:45 ID:4zNakqZpv

ルド山先行スズカ大逃げブルボン逃げだっけ

 

9:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:05:51 ID:GSkhCc6CR

となると前目につけて前を塞がれないようにするのが好きなのかな

 

10:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:05:58 ID:YTGMVUzgo

ブライアンは快勝と惨敗で極端だからそこらへんを何とかする気なのかね

 

11:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:06:03 ID:hHds+6dXz

最近出てきた現場指揮が得意なニュータイプのトレーナーは、トレーナーの指示で視野を広げてバ群捌くためにやってるらしいけど、解説員そこらへんどうなの

 

12:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:06:11 ID:O1AP8jGXs

やったところ見たことない

 

13:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:06:18 ID:/etZZsvfA

今のところ解説員は古き良きトレーナーの完成形みたいな感じだね

事前に勝てるだけの要素を用意して順当に勝つという

 

14:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:06:24 ID:LWTe3WDSB

じゃあ相性あんまよくないのかね

 

15:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:06:30 ID:YdLWZgm/O

ブライアンの勝ってるところを見るに才能は間違いなくあるから、ムラっけを無くすために担当するんじゃないの

 

16:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:06:36 ID:NAOeM00L3

ルドルフさんのときはウマ娘側の意向が強かったし、逃げしかできない娘に比べるとどうしたって戦術の幅が広がるから是非見てみたいわ

 

17:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:06:43 ID:2P0er3+j0

まあ現場レベルで決めること多いもんな

 

18:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:06:49 ID:pFCyxOYn0

ウマポ解説員の適性

逃げ☆先行◉差し○追込△

 

19:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:06:55 ID:UWynVyXOb

◉→◎→○→△だっけ。☆は?

 

20:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:07:02 ID:pFCyxOYn0

☆は◉の上。他のは昔の沖野Tの追込☆、金東条の追込☆くらい

 

21:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:07:09 ID:79gkmHmOl

例の一族定期

 

22:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:07:16 ID:mCEgE2t44

ブライアンの脚質ってなに?

 

23:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:07:21 ID:pf1SY6okO

逃げ以外

 

24:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:07:26 ID:Sp/w7RWlF

だめじゃん

 

25:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:07:33 ID:8r2CBh1HK

まあこれあくまでゲームのだし……

 

26:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:07:41 ID:tTnXqBqno

本人曰く逃げが1番不得意らしい

 

27:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:07:47 ID:UX1Uzym4r

ふっ……冗談はよせ

 

28:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:07:54 ID:SObNacrYO

うそでしょ……

 

29:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:07:59 ID:pa8dZCbfx

>>27

意外と、兄上も甘いようで……

 

30:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:08:05 ID:7EuiKyPLj

解説員が不得意ならこの世に逃げ脚質得意なやついる?

 

31:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:08:13 ID:7ANFVBhia

いねぇよなぁ!?

 

32:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:08:18 ID:pNhY2datw

まあやるまでわかんないみたいなとこあるし

 

33:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:08:25 ID:zKIRhf7xM

じゃあ解説員が得意な脚質なに?

 

34:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:08:33 ID:MB0OjKOMu

差し先行

 

35:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:08:39 ID:8nLFQUHp9

(それルドルフの主要脚質)

 

36:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:08:44 ID:pe/M1GHxH

それ本人が得意だと思ってるだけだろ

 

37:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:08:51 ID:OKeJ1PD0d

得意(になりたい)脚質かも知れない

 

38:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:08:59 ID:2+KCY6sr9

そう考えるとかわいい

 

39:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:09:06 ID:BkRcQTQyC

叶わぬ恋かな

 

40:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:09:11 ID:NAOeM00L3

実際そう悪くないと思うで

 

41:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:09:17 ID:1ZyH5JceH

なんで?

 

42:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:09:23 ID:NAOeM00L3

ルドルフさんと組んでたときの動きがよかったからや

 

43:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:09:29 ID:Y+j/ZbX8G

それルドルフがすごかっただけでは

 

44:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:09:35 ID:NAOeM00L3

まあそれもあるやろうけど、それだけやないからな

 

45:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:09:42 ID:zI17iOlw4

まあそうね

 

46:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:09:50 ID:GneAOi8mI

そうわね

 

47:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:09:56 ID:nM3JMI0lU

実際ブライアンの長所って何?

 

48:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:10:02 ID:RGtZn/0+g

取扱説明書

・姉に負けない程のスピードがあります

・姉よりスタミナ豊富です

・姉よりパワーあります

・最終直線で外に持ち出すととんでもない末脚を繰り出します

・一撃で絶命させたあと、死体を木っ端微塵に爆破してなお殴り続けるような圧倒的な爆発力があります

・今のところ勝つ時は全部大差勝ちです

・脚を溜めるタイプなので逃げ脚質にはなれません

・接戦に弱いです

・密集すると弱いです

・バ群に包まれると弱いです

・時折とんでもない負け方をします

・僅差勝ちという概念がありません

 

49:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:10:09 ID:xONi0/xPm

うまく使えば最強みたいなウマ娘か

 

50:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:10:16 ID:NAOeM00L3

別に接戦に弱いんやなくて接戦にならないんやと思うで

 

51:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:10:23 ID:bYfMHsNTv

ピーキー気味か

 

52:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:10:29 ID:OKovz9NAw

万能鍵みたいなロボ使ってたから落差すごそう

 

53:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:10:36 ID:WCpO314g0

要は末脚出せれば勝ち、出せなければ負けか

 

54:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:10:42 ID:Xi3if/WX8

博打みたいなウマ娘か

 

55:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:10:47 ID:rBO86KS4R

解説員の言う相手にすると苦手なタイプまんまで芝

 

56:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:10:54 ID:Lhy3rPrx0

負けてる姿見てると「なんやこいつ……」ってなるけど勝ってる姿見ると「うおおお三冠!」ってなるから、ほんとムラっけ次第だと思う

 

57:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:10:59 ID:IaqevnBRR

テイオーに近いのかな

 

58:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:11:04 ID:vDfYoAx7m

姉の方はルドルフに近いな

 

59:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:11:11 ID:RvtVty7yf

姉妹対決ある?

 

60:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:11:16 ID:yCx5P51zH

あって有馬とか?

 

61:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:11:22 ID:0+lVHOjAy

ジャパンカップかも

 

62:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:11:29 ID:mCAYsaqDd

解説員って僅差勝ち好きじゃなかった? 見てて好きだからブライアンの大差勝ち癖直さないでほしい

 

63:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:11:35 ID:NAOeM00L3

あれで割と好きにさせるタイプやから無理に直すことはせんと思うで

 

64:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:11:40 ID:rpXzt7QNT

まあスプリングステークス次第かな……

 

65:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:11:46 ID:WvwzA/p+h

他の有力候補誰?

 

66:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:11:51 ID:6WLtePAZs

エアダブリンとか

 

67:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:11:58 ID:51XMnBiFJ

個人的にはサクラローレル。怪我してるけどあれは強いよ

 

68:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:12:06 ID:LRbuyyxsi

怪我しない可能性にかけてトレーナーが当たりの日だってことに賭けなきゃならないのか……

 

69:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:12:12 ID:uqtM8lVPK

サクラ軍団特有の博打トレーナー

 

70:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:12:19 ID:FOdhWUw1F

ウマ娘の調子がとかじゃなく、トレーナーの調子が博打という謎

 

71:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:12:24 ID:lEdoXoxyv

当たってる日はホント強いから困る

 

72:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:12:31 ID:P/BjWScU5

サクラTはダービーでチヨノオーのちょっとしか使えない末脚を限界ギリギリまで溜めてオグリに肉薄したの見て本物の天才だと思った。

 

次のレース見て天災だと思った

 

73:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:12:37 ID:me6hwt4Oi

オグリのビビった顔初めて見たよ

 

74:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:12:44 ID:KI0cbwRFK

今まで無敵だったオグリを追い詰めたのはホントすごい

 

75:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:12:50 ID:Yi0C+FIJ/

まあ典型的な掛け算型のトレーナーだからな

 

76:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:12:58 ID:t7cZjk9Nl

定期的に0掛けるのやめろ

 

77:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:13:05 ID:VGE17WjnD

あのチヨノオー倒したオグリは三冠取る。そう考えていた時期が、俺にもありました

 

78:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:13:13 ID:Qp6rXF+Rs

クリークは強敵でしたね……

 

79:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:13:19 ID:FPT/w0v+C

オグリキャップは届かない!されたからな

その衝撃よりも菊花の後に秋天行ったことにビビったけど

 

80:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:13:25 ID:fOJz/tWdC

でもバクシンオーと組むと安定感すごいよな

 

81:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:13:32 ID:1lCO6d39g

前に壁が無いからね

 

82:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:13:38 ID:PpStntfwe

あっふーん

 

83:尻尾上がり名無し ??/3/16 21:13:44 ID:YvXc8manI

彼の死因は蓋されることなので……

 




79人の兄貴たち、感想ありがとナス!

ゼハン兄貴、てりやきトトロ兄貴、ぬぬのハンカチ兄貴、Isaac兄貴、肉無しチキン兄貴、のろうみ兄貴、経口補水液兄貴、risyun兄貴、評価ありがとナス!

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メモリー:4/4/1〜4/4/17

皐月賞(https://syosetu.org/novel/259565/125.html)まで


【?報】アオハル杯復活

1:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:45:00 ID:baQ9Jxcch

理事長曰く今年からやりますとのこと

 

2:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:45:05 ID:m69U2Qn9H

そんなのあったな

 

3:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:45:13 ID:urjkkPXUS

故障者多くなってやめたとかそんなんじゃなかった?

 

4:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:45:21 ID:vk7tHQobo

あとは末期は参加者が少なかった

 

5:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:45:29 ID:cy0WDv7WT

あーあったな

 

6:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:45:38 ID:+CYgdcd9l

ルド山シービー以前だっけ

 

7:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:45:46 ID:isymajfoq

たしかそう

 

8:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:45:51 ID:qFJKg6AQ4

多分部分的にそう

 

9:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:45:59 ID:Hn7Tc8d7V

というかルドルフってなんでルド山なの?

 

10:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:46:05 ID:bb34FqasH

ルドルフ三冠王の打ち間違えを略したのがなんか流行った

 

11:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:46:14 ID:Hn7Tc8d7V

はえー

 

12:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:46:21 ID:GoKu9r+s0

アオハル期間中URAファイナルズはどうすんの?

 

13:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:46:29 ID:PXtLggDom

URAファイナルズはもともと3年に1回

 

14:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:46:37 ID:RNswl24eg

あーそうなんだ

 

15:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:46:42 ID:hpVrLCi2t

チーム戦だっけ

 

16:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:46:49 ID:Xlg6DhiXW

解説員これで呼び戻されたとかじゃないだろうな

 

17:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:46:56 ID:+TVrFRSwU

あの頃のリギルだったら無双してたな

 

18:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:47:01 ID:/rf5m8+HU

最強の分艦隊司令官二人抱えてる無敵艦隊とか勝てる気しない

 

19:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:47:06 ID:FigK++iXa

最強の分艦隊司令官って蔑称だったんだけどな

 

20:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:47:14 ID:BMCl+aRMi

マ?

 

21:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:47:21 ID:FigK++iXa

リギルの傘の下では強いって意味だったけど、二人とも傘の下から離れてもクソ強かったから普通に尊称になった

 

22:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:47:27 ID:IVjXSng3j

カノープスでも5人いないんだけどどうすんの?

 

23:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:47:35 ID:HzfxpwOK9

個人同士で組むのもありらしい

 

24:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:47:42 ID:iimqgClu+

というかカノープスって少数精鋭のチームだからな。人数は他のチームに比べてクソ少ない

 

25:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:47:50 ID:eW80+/gG5

というか>>17があの頃のリギルはとか言ってるけど今はどうなんですかね

 

26:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:48:00 ID:ZmMyhvTJk

多少マシではあるはず

 

27:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:48:06 ID:fI7cPx88Z

というかおハナさんが本気になったら解説員と将軍加賀と金東条を釣ってこれる事実

 

28:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:48:14 ID:4eopQgSwI

厨パやめろ

 

29:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:48:21 ID:BAYf7iIpH

今更定期

 

30:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:48:28 ID:NT0gCbe/y

というか東条一門だけでもいい勝負できそう

 

31:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:48:35 ID:n8ysRRFrl

おハナさんの下に東条双璧とか悪夢かな

 

32:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:48:41 ID:nvxjafQKV

おハナさんストッパー、金は現場指揮、銀というか解説員は戦略立ては悪夢でしかない

 

33:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:48:46 ID:WsGw9NGBw

ちょうど役割分担されてるの鬼

 

34:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:48:51 ID:BMkV1Oqfx

だから解説員はチーム作らなかったのか

 

35:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:48:59 ID:q9yxRX1A0

東条一門とかいう雷属性大好きな一族

 

36:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:49:07 ID:0Nbf2IWLS

領域だっけ?

 

37:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:49:15 ID:nP2C7T6sj

あれ存在すんのかね、実際

 

38:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:49:23 ID:pUaYT0RGg

するんじゃね

 

39:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:49:30 ID:sMUJjQ47o

解説員→初めて組んだの雷属性

金東条→初めて組んだの雷属性

 

40:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:49:37 ID:f6ZU/jn3b

雷属性好きすぎだろ

 

41:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:49:46 ID:8p6EK13V2

と言うかリギルに勝てる戦力あるの?

 

42:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:49:53 ID:sS2pGMGWk

スピカならワンチャン

 

43:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:49:59 ID:C36BeoRVT

まあ可能性があるとしたらそれかな

 

44:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:50:06 ID:nVL9yOsEj

スピカとカノープスが組んだらいい勝負しそう

 

45:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:50:15 ID:Bbbcr/oTy

カノープスは地味に強いからな

 

46:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:50:25 ID:BocHy2ehc

マジでGⅡ大将が多い

 

47:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:50:32 ID:iZ6BUGl3Z

ちょっと前は平場オープンの鬼ばっかだから進歩してるとも言う

 

48:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:50:41 ID:fzVeAp1/V

カノープスはGⅠ挑むのやめたらもっと勝てると思うけど、挑むのやめたらカノープスじゃなくなる

 

49:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:50:50 ID:egn1tloKM

ネイチャさん何連敗中だっけ

 

50:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:50:56 ID:H4Zk307bG

12。クラシック期の鳴尾記念から1年くらい勝ってない

 

51:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:51:04 ID:5yfbZ++Gn

でも好走はしてるんだよな

 

52:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:51:10 ID:lg3ZpnJol

ネイチャさんが連敗してる感覚なかったわ

 

53:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:51:17 ID:I68tZUqjQ

いっつも善戦するしライブでもメインステージに来るもんな

 

54:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:51:25 ID:Smfs5dwe6

大崩れしないのはホント強いと思う

 

55:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:51:30 ID:YsTOe1jjI

スピカは大崩れするもんな

 

56:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:51:38 ID:tD3rMXQUt

ムラっけがね……

 

57:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:51:47 ID:I6X2nJKwc

カノープスは安定感だけなら冗談抜きに一番だと思うわ

 

58:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:51:52 ID:9xpC4mS+k

ムラっけと言えばブライアンの三冠ありそう?

 

59:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:51:59 ID:ArhbdBAI9

なんかとんでもない負け方するよなあいつ

 

60:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:52:07 ID:ZgjGrW7xy

露骨にやる気無くしたりバ群に埋まったり

 

61:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:52:13 ID:DvAJvXJNC

ブライアンは楽勝と惨敗が目に焼き付いてるわ

 

62:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:52:23 ID:KEtyzxYE7

普通にやれば勝てるんじゃないの

 

63:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:52:30 ID:wWYuNEGbW

解説員だし勝つんじゃないの

 

64:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:52:35 ID:uAPu3Z0uw

ブライアンって寒門?

 

65:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:52:42 ID:4KdPSgYMi

シンボリメジロトウショウナリタが四天王だからかなりの名門

 

66:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:52:51 ID:uAPu3Z0uw

あー、そうなんだ

勝ち方がすごかったね。ブルボンとはまた違うヤバさを感じた

 

67:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:53:01 ID:Kn+Te7mIT

名門って強いからこそ名門やってるわけでね

 

68:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:53:10 ID:bIpaYQrOt

ガシャーンガシャーンミホノブルボンです

 

69:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:53:16 ID:5a/7sj/GM

ロボやめろ

 

70:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:53:24 ID:NONlCx0kd

突然変異体をデフォルトにするのはNG

 

71:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:53:33 ID:k9arwvgm8

というかこのアオハル杯ってひょっとして海外を見据えてのものだったりするのかな

 

72:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:53:41 ID:7bdSXeXsg

なんで?

 

73:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:53:48 ID:DSpl8UJlg

いや、それっぽいことドブカスニキが言ってたじゃん

 

74:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:53:58 ID:jivchTuKw

103:尻尾上がり名無し ??/7/3 20:14:31 ID:NaoLnNTgt

フランスのレースは実質チーム戦みたいなもんやって隼瀬くんが言っとった。

 

同じトレーナーからペースメーカーとマーク屋で護衛して本命を通すのが主流なんやと

 

これか

 

75:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:54:03 ID:nuEV+u2NP

あー、チーム戦みたいなレースに慣れさせるためにチーム戦を経験させるってことか

 

76:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:54:11 ID:D4QytbBWP

というかなんで即座に該当レスが出てくるんですかね

 

77:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:54:21 ID:jivchTuKw

トレーナー志望だったからドブカスニキのレスで役に立ちそうなのは保存してあった

 

78:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:54:30 ID:KfHE6e+kO

だったってことはやめたの?

 

79:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:54:38 ID:jivchTuKw

受かった

 

80:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:54:47 ID:l/X1jg2qA

うおお、おめ

 

81:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:54:55 ID:kDrAWB/Ik

おめ

 

82:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:55:05 ID:5WW9XYFxe

第二の解説員になるのだ

 

83:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:55:15 ID:T8g+2SFS3

コテハンつけろ

 

84:◆玄米 ??/4/1 11:55:21 ID:jivchTuKw

これでいい?

あと解説員はマジで無理。本当に怪物だよあの人

 

85:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:55:29 ID:HM8bWh2XD

なぜ玄米?

 

86:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:55:38 ID:BEhF/r7bW

新米ですらないとかそういうことじゃないの?

 

87:◆玄米 ??/4/1 11:55:45 ID:jivchTuKw

そう。まだ研修中

 

88:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:55:52 ID:Jyvf973ND

じゃあウマ娘担当するの来年からか

 

89:◆玄米 ??/4/1 11:55:59 ID:jivchTuKw

担当できるようになるのはそうだね

 

90:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:56:09 ID:uAPu3Z0uw

解説員の無敗ってむずいんだ

 

91:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:56:15 ID:VtdMiGgxn

>>90ってひょっとしてトゥインクル・シリーズのことあんまり知らない感じ?

 

92:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:56:20 ID:uAPu3Z0uw

うん

暇つぶしにメイクデビュー行って贔屓作ったら3年間1回も負けなかった

 

93:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:56:27 ID:coDtmXj7O

そりゃ勘違いするわな

 

94:◆玄米 ??/4/1 11:56:33 ID:jivchTuKw

2割勝てれば一流だよ

 

95:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:56:38 ID:8srjECncc

まあそうだろうね

 

96:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:56:45 ID:3WlUMpvtt

おハナさんの通算が3割だもんな

 

97:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:56:55 ID:uAPu3Z0uw

レースって実力で勝ってれば勝てるものじゃないの?

 

98:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:57:04 ID:4TCUFqqw6

実力で勝っててもマークが集中したり、展開が悪かったり調子が悪かったりするとあっさり負けるよ

 

99:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:57:12 ID:bUEqMnjGc

そもそも実力で勝ってればという前提を満たすことが難しいし、勝ってたとしても後方脚質だと包囲されるとどうにもならない

 

100:尻尾上がり名無し ??/4/1 11:57:20 ID:uAPu3Z0uw

それは知らなかった。だから逃げが強いのか

 

101:◆玄米 ??/4/1 11:58:12 ID:jivchTuKw

逃げが強いんじゃなくてブルボンスズカが逃げて勝てるくらい強いんだと思う

逃げはたぶん、1番強さの誤魔化しが効かないから

 

 

 

◆◆◆

 

 

【カノープス】愛しきブロンズコレクター、ナイスネイチャさんに謝るスレ

1:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:01:00 ID:WjMRexrmh

衰えたとは何だったのか

 

2:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:01:05 ID:rpus33FkJ

普通に強くて芝

 

3:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:01:11 ID:3qUl7mHEp

ついにGⅠ勝った?

 

4:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:01:16 ID:8NlpKrUcV

いや2着

 

5:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:01:23 ID:yS6JF4GJB

ああ……

 

6:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:01:29 ID:e8gai+3OV

そう……

 

7:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:01:36 ID:YdV01sUNC

かなしいなぁ

 

8:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:01:41 ID:2nkUWMmrW

カノープスくんはいつGⅠ勝てるの?

 

9:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:01:47 ID:gZiVnGYTY

でもネイチャ復活してくれてよかった

 

10:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:01:52 ID:fsQaTiQUg

AJCCは絶望しか感じなかったけどこのぶんでは疲れてただけかな

 

11:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:01:58 ID:kkyTq+LwG

結構な過密ローテをとるからな、カノープス

 

12:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:02:04 ID:JXa3Nvd5W

その割にはあんま怪我せんよな

 

13:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:02:09 ID:xIxVWgbAc

南坂Tはそこらへんのガス抜きがうまい

 

14:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:02:14 ID:pO5FsLbfN

後は目一杯トレーニングさせないからね

 

15:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:02:21 ID:Z1G/PEoyT

そのせいで勝てないんじゃないですかね(名推理)

 

16:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:02:26 ID:x+0F/xQz0

イクノは入学前は走れるかどうか怪しい感じだったし、ネイチャも慢性的な骨膜炎だから目一杯に仕上げると故障しかねないのがね

 

17:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:02:33 ID:8M7PvRNJJ

あー、そういうことか

 

18:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:02:38 ID:OXauqhHMw

解説員はキチガイみたいなトレーニングさせるよな

 

19:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:02:44 ID:Ly/vyE5s7

ガシャーンガシャーンミホノブルボンです

 

20:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:02:50 ID:GbepzyXlJ

ロボ力が強すぎる

 

21:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:02:55 ID:3iArKRTFo

アレ本人からしても真似しないほうがいいって言う(?)レベルだから

 

22:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:03:01 ID:owjC2sIzg

壊れる寸前を反復横飛びしてたからな

 

23:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:03:08 ID:NW2jiTIXl

下手にやると壊れかねないのか

 

24:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:03:15 ID:XQWpG12bl

まあそれほどしないと菊花勝てなかったんだろうな

 

25:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:03:20 ID:Wx1MmwjA5

ネイチャは骨膜炎さえなければもっと練習できてもっと勝ててたはずなんだけどね

 

26:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:03:27 ID:MMw8zN1A9

テイオーもそんな感じだし、健康ってのも才能よ

 

27:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:03:33 ID:P6kOAcIVC

せやな……

 

28:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:03:39 ID:SPWIs4pXq

かなしい

 

29:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:03:46 ID:BeZfTuXql

とにかくネイチャ復活してくれてよかったわ

 

30:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:03:51 ID:c4Lcb0Shv

次走は春天かな

 

31:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:03:56 ID:bS5WnGAVw

ビワハヤヒデ大阪杯出てこなかったの意外だな

 

32:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:04:03 ID:O9YiCvpc6

距離が短いとかじゃね

 

33:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:04:09 ID:nPkjsQrCY

それか春天に絞ってるか

 

34:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:04:14 ID:ktylGAr++

春天に絞ってる説に一票

 

35:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:04:21 ID:9bIRwlFOH

マックイーンとパーマーとライスがいない春天の有力候補って誰?

 

36:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:04:26 ID:yV5EhSsKA

BNW

 

37:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:04:33 ID:yOY6leImh

世代交代を感じる

 

38:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:04:38 ID:Ld2vb/bLo

強豪たちが……

 

39:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:04:44 ID:Wa5R3Seqg

まじで最近激しいよな

 

40:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:04:50 ID:V99WlQe4n

悲しくもあるけど楽しみでもあるわ

 

41:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:04:56 ID:6WO2T2K0V

タイシンの追込好きだから頑張ってほしい

 

42:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:05:03 ID:rMxi5d9Qq

わかるわ

 

43:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:05:09 ID:T9aTo+KsE

俺はチケゾーが好きだわ。手堅くて

 

44:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:05:15 ID:buOJNKZrv

トレーナーの個性出てるよな

 

45:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:05:20 ID:fEnyhXxDq

チケゾーはさすがベテランって感じの仕上げ方

 

46:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:05:26 ID:Sz5rIAYXv

初ダービーだっけ。まさにウイニングチケットだよな

 

47:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:05:31 ID:Q4ri8nXZR

ビワハヤヒデTは個人的にはジェネリック解説員の素質があると思う

 

48:尻尾上がり名無し ??/4/4 17:05:36 ID:zSVzz5H7s

あんなやつのジェネリックがそうそう居てたまるか

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

【解説員】皐月賞感想スレ【三冠ウマ娘との出会い】

1:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:12:00 ID:4VqFY1ytU

いやぁ……ナリタブライアンは強かったですね……

 

2:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:12:04 ID:qTMqIBeTn

尋常じゃないな

 

3:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:12:08 ID:hiIvJHoeZ

実況が「これほどまでに違うのか!」とか言ってたけどほんそれ。トレーナーチェンジだけでここまで違ってくるのかと

 

4:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:12:12 ID:I42W1fn55

「トレーナーは素質あるウマ娘を引けるかどうかの博打。さほど影響はない」とか言ってたやつはさぁ……

 

5:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:12:16 ID:UpnmCZlgr

>>3

はそういう意味じゃない気もする

 

6:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:12:19 ID:YR1bskEUM

まあブライアンの差し脚のことだろうな

 

7:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:12:22 ID:NAoLIQrNn

バ群回避のための一時的な追込なんやろか

 

8:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:12:26 ID:/hp/+LLAa

優等生の走りしてたけど今回の直線一気でスターの片鱗を感じたわ

 

9:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:12:29 ID:0K8z0i4tm

ブルボンとはまた違った魅力あるね

 

10:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:12:34 ID:WvBXY3203

追込はいいぞ

 

11:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:12:38 ID:qbzRu3ZCO

解説員の解説が鬼で芝なんだ

 

12:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:12:41 ID:z6z1T37mr

解説員「ブライアンを囲もうとすることはわかっていた。だからわざとスタートを遅らせて最後尾にし、展開をスローに持ち込んだ。

当ての外れた他のウマ娘は戸惑い、前に進むか後ろに下がるか考えるでしょう。

しかし前へ行けば実力勝負になり、負ける。後ろへ行けば末脚勝負になり、負ける。戸惑った時点でこちらの勝ちです」

 

13:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:12:46 ID:ZvQsD2jLl

君後方脚質もできたのね

 

14:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:12:51 ID:NAoLIQrNn

隼瀬くんは基本何でもできるで

 

15:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:12:55 ID:Zf5OQa2BW

見たらわかるというか、わからされたというか

 

16:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:12:59 ID:STkTjqQdA

それにしても大外から来るんじゃないのね

 

17:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:13:02 ID:CZ0/ydfDX

内抜けた意味は?

 

18:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:13:07 ID:NAoLIQrNn

内が空いてたからやない? 逃げの娘が逸走するくらいコーナー曲がるの下手やってことは調べればわかるし、障害にはならんやろ

 

19:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:13:12 ID:FT49ex28/

あーそうか

 

20:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:13:15 ID:y8ETFoNu8

そういうことも調べんのね

 

21:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:13:20 ID:pbAVodVCS

それにしてもいいレースだったわ

 

22:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:13:25 ID:iHFUDrzsa

あーコイツ三冠ウマ娘になるなーって思った

 

23:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:13:29 ID:dMoX3TWuT

ブルボンのときは強いとは思ったけど三冠ウマ娘になるとは思わなかったから、また質の違う強さだな

 

24:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:13:33 ID:NAoLIQrNn

それにしても追込で弱点解決してくるとは思ってなかったわ。次走もこれでいくんかな

 

25:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:13:37 ID:k+Bx5vGcF

弱点って?

 

26:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:13:41 ID:RORe6H+3a

バ群に弱いとかじゃね

 

27:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:13:45 ID:PherKEktG

ナリタ箱推しだけど今日のブライアンはめちゃめちゃ落ち着いてて気負いがなかった

 

28:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:13:49 ID:m53PMNleX

GⅠなのにね

 

29:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:13:53 ID:38Esc4E64

いつものブライアンなら前に行こうとするところで悠々と見てたよな

 

30:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:13:57 ID:PdGdrEFTI

あれ王者の貫禄を感じた

 

31:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:14:01 ID:NAoLIQrNn

ブライアンちゃんは調子悪そうやったけどここから上げてくるんやろな

 

32:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:14:06 ID:peni11lXn

悪かった……?

 

33:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:14:10 ID:Q+3ZwH/tU

それにしては結構な差がついてるんですが……

 

34:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:14:14 ID:vBXQ1vQvc

あれで調子悪いのか……

 

35:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:14:18 ID:Fl1cOarsD

調整に失敗したのかな

 

36:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:14:22 ID:fyItqAeAX

解説員も万能じゃないしそれかもな

 

37:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:14:27 ID:LWGJaJzv+

任せられたばっかだもんな

 

38:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:14:30 ID:ADVr1kNVO

まあ勝てば調子良くても悪くてもいいわ

 

39:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:14:33 ID:P8bzqvDJe

勝つために調子上げるわけだからな

 

40:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:14:38 ID:82kXC+UOo

ダービー楽しみだわ

 

41:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:14:41 ID:IK4vExYGZ

ブライアンって外一辺倒かと思ってたからうそでしょってなったわ

 

42:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:14:46 ID:cZG/ZcpzV

あれどうやって対策するんだろうな

 

43:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:14:51 ID:LkrOXcA1H

内締めて外潰す

 

44:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:14:56 ID:W+8a8NZlp

できるやついる?

 

45:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:15:00 ID:MW6rWmWsK

ぬりかべなら……

 

46:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:15:03 ID:pAnKtiVXU

邪魔すぎる

 

47:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:15:07 ID:DwNwGLyKA

障害レースかな

 

48:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:15:11 ID:ZtVMWS2MT

普通のレースでジャンプを強いるのやめろ

 

49:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:15:16 ID:sqd0M6ABw

まあともかく三冠ウマ娘の資格はブライアンにしかなくなったわけだし、頑張ってほしいね

 

50:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:15:20 ID:B+2+gHVjR

ダービー勝ったら解説員は4年でダービー2勝か

 

51:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:15:25 ID:DlKBI0X85

ブライアンって長距離走れるの?

 

52:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:15:29 ID:jKdo3LtOR

血統的には

 

53:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:15:34 ID:9ZO2byges

姉が菊花賞勝ってるしむしろ短い距離のほうが不安だった

 

54:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:15:38 ID:qe/vGNU67

じゃあ一番楽なのが菊花賞で一番キツいのが皐月賞か。脚質といい血統といい、ブルボンの真逆だな

 

55:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:15:41 ID:awOsiP19C

そういうのが楽しいのよ

 

56:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:15:44 ID:hdVbQRmp2

姉貴とどっちが強いかな

 

57:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:15:48 ID:J+VNU/IeV

姉貴の強さがよくわからん

 

58:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:15:52 ID:+/Bmceuwv

菊花賞勝っただけだからな

 

59:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:15:57 ID:UwDZqyA1I

有馬の姉貴強かったろ

 

60:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:16:01 ID:Ab6ybeEHg

故障明けのテイオーに負けてるんじゃん

 

61:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:16:04 ID:cq8oY4UKB

故障明けとはいえテイオーはテイオーだぞ

 

62:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:16:08 ID:QPLzUe6u0

姉貴の評価が割れる理由ってここだよな。テイオーをどう評価してるかでめちゃめちゃ変わってくる

 

63:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:16:12 ID:GM4sRcYi5

個人的には有馬テイオーは最強だと思うから姉貴もクソ強いと思うわ

 

64:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:16:16 ID:Ldt/sxUiy

同感

 

65:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:16:19 ID:YNAV8oZxq

故障明け1年ぶりのウマ娘に負けるって聴くと弱そうに聴こえるけどトウカイテイオーだからな

 

66:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:16:23 ID:wloLXGUCP

ともかく姉貴には春天勝ってほしいね

 

67:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:16:27 ID:C+nDdkFTX

勝ち方でも変わってくるよな。前の春天がアレだし

 

68:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:16:32 ID:OglIe6a9b

アレ歴代春天の中でも上澄みだろ

 

69:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:16:36 ID:dp2HDzxpf

スイーツパクパクギガントと米っていう生粋のステイヤー2枚をスプリンターが越えるってもうないと思うわ

 

70:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:16:39 ID:jRsnA0kyM

前の春天越えるにはどうすればいいの?

 

71:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:16:43 ID:oUJEV0eTW

スイーツパクパクギガントと米とロボを纏めて倒す

 

72:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:16:46 ID:DM5aSFMZX

これは伝説

 

73:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:16:50 ID:HkywJrjpe

不可能定期

 

74:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:16:54 ID:r6k+DkTVt

勝ったとしてもスイーツパクパクギガントが怪我したから一定数「全盛期なら勝ってた」とかいい出す奴らいそう

 

75:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:16:57 ID:qr8e7wvpF

時の壁だなぁ

 

76:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:17:01 ID:EeED6cDMu

というかロボもう春天に出ないだろ

 

77:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:17:04 ID:Qd2PUBosi

まあ出る意味無いからな

 

78:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:17:08 ID:KURyvJU42

でもライス対ブルボンは京都でやってほしい

 

79:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:17:13 ID:3kVlavXit

似合うよな

 

80:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:17:16 ID:1NPZ9h8qJ

米って今まで見るに京都が一番得意なんでしょ? ロボの得意レース場ってどこ?

 

81:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:17:21 ID:Xn0k9BbPr

直線短いし中山じゃね

 

82:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:17:24 ID:fv5z7lnvr

左回りならどこでもいいスズカさんとかいるぞ

 

83:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:17:28 ID:l0X8fGZjz

ロボはどこでもある程度強いからよくわからん

 

84:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:17:32 ID:rx/OWoy1F

ロンシャンだろ

 

85:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:17:36 ID:IfJgQeEal

あー

 

86:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:17:40 ID:bbyq92dHL

それあるな

 

87:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:17:44 ID:HS7kH2Yi8

重いバ場好きだもんな

 

88:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:17:48 ID:otGhOYywq

ブルボンはフラットな気がする

 

89:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:17:53 ID:qBrWmTxkF

というか先行差しなのに中山が一番好きなテイオーとかもいるしよくわからん

 

90:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:17:56 ID:a5DYUBVaM

ブライアンはどこなんだろ

 

91:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:17:59 ID:jZEqfMwgj

東京だと予測

 

92:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:18:03 ID:n/B5Y346s

直線長いもんな

 

93:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:18:07 ID:FvscOLLCf

直線長いと何がいいの?

 

94:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:18:11 ID:s8j+gFXXN

直線長いと末脚勝負のウマ娘が力を発揮しやすくなる

だから一般的には後方脚質が有利

 

95:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:18:15 ID:FvscOLLCf

でもガンガン逃げてるスズカさんも末脚勝負できてるけどあれは何?

 

96:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:18:19 ID:GuN3XUyVN

さあ……

 

97:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:18:22 ID:aoyMgHwej

それは俺たちも聞きたい

 

98:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:18:26 ID:6sgH+H9X6

わからない。俺達は雰囲気でスズカさんのレースを見ている

 

99:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:18:30 ID:FBU+v/5Ez

スズカさんはアメリカでもよくわからない人扱いされてるので……

 

100:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:18:35 ID:mI0eV/pLl

スズカさんを見るについては速いということだけ覚えてればいいよ

 

101:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:18:39 ID:FvscOLLCf

わかった

 

102:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:18:44 ID:aHU2BjjIx

スズカさんは直線長いのが不得意とか短いのが得意とかじゃなくて左回りがそれ以上に得意なだけ

 

103:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:18:48 ID:TXSMqKGAG

スペちゃんのウマッターのTLの謎GIF好き

 

104:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:18:52 ID:BpX+eme1b

あれまじで笑う

 

105:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:18:56 ID:vuMkVewaY

なんで室内でぐるぐるしてるのか謎

 

106:尻尾上がり名無し ??/4/17 20:19:00 ID:BEoGVPy1L

カーペットがすり減ってるあたりいつもやってるんだなって

 




48人の兄貴たち、感想ありがとナス!

うやしょ兄貴、臥嘗兄貴、しましまさん兄貴、NNN22兄貴、ネツァーハ兄貴、アスリア兄貴、評価ありがとナス!

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メモリー:4/4/24〜4/4/28

2月13日はアンケート取りません。理由はもちろん、おわかりですね(以下省略)


【朗報】BNW、やっぱり強い

1:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:42:00 ID:CA3gajTtz

春天見てわかった

 

2:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:42:03 ID:fVrnN5mZY

気づくのおそすぎか?

 

3:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:42:07 ID:4crGvPg96

タイシンが3200走りきったことにびっくり

 

4:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:42:12 ID:ip98BvDlL

血統的にはさほどびっくりでもなくね

 

5:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:42:17 ID:N7HMDwMzR

ちっこいからね

 

6:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:42:20 ID:M4FyZBcEp

米定期

 

7:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:42:23 ID:pvneh8dtQ

ライスは言うほど小さくないから……

 

8:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:42:26 ID:HB9hxf2YB

ライスはブルボンと言う中々な長身が隣にいるからそう見られてるところはある

 

9:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:42:31 ID:ZeMGCQb9c

ロボ何センチ?

 

10:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:42:34 ID:VZehEJ9Ak

164.8。伸びた

 

11:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:42:38 ID:0jwp8KSIX

解説員の隣にいるとちっこい犬みたいな感じなのに結構あるな

 

12:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:42:42 ID:Gq9eFTpTE

解説員がデカい

 

13:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:42:47 ID:v9Ut4m4BV

解説員はデカいよ。ブライアンがちっこく見えたもん

 

14:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:42:51 ID:sFNKFNppx

ブライアンは実はそんなに背が高くないのじゃ

 

15:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:42:55 ID:dgClVuruN

姉貴は高いよな

 

16:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:43:00 ID:HchiZAsIT

姉貴はクソ高いね

 

17:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:43:03 ID:S8XUWZZTA

姉貴の走り方王者の貫禄あったな

 

18:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:43:07 ID:NFAuu7RI4

泰然と迎え撃つ感じにギガントの影を見た

 

19:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:43:10 ID:E6fcM6pQp

スイーツパクパクギガントと同じ芦毛だからな

 

20:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:43:14 ID:XhSPa0UuQ

ライスは追うタイプのステイヤー、ギガントは追われるタイプのステイヤーだったけど、姉貴はどっちだろ

 

21:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:43:17 ID:Qo1SYpGo+

中庸だよな

 

22:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:43:22 ID:W1cRSIsFZ

どっちとも言えない

 

23:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:43:26 ID:wJm7uC3ru

このどっちつかずな感じすごくルド山に似てる

 

24:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:43:30 ID:mMCou5UTw

どっちにも動けるからだっけ

 

25:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:43:35 ID:M6YJ/E5Ki

そう

 

26:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:43:39 ID:VB05G1+Aa

姉貴もそんな感じなのかね

 

27:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:43:43 ID:Tv2cYDM1h

姉貴は過小評価されてるけど強いよ

 

28:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:43:47 ID:Q8wDsHVER

連対率100%だもんな

 

29:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:43:51 ID:jAf3tXaOg

これホントにすごいと思う

 

30:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:43:54 ID:tAVTZdf/k

1着率100%のロボがいるから不当な過小評価を受けている

 

31:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:43:58 ID:PNS9dYZKW

そんなロボいるわけ……

 

32:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:44:02 ID:cOpibhG+W

ガシャーンガシャーン、ミホノブルボンです

 

33:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:44:06 ID:khtwh5b1Y

博士、なんですこれは!?

 

34:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:44:10 ID:aXIXhlsf0

がしゃーんがしゃーん。三冠ゲットロボだよ。クラシック三冠ゲットしてくれるすごいやつだよ

 

35:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:44:13 ID:QP53MlTlZ

三冠で済みましたか……?

 

36:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:44:17 ID:4kzQEMfEr

三冠で済めばいいほうよ

 

37:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:44:22 ID:OL+1Lo3BE

ロボと比べられる時点ですごいよ

 

38:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:44:25 ID:3Vc/xtuem

それはそう

 

39:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:44:29 ID:r8uqeQWzJ

みんなブルボン成分欠乏症にかかって三冠ゲットロボの召喚をそこかしこでしてるの芝

 

40:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:44:32 ID:fHl+nVPxC

休みながらレースに出ろ

 

41:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:44:35 ID:1iJ36hMt0

鬼かな

 

42:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:44:40 ID:jSsJzVofl

実際姉貴ってどれくらいの強いの?

 

43:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:44:44 ID:JgCJ8COlg

テイオーくらい

 

44:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:44:48 ID:tgN6aMZ60

テイマクくらい

 

45:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:44:52 ID:TsL9MOuGt

ルドロボスズより下

 

46:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:44:56 ID:WinDTeu3R

>>45

当たり前定期

 

47:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:45:00 ID:M6k4gU5F5

そいつらより上っているんスかね。忌憚のない意見ってやつっス

 

48:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:45:04 ID:R2SEy1xPa

実際どれくらい強いんだろ

 

49:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:45:09 ID:OEKU+N5me

姉貴は負け方が『あと一歩だな』っていうの多いからよくわからん

 

50:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:45:13 ID:zF3utaHGT

負けた相手にもテイオー以外には勝ってるから成長してはいるんだろうけどね

 

51:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:45:18 ID:heSAHTH1M

テイオーとまた走ったらたぶんわかる

 

52:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:45:21 ID:b3I9II5KT

米より上?

 

53:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:45:24 ID:BUkZoblZH

下じゃね

 

54:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:45:29 ID:LI3bv+ABF

ブルボンが出てるレースならライスの方が強い。出てないならビワハヤヒデの姉貴の方が強い

 

55:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:45:34 ID:zqHELTVcp

あー

 

56:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:45:37 ID:XfJGWIzfS

そうかも

 

57:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:45:42 ID:pg/sW5/Z/

なんか感覚的にわかる

 

58:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:45:45 ID:nvIUrNfw3

ゲームだと数値化されてるけど実際はそうじゃないもんな

 

59:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:45:50 ID:UiE2LP/qr

ライスはブルボン不在時はナリタタイセイとかマチタンに負けてるんだよな

 

60:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:45:54 ID:sj8tGTRxY

ライスはさぁ……ブルボンがいないと本気出せない子?

 

61:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:45:58 ID:jbotSrUaG

ブルボンがいると本気を超えた本気を出せるんだと思われる

 

62:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:46:03 ID:OVBldL7p/

ライスの天敵って皇帝だと思うわ

 

63:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:46:07 ID:jT/LbTJ+J

皇帝を天敵にしてないやつっているかってのは置いといてなんで?

 

64:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:46:11 ID:OVBldL7p/

ライスって標的を追っかけるときは強いけど他はそうでもないから、皇帝なら最後ちょこっと抜け出して楽に勝ちそう。

ライスは一瞬のキレ味ないし

 

65:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:46:16 ID:96F7EX4v2

あるかもね

 

66:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:46:20 ID:5PceLtLPF

じゃあ姉貴はライス相手に有利なのか

 

67:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:46:25 ID:USM0W5wJl

たぶん

 

68:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:46:28 ID:mcUHoEcy1

姉貴の弱点って爆発的な末脚持ちだと思ってたけど、タイシンをいなした今回のレース見るにそうでもないのかな

 

69:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:46:32 ID:At8Ysd88N

モチベーションとかそういうの抜きにするとライスはハイペースが得意なのかもな。スタミナ豊富だし

 

70:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:46:36 ID:gSIqiRL2O

スローペースが苦手なのかもしれない

 

71:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:46:41 ID:UnWU7up4V

タイシンの末脚ってどんなもん?

 

72:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:46:45 ID:OMs2jwbks

末脚だけならトップクラスだと思う

 

73:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:46:49 ID:mdzI9HrPU

テイオーとは?

 

74:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:46:53 ID:pD2eYxlRR

テイオーかな……

 

75:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:46:56 ID:sbCulYPh6

絶好調テイオーさんは邪神アバターみたいなもんで、相手+1になる感じなので……

 

76:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:47:01 ID:+xBJx0W54

チートじゃん

 

77:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:47:04 ID:NiRCRgD8X

上層はみんなチートよ

 

78:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:47:07 ID:lttwwSXR5

GⅡ見りゃわかるけどカノープスもチートよ

 

79:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:47:10 ID:LiyuwJfQd

ボーガン姉貴対マチタンとかいう仁義なき戦い好き

 

80:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:47:13 ID:Bw59RnOzK

あの二人はあんま当たらないよな

 

81:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:47:17 ID:TiIlVnJXt

マチタンはステイヤーだし、ボーガン姉貴はマイラーに転向したから……

 

82:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:47:21 ID:DIzGwsAiT

君2年前3000メートル走ってたよね?

 

83:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:47:25 ID:J6B10Xgt6

3000メートル走れるやつがマイルに来るな

 

84:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:47:29 ID:n0dQGUxUg

ガシャーンガシャーンという音が聴こえる

 

85:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:47:34 ID:8PR8x+j0s

正面玄関からバクシンが来て裏門からロボとかマイルの番人ノースフライトちゃん壊れる

 

86:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:47:39 ID:z8DpTQi47

ロボマイル走れるよね?

 

87:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:47:42 ID:tN1ywePdg

朝日杯勝ってるからね

 

88:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:47:46 ID:py6CKcTmg

ロボはなんなら短距離も走れんことはないぞ

 

89:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:47:49 ID:HL+f6mFHF

姉貴もマイル走れるあたり、能力高いやつはマイルも行けるのかもね

 

90:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:47:54 ID:Vf7eLS3Dh

姉貴朝日杯勝ってるっけ

 

91:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:47:58 ID:0dYNMcgj7

2着だけど、それまでのマイル2戦でレコード出してる

 

92:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:48:03 ID:pHN7xHU7K

はえー、わからんもんだね

 

93:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:48:07 ID:KDBLM76Fx

距離延長より距離短縮の方が楽なのはバクシンを見れば確定的に明らか

 

94:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:48:12 ID:5/+uP0eyx

バクシン血統的にはステイヤー気味だもんな

 

95:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:48:16 ID:1o/bUzNVp

なんでああなったの?

 

96:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:48:19 ID:gaiceTNTs

バカだから

 

97:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:48:23 ID:zHetVSIWD

ひどすぎる

 

98:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:48:27 ID:8jC1yhVHq

スタミナ配分できないのよね

 

99:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:48:32 ID:KXAH1FJl9

スプリングステークスの時点では皐月賞挑戦も視野に入っていたという事実

 

100:尻尾上がり名無し ??/4/24 13:48:37 ID:TRiTdyXgp

なんか変だな(ブルボンとバクシンを見つつ)

 

 

 

◆◆◆

 

 

【謎報】アオハル杯、チーム『銀河帝国』爆誕

1:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:17:00 ID:s4jSrxlF6

(中身はリギル)

 

2:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:17:06 ID:1DB8p9VtP

リギルなら良くね

 

3:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:17:11 ID:q6O3pNO1J

なぜ銀河帝国?

 

4:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:17:17 ID:2CRtLsxEz

これは銀河帝国皇帝ルドルフ

 

5:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:17:22 ID:NLEUhcC7B

>>3

ウマ娘という星々を束ねるのがチーム、そのチームを束ねる皇帝を戴くチームだから

 

6:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:17:28 ID:lZ5r6OZfS

残当

 

7:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:17:34 ID:MPM9BjJrz

妥当妥当&妥当

 

8:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:17:40 ID:kgCAsR79z

あんたほどのウマ娘が言うなら……

 

9:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:17:46 ID:P6FlCFcYu

発案者解説員定期

 

10:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:17:52 ID:eMgoCJs72

テイオー「ルドルフに可能だったことが俺に不可能だと思うか?」

 

11:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:17:58 ID:4vQ2P/F5a

無敗三冠かなしいなぁ

 

12:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:18:04 ID:NM2xWIP7X

ゴタゴタ言ってる暇あったら足治して走れ

 

13:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:18:10 ID:o3ehwQLr0

ブルボンのスペアの脚を移植しよう

 

14:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:18:15 ID:A3NcDZq7n

そんなことしたら真面目にウマ娘界のジオングになりそうなテイオー

 

15:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:18:20 ID:UPMaoCPC6

あとブルボンはアオハル杯には間に合うようです

 

16:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:18:27 ID:mxtGBsfWE

朗報だね(ニッコリ)

 

17:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:18:33 ID:+6JUsutZc

ガシャーンガシャーン

 

18:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:18:39 ID:GN+YStpYA

ガシャーンガシャーン

 

19:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:18:45 ID:DcDDXl1j5

ガシャーンガシャーン

 

20:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:18:51 ID:84mdmUzJl

総ロボ大進撃やめろ

 

21:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:18:57 ID:wQw41FYcy

マジレスするとテイオーは怪我しなきゃ皇帝を越えてたと思うわ

 

22:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:19:02 ID:ptA+MHsIR

解説員もそんなこと言ってたな

 

23:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:19:07 ID:KH+a7U/+8

ルド山もそんなこと言ってた

 

24:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:19:13 ID:rMQOGHifU

>>23

はい不敬罪

 

25:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:19:20 ID:efqa254eI

>>23

はい処刑

 

26:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:19:25 ID:NaosaHUm

まあ怪我するところまで含めて実力やで

 

27:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:19:30 ID:cFk1Wov47

それはそう

 

28:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:19:37 ID:ti/sc8WI0

ただ夢は見ちゃうよね

 

29:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:19:42 ID:3LjbVrFpc

ガキが……無敗の三冠見たかったぞ……

 

30:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:19:48 ID:o1A8/Q5Il

ロボが来そう

 

31:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:19:54 ID:PBb4/koAs

あれ、こない?

 

32:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:20:00 ID:f2K99lu0k

空気読んだロボ

 

33:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:20:06 ID:GMUIV+iiE

まあガキの無敗の三冠が見たかったってニュアンスだろうしね

 

34:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:20:11 ID:tTwRxKNYn

銀河帝国って名前が笑えないのがひどい

 

35:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:20:17 ID:1Go7Faq8g

皇帝専制やぞ

 

36:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:20:24 ID:fm1gHbeCK

生徒会長と生徒会役員とW寮長を抱える権力者集団リギル

 

37:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:20:31 ID:XYKIasekL

でもロボなら……

 

38:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:20:37 ID:HgkxL580X

ロボは生徒会の書記になったぞ

 

39:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:20:43 ID:p+7Sj5Xvi

裏切ったのか、ロボ……

 

40:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:20:49 ID:peKLKA/EA

味方になったこともない定期

 

41:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:20:55 ID:ZEZwo56l2

というかロボのリモコン持ってる人が皇帝大好きなので……

 

42:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:21:00 ID:a5z69tShm

良いも悪いもリモコン次第定期

 

43:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:21:06 ID:T+O4+wTv3

因みにスピカのチーム名はガンバルゾ

 

44:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:21:12 ID:xN84+BKtS

かわいい

 

45:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:21:18 ID:EEP2U0Nlv

ださい

 

46:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:21:24 ID:QL0sx8CKw

これ絶対テイオーが名付け親だろ

 

47:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:21:29 ID:iVH/Kb9QX

カタカナなのが実にテイオー

 

48:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:21:36 ID:dxrCj+90z

これガンバルゾは『黄金樹(ゴールデンバウム)は倒れた』できる?

 

49:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:21:42 ID:jk+BuzRfE

できなさそう

 

50:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:21:47 ID:hFViTxKxW

無理

 

51:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:21:54 ID:ohkMmbow5

世代交代を待とうね

 

52:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:21:59 ID:106+xYk1f

というか倒す理由があんまりないので……

 

53:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:22:05 ID:wrhQ6g6sX

リギル倒したら誰が海外勢をボコるんです?って話だからな

 

54:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:22:12 ID:FjT+kiShh

ライスがドバイで勝ったからライスに任せよう

 

55:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:22:19 ID:7kTPjNE57

ライスも遠縁のリギル定期

 

56:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:22:24 ID:R6KXIOExv

ドバイで勝った日本のウマ娘ってライスが初?

 

57:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:22:31 ID:9RBQCyln4

ライブリさんとじゃない方のベガが挑戦したけど勝ったのはライスが初

 

58:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:22:37 ID:9i6qIdnaO

すごいじゃん

 

59:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:22:43 ID:gljMHIdZE

まあGⅡだけどね

 

60:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:22:50 ID:VWONYwqVp

その割には報道少ないな

 

61:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:22:56 ID:JjhamgkOl

GⅡだからな

 

62:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:23:02 ID:gPZkI6rZf

でもすごくね

 

63:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:23:08 ID:9NfV1kKgF

ライトファンは『え……GⅡってなに? なにがすごいの?』って感じだぞ

 

64:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:23:14 ID:0iBMaJ5Y0

海外でも朝を告げる鶏のようにGⅠ勝ったスズカさんが悪い

 

65:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:23:21 ID:RhVpwbx06

あとロボも悪い

 

66:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:23:26 ID:RG2yVDqVc

でもロボの復帰に向けた練習風景流してライスのGⅡがおまけなのはひどいと思うよ

 

67:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:23:32 ID:okrUNTpEZ

まあテレビって要は見てもらえるような番組作らなきゃならないわけでね

 

68:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:23:38 ID:NaosaHUm

URATVではみっちりやっとるで

 

69:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:23:45 ID:ALYC1kuSb

つべのチャンネルだっけ

 

70:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:23:50 ID:Z9N1QEVTe

うん。Utubeの公式チャンネル

 

71:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:23:56 ID:yYt5BwkX5

ロボがGⅠ勝ちまくってる時期に入った新参は初重賞制覇の重みがわからないから責めても仕方ないみたいなところはある

 

72:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:24:03 ID:zJp/+alAV

ロボ以外の贔屓を作って追えばわかるんだろうけどね

 

73:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:24:09 ID:05l+mIIfC

その点で前のタイセイニキはファンの鑑だった

 

74:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:24:16 ID:xW0GdEhNm

ライスのジャパンカップブッチして中京のOPレース見に行ったやつか

 

75:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:24:22 ID:XTQlEuzSA

あいつは漢だった

 

76:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:24:28 ID:lFgyfI4W7

新規ファンはブルボンのファンであってトゥインクル・シリーズのファンではない層もいるからそこらへんなんとかしなきゃいけないんだけどな

 

77:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:24:35 ID:NaosaHUm

そのためのアオハル杯やろ

 

78:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:24:41 ID:deu10DTB0

でもロボ出るじゃん

 

79:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:24:46 ID:9Csn3wbrg

ロボ以外のレースも見させるってことじゃないかな

 

80:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:24:52 ID:M60awYTS1

あーなるほど

 

81:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:24:58 ID:GTxQ9e5U+

というかドブカスニキじゃん

 

82:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:25:05 ID:Gzo0KT+dA

ドブカスニキはアオハル参加するの?

 

83:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:25:10 ID:NaosaHUm

するで

 

84:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:25:15 ID:zmePcmjPi

おー

 

85:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:25:21 ID:4NXb6w5MT

現場はどんな感じ?

 

86:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:25:26 ID:NaosaHUm

賛否両論な感じやで

ウマ娘に負荷かかるのはホントやしな

 

87:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:25:31 ID:+Dzr04mJA

宝塚の後と有馬の後だっけ

 

88:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:25:37 ID:PtTvxqqRJ

確かに負担は重いわな

 

89:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:25:44 ID:NaosaHUm

まーせやけどチーム戦ってまた違った楽しさがあるからな。楽しめるレースを走れるのはええことやわ

ウマ娘の中には負けまくってレース楽しめへん娘もおるし、これを機に思い出せるとええなーってのもあるんやと思うで

 

90:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:25:49 ID:24ELUt9lR

負荷に関してはいいの?

 

91:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:25:56 ID:NaosaHUm

んなもんちゃんと調節するわ

なんのためのトレーナーやねんと

 

92:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:26:03 ID:lbCDXBXlZ

だろうね

 

93:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:26:08 ID:+jx9+kkFU

ド正論

 

94:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:26:14 ID:NaosaHUm

というか最近管理主義が蔓延しててアカンわ

万能薬ちゃうんやで。適材適所の方がええんや

 

95:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:26:20 ID:X2U8TYWgE

ニキ放任主義なの?

 

96:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:26:25 ID:NaosaHUm

バリバリの管理主義やで

 

97:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:26:32 ID:zetbiKRQ/

ならいいじゃん

 

98:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:26:37 ID:Hjdik2uk8

現場の意見が統一されすぎるってのは明らかによくないんだよなぁ……

 

99:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:26:43 ID:NaosaHUm

オグリンとかは管理したらああはなっとらんやろうし、放任主義も責任まで放棄してるわけやないならアリやろ。

主流派一色になるのは隼瀬くんも望んどらんやろし、どうするつもりなんやろね

 

100:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:26:49 ID:G00IGfpzS

ドブカスニキわからんの?

 

101:尻尾上がり名無し ??/4/28 19:27:13 ID:NaosaHUm

わからへんわな。ただ、ルドルフさんと隼瀬くんが組んだらなんとでもなるやろ

 




64人の兄貴たち、感想ありがとナス!

佃煮兄貴、紅い髪のエイリアン兄貴、てぃみどー兄貴、小鳥遊 相馬兄貴、心霊兄貴、ユダ兄貴、野菜射撃兄貴、でってゆー兄貴、評価ありがとナス!

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アフターストーリー:呉越同舟

 程近い未来、第一回のアオハル杯は大盛況の後に幕を閉じることになる。

 これはリギルという最強チームがその最強たる所以を見せたこともあるが、ドリームリーグにしか出てこないウマ娘が現役のウマ娘と混じって覇を競うというのは、非常に刺激的であったからである。

 

 URAとしてはこれを契機にダートや短距離に目を向けてほしかったわけだが、結果としてはより王道、中長距離に注目が向くことになった。

 しかしそれでもダートや短距離にもしっかりと注目が向くようになったから、彼らの目論見は成功したと言えるであろう。

 

 で、そんな目論見が成功する前。

 アオハル杯で出番が終わったリギルはといえば、1年の締めを終えてめいめい自由行動に移っていた。

 現在は1月。有力なウマ娘は休み、そして実績のないウマ娘たちはここで力をつけるべくレースに出る。

 

 そしてリギル所属のウマ娘は、実績と結果が豊かな者が多かった。

 故にこの1ヶ月は、リギルのウマ娘たちにとっては久々となる休息期間、ということになる。

 

 しかしそれは、トレーナーたちにとっては休息が与えられることを意味しない。

 この暇な2ヶ月でローテーションを構築し、担当するウマ娘をいかなるビジョンを持って形作るか想定し、その想定に合うようにトレーニングメニューを組む。

 

 そういうことを、しなければならない。

 これは言葉で言うほど簡単なものではなかった。ウマ娘の希望と現実をすり合わせ、そして現実的なラインでどこを目指すか、どう目指すかを策定する。

 

 チームを率いるトレーナーがサブトレーナーを大量に雇用する理由は、このあたりにあった。

 捌ききれない事務作業をさせると共に、トレーナーにとって1番必要となる実務の経験を積ませる。

 

 そして上げられてきたローテーションやトレーニングメニューを見て、無理なものがあれば改善させ、目標が甘ければ再考を促す。

 補佐と育成を同時に任せるこの時期は、サブトレーナーにしてみれば自らの能力を高める好機であり、不眠症になりかねない時期でもある。

 

「よし、できた」

 

 しかしその難しい作業を、東条隼瀬はさっさと終えた。

 

「四路侵攻の計というわけかい、参謀くん」

 

 シンボリルドルフ。

 サイレンススズカ。

 ミホノブルボン。

 ナリタブライアン。

 

 今の日本の中でも、そして恐らくは世界でもトップクラスの力量を持つ4人を一括で管理する。

 その為のローテーション、その為のトレーニング。そしてその為に要請していた施設は、トレセン内に増設されている。

 

 そのあたりを頭に入れて声をかけてきたルドルフの方を見て、東条隼瀬は軽く頷いた。

 

「ああ。今のうちに、やれることはやってしまおうと思ってな」

 

「しかしそう思い通りにいくかな」

 

「いかせるさ」

 

 4人は、優秀なウマ娘たちである。そして比較的、手がかからない連中でもある。

 練習のやり方も知っているし、故障の恐ろしさも知っている。そんなウマ娘たちを管理するというのは、さほど難しいことでもない。

 

 問題は、ローテーションをどうするかということだった。

 4人のうち3人が、王道の距離を得意とする。

 

「前代未聞だな、これは」

 

「だからこそ、ブルボンを仕上げたんだ」

 

 それはそうである。

 しかしシンボリルドルフとしては、心配なこともある。それを口にこそしないが。

 

「君の作戦を必要としないように、かい?」

 

「そうだ。お前が心配していることは、無論わかる。だから一応、こちらとしても対策はしているのさ」

 

 トレーナーがレース中寝てても勝てるウマ娘こそ、最良であると彼は言う。

 これはウマ娘単体の力で展開のあやをねじ伏せられるようになれば誤算がなくなる、という思想の完成形でもあった。

 

 無論だからといって油断するということではない。だが、ミホノブルボンとサイレンススズカはその理想に限り無く近づきつつある。

 そしてこの1年を完走すれば、ブライアンもそうなる。自分は既に、そうなった。

 

(2種の逃げ、先行、差し追込。その完成形を見せてやろうということか)

 

 目指す理想が存在すれば、後に続く者もいくらか楽になる。亜種を生み出すこともできるだろう。

 基本形が存在してこそ、変則することもできるのだから。

 

「これほどの才能を預かっている。預からせてもらっている。となると、それなりのものを残さなければな」

 

「未来を見るのはいいが、今を疎かにしないように」

 

「無論のことだ」

 

 これ以上は、言わないでもいいだろう。

 そう判断して離席しようとしたルドルフと入れ替わるような形で、急報が入った。

 

 ――――リギルの部室に出頭しなさい、という一報である。

 

 基本的に信頼した相手は権限を与えるのが、東条ハナという人物である。だからこういう呼び出しはめずらしい。

 しかし、呼び出される心当たりは実のところある。つまり、ローテーションについてなにか不手際があったのだろう、ということ。

 

 だがその予測は、全く以て違っていた。

 

「沖野さんが倒れた。あの頑丈な人が?」

 

「……そうよ。軽い過労だから大したことはないということだけれど、心労も重なっていたようだし」

 

 テイオー骨折4連発。

 マックイーン降着、骨折、あと繋靭帯炎。

 

 怪我が多い。そして降着騒動もあった。メディアや世間から、『何度怪我をさせるんだ』という非難がなかったと言えば、嘘になる。

 無論怪我した本人は、辛い。だがそれを止められなかったトレーナーも、辛いのだ。

 

「なるほど、確かに怪我続きでしたからね。私なら2度目あたりで自決しているでしょうし、素晴らしくタフな方です」

 

 おそらくは純粋に、彼は褒めている。

 精神的なタフさ。めげなさ、不屈さ。自分にはない強さを認め、そして尊敬しているからこそこういう口を利いている。

 だが、である。

 

「それ、人前では口に出さないようにしなさい」

 

「何故です?」

 

 きょとん、と。

 この顔からも純粋に褒めていたことが確定的に明らかな甥を見て、東条ハナはしかたないなぁと少し笑った。

 

 天才という人種には、人間的にやや欠けたところがある。彼女はそれを、この甥の父から学んでいた。

 

 ――――はい! 今年で最低でもこれくらいはできるようになってね!

 

 東条鷹瀬。現場指揮の天才。

 デビュー時、サブトレーナーとして彼の下についたときにひとまずという感じに指し示された到達点に、未だ彼女は至れていない。

 

「なんでも、よ。わかった?」

 

「はい。まあとにかく、怪我での心労はわかりますよ。経験者ですから」

 

「……それだけではないでしょうけど」

 

「というと?」

 

 その問いには答えず、はぁー、と。

 露骨にため息を――――たぶん安堵由来のもの――――吐き出す叔母を見て、東条隼瀬はなんとなく気づいて眉をピクリと動かした。

 

「まあそれはそれとして、お見舞いに行かなくていいのですか? 師匠としては、ことさら心配でしょう」

 

「それは、どういうことかしら」

 

「いや、好きなんでしょう。見たらわかりますよ」

 

 これでも他人の心理を読むことにかけてはそれなりの自信がありますから。

 そんなことを言うこの甥は、好意に無頓着なこと甚だしい。そんなやつに勘付かれたことを若干不服に思いつつ、東条ハナはゴホンと咳払いをした。

 

「それはともかく。スピカのウマ娘の面倒を見てほしいという依頼が来ているわ」

 

「サブトレーナーは……いないんでしたか」

 

「ええ」

 

 ほんの数年前まで、スピカは滅びかけだった。所属ウマ娘がゴールドシップなる謎のウマ娘だけになったこともあった。

 そんな惨状では、サブトレーナーなどいるはずもない。

 

 スピカは学園内でも有数の強力なチームである。しかし同時に学園内でも有数の少数のチームでもある。

 放任主義は、管理主義よりも多くを担当しにくい。臨機応変さというものをより多く必要とするだけに、限界というものが早く訪れる。

 

 マンツーマンで成果を残した放任主義のトレーナーが規模を拡大して収拾をつけられなくなるというのも、珍しいことでもない。

 

 故に成果を残してからも、沖野トレーナーは自分が臨機応変に対応できるだけのメンバーしか、スピカに招き入れることはしなかった。

 

 そして放任主義のトレーナーとは、職人気質である。これといった定形がなく、経験と勘で進めていく。

 世に蔓延る管理主義全盛の空気感もあり、なによりも教えを受けられないという難しさもあり、放任主義のトレーナーのもとにはサブトレーナーは集まりにくかった。

 

「で、やれというわけですか」

 

「役に立つでしょう。あなたにとっても」

 

「……よろしいのですか?」

 

「それくらい、向こうも承知しているわよ」

 

 沖野トレーナーは、練習の虫軍団のスピカのストッパーである。

 放任主義だからといって休んでいる間完全に放置すれば、多分誰かが怪我をする。となると誰かに任せるしかないわけだが、彼はミスターシービーが対ルドルフ4連敗の果てに休養に入った後、一時的にこの業界から離れていた。

 

 隔世の感がある――――というわけではないが、繋がりを持っているチームは少ない。

 

 今も繋がりがあるのはリギルか、カノープス。そのあたり。

 そしてカノープスの南坂トレーナーは現在他のチームの面倒を見てやれるほどの余裕がない。となると選択肢は1つしかなかった。

 

 それをそれと知りつつ、東条隼瀬は暗に問うたのだ。

 

 ――――情報抜き放題なんだが、いいのかな、と

 

 これは、東条ハナ自身が管轄すべきではないのか。それが信頼に報いるということではないのか、と。

 

 だが、それを承知して、沖野トレーナーは依頼してきたらしい。

 

「なにか策があってのことですか」

 

「ないわよ、貴方じゃないんだから。おおかた、貴方に知悉され尽くしてもそれを上回る成長をさせられる。してくれる。そう信じているのでしょう」

 

「素晴らしいことです。私も見習いたいと思います」

 

 信頼する。諦めない。限界を決めない。ウマ娘の意志に、夢に寄り添う。

 これは誰にでもできそうで、その実誰にでもできることではない。たいていのトレーナーが哀しいことに、現実に押し潰されて初心を忘れる。

 

 そんな中でも怪我にも折れず責任を全うし続けた沖野トレーナーは、さすがというべきか。

 

(それだけに、なぜ一度辞めたのか)

 

 それがわからない。まあわかる必要もないし、向こうからしても踏み入れられたくないところだろうから詮索はしないが。

 

「で、やるの?」

 

「謹んで、と言いたいところですが……受ける側にも拒否権というのがあるでしょう。そのあたりはどうなのですか?」

 

 ええー!?ボクは嫌だよー!(エエッ!?ボクハイヤダヨー!)とか言いそうなガキが、いる気がする。

 そのあたりを気にしていたのだが、返ってきた言葉は意外なものだった。

 

「もう確認してあるわよ。その上で、あなたに話を持ってきたの」

 

「正直、意外ですね」

 

「そうかしら。貴方のやり口を知りたい、貴方の指導を受けたい。そう考える娘は多いわよ」

 

 いや、そういうことではなく人格的な問題です。

 そう言いかけて、東条隼瀬はもっと気になるところを発見して問うた。

 

「何故ですか? 私のやり方というものは全部学会で公にしていますが」

 

「それでも同時代に傑出したウマ娘を育て上げたトレーナーがいるならば、直接指導を受けてみたくなるものなのよ」

 

「……なるほど。入り口の貼り紙にお目当ての品が無いと書かれているにも拘わらず、つい店員に聞いてしまう。そういうことですか」

 

 やけに実感のこもった言葉と、いつもよりも感情の機微が感じられる頷き。

 それらを見て無下にすることもできず、東条ハナは曖昧に頷いた。

 

 

「……俗な例えだけれど、多分そうなんじゃないかしら」

 

「わかりますよ、その気持ち。先日、私も探して買いに行ったプラモデルが買い占められてましてね。その時につい訊いてしまった。あれは店員に申し訳ないことをしたと思います」

 

「プラモデル。貴方にそういう趣味があるとは意外ね」

 

 そういう人間らしい趣味を持っていたとは。

 仕事人間らしさのある甥を密かに心配していた叔母は、なんとなく嬉しくなって知りたくもないし興味もない話を広げた。

 

「どんなものが好きなの?」

 

「私はジ・Oというのが好きです。ですがまあ、ブルボンがやっているゲームでよく使っていた機体を作ってあげれば喜ぶかな、と思いまして」

 

 ウマ娘の寮に、トレーナーは入れない。

 となると部室でゲームをやっていたのだろうか。いや、あの真面目なミホノブルボンが部室でそういうことをするとは思えない。

 

 となるとトレーナー寮に上がりこんでやっていたのだろう。まあなんとも、仲の良いことである。

 

「一般論だしお節介だけれど、プラモデルというのは作らずに渡したほうがいいと思うわよ」

 

「いや、渡すのはプラモデルではありませんよ」

 

「……プラモデルを買いに行ったのではなかったのかしら?」

 

「行きましたよ。必要だったので」

 

 よくわからん。まあ好き勝手にやらせておこう。

 なんとなく、東条ハナはそう決めた。




Q.なんでジ・O好きなの?
A.単純な構造で強い。あと謎の爆発力で死ぬあたりにシンパシーを感じてる

55人の兄貴たち、感想ありがとナス!

Yanbel兄貴、グラスワンダー担当兄貴、ナカミネ兄貴、tanu2兄貴、評価ありがとナス!

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アフターストーリー:欣喜雀躍

原作(史実)風味スカーレット


 スピカとの合同合宿と言っても、そう長いものではない。ほんの1ヶ月程度なものである。

 管理主義の精華と放任主義の精華とでは水と油、鰻と梅干。そんな考えもあっただけに、この2チームの合同合宿がいかなる顛末を迎えるか。そのあたりは、多くの学園関係者に注目されていた。

 

 スピカのウマ娘たちも、これまで信頼して付いて行っていたトレーナーがまさかの離脱をしてしまっただけに、不安がある。

 合同合宿をするという点に異論はない。学べることが多いと喜んでもいる。しかしそれとこれとは別なのだ。

 

 つまり、期待してもいるし、不安でもある。

 そんな中でストレッチなどを終えて集合時間5分前にリギル専用レースコースにやってきたスピカのメンツは、待っている6人の立ち姿を見て小走りで駆け寄った。

 

 6人。あれ、5人じゃなかったかな。

 そんな思いで、遠目から見る。

 

 芦毛。

 鹿毛。

 栗毛。

 栗毛。

 黒鹿毛。

 

 そして、芦毛。栗毛とうそでしょトークを繰り広げている、見慣れた長身。

 それがぬるりとこちらを向く。

 

「お、マックちゃん。ぐっもーにん」

 

「……少し、失礼しますわ」

 

「ああ」

 

 そんなふうに律儀かつ礼儀正しくこの場の責任者――――芦毛――――に許可を得て、メジロマックイーンはゴールドシップの腕を引っ張って引き寄せた。

 

「……おはようございます。で、なんでゴールドシップさんがここにいますの?」

 

「そりゃおめー、合同合宿だからよ」

 

 何言ってんだマックちゃん……サボる気だったのか?

 そんな常識を疑うような眼で見てくる常識を壊滅させたような仲間を見て、メジロマックイーンはピキッときた。

 

 しかし心の広いメジロ家のお嬢様。疑うような常識の持ち合わせがない相手に常識を疑われても華麗にスルーした。

 

「どうやって来ましたの?」

 

「ワープ航法」

 

「用事があるから行かないぜ、とか言っていませんでした?」

 

「ゴルシちゃんは宇宙に行く予定があるって言っただけだかんな」

 

 他人を待たせている。それだけに、ツッコミ切るには時間が足りない。

 そのことをよくよく承知しているだけに、マックイーンは身体に秘めたツッコミ気質の鋭鋒を納めた。

 

「遅れまして申し訳ありません、東条トレーナー」

 

「いや、やることがあったからこちらが早く着いていただけだ。遅れたわけではないさ」

 

「で、その……ゴールドシップさんがなにかこう、変なことをしませんでした?」

 

「いや、まったく」

 

 あの人は確実に変人ですが、悪い人ではありませんの。

 それは、そう続けるつもりだったメジロマックイーンの想定を覆すような答えだった。

 

「まったく?」

 

「ああ。柔軟中は真面目にやっていた。その後は確かに話してはいたが話していることにも中身があったし、無駄話をしていたわけではないのだから、特に変というわけでもない」

 

 うそでしょ……と。

 背後でそんな声が聴こえたが、ひとまずマックイーンは胸をなでおろした。

 

「そうですか……ともかく、これから1ヶ月間、よろしくお願いいたしますわ」

 

「ああ。まず方針として、俺のやり方は提示する。だが別に、常に守ってくれとは言わない。やり方が違うだろうからな。だが、練習をやめろと言ったらやめる。切り上げろと言ったら切り上げる。これは守ってもらう」

 

「わかりました」

 

 生来の愛嬌の無さも相まって、それはやや高圧的な物言いと取れなくもない。

 だがマックイーンにしても、自分たちの怪我が多いがためにトレーナーに負担をかけていたことを知っている。

 

 ――――沖野さんの教え子に怪我をさせるわけにはいかないからな。俺はマージンをとって、あまり限界を攻めないから物足りなく感じるかもしれないが、守ってくれ

 

 そういう内心を察し切れたわけではないが、メジロマックイーンは納得していた。

 

「では、はじめようか。テイオーはルドルフに先行策の何たるかを教授された後にプールトレーニング」

 

「だそうだが、テイオー?」

 

「やるやる! やるよ!」

 

 モヤモヤテイオーがニコニコテイオーに進化したのを見て、シンボリルドルフはくすりと笑った。こうも無邪気に慕われると、やはりこみ上げてくるものがある。

 

 その後もブライアン=ウオッカペア、ブルボン=ダイワスカーレットペア、サイレンススズカ=スペペアなどに括られて練習メニューが投下されていく中で、早速シンボリルドルフはレース場の邪魔にならない隅っこに座って教授をはじめた。

 

「まず、テイオー。強いウマ娘が必ずと言っていいほどに持つものは、何か。すなわちレースにおいて必須なものは何か。わかるかい?」

 

「領域、かな?」

 

 目覚めたものと目覚めない者とでの残酷なまでの格差を、トウカイテイオーは知っている。

 GⅠを制覇できたウマ娘はたいてい、領域を発現している。一方でGⅡ大将のような娘は、発現していない。

 

 領域に目覚めたから、勝てたのか。

 勝てる実力があるから、領域に目覚めたのか。

 

 それは卵が先かニワトリが先かというのと同じくらい、難しく答えの出ない問いである。

 

「領域もその一種だが、そうではない。もっと大きな視点で見てごらん」

 

 なんだろうと、トウカイテイオーは思った。そしてにぎやかな彼女には珍しく沈黙した。

 そしてそのあたりを察してか、再びシンボリルドルフが口を開く。

 

「それは、勝ちパターンだよ」

 

 出せば勝てる領域を発動させるために動くのも、勝ちパターンだと言える。

 

 ミホノブルボンであれば、1ハロンごとのタイムを策定し全体でレコードを出せるように走るのが勝ちパターン。

 サイレンススズカであれば、序盤から先頭に立ち突き放しつつ最終コーナーで更に突き放すのが勝ちパターン。

 ナリタブライアンであれば最終コーナーまで息を潜め、大外から捲っていくのが勝ちパターン。

 

 そしてシンボリルドルフの場合、それは先行して相手の勝ちパターンを潰して自分の負け筋を埋めていき、安全になったときに少し抜け出すというものだった。

 

 トレーナーが領域などのよくわからないものを信じない質であるからか、基礎スペックで暴力的に勝つのがこのリギル分艦隊のスタイルであった。

 

「ボクの場合は先行して好位置を取り、そこから領域を接続、加速して差し切る……」

 

「そうだ。では、レースに勝つには2つの方法がある。なにかわかるかい?」

 

「……ひとつは勝つ為に動くってことだよね」

 

 トウカイテイオーはいかにもなスターである。

 主導的で、攻撃的で、自分で状況を構築していくタイプ。

 

 そしてそれで勝ってきただけに、逆から見た思考の持ち合わせは少なかった。

 

「そしてもう1つは負けないために動く、ということだよ。私達の場合、トレーナー側が負けないために動き、ウマ娘側が勝つために動く。これは私達にとって、両輪のように欠くべからざるものだ」

 

「でもそれ……」

 

「そうだ。君のような爆発力で勝負するタイプには、合わない。負けないようにすることにまで気を回すと、うまく点火しない恐れがある」

 

 だからこそ、それを沖野トレーナーは教えなかった。レースという短い時間の中で周囲を見渡し気を回しすぎることがどういう結果をもたらすかということを、彼は知っていたからである。

 

 つまり、思考を単純化して長所を伸ばし、伸ばした長所で勝ちパターンを通す。それがスピカの基幹戦術。

 背中合わせでほぼ完璧に役割分担しているリギルに反して、同じ方向を見た共同作業のような形である。

 

 総括して、スピカのウマ娘は気質が単純でありながら頭の回るところのあるスペシャルウィーク以外は、そういうタイプだった。

 

 スペシャルウィークは、テストの点数が悪い。破滅的と言っていい。しかし頭の巡りは悪くない。機転が利く、というのか。

 現に自身のトゥインクル・シリーズにおける最終レースで、彼女はグラスワンダーに対して負けない手を打った。

 

 負けない手というのはつまり、相手の勝ちパターンを封じることである。

 グラスワンダーの勝ちパターンはマーク相手の後ろにつき圧をかけて消耗させながら最後に差し切るというもの。

 

 スペシャルウィークは、それをさせなかった。グラスワンダーの後ろに付き、自分の勝ちパターンを崩しても相手の勝ちパターンを潰しに動いた。

 

 まあ結局負けたわけだが、天敵と呼べるグラスワンダーに対してハナ差まで持ち込んだのはそういうわけである。

 

 本能的に、悟ったのだ。自分の勝ちパターンにとってグラスワンダーの勝ちパターンは天敵であり、どうやっても勝てないということを。

 その結果沖野トレーナーと相談して生まれたのが、自分の勝ちパターンを捨てることでグラスワンダーの勝ちパターンを捨てさせるという相殺の策。

 

「君が負けないために動く姿は想像できない。だが、こういう勝ち方もあるのだということを、知っておくだけでもいい」

 

「うん」

 

「君のやり方は未熟だが戦理に適っていた。本来先行脚質のウマ娘はレースの中央に位置し、全体を俯瞰し支配する力を持っている」

 

 ――――だから私は、まず相手の勝ちパターンを潰す。

 

 シンボリルドルフは優しい師父のような表情を《皇帝》と言うべき覇気のあるものに変えて、そう言った。

 

「何故か。それは、相手の勝ちパターンを潰しさえすれば最悪でもスペック勝負に持ち込めるからだ。スペック勝負に持ち込めれば――――即ち負けないための戦いに持ち込めれば、私たちが勝つ」

 

 負けないことに特化した影のような男が、背中を守ってくれているから。

 その確かな信頼を感じて、テイオーはちょっとだけ妬いた。自分の尊敬する人が無邪気に信頼を預けている男を見ると、なんとなくもやりとする、というのか。

 

「しかし君は、逆だろう。そのやり方を教えよう。頭の働く朝の内に教えて、それからはプールでトレーニングだ」

 

「……うん! ボク、頑張るよ!」

 

 リギルは、座学を重視する。

 そう言われる所以、象徴のような授業を皇帝が自ら行っている中、無論走ることによるトレーニングをしていた者たちもいた。

 

「よっしゃあああ! 勝ちだ!」

 

 ウオッカが叫ぶ。

 実戦を経験してなにか一皮むけた感じのある彼女は、ライバルのダイワスカーレットにここ数週間勝ち続けている――――というと語弊があるが、勝ちが先行している。

 

「あああ!! 負けたぁー!」

 

 悔しさを前面に出すダイワスカーレット。彼女はライバルなだけに、そして同じチームで同室なだけに、ウオッカがメキメキと力を付けつつあることを知っていた。

 

 ――――2000メートルであれば、10分割。2400メートルであれば、12分割。走るレースを1ハロンごとに分割してその中でレコードを更新し続ける

 

 その走法が、彼女の理想。しかしその理想に近づくにはなによりも実力が足りない。

 

「どうだ?」

 

 メジロマックイーンとゴールドシップの併走にあれこれ注文をつけていた男は、一区切りをつけてやってきた。

 その後ろからはなんとなく、2人の芦毛ウマ娘が付いてくる。

 

「アンタが教えてくれた息を入れるやり方を教えたところだ」

 

「それだけであれか。やはり非凡だな」

 

 ウオッカ。爆発力を持つ危険人物。

 将来府中マイルウマ娘星人が攻めてきたら迎撃に出そうと決めている、そんな素質を持つウマ娘。

 

(よし、今度はエアグルーヴに指揮させて3人で潰そう。勝ちパターンを潰し切れば負けることはないはずだ。あとは地力でなんとでもなる)

 

 そんなことを思われていることも知らず、非凡と褒められたことに耳をピコリと動かして胸を張る――――ターフに寝転んでいるから微弱な動きでしかないが――――ウオッカに比べて、連敗を重ねているダイワスカーレットの表情は暗い。

 

「ブルボン、彼女はどうだ」

 

「善戦していますが、基礎的なスペックの不足を確認。坂路トレーニングが必要です」

 

「確かにそうだ。だが……」

 

 ぺらぺらと、沖野トレーナーからの引き継ぎ資料を捲る。

 

(そうもいかない)

 

 脚が脆いというわけではない。ただ、熱を持ちやすい。そう書いてある。

 つまり屈腱炎とか、そういう外的な要因によらない病気になりやすい。そういうウマ娘を坂路漬けにするのはよろしくない。

 

 しかしそうもいかないと口に出せば、故障の懸念を伝えてしまうことになる。

 

「工夫でなんとでもなる」

 

「何か考えがお有りですか、マスター」

 

「それだけが取り柄だからな」

 

 こちらの話を聴いていたであろうダイワスカーレットがむくりと起き上がったのを見て、手招く。

 

「ダイワスカーレット。勝ちたいか」

 

「はい……!」

 

「では、よく聴け」

 

 はい、と。

 返事をせずに即座に傾聴姿勢に入るあたり、勝利に飢えているのがわかる。

 

 そんな彼女に左手を突き出して、東条隼瀬は指を鳴らした。

 

「これと」

 

 ついで、右を鳴らす。

 

「これ。音の違いがわかるな。高い方が左、低いのが右だ」

 

「え、はい。わかりますけど……」

 

 【右は5秒加速。左は5秒減速。聴いたらそう動け。最終コーナーにきたら、好きに走れ】

 

 ウオッカの耳に入らないようにメモ帳に書いたその文面を見せ、閉じる。

 

「そして、振り向くことは禁止。そうすれば、ハナ差で勝てる」

 

「わかりました!」

 

 たぶんわかってない。

 だがまあ、やることをやってくれればそれでいい。

 

「ウオッカ、もう一本併走だ」

 

「おう!」

 

 くるりと立ち上がったウオッカが自信満々と言った感じにゲートに立ち、パンと拳と掌を打ち付ける。

 

 やる気十分といった感じのウオッカに比べて、ダイワスカーレットは少し首を傾げながらゲートに入った。

 

 2人がゲートに入り、ほどなく。

 ガコンという音がして、ゲートが開いた。やはりスタートからハナを切るのはダイワスカーレット。このウマ娘のスタートの良さは、天賦の才がある。

 

 そんな彼女の耳に、左の音が届いた。

 

(え、減速?)

 

 どういうわけ?と。

 心の中の優等生の中身が呟くが、ダイワスカーレットはおとなしく減速した。

 

(ウオッカに早めに差されるんじゃ……)

 

 だが、一向にやってこない。

 最初のコーナー付近で、パチンと右が鳴った。

 

(加速ね)

 

 ちらりと、レース中特有の広がった視界にウオッカの焦ったような顔が映る。

 

(焦ってる……? なら、このまま突き放してやろうかしら)

 

 瞬間、左が鳴った。減速の合図である。

 ここで突き放しておいた方がいいに決まっている。そう思いつつ、優等生なダイワスカーレットは従った。

 

(あー! 振り向きたい!)

 

 そう思う。ウオッカを見て、対応して動きたい。それができない、このもどかしさ。

 しかしもどかしいからと言って、やるといったことを翻すわけにもいかない。

 指揮をしてくれているのは倒れた彼女のトレーナーがわざわざ頼んでくれた、当世随一のトレーナーなのである。

 

 その後もいくつかの指示を受け、ダイワスカーレットはその都度忠実にその指示を守った。

 

 そして、最終コーナーがやってくる。

 

(私が1番! 私が1番!)

 

 念じるようにそんなことを思いつつ、全力を出して踏み込んで加速する。

 

 その途端、ダイワスカーレットは心中で首を傾げた。

 いつもよりも、脚が軽い。心も軽い。おそらく心の方はああせいこうせいと言われずに好きに走れるからであろうが。

 

 ともかくダイワスカーレットは走った後だというのに、近頃ないほど快調なラストスパートに打って出た。

 即座にウオッカが末脚を爆発させ、開いた差を埋めにかかる。

 

 5。

 4。

 3。

 2。

 

 そして永遠に感じられた長い直線での1バ身を詰め、詰め切りかけたところがゴールだった。

 

 負けた。

 そのことは、詰め切れなかったウオッカが一番よくわかっている。

 その悔しさを表に出そうとした瞬間、ライバルの感情が爆発した。

 

「勝った! 勝ったでしょアタシ! アタシが勝ったわ、今の!」

 

 負けが込んでいたライバルに勝った。

 そんな感情の爆発と共に、丁寧語の優等生が明後日の方向に飛んでいく。

 

 その情けないロケット花火の断末魔のようなヒューッと言う音を、ウオッカは確かに聴いた。

 

「スカーレット」

 

「なによウオッカ! アタシの勝ち! 勝ちなんだ……」

 

「本性」

 

「か……ら」

 

 巻かれたネジが回り切った人形のように、ピタリとダイワスカーレットの嬉しさの舞が止まる。

 ミホーッとしているブルボン、後ろを向いて肩を震わせているブライアン、何故かビデオを回しているゴールドシップに、感情の爆発を微笑ましく見つめるマックイーン。

 

 そして。

 

「……喜んでいるところ悪いが、種明かしをしていいか」

 

「……はい。お願いします、東条トレーナー」

 

 スカーレット。お前、まだそれやるの?

 ウオッカは、反射でそう言いかけて口をつぐんだ。後が怖かったのである。




Q.なんでこいつ現場指揮取れるの? 進化した?
A.してない。答えは次話。

86人の兄貴たち、感想ありがとナス!

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アフターストーリー:蹇蹇匪躬

「で、何をしたかだが……まず、ウオッカ。お前、脚が余っただろう」

 

 脚が余る。つまり溜めていた末脚を爆発させ切れなかった。

 その言葉の意味するところを察して、ウオッカはすぐさま頷いた。

 

「それはなぜか。ダイワスカーレットにペースを乱されたからだ」

 

 基本的に、ダイワスカーレットの走りというのはスタートした瞬間からゴールまで全力である。

 無論スタミナが持つように調整するだけの頭はあるが、基本的に全力全開で突き進む。

 

 ウオッカは、途中で減速したダイワスカーレットと言うのを見たことがなかった。だからこそ戸惑い、そして戸惑った自分を認識して埒を明けようとした。

 

 この場合取れる選択肢は2つ。

 減速したダイワスカーレットを追い越してしまうか、あるいはダイワスカーレットに合わせて脚を溜めるのか。

 

 追い越してしまうという選択肢を、ウオッカは取らなかった。というより、取れなかった。彼女たちの併走とはつまり、ダイワスカーレットが前を走り、そしてウオッカが後半差す。そういったものだったからである。

 

 つまり、前に行ってどうするかという具体的なビジョンを描けなかった。

 ただでさえ、ダイワスカーレットの減速という謎の事態に見舞われているのに、その謎の上に仮定を乱立させることはできない。

 

 そう判断して、ウオッカはコーナーで減速していつもより詰まった距離を元に戻した。戻そうとした。

 しかしその瞬間に加速されて、減速したウオッカは唐突な再加速を余儀なくされた。

 

 ダイワスカーレットは減速した後も本能的にゆるやかに加速を続けた。加速からの減速にしても5秒の間、ゆるやかに速度が推移した。

 

 静から動へ、動から静へ。

 激しい変化を強いられたウオッカは、この時点での不利を悟った。

 

 これまでは、逃げるスカーレットは自分を振り向いていた。見ていた。いつ仕掛けるのか、いつ仕掛けるのかと自分に問うてきた。

 即ち、ウオッカは主導権を握れていた。だが振り向きもしないこの場合、主導権はあちら側にあるのだと。

 

「お前は乱されたペースに付き合うと自分に不利に働くと知っていたから、距離をとって眺めることに徹した。だがそれこそが、こちらの狙いだったのだ」

 

 ダイワスカーレットとウオッカの距離は、いつもよりも大きく開いた。そしてそのリードを保ったまま、ダイワスカーレットは脚を溜めることができた。

 

「……ってーと?」

 

「脚を溜めるというのは、なんの為にやる」

 

「そりゃ、ラストを全力で走るためだろ」

 

「その通り。つまり自分の最高速度を出せるが、それ以上は出ない。しかも併走だ。展開の紛れがないから予想もしやすい」

 

 ラストにおいては、逃げウマ娘より差しウマ娘はいくらか速く走れる。

 そのいくらかがリードを埋め切る前にゴールするのが、逃げというものの勝ち方である。

 

 ならば、その速度差で埋められないだけの距離を作ってしまえばいい。

 

「つまりお前は、直線に入った時点で負けていた。差しウマ娘の勝負は最終直線だからつまり、戦う前に負けていたということだな」

 

「なるほどなぁ……」

 

「お前みたいなバカみたいな差し脚を持っているやつをまともに相手にするトレーナーはいない。何かしらの勝算があって動いてくる」

 

 まるきり犯行予告である。

 

「脚を封じる。余らせる。囲む。消耗させる。対策はこの4種に大別されるが、実際の方法はこの十数倍もある。全てに対策することは不可能だが、知っておくことは損にはならない。ともあれ、臨機応変に動くことだ」

 

「わかったぜ!」

 

「で、ダイワスカーレット。窮屈だと思うが、よく走ってくれた。性には合わないだろうが、逃げというものはああして引きつけながら距離を徐々に離していくというやり方もある」

 

「はい。学ばせていただきました!」

 

 優等生スカーレットが謹厳に返事したのを見て、隣のウオッカが噴き出す。

 その流れでいつものようにやいやいやり合い出した2人を、メジロマックイーンは少し驚いたように見ていた。

 

「あのひと」

 

「おおん?」

 

「現場指揮もできたんですわね。思わぬ収穫でしたわ。音に注意を払わなければ……!」

 

 情報を抜かれるだけでなく抜き返してやろう。

 そんな責任感溢れるマックちゃんをしれーっとした目で見て、ゴールドシップは両手を後ろに回しながら笑った。

 

「ちげーよマックちゃん。スカーレットのスタート見たらわかるだろ」

 

 ダイワスカーレットは、スタートがいい。抜群である。

 そのスタートのうまさは気性――――私が1番、という――――によるものだが、それだけではない。

 

「普通のウマ娘は眼で見てスタートを切るけど、スカーレットは音でスタートを切ってる。音を感じる速度が他よりはえーんだよ。だからアレの判断の若干の遅さを補えてる。んでもって2人立てのレースだから紛れが起こらず選択肢が少ないから予測もしやすい。だからできてんだ」

 

「……あなた、頭がいいんだかなんだかわかりませんわね」

 

 偽情報を掴まされかけたマックイーンは、それでもめげずに彼の指導を見ていた。

 

 

 翌日。

 

 

 翌日もまた、この2人の併走はウオッカの勝利ではじまった。

 

 ウオッカの宿題のようになっていた、引きつけながらの逃げの対応策。

 それはあくまでも自分のペースで動く、ということ。

 

 超ハイペースなら、追込。

 ハイペースなら、差し。

 スローペースなら、先行。

 

 ――――自分は、差しウマ娘だ

 

 そんな意識の強かったウオッカはあっさりとその思考の縛りを捨て、後に常識破りの女帝と呼ばれるようになる柔軟さを見せていた。

 

 引きずられることなく状況に流されることなく柔軟に対処し、ダイワスカーレットを逆に引きつけて一時逃げのような形になりながらも最後は差し切り。

 

(メキメキと、成長していますわね)

 

 アオハル以前は、ダイワスカーレットの方が強かった。それが今ではウオッカの方が強い。

 肉体的な性能ではなく、なんとなく視野が広がった。選択肢が増えた。そして今も増えつつあり、強くなっている。

 

「逃げで勝つならば、まず何よりも圧倒的なスペックを持つことだ。しかしまだ本格的にトレーニングを積み始めるには早い。今はとにかく、手札を増やす。これしかないだろう」

 

「どうすればいいですか?」

 

「……そうだな。陳腐な手だが」

 

 次のレースでは、ダイワスカーレットが勝った。

 

 これまで通り、ダイワスカーレットは付かず離れずの距離でウオッカとの距離を保つことに腐心する――――と思いきや、昔のように一気にスタートを切って突っ走る。

 そしてウオッカは待ってましたとばかりに勇躍して追跡し、自分の得意とする差し脚質の本領というべき距離を保ちつつダイワスカーレットを追跡する。

 

 そして、異変が起こったのは第3コーナー。

 その付近でダイワスカーレットは頭を下げてやや減速しながら走りはじめた。

 

 果たして、ウオッカは差しきれなかった。少し目を凝らすような挙動の後に無理に上がっていき、そして脚を使いすぎて差しきれなかったのである。

 

「ゴールドシップさん。今の、なぜああなったのですか?」

 

「ウオッカは今前を走るスカーレットとの距離を把握することを意識してる。自分のペースで走りてぇからな」

 

「ええ」

 

「スカーレットの髪は、その距離感を掴むのにちょうどいい。どんな感じに揺れてるのか。どう見えるのか。それで距離感を大雑把に掴んでペースを上げてるのか下げてるのを見て取って維持してた。アイツ、それを見抜いて潰しに来たんだろ。いかにもスパートっぽい体勢をスカーレットに取らせつつ減速させて脚を溜めさせて、ウオッカを騙して早期に仕掛けさせる。んで最後に溜めてた脚を使って逃げ切った」

 

「……よくもまあそんな使い勝手のいいペテンをポンポンと思いつくものですわね」

 

「今のは多分二度は通じないんじゃねーかな」

 

 その通りである。

 事実この日は勝ち逃げしたダイワスカーレットは翌日あっさりと負けた。

 

 ウオッカが勝つ。

 対策してダイワスカーレットが勝つ。

 対策を対策してウオッカが勝つ。

 対策を対策した対策を――――と。

 

 そんなふうに繰り返されていく合宿の中で、メジロマックイーンは気づいた。

 ダイワスカーレットが、普通に勝ち始めている。それも、自分で考えて。

 

(なるほど、思考の幅を与えたのですか)

 

 何個か策を与えた。そしてダイワスカーレットはそれを実行して勝った。

 無論その後はウオッカに負けるというのが続いたわけだが、今や連勝するのも珍しくはない。

 

「スカーレット。今のは良かった。組み合わせの妙だな」

 

「はい!」

 

「だが組み合わせを工夫するだけではいずれ限界が来る。定期的に自分で新しいやり方を考えて、実行に移すんだ。別に失敗してもいい。失敗したこと自体を後に活かせばいいし、失敗したとしても不意をつければ勝ち目もある。ウオッカが策の一発目で負けるのは、何よりも思考の死角を突かれたからだ」

 

――――相手がどう考えるのか。どう動きたいのか。そこらへんを洞察してから、レースを組み立ててみるといい

 

 そんなふうに〆た言葉に元気のいい【はい!】を返し、練習後は過去のレースを見返しにかかるダイワスカーレット。

 練習したあとも練習しようとする生粋の脳筋であった根性属スカーレットは、脚を休ませつつ別な面から強くなれる方法を自ら知った。

 

「使い勝手のいいペテンを組み合わせられるようにしたわけですか」

 

「そゆことじゃねーの」

 

 あとはたぶん沖野トレーナーに切り替わったときに彼の心労を減らすために無茶練でない――――脚を使わない練習というのも教え込んだのだろうと、ゴールドシップは考えていた。

 そしてそれは事実であった。狂人じみた言動の中でも輝く明哲な知性は、まさしく東条隼瀬のやろうとしていることを見通していたのである。

 

「それにしてもゴールドシップさん。よくもまあそんなに意図を察せますわね」

 

「……ああ。実はな」

 

 急にシリアスになった空気を察してなんとなく身構えるマックイーンを相手に、ゴールドシップはボソリと続けた。

 

「ゴルシちゃんは天然の人造ウマ娘なんだ。シンボリエレクトロニクスの試験管の中で【タンショハチョウショ、チョウショハタンショ】という呪文を聴きながら……」

 

「へー、そうなんですわね」

 

 割といい性格をしているマックイーンは隣の不沈艦の謎の言説を華麗にスルーしながら頭を回す。

 

 ――――お祖母様はある程度距離を取ることが必要だと言ってましたけれど

 

 もっと積極的に連帯していけばいいのではないかと、メジロマックイーンは思った。合宿がはじまってからというもの、東条隼瀬は実によく指導してくれている。

 普通ならばライバルチーム相手にはどこかに弱点を作ろうとか、長所を潰そうとかいう思惑があってもおかしくないのに、徹頭徹尾自分たちのために動いてくれている。

 

 原石というべきウオッカとダイワスカーレットには、新たな面の開拓を。

 完成しつつあるスペシャルウィーク、メジロマックイーン、トウカイテイオー、ゴールドシップには無駄を無くすような研磨を。

 

 こういう私心のない人物とは、本格的な友誼を結ぶべきではないのか。

 メジロの次期当主は、メジロライアン。その補佐役になるであろうマックイーンは、より良い未来のためにそう思った。

 

 ――――私心がないから躊躇いがない。だから怖い

 

 百戦錬磨というべきメジロのお祖母様ならそう言うであろうが、少なくともマックイーンはそう思った。

 

(不敗のトレーナーとして名声がある。私たちを鍛えてもなんの利益もない。その名声を損なう可能性しかないのに、本気で行う)

 

 彼は、素晴らしい人格をしている。

 

 出世する。実績を作る。それと共に志を忘れる者が多いことを、名家の生まれであるメジロマックイーンは知っていた。

 

「ありがとうございます」

 

「うん?」

 

「あの二人に、適切な指導をしてくださって」

 

「お前たちがどう思っているかは知らないが、代理とはいえ今のところ俺はお前たちのトレーナーだからな」

 

 そりゃあ本気でやるさ。

 そういった言葉は、沖野トレーナーの人を見る目の確かさの証明でもあった。

 

「貴方にとって損でしかないはずなのに、熱心に指導してくださっている。本来使えたはずの手札を配ってくださっている。感謝していますわ」

 

「損でしかない、というわけではないさ」

 

「情報を取れる、ということですか」

 

 だがそれにしたって、正しく釣り合っているとは思えない。特にウオッカとダイワスカーレット。あの二人の成長は目を見張るものがある。

 

「いや、夢の為にだ」

 

「すべてのウマ娘に幸福を、ですか」

 

「ああ。できるならばすべてのウマ娘が最良の状態でスタートラインに立ってほしい。立てるような環境を作りたい。だからこうして、できるところから頑張っているわけだ」

 

「貴方、思ったより遥かに単純で一途な人ですのね」

 

 そう返したときにやっと、メジロマックイーンは彼の瞳に灯ったその光が何を意味するのかを察した。

 それは、忠誠心。自分がメジロに仕える家人たちから向けられていたもの。しかしその色は、大きく異なる。

 

 光の深さが、色が違う。

 

「なぜ、困難な道をいこうとされるのですか?」

 

「生きる意味と、指針をくれたからだ」

 

 その深い色が殉ずるようなものであることを、メジロマックイーンはこの一言と共に知った。

 理想のために自らを焼き焦がして悔いない程の忠誠と共鳴。

 

 イタリアからはじまりエジプトとロシアを越えても、エルバ島どころか、セントヘレナまで付いていくであろう絶対的な忠誠心。

 

 それを見て、マックイーンは悟った。

 彼は、変わらない。栄光を掴んでも、無敗という伝説を得ても。

 そしてこの変わらなさは、頑なさは、妥協を知らない。連帯する相手が妥協を知らないとなれば、未来はふたつ。

 

 

 従属するか、決裂するか。

 

 

(だからお祖母様は、距離を取ることを選んだ)

 

 メジロが呑まれないために。

 そして、決裂の未来を避ける為に。

 

(そういうことですのね)

 

 人格も信頼できる。

 能力も信頼できる。

 だが、だからこそ連帯はしない。

 

 その方針は正しかったのだと、メジロマックイーンはこの会話で悟った。




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メモリー:4/5/10〜4/5/29

ウマスピで一番好きなトレーナーとウマ娘の掛け合いって

1:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:23:00 ID:iknTPfmou

なに?

 

2:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:23:02 ID:lS3cwLRk2

ルド山と解説員

 

3:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:23:05 ID:qV3yWjEFt

「さあ、いこうか」「万事抜かりなく」

の無敵感好き

 

4:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:23:08 ID:g17NRednc

死ぬほど聴いた

 

5:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:23:10 ID:u/3aPk8o2

残当

 

6:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:23:15 ID:aBUwxDZwJ

正論スレは伸びない

 

7:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:23:20 ID:M18aNPqC1

育成中まるで負けないの芝ですよ

 

8:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:23:24 ID:MbV41nW1q

みんな編成何でやってる?

 

9:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:23:28 ID:iHv4RbUjq

トレーナー完凸新解説員、サブトレ完凸加賀、ウマ娘完凸覇道皇帝

 

10:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:23:32 ID:5ISMqmaNF

テンプレやめろ

 

11:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:23:35 ID:6DeY5QDeW

鬼みたいに強いししゃーない

 

12:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:23:39 ID:ySKU+c+ky

持ってないと冗談抜きに人権がない

 

13:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:23:44 ID:TG0Mihhbp

他はオグリと解説員の組み合わせも好き

 

14:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:23:48 ID:yW/OCyZHE

なんだっけ

 

15:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:23:50 ID:wrc5N7TAq

解説員とオグリってあんま相性よくないから知らんわ

 

16:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:23:54 ID:sJqEHVG34

「む……期待に添えるだろうか」「こういうのが味方だと、安心できるな」

これか

 

17:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:23:57 ID:he2m+YeN8

こういうのってどういうの?

 

18:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:23:59 ID:pW1I/hWvK

このコメント、テイオーと組んだときのセリフかと思ってた

 

19:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:24:03 ID:dOCQodv95

テイオーと組んだときも同じだよな

 

20:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:24:06 ID:sndioponn

テイオーの場合は「ちぇー」「こういうのが味方だと、安心できるな」だな

 

21:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:24:09 ID:HTGaunGFM

解説員の弱点、相性いいウマ娘が少ない

 

22:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:24:12 ID:Xw6NT2Me2

こういうのってどういうことだろ

 

23:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:24:16 ID:7H0UuLau9

まあ相性ゴリ押ししても人権なの鬼だわ

 

24:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:24:18 ID:wEyfBkcBJ

相性ボーナスってステ上がるんだっけ

 

25:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:24:21 ID:XMmlZUCql

そう

 

26:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:24:25 ID:n0n7QE6rk

あと固有スキル以外のスキル発動率が上がる

 

27:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:24:28 ID:7vp4qlfi0

テイオー民はトレーナー沖野サブトレ解説員でやってたな

 

28:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:24:30 ID:nRrg0oTl9

解説員サブトレってどうなん

 

29:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:24:32 ID:J0tI4uSJN

性能落ちるけど沖野トレーナーの弱点ステータス全部補えるからいい組み合わせではある

 

30:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:24:36 ID:Ek5Z8i/Lx

沖野トレーナーの相性のいいウマ娘はたいてい解説員と相性悪いから中和剤になれるしな

 

31:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:24:40 ID:Xjaqyr6l3

スズカさんの無慈悲な感じも好き

 

32:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:24:44 ID:113qYbtq5

「優しく蹴散らしてさしあげますね」「程々にな」

 

33:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:24:46 ID:s1eFZF6k+

優しく(アメリカ壊滅)

 

34:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:24:49 ID:TLv6vLYa1

合衆国こわれる

 

35:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:24:51 ID:oXtnPtMGg

スズカさんは前のバージョンの「走ってきますね」も好きだった

 

36:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:24:56 ID:3hFl/AZES

今回のほうがお上品で好き

 

37:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:25:00 ID:w5zfjc27R

お嬢様感あるよな

 

38:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:25:05 ID:OjhiKcV+G

ロボはどうなん

 

39:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:25:09 ID:lTwzmbUOU

ロボは掛け合いが解説員からはじまるレアケース

 

40:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:25:12 ID:Nc4PhDBEa

解説員基本受けだもんな

 

41:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:25:16 ID:UOS0MCbp1

「いくぞブルボン」「はい、マスター」だっけ

 

42:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:25:19 ID:mR71z6bsj

シンプル・イズ・ベスト

 

43:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:25:23 ID:flDbkTGCb

これは解説員のラジコン

 

44:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:25:26 ID:T7pMC7NQ7

スレタイとはズレるけどサブトレ時の解説員が妙に慇懃なの芝

 

45:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:25:28 ID:jXByfbF9E

思ったより遥かに礼儀正しかった

 

46:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:25:31 ID:c7AG1+RSn

ブライアンとの掛け合い楽しみ

 

47:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:25:36 ID:ED8sgOvhT

短くなりそう

 

48:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:25:39 ID:jhSfn/TBP

ブライアンは魔物枠だろうな

 

49:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:25:43 ID:ZlQQDQpyD

ネイチャと組んだときの解説員面白くて好き

 

50:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:25:46 ID:q8t5ZEr7e

「ぼちぼちいきましょー」「やりやすいな、伏兵というのは」はナチュラル畜生感ある

 

51:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:25:50 ID:d1xPCiAND

まあ解説員からすれば伏兵の方がやりやすいだろうね

 

52:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:25:53 ID:u8Qkel7hT

解説員は相変わらず逃げと組んだ時の性能がおかしい

 

53:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:25:57 ID:GQst2Jj3p

それはそれとしてルドルフと組んだ時の相性の良さが異常

 

54:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:25:59 ID:mCV3wdYyz

二人で組むと他のトレーナーとウマ娘のスキル完封できるの鬼

 

55:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:26:03 ID:rCslDnq55

それよりもなによりもテイオーの性能の乱高下がすごい

 

56:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:26:06 ID:pnfuceW99

怪我しまくるからね

 

57:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:26:09 ID:QVK4CsEBK

ダービーの後がステは一番強かったんだっけ

 

58:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:26:14 ID:i38ZdANiw

そう

 

59:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:26:16 ID:b5UfkjHTT

ダービー後と有馬記念後にアプデが恒例だから去年の有馬後アプデではテイオーもっと強くなると思ってた

 

60:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:26:19 ID:olU3cZOTR

去年のテイオーはスキルが強くてステータスが抑えめだった

 

61:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:26:23 ID:+7j0s4VFi

歴代ルド山で1番弱いのはダービー後初実装のときだろうけど、一番強いルド山どれ?

 

62:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:26:27 ID:F+j4eV0qM

4連続でシービーぶちのめして、有馬記念でミホシンザンを大差で叩きのめしたあと

全脚質封殺可能なのエグい

 

63:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:26:29 ID:bD9OsilC2

タイムスリップピックアップしてほしい

 

64:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:26:33 ID:29O32Z3hj

あのときのルド山ほしい

 

65:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:26:38 ID:/3XGlsqpN

生きる黒歴史だからたぶんもう一生ピックアップされないよ

 

66:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:26:41 ID:XVEX/RKmx

あの頃はトレーナーが弱かったから許されてたので……

 

67:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:26:46 ID:7OqO0XvdN

アレオーパーツだから

 

68:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:26:48 ID:6LHbzJiiu

解説員との噛み合いの良さはたぶん運営の想定外なの芝

 

69:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:26:52 ID:T2MojKfsW

さっさと禁止制限かコンビ殿堂にぶち込め

 

70:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:26:57 ID:ymMbitelG

シービーと言えばシービーと組んだときに解説員が「運命、か……」っていうの何?

固有セリフだよね?

 

71:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:27:01 ID:mBfgCtjAC

 

72:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:27:04 ID:x4TBYcY/v

シービーと解説員の親

 

73:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:27:08 ID:ymMbitelG

なるほど

 

74:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:27:10 ID:xVVWczErn

ライバル同士だからね

 

75:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:27:13 ID:RPsV6IGr8

血統意識したコメント用意してくれる運営好き

 

76:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:27:16 ID:clTFju163

それはそれとしてこのカオスとノーカオスしかないみたいなクソ環境何とかして

 

77:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:27:19 ID:eyqL+SlJG

現実準拠なんで……

 

78:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:27:22 ID:GOGwVqvT/

現実はもっとひどいぞ

 

79:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:27:25 ID:5Q75v2PzU

まあなにせ現実の解説員は独立してから4年間負けてないんでね

 

80:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:27:28 ID:oR5tgEqeQ

現実からナーフされてる男

 

81:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:27:30 ID:83BN0m+vs

スキル弾く解説員装備のロボかスズカさんで逃げ切るくらいしかルド山対策ないのほんまクソ

 

82:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:27:33 ID:1WRfix2ZS

じゃあなんですか、ルド山さんと走るウマ娘たちはクソゲーに挑んでるとでも言うんですか

 

83:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:27:36 ID:Njx72FkAr

それはそう

 

84:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:27:40 ID:muzUBicNE

や現ク

 

85:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:27:44 ID:0dGgcCkdZ

長距離だと2連覇後のマックイーンが食らいつけるけどね

 

86:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:27:46 ID:3Bo45hf5x

解説員は短距離とダートに出てこないからバランス取れてる

 

87:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:27:51 ID:tbiYZPQWe

俺短距離とダートが×のトレーナー初めて見たよ

 

88:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:27:56 ID:rhNK9fJUv

×って出走不可だから最低△だったもんな

 

89:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:27:59 ID:ie+4WKJqc

新解説員

ダート×短距離×マイル◉中距離☆長距離◉

逃げ☆先行◉差し○追込△

 

ちなみに☆2個は史上初

 

90:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:28:03 ID:VPzop2Dj6

余計なステータス削った戦闘民族みたいなステ

 

91:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:28:07 ID:uRD5tQl9n

なんで差しがビミョーに高いの?

 

92:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:28:09 ID:ORQDokJsO

ブルボンのメイクデビュー

 

93:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:28:13 ID:GdWNpmE7j

納得した

 

94:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:28:16 ID:meJEgnGmz

というかブライアンで差し追込やってるんだけどどうするんだろ

 

95:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:28:20 ID:kxXbFES09

どうにもならん

 

96:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:28:23 ID:l3QMYvMsY

解説員が出禁喰らって使えないから最適解なくて短距離ダートのウマ娘は工夫を強いられてめちゃくちゃ愛着が湧いてる。

今度観戦に行くわ

 

97:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:28:28 ID:Oq2jLuhl1

バクシーン!

 

98:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:28:31 ID:NkULnZf2O

先月のチャンピオンレーシング短距離部門全員バクフラ固定だった

 

99:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:28:34 ID:TQW3u89Lz

当たり前定期

 

100:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:28:36 ID:n0RKTBKue

これでダートの王が出てきたらクソゲー待ったなしですわ

 

101:尻尾上がり名無し ??/5/10 15:28:40 ID:ry/TzbRS5

バクシンオーもおかしいよ

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

【東京優駿】ナリタブライアンさんの二冠を見守るスレ【日本ダービー】

1:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:h+eX6RRUf

おそらく勝てる

 

2:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:nsXVrpS14

圧倒的1番人気

 

3:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:9AXW9w+hV

ブライアン世代は層が薄い

 

4:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:VUTVhsh13

出たわね

 

5:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:VARwTTWiV

ブライアンが強いだけ定期

 

6:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:S42hR1RkC

でも今のところルド山の同期並なのは確か

 

7:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:9AXW9w+hV

最近の三冠ウマ娘

ミスターシービー←ダイナとかいる、同期強い

シンボリルドルフ←同期弱い

ミホノブルボン←ライスいる、同期強い

 

だから今回は弱い周期

 

8:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:NimTNlIex

オカルトおじさん……

 

9:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:nN5/hCRYy

青葉賞でサクラローレルって娘が強いレースしてたんだけどね

 

10:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:9AXW9w+hV

青葉賞はマズい

 

11:尻尾上がり名無し ??/5/29 15:23:33 ID:UHMub/ODU

サクラローレルって娘は負けたの?

 

12:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:/LVvvtkC7

負けたけど3着

 

13:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:2vp3h/gWF

カノカノしてきた

 

14:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:FtFwSYWI5

3着って優先出走権あるだろ。なんでいないの?

 

15:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:uzJruw8sc

怪我

 

16:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:mpbq4YxdK

まーた怪我か

 

17:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:ZwPOGoqG/

こいついっつも怪我してんな

 

18:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:1L4Aq6C3Z

スピスピしてきた

 

19:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:mV+DOqIYZ

距離限界おじさんオカルトに走ってるじゃん

 

20:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:r2CPNObuN

ロボに裏切られ続けて心が壊れたんだろ

 

21:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:cyb1JS/uC

謎のロボ……

 

22:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:LWLofKO3u

ガシャーンガシャーン、ミホノブルボンです

 

23:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:PLwD4h7uc

でたわね

 

24:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:mm8yxOfSU

全国の寒門のウマ娘の脳を破壊した罪深きロボきたな

 

25:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:N7FtX+QfR

まあおじさんの心が壊れても別にいいや

 

26:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:EEENd5g6/

ひどすぎる

 

27:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:p3NGNsgxS

実際勝てそう?

 

28:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:U4CUuKY9h

勝てそう?よりどうやったら負けそう?のほうが質問として正しいくらいには勝てそう

 

29:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:pruq9baUE

なら安心だね

 

30:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:nSz2Jy9Wg

枠入りはじまったな

 

31:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:mEIvP76wo

どう対策してくるんだろ

 

32:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:NAoYn19m2

内締めるしか無いやろな

 

33:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:aUwPf5BSJ

知っているのかドブカス!?

 

34:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:7GQRBpcu0

前走で裏欠かれたもんな

 

35:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:Zb5NcwD6L

ブルボンの菊花賞みたいな挙動してたよな

 

36:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:IxvCBE1hF

はっきり言って皐月であんな変態機動を行えるブライアンは異常だ

 

37:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:bgyZm7qEx

ナリタ一門の最高傑作だぞ

 

38:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:5AnzLm6EG

ブライアンって大外強襲のウマ娘だから内締めたら負けない?

 

39:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:D1S/4BwPC

解説員に変わってから大外強襲したことないよ

 

40:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:TyAsy0HMs

あー、じゃあしないのかな

 

41:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:kiBgdp8Uq

解説員はブルボンを見るに最短距離進むのが好きだしやらない可能性もある

 

42:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:NAoYn19m2

最短距離進めば消耗防げるからな

ただ相変わらずあんま調子よくないわ

 

43:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:DO9vhWozN

解説員のコメントから見るにたぶん大外

 

44:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:Dai1arOXY

コメントハラディ

 

45:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:ZjBj6qVio

【レースは徒競走とは違う。はじまる前に工夫して、勝つための努力を積んでやる前から勝つ】

【では、今回も秘策がお有りですか?】

【無い。前進あるのみ】

 

46:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:6/3S2vWPg

これは脳筋

 

47:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:s6e01vR4q

解説員の知恵の泉も涸れたかな

 

48:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:NAoYn19m2

んなわけないやろ

 

49:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:J1+4grQ+v

そう簡単に涸れるもんでもないわな

 

50:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:VHPrDpkzy

というか小細工抜きで勝てるってことじゃね

 

51:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:8jZMNiT8C

くるぞ

 

52:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:FeqffkDY4

スタート!

 

53:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:CSfctI84y

きたああ!

 

54:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:jkmvXFsFF

やっぱダービーだよ

 

55:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:Hh4C/Fbn9

ブライアン最後尾じゃないのか

 

56:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:wAFTfq9/m

普通に好位に付けたな

 

57:尻尾上がり名無し ??/5/29 15:26:10 ID:wGOxydL1d

バ群苦手じゃなかった?

 

58:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:EHnaT/KSu

まあ治ったんだろ

 

59:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:1dBu0WwHj

だろうな

 

60:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:zLyi9kOVk

あ、外に振れたな

 

61:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:MCU2W77iN

これ大外から行きますって言ってるようなもんだろ

 

62:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:37Zd056Zp

結局ポツンとするのね

 

63:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:JHp2Er/yl

若干外寄りだな

 

64:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:bvJfjnig4

ブライアンを封じないことには勝ち目ないもんな

 

65:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:oo9SZqrYB

ガチガチに包囲するくらいしないと無理そう

 

66:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:M6GPNEajw

え?

 

67:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:TZQLXdQqZ

は?

 

68:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:jNm3Ok2Bm

おお?

 

69:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:zY2y0fzGH

仕掛けるのはっや

 

70:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:Rc8fi8mcZ

おいおいライスか

 

71:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:3hwNvMLkC

海外3200メートルのレースで中盤1600から仕掛けて残りの距離逃げ切った変態ライス

 

72:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:acfzxgLuh

まあ2400ならいけるのかな

 

73:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:N8n/1hiZ9

3200じゃないもんな

 

74:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:pE2AJERz+

ステイヤーならできそうではある

 

75:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:Cx4fWQqFF

あら?

 

76:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:XS4MFVdiD

下がっていくんかいー

 

77:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:tzzigvkIM

ルド山にラジコンされた娘みたいになってる

 

78:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:lZop0lPDM

仕掛けるんじゃないの??

 

79:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:NAoYn19m2

ブライアンちゃんは仕掛けられると応じちゃう癖があった。だから皐月では最後尾につけてたんや。もう治したみたいやけど

 

80:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:Vnvf2B+Ir

あーそういうことか

 

81:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:mWitDOIOA

また来たな

 

82:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:JFEd5vVzy

おいおい無理だろ

 

83:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:NAoYn19m2

勝ち目を他に用意せんかったんか。いや、スローペースだからやろな

 

84:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:0UM83FLHk

スローペースだと何が悪いんだっけ

 

85:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:NAoYn19m2

スローペースだと後方の末脚勝負になるんや。末脚勝負になるとブライアンちゃんには勝てへん。

ここで掛からせて全体のペース上げて行きたかったんやろうけど

 

86:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:73Snat3RQ

ブライアンちょっと戸惑ってて芝

 

87:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:dLpOReIAx

かわいい

 

88:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:poBEJa8yi

バンカラな見た目なのに顔の作りがかわいい

 

89:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:Cda6CIuja

まあ何してんの?ってなるよね

 

90:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:lU3HzX4zG

解説員は解説してやってないのか

 

91:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:NAoYn19m2

弱点を伝えたら意識させてまうやん

 

92:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:fbd4uIvBh

なるほど

 

93:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:hRKlF8odk

強いわこれ

 

94:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:+WUayD9cv

ものともしないなほんと

 

95:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:RvRbayGo9

解説員ならブライアンに勝てるんだろうか

 

96:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:Zr6RqWVIy

むずそう

 

97:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:rmHMsdp1B

いや尋常じゃないなこれ

 

98:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:CLqaN3Lo0

強い強い

 

99:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:Vg5zKv4Lc

手加減してほしいレベルで力の差があるな

 

100:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:7GGPfZQ4M

お手本みたいな大外強襲

 

101:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:WH34Jz659

スキル弾かれるってリアルでやるとこんな感じなのかな

 

102:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:ZvjdKu/y6

あーかもな

 

103:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:ou8VcnrZ6

ゲームでやることをリアルでやるな

 

104:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:LBW38SnpT

リアルでやれることをゲームで再現した感じなので……

 

105:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:NmqdzfVKr

菊花勝てそうだねこれ

 

106:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:neKAoCRCs

残酷なまでに強い

 

107:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:Xed/0N0Gu

いや、バケモンだわ

 

108:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:fx0BfTovl

シニアでもこんな末脚の持ち主いないぞ

 

109:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:cKvLATTT1

大差勝ちか……

 

110:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:ahXaZrym6

実況:一人だけ違うのか!

アンサー:はいそうです

 

111:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:z+wWveCzf

姉貴これに勝てる? 有馬記念までにもっと成長してそうなんだが

 

112:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:P8wE2scfF

ブルボンとはまた違ったバケモンだねこれ

 

113:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:m0vpNuoJy

最後の捲りクソ面白かった

 

114:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:1M/za9odO

解説員はやっぱ、強いウマ娘に強い勝ち方させるのうまいな

 

115:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:yvz1ZydZn

鬼みたいな末脚

 

116:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:TE37BhJr1

会場の声援ヤバい

 

117:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:fC2OvCFVp

逃げ切りと捲りにはロマンがあるからな

 

118:尻尾上がり名無し ??/5/29 ID:KlJBXVuKY

有馬記念かJCかは知らないけど、シニア勢とのレース早く見たいわ

 




60人の兄貴たち、感想ありがとナス!

炭田兄貴、AS兄貴、sparekey兄貴、青山翠兄貴、自走販売機兄貴、桜海老兄貴、無木 小柴兄貴、評価ありがとナス!

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メモリー:4/5/30〜4/6/12

https://syosetu.org/novel/259565/138.html
から
https://syosetu.org/novel/259565/140.html
まで

おまたせ


【速報】ブライアン次走宝塚記念へ

1:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:32:00 ID:2GnFol4fD

ファミマで今日の朝刊見てビビった

 

2:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:32:02 ID:oguI0Ga/U

マ?

 

3:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:32:04 ID:nLAB61Lbt

え、マジで?

 

4:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:32:09 ID:bRkvksW9c

おとなしく菊花賞かトライアルいけ

 

5:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:32:13 ID:GAVx/rEPE

京都新聞杯じゃないの?

 

6:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:32:17 ID:VGk3LgZNt

マジかよ

 

7:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:32:21 ID:mS9dkmvza

何故宝塚?

 

8:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:32:25 ID:G6BdBG2sJ

ルドルフ以来の器ってことじゃないの

 

9:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:32:28 ID:OyPQHoHEd

あールドルフもやってたな

 

10:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:32:30 ID:RN7uhcxqt

これ解説員が決めたのかな

 

11:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:32:35 ID:vTjO2oV2z

解説員ならハヤヒデとの決戦は有馬記念にするだろ

成長すればBNWに勝てるって分かりきってるだろうし、となると決戦を急ぐ必要がない

 

12:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:32:39 ID:hPrn0np9N

これ久々に痺れるレースだな

 

13:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:32:42 ID:OvnLASjTX

マジで? 無敗3冠逃さない?

 

14:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:32:46 ID:jkErb7rVU

ブライアンはもう2敗してる

 

15:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:32:50 ID:OvnLASjTX

あーそうなんだ

 

16:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:32:55 ID:DYFi4a+bC

宝塚記念って誰が出る?

 

17:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:32:59 ID:ze4KGQIUM

ビワハヤヒデとか

 

18:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:33:01 ID:AREE1QUqs

姉妹対決か

 

19:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:33:04 ID:05weoqHo+

クソ楽しみ

 

20:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:33:08 ID:Qp3Um/kN2

ブライアンは強過ぎたからシニアに殴りこんでくれるのは嬉しい

 

21:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:33:11 ID:N/7QvrBqX

これ勝ったら菊花賞勝確みたいなもんだな

 

22:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:33:15 ID:anXJ2ujbO

これブルボンの持ってるクラシック級までのGⅠ勝利数記録越えるか?

 

23:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:33:17 ID:1Efov1vF6

ブルボンはジュニアで2個GⅠ勝ってるから越えるのは無理。菊花-JC-有馬と勝てば並べる

 

24:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:33:20 ID:3k0Q1nSpG

でもここで宝塚勝てたら並んだとしても実質的には上だよな

 

25:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:33:23 ID:uQepz97JW

まあジュニアGⅠだしね

 

26:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:33:27 ID:joKDXUbBM

うわまじかよ

 

27:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:33:31 ID:m68wKmVXl

これ壊れない?

 

28:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:33:36 ID:noLxnDhQk

壊れないと思ったから出したんだろ

 

29:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:33:38 ID:A2PUBP70J

確かにいい感じに票集めてたけどさ

 

30:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:33:43 ID:J/9g/N/HV

出走登録してたから投票してたけど出るとは思ってなかった

 

31:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:33:46 ID:nXxNCbWUM

マジかよ

 

32:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:33:50 ID:TbjJvxfgq

うそでしょ

 

33:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:33:53 ID:r+hDQx+tZ

今スズカさんの話した?

 

34:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:33:58 ID:MSLHtdvOl

テイオーみたく菊花前で故障して三冠逃すのだけはやめて

 

35:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:34:01 ID:s9kQ8omOH

出れば勝ってたもんな、テイオー

 

36:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:34:04 ID:iA3JPtTC2

怖いの覚醒前のネイチャくらいだもんな

 

37:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:34:06 ID:qzPZhoZGs

ブライアンもテイオーに似た圧倒感あるから怖いわ

 

38:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:34:09 ID:Kz3l90sz+

まあ解説員がなんとかするべ

 

39:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:34:11 ID:By9+wt6fE

これビワハヤヒデ勝ち目ある?

 

40:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:34:15 ID:XwdhLaWDg

逆だろ

 

41:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:34:19 ID:V08W9EO8L

言うほど逆か?

 

42:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:34:23 ID:Izawv2lsF

ブライアン強いけどビワハヤヒデ程じゃなくね

 

43:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:34:25 ID:iRe6qsJwH

いやダービー見なかったのか?

 

44:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:34:27 ID:ZFvkW1kJr

世代が弱いわ、NとWいないじゃん

 

45:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:34:29 ID:oloTE7tKo

NとWの存在を許さないほど圧倒的なんだぞ

 

46:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:34:33 ID:gSpCaEJQb

今はわからんけどブライアン接戦に弱いんじゃない?

確か姉も覚醒する前は弱かったろ

 

47:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:34:37 ID:rHdrTFad5

圧勝しかしてないからよくわからんのよね

 

48:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:34:39 ID:osyfAHEYo

接戦になってないから弱いってのは暴論だろ

 

49:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:34:41 ID:Qj8nX2qp+

姉貴は接戦で負けてたから接戦に弱い扱いされてたのはわかるけどブライアンは言うほどか?

 

50:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:34:45 ID:q45RFdweT

姉妹だから似てるところもあるだろ

 

51:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:34:49 ID:5IozvqiD/

ハヤヒデはスピードあるけど加速が遅いから捉えきれずに負けてた。ブライアンの加速が遅いって見るやつは目が見えてないレベル

 

52:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:34:51 ID:cdRww4KyG

皐月ダービーと瞬発力の鬼だったもんな

 

53:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:34:54 ID:m4aUSkwTi

ハヤヒデファンぼく、泣く。グランプリ取らせてよ……

 

54:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:34:59 ID:IY93lKKOh

前回テイオー今回ブライアンか

 

55:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:35:02 ID:RvC5D5Gqo

相手に恵まれないね

 

56:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:35:07 ID:rxpEJVsJ2

まあ前回の宝塚記念に出るよりは遥かに勝ち目があるから……

 

57:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:35:10 ID:hrOCO1hFb

ファンネル飛び交う地獄と比べたらマシ理論やめろ

 

58:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:35:14 ID:E6EO/ERi+

それ

 

59:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:35:17 ID:btwq7xsu5

実際対策できるの? 後出しジャンケンできると思うんだが

 

60:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:35:22 ID:RcNpLYZNB

内固めれば外から、外固めれば内からだもんな

 

61:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:35:24 ID:5eotbU4Lz

ハヤヒデそういう操作できるのかな

 

62:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:35:29 ID:nAOGQHJN6

春天でやっとったで

 

63:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:35:32 ID:EQ1YDgb1c

ほんまにぃ?

 

64:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:35:34 ID:6FaA0mpRy

マ? 気づかなかった

 

65:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:35:37 ID:nAOGQHJN6

わからんくらいちょっと操作してタイシンちゃんの最短距離を潰しとった

 

66:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:35:41 ID:Q32fx0VDx

偶然じゃないの?

 

67:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:35:45 ID:nAOGQHJN6

トレーナーってのは相手の偶然を実力と思って対策するんやで

 

68:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:35:49 ID:xGPKhFsWm

はえー

 

69:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:35:51 ID:AvXGXsdfk

大変だな

 

70:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:35:54 ID:E/AxG4BtS

で、実際ドブカスニキはハヤヒデが皇帝バリのバ群操作できると思うの?

 

71:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:35:58 ID:nAOGQHJN6

あんなん無理や アホちゃう

 

72:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:36:00 ID:j+ggLfNBA

知ってた

 

73:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:36:02 ID:uYkkKgQiD

もうないじゃん……

 

74:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:36:04 ID:dr3akGFkc

ブライアンと一騎打ちかよ

 

75:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:36:08 ID:O0MwbGfEx

ロンスパなら勝てる可能性微レ存

 

76:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:36:10 ID:nAOGQHJN6

でもそれなりにはできると踏んどるよ

要はどこでどう使うかや

 

あ、さっきのアホはお前らに向けたもんでルドルフさんに向けたもんちゃうで

 

77:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:36:15 ID:6Px6Da7lI

ルドルフなら壁で封殺できるだろうからなぁ……

 

78:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:36:18 ID:vu5kjuUXI

シービーファンの俺、謎の頭痛

 

79:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:36:20 ID:+F9kKVQZU

前が壁!

 

80:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:36:24 ID:iUZvX9wpc

サクラ軍団ファンが死んだ目をしてる

 

81:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:36:26 ID:jvdHWtjUW

ルドルフくんさぁ……みんながひとりで頑張ってるのになんだいそのファンネルは?

 

82:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:36:30 ID:ly5mMIE07

「一騎打ちだと言ったろ……?」とか言わないタイプの人なので……

 

83:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:36:35 ID:KPGQhJSbA

でもそれで負けたらお前ら「なんでもっとファンネルを使わなかった!?」って言うだろ

 

84:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:36:38 ID:SdsSIMCUB

というかファンネルにするならまあまだ許せるけどあいつの場合ミサイルにして対象ごと使い潰すからな

皇帝らしくレースを支配してる

 

85:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:36:40 ID:Ulsq9/cx2

実は何もしてないのにみんなが勘違いして動いてくれているのかもしれない……

 

86:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:36:44 ID:zgnfm77B9

勘違い系主人公ルドルフやめろ

 

87:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:36:47 ID:nAOGQHJN6

ルドルフさんの前にルドルフさんはなく、ルドルフさんの後にルドルフさんはないんやで

 

88:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:36:50 ID:tIMqTX9dY

あんなんが早々居てたまるかという神の声を感じる

 

89:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:36:53 ID:GMlrAVggO

ルド山の長所が頭脳だとしたらブライアンの長所ってなに?

 

90:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:36:58 ID:C3RDm5M8i

末脚

 

91:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:37:01 ID:Ngh91yvzm

位置取り

 

92:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:37:05 ID:P7T3aONzF

末脚かな

 

93:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:37:08 ID:z5cxZ3nPC

末脚でしょ

 

94:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:37:11 ID:SoBUTMrqa

じゃあ姉貴は?

 

95:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:37:15 ID:z+lJ8/ueI

総合力かな

 

96:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:37:18 ID:Ngh91yvzm

頭じゃね

 

97:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:37:22 ID:guKC7UgSJ

総合力が高い

 

98:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:37:27 ID:1wHN20MJK

スピードの最大値が高い。瞬発力あんまだけど

 

99:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:37:31 ID:OBFPFrh3n

実際どっちが勝つんだろ

 

100:尻尾上がり名無し 2022/5/30 0:37:34 ID:xo65/60vF

わからん

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

【姉妹対決】宝塚記念実況スレ

1:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:XRIt5jRiX

【出走表】

1枠1番 インターマイウェイ

2枠2番 ナリタブライアン

3枠3番 ナイスネイチャ

3枠4番 ゴールデンアワー

4枠5番 ダンシングサーパス

4枠6番 ネーハイシーザー

5枠7番 サクラチトセオー

5枠8番 アイルトンシンボリ

6枠9番 アラシ

6枠10番 マチカネタンホイザ

7枠11番 ルーブルアクト

7枠12番 ベガ

8枠13番 ビワハヤヒデ

8枠14番 イイデライナー

 

人気

1番人気ビワハヤヒデ

2番人気ナリタブライアン

3番人気ナイスネイチャ

 

2:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:KYEZbpzVa

ネイチャwwww

 

3:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:QQ5c1Ggms

3に愛され3に呪われし女

 

4:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:8VqxJU5Bu

ネイチャさんは前世で3をいじめでもしたのかな

 

5:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:35R0IjbCq

ネイチャの前世アラビア人説やめろ

 

6:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:uN9KWujtp

ここまで執着されてるあたり3と恋仲だったのかもしれない

 

7:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:qhc/aEQB/

俺達のアイドルが……

 

8:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:nVjrUksgD

3許さねぇ!

 

9:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:DupdbP37w

3はネイチャを幸せにしないと殺す

 

10:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:BEUMw2Fh8

>>9

通報した

 

11:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:s6+UUOi9N

3への殺害予告を通報されても困るだろ

 

12:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:OLWLnKWvf

ハヤヒデの方が人気なのか

 

13:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:Yj9nWLtNW

意外だね

 

14:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:yDtwlz7ew

ほぼ僅差だな

 

15:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:cOjXqlDZN

ビワハヤヒデ外枠だけどどうなん

 

16:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:NgdXUcLlW

逃げの外枠は絶望だけど姉貴にとっては悪くないんじゃないの

 

17:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:vekCoERhq

ブライアンは内枠引く確率高いな

 

18:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:NAoSKY4Eo

外枠は全体のコントロールしやすいからええんちゃう

 

19:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:6NHXvfmlr

そろそろはじまるか

 

20:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:MdIAZ6fl7

ブライアンが勝ち筋通せるか

 

21:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:BY5uVHSVd

この時点ではビワハヤヒデの方が上だろうな

 

22:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:RIQ9Xcwhp

ブライアンはよくわからんくらいの脚でぶっちぎってくるからよくわからん

 

23:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:185ldGXEX

どうなるかな

 

24:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:q2qZ7OSbM

スタート!

 

25:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:mfi2CbrQO

スタートきたぁ!

 

26:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:/EHpi/GLz

ブライアンスタートしくじってないか

 

27:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:NAoSKY4Eo

内枠は閉じ込められやすいから下がったんや

ハヤヒデちゃんとトレーナーはやるつもりだったみたいやし

 

28:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:kbvLZ+ofA

なるほど

 

29:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:w/1q4+xJZ

ハヤヒデは相変わらずスタートいいな

 

30:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:iPEYgOCpw

>>27

なんでわかるの?

 

31:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:NAoSKY4Eo

視線が内をなぞったやろ

先行策取るウマ娘が外枠に置かれると位置取りと衝突回避のために前向くもんや

 

32:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:TZlUKj/hU

はー

 

33:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:2Md4bcruI

確かにそんな視界の動きしてたな

 

34:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:AT7k3Aw3q

ブライアン探してるのかと思ったわ

 

35:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:bCwf3M8UX

それもあるんじゃない?

 

36:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:Ye6msLEP9

ブライアン後方待機か

 

37:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:VEkGinFuW

いつもみたいにポツンとはしてないな

 

38:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:NAoSKY4Eo

流石にそこまで距離開くと差せんのやろ

 

39:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:KBRCQQvpr

なるほど、やっぱり姉貴強いのね

 

40:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:nuoeykJYd

若干ペース速くね

 

41:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:Wq8afH5XY

後続が前行こうとしてないか

 

42:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:NAoSKY4Eo

後ろからプレッシャーが来てるから逃げようとしとる

 

43:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:Nv/hN4q3f

プレッシャー?

 

44:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:ETk5ucJ1n

ブライアンか

 

45:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:G+HLAk20A

クラシック級の小娘に怯えるやついる?

 

46:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:1nOzL7A0T

いねぇよなぁ!とは言えない

 

47:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:x027dz59D

二冠ウマ娘だぞ

 

48:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:sS00w76zJ

というかこの時点でGⅠ3勝してるからこの場の誰よりもGⅠ勝ってる

 

49:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:NAoSKY4Eo

ハヤヒデちゃんが主導権握ったな

 

50:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:kA9AZwtdJ

ブライアンじゃないの?

 

51:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:A9NJJ8dBg

後続圧されまくってるな

 

52:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:XPQaT9bpj

中段落ち着きつつある?

 

53:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:mZASK7nbQ

ルド山みたいに一発で全部支配するってわけにもいかないか

 

54:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:NgAwFtplU

ネイチャポツンとしてるの珍しいね

 

55:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:Ak/sgNB1z

とか言ってたらバ群に入っていって芝

 

56:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:wZjnM/moq

ネイチャさん何考えてたんだろ

 

57:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:ggsbWUUNg

ハヤヒデ外に出たか

 

58:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:qzsreW9LU

好位捨てていいのかな

 

59:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:NAoSKY4Eo

やっぱルドルフさんに似とるわ

それなりに支配できとる

 

60:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:UPiFrSP2x

というかハヤヒデ先行なんだからブライアンに後ろ圧しまくらせてハイペースにすればよかったんじゃないの?

 

61:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:F1Qt3xNBZ

たしかに

 

62:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:5IBBw5lbW

まあ有力な逃げいないしブライアンは追込だもんな

 

63:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:yu1DRokks

ブライアンがハイペースにしようとしてるあたり解説員制御しきれてないのかな

 

64:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:NAoSKY4Eo

現状後ろから圧しまくってもハイペースにはならん

消耗して逆にスローペースになるのがオチや

 

65:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:ryHYZExO/

なんで?

 

66:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:NAoSKY4Eo

前が詰まって好位とれへん

前も詰められて好位維持に足掻く

取ろう取ろうと前半で消耗すると後半結果的にスローペースになるやろ

 

67:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:mmP71StIX

あー

 

68:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:pBWL3dYR1

解説員ってやっぱアレだわ

 

69:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:NuEqoFpPK

こんなんわかるやついる?

 

70:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:4KV5n4lFV

トレーナーならわかるんじゃないの

 

71:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:mAd3N/qkc

ブライアン離されつつあるな

 

72:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:Z9siUVWvX

いいのこれ

 

73:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:Ph1F2Vc6r

まあバ群に包まれるよりは

 

74:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:qCc5Bqg59

ペース上がってない?

 

75:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:li1NlaMyp

ブライアンを突き放しつつ、ハイペースにならない程度に上げてるんだろ

 

76:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:NAoSKY4Eo

リードを徐々にとっていく気なんちゃう

 

77:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:VowplQKKA

 

78:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:t9el+/aEd

ブライアンきたな

 

79:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:NAoSKY4Eo

隼瀬くん仕掛けたな

 

80:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:BeI7jJzJR

ハヤヒデも速度上げた?

 

81:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:3NqDMAEpR

上げたね

 

82:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:gLRVwhU1S

これどうなん

 

83:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:NAoSKY4Eo

隼瀬くんとしては唐突にブライアンがすぐ後ろにいるって感じにして後方集団を恐慌に叩き込みたかったんやろな

 

84:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:lOIuAVnu/

掛からせてぶっ壊れたハイペースにして、自分が本気出す後半にドスローにするためか

 

85:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:FXemsbJh5

鬼畜

 

86:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:neHmX7jJl

でもこれ防いだのか

 

87:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:mRFIQKJGb

やるなビワT

 

88:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:+wrgekMEv

木場ァ! お前は新世代の光だ!

 

89:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:XpDrIipEf

やーっと安定したか

 

90:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:LhM+XTKwa

解説員も手品のタネ尽きたか

 

91:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:GZg4q4QNp

ブライアンに詰められてる後方のウマ娘が死んだ顔しとる

 

92:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:LwfnqzKyz

怖いんだろうねぇ

 

93:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:F9h3X//Cs

というかあんな化け物末脚持ってるやつの近くにいたくないわ

 

94:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:EqG8bGL0D

絶対差されるもんな

 

95:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:g9OxNwHnI

それ

 

96:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:NAoSKY4Eo

隼瀬くん動かへんね

プレッシャーかけ続けることで何が起こるんやろ

 

97:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:M2St8+D5A

そんなこと言わずに解説員の解説してくれ

 

98:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:NAoSKY4Eo

わからへんもん。プレッシャーかけてもハヤヒデちゃんがレース支配してる以上どうにもならんし

 

99:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:3z4tG/dj6

一旦下がってからさっきと同じことすれば?

 

100:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:NAoSKY4Eo

同じように防がれるし消耗がバカにならんやろ

末脚が目減りしてまうで

 

101:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:chcDKK0R3

あー手詰まりか

 

102:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:vCpVZoyK6

もしかして木場ァ!って解説員と同レベ?

 

103:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:NAoSKY4Eo

偽物が本物と同レベなわけ無いやろハッ倒すぞ

 

104:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:1cI/IIVJG

こわい

 

105:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:D/b+K24Jp

でも実際手詰まりじゃん

 

106:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:NAoSKY4Eo

俺に思いつかんだけや

手詰まりなわけやない

 

107:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:URYh29vtz

普通に外に持ち出して末脚勝負でいいんじゃないの

 

108:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:EOwo/tmZX

第3コーナーか

 

109:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:1zG8m3x02

そろそろヤバくね

 

110:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:MLMTaDchL

もしかして解説員負ける?

 

111:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:rId0geiRo

ブライアンは末脚勝負だからまだわからんだろ

 

112:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:713FOJq1B

うお

 

113:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:GtjpbyAWS

ハヤヒデロングスパートできたか

 

114:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:rFpWly9nj

そろそろ仕掛けないとやばくね

 

115:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:EwyZPougC

うわ

 

116:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:zxFR58h9M

すげぇ広がってる

 

117:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:f54qQv6ii

これ外も無理だろ

 

118:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:RQdg2NdYI

内も無理そう

 

119:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:nW4KComiC

は?

 

120:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:scfy6Yg/f

おいおいおい

 

121:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:c/g4tN0/+

え?

 

122:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:NAoSKY4Eo

そういうことかホンマすごいわ

 

123:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:X7jv+T+Af

なんで今バ群開いたの?

 

124:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:UHuBsrgHx

外と内塞がれた瞬間真っ直ぐ突っ込んだら抜けたんだが?

 

125:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:U+Sde5+gL

意味がわからん

 

126:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:XNrfcLf3n

バ群ぶち抜いた

 

127:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:XDhs6h/YM

パパ瀬を思い出した

 

128:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:xuUiEZ8i/

血は水よりも濃いな

 

129:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:ag0MZC9DV

解説員の解説してくれ

 

130:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:NAoSKY4Eo

皐月で内、ダービーで外の勝ち方見せて思考に刻んで、今回中央にプレッシャーかけ続けて動きを早めさせたんや

 

131:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:j/jiRUOVc

レースそのものを伏線にするとかある?

 

132:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:VJvT2vYqL

つっよ

 

133:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:lKHHg3UpP

完全なマッチレースだなこれ

 

134:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:Fvx9aVhdv

なんで抜き去りに行かないの?

 

135:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:VS0i8R3B0

さあ

 

136:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:NAoSKY4Eo

ホンマに鷹瀬さんのアレやん

 

137:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:3t4xO6YAh

やっぱり本職から見てもそうなのね

 

138:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:5HeM7UO1f

もう見る機会ないと思ってたわ、中央突破

 

139:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:NAoSKY4Eo

はー、さすがやね さすがやね

 

140:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:2XVl0ND6M

これもうただのファンボーイじゃん

 

141:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:vZZbknTVE

つまりパパ瀬もこういう伏線撒いてたの?

 

142:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:QufEO8agA

あいつは代打だから撒けない

 

143:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:P4szqlH3w

はー、やっぱりパパ瀬のほうがすごいんすねぇ

 

144:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:NAoSKY4Eo

神の御業を系統立てて理屈にして人の技に落とし込んだほうがすごいと思うで

俺にはできんかった

 

145:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:GeNyS7SFt

はー

 

146:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:R6eSy09mu

というかブライアンさんはなんで抜かないんです?

 

147:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:EKQsFct/u

さあ

 

148:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:zOYFtTfPN

抜けないとか

 

149:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:6szjN/gi1

まあなんかあるんだろ解説員だし

 

150:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:5Bk+medgC

ハヤヒデ減速した?

 

151:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:nPALozhwr

してなくね

 

152:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:tuTs+8Ora

ブライアンが加速したんじゃない?

 

153:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:CRQR4uZp2

いや減速しただろ

 

154:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:NAoSKY4Eo

これ脚溜めてんのやろね

 

155:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:1aSHYl88V

正気に戻ったか

 

156:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:y3nB7fhgD

おかえりドブカス

 

157:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:e3nwY4Wwi

ハヤヒデ勝ってくれ

 

158:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:sXssiqKOM

スパートきた!

 

159:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:YhqFdfkaV

再点火きたぁ!

 

160:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:Sxb5gOm16

っぱハヤヒデよ

 

161:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:NAoSKY4Eo

再点火は脚への負担バカにならんで

 

162:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:KyAIeUd9e

うわ

 

163:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:mcIfGlxH1

 

164:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:oTBaO4Nuf

希望を与えてから潰すのやめろ

 

165:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:J+CKupjNt

姉貴が加速した瞬間に自分も加速してあっさり抜き去るその姿はまさに怪物

 

166:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:WTToac0vh

つええわこれ

 

167:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:TBmKwxk9m

クラシック級弱いというよりブライアンが強すぎる

 

168:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:Av1yJkrVa

なんでクラシック級ウマ娘がシニアのトップにスペック勝負挑んで勝てるんですかね

 

169:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:F/TzUwDq9

加速してから自分も加速してるから若干不利ですらあるのに

 

170:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:6TVKUS9HN

これまでのどのレースよりもエグい末脚だわ

 

171:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:wXAOHHOuZ

身体が震える

 

172:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:OVr5d73sy

えっぐい

 

173:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:I0dB31//O

バケモンだわこれ

 

174:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:mD8lOyPzp

強過ぎる

 

175:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:r8xCtv84R

魔剣じみたキレ味

 

176:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:zlGR5lWgv

瞬発力の関係でそう見えるだけでトップスピードではハヤヒデのほうが上だと思ってたけどそんなことはなかった

 

177:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:TwEK+QdRj

ダービーから何があったし

 

178:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:30Ah0lOlR

ダービー越えて1ヶ月経ってないのになんでこんなに成長してるんですか?

 

179:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:NAoSKY4Eo

ダービーまではたぶん意図的に調子悪くしてたんや

んで今絶好調だからこれが実力

 

180:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:O8WjE1Ni7

なんでダービーに不調で挑むんですかね

 

181:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:NAoSKY4Eo

そらこんなキレ味を何度も連発したらぶっ壊れるからやろ

この末脚見てわかったわ

 

182:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:YY9XDSY17

百理くらいある

 

183:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:0+sd8BQiw

絶好調ブライアン強すぎる

 

184:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:2w0P5ujJ+

姉貴……

 

185:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:cQLt/gjPy

3バ身か

 

186:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:qF90L/V/Z

強いわ

 

187:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:wrvWw8lFG

ハヤヒデと3バ身、後続とは5、6くらいか

 

188:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:7omIYlkt9

相手が悪いなハヤヒデさんは

 

189:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:dKIzsUR8i

ルドルフとは別の意味で最強

 

190:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:nAqQZlPAG

こりゃ三冠だな

 

191:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:0/gogW5nW

菊花賞1人立てでもいいレベルだろ

 

192:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:LN/qxs7nG

勝てんぜこれは

 

193:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:/zqlDOYNj

ハヤヒデ間違いなく強いけどこれ……

 

194:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:Ne3B5Zrue

5バ身差つけてるから絶対ハヤヒデは強いんだよね

 

195:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:PDitT5MTB

妹ヤバいわ

 

196:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:6R1XYkb6O

バ群中央突破が全てだな

あれで負ける気しなくなった

 

197:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:iBQCRNn15

1年経験少ないクラシック級のウマ娘なのにシニア連中を纏めてスペックでゴリ押せるブライアンがヤバい

 

198:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:CzW2ARkLp

解説員ってひょっとしてこういう細かい策より育成のほうが得意だったりする?

 

199:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:Sm/XN6Nji

レコードか

 

200:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:Qu9GL/KR9

レコード残当

 

201:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:3oCLBJUeK

あれ、表示された歴代タイム見るに去年のタイムってそこまででもないのね

 

202:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:ROMZKvtNr

前半が遅かった。後半は最速なはず

 

203:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:fU69MJdZg

あーなるほど

 

204:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:WIkYlu0cJ

有馬記念どっちが勝つんだろ

 

205:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:aWY+WJiWz

ブライアン

 

206:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:aABgkN1Mh

ブライアンだろ

 

207:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:NDzRI2MlK

ハヤヒデなら何らかの対策してきそう

 

208:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:j16qsDJIn

対策弾けるやつがいるんですわ

 

209:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:KMJReL6Rv

解説員の血の繋がりを感じたわ

 

210:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:6g446egH3

ヒシアマ姐さんも二冠だし、有馬記念で同世代三冠対決ある?

 

211:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:T7XCXWuLt

あるかもね

 

212:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:pw/yggsyh

これ禁止カードだろ

 

213:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:POpJeZWGv

ルドルフもブルボンもコンビでヤバいタイプだったけどブライアンは単体性能がまずおかしいな

スズカさんに近い

 

214:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:EgbIhcPWW

ルドルフは言うほどコンビでヤバいタイプか?

 

215:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:aeOetGi61

コンビでなおヤバいだけで単体でもクソ強ッスよ

 

216:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:x1h2wdERh

ルドルフ以来のクラシック級での宝塚記念制覇おめでとう

 

217:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:qsuXQWr6R

強かったねマジで

 

218:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:7pZpMxZU3

次走キングジョージとかないかな

 

219:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:WRzfZC6sb

普通に勝ちそう

 

220:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:LzL01eskG

ないんじゃね

 

221:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:Jcvo4hgmR

流石に菊花直行だろ

 

222:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:3r9oisTDo

いや舐めてたわマジで

 

223:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:mZgJsRzgm

ニコニコブライアンかわいい

 

224:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:LM517S4LM

子供感出てるな

 

225:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:2Qk2VIZI8

いつもムスッとしてるけどかわいいなこいつ

 

226:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:+FEvzQWcj

姉貴に勝ったの嬉しいんだろな

 

227:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:bJYcdkYG5

インタビューで姉貴姉貴言ってたしな

 

228:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:s9qrxPRZI

ウキウキブライアンはかわいいけど、それはそれとして解説員は解説しろ

 

229:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:/7gxIVEj8

仕事サボるとか解説員はさぁ……

 

230:尻尾上がり名無し ??/6/12 ID:3KNJgeTla

ひょっとして解説員って自分がトレーナーなだけだと思ってるんじゃないか?

 




次回更新は200話記念でブルボン回です。だからアンケートはなしです。間に合わなかったわけではないッス。忘れてたわけでもないッス。

72人の兄貴たち、感想ありがとナス!

ashbrain兄貴、R-to兄貴、SA0421兄貴、金木犀の香兄貴、えびてんルドルフ兄貴、KaNa_tyuri兄貴、pngn兄貴、雨桜兄貴、評価ありがとナス!

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ブルの恩返し

試験的童話風ボン


 トレーナー室に、ウマ娘が4人。

 日本だけでも合計32個のGⅠを制した無敵のリギル分艦隊の面々は、レースのために集まったわけではなかった。

 

「お集まりいただきありがとうございます、皆さん」

 

 32個のうち10個を占めるロボは、自分の呼び出しに応じてくれた3人を見回して一礼した。

 

「皆さんにお集まりいただいたのは、お訊きしたいことがあるからです」

 

「と言うと?」

 

「私はマスターに恩義があります」

 

 三冠ウマ娘にしていただいた、と。ミホノブルボンは思っている。

 あとは他にも夢を応援してくれたり、夢を肯定してくれたり、周りのバッシングを受けても庇ってくれたり、新しい夢を見つけさせてくれたりと。

 

 凱旋門賞のあれこれはあったがそれでも、恩を少しくらいしか返せていないとミホノブルボンは思っていた。

 だからクリスマスに料理を作ったりなんだりして少しでも恩を返していきたいと思っているのである。

 

 だが実際、どうやればいいのかわからない。

 

「その恩義を返していくために、何をすればよいでしょうか」

 

「参謀くんは君の夢を叶えるためにがんばっていたわけだから、恩義を返したいと言うなら夢を叶える以外に方法はない。君は夢を叶えたわけだから、もう返したと言っていいのではないかな」

 

 これは実に皇帝らしい、東条隼瀬という男の心情に即した感想だった。

 事実、彼はこれっぽっちもミホノブルボンに恩義を貸し付けたと思っていない。むしろ借りがあると思ってすらいる。

 

 ただ事実、シンボリルドルフにはわかっていた。ミホノブルボンとしては借りた恩義を義務的に返したいというよりも、自分にやってくれたように尽くしたいと思っているのだろう、と。

 

(と言っても、彼はそういうことを望まないだろうし)

 

 どうやって宥めすかしたものか。

 そういう思考を巡らせていたルドルフは、取り敢えずブライアンに目配せをした。

 

 基本的に思考回路が単純明快なこの副会長であれば、ブルボンに明確な指針を与えられるのではないかと思ったのである。

 

「勝てばいいんじゃないか」

 

「レースにですか」

 

「ああ。アイツは今は一応トレーナーだ。勝ちを積み上げるのがウマ娘として最高の貢献なのではないか」

 

 勝てば、栄光が得られる。

 勝てば、金銭が得られる。

 勝てば、実績が得られる。

 

 負ければ何も得られないが、勝てば全てを手に入れる。ブライアンは身を削り合うような勝負が好きなだけでそういうものに興味はないが、【そういうものが得られる】ということは知っている。

 

 一応、彼女は名家の出なのである。

 

「ですがそれは私の利益にもなることですし、結局のところマスターに恩義を返すのと同時に恩義を受けることになるのではないでしょうか」

 

 別にいいんじゃないかと、ブライアンは思った。

 彼女は確かに育ててくれたことに恩義を感じている。だがその恩義を自分の才能を発揮しレースで勝つことによって返そうとしているわけで、ミホノブルボンのような思考にはならなかったのである。

 

 そんな中で、サイレンススズカが口を開いた。

 

「ブルボンさん」

 

「はい」

 

「健康であれば、もうそれで一番だと思いますよ」

 

 部屋が、シンとした。

 静かな空気が場を満たし、サイレンススズカという常に走っているようなウマ娘のまとう雰囲気を際立たせる。

 

「怪我をしないというのが、一番だと思います」

 

 自分でもよくよくわかっているのか、あるいは走っているだけで温かな眼差しを向けられていることを察しているのか。

 そこらへんはわからないが、ともかく超弩級の爆弾の投下によりこの場は解散という運びになった。

 

(マスター……)

 

 しかしそれでミホノブルボンが恩返しを諦めたわけではない。彼女は結構頑固なところがあり、そしてその頑固さは大抵諦めなさにつながる。

 その諦めなさは長所として夢を支えていたわけであるが、この場合は不毛な働きを見せていた。

 

 少しずつでも、恩返しをしたい。

 その気持ちに偽りはなく、ミホノブルボンは他の友達にも訊くことにした。

 

 しかし、ミホノブルボンには友達が少ない。ライスシャワーというウマ娘がいるが彼女は海外、オーストラリアにいる。

 

「え? 恩返し?」

 

 そんなところで、ミホノブルボンは奇妙な声で鳴く友人の下へと走った。

 通常の人間であれば全角で表されるような言葉を半角で見事に表すようなその少女は、弾むような跛行で歩いていたところをとっ捕まったのである。

 

「うーん、ボクなんかはありがとーっていっつも言ってるかな」

 

「あら、テイオー。どうしましたの?」

 

 そんな話をしている中で、優雅瀟洒なお嬢様が現れた。

 

 パクパクですわ。

 ホヤあそばせ。

 おしるこ。

 

 そんなことなど、言うわけもない。彼女は、メジロ家の令嬢である。

 美しい紫がかった芦毛が太陽の輝きを反射し、高貴なヴェールのような光を放っていた。

 

「あ、マックイーン。恩返しをしたいんだって。どうやればいいかなーって」

 

 半角の彼女は、後ろを通りすがったお嬢様に向かってそう問うた。

 半角の彼女は、旧家の令嬢である。しかし本家本元のお嬢様であれば、何かしらあるのではないかと思ったのだ。

 

「恩返し、ですか。やはり込められた期待に応える、ということですわね」

 

「なるほど」

 

「私は、思いますわ。皆が込められた期待に応えてくれれば……優勝していたのに、と」

 

 雲行きが怪しくなってきた。

 

「ゆ、優勝?」

 

 半角の彼女は、裂きイカのような一房の白い髪をくるりと丸めて首を傾げる。

 そのセリフはまさしく半角のそれであった。

 

「ええ」

 

 そう頷く彼女の表情は、いかにもお嬢様と言った感じに耽美で沈痛なものだった。

 

「バースの再来だったはずですのに……」

 

「バースというのは、どういう方なのですか?」

 

「……我々党員にとって、シンザン様のようなものですわ」

 

 要は神だと、沈痛にして耽美、流麗にして瀟洒なお嬢様は述べた。

 

「なるほど。身の丈にあった期待をしなければがっかりする、ということですか」

 

 ミホノブルボンは、そう思った。かつ口に出した。

 しかしお嬢様は優雅な寛容さを発揮して、この寒門ロボの無礼をスルーした。本当に聴こえてなかったのかもしれないが。

 

「やはり、思いますわ。誠意は言葉ではなく金額と、とある偉人は言いました。前評判に違わぬ行為を見せることこそ、恩義を返すということではないかと」

 

 ミホノブルボンに、雷鳴が走った。

 トウカイテイオーすらも、この言葉には頷いた。

 

 誠意は言葉ではなく、金額。なんと謹厳な言葉であろうか。修飾、華燭。それらのうちにある実こそが、重要なのだと。

 

 トウカイテイオーは、思った。

 自分を応援してくれるファンから送られてくるファン・レターに頑張って返事をするのもいい。

 だが、ファン・レターよりなによりも、走りを見せることが重要なのだと。

 

 ガンバルゾ。

 自分が決定したチーム名のごとく、がんばるぞ。

 

 そう決意した帝王がスピカの部室へと独特なステップで帰っていく中、ミホノブルボンもペコリと頭を下げてからその場をあとにした。

 

 誠意は言葉ではなく、金額。

 しかしだからといって金銭的な贈り物をしても、マスターは受け取ってくれないだろう。

 

 ミホノブルボンは学習型コンピューターを積んでいる。そしてその学習型コンピューターは、恩返しをしたい対象が教え子から金銭を受け取るような存在ではないことを告げていた。

 

 うむむ、とロボは思った。この小学生のような情緒をしたロボは、いつもなんとなくマスターと呼ばれる人間にくっついて回り、とことこと付いて行っている。

 しかしそれはやりたいからやっているだけであって、特に何が役に立っているというわけでもない。

 

 そのことを知っているだけに、ミホノブルボンはなんとなく合鍵を使ってトレーナー寮に侵入して室内に侵入し、そして勝手知ったる台所と勝手知ったる冷蔵庫を使って料理を作りはじめた。

 

 現在彼女のマスターは学会での発表で素人意見で恐縮ですが、と言っているはずである。

 そして彼はとても料理がうまい。だから本来ミホノブルボンが作る必要などないのだが、彼は自分のために腕を振るうということをしない。

 

 そんなわけでミホノブルボンが夜食を、シンボリルドルフがお弁当を作ったりしているのである。

 ミホノブルボンはなるべく丁寧に料理を作り、時間と相談しながら温かなままに提供できるように気を遣った。

 

 あとついでに、老犬を撫でたり面倒を見てやったりした。暇だったのである。

 

「お」

 

 ただいまとすら言わずに鍵を開けて入ってきた男は、暗がりの中に光る髪飾りと瞳を見て来訪者の存在を察知した。

 

「おかえりなさいませ、マスター」

 

「来ていたのか」

 

「はい。ご飯の用意も万全です」

 

「ありがとうブルボン」

 

 ポンポンと栗毛を軽く叩くように撫でて、東条隼瀬は荷物を置いた。

 正直適当に惣菜を買ってきてこれで済ませようとしていただけに、これは嬉しかった。

 

 そして帰ってきたときに誰かがいるというのも、悪くはなかった。

 

「マスター。マスター。一緒に食べましょう」

 

「わかったわかった」

 

 袖をくいくい引っ張ってくる大型犬型ウマ娘ロボをいなしつつ、卓上に予めパソコンを立ち上げておく。

 

 これからまた仕事をするんだなーと思いつつ、ミホノブルボンはパタパタと尻尾を振った。1日とはいえ、ついて行けないのは寂しかったのである。

 

 この帰ってきた飼い主にしなだれかかり尻尾を振り足元にまとわりつくような大型犬のようなウマ娘を撫で、ほっぺたを引っ張る。

 

 こうしてブルボンの恩返しは、なんとなくいつもの形に落ち着いた。

 こういう形がこれからもつづくといいなぁと、ミホノブルボンは思った。




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アフターストーリー:不撓不屈

スピカ三部作テイオー編完。
ちなみにブルの恩返しはこのあとの出来事です。

あと23時から
https://bbs.animanch.com/board/362832/
で架空ウマ娘を作る安価スレやってます。暇だったら来てね。


 管理主義への移行というのは、大変なものである。

 指導するトレーナーの頭を改革しなければならないし、放任主義から管理主義への移行はやることが何から何まで変わってくる。

 

 これは管理主義から放任主義への移行も似たようなものではあるが、やることが増える放任主義から管理主義への移行がより困難だと言えるだろう。

 

 だがしかし、もっと大変なのはむしろウマ娘側であろうと、東条隼瀬は思っていた。

 

「アンタここ抜かったでしょ!」

 

「お前もここむやみに加速しすぎだろ!」

 

「何よ!?」

 

「何だぁ!?」

 

 グギギギギ、と。

 二人は幸せなキスをして終了、というテロップが出てきそうなゼロ距離での、顔を突き合わせての言い争い。

 

 基本大人の集まりのリギルでは起こり得ないやり合いである。

 そんな二人を遠目に見つつ、東条隼瀬は素直な感想を口に出した。

 

「よし、楽しく話せてるな」

 

「……ほんとうにそうか?」

 

 ブライアンは、思った。

 こいつあの二人を放置し過ぎではないか、と。

 

「アンタのやり方にケチをつける気はないが、折角の機会だ。色々教え込んだほうがいいんじゃないのか?」

 

「と言うと?」

 

「アイツら、放任主義の徒だろ。教えられるという経験に乏しいはずだ。その乏しさを埋める為に、アンタが選ばれたんじゃないのか」

 

 放任主義と管理主義。ウマ娘を育成するにあたって双璧を成す二大体系。

 どちらが正しいのかは、ブライアンにはわからない。まあ正直言って興味がないというのが本音である。

 

 だが放任主義と管理主義が双璧めいて存在している以上、そこには必ず理由がある。

 無ければ、ここまで存続し得ないであろう。

 

 となるとどちらにも必ず長所がある。

 なのだから、ここは管理主義の長所を味わわせてやるべきじゃないのか。

 

 そう思うナリタブライアンの言っていることはもっともだった。もっともではあるが、東条隼瀬としては別な考えのもとにこういうことを行っているのである。

 

「アイツらは放任主義のチーム、スピカに所属している。俺がいつまでもどこまでも面倒を見られるならいいが、そういうわけでもない」

 

 面倒を見られるとか見るとかではなく、見てはいけないのである。

 ブルボンの初期の頃にベテラントレーナーが越権行為を承知で接触してきたことがあったが、それは本来よろしくないことであった。

 

「だから最初は練習の組み方を見せて、そして後半からは自分の手で組めるように持っていく。これが一番いいだろう」

 

「なるほどな」

 

 こいつ、よくやる。

 自分にとってなんの得にもならないことを色々と考えて実行に移すのはもはや奇人と言うべきだが、更には自分の手から離れたときのことまで考えている。

 

「お人好しだな、アンタは」

 

「別にそういうわけでもないが」

 

「そう見えるということだ。将来苦労するだろう」

 

 お人好しに見られると、付け込まれる。

 そう明言するほど人間不信でもないが、物事を端的に、そして本質的に理解するのがこのナリタブライアンという天才である。

 

 彼が将来余計なものを抱え込みすぎるだろうと洞察するくらいのことはできた。

 

 そんな中、非常な安定感で距離感を保っていたのが、メジロマックイーンとゴールドシップのコンビだった。

 

「あの人は危険ですわね」

 

「あら、マックちゃん知ったんでござんすね」

 

 謎のキャラ変をしたゴールドシップが特に何も言うことなく肯定したのをみて、メジロマックイーンは少し驚いた。

 この芦毛の奇怪な人物は案外と良識があるから、『そんなことを言うもんじゃないぜマックちゃん』とか言われると思っていたのだ。

 

「知っていましたの?」

 

「知っていましたのよ」

 

「いつからですの?」

 

「明日」

 

 このやり取りで、メジロマックイーンは瞬間的に察知した。この白いアレは、まともに会話する気がないのだろうと。

 だがそれでもなんだかんだ付き合ってしまうのが、彼女の人格的な美徳である。付き合いやすさと言ってもいい。

 

 あるいは振り回されやすい、というのかもしれないが。

 

「……明日のことを何故知っているように語れるのですか?」

 

「知ってるからですのよ」

 

 言う気ないですわね。

 そう判断してさっさと諦めたメジロマックイーンは、さすがにゴールドシップと付き合いなれていると言うべきだろう。

 

「…………それにしても驚きましたわね。あの人は特化型――――個々人に即したトレーニングメニューを組んで育てるのが得意だと聴いていましたのに」

 

「そうした方が効率的ってだけで、別に得意不得意ってのはないと思うぜ」

 

「チームを率いる器と?」

 

 となると、リギルの天下は終わらない。

 メジロ家は、リギルと関わりが薄い家である。シンボリ家は言うまでもなく、ナリタ家も深い繋がりがある。

 

 リギルとのコネを作っておくことは、必要になってくるかもしれない。

 そのあたりを、ライアンはおそらくわかっている。わかっているだろうが、一応言っておくべきだろう。

 

 そう思ったところで、どこかから取り出してきたタピオカドリンクを吸いながら、ゴールドシップはつぶやいた。

 

「あれは与えられた権限に応じて自己の能力を拡大させていくタイプだろうし、やろうと思えばやれるんじゃねーの」

 

 それはいつか、皇帝が彼を評した言葉に似ていた。

 それを彼女が知ってていったのか、そうでないのかはわからないが。

 

「と言いますと?」

 

「皇帝といるときは補佐を、スズカといるときは道の舗装を、ブルボンといるときは主導し、ブライアンといるときは才能を必要に応じて封じ、あるいは引き出してる。やりようを変えられるってことだ」

 

「……貴方、案外鋭いですわね」

 

「ま、丸っこくないからな」

 

 しゅっと顎の下に親指と人差し指を添わせ、キリッと顔を引き締める。

 貫通能力がありそうな程に鋭くなった顎を怪訝な目で見つめながら、メジロマックイーンは何やら考えるような眼差しでダイワスカーレットとウオッカを見つめた。

 

 後輩を見守る先輩の眼差しになったメジロマックイーンの意識が自分から逸れたのを見て、ゴールドシップは少し足元に目をやってやはりと頷く。

 

(マックちゃん、脚に触れてないな)

 

 1年前くらいのこと。

 メジロマックイーンは、繋靱帯炎になった。

 

 そしてなってからもしばらくその現実を受け入れず、意地を張って走りすらした。

 そのときに感じた違和感、痛み、そういうものが残っている。いや、残っていた。

 

 走っているときの、微弱な違和感で足が止まる。

 走っているとき、また痛くなるのではないかと思って全力が出せない。

 

 そういう心理的な病が、メジロマックイーンを蝕んでいた。

 だからこそこういうところではなんとなく、自然にかつて痛んだ場所に手を触れてしまうのだが、2日前からそれが見られない。

 

(なんかしたな)

 

 沖野トレーナーとメジロ家の医師は、不治の病である繋靭帯炎を治した。しかし肉体を治したからといって、元に戻るわけではない。

 身体は元に戻っているかも知れない。だが本人の記憶に走れば脚が痛むという経験が染み付き、本来の動きをすることを阻む。

 

 だがその染み付いた記憶が、するりと抜け落ちたような感じがある。

 

(環境変えたからか? まあなんにせよ、本人に悟らせずに治すってのはあいつの得意技だもんな)

 

 治った。

 違和感が、違和感でなくなった。

 

 そのことを自覚されないように静かに目線を元に戻して、ゴールドシップはブライアンとこちらに歩いてくる男に声をかけた。

 

「あんがとな」

 

「さあ、なんのことかな」

 

「わーってるよ」

 

「だろうが、紛らわしい。慎むことだ」

 

 そんなやり取りを耳にしたのか、薄紫がかった芦毛の耳がピコンと揺れる。

 手短で、聴く分には何がなんだかわからないやり取りを咀嚼し終えたマックイーンは去りゆく二人の背中を見終えてからゴールドシップの方に視線を戻した。

 

「またなにかやってもらいましたの?」

 

「んにゃ、ゴルシちゃん号を修理してもらっただけだ」

 

「してもらってるじゃありませんの!」

 

 ああ、お礼を言いに行かなければなりませんわ!とアワアワするマックイーン。

 いつも通りのウオッカとダイワスカーレットに、あとは何故か横浜に現れたスズカとスペ。

 

 そんな中で一方トウカイテイオーはと言えば、戦術のなんたるかを叩き込まれていた。

 シンボリルドルフは、最強クラスのウマ娘である。

 しかも戦局を自在に変化させ他のウマ娘を操ることにかけては隔絶した技量を持っている。

 

 視野の広さ、天性の才能、百戦錬磨というべき経験。

 支配者として完成された才能を言語化して弟子に伝えるその姿は、皇帝と言うよりは教師に近かった。

 

 そしてトウカイテイオーからしてみれば、ルドルフの一言半句を聴くたびに自分との明確な視野の差を感じずにはいられない。

 

 トウカイテイオーは、ダービー以来負けが先行している。大阪杯こそ勝ったがそこから2年後の有馬記念まで勝ち星は無し。

 鮮烈な復活を見せたからやいのやいのと言われていないが、終わった感じがないと言えば嘘になる。

 

 なにせ、連敗を知らなかった無敗の二冠ウマ娘が連敗を知り尽くしてしまったのである。

 

「テイオー。君はここから、常に注意を向けられる立場にある。少なくとも参謀くんは君を全力で叩き潰しに来るだろう。無論私も君を全力で封殺する」

 

 その言葉を聴いて、トウカイテイオーは高揚した。尊敬する皇帝と、感情をすべて排せば認め過ぎるほどに認めてしまっている皇帝の杖に見込まれている。

 自分の実力を評価される。警戒される。レースを生業とするウマ娘の本能が、そのことを喜ぶ。

 

 だが一方で、心のどこかで思うのだ。

 

 

 ――――荷が重い、と。

 

 

「あ」

 

「げ」

 

 あが、テイオー。

 げが、東条の甥の方。

 

 合宿施設の廊下で、二人はかなり久々に顔を突き合わせた。

 

「やはりお前、俺の意識の外から仕掛けてくるな。油断できん」

 

「……偶然でしょ」

 

 事実、トウカイテイオーはなんとなくそこらへんを歩いていただけで、彼どころか誰にも会いたいなどとは思っていない。

 

 ――――その偶然を引き込む力が、お前にはある。

 

 東条隼瀬としてはそう言いたかったが、やめた。調子こかせると対応がめんどくさいからである。

 

 しかしいつもならキャンキャンと噛み付いてくるテイオーには、明らかなバイオリズムの低下が見られた。具体的に言うと、テンションが低い。

 

(いいことだ)

 

 トレーナー代理としての意識を食い破って、テイオーを敵に回して戦ってきたトレーナーとしての意識が出てきて反射でそう思ったあたり、天敵としての意識が強い。

 他の誰を相手にしても、これほど恐れはしないだろう。

 

(いや、よくないか……)

 

 どうにも、警戒心が尽きることはないらしい。こういう、爆発力を秘めた難敵を前にしては。

 

「……あのさ」

 

「なんだ」

 

「キミ、なんでボクをそこまで警戒するの? カイチョーなら、ブライアンなら、ブルボンなら、ボクを敵に回しても勝てることくらい、キミならわかってるでしょ?」

 

 復活してからまた怪我をして、そしてアオハル杯で完封に近い負け方をする。

 それも、純粋に実力で負けたわけではない。それよりももっと上の次元で、視野の広さで負けた。

 

 そのことを自覚しているだけに、そして責任感が強いだけに、ちょっとだけ凹んでいるトウカイテイオーは到底彼女らしくない問いを投げた。

 

「お前は忘れたかもしれないが、お前はトウカイテイオーだ」

 

「知ってるよ、そんなこと」

 

「だからだ」

 

 なにが?と。

 トウカイテイオーは首を傾げた。

 

「お前がトウカイテイオーであると言うだけで、警戒するに値する。俺はお前が何度骨を折ろうが、全知全能を傾けて叩き潰す。そういうことだ」

 

 あんまりにもあんまりな理屈に、一瞬トウカイテイオーは呆気にとられた。

 実力ではなく、名前で警戒する。それは素人とか、新人トレーナーがやりがちなミスである。

 

 本物のトレーナーとは名前ではなく、中身を見る。見た上で警戒する対象を決める。

 

「……ハハッ」

 

 それなのに、この百戦錬磨のキングメーカーは敢えてそうするのだという。

 お前にはそれだけの価値があるのだと、言外にそう告げられて、トウカイテイオーはバカらしくなって笑った。

 

「ボク、次は負けないよ!」

 

 それは、宣戦布告だった。いつかどこかでマックイーン相手にやったものと、ほぼ同じもの。闘志が再点火された。再燃した。その証。

 

 だが返ってきた言葉は、実に平坦なものだった。

 

「だろうな」

 

「え?」

 

 暖簾に腕押し、糠に釘。

 要は気組みをサラリと外されて、トウカイテイオーは半角めいた変な声を発した。

 

「スピカの次の対戦相手は俺ではないし、お前なら勝つだろう」

 

「そういうことじゃなくてさぁ! わかんないのかなぁ!」

 

「理解できないから恐れているんだ。それがわからないのか?」




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メモリー:4/6/20〜4/6/25

感想欄でのリクエストを聴いてみたみたいな掲示板回。リクエストあれば活動報告によろ。


【朗報】ナリタブライアン実装【ウマスピ】

1:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:01:00 ID:/H5KHJcgu

あとついでに【対決! シンザン】イベが強化復刻

 

2:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:01:04 ID:N6f9Alvvf

きたか

 

3:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:01:07 ID:OFpm5NGgX

実装がおせーんだよ

 

4:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:01:12 ID:lqt7BNycB

ダービー後に寄越せや

 

5:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:01:14 ID:ZWOz1hQed

無能

 

6:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:01:17 ID:ySIMj1C6z

遅い

 

7:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:01:20 ID:H/Uv6yk4W

遅すぎる

 

8:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:01:23 ID:MQ1eG1m1o

ブライアンはダービー後に実装されるとは何だったのか

 

9:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:01:27 ID:LLFjK0F+x

3Dモデル作るのも大変だし許してやれよ

 

10:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:01:29 ID:gzFhHb4MF

ダービーモデルのチャンピオンレーシングに今年のダービーウマ娘が出られないってなんやねんってのはあった

 

11:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:01:34 ID:I7C9yzy9x

そうやって急かすからスキルがガバるんだぞ

 

12:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:01:37 ID:UqVSjk12P

性能は?

 

13:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:01:41 ID:7121N0aQt

多分強い

 

14:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:01:44 ID:fA0d/CnKZ

【シャドーロールの怪物】ナリタブライアンってあるけどシャドーロールってなに?

 

15:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:01:47 ID:3HVBrX9ch

姉貴のインタビュー記事見ろ

 

16:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:01:49 ID:+jbsNJrli

姉貴が宝塚記念のブライアンは影を纏っていたように見えたってところからじゃないの

 

17:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:01:53 ID:dnRcHxMih

シャドーをロールするってことか。わからんでもない

 

18:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:01:57 ID:17MZrBzR4

距離限界3000は芝

 

19:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:02:01 ID:0KsjQyZX4

菊花賞勝ってどころか長距離レースに出たことすらないやつが限界3000なのはすごいな

 

20:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:02:03 ID:JuoEnGtXC

実際に走ってないと適応しない運営が菊花前提の性能にしたのはすごいな。

マックイーンがダートマイラーだった時期あったくらいには実績重視なのに

 

21:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:02:07 ID:JMRa3s993

意味不明で芝

 

22:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:02:10 ID:99lQ7O/1N

確かダービー前での唯一の勝ちがダート1700だったんだっけ

 

23:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:02:14 ID:avgMzdX7k

そう

 

24:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:02:18 ID:bNBCFelDm

ダートマイラーマックイーンとか死ぬほど笑える

 

25:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:02:23 ID:Hb8BX8rN0

その後菊花勝ったから初期スタミナクソ高いダートマイラーになった

 

26:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:02:27 ID:WxmVmKIo6

あのマイラーマックイーン未だに使ってるやついるよな

 

27:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:02:31 ID:4D0Ztq/ql

2月とかのダートチャンピオンレーシングとか、マイルチャンピオンレーシングだとマックイーン好きは使わざるを得ないのだ

 

28:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:02:34 ID:qV+ttl6vh

かなしい

 

29:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:02:38 ID:JJmMbUwrj

ダートB芝CマイルA中距離D長距離C

誰ですこれ?

 

30:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:02:41 ID:Of8lQS3P8

ダートE芝AマイルE中距離A長距離Sの今のマックとえらい違いで芝

 

31:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:02:45 ID:hFUD29Btb

中距離D長距離Cがキモい

 

32:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:02:49 ID:fsP/f87Bp

ブライアン強いな

 

33:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:02:53 ID:14oxPnHuB

ダートG

芝A

マイルB

中距離A

長距離B

先行C

差しB

追込Aか

 

34:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:02:55 ID:LSkTgY2Un

さすがに適性狭いな

 

35:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:03:00 ID:ZY83oKAN0

引いて使ったけど固有スキルクソ強いわ

 

36:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:03:03 ID:zTaSLza3Y

どんな感じ?

 

37:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:03:06 ID:ZY83oKAN0

【穿ち抜き】が発動するとバ群での事故が起こらない

発動しないときはバ群にいないから普通に勝てる

 

38:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:03:08 ID:HfNsNFALL

は?

 

39:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:03:11 ID:maKwgr+Ib

ルド山唯一の負け筋をなくせるのか……

 

40:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:03:13 ID:Hmzocme14

デバフ効く?

 

41:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:03:17 ID:vMAO6B62g

割と効く

 

42:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:03:21 ID:SlIBMZbY9

【穿ち抜き】っていうスキル見たことないな

 

43:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:03:24 ID:E8xqDxPRa

テンポイントについてた

 

44:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:03:28 ID:L3/uXuMOQ

あとパパ瀬にもついてた

 

45:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:03:30 ID:2VroV6NPD

新解説員来てるじゃん

 

46:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:03:33 ID:+w92W5mTM

新解説逃げ適性下げられてて悲しい

代わりに穿ち抜きついてるけど

 

47:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:03:35 ID:mg7zHu6eR

新解説員強いの?

 

48:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:03:38 ID:u/S4sJEeG

イベント共通なら強い。ただ適性がイマイチ

 

49:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:03:40 ID:ZxdzS61xJ

追込◉か

 

50:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:03:43 ID:3h4hsQcSO

まあそう簡単に☆にはならんわな

 

51:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:03:48 ID:XGtOUTMpP

これたぶん追込☆の沖野Tか金東条と組ませたほうが突破力あるな

 

52:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:03:50 ID:14KnabAUH

新解説員は能力がまんべんなく高いから引いておいて損はない。

育成中【穿ち抜き】くれるし

 

53:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:03:55 ID:4hlq2GLoX

これルドルフに使えば【穿ち抜き】でバ群での事故無くしつつ、解説員の固有でデバフ弾いてルドルフの固有でデバフ確実に通せるんじゃない?

 

54:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:03:59 ID:9PGHAxhbF

クソゲーやめろ

 

55:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:04:03 ID:woQGAGcoC

先行差し適性ガッツリ下げられてるから無理じゃね。○はキツいわ

 

56:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:04:06 ID:+PB4sT5Gu

ルドルフの追込Cだから偶にはルドルフに合わせてもらおう

 

57:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:04:11 ID:0URjXhhvf

運営「よし、これはブライアンと組んで使ってもらおう!」

お前ら「ルドルフと使おう」

 

あのさぁ……

 

58:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:04:14 ID:XQulxBdJw

ブライアンは穿ち抜き自前で持ってるから別に解説員じゃなくてもいいし

 

59:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:04:19 ID:7y2oxcRLi

ルド山の固有スキルと解説の固有スキルが相性良すぎるんだよな

 

60:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:04:23 ID:DD98tIP5T

素での相性値35もチート

 

61:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:04:27 ID:Z3ZOWRhP6

掛かると弱いブルボンを補佐するために出てきた解説員が変な使われ方されたし、今回もそうなると思ってた

 

62:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:04:31 ID:WtYYeOFuB

ルド山禁止にしろ

 

63:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:04:33 ID:NvxBfYVLN

ルド山の全適性1段階下げてもまだ強い

 

64:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:04:36 ID:dukQ1Ncgh

ルド山追込だと大半の自前スキル死なないか?

 

65:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:04:38 ID:4spSgfRhC

金東条から迫る影貰えばコーナースキルと尻尾でなんとでもなる

 

66:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:04:42 ID:ajudPzpNt

というかルド山の自前スキルは全脚質けん制以外死んでるから今更

 

67:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:04:46 ID:0hFXQ0Rct

そういやそうだ

 

68:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:04:49 ID:cnwCNX5hw

あの頃ルド山

自前スキルほぼ死んでる、成長率ズブい、インフレしてる環境の中での古参兵

 

なんでこいつまだ強いの?

 

69:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:04:52 ID:Hr+YZBC01

強いから

 

70:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:04:56 ID:QAAW68r7X

強いからだろ

 

71:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:04:59 ID:E99hf6VAN

固有スキルが本体だから

 

72:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:05:01 ID:WJEGXvHjU

強いやつは単純に強い

 

73:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:05:05 ID:djTapDGov

固有スキルの説明文の短さが好き

 

74:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:05:09 ID:AJYfyHSFY

【このウマ娘の賢さ数値以下だと、このウマ娘のデバフスキルを無効化できない】

 

75:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:05:11 ID:ABx+9OJ9+

短いテキストは強い

 

76:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:05:16 ID:9qA+BLeV2

簡単に摂取できる絶望

 

77:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:05:20 ID:DXW45OHB5

ポケットの中の絶望

 

78:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:05:24 ID:aZqjROLz/

【このトレーナーカードを編成したウマ娘は、自身の賢さ数値以下のウマ娘からのデバフスキルの影響を受けない】

 

79:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:05:27 ID:3QCz1PBnV

うおおおカウンター! なお

 

80:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:05:32 ID:hzbyiXZdB

ルド山対策として使えると思ってた頃が、私にもありました

 

81:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:05:37 ID:AP7S+/iMi

絶望ですなぁ

 

82:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:05:39 ID:eIESOgTRc

実装されてすぐはブルボンとかシービーとかに使われてルド山をぶちのめし、そして今やほぼルド山と組んでいる

 

83:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:05:41 ID:eXJbQJIfL

ブルボンと組んでも普通に強いけどね

 

84:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:05:45 ID:AAjNglxQt

ルド山と組むと制圧力が違うんだよね

 

85:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:05:49 ID:+5aZYXft5

単騎性能はそこまででもないんだよ。チャンピオンレーシングがチーム戦だから鬼みたいな強さなだけで

 

86:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:05:52 ID:6p5X/Z1dH

そこまででもない(Tier1)

 

87:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:05:57 ID:g1dqmkLsH

制圧力が桁違いなんだよな。みんながビームサーベル振り回してるところでファンネル使ってる

 

88:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:06:02 ID:HjfjGBM5h

全員にデバフぶっ刺さるのホンマ地獄

 

89:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:06:05 ID:adbhUiGiA

ブォーンっていうデバフ音二度と聴きたくない

 

90:尻尾上がり名無し 2022/6/20 12:06:08 ID:adbhUiGiA

どこまで避けられる?ってボイスほんと鬼

避けられんわあんなデバフ

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

【クソイベント】VSシンザン【鬼畜難易度】

1:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:01:00 ID:S1e7uZZ2V

勝てません

 

2:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:01:02 ID:AkuaEFpP0

解説員なんとかしろ

 

3:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:01:05 ID:fDgnPja30

新解説員は相手の領域を阻害する隠しスキルがあるから引いて使え

 

4:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:01:08 ID:Ma74CMcrj

マ?

 

5:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:01:11 ID:FE8gNOksc

解析で出てきた

 

6:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:01:14 ID:atTXgTEdW

なんかそんなこと言ってたな

 

7:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:01:17 ID:D4toyvJgC

姉貴の領域を邪魔したとかそんなんだっけ

 

8:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:01:22 ID:suA8SpUuU

そうそう

 

9:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:01:26 ID:6Pa10tSXy

姉貴のインタビューから結構拾ってきてるよね、今回の新実装組

 

10:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:01:29 ID:s2uzF+PDQ

ブライアンでガチャするのもいいぞ

 

11:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:01:31 ID:wnyfqGPAs

ブライアンは領域がうまく発動するとルド山ねじ伏せるから怖い

 

12:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:01:34 ID:I3nrXEZmg

これ難易度高いのか。気づかなかったわ

 

13:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:01:37 ID:frzQQfp8V

ルド山解説員で割と勝てるよな

 

14:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:01:40 ID:XBWin+Tu4

掛け合いまとめ動画作る為にいろんな育成したウマ娘と組ませたりしてるからわかるけど、普通に難易度高いよ

 

15:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:01:42 ID:mTh4QNZq2

解説員とルド山の掛け合い好き

 

16:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:01:47 ID:sw3TNJ9n0

「神を素直に礼讃する気にはなれんな」っての洒落効いてて好き

 

17:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:01:49 ID:ejuMBSJgJ

俺が信じるのは皇帝だってのが基本セリフだと思ってた

 

18:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:01:53 ID:Qd4iEZ9O2

それルド山と組んだときのやつ

 

19:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:01:56 ID:2MFXbD+9C

じゃあルド山の『君と私で、成し遂げられなかった何事かがあるか?』ってのは解説員と組まないと聴けないやつだったんだ

 

20:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:01:59 ID:EEE5ZetoI

そうだよ

 

21:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:02:04 ID:giY574tQQ

普通は『最強とは時代が経るにつけ、次代が越えていくものだ』とかだったはず

 

22:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:02:08 ID:aLdKHcnz7

成し遂げられなかったこと本気でないから困る

 

23:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:02:11 ID:rKnV/d8dG

クソゲー作り出してるのは事実だけどオグリンへの対応は感謝してるわ

 

24:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:02:14 ID:DWEsauL1c

ブルボンのセリフもいいぞ。解説員がおもろい

 

25:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:02:18 ID:JOdLeoF3Q

どんな?

 

26:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:02:21 ID:8pUWUtuhz

対戦相手を確認。対象はステータス:神であると判断。マスター、指示を

 

お前、どんなときでも平常運転だな

 

とかそんな感じ

 

27:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:02:24 ID:1NvlIf9hL

言いそう

 

28:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:02:28 ID:ONOKr3ZmL

臆しないロボ好き

 

29:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:02:30 ID:HPS+bR7eM

トレーナーへの絶対的な信頼を感じられて好き

 

30:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:02:35 ID:rG4V9SyXe

ブルボンの3Dモデルキリッとしててすごいと思う

 

31:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:02:37 ID:OoRouvOUx

本物はもっとぽやーんってしてる

 

32:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:02:40 ID:MK0zzxdtr

それは最近のURA広報が日常シーンしか上げてないからだろ

 

33:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:02:43 ID:RzseAYoCu

ぽややんロボもレース中のキリッとロボも好きだよ

 

34:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:02:45 ID:pB6PmBpJ5

休養してるウマ娘ってたいてい能力ナーフされるのに据え置きのロボはすごいよ

 

35:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:02:49 ID:ODObeqX7/

休養するやつはたいてい怪我してるからな

 

36:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:02:54 ID:2n6Ofpusb

ブライアンは適当に育てても運が良ければぶっ千切れるからガチャ引こうな

 

37:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:02:58 ID:6V35eGmZv

デバフ刺さらなかったらほぼ勝てるよな

 

38:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:03:02 ID:GQWQ8GTmZ

あと位置取り

 

39:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:03:05 ID:CzdP+Bs9J

解説員以外使って育成するとデバフ刺さりまくってストレスになる

 

40:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:03:07 ID:8FLr5sHr3

テイオー若干ナーフされてるの哀しい

 

41:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:03:11 ID:/n9/FzGnC

まあ怪我してるし……

 

42:尻尾上がり名無し 2022/6/22 11:03:16 ID:BbsnRA8gz

ゲームではいくら走らせても怪我しないから好き

 

 

 

◆◆◆

 

 

【ウマ娘の祭典】ファン感感想スレ【夏】

1:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:16:00 ID:7d3UlCWRX

おもろかった

 

2:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:16:03 ID:uuWm85cN3

スズカさんは速いね……

 

3:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:16:06 ID:gYHSAvWs7

マジで容赦しないよなスズカさん

 

4:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:16:10 ID:bU290nZCJ

無慈悲な模擬レース好き

 

5:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:16:13 ID:BOZAx2UYn

アレ見るとむしろ安心する

 

6:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:16:15 ID:1NpEsMYvJ

ロボは優しかった

 

7:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:16:20 ID:27KMGvIxC

ロボ洋服掛けみたいになってて芝なんだ

 

8:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:16:22 ID:5NmqzOZSb

ちっちゃいウマ娘に尻尾引っ張られたり腕にぶら下がられたり背中に上られたりしてもおとなしくしてるロボ優しかった

 

9:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:16:24 ID:jwuI/QJ7L

電源切れてた説

 

10:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:16:27 ID:KT29RDhEl

心優しきロボ

 

11:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:16:31 ID:MkeMPUa/v

 

12:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:16:34 ID:g7DzM9R7w

レースで活躍するウマ娘って気性的に激しい娘が多いけど、ロボはおっとりしてるよな

 

13:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:16:38 ID:Z5or6nCP0

おっとりロボ好き

 

14:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:16:41 ID:IcyozPJn4

自分のブロマイドにサイン書いて配布してくれるロボ好き

 

15:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:16:44 ID:IdQVN6I61

ぐう聖ロボ

 

16:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:16:47 ID:o3dGGx7Y4

ルド山ルド山言ってるけどかっこいいわルドルフ

 

17:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:16:49 ID:lMrKgaLTB

リギル執事喫茶好き

 

18:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:16:52 ID:Z51lUmMPa

イケメンだった

 

19:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:16:55 ID:S0Zteq18B

解説員が肩に鷹?載せてた。様になってたわ

 

20:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:17:00 ID:lKvjcR0Wu

さすが名門

 

21:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:17:04 ID:BjjWYhMfJ

解説員動物好きよね

 

22:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:17:07 ID:8tm88aZqY

前も犬の散歩してたもんな

 

23:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:17:10 ID:oXVaezete

解説員と言えばトレーナー対抗レースでの身体能力が人間のそれではなかった

 

24:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:17:12 ID:CR13le8xM

トレーナーはたいてい人外じみてるぞ

 

25:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:17:17 ID:T8lHmFc70

まあ体力ないとできないからな

 

26:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:17:19 ID:eguQBMmPS

トレーナーで一番重要なのは業務に耐えうる体力っていうのホントブラックじみてる

 

27:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:17:23 ID:fjmuDVbG0

まあ給料はいいから……

 

28:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:17:28 ID:p9kPGD8q0

あと周りに可愛い子がいる

 

29:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:17:31 ID:C8PZMc8QK

福利厚生も充実してる

 

30:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:17:36 ID:gpgRzhBdR

ただ業務時間が果てしない

 

31:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:17:39 ID:fQK1Cw2Pi

解説員の走行フォームが母親に死ぬほど似てて懐かしくなった

 

32:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:17:42 ID:WV44/uouM

解説員がウマ娘になってたらな……

 

33:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:17:44 ID:p5fvBMXrd

世界にルド山が二人いるとか壊れる

 

34:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:17:49 ID:pvPcPXEc5

ルド山増殖計画やめろ

 

35:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:17:52 ID:WV44/uouM

解説員の子供がウマ娘だったら血統続くからそこらへんに期待してる

 

36:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:17:54 ID:NHMMWXiqi

身内にトレーナーがいるだけでもアドバンテージなのに身内に解説員がいるとかバランスこわれる

 

37:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:17:57 ID:SvzfddmQs

ナリブとヒシアマ姐さんの二冠コンビが誘導してたのなんかてぇてかった

 

38:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:17:59 ID:ayGMmHb0a

豪華すぎる案内役

 

39:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:18:02 ID:1X5pD8fAc

ナリブそういうキャラなのか?

 

40:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:18:06 ID:RmlAWq5ET

ぱっと見面倒見は良さそう

 

41:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:18:08 ID:P/fB1w+3H

有馬記念では激突が見られそうで楽しみ

 

42:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:18:12 ID:e3tCL0zt2

オグタマ漫才楽しかった

 

43:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:18:16 ID:2f84ZvK7W

日常会話が漫才になるのほんとすごい

 

44:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:18:18 ID:RCcTYV0CB

ナリブよく見ると可愛い顔してた

 

45:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:18:20 ID:FvflczIAF

BNWが揃って校舎から出てきたところでてぇてくなったわ

次世代にヤバいのがいるけどこれにめげずに走ってほしいね

 

46:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:18:22 ID:Rjx3CVWku

上にもいるぞ

 

47:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:18:24 ID:Y1ulSfYoM

ロボボボボ……

 

48:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:18:28 ID:6Dw5+IRqF

ガシャーンガシャーン、ミホノブルボンです

 

49:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:18:31 ID:4EqRl+4ss

あと米な

 

50:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:18:34 ID:yaSPBcoCl

長距離ライスは無法な強さしてることが海外でわかった

 

51:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:18:36 ID:81dlE4Twl

出先潰す形で早めに仕掛けられても仕掛け返してスタミナですり潰すの鬼

 

52:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:18:41 ID:+qtjTwBHB

強い勝ち方だったわほんと

 

53:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:18:43 ID:YenizhmhV

ライス見たかったな……

 

54:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:18:47 ID:1EDQeWze8

レースで見れるんだからいいじゃん

 

55:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:18:51 ID:SSr0ya3Hm

リアルで見たいんだろ

 

56:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:18:54 ID:NktKebAsw

ロボライブサンシャイン楽しかった

 

57:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:18:58 ID:+vxihSylb

謎のネーミングやめろ

 

58:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:19:02 ID:ySbjRp8/Y

なんで光るの?

 

59:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:19:04 ID:gwgwz7YHQ

知らん

 

60:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:19:07 ID:aCVyZrEkl

趣味

 

61:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:19:12 ID:Qe3nhRezN

勝負服が空気を読んだんだろ

 

62:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:19:14 ID:/U7R//xo7

ロボの走ってる姿好きだけどライブも好き

 

63:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:19:19 ID:oWAzmp1j2

ダンスうまい、歌うまい、レース強い、なんだこのロボ、無敵か?

 

64:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:19:23 ID:EIv3tgNaj

今のところ負けてないから差し当たり無敵なんじゃないか?

 

65:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:19:28 ID:aQWafmkZr

>>64

解説員のレス

 

66:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:19:31 ID:FEHDXVn4q

マジレス神拳の使い手解説員

 

67:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:19:36 ID:qAJhBADeY

ライスっていつ帰ってくるの?

 

68:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:19:40 ID:FksRQGXxg

今のところ再来年

 

69:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:19:44 ID:NbeLC0BjA

おっそ

 

70:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:19:48 ID:HlPyQuqS1

まあ武者修行でしょ

 

71:尻尾上がり名無し 2022/6/25 21:19:52 ID:+Ur314H1G

ロボに勝つためにはそれくらい必要なんだろね

 




60人の兄貴たち、感想ありがとナス!

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アフターストーリー:ブルボンの野望 嵐世記

バレンタインブルボン実装記念です。


 バレンタインデーである。

 ミホノブルボンは、計画的な性分を存分に活かしてこの日が来るのを待っていた。

 3年前、ほんの少し育った幼木からカカオ豆を作ろうとした。だがカカオの木は育つのが遅く、これまでは買った豆からチョコを作ることしかできなかったのだ。

 

 だが今年、遂に自前のカカオの木から豆が採れた。

 去年の唐突なる持ち物検査によって理事長代理から『この木は……なんですか?』と問われたが、懇々と言って聴かせた甲斐があったというものである。

 

 我ながら口下手な方だとわかってはいる。

 なのに理事長代理は自分がマスターへの恩返しをしたいという思いを抱いていることを、察してくれたらしい。

 

 その熱い、言うなればメガトンオモイに『そ、そうですか……』と、若干引いたような顔をした理事長代理はベランダに鎮座するカカオの木をちらりと一瞥してから去っていった。

 

 見逃してくれたようである。

 だから、正直なところミホノブルボンは毀誉褒貶の激しい理事長代理のことが嫌いではなかった。いい人だなーと思っていた。

 

 理事長代理の主張は、管理主義の申し子――――と言うよりは誰かの指示を聴いて動くロボ的思考の持ち主のミホノブルボンからすれば理解もできるし同調もできる。

 

「ブルボンさん! チョコです! あと、電池です!」

 

「ブルボンさん、チョコです」

 

 怒涛のような友チョコ攻勢を受けきったミホノブルボンは、友達たちの優しさを受け取りつつ例の謹厳実直な性格を発揮して感謝の念を示した。

 そしてそれだけでなく、ミホノブルボンは市販のチョコを溶かして作ったそれらを返礼として配る。

 

 その返礼品の製作の目処は、立てやすかったと言えるだろう。

 同期も、随分少なくなったからである。

 

 ミホノブルボンの世代は粒ぞろいであると評される。

 

 マイル界へ侵攻を繰り返し、そのたびにノースフライトあたりに撃退されているサクラバクシンオーと、ニシノフラワー、更にはライスシャワーやマチカネタンホイザにキョーエイボーガン。

 GⅠ戦線に絡めるウマ娘も多く、GⅡで無双しているウマ娘が特に目立つ、そんな世代。

 

 1年上のテイオー世代の生き残りがトウカイテイオーとナイスネイチャ、上ではそよ風にしては強烈すぎるマイラーが居るくらいだと考えると、たしかに多い。

 だが、減ってきている。確実に、着実に。

 

「ステータス、『さみしい』を確認」

 

 ポツリとつぶやく。それはミホノブルボンの本心だった。彼女はロボに見えて案外人懐っこく、情が深い。

 去年はこの倍はいた。その事実が時代の移り変わりを感じて悲しくもある。だが次代の新星たちが勃興してくるのはトゥインクル・シリーズの醍醐味でもあるし、自分たちも同じように先代たちを追いやってここにいることを、ミホノブルボンは知っていた。

 

 トゥインクル・シリーズは、華やかである。華やかであるが、その裏には数々の挫折や涙がある。

 

 その挫折や涙を感動に変える者もいる。トウカイテイオー、オグリキャップ。そういった者は、居ることには居る。

 だが挫折や涙すらも感動に変えてストーリーにできる者はほんの僅かな、選ばれし者のみなのだ。

 

 この世界には見向きもされない挫折や、涙がある。

 そういうことを知らずに、ミホノブルボンはトレセン学園にやってきた。そしてトレセン学園に来てから誰からも、そんなことは教わらなかった。

 

 なのに知っているというのはやはり、彼女が精神的に成長したからだろう。

 合鍵を使ってトレーナー寮の私室に入って、ミホノブルボンはドアを開けてリビングに来た。

 

「マスター。チョコです」

 

「ん?」

 

 ちらりと、視線が揺れる。

 てこてこ入ってきたイヌ科のウマ娘を見て、少しだけ視線が優しくなった。

 

「チョコ? 何故だ」

 

「本日はバレンタインデーです」

 

「ああ……そうだったか」

 

 なんとなく、わしゃわしゃと栗毛を撫でる。

 慣れているからか、あるいは反射か。耳をペタリと畳んで尻尾を振るミホノブルボンは、なぜこうされると嬉しいのかはわからない。

 

 だが、触られると嬉しいと思う。撫でられると嬉しいと思う。いつまでもこうされていたいと思う。

 

「マスター」

 

「ん?」

 

 片手で包みを開けてチョコを口に運び、片手でブルボンを撫でる。

 そんな贅沢をしていた男は、ふと思いついたように呼ばれた方を向いた。

 

「どうした」

 

「……?」

 

 お前が呼んだんだろう。

 機能停止したような顔をしているロボにそう言いたかったが、東条隼瀬はなんとなく撫でる。

 

 ミホノブルボンは、ウマ娘である。人格もあるし心があるし、それをわかりやすく表に出すことができる。

 しかし彼女を基本的に犬の親戚のような存在として捉えているところが、彼にはある。

 

「お前が呼んだんだろう」

 

「……ステータス、『寂寥』を確認。今のマスターへのコールはこのステータス異常により、無意識に漏れ出たものだと判断」

 

「何故寂しい」

 

 ミホノブルボンは、少し黙った。それが心当たりを探しているからだということを知っていたから、東条隼瀬もまた矢継ぎ早に問いかけるようなことはしなかった。

 

 しばし、二人の間を沈黙が包む。

 沈黙といっても論文を書く手を止めていない男による控えめなタイプ音は続いているし、マンボなる鳥が時折羽をバタつかせる。

 老年の域に入った犬はすやすやと寝息を立てていて、一応生物の範疇にいるミホノブルボンも呼吸音を漏らしている。

 

 だが、静かな――――そう。とても静かで犯し難い、そしていつまでも続きそうな空間に、ミホノブルボンはいた。

 パタパタと、尻尾が揺れる。この永続するような静謐さを、沈黙を、ミホノブルボンは望んでいたのかもしれない。

 

 無論マスターに話しかけられることは、嬉しい。どんな話でも――――全く聴かせる気のない、自分の思考をまとめるための散文的な思考の放出の如き話でも、ミホノブルボンは嬉しい。

 だが、この永続するような沈黙が、ミホノブルボンは好きだった。

 破りたくないと、思った。

 

(マスター)

 

 心の中で、意識してつぶやく。

 なんとなく、一緒にいたい。そういう気持ちと、ずっとこのままで居たいという気持ちがある。

 

「原因不明。なんとなく、です」

 

「そうか。まあ俺も、なんとなくお前といるのは悪くないと思っている」

 

 パタパタと、尻尾が激しく振れる。

 ウマ娘という生物の致命的な欠点――――感情を取り繕うことが下手、という――――がそのまま表れたかのような動作に、東条隼瀬は苦笑した。

 

「マスターは今、何をなさっているのですか?」

 

「レースの見方、という記事を書いている。月刊トゥインクルに寄稿するつもりだ」

 

「ファンに向けたものですか?」

 

 そうではない。

 実のところこれは記者に向けたものである。記者というのは、世間への発信力がある。

 今や個人が世間に自分の言葉や思想を伝えられるようになり、その特権的な権力・威力は抑えられたものの、依然として旧態依然とした人間には絶大な効力を発揮する印籠である。

 

 東条隼瀬としてはファンのレースの見方をどうのこうのいう気はなかった。正直なところ興味もないし、コンテンツを観客として楽しむ人々に、楽しさの押しつけはしない。

 まあ詳しくなった方が楽しいだろう……と思うことは多々あるが、別にそこらへんは干渉しない。

 

 しかし記者はそうではない。見て、解釈して、出力する。そういうことを仕事にしている以上、マトモな見方をしてもらわなくては困るのだ。

 

 だから謂わばアンチョコとして、こういう記事を書いているのである。

 無論これは彼が勝手にはじめたことではない。基本的に受動的な人間である彼は、馴染みの乙名史という記者に頼まれて書いているのだ。

 

「で、お前はなんでそうなったわけだ」

 

「……?」

 

「寂しいんだろう。ホームシックか? 今のところ予定も無いし、また帰省しても構わないが」

 

 なにせ、今年は海外を主戦場にすることになる。日本を離れるのが初めてだというし、そういうのもあったのかも知れない。

 

 案外とそこらへんが柔軟な男は、さっさと脳内でミホノブルボンへのトレーニングメニューを再構築しはじめた。

 

「ホームシックではありません」

 

「ではなんだ?」

 

 そして再構築していたトレーニングメニューが一瞬で吹き飛ぶ。

 まあいいやと考え直し、ちらりと鋼鉄の瞳がミホノブルボンを見た。

 

「ずいぶん……少なくなりました。私の同期が」

 

「そりゃあそうだ。いつもいつまでも走り続けられるのは極少数で、たいていは3年目で見切りをつける。やめるか、ダートに行くか、障害にいくか。お前はそういう世界で生きてきたんだ」

 

 と言いつつも、実のところ東条隼瀬はこのイヌ科のウマ娘がそれほど偉大な存在であるという実感を持てずにいた。

 なんというか、中身が幼すぎるのである。別に悪いことではないが、貫禄はない。威風もない。これは身内から見ているからなのかもしれないが。

 

「それはわかっています。ですが、現実に打ちのめされている。そういう状態であろうと推察します」

 

「自分の状態を推察するのか」

 

「持論ですが、自分のことほどわからないこともありません」

 

「確かに、それもそうだ」

 

 自分のことは、わからない。

 それは彼自身が未熟だからかもしれないし、そうでないかもしれない。

 シンボリルドルフというウマ娘にだって幼少期があり、そしてライオンとして畏怖を撒き散らしていたあの頃にはわからなかったものがある。

 

 少なくとも過去の彼女は自分が弱者の為に――――より正確な表現をすれば恵まれない者たちのために動くなどとは、思っていなかったはずである。

 

 自分のことは、わからない。それは非常によくわかる理屈だった。

 

「で、寂しさを埋める為にここに来たのか」

 

「はい。マスターはいつも、私の欠けたところを補ってくださいます」

 

 それは物理的な要素じゃないのか、と彼は思った。

 確かに自分は埋めた。距離適性とか、実力とかを。

 

 しかし概念的なものを与えられているとは思えない。三冠以後の夢に関しても、結局は彼女が思いついたものなのだ。

 

(まあ、いいさ)

 

 そう思いたいなら――――ミホノブルボンが東条隼瀬といることでなにか概念的なものを補えると錯覚したいなら、させておけばいい。

 かつて自分がサイレンススズカを相手にしたように、自ずと気づき悟るまで。

 

(俺は、お前のトレーナーだからな)

 

 口に運ばれつつあるチョコをじーっと見つめつつ尻尾をブンブンするこのイヌ科のウマ娘を、東条隼瀬はちらりと見た。




遅れてごめんちゃい(ドブカス)


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第4回ジャパンカップ:千の夜を越えて

なんとなく書いたからなんとなく投稿。一応意味はあります。


 ジャパンカップ。

 世界に通用するウマ娘をと、後進国たる日本のトゥインクル・シリーズの主催者……URAによって創設されたレース。

 

 その創設当初の理念は、『まだまだ進化していく』という向上心の発露である。

 

 しかし、それはどうか。

 その裏には、確かな自信があった。URAは、思ったのだ。

 

 

 ――――そろそろ、日本も世界に通用する力を手にしているのではないか

 

 

 無論URAの上層部は白昼夢を見ながら歩くような連中ではない。海外遠征し、大レースを征する。そんなことなど、夢見すらしない。

 

 だが、彼らには勝算があった。つまり、ホームでやれば充分に相手になるのではないか、という。

 ホームアドバンテージというのは、多かれ少なかれどこにでもある。どんなスポーツでも、ある。

 

 そしてトゥインクル・シリーズにおいてそれは特に顕著だった。気候風土に合わせ適応した芝の上で行われるレースは、国や海を跨げば競技そのものが変容しているのではないかと思うほどに変わる。

 

 芝が軽い。重い。

 たったそれだけで、有利不利が容易くひっくり返る。それならば、和と洋の芝の間にある差はどれほどのものか。

 

 URAは、勝てると思った。少なくとも国内であれば勝てると。

 そう思った。

 

 しかしそこに油断はなく、日本勢は総力戦の様相を呈していた。

 

 アメリカの血を引いた期待のウマ娘、タクラマカン。

 

 前年の有馬記念を制し、年度代表ウマ娘となった『ターフの紳士』ホウヨウボーイ。

 

 ダービー、菊花と一番人気に推されながら惜敗した『無冠の王子』モンテプリンス。

 

 地方トレセンの浦和からやってきたスター、ゴールドスペンサー。

 

 名門メジロからはカノープスの古豪、メジロファントム。

 

 ティアラ路線からはこの年の毎日王冠でレコードを叩き出し頭角を現したジュウジアロー。

 

 典型的な逃げウマ娘として、その勝負服の鉢金から【日の丸特攻隊】なる異名をつけられた短距離路線のサクラシンゲキも徴用され、ほぼ完璧な体制。

 

 対して外国勢は、GⅠ級勝利をあげたのが一人というやや格落ち感のある体制。

 

 ――――日本を相手にするなら、この程度でいいさ。

 

 そういう意図が透けて見える。

 そしてその意図、意図の裏にある冷徹なまでの現実認識は、正しかった。

 

 その意図を裏切り破壊するべき日本のウマ娘たちが、その正しさを証明してしまったのである。

 

 この錚々たるメンツの中で、日本勢の最先着はゴールドスペンサー。

 しかも彼女は地方から来たウマ娘で、URAの生え抜きとしては6着のホウヨウボーイ。

 

 勝ったのは、特に優れたところもないと目されていたメアジードーツ。しかも4着までの外国勢は、当時のレコードを更新してのゴールだった。

 

 日本勢は、ベストを尽くした。

 ベストを尽くしてなお、勝てなかった。

 つまりそれは、どうしようもないレベルの差が日本と外国の間にはあるということだった。

 

 

『あのレースを観戦したものは、日本バがジャパンカップを勝つまであと20年はかかるだろうと心底ため息がもれたはずだ』

 

 

 どこかの誰かが、そう言った。

 そしてそれと時を同じくして、特設の観客席で幼い獅子が吼えた。

 

「見ていろ」

 

 3年後を。20年後でもなく、何年か先でもなく、3年後を。

 私が出てくるまでの、つかの間の天下を楽しむといい。

 

 その威風堂々たる立ち振る舞いに、特設の観客席に詰めかけた各名家の代表たちは息を呑み、絶望を引っ込めた。

 

 

 ――――この娘ならば、なにかをやるのではないか。

 

 

 そんな威風が、彼女にはあったのである。

 そして、3年後。

 

「おぅ!?」

 

 啖呵を切ったのと同じ声が、ものすごく情けない声を奏でた。

 腹部に打撃。なにか、物が落下したらしい。

 寝ぼけ眼をゴシゴシやりながら熱を持ったそれをどけようと手を腹の方に伸ばし、取る。

 

「湯たんぽ……か?」

 

 ソファで寝落ちしていた身体は、どこか強張っている感じがある。

 首を回したり腕を伸ばしたりあくびしている最中、背中から回り込むようにぬっと、見覚えのある顔が出てきた。

 

 まだ若い。だが若さを感じさせない、冷たい眼差し。

 

「腹を出すな」

 

「おぉ!?」

 

 意識覚醒率47%くらいの皇帝は、強かに不意を突かれた(3分ぶり2回目)。

 基本的に周密に配慮した作戦で危なげなく勝つことを常とする彼女からすれば、不意を突かれた経験というのはそう多くない。

 

 ――――いい経験だ

 

 覚醒しきらない頭の中で、そんな悠長な言葉が鳴った。

 

「……参謀くんか。なんで私の部屋にいるんだ?」

 

「腹を出して寝るな」

 

「わ、わかった。わかった。で、なんで私の部屋にいるんだ?」

 

「お前はいつ、部室を実効支配したんだ?」

 

 本気で頭が起きてない皇帝は、ふわーっとあくびをしてから40%くらいしか開いてない眼で周囲を見回した。

 

「あれ、部室だ……」

 

「やっと起きたか」

 

 史上最高に寝ぼけていた頭がそれなりの働きを見せるようになってから、皇帝は――――シンボリルドルフはゆっくりと起きた。

 

 そして、髪にものすごい癖がついていることにも気づいた。

 

「ちょっと顔を洗ってくる」

 

「洗わんでいいから早く部屋に帰って寝ろ」

 

 湯たんぽの熱が伝わったお腹をポリポリと掻きながら歩き出した皇帝の進路を誘導し、扉を閉じて締め出す。

 

「ふぅ……」

 

 やるか。

 第4回、ジャパンカップ。

 出走メンバーのすべてが詰まった情報の集積体から、少しずつ無駄なものを削いでいく。

 化石の発掘のような作業を行いながら、参謀と呼ばれた男はレースに臨もうとしていた。

 

 凱旋門賞の掲示板に入った二人。そして、日本勢の中で油断ならないのが一人、さらには逃がすと怖いのが一人。

 

「……そうするか」

 

 ちゃんと頭が回る程度の健康状態さえあれば勝てる。

 問題は菊花賞から中1週であるということだが、そのあたりも手を抜かせたからおそらくは問題はない。

 

 使える手が多い。だからこそできる手。

 逃げ。先行。差し。追込。ルドルフには全てができる。だがその全てを、相手は知悉しているわけではない。

 

(そのあたりに活路が見えてくるだろう)

 

 

◆◆◆

 

 

 最強コンビ1-7一点日本の夢。

 ジャパンカップ当日に掲げられたその横断幕が示すところは、明白だった。

 

 シンボリルドルフ、ミスターシービー。

 世間は、神以来初めて現れたミスターシービーという三冠ウマ娘と、【皇帝】などとあだ名されるシンボリルドルフというウマ娘に夢をみていた。

 

 ジャパンカップ初制覇という、向こう20年は叶わないであろうと目されていた夢を。

 

「というのが作戦だ」

 

「なるほど。領域はどうする?」

 

「いらん。どうせそれまで見せたこともない札だ」

 

「わかった」

 

 シンボリルドルフは、言葉足らずな彼の言葉を正確に理解した、

 

 いらん。

 

 そう言いつつ、彼は自分の想定外の出来事が起こるかもしれないということを想定している。

 

 土壇場の覚醒、異様な粘り。レースはチェスや将棋ではなく、駒は生きている。

 飛車が龍王になるとは限らない。角行が龍馬になるとは限らない。歩が龍王になり、ビショップが桂馬になる。

 

 だから、『どうせそれまで見せたこともない札だ』と言ったのだ。

 最後の最後、奥の手として取っておけと。

 

 府中、左回り、2400メートル。バ場状態は良。

 5ヶ月前に走ったあの時、杖無しで走っていた後の時と似た、しかし大きく異なる風景を見回して、シンボリルドルフは客席に向けて手を振った。

 

 そんな彼女の背に、聞き覚えのないハスキーな声が飛ぶ。

 

「The Kaiser has arrived! Are we ready to give her bouquet?」

 

 

 ――――Yeah!

 

 

 多重の返事が、東京レース場の一角の雰囲気を明るくする。

 

 

 これまで通り、相手にならない。

 

 

 そんな楽勝ムードが漂う、纏まって何やら話し込んでいる外国勢。

 それらをチラリと見て、微笑む。

 

「怖い顔してるね、ミスルドルフ」

 

「そうかい?」

 

 自分よりほんの少し……帽子を含めれば相当高く見える、天衣無縫の三冠ウマ娘。 

 後ろからやってきたミスターシービーの方をちらりと見て、シンボリルドルフは笑った。

 

「そんなこともないと思うが」

 

「いや」

 

 獲物を見つけた狼のようだ。

 

 ミスターシービーの言語センスは、高かった。というよりもシンボリルドルフがそうとしか言えない顔をしていたからかも知れない。

 

 ルドルフ。高名なる狼。

 名は体を表すというわけでもないだろうが、高い鼻梁を顎ごと少し上げながら微笑んだ彼女は、凄絶としか言いようがないほどの顔をしていた。

 

「君か私。どちらかがジャパンカップの歴史にピリオドを打とう」

 

「珍しいな」

 

「少しくらいは気にするさ」

 

 そういう世俗的なものとは無縁な、三冠ウマ娘。常識を破壊する天衣無縫さ。

 そういったものが、ミスターシービーの本質であったはずだった。

 

 だが少し、今は枠に囚われかかっている。

 

「ルドルフ」

 

「参謀くん。シービーが気後れしている」

 

「そうか? まあともかく、シービーはお前を打ち負かす可能性のある数少ないウマ娘だ。最終手段として、隣二人は残しておけよ」

 

「ああ」

 

 ミスターシービーは、本質的にはスプリンターよりのマイラーである。

 そして思い立てばすぐに仕掛けてしまうような気まぐれさを持っている。

 そのスタミナの低さ、気まぐれさを解消させるために、沖野Tは直線で仕掛ける戦法を彼女に教え込んだ。

 

(純粋なスピードで殴られると怖い)

 

 そういう危惧を、彼は彼女に伝えていない。

 いつか伝えようとは思っているし、事実として彼はこの危惧を後に伝えた。

 

 敗北という形にして。

 

 まあそれはともかく、ジャパンカップはもうすぐはじまる。

 

「大枠は決めたが、逸脱してもいい。臨機応変にな」

 

「君の指揮を信じるよ」

 

 端的なやり取りを終えて、赤いマントをはためかせて皇帝はゲートに向かっていく。

 

(さて)

 

 そんな彼女を見送って、リギルのサブトレーナー――――東条隼瀬はコーヒーを入れた魔法瓶をくるりと回してカップに注いだ。

 

 それは他の観客からすれば、皇帝の補佐をするために精神を統一するための動作に見えただろう。

 

(やることがない)

 

 しかし、別にそんなことはない。

 もう彼のやることは、ほぼない。レースがはじまると、あとは暇になるばかりだったからである。

 

『さあ、常識を塗り替えた三冠ウマ娘、ミスターシービー。1枠1番に入ります。前走秋天では見事な差し切り勝ちを収めました。

2枠2番はエスプリデュノール。前走凱旋門賞では掲示板内となる4着。昨年のジャパンカップでも好走しており……』

 

 とうとうと、実況の口上が続いていく。

 しかし6人目のウマ娘を紹介したあたりで少しだけテンションが上がり、そして10人目となる頃にはやや早口になっていた。

 

『さあ、主役の登場です』

 

 緑の勝負服。日本の皇帝。

 

『7戦7勝! ここまで無敗! 手にしたGⅠは皐月賞、東京優駿、宝塚記念、菊花賞!』

 

 それまで平気な顔をして立っていた7枠11番、ストロベリーロードが逃げるようにゲートの端に寄るほどの威圧感を漂わせながら。

 

『日本の【皇帝】! シンボリルドルフ!』

 

 今日この場で5個目の栄冠を手にする皇帝が、ゲートに入った。

 

 

 ――――カイザーのお出ましだ。花束の用意はいいか?

 

 

 極東の島国で覇者を気取るウマ娘に現実を知らせてやろう。そういう気概も何もかもが、雷霆のような威圧感の前に崩れていく。

 

(はやく、はやく開け)

 

 ゲート。

 ゲート。

 走りたい。早く逃げたい。

 

『さあ第4回ジャパンカップ、スタート!』

 

 瞬間、ルドルフの両隣が弾かれたように走り出した。

 左右に分かれ、なるべくルドルフに近づかないように。

 

(バカ!)

 

 好位をキープしようとしていた外国勢は、思わずそう毒づいた。

 ああもバカみたいな逃げをしては、ルドルフに容易く好位を明け渡してしまう。先行策を許してしまう。

 

 日本の逃げ、カツラギエースもやや驚いたようにペースを上げている。これでは下手をすれば逃げ切りを許してしまう。

 

 日本のトゥインクル・シリーズは、甘い。

 外国であればぶつかるなど挨拶なのである。そしてそんな甘い中で――――容易く好位を譲られてきた皇帝などに負けやしない。

 

 雑草魂。

 

 和訳すればそんな感じの言葉を胸に、同胞に先行策を邪魔されたウマ娘はルドルフに競りかけていった。

 

(なにが――――)

 

 ギロリと、競りかけに行った彼女をアメシストの瞳が睥睨する。

 

 食い殺されそうな、獅子の瞳。

 一度噛み付いたら喉を引き裂くまで襲い続ける狼の瞳。

 

 競りかけるために動いたはずの身体が失速するまで、時間はさほど必要としなかった。

 

 先頭、カツラギエース。

 その後ろには必死の外国勢2人。

 中盤、シンボリルドルフ。

 その隣にかなり大きな間を空けて2人。

 最後尾、先頭から25バ身程後にミスターシービー。

 

 第4回ジャパンカップは、波乱の幕開けを迎えた。

 たった二人を除いた、すべての人にとっては。




49人の兄貴たち、感想ありがとナス!
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第4回ジャパンカップ:雷霆と稲妻

みんながディオガ級とかオウ級とか使ってる中でザケルだけで勝つタイプ


(24、5、いや、もう少しか)

 

 東条隼瀬は、コーヒーを口に含みながらレースを見ていた。

 先頭カツラギエースからシンガリミスターシービーまでおよそ25バ身。

 

(想定より広い。シービーはどうした?)

 

 ミスターシービー。破天荒、天衣無縫。

 彼女特有の前進を旨とするような進取、鮮鋭な気風が感じられない。

 今の彼女であれば、菊花賞で勢い任せに坂を下るようなことはしないだろうというほどに。

 

(まぁ、いいか)

 

 ルドルフはちゃんと逃げられている。

 内に1人閉じ込め、閉じ込めた相手にプレッシャーをかけ続け、そして外には大きく離れて2人。

 

 シンボリルドルフのいる位置は、完璧な好位である。そりゃあ必然的に、真面目にレースしたければ横に位置せざるを得ない。

 

 

 この頃の彼は知らないことではあるが、シンボリルドルフは所謂ライオンのレッテルを貼られているウマ娘である。

 別にそれはレッテルもクソもなく事実なのだが、要は彼女は生まれたときからボス気質だった。

 

 シリウスシンボリが隣にひょいっとくれば雰囲気で威嚇してビビらせ、シリウスシンボリが前を横切れば雰囲気で威嚇してビビらせ、道を譲らせる。

 

 ウマ娘の中で私がナンバーワン!という感覚を当たり前のように持っている産まれながらの強者。

 まあ今では多少マシになったわけだが、本質的にはライオンのままである。性格はかなり改善されたというか丸くなったが、威圧感はやや減衰しただけに過ぎない。

 

(なんというプレッシャーだ……)

 

 凱旋門賞ウマ娘と蹄鉄を並べて走ったことがある。

 そのことを自慢とするウマ娘は、このジャパンカップに多く参戦していた。

 

(競りかけられない。本能が拒否する……!)

 

 ジャパンカップでは――――というよりも海外のレースでは、熾烈なポジション争いが行われるのが常である。肩をぶつけ合うなど日常茶飯事で、別に驚くことでもない。

 しかし今回のジャパンカップでは、その熾烈なポジション争いというものがほとんど見られなかった。少なくとも日本の観客たちからすればそう見えた。

 

 彼ら彼女らが注目するのは、シンボリルドルフとミスターシービーという二人の三冠ウマ娘。

 しかしシンボリルドルフに関してはプレッシャーの力場で全く他者を寄せ付けず、ミスターシービーに関しては競り合う必要がないほどの後方にいる。

 

(シービーはどこだ)

 

 シンボリルドルフと言えども、狼顧の相よろしく首を180度回頭させるわけにもいかない。

 

 そんな彼女の耳に、指の鳴る音が5度届いた。

 

(怪我……? 怪我をしたということか)

 

 だがそれであれば、彼が呑気しているわけもない。

 脳の一部分を少しだけ現実に起きているレースから切り離して、シンボリルドルフはその意味を考えた。

 

(なるほど。怪我明けだからか)

 

 ミスターシービーは、天皇賞秋で復帰した。

 そしてジャパンカップに駒を進めてきている。そんな彼女がいつも通りの位置につこうとすれば、熾烈なポジション争いに巻き込まれるだろう。

 

(あとは当初の想定通り……ということなのか。それにしては遅い。届くとは思えないが)

 

 当初の想定とはつまり、ミスターシービーはシンボリルドルフのバ群操作による進路潰しに何らかの手を打ってくるだろうということである。

 宝塚記念でものの見事にしてやられただけに、何らかの手は打ってくる。

 そのためのいくつかの想定の中に、【後方で視野を高めて直線一気にしかける】というものがあった。

 

(しかしそれにしては差が開きすぎている)

 

 ミスターシービーと言えども、捉え切れるものではないだろう。

 

(とはいえ、布石は打っておくか)

 

 少しだけ脚を緩め、自分のプレッシャーを直接ぶつけられる位置に何人かを巻き込む。

 焦燥、疲弊。それらを常に与え続け、そして適切な手を打てば短慮な突出をしてくれるだろう。

 

 やれることはやる勤勉な皇帝である。その結果がどうなるかはともかくとして。

 

 レースを引っ張るのは、カツラギエース。

 マイル路線から参戦してきた彼女は耳当てを装着し、このレースで初めて逃げという戦法をとった。

 

 それは皇帝とその参謀からすれば想定内――――折り合いが付きにくく、先行策が合っていないのは周知のことであったから――――であったわけだが、それにしてもよく逃げる。

 

 カツラギエースは、裏をかいたという確信があった。

 事実、皇帝は自分の逃げに対して何ら有効な手は打てていない。

 

(2人も競りかけてくるとは思っていなかったけど!)

 

 そいつら、皇帝のファンネルだよ。

 

 そう指摘する人はいない。まだ表立って目立つほど、シンボリルドルフは他のウマ娘を思い通りに動かすような策を取っていないからである。

 

 ミスターシービーの宝塚記念にしても、ペースを支配しただけだと思われていた。

 

(がんばるな)

 

 3人による壮絶な叩き合い。

 後方皇帝面で死ぬほど他人事な感想を心の中に漏らしたルドルフは、クイッと首を傾げた。

 

 ――――さて、そろそろのはずだが

 

 中盤を越えた。残りは812メートル。

 ミホノブルボンのように繊細な距離感覚があればそう思えただろうが、ルドルフからすれば大雑把に『まあそろそろだろ』と思ったに過ぎない。

 

 そしてその『そろそろ』は、すぐやってきた。

 カツラギエースと競り合っていた2人が流石に疲労を見せ、失速して先頭集団から脱落しつつあったのである。

 

(振り切った! よし、いくぞ!)

 

 いつものように溜めていた脚を爆発させようとして、カツラギエースは気づく。

 

 脚が全然残っていない、ということに。

 

(いや、逃げていたんだ私は)

 

 先行策ではない。実戦では初めての逃げである。

 だから、彼女は気づかなかった。逃げるにしても尋常ではない程に消耗させられていることに。

 

 これが二度目の逃げなら、カツラギエースであれば気づいただろう。彼女も英邁なウマ娘なのだから。

 だが意識的に逃げに打って出るのはこれが初めてで、なおかつこの場はジャパンカップ。

 

 日本勢が負け続けた中で、初めての勝者として名を残したい。そういう欲は、彼女にもある。

 

 だからこそ、気づかなかった。逃げにしても、消耗の度合いが段違いだということに。

 このレースでシンボリルドルフは、逃げのペースで走っていた。だからこそスタートを綺麗に切り、ことさら急いでみせたのだ。

 

 そして追い立てられた逃げは大逃げになり、カツラギエースはスタミナを喪失。

 そしてハイペースの中取り残され、ミスターシービーは勝ち筋を薄くした。

 

(よし、整った)

 

 半分を越える。

 3人抜く。

 

 領域どうこうはともかく、シンボリルドルフはこれらを満たせば全力を超えた全力を出せる。

 そのことを、東条隼瀬は知っていた。

 

「役目大儀」

 

 そんな一言を残して、気づかぬ内にとんでもないハイペースを牽引させられていたカツラギエースと他2人。

 それら3人を纏めて抜き去り、後ろに3人を引き連れたシンボリルドルフが先頭に立った。

 

 そして、必死に喰らいつかんとしたカツラギエース以外の2人は体力の消耗もあり皇帝の隣に居ることを恐れて下がっていく。

 その落ちていく進路と、ミスターシービーの進出経路がバッティングした。

 

 無論偶然ではない。偶然ではないが、ミスターシービーはこれをうまく避けて進路を確保する。

 それは後方に構えていたからでもあり、彼女自身がまた優れた能力を有していたからでもある。

 

(やるな、シービー。さすがは私のライバル)

 

 賛辞を贈りつつ、その跳梁は許さない。

 自分と無理矢理に競り合わせ、そして焦燥と消耗を叩き込んでいたウマ娘たち。

 自分が仕掛けた瞬間、横に広がるように続いて仕掛けてきた短慮なウマ娘たちが、シービーの進路を塞ぐように展開される。

 

「さて、いつまで避けられる?」

 

 ちらりと外を見てそんなことを言いつつ、意識を後ろに戻す。

 目端の利く外国勢が、距離を取りつつ後ろにピッタリとマークしていた。そのことは無論、知覚している。

 

「来るか」

 

 最後のコーナーを曲がり、あとに続くものは1人。シービーはウマ娘の群れの中でもがいている。

 

「やるな」

 

 こいつ日本語喋れたのか。

 

 そんな感想が頭を過ぎって、消える。ルドルフが前3人を抜き去った時、後ろから迫るこのウマ娘との差は6バ身程。しかし今は2バ身くらい。

 

 要は、差を縮められている。

 観客席から悲鳴とか、そういったものが多く上がる。シンボリルドルフというウマ娘は、辛勝が多い。

 競り合って、競り合って、その果てに勝つ。皇帝と呼ばれつつも、その勝ちは割と泥臭い。

 

 天馬の娘、ミスターシービーが泥すらかぶらない突き放すような勝ち方をするのとくらべれば、如何にも対照的である。

 

 東京レース場の直線は、長い。なにせ525.9メートルなのである。

 そんな長い直線がはじまって少しだというのに、無敗の三冠を得た日本の皇帝は海外から来たというだけのなんでもないウマ娘に追い詰められている。

 その光景はシンボリルドルフをよく知っている人間たちからすれば『またか』程度なものだったが、ほとんどの観客たちはこのときシンボリルドルフを知らない。

 

 常に接戦に持ち込んでなんとか勝ってきた、と思っている。

 まあそれは結果としては事実ではあるのだが。

 

「私はお前が来ると思っていた。だから付かず離れずの距離をとって、お前を風よけにしていたんだ。それがこの差だ!」

 

 このままいけば差し切れると、そんな思いの中で一気に詰めていく。

 

「日本の皇帝であろうが、世界では……!」

 

 少しずつ、少しずつ。2バ身が1バ身になって暫し走り、そして気づいた。

 

(詰まらない……!?)

 

 詰まらない。いくら走っても。

 ゴール板がすぐそこに迫っても、詰まらない。広がりもしない。

 

 

 ――――もう少し必死になれ。そうすれば無駄口も減る

 

 

 最後の一瞥だけを残して、シンボリルドルフは領域の片鱗すら見せず辛くもジャパンカップ制覇の栄冠を戴いた。

 しかしそこから暫く、日本勢は苦戦を続けることになる。

 

 そしてその後に勝つのは、奇しくも彼女と同じ雷鳴のような領域を持つ者であった。




Q.なんでルドルフのジャパンカップ?
A.7冠馬コラボしてたから。あとアオハル2回戦に続くから


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アフターストーリー:頓珍道中

 最終コーナーで、するりと抜け出す。

 なんてことのない、普通の動作。普通の強さ。しかしそれからの動きが、全く以って普通ではなかった。

 

 ぬるりと前に出て、力感のない走行フォームで――――完全に流すような柔らかさで先頭に立つ。

 強い。速い。止まらない。

 

『さあ、差が開いた開いた開いた! どんどんどんどん差が開く!』

 

 まるで別の生き物のように、黒鹿毛のテールヘアーが揺れる。去年伝説を打ち立てたときと同じバンカラな勝負服、白いコートが風を揺らす。

 

『春の天皇賞に向けて独走! 春の天皇賞に向けて独走!』

 

 7バ身程、だろうか。

 それなりに差をつけたところで、後続は必死に追ってくる。

 特に、カノープス組の3人。

 

『さあマチカネタンホイザが僅かに上がってきたが強い強いブライアン! ブライアンに陰りなし、ブライアン陰りなし!』

 

 ――――今年もブライアンの年だ!

 

 実況は、そう告げて締め括った。

 確かにそれはそうである。今年のトゥインクル・シリーズの主役は、ナリタブライアン。

 

 しかしそれは、日本でのこと。

 

「トレーナーさん」

 

「ん?」

 

「ペガサスって……なんなんでしょうか」

 

 知らん。

 陰りなきブライアンの大阪杯の、2ヶ月前。遠征先のアメリカで唐突に疑問をぶつけられ、東条隼瀬は暫時戸惑った。

 

「ペガサス……そういえばなんなんだろうな」

 

「伝説のウマ娘だと思いましたが、でしたらトレーナーさんが知らないということはありませんよね」

 

「ああ」

 

 歴史。そういったものからも相手の出方を知ることはできる。歴史を知れば伝統が知れるし、伝統が知れれば事の推移が掴める。

 となると現在この土地で何が流行っているのか、何故流行っているのかがわかるのだ。

 

「折角だし、調べてみようか。確か英語はできたな」

 

「はい。すぐに終わらせますね」

 

「いや、無理に急ぐな。なぜか2人しか出てこなかったんだから、相手の出方を見つつ流して逃げられるはずだ」

 

「はい」

 

「これは調整のレースだ。わかっているな?」

 

「はい」

 

 なぜか、と言いつつ理由はわかる。

 今の全盛期が再来したスズカとやればタイムーオーバーでのペナルティを喰らいかねないし、そもそも勝ち目が少ないからだ。

 

(俺と同じ思考さ)

 

 勝てないレースはしない。

 サイレンススズカに勝つには、それなりに準備がいる。

 

 例えば10人立てのレースに同一陣営から5人出走させる。そして序盤から1人ずつ全力で仕掛けさせ、息を入れる暇を与えない、とか。

 

(まあ、そうされたとしても対策はあるが)

 

 そんなことを思考する男をニコニコしながら見ているサイレンススズカは、実のところ何も考えていなかった。

 

 生粋の先頭民族であるからして、走る前に何事かを気にする神経を持ち合わせるはずもない。しかしなぜ彼女がニコニコしているのかと言えば、それはひとえに叶わなかったアメリカ遠征をやり直しているような心持ちになっているからである。

 

「折角2人出てきてくれたんだからそれなりにもてなしてやらないとな」

 

「はい。走ってきますね」

 

「流せよ」

 

「わかりました」

 

 言うまでもなく、わかっていない。

 

「領域を使うなよ」

 

「わかりました」

 

 無論のこと、わかってない。

 

 開幕で世界が加速するような感覚に陥ったレース場に身を置きながら、東条隼瀬は改めて確信した。

 

 こいつ、やっぱり脳筋だと。

 殺人的な加速で尋常ならざるハイペースに持ち込んで他のウマ娘のスタミナを削り切り、17バ身ブッチギリでサイレンススズカはペガサスワールドカップを制した。

 

 ガルフストリームの怪物。

 その名が未だ健在であることを示すように。

 

「耳ぃ。付いているのかスズカ?」

 

「つ、付いてますトレーナーさん!」

 

 まあいいや。うまいこと流して勝ってくれるのは理想ではあるけど、別に期待してなかったし。

 

 そんな感じの諦観によって離された耳のカバーを付け直したりなんだりしてるスズカをちらりと見つつ、ため息をつく。

 

(ま、元気ならいいさ)

 

 勝ち方に人の心が無くても。

 複雑な戦法は、なぜ負けたのかわからなくなる。そのわからなさで心理的なアドバンテージを取れるわけだが、複雑さを解析されると弱い。

 

 それに比較して単純な戦法は、なぜ負けたのかわかりやすい。今で言えば、スズカより遅いから負けたのである。

 サイレンススズカより速ければ、ハナを奪えた。サイレンススズカより速ければ、道中先頭をキープできた。サイレンススズカより速ければ、差し脚を繰り出されても逃げ切れた。

 

 つまり、サイレンススズカより速くなれば勝てる。楽な話である。

 で、どうやってサイレンススズカより速くなるのか? それは誰にもわからない。

 

 鼻歌を歌いながら高速で前に出ては戻ってくる、調整の効かないラジコンのような挙動を繰り返すスズカをしれーっとした目で追いながら、東条隼瀬は思った。

 

(理不尽極まりないやつ)

 

 なぜ勝てたのか不明。あえて言うならばブルボンがすごかった。それだけのこと。

 

「あ、トレーナーさん。あのお店、美味しいんですよ」

 

「そうか」

 

 考え事をしている最中特有の塩対応。

 自分のことをよく見てくれているひとを、サイレンススズカはよく見ていた。

 

 岩塩を顔面にぶつけられるが如き塩対応に直面してもめげず――――それどころか気にもせず、サイレンススズカはくるくるとその場で回って彼の意識が浮上するのを待った。

 

「で、なんの店なんだ?」

 

 36周くらいしたところで、俯きがちだった顔が意識と共に浮上した。

 

「お肉ですよ」

 

「肉か。肉……まあ肉だろうな」

 

 スズカのイメージにはあまり合わないが、アメリカと言えば肉である。

 ステレオタイプなイメージとステレオタイプなイメージの激突。その末に自分を納得させた男は、スズカに手を引かれ曳航されながら店に入った。

 

 やはりそれなりの知名度があるのか、色めき立つ店内。

 

 ここで話は少し変わるが、レースの巧さというのは、走る技術だけで決まるものではない。

 例えば五感から不要なものを認識する機能を削ぎ落として感覚を鋭敏にする。研ぎ澄ます。

 そういうことをすると、判断力が高まる。一瞬の切り返しが巧くなる。

 

 サイレンススズカの場合、駆け引きというものは存在しない。ただ逃げるだけだからである。

 しかし彼女はレース中、この情報の取捨選択を行う。

 

 芝の様子を見て、最適なコースを探す。捲り具合、重さ。水滴。湿度による変化。

 同じコースの同じレース、例えば宝塚記念でも天皇賞(秋)でも、1つとして同条件で開催されることはありえない。

 その微妙な変化を感じ取る。そのために不必要な情報を削ぎ落とす。

 

 すごい技術である。大したものである。

 差し当たっての問題は、サイレンススズカという先頭民族出身のウマ娘はこの技術を無意識に、そして常に使っているということだった。

 

 故に割と簡単にシカトしたりするし、状況に惑わされたりすることが少ない。

 

 明らかに自分に向けられた視線やら呟きやらなにやらをまっっっったく気にしていないのは、おそらくはそのおかげであり、その所為だった。

 

「ここの一押しはステーキということになっているんですけど、私からすればハンバーグがいいと思います。お塩を振っただけのものなのですけれど、あっさりと食べられて……」

 

(そう見えているだけなのだろうが、神経太いなこいつ。ワイヤーロープ製か?)

 

 彼女には、結構繊細なところがある。

 しかし擬似的な神経の太さを獲得してしまう情報の取捨選択の巧さが作用して、ある意味では尋常ならざる図太さを手に入れているように見えるのである。

 

 ニコニコしているサイレンススズカを見つつ、彼女の前に運ばれてきたそれと比して4分の1程度のハンバーグを食べつつ、東条隼瀬はふと気づいた。

 

「お前、ステーキなのか」

 

「はい。好きなので」

 

 枕詞に【あれだけ人にハンバーグを激推ししておいて】という言葉がつくであろう言葉をぶつけられてもそれに気づくことなく、ステーキにナイフを入れる。

 

(実にスズカしているなぁ)

 

 客観的に美味しいと思ったものを勧める。

 そして自分は自分の道を行く。

 

 そういうところがある。実にある。

 極めて言語化しにくいあやふやさに包まれた、絶妙にズレている感覚。

 

「美味いか。ステーキ」

 

 ほっそい身体をしているが、サイレンススズカは一応ウマ娘である。

 彼女が人間には到底食べ切れないような量を食べ進めて半分までいったところで、彼は雑談のような形で声をかけた。

 

 特に意図はない。強いて言うなら美味しそうに食べるなぁとか、そのあたり。

 基本的に言葉を額面通り受け止める(受取拒否して着払いで返送してくることもある)スズカは、ニコニコしながら答えた。

 

「はい。美味しいです、ステーキ」

 

(そんなに肉料理が好きなのか、こいつ)

 

 昔は割となんでもそれなりに美味しそうに――――少なくともこんなにニコニコはせず――――食べていた。

 

 

 ――――アメリカに3年ちょい居て、味覚が変わったのかな。

 

 

 そう思ったこの男も割と言葉を額面通り受け止めるきらいがある。

 無論、スズカの言葉の中になにか……わざと含ませたようなところがあるわけではないが。

 

 少し優しげに――――親しくなければわからない程の変化ではなく、明確に――――変化した目線を受け止めて少し首を傾げた。

 

 なにがそんなにも彼の目線を優しくしているのか、サイレンススズカにはわからない。そして本来こういう雑談を振ってくる人間ではないということも知っているから、なおのことその意図が読み取れない。

 

 取り敢えず一口でひと切れを平らげてモクモクと咀嚼し、スズカは彼の意図するところにピンときた。少なくとも彼女自身はそう思った。

 

 見た目だけは清楚な、音も鳴らなさいし、肉の脂をちっとも唇につけない行儀の良さ。

 おそらくは小さな頃に身に着けたものを天然で発揮している彼女は、少し自信ありげに目を瞑って、フォークに突き刺したステーキの切れっ端を差し出しながら、言った。

 

「トレーナーさんも食べたいんですか? ステーキ」

 

「いらん」



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アフターストーリー:夜討朝駆

ミホっとした顔……継承の時のアレ、ないしは凧見る時のアレ


 花見に行くことになった。

 

 まあ、たいていのウマ娘が花より団子なわけだが、季節ごとの行事というものへの憧れはある……らしい。

 

 ロボっぽくて犬っぽくて実はサイボーグでウマ娘なミホノバーボンは、ぴょこぴょこと耳を左右に動かしながら尻尾を縦に振っている。

 基本的に物静かなこのロボは、案外とみんなで何かをするのが好きだった。如何にも一人でいるのが好きです、みたいな雰囲気をしているのにである。

 

 そんなウキウキブルボンを他所に、各員の役割は滞りなく決まった。

 

 東条隼瀬とルドルフが料理を用意し、ブライアンが荷物持ちと味見役を兼任し、行き先までは料理に引き続きまたも彼が担当し車を出す。

 

「トレーナーさん?」

 

「ん?」

 

 心底意外だとでも言うように、東条隼瀬は少し離れたところにいるミステリーサークルの主を見た。

 

「いたのか、スズカ」

 

 めずらしい。室内にいる時間より走っている時間のほうが遥かに長い彼女からすれば、こういった長時間の企画会議に顔を出すのは如何にも珍しかった。

 

 うそでしょ……としている先頭民族は、案外何でもできたりする。一応車も運転できるし料理もできる。アメリカで過ごしたクリスマスではブッシュ・ド・ノエルを自作したとも聴いた。

 

 しかし、じゃあどこに割り振る?と言われると答えに窮する。

 できることが多いというのは必ずしも、適役の多さを意味しない。日常的な面でも、レース的な面でも。

 

「スズカは……まあなんかこう、そこらへん走っていればいいんじゃないか?」

 

 俺としては、元気に走っているだけでいいのだが。

 彼はそう思いつつも、そういうことに限っては言わない。そういう性格なのである。

 

「こ、この雑さ……」

 

 うそでしょ……とは言わなかった。ホントであってほしいから。

 

 語尾に勢いがありつつもどこか嬉しそうなスズカ――――昔に戻ったようでなんとなく嬉しくなっているらしい――――を本当に雑に放置したまま、彼は話を進めることにした。

 

 ちなみに一応言っておくと、彼がこの会議中に彼女の存在に触れることはこれ以降なかった。完全に放置を決め込んだのである。

 

「で、料理はルドルフに頼みたい」

 

「ああ。任せてもらおう」

 

 心無しか嬉しそうに頬をほころばせて言った【皇帝】は、スズカとは違う。

 つまり、やれることが多いし適役も多い、ということである。彼としてはやってほしいことが多くあって、もう2、3人欲しいくらいだった。

 

「じゃあ私が味見役をしてやろう」

 

 そんな心中も知らず、今年の――――否、ここから2、3年間の間のトゥインクル・シリーズの主役がすっくと立ち上がる。

 

 姉と両親に厳しく鍛えられた百戦錬磨の味見スキルは極めて高い。自己申告によると。

 それは福引でガラガラを回すスキルと同格、いやそれ以上だという。自己申告によると。

 

「じゃあまあ……それで」

 

「アンタは私の味見スキルを信じていないようだが、驚くことになるぞ」

 

 驚くことになっても、それはルドルフの手柄だよ。

 この場にいる誰もがそう思ったが、この生粋の妹気質であるバンカラ風末っ子に直接言うことはしなかった。

 

「マスター。私は何をしましょうか」

 

「ブルボン……」

 

 2人は見つめ合った。少なくともサイレンススズカにはそう思えた。

 

 え、なんでしょうこの差。私の時はちらっと見て諦めたような雑さだったのに。

 

 心の中で抗議している先頭民族は、実のところ自分の気質をよく理解している。

 それだけに、ごたごたとデモを起こすようなことはしなかった。

 

「……君にはある重要な任務を与える。これの成否如何で、この花見の成功失敗が決まる。それほどのものだ」

 

「光栄です、マスター。どうぞ私にオーダーを。必ず達成してみせます」

 

 沈黙が流れた。

 というか東条隼瀬は殊更に沈黙を流してみせた。これは彼の趣味ではなく、昨日ブルボンがこういう勿体ぶった会議シーンを何回も巻き戻して見ていたからである。

 

 ロボアニメなら、戦闘シーン。

 どうせブルボンは戦闘シーンを何回も見るタイプなのだろう。そう思っていたが、そうではないらしい。

 

 それが彼女の精神的成長によるものなのか、元々なのか。そのあたりを、彼は知らない。

 知らないが、勿体ぶった会議シーンをセリフを真似しながら一人二役でこなすブルボンはかわいかった。あと、【こういうのに憧れる年齢なのか】という納得もあった。

 

「ブルボン。君には【場所取り】を命じる。君が花見に適した場所を選び、確保するんだ」

 

「ステータス【感激】を確認。そのオーダー【場所取り】は皆さんの仕事の根底、基幹を為すもののはず。それを私、ミホノブルボンに任せていただけるのですか?」

 

「ああ、ブルボン。任せた」

 

 言葉使いがロボっぽく――――おそらく、いや間違いなく昨日見ていたアニメの影響――――戻ったブルボンを微笑ましげに見ていたルドルフは、贔屓目なしにいい人事だと思った。

 

 ミホノブルボンは当初、自分の判断を放棄しているようなところがあった。細かな指示をされなければ1日でも2日でもやり続ける愚直を超えた愚直さがあった。

 それは時と経験による情緒の成長によって大方解消されたわけだが、こういう大幅な裁量を与えられて動くのはあまり経験のないところだろう。

 

 精神的な成長が見込める。さすがは参謀くん。一石二鳥のいい手だと彼女は思った。

 

 で、実際はどうなのか。どうだったのか。

 ブルボンの行動から見ると、これは世紀の人選ミスであった。

 

(任せるとは言っても)

 

 心配だ。率直に言って、東条隼瀬はそう思う。

 

 親心、あるいは放し飼いにしていたペットがちゃんと自分のところに帰ってくるのか心配な飼い主心。

 ブルボンは極めて優秀な能力を持っているが、絶望的に抜けているところがある。

 

 つまり、天然なのだ。

 彼女はある瞬間を切り抜いたらそこらへんの犬の方が賢いのではないかと思うくらいな天然さを、時折見せる。

 

(一応事前に見ておくかな)

 

 ルドルフは問題ない。味見役の妨害を受けてもなんとかするだろう。スズカはなんの仕事もないからなんとかなるだろう。

 

 ……いや、集合場所に来るかはちょっと自信を持って断言できないが、結果的にはたぶん問題ない。きっとスズカは走って目的地に来る。

 

 問題は、ブルボン。いぬっぽいウマ娘。

 あの天然が炸裂した結果、例えば花見なのに頑なに居住性を重視し、花が見られないところを取る可能性もある。

 

「心配し過ぎな気もするが……」

 

 予め下見して、適した場所をそれとなく教えておくか。

 そういう配慮のもと、夕刻。彼は車に乗って出発した。ブライアンの宝塚記念の相手と、アオハル杯の次戦、芦毛バスターズの調査の途中だが、まあ行って帰るだけならなんとかなるだろうと思ったのである。

 

 事実、行って帰るだけなら彼の仕事は今日中に終わったことは間違いなかった。

 

 トレセンは、府中にある。

 そして花見場所は府中に程近い河川敷にあった。桜たちは見事に花を咲かせ、白と桃色の間の子のような花びらを振りまいている。

 

 車を所定の駐車場に入れ、東条隼瀬は景色を見渡した。

 

(中々に綺麗だ)

 

 沈む寸前の夕焼けは光量が足らない。そしてその足らない光量も橙色に染められていて、本来の桜の色を完璧に堪能できたとは言い難い。しかしそれでも、歩いていて風流だと感じさせるだけの美しさがあった。

 

「ジャリガキぃ! どこや!」

 

「こっちだよー!」

 

「声出して教えてくれるなんてアホやなぁ自分。姉諸共しばき倒して腹に飯ぎゅうぎゅうに詰めたるわ!」

 

 汚い悲鳴と汚い笑い声のハーモニーが、ここは風流とは程遠い現実であることを教えてくれる。

 風のように駆けていく鹿毛の少女と、それをかなりの速度で追っかける男。

 

 兄弟だろうか。いや、口ぶりからして姉とやらの友人かなにかか。

 まあそんな興味は薄れて消え、彼の意識は桜に戻った。

 

(やはりそれなりに、花見には来ているか)

 

 ただ、撤収の時間になりつつある。

 家族連れたちが続々と帰っていく光景をなんとなく見ていた彼は、視界の端に何かが過ぎったのを見て立ち止まった。

 

 なにか、光る物。ほぼ無くなりつつある陽光を跳ね返してぼんやりととかそういうのではなく、明らかに人工的なその青色は到底自然界に存在していいものではない。

 

 そしてその青色は、これまでに何度も見てきたものに酷似していた。

 

「……」

 

 その光は、好立地に座していた。

 地面スレスレで光っているところを見ると、落とし物か。

 

 そんな現実逃避をしつつ、彼は光源に寄っていく蛾のような塩梅でその好立地へと近づいていった。

 

 近づけば近づくほどにわかる。桜も見えるしレジャーシートを張る広さもあるし、5人で食べても寝ても余裕な大きさがある。

 

 その中心に、何かがあった。ぐるぐる巻きにされた人体、あるいはミノムシ。そんな感じ。

 

 ぼんやりと光る髪飾り。何を考えているかわからない、形容しようのないアホ顔。強いて言うならば、ミホッとした顔というべきか。

 

 そんなミホッとした顔を晒していた謎のウマ娘は、寝袋から出た耳をピンと張って揺らした。

 足音で近づいてくる誰かに気づいたのか、ごろりんとこちらに寝返りをうつ。

 やけに尻尾を振っている謎のウマ娘はミホッとした顔をキリリと引き締め、そのままいつものように腕を前に付き出そうとして寝袋に阻まれて諦めた後、口を開いた。

 

「これはマスター。奇遇ですね」

 

 寝袋入り一般無敗三冠ウマ娘。

 暗がりで発光する謎の耳飾りを付けた、実によく聞く声がした。

 

「ミノムシブルボン……」

 

「はい。ミノムシブルボンです」

 

 そしてノリがいい。ミノムシのようになっているブルボンは腕をズボッと寝袋から出して身体を起こした。

 

「何故ここにいる?」

 

「……?」

 

 フリーズしたように疑問符を浮かべるブルボン。再起動した方がいいかもしれないなどと思いつつ、完璧な野宿態勢をとっているこのイヌ娘の隣に座る。

 

「マスター。私がなぜここにいるかと言えば、それは場所取りの為です」

 

「うん……」

 

「はい」

 

 ピコピコと耳が動く。

 それが理解してもらえたという嬉しさ故だということも、そしてみんなの為になる場所取りの為なら夜から待機しかねない性格であることも、彼は理解していた。

 

「マスター、お茶をどうぞ」

 

(たしなめにくい)

 

 熱々のお茶を渡された東条隼瀬は、そう思った。

 

 場所取りという行動目的は正しい。

 防寒具や寝具、飲食物などの携帯など事前準備も間違っていない。

 

 ただ致命的に出発時間が間違っている。具体的に言うと9時間くらい。

 ぽけーっと口を半開きにしているブルボンはたぶん、とてもワクワクしている。お花見がそうさせるのか、みんなでするという状態がそうさせるのか、あるいはどっちもか。

 

「マスターも場所取りに来られたのですか?」

 

「いや、見に来ただけだ。すぐに帰るつもりだった」

 

「そうですか」

 

 耳がしょんぼりとする。

 腰をゆっくりと上げると綺麗な青色の瞳が追従し、更に耳がしょんぼりとしてシルエットがヒト娘のそれになった。

 

「……」

 

 そのまま、座る。

 ウマ娘の平均より長そうな耳ときれいな形をした眉がピコンと上がる。

 

 立つ。

 ウマ娘の平均より長そうな耳ときれいな形をした眉ががしょんぼりと萎れる。

 

(わかりやすいやつ)

 

 もう仕方ないと、彼は腹を括った。

 夜に1人で場所取りをしている担当を放置して帰るわけにも行かないし、なによりそんなことをすれば罪悪感が湧く。

 

「ブルボン。毛布はあるか?」

 

「はい」

 

 耳がピコピコしている。嬉しいのだろう。

 寝袋の中に納められた尻尾がブンブンする代わりに、どうにも耳が感情を表す端末になっているらしい。

 

「どうぞマスター」

 

「ありがとう」

 

 PCを立ち上げて学園に外泊する旨の連絡を入れ、仕事をはじめる。

 そんな彼をご機嫌そうに、ブルボンは耳をピコピコさせて眺めていた。




更新通知は
https://mobile.twitter.com/LLUMONDE
でやってます。昼飯がどーたらとかはなくウマ娘のことしか呟かないので基本無害です。


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アフターストーリー:役立たずの神龍

オチ担当スズカさん


「マスターマスター」

 

 よっぽど寂しかったのか、ブルボンは仕事の合間合間に話しかけてきた。

 無口でストイックなサイボーグといった感じな印象を持たれるこのウマ娘は、見かけによらず多弁でフレンドリーである。

 

 その話に、特に中身があるわけではない。日々のちょっとした話とか、クラスであったこととか、あまりの長距離無双の果てに国外追放――――別にそんなことはない――――を喰らってイギリスあたりを荒らしているライスシャワーとの通話とかそのあたりで、深刻な悩みもない。

 

 いや、なかった。

 家庭的に貧しく走る道を選択できないウマ娘たちの支援の為の基金――――奨学金を細分化して一口数千円にして、その出資に応じた回数ライブチケットを配布するもの――――の草案をまとめ終えた瞬間、割と中身のある問いが降ってきた。

 

「マスター。それは奨学金、ですか?」

 

「そうだ。あとはダート人気回復……いや、回復というほど人気があった例はないが、そういう施策も盛り込んでいる。お前のおかげでトゥインクルシリーズは盛り上がっているからな」

 

 一口募集するのは、それなりに人品骨柄のちゃんとした相手に向けてである。

 一般大衆に向けて募集を開始するのは、この制度が固着し一般化した後でも遅くはないと、彼は思っていた。

 

「私の夢が他の方々の夢の架け橋となっていくのですね」

 

「嬉しいか」

 

「はい。感無量です」

 

 感無量ボン。

 嬉しそうな担当の横顔を見て、東条隼瀬はなんとなく気づいたところを述べた。

 

「で。前置きはよかろう。何かあるのか?」

 

「……はい」

 

 ちょっと佇まいを正して、ブルボンは話をはじめた。

 

「私の同期はもう随分少なくなりました。バクシンオーさん、ライス、タンホイザさん、ボーガンさん。重賞戦線に絡めているのはこの4人くらいなもので、他の方々はいよいよ衰えが激しくなってきています」

 

「うん」

 

 それで?と。

 尖っていた、端的に言えば人の心が無い頃の彼ならばそう言っていただろうが、彼はこの栗毛のわんことのアニマルセラピーによってだいぶ丸くなっていた。

 

 その結果極めて雑に扱われる先頭民族もいるのだが、互いに幸せなのでまあ問題はない。たぶん。

 とにかく、彼は言いづらそうにしているブルボンの言葉を辛抱強く待った。

 

「私の友達も、引退するらしいのです。夏に」

 

 ポツポツとブルボンは話しだした。

 寒門の出のその娘は苦戦しながら未勝利戦を勝ち、クラシック期間をOPクラスに勝ち上がることに費やしていたらしい。

 

 つまり2戦目でGⅠを手にし、クラシックを制しシニアで覇を唱えたブルボンとは正反対のキャリアを、その子は送ってきたのだ。

 

(実力のある子じゃないか)

 

 東条隼瀬には常識に欠けるところがある。だが職掌内の常識は完璧に把握していた。

 

 そもそも殆どのウマ娘は、中央トレセンに入れない。

 えっそこから?と思うかもしれないが、これは事実なのだ。実のところ地方トレセンに入るのも一苦労で、そこから勝つのも難しい。

 

 そして中央で勝つのは、その何倍も難しいのだ。重賞を勝つのは、ではない。1勝すらもである。

 

 未勝利戦を、というあたりメイクデビューで負けたか、あるいははちゃめちゃにデビューが遅れたのかのどっちか。

 しかしそこで勝ち、OPクラスまで上がってくる。この時点で弱小チームならエースを張れるし、学園に入り走ることを求められる上澄みのウマ娘の上澄み、中央の中でも更に上澄みなのだ。

 

 まあその上澄みの上澄みの上澄みの上澄みの上澄みたる三冠ウマ娘を、彼は3人担当しているわけだが。

 

(そしてたぶんいい子だ)

 

 仰ぎ見るぶんには、いい。ミホノブルボンは寒門の星だ。

 だが星というのは距離を取るから明るい程度で済むのである。近ければ近いほど、その明るさは目障りにもなる。

 

 スタート地点は同じだった。

 しかし今は天と地ほどの差があると言っていい。少なくとも実績という観点から見れば。

 

 つまり、僻まずにはいられないだろうに僻まなかった。そのあたりに、その友人の人の良さと限界が見えた。

 

(性格的に、恬淡としているのだろうか)

 

 そんな予測をしている最中も、ブルボンの話は続く。

 その娘はシニアに入ってごくまれに重賞で入着したりOP戦を勝ったり負けたり。GⅠに出走できるかできないかという話までいったこともあったが、流れたとのこと。

 

「私は正直な話、勝利に一喜一憂することはありませんでした。三冠のみが私の目指す場所であり、夢であり、他に興味はなかったからです」

 

(残酷な話だ)

 

 ブルボンには頑健さくらいしか才能がない。都合のいい単位になるくらいにない。

 ものすごく頑張れる粘り強さはあるが、それは才能ではなく気質の問題である。

 

 つまりスタートラインは近かったと言える。

 だが意識や目的が違うと、ここまで変わってくる。

 

 これはブルボンの実家にテレビがなかった、というのも原因だろう。理由はブルボンが家電という家電をぶっ壊すからなわけだが、それだけに彼女は三冠以外のレースに興味や知識を持たないままにトレセンに来た。

 その無知さが、彼女に余計な油断や達成感を生まなかった――――というのは評価し過ぎだろうか。

 

「ですがそうではない、と知りました。つまり勝つのは、とても大変なことなのです」

 

 それは奇しくも、今のライトファンと同じ目線だった。

 三冠はよくある。メイクデビューは勝てるものだし、重賞は通過点。GⅠは何個勝てるかを競うもの。

 

 しかし三冠は頻発しないし、メイクデビューは勝てないし、重賞は挑戦することすら難しい。

 GⅠを複数勝つなど、それこそ天文学的確率なのである。

 

「お前は自分が三冠になることを疑ったことはなかったものな」

 

「いえ。疑わしくなったことはありました。しかし、マスターがいてくれましたので」

 

 ずぶとい。いや、ライスシャワーもそうだが、自然と勝つ前提で物事を組み立てられるのはある種の才能なのだろう。

 

 そう思っていただけに、この回答は意外だった。

 

「そうか。ならトレーナーとしての甲斐性があったということかな」

 

「はい。そんな甲斐性のあるマスターに相談があります」

 

 あれ、嵌められた?

 そんなことを思いつつ、まあなんだろうと耳を澄ます。

 

 東条隼瀬にとって、ミホノブルボンは単なる担当ウマ娘ではない。恩人でもあり、ルドルフやスズカと同じくらい人生を左右した存在である。

 その相談は無条件で聞くし、可能な限り叶えてやりたい。

 

「私の友達が重賞を勝つ方法はないでしょうか」

 

 だがこの願いは、予想していたとはいえ難しかった。

 

「その願いは私の力を超えている……」

 

「……? なぜですか?」

 

 マスターならできる。

 子供っぽい信頼があっただけに、ブルボンは戸惑った。重賞を勝つのは難しいという自覚があっても、である。

 

「できないわけではないが、その娘にはトレーナーも居るだろう。引退レースとなればそのトレーナーにもそれなりの考えがあるのではないかな」

 

「それは……その通りです」

 

「生徒同士が助言を与え合うのは謂わばよくあることで、管理すべき対象にはない。だが他のトレーナーが頼まれてもいないのに口を挟むのはよくない」

 

「はい……」

 

 しょんぼりしている。

 とてもしょんぼりしている。その原因はたぶん思惑がうまくいかなかったからではなく、自分がちょっとまずいことをさせようとしていることに気づいたからだった。

 

「まあその話は終わりにして。少し講義をしてあげよう」

 

 ピコンと、畳まれていた耳が起きる。

 聴く姿勢を示した担当に向けて、参謀は参謀らしく講釈を垂れた。

 

「逃げ先行という戦法についてだ。これは乾坤一擲、何かを変えたいときに用いられたりする。これはペースをコントロールしやすく、まぎれが起きにくいからだ。例えば他の後方脚質だと前が詰まったり、バカ逃げの結果直線までに大きなリードを取られ、どうにも差しきれないと言ったことが起こりうる」

 

「なるほど」

 

「どうしても、運を味方にしても勝ちたいという引退間際のウマ娘はこういう思考に陥りがちだ。そしてそれはよくあることだから、よく知られている。わかるかな」

 

「……はい」

 

「ここにとあるウマ娘の成績がある。通過順位を見ればわかるが、差しから先行へ、先行から前目の先行へ。そして逃げに転向して負けている。この場合次にたどり着くのは、なにかな」

 

 ブルボンの頭に、最近特にニコニコしているウマ娘の――――自分とは違う逃げの使い手が浮かんで、消えた。

 

「このぶんだと、逃げに慣れているだろう。しかしスピードの持続力の差で先頭は取れていない」

 

 大逃げをしろ、ということかな。

 そう思いはしたものの、ブルボンはどうも確信を持つには至らなかった。

 

 大逃げとは、やるだけなら誰でもできる。しかし完遂し切るには通常の四脚質よりも上の能力が要る。

 

 悩みはじめたブルボンに語りかけるように、東条隼瀬は続けた。

 

「引退レースとなれば、誰だって主役になりたい。しかしもっと目立ちたいレースがある。それが何か、わかるか?」

 

「…………」

 

 少し、考え込む。

 浮かぶのは、お父さんと一緒に見に行ったレース、日本ダービー。

 

 あのとき先頭で走るウマ娘は、誰よりも目立っていた。その後沈んでいたが。

 

「……日本ダービーでしょうか」

 

「そうだ。見たことはあるな?」

 

「はい」

 

 見たことがあることを、彼は知っている。何故ならブルボンが実家に帰ったとき、日本ダービーのレースの半券を見せられたことがあったから。

 そしてその年代さえも。その年代に起こっていた事象さえも。

 

「前を走っている子が居ただろう。それについてお父さんに聴いてみなさい。そして……そうだな。ルドルフとの宝塚記念のレースを見ろ。勉強の一環だ」

 

「わかりました、マスター」

 

「ここからはまた違う話になるが、作戦と言うのは過去を見てから立てる。

未来に勝つ為に、過去を活用する。なぜなら未来とは各々違った物を描くが、過去は見方を変えられても内実と外面は変えようがないからだ。過去とは共通認識であり、共通認識はそれを知る者の考えの礎になる。わかるかな」

 

 なんとなく、わかった。

 だがここでありがとうございますと言えないこともわかっている。

 

「マスター」

 

「なんだ」

 

「私の将来の為の講義、感謝いたします」

 

「それがわかっているならば、いい」

 

 聴いて、成績を見て、状況を把握して瞬時に作戦を立案する。

 そしてその立案した作戦を解体してピースを散りばめ、解かせる。

 

(マスターはなぜそんなにも、簡単に奇策を思いつけるのでしょうか)

 

 この心情を把握していたら、彼はこう応えただろう。

 

 凡そ戦いは、正を以って合し、奇を以って勝つ。故に善く奇を出だす者は、窮まりなきこと天地のごとく、竭きざること江河のごとし。

 

 この本意とはやや色彩を異ならせるが、こうして正と奇を組み合わせれば正が奇に見え奇が正に見える。その認識の差を付けば案外それらしく見えるし、勝てるのだと。

 

(ん?)

 

 やりすぎたかな。そんなふうに悩む男は、かすかに震えたスマートフォンに触れて電源を入れた。

 

 【明日、一緒に行きませんか?】

 そんな連絡を寄越してきたのは、先頭民族。

 

「現地にいる、と」

 

 思いやりも素っ気もない連絡を返すと、【うそでしょ】がきた。

 いつものことである。



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