彼と彼女の歩く道 (ノイフェル)
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始まりのうた
 いつもの日常


 以前の小説が警告受けたのでやり直します

これでも警告受けるなら、諦めます


 突然だが、皆様におかれましては『ウマ娘』というものをご存知でしせうか

 

 

ええ、何故この様なとんちんかんな事を聞くかと言いますと

 

 

 

 

 

「キミィ、人の話はきちんと聞くものだよ?」

 

 

私の幼馴染がウマ娘なのです

 

 

 

 

 

 

彼女といつからの付き合いかと聞かれたところで明確な答えはでてこないでしょう

 

何せ物心ついた頃には一緒にいたものですから

 

 

幼稚園、小学校、中学校と見事に一緒でした

 

所謂腐れ縁とも言えなくもないでしょう

 

 

 

とはいえ、私の幼馴染もそうですが何故かウマ娘というものは容姿端麗、運動神経抜群というハイスペックを誇っているそうです

 

正直に言うと運動ベタ、ヒッキー、容姿?なにそれ美味しいの?な俺からすると並び立つのも無理なものなのです

 

対して、我が幼馴染は容姿端麗、文武両道という俺からすると

「え、なにそのチート?」

と言いたくなるほどの廃スペックを誇っております

 

 

数少ない欠点としましては、とにかく日常生活において手抜きをする事くらいでしょうか?

 

 

いや、手抜きというと語弊がありそうですね

正確には、彼女は家事全般が苦手であるということです

 

 

 

彼女の両親は共働きであり、所謂出張族と言われている人種です

 

彼女が小学校高等学年になった頃まではどちらかは家にいたのですが、ある程度大きくなって自分で判断できると思ったのか、仕事を優先するようになったのです

 

しかし、その頃の彼女は今もですが自分の趣味。というか、興味のある事に邁進しており、それ以外については熱を持っていなかった様に感じました

 

 

勿論、彼女の両親も必要以上の生活費を彼女に渡しており、暫くの間は惣菜などで過ごしていたと聞いています

 

洗濯についても、近所のランドリーを利用していたとかなんとか

 

 

 

私の両親もまた、仕事人間と呼ばれる人種であった為に小学生の頃より家事全般を仕込まれました

 

そして、中学に上がった時からほぼ一人暮らしとなっていた訳ではありますが

 

 

 

元々彼女の食事や洗濯(強引にやらされていた)をしていた事もあり、然程に問題ではなかったのですが

 

 

 

「おーい、そろそろ無視するのはやめてくれないかい?

流石の私も泣きたくなるよ」

 

 

お、これはあまり良くない兆候ですね。目が潤んでいます

 

 

「や、わりぃ。考え事を少しな」

 

「ふむ。君が色々考え込むのはいつもの事だが、何を考えていたんだい?」

 

「今日のご飯?」

 

おい、目が輝いてんぞ。クールキャラどこいったよ?

 

 

「ほう。それは興味深いね

何にするつもりだい?私としては、そうだねぇ」

 

「や、今日は野菜炒めにする予定なんだが」

 

「待ちたまえ。確か先週もそうじゃなかったかい?

作ってもらっている手前、余り文句をいうのは憚られるが、もう少しバリエーションをだね」

 

「お前が野菜嫌いなだけでしょうが」

 

「いやいや

別に野菜が嫌いという訳ではない

ないのだが、別にサプリでも栄養素は取れるだろう?

此処はオムレツとかはどうだろう?」

 

「は?お前まだサプリメント使ってんのか?」

 

「しまっ!

さて、何のことかなぁ。私には心当たりがないんだが」

 

 

こいつ

 

「そうか

なら、お前の部屋を掃除しよう」

 

「いやいやいや!本当に待ちたまえよ

私とて女だぞ!部屋くらい自分で片付けられるさ」

 

「そう言って、いつも泣きついてくるのは誰だっての

定期的に掃除した方が楽なんだぞ?溜め込まれてから片すのは面倒なんだが?」

 

「いやいやいやいや、大丈夫だとも。流石の私でも部屋の片付けくらい出来るさ!」

 

 

おい、顔が引き攣ったんぞ。そこのクールキャラ(笑)

 

 

「そう言って一日中掃除に費やした先々週の事を忘れたか?」

 

「だ、大丈夫だ多分、きっとメイビー

 

おい、こっち見ろよ。この自称クールキャラ

 

 

 

 

「と、とにかくだ、野菜炒めも良いが別のメニューを希望するよ。私としては」

 

「とはいえ、お前のいうオムレツってあれだろ?スフレオムレツっしょ。あれ作るのめんどいんだが」

 

「そうはいうがね、アレは病みつきになるだろう

というか、手間がかかるのかい?」

 

「そうだよ。アレ作るのに卵1パックくらいいるんだぞ?」

 

「おや、何故だい?」

 

「アレ、白身で作るんだぞ?

手間がかかり過ぎんだよ。作るなら準備しときたいわ、いやマジで」

 

 

 

スフレオムレツ

 

白身で作るオムレツである

 

故に普通のオムレツよりも卵の消費数が半端ない

 

 

 

「ふむ。ならば買いに行けば良いだろう?」

 

「今何時だと思ってんの、お前」

 

既に夜の8時半を回っている

 

ウチの近所のスーパーは8時閉店で、コンビニは徒歩圏内にはない。ついでに最寄りのコンビニに卵は売ってない

 

まぁ、コイツだけなら離れているスーパーにも行けなくはないが、流石にこの時間からの出歩きは宜しくない

 

 

俺たちは中学生なのだから

 

 

 

 

 

「む、むぅ。では明日!明日オムレツではどうだい?」

 

コイツとしても流石に無理と判断した様で、不満そうに明日オムレツを作る様要求してきた

 

 

「しゃーないなぁ

んじゃ、明日買い物付き合えよ?」

 

「勿論だとも

こちらも材料が切れているからね、色々必要なんだよ。色々と」

 

 

ウマ娘ってのは、なんだかんだいって身体能力高いからなぁ

買い物とかでもかなり楽になるんだよ

 

まぁ、男として思う所がない訳でもないのだが。諦めねばならない部分というのもあるからな

 

 

 

「とりあえず飯作るから、部屋片付けとけよ」

 

「ああ、任せたまえよ」

 

任せるも何もお前の部屋なんだが

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして何もない日常は過ぎていく

 

 

俺と幼馴染は中一

 

いつまでもこんな生活が続くと思ってたんだ

 

 




アグネスタキオンが可愛すぎるので書いた

後悔も反省もしない


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 てんき

暫くは湿度多めでお送りします

普段マイペースな娘が曇るのはキツくもあり、それも良いと思う自分がいます(外道)

かなり胸糞な表現かもしれませんが、ご理解のうえご覧下さい


 

 私はアグネスタキオン

 

ウマ娘としてこの世に生を受けた

 

 

ウマ娘とは何か?

と問われたならば、答えに窮する

 

 

実のところ、自身のこととはいえ、ウマ娘について科学的に調査も行われているが判明している事はそう多くはない

 

身体能力が高いこと。五感も優れていること

そのくらいだろうね

 

 

まぁ、その辺りはどうでも良いと思っている

別に私がウマ娘だったとして、そこまで生活に影響を与える事はないからね。幼馴染と一緒にご飯を食べ、学校に行き、バカな話をして過ごす。

そんな日々が続くと思っていたんだ。愚かにも、ね

 

 

 

 

 

 

 

ああ、そう思っていた昔の私を全力で殴り飛ばしたくなるよ。本当に

 

 

 

 

 

いつもの様に放課後、中学校で研究をしていると教員が私を呼びに来た

 

 

学校においてはそれなりに真面目にしているせいか、優等生と見られていた。興味のある内容は殆ど無かったが、一々教師にとやかく言われるのも面倒だからね

 

ああ、幼馴染はその辺りは少々不器用であった為か、どちらかというとあまり成績は良く無かったね

 

そのお陰で私が彼に勉強を教える事が出来るのだから、良しとすべきなのだろうが、ね

 

 

 

学内で問題を起こすのは面倒だからと呼び出しに応じたのだが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウマ娘の為の教育機関、ですか?」

 

「そうだね。現在その様なものをつくる為に世の中から広く人材を求めているそうだ」

 

「それは、また」

 

 

確かにウマ娘と一般的な同年代の人間を比べると身体能力において、前者が勝るのは事実

どうしても、ウマ娘は力をセーブしなければ上手く社会に溶け込めないのだ

 

実際、窮屈である事は間違いない。間違いではないのだが

 

 

「勿論、本校にそのまま在籍してくれても構わないと私は思っている

例えウマ娘であろうが、なかろうがキミはうちの大切な生徒だ

だが、もしもこの環境が不自由であると感じているのならば、この様な進路もあるということを知っておいて欲しいのだよ」

 

「ありがとうございます」

 

 

うちの学校はそうでもないが、色々と噂話程度ではあるが聞こえてくるのも事実

 

幾ら本人が社交的であっても、相手がそうであるとは限らない

どうしてもウマ娘は異質なものだからね

まして、身体能力という絶対的な差が存在する

 

だから、ウマ娘達は運動系の部活に入る事が出来ない

いや、明確にその様な規定はないのだろうが、基本的な身体能力の差から倦厭される行為だ

 

仮に陸上部などにウマ娘が所属すれば、幾ら他の生徒が努力しようとも届かない部分が確かに存在する

 

 

私の様に元々運動系の部活に興味を持たないのは少数だろう

 

本能として、走りたいという欲求は存在するのだから

 

 

 

であるからこそ、ウマ娘専用の教育施設という事か

 

そこでなら、ウマ娘達も研鑽を積み、更なる高みへと至る事が出来るのだろう

 

 

 

「急いで決める必要はない

君のこれからに関わる重要な話だ。ゆっくり考えてくれて構わないし、何か知りたい事があれば聞いてくれて良い。いつでも力になろう」

 

「重ねてありがとうございます。校長先生

良く考えさせてもらいます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話が終わって部室に戻ったものの、あまり気分が乗らない

 

今日は此処までとしようか

 

 

 

今日の夕飯は何だろうか?

 

先週のオムレツは絶品だったのだが、次の日にレバニラ炒めを出してくるのは本当にやめてほしい

 

 

いや、私にはグラタンだったし、その日は彼は自分の家で食べていたから大丈夫と思ったのだろうけどね

 

割と私は嗅覚も良い方なんだ。調理と食事中にらついた匂いが次の日にも多少残っていたから、正直いってキツかった

 

 

いや、彼の嗜好にまでとやかく言える立場ではないのだけどね

それでも、気になるものさ

 

 

 

ああ、因みに私が一番好きな匂いは彼の自室の匂いなのだが、それについては墓まで持っていく秘密だろうね

 

流石に彼でも引かれる可能性が高いと思うから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アグネスタキオンの1日は

彼に起こされることから始まる

 

その後、彼の朝ごはんを食べ、一緒に登校

 

クラスは違うので、昼休みに彼手製の弁当を食べる

 

放課後はタキオンが科学部で彼は剣道部

 

だいたいが彼の方が後に部活を終える為、タキオンは自宅で研究を進める

 

部活の終わった彼は自宅でシャワーを浴びてから、タキオンの自宅にて夕食を作る

 

仕込みの間に洗濯と風呂を入れてくれる

 

 

その後、片付けを終わらせてから彼は帰宅

タキオンは1日の疲れを癒し、洗濯物を干す

 

 

これで一日は終わる

 

 

 

 

 

 

元々は彼の自宅ほどキッチンにものが揃っていなかったのだが、タキオンが両親にせめて調味料や道具を揃える様に頼み込んだ為、彼の自宅以上に充実したものとなっていた

 

更にタキオンは彼に頼み込み、こちらでの夕食を実現した

 

 

研究の時間を増やす為との建前であったが、本音は誰もいない自宅なら、せめて彼の匂いが欲しかった為である

 

 

いくら大人びたタキオンとて、まだ中学生。

小学校の頃から両親とは殆ど話をする時間が無くなっていたタキオンにとって、彼との時間は何よりも大切だったのだ

 

叶うならば、彼にこちらで寝泊まりして欲しいのが偽りなき本音だが、彼もそこまでは許容しなかった

 

自分の身近な彼との繋がりを求めていたタキオンにとって、それは辛い答えではあった。だが、それ以上に彼に嫌われたくないから涙をのんで諦めた

 

『せめて、彼と一番近しい場所に』

アグネスタキオンという少女の願いだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だからこそ、タキオンにとって校長先生の提案は興味こそ惹かれるものの、考慮に値しないものだった

 

ウマ娘というものに対する興味はあれど、それだけの為に彼との繋がりを断つ等、タキオンに選択する気はなかったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、アグネスタキオンは中学生である

 

 

しばらく後、その事を痛烈に実感する事になる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういう事だい、それは!!」

 

それは本当に珍しくタキオンの両親が揃って自宅に帰ってきた時の事であった

 

「落ち着きなさい、タキオン」

 

「そうよ」

 

「落ち着けだって?落ち着けるわけがないだろう!!!」

 

タキオンの両親が宥めようとするが、タキオンは止まらない

 

 

「一年振りに家族揃ってみれば、私にウマ娘の教育施設に行けとはどういう事なのさ!」

 

 

タキオンの両親が帰ってきた理由、それはタキオンへのウマ娘教育施設への転校の話であった

 

 

両親は言う

このままの生活では彼の負担になる

それにタキオンにとっても、そこへ行く方が為になる筈だ、と

 

 

 

手紙のやり取りもメールや電話のやり取りすら殆どしてこない両親。いつも傍で文句を言いながらも付き合ってくれる彼

 

どちらをタキオンが重視するなど論ずるまでとない

 

 

 

だが、タキオンは中学生であり、親の庇護下であるのも間違いではない

 

 

 

「私は今の生活で満足している

それじゃあダメなの?」

 

「あなた」

 

「タキオン。彼にはいつも面倒をかけているじゃないか

仮にこのままの生活を続けてどうする?

高校も同じところへ行くつもりか?」

 

「勿論だとも。それがいけないとでも言うつもりなの?」

 

タキオンの答えに父親は

 

「彼の人生はお前の為にある訳じゃない

確かに彼や彼のご両親は何も言ってきていないが」

 

「何だ、それは。私が寂しい思いをどれだけしていたのか!彼のおかげで今までやってこれた!

あなた達は何をしてくれたと言うんだ!家とお金を用意しただけじゃないか!

それで一番辛い時期を1人にして!彼に押し付けておいて!

今更、正論を振りかざすのか!」

 

タキオンを椅子を蹴飛ばすと、自宅から飛び出した

 

「タキオン!」

 

「待ちなさい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久々の卵かけご飯か」

 

彼は自宅でのんびりしていた

というのも、幼馴染であるアグネスタキオンの両親がほぼ一年振りに帰ってきたからである

 

アグネスタキオンという少女は分かりにくいが、非常に情の強い人物である

 

だからこそ、滅多にないこの機会にしっかり親と話をしたり、甘えたりするべきだと思い、今日は自宅で過ごしていた

 

 

 

 

実のところ、はじめの頃はタキオンの都合に付き合うと言う事で嫌であった

 

何度も喧嘩したし、泣かされも泣かせもした

 

 

だが、その中でアグネスタキオンという少女が何よりも『孤独』を恐れている事を知り、彼も余り両親に会えなかった事もあって今の形に落ち着いた

 

知り合いの中には『歪な関係』と言うものもいる

 

 

だからどうしたと言うのか

元よりまともな関係でないのは承知の上

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タキオンも彼も結局は両親に捨てられている様なもの

 

 

確かに彼の両親は少なくない愛情を注いでくれたのかも知れない

 

それでも思うのだ『仕事ばっかりでボクの事はどうでも良いの?』と

 

 

タキオンもそうだろう

 

 

 

 

依存だの執着だの言いたい者には言わせておけば良い

 

 

 

 

 

互いが互いを必要とする関係。歪でいつか壊れる関係であったとしても、今だけはそれで良い

 

 

 

 

 

 

そう彼は考えていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドンッ

 

 

 

 

 

 

 

そんな事を思っていた彼だが、不意に物音がしたのまでは聞き逃さなかった

 

彼の家は全て雨戸が閉まっており、窓から外は見えない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「タ、タキオン!どうしたんだよ!」

 

玄関から外に出るとそこには

 

 

 

 

「う、うう」

 

涙で顔を濡らして蹲る幼馴染の姿があった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月も星も見えない夜

 

何かが始まり、何かが終わりを告げる




 親の都合で振り回される子供。悲しいですが、よくある事なんですよね

この様な作品にお気に入りしてくださった方、ご覧になってくれる皆様には深くお礼申し上げます


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 弱い僕ら

書けたので投稿する

ハンズフリー?投降はしないっすよ?



うまぴょいではあ”り”ま”せ”ん”のでセーフ



本作は純愛路線のつもりでお送りしまさ


「参ったな」

 

「困ったわね」

 

アグネスタキオンが飛び出して行った後、両親は頭を抱えていた

 

「明日の早朝には戻らないといけないというのに」

 

「今日の深夜には出ないと間に合わないのに」

 

 

自身の娘が出て行ったことよりも自身の仕事を優先する両親

 

追いかけなかったのは、近所の目があるからである

 

 

 

 

普段居ない両親であるから

 

 

「あら?珍しいですね、いつ戻られるのですか?」

 

「へぇ、今回はいつまでいるんで?」

 

とご近所からの視線は厳しい

 

此処に自分の娘の事一つも出来ないなどという風聞が立てば、彼等の町内における立場が更に悪化すると思っていたからである

 

 

何せ、町内会の事も地元行事の事も何一つしていないのだ

それだけならまだ良いが、半ば育児放棄紛いの事までしていれば、そうもなろう

 

 

元々は彼等の職場は此処からかなり遠い為、両親はあまり気にしていなかった。が、流石に自分達に向けられている視線がキツくなっているのを今回改めて感じたという訳だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もっとも、彼等の予想より遥かに近所からの評判は悪い

 

 

子供がある程度育ってからとはいえ、育児放棄など近所の人間からすればあり得ない話であったからだ

 

だから、両親が彼の自宅を探そうとしても(実は一度も彼の両親や彼自身にも会った事がない)見つかるはずもなく、近所に聞こうにも教えてくれるはずもなかった

 

 

そしていたずらに時間のみを消費してしまう

 

タキオンに持たせていたはずの携帯もタキオンは投げ捨てて出て行っており、両親からすれば打つ手なしであった

 

 

 

 

 

最悪、警察に頼る事も選択肢に入るはずだが、両親は真っ先にその選択を潰した

 

世間体を気にしてのことであった

 

 

 

 

 

 

 

 

実はウマ娘教育施設に早期入学すると補助金が出る上に、諸経費に割引もされる

 

更に子供を預ける事で自分達の負担も減ると両親は考えていたのだが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、タキオンを見つけることが出来ぬまま、両親は自分の仕事先へ戻る事になる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、彼の自宅に来たタキオンだが

 

 

 

 

「ほれ、ホットミルク。とりあえず飲んどけ」

 

「・・・・うん」

 

タキオンの服は前日の雨のせいでぬかるんだ地面にこけたのか、泥だらけであり、髪もボサボサだった

 

「とりあえず、着替え持ってくるから待ってろ」

 

「・・・・」

 

彼の言葉に力なく頷くタキオン

それを見て自室へと向かった

 

 

「タキオン、まず着替えな

そんな格好じゃ風邪ひくぞ」

 

「・・・うん」

 

濡れた服だけでも着替えさせようとしたが、タキオンは一向に動かない

 

 

別に濡れた床や汚れた所はどうでも良い

それよりもタキオンをどうにかしないと保たない。そう彼は感じた

 

 

「風呂入るか?」

 

「・・・」

 

 

 

「悪いが、無理矢理でも風呂に入れっぞ」

 

彼はタキオンの手を引き風呂場へと向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、タキオンは身動き一つしなかった為に、彼は嫌われる事を覚悟してタキオンを風呂に入れ、髪を洗った

 

だが、タキオンはそれでも身動き一つしなかった

 

それが事の深刻さを雄弁に語っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

「タキオンはそこで横になってろ

飯だけは作らねぇとな」

 

タキオンをソファーに寝かせると彼は料理を始めた

 

本来ならば寝室なり和室なりに寝かせておきたいが、今のタキオンは1人にするには危ういものがあった

 

 

 

プルルルル

 

彼の携帯が鳴った

 

相手を見ると町内会長だった

 

 

 

 

 

 

「もしもし、どうされましたか?」

 

「おお、すまんなこんな時間に」

 

「いえ」

 

相手は町内会長で彼とタキオンの事を町内会ぐるみで助けてくれている人でもある

 

「そっちに嬢ちゃんは行っとるかの?」

 

「ええ、タキオンなら居ますが。かなり消耗している様ですが」

 

「どうやら家で何かあった様でな、頻りにお前さんの家を探しているようじゃの」

 

「そりゃ、また」

 

「とりあえず儂達から教える事はないから、今日は家から出ない事じゃのう」

 

「・・・・良いんですかね?」

 

「嬢ちゃんが消耗しとると言ったじゃろう?

おおかた両親絡みじゃと思うが?」

 

「そっ、すね」

 

「あれには皆不愉快に思っとるから大丈夫じゃろう

じゃけぇ、心配することはねぇからの?」

 

「・・・ありがとうございます」

 

「明日の早朝に電話するぞ?

今日一日は見張らせておくさ」

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

つまり、タキオンは両親と何かあったって事か?

 

 

彼は頭の隅にその考えを置きながら、お粥を作り始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「タキオン、とりあえず食べろ、な?」

 

「うん」

 

 

とは言っても、タキオンの手は動かない

 

 

いや、タキオンの手は細かく震えていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼はソファーに座るとタキオンを自分の膝の上に乗せた

 

 

小学生だった頃のタキオンが好きだった体勢だ

中学生になってからはしなくなったが、なりふり構っていられる場合でも無さそうだと判断した

 

 

「タキオン、食べな?」

 

タキオンの口元にスプーンを持っていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから30分程でタキオンはお粥を食べた

 

 

 

そして、そのままでタキオンのお腹に手を回して抱き締めた

何も言わず

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりに」

 

 

タキオンが話し始める

 

 

「久しぶりに、家に、帰って来て」

 

「話がっ、ある、って言うか、ら」

 

「ウマ娘、の施設に、行けって、迷惑だからっ!」

 

「うん」

 

「私、はっ、迷惑なのかい?」

 

「いっつも、いっつもキミに、迷惑かけて」

 

「タキオン」

 

腕の中のタキオンが強張った

 

「覚えてるか?

最初の頃はいつも喧嘩ばっかりだった事」

 

「うん」

 

「でもな、今となっちゃタキオンと居るのが当たり前なんだよ」

 

「う、ん」

 

「誰が何と言おうとさ、俺はタキオンと居たい

それじゃ、足りないか?」

 

「足り、なくない」

 

 

我ながら無責任な話だ。彼は内心自嘲した

確かに腕の中の温もりは離したくない。それは間違いないと断言できる。

だが、所詮は子供の言うことと言われてしまえば、どうにもならない現実があった

 

 

「愛している」「信じている」

言うのは簡単だろう

 

だが、想いを貫く為には彼等に持ち得ない物が多過ぎるのも事実

 

 

 

 

 

でも

 

それでも

 

そんな無力な子供であっても

 

「一緒にいよう、タキオン」

 

「うん、うんっ!」

 

 

この女の子は護りたい

そう願った

 

 

 

 

 

 

 

その日、彼とタキオンは一緒の布団で手を繋いで寝た

 

 

 

 

もう離れたくはないから

 

 

 

 

 

 

 




短いからスイスイかける不思議

本作は湿り気を多量に含みますが、基本純愛です(2度目)



実はモデルがあったりもします(実体験)

が気にしないで行きまっしゃい!


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 いっしょのみらい

書けるなら、投稿しようぜ、勢いで

と言うわけで連続更新3回目っす

え?文量が少ない



申し訳ありませんっ!
筆者のスキルでは今はこれが精一杯っす
許して下さい。できることなら何でも頑張りますからっ!

ではどうぞ


「一緒に住む?」

 

「ああ。私はもうあの家に戻りたくはない

恐らく両親と話し合いにもならないだろうからね」

 

あの日の翌日の早朝、タキオンと彼は布団の中で話をしていた

 

「そこまでかよ」

 

「ああ。多分補助金や世間体を気にしての事だとは思うよ

少し前に校長先生から聞いていて正解だったね」

 

彼は唖然とするが、当事者であるはずのタキオンの顔色は普段通りに戻っていた

 

「あの」

 

「ふふ

いいさ。慰めは。それに昨日の君のおかげで元気を貰ったよ」

 

「おまっ、それ言うんじゃねぇっての」

 

「嬉しかったよ。余り君は本音を聞かせてくれないからね

ただ、その、だね」

 

タキオンは布団の中でも分かる程に赤面していた

 

「確かに私が無気力だったのは、悪かったとは思う

だけど、流石にお風呂まで」

 

「あー、すまん

それについては弁明しようがないな」

 

彼も顔を赤くしていた

 

 

「とは言っても、嬉しくもあったけどね」

 

タキオンは微笑んだ

 

「•・・・・」

 

「おや、どうしたんだい?」

 

「っ!なんでもない、気にすんな」

 

「いやいや、その様子で何でもなくはないだろう」

 

「何でもねぇって」

 

「何だい、それは

今更隠し事などやめてくれないか?」

 

「いや、だから」

 

「話してくーれーよぉー

はーやーくー」

 

 

 

言えるはずも無いだろうと彼は内心悪態をつく

 

 

 

タキオンの微笑んだ顔が綺麗で見惚れたなどと

 

 

ガラではないと彼は思っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後30分にも及ぶタキオンのおねだり攻勢に何とか勝利した彼は朝飯の支度を始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、電話だよ?」

 

「ん、会長さん?」

 

「そうみたいだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

町内会長の話によるとタキオンの母親は昨日の深夜

父親は先程出て行ったらしい

 

 

会長よりは学校への連絡もこちらでしておくから、今日は休んだほうが良い。との事だった

 

念には念を入れた方がいいと言うのが町内会長を始めとしたご近所の総意だった

 

 

 

 

彼は食材の買い出しがあると断ろうとしたが、そちらについては昼くらいに会長にメールすればどうにかするとの事

 

 

最終的には会長を始めとしたご近所の好意に甘える事になった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、マジなのかよ?」

 

「おやおや、心外だねぇ

少なくとも私は君に嘘をつかないよ」

 

朝食の片付けをしながら、先程の話を続ける

 

「うちの親が何と言うのやら」

 

「勿論、全身全霊でお願いするまでさ

私は君と離れるつもりはないからね」

 

「そりゃ、俺もそうだけどなぁ」

 

「っ!

嬉しい事を言ってくれるねぇ」

 

思わぬ返球にタキオンは真っ赤になる

 

 

 

「しっかし、どうすんのさ?あれは」

 

「あれ?

ああ!あれの事かい?」

 

 

『あれ』とはアグネスタキオンが小学生の頃から取り組んでいた研究の事である

 

 

 

 

「あれなら止めるよ」

 

「止めるって、随分あっさりしてんなぁ、おい」

 

「今の研究テーマは寧ろ逆だろうね」

 

「逆?」

 

「そうだね。方向性で言えば真逆の研究になるだろう」

 

 

 

アグネスタキオンの研究テーマ。それは

 

『ウマ娘の限界』についてだった

 

 

つまり、ウマ娘という生き物はどこまで疾く走れるのか?

それがテーマだった

 

 

それは幼馴染であり、タキオンの理解者である彼も知っている

だが、逆とは?

 

 

 

 

この日よりウマ娘アグネスタキオンの新たなる研究が始まる事になる

 

 

 

 

 

 

 

 

この研究については後年、ウマ娘達の中においてとある一大事になるのだが、これは後に語らせて貰おうと思う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、彼とタキオンは昨日と同じ体勢でソファーに座っていた

 

 

「タキオン?」

 

「おや?何かな?」

 

尻尾は彼女と彼の間にあるから身動きとれないが、耳は明らかにご機嫌そうに動いていた

 

 

「嬉しそうだな」

 

「ふふっ、そうだねぇ。いつもはしてくれないこの姿勢だ

私のかなりお気に入りなんだよ?」

 

「さよか」

 

「おやおや、こんな美少女と密着できるんだ

もっとありがたがってもバチは当たらないと思うよ?」

 

タキオンの声色からも彼女の機嫌の良さが分かるというものである

 

 

「や、タキオンが美少女なのは否定しないし、嬉しいけどな?」

 

「ふむ、男性特有の『アレ』かい?

いいとも、相手は出来ないがその程度なら許容しようじゃないか!」

 

「あのなぁ」

 

彼は疲れた様な声を出す

 

 

確かにタキオンはどこに出しても紛う事なき美少女である

 

それは認める。全面的に

 

 

 

 

だが、やはり彼とて男である

タキオンの温もりや柔らかさ、仄かに香る彼女の匂いにノックアウトしているのだ

 

や、元よりタキオンにお熱なのだが

 

 

 

 

 

とは言っても、この状態のタキオンは彼の言う事など聞いてくれるはずもない

 

言うなれば『絶好調』であろうか

 

 

それに対して、彼は『絶不調』

元々のスペック差もあり、これでは勝負になろうはずもない

 

 

 

 

 

故に

 

 

 

 

「ヒャッ!」

 

タキオンの口から可愛らしい声が飛び出るのは必然であった

 

「ちょ、君何を

ひゃん!

 

さりとて彼とてタキオンと幼少の頃より悪戯をし合って来た者

 

タキオンの弱点など『お見通し』なのだ

 

「く、くすぐりとは卑怯じゃないかい?」

 

必死に耐えるタキオン

やや涙目でかつ涙声なのは、多少良心が痛む

 

「む、両親の良心!

これだっ!」

 

 

タキオンはため息をついた後

 

「あのねぇ、その癖はどうにかならないのかい?

確かに君は素敵な幼馴染だよ?だからこそ、それはやめてもらいたいんだが」

 

 

 

このタキオンの幼馴染、家事万能というかなりのスペックを誇るのだが、彼最大の欠点が『寒いダジャレ好き』であった

 

 

「何を言う、タキオン!

駄洒落こそが円滑なコミュニケーションの第一歩だろうが!」

 

「はぁ、そこで力説しないで欲しいんだが

そんなだから、『残念系男子』なんていわれると言うのに

 

 

 

 

『残念系男子』

タキオンの幼馴染につけられたあだ名である

 

勉強、運動こそ平均以下であるが、こと対人関係能力は同級生の中でも屈指の水準である。更に剣道をしているからか、礼儀作法にも明るく、家庭科系の能力は目を見張るものがあった

 

故にタキオンの幼馴染とはいえ、明確に付き合ってない事から、彼に好意を抱く女子もそれなりの数いたのだ

 

そう、いたの『だ』

 

過去形である

比較対象がタキオンである事もあるが、それ以上に頻発する『寒いダジャレ』に対応しきれなかったのだ

 

 

故に『残念系男子』という不名誉な称号を女子から贈られる事になった訳である

 

 

タキオンにとっては良い意味で誤算とも言えたので、積極的に改善させようと言う気はない

 

偶に遊び半分でからかうネタにするだけであった

 

 

 

 

 

 

そんなイチャイチャ(当社比)していた2人だったが、昼ごはんは2人仲良く作って食べた

 

 

 

 

 

 

 

 

3時ごろに町内会長が家を訪ねて来た

 

 

 

 

 

 

 

「家には帰りとうないか、そうじゃろうなぁ」

 

タキオンの希望を聞いた会長は納得していた

 

 

 

この2人が幼い頃から、その成長を見守って来た町内会の面々からすればタキオンの両親の振る舞いは目に余るものがある

 

 

総社(そうじゃ。岡山の地名)じゃそうじゃ。これだ!

 

小声でダジャレを言う幼馴染の脛を蹴ったタキオンだが、これは仕方ない

 

 

 

 

 

 

 

町内会長と話をした結果、当座は彼の家に居て、町内会のメンバーなどでフォローする事と決まった

 

勿論、タキオンも彼も遠慮したが

 

「何、子供が遠慮するんじゃ

子供はようさん(たくさんの意味)大人に頼ってええんじゃて」

 

と笑い飛ばされた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




タキオンの幼馴染、シンボリルドルフとウマが合うと思った人

あなたは正しい

ウマ娘とウマが合う

ではありがとうございました


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 すすむために

書いた、出来た、投稿した

隔離されてて暇なので書くしかないと思う、今日この頃


沢山のお気に入り登録、評価をつけて下さった燕 海里様
この場を借りて御礼申し上げます

拙い自己満足な小説擬きではございますが、宜しければお付き合いください


町内会長との話し合いの後、今度は学校と役場との話し合いの場を用意された

 

 

そこで判明したのが、ウマ娘の施設。仮称トレセン学園は保護者の同意が原則必要ではあるものの、抜け道はあると言うことだった

 

 

更にトレセン学園と言ってもウマ娘のみの組織ではなく、一般採用枠もあるとの事。更にウマ娘のトレーニングを担当する『トレーナー』という職の存在も知ることが出来た

 

 

仮にアグネスタキオンがトレセン学園に行くと言うのであれば、彼の同行が必須条件だとタキオンは主張した

 

学校側としては大っぴらにタキオンの親に反抗するタキオンを応援できないが、教職員や教頭に校長が個人的に力を貸してくれるとの事

 

役場としては、そこまで踏み込んだ事こそ出来ないものの、トレセン学園創立の中心人物である秋川家の人間や主要スポンサーである、桐生院家やメジロ家にコンタクトをとれる様に動く事を確約した

 

 

というのも、タキオンと彼が世話になっている町内会長は地元の名士という奴であり、会長の身内には市会議員や県会議員などがいるのである

 

会長は早朝に彼へと電話してから自身の伝手やコネをフル活用して、この場を整えたのである

 

更にその伝手を使う事で地元選出の国会議員にまで話を届ける事も期待できる

 

げに恐ろしきは権力であった

 

 

 

 

しかし、此処で問題となるのがタキオンの幼馴染である

 

何せ彼は中学生であり、これといった特筆すべき技能を持ち得ない

トレーナーになるには年齢が足らず、職員になるにもやはり年齢が足らないのである

 

 

 

だからといって、タキオンが幼馴染を諦めるわけもないし、彼もタキオンの傍から離れる気はなかった

 

 

 

 

 

ちなみに彼の両親については、彼が昼過ぎに連絡しており

 

 

始めこそ渋っていた彼の両親であったが

「タキオンの為なら、ボクは家も学校も家族すら捨てて一緒に歩く」

 

とマジトーンで言ったのを聞き、息子の覚悟を察した父親が折れ、母親を説得した

 

彼の両親は仕事の合間を使って明後日の夜に一度帰ってくると確約し、その後町内会長にお詫びとお礼の電話を入れている

 

 

 

 

 

 

現状問題なのはタキオンの両親であるが、最悪の場合は役場から動いて育児放棄からの親権剥奪も視野に入れる事にしていた

 

 

何せタキオンの両親が補助金やその後の名声などを見据えた上で、トレセン学園に入学させようとしているのは明白だからである

 

 

子育てすら碌にしていないのに、娘の立場を利用して利益を得ようなどというのはこの場にいる誰もが唾棄すべき行為であると認識していた

 

 

 

実際に一度ならずともタキオンの家には行政の指導が入っていたりするのだから、役場の人間のタキオンの両親への視線が厳しくなるのは当たり前である

 

なお、その事実を知っていたからこそ、タキオンのいる中学校へトレセン学園の案内が届いたわけではあるが

 

 

 

 

 

「しかし、仲が良いのですね。お二人は」

 

 

役場の職員が苦笑いでそう指摘すると

 

 

「その通りさ。私には彼が居ないと困るのでね

生活面においては私は無力だからね!」

 

と何故かドヤ顔であるタキオン

 

「いや、まぁ、お恥ずかしい所をお見せして申し訳ないっす」

 

と恐縮している彼であった

 

 

 

だが、彼とタキオンの体勢は午前中のあれであり、学校関係者は温かい目で見守っていたりする

 

 

 

 

 

 

余談ではあるが、タキオンと彼の学年主任(御歳ピー歳)の独身女性教員は複雑な表情で2人を見守っていた事を此処に記す

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の晩に某居酒屋にて

「リア充爆ぜろ〜」と言っていたが、因果関係は不明である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「目まぐるしい1日だったねぇ」

 

「疲れたワンカップ」

 

役場と学校関係者が帰った後、タキオンと彼は隣同士で座っていた

お互いに肩を寄せ合い、密着している状態である

 

 

「タキオン、今日何が食べたい〜?」

 

「何でもいいさ。君の手料理ならね」

 

2人は気を抜いたやり取りをしている

彼女と彼にとって、これが日常なのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

またまた余談ではあるがタキオンと彼の家は同級生からは

『踏み入らざる地』と呼ばれている

 

 

何故か?

 

 

それはあるタキオンの友人の一言に集約されるだろう

 

「もう、アンタ達結婚しなって」

 

 

それだけ2人の距離は近いのである

 

 

 

 

 

 

なお、この地区の恒例の風景?であるタキオンと彼の二人羽織は冬の名物と化しており、同級生は勿論、ご近所さんの中にもこれを見て冬を実感するという感覚の麻痺っぷりであったりもする

 

 

 

 

更に付け加えると、意外かも知れないがタキオンと彼は未だにプールや海に一緒に行ったことがなかったりする

 

まあ、是非もないよね☆

 

 

 

 

 

 

 

 

話を戻すと

 

 

「俺の手料理なら何でも良いって?」

 

「そうだね」

 

タキオンは心地良さそうに目を閉じている

 

 

 

だが、ここにいるのは『残念系男子』『エアブレイカー』と呼ばれている人物である

 

 

「そうか。それは嬉しいな」

 

そう言いながら、彼はタキオンの頭を撫でる

壊れ物を扱うかの様に、慎重に。そして愛おしきものを愛でるかの様に

 

 

「んじゃ、今日の晩飯はレバニラ炒めな」

 

「や、それはおかしくないかい!」

 

「え、だってさっき何でもって」

 

「言ったよ!確かに言ったさ!だけど、こうもっとあるだろう!

 

折角の空気が台無しである

 

 

しかし、怒鳴り合う2人の顔には確かな笑みがあった

 

 

 

時に優しく、時に厳しく

真剣に、ふざけて

遊び、学び

 

そうして2人はここまできたのだ

 

今更取り繕う必要もない

 

 

「「君(タキオン)が傍にいるなら、私(俺)は何処までも行ける」」

 

 

 

 

 

 

 

後のトレセン学園生徒会長より

 

『比翼連理』と呼ばれる事になる2人の物語は此処から始まった

 

 

 

 

 

 




と言うわけで、早々にタキオンのご両親はパージされます
仕方ないね

恋愛は障害がある程燃え上がるというけども、余計な障害はダストシュート

障害があるの?しょうがねえなあ

お粗末様でした


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 ボクとタキオンとのたたかい

注意!

今回は悪ノリ100パーで構成されております

読まなくても、次回には影響ありません

いつもにも増して短いです
ご了承の上でご覧下さい


『第十一次レバニラ炒め紛争』

 

はアグネスタキオンとその幼馴染の互いの意地をかけた盛大な争いとなった

 

アグネスタキオンは彼に対して甘えん坊属性による一大攻勢をしかけ、彼もまた甘やかし属性による一大反攻に打って出た

 

互いの手の内が分かる以上、短期攻勢による相手の飽和を狙ったものであった

 

本来ならば短期決戦を企図する相手に対して、完全防御による遅滞戦術からの攻め手の衝撃力が消耗し切ったところからの一転大反攻が正論であるといえるだろう

 

だが、これはアグネスタキオンという1人のウマ娘であり、少女である者の意地を賭けた戦いである。彼もまた、彼女の食生活を整える者としての意地とタキオンを勝ちたいというささやかな男としてのプライドが逃げる事を許さない

 

 

 

結果、両者一歩も退かずの(彼女らにとって)一大決戦となった訳である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソファーの右端にはアグネスタキオン

 

彼女の尻尾はやや力なく垂れ下がっており、耳もまた少し前に倒れている事から、モチベーションの低下が読み取れる

 

 

 

ソファーの逆、左端には彼

 

彼もまた瞳がやや揺れ動いており、視線もやや下を向いている

やはり幼馴染との対決には心が痛む様子だった

 

 

 

 

 

 

「今ならまだ間に合うんだ、タキオン!

やめよう。こんな戦いは」

 

「そうはいかない

大切な君の言葉でも、これだけは聞けないっ!譲れないんだっ!」

 

彼の悲痛な説得にタキオンも絞り出す様に震えた声を上げる

 

 

そして

 

 

ピピピビビ

 

設定したアラームの音を合図に両者は動く!

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから!なんで!今日に限ってレバニラ炒めなんだい?確かに君の手料理なら何でも良いとは言ったさ!でもそこは乙女心を汲んでくれてもバチは当たらないと思うんだ。私はっ!」

 

「タキオン、目を覚ますんだ!いいか?キミはレバーが嫌い。だが、鉄分を効率よく摂取するのにレバーは最適なんだ!別にキミがレバーを前にして涙目になっているのを見たい訳じゃ、決してない!!全てはキミを思ってこそなんだ!聞き分けてくれ!!」

 

「それこそ詭弁だよ!確かに私はレバーが苦手さ。それは認めよう!でも、だからといって食べない訳じゃないんだよ!それに君は気付いてないかも知れないけど、私の事をキミと呼ぶ時には大抵の場合、嘘をついているんだ!」

 

「違うっ!違うぞタキオン!」

 

「いいや、違わないさ!

それに私は君の手料理が好きなんだ!君と食べているあの瞬間を大事にしたい!!その私のささやかな願いすら君は叶えてくれないと言うのかっ!」

 

涙を湛えながら叫ぶタキオン

 

「いつも俺の飯を嬉しそうに食べてくれるのは、嬉しいさ!

だがっ!好き嫌いを無くそうというのはそんなに間違っていると言うのか!」

 

「エゴだよ、それは!」

 

「キミの身体がもたんときが来ているのだっ!」

 

「違うっ!私の、私の想いはそんなものじゃないっ!」

 

 

 

そう言って近づいていたタキオンは彼を押し倒す!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うまぴょいか?うまぴょいしてしまうのか?

この小説は全年齢対象だぞ!

戻れ!タキオン!

 

 

 

作者の声なき声がタキオンに届くのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だ、か、ら。言っているじゃないかぁ〜

レバーを食べなくても、鉄分は補給できるって」

 

「でもなぁ、折角だから好き嫌いは直した方が良いだろう?」

 

彼の胸板に頭をぐりぐりと押し付けながら、甘えた声を上げるタキオン

そのタキオンの頭をゆっくりと撫でる彼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どう見てもバカップルです。本当にありがとうございます(血涙)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後1時間ほどタキオンと彼はソファーの上でゆっくりとした時間を過ごした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『第十一次レバニラ炒め紛争』はアグネスタキオンと彼両者による講和をもって幕を閉じた

 

 

 

 

講和の内容は

『アグネスタキオンは出来るだけ、レバーを食べる』

『彼はレバニラ炒めを作った場合、アグネスタキオンを膝に乗せて食べさせる』

 

というものであった

 

 

 

勝者も敗者もいない戦いは終わった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なお夕食後に

 

『第二十三次お布団紛争』

が勃発したか、それは割愛する事とする

 

 




こんな感じの話を所々で入れていきたいと思うのですが?

如何でしょうか?


あと、各キャラの設定って需要ありますかね?
一応、書いてはいるのですが


宜しければご意見下さると幸いです


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 親と子と

今回はご都合主義満載にてお送りします

此処より物語は分岐するのですが、今回はね


創作だからね、夢を見ないと


だから、許して


「タキオン君、久しぶりだね

町内会長から経緯は聞いているよ」

 

「久しぶりねー、タキオンちゃん」

 

「お久しぶりです。おじさん、おばさん」

 

 

あれから二日後の夕方、彼の両親は帰ってきた

 

 

 

アグネスタキオンの家での騒動、および自分の息子の進路

それを直接聞く為に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふむ

 

彼の父親が最初に感じたのは、アグネスタキオンという少女と自身の息子から受ける感じが先月と全然異なることだった

 

アグネスタキオンという少女にせよ、息子にせよ。まだ中学生である

 

『甘え』というものはそれなりにあるものだ

 

 

 

 

『子供だから仕方ない』『大人じゃないから』

それは子供だけに留まる話ではない

 

彼等世間でいう大人とても、本当の大人と呼べる人間がどれだけ居ようか?

責任は押し付け合い、利益は独り占めしようとする

 

 

彼自身もまた、既に三十の半ばを過ぎているが、それでも自身が『立派な大人』かと問われたならば、頷く事は出来ないだろう

 

 

ただ長く生きているから、それなりに物を知っているだけなのだから

 

 

 

だが、それでも彼は自分の息子や仲良くしてくれている少女について見間違える程、親としての自覚がないわけではなかった

 

アグネスタキオンの両親と違って

 

 

 

 

 

 

「つまり、タキオン君は自分の家には帰りたくない。

そう言うのだね?」

 

「はい。厚かましい話であるとは重々承知していますが

あなた方の息子である、彼と共に歩んで行けたら。そう思っています。その為の努力は惜しむつもりはありません」

 

 

 

 

迷いのない答えだった

息子に視線をやっても、真っ直ぐ見返してくる

 

 

『男子三日すれば刮目して見よ』とは良く言ったものだ

 

 

 

元々息子はそこまで社交的でも無かったし、どちらかと言えば内罰的な子供だった

 

 

だが、タキオン君が高熱を出して倒れてから、息子は変わろうと必死にもがいていた

 

 

 

中学に入ってから剣道を始めると言ってきた時にも、その目は雄弁に語っていた

「彼女を護りたい」と

 

 

学校側にも色々と聞いてみたが、息子は出来ないなりに必死に取り組んでいた事は分かっていた

 

 

 

『護るべきものの為に強くなる』

言うのは容易いが、それを実際にしようとすると困難を極める

 

 

 

妻は息子とタキオン君を止めようと必死だが、止まるまい

 

 

 

 

 

タキオン君の瞳の輝きに覚えがある

嘗て、両親の大反対を押し切ってまで結婚しようとした時の妻の瞳の輝きにそっくりだ

 

となれば、恐らく息子の輝きもまた、若かった頃の自分そっくりなのだろう

 

 

 

 

 

殆ど手を離していたようなものだったが、いざ離すとなると寂しいものである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もういいだろう」

 

妻の必死の説得を止めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もういいだろう」

 

彼の父親は目をつぶったまま、一言も話さなかった

そして、目を開けて私と彼を見て

 

(笑った?)

 

 

確かに言葉を発する前にそう見えた

 

その時の顔は彼にそっくりだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の母親である女性はタキオンと息子の心情を理解してなお、反対していた

 

彼女から見ても息子と少女の想いは尊いものであり、引き裂くべきものではないと見えていた

 

だが、少女は両親と決別しようとしているという。

話を聞けば、確かに少女の言い分には納得できるだろう。しかし、同じように働く社会人としての自分は少女の言い分に同意できない

 

 

女としての自分ならば、少女を全力で応援しよう

だが、社会人としての自分と母親としての自分がそれを認めない

 

 

ウマ娘というのは、一般的な女性よりも身体能力は高い。いや、それどころか一般的な男性よりも高いかも知れない

 

 

それこそ、少女とは生まれて直ぐからの縁である

息子の僅か三日後に生まれたのが少女だった

 

 

同じ病院で、同じ町内で

だから、少女がどの様な人物かはわかっている

 

息子の相手として相応しいどころか、息子が寧ろ不足しているまであるだろう

 

 

 

今までは上手くいってきたかも知れない

 

だが、これからは?

中学、高校生の年齢は多感な年頃であり、幼馴染という関係が崩れやすい時期でもあると個人的には思っている

 

 

それを乗り越え、大学生位の年齢になっても今の関係を維持できるのであれば、母親としても社会人としても大いに祝福しよう

 

たとえ彼女の両親と絶縁していたとしても、だ

 

 

 

だが、今の彼女と息子が出来る事などほぼ無いに等しい

 

 

 

 

母親として、認めるわけにはいかなかった

 

 

 

 

 

 

だが、

 

 

「もういいだろう」

 

 

 

夫の目を見た

 

優しい目だった

妻として大好きな、愛している夫の目であった

 

 

 

この時、彼女は悟った

 

息子とその少女は茨の道を進むことになる事を

 

 

 

 

 

 

 

だから

 

 

「タキオンさん」

 

「はい」

 

「息子を、宜しくね」

 

 

せめてあの子たちに精一杯の援助をしよう

 

そう決意した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タキオンと彼の決意と覚悟を確認した彼の両親は足早に家を後にした

 

これから、近所に挨拶とお礼をして回らねばならない。時間的猶予はほぼ無かったが、両親にとって此処は外す事が出来なかった

 

 

 

 

更に帰りの道中。父親は仕事で付き合いのあった秋川本家に連絡を入れ、未来の娘と息子の事を頼んだ

 

 

 

 

「まさか、この歳で将来の娘を見ることが出来るなんてなぁ」

 

「ええ、そうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

出来る事は全てやろう

尽くせる手は全て尽くそう

 

 

全ては自分たちの息子と娘の為に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事態はこの日を境に急激に動き始めた

 

 

 

まず動いたのが、町内会長の身内である県会議員だった

 

彼は自分の伝手を使い、選挙管区の国会議員へと連絡を入れた

国会議員側としても、地元への影響力。それと青臭いながらも微笑ましい若い2人の門出を助けるべく、トレセン学園建設予定地選出の国会議員と話し合いの場を設けた

 

当時、ウマ娘と一般男性との結婚について国会内でも話題になっていた事も幸いし、選出議員も力を貸す事を了承

 

彼はトレセン学園予定地の側の比較的セキリュティのしっかりした物件を用意した

 

 

秋川本家はウマ娘と社会の調和を目指す当主の意向により、トレセン学園の側に建設予定の喫茶店に彼を取り込むことを提案

 

 

 

役所からは再三の要請に応じないタキオンの両親から親権を剥奪。これにはかなりの不満が上がったものの、役所側の責任者は自身のクビすら受け入れてまで強行した

 

「子供を守るのが私達大人の仕事。まして大人の都合で傷つけられている子供一人助けられないなら、そんな仕事はこちらから願い下げだ」とマスコミからの取材にコメントした

 

 

これにより、タキオンは公的支援を受ける事となり、本人の希望により来年度より設立される『府中トレセン学園』への入学となった

 

時を同じくして、彼もまた来年度よりトレセン学園近くの中学校へと転校手続きがとられる事になる

 

 

 

 

 

なお、一連の流れに関わった者は後に責任を追及されるが、皆胸を張って自身の職より退く事になる

 

 

それから僅か1年後には暴露本が出版され、当時叩かれていた人間の名誉は回復する事にもなるのであるが、それはまた別のお話だろう

 

 

 

 

 

 

 

 





横の繋がりなお話

なお、此処までしてトレセン学園に入学したウマ娘が居るってマ?
という感じにウマ娘達からは受け止められています


とりあえず同級生どないしようか、考え中
もしも何か要望あれば、どぞー


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 トレセン学園

オリ設定入りまーす!

今更っすね

彼はアグネスタキオンと幼少期から色々なもので競ってきました
ここ重要っす!

とりあえずギャグと思って流して下さると嬉しいっす

ではどうぞ


「ふぅむ、随分と大きな学園だねぇ」

 

私は今、府中トレセン学園に来ている

所々に工事関係者と思しき人影が見えるが、そうだろうね

 

現在は3月の半ば

 

トレセン学園が本格的に始動するのは今月の末日からだ

 

となれば、仕上げの工事などで作業員が居たとしても何の不思議もない

 

 

 

「しっかし、大きな建物やなー」

 

「あまりキョロキョロしてはいけないだろう

君はあくまでも特例中の特例。先方からの力添えがなければどうにもならなかったのだからね」

 

「分かってるって、タキオンは心配性だなぁ」

 

「こらっ!いきなり頭を撫でないでくれないかい?

流石に、その、恥ずかしいんだが?」

 

私の苦言を彼は笑い飛ばすと、頭を撫でてきた

 

ふ、不快では無いさ

いや、寧ろもっと撫でて欲しいのだけど、流石に人の目があるから

 

 

そういえば、クラスメイトから「距離感バグってるから気をつけてね」と言われていたが、そんなにおかしいものだろうか?

 

ちゃんと、腕は組まずに手を繋いでいるから問題ないと思うのだけどもなぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はウマ娘。で来月からトレセン学園に所属する事になっているの!

 

ウマ娘ばかりの学園だから、思いっきり走れる

家や学校みたいに周りの目を気にしないで良いのは最高!

 

今はグラウンドの使用許可を貰って走ってる

 

 

 

 

 

あれ?また新しいウマ娘かなぁ

どんな娘だろ?

 

ん”ん”っ!

 

 

 

 

 

え、ちょっと待っていやいや何で男子がここに?いやそれよりも手を繋いでる?待って待って、どういう事?彼氏なの、彼氏連れ込むの?いやいや落ち着け私。偶々手が当たったって可能性もなきにしもあらず。って思いっきし握ってるぅ!えええ、彼氏なの?彼氏ですか?ちょっ、待って、お願いだからその人紹介して!

 

ヒエッ!

 

今あの子、こっち見たよね。絶対見たよね?一瞬だったけど、すごい形相してたんですけど、え、嫉妬、嫉妬なの?独占欲、独占欲なの?

 

でも良いなぁー。凄い嬉しそうにしてるなぁ、あの子

 

はぁ、私も彼氏欲しいなぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

「どしたん、タキオン?」

 

「いや、別に何でもないよ?」

 

「そうには見えんかったぞ?」

 

「気のせいだろう」

 

「そかそか、そーいう事にしとくかな

ウマ娘だけに『うま』い逃げ方で」

 

「・・・・その癖はどうにかならないのかな?」

 

「む”り”で”す”わ”ぁ”」

 

「何処からその声は出ているのかな、長年の謎だよ」

 

 

 

 

 

「くっ、すまない。君がアグネスタキオンかな?くくくっ、いや本当にすまない」

 

おや?このウマ娘は確か

 

「シンボリルドルフさんで合っているかな?」

 

「ああ。私がシンボリルドルフだ。ウマ娘だけに『うま』いか

っ!くくくくっ」

 

ああ、これはダメなやつだね

 

「君余計な事は」

 

「ソーダを買うんだ『そうだ』」

 

「っ!っっっ!」

 

 

 

 

それから5分ほどして

 

「いや、本当に失礼した

そちらがアグネスタキオン君の幼馴染でいいのかな?」

 

「そっす。宜しくどうぞ」

 

「ああ。改めてシンボリルドルフという。宜しくお願いするよ」

 

「一つ聞きたいのだが、構わないかな?」

 

「うむ。構わないとも、理事長室へと移動しながらになるが」

 

「私が言うのもなんなんだが、随分独特な感性を持っているね。君は」

 

「ダジャレを言うのは『だれじゃ』」

 

「っ!っっっ!」

 

「こうかはばつぐんだ」

 

 

彼のしょうもないダジャレで笑うとは、これは先が思いやられるな

 

「やれやれだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シンボリルドルフ、入ります」

 

「許可!」

 

 

道中、彼がルドルフ君を笑わせて呼吸困難になった事以外には問題なく理事長室へとついた

 

 

 

「失礼します」

 

「失礼します」

 

「歓迎っ!ようこそトレセン学園へ

私が理事長の秋川やよいだ。宜しく頼む」

 

やっべえ、ツッコミどころが多すぎてツッコミきれねぇぞ。この理事長ただもんじゃない

 

隣でどうでも良い事で戦慄している幼馴染がいるが、とりあえずスルーしよう

 

「アグネスタキオンです

宜しくお願いします、秋川理事長」

 

「タキオンのおまけっす。今回はお手数おかけして申し訳ありませんでした」

 

「否っ!アグネスタキオン宜しく頼む

そこまで気にする必要はない!寧ろウマ娘と社会の調和を考えれば君の存在はありがたい!」

 

おや?ルドルフ君が意外そうに彼を見ているね

大方、真面目に振る舞えないと思っていたのだろうが

 

「では、理事長。2人は生徒会室で説明を受けてもらって構いませんか?」

 

「許可!あとは頼むっ!」

 

 

 

 

 

 

 

理事長室から生徒会室に向かっているが

 

 

「意外みたいだね、ルドルフ君?」

 

「あ、ああ。失礼だったな、すまない」

 

「別に問題ないっすわー

有馬では問題『ありま』せんわー」

 

「っっっ!!」

 

これはひどい

彼がトレセン学園に常駐しなくて正解だね。シンボリルドルフ君の腹筋がもたない

 

 

 

 

 

 

 

 

「会長、お疲れ様です」

 

「随分と疲れているが、どうした?」

 

「い、いや、何でもない。っっ!ふふっ!」

 

生徒会室に着いたのだが、道中でも追い討ちをかける彼のせいでシンボリルドルフ君の腹筋が崩壊しているね、我が幼馴染ながら困ったものだ

 

 

「初めまして、アグネスタキオンです

此方は私の幼馴染。トレセン学園内での活動は無いと思うのだが」

 

「ああ。と言う事は『現代のお姫様』と『王子様』か

私はナリタブライアン。宜しく」

 

「ふん。王子様というガラではなさそうだがな

エアグルーヴだ。宜しく頼む」

 

「王子様?」

 

「お姫様?」

 

私と彼は互いに顔を見合わせる

 

 

「いや、すまない

私達の間では君たちをそう呼んでいたのさ

なにぶん、ウマ娘であるタキオン君の為だけに彼は此処まで来たというじゃないか

私達とて憧れるものでね」

 

「それで、お姫様とは」

 

「オウ!『おう』じ様だけに」

 

「おいおい」

 

「貴様、何を言っている?」

 

「っっ!ふっ

くくっっ!」

 

「会長!?」

 

「おいおい、何だこれは?」

 

ついにシンボリルドルフは膝をついて笑いを堪えていた

ナリタブライアンとエアグルーヴはそれに困惑している

 

 

 

いや、まて

まさか

 

幼馴染の悪戯っ子の様な顔を見て

 

「ちょっと、待ちたま「会長の調子は『かいちょう』の様だ」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大惨事とはあのような事を言うのだろうね

 

 

 

詳しい描写はルドルフ君の名誉の為に伏せるが、あれは酷い

 

 

あえて言うならばルドルフ君を『ささやき』で『追い込み』、ナリタブライアン君とエアグルーヴ君から『逃げ』ていたね

 

 

『直線加速』に『コーナー加速』

我が幼馴染ながらに無駄にバイタリティ溢れるからねぇ

 

 

残念だが、初見のナリタブライアン君とエアグルーヴ君では到底歯が立たなかった様だね

 

 

 

 

 

 

「大勝利!」

 

「いや、待て」

 

「貴様、本当に、人間か?」

 

 

満足そうな幼馴染と息も絶え絶えな2人

 

 

「タキオン君。彼は本当に人間かな?」

 

流石のルドルフ君もまさか2人が負けるとは思っていなかったんだろうね

 

「残念ながら、彼は純度100%の人間だとも」 

 

 

 

伊達に私といつも追いかけっこをしていた訳ではないからね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、そろそろ良いだろうか?」

 

「ああ」

 

「問題ありません」

 

「有馬だけに「天丼はダメだろう?」

む、確かに」

 

 

やれやれだ。緊張するとダジャレを言うのはやめた方が良いだろうに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日は学校の説明と施設の案内で終わった

 

 

 

そして

 

「んじゃ、帰るか?」

 

「そうだね

今日の晩御飯はどうするんだい?」

 

「久しぶりにスフレいくか?」

 

「よし行こう、すぐ行こう、さぁ行こう!」

 

「はいはい」

 

 

私と彼は学園を後にした

 

 

何をどうやったのかは知らないが、彼の住むアパートに一緒に住む事が出来る様になったのは望外の喜びといえる

 

 

 

私と彼は腕を組んで帰路についた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「面白い人物だったな」

 

「破天荒とも言えるがな」

 

「型破りでも良いと思いますが」

 

 

その様子を屋上から見つめる生徒会メンバー達

 

 

 

じゃれあいながら、帰っていく彼女と彼の姿は3人にとってとても眩しく、尊いものに映っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




というわけで彼には『対生徒会◎』のスキルがつきました

ナリタブライアンとエアグルーヴとの戦いについてはのちに超短編であげます


ぶっちゃけ、この男は対皇帝最終兵器です

強制的にシンボリルドルフの調子を『絶不調』にします
『練習ベタ』もつけます

今度詳しく書こうかな?

ではまた次回


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 本作の設定について

だいたいウマ娘以外の設定

タキオンの保有スキルについては本編にて


 アグネスタキオン

 

 

言わずと知れたウマ娘プリティーダービーにおける☆1のウマ娘

 

マッドサイエンティストな感じにも見えるが、意外と甘えん坊

気になった方はキャラストーリーを見よう

 

勝負服は白衣タイプだが、萌え袖を標準装備しており、G1レースにおける勝利ポーズと併せると尋常でない破壊力を生み出す(個人差あり)

 

萌え袖見たさにどのウマ娘よりも先に女神像を投入し、無理矢理☆3まで持って行った

筆者はそのポーズの為にタキオン育成『だけ』を2週間続けていたりもする

 

なお、温泉イベントは未だ見れてない

 

 

サイゲェェェッ!(血涙)

 

 

 

 

 

 

本作においては幼馴染の男の子だいしゅきウマ娘

 

 

半ば育児放棄されてしまった際に、自分の傍にいてくれた彼を大事に思う一方で自分の甘えを許して欲しいと言う甘えん坊も側面も併せ持つ

 

ウマ娘についての研究も行なっているが、あくまでも彼女の中心は彼であり、自分と彼で世界が完結してしまっていると言う割と重い考えを持っている

 

が、想いを寄せている彼が人と関わっているから自分も彼に嫌われない様に合わせている

 

 

好きなものは幼馴染の彼

 

嫌いなものは彼を傷つけるものや自分の両親

 

 

好悪の感情がはっきり分かれる対応をすることが多く、彼がその都度フォローしている。それにより、更にタキオンの想いが募るという

 

あれ?何この無限装置?

 

 

余り気付かれないが、相当の激情家

 

だが、最終的には彼の元に来て甘える事で元に戻る

悪い癖だと分かっていても、やめられない。とまらない

 

彼に近づく異性にも寛容な様にも見えるが

 

 

彼の欠点を知っていても直さない

全てを受け入れ、愛するタイプ

 

 

なお、彼の匂いを1日嗅がないと非常に不機嫌となる

彼を自分の家に招いたのも、自分の家に彼の匂いを残したかったが為

 

 

実は剣道の部活が終わってから、すぐ家に来て欲しかったりもする重度の匂いフェチ。但し幼馴染に限る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アグネスタキオンの幼馴染

 

名前を決める予定は今のところない

 

 

コミュニケーションお化けであり、家事マスタークラスの腕前を持つ

コミュニケーションは父親譲りで、家事は母親直伝

 

一人称はだいたいボク。俺という時は余程マジである

 

 

タキオンを甘やかしすぎて、タキオンから家事能力を奪い去った原因である

 

これは偶然ではなく、幼い頃の彼はタキオンが可愛いので自分から離れていかないか不安になっていた

 

そこにタキオンの両親の育児放棄であり、タキオンの為にひたすら母親から家事の手ほどきをうけ、父親からはタキオンの苦手分野である対人能力を磨き上げた結果である

 

要するにタキオンの弱い部分をカバーするためだけに磨き上げたと言って過言ではない

 

好きなものはタキオン

 

嫌いなものはタキオンを傷つけるもの

 

 

実はこちらの方が圧倒的にヤバい人物であり、本編にも出ているがタキオンの為ならば、自分の人生すら投げ捨てれる狂人だったりする

 

 

普段は温厚な仮面をかぶっている為に全く尻尾をみせないが

 

 

あと、ダジャレ好きなのも幼稚園の頃のタキオンは感情が殆ど動かなかったので、園児向けの本でダジャレを覚え、タキオンに披露した

 

その結果、呆れられこそしたが、タキオンの反応を引き出せた事が強く印象に残っていた。それがダジャレ好きという形として残ったという裏話

 

 

割とタキオンの為であれば、自身が傷つくのすらも厭わない自己犠牲タイプ

ぶっちゃけるとタキオンと比較にならないほど、愛が重い

 

 

何よりもタキオンが傷つくのを恐れる為に、タキオンの障害とみなした者への容赦はない。基本タキオンを傷付けた相手を許すことはない

例えタキオンが許したとしても

 

 

にも関わらず、タキオンをからかうことにも全力という支離滅裂な行動を見せるが

 

 

相性の一番良いのはゴルシである

勿論、タキオン以外でだが

 

マイペースに場を引っ掻き回す確信犯の為に、真面目属性のウマ娘とはとにかく相性が悪い

 

会長も相性は悪くはないのだが、どうしても規律を守る立場からノリ良く話は出来ない為である

 

 

因みにゴルシと組む場合は周りの負担が6割り増し(最低値)になる為、あまりオススメはできなかったり

 

 

意外と相性の良いのが食いしん坊三人衆こと、スペシャルウィーク、オグリキャップ、メジロマックイーン

 

ツッコミに定評のあるタマモクロスも割と良い関係を築けそうだ

 

 

 

 

 

 

 

町内会長

 

 

タキオンと彼の住む町内会の取りまとめ役

 

本来なら、数年単位の持ち回りの役職であるが、とある事情により15年以上、会長を続けている

 

そんな役回りである町内会長を歴任している事もあり、町内会からの圧倒的な支持を集めている

 

実は彼のヤバさを知っている唯一の大人である

 

身内や知人に権力者が多くいる為に、いざというときの行動力は町内会長というレベルでは収まらない人物

 

何よりも子供のことを気にかけており、地元での有志による地域パトロールや地域清掃にも率先して取り組んでいる

 

力技よりも搦め手からの攻撃を得意とする食わせ者

 

 

 

 

 

 

タキオンの両親

 

 

父親は一流貿易商社に勤める

 

母親は一流商社の庶務課

 

 

タキオンは母親と不倫相手の間の子供であり、最初の頃は父親も可愛がっていた

 

だが、小学校高学年のある日、タキオンが高熱を出して倒れた

 

父親はこの際精密検査を受けさせるべきと主張し、母親は悪いところだけで良いと主張した

 

結果としては母親の主張が通ったものの、ウマ娘という特異な体質?である事から密かに精密検査を病院に依頼した

 

 

この項目の中に遺伝子検査があり、それによりタキオンが自分の娘でない事を知ってしまう

 

当然、妻はそれを隠そうと精密検査を拒否した事を察した父親はタキオンが入院中に母親に詰め寄った

 

半日にわたるやり取りの結果、不倫相手との子供である事が判明し、父親は激怒

離婚する事を言い出すが、母親としては夫の立場で入った会社である。その為に何とか離婚はやめてくれと懇願。父親としても、離婚すればそれなりに手間がかかる事を理解していたから、不本意ながらもそれを承諾。

結果、父親は家にいる事を避ける様になり、出張に出かける様になった。何の罪もないタキオンを傷つけたくはなかったから

残された母親は夫の深い怒りを知って後悔するかと思いきや、よりにもよって自身の娘であるタキオンを恨むようになる

タキオンが倒れなければ、全て明るみになる事はなかった、と

 

結果、彼女もまた出張の名目で家を空けることになる

実際には不倫相手の所に泊まっていたが

 

 

役所からの再三の要請にも応じることが無かったのも、父親は海外であり、母親はこの機にタキオンを施設送りにする腹積りだった

 

父親からタキオンの事は任されていたから。曰く「お前と不倫相手の子だろう?」との事だった

 

ところが状況はトレセン学園設立の話により一変する

 

多額の補助金にもしもレースに勝てば莫大な賞金。

逃す手はなかった

もしそれだけの金があれば、今の夫と別れて不倫相手といっしょになれる。そう思っていたからだ

 

 

実は父親はタキオンとキチンと話をするつもりだった

タキオンの意思を無視してまでトレセン学園に入れるつもりは無かったりもする

 

 

 

この後、この2人について描写の予定はないので結末を書くと

 

父親は親権剥奪をもって、妻が隠していた事を知り、裁判を起こす。当然離婚は問答無用で進める

母親は親権剥奪により、夫と離婚する必要に迫られ、夫の会社の子会社であった事から、職場での立ち位置を失う事になる。職を失うと彼女のお金目当てだった不倫相手との関係も切れ、更に裁判を起こされる事になる

 

 

後に父親はタキオンに謝罪だけはしたいと申し出るが、タキオン側の弁護士は親権剥奪による接触の禁止をあげて拒否する事になる

 

 

 

かなり後に父親とタキオンは和解するが、それまでに10年もの歳月を要する事になる

 

 

母親は幾度となく面会を申し入れるものの、こちらの窓口は彼であり、彼は徹頭徹尾彼女の申し出を黙殺した

 

 

 

 

 

 

 

 

彼のトレーナーになる可能性はないです

 

 

ただ、彼の奇行を見てタキオンは様々なスキルヒントを拾いまくります。戦術もシナジーもあったもんじゃないですが

 

 

 

『対生徒会◎』

 

シンボリルドルフ、ナリタブライアン、エアグルーヴのみ適応

 

3名の直線、カーブに関わるスキル全封印

更に高確率で『絶不調』にするデバフの鬼

 

勿論、継承は不可能

 

彼もウマ娘ではないのでレースには出ない

 

 

 

『対皇帝最終兵器』

 

 

シンボリルドルフ特効

調子を『絶不調』

 

スタミナ系、加速系のスキル全封印

 

 

 

 

勿論、ネタですが笑笑

 

 

 

 

 

現在、彼はタキオンの為に勝負服を製作中

 

 

 




生徒会については完全にネタ

許して


ゴルシみたいにシリアスを長くできない作者であった


アンケート1については今日の夕方6時までの締め切りとさせていただきます

ご協力ありがとうございました


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 しんせいかつ

ウマ娘せずに書いてた

良くわからんけど、ヨシッ!


 トレセン学園

 

ウマ娘の育成の為に秋川やよいが中心となって各方面から協力を得てようやく出来た組織である

 

 

とはいえ、今年は一年目である以上、先ずは手探りでどの様な形にしていくのかを模索する事になった

 

 

 

トレセン学園理事長

秋川やよい

 

理事長秘書

駿川たづな

 

 

 

トレセン学園生徒会会長

シンボリルドルフ

 

同副会長

ナリタブライアン

 

同書記

エアグルーヴ

 

 

トレセン学園美浦寮寮長

フジキセキ

 

トレセン学園栗東寮寮長

ヒシアマゾン

 

 

以上が当面のトレセン学園の体制となる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、何処へ行こうとも長々とした話はつきもの、か」

 

「あら、そういうものでしょう?」

 

「誰しもが君のように場慣れしていないのさ、マックイーンくん」

 

「そういうものかしら?」

 

盛大な入学式を終え、放課後、アグネスタキオンは教室にて愚痴を溢していた

それに付き合うのは、薄紫色の髪をした少女、メジロマックイーン。

 

彼女は多数のウマ娘を擁する名門『メジロ家』期待のウマ娘であり、メジロ家からこのトレセン学園へと一期生として送り込まれて来ていた

 

 

 

「ふむ、失礼

君が『姫君』アグネスタキオン君か?」

 

そこに髪型の特徴的なウマ娘がやって来た

 

「『姫君』ねぇ

私の何処をどう見たら、そう見えるのだろうね、マックイーンくん」

 

「あら?素敵ではありませんこと?

是非とも『王子様』とも会ってみたいですわね」

 

「ガラでは無いんだがねぇ。姫だ、王子様だと言われても実感が湧かないね」

 

「ああ、失礼した

私はビワハヤヒデという。しかし、現代におけるシンデレラストーリーとして関係者の間では有名だと聞くのだが?」

 

「ええ、それは私も聞いた事がありましてよ

幼い頃から共に育ち、タキオンさんを守る為に此方まで来ているとか

正に物語に出てくる騎士か王子様ではありませんの?」

 

「やれやれだね

ビワハヤヒデくんと言ったね。すまないがハヤヒデくんと呼んでも良いかい?

どうやら長い付き合いになりそうだ」

 

「勿論、構わないさ

ではタキオン君と呼んでも?」

 

「構わないよ。

しかし、クラス中が耳をそばたてているのはどうなんだろうねぇ?」

 

「それだけ、貴女の話に興味があると言う事でしょう?

宜しければ、お話を聞かせてもらっても?」

 

タキオンは教室中を見渡してみる

 

見れば、エアグルーヴやナリタブライアンも聞き耳を立てているのが見えた

 

 

やれやれ

 

 

タキオンは内心溜息をつきながら

 

 

「私はあまり時間がないのだなね

質問はマックイーンとハヤヒデが担当する

それでも良いなら、ね」

 

 

教室内のウマ娘全員が強く頷く

 

 

 

 

タキオンは彼との思い出を語り始めた

 

 

 

 

 

 

物心ついた頃の彼との思い出

 

 

 

小学校2年生の時には一緒に山に入って迷った事

泣きじゃくるタキオンを彼が励ましながら、背負って何とか麓までたどり着いた事

 

 

高熱を出したタキオンの見舞いに毎日来てくれた事

 

 

小学四年生で一緒の布団で眠るのが終わってしまった事

 

両親の居ない家に来てご飯を作ってくれた事

寂しい時にはいつも傍にいてくれた事

 

 

タキオンがいじめられていた時、助けに来てくれたこと

 

タキオンが実験で失敗した時、一緒に謝りに来てくれたこと

 

 

 

 

初めのうちこそ、クラスメイトだけだったが、次第に別のクラスのウマ娘も集まり始めた

 

 

いつの間にやらシンボリルドルフや見慣れないウマ娘も多数集まってきたのをタキオンは視界に捉えていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませー」

 

此処はトレセン学園から少し離れた所にあるパン屋

 

 

タキオンの幼馴染である彼は此処で働く事になった

 

 

理由についてはひっじょーに面倒なものがある

 

 

 

 

 

 

 

タキオントレセン学園入学

彼はトレセン学園近くの中学校へ入学予定だった

 

だが、一部の彼の情報を聞きつけたブンヤが中学校へ殺到

学校側としても通常の授業にも差し支えるとして、インターネットを介したリモート学習を提案

 

彼としても面倒をかける事は不本意であった為に、それを受け入れた

 

 

 

 

 

更に彼とアグネスタキオンの話が何処からか漏れたらしく、事前に用意してあった職場の場合も不都合が生じることになった

 

その為、急遽地元のパン屋でのアルバイトとなっていた

 

無論、法律上問題しかない話だったが、『ウマ娘と社会のテストケース』というお題目をもって推し通す事になってしまった

 

 

 

 

実際にも彼のように幼馴染のウマ娘と結婚を前提(中学校の終業式でタキオンが感極まった為)とした人物に前例がなかった為である

 

と言うのもウマ娘は基本的に行動派が多く、そのアグレッシブな活動に幼馴染関係にある男性は引き下がる

 

流石に自分で制御出来ない暴走特急と添い遂げるのは難易度が高いと見えたのだろう

 

 

だが、タキオンはウマ娘の中でも少数派である『比較的』理性派である

勿論、感情的になれば話は変わるが、そうでなければ暴走しない

 

それに加えての異常ともいえるタキオンへの執着を見せる彼ならではであった訳だが

 

 

 

 

 

 

「お!美味そうな匂いじゃねぇか!

ゴルシちゃんのお宝レーダーにも反応があるっ!」

 

 

銀髪のナイスボディなウマ娘が入ってきた

 

 

「ん?」

 

「ん〜?」

 

 

そのウマ娘と彼の視線が交差する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレセン学園に戻る

 

 

 

「すまないな、ブライアンにグルーヴ

良く声をかけてくれた」

 

小声で2人にルドルフは礼を言う

 

「いや、構わんさ」

 

「いえ、大丈夫です

しかし、凄いですね」

 

「ああ」

 

「うむ」

 

エアグルーヴの感嘆の声に2人も同意する

 

 

 

どちらかと言うと、アグネスタキオンというウマ娘を生徒会室で見た時には感情があまり出ないウマ娘だと思っていた

 

ところが、どうだ

 

昔を懐かしみながら話す彼女は、エアグルーヴから見ても美しかった

 

陶然としているウマ娘もいることから、同じ感覚を覚えたのだとは推測出来る

 

 

 

 

 

「良い出会いは人を育て、良い別れもまた人を成長させる。か」

 

エアグルーヴの母親が言っていた事を今更ながらに思い出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「タキオンさん、よろしいかしら?」

 

「構わないとも、マックイーンくん」

 

「先程、貴女は小学四年生の時に一緒に布団に入るのはやめた。そう仰っておられませんでしたか?」

 

半数以上のウマ娘も首を縦に振る

 

「そうだねぇ

恥ずかしながら、あれから暫くはマトモに眠れなかったよ」

 

「しかし、タキオンくん

先程の言い方はまるで、その、だな」

 

流石のビワハヤヒデも恥ずかしいのか小声になる

 

「別に隠すことでもないからねぇ

実は最近になって、また同じ布団で寝る事にしたのさ」

 

 

ざわっ!

 

 

タキオンのなんて事ない様な口調で、飛び出した内容に教室中が震撼するっ!

 

 

 

 

 

 

 

「まさか、うまぴょいを」

 

「アグネスタキオン!なんちゅう事しよんねん」

 

「うまだっちしたの!

す”ご”い”よ”お”お”っ”」

 

「いや、うるさいって」

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、誓って言うがね

うまぴょいもうまだっちもすきだっちもしてないから」

 

 

 

タキオンの訂正に

 

 

 

 

 

 

 

「なん、だと」

 

「アグネスタキオン、奴の精神力は化け物か!」

 

「バクシンしていないんですね、それなら大丈夫ですっ!」

 

「うまだっちなんて今するべきじゃない。だけどっ!」

 

 

 

 

 

とまあ教室内のウマ娘を狂乱の渦に叩き落とした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

「は?

いや、すまない。もう一回いいかな?」

 

「アグネスタキオンさんには大和撫子の魂が見えました

是非教えを請いたく」

 

 

 

「た す け て」

 

と朝一から涙目になっているタキオンがいたのだが、次の機会に語ろうとおもう

 

 

 




さて、そろそろ
宴の始まりだっ!(サイゲ違い)

人間のヤベー奴とウマ娘のヤベー奴が出会った

何が起きるのか、次回をお楽しみに!


というか、なぁーんで温泉イベントが一度も来ないんですかねぇ〜

いつまでたっても、ティッシュばかりでつらたん


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 エンカウント!

みんな大好きウマ娘界のトリックスターの登場だーい

なお、まだ開眼してない模様


パン屋にて勤労に励んでいたタキオンの幼馴染であったが、銀髪のナイスボディなウマ娘と出会い、視線が合ってしまった

 

「ん?」

 

「ん〜?」

 

 

 

 

 

ヤバイ

 

 

彼がタキオンと過ごしてきた13年培った経験が警鐘を鳴らしている

 

ブルー、イエロー、レッドで言えば恐らくイエロークラス

 

つまり、タキオン換算ならば目が笑ってないレベルである

 

 

 

しかし、タキオンの幼馴染として無様を見せるわけにはいかない

幸いにも仕事は終わった

 

だが、迂闊に動けば

 

彼はサッと視線を相手の頭部と尻尾に向けた。勿論、数秒で、だ

ウマ娘全般に言えるのかは知らないが、タキオンの場合は不機嫌な時に視線を向けられる事は嫌がる

 

となれば、目の前のウマ娘もそうであると仮定するの現状では最良だろう

 

 

 

尻尾の緊張はなし

 

耳は入店時に比べると、やや動きが早い様に見える

興奮の兆候あり

 

瞳孔の開きなし

 

ハナ

拡大してる様子なし

 

呼吸にやや乱れの兆候あり

 

顔全体において、やや緊張が見られる

 

 

現在は力が篭っている様相なし

 

腕と手

腕も見た目では異常なし

手はやや握りしめている

緊張の恐れあり

 

 

 

 

トータル

レッドよりのイエローと判断

 

 

 

此処までの時間僅か15秒

 

 

 

伊達にタキオンの幼馴染兼ストッパーをしてる訳でもない

 

 

 

 

 

なお、先の生徒会との追走劇においても、この能力を遺憾なく発揮できた事がスペック上では劣る彼が勝ち得た要因であった

 

 

 

 

 

 

焦ると余計な刺激を与えかねない

 

 

そう判断した彼はごく自然かつ最少限の動きで店から出て行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴールドシップは目の前の男に戦慄していた

 

 

従姉妹であるメジロマックイーンを迎えに来たものの、少し到着が早かった為にトレセン学園周囲を散策していた

 

良く勘違いされるが、ゴールドシップは感覚のみに頼るウマ娘では断じてない

彼女は周りの状況や周囲の感情を理解した上で、自身の本能を優先する事が多いだけなのだ

 

今回とて、来年従姉妹のメジロライアンとメジロパーマーと共にトレセン学園に入学するからこそ、周辺の散策をしているだけである

 

 

 

が、ゴールドシップの凄いところは本能ともいえる直感により、行動したとしても後々には上手く作用する事が多いのだ

 

 

だからこそ、問題行動の多いゴールドシップがマックイーンの迎えに選ばれた訳である

 

 

 

 

 

だが、そんなゴールドシップにとっても目の前の男は正体不明である

 

 

そして、男がゴールドシップに少しだけ視線を向けた時

 

 

 

(おいおい、このゴルシちゃんが緊張してるって?

へぇ、面白いじゃん)

 

 

確かに男は一瞬だけ、口元を歪めた

 

 

男はそのまま店の外に出て行った

 

ゴールドシップも直ぐに追いかけたかったが

 

 

 

 

 

 

 

「おばちゃん、これくれよ!」

 

此処はパン屋

買い物をせずに出る事など誰が許してもゴルシが許さなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パン屋の裏手にある空き地にゴールドシップと男

 

 

 

ゴールドシップは内心焦っていたが

 

 

 

 

「こんばんわ。キミウマ娘でしょ?」

 

「は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふっ、決まったな!

 

これぞ対イエロークラスのタキオン戦術

 

『先出し』よ!

 

 

 

うんうん

さっき迄の緊張が何処かに飛んでったね

 

口元も少し力が抜けてるし、イケルイケル!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、え、何だよコイツ

 

 

ヤッベ、楽しい奴なの?

 

 

ゴールドシップは好奇心の塊である

そして、彼女がいる家は『メジロ家』というウマ娘の名家である

 

当然ゴールドシップにこんなに気安く接してくる人間もウマ娘も居なかった

 

どうしても、格式やしきたりがあるからだ

 

 

 

 

だが、今この場に居るのは『メジロ家』のゴールドシップでなく、ただのゴールドシップ

 

 

 

 

 

ゴールドシップの好奇心というエンジンに今、火が入った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、マジ

じゃあお前って、あの『王子様』なのか?」

 

「あ、その呼び方はやめて」

 

「お、おう」

 

ある程度話をすると、相手が有名な人物だと分かった為に興奮したゴールドシップに対する相手の反応は、死んだ目だった

 

有無を言わさない圧力を感じたゴールドシップは即答した

 

 

「けど、凄えよなぁ

幼馴染のウマ娘とそこまで一緒に居られんのかぁ」

 

「そだね。タキオンと居るのがいつの間にか当たり前になってたからなぁ。最初の数ヶ月だけだったな、マジで辛かったのは

ま、ゴルシみたいな奴だったなら、タキオンとはまた違う意味で楽しそうだけどもなぁ」

 

「はー!

良いよなぁ、アグネスタキオン先輩は」

 

これは偽らざる本音だった

 

今の生活に不満はない。それでも隣の芝は青く見えるものだから

 

 

 

「何だったら、今度タキオンとも話する?」

 

「おっ、いいのか?

そりゃあ私からすれば嬉しいけどな!」

 

「大丈夫だろ

まあ、ブラックコーヒーケースで持参する様に強くすすめるがな」

 

「あ?何でだ」

 

「良くわからんが、地元の連れ達からはそう言われてたんだよなぁ」

 

「ん〜、分かった!今度行く時にはそうするぜ!」

 

「おけおけ

じゃ、暇な時に連絡くれや」

 

「任せとけって!

っと、そろそろトレセン学園に行かなきゃな」

 

「従姉妹に会うんだっけ?」

 

「マックイーンにな!」

 

「なら、ボクも行くかなぁ」

 

「うっし、じゃ一緒に行くか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よ、マックイーン!」

 

「ゴールドシップさん!」

 

 

 

「やぁ、遅くなってすまないね」

 

「ええって、んじゃ帰るか。タキオン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれがタキオンさんの」

 

「へぇ?あれがアグネスタキオン先輩かよ」

 

「というか貴女知り合いでしたの?」

 

「今日知り合った!」

 

「どういう事ですの?」

 

 

自分たちの家に帰るタキオンと彼を見送るマックイーンとゴールドシップだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっきの彼女は?」

 

「ん?マックイーンさんの従姉妹のゴールドシップだってさ」

 

「ふぅん」

 

「そういじけなさんなって!俺にはタキオンがいるんだからさ」

 

「やれやれ、今はそれで我慢するよ」

 

彼はタキオンの頭をゆっくりと撫でていた

タキオンは彼に寄りかかりながら、目を細めた

 

 

 

 

 

 

 

「さて、今日の晩御飯はどうするよ?」

 

「ふぅむ、鍋は季節外れだろうし

うむむ、悩むねぇ」

 

「んじゃ、久々にあれにするか?」

 

「おやおや、仕込みはしているのかい?

あれに手間がかかると言ったのは他ならぬ君だと思っていたが」

 

「備えあれば憂いなし。そういう事」

 

「全く

嬉しい事を言ってくれるねぇ」

 

 

その日は豚バラ丼だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地元の同級生から見た2人

 

 

「バカップル」

 

「リア充」

 

「砂糖製造機」

 

「ブラックコーヒーの糖度を上げる2人」

 

「『束縛』のタキオン

『執着』のアイツ」

 

「うちの地元で二人羽織を流行らせた元凶」

 

「わりと病んでる2人」

 

「不釣り合いな2人」

 

「でもお似合い」

 

「早く結婚しろ」

 

「これで付き合ってないとか、マジかよ」

 

「終業式でお姫様抱っこした無敵のカップル」

 





 この出会いをきっかけにゴルシはフリーダムになった

つまりマックイーン達は彼を怒っても許される



多数のお気に入りや評価にガクブルな私ですが、宜しければお付き合いください


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 乙女の一大事?

 出来たら投げる

キャラ崩壊のタグつけようかなぁ?


トレセン学園初日

 

 

各方面より期待を寄せられているトレセン学園初日は、混乱の中で終わりを告げた

 

 

 

『現代のお姫様』ことアグネスタキオン

 

彼女がトレセン学園に入学するという話は内密にしようにも、秘匿しようが無かった

 

 

事にマスコミ関係者はトレセン学園に対して彼女への取材を幾度となく打診するも、生徒の安全を名目に一切の取材行為を拒否していた

 

故にトレセン学園入学式はトレセン学園関係者並びウマ娘の関係者のみに開放され、一般の来場は例外なく認められなかった

 

 

これに対し、マスコミ各社は伝統の張り込みを行なう事にしていた

 

 

だが、マスコミ各社の予想と異なり、アグネスタキオンはトレセン学生寮に入寮しておらず、近くのマンションにて生活していた

 

 

更に彼女の地元との緊密な連携により、アグネスタキオンを写真は一切出回っておらず、彼らが知っているのはアグネスタキオンというウマ娘が一般の生徒と共にトレセン学園に来た。という事だけであった

 

 

 

トレセン学園に入学したウマ娘からすれば、ある意味では抜きん出た実力を有するシンボリルドルフと同等、或いはそれ以上に関心を持つ相手であった

 

何せウマ娘としての活躍が出来る期間よりも、1人のウマ娘として過ごす時間が多いのは自明である

 

ある意味ウマ娘達にとって、自分と合う伴侶を見つけることもまた関心ごとだったのだ

 

そういう意味では自分達より遥か先にいるであろうアグネスタキオンは彼女達にとっての希望であり、憧れでもあった

 

 

だから、たとえどれだけ取材されようともアグネスタキオンの情報を漏らす事は決してしなかった

 

 

各寮長であるフジキセキとヒシアマゾンもまた、マスコミ各社の思い込み。つまりトレセン学園は全寮制。という事を逆手に取り、張り込み組を寮の側に誘導した

 

 

 

トレセン学園は様々なトレーニングを行なえる施設であり、それ故にその敷地面積も広大なものになる

 

出入り口全てに警備員の詰所とゲートがあり、詰所からの操作以外でのゲート開放は不可能となっている

 

更に敷地の外においても、外壁沿いに巡回警備を配置。マスコミ各社の強引な取材に対応している

 

 

更にトレセン学園の側に交番が3つ増設されており、問題発生時には何れかの交番が対応する厳重なものであった

 

 

 

あくまでも彼女達は『学生』であり、『子供』である

故に思慮の無い大人の悪意から守るのは当然と秋川理事長やトレセン学園がある自治体、所轄の警察も判断していた

 

 

そもそも、これは『ウマ娘の社会進出』の為のテストケースの一つであり、民間主導とはいえど立派な国家プロジェクトである

 

念には念を入れるのは当然といえよう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレセン学園の正門は南であり、裏門は北、通用門は東。トレセン学園学生寮は南西であるから、寮生通用門は南西にある

 

 

アグネスタキオンへの取材を目論む者達は南西に集まり、関係者が出てくるのは正門。裏門と通用門は基本的には使用しない事になっている

 

 

タキオンが通るのは一番遮蔽物の多い通用門であり、通用門付近には監視カメラが2台とカモフラージュして3台。合計5台ある

 

これにより、報道関係者とアグネスタキオンとその幼馴染が接触しないように最大限の警戒をしていたりする

 

なお、カモフラージュしている3台の監視カメラは幼馴染の両親が勤める会社からトレセン学園に寄贈されたものだったりする

 

 

 

 

 

 

この様な努力によりタキオンと彼の平穏な生活は守られていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレセン学園初日の混乱の原因の一つはアグネスタキオンによる過去の話である

 

男子とどう接して良いのか分からないウマ娘というのは実に多い

というより、当時男性と上手くつきあっていけるウマ娘の数は、G1レースの勝ちウマ娘の数よりも希少。とまで言われていたほどである

 

 

力任せで相手を見つけたとしても、その後待つのは一方的な愛情だけ

 

 

それに対して、アグネスタキオンは生まれの幸運こそあれど、ほぼ確定の相手を見つけている。しかも中学生で、だ

 

 

当然、思春期のウマ娘である以上、気になるし、参考にもしたいのが偽らざる本音だったのだろう

 

 

参加者は最終的に学年生徒の三分のニにまで膨れ上がっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「参ったな、あれ程とは」

 

「分からんでもない。いや、皆分かっているんだろうさ、私達も含めてな」

 

「ですが、どうにかしないと問題になります

将来的には間違いなく」

 

 

翌日の早朝、生徒会メンバーは一足先に登校し、生徒会室で頭を悩ませていた

 

 

議題は勿論、昨日の件である

 

 

「いっその事体育館なりを使うか?」

 

「うむ。それも悪くは無いが、それだとタキオン君の負担が」

 

「確かに、2日目から講演などというのは洒落にもなりませんね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで生徒会メンバーが頭を抱えている時

 

当のアグネスタキオンは

 

 

 

「グラスワンダー君。ちょっと待ってくれないかい?」

 

「勿論です」

 

アグネスタキオンは頭を抱えたくなった

そもそも、昨日の事は昔話だったから、どうにかなった。しかし、アグネスタキオンというウマ娘は基本、対人関係は苦手なのだ

 

そういうのは基本彼がしてくれていたから

 

 

勿論、常識的な事ならば対応出来なくはないだろう

 

 

だが

 

(うまぴょいしてない精神が大和撫子だって?

いやいやいや、良く分からないのだが)

 

グラスワンダーは明らかに真剣そのものだ

 

(そもそも、何をどう教えろと?

ち、抽象的過ぎるぞこれは!)

 

 

突発的な事態に対する対応力は殆どないに等しいアグネスタキオンは

 

 

 

 

 

 

 

 

幼馴染に

 

 

た す け て

 

 

とメッセージを送るのが精一杯だった

 

 

 

 

グラスワンダーには放課後に時間を作ると言って一先ず保留とした

 

 

そして、秋川理事長に事の次第を報告し、彼をトレセン学園内に入れて良いのかの判断を仰いだ

 

 

 

 

 

秋川理事長からは生徒会のイベントの打ち合わせの為の来校であれば許可!

とメッセージが届いたのはすぐ後の事だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

た す け て

 

 

 

アグネスタキオンからこのメッセージを受け取った彼は、まず深呼吸した。

 

幼馴染であるタキオンの場合、緊急性が高いメッセージには特徴が出る。しかし、それに今回のは該当しない

 

となると、緊急性は低い。しかし態々メッセージを送ってきたとなるとタキオンのメンタル的にきてる可能性が高いと判断した

 

だが、トレセン学園はウマ娘の学校である。部外者の立ち入りは原則禁止の筈

タキオンの力になりたい。でもトレセン学園内に行けない

 

 

部屋の中を右回りでぐるぐる歩き回っていると

 

 

学園に入る許可もらった

通用門

 

 

とのメッセージが来た

 

 

 

 

 

 

そして

 

 

「なぁーんで、実質女子校に2回も入る事になるのやら」

 

トレセン学園内に入って愚痴る彼であった

 

 

 

 

通用門まで迎えに来たウマ娘

 

「えっと、生徒会長さん、だっけ?」

 

「ああ。シンボリルドルフだ

今日は態々申し訳ないね」

 

「仕方ないね、タキオンの為だし」

 

 

 

 

「あんまり見ない方がいいんかね?」

 

「どうだろうな。もしかしたら、これからも頻繁に来てもらうかも知れないから何とも言えないな」

 

「委員会がそんなんで『いいんかい』なんちって」

 

「っ!だから、そういうのはっ!」

 

口元に手を当てて笑いを堪えるシンボリルドルフ

 

「この鐘は良いらしい。そんなに『いいんかね』」

 

 

 

 

シンボリルドルフの腹筋はまた崩壊した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「や、ゴメンって」

 

「ふぅ、君は私を笑わすのが上手いな」

 

「「ウマ娘だけに」」

 

「ふふふ」

 

「くくくくっ」

 

 

その場に彼とシンボリルドルフの笑い声がこだました

 

 

 

 

 

 

「いや、この前以来思いっきり笑ったよ」

 

「そりゃまた、大変なこって」

 

「さぞタキオン君もきみといるなら楽しいだろうね」

 

「そうあって欲しいもんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒会室で生徒会メンバーと打ち合わせした

 

 

 

その際

 

「大丈夫なの?この学校?」

 

と彼は冷や汗をかいたとか、なんとか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、タキオンとグラスワンダーは会議室に向かった

 

 

 

「よ、タキオン。元気?」

 

「元気かと聞かれると少々疲れるね

ああ、グラスワンダー君。紹介しよう私の幼馴染さ」

 

「グラスワンダーと言います。初めまして」

 

「此方こそ初めまして、グラスワンダーさん

タキオンの幼馴染やってます」

 

 

 

 

グラスワンダーから話を聞いた

 

 

「なるほどなぁ。つまり貞淑なタキオンはグラスワンダーさんが持つ大和撫子のイメージぴったりって事?」

 

「そうですね」

 

「そ、そういう事だったのか」

 

「つうか、こういうデリケートな問題に俺を呼ぶなって」

 

「いえ、私がアグネスタキオンさんにお願いしたのですから」

 

「ま、そうなんすけどねぇ」

 

「大和撫子ねぇ」

 

「ええ、私は日本文化に憧れておりまして、色々と学びたくはあるのですが」

 

「ウマ娘だもんなぁ。時間も取れないよな」

 

「はい」

 

「俺から日本文化で出来るのって剣道だけだね」

 

「そうだねぇ。腕前はともかく」

 

「ほっとけや」

 

「剣道をされていたんですか?」

 

「まだ一年にもならないヒョッコですけどね」

 

グラスワンダーの興味をひいたようだった

 

「あの、もし宜しければ」

 

「ふぅむ、良いと思うよ?」

 

「まぁ、予定が合えばね」

 

 

 

 

 

 

 

その後グラスワンダーの日本文化探究についてタキオンと彼は手伝うことになった

 

 

 

 

 




ウマ娘も少女だからね、恋愛ごとに興味あるのは仕方ない

トレセン学園を取り巻く状況の複雑さが少しでも分かると嬉しい

お気に入り多すぎぃ!
感謝感激!

評価もありがとうございます!
過分な評価、誠に恐れ入ります!


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 明日の為に

 今回は妄想大爆発な回です

多分お気に入りもかなり減ると思いますが、とりあえず投げます


お世話になっている病院の婦長が絶『ふちょう』でした


グラスワンダーに日本文化を教える約束をしたタキオンと彼は速やかに家へと帰った

 

 

そして

 

 

「・・・・ああ、悪いとは思うのだけど

もう一度お願いできるかな?」

 

タキオンは自分の幼馴染の口から出た言葉を疑いたくはない

だが、今回だけは嘘であって欲しいと願った

 

「だから

タキオンと俺の今までの話をして欲しいんだとよ、俺から」

 

「ちょ、え、ま、え?何、ええ?」

 

「タキオンとりあえず落ち着けって」

 

彼は水を差し出す

 

 

「・・・・・ん、ん、ん

ありがとう。少しは落ち着いたよ」

 

「久しぶりだな、そのテンパリタキオンは」

 

ニヤニヤと彼は笑っている

 

「だから!その微妙なネーミングは止めてくれと言っているだろう?」

 

「ぽーん

只今のアグネスタキオンさんからの提案は否決されました」

 

「即答?!

せめて少しは考えるフリ位したまえよ」

 

「むーりー」

 

 

 

 

それから暫くタキオンと彼はソファーの上で格闘した

 

 

 

 

 

「つまり、生徒会からの依頼なんだね」

 

「厳密にはトレセン学園からの依頼やね

ついでに期日は明日」

 

「規模が大きくなってるよ!?

しかも、明日ぁ!?」

 

「あれでしょ?来年から外部からトレーナーを受け入れて、本格的にトレセン学園としてウマ娘のレースへテコ入れするからじゃない?」

 

「ああ、あれかい?ウマ娘によるレース」

 

「んで、その前の準備段階の一つとして、俺とタキオンの馴れ初めを語れって事じゃ無い?」

 

トレセン学園に在籍するウマ娘の大半が異性との付き合いがない

現在桐生院家が中心となってトレーナーの育成に力を入れているが、どうしても桐生院家の御令嬢の様に女性トレーナーは数が少ない

 

となれば、男性のトレーナーに指導されるウマ娘が必然的に増えてしまうだろう

 

そこで、異性に慣れる事から始めたのではウマ娘のピークを無為に過ごす可能性も存在する

 

そこで、ウマ娘アグネスタキオンと交際している(トレセン学園のウマ娘達にはまだ秘密にしている)彼に男性目線からの意見。それに引退後を見据えての男女交際についても知識を深めるのが目的らしい

 

詳しい事までは彼は聞いてないし、聞く気もないが

 

 

「な、馴れっ」

 

タキオンは真っ赤になった

 

「やっぱり俺のタキオンは可愛いなぁ」

 

「っ!っ!」

 

「あ、こら。チャンネル投げるな!ティッシュの箱投げるな」

 

「つーん」

 

「ああもう、可愛いかよ」

 

「つーん」

 

「タキオン」

 

「・・・つーん」

 

タキオンの機嫌を損ねた彼は

 

「ほら、おいで?タキオン」

 

「誤魔化してる」

 

彼が両手を出していると、タキオンはその手の間に体を入れた

そして、彼がタキオンを後ろから抱きしめる

 

「ふふっ」

 

「ホント、タキオンこれ好きだなぁ」

 

「一番近くに君を感じられるからね

当然だろう」

 

「ウチのお姫様は可愛い事言ってくれちゃって、もう」

 

「大好きだよ」

 

「俺もさ」

 

 

 

その夜は久しぶりに二人羽織で寝た

 

 

 

 

 

 

タキオンと彼の間にはルールがある

 

 

 

どの様な時にも『愛してる』とは言わない事であった

 

 

今も自活している様に見えて、結局親の仕送りがなければ生活出来ていない。

このマンションとて、町内会長の伝手で確保できたのだ

 

 

自分達で自身の生活を支えきれる

 

そんな確証がない限り、2人が『愛』という言葉を使う事はない

 

 

 

それが2人の誓いなのだ

 

考え方が古い?

構わない

 

 

それがウマ娘アグネスタキオンとその彼氏が選んだ道なのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

 

タキオンと彼は一緒にトレセン学園へと向かった

 

 

今日の朝一から彼メインの講演会という名の昔語りだった

 

 

 

 

「あら?タキオンさんおはようございます

それに幼馴染さんも」

 

「ああ、マックイーンおはよう

随分と早いんだねぇ」

 

「おはようございます

メジロマックイーンさんでしたよね?ゴルシの従姉妹の」

 

「今日は貴女と彼のお話を聞ける機会ですもの

早めに行って前の席を確保しないと

この間はゴールドシップさんがご迷惑を」

 

「いやいや、ゴールドシップさんとの話は楽しかったですし、また機会があれば是非とお伝えしていただけますか?」

 

「勿論ですわ!」

 

「じゃあ、私はマックイーンと席に行くよ

また、後で」

 

「では失礼しますわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ、今日は本当にすまないね」

 

「ま、仕方ないって事で諦メロンしてるからいいよん」

 

「こちらとしては頼み込んでる側だからあれだが」

 

「大丈夫、そこまで無茶はしないって」

 

「本当か?」

 

「信用なさすぎてワロエナイ」

 

「ブライアンにグルーヴ。大丈夫だ

彼に任せておこう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「注目っ!今日はウマ娘と異性の付き合い方について、特別講師を招いたっ!」

 

「静聴っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、えートレセン学園の皆さん、おはようございます

 

本日の特別講師なんかを務めます、トレセン学園生徒アグネスタキオンの彼氏です。どうぞ、宜しくお願いします

 

 

「タキオンさんの!」

 

「という事は、『王子様』?」

 

 

あっと、その王子様って言うのは私には相応しく無いと思ってます

 

逆にタキオンがお姫様っていうのには、全力で同意しますが

 

 

 

 

皆さんはウマ娘というご自身について、どの程度ご理解されておられるでしょうか?

 

 

ウマ娘という存在自体は近年市民権を獲得しましたが、未だに一般には周知されていないのが実情であると感じています

 

 

ウマ娘という名称は知っていても、それだけでは意味がありません

 

 

私は幸いにして、幼馴染であるアグネスタキオンが居たおかげでウマ娘というものにも興味を持つことが出来ました

 

 

調べて愕然としたのが、ウマ娘と一般男性との婚姻の成立する率でした

 

 

 

どのくらいか少し皆さんで考えてみてください

 

 

 

 

 

 

「む、たづなっ!

興味深い話だな、これは」

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

では答えを言いますと

 

大凡2%だそうです 

 

この数字はまだ私が小さかった頃の数字ですので、今はそれより上向いているとは思いますが

 

その理由はウマ娘に対する不安であるとボクは思います

 

 

ウマ娘と交際するにしても、常に付き纏うのが両者の力関係です

どうしてもそのぶぶんにおいてはウマ娘側に軍配が上がります

 

そうなると不安になるのです

 

 

「此方の意見は通らないのではないか?」

 

 

勿論、そんな事はありません

 

 

貴女達ウマ娘だって、話し合える。分かり合えるのです

 

 

 

 

しかし、悲しい事にすれ違いは起きるものです

貴女方の中では有名らしい私とアグネスタキオンでもそうです

 

 

日常の些細な事でもすれ違いになる事はあります

 

知り合いの方が言うには「円満な関係を維持しようと言うのなら、先ずは話し合いだ」

との事です

 

 

それには私も同意します

 

 

 

 

 

 

 

 

「相互理解、か」

 

「言うほど簡単ではないがな」

 

「そういえば、母も言っていました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日常生活において、些細な事でも良いと思います

 

私とタキオンは共に食卓を囲んだり、他愛のない話をしたりもします

 

 

そうやって、徐々に相手の事を理解していけばいいのだと私は思います

 

 

 

 

 

 

「うん、ご飯か」

 

「いや、そこに反応するんかい」

 

 

 

 

 

今日何があった?

明日何する?

明日のご飯はどうする?

 

 

そんな他愛のない会話でも、私は幸せを感じます

そして、出来ればタキオンもそうであって欲しいと願っています

 

 

 

 

 

皆さんは来年度より本校において、トレーナーと共にトレーニングに励む日々を過ごされると聞いています

 

 

恐らくは相手は年上で、ともすれば異性の方でしょう

 

何よりも大切なのは、『1人で抱え込まない』事だと思います

 

 

 

 

 

「ふむ、彼がタキオン君の幼馴染か。興味深いな」

 

「凄いね!ハヤヒデ、タイシン!」

 

「ああ、もう静かにしろっての

1人で抱え込まない。か」

 

 

 

 

 

 

趣味や嗜好、生活リズムに価値観

様々なものが異なるでしょう

 

時には煩わしく思うこともあると思います

 

 

今だからタキオンとも笑って話せますが、私は小学四年生の頃からタキオンの家にご飯を作りに行ってました

 

最初は私から言い出した事ではありましたが、あくまでも一時的なものと思っていた私とずっとして欲しいタキオンでは当然考えに差がありました

 

正直に言えば、当時の私は心の底では喜びながらも一方で面倒に思っていた事も確かです

 

 

じゃあ何故それを続けたか?そう聞かれると私は答えるのに躊躇しますね

 

 

 

私にとってタキオンは『最も近い他人』でした

 

でも私の中の景色に彼女が居ないと不思議と風景が色褪せて見えました

 

私にとっての日常は彼女と共にある事をその時初めて自覚しました

 

 

お恥ずかしい話ですが、それを自覚してからタキオンにはだだ甘だったと我ながら思いますが

 

 

 

 

 

「自分の中の景色」

 

「分かります〜。甘やかしたくなる時ってありますよね」

 

 

 

 

 

 

 

 

当時の私はまだ小学生。今の私もどれだけ言おうとも、中学2年生です

 

子供の戯言と非難される事も、否定される事もあると思います

それでも、私はアグネスタキオンというウマ娘と共にこの道を歩きたい

 

 

いえ、歩いて行くのです

 

彼女の後ろからついて行くのでも、彼女に後ろからついて来て貰うのでもなく、共に歩いて行く

 

 

 

「凄い覚悟ですね」

 

「む、つまりあの人はアグネスタキオンさんとバクシンする訳ですね!」

 

「ついていくんじゃなくて、一緒に」

 

 

 

 

 

 

 

皆さんもこれから沢山の困難が待ち受けているとは思います

 

 

 

それでも、貴女は1人ではないんです

 

 

孤独な王者である必要も悪役である必要もないんです

 

 

 

 

「孤独な王者、か」

 

「耳が痛いものだね」

 

 

 

 

 

 

 

彼はそう言って壇上を降ります

 

 

 

 

「え?」

 

「どうしたの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「タキオンさん、此方に来られてますわよ!」

 

「何だろうね

私の中の経験則が逃げろ!と言っているよ」

 

 

 

 

 

 

そして彼はアグネスタキオンの前に来た

 

 

 

 

「」

 

タキオンは言葉もなかった

彼女を助けてくれた、あの夜と同じ顔をしていたから

 

 

「タキオン」

 

「え、ちょ、待ちたまえ」

 

 

 

 

 

 

会場がどよめいた

 

 

 

それもそうだろう

 

タキオンを抱き寄せた彼はそのまま彼女をお姫様抱っこしたのだから

 

 

 

 

 

 

 

「た、タキオンさんっ!」

 

メジロマックイーンの目は輝いていた

 

「マックイーンさん、ウチの姫様借りてくよ?」

 

「ええ!ええ!

構いませんわ!」

 

「いや、私の意思は?」

 

 

彼のお願いに、マックイーンは何度も首を縦にふる

一方でタキオンは真っ赤になりながら彼の腕の中にいる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えー失礼しました」

 

タキオンを抱っこしたまま、壇上に戻ると普通に話を続ける

 

 

彼の腕の中のタキオンはぽかぽかと彼の胸元を叩いているが、誰の目から見ても本気には見えなかった

 

 

 

「私は何処にでもいるありふれた人間です

それでも、彼女と居たい。この気持ちだけは誰にも否定させません」

 

 

 

 

 

 

「いやいや、ありふれてないって

はぁ、でも良いなぁ。私もそういう人見つけられるのかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

今更ですが、自己紹介を訂正させて頂きます

 

 

私はアグネスタキオンの幼馴染でなく

 

「いや、ちょっと!」

 

 

 

 

アグネスタキオンの彼氏です

 

 

 

 

今後、私の可愛い彼女共々宜しくお願いします

 

「ちょっと君いいか、んっ」

 

 

その宣言と共にタキオンに口づけした

 

 

 

 

「皆さんにも善い出会いがありますように」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会場内のウマ娘達は声にならない歓喜の声をあげた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、全くっ!」

 

「まぁまぁタキオンさん」

 

「正直すまんかった

でも公開しても『こうかい』しない」

 

 

その後、目の前でのキスシーンを見て興奮冷めやらぬウマ娘達を生徒会メンバーと職員がなんとか解散させた

 

 

 

会場には彼氏をぽかぽかと真っ赤な顔で叩くタキオンとそれを落ち着かせようとするマックイーン。満足そうな表情の彼氏

 

 

「非常に為になった

なったが、最後のアレは必要だったのか?」

 

「全くだ。もう少しやりようもあったのではないのか?」

 

「ふむ、公開しても『こうかい』しない、か

覚悟とダジャレを両立させるとは、流石だな」

 

 

喧騒を何とか収めて疲労困憊の生徒会メンバーがいた

 

約1名別の意味で感心しているが

 

 

 

 

「や、あそこできちっとタキオンとの関係を示した方がわかりやすいっしょ」

 

「私の精神が保たないのだが?」

 

「はーい、タキオン。撫で撫でしましょうねー」

 

不服そうなタキオンを抱き寄せて頭を撫で回す

 

 

(う、羨ましくなんてっ!

うう、羨ましいですわっ!)

 

「人目を気にしろと言っている!」

 

「確かに目の毒だな」

 

「そうだがな」

 

 

「え、今の生徒会メンバーに権利何てあるわきゃないでしょ?」

 

「どういう事だ!それは」

 

彼のあまりな物言いにエアグルーヴは怒る

 

「え?だって前日にいきなり明日講演会するとか、ふつーにあり得なくね?

勿論、秋川理事長には1時間ほど苦情申し立てたけど」

 

 

「うぐっ」

 

「ぐぬぅ」

 

「それを言われると、何も言えなくなるな」

 

 

「え、ではわたくしはどうなのです?」

 

「ああ、マックイーンさんはゴルシからGOサイン貰ってたから、ごめんね?」

 

 

マックイーン、まさかの身内からの裏切りであった

 

 

 

「恨みますわよ、ゴールドシップさん」

 

 

『えー、ゴルシちゃん知らない〜⭐︎』

 

と空耳が聞こえてきたが、マックイーンは全力でスルーした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、でもこれで多少は一般男性に対する意識も変わるでしょう」

 

「確かにな」

 

「ふん、貴様もいう事に同意するのも癪だがな」

 

「そうだろうな

少なくとも君というウマ娘と確かに繋がっている者の存在を確認出来たのは、私たちにとって大きいだろう」

 

 

 

「あの、皆さん。タキオンさんが」

 

「アグネスタキオンについては今は忘れろ」

 

「あっ、はい」

 

 

 

話を急に真面目モードに戻すタキオンの彼氏にナリタブライアンとシンボリルドルフは素直に、エアグルーヴは不本意そうにだが、同意した

 

 

ウマ娘と付き合う者がいる

それだけでも効果はあるが、直接目にした方が皆の意識改革につながるのは間違いではない

 

 

 

マックイーンが話題にしかけたタキオンは現在、彼氏の腕の中で彼の腕を甘噛みしている

 

擬音にするなら

 

はむはむといったところか

 

 

 

やや涙目で上目遣いのアグネスタキオンは僅か数日しか付き合いの無い生徒会メンバーやマックイーンにとって、衝撃的だったのだ

 

 

彼からすれば日常茶飯事であるが

 

 

 

なお、彼の急激な話題変更は

 

 

同級生から

 

『温度差で火傷する』

 

『話題ジェットコースター』

 

と呼ばれてたりする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作者の実力不足?

 

 

ナンノコトカナー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、彼からすればタキオンの可愛さを語るにはせめて1日は欲しいと考えており、今回程度では全く足りないと考えていたりする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後の話であるが、某人物を中心とした『アグネスタキオンを愛でる会』というトレセン学園公認の組織が密かに結成される事になるのだが、それはまた後に話をしよう

 




 次回からタキオンや一部のキャラクターをしっかり動かしたい

うん、動かせるといいな


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 激突!生徒会と幼馴染

と言うわけでエアグルーヴとナリタブライアンとのレース?内容を書いてみました

ツッコミどころ満載ですが、どうぞ?


 これは生徒会メンバーと幼馴染の彼が初めて会った時の事

 

 

「会長の調子は『かいちょう』の様だ」

 

このトドメのダジャレにシンボリルドルフは崩れ落ちた

 

「会長!」

 

「おい、大丈夫か?」

 

「っ!っっっっ!」

 

突然崩れ落ちたルドルフに驚き、心配する2人

 

 

「君のしようもないダジャレが此処までささるとは」

 

「ダジャレを、いややめとくか。

流石に会長さんがマジでやばそうだしな」

 

「ならそこまでしなければ良いだろうに

やれやれだよ」

 

「や、ほらね

凛々しい相手を崩すって言うのは、なんかこう、良いじゃん?」

 

「君とは15年以上の付き合いになるけど、相変わらず分からないものだよ」

 

 

「おい、貴様」

 

タキオンが彼を咎めるが、相変わらず彼は普通に流していた

タキオンはいつもの事と諦めていたが

 

此処にはそんな事を許せないウマ娘がいた

 

 

「つまり、貴様のせいで会長はこうなっていると、そういう事だな?」

 

「おい、グルーヴ」

 

「ありゃりゃ、怒らせたか」

 

 

彼はエアグルーヴを少し見た

 

 

尻尾は緊張し、耳も緊張状態

目はすわっているし、体の各所に引き攣りを確認

 

 

結論

 

冷静な話し合いは不可能

 

 

 

 

それを理解した瞬間、彼は扉を開けて迷わず逃走した

 

 

それにかけた所要時間は僅か10秒足らずという早業であった

 

 

 

 

 

 

「なっ!貴様っ!」

 

エアグルーヴは男が逃走した瞬間、思考が停止してしまっていた

 

だが、30秒しないうちに男を追いかける事を決断した

 

 

会長に恥をかかせた男を許せなかったから

 

 

 

 

 

 

 

「ちっ、そこでお前が冷静さを失ってどうする」

 

ナリタブライアンは舌打ちをした

 

 

確かにあの男の振る舞いによりルドルフは行動不能になった

 

だが、ブライアンからすれば、余計な肩の力が取れたとすら思えていた。ルドルフは責任感があるウマ娘なのはトレセン学園の建物が出来た頃の初顔合わせで分かっていた事

 

それから2ヶ月は共に行動しているが、息抜きというものをルドルフもグルーヴもしていない様に見えた

 

 

だから、このままでは不味いとは思っていた。そこにあの男のダジャレだ。少なくともブライアンの目の前で涙を流しながら爆笑しているルドルフは大丈夫だろう

 

しかし、グルーヴにとっては尊敬するルドルフが侮辱されたと感じたのだろう

 

真面目な奴の事だから、理解できなくもない

無いが、相手は秋川本家からの要請で態々此方にまで来てもらった相手。

 

面倒な事になる前に止めなければならない

 

 

 

「アグネスタキオン、すまないとは思うが」

 

「分かっているとも

ルドルフ君の事は任せておきたまえよ」

 

「悪いな」

 

 

ブライアンは生徒会室を出ようとした時

 

 

「ああ、ひとつだけアドバイスだ

彼はウマ娘ではない。無いが私と常にいる事を忘れないでくれたまえよ?」

 

「?

ああ、分かった」

 

 

エアグルーヴを追いかけねば!

幸い誰もいない校舎だ。足音は聞こえる

 

 

 

ナリタブライアンは駆け出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

馬鹿な、何故追いつけない!

 

エアグルーヴは驚愕していた

 

 

 

確かに多少あちらの方が先行していただろう

 

だが、速度では此方の方が圧倒的に有利な筈

 

 

 

にも関わらず、奴を捕捉できない

 

 

時に教室内に入る事もある

 

が、それでも負けるはずはない

 

 

 

奴は見えている

だが、その距離が果てしなく遠く感じた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やれやれ

 

真面目なのも良いけど、程々にしないと潰れるだろうに

 

彼はエアグルーヴとナリタブライアンから逃げながら、ため息を内心でついていた

 

 

 

というか、どちらも速いね

 

でも疾くないし、上手くもない

 

 

 

多分、後から来たナリタブライアンとやらはエアグルーヴを止めようとしていたんだろうけど、目的を見失ったみたいな感じだな

 

 

どうしてこう、ウマ娘ってのはタキオンも昔はそうだったけど、直ぐに熱くなるのかねぇ

 

冷静さを欠いた走りではタキオンといつもアホやってた俺には届かんよ

 

 

 

直線で加速、階段付近でコーナー加速からの『登山家』ってか!

 

懐かしいねぇ、少し前まではタキオンをからかって良く走り回ってたっけなぁ

 

 

 

 

 

俺のタキオンが最速である為には、負けてられないんだよ

悪いけどな

 

 

彼は獰猛な笑みを浮かべた

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちっ、追いつかんだと!」

 

「グルーヴ!階段だ」

 

エアグルーヴとナリタブライアンは階段へのカーブの為にやや『減速』した

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間

 

「わりぃな」

 

 

ブライアンとグルーヴの隣を男がすり抜けて行った

 

 

 

「何!」

 

「何だと!」

 

 

これはレースでは無い

であれば、逆走もまた戦術なのである

 

 

ウマ娘としてのトレーニングを積んでいた2人はどうしても逆走という発想には思い至り難い

 

 

更に今まで彼は一度とて逆走をした事がなかった

 

その為、不意をつかれる事になった

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、不思議に思う事だろう

 

例え逆走するにしても、普通なら2人のどちらかに衝突しそうなもの

 

それが何故、当たりもせずに通過できたのか?

 

 

 

 

これもタキオンとの長い間の経験で彼が感じだ事だが、どうにもウマ娘には『速く走る』というものが無意識に存在するのではないか?

そう彼は考えていた

 

タキオンの場合だと、カーブを曲がる際には徹底的に内側ギリギリを走る。つまり最短距離を選んでいるのだ

 

タキオンが怒っている時も、ふざけている時も、である

 

 

 

となると追いかけてくる2人にもカーブの際の癖があるのではないか?

 

そう考えた

 

 

 

 

その為に態々、一度校舎から出ていき、模擬レース用のコースを少し走ったのだ

 

それでブライアンとグルーヴの癖は2人ともタキオンと同じく最短距離を走るものと推察した

 

 

更に位置関係はグルーヴが先行、ブライアンはその直ぐ後ろであった

 

 

 

 

つまり、カーブの際に外側はフリーである公算が大。そう判断し、事実外側から抜けれたのだ

 

 

 

 

 

 

 

後にこの考察を聞いたルドルフは

 

「ふむ、興味深い考察だな

それにしてもよく見ている」

と感心し

 

グルーヴとブライアンはその時そこまで考えていたのか?

と驚きの表情を隠しきれなかった

 

 

勿論、彼は渾身のドヤ顔をしてグルーヴを怒らせていたが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、彼は既にスピードが明らかに落ちている2人を確認して、意気揚々と生徒会室に戻った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初にエアグルーヴの冷静さを失わせ、ナリタブライアンは走る事により興奮状態に導き、後は自分のペースですり潰した

 

彼のした事を要約するとこうなる

 

 

 

 

 

 

「大勝利!」

 

「いや、待て」

 

「貴様、本当に、人間か?」

 

タキオンとルドルフにドヤ顔をしてVサインをする彼、息も絶え絶えに生徒会室に戻ってきたナリタブライアンとエアグルーヴであった

 

 

 

やはり自分の思うような走りが出来ないのは相当疲労を感じた様であった

 

 

 

「決まり手はルドルフ君に『ささやき』からの『追い込み』

さしずめ2人には『直線加速』と『カーブ加速』といったところかな?」

 

「タキオン、『登山家』も追加で」

 

タキオンは懐にあるメモ帳に色々と書いていた

 

 

 

 

 

 

 

以上が『第一回異種間レース トレセン学園杯』のあらすじである

 

 

 

 

優勝賞品はタキオンの笑顔だったと彼は語る

 

 





なお、この野良レースによりナリタブライアン、エアグルーヴに『直線加速』『コーナー加速』が、シンボリルドルフには『追い込み』『ささやき』が
アグネスタキオンには『直線加速』『コーナー加速』『登山家』『ささやき』『追い込み』のスキルが開放されたとかなんとか


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 タキオンの1日

(アイディアが)来た
(文字数を)見た
(投稿予定に)勝った

つまり我が軍の大勝利である(大本営発表)


短いのとクオリティは許して


「タキオン、起きろ」

 

私の好きな声がする

でも、起きない

 

「お前なぁ、起きてんのバレバレだぞ?」

 

はて?知らないねぇ

私はまだ寝ているのさ、何せいつものあれをして貰ってないのだからね

 

「おい、こら」

 

ふふふ、怒っても無駄だよ

私だって君に意地悪をしたいわけでは無いんだ。だが、やはり朝一にはあれがあって然るべきだと私は思うのだよ

 

「・・・・へぇ」

 

!!

今何か寒気がしたぞ!

と言うか、彼の声のトーンが

え?まさか

 

 

ガチャ

 

 

 

今、ドア閉まった、のかい?

 

いやいやいや、待て待つんだアグネスタキオン!!

冷静になるんだ!此処で焦っては彼の思うが儘!

そうさ、私はアグネスアグネス。冷静さでは彼より、も?

 

 

 

待って

今、何かいい匂いがしているんだが

いやいやいやいや、まさか、そんな事はあり得ないだろう!

手がかかるから滅多に出さない料理の筈

 

し、しかしっ、この匂いと音はどう考えても

 

 

「やれやれ、タキオンの奴。今日は折角昨日のお詫びにスフレオムレツ作ったのになぁ。あー残念残念。俺1人で食べるのかぁ。タキオンは卵ご飯でいいな、うん」

 

 

 

うわあああああっ!しまったぁ!

す、直ぐに行かないとっ!

 

じゃなくて着替えてからじゃ無いと!

あああああっ!!

 

 

 

 

 

 

「お、お、おはよう!」

 

「・・・」

 

うう、視線が冷たいっ!

 

って、え?テーブルの上の皿に、ものが、無い?

 

「おはよう狸寝入りしたタキオン」

 

ううう、ジト目で見られてるぅ

機嫌は最悪ということか

それにバレてる。どうする?

 

 

完璧で可愛いタキオンちゃんは彼を華麗に説得する

この状況でかい!

 

どう見ても無理筋だろう

 

素直で可愛いタキオンちゃんは彼にしっかり謝る

アリといえば有りだと思うけど、どうだろうか?

 

 

現実は非情である

流石にこれは受け入れ難いね

 

 

 

 

良し、謝るとしよう

 

「あの、「タキオンのご飯はジャーにあるから、勝手に食べて」」

 

 

え?

 

え?

 

 

え?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スフレオムレツないの?

 

たきおんのすきなおむれつ

 

な い の ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待ってくれ!私が悪かった!悪かったから、そんな無体な事を言うのはやめてくれよぅ

確かに私は今日狸寝入りをした!したのは悪かった!本当にっ、悪かったと思ってるし、反省もしてる!

今後はなるべく自分で起きるように努力する!努力するから、そんな事言わないで!

ねぇ、ねぇってば!」

 

私は必死に彼の足にしがみついて懇願した

 

 

「ふーん」

 

 

「わかってる、たきおんがわるいのはわかってる

ごめんなさい。ちゃんとあしたからはおきるから!

ごはんもすききらいしないし、そうじもてつだう!

わがままもあんまりいわないようにするから!

たきおんいいこにするから!」

 

 

「幼児退行まで、すんなし」

 

ためいきをついてる

 

 

「もう

俺も甘いのかねぇ」

 

たきおんのあたまをなでてくれてる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んで?たかだかスフレオムレツ食べれないくらいで幼児退行した、アグネスタキオンさん?」

 

「ううううう、忘れてくれよぉ」

 

私は今スフレオムレツを食べながら、彼に文句を言われている

失敗だった。彼が言うには私は寝ている時と起きている時で耳の動きが違うらしい

狸寝入りはすぐにバレたそうだ

 

でも最近は素直に起きなくなったから、少しお灸を据えようと思ったらしい

 

どう見ても、少しじゃないと思うんだが

それよりも、だ

 

 

 

 

 

 

「いや、これうめぇなぁ!」

 

「で、何で君がいるんだい?ゴールドシップ君?」

 

 

彼女が何故此処にいるんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふー、美味かった美味かった

やるな、お前!」

 

「ふ、かかったな!ゴールドシップよ」

 

「な、何だと!」

 

「そういう茶番はいらないから」

 

「えー、ゴルシちゃんは」

 

「早く吐け」

 

「お、おっす」

 

 

おや?どうしたんだい、ゴールドシップ君?

急に顔色を青くして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後にゴールドシップはこう語る

 

 

 

 

「いや、あん時のタキオン先輩マジでやばかったぜ

マックイーンとライアンとパーマーとドーベル合わせるよりも怖かったぜ!」

 

 

 

 

 

 

なお

 

 

「へぇ?誰が怖いって、ゴールドシップ君?」

 

「そりゃ、アグネスタキオンせんぱ、い?」

 

「ちょっと向こうで話をしようか?

何、すぐに終わるさ」

 

 

とタキオンは笑顔でゴールドシップを連行していった

 

 

この際にその場にいたダイワスカーレット、ウオッカ、ツインダーボはゴールドシップが連れ去られた方角にそれはそれは見事な敬礼をしたとかなんとか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり何だい?

近所でパルクールしてたら、彼に近所迷惑と言われて此処に連れて来られた、と?」

 

「ういっす」

 

「ふぅん、どうしたものかな?」

 

「心配するな、タキオン

この暴れ馬にゃ、キチンとオハナシしておくから」

 

「ひぇっ!」

 

ふむ。どうやら彼もそれなりに怒っているみたいだし、大丈夫か

 

一応はマックイーン君には伝えておこうかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

慌ただしい朝が終わり

 

 

 

「しかし、座学は退屈だねぇ」

 

「ふむ、やはりタキオン君にとっては物足りないかな?」

 

「まぁ、タキオンさんは座学ではルドルフ会長より上ですものね」

 

 

入学時に共通テストがあったのだが、タキオンとルドルフは共に満点であった

 

だが、暇潰しにタキオンが書いた考察が教員の目に留まり、教員より絶賛された

それにより、座学のトップはタキオンという認識となっていた

 

 

「そう言うわけではないと思うのだがね」

 

「いや、アンタ実技でも優秀で筆記トップ。それで彼氏持ちとかなんなの?」

 

「タイシンは羨ましいんだ?」

 

「はぁ?全然違うし!」

 

 

昨日の講演会からか、タキオンの周りには人が集まり出していた

 

 

今日のメンバーはいつものマックイーンにビワハヤヒデ。その友人のナリタタイシンとウイニングチケットだった

 

 

 

「彼氏ですか、何とも甘美な響きですわね」

 

「確かにそうだな」

 

マックイーンとハヤヒデはため息をつく

 

 

マックイーンは名門『メジロ家』期待のウマ娘

トレーニングばかりの日々で出会いなどなかった

 

ハヤヒデとてタイシン、チケットと共にいる時間が長いせいか基本トレーニングばかりの毎日であった

当然、出会いなど期待できる筈もない

 

 

更に本人は気付いていないが、高身長のハヤヒデに対して、小柄なタイシンとチケット。一緒にいると大人っぽい雰囲気と合わせて、姉と妹が出かけているように見られていたのも、原因の一つではある

 

 

 

 

 

「やっぱり彼氏欲しいなら、ハヤヒデにみたいに胸が大きい方が良いのかなぁ」

 

ビシッ!

 

この時、タキオン達は確かにそんな音を聞いた

 

 

 

 

 

 

 

 

「胸、ですか」

 

自身のそれに手を当てて、呟くマックイーン

その顔は伏せられている

 

 

「胸か」

 

あまり気にしないようにしているが、実はかなり気にしていたタキオン。

 

気のせいか目のハイライトが消えている気もするが

 

 

「ふん、胸なんか」

 

そう言いながらも自身のソレを凝視しているタイシン。彼女とてお年頃、気にならない訳が無かったようだ

 

なお、小さな声にも関わらず、妙に声が響いた

 

 

「ハヤヒデが羨ましいなー」

 

1人明るい雰囲気のチケット

 

 

だが、

 

 

(おい、チケット!燃料に油を注ぐのはやめてくれ!)

 

 

ビワハヤヒデは内心絶叫していた

 

ハヤヒデから見れば邪魔でしかないコレだが、それを今言えば確実に『何か』が終わる気がしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、このチケットの発言は教室内に聞こえており、一部のウマ娘から瘴気の様なものが立ち上り、別の一部のウマ娘達は視線を逸らしていたりするが、因果関係は未だ不明となっている(大本営発表)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この危険な空気も授業を告げるチャイムによって、なんとか収束したのは誰にとっての幸運だったのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後はマックイーンにグラスワンダー、エルコンドルパサーと共にタマモクロス主催の料理教室に来ていた

 

 

グラスワンダーとエルコンドルパサーは日本の料理を

マックイーンは自分が食べる為に

タキオンは彼に食べさせる為に

 

それぞれ真剣に取り組んだ

 

なお、試食係はオグリキャップであり、タマモクロスとの協力により趣味と実益を上手くも合わせる事が出来ていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんなタキオンの日々であった

 

 

 

 




ゴルシが何故か出てきた

作者もよく分からない

まぁ、ゴルシだからいいか


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 彼の1日

新たな試みをしてみたが、どうにもしっくりこない

今回のみになりそう



甘えるタキオンを送り出した彼は、とりあえず学校から出されている宿題に手をつけた

 

 

 

 

 

 

 

 

課題はお昼前に終わったので

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

件名  課題終わったぞ

 

 

本文

 

終わったから来てもええで?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっし!やっと終わったか!

さぁ、これから不思議を探しに行こうぜっ!」

 

「昼飯食べる?」

 

「飯が先だな!

いやぁ、お前の飯美味かったからな!

下手すりゃあウチ並みじゃねぇのか?」

 

「はいはい」

 

ゴールドシップとの昼ごはん

 

 

彼自身、ゴールドシップというウマ娘にはタキオンとは違った意味で好意を持っている

 

何というか、自分の知らないところへと連れていってくれる感じがするから

 

 

タキオンに抱く感情が親愛ならば、ゴールドシップに抱く感情は友愛なのだろうか?

 

ゴールドシップにあってから僅かな時間しか経っていないものの、彼にとって彼女もまた近しいものと感じていた

 

 

 

 

因みに趣味という意味での友人ならば、間違いなくシンボリルドルフが最高だとは思っている

 

何せ、常日頃から凛々しい彼女が自分のバカバカしいダジャレで笑ってくれるその姿は、昔のタキオンの姿と重なるからだ

 

勿論、シンボリルドルフは昔のタキオン程に鉄面皮ではないだろう

 

 

それでも彼女の少しでも気晴らしになれば良いとは思っている

 

 

 

実は生徒会メンバーどころか、現状では学園関係者の中で唯一アドレス交換をしているウマ娘でもあったりする

 

 

 

 

大体がウマ娘の未来についての話になるのが玉に瑕ではあるが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そーいやぁ、お前ってデザート作れんの?」

 

片付けをしている彼にゴールドシップはそう問いかけた

 

「デザートって、また抽象的な」

 

「いや、なんでも良いと思うんだけどな?」

 

「何で疑問形なのさ?」

 

「ま、いいじゃねぇかよ!」

 

「一応はクッキー、パイにシュークリーム、エクレア位は作れるが?」

 

「お?意外だな?」

 

「ほっとけや」

 

 

これはタキオンが小学生の頃にサプリメントに傾倒していた時期があった事が影響している

 

 

 

 

 

 

 

当時はまだタキオンの両親もそこまで家を離れてはいなかったが、多忙を極めていた為に、タキオンにはお金のみを渡していた

 

また、タキオンはタキオンで自分の研究テーマに没頭していた時期だった為に食事に割く時間の節約をしていた

 

最初はゼリーだったが、そのうちにサプリメントの方が手っ取り早いと知り、そちらへと変えたのである

 

 

当時の彼は必死にタキオンを止めたが、耳を貸してくれなかった

 

 

 

そこで彼は母親に頼み込み、美味しいデザートを作れば、タキオンのサプリメント生活をどうにか出来るのではないか?そう考えたのだ

 

 

料理という手もあったが、当時のタキオンは偏食嗜好であった為に、デザートにしてはどう?という母親の助言を聞き入れたのだ

 

 

 

 

勿論、小学校の3年であった彼にそこまで美味しいデザートは作れなかった

 

だが、差し出されたデザートに興味なさそうだったタキオンは、彼の手を見て愕然とした

 

どの指にも絆創膏を貼っていたからだ

そしてタキオンは察したのだ。これは目の前にいる幼馴染が怪我をしながらも作ってくれたものだ。と

 

 

それ以来、タキオンはサプリメントをやめた

 

 

たとえ不恰好でも幼馴染の作るものの方が、彼女にとって宝物に見えたのだから

 

 

 

 

 

そうして徐々にレパートリーを増やして今に至る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その話を聞いたゴールドシップは

 

 

「マジかよ!やっぱりお前、凄えな!」

 

と目を輝かせていた

 

 

 

タキオンの笑顔のために料理の腕を磨いた彼

 

彼の料理を見て研究よりも彼との時間を増やすことにしたタキオン

 

 

 

ゴールドシップからすれば、それは侵し難い神聖な絆に見えたのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んじゃ、走るか!」

 

電車で隣町まで来たゴールドシップは河川敷で宣言した

 

「なんでやねん!」

 

ノリでついてきた彼は思わずツッコミを入れる

 

 

「飯食ったらちゃんと動かねぇと、太るぜ?」

 

「うぬぬ」

 

それから1時間、ゴールドシップと彼は河川敷で走り回った

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、その末脚ってのか?

凄いな、ゴルシは」

 

「そのアタシに遅れてでもついて来れるお前もデタラメだろ?」

 

「違いないや」

 

ゴルシと彼は河川敷で仰向けになって笑った

 

 

 

 

 

彼は『末脚』のヒントを手に入れた!

 

 

 

 

 

 

 

その後、ゴールドシップと別れ、家の近くのスーパーで買い物をしていると

 

「ウマ娘、か?」

 

長身の綺麗なウマ娘が食材を選んでいた

 

 

 

 

 

彼の視線に気付いたのか、ウマ娘と彼の視線が合うと

 

 

「あの〜、もしかしてタキオンさんの」

 

「あ、やっぱり学園の方でしたか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の名はスーパークリーク

 

 

やはりトレセン学園のウマ娘であった

 

 

「買い物ですか?」

 

我ながら変なことを聞いたと後悔した

スーパーに来て買い物以外に何をするというのか?

 

 

「そうですね、実は同じ部屋のウマ娘の子と仲良くなりたいんですけど」

 

 

 

話を聞くと、なんでも気の強い娘らしく、クリークさんと中々話をしとくれないとの事

 

 

 

一時、タキオンもそんな事があったのを思い出して、それから多少のアドバイスをした

 

 

 

「ありがとうございました」

 

「いや、此方こそ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に帰るとまだタキオンは帰ってないようである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

件名  お疲れ様っす

 

宛先  シンボリルドルフ

 

 

内容  内容は『ないよう』

 

    

 

 

 

 

と送ってみた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

件名  会長がまた引き攣っているぞ

 

 

内容  ルドルフの奴にメールを送ってくれるのは、良いのだがな

    せめて、奴が最初から笑う事のない内容にしてくれ

                   ナリタブライアン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

との返信があった

 

 

 

 

今日も平和な1日だったなぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

「お帰り、タキオン」

 

 

 

 

 

 

 

 

明日はどんな1日になるのだろうか?




皆様のお気に入り登録の数を見て、草生やすのは失礼なので

会長の腹筋を破壊します


まだ、投稿して三日くらいだと思うのですが


タキオン可愛いという同士が沢山いて嬉しい限り

勿論、ウマ娘みんな可愛いけどね

ネタは続くよ、どこまでも


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 とある記者の苦難の日々

物事にゃあ触れちゃいけない物もあるという小話

この小説ではこういった描写もしていく予定


怒らないでね?

今回はウマ娘出ませんが


俺はフリーの記者だ

 

 

これまでに色々なスクープを世に知らしめた事もある、それなりに実績のある記者といえるだろう

 

 

 

 

 

今回、俺が狙うスクープは『現代のシンデレラ』だ

 

 

ウマ娘という稀少な存在でありながら、幼馴染の男とずっと過ごして、今年新設されたトレセン学園に来たというものだ

 

 

ウマ娘の話題といえば、一部のレースやそのレース優勝者が結婚したとか破局したとかのニュースばかりだ

 

 

はっきり言ってしまうと話題性に乏しい

 

 

 

 

だが、今回のこれは明らかに話題になる。そう俺の長年の経験も言っている

 

勿論、他所の記者達も同じ事を考えているだろうから、競争率は尋常ではないだろうがな

 

 

 

 

とにかく、個人名はおろか、出身地方まで不明では話にならない

 

まずはトレセン学園側に取材を申し込んでみるか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

畜生!

トレセン学園側に問い合わせたところ

 

『当学園に在籍する生徒、並び関係者に対する情報の開示は認められません』

 

との回答だ

 

予想はしてたが、思ったよりもガードが堅いな

 

 

 

となると、やはりインタビューしかないか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すいません、一言だけでも!」

 

「現代のシンデレラについて、何かコメントを!」

 

 

 

おーおー、やってやがるな

明らかにウザったいと思うほどの記者やレポーターにカメラの数々

 

 

 

 

だが、何か嫌な予感がするな

 

 

 

 

 

少し距離をとるか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マジかよ!

 

警備員じゃなくて、警察官だと!

 

 

さっき、正門付近で強引な取材を試みた連中は悪質な者はパトカーで聴取受けてやがる

 

 

 

どうなってやがんだ?

 

確かに新設の学園だが、警察まで動くか普通?

 

 

 

しかも、外周の道路に機材の設置や路上駐車も禁止とか、どういう事だ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仕方ねぇ、正門は諦めて他の門に行くか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何だこりゃあ

 

今外周をまわって南西の学生寮近くの通用門が遠くに見える所に居るが

 

 

外周を警備員が巡回してやがるし、トレセン学園周辺だけで交番と派出所が合計6ある

 

トレセン学園外周に面している交番だけで3つだと?

 

 

 

 

て事は何か?座り込みや張り込みをしたら、警察が飛んでくるのか?

 

冗談じゃねぇよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレセン学園周辺での取材はリスクの割に得られるものがないとして、知り合いの記者に会いに来た

 

 

「どうも」

 

「やれやれですよ

ウチの編集長がカンカンでしてね」

 

「て事は」

 

「ええ、トレセン学園からは厳重抗議。警察からは注意が来ましたよ

今、上の方はピリピリしてますね」

 

そりゃやべえな

トレセン学園は恐らくこれから話題になるだろう

 

厳重抗議って事は次やらかしたら

 

 

「此処だけの話なんですけど

実は既に何社かはトレセン学園から出禁を食らってるとか」

 

「マジですか?」

 

「ええ。しかも秋川、メジロなどのトレセン学園のスポンサーからも取材拒否となったとか」

 

「拒否ですむんですかね?」

 

「すまないと見てます

最悪取引停止もありえる、と」

 

背筋が凍った

取引停止。つまり、取材などの行為が見られた場合、法的対処をするということか

 

実質出禁食らった会社はウマ娘関連のニュースを取り上げられなくなった様なものだ

 

 

「すげ替えでも?」

 

「恐らくは」

 

無理か

 

となると大手は二の足を踏むな

中小どころなら、或いは

 

「こんな事を言うのも何ですけど、このヤマはヤバいですって」

 

「ええ、気をつけますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうなると、俺の持つ伝手でどうにかなるレベルじゃねぇな

 

だが、惜しい

 

 

これだけ厳重な囲いであるなら、その先のスクープは間違いなくデカイものになる

 

 

何せ、間違いなく独占スクープになるんだからな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな中で気になる裁判を見つけた

 

離婚調停の裁判

 

 

そこまで珍しい訳では決してない

 

 

 

だが、偶々傍聴したその裁判で

 

被告の娘がウマ娘である事を知った

 

 

 

 

 

 

彼の勘が言っている

 

何かある。と

 

 

 

 

 

 

 

 

そこで被告に面会を求めてみたが、やっぱりビンゴだった

 

 

少し金を積めば、出るわ出るわ。貴重な情報が

 

 

 

 

ウマ娘の名前はアグネスタキオン。

 

育った場所、住所、出身幼稚園、出身小学校に中学校

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はそれを元にして取材することにした

 

 

これでは足りない。スクープとしては弱い

 

だから、もっと情報を集める

 

これは俺しか持ってない情報

 

 

 

しかもトレセン学園には一切の取材をしていない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

間違いなく、今年一番のとくダネになる

 

そう確信していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずはアグネスタキオンの実家を訪ね、写真を撮った

 

勿論、ぼかしは入れるがな

 

 

 

次に近所の人に取材を試みた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、何故か初めの人物こそある程度取材に応じてくれたが、あまり価値のないものであった為に、他の人物にも取材したが一切応じてくれなかった

 

 

そこで、出身幼稚園や小学校にも電話で取材を申し込んだのだが、答えは全て『お答え出来ません』の一言だった

 

 

中学校に至っては『お話できる事はありません』の一点張り

 

 

 

 

 

 

 

 

では、彼女の保護をした役所にも取材したが『プライバシーの問題からお答え出来かねます』であった

 

 

 

 

 

 

 

 

仕方なく近所の学生に取材しても「知らね」「知らなーい」ばかり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

んな訳があるか!

 

だがアグネスタキオンの地元では一切の新しい情報を得ることが出来なかったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男は肩を落として、自宅に帰っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理由は簡単である

 

 

タキオンの実家を見た事もない男が撮影しているのを見かけた近所の人間が町内会長に連絡

同時に怪しい人間がウロウロしている事を知り合いに伝えた

 

その話を聞いた1人がわざと取材に応じ、当たり障りのない情報を提供し、名刺を入手

 

フリージャーナリストとの肩書きからタキオン狙いではないかと町内会長に連絡

 

ウロウロしている人物がタキオンのスクープを狙う記者であると判断した彼は町内会の連絡網を使い、町内に伝達

 

更にタキオンの出身幼稚園、小学校、中学校にも連絡したのだ

 

 

各所は迅速に対応し、タキオンの情報を漏らさない様にしたのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自宅に帰った記者はパンチは弱いがスクープであると割り切って、知り合いの会社にこれを持ち込んだ

 

 

 

 

会社側もこれを嬉々として受け取り、彼には多額の報酬が渡された

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、いつまで経っても彼のスクープが紙面に載る事はなかった

 

不思議に思った記者はその会社の知り合いに連絡を入れたが、返ってきた答えに愕然とした

 

「はぁ、その者でしたら先週付けで退職しておりますが」

 

 

 

あり得ない。知り合いは少なくともその会社に10年以上働いていたし、彼からのスクープを幾度も記事にしてきた

 

 

 

しかし、それだけではなかった

 

 

「君の記事はウチでは今後取り扱えない」

 

と宣告を受けたのだ

 

 

彼は何度も理由を問うも、理由はわからずじまいだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当然だが、これにも理由がある

 

確かにトレセン学園からは情報を得ていない

しかし、厳重過ぎる警備体制はウマ娘保護の為であり、ウマ娘と社会の調和の為のテストケースを守る為でもあったのだ

 

 

 

ところが、彼はそれをトレセン学園から情報さえ得なければ良いと解釈してしまったのだ

 

 

トレセン学園側としては学園内と周辺を守るだけで手一杯

政策を主導する人間もそれで良しと考えていた

 

 

 

ところが、アグネスタキオンの地元選出の議員より、アグネスタキオン地元にて取材を行なう記者の存在が報告された

 

 

つまり、穴を見つけた記者がいたのだ

 

 

 

関係者は直ちに対応に追われる事になる

 

何せ前代未聞の試みである

 

 

 

既にシンデレラストーリーとしてウマ娘関係者の間に広まっている。寧ろそれを後押ししたのだ

 

此処で外部からのくだらない介入のせいで2人の生活が脅かされる事に

なれば、ウマ娘側の不信は高まる事は容易に想像がつく

 

 

 

 

しかし、その記者を抑えるのは無理である

 

少なくとも『報道の自由』というものがあるのだ

 

 

多少強引な取材方法としても、違法行為ではない

 

 

 

 

 

 

だが、彼等は『国家』である

 

 

個人を抑えるのは無理だとしても

 

 

 

 

 

 

 

そこで報道各社の上層部に

 

『アグネスタキオンの記事出すなよ?』(意訳)

 

との通告を行なった

 

 

勿論、内部からも異論は出たが

「一時の狂騒の為に、ウマ娘との共生の指標を捨てるかね?」

との意見には逆らえなかった

 

 

 

 

 

 

 

これは記者が自宅に戻って記事を纏めるのに手間取ったから間に合ったといえる

 

もしも、記者が戻ってすぐに自分の記事を売り込んだならば、恐らく今年度最大のスクープだったかも知れない

 

 

だが、タキオンの母親から聞いた話は主観的なものばかりであり、それの補強材料を求めて向かった所でのまさかの空振り

経験豊か故に、憶測を交えた記事がどれだけ後で問題になるか理解していたが為の悲劇ともいえよう

 

 

 

結局、国側の行動が先着し、記事は編集長の所で止められた

 

 

記事を受け入れた担当は会社の上層部に睨まれる事になる

 

スクープは欲しいが、会社を潰すリスクを犯す必要はないのだから。それを受け入れ、記事にしようとした者への目は厳しくなる

 

 

結局担当は自主退職に追い込まれる事になる

 

勿論、今までの会社への貢献に対しては多大な退職金という形で支払われたが

 

 

 

 

そして、元凶である記者に対しては取引停止という処分となったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

この様な顛末を辿る記者はこの時期には珍しくなかったとかなんとか

 

 




そりゃ(必死で隠している宝箱を開けたら)そうなるよ

実のところタキオンと彼氏の生活はかなりギリギリのところで成り立っているという話でもあったり


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 だんす?ボクわかんない

シンボリルドルフを下した剣(ダジャレ)が生徒会に迫る

頑張れ、グルーヴ!負けるなブライアン!


そんな話


トレセン学園での生活にも慣れてきたタキオン。タキオンとの二人暮らしにも慣れてきた彼氏

 

既に季節は移り変わり、みんな大好きゴールデンウィークに近づいて来た

 

 

 

「と言うわけで、何処かへ出かけると言うのはどうだい?」

 

「無理」

 

「即答!?

いやいや、待ってくれ。少しは考える余地はないのかい?」

 

「ない」

 

「また、即答?!

お金が足りないとか?」

 

「仕送りと俺のバイト代

それと秋川、メジロ両家からの寄付金

さて、手をつけるか?」

 

「うん、儚い夢だったね」

 

旅行を提案してくるタキオンも理解したのだろう

現状の俺たちはただの客引きパンダに過ぎない

生活基盤一つ無い俺たちが旅行など許されるはずもなし

 

「人の夢は儚い。そういうこった」

 

「はぁ、確かにねぇ」

 

タキオンの耳と尻尾が力なく垂れ下がる

 

んな顔するなって、俺だってタキオンと何処かに行きたいよ

 

「とりあえず、飯だ

今日はハンバーグだぞ?」

 

「おお!花丸ハンバーグだろうね?」

 

「はいはい」

 

 

 

 

 

花丸ハンバーグとはハンバーグの上に目玉焼きを乗せるだけのシンプルなものだ

 

個人的にはトーストに目玉焼きのせて、ラ〇〇タみたいにして食べたいのだがなぁ

 

 

とはいえ、タキオンのあの喜びようを見たら、俺も合わせた方がいいだろうな

 

内心ため息をついているが、それでも口角が上がるのを自覚していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、ダンスですか?」

 

「肯定っ!来年よりウマ娘達によるレースを行なうのは知っての通り。だが、それのみではインパクトが弱いと言う事でな」

 

此処はトレセン学園理事長室

 

生徒会長のシンボリルドルフと理事長の秋川やよいが話をしていた

 

「理屈は分かります

しかし、それなら専門家の方が宜しいと考えますが?」

 

「無論っ!

実はなぁ、今年の夏にトレセン学園内で行事をして欲しいとの要請があって」

 

理事長もお疲れ気味であった

 

「それとダンスが、どう関係するのですか?」

 

「要請っ!シンデレラストーリーの2人を是非見たいとの事で

それも踊りを見たいと」

 

シンボリルドルフは顔を顰めた

 

「お気持ちは分からなくはありません

しかし、タキオンだけならいざ知らず、彼は名目上部外者では?」

 

「分かってはいるのだがなぁ。どうにも一定以上の年齢にあるウマ娘達からの突き上げが」

 

いつもの喋り方すら出来ないほどに消耗していた

 

「・・・・・分かりました。確約は出来かねますが、可能な限り努力してみます」

 

「すまん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり奴を見世物にするということか」

 

「ブライアン!その言い方は無いだろう」

 

「いや、グルーヴ。ブライアンの言う通りだ

どれだけ言葉を取り繕うとも、タキオンと彼を私達は見世物にしようとしている」

 

理事長室でのやり取りを聞いたブライアンは不愉快そうに吐き捨て、グルーヴはそれに抗議する

 

「では、どうだと言うんだ?エアグルーヴ

奴に説明するとして、どう説明する?」

 

「そ、それは」

 

エアグルーヴも言葉を継げない

 

なんだかんだで会長を通して付き合いのあるタキオンの彼氏。初対面のイメージが未だに消えていないが、だからといって不真面目というわけでも無い

 

エアグルーヴが密かに育てている花壇の種を確保したのは彼なのだから

 

 

だからこそ、彼の嫌うことも分かっている

彼は何よりも『アグネスタキオンを傷つける事』を嫌うのだ

 

 

今回の件、言ってしまえばアグネスタキオンを見世物にする事と同義である

 

果たして受け入れてくれるか?

 

 

 

「仕方ない

私から連絡を入れよう」

 

「いいのか?」

 

「正直なところ、気は進まないさ

最悪、せっかく出来た友人を失うかもしれないな」

 

ブライアンの言葉に力無く答えるルドルフ

 

 

 

 

 

 

シンボリルドルフというウマ娘にとって、アグネスタキオンの彼氏というのは中々表現の難しい相手である

 

友人の彼氏?確かにタキオンの彼氏である以上、間違いではない

友人?当てはまる事も多いが、しっくりこない

恋人?まずあり得ない。彼には相思相愛のアグネスタキオンという相手がいる。ルドルフとしても、彼に異性という感情を抱いた事はない

 

あえて言うならば、理解者だろうか

シンボリルドルフの理想を偶々話したことがあったのだが、彼は「いいねぇ、そういう世の中なら俺もタキオンも楽に過ごせそうだ」と笑って賛成してくれた

 

嬉しかった。子供の戯言とも取れる理想を肯定してくれた事が

 

 

 

 

 

だからこそ、こんな事で彼との繋がりを断ちたくはない

しかし、シンボリルドルフはトレセン学園の生徒会長。誰よりも重い責任を持たなければならないのだ

 

震える手で、ボタンに

 

 

 

 

 

 

「会長。タキオンを通じて奴に連絡しました

多少、揉めそうですがどうにかする。とタキオンが」

 

エアグルーヴの言葉に

 

「あ、ああ。正直助かったよ、グルーヴ

ありがとう」

 

「アンタは1人で背負いすぎだ。私やグルーヴにもっと頼れ」

 

「ブライアンの言う通りです。もっと頼っていただけると嬉しいのですが」

 

シンボリルドルフは自分の椅子に体を預けた

 

 

 

あまりにもキツかった。

ルドルフは2人の気遣いに感謝していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夏にダンスねぇ」

 

「めんどいかい?」

 

「ぶっちゃけるとな」

 

タキオンは友人であるエアグルーヴからのメールの真意を間違う事なく理解していた

 

なるほど、ルドルフ君では辛すぎた、か

 

 

アグネスタキオンとて伊達に彼の幼馴染と恋人をやっていない

そして、小さい時の経験から周りの者達の感情を読み取る能力にも長けていた

 

もっとも、それをうまく活用できない事が多いのであるが

 

 

間違いなくルドルフ君は彼にかなりの信頼を寄せている

そして、ルドルフ君は今までの人生の中で彼の様な人物に出会った事がない。そう自身で言っていた

 

つまり、ルドルフ君にとって、彼に嫌われた場合の対処法は分からないのだろう

 

彼女には一種のカリスマ性がある。彼女に対して大なり小なり敬意を抱く者は多いだろう

 

それ故に彼女に気安く接してくれる相手はいなかったのではないだろうか?

まして、異性ともなれば尚更

 

 

 

だからこそ、彼女は恐怖したのだろうとタキオンは予想する

 

『未知』とは恐ろしいものだ

『失敗』も恐ろしい

 

だが、後者は対処法さえ間違えなければ問題ない。そう『知って』いれば

 

 

この2つが合わさると難易度はとてつもなく上がる

 

知らないのに失敗も出来ないのだ

 

 

 

そして、今回の場合は更に難易度が高かっただろう

 

何せ『時間』がなかったのだから

 

 

 

知らなくても、調べれば良い

失敗するとしても、心構えさえしていれば良い

 

 

 

今回はそれを許されなかった

 

 

 

だから、恐怖したのだろう

 

 

 

 

とりあえず私の恋人を宥めようか

 

 

 

タキオンは彼の説得にかかることとした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、トレセン学園の校庭に生徒会メンバーとタキオンに彼氏の姿があった

 

 

「足労かけてすまない」

 

「校庭にいる皇帝を肯定する」

 

「お前なぁ」

 

「き、貴様っ!」

 

「まさかの三連射とはねぇ」

 

「っ!!っっっっつ!」

 

「よし皇帝討ち取ったりー」

 

「お、おいグルーヴ?」

 

「だ、大丈夫ですっ!」

 

「グルーヴ君、ご愁傷様だ」

 

先制攻撃でシンボリルドルフを討ち取った彼だったが、エアグルーヴも様子がおかしい事に気がついた

 

タキオンは友人の冥福を祈った

 

 

エアグルーヴ

 

耳と尻尾にやや緊張

顔、赤いし、やや緊張

涙目に口元を隠している

 

 

 

彼はとてもよい笑顔をエアグルーヴに向けた

 

 

それこそ、エアグルーヴの見た表情の中では最高の笑顔だった

 

 

 

 

「さて、覚悟はいいかな?

エ ア グ ル ー ヴ?」

 

 

 

 

のちにナリタブライアンは語る

 

「あれは悪魔の笑みだな」と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこに木がある気がする」

 

「や、やめっ!」

 

「頑丈な艦上

蛙は帰る」

 

「っつ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふ、勝利とは何と虚しいものだろうか?

なぁ、ブライアン君?」

 

「お前がそこまで生き生きするのを初めてみたな」

 

「やれやれ。彼と会う時には心の準備は必須だと伝えていただろう?」

 

「どうやら、グルーヴの奴は大丈夫と思っていた様だな

油断大敵だ」

 

うし、帰るか!

 

「待て、どうしてそうなる」

 

「え?説明役のルドルフとエアグルーヴはそこでダウンしてるけど?」

 

「む、それは、そうだが」

 

現在、シンボリルドルフならびエアグルーヴは戦闘不能となっております

 

復活予定時刻は不明となっております

 

 

 

「じゃ」

 

「どうなんだろうなぁ」

 

「いや、確かに、だが」

 

 

1人悩むナリタブライアンを残して彼とタキオンは帰っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、シンボリルドルフからアドレスを聞き出したエアグルーヴが彼の携帯に全五千文字にも及ぶ苦情のメールを送ったのだが、それは別の話

 




感想のかたの方がセンスあってワロリッシュ

そのセンスを下さいな?扇子あげるから


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 甘えるタキオン、甘やかす彼

糖度と純愛が足らない!

補充しないと!


と思ったら方向性が迷子になったZE

まぁ、ノリだけの小説だから、許して?

著しいキャラ崩壊を含みます
最大限の警戒の上でご覧ください


 生徒会メンバーのうち2名をダジャレにより陥落させた彼だったが、今年最大の試練を迎えていた

 

 

 

「起きろータキオンー」

 

「う、うん?あ❤️」

 

タキオンを起こしに来た彼は戦慄した

 

今年もこの時が来てしまったのか、と

 

 

 

 

 

「タキオン、ほら朝ご飯だ」

 

「やだ」

 

「タキオン」

 

「やーだー

たーべーさーせーてー、くーれーよぉー」

 

 

やはり間違いない!

今年も俺の鋼の精神が試される時が来たようだ

 

彼は今日1日が辛い日々になる事を覚悟した

 

 

 

 

 

「ほれ、タキオン

おいでー」

 

「うん♪」

 

ソファーに座る彼の膝の上に座ったタキオン

 

「はい、あーん」

 

「あーん

んっ、おいしい」

 

 

通称『甘えんぼタキオン』

 

アグネスタキオンは普段はそこまでおおっぴらに甘えない

 

だが、何故か一年に一度だけ、目一杯甘えてくる

 

 

食事は彼の膝の上。彼が食べさせないと食べようともしない

 

リビングにいる時は必ず膝の上

キッチンにいる時は彼の背中にくっついてる

 

トイレの時もドアの向こう側にいないと拗ねる

 

お風呂も一緒じゃないと入らない

 

寝る時も一緒の布団

 

 

 

外出時は何も持っていないなら、お姫様抱っこ

持っている時はおんぶ

 

 

 

正に彼の男としての本能に全力で挑戦してくるのだ

勿論のこと、彼はタキオンとうまぴょいするのは早いと思っているので、必死に抑えなければならない

 

 

 

 

今日がGW(ゴルシウィークではない)

である事がせめてもの救いであった

 

 

 

この日は誰であろうとも会う気にはならない

 

地元ではこの日を『タキオンの日』とし、近所のおじさんやおばさんは勿論の事、お爺さんやお婆さんまで積極的に協力してくれる

 

だが、彼にしてみれば生殺しの上に公開処刑でもある

 

え?じゃあ嫌かって?

 

んな訳ないでしょ、可愛い彼女が甘えてくれるんだからね

 

 

 

 

 

 

という事で、彼にとっての苦難?の1日が始まった

 

 

 

 

 

「はい、タキオン口開けてー」

 

「あーーー」

 

シャコシャカ

 

 

 

歯磨きも

 

 

 

 

「はい、タキオンばんざーい」

 

「んーーーー」

 

着替えも

 

 

 

 

 

 

「タキオン、おいで」

 

「うん」

 

「というか、この時だけは耳かきさせるんだよなぁ」

 

「???」

 

「何でもない。はーい、動くなよー」

 

 

耳掃除も

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日はごろごろするかぁー」

 

「うんっ!」

 

お昼寝も

 

 

 

 

 

 

 

「んーー」

 

「はいはい、頭撫でるのな?」

 

「♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このままの時間が過ぎれば問題ない

そう彼は思った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピンホーン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はいはい、どちら様ですかねっと

 

 

「はいはい」

 

「ごめんください、メジロマックイーンです」

 

「マックイーンさん、どうされました?」

 

「いえ、実は先日ゴールドシップがご迷惑をおかけしましたので、お詫びに、と」

 

インターホンの先のマックイーンさん

 

 

終わった

 

彼は素直にそう思った

 

 

 

此処でマックイーンさんに帰ってもらう?あり得ない

 

失礼の極み

 

 

 

では上がってもらう?

 

タキオンと俺のイメージが死ぬ

 

 

 

 

 

 

ん?別に問題無くね?

 

寧ろタキオンの可愛さを広げるチャンスでは?(タキオン推進過激派筆頭)

 

 

 

 

 

 

「では、鍵開けますんでどうぞー」

 

「ではお邪魔しますわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メジロマックイーンは語る

 

 

タキオンさんと1ヶ月程付き合ってきましたがまだ、知らない事が多かった。と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メジロマックイーンは目の前の光景が信じられなかった

 

 

 

 

「いらっしゃい」

 

「んー」

 

 

え、タキオンさん。貴女そんなキャラクターでしたかしら。違いますわよね、貴女はもっとしっかりしておられたと思うのですが?ではタキオンさんのそっくりさん?あり得ませんわ。彼がタキオンさん以外に此処まで密着を許すはずありませんものね。え、ではタキオンさん本人?この彼の膝の上で甘えている彼女が?そうなんですの?え、今日はナイターでしたわよね。今日こそは勝てると良いのですけれど。嗚呼空は青いですわね

 

 

一部ノイズが混入していたものの、淑女たるメジロ家のウマ娘

 

この程度で動揺などしてはなりません、ええ、なりませんとも!

 

 

「ず、随分とタキオンさん可愛らしいですわね」

 

「おいおい、マックイーンさん。それは違うって

タキオンはいつだって可愛いもんなー」

 

「嬉しい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はっ!

 

一瞬、意識がとびました

 

息をするように惚気る!

こ、これが『現代のシンデレラ』の本領という訳ですわね!

 

 

負けていられませんわよ!マックイーン!

 

『いや、お前彼氏居ないのに勝てる訳ないだろ?』

 

何やらゴールドシップさんの声が聞こえた様な気がしますが、気のせいですわね!

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫?マックイーンさん」

 

「問題ありませんわ!ばっちこいですわよ!」

 

「え?マックイーンさんってお嬢様、何だよね?」

 

「あら?お嬢様といっても色々ありましたよ?」

 

「そっかぁ」

 

「ん〜♪」

 

「ところで、タキオンさんはどうなさったのでしょうか?」

 

「ん、ああ。一年に一度のレアなタキオン『甘えんぼタキオン』」

 

「どういう事ですの?」

 

おかしいですわね、この方もっと話が通じると思っていたのですが

 

 

「ちなみに地元では『タキオンの日』って呼ばれてた」

 

「地元公認ですの!?」

 

 

 

ああ、ですが

こんなに無防備で彼に甘えるタキオンさんも新鮮ですわね

 

 

 

 

 

はっ!

い、いけませんわよ。マックイーン

 

たとえ同性の方で魅力的だったとしても、殿方のいるタキオンさんですのよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マックイーン。良い話があるんだが?」

 

 

 

この時私は思いましたわ、彼は

 

そう彼はっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これ、去年の涙目のタキオンの写真」

 

「言い値で買いますわ」

 

ごめんなさい。タキオンさんっ!

 

 

わたしは悪魔(タキオンの彼氏)に魂を売ってしまいましたの!

 

 

 

 

「ふふふ、俺の目的は一つ

タキオンの可愛さを広める事だー!

 

 

 

な、何て

 

何て恐ろしい事をっ!

 

 

この様な企み、今ここで食い止めなければっ!

 

マックイーン、しっかりなさい!

 

「あ、貴方は良いんですの?」

 

「ん?何が?」

 

「有象無象がタキオンさんに集まりますわよ!」

 

「分かってない、分かってないよ

マックイーンさん。

タキオンが可愛い。当然、群がる有象無象もいる

だからこそ、貴女の力が必要なのですよ?

メジロマックイーンさん?」

 

いつにもない迫力!

こ、これが生徒会の女傑たちを倒した彼の本当の姿!(生徒会メンバーに対する熱い風評被害)

 

「な、何をわたくしに求めるつもりなのですかる」

 

「勿論

『アグネスタキオンを愛でる会』その会長!!

 

全身全霊手伝わせていただきますわ!

 

 

ごめんなさい、タキオンさん!

ですが、ですがっ!

 

涙目のタキオンさんの写真には勝てませんでしたの

 

 

 

 

その日私は一つ学びました

 

たとえ何であろうと、美しいものは美しいと!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、その日より様子が少しおかしくなったマックイーンにゴールドシップが優しくなったのは余談である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、『アグネスタキオンを愛でる会』という謎の組織がトレセン学園内に現れる事になる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アグネスタキオンを愛でる会

 

 

発足時

 

 

会長

 

メジロマックイーン

 

 

副会長

 

ナリタブライアン

 

 

 

特別顧問

 

秋川やよい

駿川たづな

 

 

名誉顧問

 

アグネスタキオンの彼氏

 

 

外部協力

 

〇〇町、町内会一同(彼とタキオンの地元)

〇〇小学校PTA(同上)

 

 

 

 

 

余談1

 

 

メジロマックイーンは悩んでいた。布教活動は順調だった

だが、学園内におけるサークル活動は生徒会メンバーと理事長の許可が必要

 

しかし、マックイーンが生徒会メンバーと特別親しい訳ではなかった

 

 

「おい、マックイーン」

 

「あら?ブライアンさん何か御用ですの?」

 

ナリタブライアンが話しかけてきたのだが、どうにも様子がおかしい

 

周囲を見回している

 

「お前がとあるサークル活動の勧誘をしていると耳にした」

 

あ、コレあかんやつですわ

マックイーンが頭を内心で抱えていると

 

???

 

「て、手伝って、やっても、良い」

 

そこには恥ずかしそうに視線を逸らすナリタブライアンがいた

 

 

勝機ですわ!

 

マックイーンは彼から預かったものをブライアンに見せた

 

 

「お、おおっ!」

 

明らかにブライアンの目が輝いた

 

「協力して下さるのであれば、名誉顧問に頼んで用意して貰いますわよ?」

 

「任せろ」

 

見事なまでの即答であった

 

 

大丈夫なのでしょうね、この人は

マックイーンは自身の学園に不安を覚えた

 

 

もしも彼がいたなら、こう言うだろう

 

「斬新な自己紹介だな」と

 

 

 

 

 

 

余談2

 

「歓迎っ!」

 

「理事長、実はあるサークル活動を許可して貰いたいのですが」

 

「では、書類を提出してください」

 

「こちらですわ」

 

書類に軽く目を通したたづなは理事長にも書類を見せ

 

「要請っ!」

 

「何か?」

 

「私たちをサークルに加えて頂けたら、と」

 

「大丈夫なのか、この学園は」

 

「先程のご自分を振り返って見て下さいな」

 

サークル活動に加わりたいと言い出す理事長とその秘書

その光景にブライアンはつい不安を口にするが、マックイーンはすかさずツッコミを入れた

 

彼が居たならば

「もうダメかも分からんな」

 

という事うけあいである

 

 

 

 

 

こんな組織だが

のちに会員数500人を超える組織となり、多数の下部組織まで擁するに至るが、それはまた後々のお話




というわけでトレセン学園公認(本人非公認、後に公認)のサークルができましたー

この小説ではメジロの方々も弾けます

そりゃ、ゴルシの血筋だからね、仕方ない


しかし、まだ5月
後2年以上あるのだが(震え声)


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 来訪者

みんな大好き温泉トレーナーの登場です

東条トレーナーは未『とうじょう』


いつも以上にキャラ崩壊してるけど、許して許して


桐生院葵は困っていた

 

 

恐らくは人生で五指に入るほどのピンチだろう

 

 

 

 

まず、携帯を実家に忘れた

 

今日という日を楽しみにしていた為か、昨日はあまり寝付けなかった

お手伝いさんに起こされて、慌てて出てきたからだろう

 

 

 

更に地図も持ってない

 

まさか携帯を忘れるなんて誰も思わなかっただろう。だからこそ、地図を持って行かずとも、問題無いと思われたとて不思議ではない

 

 

 

 

 

そして、桐生院葵は所謂箱入り娘というものである

 

何処へ行くのにも必ず誰かが同行していたし、送迎もされていた

 

 

 

 

だが、今回は来年からトレーナーとして働くかもしれないからと、家族やミークを説得して電車で目的地に行くことにした

 

 

現在、トレセン学園ではトレーナーの為の寮を建設中であり、葵もそこへと入寮する予定であった

 

となれば、いつまでも家を頼ってられない

 

葵とて大学を出た立派な大人なのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう意気込んで、トレセン学園の最寄駅まで来たものの、彼女はトレセン学園の詳細な場所が分からない

 

 

トレセン学園程大きい施設ならば、バスがあるんじゃない?

 

そう思われる方もおられるかも知れない

 

 

 

しかし、仮にバスを出すとすれば外部から通勤する者達で溢れかえるのは容易に想像がつく

 

では、トレセン学園直通のシャトルバスにすれば良いかというと、それは非常に難しい

 

何故ならば、シャトルバスという事は乗り込む者がトレセン学園関係者と周囲に宣言している様なもの

 

 

となれば、トレセン学園周辺から排除した報道関係者が今度はシャトルバスのバス停付近に群がるのは容易に想像できる

 

 

 

そもそもトレセン学園や警察、政府がマスコミに対して過剰ともとれる対応をしたのは、勿論ウマ娘たちの安全の為であるのは間違いない。だが、それともう一つ『周辺住民への配慮』という面も含まれていた

 

トレセン学園は広大な敷地を持つ

そして、将来的にはウマ娘たちによるレースの為に日夜トレーニングに励む場所になる

 

 

そう、『日夜』なのだ

 

勿論、深夜にトレーニングはさせないつもりだが、それでも熱心なウマ娘の中にはギリギリまでトレーニングしたいと言うものもいるだろう

 

 

 

となれば、照明は必要になる

 

トレーニングしていて、怪我などとなれば一大事だから

 

 

そして、基本的に負けず嫌いであるウマ娘ならば1人や2人程度で収まるとは思えない

 

 

そうなってくると、大規模な照明を使用するのが望ましい

 

 

だが、トレセン学園は土地買収の事情により、周辺に住宅地がある

 

 

これはトレセン学園という施設が出来ることに伴う様々な需要の増加を見込んで出来たものでもあった

 

 

 

 

 

 

 

 

トレセン学園はその用途より広大な敷地を有している

 

 

となれば、その建設期間もそれ相応の時間を要した

 

基礎工事とて、一般的な住宅でも一日や二日で終わるものではない

 

掘削、残土搬出、型枠形成、型枠の為の基礎路盤の構成等、様々な作業を必要とした

 

 

 

 

 

元々存在する建物の流用も当初は検討されたが、トレセン学園は特殊な用途の施設であり、併設する設備もまた多岐に渡る

 

 

ウマ娘のスピード強化の為の長距離のレーストラック

スタミナ強化用の屋内プール

パワー強化のトレーニングジム

根性用の坂路

ダート訓練用のダート

 

トレセン学園の生徒の為の食堂

生徒の健康管理の保健棟

 

 

ウマ娘の数が数である為に、保健室で無く保健専用の棟を用意しなければならないことになったのだが

 

 

 

これだけ多様な施設を内包するものがあるはずもない

 

 

となると、既存の建造物の解体から始まるのは道理である

 

 

 

 

 

 

解体と簡単に聞こえるかも知れないが、境界面での養生、それに伴う外部足場の設置

 

解体用の重機の搬入、建物の調査。主に石綿の有無は解体方法が変わる為に最優先で行なわれる

 

有無の確認であった場合には専門の業者へと撤去の依頼。それに並行して内装の解体

 

それが終わってから、漸く建物の解体が出来るのだ

 

多数の重機による解体

それに伴う粉塵拡散防止のための散水

 

建物を下げると共に外部足場、養生の撤去

 

解体したコンクリートガラとそれ以外の仕分け

ガラの搬出

 

建物は出ている部分だけでは無いため、地中の基礎の掘り起こしと破砕

 

 

これに現場状況報告用の写真撮影

 

 

 

解体終了後は整地

 

 

 

 

 

軽く挙げたが、これだけの作業を解体するには必要とするのだ

 

 

 

 

 

 

 

早くても1ヶ月。長ければ一年かかることもある(あくまでも作者の経験によるので、正確なものではない)

 

 

その上で前述の基礎工事

 

更に建物本体の建設となれば年単位の大型プロジェクトになる

 

 

 

 

 

 

 

 

では、すぐそばでそんな大型プロジェクトが進行していて、他の空き地を不動産会社等が放置するか?

 

するわけがない

 

大勢のウマ娘が生活する施設

 

そこに伴う需要の大きさは想像を絶する事になるのは容易に想像できる

 

 

 

そして、その施設は広大さから完成は遅い

 

 

ならば、それに先行して建物を造ろうというのは不思議ではない

 

一戸建て住宅レベルならば、作るだけなら半年もいらないのだから。勿論工法により差がある事をここで明言させていただく

 

 

 

 

そして、大型のスーパーや中規模の商業施設が出来れば、その周りにもまた需要が生まれる

 

 

 

 

つまり、建設当初こそ周辺にそこまで住宅が存在しなかったトレセン学園であるが、正式稼働する頃には立派な住宅地が出来ていたのだ

 

 

 

 

 

これにはトレセン学園のプロジェクトに関わってきた者達も頭を抱えた

 

ウマ娘の為の施設だったが、周辺住民への配慮も必要になってきたからである

 

一応は住民もウマ娘の教育施設という事は事前に周知されていた。だからといって住民感情を無視する訳にもいかなかった

 

 

その為、トラブルの元にもなりかねないマスコミの学園周辺からの排除は優先すべき課題だったのだ

 

たとえ、それが多少の生け贄を必要になろうとも

 

 

 

言ってしまえば、トレセン学園は最早ウマ娘関係者だけに影響を与えるものでなくなってしまっていたのだ

 

 

そりゃ、政府も強行策の一つや二つ取りたくもなるだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じことはシャトルバスを運用した場合の駅前バス停でも懸念されたのだ

 

駅前である

 

そんなところでマスコミが大勢居座ったら?

 

通勤の邪魔である

生活にも影響が出るだろう

取材攻勢をしようものなら、間違いなく不満が噴出する

 

 

 

そして、その矛先はマスコミとトレセン学園に向かうだろう

 

 

 

どれだけトレセン学園がマスコミに要請しようとも、実例のある通りに彼等は『スクープ』の為ならば、穴を見つけるだろう。強引な手段に出てくるかも知れない

 

 

そうなった場合、鎮静化は困難を極めるだろう

 

 

対応に追われている時にも不満は蓄積する

 

 

 

そして、いつかは爆発するだろう

 

いや、爆発するならば『まだマシ』だろう

 

 

爆発しなければ、トレセン学園、ひいてはウマ娘に対する感情が悪化する公算は高い

 

 

 

 

一度根付いた感情を払拭するのは容易ではないし、払拭するのにも長大な時間を要する事になるだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

故にトレセン学園へのバスの設置は見送られたのだ

 

 

 

 

 

 

それにより葵は途方に暮れているわけだが

 

 

 

人に聞けば良い。そう思われるかも知れないだろう

 

 

普通ならそれが正しい

 

 

しかし、トレセン学園周辺からマスコミは排除された

マスコミ各社の上層部には警告がなされた

 

 

だが、それでも諦めない『悪い意味での』記者というものは一定数存在していた

 

 

彼等の中には最寄駅に待機している者もいるだろう

 

 

 

だから迂闊にトレセン学園への道を聞くことも出来ない

彼等は耳と勘が良く、それこそそれだけで見ればウマ娘に匹敵しうる者もいるのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実家に電話するのが一番である

 

 

だが、箱入り娘である葵は『公衆電話』というものを知らなかった

 

 

 

ミーク曰く「・・・・・箱入り娘でなく、ただのポンコツでは?」との事であったが、ある意味では間違っていないだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

このまま、家に帰るのか!

いい歳をした者が迷子になったと自白するのか!

 

どうする!桐生院葵!

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、

 

 

 

 

 

 

「こんちは

桐生院葵さんすよね?

 

「え?」

 

 

 

 

声をかけられた葵が振り向くと

 

 

「ども」

 

悪戯っぽい笑みを浮かべた少年がいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時を少し巻き戻す

 

 

 

 

葵が出て行って少し経った桐生院家では大騒ぎになっていた

 

 

「あの、ポンコツ娘がっ!」

 

ハッピーミークは激怒した。必ずやあの無知蒙昧な箱入り娘をどうにかせねばならないと改めて決意した

 

 

そもそもハッピーミークは桐生院家の教えを受けたウマ娘であり、来年トレセン学園に入学するウマ娘だ

 

 

だが、担当トレーナーとなる桐生院葵はトレーナーとしての能力はともかく、他が壊滅的だった

 

物を忘れるのは当たり前

道に迷う。訳の分からない物を買ってくる

何もない所でこける

 

 

トレーナーモードでない桐生院葵はハッピーミークが世話していると言っても過言でなかった

 

 

どちらがトレーナーか最早わからない

 

 

 

だが、何故か無駄に行動的な上に勢いで動き回る。今年で21になったとは思えない程に私生活での葵は頼りなかった

 

 

 

ミークは目の前にある葵の携帯を見て察した

 

『あのバカ、忘れて行ったな?』

 

 

 

ミークは不機嫌そうに葵の父親の部屋に向かった

 

あんなでもトレーナーだからなぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミークより話を聞いた父親はトレセン学園の秋川理事長に連絡を取り、娘は駅で立ち往生しているだろうから、どうにかしてほしいと頼み込んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

秋川やよいは困った

そりゃそうだ。来年トレセン学園にトレーナーとして来る者が迷子になったなど笑い事にもならない

 

駅にいるとの事らしいが、仕方ないので了承する

 

桐生院とてスポンサーだから

 

 

 

 

 

だが、いざ迎えを出そうとしても適任者がいない事に気がついて頭を抱える事になる

 

やよいとたづなは顔が売れているから、無理

ウマ娘?ウマ娘と歩いている者に奴等が食いつかない筈がない、却下

 

他の職員?

トレセン学園のサイトに情報載せてるから無理

 

 

 

 

トレセン学園は情報規制の対価として、トレセン学園職員の情報のみサイトに掲載していた

 

流石にアグネスタキオンの件で無茶をしたと反省している政府からの要請だった

 

やよいも全く餌を与えないなら早晩暴発しかねないとして、職員に通達した後に掲載に踏み切った

 

 

 

 

だが、これではトレセン学園関係者から迎えが出せない事になる

流石にそれは色々とマズイ

 

 

頭を抱えていたやよいにあるサークルの事が浮かぶ

 

 

 

 

 

情けないとは思うが、名誉顧問に頼む事にした

 

ついでに新しいタキオンの写真も欲しいと思っていた

 

 

 

 

 

 

 

だが、顧問への連絡手段は会長であるマックイーンからのみ

 

会長を呼び出そうかと考えていると

 

「理事長、失礼します

シンボリルドルフです」

 

別の会長が来た

 

 

 

 

用件は直ぐに終わった

 

ふと思った

 

「質問っ!」

 

「?何でしょうか?」

 

「アグネスタキオンの彼氏の連絡先を知っているか?」

 

恐る恐るたずねる

 

「ええ、何かあった際の為に」

 

 

 

 

 

そこでめちゃくちゃ頼み込んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンボリルドルフは頭を抱えた

 

 

だから彼はトレセン学園の人間ではないのだがなぁ

 

ため息が出る

 

 

 

仕方ないので電話する事にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、突然すまない

 

実は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わかった。色々と迷惑をかけるな

礼は不要?ふふっ、ありがとう

では通用門で待っているよ

 

 

 

 

 

 

シンボリルドルフは電話を切ると通用門に向かった

 

 

その時の彼女の尻尾と耳はご機嫌そうになっていたと目撃したウマ娘は話す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よ」

 

「やぁ」

 

簡潔な挨拶

普段のシンボリルドルフならば決してしない事である

 

しかし彼女も彼も気にしない

 

 

 

 

 

「はーん、二十歳超えてんのに、何てぇか頼りないねぇ」

 

「うーん、そこは明言しないでおこうかな?」

 

「それ、言ってるも同じだろ?」

 

「さて、どうだろうね」

 

ルドルフは柔らかい笑みを浮かべた

 

「しっかしなぁ、生徒会長ってのは便利屋かなんかなの?」

 

「ある意味ではそうかもしれないね」

 

「はーん?ご苦労様なこって

あんま、無理すんなよー」

 

彼はそう言うと、ルドルフの肩を軽く叩いて通用門から出ていく

その手にルドルフから渡された桐生院葵の写真を持ったままで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無理するな、か」

 

シンボリルドルフは彼が叩いた肩を優しく撫でる

まるで愛おしい何かを愛でるかのように

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は桐生院葵と彼の出会った時に戻る

 

 

「あの、貴方は?」

 

明らかに自分よりも年下と思える相手。しかも葵は見たこともない

困惑するのも当たり前だった

 

「・・・・・」

 

彼は無言で紙を差し出した

 

 

 

 

 

 

 

桐生院葵さん

 

 

ボクは桐生院家から貴女の迎えを要請されたトレセン学園から派遣された者です

 

 

 

 

 

追伸

 

ハッピーミーク、激おこ

 

 

 

 

 

 

 

 

と書いてあった

 

 

 

葵は顔を青くした

 

 

携帯を忘れて行ったのがバレたのだと察したのだ

 

 

 

 

彼の後をついていく葵だった

 

 

 

 

 

 

 

なお

 

(葵の顔色が『あおい』。微妙)

 

と彼は平常運転だった

 

 

 

 

 

 

 

通用門で少しトラブルになった

 

 

「え?トレセン学園発行の証明書は?」

 

「あ、はい、すいません!」

 

トレセン学園内に入校する際には学生証、職員証が必要である

臨時の場合にはトレセン学園発行の証明書が必須であった

 

彼の場合はトレセン学園理事長直筆の書類にトレセン学園生徒会発行の書類。若しくはトレセン学園関係者同伴が求められる

 

彼を特別優遇していると非難される事がない為の措置であった

 

 

ところが、葵はその証明書を涙目になって探している

 

 

 

 

 

 

 

 

(おーい、社会人〜)

 

彼の葵に向ける視線が冷たくなったとしても、誰も責めることは出来ないだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桐生院葵は泣きたかった

 

 

トレセン学園に着いたのは良いが道中、年下の少年は明らかに不機嫌そのものだった(マスコミ関係者が道中張り込んでいたから)

会話一つなかった(話をすれば、食いついて来るのが周りにいたから)

 

とどめに入校の為の証明書がカバンの中にある筈なのに出てこない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

警備員は彼に気の毒そうな視線を送った

 

 

何せ明らかにトレセン学園の用事で振り回されているのが、第三者から見ても分かるから

 

必死で書類を探す女性に、段々表情が死んでいく少年

 

気の毒である。相方に視線を向けるとやはり彼女もそうらしい

 

 

だが、トレセン学園は出来たばかりだ。勝手な判断は許されない

 

 

 

(坊主、すまねぇ)

 

彼は力になれない自分に腹が立った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうすぐ着きます」

 

「うん」

 

ハッピーミークは激怒していた

何と葵はトレセン学園に入校する為の書類すら忘れて行ったのである

 

 

「慣れないオシャレなんかするから」

 

自宅ではジャージやフリースといった格好で動き回る葵である

 

書類なんかもバインダーに入れてそのまま持ち歩くのが常だった

 

 

ところが、今日トレセン学園に行く前日はきちんとミークも用意を手伝ったにも関わらず、鞄を変更した

 

それは別に良いだろう。寧ろ歓迎すべき事だ

 

ミークの怒りが少し落ち着いてから葵の部屋を掃除していると、用意した鞄があった

 

明らかに中身が減っていたので、彼女が別の鞄に入れ替えたのだとすぐわかった

 

 

非常に良い兆候だ

ミークはそう思っていた

 

 

 

 

しかし、何となく鞄の中を見てみると

 

明らかにあってはならない筈の封筒が残っていた

 

 

 

 

 

 

いや、まさか、流石に

 

ミークの中で否定の言葉が乱舞した

 

 

だが

 

 

待て、いや、やりかねない、寧ろやる、それが桐生院葵

 

といったしてはならない筈の肯定の言葉が否定の言葉を駆逐した

 

 

 

 

 

 

頼むから、思い違いであってくれ

 

ミークはそう願いながら、封筒を開けた

 

 

 

 

 

 

 

トレセン学園入校証明書

 

 

 

 

この文字が見えた時点でミークは封筒に書類を戻した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「車、出して」

 

ミークの抑揚のない声が虚しく響いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

車を選んだのは、電車で行った場合、駅前でウマ娘であるミークは非常に目立つからだ

 

折角トレセン学園に混乱させないようにお願いしたのに、ミークがそれを無駄にしてはならないと判断した

 

その位の冷静さは残っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのポンコツどうしてくれようかっ!」

 

 

ハッピーミークの歴代最大となるであろう怒気は隠しきれなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

運転する家政婦は祈る

 

 

 

 

せめてトレセン学園では何もない事を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、いつまでかかるの?」

 

少年が声をかけてきた

 

そこには隠しきれない失望の念があった

 

 

「す、すいません、すいませんっ!」

 

葵も鞄の中に無いのは理解していた

 

 

 

 

では、どうする?

 

電話する?携帯がない

 

おとなしく帰る?道がわからない

 

 

 

堂々巡りであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこに

 

 

 

 

「ばか」

 

彼女の相棒の姿があった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハッピーミークは葵に書類を渡したが、明らかに好意的でない雰囲気にため息が出た

 

 

事の些細は車の中で葵の父親から聞いた

 

トレセン学園側としても葵の迎えを出すのに苦慮していた事

なんとか生徒会長の個人的な誼を通じて迎えを出せた事を

 

 

 

ところがそこまでして迎えに行った葵がまさかの書類不所持

 

 

これで怒らない筈がない

 

 

ミークなら怒る

間違いなく

 

 

 

 

目の前の少年は感情を完全に消した顔をしている

 

 

初対面のミークでも分かる

 

 

 

 

これはヤバいと

 

 

 

 

 

 

 

だが、何もしない訳にもいかない

 

 

 

 

「私はハッピーミーク。葵の家のウマ娘

今回は葵がご迷惑をかけて、ごめんなさい」

 

頭を素直に下げる

 

 

 

実はミークとてそこまで対人スキルは高くない

言葉足らずは百も承知だ

 

それでも謝らない選択肢はない

 

 

 

「ま、良いっすけど」

 

それだけだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレセン学園内を歩く桐生院葵とハッピーミーク

 

それを先導するのは少年だった

 

 

 

「・・・・・」

 

無言である

 

葵は色々と聞きたそうな顔をしているが、ミークが腕を掴んで止めた

 

 

 

ミーク自身も色々と疑問がある

 

何故トレセン学園校内に普通に入れる?

何故迷いなく歩いている?

何故周りに興味を持たないのか?

 

すぐそばではウマ娘達がトレーニングに励んでいる

時折、少年に頭を下げるウマ娘もいる

 

 

訳が分からなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「会長ー、入るぞー」

 

そう言って彼は無造作に扉を開けた

 

部屋の名前は『生徒会室』なのだが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンボリルドルフ、ナリタブライアン、エアグルーヴは目を疑った

 

 

入室してきた彼は彼女達から見て明らかに激怒していたからだ

 

 

 

『何をやった!』

思わず彼と一緒に入室してきたウマ娘と女性を内心責めたとしても、許される筈

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アグネスタキオンは校庭のベンチでマックイーンとオグリキャップ、タマモクロスののんびりしていた

 

「ゴールデンウィークの合間の授業はしんどいなぁー」

 

「そうですわね。ですが、研鑽を積まねばならない身としてはありがたいですわ」

 

「そうだな。タマの言うことも分かるが、私は授業があった方がいいな」

 

「いやいや、オグリ君。君は放課後の料理研究会の試食がしたいだけじゃないのかい?」

 

「さて、どうだろうな?」

 

「それ答えてるやろ!」

 

女3人よれば姦しい。とは良く言ったものである

 

 

「かい、いえ、マックイーンさん」

 

「あら、スズカさん。どうされましたの?」

 

そこにサイレンススズカがやって来た

 

「実はさっきこも、いえタキオンさんの彼氏を見かけたもので」

 

「ほぅ?

彼が此処に来ているのかい、スズカ君」

 

「ええ、先程見かけましたので」

 

「ほな、探してみるか?」

 

「うん。手伝おう」

 

「オグリキャップさんは、彼のクッキーが欲しいだけでは?」

 

「ははは

彼のデザートも美味しいからね、分かるとも!オグリ君」

 

「では私もお手伝いしますね」

 

こうして

『タキオンの彼氏を見つける』緊急クエストが始まった

 

 

報酬はタキオンの笑顔と彼特製のクッキーである

 

 

 

 

マックイーン、タマモクロス、オグリキャップにサイレンススズカ。アグネスタキオンは彼を探すべくベンチを後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、かいいえマックイーンさん

向こうに行きましたよ!」

 

「ありがとうございます」

 

「しかし凄いね、マックイーン君

さっきから沢山のウマ娘から彼の行き先を教えて貰っているが」

 

「ええ、まぁ」(言えませんわ!会員に彼の行方を見つける様にメールを一斉送信したなんて!)

 

 

 

現在はアグネスタキオン非公認組織である『アグネスタキオンを愛でる会』は入学式直後の講演会等の影響も手伝って爆発的な拡大を見せている。特に学園トップである理事長と駿川秘書、生徒会のナリタブライアン副会長の参加は大きかった

 

これにより、タキオンの目を逃れての広報活動も活性化した結果、結成より僅か数日でマックイーンの予想を遥かに超える勢いで大きくなっていた

 

だが、参加するものは鋼の掟たる『アグネスタキオンと彼を見守る』(名誉顧問未承認)を何よりも守る淑女であり、鋼の如き結束力を有していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや?」

 

「いましたわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたんだい?」

 

「うおっ、タキオンか」

 

突然後ろから抱きついて来たアグネスタキオンに彼は動揺した

 

「おや?何やら不機嫌そうだね?」

 

「別に」

 

「隠さなくてもいいさ

ふむ、そうだ!あっちへ行こう!」

 

タキオンは何かを思い付いたのか、彼の腕を引っ張って行った

 

 

 

 

 

 

「尊みが過ぎますわね!」

 

「ああ、ありゃかなわんわ」

 

「うん、羨ましいな、あれは」

 

「ええ、本当に」

 

近くの物陰から2人を見つめるマックイーン、タマモクロス、オグリキャップにサイレンススズカであった

 

 

 

 

 

 

 

その先には

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「タキオン、恥ずかしいんだが?」

 

「おやおや、いいじゃないか

私と君はトレセン学園公認の仲だろう?」

 

アグネスタキオンに膝枕されて、照れている彼の姿があった

 

彼は仰向けに、タキオンは嬉しそうに彼を見下ろしていた

 

 

「おい、節度はどこいった?」

 

「さぁてね?

君の好きな漫画で言うなら『休暇を取ってベガスにでも行っている』んじゃないかな?」

 

「そっか、なら仕方ないな」

 

「そうだとも、仕方ないのさ」

 

タキオンと彼は顔を見合わせて笑った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「写真を撮りたいですわ!永久保存間違い無いですわよ!」

 

「落ち着きぃ、マックイーン!

気持ちは分かるけどな!あかんで!」

 

「む、カメラか」

 

「私、無音カメラあるので撮っておきます?」

 

「そうだな、その方が顧問も喜ぶだろうし」

 

「ちょい、待ちや!なんでスズカは無音カメラなんて持ってんねや!」

 

「それは」

 

「なるほど、サイレンススズカだけにか?」

 

「ええ♪」

 

「スズカさん!会長権限で撮影を許可しますわ!

オグリキャップさんはタマモクロスさんを押さえなさい!」

 

「はい、わかりました♪」

 

「了解だよ、会長」

 

「待ちぃ、オグリ!スズカもやめんかい!

マックイーン何でそんなに満足そうなんや!

あかん!ツッコミが追いつかへん!」

 

 

 

 

 

 

というやり取りがあったとさ

 

 




切りどころがなかったので長くなった

皆様、アンケート協力ありがとうございます

おかげさまでお気に入り登録百件を超えました



信じられるか、まだこれ投稿始めて1週間経ってないんやぞ

投稿したから、投降します

オサラバッ!


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 シンボリルドルフ

先に謝っておきます

ごめんなさい!
こんな事をするつもりはなかったんです!

でも何故か筆がのったので書いてしまいました!

会長ファンの方、特にごめんなさい

苦情、批評、非難
如何なるものもキチンと受け止める次第です!


シンボリルドルフは生徒会長である

 

トレセン学園における生徒会の役割は多岐に渡る

 

 

対外的な行事、トレセン学園内での行事の企画、運営

 

日常生活におけるトラブル、問題の早期発見、早期解決

 

理事長への要望の提出

 

 

これに加えて外部からの人物に対しての審査も行なっている

 

 

 

これはトレセン学園校内に関係者以外を入れた際に問題となる可能性を少しでも下げるために行なわれている

 

 

 

生徒から見れば、理事長が許可したよりも生徒会が認めた者、その方が心理的抵抗は少ないという理事長の判断である

 

更にトレセン学園寮のフジキセキとヒシアマゾンとの打ち合わせ

 

 

現在建設中のトレセン学園トレーナー寮についても生徒会の権限内であった

 

 

勿論、生徒会として解決できない問題なら理事長に報告するが、基本的には生徒の生活に影響が出るために生徒会が処理していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「工事時間の延長、ですか」

 

「ええ、大変申し訳ないのですが」

 

トレセン学園の昼休憩に現場責任者が訪ねて来た

無論の事だが、事前連絡はもらっている

 

「しかし、契約では工事は18時まで、と」

 

「仰る通りです。こちらとしては申し訳ないとしか申し上げられないのですが」

 

「どの様な理由が?」

 

工事の現場責任者は気まずそうに口を開く

 

「本日の作業は4Fの壁のコンクリート打設なのですが、ミキサー車の一台が渋滞に巻き込まれたとの事でして、現在調整しているのですが、このままだと間に合わない可能性があるのです」

 

「なるほど」

 

 

基本的に打つ数量に応じてミキサー車の台数を決めるのだが、生コンのプラントとの距離に応じてミキサー車の数は増減する

 

近いのであれば、回転数は早くなるので少ない台数でも回る

遠いのであれば、回転数は遅くなるから台数を増やす

 

そして、打設の数量は大まかには算出出来るために、それに応じて担当がミキサー車やポンプ車の数を決める

 

ポンプ車一台に対して同時に接続できるミキサー車は最大で2台。そしてミキサー車一台にどのくらいの時間がかかるかを計算し、そこから終了予定時刻を算出する

 

時間が足りなければポンプ車を増やすなどの対応をするのだ

 

 

 

今回の場合はプラントが近いためにミキサー車を少ない数を手配したが、そのうちの一台が事故渋滞に引っかかったとのことであった

 

 

 

 

 

たかが一台と侮るなかれ

 

今回のミキサー車の回転が往復1時間。作業時間は大体6時間で計算するから、6回往復出来る

 

現場の都合により、5トンミキサー車の為であるから、生コン積載量は約2トン

 

現在は昼過ぎであることから、3回転は終わっている

 

単純計算で6トン生コンが不足する計算となる

 

 

強度などの問題により、途中での中断は出来ない

 

 

 

現在担当が何とかミキサー車の確保に奔走しているが、前日が月曜日で雨であった事から、中々ミキサー車が確保できないのが実情であった

 

 

 

 

 

曜日と天気が関係するの?

と疑問に持たれる方もおられると思う

 

 

生コン打設時にはそれなりに騒音が出る

 

さて、それが休日である日曜日にするとして、不快に思わないだろうか?

その前日の土曜日とて、人によっては休みだろう。

 

 

 

工事開始時に近隣との協定を結ぶことは割とある

 

 

この道路は通学路だから、朝と夕方は使えない

ここの道路の側道には停めるな

工事の音が気になるから、音出しの作業は9時から

 

などという近隣とのトラブルを回避する為のものだ

 

 

 

その中に土曜日の音出し作業禁止というのは良くある事だ

 

 

 

 

当然のことだが、工程的には土曜日に出来なかった作業は月曜日になる

 

しかし、雨の場合は打設箇所にもよるが、あまり推奨されない

 

勿論、屋内ならば何の問題もないが

 

 

 

 

 

結果、週明けの月曜日に雨が降る。そうすると、火曜日に土曜日、月曜日、火曜日分の生コン打設が被るのである

 

 

となると、プラントも忙しくなるし、ミキサー車の段取りも難しくなるということだ

 

 

そして、苦慮して手配したミキサー車が一台使えないとなると、その分の補填をしなければならない

 

他の現場が終わってフリーになったミキサー車を確保せねばならないが、ミキサー車がフリーになるのは自分の予定数を運搬して、それをポンプ車に投入。その後、ミキサー車を洗浄するまでしてやっとである

 

 

現在の昼過ぎにミキサー車が捕まるとは思えないからこそ、生徒会に連絡をいれたのだ

 

 

 

 

 

 

打設は遅くするなら幾らでも遅く出来るが、早くするのはほぼ不可能に近いと言って良い

 

 

 

ミキサー車が捕まらない現状、時間をオーバーするのはほぼ確定なのだ

 

 

 

 

 

しかし、ルドルフとしてもそう簡単に分かったと言えない問題がある

 

 

 

そもそも工事関係者に渡しているセキュリティキーは時間に連動している

 

 

 

作業関係者が持つセキュリティキーは朝の7時半から夕方の6時までしか作動しない

 

悪用の恐れが無いとは言い切れないからだ

一応は工事関係者には掲示物をダッシュボードの上に掲示する様にする事により二重のチェックとしたい。それを要請しているが、一部関係者は怠っていた

その為に警備員が一々確認しなければならない事態にもなっていたのだ

 

 

キチンとルールをまもっているならば、多少の不都合にも目はつぶれようが、ルールを徹底できないものにそれを適応して良いものか?

 

生徒会長としては即答しかねた

 

 

 

 

 

 

なお、この事は理事長にも報告していたが、敢えて理事長は動かなかった。

この工事責任者、いや会社がどのように動くか如何では今後のトレセン学園関連の仕事を任せる事が出来ないと判断していたからだ

 

組織説明の際に一次業者全てに『原則』生徒会への連絡を義務づけた

 

だが、施工業者の本社側には『工事において問題が発生した場合、事の大小問わずトレセン学園理事長にも報告する事』をトレセン学園工事に参入するにあたり周知徹底させるように要請していた

 

 

 

 

 

 

つまり大前提として、問題発生時にはトレセン学園生徒会と理事長双方に報告する義務が工事側にはあったのだ

 

 

だが、悲しいかな。幾ら本社側が神経を尖らせようとも、それが現場に受け入れられない事もある

 

問題はそれで収まる問題なのか?そうでないのか?

その線引きがキチンと定められているかどうがだった

 

 

 

 

 

 

故に学園側は『時間的猶予のない』セキュリティキーの貸し出しのみとしていたのだ

 

つまり、そういう事なのである

 

 

 

 

 

 

 

シンボリルドルフは熟慮の後、理事長にその話を持っていく様にした

 

流石の生徒会長でもこの問題は大きすぎるとみたのだろう

 

 

 

 

 

 

 

現場責任者は顔色を変えた

 

理事長に話すという事はこの問題をかなり深刻に受け止めている証拠に他ならない

 

 

彼は理事長室へ行く前に現場事務所へと連絡を入れ、担当のみでなく事務所員全員でミキサー車の確保を動く様連絡した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、疲れるな、本当に」

 

午後の授業はない

 

出来たばかりの組織であるトレセン学園だ

 

問題は山積みであり、生徒会の誰かが部屋に常駐しなければならなかったからだ

 

 

 

 

 

 

しかし、有事でもなければ仕事はない

 

既に今日分の書類は済ませている

ともすれば、明日の分で出来るのもしているのだ

 

 

 

コンコン

 

 

「む?誰だろうか?」

 

この時間には生徒は授業中の筈

さっきの人物はもう戻ったとメールが来ている

 

 

 

 

 

 

 

気のせい、か?

 

 

 

いや確かにノックの音がしたはずだが?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンボリルドルフは外を確認しようと扉に向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰も、いないな?」

 

扉を90度開けて左右を確認する

 

「???」

 

気のせいなのだろうか?

 

彼女は後ろをふと振り返ると

 

 

 

「や」

 

 

シンボリルドルフはフリーズした

 

 

目の前に何故かタキオンの彼氏がいたのだから

 

 

 

割と近い距離と言えるだろう

 

 

 

 

 

「一応、聞きたいのだが?」

 

「ん?」

 

気を取り直した彼女は目の前にいる上機嫌な彼に

 

「許可はとっているのかな?」

 

ニコニコしながら、彼が出す携帯の画面を見つめる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

件名   依頼っ!

 

送り主  秋川やよい

 

本文   実はシンボリルドルフが色々あって疲れている様で、一度会ってリラックスさせてくれないか?

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

彼女は間の抜けた声を思わず出してしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?だって!

可愛いなぁールドルフは!」

 

「からかわないでくれないかな」

 

生徒会室に戻ってソファーの対面に座った彼は楽しそうに笑っていた

私はといえば、顔が熱い。鏡を見るまでもなく、真っ赤になっている事がわかってしまう

 

「いやいや!

何言ってんのさ、ルドルフ!さっきの君の顔、凄く可愛かったって」

 

ううっ、両親の前でもあんな失態した事がないぞ

それを見られるなんて、穴があったら入りたいっ!

 

ソファーに座ったまま、視線を下に落とす

恥ずかしくて、彼の顔を直視できないぞ

 

 

「いいじゃん、少しは肩の力抜いたってさ」

 

「簡単に言ってくれるなぁ」

 

そんな簡単に出来たなら、苦労はしないのに

 

 

「じゃあ、試してみる?」

 

「試す?」

 

思わず顔を上げた

そこには悪戯を思いついた様な笑顔を浮かべる彼の姿があった

 

 

「そ、ルドルフとボクの真剣勝負さ」

 

「勝負、とは中々面白いことを言うものだね」

 

分かっているのか?私は勝負に手加減も妥協もしないんだぞ?

彼を睨みつけても、彼の表情は変わらない

 

「ウマ娘というものは、とかく勝負にこだわる

それを知っていての発言か?」

 

自然に語気が鋭くなるのを感じる

 

「おいおい。俺がタキオンとどれだけ一緒に過ごしたと思ってんだ?」

 

っ!

今までの笑顔から凄みを感じる笑みに変わった

 

「驚いたな。そんな顔も出来るのか?」

 

「で、どうするよ?逃げても良いよ?」

 

挑発的な言い方。だが

 

「逃げるつもりはない」

 

 

 

 

 

 

 

私と彼は机を挟んだソファーの向こう側で対峙した

 

「ルールは私は5分耐える

君は私に参ったと言わせるか、床に膝を着かせる。

相違ないね?」

 

「問題ない。どんな手を使ってもいいんだな?」

 

「ああ」

 

「では、時計の針が12になったら、始めようか」

 

 

 

 

「負けるつもりはないよ」

 

 

5

 

 

「言ってろ」

 

 

4

 

 

 

3

 

 

 

2

 

 

 

1

 

 

 

 

さて、彼はどうすっ

 

「さって、ルドルフちゃん覚悟はいいかなぁ?」

 

ばかな、数秒目を離しただけで、距離をつめてきただとっ!

ま、まて!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーー!!」

 

はーい、ルドルフちゃん

たかいたかーい!

 

 

は、恥ずかしすぎるぞ、これはっ!

い、今私は彼に所謂『たかいたかい』をされている

声が出せない程、恥ずかしい

というか、私もそれなりにあるんだぞ?

それをこうも簡単にっ!

 

 

「どう?ルドルフちゃん?たのしいっしょ?

 

「ーーーーーっっ!!」

 

声なんて出せるわけないだろう!

ううっ、恥ずかしいのに

そうだ。時間はっ

未だ一分も経っていないだと!

 

 

「よーしよし、もっとゆっくりしようねー」

 

 

だが、何故だろうか

凄く安心する

ああ、だんだんねむ、く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンボリルドルフというウマ娘は早熟な少女であった

 

 

小学校低学年の頃から、既にカリスマの片鱗を見せており、周囲の人々を惹きつけていた

 

そして、両親もまた少し親離れが早いことに一抹の寂しさを持ちながらも、彼女の歩みを止める事は無かった

 

そして、彼女は小学五年生のときにふと考えた『ウマ娘にとっての幸せとはなんだろうか?』と

 

彼女がもう少し弱ければ、もう少しわがままなら自分の幸せだけを考えていただろう

 

 

だが、彼女は弱くもなく、自分を律する事も出来てしまった

 

 

彼女に憧れる者、期待する者は多くいるだろう。彼女はそれを力に変える事ができる

 

 

だが、それでもシンボリルドルフというウマ娘はただの〇〇という少女なのだ

 

 

 

 

 

 

彼女はいつしか自分から出ている少量の血に気づかないまま、成長していったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、〇〇偉いなー」

 

「〇〇。良くできたわね、でも無理したらダメよ?」

 

 

〇〇は何か懐かしいものを見た気がした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ」

 

シンボリルドルフは目を覚ました

 

「お、起きたか?」

 

彼が目の前にいる

天井が見える

 

「ここは?」

 

 

体を起こすと彼の上着が掛かっていた

 

 

「大丈夫か?

わりぃな、少しやり過ぎたか?」

 

 

彼の言葉の意味が分からなかった

 

「どういうこと?」

 

「ルドルフはさっき俺がたかいたかいしていた時、涙を流して気を失ったんだよ」

 

「そうなの?」

 

「??本当に大丈夫か?」

 

彼が私のおでこに手を当てる

 

その懐かしい感触に思わず目をつぶってしまう

 

 

「熱はないな」

 

「あ、」

 

彼の手が離れてしまった

 

 

「どした?」

 

「ううん、なんでもない」

 

「やれやれ、今回は俺の負けだな」

 

「そう?」

 

そうとは思えないのだが

 

「んで?どうすんの、罰ゲームは」

 

「ばつげーむ?」

 

そういえば、そんな事を言った気もするな

 

「なんでもいいの?」

 

「何でもではないな」

 

そうか

そうだな

なら、これならタキオン君も許してくれるだろう

 

「あたまを」

 

「ん?」

 

「あたまをなでてほしい」

 

「???

それでいいのか?」

 

「うん」

 

 

 

 

 

 

シンボリルドルフと彼は隣り合わせで座っていた

 

彼としては、甚だ疑問な距離感だがシンボリルドルフは「いい」「だいじょうぶ」と譲らなかった為に彼が折れた形である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んじゃま、いいか?」

 

「うん」

 

彼が私の頭を撫でる

ゆっくり、でも優しく

 

 

 

そうか、私は

寂しかったんだな

 

 

 

だから、彼の温もりが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すまない。タキオン君。君の彼氏を取るつもりはない

 

そんな隙間が君たちの間にない事は知っている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、今この瞬間だけは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼を好きになる事を許してください

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンボリルドルフは彼の温もりの中で目を閉じた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んじゃ、無理しなさんなよ?」

 

「無論さ。今日は助かったよ、ありがとう」

 

「何、ルドルフの為だからな、気にすんな」

 

「気をつけてな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼はシンボリルドルフとのやりとりを思い出していた

 

 

なんてっかなぁ、昔のタキオンに本当に良く似てるなぁ、ルドルフは

 

思わずタキオンが好きなたかいたかいしてみたけど、泣くほど嫌だったかぁ

 

なんかアイツ見てると昔のタキオンを思い出すんだよ

人との温もりに飢えていたタキオンと

 

 

元気になったみたいだから、とりあえず良しとするか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、初恋とは叶わぬものとは言っていたが、まさか相手のいる人物に懸想しようとはね

 

本当に我ながら、情けないなぁ」

 

彼の去った生徒会室でシンボリルドルフのすすり泣く声だけが残った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




というわけで、会長の失恋回となってしまいました事を此処にお詫びします

シンボリルドルフのキャラクター大好きなんですよ、でも何故かこうなった

おかしい、エアグルーヴメインの話の息抜きに書いていたはずなのに


どおして?


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 くらいもの

突然ですがアンケートをこの話限定で取らせてもらいます

宜しければご参加下さい

前回の話は割と反応が怖かったです


では、どうぞ


シンボリルドルフの件があって暫くして、初夏を迎えようというある日のこと

 

「待てタイシン、どこへいくつもりだ!」

 

「待ってよータイシン!!」

 

 

 

ナリタタイシンは激怒していた

 

同室であるスーパークリークに余計な事を吹き込んだ男に

 

 

男は生徒会室に居ると聞いた

 

 

 

あの男の自宅にまで押しかけるつもりは、ない

 

 

だからこそ、この機会を逃すつもりは無かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビワハヤヒデとウイニングチケットを撒いたナリタタイシンは生徒会室のドアをノックした

 

 

 

「ああ、入っていいぞ

覚悟してから入ってこい」

 

「は?」

 

中から聞こえてきた返事にタイシンは一瞬言葉を失った

 

 

 

どうゆう事。此処は生徒会室のはず、間違っても私の部屋じゃないし、アグネスタキオンの研究室でもない。オグリキャップやメジロマックイーンの居る食堂でもないだろうし、エアグルーヴの花壇に踏み入る訳でもない

なのに何を覚悟しろと言うのか?

 

 

補足するとアグネスタキオンは現在、専用の研究室を与えられている。何故か機材や薬品の類は潤沢にあるという噂だ

何故噂かというと、タキオンの彼氏が出てきた時に七色に輝いていたのをタイシンも見た

しかも、平然としていたのだ。アイツは

鏡を見てないのかと思ったが、メジロマックイーンに「大丈夫ですの!」なんて聞かれた時も「大丈夫、いつもの事」って流してたから知っている

 

明らかにヤバい

 

 

 

次のオグリキャップとメジロマックイーンのいる時の食堂

 

語るまでもないが、トレセン学園一の健啖家であるオグリキャップに学園一のスイーツ好きなメジロマックイーン

 

2人が揃うと歴戦の勇者揃いのトレセン学園食堂職員も名誉の戦死が相次ぐ地獄絵図と化す

 

危ない

 

 

最後のエアグルーヴの花壇については

 

一度、ウイニングチケットが花壇に踏み入る事があったのだが、その場を見たビワハヤヒデとタイシンはその記憶を封じている

 

ただ一つ

花壇に踏み入る事だけは何があろうとも、しない

3人の中で犯してはならないタブーとなった

 

 

 

 

 

 

流石にこれらの様にはならないと判断したタイシンは生徒会室に入った

 

「失礼しま、す」

 

 

我が目を疑った

 

 

 

 

まず、エアグルーヴが蹲っていた

 

この時点で明らかにヤバい雰囲気しかしない

 

 

「え」

 

 

次にナリタブライアン

 

普段の凛々しい態度は一緒だが

 

「あのさ、ブライアン」

 

「なんだ、タイシン」

 

聞くべき事で無いのはわかる

ナリタタイシンというウマ娘の持つ直感が叫んでいる

 

「あれに触れるな」と

 

 

だが、それでも聞かねばならない

 

ナリタタイシンは意を決して

 

 

「何でウエディングドレスなのさ」

 

 

疑問を口にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少し遡る

 

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

トレセン学園生徒会室で生徒会メンバーと彼は沈黙していた

 

「待て、何故貴様まで黙っているのだ!」

 

「や、ノリで」

 

「貴様という奴は」

 

エアグルーヴは頭を押さえた

 

「しかし、何故これが此処にあるんだ?」

 

「ふむ、タキオン君との婚姻衣装というなら祝福するが?」

 

「何故かと言われましてもねぇ

ルドルフ、大丈夫だ。今はまだその予定はない」

 

「そうか

では私にかな?」

 

シンボリルドルフは冗談混じりでウインクして見せた

 

「か、会長!?」

 

「おいおい」

 

2人は慌てる。何せシンボリルドルフというウマ娘は今まで冗談を言うようなものでは無かったのだ

 

「ふむん、それだとちと丈を直さんといかんのっすよ、ルドルフさんや」

 

「そうか。それは残念だな」

 

微笑みながらシンボリルドルフは彼に視線を送る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では何なんだ、これは?」

 

「うん、ウチの地元からの贈り物です!」

 

「地元がこんなものを送ってくるのか」

 

彼の答えにブライアンは驚きを隠せない

 

 

当たり前だろう。どこの世界に中学生へウエディングドレスを送りつけてくる大人がいるというのか

 

 

「ん」

 

「何?私だと?」

 

「そ、タキオンと殆ど身長変わらないだろ?」

 

「それはそうだが、胸周りが」

 

「でぇじょうぶた!タキオンの将来性を見て作ったらしいからな!」

 

「やめてさしあげろ」

 

酷い話である

僅か半年足らずでそこまで身体的成長は見込めないというのに

 

 

3人はウエディングドレスの一点を見て、揃って目頭を隠した

 

「酷い」

 

「これが大人のする事か?」

 

「タキオン君は大丈夫かい?」

 

「大丈夫、一日中ハグしたら落ち着いた」

 

「それは大丈夫といえるのか?」

 

「い、一日中、だと」

 

「中々情熱的だね」

 

 

 

 

 

実際にはそれなりに大変だった

 

何せ、目を真っ赤にして暴れようとするタキオンを無力化する為に、彼は右腕を2時間に渡って噛みつかれていたのだから

 

 

以前の甘噛みではなく、歯を突き立ててだ

多少とはいえ出血したが、タキオンの為ならその程度問題にならない

 

落ち着いたタキオンは傷口を舐めるという割とアブノーマルな一幕もあったが、彼の不動の精神力で耐え切った

 

 

そしてその後しっかりイチャイチャした訳だが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実は薄手の長袖の下にはその傷がはっきり残っているのだが、そこまで語る必要性を感じてはいなかった

 

寧ろタキオンにつけられたこの傷も、タキオンからの物と思えば愛おしくすらあった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、私か」

 

「無理強いはしないよ」

 

「ブライアンどうするのだ?」

 

「しかしウエディングドレスか

やはり女子としては憧れるものだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、ブライアンはエアグルーヴの手伝いの元着替えてみた

 

 

 

 

「ふん」

 

「へー」

 

「流石だな、ブライアン

良く似合っているな」

 

 

 

 

此処までは平和だった

 

 

だが

 

 

「しかしどうにも分からん

貴様とタキオンが釣り合うとは

ーーーっ!」

 

 

 

気が緩んだのかエアグルーヴは彼の地雷を踏んだ

 

 

 

「エアグルーヴ?今何つった。俺とタキオンが釣り合わねえって?」

 

とある傾奇者はいった

『人間にゃ触れちゃいけない痛みがある』と

 

エアグルーヴはそれに触れたのだ

 

 

 

 

「いや、すまん!他意は無かった」

 

エアグルーヴはらしくなく言い訳をする

 

何せ顔を伏せて、無言であるにも関わらず物凄い圧を感じるのだ

 

 

 

 

 

「覚悟はいいな?」

 

その時、3人には彼の目が怪しい光を放った様に見えた

 

 

 

 

 

 

「エアグルーヴそこの文の構成は『こうせい』よ」

 

「や、やめっ」

 

エアグルーヴはジリジリと後退するが

 

「残念だな。唾液を『たえき』っても無駄」

 

「っ!」

 

遂に壁際まで追い詰められた

 

「す、すまん!」

 

そして

エアグルーヴの耳元で

 

「言い訳して『いいわけ』?」

 

と囁いた

 

しかも妙に艶のある声で

 

「ーーーーーっっ!!」

 

エアグルーヴは床に蹲った

 

 

 

 

 

 

ちなみに

 

「おい、奴はドSという奴か?」

 

少しだけ引くブライアンと

 

 

「くっ、グルーヴめ、あんな美味しい役を!

 

と少々おかしな事を言っている生徒会長がいたとか何とか

 

 

 

 

 

 

そして、彼は何事もなかった様にソファーに座るとルドルフと雑談を始めた

 

なおルドルフの尻尾ははちきれんばかりに振られていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな中にナリタタイシンは入ってきたのだ

 

そりゃ、ナリタブライアンだって覚悟しろ位は言うだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして

 

 

「ちょっと良い?」

 

タイシンは漸く目的の相手の前に立つ事が出来た

 

 

彼は

 

名称不明のウマ娘に少しだけ目を配った

 

 

 

 

耳と尻尾から軽度の興奮状態

 

顔と各部の状況より怒りと推察

 

腕部、脚部

中度の疲労状態にあると推測

 

 

結論、怒りによる興奮状態。放置すると故障の可能性が濃厚

 

 

 

と判断した

 

 

 

 

「良いも何も名前も知らない人の言う事を君は聞ける?」

 

「っ!

うるさい!」

 

精神状態も不安定。これは興奮状態との相関関係を認めず

 

 

 

 

 

 

彼は嘗て友人よりこう言われた事があった

 

 

「何かさ、お前って怖いよ」と

 

詳しい話を聞くと、アグネスタキオンに自分全てを捧げている様に見えて怖いとの事だった

 

 

 

彼はその友人の言葉が理解できなかった

 

タキオンは大切な幼馴染で好きな女の子だ。それを守ろうとするのが、そこまでおかしいのか?と

 

そこで彼は小説などを読み漁った

 

そしてある小説に巡り会えた

 

そこには愛の為に自身の想い人の為にならば、それこそ禁忌すら厭わず行なう男の姿があった

 

彼は憧れた。アグネスタキオンというウマ娘を守る為に何も出来ない無力な自分を変えたかった

 

家事が出来てもタキオンを守れない

タキオンを守る為にどうしたら良いのか?

 

 

 

 

そこで彼が考えたのはタキオンの姿を見ただけで彼女の体調や精神状態を把握できるならば、彼女を守れるのでは無いか?と

 

 

その為に、彼は自分の体を実験台にした

 

どの様な状態の時にこうなるのか?

どの様なダメージを受けたならば人はおかしくなるのか?

 

 

 

 

 

全て、タキオンの為に

 

 

 

 

 

 

 

それだけが幼い彼の願いだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人は言うだろう

「狂っている」と

「間違っている」と

 

 

 

 

 

だからどうしたというのか?

 

 

タキオンは親に見捨てられ、自分は親を捨てたのだ

 

 

 

 

あの日タキオンは彼に言った

 

「君が壊れているなら、私もとっくに壊れているさ

壊れているもの同士、お似合いだろう?」

 

そして

 

「地獄に堕ちるなら、私も一緒さ。君だけを独りにはしない。だから私を独りにしないで」

 

 

 

彼は止まらない。タキオンがいる限り

タキオンは止まらない。彼がいる限り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なに」

 

ナリタタイシンは目の前にいる男が目を伏せたのを見て、背筋が凍る様な感覚に陥った

 

しかし、ナリタタイシンというウマ娘は強いウマ娘だ

 

 

 

 

だからこそ

 

 

 

 

 

見てしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光も何もうつさない空虚な瞳を

 

 

 

「ーーーーーっっっ!!!」

 

 

ナリタタイシンはその場に座り込んで動けなくなった

 

 

ナリタブライアンもエアグルーヴも隣にいるはずのシンボリルドルフも見ていない

 

あの空虚な瞳を

 

 

 

「ありゃりゃ、腰抜かしたのかな?」

 

「そのようだが?」

 

突然様子がおかしくなったナリタタイシンに疑問を持つルドルフだったが

 

 

「ま、連れてくわ。今日はこれで帰るなぁ」

 

「ああ」

 

「気をつけてな」

 

 

 

彼はナリタタイシンを抱き抱えて生徒会室を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンタ、何なの?」

 

震える声でタイシンは問いかける

 

「何だろうなぁ」

 

「真面目に答えろ!」

 

タイシンはこの男が怖い

それでも、何かしないと終わる気がした

 

致命的な何かが

 

 

 

 

 

 




エアグルーヴを撃沈したイケボイスは母親の仕込みです
基本タキオン専用ですが、今回初めてタキオン以外に使用しまひた

やったぜ


では次回も宜しければご覧ください


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 彼と私

シンボリルドルフとくらいものの間の小話


かなり暗いです

それだけはお覚悟を


アグネスタキオンは最近、自分の研究室を手に入れた

 

トレセン学園の本校舎の一階の東端である

 

昇降口からも遠く、しかし通用門からは近い

 

 

学園からのタキオンへの気遣いを感じさせるところであった

 

 

 

 

此処に彼女と彼は花瓶を複数用意し、花を飾った

 

 

黒い百合であった

 

 

 

これを彼女達は研究室のあちらこちらに飾っていた

 

 

 

「まるで私達だね」

 

タキオンと彼はそう言って笑い合った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タキオンが嘗て研究していたのは『ウマ娘の限界』についてだった

 

だが、今研究しているのは『ウマ娘の能力低下』の為の研究である

 

 

 

タキオンは自分が不幸とは思っていない。

 

 

 

ただたまに思うのだ

 

私がウマ娘でなければ、この様な生活を送らなくても済んだのではないか?と

 

 

だからとて、今の自分に求められている役割はこなす

 

 

 

 

私と彼はただのマリオネット

 

大人達の思惑通りに踊り、そのうち打ち捨てられる替えのきく人形

 

 

 

彼を思っているのは間違いない。彼の想いを疑う事もない

 

 

彼に想いを寄せるのも良いだろう

 

 

 

 

だが、貴女達では無理なのだ

 

人形劇の人形になりきれるはずがない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私も彼もただの人形

 

踊り疲れても、観客の望むままの夢を魅せる。それだけのもの

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貴女達にそれは似合わない

 

だから、彼と歩めない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ、願わくば

 

私のたった1人の妹分にだけは輝かしい明日を

 

 

 

 

 

 

 

アグネスタキオンはそれだけを願っている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タキオンも俺も所詮は凍った池の上で踊っているに過ぎない

 

 

ルドルフもマックイーンもゴルシもグルーヴもブライアンも皆明日を見ている

 

 

俺たちは明日なんて見てないんだ

 

ただ、生きていた証が欲しいだけなんだ

 

 

 

誰かの大切にならなくて良い

誰かの為に生きてなくても良い

 

 

 

タキオンの生きた証はマックイーン達が守ってくれる

タキオンの願いは彼女の妹分が叶えてくれる

 

それで良い

 

 

俺はただのパペットドール

 

操る相手がいなければ忘れ去られるだけ

 

 

 

 

それで良い

 

 

 

ただ、もしもこんな俺がタキオン以外に願えるならば、我が儘がゆるされるのであれば、彼女が願う未来を

 

 

 

彼は願う

 

タキオンの幸せを

タキオンの願いを

 

そして

 

〇〇〇〇の願った未来を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

町内会長は半年前にこの町から巣立っていった2人を心配していた

 

 

 

あの2人は歪だった

 

 

親に見捨てられ、幼馴染のみを見ていたアグネスタキオン

幼馴染だけを見ていて、親すら打ち捨てた少年

 

 

 

人々は言う

 

 

ウマ娘と人の理想形だと

 

 

 

 

 

 

 

 

冗談にもならない

 

あの2人はどちらが欠けてもダメなのではない

 

アグネスタキオンが彼より先に死ぬとしたら、寿命のみ

それ以外の要因なら、彼が先に死ぬだろう

 

 

 

アグネスタキオンは彼がいないと生きていけないだろう

彼はアグネスタキオンがいないなら死ぬだろう

 

 

同じようで違う

 

アグネスタキオンは彼を失っても可能性は極小だが生きていける可能性がある

 

彼はアグネスタキオン以外に意味はない

 

彼の中ではアグネスタキオンは1で

その他は等しく0なのだ

 

そして、彼もまた0のうちに入っているだろう

 

 

 

 

 

 

町内会長が2人を気にかけていたのは、様々な事を見てほしかったからだ

 

山の向こうの景色

空の果ての景色

海の向こう側の景色

 

 

その他にも幾らでも2人が知らない景色がある

 

 

だからこそ、2人の周りの大人達は守ったのだ

 

 

たが、トレセン学園の話が漏れた事で全てがおかしくなった

 

タキオンの母親は彼女をそこへ入れようとし、中学校もウマ娘である彼女を持て余していたから、そこへ入れようとした

 

彼が気づいた時には手遅れだった

 

アグネスタキオンは両親との関係が完全に切れ、少年は彼女を守る為だけに家族も知人も全て捨てた

 

 

せめて、あちらの中学校へ通わせようと手を尽くしたが、結局思慮のない大人達によってそれも阻まれた

 

 

トレセン学園に通う彼女はこれから出会いの中で得るものもあるだろう

 

だが、彼にその機会はもうあるまい

 

 

 

 

 

トレセン学園に頻繁に出入りしていると言う話は聞いた

 

だが、あれではただの見世物だ

 

 

そして、彼の価値観はそこで終わる

タキオンという少女の為の装置

ウマ娘に未来(夢)を見せる為だけの機械

 

それに成り下がる

 

 

 

 

しかし、彼にできることはもう、ない

 

 

 

 

シンデレラは12時に魔法が解ける

 

タキオンと少年の現実(夢)もいつか、終わる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴールドシップは自宅で考えていた

 

 

 

何かがおかしい

 

ゴールドシップの優れた嗅覚と第六感はそう言っていた

 

 

だが分からない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴールドシップの疑問が氷解するのはそれから一年後の事であった

 

 

 




2人は勿論花言葉を知っていてその花を好んでいます


過去編も何処かで入れることになるでしょう

お気に入り登録と評価バーの色で恐慌状態になりますよー


短すぎますが、ご堪忍下さい


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 私の自慢の2人(前編)

アグネスタキオンといえばこの子だよなぁ

というわけで、真打登場!


ええ
落差はひどいです

くらいものの少し前のお話

風邪ひかないでね?


私はダイワスカーレット!

 

今年中学一年生になるわ!

 

 

私も一応ウマ娘になるのだけど、あんまり自覚がないのよねぇ

 

確かに耳はあるし、尻尾もあるけど

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな事より、私には尊敬する人が2人いるの!

 

 

1人は従姉妹のお姉ちゃんのアグネスタキオン!

 

すごい物知りで、色んな事を教えてもらってたの!

でもだからって走るのが苦手な訳じゃないのよ!

 

昔ウマ娘のレースに出てた人にも圧勝してたもの!

 

 

物知りで、速く走れて、とっても優しいの!

 

いつも私のことを「スカーレット」って呼んでくれて、家に遊びに行くと私のわがままも許してくれたのよ

 

うちじゃ、全然走らせてくれないし、同級生に合わせろって

 

でも、そんな事をしても私にはお友達はいない

だって、手加減してるって言われるもの

 

 

でもタキオンお姉ちゃんはそれをいつか解決するって研究してるらしいの、凄いでしょ?

 

 

 

でもお姉ちゃんの一番凄い所は、仲の良い男の人がいる事かしらね

 

 

2人が一緒に生活してるのを見てると、信頼し合ってるんだなぁっていつも思う

 

 

 

 

 

 

 

 

で、もう1人の尊敬するのがお兄ちゃん!

 

 

お姉ちゃんの相手だからお兄ちゃんなのよ!

 

いっつも美味しいご飯を作ってくれて、私の愚痴なんかも嫌な顔一つしないで聞いてくれるのよ?凄いでしょ?

 

それに私のお洋服も何着か作ってくれたり、お姉ちゃんとお揃いの白衣もプレゼントしてくれたの!

しかも裏に白糸でwithアグネスタキオンって刺繍してくれたのよ!

 

私の宝物なんだから!

 

私が走る時のアドバイスもしてくれてて、えっと何だったかな?

 

あ!そうだ

メモがあったのよ!

 

『コーナー加速』『直線加速』『コーナー回復』『直線回復』にこの前教えてくれた『鋼の心』だったかしら

 

 

いっつも野良レースでは助かってるんだから!

 

 

 

皆はお兄ちゃんはおかしいって言ってるけど、私にとっては素敵なお兄ちゃんなの!

 

 

同級生でライバルのウオッカとの模擬レースだって負け無しなのはお姉ちゃんとお兄ちゃんのおかげなのよ!

 

 

特にお兄ちゃんは遊びに行くと、私の気付いてないところまでキチンと指摘してくれるの!

 

で、それを直したらもっと速くなるの!

 

 

後は私のお料理とお裁縫の先生でもあるのよね

うう、女子としてはお兄ちゃんでも男の人に負けるのは結構ショックだけどね

 

最近はウオッカも私に競う様に習い始めたけど、機会があったらお兄ちゃんに一緒に教えてもらおうかしら?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

信じられない!

 

お姉ちゃんとお兄ちゃんが引っ越しした事をパパもママも黙ってたのよ!

 

でも、お姉ちゃんとお兄ちゃんがまさか噂の『現代のシンデレラ』だったなんて、思わなかったわよ!

 

うぅ、なんか複雑

私だけのお姉ちゃんとお兄ちゃんが他の人に取られたみたいで、ショックだなぁ

 

 

でも、今度の夏休みにお兄ちゃんの家に遊びに行こうかしら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なにそれ!

 

もう、最悪!

 

パパとママは会いに行かないほうが良いって言うのよ!

 

どうして?って聞いても答えてくれないし、ああもぅっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お姉ちゃんとお兄ちゃんがお世話になってた町内会長さんから、お兄ちゃんの家の電話番号をもらったの!

 

私の事も覚えていてくれたみたいで

 

「タキオンちゃんの妹ちゃんじゃないか!」

だって!嬉しかったなぁ

 

 

 

 

 

 

明日お兄ちゃんに電話してみようかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もしもし!

お兄ちゃん!お久しぶりです

 

あ!やっぱり分かってくれたんですね、嬉しいです!

 

あ、はい

元気にやってますよ?

 

え?脚ですか?

 

確かにちょっとだけ違和感があるような気もしますけど

 

あ、そうなんですか、分かりました。ありがとう、お兄ちゃん!

 

 

 

 

あ、タキオンお姉ちゃん!

うん元気にやってるわ!お姉ちゃんの妹だもの!

 

え?そんな、別にお姉ちゃんとお兄ちゃんが悪いわけでもないでしょ!

 

 

うん、うん

 

トレセン学園見学できるの!

でも私そんなに優秀じゃないけど

 

え!お兄ちゃんの知り合いに生徒会長と理事長がいるの!!

 

お兄ちゃん、どんな事したらそんな事になるの?

 

 

 

うん!勿論行きたい!

 

あ、そうだ。もう1人は無理、よね?

 

 

 

 

 

え!良いの!お姉ちゃん、お兄ちゃんありがとう!

 

 

 

 

うん、うんまたね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

じゃ、あいつにも知らせようかしら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もしもし

ええ、スカーレットよ

 

今週の土日時間ある?

 

そっか。アンタトレセン学園に興味あったわよね?

 

うん、私のお姉ちゃんとお兄ちゃんが見学に来ても良いって

 

 

ああ、もう!少しは静かにしなさいよ、全く

 

そりゃ、アンタの気持ちも分かるけどね

 

 

ええ、じゃあ土曜日の昼に駅でね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイワスカーレットとウオッカはトレセン学園の最寄駅に来ていた

 

 

「いよいよか、緊張するなぁ」

 

「とりあえずお兄ちゃんの家に行くわよ?」

 

「ああ。やべぇ緊張してきた」

 

 

この時、スカーレット達からマスコミの目を逸らす為に、理事長秘書であるたづなが駅の逆方向に関係者を誘引していた

 

 

 

 

 

 

 

 

2人は地図に指定されたマンションの前に来ていた

 

 

「おっきなマンションねぇ」

 

「いや、お前の兄貴って金持ちなのか?」

 

 

このマンションの契約をしたのはここ選出の国会議員の代理人なのだが、2人が知るはずもない

 

 

「えっと」

 

スカーレットはメモにある部屋番号をコールする

 

 

 

 

『ハロー、スカーレットか?』

 

「お兄ちゃん!うん、友達も連れてきたの!」

 

『相変わらず、元気だねぇ

ともかく部屋までおいで?』

 

「はーい」

 

「お、お邪魔します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋に通された2人は男の歓迎を受ける

 

「よ、スカーレット。よく来たな」

 

「お兄ちゃん!」

 

スカーレットは迷わず彼に勢いよく抱きつく

 

「お、おい。スカーレット

って、マジか」

 

ウオッカは目を疑った

スカーレットは認めたくは無いが、ウオッカよりもウマ娘としての能力は上である

 

そのスカーレットが勢いよく抱きついたのに、目の前の男は勢いを自身の回転で殺しきったのだ

 

それだけでもこの人物が並の人物でないことがわかるというもの

 

 

「このおてんば娘め」

 

「ごめんなさーい」

 

「あ、初めまして

ウオッカと言います。今回はお世話になります!」

 

「スカーレットの兄って事になるのかな、宜しく」

 

「素敵な部屋ね」

 

「スカーレットとウオッカくんは悪いが同じ部屋で構わないか?」

 

「あ、大丈夫です」

 

「えー、お姉ちゃんかお兄ちゃんの部屋はー」

 

「タキオンは交渉しな。俺は却下」

 

「・・・どうしても?」

 

「どうしても」

 

「うー」

 

ウオッカは更に驚いた。ウオッカの知るダイワスカーレットというウマ娘は礼儀正しく、常に冷静であった

こんなにも家族の前だと違うのか、と驚く他ない

 

「しっかし、スカーレット。お前、よく鍛えてるな

お兄ちゃんびっくりよ?」

 

「ふふん。でしょ?」

 

「ウオッカくんは差し希望かい?」

 

「え、あ、そうですけど」

 

「ふむ、スカーレットは先行で

ウオッカくんは差し。ルドルフかねぇ」

 

「どうしたの?お兄ちゃん」

 

「いやな、折角トレセン学園に行くのに、土産の一つも無いんじゃ面白くないだろ?現役のウマ娘に話をと思ってな?」

 

「え、いいの?」

 

「可愛い妹分とその友達の為なら、多少は考えるさ」

 

「やったー!!」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 

「とりあえずそこの部屋に荷物置いてこい

そしたら、飯だ」

 

「お兄ちゃんのご飯!

行くわよ、ウオッカ!」

 

「お、おお」

 

 

 

 

 

「大したもんは作れんが、とりあえずビーフシチューだ」

 

「お兄ちゃん、私の好物覚えててくれたんだ!」

 

「さてなぁ」

 

「「いっただきまーす」」

 

「やっぱりお兄ちゃんのビーフシチュー最高!」

 

「いや、美味しいっす」

 

スカーレットとウオッカの食べっぷりに終始彼は笑顔だった

 

 

 

 

 

 

 

「んじゃ、トレセン学園見学行くぞー」

 

「はーい!」

 

「宜しくお願いします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、通用門前に到着した

 

 

「凄い警備」

 

「ああ」

 

スカーレットとウオッカは過剰とも見えるトレセン学園の警備の厚さに驚いていた

 

彼は警備員の詰所に頭を下げていた

 

あちらも苦笑していたが

 

 

 

「すまない。待たせたかな?」

 

「悪いな、ルドルフ」

 

「何、他ならぬ君からの頼みだ

それに来年ここに来るかもしれないのだろう?

気にする事はないさ」

 

「助かる」

 

スカーレットは相手が誰か分からなかったが、ウオッカは知っている様で目を輝かせていた

 

「あ、あの、シンボリルドルフ先輩ですよね、トレセン学園生徒会長の。ウオッカと言います、初めまして!」

 

「ダイワスカーレットです。タキオンお姉ちゃんがお世話になってます」

 

「人気者は辛いねぇルドルフ」

 

「からかわないでくれ

ウオッカくん、ダイワスカーレットくん、ようこそトレセン学園に

改めて自己紹介をしよう ここの生徒会長をしているシンボリルドルフだ。宜しく」

 

ルドルフとウオッカ、ダイワスカーレットのやり取りを彼は微笑みながら見ていた

 

 

そして

 

「此処が理事長室だ」

 

「理事長、見学の2名を連れてきました」

 

「許可!入りたまえ!」

 

 

「は、初めまして。ダイワスカーレットです」

 

「ウオッカです。宜しくお願いします」

 

「歓迎っ!当学園の理事長秋川やよいだ!

今日と明日の二日間とはいえ、しっかり見ていってほしい」

 

「はい!」

 

「ありがとうございます!」

 

「理事長、この娘達の為にありがとうございます」

 

「?何かあるのかい」

 

彼が理事長にお礼を言っているが、ルドルフには心当たりがない

 

「気にすんなって」

 

 

 

 

 

 

 

理事長の元を辞した4人は

 

 

「私だ、入って良いかな?」

 

「ああ」

 

「失礼するんじゃよ?」

 

「失礼します」

 

「お、お邪魔します」

 

「やぁ、スカーレット!元気そうだねぇ」

 

「お姉ちゃんっ!!」

 

生徒会室に来た

 

そこにはナリタブライアンにエアグルーヴ、そしてダイワスカーレットの姉であるアグネスタキオンがいた

 

早速スカーレットは大好きな姉に抱きついた

 

「やれやれ、大きくなったと思ったら、気のせいかな?」

 

「俺にもおんなじ事してるんだぞ、タキオン?」

 

「困ったものだねぇ」

 

口でこそ、文句を言っているが、タキオンも彼も笑顔だった

 

「驚いたな」

 

「ふん」

 

「正に良き姉と兄といったところだろうな」

 

三者三様の反応を見せる生徒会メンバーだった

 

「・・・・・」

 

ウオッカは少しだけ羨ましそうだった

 

 

 

そして、それをこの男が見逃すはずもなかった

 

「ふふ、ウオッカくん。何なら、二日間の間だけでも甘えてくれても良いんだぞ?」

 

 

某ウマ娘が

 

「うう〜、私も甘やかしたいです」

 

と羨むほどに、甘やかすのが上手い男が動いた

 

 

敢えてスキル的な表現をするなら

 

『甘やかし◎』

 

と言った所だろう

 

 

 

 

そして、これは頑張っている相手にほどささるのだ

 

 

「うえっ!い、いや、その」

 

ウオッカは慌てた

確かに年上だが、たった一つの差の筈だ

 

恥ずかしいと思う筈なのだが、それよりも羨ましさの方が不思議と強かった

 

「あ、あの、その

いいんすか?」

 

「何、可愛い妹分がもう1人増えるくらいで文句は言わないって」

 

「じゃ、じゃあ、その

お願いします

 

ウオッカとて、しっかりしていると言ってもまだ、中学生

しかも去年までは小学生だったのだ

 

目の前でライバルのスカーレットが兄や姉に甘えているのを見て、何も思わないほどにまだ成長していなかった

 

 

 

 

 

 

 

特にウマ娘にはその傾向が強い

 

彼の彼女であるタキオンは勿論、その妹分であるスカーレットもそうだし、ルドルフもそうだ

 

 

あまり態度には出てないが、エアグルーヴもナリタブライアンもそうだと彼は確信していた

 

 

ウマ娘と言うのは、総じて走る事に並々ならない想いを持っているらしい。彼には理解できないが

 

しかし、同年代の自分達に比べるならば、既に圧倒的といえる実力を有している

 

それでも彼女達ウマ娘は高みを目指す。

初めは憧れや羨望ですむだろう

 

が、ウマ娘と自分達の間には埋めがたい実力差が横たわる

 

その内、それは嫉妬から嫌悪に変わるのは止めようが無い

 

 

 

そして、ウマ娘の親であっても、それは例外ではない

 

 

 

自分の娘にも関わらず、『別のナニカ』に思えてきてしまうのだろう

 

 

 

だから、自然と距離を取る

子供にはわからない様に

傷つけない様に

 

 

 

 

 

しかし、大人達は忘れている

 

自分達が子供の時、大人にそうされて、気付かなかったのかを

 

 

 

 

 

 

 

子供は他人に敏感だ

 

 

すぐに大人のそれに気づく

 

 

 

 

そして、初めこそ分かってもらおうとするだろう

 

だが、そのうち諦めるのだ

 

 

 

 

愛してもらう事、見ていてもらう事を

 

 

 

勿論、そうで無い親もいるだろう

聞く限りではエアグルーヴの母親は彼女の良き理解者だ

 

 

 

 

だからこそ、エアグルーヴにかかるストレスは余計に強くなる

 

全てに絶望するなら、目も耳も塞げば良い

 

 

 

だが、母親という救いがあるからこそ、彼女にはそれが出来ない

 

 

 

闇の中で過ごすならば、そのうち目も慣れてこよう

しかし、闇の中にたった一つでも光があれば?

 

どうしても、そこに目がいくだろう

 

そうすれば、光と闇の対比が出来てしまう

エアグルーヴがやや男性に対して不信感をもっているのも、母親に対して父親がそうで無いからだと彼は思っている

 

そうだからこそ、エアグルーヴの会話の中で父親の話が出た事は一度もない

 

 

 

 

 

 

愛してもらっていない。

 

そう思うからこそ、多くのウマ娘は自分のアイデンティティである『走り』で勝つ事に貪欲なのだ

 

そこには

 

『私を見て!』『私は此処にいる』

 

 

といった悲痛な彼女達の叫びがあるのだ

 

 

 

 

サイレンススズカは、『先頭の誰もいない静かな世界』が好きだと言っていた

 

 

彼女にとって、周りの大人達は『ノイズ』なのだろう

だからこそ、彼女はレースに興味を持っていないと言いながらも、先頭に並々ならぬ執着を見せていると感じる

 

 

 

 

余りにも残酷で、救いがないじゃないか

マックイーンの様に生まれながらに名家の責務を背負うものもいる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だからこそ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勿論、彼とて誰でも手を差し伸べるつもりは、ない

 

 

残酷な話ではあると思うが

 

 

 

彼はタキオンのものであり、タキオンの杖なのだ

彼女が、躓く事なく道を歩けるための

 

だから、妹分のダイワスカーレットには優しくできる

その友人で苦しんでいるウオッカくんにも、少しの間とはいえ、寄りかかれる盾になろう

 

 

昔のタキオンにあまりにも似ているルドルフの支えにもなろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〇〇〇〇の願う未来の為に希望の種を蒔こう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それしか、彼には出来ないのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな内心をおくびにも出さずにウオッカを見ていた

 

 

 

 

「じゃ、じゃあ、兄貴って呼んでもいい、ですか?」

 

ウオッカは不安そうに恐る恐る口にする

 

「良いぞ、おいで?ウオッカ」

 

「っ!」

 

ウオッカの顔が上がると同時に彼に飛びかかる

 

「兄貴っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良いのかい?スカーレット」

 

「ふん。いいわよ

それでも私がお兄ちゃんの一番の妹なんだから!」

 

アグネスタキオンは妹分の成長を喜んでいた

恐らく数年前なら、絶対にウオッカ君の事を認めなかっただろう

 

だが、今の彼女はウオッカ君の気持ちが痛いほど分かるのだろうね

 

 

「本当に大きくなったね、スカーレット」

 

「へへ

ねぇ、お姉ちゃん。今日は一緒に寝てくれる?」

 

おずおずと上目遣いで聞いてくる妹に

 

「勿論だとも」

 

私はそう答えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

ブライアンとグルーヴは彼と彼に抱きついて甘えているウオッカ君を見ている

 

驚くにも値しない

 

 

彼はそれこそ、奇天烈な行動を取りはする

 

 

だが、その根底にあるのは私達ウマ娘へのひたむきな想いと理解しようという姿勢だ

 

 

アグネスタキオンというウマ娘を幼馴染として育ち、ダイワスカーレットという妹分を見て育った彼だ

 

 

 

世間一般の『自称』ウマ娘の専門家達よりも私達の内面を理解しているのだろう

 

 

私はあの時、確かにそう感じた

 

 

 

確かに享楽的な部分がある事は否めない

 

 

 

 

 

だが、以前彼は私に言った

 

「俺はアグネスタキオンの杖だ

何があろうとも、それだけは変わらない」

 

 

 

 

あの時はただ衝撃のみでマトモに理解できなかったが、今ならば分かる

 

 

 

 

 

 

彼はアグネスタキオンに1人で立って欲しいのだ

 

 

 

 

幼少の頃から彼女といたと聞いている

 

そして幼少の彼女は不安定であったとも

 

 

 

 

彼がタキオン君を縛っているわけでも無い

タキオン君が彼を閉じ込めているわけでも無い

 

 

 

 

 

2人とも互いの事を思い遣りながら、それでも致命的な所でズレているのだ

 

 

 

 

 

この2人に今の光景はどう映っているだろうか?

 

 

 

 

シンボリルドルフは人知れず、拳を握りしめた

 

 

 

 

 

 

 

 

 




というわけでウマ娘のみんなの初めてを奪った彼女がついに出走しました!

何故か前後編になりました


ご め ん な さ い

許して許して


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 私の自慢の2人(中編)

お気に入り登録と評価が凄すぎて、書くしかないじゃないか!


いや、本当にありがとうございます!!

というわけで前回の続きっす
あれ?3回分になったぞ?


もし、宜しければ感想下さると狂喜乱舞します

いつも通りに独自設定ありまくりですが、どうぞ


「次はどこ行くんすか、兄貴っ」

 

「次は食堂やねぇ」

 

 

 

「あーウオッカの奴ったら、完全にお兄ちゃんに懐いてる」

 

「まぁ、気持ちは分かるだろう?スカーレット」

 

「そりゃ、分かりますけど」

 

やれやれ、我が妹はなんだかんだで気難しいからね

可愛いものだよ

 

 

おや?

 

 

彼が振り向いて目くばせをしてきた

 

 

ふぅん、なるほどね

なら

 

 

「スカーレット」

 

「あ、はい」

 

「どうやら彼の左手が暇なようだ

行ってきたまえよ」

 

「え、でも」

 

私を見るスカーレット

やれやれ。私と彼の関係を知っているだろうに

 

「私は彼の彼女なんだ。心配することはないさ」

 

「お姉ちゃん」

 

それでも私が気になる。か

仕方ないね

 

 

 

「え、お姉ちゃん!」

 

可愛い妹に手本を見せてあげようか

 

 

 

 

 

「へへっ」

 

ウオッカは俺の右腕に抱きついて嬉しそうにしている

これまであまり甘えられなかった弊害かねぇ

 

どうやらスカーレットは渋っているようだな

 

 

ま、あの子の性格を考えればそうかもな

 

 

 

「っと」

 

「こ〜ら〜

私も構いたまえよ〜」

 

だと思った

 

タキオンが後ろから抱きついてきた

 

こうなると

 

 

「お兄ちゃん♪」

 

左腕にスカーレットが来た

 

 

 

両手は塞がって、少々暑苦しいがまぁ良いだろう

 

 

 

 

 

 

今回はスカーレットとウオッカのストレス発散だ

 

問題ない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、食堂に着いたが、両手は塞がってるしタキオンは俺の体に両腕を回してるからな

 

身動きが取れん

 

「へへっ」

 

「♪」

 

ウオッカとスカーレットは無理だな、こりゃ

しっかし、やっぱりスカーレットはタキオンの従姉妹とはいえ、妹だな。甘え方がよく似てる

 

 

となると

 

「やれやれ、わかったよ」

 

 

流石はタキオン。言わずとも分かるか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オグリぃ!つまみ食いすんなや!

さっさと皿並べてまえや!」

 

「チケット、それはあっちのテーブルに

タイシンはそこのテーブルだ」

 

「会長、顧問とタキオンさんが!」

 

タマモクロスさんはつまみ食いしようとするオグリキャップさんを注意し、ビワハヤヒデさんは仲の良いウイニングチケットさんとナリタタイシンさんと各テーブルに料理を並べています

 

準備はほぼ整ったと言っても良いでしょうね

 

見張り役のスズカさんが主役の到着を告げます

 

 

 

「さぁ、皆さん

私たちの未来の後輩を歓迎しましょう!」

 

わたくしはそう声をかけました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレセン学園生徒によるダイワスカーレット、ウオッカの歓迎会

 

 

それはタキオンさんの話を聞いたスーパークリークさんとグラスワンダーさんから提案されました

 

 

それに即座に乗っかったのは何故かいるゴールドシップさんでした

 

 

というか、貴女家に居たのではありませんの?

まぁ、今更ですので気にはしませんが

 

 

 

 

それにウイニングチケットさんが

引きずられてナリタタイシンさんにビワハヤヒデさんが

 

料理がないと味気ないとの事でタマモクロスさん

手伝うと言っていたが、どう見ても味見とご飯目当てのオグリキャップさん

 

当然、わたくしもタキオンさんの友人として、会長として参加する事にしました

 

 

するとサイレンススズカさんも協力を申し出てくれました

 

 

 

 

更に何処から聞きつけたのか、シンボリルドルフさんも協力してくれる事になり、生徒会室で時間を稼ぐ事をお願いしましたわ

 

 

 

 

 

その他にも様々なウマ娘達が協力してくれているからこそ、この様な短期間で用意ができたのですわ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどねぇ

こういう趣向かい?」

 

「悪くはないだろ、タキオン?」

 

食堂の扉を開けたお姉ちゃんとお兄ちゃんが楽しそうに話してる

 

 

でも、私は食堂の中の光景に目を奪われていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには沢山のウマ娘達

 

多分、先輩だと思うけど

そして、その後ろのテーブルには様々な料理が並んでいる

 

 

隣のウオッカも目を見開いていた

 

 

 

 

 

「こほん

ようこそダイワスカーレットさんにウオッカさん

トレセン学園生徒として、貴女方を歓迎しますわ」

 

 

先頭の薄紫の綺麗な髪をした人の挨拶に、食堂中から拍手が起こった

 

 

「あ、えっと

ダ、ダイワスカーレットです!

あの、よろしくお願いします!」

 

ああもうっ、どうして気の利く挨拶が出来ないのかしら!

 

「あ、ウオッカです

あっと、歓迎ありがとうございます」

 

 

お姉ちゃんとお兄ちゃんが顔を見合わせて、笑った?

 

お姉ちゃんは私の左手を、お兄ちゃんは私の右手をとって

 

 

「改めて紹介しよう!

彼女はダイワスカーレット。私と彼の妹さ!」

 

嬉しそうにお姉ちゃんは声を上げる

 

 

うわ、また拍手が

 

 

 

そして

 

「こいつはウオッカ!

俺の妹分だ。宜しく!」

 

お兄ちゃんがウオッカの左手を取って宣言した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「中々凄い手間かけるなぁ、マックイーンさん」

 

「ええ、折角の機会ですもの。楽しんだもんの勝ちでしてよ?」

 

「は、違いないな」

 

お姉ちゃんはどこかに行って、私とウオッカはお兄ちゃんと挨拶周りしてる

 

「では、自己紹介を

わたくしはメジロマックイーン。タキオンさんと彼の友人ですわ」

 

「私はゴールドシップってんだ!

宜しくな!」

 

マックイーンさんの後ろから銀髪の綺麗なウマ娘が出てきたけど

 

「えっと、宜しく」

 

「お、おう、宜しくな」

 

「ん?どした?」

 

いや、あの、ゴールドシップさん?

今後ろのマックイーンさん、凄い顔してるわよ?

 

「あ な た は!」

 

「ひょえっ!」

 

「まぁまぁ、マックイーンさん。良いじゃないか

な?ゴルシ?」

 

怒ってるマックイーンさんをお兄ちゃんは笑いながら止めてる

 

あ、ゴールドシップさんお兄ちゃんの後ろに隠れた

 

「はぁ、仕方ありませんわね

ゴールドシップさん!行きますわよ!」

 

「いや、どこにだよ?」

 

「決まっていますわ!

今日はデザート食べ放題!デザートを食べるに決まっているでしょう!

 

「お、おう?」

 

あれ?おかしいわね

凄く頼りになる先輩だと思ったのに、なんかこう、いきなり残念感が

 

「色んな意味で凄い先輩だな」

 

・・そうね

 

 

 

 

 

「お!お疲れさんやな!」

 

「もぐもぐ」

 

「お、今度はイロモノ枠か」

 

「誰がイロモノ枠やねん!

そもそも、ウチらがイロモノなら自分らはどうやねん!」

 

「イロモノですが、なにか?」

 

「さ、さよか」

 

「もぐもぐ」

 

「つか、オグリも少しは気にせんかい!」

 

えっと、確かにこれイロモノ枠よね

 

小柄で凄い勢いのある人とずっとご飯食べてる人

 

「おい、スカーレット

あれ見ろって」

 

ウオッカが声を潜めて話しかけてきた

 

 

はぁっ?!

 

 

そこには明らかに20枚以上の空いた皿が積み重なっていた

 

嘘でしょ!まだ始まって10分も経ってないのよ!

 

 

 

 

「食べ過ぎやろ!」

 

「だが、言うじゃないか『一杯食べる君が好き』と」

 

「限度、限度があるやろ!

あ、すまんかったな。ウチはタマモクロスや、よろしゅうな」

 

「オグリキャップだ、宜しく」

 

「あ、こちらこそ」

 

「よ、宜しくお願いします」

 

 

ウオッカ、お兄ちゃんの服の裾掴んでるわね

気持ちはわかるけど

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっす」

 

「こんにちは」

 

「あ、こんにちは」

 

「体調は良好そうですね」

 

 

次に来たテーブルはオレンジ色の髪をした人に黒髪で黒い衣装の小柄な人。それに

なんて言えばいいのかしらね、これ?

 

「ミホノブルボンです」

 

「ライスはライスシャワーだよ」

 

「サイレンススズカです。初めまして」

 

 

「あ、初めまして」

 

「は、初めまして」

 

 

「実はな、スズカさんにブルボンさん

このスカーレットは多分『逃げ』も出来るぜ」

 

「ほう」

 

「へぇ?」

 

 

え、何

お兄ちゃんが言った瞬間、凄いプレッシャーを感じるんだけど!

 

 

「で、ライスさん。ウオッカは『差し』みたいだ」

 

「そうなんだ」

 

「っ!」

 

 

え?この人達マトモだと思ったんだけど

 

もしかして、ヤバいの?

しかもお兄ちゃんも『イイ笑顔』してるしっ!

 

 

 

 

 

 

 

ミホノブルボン、ライスシャワー、サイレンススズカ

 

 

トレセン学園のウマ娘ならば、誰もが知る

 

トレーニング好きな3人である

 

正確にはサイレンススズカだけだったが、いつの間にかブルボンとライスシャワーが参加していた

 

 

そのトレーニングの密度は並でなく、あのナリタタイシンとシンボリルドルフすら脱落するレベルである

 

 

 

とあるきっかけでサイレンススズカはタキオンの彼氏に重すぎる信頼を寄せており、彼の敵になる者への容赦も慈悲もない

 

 

が、いたって普通に見えるからこそ、スズカのヤバさは周知されている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、来た!

タイシン!ハヤヒデー!」

 

「相変わらず元気だなぁ、チケットさんは」

 

「ふん」

 

「挨拶まわりかい?」

 

「んなところ

ちょっと、用事あるから頼むな」

 

お兄ちゃんは席を外した

 

「では、自己紹介させてもらおう

私はビワハヤヒデ、宜しく頼む」

 

「ウイニングチケット!宜しく!」

 

「チケット、うるさいっての

ナリタタイシン、まぁ宜しく」

 

「あ、どうも」

 

「宜しくお願いします」

 

3人のあまりの落差にウオッカは呆然とした

 

 

「ダイワスカーレットだったね

君は先行タイプか?」

 

「わかるんですか!」

 

「それなりにな」

 

 

この後めちゃくちゃ盛り上がった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「や、オペラオー君、元気?」

 

その後お兄ちゃんが合流して、挨拶周りの続きとなった

 

「あら、ごきげんよう」

 

「こっちの派手なのがテイエムオペラオーでこっちのお嬢がキングヘイロー」

 

また、濃い先輩達ね

 

「テイエムオペラオーとはボクのことさ!」

 

「キングヘイロー、宜しくね?」

 

あれ?ヘイロー先輩は意外に普通?

 

「ところで、例の話は受けてくれないのかな?」

 

「あん?あれなぁ」

 

え?何

 

「今度、彼とタキオン君による劇をしたいのさ!

勿論、ボクが監修するよ!」

 

「めんどい」

 

「いや、しかしだね」

 

「断る」

 

「む。そこまで嫌なのかい?」

 

「やめなさいよ、オペラオー

キングに相応しくないわよ」

 

「わかったよ

だが、気が向いたら頼むよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ねぇ、ウオッカ

 

「なんだよ」

 

凄く個性的な先輩ばっかりね

 

「でも、面白そうだな」

 

アンタねぇ

 

ま、良いけど

 

 

 

 

 

 

 

 

この後彼と別れたスカーレットとウオッカは様々な先輩と話をして回った

 

 

 

 

 

 

 

 

タキオンの研究室

 

 

 

 

「はぁ、やっと出来たのね」

 

「協力を感謝するよ、ナイスネイチャくん

キミがいなければ、これは作れなかったよ」

 

「いや、いいんだけどね

寧ろ何で作れたのよ?」

 

「何、此処には様々な機器が揃ってる

それにカフェ君が製造方法は調べてくれた

そして、キミと私の彼が必要な物を揃えてくれたんだ。これで出来ないならお笑いだろう?」

 

「別に構いません。貴女の彼氏から対価は貰いましたから」

 

「だね、ネイチャ君の地元商店街での物資。足りない分は俺が知り合いに頼み込んで確保。マンハッタンカフェ君が知識面のサポート

これだけやって、失敗はないだろう」

 

「うわっ!

え?いつの間に?」

 

突然現れたタキオンの彼氏に驚くナイスネイチャ

 

「甘いな、ネイチャ君

タキオンいるところに俺ありだよ」

 

「ねぇ、カフェ。話が通じないんだけど」

 

マンハッタンカフェは読んでいた本を閉じ、ナイスネイチャの方を向き一言

 

「慣れましょう」

 

「慣れる訳ないじゃない」

 

 

トレセン学園の良心、ナイスネイチャの苦労は始まったばかりだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダイワスカーレットさん、タキオンさんが呼んでましたよ?」

 

「あ、どうも」

 

グラスワンダーさんが声をかけてくれた

 

でも、この人なんか苦手なのよね

 

 

良い人なのは分かるんだけど

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

け、研究室って、お姉ちゃん何してるの?

 

いや、そりゃあ実家にいた時から研究室作ってたのは知ってるけどね

 

まさか、トレセン学園にまで作るなんて、普通は思わないわよ

 

 

 

 

あ、そうね、お兄ちゃん

 

お姉ちゃんに普通を求める方がおかしいわよね

 

 

 

でもね、お兄ちゃん?

 

時と場合を選んでから、ノロけてくれない!!ほら、隣にいるマンハッタンカフェ先輩とナイスネイチャ先輩の表情が死んでるわよ!!

 

 

え?何お姉ちゃん?

 

そんな事言うなら、今日は一緒に寝ない?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうよね!お姉ちゃんが可愛いのはあたりまえよね!!

 

 

 

見事なまでの掌返しであった

 

 

 

 

 

 

ウマ娘ダイワスカーレット

 

彼女が一番好きな事は大好きなお姉ちゃんとお兄ちゃんに甘える事である、まだまだ甘えん坊な中学生であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼によるアグネスタキオンへの惚気が一段落し、マンハッタンカフェとナイスネイチャが漸く正気を取り戻した

 

 

 

その間、ダイワスカーレットは大好きなお姉ちゃんとお兄ちゃんに交互に撫でられると言う最高の時間を過ごした

 

 

 

 

 

 

 

「さて、そろそろ本題に入ろうかな」

 

「いや、アンタ達がバカップルしなかったら、もっと早くに本題に入れたと思うんですけど」

 

「そうですね」

 

アグネスタキオンの発言に即座に切り返すナイスネイチャと、彼から対価の本をもらってご機嫌なマンハッタンカフェも追撃する

 

 

 

 

 

バカップルする[動詞]

 

周りの事を考えずに恋人同士がお互いの事をひたすら褒め合う事。独り身の相手に精神的ダメージを与える行為

[類義語]イチャイチャする

 

民明書房より抜粋

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、全然物足りないけど、仕方ないね」

 

「はぁ、もういいけどさ」

 

自覚して反省の色のあるアグネスタキオンに対して、全く反省する気のない彼を見て、ナイスネイチャは諦める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、フルパワーのバカップルされた某ゴールドのウマ娘は、それから1週間に渡りブラックコーヒーしか飲めなかったとか、なんとか

 

「うっそだろ、お前!100万ゴルシパワーとか勘弁しろよ!」

と謎のコメントを残している

 

 

それに伴い、彼女のデザートは何故かトレセン学園の某メジロのウマ娘に送られてしまい、予期せぬデザートによりその人物のウエストが○センチ増えた事もここに記す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、スカーレット

目をつぶりたまえ」

 

え?

 

「はいはい、スカーレット

失礼するぞぉー」

 

ちょ、お兄ちゃん!?

 

 

彼は笑みを浮かべて、スカーレットの目を隠した

 

 

 

 

 

 

ねぇ、お兄ちゃん!どうしたのよ!

 

「心配すんなって、俺とタキオンがスカーレットに悪いことする訳ないだろう?」

 

う、それはそうだけど

 

 

ダイワスカーレットはその言葉に反論出来なかった

 

確かに姉と兄はたまにスカーレットをからかうが、それでもスカーレットが本当に嫌がることはした事がない

 

 

 

 

 

ぽん

 

 

 

 

 

え?

 

 

 

スカーレットは自分の頭に何か乗ったのを感じた

 

 

「んじゃ、我らがお姫様の初披露だな」

 

手をどかされたスカーレットは

 

 

 

 

 

え?

 

 

 

 

いつの間にか目の前にあった鏡を見て驚いた

 

 

 

 

 

「いつか言っただろう、スカーレット?

ダイワスカーレットというウマ娘は私と彼にとって、大切な娘だと

今日が何の日か忘れたのかな?」

 

 

 

そうだ、忘れていたけど今日は

 

 

「そうだ。ダイワスカーレット

お前さんの16回目の誕生日だ」

 

 

じゃあ、これは

 

 

「私達からの贈り物さ

受け取ってくれるだろうね、スカーレット」

 

 

 

 

うん、うんっ!!

 

 

 

 

 

 

 

鏡の中のスカーレットの頭には美しいティアラが輝いていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良かったじゃないのスカーレットさん

似合ってるわよ」

 

ありがとうございます、ナイスネイチャ先輩

 

「でも、作り方を知っているからって作れるタキオンさんも大概ですね」

 

「そりゃ、近所の服飾店や金属店の人の伝手をフル活用したからな

間に合わなきゃ、どうなる事かと思ったが」

 

呆れてながらも嬉しそうなマンハッタンカフェ先輩に楽しそうなお兄ちゃん

 

 

お姉ちゃん

 

「うん、何かな?スカーレット」

 

私、このティアラに恥ずかしくないウマ娘になる!

 

お姉ちゃんの目が点になった

お兄ちゃんもネイチャ先輩もカフェ先輩もだ

 

 

 

 

「くくくくっ!そうか!そうかい!!

キミはトリプルティアラを目指すというのかい!!」

 

お姉ちゃんは楽しそうに笑っていた

 

お兄ちゃんも先輩達も

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食堂もひと段落した頃、ウマ娘達は片付けも早々にグラウンドへと出てきた

 

研究室にいたスカーレット達もである

 

 

 

「さて、未来のトレセン学園生徒であるスカーレットとウオッカにささやかながら、生徒会からのプレゼントがある

しっかり、目に焼き付けるんだ」

 

グラウンドに出たお兄ちゃんはそう言った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マジか」

 

 

 

 

私とウオッカは驚いた

 

 

 

もう日が暮れそうな夕日の中に

 

シンボリルドルフ、エアグルーヴ、ナリタブライアン先輩達がいたからだ

 

 

 

「さて、私たちは生憎だが、準備も手伝えなかった

だから、君たちにプレゼント出来るものといえばこれしか思いつかなかった」

 

シンボリルドルフ先輩が苦笑まじりに言う

 

 

 

お兄ちゃんは無言でレース用のピストルを空に向けた

 

 

「さて、行くか」

 

「さぁ見ておけ、お前達が目指す道を」

 

「行くぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

圧巻のレースだった

 

世代最強とも謳われるシンボリルドルフ先輩

それと比肩し得ると呼ばれているナリタブライアン先輩とエアグルーヴ先輩

 

 

 

先輩達は私達の為だけに走ってくれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後世ではこのレースを

 

『時代を動かしたレース』

 

 

と呼んだ

 

 

 

 




であたし(ティアラ装備)が産まれたってわけ!

という話になりました

月影夜葬様の感想を元にしましたので、ご不快であれば訂正致しますが伏して感謝申し上げます!


贈り物って形にない物でも心に残ればいいなぁと言う事から今回の様になりました

ご意見、批評などございましたら気軽にどうぞ

ではありがとうございました


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 私たちの自慢の2人(後編)

2人のトレセン学園見学初日おわり!


予定より相当長くなったorz


騒動は『そうとう』長くなり申した




さって、次の日も書かなきゃ


いつも通り、捏造、独自設定しかありませんが、許して?


私とウオッカは生徒会の先輩達によるレースを見て、お姉ちゃんと帰路についた

 

お兄ちゃんは生徒会のメンバーと共に学園で用事があると言うので、先に帰った

 

 

 

 

 

「楽しかったかな?2人とも」

 

お姉ちゃんは私とウオッカに聞いてきた

 

「本当に良い思い出になりました」

 

うん!ありがとうお姉ちゃん!

 

「満足してくれたなら、私達も嬉しい限りだよ」

 

お姉ちゃんも嬉しそうだった

 

「あの、タキオンさん」

 

「何かな?ウオッカ君」

 

「兄貴は今日帰ってくるんですか?」

 

「ああ、そういえば君は彼のことをそう呼んでいたね」

 

お姉ちゃんの言葉に

 

「あ、いや、マズかったですか?」

 

男勝りで有名なウオッカも不安そうだ

 

「構わないさ

何なら、私の事も姉と呼んでくれても良いんだよ?」

 

え、お姉ちゃん?

 

流石にそれは

 

「いえ、ありがとうございます

でも兄貴だけでもじゅうぶんですよ」

 

「そうかい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そういえば、お姉ちゃん

 

「うん?」

 

あたしとウオッカのサイズ聞いてきたのは、何で?

 

「サイズ?

なるほどねぇ

明日には分かるさ」

 

そうなの?

 

お姉ちゃんは少し考えてから、楽しそうに笑っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレセン学園では食堂の大掃除と並行して、スーパークリークと彼主導の元でシンボリルドルフ、エアグルーヴ、メジロマックイーン、ナイスネイチャ、ゴールドシップがとある部屋に集まっていた

 

 

「つまり、制服を仕上げると?

この短期間でか」

 

「んにゃ、制服は専門の業者がいるんだ

下手に手を出して大火傷する趣味はない」

 

「どう言う事だ?」

 

「そういうことですのね」

 

「どういう事だよ、マックイーン?」

 

「つまり、彼氏さんはウオッカさんの衣装を作るつもりなんですね?」

 

「そー言う事」

 

全員が納得した

 

「だが、貴様は服など作れるのか?

とてもそうには見えないが」

 

「おいおい、エアグルーヴ先輩

そりゃ、言い過ぎだって

このゴルシちゃんの新しい勝負服を作ったのはコイツなんだぜ?」

 

「なるほど、そうでしたのね」

 

マックイーンは漸く納得した

 

 

ライアンやパーマーにドーベルから聞いていた赤い勝負服

 

メジロ家のお抱えの裁縫屋に聞いても分からないはずだ

 

 

そして、彼のことを殊更気に入っているゴールドシップなら、自分のサイズを取らせる事もあり得るだろう

 

 

気難しい性格のゴールドシップだが、今年に入ってからは伸び伸びしているとライアン達からも聞いていた

 

 

ゴールドシップというウマ娘は気に入った相手には隠し事をしないウマ娘なのだから

 

 

 

 

「折角兄貴と慕ってくれてんだ

兄貴らしい事の一つでもしてやりたくなるだろ?」

 

「それでこのメンバーというわけか」

 

 

再度、この場にいる全員が納得した

 

 

 

 

 

スーパークリークは家事万能

 

エアグルーヴは母親から家事は一通り仕込まれている

 

ナイスネイチャは家の手伝いをしていたので裁縫には自信があるとの事

 

シンボリルドルフ、メジロマックイーン、ゴールドシップは家の都合とはいえ、ある程度以上の水準の腕を持っている

 

 

本来ならば、タマモクロスも加えたかったが、今日の食堂での一件で疲れているだろう事から除外した

 

 

だが、これだけのメンバーがいればどうにかなる!

 

 

 

 

 

そう思わせるメンバーだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

激しい討論の結果、ウオッカに送る衣装はジャケットタイプの物となった

 

 

 

本来なら、材料の不足で終わっていたが、そこはトレセン学園の良心ことナイスネイチャによる活躍が光った

 

 

何せナイスネイチャが頼み込むとどこの店も協力的になってくれた

 

これにはシンボリルドルフも目を丸くした

 

 

 

彼は彼で地元の服飾店の店主に相談し、図面を起こしてもらった

 

曰く

「伊達にこの仕事で40年飯を食ってる訳じゃない」との事だった

 

 

 

そして、図面はFAXにより送られ、材料はトレセン学園の正門前までナイスネイチャとシンボリルドルフが受け取りに行った

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、僅か3時間程でウオッカのジャケットが完成した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、彼は急ぎ足で自宅へと向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただい、ま?」

 

あ、お兄ちゃんが帰ってきた!

 

「おかえり、随分遅かったね」

 

「許してくれ

なんでも「ん?今なんでもって」頼むから、落ち着いてくれませんかねぇ?」

 

「無理だな」

 

「ひどぅい」

 

 

ああ、いつものお兄ちゃんとお姉ちゃんだなぁ

あれ?どうしたのよ、ウオッカ

 

「え?兄貴ってこういう人なのか?」

 

どうかしらね

正直な話をいうとね、あたしにもよく分からないの

 

「は?いや兄なんだろ?」

 

そりゃね、お姉ちゃんの結婚相手だし

 

「え”」

 

どうしたのよ、そんな鳩がマシンガン撃ち込まれた様な顔して?

 

「いや、それ残らねぇだろ」

 

あたしも聞いた話だけどね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレセン学園に転校する事になったお姉ちゃんとお兄ちゃんは終業式で校長先生から応援されたんだって

 

「マジか。あの堅物親父が?」

 

そうみたいね

 

 

それで

 

「アグネスタキオン君と君にはこれから困難が待ち受けると思う

だが、それに挫けずに自分たちの道を迷わず進んで下さい」

 

「貴女達の進んだ道は必ず誰かの道標になるはずです

苦労も困難も多いでしょう。それでも貴女達2人ならば乗り越えることが出来ると私は信じています。頑張って下さい」

 

みたいな事いったみたいね

 

 

「ちょっと無責任過ぎねぇか、それ」

 

まあそうよね

 

 

 

「校長先生。大丈夫ですよ、俺はタキオンを支え続けますから

何があろうと、誰に言われようとも」

 

って言ったらしいわね

 

「凄えな、兄貴」

 

そうしたらね

 

 

「お、ついに婚約発表か?」

 

って同級生の1人が言ったらしいの

 

「どうなんだよ、それ?」

 

どうやら、彼なりの応援だったみたいよ?

 

 

 

それでお兄ちゃんは

 

 

 

 

 

「そうだな

此処で宣言するのもあり、か?」

 

って言ったらしいの

 

 

「良く学校側が止めなかったな」

 

なんでもいつもはうるさいはずの学年主任と教頭が止めようとする教師を制止してたって話よ

 

 

 

それでね

 

 

「アグネスタキオンさん。俺は君のことが好きです。これからも貴女の傍で貴女を支えさせて下さい」

 

って言ったらしいわ

 

 

「嘘だろ」

 

ほんとらしいわよ?

アンタはそういう恋バナに興味持ってないフリしてたから知らないのよ

 

「うぐ

でも、そんな告白したのか、兄貴って」

 

 

そうね

 

 

それでお姉ちゃんも

 

 

 

 

「はい。いつまでも貴方のそばで一緒に生きていきたいです」

 

 

 

そう言ったそうよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後はすごい騒ぎだったみたいね

 

 

何たって、教師の何人かが持ってる書類を投げて簡易的な紙吹雪を演出したり、放送部はウエディングソングを流したりしたそうよ

 

 

 

「ノリ良すぎだろ」

 

 

 

最後に体育館全体に響くキスコールで

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

お姉ちゃんとお兄ちゃんはキスしたそうよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時の体育館は正にお祭り騒ぎだった

 

 

タキオンと彼の関係を良く知る友人達は2人を胴上げしたり、知らない者達はその間に即席のウエディングロードを作ったり、止めるべき教員もまた、紙吹雪にした書類を回収してから、近所のカメラマンを手配したりした

 

勿論、後でかなりの問題に発展したが、頑として学校側はこの事について謝罪しなかった

 

曰く

「生徒の新しい門出を祝っただけ」「少しだけやり過ぎた」との事だそうな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その時の写真ないのかよ?」

 

あのねぇ、皆アレだけは見せてくれないわよ

 

 

「そうだろうなぁ」

 

ウオッカだってそんなものがあったとしたら見せないでしょ?

 

「だよなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウオッカとて立派な少女である

 

 

良く少年っぽいと知人や両親にも言われるが、それでも彼女とて憧れがないわけではない

 

良く話をするダイワスカーレットは彼女と違い、女性らしい恵体をしているのもまた、ウオッカの性別を誤認される要因でもある

 

 

 

 

 

 

 

 

ウオッカはウマ娘としての本能とかは正直どうでも良いと思っていた。しかし、必ず病院に行くと「ウマ娘は走るのが好きなもの」と言われる

 

だからなのだろう、両親はトレセン学園に行けと言う

 

 

別に構わない

 

どうせ、地元にいてもスカーレット以外で親しい奴なんていない

 

スカーレットとは良く全力で競うが、それもあくまで他に誰もいない時に限る

 

 

 

確かにウオッカやスカーレットはウマ娘で、身体能力は他者よりあるかも知れない

 

でもそれだけなのだ。ウオッカにせよ、スカーレットにせよ、まだ中学生になったばかり

 

 

 

だから不意に心細くなる事もあるし、誰かに話を聞いてほしいと思う事もある

 

両親は優しくしてくれてこそいるが、明確にウオッカと一線をひいている

 

兄妹はいない

 

 

ウオッカはいつしか、走ることが自分の存在を認めさせる事になると思い始めていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから逃げるようにトレセン学園への入学を希望したのだ

 

 

 

トレセン学園なら、この孤独感を忘れさせてくれると思うから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなある日、スカーレットとか突然

「週末にトレセン学園へ見学に行くけど、アンタはどう?」と連絡がきた

 

 

 

 

 

トレセン学園は今年出来たばかりで、そんな話は聞いたことがない

 

 

 

 

だが、真面目なスカーレットが嘘を言うとも思えない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウオッカはその提案にのることにした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、見学に来て驚いたのはスカーレットに兄がいるということだった

 

姉については彼女と同じウマ娘であると聞いたことはある

 

 

だが、血が繋がってない兄と慕う男にスカーレットは遠慮なく甘えていたのは衝撃的だった

 

 

 

 

 

 

ダイワスカーレットという少女は彼女から見ていると、皆が言っているような優等生とは思えない

 

あくまで揉め事を起こしたくないから、優等生のフリをしているのだろうと思っていた

 

 

 

 

そんなスカーレットが男に会って早々に飛びつくように抱き着くなど、ウオッカには想像も出来なかった

 

 

 

 

 

そして、ウオッカはスカーレットに確かに嫉妬したのだ

 

 

スカーレットには自分を理解してくれる姉がいる。しかもそれは同じウマ娘だというではないか

 

更に兄と慕う男もいる

 

 

 

 

 

 

自分にはないものを持っているスカーレットに嫉妬しないほど、ウオッカはまだ大人ではない

 

自分自身が情けないと思っていても、止められない醜い嫉妬

 

 

 

 

 

 

 

それはトレセン学園で彼女の姉に会って、更に甘えるスカーレットを見て大きくなっていった

 

 

 

 

 

 

 

 

だが

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ、ウオッカくん。この二日だけでも、甘えてくれてもいいんだぞ?」

 

そうスカーレットの兄は言った

 

 

 

 

 

自分を憐んでいるのか?とウオッカは感じた

 

 

しかし、男の目はウオッカ『だけ』を真剣に見つめていた

 

口調とは裏腹に

 

 

 

 

 

 

 

 

甘えて良い筈がない

この人はスカーレットの兄だぞ

この人も自分のことを避けるのではないか?

 

 

 

頭の中に疑問の声があがる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、ウオッカの幼い部分は叫ぶのだ

 

 

 

そうであっても、助けて欲しい

私を見てほしい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ウオッカは一生の宝となる兄を手に入れたのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女が後に自分のトレーナーと付き合う事になった際に、彼女とトレーナーがまず挨拶したのは両親でも理事長でもなく、ウオッカが兄と慕う男だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、飯だぞー」

 

 

 

 

 

 

 

呼んでいる

ウオッカとスカーレットが大好きな兄が

 

 

スカーレットと顔を見合わせて

 

「はーい」

 

「すぐ行きます」

 

 

 

 

兄と慕う男の元へと駆け出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイワスカーレットとウオッカ

 

 

 

 

後に

『シンデレラ達の希望』

 

そう呼ばれる事になる

 

 

 

 

 

 

 

 

 




と言うわけで今回はウオッカの内面と終業式の騒ぎに触れてみました


創作だから、許して?


トレセン学園見学二日目についても、鋭意製作中なので、気長にお待ちください

というか、お気に入り200件突破とか、うせやろ?

あ”あ”ー心臓がぴょんぴょんするんじゃよー(ごちうさ難民感)


とりあえず完結はさせるので、気長にお待ち下さい


文量が少ない?

仕様なので『しよう』がないと諦めて下さい


ではありがとうございました


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 夜明けに向かって(前編)

諸事情により、来週末まで更新が滞ります

日曜はもしかしたら、更新できるかもしれませんが


ご了承ください




誤字脱字のご指摘ありがとうございます


「おはよう」

 

「おはようございます」

 

トレセン学園見学の翌日、アグネスタキオンとダイワスカーレットは朝食を作っている彼と彼を手伝いたいと全身でアピールしているウオッカに挨拶した

 

 

 

「よ、今日は珍しく自分で起きたな?」

 

彼はタキオンに少しばかりの皮肉を込めた挨拶をした

 

 

 

勿論、その間も朝ごはんを作る手は止まらない

 

 

「なに、スカーレットが起こしてくれてね」

 

「把握」

 

 

 

アグネスタキオンは基本的に彼が起こしに来るまでは布団から出ない

 

彼に朝一番、声をかけてもらうのが、タキオンの日課であった

 

 

 

 

その後にバカップルするのが自然の流れではあるが、ここは2人の家である

 

問題はない

 

 

 

 

 

しかし、今日は可愛い妹であるスカーレットがいるのだ

 

真面目な彼女が姉を起こすことを躊躇うことはない

 

 

大好きな兄が朝ごはんを作っているのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな会話をしている彼の後ろで、そろそろとしているのがウオッカである

 

 

昨日、彼女はアグネスタキオンに密かにおねがいして、一日だけ兄と一緒の布団で寝たいと頼み込んだ

 

 

 

ウオッカはダメ元で頼んだが

 

 

「ふぅむ。そうだねぇ

まあ良いだろう。ウオッカ君の好きにしたまえよ」

 

と拍子抜けする程にあっさり認められた

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ウオッカとスカーレット、アグネスタキオンのさんにんがかりの説得により、彼とウオッカは一緒に寝ることが出来た

 

 

 

 

布団の中でいろいろな話をしたウオッカは、今まで望んでも手に入らなかった温もりの中で眠ることができた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝目が覚めてみると、目の前に彼の顔があり、一分間ほど色々と葛藤したのはここだけの話であるが

 

 

 

 

しかし、ウオッカも少しばかり冷静になってみると、明らかに恥ずかしいことをしてしまった事に今更ながら気が付いた

 

 

欲しくても手に入らなかったひとときとはいえ、『兄』という甘えられる存在

 

自分を見ていてくれる先輩達がいるトレセン学園

 

それらを一日のうちに見て、体験して、手に入れたのだ

 

 

 

 

 

舞い上がらないはずもなかった

 

 

 

 

 

 

 

そして、その興奮のままに兄と慕う人物と一緒に寝たのである

 

 

うまぴょいやうまだっちしてないとはいえ、年頃の少女としては恥ずかしい事である

 

 

 

 

 

そして、ウオッカはどちらかというと男らしい性格の持ち主

 

自分のキャラに合っていないと自覚するが故に、とてつもない羞恥の感情に襲われた

 

 

 

 

 

そして、迷惑をかけた兄の手伝いをせめてしようとしているのだが、手際がよさすぎて、手伝いを申し出る事ができない

 

でも、何か手伝いたい

 

 

そんなウオッカの奥底にあるいじましい乙女心が彼女の行動に表れていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、ウオッカは食器を並べるのと料理を運ぶことしか出来なかった

 

 

しかし

 

「助かる」

 

 

そう言って頭を撫でてくれる兄の手は、昔自分を撫でてくれた両親の様に温かかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、きょうもトレセン学園に行くとしようか」

 

「なぁ、タキオン。何度もルドルフにも言ってるけどな?俺はトレセン学園の生徒じゃねぇぞ?」

 

「そうだね」

 

「いや待てや。何でそれがどうした?みたいな顔をするんだ!」

 

「それが問題になるのかい?」

 

「口にしやがりましたよ!」

 

そうよね、お兄ちゃんはウマ娘でもトレセン学園の生徒でもないのよね

 

何であんなにトレセン学園の生徒と仲が良いのかしら?

 

「だよな、兄貴ってすげえな!」

 

いやアンタ、それでいいの?

 

 

 

 

 

 

 

 

当然、この謎の影響力にはトレセン学園理事長公認組織『アグネスタキオンを愛でる会』の存在があった事はいうまでもないだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時期にはかの組織の規模は更に拡大し、

 

 

会長

 

メジロマックイーン

 

 

副会長

 

ナリタブライアン

シンボリルドルフ

 

 

特別顧問

 

秋川やよい

駿川たづな

 

 

名誉顧問

 

タキオン彼氏

 

 

外部協力者

 

〇〇町内会一同

〇〇小学校PTA

〇〇中学校教職員一同

ハッピーミーク

ゴールドシップ

メジロライアン以下メジロ家一同

衆議院議員〇〇〇〇(町内会長の伝手、タキオン達の地元選出議員)

同議員〇〇〇〇(トレセン学園のある地域選出)

トレセン学園警備員一同

 

 

と地味に勢力を拡大していた

 

 

 

 

これには、これから増えるだろう不足の事態に迅速に対応するべきという、特別顧問の強い意見が反映された形であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、この事を知った彼は

 

「この国、大丈夫か?」

と真剣な表情で呟いたという

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、いつもの掛け合いをしながら仲良く朝食を食べた4人はトレセン学園へと向かった

 

 

「ねえお兄ちゃん?」

 

「お?どったよ?」

 

スカーレットは疲れたように

 

「あのね

せめて食事中くらいはバカップルするのやめない?

 

「無理」

 

即答だった

 

恐らく早押しクイズに出たならば、最速の反応速度だろう

 

 

 

「確かに無理だねぇ」

 

タキオンも同意した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そもそもの話、此処は彼女と彼が唯一自然体でいられる場所

 

 

 

であるならば

 

「リア充自重しろ」

「このバカップルが(血涙)」

「お前らもう結婚

あ、こいつら婚約してたわ(白目)」

「ねぇ、彼氏のいない私たちに見せつけてるの!」

「あ”あ”ー、今日もブラックコーヒーがうまい」

「もう結婚式しろよ」

「寧ろ式場が来なさいよ」

「何故誰も牧師を呼ぼうとしないのか?」

「ちくわ大明神」

「誰か、コイツらに治療しろ」

「(バカップルにつける薬は)ないです」

「現代医療の限界」

 

などと散々言われてきた2人にとっては理想郷である

 

 

 

 

 

 

幸か不幸か、2人に知る由もないが、この2人はタキオンの機嫌によってはお風呂も一緒に入る程である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

描写?

 

この小説は全年齢対象です

 

『うまぴょいはしない、させない、描写しない』の三原則を遵守しております

 

 

 

作者はブラックコーヒーを飲みながら、書いてるのです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サ〇ゲにも〇〇〇〇にも怒られるからね、仕方ない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

であればこそ、2人からすれば食べさせ合いなどジャブにもならない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時に知らないということは幸運でもあるのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とまぁ、心温まる(当社比)やりとりをしつつ、トレセン学園への道中を仲良く歩くのであった

 

 

 

 

 

 

 

その周辺に周囲に溶け込めない黒服の人間が複数人いた事はタキオンと彼しか知らない事である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレセン学園通用門、通称『バカップルの門』(トレセン学園通用門担当警備員命名)より、4人は入校する

 

タキオンと彼は指定の手続きを

スカーレットとウオッカはメジロマックイーンより受け取った書類を提出する

 

その書類の裏側に白地の書類に白文字で『アグネスタキオンを愛でる会承認済み』とやたら達筆な文字で書いていたのに2人が気付かなかったのは多分幸運なのだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、4人は無事に学園内に到着した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには

 

 

「きましたね」

 

「おはよう、2人とも」

 

と何故かジャージ姿のミホノブルボンとサイレンススズカ

 

 

 

「お、おはよう」

 

「2人ともおはよう。今日は絶好のトレーニング日和だな」

 

言葉こそ弱気だが、妙なオーラを振り撒くライスシャワーに苦笑いのシンボリルドルフがいた

勿論、2人もジャージ姿である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スカーレットとウオッカはウマ娘である

 

故に本能というものも高いレベルで備わっている

 

 

 

その本能が彼女達に警告する

 

『逃げろ』と

 

 

 

 

 

 

だが、スカーレットは姉と兄に問いかけた

間違いであって欲しい、と

 

 

だが、

 

 

「折角トレセン学園に来ておいて、トレーニングを体験せずに帰るのは勿体ないだろう?」

 

「だから、2人にとって勉強になるウマ娘に声をかけた」

 

 

『違う、そうじゃない』

 

ダイワスカーレットとウオッカは2人ともそう思った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも、私たち私服だし」

 

そう、2人とも今日帰るために荷物を持ってきたし、私服である

この服でのトレーニングは流石に無理がある

 

そう思っていた

 

 

 

「バクシーン!

タキオンさん!ジャージ2着持ってきましたよ!」

 

 

 

しかし、現実は非情である

 

 

 

トレセン学園のまとめ役の1人であるサクラバクシンオーがジャージを持ってきたのだ

 

 

 

 

 

 

いうまでもないが、前日に2人のサイズを聞いていたのは、ウオッカの勝負服を作るためだけではない

 

2人のジャージを作るために用意したのだ

 

 

 

「あはははは」

 

「マジかよ」

 

 

 

 

 

 

逃げられない

 

 

 

 

 

 

そう思ったダイワスカーレットとウオッカの乾いた嘆きだけがその場に残った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




期待する以上は、こうなります


彼とてタキオンに対抗するために頭のおかしいトレーニングや戦術論などを構築してますしねぇ






なお、4人の中では会長が唯一の良心にして、ストッパーです

会長ならいけるやろ(なげやり)


感想への返信が大幅に遅れる事をお許しください


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 夜明けに向かって(後編)

短くなってますが、来週末まではこのくらいの文量になると思います

ご堪忍ください


『トレーニング大好き三人衆』(会長を添えて)により、素敵なトレーニングへと導かれた2人と別れたタキオンと彼はトレセン学園武道場に来ていた

 

 

 

武道場といっても、来年から学園に来るトレーナー達のトレーニングジムになるのではあるのだが

現在はまだ機材がないために、ジムと書いて武道場と読む訳の分からない状態にあった

 

 

主な利用者はグラスワンダーと彼であり、彼より剣道の基礎を教えて貰っていたりする

 

 

 

 

 

話を戻すが、ウマ娘とトレーナーの間には埋め難いフィジカル面における差が存在する

 

 

であればこそ、ウマ娘のみでなく、トレーナーもまた成長しなければならない

 

ウマ娘はトレーニングにより身体能力が更に向上するが、トレーナーは自ら鍛えなければ、差は開く一方なのだから

 

 

更に言うなら、タキオンのように理性的?なウマ娘ばかりではないのである

 

 

 

 

 

 

 

以前ウマ娘と一般男性の結婚率に触れたが、その殆どはウマ娘によるうまぴょい、うまだっち、すきだっちであり、抵抗出来ない相手はそのまま人生の墓場へと後着した

 

 

故にゴールしたとしても、相手との間に絆が生まれる事は少なかったのだ。『ウマ』娘だけに

 

 

 

 

 

後年、サイレンススズカのお気に入りである某ウマ娘の脚を勝手に触ったとあるトレーナーは

 

「あのジムでのトレーニングが無ければ、即死だった」と語るが余談である

 

 

 

 

 

 

そんなところで何をしているかと言えば、アイドルウマ娘であるカレンチャンを外部より特別招集し、ウマ娘のライブトレーニングのコーチをしてもらっていた

 

 

 

 

来年より多数のスポンサーがつくウマ娘達によるレース。カレンチャン自身は未だ参加を表明していないが、一着のウマ娘を中心としてレース参加者全員でのウイニングライブ

 

これについては、秋川家のみならずとも期待していた

 

 

 

 

 

 

では何故彼もいるのか?

との話だが、トレセン学園のスポンサーよりアグネスタキオンとのダブルセンターによるシンデレラライブを切望されていたからである

 

 

 

彼に言わせれば

 

「面倒」

の一言で片付けられる話であるが、トレセン学園のスポンサー複数からの依頼ともなれば、断るのは難しい

 

 

 

 

一応、住宅を用意してくれた議員の代理人からは、断っても問題ない。と言われているが、彼の生活基盤を支えているのはタキオンとの繋がりを周囲が求めているのも承知している

 

 

 

 

 

 

 

故にこそ、彼に否やという事はできなかった

 

 

 

 

であれば、キチンとやり切る必要がある

 

 

 

 

 

 

 

 

形は既に出来ている

 

 

 

 

恐らく、予定されている夏までには仕上がるだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、せっかくの妹と新しくできた妹分がいるのだ

 

 

 

 

 

 

 

タキオンと彼の形を伝えるのも一興である。そう2人は考えていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アグネスタキオンはなんだかんだ言っても優秀なウマ娘であり、ダンスの振り付けについてはある程度のレベルにまで到達していた

 

 

問題は相方の方だが、リズム感が壊滅であろうとも、ことアグネスタキオンに関わる事であれば問題はなかった

 

 

 

伊達にエアグルーヴとナリタブライアン相手に初見でとはいえ、勝ってはいない

 

 

相手の些細な仕草より、感情や情報を読み込む事に力を注いだ彼だ。ましてや、その相手としていたのは他ならぬアグネスタキオン

 

 

 

 

 

 

彼にとって、タキオンのリードに合わせるなど造作もない事であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曲名は『うまぴ〇〇伝説』

 

というものであり、割とアクションも多彩なライブとする予定であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バックダンサーはメジロマックイーンを始めとした『アグネスタキオンを愛でる会』トレセン学園所属メンバーであり、密かに秋川やよい理事長や駿川たづな秘書も参加してたりするが、概ね問題はなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

余談ではあるが、理事長室で秋川氏と駿川氏が練習していたのを偶々目撃したエアグルーヴは笑顔の2人により、『自発的』にダンストレーニングに参加させられていたりする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、こうてい(校庭)でこうてい(皇帝)がこうてい(肯定)しなかったトレーニングはシンボリルドルフの精神的疲労を犠牲とする事で無事に終了した

 

 

まぁ、当の3人はトレーニングの量が足らないと思っていたが、あくまでも時間稼ぎが主目的の為に『軽め』(3人基準)のトレーニングで妥協した

 

 

 

シンボリルドルフは後日、アグネスタキオンによりゲロ甘に甘やかすよう言われた彼により、思わず幼児退行する程甘やかされた

 

 

 

 

その事を聞いた某ウマ娘は同室のウマ娘に同じことをしようとするも、相手はそれを拒否した為に少しばかり問題となったが、必要なぎせいであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、トレーニングに励んだ6人はそのままシャワーを浴びて、ダイワスカーレットとウオッカは私服に、他の4人は勝負服に着替えた

 

 

 

 

 

 

そして

 

 

 

トレセン学園ダンスホールにて

 

 

 

 

観客2人の『シンデレラライブ』が開催された

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

内容についての描写は省くが、メインはアグネスタキオンであり、彼は合いの手を主に担当した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

未完成ながらも、そのライブに2人は見入っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

某ウマ娘がウエディングドレス姿でライブ参加させられようとした際には、同じ生徒会メンバーと共に猛烈に反対したが

 

某人物より

 

「ん、ああ

そっか、1人は寂しいもんな。じゃ、もう一着頼むかな?」

 

と割と酷い事を言われた2人はその人物の彼女に文句を言ったそうだが、事実関係は不明である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へへっ」

 

「アンタねぇ、いい加減にそのニヤケ顔やめなさいよ」

 

怒涛のトレセン学園見学を終えた2人は帰りの電車の中で話をしていた

 

 

 

スカーレットが言う通り、ウオッカはひたすらご機嫌だった

 

 

 

「つってもよ、こんなの用意してくれるなんて思わないだろ?」

 

「まーね」

 

 

ウオッカの私服の上にはスカーレットの兄が用意してくれたジャケットがあった

 

 

 

 

別れ際にぽんっと渡されたのだが、気になって見てみれば既製品ではないと一目でわかるジャケットだった

 

確かに既製品に比べるとやや見劣りするかもしれない

 

 

だが、それでもウオッカにとってこれは宝物だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後にウオッカがG1を制した時のインタビューにおいて、ウオッカはこのジャケットを着用していたとされる

 

 

 

 

 

 






できれば、ライブ内容も書きたかったのですが


作者の能力がないようなので諦めました





というか、お気に入り増えスギィ!

ありがとうございます!!!


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 じぶん

くらいものの続きとなります


携帯止まってたけど、何とか回復できたし、コロナにかかってたけど回復出来たからヨシッ!(現場猫)



暫くシリアス路線となります


 彼は彼女が何を言っているのか、全くわからなかった

 

彼女は言っている

 

「お前は誰だ」

 

 

それには胸を張っていえるだろう

 

アグネスタキオンの彼氏だと

 

 

 

 

「違う。確かにアンタはアグネスタキオンの彼氏なんだろう。けど、それ『以外』のアンタはいるのかって聞いてんの」

 

 

ナニヲイッテイル?

 

 

 

 

幼い頃から同じ時を過ごしたアグネスタキオン

 

彼女は自分にとっての目標であり、希望であり、道標でもあった

 

 

 

 

 

 

 

 

目標であるからこそ、己を磨いた

彼女の傍にいれるように

 

希望であるからこそ、守りたかった

本当は弱い彼女を支える為に

 

道標だからこそ、彼女の輝きを失わせたくなかった

彼女が沈んでいるところなど見たくもないから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昔の彼にとってはタキオンが1で、その他は例外なく0だった

 

 

 

 

それのどこがおかしいと言うのか?

 

 

 

 

 

 

 

弱い自分がこの手に抱えきれるモノなど多くはない

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、タキオンの従姉妹であるダイワスカーレットという少女もその範疇に入った

 

 

タキオンの希望だから。という理由で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、此処で彼の中に疑問が生じた

 

 

 

ありえないとは思うが、タキオンとスカーレットが対立した場合はどうすれば良いのか?と

 

 

 

 

 

 

タキオンの側にいるのが正しいだろう

 

だが、優しい彼女はスカーレットを思って心を痛めるだろう

 

 

 

 

スカーレットの側にいれば、スカーレットは守れてもタキオンの心は傷つくだろう

 

 

そしてアグネスタキオンという少女はそれを隠せてしまう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の中で少しずつ歯車が狂い始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、トレセン学園という新たな環境に身を置いたタキオンはその輝きを更に増した様に見えた

 

 

それ自体は歓迎すべきだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

問題とすべきは、己の感情が徐々にコントロール出来ていなくなっている様に感じれる事だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そもそも、外野が何を言おうともタキオンの耳に入らないのであれば、それは全て些事であった筈

 

 

 

ところがトレセン学園に来た初日から、生徒会メンバーとのあのやり取り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まるで幼い頃の自分ではないか

 

 

 

 

 

 

弱く、タキオンを守るための術も知らず、ひたすら足掻いていたあの頃の自分

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、彼はかつてのタキオンによく似た少女に出会う

 

 

 

 

 

 

 

バカなやり取りをして、くだらない話をして、そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それを自覚した時、彼の中でナニカガ壊れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アグネスタキオンにとって、ウマ娘達にとって『理想の人物』という虚像が無くなれば、彼には何も残らない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の中にあるのは、ただアグネスタキオンの為に

 

それだけなのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

呆然とする男

 

 

 

 

 

ナリタタイシンは目の前の男がここまで無防備な所を見た事がない

 

 

タイシン自身はあまり人付き合いを好んでいない事もあってか、チケットやハヤヒデ経由の話ではあるが、基本的にこの男はアグネスタキオンの側以外では気を抜かないと聞いていた

 

 

 

様々な噂を聞いたことがあるが、とても噂の様な頼りがいのある人物には見えなかった

 

 

 

寧ろ、道に迷っている子供のような印象すら抱く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼はとりあえず目の前の少女を保健室に連れて行った

 

 

「ちょっ」

 

 

彼女をベットに寝かせると、彼は逃げるようにその場を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナリタタイシンは腰が抜けていた自分を叱責した

 

 

『此処で動かないとか、絶対に駄目』

 

タイシンは強迫観念にも似たそれに突き動かされた

 

 

 

 

 

 

動かない?

ふざけるな。私は、ナリタタイシンはそう言った周囲の声に反発してきたのでは無かったのか?

 

 

体格が小さいから、パワーがないから、スタミナがないから

 

 

 

そんな周りの声に反発して、このトレセン学園でナリタタイシンというウマ娘を認めされるのでは無かったのか?

 

 

 

その為に連日トレーニングに明け暮れていたのでは無いのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

確かにこの男とタイシンは多分、そりがあわないのだろう

 

 

だからといって、自分の知人の恋人がおかしくなっているところを放置できる程にナリタタイシンというウマ娘は薄情でも、無情でもない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから

 

 

 

 

 

 

 

「この、待てっての!」

 

 

走れ

 

 

 

 

 

 

走れ

 

 

 

 

 

 

 

走れ!

 

 

 

 

 

 

目の前の男がどうではない

 

 

ナリタタイシン(自分)ナリタタイシン(ウマ娘)であるために

そして、アグネスタキオンの友人であるために

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タイシンのスタートが遅かったとしても、あの男は生徒会のエアグルーヴとナリタブライアンを攪乱したとはいえ、走りで上回った規格外である

 

 

にも関わらず、タイシンが保健室を出た時にはまだ視認できる所にいた

 

 

 

 

 

そして、タイシンの姿を見て怯えるかの様に男は校舎の裏側へと走っていった

 

 

 

 

今の時間で校舎裏にいるのは、エアグルーヴと自主トレーニングをする自分くらいである事は他ならぬタイシンが良く知っている

 

 

 

 

 

「待てっての!」

 

 

 

タイシンは上履きのままで校舎裏に駆けて行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男は混乱していた

 

 

 

 

何故、僕は此処にいる?

タキオンの為と言いながら、タキオンの傍に居ないではないか?

 

 

 

タキオンの姿を求めて、彼は校舎裏へと来ていた

 

 

 

 

 

 

 

 

誤解されがちであるが、彼は決して社交的でも明るい性格でもない

 

寧ろ、内向的で閉鎖的な性格であった

 

 

 

それをアグネスタキオン(好きな女)の為に必死で自分を偽って来ただけなのである

 

 

 

 

 

そうしなければ、幼い頃のアグネスタキオンを取り巻く状況をどうにも出来なかったから

 

 

 

 

 

 

『いや、違うだろ?』

 

と彼の中のもう一人の自分は囁く

 

 

『お前が自分を偽ったのは、アグネスタキオン(好きな女)の為なんかじゃない。お前が自分自身に自信を持てなかったからだろ?

 

 

 

 

彼は必死に否定する

 

『そうだよなぁ

アグネスタキオン(好きな女)の為って言い訳があれば、大抵の事は誤魔化せるもんなぁ?』

 

 

違う

 

 

『アグネスタキオンの両親も、お前の両親も、周りの大人達も、同級生達も、お前にとっては邪魔だったんだろ?

だから、お前は自分にアグネスタキオンを依存させた

そうすりゃ、お前はアグネスタキオン(好きな女)の為に必死になっているって見えるもんなぁ?』

 

 

違う

 

 

『違わねぇよ。じゃなきゃ、もっと惚れた女を周りに理解させる様に動けた筈だ

断じて、逃げる様にトレセン学園(此処)に来る必要は無かっただろう?』

 

 

違うっ!

 

僕はただ、タキオンと一緒に居たかった

ただ、アグネスタキオン(好きな子)に笑って欲しかっただけなんだ!

 

 

『は

だから、自分の好きな女を自分に縛りつけたってのか?

自分一人じゃ、何も出来ない奴が?』

 

 

内なる自分は嗤う

 

 

『そもそも、お前の今出来ている事はお前が心底嫌っている大人たちによって手に入れたもんだろうが?

笑って欲しいなら、簡単だろ?

お前が消えりゃあいいんだよ

 

 

き、える?

 

 

『そうだ!

お前は嘘の塊だ!そんな醜いモンが傍にいたら、アグネスタキオンの邪魔だろう?

自分が何なのかも分からないお前如きがアグネスタキオンの傍に居る資格なんてないんだよ!』

 

 

 

資格、ない?

 

僕がタキオンの傍にいると、タキオンのじゃまになるの?

 

 

 

 

彼が呟くと

 

 

 

ふざけないでよ

 

 

 

 

 

 

誰かの声がした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナリタタイシンは男を追いかけていると、男が急に頭を抱え出したのを見た

 

 

 

そして、焦点の合わぬ目でぶつぶつと何かを呟いていた

 

 

 

 

 

 

殆ど聞き取れなかったが

 

 

「タキオンの傍にいると、タキオンの邪魔になるの?」

 

という言葉だけは不思議とはっきり聞こえた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふざけないでよ

 

 

 




という訳で支離滅裂な彼でした


実は彼の内面はボロボロだけどだったというお話




バッドルートの方が早く書き終わってたのはここだけの秘密(小声)


また、のんびりこうしんしますので、宜しければお付き合いください


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 えらぶということ

難産でした

というか、お気に入り数が洒落にならないので怖いですが、どうぞ







ナリタタイシンは自分の中に生まれた感情を制御しきれなかった

 

 

目の前の男は事もあろうにアグネスタキオンといる事が邪魔になると言ったのだ

 

 

 

 

 

このトレセン学園で誰がそんな事を思うと言うのか?通用門(バカップルの門)の警備員?

 

あり得ない

確かに噂では警備員の詰所には常にブラックコーヒーが5ケース程ストックされているだの、そこに配置される警備員はコーヒーが飲めなければならない決まりがあるだの聞いた事はタイシンもある

 

 

だが、独り身の警備員達とて、あの二人については好意的に見ているとチケットやハヤヒデから聞いたことがある

 

 

 

 

では、男の学園立ち入りを認めた学園の理事会?

 

それもないと断言できる

 

確かに目の毒になる程にバカップルであるが、ウマ娘と一般男子の新たな可能性を秘めた二人を許容しない理由ことない

 

 

理事会といったところで、トレセン学園の責任者であり最大の出資者である秋川家の人間である秋川やよい理事長の意向は無視できる筈もない

 

 

 

 

ならば、私達ウマ娘?

 

それこそ、あり得る訳がない

 

 

もし、反発があるのであれば学園としてスタートした直後に男を呼んだまで講演会の様なモノした時に出席する筈も、あの怪しげな組織に続々加入する筈もない

 

 

 

 

メジロマックイーン?

 

アグネスタキオンの親友であり、男とも直接やり取り出来る数少ないウマ娘

 

そして、なによりも二人の関係を守ろうとしている。それこそ、実家であるメジロ家の力を使ってでも

 

 

 

ビワハヤヒデ?

 

アグネスタキオンの近しいウマ娘であり、何よりある意味ではアグネスタキオンと同じ様にデータを集める事好きな同好の士

 

 

 

 

ウィニングチケット?

 

人情家の彼女が友人の恋路の邪魔をする筈もない

 

 

 

 

サイレンススズカ?

 

ミホノブルボン?

 

ライスシャワー?

 

トレーニング狂いの様に見えて、実は相当の恋愛スイーツ脳の彼女達が2人の関係を邪魔させるとでも?

 

寧ろ邪魔するモノを排除する側だろう

 

 

 

 

 

 

タマモクロス?

 

まずない

オグリキャップ(暴食ウマ娘)の抑えてしても有用なタキオンの彼を排する事は天地がひっくり返っでもあり得ないだろう

 

なんだかんだで腹もちの良いメニューを一緒に考えているとも聞く

 

 

 

 

 

 

 

では、そのオグリキャップ?

 

それも考えにくいだろう

 

 

なんだかんだ言って、彼女であるアグネスタキオンも複雑な顔をする程に彼の食事を気に入っているのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

ならば、マンハッタンカフェ?

 

 

確かにアグネスタキオンとその彼氏(バカップル)の最大の被害者である事はトレセン学園の関係者ならば疑いようもない

 

だが、マンハッタンカフェとて散々愚痴ってはいるものの、アグネスタキオンの研究にも興味がある訳だし、彼の所有している本も気になるならしい

 

自他ともに認める読書家であるカフェにとって、タキオンの彼氏は色々とお世話になっているとも聞いている。

 

 

だからこそ、ありえないだろう

 

 

 

 

 

いつも気苦労の絶えない生徒会メンバー?

 

 

確かにエアグルーヴは少しばかり当たりは強い様に見えなくもない

 

だが、タイシンは一度だけ聞いた事があった

 

エアグルーヴが花を育てている花壇。その一部はあの男から種を貰ったと

ならありえないだろう。彼女も義理堅い性格をしているのだから

 

 

 

ナリタブライアン?

 

エアグルーヴから聞いた話では、どちらかといえばあの男と一緒にエアグルーヴをからかったりしてくると良く愚痴を聞く

となれば、そこまでの悪感情を持っているとは思えない

 

 

 

 

 

シンボリルドルフ(生徒会長)

 

 

確かに厳格そうな彼女であれば、特例措置の相手に対して良い感情を抱くとは考えにくいだろうが(生徒会室での一部の会長関連の話はエアグルーヴも話せなかった)

 

 

だが、ある程度トレセン学園に貢献している男を嫌うほど、シンボリルドルフというウマ娘は考えなしとも思えないが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナリタタイシンは蹲る男の前で思考の海に沈んでいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アグネスタキオンはウマ娘である

 

 

ウマ娘というモノは何故か第六感にも優れている者が多くいる

アグネスタキオンもその例に漏れない

 

 

 

 

そして、アグネスタキオンにとって文字通り『人生の殆どを共にした』彼関連でのこの直感というものは十分に信用出来た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふむ、嫌な予感がするね

 

 

 

 

 

いつものように、目的のための日課(実験)を行なっていたタキオンだが、胸騒ぎを覚えた為に自分の研究室を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

そして

 

 

 

 

 

 

おや?あれはナリタタイシンくんじゃないか

 

 

ふむ?

珍しい事もあるものだね。彼女があそこまで余裕なくしているなんて

 

 

 

 

 

 

 

廊下の奥から校舎の裏に駆けて行ったナリタタイシンを見たタキオンは首を傾げた

 

ナリタタイシンという人物は確かに人付き合いが良い方ではない。だからとて、周囲の輪を乱すような事をする訳でもないし、人の意見にもある程度は耳を貸す

 

はっきり言えば、色々とアウトな実験もするタキオンより余程にマトモであると常々思っていた

 

 

だからこそ、そんなナリタタイシンが靴を履き替える事すら惜しんで校舎裏に向かった事は気がかりであった

 

 

 

そして、あの表情。あれは追い詰められて逃げている顔ではない

追い詰められていたとしても、『何か』を追いかけている顔である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

校舎裏に回ったアグネスタキオンは目を疑った

 

 

 

いつも飄々として、タキオン(自分)を支えてくれていた彼が蹲っていたのだ

 

 

 

そのそばにナリタタイシンが居たが、彼女が彼に何かをしたとは思わなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「〇〇。どうしたんだい?」

 

男は自分の側から聞き慣れた声が聞こえた為に、その方向を向いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アグネスタキオンは目を疑った

 

 

いつもの彼でなく、それこそ小学生の頃。それもタキオンと一緒に遊んでいた頃の彼の顔をしていたからである

 

 

「タキオン。僕、タキオンの傍に居ても良いのかな?」

 

 

耳を疑った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話をタキオンはゆっくりと聞いた

 

ナリタタイシンはその場を離れようか?と視線で問いかけてきたが、タキオンはいて欲しいと返した

 

 

今の彼は間違いなく普通ではない

確かにタキオンは彼の彼女であるし、一番近しい者だと断言できる

 

 

だが、だからこそ見えないモノもあるとも考えている

 

 

 

タイシンには悪いとは思うが、付き合って欲しいというのが、タキオンの本音であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話を聞いて、タキオンはどれだけ彼に負担をかけていたのかを今更ながらに痛感した

 

そして、どうしたら良いか迷った

 

 

 

恐らく、このままの環境であるならばタキオンは良くても彼は潰れるのではないのか?

 

であれば、どうするのか?

彼と別れるのか?

 

 

タキオンの冷静は部分は彼と別れるべきと言う

 

彼は今までタキオンを支え続けてくれた

だが、彼の人生をこれ以上おかしくするのは耐えられない。と

 

 

 

だが、タキオンの女の部分は言う

 

彼と別れたくない。と

 

 

 

 

 

 

 

 

タキオンにせよ、彼にせよ根本的に自己犠牲型の人間なのだ

 

彼の方が些か以上に自己犠牲な上に献身的といえなくもないが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのさ、タキオン

アンタ達恋人同士だけど、私達も頼りなよ?

それとも、私達は当てに出来ない?信用出来ない?」

 

そんな事はない

 

「ならさ、もっと頼りなよ

いつも自分で解決しようとしてる私が言うのもおかしいけど、少なくともこの学園関係者の中にアンタ達を助けようとしない奴がいると思ってんの?」

 

 

だが

 

 

「ああ!もう、まどろっこしいな!

少なくとも、私はアンタ達の事を応援してるし、羨ましいとも思ってる!

もっと頼りなよ」

 

 

そう、か

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アグネスタキオンにとって、トレセン学園は確かに救いであったのかも知れない

 

だが、救いであると同時に彼の生活を壊してしまった要因でもあったのだ

 

 

確かに彼は一緒に来てくれた。それ自体は凄く嬉しい

 

 

 

それでも、ふとした時に思うのだ

 

 

 

タキオンは家族から見放されていた

だが、彼はそうでは無かったのだ

 

 

 

実は一度だけ、トレセン学園宛に手紙が届いていた

 

 

彼の従兄弟からの物だった

 

 

 

 

文面はただ一言

 

 

 

 

 

 

 

 

兄貴を返せ

 

 

 

 

だった

 

 

 

 

 

 

この時、アグネスタキオンは知ったのだ

 

家族から疎まれていたアグネスタキオン(自分)が彼の人生をめちゃくちゃにしてしまった事に

 

 

 

 

 

知らなかったでは済まされない

 

 

 

 

何が『現代のシンデレラ』だ

 

 

自分は〇〇という人間を不幸にしただけではないのか?

 

 

 

 

 

 

そんな思いが常に頭の片隅にあったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

依存し合っていながらも、何処かでおかしかったのがタキオンと彼の関係であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうさ、私はバカで愚かな女でも良い

 

 

 

それでも

 

 

「〇〇。そのままで構わないから聞いてくれ

私はどれだけ君が辛くても、君にいて欲しい。浅ましいと言ってくれても構わない

でも、私には君が必要なんだ。好きなんだ

一緒に生きて、一緒に死んでくれないか?」

 

 

我ながら本当に度し難いものだと思う

 

大切ならば、守る為に力を尽くすべきであり、それでも守れないならば自分から離せば良いだけの事

 

 

 

だが、アグネスタキオンにとっての彼は世界と同じであり、彼を欠かした世界に価値を見出せるとは思えなかった

 

 

 

 

「タキオン

僕もタキオンと一緒に居たい。タキオンが許してくれるなら」

 

 

 

 

 

そして、2人は泣きながらキスをした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナリタタイシンは部屋に戻った後、あの2人について考えていた

 

 

 

 

多分、一般的にはあの2人はおかしいのだろう

 

 

だがタイシンにはあの2人を否定出来なかった

恋人もいないし、そんな候補もいないタイシンであるが、それでも素直に羨ましかった

 

 

 

 

 

そして、タイシンは一つの決意をした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、メジロマックイーンにナリタタイシンはとある話を持ちかける事になる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、トレセン学園の外側で一つの騒ぎが起こっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

『現職国会議員による不正取引?』

 

 

ある新聞の一面にそんな記事が掲載される事になる

 




実は彼の家族側から相当恨まれているタキオンでした

両親はある程度事情を知っていますし、叔父や叔母も知っていますが子供達はそんな事知りませんので



これから、色々と悪意に晒される事になりますが、純愛ですし、パッピーエンド(当社比)になるので、許して?


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 あまやかせ!

書けたら、投げる


シリアスの箸休めにござる


 

 

  シンボリルドルフは今緊張していた

 

 

どれだけか?

そう聞かれたならば、トレセン学園生徒会長に任命されるより

 

そう即答するだろう

 

 

 

 

 

先日、アグネスタキオンの従姉妹であるダイワスカーレットとその友人であるウオッカがトレセン学園に来た

 

 

 

 

 

 

 

 

それ自体は問題ない

ないどころか、次代のウマ娘と交流出来たのはシンボリルドルフとしても嬉しい限りである

 

 

ゴールドシップ?

生徒会のエアグルーヴと致命的に合わないので、生徒会室には来ない

 

 

 

 

 

 

交流出来たのは非常に喜ばしい事であった

 

 

 

ブライアンとグルーヴとの模擬レースも良かったと思う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後の『トレーニング大好き三人衆』とのトレーニングが無ければ、もっと良かったのだが

 

 

 

 

別に彼女達のトレーニングメニュー自体を否定するつもりは毛頭ない

ないのだが、空き時間を見つけてはトレーニングに励む3人に比べて後輩2人は環境が整っていない。ルドルフの場合はそもそも時間が足りないのも事実

 

出来る範囲で効率的なトレーニングをしていると自負しているが、彼女達程のトレーニングをしているかも問われるならば、否であろう

 

 

一応、3人の中では『比較的』常識的なサイレンススズカに任せようと言う話もあったが、アグネスタキオンより頼まれた為に断りきれなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁ、済んだ事なのだが、問題はアグネスタキオンが何故か1日だけ彼氏を貸してくれると言ってきたのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、待ってくれ

どういう理屈だ、それは

 

 

おかしくはないとおもうんだがね?

先日の件で生徒会メンバー、特にルドルフ君には負担をかけた。だから彼と一緒に居て気晴らししてはどうかな?

そう言う話さ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という事で、何故か日曜日に生徒会室で待ち合わせをしているのだ

 

 

というか、彼は一応部外者なのではなかっただろうか?

ルドルフは首を傾げた

 

 

 

 

 

 

 

実のところはアグネスタキオン、トレセン学園公認サークル『アグネスタキオンを愛でる会』の暗躍があったりする

 

この学園において、理事長と生徒会を味方につければ大概の事は上手く回るのである

 

故に彼についての処遇は電光石火の如き速度で決まった

 

 

 

理事会を通す案件であるが、現在のトレセン学園最大の広告塔でもある『シンデレラの王子様』の懸案であるかま故に即座に採決された

 

 

 

 

 

 

 

まぁ、生徒会でナリタブライアンが協力者なので仕方ないとも言えなくもないが(その組織の副会長である事をルドルフ本人は自覚してない為)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっす、ルドルフ

元気かー?」

 

あ、ああ

おはよう

 

「うん?」

 

どうした?

 

 

 

いきなり目を細めた彼にルドルフは驚いた

 

 

 

 

「うし、まずはマッサージするか」

 

 

は?

 

 

 

ルドルフは間抜けな声を出すしかなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つまり、私の背中部分に異常が見られるということか

 

「あくまでもプロじゃねぇから、確定ではないけどな」

 

 

彼の説明を受けたルドルフは内心驚いていた

 

 

そういえば、初対面の時のレース?の感想をブライアンとグルーヴに聞いた時も言っていたのを思い出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「奴は身体能力で勝てないことなど最初からわかっていたのだろうな。その上でエアグルーヴの冷静さを奪い、私からも背を見せる事でいつしか冷静さを奪った。そう見えたな」

 

「ぐ、否定できんなそれは。と言う事はあの不自然にコースを走ったのも」

 

「推測だが、最後に奴は私たちの側を逆走で通り抜けた。あの為の物だったと思うが」

 

「あの男の洞察能力はとんでもない水準という事が」

 

2人に話を聞くと、苦々しそうに話をしてくれた

 

当然だろう。ウマ娘の中でも同年代では上位の実力者である筈の2人が一般男子に出し抜かれたのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのなぁ、ルドルフ

基本的にウマ娘だろうが、なんだろうが隠せないものって幾らでもあるんだよ?

筋肉の動き、緊張。視線の動きや意識の動き方」

 

いや、言っている意味は分かるが

 

「伊達にタキオンの幼馴染やってないんだよ。剣道してたのだって、視線や呼吸による動作の影響を調べる為だったしな」

 

そこまでか

 

 

 

 

 

実際、剣道のみならずとも視線を追う事はスポーツ全般で有効とされている

 

先手を取るに越した事はないが、後手の場合でも相手の行動をある程度予測出来ていれば対応し易くもなる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お客さーん、だいぶ疲労が溜まってますよ?

少しは休んではどうですかねぇ?」

 

ふざけて声をかけてくる彼だが、決して遊んでいるわけでないのは他ならぬ私には理解できていた

明らかに疲労感が和らいできたからである

 

 

休めるものならそうしたいけど、そうもいかないさ

 

 

「程々にしとけよ?

ルドルフみたいなのは、溜め込みすぎて潰れる事もあるだろうからな?」

 

流石にそこまではないと思うけど

 

「ルドルフは期待を力を変える事が出来る

でもな、悲しい事に頼れる者を見つけた者の中には、自分で何かをする事を厭う様になる者もいるのさ?」

 

そういうものなのか?

 

「誰しも失敗は嫌がるものだろ?

なら、自分より優秀なものに託したくなるもんさ。ついでに責任も押し付けられるからな」

 

 

 

勿論、彼の言う事は極論である

 

が、間違いなくそういった者は少なからず存在する

 

 

その様な輩にルドルフの労力を費やすのは勿体ないと彼は思っていた

 

 

 

 

分かった。心に留めておくとするよ

 

ルドルフも彼の気遣いが分かった為に素直に答えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、マッサージは一通り終わったし、どうするよ?」

 

 

ふむ、どうしたものかな?

 

 

 

 

 

 

実はルドルフにも彼に頼みたい事はある

 

あるのだが、あまりにも恥ずかしい事である為に言い出せなかったのである

 

 

 

 

 

 

が、ルドルフは失念していた

 

目の前にいる男は些細な仕草から相手の内面を読み取る事に長けている相手だと言う事に

 

更にルドルフは知らない事だが、彼女と昔のアグネスタキオンには共通点が多い為に、かなり正確にルドルフの本心を理解してしまえるのであった

 

 

 

 

 

「あれか?

たかいたかいがご所望か?」

 

っぐ!

 

な、ナンノコトカナ?

 

「そっかそっか

よしよし、そう言う事ならお兄さんに任せておきなさい」

 

 

ルドルフの動揺を見抜いた彼は以前見せた満面の笑みを浮かべながらルドルフに近づいてきた

 

 

 

ま、待て。その笑顔はなんだ?

は、話し合おう、話せば分かる

 

 

さしものシンボリルドルフとて、この状況の彼に抗するのは危険と判断して、海軍将校に射殺された某総理みたいな言葉を発する

 

 

「問答無用☆」

 

様式美と言わんばかりに定型句を満面の笑みで放つ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして

 

 

 

「はーい、ルドルフちゃん。たのちいでちゅかー?」

 

ーーーーーーっっっっ!!!

 

 

いつぞやの光景が再現された

 

 

 

しかも、明らかに今回の彼は楽しんでいる

 

 

輝く様な笑みを至近距離から直視したシンボリルドルフ(恋愛レベル最低値)に抗える筈もなかった

 

 

 

 

 

 

 

待て、よく考えれば恥ずかしがらずとも良くはないだろうか?

 

ルドルフの脳裏にふとそんな疑問が浮かび上がる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は日曜日

 

 

校庭ではいつもの3人と1人が自主練習をしているが、この校舎内にいるものはルドルフと彼のみ

 

 

 

ならば、彼に見られることさえ許容して仕舞えば、甘えたい放題ではないのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒会長としての威厳?

そんなものは月曜日まで何処かは投げ捨てておけば良い

 

そう判断したルドルフは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

んーーー♪

 

久しぶりに〇〇としての自分を見せる事にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、30分程たかいたかいをして貰ったルドルフは昼ごはんの時間である事に気づいた

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?飯か」

 

そうだな、食べに行かないと

 

 

内心では落ち込んでいるルドルフだったが

 

 

「弁当持ってきたから、食べるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この前の裁縫と言い、偶にしてる料理講習会と言い女子力高すぎやしないかい?

 

 

シンボリルドルフは彼の弁当を食べながら、愚痴をこぼした

 

「ん?

どうだろうなぁ。たまにタマモクロスとしてるよ、確かに」

 

シンボリルドルフとて、女子である以上はある程度の家事能力は有している。いるのだが、明らかに彼と比べると負けている気しかしなかった

 

 

 

曲がりなりにも好意を寄せている男子が自分より家事能力に秀でているというのはルドルフとしても複雑な思いにならざるを得なかった

 

 

「気にすんな」

 

いや、普通に落ち込むんだがね

 

 

と言いながらも、箸は止まらないルドルフだった

 

尚、ミートオムレツが気に入った様である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、昼からルドルフのお願いにより膝枕からの耳掃除となった

 

 

 

ウマ娘にとって、自身の耳というのは大切なものであり、尻尾と耳を勝手に触られた場合、警察沙汰になるレベルの事であったりもする

 

 

 

その耳掃除を彼に頼んで、その後は彼の膝枕で半日を過ごした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かなり昔の話とはなるのだが、耳をウマ娘が触らせる事は婚前交渉という意味を含んだ行為という事をアグネスタキオンから聞いたシンボリルドルフは顔を真っ赤に染めたらしい

 




というわけで会長は甘やかされましたとさ


お気に入り三百件突破とか、たまげたなぁ(白目)


という訳でアンケートを実施しますので、よろしければご協力ください


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 ハッピーミークから見た風景

今回も捏造、独自設定ギガ盛ですが許してください



なんだかんだ言われている彼女も周囲の環境から振り回されている感じがしましたので、こうなりました


  私はハッピーミーク

 

桐生院家所属のウマ娘だ

 

 

 

 

とはいっても、現在のウマ娘というものが活躍できる環境は本当に少ない

 

 

 

 

 

規模が少ないレースと賞金

 

その少ないパイを奪い合うウマ娘とトレーナー達

 

 

 

 

 

 

だが、あまり人気のないレース故にスポンサーも少ない

当然それに比例して賞金も少ない

 

そんな中、それでも勝つ為にウマ娘を育てようとするトレーナー達

 

だが、その為のノウハウが無い者達とノウハウを豊富に持っている桐生院の様な名家では当然だが、知識という一点でも大きな差がある

 

加えて、桐生院などのウマ娘を代々育てていた家は独自にトレーニング設備を保有している事が多く、育成の環境においてでも埋めがたい差があった

 

 

 

知識に加えて効果的なトレーニングを有する者とそうでない者。 ウマ娘とトレーナーがどれだけ力を尽くしたところで、容易に埋められる差ではなかった

 

 

 

故に勝敗は余程のことがなければ覆る事はない

 

だから観客も増えないし、人気も出ない

 

 

 

観客からすれば、わかりきったレースであるなら当たり前であるだろう。勿論、番狂わせがないわけでも無いが殆ど起きない

 

 

 

 

『このままではこの業界に未来はない』

 

桐生院などはこの事を理解してはいたが、長年の間これをどうにもできる者は現れなかった

 

 

 

そこには、例えどの様な形であったとしても一つの世界において『名門』と呼ばれている事に満足してしまった者たちが多く居た事が影響していたのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところが、近年勢力を持ち始めた秋川家の秋川やよいを中心にウマ娘達の育成組織『トレセン学園』を作る話が出てきた

 

 

実のところ、秋川本家が衰退するウマ娘によるレース事業に参入する為にトレセン学園を作ったという側面も存在する

 

口の悪い関係者は『金持ちの道楽』という者もいたが

 

しかしである。トレセン学園というウマ娘に一定のトレーニングを行える施設ができる事は大きかった

 

 

 

今までは個人の裁量の範囲内でしか行えなかったトレーニングやその設備の確保。ウマ娘の食事の確保も出来るのだ

 

 

この辺りも新規のトレーナーがレースへ参入する事を阻む大きな要因だったのは言うまでもないだろう

 

 

 

画一的なものであれば、そこまでの不公平感は生まれない

あとは、ウマ娘やトレーナーによるトレーニング次第と言える

 

 

 

そして、ウマ娘達によるウイニングライブ

 

 

 

 

 

 

今までのウマ娘によるレースに比べると話題性もある。ライブというものにより、集客も見込めるだろう

 

見目麗しいウマ娘達によるライブともなれば、若年層の新規ファンを呼び込む事も期待できる

 

となれば、それに便乗しようと言うスポンサーが現れるのは必然だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてハッピーミークが所属する桐生院においても、それは一緒だった

 

 

いや、寧ろ今までの事を考えれば桐生院が今後のウマ娘関連の先駆者となろうとするのは当然の流れでもあったのだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当代当主の一人娘、桐生院葵は桐生院の教えを受け継ぎ、トレーナーとしては一流である

 

ウマ娘の指導者として、桐生院が長い間培ってきた知識を幼い頃から葵は教え込まれてきたのであるから、当然とも言えるだろう

 

 

 

しかし、以前トレセン学園訪問の際にもあったが、日常生活においては桐生院葵という人物は世間知らずである

 

 

 

誤解されがちだが、別に桐生院葵がモノを知らないのではない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、ミーク

またトレセン学園に行けないかな?」

 

そら来たぞ

 

 

ハッピーミークは内心でため息をつきながら

 

 

「無理。というよりこの前迷惑かけたのに何考えてるの?」

 

「で、でもあの時は初めてだったから」

 

 

恐らく葵は『現代のシンデレラ』ことアグネスタキオンに会いたいのだろう

 

 

前回の訪問では秋川理事長や生徒会からの組織的な説明しかなかったからだ

 

 

本来ならば、色々施設の説明や在籍するウマ娘との交流を予定されていたのだが、駅と通用門で余計な時間を使い過ぎた結果こうなった

 

 

「勝手に訪問しても迷惑になるだけ。葵も来年からは正式にトレーナーとして活動する事になる。

もう少し、自覚するべきだと思う」

 

 

「ううっ、でも」

 

 

「葵が気になるのも仕方ない事だとは思う。でもシンデレラの件はデリケートな問題。興味本位で迂闊に触れるなんて、あってはならない」

 

 

葵は落胆しながら

 

 

「はぁ。そうよね。

この前、キチンとしてたらなぁ」

 

 

「後悔する位なら、もう少し考えて行動してほしい

もう葵は子供じゃないから」

 

 

「そうよね」

 

 

葵は沈んだ様子で部屋に戻っていった

 

 

 

 

 

 

 

だが気づいているのだろうか?

 

彼女が迷惑をかけた少年こそがシンデレラの相手だった事に

 

 

 

 

 

知るはずもないだろう

 

ハッピーミークは内心自嘲した

 

 

 

桐生院家において、葵にトレーナーとしての知識以外(余計な事)を教える事は禁じられていたからである

 

 

それは葵の担当ウマ娘であるハッピーミークも例外ではなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桐生院葵は今年まで大学生であり、来年からはトレセン学園所属のトレーナーになることが決まっていた

 

一応トレセン学園のトレーナーになる為には試験を突破しなければならないが、そこについては誰も心配していない

 

葵のトレーナーとしての力量は確かなのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレーナーとしての英才教育を受けるその一方で、大学生活においても、必要以上に同級生との交流は許されず、基本は桐生院の家での教育が主であった

 

彼女が友人としている者達は桐生院家が認めた者のみである

 

 

 

 

 

 

 

 

桐生院葵という女性に対して、桐生院という家が求めるのはトレーナーとしての実力のみだった

 

 

 

ところが、トレセン学園ができた事で少し状況が変わった

 

 

葵がトレセン学園に所属すれば、そのままハッピーミークの担当になる

 

そして、トレセン学園に所属するトレーナーは狭き門をくぐり抜けることの出来る才能の持ち主ばかり

 

 

 

そして葵は言うまでもなく、日常生活においてはポンコツである

 

 

 

 

 

 

 

トレーナーとしての葵と付き合えたとしても、私人としての葵に付き合える者はそう多くはないだろう

 

 

ましてや、それが異性なら尚更

 

 

 

確かに葵は容姿端麗であり、頭脳明晰と言っても過言ではない

 

見た目に釣られる者も出て来るだろう

 

 

 

だが、果たして一般常識はあっても、生活知識の無い葵とプライベートで付き合える男がどれだけいるだろうか?

 

 

 

まして、多感な年頃の娘をトレーニングしているトレーナーだ。誰が好き好んで休日にまで付き合うのに疲れる葵と時間を作ろうとするのだろうか?

 

 

 

 

そんな男はよっぽどの世話好きか、葵を真剣に見ている者になるだろう

 

 

 

 

 

 

 

それが桐生院本家の狙いだった

 

 

 

トレーナーとして一流であり、不器用ながらも人を思いやれる。そんな葵であり、悪意は一切ない。

 

一度懐に入れてしまえば、早々見捨てれるとも思えない。その程度で見捨てるなら、最初から興味を持つわけないのだから

 

 

 

 

 

そして、一緒にいる時間が長くなれば長くなるほど情が湧く筈だ

 

 

 

必要なら、適当な障害を用意する事も本家ならやるだろう

 

 

 

 

 

 

そして、葵とトレーナーが結ばれた瞬間、桐生院本家の野望は成就する事になるだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仮に葵を取り巻く環境から、本家を敵視するのであれば、それもまた彼らからすれば問題にならない

 

 

 

 

 

 

本家を敵視したとして、葵は間違いなく本家の被害者なのだから

 

 

 

 

自分たちが敵視される『程度』で葵がトレセン学園のトレーナーと結ばれるのであれば、彼等は躊躇わないだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

仮に本家が葵の彼氏と争ったとして、本家が勝てばあらゆる方法を駆使して彼氏を桐生院に取り込むだろう

 

 

万一本家が没落しても、問題ないと判断するだろう

 

 

 

 

本家の人間が望むのは『桐生院』という血が絶えぬ事なのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本家を没落させたとなれば、葵は唯のトレーナーとなる。間違いなく彼氏は放っておけまい

 

 

そして、2人の間に子供が生まれたならば、性別関係なくその子には桐生院の血が流れている

 

 

 

 

 

 

2人がトレーナーから離れたとしても、問題ないだろう

 

 

 

どれだけトレーナー業から離れたとしても、2人がトレーナーであった事は事実

 

子供に親の話をする時に果たして『トレーナー』『ウマ娘』と言う単語を使う事なく、子供の疑問を解決できるだろうか?

 

 

 

そして、子供は少しでも疑問に持てば調べるだろう

 

 

 

そうなれば、誰かが2人の事を話すだろう。『純粋な善意』で

 

 

 

 

 

 

そして、両親に憧れを持つならば必ずトレーナーへの道を一度は目指すだろう

 

 

 

そうなれば、『滅んだ旧家』である桐生院の血筋である子供をメディアは放っておかないだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

どこまで行っても、このままなら葵は『籠の中の小鳥』(桐生院本家の道具)にしかなれないのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この事はミークの前に桐生院に居た先輩のウマ娘より聞いていた

 

 

 

 

この様なおぞましい考え方が出来るのが名家というものであるのなら、ハッピーミークは名家など滅ぼしてしまえと考える

 

 

 

 

 

 

 

 

確かにポンコツでどうしようもないほどに抜けている葵だが、ミークはそんな葵が嫌いではない

 

 

 

 

 

というより、嫌いになれる筈がないのだ

 

 

 

確かに私生活ではどうしようもなくポンコツで、ミークや周りを困らせてばかりだ

 

それでも桐生院葵という人間はトレーナーとして立派にミークを導いてきた

 

それだけば、誰であろうとも否定させない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かの組織を利用するようで悪いとは思うが、ハッピーミーク個人で桐生院に逆らう事は無理である

 

失敗すれば、葵の人生に関わる事は出来なくなる事は間違いないだろう

 

 

そしてミーク自身、自分のピークは恐らく3年程度だと考えている

 

 

となれば、引退したウマ娘となったミークが葵の側にいる事を許されるとも思えない以上、時間的猶予は少ない

 

仮に輝かしい結果を残そうとも、ハッピーミークはどこまでいっても桐生院のウマ娘

 

 

どのように立ち回ったとて、桐生院の思惑の上を行く事は難しいだろう

 

 

 

 

 

 

 

かの組織はウマ娘を中心に名家であるメジロ家に何故か国会議員も名を連ねていた

 

 

ウマ娘もまた、桐生院に育てられてきたミークから見ても実力者ばかり

 

 

 

 

 

来年以降、間違いなく名前が売れるだろう

 

 

そうなれば、社会的影響力も有する事になる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

葵の未来を守るため、ハッピーミークはたとえ恨まれようとも手を選ぶ事は出来ないのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ願えるならば、あのポンコツでも優しいトレーナーに幸せな未来を

 

 

 

 

 

 

 

それがハッピーミークの願いであり、祈りであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




桐生院本家の狙いはウマ娘関連の業界において、名を残す事と
桐生院の血を絶やさない事


その為ならば、彼等はどんな手でも取ります




ハッピーミークが例の組織に加わったのもこう言う理由からでした


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 くずれるもの

記者の執念が2人の生活を脅かさんと2人に迫る


誰かが言った。トレセン学園が出来るのが早すぎると

 

 

 

 

報道関係者は苛立った

自分達には碌な情報を寄越さないから

 

 

 

 

ウマ娘達は喜んだ

これで周りからとやかく言われる事も、周りに無理をして合わせる事もないから

 

 

 

 

 

トレーナー達は今までの苦労が報われたと泣いた

『名門のお遊び』『できレース』

そういった声を知るが故に

 

 

 

 

 

 

 

政治家達は未来へと想いを馳せた

『現代のシンデレラ』という確かな道標があるのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、トレセン学園に期待するものは発案者である秋川やよいの予想も出来ないほどに大きなものとなっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

であるならば、これは必然だったのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレセン学園の詳細な情報こそ手に入れたものの、関係者への直接的な取材についてはトレセン学園が開校して3ヶ月経った今でも許可がおりない事に報道関係者は苛立ちを隠せなかった

 

 

彼等からすれば、今だからこそトレセン学園の記事は売れると確信していた

 

 

しかし、叶わない

 

それどころか、一部の思慮の無いフリー記者などが迷惑も考えない行動を取った事により、非公式にだが報道各社に対して取材の自粛『要請』がなされる始末

 

 

 

更に何処ぞのフリーの記者がシンデレラの記事を持ち込んだとの話があったが、各社の経営陣に『勧告』がなされていた為にスクープが世に出る事はなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、彼等とてこれで飯を食べている者達である

 

 

 

彼等お得意の『コネ』や『オフレコ』を駆使して、どうにか情報を拾い集めていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その中で判明したのが、トレセン学園のある府中選出の国会議員が今年の3月末にとある物件を借り上げたという話だった

 

 

 

 

 

歴戦の経歴を持つ記者達はここに突破口を見出したのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

速やかにその議員に直接取材を申し込む一方で、議員の地元での取材を展開した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は辟易していた

 

 

最近になってから、国会議員である彼の元に取材の申し込みが急増したからである

 

彼は野党議員であり、お世辞にも目立つ人物でなかった

 

 

 

 

だからこそ、記者達の狙いも透けて見えた

 

彼等は自分から、あの少年と少女の情報を得ようとしているのだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つつけば埃が出る議員は多い。彼もそうでないとは言いきれないだろう

 

 

そこら辺から、オフレコという形で情報を得て脚色してから報道するだろう事は目に見えている

 

 

 

 

 

だが、そんな事を認めるつもりは毛頭無い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

確かに彼も地位は惜しい

 

 

だが、これは唯の収賄事件ではないのだ

 

 

 

 

 

 

 

彼等(記者)からすれば、話題になれば一緒なのかも知れない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

違うと言ったところで、納得したフリしかしないだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の朝刊にとある記事が掲載された

 

 

 

 

 

 

府中選出の〇〇議員、突然の辞職!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

政府首脳は突然の辞任劇に驚くと共に理解した

 

 

奴等はやってはならぬ事をした、と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

確かに政治的力学で言えば、野党議員が1人抜けた事は歓迎すべき事であろう

 

 

だが、今のウマ娘とヒトの共存社会を目指している首脳からすれば、彼は間違いなく同じ道を目指す同士であった

 

 

 

この共存社会を目指す政策は近年の政策としては珍しく、超党派を以てあたっていた一大国家プロジェクトである

 

 

 

この成否は間違いなくこの国の未来を左右するだろう確信があった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決してスクープ狙い如きの記者などが邪魔をして良い案件ではない

 

 

 

 

少なくとも、主要各社の経営トップにはその事を周知させる様に通達した筈である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ましてや、かの議員の役割は話題の塊である『現在のシンデレラ』を大人達の悪意から遠ざける事であったのだ

 

 

彼は議員としては、かなり国民寄りの感性をしている上に、大人としての責任感も持ち合わせていた

 

 

 

 

 

 

だからこそ、彼にシンデレラの彼氏の住居を用意する様に頼んだのである

 

 

 

 

 

 

更に、管理会社も信頼できる所を選び、高額な賃貸料も内閣やウマ娘関連の部署のトップ等と出し合っていた

 

これにより、アグネスタキオンと彼氏からは『余り変わらない値段の物件』と見える様にしていたのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在の政権運営は順調であり、若い総理も再選を果たしたばかり

 

 

 

彼等政府首脳は、この政権の間にある程度の実績を残してくれる事を期待していた

 

 

彼女達の住む階層は警備関係者や医療関係者に法律関係者等を入居させており、有事の際には即応させられる体制となっている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それだけの体制を維持させるのが、府中選出の彼の仕事であったのだ

 

 

引き継ぎについても問題だが、後任も決めなければならない

 

 

 

 

 

 

しかし、間違いなく後任決めは難航するだろう

 

 

 

 

いうまでも無いが、補選により選出される議員によっては、2人の情報を漏洩させかねないのも問題である

 

 

 

最悪、前任者の様に秘密を守る為だけに職を辞す事も覚悟せねばならない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『たかだか子供の為』

等と考える人間では務まらないし、勤めさせる訳にもいかないのが実情であった

 

 

 

 

 

 

 

 

更に忌々しい事だが、不祥事の追及を避ける為に辞職したという記事もかなりの報道関係者が伝えていた

 

 

 

そこに芸能人などのコメンテーターや事情も知らない『自称』専門家共まで騒ぎ立てる始末である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

通常国会の会期を延長してでも、この問題を取り上げるべきだと喚き立てる野党議員もいる

 

それどころか、与党議員の中にもこれを機に野党を追い落とすべきと主張する連中までいるのであるから、たまったものではなかった

 

 

 

 

 

野党側としては、超党派として行なっているウマ娘関連プロジェクトに違法性があると主張し、与党からも野党を追い落とすと騒ぐ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

党利党略も必要な時がないとは言うまい

だが、時と場合を選べと言わざるを得ない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

既に辞職届けと離党届を提出している元議員は、煩わしい取材攻勢にあっているだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時、政府首脳や議員達が守っていた秘密が少しずつ漏れ始めていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元々、タキオンと彼の住むマンションは高級住宅であった

 

 

これは2人の安全や機密漏洩を危惧した場合、当然の措置であった

 

 

 

 

 

 

 

だが、自分達の子供程度の人間が同じマンションに起居している事に他の住民が不満を持つ事は容易に想像できた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それ故に、例外はあるが2人は裏口からマンションに入り、搬入用の業務エレベーターで自分達のフロアに移動していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

他の住民から分かりにくい様にしていたのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、よりにもよって出入りしている業者の1人がSNSで呟いたのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これに気付いたのはメディア側であった

 

直ちに取材を申し込み、その特異な取り扱いから何かを感じた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遅れた政府側も気づいたのだが、時既に遅くアグネスタキオンと判明こそしなかったものの、ウマ娘と少年が仲良さそうに業務用エレベーターを利用していることが判明した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当然ながら、基本全寮制であるトレセン学園

 

 

その近くのセキリュティのしっかりしたマンションにウマ娘と少年がまるで人目を避けるかの様に生活しているのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これで、トレセン学園の関係者でないと考える程に記者も甘くはない

 

 

 

 

 

 

 

確証はないが、恐らく『シンデレラとその相手』だと感じた記者はその裏口からトレセン学園までの様々な経路に人員を配置した

 

 

 

勿論、バレない様に人を変え、衣装も変えてである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、遂に2人の姿を捉えたのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

丁度、タキオンの彼が色々と吐き出してから1週間後の事であった

 




これから、暫くヤバめの話になりますが、ご容赦ください


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 まもりたいもの

危機的状況にありますが、一つだけ

トレセン学園を始めとした一連の計画は『国家プロジェクト』です





しっかりタグを読んでから、本編をご覧下さる事を強く推奨します



とある男は頭を抱えていた

 

 

 

現在『現代のシンデレラ』と『王子様』の住宅が発覚した事で大きなニュースとなっていた

 

 

 

 

 

 

『普通』なら問題にならない

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、彼は件の2人が居住するマンションに出入りする業者である

 

 

 

 

 

 

 

付け加えるならば、2人の情報を漏らした人物の所属する会社の社長だった

 

 

 

 

 

 

 

 

マスコミから英雄視されている情報提供をした男であったが、会社からすればとんでもない事をした人物でしかない

 

 

 

 

 

 

 

例のマンションに搬入している業者は2人が入居した事を明かしてはならないという契約を結んでいたからである

 

 

 

 

 

今回漏洩させた男は偶々外せない用事があった担当から『個人的』に頼まれてヘルプした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頼んだ側からすれば、彼も部外秘である事を承知していると思って頼んだのである

 

 

だが、事が事だけに知る人間を絞らなければならないと判断した現場サイドはあくまでもマンションに関わる人員のみに周知させたのだ

 

 

 

 

更に言えば、仕事のヘルプも上司を通した場合は手続きが煩雑な為に個人的に頼んだ訳

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、そんな事を知らない彼はSNSで発信してしまったのである

 

 

 

 

 

当然ながら、SNSでも『いや、それ言っていいの?』『それバラしちゃ駄目な奴では?』と言ったコメントが多数寄せられた

 

 

 

 

 

だが、自分の発言が思いの外反響を生んだことで彼は調子にのってしまった

 

 

その結果、マスコミへの情報のリークという最悪の行為をしてしまう事に繋がってしまう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当然、会社には政府や同じマンションに出入りしていた業者、更にトレセン学園やそのスポンサーからは特大のクレームが入った

 

 

 

殊更トレセン学園の秋川理事長の怒りは凄まじく、トレセン学園にも納入していた会社であったが、即座に契約違反をしたとして出入り禁止となった

 

これに加え、学園のスポンサーや今後拡大するであろうウマ娘関連のレース場などで決まりかけていた仕事も全てキャンセルとなる事に

 

 

 

 

 

 

会社としても、漏洩させた彼を即座に解雇すべきだったが、まるで情報を漏らした彼が正しいかの様に偏向報道をするメディアとそれに踊らされる世論によって、彼の解雇は不当であると言う風潮が生じてしまう事になった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寧ろ、情報を隠そうとする政府やトレセン学園が悪いかの様な報道も相次ぎ、今まで抑えられてきた報道も自由にすべきとの論調が強まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、この好き勝手な報道に怒りを示した者が現れた

 

 

 

2人が居住するマンションの管理会社である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このマンションは多くの住民が居住しており、マンションとして居住者のプライベートを守るのは当然であるとコメントを出した

 

その上で居住者の個人情報を漏洩させた事は紛れもない契約違反であり、それを擁護するなどあってはならないと強い口調で訴えた

 

 

 

 

更にトレセン学園周辺の有力者や町内会、中学校からも相次いでコメントが発せられた

 

 

 

 

しかもこれはマスメディアを通す事なく、SNSや配信チャンネルを通してのものであり、一様に『大の大人が子供達のプライベートを暴いて騒ぐのは余りにもおかしい』と発信した

 

 

 

 

中学校に至っては

マスコミの強引な取材によりタキオンの彼氏が当然の権利である中学校にすら通えなくなった事実を公表したのである

 

 

 

 

これにはマスコミ側も慌てた

 

何せタキオンの彼氏が中学校へ通えなくなった理由は正しく其処にあったから

 

 

 

 

マスコミ側は世間の知りたいであろう話題を調べるのは当然の権利であると主張した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、このコメントは悪手であった

 

 

これに対し、放送倫理会は『公人でもない唯の一般人に対しての過剰とも言える報道は問題がある』と発言し

 

 

弁護士連盟からも『個人の権利を侵害する行為を正当化できる理由は存在せず、現在の過熱報道は違法性が高いと判断出来る』というコメントが発せられた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これに対して、マスコミ側はアグネスタキオンの母親が役所から親権剥奪されていた事を都合の良い脚色をして報道

 

 

そもそも、子供2人をトレセン学園に送り込んだ事自体を問題にしようとした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日である

 

 

 

 

 

トレセン学園の公式チャンネルにおいて、一つの配信がされようとしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆様、おはようございます

最近話題になっているアグネスタキオンの彼氏です

 

 

 

何と渦中の彼氏が配信に顔を出したのである

 

 

彼を中心として、右には秋川理事長と駿川秘書。左には生徒会長であるシンボリルドルフとトレセン学園警備主任という配置

 

 

 

 

話題になっている事について、当事者として発言します

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曰く、転校予定の中学校に対する強引な取材攻勢

トレセン学園付近での座り込みによる周辺住民やウマ娘達に対する配慮のなさ

 

自分達の地元に対する無思慮な取材

 

 

近隣の駅での執拗な関係者探し

 

 

加えて、相談もなく勝手にアグネスタキオンと彼の姿を報道した事

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その上で語る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分とアグネスタキオンが付き合っている事がそこまで問題なのか?

問題であるならば、キチンとしたルールに基づいて此方に連絡する事はなかったのか?

 

報道の自由を謳いながら、自分達の自由を阻害しているのは許されるのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、最後に

 

 

 

 

 

 

自分達は幸せになってはいけないのか?

と無表情で言い残した

 

 

 

 

 

 

 

 

秋川やよいは

「本学園の目的はウマ娘の円滑な社会進出の一助としてのものであり、これは今も問題となっているウマ娘やそれに関わる者達に対する答えを見つけようとするものでもある

報道各社は彼とアグネスタキオンの事を面白おかしく報道するが、この様な事を行なう権利が果たしてあるのだろうか?

また、この2人について世間が知りたがっている為にこの様な強引な取材を行なったとの事であるが、知りたがっているからと無法な取材を正当化するのであれば、それは既に報道する人間としての良識すら失っているのではないかと私は思う」

 

と語り

 

「本校生徒であるアグネスタキオン並び、協力者である彼へのこの様な常軌を逸した取材並び報道をした各社に対して、トレセン学園は関係する企業や組織と連携して『余す所なく』然るべき手段を講じる事をここに宣言します」

 

と続ける

 

 

警備主任は

「今後、トレセン学園に来校する業者に対しては今回の件から移動は勿論、行動についても制限する事も検討します」

 

と言い

 

最後に

「トレセン学園生徒を代表して申し上げる

今回の一件については、甚だ残念であります。生徒会長として生徒達の安全面から、今後もトレセン学園内における取材行為の一切を認めない事を此処に宣言します」

 

 

とシンボリルドルフは締めくくった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレセン学園からの一方的な通告にも聞こえる配信に対して、一部の報道機関は漸く自分達が行なったと事を自覚し、顔色を変える事になる

 

 

しかし、大多数のメディアはトレセン学園の記者を入れない配信は明らかに報道の自由に反するとして、トレセン学園側に対して会見を開く様に強く求めた

 

勿論、アグネスタキオンの彼氏も会見の場に出す事も当然の様に主張したのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところが、事態は彼等の予想だにしない動きを見せた

 

 

 

まず、アグネスタキオンと彼の情報を漏洩させた人物が所轄の警察に任意同行を求められる

 

任意のために彼は断った

 

 

 

 

すると、会社に対して強制捜査の手が入ったのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この事を聞いたマスコミ各社は警察の横暴を非難したが、それに対して警察側は

 

「アグネスタキオンの彼氏より彼と会社に対して、プライバシーの侵害という名目での訴えがあった」

 

と語った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まさか、実際に裁判沙汰になると思っていなかった彼は直ぐに国選弁護士を通じて示談を申し入れたが、タキオンの彼は一蹴した

 

会社側は全面的に非を認める事により、示談が成立したが

 

 

 

 

 

 

 

 

更にアグネスタキオンと彼の写真を勝手に雑誌やTVで報道した各社に対しても、彼氏は全力で殴りかかった

 

 

 

偏向報道に便乗して、タキオンに対してあらぬ事を言ったコメンテーターや自称識者に対しても名誉毀損という形で殴りつける

 

 

 

 

 

 

 

 

一部の冷静さを取り戻した報道関係者は速やかにアグネスタキオン達への謝罪とトレセン学園側への弁明を始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冷静さを保っていた理事長や秘書。生徒会長や政治家、近所の人達はまだ良かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、彼はアグネスタキオンを傷つけたメディア関係者に対して容赦する姿勢を一切見せなかった

 

 

あくまで漏洩させた人物のいた会社についても腹を立てていたが、それでもギリギリ許せる範囲と自分に言い聞かせた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうなると、マスコミ各社は生き残りをかけて裁判で争うか、報道を通じて彼の方から折れる様に仕向けるしかなかった

 

 

彼等からすれば、当然の権利だったから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところがである

 

 

 

 

報道各社が自分達で取材し、報道できるのはあくまでも『許可』があるからである事を彼等は失念していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

争う姿勢を見せていた大手報道機関に対して、とある通告がなされたのは騒動から半月が過ぎようかという頃であった

 

 

放映権並び電波権などの剥奪

 

 

それがその報道機関に下された処置であった

 

 

 

 

 

再三放送倫理会等よりの警告や勧告が成されたにも関わらず、無視し続けたかの企業に対する制裁であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その槍玉に上がった企業は人海戦術により、アグネスタキオンと彼の姿を捉え、無許可を以ってテレビに流したところであった

 

 

 

 

最初、この通告を受けた企業側の担当は笑い飛ばした

 

「できる筈がない」と

 

 

通告をしに来た役人は言い放ったとされる

 

 

「あなた方は未来を殺そうとしている

故にあなた方が殺されるのですよ」と

 

 

冗談と受け取っていた担当は余りにも物騒な物言いに違和感を覚えた

 

 

役人の顔をじっと見つめるが、気付いてしまった

 

 

 

目が笑っていないのである

 

 

 

 

 

それに気付いた瞬間、担当は渡された書類に目を通した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愕然とした

 

 

放映権は勿論、取材行為に関する権利も一切が剥奪されるという前代未聞の勧告であったからである

 

 

 

 

 

 

「馬鹿な、こんな事をして」

許されるものではない

 

 

そう言いたかった

 

 

 

「倫理会から警告を受けていた筈

その際に通達されていた筈ですよ?改善が見られない場合、最悪の処置を講ずる事となる。と」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勿論、政府首脳や与野党でこの判断について紛糾した

 

 

この国でも有数の規模となるこの会社を倒産に追い込めば、大量の失業者が溢れる。更に順調な政権運営にも必ず影響が出る

 

だから、もう少し穏便な手段で妥協すべきではないのか?と

 

 

 

 

だが、総理は一切の躊躇いなくこの非情な手段を決定した

 

 

 

「ではどうする?

彼氏の憤懣を放置して、あの様な無法を許すというのかね?

それならば、トレセン学園の意味がなくなるだろう

優先すべきはどちらかね?

ウマ娘と共存できるモデルを潰し、未来を殺すか?

それとも、あの無法集団を一度叩き直すか?

選びたまえ

ただし、心したまえよ?モデルを潰したのであれば、今後ウマ娘達との関係修復はほぼ不可能になる事を」

 

 

閣僚を集めた閣議で総理はそう言い放った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に超党派の会合でも総理は一人一人に決断を迫った

 

 

この期に及んで判断も出来ない者は国民の代表者たる資格なし

そう告げて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果、僅差ではあるがウマ娘との未来を守る事が決定された

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の役人もまた、選択を迫られ即答した人物であった

 

 

それ故に一切の容赦も慈悲もない

 

 

 

 

 

 

 

担当はやっと事態の深刻さを理解して

 

「直ぐに会社と協議します」と話す

 

 

だが

 

「勘違いなさっている様だから訂正しよう

これは決定事項だ。覆せる等という考えは捨てる事だな

期日は上半期の終わり。今が7月の末。そういう事だ」

 

 

 

「そんな!既に来季の番組編成も終わっているんですよ!」

 

担当は悲鳴をあげる

 

 

 

番組編成も来年の分すら既に取り掛かっている所すらあるのだ

それを全て無駄にしろというのか?

 

 

 

「下請けや孫請けの企業に対しては、審査の上で適正な価格を支払う。問題ないだろう?」

 

 

 

担当は理解せざるを得なかった

 

最近になって、今まで協力してきた制作スタジオの幾つかが、来年の打ち合わせを拒否してきたのはこれを知っていたのだと(担当の勘違い。余りにも目に余る報道が過ぎた事で、同一視される事をスタジオ側が嫌っただけ)

 

 

 

「早々に会社に知らせるといいでしょう」

 

 

役人の冷たい言葉に

 

「わかりました」

 

担当はそう言うしかなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

担当はそれでも自分達の会社ならばどうにか出来ると信じていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その結論は覆らない、と」

 

弱々しく電話の相手に確認する

 

「総理を始めとして、特に財務相に総務相の怒りは尋常ではない

警察庁長官も苦虫を噛み潰していた。これ以上の説明は必要かな?」

 

 

 

「・・・・これより報道を是正致します。私を始めとした経営陣も全て入れ替えましょう。それでも」

 

痛みを堪える様に絞り出した

 

「残念だが、そのレベルを超えてしまったのだよ

総理は自身の政権の進退をかけてでも、この結論は譲るまい」

 

 

「   」

 

 

絶句するほかなかった

 

 

今の総理は40代という若さで総理の座に上り詰めた、歴代史上最年少の総理である

 

 

だからこそ、余り強引な政策を好まずに堅実とも言える政権運営をしてきた

 

 

 

それ故に支持率も安定しているが、下手をうてば政権がひっくり返る事もあり得る

 

 

 

 

にも関わらず、この様な決定を下した事で漸く気付いた

 

 

今の総理が掲げる『ウマ娘との共存社会』にどれだけ総理が情熱を傾けていたのかを

 

 

 

 

 

 

 

 

いつもの様に賄賂などによる買収攻勢も手遅れである

 

時間も足りないが、それ以上に

政治家達や主要役人達への踏み絵は済ませているのだから

 

 

 

 

 

「私も総理にせめて今年度末まで待つ事を提案したのだが」

 

 

それだけの時間があれば、この苦境もどうにか出来る可能性はあった

 

 

最悪の場合は『殉教者』になって貰えば良いとすら考えているからだ

 

 

 

 

「明日の国会は荒れますな」

 

「最悪、内閣不信任案が出される事も覚悟しておられる

止められぬよ」

 

仮に不信任案が可決されれば、解散からの総選挙となる

 

 

そうなれば風向きは変わるかも知れない

 

 

 

 

 

 

「だが、否決されるだろうな。貴様らが下手をうち過ぎた」

 

電話の相手は静かに怒っていた

 

 

トレセン学園建設の際に電話の相手は様々な手を使って自身の支持母体へと便宜を図るつもりだった

 

それが失敗しても、来年から始まる様々なウマ娘によるレース。その放映権等に口を出すつもりだった

 

 

 

だからこそ、『シンデレラ』だの『王子様』だのに拘ろうとする報道各社に苛立ちを募らせていた

 

 

 

実際、幾度となく警告もしていたのだ。『これ以上踏み込めば、フォローも出来ぬ』と

 

 

 

だが、それを無視し続けてのこのザマである

 

 

 

 

例え彼が総理に直接意見できる立場であっても、既に全てが決まってしまっている

 

派閥の切り崩しを図ろうにも、時間がない上に今回は議員全員の意見を確認されている。故に意見を変えることは困難を極めるのだ

 

 

 

 

 

 

如何に『総理のご意見番』等と呼ばれていても、覆せない。下手をすればその立場から追われる事も普通にあり得る

 

 

 

 

 

「何とか私どもでも足掻いてみます」

 

 

「無駄だと思うがな。精々最後の株主総会で吊し上げられると良い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この会社は自分の祖父から受け継いだものである

 

 

どれだけ法的に危ない時も政権幹部と繋がっている事で難を逃れてきた。

 

 

 

 

だからこそ、今回もそう出来ると確信していた

 

 

「確信ではない。唯の慢心だったか」

 

 

 

会社の会長職にある老齢の男は自室で小さく溢した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




というわけで、マジギレした彼の逆襲とそれ以上にキレ散らかしている総理でした



続きは明日か明後日にでも


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 ごはん

少し前に書いていた物です


並行世界の物語と思っていただけるとありがたいです



一部本編の設定がありますが、基本ネタです


彼は怒っていた

かの人物を打倒しえねば彼は前に進めぬ、否!進んではならぬ。そう思い定めた

 

 

だが、かの人物は強大であった

 

 

 

 

故に彼は自身に協力してくれる同志を集めた

 

 

 

 

 

 

負ける訳にはいかない!

 

 

 

 

 

 

 

彼の信念は果たして標的を打倒できるのか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけで、第一回アグネスタキオンを愛でる会の幹部会議を始めます

 

「待って」

 

ん?どした、タキオン?

 

「どうしたではなくて、なんだいその奇妙な組織は?」

 

???

 

「何故君が頭を捻るんだい、私が頭を抱えたいよ」

 

何だと!タキオンの具合が悪いだと!

風紀委員長、直ちにタキオンを病院へ!

 

「タキオンさんをバクシンで送り届ければいいんですね!」

 

「待ちたまえ

何故イロモノ枠でないはずのバクシンオー君が此処にいるんだい?」

 

サクラバクシンオー君は我等の組織の要、風紀委員長だが?

 

「何だその奇妙な組織は」

 

では会長、報告を

 

「それでは

現在当組織はトレセン学園公認のサークルとして機能しております

副会長や特別顧問の協力もあり、順調に勢力拡大中ですわ」

 

「マックイーン君、君までが」

 

弱々しいタキオンの言葉に目を背けるマックイーン

 

うむ、俺のタキオンの素晴らしさが浸透するのは非常に喜ばしい事だ。しかし、無理に布教するのはNGだ

そこの徹底は大丈夫か?

 

「副会長として、その様な事がないように全力を尽くしている

安心してくれ、名誉顧問」

 

「待つんだ。副会長とはブライアン君、君なのか?

そして、何故君が名誉顧問なんだ

あと、よくよく考えるとトレセン学園公認のサークルってどういう事だ?」

 

特別顧問が理事長と理事長秘書だが?

 

「ガッデム!」

 

あまりの惨状にタキオンのキャラクターも思わず壊れる

 

 

 

 

 

 

 

「しかしまぁ、大きくなったなぁ」

 

「そうですわね」

 

「ゴルシ」

 

「感慨深いものだな」

 

彼とマックイーン、ブライアンは遠くを見つめていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初めからこの組織はうまく行ったわけではなかった

 

 

 

豊富な資金(タキオンの秘蔵写真)こそ存在していたものの、如何にマックイーンが野球狂いだったとしても、それだけでは勢力拡大出来るものでは無かった

 

襲い来るゴルシや立ち塞がる生徒会

 

 

マックイーンと彼は協力して様々な困難を乗り越えて来た

 

 

 

 

 

そして、生徒会役員であるナリタブライアンを此方に引き込むと、彼は残りの生徒会役員であるシンボリルドルフ、エアグルーヴに全面攻勢をかけた

 

正に死闘であった蘇ったゴルシmark IIIに門番ヒシアマゾンとフジキセキ

辛うじて勝利した彼らは

『追い込み』『ささやき』『ハヤテ一閃』

更にライバルであるゴルシより託された『末脚』により最後まで攻勢を緩めなかった

 

 

まずシンボリルドルフが斃れ、エアグルーヴは孤軍奮闘するも斃れた

 

 

 

 

だが、彼もまた深く傷ついていたが、大天使タキオンの膝枕により奇跡の生還を遂げた

 

 

 

この勝利により、彼等の組織は圧倒的な勢いのままにトレセン学園を席捲したのである(大本営発表)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ちたまえ

ルドルフ君とグルーヴ君にも失礼な捏造はやめたまえよ」

 

 

 

 

 

ごめんなさい

 

 

嘘 で し た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では綱紀粛正委員長報告を」

 

「はい、現在のところ目立った問題はないと思います

漆黒(ライスシャワー)さんとメカボーグ(ミホノブルボン)さんも問題なしと言っていますから」

 

宜しい

後で特別功労賞として、臨時ボーナス(新しいトレーニング方法)を支給するから、2人にも声をかけておいて

 

「はい、わかりました」

 

「ちょっと待ちたまえ。色々突っ込むのもイヤだが、それでも言わせてほしい!

何故!君が!此処に!いるんだい!!サイレンススズカ君!!」

 

「え?」

 

「ゴルシ」

 

「何故そこで不思議そうな顔をするんだい!」

 

 

 

 

 

「ところで、ゴールドシップさん?」

 

マックイーンの背後から明らかに異質なモノが立ち上る

 

「ゴールドシップなんて素敵でカッコいいウマ娘なんて知らないなぁ」

 

冷や汗を流しながら、ゴールドシップ(仮)は逃げの体勢に入る

 

だが、ゴールドシップ(仮)の逃げ特性はCである(某人物の影響により上昇)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メジロマックイーンがあらわれた!

 

 

ゴルシはにげだした!

だがまわりこまれてしまった!

 

 

メジロマックイーンのおせっきょう!

 

 

ゴルシはすばやくみをかわした!

 

 

ゴルシはにげだした!

だがまわりこまれてしまった!

 

 

 

メジロマックイーンのたすけをよぶ!

サクラバクシンオー(ふうきいいんちょう)があらわれた!

サイレンススズカ(とてもやばいひと)があらわれた!

 

 

サイレンススズカのこうげき!

わたしのまえははしらせない!!

 

 

ゴルシはすばやくみをかわした!

 

 

サイレンススズカのついげき!

 

 

ゴルシに147のダメージ!

ゴルシのめのまえがまっくらになった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という訳でゴールドシップはサイレンススズカにより捕縛されましたとさ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところでマックイーン(会長)さんや

 

「なんですか、名誉顧問?」

 

一応ゴルシもウチの外部協力者だからね?

 

「そうでしたの?」

 

「もう少し早く言ってくれよ」

 

 

彼のカミングアウトにマックイーンは驚き、ゴールドシップは恨めしそうに彼を見た

 

 

 

 

じゃ、ゴルシならどうするよ?

 

「そりゃ、オメー。黙っておくに決まって

悪い、そうだよな」

 

 

何故かゴールドシップが謝っていたりする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

では本題に戻る

今回問題となっているのは、オグリキャップ(暴食の女王)だ!!

 

「色々と言いたいことがあるのだが、何やら不穏な意味にも聞こえるのだがね」

 

「確かに食育担当(タマモクロス)さんが保ちませんわね」

 

「しかし、名誉顧問さん!それだからこそスーパークリークさん(リーサルウェポン)を投入したのではありませんでしたか?」

 

風紀委員長(サクラバクシンオー)さん、それでも劣勢を覆す事は難しいという事らしいですよ?」

 

む、我等が誇るスーパークリークさん(甘えさせたいウマ娘)をもってしても優位に立たないとは

かの人物の称号に偽りなし。という事か

 

「ならばこっち(生徒会)の二人も投入するか?」

 

「はぁ、もういいよ

ブライアンくん、戦力の逐次投入は愚策だろうからオススメはできないだろうね」

 

 

となればやむを得ない、か

 

 

「まさか!」

 

「いや、待て!」

 

「ええっ!彼女を動かすのですか?」

 

「流石にそれは」

 

 

彼の真意を理解したマックイーン、ブライアン、バクシンオー、スズカは再考を促す

 

 

ではどうする?

 

「行ってもらうしか、ねぇだろうなぁ」

 

俺とて本意ではない

だが、食育担当(タマモクロス)を救うには彼女の力が必要なのだ!

 

 

苦労人にして、常識人(ナイスネイチャ)を動かす

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日、彼の姿はトレセン学園の食堂の厨房にあった

 

 

 

 

 

しっかし、中坊が厨房に入っているなど笑い事にもならないな、こりゃ

 

「っっ!!!」

 

彼の呟き(寒いダジャレ)生徒会長(シンボリルドルフ)が蹲っているが、いつもの事なので誰も気にしない

 

 

 

 

 

 

 

 

この厨房内には

 

タキオンの彼氏(対シンボリルドルフ用最終兵器)

食育担当のタマモクロス(ツッコミマスター)

スーパークリーク(ナリタタイシン甘やかしたい)

組織一の苦労人(ナイスネイチャ)

寒いダジャレ大好きウマ娘(シンボリルドルフ)

会長のダジャレ被害担当(エアグルーヴ)

が揃っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、(オグリキャップ)がやって来る

 

 

 

 

 

 

だが、この日如何なる偶然か彼女のそばにピンク色の悪魔がいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

果たして彼等の運命は如何に!




というわけで、こんな話もあったのよ?って話です


オグリキャップのそばに居たものについてはわかる方は分かるかもしれませんね

Twitterでの知り合いの方の絵から思いついたネタです

アンケートについては本日の正午までとさせて頂きます

ご協力頂きありがとうございました!!


本編にピンク色の悪魔は出てきません


というわけでありがとうございました


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 あらがうものたち

騒動は未だ解決に遠く


 報道機関としての存続を実質奪われた企業は株式会社である

 

 

そして、何処からか会社の窮状が漏れた

 

 

 

当然のように株主達は激怒し、株主総会の開催を要求した

 

 

 

この会社の不幸は例年株主総会は7月か8月に行なう事にしていた事であった

 

 

 

 

 

 

 

 

「以上が現在の状況となります」

 

専務(生贄)からの株主達への説明が終わると

 

 

「ふざけるな!」

「警告があったのに、何故真剣に受け取らなかった!」

 

 

といった怒号が会場のあちこちから浴びせられた

 

彼等からすれば、一流企業であったこの会社の株券は安全なものであった

 

それが僅かひと月もしない内に紙屑同然となれ果てようとしているのである

 

怒るのも道理だった

 

 

 

「一つお伺いしたい

仮に我々(株主)に損害を与えた場合、経営陣がそれを補填してくれるのだろうね?」

 

会社の株を起業当初より保有している一人の株主が声をあげた

彼が言っているのは、起業当初は株主がつかなかった為に当時の社長が株主達にした約束の事である

 

 

 

この発言に対して、経営陣は明確な答えを出すことを躊躇った

 

 

仮に株主達の損害を補填したとなると、その額は莫大なものになる事は疑う余地もない

 

 

 

更にこれから続出するであろう退職者達にも退職金を支払う

 

 

 

これに加えて、実弾(賄賂)を使って各方面への交渉もしなければならない

 

 

 

 

 

 

規模が縮小されるのであっても、再起は出来る

 

元手があるのならば

 

大企業であるこの会社をそこまで追い詰めた時点で他の報道機関の頭も冷えるだろうから、最悪の事態(倒産)だけは避けれるのではないか?

 

 

それが会社の役員会議で役員から出た意見であった

 

 

 

 

 

 

 

つまり、会社としては平身低頭してでも廃業にならない道を模索する。必要ならば、現在の役員や管理職の人間の中からもリストラしてでも

 

 

 

その上で社員達に理解を求める。何れ来るであろう再起の時まで耐え忍ぶ事を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、ただ待っていたのでは事態が好転する可能性はとても低い事は明白

 

その為にある程度以上の資金を保持せねばならない。買収するにせよ、他の企業に働きかけるにせよ、お金は必要なのだから

 

 

 

 

 

必要ならば会社の起業した会長の一族の資産すら手をつけてでも、再起を図るつもりだったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、株主総会において、株主達の被害の補填などをしてしまえば、かなりの資金を失う事になる

 

それは会社存続や再興の為に使うべき資金の枯渇を意味し、社内からも諦めの空気が出てくる事に繋がりかねない

 

 

 

大企業といっても、大量の社員達が一斉に退職しようものならば、その対処に莫大な資金を充てざるを得なくなる

 

 

更には、退職者の数が膨大になれば、円滑な手続きができる可能性もかなり低くなる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、この企業は日本屈指の企業である

 

 

 

そんな会社が事務手続きでまごつけば、ただでさえ存続が危惧されているこの会社の未来が危険視される事にも繋がろう

 

 

しかし、手続きに人員や資金を割けばその分、会社存続の為の工作が遅れる事になりかねないし、使える資金が少なければ効果も見込めなくなるだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

つまり、総会で現在問題視されている『株主の利益確保』を行なった場合、貴重な対応の時間や資金を奪われる事が明らかと言えたのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

株主総会に出席する会社役員達は内心、頭を抱えていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、彼等は些か以上に自分達に都合の良い考え方をしていると言わざるを得ないだろう

 

 

 

第一に、彼等は『法を犯した』

言わば犯罪者の様な者である

 

 

一応、他の報道機関も擁護する動きを見せているが、その中でも明らかな温度差が生じていた

 

 

 

 

 

先ずはトレセン学園の配信を受けて、速やかに関係改善に舵を切った者達。

彼等は頭を下げ、示談金を提示し、トレセン学園並びアグネスタキオンの周辺での強引な取材行為は今後一切しないことを自身の報道にて世間にも伝えた

 

 

当事者であるタキオンの彼氏はいくら憤懣やるかたない様子であっても、彼もタキオンの今後がかかっていると説得された。故に今後次第であるが、交渉の席に着く事に渋々同意した

 

 

 

 

 

 

次に報道機関の中でも一際大きい、件の会社に対する苛烈とも言える措置を政府が下した事で方針転換を行なった者達。

 

 

本音を言えば、不愉快極まりない話である。が、その為だけに会社を潰せるか?と聞かれたならば、彼等は首を横に振らざるを得ない

 

政府から各種権利を剥奪されるという事は、「お前達にこの権限を与えるのは不安がある」と言われているも同義であり、報道の自由などと誤魔化している場合ではない

 

まして、業界でも大手である企業が既に槍玉に上がっているとなれば、政府の本気度も察せられる

 

 

 

彼等は内心を必死で押し隠しながら、トレセン学園側への謝罪を行うべく、トレセン学園のスポンサーに接触しなければならなくなった

 

明らかに遠回りであるが、彼等にはトレセン学園にコンタクトする方法がない

 

正確にはどのルートを使えば『トレセン学園』や『政府』が許してくれるか判断がつかなかったのだが

 

 

 

既に彼等は警告を無視している。であればこそ、これ以上のミスは文字通り『企業(生命)の危機』を招く事を今更ながらに認識していた

 

 

既に彼等と取引のあったスタジオや、制作会社の一部は距離を取りつつある事も彼等の危機感を煽っていた

 

 

 

 

 

加えて自分達の番組で起用していたコメンテーターの芸能人が名誉毀損と訴えられた事も大きかった

 

 

当人は謝罪会見を開いた者もいれば、自身が所属する事務所を通じて謝罪のコメントを発信した者もいた

 

 

 

 

知名度のある自分達が『とりあえず』謝れば問題は解決する

 

その様な考えをもっていた芸能人も少なくなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところがである

 

 

その『形ばかりの謝罪』に対して、一部のウマ娘擁護団体やウマ娘、その身内などが激怒したのである

 

 

 

 

 

「自分達にとっての希望を散々振り回しておいて、その言い様はなんだ!!」

 

ウマ娘に少なからず関わっている者達にアグネスタキオンと彼の情報が少しだけとはいえ、提供されていたのはそれだけウマ娘を取り巻く環境が厳しいものだったからである

 

彼女達は自分達と世間がどれだけ上手くいっていなかったかを発信し、その上で『現代のシンデレラと王子様』の関係が奇跡的なものであるかを世間に広めていった

 

 

 

 

 

これはSNSなどにより拡散され、『シンデレラ』と言う名称だけで騒いでいた者達は如何にこの問題が複雑なのかを漸く理解した

 

切り取りや偏向報道しか情報源のなかった世論は当初、メディアや芸能人に同情的だったが、これを知り一変する

 

 

 

 

 

 

そうなると人気商売である芸能事務所やプロダクションは、形ばかりの謝罪を行なった芸能人達に対してのペナルティを検討しなければならなくなった

 

一方でその様な事実を隠したままに報道番組でコメンテーターをさせていた報道機関に対して、抗議をする事になっていく

 

 

 

報道機関はトレセン学園への連絡の道筋を構築する一方、逆風となりつつある世論への対策や芸能事務所などへの対応に忙殺される事となる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後は政府のしている事を声高に非難し、自由な取材と報道は自分達の正当な権利であると主張する者もいた

 

 

政府のやり方を切り取り、捏造し、脚色を加えてどれだけ違法性があるのかを自局の息のかかった法律家などに解説させ、政権にダメージを与えようとしていた

 

 

 

政府が制裁を加えた当初は世論も味方になりつつあった

 

 

更に大手である企業が許可取り消しとなるのであれば、空くであろう放送の枠を取得するべく様々な交渉を密かに始める事となる

 

 

当然ながら制作会社、スタジオの一部はこちらと距離を取ろうとしたのだが、「今後の付き合いはない」と恫喝してそれを封じ込めた

 

 

 

 

更に他の報道機関が自粛しつつあったアグネスタキオンや彼への強行取材や居住するマンションへの侵入を試みる事も行なう事で視聴率を稼ごうとした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、それもマンションの住人が入った隙を狙ってマンションに不法侵入した記者が警察により逮捕された事で風向きが変わった

 

 

マンション管理会社とマンション住人は共同で会見を開き、不法侵入を助長させたとして侵入した記者の所属する会社を訴えたのである

 

 

 

何せ、情報をリークした人物もタキオン達の部屋までは知らないし、エレベーターは住人の持つ鍵か、管理人の部屋からの操作でないと起動しない

 

 

当然だが、侵入に成功した記者は各階を走り回り、2人の部屋を特定しようとした

 

 

 

住人からすれば、セキュリティのしっかりした物件だからこそ、高い賃料を払っているのであって、それが脅かされるなど論外だった

 

 

 

 

 

 

 

 

此処に来て初めてマンションの住人達は2人が受けていたモノを実感したのだ

 

 

それまではどちらかと言えば他人事であったが、いきなり当事者となったのだ

 

 

 

住人の怒りは尋常なものではなかった

 

 

 

 

だが、それ以上に激怒していたのは管理会社である

 

前述した通り、このマンションはセキリュティの高さが保証されているからこその高い賃料であり、本来なら部外秘であった筈のアグネスタキオンとその彼氏を此処に住まわせる判断の理由もそこにあったであろう事は間違いない

 

ところが出入りしていた業者の管理不足と従業員の自覚の無さにより、漏らしてはならない筈の個人情報とも言えるものを流出させてしまったのだ

 

それに加えての今回の一件ともなれば、最早管理会社としての信用にも関わってくるし、常識的な考えを持つ大人としても許容範囲を超えていた

 

 

確かに賃貸契約とはどうしても貸している管理会社の方が強くなりがちではある

だからとて、住人の感情を無碍にし続ければいざと言う時に必ずどこかで問題が起きる

 

 

 

マンションの担当者はこの事態を重く見て、管理会社の上層部へと改めて報告と要望を上げる事になる

 

 

 

 

 

その結果が管理会社と住人による合同会見という形にあらわれる事になったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイワスカーレットとウオッカはウオッカの自宅に集まっていた

 

 

 

 

「どうすれば良いのよ!お姉ちゃんとお兄ちゃんが危ないのにっ!」

 

「畜生、スカーレットの両親も私の両親も役に立たねえ!

兄貴が危ないってのに!」

 

 

 

 

如何にダイワスカーレットがアグネスタキオンの従姉妹であり、ウオッカが彼の妹分であろうとも、どうにかなる話でもなかった

 

 

特にダイワスカーレットの両親はアグネスタキオンの両親の事を良く思っておらず、アグネスタキオンにも良い感情を持っていない

 

 

精々が「厄介事ばかり起こしてくれる」という不満がある程度であり、タキオンの為に動く気など到底なかったし、ともすれば自分達の娘であるダイワスカーレットが余計な事をしないか心配していた

 

 

 

親からしたら隠しているつもりなのだろうが、元々子供は感覚が鋭い上にスカーレットは五感が優れたウマ娘。そこに兄から教えてもらったヒトの見方まで加わって両親の思惑など見通せていた

 

 

 

事にスカーレットはタキオンと彼の身内であるからして、彼女が抱える不満は相当なものになっていた

 

 

 

 

 

 

 

翌日、そんな2人の元に訪問者が現れる事になる




もう少しだけ続くんじゃよ


信じられるかい?

まだ一年目の夏前なんだ、これ


ウマ娘の小説なのにトレーナーが桐生院葵嬢以外出てきてない不思議(白目


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 アグネスタキオンしっとり風味 彼氏を添えて

ほのぼのを書こうとしたのだが、どうしてこうなったのやら


これは少し未来の話

 

 

 

 

 

 

あ”ー疲れたぁ

 

やれやれ、流石のキミでもライブは堪えた様だねぇ

 

 

 

 

アグネスタキオンと彼はトレセン学園内にあるタキオンの研究室でのびていた

 

 

 

 

スポンサーは無理難題ばかり押しつけてくるよなぁ

 

 

ま、仕方ないと思うがね。スポンサーが居なければ、トレセン学園も出来ていない訳だしね

 

 

 

 

 

 

理解できん事もないが、ボクが出る必要ってあるんすかねぇ?

 

 

無いとは言えないだろうね。先月行なったスポンサー達を集めて行なったシークレットライブ

あれの評判は上々だったとルドルフくんから聞いているよ

 

 

やだねぇ、完全に見世物になってますわぁ

夜をどうにかしナイト

 

 

 

やれやれ、夜だけにナイトと言うわけかい?

そういうのはシンボリルドルフくん(被害担当)にしたまえよ

 

 

 

わー、タキオンひどーい。ルドルフ泣くゾォ?

 

 

 

大丈夫だろう

その場合はキミが慰めれば万事解決さ

 

 

 

 

 

なんというマッチポンプ

 

 

 

 

 

 

 

当人が此処にいたら苦笑するだろうが、2人にとってシンボリルドルフというウマ娘は気軽に揶揄って遊べる相手なのだ

 

 

 

 

この事をナリタブライアン(例の組織の元副会長)の前で彼が語った時

 

 

「まぁ、名誉顧問と奴が良いなら問題ないがな」

と遠くを見ながら同意していた

 

 

 

 

 

 

しかしだね

 

 

お?どったのよタキオン(マイハニー)

 

 

あの演出はいるのかい?必要性を感じないのだが

 

 

いる(鋼の意思)

 

 

そ、そうかい

 

 

 

 

 

 

アグネスタキオンが言っているのはうま〇〇い〇〇での演出の一つであった

 

 

 

 

 

ライブの中でステージを走り抜ける演出があるのだが、そこについてとあるウマ娘から意見があったのだ

 

 

「貴女達恋人同士なのよね?

なら、こうしたらどうかしら?」

 

外部からトレセン学園の手伝いに来ていたマルゼンスキーの意見だった

 

 

 

アグネスタキオンは恥ずかしい為に断ろうとしたのだが、タキオン(恋人)の可愛さを伝える事に全力を尽くす彼は持ち得る手段を尽くして見事にタキオンを説き伏せたのだ

 

 

 

結果、ライブの中でステージを走り抜ける際には彼がアグネスタキオンをお姫様抱っこして走り抜ける演出へと変化させた

 

 

 

なお、彼としてはもう一つ変更したい点があったのだが、これについてはアグネスタキオン、エアグルーヴ、シンボリルドルフが全力で対抗した

 

彼はイケボを以てエアグルーヴの腰を砕く事に成功したり、ルドルフを個室に呼んでたかいたかいや耳かき(交渉)したのだが、結局彼とマックイーン達の願いは叶わなかった

 

 

 

仕方ないので、彼はエアグルーヴの愛用しているMP3に彼のイケボで寒いダジャレ50連発のデータを入れたり、1週間ルドルフにはたかいたかいと膝枕(ご褒美)なしというささやかな報復を行なった

 

張本人であるタキオンに対しては、好物であるスフレオムレツを1ヶ月間作らない事と、苦手であるブロッコリーのスープを週一で食卓に並べる事で妥協した

 

 

 

ブロッコリースープを食べるときに涙目のタキオンを見てほっこりとしていたのは彼だけの秘密である

 

 

件のスープはわかりやすく言うと、コーンクリームスープのコーンがブロッコリーに変わったものである。偏食のきらいが幼い頃からあったタキオンの為に飲みやすい、食べやすいメニューを彼は色々試していた

 

 

その中において、見た目だけで中身を連想できるブロッコリースープは異質なものであった為にタキオンは未だに苦手としていた

 

 

 

 

 

ぶっちゃけると、食べようとして躊躇い、彼の顔を何度も見てから涙目になって口に含む瞬間目を閉じるタキオンが可愛いすぎるので彼からすると仕方ないのである

 

なお、組織内でもこの光景を見たのはメジロマックイーンのみであり、思わず彼女も暴走しそうになったのはここだけの秘密であったりする

 

 

 

 

 

 

 

なお、後日タキオンへの行為を知ったオグリキャップ(暴食女王)は彼に対して珍しく怒りを露わにしていたが、タマモクロス(ツッコミマスター)学園一の苦労人にして常識人(ナイスネイチャ)の犠牲により事なきをえたことを報告しておく

 

 

しかし、タキオンの偏食家ぶりを知ったオグリキャップはエルコンドルパサー、グラスワンダーを連れて様々な独特な日本料理を食べる事となり、アグネスタキオンの涙腺が崩壊しそうになった事は余談である

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、問題となったシーンは画面に向かってキスする場面であり、彼とマックイーン達(アグネスタキオンを愛でる会メンバー)はタキオンと彼のキスを熱望していた事も合わせて記す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライブ練習についてはウマ娘達の中にも温度差があり、監査委員長(ナリタタイシン)やビワハヤヒデ、ヒシアマゾン等は余り乗り気ではなかった

 

その一方で組織委員長(メジロマックイーン)(会長より改訂)綱紀修正委員長(サイレンススズカ)その委員達(ライスシャワーにミホノブルボン)特別顧問(秋川やよいと駿川たづな)等は非常に乗り気であった

 

特にスズカは組織内において、別の枠組みである『親衛隊』を創ろうとしていた程である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼はトレセン学園に来てから、タキオンに内緒で少しずつ仕上げてきたものがあった

 

特別衣装(ウェディングドレス)である

 

 

 

如何に家事のレベルが世間にいる専業主夫達と比べても隔絶したものを持っているかれであっても、こればかりは苦戦せざるを得なかった

 

 

 

故に協力者がいた。

学園一の苦労人にして地元商店街のアイドル(ナイスネイチャ)ナリタタイシンを甘やかしたいウマ娘(スーパークリーク)の2人であった

 

 

 

 

本来なら、ここにエアグルーヴ(シンボリルドルフ専用デコイ)も加えたかったが、彼女を巻き込むと高確率でナリタブライアンに伝わるだろう

 

そうなると、メジロマックイーン(野球とスイーツ大好きウマ娘)に伝わるリスクが爆上がりする事は目に見えていた

 

 

 

 

 

 

確かにマックイーンは好人物であり、タキオンや彼にも色々と便宜をはかってくれている

 

 

 

それ自体にはタキオンも彼も非常に感謝している

 

 

 

いるのだが、時と場合によって(スイーツと野球の場合)は高確率で暴走する

 

ゴールドシップ(メジロ家の問題児)が抑えに回る事からもどれだけ面倒な事かは理解いただけよう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウェディングドレス自体はナリタブライアンに押し付けたものがあるために、そこまでの問題とはならなかった

 

材料や細かいアドヴァイスはナイスネイチャの知り合いである商店街の皆様に協力してもらう事で解決した

 

 

 

 

 

 

「だからって、何で普通に出来るのよ」

 

「ネイチャさん、愛ですよ愛」

 

???

 

「いや、愛ってクリークさん

あと、そこで不思議そうにしないでよ」

 

 

いや、不思議な塊であるウマ娘に言われても、ねぇ?

 

 

「ううっ、言い返せないぃぃぃ」

 

「顧問。ナイスネイチャさん(私達の良心)をあまりいじめない方がいいと思いますよ〜

それと、どうやってタイシンちゃんと仲良くなったんですかぁ?」

 

「あの、クリークさん?妙な意味を含んでなかった?

確かにタイシンさん最近顧問さんと仲良くなりましたよね?」

 

仲良くなったと言われましても、ねぇ?

俺としてもよくわかんないのだが

 

 

 

 

 

 

彼は別に鈍感でも他者からの感情に疎い(ギャルゲの主人公)でもない

 

 

というか、両親からの悪意に晒されるしかなかったタキオンを守る彼が他人の感情に注意を払わない筈がない

 

 

もっとも、注意している事と対応する事は全く別の話なのであるが

 

 

 

 

 

 

 

 

だから、ルドルフが自分に対して複雑な想いを抱いている事も、色んなウマ娘から憧れや羨望を向けられているのも知っている

 

スカーレット()ウオッカ(妹分)がどれだけ苦しい中にいるのかも

 

 

 

 

 

だが、彼は物語の主人公(ヒーロー)ではない

 

弱く、惨めでどうしようもないほど愚かな子供なのだ

 

 

 

 

力があっても、想いがあってもダメなのだ

 

 

 

 

 

 

力だけあっても、一時凌ぎにしかならない

 

 

一時的には好転するのかもしれない。だが、大衆というものは貌がないから少しのきっかけで正反対の方向へ容易に向く

 

それはとても恐ろしいことである

 

 

 

 

 

想いがあっても、それだけで状況を変化させる事もまた難しい

 

 

 

仮に一時の狂騒によって変化した社会が歴史上上手く言ったためしなど殆どない

その代において上手くいったとしても、高潔な精神はいつか失われる。その結果残るのは、市民の支持を受けて権力を握ったと錯覚して強権を振りかざす権力者とそれに喘ぐ事になる市民達である

 

 

 

 

 

 

では、想いと力を併せ持ったならば問題ないのだろうか?

 

 

それもない。社会を動かすのは一人一人の意識なのだ

仮にその様な人物が理想論を振りかざしてトップとなったとしても、長くは続くまい

現代社会においては、教育が徹底している国家も多い。それ故に不平不満を持ちながらも自らを律する事が出来る

だが、不満は残るし、革新的な事をする為には意識改革が必要なのである。押し付けでは反発しか生み出さない

 

先のメディア騒動もまた、そういった意味を持つものであったと彼は思っている

 

 

 

 

 

 

 

 

政府や秋川家を中心としたウマ娘との共存社会の実現

 

 

その為のトレセン学園であり、来年からスタートする各種レースなのだ

 

 

 

 

 

だが、彼等は既得利権を持つ人間の理性を信じすぎたのだろう

 

 

 

メディアにも将来が見えている『筈』。だから不用意な事を出来る土壌さえなくなせば、問題は解決すると

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうではなかった

 

彼等は目先の利益も将来の利権もどちらも求めた

 

 

 

その結果、どれだけの混乱が起きようが、誰が悲しもうが彼等にとっては些細ごとだったのだ

 

 

だが、自分達が受ける被害にだけは敏感に反応する

それは自分達の権利だと

 

 

 

 

 

 

 

そして双方はそれ故に相入れる筈もなく、結果として一部の者達から『言論統制』と揶揄される程に苛烈な結末となったのだ

 

 

 

 

 

 

 

あれからまだ少ししか経っていないが、トレセン学園の周辺は平穏な空気を享受できている

 

 

彼も何かを言おうとは思わない

 

結局のところ、彼もまたトレセン学園により利益を享受している側なのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だからこそ、思うのだ

 

 

彼は勿論の事、ウマ娘としてのアグネスタキオンも表舞台に立つ事は二度と出来ないのだと言う事を

 

 

 

 

 

 

タキオンにその話をした時

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふぅん?

私がウマ娘としての活動が出来ない?

それがどうしたというんだい?私にとってキミとの日常やマックイーンくん達とも日常があればそれで良い

それ以上を望むつもりはないし、必要も感じないさ

 

 

 

でも、タキオンだって走りたいだろ?

 

 

 

やれやれ、キミは私と何年一緒にいるんだい?

私が望むのは日常(あなたと過ごす日々)。それで良いし、それ以上に欲しいものはない。それにスカーレットが笑って過ごせたならば言う事はないだろうけどね

 

 

 

との事であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

既得権益と良く耳にするが、ある意味ではそれは正当なものでもあるのだろう

 

 

 

 

新しい事を始めるためには、様々な障害が立ち塞がる

 

 

トレセン学園設立を例にしてみれば、トレセン学園の為の土地。建設する為の許可。今まで個別にしていたトレーニングや教育を一括して行なうにあたる各種法令整備と環境整備

 

更にトレセン学園の運転資金

 

軽く見積もってこのくらいはあるのだ

 

 

 

 

 

 

しかも失敗すれば投資した全てを無駄にする

 

 

 

そんな事に誰が進んで協力すると言うのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アグネスタキオンを一番近くで見てきた彼は大人(タキオンの母親)のやり方を間近で見てきた

 

 

 

だからこそ、綺麗事を言うつもりはない

 

 

勿論、必要ならばどれだけ情けないフリも汚い真似もしよう

その程度の覚悟すらなく、タキオンの日常を守れる等と世迷言を言うつもりなど彼には無かったのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ、先の騒動においては余りにもそれに焦点を当てすぎたのは事実

 

 

メディアからすれば、生き残りをかけたものであったからどうしても過剰気味な物となったし、政府側からしても退く事は許されなかった

 

 

 

それを見ていたからこそ、彼はよく理解していた

 

 

自分達を利用しようとしている大人達と対立する事がどれだけ無駄な行為なのかを

 

必要なら表舞台に立とう(ピエロになろう)ライブにも出よう(見世物にもなろう)

 

 

 

 

 

 

アグネスタキオンという少女を守る為の盾にも彼女の歩みを止めようとする者達を倒す剣にもなろう

 

安らぎの欲しい時には寄りかかれる大樹となろう

 

 

 

 

 

以前、ナリタタイシンから自分は何だ?と聞かれたが、今ならこう答えよう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はタキオンを護り、支える為にあるモノ

 

 

 

その為に無力で愚かなボクを封じよう

 

 

いつか、いつの日か彼女と彼女の世界が優しいものになる。そんな未来が来る日まで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マッハッタンカフェは自室で本を読んでいた

 

 

周囲から読書家として知られている彼女だったが、恐らくトレセン学園にいる誰よりもタキオンの想いを理解していると確信している

 

タキオンの彼よりも、である

 

 

 

 

 

 

 

アグネスタキオンというウマ娘をアグネスタキオンは嫌悪していた

 

 

いや、嫌悪など生易しいものではない。憎悪しているのだ

 

 

 

 

 

 

彼と言う人物の人生を狂わせたアグネスタキオン(ウマ娘)を他の誰よりもアグネスタキオンは憎んでいた

 

 

 

それを知っているカフェはどれだけ彼の存在にタキオンがスクワレテイルのかを良く理解していた

 

 

 

 

 

 

 

 

だからこそ、彼女は2人に協力するのだ

 

 

わかり合っている様で致命的にすれ違っている友人達の助けとなるために

 

 




最近お気に入り登録が増えたり減ったりしてる


良くわからないっす


まぁ、たしかにクオリティ低いから仕方ないだろうけど


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 とある日常のバカップル(起)

息抜きに閑話をブッコムスタイル


夏。それは浪漫に満ちた季節

 

夏、それは普段と違った姿が見える季節

 

夏、異性にアピール出来る貴重な季節

 

 

 

 

 

 

 

例え決まった相手がいるアグネスタキオンでも、その原則からは逃れられない

 

 

 

いや、寧ろ彼の姿が世間に知られた事でアグネスタキオンの焦燥感はいつもよりも大きなものとなっていた

 

 

 

 

タキオンの彼はたしかにお世辞にも美形とは言いがたいだろう

 

決して、運動神経抜群や頭脳明晰でもないし、天才でも秀才でもないだろう

 

 

 

どこにでもいるであろう、普通の少年なのだ

 

 

 

 

 

 

 

でも、そんな彼がアグネスタキオンは好き

 

 

つまらない駄洒落を言ったり、慣れない料理を作ったり、苦手なはずの家事を必死でやっている。いつも劣等感を感じながらも歯を食いしばって自分のために努力してくれる、そんな彼が

 

 

 

 

良く歪な関係と言われてきた。自分と彼では釣り合わないとも言われてきた。彼よりもっと良い相手がいるとあの女(母親)は言っていた

 

 

周りの評価(雑音)など知った事ではない

 

 

 

アグネスタキオンにとって、彼は日常そのものなのだ

 

 

だからこそ、彼が辛そうにしている事には耐えられない。彼は自分に笑っていて欲しいと言う。だが、それならば彼も笑っていて欲しいのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレセン学園に入ってから、アグネスタキオンは気が気でなかった

 

 

何せ顔合わせの時にはっきり感じた事がある

 

 

 

 

トレセン学園生徒会は彼女にとって未来の強敵足り得ると

 

 

 

『今』はシンボリルドルフだけだろう。彼の良さは傍目からは分からない。彼の懐に入って初めて理解できるものだから

だが、将来的にはわからない

 

 

そして、タキオンは自分にそこまでの自信を持てない。

彼と一緒になったのは、あくまでも彼と幼馴染であったからであって、嫌な事だが、彼と幼馴染でなければ一緒になれたなどとは思えなかったのだ

 

 

 

 

 

 

どちらかと言えば、研究に没頭して周りとも余り溶け込めず、孤立した挙句に相手を見つけたらひたすらに甘えるのではないかと思っている

 

 

 

 

 

 

それはタキオンにとって、あまりにも恐ろしく、しかし有り得る未来図であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だからこそ、タキオンはシンボリルドルフにだけは彼と距離を詰める事を許容した

 

 

彼女は聡明でキチンとした倫理観を維持できる人物だ

 

 

 

 

仮に彼と一緒にいても良いと言われたとしても、必ずタキオンに遠慮するだろう

だが、ウマ娘というものは本来激情的になりやすいもの

 

 

ひとたび冷静さを失えば、どの様な凶行に走ったとしても不思議ではない存在である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

故に定期的にガス抜きをさせる事で、彼女の理性を維持すると共に、タキオンへの罪悪感も持たせておくのだ

 

されば間違いなく、彼女は決定的な間違いをする事はないだろうと判断していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に生徒会長(シンボリルドルフ)が彼に対して遠慮なく接する事により、彼女よりも脅威となるであろう人物への牽制ともなる

 

 

 

我ながら情けないとは思う

 

 

彼の彼女なのだから、自分の魅力で彼を繋ぎ止める。くらいは言うべきであるが、アグネスタキオンは自分にそこまで自信を持てないのが現状であった

 

 

 

とは言っても、『恋は戦い』とも言うと聞くし、彼を素直に誰かに譲るなど到底あり得ない選択である

 

 

 

 

 

 

 

だからこそ、タキオンはタキオンなりに努力するのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、スカーレットかい?久しぶりだねぇ

 

 

ん?問題はないと思うよ、ありがとう

 

ところでスカーレット、既に夏休みだろう?どうだい、私の知り合いがプライベートビーチを貸してくれると言う話でね?

良ければキミとウオッカくんも来ないかい?

 

 

 

 

 

落ち着きたまえよ。当然だが彼しか異性はいないし、そんなに多く人を集めるつもりはないよ

 

 

ふむ、明後日か

 

分かった、少しだけ待ってくれるかな?

確認してみよう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もしもし、マックイーン?

ああすまないね。この前の件なのだが、明後日など大丈夫かい?

 

 

随分と準備がいいのだね。こちらとしては助かるけども

 

そうだね、そうなると問題は彼をどう説得するかになるか

 

 

 

 

ふむふむ、ではお言葉に甘えるとしようか

ありがとう。では明後日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スカーレットかい?待たせてすまないね

 

明後日の始発で此方に来れるかな?

 

そうか、では駅のロータリーで待ち合わせという事で頼むよ

 

 

合言葉は『行方も知らぬ』

 

 

そうだとも『恋の道かな』で頼むよ

ああ、では明後日に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やれやれ

夏休みに入ったけど、正直な話暇なんだよなぁ

 

 

ん?スカーレットの奴から電話?

 

 

 

 

おう、どうした?

明後日の予定?そりゃ暇だけど、どうしたんだよ?

 

 

は?タキオンさんと兄貴と海に行くって?

いやいやいや、マジかよ!

 

 

そりゃ、行くに決まってるだろ!

 

 

 

は、水着?

 

 

お、おう。なんでそんなにやる気なんだよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんでか明日スカーレットの奴と水着選ぶ事になったんだが

 

学校指定の水着じゃダメなのかよ

 

 

スカーレット曰くダメらしい。なんでだよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、スカーレットとあたしは近所のデパートで新しい水着を買ってみたんだが、一つだけ言わせてほしい

 

 

あたしたちまだ中一だぞ!

んなに大胆な水着いんのかよ!

 

 

 

スカーレット曰くいるらしい

なんでなんだよ

 

ま、あたしまで付き合う必要ないから、スポーツ系の水着にしたんだけどさ、買ってから他にも先輩方が来るっていうのは卑怯じゃないか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふふふふふふ、明日はタキオンさんと顧問との海ですわ!

 

 

タキオンさんを誘っておいて正解でしたわね!

 

 

 

まぁ、参加したい方が多すぎたので抽選(戦争)になりかけたのはいただけませんが、必要な犠牲でしたものね!

 

 

 

主催である私は当然参加するものだと主張しようとしたら、まさかのゴールドシップさんが参加しようとしたのには困りましたわね。思わず説得(武力制圧)しなければならなかったのは問題ですわね

 

まったく!顧問からの指導の成果でしょうが、妙にやり辛くなってきましたわね、ゴールドシップさんは

 

 

 

 

 

 

 

ちなみにタキオンを誘ったメジロマックイーンであったが、如何にメジロ家のプライベートビーチであっても、大勢では邪魔者に目をつけられるとの建前により、マックイーン含めて僅か8名までという枠を設けていた

 

更にタキオンとその彼に、ダイワスカーレットとウオッカ。つまりマックイーン以外では僅か3名というとてつもない倍率の枠となっていたりもする

 

 

 

綱紀修正委員会の面々達(サイレンススズカ等)甘えたがり屋(シンボリルドルフとナリタタイシン)を中心に様々なウマ娘が参加希望を表明した為に、ひっじょーうに選考が難航した事は言うまでもないだろう

 

特別顧問も参加したそうにしていたが、流石に自重してもらった

 

 

 

 

厳選なる抽選の結果、彼に甘えたい筆頭(シンボリルドルフ)強気系甘えん坊(ナリタタイシン)学園一の苦労人(ナイスネイチャ)が選ばれる事となった

 

 

ついてく系ウマ娘(ライスシャワー)無感動系ウマ娘(ミホノブルボン)は勿論、絶対先頭譲らない系ウマ娘(サイレンススズカ)が修羅になりかけていたが、副会長(ナリタブライアン)女帝(エアグルーヴ)宝塚系ウマ娘(テイエムオペラオー)ルチャ系ウマ娘(エルコンドルパサー)大和撫子系ウマ娘(グラスワンダー)による反抗の前にさしもの彼女達も沈黙を余儀なくされた

 

 

なお、盾にされていたのがメジロ家の某ウマ娘であった事はマックイーンにとって今更であったりする

 

 

 

 

だが、トレセン学園一のアンタッチャブル(危険人物)といえば皆口を揃えてこう言う

 

アグネスタキオン以外にいない

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで始まろうとする夏の海(乙女達の一大事)

 

果たしてまともに終わるのだろうか?




ダイスを振って、まさかの結果に草生えた


どうして、タイシンとネイチャがはいったのだろうか?



頑張って書こうと思います


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 続バカップル(承)

バカップルと言いながら、割とシリアス入ってます


次回より海イベントとなりますが、期待せずに待ってて下さると嬉しいです


アグネスタキオンが彼を異性として意識し始めたのはいつの頃だったのだろうか?

 

 

 

そう聞かれたらとタキオン本人もいつからだとはっきり答えることは出来ない

 

 

 

 

 

 

 

確かに彼とは幼馴染であり、家族も含めて一番身近な存在だった事は疑いの余地もない

 

 

 

だが、幼い頃の彼はお世辞にも頼り甲斐のある人物とは言えなかったのも事実

 

寧ろタキオンの影に隠れていることすらあった程、臆病な少年だった

 

 

 

 

 

 

 

意外に思うかもしれないが、当時のタキオンにとっては幼馴染である彼すらもどうでも良い存在であった

 

小学3年の時に両親が家を頻繁に空ける事になった時、タキオンは自宅での研究出来る環境を両親に望んだ

 

勿論、トレセン学園にある本格的な研究室の様なものではなく、資料がメインのものではあったが

 

 

 

父は反対したそうではあったが、頻繁に家を空ける事への罪悪感から渋々受け入れた

 

逆に母は私の研究を後押しする様な姿勢を見せた

 

 

 

 

 

だが、タキオンとて幼いながらに女である

母が父との間に愛情など持っていないことも、自分に対しても邪魔としか思っていないことも理解していた

 

 

 

父はその様な事を母が考えているなど、つゆほどにも思っていなかった様ではあったのはいっそ哀れにも思えた程だ

 

 

 

 

 

 

 

 

だからアグネスタキオンは他人が嫌いだった

 

 

心の底では別の事を考えておきながら、平気で嘘をつける。そんな大人が。信用ならない他人が

 

 

 

 

 

親が家を頻繁に留守にする事を聞いた幼馴染が家の手伝いを言ってきた時にも、正直な話としては煩わしさしか感じない

 

両親が不在の自宅はタキオンにとって、数少ない気を休められる場所なのだ。そこに幼馴染とはいえ、異分子が入る事を許容出来るほどに当時のタキオンは大人ではなかった

 

 

 

 

 

 

だが、余りにも必死に言ってくるものだからつい許可してしまっていた

 

 

 

しかし、それは思いの外タキオンにとっても快適な生活になる

 

 

 

 

 

彼は一々いつご飯を食べろだ、風呂に入れだなどと言わないからだ

 

 

晩の7時までにタキオンがリビングに降りてこなければ、ラップをして夕食は置いておくし、風呂は入れて蓋をしておけば問題なかった。いざとなれば追い焚きすればこと足りる程度の話

 

 

洗濯や掃除などもタキオンの自室前に洗濯物を置いておけば、勝手にしてくれていたし、タキオンの自室や研究室については無理に掃除しようとしなかった

 

 

 

だからこそ、タキオンは彼の事を許容する様になった

彼のおかげで雑事から解放され、研究に没頭出来たのだから

 

 

 

 

いつしか、両親が自宅にいる事に違和感をおぼえ、彼が自宅にいる事に違和感を感じなくなっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、奇妙な生活を始めて一年程後の事だった

 

 

 

アグネスタキオンは体調を崩し、寝込んでしまったのだ

 

彼は自身のみではどうにもならないと判断して、タキオンの父親に連絡をとった

 

 

 

連絡を受けた父親は出張先であったが、直ぐに自宅に戻るとタキオンを総合病院に連れていった

 

タキオンと父親が病院に着いて、診察を受けている頃にようやく母親も到着した

 

 

 

 

薬も処方され、回復に向かうと言われた母親やすぐに出張先に戻ろうとした

それ自体は父親も咎めなかったが、彼は良い機会だから、精密検査をお願いするべきと提案した

彼からすれば、ウマ娘というものは未だに分からない部分が多いからこそ、念には念を入れたかっただけだった

 

 

ところが、母親は血相を変えて精密検査に反対した

 

曰く「今回は大丈夫だったのだから、心配するほどでもない。それに私達には仕事がある。態々忙しいこの時期にする必要はない」との事であった

 

 

なるほど、一見すれば分からなくもない理屈ではあるだろう

 

 

実際、2人とも出張先から何とか予定を空けて帰ってきているのだから、余り時間をかけれないのも道理ではある

 

 

 

 

 

だが、それ以上に自分の娘(アグネスタキオン)を心配する気持ちが彼にはあった

 

 

確かに家を頻繁に空けている駄目な父親だ

しかも、幼馴染の少年に面倒をかけているという噂も耳にする

 

親として彼は間違いなく駄目な部類であろう

 

 

だからといって、目の前で苦しんでいる娘を放置できる程に愛情が無いという訳でもなかった

 

 

 

 

母親にはとりあえず先に出張先へ戻ってもらい、彼は後日の念の為の検査と並行して精密検査をしてもらう事にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その判断が全てを狂わせるともしらないで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、検査結果を聞きにタキオンと父親。それに幼馴染の彼が病院に来ていた

 

何故、幼馴染の彼が同行しているのかといえば、タキオンが望んだからであった

 

彼女の中では既にいつも居ない両親より、いつも側に居てくれる幼馴染の方が信頼できると判断されていたからである

 

 

父親としては、余りにもショックな話であったが、自業自得として割り切るほかなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

そして精密検査の結果を父親のみが呼び出されて聞く事になる

 

 

 

 

 

 

 

タキオンと幼馴染の彼は『少し離れた』待合室で待つ事になった

 

 

 

 

 

 

 

 

ここで病院側は致命的なミスをおかした

 

アグネスタキオンはウマ娘である。それ故に聴力も一般的なそれを遥かに上回るのだ

 

これもまたウマ娘が世間に浸透していない弊害とも言えるのだが、この時においてのこのミスは余りにも致命的だった

 

 

 

 

 

病院側としては父親とタキオン双方に配慮したつもりだったのだろうが、その配慮は最悪の結末を生み出すこととなる

 

 

「タキオンは私の娘じゃ無いってどういう事なんだ!」

 

事が事だけに、父親としても声を荒げる事を止める事は出来なかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、

 

 

 

 

ハハ。どういう事なの?

父さんが父さんじゃないって、どういうこと?

 

 

その悲痛な叫びが、よりにもよってタキオンに聞こえていなければの話だ

 

 

 

 

 

 

 

アグネスタキオンはその時、ようやく理解した

母が父親を愛さない様に、彼女もまた母にとって邪魔だった事に

 

 

 

 

 

 

それに気付いた時、タキオンの中で何かが音を立てて壊れた

 

 

 

 

 

そして、状況も分からない幼馴染の彼であったが、泣いているタキオンを見て、何も言わずに抱きしめた

 

 

 

 

 

その時、彼は誓った

 

タキオンを傷つけるモノ全てから彼女を守る、と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、タキオンを取り巻く環境は一変したと言ってもいいだろう

 

 

父親はタキオンとの接し方が分からなくなり、仕事に逃げ

母親はタキオンのせいで今までの苦労が全て水の泡になった。それにより、タキオンを憎んだ。徹底的に自分の娘である筈のタキオンを追い詰めようとしたのである

 

だが、タキオンを傷つけようとする事を何よりも許せない幼馴染の彼はその頃から仮面を被り始めた

人付き合いの良い子供。愛想の良い子供

 

それにより、タキオンを守ろうとしたのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皮肉な事に、タキオンがもっとも嫌っていた仮面を被る大人にタキオンが最も頼っていた幼馴染が近づいていったのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それ以降、タキオンと彼の生活はみてくれこそ安定して見えるが、危険なバランスで成り立っていたのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タキオンが彼を異性として認識したのが病院の一件であるとは思っている

 

 

だが、それからの彼がタキオンにとっての心からの安らげる場所になっているのかと聞かれたら、タキオンは即答できない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

確かにトレセン学園での生活も彼との共同生活も楽しい

 

 

だが、自分の何処かで警鐘をならしている自分がいるのだ

 

 

 

 

だからこそ、今回態々彼と海に行くのだ

 

最近、気の休まる事が少ない彼の休息の為。そして彼との優しい思い出を増やす為に




このカップル2人ともかなり歪んでます。今更ですが


というか、まだ8月に辿り着かないという話


やべ、何話になるんやろか?


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 他者から見た景色

前半部分と残りの部分で温度差が酷いですが、許してください



色々な思惑が絡まっているのが新しい体制という話?


はぁ

 

 

いつもの事だが、ため息をつきそうになる自分を何とか堪える

 

 

 

 

この府中トレセン学園は開校して一年目だ

 

 

 

それ故に問題が山積しているのは当たり前なのだが、当然それに対処する私達トレセン学園生徒会メンバーも粒揃いだ

 

 

 

 

 

 

なのだが、先のメディア騒動以降、面倒事が加速度的に増えている感じしかしないのは何故だ!

 

 

 

 

 

特に最近増えてきているのが、トレセン学園への無許可での侵入行為!捕まった者達は一様に「アグネスタキオンの彼氏は良くて、何故自分達は駄目なのか?」と言う

 

 

ふざけるな!と言いたくなるのを堪えるのもキツくなってきた

 

 

そもそも、奴が進んでトレセン学園に立ち入る事などそうそうない。ないよな?

 

ついでに言えば、一応名目上とは言え奴はトレセン学園外部協力者なのだ。ただゴシップ狙いの記者崩れと同じ様な扱いになる訳がなかろう、馬鹿者どもめ!

 

 

 

 

 

記者崩れの相手は基本的には警備主任の管轄だが、奴等は口だけは達者な連中が多いから、面倒極まる

 

 

 

 

更に最近私達にとって負担となりつつあるのが、搬入業者への対応だ

 

 

 

 

 

先だってのタキオンと奴のマンションでの騒ぎ

 

ここトレセン学園でも他人事ではないからな。

事実、工事関係者の中に学園内を無許可で、というより工事関係者に学園内の撮影など許可するつもりもないが、撮影していた事が先日発覚した

幸いというべきか、外部に流出させるまでに至っていないのが唯一の救いだが、それでも看過し得ない問題だった

 

こちら側としては甚だ遺憾ながら、トレーナー寮についての工事を一時中断せざるを得なくなった

 

 

 

はっきり言って、機密保持一つ徹底できないのであれば、どれだけ仕事が出来ていても信用できないからな

 

 

 

 

どうやら、記者達(ハイエナども)はトレセン学園内で工事している作業員に目をつけた様だし、作業員の中にも良からぬ事を考えている人間がいる様だ

 

 

 

工事担当の元請けからすれば、それこそふざけるな!と言いたい話だろうが、こちらとて生徒の安全が第一だからな

 

 

理事長からも最悪、元請けから全て変える必要もあると言われている。あちら側としてはそれだけは避けなければならないと必死になっている様だがな

 

 

仮に続投させたとしても、恐らく今までより更に締め付けは強くせざるを得なくなる

あちらからすれば、トレセン学園という一大プロジェクトに寄与したという実績が欲しいのだろう。それがあれば、今後もウマ娘関連の事業における彼等の仕事が増える可能性もあると見ているのだろうが

 

 

 

 

 

 

 

搬入業者については徹底した教育をしているとの報告もあるし、今までの実績もある。

 

だが、これについてはどれだけ警戒しても足りないくらいだろう

 

 

 

最悪の場合、携帯の持ち込みについて全面的に禁止する他ないだろうし、警備部からは正門と裏門だけでも金属探知機などの導入を検討してはどうか?との提案もある

 

 

 

こちらとしては、寧ろ段階的に警備を引き下げるつもりだったのだがどうにもならんな

 

 

 

 

 

 

 

実際、政府からは無軌道な取材に対しては断固とした対応をとって良いとの話も来ていると理事長から聞いている

 

 

 

現在、ブライアンが有志を集めてトレセン学園内の見回りをしていると聞くが、どうにもならないだろう

 

 

自主的に生徒側からの提案だというのが、また救えない話だ

 

 

要するに生徒達はタキオンや彼への仕打ちを忘れてないという事になる

 

 

 

この不信感は容易に払拭できるものではないし、一部メディアが未だに喧しく騒いでいるのも拍車をかけているだろう

 

理事長からは監視カメラの増設と巡回警備の強化が打診されているが、これでは当初の目的である『ウマ娘との共存社会の実現』は遠のくばかりだろう

 

 

 

 

 

現在、会長は来年度から学園に赴任するであろうトレーナー達についての対策会議に出席している

 

 

一応トレーナーと一括りにしているが、現在赴任している教師とはわけが違う

 

 

ともすれば、私たちウマ娘の私生活にすら介入できるのがトレーナーという者だ

 

私生活に立ち入ることのない教師とでは全く扱いが異なるのは仕方ない。更にトレーナーというもの自体がまだどの様なものかはっきりとした定義が定まっていないのだ実状なのだ

 

 

 

つまり、どこからどこまでがトレーナーの裁量の及ぶ範囲であるのかが未だもって決まっていない

 

 

更にいえば、トレーナーという者が不埒な事を考えないという保証もない。見目麗しい上に異性との交流の殆どないのが私達ウマ娘だ

 

少しでも女性経験があるなら、容易に扱えるだろう

 

 

 

となれば、トレーナーとしての技量よりも人格面を重視すべきなのかも知れないな。この前来た桐生院トレーナーの様に女性トレーナーも数は少ないが存在すると聞く。

 

そちらを優先的に採用すべきではないかとすら私は思っている

 

 

だが、そうなるとトレーナー同士の恋愛についても考慮せねばならなくなるらしい

 

 

本当に煩わしい限りだ

 

 

 

 

だが、来年度よりウマ娘によるレースは相当増える事になっている以上、遅滞は許されないのが現実なのだ

 

本来ならば、一、二年は時間を取りたいのが本音なのだが。それを状況が許してくれない

 

 

 

 

そんなこんなで、現在はエアグルーヴが1人で生徒会の仕事を回している始末である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちわっす、お邪魔するんじゃよー

 

 

邪魔をするなら帰れ

 

 

お邪魔しましたー

 

 

待て、せめてその甘味は置いていけ

 

 

無理ですのん

 

 

貴様と言う奴は

 

 

HAHAHA⭐︎

 

 

 

 

 

等と頭の悪いやりとりをしているのはタキオンの彼氏である奴だった

奴は生徒会役員ではないが、何故か理事長からの要請で偶に生徒会室に来るのだ

 

ほぼ彼手製のお菓子を持ってくる為、エアグルーヴのみならず、ブライアン、会長も歓迎している

 

 

別に仕事の邪魔をするわけでもないために、なあなあで済んでいるのだ

。タキオンも別に咎めるつもりはないらしいから別に構わんが

 

 

 

 

 

 

しかし、改めて思うが奇妙な男だと思う

 

 

 

 

トレセン学園のウマ娘は女子ばかりであるし、皆見目麗しい者ばかりだ。グルーヴが知る男ならば見境なく口説きにいっているだろう

 

だが、奴はその様なそぶりを一切見せない。この前、ナリタタイシンをお姫様抱っこで保健室に連れて行った時にも何もなかったとタイシン本人からは聞いている

 

 

 

 

アグネスタキオンからも『まだ』そういう事はしていないとも聞く

 

 

確かに奴はアグネスタキオンの彼氏だ。だからと言って、それだけでこの空間にいる事を無視できるものなのか?

見目麗しく、性格も良い?であろうウマ娘たちなのだ

 

 

 

 

 

 

エアグルーヴとしては正直、まだこの男を信用したわけではない

 

 

ないのだが、頼りになるのもまた事実だろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そもそも、奴が会長のお気に入りだという話だが、正直に言って会長と釣り合うとも思えない

奴の前では怖くて言えないがな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とは言っても、奴とタキオンや会長との関係が羨ましくないかと言われたならば、答えに窮する程度の好意はある

 

 

 

 

 

恐らく彼に関わるウマ娘なら一度は思うだろう

『一番早く出逢えていたら』と

 

 

私とて理解している(わかっている)

 

 

 

それが空虚な仮定であることなど。

 

 

 

 

 

でも思わずにはいられない

浅ましいと思う。余りにもバカバカしい仮定だとも

 

 

 

だが、それでも尚、(ウマ娘)(理解者)が欲しかったのだ

 

 

 

 

 

何をするにも周囲と合わせねばならず、努力の末に結果を出そうともウマ娘だからと言われてしまう

 

 

 

はっきり言うが、アグネスタキオンやオグリキャップの様周囲に理解者がいる事など稀である

 

 

しかし、他のウマ娘からすれば恵まれている立場である筈の2人とて、周囲からの悪意に悩まさせていたのが現実なのだ

 

 

 

 

 

 

実はトレセン学園に入学するウマ娘に一度アンケートを取った事がある。

アンケート内容は『結婚したいか?』であった

 

 

 

その際、七割近いウマ娘がしたくない。と答えていた

 

 

 

 

これが現実なのだ

 

残酷なまでに、世間からの理不尽とも言える風当たりを受けて、走る事にしか存在意義を見出せないウマ娘というものの

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、彼がトレセン学園で講演した後のアンケートでは、実に9割ものウマ娘が結婚に興味ある。と回答した

 

 

 

 

 

 

 

それだけ、アグネスタキオンと彼の関係は私達ウマ娘にとって、尊いものと見えたのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だからこそ、彼の提案で始まったトレセン学園並びアグネスタキオン公認組織『アグネスタキオンを愛でる会』というものが瞬く間にトレセン学園内で勢力を拡大したわけだ

 

 

エアグルーヴ自身はその下部組織である『アグネスタキオンと彼氏を見守る会』に所属している

 

 

 

グルーヴが求めるのはアグネスタキオン(友人)ではなく、友人とこの彼氏が笑い合えるモノだから

 

 

 

 

発起人はゴールドシップであり、元の組織と比べると秘匿性が重視されている

 

故に少数精鋭であり、基本的にウマ娘の中でも一定以上の力を求められる

 

力といっても、その種類は様々である

 

 

エアグルーヴは組織運営力を、ゴールドシップらメジロ家の影響力を、トレーニング大好き三人衆(サイレンススズカ達)は純然たる力を、マンハッタンカフェは企画力をそれぞれ有している

 

 

 

 

さりとて、彼女たちが求める未来への道は険しく、遠い

 

 

 

だが、それでもそれでもと声を上げ続けなければならない

 

待っていたところで辿り着く事など出来ないから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでも、ふとした時に思うのだ

 

 

タキオンの様に、会長の様に(エアグルーヴ)にも安らげる場所が欲しい。と

 

 

 

 

 

 

エアグルーヴとて年頃の娘なのだ。弱音をはきたくなる時もあるし、温もりが欲しくなる時もある

 

 

 

 

気安い関係を結ぶには些か以上にエアグルーヴという人物は気難しいと自身でも理解しているつもりだ

そして、それを治すのが難しい事も

 

故に自分が誰かと恋仲になる等という事はありえないとまでは言わないが、難しいとも自覚している

 

 

 

対して、タキオンは彼に対しては誠実だし、会長は言うまでもない

 

 

 

 

 

だが、私たちはウマ娘なのだ

 

 

 

 

彼がこんな時期にも薄手とはいえ、長袖を着用しているのはタキオンにつけられた傷を隠すためだろう

 

 

 

 

 

 

一度だけ、グルーヴは彼が着替えしている所を目撃してしまった事がある

 

その際に偶々彼の腕にある咬み傷が見えてしまったのだ

そして、それが他ならぬタキオンによって付けられたものだとも

 

 

 

彼がトレセン学園に来る際には、必ず薄手の長袖を着用している

今までグルーヴの知る限りにおいては、全てである

 

 

 

彼とそこまで距離を詰めれるものは、恋人であるアグネスタキオン以外にありえない。会長という可能性も少しはあるが、会長は彼に嫌われる事を何よりも恐れているのは、グルーヴのみならず、ブライアンも知っている事だ

 

 

となれば、タキオン以外には考えられないだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

アグネスタキオンは彼の恋人だ

 

だからこそ、私達ができないことも出来てしまうのは理解できる。だが、感情面で言うならば、到底納得出来ない

 

 

 

タキオンは私達(ウマ娘)が望んでも手に入らないもの(伴侶)を手に入れている

 

 

 

 

 

 

 

 

なのに、それを傷つけている

しかもである。それを彼も受け入れているのだ

 

 

 

 

 

エアグルーヴもかなり理性的なウマ娘だと自負している

 

 

だが、彼女に対して仄暗い感情が沸き上がるのを止める事はグルーヴには出来なかった

 

 

 

 

 

 

表向きは2人の関係を祝福しながら、心の底ではそれに昏い感情を抱く

 

 

 

 

 

 

 

そんな自分に気づいたからこそ、グルーヴの気持ちは沈んでいたのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どったよ?

 

何でもない

 

そっか?

 

ああ。貴様はタキオンの事や会長の事を考えていれば良かろう

 

ふーん?

 

私の事は気にするな(私を見て)

そこまでの問題がある訳ではないからな(助けて)

 

さよか

 

 

 

 

此処まで弱ってもなお、強がる自分

あまりの情けなさに泣きたくもなる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なあ、エアグルーヴ

俺さぁ昔のタキオンを見てきたわけよ。昔のアイツは感情をあまり表に出さない奴だった

だからさ、そういう取り繕ったモンは見え見えな訳よ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

止めろ(助けて)

 

私の中で相反する想いが高まる

 

 

彼は

 

とりあえず、このままやとグルーヴおかしくなんぞ?

こんなんでもいいなら、甘えてみ?

 

 

 

事もなげに彼は私に言った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、私は生まれて初めて母以外に甘えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あたしは人知れずため息をついた

 

 

あたしはマルゼンスキー。この前のトレセン学園であったシークレットライブの協力者

 

 

一応、今の細々としたウマ娘達によるレースに参加していたんだけど、もう引退したの

 

あたしは幸運な事に真っ当なトレーナーに指導して貰っていたから、故障による引退ではなくて、普通に引退できたの

 

 

まぁ、かといってトレーナーと良い仲になった訳でもないんだけどね

 

 

 

今回の協力だって、例の『シンデレラ達』に興味があったから参加したんだけどね

 

 

 

 

はっきり言って、想像以上に悪い状態だった

 

 

 

誰が初めにシンデレラなんて言ったのかは知らないけど、それは良いわね。問題は彼が『王子様』と誤認されている事にある

 

 

 

 

確かにアグネスタキオン(彼女)との関係を見ていれば、王子様と呼びたくなる気持ちも分かるわ

 

でも、彼は間違いなく王子様ではない。彼は『魔法使い』なの

 

 

何もなかった少女(夢見るウマ娘達に)に希望を与える魔法使い

 

 

 

そして、王子様(未来)に繋ぐだけの存在

 

 

 

 

多分、あの学園の中でそれを理解している子はいないと思う

もしかしたら、秋川理事長やその秘書すらも

 

 

 

 

 

彼は来年学園に来るトレーナー達への慣れと期待をさせる為の者。あたしにはそう感じられた

 

 

 

 

今現在、トレセン学園を取り巻く情勢は複雑だ

その中心には『シンデレラと王子様』がいる

 

 

 

 

はっきり言って、おかしな話である

 

未成年で、しかも両親から見捨てられた『シンデレラ』と両親や周囲の環境を捨ててまで共に居ようとする『王子様』

 

 

話題性は抜群だろう

 

ましてや、件の強引すぎる取材や意図的なリーク

 

 

 

 

本当に守るつもりがあるのであれば、秋川本家や桐生院に政府が絡むのだ。もっと他のやり方もあっただろう

 

 

 

だが、彼らはそうしなかったのだ

 

 

 

 

 

 

まるで何処からか情報が漏れるのを期待していたかの様に

 

 

 

 

今では世論はよく分からなかった筈のウマ娘たちに同情的なものになりつつある

 

 

ウマ娘やそれに関わる者達にとっては幸せだろう

 

 

 

 

 

 

だが、果たしてトレセン学園でかなりの影響力を有してしまった彼を放置できるのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

少なからず、大人達と関わってきたマルゼンスキーは無理だと思う

 

 

何せ、トレーナー達がやり辛くなるだろう。

トレーニングとはいつもウマ娘の思うようなものにはならない。トレーナーから見た状態と自分で理解している状態とでは、差異が生じる以上、仕方のない話

 

 

更に言えば、彼はどうしてもウマ娘に甘くなるだろう

 

最初の頃はどうにかなるだろうが、どこかで決定的な対立を生むだろう。そうなってからでは手遅れなのだ

 

 

 

酷な言い方だが、トレーナーの共通の教育とウマ娘達への一定水準のトレーニングはトレセン学園がどうとかではない。今後のウマ娘が行なうであろうレースの絶対条件となるのだ

 

 

故に彼とトレーナーという制度を比べたら、理事長の個人的感情等入る余地はない

どう思おうと、トレーナーを選ばざるをえなくなる

 

 

 

だが、そんな状況になれば今年から彼に接しているウマ娘が良い感情を抱くはずもない

 

 

 

 

 

 

 

だからこそ、かれは『今年いっぱい』なのだろう

 

 

だが、マルゼンスキーは彼がいっそ哀れにすら思う。彼はウマ娘がどうではなく、幼馴染のアグネスタキオンを支えたいからこそ、トレセン学園まで来たのだろう

しかしである。彼は思慮のないマスコミの取材攻勢により、中学校に通うことも出来なかったと聞く

 

 

一応、課題などを提出しているとしても、彼は学校生活を放棄せざるをえなかった

 

 

 

 

それでも、彼の姿が知られていなければ救いもあったろう。転校扱いにしてどこかの中学校に通えばいいだろう

だが、彼はアグネスタキオン(恋人)を守る為に、自身の姿を晒したのだ

 

こうなると、彼の姿を求めてマスコミが群がるのを阻止する事は出来ないだろう

 

 

さりとて、トレーナーが居るトレセン学園に彼の居場所は無くなるだろう

 

 

 

 

トレセン学園(アグネスタキオン)の側にも居らず、普通の生活にも戻れない

 

 

 

そこに彼の意思の介在する余地はないだろう

 

 

 

 

 

彼はマルゼンスキーから見ると殉教者に見えてしまう

 

『ウマ娘との共存』という名の思想の

 

 

 

 

 

だからこそ、マルゼンスキーは疑問の声を上げ続けよう

例え同じウマ娘から疎まれようとも

 

 

1人の少年の未来を守る為に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




実は会長でなければ、その立ち位置にはエアグルーヴが入っていたのはここだけの秘密


生真面目すぎる故にストレスを抱えている彼女は本作においても重要な人物だった筈なのだが、どうしてこうなったのやら




とりあえず閑話は一旦切り上げて、不穏な事態になりつつある本筋に戻ります

ではご一読ありがとうございました


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 蠢く者達

 諦めない者達の話

往生際が悪いとも言う


一部メディアによる過熱報道については、総理を始めとした政府首脳の断固たる対応により、ひとまずの鎮静化を見た

 

 

 

 

 

だが、それにより被害を被ったものもいる訳で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宜しいのですか?

 

 

構わん。あくまでも『シンデレラ』と『トレセン学園』にかかる事項などと言ってはいるが、その線引きは曖昧だ。その2つについては特に状況が悪化しているからこその此度の措置に過ぎん

 

そうであるが故にその『外』にまで気は回るまいよ

 

 

 

 

 

 

とある密室でよからぬ事を話す男2人

 

 

片方は見るからに偉そうな態度を取っており、もう1人はそれに気を遣っているかの様な態度をとっている

 

それもそのはず、偉そうな男は国会議員であり、もう1人はその秘書なのだから

 

 

とはいえ、本来なら『触れるべからず』である筈の件に首を突っ込むなどあり得てはならない事である

 

だが、彼には確かな勝算があった。これを明るみにさせない程度の権力()もある

 

 

 

 

そして、その人物の言う事は間違いではなかった

 

 

 

 

急な事態であったが故に、普段と異なり強硬な対策をしなければならなかった。とはいえ、時間をかけて議論していない為にその対策自体がかなり穴のある物なのは、ある意味では仕方のない事ではあるだろう

 

総理はあくまでも非常手段としてのものであり、これに関しては事態が終息次第撤回すると共に、総選挙にて民意を問うつもりであった

 

 

 

どの様な理由があったとしても、彼のした事は間違いなく専制政治のそれであったのだから

 

だが、そんな事を知らない者達からすれば、現政権による言論弾圧とも取れなくもなかったし、知っていてもわざとそう受け取った者達もいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、この男はそれにより明確な被害を受けたものであり、与党議員の地位にある人物だった

 

 

 

彼はトレセン学園による来年からのウマ娘達のレース。それによる利権の一部を享受する予定。いや問題がなければ、それはほぼ間違いない未来であったのだ

 

ところがである。その肝心の放映権を持たせる予定の企業が今回の件により、実質的な営業停止処分を受けてしまったのである

 

 

 

現在、超党派である総理が率いる派閥がウマ娘関連においては主導権を握っており、彼も立場上その処分に異をとなえることは出来なかった。

明らかに逆らってはならない流れだったからである

 

今度当該地である府中の補選が行われる事になり、ウマ娘擁護派と否定派による決選となる事が報じられている

 

 

 

 

というより、彼がマスコミに対して府中の前議員への疑惑を吹き込んだのである。府中はトレセン学園の所在地であり、今後様々な利権の絡む所となるのは明白である

 

 

 

そんなところに、良識派気取りの人間を置いたままでは動き辛くなるのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現総理は若いからか、理想に傾倒する節があると彼は思っていた

 

それは一般論としてなら悪くないのかも知れないが、彼ら既得利権を持つ者と密接に繋がっている者からすると、邪魔でしかない

 

 

 

彼を総理に推した理由は前政権までに続いた利権政治からの脱却を『建前上』掲げたからに他ならない

 

 

実際、現政権になってから徐々にではあるが、世論も政権に味方する風潮へと変化していった

 

 

 

 

 

 

 

だが、彼らにとっての誤算は総理となった男の手腕を見誤っていた事にあった

 

組閣の際にある程度の素案を彼らは総理に提出したのだが、総理はそれを一蹴。若手や現状を打破するべきとの危機感を持つ人間を閣僚に据えたのである

 

 

一応、何名かは党の重鎮クラスを内閣に入れたのではあった。が、それはあくまでも党の執行部に対する気遣いの様なものであれこそ、その人物には優秀な次官をつけるなどして、行動に掣肘を加えていた

 

 

 

 

 

 

国民は地味ながらも、堅実で誠実な手腕を振るう総理を支持し、そのままの勢いを以てトレセン学園に関する様々な政策を実施していた

 

 

記者会見のみならず、配信チャンネル等も活用して可能な限り民意を得ようともしていた為にトレセン学園建設について問題となる事はなかった

 

 

 

 

 

 

だが、彼をお飾りの総理としようとしていた者達からすれば、好ましくない事態であったともいえよう

 

 

実績をあげ続けた結果、与野党の垣根を越えた超党派ともいえる派閥を総理は率いる立場となった為に、彼らの総理に対する影響力は落ちる一方だったのだから

 

 

 

 

それに加えての先の騒動である。

これについては、世論を二分しかねない程の騒ぎとなっていたが、自身の首すらかけて彼は苛烈とも言える措置に踏み切った

 

 

 

 

 

それ自体の是非はさておき、総理の強すぎる影響力に懸念を持っている者達はこれを機に追い落としにかかる事とした

 

ついでに彼が臨時措置としているものを上手く利用しようとする者も多く出ていたりもする

 

 

 

 

 

 

だが、これ以上のマスコミによる強引な報道はトレセン学園。それを支持している総理への同情的な風潮を生みかねなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

そこで、彼はある事を思いついた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本当によろしいのでしょうか?アグネスタキオンの従姉妹であるウマ娘の情報を漏洩させるなど

 

 

ふん、問題あるまい。あくまでもアグネスタキオンの周囲とトレセン学園に対する取材行為については問題視されておるが、アグネスタキオンとやらの従姉妹まで取材行為を禁止されている訳ではなかろう?

 

 

は、はぁ

 

 

 

とにかく、それなりに強引な取材をする所にそれを持ち込め。それで色々と動き出すだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

与党政治家であり、表向きは総理支持派である彼である。が内心では、自分達の権利を壊そうとしている総理への反発はかなりのものであった

 

であればこそ、数少ない総理の弱点となるであろうマスコミへの強硬な措置とウマ娘関連のスキャンダルは逃すべきではない。そう彼の派閥の上役へと提案し、それを実行した

 

 

 

 

彼は元官僚上がりの議員であり、『一応』実務者としては有能との評価を受けていた

 

 

だからこそ、一部の役人や役所に対して多大な影響力を有しており、それを利用しての今回のリークとなったのだ

 

 

 

 

 

更に報道関係者に対しても党幹部ほどではないにせよ、一般的な国会議員よりは遥かに強い繋がりを持っている

 

 

これにより、自身にとって不都合な人間の情報を集め、『何故か』その情報がマスコミへと渡り、その人物が辞職に追い込まれる事もあったりもする。

 

いつもの事

 

今回とて、彼にとってはその程度の認識しかないものであった

 

 

 

 

 

 

 

そして彼の思惑通り、『偶然』とある筋よりアグネスタキオン(シンデレラ)の従姉妹にウマ娘がいる情報が某メディアにもたらされた

 

 

 

この会社は強引な取材を展開しておきながらも、常にグレーゾーンギリギリの取材を行なう事で有名であり、それ故に特ダネともいえるこの情報に食いついた

 

だが、このメディア企業は狡猾であり、自社で雇い入れている専任の法律家と協議してどの様な方法であれば『問題にならない』のかを検討し始める

 

 

彼等としては勿論大スクープであるこの一件を逃したくない気持ちはあったが、だからといって会社を潰す気など毛頭なかった

 

 

既に実質的廃業となった会社と異なり、彼らは要人との關係深化を望む必要性を感じていなかった。とはいえ、それでも情報をリークしてもらえる程度の関係は維持していたが

 

 

確かに政治家などと結びつく事により、自分達の立場を守るのも悪くはないだろう

 

だが、政治家とは世論という極めてあやふやなものの支持があってこそ初めて成り立つものだ

 

現政権までに与党はかなりの年数主流派であった事は間違いない

 

 

だからとて、それが崩れないなどと誰が断言できるのか?

だいたい、その様なグレーゾーンに手を出している政治家というのは後ろ暗い事をやっているものばかりではないか?

また政治家としての能力にも疑問符がつく

 

 

政治家といっても、職を失えばただの人に戻るだけ

もしかしたら、どこかの組織の顧問などになるかも知れない。がそれとて、組織側としては元いた政党などへの影響力を期待してのものである事は疑いようもない

 

 

 

 

政治家をクビになるにせよ、落選するにせよ、その原動力となる民意を蔑ろにする者にマトモな未来()はないのだから

 

 

 

 

 

故にこそ、彼等は常に議論し続けるのだ

『違法と合法の境目のギリギリ』を

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その魔手は届くこととなる

 

 

 

アグネスタキオン(シンデレラ)その彼(王子様)の大切なダイワスカーレット(宝石)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、ウオッカはスカーレットと共に近くのショッピングモールに出かけていた

 

 

ウマ娘である2人は目立つ為に必ず帽子を被っていた

スカーレットからすれば、甚だ不愉快であるが大切な2人(アグネスタキオンとお兄ちゃん)から贈られたティアラは彼女の自室の宝石箱に入れていた

 

 

というのも、間違いなく高価な品であり、かつ一点もの(オーダーメイド)である事は明白なティアラ。

そんなものをつけて歩いたとなれば、周囲の興味を引くどころか余計なもの(悪意)すらも引き寄せかなない

 

 

 

 

そして、それはウオッカも同じであった

 

折角の宝物であるが、そうであるが故に彼女も日常生活での使用は躊躇われた

 

 

だからであろうか、それとも共通の秘密の話題を共有する為なのか、トレセン学園に行って以降の2人の仲は良くなっていった

 

 

 

 

それは2人の両親や同級生達にとって、歓迎すべき事ではなかったのだろうが

 

そんな事は2人に関係なかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すいません。今、インタビューよろしいでしょうか?」

 

目的地のショッピングモールに向かう道中、スカーレットはそう声をかけられた

 

 

「わ、私ですか?」

 

 

スカーレットは戸惑っていたが、ウオッカは少しばかり嫌な感じを覚えた

 

 

 

 

 

そもそも、街頭インタビューならばもっと人通りの多い所を選ぶだろう。

 

ここはどちらかといえば、人通りの少ない路地

 

 

 

 

 

しかも、インタビューなどと言っているが、明らかにスカーレットを狙っていたようにウオッカには見えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウマ娘というのは、感覚が一般人のそれより優れており、ウオッカは殊更その傾向が強かった

 

 

 

 

 

 

その感覚が警告するのだ

 

 

 

 

逃げろ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイワスカーレットにインタビューしようとしている記者は内心でほくそ笑んでいた

 

確かにカメラ『は』用意していない

 

 

 

何せバカな同業者達が余りにも情けない取材行為をしたことにより、世間からの風当たりは明らかに強くなっていたから

 

 

 

だが、所詮はウマ娘といったところで取材慣れしていない上に経験も致命的に不足している子供である

 

 

取材を始めたら、ポケットに入れているレコーダーを起動すれば事足りる

 

 

名刺については渡す気はない

 

 

 

 

会社で違法行為ではないとの事だったが、態々リスクをおかす必要などありはしないのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが

 

 

 

 

 

 

 

 

あの、すんませんけど急いでるんで

 

 

と、ダイワスカーレットに同行していた娘が口を挟む

 

思わず舌打ちをしたくなりそうなのを堪えた

 

 

 

 

いえいえ、お時間は取らせませんので(口を挟むな!)

 

いや、んな事言ってもこっちには関係ないと思うんすけど

 

 

その後彼は何とか引き止めようとしたのだが

 

 

 

 

 

そ、そうよね。ごめんなさい

 

と、ダイワスカーレットとその娘は去ってしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

くそっ!余計な事言いやがって、ガキが!

 

彼はその場で悪態をついた

そう、ついてしまったのだ

 

 

 

 

 

此処は裏路地であり、人通りは『殆ど』ない

 

 

そして人通りの滅多にない所で大の大人が子供2人を必死に引き止めようとしていたのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、傍から見ればどう見えるのだろうか?

 

ましてや2人とも迷惑そうにしていたのを記者の男が引き止めていたのである

 

 

 

そして、人通りの少ない所での押し問答は近所の人間からすると怪しい事この上ない

 

 

 

今の世間はマスコミ関係者に対する視線は非常に強い

 

 

 

 

 

 

少しお時間よろしいですか?

 

そんな声が記者の男にかかるのは当然であった

 

 

 

 

 

 

 

 

その場は何とかなった記者であったが、彼はマスコミ関係者でありながら、理解していなかった

 

 

 

 

 

 

現代社会の情報ネットワークの恐ろしさを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スカーレットにインタビューを試みた会社では既に大騒ぎとなっていた

 

 

警察からの注意などどうでも良かった

 

だが、執拗にインタビューしようとする記者の事がネットにアップされていたのだ

 

 

 

しかもご丁寧に子供2人にはモザイクをかけた上で

 

 

 

このモザイクは動画をサイト運営側がかけたものだったが、記者にはかけられていなかった

 

 

 

 

この取材は特ダネとなる事がほぼ確定していた為に、万が一にも取材できない事を回避するべくベテラン記者き担当させていた

 

 

 

だが、この動画により記者が明らかになるとネットでは大炎上

それだけならば問題なかった。だが、彼はそれなりに関係者の間では有名な記者であった為に所属会社も程なく特定された

 

 

 

問題となったのは、取材を断っている2人に対して執拗に取材を求めようとしている場面が写っていた事である

 

 

 

 

 

件の記者は諦めずに何とか取材するべく、2人を追いかけていたのだが、当然会社からの連絡を受けて帰社した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、事はそれだけにとどまらなかった

 

 

妹分であるウオッカより、タキオンの彼はこの件で相談を受けたのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アグネスタキオンとその周辺が怒りを露わにするのに時間はかからなかった

 




とりあえず、入院してるので暫く更新出来そうにない


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 触れるべからず

つがいの鳥
されど目指す空は違う


雄は猛る

守るべきものを、世界を守る為に


雌は願う


ただ平穏な時間を


 突然の妹分からの連絡に彼は少しばかり違和感を覚えながらも、その電話を取った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グシャッ!

 

 

 

電話を終えた彼は、怒りを抑え込む為に握り込んでいたくるみを握り潰した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やりやがったな、ど畜生どもが!

 

 

いつもの明るい声ではなく、地を這う様なドスの効いた声であった

 

 

 

 

 

 

 

彼にとってアグネスタキオン(自分の光)は勿論ダイワスカーレット(恋人の従姉妹)ウオッカ(兄と慕ってくれる妹分)に手を出すと言う事は断じて認められない事だった

 

 

 

それでも、タキオン(恋人)ならどうにか出来る。だが、よりにもよって手の届きづらい2人(スカーレットとウオッカ)を狙ったのだ

 

到底許せるものではなかった

 

 

 

 

これがトレセン学園在籍のウマ娘たちならば、幾らでも対処(処理)方法はある

 

 

 

だが、故にこそ彼は理解していた

 

 

 

このうざったい方法を取るのは、それを生業(飯の種)にしているものだ、と

 

 

 

ましてや、ウオッカ(義妹)から聞いた話では態と人通りの少ない所で待ち伏せしていたというではないか

 

 

 

となれば、叩くべき所は限定されるのは必定

 

 

 

 

 

 

不幸にも(幸いにも)ネットで大炎上しているのを先程確認したので、どうしても此方からのアクションに対応するタイミングは遅れよう

 

彼方に取って怖いのは世間の反応であり、自分とタキオンの後ろ盾である政府の影だろう事は疑いの余地もない

 

 

 

 

 

 

 

そう、思っておけば良い

 

 

 

 

 

 

 

確かに彼は子供

 

だが、相手は知らないのだ。

 

彼は守る為ならば、代償如きに構うつもりはないと言う事に

 

 

 

己の保身?

既に世間に姿を晒した身である

 

賛否両論ある総理の決断を促す形ともなった自分だ。間違いなくマトモな人生は送れまい

 

 

タキオンから離れるつもりはない

だが、自分がタキオンに害を与えると判断したなら、その限りではない

 

 

良くて見世物(王子様)。悪ければ、刑場の露(世間からの大バッシング)となろう

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、敢えて言いたい

 

 

 

 

それがどうした?

 

 

 

 

彼が尊敬する小説の登場人物は焦がれる相手(クリスティーヌ)の為にどの様な事でもしていた

 

それが例え自分の破滅を意味するものだとしても、である

 

 

 

 

彼もまた自分の全て(アグネスタキオン)の世界を守る為ならば、自分如きなどどうでも良かった

 

 

 

 

 

 

 

『愛している』などと言うつもりはないし、恐らくこれからもないだろうと思う

 

彼には『愛』というものは理解できないからだ

 

 

 

 

 

 

確かにアグネスタキオンと恋仲である。決して彼女の悲しむ顔が見たいなどと言う倒錯的な趣味を持つわけでもない

彼が望んでやまないのは彼女が笑って過ごせる世界

 

 

 

その為ならば、どれだけ非道な事もしよう

法に反さない程度にしかならないのが、口惜しい。それでも自分の命とタキオンの幸せを選べと言われたなら、前者を即座に打ち捨てよう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相手は理解していない

 

 

彼等が敵に回したのは、総理でも秋川理事長でも、トレセン学園でもない

タキオンの彼氏という狂人なのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶対に許さねぇ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と1人の男が怒りに燃えている頃、もう1人怒りに身を震わせている者がいた

 

 

 

 

 

 

そうか、ありがとうスカーレット。念のために聞くけど、本当に大丈夫なんだろうね?

 

 

 

ああ、ウオッカくんか

良い友人を持って良かったじゃ無いか、スカーレット

 

照れなくても良いだろう?

 

 

ああ、くれぐれも気をつけてくれたまえよ?

 

 

 

うん、それでは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふぅん。スカーレットに手を出す、か

 

 

従姉妹(ダイワスカーレット)との電話を終えたアグネスタキオンは1人呟いた

 

 

 

ここはトレセン学園にあるタキオンの研究室

 

別名

『マッドの巣窟』である

 

 

 

 

 

此処には、アグネスタキオンのとある研究に興味を持つ組織や個人から提供された様々な薬品や実験器具などが数多く揃えられており、非常に研究の環境としては整っていた

 

某理事長曰く「驚愕っ!!此処までの環境とはっ!」とのリアクションをするほどである

 

 

さもありなん

この研究室の出資者は製薬会社や大手企業、大学に専門学校など多岐に渡っており、実のところはトレセン学園自体よりもスポンサーは多いのであったりもする

 

 

 

何故ウマ娘とはいえ、一介の学生に過ぎないアグネスタキオンに此処までの注目が集まったのかと疑問に思われるだろう

 

 

 

理由は彼女の研究内容にあった

 

 

それは

『ウマ娘の力を人レベルにまで落とす薬』であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女(アグネスタキオン)は幼少の頃より常に思っていた

 

 

 

何故、父も母も自分を見てくれないのか?

 

何故、自分や従姉妹(ダイワスカーレット)が本気で走ってはならないのか?

 

何故、他の人たちは自分達(ウマ娘)を認めてくれないのか?

 

 

 

そして

 

何故、幼馴染である彼が私のために傷つかなければならないのか?

 

 

 

 

確かに自分(アグネスタキオン)は彼に様々な事をしてもらってい る。それは認める

 

 

 

 

だが、タキオンにとって幼馴染である彼はかけがえのない、替えのきかない大切で大事な男性(ひと)なのだ

 

 

 

 

容姿が優れない?

ふぅん、それがどうしたというんだい。彼の良さは外見では分からないさ

 

根暗じゃね?

そう思いたければ、そう思ってくれていれば良いさ

 

気持ち悪いよね?

そうかい。私はそんな彼が好きだからね。問題ないさ

 

 

 

 

幼馴染()と仲良くしていると決まってしたり顔でそう言ってくる連中がいた

 

 

 

 

君たちにとやかく言われる筋合いはない

 

 

 

 

そう何度口にしようとしたか、数えるのも馬鹿らしくなるほどに思っていた

 

 

 

母親などは

 

貴女にはもっと相応しい相手がいるのよ?

 

 

等とその時だけは母親らしい事を言っていたが、全く私には響かなかった

 

 

 

 

 

 

 

彼の人並外れた観察力は無駄な事を好まなかった昔の私の為に

 

料理の腕は偏食気味の私の食生活改善の為に

 

掃除の上手さは研究ばかりで片付けをしない私の為に

 

人当たりの良さは人付き合いをしようともしない、私のフォローの為に

 

 

 

常に彼は私の欠点を補おうとしていてくれた

 

 

 

初めの頃こそ、鬱陶しく思っていたが、失敗(怪我)しながらそれでも私に色々良くしてくれていたから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、どこかで思ってしまったんだ

 

彼と競争すれば十中八九は勝てるだろう。直線レースやある程度定まっているレースならばほぼ勝てよう

 

 

 

 

 

だがそれは、(アグネスタキオン)の力というよりも(ウマ娘)の身体能力に依るところが大きい

 

 

 

 

 

 

 

初めの頃は私達(ウマ娘)が何処まで行けるのか?その果てを見たかった。その感情は今でも多少ある事は否定しない

 

 

だが、それ以上に感じたのがあまりにも酷い現実だった

 

私達ウマ娘は身体能力に優れているのは事実。だが、それとて鍛えなければ意味がない。

といっても、鍛えてなかろうが、人のトップアスリートとやり合えるくらいの身体能力を有してしまっているのが私達ウマ娘なのだ

 

 

結果、幾らウマ娘が社会に溶け込もうとしても、その特異性がそれを阻んでしまう

 

 

スカーレットも今でこそあんなに元気になっていたが、幼少の頃はいつも何かに怯えて過ごしていた

 

 

 

 

 

 

ダイワスカーレットという少女の母親はウマ娘であり、父親はそれを20歳の時から支えてきたと聞いている

 

仲睦まじい夫婦だったと記憶してる

 

 

であるからこそ、スカーレットは友達を直ぐに作れると思っていたのだろう

だが、異分子であるウマ娘のスカーレットは周りの子供たちからすれば違うものに見えていた様に思う

 

 

スカーレットが私と出会った時、叔母であるスカーレットの母親はウマ娘である私と引き合わせるつもりだったのだろう

 

そこで、スカーレットは彼と初めて会ったのだったね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おにいちゃん、だぁれ?

 

ぼく?ぼくはタキオンちゃんのおともだち!

 

そうなの?

おねえちゃん、うまむすめだよ?

こわくないの?

 

こわい?

ちがうよ、タキオンちゃんはすごいんだよ!

 

え?

 

タキオンちゃんはね、ぼくがどれだけはしってもおいつかないの!

でもね、いつかタキオンちゃんといっしょにはしりたいの!

 

あの、えっと

 

??

どうしたの?

 

わ、わたしもうまむすめなの!

こ、こわくないの?

 

ぼくになにかするの?

 

しない!

 

じゃ、こわくないよ!

 

っっっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなやりとりがあったと聞いた時は驚いたものだった

 

 

それ以降、スカーレットは私と彼と一緒にいる時は私達の少し後ろをついて来ていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やはり私にせよ、スカーレットにせよ。ウマ娘という生まれについては正直な話歓迎できてないのも事実なのだろうね

 

 

常に『走る事』のみを期待され、勝てなければ負の感情をぶつけられ、勝ったとしてもまた負の感情をぶつけられるのだから

 

 

 

 

 

であればこそ、ウマ娘達によるレースは常に盛り上がる

 

そこでは何に遠慮する事なく、実力を発揮できるから

 

 

 

 

だが、そうするうちに『戻れないところ』まで行ってしまったと嘆く先輩達を何人も知っている

 

 

 

 

レースを制することが出来たウマ娘は幸運である

 

大体がその相棒(指導者)と結ばれるのだから

 

 

 

ではレースに負けたウマ娘は?

実力はある。でもその心に常に何かを抱え込む事になる。そうなれば、余裕が失われていき、最終的に指導してくれている者達と致命的な破局を齎す

 

 

これはウマ娘と人のレースにかける想いの違いが原因なのだろう

 

 

 

走る事はウマ娘にとっての本能と言っても過言ではない

そして、レースに出るウマ娘はよりその傾向が顕著である

 

 

しかし、勝てない

 

幾らトレーニングしようとも勝てない

 

 

ウマ娘は勝気なものが多く、それ故にいつか思い始める

『自分はもっとトレーニング出来るのに、どうしてさせてくれないの!』と

 

 

 

これは単純に立場の違いからの見解の相違であるとタキオンは思う

 

ウマ娘(本人)からすれば限界までトレーニングしたいだろう。でもトレーニングさせている側からすれば、ウマ娘というものはとかく金がかかってしまうものである。

食費、トレーニングの場所の確保、蹄鉄など

 

であればこそ、万一故障などしてほしくはないだろう

だからある程度の余裕を持ったままトレーニングを終わらせる事になってしまう

 

 

 

一部の者達、桐生院などの所謂『名家』と言われる者達は蓄積した膨大なデータや経験から、ウマ娘にかなり寄ったトレーニングを行えるし、説明も出来る

 

だが、殆どの者達は1代限りのウマ娘育成であり、設備資金面などにおいて名家に比べると劣ってしまう

 

 

 

 

 

そして溜まった不満は破局を招く

 

 

 

ウマ娘でない貴方達には分からない!(どうして分かってくれないの!)

 

 

 

これを言ってしまうと、もう関係は元に戻らない

 

 

育成する側もする側で文字通り『生活をかけて』いる者が多い

だからこそ、決して余裕があるわけではないのだ

 

 

それを押し隠してしている彼等にとって、その一言は全てを壊しかねないものであった

 

 

 

 

 

 

後は容易に想像出来るだろう

 

 

育成側はそれでもウマ娘に過剰な負担をかけまいとし、ウマ娘はそれに反発して過剰なトレーニングを勝手に行なう

 

そして、怪我をして全てを棒に振る

 

 

 

例え、その後に両者が歩み寄ったとしても、不信の種は消える事なく残り続けるだろう

 

 

 

 

 

 

 

そういったウマ娘達は世の中にとても多く、彼女達にとってウマ娘である事が幸せと思えるはずもなかった

 

 

 

 

アグネスタキオン(シンデレラ)を隠す理由の一つがこれであった

 

 

 

自分は上手く出来なかったのに、アグネスタキオンは子供の時から理解者がいる

 

 

そこに昏い感情を持つウマ娘がいないとも限らなかったのだ

 

 

以前も語ったがウマ娘は基本的に承認欲求が強い

それはシンボリルドルフだろうが、エアグルーヴだろうが、アグネスタキオンだろうが逃れられない本能だ

 

 

『自分を見てほしい、認めてほしい』そんな切なる想いがある

であるからこそ、ウマ娘は自身を磨くのだ

 

 

だが、ウマ娘の一生の中でそれを得られる機会などそうそうないし、巡り会う事も中々ない

 

 

 

 

それを幼少の頃に手に入れていたアグネスタキオンはウマ娘から見れば幸福なのだろう

 

 

それはタキオンにも否定できない

 

 

 

 

 

ある人はタキオンに言った

 

 

その様な研究をするのは、貴女(アグネスタキオン)が理解者を得ているからなのでしょう、と

 

 

そうだと思う

 

 

 

 

 

 

『愛に憧れ、愛を願い、愛に狂い、愛に生き、愛を失う』

 

とは昔いたウマ娘の言葉である

 

 

 

だが、タキオンはそれを幸運にも手に入れていた

 

 

 

 

 

 

 

否定されるだろうが、手に入れたとしても幸せになれると言われたらタキオンは首を傾げるだろう

 

 

 

 

 

 

別の世界線であるが、シンボリルドルフは自身のトレーナーの姿勢に対して好意を示していた

「自分の視座に立ってくれた」と

 

 

 

誰も彼も相手の立場を慮ろうとするが、それが叶わない事が多いのも事実

 

 

 

 

 

彼が自分(アグネスタキオン)のせいで変わっていくのがタキオンは怖かった

 

 

 

 

 

 

 

アグネスタキオンは昔の彼で良かったのだ

 

ただ、何も難しい事を考える事もなくスカーレットと3人で野原を駆け回ったあの頃の彼で

 

 

 

 

 

 

 

スカーレットも常に言っている。ウマ娘である事が辛いと

ウオッカくんも言っていた。ウマ娘だから幸せになる訳ではないと

 

 

 

 

 

 

 

だから、タキオンはこの研究を完遂する

 

 

自分達(アグネスタキオンとダイワスカーレット)の幼い頃の願いを果たす為に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

であればこそ、容認出来ないのだ

 

 

 

 

 

 

 

覚悟しておきたまえよ?私はそこまで優しくも甘くもないからねぇ

 




シンデレラと王子様と呼ばれている彼女たち


だが、平民の娘と王族の世界は違うという話とダイワスカーレットの起源の話でした



では、ご一読ありがとうございました


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 異聞 暴食の饗宴

これは並行世界のお話


シリアスに見せかけたナニカです


出来は期待しないでね?


彼は唖然していた

 

 

 

初めはとあるSNSをふと見たからだ

 

それはは数あるSNSの一つであり、本来ウマ娘達の専用ソーシャルメディアサービスである

特徴として、配信機能を有していたが割とよくあるものであった

 

 

彼の特殊な立ち位置ゆえにマックイーンがメジロ家のコネで無理矢理アカウントを作ろうとした

 

これは以前からあった加熱報道や偏向報道対策であり、いつもトレセン学園の会見に参加するのは色々と問題があると彼女は憂慮していた背景がある

 

 

 

当初、運営サイドはこのメジロからの申し入れに対して難色を示したがマックイーンによる説得により態度を180度変え、彼のアカウントを運営公認アカウントとしたい旨をメジロ側に伝えた。言うまでもなく、注目されている彼が自社の管理するアプリに参加するのはメリットが大きいと判断したからであった

 

 

 

マックイーンやゴールドシップはこの運営の態度にかなり不信を覚えたが、状況的に仕方ないとして、彼に連絡した

 

 

 

彼は必要性についてかなり疑問に思っていたが、マックイーンとゴールドシップ(メジロ家)の好意ゆえに素直に受け入れた

 

 

 

 

 

 

とはいえ、彼はゴールドシップより複垢、つまり複数のアカウントを持つ様勧められており、運営に対してその件について申し入れた

 

 

当然ながら、運営側としては受け入れ難い話であった。彼という存在をアピールする事により、更なる利用者の増加等の効果を期待するからこその特例措置であったから

 

複数のアカウントを持つと言うのは、ウマ娘専用の配信アプリという大前提が崩れてしまうと彼の要望に対して真摯に検討した上での結論となった旨を返答した

 

 

 

まぁ、彼自身も無理筋であったと理解していたからこそ素直に引き下がった

 

 

 

 

 

 

だが、いざ彼が配信のリスナーとして参加すると彼にとっては予想通り、運営にとっては想像以上の混乱を齎す事になった

 

 

 

運営側は公式発表として、アグネスタキオンの彼氏がこのアプリに登録したとアナウンスした。が、当然の如くリスナーやライバー双方は当初信じなかった

 

当たり前といえる

 

 

 

トレセン学園に所属しているウマ娘達はこの事について、ある程度情報が回っていたので混乱はなかったが、そんなものは当然一般のウマ娘が知るはずもない

 

 

 

 

 

 

 

だが、トレセン学園所属のあるウマ娘の配信に彼がリスナーとして現れた際にライバー側が普段通り(・・・・)に対応した事で一変する

 

 

 

 

 

 

彼女がトレセン学園所属のライバーである事は普通にプロフィールにも書いており、リスナー側もそれを理解していた

 

 

 

 

そのさい

 

 

リスナー

お?ネームレスさん(彼のリスナー名)いらっしゃい

 

 

ネームレス

どもども、お邪魔しますよぉ?

 

 

リスナー

いつ来るか待ってましたよー。学園で会えると言っても余り来られませんからね

 

 

ネームレス

一応自分部外者のはずなんですけどねぇ(苦笑)

 

 

 

 

というやり取りがあったのだ

 

 

勿論、この辺りは組織(アグネスタキオンを愛でる会)によりしっかり議論された上での双方の発言であり、ライバーであるウマ娘側に何ら問題はなかった

 

 

と言ったところで、それをリスナー側が知らなかったという事でかなりの混乱を招く事となったのである

 

 

 

 

ライバーであるウマ娘と彼は勿論だが、運営側にも多数の真偽確認の為の連絡が寄せられてしまい、運営側は公式発表したにも関わらずもう一度発表せざるを得なくなるという異例の事態ともなった

 

 

 

このアプリでは基本的に自分で立ち絵などを用意したり、写真などを使って(勿論、版権モノについては厳重な審査があるが)の配信である

言ってしまえば『かたり』も出来てしまう可能性もなくは無かった

 

穿った言い方をすれば、幾らでも疑うことは出来たのである

 

 

それだけ、アグネスタキオンの彼氏というものは一般ウマ娘からすれば縁遠いものであったとも言えるが

 

 

 

 

であるがゆえにこの配信を聞いていた一部のリスナーやその話を又聞きした者たちは、彼自身の配信をして欲しいとの要望を運営に上げる事となったのもある意味では必然だったのかも知れない

 

 

 

 

 

 

 

運営側としては、その様な強制をしたくなかったが、仮にも『ウマ娘専用』としていた以上、例外を作ってしまった事もあり彼に対して要請という形をとるほかなかった

 

 

 

その辺りの事情は彼も理解していたし、元よりメディアには既に顔も声も露出している事もあり、普通に配信の依頼を受け入れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当然ながら、未だ世間に露出していないアグネスタキオンは出せないし、トレセン学園に所属しているウマ娘も来年レースに出るとはいえどもそこら辺の調整は必要だった

 

 

 

 

そこで、彼の初配信でのゲストとしてトレセン学園理事長(秋川やよい)とトレセン学園生徒会長《シンボリルドルフ》を招くこととした

 

 

 

本来ならば、ゲスト抜きの単独配信にすべきだったのだが、この配信アプリの件を当事者であったライバーのウマ娘からシンボリルドルフは相談を受け、それを理事長に報告した

 

 

やよいとしてはもう少しやり方は無かったのかと思わなくも無かったが、曲がりなりにも組織の会合にて決まった事であったが為に無理矢理納得させた

 

 

その上で、そういう事ならば彼のみを矢面に立たせるべきでないと考え、彼の初配信に出ることをその場で決めた

 

その場にいたルドルフもまた、親しい友人である彼のある意味では窮地に助力すべく理事長に協力を申し出た

 

これについてもやよいはかなり不本意そうであったが、熟慮の末彼女の同席を許可する事となる

 

 

やよいからすれば、矢面に立つべきは彼でもシンボリルドルフでもなく、大人である自分たちであるべきとの意識があったからだった

 

 

 

 

 

 

 

 

確かにウマ娘に直接メッセージを届けれるツールとしてのそのアプリは有効ではあるだろうが、そこまで彼に負担を強いる事が果たして正しいことかについて甚だ疑問だったからだ

 

 

 

この件については組織においても常に激論を交わしている議題であり、提案者であるマックイーンですら非常に悩んでいる難題となっている

 

 

 

 

 

 

 

紆余曲折あったが、(アグネスタキオンの彼氏)トレセン学園理事長(秋川やよい)トレセン学園生徒会長(シンボリルドルフ)という、まるで何時ぞやの会見を思い出せるかの様な陣容にて初配信となった

 

 

 

 

 

 

結果、彼が本物のアグネスタキオンの彼氏(現代のシンデレラの王子様)という事がそのアプリ内における常識となった

 

 

 

 

 

 

 

今回、彼が連絡を受け取ったのはその配信アプリから繋がった一般のウマ娘からのとあるメッセージだった

 

 

 

 

 

〇〇〇〇

あの、トレセン学園の生徒だと思うんですけど、妙なモノ?を連れてたんですけど?

 

 

と言うものであった

 

 

 

 

確認すると、それは丸いピンク色の小さなモノだったとの事だった

 

 

 

 

 

彼は非常に嫌な予感がした

 

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

彼の携帯に更なるメッセージが届いた

 

 

着信音はうま〇〇〇〇説

これはトレセン学園関係者の中でも組織に属する者からの時専用の着信音だった

 

 

 

そこには

 

 

 

 

件名

 

アカン、やばいで!

 

 

 

件名からして明らかに穏やかなものではない

 

しかも発信者は組織のオカン(タマモクロス)である。彼女が冗談を言うタチでないのは料理研究会(オグリの試食会)で良く関わっているから理解している

 

これがゴールドシップ(メジロ家一の問題ウマ娘)であるならば、まだ救いはあっただろう

 

 

 

恐る恐る内容を見てみると

 

 

 

 

 

 

 

うせやろ(ジーザス)

 

 

 

と思わず嘆いてしまう内容だった

 

 

 

 

 

 

更に凶報は続く

 

 

 

トレセン学園一の常識枠(ナイスネイチャ)より地元の商店街で飲食店が次々と臨時閉店しているという話だった

 

 

 

理由は全て同じ

食材不足(・・・・)であった

 

 

 

 

 

 

 

今の時刻は午後16時過ぎ

 

 

 

普通に考えれば、まだ夜分のストックが何処の飲食店にもある筈である

 

にも関わらずこの惨状

 

 

 

 

 

 

彼はすぐさま、組織主要要員に非常アラート(一斉メール)を送った

 

 

 

内容は

 

 

 

 

対オグリシフト発動!

各員の健闘を祈る!

 

 

 

だった

 

 

 

 

彼も急いでトレセン学園の食堂に向かう事とした

 

 

 

 

 

間違いなく、そこは戦場になっていると確信して

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エアグルーヴは食堂で戦慄していた

 

 

 

 

なんだ、これは?

 

 

 

 

 

 

食堂の一角

そこには2人のウマ娘と一つの物体?があった

 

 

1人は分かる

 

オグリキャップだ。トレセン学園一の健啖家であり、別名ブラックホール(食堂要員最大の相手)と呼ばれ、彼女が食堂に来るのは決まって食堂の閉まる30分前

 

 

そして、彼女が来てからの30分は食堂の調理師(ソルジャー)にとって正に鉄火場と化す

 

その30分で彼女は常識で測れない程の量を食べるのだ

 

 

異例とも言えるこれは余りにもオグリキャップ1人にかかるリソースが大きすぎる為に他のウマ娘達の食事を提供出来なくなりかねない為のものであった

 

 

 

 

 

あともう1人は確かスペシャルウィークとかいうウマ娘だったと記憶している

 

夏頃に行われたオープンキャンパスに来校していたウマ娘だったと記憶にあった気がするが

 

 

 

 

 

 

既に歴戦の調理師達は斃れ、今はタマモクロスを筆頭にシンボリルドルフ(生徒会長)、ナイスネイチャ、スーパークリーク、サクラバクシンオー、メジロマックイーンが調理場に入っており、運び役として私やナリタブライアン、ナリタタイシン、サイレンススズカ、ライスシャワー、ミホノブルボンが動員されている

 

 

 

にも関わらず、此方が劣勢というのは凡そグルーヴに理解できるものではなかったが

 

 

 

スペシャルウィークとやらも食べるし、オグリキャップも食べる

 

食べるのだが、それ以上に

いや、比較するのも馬鹿らしくなるほどの速度で食事をしているのがピンク色の物体だった

 

 

トレセン学園一の健啖家であるオグリキャップも霞んでしまう程の食事量

 

 

 

今、調理場はおろか、運んでいる私達も鉄火場の中にいる様に錯覚してしまう。それほどのものだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悪りぃ、遅れた!

 

 

 

そこに(アグネスタキオンの彼氏)が到着した

 

 

 

 

やれやれだよ

 

いや、何が起こっているんだ?

 

凄いお皿の量!

 

 

更にタキオンにハヤヒデ、チケットも連れてきた

 

 

 

 

とりあえず事情を詮索するのは後だ!

タキオンにビワハヤヒデさんにウイニングチケットさんは料理運んで!

俺も調理に入る!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから30分後

 

 

オグリキャップとスペシャルウィークに謎のピンクの箸が漸く止まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後にトレセン学園に伝わる『魔の二時間』と呼ばれる

恐ろしい伝説であった

 

 

 

 

 

 




代金はピンクが金塊で払って行きました


何故来たのでしょうか?



以前少しだけ書いたネタを膨らませたものになります


ネタだけど、クロスオーバータグ要るかも?


いや、皆さん発想が秀逸すぎてホント驚きますわ



色々書けてはいるんですが、大体が横道に逸れている話という罠


という訳でアンケート実施しますので、宜しければご協力下さると幸いです
ご一読ありがとうございました


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 異伝 もしもルドルフと幼馴染だったら?

アンケートの結果を受けてとりあえず投げます

この時間軸の彼はシンボリルドルフよりもやや年上であることをご了承ください


私はシンボリルドルフ

 

一応、今年から稼働するトレセン学園の初代生徒会長を拝命している

 

 

 

トレセン学園とはウマ娘の養成機関であり、今年の末よりトレーナーの育成機関としての役割を併せ持つ事になる

 

 

 

 

おい、会長

 

ブライアン!

 

 

 

む、どうした?

 

 

 

手が止まっているぞ?さっさと片付けんとまだまだ仕事はあるだろう

 

 

そうだな。すまない

 

 

 

新設される以上、当然ながら煩雑な仕事も増えるということになる

 

 

 

 

トレセン学園の生徒会は会長である私に副会長であるナリタブライアンに書記であるエアグルーヴ。そして

 

 

 

 

ちわー、三河屋ですー

追加の書類と昼餉お届けに参りやしたー

 

 

と1人の男性が部屋に入ってきた

 

 

 

 

 

おい、貴様。三河屋とは何だ?

 

 

そんなことはどうでもいいだろう、グルーヴ。それよりまた追加か?

 

 

すまないな。で?今日のお昼はなんだい?

 

 

 

三者三様のアクションで彼を迎える

態度こそふざけているが、彼は基本的に物事に手を抜かない性分だ。そこについては、この半月ほどで2人とも分かっている筈

 

 

現在トレセン学園は再来週に迫った稼働に向け、最後の追い込みとなっている

 

学生である私達が、その前に仕事をするのはどうかと思うが、これも後から苦労するか、先に苦労するかの問題だろう

 

稼働すれば様々な問題が噴出するだろう事は疑いのない事。

であればこそ、積極的に仕事を減らす他ない。これについては2人とも同意してくれているから助かっている

 

 

 

 

 

 

 

生徒会顧問の役職にある彼は私の幼馴染だ

トレセン学園に入学するにあたり、彼のご両親がわざわざ学園のオーナーである秋川家に交渉し、特例措置としてこの様な形になったのだ

 

とはいえ、彼は今年高校生となる私よりも三つほど年上であり、正式には『トレセン学園臨時講師』であったりするのだが

 

 

幼い頃より私の面倒を見てくれていた彼。そうであるからこそ、ウマ娘という存在の特異性をしっかり理解しており、今年の秋からトレーナー候補達が入学してくる際には其方の講師となる予定だ

 

 

 

彼自身はあまり乗り気でなかったみたいだが、彼の従姉妹にあたるウマ娘が彼の両親に必死に頼み込んだのと、私も自分の両親と共に頼み込んだのが功を奏したらしい

 

 

何せ私というお世辞にも賢くなかったウマ娘をしっかり育て上げた彼だ。実績は十分と言えるだろう

 

 

 

 

 

 

 

だが、この場合色々と私にとって不都合な事がある

 

 

 

彼にとって私という存在が唯一無二というわけでは決してないが、私にとっての彼は正しく唯一無二の存在なのだ

 

 

はっきり言ってしまうならば、ウマ娘の素晴らしい社会を目指すべきだと思っていても、私自身が幸せにならねばならないと自覚している

 

(シンボリルドルフ)にとっての幸せは日常の中にこそあり、それは何気ない日々。彼と過ごす日々なのだ

 

 

些か以上に目障りな彼の従姉妹(トウカイテイオー)がいるが、それはまだ許容しよう

 

だが、これから半年後には彼はトレーナー候補生と接する事になるだろう。ウマ娘ならどうとでも出来る。何せこれでも生徒会長なのだから

 

しかし、トレーナーやトレーナー候補生なら流石の私でも手が出せなくなる

 

 

今年の候補生の中には大卒の桐生院葵とやらがいるのを私は既に確認している。

桐生院とはウマ娘の育成における名家の一つであり、毎年の様に名ウマ娘を輩出する事で有名だ

 

しかし、桐生院の恐ろしい所は実力のみでなく、優秀な育成者を積極的に自家に取り込む事にあると私は思っている

 

 

 

数年前にフリーのトレーナーが育成していたウマ娘が春秋天皇賞制覇という快挙を成し遂げた

 

決して他のウマ娘が弱いわけでも、そのウマ娘の育成環境が他より優れていたわけでもないと思う

にも関わらず、その人物の担当するウマ娘は偉業を達成し、その翌年も出走したレース全てを一着で終えている

 

結局、その年の有馬記念を最後に引退したウマ娘だったが、殆どの者達はかの人物でなく、ウマ娘に注目した

 

 

ところが桐生院はその人物に注目し、自家の分家筋の女性との婚約を果たさせ、優秀な人材である彼を合法的に取り込んだと私は見ている

 

それ以降、彼は桐生院閥の人間として扱わられ、桐生院はさらに飛躍する事になった

 

 

この話を聞いた私が桐生院の過去を調べると、興味深い事にかの家は優秀なトレーナーや関係者を自派閥に取り込む事が多かった事が判明した

 

 

 

(シンボリルドルフ)の贔屓目抜きにしても彼の洞察力や経験による感覚などは優れていると断言出来るだろう

でなければ、例え私や彼の両親がどれだけ懇願しようとも男性(異分子)である彼をトレセン学園に受け入れようなどと考えは認められない筈

 

 

 

当然ながら、この異例ともいえる人事について出資者でもある桐生院が気付かないはずもない

 

 

となれば、あらゆる手管を使って彼を取り込もうとするだろう

悪い意味で有名だった彼の従姉妹(トウカイテイオー)を更生させたのはウマ娘に関わる人間なら誰しも知っているだろうから

 

 

 

別にトレーナーである必要はないだろう。メンタルケア担当でもいいだろうし、彼の能力ならウマ娘の食育担当も務まるはずだ

 

それに桐生院ともなれば、その気にさえなったなら彼をトレーナーにする為の教育を施すくらい造作もない

 

 

 

 

 

(シンボリルドルフ)は嫉妬深いのだ

彼がトレーナーでないからこそ、彼に対してそこまでの執着を見せないが

もし、仮に、彼がトレーナーになったなら、私以外のウマ娘が彼の担当になるなどしたら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はどうなるかわからない

 

 

 

 

 

 

 

 

幼い私を嫌な顔一つせずに構ってくれた彼

勉強が苦手だった私に根気よく教えてくれた彼

 

 

 

彼の前だけだった

両親以外に見せることのない(ルナ)を見せれたのは

 

 

 

憧れは理解より最も遠い感情としたり顔で周りの人達は言う

 

 

 

 

 

 

 

どうでもいい事だ

 

 

 

私の両親は彼の両親の学校の後輩であり、それ故に様々な面で両親は彼の家族に助けられてきた

 

 

彼が生まれた時、私の両親は自分の事の様に喜び、私が生まれた時も彼の両親や彼もまた自分の事の様に喜んでくれたと聞く

 

 

 

両親が言うには、生まれたばかりの私を見て彼に「自分の妹の様な娘だ。大切にするんだぞ?」と彼の両親が言ったという

 

 

 

 

 

彼はその言葉を違えない様に幼い私を一番近い所で見守ってくれた。

聞けば、私の初めての言葉は「おにぃ」だったと言う

 

 

 

 

幼い私にとって、あの人()がどれだけ大切で身近だったのか判ろうというものだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

であればこそ、彼に思慕の念をいだくのは当たり前といえる

 

 

やんちゃだった私の我儘を苦笑しながら聴いてくれた彼。成長するにつれて私の周りに人が集まってきたが、そんな事(・・・・)はどうでもよかった

 

彼に褒めて欲しい。彼に笑って欲しい

 

 

そんな幼い感情だけが私を成長させてくれたのだ

 

 

彼に恥ずかしくない様に

彼が笑われない様に

 

 

彼に相応しくある為に

 

 

 

 

それこそが、私の行動原理であり、家族以外のつまらない称賛(雑音)など意味のないものだった

 

 

 

 

 

 

 

 

両親にとっても大恩ある先輩の息子である彼に対して好意的であったし、ウマ娘という特異な存在である私が周囲に上手く溶け込めた事実も彼に対する態度を一層良くしていった

 

 

世間ではウマ娘という存在が周囲との関係に悩む事も多くあると報道されており、少なからぬ軽犯罪も起こっていた

 

 

 

 

 

その様な事のない様に気にかけてくれる兄の様な存在は私にとって頼もしく思えたのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところがである

 

 

その様な関係だった私たちに割って入ろうとする者が現れた

 

 

それこそが彼の従姉妹(トウカイテイオー)であり、彼女は私に憧れていると言っていた

 

 

 

 

だが、私には分かる。分かってしまう

 

彼女(トウカイテイオー)が憧れているのはウマ娘(シンボリルドルフ)でなく、1人の女(シンボリルドルフ)なのだと言う事が

 

 

 

 

未だ私の奥深くに隠している嫉妬深い私。それこそ、トウカイテイオーというウマ娘の原点であった

 

 

 

 

 

元よりウマ娘は感情的になりやすいが故によく言えば情熱的、悪く言えば直情的な者が多い

 

それだけならば然程に問題とならないが、そこに高い身体能力が加わるとマトモな解決を行なうのが困難になってしまう

 

 

それこそがウマ娘を取り巻く環境の悪化に繋がるものなのだ

 

 

 

 

トウカイテイオーは私よりも二つ年下であり、彼からすれば五つも年下だった

 

 

 

勝手に憧れるのであれば、私とて目くじらを立てるつもりも無い

 

 

 

だが、彼女は幾度となく彼に要らない面倒をかけた。

それは幼い私には出来なかった(・・・・・・)事だ

 

 

 

彼に嫌われるのが怖くて、出来なかった事

 

 

 

 

だが、彼の従姉妹であるトウカイテイオーは気にする事も、躊躇う事もなく、その様な(暴挙)に及んだのだ

 

 

 

 

 

 

その時、声ならぬトウカイテイオーの声が聞こえた気がした

 

 

『どこまでいっても、貴女(シンボリルドルフ)は他人。(トウカイテイオー)とは違う』と

 

 

 

 

 

そう思った時、私ははっきりとトウカイテイオーは自身を脅かす敵だと認識した

それと同時に、彼が何よりも欲しいという浅ましい自分を理解したのだ

 

 

 

 

 

 

 

その為のトレセン学園であり、トウカイテイオーが此処に入るまでに2年間の猶予がある

 

 

 

この2年間、トウカイテイオーと彼の間には物理的距離が確かにあり、生徒会長である私と顧問である彼は近しい間柄である

 

 

そして、早く此方(トレセン学園)に来る為には特待生制度を利用する他ない。だが、特待生制度を利用するには実力、実績は勿論の事、素行などの日常生活の態度等も審査の対象となる

 

 

 

認めたくは無いが、トウカイテイオーは確かにウマ娘としては優秀だろう。彼の手ほどきを受けている以上、当然といえるが

 

 

 

だが、いかんせん素行などについては論外と言わざるを得ない

現在こそ、改善されているが、だからとて嘗ての行状が全て帳消しになる道理もないからだ

 

 

 

トレセン学園自体がまだ始まったばかりである事も考えると模範的なウマ娘は称賛されるだろうが、余りにも唯我独善では周りも認めるわけにはいかないだろう

 

 

 

今年の編入組は既に確定しているし、特待生制度を運用すると言う話も聞いていない

 

 

 

 

 

 

残念だな、テイオー

キミがどれだけ彼を望もうと、私はそれを許すわけにはいかないのでね

 

 

従兄弟であるからと常に彼の悩みの種になっていた自身の振る舞いを反省すると良い

 

 

 

 

 

 

 

 

ルドルフは1人内心笑っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのシンボリルドルフの目論見が崩壊するのは、僅か三日後のことであったが、それはまた別の話である

 




『独占欲』『拘束』などがきょうかされた我らが生徒会長でした


とりあえずストック分は投げれますが、基本遅くなることをご了承ください


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 海という名の戦場へと(転)

入院生活長引いてて投稿遅れた

とりあえず投稿する


完結はどの様な形であれしたいと思っているので、気長にお待ち下さると幸いです


恋人であるタキオンからの話だが、彼は一瞬呆然とした

 

 

 

 

なぁ、タキオン?

俺の聞き間違いだと思うんだ。もう一回聞いていいか?

何て?

 

 

そういうリアクションをすると思ってはいたよ

今度一緒に海に行こう。何、マックイーン達もくるけど、そこまで多くはないから問題ないさ

 

 

問題しかない件について

 

 

そう言ってもねぇ。マックイーン以外に来るのはシンボリルドルフくんとナリタタイシンくんにナイスネイチャくん。それにスカーレットとウオッカくんだ。問題ないだろう?

 

 

後者2人はともかくとして、前者4人は問題しかない件についてどう思うよ?

 

 

ふぅん?

なるほど?

 

 

ボクは人前で肌を晒したくない。それを知っていての事なんだね?タキオン

 

 

恨めしそうにタキオンを見てしまう

 

 

 

う、ぐ。それについては謝ろう

だが、マスコミなんかの事(つまらない事)で疲れただろう?

私としては休んでほしいのさ

 

 

で、そういうことになった、と?

 

 

わ、ワタシもかなり頑張ったんだよ⁈

マックイーンから提案を受けたときには参加者は20人を超えていたんだ!

それをなんとかここまで減らす事に成功したのだから、そこまで責めなくともいいだろう?

 

 

oh.no

 

 

抽選したとは言え、そこまで問題のあるメンツはいない筈だ

折角の機会だし、バカンスを楽しもうじゃないか?

 

 

むむむむむ

 

 

 

 

流石にタキオンとマックイーンの苦労を考えるとこれを否定するのは良心が咎めるのも事実

 

しかし、スカーレットにウオッカ(妹達)は良いし、ルドルフ(ふざけ合う仲)も何とかなるだろう。タイシンもマックイーンもどうにか出来る

 

 

のだが、なぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナイスネイチャ

 

 

我らが組織一の苦労人にして、常識人

 

 

本人はいつも自分は3番手くらい(寝言)を言っているが、その潜在ポテンシャルはルドルフ達すらも戦慄する程である

 

そして、癖の強い組織のメンバーの中において、暴走(逸脱)しがちなメンバーを抑えられるのもひとえに彼女の感性によるものである事は周知の事実だろう

 

 

シンボリルドルフ(甘えん坊)メジロマックイーン(野球、スイーツ大好き)サイレンススズカ(狂戦士)ゴールドシップ(暴走特急)

一部、明らかに学園関係者でないものが混ざっている気もしないでもないが彼自身もそれに当てはまるので敢えてスルーする

 

つまりははっきり言って、マトモなウマ娘に彼女達を制御出来るとも思えない。だからこそ、ナイスネイチャは貴重なのだ

 

 

組織の良心といえば、ナイスネイチャ

組織のオカンといえば、タマモクロス

 

 

これは組織に属する者にとって共通見解といえるだろう

 

 

 

 

 

で、あればこそどう接すればいいのか彼にもわからない

 

 

 

正直な話として、彼が最も苦手とするのはナイスネイチャだったりもする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なぁ、タキオン?

 

 

なんだい?

 

 

せめてグラスワンダー(武士道ウマ娘)は呼べないか?

 

 

ふぅむ、難しいだろうね

抽選した以上、特例を認めるのは色々と問題になるだろう

 

 

彼としては、最悪の場合武力制圧も考えなければならないと思っている

 

何せマックイーンは事デザート関連になると途端にポンコツ化するし、最近はシンボリルドルフも生徒会室限定の甘え方を生徒会室以外でもしようとしてる風に見える。ナリタタイシンは割と溜め込むタイプにも見えるし、スカーレット()は羽目を外すと普通にスキンシップが過剰になる。ウオッカは多分、安全だろうがスカーレットに影響されて暴走する可能性もなきにしもあらず

 

そこで、近頃彼やタマモクロス(トレセン学園のオカン)に日本料理を習ったり、彼から剣道や柔道を習っているグラスワンダーがいた方が安心なのである

 

それに

しかしなぁ。タキオンとタイシンは良いとしても、他のメンツは体動かすの好きだろう?

ボクのフィジカルでは保たんよ

 

 

うん?

大丈夫だろう。彼女達とて加減はするだろうさ

 

 

そう言って、彼から視線を外すアグネスタキオン

よく見れば、少しばかり顔が引き攣っていた

 

 

 

 

 

おい?

 

 

も、元々ワタシがどうにか出来る話ではないだろう!

ワタシの対人能力の低さを侮ってもらっては困る!

 

 

それ、威張るところ違うやろ

 

 

ううう

 

 

タキオンが泣きそうになっている。しかし、何故だろうか?まっっっったく慰めようという気が起きないのは

 

だが、放置するとイジケルタキオン(ヘソを曲げる)になって些か以上にめんどいのも事実

 

 

流石にこの年になって、面倒(お風呂に入るや膝枕)を頻繁にすると此方の理性君も満身創痍

 

 

やむないか

 

 

 

 

タキオン、とりあえずその件については了承した

それで良いな?

 

 

そうしてもらえると助かるよ

 

 

んで、いつ?

 

 

明後日⭐︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

落ち着け俺。今タキオンを全力でしばき回したくなったけど、我慢しろ。いやでも許されるのではないか?だって明後日やぞ?しかも今日だってあと数分で終わるし。という事は何か?実質明日半日位しか準備期間無いって事か?必要な物のリストアップと首謀者(マックイーン)との打ち合わせ(話し合い)(物理)もせにゃならん

その上でスカーレットとウオッカ(妹達)が安心して遊べるだけの環境を整えにゃならん。如何にマックイーンとて、彼女は名門『メジロ』のウマ娘。感覚が些かズレている可能性を捨て去るべきではない

でも、よく考えたらマックイーンって割と庶民派だよな?野球好きだし、食べ歩きとかもするらしいし

そうか。あのゴルシの従姉妹だったな。それなら納得。

 

いやいや、待て待て。確か2人の歓迎イベントの時にも材料に高級食材を普通にぶち込んできたよな?

て事は何か?割と俺もだが、気が休まる環境になっているか確認せにゃならんわけか?

 

時間は深夜。この時間からゴルシに連絡を取るのは難しい、か

 

つか、タキオンも少しばかりその辺りに配慮しても良いだろうに

 

 

 

 

 

 

 

仕方ない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タキオン

 

 

おや、やっと考えがまとまったかい?

 

 

暫くブロッコリーとパセリ(タキオンの苦手なもの)をメニューに出すから、覚悟しとけ?

 

 

は?

いやいやいや、何でそうなるんだい!

 

 

何ででしょうねぇ?(邪笑)

 

 

納得できない!理由を言いたまえよ!

 

 

黙秘しますぅ

 

 

認められない!

 

 

これから3食手抜きで良いのなら、どうぞ?

 

 

ぐぐぐ

 

 

どうせ明後日には豪華な飯食べれるんだから、良いだろ?

 

 

何故だ!何故こんな事を!

 

 

何故?そりゃ、偶には好き嫌いの激しい恋人の偏食をどうにかしようと思ってな?

尊敬する(先輩)がブロッコリーとセロリ食べれないなんて、カッコ悪いだろ?

 

 

・・・・・・八つ当たりの気がしてならないのだけど?

 

 

ん?ああ、そうかそうか。タキオンは一食で二つとも(ブロッコリーとセロリ)を食べたいって言うんだな?

任せておけ!ブロッコリースープとセロリをふんだんに使ったグラタンでも作るさ

 

 

待つんだ。グラタンは良いとしても、スープはやめてくれ

 

 

だって、タキオン。流し込む気だろ?

 

 

その位は許して欲しいんだけどなぁ!? 

 

 

いやいや、オグリキャップ(暴食の女王)見てみ?

あそこまで食べろとは言わんさ。でも作る側としては残さず食べて欲しいわけよ?

その為に様々な趣向を凝らす訳だしな。勿論タキオンの事は大好きだ。だからこそ、タキオンには常に妹達(スカーレットとウオッカ)の手本になってもらいたい

そう思う事が悪い事かな?

 

 

せ、せめて、せめてブロッコリースープとセロリの組み合わせは勘弁して欲しい

 

 

やーだー

 

 

か、かくなる上は

 

 

 

アグネスタキオンが彼に飛びかかろうと構える

 

 

 

お?物理的に制圧するか

いいぜ、来いよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論から言うと

 

 

アグネスタキオンは飛びかかって押さえつけようとしたのだが、相手が悪かった

 

恐らく3月までの彼ならば、それでどうにかなっただろう

しかし、彼女は知らなかった

 

 

 

 

ゴールドシップ(メジロの問題児)との度重なる模擬戦?により、彼の対応力は大きく向上していた事を

 

 

 

4月の頃こそ、白星ばかりだったゴールドシップであったが、ゴールデンウィークに入る頃から黒星をつけられ始め、7月に入った頃には勝率を五分五分にまで持っていかれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、なんでお前そこまで対応できんの?

 

 

慣れ。ですかねぇ?

 

 

くっそ、このゴルシちゃんがこんなに簡単に負けるなんて

でも覚えとけ。例えこの私が斃れたとしても、すぐに第二、第三のゴルシが

 

 

はいはい

んじゃ、逝ってらっしゃい

 

 

ウポァッ!

 

 

 

 

というやり取りがあったとか、何とか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つまり、どうなったかと言えば

 

 

 

 

そ、そんな

ワタシに抱きつかれて動揺しないなんて!

 

 

動揺しなくなったぜ!

どうよー?

 

 

と言うか、寧ろ普通に抱きしめてきているのだけど?

 

 

そりゃ、ねぇ?

折角恋人(アグネスタキオン)が来てくれたんだし、歓迎しないと彼氏として最低じゃん?

 

 

い、いや。そのだね

妙に手の動きが、ひゃん!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、タキオンの説得(物理)は効果を上げる事なく、寧ろ彼によって翻弄されてしまいましたとさ(意味深)

 

 

 

 

 

 

 

 

余談ではあるが、彼との模擬戦?により更なる力を手にしたゴールドシップが後々自身のトレーナーを翻弄した

 

これについて、トレーナーは彼に愚痴ったが

 

 

「や、トレーナーっていう仕事する以上、そういうスキルも必須でしょうよ?」

 

とあっけなく返されたとか何とか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に余談となるが、ゴールドシップとの模擬戦?では密着状態になることもしばしばあった

当然だが、彼女の豊かな身体が密着する為にゴールドシップは動揺を誘えるとふんでいたのだが、普通にノーリアクションであった

 

 

それを不思議に思ったゴールドシップが聞いてみると

 

 

 

 

 

生憎だが、タキオン以外にはそう言う感情はいだけないんでな?と言い放った

 

 

 

 

 

 

その日、ゴールドシップは家に帰ってドーベル、パーマー、ライアンに散々愚痴ったのは仕方ない事である

 

 

 

愚痴られたドーベル達は久しく見なかった(ゴールドシップ)の弱々しい姿に複雑な想いを抱いたらしい

 

なお、その時の涙目のゴールドシップの写真が何故かマックイーンの所にも届いていたりもする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

原作に出てくるウマ娘達の本作での扱い

 

 

 

アグネスタキオン

 

 

ヒロイン枠。ウマ娘プレイ時、勝利ポーズが可愛すぎて即堕ちした。

勝負服を某動画で見て、女神像を全ブッパして解放したら、更に可愛くて暫くタキオン以外育成出来なかった

総育成数は間違いなく100はこえたであろうウマ娘

しかし、一度として温泉イベントは発生せず

 

サイゲェェェェェェッ!(血涙)

 

本作では、彼と支え支えられ歩んだ結果、恋仲となった

様々な障害が立ち塞がるが、2人でなら乗り越えられると確信している

 

 

譲れないもの

 

彼 ダイワスカーレット

 

 

嫌いなもの

 

マスコミ 彼を傷つけるもの 両親

 

怪文書化する為に後は割愛する

 

 

 

 

 

アグネスタキオンの彼氏

諸事情により、名前をつける予定は今のところない

 

理性的と自身は思っているが、かなりの激情家。実は従兄弟達にかなり慕われており、それ故にアグネスタキオンが度々不穏な手紙を受け取っているのだが、彼は知らない

 

基本尽くすタイプであり、相手を観察して足らないところを補う事に長けている

家事全般については、専業主夫に今すぐにでもなれるレベル

 

最近の不満は世間に顔を晒した為に、買い物にすら出かけれなくなった事

 

 

 

シンボリルドルフ

 

 

完全無欠の生徒会長

だった筈なのだが、サブヒロイン的な立場になってしまった

作者も当初は困惑していたが、開き直っている

 

因みに彼と2人っきりの時だけは〇〇と呼んで欲しい願望があるが、そうなった場合、ルドルフ自身も引き返せる自信がない為に何とか我慢してる(あくまでもルドルフ基準では)

のだが、最近自制が効かなくなっている模様。本人は意識していないが

 

ブライアンとグルーヴは既に慣れてしまっているので、週一くらいは彼との触れ合いをしている。勿論、タキオンに許可をもらってるのだが

 

 

 

エアグルーヴ

 

 

本来なら、彼女が会長のポジションだった予定なのだが、何故かこうなった

やはりプロットは大事。そういうことだろう

彼女の場合だとお世話される余地が彼にそうないので、ある意味では更にハードルが上がったと思うので助かった気もする

どれだけいっても彼はタキオン一筋なので、他のウマ娘に甘える事はない

花関係でもう一仕事あるのだが、作中では来年の話になるのでいつになるやら

ジューンブライト仕様のエアグルーヴにはびっくりした

 

 

 

ナリタブライアン

 

 

ガチャで来てくれなかったウマ娘。であるからこそ、悲しいほどに描写な難しい子でもある

他のウマ娘の描写がうまいわけではないよ?ウマ娘だけに

組織のウマ娘側におけるナンバーツーであり、トレセン学園内における調整役を担っている

実は彼に負けたことが相当ショックであり、何度もリベンジを挑んでいるが彼は応じる事がないのが不満

 

 

 

メジロマックイーン

 

 

野球とスイーツをこよなく愛する天皇賞(春)最大の難関

ライスシャワー育成の最難関ともいえる相手であり、作者は10数度に渡ってマックイーンに阻まれた

だが、キャラクターとしてはかなり好きな部類であり、最初は彼女の幼馴染にしようかと迷ったほど

組織の創設者であり、その影響力は学園内にとどまらず政財界にも多少及ぶほど

最近の悩みは従姉妹(ゴールドシップ)と彼が振る舞う低カロリーデザートである

その影響からか、和菓子にも興味を持ち始めている

 

 

 

ナリタタイシン

 

 

作者がアグネスタキオンの後に堕ちたウマ娘

端末がマトモであったなら、未だにプレイしていただろう要因の一つ

作中においては贔屓しないように自重している(出来ているとは限らないが)

基本彼との相性は良い方だろう

頑張り屋のタイシンとサポート特化の彼

上手く噛み合うまでに時間こそかかるだろうが、噛み合えば相当双方にとって有意義な関係になるだろう

 

 

 

サイレンススズカ

 

 

作者がウマ娘を始めたきっかけ

胸なんか飾り。作者はそう思っている(あくまで個人の感想)

物静かな性格という設定は何処かへ旅立ったらしい

『トレセン学園武闘派』筆頭であり、組織の引き締め役

走りについて悩んでいた時、彼にアドヴァイスを受け解決した。その事から彼に対して憧憬の念を抱いているが、彼女(アグネスタキオン)がいる為に自重している

その為、彼の幸せを邪魔するものに対しては一切の容赦がない

 

 

 

ライスシャワー

 

 

前述のサイレンススズカと後述のミホノブルボンと共に組織における綱紀を引き締めているウマ娘

諸々の事情により、トレーニング大好き娘となってしまったある意味作中でも屈指の改変を受けたキャラクターでもある

その愛くるしさから多数のお兄様とお姉様を作り上げたと思われる罪づくりなウマ娘

あと、固定スキルのモーションかっこよくない?

某動画サイトにて元アナウンサーによる実況からライスシャワー育成に入ったのが作者である

とはいえ、天皇賞春を越えられないのだが

 

 

 

 

ミホノブルボン

 

 

前述のサイレンススズカ、ライスシャワーと並んでトレセン学園トレーニングキチの名を馳せるウマ娘

無表情である上に感情の起伏があまり目立たない為に誤解されがちであるが、相当の負けず嫌い

体格の差などを覆す為に過酷なトレーニングをするライスシャワーと不可能ともいえる先行逃げ切りを目指すサイレンススズカには尊敬の念を持っている

 

また、タキオンの彼氏である彼にもウマ娘という不条理な者に寄り添おうとする姿勢に対して敬意を抱いている

因みに最近はナリタタイシンもこちら(トレーニングガチ勢)に引き入れようとしていたりする

 

 

 

 

オグリキャップ

 

 

言わずと知れたウマ娘界きっての健啖家。某ウィークと某マックイーンを揃えるとトレセン学園の食堂要員が壊滅する

後述のタマモクロスと共にスカウト枠で学園に入学した

育てられた環境が恵まれていたからか、人の感情に敏感でありタマモクロスの影響からか面倒見も良い

日本文化(日本食)をエルコンドルパサーとグラスワンダーに積極的にすすめている

 

 

 

タマモクロス

 

 

別名『トレセン学園のオカン』

面倒見が良く、性格も明るく非常に好人物

であるが故にトレセン学園のウマ娘(個性が服着てるウマ娘)に振り回されがちである

彼とは料理研究会を共に主催し、ウマ娘達の食育にも力を発揮している

 

 

 

グラスワンダー

 

 

アメリカ生まれのウマ娘。両親が親日家であり、その影響からか新設されたトレセン学園に入学した才女

日本文化に憧れを持っており、タマモクロスからは日本料理。彼からは剣道、歴史的知識などを吸収している

実は彼の歴史談義を一番長く聴いていられるウマ娘でもある(最長6時間)

両親を思い出させるようなアグネスタキオンと彼の関係を好ましく思っており、邪魔だてする者は如何なる手段(非合法的処置)すら厭わない

 

 

 

ナイスネイチャ

 

 

組織内のみならず、トレセン学園内においてすら苦労人として認識されているウマ娘。所謂不憫枠

 

しかしながら、そのぶれない価値観のあり方は組織にとって必須とも言えるものであり、当人の認識と異なり組織のエース(切り札)の1人である

トレセン学園のある近くの出身のために非常に様々な伝手を持つ




本作のアグネスタキオンは些か胸が小さいという改変してます

作者の好みなので、許して下さい
出来る限りなんでもcry


お気に入りが四百件超えててビビります


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 異聞 私の見せたい景色

出来たら、投げる


とりあえずストック終わったし、明後日の手術終わったら感想返信などをしたく思います

多分、追加の手術はないと思いたいけど


なぁ

 

どうしたの?

 

色々と聞きたい事はあるんだよ、俺さ?

 

別に貴方と私の間柄でしょ。何でも聞いてくれて良いと思うわ?

 

何でも?

んじゃ、スリーサイ

 

それ以上言うと、少し貴方の体が不思議なことになると思うけど?

 

何でもって言ったじゃねぇかよぉ

 

 

 

 

 

今俺は幼馴染のサイレンススズカと一緒に山に来ている

ま、山って言ってもピクニックでは無くて、その麓でのスズカのトレーニングと気晴らしの付き合いなんだけどもな

 

 

 

 

 

サイレンススズカ

 

 

俺の幼馴染で明るいオレンジ色か?語彙がないから知らんが。の長い髪をしたウマ娘だ

 

ウマ娘ってのは耳と尻尾が俺たちと違って、んで少しばかり身体能力が高い連中の事

 

ぶっちゃけ、世間ではやれウマ娘に対する色々あるらしいけど、俺にとっちゃあ唯の幼馴染で少し走るのが好きな奴でしかない

 

 

何でもトレセン学園とかいう所に来年行くらしいが、詳しい事は知らん。俺はスズカの保護者でも家族でもないからな。

 

 

 

何か苦しそうな時期があったが、そん時ばかりは側に居てたけどそんだけだ。

そもそもルックス(顔面偏差値)という点で言えば、スズカと俺は釣り合うはずもないし、運動神経とて俺は致命的に悪い

では、勉強ができるかといえば、そういう訳でもないし、特筆すべきことなどありゃしない。唯の一般人(バンピー)なのだ

 

 

稀に気晴らしにこうして遠出に誘われるが、いつもスズカのトレーニングに付き合う訳でもない

ま、週に三日ほどはスズカの実家で夕飯をご馳走になったり、逆にウチに招くこともあるくらいだろうな

 

 

 

 

そりゃ、小学生の頃はそれなりに親しかったと思うが、思春期特有の感覚からか俺がスズカと一緒にいる事に恥ずかしさを覚えはじめた

 

ぶっちゃけると、頭脳明晰、運動神経抜群、容姿端麗のスズカと比べられるのが辛かっただけなんだがな

 

 

別に俺の両親が咎める訳でもねぇし、スズカの奴がそんなつまんない(・・・・・)事を気にするはずもない

 

だが、学校の連中や教師達はいつも俺とスズカを比べていた

 

 

 

惨めだった。幾ら足掻いても届かない

小学生の頃、俺はスズカの隣にいたいと思っていた

 

 

でも歳を重ねていくと、その差は絶望的なものになっていくことをいやでも思い知らされた

俺は幼馴染(スズカ)に何一つ勝れる事はないのだと

だから、スズカに俺みたいな奴が側に居ても邪魔にしかならないといつからか思いはじめた

 

 

そして、悲しい顔をしているスズカを見ないふりをして、学校では距離を取っていたんだ

 

 

 

 

でも、ある時スズカは学校で『キレた』と聞いた

 

正直な話、頭が真っ白になった

スズカが誰かを傷つけた事よりも、スズカの心が傷付いてしまう事に対して、である

詳しいことをスズカは決して俺に話さなかったけど。あの時の剣幕は幼馴染である俺でもほとんど見ないレベルだった

 

 

その後、文字通りお互いに感情をぶつけ合った。勿論それでも俺の想いは言えなかったが

 

 

 

そのままよく分からない距離感を維持したままで今に至る

来年にはトレセン学園とやらにスズカは進学する。俺は地元の県立高校を受験する

 

 

恐らく、スズカとの関係も中学3年であるこの一年が最後になるんだろう

俺はそう覚悟していた

 

 

寂しくはある。悲しくもある。一緒に居たいと強く思う

 

 

でも、これはスズカにとって良いこととは思えない

だから、俺はこの感情に蓋をする

 

 

 

どれだけ泣きそうで、辛くともスズカを笑って見送りたいから

アイツの夢を護りたいから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイレンススズカは不満だった

 

 

彼女はウマ娘であり、中学生ながらに同年代のウマ娘達と草レースで競走していたりしており、ウマ娘としてならば満足できる環境にいた

 

世間のウマ娘からすれば、理解ある両親にウマ娘である自分に配慮された環境。そこに家族以外の理解者まで居れば羨ましい限りなのだろうともスズカ自身思っている

 

 

昔のスズカにとって何者にも変えがたいモノが一つあった

 

 

先頭を走る静かで穏やかな世界

 

 

それこそが幼い頃の彼女が欲したモノだった

 

 

 

だが、大きくなるにつれてスズカにはもう一つ、どうしても譲れないモノが出来た

 

 

 

それは幼馴染であり、いつもスズカ(自分)を支えていてくれた彼だった

 

小さなスズカをいつも助けてくれた幼馴染の彼

 

 

スズカは基本的には物静かなウマ娘であり、他人と積極的に関わろうという気はなかった

対人能力が低いとかそう言う話で無く、興味がなかったのである。もう少し言えば意味を持たなかったのだ

 

 

スズカにとって、彼と両親と彼の両親とさえいれば彼女の世界は完結した。

 

この長い髪とて、彼が小学生の頃に一度だけスズカが髪を伸ばしたときに照れていた事を知ったから伸ばしているのだ

 

 

彼に少しでも長く自分(サイレンススズカ)を見てほしい

ウマ娘でも幼馴染でもない、1人の異性として

 

 

 

 

 

とはいえ、小学生の頃のスズカには彼がそこまで大切だとまでは思えなかった

 

 

 

だが、中学生になってから彼がスズカから離れていってしまった

 

 

 

スズカは彼に聞きたかった

 

 

私のどこがダメだったの?

どんな事でも絶対直すから

だから、一緒に居て欲しい

 

そう泣いて、彼に縋りつきたかった

 

 

 

 

 

けれど、出来なかった

 

 

 

嫌われるのが怖いから

 

 

 

 

小学生の時、一度だけ彼に本気で怒られた事があった。

きっかけはスズカにとっては些細な事だった

 

でも、彼はそう思わなかった

 

 

あの時の彼の冷ややかな視線。

その中に(幼馴染)はおらず、ただ()がいただけだった

それが解決するまでにひと月もの時間をかけるしかなかった。私も私の両親も、彼の両親の話すら彼は聞こうとしなかったのだ

 

 

その間、スズカは毎日どころか、毎朝と毎晩彼の部屋の前で何度も謝った。それでも、彼との日常は取り戻せなかった

 

最終的には衰弱していた私を見かねて、彼は許してくれた

 

 

 

 

それからは一緒に居てくれた彼は何処かに行こうとしていた

 

そして、中学に入ると彼はいつもの様に来てくれていたスズカの家にも来なくなってしまう

 

 

スズカは夜な夜な泣いていたし、寝て夢で彼の事を見れば、現実(夢との差)で打ちのめされてしまっていた

 

 

 

 

 

 

そして、スズカは聞いてしまう事になる

 

 

 

自分のクラスメートが彼に心ない言葉を浴びせていた事を

 

 

ウマ娘の中でスズカはかなり温厚なほうに入る。感情的になりやすいウマ娘の中では間違いなく理性的といえるだろう

加えて名前通りに非常に静かな雰囲気を纏う上に容姿は優れていた。憧れる同性は愚か、スズカに恋心を抱く異性も多かった

 

 

だからこそ、彼が目障りだったのだろう。彼をスズカから離そうと様々な方法を用い始めた。スズカからは見えない様に

 

スズカから嫌われたくない。でも彼は気に入らない。そんな幼い感情からだったのだろう

だが、それがスズカを怒らせる事になった

 

 

 

 

サイレンススズカというウマ娘も世間一般のウマ娘と同じく負けず嫌いであり、その為の努力は惜しまない

 

それは自分の譲れない景色の為であり、彼と一緒にその景色を見たいが為である

紛う事なき『執着』であり、ある意味ではウマ娘らしい(・・・)感情の発露ともいえなくもない

 

 

 

スズカはクラスメート(どうでも良い事)には無関心であったが、こと彼の事に関しては非常に敏感であり、ともすれば神経質になっているとさえ言えた

 

 

 

 

クラスメート達は理解していなかった

サイレンススズカにとっての逆鱗は彼であった事に

 

 

彼がスズカの側にいる事が許せない

それ故にスズカのためと称して、彼に圧力をかけ続けた

 

 

 

お前なんかにサイレンススズカは釣り合わない

彼女だってあんたの事を迷惑に思っているのが分からないの?

 

 

 

始めは純粋に彼を思ってとある女子が言った

 

スズカさんと一緒に居て疲れない?

 

身体能力において、彼がどれだけ努力しようとも埋めがたい差は歴然と存在する。その上にスズカは勉強もしっかりしているとなれば、それを目指す彼にとってどれだけのプレッシャーになるのか。それを心配しての事だった

 

 

つまりこれはあくまでも彼を思いやった発言であり、彼もそれが分かっていたから普通に話をした

 

 

だが、それを見た他の連中はそう受け取らなかった

いや、一部の者達は発言の真意を理解していながら、敢えて曲解したのである

 

 

 

 

スズカさんは彼といたら疲れるのだ。或いは彼はスズカと居て疲れる。と

 

 

 

 

 

ならばいっそ引き離してしまえば、自分達にもチャンスがある。そう男子は思ったし、色々話が出来ると女子は思った

 

 

 

一部の生徒はこれをとめようとしたが、優等生であるスズカと落ちこぼれである彼が学内で親しくしている事に内心複雑な感情を持っていた一部の教員が事もあろうにこれを静止した

 

 

文武両道なスズカが部活動や課外活動(野良レース)で実績を上げれば学校の評判や自身の評価も上がると思ったからだ

 

 

 

彼等はスズカが部活をしないのは、落ちこぼれである彼のせいだと真剣に思っていた。いや、思い込んでいたのだ

 

 

 

 

と言っても狭い校内での話。しかもスズカは休み時間には歩き回る事が多いのだ。故にそうなるのは必然だったのだろう

 

彼が受けていることをとあるタイミングでスズカが知ってしまったのだ

 

勿論スズカは激怒した。が、それでもある程度(・・・・)冷静さを維持できたスズカは一旦自宅に戻ることが辛うじて出来た

そして、自宅の両親にそれを話したのだが、スズカ以上に激怒したのはスズカの両親であった。彼等は学校側に対してスズカ自身の意思で部活をして居ない事を告げた。彼がどうだからではないと

 

まぁ、告げたというよりも怒鳴りつけた。という方が正確な表現であっただろうが

それと共に、彼とスズカの間を裂こうとした事について、特に父親が怒りを露わにした

 

 

スズカの父親からすれば、彼は幼馴染という立場からスズカをともすれば両親以上によく見ており、彼のおかげでどうにかなった事も多々あったのだ。歳の差こそあれど、スズカの父親にとって彼はただの娘の幼馴染という認識ではなかった

自分も含め、家族の恩人という意識はあったのだから

 

 

スズカの母親からしても未来の息子といっても良い存在である彼に対しての、ある意味では学校ぐるみのこれには激怒というより嚇怒と表した方が正確とも言えるほどの怒りを持って、学校へと文字通り殴り込んだ

 

 

この凶行に寧ろ当事者である彼や彼の両親が止めに入るという訳の分からない状態にすらなってしまった

 

 

 

 

 

だが、これによりサイレンススズカという人物は学校そのものに対して大きな不信感を抱く様になり、学校にこそ登校するものの、彼以外を寄せ付ける事を極端に嫌う様になってしまう

 

 

流石にこれはマズイと思った彼はありとあらゆる方法でスズカを説得しようとしたのだが、彼の説得をもってしてもスズカの意思を覆す事は叶わなかった

彼にとって誤算だったのは、説得に協力してくれると考えていたスズカの両親がスズカの擁護に回った事であろう

結果、中学校というものはスズカにとって忌まわしいものにしかならなくなってしまう事になる

 

 

 

こうなると、幾らスズカの幼馴染である彼でもどうにもならない。幼馴染だからこそ、スズカの頑固さは痛いほどに理解していたから

 

 

 

とはいえ、ある意味ではサイレンススズカにとって好ましいのかも知れない。と彼は内心諦めの感情を抱いてもいた

 

 

やはりスズカもウマ娘である以上、学校行事などでは全力を出せない。そして、真面目で優しいスズカにそれは負担にしかならないだろう

 

 

トレセン学園というウマ娘達の通う教育施設がある。そこにスズカはいくだろう。それはスズカの将来を考えたなら正しい

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、正しいのだ

 

 

彼は唇を噛み締めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって、ここはトレセン学園近くのアパートメント

 

 

ワンルーム七畳、賃料五万四千円。敷金、礼金は合計家賃二ヶ月分

 

 

 

そんな物件の室内にサイレンススズカと目隠しされている彼(・・・・・・・・・)がいた

 

 

 

 

 

というわけで、此処が貴方の家

 

オイコラ、待てや

 

 

スズカの発言に間髪入れずに彼はつっこむ

 

 

??

何?

 

何で不思議そうな顔してんだよ!此処何処だよ!

んで、何故俺は此処に居るんだ?

ついでにスズカ。お前は来月からトレセン学園に通うんじゃなかったのかよ!

 

 

質問は一つずつの方が良いと思うのだけど

 

 

彼の怒気のこもった質問に平然とつっこむスズカである

流石は幼馴染の貫禄。と言った所だろうか

 

別にドヤ顔する必要もないのだが

 

 

 

あー、スズカ?

胸を張っても、なぁ?お前のじゃ

 

ムネガナニカシラ?

 

サーセン

 

 

幼馴染ならではの心温まる?会話であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冷静さを取り戻した彼とスズカは話をした

 

 

トレセン学園に入学するスズカだが、幼馴染()が居ないのは寂しい

親に相談し、彼の両親に話が行き、せや引っ越し(彼限定)しよう。物件の支払いは両家で折半するか

 

 

どうせ、高校受験も考えてなかったバカ息子だから、スズカちゃんの近くに居た方が親としても安心(意味深)

 

スズカの両親からすれば彼は未来の息子(確定)であり、(スズカ)の最大の理解者なのだ

しかも、スズカの性格から生活リズムや食べ物、服の趣味に至るまで網羅している

 

諦めるには、余りにももったいないのである

 

 

 

 

 

 

 

こんな背景から彼はトレセン学園の側のアパートでの新しい生活が始まる事となった

 

 

 

なんでやねーん!

 

 

彼の絶叫が虚しく響いた

 

 

 

 




というわけでスズカルートの場合は大正義スズカの旦那ルートとなります

会長ルートと異なり、対抗バはありません
スズカの理想通りの大逃げからの独走となります

(彼といる)景色は譲れない!


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いざ戦いの場へ(結)タキオン、何言ってんの?(汗)

頭がよく回らない時に書いたものを加筆修正したもの

しかし、海水浴に入らなかったと言う救えない事実



ま、まぁこれで海水浴繋げると10,000文字超えるから、許して?


ではいつも通りのクオリティですが、どうぞ


これは海に行く少し前の話

 

 

 

ウマ娘、ナリタタイシンはかなり気難しい性格をしている

 

 

というのも、トレセン学園に来るまでに色々あったから

 

 

 

 

 

 

そのタイシンだが、絶賛混乱していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え、ちょっと待って。いやいや、え、何、これ?

 

 

 

とある用事で生徒会室に来る事になった

 

 

 

のだが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋をノックした後に入ると

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ん〜

 

相変わらずルドルフ甘えんなぁ

 

めいわく?

 

んにゃ、別にいいよぉ?

 

うれしい

 

 

 

 

 

 

生徒会室のソファーの上であのシンボリルドルフがタキオンの彼氏に膝枕されていたのだ

 

 

それだけでも異常事態だ。いつもの生徒会長(シンボリルドルフ)を知るものからすれば失神ものである

しかも、明らかにシンボリルドルフの様子がいつもと違っていたのだから違和感は凄い

何というか、子供みたいであったのだ。

まぁ、高校生も子供といえば子供なのだが

 

 

 

ところが、彼はそれに慣れているかの様な態度で普通に彼女の髪を梳いたり、頭を撫でたりしているのである

 

 

 

タイシンが思わず自分の頬を抓ってしまうのも致し方ない事といえるだろう

 

 

 

 

 

ん、おや?

確かナリタタイシンだっけ?

ルドルフ、お客さんやぞ?

 

んー?

 

 

 

彼がタイシンに気付いて、シンボリルドルフに声をかける

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ。ナリタタイシンくんか。どうしたんだ?

 

 

 

5分もしないうちにいつもの凛々しい姿を見せるシンボリルドルフ

 

 

え、何これ怖いんだけど

タイシンは内心ドン引きした

 

何なのさっきの事は無かったことにするつもりなの?

いやむしろ、はっきりみてしまったんだけど?

 

 

 

 

 

と内心パニックになってるタイシンだが

 

 

 

 

 

シンボリルドルフの後ろでソファーに座っている彼は必死で笑うのを堪えていた

 

何せタイシンの混乱がはっきりわかるのだ。

 

 

 

以前やり取りした時は双方共に冷静と言えぬ状態であった

 

だが、タキオン以外にあんな姿を見せた事を何よりも無念と思っていた彼だ。こんなにタイシンの力になれそう(愉しそう)な事を見逃す筈もなかった

 

 

更に言えば、タキオンの従姉妹より面白い資料が先日提供されていることから、彼の悪癖(ドS)が顔を出してしまう

 

 

 

 

ついでにタイシンの誤解についても、それはそれで面白くなるとすら彼は考えていた

 

 

冷静に対応しているように見えるルドルフだが、首筋が赤くなっていた。

これはシンボリルドルフ独特の特徴であり、彼女が多大な羞恥の感情を感じた場合、このような事が起きるのだ

 

 

まぁ、他の生徒会メンバー(ナリタブライアンとエアグルーヴ)に比べたら余程目立ちづらいとも言えなくはないが、彼からすれば耳と尻尾に出る二人と首筋に出るルドルフはさして変わりなかったりする

 

 

 

 

つまり、彼からするとこの室内にシンボリルドルフとナリタタイシン(からかい甲斐のある真面目っこ)がいるのだ

 

しかも、明らかな隙を見せて。である

 

 

 

兵は拙速を尊ぶともいう

 

 

であれば、やるしかない

 

 

 

彼は2人のやり取りを見ながら、そう固く決意した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ゴールドシップは自分の中学校で知り合いに愚痴っていた

 

 

 

 

な〜、酷いんだぜ?マックイーンの奴「貴女もいい加減真面目に学校に行きなさいな!」ってさ

 

 

因みに既に秋も中頃だが、彼女がトレセン学園に行った回数は30回をゆうに超えている

 

しかも、大半が『平日』である

 

 

 

初めの頃こそ、ある程度の自由を許していたマックイーンであったが、流石にこれ以上は看過し得ぬとメジロ本家に連絡

 

ゴールドシップの従姉妹たち(ライアン、パーマー、ドーベル)によりトレセン学園訪問(自由への門出)は夏休み以降阻止され続けていた

 

 

いや、それは仕方ないんじゃないのかなぁ

 

 

と相手のウマ娘、アグネスデジタルは内心苦笑した

 

 

 

 

目の前の先輩(ゴールドシップ)は奇天烈な性格であり、学校中から奇人、変人として認識されていた

 

 

だが、実際のところは要所要所を押さえている思慮深いウマ娘なのだ。それをいつもの奇行がイメージとして先行しているから注目されにくいだけだとデジタルは常々思っていた

 

 

 

 

でも従姉妹のマックイーンさんも先輩の事を思っての事だと思うんですけど

 

 

椅子を傾けていたゴールドシップはデジタルのその言葉に姿勢を元に戻すと

 

 

いや、そりゃあ分かってるけどな。正直な話、此処(学校)つまらないだろ?

 

 

 

そうなんだよねぇ

 

 

デジタルは肯定も否定もしなかった

 

 

 

 

というのも、この中学にはウマ娘が2人(ゴールドシップとアグネスデジタル)がいる

とはいえ、他の生徒や教師陣からするとデジタルは普通の家庭で育ったから良いが、ゴールドシップは名門メジロ家(業界では著名なところ)の出身である

 

実際問題として、この学校はメジロからの資金的援助を受けており、学校首脳部(校長、教頭にPTA役員会)などからすれば気をつかわざるを得ないのが実情だった

 

 

何せウマ娘というのは学校側からしても持て余す存在であり、常に悩みの種であったから

だが、資金的援助を受けた以上は流石に気をつかう

 

と言っても現場サイド(担当教員など)からすると勘弁してもらいたい話なのだが

 

 

 

当然ながら、この教員間の温度差をゴールドシップとアグネスデジタルはおぼろげながらに認識しており、体育などで全力を出せぬことも相まって学校自体に良い感情を持てずにいた

 

 

本気を出せばウマ娘だからと言われ、セーブすれば手加減してと言われるのであれば、校内に居場所が無くなるのも不思議ではないだろう

 

 

 

 

だからこそ、ゴールドシップはトレセン学園に頻繁に行くのだ

故にこそ、デジタルは姉であるアグネスタキオンの彼氏に色々と吹き込んでいる

 

とりあえず手始めに自分の趣味である同人誌。その中では初歩的な(ドS執事)ものを数冊厳選して送りつけた

 

もしかしたら、従姉妹(アグネスタキオン)に見られるかもしれないが、デジタルからすればそれはそれで構わない

タキオンにとっては忘れたい過去だろうが、デジタルは鮮明に覚えている

 

 

あの(・・)アグネスタキオンが自分の彼の為だけにスーツ(執事服)を用意して、執事をしてもらっていた事を

 

 

そして、偶々デジタルはそれを目撃してしまったのである

 

 

 

つまり、敬愛する姉は執事属性に弱い可能性があるのだ。となれば同好の士(同人の沼)へと誘える可能性は大いにあると考えられる

 

そうなると、姉をデジタルと同じく尊敬する従姉妹のダイワスカーレットも引き込める可能性すら出てくる

ダイワスカーレットはデジタルより一つ年上であるが、その恵体は素晴らしいの一言に尽きる

 

 

そして、ダイワスカーレットはまだ中学生

つまりは大正義(ロリ巨乳)といえよう。そこに変わり者とはいえ、容姿端麗なゴルシ先輩まで加えたなら、どうだろうか?

 

 

純粋なロリ枠として自分。マッドだが純情キャラで執事属性に弱い(アグネスタキオン)。真っ直ぐで正統派ながらにロリ巨乳という逸材(ダイワスカーレット)。変わり者で容姿端麗で男装もいけるであろうゴルシ先輩。家庭能力万能で執事属性を持ち得る上に更なる伸び代も期待できるであろう可能性の塊(姉の彼氏)

 

これだけの逸材を揃えたならば、(きた)るべき同人誌即売会においても周りの猛者達にひけは取らないとアグネスデジタルは断言できる

 

のだが、いかんせん姉は彼氏と従姉妹のスカーレットにしか興味を示さず、義兄に至っては姉を中心にしか物事を見ないときた

無論、姉の幸せは望むところであるがデジタルとしてはもう少し視野を広く持って欲しいと願う

 

有り体にいえば、アグネスデジタルの趣味(同人活動)を手伝ってもらいたいと言う我欲である

 

 

だがこれとて、大好きな姉と義兄に趣味を共有して欲しいと言う純粋な妹心からくるものであって、下心など決してない。無いったら無いのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とまぁ、色々と混沌としている問題児(アグネスデジタル)はさておき

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いよいよ海水浴(運命の日)を迎える

 

 

 

 

移動手段はトレセン学園の寮近くの通用門までメジロの送迎車が来る予定であった

 

 

ところが、懲りない連中(記者というハイエナ達)が通用門近くに待機しているのを寮長の1人であるヒシアマゾンが確認した

その為、急遽メジロの車ではなく我等が組織一の常識人(ナイスネイチャ)の知り合い達による緊密な連携作戦が決行された

 

 

ここで肝心なのはトレセン学園所属のウマ娘について、報道関係者はほとんど情報を持ち得ない。という事だ

 

あるのは精々がシンボリルドルフ(生徒会長)のそれくらい

 

 

そして、ウマ娘に対しては報道関係者もそれなりに対処出来るが、一般市民(学園周辺住民)に対して彼等は無力であった

 

何せ、初期の行き過ぎた報道により、多大なストレスを住民に与えている。関係各社は無視しているが、かなりの数の苦情が寄せられていたりもする

その上更にアグネスタキオンとその彼のマンションへの強行取材やそのマンションからトレセン学園までへの張り込み

トドメにアグネスタキオンの彼が転校しているはずの中学校に通えない事実。それに近所で彼が働く予定だったパン屋の店主からの話が近所に行き渡ったのだ

無思慮な取材行為により、一人の少年の生活が破壊されたという事が

 

 

トレセン学園周辺住民の殆どがトレセン学園建設に伴い、なんらかの利益を享受している者達だった

金銭面では決してない。例えば、大きなスーパー。例えば本数の増えた電車やバスと言った交通手段。例えば、トレセン学園関係者が利用する各種店舗。そういった環境的な利便性である

 

元々住んでいた者からすれば、確かに騒がしくはなったといえる。だが、事前に複数回住民説明会が行われ、トレセン学園経営陣は周辺住民の理解を得ようと常に努力していた。その事がわかるくらいには彼等に対して彼女らは努力、説明を重ねていた

 

トレセン学園ができる事に伴う建設ラッシュによって移住してきた者達は確かに不愉快さを持っている者も少数ながらに存在していたが、それでも利便性やある種のウマ娘を見れるかもしれない(ミーハー的な感情)により相殺できる程度であった

 

 

さて、トレセン学園により少なからぬ利益をもたらされているのに対して報道関係者はどうだろうか?

 

道路などを無駄に占拠する(スクープの為の張り込み)トレセン学園についてのインタビュー(無思慮極まるしつこい取材行為)最寄駅近くでの集まり(駅などの利用の妨害)、これに加えての地元住民からの抗議の無視(都合の悪い情報の遮断)。これで報道関係者に好意を持つなどできる方がどうかしている

 

 

故に報道関係者に対する地元住民の対応は常に塩対応であり、協力的とはお世辞にも言えなかった

 

だが、この空気(自分達への不満)は痛い程理解している彼等である。余計な事などできようもない

 

 

さて、こんな状況下で一般車両とメジロ所属の高級車が複数現れた場合、彼等はどう動くだろうか?

 

 

メジロ家が今回投入したのは、メジロマックイーンやゴールドシップなどメジロ家において次代を継ぐもの達が専用で使っている車である

 

当然ながら、その車の車種やナンバーを報道関係者が覚えていないはずもない

 

故に彼等はほぼ同じタイミング(・・・・・・・・・)で現れた一般車両に構う余裕は無くなった

 

 

 

 

確かにメジロとしては、様々な伝手を作っておくにこした事はない

これから確実に成長するであろう、ウマ娘達によるレース。

 

そこにおいて、無論メジロのウマ娘が重きをなすのは重要であるが、新しい時代を築くであろう、新進気鋭の若人(わこうど)達を無視する必要は全くないからである

 

ましてや、次期メジロ当主(メジロマックイーン)が現当主に頼み込んだ案件なのだ。今回の件は

 

 

となれば、メジロとしても本気(マジ)で動くのは当然である。ありとあらゆる物を使って目的成功(プライベートビーチに招く)を目指すのは極自然であった

 

 

 

この海水浴に参加することが決定していたナイスネイチャ。彼女が持つコネ(トレセン学園近隣商店街の皆様)は相手方の意表をつくのには十分だった

 

 

ともあれ、メジロ当主直々の命により、ミッション『海水浴を実現せよ』が発令される事になる

 

 

 

 

 

釣り餌はメジロ家の所有する専用の送迎車

 

本命はナイスネイチャの知り合い達の車であった

 

 

 

動員された車両は全て業務用の車両であり、中の物が見えない様に元々なっていた為に不都合はない

 

更に顔見知り(ナイスネイチャ)で慣れている知り合い達だ。ウマ娘というものに対しても隔意などあろうはずもなかった

 

 

 

 

こうして、盛大に陽動作戦が行われた訳だ

 

無論、記者達も無能ではない

仕組まれたタイミングともいえる状況で現れた一般車両。不審感を持った者もいた

 

が、メジロの送迎車が『複数』動いた事を見た一部の記者は即座に追跡しようと動いた

こうなると、群集心理とでもいえるものが働き始める

 

 

 

言うまでもないが、此処に居ること自体がリスクの高い行為なのだ

だが、リスクに見合ったリターン。つまりトレセン学園関係のスクープは期待できる

が、様々な方法でトレセン学園に対する取材行為については抑止されているのが現状

 

此処にいる者達全てが別の取材と偽って此処に来ている

 

 

バ鹿正直にトレセン学園へ取材に行く等と言えば、止められるのは間違いない。それを無視した場合、良くて戒告。悪ければ解雇(クビ)になるだろう

 

 

であればこそ、彼等はスクープを何より望むのだ

何処からかトレセン学園所属のウマ娘が今日外出する事がリークされた事も彼等の行動を縛る事となったが、些細な事である

 

 

 

 

さて、かなりヤバい状況にある彼等である

 

そこに『独占スクープ』などという餌があって飛びつかないだろうか?

 

 

無理である

そもそも、それでも思いとどまる程度に考え方が及ぶのであれば、最初からトレセン学園関係の取材(破滅への道)など選ぶ筈もなし

 

 

 

さて、明らかに特ダネの匂いのする者に飛びついた数名。彼等はすぐさまバイクに乗って追跡し始めた

 

残りの者は悩んだ

(どうするか?)

 

彼等は表にこそ出さないが、焦っていた

 

 

実はこの時、スクープは他にもあった

他ならぬ、マスメディア(自分たち)について。正確にはその取材の行き過ぎた行為について。である

 

 

現在、世間は度重なるウマ娘関係者への強引な取材行為に対して注目していた

となれば、それについて報道すれば間違いなくスクープになるだろう

 

しかしである。それは身内を売る行為であり、下手をすると自分達にも跳ね返ってくる諸刃の剣

 

出来るはずもなかった

 

 

この話題が霞む程のスクープとなると、政治家の汚職や芸能人のスキャンダルでも足りない

 

謎のベールに包まれているトレセン学園のウマ娘や現代のシンデレラと王子様(アグネスタキオンとその彼氏)くらいである

 

彼氏は公の場に引きずり出す事に成功したが、メディアからすれば自由な(・・・)取材が為されていない事は不満であった

更に相手であるシンデレラ(アグネスタキオン)不在ではどうにもパンチが足りない

 

まあ、今まで散々やられてきた事に対する意趣返しという事も多分に含まれていたが

 

そして、今1人の記者が先行した連中の後を追った

 

その後は雪崩をうった様に誰も彼もが急いで追いかけた

スクープ(薔薇色の未来)を求めて

 

 

が、彼等は忘れようとしている事があった

 

 

強行取材を主導したマスコミは廃業が決定したことを

 

マンション内の個人情報を漏らした人物は現在、裁判を起こされている。当然ながら、これで敗訴した場合、一個人では到底返しきれない程の罰金刑となる事は確実である

事実被害を受けたマンション管理会社の物件に対するセキリュティについて居住者からクレームがかなりの件数寄せられており、管理会社はその対応に多額の資金や労力を要する事になっている。更に話のまとまりかけていた話も十数件破談となっており、明らかにマンション内の個人情報を出入りする業者が漏らした事が原因といえた

 

その人物が所属していた会社については、被害を受けたマンション管理会社の管理物件並び、トレセン学園とその関係企業から取引停止が言い渡されている。

当然、この報道は大きく取り上げられている為実質的には廃業になる公算が高いだろう

たとえ示談したとしても、失った信用を取り戻すのは容易ではないのだから

 

 

 

そして、アグネスタキオンの情報を掴んだフリーの記者が持ち込んだ記事は差し止められている事を彼等は不幸にも知らなかった

 

 

 

 

彼等特有の『スクープになれば何とでもなる』というものが通じるレベルを超過している事を理解していなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、この過激にして無法な報道姿勢に対してメジロ当主達も良い顔をする筈もなかった

 

何せ、ウマ娘(自分たち)の未来を潰すが如き所業でしかないのだから

 

 

 

寧ろ、この一件を利用して全てを終わらせようとするのは、ある意味では必然であったのかもしれない

 

 

 

メジロ当主はトレセン学園の理事長である秋川やよいに連絡を入れた。その連絡を受けた秋川理事長は警備部門の責任者に対して、ある日(海水浴に出かける日)にトレセン学園周辺の巡回を増やす様に要請した

 

 

 

ここで、トレセン学園周辺の警備体制について触れたいと思う

 

 

トレセン学園外周にのみ、警備員はその権限を行使できるとされている。が、権限と大袈裟に言っても声かけと取材行為を行なう為の張り込みなどについて注意するだけであるが

 

素直に記者が引き下がれば良いが、大体がなんやかんや言って自分の権利を主張する

が、それをどうにか出来る権限を警備員は持ち得ない。トレセン学園内であれば話は変わるのだが

 

 

そこで、揉め事になると出番があるのがトレセン学園外周周辺に点在する交番

揉め事になると、警察官が介入。それにより、物理的に排除する。それと警察が介入する事を見せる事による抑止力を狙っていた

 

 

さて、トレセン学園は敷地が広大である。にも関わらず、その外周部の道路は全て『一方通行』なのだ

 

メジロの送迎車達は事前の打ち合わせ通り、トレセン学園外周部をぐるぐる回る

まるで用事があるのに、入れないかの様に

 

 

そして、記者の何人かは気付くだろう

 

送迎車は外周を回っている。と

 

 

 

そうなれば、待ち伏せしようとするものも現れるし、もっと強行に逆走してでも停めようとする者も出るだろう

 

事実、そんな者が出た

 

 

 

さて、トレセン学園についてメディア各社に通達が以前より出ていた

 

トレセン学園外周部において、『関係者』への取材行為の禁止である

当初は自粛であったが、度重なる報道により生徒などへの悪影響が出ると判断されたが故の判断であった

 

 

 

にも関わらず、その『外周部』で『関係者』といえるメジロの送迎車に取材行為をしようとしていたのだ

 

即座に周辺の交番より、警察官が出てくる

 

 

 

 

例え報道の自由を叫ぼうとも、警察にその道理は通じるはずもなかった

 

そして、混乱する現場を他所に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

連絡あったけど?

 

 

うむ。では行こうか

 

 

はぁ、何でこんなに面倒なのさ

 

 

やれやれだね。ま、仕方ないと言えばそうなんだけどもねぇ?

 

 

皆さん、申し訳ありません

 

 

 

 

阿鼻叫喚なあちらを尻目に、今回のイベント参加者達はトレセン学園通用門付近に停車しているハイエースへと乗り込む

 

 

 

 

よぉ、ネイチャちゃん。お疲れ

 

明らかに目つきが一般人と呼ぶには目つきの鋭い運転手が声をかける

 

 

 

あ、そっかぁ。ハイエース(この車)じゃないと厳しかった?

 

そうだなぁ。何せネイチャちゃんとその友達だろう?

荷物を考えたらこれ(ハイエース)が1番だってんでな、俺が呼ばれた訳よ?

 

 

ナイスネイチャはどこ吹く風。普段通りに対応していた

 

 

 

となれば、

 

 

シンボリルドルフです。この度はお世話になります

 

メジロマックイーンですわ。宜しくお願いいたします

 

ナリタタイシン。宜しく

 

アグネスタキオンです。ご面倒をおかけします

 

 

と挨拶するのは極自然であった

 

 

 

 

そして

 

 

 

助手席には、すでにタキオンの彼氏がスタンバっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

車は住宅地の中を通り、普通に駅の東口へと着いた

 

そこには、メジロマックイーンが特別に呼んだ小型のバスが停まっている

 

 

んじゃ、鉄さん。ありがとね

 

おう、楽しんできな!

 

 

 

 

 

鉄さんと呼ばれた人物は笑顔を見せてハイエースに乗って去っていった

 

 

 

 

 

 

皆様、お疲れ様ですわ。此方に

 

 

マックイーンの先導の元、バスに搭乗する

 

 

 

やれやれ、登場して早々搭乗(・・)かよ。忙しいこって

 

・・・・まあ、キミの意見には同意できなくもないが、此方は面倒をかけているのだからねぇ

 

登場して、搭乗(・・)

っっっっ!!

 

彼のぼやきを宥めるタキオンと不意打ちにも反応してしまうルドルフである

 

 

いや、だからアンタさぁ

 

(ルドルフさんの笑いのツボが分かりませんわね)

 

(頭痛いなぁ、大丈夫かな?)

 

 

ナリタタイシンは呆れ、メジロマックイーンは困惑し、ナイスネイチャはこれからの事を考えて頭を痛めていた

 

 

 

 

 

何せトレセン学園側からのメンバーはアグネスタキオン(学園一のマッドにして、唯一の彼氏持ち)メジロマックイーン(某組織会長で何処かズレてる)ナリタタイシン(最近、トレーニングガチ勢入り)シンボリルドルフ(生徒会長)自分(ナイスネイチャ)なのだ

 

 

ナイスネイチャにとって不幸だったのは、比較的マトモ(・・・・・・)なウマ娘との交友が多かった為、個性の殴り合いみたいな環境には慣れていなかった事だろう

 

 

これが学園のオカン(タマモクロス)であれば、顔を引き攣らせていたのであろうが、ナイスネイチャが主に関わっていたのはサクラバクシンオーやビワハヤヒデ、ウイニングチケット、ナリタタイシンにライスシャワー、ミホノブルボンであった

 

 

一部、組織でもヤベー奴と認識されているウマ娘が混じっているが、彼女達(ライスシャワーにミホノブルボン)一部を除き(・・・・・)非常に常識的であった

 

 

 

 

 

 

 

組織一の常識枠(ナイスネイチャ)の苦労は此処からはじまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




デジたんが実装されたので、急遽ウマ娘始めました

デジたんとタキオンばかり育成していてもどうにもならなかったので、ルドルフ育ててみたらデジたんとの固有スキルとの相性良すぎてワロタ


のんびりやっていきたい


しかし、未だ秋口という恐ろしい話

後何話いるんやろか?


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想いの向かう先

書いてたら、一万文字手前であった件


リア友からスク水について聞いたところ、怪文書の様な物が送り付けられた件

流石は全部は載せれないっての


今回は元のアプリのイベントを一部採用しております。
予めご了承ください


海。それは生命誕生に深く関わったとされる

 

つまり、生きとし生けるものにとっての母なのだろう

 

 

 

大地。凡その生命の過ごすものであり、どの様な生命(いのち)であれ、何れは其処へ還る(かえる)

 

しかして、様々な試練を生命に課す

ならば、海を母とするのであれば大地は父なのかも知れない

 

 

 

 

 

 

 

さて、哲学(現実逃避)はそろそろやめにしないかい?

 

 

 

止めんな、タキオン!!

俺は今、生命についての考察をしているところだ!

 

 

 

彼にアグネスタキオンが声をかけるが、彼は頑なに現実と向き合おうとしない

 

 

 

 

 

 

此処はメジロ家所有のプライベートビーチ

 

 

近くにはメジロの所有する別荘があり、ビーチの側には

様々な物を取り扱う店?もある

 

 

まあ、店というよりも保管倉庫の様な物であると言えるだろうが

 

此処プライベートビーチに招かれるのはメジロ家が招待した者のみ。となれば、メジロとしても招待客に財布を開かせる訳にもいかない。メジロのウマ娘などであれば、尚更だろう

 

 

 

だが、根っからの庶民派である彼からすれば受け入れ難い現実であった。

 

とはいえ、それだけ(・・・・)であるなら、まだ許容できた

 

 

 

 

 

 

彼はアグネスタキオンが好きだ

それは誰に聞かれても変わることのないものだ

 

 

だが、あらゆる事でアグネスタキオンを支えようとしている彼にも弱点はある

 

海やプール。である

 

 

泳げない?

それもある

 

目を水中で開けるのが怖い?

それもなくも無い

 

 

 

だが、彼最大の弱点は眼鏡をしている為、眼鏡を外すとのび太くんもビックリの事になる事だった

 

 

夜就寝時、必ず決まった場所に眼鏡を置いて寝る

寝るのだが、彼はお世辞にも寝相が良いと言えない為に良く眼鏡が迷子になってしまう

 

起床時、当然ながら彼は眼鏡をかけようとする

のだが、所定の位置に眼鏡がないと文字通り『手探り』で眼鏡を探さなければならなくなる

 

 

この時

 

「眼鏡、眼鏡」と呟きながら眼鏡を探し回る訳だ

 

 

 

アグネスタキオンも流石に其処まで知らない。添い寝する時も彼は必ずタキオンより先に起きるからである

 

仮に寝坊しそうな時は最初から形状記憶のフレーム仕様の眼鏡で寝ることにしていたりもするが

 

 

 

 

眼鏡をかけているが故に海やプールには入らない事にしている。タキオンならば、それこそ満面の笑みで彼の手を引いてくれるだろうが、彼からするとそれは勘弁願いたい話だったから

 

 

じゃあ、コンタクトにすれば良いのでは?

と思われるかも知れないが、彼は目にコンタクト(異物)を入れる事を極端に恐れていた

 

 

 

 

 

 

実のところ、彼はヘタレであったりするのである

 

 

仮面を被り、感情を、自分自身すら偽り続ける

 

それが幼い頃からタキオンを護る為に彼が生み出した唯一の方法

 

 

 

 

意外かもしれないが、1番近しい筈のアグネスタキオン(恋人)であったとしても、彼の素顔(本心)を見る事は稀であったりした

 

であるからこそ、油断したと言えども仮面の下(本心)を見せてしまったナリタタイシンに対しては心穏やかにいられなかったりする

 

 

 

 

 

更に

 

 

ふぅん?

まあいいさ。それで

どうだい、この水着は?

 

 

 

水着

そう、英語ではSwimsuit。フランス語ではMaillot de bainと呼称されるものである

 

水辺で遊ぶときや遊泳時、潜水時に着用する衣服の一種である。またこの中には『スクール水着』通称『スク水』と呼ばれる物が存在する

 

 

これについては旧来の『旧スクール水着』と近年採用された『スクール水着』が存在し、タキオンの従姉妹(アグネスデジタル)によると両者を好む者たちによる論争が日夜繰り広げられているとかなんとか

 

 

 

 

閑話休題(それはそうとして)

彼が現実逃避している理由の大半はこれ(水着)であった

 

 

恋人であるタキオンの水着は眼福である。寧ろ、写真を撮って神棚に奉納するレベルだ

 

だが、此処に居るのはタキオン(恋人)のみにあらず

 

 

スタイルにおいても圧倒的なシンボリルドルフ

スポーディーな魅力のあるナリタタイシン

メジロのお嬢様でありながら、飾らなくても映える容姿を持つメジロマックイーン

平凡などと言っていても健康的な魅力を持つナイスネイチャ

 

が居るのである

 

妹分であるダイワスカーレットについてはそれなりに付き合いがあるため慣れている

もう1人の妹分、ウオッカについても『妹フィルター』を通すことで問題ないだろう

 

 

だが、前者の4人については彼の精神力をガリガリ削ってくる

 

 

 

 

気を遣ってか、ルドルフとマックイーンにネイチャはある程度の距離を保っている

 

妹達は問題ない

 

タイシン(本人からそう呼べと言われた)は基本的にパラソルの下でアプリをするか、走り込みなどをしている

 

 

 

 

ならばよしっ!

とならないのが、世の常なのか。恋人であるアグネスタキオンは彼をしきりに海に誘っている訳だ

 

 

 

お仕置き(タキオンの苦手な料理)したから、問題にならないと思い込んでいた過去の自分を張り倒したくなったのはここだけの秘密

 

 

 

 

 

 

 

だが、彼とて早々頷く訳にもいかない。この『プレパラートの心臓』しか持たぬ彼にとって容姿端麗であるウマ娘達の水着姿は正しく劇薬であるからだ

 

 

 

 

というよりも、普段から隙を見せない様に振る舞っている彼にとって眼鏡を外す(素の自分を晒す)と言うのはあまりにもハードルの高い事であった

 

 

 

 

であるからこそ、彼は最後まで海水浴に反対していた訳だが

 

 

 

 

 

 

 

お兄ちゃん!早く遊びましょうよ!

 

あ、兄貴!ビ、ビーチバレーとかしないっすか?

 

 

 

妹分達(スカーレットとウオッカ)が彼を呼ぶ

 

 

さあ、どうするんだい?

せっかく妹達が呼んでいるのにキミは無視できるのかな?

 

 

タキオンは彼に決断を迫る

 

 

 

 

ビーチバレーですか。流石にこの浜辺では野球はできませんものね

 

や、マックイーンさん。そりゃ無理でしょ

 

・・・ふむ。や、急に野球(・・)は出来ない、か

うん、いまいちかな?

 

は?ビーチバレーやるの?

ま、いいけどさ

 

 

皆それぞれに反応するが、そこにはほのかな期待があった

 

 

 

 

少なくとも、彼はそう受け取った

 

 

 

 

ああっ!もう!タキオン、これ貸しだからな!!

 

 

 

 

海に入るよりは、マシ

 

そう自分を無理矢理納得させるしか方法はなかったといえる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、お前ら手加減しろや!!

 

 

無理。する訳ないじゃん

 

勝負となれば手加減出来ないな!

 

いや、ほんと、ごめんね?

 

勝負の世界は残酷ですのよ?

 

 

 

ビーチバレーをしていた時のやり取りである

 

 

 

 

チーム分けは単純明快

チーム『タキオンファミリー』

アグネスタキオンとその彼。従姉妹のダイワスカーレットと彼の妹分であるウオッカで構成されている

 

チーム『トレセン学園』

シンボリルドルフにメジロマックイーン。ナリタタイシンにナイスネイチャのチーム

 

 

うん?年齢差?

知らんな

 

と言わんばかりの編成だった

 

 

 

 

更に勝負事になれば燃え上がるウマ娘らしく、穴である彼を容赦なく突いてくる

 

 

思わず、彼が悪態をつく程度には

 

 

 

 

だが、やられっぱなしで黙っているほどにタキオン達とて優しくはない

 

 

 

 

こなくそっ!!

 

流石、お兄ちゃん!!

ウオッカ!

 

任せろっての!!

 

君たちはあまり知らないかも知れないけど、彼も相当に負けず嫌いなのさ

 

 

 

やりますわねっ!

 

いやいや、どんだけなのよ

 

見事と言わざるえないな、これは

 

っっ!!

 

 

 

 

集中されていた彼であるが、ワンサイドになる事は我慢ならず必死にレシーブする。それをスカーレットがウオッカに繋ぎ、タキオンと見事な連携(フェイント)からのアタック

 

 

 

 

双方即席のチームであるが、殊更タキオンのチームは難しいといえるだろう

シンボリルドルフ達は少なくともトレセン学園内で交流があり、それ故に相手の動きも多少なりとも分かる

 

が、タキオンと彼にスカーレットはともかくとして、ウオッカについてはスカーレットだけであろう

そこにウマ娘の動きを観る事に長けた男が居なければ、だか

 

 

既にそれなりの回数ビーチバレーをしている以上、彼とてウオッカ(妹分)の動きのクセを少しだけは理解しつつあった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小学生の頃の彼はひたすら学んだ

アグネスタキオン(幼馴染)の動きの癖を

自分(生物)の筋肉などの動きを

 

 

 

 

ただ護りたかった

笑って欲しかった

共に居たかった

 

 

それはやがて別の感情を生む

 

 

彼女らしくあって欲しい

どこまでも駆けて欲しい

貴女(タキオン)の為に駆けていきたい

 

 

 

 

 

憐れみも、慰めも要らない

嫌われようと、蔑まれようと構わない

 

 

 

それこそが彼の想い(願い)であり、祈りなのだ

 

 

 

 

ただ、貴女(アグネスタキオン)が笑って暮らせる世界を

 

 

 

それこそが彼の本心(原動力)

 

 

 

 

 

 

 

 

例えどの様な事であれ、彼はアグネスタキオンの前で諦める訳にはいかないのだ

 

無様で良い。愚かでも良い

 

足を止める事だけは許さない。他ならぬ彼自身が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナリタタイシンは驚いていた

 

 

タイシンのスパイクは決して軽いものではなかった

だが、彼はそれに適応しつつあったのであるから

 

 

 

 

トレセン学園で|トレーニング大好きウマ娘同盟《サイレンススズカ、ライスシャワー、ミホノブルボン》に参加する事にしたタイシンであったが、その密度について行くのが難しい状態が続いていた

 

 

そもそも、サイレンススズカは逃げ特化。ミホノブルボンも逃げ特化。ライスシャワーは先行型であり、ナリタタイシンは追い込み型である。本来ならば全く性質の異なるトレーニングであり、ナリタタイシンにとってはあまり参考にならない筈だった

そう、だったのだ

 

そもそもスズカを始めとした3人は同年代のウマ娘達に比べ、かなり優秀だった。長所を伸ばしていけば、普通に戦えるだろう

だが、3人はそれだけでは駄目だと考えている

特化型と言えば聞こえは良いが、戦術が限定され過ぎる為に相手によっては不利となる事が容易に予想できるからだ

勿論、一つの走りを極める事が悪いとは言わないし、3人とも思ってない

 

 

だが、ウマ娘の現役として活躍できる期間は非常に短い。その上、今のようにレース自体が少ないならいざ知らず、来年からレースの数がかなり増えると聞く

となれば、それ相応のスケジュールとなり、それはウマ娘の脚に相応の負担を与えるだろう

 

大体大まかに言ってウマ娘がレースに出てフルパフォーマンスを発揮できるのは普通なら3年。長くても5年も保たないと言われている

 

さて、デビューしたての頃の体力が果たして引退間際に残っているだろうか?

恐らくは無理だろう。度重なる強敵達との戦い(レース)は否が応でも身体を蝕む

特に大逃げとなるサイレンススズカにとって、これは看過し得ない問題だった

そうならない様に担当トレーナーとしっかり話し合ってスケジュールを組むのは当然だが、それでも避けられないだろう

付け焼き刃如きで強敵達と渡り合うのは不可能。ならば体力のある今、様々な戦術を文字通り身体に叩き込む

それは間違いなく無駄にはならないのだから

故にスズカ、ブルボン、シャワーは差しや追い込みの鍛錬も欠かす気はない。そうして見ると見えてくるモノもあったのだから

 

そうだからこそ、ナリタタイシンもトレーニングに参加する事で得られるものは多いと思えたのだ

 

 

しかし、当たり前の事であるが、言うほどに容易ではない

そもそも脚質やウマ娘の考え方などに合わせて得意な走り方を決定するのである

 

サイレンススズカであれば『静かで穏やかな世界』。それをレース中に実現しようとすれば、常軌を逸した大逃げしかないのである

 

 

その方がやる気も上がるし、トレーニングの効率も高い

 

 

それに真っ向から立ち向かうとなれば、おおよそ並のトレーニングではどうしようもないのはお分かりいただけるだろうと思う

 

 

 

 

だが、3人は声を高らかに上げる

 

 

だから、どうした?

 

 

 

不可能?その不可能とも思える難事を超えてきたからこそ、今の私たちの生活があるのではないか?

そもウマ娘という存在については未だ判明していない事が多々ある

 

なら、誰が不可能と決めたと言うのか?

 

 

 

3人は不可能とも言える事に挑む人物を知っていた

 

 

それがアグネスタキオンの彼なのである

 

 

 

 

ウマ娘とヒトは対等たり得ないとされる

 

 

身体的能力で優るウマ娘であるが、こと社会に適合という点においてはヒトより劣ってしまう

相互理解が足りないのである

 

ウマ娘は自身の出来る事がヒトに出来ない事を不思議に思い

ヒトは自身の出来ぬ事がウマ娘に出来る不条理を嘆く

 

 

そこに意識の差が生まれ、それがいつしか確執へと変わる

 

 

 

幼馴染とはいえ、他にもウマ娘の幼馴染を持つ者はいた筈である

だが、今まで上手くいかなかった

 

それに絶望するウマ娘とヒトは多かっただろう

 

 

だが、なんの因果かアグネスタキオンと彼は幼馴染として生を受け、今でも良好な関係を維持している

 

 

人々は2人をシンデレラ(与えられた者)王子様(与える者)と呼ぶ

 

 

 

だが、3人からすればそうは到底見えない

 

 

 

アグネスタキオンと彼。双方が与え、与えられているのだ

 

だが、どうしても身体能力的に彼はアグネスタキオンに劣る

 

 

 

 

それでも、でも、けれども

彼はそう声に出さないものの、叫びながら必死にもがいているのだ。足を止める事をせず、這ってでも少しずつでも前へ。先へ

 

 

まだ関わって半年もしてないが、その執念を3人は何より、誰よりも理解していた

 

であるからこその、二人の仲(アグネスタキオンと彼)を守ろうとしているのだ

 

 

 

 

 

 

 

そんな人物を目の前にして、どうして泣き言を言ってられようか?

 

それが3人に共通する想いなのだ

 

 

だからこそ、そのトレーニングは過酷を極める。シンボリルドルフすら、二日で着いて来れないレベルのトレーニングである事からもそれは分かるだろう

 

 

そんなトレーニングにナリタタイシンは参加しているのだ

3人からすればナリタタイシンのひたむきな努力は良い刺激になり、更なるトレーニングへのやる気向上に繋がっている

 

だが、3人で悩みながらも進めるトレーニングとナリタタイシン独りでするトレーニングではどうしても進み方に差が出てしまう

 

 

 

トレセン学園に指導者であるトレーナーが来るのは来年

それまでトレーニングしないと言うのはあまりにも勿体ない。勿論、身体に無理な負荷をかけないようアグネスタキオン(学園一の専門家)に色々相談し、彼にも相談している

 

フィジカル面においてはアグネスタキオン。メンタル面や僅かな違和感等目に見え辛いものは彼にそれぞれ手を貸して貰っていた

 

 

 

これには秋川理事長と駿川秘書やこの前来校した頼りになるかわからないトレーナー候補生(桐生院葵)担当ウマ娘(ハッピーミーク)も驚きを隠せなかった程である

 

特に葵とミークはウマ娘育成の名門である桐生院所属であるからこそ、その密度とギリギリのトレーニングに驚く他なかったのだ

 

 

 

 

 

彼女達は来年より始まる各種レースで結果を出す事により、ウマ娘の可能性と共に2人を全面的に助けるつもりだった

 

別にナリタタイシンにそこまで求めるつもりはないが、少なくとも必死にトレーニングをしている仲間を放っておくつもりはない

 

 

 

 

 

 

 

だが、そんな3人の想いと裏腹にナリタタイシンは伸び悩んでいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本来ならタイシンが海水浴にくることはなかった

 

 

なかった筈だったのだが、腐れ縁ともいえるハヤヒデとチケット

今回は勢い任せのチケットがタイシンの名前で海水浴に応募していたのだ

 

勿論、チケットとハヤヒデも参加希望だったのだが

 

そして、いきなりメジロマックイーン(某組織の会長)から声をかけられた

 

 

 

 

曰く

 

 

いつなら予定が空いているのか?

 

 

 

訳が分からないタイシンだったが、それでも知らない相手でなし

 

そっけない態度をよく取るから誤解されやすいが、ナリタタイシンというウマ娘は優しく人付き合いの良い人物なのだ

 

 

 

だから、普通に予定を話した訳なのだが

 

 

 

 

 

気付いた時には手遅れだった

 

トレーニング仲間(サイレンススズカ達)も気分転換は必要と言っていた

 

本音では嫌だったが、それでもタイシンの知り合いから聞く彼の姿と自身が知っている彼の姿は全く重ならなかった

 

 

 

 

あの時、シンボリルドルフは言っていた

 

彼は不器用な人だ。と

 

 

だが、そう語るシンボリルドルフの姿は何処となく寂しそうだったのをはっきり覚えている

 

 

ナリタタイシンとてウマ娘

シンボリルドルフの気持ちはそれこそ痛いほどわかる

 

 

 

 

ウマ娘という者は総じて孤立しやすい。

圧倒的身体能力に恵まれた容姿

 

 

だが、それだけなのだ

別に勉強しなくても良いわけでもないし、運動神経が良くとも相応のトレーニングが必要

走り込めば走り込んだだけ脚は速くなるだろう

 

それが一般的な水準を超えるのも時間の問題

 

 

 

 

 

ナリタタイシンとて、小柄であったからか学校では孤立していた

 

 

体育の走る時だけは辛さを忘れる事が出来た。自分に隔意を持つものも自分を認めてくれるから

 

そして、学外でナリタタイシンは野良レースの様なものに打ち込み始め、ハヤヒデやチケットと出会ったのだ

 

 

だが、自分と同じ者(ウマ娘)と出会ったが故に学内での日常は更に苦痛となっていく事になる

 

そして、ある時ハヤヒデからウマ娘の集まる学園である『トレセン学園』の話を聞いた

 

タイシンの両親も思うところがあったのか、すぐに申し込みをしてくれた。少しばかり面倒な試験があるにはあったが、タイシンは何とか突破して此処(トレセン学園)にいる

 

 

 

そして、見たのだ

私達の想いの、願いの一つの理想形(アグネスタキオンと彼)

 

 

噂には聞いていた。ハヤヒデは色々物知りであり、チケットとタイシンにも教えてくれていたから

 

俄かに信じられなかった

自分達(ウマ娘)と共に歩もうとする人がいるなどと

 

 

だが、それも講演会の時に直接目にするまでだった

 

 

そこには確かな『絆』があり、相手を思いやる気持ちがあったのだから

 

 

 

 

 

 

 

届かないと諦めていたから、期待しないから絶望も失望もしない

アグネスタキオンが自分の彼氏を自慢する様な嫌なウマ娘であったならば、良かっただろう

彼がただアグネスタキオンのウマ娘としての能力目当てに傍にいるならば

 

 

そうではなかった

 

 

 

ナリタタイシンを始めとしたウマ娘達の中には、どうしても理解は出来ても納得できない者が出てくるのもやむない事だったのだろう

 

 

 

 

 

 

 

彼は優しくしてくれる。例えそれがアグネスタキオンの友人であったからだとしても

 

彼は自然体で接してくれる。彼がウマ娘になれているから

 

 

 

 

彼の気持ちは疑う余地もなく、アグネスタキオンに向けられている

トレセン学園に通うウマ娘でそれを理解しない者はいない

 

 

 

 

 

でも

 

アタシ(ナリタタイシン)は弱い

 

構って欲しい

 

守って欲しい

 

見て、もらいたい

 

 

止めどなく溢れ出てこようとする想い

 

それがどれだけ浅ましいのか、理解していても

 

 

 

 

 

彼に複雑な想いを抱きながらもタイシンは思いとどまるだけの精神力を持っていた

 

 

でなければ、顔見知り程度の異性に水着姿など見せる訳もない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナリタタイシンはネットの向こうでハイタッチしている彼等を目を細めて見ていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビーチバレーもひと段落した後、ルドルフはウマ娘らしく砂浜でのトレーニングを提案した

 

 

皆一様に賛成した

 

此処にはフィジカルトレーナーとも言えるアグネスタキオンとメンタルサポーターとも言える彼がいるのだ。更にメジロの万全のバックアップも期待できる

しない理由がなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うむん?

 

 

彼は彼女達の走り込みを見ながら首を傾げていた

 

 

そして

 

 

すいません。少しお借りしたいものがありまして

 

と何処かに連絡していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うん。やはり異なる環境でのトレーニングもいいものだな

 

そうだねぇ。ルドルフくん、なんなら年に数回くらいはこういった環境を用意してはどうだい?

 

あ、それいいかも

 

でしたらわたくしたちメジロ家も全面的に協力しますわよ?

 

 

 

盛り上がる4人を他所に

 

 

 

 

なんでっ!

 

ナリタタイシンは苦しんでいた

 

 

 

 

トレセン学園内を見回してもタイシンよりトレーニングしていると思えるのはサイレンススズカ、ミホノブルボンにライスシャワーくらいだろう

 

 

 

だが、今回トレーニングして分かったのは、絶望すら覚える程の他者との差だった

 

 

 

アタシには無理、なの?

 

 

さしものタイシンも弱気になりかかった

 

 

 

 

あの、ちっと良いか?

 

彼が声をかけてきた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なに?

 

タイシンはいつもよりも無愛想な自分を自覚した。だが、それを彼が許してくれるだろうとも

 

 

聞きたいんだけど、良いか?

 

 

別に、いいけど

 

 

 

 

 

 

タイシンはさ、なんで競おうとすんのさ?

 

 

その言葉を聞いた瞬間、タイシンの目の前が真っ暗になった

 

 

アンタもアタシを否定するのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

だが

 

 

おいおい。それじゃあタイシンくんが誤解するだろう?

しっかり説明しないとダメじゃないか?

 

 

とアグネスタキオンは彼を諭す

 

他の3人(ルドルフ、ネイチャ、マックイーン)は彼に鋭い視線を向けていた

スカーレットは苦笑いしており、ウオッカはその空気の温度差に戸惑っていたが

 

 

 

 

 

そうか。そうだよなぁ

 

彼はしきりに頷くと

 

 

 

 

 

なぁ、タイシン

言い方が悪かったよな。ごめんよ

 

膝をついて頭を下げているタイシンの側に寄って、彼は言った

 

 

 

どう言う事?アンタも私がレースに相応しくないって事じゃないの?

 

 

タイシンは震える声で聞く

 

 

それはないから、安心しろや

 

彼はタイシンの問いに即答した

 

 

どういう事だい?

 

ルドルフは思わず口に出した

マックイーンもネイチャもウオッカも不思議そうな顔をしていた

 

 

逆にタキオンとスカーレットは微笑んでいる

 

 

 

 

 

 

 

タイシンはどちらかというと、後半に力を発揮するタイプじゃないかと思うんだよ。

なんでさっきの模擬レースで常に後着してたのかと言うと

 

 

 

タイシンは呆然とした顔で彼を見ていた

 

 

序盤において、先行型であるタキオン、ネイチャ、マックイーンにスカーレットと先頭争いをしていたからだと思うわけよ

実際にメジロの人から計測器借りて何度かタイム測ったけどな

 

 

ルドルフの、マックイーンの、ネイチャの、ウオッカの

そして、何よりナリタタイシンの表情が驚きに染まった

 

 

 

後半の加速力についてはまだデータ揃ってないから断言は出来ないけども

俺が知ってるウマ娘の中でも一、二を争う加速力だと思うよ?

 

 

 

そう、なんだ

 

 

タイシンは震える声で小さく呟いた

 

 

 

だから、騙されたと思って後半まで我慢してみたらどうかな。って素人ながらに思うのだけ、ど?

 

 

彼は徐々に自身を見る4人の視線の質が変わっているのを感じて戸惑っていたが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、少しの休憩後に模擬レースをしてみたのだが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

流石というべきなのだろうね、タキオン

 

当然だろう?

私の最高のパートナーだよ?ルドルフくん

 

まさか、そういう視点でも見ているとは思いませんでしたわね

 

はー。いやほんと、凄いね

タキオンさんが羨ましいなぁ

 

いや、凄えな兄貴は!

 

当然でしょ!

私とお姉ちゃんの大好きなお兄ちゃんなのよ!!

 

 

 

え、嘘でしょ?

 

 

 

 

常に最後着だったナリタタイシンが一気と2着となったのである

偶然だと思ったタイシンは何度か模擬レースを頼んで走ってみたが、今までの走り方に比べて、かなりの速度が出せることを実感していた

 

 

 

 

 

まぁ、当人が1番見えないなんて事はザラにあるからね、仕方ない

 

と彼は勝手に1人で納得していたが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、この海水浴は無事に終わった

 

 

終わってみれば、参加した者達全てに成果のある有意義なものとなっていた事にルドルフは帰りのバスの中で気付き、苦笑した

 

 

頼りになる人だね、彼は

 

前の席に座るタキオンに話しかける

 

 

おやおや、彼とトレセン学園で1番関わっているのはキミだろうに

今更気付いたのかな?

 

悪戯っぽくタキオンは笑った

 

 

そうだったね

 

ルドルフも思わず苦笑した

 

 

 

タキオンが言う通り、トレセン学園内でアグネスタキオンを除いて彼に1番近いのは間違いなくシンボリルドルフである

 

 

何せ、問題が次々と起こるトレセン学園の生徒会長(生徒側の代表)なのだ。疑いの余地なく学園一の苦労人だろう

 

 

 

そしてタキオンとしては自分の恋人()がルドルフの少しでも支えになれば、との思いから2人を会わせる事を認めている訳だ

 

実際、エアグルーヴやナリタブライアンから聞いたところでは彼女にとって良い意味で息抜きになっていると聞いてもいる

 

 

 

まあ、恋人として多少思うところが無いわけでもないが、これは我儘だとタキオンとて理解している

 

 

 

 

 

 

その関係からかシンボリルドルフとアグネスタキオンは周期が意外と思う程度には親しい間柄となっている

 

 

 

 

 

いつもありがとう。本当に感謝しているよ、タキオン

 

 

ルドルフは頭を下げた

 

 

構わないさ。彼が誰かの為に動く事を見るのも私は好きだからねぇ

 

 

タキオンは自然に笑った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナリタタイシンは夢を見ていた

 

 

いつもはハヤヒデやチケットと走っているのに、一向に追いつけない悪夢。声が枯れるまで叫んでも、必死で脚を動かしても全く追いつかず、いつしかタイシンは独りぼっちになっていた

 

 

だが、今回はハヤヒデにチケット。それにシンボリルドルフやアグネスタキオン達とも競い合っている夢だった

 

ナリタタイシンは人知れず、柔らかい笑みを浮かべていた

 

 

 

[ナリタタイシンは末脚のスキルを会得した!]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

車がかなり走っていると話をしていたアグネスタキオンとシンボリルドルフも眠りについた

 

皆幸せそうな顔をして眠っている

 

 

 

 

だが、助手席に座る彼の顔は険しかった

 

 

イヤホンをして何かを聞いている彼

その手元の端末には

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

首相、衆院解散を宣言!与野党合同の内閣不信任案決議前の突然の発表

 

とのテロップが流れていた

 

 

 

 

 

 

 

 

嵐になるか。それも特大の

 

彼は憂鬱そうに呟いた




さって、のんびりした空気は楽しめたでしょうか?

これからはまた暫く堅苦しいお話が続くかも知れません



なお、ハーレムエンドは一切考えておりません事を明記します
彼は所詮一般人だからね、仕方ない


一応アンケートは取りますので、宜しければご協力ください

ではご一読ありがとうございました


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 壊れゆく(未来)

さて、少しほのぼのした話を書くと何故かシリアスを書きたくなる不具合

ま、私にガチシリアスは無理なんですけどねえ


というわけで風呂敷をもう少しだけ広げますよ?

仕方ねぇ、読んでやるわ。という方はどうぞ


時はアグネスタキオン達が海水浴へ行った日より2週間前

 

 

 

 

与党重鎮でありながら、現総理と対立する派閥は秘密会合を開いた

 

 

 

現総理はすでに彼等(与党重鎮)の制御を離れ、独自路線を歩み始めた事を懸念してのものだった

 

 

 

 

元々、トレセン学園(ドル箱)についての建設や関係法律の整備は彼等も積極的に協力した

 

 

そも、敷地面積のみで言えば東京ドーム四個分に相当するトレセン学園。施設もウマ娘育成の名目で最新のモノが建設されている

更に学園周りについても道路の拡幅や補修、新設も急ピッチで行なわれた

 

当然ながら、所謂『建設族』と言われている与党重鎮やそれに従う議員達に少なからぬ利益を齎した

 

 

更に以前も触れたが、トレセン学園建設に伴うその周辺での需要増大を見込んだ企業なども少しずつではあるが、周辺に移り始めていた

 

 

これにより、トレセン学園の存在する府中市における税収は増加の一途を辿る事となり、財務に関わる者たちを喜ばせた

 

当然ながら、税収が増えるということは人の移動も活性化されている事でもあるから、総務省や地元自治体もこの動きに満足していた

 

人が動けば、ものも動く。そこに物流が介在しない筈もなかった

物流業界に票田を持つ者はそれで利益を得た

 

 

 

 

更にトレセン学園が稼働する事に伴い、トレセン学園や所属するウマ娘達の特集。大規模になるレースや新しい試みであるライブ等の報道により利益が見込めていたマスメディアとそれに近しい政治家や官僚

 

あまり褒められた事ではないが、ある程度の融通をきかすことで自身にも見返りを求められた

 

 

 

ウマ娘関連の産業はまさに様々な者達にとって美味しい話だったのである

 

俗な言い方をすると、ウマ娘関連でウマ(・・)ーい。というわけだった

 

 

 

 

 

 

 

利益も出ているし、これからの利益も見込める以上、彼等与党重鎮達もめくじらを立てる気も対立する気もなかったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところが、である

 

 

ある筋からとある情報がもたらされた

何でも、幼少の頃よりウマ娘と共に歩もうとする変わり者(・・・・)が居るとの話だった

 

少し調べさせると両親の理解を得れなかったウマ娘に幼馴染の小僧が同情したのか、数年間に渡ってそのウマ娘に尽くしているらしいとの事

 

彼等政治家からすれば、ウマ娘だろうが、トップアスリートだろうが、大御所と呼ばれている芸能界の大ベテランだろうがどうでも良かった

 

 

彼等の基準は一つ

 

己の利益になるか?ならないか?

 

 

それだけだったのだから

 

 

その基準からすると、そんなもの(ウマ娘と歩む少年)に価値を見出せないから放置で良かった

 

 

 

 

だが、彼等はそこで適切に処理(・・・・・)しなかった事を今でも後悔しているのだが

 

 

 

 

 

 

 

事態がおかしくなり始めたのはいつ頃だったのか?

 

彼等には分からない

が、トレセン学園が稼働する少なくとも3か月前くらいには動きがないと説明がつかないのも事実なのだ

 

 

 

 

いつの間にやら、ウマ娘とその関係者の間で取るに足らなかったもの(1人のウマ娘とそのおまけの小僧)が有名になっていったのだろう

 

そして、SNSなどを介して一部の者達(ウマ娘と関係者)にある意味での未来モデルとして注視されるようになったと見ていいはず

 

 

更に何を血迷ったか、地方選出の議員が勝手に連携し、件のウマ娘(アグネスタキオン)そのおまけ(幼馴染)がトレセン学園に関わるようになった

その頃にようやく情報を手に入れた彼等はすぐさま、余計な事がこれ以上起こらない様、対策を命じた

 

 

それが過激ともいえるマスメディアによる取材攻勢だったのだ

こうすれば、ただの子供に出来ることなどない。そう確信していた

 

 

 

 

 

だが、現在ではその小僧により手痛い反撃を食らってしまい、あまつさえそれに感化された人間(総理や超党派の連中)が増え始めたのだからこれ以上の放置は出来なかった

 

 

 

既に奴らは超えてはならぬ一線(彼等の利益)に手を出したのだから

 

 

 

 

いきなり小僧(諸悪の根源)を狙ったところで余計な邪魔が入るのは明白

 

そこで、まずはトレセン学園側に肩入れしている総理を黙らせる事にしたのだ

 

 

幸いにして、この一連の騒動で総理は強硬な手段を用いている

超党派の中にもこの様な独裁的行為に反発するものもいた

 

そして

大多数の議員達はあくまでも議員職である事を望んでおり、総理(沈む船)に最後まで付き合おうとするのは極一部だった

 

 

そこで、反ウマ娘ではなく、反総理として各派閥の連携を主導しているわけである

 

 

 

 

 

 

 

野党側から、不信任案決議についてある程度の協力を取り付けました

 

現在主流派である総理の派閥内にもかなりの温度差があるようで、何人かは此方の動きに賛同するかと

 

 

 

つまり、不信任案決議すれば十分勝機はあるのだな?

 

 

仮に否決されたとしても、総理は自身の立場を思い出すだろう

そうすれば、こちら側の意見ももっと取り上げられるはず

 

 

 

 

そう彼等は考えていたのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、往々にして情報とは漏れるものであり

 

 

 

 

つまり幹事長達が主導して不信任案を提出するというのかな?財相?

 

最早止められないと思われます

 

何を考えているのだ!奴らは

せっかくウマ娘達との共存の道が出来ようとしているのに!

 

 

総務省の次官が嘆く

 

 

実のところ、日本では未だに問題となっているウマ娘関連の話だが、既に欧米においてはクリアしつつある問題であった

 

 

 

 

日本でウマ娘関連で名家と呼ばれる家はいくつかあるが、それであっても欧米においては『そこそこの歴史』程度なのだ

 

当然ウマ娘関係のノウハウは文字通り桁外れ

 

それに身体能力が優れるというのであれば、その面において活躍して貰えばいい。というのが欧米での主流

 

無論、問題が起きないとは言わないが、その時はキチンと判断すれば良いだけの事。そう割り切っていた

 

 

 

 

日本に生まれたウマ娘でも海外で生活しているウマ娘というのはかなりの数になる

 

小難しい問題をそのまま放置している日本に愛想を尽かせたウマ娘もいるわけだ

 

更に欧米ではウマ娘によるレースも活発であり、当然規模や賞金なども日本のそれとは比較にならない

 

 

故に日本で育った有能なウマ娘やトレーナーが海外に出て行ったまま。というのも割とよくある話であったりする

 

 

 

それがまた、日本でのウマ娘関係の業界衰退を招き、そしてまた人とウマ娘が出て行く

 

まさに負のスパイラルであった

引退したとしても様々な制度の整っている欧米と何もかも手探りな日本ではどちらを選ぶかなんて分かりきっている

 

 

 

ある意味では日本に残っているウマ娘達は疲れていたのだ

 

そこに現代のシンデレラ(アグネスタキオン)王子様(タキオンの幼馴染)が現れた

 

 

根強い不信感を抱いているウマ娘が多い。だからこそ、彼女達(タキオンと彼)を守らねばならないのだ

 

 

信用を築くのは長い時間を要する

だが、崩れる時は一瞬なのだから

 

 

 

 

 

 

 

その程度の事くらいは彼等、党の重鎮なら理解していると総理である彼は思っていたのだが

 

 

 

予想以上に面倒な

 

 

温厚で知られている総理であっても、思わず吐き捨てる

 

 

 

 

 

少し話を変えるが

競馬は農水省の管轄

だが、競バは?

 

ウマ娘はヒト

総務省?

でもお金がかかる

財務省?

レース場とかの整備

国土交通省?

 

 

 

実は管轄の省庁を巡って、現在官僚達は壮絶な綱引きを行なっている

 

何せウマ娘関連の管轄省庁ともなれば、間違いなくポストは増える

職務も増えるが、予算も増える

 

 

今までの様に小規模であれば、総務省でも良かった

が、これからはそうはいかなくなる

 

というよりも、いかせてはならない。というのが総務省以外の官僚達の総意であるわけ

 

 

 

 

トレセン学園建設時は教育機関の一つとして文科省の管轄だった

 

だが、教育機関としてのトレセン学園と開催するウマ娘達のレースを同一視するのは問題がある。との突き上げがあった

 

 

閣僚からも、これを機に専門の庁を創るべきでは?

との声もあったが、総理としては悪戯に省庁を増やす事に対して慎重にならざるを得ない

 

一度創ったが最後

廃止するのは面倒を極めるのだから

 

 

事実、総理がまだ新人議員だった頃、省庁再編が行なわれたが、大問題になった事を覚えている

 

 

ポストを増やすことは容易にする癖に、減らす時は煩雑な手続きなど全力で対抗していたのを見てきた以上、総理にはその選択はなかったのだ

 

 

 

 

 

とはいえ、差し迫った問題としてはこれからどうするのか?である

 

 

不信任案が決議されたなら、退陣するか解散総選挙しかない

が、不信任案決議を目指す以上、彼等は選挙対策もしている筈

 

 

まして、此方は地元票を固めきれない議員が多い

相手は2世、3世議員やベテランばかり

 

確固たる票田を持たない総理側では苦戦は免れない

 

 

 

負けた場合、間違いなく不都合は全て自分達に被せるだろう

 

 

 

そして勝手気ままに全てをやり始める

 

問題が出たとしても、形だけの謝罪か、辞職するか

したとしても、影響力は残すだろうし、何らかの地位を代わりに用意するだろう

 

 

 

そうなれば、今までの苦労は徒労に終わる

 

 

 

 

 

 

総理。お電話ですが

 

 

後に出来ないかな

 

 

秘書の言葉にやや苛立つ

 

 

 

それが

 

 

わかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もしもし

 

 

ごきげんよう。久しぶりですね

 

 

っ!貴女でしたか

 

 

 

電話先の相手を理解した総理は驚きを隠せなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、この電話を受けて僅か数日後、彼は国会会期中に解散総選挙を宣言したのだ

 

 

 

 

 

熱い、全てを溶かす(壊す)秋が、始まる

 

 

 

 

 

 

 

 




人が3人いれば派閥は出来る

物事には多面性がある
故に人は争う

そんな話でした
中々潰れない彼等。多分作中最強かもね


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 (部外秘)シンデレラライブアフター(前編)

今回、初の試みをしております
規約等を読んだ上で投稿しておりますが、運営から警告を受けた場合、即座に削除する事をご了承ください

とあるアーティスト様の楽曲を全文利用しております
予めご了承くださる事を重ねてお願い申し上げます

なお、勝手な解釈をつけておりますので、これについてご不快になる様でしたら閲覧を控えていただければと思います

作者はスマホで投稿しているため、それに合わせた行間などを取っております。パソコンで閲覧されている方におかれましてはご不便おかけしますが、何卒ご容赦ください

それでも宜しければ、どうぞ


トレセン学園が様々な思惑の中、スタートした記念すべき初年度

 

 

その夏の某日のことである

 

 

 

 

 

 

ふぅん、慣れないものだねぇ

 

慣れてくしかないだろうよ?タキオン

んで、ルドルフさんや

 

何かな?

 

確か、聞いた話ではタキオンと自分のライブと聞いてたし、観客も可能な限り絞るって話だったと思うのだがなぁ?

 

ああ、そのだね。

 

体育館の舞台袖で自分の着ている衣装に愚痴るタキオンとそれを宥める彼。その彼に詰め寄られるシンボリルドルフの姿があった

 

実は彼に詰め寄られてかなりドキドキしているシンボリルドルフであったが、流石に分別が無さすぎると自重していたりする

 

 

 

 

 

 

 

シンボリルドルフ脳内(イメージ)

 

 

悪いルドルフ

「相手が此方の間合いに入ってきたのだから、此方も距離を詰めるべきだ。そうでなければ失礼だろう?」

 

良いルドルフ

「待つんだ。彼はタキオンの恋人であって、(シンボリルドルフ)の恋人はないのだぞ?それは彼にもタキオンにも不誠実ではないのか?」

 

悪いルドルフ

「何、綺麗事を言っているのだ?そもそも秋波を寄せない人物に頭を撫でられ、髪を梳く事を許し、挙げ句膝枕されて耳かきまでされるとでも言うのかね?」

 

良いルドルフ

「ま、まだ尻尾を触られてないから、セーフ」

 

悪いルドルフ

「アウトだよ!完全にアウトだろうが!」

 

 

ルドルフの良心?の化身の苦しすぎる言い訳に対話相手であるルドルフの悪い心も声を荒げる

 

 

ルドルフ

「!!そうか!言い訳して良いわけ(・・・・)ないな、うむ」

 

 

のだが、当事者は至って平常運転であったりする

 

善悪ルドルフ

「「お前さんは少し黙ってなさい」」

 

 

このザマには思わず2人?のルドルフもシンクロしてツッコむ他ない

 

 

 

ウマ娘、シンボリルドルフ

いつも凛々しく頼りになる彼女だったが、素顔の彼女は意外と抜けていたりした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルドルフくん?

 

反応がない。ただのしかばねのようだ

 

そんなわけがないたろうに

 

 

 

少しばかり放心していたルドルフを心配するタキオン(友人)と言葉ではふざけているものの、真剣な目を向けているタキオンの彼(ルドルフの想い人)

 

 

 

 

 

 

それを少しだけ遠くに感じながら

 

 

いつも思ってしまうことがある

 

 

 

(誰より先に貴方と出会えていたら、貴方の支え(憧れ)になれたのだろうか?)

 

意味のない仮定だ

そう、もう1人の理性的な(シンボリルドルフ)は言う

 

 

 

 

臆病者だと自身でも思う

 

 

友人(タキオン)の好意に甘え、(友人の彼氏)の行為にも甘え

 

ひたすらに流されてしまう自分

 

 

 

 

 

生徒会長は激務だから

恋人(アグネスタキオン)の以前の姿に似ているから

 

少しだけでも休める場所を

そう言ってくれる友人(タキオン)その場(気を抜ける時間)を用意してくれる彼や友人達(エアグルーヴとナリタブライアン)

 

 

 

嬉しいと思う

ありがたいとも

 

 

 

 

 

 

だが、少しずつ。しかし、確実に生徒会長(ウマ娘の範たる自分)は弱くなっているのも事実

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すまないね。少しだけ考え事をしていたよ

 

ふむ?無理はしないでおくれよ?キミも私の友人なのだからね?

 

・・・・・さよか

 

 

 

 

 

今はただ、生徒会長としての自分(シンボリルドルフ)であろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏休み前、古文の授業でとある和歌を習った

 

 

 

今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを

 

人づてならで いふよしもがな

 

 

というものだった

 

 

意味としては

あなたに恋をしていましたが、今となってはその想いを諦めよう

ですが、せめて人伝ではなく、直接貴方に言う方法がほしいものです

 

 

と言ったところだそうだ

 

 

 

古来日の本において、和歌に感情(恋心)を込めて相手に贈るという習慣があったそうだが、この和歌は間違いなく悲恋である

 

 

 

今の自分(シンボリルドルフ)にとってこれ程までに似合う和歌もないだろうと自嘲した

 

 

 

が、自分はこの和歌の人物と異なり、声は愚か、手すら届く距離にいる人物に対して想いをはっきり出来ていない

 

 

 

 

 

 

 

彼と過ごすときは楽しい

彼と話をするときは嬉しい

彼のたまに見せてくれる仕草を見ると優しい気持ちになる

 

だからこそ、願ってしまう

 

わたし(ルナ)呼んで(見て)

 

 

 

臆病者な自分なのに、相手に何を求めるのか?

 

 

そう言いたくなるし、否定できない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある時偶然(・・)会った先輩に相談したことがある

 

その先輩は言った

 

言い方は悪くなるけど、その人はまるで麻薬ね

 

 

その時のルドルフは烈火の如く怒りを露にしたのだが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、すまないね

 

少しは休みたまえよ、ルドルフくん。私も彼もトレセン学園の皆もキミが倒れることなんて望んでないからね?

 

・・なに?ルドルフ

まさか、タキオンみたく(食生活を管理)される?

医食同源ともいうし、よもやまルドルフが生活リズムをおかしくしているとは思えないからな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレセン学園マメ知識

 

 

タキオンする(動詞)

 

トレセン学園内においてのみ、使用される表現方法

 

 

意味は大きく分けて三つある

 

 

 

一つ目は甘える

 

類義語にバカップルするも存在するが、此方は恋人同士での甘えになる為厳密には異なる

 

主にシンボリルドルフとアグネスタキオンにその彼が使用する

当然ながら、タキオンは非常に微妙な顔をする

 

 

二つ目はご飯を作ってもらう

 

 

意外かも知れないが、彼が料理を振る舞うのはアグネスタキオンと学外ではあるが、従姉妹のダイワスカーレットとアグネスデジタル。それに料理研究会の面々だけだったりする

 

料理研究会には代表タマモクロスを始めとして、ビワハヤヒデにスーパークリーク、ナイスネイチャにグラスワンダー。後にナリタブライアンとエアグルーヴにミホノブルボン、サイレンススズカにライスシャワーとテイエムオペラオーが参加している

学外からは彼とゴールドシップが参加している

 

オグリキャップとメジロマックイーン(食べること大好きウマ娘同盟)はあくまでも料理研究会のメンバーではなく、試食係である

 

 

 

学園のオカン(タマモクロス)は同好会発足の際に言った

 

あくまでもウチらは料理を作る(創る)のであって、食べるだけとか認めへんで!

 

 

 

その姿を見た彼は

 

オカンや。オカンがおる

と呟き、其処から学園のオカンという二つ名が浸透した

 

 

 

なお、余談ではあるがアグネスタキオンの『現代のシンデレラ』以外では最初の二つ名となっていたりする

当の本人は

 

なんでやねん

 

と力なくコメントしたとされる(サクラ通信より)

 

 

 

 

三つ目はあまり知る人はいない。というよりも知りたくないと言う方が正しいのだが

 

 

アグネスタキオンの試験薬の被検体になる事である

 

これはかなりのギャンブル性を秘めたものであり、ウマくいけばテイエムオペラオーの様に良い効果を手に入れられるだろう

なお、彼女が引いた効果は『一日中後光が差す』という劇学に興味を持っている彼女からすればとても良いものだったとのこと

 

ハズレはアグネスタキオンの彼氏みたく、ゲーミング(七色に発光する)効果を手に入れる事が出来るだろう

 

 

とは言っても、基本的にこれの担当は彼とマンハッタンカフェ。

あとはマックイーンのお仕置きとして指定されるゴールドシップくらいなのだが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

来年のウマ娘達によるレースの大幅な拡大に伴い、トレセン学園ではウイニングライブをレース後に行なうこととしていた

 

 

確かにウマ娘によるレースは圧巻だが、現在開催されているレースはそこまでの人気がない

環境、設備、資金。あらゆる点において、平等とは言い難い。それ故に勝敗がある程度分かりきったレースであるからだと関係者は判断していた

 

そこで、新しい試みとしてライブをする事となった次第である

 

 

 

当然、今年の4月の学園稼働に伴い、ライブのトレーニングも行われており、学園所属のウマ娘達は必ず参加する事になっている

 

今回はプレ公演との位置付けでトレセン学園開校に協力してくれた企業や組織に個人を招いてのものだった

関係者のみとしており、外野や雑音(マスメディア)については例外なくこれの参加を認めなかった

 

 

 

 

 

 

そして、来年度よりトレセン学園主導で行なわれる事となった

 

URAファイナルズ

 

 

 

これは低迷するウマ娘達によるレース

その人気や熱気を取り戻す為に秋川理事長が関係各位へ3年間もの間、粘り強く交渉した結果実現したものだった

 

とはいえ、これの参加資格は特に定めていない

 

シニア、クラシック問わず。敢えて言うなら、レースに、走りにかける熱意のみが参加資格といえるだろう

 

 

いきなり初年度から開催する(出来る)かについては未だ話し合いの途中ではある。が、確かに開催する事は決定していた

 

 

 

無論、開催の日時が確実なものとなった時点で関係省庁にも連絡を入れ、承認されなければならないが余程の事がない限り(・・・・・・・・・)問題なく進められるだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、既に目的のライブは終了している

 

 

にも関わらず、体育館内には学内のウマ娘たちが大勢残っていた

いや、残っているというのはいささか正確ではない

 

対外向けの曲である『うまぴょい伝説』が終わった後、来賓客を帰した。その後で一度生徒達も教室に戻している

 

それから通常授業を2時限したのちに、生徒達はもう一度体育館に集められたのだから

 

 

 

事前に生徒達にはアンケートを取っており、その結果こうなったといえる

 

 

 

 

 

トレセン学園に通うウマ娘達にとって、アグネスタキオンはまだしも、その彼については遠目から見る事はあっても、その声などを聞く機会は先の講演会以来ほとんどなかった

 

 

トレセン学園最大の組織(アグネスタキオンを愛でる会)。そろそろ秋にさしかかるこの時期ではあったが、サクラバクシンオー(広報部部長兼サクラ通信担当)の調べによるとトレセン学園に所属するウマ娘の内7割ものウマ娘達がこの組織に加入していた

 

更にそこからかなりの数の下部組織が誕生しており、組織のトップであるはずのメジロマックイーンくらいしか、全貌を把握出来ていなかった

 

 

とはいえ、基本的なスタンスは『アグネスタキオンと彼を見守る』というものであり、そこから逸脱する様な事はなかった

 

仮にあったとするならば、組織一の武闘派(綱紀粛正委員長)達が説得(・・)するのであったが

 

 

 

だが、かなりの人数となったことにより、組織幹部(所謂古参勢)以外ではかなり彼との接触機会が限定されていた

 

それでも、彼女達のマンションが特定されるまでは彼もそれなりの頻度でトレセン学園に来校していたのだが、特定されて以降はその回数は激減していた

 

 

結果的に学園に在籍しているウマ娘の大半はアグネスタキオンと彼の日常風景(アグネスデジタル曰く尊み溢れる光景)を見る機会がなくなりつつあった

 

 

 

であれば、夏休みなどの長期休暇ならば?との期待もあったが

 

組織副会長に就任したシンボリルドルフ(トレセン学園生徒会長)

 

君達の気持ちはよく分かる。だが、その為だけにリスクをおかすことは出来ない。勿論、タキオンや私に会長(マックイーン)からも彼に色々提案させてもらう

 

 

 

 

 

 

 

なお、夏休みを前に組織の基幹人事が改めて発表された

 

 

 

アグネスタキオンを愛でる会

 

 

会長 メジロマックイーン(メジロ家出身)

 

特別顧問 秋川やよい(トレセン学園理事長)

     駿川たづな(トレセン学園理事長秘書)

 

副会長 ナリタブライアン(トレセン学園生徒会副会長)

    シンボリルドルフ(トレセン学園生徒会長)

 

名誉顧問 〇〇〇〇(アグネスタキオン彼氏)

 

 

外部協力者 ダイワスカーレット(アグネスタキオン従姉妹)

      アグネスデジタル(アグネスタキオン従姉妹)

      ゴールドシップ(メジロ所属メジロマックイーン従姉妹)

      ハッピーミーク(桐生院所属ウマ娘)

      以下省略

               敬称略

 

 

となっていたりする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウマ娘達が待望した、シークレットライブが始まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初めの曲は彼のみのソロであった

 

 

 

当然だが、此処でしか聴ける(観れる)筈のないものである

 

 

 

 

 

昔見た青空  照りつける太陽

 

 

大好きなタキオンと出会った日

今でも忘れないあの景色

 

青空の下、照りつける太陽にも負けない様な笑顔で走っていたタキオン

 

 

心にもプリズム 輝いた季節

 

 

何もかもが新鮮で、美しく。そしてキラキラと見えていたあの頃

 

 

今となりゃ 想い出  美しくにじんで

 

 

今では遠く、儚い景色。それでも強烈で鮮明に思い出せる

 

 

戻りたい 帰れない 素直になれない

 

 

タキオンが、スカーレットが。タキオンの両親が、スカーレットの両親が笑い合っていた頃

取り戻したかった、あの日々

でも、もう引き返せない。決めたのだから

 

 

恋して 焦がれて あなたに一途だったあの頃

 

 

タキオンに惹かれて、タキオンを憧れて、ただひたすらに眺めていただけの幼い自分

 

 

二度とはほどけないの ねじれた純情

 

 

もう、あの頃の自分には戻れない。戻りたくない、無力だった自分に

 

 

見つめているだけで この胸いつも震えていた

 

 

貴女(アグネスタキオン)を見ている。それだけで気持ちが溢れていた、いつも

 

 

今でも好きよキラキラ  ガラスのメモリーズ

 

 

今でも貴女(タキオン)と共にいる。この日常がいつまでも輝き続けてほしい

たとえそれがどれだけ儚いものであったとしても

 

 

愛さえも演じて 心まで化粧して

 

 

貴女(タキオン)を守る為ならば、どこまでも心を飾りましょう

 

 

強がって無くした 大切な人

 

 

そうして、色々なモノを無くしていくのでしょう

 

 

写真なら 今でも 仲の良い2人ね

 

 

思い出の中では笑ってくれていた貴女の両親

 

 

振り向いた笑顔が 魅力的だった

 

 

それでも私を見てくれるキミの笑顔が大好きで

 

 

飛び散る 光りに 何もかもまぶしかったあの頃

 

 

届かない景色に目を細めて、見ているだけだったあの頃

 

 

割れたらもどせないの こわれた純愛

 

 

もう戻ることは出来ない。ただ貴女(アグネスタキオン)に憧れていただけの自分に

 

 

もう一度 貴女がきつく 抱きしめてくれたなら

枯れてた 涙キラキラ あふれてくるでしょう

 

 

幼い頃の様に何も考えず、ただ触れ合えるのならば、幼い時の様に泣いてもいいのでしょうか?

 

 

恋して 焦がれて 貴女に一途だったあの頃

二度とはほどけないの ねじれた純情

見つめているだけで この胸いつもふるえていた

今でも 好きよキラキラ ガラスのメモリーズ

 

 

過去の自分、弱い自分。それを否定してきた

それでも貴女(アグネスタキオン)への想いだけは守り抜きたい

 

 

もう一度 貴女がきつく 抱きしめてくれたなら

枯れてた 涙キラキラ あふれてくるでしょう

ガラスの oh メモリーズ

 

貴女(アグネスタキオン)と触れ合えなくなったとしても、私の思い出が色褪せる事は決してないでしょう

 

美しく、輝いている未来を貴女に届けれるのならば

 

 

 

 

 

 

 

 

曲名 ガラスのメモリーズ

 

アーティスト TUBE

 

作詞作曲 前田亘輝 春畑道哉

 

           敬称省略

 

 

 

 

 

彼のライブは終わり、タキオンの番となる

 

 




うまぴょい伝説は歌詞使用の許可がおりてなかったから、キングクリムゾンするほかなかったのじゃ
許して、許して

とある読者様よりこの歌うちの名無しくんに似合う。とメッセージ「頂き、被ってないか戦々恐々したのは此処だけの話


サイト規約に則ってるとは思うので、問題なければタキオンのパートもそのうち投稿します


つまらないとか言われたとしても、投稿を投降する気はないどす
ではご一読ありがとうございました


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 妹達から見た海水浴の裏側(前編)

とりあえず8,000文字というキリ良かったので上げる


そろそろ、色々とクライマックスになってくる予感がする


相変わらずの雑文ですが、どうぞ


海水浴

 

海や砂浜で遊ぶ事

また海で泳いだり、近年では砂浜で日焼けしたりする事も含まれる

 

 

 

 

大好きな姉からの連絡を受けたスカーレットはウオッカと少し面倒な事がありはしたが、万全の用意を整えた

 

 

姉曰く

 

最近の彼は疲労が蓄積しているからね。此処らで無理矢理にでも休ませないとねぇ

 

との事だった

 

 

それに対して

 

でもお姉ちゃん。お兄ちゃんって海水浴嫌いじゃなかったかしら?

 

と聞くと

 

 

・・・・・まあ、どうにかするさ。どうにか

うん、大丈夫だろう。多分ね

 

と頼りない応えが返ってきた

 

あ、これお姉ちゃん話してないのね

とスカーレットは理解したが、全て姉に任せる事にした

 

 

 

べ、別に機嫌の悪いお兄ちゃんの説得が大変とか、そういう訳じゃないんだから!!

 

とはスカーレットの発言だった(ウオッカ証言)

 

 

 

 

 

 

そこら辺は尊敬する姉に任せる(押し付ける)として、スカーレットは別の人物に連絡を入れた

 

 

 

 

 

 

 

もしもし?

 

おおっ!久しぶりですね、スカーレットさん

どうしたんですか?も、もしかして私の趣味(同人誌製作)の手伝い

 

しないわよ

 

せめて、最後まで言わせて下さいよぉ

 

いやはっきりしとかないと、また前(・・・)みたいになっても困るのよ

 

ううっ、こうなったらお姉ちゃんとお義兄(にい)ちゃんをどうにかして引き込まないとダメかなぁ?

 

・・ねぇ、何だか聞き捨てならない言葉が聞こえた気がしたんだけど、デジタル?

 

キ、キノセイデスヨ。気のせい!

 

 

と明らかに動揺した様な応えが返ってきた

 

 

 

 

!!

同様に動揺(・・)する

これだっ!

 

 

[作者のダジャレセンスが3下がった!]

 

[シンボリルドルフのやる気が絶好調になった!]

 

[エアグルーヴのやる気が絶不調になった!]

 

[ナリタブライアンのやる気が絶不調になった!]

 

[〇〇〇〇〇〇〇〇のやる気が絶好調になった!]

 

 

 

 

 

閑話休題(冗談はさておき)

 

 

 

 

アグネスデジタル

 

 

姉からはデジタル。兄からはデジたんと呼ばれているダイワスカーレットの従姉妹であり、アグネスタキオンの従姉妹()でもある

 

 

強烈すぎるキャラクターであるが、姉と兄からは普通に対応されているウマ娘である

 

 

 

まあ、いいわ。それよりデジタルは誘われてないの?

 

 

あー、その学校に行かないと、その

 

あ、うん。分かったわ

 

 

アグネスデジタルの両親は割とデジタルの趣味にも寛容な方だと客観的に思う

が、流石に趣味(同人誌集め)の為に頻繁に学校を休むデジタルに対しては許容出来なかったのだろう

 

 

本来なら、信用できる身内(アグネスタキオン)がデジタルを誘うのであれば両親とて否やとは言わないところではある

 

 

スカーレットの両親と違い、あくまでもデジタルの両親はアグネスタキオンとその両親を分けて考えているからこそであった

 

 

その点でいえば、スカーレットよりもデジタルの方がタキオン()の誘いを受け入れやすいのはスカーレットにとって皮肉でしかなかったりする

 

 

それこそ、小学生の頃は真剣にデジタルの事をスカーレットは妬んだ事もある程だった

今でこそ、スカーレットとデジタルの間にその様な蟠りはないのだが

 

 

 

ふーん。なんていうか残念ね

 

私としてはトレセン学園に行ってナマのウマ娘さんをみたいのですけどね?

 

 

 

実はスカーレットとウオッカがトレセン学園に招待された時、デジタルも呼ぼうという彼から提案があるにはあった

 

 

ふぅん。別に私は止めはしないよ?

でもいくらなんでもスカーレットとその友人にデジタルまでキチンと対応出来るのかな?

 

うぐ?

た、確かにデジたんは難しいか?あまり無体な事をしたくは無いんだけどなぁ

 

冷静に考えようか?

本当にキミはデジタルを制御出来るのかい?

彼女が憧れているウマ娘の学園である此処(トレセン学園)に連れてきてなお

 

あー、うー

 

流石にその顔はやめてほしいな

別に千年の恋が醒めようと、私がキミを離すつもりはないよ?

でも恋人としては複雑な気持ちにしかならないからね?

 

だな。スマン

 

で、だ

今デジタルの両親に連絡を入れたんだが、どうやら彼女は学校を良くサボタージュしているらしい。今回は見送って欲しいとの事だよ

 

orz

デジたん、何やってんのさぁ

 

 

と言ったやり取りがあったとか何とか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アグネスデジタルが実装されるなんて予想してなかったからだろ?

 

・・・・・・・

HAHAHA⭐︎

そういう解釈もあるね

 

 

 

 

 

 

誠に申し訳ありません(作者土下座)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、アグネスデジタルは自身の行ないにより貴重な姉と義兄(あに)の誘いを受けることが出来なかった訳だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そっか。デジタル、アンタはもう少し学校に真面目に行きなさいよ?

 

と言いましてもねぇ

 

別にアンタの趣味を否定する気なんてないわよ。私は勿論だけど、お姉ちゃんとお兄ちゃんもね

でも、いざって時に困るじゃない?

 

・・・ですねぇ

 

アタシだって、折角なら従姉妹のアンタと一緒に何処かに行きたいわよ

 

ふふふふふ

 

・・・何よ?

 

ツンデレスカーレット。やっぱりいいですなぁ

 

ばっ、バ鹿言ってんじゃ無いわよ!!

 

いやいや、冗談はさておいてそのスカーレットの気持ちは嬉しいんですよ?

 

ふん!またそうやって誤魔化して

まあ良いわよ。土産話期待してなさいよ?

 

はい。楽しんできてくださいね?スカーレット

 

 

 

 

 

ダイワスカーレットとアグネスデジタル

決して外見も趣味も似通っていない従姉妹

だが、その心優しさは間違いなく似ていたのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、時間は海水浴当日になる

 

 

タキオン達が壮大な囮作戦をしている頃、スカーレットとウオッカは唖然としていた

 

元々、どうやって向かおうと思案していたのだが、デジタルより早朝連絡があったのだ

 

 

 

 

私の先輩が迎えを出してくれるそうなので、スカーレットの家で待っててくださいね?

 

との事

 

 

 

確かに出発時刻は6時半だから、5時くらいに連絡するのは理解できなくも無い

無いのだが、一つだけ疑問が残る

 

 

 

何故アグネスデジタルはその時間(5時)に連絡出来たのか?

という事だ

 

 

そして、スカーレットはお礼のメールを返信した

デジタルの性格上、メールには即反応する筈

 

 

だが、1時間経った今でも返信は来ない

という事は、だ

 

 

 

スカーレットは頭を抑えながら、もう一つメールをデジタルに送った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

送信者

ダイワスカーレット

 

件名

覚悟しときなさいよ?

 

本文

後でお姉ちゃんとお兄ちゃんに言っておくからね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スカーレットは理解していた

よりにもよって、今日従姉妹(デジタル)は夜更かししていた事を

 

スカーレットがいくら言っても聞かない(効かない)のは承知している

 

 

となれば、少々灸を据えて貰わねばならないとスカーレットは思った

 

 

 

 

 

 

事実、徹夜した為に昼目を覚ましたデジタルは、スカーレットからのメール

特に二通目の内容に

 

 

嘘おおおっ!!

 

と絶叫したとかなんとか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自宅前に予定時刻待っていたスカーレットとウオッカの前にミニバスが停車した

 

 

え?

 

は?

 

 

予想外の車両の登場に戸惑う2人

 

 

だが現実は待ってくれない

 

よ、ダイワスカーレットとウオッカってのは確かアンタ達2人の事だよな?

 

 

銀髪の美しいウマ娘がバスから出てきた

 

 

 

あ、ダイワスカーレットです。今回はありがとうございます!

 

ウオッカです。お世話になります!

 

 

あー、いや。そんなに畏まられると、なぁ?

 

相手のウマ娘はやりづらそうにしていると

 

 

お嬢様。その辺で

ダイワスカーレット様とウオッカ様ですね?

お迎えにあがりました

 

と運転手の男性が恭しく挨拶してきた

 

 

それとお嬢様。お二人が挨拶されているというのに、自己紹介なさらないのは如何なものかと

それと、発車しますので席についていただけますか?

 

 

あー、そうだな。アタシはゴールドシップ。2人と同い年だ!宜しくな!

 

 

 

 

 

 

後にトレセン学園次世代を代表するダイワスカーレット、ウオッカ、ゴールドシップ

所謂『トレセン学園三騎士』と呼ばれる事になる3人は此処で改めて出会ったのである

 

 

 

 

 

 

 

そういや、あの時いた、よな?

 

おう!確かに居たなぁ

 

マックイーン先輩に連れて行かれなかったかしら?

 

あー、うん。マックイーンはデザートに目が無くて、その、なんだ

 

あーなるほどなぁ

 

確かにそんな感じだったわね、先輩

 

 

 

とまぁ、約1名の名誉を犠牲(話題)にしながら、3人は和やかに雑談に興じていた

 

 

 

 

 

 

お嬢様。そろそろ着きますが?

 

 

??

 

運転手が目的地に到着する事を告げると

 

おっ、そうか。スカーレットにウオッカ!悪いんだけどな、黙っててくれよ。アタシが乗ってる事は

 

満面の笑み(・・・・・)で頼んできた

 

 

え?

 

いや、お前もしかして

 

 

スカーレットとウオッカはまさかの可能性にいきついた

 

だが、名門と言われているメジロ家のウマ娘であるゴールドシップがまさか。と思い直そうとしたが

 

 

お二人のご想像通りです。お嬢様はマックイーンお嬢様に黙って此処におられます

 

 

やっぱりかよ

 

ええ、何やってるのよアンタ

 

まさかの事実とお嬢様と呼んでいる人物の隠し事を躊躇いなく暴露する運転手の双方に戦慄する2人(スカーレットとウオッカ)だった

 

いや、お前。そこは隠そうぜ!

 

そうは言われましてもなぁ。一応シップお嬢様を尊重してマックイーンお嬢様には(・・)黙っておきますが

 

ん、まぁそれなら良いか

 

 

いいのかよ、それ

 

何なのかしら。お兄ちゃんと似た様な空気を感じるんだけど

 

いやいや。兄貴ってそんなに我儘じゃないだろ?

 

 

 

 

ウオッカの想いとは裏腹に彼女が兄と慕う人物はわりかし身勝手である。ただそこに理屈や結果を残す事で黙らせるという、ある意味ではゴールドシップよりも性質(たち)が悪いのであったりするのだが

 

 

 

目的の為には倫理観や面子(不要なもの)など投げ捨てるべし

 

それが短いながらに彼からゴールドシップが学んだことであった事をスカーレットが知らなかったのは果たして幸運だったのだろうか?

 

誰にも分からない。当の本人達(彼とゴールドシップ)にさえも

 

 

 

 

 

 

 

そして、3人(1人は隠れているが)に彼が合流した

 

 

彼はトレセン学園に向かわず、自宅のマンションから迂回ルートを通って合流する事にしていた

 

実はタキオンを前日からトレセン学園の寮においだ、もとい避難させていた

 

何せ、此処(マンション)は一部の心無い人たちによりタキオンにとって安住の地となり得なくなっていたからだ

 

現在はそれでも一応(・・)は彼女も帰ってきているが、何よりもタキオンの安全を優先したい彼は密かに特別顧問達(秋川理事長と駿川秘書)へとある提案をしていたりもする

 

 

 

 

彼個人であれば、記者達の目を欺くのはそこまで難しくはないし、そもそも記者達は大っ嫌いなので、位置関係などはある程度とはいえ把握している

 

 

そして、妹達(スカーレットとウオッカ)に連絡を入れて合流した訳だが

 

 

 

どうも、お世話になります

 

いえいえ、いつもシップお嬢様がお世話になっております

主に代わりお礼申し上げます

 

 

と運転手と軽い挨拶をしてから、彼はおもむろにバスの最後部にまで態々来た

 

 

 

ふぅん?

 

彼はそう呟くと、『足で二度』近くの椅子の脚を蹴った

そして、妹達の元に戻ったのだが

 

 

(やべぇ、気づいてんのかアイツ)

最後部の収納部分に潜んでいたゴールドシップは戦慄した

 

 

 

 

が、少し待ってほしい

ゴールドシップというウマ娘は同年代のスカーレットやウオッカと比べても高身長である

しかも、である。彼女の気質的にじっとしているのが『とても』苦手でなのだ

 

 

さて、収納部分に気づいていないならまだしも、彼はタキオンや同行する友人達に妹達の為に警戒を怠る訳にはいかない

 

 

当然気付く

中に何かいることも

 

 

 

が、此処はメジロ所有のミニバス。そんなところでこんな事(・・・・)をする人物など彼は1人しか知らない

 

マックイーンからメジロの他のウマ娘(ライアン、パーマー、ドーベル)の話は聞いている

が、聞いたところではそこまで奇矯な行動を取るとは思えなかった

 

となれば、彼が知る限り1人しか該当しない

 

 

 

そこでわざわざ近くの椅子の脚を『二度』蹴ったのだ

 

中に潜んでいる人物(ゴールドシップ)に聞こえるように

 

 

 

 

 

 

 

そして、彼女は正直にも動いてしまう

彼がよく知る彼女(ゴールドシップ)の癖で

 

 

彼からすれば、中身さえ確認できれば問題視する理由はない

 

それだけだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、陽動作戦の混乱の最中タキオン達と合流したのだ

 

 

 

よ、タキオンにルドルフ。それにマックイーンにネイチャに、タイシンさん?

 

なんでアタシだけ呼び方かえるの?

別に呼び捨てでいいっての

 

アッハイ

 

 

という一幕があったとかなんとか

 

 

 

 

 

因みにゴルシの必死の努力によりマックイーンには(・・)バレずにすんだとだけ言っておく

 

 

 

 

しっかしなぁ。マックイーンとこの人も大概ヤベェよな?

 

否定したくはありますけど、否定出来ませんわね

 

流石にあそこまでやる必要があったのだろうか?

心情的には理解できるとはいえ

 

 

 

彼の言っている事は彼女達が合流する為にメジロ主導で行なった警察まで巻き込んでの陽動作戦の事だった

 

確かにあれからも自重しない彼等は鬱陶しくはあった

だからとて、あそこまでするとは彼にも想像できなかったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この苛烈とも取れる対応だが、メジロからすれば当たり前の措置であった

 

 

幾度にも及ぶ警告。更に政府すら利用してまで色々としてきたのだ

 

メジロ側からすれば、彼等に十分配慮したといえるだろう

 

 

 

 

そして、あの騒動(マンションの一件)

 

譲歩しても、あちらは当然のようにその分だけ前に出る

分かってはいた事だが

 

 

そしてメジロ当主とて親である

 

子供たち(マックイーンやゴールドシップ)が関わってもいる問題だ

 

 

 

 

 

常にメジロの重責(次世代のメジロを受け継ぐもの)を感じていたマックイーン

故にいつも余裕がなく、趣味(野球やデザートを食する)でしかストレスを発散できなかった

姉妹にすら、壁を作っていたあの子がトレセン学園に通い、良い方向に変化していった

 

 

ゴールドシップ

メジロのウマ娘としての教育を受け、それを身につけているにも関わらず常に自由であろうとする健気な子

学校においても、家においてもいつも壁を作っていた

 

 

歯痒かった

名門と言われているメジロ当主。なのに、自身の子供一つ守れないのか?と

 

 

 

メジロ当主としての自分

あの子たちの親としての自分

 

 

どちらも自分のはずなのに、どちらかを選ばねばならなくなる

 

情けない言い訳であり、笑い話にもならない

 

 

 

 

だが、今年に入ってからゴールドシップは変わり始めた

 

 

彼に出会い、彼女(アグネスタキオン)に出会い

良き先達(トレセン学園の先輩)に出会い、学び

 

学校においても、アグネスタキオンの従姉妹であるアグネスデジタルに出会い。

ないと思っていた居場所を見つけたのだろう

 

そうすると周りを見渡す余裕が出来、姉妹たちとの仲も目に見えて良くなってきた

 

 

 

 

多かれ少なかれ、ヒトは互いに影響しあって生きていく

 

 

親として、自分の手で子供達をキチンと導けなかったのは情けない限りだが、あの子達が笑ってくれるのであらば、私の安いプライドなどどうでも良かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

温厚な草食動物でも、子供を守る為ならば死に物狂いになる

 

 

 

 

 

 

だからこそ

 

 

 

 

 

 

 

 

娘たちの未来を奪おうとする者たち相手に、躊躇いなどあろうはずがない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この様な事情があった訳だが、当然の事ながら誰一人知るものはいなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ、その辺りはどうでもいいだろう?

それよりもキチンと用意してきたかい?

 

・・・・甚だ不本意ながら、な

 

 

タキオンからすれば、どうでも良い話なので自分の彼氏に海水浴の準備をしているか、訊ねた

 

何せこの男、自分の都合が悪い事については意図的に手を抜く悪癖があったりするのだ

 

今回は恋人である自分だけでなく、他のメンバーもいる

となれば

 

 

あ、忘れたわ

 

 

などとぬけぬけと言い出しかねない

かくいうタキオンとて、その様な状況の場合は高確率でそうするだろうとは思うが。これはこれ。それはそれ。である

 

とても素敵な恋人同士(似た者同士)だった

 

 

 

 

 

ふむ、キミとしては不本意なのかな?

 

少しばかり眉を下げて聞くルドルフ

 

 

 

実はルドルフ、生徒会メンバー(エアグルーヴとナリタブライアン)に頼み込んでわざわざ水着選びをするくらいにこの海水浴を楽しみにしていたのだ

 

秋波を寄せる相手が乗り気でなかったというのは、流石に堪える

 

 

 

んー、そりゃあなぁ

タキオンやスカーレットならある程度は慣れてるけど、ルドルフにせよマックイーンにせよ、ネイチャにせよ、タイシンにせよ、ウオッカにせよ意識はするだろう。俺も男なんだからよ?

 

 

 

 

・・・・・・そうか。

うん、そうなのか。それは仕方ない事だ

 

はっきりと言いますのね

 

いや、恋人の前で堂々と言うことなのかな?それ

 

・・・・あっそ

 

兄貴も大変だなぁ

 

いや、ウオッカ。アンタもその一人なのよ?

 

 

 

彼のカミングアウトにそれぞれの反応を見せる

 

 

 

シンボリルドルフは言葉こそ冷静だが、絶賛尻尾と耳が大活動中(大はしゃぎ)

 

メジロマックイーンは褒められるのには慣れているのだか、あまり内心を語ろうとしない彼の言葉に少し照れていた

 

ナイスネイチャは照れていたが、それ以上に恋人の前で堂々と発言した事に戸惑っていた

 

ナリタタイシンは無関心の様であったが、少しばかり尻尾が揺れていた。が、それと彼の発言の関係は不明である

 

ウオッカは兄貴分の立ち位置に少し同情し、スカーレットはそんなウオッカに呆れていた

 

 

 

 

 

 

 

 

その影で

 

 

(畜生!アイツをからかえる貴重な機会だったのに、マックイーンがいるから、出られない!)

 

と内心歯噛みしているウマ娘がいたとかなんとか

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、タキオンの懸念は無用だったりする

 

何せ、相手はマックイーン

例えスイーツに目が無かろうが、応援してる球団が最近絶不調だろうが手抜かりは、ない

仮に彼が水着を忘れたと言ったとしても、即座にマックイーンが手配する事請け合いであるのだが

 

 

 

もしも、彼が(くだん)の球団の試合のチケットを持っていたらわからなかったのは、本人の名誉のために伏せておくが

 

 

 

 

 

 

 

ただ、彼としても今回断れなかったのは、単にタキオンやスカーレット。ウオッカがいるからでは決してなかった

 

 

実は最近、彼の中において少しばかりの変化が起きていたのだ

 

 

 

 

今まではタキオンを中心とした人物しか見てなかった

 

だが、ここにきてその軸がぶれようとしていたのである

 

 

 

 

 

タキオン最優先なのは変わらない

 

そして、スカーレットとデジたん

これも変わるまい

 

 

そこに妹分として慕ってくれるウオッカ

 

そして、自身に気負う事なく接してくれているシンボリルドルフが入ってきたのだ

 

 

 

 

彼はまだ自覚していないが、少しずつ。だが、確実に彼の中で何かが変化していっているのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これを何よりも誰よりも喜んでいるのは、他ならぬタキオンだった

 

幼馴染である彼の変化に気づかないほど、タキオンの彼に対する執着は弱くない。

 

だが、

だからこそ。彼とルドルフの接触機会を増やそうとしているのだ

 

 

 

 

 

 

 

1人(タキオン)では、もう彼は止められないと朧げながらに思っているから

 

 

 

人生は重き荷を負うて 遠き道を 行くが如し

 

かの天下人徳川家康公の言葉にある

 

 

彼は様々なものを投げ捨てて、此処にいる

だが、人生とは、生きていくということは何かを背負いながら、その重荷に耐えながらも歩んでいくものだ

 

最近になって、ようやくタキオンもそう思える様になった

 

 

 

 

だから、彼にも私以外を気にかけて欲しい

 

 

そうでなければ、いつか彼が何処かへと消えてしまう気がしてしまったのだから

 

 

ルドルフもまた、自分と同じく愛が重いだろう

 

それで良いのだ

 

 

 

 

 

 

 

彼を独り占めしたい気持ちも勿論、ある

 

 

いつもそばにいて、スカーレットとデジタルだけ居れば良い

そう思う自分も確かにいる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

認めよう。私は弱い事を

認めよう。私だけでは、彼を守れない事を

認めよう。彼をここまで追い詰めたのは他ならぬ、私なのだと

 

 

 

 

 

だが、それでも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼がそばに居ない自分など受け入れない

彼が壊れていくのを黙って見ているなど、耐えられない

彼の微笑みが、見たいのだ

 

 

 

 

 

 

 

アグネスタキオンというウマ娘は、どちらかというと与え続けられてきた

 

彼に食事を、平穏を

 

 

 

だからこそ、アグネスタキオン(弱い自分)を認め、始めよう

 

彼と共に描く、明日を

 

 

 

既にこの話はルドルフとも機会を見てしている

 

 

 

彼女も複雑そうではあったが、最終的には同意してくれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時、私とルドルフは勘違いしていたんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ間に合う(・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




というわけで最後の方はスカーレットほぼ空気だった気がする


おい!このスカーレットメインとか、中身スカスカじゃないか!
とか
ここのしまうましまうとか、考えてませんよ? 

サクシャウソツカナイ


お気に入りが順調に増えてて、いつルドルフの腹筋壊そうか考え中


あと、贅沢かもしれませんが感想欲しいです(切実)


!!
感想なくて、心が乾燥する

これだっ!


というわけでご一読ありがとうございました


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 妹達から見た海水浴の裏側(後編)

さて、久しぶりに短いぞー

最近らしくなく、長文が続いてたからそろそろ元に戻したい

この小説はスナック感覚で読んでもらえるくらいでちょうど良いと思うの


紆余曲折あったが、ミニバスは無事にメジロ所有のプライベートビーチに着いた

 

 

最近では水上バイクなどが沿岸をウロウロしていることが多かったのだが、海水浴のシーズンであることからメジロ側もある程度水上バイク部隊を配置

 

無法者達への対策を欠かすことはなかった

 

 

もしもの話だが、これがなかった場合は如何にマックイーンと言えどもプライベートビーチに友人達を招くことはしなかっただろう

 

 

 

メジロの名誉にかけても、ここでの話は部外秘だったのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それで、何か言い訳はありまして?

 

ま、マックイーン。とりあえず落ち着けって

 

ゴールドシップは絶賛ピンチだった

どのくらいピンチかといえば、ラスボス戦開始時にセーブと回復を忘れたくらいである

 

 

怒れるマックイーン

それはメジロにおいて、逆らってはならぬ者

 

こと、要領のいいゴールドシップであるが、特に今年に入ってから彼女は毎回の様にマックイーンに怒られていた

 

が、なんだなんだ言っても可愛がられているゴールドシップである。スカーレットの様に、蝶よ花よと愛でられているわけではない

 

 

どちらかと言えば、ヤンチャなきかんぼうに対する様な扱いであったが概ねゴールドシップは満足している

 

 

後年白銀の騎士娘(シルバーナイトガール)と呼ばれる事になる彼女とて彼やタキオン。それにトレセン学園の先輩達から見ればヤンチャなゴールドシップは可愛いものといえたのだ

 

そうであるから、大体ゴールドシップが怒られていても彼なり、タキオンなり、ルドルフ達が庇ってくれているからマックイーンとて強く出れなかった

 

 

 

が、今回ばかりはゴールドシップの危機だろう

 

 

 

 

悪ふざけをしあう間柄である彼はゴールドシップの危機をきき(・・)ながら、鰈の調理動画を見つつ華麗(・・)にスルーしていたが

 

 

原因は現地に着くと、彼女達は皆バスで着替えを始めた。勿論、彼と運転手は降ろした上で、だ

カーテンも全て閉め、いざ着替えようとした時にそれは起こった

 

 

当然、カーテンを閉め切ったバスの中は少し暗かった

電気を点けようという意見もあったが、同性同士といっても恥ずかしがるウマ娘がいた為に点けることをしなかった訳だ

 

 

そして、着替えのために皆距離を取ったのだがバスな最後尾で着替えていたシンボリルドルフが少しふらつき眼鏡を落とした

 

急激な視界の変化に対応しきれなかったルドルフはたまたま(・・・・)近くにあった(・・・・・)収納ケースに倒れ込んでしまったのである

 

 

予期せぬルドルフの行動に着替え途中の皆も電気を点けて、ルドルフの元に向かった

 

 

 

 

 

そこで見たものは、倒れ込む半裸のルドルフと唖然とした表情で収納ケースの中に収まっていたゴールドシップ(従姉妹)だった

 

 

 

先に言っておくが、別にマックイーンとてゴールドシップが嫌いではない。寧ろ規範的なメジロのウマ娘の中で染まる事なく、己を貫こうとするゴールドシップには感心しきりだった

 

 

 

 

 

だが

これはダメだろう

 

 

 

故にこそ、マックイーンは怒っているのだ

 

 

 

因みに、ゴールドシップの潜んでいた収納ケースは蓋を被せると左右に蓋がぶれない様なものだった

普通に弄ったのであれば、開くことは決してなかった

 

ところが、である

ルドルフはその収納ケースの左手前に倒れ込んだ。

 

それにより、ちょうど畳返しの様に蓋が浮き上がった

 

これではどうしようもない

 

 

 

これにはシラオキ様も大爆笑必至であろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

此処(海水浴)にゴールドシップを呼んでいないのは、彼女にも中学校の生活があるからと考えている

 

では、平日に海水浴なんかに行くな。との非難もあろうが、マックイーンとしても警備上、土日では無理とのメジロ本家からの要請があったからやむなくこうしたのである

 

 

 

要請などようせい(・・・・)(良くしなさいの方言)

 

といったところであろうか

 

 

 

 

 

 

 

だが、救いはあった

 

 

あの、マックイーン先輩。怒られる気持ちはわかるんですけど、やっぱりゴールドシップさんもお姉さんである先輩と一緒にいたかったんじゃないでしょうか?

 

 

同じように姉を慕っているダイワスカーレットがゴールドシップのフォローに入った

 

そう、なんですの?ゴールドシップさん?

 

 

いつも飄々としているゴールドシップである。長い間一緒にいるマックイーンだったとしても、その様な考え方は出てこなかった

 

 

だが

 

 

ば、ばっか。アタシがそんな事思う訳ないだろう!

 

 

言葉でこそ、否定している。しかし、その顔は真っ赤であり、声も震えていた

 

 

つまりは動揺しているのだ。マックイーン同様(・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あまいあまいと思いつつも、マックイーンはゴールドシップの事を許してしまった

 

 

 

 

 

 

その後、ナイスネイチャと彼による自作の弁当が振る舞われ、一部のウマ娘(ルドルフ、タイシン、ウォッカ)がショックを受けた事は、まぁ余談だろう

 

 

 

 

 

 

この日を境にゴールドシップは様々なウマ娘に自分の姉(メジロマックイーン)の事を話し回る事になり、マックイーンの恥ずかしがる回数が増えたのだが、それもまた余談である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、メジロ当主はとある人物に連絡を入れていた

 

 

 

 

お久しぶりですね

 

 

わざわざ貴女が連絡してくる。これ以上に不吉な事もないだろうな。やれやれさ

 

 

電話先の相手はため息混じりだった

 

 

 

ええ。本来なら貴女に連絡を取る事自体が尋常ならざる事ですわね

 

 

其方の悪い癖だ。一々前置きが長い

 

 

そうですね

では単刀直入に言いましょう

協力して欲しいのです。子供達の未来(明日)を守るために

 

 

ふぅ。未来、か

 

 

当主の言葉を聞き、何かを思い出すようにため息をつく

 

 

 

 

彼女が思い出すのは、あの時の光景

 

 

自分が認め、尊敬していた人物。可愛がり、その力量(チカラ)もあったあの娘

 

一緒に歩んでいける。誰もがそう思っていた

 

 

 

 

 

 

だが、何処かで致命的に間違えてしまった

 

 

あの人は永遠に喪われ、あの娘の笑顔もまた失った

 

 

 

 

 

それ以降、彼女は世間から隠れるようにして生きてきた

 

期待するだけ、絶望する

なら、期待しなければ絶望する事も、また涙する事もない

 

 

そう思って

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貴女にこう言いたくないのだけど

 

 

メジロの当主を務める女性は躊躇いがちに言う

 

 

いつまで逃げるつもりなのかしら、貴女は

それで、あの人達が喜ぶとでも?

 

 

言ってくれるな

 

 

『先に進むもの達の責務を果たせ』

あの人の言葉だったわね

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだ

 

 

 

 

ある時、私を指導してくれていた彼は私に言った

 

 

 

〇〇〇〇。俺は所詮は国の言う事に逆らえない臆病者だ

自由とは到底言えないんだろうさ

お前さんもそうだろう。

 

だがな、俺たちが求めているモノ。今は果てない道の先にあるかもしれん

でもよ、それで諦めんのか?逃げだせるか?お前さんは

 

 

俺たちがしている事は無駄に終わるかもしれん

 

だがな、いつかやがて俺たちの歩んだ道を目指してくれる者達が現れる筈

俺たちはそいつらが目指せるものであるべきなんだよ

それが先に立つ(発つ)者の仕事だ

 

 

 

 

 

 

 

嗚呼、そうだったのだ

 

 

 

 

 

彼女は眩しそうに目を細め

 

 

 

 

懐かしい文言だな。確かに今の私を見れば、あの人なら容赦なく喝を入れているだろうさ

 

 

っ!

そうね

 

 

メジロの当主は電話先の人物の声に力が戻った事を理解した

 

 

さて、何をすれば良い?

既にウマ娘としては働けない私だ。それでも私にしか出来ないことがあるから、連絡してきたのだろう?

 

 

 

 

大胆不敵。傲岸不遜

 

世間からそう言われ続けながらも、ウマ娘として一つの時代を築き上げた彼女の心に火が灯った

 

 

 

おおかた貴女の悪巧みだ。中々楽しそうな事になるだろうが、それもまた一興。精々観客達を沸かせて見せよう(魅せよう)

 

 

 

 

 

 

 

 

此処に『旧き巨星』と言われたウマ娘が舞台に上がる

 

 

 

自分がかつて信じた、守ろうとして守れなかった者達の想いを

そして、今まさに崩れ落ちそうになっている者達の想いを

全てを無駄にしないために

 

 

 

 




というわけで一部のウマ娘がふっきれました


みんなのゴルシはこれから、さらに皆を振り回してくれるでしょう



最後に出てきたウマ娘は実在の競走馬モデルのウマ娘です


あと、サイゲのカバーが広くなりすぎて、一部考えていたウマ娘が軌道修正しなければならなくなったのはここだけの話


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  舞台に上がるとき

トレセン学園稼働一年目にして、クライマックスになる小説があるそうです

しかも、ウマ娘のレースについてほとんど触れてもいない


はい、私めです


許してください、なんでもはできませんが

今回は過去話と政治オンリーですが、どうぞ


総理による衆院解散宣言は様々な動きをもたらすこととなった

 

 

事情はどうあれ、総理の勝手な判断により解散総選挙となった以上、現与党に総理の席はなかった

 

選挙対策も充分になされていないまま、選挙戦に突入すると見られていた為である

 

 

 

 

 

 

ところが、解散が決まった日。現政権の財務相を務めている人物を始め、総理などがこぞって党本部に離党届を提出したのである

 

人数としては二十数名

与党の衆院議員が六十数名であり、三分の一にもなる人間が一斉に離党届を出してきたのである

 

当然だが、党の離党届を受理する者は驚くほかなかった

 

確かに総理を罷免しようとしていたし、今離党しようとする者達の大半には声をかけていなかった

 

 

 

だが、風見鶏(日和見)で有名な議員すらもその中にいるとは思わなかったのだ

 

制止しようとする党幹部達を他所に彼等は速やかに結党届を提出

 

現総理が新党結成という前代未聞の事となった

 

 

 

 

 

そのため、政治的空白が総選挙まで起きる

 

本来であれば、他国から色々と言われる行為であったが、親日路線を維持している隣国よりは

 

 

ウマ娘の問題が日本においても大きな関心ごとになっていることは非常に喜ばしい事である

 

とのメッセージが発信されるにとどまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に総理降ろしの中心人物である与党重鎮の選挙区において、とある人物が衆院選に出バを表明した

 

 

その人物の名はクガヤシといった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女はウマ娘であり、今から20年以上前に自身の今でいうところのトレーナー。それに後輩であったナツフジ。この2人と共に日本におけるウマ娘という存在を周知のモノとさせたのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウマ娘という者について、当時はほとんど理解されておらず、ウマ娘として生を受けた者達は帽子を被り耳を隠し。ダボダボのズボンを履く事で尻尾を隠し生活していた

 

田舎においてはそれなりに理解があったものの、逆に都市部においては一種の化け物の様な扱いを受けることすら頻繁にあった程だったとされる

 

 

そんな日々に嫌気がさしていた若き頃のクガヤシはある日、変わった人と出会った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その若者はある財閥の御曹司であり、財閥のトップという社会的に重要な立場を有していた父と一般家庭の出ながらも大恋愛の末に結婚した母の間に出来た唯一の子供だった

 

 

それ故に父の両親や親族と母の両親の仲が悪かった事を幼い頃から理解せざるを得ない立場にあった

そこで様々な立場がある事を幼心に理解した。理解しなければならなかった

 

 

当たり前だが、彼は悲しく思い、成長するにつれてその感情は嘆きへと変わっていった

 

 

だからこそ、彼の周りには様々な立場の者達が集まってくる

父に近しい者達の親族。母に近しい者達の親族

お金持ちである彼の財産目当ての人物に、単純に彼の考え方に興味をもった者

 

彼はどの様な人物であっても、拒む事なく、先ず話し合う事を何よりも大事としていた

 

 

 

 

 

そんな彼がある日友人から聞くことになる

 

 

どんな日でも帽子を被り、ブカブカのズボンを履いている女性がいるという事を

 

 

彼は興味を持ち、その人物と会おうと決意する

 

 

当然、特に彼の父の関係者は怪しい人物に近づく事をよしとしなかったが、彼はそんな意見に耳を貸す事などなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、クガヤシと御曹司である彼は出会った

 

 

初めこそクガヤシはウマ娘である事を隠そうとしていたのだが、幾度も会うとなればミスの一つや二つは出てくるもの

 

結局、耳がバレてしまい、そのまま自身がウマ娘である事を告白しなければならなくなった

 

 

 

これで彼との楽しい時間も終わりか

 

 

クガヤシは迂闊な自分自身に腹を立てる一方、一抹の悲しさを感じていた

 

 

 

だが、彼はクガヤシがウマ娘である事に関心を持つ事こそあったが、別に彼女を拒否する様な事はなかった

 

寧ろ、何故クガヤシ(ウマ娘)を拒否せねばならないのか?

 

と逆に聞かれる始末

 

 

 

 

世間知らずだった彼にクガヤシはウマ娘について教えた

 

 

人よりも力が強く、足が速く、聴覚も優れている

人とは違う生き物だ、と

 

 

説明しながら

 

 

(何でこんな事をウマ娘である私が教えているのだ?)

と疑問をおぼえながら

 

 

 

そして、特徴的な外見(耳や尻尾)により、社会より避けられている者だとも

 

 

 

 

 

 

 

それに対して、彼は疑問に思った

 

確かに自分たち()とは違う部分もあるのだろう

だが、少なくとも目の前にいるクガヤシ(ウマ娘)は理性的で、興味深い事を知っており、笑い、悲しみ、喜びもする

 

 

違う部分があったとしても、はたしてそれだからと受け入れない理由になるのか?

 

 

 

そんな事を言い出したら、人種によって肌の色も違うし、言葉や風習とて違うのだ

 

 

果たして、そんな事があって良いものなのか?

 

 

 

 

 

彼はその日クガヤシと別れてから、自室に戻り考えにふけった

 

 

 

 

翌日、マスメディア関係の親族を持つ友人にそれとなく聞いてみた

 

 

ウマ娘とは何か?と

 

 

 

その友人はそれに対して

 

なんだ?その、ウマ娘ってのは?

と返してきた

 

 

 

そこで彼は様々な職業に就いている親族や友人を持つ友人達に聞いて回った

 

 

ウマ娘とは何か?

 

 

 

ところが誰一人として、明確な答えを持つ者はいなかった

 

法律関係者や医療関係者、政府関係者を親族に持つ友人達でさえも

 

 

 

 

 

そこで彼は一つの集まりを主催する事にした

 

 

『ウマ娘研究会』である

 

これはウマ娘というものについて考えると共に、共存社会についても考えるというテーマを持った集団であった

 

 

 

彼は幸いにして、当時私立大学の学生であり、彼の実家や彼の友人達の実家から少なくない資金的援助が行われていた

 

成績等に反映してほしくはなかったが、このサークルを創る際にはこれが大いに役立った

 

 

大学の学園長や理事長としては、色々と複雑なテーマであるウマ娘を掲げたサークルなど本音としては創ってもらいたくはなかったが、そうもいかずやむなく承認した形であったのだが

 

 

 

 

そして、このサークルが活動し始めると、興味本位の参加者も現れ始め、学生らしく知らない事を知ろうとする者も多数参加する事になってくる

 

 

 

そうして、いつしか唯の倉庫一室でしていたサークル活動であったが、大学の講義室一つをまるまる貸し切る程の規模に成長していった

 

 

 

 

そして機会を見て、彼はサークルの代表になっていた事からクガヤシへのサークル参加を要請する事になる

勿論、外部の協力者として認められた上で、だ

 

 

 

これにより、理想論であったウマ娘との共存社会のデザインが俄に現実味をおびはじめた

 

サークルに参加する者達は、制度面や医療体制、はては身体能力の明らかに異なるウマ娘専用の学園(・・・・・・・・)の設立。と言ったものまで議論し始める事になってきた

 

 

なお、この頃このサークルには若き頃の秋川家当主や桐生院当主に現総理の父親なども参加していたりもする

 

 

 

 

 

そして、ある日クガヤシは自分の後輩であったナツフジをそのサークル活動に参加させる事にした

 

ナツフジはウマ娘としては珍しく、大学などに通いたがり積極的に社会へと溶け込もうとしていた

 

ウマ娘の大半はウマ娘やその関係者のみで集まるか、ひたすらウマ娘てある事を隠して生きていく事を選択するのが普通だった中で

 

 

その為、ナツフジのサークル参加は本人やサークルメンバーからも好意的に受け止められ、更にサークル活動は活発になってきた

 

 

 

 

 

此処で彼等に転機が訪れる

 

 

サークルに参加している者の親族から、雑誌のインタビューの依頼が来たのである。あまり有名どころではない雑誌とはいえども、サークルの活動を世間に広く知らせる機会とあってサークルメンバー達は沸きたった

 

 

そして、クガヤシとナツフジもそのインタビューに同意した事で日本では初めてとなるウマ娘の記事が雑誌に掲載される事となった

 

 

 

 

反応は劇的だった

 

 

ウマ娘からは概ね好意的な反応を雑誌を発行した出版社経由で受け取り、大衆からは写真がなかった事からヤラセではないか?との抗議じみた反応もあったが、殆どが驚いた。という反応であった

 

 

 

 

そうして、注目度が集まればいよいよTVも動く事になる

 

 

今から20年前といえば携帯電話の先駆けとなるものが発売され始めた頃であり、インターネットも一般には普及されていなかった時期である

 

SNSの様に個人で情報を発信するなど、どだい無理だった時代であり、そうであったからこそ、TVの力は絶大であった

 

 

 

 

 

そのテレビが遂に『ウマ娘研究会』の活動に取り上げる事にしたのである

 

 

その頃には代表である彼とクガヤシの後輩であったナツフジが仲を深めており、テレビ放映により全てがうまくいく

 

 

そう、思っていたのだ

 

 

 

 

 

 

テレビ放映により、更に世間へと知られる事になった『ウマ娘研究会』である

代表は某財閥の御曹司で、その想い人はサークルに参加するウマ娘

 

 

なんともマスコミの好きそうなネタであった

 

 

そこで彼等マスコミは一計を立てた

 

 

サークルに初めて参加したウマ娘はクガヤシである

 

にも関わらず、彼等はカツフジが初めてサークルに参加したウマ娘と報じ、この活動の裏には彼とナツフジの恋があったのだと

 

 

センセーショナルではあったし、雑誌の記事を見ていない者が多かった為にこの意見はすんなりと受け入れられた

 

クガヤシもまた、世間の注目を集める為。というマスコミの意見を受け入れた

 

 

 

 

 

 

いや、受け入れてしまった(・・・・)のである

 

 

 

 

重ねて書くが、代表は財閥の御曹司。

その伴侶に立候補する者や推薦する者はかなりの数に及ぶのは想像できよう

 

御曹司のお遊び。程度にサークル活動を黙認していた彼等だったが、相手がそのサークルに参加している何処ぞのウマ娘となれば話は変わってくる

 

 

 

 

その後、彼等はありとあらゆる手を使ってサークル活動を妨害し始める。そして、それを悲劇的に報じるマスコミ

 

世間はそれに同情し、御曹司とナツフジの恋模様にそれを支えているクガヤシに注目していた

 

 

 

 

 

 

苛立ちを隠せなくなったある人物が凶行に及ぶ

 

 

 

ある人物を使い、御曹司とナツフジが二人きりになった時を狙い交通事故を装ってナツフジを亡き者にしようとしたのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、これは企んだ者からすれば最悪の結果を残す

 

 

ナツフジに向かって高速で突っ込んでくる車に対して、彼はナツフジを突き飛ばして(・・・・・・)守ったのである

 

代償として、彼は車に跳ね飛ばされ命を落とす事になったのだ

 

 

突然の恋人の死

ナツフジはそれに耐え切る事が出来ず、彼の後を追った

 

 

 

 

 

 

マスコミはこの悲劇的な事故を各社報道した

 

 

 

クガヤシはこれを知り、自分が彼とナツフジを死に追いやったのだと思い、サークル活動を抜け、世間から身を隠す事とした

 

 

 

 

 

 

 

 

これがその時を知る人達の記憶に鮮明に残る事件になるのは必然だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その人とウマ娘の共存社会を目指していた『ウマ娘研究会』の有名人であるクガヤシが出バを表明したのだ

 

しかも、現総理中心となって構成されつつある新党公認の候補者として

 

 

 

与党重鎮の地盤であるこの選挙区は長らく高齢者以外の投票が伸び悩んでいた場所であった

 

だからこそ、与党重鎮の確固たる地盤として機能していたのだが

 

 

 

 

知名度においては、それこそ当時の人間からすれば有名などというレベルでないクガヤシの出バは与党を文字通り揺さぶった

 

 

 

更にかつてウマ娘研究会に属していた人物が、ウマ娘との共存を掲げている新党の公認候補として次々と出バを表明し始める事になる

 

 

 

更に野党よりも離党者が出始め、全員が新党に合流する事になった

 

 

 

 

 

これにより、現職衆院議員だけで40名を超える新党として前代未聞の規模となっていた。更に与党の参院議員や野党側の参院議員なども合流してくる事も確実視されている

既に衆院議員のみで言えば、与党とほぼ同数の議員数を確保しており、連立を組んでいるからこそ、かろうじて与党は最大数を確保できているという有様に陥っていた

年齢層でいえば、総理を始めとして若手中心であり、最高齢が風見鶏と揶揄されている60代前半の議員である事から全政党の中でも平均年齢が1番若い政党でもある

 

なお、アグネスタキオンとその彼の地元選出議員も新党に合流していたりする

 

 

掲げる政策はウマ娘との共存社会の実現と社会システムの再構築。福祉、経済の再生。であった

 

 

新党には秋川、桐生院を始めとしたウマ娘関連の企業や組織が応援に入る事となり、ウマ娘研究会関係者もこぞって支持に回ることが確定していた

 

 

 

 

それに対する与党側は地元の有力者などに声をかけたり、著名人にも出バを要請している

 

 

なんとかマスコミを抱き込む事で民意を引き寄せようとしているものの、実務者として優秀な若手は全て新党に持っていかれており、残ったのは派閥調整に優れる古参議員や新党に合流すべきか、与党に残るべきか未だ迷っている頼りない議員ばかりであった

 

 

その為、政策論争などしようものなら、言い負ける事が避けられないと与党幹部達は頭を抱えてすらいる

 

 

野党は政権を投げ出した総理に資格はないとして非難しているが、それに対して

 

 

その資格の有無を論ずるための今回の選挙である

国民の皆様には不便と苦労をおかけするが、今後の国を担う重大な問題でありますから、どこへ投票するにしても選挙への投票はお願いしたい

 

とのコメントを発している

 

 

更に若手中心であるから出来るのか、新党に参加している議員のほとんどは某配信サイトに専用のアカウントを持っており、2日3日に一度は生放送をしている

 

 

非難のコメントであっても反応する事も相まってなんだかんだ言っても視聴者は多い。逆に配信をしない野党や与党へ苦情が寄せられる始末だった

 

 

 

 

 

 

 

 

虎の尾を踏んだとでもいうのか

 

 

与党重鎮の一人は苦々しく幹部の集まる会合で苦々しくこぼしたとされる

 

 

 

 

マスコミやコメンテーターなどには新党に対する不安や不信を植え付ける様に頼んでいるが、それに対しても手厳しい意見が飛んでくる始末だった

 

 

 

更に都合の悪い事に残っている与党議員の一人がアグネスタキオンの従姉妹であるウマ娘に対して強引な取材を行なう様、あるマスコミに依頼した事が暴露された

 

これだけでも致命的なのに、府中選出の元議員の疑惑について一部がマスコミによる捏造報道であった事もSNSで発信され、大問題となっていた

 

 

 

最早、マスコミとしてもトレセン学園やアグネスタキオン達に構う余裕は失われつつあったのである

 

 

 

 

 

これに加えてのウマ娘研究会(過去の亡霊)

利害の一致から手を貸して潰したはずの彼等がこのタイミングで牙を剥いてきたのだ

 

 

元々、御曹司を跳ねた車のナンバーは捜査記録にあったのだ

 

だが、当時既に議員職にあった彼が中心となって、これを握りつぶす様に圧力をかけた

なにせ、依頼人は彼の派閥の最大支援者だったのだから

 

その財閥は今でも彼の最大支援者であり、一蓮托生の関係だと()は思っていたのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

混迷を深める政治

 

それとはよそに続いていくウマ娘達の生活

 

 

描く未来

望む明日

果てぬ祈り

 

 

 

 

 

次回

 

最終編

『明日の為に』

 

 

 

ご期待下さい





とりあえず全部土台は出来たと思う

で、出来たよね?(震え声)

と、と、とりあえずよしっ!(無能猫)

次回より最終章となります
時期は不明ですが、投票により分岐するルートを設ける予定です。皆様におかれましてはご協力をお願いしたく思います


分岐により、ノーマルエンドとハッピーエンドとする予定です
勿論、どちらも書き切る予定ですが

ではこの様な小説を読んでくださりありがとうございました
宜しければ、また次回お会いしましょう


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 IFルート シンボリルドルフの場合

こんなルートもあったかもしれないという話


救いのない話なので、それが嫌いな方はバック推奨


シンボリルドルフはウマ娘である

 

 

だが、それだけではなかった

 

理解者(とも)がいた

友人(好敵手)もいた

 

 

 

そう、いた(・・)のだ

 

 

 

 

 

 

トレセン学園開校2年目になってから、生徒会長としての仕事は更に増え、ナリタブライアン(副会長)エアグルーヴ(書記)だけでは手が回らなくなってきた

 

そこで秋川理事長(元特別顧問)と相談し、生徒会メンバーの増員を決定した

 

一番の候補はやはりメジロマックイーン(元会長)であった。組織間の調整能力に優秀な事務能力

多少、問題点(スイーツにかける行き過ぎた情熱)もあるが、今年からは徐々にウマ娘達によるレースも大々的に開催される

 

そうなれば、マックイーンとて自然に減量出来る

 

 

更に()が遺してくれたレシピ

低カロリーのデザート、和菓子などの豊富なレシピ

 

 

これがあれば、問題ないと思ってはいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

申し訳ありません。ルドルフさん

ですが、今のわたくしにその資格はありませんので

 

 

そうか、そうだろうな。すまない、無神経な事を言ってしまった様だ

 

 

マックイーンの勝負服は元々白い予定だった

純白の穢れなきウマ娘

 

そういうテーマで製作された衣装だと聞いていた

 

 

あの日、マックイーンは友人(アグネスタキオン)と彼にそれを披露するつもりだったのだ

だが

 

 

 

 

 

だが、あの日

 

全てが狂ってしまった

 

 

マックイーンは嘆き、悲しみ、そして決断した

勝負服であった白い衣装を『黒』に変えてもらう事を

 

 

 

 

 

 

 

マックイーンの勧誘が失敗したルドルフは、そのままとある部屋に足を運んだ

 

 

ルドルフはあの日以来、1日に一度は必ず此処に通う事にしていた

 

 

その部屋には一面黒百合が供えられていた

 

 

 

 

 

 

 

会長、ですか

 

 

ああ、カフェくんか

 

 

その部屋の片隅で本を読んでいたのは、マンハッタンカフェだった

 

 

必要な時以外はこの部屋から出ようともしない彼女は、去年に比べて格段にやつれていた

 

だが、その瞳の光だけはギラギラと輝いている

 

 

 

元々、あまり人付き合いをしようとしなかった彼女だったが、あれ以来はますます他者との関わりを避ける様になっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれからひと月以上経った今でも克明に思い出せてしまう

 

 

 

あの日々(平穏)が失われてしまった、あの時のことを

 

 

 

 

 

 

 

その日は翌月に迫ったトレーナー達の受け入れ準備に追われていた日だった

 

ウマ娘としての自分達にとっての晴れ舞台

 

各種レース(G1.G2.G3)が夏から開催される事になり、それに伴いトレーナーというトレーニング監督者を受け入れる事は事前に決まっていた

 

 

予定では、今年の一月末からトレーナー専用の寮を解放してトレセン学園内にあるトレーナー専用施設なども順次稼働させる事になっていた

 

ところが、である

 

ある事情により、肝心の寮の完成が遅れてしまったのだ

トレーナー寮の完成自体はしていた。ガワ(建物)だけは

 

 

が、肝心要の内装関係、つまりは照明や各種設備、机や椅子、ベットなどの設置が遅れてしまった

 

 

この手配に時間を取られてしまった結果、ウマ娘達のトレーニングが始まる4月ギリギリまでトレーナー寮の完成は出来ていなかったのである

 

 

 

その辺りについて、私達生徒会や理事長達も時間を取られていたし、殆どのウマ娘はそちらに関心を寄せていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから、なのだろうか

 

 

その日の夕方、一報が入った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

発信先は警備主任だった

 

 

此処、生徒会室に備え付けられている固定電話。警備主任とはいえ、余程の要件が無ければ連絡する事は出来ない

 

 

 

 

嫌な、予感がした

 

 

 

ウマ娘としての、いや

ヒトとしての本能だったのだろうか、私はその電話を取ることを躊躇った

 

 

 

しかし

 

 

 

はい、こちら生徒会室。シンボリルドルフです

 

 

こちら、警備部。警備主任です

落ち着いて聞いてください

 

 

声が震えていた

怒り?悲しみ?

どちらとも言えず、どちらとも言える。そんな声だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・彼が亡くなりました

 

 

 

 

 

 

 

 

それを聞いた瞬間、私の全身から力が抜けてしまい、崩れ落ちた

 

 

 

 

 

会長!?

 

おい、どうした!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(シンボリルドルフ)が欲しかった、守りたかった者は私の手の届かない所へ行って(逝って)しまったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まって、いかないで!おいていかないで!!いっしょにいてよ!!!

 

 

まどろみの中、彼がどんどん先にいってしまう

その背中を(ルナ)は追いかけていた

 

だが、全力で私は走っているのにも関わらず、歩いているはずの彼との距離は一向に縮まらない

それどころか、どんどん距離を離されていた

 

 

 

 

わたしいいこにする。わがままいわないから!だから、いっしょにいてよ!!そばにいてよ!!

 

 

 

転んでしまった私は泥だらけになりながら、彼に向かって叫ぶ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしを、るなをみてよぉ!!

 

 

 

 

彼が私に振り向いた

 

その顔はいつものように少しだけ困ったような顔だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょう

 

 

 

 

いちょう

 

 

 

 

 

 

 

かいちょう!

 

 

 

 

 

 

 

会長!

 

 

 

 

 

 

 

 

此処は?

 

 

保健室です

 

 

そこにはエアグルーヴがいた

よく見ると彼女の目も真っ赤であり、明らかに泣き腫らしたものだった

 

周囲を見渡すと、私はどうやらベットに寝かされているみたいだ

 

 

 

 

あれから、どうなった?

 

 

私の問いかけにエアグルーヴはビクッと震えた後

 

 

ヤツは、ヤツは亡くなったと

 

 

 

エアグルーヴが無念そうに言う

 

男性が嫌いなエアグルーヴであったが、不思議と彼との相性は悪くなかった

言葉でこそ強く言うものの、エアグルーヴは貴様と言わずヤツと呼び続ける

 

一度ブライアンとタキオンとで彼女に質問(尋問)してみた。タキオン特製のオクスリを片手に持って、だが

 

 

そこまでして、やっと聞けた彼女の本音

 

 

 

貴様と呼び続けるのが良いのかも知れません

しかし、ヤツは「もっと力抜いてもええんやで?」と言っていましたので

 

という事だった

 

 

彼女なりの親愛表現だったのだろう

 

 

 

 

 

 

己を何よりも律するべきと考え、行動に移している彼女ですら、ここまで私同様に動揺しているのだ

 

 

 

 

だが、1番聞かなければならない事がある

 

 

 

グルーヴ。すまないが1番答えづらい事を聞かせてくれないか。タキオンはどうした?

 

 

私が最も憧れ、嫉妬もし、それでも親友といえる間柄にある。そして何より、誰よりも彼との関係の深い彼女の事を聞いた

 

 

 

タキオンは

 

 

グルーヴは良いよどんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アグネスタキオンにその連絡が入ったのは、ルドルフ達に連絡の入る僅か1分ほど前だった

 

 

 

 

そうか。わざわざ連絡ありがとうございます。彼の両親への連絡等はお任せ下さい

 

自室(研究室)にて連絡を受け取ったタキオンはその訃報を冷静に受け止めていた

 

 

彼女にはこうなる事がなんとなくわかっていたのだから

 

 

彼は自分の安全を容易く捨て去る

 

 

 

(アグネスタキオン)を守るため

(ダイワスカーレット)を守るために

 

 

 

だが、タキオンもスカーレットも

彼を兄と慕うデジタルもウオッカも

 

彼を想うルドルフ達誰もが、そんな事を望んでいない

 

 

 

 

ただ一緒に笑い合えればそれで良かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タキオンは口ずさむ

 

 

 

あなたに逢えた それだけでよかった 世界に光が満ちた 夢で会えるだけで良かったのに 愛されたいと願ってしまった  世界が表情を変えた

 

独り涙を流しながら

 

 

 

近づくことは出来ないオアシス 冷たい水をください できたら愛してください 僕の肩で羽を休めておくれ

 

 

アゲハ蝶

ポルノグラフィティ

 

最早あの景色は見られない

 

 

 

 

 

 

翌日、アグネスタキオンの姿はトレセン学園から消え去っていた

 

 

 

 

 

 

 

トレセン学園入学が決まっていたダイワスカーレットとウオッカは突如として入学を辞退

 

 

 

 

 

 

組織自体もタキオンと彼がいなくなった事により自然に消滅していくこととなる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これはあったかもしれない、一つの物語

 

 

 

 




一つ噛み合わなければ、こうなったというお話


実はこれから書くところは随所にバッドエンド直行の罠が仕掛けられる予定

許してください


では次回をお楽しみに


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明日のために
  満ちぬものたち


最終編第一話です

相変わらず混沌としている状況

少しずつ、確実に風呂敷を畳んでいく次第


では、どうぞ


政治の世界が大混乱となりつつあっても、学生達の生活は変わらない

 

 

 

そんな中

 

 

それはどういう事なんだ!!

 

アグネスタキオンは自宅であるマンションの自室にて大声を上げた

 

普段から飄々としている彼女からは想像できない姿である

 

 

対峙している彼とて、この姿を見る事は稀であり、出来れば見たくない姿でもあった

 

 

言葉通りだと思うけど?

タキオンはトレセン学園の生徒だ。今まで特例としていたが、全寮制である筈のトレセン学園で通学というのは問題が多い

だから、理事会からタキオンも寮に入るよう通達が来た。そういうこった

 

 

それこそ、おかしな話だろう?私がトレセン学園に来る際の条件としてキミとの生活があったはずだ。そうであったからこそ、私はトレセン学園に通う事を同意した

 

 

彼の言葉にタキオンは反論した

 

そもそも、トレセン学園に通うという選択肢をタキオンが知ったのはトレセン学園入学試験の僅かひと月前。本来であれば受験も間に合うはずがなかった

が、トレセン学園理事会承認のもとで特例措置として受験を認められ、学園周辺の物件からの通学を認められた

彼と自分が『現代のシンデレラと王子様』との噂になっていたからこそ、そこに利用価値を見出していた。それ故の破格の対応だったとタキオンは考えている

 

 

 

警備上の問題もある。これからは何があるのか不鮮明な中での生活を余儀なくされる

となれば、今まで以上の警備体制をする事になる。それでは色々と問題しか出ないだろう

 

 

 

 

 

この秋、彼女と彼を執拗に取材しようとして政府から事実上の廃業を勧告されていた大手マスコミの一つが倒産した

 

理由は資金繰りの悪化であり、政府の勧告によるものではないと報じられている

 

 

が、少し調べればその勧告が全てを決めたことなど明らかであった

 

 

タキオンが学園に通っている間、彼はトレセン学園の警備主任や警備会社などとも話し合い、こうなると今までとは比較にならないレベルの警備体制が必要になるという結論に至った

 

 

何せ、大手である企業が倒産するなど尋常な事ではなく、そこに勤めていた人達とて大勢いるだろう

それによって生活を支えられていた人ともなれば、想像を遥かに超える人数になろうことも

 

 

一流企業に勤めていたにも関わらず、いきなり職を失い、しかも同じ報道系企業への再就職も困難を極めるだろうこの状況

 

 

家族の仕事を誇りに思っていた者からしても、受け入れられるものではない

 

 

 

更にコメンテーターや自称有識者によるタキオンへの想像でしかない、無責任なコメント

これに対して、彼は全て名誉毀損として裁判を起こし、現在は係争中となっている

公判はまだ先ではあるが、相手からすれば彼という存在ほどやり辛いものもないだろう

 

何せ、彼は常に捨て身でかかってくるのだ

立場や地位があればあるほど、しがらみは多くなり、身動きが取れなくなるは必然

 

どちらにせよ、ある程度名の売れている相手であり、芸人などが相手である。イメージなどの問題になり、最悪自分たちのこれからの仕事にも差し支える可能性すらあったのだから、たまったものではない

 

 

当然だが、彼等にもファンがいる。そのファンからすれば彼は好意的に見る事は出来ないだろう

 

既に謝罪をしている者達については示談する事も視野に入れているが、未だに謝罪しようとしない者に対して彼は自分から動く気はない

 

動かなくても、その人物が所属する事務所が勝手に(・・・)対応するのは目に見えているのだから

 

自分で事務所を持っている、所謂大御所や重鎮などと言われている人物はこうなる前にすぐ謝罪してきている

 

 

主に若手に相当する者達は謝罪するのが嫌な様であるし、事務所としても余計なことはしたくないだろうが

 

 

 

 

だが、今回のとある企業の倒産を受けて動かないという選択肢はほぼ無くなった。というよりも怖くて取れなかったのだが

 

 

といったとて、自ら手を下した訳ではないが、そのきっかけを作った一人は他ならない自分なのだから

 

 

 

 

 

となれば、当然当事者視点では被害を与えた自分やタキオンに悪意が集中するのも道理であろう

 

トレセン学園にもその矛先は向かうであろうが、彼方には優秀な弁護士がついている

 

迂闊な事が出来るとも思えない

 

 

 

 

 

 

ルドルフについては、正直なところ申し訳ないと思っている

 

 

 

が、ある日それを詫びた時には

 

 

顔を上げてくれ。キミがタキオンを守る為に余裕がなかった事。私も理解しているさ

理事長からも言われたよ。私まで出る必要はない!とね

 

 

そうしてくれたなら、どれだけ良かったか

 

 

私の事も考えてくれて本当に嬉しく思う。だが、私はキミに色々と与えられすぎている

 

 

そんな事は

 

 

ない、とはたとえキミとて言わせない。キミがどう思ったのではなく、私がどう受け取ったのかが重要だろうからね?

 

 

はぁ

薄々感じていたが、ルドルフも大概頑固だな?

 

 

おや?それは光栄だ。私にとっては褒め言葉だろうね、それは

 

 

じゃあ、詫びるのは失礼だな

 

 

 

ルドルフ

 

ありがとう

 

 

ふふ。そう言ってくれるのか。そうだな、そちらの方が私にとって有難いな。アナタの力になれ、嬉しく思う

 

 

 

といったやりとりがあった

 

 

 

もっともルドルフとしては、いつもストレス解消に付き合っている(甘えさせてくれる)彼に対してこの程度では到底足りないとすら真剣に思っているのだが

 

 

タキオン曰く彼と自分の次に愛が重いのはルドルフであるとの事らしい

 

 

 

 

彼がルドルフのところを去った後

 

寧ろ私は嬉しく思うよ?他ならぬ私がアナタの盾になれるのであれば、どんな称賛の声より、勲章よりもその事実は勝る

 

それに、だ

 

 

と1人呟き、口元を歪めると

 

 

アナタとタキオンに私がいるところならば、たとえそれが地獄だったとしても、私にとっては天国さ

 

と笑った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悪意から遠ざけたいからこそ、タキオンはトレセン学園の寮に入るべきなのだ

 

どれだけ守れるか不透明なのだから

 

 

勿論、取れる手段は全て取るし、出来ることは全てするつもりだ

 

 

 

タキオンも一緒に戦うと言ってくるだろうが、これは俺の見栄(意地)なのだ

 

彼女と共にいる為の誓いでもある

 

 

 

タキオンを守ることも出来なくなったら、タキオンの元から去る

 

彼の行動原理であり、何があったとしても譲れない一線なのだ

 

 

 

強くもなく、賢くもなく、正しくもないし、綺麗でもない

 

 

そんな自分がタキオン(自分にとっての宝石)のところにいる根っこの理由は正にこれだった

 

 

 

そこだけは何があっても、揺らいではならない所なのだ

 

 

たとえ、タキオンに嫌われたとしても

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレセン学園内部においても問題が起きていた

 

 

 

いや、内部というには些か語弊があるだろうが

 

今年の12月に完成予定である筈のトレセン学園トレーナー寮

既に建物自体の工事は今月いっぱいで終了する目処が立っているのだが、残りの内装工事に問題が発生していた

 

 

この内装工事を担当する一部の業者が工期を延ばせないかと言ってきたのである

 

トレセン学園側からすれば、そこは工事を依頼した元請との話し合いであり、はっきり言えば工期さえ守ってくれるのであれば問題にするつもりはなかった

 

 

だが、彼らは元請を飛び越えてトレセン学園に直接連絡してきたのである

 

実はこの言い出してきた会社は分裂した与党に残っている議員の影響下にある会社であり、厳密には与党議員の弟が経営している会社であった。

 

その為、会社の規模はさておいても、影響力だけは無視し得ないものであったのである。そう少なくとも経営者は考えていた

 

 

 

 

だが、工事としてスタートする前ならいざ知らず、既に工事としては終盤に差し掛かっている

 

このタイミングでそれを言い出すのはどういう事か?と秋川理事長は首を傾げた

 

 

 

 

逆である

 

『今』だからこそ、この様な言い分を通せると向こうは踏んだのだ

 

内装工事と言っても、資材の手配や人員の手配、見積もりの作成などする事はかなりあり、それをこれから僅か2ヶ月しかない時間で出来るかと言われたら、誰も断言できない

 

 

替えを用意するにも時間がかかり過ぎる

なればこそ、『今』ごねるのだ

 

 

 

 

 

しかも、依頼主である政府は現在大混乱中

 

ともすれば、もう少し自分に有利になれる様動けるのではないか?

 

そんな考えがあったのだろう

 

 

 

なお、この動きは与党議員のあずかりしらぬところで行われていた

 

 

 

当たり前である。ただでさえ、クリーンなやり方を全面に押し出してきている総理率いる新党

それに対してなんとか候補者を立てようとしている与党だが、苦戦は免れない

 

既に世論調査において、既存の政党である与野党の支持を新党が超えているとのデータすら出ているところもある

 

下手をうてば、文字通り『致命傷』となることは間違いない

ましてや、この業者は与党議員への忖度の一環として選ばれたに過ぎない

 

 

 

本来ならば、工事を受注した元請が各種工事担当を決めるのが通例である。にも関わらず、この会社だけは上からの圧力により無理矢理ねじ込まれたのだから

 

 

 

もしも、このやり方を当の議員が知ったなら、顔色を真っ青にして止めるだろう

 

 

今まで(立場が安定している)なら、まだ庇い立ても出来るだろう

 

 

 

だが、今はそうではないのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、情報のリークとは何もマスコミだけのお家芸ではない

 

 

 

 

 

今回のこの越権行為に対して、最も不満を抱いたのは他ならぬ元請だった

 

既にトレセン学園生徒会や理事会から厳重注意を受けているのだ

一時は工事自体の存続すら危ぶまれる事態になった事を彼らは良く覚えていた

 

 

この工事だけではない

将来的に見た場合、トレセン学園の増改築やウマ娘関係の仕事の受注にも関わってくる。元請をしている会社の経営陣はそう考えていた

 

だからこそ、問題が発覚した時には現在トレセン学園の工事を担当している職員全てを入れ替えるべき。との話も真剣に話し合われたほどであった

 

 

そこまで神経質になっている工事において、自分達を無視して直接施主の一つでもあるトレセン学園理事長に直談判する協力会社など認められるはずもなかった

 

 

そこで、元請の会社の経営陣はこの様な事をした(くだん)の会社経営者に発言の撤回とトレセン学園側と自分たち元請への謝罪を求めた

 

 

 

 

 

だが、その対応を受けた側は自分の後ろには与党議員がいるのだと、あからさまに恫喝しようとした

 

話し合いにならないと判断した経営陣は直ちにその業者を現場出入り禁止、取引停止とした上で可及的速やかに(最優先の扱いで)代理の業者を探す事とした

 

それと共に、その業者に対しては法的措置の検討に入ったのである

 

 

 

 

その動きに不快感を持った経営者は自身の兄(与党議員)に力を借りるべく連絡を入れた

 

 

 

 

 

 

連絡を受けた議員は仰天した

 

 

それもそうだろう。こんな危険な時期によりにもよって、槍玉にあがる特大の爆弾を他ならぬ自分の身内が持ち込んできたのだから

 

彼は直ぐ自分の弟に対して、自重を求めた

 

 

弟の会社の仕事の大半は彼の立場があったからこそ、受注できたものであり、お世辞にも評判が良いとはいえなかった

だからこそ、自分の立場が失われれば、お前の会社だってヤバくなるのだぞ?と

 

 

事ここに至ってようやく理解した弟であったが

 

 

 

 

 

手遅れであった

 

 

相手は建設業界では中堅どころか大手とすら言える企業

 

即座に法務担当が動き、裁判を起こす事をマスコミ各社に文書で以って通達した

 

 

 

 

一つだけ弁護するところがあるとすれば、弟である経営者はトレセン学園の工事を引き延ばす事で兄を助けようという意識があったところだろうか

やり方は間違っていたが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

様々なモノを巻き込みながら進んでいく

 

 

その先の景色が見えるまで




というわけで、ifルートにおけるトレーナー寮の完成遅延は避けられる模様

別の問題が噴出しましたが、まぁいいでしょう



では今回より新しいアンケートを実施したく思います

皆様の一票がこの小説のルートを決定します
こぞって御参加下さると幸いです

あ、それとお気に入り五百件到達したので、記念小説っていります?
タキオンとルドルフに〇〇〇〇の甘々小説

よろしければご意見下さい
ではご一読ありがとうございました


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  交錯するものたち

記念小説を書くつもりが出来上がってしまったので、投げる

因みにこの小説のヒロイン枠のウマ娘には法則があったりします
気が向いたら、探してみてくださいな?


では、どうぞ


さて、私から言いたいことがあるのだが、構わないだろうね?

 

良いんじゃないかなぁ

 

な、投げやりだねぇ、まあいいさ

 

というか、俺も言いたいことあるのよ?タキオン

 

おやおや、珍しい事もあるものだねぇ。なら先に聞いても構わないよ?

 

では先に失礼するぞ?

何で、俺が縛られたんですかねぇっ!!

 

 

 

 

タキオンと彼は今、トレセン学園内にある

タキオンの研究室(マッドの巣窟)にいた

 

トレセン学園で有名なマッドといえば、現在彼の目の前にいるタキオン(大天使)である

 

が、流石は『個性の殴り合い』と関係者から密かに言われているトレセン学園である

 

データを集めることに執着を見せるエアシャカールや効率的に物事を進める事に情熱を燃やす、科学立国ドイツよりはるばる留学してきたエイシンフラッシュも頻繁に出入りしている

 

が、似たモノ同士であるタキオンと彼

 

実はこの男もマッドの気質を持っていたりもするのである

 

 

 

 

 

ただ、タキオンと決定的に違うのは余程のことがない限り、彼は他人を使ってのデータ採りをする事がないくらいであろうか

 

 

まぁ、これは彼とタキオン達の研究テーマの違いともいえる

 

彼にとっての優先課題は自分のスペックでどれだけウマ娘(タキオン)の力になれるかであって、ある意味では自身の能力を磨き上げる為に努力を重ねるエアシャカールやエイシンフラッシュとも通じる部分もあるといえるだろう

 

 

なお、やむなくデータ採りをする場合はマンハッタンカフェ(同好の士)ゴールドシップ(悪友)であったりするのは、此処だけの話である

 

前者には彼秘蔵の本

後者には2人で遊ぶ時間

 

それぞれ対価として用意している

 

 

それが釣り合うかについての議論は不要だ、よろしいな?

 

 

なお、このデータどりに興味を示したコードネーム『メカボーグ』ことミホノブルボンが一度被検体に立候補した事がある

 

彼としては些か以上に気乗りしなかったが、ブルボンたっての願いとあっては断りきれなかったという背景があったりなかったり

 

 

その対価として、エイシンフラッシュとエアシャカールと考えていた効率的なトレーニングを提供したところ、トレーニング大好き同盟(スズカ、ライス、ブルボン、タイシン)により即座に運用されたらしい

 

スズカ、ライス、ブルボンには非常に好評だったのだが、その時偶々参加していたグルーヴとブライアンにルドルフ。それにタイシンからは不評であった

 

 

エアシャカール、エイシンフラッシュにカフェと共に彼はすぐさま最適化をするべく協議を重ねようとしたのだが、怒れるグルーヴの強襲によりやむなく断念する事になった

 

 

後でスズカから聞いたところ、彼女達は基礎能力に不足があったとの事である

 

 

 

念のために記しておくが、トレセン学園の中でも生徒会メンバーは上位の能力を有しているし、弛まぬ努力をしているタイシンとて水準より遥かに高いレベルの身体能力を有している

 

ただ、スズカ達の基準が高すぎるだけなのであった

 

 

 

 

 

 

 

因みに我らが大天使(タキオン)についてはシャカール、フラッシュ、カフェ、彼にゴルシ。全会一致で被検体とする事は否決された

 

 

『タキオンには研究室で萌え袖クルクルさせとけ』

とはシャカールの弁である

 

 

なお、その白衣は彼が半年の時間をかけて、一人で作り上げたオーダーメイドであったりもするが、それは余談であろう

 

 

 

 

このメンツは一度ナチュラル・ハイになった際、豊胸効果のある試験薬が完成させた事があった

効果については、大凡8割問題ないという結論に至った為、完成品とカテゴライズしたのであるが

 

 

完成時にはマンハッタンカフェにエイシンフラッシュがいた。しかし、満場一致で廃棄した

それはもう、迷う事なく

 

 

カフェとフラッシュ曰く

 

 

これは争いの元となりかねない、との事であった

 

 

 

彼としても女性の価値として外見よりも内面であって欲しいとの希望より、その試験薬に関わるデータを全て処分したわけである

 

 

類は友を呼ぶ(朱に交われば赤くなる)。とは良く言ったものだ

 

 

 

 

 

そんな曰く付き(いうまでもないが、トレセン学園が開校して僅か半年も経過していない)の場所に彼は居る

 

しかも、何故か縛られて、である

 

 

 

 

 

 

 

 

勿論、これがタキオンなりの愛情表現だというのであれば、彼は謹んでそれを受け入れる覚悟はある

 

たとえ、世間様に顔向けできない趣味に目覚めたとしても相手がタキオンであるのならば、彼にとってそれは全て是となる

 

 

とはいえ、彼とて一般的な感性も持ち合わせている

本音を言えば、痛いのは勘弁願いたいのであるが

 

 

 

 

 

待ちたまえ。何か致命的な誤解がある気がしてならないのだが

 

 

タキオンが彼の思い違いを察したのか、訂正しようとするが

 

 

 

なるほろ、5階にいると思ったのは、ご言わせないっての!

 

 

タイシン、酷くね?最後まで言わせてよぉ

 

 

彼の寒いダジャレを阻止したのはナリタタイシンだった

 

 

 

あの海水浴以降、トレセン学園に来る機会は目に見えて減った彼であったが、その割にはタイシンとのエンカウント率は高かった

 

具体的には、体感8割くらいだろうか?

 

 

 

うむむむ

っっ!!そうだ、暗いところで泣く(cry)!これかっ!

 

 

アンタって

 

 

 

 

 

タイシンは肩を落とした

 

 

 

タイシンからすれば、トレセン学園に入る前からの悩みを目の前の男に解決してもらったのだ

 

どうしても意識してしまうのを止められなかった

 

 

我ながら単純だとは思っている

だから、それを彼の相手であるタキオンに打ち明けたのだが

 

 

 

やれやれだね。私の王子様はどうやら魔法でもつかえるのだろうかな?どう思うタイシンくん

 

と言われ

 

魔法ね。そうかも知れないけどさ、私たちが単純にチョロいって可能性もあると思うけど

 

と思わず返した

 

 

 

すると、タキオンは目を丸くして

 

 

 

 

 

ハハハハハ!それは確かに否定できないね!私達はチョロいか。いや、その発想はなかったよ!

 

 

タイシンの発言に大爆笑した

 

 

確かにウマ娘(自分たち)は世間一般的な女性に比べたなら、俗な言い方をすればチョロいのかも知れない

 

 

 

別にそれでも構わないと思うのだが、ナリタタイシンくん

 

 

だが、そんな事(・・・・)などどうでも良い。そうかんがえているのがシンボリルドルフというウマ娘だった

 

 

 

私もタキオンも、そして君もあの人に救われた。だから、想う。それだけで良いと私は思っているよ。幸いにしてタキオンはその辺については寛容だ。ならば私達は共に歩めると思うのだが

 

 

 

別に他人がどう思おうと、それは問題ではないのさ。問題なのは、その他人の考えに自分が従うのか、それともそれでも尚自身の想いを貫けるのか。それが問題だと私は思っているよ

 

タキオンは苦笑混じりで続ける

 

 

ルドルフにせよ、タイシンくんにせよ知らないだろうがね。彼は地元で『残念系男子』と呼ばれていたんだよ?

 

 

 

ハ?

アイツが残念ってどういうこと?

 

 

 

ほう。それは、初耳だな。タキオン、なぜそうなったのかな?

 

 

タキオンの突然の暴露に剣呑な表情を浮かべるタイシンとルドルフ

 

それはそうだろう

 

 

タキオンほど突き抜けていない2人である。他者からの評価が気にならないでもなかったのだから

ましてや、少なからぬ好意をいだいている相手を悪し様に言われるのであれば、そりゃ機嫌も悪くなろうもの

 

 

 

 

そう凄まないでほしいね。何、理由は簡単さ。私と今の様な付き合いをしていたのだからね

 

 

あー

 

 

それなら、理解出来るかも知れないな

 

 

 

 

 

 

当時から距離感がバグっていたと言われていたタキオンと彼である

 

 

 

当時、タキオンと彼が頻繁に買い物していたスーパーでのブラックコーヒーの売り上げが2人が買い物に来る前と比べて6割アップしたり

 

二人羽織用の大きな羽織が突如として彼女達の地元でブームになったり

 

商店街の一部店舗では密かに彼の成長記録として、各季節毎の写真を保存してたり

 

 

 

学校では頻繁にバカップル(イチャイチャ)していた2人であったが、実のところ学外でこそ、その存在は広く周知されていた

 

 

 

 

 

曰く

 

 

 

同年代のウマ娘のオトン

とか

 

ブラックコーヒーブームの火付け役

とか

 

羽織ブームの火付け役

とか

 

11月4日(タキオンと彼が初めて外で(・・)二人羽織した日)は二人羽織の日とした2人

とか

 

 

 

余りにも2人に付けられた渾名は多い

 

 

 

 

 

 

当時は2人だけの世界に浸っていた(逃げていた)タキオンと彼であったから、この辺りの事は全く知らないのであるが

 

 

 

 

 

 

 

結論として、タキオンはルドルフの他にタイシンも彼のそばにいる事を認めた

 

その時のタイシンは言葉こそ少なかったが、その尻尾ははちきれんばかりに動いていたとされる

 

 

 

 

 

 

 

 

時は戻って

 

 

くっ、ふふふっ。相変わらずアナタのいう事は面白いな

 

 

ルドルフは涙を流しながら、彼に話しかける

とはいえ、以前の様に蹲ってしまう醜態はさらせなかった

恋をしている1人の女として、想い人の前でその様なザマをしたくはなかったから

 

 

つぅか、何これ?

タキオンだけじゃなくて、ルドルフにタイシンまでいるんかい!

3人いて、誰も俺を解放しようとしないのかよ!

 

 

解放はするつもりないけど、介抱(・・)はするけど。・・・・・・アンタがしてほしいなら、さ

 

 

何を想像したのか、少し顔を赤く染めながらタイシンは言う

 

 

!!

ほほぅ、タイシンさんやりますなぁ?

 

何かに気づいた彼はニヤリと笑った

 

 

は?何言って。って違っ

 

 

彼のリアクションを疑問に思ったタイシンだが、隣のシンボリルドルフ(ダジャレ感知器)の反応を見て、自らの失敗を悟る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

脳内イメージ

 

 

所長、ダメです!

流出止まりませんっ!

 

 

ええいっ!隔壁を下ろせっ!

 

 

っ!ですが、まだ生存者が!

 

 

既に手遅れだ!それよりも何としても外部への流出だけは阻止せねばならん!

このダジャレ拡散粒子(対シンボリルドルフ専用最終兵装)のな!

 

 

っっっ!は、はいっ!

 

 

すまんな、みんなの命をくれ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、奮闘及ばずにナリタタイシンへの感染が確認された(無慈悲)

 

 

 

 

と言った感じであろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とはいえ、である

 

 

このタキオンの研究室に現在4人いる

 

 

 

 

勝負服(白衣)を着て、明らかに楽しそうなタキオン(天使)

 

同じく走るわけでもないのに、勝負服を着て少し落ち着かない(かかっている)様子のルドルフ

 

外出する時にしか着ない、と言っていたはずの服を着ているタイシン

 

 

そして、椅子に拘束されている自分である

 

 

 

 

 

なるほど

タキオンさんや?

 

 

おや、なにかな?

 

 

独占欲があるのはボクとしても承知している

のだが、束縛などいつの間に手にいれたのかな?

 

 

私がタキオンに教えたのだが

 

 

オマエ(ルドルフ)かーい!

 

 

まさかの事態に彼も壊れる

 

 

それはどうでも良いけどさ、これからどうするの?

 

 

み、身も蓋もない意見だね、タイシンくん

 

 

あのさぁ、コイツを拘束して悦に浸る。なんてどうでも良い事ならさっさとコイツ解放して連れて帰りたい(トレーニングに付き合わせたい)んだけど

 

 

 

ナリタタイシンは海水浴の後、ハヤヒデとチケットとも模擬レースをして確かな手応えを感じていた

 

それ以降、タイシンは更にトレーニングに邁進しているのである

 

 

 

 

 

もっとも、それを危惧した彼により、直ぐに眠れる薬(彼特製のオクスリ)(比喩的表現)の入った注射器を装備した大和撫子(グラスワンダー)が常にタイシンのトレーニングを見守っていたのだが

 

 

なお、この人選について、ナリタタイシン甘やかしたいウマ娘(スーパークリーク)が最後まで抵抗した事をここに記す

 

 

彼は彼女の場合、ナリタタイシンを止めるための抑止力なり得ないとして却下した訳だが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだな。そろそろ本題に入ろう

 

 

場を仕切り直そうとルドルフが言う

流石はトレセン学園初代生徒会長を務める女傑と感心するであろう。この場にいるのが()でなければ

 

 

ルドルフさん、ルドルフさん

 

 

うむ。何だろうか?

 

 

あのね、場の空気を引き締めたい気持ちは分かる。分かるんだけどね

 

 

首筋真っ赤にして、尻尾ブンブンしてる時点で意味、なくね?

 

 

 

 

 

彼の友人曰く

 

オマエってAKYだよな?

との事

 

 

意味を聞くと

 

 

 

A(敢えて) K(空気) Y(読まない)

 

という事だった

 

 

 

当時の彼は

 

なるほど、至言だな

と感心したそうな

 

 

 

 

 

 

 

 

だからこそ

 

 

エアブレイカーなどという渾名も頂戴していた訳なのだが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

想い人の前。しかもそれを隠す必要もなくなった状況で彼と顔を合わせるのは実は初の機会となるシンボリルドルフ

 

 

当然、緊張もするし、日頃の冷静さを維持できるはずもなし

幾らルドルフに意地があったとして、維持(・・)出来ぬ

 

そう言う事である

 

 

 

しかもそれを他ならぬ当の想い人から指摘されたルドルフの羞恥心たるや如何ばかりのものであったのか

同席しているタキオンやタイシンにすら推しはかれるものではなかった

 

 

 

 

 

 

 

と言うわけでルドルフは彼の無慈悲極まる攻撃(口撃)により、大破。行動不能となった

 

 

 

呻き声を上げながら蹲るシンボリルドルフ(同級生)の姿に

 

 

 

ふぅん。切れ味が更に増している、か

 

傍目では冷静に見えるアグネスタキオンだったが、付き合いの長い彼にはタキオンがかなり焦っているのが手に取る様にわかる

 

 

タキオンの目のハイライトが戻っているからである

 

 

 

 

 

 

は、コイツ何言ってんの?

 

と思われるかも知れないが、アグネスタキオンというウマ娘は幼少期両親から放置されていたことが原因で、表情が他のウマ娘に比べ死んでいる

 

逆に強烈な感情を宿す時以外は、ハイライトはどこかへ長期出張しているのである

 

 

 

 

 

 

 

そして、この状況のタキオンは混乱の極みにあり、いつもの様な飄々とした態度や理論的な思考はまず取れない事を彼は経験で理解していた

 

 

 

 

 

 

 

彼はこの状況を打破するには目下タキオンとルドルフをどうにかしないとならないと考えていた

 

タイシンはどちらかというと、自分が拘束されている事に戸惑っているのは明らか

 

 

となれば、残りの2人(タキオンとルドルフ)さえ、どうにかすればこの状況を変化させる事ができると考えたのである

 

 

 

 

そこで、まずは純粋なルドルフを下し、返す刃をもってタキオンを打倒するのが最適と判断していた

 

 

 

 

 

 

自分に好意を寄せるものや恋人にすら手加減なく痛撃を与えるところに、彼等の絆の深さが垣間見える事だろう

 

 

 

え?見えない

 

そんなー

 

 

 

 

 

 

それに、だ

 

タキオンは彼の執念を過小評価している

 

 

 

たかだか、ロープで椅子に縛りつけたくらい(・・・)でどうにかなる程度なら、タキオンと共に歩こうなどと思わないし、思ってはならない

 

 

 

 

つまり

 

 

 

さぁ、タキオン

 

 

え?ちょっ!

 

 

 

 

 

 

 

ナリタタイシンは自分の目と正気を疑った

 

 

目の前で椅子に拘束されていたはずの人物は、よどみなく立ち上がったのだから

 

 

 

 

アグネスタキオンは自身の失敗を悟った

 

 

(やれやれ。ルドルフに彼の拘束を任せたのは失敗だったね、これは)

 

自分で拘束していたのであれば、ロープなどではなく、最低でも鎖位は使ったであろうに、と

 

 

 

 

人の執念とは斯くも恐ろしいものである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして

 

 

 

 

 

 

ターキーオーン♬

さぁ、いい子いい子しましょうねー

 

 

ま、待ちたまえ!今そこにタイシンがいるんだぞっ!せめて場所を選ぶとか(何気に拒否はしてないアグネスタキオンの図)

 

 

 

別に良いじゃん

さぁいい子いい子〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナリタタイシンは戦慄した

 

 

目の前で繰り広げられる惨状に

 

 

 

床に蹲るシンボリルドルフ。しかも、呻き声を小さくあげながら、尻尾ははちきれんばかりに忙しなく動いている。その首筋といわず、見える部分の大半が真っ赤に染まっているという状態

 

 

彼に後ろから抱きつかれ、片手はお腹に回され、もう片方の手で、ひたすら頭をゆっくりと撫でられているタキオン

しかも、妙に色気のある声で耳元に囁かれているおまけ付きで

 

最初こそ、全力で抵抗している様に見えたタキオンだったが、明らかにその勢いは落ちていき、今となってはされるがまま

 

 

 

 

 

 

 

タイシンは知らなかったが、彼のこの方法はスーパークリーク(ナリタタイシン甘やかしたいウマ娘)直伝の方法であったりする

 

ささやきについては、以前エアグルーヴに行なったものを、タキオンの従姉妹(アグネスデジタル)が彼に提供した資料(ドS執事もの)により更なる強化(凶化)されたものであった

 

 

なお、この練習成果は録音テープという形でデジたんの元に届けられており、デジタルの部屋から喜びの声が絶えなかったとかなんとか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、タキオンがついにノックダウンすると

彼は満面の笑み(・・・・・)でタイシンの方に歩み寄ってきた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タイシンは逃げようとしたが、ふと思った

 

 

 

 

あれ?これ私逃げる必要ってあんの?

 

 

 

 

目の前でさんざんバカップルされていたタイシンは正気を失いつつあったのだが、悲しいことにそれを彼女が自覚する事はついぞなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして

 

 

 

ヒャッ!

 

タイシンは思わず、自分の口を押さえつけた

 

 

(なんだ今の乙女みたいな声は。自分(ナリタタイシン)には似合わない声だろう)

 

と自分を内心叱り飛ばしたのだが

 

 

あうっ!

 

 

 

ダメだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つか、ルドルフにせよ、タキオンにせよ、タイシンにせよ思うんだがなぁ。もう少しウマ娘ってのは身体を労われないもんかねぇ?

 

現在タイシンは彼によるマッサージを受けていた

 

脚や、腕に腰回りなどである

 

 

 

なんっで、手慣れてんの、アンタ

 

息も絶え絶えにタイシンはたずねる

 

 

必要だった(・・・)から、だろうな

 

 

彼は少し寂しそうに言った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楽になったか?タイシン

 

 

うん、ありがと。すごく楽になった

 

 

そりゃ、結構な事で

 

 

マッサージの終わったタイシンと彼はまったりしていた

 

 

 

後ろでは寝入っているタキオンと、未だに羞恥の感情から立ち直れてないルドルフがいたが、彼はかれ(・・)いにスルーしていた

 

 

スルー、するぅ(・・・)?とドヤ顔で聞いてきた時には何とも言えない感情を持つ事になりはしたが、それもまた彼の魅力なのだと考えを改めた

 

 

 

恋は盲目。とは良く言ったものである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アンタさ

 

ん、どした?

 

 

備え付けてあるソファーに隣り合わせで座ったタイシンは

 

 

さっき、言ってたよね。必要だったからって

 

 

 

と、問いかけた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は内心でため息をついた

 

 

なんでこうもまぁ、感情の機微に敏いかなぇ?と

 

思わず漏らした一言だったが、マッサージを念入りにする事で有耶無耶にしようとしていたというのに

 

タイシンを見た

 

タキオンの様な引き込まれそうな赤でも

ルドルフの様な美しい薄紫でもない

 

そこにあったのは、常に己を律しようとする綺麗な蒼い瞳だった

 

 

 

(誤魔化すのは、無理だな)

 

彼は少しだけ内心を話す事を決めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナリタタイシンは少しだけ驚いた

 

 

彼が自分を見る目が明らかに変わったから

 

今まではどちらかというと、少し後ろ向きの感情が見えていた

 

 

だが、少しだけ目を瞑ってから、開いたその瞳には

 

 

 

眩しいものを見る様な、自分に届かないものを見る様なそんな色を帯びていたのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンボリルドルフは密かに2人の話を聞いていた

 

 

盗み聞きなどと不躾にも程がある。とは自覚している

褒められたものでないという事も重々理解している

 

だが、どうしても止められない

 

ルドルフは彼と関わっている中において、大体が彼に甘えていると自覚している

情けないとも思っている

 

 

 

そうであるからこそ、彼の弱音や本心に触れる機会はほぼなかった

 

いや、そうではない

 

 

自分(シンボリルドルフ)は怖かったのだ

踏み込みすぎて、彼に嫌われる事が

 

 

だが、タキオンは彼の想いの根源であり、タイシンは今まさに彼の弱音を聴こうとしている

 

 

それに対して、自分はどうだ?

 

蹲ったままでこの話を盗み聞きしようとしている

 

 

 

 

ルドルフは人知れず涙を零した

 

 

 

 

 

 




考えてない様にみえて、『ないよう』はあるという話


予定ではタイシンでなく、ゴルシだったのだがなぁ
不思議な事もあるものだ


あ、あとセイウンスカイ可愛すぎて、作者狂喜乱舞しました

タキオンの育成が捗らなくてツライスシャワーですわ


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  むかしがたり

今回は過去話が中心となります

当然の如く、捏造や独自解釈満載でお送りします
予めご了承ください


なお、本作における一部のキャラクターへの不遇ともいえる扱いがございますが、これについては後の展開次第で変化する事を断言させていただきます

アンケートへのご協力ありがとうございました

では、どうぞ


あるところにごくごく平凡な少年がいました

 

 

共働きしている両親に少し引っ込み思案な少年

 

それはどこにでも居る普通の男の子でした

 

 

 

 

 

少年は引っ込み思案ではありましたが、好奇心旺盛でした

 

 

毎日、河原や近くの広い草っ原。少し離れたところにある山の麓までいっていました

 

 

 

 

そして、ある日出会ったのです

 

 

 

 

 

 

 

こんなのじゃ、ないのに

 

 

アグネスタキオンという少女に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ねぇ、聞いてもいい?

 

 

いいよ?

 

 

私達、ウマ娘ってさ。結構初めて会った人からは妙な目でみられる事があるの。何たって尋常じゃないスピードで走るんだから当たり前だけど

 

 

それで?

 

 

タキオンもそうだったんでしょ?なのにどうして

 

 

そうだなぁ

憧れたんだろうな。その姿に

 

 

彼は懐かしむ様に目を細めた

 

 

 

 

 

幼い頃の彼は、いや今でもだが、とりわけて取り柄のないのが自分だ

 

だからこそ、憧れたのだろう

 

 

名前(タキオン)の通りに何処まででも行けそうな翼を持つ彼女に

 

後に知ったが、タキオンとは光速で動く粒子の仮称らしい

まだ仮説の段階だそうだが、タキオンの父親曰く

 

 

あの子(タキオン)にはただ、未踏であろうとも可能性を恐れる事なく進んで欲しい

 

とのことからこの様な名前がついたらしいが

 

 

 

 

 

 

そして、惹かれた。たとえどの様な道であろうとも進もうとする彼女の強さと気高さに

 

 

そして

彼女の力になりたいと幼心に思った

 

 

 

その為に、できる限りのことを学ぼうとしたし、今でもそれは変わらない

 

 

 

 

 

 

だが、いつからかタキオンは走ることへの情熱を失った様にみえる

 

 

悲しかった。悔しかった

 

彼女(タキオン)の心を守れない自分の弱さが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナリタタイシンは話を聞いて驚いた

 

 

アグネスタキオンが走ることをどちらかといえば嫌っているのはタイシンとして知っている

 

だが、それによりこの人がここまでショックを受けているとは思ったいなかったのだ

 

 

 

タキオンが走るのをみてるのが、好きだったんだ。アンタは

 

 

だろうな。憧れもあっただろうし、勿論嫉妬もあっただろう

でも、タキオンが自分の目標に向かって走り続けるのを応援したいってのは間違いなかったと思う

 

 

そっか、アンタも大概だね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今でもはっきりと思い出す

 

 

青空の下、ひたすら、がむしゃらに走っていたタキオン

でも、表情は苦しそうでもなく、走る事自体がとても楽しそうだった

 

 

 

見惚れた。魅入ったと言ってもいいだろう

 

 

 

 

だが、それも少しずつその輝きが失われつつあった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

許せなかった

 

 

 

彼女を放置する彼女の親が

 

それを放置している周りの大人達が

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、なによりも

 

 

 

 

 

 

 

 

タキオン(好きな子)1人守る事も助ける事も出来ない己自身が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから、彼は全てを拒もうとした

 

 

タキオンを勝手な理屈で見捨てようとするタキオンの両親を

ウマ娘というだけで奇異な視線を向けてくる者達を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、所詮は大人でもないたかが子供1人。

 

できる事など知れていた

 

 

 

 

だからこそ、彼はひたすらに耐えることにした

 

タキオンの事を憐れむ自分の両親や、自分たちを見せ物の様に扱おうとする大人達。それとタキオンに対して嫌悪感を隠そうともしない学校の連中にも

 

 

 

 

 

 

力をつけ、知識を蓄え、タキオンを支えようとした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、彼がタキオンの道を尊重する様にタキオンもまた、彼の事を心配している事を当時の彼は理解していなかった

 

 

 

 

 

如何にして早く、速く、疾くウマ娘は走れるのか?

 

 

それこそがタキオンの課題だったはず

 

 

 

 

 

 

 

だが、ある日タキオンはそれを捨てた

 

 

 

タキオンからすれば、変質していく幼馴染に耐え切れないからこその選択だった

 

 

だが、皮肉にもその選択が彼を更に歪ませる結果となったのだ

 

 

 

 

 

己の情けなさから、タキオンは道を諦めた

 

 

それは彼にとって、何よりも許しがたい事だった

 

 

 

 

 

だが、既に彼は幼かった頃とは違う。変わってしまった

 

 

仮面を被り、本心を偽り、周囲からの悪意よりタキオンを守る

 

 

 

 

 

それを数年間、しかも最も重要な時期に続けた彼

 

 

結果、彼は何よりも素顔(本音)を曝け出すのを恐れる様になってしまったのである

 

 

 

 

 

 

そうであり続けたならば、まだ良かっただろう

 

 

 

だが、此処(トレセン学園)には真っ直ぐな、自分の想いを貫こうとするウマ娘が殆ど

 

 

 

タキオン(太陽)に憧れ、それによって目を灼かれた彼。その彼が他のウマ娘(太陽)をみたことにより、少しずつではあるが、歪みを自覚できる様になっていったのだ

 

 

 

 

 

 

それだけならば、良かった

 

 

しかし、それと共に彼は悪意にさらされ続けた。マスコミや大人達の行為という名の

 

 

 

 

 

いうまでもなく、彼とて所詮子供なのだ

どれだけ大人のフリをしようとも

 

 

 

そして、タキオンとの同居により彼は弱音を吐く場所すらなかった。タキオン(想い人)に心配をかけたくないからと言い訳して

 

 

 

 

 

少しずつ、だが確実に彼がおかしくなっていったとしても不思議ではない

 

 

 

 

本来なら、中学校に通うべき時期

 

集団生活に適応するための貴重な時間

親の手を振り切り、新生活に適応しようとすれば、それはマスコミにより阻まれる

 

 

結果、彼は秋も深まるこの時までに登校した事は一度として、ない

 

学校側もどうにかしようとしていたし、元地元選出の議員は対策をしようとしていた

だが、それもマスコミの報道による辞職に追い込まれた事で全て白紙となった

 

 

補選により、よりにもよってトレセン学園に好意的でない人物が当選した事も悪い方向に働いてしまった

 

 

 

 

 

勿論、今回の衆院解散により選挙が行なわれる事となり、補選で当選した議員がかなりの疑惑を抱えている為、再選の可能性は絶無であるが

 

 

 

 

 

 

 

 

親もなく、頼るべき大人は遥か彼方。

頼りになる大人がいたとしても、頼るにはあまりにもお互いの立場が微妙であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以前、タイシンが見た彼の表情

 

それは彼の限界が近い事を示していたのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ねぇ

 

 

どしたよ?

 

 

 

 

タイシンは理屈ではなく、本能に近い部分で理解していた

このままでは、この人はおかしくなってしまう。と

 

 

 

 

 

だが、タイシン1人ではどうにもならない事も同時に理解していた

それと、タキオンには言えない事も

 

 

 

お互い支え合っている。そう言えば聞こえはいいが、この2人はそうでない事をタイシンは理解した

 

 

タキオンは彼の事を想うが故に自分の夢すら諦めようとしている

彼はタキオンを想うが故に自身を捨てようとしている

 

 

 

っっ!

 

 

タイシンは内心歯噛みした

 

タキオンとこの人が何をしたと言うのか?

憧れを守ろうとして、想いを貫こうとして

 

そしてお互いがボロボロになり、壊れかけている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(なんでっ!こんなことになるのさ!)

 

 

彼と話をしながら、タイシンは自分の無力さを嘆いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナリタタイシンはウマ娘として生を受け、ウマ娘としての道を歩んでいた

 

 

 

 

だが、彼女は同年代のウマ娘に比べて、圧倒的に不利であった

 

 

小柄な体躯。筋肉の付きづらい体質

 

 

 

 

タイシンの通っていた小学校、中学校にはウマ娘はいなかった。そのため、学外での模擬レースにタイシンはそれなりに出ていた

 

当然、様々な機会で競う事になった

 

だが、勝てない

 

 

努力量なら、間違いなく相手より上であったとタイシンは断言できる

 

 

それでもいつも結果を出せず、ゴールまでの距離は長く感じた

 

両親はそれでもタイシンの事を応援してくれていた

いつだって温かく見守ってくれていた

 

 

 

だが、いくらやっても結果の出せない状況にタイシンは苛立ち、両親に八つ当たりした事もある

 

それでも両親は応援し続けてくれた

 

 

 

いつしか、その両親すら煩わしく思えてくる様になってしまう

そして、そんな自分に自己嫌悪した

 

 

 

なんて、自分は弱いんだ

 

 

 

そして、それでも諦めたくないからトレセン学園に来た

 

 

 

 

 

 

 

トレセン学園入学試験の時、久しぶりにウイニングチケットとビワハヤヒデと再会した

 

騒がしいけど、熱い心を持つチケット

静かだが、勝つ為の努力を怠らないハヤヒデ

 

 

どちらもタイシンから見れば眩しくうつった

 

 

 

 

 

 

 

トレセン学園に入学して早々、講演会というものが開かれる事になった

 

 

聞けば現代のシンデレラ(アグネスタキオン)その王子様(あの人)関係の講演会だと聞いた

 

 

シンデレラと王子様などと言われてもタイシンには興味なかった

寧ろ、そんな風に持ち上げられている人物がタイシンは嫌いですらあった

 

 

 

 

だが

 

 

講演会を聞いたタイシンは圧倒された

 

ここまで想いを貫けるものなのか、と

そして、自分が持ち得ないモノを持つアグネスタキオンに密かに嫉妬した

 

 

だが、そんな弱い自分を許せないからタイシンはトレーニングに励んだ

 

 

幸いにして間違いなく、地元でのトレーニングよりも効率的で濃密なもの

 

 

 

それでも、タイシンは手応えを感じる事が出来ずにいた

 

 

 

 

 

 

 

そして只管もがいていたあの日、タイシンに彼は言ったのだ

 

 

 

タイシンはどちらかというと、後半に力を発揮するタイプだと思うんだよ

 

俺が知ってるウマ娘の中でも一、ニを争う加速力だと思う

 

 

 

 

 

何をバ鹿な事を

 

タイシンはそう思った

 

 

 

だが、顔を上げてみればどこまでも真剣な顔つきをしたあの人

 

 

(一度だけでも走ってみたら、どうだろう?)

 

 

 

私の中で何かが囁いた

 

 

 

 

 

シンボリルドルフにアグネスタキオン。メジロマックイーンにナイスネイチャ

それにダイワスカーレットとウオッカ

 

 

同年代でも傑出していると言われるシンボリルドルフ。幼い頃からウマ娘としての自分を向き合い続けていたアグネスタキオン。ウマ娘名門メジロの次代を継ぐものとして己を磨き上げたメジロマックイーン。言葉こそ弱気であるが、それでも周囲の期待に応えようと鍛錬を怠らないナイスネイチャ

 

 

遅いはずが無かった

 

 

ダイワスカーレットもまた、幼い頃にあの人と関わり憧れたと聞く。大好きな姉と兄に恥じぬウマ娘となる為に自身を鍛え上げたのは僅かな時間であってもわかる

そのスカーレットを近くで見ていたウオッカもそれに触発されて相当なレベルに仕上がっていた

恐らくは同年代ならば上位といっても過言ではないだろう

 

 

 

 

前を行くタキオンにスカーレット、ネイチャ。少し前に出ているルドルフとウオッカ

 

 

焦る気持ちが募る

 

 

(このままでは追いつけないのではないか?)

 

弱い自分が前に出ろ。そう言う

 

 

 

だが、一度でも良い。アタシにも夢を見させて欲しい

 

そう、願った

 

 

 

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後半加速した時、タイシンの視界が晴れた気がした

 

 

 

 

初めて一着だった

 

 

 

 

何度かその後も走ったが、上位に食い込む事も出来たし、たとえ後着したとしても確かな手応えを感じていた

 

 

 

 

 

 

ダメ、だった

 

 

 

 

 

 

あの人にとって、自分はただ恋人(アグネスタキオン)の周りにいる沢山のウマ娘の中の1人に過ぎないのだろう

 

 

 

でも、ナリタタイシンにとってあの人はその瞬間から唯一無二の(ひと)になったのだ

 

 

 

 

 

その人を助けられない無力な自分が嫌だった

 

 

あの人に声をかけられる前の自分を見ているみたいで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンボリルドルフは自嘲していた

 

 

(そうか、彼もまた苦しんでいたのだな。それを私は)

 

 

 

今ですら、立ち上がって彼を支える事も出来ない臆病者

這いつくばり、蹲ったまま、盗み聞きをしている卑怯な自分

彼を真っ直ぐ見ることさえ出来ない

 

 

 

 

 

 

私が強い?冗談にしても笑えないなルドルフ

 

 

以前、タキオンと話をしていたときに彼女が言った一言だった

 

 

 

タキオンが弱いというのこそ冗談だと私は言った

 

 

 

本当に私が強かったのなら、彼をあそこまで追い詰める事も歪ませる事も無かったのさ

 

 

 

あの時、私にはタキオンの言っている事の真意が理解出来なかった

 

 

 

ただ

 

あの遠くを見る様な表情をするタキオンは印象深く私の記憶に刻まれている

 

 

 

 

 

 

 

 

幼い頃から早熟であったとルドルフ自身は過去の自分を振り返る

 

 

 

我ながら可愛げのない子供だっただろうとも

 

 

 

 

いつも、何かを求めていた

確か小学校低学年位までは親に甘えていた気がする

 

それ以降は誰かに甘えるよりも、自分で何かをする事こそ大切であると考えた

 

 

 

そして、いつだったかは定かではないが私たちウマ娘について調べた気がする

 

 

 

そこで知ったのは残酷なまでの真実

 

 

 

ルドルフの両親は今で言うトレーナーとその担当ウマ娘だったと聞く

 

仲睦まじい両親であり、ルドルフにとっての憧れであり、理想だった

 

 

 

 

 

母の様に父といつも仲良く過ごしたい。いつか私もそんな異性と出会いたいと

 

 

 

だからこそ、自分の周りと世間の温度差に戸惑った

 

 

 

 

そしていつしか、『ウマ娘皆の幸せ』という大それた思いをいだく様になった

 

 

 

 

 

 

だが、それを両親に話をしたところ、2人とも悲しそうな顔をした

 

 

 

 

 

 

 

 

あの時はわからなかったが、今ならわかる

 

 

私の夢は途方もなく険しいものだったのだと

 

 

 

 

 

 

 

 

トレセン学園に入学する事が決まった

 

 

トレセン学園とはウマ娘専用の育成機関であり、指導者によりばらつきのある育成環境の均一化を図るものだと聞いた

 

ウマ娘にとっても存分なトレーニング設備

指導者にとっても用意された環境というのは、大きな意味を持つ

 

 

 

 

ウマ娘によるレース自体は規模こそ大きくはないが、既に始まっていると聞く

 

だが、それに参加するためには相応の実力を求められる

当然ながら、実力を身につけるためにはそれなりの環境が必要だ

 

 

 

だが、ウマ娘によるレースが一般的でないために指導者はその環境を一から用意しなければならない

 

仮にウマ娘が走り込むとして、短距離でも1キロ以上。長距離ならば3キロもの距離が必要となる

 

無論、実際のレースする場所の様に出来れば最高であるだろうが、殆どの指導者にそこまでの資金的余裕はない

 

となれば、河川敷なり公園なりになるが、当たり前であるがそこは自身の所有地ではない以上、トラブルも生みやすい

 

 

 

 

 

 

 

これが、ウマ娘の指導者が他の国に比べて少ない理由であるだろう

 

何せ、この日本という国はあまり広くない

勿論探せばそのくらいの土地はあるのだろうが、果たしてウマ娘の育成だけの為にそこまで出来る人物がどれだけいるというのか

 

 

 

 

更にレースで勝利したとしても、賞金も少ない上に大して注目もされない

 

 

 

 

この状況を打破するべく作られたのがトレセン学園だった

 

 

 

 

 

 

 

トレセン学園に入学するにあたり、私とナリタブライアンにエアグルーヴは成績優秀との事で生徒会への勧誘があり、私たちはそれを受けた

 

 

 

 

そして、入学するまでに様々な雑務を片付けていたある日、理事長経由で連絡が来た

 

 

現代のシンデレラ(アグネスタキオン)が本学園に入学すると

 

 

それだけであれば、普通だろう。彼女とてウマ娘だから

 

だが

 

その王子様もトレセン学園近隣にて生活する予定

 

 

との連絡に私たちは顔を見合わせた

 

 

 

正直なところとしては、何故こちらにその様な連絡が来るのかがよくわからなかったからだ

 

 

 

 

だが、後日

その2人がトレセン学園に来ると聞いた

 

 

はっきり言うと意味が分からなかった

トレセン学園とは言い換えればウマ娘の為の学園だ

 

勿論、教師陣や様々な職員がいるのは仕方ない事だ

警備員として必要だろう

 

だが、アグネスタキオンの彼がトレセン学園に来る意味は何か?

私もそうだが、ブライアンやグルーヴとて納得してはいなかった

 

 

とはいえ、理事長。いや正確には理事会からの指示ともなると生徒会長といっても一生徒に過ぎない私たちに拒否権などあるはずもない

 

 

 

 

 

 

そこで、出会った

 

私たちウマ娘にとって、いや私にとっての理想ともいえる関係を持つ2人に

 

軽口を言い合いながらも離れる事のない2人

 

 

衝撃的だった

 

 

 

 

 

それだけでも驚きだと言うのに、彼はブライアンとグルーヴを手玉に取ってしまったのだ

 

彼のダジャレ攻勢に屈した私が言うことではないのだろうが、自分の目を疑う事だ

 

 

ブライアン、グルーヴ共に入学時のテストにおいても実技、即ち模擬レースにおいても上位の実力を持っていた

それは直接(まみ)えた私が1番理解している

 

 

確かにグルーヴもブライアンも冷静さは欠いていたのだろう。走ったのがトレセン学園という障害物の多いところでもあったのだろう

 

それでも、普通ならば加速力に秀でるブライアンと持久力に優れるグルーヴが遅れを取るとは俄かに信じられなかった

 

 

 

だが、後日私も一度同じ条件で挑んだところ、見事に負けた

 

 

 

 

 

衝撃を受ける。などという表現では全く足りないほどの動揺を私は見せた

 

 

 

 

 

彼曰く

 

 

感情を揺さぶれば実力は発揮できないし、癖を見抜けばそれなりの対応ができる。

らしい

 

 

それでも私たちは納得出来ないのを理解してくれたのか

 

 

ウマ娘だろうが、人だろうが結局は生き物

というよりも、機械でもそうだけどな。動く際には必ず何処かに動きがある

 

そして、ウマ娘みたいに高速で走る連中ってのは、当然それ相応の状況把握能力がないと高速の利点を活かしきれない

で、その状況把握の手段ってのは大体視覚頼り

高速であればあるほど、視覚の重要性は増す。当然反射能力もいるだろうがな

 

となりゃウマ娘相手にやることは限られる

 

相手より早く動くか、相手の動きの『起こり』を潰すか。

 

 

 

 

意味がわからなかった

ブライアンもそうだったのか、『起こり』の意味を聞いた

 

 

 

ま、これは俺が剣道やってたからなんかも知らんけどな。剣道のみではないと思うけど、相手の視線を見るってのは有効だ

そして、必ず力を入れる直前に呼吸などを入れる。これが『起こり』だな

 

んで、この『起こり』のタイミングで予期せぬ事が起きると集中力が乱れる

アンタらゴルフ観ない?

ゴルフではショットの直前は必ず音を立てないのがマナー。あれは集中力を乱さない為らしいがな

 

 

 

それについて、グルーヴも理解したのだろう。それでも納得のいかない表情をしていたが

 

 

 

重要なのは、この時邪魔が入ると普段の実力なんて発揮出来ないって事

 

ゴルフなんかでも、たまにトラブルあると聞くけどな。そういう時のショットは大体ロクなものにならないらしい

 

つまり、相手の動きの『起こり』を潰す事が出来ればそれは大きすぎるアドバンテージになるって事

 

俺が3人を振り回せたのは3人の走る時の呼吸、脚の運び方。視線の動かし方、走りの癖。その辺りの情報を仕入れながら手に入れられたからだな

思ったろ?走りにくいとか、やりづらいって

 

 

 

 

呼吸を乱す。とも言われる事のあるこの方法はアマ、プロ問わず有効であるとされている

 

競技者というものは自分なりのテンポを持っている事が多い。それを無理矢理崩す事で相手の実力を下げ、冷静さを奪い、時に奇策を以て相手に思考を強制する

 

 

これが彼のした事だった

 

 

自身の実力は完全に出し切り、相手の実力を発揮できない状況や状態に追い込む

 

 

 

これが彼の真骨頂といえる方法

 

 

 

 

彼はこの方法でタキオンにすら、数回とはいえ勝利していると後日聞いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は衝撃を受けた

 

 

 

 

そして、その様な事は容易でないにも関わらず、それを実行した彼が眩しく見え、その彼に想いを寄せられているタキオンに嫉妬した

 

 

そう、嫉妬だ

 

 

 

私は当初、タキオンに対して好意を持っていなかった

 

どちらかと言うと、ひたすら妬んでいたと言えるだろう

 

 

彼女はしたい事をして、したくない事は彼に任せきりだったと聞く。彼女の複雑な家庭事情は確かに辛いのだろう

 

 

 

 

対して私の家庭は恵まれていると言って過言ではないだろう

 

 

 

だが、彼女には理解者()がいる

 

それだけで私から見ればタキオンは幸せだと思っていた

 

 

 

 

 

グルーヴの様に片親だけ理解があるのも、私の様に両親が理解しているのも、タキオンみたいに両親から理解されていないのも変えがたい事実

 

 

 

 

だが、グルーヴは母親が理解者であったからこそ、父親、ひいては男に対する強烈な不信感を持つことになった

私は理想的な両親を持つために、それを基準で考えた結果無謀とも思える理想を掲げている

 

タキオンは最初から両親に期待していない。彼女が求めているのは従姉妹であるスカーレットや理解者である彼くらいだったと聞く

 

 

 

 

 

ウマ娘としての自分(シンボリルドルフ)ならば歓迎できる事だ。2人の関係は自分の理想である両親に近かったのだから

 

だが、その一方で女として見たら、それこそ嫉妬しかなかった

 

 

 

たとえどれだけ歪に見えていたとしても、彼だけは常に味方だと思えたから

 

 

 

 

 

 

しかし、実際接してみるとアグネスタキオンという人物は好感の持てる人物だったし、彼は彼で不思議とウマがあった

 

 

まぁ、幼い頃の自分を曝け出そうとする程度には彼の事を信頼する様になったのであるわけだが

 

 

 

そうなってくると幼い頃の私(ルナ)が言うのだ

 

 

 

 

 

彼に甘えたい

 

 

 

 

 

我ながら度し難い考えだった

 

 

彼は私の彼氏ではない

家族でも彼氏でもない人に甘えるなど、あってはならない事だ

 

 

 

 

 

だが、彼と関わり合いになるうち、タキオンと彼の触れ合いを見るうちにその感情はどんどん大きくなっていった

 

 

 

 

 

そして、あの日

 

 

 

 

彼との勝負に負け、彼に甘えたあの時

 

 

 

私は確かに幼い頃感じた温もりを感じたのだ

 

 

 

 

 

誓っていうが、両親が私を甘やかさなくなったのではなく私が両親に甘えなくなっただけ。

彼等は私に変わらない愛情を向けてくれていたし、それを私も理解していた

 

 

だが、肉親に甘えるのと彼に甘えるのとでは何かが違うと感じたのも事実だった

 

 

 

 

それから少しするとタキオンは私と彼を頻繁に会わせる様にする様になった

 

曰く

 

 

少しばかりルドルフは休むべきだろうね。とは言ったところでキミが素直に頷くとも思えない。だから、彼をキミに少しだけ貸すとしよう

 

 

その様な気遣いは無用だと言ったのだが

 

 

知らぬは本人ばかりなり。とは良く言ったものだ。生徒会長としての仕事にトレセン学園生徒としての日常。更に来年を見据えてのトレーニングと現在行われているトレーナー寮の工事関係の窓口。よくもまぁ此処まで詰め込めるものだよ

 

 

タキオンは非難する様な口調だった

言い返そうとすると

 

 

その上、ブライアンとグルーヴにもあまり頼らないと言うじゃないか。『孤高の皇帝』などというのは褒められたものじゃあないね

 

 

 

あの時はらしくもなくタキオンと口論になったものだ

 

 

 

後でその事をタキオンに聞くと

 

 

おいおい、やめてくれたまえよ。私がそこまでお節介を焼くと思うかい?

 

 

タキオンは肩をすくめてそう言った

 

 

私が言うのも変な話だが、体調管理なんてルドルフの様な立場にいる者からすれば当たり前に出来ていなければ困る事だろう?まして、今でこそ改善しているが私も研究に没頭していた頃は自身の健康管理もおざなりだったさ。その私がどうしてキミの事をとやかく言えるというんだい?

 

 

当時の私は

では、何故?と聞くと

 

 

おいおい、本当に大丈夫なのかい?そこまでお節介を焼く人物などキミのそばにそこまで多くはないと思うのだけどね

 

 

私は自身の鼓動が早くなるのを感じた

 

 

予想はついているだろう?彼さ

 

 

 

正確には彼が違和感を感じて、それをグルーヴとブライアンに聞いたらしいのだが

 

それを聞いた私は胸の中があったかくなるのを自覚した

 

 

 

 

 

 

 

それからというもの、私は彼と会う事を楽しみにする様になった

 

 

大体が私の愚痴や話を聞いてもらうか、彼に甘えていた

 

恥ずかしい話だが、たかいたかいや抱っこに膝枕や腕枕もしてもらった事すらある

 

 

 

しかし、思い返してみれば私が彼の事を気遣った回数など殆どない

 

 

 

 

 

 

 

 

それに今更気付いた事も、ルドルフが彼とタイシンの会話に割って入れない理由だった

 

ルドルフはタイシンより早く彼との距離を詰める事が出来た。タキオンとの話し合いも出来た

 

 

なのに、彼の事に気がつくのが遅れた

 

 

 

だから、情けなくてルドルフは顔を上げる事が出来なかったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴールドシップは自宅であるメジロ本家にて資料を漁っていた

 

 

 

 

あー、もう。もう少しマトモな資料ねぇのかよ!

 

 

ゴールドシップは書庫で頭を抱えていた

 

 

 

ゴールドシップは彼と関わり合いになってから、色々と物の考え方や見方を変える様になっていた

 

 

そのきっかけである彼の様子がおかしいのはゴールドシップも知っていた

マックイーンより聞いていたからだ

 

 

だが、海水浴に行った時、彼女が予想するよりも遥かに状況が悪い事に気がついた

 

マックイーンから夏休み後、トレセン学園に行くのを止められていたからである

そうでなければ、もう少し早く気づけただろうが

 

 

んな事言っても仕方ねぇんだよなぁ

 

 

ゴールドシップは肩を落とす

マックイーンが意地悪でトレセン学園に来るな。と言っているのではないことくらい、ゴールドシップにもわかっている

 

ライアンにせよ、パーマーにせよ、ドーベルにせよ、あの姉にせよ皆自分の事を考えてくれているのを彼女とて承知している

 

 

今回の件は、本当にタイミングが悪かっただけ。なのだ

 

 

 

とはいえ、彼を守るものが少しずつ、だが確実に奪われつつある事を彼女は良く理解している

 

元国会議員がつけていたSP。秋川やメジロが密かにつけている私服警備員。トレセン学園の警備員に周辺の警察組織。強固であった筈の彼等が住むマンションのセキリュティ

 

今年の初めには直接的だけでもこれだけあったのだ

 

 

だが、議員のつけていたSPは辞職に伴い撤退

議員としては、自身の議員職が亡くなろうともつけておきたかったのだが、マスコミによるいつもの事(偏向報道)により、それは叶わなかった

 

周辺の警察組織にも緩みが見られ、所轄の警察署の中にも今の状態を不満に思う者が少しずつ出始めている。現場は何とか問題なく動いているが、年度末の異動次第ではそれも危うくなる

 

マンションのセキリュティについては、既に不心得者により情報が流出しており、こりもせず張り込みを続けている取材陣の煩わしさから一部住民が現状に対して反発する動きも出てきそうとの話もある

 

更にメジロは一枚岩だが、秋川の中にも不穏な動きがあるとの話を当主からゴールドシップは聞いている

 

 

 

終いには、アグネスタキオン先輩がトレセン学園の学生寮に移されているとも聞いている

 

つまり、彼は自宅すらも危ういと見ていると言う事だ

 

 

 

 

 

現在衆院選の真っ最中であり、どうしても世間の目はそちらに向いてしまう

 

この隙を狙って、またぞろ記者たちが取材という名の迷惑行為を及んでいる事はゴールドシップとて自身の付き人から聞いている

 

既にメジロ家は無思慮なマスコミに対して敵対的な関係をとっているとはいえ、お互いに立場がある以上は全面的対決は出来ない

 

 

メジロにも独自の広報方法くらいは有しているが、一般的ではない。それ故にマスコミの力を借りなければならない部分もあるのだから

 

マスコミ側からしても、来年から増えていくウマ娘による各種レースに対する取材。更に今でこそ険悪な関係となっているトレセン学園とも、何れは関係改善を図らねばならない。それだけの話題性を秘めているのだから

 

 

つまり、現状殴り合っていると言っても過言でない両者であるが関係を断ち切る訳にはいかないのである

 

 

それを知っているからこそ、彼等はどこまでも傲慢になれる

自分達(マスメディア)しか取材行為を許されていないのだから

 

 

実は一部の動画配信者とやらがメジロや秋川、トレセン学園にインタビューしたい。そう申し込んで来てもいた

 

曰く

 

 

自分の動画にて真実を配信したい

 

 

との事だった

 

 

今までにない申し入れであったが為に、何処にせよどうするべきか迷ったのだが、ゴールドシップははっきりと断るべきだと言った

 

 

 

ゴールドシップは暇潰しにネットをする事はない。しかし、後輩のアグネスデジタルはネタに詰まった際、ネットサーフィンをしている

 

 

 

そこでデジタルが見たものは、憶測をあたかも真実であるかの様に発信する動画配信者達の姿であった

 

その中にはデジタルが尊敬する姉と兄を非難する様な内容も含まれていた

 

 

 

別にデジタルとて、姉達のしている事に全面的な同意が得られるとは考えてもない

 

しかし、配信内容を聞いてみれば出所のわからない情報を元に推測と憶測を並べ立てている酷いものだった

 

 

少なくとも、彼等よりデジタルは姉や兄の事を知っているし、従姉妹であるスカーレットとも色々と話をしている

先輩であるゴールドシップからも話を聞いてもいる。彼等より事情に詳しいのは間違いなかった

 

 

不愉快だった

 

 

確かに彼等が事情を知らないのは仕方のない事だろう。知ってる情報を繋ぎ合わせるのもわからなくはない

知らない事を語るな。と言いたくなるが、彼等はそれで収入を得ているそうなので、言っても無駄だろうから

 

 

だからとて、偏向報道しているマスコミの情報を鵜呑みにしたり、姉と兄のマンションの情報をばらした人物をあたかも正当な権利を行使した人物の様に扱う事はデジタルからすると認められなかったが

 

 

 

ゴールドシップはそんなデジタルの愚痴を聞いていた為に、デジタルに確認をとった

 

 

 

そして、申し込んで来た者の中にそう言った内容の配信をしている人物が少ないとはいえ、いる事を知った

 

ゴールドシップはすぐさま、当主に話をした為にインタビューは実現しなかったのである

 

 

 

 

 

そこで、ゴールドシップは考えた

 

 

 

そういった配信者とやらがいるのであれば、自分も出来るのではないか?と

 

ライアン達は止めたが、ゴールドシップからすれば身バレなどどうでもよかった

 

 

彼女は知っている

 

 

彼が僅かひと月とはいえ、アルバイトしていたパン屋の店主夫婦が彼が来れなくなった事を悲しんでいる事を

 

ゴールドシップと共に遊んでいた近所の子供達も彼が来なくなった事で寂しく思っている事を

 

 

何よりもゴールドシップはそれを楽しんでいた

 

 

 

 

 

だから

 

 

アイツとバ鹿やってて、アタシは楽しかったんだからな

 

それを奪ってんなら、アタシは容赦しねぇぞ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

揺れる想い、尽きぬ願い

 

 

ヒトは届かぬと知りながらも手を伸ばし、明日(ユメ)を追いかけ続ける

 

 

いつか叶う(届く)と信じて

 

 

 




というわけで、揺れるタイシンとルドルフとなりました


アンケート結果により、ルートが決定しました


また、暫く後にもアンケートの予定がございますので、よろしければご協力お願い申し上げます

ではよろしければ次回お会い致しましょう


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 記念小説 あったかも知れない未来


 ifのお話

当然、本編とは矛盾する事が山程ありますが、許して


それでも宜しければ、どうぞ


ふぁぁぁぁ、よく寝た

 

「よく寝た」じゃねぇからな、タキオン

時計見ろ、今何時だと思ってるんだよ

 

ふぅん?・・・・キミ、時計が壊れている様だが、早く直した方がいいと思うよ?

 

んな訳あるか。時計は正常、現実は無情。お前はねぼすけ

オーケー?

 

 

此処はとある家庭の光景

 

美しい亜麻色の髪を伸ばした女性と、ボサボサの短髪黒髪の男性が話をしていた

どうやら、女性は寝起きの様で目を擦りながら男性に話しかけている

 

男性は昼食(・・)の支度をしながら、女性の話し相手をしている様だった

 

 

 

おかしな事をいうものだねぇ。私の部屋の時計ではまだ10時過ぎだったと思うのだけど?

 

どうやら、女性と男性は現在の時刻について話をしている

 

 

 

 

男性はキッチンにもある時計を顎で指し示した

 

 

?ふむ

 

 

 

⏰<おう、今は11時半やで

 

 

 

おや?

 

女性は寝室の時計を見た

 

 

 

⌚️<すまんの、ワイ電池切れや

 

 

女性は止まっていた(・・・・・・)時計にようやく気付いた

 

 

え?

 

 

 

女性は自身の腕時計を見た

 

 

 

⌚︎<おう、早くせんと遅れんで?ちなみに11時半や

 

 

 

 

 

あ、さっきルドルフから連絡あってな、今日は久々にタイシンとゴルシも来るらしいから、覚悟しとけや?

 

 

え"?

 

 

女性は男性の言葉に腕時計を呆然と見ていた視線を上げた

 

 

そこには満面の笑みがあった

 

ただし、眉間がピクピクと動いており、男性が怒っていることが容易に察せられた

 

 

 

 

 

女性は今日の予定を思い出す

 

 

(先ずは落ち着こう。冷静にならないとロクな事がない。今日はルドルフ達と久しぶりに会う約束をしている。それは間違いない。待ち合わせ時間は確か12時前だった筈)

 

 

 

 

(じ、12時前!?)

 

 

覚醒しきっていなかった女性の意識が急激に覚醒する

 

 

き、今日は久しぶりにルドルフ達と会うのはキミもしっていたよな!な、何で起こしてくれないのさ!

 

 

女性は服を着替えながら男性に文句を言う

 

 

なーに、偶にはいい薬だろうよ?

いっつも、いっつもいっつも俺が起こさなきゃ起きないねぼすけさんにはな?

 

 

それは否定しないさ!だが、よりにもよってタイシンの来る時に起こさなくってもいいだろう?!

 

 

さぁーてねぇ、俺は知らんかったなぁ?

 

 

 

嘘である

この男、ルドルフより早朝連絡を受けていたにも関わらず、女性を起こさなかったのである

 

 

ああ、もうっ!待ち合わせの場所まで行くのに専用レーンを使ったとしても40分はかかるんだよ!?遅刻確定じゃないかっ!

 

 

自業自得だな

 

 

 

タキオンと呼ばれた女性は慌てて飛び出していった

 

 

 

 

 

 

平和だねぇ

 

 

男性はしみじみと呟いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という訳で今度のサークル本の製本手伝って下さい!

 

あのねぇ、デジタル。何でアタシとウオッカまで手伝わせるのよ!

 

せっかくですし、スカーレットとウオッカさんにも売り子まで手伝って貰えたらなって

 

いや、私までやんのかよ

 

 

 

カフェテリアではピンク色の髪をした女性が赤い髪のツインテールの女性と黒髪の女性に頼み込んでいた

 

ピンク色の髪をした女性はアグネスデジタル。同人活動に魂を込める新進気鋭の同人作家

ツインテールの女性はダイワスカーレット。アグネスデジタルの従姉妹であり、かつてトリプルティアラを達成した事のある人物

黒髪の女性はウオッカ。ダイワスカーレットと同時期に活躍した人物であり、有馬記念三連覇という大記録を打ち立てた人物だった

 

 

 

あれ、タキオンさんじゃねぇの?

 

ウオッカが周りを見渡していると、カフェテリアの反対側の専用レーンを必死に走っている女性を見つけて、声をあげる

 

 

あ、本当ね。どうしたのかしら?

 

そうですねぇ、多分待ち合わせに遅れそうになっているんじゃないでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次のニュースです

 

 

本日、〇〇総理は所信表明演説で

 

『私達は今、歴史の転換期を迎えております。人とウマ娘の共存社会。これにはまだまだ課題があるでしょう

 しかし、歴史を紐解いてみれば、人種、思想等埋めがたい障害を乗り越えて来た事が多々ありました

 私達もそうならなければならないのです。我々政治家がその先頭に立ってこの困難な道を進み続けたい

 そう私は思っております』

 

と語り、三期目となる現政権においても、ウマ娘と人の共存社会実現の為に努力する事を改めて表明しました

 

 

 

 

街頭テレビはその様なニュースを流す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふむ、どうやらタキオンは遅刻する様だ

 

また寝坊でしょ。どうせ

 

アイツもいい加減怒ってるんだろうなぁ

 

 

待ち合わせ場所でのんびりとしている美女3人

 

 

 

トレセン学園黎明期を生徒会長としてまとめ上げた『皇帝』シンボリルドルフ

 

シンボリルドルフやサイレンススズカ、ミホノブルボンなどとの『死闘』と呼ばれる天皇賞秋を見事制した『鬼脚』ナリタタイシン

 

トリプルティアラを獲った『シンデレラ達の希望』ダイワスカーレット、その圧倒的ともいえる差し足にてその世代を沸かせた『差し姫』ウオッカ。その彼女達と鎬を削りあった『暴走特急』ゴールドシップ

 

 

彼女達は遅刻してくる友人をのんびりと待っていた

 

 

 

 

 

しっかし、タキオンさんも懲りねぇよなぁ

 

懲りるという意味では、キミもさして変わらないと思うのだが

 

いつも旦那やマックイーン達を振り回してるアンタが言うの?それ

 

 

ゴールドシップの一言に思わずツッコミを入れる2人

 

 

 

別にいいじゃねぇかよ、楽しくやってるんだし

 

 

ゴールドシップも反論するが、その後頭部には汗が流れていることから苦しい言い訳である事は承知している様であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たづなっ!来年の入学者の願書は集まったか?

 

はい。いつもながら、倍率は四倍にはなるかと

 

 

 

此処はトレセン学園理事長室

 

そこでは2人の女性が話をしながら、書類整理をしていた

 

 

1人は秋川やよい

トレセン学園発起人の1人にして、学園創設時より生徒たちを見守って来た人物

 

もう1人は駿川たづな

秋川理事長を常に支えている彼女の秘書であり、様々な知識を豊富に持つ人物である

 

 

その部屋に一枚の写真がある

 

教え子の結婚式の写真だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ま、待たせたねぇ

 

 

汗だくになりながらタキオンは謝る

 

 

ふむ

 

 

ルドルフは近くの時計を見る

 

 

⏰<姐さん、今12時15分でっせ〜

 

 

予定より、約30分の遅刻

 

 

どうせ、タキオンの事だから大方研究に熱中し過ぎてたんでしょ?

 

 

処置なし。と言わんばかりのタイシン

元より、生活の殆どを旦那にコントロールされているタキオンである

子供が出来るくらいの事がなければ、こんなものだと割り切っていた

 

 

 

ま、タキオンさんなら仕方ねぇよな

 

 

ゴールドシップは苦笑していた

 

 

 

彼女からすれば、自分の旦那。つまり元トレーナーが現役時代色々とお世話になっていたタキオンである

あまり強くはいえなかった

 

ゴールドシップ自身も現役の頃にはタキオンとその彼である人物には迷惑をかけた自覚もあるから、尚更だったのだが

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、まさかオグリキャップが小料理屋とは

 

そうだねぇ。私も相談を受けた時には驚いたものさ

 

そうはいうけどさ。オグリだってなんだかんだ言いながら料理研究会に参加してた訳だし、そこまで不思議でもないんじゃないの?

 

でもよぉ。まさかプロポーズする時に自分の手料理出すなんて思わねぇよなぁ。あの人食べる専門とばかり思ってたぜ、アタシは

 

 

 

 

 

 

『トレセン学園三暴食』筆頭、オグリキャップ

 

 

『スイーツ』のメジロマックイーン

『爆食』のスペシャルウィーク

『食帝』オグリキャップ

 

この3名の中でも一際秀でたのが、オグリキャップだった

 

 

食べる事を好み、故郷を想い、トレーナー(相棒)と共にターフを駆け回ったルドルフ達の世代におけるダート最強のウマ娘

 

 

 

 

 

彼女は相棒である自身のトレーナーに引退レースの直前、プロポーズした

 

 

実はルドルフ達の世代における二番目(・・・)に伴侶を見つけたのが彼女である

 

 

親友であるタマモクロスやスーパークリークにナイスネイチャ、『専業主夫』ことタキオンの彼に料理を師事しており、その腕はトレセン学園在籍中にタマモクロスにすら匹敵する様になっていた

 

 

 

オグリキャップは引退後、故郷の笠松にトレーナーと共に戻り、彼女は小料理屋。旦那はトレーナーとして、オグリキャップの後輩達を指導している

 

 

オグリキャップの知り合いや、彼女の友人であるタマモクロス達も頻繁に訪れる隠れ家的なスポットとして機能していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、中々にキミたちもすごい事を考えるものだね。正直なところ、正気とは思えないよ

 

タキオンは苦笑いした

 

 

 

なお、これを彼女の旦那や知人に言った場合

 

 

お、なんだタキオン。中々強烈な自己紹介だな

 

とか

 

寧ろ、貴女が正気だった事はあるんですか?

 

 

と言われる事請け合いである

 

 

 

 

 

それはさておいて

 

 

 

トレセン学園を卒業したウマ娘の中で明確に伴侶(結婚相手)を見つけているものは、実のところそこまで多くない

 

 

出走したレースの殆どを制したシンボリルドルフとて、未だに未婚であるし、ナリタタイシンとてそうである

 

 

参考までに言うと、ゴールドシップは既婚者であり、同世代のダイワスカーレットやウオッカとてそうである

更にアグネスデジタルとて、実は既婚者だったりする

 

 

年齢的には何ら焦る事のない二十代前半という事で、ルドルフもタイシンも周りから言われていても焦る様子はない

 

 

身近なグルーヴやチケットにハヤヒデも明確に付き合っている男性(元トレーナー)がいると言っても気にする気配すらない状態である

 

 

 

 

 

というのも、2人があくまでも初恋を未だに堅持し続けているのは近しいもの達なら誰しもが知る話であったりする

 

 

 

相手である彼はアグネスタキオンがトレセン学園を卒業した翌日に婚姻届を提出

卒業1週間後には結婚式を挙げているのだが

 

 

事情をよく知らない者からは、非難があったものの、タキオンにせよ彼にせよ、ルドルフとタイシンとも話をした結果であり、当事者たる2人は素直に祝福しているのだから、事情を知らない者からすれば訳が分からなかっただろう

 

 

 

 

結婚式には2人に近しい者や、樫本理事長代行やその担当ウマ娘であるビターグラッセとリトルココンも出席。2人を幼い頃から見守っていた2人の地元の町内会長やメジロ当主に秋川本家当主も出席した

 

仲人は共通の親しい友人代表としてシンボリルドルフ。新郎の親族として実に3年ぶりに彼の両親が出席し、再会にさしもの彼も涙した

 

新婦側の親族として、ダイワスカーレットにアグネスデジタルが動くこととなる

 

なお、タキオンの父親は出席を辞退しており、代わりに祝電を送ってタキオンも涙していたとか

 

 

トレセン学園講堂にて、披露宴が行われるという前代未聞の事を樫本理事長代行は許可。在籍するウマ娘の新たな目標となった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アグネスタキオン

 

 

トレセン学園一期生であり、世間を騒がせた『現代のシンデレラ』

 

幼少期より、両親から育児放棄に近しい状態を置かれていたが、後述する彼女の幼馴染により生活環境を辛うじて維持する

 

トレセン学園に入学するも様々なトラブルに見舞われた事から、彼女はウマ娘としてのデビューが出来なかった

だが、ウマ娘としての能力は同世代の者に比べても遜色のないものだったと彼女に近いもの達は一様に話す

 

二期生として入学して来た従姉妹のダイワスカーレットのサブトレーナーとして、主にフィジカル面でのサポートを担当した

 

後に四期生といて入学してくるアグネスデジタルのトレーナーとして、実力を発揮。アグネスデジタルはウマ娘として珍しい、芝とダート双方で結果を残す事となる

 

トレセン学園在籍のウマ娘として、初めて結婚式を挙げた

 

 

 

 

アグネスタキオンの彼

 

 

幼少期にアグネスタキオンと出会い、憧れ、彼女のために努力を惜しまなかった人物

 

かなりの激情家であり、アグネスタキオンを傷つける者に容赦はしなかった

幼い頃のアグネスタキオンの生活環境を整えた人物でもある

 

トレセン学園にアグネスタキオンが入学してからは騒動ばかりだったが、翌年『トレセン学園トレーナー相談役』としての立場を得る事になった

これはウマ娘に対して、経験の少ないトレーナー達とトレーナーとの関わり方に慣れていないウマ娘達の間に立つことで双方の円滑なコミュニケーションを図る役職だったとされる

 

恋人であるアグネスタキオンが担当したダイワスカーレットやアグネスデジタルに対しては主にメンタルケアや健康管理を担当した

アグネスデジタルのサブトレーナーでもある

 

 

アグネスタキオンがトレセン学園卒業と同時に結婚

 

以後は穏やかな生活を送ることになる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





というわけで、とあるルート選択のエンドでした


ハッピーエンドだと思わなくもないけど、個人的には微妙だったりする


記念小説だから、良いと思いたい


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 タキオンのデート

デート回
みたいなもの

残念ながら、しばらくはギリギリの事が続く事になります


許してね?


今回もアンケートを取りたいと思います
宜しければご協力下さい


いやぁ、今日は晴れて良かったですね!スカーレット

 

いや、そりゃ晴れてた方がいいでしょうけどね。何でアタシ此処にいるのかしらね?デジタル?

 

 

 

此処はとある主要ステーションの側にあるコンビニのイートインコーナー

 

そこには帽子を深く被った2人の姿があった

 

 

そう、アグネスタキオンの従姉妹であるダイワスカーレットとアグネスデジタル

 

趣味も住まいも違う2人であるが、とある事情より集まっていた

 

 

 

実はタキオンお姉ちゃんから聞いたのですが、今日2人でデートだというらしいんですよ!

これはもう、見るしかないでしょう!

 

 

 

世間一般には、それをデバガメという

 

 

 

帰るわね、アタシ

 

 

ダイワスカーレット今年最高の反応速度であった

 

確かに大好きなお姉ちゃんとお兄ちゃんのデートである

気にならない筈はない

てか、許されるなら是非見たい

 

そう、許される(・・・・)ならばである

 

 

 

なんだかんだ言って恥ずかしがり屋な姉のアグネスタキオン

 

既に何度かデートしているとしても、果たして尊敬する姉がその様な事(デバガメ)を許すだろうか?

いや、許さないだろう

 

 

聞いた話では彼氏に執事服を着せて、『お嬢様プレイ』とやらをしていたというではないか

その際、偶然それを目撃した者はそれはそれは恐ろしい目にあったと

 

他ならぬ、目の前にいるデジタルがそう言っていた筈

 

 

 

興味がないとはいわないわよ、アタシもね。でもお姉ちゃんを怒らせたらどうなるか?アンタが1番理解してるんじゃないの?デジタル

 

ま、まあそうなんですけどね

 

 

デジタルもそれは理解している

怒らせた姉は怖い

 

 

 

しかし

 

 

でも、気になりませんか?

 

 

デジタルは諦めない

 

 

元々姉と兄が大好きと言って憚らないのがダイワスカーレットというウマ娘である

どれだけ、スカーレットの両親が良い顔をしなくとも、そこだけはスカーレットは譲ろうとしない

 

 

そんなスカーレットがその2人のデートを気にしないはずがないのである

デジタルもスカーレットもそういうお年頃なのだから

 

スタイルという一点においては、3人(タキオン、スカーレット、デジタル)の中において圧倒的なスペックを誇るスカーレット。だが、姉と兄に構ってほしいという願望を持つ甘えんぼなウマ娘なのだ

 

 

そういう意味(甘えんぼ)においては尊敬する姉と自分も一緒だと思っているが、デジタルからすれば寧ろ望むところである

 

姉と従姉妹に似ているというのは歓迎すべき事、なのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

一方

 

こちら、テイオー。目標は現在、階段を降りて改札方向へと進行中

 

 

『こちらオータム。確認した

テイオーは速やかにメジロとウィナーに合流されたし』

 

テイオー了解

 

 

 

 

その主要ステーション内の物陰に少しばかり(・・・・・)不審な人物がいた

 

その人物は2人(タキオンとその彼)の動きを手元の無線で報告すると、急いでその場を去った

 

 

 

 

この日、その駅に不審者の連絡が多数寄せられたことと関係はないはずである

 

 

多分

 

 

 

 

 

その駅の東口には、大きなシャトルバスが停まっていた

 

だが、不思議な事にフロントガラスにも車の後部や側面に社名などが掲示されていない

 

 

 

 

 

 

その車内では

 

 

会長、コードネームテイオーはまもなく追跡班に合流するよ

 

ウィナーより連絡。目標は東口改札口より出る模様

 

メジロより、足は用意した。との事だ

 

 

 

万事オッケーですわ!

追跡班には、くれぐれも慎重に行動する様徹底してもらいなさい!

 

 

車内の取りまとめ役と思しき人物は満足げに頷く

 

 

 

 

ちょう待てや!

 

そこにツッコミを入れるのは、我らがオカンことタマモクロスである

 

オグリにスズカにブライアン!

自分らなにやっとんねん!

 

 

明らかに色々と間違っている様な行動をする友人達に彼女はツッコむ

 

 

 

あー、多分言っても無理だと思うけど

 

 

諦め顔なのはナイスネイチャ

彼等のストッパー役であるはずだが、タマモクロス(学園のオカン)と協力したところで、時すでに遅かった

 

 

 

何せ

 

 

トレセン学園理事会公認組織(アグネスタキオンを愛でる会)の幹部全員を動員する史上最大の作戦であるからだ

 

 

 

 

 

では、基幹メンバーだけ紹介しよう

 

 

 

実働班

 

 

総括

会長、メジロマックイーン

 

補佐

マンハッタンカフェ

 

通信班班長

副会長、ナリタブライアン

 

通信班

オグリキャップ

サイレンススズカ

 

 

メインベース『オータム』管理

タマモクロス

ナイスネイチャ

 

 

 

 

追跡班

副会長、シンボリルドルフ

外部協力、ゴールドシップ

ナリタタイシン

 

 

 

 

マスコミ対策班(機動班)

班長

エアグルーヴ

 

対策班

ライスシャワー

ミホノブルボン

グラスワンダー

エルコンドルパサー

サクラバクシンオー

 

 

マスコミ対策班(トレセン学園)

秋川やよい特別顧問

駿川たづな特別顧問

テイエムオペラオー

キングヘイロー

エアシャカール

フジキセキ

ヒシアマゾン

 

 

 

という正しく組織の主要メンバー全てを動員した作戦だった

 

 

 

実働班は追跡班と連携して、2人の警護

マスコミ対策機動班はその脚の速さを活かして、彼等の早期発見

トレセン学園にいるメンバーに連絡を入れて、即時対応する

 

 

本来なら、機動班にスズカも入れる予定だったのだが、想定以上にスズカが怒っていた為に急遽オータム通信班とした

 

エルとグラスはアメリカから来ている為、いざとなればカタコトにて現地警察を誘導する役割があったりもする

 

 

 

実は、このメンツの中でタマモクロスとナイスネイチャ以外に良識のある判断が出来るメンバーはいなかったりするのはここだけの話

 

 

 

名前の通り、メインベース『オータム』は秋川家からの提供であり、陽動作戦にはメジロ、桐生院や政府首脳などが密かに関わっていたりもする

中の機材は全てメジロからの貸し出しであり、態々操作方法のレクチャーを事前に受けている

 

皆、一応は(・・・)常識的ではあるのだが、暴走すると止まらないのである

特に恋愛関係ともなると

 

 

本来なら此方側である筈の生徒会長(シンボリルドルフ)もこれについては役に立たない

 

 

何せネイチャ視点では明らかに彼を見る視線がアレなのだから

 

 

 

 

 

 

といっても仕方ない点もある

 

ウマ娘という、ある意味では特異な存在。それに寄り添おうとしてくれるのだから。しかも、その為ならば世間すらも敵にする事すら厭わないとなれば、乙女心を打ち抜くには充分すぎる

 

 

 

 

実質、ストッパー役である筈のタマモやネイチャが止めないのも、何処かでやはり憧れがあるからなのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、何処行くかねぇ

 

うぅん。悩むね、それは

 

 

腕を組みながら、楽しそうに話す2人

 

 

だが、疑問が残る

 

 

タキオンはウマ娘であり、彼とて少なくとも会見を見ていた人達には顔が知られている

 

にも関わらず、何故2人はデート出来るのか?

 

 

 

 

 

 

答えは簡単

 

 

トレセン学園に所属しているゴールドシチーというウマ娘がいる

 

タキオンは彼女によりメイクを施されていた。元々、『現代のシンデレラ』という呼び名こそ知られているものの、外見は彼やトレセン学園により徹底的に秘匿されている

 

彼はメディアにも姿を知られているが、メジロお抱えのメイク師により普段とは別人と言えるほど変わっていた

元々、外見についてはあまり頓着しない人物であったこともあり、同席していたゴールドシップをして

 

 

え、本当にオマエなの?

 

と言わしめる程の変わりようだったそうな

 

 

 

余談ではあるが、ルドルフは彼の姿のあまりの変わり様に、驚き

タイシンはどうでも良さそうにしていた

 

タイシンからすると、自分もそうだった様に彼に惹かれるウマ娘がこれ以上増える要素は要らない。というのが本音だったが

(ま、見た目だけでコイツの良し悪しを言う奴なんかにアタシ達は負けないけど)

 

 

ウマ娘、ナリタタイシン

 

 

最近のお気に入りは彼がたまにしてくれる、後ろから抱き上げられる事だったりする

 

 

 

ちなみに追跡班であるシンボリルドルフはマックイーンに対して、彼の姿の撮影とその保存を頼み込んでいたりするが、気にすることもあるまい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はてさて、タキオンとしては久しぶりのデートである

 

絶賛尻尾は大回転中。耳もご機嫌そうに忙しなく動いていた

 

 

 

更に言うと、タキオン曰く『彼の成分』がトレセン学園の学生寮に移った関係から慢性的に不足しており、その補充にタキオンは忙しかった

 

 

具体的に言うと、彼の胸に頭を擦り付けたり、彼の背中から抱きつく。などと言った行動をしていた

 

 

 

 

リア充滅ぶべし

 

と周りのみなしご達(彼氏、彼女いない人達)からの剣呑な。いや、最早怨念すらこもった視線を彼は感じていた

タキオンは絶賛、彼の成分摂取中であり、周りの視線(些末ごと)を気にする余裕はなかった

 

と言っても、常であったとしても気にする訳もないのだが

 

 

ではもう1人の当事者である彼は?と言えば

 

 

(怨念がどこにおんねん(・・・・)。む、いまいちかな?)

 

 

新しいダジャレ(対ルドルフ、グルーヴ用兵装)の開発に意識を向けていた

 

 

 

 

因みに地元の学校においても、この様な事は頻繁どころかいつもあった為、同級生や既婚者の教師はあきら、もとい慣れていた

 

 

更に余談ではあるが、同校の某女性教諭(40手前、未婚)はこの光景を見るたびにハンカチを咥えて悔しがっていた

バカップルする2人とこの女性教諭のコラボはその世代では日常風景であった事を付け加えておく

 

 

 

 

 

 

一方、それをついせ、いや偶然(・・)同じ方向に歩いていたスカーレットとデジタルは

 

 

いつも通りね

 

ええ、いつも通りですなぁ

 

 

平静そのものであった

 

 

しかし、疑問も残る

タキオンと彼はそれなり以上に変装しているのに、何故2人はわかるのか?

 

 

2人は言う、大好きな姉と兄の姿が少し変わった程度でわからなくなる筈ない。と

 

 

 

なお、兄が変装していることはデジタルがゴールドシップから聞き出したし、タキオンについてはマックイーン(会長)から聞き出している

 

 

 

例の組織において、2人は正しくタキオンと彼のそばにいる事が出来る事から勧誘された

 

敬愛する姉に大規模な組織ができていた事

 

これについて、スカーレットは

 

お姉ちゃんとお兄ちゃんの事でしょ?それくらい当たり前なんだから!

 

と満面の笑みで肯定したとされる

 

 

一方、デジタルは

 

いやぁ、皆さん尊みがわかってますなぁ〜

 

と此方も満面の笑みだった

 

 

 

 

これについて、マンハッタンカフェ(タキオンと彼の外付け良心回路)

 

 

似た者姉妹でしたか

 

 

 

とため息混じりで言ったとかなんとか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マックイーン達は追跡班と合流し、メインベース『オータム』ごと移動していた

 

 

 

なお、キチンと有料パーキングに停めていた為に何の問題もない

 

マスコミの様に路上駐車など、彼女達は認める筈なかったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ねぇ、ハヤヒデ?

 

どうした?

 

何で私達、2人を追いかけてるの?

 

簡単な事だろう

『恋は盲目』ということさ

 

 

一方、ビワハヤヒデとウイニングチケットは2人に気付かれない様にして尾行していた

 

 

 

本来、2人はトレセン学園に居る予定だったのだが、数日前にタイシンから頼まれた為、ここに居る

 

 

頼まれた以上、手を抜く事はしないハヤヒデは様々な情報を集めた結果、彼女達の地元である此処に来る可能性が最も高いと判断していた

 

 

 

 

妹であるブライアンなら

 

 

姉貴は余計な事を考えすぎる

別に聞けばいいだろうに

 

とか言いそうではあるが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、そろそろタクシー呼んだから来ると思うんだが

 

タクシーかい?なるほどねぇ

 

 

彼の話にタキオンは納得した

 

彼の創設した『例の組織』がこの状況下で動かない筈はない。ということを

 

 

 

あの組織は彼がタキオンへの愛情が暴走した結果、出来たことは彼も否定しない

 

だが、その一方で『何かあった』時の為の予防線でもあったのだ

 

 

幸いにして、発起人であるマックイーンはその辺の事情も汲んでくれた様だった。だからこそ、秋川トレセン学園理事長や桐生院との繋がりを期待できる桐生院所属のハッピーミークなども引き入れたのであろう

 

更に今回、タキオンにとって数少ない弱点となりうるスカーレットとデジタルすら組織に入れたとも聞く

 

 

ある意味ではトレセン学園に匹敵しうる影響力を有し得る組織。となれば当然タキオンや妹達(スカーレットとデジタル)は勿論、自分が妹分とするウオッカとて守ってくれるだろう

 

 

 

 

我ながら、薄汚いものだと思う

 

 

しかし、彼の根底にあるモノは

 

 

 

 

 

武者は犬ともいへ、畜生ともいへ、勝つ事が本にて(そうろう)

 

 

という戦国期の武将の教えだった

 

 

彼は幼いながらにこの言葉を

 

『武士は犬と言われようが、畜生と蔑まれようとも勝つことが一番』と捉え、自分自身の今の状況を考えた上で

 

『タキオンを守る為ならば、どれだけ否定されようと怨まれようとも構わない』

 

と決意した

 

 

 

彼にとって、『オペラ座の怪人』ファントムと、この言葉を遺した朝倉宗滴(あさくらそうてき)公は自身の道標となったのである

 

 

 

 

 

 

薄汚れた手でタキオンに触ることに躊躇する時もあった。実際、タキオンから距離を取ろうとしたことも一度や二度ではない

 

 

 

だが

 

君が汚れているというなら、それでも良い。私も汚れてしまえば良いだけの事さ

 

と言われた

 

 

 

 

 

あの時(・・・)は一緒ならば、どんなところでも良い。と思ったものだ

 

 

 

 

だが、違うのだ

 

 

タキオンは家族に疎まれ、母親に捨てられた

 

自分は家族を、友人達を捨てた(・・・)

 

 

 

 

何処が同じだと言うのか

 

 

世間では自分の事を『シンデレラの王子様』などと呼ぶ事もある

 

 

 

冗談にもならない

 

 

 

 

シンデレラの王子様はシンデレラに様々な物を与えられるだろう

 

地位も、安全な生活も

 

 

 

自分はどうだ?

 

 

タキオンの為。と言い訳して、トレセン学園まで来た

 

だが、今の自分はタキオンのみならず、トレセン学園やルドルフを始めとしたトレセン学園に通う生徒にすら迷惑をかけている

 

にも関わらず、自分はあたかも知らん顔で被害者ヅラをする

 

 

 

 

 

 

 

 

吐き気がする

 

 

 

 

これが自分なのか?と思うたび

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分を〇したくなる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何がタキオンの為だというのか?

 

汚れ続けていく自分をタキオンに見せたくないから、タキオンをトレセン学園の寮に入れた

 

 

 

タキオンは涙ながらに最後まで行ってくれたのに

 

 

 

その手をボクは掴めなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アグネスタキオンは少しずつおかしくなっている様な気がする彼が怖かった

 

 

彼が怖いのではない

 

その変わっていく彼を受け入れられなくなる自分が怖いのだ

 

 

 

タキオンはおぼろげながらも理解している

 

 

このまま行けば、取り返しのつかない事になるのではないか?と

 

 

 

 

 

だが、タキオンは怖かった

 

 

彼に拒まれるのが

 

 

 

 

タキオンがルドルフやタイシンについてある程度理解を示しているのは、恐らく自分だけでは彼を止めれないと思っているから

 

 

 

彼はトレセン学園に入った頃は少しずつ昔の様になっていった

 

私やスカーレット、デジタルが好きな彼に

 

 

 

 

 

スカーレットとデジタルを呼ぼうとしたトレセン学園見学

 

デジタルこそ来れなかったが、代わりに来たウオッカくんが彼の心を癒した

 

 

口にはしなかったが、私もスカーレットも喜んでいたのだ

 

 

このままいけば、優しかった頃の彼に戻る。と

 

 

 

 

夏のシークレットライブも良かった

 

彼の想いの少しでも理解できたから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、全て壊れた

 

 

あの騒動のせいで

 

 

 

 

彼はあの騒動により、自身の身を世間に晒さねばならなくなった

なら、私も。そう言った私を彼やルドルフ、マックイーン達が止めた

 

 

 

 

あの時、たとえ彼にどう思われようとも、私も出るべきだったのだ

 

 

 

そうなれば、まだ間に合った筈

 

 

 

情けないと言われても、彼にすがりついてでも止めるべきだったのだ

 

 

本当に今更、だが

 

 

 

 

 

 

今日、彼に抱きついて驚いた

 

 

彼はどちらかと言えば、やや肥満体型であった筈

 

それが痩せていた(・・・・・)のだ

 

 

彼は昔から私に愚痴っていた

 

自分はどうにも脂肪のつきやすい割に痩せにくい。と

 

 

 

そして、私が一緒に生活していた時にはそんな事なかった

 

 

 

私が大好きな彼の匂い

 

その中に僅かだが、香水の香り

 

 

 

彼はどれだけスカーレットやデジタルが言おうとも、香水だけはつけなかった

デジタルが嘘泣きで女装を頼んだ時は断れなかったのに、だ

 

 

つまり、彼は香水をつけなければならない様な状態にある。という事

 

 

 

そして、何よりも

 

 

 

 

 

 

 

彼はトレセン学園に移った私は元より、あれから誰も自宅に上げていないのだ

 

 

確かに人目を忍んで彼はトレセン学園に来る事もある

 

私やルドルフにタイシンとは直接接触もある

 

 

 

だが、ルドルフだけでなく、タイシンも違和感を感じると言うのだ

 

 

 

 

 

 

 

寒気がした

 

 

 

すぐそばにいる筈なのに、彼がいない気がしたから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレセン学園近くの病院の一室

 

 

そこである医師は悩んでいた

 

 

 

 

先日の事だった

 

救急車も使わず、一般車両で腹部を刺された少年が運び込まれた

 

 

事前に警察から連絡を受けていた

だが、明らかに刺し傷を見れば分かった

 

 

刺した相手に明確な『殺意』があった事が

 

 

 

直ちに医師は保護者を呼ぼうとしたのだが、少年を連れてきた人物から「連絡しないでもらいたい」と言われた

 

 

それを断ろうとすると、院内の電話が鳴った

 

 

 

 

 

 

 

そして、私達は手術が終わった少年を『その日』のうちに退院させた

 

 

院長から言われた

 

『この手術の事は忘れたまえ』と

 

 

 

 

その日や翌日のニュース、新聞にあの少年の事は一切載っていなかった

 

 

 

 

確かに上から言われた以上、組織に属するものとしては従うのが当然かもしれない

 

 

だが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

医師はひたすら悩み続けた




最後に不穏な事を入れるスタイル


いつもの乱文なので、諦めて下さい


今回のアンケートは期間を定めたいと思います

来週の木曜日までとしたいです


ちなみにアンケートで回収されなかった話は完結後にポロポロ出していく予定です

ではご一読ありがとうございました


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 断章 ダイワスカーレット

色々と立て込んでいたので、投稿遅れました

思わず諦めようかとも思いましたが、風呂敷は畳まねばならないのでまだ性懲りも無く続きます


宜しければお付き合いください


私はダイワスカーレット

 

 

パパとママの娘

 

私はウマ娘だけど、ママもお婆ちゃんも違うの

 

 

 

でも、従姉妹のお姉ちゃんとデジタルはウマ娘

 

お姉ちゃんはアグネスタキオン

デジタルはアグネスデジタルって言うのだけど、どうして私だけアグネスじゃないのかが少し不満ね

 

 

 

最近、お姉ちゃんとお兄ちゃんの周りが大変みたいで私はかなり心配してるの

 

お兄ちゃんって言っても、従兄弟ではなくてお姉ちゃんの彼氏だからお兄ちゃんって呼んでるのだけどね

 

 

 

初めて会った時はなんていうか、凄く『薄い人』だったと思うわ

 

お姉ちゃんを時折、目を細めて見ていたのは今でも覚えてる

 

 

 

 

でも、今なら分かる

あれはお姉ちゃんに憧れていたのだと思う

 

近づけど遠い

遠そうで近い

 

まるでお姉ちゃんはお兄ちゃんにとって、蜃気楼の様なものだったのではないかと今では思っている

 

 

 

私達ウマ娘とお兄ちゃんでは根本的に違う部分はある。でもね、私もデジタルもお姉ちゃんも、お兄ちゃんと一緒で笑いもするし、悲しくて泣く事もある

 

 

多分、お姉ちゃんがお兄ちゃんを心配し始めたのはそれをお兄ちゃんが直視した頃じゃないかと思う

 

 

お姉ちゃんの両親は私の両親に言わせると「ろくでなし」らしい

 

 

父親は若い頃、妹である私のママにたくさん心配をかけたらしいし、結婚する時はお爺ちゃんもお婆ちゃんもママも反対したって聞いている

 

母親は自分の会社での立場を固める為におじさんと結婚しようとしたらしい

それを知っていて、おじさんは結婚しようと決めた。だから、お爺ちゃんもお婆ちゃんもママもパパもお姉ちゃんの両親を毛嫌いしている

 

 

でも、そんな事は私とお姉ちゃんに関係のないこと

 

元々お姉ちゃんはどちらかと言うと、フィールドワークって言うのかしら?様々な事を自分の目で確かめようとしていたの

私やお姉ちゃんの様なウマ娘はどこまでいけるのか?

どこまで疾く走れるのか?

 

 

 

まだ小さかった私にお姉ちゃんは目を輝かせて話をしてくれた

 

 

そんなお姉ちゃんに惹かれたのが、お兄ちゃんだったのよ

 

でも、お姉ちゃんが最低限生活できると見たお姉ちゃんの親はお姉ちゃんを放っておいて出張ばかり

何度かお姉ちゃんに私は身体に悪いからって言っても止められなかった

 

多分、お姉ちゃんはその頃には身近だった両親に放置された事で周囲に関心を持つ事をやめたのだと思う

 

 

どうしても、私もパパとママがいなければ中々会う機会がなかった事もあり、同じ状況だったデジタルと歯痒い思いをしていたわね

 

 

 

でも、お兄ちゃんは違った

 

お姉ちゃんにどれだけ邪険に扱われても、お姉ちゃんのそばを離れようとしなかったというわ

 

 

 

 

そして、お姉ちゃんはいつしかお兄ちゃんを自分の生活の一部として組み込む事で自分のしたい研究に集中しようとしたの

 

 

まあ、それは無理だったんだけど

衣食住の中で衣、つまり衣服は早々変える必要をお姉ちゃんは認めてなかった。住、お姉ちゃんが住んでいる家はお姉ちゃんの両親が居ないからお姉ちゃんだけが生活していた

 

でも、食事だけはどうにもならなかったと聞いている

最初はビタミン剤とかサプリメントとかで済ませていたらしいけど、お兄ちゃんがあまりうまくない料理を作ってくれていたそうだ

それで、お姉ちゃんはそちらを優先したと聞いたけど、多分お姉ちゃんは私たちに隠している事があると思う

 

 

 

というかね、お姉ちゃんがお兄ちゃんに勝てない理由はね

 

 

胃袋を掴まれているのもあるけど、お姉ちゃんの研究室にある白衣

 

既にサイズが合わないから、着れないけどお姉ちゃんはいつまでも大切にしている

 

 

 

あれにはこう白色の糸で刺繍されているのだ

 

 

 

 

 

Dearタキオン(親愛なるタキオン)ってね

 

 

 

お姉ちゃんは知らないふりをしているけどね

トレセン学園の研究室に、その白衣があるってカフェ先輩から聞いたから、思わず訊ねたの

 

 

そうしたら

 

 

ふぅん、スカーレット。別に捨てるのが勿体無いとかそういう訳では別にないんだよ?ただ、せっかく彼がくれたものだからね。サイズが合わなくとも、保管するのが間違っている訳ではないと思うのさ、私はね。うん?数着あるのに、全部保管してるのは何故?いやいや、私とてこれを座布団に再利用しようとか、考えてはいるのだよ?だけど彼から貰ったものはやはり、特別だからね。大切にしたところで問題ないも私は思うのだよ。それはそうと、その話を誰から聞いたのかな?カフェから?ふむ

 

 

とまあ明らかに慌てていたんだけどね

 

頭脳明晰、冷静沈着言われているお姉ちゃんだけど、突発的な事態にはめっぽう弱いし、お兄ちゃんが絡んでいる時はほぼ面倒な事になるのよね

 

 

 

 

なお、スカーレットやルドルフ達はそのイメージが強いが彼からすれば

 

 

冷静沈着(爆笑)

とリアクションが返ってくるだろう

 

 

 

なお、彼はタキオンで遊ぶことが稀に良くあるのだが、50%の確率で反撃される

 

そういった時にはほぼ確定でバカップルする様になるのだが、幸いと言うべきかスカーレット以外に目撃された事はない

 

 

 

なお、目撃したスカーレットは

 

え、うまぴょいなの?うまぴょいするの?!

 

と動揺してたり

 

ふむ、そうだねぇ。それもありかもしれないと私はおもうのだけど、キミはどう思う?

 

とスカーレットに目撃された事で、スカーレット同様に動揺(・・)していたタキオンは彼に問いかけた

 

 

却下に決まってんだろうが!

 

 

彼は即座に拒否した

もしも、彼が拒否しなかった場合はそのままうまぴょい、うまだっち、すきだっちに移行する可能性は非常に高かったとだけ、名言しておく

 

 

 

 

 

 

実はアグネスタキオンという少女がかなりの臆病な性格であることを知っている者はごく僅かである

 

従姉妹であるスカーレットとデジタルに、恋人である彼くらいだろう

 

 

 

元々は唯我独尊。ゴーイングマイウェイ(我が道を征く)性格であった。いや、正確には周囲への無関心の方が正しいといえるだろう

 

だが、彼によってタキオンの生活は一変した

それ以降、アグネスタキオンという少女は彼という存在を常に必要としていた

 

 

ともすれば、彼が居なければアグネスタキオンという個人がおかしくなるほどに

 

 

 

 

 

それを知るスカーレットとデジタルからすれば、一連の騒動は怒りを隠しきれないものであった

 

 

なお、以前の強引なインタビューがあった事もあり、スカーレットとウオッカにデジタルの周辺にはメジロ家が雇い入れたSPが密かに配置されている

 

これは、スカーレットから話を聞いたデジタルがゴールドシップに相談した事で実現したのである

 

 

 

 

さりとて、トレセン学園と政府間で責任の所在が曖昧となっているアグネスタキオン達について、公的には(・・・・)部外者であるメジロ家にできる事はなかった

 

 

あくまでも、メジロ当主個人としての考えとメジロ当主という公人の判断は異なるものなのだから

 

 

 

 

 

ダイワスカーレットにとって、義理の兄となる人物は優しい人物だった

 

 

タキオン()は勿論の事ながら、自分(スカーレット)(デジタル)にも気を遣ってくれている

女子としては家庭的能力において、彼に全敗しているのはどうにもやりきれない気持ちになるが、それは仕方ないと諦めていた

 

 

ウマ娘という、世間から理解されにくい境遇にある姉や自分たちを理解しようとしてくれる大人はいても、同年代には中々いなかった

 

姉に至っては両親から嫌われて、叔父や叔母からも疎まれている

姉ではなく、その両親の所為であるとはいえども

 

それでも、大好きな姉に寄り添ってくれている兄をどうして嫌いになれようか?

 

 

 

そうであるからこそ、スカーレットやデジタルは煮え切らない2人にいつもやきもきしている

 

ともすれば、うまぴょいなり、すきだっちなりしてしまえば良いのではないか?

とすらスカーレットは思っている

 

同級生のウオッカや、デジタルの学校の先輩であるゴールドシップに聞いても、兄の様な人物は世間でも稀な人物らしいではないか

 

 

スカーレットとて、その様な事を言いたくはない。しかし、現実的に義兄(姉の彼氏)(キチンとした身内)とする為にはそれなりの行為が伴わねばならないのも事実のはず

 

だからこそ、姉の彼氏である人物をスカーレットとデジタルはお兄ちゃんと呼んでいる部分も無きにしも非ずなのだ

2人としてはいつまでも躊躇っている姉に対する叱咤激励のつもりなのだから

 

 

 

奥手なのは姉の自由だろう

 

しかし、最近では兄の周りに様々なウマ娘の先輩達がいるとも聞くではないか

姉の考えは理解できる。恐らくは自分一人では兄を繋ぎ止める事は容易ではないと考えているのだろう

 

 

 

 

だが、姉は知らないだろう

 

 

兄と自分とデジタルが慕う人物がどれだけ姉に執着しているのかを

 

 

 

 

 

姉であるアグネスタキオンは丈の長い白衣の下にオレンジ色やクリーム色の薄手のシャツ。

下はあまり丈のないスカートに黒タイツ。という格好を好んでいる

 

 

が、この格好とて兄の嗜好が多分に含まれているのは、スカーレットとデジタルも良く知っている

 

 

 

何せ、兄手製の白衣は全て丈が長く、それこそ姉が好む丈の短いスカートと合わせると、あたかもスカートを履いていないかの様に見えてしまう

 

そして、姉が愛用している黒タイツだが、スカーレットやデジタルは白のハイソックスを愛用しているが、明らかに枚数がおかしいと思われる

 

 

 

曰く

 

 

その、なんだ。彼にはいつも世話になりっぱなしだからねぇ。私の衣装で彼が楽しめるのであれば、私としては協力するのはやぶさかではないさ

 

 

との事だった

 

 

 

 

何故、そこまでしておいて、あともう少し踏み込まないのか?がスカーレットには不満でしかなかったりする

ウオッカもゴールドシップも兄に対して少なからぬ好意をいだいている

 

 

 

トレセン学園においても、シンボリルドルフ先輩や隠しているようだが、ナリタタイシン先輩も兄に対して好意をいだいているだろう事は間違いない

 

 

デジタル曰く

 

うーん。スカーレットからの話を聞くに、そのシンボリルドルフ先輩は兄さんに甘えているような気がしますねぇ。ナリタタイシン先輩についてはもう少し詳しく書かないとわかりませんが

 

 

との事だ

 

 

積極策を推奨するスカーレットと異なり、デジタルはあくまでも慎重に事を進めるべきだと言っている

 

 

どちらにせよ、兄と姉が結ばれて欲しいという一点においては共通しているといえるだろう

 

 

 

 

 

というか、最近ゴールドシップ経由で加入した、トレセン学園理事長公認組織『アグネスタキオンを愛でる会』の会長(マックイーン先輩)特別顧問(秋川トレセン学園理事長)副会長(ナリタブライアン先輩)との話し合いにおいて、この組織は姉と兄の関係を見守ろうとしている事がわかった

 

 

 

これは非常にスカーレットとデジタルにとって、興味深い話であったともいえる

 

つまり、姉と兄の関係はトレセン学園においても一定の支持を受けているという事なのだろう

 

 

 

それ自体は喜ばしい事である

 

名簿は見せてもらえなかったが、秋川理事長が言うにはかなりの人材が集まっているとの事。つまりは障害を除く方法には事欠かないということでもあるのだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最近、娘が従姉妹と頻繁に連絡を取り合っていると妻から聞いた

 

 

馬鹿兄貴の娘でないならば問題ないと私は思っているのだが、妻はそう思っていないらしい

 

どうにも、妻としては最近頻繁に休日出かけている娘が心配でならないらしい

それは父親である私も同じ。娘は何故かウマ娘としてこの世に生を受けてしまった

 

ウマ娘というもの自体にあまり理解が及んでいない。私と妻は途方に暮れた

だが、それでも私達の大切な娘なのだ。馬鹿兄貴の様な事など断じて出来るはずもない

 

ウマ娘というものはとにかく身体能力が非常に高く、感情的になった場合は警察などを呼ばねばどうにもならないケースが多々あると聞いている

 

それ故に社会において、あまり歓迎されていないとも

 

 

娘にとって馬鹿兄貴の娘と妹の娘がウマ娘であった事は何よりの吉事だったのだとは思う

 

 

妹はいいだろう。既に旦那と別れているとはいえ、娘をしっかり育てているのだから

だが、馬鹿兄貴はダメだ

その娘であるタキオンとも出来れば大切なスカーレットを会わせたくはない。ないのだが、他ならぬ娘自身がタキオンを慕っているのだから、親としては頭の痛い話だ

 

更にここ数年はタキオンと付き合っているとかいう、不審極まる男までるとさえ聞いている

 

 

娘が言うには、タキオンと幼馴染でありながら未だそばにいるというではないか

 

 

 

 

理解できない

 

 

馬鹿な兄は職場の同僚の勧めるままに、合コンをして今の妻と出会ったという

 

結婚すると言った時、私や妹は反対したのだ

 

 

どう考えても、兄にとって良い部分が見当たらない話だったのだから

 

相手からすれば、社内での立場を上げる為に兄を利用しよう。そう私と妹には見えていたのだから

 

 

 

それでも結婚を強行した

 

 

私と妹も渋々ながら、祝福したのだ

 

だが、あの女は事もあろうに兄と結婚していながら、不倫していたらしいではないか

そして、タキオンは不倫相手との間に生まれた子供だという事も最近になって知った

 

 

 

最近、世間を騒がせているのはタキオンの幼馴染だと聞く

という事は、この騒動の中心にはアグネスタキオンがいる可能性は極めて高い

 

それだけならば、問題ないのだが娘であるダイワスカーレットは来年進学する予定のトレセン学園に興味を持っていると妻から聞いている

 

妻と話し合い、トレセン学園の入学試験まではトレセン学園へ行く事はないだろうし、機会があっても行かせるつもりはない

 

 

 

だが、私にせよ妻にせよウマ娘という者達のコミュニティを甘く見ていたと痛感させられた

 

妹の娘であるアグネスデジタルの通う学校にはウマ娘の名門とやらの出身ウマ娘が在籍している。とつい昨日妹から連絡があった

 

しかも、デジタルはこの先輩と親しいとも聞く

更に娘の学校にもウマ娘がもう一人いるという事を始めて知った

 

 

 

私も妻もスカーレットを愛しているし、大事にしている

 

だからこそ、スカーレットには平穏な生活を送ってほしいのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




現在、私事により大混乱している真っ最中です

まことに申し訳ありませんが、次回投稿については不明とさせていただきます

あしからずご了承下さい


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 タキオンとのデート その裏で

難産でした

書きたい事は沢山あるのですが、関連性を考えると1話にまとまらないのでひたすら書いては消しての繰り返し


それだけしていても、クオリティが上がらないのがノイフェルなのですが


では、どうぞ


やれやれ

 

今の俺の内心を偽らずに語るならば、その一言に尽きるだろう

 

 

タキオンとの久しぶりのデートである

 

それ自体は非常に嬉しい事だ

なんなら、この幸運に邪神にでも五体投地からの全力の信仰を捧げても構わないと思うほどに

 

 

だが、時期が悪い

 

 

今、世間では総選挙を控えている状況であり、ことマスコミどもは必死になって与党を勝たせるべく偏向報道を強めている

 

やれ、現職の総理が新党を立ち上げるなど前代未聞であり、無責任だの

ウマ娘やその利権に群がる者たちが集まっている新党は所詮利益獲得を目指すだけの組織に過ぎないだの

自分たち(マスメディア)不当に(・・・)弾圧した現総理とその周辺の人物は民主主義を破壊しているだの

 

 

ここまでくると、いっそ感心する

 

よくもまあ、ここまで自分のことを棚にあげれるものだ。と

 

 

 

そう言った意味でなら、確かに今のタイミングは悪くないだろう

文字通り、彼等マスコミも生死をかけてこの選挙戦に挑むほかないのだから

 

 

 

だが、俺個人としては最悪のタイミングといえる

 

何せ、少し前に殺意の乗った攻撃を受けた。それにより、それなりのダメージを受けている

予想通りというか、所轄も一枚岩ではなかった様だし、ともすればマスコミと癒着しているだろう事も驚くほどの事ではなかった

 

 

マンションが暴露され、学園もバレている。当然、通学経路も奴らとて理解している筈

 

タキオンがメディアにより露出していないのは、本当に運が良かったと言えるだろう

 

 

問題行動を起こしたバイトの人物やマンションへの出入りをしていた業者などは管理会社から、取引停止を言い渡されているらしい。特に情報を漏洩させた人物については、労務規定違反として所属していた(・・・・)企業とマンションの管理会社の双方から訴訟を起こされているとか何とか

 

こっちにも、実績の少ない弁護士(名声を稼ぎたい乞食)が話を持ってきている

何せ、一連の騒動で俺は世間に姿を晒した。その俺が訴訟を起こすとなれば、話題性はじゅうぶんだろう

 

こちらからすれば、要らぬお節介でしかないのだが

 

 

現在、何件もの訴訟を起こしているが、それはひとえに俺に注目(ヘイト)を集める事と、軽々しくこの話題に触れさせない為である

 

自称専門家やコメンテーター(事情を知らない芸能人)程度に状況を掻き回されるなど迷惑千万なのだから

 

そも、テレビにせよ、週刊誌にせよ、ネットニュースにせよ注目されねば困る(・・・・・・・・)のだ

そこに当事者たちへの配慮など期待する方がどうかしている

 

 

ブンヤと昔はメディア関係者を呼んでいたらしいが、部数を売り捌こうとする新聞屋が語源だったと聞く

 

つまり、彼等にとっては真実かどうかは重要でなく、部数を売れれば問題にならないのだろう

 

 

新聞とは、古きを辿ればこの国においてなら江戸期の瓦版にその起源を見出すことが出来ると思われる

 

かの大坂の陣の頃より発生したと言われている瓦版は、あくまでも庶民の娯楽の一種であり、情報を獲得する機会に恵まれなかった当時の民衆にとっては、口コミと並ぶ情報を獲得するためのツールだったのだろう

 

 

だが、明治維新後になって大衆に広く情報を齎す手段として新聞が有効であると認識した者達は新聞社を設立。情報の収集と発信を自らの使命としたのだろう

 

だが、『物事は批判するは容易である』事からもわかる様に新聞社は度々時の政府を痛烈に批判した

その動きを憂慮した政府は言論統制を行使、それは忌まわしき太平洋戦争の終わりまで検閲という形で続く事となる

 

敗戦後、新聞社もまた情報を取り扱う立場としての責任を問われる事となり、一部新聞社のトップも責任を追求される事となった

 

 

戦後の混乱を経て、新聞社は独自の放送局を持つ事で更なる情報の発信を目指す事になっていく。その責任についての議論を置き去りとして

 

管理する側の政府としても、言論統制や言論弾圧はもってのほかであったが、偏向報道による世論の誘導は統治において有効であると判断し、一部新聞社などのマスコミとの行きすぎた関係(癒着)が横行する事となった訳だ

 

 

歴史的に見れば、新聞の起こりは官報。つまりは政府からの市民達への通達であった事から考えれば不思議ではないのかも知れないが

 

 

 

だが、時は移ろうものである

技術の革新により、人々はインターネットという手段を用いて、SNSなどによる個人での情報収集や発信を可能とした

 

結果として、新聞社などの既存のマスメディアはその立場を少しずつ、だが確実に弱めていく事となってしまう

 

マスメディアの対策は週刊誌などの様に話題性のある物を集めて報道するスタイルと、絶大な影響力を背景に強硬な取材などを推し進めるスタイルへと向かっていった

 

後者は権力者との緊密な関係も相まって、自分たちしか知り得ない情報(only one)を武器とする者も現れ始めた

こうなってくると、どれだけ早く情報を発信するか?が至上命題もなってしまう部分もあり、それが今回の騒動の様な問題を引き起こす原因ともなってしまった訳だ

 

 

更にこれを助長してしまうのが、TVの発達により出現した『芸能人』というものである

 

そも、芸能人とは『芸や能を生業(なりわい)とする者』という意味であり、口や容姿が優れている者の事ではなかった

 

能楽や芸とは古来、様々な上流階級の者に披露するものであり、目上の者に披露する以上、それなりの立ち振る舞いを要求されていた

 

が、戦国期の出雲阿国などにより、上流階級のみならず、庶民向けの芸能が発達していった

 

これもまた世襲制でなく、能力が重視されていた

 

歌や歌劇などもまた、実力があれば問題ない様な世界ではなかった

 

 

賛否両論あろうが、それにより品格と言えるものは維持できていたのもまた事実だろう

 

 

 

だが、TVやラジオなどの爆発的普及により、所謂芸能人(有名人)と呼ばれる者たちが次々と現れてきた

 

彼等もまた、ある特定の分野においては特出すべき才を持っていたのだろう

 

だが、昔と異なり同業者の増えた現代では余程のことがない限りはそれのみで生活出来なかった

 

 

そこに目をつけたのが、報道関係者だった

彼等は自身の持つ情報に付加価値を求めていた。芸能人達は自分の仕事を求めていた

 

結果、生まれたのがコメンテーターという門外漢であった

専門家でないから、責任を持たず。しっかりとした問題への知見を持たぬから、他者に平然と迎合したり、平然と他者をこき下ろす

 

芸能人であるから、そのファンは注目する。知名度があるから、その問題自体にも更なる価値を付与できる

 

 

 

自分の影響力を理解しているならば、この様な軽率極まる行為はできようはずもない

実際、古い意味での芸能人は余程なことがない限り、自ら情報を発信することがない。彼等はその辺りもしっかりと教え込まれているのだから

 

 

 

 

 

 

情報は発信するが、その是非は個人に委ねる

しかし、その情報を発信するのが有名人。その有名人は深く考えもせずに無責任な発言をする

 

 

 

彼からすれば、いい加減にしてもらいたい話でしかない

勿論、意図的にタキオンの情報を隠していた此方にも非はあろう。シンデレラと王子様とやらの価値がなければ、タキオンは分からないが自分は間違いなく此処にはいない

 

 

彼等は言う

 

有名人であるならば、責任を果たせ。と

 

 

 

責任とはなんだ?

タキオンが望んで親から憎まれたとでもいうのか?

俺は良いだろう。親を従姉妹を望んで捨てた人間だ

 

 

あなた方(芸能人)は望んでその道に入った

タキオンは他の道を選べなかった

 

 

それが同じだとは俺には思えない

 

それに、真実を述べたとしてもマスコミは都合の良い様にねじ曲げるだろう

 

 

現に、俺は刺されたと言うのに、近くにいたマスコミ関係者は見て見ぬふりだったし、担当の警察官も救急車を呼ぶ寸前に戻ってきたというではないか

 

大人だから卑怯とは言わない。俺も卑怯なのだから

 

 

俺と大人は同じ穴の狢に過ぎず、どちらも大した違いはない

違うとすれば、彼等の方が俺よりも社会的立場を持っているということだろう

 

 

タキオンは、スカーレットは、デジタルは、ウオッカは、ルドルフは、タイシンは、ゴルシは

そのままでいてほしい

 

 

 

 

 

汚いモノ。汚れたモノ

 

全て

 

総て

 

 

俺が持っていく

 

 

 

 

 

 

地獄の底まで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神よ

 

 

忌まわしき、呪わしき、そして残酷なまでに平等を強いる女神よ

 

 

貴女にとって、ウマ娘とはなんなのでしょうか?

 

 

 

取るに足らぬ、替えのきくものでしょうか?

 

 

 

愛を、哀を叫び 嘆き 悲しみ

 

それでも、まだ足りぬと仰せになるのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

私は無力で無様な人の子なれど、ゴルシ(壊すべきしがらみ)スカーレット、デジタル、ウオッカ(紡ぐべき明日)ルドルフ、タイシン(繋ぐべき未来)

 

何よりも

 

人生をかけて護りたい女性(アグネスタキオン)を守る事すら叶わぬのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

人の一生涯で守れる者はそう多くはないでしょう

 

財力、権力、腕力、学力

様々な力があるでしょう

 

 

俺はどれも持ち得ない

にも関わらず、守ろうなどと傲慢なのかも知れません。身の程知らずとなじられたとしても否定しません

 

 

しかも、俺は守ろうとするモノを増やしてしまった

 

 

 

 

 

ボクは親を知っていても、親の立場は知らない

 

どうしてタキオンの両親は彼女を半ば育児放棄したのか分からないし、分かりたくもない

 

 

 

ボクが知っているのは、両親から半ば放置されていて、それでも自分を保とうとしている弱々しかった彼女と夢に向かって進んでいた頃の彼女なのだ

 

 

 

だからこそ、タキオンの両親をボクは許せない

 

だが、ボクの両親はタキオンの両親を不快に思っていながらもタキオンも同一視していた

 

 

挙げ句、ボクとタキオンを物理的に引き離そうとした

 

だから、ボクはタキオンと家族を比べて迷う事なく彼女を選んだ

 

 

 

たとえ、何回生まれ変わったとしてもこの結論は変わらないだろう

 

 

タキオンを、タキオンの世界をありとあらゆる悪意から守る

それが、ボクの誓いなのだ

 

 

 

その為ならば、いくらでもタキオンの嫌う嘘を吐こう。周りを巻き込んでも止まる気はない

 

無情と非情と言われようが、ボクのせいで家庭を壊されたと恨まれようが一向に構わない

 

それだけがボクの救いなのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ、願わくば

 

 

もう少しだけ、彼女と過ごせる時間を下さい

 

ボクの傷が優しいタキオンに見つからない様に

 

 

 

少年はタキオンと共にいながら、自身の服の下の包帯の更に下にある傷を隠すために普段使わない香水まで使っていた

 

幸い、彼はこの事態を予想していたために常日頃から包帯を使用していた

香水は彼の従姉妹から贈られた物であるため、不自然さはそこまでないと自分では判断している

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

想いはすれ違い、拗れ、交錯する

 

 

 

それぞれの願う明日へと向かい

 




完結までの流れは出来ていますが、強引な展開は宜しくないと思うのでゆるりといきたいと思います

一読なさって下さった方、お気に入り登録していただいた方
皆様本当にありがとうございます


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 せいとかいのいちにちっ!

これはタキオンのデートの少し前のお話し


『まだ』平穏だった頃の残照


宜しければお楽しみくださいませ


私はエアグルーヴ

 

 

今年の春に開校したばかりのトレセン学園に通うウマ娘であり、トレセン学園の生徒会に所属している。一応書記を担当しているのだが

 

同僚?というべきなのだろうか、よく分からんが生徒会のメンバーは会長のシンボリルドルフと副会長のナリタブライアン

 

些か世間離れしている会長だが、その実務能力とウマ娘としての身体能力、更に組織を束ねる指導力とでも言うべきものは非常に高い

どれくらいかというと、(書記)は雑務、奴《副会長》はのんびりしていても普通に業務が回る程度といったところか

 

 

 

副会長を務めるナリタブライアンは頭脳明晰で知られるビワハヤヒデの妹らしいが、そういう面では似ていないな

ハヤヒデが理論派なら、奴は感覚派とでもいうのだろう

だが、不思議と奴のやる事は大きな失敗になりにくい。なんだかんだいっても、やはり姉妹なのだろうな。そつがない

ウマ娘としての実力も高く、トレセン学園においては上位と言えるだろう。それは会長も私もそうなのだがな

 

 

私も含めたトレセン学園生徒会は入学試験を好成績でパスした者の中から秋川理事長と駿川秘書が選んだと聞く

当初は上手くいくのかと不安だったが、なるほど私の様な者が心配するまでもなく、熟慮の末にメンバーを厳選されたのだろう

 

 

道標を会長(シンボリルドルフ)が示し、副会長(ナリタブライアン)がその道を切り拓く。(エアグルーヴ)がそこにルールなどを決める事で後からくる者達は歩きやすくなる

 

視点的にも、会長は総合的に。ブライアンはやや感覚で論じ、私はやや論理的に物事をとらえる

バランスが取れているといえるだろう

 

 

 

 

だが、最近は少しずつ変化が起きている

 

 

まずブライアンの奴がマックイーンの創設した組織に加入した

その後、私はその下部組織を創り、会長はブライアンに勧められるままに加入したそうだ

 

 

まぁ、それはいいだろう

 

 

確かにタキオンの彼氏は弱い。だが、私もブライアンも後に会長すらも奴と初めて競った時には負けている

 

奴曰く

 

 

レースってのは精神状態がかなり重要だと聞くけど、ことウマ娘に限ればそのウエイトは相当デカいな

 

とのことだった

 

 

 

だからとて、奴がそこまで上手だとは思えないが

いや、よそう。経緯などどうでも良い。結果として私たちは奴に負けたのは紛れもない事実なのだから

 

 

 

 

初めて奴に会った時は傍迷惑な奴という印象が強かった

だがよくよく考えてみれば、奴からすれば私達の人柄も知らない上に世間からはあまり受けの良くないウマ娘だ。警戒もするのだろう

 

 

 

とはいえ、たまにふらっと学校に来て、さらっとアドバイスしていくのはどうかと思うがな

 

 

特にスズカやブルボン、ライスシャワーが奴に対してかなりの敬意を持っているのだが、良いのだろう。恐らくな

 

 

 

実際、奴のアドバイスにより長らく燻っていた者も長すぎたトンネルを抜けたとも聞く

 

 

個人的には複雑だが、だからといって奴の活躍を認めないわけにもいかないだろう

 

 

内々にではあるが、奴をトレーナーにしようとする動きも理事会ではあるそうだ。全くしょうもない(・・・・・・)話だがな

 

 

普段から口には出さないが、私も奴のウマ娘の能力を伸ばす力には感心しているし、関心(・・)も寄せている

 

殊更、走る事に関しては私達ウマ娘はどうしても冷静に分析はできないからな

 

 

 

実際にトレセン学園において、奴のアドバイスで殻を破ったものはかなりいる

 

有名なところでいえば、ナリタタイシンだろうな

元々体格に恵まれなかった彼女だが、何やら海水浴で奴にアドバイスを受けて以降は彼女の友人であるビワハヤヒデやウイニングチケットとも互角以上の争いをしていると聞く

 

そのかわり奴がトレセン学園に来ると何かにつけて、奴のところへと行こうとするのだが

 

 

サイレンススズカなどは春先にアドバイスを受けたと聞いている。その後ミホノブルボンとライスシャワーもアドバイスを受け、更にその実力を増している

更に彼女達は効果的なトレーニングをアグネスタキオンと奴に組んでもらう様に頼み込んでいるとも

 

 

既にタキオンはレースに出ることを諦めている様で、これには乗り気な様だな

 

奴も奴で来年に入ってくる妹達(ダイワスカーレットとウオッカ)のトレーニングのデータ集めが出来るかも、と不穏な事を言っていたな

 

 

と言っても、それでも満面の笑みを浮かべていたスズカ達に何かを言うつもりはない

 

タキオンにせよ、奴にせよスズカ達を痛めつける様なトレーニング内容を組むとは思い難いしな

 

 

 

あとはキングヘイローとナイスネイチャだろうな

 

 

些か気位の高すぎたキングヘイローと逆に弱気にすぎたナイスネイチャ。この2人をあっさりと自覚させたのは驚愕するほかなかった

 

 

と言っても、スズカ達のトレーニング(アグネスタキオン臨時コーチを添えて)にキングヘイローを2日ほど付き合わせただけらしいがな

 

 

 

ナイスネイチャについては、どうやらナリタタイシンとジャラジャラの練習風景を見させたと聞く

 

ジャラジャラは悪路に強いウマ娘であり、芝では適性がないと奴は判断しダート一本に絞った結果、実力を伸ばし続けている

 

 

性格としては感情の浮き沈みが激しいのに、割と引っ込み思案という中々に難しい性格をしているウマ娘だ

 

 

とはいえ、トレセン学園においてはダートでオグリキャップを常に追い詰めるほどの実力を有する様になったのは驚くほかないな

 

 

 

ただ、トレーニング内容を聞くと目の輝き(ハイライト)が失われるのは大概ホラーだと思うのだが

 

 

 

 

 

 

エアグルーヴは知らないが、ジャラジャラのトレーニング内容は彼が幼い頃にしていたトレーニングをウマ娘様にスケールアップしたものであり、キツいなどという話ではなかった事をここに記す

 

ジャラジャラ曰く

 

「死ぬかと思いましたよ、本当に」

 

とのことらしい

 

 

 

 

 

頭が痛いのは(くだん)の組織がトレセン学園内のみならず、絶大すぎる影響力を有し始めていることだな

 

 

発案者である奴は名誉顧問という看板におさまっているし、会長もメジロという組織についても明るいメジロマックイーンだ

更に特別顧問として理事長とその秘書までついている

副会長としてブライアンと会長がついているから、然程に問題にはならないだろう

 

だが、つい最近に入ったとされるトレセン学園理事会の面々については注意が必要だろうと思っている

 

確かにマックイーンにせよ、ブライアンにせよ、会長にせよ優秀だろうことは疑いの余地もない

 

 

だからこそ、危険なのだ

私達の視点はあくまでも学生としては広いだろうが、一個人としては狭い

だが、相手は老練にして老獪ともいえる人物達

理事会といえば、常々理事長も苦労させられていると溢している連中だ

 

 

実際、トレセン学園の名目上は外にいる奴を合理的に学園内に入れようとしている。トレーナーとして

 

 

今は協力者だから、奴も余程のことがあれば拒否できる

だが、トレセン学園所属のトレーナーとなってしまうと完全に上下関係が出来てしまい、拒否も許されないだろうことは疑いの余地もない

 

 

しかも、理事会の意向とはいえトレーナーになってしまえば、間違いなく試験や適性検査を突破してトレーナーになった者達からの反発が予想される

何せ、まだ学生なのだ。あちらからすればふざけるな!と言いたくもなるだろう

 

理事会はトレーナーでなくとも、ウマ娘とトレーナーの相談役にしてはどうかとも打診しているらしい

 

 

 

資質はあるとしても、奴は受けないだろう

そも、奴がそこまでするのはタキオンの為であり、タキオンの周りを守るためだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

一度だけだが、見たことがある

 

光を失った、まるで死人の様な目をした奴を

 

 

聞けばナリタタイシンも見たことがあると言う。マルゼンスキーさんは奴をかなり不安視しているともこの前聞いた

 

 

 

会長は知らないかもしれないが、奴の内面は見た目ほどに安定していない

ともすれば、ガラス細工の様なものかもしれないとすら思えてくる程だった

 

 

 

奴の素顔はどちらなのか、関わりの少ない私には理解しかねた

 

それが何故か悔しかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつも通りとはいかないものの、通常業務は滞りなく終わる目処がついた

 

 

会長はやはりタキオンが気になる様でいつもと少しばかり様子が違った

 

ブライアンはどうやらハヤヒデにタイシンの事を相談されたらしく、珍しく頭を抱えている

 

 

ハヤヒデとチケットにタイシンは割と良く一緒に行動するのだが、最近では無自覚にタイシンが奴の話題をかなりの頻度で振ってくるのだそうだ

チケットは割と素直な上に感情表現は豊かなので然程に気にしていないそうだが、理論派であるハヤヒデにとって、奴の行動の大半が理解の範疇にない様だ

 

何せ、適正距離など無視した様なトレーニングをスズカ達に課していたり、ジャラジャラの受けるトレーニングなどは明らかに精神論的な部分も多いのだ

実際にハヤヒデは何度か奴に話を持っていくのだが、相手は論理的思考においてはハヤヒデすら上回るアグネスタキオンを相手にしてきた者だ

 

ハヤヒデの理論では、奴の精神論と経験則にタキオンとの関わりで磨かれた論理的思考を合わせた物を崩さなかった

 

それどころか、奴のトレーニングの有用性を文字通り『身をもって』味わったとの事だ

 

 

その時はジャラジャラのトレーニングの時だったらしく、ハヤヒデからすれば適性のないダートのトレーニングだったが、ハヤヒデ曰く

 

 

認めたくはないが、確かにトレーニングとしては効果的だな。なるほどタイシンや会長が焦がれるわけだ

だが、彼のトレーニングはかなりウマ娘を選ぶだろう。何せ明らかにオーバーワークギリギリのトレーニングだ。余程基礎が出来てないと数日で潰れかねないだろう

 

 

と言っていた

 

ハヤヒデの評価としてはかなり高いのだろう

 

 

トレーニング自体は過酷なものだが、その見返りは破格といえるだろう。そのかわり、奴に身体情報を開示しなければならないのだが、スズカ達やジャラジャラは全く躊躇わなかったそうだがな

 

スズカ達は元より奴を信用している。

ジャラジャラの場合は来年から始まるトレーナーとのトレーニングを待つだけなど、恐怖でしかなかったのだろう

 

 

そんなこんなでハヤヒデは奴に若干だが苦手意識を持っている様だな。ブライアンはそれを寮の自室で聞かされているのだろう

 

 

タイシンから聞くところによると、どうやらスズカ達のトレーニングにチケットも参加したいと言っているらしいな

 

そうなると、ハヤヒデの葛藤を受け止めれるのはブライアンだけになりかねない

 

 

あと、ウマ娘としてではなく女性としてタマモクロスと奴が主催する料理研究会にタイシンとチケットと共にハヤヒデもこの前参加したらしいが、その際に奴の料理に打ちのめされたらしいともきく

 

気持ちはよーーーく分かる

 

 

何故あそこまでふざけてもいる奴が繊細な料理まで出来るのか?という疑問は恐らく研究会に属するウマ娘ならば一度は思うだろう

 

私とて、母から家事のノウハウは一通りは仕込まれた

だが、タマモクロス(学園のオカン)スーパークリーク(誰かを甘やかしたいヤベーウマ娘)ナイスネイチャ(普通じゃない詐欺疑惑)には到底及ばない

 

菓子の腕前ならは、エイシンフラッシュ(ドイツからの留学ウマ娘)がとてつもない物だった

エイシンフラッシュの場合は身内が菓子職人の中でもトップレベルの腕前らしいから納得できなくもない

 

 

だが、そのエイシンフラッシュをして

 

 

・・・・これは

貴方が作られたのですか

あ、いえ。随所に不調和があるとはいえ、中々の出来かと

 

 

と奴の作ったカスタードパイを食べて言っていた

 

後で奴がほぼ独学で学んだ事を聞き、非常に驚いていたな

 

 

 

 

 

タキオンが言うには、彼女のサプリメント生活を終わらせる為にひたすら料理に没頭した時期があるらしい

 

奴の見かけとは裏腹に高い家事スキルの全てはタキオンの為だけに磨きぬかれたものだそうだ

 

 

お陰でタキオン本人の家事スキルは目を覆わんばかりの酷いものらしいが、それは女としてどうかと思わなくはないがな

 

とはいえ、人生の伴侶として考えるならば奴は間違いなく優良物件なのだろうとは思う

 

 

家事全般が得意で、私達ウマ娘にも理解があり、自分を高める事に躊躇いもない

 

問題としては、付き合ったとしてタキオンくらいの開き直りがないと女としてのプライドはボロボロになるだろう事くらいか

 

 

 

 

何を考えているのだ、私は!

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず仕事は終わったので、学園内の見回りに行く事にする

 

 

最近はトレセン学園トレーナー寮の工事関係者を一新した事で面倒な事はかなり減った。だが、それでも油断ならない

警備部の方からも女性隊員を十名ほどトレーナー寮の建設現場から学園の見える範囲に常駐で監視してもらっている

 

何せ、トレーナー寮とて三階建てだ

ともすれば、外部足場などからのトレセン学園内の無許可の撮影などが行われないとも限らないからな

 

前の工事担当業者のやらかしは全て今回新たに入ってきた元請に伝えているし、各業者にも伝達する様に要請(・・)している

本来ならば、スマホなどの撮影機器となりうる物の持ち込み自体を禁止したかったのだが、それだけは元請側も受け入れがたかった様だ

 

 

あちらの言い分も理解できる

だが、理解出来ても納得できるかについては全くの別問題

 

理事長から理事会連名の誓約書にサインさせ、違えた場合は一切の弁解は受け入れず、全て裁判にて決着をつけるとまで言い切ったそうだ

 

 

現代社会において、スマホは必需品といえる

それを仕事だからおいていけ。とはそうならない事くらい私達とてわかってはいるが、何せマスコミの連中が工事関係者に着目しないはずがないのはわかりきっているからな。果たしてどれくらいそれを認識しているのやら

 

 

現在、トレセン学園への入校が許されているのは、警備部と教職員。それに工事関係者と奴くらいだ

 

そこに例外は認められない

 

 

工事関係者については、工事時間は8時から夕方の5時までとなっている

残業の場合は昼の1時までに元請の担当から、私達トレセン学園生徒会への連絡が義務付けられている

 

工事の監督達も含めても最長で6時半。したがって、彼らに貸与する入門証も午前7時半から午後6時半と設定されている

 

 

これについても例外は一切認めないし、万が一にもこれを違反したり、入門証の返却の忘れがあった場合は速やかに該当する業者の出入りを禁止する。という、かなり厳しい内容となっている

 

 

警備部からは、車両での入校自体を禁止するべき。との声も上がっていた

その上で、現場出入り口に金属探知機などを設置して持ち込み物自体を管理しようという声もあったとも

 

 

過剰ともいえる対応だが、警備部としてはスマホなどの持ち込みを認めた場合、学園内の無許可の撮影のリスクを完全に払拭できないとの事だった

 

 

であればこそ、過剰であろうが、苛烈と言われようともそうすべきだという意見が多かった

 

 

 

実際、タキオンと奴の住まいの情報を漏らした奴にはとあるマスコミから多額の報酬が渡っているとも聞く

 

勿論、示談するには全く足りない。せいぜいが裁判の費用になる程度だろうが

 

 

だからこそ、それを知る作業員がいた場合魔がさしてしまう事があり得る

 

事実、前の元請の契約を打ち切った理由の一つが作業員の1人が自身のブログにトレセン学園内の写真を掲載した事が発覚したからだからな

 

 

 

写真の素人ならいざ知らず、その道のプロに見せれば何処から撮影したのか位すぐに分かるというのに

 

 

 

結果、警備部に必要でなかった負担を強いる事になってしまったわけだ

 

 

 

 

更に未だトレセンでに無許可で侵入しようとする不審者(記者)もいる様だから、見回りも必要

幸いというべきか、スズカ達やジャラジャラにエアシャカールやマンハッタンカフェ(アグネスタキオンというマッドの仲間たち)にテイエムオペラオーやサクラバクシンオーなども協力してくれてはいる。しかし、全く手が足りない状況だと言える

 

 

ましてや、私達の姿を今はまだ隠すべきだというのが理事会の考えだ

 

 

 

 

奴についてもタキオンと別居した事で扱いが変わることとなった

 

今までは通用門の警備部詰め所に連絡を入れる事は奴も理事長も私達生徒会もなかった

だが、今後は三時間前くらいには連絡しなければならないし、所轄の警察官がマンションから学園近辺まで、近辺から通用門までは学園の警備部が奴を監視する事になった

 

不愉快な言い方ではあるが、どうにも所轄から我々トレセン学園関係者はよく思われていない様だったらしい

 

 

警察からすれば、私達の行動など余計なことにしか見えないのかもしれないな

 

 

 

本来ならば、騒動の頃まではきちんとした体制があったにも関わらず、あの騒動において一部の有識者と名乗る連中がテレビなどでこぞって奴とタキオンにつけているSPの経費は何処から出ている?などと騒いだ

 

 

更にタキオンの転校を支援していた国会議員が贈収賄の疑いで辞職せざるを得なくなったのも問題だった

 

 

 

その辺りに詳しいマックイーン曰く

 

 

残念ですが、国会議員ともなると本当に真っ当な議員を探す方が難しいのです

多寡の問題ではないでしょうけども、あの議員よりも大っぴらに不祥事をしている議員は私も何人か聞いていますの

 

 

 

つまり、邪魔な後ろ盾を先につぶしに来たというわけらしい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

校内を巡回しながら、思考の海に沈む

 

 

一部生徒は動画配信サイトにて、色々な意見を聞いているという

心無い意見というよりも、罵倒や誹謗中傷に近いものもあるそうだが、彼女達はそれでもやめるつもりはないそうだ

 

 

奴を取り巻く状況はある意味ではトレセン学園にいる私達以上に悪い

 

 

 

のだが、問題は奴のみではない

 

 

 

タキオンにせよ、会長にせよ奴に近すぎるから見えてないところがある事に気づいていない。いや、タキオンの場合はたまに憂鬱な顔をすることからして、わかってはいるのだろう

それでも止められない、といったところか

 

 

 

かくいう私も奴を止める事はできないだろう

 

あの手の者は自分の中に抱え込まないほどの重荷を抱え込む

辛抱強いから、問題なく片付けられるうちは分からない

 

だが、ひとたび自分の容量を超える事に直面しても自分だけ(・・)でどうにかしようとする

 

 

 

人というものは常に精神の影響を多大に受ける

 

こと、奴の様な者はそれが顕著だ

 

 

 

タキオンは言っていた

 

 

初めの頃の彼は、それこそ私が理解できない程にキラキラと輝いた目を私に向けていたよ。初めは戸惑い、そのうちに慣れていったがね

 

 

苦笑混じりに

 

 

だが、私はタキオン(超光速の粒子の名を持つ者)だ。どの様な意図があってこの様な仰々しい名前をつけたのかは知らないが、それでも私はウマ娘の果てを見たくなっていたのさ

 

だが全てをそれに向けていた私は(愛する者)と出会い、従姉妹達(スカーレットとデジタル)にキチンと向き合い、理不尽(両親)を見て、思ったのさ

 

遠くを見るように、眩しいものを見るかのように

 

 

その結果、満足出来るのか(私は幸せになるのか)?とね

 

 

 

 

その言葉を聞いた時、私と同席していたマンハッタンカフェは驚いたものだ

 

 

 

いつもの飄々としていたタキオンのイメージを完全に払拭するほどに、彼女は魅力的だったからな

 

 

 

 

 

 

なお、この話が終わって散会する間際に

 

 

 

では、私がいつも実験体になる必要はないのではないでしょうか?

 

とカフェが言ったところ

 

何をいうんだい?キミが彼の秘蔵の本を欲しがるから、わざわざ実験体の報酬としているだけだろう?それは言いがかりだねぇ

 

 

 

との事だった

 

 

私がそれでもカフェの事を考えて、実験の頻度を下げるべきでは?と提案したところ

 

 

無理だろう。私だけならいざ知らず、彼の実験はデータが多ければ多いほど良いのだからね

 

 

との答えが返ってきた

 

 

まさか、奴も実験しているのか?と私が驚くと

 

 

当然です

 

そもそも、彼の方が私よりもぶっ飛んでいる所があるのだがね。自分自身を使っての臨床試験などそうそうできないだろうに

 

 

 

とタキオンは元より、何故かカフェにも真顔で反論されたのだが

 

 

 

 

類は友を呼ぶ

 

 

 

私は改めて先達の言葉の重みを噛み締める事となった

 

 

 

 

 

 

余談だが、その翌日にタキオンとカフェから話を聞いたらしい奴が、それこそ輝かんばかりの満面の笑みで私を追いかけ回した

普通なら、適当に対応するのだが、奴のタキオン以上の不穏な気配と腰袋に入れていながら頭を出しているアンプルなどが私の恐怖を煽った事は言うまでもない

 

 

何故かその場にいたゴールドシップを盾として、なんとか逃げおおせたのは幸運だったといえよう

 

 

何故かその話を聞いたスズカ達やグラスワンダーは羨ましそうな顔をしていたのが今でも謎だがな

考えてはならないという本能の警告に従って、私は全力でスルーする事にしたが

 

 

 

 

 

 

 

多目的ホールでは、オペラオー達が舞台の練習をしていたり、ライスシャワーがいつもの事(模擬短刀を持っての踏み込み練習)をしていたり、エアシャカール達がパンなんとかとかいう車輪状の物体の試作品を動かしていたりしたが、概ね平穏だった

 

 

 

セイウンスカイが薙刀装備のグラスワンダーに追いかけ回されたり、タイシンがスズカとブルボンとハヤヒデを追いかけ回していたり、ジャラジャラとキングヘイローが紅茶タイムをしていたりもしていた

 

 

というか、此処トレセン学園の生徒達は多少(・・)個性的な面々が多い

 

 

だからとて、倫理観や良識が欠如しているわけでは決してないのだが、ウマ娘としての全力を出せなかった弊害かトレセン学園でかなり自由にする者が多いのも事実なのだ

 

 

それについては私やルドルフ会長、ブライアンとしても問題にするつもりはない

 

 

ないのだが

 

 

 

 

アグネスタキオンのモルモットになり隊(どけ!私達がモルモットだぞ!)

 

 

というのは何なのだっ!

 

 

 

基幹組織であるアグネスタキオンを愛でる会から派生した様々な下部組織がトレセン学園内には存在する

 

 

警備部の『アグネスタキオンと彼を守る会』は規模として下部組織の中では最大であり、私とヒシアマゾンとフジキセキが主催する『アグネスタキオンと彼の世界を見守る会』がその次の規模を持つ

 

 

下部組織の統制はかなりのバランス感覚が必要(面倒事は勘弁)との事で副会長であるブライアンより、私達3人が下部組織の統制をしている

 

統制などと仰々しい物言いだが、要は羽目を外しすぎないように少しばかり目を配るだけなのだがな

 

 

 

だが、ついこの間の事

 

 

奴にトレーニングをしてもらっているジャラジャラを羨ましがる者達が急遽作り上げたのだ

 

 

組織については名目上、下部組織となるためにその取りまとめの1人であるフジキセキへの届け出がされたそうだ

 

 

目的はマンハッタンカフェとスズカ達やグラスワンダーにエルコンドルパサー、ジャラジャラの代わりにタキオンと奴の実験(トレーニング)を受ける事らしい

 

 

 

 

確かに私たちは多少羽目を外すくらいは許容すると言ったが

 

 

 

 

頼むから、自重してくれ

 

 

 

と願ってやまない私だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後年、エアグルーヴは世間からは(・・・・・)女帝と呼ばれる事になる

 

 

だが、トレセン学園関係者は一様に

 

 

 

 

トレセン学園のお母さん

 

 

と呼んだとかなんとか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なお、トレセン学園にはタマモクロス(学園のオカン)スーパークリーク(ウマ娘のママ)が存在する事態となっていた為にエアグルーヴはそれを聞いて絶望したかの様な顔になったとされる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




というわけで、『トレセン学園の3人の母親』が爆誕する未来へとつながる事が決定した瞬間でした

というかね、ストーリーのグルーヴさんは嫁というよりもお母さんって感じがしましてん



補足としましては、グルーヴが彼の事を『たわけ』と呼ぶ事はないです

アレはトレーナーにこそ相応しいと思うので


ご一読ありがとうございました


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 大人たち

書き連ねた結果、中途半端な物が出来ていたので完成させてみた


いうまでもないですが、クオリティはないです
内容も『ないよう』ですな


お気に入り乱高下してて、苦笑を禁じ得ない

とはいえ、この様な小説もどきを読んでいただきありがとうございます

では、どうぞ


汚職のスキャンダルを報じられ、世間から白い目で見られていた元国会議員の男性は自宅で連絡を受ける

 

 

あの少年が刺されたというのだ

 

 

 

刺したのは中学生の男子

 

動機は自分の両親の仕事を奪い、自分の家族を壊したから

との事だった

 

少年の両親はこの秋に倒産した大手の企業に勤めていた

その企業は強引な取材を続け、再三の各方面からの警告を無視し続けた結果、孤立してしまう事になったところである

 

これだけならば、マスコミにおける最大手の一つである。蓄えていたモノも決して少なくはなかったからどうにかなった

しかし、政府から直々に勧告を受けた事を知った投資家達は早々に株式を手放した。彼等からすれば、儲けになるならいざ知らずその材料が致命的に不足している企業の株式など保持する理由などないのだから

結果、今年度末までは放映権などもどうにか出来る様に交渉していた者達の想いなどお構いなしに株価が大幅に下落した

そして、この状況を不安視した株主達は最早暴落と言って良い程の値崩れを起こした事による損益の補填を求めた

 

彼等からすれば、決して値崩れするはずのないもの(安全牌)が、経営陣の無策によりまさかの事態を引き起こしたと見えるのであるからして、当然といえたのだろう

 

 

だが、大手であるからこそ取引金融機関も多い。ならば、取引先の金融機関に借り入れを申し込む事でどうにか事態の収束を試みた

 

俗な言い方だが、彼等に残された手段は自分たちに強権を振るった現政権のスキャンダルを見つけるか、政権与党の重鎮を説得するほかない。それに必要なのは実弾(賄賂)であるのだから

 

 

スキャンダルを報道するにも、彼等では世間からの視線も厳しい

となれば、同業者を頼るなり利用するならしなければならないのだが、彼等のした事がきっかけとなり報道機関に対しても政府が大鉈を振るう口実が出来てしまっていた

 

他所のところとて、強引な取材をしてないとは誰も言わないが、それでも致命的なミスをおかす事は避けていたと自負していたのである

その努力(あくまでも彼等マスコミ視点)が無駄になったとなれば、決して良い感情をいだける筈もなかった

 

 

これも動かすには(利益)を用意する他なく、それは今の彼等にとって容易ならざる事であった訳である

 

 

それに加えて理性的な判断の出来る会社は大手である筈のこの会社との契約打ち切りなどを打診してきた。さらに世間からの風当たりが強いと判断した芸能プロダクションや事務所なども契約の打ち切りや一時停止などの措置を取り始めた

 

それ故に融資を欲したのだ

しかし、今までの経営状態でいえば融資出来るのだが、彼等(金融機関)とて利益を上げぬ事にはどうにもならない

 

融資する事自体に問題がなくとも、政府から睨まれている事は彼等も独自のルートから知っていた

しかも、生命線である放映権の取り上げが真剣に検討されているとなれば、融資したとしても返済されるかは非常に怪しい

 

金の切れ目が縁の切れ目ではないが、誰だって沈む船を財産を載せるものはいないだろう

 

ましてや、額が大きすぎるのであるから、どこの金融機関も容易に首を縦には触れなかったのだ

 

 

更にその企業にとっての不運は続く

 

緘口令をひいたはずであった『今秋からの放映権の取り上げ』の予定。これが社員達に漏れたのである

 

番組の放送が収入の中心であったからこそ、この話は社員達に衝撃を与えた

 

その結果、退職金がもらえるうちに退職する者が増え始め、更にそれを見た者たちも退職を意識する様になってしまう

 

 

児童の両親はその騒動において、倒産が決定的になってから退職した

 

両親からすれば、信じ難い事であったし、仮に退職したとしても同業者に再就職する事は容易だと考えていたからこその判断だった

 

 

だが、よりにもよって政権幹部からの警告を再三無視した挙句、倒産の憂き目にあった企業からの退職者

 

しかも、両親は番組制作に深く関わっていた

それも報道関係の番組の、である

 

2人は自身の番組にて、トレセン学園について取り上げた事がある

その際、コメンテーターなどにそれとなくトレセン学園に対するネガティブなイメージを拡める様に指示していた

 

 

 

果たして、ある意味ではその企業が倒産した遠因ともなり得る番組の制作、しかもその中枢にいた人物を雇いたがるだろうか?

 

 

 

もしかしたら、雇う所もあったのかも知れない

 

 

だが、2人は大企業であった会社に長年勤めていた。そのプライドが「同じくらいの規模の会社でしか働きたくない」という行動につながった

 

 

 

だが、雇うかどうか判断する方からすればとんでもない事でしかない

 

 

直接的に政府から言われてないとしても、ある意味では政府から睨まれている可能性がある人物。それを引き受けるのはメリットよりリスクが遥かに上回る

 

そう判断したとして、誰が責められようか

誰しも自分の会社を潰したいとは思わないのだから

 

 

 

結果、両親は職を失っても再就職の目処が立たなかった

 

 

 

児童は口うるさい両親が常に家にいる事が不満だった

口を開けば、前の会社の事や自分たちを採用しない者たちへの不満。そして、全ての元凶となった子供への恨み言ばかり

 

今まで人を使う側であった両親は今更使われる側になるなど我慢ならなかった事もあり、徐々に家庭内の空気も悪くなっていくのに大した時間はかからなかった

 

 

 

そういったものが、少年を凶行に走らせたのだ

 

 

 

 

 

タキオンの彼がトレセン学園に行く道中、ほんの僅かな警備の穴があった

 

距離にすれば僅か10メートル程

 

ここは彼の自宅のマンションから所轄の警察官が少し離れた所で監視して、ここでトレセン学園所属の警備員に引き継ぐところだった

当然ながら、トレセン学園所属の警備員はあくまでもトレセン学園内やトレセン学園外周部のみにおいて、その職権が及ぶものであって、彼等はSPではない

雇用主もトレセン学園であり、秋川理事長では無い以上は彼女が勝手に動かせるはずもなかった

 

SPをつける事は国会議員であった彼が在職中はできていたが、その職を失った事により困難となってしまう

 

 

 

 

 

当初、つまりは今年の春にはSP任せの予定だった為、この様な警備体制は予定されておらず、例の騒動により彼等の住居であるマンションが明らかになった事により急遽策定したものだった

本来は辞職した国会議員が私費でSPを継続してつける事になっていたのだが、何をしようとも吊し上げる連中(トレセン学園のスクープを狙う記者たち)により、阻害されていたのである

 

その為、急遽作り上げた体制であった。

 

 

その警備予定では所轄は彼を自宅マンションから、トレセン学園外周部(・・・)まで監視する事になっていた

 

 

だが、何故か警察官の中には外周部まで彼が行く前に姿を消す者も少なからず存在した

彼からすれば、警察側に余計な手間をかけているという意識があった為にそれを指摘しなかった

 

 

トレセン学園所属の警備員達はまさか、いなくなっているなどとは想像しておらず、彼がトレセン学園より帰宅するときは姿を見せていた事もあり気付くことはなかった

 

 

たちが悪い事に帰宅時はキチンと所轄も適切な警護をしていた事が仇となった形でもある

 

 

そこに加害者の男子生徒は潜んでいたらしい

 

 

凶器は一般に流通している包丁

男子生徒は彼を刺した後、傷口を抉る様にしたそうだ

 

 

すぐにトレセン学園側の警備員が取り押さえたが、不思議な事に時間的には近くにいたであろう担当の警官は現れる事がなかった

 

それよりも近くの交番から警官が駆けつける方が早かったらしい

 

 

更に連絡では担当の警官が後から戻ってきて、救急車を呼ぶ必要はない。と指示した

 

 

 

 

 

 

議員職を辞したといえ、その人物は彼を保護する責任がある

 

これは国会議員である事とは別の問題だ

 

 

大人の都合に子供を巻き込んだ責任。それから目を背ける程に男性は無責任でも、非道でもない

 

 

 

連絡してきたのは、所轄の警察のある警部

 

どうやら、所轄の中でもトレセン学園に対する扱いで温度差があるとの事

 

警察署長は良く言えば、場の空気を読む人物

悪く言えば、優柔不断な人物だった

 

 

当然のことながら、トップがそうであるから下は各々自分勝手に動き始めた

 

大多数は未来を守ってほしいという願いを真摯に受け止め

ごく少数の者達は、下らない。と内心侮蔑していたらしい

 

 

 

 

そもそも色々とおかしな事が多い

 

 

先ずは警察関係者とトレセン学園警備部、しかもどちらも担当部署以外が知り得ることのできない筈の双方の僅かな間

 

更に彼は確かにこの時刻にトレセン学園に行く事は多いと聞いている。だが、一学生の身である男子生徒がそれをどうやって知ったのか?

 

そして、担当の警官は何故姿を隠したのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

調べさせれば、すぐ判明した

 

 

 

その場所を教えたのは、男子生徒の父親の元同僚と名乗った男

担当の警官にそれを命じたのは、その警官の直接の上司

 

 

 

 

そして、両者は警察内の情報をリークする側とその情報を受け取る側だったのだ

 

その恩恵を担当の警官も少ないながらに受けていた

 

 

 

 

更にこの情報を掴んだ警察庁は直ちに所轄の警察署を始めとした近隣の警察全ての調査を開始。彼が刺されてから、僅か2週間後の事である

 

それにより、様々な事が明るみになった

 

 

元々、ウマ娘に対して良い感情を持っていなかった所轄警察署の一部が大袈裟ともいえる対応を主導した署長に反発

 

各部署において、彼等は少しずつ情報をマスコミにリークしていた

 

だが、リークした情報を大っぴらにされると自分たちの存在が明るみになると思っていたから、マスコミ側には情報の秘匿を要請していたそうだ

 

 

結果、彼等はその存在を警察内以外に悟られる事がなかったとの事らしい

 

 

 

 

 

とはいえ、今回の件で明るみになった事はあまりにも大きい

 

アグネスタキオンの彼氏を病院に直接送った挙句、術後直ぐに家に戻した警察官。それを指示した上司や黙認した同僚

更にこの情報を加害者に提供した記者

 

 

彼等はルビコン川を渡ったのだ(越えてはならぬ一線を越えた)。確かに彼個人は既に国会議員職になく、警察に対して行える事はそこまで(・・・・)多くはない

 

だが、たとえ国会議員でなかろうが、世間から白い目で見られていようが認めてはならぬ事がある。許してはならない事があるのだ

 

 

彼は電話機を手に取った

 

 

 

自身の責務を果たすために

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、一本の電話が総理官邸にもたらされた

 

 

既に選挙準備で慌ただしくなっている与野党と異なり、総理をはじめとする新党に属する者達はそこまで慌てていなかった

 

自身が管理するホームページやブログ。または配信チャンネルやSNSを使用して自分達の主張を発信し、否定意見に対しては殊更丁寧に対応していた

 

無論、言うほどに簡単なものではないし、候補者も多忙であったが、新党に属している現職議員からすれば選挙の時になってから慌てて広報活動をするなど必要がない行為である

 

 

自分達がしてきた事を堂々と。隠すことも偽ることもなく、ただありのままに公開し、これからの未来図を国民に提示する

 

その結果、落選しようともそれは自らが及ばないだけなのだから

 

 

新人候補は仕方ないが、自分たちが国会議員としてキチンと職務を果たす事を日頃から意識しているもの達が大多数を占めている新党としては選挙カーなどを動員しての選挙活動は諸刃の剣であると認識していた

 

 

 

そもそも、時間ギリギリまで選挙カーで回るというのは、場所によっては迷惑行為にしかならない

 

住宅地の近くで選挙カーを走らせるにしても、時間を考えなければならないし、保育園や幼稚園の近くで昼頃から選挙カーを走らせるなどそれこそ迷惑そのものである

 

効率よりも、新党の者達は迷惑にならない事を重視したのだ

 

 

それよりも、ポスターなどの掲示物などから関心を持ってもらうべきだと判断していたし、常に誰かをブログやTwitterなどにおいて叶う限り迅速な対応をする様に努めていた

 

 

 

そもそも街頭演説は候補者が一方的に自身の主張を流すのであって、仮に真面目に聞こうとしている者が居たとしても、それに候補者が対応する事は稀である

下手すれば、大物議員が応援演説をしに来た場合などは聴衆をSPがマークするという本末転倒な話もある

はっきりいえば、党の重鎮が評価しているかなどよりも何をしたいか?何をこの数年間で感じたのか?のほうが余程選挙民からすれば参考になるだろう

 

更に街頭演説する場所は大抵人通りの多い駅前などであり、通行の妨げになる事もしばしば見られる

 

 

近年では露骨に他の政党を名指しで非難するなど、選挙の形としてマトモなものであるのかすら怪しくなりつつあるとすら思われているのも実情である

 

勿論、ネットに明るくない人達もいるのだろうから、街頭演説が一概に悪いとも言えないのであるが

 

 

 

 

 

そんな最中、官邸に入った一本の電話が事態を急速に動かした

 

 

 

 

 

真っ先に動いたのは警察庁である

 

警察庁長官は自身に捜査権が存在しない

総理大臣からの指示があれば、その限りではないものの、余程の事がない限りはそれを行使する事はない

それ故に問題のあった警察署の管轄であり、取りまとめである警視庁に連絡を入れた

 

 

当然ながら、警視庁はこの連絡を受けて迅速に動いた

何せ、今はまだ世間に知られていないだけで明らかに警察の不祥事である

現職の、しかも警察署の中でも管理職にある人物が自身の思想のために警察の業務に口を出した。それだけでも大問題である。更に意図的に防げた公算の高い事件を引き起こしたともなれば、例え同じ警察組織とて容認できない

 

更に本来ならば、速やかに捜査が行われなければならないにも関わらず、捜査は所轄が秘密裏に行なっているとの報告だ

実際、近隣の警察署から人員を確認の為に動かしたが署内においてすらもこの事を周知しきれていない有様だ

 

軽犯罪であれば、それもいいだろう

だが、今回の一件は明らかに殺人未遂であり、しかもその原因に現職の警察官が複数関与している可能性が極めて高い。そう判断せざるを得ないのだ。もたらされた情報が確かならば

 

 

 

それだけでも所轄の警察署の管理職のクビがまとめて飛ぶ事態。にも関わらず、事もあろうにそれが官邸経由でもたらされたというのだから、最悪などという生ぬるい話ではない

 

 

事が事だけに最悪の場合、警察庁長官が動く可能性すらあった案件なのだ

つまりそれは、警察庁がこちらの自浄作用をあてにしていないという明確すぎるメッセージとなってしまうのだ

 

現職の警視総監は警察庁長官に良い感情をいだいてはいない。いないが、そんな些細な事を気にしている場合ではなかった

 

 

 

直ぐに所轄の警察署に対する捜査を始める様指示を出すとともに、もう一件についても迅速に捜査する様命じる事になった

 

 

 

総監の周辺には、今回の選挙戦の結果を見てから動くべきではないか?という意見もあった

 

確かにウマ娘との協調を強調(・・)する現総理率いる新党とその総理に反発する与野党では、ウマ娘関連の政策については明らかな温度差があるのは事実

 

 

新党側が勝つならば、今回の件は当然重視されるだろう。だが、新党側が負けたならば、様々なウマ娘やメディアに対する政策などは即時修正される可能性も出てくるだろう

 

であれば、今急いで動く必要性はないのではないか?

 

それが彼等の意見であった

 

 

だが、警視総監はその意見を一蹴した

 

 

本件の本質は例えどの様な意図があろうとも、決定した事項に対して現場と管理双方の一部が違反した事

本来ならば、一番法やルールを厳正に守らねばならない筈の警察が、だ

 

警察は思想の自由は認められていたとしても、それを公務に持ち込んで公務の妨げを助長するなどあってはならない。また、それを看過してはならないのだ

 

それを認めてしまえば、我々警察の存在意義にも関わるのだ

 

 

と諭した後に、迅速な行動を取るように各所へと通達した

 

 

 

 

因みにこの頃、タキオンと彼はデートしていたのだが、ある意味で幸運といえただろう

 

 

 

何せ、例の組織(アグネスタキオンを愛でる会)は全力でそちらにリソースを振っていたのだから

 

既にかの組織は学生間のサークル活動の域を越え、様々な方面へと影響を与えるものとなりつつあったのだから

それこそ、発起人が望んだことであるが

 

 

 

最近は内向き、つまりタキオンの周辺やトレセン学園に注力していた為に彼への手当が減っていたのは事実

 

アグネスタキオンが彼と同居していたマンションを離れる事になって以降、少しずつだが、確実にアグネスタキオンのみ(・・)を注視する様になっていた

 

 

 

発案者であり、発起人でもあるタキオンの彼氏からすれば望むところである

 

が、組織のまとめ役であるマックイーンを始めとしたメンバーはアグネスタキオンと彼。双方が揃っている事こそが肝要と考えていた

 

 

にも関わらず、彼の事を疎かにせねばならない理由

それは今の組織の肩書きにあった

 

 

 

元々発足時はアグネスタキオンの彼氏公認組織

それが後にトレセン学園理事長公認組織。更にはアグネスタキオン当人公認組織という変化があった

ここまでは基本的方針が変わる事はなかったのだ

 

ところが、2人の別居の時期に何故かトレセン学園理事会がこの組織を公認する様になった

 

 

マックイーン(会長)特別顧問たち(秋川やよいと駿川たづな)副会長たち(ナリタブライアンとシンボリルドルフ)は違和感を覚えながらも名誉顧問(タキオンの彼氏)からの要請とあって受け入れた

 

 

 

 

これは有事の際にタキオンを守る方法(権力)を引き寄せる為に彼が主導して特別顧問(秋川理事長)を介して行なった事である

 

確かにトレセン学園創設者ともいえる秋川やよい理事長はトレセン学園内において、絶大な影響力を持つ

更に外部に対しても決して侮ることのできない影響を及ぼせる

 

だが、トレセン学園創設にあたっての出資者は秋川家のみでなく、他の名家や企業も資金面などで協力しているのだ

それ故にトレセン学園には理事会が存在し、その筆頭が秋川理事長なのであるわけである

 

 

であるからして、秋川理事長の権限は広範に渡れども理事会によって常に制限されるのである

 

 

特に再来年の2月より開催が予定されているURAファイナルズ

この開催を巡っては理事会の中でも意見が割れた

 

ウマ娘達によるレース

それを来年度から拡大し、既存のレースを含めてG1、G2、G3と格付けする事で出走への条件をつけたのである

それは経済界に影響力を持つ理事会のメンバーをもってしても、容易になし得ることではなかったのだ

 

 

そもそも低迷しつつあるウマ娘達のレース

それに対する起爆剤とするべく開校したのが、トレセン学園であり、その先に各種レースという受け皿を増やす事により、ウマ娘という存在を世間に広める。そして、社会進出にもつなげる

 

ある意味では非常に欲張りな話であったともいえる

 

 

 

海外では既に周知されているウマ娘達によるレース

それに比べてこの国の何と遅れていることか

 

 

 

それはウマ娘に関わりのある仕事をしている者達が一度は思うことであった

 

 

 

然れども、悲しいことではあるが理想だけでは世の中は回らないのも事実

 

拡大するウマ娘達によるレース

それに伴う放映権や各種事業

付随するであろう雇用の拡大

 

 

ウマ娘達の事を知らなくとも、飛びつくには十分なメリットがあったわけである

 

 

言い方は良くないだろうが、その利益目当てに参入したもの達がトレセン学園理事会の約半数を占めている

 

 

これにより、理想に傾倒しがちな秋川理事長に対する抑止力としているわけだ

 

 

その彼等がアグネスタキオンを愛でる会に名前だけとはいえ、参加しているのはひとえにメジロ、桐生院や政界に対する影響力を期待している部分が多いにあったともいえる

 

 

勿論、それ相応の対価を彼等とて支払う事になるのだが、長い目で見れば元は取れると判断出来た

 

 

 

 

トレセン学園は様々な思惑の交差する場所となっていたのだ

 

 

 

 

 

 

であるからこそ、政府にせよ、理事会にせよ、秋川理事長達にせよ触れてほしくないという思いがあった

 

 

ただでさえ初の試みが山積しているトレセン学園

そこで市民の理解を得るための看板として現代のシンデレラとその王子様(アグネスタキオンとその幼馴染)が必要だったのだ

 

 

 

はっきり言えば、2人とトレセン学園の間に関連する事などアグネスタキオンがトレセン学園に入学しなければ存在しない

 

別にトレセン学園で2人が出会った訳でもないのだから

 

 

 

それでも、2人の姿は間違いなくウマ娘達の希望となる

 

そこに羨望、嫉妬、渇望など様々な思いがあろうとも、ウマ娘と一般男子という組み合わせに憧れをいだかないウマ娘が果たしているだろうか?

 

 

今までにウマ娘とその指導者が結ばれた例はそれなりにある

 

 

上手くいったかはさておきだが

 

 

 

 

しかし、ウマ娘を幼馴染にもった人物はほぼ間違いなくウマ娘に対して強烈な劣等感を持つ

 

走れば届かず

学べど届かず

磨いても届く事ない遠き星

 

それがウマ娘を身近に持つ者が持つ感情

 

 

ウマ娘(幼馴染)を見れば自身の至らなさをいやでも実感する

 

これで相手がそれを鼻にかけるような人物であればまだ救われよう

 

 

されども、彼女達は身近な人物である彼等を心配し、力になろうとする

なるほど素晴らしいだろう。なんとも人間味溢れるものだ

 

 

だが、そうであればあるほどに彼等は追い詰められてゆく

少しずつ、しかし確実に彼等の中の負の感情は育ってゆくのだ

 

 

 

そして、いつかそれは爆発する

 

しかし忘れてはならないのはウマ娘達も必死なのだ

 

 

『嫌われたくない』『理解し(分かっ)て欲しい』『そばに居たい』

 

そう言った感情をウマ娘達も自分の中で何とか消化しようとしているのだ

 

 

爆発するときは感情的になる

 

果たして年単位で鬱積した感情をぶつけられたウマ娘達が冷静でいられようか

 

 

実はウマ娘による軽犯罪における被害者の多くはウマ娘の近しい異性。とりわけ幼馴染が多いのである

 

 

 

トレセン学園とはウマ娘達の育成機関であると同時にトレーナー(年上の人物)との円滑なコミュニケーションを学ぶ場所でもあるのだ

 

 

 

当然ながら、ウマ娘達を導くトレーナーも様々な事を学ばねばならない。

現状でトレーナーとして成果を出している人物が教育者としての能力を併せ持つかは別問題

 

 

実際、既にウマ娘達の世界で有名な樫本トレーナーとて指導者としては一流でも、教育者としての能力は未知数

 

 

であればこそ、アグネスタキオンという幼少期に家庭の問題を抱えたウマ娘と上手く付き合っていけた彼は重要なのだ

 

 

秋川理事長には知らされていないが、彼をトレセン学園の非常勤講師とする案も理事会内で出ている

勿論、年齢等を考えれば問題もあるだろうが、カウンセラーや相談役などと言った役職を与える事も考えていた

 

 

既に本格始動まで時間的猶予のないトレーナー育成

ウマ娘達との円滑なコミュニケーションという面においては、先駆者であるウマ娘の指導者よりウマ娘達に寄り添ったものが出来ると期待しているからである

 

 

 

アグネスタキオン(1人のウマ娘)の為でなく、未来(ウマ娘達)の為に彼を使い潰す(・・・・)つもりなのだ。理事会は

 

 

一番苦しい時期を彼に任せて、ある程度の道筋が出来れば他の者達に任せる

 

 

少数の犠牲で未来が守れるのであれば、彼等理事会からすれば問題になる事はない

 

 

つまり、彼に色々と恩を売る事が重要。その為の努力を彼等は惜しむつもりはなかった

 

 

突然ともいえるアグネスタキオンの学生寮への入寮は彼等理事会からすれば好都合だったすらいえる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メジロ当主は自室でため息をついていた

 

 

今のトレセン学園を取り巻く状況もそうだが、それ以上に問題視せねばならないのは娘の1人であるゴールドシップの事だった

 

 

 

自由奔放で、奇抜な行動をとりがちな娘であるが、当主とて若い頃はゴールドシップ以上に無茶苦茶な事をしでかしたりもしていた

マックイーン達には到底言えない事ではあるのだが

 

それに越えてはならない部分はゴールドシップも弁えているし、それは彼女を知っているメジロ家の人間もよく理解している

 

 

だが、今回の件についてはギリギリ(グレーゾーン)であると思っている

 

 

自由奔放で周囲を振り回す事の多いゴールドシップだが、長姉のマックイーンは勿論のこと、ライアン、ドーベル、パーマーや分家筋のアルダン等にも愛されている

 

それは彼女がいつも他人の笑顔を求めて行動しているからだ

 

 

 

 

 

メジロのウマ娘や使用人たちからも好かれるウマ娘。それがゴールドシップなのだ

 

 

 

 

 

 

 

だが、そのゴールドシップが事もあろうに配信という試みをしたいという

 

 

メジロの当主としては世間に対して、一つの発信源を手に入れる事であるからして喜ぶべき事だった

 

しかし、ゴールドシップの母親としては可愛い我が子に世間の生の声が向くと思うと素直に喜べない話なのが彼女にとって大問題だった

 

 

配信するということは、二通りあると彼女は聞いた

 

事前に録画したものを配信するか、世間でいうところの生放送(ライブ)

どちらにせよ、コメントという形をもってゴールドシップに届くわけである

 

賛意も賞賛もあるかも知れない。しかし、話題にするのは賛否両論で世間を騒がせているあの子達(ウマ娘)の世界についてなのだと聞いた

 

 

 

一連の騒動により、職を失ったもの

社会的立場を失ったものがいる

 

その一方で、傍目からすれば彼女達ウマ娘はトレセン学園を得て、シンデレラと王子様(アグネスタキオンとその伴侶)という未来への希望がいる

 

 

確かにマスコミの一連の行動にて、アグネスタキオン達は実害を被った訳だが、当事者でない者達からすればそれは有名税とでもいうものに見えなくもないだろう

 

更にいえば、渦中の彼も表に出て彼を擁護したシンボリルドルフも配信しているゴールドシップもまだ子供だ

 

となれば、当然ながら私達大人が前に出て守らねばならない筈なのに、何故子供達が渦中にいるのかを疑問視する者達が現れる

 

 

それだけならまだしも、必ずゴールドシップ(ウマ娘や彼)に対して不平不満をぶつけようとする者も現れるだろう事は想像に難くない

 

 

親として、それを容認するべきかどうかは非常に悩む話だ

 

 

 

 

 

 

 

彼女の脳裏にかつての悲劇(御曹司とナツフジの事故)がよぎったとしても不思議ではなかった

 

 

 

そして、彼女はとある人物と連携すべく動きはじめた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とあるテレビ局の選挙担当を務める人物は悩んでいた

 

 

上司から、新党について好意的な発言を控えて現在の与党支持が上がるような報道をせよ。そう言われていたからである

 

彼が個人的に懇意にしている人物、つまり与党側の某人物よりもそれとなくそういった流れを作る様に頼まれている

 

 

だが、初回の放送において露骨なまでの新党下げ、与党上げの放送を行なった結果、かなりの数の苦情が寄せられたのだ

 

かつての御曹司の悲劇を知る者からは「事実を歪曲して報道するな!」と言われ、若者からは「私達が親などから聞いた話と少し違うけど、どっちが正しいの?」との疑問が多く出てきた

 

 

番組内において、とあるコメンテーターはウマ娘研究会の事を

 

 

まるで合コン会場ですね、それは

 

 

と冗談混じりで発言したのだが

 

 

 

 

その結果、死人が出てるのだが?

 

知らないなら知ったふりするなよ!

 

不愉快極まる

 

 

などといったかなりキツイクレームも出ていたりする

 

 

 

番組側としては、局の意向で出演してもらっている為にかなり気を遣わねばならないのだが、今回はかなり問題だと思っている

 

 

コメンテーターや有識者は概ね局の意向を汲んで動いている

だが、今回は企画の一部に討論会がある

 

今回の選挙における目玉の一つがウマ娘関連の政策の是非

与党、野党の各党に新党からそれぞれ1人ずつ代表を出しての事

 

 

しかも、生放送である

 

 

彼の長年勤めてきた経験はこう言っている

 

 

 

 

やめとけ。と

 

 

 

何せ、与野党の代表は議員としての経歴は長い。しかし、ウマ娘についてどの程度の知識を有するのかと聞かれたら彼には分からない

 

対する新党側の代表は元ウマ娘研究会のメンバーであり、今回新党側の候補者として与党の安定区からの出バを予定している人物だ

 

言うまでもなく、ウマ娘についての知識は与野党の代表よりもある事は間違いないのた

 

 

 

 

そもそもの話

 

このテレビ局は、現在内部で分裂の危機にある

と言うのも、この局の記者の1人が傷害事件の重要参考人として任意同行を求められたのが発端だった

 

いや、これは正確ではない

 

同業者が実質政府により倒産に追い込まれた事で、各社はこれからの行動の選択を迫られた訳だが、この企業は

 

潮目の変わるのを待つ(頭下げて、時間を稼ぐ)事を選んだ

 

 

 

 

 

だが、この判断は社内において番組制作などに関わるもの(数字を取りたいもの)事務方や裏方スタッフ(会社を潰したくないもの)とに二極化される事につながった

 

 

これだけでも問題なのに、経営陣間でも対立する雰囲気が出来つつあったからたまらない

 

 

社長は会長(創業者)の娘婿であり、彼は会社の更なる躍進。つまりこれまで通りの報道姿勢を貫く事を良しとした

会長が病床の身であったことと、同業者の大手が倒産した事による一時的な混乱が業界内での勢力拡大。ひいては自分の立場の強化につながるとの判断からだった

 

これに異を唱えたのは副社長と専務だった

2人からすれば、今回の件は今までの状況とはまるで緊急性が異なると主張し、社長に対して報道の自粛。即ち、トレセン学園関係の無思慮な報道の停止を求めた

業界大手であった会社すら、倒産に追いやったのだから今更二の太刀を振るう(もう一社倒産させる)事を躊躇う事はないと思っていたからである

 

勿論、その様な事は余程の事がない限りは(・・・・・・・・・・)行なう予定は総理にもなかったが、そんな事を彼等が知るはずもないし、知っていても信じられなかっただろうが

 

 

社長は2人の発言に不快感を隠そうともしなかったが、副社長も専務も義父(会長)がこの会社を発展させた功績を認めていた事から渋々受け入れた

 

 

だが、一度でも会社のトップが取材行為を認めたと判断した一部の者は正当な権利(トレセン学園への取材)の為に密かに動き出した

 

トレセン学園近隣で出待ちをしている者達を隠れ蓑として、ある人物はこう考える

 

 

 

ならば、目障りな人物(渦中の人物)を行動出来なくすれば良い

 

 

 

その結果、1人の男子中学生が凶行に及んだわけだ

 

 

この流れを主導した人物はあえてこれを見逃し、後にこのスクープを大々的に報じるつもりだった

 

 

 

だが、彼の思惑よりも事態は速く動きはじめた

 

 

まず彼にルートを教えた警察内部の人物が早々に判明し、その人物の交友関係を辿った結果と加害者の少年の供述により、彼は捜査線上にあっさりと浮上した

 

任意同行としていたが、既に証拠固めはほぼ終わっていた

警察内部の人物も記者を完全に信用しておらず、個人で記者の情報をまとめていたから

 

 

 

 

しかし、このタイミングが非常に不味かった

 

生放送の僅か2日前だったのである

 

 

現在は任意同行である為に局としてもわざわさ報道すべきではないと判断していたが、生放送の番組を取り仕切る人物からすれば勘弁願いたい話である

 

局の意向と懇意にしている政治家からの要望だけでも勘弁して欲しいのに、身内のスキャンダルを抱えたまま生放送など正気の沙汰ではない

 

 

仮に生放送中は隠し通せたとしても、その後発覚すれば情報を取り扱う者としての資質に大きな疑問をつけられるだろう

生放送中に他局から報道されようものならば、目も当てられない

 

 

 

彼は直ぐに番組中止を訴えたが、議員や候補に社長お気に入りのコメンテーターの都合の問題もあり中止は認められなかった

 

 

 

 

 

 

 

選挙の前哨戦ともなる生放送

 

 

これが一つの転機となる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




昨日、ふと日間ランキング見てたら、まさかのランキング入りしてて草どころか芝生えました


どうしよう。と思いながら書いてます


ではご一読ありがとうございました


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 崩壊の時

ついに微妙なバランスで成り立っていたものがくずれおちます


何度も書いてますが、これはハッピーエンドです


では、どうぞ


番組プロデューサーの予想はいい意味でも、悪い意味でも外れたと言える

 

 

今回の生放送での党政策討論は本来なら、一時間ある情報番組の一コーナーとする予定だった

 

 

 

ところが、他局より申し入れがあったのだ

 

 

 

党政策討論会だけで、ふた枠とりたい

 

 

 

 

当然だが、その様なものを受け入れる謂れはない

 

本来ならば

 

 

 

それに対して、他局はとある記事を差し出してきた

 

そこには

 

 

 

 

 

 

 

衝撃!昼に起きた惨劇。被害者は今秋の騒動の当事者か!?

 

 

との見出しが一面に記載されていた

 

 

 

対応した人物は申し入れてきた他局の人間を顔を思わず見た

 

 

相手は平静そのものだった

 

だが、その瞳には明らかな侮蔑の色があるのを見て取れた

 

 

 

 

つまり、アチラは知っているのだ

 

あの事件(自局の人間のしでかし)

 

 

 

 

 

その上でこう言っているのだ

 

 

最後の名誉(花道)は用意してやるから、大人しくしとけ

 

 

 

困ったものですね。私たちの権利が当たり前と思っている不心得者が多すぎるのは

 

 

提案してきた局は業界内では珍しく、堅実で誠実な取材を是としておりその為にそこまで大きな会社規模となっていないところだった

 

 

トレセン学園への取材は勿論、彼に対しての取材もトレセン学園側に正規ルートで申し入れており、結果を素直に受け止めている数少ない良識ある局だった

 

 

当然だが、報道においては常に他局に先を越されており、スクープという点においてはかなり目立たない存在だった

 

 

しかし、関係者への適切な配慮から「そちらにならば、話をしよう」と言った取材を好意的に受け止めてくれる者も多かった

 

スクープこそ殆どないが、誤報という点においては殆ど存在しないのが他局にはない特徴である

 

 

 

こと、政治関係においては情報を出すタイミングが事態を大きく変化させる事も理解している為に報道に際しては必ず確認をとってから報道する徹底ぶりだった

 

 

企業としてはこちらの方が古く、世間からは誠実な報道機関と周知されている

一方で業界内では勢いのない落ち目の企業と揶揄されていたが

 

 

 

 

だからこそ(・・・・・)、今回のような事が頻発する業界に対して大きな不満を持っていたのである

 

 

速度を優先するあまり、関係者や周辺への配慮を置き去りにした取材。

ひたすらに数字(部数や視聴率)を求める為に平然と行われる一方的で、有識者やコメンテーター(影響力のあるもの)を使っての偏向報道

 

 

その結果、今秋においては被害を受けた人物から名誉毀損で大量に有識者やコメンテーター、はては報道機関まで訴えられている始末

 

 

そこで誠実に対応すれば向こうも多少は考えてくれたはずなのに、報道機関や人気のある芸人達(コメンテーター)自称(・・)有識者はメディアやSNSを使い、知る権利や報道の自由に思想の自由を理由に謝罪しようとしない

それどころか、彼について憶測混じり、しかもかなり悪意のあるもので世論を味方につけようとしていた

 

逆に本当の有識者やコメンテーターの中でも大御所などと言われている人物は早々に謝罪した。あちら側としても謝罪した上で、今後反省を活かすと言っていることもあり、謝罪を受け入れている

 

 

更に言えば、彼の後ろ盾である国会議員をあたかも大規模な汚職事件であるかのように世論を誘導し、くだんの議員を辞職に追い込んでもいたのだ

 

 

正常な報道を常に心がけている者からすれば、噴飯物であり、彼の擁護記事を書いたり報道してたりもする

 

 

 

だが、トレセン学園関連の情報は丁寧に秘匿されており、これがまた事態の速やかな収集を阻む事になっていたわけである

 

 

 

 

さりとて、メディアの良識を何よりも重視していたこの企業からすれば、とんでもないことだった

 

 

子供であり、親の庇護すら受けることのできなかった少女とそれを守る為に己が周りのものを捨てるしかなかった少年

 

非難されるべきは、果たして彼女と彼なのだろうか?

 

 

いや、違うはずだ

 

真に非難されるべきは彼女の両親とトレセン学園の経営陣であり、この事態を見守ることのできなかった我々メディアであろう

 

 

 

 

だからこそ、この企業は渦中にいる少年が事件の被害者になった時に混乱し、その原因が同業者によるものだとリークされた時の怒りの程は想像を絶するものとなったのだ

 

 

いつも過激な報道をして、様々な家庭を散々破壊する片棒を担いでいたメディア関係者が例えその身内だとしても、それを恨んだ結果事件を引き起こした。のみならず、その情報面で現役の記者と警察官が共謀したなどというのは、到底認められなかった

 

 

 

 

 

公開討論会などと言っても、企画しているところは明らかに与党よりの報道をしているところ

 

実際、調べたところでは一時間の番組内で僅か15分程度だと判断出来る

 

僅か15分で何が出来ようか?

おおかた与党や野党の代表ばかりクローズアップして、新党側には質問させるつもりもないのだろう

 

 

であれば、わざわざそんな時間しか用意できない番組に出演させる必要はない

 

幸いと言いたくはないが、相手を動かすに足るものは用意している

 

中身のない情報番組(与党の都合の良い情報しか流さないもの)に時間を取るくらいならば、こちらでふた枠。つまり2時間与えて存分に議論してもらおうではないか

 

 

それが彼らの会社の経営陣の判断だった

 

 

そして、それは現場で働くもの達の総意でもある

 

彼らの本音は

 

あんなの(他の局の連中)と一緒にするな!!

 

だったのだから

 

 

 

 

 

 

結果、以前同じことを相手にしていた事もあり、渋々ながらもこれを受け入れる他なかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、これを知らされた与党側は難色を示した

 

 

何せ、いきなりフィールドが変わったのだ

彼らからすれば自分たちのフィールド(懇意にしている局の番組)であったからこそ、討論会を受けたという事情がある

 

 

以前の党首討論においては与党は新党はおろか、野党にすらも論破されかかるという大失態をやらかしていた

 

 

一応、各組織には各候補への支援を要請していたが、地方の支部の中には露骨に不安を言ってくるものすら出てくる始末

 

これでは、マズイと判断している

だからこそ、今回の討論会は負ける事が許されない

 

 

それ故に舞台を自身の有利なものとした上で、時間すら短時間に区切ったのだ

 

これならば、多少不利になっても司会者が気を利かせて(・・・・・・)討論を打ち切れる

 

 

 

 

 

そう、思っていたのだ

 

にも関わらず、よりにもよって中道的な態度で有名なテレビ局がその舞台を用意することとなってしまった

 

 

 

更に配信チャンネルを併用して、気になる質問などが出てきた場合にはこれを取り上げる手法を取るというではないか

 

 

 

既に与党側の代表として、大々的に与党公式ホームページなどでも宣伝している

 

これは彼が再選を目指す選挙区に出バを表明している人物対策だった

 

 

 

相手は総理率いる新党の目玉候補の1人であるクガヤシ

 

 

そう、かつての悲劇のある意味では当事者だった

 

 

 

 

彼女は私立大学を卒業して以降、姿をくらませていたが元々弁のたつ人物であり、度々現役の頃には討論会などにでていた論客である

 

 

対する候補は自分の父親の地盤を引き継いだ所謂2世議員だった

 

名門大学の法学部を出ているが、それとて優秀とはいえない能力

ただ、派閥間のバランスを取る為に彼を引き入れただけにすぎないのだ

 

 

この選挙区は議員の父によりインフラ整備や各種行政サービスの充実が早期に実現した

その背景から、高齢者になればなるほど父親への信望は厚い

 

その期待をうまく利用して、その息子が議員になっただけなのだ

 

 

 

当初こそ、若者を中心に『世襲議員』である彼に対して不信感が盛り上がったのだが、表向き(・・・)は不祥事がなかったことから息子の地盤は固まる事となった

対立候補を野党も用意したが、その選挙区の議員として立候補しながらも縁もゆかりもない人物ばかりだった為に与党内では確定した選挙区として扱われる様になった

 

加えて、いつも高齢者からの熱狂的支持を集めるこの議員に嫌気がさしたのか若者の投票率が目に見えて減っていった事も彼が長年議員を続けてこれた理由だろう

 

 

 

だが、彼が得意とするのは実務でも論舌でもなく、組織間の利害調整だった

 

しかも、割と表に出せない方面の

 

 

 

ところが、今回出バしてきたクガヤシはこの選挙区出身であり、女性であり、ウマ娘でもある

しかも、今回世間の注目を集めている総理率いる新党の候補としての参戦だった

 

 

 

実際、選挙前に彼の陣営が聞き取り調査したところによると、今まで選挙を棄権していた二十代と三十代はクガヤシ側の主張にある程度理解を示しているとされる

 

では、磐石である高齢者(五十代以上の年代)の支持はどうかと調べると無視し得ない結果が出てきた

 

 

当時の財閥御曹司とウマ娘(ナツフジ)の事故は話題にも上がりながらも徹底した捜査が行われていないとみられていた

 

更にウマ娘という存在をうまく消化できなかった彼らの一部はクガヤシの主張に耳を貸していたのだ

 

 

つまり、鉄板と言われていた票田が崩れ、今までは殆ど機能していなかった若者の票がクガヤシ側に流れる可能性が高いのだ

 

 

当然ながら、後援会などの活動でクガヤシ達新党の主張がどれだけ困難な物かを強調し、支持を引き剥がそうと試みた

 

 

 

だが、クガヤシは自身の選挙事務所を広く開放し、市民達との議論の場として機能させ始めた

 

更に自身の配信チャンネルなどにおいても、夜になると精力的に活動する事とした

 

 

結果、後援会や支持者に丸投げしている現職との差が強調されていく事になってしまう

 

彼も一度は配信チャンネルを使って自身の主張をしようとしたが、クガヤシの様に質問を次々と投げ込まれ、それに対する対応を怠った結果、若者の支持を失う事となった

 

 

 

悪いことは重なるもので、野党は超党派を結成し野党連合として各選挙区に候補者を擁立したのだが、なぜかクガヤシの選挙区には対立候補を用意しなかった

 

結果、現職国会議員と新人のクガヤシによる一騎討ちとなる公算が高まった

 

 

 

 

この様な背景があり、党本部としてもくだんの国会議員の劣勢を挽回させるべく、今回の討論会への参加を打診したのだ

 

 

 

本来ならば、これはただのショーであったにも関わらず、与党側の予想を裏切る形で討論会が開かれる事となってしまった

 

 

 

この議員は党本部の完全に公認候補として名が知られているために、万が一負けた場合の動揺は下手すれば全国規模に及ぶだろう

 

 

 

 

しかも、相手は例の事故(ナツフジの事件)を隠蔽したとされる与党のベテラン。しかも、その議員の派閥のトップが警察などに圧力をかけて捜査妨害をしている

 

 

彼らウマ娘研究会の面々は何もせずに過ごしてきた訳ではない

自分たちのコネや人脈を使い、少しずつ真実に近づきつつあったのだ

 

 

 

そして、現状最大の問題が現職の検察トップがその指示をしていた事だった

 

 

もしも、これが明るみになれば、与党の支持は吹っ飛ぶ

 

検察トップを強引に据えたのは総理に対立する人物であり、現在の与党No.2なのだ

 

 

勿論、総理にも批判は及ぶだろうが、この指示を受けて実行したのは総理が議員になる前の事

 

 

しかし、指示した者は当時も与党議員だったのだ

その指示を受けて捜査を妨害する事をした人物は忖度した功績(・・)を評価されて検察のトップへと任命された

 

 

 

 

 

どう見ても、真っ黒です

 

本当にありがとうございます

 

 

 

 

 

つまり、彼ら与党が選挙に負ける事になった場合は様々な不祥事が露見する可能性がある

 

しかも、警察庁長官は今回の傷害事件には裏があると考えており、異例ともいえる警視総監との緊密な連携をしているという

 

更に異例中の異例ともいえる特捜部との共同捜査を行なう公算すら出てきていた

 

 

 

 

勿論、与党内では検察トップに働きかけて特捜部の動きを牽制するべきだという意見もあるが、それをした場合はやましい事があると公言する様なものである

 

 

出来るはずもない

 

 

 

 

 

 

 

 

長年、この国の政権与党として君臨してきたこの党は隠し事など琵琶湖にも埋めきれない程に山積している

 

 

これをどうにかしているのは、彼らの権力である

 

 

 

 

議員も落ちればただの人

 

という言葉もある

 

 

勿論、完全に影響力を喪失するわけではないが、致命的なものになることは疑いの余地もない

 

 

 

 

 

であるからして、前哨戦たる討論会で負けることは出来ないのだ

 

色々な意味で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、彼らは忘れていた

 

 

確かに警察側の捜査を止めれば、警察から()何も漏れない

しかし、あの事故は依頼主(・・・)がいた事を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある屋敷にて

 

 

 

なんだこれは!!!

 

 

屋敷の主人の怒声が部屋に響いた

 

 

その主人の手元に一枚の手紙があった

 

 

 

 

 

 

 

 

私の父は償うことも出来ない大罪をおかしました

 

 

貴方の兄上様の死の原因を作ったのは私の父だったのです

正確には兄上様とお付き合いされていた女性を亡き者としようとしていたのです

 

先日亡くなった父の遺品を整理していたところ、その時の証拠を見つけました

父とあの事件(・・)の揉み消しを依頼した与党の重鎮議員との会話です

 

例え知らないと言っても、私は貴方を長年裏切り続けてきたのです。貴方や先代様、兄上様にも多大な恩を受けておきながら

 

 

この手紙を貴方がお読みになった頃には、私はこの世にいないでしょうが、お許しを

 

 

 

 

との内容だった

 

 

 

つまり、兄と義姉上(あねうえ)はよりにもよって、身内に命を奪われたというのかっ!

 

 

 

 

 

許せぬ。兄を、義姉(あね)を奪った者も。それを自分たちの利益とした者も

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰も知らないところで導火線に火がついた

 

 

 

 

 




というわけで、10年以上前のヤイバがいきなり飛んでくる事となります

さー、大変だぁ(白目)



お気に入り増えすぎて、リアルで発狂しそう

そろそろ冷え込んでまいりましたので、皆様どうかお身体にはお気をつけて


後でアンケート実施するのでご協力頂ければ幸いです


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 見える道筋、消える者たち

舞台に上がる者がいる
舞台を降りる者もいる


演目が変われば、演者も変わる


他者を踏みつけた者がいた
その報いを受ける時がきたのだ


生放送の開始1時間前のこと

 

 

とある財閥の当主より、緊急の用件ということで時間をとってほしいと放送局の経営陣に連絡が入った

 

 

何事かと怪訝に思いながら、用件を聞くと

 

 

現在、野党連合と新党と争っている現在の与党の幹事長

 

その人物が先日亡くなった財閥のグループ企業相談役と共謀して、ナツフジ氏を亡き者としようとしたということ

更に、結果として当時の財閥の後継者と目されていた人物が亡くなった事を事故(・・)として、処理する事を当時の幹事長が請け負った

 

という事がもたらされた

 

更に肉声の会話を録音したテープのダビングも一緒に提供される事となり、これを生放送中に世間へと届けて欲しいとの事だった

 

 

 

だが、あくまでも当主の個人的な感情も含んだ要請である為に、必ずしも聞く必要はないとも発言していた

 

 

当主はこれから、警視庁へと行って証拠を全て提出するつもりだそうだ

 

 

 

財閥へのダメージも避けられないのは確実にも関わらず、彼は全く迷いがなかったようである

 

 

 

 

 

 

 

 

財閥の後継者であった御曹司を亡くした時、当然のように後継者を巡って醜い争いが起きた

 

彼は4人兄妹の末っ子であり、本来ならば兄や姉を支えるべき立ち位置だったのである

 

しかし、聡明だった長兄が亡くなると父から溺愛されていた姉が財閥の長となるべく色々な者たちに働きかけた

それに不満を覚えたのが、第三子であった次男である

溺愛されて、何でも与えられて育てられた姉では財閥の財産を食い潰すだけだと思い立ち、姉と対立する事になった

こちらには母や叔母がついた

 

彼はなんとか2人を説得しようとしたが、受け入れられるはずもなかった

 

当然といえるだろう

 

財閥トップともなれば、動かせる資金や人員は尋常ではない

仮にトップでなければ、精々がグループ企業のトップか専務どまり

 

 

待遇は天と地ほどの差がでるのだろうから

 

 

 

 

だが、その様な争いを何よりも嫌っていた祖父が父や叔父。母と叔母を集めて一喝した

 

 

儂達が優先すべきは自身の安定ではなく、自身が苦しかろうとも働いている者達の安定を何よりも願うべき

それすらわからぬ者達に後を託すわけにはいかぬ!

 

 

 

結果、姉と兄は親類へと養子に出され、仲介しようとしていた末弟である彼が次期後継者となったのだ

 

 

 

とはいえ、彼は英才教育を受けていた長兄や野心に溢れる姉、向上心の塊の様な次兄とも違う

 

 

良くも悪くも次代に残すものを残そうとするのが精一杯だった

 

 

 

 

 

だが、昨年補佐をしてくれていた祖父は病で帰らない人となり、父と母も既に他界していた

 

既に子供ではないが、それでもやはり心細いものではある

 

 

 

 

 

しかし、彼は長兄が亡くなった事件に政党以外の匂いを感じ取っていた

 

確かにあの時点では兄の婚約者とも見えていたナツフジは兄の婚約者の座を狙っていた者達からすれば、邪魔だっただろう

 

事故が起きた際、当時はあまり親しくしていなかった与党に火消しを頼む。というのはわからなくもない

交渉役をしていた人物、つまりナツフジを亡き者としていた者が唯一、与党幹部などとのコネを有していたのだから

 

 

だが、確実に後継者として育てられていた兄が亡くなって、一番最初に動いた者がいたのを彼は思い出した

 

 

そう、姉だ

 

姉は兄が事故死するなり、直ちに周辺の者を使って自分の立場を固めようとした

 

 

 

 

当時は混乱を早期に収める為だと思っていたが、それにしてはあまりにも妙だった

 

あの感情的になりやすい姉が動揺も騒ぎもせずに動き出したのは

 

 

そう考えると次々と疑問が浮かぶ

 

何故、姉は直ぐに組織内を混乱させる様な事をしていたのに、当主の座にあった父は動かなかったのか?

何故、姉と懇意にしていたはずの叔母が次兄の後援にまわったのか?

何故、兄妹の中で一番迅速に動いていたはずの次兄より先んじる事が出来たのか?

何故、姉の目付け役であった人物があのタイミングで家から去ったのか?

 

 

幾らでも疑問はわいてくる

 

 

 

 

 

 

 

彼のその疑念は警視庁に捜査の依頼を出した後、屋敷に戻った時に確信となるのだが、これは次回にでも触れよう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

与党ベテラン議員は討論会の前から、既に消耗していた

 

 

何せ、党三役から直々に討論会でしくじる事は許さないと言われていたからである

 

話が違う!

 

彼はその席で何度も叫び出したくなるのを必死で堪えることしか出来なかった

 

 

確かに自分の選挙区ではあまり旗色は良くないだろう

だが、相手は例えかつての有名人だろうと、政治の世界を知らない者

 

 

既に三選を果たしている自分とは違うのだ!

 

 

そう声高に言いたかった

 

しかし、3人の纏う空気がそれを許さなかったのだ

 

 

 

 

 

 

実は中立的なマスコミの調べた世論調査では野党連合の支持率が2割。与党の支持率が3割

そして、新党の支持率は2割7分だったのだ

 

つまり、態度を保留としている層が2割3分いるわけで、党首討論にて政策論議という肝心の部分で遅れをとった与党に追加の支持を集めようとすれば、今回の好機は逃すわけにはいかない

 

 

しかも、その世論調査は党首討論以前のものであり、下手すれば支持率を失っている可能性すらありえた

 

 

 

更に政権与党であった彼等だが、総理について新党に参加した者達は国民からも支持されている者が多数含まれていた

野党から合流した者達も国会審議などでキチンとした質問の出来ている若手が中心だった

 

 

当然、総理以下の人物が抜けた穴を与党に残った者達で埋めたのだが、世間からの視線は厳しかった

 

 

以前、不透明な会計が事務所から見つかって国会で追及された選挙対策委員長は自身の秘書を差し出す事で事なきをえた

 

だが、総理は監督責任を彼に求めていた。しかし、委員長は全てを秘書の責任として無理矢理逃げ切った過去がある

 

 

それが今では選挙対策委員長。他にも元愛人との好ましくない関係を報じられた人物が政務次官になっているなど、国民目線からすれば、明らかに危険な人事が強行されていた

 

 

暫定的な総理を選出する動きもあったが、下手な人物を総理に据えようものならば、国民感情が最悪に成りかねないとの事で、臨時措置として総理が続投している

 

 

 

 

逆を言えば、そこまで与党側の人員は払底しているとも言えた

 

 

確かにキャリアは長い

だが、それがどうしたというのか?

 

 

そして困った事に再選を何度も果たした議員というのは、無駄にプライドだけは高くなる者が多い

 

プライドが高いのは大いに結構だが、能力が伴わなければ滑稽なだけである

 

 

 

 

 

それでも討論会さえどうかにすれば、どうにかなると与党所属の議員達はそう思っていたのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、現実とは時に非情となり、牙を剥く

 

 

討論会直前のニュースにて、現与党の重鎮が過去の犯罪に加担していた事を与野党議員と新党の議員の目の前で報道したのだ

 

 

与党議員は当然、捏造だと一蹴しようとしたが、まさかの肉声付きとあっては否定しづらかった

野党議員はこれ幸いと討論会にて、これを追及。更に過去の疑惑などについても全て詳細を明らかにすべしと主張した

 

これに対して、新党の候補者は

 

あくまでも、警察などの発表でない以上はそれが真実かは不明とすべき

 

と言い

 

 

だが、もしもこれが事実だった場合は間違いなく疑惑の議員は刑事責任を問われるでしょうな。何せ警察機構に対する介入ですから

 

 

と能面の様な顔をして、発言した

 

 

 

 

その後は与野党議員と新党の候補者の間で政策論議がなされる事となったが、この討論会のもう一つの参加者であるリスナー(国民)から与党議員に対して痛烈な質問が何度も飛び、その度に彼は

 

私には判断できかねる問題ですので

とか

それは、その当時の事情がありましたので

と、当たり障りのない事を言ってしまう

 

 

いうまでもないが、此処は国会ではない

国会内で通じた言い訳が通る道理はなかった

 

 

終いには

 

与党の議員さんはマトモに質問を答えるつもりはあるのか?

 

とまで言われてしまい、彼は顔を赤くしながらも、沈黙する他なかった

 

 

 

野党議員にも、かなり厳しい意見が寄せられたが

 

 

その件に関しては事実関係を速やかに確認して、国民の皆様へとお知らせしたいと思います

と自身では答えられない事には言うものの、建前ではなく国会議員としての発言をしっかりしていた

 

 

当然だが、混乱を招いたとされるウマ娘擁護の政策を打ち出す新党の候補者にも厳しい意見が叩きつけられた

 

 

これについて、候補者の人物は自身の経験やクガヤシとナツフジとの話などから可能な限り答える様にした上で

 

 

皆様のご指摘の通り、まだまだ問題を抱えております

であればこそ、皆様からも様々なご意見やご指摘などをいただき、未来へとつなげていきたいと新党の候補者、議員一同考えております

 

 

と結んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、討論会(それどころ)では無かったもの達もいた

 

 

与党重鎮をはじめとする幹部達だった

 

当然、重鎮は捏造報道と切り捨てた

安堵する者たち

 

そこに電話が鳴り響いた

 

 

 

 

 

 

 

特捜部による強制捜査の知らせだった

 

 

特捜部はこの事故について、何年もの間検察のトップから隠れて捜査し続けていたのだ

 

決定的証拠を欠く事と、検察のトップが明らかに政権よりの態度を示していたことから、特捜部は全てを極秘に行なっていた

 

 

 

そして、待ち望んだ確たる証拠

 

それを持って、特捜部は史上初となる政権与党幹部の事務所への強制捜査と踏み切ったのだ

 

 

 

 

今回の判断には、警察庁長官と警視総監、更に司法長官の承認を得ての超法規措置

何せ判断するべき検察のトップが相手側に含まれていたのだから

 

 

 

 

 

 

 

更に混乱は続く

 

 

検察庁のトップが逮捕されたのだ

 

 

 

 

既に過去の証拠を持っている者は辞職した後だとトップは思っていたし、事実そうだった

 

だが、その人物が報道を見て警察署に出頭してきた事で全てが明るみに出る事となる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、報道各社にはさらなる凶報が齎された

 

 

トレセン学園関係者の少年が中学生の男子生徒に刺された事が大々的に報じられたのだ

 

更に近隣住民からの数々の不法行為などが次々とSNSなどで暴露されていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まず、与党重鎮は国会閉会後であった事から即座に任意同行を求められた

 

既に逃げ場のない事をはっきりと自覚した議員は全てを話す事となる

 

 

 

検察庁のトップについては公務を妨害したとして、即座に逮捕された

 

 

 

任意同行で聴取されていた記者もそのまま犯罪行為の扶助の罪で逮捕される事となる

 

 

 

 

わずか1日で様々な事が起きる事となってしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、そんなこと(・・・・・)よりも問題があった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、弁明を聞こうかな?

 

 

怒れるタキオンがタキオンの彼の前にいたのだから

 




政権を独占していたが故に慢心し、思う通りに物事を動かしてきた者達の末路でした


これから、しばらくはトレセン学園関係の話になる予定

これはウマ娘の創作ですからね、当たり前ですが


近日中に次を投稿します

ではご一読いただきありがとうございました


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 貴方と私

ようやく書けたタキオンの事情回

ぶっちゃけると、この設定は非難されると思いながらも初期に考えていた設定


ねじれ捻れまくった結果、タキオンと彼の意思疎通はかなり困難になっていた模様

人だからね、仕方ないの


アグネスタキオンは親しい人物ならいざ知らず、知らない者にまで興味を持とうとしない人物だ

 

 

これは、幼少期において両親から半ば放置されていた事による、自分を守ろうという深層的な心理から生じたものである

 

知らない者と関わるな。それよりも自分の夢を追いかけろ

 

 

それが幼いタキオンの抱いていた考えだった

 

 

 

しかし、彼と出会う事で少しずつではあるが、彼女の生活のみならず、価値観すら変化をもたらした

 

というのも、小学校においてタキオンのフォローを彼は全て引き受けていた事を知ってしまったから

 

 

当初は煩わしいだけの存在であった彼であるが、それは時を重ねる毎に

 

 

側にいた方が便利な者から

 

側にあると落ち着く者

 

そして

 

側にいないと落ち着かなくなる男子(ひと)

 

と徐々に変化していった

 

 

 

 

アグネスタキオンは聡明な人物であり、その頭脳は自身が疎かにしてきた事で幼馴染の彼が様々な不利益を被っていた事を知った

 

そして、歩く様な速さであったが他者との付き合い方を考える様になっていったのだ

 

 

そして、トレセン学園で様々な出会いを経験した彼女だったが、彼女の中の線引きは全くぶれなかった

 

 

つまり

 

彼やマックイーンにルドルフ達と

 

全く関心を持たないもの

 

 

であった

 

 

 

 

その日も彼女はいつも通りに研究室にこもって自身の研究をしていた

 

 

この研究室には大型のモニターがあり、テレビとしての機能も有するハイスペックな物だ

 

 

 

研究室の常連であるマンハッタンカフェ(被害担当)エアシャカール(データ至上主義のヤバいウマ娘)はテレビとして利用するが、タキオンはあくまでもスポンサーとの連絡を取る事にだけ利用している

 

 

実はこの大型モニター。かなりの高額製品でありマックイーンでも驚くほどの値段がつくものだった

 

 

 

 

 

 

そのモニターでカフェは後1時間後に迫った討論会を見る為に、その局の番組を見ていた

 

スマートファルコンやゴールドシチーからマックイーンが聞いた話では、報道機関の中では最もマトモであり、信用できるとの評価だったからである

 

 

 

だが、討論会の始まる直前に臨時ニュースが差し込まれた

 

 

トレセン学園関係者の少年が刺されたというニュースが

 

 

 

 

マンハッタンカフェと共に雑談に興じていたタキオンは、昨日のデートにおいて、彼の様子が少しおかしかった理由を今更ながらに把握したのである

 

 

討論会の前という事で、短すぎるニュースとなったが、タキオンは自分のスマホでネットの海から情報を手に入れようと試みた

 

それを横目で見ていたカフェはエアシャカールやタマモクロスなどに連絡することとした

 

 

 

タキオンの目のハイライトが戻っていたから

 

 

 

 

 

討論会の内容についてはどうでも良かった

 

いや、カフェ個人としては無視したくない内容だったのだが、それ以上に激怒しているタキオンを止めねばならなかったのだ

 

 

 

 

その荒ぶりようといったら、尋常ではなくエアシャカールにマンハッタンカフェは勿論、オグリキャップやタマモクロスにスーパークリークまで抑えに回ってなお、互角だったほどである

 

最終的にはナイスネイチャとサクラバクシンオーまで加わった事でようやくタキオンは平静を取り戻した

 

 

 

この日、たまたまジャラジャラのトレーニングの為に彼がトレセン学園へと来ていた事を知っているが故に余計にカフェ達は必死になったといえるだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

アグネスタキオンは幼い頃に両親から放置されて育った

 

 

 

しかし、タキオンはそれを嘆く事も悲しむ事もなかった

 

母が頻繁に家を空ける。父もそう

 

 

タキオンに残されていたものは、父親がタキオンの為に(・・・・・・・)家に置いていった筈のご飯用のお小遣いの一部(・・)だった

 

タキオンは母からキャッシュカードを預かり、それから日々の食費などを出せば良いと言われていた

 

 

 

 

母親と父親では同じ系列の会社に勤めていながらも、出張という点においては然程に回数は変わらない

 

 

後で判明したが、父は交渉などで飛び回る事が必要だったのだが、母は不倫相手の家に入り浸っていた

 

 

 

タキオンの食費として彼女の父親がタキオンの口座に振り込んでいた金額はタキオンの生活を支えるにはじゅうぶんなものであった

 

 

 

それはあくまでもタキオンと父親の間での話し合いで決まった事である。実際は父親があまりにもタキオンに何もしてやらない事を気にした事であり、父親は妻が自身の出張中に自宅へ残っている事を承知の上での話だった

 

 

 

だが、とある時に母親はタキオンに父親からかなりのお小遣い(食費)をもらっている事に気がついた

 

 

タキオンの父親がその口座を開設したわけではなく、母親が口座を用意した

 

であるからこそ、母親は知っていたのだ

 

口座の暗証番号と銀行印を

 

 

 

そして、嵩張る通帳などに興味を持っていなかったタキオンの隙を見て、母親は通帳を自身の手元においた

 

 

後は記帳してみれば、彼女が思う以上にタキオンへと夫がお金を渡している事が判明するのは当然だった

 

 

そして、彼女は娘の預金に手を出した(・・・・・・・・・・)

 

 

不幸な事にタキオンに振り込む金額はタキオンと父親が話をして決めた金額よりもかなり多かったし、タキオンは通帳の中身を見ることを全くしなかった

 

父親として、せめて娘には不自由させたくないという親心だったのだろうが

 

 

タキオンが実験道具や資料などを欲しがった時も父親は叶う限りはそれに応えた

 

そして、余ったお金はタキオン()の将来の為の積立金しておけば良いとの考えであったのだ

 

しかし、妻からすれば家庭のためのお金(自分の金)を勝手に娘へと渡している様に見えてしまう

 

勿論、彼は家庭に結婚した時に決めた以上の金額を常に入れており、一般的な家庭に比べるとかなり裕福な暮らしを送っている

 

娘に渡しているお金はあくまでも仕事の出張費手当や臨時ボーナスであり、何ら問題にならないと彼は思っていたし、それはある意味では真実だろう

 

 

 

だが、結婚した理由が理由である妻からすれば、不愉快でしかなかったのだろう

 

 

彼女は娘の預金を問題ない程度に引き落として、自分たちの(不倫相手との)生活の資金として残す事にしたのである

 

 

 

 

それをタキオンが知らなければ、まだ(・・)良かったのだろう

 

 

 

だが、ある日ふとタキオンは珍しく通帳に記帳した方がいいと思い立ち、自分が通帳を保管していた場所を見た

 

 

 

 

なかったのだ、通帳が

 

 

それから数日後、母親が一時的に帰宅した

翌日には出張へと行ったであるが

 

 

そして、タキオンは保管場所に通帳が戻ってきた事に気がついた

 

 

 

気になって、通帳を開いてみれば

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タキオンはかなり几帳面であった

 

額こそ気にしなかったが、父親のお金である事を理解していたので、いつも口座から出すときには必ずメモを取っていた

 

彼女なりに、父親に感謝していたのだから 

 

 

 

ところが、全く覚えのない引き落としの履歴があった

 

 

しかも、タキオンがいつも出す金額よりも多い額が、である

 

 

 

 

その後、タキオンはわざと気付かないふりをして暫く過ごした

 

 

 

 

確かに母親の行動を注視するとおかしい部分がある

 

 

いつも家を空けたままにしていた母親が、何故か月一の頻度で帰ってくる。別に家事をするわけでもないというのに

 

そして、そのタイミングはいつも父親がお金を振り込んでくれる第三月曜の翌日

 

いつからか、母親の服などが変わっていた

 

 

 

 

 

それでも、母親なのだ

タキオンの事を全くと言って良いほどしてくれていなくとも、あの人は自分を産み育ててくれたのだ

 

 

アグネスタキオンという少女は願った

 

嘘であって欲しい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、再び見た通帳にはタキオンの覚えのない取引内容(出金記録)が記載されていた

 

 

 

 

 

 

 

 

この時、タキオンの中のナニカが音を立てて壊れたのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それ以降は語るまでもない

 

 

母親に絶望したが、嫌悪も憎悪もしなかった

 

 

 

ただ

 

 

ああ、こういう事を平気でできる(ひと)だったのだな

 

 

という乾いた感情だけがあった

 

 

 

父親には感謝もしていたが、既に父親に対しては金銭面くらいしかタキオンは頼るつもりもなかった事もあって、タキオンは両親が自宅にいる事を良く思わなくなる

 

 

そうなると、娘に負い目のある父親は歩み寄る事が出来なくなり、母親はそれでも月一だけは帰ってきた

 

しかし、タキオンは母親に通帳を手渡してこう言った

 

 

これが必要なんだろう?私にはどうでも良い(・・・・・・)から預かっていてもいいよ?

 

 

 

 

 

 

この時初めて母親はタキオンが自分のしていた事に気付いていた事を知った

 

 

しかし、既に半年近く行われてきた行為の結果、タキオンは母親を一切信用しなくなってしまった

 

 

 

 

 

 

そんな中で彼と出会い、彼に様々な事をしてもらっていた

 

 

彼の手料理を食べたときには涙し、ふとした時にリビングに降りると彼がいる事に安心感を覚える事となっても不思議ではない

 

 

 

 

 

しかし、世間の目は当初タキオンの家に頻繁に出入りする彼に厳しかった

 

 

何せタキオンの家の事情を近所の人達が共有するには、タキオンが一度高熱を出して倒れる時まで待たねばならなかったのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アグネスタキオンにとって、スカーレットもデジタルも大切な存在だ

それは断言できる

 

マックイーンやルドルフ、タイシンやカフェ達も素晴らしい友人だとそれも断言しよう

 

 

 

しかし、アグネスタキオンという少女にとって、この世で何者にも変え難い存在は彼しかいなかった

 

 

勿論、彼も自分も思春期というかなり複雑な時期。隠し事の一つや二つは何とか堪えよう

 

 

だが、彼が殺傷されたなどという非常事態を彼の一番そばにいた筈の自分が知らなかった事に目の前が真っ赤に染まった

 

そして、彼がこの前のデートの時にそれを話してくれなかった事が何よりも悲しく、腹が立ってしまったのだ

 

 

 

 

だからこそ、タキオンは彼と話をしなければならない

 

 

 

なのに

 

 

 

 

 

 

くっ、タキオン落ち着け!

 

あかん。タキオンの奴マジや!

シャカール!自分、会長呼んできてくれや!

 

タキオン!少しは落ち着けっての!

 

ちょっと!タキオンさん、落ち着いてよ!

 

やむを得ませんね

少し皆さんタキオンさんを抑えていてください

 

カフェさん、何かあるのですか?

 

 

タキオンを必死で抑えているオグリキャップとタマモクロスにナリタタイシンとナイスネイチャ、それにスーパークリーク

 

此処の事をタキオンと同じくらい知っているマンハッタンカフェ。彼女は倉庫から拘束するための道具を持ってくるために他のメンバーに時間稼ぎを頼んで倉庫に向かった

 

 

エアシャカールは生徒会室に急行し、シンボリルドルフ達を連れてくることとした

 

 

 

 

 

メタ的な事ではあるが、現在のタキオンのパワーはステータスで表記するとC +相当であり、これは同世代のウマ娘の中ではナリタタイシンに次ぐ能力であったりする

 

 

 

 

 

タキオンは自分の感情を処理できていなかった

 

 

私は彼に怒っているのか?

それとも、悲しんでいるのか?

 

わからない

 

彼が自分の心が

 

 

 

 

 

 

でも、苦しい

辛いんだ

 

 

 

 

千々に乱れる思考の中で、それでも残ったのは

 

 

 

彼に逢いたい

 

 

それだけだった

 

 

 

 

ニュースで彼が刺されていたと聞いたタキオンが先ず感じた感情は安堵だった

 

 

おかしいと思われるかもしれないが、アグネスタキオンという少女にとって、彼はなくてはならない存在となっていた

 

無論、彼をこの様な目に合わせたもの達については、例えどの様な事があろうとも必ずそれ相応の報いを与えることを決意していたが

 

 

 

 

この考えは彼と同じだとタキオンは願っていたが、彼自身はタキオンを悪意や害意から遠ざけるために徐々にタキオンから離れようとしていたのであった

 

 

タキオンにとっての幸福、即ち彼と共にいる世界と

彼にとっての幸福、アグネスタキオンとその周りの世界を守る

 

 

これは似て非なるものであったといえよう

 

 

 

元々彼はタキオンに必要とされる為だけに家事やウマ娘、人体などについての知識を貪欲に集めた

 

 

しかしこれは、あくまでもアグネスタキオンの為であり、彼からすれば必要ないのであれば、いつでも投げ捨てれる程度のものでしかない

 

 

彼が望むのはアグネスタキオンという存在が安心して暮らせる世界であり、それを脅かすものは出来る限り排除したいと常に考えていた

 

 

 

 

 

 

 

それはタキオンの恋人である自分とて例外ではなかった

 

 

 

 

 

だが、これは彼自身の弱さから来るものだと他ならぬ彼が一番理解していたのだ

 

 

どこまで行っても、タキオンに追いつくことの出来ない自分ではタキオンと釣り合わないのではないか?

 

この考えは常に彼の意識の片隅にあった

 

 

結局のところ、タキオンの道を無理矢理変えたのではないか?

 

 

アグネスタキオンというウマ娘は間違いなくシンボリルドルフ達と互角の実力を持っている

身内贔屓などでは決してない

 

超光速の粒子(タキオン)の名に恥じないだけの実力を彼女は有しているし、研究者としての彼女もまた優秀であることは疑いの余地などないだろう

 

 

だが、彼女は一連の騒動により、マスコミの前に出る事が困難となってしまったのである

 

更に彼女の物心ついてからの研究テーマであった『ウマ娘の限界』という研究まで、奪ってしまったことを最近になって知った

正確にはトレセン学園に行く際、タキオンは彼に以前の研究テーマについて嬉しそうに話していた

 

だから、彼はタキオンが以前の研究テーマを研究しているものとばかり思っていたのだ

 

しかし、そうではなかった

 

タキオンの研究テーマは昔と変わったままだったのである

 

 

 

 

 

彼がそれを知ったのは、とある製薬会社の人物からの接触によってだった

 

製薬会社からすれば、ウマ娘であることを含めてもアグネスタキオンという人物の優秀さは明らかであり、他の企業に先んじて彼女を獲得しようとしていたのである

 

しかし、この製薬会社はトレセン学園におけるタキオンの研究室については出遅れてしまい、全く交換できなかった

 

 

そこで、彼女の将来の伴侶の公算の高い彼と良好な関係を持つことで自社の状況を一変させようと考えたのである

 

 

 

 

いうなれば、(アグネスタキオン)を射んとすれば、先ずウマ(彼氏)を射よ

 

ということだった

 

 

交渉担当にあたった人物は、アグネスタキオンの研究者としての優秀さをアピールしながら、彼もまたウマ娘関連における豊富な知識を持つことを絶賛した

 

この製薬会社は将来的にウマ娘へ処方する薬の開発に手をつけたいと考えており、世間のウマ娘から好意的に見られているであろう彼も交渉役として自社へと引き入れたいと考えていたのである

 

 

だが、それはタキオンが彼に隠して研究していた研究テーマ

 

 

ウマ娘の力を完全に人と同じレベルまで落とす薬

 

の存在を彼に突きつける事となったのだ

 

 

 

 

 

研究者というものの中には、組織などお構いなしに自身の研究テーマ完成に注力するものが現れる

 

本来ならば、タキオンの研究テーマは部外秘なのだが、こと研究者という者は偶にそう言った組織の(しがらみ)を極端に嫌うものが出てくる事がある

 

 

確かに全てを自分がするよりも得意分野毎に分けた方が研究も進みやすいのは事実だろう

 

しかし、その行動は当事者であるタキオンの同意を得た上でならば問題ないが、そうでなければ大問題となる事もある

 

 

 

はたから見れば、ただの研究だろう

しかしそれは、アグネスタキオンという少女のまだ少ない人生の中のかなりの時間を費やしてしている研究テーマ

 

しかも、それを一番知ってほしくなかった彼に知られてしまったのだ。タキオンの想いとは裏腹に。しかもタキオンの全く知らないところで

 

 

 

 

 

それ以来、彼はやはりタキオンの夢を自分が奪ったのだと自らを追い込んでいった

 

 

その結果が、一連の騒動において彼がメディアに姿を現した理由でもあったのだ

 

 

好きな女性(アグネスタキオン)を守る為に、あらゆる敵意や悪意を自分に引き寄せる為に

 

 

 

 

 

そして、その目論見はうまくいったと言ってもいい

 

 

加害者が自分よりも歳下であったことこそ予定外だったが、それだけである

 

彼はトレセン学園警備部はいざ知らず、所轄の警察官の中にも不平不満を溜め込んでいるのも薄々感づいていた

 

 

 

タキオンには身勝手だが、いつまでも夢を追いかけてほしいと彼は願っている

彼自身は理想を追い続けよう

力尽き、斃れるその日まで

 

 

 

タキオンは一筋の流星ではなく、皆を見守る月であってほしい

一瞬だけ煌めき、消える役目は自分がするから

 

 

 

 

 

 

 

タキオンとその彼氏

 

この2人は割と拗らせていたのである

 

 

 

 

本質的には似通っている(あまえんぼうな)2人

 

 

ただ、タキオンの休める場所となる為に彼はひたすらに自分を律していたのだ

 

それを知っていてもタキオンは彼に甘えることを控える事が出来なかった。

それだけ、アグネスタキオンという少女が受けた痛みは深かったということであろう

 

 

 

 

 

 

 

 

だからこそ、アグネスタキオンは恐れるのだ

 

 

彼を失う事を

 

 

 

 

 

彼がいたから、研究を続けられた

彼の心遣いがタキオンを癒してくれた

彼の些細な仕草を見て、タキオンはいつも嬉しかったのだ

 

 

 

 

 

 

 

隠し事をされるのは嫌だ

 

自分を捨てた両親を思い出すから

 

 

彼と一緒に居ないのも嫌だ

 

彼と過ごす時間は本当に楽しいのだから

 

 

彼の料理が好きだ

 

彼と自分を繋げてくれたものだから

 

 

 

 

 

でも、彼は少しずつ遠ざかっている様な気がしてならない

 

 

 

それが何よりもタキオンには辛かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある屋敷にて1人の男性と1人の女性が向き合っていた

 

 

 

言いたい事があるなら、さっさとしなさいよ

 

 

女性は不愉快極まるといった表情を隠そうともしなかった

 

 

 

では、聞くが

兄上が亡くなった事件の裏で絵を描いていたのは貴女だな?姉上

 

 

 

男性の発言に女性の眉が顰められた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう。ようやく気づいたのね

 

 

彼女は皮肉げにそう言い捨てた

 

 

彼女は語る

 

 

 

ナツフジという、未来に自身の姉となる人物。そして、ウマ娘を彼女は受け入れられなかったと

 

父親にも必死で訴えたが、それについては一切聞き入れてもらえなかったと

 

 

 

 

そして、彼女は口にした

 

 

 

アンタやアイツがどれだけウマ娘に好意や理解を示そうとも、結局世間ではウマ娘という存在は未だに未知のものなのよ

 

だから、大衆は少し離れたところで彼女達を見るだけにとどまる

 

そうよね、そうすれば傷つかないものね

 

 

 

彼女の口角があがる

 

 

 

 

でもね。アンタは知らないでしょうけど、人というものは本当にどこまでも功利的になれるものなのよ

 

 

どういう事だ

 

 

世間では今騒がれている子供。確か『シンデレラの王子様』だったかしらね。

その相手、つまりはシンデレラとやらの両親をアンタは知っている?

 

 

知るはずもないでしょう

 

 

 

そうよね

普通はそうよ

 

でも、私は知っているの。シンデレラの母親を、ね

 

 

 

彼女は語る

 

 

アグネスタキオンの母親と不倫関係にある人物を彼女は良く知っていると

 

 

彼は彼女と以前数年間付き合っていた人物であり、率直に言ってしまうと浪費家であり、見栄を張る人物だ。しかも大卒にも関わらず、数年は仕事をせずにブラブラしていた

 

その割にはプライドは非常に高く、自分の会社を創りたいといつも言っていたのである

 

そして、財閥の娘である彼女と出会い、世間慣れしていなかった彼女は興味本位で少しの間だけ付き合っていた事がある

 

別れた後も彼は彼女(金蔓)を手放したくない様で、彼女をしきりに食事などに誘っていた

 

酒の席で彼は言っていた

 

 

今はある女と付き合う事にしているが、どうやら自分の子供を産んだらしいと

そして、その娘がウマ娘であったとも

 

 

だから、彼は今年できたトレセン学園にそのウマ娘を入れようと相手に持ちかけたそうだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、事もあろうにその娘は懇意にしていた男と共にトレセン学園に行ったというのだ

 

 

彼は実父として名乗り出るべきか悩んだのだが、そうなると現在相手の女性はその夫に離婚調停を申し入れた上に、裁判を起こされている

 

 

確実に彼自身も巻き込まれることになるのだ

 

 

 

 

勿論、自分の娘(ウマ娘)である以上は上手に立ち回れたならば、それこそ考えるのもバ鹿らしくなるほどの大金を手に入れる事が出来るだろう

 

何せ、ウマ娘とはいえ未成年で自分の娘なのだ

どうとでも言い含める事でレースの賞金を手中に収める事ができる、と

 

 

 

 

 

 

つまり、付き合っていた元カレからしても、シンデレラの王子様は邪魔者でしかなかったのである

 

 

だが、今の騒動が収まるまではその人物からシンデレラの父親であることを世間やトレセン学園に公表しようとは考えていない

 

 

 

面倒ごとは避けるべきなのだから

 

 

 

 

 

財閥の娘であり当主になれなかった女は過去の事を掘り返しかねない人物達の影響力の排除。その元カレは自分の未来のための障害の排除という一点において利害の一致を見たのである

 

 

 

 

結果、彼女は自分の(財力とコネ)を使い、担当の警察署の上の人物を買収したのだ

 

 

 

 

 

 

なお、その元カレは幾度かタキオンの住むマンションに押しかけていたが、マンション側としても管理会社としてもこれ以上の混乱を望むわけもなく、マンションの騒動の1週間後には施設警備員を独自に雇い、出入りについて徹底管理させていた

 

そのために彼はタキオンはおろか、彼にも会う事は出来なかったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

つまり、今回のタキオンの彼が襲われた理由は

 

 

彼のせいで不利益を被ったマスコミ

彼のせいで職を失い、生活を壊された元社員の家族を

彼が騒いだせいで昔の罪が暴かれそうになった財閥の娘

彼が娘のそばにいたせいで自身の贅沢な生活を奪われたタキオンの母親とその不倫相手

彼とタキオンが騒がれたせいで、余計な(・・・)仕事を増やされた警察内部の人間

 

 

という者達により引き起こされたものだったのだ

 

 

 

 

 

 

 

馬鹿な

 

 

男は絶句した

 

その規模にではない

1人の子供にそこまでの悪意をいだける大人達の良識のなさにである

 

 

 

 

マスコミは自業自得であり、幾度も『警告』がトレセン学園や政府から出されていた事は部外者である彼とて知っている

それでも彼らマスコミの殆どは少年を飯の種とし、トレセン学園には『自由』の名を振りかざした取材行為を求め続けた

自由であるならば、果たすべき義務や責任があるにも関わらず

 

 

当事者でないとしても、報道に対する責任からは免れない。いや、免れてはならない

そうでなければ、彼らマスメディアの存在価値はどこにあるというのか?

彼らは責任の元で報道をしているのであって、その責任が今回は尋常ならざるものだったということ

 

 

職を失い家庭を崩壊させたというのであれば、その責は処分を下した与党や政府に負わせるものであるはず

少年が政府や与党を動かしたわけでもないのだから

 

 

これについては、いうまでもないが情報提供した同業者や家庭内において加害者の少年の両親がタキオンの彼氏を誹る事はあっても、元同僚や政府を誹る事はなかったからだ

両親からすれば、あくまでもタキオンの彼氏が騒いだ事が要因であり、自分たちには一切の非がないと認識していた

 

 

姉についてはいうまでもない

例え財閥当主の椅子がほしかったからとて、そのために自分の兄やその婚約者を手にかけるなどあってはならない事

 

 

 

タキオンの母親とその不倫相手についても論ずる必要はないだろう

子供を産んだのであれば、その命に対する責任は持つべきであって、それを結婚しているとはいえ実の父親でない人物に責任を持たせるなどマトモではない

 

しかも、それをひたすら隠しておきながら利益になると知った瞬間に父親として名乗り出るなど許されるべき事ではないだろう

それを許すとしたら、当事者である子供と今まで騙されていた父親

 

 

だが、その父親も仕事人間らしく娘には最低限しか関わっていないとも聞いた

 

育児放棄されておきながらも、その娘がマトモに育ったというのであれば、両親ではなく周囲の人間がしっかりしていたのだろう

聞き及ぶ限りでも、アグネスタキオンの彼氏は子供ながらにしっかりしているとの事であるなら、認めるべきは彼氏であろう

 

今まで何一つしていない人物が今まで苦労してアグネスタキオンに寄り添ってきた人物をどんな顔をして非難できるというのか

 

 

警察についても、これまた論外だろう

 

不服ならば、それを申し立てるべきであり、例えどの様な感情をもったとしてもその職務遂行にそれを持ち込んで良いはずがない

持ち込むのであれば、それは最早公僕としてどころか組織人としての資格すらない

ましてや、その結果として傷害事件を誘発し、あまつさえそれを隠蔽しようなどという事は断じて認めてはならない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思考にふける弟を女は目を細めて見ていた

 

 

 

アンタのその気質は本当に立派だと思うわ

でもね、それだけでは何も変えれないのよ

清濁併せ飲みなさい。そうすれば、この家も安泰よ

 

 

彼女はそう呟いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この一時間後、この女性は警察に出頭

彼女の知る限りの事を警察に話した

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この作品のメインキャラに絡む人たちは基本的にみんな何かしら抱えているという話


近づけば遠ざかり、遠ざかれば近づく遠き星
蜃気楼の様に夢を見せ、そして消えゆくもの



夢とは叶えるもの
理想とは理(ことわり)を想う
つまり、届かないもの叶わないものと私は思っております


ではご一読ありがとうございました


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 デジタルの待ち望んだ一日(前編)

少女よ
キミの願いはようやく叶う


といったお話


ウマ娘二次創作のガイドラインが更新された事に伴い、現在進めていた話などについて再考する必要が出てきました

と言う事で暫くはifストーリーをお楽しみください


これは少し未来のあったかもしれない日々の記録

 

 

 

 

 

 

アグネスデジタルは今日という日を待ちわびていた

 

 

それこそ、大好きな姉と兄がトレセン学園に行くことになってから、ずっと

 

 

 

 

 

 

んで、何故に俺までいるのですかねぇ?

 

決まっているだろう?デジタルが望んだからさ

 

解せぬ

 

 

 

トレセン学園栗東寮の前に来た彼はタキオンの言葉に力なくうなだれた

 

 

 

だから俺は野郎なんだってばよぉ

規則的にも色々問題になりゃせんか、これ?

 

それはないといえる。キミはトレーナー職となる前からトレセン学園に来ていたが、問題行為は一度としてなかったからね。そして、正直な話私はキミと久しぶりに出かけられて嬉しいと思っているよ

 

アンタ最近はトレーニング以外で学園に来なくなったよね。たまには来て良いと思うけど

 

無茶を言わんで欲しいなぁ

トレーナーであるからこそ、何よりも問題を起こしてはならないと思うんですが、それは

 

既にトレセン学園の生徒会長の地位を退いたシンボリルドルフは久しぶりの彼との逢瀬に機嫌よさそうに。相変わらずレースでは鬼脚と呼ばれてトップクラスを維持し続けているナリタタイシンは自身のトレーナーの発言に不満げだった

 

 

 

トレセン学園も今年で開校3年目

 

1年目の混乱期を経て、2年目には飛躍した

その結果、世間からの理解も得ることが出来、ようやく様々な事が軌道に乗り始める事になっている

 

 

シンボリルドルフは二期まで生徒会長を務めたが、三期目については立候補するのを辞退した

 

曰く

 

私は私の役目を果たしたと思っている。これからは1人のウマ娘として有終の美を飾るべく奮励努力していくつもりだ

 

 

との事だった

 

 

同時期に副会長のナリタブライアンと書記のエアグルーヴもそれに倣い、初代生徒会はここにその役目を終えた

 

 

とはいえ、まさかだよなぁ

 

彼は苦笑していた

 

 

それをアタシ達が引き継ぐ事になったんですけども

 

うだうだ言っても仕方ないだろ、スカーレット

先輩や姉さんに兄貴たちが残したものを引き継いで、残していくのが今の私たちの仕事だろ?

 

まーな。しっかし、このゴルシちゃんが生徒会副会長とかどうなってるんだ、ホント

 

 

 

彼の言葉に二代目の生徒会長であるスカーレットと書記のウオッカ。それに副会長のゴールドシップはそれぞれの反応を見せた

 

 

 

トレセン学園の地盤を固めたルドルフ達は当然ながらその後任選びも慎重に行なわねばならない立場となった

 

 

 

 

 

組織というものは不思議なものであり、組織を創り上げた人物の次の代でその組織の明暗が分かれると言っても過言ではない

 

 

 

平家の時代においては、平清盛公の影響が絶大すぎたが為に次代が育つ為の障害となり、源氏の再興を許した

 

その源氏とて、九郎判官義経を頼朝公は討伐した

その後ろ盾たる奥州平泉の藤原氏も共に滅ぼし、各地に地頭と守護をおき、更に六波羅探題を設置する事により九郎判官を源氏より引き剥がそうとした後白河院などの動きを牽制し、武家社会を創り上げようとした

 

頼朝公の急死に伴い跡を継いだ頼家は圧倒的実績を持っていたが故に御家人をまとめ上げていた頼朝公が抱えていた問題の解決に時を費やす事となる

 

つまり二代目にして統治体制を確立できなかったのだ

 

 

その鎌倉を破った足利とて、初代尊氏公の残した問題の殆どを解決したのは三代目にあたる義満であった

 

 

その後、この国において守護大名より脱却した戦国大名ともいえるものが多々現れたものの、戦国大名としては実質二代目となる今川氏真や武田勝頼などが御家を滅亡させている

 

とはいえ、両者とも父親が天下に名の知れた名将であった事は周辺勢力に強大な敵を抱えていたなどの一概に二代目が無能とは断じる事も出来ないだろうが

 

 

 

 

しかし、組織としての次代を引き継ぐ二代目というものは非常に重要である事は何ら変わらないだろう

 

 

ルドルフ達も自分達が跡を託す人物について、真剣に考えた

 

その結果

ルドルフはスカーレットを

ブライアンはゴールドシップを

グルーヴはウオッカを

それぞれ選んだ

 

 

 

シンボリルドルフがダイワスカーレットを選んだ理由は彼女が弛まぬ向上心を持ち続けていた事が第一の理由だろう

 

勿論、他のウマ娘達が研鑽を疎かにしていた訳では、決してない

 

 

無いが

 

 

アグネスタキオンの異様ともいえる投薬と特殊な性癖(ドM)すら裸足で逃げ出すタキオンの彼とサイレンススズカ、ミホノブルボン、ライスシャワーの主導するトレーニングを1年間ひたすら耐え続けたスカーレット以上の人物をルドルフは知らなかった

 

 

スズカ達は初のURAファイナルズにおいて激闘を繰り広げた結果、現役を引退する事となっていたが為のトレーニング内容であった

 

言うなれば、既に難易度がベリーハードのところが、更に難易度が進化してエクストラになったといったところだろうか

 

 

なお、そのトレーニングについてナリタタイシン曰く

 

 

は?いやいや、あたしにアレをしろっての?無理無理

 

と流石に顔色を悪くしていた

タイシンとて、好意を寄せている人物が関わっているトレーニングである。

出来るならば参加したかった。だが、それで身体を壊しては元も子もないないので泣く泣く辞退したのである

 

 

 

そんなレベルのトレーニングを例え大好きな姉と兄が主導するからと1年間も続けられるだろうか?

 

 

少なくともシンボリルドルフには無理だった

その前までは食らい付いていたジャラジャラも脱落した

 

 

 

まさにスカーレットのためだけのトレーニング(オンリーワン)だった

 

レースに出走することが様々な理由から叶わないタキオン。表舞台に出る事のできなくなった彼。ウマ娘として走る事の叶わなくなったスズカ達

 

スカーレットは彼女達から様々な事を学び取った

 

レース前の念入りな準備(過密なトレーニング)にレース時の駆け引きや相手の心理を読み取るための数々の手管

更にウマ娘としての体質を利用した的確な食事方法など

 

 

 

更に何故か勉強関連も姉と兄はしっかりとスカーレットの面倒を見ていた

 

 

 

どうしてもトレーニングに注力すると勉学が疎かになる事もあるだろうという兄からの提案だった

 

 

なお、その発言にウオッカを始めとした数人が顔を引き攣らせたのはそこだけの話である

 

 

 

余談だが、トレセン学園において一年目は一般教養を重視するカリキュラムを組んでいるのだが、入学したウマ娘達は早くトレーニングして欲しいと教師陣に頼み込むのが通例となりつつあった

 

これはウマ娘であるから、常に周囲に対して気を遣わねばならなかった反動から来るものであると理事長を始めとしたメンバーらは認識していた

 

その為、『アグネスタキオンを愛でる会』から名を変えた『研究会』では度々議題として上がっていたりする

 

 

 

だが、トレセン学園の理念の一つである『ウマ娘との協調社会の実現』というものがあるために早期のトレーニングは個々人の裁量に委ねられる事となった

 

 

 

 

トレセン学園において、最強の呼び声も高い東条ハナトレーナーがまとめる『チームリギル』は新入生を夏までにある程度迎える事としており

、リギルでやっていく決意のあるウマ娘は可能な限り引き受けている

 

 

『チームスピカ』は沖野トレーナーの指導の元で運営されているが、新入生については個々の事情を踏まえた上で受け入れるかどうかを判断していた

 

 

このようにトレーナーの考えによって、新入生に対するスタンスは大きく変わっている

 

だが、原則として一年目にチームへ加入する条件として

『日常の生活態度や授業への姿勢』が何よりも重視されており、実力があったとしても日頃の行ないが悪い場合はチームへの加入を認められないし、加入していたとしても態度如何ではチームから除籍処分を受ける事もあると通達されている

 

 

 

 

因みにアグネスタキオンは去年トレーナー試験を受けて、トレセン学園生徒ながらにトレーナーを兼任している

 

タキオンは彼を補佐役として、当時タキオンと彼にトレーニングを受けていたスカーレットと正式にトレーナー契約を結び『チームラサラス』を結成した

 

 

此処は規模こそ小さいもののダイワスカーレット、ウオッカ、ゴールドシップにハルウララが加入しており、学生の身でありながら研究者でもあり、トレーナーでもあるタキオンが結成したチームとあって注目を集めていた

 

 

既にスカーレットとウオッカ、ゴールドシップはデビュー戦を勝利しており、3名ともシンボリルドルフ達と激戦を繰り広げている

 

 

ラサラスには他にもコーチとして、サイレンススズカにミホノブルボンとライスシャワーが在籍しており、外部のウマ娘としてジャラジャラやナリタタイシンがトレーニングに参加する事もあったりする

 

 

 

本音を言えば、ルドルフとて此方に参加したくはあったのだが、流石に生徒会長自ら新しい枠組みを壊すべきではないと思いとどまった

 

 

 

そのかわりにタキオンとタイシンに頼み込み、思う存分彼に甘えた(ルナした)

 

 

 

ちなみにルドルフはトレセン学園における騒動がひと段落したところで彼に告白した

 

 

詳細は省くが、結果として2人きりの時は彼にルナと呼んでもらえる事になり、ルドルフは終始ご満悦だったとか何とか

 

 

 

 

 

 

 

トレセン学園豆知識

 

 

ルナする(動詞)

 

シンボリルドルフが彼に誰の目も憚る事なく甘える行為をさす

主に頭を撫でられる。たかいたかいされる。膝枕されるなど

なお、ルナちゃんモードの際に余計な事をするとプックリルドルフが見られる為、一部のウマ娘はこぞってこの時のルドルフに接触しようとする

 

当然だが、エアグルーヴやナリタブライアンを始めとしたウマ娘による強固な防衛ラインを突破せねばならない上に最終兵器(グラスワンダー)を必ずどうにかしなければならない

その為、現在までにルナちゃんを見た事があるのは、彼以外ではアグネスタキオンとナリタタイシンくらいである

この場合は2人も対抗心からか精神年齢が著しく低下するので、彼の負担が跳ね上がる事となるが、それはご愛嬌

 

 

 

類義語としては、『タイシンする』が挙げられる

 

なおタイシンするの場合だと、たかいたかいやハグがメインとなるので誤用には注意されたい

 

 

 

勘違いされがちだが、『タキオンする』と先にあげた二つは少し意味が変わるので、使用の際には細心の注意が必要

 

 

タキオンするの場合は周囲の視線などお構いなしの上に遠慮も自重もない為に、独り身のウマ娘やヒト娘などに多大な精神的ダメージを与える広域マップ兵器。しかも敵味方の区別はない

これに対して、前者の二つは周囲に配慮しているそうだ(当社比)

 

 

言うまでもなく、前者も後者ほどでないにしろダメージを与えるのではある

ルナした場合、とてつもないダメージを受けるのはエアグルーヴとナリタブライアンであるが、気にしなくても良いだろう

 

ルドルフと同じチームに入っている2人だが、専任のサブトレーナーと良い仲になりつつあるとか、なんとか

 

 

類義語として、『バカップルする』が存在する

 

 

 

 

なお、彼視点で言うと全て甘やかすになるが、対象によって少し表現が変わる

 

 

タキオン、ルドルフ、タイシンの場合は『バカップルする』に

スカーレット、デジタル、ウオッカ、ゴールドシップの場合は『お兄ちゃんする』となる

 

 

ちなみにこれを知った某ウマ娘は『ママする』事を全力でナリタタイシンに求めたとされるが因果関係は不明である

 

更に余談だが、『オカンする』という表現もトレセン学園において使用される事もある

               

 

 

使用方法がわからない?

仕様(・・)だからね、しょう(・・・)がない

 

 

 

 

 

 

 

なお、このやりとり(バカップルする)を初めて見たトレーナー達は天を仰いだとか

 

その日、トレセン学園トレーナー寮の食堂において、寮開設一番の酒の消費量を記録したとされる

 

 

因みにマックイーンやスズカ達は慣れたもので、それを話の種にできる程度になっていた

 

 

 

 

 

着々とまだ見ぬ世界への道が用意されつつある

そんな中、夏休みの最終日にわざわざ彼は呼び出された訳で

 

 

 

 

そういうけどよ、オマエの場合夏休みも何もないんじゃねえのか?

 

 

真実は時に人を傷つけるんだよぉ

 

 

ゴールドシップの容赦のない指摘に彼は項垂れた

 

彼は結局、学校に通う事もならず最終学歴は中卒となってしまった

 

 

 

 

とはいえ、今更そんな事を気にするメンバーはいないのだが

 

 

 

別に構いはしないだろう?私がキミを養っていけばいいだけの話だろうに

 

や、あのタキオンさん?

それ一般にはですね?

 

平たく言えばヒモだよね、それ

 

だから、正論で殴りかかるのはヤメロッテ

 

 

タキオンの養う宣言に戦慄する彼

その彼にあっさり追撃をかけるタイシン

 

 

 

ふむ。ヒモという訳でもないだろう。どちらかと言えば専業主夫といったところだろうか

 

 

ルドルフゥゥゥッ!

フォローになってないから!

寧ろ死体に鞭うってるから、それぇ!

 

 

別に兄貴がヒモって訳じゃないだろ?

兄貴はあたし達をしっかり見てくれているんだし、姉貴や先輩たちが洗濯とかしてるところ見た事ないんだけどな

 

 

っぐ

 

それを言う?

 

返す言葉もないな。それを言われると

 

 

 

ウオッカの発言に思わず胸を押さえるタキオンとタイシンにルドルフ

 

 

 

 

料理はルドルフが出来る

 

洗濯はタイシンが出来る

 

掃除はタキオンが出来る

 

 

しかし、総合的な家事能力において、3人が協力したとしても彼に及ばないのが現実

 

であるからして、3人は彼に任せきりになりがちなのだ

 

 

 

既にこのメンバーで合宿なども幾度かしているが、専ら手伝うのはスカーレットやウオッカであり、たまに手伝うのがデジタルとゴールドシップである

 

3人からすると、自身の女子力のなさを痛感するから手を出しづらいのだが、それは手伝う者からすればどうでも良い(・・・・・・)話だった

 

 

そもそも内訳がお兄ちゃん大好き(スカーレットとデジタル)兄貴大切(ウオッカ)ハジケリスト(ゴールドシップ)である

 

どう見ても同情されるわけが無かった

 

 

スカーレットは兄に女子力で負けているなら、鍛えれば良いと考え、デジタルは兄と仲良くしたいと思い、ウオッカは兄の力になりたいと願い、ゴールドシップは友人の力になりたいと思いつつ、面白そうだと思っていた

 

 

 

 

 

 

残念ながら先輩といえども、彼が掲げる『立ってるものは親でも使う』に対応してない人物を彼女達は気にしていなかった

 

 

 

 

 

いやぁ、すいません。遅れましたぁ

 

 

そこに本日の主役、アグネスデジタルがやって来た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、デジタル。今日は何処に行くのよ?

 

 

最寄駅から電車で移動中にスカーレットはデジタルに尋ねた

 

 

 

 

 

 

既に次のレースを見据えての調整に入ろうかという時期に突如として誘われたスカーレットはやや不満げだった

 

 

とはいえ、トレーナーであるタキオンとその補佐である兄も此処にいる以上は断る理由などスカーレットになかった

 

何せタキオンはともかくとして、兄は仕事とプライベートを完全に分けているのだから

 

 

 

 

タキオン、ルドルフ、タイシン、スカーレット、ウオッカ、ゴルシ、デジタルに彼

 

豪華メンバーと形容しても足りないだろう

 

 

 

 

アグネスタキオン

 

 

ウマ娘としての実力を持ちながらも、トレセン学園一年目の騒動を考えた結果、ウマ娘のレースに一切出ることの出来なくなった人物

 

その一方では、研究者として既に実績を積みつつあり、特にウマ娘関連の製薬開発においては彼女の研究室設置を支援した製薬会社と共同で画期的な新薬を試作している

 

更に去年トレーナーとしての資格を現役のトレセン学園生徒でありながらも取得し、担当ウマ娘であるダイワスカーレットの育成に彼氏と共に取り組んでいる

 

既にダイワスカーレットはデビュー戦を勝利し、重賞の一つであるG IIIも二勝している事から、将来有望なトレーナーとして見られている

 

 

 

シンボリルドルフ

 

 

トレセン学園初代生徒会長であり、初のGIレースであった天皇賞春を並み居るライバルを抑えて勝利した史上初のGIウマ娘でもある

ウマ娘の未来という難しい問題に真摯に取り組むその姿勢から、世間からの支持も高い人物

 

割とお茶目な性格もあるらしく、場を和ませようとあえて寒いダジャレを言ったりするものの、幸いにも好意的に受け止められている

 

最近の悩みはチームリギルに所属した関係上、タキオン達のチームであるラサラスに加入したくもあるが、しがらみがある事もある為にそれが実現困難な事

 

既に数々のレースに出走し、華々しい結果を出している

無敗とはいかぬまでも、既に天皇賞春、日本ダービー、天皇賞秋を勝利しており、世間からもウマ娘の代表格と見られている

 

 

 

ナリタタイシン

 

 

小柄でありながらも、驚異的な末脚を武器に出走するレースにおいては、必ず掲示板に入るという結果を出している

オークスや安田記念を勝利しており、前述したシンボリルドルフ最大のライバルと目されていたりもする

 

彼女はトレーナー制度を利用しておらず、建前上のトレーナーは彼となっている

これはタイシンが些か気難しい事と、どうしても見かけだけで判断してくるトレーナーなどタイシンは必要としていなかった為だ

 

 

 

模擬レースまで全てのウマ娘に対する情報は伏せられており、模擬レースの結果次第でウマ娘をスカウトするトレーナーが殆どだった

 

これはトレーナー自身の資質を見るためのものであり、伏せられているのはトレセン学園の職員側からの情報だけであった

つまり、必要ならばウマ娘達と円滑なコミュニケーションを取る事でそこから情報を仕入れる事を秋川理事長を始めとした理事会は望んでいたのである

 

 

だが、その模擬レース以前にウマ娘をスカウト出来たのは東条トレーナーと沖野トレーナーのみであった

 

東条トレーナーは生徒会メンバーのトレセン学園開校時の情報を集めており、生徒会3名を自身のチームへと勧誘した

沖野トレーナーはその観察力より、メジロマックイーンとサイレンススズカ、ミホノブルボンとライスシャワーを模擬レース前にスカウトしている

 

 

だが、言うまでもなく見た目もまたトレーナー達がスカウトするには重要なポイントである

 

ナリタタイシンは見た目とは裏腹にパワフルなレースをする

しかしそれは、自身の体に相当な負荷をかける事と同義であり、トレーナーからすれば些か以上に無謀と見えたのだろう

 

 

タイシンをスカウトしようとした者は総じてタイシンのレース運びを危惧していた。他ならぬタイシンの体を考えて

 

だがタイシンからすれば、タキオンと彼に考えてもらったトレーニング内容を真っ向から否定された様なものであり、タイシンはその様な事を言う人物とトレーナー契約を結ぼうとは思わなかった

 

確かにタキオンの薬については、ウマ娘の本能が全力で警鐘を促す事もあるが、それでも友人であり、共通の想い人を持つタキオンが不穏な事をするなどタイシンには考えられなかった

更にタイシンの走り方を見出した彼は、ともすれば過剰ともいえるほどにタイシンの身体を気遣っている

 

それに対して、無茶なトレーニングを望んでいるのは寧ろタイシンの方なのだ

勿論、彼がその様な事を許すはずもなく、タイシンする事を止める事や手作り料理を振る舞う事を止めるなどの交渉により、タイシンを止めていたが

 

 

幸いにして、トレーナー制度を導入した最初の年ということもあり、タイシンが早期に担当トレーナーを決めなくとも問題にならなかった

 

が、オークスに出走したいと思っていたタイシンは当時既にトレーナー資格を有していた彼に担当を依頼した

 

 

紆余曲折の末にこれを一時的な措置とする事でタイシンの希望が叶ったわけだ

 

 

 

なお、その提案がなされた時にシンボリルドルフは

 

その手があったか!

 

 

と人知れず衝撃を受けていたりする

 

 

 

 

ナリタタイシンはどの様な障害があろうとも、それを常に乗り越えてきた

いつしか彼女はこう呼ばれる様になった『不屈のウマ娘』と

 

 

 

 

 

 

スカーレット、ウオッカ、ゴールドシップ

何れもトレセン学園二期生であり、その実力の片鱗を見せつつある次代のウマ娘である

 

 

アグネスデジタル

彼女もまた三期生の中で有望株あった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目的地は有明

 

 

 

熱い、夏のイベントが始まる

 

 

 

 

 

 

 

 




デジタルの出番が少ない?

じ、次回からデジタルの独壇場ですから許して



ではご一読ありがとうございました


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 デジタルの待ち望んだ一日(中編)

新聞配達は寝る時間が難しいと今更ながらに思い知った今日この頃

最近寒くなったり、新株が上陸してきたらしいですが皆様どうかお気をつけを


これからは更新が更に亀になります

内容については今更なので、お察し下さると幸いですが


さて、アグネスデジタルは長年の夢であったとあるイベントに姉や従姉妹に兄。更に姉の友人達を連れてくる事ができた

 

 

とはいえ、皆有名人である

 

姉であるアグネスタキオンも最近はトレーナーとして、メディアに顔を出す様になり、その伴侶である兄も当然その隣にいる

従姉妹のダイワスカーレットは既にウマ娘としてレースデビューしているし、二代目のトレセン学園生徒会長だ。その親友であり、兄を兄貴と慕っているウオッカ先輩もレースデビュー済みでトレセン学園生徒会書記。

学校の先輩であったゴールドシップは何故かトレセン学園生徒会副会長をしており、更に言えばメジロのウマ娘でありながらもマックイーン先輩やライアン、ドーベル先輩とも異なる道を歩んでいた

 

メジロ家の一員でありながら、姉をトップとした法人を作ろうとしているとも聞いている

相変わらずの行動力だ

 

 

先代の生徒会長であるシンボリルドルフ先輩

この半年間で思った事は、非常に切り替えの上手いひと。だった

 

どうやら、兄に相当お熱らしく、トレセン学園における最強と目される『チームリギル』に所属していながら、兄にトレーナーをして欲しいと姉やリギルのトレーナーである東条ハナトレーナーに言いたいらしい

 

が、先輩は非常に目立つ存在であり、かつトレセン学園生徒の規範とならねばならない事もある為にそれを表に出せないそうだ

 

やれやれ。皇帝自身が己を肯定(・・)できないか

 

と言っていたりした

・・・・・先輩として、ウマ娘として尊敬出来るが、どうやらこの部分についてはフォローできないとデジタルは思っている

 

凛々しいし、責任感もある。向上心も高く、常に研鑽に励む姿は正しく皇帝と呼ぶに相応しいだろう

 

デジタルとしても、姉の考え次第だが義姉(あね)と呼ぶのもやぶさかではない

 

 

 

ナリタタイシン先輩

 

世間からは『鬼脚タイシン』や『不屈のウマ娘』と呼ばれている人物であり、ぶっきらぼうに言い方とは裏腹に非常に優しい先輩

 

兄とのトレーニングや合間の会話を楽しんでいる人であり、最近では姉の為だけに時間を費やしていた兄にゲームなどを勧めているそうだ

今回のイベントに兄を同行させれたのは、タイシン先輩のこの動きがあったからだとデジタルは個人的に尊敬していたりする

 

姉の前だろうと、兄に甘える事を最近自重しなくなっており、それが姉と兄の関係の進展を促している為にデジタルとしては全力で応援している

 

 

 

 

更に此処にはいないが、サイレンススズカ先輩にミホノブルボン先輩。ライスシャワー先輩やハルウララ先輩にもデジタルはかなり世話になっている

 

 

因みに創作活動という面においては、テイエムオペラオー先輩とフジキセキ先輩にマンハッタンカフェ先輩にかなり力を貸して貰っていたりもする

 

ウマ娘としてのトレーニングとトレセン学園生徒としての一般科目の学習。これに加えての創作活動はデジタルにとってもかなりの負担であるが、タマモクロス先輩(学園のオカン)スーパークリーク先輩(どうせみんなのママになる)の差し入れなども彼女にとって非常に助かるものであった

 

 

今回、製本作業などには姉の友人であるエアシャカール先輩やキングヘイロー先輩にナイスネイチャ先輩にも協力してもらっており、彼女達には姉と兄の秘蔵写真を手渡していたりする

 

 

 

 

 

 

その様な苦労もあり、デジタルの同人誌(ウス=異本)は完成した

 

 

勿論、今回の外出の理由は兄以外には周知しており、寮長であるヒシアマゾン先輩にも事前に届け出をしている

 

内容は姉と兄の幼少期からのストーリーを軸としたものであり、ノンフィクション寄りのフィクションとなっている

姉には許可を取っており、兄については説得(泣き落とし)している為問題なかった

 

 

 

今回ここまでのメンバーを集めた理由としては、事前にトレセン学園公認同人誌と銘打って宣伝している為だったりする

 

一応、売り上げ次第では重版も考えるべきだという意見が理事会から出ているらしいが、デジタルとしては持ち込みの100冊が完売すれば良い方だと考えていた

 

 

直接購入の特典として、姉や姉の友人達の直筆サインを先輩達にお願いしており、反響はあるとデジタルは考えていた

 

 

 

実際、あるスレでこれを公表したところ

 

 

 

マジかよ

 

待てぃ、それは付加価値高すぎやろ

 

それな。現役のウマ娘手製の同人誌にトップレベルのウマ娘の直筆サインとか明らかに売れ残る要素なくね?

 

絶対に複数購入するやつが出てくるゾ

 

お兄さんは!お兄さんのサインはないのですか!!

 

内容も事実に即した内容なんだろ?絶対売れるだろ

 

売れ残らない事に花京院の魂を賭けるゾ

 

 

 

との声が上がっていた

 

 

 

 

呼子は兄であり、売り子は自分とスカーレットにウオッカ先輩とゴルシ先輩だ

 

兄にはイケボ仕様で対応する様に頼むつもりである

 

 

 

コスプレは今回しない

するとすれば、勝負服だがそれは流石に問題ありと理事会からストップがかかった為だ

 

とはいえ、現役で活躍しているウマ娘の私服。それだけでも価値があるので然程に問題となる事はないのだが

 

 

 

 

 

 

デジタルが今回の内容にしたのは、彼女なりに世間へと姉と兄の事を発信しようと思ったからだ

 

 

ゴルシ先輩やルドルフ先輩が配信などを通して世間に伝えたように

スカーレットやウオッカ先輩、タイシン先輩が全力の走りを見せる事で姉と兄のしてきた事を証明しようとしたように

選手生命を燃やし尽くして、一部の誹謗中傷から2人を守りぬこうとしたスズカ先輩、ブルボン先輩、ライス先輩のように

 

デジタルもまた何かをしたかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会場に着くと、早速ブースの設営に取り掛かる事にした

 

 

とはいえ、他のサークルのメンバーもいる訳で

 

 

 

 

 

あれ、シンボリルドルフじゃないか!

 

あっちはダイワスカーレット!?

 

うせやろ!なんでそんな有名人がまとまってサークル参加してんの?

 

あっちにはナリタタイシンとウオッカにゴールドシップゥ?!?

 

て事はあのウマ娘ってもしかして

 

アグネスタキオン、ですかねぇ

 

つまりあの男性は

 

お兄様ということですね、分かります

 

アグネスデジタルもいるぞい!

 

なんだこれ、たまげたなぁ

 

 

 

 

既に設営を終えているサークルはかなりの動揺を見せている

設営中のサークルとて同様に動揺(・・)していた

 

っく、どうよ(・・・)!

 

 

とデジタルは内心ドヤっていたが、可愛いものである

 

 

 

 

 

なお、外で列をなしている参加者達は当然だがパンフレットを読んでいるわけで

 

 

デジたんのブース?!?

 

しかも、豪華立会人とか?

 

滾る、滾るゾォっ!

 

 

 

既にオンラインにて同人活動をしているアグネスデジタルはデジたんの愛称でそれなりに知られていた

 

書くものについては、いつも

 

 

私の近しい人達をモチーフとした内容となっています。許可を取っていますが紳士淑女らしい対応をお願いします

 

と巻頭にデフォルメされたアグネスデジタルのキャラで注意書きがされている上に、購入者一人一人にメッセージが書かれていたりとその界隈での人気は高かった

 

彼等購入者は競合する相手が多い事を望んでいないことから、それを喧伝する事は一切しなかったのである

 

 

 

 

そんなデジたんの『初めての対面販売』とあっては元々のファンは勿論の事、今まで知らなかった参加者の興味を強くひいていた

 

 

さらに付け加えれば、デジタルのブースはどちらかといえば『ハズレ』と言われる空調が効きづらく、会場の奥まった場所にあった事も参加者の興味を持つ理由だった

 

つまり、有名人だからとて運営側は考慮しないということなのだから

 

 

 

 

 

 

当然だが、最近になって『トレセン学園のお父さん』と呼ばれ始めている彼がいる以上、熱中症などの対策もしっかり行なっていた

 

 

8月も終わりとはいえ、未だ『酷暑』といわれるほどの尋常ではない暑さなのだ

 

まして、共にいるのは好意を持つ者や大切に思っている者達なのだ

万どころか、億に一つにも手抜かりなど許せるはずもなかった

 

 

 

実はこの過剰とも言える対応こそが、トレセン学園に所属するウマ娘達をして『親バカ』『兄バカ』と言われている所以であったりする

 

 

同じトレーナーからは生暖かく見守られ、学園関係者からは「平常運転ヨシッ!」と何故か納得され、少なからず誰かに甘えたい心を持つウマ娘達からは羨望の視線を向けられていたりする

 

 

特にナリタタイシンの話はいつの間にかトレセン学園全体に広がっており、ジャラジャラの事も合わさって「少し意地悪だけど、私たち(ウマ娘)をしっかり見ていてくれる人」と言う評判があがっていた

 

 

 

 

独占欲の比較的高い、タキオンとルドルフにタイシンはこの状況を好ましく思っていない。一方で大好きな兄の事を知って欲しいスカーレット、デジタルにウオッカは積極的にその話を肯定していた

 

ゴールドシップは楽しそうなので、スカーレット達と一緒に動き回っていたが、たまに彼を振り回していた

 

その場合、4割ほどの確率で『物理的に』ゴールドシップが振り回される事になるのだが、それはそれで彼女からすれば楽しい事でもあったりする

 

 

 

 

 

 

というわけで、道中行き先が有明であると聞くや否や彼は動き始めた

 

 

即座に知り合いの氷屋に電話して、会場の最寄駅にアイスノンの販売所を臨時に作れないか話をしたり、明らかに成人男性でも持て余す様な大型のクーラーボックスを道中ホームセンターで購入し、そこに保冷剤と大量のスポーツドリンクを投入した

 

当たり前だが、電車で移動するのに大きな荷物を持って乗るのは他の乗客の邪魔(マナー違反)にしかならないので、急遽先の騒動で知り合ったウマ娘が所属するタクシー会社に連絡して移動手段を確保した

 

 

 

総勢8名なので、3台確保しそれに乗って会場付近の最寄駅まで向かう事にした

 

 

殆どがウマ娘なので、走れなくもなかった。その場合、彼がタキオンかルドルフに抱き抱えられる事になる為に彼はその選択肢を最初から捨てていたりするが、仕方のない事だろう

 

 

なお、その彼の考えを正確に理解していたタキオンの耳と尻尾がへにゃり(ヘンニャリタキオン)となっていたのだが、彼は見ない事にした

 

 

 

 

 

 

 

会場につくなり、タキオンの持参した手製の送風機や空冷装置をブースの近くに配置すると共に熱中症への周知のためのポスターをデジタルに即興で作ってもらい、ルドルフが配置を考えて、タイシンがそれを掲示した

 

他のブースにも関わる事なので、スカーレットとウオッカにゴールドシップが近くのブースの人達にお願いすると共に彼も運営側の人間に頼み込んだ

 

 

 

更に本来ならば、ブース内に引きこもる予定だったルドルフとタイシンを何かあった際の対応係とする事もデジタルとの話し合いで決定した

 

 

 

 

彼は東条トレーナーからルドルフの事を任されていたし、スカーレット、ウオッカ、ゴールドシップにデジタルは自身の担当チーム所属。タイシンは彼にとって唯一の専任となっている担当ウマ娘

 

タキオンは何があっても共に歩くと誓った女性(ひと)なのだ

 

 

 

 

ゴールドシップとウオッカには、販売中は定期的にドリンク補充を頼んでおり、状況によっては緊急時の搬送役も担う事とした

 

 

製薬会社と契約を結んでいるタキオンは、今回のイベント参加に伴い製薬会社から一つの依頼を受けていた

製薬会社が来年度に販売する予定の熱中症対策の飴やタブレットなどを試供品としてブースに来るお客達に無料配布して欲しいとの事であった。

 

タキオンと契約している製薬会社や研究所は規模としていえば大手ではなかった

CM(コマーシャル)を出そうにも、そこまでの資金的余裕があるなら新薬などの開発をしたいと言うのが彼等の偽らざる本音だった

 

その為に古来から存在する手法、即ち『クチコミ』を利用しようとしていたのだ

 

 

 

熱中症グッズを無料配布しながら、声をかけて手渡ししてくれるタキオン

 

これに心奪われない人がいるだろうか?

いや、いないはずだ

 

 

 

 

なお、デジタルとしては最近兄に様々な相談を持ちかけているエアグルーヴ先輩も動員したいと考えていたりした

 

 

あの、ニュアンスが少し違う「たわけ」

 

 

担当のサブトレーナーさんに向けるたわけ

兄に向けて言うたわけ

 

同じ言葉のはずなのに、含む意味がまるで異なるのだから凄いと思う

 

正直、あれは反則だとデジタルは思っている

あとライスシャワー先輩の愛らしさも

 

 

 

トレセン学園では、その愛くるしさよりもトレーニングに邁進する姿から、少しばかり距離を取られている先輩だが、ネットの海では

 

 

 

どけ!俺がお兄様だぞ!

 

いいや、ワイがお兄様だ!

 

全力でお兄様を遂行するっ!

 

私が、いえ私達がお姉様よっ!

 

私はお姉様だったの?

 

アナタも私もお姉様♪

 

 

 

などといった『お兄様、お姉様症候群』なる症状が発生している模様

 

 

 

 

因みにカルト的な人気として

 

 

 

 

メディアすら敵に回す事を躊躇わない兄貴。素敵だな

 

分かるマーン

 

そりゃ、捨て身の愛情とかねぇ

 

お兄様ぁぁっっっ!!

 

お兄様成分どこ?ここ?

 

たまに更新するSNSで飯テロするなと

 

お兄様のご飯たべたぁぁいっ!

 

それに文句言うなら、アグネスタキオンに言うべきなんだよなぁ

 

極稀にナリタタイシンもお兄様の飯テロするのは何故なの?

 

タイ兄?

そう言う概念もあるのか

 

タキ兄だろ!いい加減にしろ!

 

は?

兄タキだろうが!

 

 

とあの騒動以降、兄へのカルト的人気が上がっていて少し怖いと思います

 

やっぱりネットの海は深い(腐海)んだなぁ。と改めて思うデジタルであった

 

 

 

 

 

既に結婚までカウントダウンと言われている姉と兄

 

 

実は姉の勤めている製薬会社から幾つか新居の提案もされていると聞いているけど、周りから堀を埋められている気がしなくもないデジタルであった

 

 

ヒト息子とウマ娘の結婚自体は然程に珍しくはない

 

 

ただ、姉と兄が珍しい点は

 

ふっきれたのか

マスコミの前だろうが、なんだろうがバカップルする事を自重しなくなったこと

 

だろう

 

 

 

 

 

先にあげたカップリング論争にも多少関係あることだが、やはり姉と兄の組み合わせが一番支持者が多い

 

そりゃ(前回の衆院選のある意味話題だったんだから)そうなるのは自明であったのだが

 

 

次にタイシン先輩と兄の組み合わせだろうか

意外かも知れないが、タイシン先輩はレース後などのふとした時には兄に凄く甘える。クリークマムも呆れるほどであるからして、普段のクールさなど原型も残らなかった

 

 

 

その点でいうとルドルフ先輩と兄の仲は姉やタイシン先輩は元より、スカーレットやウオッカ先輩、ゴルシ先輩とのそれよりも世間に知られていないだろう

 

 

勿論、責任ある立場であったこともあるのだろう

 

それに兄を慮っての事でもあるとも思う

 

 

 

だが、相手は甘えたい者をしっかり甘やかすことが好きな(スーパークリーク先輩もドン引きな)兄である

 

 

寧ろ、積極的に甘えてほしい(ルナして欲しい)と思ってすらいるはず

 

 

 

 

元々、誰かに頼る事を良しとしなかった姉とスカーレットをあそこまで変えた兄だ

 

そのヤバさは既に証明されていると言っていいだろう

 

 

 

一部からは「不誠実極まる関係」と言われているが、これについて兄を非難するのは酷な話だとデジタルは思っている

 

 

 

 

 

 

 

兄は不安なのだ

 

いつ自身が不要だと言われてしまわないか

 

 

 

 

元々兄は姉の為ならば、どの様な扱いをされようともそれに拘る必要性を感じていなかったそうだ

 

それこそ、姉の為ならば死すらも肯定していたと最近になって聞いた

 

 

 

であればこその、あの献身だったのだ

 

だが、今となっては姉達と生きる事を真剣に考えている

 

 

 

 

 

ここで問題となってくるのが、不自然な程に兄の自己評価が低い事だろう

 

 

ウマ娘としてのみならず、薬学者として、トレーナーとしても確かな実力を持つ姉

 

 

ウマ娘として一つの流れの先頭を走り続け、『皇帝』と呼ばれるに至ったシンボリルドルフ先輩

 

どの様な苦境においても、決して諦めることなく栄冠を掴み取ったナリタタイシン先輩

 

更に名門であるメジロの期待を一身に背負いながらも皇帝に挑み続けて、ついに天皇賞春の盾を手に入れたマックイーン先輩など

 

 

兄が知るウマ娘は綺羅星の如き輝きを持つ者ばかりだった

 

 

 

兄はどちらかというと、目立たない場所にひっそりと咲く草であり、花壇に咲く花を引き立てる為のものである

 

 

 

 

 

 

 

とはいえ、では兄が自己評価通りに才に優れないかというとデジタルは勿論、姉や従姉妹も首を傾げるだろう

 

 

なるほど、生まれ持った才能は兄にはないのかもしれない

 

 

 

だが、デジタルや姉達は口を揃えてこう言うだろう

 

 

 

それがどうした?

 

 

 

 

 

姉が兄に惹かれたのは、その懸命に姉の為に努力する姿であって、兄の才能ではない

 

あの頃の姉にとって、自分(タキオン)の為にひたすら努力している兄は正しく救いだったのだ

 

 

私やスカーレットとてそうだ

 

姉のそばにいる才気あふれる人ではなく、姉をひたすらに守ろうとしてくれている人だからこそ、私たちは兄に憧れたのだ

 

 

 

少し抜けていて、少し頼りなくて、少しスケベ

 

でも

しっかりしようと頑張る、頼り甲斐のある様に努力して、恥ずかしそうに目を逸らす

 

そんなあの人が

 

 

私達は好きなのだ

 

 

 

 

なお、タキオンは元々白のハイソックスを着用していたのだが、彼の好みに合わせて黒のそれに変えた結果、彼が赤面した為にそれを普段着とする事にしたそうな

 

スカーレットとデジタルも姉に倣い、黒のハイソックスに変えていたりする

 

 

 

 

余談であるが、兄が黒を好む理由は

 

 

どんな色も内包出来るから

 

だそうだ

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、お姉ちゃん達戻りましたか

 

 

デジタルはブースの準備が終わった時点で姉達を着替えに行かせていた。何せ着替えの場所も時間が迫れば人が多くなる

 

姉達は有名人である以上、可能な限り無用な混乱を起こすべきではないのだから

 

 

 

しかしねぇ、デジタル。この衣装はどうかと思うのだが

 

姉が衣装を着てくれているが、それに不満な様だった

 

 

だが、タキオン。似合っているから問題ないと思うが?

 

含み笑いをしながら、ルドルフ先輩が姉を茶化す

 

というより、アイツの手縫いなんだから別にいいと思うけどね

 

タイシン先輩は似合うかどうかよりも、兄の手作りである事を強調している

 

そうよ、お姉ちゃん!似合っているのだから、気にする事ないわよ!

 

しかしだねぇ

 

スカーレットの言葉にもいまいち乗り気ではない様子

 

 

でもさ、似合ってますよタキオン先輩!

 

だよなぁ。つーか、アイツが折角タマモクロス先輩やナイスネイチャ先輩達を説得して作った衣装なんだから、今日くらい着ていてもいいんじゃねぇか?

 

うぐっ!

 

 

ウオッカは褒めるわ、ゴルシ先輩は的確に姉が気にしてる事を容赦なく突いてくる為、さしもの姉とて劣勢である様だ

 

 

そういえば、彼の衣装はフジキセキの勝負服を参考にしているらしいな

 

ん、チケットとハヤヒデからそう聞いてる。最初はフジキセキの衣装を借りれば良いんじゃないか?って意見も出てたらしいけど

 

 

 

 

事実である

 

 

衣装合わせをする際に仮縫いするのも大変だった為、上着だけでも羽織るべきではないか?との意見が出ていた

 

サイズ的にはそこまでの誤差はなかった為に(いうまでもないが、胸部については相当の誤差が出ている)上着をそのまま試着するべきだと当のフジキセキは言っていたが、風紀的な指導がバンブーメモリーとサクラバクシンオーより入った為に断念した形だ

 

 

しかし、彼のいつもと違った姿がどうしても見たかった一部のウマ娘達は様々なルートから彼に似合うであろう衣装(明らかに自分達の趣味)を探し出す事にしたのである

 

げに恐ろしきは人の欲望。という事なのだろう

 

 

 

結局、国会議員になっていたクガヤシ氏の後輩であるミスターシービーとフジキセキの衣装の合いの子という案が出され、決定した

 

ちなみに当事者である彼は

 

 

いやいや、イケメン枠のフジキセキとミスターシービーさんの服が似合うわけないだろう?

OK、少し冷静に話し合おう、レディ?

 

 

と普段のキャラクターを投げ捨ててまで彼女達を説得しようとしていたりする

 

 

言うまでもなく、失敗した訳だが

 

 

 

 

 

 

 

元々彼への信用は高い

 

が、彼女達からすればお洒落などに時間を割かない彼に対してはそれなりに思うところがあるわけで

 

そんなところに、彼の衣装決めなどという餌を与えたなら、こうなるのは寧ろ道理であった

 

 

 

特に物臭同士であったタキオンからすれば、自分は服装などにも気をつかう様になったというのに、恋人である彼はいつも通りの格好というのは納得できかねる話であった訳で

 

 

一応、礼服やタキオンから贈られた執事服は持っていたが、それ以外だとワイシャツとジャケットにスラックスというビジネスマン必須の格好であった

 

今更言うまでもないが、彼は高校生の年齢であり、まがりなりにもトレセン学園所属のサブトレーナーである

事情があって、トレーナーとして名乗ることは難しい故の措置ではあるのだが

 

 

そんな人物が着たきり雀では風聞的にも宜しくないし、幾ら替えを用意しているとはいえ、それでは困る

 

それが彼のそばにいるウマ娘達の総意であったからこその今回の行動であったりするのだから、どうしようもない

 

 

 

なお、事情を前生徒会長(シンボリルドルフ)から聞いた秋川理事長は苦笑混じりに

 

 

許可っ!

彼にもう少しファッションというものを教えてもらいたいっ!!

 

 

といったとか何とか

 

 

 

 

 

 

 

因みにタキオンやルドルフは彼の衣装の意匠(・・)についてかなり問題視しているのとは逆にタイシン、スカーレット、ウオッカ、デジタルは彼のしたい様にさせて良いと思っていたりする

 

 

というのも、彼がプライベートで着ている服はかなりダボダボな物が多く、地元では有名な『二人羽織』が容易に出来るサイズだったりする

 

 

であるからこそ、小柄なタイシンやデジタルは彼の膝上でそれを楽しむことが出来るのである

 

スカーレットとウオッカは多少問題意識はあれど、それは兄の自由で良いと思っている為に口を出すつもりはなかった

 

 

余談ではあるが、タキオンも『二人羽織』をしっかりと楽しんでいるのだが、彼女が今回の件で衣装決めに参加しているのは(ひとえ)

 

 

 

彼を私色に染めたい(超曲解的意見)

 

という理由に他ならなかったりするのはここだけの秘密

 

 

 

 

 

 

 

 

 

様々な思惑をはらみながらもいよいよイベント開始となる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




という訳で、イベントはダイジェストで次回お送りします


ご一読ありがとうございました


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 タキオンと彼の本気

難産でしたが、とりあえず書けたので投稿する


時系列的にはタキオン達がトレセン学園に来て2年目の5月くらいです



よろしければ、どうぞ


 エアグルーヴは戦慄していた

 

 

昨年1年間彼女たちと付き合いがあったにも関わらず、まるで初めて会ったあの日の様な錯覚すら覚えるほどに

 

 

 

 

 

うーりうりうり

 

やめたまえよ、グルーヴやブライアンにルドルフも見ているだろう?

 

 

目の前のアグネスタキオンは奴の座っている足の間に収まり、あろう事か奴に背中を預けている

奴は奴でそんなタキオンを目を細めながら、ひたすら頭を撫で回しているのだ

 

 

この生徒会室で、だ

 

 

 

 

しかも、である

 

言葉でこそアグネスタキオン(にくいあんちくしょう)は拒否している様に見えて、耳や尻尾はご機嫌そうに動いているのだ

 

 

 

 

おい、待て

 

とエアグルーヴならずとも言いたくもなろう

 

 

 

 

 

去年1年間は本当に面倒ごとばかりが多かった

 

奴やタキオンにも原因があるとは言え、どちらかと言えば2人は被害を受けた側だろうといえる

 

 

特に学校に満足に通えなくなった奴については同情する他ない

 

それに加えて、遂に奴が暮らしていたマンションからの引っ越しを余儀なくされたのだ

 

 

 

どうやら、元議員のコネで住居を得ていた事がマンション住人や一部の者たちから問題視されたそうだ

 

だが、そうなれば奴は何処で暮らせば良いというのか?

 

 

真っ先に秋川理事長や理事会が手を差し伸べようとしたが、それはそれで彼等は非難する始末

 

 

では、役所を頼るのか?と言われても世間は納得しようとしなかった

 

 

どうやら、奴は両親の所へと戻るべきだと世間の『良識派』とやらは言いたかったらしい

 

 

 

 

 

しかしである

 

 

タキオンがトレセン学園に来た理由はタキオンが望んだ事以上に学園側が望んだ事だったのだ

 

だからこそ、タキオンと奴の生活環境を整える必要があり、トレセン学園が用意した場合は公平性、つまりトレセン学園に常に優位となるという事で元議員が動いたというだけの話

 

 

これはタキオンがトレセン学園に入学する条件として、理事会が書面にて記していた

 

 

アグネスタキオンとその幼馴染の生活環境などをトレセン学園は関係各位と連携し、それを用意する

 

 

 

 

 

 

当然だが、この契約をトレセン学園側つまり理事会は重く見ており、それだからこそ奴とタキオンのマンションが暴露された時には常ならぬ速さでマスコミなどに対応したのである

 

 

昨年末の選挙において、総理率いる新党が圧倒的な勝利を飾り、単独で政権与党となった事も恐らくは影響しているのだろう

 

 

つまりは、一般市民でしかない奴を特別扱いした事を強調する事で現政権にダメージを与えようとしているのだ

元議員は総理の率いていた超党派に参加していたメンバーであったからだろう

 

 

 

 

実際、これは国会でも議論されニュースなどにも取り上げられた程だった

 

 

だが、その間奴は文字通り『針の筵』の様な生活だったと聞く

 

 

 

 

 

紆余曲折したが、トレセン学園内のタキオンの部屋に奴を置くべきではないか?との意見や新規に物件を借り上げるべきではないか?

 

などの意見がトレセン学園側では飛び交ったらしい

 

 

 

 

マックイーンの実家であるメジロ家からは、奴を一時的に引き取るか或いはメジロ家の人間として迎えるという意見や元議員の養子にする。と言った話すら出てきた

 

意外なところでは桐生院トレーナーの実家である桐生院家が分家の養子としたいと申し出てきたり、タキオンと既に契約している製薬会社から住宅を用意する。と言った話すら出てしまう

 

 

 

 

メジロからすれば、次期当主の最有力であるマックイーンに近しい上にマックイーンの友人であるアグネスタキオンの伴侶ともなれば、その重要性を疑う理由などなかった

それに加えて、マックイーンの後に続くであろうゴールドシップとも親密な関係である事もまた彼の価値を上げる事につながっていた

 

メジロ家は歴史ある家であるが故に、それ相応の立ち振る舞いを要求されてしまう

勿論、ゴールドシップとてできない訳では決してないが、好んで枠に収まろうという気はさらさらなかった

 

そうなってしまうとマックイーンやライアン、ドーベルにパーマーやアルダンや当主など彼女に近しい者はゴールドシップのあり様に理解を示すだろうが、彼女から遠いメジロ関係者は不快感を示すだろう事は容易に想像できてしまう

 

そういったしがらみはゴールドシップにとって好ましくないものであり、その結果として更に突拍子もない行動が増える可能性はある

 

それでは、ゴールドシップと彼女の風聞しか知らぬ者の間の溝が埋まる事は決してない

仮にマックイーンや当主達がゴールドシップを弁護しようものなら、彼等はそれにも不快感を持つだろう

 

だが、長年アグネスタキオンを支えてきた上にマスコミすら相手取ったいう確かな実績を持つ彼が間に入れば両者の溝が埋まる可能性もある

 

勿論、マックイーンやゴールドシップの親しい人物である事も確かだがそう言った意味でも彼をメジロに迎えるのはメリットがあるといえる

 

 

付け加えれば、メジロの一員となる事により彼はアグネスタキオンやダイワスカーレット、アグネスデジタルやナリタタイシンなどの担当ウマ娘に対しても様々なサポートが出来る

彼にとっても悪い話ではないはずだ。という理屈だった

 

 

 

 

元議員の申し入れは何のことはない

 

彼自身が負い目を感じていたからである

自分が辞職に追い込まれていなければ、彼はもっと安定した生活を送れていただろうし、メディアと対立する事もなかったと思っているのだから

 

養子とすれば、義理の息子の住まいを用意する事に何の不都合もない

 

 

 

桐生院は本格的にウマ娘達のレースが始まった年に当代のウマ娘であるハッピーミークとそのトレーナーである葵をトレセン学園に送り込んだ。

目的は2つ

 

トレセン学園、ひいては大規模に開催されるウマ娘のレースにおいて桐生院の存在を知らしめる事

 

それと、有望なトレーナーやウマ娘の卵を探し出す事であった

 

 

ハッピーミークも葵も決して凡百の才を持つ者ではない

ミークは全距離に適性を持ち、追い込み以外の差し、先行、逃げに対応する事の出来る桐生院の歴史の中でも傑出したウマ娘だ

 

葵もまた、私人としてはどうあれ、ウマ娘を育成するトレーナーとしての実力は非常に高いと桐生院も判断していた

 

 

しかしながら、桐生院の知識や経験を生かして育て、葵が完成させたはずのミークであったにも関わらず、ナリタタイシンに敗北したのだのである

 

惜敗などというものではなく、2着であったミークに大差をつけての圧倒的なナリタタイシンの勝利だった

 

 

 

この敗北の時までは桐生院本家はそこまで2人の事を問題視していなかったが、流石に大差、厳密に計算すると12バ身もの差をつけられた上での敗北ともなれば本家とて慌てる他ない

 

 

そして、ナリタタイシンの臨時トレーナーをしていたのが、かの『シンデレラの王子様』と知った者達は驚きを隠せなかった

 

彼等からするとアグネスタキオンのおまけ程度であった彼にトレーナーとしての価値が出てきたからである

 

 

別に葵やミークが報告していなかった訳ではなかったが、とりわけ重大な報告とはしていなかった。それ故に彼ら本家達の驚き様な尋常ならざるものとなったのだ。なまじ桐生院はウマ娘というものに長く関わっていた為に子供1人がそこまで影響を与えるなど想像の範疇ではなかったから

 

 

これにより、桐生院は彼を自派閥に取り込もうと躍起になることとなったのだが、同じくウマ娘の育成の大家である他の名家やメジロにトレセン学園の出資者の一つである秋川家などの動きもあり、自重しなければならなかった

 

 

ところが、彼が世間から非難される様な風向きになると各団体はその対応に追われる事になった

 

これを見た桐生院の一部は、この状況を好機と考え動き始めた

 

 

彼の情報をそれとなく、マスコミ各社にリークしたのだ

これにより彼に対する風当たりが更に強くなる事をその者達は期待したのである

 

 

 

 

当然だが、葵もミークもそんな事は一切知らない

 

 

 

 

 

混乱を助長しながら、その一方で彼に救いの手を差し伸べることとしたのである

 

全ては桐生院の繁栄の為に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな状況であっても、タキオンは奴に対する態度を変えなかった

 

 

いや

 

 

 

家がないだって?!良いだろう。すぐにヒシアマゾンとフジキセキに確認を取って、私の部屋に来たまえ。ああ、気にする事はないさ。もしも却下されたならばキミの立場を使ってトレーナー寮の一室でも使わせて貰えば良いからねぇ

 

 

と何処かウキウキした様にタキオンは奴に言い放った

 

 

私がそれはまずくないか?と問うと

 

 

今更だろう。彼と私は昨年の秋頃までは共に生活していたのだからね。トレーナー寮とて単身用とファミリー用の二種類が整備されているとも聞く。問題になるとは思えないさ

 

 

しかしだな、タキオン

お前のいう事も分かるが、奴は良いとしてもお前は学生だろう?

あの、その、だな

 

 

タキオンの発言に疑問を挟むブライアンだったが、最後はブライアンらしくなく弱々しい口調だった。無理もないだろうとは私や会長も思ったが

 

 

ふぅん?ああ、そういう事かな?

別に彼とうまぴょいやすきだっち、うまだっちするわけでもないから、その懸念は無用さ

 

 

別に君やあの人の理性を疑う訳ではない。しかし、問題となりそうな行為は慎むべきだと思うのだが

 

 

会長が言いにくそうに指摘する

そもそもの話、こう言った話をする場合はタキオン(彼氏持ち)を相手にするには私やブライアン(彼氏を持たぬ者)では分が悪いどころの話ではないのだが

 

ここは私達の中で唯一告白経験まである会長に説得してもらう他ないだろうと判断せざるを得なかった

 

 

しかし

 

 

 

ふむ。ルドルフ、君がそう言うのかな?

 

 

会長の発言をうけてなお、タキオンは余裕を隠そうとしない

 

 

おっと

 

タキオンの懐から、テープレコーダー?の様なものが落ちた

 

 

 

そして

 

 

 

彼女のいる貴方にこの様な事を言うのは間違っている事は重々承知している

 

しかし、私は貴方との触れ合いが何よりも尊いものであると最近思えてきたのさ。だから、私と

 

 

ガチっ!!

 

 

突然の事に身動きが取れなかった私とブライアンを他所に会長はテープを止める

 

ああ!なにをするんだい、ルドルフ?!

 

それは私のセリフだ!いつの間にこんなものを取ったというんだ、君はっ!!

 

 

抗議の声を上げるタキオンに真っ赤な顔をして反論する会長

 

心配しなくても、私や彼ではないよ

 

 

いや、心配しなくて済む要素がどこにもないと思うのだが

 

 

これはカフェの仕事さ。やはり彼女も良い仕事をするものさ

 

 

私達の視線を受けて、タキオンは疑問を解消した

 

 

あ、やっぱりか

相変わらず、カフェのお友達は優秀すぎるなぁ

 

 

今まで椅子と化していた奴が言葉を挟む

 

 

 

そういえば、貴様居たのだったな

 

 

 

酷くね、グルーヴ?

そんな事をいうなら、ハナさんの所のサブトレーナーに泣きつくぞ、俺は

 

 

ほう、それは中々面白い事になりそうだな

 

ふぅむ、それはそれで良いデータが取れそうだねぇ?

 

どういうことだろうか?

 

 

私の言葉に奴が痛いところを突いてくる

それにブライアンを始め、皆が興味を持ってくる

 

 

ええぃ、奴め余計なことをっ!!

 

 

 

この前、ハナ先輩から相談を受けてね?

何でもグルーヴが特定のサブトレーナーにだけ当たりが強いらしいのさ

 

 

ま、グルーヴだから期待の裏返しだと思うけどね

 

 

 

したり顔で奴は話す

 

 

 

 

 

元々エアグルーヴは自身にも他者にもそれ相応の立ち振る舞いを求める。別に悪いことじゃない

実際、皇帝なんて呼ばれているルドルフや女帝なんて呼ばれているグルーヴは本人だけでなく、ルドルフのトレーナーであるハナ先輩やグルーヴの担当しているトレーナーにもそれ相応のモノを求めて然るべきなんだよ

 

ただ、沖野さんや桐生院さんみたいにトレーナーのしての力量は確かなんだけども日常生活においては個性的な(抜けているところのある)トレーナーも多い傾向にあるのも事実

 

仕方のないこととも言えなくもないけどな

担当ウマ娘の生活環境から本人の気質まで把握した上で、的確なトレーニングやサポートをしなければならないのがトレーナー

更に慢性的なトレーナー不足により、今年からトレーナー職に就いたものでも一定の基準を満たせばチームを持たなければならないからな

 

 

 

 

奴の言う通り、今年から始まったウマ娘達によるレースの拡大は我々ウマ娘の活躍の場を増やす事に繋がった

だが、それと同時にウマ娘を指導する立場であるトレーナーの需要も爆発的に増加する事となってしまったのも事実だろう

 

しかも、担当するウマ娘は難しい年頃の娘ばかり

奴の様に幼い頃からウマ娘という存在に慣れているならいざ知らず、画面越しや知識でしかウマ娘を知らないトレーナー志望の者も多いと聞く。当然だが、トレーナー『学園』と言う以上、そこでのトレーナーや候補生とウマ娘の問題があってはならないとの建前がある

 

そこで、半年から一年かけてトレーナー志望の者達は様々な知識を身に付けさせる制度を設けている

どうしても、人生経験などの理由から指導する側であるトレーナーのほうが抑止力とならなければならないケースが増えるだろうからな

 

レースに勝利すれば、それなりの賞金や名誉が手に入る以上、それ目当てのトレーナー志望者が現れないとも限らない

 

 

こう言った事情から、トレーナーを安易に増やすわけにはいかず、それはそのままトレーナー数の不足となってしまう

 

だからこそ、基準を設けてトレーナーによるチーム編成を推奨しているのだ

 

 

 

 

 

それはそうとして、だ

おい、お前

いつまでそうしているつもりだ?

そこのルドルフが羨ましそうにしているのだが?

 

 

待つんだ、ブライアン。別に羨ましがってなど

 

残念だが、ブライアン。それは認められないよ。私も彼との最近触れ合いが足りてないからねぇ

 

ブライアンの発言に動揺を隠せない会長に奴のそば(彼氏いないグルーヴの精一杯の表現)から離れようとしない

それどころか、奴の手を自身の身体の前で組ませようとする始末である

 

 

 

奴も奴でタキオンの頭の上に顎を乗せて、タキオンをしっかり抱きしめる始末である

 

 

 

 

 

だから、それを止めろと言っている!

 

 

 

思わず、私は血を吐かんばかりの声をあげそうになった

 

 

そういえば

『あの』計画性の化身ともいえるエイシンフラッシュが奴とタキオンの所に来たと噂で聞いた事がある

 

 

なんでも、フラッシュの担当トレーナーとそれなりに上手くいっているそうだが、フラッシュとしてはもう少し踏み込んでいきたいと思っているらしい。そこで、『トレセン学園一のバカップル』と言われている2人に助言を求めたそうだ

 

 

だが、相手は草食系に見えて肉食系のタキオンとウマ娘と比べても遜色ないどころか、下手をすると上回りかねないほどに愛が重い奴だ

 

 

 

エイシンフラッシュは2人にアドバイスを受けて、満足そうに部屋を後にしたとスズカから聞いた

 

 

 

その後、フラッシュは担当トレーナーと将来婚約する事を誓い合ったと聞いているが、どうにも腑に落ちん

 

 

 

 

 

 

それはそうとして、だ

 

現在、私とブライアンがソファーに座っており、対面のソファーに会長と奴にタキオンが座っている状態だ

 

 

何?おかしいだと

 

心配するな。私とてそう思っているからな

 

 

 

 

 

かいちょー、いる?

 

 

 

また面倒なのが来たな

 

 

私は内心で頭を抱える事になった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぼくの名前はトウカイテイオー

 

 

会長に憧れてトレセン学園に入学したんだ

 

地元では結構強いと思っていたんだけど、此処にはもっと凄い強い人達がいる事を知った

 

 

会長こと『皇帝』シンボリルドルフ先輩

副会長の『シャドーロールの怪物』ことナリタブライアン先輩

書記の『女帝』エアグルーヴ先輩

 

他にも『芦毛の怪物』ことオグリキャップ先輩に『白き稲妻』ことタマモクロス先輩など沢山いる

 

先輩達の一部は今年の一月から既にレースに出走していて、確たる結果を出しているからね

 

 

 

でも、ぼくが何よりも驚いたのは同級生のダイワスカーレット

 

彼女は脚付きが良いと思ったから、一度真剣勝負したんだけど、六バ身も離されて負けたんだ!

 

ショックだった

無敵のテイオーで名が知られていたのに、あっさり負けるなんて!

 

 

 

しかもだよ!!

 

 

おい、スカーレット。スタート失敗してんじゃねぇか。兄貴にまた指導されるぞ?

 

ま、仕方ないよな。それでも先頭を譲らなかったのは流石だけどよ

 

 

とレースを見守っていた2人が言ってきたんだ!

 

 

つまり、ぼくはスタートに失敗したダイワスカーレットに負けたって事?

 

 

 

それは流石に納得できなかったから、もう一回勝負を挑もうとしたんだけど

 

 

ごめんなさい。トレーニングしてくれている人達からはあまり走らない様に言われているの

 

 

と断られてしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

だから、かいちょーに話をしに来たんだけども

 

 

 

 

ふむ?確か彼女は

 

トウカイテイオーだったな。スカーレット達から聞いている

 

 

 

誰?この2人

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後にシンボリルドルフは語る

 

 

別に彼女が悪いわけではないのは理解している。だが、しかし何故あのタイミングでよりにもよってテイオーが来たのだろうか。私は何か悪い事をしたのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トウカイテイオーは悪くいうと、少し生意気なウマ娘である

 

 

だが、それは自分を周りに認めて欲しいという自己肯定からのものでもあった

 

 

ぼくは凄いから、見て欲しい。褒めて欲しい

という切なる叫びなのだ

 

 

 

 

そして、そんなウマ娘を放っておけない人物がこの場にいたのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つまり

 

 

 

 

なるほどな

つまり、トウカイテイオーはスカーレットに負けたのが納得できないのではなくて、スカーレットとの力の差を正確に理解したかった、という訳やね

 

 

うん!そう

負けて悔しいのもあるけど、ダイワスカーレットが本来の実力を発揮できていないのに負けたってだけじゃ、意味がないと思うんだ

 

 

しかし、スカーレットがスタートに失敗したのか。となればいよいよアレを使うべきかも知れないね

 

 

セヤナァ

 

 

 

 

 

 

 

因みにメタ的な言い方をすればスカーレットの能力は

 

速さD スタミナD パワーE 根性C 賢さC

 

であり、デビュー前のテイオーと比べてかなり高いステータスとなっている

 

 

更に『直線加速』『集中力』などを有しており、元も子もない言い方になるが、負ける方がおかしい差があったのだ

 

 

しかし、タキオンと兄である彼にとって看過できない問題があったが、此処では問題とならなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけで、だ

 

 

 

 

へぇ、じゃあタキオン先輩とお兄さんがダイワスカーレットのトレーナーなの?

 

や、原則一年目はデビュー出来ないきまりだからね、テイオー

 

そうだねぇ。とはいえ、私とキミがスカーレットのトレーナーになる事はほぼ確定だろう?

 

否定はせんがなぁ

 

 

 

 

何というか、タキオンにせよ、奴にせよ少しは周りを見ろと言いたくなる

 

会長がションボリルドルフとなっているというのに、ええい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところで、タキオン先輩とお兄さんって付き合ってるの?

 

 

何故今それを聞くのだ、トウカイテイオー!!

 

 

テイオーの質問に思わず罵声を浴びせたくなったぞ、私は

というか、見ればわかるだろう!?

 

 

恋人でも無いものがどうして二人羽織などするというのだ!

出来るわけないだろう?!そんなふしだらな事が

 

 

 

そりゃ、ねぇ?

愛してるよタキオンを

 

キミから愛という言葉を引き出すのに、凄く時間がかかった気がするよ。まったく

 

 

テイオーの質問に奴は笑顔で答える。タキオンも凄く嬉しそうだった

 

 

 

不思議なものだな

奴からはタキオンの顔が見えないし、タキオンからも奴の顔が見えるはずもないのだが、それでも何の問題がない様に見える

 

以心伝心とでもいうのだろうか

 

 

 

 

ふーん

でも、かいちょーもお兄さんの事が好きみたいだけど?

 

 

テイオー!!

お前は何をいいだすのだ!!!

 

 

ブライアンも顔を顰めているし、会長に至ってはションボリルドルフだというのに、顔が真っ赤だぞ!

 

 

 

 

 

それは嬉しい限りだが、俺が一生涯をかけて幸せに出来る人数などたかが知れていると思っている

タキオンを第一に考えたいし、スカーレットやデジタルにウオッカも可能な限り幸せな人生を送ってもらいたいと思うし、そのための手伝いをしたい

そんな奴がルドルフの真剣な思いに応えられると思うか?テイオー

 

 

 

 

・・・・・・まあ、奴なりに会長からの告白を真剣に受け止めているという事なのだろう

 

やれやれ、奴くらい真摯に向き合う事が出来るのであれば、学園生徒とトレーナー間の恋愛とて認めさせれるだろうに

 

 

 

 

 

でもさ、好きっていうのは止められないものだってどこかに書いてあったよ

それに先輩とかいちょーだけの問題じゃなくて、タキオン先輩も関わる事でしょ?

 

 

 

ほぅ

テイオー。中々言うな

 

私は内心で感心していた

 

 

 

 

 

そも、間違われそうになるが、トウカイテイオーというウマ娘は決して勢いだけの人物ではない

 

文武両道を是とするシンボリルドルフに憧れているのだ。唯、レースに強いだけで皇帝に届くとは彼女とて思っていない

 

 

 

私は別に構わないと思っているよ

 

 

解せぬ

 

 

タキオンの発言を受けて、奴は不本意そうな顔をする

 

 

そもそも、幼い頃の私ならともかくとして、今の私がキミにそこまでの負担をかけると思っているのかい?スカーレットもデジタルもウオッカもだよ

 

 

タキオンは奴の言葉を否定する

 

 

 

しかし

 

 

 

 

実験室の掃除

 

うっ!

 

寮の自室の整理整頓

 

ぐっ!

 

好きあらばサプリメント生活

 

くぬっ!

 

 

 

 

おい

 

 

奴の呟きにタキオンは冷や汗を出し始めたぞ

 

 

 

 

アグネスタキオンは去年の秋頃に彼と住んでいたマンションからトレセン学園の学生寮へとその住まいを移すこととなった

 

 

 

それに伴い、タキオンが同室となったマンハッタンカフェが言うには

 

 

 

これで良く、あの人は生活できていましたね

 

との事

 

 

タキオンは

 

いやいやいや、違うんだ!いいかい、彼がいる以上は掃除や片付けが苦手な私がそれをするよりも、それを得手とする彼がしてくれた方が効率が良い。その時間を私は研究などの時間に充てる。彼は私の役に立って嬉しい。どうだい!一挙両得というやつではないだろうか

 

と言っていたが

 

 

 

そうですか

しかし、タキオンさん。貴女は良いのですか?

 

な、何がだい?

 

 

 

 

女子力というか、女としてそれはどうかと

 

 

 

ぐはぁっ!!

 

 

 

カフェの無慈悲ともいえる指摘にさしものタキオンも胸を抑えて倒れこんだらしいな

 

 

どうやら、少しは気にしていたみたいだが

 

 

 

 

 

 

 

タキオンは彼に諸事(家の事)をさせていた為に彼女自身の家庭科的なスキルは壊滅的ともいえる有様だった

 

 

彼が3食作らなければ、タキオンはむくれる

 

たまに喧嘩した時などは、自分の研究室に閉じこもり食事はサプリメントになってしまう

 

 

 

 

なお、彼の作る弁当には必ずタキオンの嫌いなブロッコリーやセロリを使った品が一つ入っている

 

タキオンは涙目になりながらも、それを食す事にしていた

正確には食べなければならなかった

 

 

 

でなければ、彼が怒る

 

 

 

別に怒声を上げるわけでも、罵声を浴びせるわけでもない

 

 

ただ

 

 

 

・・・・・・

 

弁当箱に残る物を見て、無言でタキオンを見つめてくるのだ

しかも、目の光を消して(ハイライトオフ)

 

 

 

一度だけ、オグリキャップに食べてもらった事がある

 

 

 

しかし、即バレた

 

 

何せ、オグリキャップのそばにはオカン(タマモクロス)がいる

更にオグリキャップも素直な性格の為にお礼を言ってくるのだ

 

 

例えバレなかったとしても、タキオンの良心が保たない

 

 

 

 

 

 

ちなみにそれから毎日オムレツの中にブロッコリーかセロリのペーストを入れていたので、彼は余程怒っていた様だった

 

 

それも辛かったが、タキオンとしては彼がいつもの様に抱きしめてくれなかったり、膝枕してくれなかった方が辛かったりする

 

 

 

 

 

一応、タキオンも料理の練習をしている

 

 

タマモクロス曰く

 

 

なんでタキオンは薬の調合が出来るのに、料理はからきしなんや!?

 

との事

 

 

タキオンにもわからない

 

 

 

適量は分からないにせよ、タキオンの作るものは何故か高確率で炭化物(カーボン)となってしまう

 

これはもう、マスターカーボンを名乗るほかないのではないか?と皆が真剣に議論した事もあったほどだった

 

 

 

なお、彼曰く

 

 

いや、マスターカーボンはしゃもじ投げの腕も一流じゃないとダメだからな

 

 

との事でタキオンのマスターカーボン命名は避けられた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

余談はともかくとして、タキオンとしても女性として彼の伴侶として多少なりとも料理が出来る様に努力していくつもりだった。それと片付けが出来る様にしていこうと固く誓ったとかなんとか

 

どこぞの歌姫の様な『汚部屋』と言われるのはうら若き乙女として我慢ならないからである

 

 

 

 

この努力が漸く一年後実り、人並みにアグネスタキオンは片付けが出来る様になったのは少しだけ未来の話である

 

勿論、それにはオカン(タマモクロス)常識人(ナイスネイチャ)などの涙ぐましい奮励努力があったのは言うまでもないのだが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

余談ではあるが、タキオンが研究室を片付けてから彼を出迎えた際、アグネスタキオンという少女にしては珍しく、胸を張っていた(ドヤ顔だった)らしい

 

 

彼はその後、ナリタタイシンとのトレーニング終了後

 

 

 

 

 

タ”イ”シ”ン”ン”ッ”!

 

え?どうしたのさ

 

俺のタキオンが、タキオンが

一人でお片づけ出来る様になったんだよぉぉぉぉっ!

 

 

あ、そう

 

 

と彼が滅多に見せない涙目で小柄であるタイシンに抱きついていたりする

 

勿論、タイシンはそっけなかったが、尻尾は全力稼働し、耳は他者よりも彼の滅多に見れない弱気な言葉を聞き逃すまいとそちらのみに集中。顔は真っ赤であった

 

 

 

 

 

 

勿論、トレーニングが終わってからと言うことは周りの目もあるわけで

 

 

 

 

あれ?顧問

なにあの顧問可愛いんだけど

 

彼タイ。なるほどね

 

尊みの波動を感じて駆けつけてみれば、なんと言う事でしょうっっ!・・・・・・はぁ、尊いですなぁ

 

 

 

とまぁ、公開処刑の様相をていしていたが、タイシンからすれば逃すべきでないBIG Chanceであった為にそれどころではなかった

 

 

 

 

 

 

なお、後日この現場を撮影していたあるウマ娘の存在を知ったタイシンは

 

 

別にアンタが何を撮ろうと構わない。けど、それを当事者であるアタシに渡すくらいは期待してもいいはずだけど?

 

 

と穏便に交渉した結果、そのデータを獲得したとかなんとか

 

 

 

 

 

 

余談ではあるが、暫くの間

 

 

アンタ、この前トレーニングしてる他のウマ娘達の前でアタシに抱きついていたんだから、色々聞いてくれてもいいと思うんだけど?

 

 

と彼を振り回したとされる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼氏による大攻勢の結果、タキオンの乙女心は大破する事となってしまう

 

 

 

 

なお、流れる様ないっそ無慈悲とすら言える口撃(攻撃)に一年程の付き合いがある会長やブライアン。かくいつ私も少しばかり引いていた

 

 

でも、得意なんだから良いんじゃないの?

 

 

では、テイオー

テイオーがもしも好きな人が出来た時に、料理も出来ない。片付けも出来ない。更に手伝いもしない人だったとして、それを受け入れるかい?

 

 

うーん?

それは確かにそうかも

 

 

蹲るタキオンを他所に奴はテイオーと普通に話をしている

 

 

 

おい、貴様

タキオンの事をあ、あい、愛しているのではなかったのか?

 

 

 

 

ん?勿論

だけどね?

最近思ったのさ、タキオンを甘やかしては彼女の為にもならない

時にはタキオンに嫌われる覚悟できつい事をしなければならないんだ、とね

 

 

 

いや、その精神は立派だとは思う。しかし、泣きそうになっていなくはないか?

 

 

な” っ” て” ま” せ” ん” っ”!!

 

 

 

明らかに泣いているというのに、奴は頑なに認めない

 

 

 

しかし、私の気のせいだろうか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《b》会長が少しウキウキしている気がするのだが《b》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここから暫くは生徒会役員による高度な視線での会話をお楽しみ下さい

 

 

 

 

 

(おい、グルーヴ。どうにかしろ)

 

(無茶を言うな。明らかに会長はかかっているぞ

私だけでどうにかなるものか)

 

 

おおっと、ゴール前の彼が涙目になっているのを確認したシンボリルドルフ!

これは速い!前方にいたトウカイテイオーをあっさりかわしたぁ!

 

先頭を行くのはアグネスタキオン!

しかし、様子がおかしいぞ?

 

 

シンボリルドルフ、スピードが衰えないっ!

これはかかっているのかぁ!

 

 

前方のエアグルーヴは決死のブロックに入るぅ!

エアグルーヴのやや前方のナリタブライアンは必死に逃げる!

 

 

 

エアグルーヴ!ダメだ、暴走する皇帝は女帝であっても止められないのかぁっ!!

 

 

 

 

 

(私では無理だ。ブライアン貴様も手伝え!)

 

(なんで私が

こういうのはお前や姉貴の領分だろうに)

 

 

 

 

残るはナリタブライアンとアグネスタキオン!!

 

 

さぁ、皇帝は怪物を射程距離に捉えたぞ、どうするナリタブライアン!!

 

 

 

 

(ちっ、柄でもないというのに)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おい、アンタいい加減にしろ

それとお前もそろそろ帰ってこい

 

 

 

ナリタブライアンはルドルフの頭をはたいた

 

・・・・・・はっ!すまない、思わず我を忘れていたよ

 

 

やれやれ、彼の泣き顔だけで暴走するとは困ったものだねぇ

 

 

 

な、泣いてねぇし?

 

 

 

 

 

 

と言いながら、タキオンの胸にダイブする奴とそれを満足そうに受け止めるタキオンを見て、私たちはどうしようもなく敗北感を味わうこととなった

 

 

 

 

 

 

 

なお、後日

 

二人の妹(苦情担当)にいったところ

 

 

え?エアグルーヴ先輩。言いにくいんですけど、それだけ(・・・・)ですよね?慣れてくださいよ

 

 

 

と残念そうなものを見るような目で言われた

 

 

 

どうにも2人はまだ自重していたらしい事をそこで初めて私は知る事になる

 

 

 

曰く

 

マウス・トゥ・マウス(粘膜的接触)も一緒にお風呂も一緒にお昼寝も見てない様では2人の仲の良さを見たとは言わない

 

 

らしいとの事だそうだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はどうやらあの2人(バカップル)の事をまだ理解していないという事に改めてため息をついた

 

 

 

 

余談ではあるが、奴の起居する場所については2つの寮の寮長であるフジキセキとヒシアマゾンをどうやって説得したのかは知らないが、一時的にタキオンの部屋に住むこととなったそうだ

 

 

 

これにより、同室であるマンハッタンカフェのただでさえ多かったコーヒーの消費量が倍程に膨れ上がったらしいが、因果関係は不明であった(大本営発表)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




というわけで、そろそろバカップルする事を自重しなくなった2人と苦労人ポジとなったエアグルーヴのお話でした


会長?
快調に彼へとアピールしてますね



ではご一読ありがとうございました


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  反撃

 デジタルの話の少しだけ前の話


あるカフェテリアにて

 

 

今日はありがとうございます

 

黒髪の記者は目の前の2人に頭を下げた

 

 

 

別に構やしないけどなぁ

 

あの2人の事、かぁ

 

 

記者の女性は歯切れの悪そうな2人を見て

 

 

言いにくい、ですか

 

と聞くと

 

 

別にそうじゃないけど、アンタ達記者ってのがどうにも好きになれなくてな

 

そうよねぇ。言い方悪いけど、私達の中では台所のGより扱い悪いわよ。貴女達報道関係の人は

 

 

 

そう、ですね

 

 

記者の女性、乙名史は暗い顔をした

 

 

彼等からすれば、自分たち報道に携わる者達は同級生の生活を破壊した者の同類にしか見えないだろう

 

既にあの事件からかなりの時間が経ったとはいえ、彼等からすれば風化する事なくしこりとして残っているのだ

 

 

 

ま、いつまでも言ったところで仕方ないのは間違いない。それは俺たちも分かっちゃいるさ

 

でも、やっぱり気に入らないのよ。シンデレラだか王子様だか知らないけどね。少しでも2人を調べたら分かるでしょ。両親の庇護を受けれない女の子とそれを拒否するしか幼馴染を助けられなかった男の子

それがどれだけ歪なのかくらい

分からないなら手を触れないで欲しかったわ

 

ま、その時に力になれなかった私たちが言うことではないと思うんだけどね

 

 

男性の方は多少冷静であったが、女性の方は憤懣やるかたない。といった態度だった

 

しかし、最後の言葉で力無く女性は笑った

 

 

 

まるで後悔しているかの様に

 

 

 

そうですね。たとえ所属する会社は違ったとしても私もまたマスメディアの一員

その責任については、今後しっかりと果たしていくつもりです

 

 

乙名史は今でこそ、それなりに有名となった雑誌の記者である

 

が、その当時は零細といえる程度の規模しかなかった会社で何とかしようと四苦八苦していた

当然ながら、起死回生の一手としてトレセン学園や2人の記事を掲載しようもいう動きは社内でも少なからず存在した

だが、社長を始めとした経営陣はそれを一切認めず、ウマ娘達によるレース関連の記事を今まで通りに書く事を続けるように指示する

 

 

結果、『皇帝』シンボリルドルフや『女帝』エアグルーヴに『怪物』ナリタブライアン。『鬼脚』ナリタタイシンや『夢を描く姫(シンデレラの希望)』ダイワスカーレット、『豪脚』ウオッカ。などといったウマ娘達の取材を行なうことが出来た

トレセン学園所属のウマ娘は例外なくマスコミ嫌いであり、乙名史の会社は数少ない取材が出来、それを誌面とはいえ伝えることが出来る企業であった

 

 

 

自分達は無関係。と乙名史は思っていなかった

直接的には関係ないとしても、自分たちの記事が他人の人生を左右しかねない。という一点においては他の報道機関と変わらないのだから

 

 

 

 

 

とはいえ、今日は乙名史の彼等への取材である

 

 

 

うーん、あの2人についてかぁ

 

話題には事欠かなかった2人よね

 

 

 

その話題が全く世間に浸透していないのが、不思議でならない

何せ、国政まで巻き込んだ大騒ぎの中心にシンデレラと王子様(2人)はいたのだ

 

普通ならば、それに色気を出して情報を漏らす者もいるだろう。あのマンションの時のように

 

 

 

 

それを乙名史が聞くと

 

 

冗談じゃない。あんな奴と一緒にしてくれんなよ

 

貴女達からすれば、ただの飯の種なんでしょうけどね。私達は2人の事をそれなりに知ってるの

そんな事出来るわけがないでしょう?

 

 

との答えが返ってくる

 

 

 

この地区においては、殊更マスコミ関係者に対する態度はトレセン学園開校から既に五年以上経った今でも冷淡と言っていいものだった

 

というのも、シンデレラことアグネスタキオンについて調べていた(嗅ぎ回っていた)際に役所や学校は勿論、生徒にすら手当たり次第に取材行為をした記者がいた

 

住民の中にはタキオン達に良い感情をいだいていない者もいたのだが、そのあまりにも強引な取材方法を見た彼等は協力する気が失せてしまう

 

それでもある程度の見返りがあるならば、考えもしただろう。だが、半年もしないうちにタキオン達の住所を突き止めた上に現地リポートとの名目でマンションの前での中継などの迷惑を考えない行動を起こしたメディアなどを彼等は見た

 

元々、2人の地元である此処では町内会や学校などは2人の情報についてマスコミに開示するつもりは毛頭なく、2人を知る者ほどその傾向は強かった

そんな空気の中で地元しか知り得ない情報をマスコミに洩らしたとして、果たしてマスコミは自分の立場を考えてくれるだろうか?

そう改めて考えた

 

 

期待できるはずもなかったのだ

 

結局、損得勘定した結果として、協力する事は無理と判断していたりする者もいる

 

 

 

過熱報道した結果、とある事件(彼が襲われる)が起きてしまった事もあり、2人についてあまり良い感情を持っていない者達ですら、それ以上の悪感情をマスコミに持つこととなったのは皮肉としか言いようがない

 

 

 

 

 

 

2人の関係の始まりを詳しく知るものは同級生にはいない

 

 

 

元々、アグネスタキオンという少女は学校に来たとしてもつまらなそうにしていたし、その彼氏となった人物はどちらかというと目立たない人間だったと2人は言う

 

 

だが、いつしかアグネスタキオンは学校に来る頻度が目に見えて減り、彼は学校にいるときは図書室に籠りきりになっていった

 

 

その時、彼は必死で栄養学やウマ娘についての数少ない資料を漁り続けた。レースにて故障したウマ娘の記事を読み、比較する事で『逃げ』と呼ばれる戦法の中でもとりわけ『大逃げ』と呼ばれている他のウマ娘を大きく引き離すものが最も故障した際に重篤なダメージを負いやすい事などを彼は知った

 

だが、五年生位からはアグネスタキオンは学校にキチンと登校するようになり、彼は彼女のそばにいつも居る事となっていた

 

その頃からだろうか。2人の距離感が明らかに変わったのは

 

 

同じクラスであった2人

だが、その2人の様子は対象的

 

タキオンは彼の席よりも後ろだった為に彼の背中を見つめたり、一心不乱にノートに何かを書き込んでいた

板書を書き写しているのにしては、明らかに書いている文量が多かった様であると当時のクラスメートたちは噂していた

 

一方で彼は授業に集中しており、タキオンの視線に気づいていたのだろうが、一切反応しなかった

 

 

昼になれば、学校は給食制でなく各自用意するシステムだった為かいつも彼のお手製の弁当を2人で食べていた

 

昼食が終われば、彼の膝の上にタキオンがのり、彼に後ろから頭を撫でて貰ったり、冬場になれば偶に大きな上着で二人羽織をしてたのを今でも思い出す

 

 

 

彼女達はそれ以降、バカップルし続けた

 

 

食事の際のあーん。は当たり前

目と目で通じ合うのも当然

身体能力において、圧倒的に劣るはずの彼とタキオンのダンスは見ているもの達を惹きつけてやまなかった

たまにタキオンをおんぶして帰るのも日常

見た目炭にしか見えない物体(カーボン)でもタキオンの作ったものなら躊躇いなく食べる彼

それを見て、彼に抱きつくタキオン

その後、彼がダウンしてしまい、タキオンが涙目になって保健室に彼を連れて行くまでが一連の流れだった

 

 

それをみた一部の者達は嫉妬団を結成するも、あまりにも高すぎるバカップルの空気を受けて彼等は正気に戻ったり、彼が参加していた地元婦人会主催の料理教室では愛妻弁当がブームになったり、地元ではペアルックが流行ったり、二人羽織が流行ったりと彼女達の影響は計り知れなかったりした

 

 

 

 

 

そ、そんな事があったんですか

 

 

あったんですよ、記者さん

 

懐かしいよね、それ

 

 

2人から話を聞いた乙名史は驚きを隠せなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、2人に連れられて彼とタキオンが一時期一緒に暮らしていたという場所に乙名史は来ていた

 

 

 

だが、そこは異様な光景だった

 

 

木造の朽ちかけた建物

それだけならば、よくある風景といえる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一面の黒

 

そう形容する他無い景色がそこにあった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これ、百合ですか?

 

 

乙名史は恐る恐る尋ねた

 

 

らしいな

 

うん、これ『黒百合』らしいわね

 

 

 

木造家屋を囲むようにして生えている黒百合

数はおそらく100はくだるまい

 

 

それはその家屋を守る様にも、外部の者を拒絶している様にも乙名史には見えていた

 

 

 

 

どうしてこんなに?

 

 

乙名史は自然とその疑問が口に出た

 

 

 

 

そりゃ、お兄ちゃんが好きだったからに決まってるでしょ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

乙名史と2人の前に現れたのは1人の少女だった

 

 

 

なに?なんかごようですか?

用がないなら、さっさと消えてください

 

 

 

眉を顰め、目を細めて3人を見る少女

そこには好意の一欠片もなく、あるのは昏い情念のみであるように乙名史には見えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの子はいったい?

 

 

その場を後にした乙名史は2人に問いかける

 

 

 

あの子は彼の従姉妹です

 

 

タキオンにスカーレットやデジタル(従姉妹)がいるように、彼にも当然従姉妹や従兄弟はいた

 

なんだかんだで面倒見の良い彼である。当然彼女達は彼に懐いていた

聞くところによると、彼が三年生の時まではそれなりに彼とも関わり合いになっていたという

 

 

 

 

だが、それ以降は彼がアグネスタキオンにかかりきりになった為に従姉妹である彼女は大好きだった兄との接点がほとんどなくなってしまった

 

トレセン学園に彼が向かう事になった際、彼は両親を半ば切り捨てた事で彼に対する彼女の両親の印象も最悪となってしまったという

 

 

彼女は必死に両親を説得しようとしたが、叶わなかったのだ

結果、彼女は自分の友人が此方に引っ越す時に友人にくっついて此方に来たらしい

 

 

そして、兄が過ごした(廃墟)の周りに兄が大好きだった黒百合を植えた

従兄弟達と一緒に

 

 

大好きな兄が帰ってくる様に祈り(願い)をこめて

忌々しいウマ娘への憎悪(呪い)をこめて

 

 

 

だが、彼女はキチンとわきまえて行動出来る為に周回の大人達も注意は出来ない。勿論、注視はしているが

むしろ、従兄弟の方が問題であった

 

アグネスタキオンという名前を知らなかった彼は必死でそれを突き止めようとしたのだ

その行動力はトレセン学園の最寄り駅まで自分1人で向かう事が出来た事からもお分かりいただけるだろう

 

 

当時の彼の年齢は小学校五年生

それが自宅から2時間も離れた駅に独りで向かい、隣県のトレセン学園にたどり着く直前まで行ったのだから

 

 

幾ら彼女の友人が言おうとも、彼女は此処から離れない

 

 

大好きな兄が残してくれた場所を失いたくなくなかったから

 

 

 

彼女からすれば、彼の両親も敵であった

大好きな兄を止められなかったのだから

 

 

少女はトレセン学園での一連の騒動をTVで見た

 

 

そこにあったのは、世間に自分の姿を出すしかなかった兄

そして、それを止めようともしない無責任に見えた理事長とやらとウマ娘(シンボリルドルフ)の姿だった

 

だが、彼女は兄の想い人はアグネスタキオンという名前である事を知っていた

だからこそ、彼女は許せなかったのだ

 

兄を矢面に立たせておきながら、姿を見せないウマ娘(アグネスタキオン)

 

ウマ娘(アグネスタキオン)に都合の良い様に使われる事をよしとする兄が

 

 

 

 

この木造家屋は聞くところによると、幼かった頃の兄とウマ娘が秘密基地として利用していたらしい

 

 

その頃はまだ(・・)彼女にも構ってくれていた

 

多分、誰もが幸せだった頃

 

 

 

 

 

だから、彼女は此処に拘る

 

 

頼らなくても、力が弱くても、それでも一生懸命だったあの人を。頼り甲斐が、周囲の人たちに認めさせなければ、自分自身を偽らなければならなくなったあの人の優しい思い出のあるこの場所を

 

 

 

 

 

例え、それが他の人たちに認められなかったとしても

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな事があったんですか

 

 

 

乙名史は絶句した

 

 

世間では最近になって頭角を現しつつあるダイワスカーレットのトレーナーを勤めるアグネスタキオンに注目が集まりつつあった

 

 

当然ながら、彼女が2年ほど前に話題となったシンデレラである事がネットでは問題視された

 

 

何せ『鬼子』とネットでは侮蔑すらされている彼の恋人だったのだから

 

 

 

 

 

 

 

ネットとは常に情報が飛び交う

 

故にその中から真実を選び取らねばならない

 

 

 

 

 

しかし、騒動の当時のネットの反応は

 

 

 

ただの子供が高すぎるマンションに住んでるっておかしくね?

 

マンションの写真投稿しただけで、裁判沙汰とか何それ?

 

え、何コイツ?

何様のつもりなの

 

裁判って言うけど、それお前の金じゃないだろ?

 

 

 

などという彼に対して批判的な意見が多かった

 

いや、多かったのではなく、目立っていたのだ

 

 

 

更に大手のマスコミ関係の企業が倒産すると、その実害を受けたとする者達の彼への攻撃は止まるどころか、過激になっていった

 

 

一部マスコミからすれば、それこそ望む流れであった為に、敢えてこの流れを放置していた背景もある

 

 

当たり前だが、彼を庇う意見や冷静になるべきとの意見も少なからず存在した。が、往々にして非難意見の方が市民権を得やすい事も悪い方向に作用した

 

 

特に当時彼と裁判で争っていたコメンテーター(著名人)のファン達は彼を目の敵にしていたのだ

 

 

 

 

 

 

その後、騒動が収束するにあたり、各メディアは少しだけその騒動の真相を説明する事としたか、時間をかけなかった事もあり、それが世間に浸透することはなかった

 

 

 

 

この事にタイシンは控え目な表現で赫怒しており、レース終了後のインタビューは全てトレセン学園を通じてのコメントに留まっていた

 

流石にルドルフはそういかず、甚だ不本意ながらも取材に応じることとなってしまっていた

 

 

もっとも、取材するマスコミからしても、この問題を取り上げられてしまうと非常に面倒な事にしかならないから、ルドルフなどトレセン学園のウマ娘には当たり障りの無いインタビューとならざるを得なかった

 

ルドルフ達はその真意を理解していたからこそ、必要最低限の事しかコメントしなかった訳である

 

 

 

 

 

 

 

しかし、タキオンやマックイーン、ルドルフやタイシン達はこの事を非常に不愉快に思っており、時期を待っていたのだ

 

 

 

 

 

 

そして、アグネスタキオンというウマ娘がダイワスカーレットのトレーナーとして注目を浴びたタイミングで、記者会見を開く事とした

 

 

 

これはあくまでもダイワスカーレットの記者会見だとメディア各社は思っており、今後の目標などについてだと判断していた

 

 

 

 

だが、忘れてはならないのがダイワスカーレットこそが、最もこの状況に不満を溜め込んでいた事であった

 

 

尊敬する姉の為に大好きな兄が必死に行動した結果、兄は世間での居場所を失った

 

住んでいるマンションの住民からも心無い言葉を浴びせられ、ネットでは未だに彼を犯罪者呼ばわりする始末

 

 

彼等が言うには

 

税金で生活している

との事らしい

 

 

 

全くの誤解である

 

 

トレセン学園に彼が学園創設から来ている回数はかなりの数になるが、講演会や学園所属のウマ娘、トレーナーなどへの相談窓口などによる彼への報酬の全ては彼の生活資金に回っており、彼の手元に残るのは精々ニ、三万程度である

 

それとて、自身の食費に充てねばならないし、水道光熱費などもかかる。余裕などなかった

 

 

あくまでもデートなどはタキオンやルドルフ、タイシンから資金は出ており、彼は常に自宅か学園にしか居られない

 

 

 

それもこれも、本来ならパン屋というアルバイト先を確保していたにも関わらず、執拗な取材行為により学校にもアルバイト先にも行かなくなってしまった事が原因だった

 

 

 

 

当時、トレセン学園理事会は彼にカウンセラー的な仕事を割り振りつつ、パン屋のアルバイトで資金を調達してもらうつもりだった

 

 

彼のパン屋の収入が確定すれば、その不足額をトレセン学園における諸事で補填する予定を立てていた

 

 

それが叶わなくなった為に、秋川理事長や駿川秘書、理事会やメジロからの資金提供で彼の生活は維持されていたのだ

 

 

あまり知られていないが、タキオンをマンションから出して以降の彼の主食はカップ麺であり、1日千円程度の生活を送っていたのである

 

 

 

 

これをタイシンが最初に気づき、即座にタキオンやルドルフ達。更にスカーレットやウオッカにデジタルまで押しかけての大問答になった

 

 

料理は出来る

しかし、自分のためにそれをする必要はない

 

 

それが彼の偽らざる本音だった

 

 

 

 

 

 

 

 

スカーレットはそんな不健康極まる生活を強いてきた要因であるマスコミを何よりも嫌悪していた

 

 

 

 

であるからこそ、この場を整えたのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

記者会見という名の弾劾の場は混乱を極めた

 

 

スカーレットとタキオンが提示したのは、これまで2年にも及ぶ彼に対する様々なマスコミ関係者による行為であり、2年前に起こった彼への殺傷事件についての詳細をテレビの前で赤裸々に語った

 

 

当然だが、一部のメディアは放送を止めた

 

 

しかし、これがかえって視聴者の興味をひき、彼等はその内容を知る為にネットという海に泳ぎ出す

 

 

マンションにおける騒動より、トレセン学園関係者はマスコミの報道姿勢に大きな疑問を感じていた為に、同時にトレセン学園公式チャンネルにて生配信を行うことを通例としていた

 

 

結果、2年間もの間マスコミが隠していた

 

 

彼を刺した人物はマスコミ関係者により行動をコントロールされた結果、犯行に及んだ事

そして、その事実をマスコミは知りながらも意図的に報道しなかった事などを暴露したのだ

 

 

 

 

 

 

そして、タキオンは自分の想い人である彼がどれだけ窮屈な生活を送ってきたのかを語った

 

 

 

 

 

当然だが、政府や警察などへの根回しも済んだ上での行動であり、タイミングを合わせて、政府は元議員の協力の元、当時の詳細な資金の流れを発表した

 

 

そこには、元議員の個人的な資産こそ使われていたが、税金の投入の事実は一切なかった

 

 

当たり前である

元々彼やアグネスタキオンの面倒を見る話は、政府からではなく彼の地元出身の国会議員からだった

 

議員から議員に話が渡ったからとて、税金の動く余地はないのだから

 

 

 

 

 

 

 

更にタキオンは自身の生い立ちを話した

 

 

 

自分は望まれて生まれてきた訳でも、両親から幸せを願われた訳でも無い。と

 

 

実父はお金のために母を望み、母は育ての父の立場と財を欲した

実父と母は自分たちの未来のためだけに育ての父を欺き、私を利用しようとした

 

 

育ての父はその事実に戸惑い、距離をおいた

世話をする筈の母は事もあろうに私に与えられていたお金にすら手をつけた

 

 

そんな私を守ろうとしてくれた彼をこの2年間悪様に言ってくれた以上、私が容赦できるなどとは思わない事だ

 

 

 

 

滅多に見せない鋭い視線を居並ぶマスコミ関係者にタキオンは浴びせた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やった事を無かった事には出来ない

どれだけ地位が高かろうとも


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 デジタルの待ち望んだ日(後編)

雨が降ってきたので投稿します


アグネスデジタルの夢見た1日が終わる


いうまでもありませんが、捏造独自設定が乱舞していますのでご留意ください


今年も暑い夏が終わる

 

 

 

 

そんな日に紳士、淑女達のイベントが始まろうとしていた

 

 

 

 

今年からはウマ娘関連の同人誌販売も一部解禁されており、この界隈の猛者達は新たなる戦場に心躍らせていた

 

 

勿論、実在するウマ娘を題材とする場合は様々な制約が設けられているが、その程度は各種版権などにもめげずに市民権を得た作家達にとって障害となりえなかった

 

しかも、その管理を任されている団体『勉強会』には新進気鋭のデジたんが参加しており、ともすれば色眼鏡で見られがちな同人誌業界を正確に把握してくれるという期待もあったのだ

 

 

実際、アグネスデジタルに甘々なアグネスタキオンと彼が中心となって肖像権などの各種権利関係の問題解決に積極的に取り組んでいた

幸いにも『愛でる会』の頃に様々な外部の団体とも繋がりが出来ていた事もあってか、ウマ娘達のレースやライブが本格的に注目される様になってから僅かな年数での解禁につながる事になる

 

 

 

 

更にメジロ、秋川、桐生院よりそれぞれ法律の専門家を外部協力者として招き、法律関係についての理解を深めると共に、いざ問題が起きた場合には即応体制をとれる様に組織としてまとめ上げた

 

それに伴い、夏の祭典に対する運営側への様々な面での協力体制の構築をトレセン学園やそのスポンサー達にも提案することとなる

 

これは祭典のスポンサーに出版業界の企業も名を連ねていた為でもあった

 

 

特にTVや新聞関係のマスコミとの関係は冷え切っているトレセン学園だが、いつまでもそれでは問題であった事も影響していたりする

 

 

 

結果として、トレセン学園に所属するウマ娘についての各種権利は在籍中に限りトレセン学園に帰属するという入学時の契約を根拠に当人に閲覧させた上で同人誌の是非を決める事となった

 

 

これは作家からすれば、面倒この上ない事でもあった。しかし、逆にトレセン学園は当人が認めた内容の同人誌については『トレセン学園公認』というものを用意する事で作家側にも配慮した

 

 

つまりはトレセン学園公認の同人作家とも言えなくもない状況を生み出した訳である

 

更に作家側には通達していないが、今回のイベントにも秋川、メジロなどのトレセン学園スポンサーの家の人物が客として入っており、ウマ娘関連の書籍の購入を叶う限り行うことが決定された

 

どうしても、野良やトレセン学園側に提出した内容と異なる同人誌が販売される可能性はゼロでは無かったからである

 

 

なお、この購入した同人誌は中身をある協力者とアグネスデジタルが中心となって精査した後に、2人で分け合う事も決まっていた

 

購入資金については、その協力者とデジタルが全て負担するつもりだったのだが、トレセン学園理事会が費用の半分を受け持つこととなっていたりする

 

 

これは内容精査する以上、それに相応しい対価が必要との意見が理事会側より上がった為である

また、それに加えてアグネスタキオンの親族であり、彼も妹として可愛がっている事も無関係ではないだろう

 

 

 

 

 

 

アグネスデジタル。いや、この場においては同人作家『デジたん』と呼ぶべきだろうか

 

彼女の同人誌は姉と兄2人の恋路を描いたものである事は先に触れた

 

 

 

では、彼女が全てを一人でしたのか?

 

否!彼女には頼もしい助っ人がいたのである!

 

 

デジタルの同級生でクラスメイトでもあるメジロのお嬢様

 

メジロドーベルだった

 

 

 

彼女は元々メジロという環境下では自身の趣味が受け入れられる土壌がないと諦めていた

 

だが、ゴールドシップという色々な意味で破天荒なウマ娘がいる前例がある以上、ドーベルの趣味が受け入れられない理由はなかったのだが、彼女はそれを知らなかった

 

 

別にマックイーンにせよ、ライアンにせよ、ゴールドシップにせよそんな事(・・・・)くらいでドーベルへの態度を変える事はないのだが、『知らぬは本人ばかりなり』といったところであったのである

 

 

 

そんな彼女であったが、最近彼女が注目していたのは新進気鋭の同人作家『デジたん』であった

 

 

デジたんはウマ娘関係の同人誌をネットにて公開している同人作家としては異色の人物であった

 

更にその内容が

 

 

『幼い頃に親から放置されていたウマ娘の少女がとある少年の献身的な支えを受けて、様々な困難を乗り越える』

という、ある意味では王道ともいえるものだった

 

 

そして、妙に主人公のウマ娘の心理描写や幼馴染の少年の内面などの描写が上手く、正道派に飽きつつあったドーベルであってものめり込むのにそこまでの時間はかからなかった

 

 

しかも、このデジたんの作品は『基本無料』であり、希望するのであれば指定口座に千円までの入金が可能であるという仕様だった

 

 

 

更にとある気高い理想を持つ少女とそれに寄り添おうとする少年の話やハンデを負いながらも、常に挑み続ける少女とそれを助けようとする少年の話なども同じサイトに掲載されていた

 

前述の作品と同じく、こちらも『基本無料』であった

 

更に入金についても回数こそ制限はないものの、振込額が千円を超えた場合は振込できない仕様ともなっていたりする

 

 

 

これは秋川の所有する金融機関でデジタルが受取り用の口座を開設した際に金融機関側との間での取り決めによるものだった

 

 

 

 

言うまでもないが、最初の作品のモデルは姉と兄であり、シンボリルドルフとナリタタイシンがその後の作品のモデルであった

 

 

同人誌のモデルという事で姉達は難色を示したが、事前に兄を引き込んだ事により、無事に問題解決となった

 

 

兄は姉とお風呂に一緒に寝る

ルドルフ先輩と1日デート

タイシン先輩とは兄がデートプランを考えての1日デート

 

という対価を用意する事になったが、必要な犠牲だったとデジタルは全力で素知らぬ顔をした

 

 

なお、後で姉達から何故かデジタルが感謝される事になり、デジタルが困惑したのはここだけの話

 

 

 

 

余談ではあるが、シンボリルドルフはダイワスカーレットとアグネスデジタルにお姉ちゃんと呼んで欲しそうにしていたりする

 

 

従姉妹にトウカイテイオーがいるとはいっても、彼女とは違ってスカーレットにせよ、デジタルにせよ、お姉ちゃんと呼んでくれそうだから、らしい

 

テイオーはかいちょーと呼ぶようになってから、お姉ちゃんと呼ぶ事は無くなって寂しさを感じているそうである

 

 

 

 

 

の割には兄のことを偶に『お兄ちゃん』と呼ぶのは如何なものかとデジタルは常々思っている

 

 

 

ルドルフをフォローすると、『お兄ちゃん』呼びの時にはルナちゃん化している為に、精神年齢が凄く低くなっているので、ある意味では当たり前なのだが、デジタルはそんな事を知るはずもなかった

 

 

 

ルナちゃんする。についてはタキオンとタイシンと彼以外が知ることのない様にしているトップシークレットなのだから

 

 

まあ、別にバレたからといってなんの不都合がある訳でもないと、実は彼やタキオン、タイシンは思っていたりするのだったが

 

 

 

確かにトレセン学園の生徒会長であった頃ならば、色々と問題もあっただろう

 

しかし、既にその職より身を退いたのであれば、寧ろ『1人のウマ娘』として最大の幸福の一つである『伴侶を見つけて懇ろな関係になる』というのは別に問題になるとはタキオン達は思っていない

 

 

寧ろ、シンボリルドルフというウマ娘が率先してそれをする事で他のウマ娘達に道を示すべきではないかとすら思っていた

 

 

 

 

 

己を律する事は非常に大切な事だろう

 

しかし、だからといって全てを押し殺す必要など何処にもない

 

 

 

 

 

勿論、明確に伴侶のいる人物に懸想するばかりか、その人物に異性を求めるなどというのは褒められた話ではないだろう

 

 

だが、そんな事は2年前にタキオンがルドルフを誘った時に理解していたことのはず

 

 

 

 

 

 

シンボリルドルフとナリタタイシンはそれを理解した上で彼に想いを伝えた

 

そして、フラれた

 

 

 

それでもルドルフとタイシンは諦めることなく、今に至る

 

 

 

 

諦めるのかい?世間には事実婚というものもあるのだけど

 

 

シンボリルドルフは彼の世間体も気にしているのだろう

 

 

だが、ナリタタイシンは知っている

 

 

 

 

どこまでいっても、彼が全ての人に祝福される事は永遠にない事を

 

 

 

恨むのなら恨めばいい

 

 

そんな彼をナリタタイシンは愛したのだ

共に地獄に堕ちろというのであれば、タイシンは喜んで共に逝こう

 

 

それでも、ナリタタイシンは彼が好きなのだ

 

例え彼との間に子供を作る事が叶わなくとも、彼の一番になれなかったとしても、だ

 

 

 

 

 

 

ナリタタイシンというウマ娘としての恩人は間違いなく彼であり、今のタイシンは彼抜きで語ることなど出来はしないのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、タキオンとルドルフとタイシンとの関係を持っている彼についてトレセン学園のウマ娘達は好意的に見ている

 

 

曰く

 

少女漫画を見ている様

 

燃え尽きる様な恋愛、素敵

 

など

 

 

 

一方で

 

 

え、それいいの?

 

会長に失礼では?

 

そもそも、そこまでの人なんですか?

 

 

 

との否定的意見も少なからず存在する

 

 

 

 

 

 

 

だが、彼にとって重要なのは、タキオン達を幸せにする事であり、彼女達に真剣に向き合う事が何より大事

 

それ以外の事については、考慮はするがそこまで重要視していなかったりする

 

 

 

 

なお、トレセン学園のトレーナー達からは

 

 

 

いや、まじかよ

 

え、あの(・・)アグネスタキオンと付き合っていながら、他のウマ娘まで抱え込むのか

 

流石師匠!

 

 

などとの声が聞かれる

 

 

 

 

なお、トレセン学園において担当トレーナーとウマ娘の関係が『公式』に認められたのはエイシンフラッシュではなく、オグリキャップだったりする

 

 

 

エイシンフラッシュは計画的に物事を進めるという本人の気質的に感情に任せた事は中々出来なかった

 

せっかく、タキオンと彼から伝授された手管とてフラッシュにとっては難易度が高すぎるものであったのだ

 

例えるならば、デビュー早々に有馬記念を勝利しろといった難易度である

 

 

逆にオグリキャップはトレーナーと買い食いなどを楽しみながら、日々トレーニングに明け暮れていたが、そこは『暴食の女王』である

 

担当トレーナーにかかる金銭的負担は尋常なものではなかった

 

 

 

困ったトレーナーは同僚である沖野トレーナーに相談し、沖野トレーナーより彼に話がいくことになる

 

 

 

トレセン学園内で彼よりウマ娘に関わってきたのは、桐生院トレーナーくらいであり、彼女は異性である事からの選択だった

 

 

 

 

相談を受けた彼はオグリキャップのトレーナーに腹持ちの良いメニューやウマ娘の健康に配慮したうえで食べ応えがあり、尚且つ工夫次第で安く出来るメニューなどを手渡した

 

 

 

 

準備の良すぎる彼にオグリキャップのトレーナーが聞くと

 

 

そりゃあねぇ。一応トレーナーからの相談も受け付ける役職にある訳だし、ウマ娘ってのはどうしても栄養を大量に摂らなければならない。となれば、貴方みたいな悩みを抱える人物は早晩現れることくらい予想できますよ

 

 

 

ちなみにウマ娘の身体的成長(とある一部)を促すメニューなども彼は有していたが、彼の信念(貧乳党)により、相談されるまでは表に出すことはなかったりする

 

 

 

え?信念ではなく、趣味、嗜好?

 

 

 

 

そういう解釈も出来ますね

(その後作者は詰腹を切らされ、グラスワンダーが介錯した)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は究極の機能美(精一杯のオブラートに包んだ表現)こそが至高であると考えており、その布教に努めたいと常々考えてはいた

 

 

しかし、彼に想いを寄せるルドルフに多大なダメージを与えかねないとして自重(自嘲)したのである

 

 

 

なお、仮にそれを公表した場合、タキオン、タイシンとルドルフの間で間違いなく仁義なき戦いが勃発する事になるのだが、幸運にもその様な未来は訪れる事はなかった

 

 

 

 

余談ではあるが、タキオンの食生活改善を目指したメニューの中に、意図的に成長を促すメニューが排除されていた事と、彼の意向の因果関係は不明である(大本営発表)

 

 

 

 

とはいえ、それを言い始めると彼もまた顔面偏差値は一般レベルにすら達していない部分もある為に盛大なブーメランとなるのはご愛嬌だったりするのだが

 

 

 

 

 

 

 

 

それはさておき、彼の助言を受けたオグリキャップのトレーナーは不器用ながら彼女の為の手料理を振る舞った

 

勿論、タマやクリークにも彼にも及ばないものであったが、健啖家である自分を想って作り上げたトレーナーの料理を食べたオグリキャップの表情は、オグリキャップに心惹かれていたトレーナーの贔屓目抜きに美しいものだった

 

 

 

それ以降、彼女は『料理研究会』において、タマやクリークに彼やネイチャなどの手ほどきを受けつつ、トレーナーと共に料理の腕を磨くこととなった

 

そして、トレセン学園在籍期間の最後の年である今年の春に彼女はトレーナーに告白し、トレーナーもそれを受け入れた

 

 

 

勿論、教え子とそのトレーナーの恋愛とあってトレセン学園内においてもトレーナーの事を非難する声が上がった

 

 

 

これは自分たちは担当ウマ娘の誘惑に耐えているのに、何故彼はそれが出来なかったのか?

というある意味では嫉妬混じりの意見でもあった

 

しかし、ある意味ではその意見は的確な意見であり、トレセン学園理事会でも議論が重ねられる事となった

 

 

 

その席上で、『トレセン学園トレーナー、ウマ娘相談役』として参加していた彼は

 

 

 

問題ではあるのでしょう

しかし、それならば自分とタキオンやルドルフにタイシンとの関係も問題視しなければならないと思いますが?

 

 

と発言し

 

 

何より大事なのは、このトレセン学園における役割は『ウマ娘達の未来の選択肢を拓くと共に、それを後押し』する事だと思いますが?

皆様はどうお考えでしょうか?

 

 

と締めくくった

 

 

 

 

トレセン学園は当初こそ、翌年以降増えるウマ娘達によるレースやそのウイニングライブに参加する者達の養成期間というものであった

 

しかしながら、開校したその年の年末の衆院選において、政権与党となり総理大臣に就任した人物は所信表明演説にて

 

 

 

私達人とウマ娘は常に隣人でありながらも、そこには『見えざる壁』がありました

そしてそれは、お互いの円滑な様々な交流に悪影響を及ぼし続けてきたのです

今回我々新党が国民の方々より多くの信任をいただく事が出来た結果、今私は此処にいます

 

ですが、それは我々の活動方針が全て信任された訳ではないのです

 

 

私達は変わらなければならない

政治家も官僚もマスコミも、そして国民の皆様もまた

 

そうやって、やっと新しい未来が拓けるのです

 

 

勿論、その道筋を創るのは我々政治家の仕事ではあります

皆、襟を正してそれに邁進していく次第です

 

 

今回の選挙の一つの大きな点となったトレセン学園を巡る一連の騒動。これを受けまして、我々政府としてトレセン学園の理事会に対して一つの提案をする事となりました

 

 

 

 

 

この内容こそが、トレセン学園の規模の拡大と役割の多様化であった

 

 

本校である府中トレセン学園はウマ娘とトレーナーの養成期間として

 

 

栗東に再来年開校予定のトレセン学園栗東センターはウマ娘達の将来に向けた様々な教育を行なう施設となる予定であった

 

 

 

 

 

これは総務大臣となったクガヤシ氏の目玉政策であり、ウマ娘に対する扱いは世間の無理解もあるが、ウマ娘側からの歩み寄りも致命的に不足しているという考えによるものであった

 

 

 

 

 

ウマ娘達の未来の一つの形として、オグリキャップのトレーナーと彼女の様な形を認める事で、また一つの選択肢がうまれるのではないか?

 

というのが、彼の主張である

 

 

 

その後、1週間もの議論の末にオグリキャップとそのトレーナーの件に関してはトレセン学園理事会も認める事となった

 

 

ただし、言うまでもないが『うまぴょい』『うまだっち』『すきだっち』などについては認められず、これはトレセン学園外でのそれをも含んでいた

 

 

理事会はトレセン学園生徒会長であるダイワスカーレットを通じて、二代目風紀委員長であるバンブーメモリーにその辺りの徹底を要請する事となる

 

バンブーメモリーはその困難さから先代風紀委員長であるサクラバクシンオーにも協力を要請し、バクシンオーもまた元名誉顧問である彼に対して、サイレンススズカ、ミホノブルボン、ライスシャワーの協力を要請する事となった

 

 

併せて『トレーナー相談役』である彼からオグリのトレーナーに対しても注意喚起が為される事となり、この件は決着する事となった

 

 

 

 

 

なお、先行していたはずの自分がオグリキャップに差し切られた事にエイシンフラッシュはいたく動揺し、その結果彼女のトレーナーとの距離が縮まり、フラッシュの父親との話も進み始めたのは余談である

 

 

 

 

 

 

オグリのトレーナーの一件により、担当ウマ娘との距離感に悩まされてきたトレーナーやトレーナーとの距離を詰めたいウマ娘から、彼は畏敬の念を込めて『師匠』だの『先生』だの呼ばれ始めることになったりするのだが、ご愛嬌であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その様な変革の中にあるウマ娘に対する注目度は高まる一方だった

 

 

 

そして、そういった話題に敏感な者達が同人活動を通じてウマ娘達の助けになりたい

という主張がトレセン学園に寄せられ、今回のアグネスデジタル達のイベント参加に繋がる事になった

 

 

しかし、トレセン学園とてこのイベントの抽選という不文律を歪めるつもりは毛頭なく、あくまでも『同人作家デジたん』という一サークルとしての参加となっていた

 

 

まあ、おまけが尋常ではないほどに豪勢であったのは正直なところやり過ぎだと彼は思っているが

 

 

だが、可愛い妹分の頼みともなれば、それこそ不可能すら可能にするべく全力で取り組むのか彼クオリティである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イベントが始まるなり、一部のデジたんの活動を知っている者達はこぞってハズレスペースである彼女のブースにと押し寄せた

 

 

しかし

 

 

ちゃんと、並べよー

 

んな、簡単に売り切れねぇから、落ち着いて並べって

 

 

ゴールドシップとウオッカが客の整理をしていた

 

 

 

 

 

 

ちょ、あれゴールドシップ?

 

隣にいるのってウオッカ?!

 

ナゼェ、アナタタチガココニイルンデェスカ?

 

アエエ?

ゴールドシップとウオッカ!ナンデ?

 

 

等と客の一部は動揺していた

 

 

 

イベント参加します!

もしかしたら、豪華なゲストも呼べるかもしれません

 

 

とデジたんのサイトに書いてあった事を一部の客は思い出していたりする

 

 

 

 

ふむ、2冊だな

 

んじゃ、これとこれね

 

あ、特典については悪いけどランダムなの。それは許してあげてね?

 

 

注文を取る『皇帝』シンボリルドルフに商品を提供すら『鬼脚』ナリタタイシンと一声添える『シンデレラの希望』ダイワスカーレット

 

 

わざわざありがとうございます!是非イベント楽しんでいって下さいね?

 

 

とお金を受け渡しながら、満面の笑みを浮かべる『デジたん』こと、アグネスデジタル

 

 

 

そして

 

ありがとうございました

会場は混んでますので、どうかお気をつけを

 

という彼と

 

さぁ、持っていきたまえ。これは私のスポンサーが来年発売する予定の熱中症予防の塩タブレットだ。くれぐれも熱中症には気をつけるんだよ?

 

と客にタブレットの入った小袋を渡すアグネスタキオンだった

 

 

 

 

 

 

 

 

デジたんのブースから出た客は

 

 

 

 

何、あれ?

 

ウマ娘の有名ところばかり集めてるって、マ?

 

というか、デジたんってマジでウマ娘だったのか?

 

あの男の人ってもしかして?!

 

お兄様ぁぁぁっ!!

 

何あれ、尊い

 

あ”あ”〜

頭がぴょんぴょんするんじゃ〜

 

 

 

等と動揺の隠しきれなかった者達ばかりだった

 

 

 

 

 

 

 

更に彼等は自宅に帰った後

 

 

 

 

キミの未来に更なる輝きを願って

 

逃げても良い。けど、諦めるな

 

カッコいい自分であり続ける事を願う

 

自分が面白いだけじゃダメだ。周りも笑顔に出来てこそだ

 

一番になる事は難しい。けど、その熱意はいつかあなたの未来を変える力になるのよ

 

良き出会いを、良き別れを。全てはあなたの糧となるのだから

 

自分が守りたいものを見つけよう。そうすれば強くなれる

 

 

 

といった各人からの一言のメッセージが巻末に自筆で書かれていたのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、盛況のうちにデジタルがトレセン学園入学前から望んでやまなかった1日は終わりを告げたのである

 

 

 

 

 

 

なお、この同人誌については購入者達は誰一人として手放そうとしなかった為に、ネットなどでは尋常ならざる金額で捜索されていたりする

 

 

 




というわけで少し未来の話はこれでひと段落です


これからは、相変わらずの高低差が激しい話になりますがご了承ください


ではご一読ありがとうございました


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  それでも私は貴方といたい

情熱が暴走したので投稿します


中々感想こないけど、何故かお気に入りが増えているという怪現象?



今回でタキオンと彼の蟠りは『殆ど』解消します


なお、今回はやや攻撃的な表現が出てきますので、悪しからずご了承の上でご覧ください


マンハッタンカフェ等の尽力の結果、一先ず冷静さを取り戻したアグネスタキオン

 

しかし、彼女は何としてでも彼と会って話をしなければならなかった

 

 

 

 

酷な言い方になるが、今の君が彼と冷静に話し合えるとは私には思えない。日を改めるべきだと思う

 

エアシャカールに呼ばれて慌てて駆けつけたシンボリルドルフはタキオンにそう言い切った

 

 

確かにそうだろう

 

自分はあの臨時ニュースを見てからの記憶が曖昧だ

 

 

 

という事は文字通り、『我を忘れるほどに激昂』したのだろう

 

そんな人物と渦中の人物を会わせるなど、マトモな者であれば認めがたい話である

 

 

 

だが

 

 

言い方は悪くなる事を先に詫びておくよ、ルドルフ

 

 

自分でも驚くほど、冷たい発言だった

 

 

だが、構うものかとタキオンは思い直した

 

 

これは私と彼の問題だ。確かにカフェ達に迷惑をかけた事はすまなかったと思っているよ。後日必ず今回の件については何らかの形でお詫びしよう

 

タキオンは目の前のルドルフを睨みつけた

 

しかし、これはもう一度言うが私と彼の個人的な問題に過ぎない。ルドルフ、君が私たちの事を心配する気持ちは分からなくはない。だが

 

 

タキオンは一息入れて

 

 

私の邪魔をしてくれるな、ルドルフ

 

 

あらん限りの憎悪を持って、シンボリルドルフを再度睨みつけた

 

 

 

 

 

 

シンボリルドルフは驚愕していた

 

いつもは飄々としていて、捉え所のないアグネスタキオンという人物が今にも掴みかからんばかりに自分を睨みつけている事に

 

 

(分かっていたつもりだったが、流石に堪えるな)

 

 

ルドルフとて、分かっていた

 

 

此処で彼女を止めようとすれば、間違いなく彼女に恨まれる事くらいは

 

 

 

 

しかし、それでもシンボリルドルフは理解しきれていなかった

 

 

 

 

 

 

 

シンボリルドルフは両親の愛を受けて育った

ナリタタイシンもどんな状況でも、両親が支えようとしてくれた

エアグルーヴは父親はそうでもなかったが、母親は彼女の理解者だった

 

ナリタブライアンは両親の理解こそなかったが、それでも双子の姉であるビワハヤヒデがいた

メジロマックイーンにはメジロの姉妹と理解ある家人に当主がいた

ナイスネイチャにも温かい家族や近所の人たちがいた

 

 

 

だが、アグネスタキオンは両親に距離を置かれ、母親に疎まれ、父親からの愛すら受け入れられなかった

そして、その隙間を埋めてくれたのが他ならぬ彼であったのだ

 

 

その痛みと歪みをシンボリルドルフは理解しきれていなかったのである

 

 

とはいえ、それをアグネスタキオンや彼と同年代の彼女に望むのはあまりにも酷な話でしかないのだが

 

 

 

タキオンにとって、両親などよりも彼の方が家族そのものであり、常にタキオンを護ってくれていたのだ

 

 

それは世間からすれば、歪な歪んだ関係なのだろう

 

何も知らない者達は声をあげる

 

 

 

そんな事は間違っている

彼なんかがする事ではない

 

 

 

 

では、あの時どうすれば良かったのだろう?

 

日に日にささくれ立っていく心

閑散とした家と同じくらい冷え切った心

 

 

それでも、学校からはしきりに「登校しなさい」との電話ばかり

 

 

 

あの時、アグネスタキオンに味方はいなかったのだ

 

 

賢しらにモノを言う者たちは

 

 

役所を頼れば良かった

だの

親戚を頼れば良かった

 

などと寝言を言う

 

 

 

 

(何も知らない奴らが好き勝手に言うものだ)

 

そうタキオンは彼等の言葉を聞き流しながら、忌々しげに思っていた

 

 

 

アグネスタキオンが育児放棄の様な扱いを受けてから約6年

それだけの時間が経って、ようやく事態は動き出したというのに

 

 

 

そもそも、私たちの味方みたいな顔をしている町内会の人間とてタキオンは信用していない

 

 

彼等は最初、彼をひたすらに注意していたではないか?

 

近所の人間ならば、タキオンの両親が使う車がいつも家にない事を知っているだろう

タキオンがいる以上、電気は常につけていたのだから気付かないはずもない

 

 

彼が助けてくれるまで、タキオンは暗闇の中で寝ることすら出来なかったのだから

 

 

 

挙げ句、彼が私の所に来る時でさえも、彼等はそれとなく注意していたのを知らないとでも思っているのだろうか?

 

 

ウマ娘とは人よりも嗅覚や聴覚に優れるのだ

 

分からない筈がないのに

 

 

 

 

 

 

彼は私にとっての太陽である

彼は私のことを太陽と例えるが、それこそ解釈違いも甚だしい

 

 

私は彼という光が無ければ、輝くことひとつ出来ないのだ

 

 

 

だからこそ、怖いのだ

 

 

彼に捨てられる事が

 

 

 

彼は私がいなくとも、普通に生活できるだけの能力を持っている

それに比べて、私は彼が居なければ寝ること一つ覚束ないのだ

 

 

 

 

私と彼の関係を理想だというものがいる

 

笑わせるな

 

 

 

彼という人の人生を狂わせてなお、平然としている私と血を吐く様な努力をしなければならない彼の関係のどこが理想だというのか?

 

 

泥に(まみ)れるべきは私なのに、彼はいつもそれを許さない

許してくれないのだ

 

 

 

 

そして、彼は突然私との同居をやめて、私をトレセン学園の学生寮に放り込んだ

 

 

その時、私は泣きながら彼に(すが)り付いた

 

 

 

あのままでは、彼が私の手の届かない所へと行ってしまう気がしたから

 

 

 

 

 

 

そして、私のその予感は的中した

して、しまったのだ

 

 

確かに彼は死んでいない事に安堵した部分もある

 

だが、そんな浅ましい私が何よりも誰よりも許せなかった

 

 

 

 

 

 

死ななかったから、どうだというのだ?死ななければ、彼がどんな痛みを受けようとも関係ないとでも言うのか?

 

 

この思考に至った瞬間、私は怒り狂ったのだ

 

 

 

恐らく、カフェ以外は気付いていないだろうが、私は止められなければ自傷行為に走っていただろう

 

 

許せなかった

 

 

彼を一人にした自分が

 

彼にだけ負担を押し付けてしまう事に慣れてしまった自分が

 

彼を自分で支えようともせずに、安易に人を頼った自分が

 

 

 

今、ルドルフを睨みつけているが、ルドルフを睨みつけているわけではない

 

昔の私の様に、彼に縋り付くことしか出来ないルドルフを通して昔の私を睨みつけているのだ

 

 

 

 

私はてっきり、シンボリルドルフというウマ娘は私生活でも己を律しているものとばかり思っていた

 

だからこそ、ルドルフには彼を甘えさせて欲しかったのだ

 

 

いや、言い訳だ

本当ならば、それは私自身がしなければならない事であった筈なのに、それを人任せにしてしまった

 

 

逆にタイシンは彼と対等な関係を築こうとしている節がある

 

 

 

それは何よりの救いであり、実のところ誤算でもあった

とはいえ、良い意味での誤算だったのだが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マンハッタンカフェは急ぎ足でトレセン学園内を回っていた

 

 

タキオンについては、とりあえずシンボリルドルフとナリタタイシンが居ればどうにか出来るだろう

念のために、先程グラスワンダーとエルコンドルパサーにも声をかけたので何かあったとしても問題ないはずだ

 

欲を言えば、サイレンススズカかミホノブルボン、もしくはライスシャワーがいれば最良なのだが、そこまでの時間はかけられないと判断している

 

 

 

お、カフェじゃないか?

 

 

彼を見つけた

 

私の焦燥した姿を見た彼は表情を改めて

 

 

直ぐに連れてってくれ

 

 

とだけ言ってくれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アグネスタキオンを何とか静止しようとするシンボリルドルフとそのシンボリルドルフを睨みつけるアグネスタキオン

 

 

そんな膠着状態の中

 

 

 

間に合いましたか

 

マンハッタンカフェと

 

 

随分と懐かしい表情(かお)してるな、タキオン?

 

彼が入ってきた

 

 

 

 

聞きたいことがあるんだが、構わないかな?

 

 

タキオンの声は更にトーンが下がった様にシンボリルドルフには感じられた

ともすれば、圧力すら感じる程に

 

 

タキオンの質問に答えなかった事、あったか?

 

 

それでも、彼の声色に動揺も躊躇いの色もなかった

 

 

 

 

 

 

 

タキオンの質問に答えなかった事、あったか?

 

 

そのセリフを聞いたアグネスタキオンは不愉快そうに眉を顰めた

 

 

確かに答えなかった事はないね。しかし、はぐらかした事は山程あると思うのだがね?

 

 

そりゃあな

それのどこに不満があるんだ?タキオン

 

 

アグネスタキオンの怒気など素知らぬ顔で受け流す彼

 

 

不満しかないね。キミはいつもそうさ。私には夢を追いかけろという。些事は自分が片付けるから、とね

 

 

彼は怪訝そうな顔をする

 

 

今までそれで上手くやってた。それじゃ不満なのか?

 

 

不満だね。いつも気になっていたんだよ。私は夢を追いかけるとして、キミはどうなるというんだい?

 

 

タキオンは彼を睨みつける

 

 

どう、とは?

 

 

この期に及んで、まだ惚けるつもりなのかな?

 

私はこう聞いているのさ?

 

 

私の夢が叶った時、キミは何処にいるつもりなのか?とね

 

 

タキオンの視界の端に息を呑むルドルフとタイシンの姿が映った

 

しかし、今はどうでも良かった

 

 

 

今のアグネスタキオンの最重要課題は、目の前の分からず屋を説き伏せる事であったから

 

 

 

 

 

 

 

 

何処にいるか、か

 

 

彼はどうでも良さそうに呟いた

 

 

 

それだけで付き合いの長いタキオンには解ってしまったのだ

 

 

『この男はその未来に自分の存在を必要としていない』事が

 

 

 

 

ふざけないで欲しいものだね。キミは私と共に歩むと言った筈だ。それを嘘にするつもりなのかな?

 

 

タキオンは内心泣きそうだった

 

それはそうだろう

いつも、いつまでも一緒だと思っていた相手が実は未来などを見ていないなどと言うのだから

 

 

 

タキオンにはルドルフ達やスカーレット達がいる

それで良いじゃないか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タキオンの中の何かが弾けた

 

 

 

巫山戯るのも大概にしてよ!

 

 

最早それは悲鳴に近かっただろう

 

 

貴方がいたから、私は歩き続けられた!その貴方を失ってまで歩き続けたくない!どうしてわかってくれないの!

 

タキオンが感情に任せた時にしか出ない、女の子らしい口調だった

 

 

・・・しろってんだよ

 

 

彼は小さく呟いた

 

 

 

そして

 

 

じゃあ、僕はどうすれば良かったんだよ!

 

 

彼もまた悲鳴に近い声をあげた

 

 

親は人の家庭のことだから、迂闊に踏み入るなって言う!じゃあ学校に相談しても、近所の人に相談しても、誰も答えてくれない!!役所に相談しても、僕はタキオンの家族でも大人でもないから対応できないって言われた!!それでもキミは傷ついていたのに!なのに僕はただキミの側にいる事しかできなかったんだぞ!!

 

 

それは長い事溜め込んでいた彼の悲痛な叫びだった

 

 

 

 

アグネスタキオンが両親に半ば放置されている事を知った彼はまず両親に相談した

しかし、両親はタキオンの家の事だからとそれ以上の事を彼に言わなかった

 

そんな事は彼自身よく分かっている

 

 

でも、そうじゃない。あのなんだかんだ言って、楽しそうに走っていた憧れていた少女が泣いていたのだ

涙こそ見せはしなかったが、彼にはそう見えた

 

だからこそ、助けたかった

 

 

両親があてにならないと思った彼は学校の担任や学年主任などにも相談した

 

しかし、学校関係者が生徒の家庭の事情にまで踏み込む訳にはいかない。と言われただけだった

 

 

それでも、彼はタキオンの為に近所の大人達にも相談した

 

だが、誰もが彼のする事に眉を顰めて相手にしなかったのだ

 

 

最終手段として役所や警察にまで相談したが、彼等は

 

 

自分達の管轄ではない

 

と彼の悲痛な想いに応えようとしなかったのだ

 

 

 

 

 

だから、彼は自分の両親や周囲の大人達にとって『良い子』を演じながら、タキオンの為の力を蓄える事としたのだ

 

 

それはまだ幼かった彼にとって、精神的に相当の負担を強いる事であり、何度もストレスで彼は食事などを戻したりしていた

 

 

 

それでも、彼はタキオンの事が好きで、彼女の力になりたかった

 

 

 

献身的といえば聞こえは良いが、それは彼自身を削りながらタキオンに捧げるが如き所業だったのである

 

 

 

 

そして、タキオンが体調を崩した一件から周囲の大人達は手のひらを返した様に協力的になっていった

 

しかし、彼の心は全く動かなかった

態度には一切出さず、心を殺して彼等の協力を受け入れたのだ

 

 

 

タキオンがトレセン学園に行く事に反対しなかった理由は、そんな連中との関係を彼は打ち切りたかったのである

 

 

憎悪した感情はやがて摩耗し、いつしかそれは無関心どころか虚無へと至ってしまったのだ

 

 

 

それでも尚、彼に残っていたのは

 

 

アグネスタキオン(自分の好きな人)の世界を守りたい

 

という最早呪いにも似たナニカだった

 

 

 

 

人はそれを妄執と言うのだろう

 

 

だが、彼にとってそんな事はどうでも良かった

 

マスコミが様々な方法で邪魔をしてくるのを見て、殺意すら覚えていたが、彼は

 

 

 

そこまでネタ()が欲しいのか?ならば自分達がそれになると良い

 

と考えた

 

 

 

幸いというべきか、タキオンの件で彼は人の悪意には非常に敏感だった事もあり、トレセン学園周辺の警察の中にも温度差がある事も朧げながらに感じていた

 

 

更にセキリュティを重視してくれた結果、マンションとしては高額な賃料となった事もあり、そこに住んでいる住民からもよく思われていない事も理解していた

 

まあ、彼等からすれば高い賃料を払って住んでいるというのに、そこに子供2人だけが越してきたとなれば不満の一つや二つ出る事も分からなくはない

 

 

更にトレセン学園自体が取材行為について、完全にシャットダウンしていた事は周辺に張り込んでいるマスコミ各社の記者達の不満を集めている事とて分かりきっていた事だった

 

 

 

だが、彼にとっての誤算はマンションに出入りしていた納入業者がまさか自分とタキオンの写真を撮った挙げ句、それをネットに晒すとまでは思っていなかった事だった

 

幸いにもタキオンはフードをかぶっていた上に後ろ姿だった為に特定されるリスクは最小限に抑えられたが、彼はバッチリと写真に写ってしまっていた

 

 

彼はそれを受けて、方針を転換するほか無いと考えを改めたのだ

 

 

 

 

今までは仲間を増やす事でタキオンを守るモノを増やす事に注力してきた

しかし、今回の件で間違いなくタキオンにも悪意が届きかねない状況となった為に、彼は積極的に相手側のヘイトを買う方向にと軌道修正したのだ

 

 

 

 

 

 

だが、この根底には小学生の頃の大人達に対する拭い難い不信感が存在していたのだった

 

 

 

タキオンに笑顔を見せつつ、その裏でこ狡賢い事をしている事実は彼に更なる精神的負荷をかける事となった

 

 

 

 

 

そして、その集大成とも言えるのが先にあった傷害事件だったのだ

 

 

 

彼の望みはそこで死ぬ事だった

 

 

そうなれば、例えマスコミがどう取り繕おうが、加害者の事情がどうあろうが、警察がどれだけ不満を抱えようが関係ない

 

 

死人が出る以上、それに携わるもの達は必ず何処かで報いを受ける事になり、それは翻ってタキオンの安全を確保する為のものとなるはずだった

 

 

 

 

だが、死ねなかった

 

 

彼の独白を聞いたタキオンは勿論、ルドルフ達も顔色を真っ青にしていた

 

 

そんな事をして、私が喜ぶとでも思っていたの?

 

 

タキオンは涙を浮かべていた

 

 

 

 

 

 

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

 

タキオン、お前何っ!

 

 

 

 

 

 

 

場が静まり返った

 

 

 

タキオンは彼に抱きつくとキスをしたのだ

 

 

 

しかも、フレンチでなく深い方で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それはタキオンが二度と彼を離さないという意思表示に他ならなかった

 

 

唇を離したタキオンは彼を見つめて

 

 

私は言ったはずだよ?貴方が地獄に堕ちるというのなら、私も一緒に行く、とね?

 

 

そして、タキオンは優しい笑みを浮かべた

 

 

ありがとう。崩れ落ちそうだった私を懸命に支えてくれて

 

 

ありがとう。こんな私の為にボロボロになるまで戦ってくれて

 

 

ありがとう。私を愛してくれて

 

 

 

タキオンは呆然としている彼をその胸で抱きしめた

 

 

 

 

 

っっっっ!!

 

 

 

ーーーーーーー!!

 

 

 

 

彼はタキオンの胸の中で、声にならない叫びを上げた

 

 

 

 

 

 

 

 

私は貴方にとって、頼りないし、重荷になるかも知れない。それでも、私は貴方といたいと思っているの。一緒に生きていこう?痛みも苦しみも喜びも全て分かち合って

 

 

 

 

その時のタキオンはシンボリルドルフから見ても、本当に美しかった

 

 

 

 

 

 

 

(哀しみ)を知りながら、愛に生きる

 

アグネスタキオンはその時、強くそれを誓った

 

 




やっと、タキオンと彼の道が交わった


長かった
本当に長かったです


これを書きたいが為にこの小説を書き始めたと言っても過言ではなかったりします


実は小説投稿時から、この話だけは殆ど完成していたりします


後はひたすらにバカップルしたり、ルナしたり、タイシンしていきたいと思ってます

残りの伏線も回収しますが

今回から新しくアンケートしますので、宜しければご協力の程、宜しくお願いします

ではご一読ありがとうございました


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 淑女達の宴

雨が降って、住民票の移動をする為に休みとなったので投稿します


これからはシリアス二割にほのぼの五割、ギャグ三割くらいにしたいかなって



ギャグセンス?
知らない子ですね?

というわけで、どうぞ


此処はトレセン学園にある、とある一室

 

 

そこには数人の影があった

 

 

 

さて、今回の議題ですが沈黙さん、どうぞ?

 

 

進行役の発言を受けてオレンジ色の美しい長い髪の人物が立ち上がった

 

 

はい

今回、私達の思惑とは異なりましたが、無事2人の仲は戻ったと見て良いと思います

ですが、このままではダメだと思うんです

 

 

一人の人物が挙手した

 

 

どうぞ、閃光さん

 

 

閃光と呼ばれた黒髪の美しい人物は

 

 

ありがとうございます、議長

沈黙さんの意見には概ね同意出来ますが、実際にどうするか?

それが問題では無いかと

 

 

 

 

部屋にいるもの達は考え込む素振りを見せた

 

 

一つ提案がある

 

ボリュームのある髪の人物は議長に発言許可を求めた

 

 

どうぞ、平家さん

 

 

平家と呼ばれた人物は

 

私としては、これを機に二人のみならず他の二人も交えた上で更なる関係の発展を目指すべきでは無いかと考える

さしあたって、統括は協力してくれると思うか?議長

 

 

それには及びませんわ

この会議で議決された事柄については、余程のことで無い限り統括達は実行する手筈となっておりますの

 

 

室内がどよめいた

 

 

一つ構わないだろうか?

 

美しい白い長い髪の人物が発言を求めた

 

 

ええ。山県さん、どうぞ

 

 

私が思うに二人には余裕がないのが問題だと思うんだが、どうだろうか?

 

 

確かに、私達のトレーニングなどを見ながら、来年度に向けてトレーナー向けの講義なども担当していると聞いてます

しかも、その上あの人はトレセン学園内に住居を持っていないとなると

 

 

ああ。負担は私達が思う以上に深刻なものでは無いかと私は思っている

 

 

ふむ。ならばいっそ彼をトレセン学園に住まわせる事は出来ないのだろうか?

幸いにも彼はトレセン学園内でのキチンとした仕事がある

となれば、その彼が外部から通勤するというのはトラブルの元だと思うのだが

 

 

山県の発言から沈黙が懸念を示し、平家はその根本的な解決策を提案した

 

 

ですが、彼はその提案を受け入れるでしょうか?

 

 

閃光の疑問に

 

 

 

難しいですわね

あの人はなんだかんだ言っても、他人の事を考えるいえ、考え過ぎる人ですから

 

 

 

流石に私の故郷で羽を伸ばす訳にはいかないでしょうし

 

 

閃光は無念そうに呟いた

 

 

うん、そうなると私の地元なんかはどうだろうか?

幸いにして、中京の中心地である名古屋にも近いから此方からの交通の便も良い

 

 

確かにな

更にそこならば下呂や飛騨高山にも近い

観光にももってこいだろう

 

 

そうなると、やはり宿ですわね

 

 

 

閃光の発言から俄に議論の方向性がまとまりかけてきた

 

 

 

あまり騒がしくされるのは好ましくないと思うのだけど

 

 

となれば愛知ではなく、岐阜や滋賀辺りが妥当か?

 

 

そうだね

幸い、岐阜からならば大垣鉄道を使えば滋賀の米原まで1時間もかからない

そこからなら、時間さえ気にしなければ在来線でも京都にいけるし、時間的余裕がないのなら、岐阜や米原からでも新幹線に乗れるからね

交通のアクセスも問題ないと思う

 

 

あの人は歴史が好きだったはず

 

 

となれば、名古屋の方が良いのではありませんか?

 

 

 

 

 

 

方向性が定まれば、この場にいる彼女達は活発に議論出来る

この集まり。正確にはその後援組織は資金力も豊富な事からも、この提案が許可される可能性は非常に高いと彼女達は判断していた

 

 

 

 

 

そして、この場で決定した事は直ちに統括を通じてトレセン学園理事会への提案としてあげられる事となった

 

 

 

ふむ、慰安旅行か

 

悪くは無いのではないですかな?

 

そうですな。確かに彼への負担が過ぎるのも事実ですし、彼不在時に色々と動く事が出来るでしょう

 

いい加減、目障りだからな

 

 

トレセン学園理事会の面々にとって、今年トレセン学園周辺で起きた出来事は何一つ歓迎できないものであった

 

 

元々、トレセン学園の経営が軌道に乗り次第、マスコミ関係者を学内に入れて取材をさせるつもりだった彼等からすれば

 

何故待てないのか?

という疑問しか持てなかったのである

 

しかし、情報には鮮度があり、他の局が取り上げているニュースを取り上げたところで大した注目を集められないと言うのが彼等マスコミの主張であった

ましてやインタビュー出来るのはトレセン学園理事長である秋川やよいのみともなれば、尚更だった

 

 

彼等が望む絵。それはトレセン学園に通うウマ娘達であり、秘密のヴェールに包まれている『現代のシンデレラ』であったのだから

しかし、それはトレセン学園理事会として容認しかねるはなしであった

訳で

 

結局、彼等マスコミにとってメリットたりえないものが選択肢として残された為に彼等は反発したのである

 

 

 

 

が、そんな事は理事会からすれば知った事ではない

 

 

理事会からすれば

 

譲歩したんだから我慢しろよ

 

 

と言うのが本音だった

 

 

 

 

なお、クガヤシ氏に出バを要請したのは総理以下新党に参加する予定だった現職の総務大臣であったが、彼女が動くべきだと決意したのはかつての『研究会』のメンバーであったメジロ当主と理事会に所属するある人物の働きかけがあった為であったりする

 

 

 

理事会なりに彼等マスコミの無法ぶりに怒りを感じていた訳だったのだ

 

 

 

 

成程、確かにマスコミ関係者は更なる名声や利益が欲しいのだろう。それは誰しもそうだ

 

 

他者より先へ

他者より上へ

競い、妬み、憎んで

その身を食い合う

 

 

とはとあるアニメの黒幕のセリフであったが、それはある意味では真理であったのだろう

 

 

 

だが、それを我慢も制御も出来ないのであれば、私達は獣以下の存在であると彼等は確信する

 

 

獣は確かに獲物を狩る

 

 

だが、それは生きる為であり、それ故にそれは残酷でありながら、儚くも美しくすらある

 

 

 

 

だが、自らの欲望の為に他人、しかも子供をこぞって食い物にしようというのはあまりにも情けないではないか?

それを自分達の子供達に胸を張って見せられるとでもいうのか?

 

 

 

 

 

トレセン学園という巨大な組織

 

当然、それに絡むのは様々な利権である

彼等理事会の人間とて、それを目当てにしていないとは言わない

 

 

 

 

 

 

しかし、彼等は

 

 

 

懇願っ!!

どうか、どうか私の考えている事に協力してほしいっ!

 

今のままではダメなのだっ!

 

 

 

 

 

自分達のところにアポ無しで押しかけてきて、土下座せんばかりの勢いで頼み込んできたあの小娘(・・・・)の真剣で真っ直ぐな目を見て何かを感じたからこそ、トレセン学園という大博打にうって出たのだ

 

 

 

 

 

そこに一抹の憧憬があった事を彼等は話そうとはしない

 

 

だが、彼等理事会のメンバーが忘れかけていた『大切なモノ』が確かに今、彼等の胸の奥に息づいているのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という訳で、だ。今度の週末旅行に行くとしよう!

 

 

突然すぎて、草どころか芝生えるわ。トレセン学園だけに

 

 

っ!な、なるほど。トレセン学園のターフと芝をかけたのか。流石だな

 

 

いやごめん。アンタが何言っているのか全然わかんないわ、ルドルフ

 

 

 

トレセン学園にていつものメンバー達(サイレンススズカと愉快なトレーニング仲間)とのメニューをこなして帰宅しようとしていた彼は突然後ろからタキオン(ハニー)に抱きつかれて言われた事に困惑した

 

 

 

なお、明らかに風紀的に問題しかなかったのだが

 

 

 

 

うむうむ。今日も学園は異常なしですね!

 

 

どこを見て異常なしと思ったんですかねぇ?(現場猫感)

 

 

 

と我らが風紀委員長のお墨付きであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おや、タキオン。戻ったんですか?

 

おう、どうしたよ?

今日は帰るんじゃなかった、のか?

 

 

タキオンの研究室に4人が入ると、マンハッタンカフェとエアシャカールがそこにいた

 

カフェはこの部屋にコーヒーミルや自分の本などを持ち込んでおり、自室と何ら変わらない空間を作ろうとしていた

 

 

エアシャカールもまた、様々なデータを収集できるタキオンの研究室にいる回数は多かった

 

しかし、どういうことかタキオン達が帰って来た事をみた彼女の表情は引き攣っていた

 

 

 

 

そして、マンハッタンカフェとエアシャカールは

 

 

 

(おい、タキオンの奴だけじゃなくて、奴もいるぞ)

 

(それはそうでしょう。彼はタキオンの彼氏なんですから、居たとしても問題ないはずでは?)

 

エアシャカールのアイコンタクトにカフェも応じる

 

(そりゃそうだがな。奴がいるということは)

 

(まあ、タキオンしますね。間違いなく)

 

エアシャカールの間違いであって欲しそうな懇願するかの様な視線を受けてもマンハッタンカフェは冷酷に真実を突きつけた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレセン学園豆知識

 

 

タキオンする(動詞、形容詞)

 

 

バカップルするの最終形態

ルナするやタイシンするのある意味究極系にして、到達点

 

 

抱きつく?頭を撫でる、撫でられる?

 

そんなものは序の口に過ぎない

 

 

突然彼に抱きついて、頬ずりしたり、見つめあったり、そして粘膜的接触をする

 

 

なお、2人きりの場合はタキオンが彼に甘噛みしたり、彼がタキオンの耳や尻尾などを丁寧に慈しむ様に撫で回したりする

 

 

 

高確率で周辺のウマ娘達がデジたんと化す副作用がトレセン学園内で確認されている

 

 

 

 

 

 

トレセン学園豆知識、其のニ

 

 

デジたんする(動詞)

 

 

通称、尊い生産機。または尊いBot

 

仲の良い2人、トレセン学園内においては主にアグネスタキオンとその彼氏。彼とシンボリルドルフと彼とナリタタイシンの掛け合いや触れ合いを見たものが陥る現象

 

 

 

自分達が望んでやまないそんな光景を見た彼女達は、そこに理想郷(アヴァロン)を見出すだろう

 

そして、それにより彼女達は恍惚とした表情を自覚なく浮かべてしまう

 

 

または『広範囲マップ兵器』(バカップル)の被害者達とも言えるだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

(なあ、逃げていいか?)

 

(だめです)

 

 

マンハッタンカフェの即答にエアシャカールは肩を落とす事になる

 

 

 

分かっていた。此処(研究室)に来るということはそういう事もあり得る事くらいは

 

 

だが、それを差し引いてなお、此処の充実ぶりは凄まじいの一言に尽きる

 

 

 

研究室設立以来増え続ける研究資料や各種データ

更にタキオンが試作薬を送った事に対する返礼と言わんばかりに、更に増えた研究機材や社外秘ともいえるデータすら此処には揃いつつあったのだから

 

 

勿論、シャカールはカフェの様にタキオンの研究助手ではないので、これを使用しての新薬開発などをする事は出来ないが、それでもシャカールにとって此処はトレセン学園の図書館以上に価値のあるものだったのだ

 

 

 

であるからして、エアシャカールはタキオンの彼が此処に来ない事をいつも願っている

 

 

人の夢と書いて儚い

 

つまり、そういう事であるが

 

 

 

 

 

 

 

しかし、慰安旅行か

 

いいんじゃない?アンタ達最近疲れてるでしょ?

 

しかしなぁ、トレセン学園の本格的な始動まで半年を切ったというのに此処を留守にするのはどうかと思うんだが

 

 

 

 

 

 

 

 

ピロリンッ!

 

 

彼の携帯電話がメールを知らせた

 

 

 

 

 

 

 

そこには

 

 

 

 

 

 

 

 

 

発信者

 

東條ハナ

 

 

件名

 

いつも私達への指導ありがとうございます

 

 

内容

 

今週末、教官は慰安旅行に行かれると聞きました

次の講義については、桐生院トレーナーの担当ウマ娘であるハッピーミークさんに臨時講師をお願いすると通達がありましたので、是非ゆっくりして来てください

私達への講義はまた来週よりお願いします

 

 

追伸

 

いつも私達への丁寧な指導。受講者として御礼申し上げます

 

 

追伸2

 

教官。どうかウイニングライブの練習だけは勘弁してもらえないでしょうか?

勿論、教官の言わんとしている事は私達にも理解できますが

 

 

 

との事であった

 

 

流石だねぇ

 

桐生院トレーナー。うん、無理やな

 

 

 

彼は東條トレーナーの判断に同意した

 

 

 

何故か?

 

 

文面には桐生院トレーナーつまり桐生院葵にではなく、その担当ウマ娘であるハッピーミークに臨時講師を依頼するとある

 

 

そして、彼の桐生院葵に対するイメージはトレセン学園に来た時のイメージであった

 

勿論、トレーナーとしての知識や経験があるのは認めるが、彼女はハッピーミークとあってこそ、トレーナーとしての力量を十全に発揮できると彼は判断していた

 

 

つまりはそういう事であったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

という訳で、彼の懸念材料が消え去ったので残るはシンボリルドルフ(生徒会長)だけであったのだが

 

 

 

会長

何故そこで下がろうとするのですか?!

 

そうだな

流石に臆病にも過ぎるだろう

 

 

慰安旅行の件をタキオンから聞いたルドルフは生徒会室に戻ると忙しいので断ろうかと彼女達に話をした結果、これであった

 

 

 

良いですか?

確かに会長と奴の関係は世間一般では好ましくない関係だと思います!ですが、それで本当にいいのですか?

 

グルーヴ。小難しい事を言う必要はない

いいか、会長。ではお前はタキオンとナリタタイシンが奴と仲睦まじくしているのを黙って見ていられるのか?

少なくとも、お前は他のウマ娘達と違い、その輪に入る事が出来ていたというのに、だ

 

 

ぐうの音も出なかった

 

 

 

(あの温かさを、温もりを、安らぎを、タキオンとタイシン以外にわたせるのか?)

と自問すると

 

 

すまない。グルーヴにブライアン。悩む必要はどこにも無かった様だ

 

 

いえ

 

アンタは余計なことばかり考えすぎだ

そういう意味では奴とお似合いなのだろうがな

 

ふふっ、それは私にとって何よりの褒め言葉だよ。ブライアン

 

 

ルドルフは柔らかい笑顔を浮かべると

 

 

ではタキオンとの打ち合わせに行ってくるとしよう。すまないが宜しく頼む

 

 

任せてください

 

土産話くらいは聞かせてもらうぞ?

 

 

 

 

 

 

やれやれ面倒な奴だな

 

そうは言うがブライアン。まさか貴様が会長の背を押すとはな

 

 

ブライアンは

 

忘れているかも知れんがな、私はあちらでも副会長なんだ

その私が奴の幸せを望んだとして不思議か?

 

 

と悪戯っぽく笑った

 

 

 

 

 

 

ナリタタイシンの場合は

 

 

次の週末旅行に行ってくる。悪いとは思うけどさ

 

 

いえ。たまの休息は効率的なトレーニングに欠かすことの出来ない物だと思います

問題ないかと

 

うん、ライスもそう思うよ?

タイシンさん、楽しんできてね?

 

ええ。ブルボンさんとライスさんの言う通りです

少し気晴らしに行ってくると良いと思うわ

 

え、じゃあトレーナー居ないんだ!

やったぁ、これで少しは休める

 

 

タイシンと彼の休養を喜ぶスズカ達とタキオンと彼がいなくなる事でその日のトレーニング内容が楽になる、とジャラジャラは喜んだ

 

 

 

 

ジャラジャラさん。貴女は私達と一緒に樫本トレーナーのところのリトルココンさんとビターグラッセさん達とのトレーニングがあるので、心配しなくて良いですよ?

 

とジャラジャラの発言を聞いたスズカは菩薩の様な微笑みを彼女に向けていた

 

 

だが、ジャラジャラは知っている

このスズカはかなり怒っている時のスズカである事を!

 

 

あれ?私もしかして、墓穴掘った?

 

 

 

ま、頑張れ

 

 

軽い!軽いっすよ、タイシンさん!

 

 

この状況でナリタタイシンが選んだのはジャラジャラを助ける(蛮勇もしくは無謀)ではなく、彼女を見捨てる(戦略的撤退)であった

 

何故かって?

 

 

 

誰が好き好んでサイレンススズカ(トレセン学園最強戦力)を相手にしようというのか?

 

かの薩摩隼人もびっくりな大和撫子こと、グラスワンダーですらスズカには及ばないのだ

 

 

グラスとて彼から教わった剣道に始まり、柔術、薙刀、華道、茶道に薩摩示現流などの数々の教えを吸収して来た学園屈指の猛者なのだ

 

 

思わず

 

おい、レースしろよ

 

 

とツッコミたくなる様な内容であったが、海外留学組は大概個性的なので問題視されなかったりする

 

 

エルコンドルパサーは格闘技やキャットファイトに興味を持ち、エイシンフラッシュはトレーニングの傍ら、日本独特の和菓子などについて興味を待っていたりする

 

それでもなお、彼女達はトレーニングも欠かさない辺り、やはり優秀なのだと周囲の人達は感心していたが

 

 

 

なお、トレセン学園部外秘緊急マニュアルによると、有事の際はグラスワンダーが彼を、サイレンススズカがタキオンを。それぞれ護衛する計画に組み込まれる程なのである

 

だが、そのグラスワンダーをして、サイレンススズカには届かない

 

スズカのヤバさが理解できるというモノだろう

 

 

なお、ミホノブルボンとライスシャワーもまた、スズカには及ばないものの直接的戦闘力はグラスワンダーのそれを上回る事も付け加えておくとしよう

 

 

『トレセン学園一の武闘派集団』は伊達ではないのだ

 

 

 

 

 

それならば、まだタキオンしている所を邪魔する方がマシであろう

 

 

 

なお、もし仮にタキオンしている最中に邪魔をした場合、ゲーミング化(七色に発光する)事を覚悟せねばならない

 

 

 

 

経験者である彼曰く

 

 

ああ、アレ(ゲーミング化)はなぁ

 

 

 

鏡とか水辺とかで自分の姿見る時辛くなるのよ

 

 

と苦々しくこぼしていたりする

 

 

 

 

・・・・・まあ、他に言う事がないのか?などのツッコミが必要かも知れないが、タイシンとて己の身は惜しい

 

 

 

彼の命がかかっているとか、タイシン達の恋模様に関するものであればタイシンとて迷う事なく、挑んでいけるだろう

 

 

 

しかし、コレは流石のタイシンとて持て余す事でしかなかった

 

 

 

まぁ、それでもタイシンは彼の事を愛している訳だが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私に味方はいないんですかぁ!?

 

 

 

いません

 

 

彼女の言葉に反応する者が誰一人としていない時点でお察しだった

 

 

 

そんなこんなで、ジャラジャラの悲鳴は虚しく響き渡る

 

 

 

 

 

 

 

 

とはいえ、リトルココンとビターグラッセのトレーナーである樫本氏は良くも悪くも善良で常識的な人物であり、タキオンや彼(頭おかしい2人)に比べるべくも無かったりするのであるが

 

 

 

 

 

 

ジャラジャラとしては、いつもの様な地獄みたいなトレーニングを覚悟していたのだが、思ったよりも楽なトレーニングだった為に樫本トレーナー達の元を離れた後で自主トレーニングをしていたのは此処だけの話である

 

つまり、ジャラジャラは樫本トレーナーのトレーニング内容だけでは不足していた訳であった

 

ジャラジャラは

 

一緒にトレーニングしている自分達に遠慮して軽めのトレーニングとしてくれたのかな?

 

 

と考えていたりする

 

 

 

 

リトルココン、ビターグラッセ「いや、その理屈はおかしい」

 

サイレンススズカ、ミホノブルボン、ライスシャワー「やはりジャラジャラさんも染まってますね。今度から一段階トレーニングの質を上げる様にタキオンとあの人に話しておきましょうか」

 

樫本トレーナー「え、なにそれ怖い」

 

 

 

 

と後日それを知ったココンとグラッセに樫本トレーナーは戦慄し、スズカ達はジャラジャラが順調に適応している事を確認できた為に、満面の笑顔であった事をここに記す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ、そんなこんなでタキオンとルドルフ、タイシンに彼の四人のみでの慰安旅行と相なる事になった

 

 

 

 

 

なお、それを聞きつけたメジロ一の暴走特急(ゴールドシップ)

 

 

面白そうじゃねぇか。うっし、アタシが行って更に楽しくしてくる!!

 

 

と学校でアグネスデジタルの前で発言したが為に

 

 

彼女は物理的(・・・)に制圧されてしまった

他ならぬアグネスデジタルによって

 

 

 

 

実はスカーレットとウオッカだけでなく、デジタルにも効果的なトレーニングを学園に入学したら施す為に、基礎能力向上用のトレーニングメニューを姉と兄から贈られていたのであった

 

メジロでウマ娘として多少のトレーニングをしているゴールドシップと未来を見据えた計画的なトレーニングを毎日欠かさずしているデジタルでは、その地力に大きな差がついていたのである

 

 

 

 

なお、突然の食堂での凶行に

 

 

 

ワザマエ!

 

あの(・・)ゴールドシップを一撃、だと?

 

なんだあれは、たまげたなぁ

 

まさかのゴールドシップのストッパー役か?

 

ちくわ大明神

 

誰だ?あの桃色の子は?

 

おい、誰だ。今関係ない事言った奴は?

 

 

 

 

などと概ねアグネスデジタルを称賛する空気だった

 

 

これはゴールドシップが嫌われている訳でなく、突拍子のない行動ばかりしている彼女とどう接したら良いのか分からない者が多かったからである

 

 

 

この日を境にして、ゴールドシップに対する学校の同級生達の対応が割と雑なものになっていったが、ゴールドシップとしては腫れ物扱いされるよりも余程嬉しかったらしく、それからのゴールドシップは平日にトレセン学園へと赴く事は無くなった

 

 

同級生達と全力でバ鹿な事しているゴールドシップは、その名の通り輝かんばかりの笑顔だったそうな




2人、もとい4人の幸せの為に彼女達は暗躍し続けます


アンケートの編集間違えてて、草

急いで訂正したので、引き続き協力をお願いします



なんと、お気に入りが600件を超えました
ありがたい事です

こんな稚拙な文を読んでいただけた上にお気に入りに登録までして頂いている事に至上の感謝を

評価をつけてくださった皆様には大いなる感謝を


という訳で、それに報いるべく私は年末まで駆け抜けます

宜しければお付き合いくださいませ


ではご一読ありがとうございました


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 明日へ羽ばたく者達

必要な情報詰め込んだら、まさかの一万文字オーバーと、震えるな



年末も近いので、バクシンします!

年末までに本編完結させるぞ、おー!


というわけでいつも通りのぐだぐだですが、宜しければお付き合いください


時は流れ

 

 

 

アグネスタキオンという少女とその幼馴染であった少年は無事今までの苦労が報われる事となった

 

 

だが、それは当人達だけの努力によるものではない

 

誰かが、沢山の友人達が彼女達を支えてくれていたからであった

 

 

 

 

 

トレセン学園一期生が卒業する、今日この日

 

 

アグネスタキオンと彼は新たな門出を迎える事になる

 

 

 

 

 

アグネスタキオンは再来年から始動する『トレセン学園栗東教育センター』の『健康管理室室長』となる事が決定している

 

彼もまた『トレセン学園栗東教育センター』の『ウマ娘、トレーナーカウンセラー』となる事が内定している

 

 

今年一年は担当であるダイワスカーレットのトゥインクルシリーズの最後を飾る重要な時期である為に、トレセン学園理事長が学園理事会を説得した形である

 

 

幸いというべきか、栗東教育センターの完成もまた来年の夏頃を予定している為、時期的にも再来年の春からの運用となる事が決定されていた

 

 

 

 

 

 

 

他のウマ娘達の進路についても触れておこうと思う

 

 

 

 

 

 

メジロマックイーン

 

彼女は例の組織の会長職を見事に遂行してみせ、その後の『研究会』への移行という難事すら彼女はやってのけた

その手腕は学園理事長である秋川やよいをして

 

 

驚愕っ!

マックイーン。キミの手腕には驚くほかないっ!

よく、この難しかった組織をまとめ上げてくれた!

トレセン学園理事長として、また一人の大人として

メジロマックイーン。キミに感謝しているっ!

 

と絶賛するほど

 

 

 

実際、タキオンの彼にとって件の組織はアグネスタキオンを守る為の防波堤的なものであった

 

無論、タキオンの魅力を布教したいというのも偽らざる本音ではあったのだが

 

 

その一方で、天皇賞春の盾や今年の安田記念でも勝利したりとウマ娘としての活躍もめざましいものがあった

 

 

まさに『メジロの次代』を象徴するに相応しい人物であった

 

 

 

 

 

ナリタブライアン

 

 

トレセン学園初代生徒会副会長として、書記のエアグルーヴと共に会長であるシンボリルドルフを良く支え、問題の山積していたトレセン学園黎明期を見事に導いた

 

また、例の組織においても副会長として活動し、彼とタキオン、ルドルフ達の関係を積極的に支援した

 

彼女もまたウマ娘としての実力は高く、新旧対決となった今年の皐月賞では次世代を代表するダイワスカーレットやトウカイテイオー、ウオッカらを相手にしながらも圧巻の勝利をもぎ取った

 

ジャパンカップにおいて。海外勢と熾烈なレースを繰り広げたが、結果として6バ身もの差をつけて勝利した

 

 

なお、優勝コメントで

 

 

確かに海外勢は強かった

だが、彼女達以上に巧みな走りを見せる奴がいたのでな

 

 

と謎のコメントを残した

 

 

ジャパンカップの勝因はナリタブライアンらしかぬ、絶妙なコーナーでの戦術によるものだと、レース解説者は語っていた

 

 

 

エアグルーヴ

 

 

母親程の結果こそ残せなかったものの、それはライバル達の実力が母親の時代と比べ物にならぬ程高かったからである

 

しかし、トリプルティアラも獲得できず、不安定になった時期があった

 

 

担当トレーナーに感情をぶつけてしまい、彼に嫌われる事を覚悟していた彼女であったが

 

 

それでは俺はキミを支えたい

 

 

との言葉に見事ノックアウト

 

 

その後は周囲がドン引きするほどのバカップルぶりを見せる

 

 

 

だが、ウマ娘としての実力は確かであり

G1勝利数2回

G2勝利数7回

G3勝利数6回

 

という結果を残した

 

 

組織人としての能力も非常に高く、こと補佐能力においてはトレセン学園屈指との呼び声も高い

 

 

 

 

ビワハヤヒデ

 

 

ナリタブライアンの姉であり、ナリタタイシンの親友であり、BNW一の頭脳派であった

 

特にBNW揃いぶみだった弥生賞の死闘は未だに世間の印象に強く、それまでの彼女のイメージであった『冷静にレースを見る』というものを根底から覆し、どこまでも貪欲に勝利を求める姿勢を見せつけた

 

結果は、ナリタタイシンの追い込みに屈し、ハナ差で2着となるも世間からは屈指の好カードとの呼び声も高い

 

 

 

ウイニングチケット

 

 

ビワハヤヒデと同じくナリタタイシンのトレセン学園入学前からの友人であり、BNWの一角

 

その体躯からは想像できないほどのパワーを見せ、常に掲示板を外す事はなかった人物

 

弥生賞の死闘では親友であるナリタタイシンとの最終直線で壮絶な競り合いを見せるも、僅かに及ばず、隙をついたビワハヤヒデにも抜かれ3着となった

しかし、ナリタタイシンからウイニングチケットまで僅かクビ差であり、4着以下を7バ身以上離しての決着であった事から彼女達の実力の高さが分かるというものだろう

 

担当トレーナーとは遊び友達的な関係を築いており、自身がチケットから異性として見られていない事を担当トレーナーは嘆き悲しんだ

 

 

 

 

 

余談ではあるが、男性トレーナー達には『男どもの愚痴』という組織が出来上がっており、トレセン学園に所属する男性トレーナーの実に9割が参加している

 

 

主な活動内容は担当ウマ娘達の情報交換である

と言っても、別に悪い事をしようというわけではない

 

彼女達は多感な年頃である

 

 

それ故に様々な視点からウマ娘達を見て、危険な兆候がないかを気にかけるという互助的な組織だった(・・・)

 

 

なぜ過去形かというと、きっかけはオグリのトレーナーの一件だった

 

 

 

今年の春先に担当トレーナーとウマ娘の関係について、ある通知がなされた事で、今まで自重してきたウマ娘達が積極的に動き始めたのである

 

 

これには男性トレーナー達も困惑するほかなく、成功者(オグリと付き合ってる)であるオグリトレーナーに泣きついた

 

 

しかし、泣きつかれたオグリトレーナーとて困った

 

 

 

オグリトレーナーの成功には師匠(タキオンの旦那)が深く関わっていたのだから

 

オグリトレーナーとしては自分一人だった場合、ここまでまで出来たとは思っていなかったのである

 

 

 

 

しかし、泣きついてきたトレーナー筆頭である、エイシンフラッシュのトレーナーも退くに退けない事情があった

 

 

それは通知の後、担当であるエイシンフラッシュのアピールが目に見えて強くなってきていたのだ

 

元々、胸元を開けているフラッシュの勝負服自体が既に凶器だというのに、そのフラッシュが事あるごとに誘惑としか思えない行動を取り始めたのである

 

しかし、それでも流石はエイシンフラッシュと言うべきか

 

予定された時間通りにトレーニングなどは進める

 

 

 

フラッシュのトレーナーからすればたまったものではなかった

 

彼はまだ二十歳になったばかりである

あまりにもフラッシュの誘惑は魅力的であり、効果的だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、そのフラッシュの事を聞いた2人は

 

 

 

エイシンフラッシュかかってますねー。どうでしょうか、タキオンさん?

 

ふむ。この場合、かかる事自体が悪いことではないのだがね。しかし、中途半端なのはいただけないな。羞恥心を残すのはフェチズム的には大有りだろうし、彼女のトレーナーにも効果的だ

 

だが、あそこまで露骨だと流石にトレーナーとフラッシュ双方にとって厳しい展開となるだろうねぇ

 

なるほど

つまり、この展開だとエイシンフラッシュにとって不利になるというわけですね?

 

世の中には『肉食系男子』と言われる者がいると聞く。フラッシュのトレーナーがそうであれば良いが

 

そりゃ無理だ。彼『草食系男子』だから

 

 

と言い合っていると

 

 

いきなり何いうてんねん、自分らは!!

 

と我らがオカンことタマモクロス(ツッコミマスター)が鋭いツッコミを入れたとか何とか

 

 

 

 

 

 

 

話を戻す

 

つまり、このままではフラッシュトレーナーの理性という名の要塞が陥落する可能性が高かったのだ

 

 

 

なお、ここまでフラッシュが焦っている理由はアグネスタキオンには劣るものの、他のウマ娘達よりは先んじていたと思っていたら、いきなりオグリキャップに差し切られた事からの焦りであったりする

 

 

フラッシュとて、2人からアドヴァイスを受けていたが彼女の気質にあっていなかった事もあり、断念した

 

 

だがそれでもフラッシュは自身の計画の絶対性と皆よりも先んじている優位性は揺らぐことの無いものだと思っていたのだ

 

 

 

ところか蓋を開けてみれば、フラッシュはトレーナーとの距離をかなり縮めはしたものの、決定打に欠けていた

 

 

いや、この場合はフラッシュのトレーナーを褒めるべきだろう

 

彼はフラッシュよりも背が高い

当然だが、フラッシュは彼のそばにできる限り居たい

 

 

それは勝負服であろうが、スク水であろうが、制服であろうが関係あろうはずがない

 

 

 

 

 

さて、ここでエイシンフラッシュの勝負服について冷静に思い返して貰いたい

 

先にも述べた様にフラッシュの勝負服は海外のウマ娘であるからか、胸元が開いている

 

それを彼は見下ろす形となるのだ

 

 

 

更にそれに加えて、レース後の場合、汗などが付いている事が多い

 

 

 

 

 

これで彼女の魅力に落ちないものがいようか?

 

いや、いないはずだ

 

 

 

まあ、心に決めた女性(ひと)がいる者については除外するとして

 

 

 

 

 

更にフラッシュの趣味であるお菓子作りもまた女子力的には加点対象であり、彼女の株は上がる一方だった

 

 

 

 

 

 

 

というわけで、フラッシュトレーナーは絶体絶命だったのである

 

故に先駆者であるオグリトレーナーの的確な助言は何としてでも欲しかったのだ

 

 

 

 

困り果てたオグリトレーナーはそれでもフラッシュトレーナーの気持ちも理解できなくはないので、師匠に相談する事にした

 

 

その後、オグリトレーナーから相談を受けた彼は即座に動いた

 

というのも、彼とタキオンは以前フラッシュから相談を受けていたのだから

 

 

 

まずはフラッシュの父親である人物がドイツにおいて菓子職人として、非常に名誉ある立場にある事を知り、日本にもその弟子が経営する店がある事を調べ上げた

 

その上で、理事会のコネを利用する事でかの人物を日本に一時的に招待する段取りをつけてもらった

 

 

後はフラッシュとフラッシュトレーナーの問題であるとして、それ以上の介入をする事はなかった

 

ただし、マスコミが余計なこと(いつもの事)をしない様に手隙のグラスワンダーとエルコンドルパサーにスズカ達をそれとなく配置したが

 

 

 

 

 

 

結果、フラッシュとフラッシュトレーナーは父親公認の関係となり、フラッシュトレーナーはオグリトレーナーとその師匠に感謝する事になる

 

フラッシュトレーナーとてエイシンフラッシュというウマ娘が好きなのは間違いなかったが、彼女のことを思うと中々踏み出せなかったとの事であった

 

 

 

 

それは一般的にはヘタレているという奴では?

 

とオグリトレーナーは内心首を傾げたが

 

 

 

まあ、収まるところに収まったから、ヨシッ!

 

 

という師匠譲りのガバガバ理論で納得したとかなんとか

 

 

 

 

この一件により、オグリトレーナーが頼りになるとの評判が男性トレーナー達の間で上がるようになり、結果オグリトレーナーが『男どもの愚痴』の取りまとめ役として見られる様になった

 

 

非公開組織とはいえ、そんな立場をした事がない事をオグリキャップにある時溢すと

 

 

 

そうか?

貴方なら出来ると思うのだが

 

そうだな。それなら、貴方が師と仰ぐ人に協力してもらえる様に頼むと良い

 

 

とのアドヴァイスを恋人であるオグリキャップからもらう事になり、師匠に相談すると

 

 

大変だなぁ

手伝いくらいなら、しますよ?

 

 

と軽く受け入れられた

 

 

 

 

 

なお

 

 

やれやれ2人揃って彼に世話になる、か

これはもう、結婚式の仲人は決まった様なものだな

 

 

とオグリキャップがつぶやいていた事をオグリトレーナーが知らなかった事は果たして幸せだったのだろうか?

 

 

 

 

 

 

それはともかくとして、この組織はその後エアグルーヴのトレーナー

 

東條ハナのチームリギルの元サブトレーナーであった彼がようやく東條トレーナーに認められ、リギルでエアグルーヴのトレーニングなどの全てを任される様になった人物

 

など様々な迷える男性トレーナー希望の星となったとされる

 

 

 

 

 

 

なお、チームシリウスの沖野トレーナーはこれに参加しておらず

 

興味を持った沖野氏に対しては

 

 

 

 

すまんが、此処は良識ある人の集まりでな

 

初対面のウマ娘の脚を無許可で触る人はちょっと

 

スペシャルウィークだっけ?

ひでぇ事しやがるな

 

というか、スズカさんの蹴り受けて何で無傷なんですかねぇ?

 

お前には東條トレーナーがいるだろう!ぺっ!

 

 

などという理由から参加をやんわり?と断られていた

 

 

 

なお、男性トレーナーの間ではサイレンススズカ一派はさん付けで呼ばれている

 

 

理由は、察してください

 

 

沖野トレーナーがスズカの蹴りを受けて無事な理由。それは

 

 

 

トレーナー教官、つまり彼が

 

 

なるほど、なるほど。つまり沖野くんはウマ娘の脚質や肉付きなどを見るために彼女達の脚を触る事がある、と?

 

 

と沖野トレーナーの話を聞いた為に、沖野トレーナーに身体能力向上の為の特別メニューを課したからであった

 

 

 

 

 

 

テイエムオペラオー

 

 

別の世界線では『世紀末覇王』などという物騒な呼び方をされる事になる彼女だが、こちらでは常にライバル達と切磋琢磨しながら、更なる高みへと駆け上がっていた

 

学園を卒業したからといって、ウマ娘として活躍できない訳ではない事から、彼女はトレセン学園の卒業生用の寮に入寮して更に己を高めるべく鍛錬を続けるつもりである

 

ちなみに最近になって、以前から熱望していたとある案件がようやく許可が取れた為にウマ娘としてレースの世界から身を退いた後は歌劇の世界で生きていこうと誓っている

 

 

 

フジキセキ

 

トレセン学園学生寮寮長であり、卒業後も後任が決まるまでの間はその職に在り続ける事を決めた

レースに、寮の管理に、彼女自身の女性としての魅力を磨く事に彼女はいつも情熱を傾けており、それは寮のウマ娘達への無言の応援でもあった

後任が決まったら、新規開設の栗東にでも行こうかな?

と密かに考えている

 

 

 

ヒシアマゾン

 

フジキセキと共にトレセン学園のウマ娘達の生活を支えてきたタマモクロスやスーパークリークと並ぶ、もう1人のトレセン学園のお母さんともいえる存在

学園のウマ娘達は自由奔放な者が殆どの為に気苦労も絶えなかったが、それでも彼女は楽しかったというだろう

 

フジキセキとは異なり、身体が動く限りはトレセン学園学生寮寮長として働きたいと学園側に伝えている

 

実はアグネスタキオンが頭の上がらない数少ない存在でもある

 

 

 

キングヘイロー

 

 

常に高い意識を持って事にあたるその姿勢は、シンボリルドルフの範となっていた事をつい最近まで知らなかった

 

だが、結果が中々出ず苦しい時期が続いていた

それでも、彼女は

 

私はキングなのよ

諦めるなんて、出来るはずないじゃない!!

 

と己を叱咤激励し、常に立ち上がってきた『トレセン学園の不屈の乙女』である

 

今年に入るまではシルバーコレクターなどと世間から言われていたが、秋華賞にて待望のG1初勝利を飾ることとなった

 

彼女も友人であるテイエムオペラオーと同じく、更なる高みへと至る為に卒業後も学園に留まり、レースの世界に身を置き続ける

 

 

スーパークリーク

 

タマモクロスとオグリキャップと特に仲が良く、ナリタタイシンのルームメイト

甘えてくれなかったナリタタイシンに対して、悲しいと思っていたが彼女に転機が訪れた

彼女のトレーナーが仕事人間だったのだ

 

いや、正確には仕事以外ダメ人間だったのである!

まさにスーパークリークにとって理想的なトレーナーといえた

 

彼女はその全力でトレーナーの期待に応えつつ、トレーナーのお世話をする事で高いモチベーションを維持し続けた

 

 

ゲーム的な表現をするならば、毎ターン終了時に調子が1段階上がる、といったところだろうか?

 

 

 

なんだこれは、たまげたなぁ

 

なるほどねぇ。これもまた一種の永久機関なのだろう

 

 

 

と彼とタキオンですら驚愕していたりする

 

 

 

 

ナイスネイチャ

 

 

トレセン学園一の苦労人にして、『普通普通詐欺容疑ウマ娘』

本人曰く

 

いやぁ、あたしは普通だから

 

との事であるが、家事能力において万能といえるエアグルーヴを凌ぎ、こと掃除、整理整頓能力においてはタマモクロスを凌ぎ、料理の腕はスーパークリークを凌ぐものである

 

 

普通ってなんだっけ?

 

と思わず彼女をよく知る者達はこぞって頭を悩ませる事になる

 

 

ウマ娘としての力量も確かなものであり、シンボリルドルフ、ナリタタイシンにナリタブライアン、エアグルーヴ4人に勝利しているのはナイスネイチャだけだったりする

 

 

 

 

タマモクロス

 

 

トレセン学園における、みんなのオカン

お母さんになるとヒシアマゾンになり、ママになるとスーパークリークになるので、非常に大事である

なお、最近ではお母さんの対立候補としてエアグルーヴが人気を集めていたりする

 

そのキレッキレのツッコミ力から繰り出されるツッコミは最早芸術の域に達しており、『ツッコミマスター』との呼び声も高い

そんなタマモクロスなので、当然のようにレースでも高い実力を発揮する

とはいえ、彼女は芝ではなくダート専門であり、今年の東京大賞典こそ勝利を逃したが、去年の勝利者であり、親友のオグリキャップやハッピーミークなどと熾烈な争いを常にしている

 

卒業後は一度大阪に戻り、阪神競バ場の運営を手伝う予定らしい

 

 

 

オグリキャップ

 

 

『芦毛の怪物』『ダートの女王』などと呼ばれているダートにおける世代を代表するウマ娘である

そのどこか気品すらある佇まいから、ファンも多い人物でもある

元々地元である岐阜の為に何かしたいと思い立ってトレセン学園に入学した心優しい人物であり、普段の姿からは闘争心など窺い知れない

 

だが、ひとたびターフに立てば勝利を貪欲に求める姿勢を見せ、観客を圧倒しながら、その姿に魅力される

 

元々は食べる専門だったが、とある理由により彼女も作る事の喜びを知る事になり、担当トレーナーと共に地元で小料理店を開くべく来年一年は食品衛生管理者の資格取得の為に努力する事を決めていた

 

 

 

ライスシャワー

 

 

別名『漆黒の刺客』と呼ばれている引退して1年経った今でも最強議論に名を連ねる人物

 

元は先行タイプであったが、諸々の事情を考えた結果、彼女は差しへと戦術を変更する決意を固めた

だが、それは茨の道であり、文字通り身体を、魂すらも削りかねない過酷という言葉すら生温いトレーニングを彼女に課す事となった

 

しかし、ライスシャワーは諦める事なく、逃げずに真剣に向き合った

 

1年間というウマ娘の中でも短命といえるレースにおいて、ライスシャワーはその全てを出し切った

 

 

年度末に新設されたURAファイナルズ決勝において、トレーニング仲間であったミホノブルボン、サイレンススズカと共にレース中に怪我を負い、走り切ったものの引退となる

 

 

しかし、彼女は自身の選択を後悔していない

 

あの頃、ライスシャワー達のトレーナー役をしていた彼に対するメディア主体の批判的空気

それを彼女達は身をもって砕いたのだから

 

 

それ以降はアグネスタキオンと彼が育成するダイワスカーレットのトレーニングなどに協力しながら、楽しい毎日を送ることが出来た

 

卒業後はタキオン達と同じく、来年1年間はトレセン学園においてスカーレットの育成に協力し、再来年には栗東にて彼の手伝いをするつもりである

 

 

 

ミホノブルボン

 

 

ライスシャワーと同じく、己の信念に従い困難に挑み続けた人物

逃げに高い適性を持ちながらも自身の、そして後に続くウマ娘達の可能性を拓くべく差しへと転向した。

それは彼女の身体に相当の負荷をかけることになった為、さしもの彼もブルボン達を止めようとしたのである。

しかし、ブルボンを始め、ライスシャワー、サイレンススズカは一切ひかず最後には彼が根負けした

 

ブルボン達はその前年から続く、彼への偏執的な報道や悪意あるネット民の言葉を誰よりも気にしていたのである

それこそ、当事者である彼よりも

 

トレセン学園入学当時、ミホノブルボンは他の者から『サイボーグ』と誤解されるほどに感情が希薄だった

 

そのブルボンを変えたのが、あの講演会だった

 

だからこそ、ミホノブルボンは感情を与えてくれた彼に恩返しがしたかったのだ

 

 

それをファイナルズの後に彼に言うと、彼は無言でブルボンを抱きしめた

 

 

そして

 

 

バ鹿野郎。んな事俺が望んでるわけねぇだろうが?

 

 

と彼は震える声でブルボンを叱った

 

 

 

 

だが、ミホノブルボンにとってはそれで充分だったのだ

 

彼女のウマ娘としてのレース生命は終わったとしても、彼女の人生はまだ続くのだから

 

ブルボンもライスシャワーやサイレンススズカと同じ様に彼について行く事を決めていた

 

彼の幸せを守る為に

 

 

 

 

サイレンススズカ

 

 

引退した今となってもなお、トレセン学園最速の称号を持つウマ娘

それもそうだろう

URAファイナルズとはその年一年で活躍したウマ娘達を集めてのレースである

 

そのレースにおいて、2着であるミホノブルボンを圧倒的大差(・・・・・)をつけて走り抜けたのがサイレンススズカというウマ娘だったのだから

 

 

『最早スピードという概念そのもの』とまで解説者に言わしめたスズカの走りは、そのトレーナー(正確にはトレーナーの様なもの)である彼に対する世間の向かい風を粉砕するには充分だった

 

レース後、ブルボンを泣きながら抱きしめ、ライスシャワーを涙を流しながら抱え上げ、ライブ後のスズカを顔をくちゃくちゃにしながら背負って花道に向かった彼を誰が非難できようというのか?

 

 

そして、後日の記者会見において、スズカ達3人は揃って

 

 

選手生命がこのレースで終わる事を覚悟してでも、伝えたい事があった

 

と発言した

 

 

当然だが

 

 

優秀なウマ娘を自分の都合で使い潰すとか、マジ外道

 

そこまでウマ娘を追い詰めるとか、もうアイツ人間じゃねえ

 

マインドコントロール?

トレセン学園の管理体制はどうなってんだ?

 

 

などという意見がそれでもネットの海では根強く残っていたが

 

 

 

スズカはいつも感謝していた

 

『大逃げ』という明らかに常軌を逸した戦術の為に、ありとあらゆる努力をしてくれた彼に

その為だけに、嫌いであるはずの大人達に頭を下げて回ってくれた事に

 

 

 

だから、サイレンススズカはあの人の為なら、どんな事だって出来るし、受け入れる

 

 

 

スズカ達がウマ娘として出来ることは全てやり尽くした

 

後は、来年入学してからタキオンの、彼の妹達にバトンを渡そう

そして、いつか

 

 

 

 

彼が心から笑って過ごせる世の中にする為に

 

 

 

 

 

『無償の愛』と人は言う

『報われない恋』とも

 

 

分からない人には分かって貰わなくていい

 

 

ただ、自分の心の信じるままに

 

それもまた、彼から教えてもらった大切なサイレンススズカの宝物なのだから

 

 

 

 

 

 

 

エルコンドルパサー

 

 

トレセン学園での生活を終える彼女は親友であるグラスワンダーと共に全国を巡って活動をしようと考えていた

 

 

なるほど、トレセン学園の影響の及ぶところであれば、ウマ娘達は様々な未来をつかみ取れる事だろう

 

だが、そうでないところもあるはず

 

 

現に彼女の故郷であるアメリカでもウマ娘達の扱いは一昔前より格段に良くなったと聞く

 

 

だが、それでも未だに届かない部分というものはあるのだ

彼女はそのノウハウを日本で学び、それを祖国アメリカで活用したいのだ

 

 

 

 

グラスワンダー

 

 

ある意味では彼に初めて師事した人物といえるウマ娘

それはウマ娘としてのそれではなかったが、それでもグラスワンダーは彼に誰よりも感謝していると思っている

 

そうであるからこそ、他ならぬグラスワンダーが幸せになり彼もまた幸せになる環境を整えるべきだと考えていた

 

 

奇しくも、彼に多大な恩を感じているサイレンススズカとは全く別の結論は達したといえる

 

 

スズカは彼の為に外敵を排除する事を願い、グラスワンダーは彼の為に世間そのものを変えようと言うのだ

 

 

 

どちらも正しく、どちらも間違っているのかもしれない

 

 

だが、2人は征く

 

その先にある未来を夢見て

 

 

 

 

 

 

 

ナリタタイシン

 

 

彼に導かれ、彼に惹かれ、彼と共に在る事を決意した人物

 

最初は変わったやつだと思った

そして、妙だけどまあ、いい奴なのかな?と

 

 

 

 

しかし、ナリタタイシンは知ってしまった

 

彼の中にある空虚な彼を

 

 

 

それ以降、彼の事を何となしに見ていたが、あの海水浴で全てが変わった

 

 

 

関心は執着に

興味は恋心に

 

 

当時のタイシンは

 

 

アタシってこんなにチョロかったんだ

 

と内心呆れていたが

 

 

彼と過ごす日々が過ぎるにつれて思い始めた

 

 

悪くない。いや、いいじゃんコイツ

 

 

 

どこの即落ち2コマなのか?と内心では苦笑どころではなかったが、それでも不思議と離れがたい謎の魅力が彼にはある様に思えた

 

 

 

恋愛とは惚れた方の負け

 

 

とはよく言うが、まさにタイシンはそうだったと言えよう

 

 

 

 

だが、恋敵みたいな相手であるアグネスタキオンにせよ、シンボリルドルフにせよ、女性的魅力は圧倒的に自分が劣る

 

そう、タイシンは思っていた

 

 

 

 

 

しかし、タイシンが彼に寄ると、何故か彼は分かりにくいが少し構える

 

最初は

 

 

え、アタシ嫌われてるの?

 

 

と思っていたが、良く彼を観察していると気付いた

 

アグネスタキオンが彼に抱きつく前にも同じ様な兆候がある事に

 

 

 

は?どう言う事、これ

 

 

タイシンの勘違いでなければ、彼は自分にもタキオンと同じくらい関心を寄せている事になるわけで

 

 

『無駄な考え、休むに似たり』だっけ?やってみるか

 

 

 

その頃にはスズカ達とのトレーニングにもいつもの様に参加させてもらっており、その際にタイシンは仕掛けてみた

 

 

彼がトレーニングを見に来た時に、ふらついた感じで彼の胸の中に飛び込んでみたのだ

 

 

 

あ、コレやば

 

 

タイシンは陶然としそうになったが、何とか抑えて彼の鼓動へと意識を向けた

 

 

するとどうだろう

 

 

彼の鼓動が早鐘の様になっていたのだ

 

 

 

 

更に、もみあげに隠されていたが、彼の顔の一部が赤く染まっていた

 

 

 

 

 

 

タイシンは確信した

 

 

彼はこんなアタシでも異性を感じてくれているのだと

 

 

 

 

タイシンはそれを理解した瞬間、想像出来ない様な幸福感に包まれた

 

ただし、どこか嫌な予感もしていたのだが、タイシンはそれを敢えて無視した

 

 

 

 

この時のタイシンの判断はまさに英断だった

 

 

彼に寄りかかっているタイシンを見ていたサイレンススズカの目には光が無かったのだから

 

 

 

 

 

その後、シンボリルドルフと共に彼を支えないか?というアグネスタキオンの誘いに彼女は即乗った

 

逃す理由などありはしない

 

 

逆に思い悩むシンボリルドルフに対して

 

 

は?え、何?シンボリルドルフ、アンタ今更アイツから離れられると思ってたの?

 

とタイシンからすれば優柔不断にしか見えないルドルフに不満を持ったりした

 

 

 

 

その後、紆余曲折あり『タイシンする』とまで言われる程は学園内での生存圏を確保した

 

 

 

 

 

 

レースについては、出走するレースにおいてはそれこそ『暴威』ともいえる圧倒的な力を発揮し続けた

 

特にそれが顕著だったのは彼女が二年生の時に出走したジャパンカップであった

 

既にナリタタイシンのトレーナーとして実績を積みつつあった彼であったが、同様にスズカ達のトレーナー役も引き受けていた

 

 

それ故に海外勢からは

 

 

私達と同じ年齢の奴が、しかも『二足の草鞋』だったかしらね。それ以上の事をするなんて、無謀にも程があるわ

残念ね、ナリタタイシンさん。もっとマトモな(・・・・)トレーナーが貴女につけば勝負になったでしょうに

 

 

とレース前に言われた

 

 

 

だから、タイシンは文字通り『踏み潰した』のだ

 

2着が時間制限でゴール出来ない程の圧倒的、絶望的な敗北を返礼として贈った

 

 

 

そして

 

 

あんまり、アイツの事を舐めんじゃないっての

 

 

と打ちひしがれる海外勢に彼女は言葉を共に贈った

 

 

 

 

なお、彼にも唯一無二の固有スキルが存在する

 

 

『対生徒会』より進化した『吾唯足知(吾唯足るを知る)』である

 

 

意味は

 

 

私は満ち足りた事だけを知っている。だが

 

彼の場合は

 

ボクの日々が満ち足りた理由を知っている

 

となる

 

 

 

効果は『固有スキルによりスタミナ回復した場合のみ、加速力がすごく上がる』事と『そのウマ娘固有スキルの発動条件を無視して発動させる』というものである

 

言うまでもないが恋人であるアグネスタキオンの固有スキル『U=ma2』との相性は抜群であり、彼との親密な仲にあるナリタタイシンはその2つのスキルを学んでいた

 

 

なお、彼の固有スキルには

 

貴女(アグネスタキオン)がそばにいてくれるなら、どんな事だって打ち砕いてみせる

 

という意味が隠されていたりする

 

 

 

なお、そこに3年目からはゴールドシップの『不沈艦、抜錨ォッ!』まで加わってしまったが為にとんでもない事になってしまうのであるが、それはそれ。である

 

 

 

 

ナリタタイシンは彼を侮辱した海外勢を許す事が出来なかったのだ

 

ちなみに言うまでもないが、彼に心無い言葉を浴びせるネット民や面白半分に想像、いや妄想を垂れ流すコメンテーターなどにはいつかそれに見合った報いをくれてやる。と固く決意していた

 

 

 

なお、このレース後に彼は

 

 

気持ちは分からなくもないが、彼女達は国外勢なんだから詳しい事を知らんのは当たり前

嬉しいが、程々にな?

 

とタイシンに軽く注意している

 

 

 

 

 

なお、ジャパンカップの開催を望んだのは政府でもトレセン学園でもなく、海外のウマ娘養成機関だったりする

 

彼等は日本のウマ娘達に対する姿勢がどう変わって、それがどこまでウマ娘達のレベル向上に寄与したのか?それを確かめる為にジャパンカップの開催を求めたのだ

 

 

それはあくまでも世界的にウマ娘育成後進国である日本のレベルを測るものでしかなかった筈がまさか敗退。しかも、尋常ではない負け方をしてしまった為に、来年以降のジャパンカップの開催を要請する事になる

 

彼等とてウマ娘育成先進国としてのプライドがあるのだから

 

 

もっとも、翌年もナリタブライアンによって蹴散らされる事になり、その翌年はダイワスカーレット(シンデレラの願いを継ぐ姫)に。更にその翌年もアグネスデジタル(シンデレラ達の秘蔵っ子)により蹂躙される事になるのだが、それは別の話だろう

 

 

彼女はウマ娘としての活躍を今年の年末の有馬記念として勇退しており、多くのファンを悲しませた

 

 

引退ライブの後にカメラの前で初めて、タイシンは彼の唇を奪い、それはもうとんでもない騒ぎとなった事は記憶に新しい

 

 

既に数々のレースでの賞金

とりわけジャパンカップでの賞金により、彼女は既に滋賀県栗東市。つまり『トレセン学園栗東教育センター』の坂を降りたところに自分名義の家を建てるべく学園理事会との調整を行なっている

 

 

言うまでもなく、ナリタタイシンは彼に着いて行くつもりなのだ

 

 

多少不便なところとは聞いているが、『住めば都』と言うし、彼が居るのであればタイシンに不満はない

 

 

それに学園関係者でなくなったとなれば、『色々と』有利なのは事実なのだから

 

 

世の中には『事実婚』という便利なものがあるとハヤヒデから聞いているし、何の問題もなかった

 

 

タイシン的には

 

 

 

 

 

 

シンボリルドルフ

 

 

トレセン学園初代生徒会長にして、初年度の活躍ぶりより『皇帝』と呼ばれたウマ娘

 

常に自己鍛錬を怠らず、驕らず、侮らず、ベストを尽くしてきた人物

 

トレセン学園黎明期を代表するウマ娘といえば、彼女がサイレンススズカかと言われるほどの知名度を誇る

 

威風堂々、清廉潔白、勇往邁進

彼女を表現する言葉には事欠かないだろう

 

しかもウマ娘としての実力のみならず、組織のトップとしての実力やカリスマにも溢れるという、傍目からすると完璧超人である

 

 

だが、硬い彼女の内側はそれに反して非常に柔らかい。

シンボリルドルフという少女はデリケートなのだ

 

なお、彼女が好意を寄せる人物が

 

 

いや、ボクもデリケートなんですけどね

 

と言った事がある

 

 

その際、某人物は

 

 

おや?キミはデリケートではなくて、バリケードだろう?体躯的に

 

 

と言って、事あるごとに積極的にシンボリルドルフの腹筋を破壊しにかかるのが少しだけ困りごとだと思っている

 

 

 

 

なお、彼女は自身の渾身のギャグ(精一杯のオブラートに包んだ表現)をスルーする(・・)と、もれなくションボリルドルフとなり、彼が居る場合だとほぼ確実にルナちゃん化する

 

 

真面目でカリスマ溢れる外向きの彼女とは異なり、私生活での彼女は甘やかされる存在だったりする

 

それを知るものは殆ど居ないのだが

 

 

彼女もまた、彼に対する世間の風当たりの強さをどうにかしようと四苦八苦していた人物であり、それに触れるとシットリルドルフとなるのでマスコミ関係者はその話題に触れない様にしている

 

 

 

一度、そう一度だけ

そんなミスをおかした記者がいた

 

 

 

 

シンボリルドルフさん、今回のレースの勝利おめでとうございます

 

 

ありがとう。とはいえ、やはり皆良く鍛錬している。私とて『皇帝』などと肯定(・・)されているが、油断すれば直ぐに追い抜かれそうな圧を常に感じている

 

 

なるほど。『皇帝』シンボリルドルフさんでも油断は出来ませんか

 

ところで、今回ナリタタイシンさんとの直接対決となるかと思われましたが、やはりあちらが回避されたのでしょうか?

 

残念だが、記者君。その質問には答える術がない。確かに私と彼女は友人だが、だからといって勝負の場にそれを持ち込むつもりはない

 

・・・・大変失礼しました

 

 

記者はシンボリルドルフの少しばかりの怒気を感じ取ったのか、トーンを少し落とし

 

 

それはそうと、ナリタタイシンさんのトレーナーについて世間ではあまり良くない風評があると聞きます

本来であれば、その様な問題のあるトレーナーをナリタタイシンさんの様な有望な人物につけるべきではないかと思いますが?

 

 

 

特大の爆弾を投下した

 

 

 

周りの記者達は顔色を変えた

 

 

それ(・・)は他ならぬマスコミ関係者が触れてはならないタブーであった

 

 

 

ギリッ!

 

 

質問した記者をどうにかして退席させようとしている記者達はそんな音を聞いた気がした

 

 

その音の発信源の方を見た記者達は、その行為を後悔する事となる

 

 

 

暗い、いや昏い目をしたシンボリルドルフ(皇帝)がそこに居たのだから

 

 

その目で自分達(記者達)を見ている

 

 

歯を食いしばりながら

 

 

 

まるで、そう

 

 

親の仇でも見るかの様な表情で

 

 

 

そして

 

 

ふむ、なるほど。彼にナリタタイシンは相応しくない、と?そこの記者君はそう言うのだね?

声色一つ変えない彼女が何よりも記者達は恐ろしかった

 

 

質問した記者もようやく、自分が踏み込んでならない領域に踏み出した(ルビコン川を渡った)事を理解して

 

いえ、失礼しました。私達が言って良い話ではありませんでした。質問を取り消させて下さい

 

 

と言うと

 

 

人には誰にでも間違う事はある。それを否定しようなどとは到底思わない。が、あまり火遊びは感心しない。覚えていてくれると助かる

 

 

との言葉を最後に取材は打ち切られた

 

 

 

 

 

当然であるが、その記者は(帰社)するなり、上司に呼び出され配置換えを命じられた

 

会社からすれば当たり前である

トレセン学園関係者に取材する時、とりわけアグネスタキオンに近い人物への取材において『彼』の話題を出す事は相手の機嫌を完全に損ねる事でしかなかったのだから

 

 

 

 

 

こんなエピソードがある程度にはシンボリルドルフは彼に固執していたといえよう

 

 

 

なお、彼女は来年末まではウマ娘の一人として、ターフに立ち続け、次代を継ぐ者たちを迎え撃つつもりであった

 

 

 

 

その後?

 

そりゃ、栗東に行ってシッポリルドルフするんだよ

 

 

 

 

 

 

皆、それぞれの道を征く事を決めていたのだ

 

 




2人ほど意図的に抜いてますが、次回に回します

べ、別に文量が多すぎて困惑してるわけじゃないんだからねっ!



年末に向けてのテンションで作者は壊れてますが、私は元気です


気軽に感想くれても、いいんですよ?
などと媚びて行くスタイル

ではご一読ありがとうございました


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 卒業式とその後

後1話でとりあえず本編完結します

これまでありがとうございました



では、卒業です

どうぞ


トレセン学園第一期生卒業式は桜の花びら舞い散る中、厳かな空気満ち溢れる場となった

 

 

私達は、今日学び舎であるトレセン学園を卒業する。感慨深くあり、皆それぞれが言葉に出来ないほどの想いを秘めているのだと、壇上から皆を見た私は今、強く思っている

 

卒業生代表は『皇帝』であり、初代生徒会長を見事勤め上げたシンボリルドルフ

 

トレセン学園2年目の2月のデビュー戦において、エアグルーヴ、ナリタブライアン、ビワハヤヒデ、リトルココン、ビターグラッセ達との激戦の末勝利をおさめ、トレセン学園に所属していない在野の先達が多く参加した天皇賞春において盾を獲得

それ以降も、常に勝利とはならなかったものの、数々の名勝負を生み出してきた

 

 

 

これから私達は皆それぞれの道を征く。世間からのウマ娘への認識が少しずつ良い方向になりつつあるが、それでも困難は多い事だろう。後輩たちの征く先にも私達の様な様々な困難がある事だろう。だが、恐れずに前に進んで欲しい

 

私達が踏み締めたその場所は、やがて道となり、後から続く者達への道標となるのだから

 

最後となりましたが、トレセン学園の教職員の皆さん。並び私達を支えてくださった皆様に卒業生を代表してお礼を申し上げる。私達は如何なる困難に出会おうとも、独りではない。それを胸に刻み、今日学び舎であるトレセン学園を後にしよう

 

後輩たち。後は任せたぞ

 

 

本来であれば、在校生代表による送辞の後の答辞なのだが、諸々の理由により逆となっていた

 

 

 

今日、このトレセン学園という学び舎を卒業される皆様。ご卒業おめでとうございます。在校生を代表してこの言葉を贈らせて貰いたいと思います

 

在校生代表は二代目の生徒会長であるダイワスカーレット

様々なトレーニングを受け、友人であるウオッカ、ゴールドシップ、トウカイテイオー達と先月デビューを果たしている

 

ここ、トレセン学園は私達が入学した時2年目でした。そんな困難な状況にあっても、先輩達は怯まず、臆せず、迷う事なく歩み続けておられました

 

 

エアシャカールが

 

 

私達はそんな先輩の背中を見て、憧れ、支えとしました

 

 

マンハッタンカフェが

 

 

道なき道を征く。言葉にすれはこれだけですが、そこにどれだけの苦労や困難があったでしょう

 

 

テイエムオペラオーが

 

 

ウマ娘の為の学園。それは私達が私達である事を許される環境です

 

 

キングヘイローが

 

 

しかしそれは様々な困難や障害との戦いの連続だったと思います

 

 

ナイスネイチャが

 

 

私達二期生。そして後輩である三期生が普通に過ごせているのは、他ならぬ一期生である先輩方の努力や献身があったからだと強く意識しました

 

 

 

スーパークリークが

 

 

このトレセン学園にはまだ伝統と言われるほどの積み重ねはない。そう世間の人は言います

 

 

 

タマモクロスが

 

 

でも!先輩達の残してくれたモノは、私達の道標であり、誇りです

 

 

エイシンフラッシュが

オグリキャップが

 

 

これから先輩方はそれぞれの道を征かれます。私達は先輩方の創り上げてくれたものを守りながら、新しいトレセン学園を創り上げていくつもりです!

 

 

サイレンススズカが

ミホノブルボンが

ライスシャワーが

 

私達ウマ娘だけじゃない、それを守ろうとしてくれる。手を差し伸べてくれた優しい人たちへの

 

 

ナリタタイシンが

シンボリルドルフが

 

それが、私達に出来る精一杯のお返しだと思うから!

 

アグネスタキオンが

その彼氏が

 

だから、先輩方も見守って下さい!そして、またトレセン学園で、どこかのレースで、どちらでもないいつかどこかで

 

 

私達と皆さんは繋がっているんですからっ!

 

 

このトレセン学園を卒業する

 

 

約1名関係がない者がいたが、スルーして下さいな

 

 

 

 

 

あの引っ込み思案だったスカーレットが、変わるものだねぇ

 

そう呟くアグネスタキオンの目には光るモノがあった事を知るのは、隣に座っていたマンハッタンカフェだけであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレセン学園の卒業式は感動のうちに終わった

 

 

本来なら、開校当時は一般にも公開する予定であった

だが、諸々の事情を鑑みた結果、卒業生の家族とトレセン学園関係者だけというものになっていた

 

 

言うまでもなく、トレセン学園開校の年の騒動のせいであった

 

しかし、懲りないマスコミ各社はトレセン学園理事会に対して、卒業式の放送とその後の取材行為を求めてきた

 

 

 

 

当然だが、理事会はその提案を一蹴

来校者の増える卒業式に余計なモノを入れる事に議論する必要を認めなかった

 

 

それに対して、マスコミ側は『報道の自由』を主張(平常運転)した。

 

だが、これに待ったをかけたのは出版業界だった

 

 

 

出版業界は報道に携わるものとしての倫理観を持ち得ないトレセン学園側への取材行為などを挙げて、週刊誌などによる該当メディアへの一斉攻撃を開始した

 

 

というのも、『声』という曖昧なモノを用いている彼らに対して、出版業界の各社は『文字』また『雑誌』などと言った物質的に残るもので情報を発信している

 

故に出版業界各社は憶測や推論を展開するにしても、必ずそれを強調し、それに対する反証も欠かさずに行う様に努めてきた

 

 

何故ならば、出版業界とは基本的に『ナニカ』が残ってしまう。それは雑誌であったり、記事であったりする訳で

 

 

マスコミというと彼らも広義的にはそれに該当する為に良い顔をしないが、マスコミは非難する時は鬼の首を獲った様に騒ぐが、謝罪については手抜きともいえるものに終始する事のなんと多い事か

 

コメンテーターや番組司会者などは

 

 

その様な意図で発言したわけではない

だの

 

私はその様な発言自体していない

 

言い逃れしようとする

 

 

 

 

違うのだ

 

 

『言葉』を仕事道具にしているマスメディアの人間は、他の誰よりも『言葉』に対して、真剣に慎重に真摯にあたらなければならない

 

 

 

 

 

それが出来ないのであれば、それは最早マスコミではなく、ただの口コミであろう

 

 

 

 

 

彼ら出版業界は3年間待った

 

 

騒ぎ立てるマスコミが真剣に向き合う事を

 

 

 

 

 

 

しかし、それは果たされなかった

 

 

 

だから、彼らは『マスメディア』の一員として行動するのだ

 

自分達の仕事の誇りを、信念を守る為にも

 

 

 

 

 

更に言えば、先の夏のイベントもまた彼らに衝撃を与えた

 

 

サークル主は今年トレセン学園に入ったばかりのアグネスデジタル

 

しかし、彼女はそれをインターネットという誰もがその情報に触れられる場所で公開したのだ

 

 

イベントに参加すると表明した時も、口先だけだろう。と彼らは思っていた

 

 

 

当たり前である

 

確かにウマ娘によるレースにより、世間のウマ娘への認識は少しずつ良い方向へと変化しつつあるだろう

だが、彼女は『彼』を尊敬していると公言していたのだ

 

『彼』には敵が多い

 

それはそのままアグネスデジタルへの悪意に繋がる可能性は誰にも否定できない筈であったのだから

 

 

 

だが、彼女は恐れる事なくイベント会場に乗り込んできた

 

しかも、話題になっているアグネスタキオン、シンボリルドルフ、ナリタタイシン、ダイワスカーレット、ウオッカ、ゴールドシップに彼まで連れてきて、だ

 

 

 

まだ、高校生の年齢にある子供がそれだけの覚悟を示してまで、義理の兄の事をどうにかしようと心を痛めていたのだ

 

 

 

 

 

 

なのに、自分達大人が

しかも当事者のすぐそばの立場である自分達が

 

 

何もしないというのは、あまりにも情けなかった

 

 

 

それ故の今回の動きであった

 

 

 

 

 

 

 

つまり、今回の一件はある意味ではアグネスデジタルの活動によるものだった訳だ

 

 

彼ら出版業界各社は3年間集めに集めた相手の不祥事やスクープなどで横合いから全力で殴りつけたのだ

 

 

当然だが、彼らもまたその不祥事などを3年間もの間放置していた事を非難される事を覚悟して、だ

 

 

 

 

こと、取材行為などについての法的根拠などに精通している言わば同業者からの奇襲に対して、マスコミ各社は初動が遅れてしまった

 

 

常ならば、ある程度の情報が自然と流れてくるものであったが、今回に関してはその限りではなかった

 

マスコミ各社お得意の『名誉毀損』などと言った脅し(交渉)は出版業界の彼らに通じるはずもなく、トレセン学園理事会はそれを根拠として卒業式への取材行為については謝辞した

 

 

 

結局、〇〇砲と世間で言われている週刊誌による暴露により、話題(スクープ)を求めたはずの彼らマスコミがスクープを提供するという皮肉な事態になってしまう

 

 

更にその騒動を受けて、3年前からマスコミには沈黙を保っていた総務省が動く

 

放送倫理、番組向上機構ことBPOという組織が存在していた

しかしこれは、報道各社の出資により成り立つものであった為に既に形骸化しているのは周知の事実であった

 

 

そこで、総務大臣であるクガヤシ氏は

 

 

BPOはその責務を果たしていないとして、放送倫理審議会を総務省主導で設立する事を発表

 

此処には役人や大学教授に法曹界より弁護士などを組み入れ、『報道の自由』についての監視役を創り上げた

 

審議会には総務省や政府に対して提言する役割が与えられ、悪質であると判断された場合は警告、勧告。そして放映権の恒久的な剥奪の処分が下される

 

 

更に審議会参加メンバーにも監視の目が用意されていた

 

現在は外部の有識者会議によるものであるが、最終的には国民投票により審議会メンバーの信任を問う形とする予定である

 

 

 

近年のパソコンやスマホの爆発的普及により、ネットを介しての投票などを積極的に導入している現政権ならではの手法であったといえよう

 

 

悪質な場合は刑事罰にも問われる事になる事が既に決定されていた

 

 

 

 

思わぬ援護を受けたトレセン学園は無事に卒業式を終えることが出来た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、メインイベントは此処からであったといえよう

 

 

 

体育館での卒業式を終えた生徒達はそのまま大講堂へと移動した

 

 

大講堂は主にウイニングライブなどの練習に使われる場所であり、収容人数も実際のライブを意識してか、それと同様の規模を誇る

 

 

 

 

 

 

そこで、今回重大な発表があった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、同期の諸君。私達は無事卒業した訳だが、どうする?このまま「はい、さよなら」ですませるかい?

 

 

壇上に立つアグネスタキオンが卒業生に問う

 

 

 

 

ありませんわね、その選択は

 

いやぁ、それはないでしょ?

 

ライスも無いと思う

 

はい。ライスさんのいう通りです

このままでは、一部の生徒が暴徒化するかと

 

ふふっ、楽しみね

 

 

 

などの声と

一部生徒は何故か動き出していたり

 

 

うん?

何かあっただろうか、タマ?

 

予定通りですね

流石はアグネスタキオンさんです

 

待て待て、本当にやるつもりなのか?

アグネスタキオンの奴は?

 

 

との反応があった

 

 

 

 

 

そして

 

 

さあ、私達先達からの最後の贈り物だ。後輩諸君、しっかり目に焼き付けるといい!

 

 

 

 

 

 

 

 

壇上には

 

 

オグリキャップ

 

エイシンフラッシュ

 

エアグルーヴ

 

そして、アグネスタキオンの姿があった

 

 

 

 

 

 

在校生の中からは

 

 

あっ(察し)

 

いよいよですか!いよいよなんですね、お姉ちゃん!

 

あー、大丈夫なのかよこれ?

 

ま、何とかなるだろ

 

 

 

との声が聞こえたり

 

 

 

 

 

 

さて、このメンバーを見て察せられる者はそう多くはないだろう!

 

 

というわけで、頼むよ?

 

 

タキオンのセリフに

 

 

 

 

 

 

 

 

うおっ!

え?スズカさん、何で?

 

ふふっ、さぁ壇上にどうぞ

 

 

とオグリのトレーナーが

 

 

 

え、何なんすかこれは?

 

 

あのね、フラッシュさんが待ってるよ?

 

はい。フラッシュさんの事を考えれば答えは一つかと思われますが

 

 

あーなるほどね。師匠の仕込み?

 

 

ううん。これはタキオンさん達の希望、かな

 

 

了解っす

フラッシュのところまでお願いします!

 

 

とエイシンフラッシュのトレーナーが

 

 

 

 

え?

このメンバーってまさか

 

 

さあ、逝こっか

 

 

んげ!?

きょ、教官。どうして此処に?

 

 

何言うじゃないか

「赤信号、みんなで渡れば怖く無いってね」

 

 

それあかんやつでしょ

 

 

とエアグルーヴのトレーナーとタキオンの彼が

 

 

 

 

 

 

 

そして

 

 

という訳で、タイシンも舞台に上がるデース!

 

は?意味わかんないんだけど

 

彼も待ってマース

 

んじゃ、行こっか

 

 

エルコンドルパサーの言葉に難色を示していたタイシンだったか、彼の存在により、あっさりと前言を翻した

 

 

(タイシンチョロインデース。エルは心配デスよ)

 

 

ナリタタイシン

最近はチョロイン属性が身につきつつある、うら若き乙女であった

 

 

 

 

というわけで、ルドルフさん。ご同行下さい

 

いや、待ってくれ。状況が飲み込めないのだが

 

飲み込めなくても大丈夫ですよ?

 

というか、だ。何故君はこの祝いの席にそれ(模造刀)を帯剣しているのだ?

 

うふふふふ

 

わ、分かった。同行するから、その笑みはやめてくれないか?その、だな。すごく、怖い

 

かの『皇帝』も大和撫子(薩摩隼人)には勝てなかった様である

 

 

 

 

 

 

 

かくして壇上には

 

 

 

オグリキャップとそのトレーナー

 

エイシンフラッシュとそのトレーナー

 

エアグルーヴとそのトレーナー

 

シンボリルドルフとナリタタイシンに彼

 

が揃う事となった

 

 

 

 

 

 

そして、

 

 

 

トレーナー。キミが居てくれて、私の事を見てくれて、支えてくれた。本当に感謝している

 

だから、言わせてほしい

 

 

トレーナー

いや、純

貴方を私、オグリキャップは愛している

共に道を歩いてはくれないか?

 

 

オグリのトレーナーは

 

 

先に言われて、格好悪いなぁ

 

俺は3年間色々なキミを見てきた

 

 

ターフを走る姿

食堂でお腹いっぱい食べる姿

料理研究会で師匠やタマモクロスにスーパークリークやナイスネイチャたちと笑い合うキミの笑顔

 

 

俺は

 

矢上純はオグリのトレーナーだ

でも、それ以上にキミを愛している

 

一緒に歩こう

いつまでも、どこまでも

 

 

 

 

そう言ってオグリキャップとそのトレーナーは壇上で抱き合った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やれやれだよ。気持ちは分からなくもないが、もう少し落ち着きたまえよ

 

 

壇上からタキオンは呆れた声を出した

 

 

 

とはいえ、彼女と親しい者ならば

 

 

 

嘘ならもっとマシな嘘つかんかい!

 

タキオンに気持ちが分か、る?

 

いや、多分お前には一生理解できないと思うんだがなぁ

 

と言う事だろう

 

 

 

 

 

 

 

トレーナーさん

私は、エイシンフラッシュは貴方の担当ウマ娘です

 

 

そうだね

 

 

最初は「何てズボラな人なんでしょう」と呆れました

 

 

良く言われたっけ

 

 

ですが、不思議なことに貴方との日々は私にとってかけがえのないものとなっていきました

 

 

光栄だよ

寧ろワイの方がフラッシュの負担になっていないか心配だったよ

 

 

そうでしたか

私は気づいていましたよ?

私の胸元を貴方が気にしていた事

 

 

ちょっ、此処でそれを言うのはやめようやぁ

 

 

ええそうですね

では

 

 

私エイシンフラッシュは田坂憲保さん。貴方を異性として、1人の男性として愛しています

 

どうか、私と共に生きて下さい

 

 

ホント情けないなぁ

 

エイシンフラッシュさん。こんなワイで良かったら、一生貴女を支えさせて下さい

 

 

こんな、なんて

貴方以外の男性(ひと)は考えられません!

 

 

フラッシュと彼もまた抱き合った

 

 

 

 

 

 

 

はーい、みんな

デジタルしてるかぁ?

 

 

会場のウマ娘達が必死で愛が溢れる事を我慢している事を知りながらも彼はそうアナウンスした

 

 

 

 

 

グルーヴ

 

な、何故貴様が此処に居る?

 

 

え、それは俺が連れてきたのですが

 

 

教官には勝てなかったよ

 

 

お、お前と言うやつは

 

 

 

 

グルーヴ

俺はいつも思っていた

君の願いである『トリプルティアラ』を成し遂げさせられなくて

 

 

それは私の力不足故の事だ

貴様のせいではあるまい

 

 

だが、それでも俺にできた事があったはずだ

それを俺は出来なかった

 

 

たわけ

それは結果論だ

それに私はお前には助けられていた

いつも、な

 

 

だが

 

 

くどいぞ

そこまで責任を感じていると言うのなら

 

 

君のこれからを支えたい

今までも、これからも

 

 

た、たわけ

そ、そんな事を衆人環視の前で

 

 

グルーヴ

俺はお前の事を愛している

 

 

わ、私もお前の事を

 

 

 

 

 

そう言ってエアグルーヴとそのトレーナーは抱き合った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして

 

 

 

アンタとは何だかんだ言って、3年ほど一緒にいるんだね

 

確かになぁ

我ながら良くもまぁこんな無茶をしたもんだ

 

その間、アンタは私の事を見てくれてた。どんだけ非難されていても

 

あのなぁ

一応とはいえ、タイシンのトレーナー(仮)だぞ?

早々無責任な事は出来んさ

 

そう。アンタはいつもそうだったよね

 

いつだって自分よりも他人を気にする

 

 

彼は歪だ

自分などどうでも良いかの様に振る舞う

 

タキオンとの大喧嘩の後もその悪癖は事あるごとに行動に現れていた

 

 

 

それが何よりもタイシンにとって不満だったのだ

 

 

アンタは来年まで此処にいて、再来年には栗東に行く。から私もついて行く。もう、アンタを離さない

 

 

 

タイシンはそう言って、彼に抱きついた

 

二度と離れてやるもんか

 

 

そういわんばかりに

 

 

 

 

 

 

全く、お膳立てされないと勇気が出せないとは。我ながら情けないものだね

 

別にかまやしないだろうよ

 

『他人は他人。我は我』だろ?

 

 

思い起こせば、あれから3年か。もっと時間が経ったような気がするよ

 

『季節は百代の過客にして 行き交う年もまた旅人なり』だったか

昔の人は上手いこと言ったもんだな

 

確かにそうだね

 

 

 

大講堂内のざわめきが大きくなる

 

 

あの『皇帝』シンボリルドルフが見たこともない表情(かお)をしているのだから

 

 

私はウマ娘の幸せを願った。そして貴方はその夢を応援してくれた

 

ルドルフは彼に一歩近づく

 

確かに世代最強などと言われているが、結局先の有馬ではスカーレットに負けてしまった

 

 

 

先の有馬記念では『皇帝』シンボリルドルフ、『女帝』エアグルーヴ、『怪物』ナリタブライアン、『鬼脚』ナリタタイシン、『剛脚』ウオッカに『暴走特急』ゴールドシップが参加する凄まじいレースとなった

 

 

しかし、それを制したのは『シンデレラの希望の姫』ダイワスカーレットだった

 

彼女は昨年のURAファイナルズを思わせる凄まじい『大逃げ』を以て並み居るライバルを抑え切ったのだ

 

 

 

だが、あの時私は思ったよ

 

 

私の、いや。私たちのした事は間違いではなかったのだ。とね

 

 

それは透き通る様な美しい表情だった

 

 

 

だから、私のウマ娘としての役割は終わったと思っている。そして、これからは1人の女性としての幸せを欲している

 

貴方にはアグネスタキオンがいる。だけど、私は貴方を想い続けるよ

 

 

更にルドルフは前に進む

 

 

愛しい貴方のそばに居たいから

 

 

そして、シンボリルドルフは彼の胸に身体を預けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やれやれ。タイシンもルドルフも情熱的だねぇ

 

 

最後に彼と向き合ったのはアグネスタキオン

 

 

感情的になり過ぎて後悔しなきゃ、いいがな

 

 

それこそルドルフならこう言うだろうさ

 

 

「あまり私達を無礼(なめ)るな」ってねぇ

 

 

違いない

 

 

タキオンと彼は楽しそうに笑った

 

 

そこには、気負いも緊張もない

あるのは、日常そのものだった

 

 

あまり言語化するのは好きではない

アグネスタキオンにとって、言葉など何の意味もなさない

愛を囁きながらも、そこに愛のなかった両親を知っているから

 

 

彼もまた言葉に意味を求めない

タキオンを言葉は助けてくれなかったから

 

 

だから

 

 

愛しているよ、貴方を

 

愛し続けるさ、タキオンを

 

 

 

それだけで充分だった

 

 

 

 

タキオンと彼が抱き合い、唇を重ねた時

 

大講堂を揺るがすほどの歓喜の声が上がった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ねぇ、サトちゃん凄いね!

 

うん。キタちゃん

 

 

ある2人はこの光景を忘れないだろう

 

 

 

私達(ウマ娘)にもあんな恋愛ができるのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

トレーナー!ありがとうございましたぁ!

 

 

 

大講堂でのイベントの後、卒業生に混じって挨拶をしていた彼の元に1人のウマ娘が駆けつけた

 

 

彼女の名はジャラジャラ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジャラジャラ

 

 

トレセン学園一期生にして、彼のトレーニングを受けて恐らくはトレセン学園屈指の成長を見せた少女

 

ダート専門としながらも、同世代にはオグリキャップ、タマモクロス、ハッピーミークと所謂『ダート三強』が存在しており、彼女はデビューしてから約2年間『ブロンズコレクター』と呼ばれていた

 

だが、引退直前の東京大賞典にて、オグリキャップ、タマモクロス、ハッピーミークの揃ったレース終盤、怒涛の追い上げを見せ、先頭であったタマモクロスをギリギリ差し切って勝利

 

引退レースでありながら、G1初勝利を飾ることになった

 

 

 

彼女はレース後、トレーナーである彼に涙ながらに抱きつき、ひたすら感謝を彼に伝えていたという

 

 

 

 

 

 

 

終わったなぁ

 

何を言うんだい!これからが寧ろ始まりさ!

 

 

彼の方を向いて、アグネスタキオンは満面の笑みを浮かべた

 

 

 

 

 

 

 

アグネスタキオン

 

 

トレセン学園一期生でありながら、異例のレース出場回数ゼロという人物である

 

しかし、同期のシンボリルドルフ達が言うにはウマ娘としての能力は充分あったとされる

 

にも関わらず、何故レースに出なかったのか?世間ではその疑問の答えを出すことが出来なかった

 

トレーナーとして、また薬学者として、化学者としてマルチな才能を発揮し、様々な功績を残した

 

所謂『現代のシンデレラ』であり、伴侶である人物と二人三脚で学園卒業後もその人生を走り抜けたとされる

特に卒業後赴任した栗東教育センターにおいて、後進のウマ娘達の健康管理を行なうと共に、副業であった製薬会社の研究員としても活躍し続けた

 

 

後に彼女の功績を以て、『アグネス共同製薬会社』が同地栗東に設立されることとなり、教育センターを退職した後もウマ娘達の健康を支えたとも

 

後に栗東市より、その功績を讃えられ教育センターからアグネス共同製薬会社への道路を『シンデレラロード』と命名される事となった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アグネスタキオンの伴侶にして、彼女の生涯のパートナー

トレセン学園に彼女が在籍していた頃は様々な手を以て彼女やシンボリルドルフ、ナリタタイシンや妹であるダイワスカーレット、アグネスデジタル、ウオッカ。そして悪友であるゴールドシップの為に尽力した

 

その依怙贔屓とすらいえる姿勢はいつまでも問題視される原因となったが、当人はそれを甘んじて受け止めていた

 

彼は早逝する事になるが、7人のウマ娘を支え切った事から『虹を追い続けた者』と呼ばれる事となる

 

彼に影響を受けたものは多く、ウマ娘のみならず経済人や文化人に政治家などと多岐に渡る

 

 

後に友人であった歌劇作家であるテイエムオペラオーにより、『〇〇〇〇〇〇〇〇》が上演されるようになり、ようやく彼の名誉は回復することとなった

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次話で本編完結となります

その後は閑話として色々なエピソードを語りたいと思っております


お気に入り登録された皆様
評価をしてくださった皆様
感想をいただいた皆様

そして何より、この様な不出来な小説を読み続けてくれた皆様に感謝を

宜しければ、後1話お付き合い下さると幸いです


ではご一読ありがとうございました


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 彼の彼女の歩く道

貴女を追い続け、貴女を守りたかった


夢はいつか叶う



そして、終わる


本編最終話です
どうぞ


激動の四年が過ぎ去り、アグネスタキオンたちは栗東に新設された『トレセン学園栗東教育センター』に赴任する事となった

 

 

同行者は彼は勿論の事、シンボリルドルフ、ナリタタイシン、サイレンススズカ、ミホノブルボン、ライスシャワー、ダイワスカーレットである

 

 

普通に大所帯であった上に豪勢と一言で片付けられないレベルのメンバーだった

 

初代会長シンボリルドルフに二代目会長ダイワスカーレット

初の海外勢とのレースであったジャパンカップをその実力で文字通り『蹂躙』し、日本のウマ娘のレベルの高さを世界に示したナリタタイシン

今なお、『異次元の逃亡者』として名を馳せるサイレンススズカ

信念に生き、その身をウマ娘という存在と彼に捧げた『不朽のウマ娘』ミホノブルボン

風評など気にする事なく、ただ自らの想いの為にターフを走り抜けた『漆黒の刺客』ライスシャワー

マルチな才能を発揮し、近年急速にその名を世間に知らしめた『トレセン学園一の頭脳』アグネスタキオン

 

自身の道を信じ抜き、マスコミや世間と闘い続けている『鬼子』と呼ばれている彼

 

 

 

大凡何かのイベントであったとしても、ここまでのメンツを集める事は叶うまいと思われるものであった

 

 

 

新幹線で京都駅まで行き、米原方面の新快速に乗り換え滋賀方面へと戻り、草津駅で下車し、そこからバスで向かう事とした

 

実は最寄駅ではないのだが、本数の問題などからこのルートを選んだのである

 

荷物自体はタイシンの自宅宛に郵送しており、彼女達が到着して1時間後に荷物が着く様に手配していた

 

 

 

言うまでもないが、このメンバー

 

非常に目立つ

 

 

ただでさえ容姿端麗なタキオン達であるのに、諸々のレースにより知名度が段違いとなった彼女達である

 

ましてや、タキオン、ルドルフ、タイシンは恋をしている

 

 

女性は恋をすると化ける

 

とは良く言ったもので、元々美しかった彼女達は更に美しくなっていた

 

 

 

思わず顔面偏差値が平均クラスの彼が躊躇するほどに

 

 

 

 

とはいえ、躊躇した分だけ距離を詰められるので然程に意味などなかったりする

 

 

 

 

バスに揺られる事約30分程で教育センターの正門前に着く

 

最寄り駅である手原駅は草津線であり、先に触れた通り本数が少ない

JRは増便を検討したが、教育センター側はこれを謝辞している

 

 

一応手原駅の場合はシャトルバスを運行しているので、こちらの方が便利なのだが、今回は先にタイシンの家に寄ることとなっているので、こうなった次第だ

 

 

そうは言ってもバス停ひとつ分なので、然程に距離が離れているわけではなかったりするのだが

 

 

 

 

 

 

でかくね?

 

ふむ、豪邸だね

 

奮発しすぎではないのか、タイシン?

 

そうでもないって

 

 

タイシンは否定するが、明らかに大きすぎる邸宅である

一体何人住むつもりなのか?と言わんばかりの広さであり、しかも別の棟まである始末

 

タイシンとしては、教育センターに遊びに来る友人達の受け皿という意味もあってこの規模としていたのだが

 

 

 

 

 

建前上は

 

 

 

 

費用については、ジャパンカップの賞金やマックイーンやブライアン、ハヤヒデやチケットなどが多少援助してくれたので金銭的負担は思っていたのよりは軽かった

 

 

本来なら、レース勝利の際の賞金はトレーナー。つまり彼との契約内容によって、ウマ娘とトレーナーで分ける事になっているが

 

 

ボクは口を出しただけ

結果を出したのはタイシンの努力あっての事

 

 

と賞金を受け取ろうとしなかった

 

 

 

それでもタイシンが納得するはずもなく、彼のアパートに行って彼の為に料理を振る舞ったりして、少しでも彼に返そうとした

 

 

 

 

 

彼とタキオンが一年目に住んでいたマンションであったが、マンションの住民とトラブルになりかねず、またマスコミや面白半分で凸してきた配信者などがマンション周辺に待機していたり、そこで配信していたりしていた為、彼はマンションからの退去を決意

 

マンション入居にあたり、尽力してくれた元議員の元にトレセン学園理事会の一人と共に赴き、今までの事に感謝し、この様な事になった事を陳謝した

 

 

また、マンションの管理会社に対しても、一連の騒動により多大な迷惑をかけた事と同じマンションの住民にも迷惑をかけた事を謝罪し、そこを引き払う事を伝えた

 

 

 

幸いというべきか、トレセン学園理事長秋川やよいとその秘書駿川たづなと理事会のメンバーは彼が学園に訪れた際の理由などの履歴を全て残しており、通用門担当の警備員とも連携し、事実確認を行なった

 

 

ダブルチェックは基本であった

 

 

 

それにより、彼の出勤記録を作り、そこから彼の給料を算出した

その給料を転宅の際の元本にする様に彼に伝えたのである

 

 

 

転宅について、管理会社の担当は

 

 

寧ろ自分達の不手際のせいで、お二人の平穏な生活を守れなかった事を謝罪し、せめてもの償いに彼の新居の手配をさせて欲しいと願い出た

 

彼等管理会社からすれば、セキュリティーやプライベートの保護などを行えるとの信頼を裏切ったのだから

 

 

 

同席していた理事会の人物はこの提案に迷っている彼に対して

 

 

君が彼等に遠慮する気持ちも分かるつもりだ

しかし、彼等とて立場がある。安心を謳っていた筈のマンション内でのプライベート情報の流出に加えて住民間でのトラブル

これで君が出ていくならば、彼等の信用は地に堕ちたままとなる

せめて、彼等のアフターケアを受け入れてやってはどうかね?

 

 

その通りだった

 

 

彼の住むマンションの住民の一部が騒いでいるのは事実だが、それ以上にこの管理会社が管理している他の物件の住民からは

 

 

子供が必死で生活してるのに、同じマンションの住民はなにやってんの?

 

しかも、そのマンションにその子目当ての人間が押し寄せているんでしょ、迷惑と言うのは分かるけど、管理会社は施設警備員配置してるし、そこまで問題にしないといけないの?

 

というか、そいつらはどうしたいのさ?

その子供に出て行けとでも言うつもりなの?

 

 

 

とかなりの論調で管理会社に抗議ともいえる電話が入っていたのだ

 

 

 

 

 

というもの、とある住民がSNSで

 

 

自分の住んでいるマンションに例の子供いるんだけど、ホント迷惑

さっさといなくなって欲しい

 

 

との呟きをしたところ

 

 

 

 

その子供、親とほぼ連絡とってないって知ってる?

親の支援も当てにできない子供を追い出すって本気?

 

迷惑って何?ニュースなどではマンションの敷地内には立ち入れないと聞いてるし、そこら辺は警察の特別巡回地区に指定されてるって話だよな

 

居なくなれっていうなら、寧ろ自分が引っ越せば良いだろ?

管理会社だって、そういう訳なら費用を持ってくれるだろ?

 

 

 

と痛烈な反応が帰ってきた

 

 

 

警察は彼が傷害事件の被害者になった一件の後、警察庁長官や警視総監なども動くと言う大騒動になった

所轄の一部の警察官が意図的なサボタージュをした結果、彼が刺されてしまったのだから

 

加えて、それを隠蔽する様に指示した事も明るみに出ると、そのエリア担当の警察署に査察が入る事となった

 

 

その結果、署員の一部がこれに関与していた事が明らかとなり、即刻懲戒解雇の処分を下した

 

 

 

曰く

 

 

市民の安全を守るつもりのない人物など警察には残念だか不要

加えてそれを後押しするかの様な行為がある事など絶対に許容出来ない

 

 

との事であった

 

 

中途半端な時期にも関わらず、異例とも言える人事異動が発表され、関わりの少なかった警察官は新年早々に他の署へと移動させられる事と決まっていた

 

 

これは『処分』であり、決して『温情』ではない

 

 

人事異動が発令されるのは、基本的に年に2回

 

9月と4月である

 

 

 

つまり、それ以外の時期での異動は関係者ならばこう思うだろう

 

 

 

 

お前、何やった?

 

 

 

 

つまり、新しい環境においていきなり同僚からの白い視線に耐えなければならなくなる訳で、これが彼等に与えられた『処分』だということである

 

 

その後所轄は襟を正し、トレセン学園と彼に非公式ながら謝罪

 

彼の自宅からトレセン学園までのルートの巡回の話をした

 

 

 

ところが、彼からは

 

 

それよりも、マンションの状況をどうにかして欲しいです

 

 

との要請があった為に特別巡回地区となり、周辺住民とマスコミなどのトラブルを未然に防ぐ対応を取り始めた

 

 

 

 

彼については定年退職した後に技能指導員として再雇用された人物を『人格面』などの精査をした上で配置する事となる

 

 

 

なお、呟いた人物はこれで世間の同情をひこうとしたのだが、皮肉にも逆効果となってしまった

 

 

 

あまつさえ

 

 

 

その話を詳しく聞かせてもらってもいいでしょうか?

 

 

 

などと言った『自称社会的正義を守る』配信者とやらが接触を求めてくる始末だった

 

 

 

 

 

ある意味では世間の同情を買えなかった一部の住民達は

 

 

 

なら、彼方から退去させれば良い

 

 

との発想に至った訳である

 

 

 

 

 

住民同士のトラブルにはあまり手を出せない管理会社としては、事情を他の住民から聞いて、知っているだけに歯痒い思いをしていたのだ

 

 

 

彼等は自社物件ではなく、府中にて良心的な経営をしているとある不動産屋を紹介

 

その不動産屋からかなり古いが、事情を知っても受け入れてくれる大家のいるアパートを紹介される事となる

 

 

 

 

 

なお、契約自体は元議員が継続する事となり、『空き部屋』でありながら、彼がトレセン学園を離れる日まで続く事となっていた

 

 

 

タイシンはそのアパートをナイスネイチャから教えてもらい、週に一度程度通う事にしていた

 

 

 

実はタイシンの料理スキルはそこまで悪くなく、以前の一件から同室のスーパークリークやタマモクロス、ナイスネイチャなどに師事していたりする

 

 

 

なお、それは世間で言うところの『通い妻』そのものであり、それを知っているハヤヒデやチケット、ネイチャなどは揃って優しい視線をタイシンに向けていたりする

 

側からするとタイシンは『小柄』で見方次第だが『幼く見え』、そんな人物が『通い妻』していた訳で

 

 

 

 

 

 

もしもし、ポリスメン?

 

 

と下手すればなりかねない案件であったりした 

 

 

 

 

 

ナリタタイシン

 

少しだけ幼い自身の容貌に不満を覚え始めている恋をする少女であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

因みに栗東と言うのに、教育センターの最寄駅である手原駅にアクセスするには栗東駅の隣駅である草津駅からしか草津線にはアクセス出来ない

 

しかも、新快速だと栗東は通過されてしまう

 

 

 

当時、トレセンの側に住んでいた作者はいつもこの謎仕様に困惑していたりしたのだが

 

なお、ホテルも栗東より草津駅の方が多かったりするし、バスでのアクセスも何故か草津駅の方が便利だった記憶がある

 

 

駅前も栗東より、5年ほど前に出来た商業施設の所為で草津駅の方が利便性が上がった

 

 

 

 

 

 

 

 

荷物を運び込んだタキオン達は早速センターに向かうこととした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歓迎っ!

 

よく来てくれた

 

 

え?やよいさんがなして此処におっとよ?

 

地が出ているよ

 

失礼

何故秋川理事長が此方に?

 

 

秋川やよい理事長に迎え入れられた2人は驚き、特に彼は滅多に見せない方言全開になるほどの衝撃を受けていた

 

 

 

実は

 

 

 

 

 

要約すると

 

トレセン学園創設時の混乱期を乗り切った手腕を買われて此処に来たそうだ

 

 

となると、トレセン学園は?

 

うむっ!

樫本君に任せている

 

樫本ちゃん、ファイトやで

 

 

 

 

因みに樫本トレーナーはその話を受けた晩

 

 

 

彼女は同僚である東條、沖野、桐生院と飲みに出かけ、潰れて帰ってきた

 

 

オグリやフラッシュ、グルーヴのトレーナーは?

 

此処は独り身専用です!

 

 

 

ココンとグラッセは呆れながらも、しょうがないなぁという顔をしていたそうだ

 

 

その年、樫本トレーナー改め樫本理事長代理は『アオハル杯』の開催を理事会に提案する事になるのだが、それはまた別の話である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という訳で教育センター所長に秋川やよいトレセン学園理事長を据え、新たな時を迎えることとなった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、教育センターにて次世代のウマ娘やトレーナー養成にタキオンや彼は奔走し、6年後タキオンの育ての父親との和解が成立した

 

既にタキオンと彼は結婚しており、その事は手紙で知らされていた父親はタキオンと彼に今までの事を謝罪し、それ以降は家族としての関係を戻すこととなった

 

 

父親は今まで働いていた会社を退職し、栗東に引っ越す事として、教育センターから徒歩数分の距離にあるスーパーでアルバイトしながら生計を立てる事にした

 

勿論、失われた時が戻る事はないが、それでもタキオンと父親は徐々にその関係を戻していくと彼は確信していた

 

 

その翌年、彼もまた自身の両親と話し合いの場を設け、話し合いを初めてした

 

従兄弟達との関係も漸く元に戻ったのである

 

 

 

 

だが、それから僅か2年後に彼は病に倒れ、そのまま帰らぬ人となってしまう

 

 

この訃報に秋川やよい理事長以下トレセン学園理事会やメジロ、秋川当主などはタキオンに弔電を送り、彼の葬儀には代理人として駿川たづな女史が参列する事となった

 

 

 

 

 

 

 

それから僅か半年後

 

 

アグネスタキオン、シンボリルドルフ、ナリタタイシン、ダイワスカーレット、アグネスデジタル、ウオッカにゴールドシップをはじめとした彼と親しかったウマ娘達の姿は劇場にあった

 

 

 

よく来てくれたね

 

歌劇作家として有名になったテイエムオペラオーが迎えてくれた

 

 

久しぶりだね、オペラオー。彼の葬儀の時の弔電嬉しく思うよ

 

 

此方こそすまないと思っているよ

本来なら参列すべきだったのだがね

 

 

彼女は無念そうに表情を歪めた

 

 

地方巡業の最中であり、ましてや南九州へと巡業していた時に彼の訃報を知った

 

何度も迷ったが、泣く泣くプロとしての責任を果たした

 

 

 

彼女にとって、彼が『この作品』の完成を前に亡くなるというのはあまりにも辛い話たったのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

オペラオーの脚本を書いた舞台は

 

 

 

 

幼い頃、両親からの愛を受けられなかった少女がとある少年と出逢い、恋心を育みながら様々な障害を乗り越えて、やがて結ばれるという内容だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それはまさにタキオンと彼の人生そのものだったのだ

 

 

 

 

『彼と彼女の歩く道』

 

 

それがその劇のタイトルであった

 

 

 

 

 

そしてそれは、新進気鋭の歌劇作家であるオペラオーの作品である事もあり、マスコミも喜んでそれを報道してしまった(・・・・)のだ

 

 

しかし、この作品はかなり事実に寄せた内容となっており、『ノンフィクション芸術』と揶揄される程の内容であった

 

 

 

故にマスコミを想起させる役どころは観ている者がはっきりと嫌悪感を示す程度の演出となっており、それがかえってオペラオーの不満を表していた

 

 

 

 

 

 

その後、『彼と彼女の歩く道』はドラマ化や書籍化されるなどと言った一大旋風を巻き起こす事になるのだが、それは少しだけ先の話である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1人の少年と

1人の少女がいた

 

 

 

ねぇ、キミ

何でそんなに楽しそうに走るの?

 

ふぅん?キミは私を怖がらないんだね?

 

 

 

そんな事ないよ

だって、そんなにキラキラしてるもん

ねぇ、お名前は?

 

騒がしいね。私はアグネスタキオン。もう良いだろう?

 

 

 

 

アグネスタキオンは煩わしそうにその場を走って何処かに行った

 

 

 

 

 

 

少年はその走りに、輝きに魅せられたのだ

 

 

 

 

 

 

 

凄いなぁ。ボクもあんな風になれるのかなぁ?

 

 

少女がいなくなった場所で少年はそう呟いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

七色の幸せ

 

 

星空の約束

 

 

今も晴れない雨の中

 

 

届かないキミにだけ

 

 

こんなに愛してるのに

 

 

求めては増える分だけ

 

 

短くなる夢の続き

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空に咲く

 

虹になりたい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼と彼女の歩く道

 

 

 

終幕

 

 




幼い頃の夢だった

少年は何も知らず、ただその姿に憧れた


その少年と憧れを抱かれた少女の物語








まさか、此処までの評価やお気に入りなどを頂けるとは思いもよりませんでした

多数の感想を頂き、ただただ恐縮する次第です


投稿時に入院なども相まって、中々筆が進まなかった事もあり、長々と続けてしまった感があります



そもそも、創作活動に興味を持ったのはリア友が今年このサイトで小説投稿をしている事を知った事がきっかけでした

その友人はコロナ禍において、不幸にも命を落とす事となりましたが、彼としていた話の中の

アグネスタキオンの萌え袖くるくる可愛くね?

との話と自身の夢の内容を合わせた結果がこうなりました


低評価を頂いたり、誤字を指摘されたりと至らぬ私ではありますが、此処まで来れたのは偏にこの小説を読んでくださった皆様のお陰であると思っております

伏して御礼申し上げます

今後とも創作活動を続けていこうと思いますので、ご縁がありましたらまた何処かでお目にかかれたならば、幸いです



最後のアンケートを実施しますので、宜しければお付き合いくださると嬉しく思います

皆様重ね重ねありがとうございました


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アフターストーリー
 いざ!征かん


という訳で、バクシンできたので、投稿します


完結しても、まだ続くんじゃよ? 



では、どうぞ


 では時系列を戻して、タキオン達4人の慰安旅行について語ろうと思う

 

 

淑女達の提案を受けたトレセン学園理事会は直ちに持ち得る全ての権能(コネや財力など)を行使して、僅か半日で全ての準備を終わらせたのである

 

 

 

これには、流石のマックイーンも

 

 

 

た、確かに全力を傾けるとは言っていましたが、ここまでしますの?

 

 

と引き攣った顔をしていたとか、何とか

 

 

なお、前日よりメジロの暴走特急ことゴールドシップをトレセン学園のタキオンの研究室(マッド達のおもちゃ箱)にこう、げふんげふん

 

もとい招待する事により、後背の憂いを断つ事に成功した

 

 

流石のアタシもこんな扱いされるのは初めてだぜ

 

 

と、ゴールドシップは苦笑いしていた

 

 

 

なお、その眼前には

 

 

良いですか?グラスワンダーさん

今日から明後日の夕方まで此処の守りを崩しては駄目ですよ?

 

 

はい

 

 

と明らかにヤバそうなオーラを纏っているサイレンススズカとグラスワンダーが居たりする

 

付け加えると、グラスワンダーは原作と異なり、示現流の教えを一定の水準まで修めた事を祝してトレセン学園近郊の商店街に住むとある人物から模造刀を貰っており、それを常に帯剣していた

 

 

それに対して、スズカは無手であるが、それにも関わらずスズカに軍配が上がるという理不尽な現実であったりする

 

 

 

なお、念のために研究室の周辺には仮設テントを建てて、そこに必ずスズカ、ブルボン、ライスの中の一名とエルコンドルパサー、タマモクロス、スーパークリーク、オグリキャップの中からも一名が常駐する厳戒態勢であったりする

 

 

更にこれに加えて、メジロ本家よりの増援がトレセン学園周辺に待機しており、その異様ともいえる雰囲気に周辺で待機している記者たちも気を引き締め直したり、本社からの増援を要請したりしていた

 

 

 

 

言うまでもなく、学園の外についてはメジロが主体となった大掛かりな陽動作戦であるし、学園内については『その場のノリ』であった

 

 

会長不在時のトレセン学園生徒会最高責任者は副会長であるナリタブライアンであり、彼女はこういったバ鹿騒ぎは大好きであった事から承認された

 

 

なお、ストッパー役のエアグルーヴはまさに『頭痛が痛い』といったありさまであったのは言うまでもないだろう

 

 

 

 

学園はゴールドシップが意図した状況ではないが、学園外の状況はゴールドシップがアグネスデジタルに『落とされて』から自宅に帰って当主に直談判した結果、実現したものだったりする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな騒動など、どこ知らぬ顔でタキオン達は東京駅に着いていた

 

 

 

さて、これからどうだったかな?

 

流石に緊張するな

 

確か東海道新幹線でしょ?何番線だっけ?

 

18番、19番線だな

しかし、わざわざグリーン車とは恐れ入るわ、ホント

 

 

初めての新幹線による旅に興奮を隠しきれないタキオン。逆に不安を隠しきれないルドルフと彼がいるなら万事OKのタイシン

 

事前の調べが足らないせいで不機嫌な彼という有様であった

 

 

なお、タイシンは彼と手を繋ぎ、タキオンとルドルフは彼の服の後ろを少し掴みながら彼に着いて行ったりしている

 

 

 

なお、彼は事前に調べた為にグリーン券の値段を知っており、居た堪れない思いがいっぱいであったりする

 

 

(おいこら、なんだよ1人15000円って?てか、なんで岐阜?もっと近場で良かったじゃん!いや、ボクの金なら気にしないけどもこれ全部理事会の人達のポケットマネーなんですけどぉ?!)

 

 

と彼は内心絶叫していた

 

 

 

 

元々彼は小市民であり、その性根もガラスやノミどころか『プレパラートの心臓』と評されるほどに小心者であった

 

あくまでも彼が今までやってこれたのは、アグネスタキオンという少女の為だけを想って一心不乱に行動していたからであったのだ

 

 

ちなみにプレパラートとは理科の観測器具である顕微鏡の対象を固定する本当に脆いガラスの事である

 

 

 

 

話を戻そう

 

 

東京駅を19時過ぎに出ると、目的地の最寄駅である岐阜羽島には21時過ぎに到着する予定だ

 

 

停車駅は東京駅を出て、品川、新横浜、三島、静岡、浜松、名古屋。そして降車駅である岐阜羽島となる

 

 

 

 

 

その後2キロほど歩き、羽島市役所前駅より名鉄竹鼻線で名鉄岐阜駅に向かうルートであった

 

 

これはタキオン達が夜の散歩を希望した事によるものであり、本来なら名古屋駅で大垣行きの通勤快速なりに乗り換えた方が分かりやすかったりする

なので、リアルに東京から岐阜に行くときには気をつけてね?

 

 

羽島市役所前には30分ほどあれば着くであろうから、21時47分の笠松行きに乗る予定である

 

 

つまり岐阜に着いたら既に22時くらいになっているというわけで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

着いたねぇ

 

だねぇ

 

日頃から使わないものを使うと、少し疲れるな

 

そうやなぁ、大丈夫か?タイシン?

 

ごめ、ちょっと辛いかも

 

顔色の悪いタイシン

 

 

 

やはり疾く走れるウマ娘故か自身の力でなく受動的に動くものに対しては人と感覚が違うらしい

 

以前、イベントの服の関係で知り合ったミスターシービーさんもエレベーターは苦手だと言っていたしなぁ

 

 

 

とはいえ、岐阜駅に到着する時刻は知らせているわけで

 

 

 

 

トレセン学園一行様ですね

お迎えにあがりました

 

 

だからさぁ

理事会の人達は少しは自重しようよ、ホント

 

 

俺は人知れずため息をつくしかなかった

 

 

 

 

 

なんでも、此処は理事会のメンバーの1人御用達のホテルらしく、食事なども全てルームサービスにて対応しているそうな

 

しかも、このホテルは深夜12時までディナー?のルームサービスを受け付けており、至れり尽くせりであった

 

 

 

 

チェックインしようとサインしようとして、俺は固まった

 

 

待て、どういう事だこれは?

 

 

 

 

 

 

トレセン学園一行

 

分かる

 

 

4名

 

そうだな

 

 

部屋数

 

1つ

 

 

何でやねん!

 

 

 

急いで、秋川理事長にメールを送る

 

 

すると

 

 

 

 

 

 

発信者

 

秋川やよい

 

 

件名

 

すまん!

 

本文

 

どうやら彼等が間違えて(・・・・)部屋数を一つとしてしまった様だ!

 

・・・・・本当に済まないが、今日はそこに4人で泊まって欲しい

 

 

 

 

 

 

 

 

落ち着け

 

フロントの人も、やよいさんも悪くない

 

 

 

だが、敢えて言わせてもらおうっ!

 

 

 

 

計ったな!理事会ぃぃぃぃっっ!

 

何とか鋼の精神で大声を出す事なく済ませたが、ありえねぇだろうがよ!

 

6人部屋をわざわざ指定しておいて、それで他の部屋の予約を忘れただとぉ!

 

そんな言い訳、良いわけ(・・・・)ないだろうがぁっ!

 

 

 

 

 

 

とはいえ、タイシンの調子が悪い以上遅滞行為は認められないし、時間が時間である

 

ましてや、俺たちは学生の身である

幾らトレセン学園の公認といっても、騙りと判断されるのがオチ

 

更にルドルフとタイシンは今後メディアへの露出も増える事を考えれば、問題行動などもっての外

 

 

 

 

 

というわけで、私達が泊まる部屋に来たわけだ

 

あ、ああ。そうだな

 

とりあえずタイシン寝かせてくるわ、タキオンとルドルフは何か頼んどけよ?

時間が時間だしな

 

やれやれ。ならば道中でファストフードを買えば良かっただろうに

 

それはどうなんだよ?

俺とタキオンはともかくとして、ルドルフとタイシンは栄養バランスにも気を遣わなきゃならんというに

 

 

 

 

 

そう苦笑して、俺はタイシンを抱き抱えて寝室へと向かった

 

 

 

勿論、やましい事などなかった

当たり前だが

 

 

 

 

 

ごめん、アンタの負担になってるよね、アタシ。こんなんじゃ、ダメなのに

 

 

ナリタタイシンは心優しい少女だ

タキオンと別居する様になってからも、時間を見つけては俺の事を心配して学園に来ているボクを探してくれた

 

 

そして、いつもその真っ直ぐな目を優しそうに細めて

 

アタシはさ、そんなに優しくないからはっきり言うけど。このままじゃ、アンタが先に参っちゃうよ。勿論、スズカ達やルドルフにタキオン。それにアタシもアンタに会いたい。それでもアンタが傷つくのは見たくないの

 

 

と事あるごとにボクの心配をしてくれた

 

 

 

だから

 

 

大丈夫。タイシンはいつもボクを支えてくれているんだから、たまにはお返しさせてよ

ボクだって一応は男なんだから、さ

 

 

 

と眠りについたタイシンの頬を撫でた

 

 

 

 

このくらいはセーフでしょ?

 

 

 

 

 

 

リビングに戻るとタキオンとルドルフが苦笑していた

 

というか、料理が来るの早すぎないか?

 

 

 

テーブルには作りたてと思われる料理が並んでいた

 

 

 

 

これはトレセン学園理事会が事前にサイレンススズカからトレーニング内容に沿ったメニューの候補一覧を入手して、予約の際に併せてホテル側に送った為であったのだ

 

ここはそれこそ、社会的地位の高い人物が好んで使うホテルである

 

 

客のプライバシーを守るのは当然として、叶う限りの客のニーズに応えることがこのホテルの経営理念と言えるので、この対応も当然と言えたし、そうでなくては困るのだ

 

高いだけのホテルに用はない。

欲しいのは、一流であるというプライドとそのプライドを持つに相応しいきめ細やかな対応ができる事

 

それだけのホテルであればこそ、トレセン学園理事会も安心して送り出せたのである

 

言い方は悪いが凡百のホテルに彼女達を泊めるなど許せるはずもなかったのである

主にプライバシー関係とセキリュティ関係の信頼性において

 

 

 

ふむふむ。興味深いねぇ

 

どうした?タキオン

 

興奮するタキオンと意味が分かっていないルドルフ

 

 

実は俺も驚いていた

 

 

 

 

この食事。間違いなく、栄養管理に気を付けながらも、このクオリティに仕上げてる!

 

 

流石は理事会が推薦したホテル

 

脱帽するわ、いやほんとに

 

 

 

 

 

 

その日はダウンしたタイシンの事もあり、早く就寝することにした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日土曜日

 

 

人通りが多くなると予想される為、朝の6時半にホテルをチェックアウトする事とした

 

幸い、タイシンの体調も回復した為に今日の予定には支障がない様である

 

 

今日訪れる予定なのは、先ずオグリキャップの故郷でもある笠松

 

 

そこでトレセン学園の現役生徒であるアグネスタキオン、シンボリルドルフ、ナリタタイシンとの交流イベントとなる

 

 

トレセン学園は来年度、いや正確には来年の2月より一部の生徒達が順次デビューする事となっている

 

 

 

その際、候補となったのは地元府中、大井、中山、阪神、京都、函館、中京に今日の最初の目的地である笠松である

 

 

 

学園生徒であるオグリキャップに所縁の深い笠松ならば、何かあった場合にも笠松側とトレセン学園側の連携がしやすいとの理由から、当面は学園生のデビューは笠松にする事と決まった

 

距離的な問題こそあるが、デビュー戦という一番プレッシャーのかかる舞台だから特にウマ娘に理解がある笠松となったそうだ

 

 

選ばれなかった他の候補地については、当事者であるウマ娘に一任されるが引退ライブや節目のイベント会場にするという事での決着を見た

 

 

 

しかし、向こうからの提案とはいえ朝早いともいえるであろう7時にお邪魔しても良いのか?が甚だ疑問だが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よくお越しくださいました。私は此処笠松の管理をしております、重里と申します

 

 

あ、はい

私は『トレセン学園トレーナー部門教育係』をしている者です。浅学非才の身でありますが、今後ともどうか宜しくお願いします

そして、今日は急な訪問にも関わらず、ご丁寧な対応ありがとうございます

此方が

 

初めまして。トレセン学園所属『研究担当』アグネスタキオンといいます。今日は宜しくお願いします

 

朝早くの訪問にも関わらず、懇切丁寧な対応ありがとうございます。トレセン学園生徒会長シンボリルドルフです。今後、様々な面でお世話になると思いますが、御指導御鞭撻の程宜しくお願いします

 

ナリタタイシンです。今日はありがとうございます

 

 

笠松競バ場

つまり、来年の2月にルドルフとタイシンが連続してデビューする所に着くなり、奥の部屋へと通された

 

 

あの、ワタシは別に良いと思うんですが?

 

 

あ、ハイ

ダメですか、そうですか

 

 

 

 

とりあえず席を外そう(前述的撤退)しようとしたら、タキオンとルドルフに袖を掴まれて、タイシンに後ろから抱きつかれた

 

ので!

諦めました!

 

 

 

 

笠松の総責任者である重里は興味深そうにこの施設を回っている4人を部屋の窓から見ていた

 

 

 

なるほど

彼女達がオグリの言っていた友人達、か

 

そして、彼がそうか

 

 

 

 

 

嘗てオグリキャップというウマ娘の少女は此処笠松の近くの家で生まれた

 

 

生まれたばかりのオグリは他の赤子と比べて体重が軽く、更にウマ娘である事から、重里の前任者へと病院から連絡があった

 

 

此処はその当時から既に小規模ながらも行われていたウマ娘達によるレースの会場の一つであった為に、ウマ娘の身体に詳しいドクターがいた為であったのだろう

 

 

今もって全容が解明されていないウマ娘という存在

 

しかもそれが、赤子となると病院としても迂闊な事は出来なかった

 

 

 

 

そんな周囲の心配を他所にオグリはすくすくと育っていった

 

同じ歳のそれと比べて軽かった体重も、彼女自身が好き嫌いなく沢山の物を食べる為に解決した

そして、オグリは走る事が大好きだった

 

 

いつも金華山(岐阜駅の北にある山。有名な岐阜城があるところでもある)の麓まで走ってきたり、各務原(かがみはら)の方へと散歩に出かけたり、関ヶ原の方まで走っていったり、一宮の方まで楽しそうに駆けていったりしていた

 

金華山は笠松から見ても北側に位置し、各務原は方角的には東で大垣は西、一宮は南に位置する

 

 

 

金華山までの距離は約12キロであり、各務原は約9.5キロ

大垣は約20キロで一宮、こちらでは尾張一宮と呼称するが、そこまでは約11キロ

 

 

楽しそうに走る彼女の姿は笠松のみならず、これらの地域でも頻繁に目撃されており、その愛らしい姿から好意的に見られていた

 

 

時たま、大垣を越えて関ヶ原に行く事があったそうで、その際には大垣からは長閑な田園風景も見られる事から特に彼女は気に入っていたらしい

 

 

しかし、だいたいそういう時には彼女が帰ってくる時には何かしらのお土産を持って帰ってくる

 

というのも、楽しそうな彼女を見た農家の人達がこぞってオグリに野菜などを手渡してくるそうだった

 

 

彼女としては申し訳ないと思っているのだろうが、優しい彼女は相手の好意を断りきれず、困り果てた顔で笠松に帰ってくる

 

 

その頃には地元のローカル局でオグリキャップの事を何度か報じていた事も手伝い、彼女が地元笠松を盛り立てようと日々トレーニングに明け暮れている事が知られる様になった

 

 

彼女は野菜などを貰ってしまい、その申し訳なさから暫くそちらに行かなくなっていたが

 

 

 

 

笠松競バ場に

 

 

 

もしもし

オグリちゃんは元気かしら?

そう、最近姿を見ないから心配してたのよ

また近くに来たら寄って欲しいって彼女に伝えてもらえないかしら?

 

とか

 

ウチのカミさんが、オグリちゃん来ないなぁ。って言ってましてね?

もし良かったら、たまにでも良いんで顔だけでも見せちゃくれませんか?勿論、彼女が忙しいのなら無視してくれても良いので

 

 

と言った電話が競バ場にも頻繁にかかってくる様になった

 

 

 

しかし、彼らも分かっているのか

ひと月経っても彼女の姿が見えない時にしか電話してこない

 

 

 

そして、いつからか

 

笠松に大量の野菜などや多額の寄付が寄せられる様になったのだ

 

 

 

 

オグリキャップ、頑張れよ!

 

オグリちゃん。無理はしないでね?

 

オグリのお姉ちゃん。頑張ってね!

 

 

などと添え書きのされた物が

 

中には子供のものと思われる、豚の貯金箱などがあり、オグリはそれを今でも笠松の自室に大切に保管している

 

 

 

そんな彼女はいつしか

 

『笠松の星』や『美濃の希望』などと呼ばれ始めた

 

 

 

すると地方局もその噂を聞きつけて、オグリにインタビューをする事になり、それがまた彼女の人気に更なる燃料を投下する

 

 

そしていつしか、此処笠松競バ場は隣の中京競バ場にも勝るとも劣らない活気を見せる様になっていったのだ

 

 

 

他の競バ場と決定的に異なるのは

 

 

レースが無くとも、その活気が失われる事がない

事だろう

 

 

 

 

笠松の英雄はウマ娘にして、ウマ娘にあらず

 

と評されたオグリキャップは彼女やトレセン学園が思う以上の影響力を持っていたのだ

 

 

 

 

 

 

そのオグリキャップの紹介である

 

重里氏は僅か2日の間に来る人物であるアグネスタキオン、シンボリルドルフ、ナリタタイシン。更に形式上とはいえ、トレセン学園の代表として訪問する彼について可能な限りの情報を調べ上げた

 

 

 

オグリよりいつもの様に1日の最後に連絡は来るものの、それのみで判断する訳にはいかなかったからである

 

 

 

 

 

オグリキャップは純粋である

 

 

それ故に真実を的確に見抜く力に長けている

だが、だからこそ人の裏を読むことを好ましく思っていない。

 

それは彼女の何よりの大切なものであり、重里は勿論の事、彼女を見守ってきた笠松の者達は不満に思う事はない

 

というよりも、それは自分たち大人の役割だと彼等は常に思っていた。

 

 

 

 

勘違いされがちではあるが、ウマ娘というものは本来臆病で警戒心が高い生き物である

 

 

感覚が優れるが故に、周囲に怯え

人と違うからこそ、憧れる

 

だが、そのうちにそれは

理解されないなら、自分で居場所を作る

人と違っても、理解されなくともいい

 

 

と変わりゆく

 

 

世間で有名なウマ娘の殆どが自己主張が強いウマ娘であるのは

 

 

声を上げ続けなければ、自分の居場所がない

 

と思っているからだと重里は考える

 

 

実際、幼い頃のオグリとて、周囲に怯えて生活していた時期はあったのだから

 

 

 

 

重里は今回の訪問で見極めるつもりだった

 

 

彼女達の未来と自分達の未来は交わるのか、否か

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これがオグリキャップの故郷か

 

正確には違うらしい

彼女の出生地は此処よりも東にある山県(やまがた)市だそうだ

 

此処から遠いの?そこ

 

聞いた話では高速で1時間かからないとか何とか

恵那(えな)や関市の方らしい

 

関市か。確か刀剣の町だったかな?

 

正確には鍛治が古くから盛んな土地だろうな

刀剣の町というのならば、どちらかというと備前長船(おさふね)だろうよ

 

 

確か岡山だったか?

 

 

せやな

岡山県南部の旧長船町。現在は長船町、邑久(おく)町、牛窓町が合併して瀬戸内市らしいがな

なお、有名な焼き物である備前焼の生産地である備前市に隣接してるそうだ

 

 

授業でも出てきたね、その名前

 

今でこそ地方都市だが、鎌倉時代より続く由緒正しい刀剣の町だったそうだ

これは中国山地から良質の鉱物が採れた為と、長船にクヌギが自生していた事から、たたら製鉄が容易に行なえた事と、主要街道である山陽道と主要航路である瀬戸内に面していた事が理由らしいな

 

時間があれば行きたいところだが、流石に無理だろうな。今回は

 

 

ま、キミの歴史談義は今度聞くとしよう。しかし、中々に規模の割には立派な設備だねぇ

 

タキオンは彼の話題を遮った

 

こうなると、この人が面倒くさくなるのを知っているからである

 

 

そうだな。彼の話は今日のホテルででも聞くとしよう

 

 

彼が肩を落としているのを見たルドルフは彼をフォローする

 

 

やれやれ。あまり彼を甘やかさないでくれないかな?ルドルフ

 

いや、普段アタシ達が散々甘えてるんだから偶には良いんじゃないの?

 

そのルドルフを若干責めているタキオンに反論するタイシンであった

 

 

いいかい?彼は普段はその事を隠しているが、彼もまた『趣味人』だ。彼の好きなこと、つまり歴史談義などに付き合っていては1日など直ぐに終わってしまうよ

 

 

タキオンはその時の事を思い出しているのか、苦い表情をしていた

 

 

所謂『趣味人』もしくは『オタク』や『マニア』と呼ばれる者はとにかく自分の好きな事を語らせると話が長い

 

ほんっとーに長いのだ

 

 

その例に漏れる事なく、彼もまた豊富すぎる知識があるからこそ、他人の視点を求めて、しっかりと話をしてしまう

 

なお、タキオンが覚えている限りでは2日目の朝までの記憶がある

 

 

 

なお、タキオンの従姉妹であるデジタルに『ウマ娘ちゃん』を語らせると最低でも半日は覚悟しなければならない

 

げに恐ろしきは、ヒトの業であった

 

 

 

 

長い時間ありがとうございました。来年の2月からよろしくお願いします

 

トレセン学園としては、今後各地の競バ場との緊密な連携を模索していきたいと考えております

勿論、其方の意思次第ではありますが、是非ご検討下さい

本日はお忙しい中、ありがとうございました

 

ありがとうございました。今度宜しくお願いします

 

色々と参考になったよ!ありがとうございます

 

 

 

 

 

なるほど、彼女達ならばオグリと共に新しい未来を創れるだろう

 

重里はそう呟くと徐に受話器を取った

 

 

 

 

この日、トレセン学園の方針に疑問を持っていた為に協力を渋っていた各地の競バ場から、来年からのレース開催への全面協力の話が相次いで学園理事長に届く事となった

 

 

 

 

 

さて、昼前だがどうするよ?

 

確か、今日の宿は大津だったね?

 

 

誰もいない公園でのんびりと談笑する4人

 

 

 

滋賀県の県庁所在地である大津市

 

京都市に隣接する都市であり、日本最大の湖である琵琶湖沿岸の都市でもある

 

交通の便としては、新幹線こそ止まらないものの、兵庫県姫路市からの新快速の停車駅の一つであり、滋賀県における中心的役割を担う都市である

 

新幹線が停車しないのは、2つ西の京都駅が新幹線の停車駅である為に新幹線特有の速度を殺しかねないとかなんとか言われているらしい

 

 

百人一首の10番目である

 

 

これやこの

 

行くも帰るも

 

別れては

 

知るも知らぬも

 

逢坂(あふさか)の関

 

 

の中にある逢坂の関とは滋賀の大津と京都の山科の境目にある関所と言われている

 

旧国名では大津は近江国であり、山科は山城国。つまり、古の都である京に至るための関所だったそうである

 

 

 

 

 

琵琶湖かぁ、絶景なんだろうなぁ

 

さて、どうする?在来線でのんびりと行くか?それとも新幹線で行くか?

でもルドルフ。また岐阜羽島まで行くの?それとも名古屋まで戻んの?

 

どうするべきかな?これは

 

一応言っとくと、米原まで出れば本数は少ないけど新幹線はある

とはいえ、岐阜から米原までの直通は数が少ないらしいから、殆どが大垣から大垣鉄道に乗り換えらしいぞ?

 

ふむ。確か関ヶ原はその区間にあるのだったな?

 

そやね

聞くところによると、関ヶ原駅には当時西軍と東軍で参陣してた主要武将の名前が書いてあるとか、なんとか

 

ふーん。じゃあ、彦根城も近いって事?

 

あ”!?

 

 

 

和やかに会話していた筈が、いきなり彼の雰囲気が激変した

 

え、なに?

 

ナリタタイシンも困惑していた

タキオンより、彼は歴史。とりわけ安土桃山、つまり戦国時代が好きだと聞いていた

ついでに最近世間で脚光を浴びている彦根城を話題に選んだタイシンは決して悪くない選択の筈、だった

 

 

 

ただ一点

 

彼が偏執的なまでの徳川嫌いでなければ

 

 

そ、それより安土は確か南近江だったはずだろう。やはり何か残って

 

ないよ

 

ふむ?

 

え?何で

 

安土には遺構も殆ど残ってない

そう言った

 

 

 

 

天下を戦国期において、初めて手にかけたのは間違いなく織田信長であろう

 

 

大勢力を誇っていた相模の伊勢氏(北条氏)の本拠である小田原城が少なからず現存しているのは、かの秀吉による『小田原征伐』において秀吉が支城を落とすことに専念しており、積極的に攻め寄せなかった事も多分に影響している事と思われる

 

更に北条氏を下した後にも廃城としなかったのは、北条氏の後に関東移封された徳川氏に対する牽制もあったのではなかろうか?

 

事実、戦国期における屈指の民生国家であった北条氏は領民より慕われていたとされ、一説にはその北条氏の影響を嫌ったが故に徳川家康は本拠を小田原より発展していなかった江戸に定めたという説もあるくらいだ

 

 

ある意味では幸運に恵まれた小田原城であったが、安土城はそうではなかった

 

記録によると織田信長が安土城を本拠としたのは琵琶湖という天下屈指の水運を抱える湖を望みながらも、京に近く、西は山城東は美濃とどちらにも影響を持てたからではないか?と思っている

 

そして、安土城は戦城(いくさじろ)ではなく、どちらかといえば現在の政庁的な要素が多かったらしい

 

城下には巨大な南蛮新教すなわち、キリスト教の教会に戦没者を祀る寺社や町人たちの街もあったとされる

 

 

更に言えば、此処は旧六角氏の本拠地である観音寺城の至近であり、滅んでなお、近江において影響力を残していたそれへの対策であった可能性もある

加えて、その頃の織田の戦域は西は播磨、北は能登や越中、東は信濃や駿河であり、隣接する大和筒井や遠江徳川は同盟関係にあった

 

 

つまり、戦を意識しなくとも良かったのではなかろうか?

 

 

 

 

 

ところが1582年、本能寺により織田信長は明智光秀に討たれ、更に嫡男であった織田信忠もまた京にて命を落としたとされる

 

 

その後の混乱期において、安土城の象徴でもあった天主(誤字ではない)などの一部の建物が消失しその後暫くはそれでも城としての機能は果たしていたとされる

 

しかし、時は織田の時代から羽柴、豊臣の時代へと移り変わり、秀吉の甥である豊臣秀次が八幡山城を築城し、そこを拠点とするにあたり、安土城は廃城となったそうだ

 

 

 

現在でも安土城の調査は終了しておらず、その全容を伝えるのは太田牛一の『信長公記』や宣教師ルイス・フロイスのイエズス会への報告資料、公家であり、織田家との付き合いのあった山科言継(やましなことつぐ)の『言継卿記』などのごく限られた資料に留まる

 

なお、儒教学者である小瀬甫庵(おぜほあん)による『太閤記』も存在するが、これは彼以外にも様々な著者がおり、かつ他の現存する資料との矛盾が頻繁に指摘されることから資料としての信憑性に疑問が残る

 

 

 

 

ふぅん、中々興味深いね。これは

 

ある意味では滋賀の発展に寄与したと言っても過言ではない織田信長とその安土城だけど、謎が多いんだよなぁ

 

しかし、よく知っているね。流石に授業だけでは調べられないだろうな

 

時間だけは余るほどにあったからな

それにやよいさんからは態々Wi-Fiまで用意して貰ってたし、暇がありゃ調べられるってもんさ

 

ホント、アンタって凄いよ

 

行動力と実現力については規格外だからね、彼は

 

企画を立てました。しかし、規格(・・)外でした

なんちって

 

っっ!!

ポカポカ

 

 

ふとした拍子に思い付いたダジャレを披露する彼と、それを聞いて涙目になりながら、彼をポカポカ叩くルドルフであった

 

 

 

やれやれ。人目がないからと言って、気軽にルナちゃんにならないで欲しいのだが

 

ルナわるくない

 

不貞腐れるシンボリルドルフ

そこにはいつもの覇気や、凛々しい佇まいなど無かった

 

 

 

 

 

 

 

で、名古屋に戻るんだよね?ルナしたルドルフ?

 

そ、そうストレートに言わなくても良いだろうに

 

あまり外でルナしないで欲しいものだね。流石に困るよ?

 

 

 

 

と2人ともルドルフを責めているが、はっきり言おう

 

 

 

 

 

 

お前さんたちも似たようなもんでしょうが?

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず彼女達は岐阜駅まで行き、快速にて名古屋へ向かった

 

 

 

 

ふむ、此処が名古屋か

 

やはり中京最大の都市だな。非常に栄えている

 

ねえ

 

家電量販店なら、太閤口にあるぞい

 

 

名古屋で一度下車した一行は〇〇グカメ〇に向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

ふふん♪

 

機嫌が良さそうだな、タイシンは

 

まさか、大須にまで来ることになろうとは

 

やれやれ。どうにも私はあの地下鉄というものは合わないようだね

 

 

〇〇グカメ〇に目的の品が無かった事で意気消沈するタイシンを見かねた彼は市内の大須ならそういうものがあるかも知れないとタイシンに提案した

 

 

幸いにも大須に行くための地下鉄はかなり利便性が高く、僅か20分足らずで到着できた

 

そこのとあるビルでタイシンは探していたレトロゲームを見つけ、即購入

 

 

当初の目的の品こそ確保できなかったが、タイシンは満足していたわけだ

 

 

 

ちなみに彼の左腕に抱きついたまま、耳と尻尾をご機嫌そうに忙しなく動かしていたりする

 

 

 

というわけで、ナリタタイシンである事が周囲へとバレる事がなかったという副次的効果をもたらす事になる

 

 

 

 

 

なにせ、タイシンの纏う空気は

 

触んないで

 

というものであるからだ

 

 

 

ま、実際は学園内どころか、彼のアパートですらイチャイチャしているわけなのだが、知らない事って幸せだと思うの

 

 

 

 

なお、そんなタイシンにも後年ファンが出来るわけで

 

 

 

 

今日も我らが姫は絶好調やな!

 

この

「アンタ達なんてどうでもいい」って対応が癖になる。ならなくない?

 

わかりみが深すぎる

 

お前は俺か?

 

こんなタイシンちゃんやけど、トレーナーの前だとねぇ

 

あれは脳みそ破壊されるわ、タイトレてぇてぇ

 

トレタイではないのか?

 

というか、あのトレーナーってスズカさん達のトレーナーじゃなかったか?

 

ヒェッ!

スズカさんの!マジでかよ!

 

サイレンススズカという、グラスワンダーすらも慄くトレセン学園最強の修羅の貫禄よ

 

あの、ジャパンカップでの尊い絡みをもう一度!

 

 

 

 

と一部ノイズが入っていたが、タイシンのファンは割とコアなファンが多い

 

 

 

ちなみに彼ら彼女達は彼とタイシンの関係については、否定しない

 

それどころか、寧ろもっと供給してくれ!と切望していたりする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だからって、これひどくない?

 

新幹線に乗ったタイシンは膨れていた

 

 

確かに名古屋では彼と多少(・・)イチャイチャしたかも知れないが、全然普通のはずだ

 

 

 

注意

 

トレセン学園に所属しているウマ娘たち全員に言えることだが、彼女達は日常見せられている

 

タキオンする

ルドルフする

タイシンする

に加えて

 

お兄ちゃんする

兄貴する

ゴルシする

 

 

更には

 

オグリする

フラッシュする

 

と言った数々の行動を見た結果、些か(・・)距離感がバグっていたりするので学園所属のウマ娘と対応する時には注意が必要だったりするのであった

 

 

 

 

 

 

余談ではあるが

 

 

トレセン学園とは『世間一般の常識を教えるところ』でもある事をふと思い出した(・・・・・)秋川理事長は

 

 

平和だから、ヨシッ!

 

 

と考えるのをやめたとか何とか

 

 

 

 

 

 

 

では、何故タイシンが憤っているのかというと

 

 

や、確かにさ。ルドルフは岐阜で、アタシは名古屋で甘えたよ?でも、そこはジャンケンでしょ、普通は

 

目の前には彼の肩に寄りかかってリラックスしているタキオンの姿があったのだから

 

羨ましくなんかない。羨ましくなんて、絶対ない

 

 

と隣で小さく呟いているルドルフがいたが、2人はスルーしていたりする

 

 

席順は通路側に彼、その奥にタキオン

彼の向かい側にタイシンでその奥がルドルフとなっている

 

 

つまりはそういう事だ

 

 

岐阜でルナしたルドルフ

名古屋で盛大にタイシンしたタイシン

 

となれば、次は自分の番だとタキオンが主張したとて、誰が責められようか?

 

 

 

因みにルドルフとタイシンはその横暴に全力で抗議した

 

 

 

しかし、相手は七色に輝く薬品(ゲーミング式ドラッグ)を懐から2人にだけ見えるようにしたタキオンである

 

 

しかも、2人が協力しあったとしても、最終的な勝者は1人

 

 

つまり、タキオンを退けたところで隣の相手が敵になるだけである

 

 

 

そして、タキオンは彼がいる状況下においては、比喩抜きで『ゾンビ戦法』が可能なのだ

 

実質残機無限である

 

 

 

 

という訳で、タイシンとルドルフは絶対に負けられない戦い(席順決めのジャンケン)をしたのだが

 

 

 

 

 

 

結果は見ての通りである

 

 

 

 

その結果、シンボリルドルフはルナちゃんから元に戻ったと思ったら、ションボリルドルフへと変化してしまった訳である

 

 

とはいえ、ナリタタイシンはルドルフに同情しない

勝負の世界とはそういうものなのだから

 

 

 

 

 

 

 

注意

 

唯の席決めのジャンケンです

ついでに勝者はその勝敗の有無を問わずに確定しています

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけで、大津に着きました

 

 

 

待ちたまえよ。私と彼のラブラブ描写はどうしたというのかな?

 

 

こらこら、舞台裏に来るんじゃありませんよ

 

 

ふぅん?

 

 

 

 

 

 

 

 

一時混線した事をお詫び申し上げます

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

では、慰安旅行後編に続きます!

 

 




慰安旅行前編となります


後編は明後日くらいには投稿できたらと思っております




ではご一読ありがとうございました


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 据え膳食わねば?(前編)

とりあえず、タイシン成分を補充しましょう、そうしましょ

本編の補完的な話でもありますが、基本的には明るい話です



本作における、シンボリルドルフの扱いは割と様々である事を念頭においてご覧になる事を強く推奨します

まあ、この小説を読んでくれている皆様ならば、その辺りは理解して下さっているとはおもっていますが、念の為に


あ、言うまでもありませんが規約やサイゲ様などの関係者に迷惑をかけるつもりはありません
悪しからずご了承下さい


これは彼女達がトレセン学園を卒業してなお、学園にてスカーレットの育成に励んでいた頃の話である

 

 

 

 

 

タイシンの場合

 

 

 

あれ?部屋の鍵開いてる?

 

 

いつもの様に彼へと手料理を持ってきた(通い妻しに来た)タイシンだったが、珍しいことに部屋の鍵が開いていることに気が付いた

 

入るよ?

 

タイシンは声を潜めて、室内に声をかけながら扉を開けた

 

 

 

そこには

 

彼が机に突っ伏して寝ていたのである

 

 

 

 

(え。えっと携帯は、そっか置いてきたんだった)

 

タイシンは内心自分の判断を悔やんだ

 

 

 

何せ、タキオンですら片手で数えるほどしか見たことのないという彼の寝顔なのである

 

 

それはもう、撮影する以外の道があるだろうか?

 

いや、ないだろう

 

 

 

激レアである

 

 

理事長が『激アツッ』と書いた扇子を持って、扉を開ける光景が何故かタイシンの頭をよぎった

 

 

タイシンのしているゲームでいえばSSRどころか、LRであろう

 

 

 

しかもである

 

彼は眼鏡を外して寝ていたのだ

 

 

 

 

これはもう、タキオンとルドルフに話せば、プンプンタキオンとゲキオコルドルフ待ったなしである

 

タキオンが言うには、彼が眼鏡を外す事自体が滅多にない事だと聞いているし、あまつさえその彼が眼鏡を外したまま寝ている事をタキオンは一度も見たことがないと残念がっていたのをよく覚えている

 

 

 

とはいえ、彼の事を惚気ると必ず2人も乗ってくるのでそこまで怒りは持続しないのであるが

 

 

欲を言えば、この姿を写真に収めておけば、本当に幸せな気分になれるだろうな

 

 

とタイシンはふわふわする思考の中で思っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

彼が寝息を零す

 

それを見るタイシンは柔らかい笑みを浮かべていた

 

 

 

ナリタタイシンはタキオンやルドルフの様に体つきが女性らしくない

 

 

かといって、スズカみたいに『最速の機能美』と呼ばれる様な独特の魅力(・・・・・)を持つわけでもない

 

 

未だに身長も体重も然程に変わっておらず、ハヤヒデやチケットからも軽く持ち上げられる事が多い

 

 

勿論、彼になら後ろからだろうが、前からだろうが抱き上げられるのは大歓迎である

 

 

寧ろ、自分から強請りにいくほどである

 

 

 

強請るな

 

勝ち取れ

 

さすれば与えられん

 

 

とはどこかのアニメの台詞らしいが、タイシンは『追い込み』型であり、機を窺うのには慣れている

 

それになんだかんだ言っても、タイシンは今の彼やタキオンやルドルフ達との関係が嫌ではなかった

 

 

 

 

 

人によっては『ぬるま湯の様な関係』と言う者もいる

 

 

別に構わないではないか

 

当事者である私達が、それを良しとしているのだから

 

 

 

 

 

 

タイシンはうずうずしていた

 

 

 

可愛いのである

 

彼が

 

 

 

 

いつもは、常に気を張っているのか、少し眉間に皺を寄せており、威圧的な空気を纏っている

 

とは言っても、誰かが話しかけてくればそんな空気は雲散霧消してしまうのだが

 

 

 

 

つい、この間妹分であるウオッカのトレーナーから彼女と付き合いたいと言われたらしい

 

今年いっぱいは『トレーナー部門教官』である彼はその人物の事をよく知っているらしく

 

 

細かい事をぐだぐだ言うつもりはない

ウオッカとお前さんの問題だからな

ただ、一つだけ

あいつを頼む

 

 

兄として彼女を4年間見守っていた彼はそう言ったらしい

 

 

 

 

彼は一度タキオンの為に全ての(しがらみ)を投げ捨てた人物だ

 

 

そこにどんな想いがあったのかは、彼は語ろうとしない

 

 

現在、タキオンは自身の母親と実の父親との間で親権問題が表面化しており、彼もその問題に関わる他ないと聞いている

 

 

彼が言うには

 

 

おおかた、タキオンがウマ娘としての活躍をしてなかったから、黙っていたんだろう。

だが、今年の頭に製薬会社が発表した『ウマ娘専用の頭痛薬』の共同開発者がタキオンと知り、更にスカーレットが活躍している事からタキオンを娘として手元におけば、その賞金すら手に入れられると思ったんだろうさ

 

 

タキオンの母親は夫である人物との民事において、離婚が成立し、加えて育児放棄による親権剥奪に対する責任を追求された

 

勿論、夫にも責任があったが、彼女の『娘の面倒を見る名目で夫から多額の資金を受け取りながら、それを怠ったばかりか娘であるタキオンの預金にまで手をつけた事』が問題となり、彼女は自宅から追い出される事となった

 

 

夫としての最後の責任なのか、彼女にはアパートを用意しており、その鍵を渡す事が彼女への最後の行為であった

 

 

更に夫の立場を利用して、夫の会社の下請けの様な会社で好き勝手していた為に、離婚が成立するなり、会社から解雇通告される事ともなる

 

 

 

 

それでも彼女には不倫相手がいたのだが

 

 

 

 

 

 

不倫相手である彼はかなり厳しい状況にあった

 

 

4年前、金蔓であった元カノである財閥の娘はとある事件に関与したとして、警察に自首

 

彼女くらいの資金があれば、保釈金を払う事が出来たはずなのに、彼女は刑に服していた

 

 

 

当然だが、大きすぎる金蔓を失った彼はたちまち生活が成り立たなくなっていく

 

彼女の家に恥も外聞もなく、泣きつこうとしたが、門前払いされた

 

 

それどころか

 

 

 

今後、この家に立ち入るのであれば、貴方を警察に引き渡します

 

この意味を良く考えて欲しいものだ

 

 

 

と本家の当主とやらから言われてしまう

 

訳が分からなかった

 

 

 

 

仕方ないので、いつもの様に適当な女性に捕まえて上手くしようとしたのだが

 

 

逆にその女性達の相手から裁判を起こされる寸前までの事態になってしまう

 

 

 

 

 

男にとって、人生とは女に寄生する事で楽に生きれるものであったので、自分で働くなどと考える気持ちも湧かなかった

 

 

だが、背に腹は変えられないとコンビニでアルバイトをしたのだが

 

 

 

 

 

 

あのー、まだですかぁ?

 

あのさぁ、こっちも急いでるんだけど?

 

 

などと客から言われるほどに手際が悪かった

 

 

 

当然であろう

 

親の仕送りだけで、学生時代は生活し、卒業する頃には財閥の娘という巨大な財布を手に入れていたのだから

働いた事がなかったのである

 

 

それが40前になって、初めて働くのである

 

 

何も知らない。何も出来ない

でも、プライドだけは一人前にある

 

 

 

 

悪いけど、明日から来なくていいから

 

 

 

 

 

そうなるのは必然だった

 

 

 

 

 

それでも彼は生きていかねばならない訳で

 

 

 

 

 

おい、おっちゃん

今仕事してるのか?

 

 

 

 

 

 

 

彼はそれから、建設会社でその日暮らしをする様になった

 

 

素行は良くなく、仕事の覚えも悪い

 

当たり前だが、同僚からの評価は最悪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでも彼はなんとか不倫相手の裁判が終わるまで、時間を稼ぎきった

 

 

 

 

 

そして、2人は実の娘であるアグネスタキオンのお金を手に入れるべく動き始めたのだが

 

 

 

 

 

 

2人は知らなかった

 

 

彼女のそばで生きると決めた子供

 

嘗て、娘を奪ったと憎悪した

実の娘(ドル箱)を勝手に奪った憎い子供

 

 

それがとんでもなく、高い障害となって立ち塞がっている事に

 

 

 

 

 

彼はその動きを知るなり、秋川、メジロ、桐生院そして、学園理事会に元議員と言った彼が動かしうるコネの全てを総動員

 

弁護士や法律家などで臨時のチームを組んで、全ての決着をつけようとしたのだ

 

 

 

 

 

 

そして、同時期に財閥の娘である4年前の傷害事件に関わった人物に犯行を持ちかけた人物がいる事と、アグネスタキオンの母親でありながら彼女を利用することしかしなかった女性と、タキオンの実の父親でありながら、全ての責任から逃げ続け、彼女がお金を生み出せると知った瞬間に彼女の父親であると名乗り出た人物がいる事

 

その事がとある『週刊誌』によって、暴露されたのである

 

勿論、タキオンからは了解をもらっており、タキオンは自身のSNSで

 

 

 

 

今回とある週刊誌により、報じられた事については全て事実です。しかしながら、非常にデリケートな問題ですので、会見などについて開く予定はありません

 

 

と発信し

 

 

 

今回、私のトレーナーであり、姉であるアグネスタキオンについて、週刊誌にて取り上げられましたが、これについて私ダイワスカーレットから世間の皆様に申し上げる事は一切ございません

 

 

と担当ウマ娘であるスカーレットも発信する事で取材攻勢に出ようとするマスコミを牽制した

 

 

更にタキオンの為に彼が集めた法律家達は

 

 

本件については、現在係争中であり、お話しできることはありません

 

 

とだけコメントを残した

 

 

 

 

 

2人とて、ある意味では今後の人生を賭けた事であった事から、知人や親族からもお金を借りてまで、裁判に持ち込む事を選択した

 

アグネスタキオンの親は自分達なのだから

 

という考えの元で

 

 

 

 

裁判は長期化するものと思われていたが、事態は急速に動き始めた

 

 

 

 

 

 

刑に服していた、財閥の娘がとあるマスコミ関係者に証言したのだ

 

 

 

 

 

 

当時関係のあったアグネスタキオンの実の父親と名乗る男性と共謀して、ダイワスカーレットのサブトレーナーを務める人物に対しての4年前の事件に関わった

 

 

 

 

彼女は弟である財閥当主より、この話を聞き、4年前の事件の全容をマスコミに語ったのである

 

 

 

その記者は直ぐに彼女の面会記録を調べ、そこにアグネスタキオンや彼の関係者の姿がない事を確認した

 

 

 

 

つまり、タキオン側の意思は介在していないと言う事であり、記者はこれを記事にしようとした

 

 

そこに一本の電話がかかってきた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、すぐ後

 

 

タキオンの実父が4年前のタキオンの夫である人物が被害にあった傷害事件に関与していた可能性がある事が報じられた

 

 

しかも、ご丁寧に財閥の娘と実父の会話が録音されたテープ付きで

 

 

 

 

 

こうなると、裁判どころではなくなったのが、2人だった

 

民事で争っていると思っていたら、その片割れが事件の関与を取り沙汰されたのだから

 

実父は何が何だか分からなかった

 

 

 

 

 

 

しかし、確かに音声記録はあったのだ

 

 

 

元カレである彼にそれなりの感情をいだいていた女性は、彼がおとなしく余生を送るのであれば、それを墓場まで持っていくつもりだったのである

 

 

だが、彼はまた問題を起こそうとしている

 

しかも、一度危害を加えようとした少年の守ろうとしている人物にまた手を出そうというのだ

 

 

だから、彼女は決定的な証拠を提供したのだ。弟を通じて

 

 

 

 

 

彼女は学校では孤立していた

 

それを救い出してくれたのが、元カレである彼だった

 

 

 

別れこそしたものの、彼女は彼の事をそこまで嫌いになれなかった

 

 

 

 

だからこそ、一度は彼を守ったのだ

 

 

 

 

 

 

それでも、まだ現実が見れないから、無理矢理にでも現実を突きつけるのだ

 

 

 

 

彼女は彼を愛していたから

 

 

 

 

 

 

 

当然だが、警察は即座に反応し、実父に『殺人教唆』の容疑で任意同行を求めた

 

 

 

当時捜査していた者達は、どこか違和感を覚えていた

 

だからこそ、今回の件でようやく納得がいったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ、タイシンにとっては心底どうでもいい話だ

 

実際、タキオンも彼も既に『終わった事』としているのだから

 

 

 

 

だが、各種手続きや根回しなどを精力的に行なった彼の負担はどうしようもないのだろう

 

 

だから、こうして無防備な姿を晒している訳だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いっつも、アタシ達を見守ってくれて、ありがと。アンタはいつも「実際してるのはタキオン達ですからなぁ」なんて言ってるけど、感謝してるんだよ?愛しくて、切なくて、それでもどうしようもなくて、いつもアタシ達はやきもきしてるんだよ?

 

 

タイシンは自分の中にこれだけの異性への執着心がある事に驚きを隠せなかった

 

 

でも、悪くない

 

 

タイシンはそう思い始めていた

 

 

アンタが傷付いたら、アタシ達は悲しいし、寂しい。アンタが笑ってくれたら、嬉しいし、アタシ達も一緒に笑い合える。アタシは2年前のジャパンカップで。スズカは2年前のファイナルズで。ルドルフは3年通しての活躍で。ジャラジャラは去年の東京大賞典で。タキオンはトレーナーとして、新薬の開発をした研究者として。アンタを皆護りたい

 

 

ジャパンカップでタイシンは彼の名誉を守った

スズカ達はファイナルズで彼の道の正しさを示した

ルドルフは3年通しての評価で彼と願った未来への道筋を拓いた

ジャラジャラは東京大賞典で、彼が導いた未来への扉を開いた

タキオンは彼と過ごした日々が間違いなかったのだと、成果を出した

 

 

アタシ達の役割は終わり。でも、アンタや私達の願いは確かに次の世代に受け継がれている。少しでもアンタは緩む事を怖がってる。多分、タキオンやルドルフ達にはわかんないだろうけどさ

 

 

ナリタタイシンやジャラジャラ、彼は『持たざる者』であり、タキオンやルドルフ達は『持つ者』である

 

 

ゆっくりお休み。こんなアタシだけど、アンタの休める場所にくらいはなれると自惚れてもいいよね?

 

 

 

窓から夕陽の光が差し込む中、ソファーの上でナリタタイシンは彼の頭を自分の膝の上に乗せながら、優しく。愛おしい、壊れやすいものを慈しむ様に撫で続けた

 

 

 

 

こんな日常をアンタと

 

 

ナリタタイシンの祈りであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルドルフの場合(前編)

 

 

 

おや?

 

よ、ルドルフ

元気か?

 

学園内を歩いていたルドルフは彼を見つけ、彼もまたルドルフを見つけて手を上げて挨拶してきた

 

 

やれやれ。それでは周囲に示しがつかないだろうに『トレーナー部門教官』殿

 

勘弁しろって

んな柄じゃない事はルドルフとて知っているだろうに?

それとも、こうお呼びすべきかな『生徒会特別顧問』殿?

 

ルドルフの苦言に彼も反撃する

 

私の負けだ。確かにお互い似合わない事をしているね

 

 

ルドルフは既にレースから身を退いており、本来ならば『無任所』であった

 

だが、他ならぬスカーレットが

 

せっかくトレセン学園一の功労者がいるんですから、手伝って下さいね?

 

 

とルドルフに頼み込んだ

 

いや、私は既に身を退いたから今年はのんびりしようかと

お願いします!お姉ちゃん♪

頼むよ、姉貴

 

よし、分かった。微力ながら力を尽くそう

 

 

断ろうとするルドルフにスカーレットとウオッカが頼み込むと、ルドルフは思わずそれを受け入れてしまった

 

 

いや、ちょっと待ってくれないか?それは卑怯だろう、スカーレットにウオッカ

 

 

二言はない、ですよね?

アーゴルシノヤツガ、リジチョウシツニイッテシマッター

コレハモウマニアワナイナー

 

 

久しぶりの『お姉ちゃん』と『姉貴』呼びに脊髄反射的に反応したルドルフは自身の失言を訂正しようとするも、時すでに遅し

 

ゴルシが理事長室に逃亡した後であった

 

 

やれやれだよ。ウッカリルドルフしなくてもいいだろうに

 

まぁそう言うなって、タキオン

このたまに見せるポンコツっぷりもルドルフの魅力の一つよ

 

 

タキオン達だな!彼女達に色々吹き込んだのは!?

 

え?何それ怖い

 

濡れ衣だねぇ

 

 

ルドルフとしてはほぼ間違いないと確信していたのだが、彼もタキオンも心当たりがない様子であった

 

 

あ、これ考えてくれたのテイオーですよ?

 

テ、テイオー。君ってやつは

 

 

 

どこかで

 

にしししっ!

 

 

と言う笑い声が聞こえたとかなんとか

 

 

 

な、納得は出来ないが、理解はした

 

 

場の空気を変えようとするルドルフだが

 

 

 

さて、シンボリルドルフくん?

 

なーにか、忘れちゃしませんかねぇ?

 

 

そうは問屋が卸さない

いや、卸させないのが、この2人である

 

 

 

ま、待つんだ。2人とも

 

おやおや、何やらルドルフが言っているよ?タキオンくん

 

そのようだねぇ。ま、関係あるまいよ

 

 

じりじりと後退するルドルフに、彼に先陣を交代(・・)したタキオン

 

心なしか、2人の纏う雰囲気が怪しくなっているのは、果たして気のせいなのだろうか?

 

 

 

俺は、悲しいよルドルフ

こんなつまらない事(・・・・・)でルドルフを弄るわけないじゃないか?

 

 

輝かんばかりの満面の笑みで彼はルドルフに語りかける

 

 

あ、あ

 

しかし、ルドルフは脚を震わせ、目に涙を浮かべている

 

 

ま、まって。話せばわかる

 

 

やや、ルナ化しているルドルフは決定的な言葉を口にした

 

 

問答無用♪

 

 

彼の返答はやはり満面の笑みであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、スカーレットはデジタルとパーマーを

 

ウオッカはクリーク、ネイチャ、マックイーンにそうだな

グルーヴも呼ぶか

 

タキオンは

 

 

分かっているともさ。カフェとスズカ達とグラスとエル。だろう?

 

さっすが♪

 

 

 

彼はルドルフを行動不能にした後にタキオン達に指示を出す

 

スカーレットとウオッカはこういう時の兄には抗しきれない事をよく理解していた為に一切反論しなかった

タキオンに至っては、ノリノリで彼の真意を汲み取っていたが

 

 

 

さて、緊急ミッションだ

 

 

『ルドルフ改造計画』を実行する!

 

 

 

彼の言葉に3人は笑顔で頷いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




と言うわけで、次回は『ルドルフ改造計画』別名『ルナちゃん可愛いヤッター』プロジェクト発動となります

宜しければご覧くださいませ



ではご一読ありがとうございました


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 京と女心

というわけで、前後しましたが慰安旅行後編です


規約にかかる様ならば、即座に削除しますので見逃して欲しい



い、一応アプリ様にもお風呂シーンあるから、だ大丈夫だよね?


そう怒る事もないだろう?

 

そうは言うが

 

流石にねぇ

 

 

とりあえずホテルに着いたは良いのだが、ルドルフとタイシンの機嫌がまだ直らない

 

こう言う時に俺が口を挟むと更に拗れるから、黙っておくとしよう

 

 

2人がヘソを曲げているのは、タキオンが結局京都駅に着くまで俺の隣を独占していたから、らしい

 

 

俺としては久しぶりにタキオンと一緒に居れたので嬉しかったが、流石にルドルフやタイシンへの配慮が足らなかったかも知らない

 

 

 

 

どうやら、ルドルフとタイシンはあと2日となってしまったが、思う存分甘えたい模様

 

 

どうやら、学内では彼女達なりに同期達に配慮して、自重していたそうであった

 

 

 

・・・・・自重ってなんだっけ?

と思わなくもないが、いいのだろう

 

 

多分

 

 

 

 

 

 

 

という訳で、現在俺とタキオン、ルドルフ、タイシンの間で珍しく対立している

 

 

 

だから、それは色々と問題だと何度言えば

 

でも、タキオンとは入ってるんでしょ?

 

些か、不健全かも知れないが、それでも私としてもその誘惑には抗い難いものがある

 

私としては、構わないと思っているのだがね

 

 

構うんですよ、タキオンさん

主に俺の理性的な意味で

 

ふ、ふーん

 

流石にそうなるのか

 

やれやれ。私としては構わないのだがねぇ

 

 

 

構います

ええ、運営などの怖ーい人達に睨まれるだけでなく、他の創作活動をする同士達にも迷惑がかかるんです

 

 

 

作者の嘆きはさておいて、今俺たちは琵琶湖を臨む高級ホテルに来ている

 

また、部屋は一室である

 

 

そう、『また』なんだ

 

 

更に言えば、部屋に備え付けの露天風呂があり、普通に五、六人は入れるだけの広さがある

 

という訳で、タキオンを内心羨ましがっていたルドルフとタイシンはタキオンを引き入れて、俺を説得しようとしているのだが

 

 

当然、俺は頷くわけにはいかない

 

色々な意味で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

良い湯だねぇ。それに夕陽が琵琶湖を染めている。なかなか見れないロケーションだろうね

 

うむ、本当に良い景色だ。なるほど、古来からこの琵琶湖が好まれてきた理由も分かろうというものだな

 

ん。ところでアンタ、もっと近くに来なって

 

ちかくにいけるわけないだろ、いいかげんにしろー

 

 

現在私はピンチです

結局、3人には勝てなかったよ

 

 

しかし、私頑張った

 

 

でも

 

 

 

 

 

つまり、キミは裸体でなければ良いんだね?

 

そうは言ってない

が、それならまだ考える余地があると思うとは言っている

 

じゃあ、水着とか着れば良いわけなんだ?

 

まあ、そうなるのか?

だが、既に冬に差し掛かる時期にそんなものを用意できるわけもない

つまりは、無意味な仮定だな

 

残念ながら、そうはいかないのさ

 

 

はい?

何を仰るのやら、ルドルフさん?

 

 

やけに確認してくるタキオンとタイシンに不審なモノを感じていたが、それはルドルフの言葉で更に危険な色を帯び始めた

 

 

やれやれ、私がキミと何年の付き合いだと思っているのかな?私とて最初からキミと風呂に入れたわけではなかった事を忘れたのかい?

 

た、タキオン

お前、まさか

 

 

バ鹿な

そんな事があるはずがない

 

いや、あってたまるか

 

 

 

内心動揺の極みにある俺を他所にタイシンとルドルフは荷物の中から

 

 

 

 

ソレ(絶望)を取り出した

 

 

持って来て良かったというべきだね

 

もう冬だってのに、何考えてんだって思ってたけどね

 

 

タ、タキオン。まさか、お前!

 

 

そうさ!今回の旅行が決まった時にマックイーンを通じて理事会に働きかけたのは、他ならぬ私さ!

 

 

 

 

はかったな!タキオンっ!

 

ハハハハハ!キミが悪いんだよ?キミの普段からの行いを恨むと良い!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という訳で、今俺は水着を着たタキオンとルドルフとタイシンと共に露天風呂に入っている訳ですよ

 

 

笑ってくれ

こんな無様な俺を

 

 

やれやれだよ。本当に我が幼馴染はこういうところが面倒なんだがねぇ

 

タキオンは心底めんどそうに話す

だが、その耳と尻尾から喜んでいるのは一目瞭然だった

 

 

しかし、タキオン。それはキミが大切にされているという訳なのだろう?私とタイシンからすれば、羨ましい事この上ない話だが

 

ルドルフはやはり少し恥ずかしいのか、各所に緊張の色が出ているものの、どちらかと言えば喜びの感情の方が上回る様であった

 

 

だよね。結局、アタシとルドルフだけなら、多分コイツを説得出来なかった。ホント羨ましいよ

 

タイシンは自分とルドルフだけだと、俺を説き伏せれなかったことに無力感を感じているようだが、それでも彼女の耳と尻尾からは歓喜の感情を隠しきれない様だ

 

 

タイシン。これは説得違うと思うの、俺

 

解釈違いって奴でしょ?

 

俺、この慰安旅行終わったら、理事会に殴り込むんだ

誰が止めようとも、絶対に

 

 

俺はこの慰安旅行を考えたのは、理事会ではないと思っている

 

だが、その旅行の所々に彼ら理事会メンバーの余計なお節介が垣間見える訳で

 

 

 

 

なんでか知らないが、理事会のメンバーはしきりにタキオンと俺にルドルフとタイシンの関係を後押ししている気がしてならない

 

 

しかし言うではないか

 

兵は拙速を尊ぶ

 

 

だが、往々にして

 

 

急いては事を仕損じる

とも言う

 

 

 

急ぎすぎてもダメだと俺は思うの

特に感情の深く関わる様な問題は

 

 

 

 

 

 

 

とはいえ、本当に長い半年間だったねぇ

 

アグネスタキオンはしみじみと呟く

 

そう、だな。本当に大変な半年間だった

 

シンボリルドルフも思うところがあるのか、感慨深く呟いた

 

ホント、小難しい事ばかりでさ。本当に大切な物なんて決まりきってると思うんだけどな、アタシは

 

タイシンは苦々しく呟き、俯いた

 

 

 

この半年は彼女達にもそれ相応の負担を強いていた

 

 

 

タキオンとタイシンはまだ良いとして、ルドルフは世間の悪意というものに初めて対した事になる

 

 

世論というものは貌のないものさ。故にどの様な方向にも誘導できる。それが一流に出来るものをアジテーターと言う。かのドイツの総統殿が代表例だろうね。そして、それを支えたのはゲッペルスという人物さ

 

ゲッペルス?

 

 

タキオンの呟きにタイシンが首を捻る

 

確か、当時の宣伝省のトップだった人物か

 

そうさ。当時、ベルサイユ体制により疲弊しきっていた閉塞した空気漂うドイツを総統殿の演説が動かし、その支持を強固なものとしたのがかの人物さ

 

そして、それはある意味においてマスメディアの理想形なのかも知れないね

 

 

 

マスコミは流れを作る

 

それがどの様なものであっても、だ

 

 

日本ではマスコミの事をブンヤと呼ぶ事もあったそうだ。語源は新聞屋であったそうだがね。彼等は記事を売るのが仕事。正確さや真実なんて二の次さ

 

タキオンの言葉の中に明らかな嫌悪の色が出ていた

 

だから、彼等は部数。つまりは話題になりそうなモノを徹底的に追いかける。それがその人物の生活を壊すとしても、だ

 

放送倫理?そんな高尚なモノは彼等に備わっているわけがない。備わっているのなら

 

 

タキオンの瞳に剣呑な光が宿る

 

 

備わっているというのなら!何故彼が、彼だけが責められなければならない!誰も彼もが我が身惜しさに口を閉ざし、沈静化してから、さも自分は悪くないかの様に自己主張する!!

 

 

それはアグネスタキオンという少女が溜め込んでいた激情だった

 

 

ルドルフとタイシンはその気迫に圧倒される

 

そんな中でも

 

タキオン

 

 

彼が後ろから抱きしめようが、タキオンは止まらない

 

 

かく言う私だってそうさ!結局はキミを矢面に出しておきながら、私は安全なところに常にいた!実際私の名前と顔を知っている者が世間にどれだけいるというんだい!

 

 

何故なんだ!何故キミばかり非難される?否定される?そのキミを追い詰めた者たちに対して思う事がないとでも言うのか!!

 

 

タキオン、もういいから

 

 

彼が諌めようが、タキオンは止まらない

 

 

キミが通う予定だった学校!アルバイトする予定だったパン屋!キミと私が過ごしていたマンション!挙げ句、何も知らない者が好き勝手にキミの事を悪様に言う!奴等はキミから沢山のものを奪ったじゃないか!

 

 

結局、学校に対して彼は登校することで混乱を招きかねない事を理由に学長に対して登校しない事を告げた

 

学長は何度も考え直す様にすすめたが、メディア対策など普通の学校ができるはずもなく、彼の考えを受け入れるしかなかった

 

 

パン屋を営む老夫婦は、彼の窮状に心を痛めていた

だからこそ、彼はそこで働く事を諦めたのだ

 

 

マンションにおいては、既に針の筵であり、彼の郵便物の中には誹謗中傷としか思えない様な物も多数混ざっていた

 

それは全て消印のない物もあることから、彼は察していた

 

 

更に配信サイトでは彼の問題をやはり再生数稼ぎとして利用する人物も現れ始めており、彼の知名度は悪い意味で上がりつつあった

 

 

 

多少彼を好意的に見る流れが出来ていても、それを押し潰さんばかりの悪意が上回ってしまう

 

 

 

私は!トレセン学園に来るべきじゃなかったんだ!!此処に来ればキミの負担も減らせると思い込んでいた私が悪かったんだ!!

 

 

タキオン

もう良い。やめてくれ

 

彼はタキオンの前に回り込み、タキオンを正面から抱きしめた

 

 

 

トレセン学園に来なければ良かった

 

その言葉はアグネスタキオンという少女が受けた傷の深さを何よりも表していた

 

 

 

っっ!!

 

っ!

 

 

ルドルフとタイシンにとって、タキオンの悲痛な声は何よりも辛かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タキオンの慟哭により、静まり返った露天風呂

 

 

 

タキオンは元より、ルドルフとタイシンもその顔を俯かせていた

 

 

 

 

 

(いや、何この空気?)

 

当事者であるはずの彼であるが、彼からすれば『既に済んだ事』であり、そんな事(・・・・)でタキオン達を曇らせるつもりなど毛頭なかった

 

 

彼が欲しいのはタキオン達の笑顔であり、決して涙に濡れた悲しみに沈む表情ではなかったのだ

 

 

とはいえ、彼は確かに『エア・ブレイク』持ちだが、この状況下でのそれは困難を極める

 

 

 

何せ、此処は露天風呂であり、彼やタキオン達は水着である

 

常ならば、スキンシップにより落ち着かせる事も選択肢になったが、水着という直接相手に触れる行為というのは、それこそタキオン相手だとしても彼をして躊躇いを覚えてしまう事である

 

 

先の行為はそれこそ、咄嗟に出たある意味では反射的な行動であった為にある程度の自制も出来た

 

 

 

だが、このままではどうにもならないのも事実である

 

 

 

 

仮にタキオンが自身を持ち直したとしても、ルドルフとタイシンはそうはいかないだろう

 

ルドルフは責任感が強い

それは言い換えれば、常に何かを気にし過ぎている事とあまり変わるまい

 

タイシンは優しい

それもまた、相手の痛みを自分の事の様に受け止めてしまい、彼女自身が傷ついてしまうという弊害を生む

 

 

2人ともタイプこそ違えど、痛みを感じやすい人物といえる

 

 

 

そして、更に都合の悪い事だが、彼女達は彼を想っているが故に自身の無力を嘆いている

 

そんな中のタキオンの慟哭は彼女達にどんな思いを抱かせてしまったのか?

彼としては想像したいとは思えないものになる事は間違いないだろう

 

 

 

 

彼の様に愛を知って強くなる者もいれば、タイシンやルドルフの様に愛を知るからこそ、臆病になる者もいるという事だ

 

 

 

 

とはいえ、このまま放置するわけにもいかず

 

 

 

 

 

彼は一つの決断に迫られた

 

 

 

 

そして

 

 

 

(ええぃ、ままよっ!)

 

 

ひゃっ!キ、キミどこを触って

 

ちょっ!触んなって言うつもりはないけど、どういうつもりなのさ?

 

ちょっと待ってくれ!何故そこを触るのだ?!

 

 

彼は自らの尊厳を投げ捨てる事にした

 

 

こうでもしなければ、この状況を打開できる気がしなかったのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところで、一人だけリアクションおかしくありませんかね?

 

 

当小説は全年齢対象であり、また諸々の事情よりその様な事をされると困るのです!

 

主に作者が!

 

 

 

 

 

 

 

 

戯言はさておき、彼の捨て身の策はなったといえよう

 

 

 

ふぅむ。キミがまさか尻フェチだったとは、ねぇ?

 

ま、アタシとしてはそっちの方がまだマシだけど

 

人の趣味や嗜好にあれこれ言うつもりはないのだが、その、それで良いのか?キミは

 

 

 

彼の名誉の為に言っておくと、以前も触れたと思うが、彼は『貧乳党』の熱烈な信奉者であり、実はスカーレットがあそこまで育った事にタキオンやデジタルよりも絶望した人物である

 

 

 

 

俺のっ!力が足りなかった!

俺があの子の食事を全て用意できていれば、こんな事にはならなかったのに!

 

 

 

と人知れず嘆いていたほどである

 

 

デジタルについては

 

GJ!(グッジョブ!)と思わず親指を立てていたりする

 

 

 

 

歪んでいる割には人生をエンジョイしている彼であった

 

 

 

 

そんな彼が『貧乳党』の誇りを捨てるだろうか?

 

否!

断じて否である!

 

 

其の至高の存在である『最速の機能美』を維持すべく、彼はひたすら暗躍した事もある

なお、本人に見つかり『ミッド式OHANSHI』をされたそうだが、数時間の激闘の後に双方で和解が成立したとされる

 

 

かの『学園一の修羅』とすら全力で渡り合えた彼の熱意は察するに余りあるものであった

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、誤解だ!俺は『貧乳党』であり!尻フェチではない!

 

 

いや、まぁね。分かってはいた事だけどもあまりそれを自信満々に言わないでほしいものだね、流石に悲しくなるよ私は

 

 

貧乳、党だって。そんな、それでは私は

 

 

変なもん信仰してるんだね、アンタって

(っし!ならアタシが1番有利って事だよね?)

 

 

彼のカミングアウトに分かっていたと言っても、トーンダウンするタキオンとはじめて知る残酷な真実に打ちひしがれるルドルフ

そして、言葉でこそ無関心の様に見えるが、内心では1番喜んでいるタイシンであった

 

 

 

特に圧倒的とも言える身体を持つルドルフにとって、其の事実は彼女を打ちのめすものであった

 

 

なお、ルドルフが悩んでいた時に

 

つってもさ、ルドルフ先輩のそれって他の2人に比べたら圧倒的でしょ?有利になる事はあっても、不利になる事は早々ねぇんじゃないか?

 

とある彼と仲の良いウマ娘からアドバイスを受けていただけに、彼女の受けたショックはより大きかったりする

 

 

 

 

 

なお、後日その事実をルドルフを通して、兄から知ったスカーレットとデジタルは無言でお互い頷くと、満面の笑顔でその場を去った

 

 

そして

 

え、ちょっ、な、何かアタシしたっけか?

 

と冷や汗を流している某ウマ娘に対し

 

ふーん。言い残す事はそれでいいのね?

 

残念です、ゴルシ先輩

 

との不穏な会話の後、2人はそのウマ娘の少女を連行していったとされる

 

 

 

その後の詳細は不明だが

 

 

トレーナー。ちょっと聞いてくれよぉ〜

 

とその少女が自分のトレーナーに泣きついてたとかなんとか

 

 

 

 

 

 

 

ま、胸の大きさのみで判断するのはどうかと思うよ、私は

 

タキオンなりにルドルフをフォローする

 

だが

 

タキオンが羨ましいよ。もしも彼と私が最初に出会えていたなら、私は決してタキオンの様にはなれなかったからね

 

 

 

シンボリルドルフは寂しがりやであり、誰よりも欲深いと思っている。『ウマ娘達の未来』などというものは、それこそ皆が協力して、それでも届かない遥かな地平

 

たった一人の小娘がどれだけ足掻いた所で届きうるものでは決して、ない

 

 

そんな分不相応なものを望み、願うシンボリルドルフが無欲であるはずがないと彼女は思っていた

 

まさに傲慢で、貪欲

 

 

仮にルドルフがタキオンと同じ立場だったとしたならば、ルドルフは間違いなく他のウマ娘達を彼のそばに居させる事はなかったろう

 

 

 

いや、間違いなくルドルフならば彼を離さないだろうし、離れることを許さなかっただろう

 

 

 

 

それを他ならぬルドルフ自身が一番理解しているからこそ、自己嫌悪するのだ

 

 

 

 

 

んな事言っても、別にルドルフの事を嫌いになる訳じゃないんだがなぁ

 

 

いつの間にかルドルフのそばに寄って来た彼が後ろから優しく彼女を抱きしめた

 

 

なお、その際にある所を触りそうになった彼が明らかに動揺した事をルドルフは見なかった事にした

 

ああ。ありがとう

 

ルドルフは彼にそのままもたれ掛かり、目を瞑りその身をあずけた

 

 

 

 

なお

 

 

(おおいっ、ルドルフ!そこで身を預けてくるなよ!重いとかじゃなくてだな、その色々と困るぅぅぅぅっ!!)

 

 

と彼が内心絶叫していたのはご愛嬌である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で?何かいう事ないの、ルドルフは?

 

あ、ああ。タイシンすまなかった

 

 

そうして5分間程至福の時間を味わっていたルドルフであったが、二方向から強い視線を感じた

 

 

それは当然、ナリタタイシンとアグネスタキオンである

 

 

特にタイシンの視線は物理的な痛みを伴いそうな程のものであり、タイシンの不機嫌さがよくわかるものであった

 

 

 

 

じゃ、さっさと交代しなよ

 

タイシンは

 

「次はアタシの番だから、早く変わって」

と暗に言っているのだが

 

 

いや、その、なんだ。もう少しダメか?

 

 

水着越しとはいえ、彼を直接感じられる今の体勢がルドルフはかなり好ましいものであると思っていた

それ故に、もう少しだけこの時間を味わいたいと思っているのだが

 

 

却下。早く代わる!

 

にべもないタイシンにより、ルドルフは彼から引き離された

 

 

 

 

どうだったかな?ルドルフ。彼の包容力は?

 

なるほど。君が嘗て「万金すら彼の温もりには叶うまい」と言っていた理由が今更ながらにわかったよ

 

 

タキオンはルドルフの表情を見て

 

 

やれやれだ。彼の魅力に負けたウマ娘がまた一人増えたわけか。困ったものだねぇ

 

 

と満更そうに呟くにとどまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もしもし、タイシンさんや?

 

 

なに?

 

 

あの、人の膝の上でのんびりしないで欲しかったりするのですが

さっきも言いましたけど、その色々と厳しいもので

理性的なものが

 

 

大丈夫、もし襲ってきても返り討ちにしてあげるからさ

 

 

タイシンは機嫌良さそうに彼の言葉を否定する

 

 

その様子を見た彼は

 

(解せぬぅぅぅっっ!!)

 

とやや、涙目であったらしい

 

 

 

 

 

 

なお

 

 

いやぁ、久しぶりの彼の涙目はやはり良い!そうは思わないかなルドル、フ?

 

その彼をしっかりと見ていたタキオンはルドルフに同意を求めようと彼女を見ると

 

 

くっ、なんだあの彼は可愛い過ぎる。甘やかしたくなる。しかし待て、シンボリルドルフ。それをしてしまうと引き返せなくなる気がする。だが、しかしっ!

 

 

とルドルフはある衝動(クリーク化)と必死に戦っていた

 

 

・・・まあ、人の好みというものは千差万別というからね。私は君を否定はしないよ、ルドルフ。だが、親しい友人として言わせてもらえるならば、引き返せる所で踏みとどまるのも理性だと思うのだがね

 

 

 

思わぬ友人の壊れっぷりにさしものタキオンも止めようか少しだけ悩んだ様であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけで!

ようやく!

風呂が!

終わりました!

 

 

やれやれ。無駄に勢いよくした所で、何も変わらないだろうに

 

はい、そこうるさいですよ!

 

アンタなりに恥ずかしかったて事みたいね

 

恥ずかしかったに決まってんでしょうが!

いい加減にしようね、いやマジで

 

しかしだな。折角のちゃ、いや慰安旅行なのだから、羽を伸ばすべきだと思うのだが

 

羽を伸ばすのと、無秩序はぜんぜぇん違いますからね!

あと、ルドルフ。今チャンスと言いそうになってなかったか?

 

 

・・・・・・気のせいだろう

 

 

ほう?

 

 

ルドルフの誤魔化しに彼は手元の携帯を操作して

 

 

 

よろしい。そこまで煩悩の多いタキオン達に朗報だ。明後日学園に帰ったら1週間スズカ達の全力の(・・・)トレーニングに混ぜてもらえる様に話をつけた。しっかり煩悩を退散させるように

 

 

ちょっ!?

それは横暴だろう?!

いくらなんでも、それは無茶というものだろう!?

 

 

 

そのセリフにタキオン達は一斉に動揺した

 

 

何せ、タイシンが参加しているとはいえども、あくまでもそれはタイシンのトレーニングの差し支えとならない様にスズカ達が配慮(手加減)して行われているモノだと他ならぬタイシンが1番良く知っているからである

 

 

確かにトレーニングガチ勢などと言われているタイシンではあるが、それを1日ならともかくとして、1週間も行なうと言うのは流石にゾッとしない

 

 

 

そのトレーニングのストイックさから、スズカ達はトレーニングに参加した事のウマ娘からはスズカさん、ブルボンさん、ライスさん。とさん付けで呼ばれているほどである

 

 

なお、彼女達のトレーニングに参加しての最長記録は4日のテイエムオペラオーとキングヘイローとナリタブライアンが所持している

 

 

 

つまり、そういう事である

 

 

 

 

だが

 

 

いや、流石に旅行で仕事を空けているのに、それ以上空けるのはマズイと思うのだが

 

私も色々と研究データの取りまとめがあるからねぇ。残念だが参加できないよ

 

ルドルフ、タキオン。アンタらねぇ

 

 

もっともらしい口実で逃げようとするルドルフとタキオン

 

しかし何故か、タイシンは2人に同情する様な視線を向けていた

 

 

 

心配するなって

その辺りはきちんと交渉済み

1週間理事長から、たづなさんを借りる事が出来たから、事務的な処理は問題ないし、ブライアンにお願い(・・・)したら快諾してくれたから

 

タキオンの方はカフェにまた俺の愛読書と理事会の人から譲ってもらった本を貸し出す事で協力してもらえる事になったし、その1週間の詳細なデータを条件にシャカールからも快く協力してくれるとの事だ。安心すると良い

 

 

そんな!

 

 

タキオンは絶望したような声をあげる

 

 

だが

 

ぐっ、し、しかし私は東條トレーナーから年明けにトレーニングを受ける事になっているから、それに影響があるようなトレーニングは

 

 

ルドルフは諦めない

例え友人2人が傷つき倒れたとしても、その思いを無駄にしないために(意訳。自分だけ何とか助かろうとしてます。このルドルフさんは)

 

 

 

しかし、忘れてはいけない

 

彼の立場を

 

 

 

ああ、東條さんからは許可もらったよ?

流石にやりすぎては困るらしいが

 

 

OH.MYGOD

 

 

流石はシンボリルドルフ

そう他の3人に思わせるような、見事な発音の英語と

 

それはそれは見事なorzであったとさ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、4人の姿は京都駅の北口にあった

 

 

 

今日は今日とで京都(・・)観光です!

 

ふむ?タクシーを使うのかい?

 

アタシタクシー苦手なんだけど

 

今日の何時に学園に戻るつもりなんだい?

 

タクシーは使わんよ

ルドルフ。フジの姉貴とヒシの姉御には既に話を通してるから、そうだなぁ、21時くらいまでには帰らんとな

 

となると、東京駅には19時半くらいまでには着いとかんといかんか。

つー訳でそうさなぁ。京都を17時半くらいには出んといかんやろう

 

 

 

今が9時半。つまりあと半日くらいか

 

長いようで、短かったね

 

ではどうする?観光するならば、やはり金閣寺などが良いのだろうかな

 

ぶっちゃけると、そこら辺はメジャーすぎるし今日は日曜日

観光客が多い事は容易に想像できるから、パスだな

 

新京極行く

 

 

 

 

新京極

 

京都駅より徒歩で北に30分ほどの所にある商店街があるところ

京都ならではの『八つ橋』の店や京都土産のお店、北の市役所の側にはかの有名な『本能寺』があり、京都最大の商店街である

 

正式には『寺町京極商店街』であり、西側の『寺町専門店会商店街』を合わせるとかなりの規模の商店街となる

 

 

 

なお、寺町とは安土桃山の太閤秀吉が京の再整備の際にこの付近に寺社を移転させてきた事に由来するらしい

 

元々寺町とは寺社の側にある商店街などを指し、京都という寺社仏閣の多い土地柄も相まってこの様な規模になったのか?それとも昔からの町人達の創意工夫の結果なのか?作者としては気になる所ではある

 

 

なお、この移転されてきた寺社に本能寺も含まれており、元は京都市立本能小学校のあった所に本能寺はあったとされる

 

 

幕末期の戦乱の中で本能寺もその影響を受けてしまい、『禁門の変』または『蛤御門の変』と呼ばれる一連の戦闘により本能寺のその大半は焼失し、後に再建した

 

 

現在は信長公の霊廟や資料館。隣接地に本能寺ホテルがある

 

 

 

専門店会商店街は昔ながらの飲食店が立ち並ぶ道幅の少し狭い商店街である

 

とはいえ、それはアーケード街である『寺町京極商店街』に比べての話であり、人の往来に支障をきたすレベルではない

 

 

まあ、人出が多くなり過ぎればお察しではあるのだが

 

 

 

 

 

うまうま

 

いや、よく食べれるねぇ

 

あまり推奨はしたくないな、その食環境は

 

そう言っても、アタシたちもこうやって色々摘んでる訳だし、良いんじゃないの?

 

 

近くのコンビニで買ったものをベンチで食べているタキオン達と『八つ橋』を昼飯にしている彼であった

 

 

エネルギーさえ摂れば問題ないから、セーフ

 

とは彼の言である

 

 

 

 

なお、作者はカロリーしか興味を持っていないために、平気で〇〇クシェイクのみで昼飯扱いとかをします

 

安くて良いのよね、このやり方

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで商店街で買い物を済ませれば、既にお昼前である

 

 

 

さて、どうすっかねぇ?

 

悩みどころだね

 

どうだろ?

 

なら、一つ行きたいところがあるのだが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけでやってまいりました!

 

 

平安神宮

 

 

 

寺町京極商店街から徒歩約40分で方角的には北東方面、鴨川を渡った所にある有名な観光地である

 

 

平安京の時代の朝堂院を復元した建造物であり、国の重要文化財として登録されるとともに平安京に遷都(都の機能を移す事)した桓武天皇を祭神としていた

後に平安京時代の最後の天皇である孝明天皇も祭神として祀られている

 

 

朝堂院とは平安時代における宮城(きゅうじょう)と呼ばれた主上つまりは天皇に関連する施設である

 

正確には異なるのであるが、本筋ではないので割愛させて欲しい

 

 

 

なお、平安神宮一帯は岡崎地区にある事から岡崎公園として再整備されており、周辺には京都市立図書館や美術館などが立ち並ぶ

 

 

 

特に目を引くのが『大鳥居』であり、これが平安神宮を代表するものと言っても過言ではないかもしれない

 

 

 

 

大鳥居前で4人での撮影をした(丁度通りがかった親切な外国人観光客の人に撮影をお願いした)

 

 

 

 

 

その後、平安神宮より南下し『清水寺』へ赴いた

 

 

 

 

京都市内が一望できるなぁ

 

良い眺めだね

 

視界を遮るものがないと、こうも良いものなのか

 

そういえば、京都駅と京都タワーくらいしか高い建物ないよね?

 

それはな、タイシン『古都保存法』ってのがあんのよ

 

 

正確な名称ではないが、要するに『昔の景観と今の建造物はミスマッチ。だから建てるとしても高さ制限かけますし、建てる場所にも注文つけますよ』といったことである

 

古都だけに

 

 

特に奈良や京都市内に多く見られるもので、実は市内の建造物には明確な高さ制限が設けられており、それを超過する建造物は『原則』認められていない?

 

 

どこぞの本社ビルがあるけど、詳しい事は知りませぬよ

 

 

 

 

 

ところで、私たちの格好についてコメントしてはくれないのかな?

 

そうだな。せめて、すこしだけでもコメントは欲しいものだが

 

別にアンタにセンスのあるコメントなんて求めてないけど、さっきからずっとアタシ達をちらちら見てたでしょ?一言くらいあってもいいと思うけどね

 

 

わかりましたよ!

ああ、もう3人とも綺麗だよ!

思わずときめきましたよ!

悪うございましたねぇ!!

本当にありがとうございます!!!

 

 

彼は真っ赤な顔をして3人を褒めた

 

 

 

というのも、彼女達は祇園付近で貸衣装。つまり着物姿に着付けて貰い、彼と歩いてきたのだから

 

 

 

ふぅん?

(おや?彼にしては随分と珍しい反応だね?昨晩の水着姿で共に露天風呂に入った時の反応よりも良い様な気がする。ふむふむ、となると一着くらいは私物として着物を持っておくのも考えるべきかも知れないな)

 

いや、そこまで言ってないのだがなぁ

(露出度でいえばこちらの方が圧倒的に下だと思うのだが、彼はこちらの方が好みなのだろうか?となると確かマルゼンスキー先輩から聞いた話だと、ゴールドシチーという人物がその辺に詳しいと聞いた気がする。帰ったら相談するのもアリかもしれないな)

 

そ、そう。あんがと

(ちゃんと褒められるじゃない。でも綺麗でときめく、か。ならこの衣装後で買った方がいいのかな?コイツが喜んでくれるなら、アタシとしても嬉しいし)

 

 

 

 

 

とまあ、滅多に見れない彼の羞恥全開の本音に3人ともそれぞれの反応を見せた

 

 

 

 

なお、余談ではあるが学園に帰ってしばらく後の正月において、何故か(・・・)学園生徒の間で空前の着物ブームが巻き起こることとなり、それには東條、樫本、桐生院トレーナーや駿川秘書に秋川理事長まで巻き込まれる大騒動となり、男性トレーナー達の目を楽しませたという

 

 

 

 

この時に雑誌モデルをしていたゴールドシチーがトレセン学園に自身の知り合いの呉服屋と共に来校し、生徒達に着付けやその時の立ち振る舞いについてレクチャーしたとかなんとか

 

 

 

 

 

 

 

更に余談となるが、タキオン達が卒業して2年後に栗東へ引っ越してから暫くすると、京都老舗の呉服屋がナリタタイシンの自宅に頻繁に出入りする事となり、タイシンの家には家主であるナリタタイシンは勿論、アグネスタキオン、シンボリルドルフ、ダイワスカーレット、サイレンススズカ、ミホノブルボン、ライスシャワー達の家着用の和服などが大量に用意されたと言われているが、詳細は不明である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、3日間の慰安旅行は終わりを告げ、彼女達は日常へと戻っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、スズカ達のトレーニングで疲労困憊なタキオン達と、それを嬉々としてお世話する彼の姿があったそうな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、理事会のお歴々にはしっかりと話をしたそうな

 




というわけで彼にとっては色々役得であり、色々大変だった慰安旅行は終わりました


その後の事はまた別の機会に触れたいと思います



では、ご一読ありがとうございました


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 据え膳食わねば?(中編)

という訳で出来ました

『ルドルフ改造計画』編?です


語彙力と描写不足なのは、ノイフェルのセンスが皆無だからです!

許してください

なんでもはしませんが


真っ先に部屋から理事長室へと逃れたゴールドシップは安堵していた

 

 

 

やれやれ。危なかったぜ

 

 

あの時、ゴールドシップ自慢の『ゴルシレーダー』が猛烈な反応をしていたのだ

 

 

この場に残ってたら、ヤベェ

 

 

 

故に彼女は一目散に理事長室へとエスケープしたのである

 

 

既に秋川理事長からはルドルフの『特別顧問』について

 

驚愕っ!

確かにその手があった!

 

承認!

即座に取り掛かりたまえっ!

 

との即断即決をしてもらった

 

 

 

実際問題として、まだまだトレセン学園には問題が山積みであり、初代生徒会長として辣腕を振るった彼女の力は欲しいのが、秋川やよいの偽らざる本音だったのだ

 

無論、スカーレット達も良くやってくれているとは思っている

 

それでも、学園創成期を支え切ったルドルフ達の実力と影響力は決して侮れるものではなかったのだ

 

 

 

それだけに今回の申し出は渡に船だった訳で

 

 

まだまだ楽は出来ないなぁ

 

 

やよいの呟きが虚しく理事長室に響いた

 

 

 

 

 

さて、絶賛『ゴルシレーダー』が危険反応を示している為に、ゴールドシップは生徒会室に戻る事を良しとしなかった

 

 

君子危うきに近寄らず

 

誰が好き好んで虎口に飛び込もうというのか?

 

 

 

 

 

しかし、時に人の想いとは無力なもので

 

ゴォールーシィー?

 

げ、ウオッカの奴か!ヤバっ逃げねえと!

 

黒い瘴気を撒き散らしながら、ウオッカが学園内を彷徨っている事を高性能である『ゴルシレーダー』は捉えたのである

 

 

そして、彼女は駆け出して(・・・・・)しまったのだ

 

 

コラァ、ゴールドシップ!何走ってるんですか!

 

んげっ!メモリー

 

ゴルシの前に立ち塞がるのはバンブーメモリー

サクラバクシンオーより、後を託された次代の風紀委員長である

 

 

そして、彼女はゴルシの名前を大声で呼び止めた

 

 

そう

 

大声(・・)

 

 

 

そうなると彼女の存在がバレる訳で

 

 

いや、ホント悪いと思ってるから、後で反省文も出すしここは勘弁してくれよ

 

 

ん、まぁ良いっすけど気をつけて下さいよ?

 

 

と余りの必死なゴールドシップの様子にメモリーも思わず受け入れてしまう

 

 

 

 

ウオッカやスカーレットに見つかれば、大変なことになるのは間違いない

 

 

 

更に言えば、デジタルの奴に見つかってもヤバイ

 

 

 

 

 

そして何より、『アイツ』に見つかるのが多分、いや間違いなくヤバイ。とゴールドシップは確信していた

 

 

 

並のウマ娘ならば、諦めてしまうだろうが、そこは『不沈艦』の異名を持つゴールドシップ

 

早々に諦めるはずもなかった

 

 

 

 

 

 

だが、運命とはとかく残酷なものであり

 

 

 

あー。トレセン学園在籍の全ウマ娘に通達。『コードG』を学園特別相談員の名のもとに発動する

 

 

との放送が流れた

 

 

 

(いや待て、それはやり過ぎだろ!)

 

 

彼女は内心絶叫した

 

 

 

『コードG』

 

 

 

正式名称『ゴールドシップ捕獲作戦』であり、度々暴走する彼女に困り果てた彼女のトレーナーが自身の教官。つまり『トレーナー部門担当教官』である彼に愚痴った事から出来たものであった

 

 

ウマ娘とトレーナー双方の合意の上での休息なら良いが、ウマ娘からのサボタージュやトレーナーからのそれは一方的なものであり、その頻度などにより悪質であると判断した場合に限り、学園管理職からの介在を是としている

 

 

勿論、双方の主張を聞いた上での厳正な対処が求められるのはいうまでもなかろう

 

 

 

なお、『コードS』も存在しており、これはセイウンスカイに対するソレである

 

 

ただし、これの発令がひと月の間の規定回数を上回った場合、ウマ娘は生徒会に

トレーナーは学園理事会と彼が同席する場において、両者の間の関係性の是非や場合によってはウマ娘に対してならば、1週間ほどの隔離処分。トレーナーの場合だと彼による再教育となり、その成績や受講態度いかんではトレーナー資格の剥奪もあると規定している

 

 

 

 

当然である

 

 

その立場に見合った自覚や能力の不足は認めるとしても、そこに対して熱意を持てず、努力も怠るような者にかける時間も慈悲もないのだから。

 

幸いにして、トレセン学園開校から四年経過した今まででは一度として、この処分が下された事はない

 

 

 

下された場合、トレセン学園理事長、トレーナー部門担当教官そしてトレセン学園理事会の半数は引責辞任しなければならないという規則がある

 

 

これはその様にしか指導できなかった担当教官とそれを指名した理事会。そして、その様なウマ娘もしくはトレーナーを受け入れた理事長にも責任があるという考えのものであった

 

入学させたから、あとは知らん

教育したから、あとはご自由に

 

 

と言うのは彼女や彼らが最も忌むべき事であると思っていた為であるからだ

 

 

 

 

そして、今回の様な件での発令には、『学園生徒会の半数以上の同意とトレセン学園理事長の承認もしくは理事会メンバー1人の同意』が必要である

 

 

(あ、やべ)

 

 

ゴルシは己の失態を悟った

 

 

 

生徒会室から理事長室まで、彼の足であっても往復5分もかからない

そして、シンボリルドルフの事については以前から理事長自身が言ったいた事であったから、承認だけならすぐ終わると誰でもそう思うだろう。

 

にも関わらず、彼女は直ぐに生徒会室に戻らなかった

 

 

 

 

 

そりゃ、スカーレットもウオッカも怒る

 

何せ、異様な雰囲気を纏う2人(姉と兄)にはスカーレットもウオッカも出来れば関わりたくなかったのに、ゴルシは逃げたのだから

 

 

 

 

 

 

そして、この状況に怒りを表しているのは彼女達だけではない

 

 

 

さぁ、ゴールドシップさん!出てきなさいな!

 

 

あー。マックイーン怒ってるよ

そりゃ、トレーナーさんと良い雰囲気だったからなぁ

 

 

折角!デジタルさんが呼んでくれてたのに!

ゴールドシップ、よくも!

 

 

 

同じ『メジロ』のウマ娘であり、彼女の姉であるマックイーン

彼女は去年くらいから、少しずつトレーナーとの距離を詰め始めていた。

その甲斐もあって、今日間違いなく『良いムード』に持ち込めたのに、あの放送である

 

そりゃ、マックイーンはプンプンよ

後でスイーツやけ食いする程度には

 

 

そして、筋肉を鍛えていたメジロライアンは同い年のゴールドシップとどれくらい差があるか確かめたかったので、この作戦に参加している

 

 

ゴールドシップの妹であるメジロパーマーは、それこそ激おこプンプンであり、何故ならば憧れの同人作家であり、同好の士であるアグネスデジタル先生からとあるイベント(ルドルフ改造計画)への参加を誘われている中での放送だったのだから

 

憧れの同人作家デジたん。しかもその人物直々の誘いであったのに、ゴールドシップのせいでその参加を泣く泣くだんねんしなければならなかった彼女の怒りと悲しみは想像を絶するものがあったのだ

 

 

 

 

ヤベェ、今回はいつもより明らかに良くない雰囲気だぞ?ち、畜生震えてきやがったぜ

 

 

 

プルルルル

 

 

今忙しいって何

 

 

 

件名

 

 

 

本文

 

うっわ大変そうだな

しかし、自業自得ファイト♪

ロケットみたいなゴルシパワーならいけるいける!

おも、もとい悲しい事になって、俺も辛いよ

味方になろっか?

露見したら、俺もヤバイけどさ

 

 

 

煽ってんのか、ホントいい趣味してんなぁ

 

 

 

あれ?

 

ぼやいた彼女は気づいた

 

ん、待てよ?うしロお味露?

 

 

ソレに気づいた瞬間彼女の全身から汗が噴き出た

 

 

いやいやいや。ありえねぇって。いくらアイツがちょっとばかし常識外れだったとしても

 

 

ぽんぽん

 

 

誰かが彼女の肩を叩く

 

 

しかし

 

いや、待てよ。これからどうにか校庭まで出ればどうにかなるか?

 

 

ぽんぽんぽん

 

だから、今アタシは忙し、い?

 

 

彼女が振り向くと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハァーイゴルシィ?

 

 

と満面の彼が立っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

その後の事は忘れたい

 

とゴールドシップはその時の事を語る

 

 

 

 

ただ

 

 

 

とある銀髪のウマ娘がマックイーン達に囲まれて着せ替え人形となっていた

 

とだけ言っておこう

 

 

 

 

なお、後日ソレを知ったメジロ当主はマックイーンにその映像データの提出を求め、マックイーンもそれを了承したとされる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、とりあえず落ち着こう。そ、そんなに服を持ってこられても、だな。私は1人なのだから、その

 

 

 

満面の笑みを浮かべる彼とニヤニヤ笑っているタキオンと吹き出しているタイシンにジト目を向けたい気持ちを押さえつけて、ルドルフは集まったもの達を説得しようとしていた

 

 

なお、生徒会室の隣には彼の執務室があり、そこには何故か様々な縫製道具や調理器具が備え付けられていたりする

 

 

 

あのさぁ、俺がいる間は良いけど居なくなったら誰が使うんだよ、此処を

 

 

と彼はツッコミを入れている

 

 

 

別に構わないと思いますが、ルドルフ前会長

折角貴女をプロデュース出来る機会など、恐らくはもう訪れないと思うので

 

そうですねぇ

どんな服が似合うかしらぁ

 

あーうん。ごめんね?

でもアタシも興味あったからね

 

とまぁ、皆ノリノリだからね。諦めたまえよ?

 

 

とタキオンが締めくくる

 

 

 

なお、マックイーンはゴルシのファッションショーに夢中であった為に

 

 

 

申し訳ありませんが、辞退しますわ

 

 

との事であり、スズカ達やグラス達は揃って外出中であった為にこの場にはいなかった

 

 

 

いやまさか、前会長いえ特別顧問を色々とプロデュース出来るなんて思わなかったわね!

 

だな。楽しみだぜ!

 

いやぁ、まさかルドルフ姉さんの衣装合わせに立ち会えるなんて、感激ですね!パーマーさん

 

そうね、デジたん先生!

私も頑張るわ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、様々な意見が出て紛糾しそうだったので、俺が音頭を取ることとする

異存はないなー

 

オッケーよ、兄さん!

 

おう!任せたぜ兄貴

 

勿論!お任せしますよ、お兄さん

 

はい、お任せします!

先生!

 

ええ

任せますねぇ

 

あーうん。程々にしてあげた方がいいと思うけどね

 

 

 

なお、タキオンとタイシンにグルーヴは隣の部屋で着替えているルドルフに同行しており、逃亡しない様に監視していた

 

 

 

余談ではあるが、何故か(・・・)ルドルフのサイズピッタリの服がかなりの数あった事にルドルフは驚愕していた

 

 

 

言うまでもないが、シンボリルドルフの人気はトレセン学園において相当なものであり、彼女の非公式ファンクラブも存在している

 

そのファンクラブから彼女と親しい関係にある彼宛に大量にルドルフに来て欲しい衣装が送られてきたなぁ

 

既にファンクラブの初代会員達は卒業している為に、それぞれの職に付いている

だからこそ、学生の身分の頃とは違う金額を使える為に、ルドルフへの衣装を送りつけてくるのである

 

 

なお

 

 

うーむ

これだけの量となると、そろそろ別室に保管せねばならないか

 

と彼は頭を悩ませていたりする

 

 

 

それを聞きつけたマックイーンは

 

それでしたら、どうでしょうか?わたくしたちメジロが管理する物件が直ぐそばにありますので、そこで保管するというのは?

 

と再来年入学するメジロアルダンが管理する物件へのルドルフ宛の衣装を持ち込む事を提案して、彼はそれを受け入れた

 

 

 

なお、興味本位で少しだけサイズを合わせようとしたメジロのお嬢様がそのサイズ差に絶望した事はメジロでもトップシークレットだったり

 

 

 

 

 

 

という訳で、そんな衣装を持ち込んだ訳なのだが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スーツ

 

 

なるほどなぁ

普段から凛々しいルドルフにはよく似合う

あれやね、ミスターシービーさんとかフジキセキに通じる魅力があるな。これは

 

 

普段は凛々しいルドルフ先輩がお兄さんの言葉にデレデレとは、はぁしゅきぃ

 

尊みが深いですね!デジたんさん!

 

 

あ、あまり褒めてくれるな。その、あの嬉しくはあるのだが、照れる

 

 

 

 

セーラー服

 

 

また、これはニッチなチョイスだなぁ

一応去年までは学校に通っていたとはいえ、うむむ

 

 

うーん。似合ってるんだけど、ルドルフ先輩ちょっと恥ずかしそうね

 

そりゃまぁ、兄貴の前じゃあ恥ずかしいだろ?

 

こ、これも恥ずかしいのだが。というか、あまり間近で見ないで欲しいのだけど

 

 

 

 

メイド服(正統派ロングスカート)

 

 

所謂ビクトリアメイドって感じやな

優秀なメイドなのか、新人の少し不慣れなメイドなのか

うーむ

 

 

そこを気にするんだ

 

まぁ、この人がルドルフさんを好きなのは今更ですしねぇ

 

いや、そのだな。何故このチョイスなのだろうか?

 

 

さしもの皇帝とて、この嗜好には肯定しかねるご様子

 

 

 

 

 

 

メイド服(ミニスカート)

 

 

出たな!

現代社会の生み出した、実用性皆無の皆の想いを詰めた一品が!

しかしだな。これでどうしろというのか?

しかもこれを送りつけてきたのは、他ならぬシービーさんなのだが、あの人の事がよくわからんな

 

 

おや?シービー先輩なのかい?

 

そうなのよ。どしてやろうなぁ?

 

いや、あの、その。あまり凝視しないでもらえるとありがたいのだが

 

 

ルドルフは混乱している!

 

 

 

 

 

 

 

白無垢

 

 

もう突っ込まんぞ、俺は

というか、これ送りつけてきたの、理事会の人なんだが

 

うう、綺麗ですなぁ

 

というか、こういうの着ると婚期が逃げるって話じゃなかったっけ?

 

行き遅れるって話だよね、確か

 

普通なら嫌がらせなんでしょうけど、ルドルフ先輩の場合ってお兄ちゃん狙いだからなぁ

 

 

 

 

 

 

ウエディングドレス

 

 

 

 

これ絶対狙ってんだろ!

 

ううううう。何故こんな事になったんだろうか

 

でも、涙目のルドルフ先輩なのに、妙に似合うのなんでなの?

 

それはそうですよ、パーマーさん。言ってしまえば、結婚式の時に感激のあまり涙を流している新婦に見えますからね!

 

いや、デジタル?一応私の旦那なんだがねぇ

 

タキオン姉さん、ファイトですよ!

俺は応援してるっす!

 

 

 

ちなみにこの時彼はルドルフの姿を見て、少しだけ見惚れていたのをタキオンとタイシンは把握しており、後日デートを要求されていたりするのであるが、今は余談だろう

 

 

 

 

 

 

バニーガール

 

 

 

ふむ?こんなものがあったのかい?

 

えっと、ちょい待ち

目録によると、あ、ゴルシの奴だこれは

 

と、とりあえず着させようとするそのスタンスはやめないだろうか?

 

 

なお、ストッパー役のはずのエアグルーヴは感情のない瞳(ハイライト・オフ)で着付け役をこなしていたりする

 

 

ちなみに何故、バニーガールの着付けが出来たのかは、グルーヴとそのトレーナーである人物のみが知る事である

 

 

 

なお、既に卒業生であるグルーヴであるが、伴侶であるトレーナー氏との共同生活を既に学園近くの賃貸物件において始めており、近所では有名なバカップルとなっていたりする

 

 

 

 

 

 

 

流石に水着は問題があるだろうとグルーヴの意見によりストップしたのは彼女なりの情けだったのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜

 

 

 

 

騒がしい1日だったな、ルドルフ

 

やれやれ、そう思うならば助けてくれても良かっただろう?

 

 

彼の居室にルドルフの姿はあった

 

 

トレーナー寮の中には独身寮と家族の為の寮があり、彼は後者に部屋を持っている

 

多忙な時は、生徒会室の隣の部屋で作業する事もあったが、既にトレーナー部門教官としての業務についても、後進の育成が済みつつあった為にそこまでする必要はなかった

 

来年には府中を離れる事が確定している以上、彼の仕事といえば専ら理事会との折衝や余程の問題が起きた場合のみとなりつつあった訳だ

 

 

 

諸々のトレセン学園内部の問題は片付きつつあったが、やはり世間からの負のイメージを払拭するには至らず、あまり外出できない生活を強いられていた

 

殊更、彼の教え子である一期生のトレーナー達が事あるごとに彼を擁護している事も世間からすれば面白くないのだろう

 

 

だが、それは彼からすれば些事に過ぎず、数年前と比べたならば穏やかな生活を送っているといっても過言ではなかった

 

 

学園外のアパートも借りている為に、学園での仕事で遅くならない限りは帰宅する様にしているのたが

 

 

 

ほんとうにはんせいしてる?

 

ルドルフ。いや、ルナが彼に歩み寄ってくる

 

んな事言ってもなぁ。仕方ない部分もあったろう?

それになんだかんだでボクにとっては良い目の保養だったからね

 

・・・なら、いい

 

 

彼女は迷う事なく、彼の膝に頭を乗せた

彼はそれを苦笑しながら、頭を撫でていた

 

 

 

大好きだよ

 

 

シンボリルドルフは返ってくることのない、愛の言葉を呟いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世間の者達は賢しげに言う

 

 

君の様なウマ娘がこんな恋愛をしてはダメだ

 

あんな奴のどこがいいんだ!

 

騙されてるって

 

 

未だにファンレターの中に彼に対する誹謗中傷があるのは、最早閉口する他ない

 

 

 

最初から決着の付いていた勝負だ

 

いや、勝負以前の問題だろうとルドルフはいつも思っている

 

 

 

シンボリルドルフやナリタタイシンは彼の温もりを求める

 

だが、アグネスタキオンはそれを求めない

 

 

 

彼女は彼によって、満たされているのだから

 

 

 

 

ルドルフもタイシンも満たされていない訳では決してない

 

 

だが、それでも私達は不安なのだ

 

 

彼がいつか手の届かない所へと旅立ってしまうのではないか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、今は

 

 

今だけは

 

 

この温もりの中で眠ろう

 

 

 

 

 

 

この暖かい陽だまりの様な安らかな人の温もりの中で

 

 

 

 

 

 

 

 




当作品におけるシンボリルドルフは様々な分野で活躍できるマルチタレントです

笑いよし
シリアスよし
弄られよし
カリスマよし
ルナちゃんよし


うん何も間違ってないね



という訳で後編はメインヒロインことアグネスタキオンとなります


筆が進めば年が変わるまでに書けるかもしれませんが、期待せずにお待ち下さい


では、ご一読ありがとうございました


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 果てにある景色

スズカから見た景色


サイレンススズカというウマ娘は幼少の頃から、少しだけ変わっていたウマ娘であった

 

 

ウマ娘とは本来闘争心や向上心旺盛な者が多い中で、彼女は他者の事など気にする性分ではなかったから

 

 

スズカが気にするのは、『誰にも邪魔されない静かな世界』であった

 

 

 

 

しかし、ウマ娘同士のレースとなれば、その様な景色を見る事など叶うはずもない

 

皆が一着(先頭)を競っているのだから、当然だろう

 

 

 

 

トレセン学園というウマ娘達の学校に入学したスズカであったが、彼女の『静かな世界』への想いは日に日に大きくなっていった

 

友人であるエアグルーヴは生徒会に入り、なにやら問題を抱えている様であったが、スズカは自分が力になれるとは到底思っていない

 

 

 

サイレンススズカという人物は静かと言えば聞こえは良いが、どちらかといえば『無関心』なだけであり、当然の様に対人能力など皆無に等しい

 

そんなスズカがグルーヴの悩み事を解決できるなどと思っていないのだから

 

 

 

 

 

トレセン学園に来ても、スズカの願いに対しての意見はやはりと言うべきか、否定的なものばかりだった

 

 

 

そんな鬱屈した日々を送っていたスズカだったが

 

 

 

 

 

ゲホッ!ゴホッ!

 

ま、まだだ。まだ、俺は走れるし、やれる!

いや、やらなきゃなんねぇんだ!!

 

 

と明らかにオーバーワーク気味のトレーニングをする人物を見かけた

 

 

 

スズカはその人物を見たことがあった

 

 

確か学園生活が始まってすぐあった講演会とやらで

 

 

 

 

 

あれはアグネスタキオンさんの幼馴染さん?

 

 

スズカは驚いた

 

あれだけアグネスタキオンさんのそばにいる彼でも、ここまで努力しなければならない事に

 

 

 

 

後になって聞いてみると

 

 

湖で泳いでいる白鳥だって、水面下では脚を必死に動かしてる。見えないところで努力するのは基本だろ?

 

 

 

と言われ、成程と思ったものだ

 

 

 

 

 

そして、暫くの間スズカは彼のトレーニングを見守りながら考える様になっていった

 

 

 

私は確かに『誰もいない静かな景色』が見たいと思っている

でも、彼ほどに必死になっていただろうか?

 

 

 

 

スズカは肯く事が出来なかった

 

 

 

だから、少しずつ無理をし始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょっと、待って!

 

 

それはダメな奴だから!

 

 

 

そして、彼と話をする機会に恵まれた

 

 

 

 

 

 

 

 

へぇー

『誰もいない、スズカさんだけの静かな世界』か

つまり、レース中に他者の介在する余地がないほどの逃げしかないよな。それって

更にいえば、そこまでの逃げとなると最早『大逃げ』と言うべきものになるだろうなぁ

 

 

スズカは驚いた

この人物は自分の願いを否定しなかったのだ

 

 

笑ったり、否定しないのか?

そう聞くと

 

 

冗談

俺自身が不可能って言われてるウマ娘の幼馴染と共に居ようとしてるんだ。しかも、なんの取り柄もないこんな俺が、だ

先人達が夢見て、そして夢破れてきた事に挑む俺がどうしてスズカさんの夢を笑えるもんかよ

 

 

と彼は悪戯っぽそうに笑った

 

 

そういうもの、なのかしら?

 

 

さて、どうなんだろうね?

他人の事がどうでも良いとは言わないさ。けれど、結局のところは他人の視点から見た客観的な意見が正しかろうとも、それを俺やスズカさんにとっての正解とはいえない事だって沢山ある

 

 

彼は続ける

 

 

不可能。非効率的。無謀。無駄

それでも先人達が諦めなかったからこそ、今の俺達の生活がある

重要なのは、俺やスズカさんが後悔しない事、だと思うけどな

 

 

そこには、届かないモノに必死で手を伸ばす少年の姿があった

 

 

 

 

 

 

 

それからのスズカは変わった

 

 

彼の気遣いにより、スズカには一緒にトレーニングする相手が必要だと思ったらしく、ミホノブルボンとライスシャワーを紹介され、3人の要望を元に彼の幼馴染であるアグネスタキオンと彼が考案したトレーニングメニューをこなすようになっていった

 

 

友人であるグルーヴからは

 

 

スズカ、お前は変わったな

 

 

と言われ

 

 

ええ、良い出会いがあったの

 

 

と心から笑う事が出来た

 

 

 

 

 

そして、ブルボンとライスとの交流の中でスズカは知った

 

彼を取り巻く状況の複雑さを

 

 

 

 

だから、サイレンススズカは走り続けるのだ

 

 

いつか辿り着く『サイレンススズカ(私達)だけの世界』を夢見て

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌年の3月

 

 

大盛況となったウマ娘達の一年を締めくくるURAファイナルズ決勝にスズカは出走する事となっていた

 

そこには友人であり、トレーニング仲間でもあるブルボンとライスの姿もあった

 

既に来季の天皇賞などに照準を合わせているマックイーンやルドルフ、タイシン達は参加していないが、それでもオペラオー、ヘイロー、グラスにエル、グルーヴにブライアン、ハヤヒデにチケットと豪華なメンバーか集まっていた

 

 

だが、彼女達とスズカ達には決定的に違うものがあった

 

 

 

スズカ達は今年度最後となるこのレースにおいて、必ず勝利し彼への批判的な空気をなんとかしようと考えていた

 

 

 

彼と共にあった約2年間の中で、スズカ達は様々なものを貰い、与えられてきた

 

 

批判があるのを承知してまで、彼をトレーナーとして引っ張り出したのは彼女達が彼の事を心配していたからなのだ

 

 

昨年の一件以来、彼はトレセン学園に自主的に来る機会が目に見えて減っていた事を他ならぬ3人は理解していた

 

そしてそれは、タキオン達が悲しむ原因となっている事にも

 

 

だから、スズカ達は彼にトレーナーとしてトレーニングを見てもらうという名目で彼を出来る限り学園に留めていたのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レースは第三コーナー付近でスズカが更にペースを上げた事でほぼ決したと言っても良い

 

 

第四コーナーの大欅を越えた所で、後ろを少し見たがブルボン、ライス。その他のウマ娘という順位で推移していた

 

 

 

 

 

スズカは思いっきり地面を踏み締め、更なる加速をして最終ストレートを駆け抜けた

 

 

 

 

次着のミホノブルボンに圧倒的大差をつけての文句なしの一着であった

 

 

 

 

だが、スズカは自身の脚が異常をきたしている事に気がついていた

 

ウイニングライブか終わると、トレーナーを務める彼がライスシャワー、ミホノブルボンの順に涙を流しながら、彼女達を労い、怒っていた。

 

 

 

最後に自分のところに来て

 

 

見たい景色は見えたかよ?

 

と彼は震える声で私に訊ねた

 

 

その答えは満面の笑顔だった

 

 

 

幼かった、ただ走る事だけを楽しんでいたあの頃の様な笑顔で

 

 

 

 

彼に背負われて、ターフを後にした

 

 

その温もりの中で

 

 

後はお願いします

ルドルフさん、タイシンさん

 

 

と私は密かに願った

 

 

 

 

 

その後、私達は春に入学してきたタキオンの妹であるダイワスカーレットさんのトレーニングのサポート役を引き受ける事となった

 

いいえ、引き受けるというよりは私達が自ら志願した。という方が正しいのだけど

 

 

スカーレットは飲み込みが早い上に、タキオンの妹であり、彼を兄と慕うだけあって素直に彼の指導を受け入れていた

 

 

その結果、実力を目に見えて伸ばしていった

 

 

 

 

あの、スズカ先輩?本当に走れないんですか、明らかにあたしより速いんですけど

 

とトレーニング中にスカーレットが言ってきたが、私達の仕事は終わっているのだ

 

 

後は貴女達が彼の道の正しさを証明するだけ

 

 

 

スズカはいつもそう思いながら、スカーレットのトレーニングのサポートをしていた

 

 

 

あの人()を道は選んだ。過酷で困難な道を

 

ならば私はその彼を支えよう

 

 

 

私達(スズカ、ブルボン、ライス)が最初に孔を開けよう

世間の悪意という巨大な壁の

 

彼に寄り添う者(ルドルフとタイシン)がその孔を拡げよう

 

彼を慕い、信じる者(スカーレットやウオッカ)が更にその孔を拡げ、壁に罅をいれよう

 

彼に手を引かれた者(アグネスデジタル)がその壁を壊せば良い

 

 

 

そして、いつか

 

 

(あの人)が笑って平穏に暮らせる世界を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スズカ達もまたスカーレットの引退後にトレーナー職を辞したタキオンと彼や、それについて行くルドルフ達やスカーレットと共に栗東へと向かった

 

 

教育センターとの名前通りに、ウマ娘やトレーナーの候補生が数多く在籍しており、タキオンはそこの医務室長を。彼は候補生達の教官を務め、ルドルフは彼の補佐をした。

スズカ達もまた彼の補佐として活躍し

 

 

 

やがて

 

 

 

 

サイレンススズカさん!

じ、自分と付き合って下さいっ!

 

 

栗東で生活すること3年目にスズカはとある職員に告白された

 

 

 

 

スズカとしては、もう少し相手を選ぶべきだと思っていたが、その人物はかなり押しが強く、事あるごとにスズカへのアタックをしてきた

 

スズカの直接の上司となる彼との関係も良好であり、名前を言えば

 

 

 

ん?

ああ。あの人か

 

 

という程度には認識していた

 

 

 

スズカは半年待たせたにも関わらず、自分にアプローチしてくるその人物の熱意に負け、付き合う事にした

 

 

なお、この結果をかの人物が一番最初に報告したのが、他ならぬ彼であった為にスズカはかなり恥ずかしかった

 

彼はスズカとその人物の交際を事のほか喜び、その日は珍しくタイシンの家にてホームパーティーを催すほどであった

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、それから僅か10年も経たない内に、彼は帰らぬ人となってしまった

 

 

スズカやスズカの夫は彼が衰弱していく様子を知っていた為に殊更ショックが大きかった

 

 

 

彼がスズカに遺した言葉は

 

 

どうやら、ボクの方が先にスズカよりも見れるみたいだね。悪いけど、先に『誰もいない静かな景色』を見に逝くよ

 

であった

 

 

 

タキオン、ルドルフ、タイシン、スカーレット、ウォッカ、ゴールドシップ、デジタル

 

更にマックイーン、オグリ、グルーヴに彼が重篤と聞いて来日したフラッシュやその夫達にも言葉を遺し、彼はその僅か2日後に旅に出た

 

 

 

 

そう

 

 

彼は『果てにある景色』を見る為に旅に出たのだ

 

二度と帰られない旅路へと

 

 

 

 

 

 

その後の事を少しだけ

 

その僅か半年後にオペラオーの尽力により、『彼と彼女の歩む道』が上映されると、そのセンセーショナルな内容から各方面からの激烈な反応があった

 

特に反応著しかったのは、槍玉に挙げられているTV業界であり、彼等は名誉毀損でオペラオーを訴えると脅しにかかった

 

 

新進気鋭とはいえ、所詮は新人である

 

潰すのは容易であり、相手からの譲歩を引き出せると思っていたのだろうか

 

 

 

ところが、『アグネス共同製薬会社』代表取締役となっていたアグネスタキオンが声明を発した

 

 

今回、友人であるテイエムオペラオーの例の舞台の内容については当事者として、また故人でもある私の夫と彼女の間で話し合いがなされた上での内容であり、これについて一切の虚構が含まれていない事をここに保証する

 

との内容であった

 

 

 

更にこの発表を受けて、大手出版社などの出版業界は未だに真実を報道しないTV関係者に対して、『放送倫理審議会』による監査請求を行なう事として、報道に携わる者としての責務を果たす事となった

 

 

更にテイエムオペラオーに対する恫喝とも取れる姿勢を取った企業に対しては『恐喝罪』としての立件を視野に入れた捜査の開始がまことしやかに囁かれる様になると、さしもの彼等も態度を一変させ、オペラオーに対して謝罪する事となった

 

 

そして、出版社と契約を結んだオペラオーはタキオンとタキオンの夫の生涯についての暴露本を共同執筆者として、ルドルフ、タイシン、スカーレット、ウオッカ、デジタル、ゴールドシップにスズカ達を巻き込んで世に出す事とした

 

 

 

こうして、彼の名誉は実に10年以上経った後にようやく回復する事となったのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

栗東御園

つまり、教育センターに程近い場所に彼の墓所がある

 

 

 

そこには

 

 

『誰よりも力強く走り抜け、果てを目指した人物ここに眠る』

と書かれた彼の墓があった

 

 

 

 




実は作中において、彼にルドルフ以上に恋焦がれていたという此処のスズカでした



彼女はその後、教育センター職員である夫の妻として生活しながら、彼の墓の管理を『1日欠かさず』彼女が病魔に倒れるまで行い続ける事になります




では、次回こそタキオン編となりますので、気長にお待ち下さい


ご一読ありがとうございました


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 アグネスデジタル

タキオンについては、糖度が足りないと思ったので暫くお休み


何故か出来たデジタルの話を上げる





アグネスデジタル

 

 

その名前は彼女が現役を退いてから、20年以上経った今でも、確たる輝きを持っている

 

シンボリルドルフ、ナリタブライアン、エアグルーヴ、サイレンススズカ、ミホノブルボン、ライスシャワー、オグリキャップ、タマモクロス、ハッピーミーク、ナリタタイシン

 

綺羅星の如き力量を持ったウマ娘達が、その力を発揮し始める環境となったトレセン学園本校

 

アグネスデジタルはその三期生であった

 

 

前述した輝ける一期生に続けたばかりに、ダイワスカーレット、ウオッカ、ゴールドシップ、トウカイテイオーといった猛者達が君臨した第二世代

 

 

アグネスデジタルの従姉妹にあたるダイワスカーレットのトレーナーもまた従姉妹の姉にあたるアグネスタキオンであり、その補佐を務める人物は当時悪名高かった人物であり、アグネスタキオンの伴侶であり、ダイワスカーレットとアグネスデジタルにとっては義兄といえる関係であったとされる

 

 

当人の話によると、既に一期生がデビューした頃にはアグネスデジタルとダイワスカーレットは基礎トレーニングに勤しんでおり、その時点からアグネスタキオンとその伴侶からの綿密なトレーニングメニュー「用意されていたと言われている

 

 

 

良く世間では

 

 

『ナリタタイシンは世界に絶望を突きつけ、ナリタブライアンはプライドをへし折り、ダイワスカーレットはその力で彼等の育成者に悪夢を見せ、アグネスデジタルは唯絶望感のみを与えた』

 

とジャパンカップを知る者たちは口を揃えて言う

 

 

 

芝とダート両方において、無類の強さを発揮したアグネスデジタル

 

 

従姉妹であり、先輩にあたるダイワスカーレットの引退レースとなった有馬記念において、初対決する事となり、先行逃げのダイワスカーレットに対して、追い込み型の差しタイプであったデジタルは第三コーナーにおいて、スカーレットの次を走るウオッカを差し、第四コーナーでようやく彼女を射程に捉えた

 

しかし、『シンデレラの希望』と呼ばれていたスカーレットはよく粘るも、ゴール直前にデジタルに屈しハナ差での敗北を喫する

 

 

姉であり、ライバルでもあったスカーレットに勝利した事で呆然としていたデジタルに対し

 

 

何ぼんやりしてるのよ?デジタル、貴女は私に勝ったんだから、この先姉さんと兄さんの想いを継いでいかなきゃならないのよ

 

と激励したとのエピソードがあるほどだ

 

 

とはいえ、依然として海外のウマ娘育成環境に比べ、我が国のそれは圧倒的に遅れており、それ故にジャパンカップは日本のウマ娘達のレベルを測る以上の意味を持たなかったそうだ

 

ジャパンカップ開催はあくまでも後進国であった日本のウマ娘達に世界のレベルを見せつける意味があったとされている

 

 

 

もっとも、国内のレースのレベルを理解せずに着順表だけを頼った資料を元にしていた海外レース主催関係者に対して、海外の特にウマ娘育成関係者からは冷ややかな視線が未だにあるそうではあるのだが

 

 

 

とはいえ、ある意味ではこれも仕方ない部分があり、特にウマ娘によるレースが大々的に開催される様になって僅か2年ほどで如何程の信頼できるデータが集められたのかは甚だ疑問ではある

 

 

何せ大規模なレース増加が行われる前まではまともにTVで放映される事すらなく、あくまでも個人の趣味で見られていた程度であったのだから、その頃のレース記録を手に入れるなど、国内関係者ですら躊躇う程の難事であったから

 

 

 

だが、ジャパンカップ主催者達はデジタルが圧勝したにも関わらず、無謀ともいえる事をしでかしたのである

 

 

ジャパンカップの開催地は東京府中競バ場であった

この府中は芝のコースのみが整備されており、日本独特の芝では世界のウマ娘達の実力が発揮できないと主張

 

そこで、競バ場としての歴史が古く、芝、ダートに障害物走に対応していた千葉船橋の中山競バ場でのダート勝負を日本側に打診したのだ

 

 

 

 

何せ、ジャパンカップ開催から四年経ちながらもいちどとして勝利出来ていないのが現実でありジャパンカップ主催者達は自分達の国で

 

 

相手の実力も見抜けなかった愚か者

 

一度ならず、二度三度と愚行を重ねる〇〇者達

 

 

との評価が下されており、世間では成功者であった彼らだがその立場を急速に失いつつあった

 

 

 

 

四度目となるジャパンカップにおいて、アグネスデジタルとメジロパーマーが日本側より出走し、海外のメディアはこぞって

 

 

 

 

かのトレーナーの系譜を今度こそ打ち破れるか?

 

 

とナリタタイシンのトレーナーであり、ダイワスカーレットのサブトレーナーであり、義兄でもあった彼の(海外勢からすれば)最後の育成ウマ娘であったデジタルとの対決に注目を集めさせた

 

 

 

しかし、日本のそれとは違い、海外のメディアは彼の功績を認めており、『強者を育てた者にも相応しい扱いを』というスタンスの元フィルターのかかっていない情報を発信していた

 

 

 

実のところ、陣営の中には『自分達が負けるはずがない』との安いプライドから対戦相手であるはずの日本のウマ娘についてマトモに調べようしないところもあったりした

 

 

 

それもある意味では仕方のない事だろう

 

 

トレセン学園開校までは、ウマ娘育成環境はその指導者の経済力によって左右され、数少ないレースに勝利しても旨み(賞金)は少なく、入賞するのは歴史ある名家や財閥や企業をスポンサーに持つ者ばかりだったのだ

 

 

『金持ちの道楽』

などと揶揄されたとしても、否定しきれなかったのがその頃の日本だったのだから

 

 

 

そして、その様な日本に見切りをつけて海外で活躍しようと海外に飛び出した指導者やトレーナーは多かった

 

 

 

しかし、である

 

 

育成環境の整っていない日本で燻っていた者達が、環境の整っている中で指導やトレーニングを重ねてきた海外の者達と果たしてマトモに勝負できるだろうか?

 

 

以前にも少し触れたが、ウマ娘とは指導者にとって、パートナーであると同時に故障してもらっては困るのだ

 

 

 

となれば、本来ならば必死などという表現では生やさしいトレーニングを積んでなあ、勝負になるか分からないところ『故障を恐れながら安全性と効率を両立させたトレーニング』を積んだウマ娘が『幼少期から常に研鑽を欠かさなかった者達』に互角の戦いを挑めるだろうか?

 

 

積み重ねた時間が違い、海外に適応するにも時間をかけ、それでいて日本よりは環境が良くなったと言っても、それ以上の環境で育てる事が叶わなかった日本のウマ娘達は『世界のレベル』を前に膝を屈するしかなかったのは必然とすらいえよう

 

 

 

 

そんな海外に飛び出してきた日本のウマ娘や指導者を見てきた海外の関係者からすれば、『多少マシ』程度の評価をしたところで不思議ではないだろう

 

 

 

しかも、それよりも環境の整っていなかった日本。多少環境を整えたところ(トレセン学園)で大したものに映らないのもある意味で納得できるモノであったといえよう

 

 

 

 

 

まあ、その代償を彼らは4年間払い続けた訳だが

 

 

 

 

アグネスデジタルはウマ娘としては、オグリキャップ、ハッピーミーク以来となる『芝とダート』両方を走れるウマ娘である

 

 

しかも2人と異なり、彼女は双方のG1を幾度も制覇しており、先達の『アグネス一族』であるスカーレットが引退すると、その強さは更に注目される様になった

 

 

 

なお、メディアが良く使う表現である『アグネス一族』とはアグネスタキオンとその彼の指導を受けたウマ娘を指し

 

サイレンススズカ、ミホノブルボン、ライスシャワー、ナリタタイシン、ジャラジャラ、ダイワスカーレット、アグネスデジタルがそれに該当する

 

 

 

世間においては『ブロンズコレクター』であったジャラジャラすら引退レースである東京大賞典で勝利していることから『G1勝利者の集まり』(プラチナコレクター)と呼ばれる事もある

 

 

他にも表現するものによるが、ウオッカやゴールドシップなども数える事もあるが、どちらにせよ恐ろしい陣営といえた

 

 

 

しかも、引退した彼女達は後進の育成に関わっているとされ、『アグネス一族』の集大成ともいえたのがアグネスデジタルというウマ娘と言われていたりする

 

 

 

 

なお、スカーレット引退後一年程経っているが、アグネスデジタルは未だに一度として敗れたことはなく、ネット界隈では

 

 

 

 

 

アグネスデジタル

奴を誰か止めろ〜

 

今度のレースデジタル出走

オワタ

 

だから、芝とダートを制覇しようとするのは、やめろって!

 

(朗報)我らがデジたん先生、本業で負けなしの様子

 

これで年に2回のイベントは欠かさないとは何というデタラメよ

 

それで年明けのレースに出て、平然と勝つる先生の素晴らしさよ

 

 

 

 

 

 

などと言われていたりする

 

 

 

 

勘違いされがちだが、アグネスデジタルのトレーナーはタキオンでも彼でもなく、2人の薫陶を受けた人物であった

 

 

だが、この人物はデジたん初の同人即売会に行った猛者であり、そこでデジタルの輝きに魅せられた人物だった

 

 

 

彼はその日のうちに高卒で3年間勤めていた会社を辞める決意を固め、トレーナーを志す事とした

 

そして、僅か一年足らずでトレセン学園トレーナー部門に配属されるという割と恐ろしい人物だったりする

 

 

そして、一年もの間タキオンや彼からトレーニングについて様々な事を学び、己を磨き上げた

 

 

 

彼がデジタルのトレーナーに志願してきた時、タキオンと彼はその人物を覚えており

 

 

ふぅん、半年ほど前に見たような人物だね?

 

 

確かデジタルのイベントに来てなかった?

 

 

と問われ

 

 

はいっ!不肖綾川瀬昨年のデジタルさんのイベントに参加しました!

そこで、デジタルさんの直向きさに惹かれて、トレーナーを目指した次第であります!

何卒、アグネスタキオントレーナー、サブトレーナー殿の元で彼女の力になりたくっ!

 

 

と土下座せんばかりの勢いで懇願したそうである

 

 

 

こういった人物が嫌いではないタキオンと、他ならか自分に通じる部分があった彼はデジタルのサブトレーナー見習いとして採用した

 

 

 

あの〜、私より魅力的なウマ娘ちゃんは沢山いると思うのですが

 

 

と事情を知ったデジタルは困惑気味であったとかなんとか

 

 

 

 

 

彼はその後トレーナーとしての教育と共に、『同人作家デジたん』のアシスタントとしての実力を磨くべく奮励努力を重ね、スカーレットの引退試合である有馬記念以降、3月まで2人のサポート無くデジタルを支え切った

 

 

これを見た2人は、デジタルを託すに値する人物と判断

 

3月の1日付でアグネスデジタルの専属トレーナーとしての手続きを完了させている

 

 

 

 

 

4月以降も度々チャットやSNSにおいて、2人に相談しながらもデジタル引退までのウマ娘としての彼女を支え、引退後は『同人作家デジたん』のアシスタントとして活躍し続けた

 

 

彼が亡くなる半年前にデジタルと無事ゴールインし、彼にとって気がかりであったデジタルの結婚について解決させた人物でもある

 

 

なお、仲人として彼を指名しており、

 

 

 

あのなぁ

俺はあと何回ウマ娘の結婚式で仲人すりゃ良いんだよ

 

 

と愚痴っていたとされる

 

 

だが、その表情は間違いなく笑顔だった

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに彼に仲人を依頼した人物は多く

 

オグリキャップ夫妻

エイシンフラッシュ夫妻

エアグルーヴ夫妻

ナリタブライアン夫妻

ウイニングチケット夫妻

ダイワスカーレット夫妻

ウオッカ夫妻

メジロマックイーン夫妻

ゴールドシップ夫妻

ナイスネイチャ夫妻

タマモクロス夫妻

スーパークリーク夫妻

トウカイテイオー夫妻

サイレンススズカ夫妻

ミホノブルボン夫妻

ライスシャワー夫妻

アグネスデジタル夫妻

沖野夫妻

 

となっており、『ウマ娘専属仲人』と呼ばれた事があったとか何とか

 

 

 

なお、彼女達は結婚式の時期が絡まない様に入念な打ち合わせをした為にブッキングは一度として起きていなかったりする

 

 

なお、チームリギルのトレーナーである東條ハナトレーナーとチームシリウスの沖野トレーナーは約10年もの大恋愛の末に結婚する事となり、教官であった彼をやはり仲人として指名している

 

 

 

なお、結婚式の翌日桐生院トレーナーと樫本トレーナーが担当であったハッピーミークとビターグラッセとリトルココンに介抱されていたが、因果関係は不明となっている

 

 

 

 

 

勢いをつけて、全力で殴りつける

 

と言わんばかりのデジタルの蹂躙劇には、同人誌のアシスタントであり、彼女の補佐役であるパーマーも苦笑いである

 

 

なお、パーマーはスカーレットの後を継いで生徒会長をしていたりしているのだが、苦労人として同級生や下級生の信望を集めていたりする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

姉を尊敬し、兄に憧れたアグネスデジタルはスカーレットが引退した翌年のURAファイナルズ勝利を最後に勇退する事となる

 

 

これはあまりにも圧倒的過ぎるデジタルの存在を危惧した『全日本ウマ娘協会』からの要請であり、パーマーや彼女のトレーナー達は抗議しようとしたが

 

 

いえいえ。私もまた後にバトンを渡せる様ですからね。サトちゃんとキタちゃんに任せますよ

 

 

と他ならぬデジタルがそれを受け入れた為に他のもの達も納得する他なかったという

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アグネス一族』最後と言われたアグネスデジタルはこうしてレースの世界より去る事となった

 

 

 

 

 

 

その後、やはり彼女も教育センター付近へと引っ越す事とし、スカーレットや姉や兄達と悠々自適に同人活動に勤しむ事となる

 

 

 

のちに教育センター在籍中の生徒達と共に『ウマ娘同人サークル』を結成

初代会長にして、名誉メンバーとして夫と共にウマ娘の新たな道を切り拓くことになる

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なお、同人サークルにはタキオン、ルドルフ、タイシンに彼などが製本やトーン貼りなどの関係で参加していた模様


のちに教育センター所長となるスカーレットもこれには苦笑いしたとかなんとか




タキオンについては、糖度が溜まり次第書き上げるのでお待ちください


ではご一読ありがとうございました


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 据え膳食わねば(後編)

苦慮の末出来たタキオン編


最後怪文書的なものになったけど、ヨシッ!


アグネスタキオンは理性的な人物であり、決して軽挙妄動する様な人物ではない

 

 

ないのだが、彼が関わるとごく稀に暴走する

 

 

 

家がないなら、私と暮らしたまえよ〜

 

いや、タキオン?

同室のカフェさんどうすんのよ?

 

ふむ

 

 

 

ある日のこと

 

タキオンがいきなり妙な事を言い始めた

一緒に暮らすも何も、折角新しいアパート確保したのに、舌の根も乾かぬ内に転宅などできよう筈もないだろうに

 

 

しかも、明らかに同室のカフェの事を考慮している様には見えなかったのだが

 

 

 

では、こうしよう

 

 

タキオンは紫色のアンプルを取り出して

 

 

私がキミに甘えたくなる時は、これを使ってカフェに寝てもらおう

 

 

おい、この女神物騒な事言ってんぞ?

 

 

思わずツッコむしか無かった

 

 

(誰か、誰か!ここら辺にタマ師匠(ツッコミマスター)は居られませんか!)

 

と思わず現実逃避したとして、俺が謗られる謂れがあろうか?

ない筈である

 

 

 

女神とは恥ずかしい事を言うものだねぇ

 

 

や、タキオンが女神で天使なのは確定的に明らかな事

寧ろ、その愛らしさを全世界に伝える事こそ、タキオンに初めて魅せられた俺の使命だとすら思ってるのだが

 

 

タキオンもドン引きする様な事を平気で言うが真理だからね、仕方ない

 

 

ところで、いくらなんでも紫は攻めすぎだと思うぞ?

確かにこの国古来の風習では紫とは高貴な色であった事は間違い無いのだが、それをよりにもよって怪しい薬の色にするのはどうかと思うのだがな

 

 

ふーむ。ならばどうしたものか

 

 

いっその事ことゲーミング(七色に発光)させたらどうよ?

危険性は伝わるだろうよ

 

 

俺はタキオンの悩みに投げやりに応える

 

 

というか、キミは同居に反対なのかい?

 

 

タキオンとしては、どうやら俺とまた秋までの様に共に生活したかった様である

確かにあのマンションにも思い入れはあるが

 

タキオンにとってみれば、俺と生活できるならば何処でも良いのだろうとは思う。しかし、だ

 

 

敢えて俺はそれを拒否する

 

キミは私と生活するのが嫌だったのか?

 

タキオンの内心を示すかの様に彼女の尻尾と耳は力なく垂れ下がっていた

 

 

 

こんな弱々しいタキオンなんて、見たくないから折れろ

 

そう俺の中で叫ぶ

 

だが、それはダメなのだ

 

 

だから

 

 

 

んな訳ない

だけど、ある程度の節度は必要だろ?

 

 

 

俺からすれば、下着姿に白衣だったり、バスタオル姿だったりするタキオンは常に理性を削っていたので割と必死な訴えである

あまつさえ、一緒にお風呂とか寝るとかしてると此方の精神はガリガリ削れる訳で

 

 

 

以前の様にスカーレットやウオッカ(第三者)がいるならば、必死に制御出来るのだが、タキオンと2人きりの場合、その理性がどれだけあてにあるのか甚だ疑問だしな

 

 

 

はっきり言って、滅亡間近の大名に従う国人衆並みに信用ならん

 

 

勿論、タキオンが抵抗するならば、間違いなく返り討ちとなるだろうが、どうにもタキオンは受け入れそうで怖い

 

 

 

となれば、可能な限りタキオンと2人きりの状況を避けるほかあるまいて

 

何せタキオンはああ見えて『肉食系女子』なのだからな

 

 

 

実はこの彼の意見はそれこそ『解釈違い』も甚だしいものであり、タキオンは何よりも彼との『繋がりの証』が欲しいのだ

 

 

それはルドルフやタイシンや周りから見えづらいが、アグネスタキオンという少女の本音であった

 

 

 

 

彼に捨てられるのが怖い

彼と離れるのが怖い

彼に見放されるのが怖い

 

 

アグネスタキオンという少女はシンボリルドルフとナリタタイシンという少女を彼を繋ぎ止める為に引き入れたが、それにより他ならぬ彼女自身が常に緊張を強いられるという笑えない事態に陥っていたのである

 

 

シンボリルドルフは同性であるタキオンから見ても魅力的な女性だ

聡明であり、常に誰かを導いていけるそんな人物

 

ナリタタイシンもまた小柄な体躯でありながらも、それを補ってあまりある魅力に満ち溢れた女性だ

確かに少々直情的であるが、それは彼女が自分の想いに正直で真剣である事と同義であり、かつ彼女は人の事を思いやれる人物

 

 

 

それに比べ、自身は彼に甘え、彼に委ね、彼に任せきりにした結果、彼を引き返せない所まで追いやった

今も自分の研究ばかりにかまけているのに、彼を失いたくないと我儘を言うばかり

 

 

それで彼と歩めると良く言ったものだ

 

とすら思っている

 

 

 

 

 

でも

 

 

それでも

 

 

 

アグネスタキオンは彼を欲しているのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

浅ましいと思うし、救えない性分だろう

侮蔑されても仕方ないし、軽蔑されるのもやむを得ない

 

 

 

だが、そんなアグネスタキオンは彼を何よりも、誰よりも愛しているのだ

 

 

 

 

相変わらずの激重思考だが、問題ないだろう

想い(・・)だけに

 

 

 

 

 

彼からすれば、理性的に受け入れられない

タキオンからすれば、情動的に受け入れられない

 

 

 

そして、この件に関しては

 

いや、この件に関して『だけ』はどちらも譲る事は出来ないし、許せない

 

 

となれば

 

 

 

 

タキオンが彼を見る

 

彼がタキオンを見る

 

 

 

(どうやら雌雄を決する必要がありそうだね?)

 

 

(本意ではないが、仕方ねぇ。かかって来いやぁ)

 

 

 

お互いに長い付き合いである

 

アイコンタクト(この程度)は余裕だった

 

 

 

 

 

タキオンと彼が互いに譲れないときの解決法

 

 

そ れ は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さあ、始まっても欲しくない時が来ました

 

 

アグネスタキオン対彼。第?何回戦でしたか?ナイスネイチャさん?

 

 

え?ああ

確か、第七回目だったかな?

 

 

 

トレセン学園のとある講堂にて、『第七回タキオンvs彼異種対決』が開催されようとしていた

 

 

 

司会進行役はタキオンさんと彼の被害担当ことマンハッタンカフェと学園一の常識人ことナイスネイチャさんでお送りします

 

 

あははは、カフェさん大丈夫?

 

 

大丈夫じゃないんで代わってくださいと言えば代わってくれますか?

 

 

ごめんなさい

 

 

タキオンと彼に良く振り回されているカフェとネイチャが即席の解説席に腰を下ろしていた

 

カフェの申し出に対しては丁寧に断るネイチャであったが

 

 

 

 

 

なお、この学園には至る所にゲリライベント用のセットが用意されており、その全容を知るのはゴールドシップと彼のみであったりする

 

 

 

 

なんか関係者と違う気がするけど、ヨシッ!(学園猫)

 

 

 

 

 

 

トレセン学園豆知識

 

 

学園のオカンにしてツッコミマスターといえばタマモクロス

学園一のおぎゃリストといえばスーパークリーク

学園一の暴食女王といえばオグリキャップ

学園一の逃亡者といえばナリタブライアン

学園一のお母さんといえばエアグルーヴ

学園一のお袋さんといえばヒシアマゾン

学園一のマジシャンといえばフジキセキ

 

などと様々な渾名が存在する

 

が、その中で異彩を放つ者もいる

 

学園一のマッドことアグネスタキオン

学園一の被害担当ことマンハッタンカフェ

学園一の幼妻ことナリタタイシン

 

などである

 

 

なお、一番最後については本人に言おうものなら、真顔で蹴りが飛んでくるので注意が必要であったりする

 

 

因みにブライアンの渾名については、翌年セイウンスカイに無事?継承される事になるが完全な余談であろう

 

 

 

 

 

 

 

さて、今回は特別ゲストとして、2人をお招きしています

 

 

私達の愛を無礼(なめ)るな、彼の膝は私の枕シンボリルドルフさんとアンタ1人にはさせない、アンタは私が守るナリタタイシンさんです!

 

 

待ってくれ

 

 

諦めなって、ルドルフ。このノリのコイツらから逃れるのはスズカでも無理なんだし

 

 

 

ゲストとして招かれた(攫われた)2人。ルドルフは混乱し、タイシンは最早諦めの境地であった

 

 

 

既に5回を超えているにも関わらず、未だに困惑するルドルフがおかしいのか?

それとも、諦めの境地に至ってしまったタイシンの適応力がずば抜けているのか?

 

 

余談ではあるが、ルドルフは5回目だが、タイシンはまだ4回目であった。タイシン不在の時はスズカがゲストであり、2人がいなかった頃はマックイーン(タキオンの親友)タマモクロス(ツッコミマスター)であったのは言うまでもあるまい

 

 

 

 

 

ルールは簡単。方法は問わないので、相手を屈服させた方の勝ちとなります

 

 

いつも思うんだけど、なんかおかしくないの?

 

 

ではネイチャさん

 

 

 

カフェの発言に疑問を持つネイチャ

そのネイチャに

 

 

貴女は言えますか?彼と楽しそうに過ごす今のタキオンさんに

 

ごめん無理

 

 

 

 

 

 

 

 

流石のナイスネイチャも心底楽しそうに彼との時間を過ごしている友人の邪魔をする事は出来ない

 

 

 

報復が怖い訳では決してない

 

ないったら、ないのである

 

 

 

 

 

なお、いつもの3人(スズカ達)は講堂内にはおらず、入り口付近で門番をしている

 

もう一つの入り口は

 

 

 

皆、申し訳ないデスガ、此処は通せマセーン

 

 

うふふ

此処を通すつもりはありませんので、あしからず

 

 

エルコンドルパサー(グラスのストッパー)武士娘(大和撫子)が守っていたりする

 

 

 

 

講堂内ではタキオンと彼以外だと

 

 

進行役とゲストに

 

 

 

なんでウチがせなあかんねん

 

 

む、タマ

この方が画面の映りは良くないだろうか?

 

 

 

撮影係として、タマモクロスとオグリキャップが居たりする

 

 

 

 

というのも、初の試みであった第一回開催の際には多くのウマ娘達が会場に押し寄せ、一時的にではあったものの大混乱に陥っていた為にこの様に校内に設置されているモニターでの観覧が可能な様、放送としてのである

 

 

 

 

 

なお、この混乱については

 

 

 

ま、またか

ええぃ、また奴とタキオンなのか!気持ちは分からなくはないが、少しは自重してもらわねば此方が保たん

 

とエアグルーヴがこぼしていたらしい

 

 

 

その声が友人であるスズカを通して議題に上がり、この様な対策が採られる事になった訳だ

 

 

なお

 

うっし、なら色んな所にセットが必要だな!

 

 

と、とあるウマ娘が奮起した為に至る所にセットが配置される事となった訳だ

 

しかも、このセット折り畳み式や組み立て式を採用しており極力スペースを取らない仕様となっていたのだから、生徒会としてもそこまで文句は言えなかった側面もある

 

 

更にセット製作費用は彼女の自腹であり、生徒会会計的にも優しいものであり、2ヶ月に一度定期メンテをする事で安全性の担保も行なうという超親切仕様でもあった

 

 

 

これについて、秋川理事長は

 

 

無念っ!!

残念ながら、エアグルーヴ。諦めるほかないっ!

 

 

と眦を下げながら、彼女に諭したとされる

 

 

 

 

ゴールドシップ

 

彼と関わる事で、更に厄介度が上がってしまった少女であった

 

今まではただ衝動に任せた行動を取ることが多く、結果としては良い方向へと向かう為に容認されていた部分が多かったが、彼と関わる内に『口実を作る(大義名分を得る)』事の重要性に気がついた結果、彼女の行動の範囲は拡大したのに、実際に被害に遭う者は減るという現象が起きる事となる

 

 

 

 

あの子(ゴールドシップ)でも当主が務まるかもしれないわね

 

 

とは現メジロ当主の言である

 

 

 

もっとも、当の本人はそんな窮屈な立場を望んでいないし、マックイーン達もゴールドシップにそんな負担をかけるつもりは毛頭なかったので実現しようもなかったのだが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

面倒ですが、始めますか

 

明らかに面倒くさいという雰囲気を隠しもしないマンハッタンカフェが宣言した

 

 

 

 

 

えっと、相手の好きなところをあげ、る?

 

 

抽選くじを引いたネイチャは、その内容に戦慄した

 

 

(え?誰なの、こんな恐ろしい内容を書いたのは?)

 

 

 

 

 

ふふっ、どうやら私の内容が採用された様ですね

予定とは違いますが、良い傾向でしょう

 

 

 

 

ネイチャの驚愕の元を用意した人物はとある部屋からこの放送を視聴していた

 

 

彼女の名はエイシンフラッシュ

この国から遠く、欧州ドイツからわざわざトレセン学園に入学してきた少女であった

 

 

ちなみにこのくじはトレセン学園有志達により、用意されたものであるが、その内容は様々である

 

当然だろう

人だろうが、ウマ娘だろうが個々の趣味嗜好は幅広いのだから

 

 

 

その中でエイシンフラッシュは異性との関係について、かなり興味を示している人物だぅた

 

 

彼女自身は祖国ドイツにおいて、高名なマイスターである父とその店を手伝う母の間に生まれ、当然だが、お嬢様として父の弟子や従業員から扱われていた

 

 

その頃には思わなかったが、1人のウマ娘としてトレセン学園に来た今ならば分かる。いや、分かってしまう

 

 

彼等からすれば、フラッシュは『マイスターの娘』や『店のお嬢様』でしかなかった事を

 

 

勿論、フラッシュとてそれを否定するつもりは毛頭ない

 

しかし、それを窮屈に感じていたからこそ、彼女は単身祖国ドイツを飛び出してウマ娘育成に関しては後進国である日本のトレセン学園に来たのだ

 

 

 

 

ここでなら、両親とは関係のないエイシンフラッシュという人物を見てくれる人がいる

 

そう信じて

 

 

 

 

彼女は入学して早々に衝撃を受けた

 

 

アグネスタキオンさんとその彼氏

 

その存在に

 

 

 

 

ヨーロッパ、特に西欧諸国と言われるドイツ、フランス、イタリアなどにおいてウマ娘の社会進出は進んではいる

 

だが、それでもウマ娘と添い遂げようとする人物というのは、基本的に社会的地位や権威のある人物が多い。フラッシュの父もそうだろう

そうでなくとも、社会人としての確かな生活基盤を持つ者である事は暗黙のルールといえた

 

 

自分自身の面倒も見れない者がどうしてウマ娘と添い遂げられようか

 

 

言葉にする者はいないが、概ねそう言った意見が大勢を占めていた

 

 

 

 

そのヨーロッパよりも社会進出ができていない筈の日本。しかもまだ親の庇護を受けているのが当然と思われている年齢の少年が、それこそ『全てを捨ててまで』共に歩む事を選んだと言うのだから、フラッシュの受けた衝撃は計り知れなかった

 

 

 

 

フラッシュとしては、あまり関わり合いになりたくはなかったが、やはり彼女も年頃の娘

タキオンと違うクラスとは言え、気が付けばタキオンと彼の動静に注目していた

 

 

 

そして、アグネスタキオンに憧れた

 

何せ、ルックスなどはどうでも良いとフラッシュはいつも考えていたのだから、タキオンに構い倒す彼に熱のこもった視線を向けたとしても許されるはずだろう

 

 

フラッシュからすれば、センスだルックスだといったものは付き合い始めてから少しずつ矯正していけば良いとすら考えていたので、はっきり言ってしまうとウマ娘ながらに面食いな人物には共感できなかったのだ

 

 

 

寧ろ、それなら『彼氏を私色に染め上げる』を楽しむべきであって、間違っで避ける事ではないと、少なくともフラッシュには思っている

 

 

 

 

 

というよりも

 

 

彼と言う存在はある意味では創作劇のヒロインを助ける王子様的な者にも見えなくもない

 

 

(なるほど。王子様とは言い得て妙ですね)

 

 

 

この国独特の言い回しには未だに慣れないフラッシュでも、この表現には思わず納得してしまうものがあった

 

 

 

 

とはいえ、流石にフラッシュも相手が既に定まっている人物を横取りするつもりはない

 

 

まあ、海を隔てたあの島国の者ならば

 

 

恋にルールは無用

 

 

などとしたり顔で言いそうではあるのだが、フラッシュにはそういう趣味はないし、そんな事に意味があるとも思っていない

 

 

 

 

 

 

だが、そうなるとフラッシュとしても困った事になる

 

 

何せトレセン学園に来てから出会った異性は学園職員もいる為にそれなりの数にはなるものの、深い仲になろうと思う人は中々見つからない

 

 

確かに来年度より学園に併設しているトレーナー寮で生活しているトレーナー達もこの敷地内に足を踏み入れ、スカウトなどを経て私達ウマ娘との生活を始める訳だが

 

そうなると、常に予定通りの生活を良しとするフラッシュにとって、困った事になる訳だ

 

 

何せ、結局半年経った今でも異性との交流はほぼゼロ

 

彼と言葉を交わす事は多少あっても、それだけでは不足しているのは明らかだ

 

 

 

そこで、タキオンと彼のやり取りを見て、そこから学び取る方法を実行する事にしたのである

 

それこそ、ネイチャが戦慄した内容に繋がる訳だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当然だが、そんなフラッシュの思惑を知る筈のないナイスネイチャは自身の引きの悪さに絶望していた

 

 

 

か、カフェさん

 

やむを得ません。掲示板で安価が絶対なようにくじ引きもまたどの様な結果だとしても、それは絶対なのです

 

 

悲壮な覚悟のオーラを纏うカフェに

 

 

いや引き直せばいいのではないか?

 

 

とルドルフが至極真っ当な事を言ったのだが

 

 

ルドルフ!アンタは分かってない!

 

 

何故かタイシンから非難されていた

 

 

 

いい、ルドルフ。例え低確率でも、引けないと思っていても、引いてはいけないと思っていても、それを引いたのであれば、その結果を受け入れるべきなの!!

 

 

それがっ!どれだけ辛い結果となろうとも!

 

 

ナリタタイシンはスマホでゲームをしている

 

だからこそ、彼女はくじやガチャの結果を受け入れず、引き直す事に対して猛烈な拒否反応を起こすのだ

 

 

 

 

 

 

・・・・ふむ

 

そだな

 

 

なお、その様子を遠巻きに見ていたタキオンと彼のタイシンへと向ける視線はとても冷ややかであった事を付け加えておこう

 

 

 

 

 

なお、翌年春からレースで本格的に活躍し始めたタイシンは、その賞金の一部をゲーム内課金(ガチャ)に使おうとした為に、タイシンの賞金管理を彼はトレセン学園理事会に委任する事になったのは余談である

 

 

 

何せタイシンは初のG1勝利獲得賞金の半分を課金しようとしたのだから、彼は即座にトレーナーとして彼女の賞金受け皿の口座を理事会に要請して開設してもらった

 

その後彼やトレーナー代表を臨時に務める東條トレーナーと共に理事会に出席。その議場において、『ウマ娘のレース賞金については原則としてトレーナーかトレーナーの委託を受けた理事会がこれを代行する』事を決定している

 

 

 

 

 

とにかく引き直しは無しで

 

 

 

 

 

と言う事で

 

 

お題は

 

 

相手の好きなところを挙げる

 

 

となった

 

 

 

 

ふむふむ。好きなところかな?当然全てだが、それでは勝負にならないたろうね

 

 

なに、盛大に惚気ていいって事なの?

なら全力で惚気ようか

 

 

 

この台詞を聞いた一部のウマ娘たちはこう呟いたとされる

 

 

 

 

 

 

oh my goodness(終わった)

 

 

 

因みにoh my godやoh jesusは人によっては言い方に不快感を持つ言い方なので、上記の言い方が波の立たない言い回しらしいですね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして

 

 

絶望が始まる

 

 

 

 

 

 

 

 

まず、何をおいてもタキオンは可愛いし、いつも髪は無造作に見えて、しっかりとケアしてるのもポイント高いよな。勿論、タキオンの肌はすべすべだし、いい匂いするし、柔らかいし隣にいるといつも安心する。料理を黒焦げ(カーボン)にするけども、その時の涙目になっているタキオンの可愛さは筆舌にし難いものがある。薬品調合をたまにミスった時のタキオンはかなりのレアだが、見る価値は充分ある。なんせ、こんな薬が出来て、この様な効能がある。なんて散々言っておいて、それがお釈迦になった時のタキオンの顔はあれ?おかしいな?って小首傾げながら、意味ないのにその薬を色んな角度から見ては更に首を傾げるんだぞ!可愛い以外の表現が出来るはずもない!あと、食事を待つ時のタキオンも最高なんだよな。なんかこう、親鳥のご飯を待つ小鳥みたいな感じでさ、いやホントたまには焦らしてやろうかなって思ってるんだけど、やっぱりタキオンには笑って欲しいから、ついつい普通に作るんだよね。あ、そうそう。食事といえば、嫌いなブロッコリーやセロリを食べるときなんかはマジでどうしようかな?っていつも考える程に可愛い。料理を出したら、直ぐに手をつけるんだけど、匂いでわかるのかブロッコリー入ってるよね?食べないとダメなのかい?え、本当にみたいな顔して俺と料理を交互に見比べるんだよね。で、俺がニッコリ笑うとタキオンは一、ニ分俺を凝視してから諦めた様に料理を見るんだよ。それでも、俺が前言撤回してするのを期待してか、料理を見ているのにチラチラこっちを見てくるんだよ。しかもやや涙目で。でも俺も嫌がらせでタキオンに食べさせようとしている訳じゃないのも分かっているから、最後は両眼をしっかり瞑ってブロッコリーの入った料理を口にするんだよ。で、口に入れた瞬間にタキオンの耳と尻尾が力なく垂れるのもポイント高いと思うわけさ。あとたまにオムレツの中にセロリで作ったスープを入れたりすると、タキオンは喜んでオムレツを食べてから、すぐに涙目になって、視線で抗議してくるんだよなんで、コレをオムレツに入れたの?ってね。可愛いに決まってるよな?あと、寝起きのタキオンなんて至高そのものだろう。んあ、おはようって、長袖から少し出た手で目を擦りながら寝ぼけ眼で挨拶してくるタキオンを見た日には朝からスフレオムる気になるよな

 

 

 

 

とまあ、早口で捲し立てる

 

 

 

う、むむ?

 

え、えっと

 

 

彼に惚れているルドルフとタイシンも想い人のまさかの一面に困惑を隠しきれない様子である

 

 

 

ふむ。なるほど。そうキミは言うのだがね?私が思うにキミのいつも料理している後ろ姿は本当に魅力的だと思うのさ。リズム良く、手際良く、しかもそれでいて私の好みの範囲から逸脱しない料理を作る。これは間違いなくすごい事だろう。何せ私とて女だから、味覚については日にばらつきがある。にも関わらず、キミは私が常に美味しいと思える味付けに仕上げてくるのだから、その努力と気配りには本当に頭が下がるよ。ついでに言わせてもらうならば、私の私生活での服装の事をキミはよく言うが、私からすればキミとて然程に変わらないと思うのだがね。知っていると思うが、私達ウマ娘は五感特に聴覚と嗅覚、それに視力に優れている。つまりキミは普段着としている年季の入ったジャージなんかはキミの匂いが染み付いているものなのさ。突然私はその匂いを四六時中嗅いでいるわけで、正直なところとしてはキミを襲わない様に全力で本能に抗っていることを少しは理解してくれても良いと思うのさ。何度キミのお古のジャージをちょろまかそうと思った事か、数えるのも億劫だよ。それとルドルフは知らないかもしれないが、タイシンがキミのお古のタオルを持ち帰っている事をしっているのかな?

 

 

ちょっ、タキオンそれ内緒じゃなかったの!

 

 

突然のカミングアウトに今まで傍観者だったタイシンは焦る

 

何故なら

 

 

ほう、それは興味深い話だと私は思うのだが、ナリタタイシン君はどう思うかな?

 

 

 

それはもう、激怒しているシンボリルドルフが隣にいるのだから

 

 

いや、ほら。ルドルフだってアイツの家に行けば貰えると思うから、ね?

 

 

・・・・・・むぅ

 

 

 

 

 

 

ちなみにこんなやりとりをしてる間に

 

 

 

 

今回も決着つかず、か。やれやれだね、これは

 

 

ま、らしいっちゃ、らしいだろ?

 

 

 

 

と何故かタキオンと彼が抱き合っていたりする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレセン学園は今日も平常運転でしたとさ

 

 

 

 

 

 

 

 




この世界はウマ娘がいます

つまり、据え膳食うのは?

そう言うことなのです



タキオンとのラブラブ短編は新年三が日くらいにあげるか迷い中です


ご意見いただけると、毎日のRTAを頑張れるので有り難いです


ではご一読ありがとうございました


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 そして明日に繋がる

今回の話については、もしかしたら削除するかもしれません

引退したとはいえ、実在のウマの名前ですので


とはいえ、クリスマスプレゼントにございます


ディープスカイは不満だった

 

 

彼女に父親はいない

 

 

いや、正確にはスカイが生まれて僅か2年足らずで早逝しているらしいのだが、そんな幼児どころか赤子のころをスカイが覚えている筈もなかった

 

 

 

 

 

確かに母や叔母達は優しいし、叔父さん達も良くしてくれている

 

それにルドルフ姉さんやタイシン姉さんも色々教えてくれるし、スズカさん達も本当によくしてくれている

 

学校では父親譲りの黒髪であまり浮いてないから、そこだけは感謝しても良いと思ってる

 

 

いや、別にスカーレット叔母さん、デジタル叔母さんにスズカさんやマックイーンさんにセイウンスカイさんをどうと言う訳じゃないよ?

 

それでも、ほらね?

学校行ってて、地毛が赤とかピンクとか、オレンジとか薄紫とかライトグリーン?なのかなぁ。とかだとすごく浮くと思うのよ

 

まぁ、それなら母さん譲りのライトブラウンでも良いとは思うけどね

 

 

 

 

近所の『トレセン学園栗東教育センター』に興味はあるんだけど、なんだかなぁ。って思ってるのが本当のところだ

 

 

 

 

母さんはほとんど語らないけど、母さんや父さんの友人からは2人ともそこの職員だったと聞いている

 

 

でもなぁ、『ウマ娘』だからって、普通の学校に通っても良い訳だしね。ま、なにかあっても言い訳(・・・)出来ないけどさ

 

 

 

父さんについては、正直なところあんまり良いイメージはない

 

 

何でもルドルフ姉さんとタイシン姉さんは父さんにぞっこんだったそうで、学校でも有名なカップルだった母さんと父さんの仲を知りながら、告白して断られたって聞いてる

 

 

正直な話、私はまだ恋愛なんてした事がないから、姉さん達の気持ちはさっぱり分からない

 

 

ただ、ルドルフ姉さんもタイシン姉さんもすごく美人なのに、勿体ないとは思ってる

 

 

今でも、姉さん達の実家や家に見合いの話が持ち込まれたり、結婚してほしいってプロポーズされる事もあるみたいだけどね

 

でもそれを全て断っていると聞いている

 

 

 

写真を見る限りでは、そんなに美形って訳でもないし、愛嬌のある顔でもないと思うんだけどなぁ、父さんって

 

 

 

 

あと、近所の菓子店のフラッシュさんからは

 

 

実は学生時代、スカイのお父さんを狙おうとした事があったのよ?

 

 

って聞かされた時には、ホントびっくりしたけどね

 

 

 

 

というか、ウチって結構田舎の方に住んでいるはずなのに、有名な人かよく来るんだよねぇ

 

 

スズカさんはいつもうちで母さんと少し話してから、父さんの墓に行っているそうだし、ブルボンさんとライスさんは教育センターでの勤務が終わったら、うちに来て少し談笑してから帰ってるしなぁ

 

 

 

 

タキオンの同期の中で此処栗東市に住んでいるのは、ルドルフとタイシンにスズカ、ブルボン、ライスにスカーレットは勿論のこと

 

 

母国ドイツで無事マイスターの称号を得たフラッシュは未来の後輩達の為にお菓子を振る舞おうと栗東市へと越してきて、夫婦で菓子店を経営している

 

タマモクロスは阪神競バ場に数年間勤めた後に、そこの職員だった人物と結婚

 

その後、栗東に越してきている

 

『鉄板焼きタマ』はトレセン学園の東側通用門の坂を降ってすぐのところにあり、教育センターに所属しているウマ娘やトレーナー候補生達の憩いの場として活躍している

 

 

スーパークリークは諸々の事情より栗東ではなく、隣接する市である草津市に家を購入。そこで夫婦水入らずの生活を送っている

なお、月一くらいでクリークの旦那が甘やかされる(クリークされる)事に耐えかねて、教育センターにて教鞭を振るう事がある

 

勿論、笑顔のクリークに連れ戻されるのだが

 

ウマ娘、候補生、職員から見事な敬礼で送り出されるのが通例となっていたりする

 

 

ちなみにクリークの旦那は『元』トレーナーであり、現在は月一の臨時講師の仕事しかしていない

 

 

いや、正確には『出来ない』のだが

 

 

 

貴方は頑張りましたから、うーんと甘えてくれて良いんですよ〜

 

 

と妻であるクリークに笑顔で言われているので、これくらいしか出来ないのだった

 

 

 

じゃあ、クリークと別れれば?

 

と言いたくなるだろうが、旦那も旦那で割とハイレベルのおぎゃリストであったので、さしたる問題となっていなかったりする

 

 

 

 

エアグルーヴは栗東の北にある守山市にトレセン学園卒業して5年後に引っ越す事とした

夫の仕事であるトレーナー業の妨げになりたくなかったからである

 

しかし、グルーヴもまたウマ娘であったと言えるのか、夫の担当ウマ娘と夫のスキンシップには散々ヤキモキさせられた為に、担当ウマ娘が引退するのに合わせて、夫を説得(内容はあえて触れないが、日本語って難しいと思われるものであった)して引っ越しを決めた

 

幸いというべきか、シンボリルドルフが引っ越した際に彼女の就いていた『生徒会特別顧問』をグルーヴは引き継ぐ事となっていたのと、夫の収入があった為に守山の田園地帯の一角にバラ園を作る事として、彼女は夫と共に生涯に渡ってバラ園の経営をする事となった

 

 

教育センターやタイシンの家には度々訪れる事となり、特にバレンタインやクリスマスシーズンにはグルーヴ印のバラを贈る事が教育センターで流行ることになる

 

 

 

 

オグリキャップは相変わらず笠松に住んでいるが、夫婦揃って半月に一度はタマの店に遊びに来るし、そのついでにタキオンの自宅にも顔を出している

 

 

 

他にもテイエムオペラオーやキングヘイローは余暇になると遊びに来るし、ゴールドシップは旦那を引き連れていつの間にか来ていたりする。ウオッカはトレセン学園での理事長補佐として活躍しており、旦那はトレーナー部門教官を務め上げている

 

2人もマックイーンがタキオンの家に行く時に同行させて貰っている

 

 

そのマックイーンはメジロ当主として活動しており、同じく桐生院当主となった葵とその秘書であるミークとは度々顔を合わせている

 

 

 

なお、マックイーンは沖野トレーナーの事をかなり気にしていたが、仕掛けるタイミングを図っている内に東條ハナ女史に差し切られてしまった為、未だ未婚であったりする

 

 

本人は

 

 

ま、まあ、ライアンやドーベルにパーマーやアルダンも居ますのでわたくしが結婚しなくとも問題ありませんわよ

 

 

と言っていたりする

 

 

 

ウイニングチケットは担当トレーナーと5年間にも及ぶ攻防の末にゴールインして、トレセン学園の教官を勤めていたりする

とはいえ、感覚派なので親友のハヤヒデと協力して効率の良いメニューを考案していたりする

 

ビワハヤヒデもトレセン学園教官として新入生達を1年間指導する立場となっている

元々論理的な思考が得意な彼女であった為に生徒から『分かりやすい授業』と好評である

 

 

 

サクラバクシンオーは後に後輩であるバンブーメモリーとサクラチヨノオーと配送サービスを開業

 

四苦八苦しながらも、充実した毎日を送っている

 

 

 

 

 

 

同じ時を過ごした者達はそれぞれを道を征く

 

 

 

 

出会い、別れ

そしてまた、巡り会う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ディープスカイと名前がついた理由は

 

 

 

 

 

子供の名前、どうしたものか

 

さて、ボクにネーミングセンスを期待されても困るからなぁ

 

 

と頭を悩ませていた2人だったが

 

 

 

ふむ、ディープスカイ。と言うのはどうだろうか?

 

 

へ?

理由は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スカイは空。つまりは果ての無い道とも言えるだろう?ウマ娘としての限界の先を目指した私とヒトでありながら、私と添い遂げてくれるキミの道もまた果てしないものだろう?

 

 

ほほぅ

そして、自由であってほしいとの願いでもある、か?

 

 

勿論

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、タキオンは全てを語らなかった

 

 

 

 

空とは虹のかかる場所。キミの目指すところ『虹の向こう』と言う意味で私はディープとつけたのさ

 

 

 

 

彼の遺体の前でタキオンはそう言った

 

 

 

 

 

 

 

空の向こうへ

 

ディープスカイ

 

 

アグネスタキオンと夫である一美(こずみ)(うつほ)氏との間に生まれた人物であり、幼年期は一般の学校で過ごした

 

中学に進学した頃、学校行事で『栗東教育センター』へ行くこととなり、そこで初めて様々なものを見た

 

 

効率的で効果的なトレーニング

充実した医療体制

生徒や候補生に対する手厚いメンタル面のケア

 

 

 

そして、尊敬している母親や叔母や周りの者達の影響を受けて教育センターの門を叩く事となる

 

 

ディープスカイ

13歳の時の事であった

 

 

 

既に法改正や制度も改められており、『トレセン学園』や『教育センター』も教育機関としての認可を受けることになっていた

 

 

それに伴い、学園とセンターに常駐する一般科目を教える『教官』は漏れなく『教員試験』を受けることが義務付けられる事となり、義務教育機関としての役割も強くなる事となった。トレセン学園理事長ウオッカと教育センター所長ダイワスカーレットは理事会や関係部署と協議して『ウマ娘』のみならず、広く一般にも門戸を開く事を決定

 

 

様々な問題が起きているが、それでも生徒会などと連携して『ヒトとウマ娘の共存社会』に向けて、積極的な活動を行なっていた

 

 

 

スカーレットが現役の頃からに総務大臣の地位にあったクガヤシ氏を相談役として、教育センターに招き入れ、ウオッカも当時の総理を政界引退後にトレセン学園理事会へと勧誘している

 

彼女達としては、これにより少なくとも政治家達の好き勝手にさせない為の措置であり、特段なんらかの忖度が欲しかったわけではなかった

 

 

彼女達2人が望んだのは『ヒトとウマ娘が当たり前の様に暮らせる世界』だったのだから

 

 

 

 

 

 

そして、スカイは母親と亡き父親の面影を見る事になる

 

 

タキオン印の医療器具

見た事のあるトレーニングや教育内容

 

そっか

父さんは此処に居たんだ

 

 

スカイは初めて父親の影を見た気がした

 

 

ディープスカイには宝物がある

 

それは一冊の古びたノート

 

 

 

 

そこには様々な事が書いてあった

 

母親(アグネスタキオン)の事。スカーレット叔母さんの事。デジタル叔母さんの事。ルドルフ姉さんの事。タイシン姉さんの事

 

他にもスズカさんやブルボンさんにライスさんを始めとした様々なウマ娘の事が事細かに書いてあった

 

 

 

 

そして、スカイは教育センター初日の夜に初めて気がついた

 

 

 

 

 

最後のページには不自然は余白があった

しかし、何も書いていないと思っていたのだが

 

 

寮監のフジキセキさんから、とある薬品を貰った

 

 

曰く

 

 

キミの父親からの最後の贈り物

確かに渡したよ

 

 

との事だった

 

 

 

 

そういえば、母さんの研究仲間であったマンハッタンカフェさんが言っていたのを思い出した

 

 

あの人は遊び心があった人で、薬品で文字が浮かび上がるなんて事を考えていました

 

 

 

浸しては紙がダメになるので、スポイドで一滴ずつ垂らすことにした

 

 

そこには

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キミが生きる道をボクもタキオンも強制しない。だから、好きに生きなさい。自由に、キミの名前の様に

 

 

 

ずるいよ、父さん

 

 

 

 

 

 

 

 

スカイは涙で滲む中

 

 

 

キミとタキオンを遺して逝く父さんを許せなんて言わない。憎んでくれても良い。ただ、悔いの無い人生を送りなさい

 

 

 

 

その文字が読めた気がした

 

 

 




というわけで、彼の本名公開です

名前を出さないって難しいんだと痛感しました


では皆様、良いクリスマスと年末を


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 冬のバカップル達

これはトレセン学園2年目のとある日の記憶


よ!みんな元気してっかよ?ゴルシさんが今回の語り部になるから、よろしくな!

 

 

そう言って彼女はため息をつく

 

 

本来だったら、あたしのトレーナーも一緒にするはずだったんだけど、逃げたんだよなぁ

 

 

というか、最近『トレーナーの人間離れ』が加速してる気がするだよ。あたしやウオッカから逃げ切るトレーナーとか、あたしやタイシン先輩の蹴りうけても平然としてるトレーナーとか、スズカさんのやや本気の蹴り受けても病院送りにならないOトレーナーとかな

 

 

最近トレセン学園のウマ娘達を密かに悩ませている問題。それが『トレーナーの人間離れ』である

 

 

 

や、ウマ娘と関わろうと言うのに、何であなた方は『普通』なんですか?

 

 

トレーナー部門教官となっていた空の第一声であった

 

 

彼からすれば、幼い頃から嫌と言うほど『ウマ娘』という生き物の理不尽なまでの身体能力を見てきた

 

だからこそ、来年度からトレーナーとして働く彼等、彼女達の身体能力の低さに驚く他なかった

 

 

感情的になりやすいのが、『ウマ娘』の特徴とも言えるほどである

 

 

無論の事、学園の初年度のカリキュラムにその辺りをある程度自主コントロールできる様なプログラムも組まれているが、だからとてウマ娘達だけに注意させるのは酷であろうと彼は思っている

 

彼女達だって『ヒト』なのだから

 

笑いもするし、怒りもするし、泣きもする

 

 

 

そして、トレーナーとはそんな少女達と共にレースに挑んでいくのだ

 

言うまでもなく、彼女達ウマ娘にとっては『一生に一度(オンリーワン)』なのだ

トレーナーからすれば、他のウマ娘がいたとしても彼女達の一度きりのチャレンジ

 

トレーナーはそれを彼女達以上に真剣に受け止めなければならない

 

 

 

であれば、上辺だけのやり取りなどで済ませられるはずもない訳で、本音でぶつかるのが当たり前となろう。しかし、彼女達は多感な年頃である以上、『思わず』手が出る事もあるだろう

 

 

それを普通に受け止めるのは、ほぼ不可能

 

であればこそ、己を鍛える必要があると空は考える

 

 

これはトレーナーを傷つけた場合、当事者であるウマ娘にもかなりの精神的ダメージが予想される事と共に、負傷した場合の処理の複雑さにも理由がある

 

 

学内の問題である為に、学園理事会などが情報の流出を止める事自体は然程難しくはない

 

だが、それはあくまでも軽傷であった時に限る

重傷の場合は当然だが、家族への連絡が必要となる

 

その場合、果たして家族たちがウマ娘にどう言った反応を見せるのか?想像するまでもないだろう

 

 

加えて、制度的な問題もある

 

敷地内あるのはあくまでも『応急処置』の出来る施設に過ぎず、学園と専属契約している病院に搬送される事になっているが、当然治療費などが発生する

 

だか、トレーナーやウマ娘関係者というのは制度上かなり曖昧な立場であり、公的には危険作業とみなされていないが、保険業界からは『危険作業』として認識されており、一般的な傷病保険には加入出来ない事となっている

 

 

保険業界も昔はウマ娘関係者でも加入させていたのだが、とある関係者がウマ娘との関係を拗らせた時に、月にどころか毎週一回は病院にかかる様な事態を引き起こした事があった

 

その人物が加入していた保険会社はお世辞にも大きな所ではなかった事もあり、その会社はかなりの人員と資金を消費してしまう

それにより、その会社は経営が悪化し始めた。様に周囲から見えてしまった

 

 

加えて間の悪い事に、同時期に医師とウマ娘関係者が共謀して事件を起こしてしまい、保険業界はウマ娘関係者を『例外』扱いする事を暗黙の了解としたのである

 

 

それが今に至る保険業界からの『危険作業』扱いの理由であった

 

 

 

当然だが、この辺りの事情も理解しなければトレーナー部門教官など勤められる筈もない

 

実際は理事会から色々と愚痴を聞いていた中で知った訳なのだが

 

 

 

「なら、関係会社で保険会社創れば良くね?」

と考える方もおられるかもしれないが、それは非常によろしくない

 

言ってしまえば『ウマ娘関係者』特化というものは現状においては懐疑的な視線を向けられる要素でしかないし、他ならぬマスコミがそう誘導するだろう

 

 

 

 

という訳で、教官としての初仕事は

 

 

 

 

トレセン学園元武道場

現、トレーニングルーム

 

 

という訳で、皆さんには身体を鍛えてもらいます

 

 

空の一言にトレーナー候補生はざわめいた

 

 

 

それ、意味あるのか?

 

え、そういう事するのかよ?

 

というか、何で教官が子供なんだよ

 

 

パキッ!

 

 

空の手の中にあったクルミが『砕けた』

 

 

あなた方は来年度トレーナーになる為、此処に来たんですよね?

 

静まり返る候補生達を前に

 

 

やりましょうね?

 

 

 

満面の笑みで空はそう告げた

 

 

 

 

 

 

 

後に東條トレーナーは語る

 

 

あの時の教官は子供である事を一瞬忘れましたね

ええ、怖かったです。本当に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という訳で『トレーナーの人間離れ』が進行していくこととなったのである

 

 

 

 

当然だが、これは秋川やよい理事長を始めとした理事会やトレセン学園教務部達との協議の結果こうなった

 

 

教務部というのは、トレセン学園にて主に初年度行なわれる一般教養や普通科目の教員が所属している部署。どちらも初年度以降も行なわれる為に生徒達に近い存在とも言えなくも無いだろう

 

 

 

学園の形をとっている以上、通常の高等教育についても教えるべきだという意見はトレセン学園関係者の間で強い

その結果、実現したのが教務部であった訳だ

幸いにして、塾の講師などに資格が必要ない事を利用する事でどうにか教育の形を取る事は出来た。勿論、問題は山積みだが

 

 

酷な話ではあるが、トレセン学園に所属している全てのウマ娘がレースで活躍できる訳ではないのだから、その後のケアも考えねばならない

 

 

折角トレセン学園に来たのだから、何か学んでいって貰いたい

 

 

それが教務部を始めとした学園関係者の思いだった

 

 

 

 

 

 

 

まあ、そこら辺の事情を知っているのは初代生徒会メンバーぐらいなので、彼女の嘆きも分からなくはない

 

 

 

ま、そんな事よりも今回あたしが話するのは去年の冬の話だな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四季の終わりにして、次の芽吹きを待つ季節

 

 

 

そんな冬にトレセン学園は

 

 

 

 

うむ、そっちは任せてもいいか?ブライアン

 

任せておけ

全く、こんな事なら姉貴を引っ張ってくればよかった

 

ブライアン。そう言って暇を作ろうとするな

どれだけ仕事があると思っているんだ?

 

 

トレセン学園開校一年目である為に、全てが手探りで行われているのは承知の通り

 

その先頭に立っている生徒会メンバーはイベントの度に忙しなく動き回る事となっていた

 

 

 

人手が足らん!

会長、奴の手を借りましょう

不本意ではありますが

 

奴?

ああ、名誉会長か。確かにな

奴なら、理事会ともそれなりにコネがあると聞くし、何気に影響力もあるからな。私としては奨めるぞ?

 

 

グルーヴの提案にブライアンも乗り気だった

 

 

しかしだな。彼の立場は微妙だぞ?学園関係者ではあるが、生徒ではないだろう?

 

ルドルフの言う通りだった

彼はあくまでも来年度から始動する『トレーナー部門教官』というのが学園での立場であり、『ウマ娘相談役』としての立場もあるが、どちらかと言えば教職員の立場にある

生徒主体のイベントへの協力を要請するのは、生徒会長としては憚られた

 

更に今年の秋口からの一連の騒動で、彼が少なからず疲弊しているのも知っているルドルフ個人としても彼には休んで欲しいというのが本音である

 

 

お困りの様だねぇ

 

そこに現れたのはアグネスタキオン

彼女は生徒会『庶務』の役職に就いている

 

とはいえ、これは彼女が生徒会室を度々訪れる為に急遽整えた方便であり、形ばかりの役職であったりする

 

 

本来なら、認められる筈もないのだが

 

 

 

 

タキオンか

まあ、奴を抑えられるなら、構わんか?

 

別に手数が多いのは歓迎すべきだろう?

 

しかし、だな

 

 

グルーヴは彼の対策として、ブライアンは偶にとはいえ戦力として役立つならば問題なしとした

 

が、当然ルドルフは難色を示したのだが

 

 

おやおや?折角彼と会える機会が増えるかもしれないというのに構わないのかい?

分かった。形式上という形でならば認めよう。勿論、多少貢献してもらうが

 

 

タキオンの言葉につい流されてしまうルドルフであった

 

 

恋する乙女は無敵だって、それ昔から言われてたし、多少はね?

 

 

 

 

 

この申し出に対して、秋川やよい理事長は温かい目で報告に来たルドルフを見ていたとされる

 

 

 

 

 

という訳でタキオンが此処にいるのは問題なかったのだが

 

 

 

忙しいのは見たらわかるだろう

暇なら手伝え。それか姉貴を呼んできてくれ

 

タキオンか

お前からも会長を説得してくれ。流石に手が回らん

 

ブライアン。それは無理だろうね。先程マックイーンが彼女とチケットを引っ張っていったのを見かけている

 

ちっ、流石マックイーンだな

先手を取られたか

 

グルーヴ。つまり彼を呼ぶ事をルドルフが渋っているという事なのかい?

 

そうだ

気持ちは分かるのだがな

 

 

グルーヴとしても、なんだかんだで付き合いのある彼をわざわざ引っ張り出したくはない

ないのだが、予算編成を終えたというのに、関係各所から追加の予算請求が回ってきているのだ

だが、秋川理事長と駿川秘書は関係省庁との話し合いの為に不在

こうなると、生徒会メンバーでは対応しきれないのである

 

彼女達はあくまでも生徒であり、彼は教職員。しかもそれなりのポストである事の違いである

 

生徒会の場合だと、理事会に対しての要求は理事長を通してしか行えず、困っているのだ

 

 

 

寧ろ、グルーヴとしては彼を『生徒会顧問』として迎えられないのかを真剣に考えていたりする

 

 

なるほどねぇ。ルドルフ、仕方ないじゃないか。彼を呼ぼう、そうしよう

 

気のせいか?明らかに私情が混じっている気がするのだが

 

食い気味にルドルフを説得しようとするタキオンに彼女も思わずツッコミを入れた

 

だが

 

当たり前だろう。彼は私の彼氏なんだよ?なのに最近はトレーナー候補生との仕事や理事会との話し合いに、タイシンやスズカ達のトレーニングばかりじゃないか!もう1週間も彼の手料理を食べていないし、声だって数える程しか聞いていない!しかもだよ?それも全て電話越しという味気のないものばかりじゃないか!何度も言うが、私は彼の彼女なんだよ?その彼女を放っておいて、他の女性とイチャイチャするとか流石の私も怒らざるを得ないと思わないかい?ルドルフ

 

 

と、驚きのワンブレスであった

 

 

 

おい、ここでタキオンするな

そういうのはルドルフと2人の時にしろ

 

 

とブライアンはタキオンの言葉を遮る

 

 

 

 

 

トレセン学園豆知識

 

タキオンする

彼がいない場合、惚気る。彼について愚痴る行為

なお、副次的効果として、周囲の『彼氏いないウマ娘とヒト娘』に多大な精神ダメージを与える

 

 

 

 

むぅ。そうは言うがね

 

 

タキオンは不貞腐れる

 

 

タキオン

アンタの言い分も分からなくはないが、私もグルーヴの奴も相手が居ないんだ

少しは自重してくれ

 

 

ふぅん?流石にこれ以上は私も許容出来ないが?

 

する必要もないし、される必要もないから安心しろ

 

 

タキオンの言葉を一刀両断するブライアン

 

 

奴に魅力が無いとは言わんが、私の好みではない

そういう事だ

 

 

タキオンとルドルフの剣呑な視線を意にも介さないブライアンであった

 

 

 

 

とにかく、彼を呼んでくればいい訳だね!早速彼を呼んで

 

 

よお。呼んだかぁ?

 

 

耳と尻尾をご機嫌そうに動かして、彼を呼びに行こうとしたタキオンだったが、当の本人の登場であった

 

 

 

 

タキオンはどうして?と困惑した

彼を呼びに行く→彼と話できる→つまり、彼と久しぶりにイチャイチャ出来る

 

それがタキオンの計画だった

 

ところが、彼が此処に来てしまってはその予定が全て崩れてしまうでは無いか

 

 

 

ど、どうしてキミが此処にいるんだい?

 

タキオンは思わずorzと膝をつきながら、彼に問いかける

 

 

ん、ああ。呼ばれたからな

 

彼はタキオンから視線を外しながら、答える

 

 

 

 

何故かと言うと、タキオンは制服の上に彼のお手製白衣を着ている

つまり、タキオンはスカートな訳であり

 

 

彼はタキオンの後ろのドアから入室してきた

当然である。生徒会室に出入り口は一つしかないのだから

 

タキオンは先程まで席について事務処理をしていたルドルフと話していた。つまりは部屋の入り口側から室内に進んだということ

そして、タキオンは正面方向、ルドルフ側に膝をついた

 

 

 

 

つまり、そう言う訳である

 

 

 

 

 

 

見慣れた光景と言えなくも無いが、それでも1週間もの間、タキオンと触れ合えなかった彼にとって、その景色は猛毒であったのだから直視出来ないのは当たり前であろう

 

 

ただ、彼氏として一言だけ

 

 

黒は攻めすぎじゃないでしょうかねぇ

 

 

との事らしい

 

 

 

 

 

 

 

 

何のことかは知らないがヨシッ!(突然の学園猫)

 

 

 

ふむ、とりあえず来てくれたのならば色々と頼みたいが構わないかな?

 

仕方ないなぁ

 

目の前の惨状は見ない事にして、ルドルフは彼に依頼した

彼としてもルドルフの力になりたいのは事実なので、問題ない

 

 

とりあえず追加予算を理事会に通せばいいのな?

他にやる事は?

 

 

彼女達生徒会メンバーは優秀である

となれば、彼女達が出来ない事で自分に出来る事

かつ『常ならば出来ている事』となれば、秋川理事長達が外出している為に出来ないであろう理事会とのやり取りだろうと見当をつけた

その上で『クリスマス』のイベントが既に来週に迫っている現状で理事会を通さなければならない案件はほぼ追加予算申請だろうとも考えた上で発言した訳だ

 

 

流石だな

やはりなんだかんだで優秀なのだな

 

この理解力にはグルーヴも感心する他なかった

 

 

その通りだ。苦労をかけるとは思うが、頼めるかな?

 

 

大丈夫、問題ない

 

 

空からすれば、理事会はただのお節介焼きの集団でしかなく親しみやすい年上の集団でしかなかった

 

 

 

勿論、彼等は様々な利権の絡むトレセン学園をやよいの協力要請を受けてから、僅か10年もかからずに現在の形にした者達である

はっきりいって、規格外と言っても良いほどの経済力や組織力、調整能力を有している

 

だが、彼等からすれば空は必死になってタキオンを守ろうとしているその姿を見て、彼等なりに支援しようとしているだけに過ぎない

 

功利的といえる彼等にしては珍しい行動でもあったが、この変化にはやよいの説得以外にも理由があった

 

 

 

あまり知られていないが、学園理事会も学園内に常駐しており、彼等は生徒達を直に見ている

勿論、窓から見る程度だが

 

であればこそ、ウマ娘達の楽しそうな姿を見ている訳であった

 

彼等とて暇では決してないが、ほとんどの職務から退き名誉職や相談役などをしている彼等はオンライン会議で充分その職務を果たせていた

 

 

意外かも知れないが、学園通勤者の中で一番早く学園に来るのは彼等理事会であり、朝の6時には既に学園に着いている

 

 

 

 

グルーヴの称賛に

 

 

タキオンについて行こうとしてんだから、このくらい出来ないとな

 

 

と満更ではなさそうだった空だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

って事があった訳だよ

 

 

ゴールドシップはそう言って、カメラ(・・・)を見ると

 

 

 

 

 

経緯は分かった

で、続きはよ

 

ゴルシネキ前置き長い、訴訟

 

早くタキオンするを見せるんだってばよ

 

いい加減寒いので、本題に入ってくれませんか?

 

全裸してる自分が悪いんだよなぁ

 

 

 

などのコメントが流れていた

 

 

 

 

 

実は今回試験的にメジロ、秋川、桐生院が合同で『放送局を介さない試験的情報の発信』を行なう事としていた

 

世間ではSNSなどの情報発信方法は多くなったにも関わらず、今なお放送局を持つマスメディアの影響力は脅威であった

 

 

正確な、中立的な情報を発信するならまだしも、彼等独自の『方向性』を持たせて情報を発信するのが彼等の常套手段である

 

 

今年も終わりになろうという最近、ようやく国会でも重い腰をあげる事にしており、既に報道各社は国会に対して

 

 

放送倫理、番組向上機構(BPO)の組織改革に各社連携して取り組んでいくので、もうしばらくの猶予を

 

 

と懇願した為に国会で審議はするが、準備委員会の設置は見送られる事となった

 

 

これは秋の苛烈ともいえる措置に続いて、この様な事をした場合『言論の自由』と『民主主義』の否定にもつながりかねないとの危惧からの判断だった

 

決して、報道各社に対して配慮した訳ではなかった

 

 

 

 

だが、この決定に対してあまり良い顔が出来ないのがトレセン学園関係者である

 

 

何せ既に彼等は何度もこちらが用意したルールを破っており、その度に問題となっている

 

 

別に学園関係者が被害に遭うなら、まだ許せたが『学園からの要請』を受けて協力してもらっていた彼に対してのそれは常軌を逸していた

 

 

 

良く芸能人や政治家、スポーツ選手などと同じく有名になったんだから仕方ない

 

との世間の意見を聞いている

何度も学園に抗議文や電話を貰ってもいる

 

 

 

しかし、芸能人やスポーツ選手などは個人で活動しているといっても、必ず事務所なりスポンサーなどがついてくるものだ

 

スポーツ選手の場合、活躍して直ぐにはスポンサーはつかないだろうが、それでも彼等を守る環境はある

 

政治家などは言うに及ばずだろう

 

 

 

それに対して、彼はあくまでも元議員の後ろ盾があったとはいえ、基本的に自身で解決する必要があった

 

しかもご丁寧にその後ろ盾をしっかり剥がした上で彼を吊るし上げようとしたのだ

その為だけに『自称有識者』を騙る連中を用意したり、『有名人』を起用したコメンテーターなども揃えた

 

 

だが、本当の関係者からすれば、彼等の指摘の大部分は的外れであり、学園側が情報を遮断しているにしても酷いものだった

 

 

 

 

それに対しての彼等報道各社の謝罪は形ばかりのものであり、まだコメンテーター達からの謝罪の方がマトモであった

 

 

 

彼等報道各社は燃料を投下して、種火を燃え上がらせた後はひたすら風を送り続けただけで、その燃えたものに対する補償は『報道の自由』の一言で片付けてしまう

 

 

 

 

であればこそ、学園は専用チャンネルを用意した

しかしながら、知名度などの問題もあり、世間に対する対策としては弱すぎた

 

 

であればこそレースなどて認知されて始めてきた事を受けて、有名動画配信サイトでチャンネルを開設する事になったのだが、それをゴールドシップが嗅ぎつけて

 

 

面白そうじゃねぇか。あたしに任せろ!

 

 

との説得にメジロ当主が折れ、秋川と桐生院にも根回しした結果実現したのである

 

 

 

 

 

 

 

お?タキオン聴くのが希望か?

 

 

と彼女がコメントを拾うと

 

 

 

や っ た ぜ

 

おいバカやめやめろ

 

自分から地獄の蓋を開けに行くのか(震え声)

 

トレセン学園最強火力来たな、コレ

 

でも、気になるでしょ?

 

気になる

 

そりゃあ、ねぇ?

 

気にならないはずがないんだよなぁ

 

俺もそーなの

 

怖いもの見たさかな?

 

 

 

うっし、ならタキオンする。を語ってやるから覚悟しながら聞いていけよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼を加えた生徒会は動きを更に活性化させる事となった

 

生徒会メンバーでは手の届かないところは教職員である彼がカバーし、生徒会以外との連絡はタキオンが行なう事で更なる作業の効率化を実現できたからである

 

 

更に

 

 

ふん。やはりお前のコレは美味いな

 

『料理研究会』に属しているのは伊達ではない。ということか

 

うんうん。久しぶりのキミお手製の菓子は美味しいねぇ

 

うん。美味しいのだが、その、なんだ。女子力というもので圧倒的に負けているような気がしてならないのだが

 

 

余裕が出来た彼は調理室にて手製のクッキーを焼き上げて、カフェおすすめのコーヒーと共に彼女達に提供した

勿論、紅茶も用意している

 

 

 

これには些かストレスが溜まり気味だった生徒会メンバーもニッコリだった

 

まあ、ルドルフはその圧倒的戦力(女子力)の差に慄然としていたのだが

 

 

 

 

あともう一人

 

 

で、あとどうすんの?

 

 

ナリタタイシンが生徒会室で手伝っていた

 

 

 

彼を急遽ルドルフが呼んだ為にトレーニング(2人きりの時間)を奪われる事になったタイシン

ならば、彼の手伝いをしようと生徒会室で合流したのである

 

 

 

 

いや、なに。最近タイシンが彼に対して非常にアピールしているのを見るとだな

何というか、すごく負けた気分になるんだ

 

あの人のそばに居たいから、健気に頑張るタイシン

うわぁぁん、タイシン可愛いよ”ぉ”ぉ”っ”!

 

 

 

とは彼女の親友達の言葉である

 

 

 

 

実はタキオン、ルドルフにタイシン

現在、3人の中で今一番彼のそばにいる時間の長いのはタイシンだったりする 

 

既に再来月に迫っているデビュー戦に向けてタイシンはスズカ達と調整しなければならないので、当然トレーナー(仮)である彼の元でのトレーニングの機会が増えている

 

更にライブの練習も行なわなければならない以上、俯瞰的に見る人物は必須であり、それが彼になっているのは当然ともいえよう

 

 

正直なところとして、通常メニューは彼抜きでも問題ないが、ライブの練習だけは彼を観客として練習せねばならない

 

 

故にタキオンの不満は高まり、ルドルフのもやもやは募る一方でタイシンはご機嫌なのだ

 

 

 

とはいえ、別にタキオンから彼を奪い取るつもりはタイシンに毛頭ない。ないのだが、やはり彼女も女である

 

どうしても『独占欲』というものは出てきてしまう

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし

 

 

 

だから、そういうのはやめろと

 

無駄だ。グルーヴ、諦めろ

 

(うらやましくなんてない!うらやましくないもん!)

 

(これが積み重ねてきた時間の重みだっていうの!)

 

 

エアグルーヴが止めようとするも、ブライアンが悟った顔で止める

ルドルフは内心でルナちゃん化して、タイシンは戦慄していた

 

 

そこには

 

 

いやぁ、昨年ぶりだねぇ。この格好は

 

や、おま、まぁええか。知らんぞ俺は

 

 

明らかに大きすぎる服を着たまま、事務処理をするタキオンの姿があった

 

 

 

 

コードダブル

 

所謂『二人羽織』であり、タキオン達の地元ではバカップルの証となっているカップル最終形態の一つである

 

彼の膝の上に座り、彼に背を預け、彼の温もりの中で平然と作業するタキオン

 

その姿はまるで

 

 

玉座に座る女王の様であった

 

とルドルフ達は後に語った

 

 

 

この姿を前にしては、さしもの未来の『皇帝』『女帝』『怪物』『羅刹』も膝を折る事になった

 

 

 

因みに『羅刹』とは、ジャパンカップの第一回にて圧倒的という表現すら生温い絶望を海外勢に叩きつけたタイシンに対する海外からの異名であったりする

 

 

本人は

 

あっそ。それで?

 

と呼称などに一切興味を示さなかったそうだが

 

 

タイシンにとっては、彼をよく知りもしないで否定した海外勢などにどう思われようが、言われようがどうでも良かった

 

それにあちら(海外)からこちら(日本のウマ娘)に勝負を挑んでおきながら、あの体たらくで何を言おうとも『負け犬の遠吠え』にしかならないだろう

せめて、2着を海外勢がとっていればまだ変わっただろうがそれすらマックイーンであり、日本のウマ娘2人がワンツーフィニッシュというあちらからすれば面目丸潰れであり、立つ瀬などあるまい

 

タイシンからすれば

 

他人(ひと)の事言ってないで、自分達の後の事考えたら?

 

と言いたくもなろう

 

 

 

 

 

 

ともあれ、バカップル最強兵装の一角を見せつけられた生徒会メンバーとタイシンは驚いた

 

 

 

そんな、バ鹿な

(あの距離に幼馴染で彼氏とはいえ、異性がいるのにタキオンは動揺しないとでもいうのか?)

 

やれやれだな

(あの距離だぞ?体温は愚か、吐息すらかかるところにいるにも関わらず、平静を維持している?そんな事が出来るのか⁈)

 

 

グルーヴもブライアンも内心驚愕していた

それはそうだろう

 

ウマ娘とは感覚に優れている

特に視覚、聴覚、嗅覚のそれはヒトを遥かに凌駕している

 

 

にも関わらず、アグネスタキオンは彼と密着状態、しかも同じ服を着ているという事は彼の体熱や匂いなども文字通り『すぐ側』で感じているはずだ

 

 

それでもなお、彼女は平然としているのだから、グルーヴとブライアンの受けた衝撃は驚愕などというレベルではなかった

 

 

 

 

 

一方

 

 

(ううううっ、うらやましくなんてないもん。ルナうらやましくなんてっ!・・・・ううっ、うらやましいよぉ〜)

 

 

最早生徒会長としての凛々しい姿など何処へ行ったのか、涙目でタキオンに抗議するルナちゃんと

 

 

(え?アレが例のやつなの?いやいやいや、確かに羨ましいけどっ!あそこにアタシがいて耐えられる?無理。嬉しいだろうけど、アイツを襲わない自信ない)

 

思考が乱れに乱れるタイシンであった

 

 

 

 

 

 

 

実際、これを初めてした時にはタキオンも相当苦労したものだ

 

 

 

彼を襲わない様にするのには

 

 

何せ、彼は当時両親との関わりのなくなったタキオンを心配して、このような事をしてのは分かっていた

 

 

だが、その頃には彼の事を意識し始めていたタキオンにとって、それ(二人羽織)は生殺しに近い拷問だった

 

 

 

子供特有の高い体温が2人分衣装の中に籠ると当然ながら、発汗を促してくる。当然彼の匂いもタキオンからすれば凄いものであった

そして、当時の彼はタキオンを純粋に勇気づけようとしてしてくれているのもタキオンはわかっていた

 

それでも、意識している異性とほぼ密着している行為というのは、いくら早熟なタキオンであったとしてもスルー出来る状態ではなかった

 

 

 

彼が自分の事を心配してしてくれている

彼は下心なく、この様な事をしてくれている

 

 

そんな事は当時のタキオンも承知していた

 

問題は、ウマ娘という存在であるタキオンとて理性的ではあるが、割と本能の厄介さというものも認識していた

そして、それが彼に対して発揮される事になれば、ロクな事にならない事も

 

 

 

であるからして

 

 

ううっ、温かいし、気持ちいい。だけど良い匂いもするし、彼の鼓動だって聞こえてくる。が、我慢するんだ、アグネスタキオン!彼の信頼を踏み躙ってしまえば、二度と関係は元に戻らないんだぞ!

 

彼女は理性を総動員して、なんとかこの窮状を乗り切ろうとした

 

 

 

だか

 

待ちたまえ。彼は私達ウマ娘の事を知らない訳ではないのだろう?となれば、これはもう彼からのプロポーズと受け取っても良いのではないかな?

 

タキオンの中の本能(悪魔)が囁く

 

 

そ、そういうものなのだろうか?

 

タキオンとて、まだこの頃は『若い』というよりも『幼い』と形容する方が似合う時期

 

大人ですら道を誤る選択をする事が多い、この誘惑に抗う事は

 

 

待つんだ、本体。そうして一時(いっとき)の感情に流されてしまえば、その後に残るのは何か良く考えたまえ

 

負けじと理性(天使)も出てきて反論する

 

 

確かにヒトは過ちを繰り返す

しかし、一時の感情に流されて(温もり)を手放すことが果たして正しい選択と言えようか?

 

 

否!

間違いなく否であろう

 

 

アグネスタキオンは彼という存在に救われ続けてきた

にも関わらず、その彼の今までの行為(好意)を受けておきながら、その様な真似をした場合、彼との関係はどうなるだろうか?

 

 

 

しかしだね。彼は私に惚れているのだから、繋ぎ止めるのは容易だと思うのだが

 

本能(悪魔)は尚も抗弁する

 

 

その意見には賛同しかねるよ。確かに彼は私に好意を持ってくれてはいるのだろう。しかし、よく考えてみたまえ。私は彼と共に調べたはずだろう?『幼馴染と関係を持とうとしたウマ娘(先達)の失敗談』を

 

 

理性(天使)はなおも静止する

 

 

確かに彼がタキオンに対して好意を持っている事は間違いないだろう

 

だが、しかし

それに甘えて彼に対して不誠実な行動を取った場合、果たして彼が受け入れてくれたとしてもタキオンの良心が保つだろうか?

 

 

恐らく保つまい

 

 

 

 

そんな未来などアグネスタキオンは到底耐えられるはずもない

 

 

 

また、あの誰もいない自宅に戻るのか?

母親からの手料理一つなく、父親からはただ手紙とお金だけ

 

 

 

自由かも知れない

しかし、そこに他人(家族)の温もりはない

 

 

 

 

だから、タキオンは踏みとどまったのだ

彼を失いたくなかったから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな事があったとは知るよしもないルドルフとタイシンの驚愕をタキオンは

 

 

(私はね、ルドルフやタイシン。君たちが羨ましいよ。確かに唯一無二の理解者で常にそばに居てくれる空がいる。だが、私は親の温もりを忘れて育った。怖いのさ、そんな私が彼と共に生きていけるのかが)

 

 

 

愛を知り強くなる者がいれば、逆に弱くなる者もいる

 

彼は前者で自分は後者だと、この時のタキオンは思っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁ、それはそうとして、だ。この特等席は例え君たち相手でも早々譲れはしないのだがね

 

 

タキオンはそう呟いた

 

 

 

 

 

 

なお

 

 

(あがががが。タキオンそんなに身体を預けるなって。嗚呼畜生いい匂いがするし、相変わらず柔らかいし、ああもぅタキオン最高すぎるんだけど、もう少し俺が異性である事を意識してくれませんかねぇ。り、理性が、理性が保たん。でもタキオン悲しませたくないし、嫌われたくないし、グルーヴ達の目もあるし。過去の俺ぇ!なんでこんな事をしたんだ。いや嘘です、ごめんなさい。最高です、はい)

 

 

と絶賛混乱中の空がいたが、まぁ余談だろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、後日

 

 

へ、へぇ。これが、そうなんだ。うん、悪くない、いやいいじゃん、これ

 

 

とは『二人羽織』をしてもらったナリタタイシンの感想である

 

 

 

っっっっ!!

 

ルドルフは声にならない悲鳴を上げそうになる自分を必死に堪えていた

 

 

 

次は自分の番なのだから

 

 

 

 

 

 

 

そして

 

 

(これは、ああ。駄目だ、彼に溺れてしまう。彼の温もりと匂いを膝枕以上に感じてしまうな。なるほど、タキオンがこれを知れば戻れなくなるが、大丈夫かい?と言っていたのも頷けるな。これは確かに下手なものよりも危険極まる。でも、手放しなくないな)

 

 

とルドルフは葛藤する事になる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、後にトレセン学園公認カップルとなったオグリキャップとそのトレーナーである矢上純氏も自分達の先達に倣い、『二人羽織』をしようとしたのだが、そのあまりの危険さに断念したというエピソードもあったりする

 

 

その為、二人羽織はバカップルの最高レベルの証としてトレセン学園の生徒達に長く伝えられていく事になるのだが、それはまた別の話であろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ってな事があったらしいんだよ。どうだお前ら、満足したか?

 

 

語り終えたゴルシはカメラを見ると

 

 

 

 

けふっ(吐糖)

 

無理ぃ、でもしゅきぃ

 

だから、あれほどやめろと言ったのに

 

恋人いるワイ氏

今彼女にその話ししたら、普通にドン引きされた件について

 

そりゃ、そうだろ

 

こ、これが人生をタキオン氏に捧げた人物のスペックだと言うのか!

 

ええい、トレセン学園のウマ娘の精神力は化け物か!

 

まだだ!まだ終わらんよ!

終わりませんよね?ゴールドシップさん

 

二人羽織とか都市伝説だと思ったら、そんな事はなかった件について

 

ゴールドシップ君。後で話があるから、時間を空けておきたまえよ?

 

いやぁ、色々お腹いっぱいですわぁ

 

てか、ホントタキオン彼氏との関係どうなってんのさ?

 

これが『皇帝』と『鬼脚』なんですか、本当に?

 

 

 

等のコメントが流れていた

 

 

 

 

 

 

 

ん”っっ?!

 

 

笑いながら、コメントを見ていた彼女はその中に見逃せない、否見逃してはならない(・・・・・・・・・)コメントを見つけた為に変な声を出した

 

 

 

彼女は手元のコメントだけを映し出す機器を操作して、少し前のコメントを見ると

 

 

 

 

ゴールドシップさん、ご愁傷様ですわ

 

や、おいたが過ぎたようだな

なぁ?ゴールドシップぅ?

 

え、なんか怖い人がいるんだが

 

もしかして、リアル関係者?

 

 

 

 

 

と既に見逃してはならないコメントがあった事にようやく気がついた彼女は背中から冷や汗が吹き出した事を自覚した

 

 

 

 

そして

 

 

 

チャンチャンチャン

チャチャチャ、チャチャチャー

 

と彼女の携帯がメールの着信を告げた

 

 

この、着信音は

 

 

 

恐る恐る携帯を開くと

 

 

 

 

 

発信者

 

ダイワスカーレット

 

 

件名

 

あのね

 

 

本文

 

ねぇ、アンタなにやったのよ?

さっきからお兄ちゃん無茶苦茶怖いんだけど。スズカさん達やタイシンさんも明らかに怖がってるくらいのヤバい雰囲気なんだけど、ホント大丈夫?

 

 

追伸

アタシはフォロー出来ないから、自分でどうにかしなさいよ! 

あと、お兄ちゃんそっちに向かったわよ

 

 

 

 

 

わ、悪いけど、急用が入ったんでまた配信するな!皆またな!

 

 

友人(スカーレット)からの警告を受けた彼女は急いで配信を止めると逃げようとした

 

 

 

 

しかし、此処は学園内の一室である

 

 

 

と、とにかく謝るとしても、こっちから行かないとヤベェからな

 

彼女でも怒れる彼は怖い

怖いけど、逃げる訳にはいかなかったりする

 

 

何せ、最終的に彼女のフォローをしてくれるのは彼と彼女のトレーナーだけなのだから

 

だが、彼女のトレーナーは彼にとって教え子であり、トレーナーからすれば彼は教官である

 

どうしても、年下であるはずの彼にトレーナーは勝てなかったりするこだ

 

 

 

 

ゴールドシップの逃走劇が今、始まる




因みに扉を出たところに満面の笑みを浮かべた空がいた為に、彼女の逃走劇は僅か10秒程で終わってます



中々イチャイチャだけを書けない私を許してください

何でもしますから!



という訳でご一読ありがとうございました


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 夢現(ゆめうつつ)

 もしかしたら、あり得たかもしれない未来


少し切ないかもしれませんが、どうぞ


此処は滋賀県栗東市にある、とある住宅

 

 

ああっ、寝坊した!

 

転がり込む様に黒髪の女の子がリビングに駆け込んできた

 

 

おやおや、どうしたんだい?スカイ。そんなに慌てて

 

母親だろう美しいライトブラウンの髪を伸ばした女性は少女に問いかける

 

お母さんっ!私起こしてって頼んだよね?何で起こしてくれないのよ!

 

少女はどうやら母親である女性が起こしてくれなかった事に怒っている様である

 

だから言ったじゃないか。夜更かしはほどほどにしなさいって

 

うぐっ!

 

しかし、母親の指摘に思わず言い淀む

 

 

そこに

 

 

こらこら。朝っぱらから喧嘩すんなって

スカイもタキオンもご飯出来たから、早く手洗ってくる

 

 

少女と同じ黒髪の男性がキッチンから声をかけてきた

つけているエプロンは少しくたびれており、この男性が長いことこのエプロンを使っている事を思わせた

 

 

 

あ、お父さんおはよう!

 

朝一で罵倒される私と笑顔で挨拶される父親。やれやれ、本当に母親というのは大変だねぇ

 

 

どうやら、少女の父親らしいその男性に笑顔で挨拶する少女とそれを見て苦笑いする女性

 

 

彼女達のいつもの光景であった

 

 

 

 

 

 

 

おひょうさん(お父さん)ひょうはにゃにするの(今日は何するの)

 

こら、スカイ。食べながら話をしない

口の中に物がなくなってから話をしなさいな。別に逃げも取りもしないんだから

 

食事中に父親と話をしようとするスカイという少女。それを父親の男性は嗜めている

 

むむむ。今日もブロッコリースープかい?

 

妻である女性は今日の献立に不満がある様だった

 

いい加減、母親になったんだし偏食癖をなおさないといかんやろう

 

 

男性は苦笑しながらタキオンを諭す

 

 

 

 

女性の名前はアグネスタキオン

 

 

トレセン学園第一期生であり、当時関係者では有名だった『現代のシンデレラ』その人である

学園卒業後は一年学園に残り、従姉妹であり自身と夫が担当するダイワスカーレットのトレーナーが引退するまでのトレーニングを担当した

 

主に体調管理をメインで行なっていた夫と異なり、様々なデータから導き出した効率的で効果的な指導を行なった結果、スカーレットは世代最強とまで言われる様になる

 

その後はトレセン学園理事長秋川やよいの要請を受けて、此処栗東市に新設された『トレセン学園栗東教育センター』の医療部門の管理者として赴任する事となる

夫である人物もまた秋川理事長と学園理事会の要請を受けて、『教育センター』の『トレーナー部門管理責任者』としてタキオンに同行している

 

 

その後、約10年ほど勤め上げる中で、結婚していた人物との間に娘であるディープスカイをもうけ、それを機に退職する事となる

 

 

なお、トレセン学園在籍中より複数の製薬会社と随意契約を結んでおり、栗東への赴任を機に『アグネス共同製薬会社』が設立され、その初代代表取締役に就任している

 

とはいえ、あくまでも株主で出資者である製薬会社との取り決めの結果、栗東市の利便性や西日本方面への新たな拠点として、またタキオンの新薬開発の一助となるべく創設されたという経緯があった

 

既に幾つかの新薬を学園在籍中に世に送り出していたタキオンは、製薬会社にとってウマ娘関連の新薬開発に必要不可欠な人物となっていたのである

 

 

 

スカイが成長するにつれて、タキオンは少しずつ家庭を気にするようになり、今はそちらの代表取締役も辞任して、一介の研究員として活躍していたりする

 

 

元社長ともいえる同僚に職場の人間は困惑したが、マイペースに新薬の開発に勤しむタキオンを見て、同僚たちも最近ようやく慣れ始めてきたそうだ

 

 

 

 

夫である彼は妻であるタキオンが学園に在籍中、一度傷害事件の被害者となった際、担当の医師に後日呼び出しを受けた

 

 

曰く

 

少し気になる部分がありまして

 

 

との事であった

 

 

 

それをタキオンに告げたところ

 

 

 

何が何でも、キミを病院に行かせる!例え学園がマスコミが、何と言おうとも邪魔はさせない!

 

 

とすごい剣幕で迫られた

 

 

更にそれが伝わったのか、スズカ達は学園内で彼が裏門から病院までの迎えが来るまで彼のそばから離れなくなった

 

 

 

病院までの送迎については我らが常識人にして、苦労人であるナイスネイチャの知り合いで、前回海水浴の際にタキオン達を送迎してくれた鉄さんが快く引き受けてくれた

 

彼の仕事は作業員の仕事の割り振りと、作業員が帰社してからの前貸などの担当であった為に、昼間は比較的暇なのであった

その頃は冬であり、現場で何らかのトラブルがない限りは、鉄さんは動ける立場であったから、ネイチャの要請を受けたのだ

 

 

タキオンとしても、全く見ず知らずの人に頼むより、多少でも見知ってた人の方が安心できた為に、これを全面的に受け入れる事にした

 

 

 

更に鉄さんは所謂『強面(こわもて)』であり、メディアに露出している彼を周囲の悪意から守るのにも適していた

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、病院で判明したのは

 

 

幼い頃から身体に無理な負荷をかけ過ぎた上に、健康管理を怠っていた事による身体のバランスが崩れている事

 

だった

 

 

今すぐどうなる訳ではないが、将来早逝する可能性がある。との診断がされる事となった

 

 

勿論、定期的な検査によるデータの比較は必要不可欠であったが

 

 

 

 

 

 

 

結果として、この診断を受けたタキオン達は渋る彼を関係者総動員して説得にかかった

 

 

共に生きてくれるのだろう?なら、キミは長生きする努力をするべきじゃないのか?

 

 

最終的には涙ながらに彼を押し倒して、説得したタキオンの活躍でようやく通院する事と、治療する事を受け入れさせた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今、栗東市で専業主夫をしていながらも、彼は週に一度は隣の市である滋賀県草津市の病院に通院している

 

 

此処には傷害事件の担当であった医師が在籍しており、彼の主治医という立場になっていた

 

 

曰く

 

 

あの時、私は警察の言いなりにしかなれなかったからね

この位はさせて欲しい

 

との事だった

 

 

しかし、この医師は家庭を持っていたはずだから、色々問題があると彼は謝辞したのだが、未だに地元では影響力を有していた彼の元後ろ盾であった元議員を始めとした有志によるこの医師への諸々の支援により、金銭的な不安を解決していたりする

 

 

 

 

タキオンは産後、落ち着いたと判断すると少しずつだが、仕事を始めた為に、スカイの面倒は彼が必然的にみることになった

 

 

 

その結果、ディープスカイは近所や知人では有名な程の『ファザコン』になってしまったのは仕方のない事、なのだろうか?

 

 

 

 

 

 

ねぇねぇ、父さん母さん!

今日はどこ行くの?

 

さて、何処に行くつもりなのかな?私も知らなくてね

 

朝食を食べ終えたスカイとタキオンはリビングでまったりしながら、話をしていた

 

 

そろそろ迎えが来るはずなんだが

 

 

 

 

ピンポーン

 

 

彼がそう呟いた時、迎えが来たようだった

 

 

 

 

 

 

 

 

や、迎えに来た

 

 

黒色のワゴン車に乗ってきたのはナリタタイシン

助手席には

 

おはよう、皆。元気そうでなによりだ

 

 

かつて『皇帝』と呼ばれていたシンボリルドルフの姿があった

 

 

 

 

 

今日は悪いな、2人とも

 

別にいいって、アタシとルドルフがしたいからしてるだけなんだし

 

車で最寄りの栗東インターから岐阜方面に車を走らせている車内で助手席に乗る彼は運転手のタイシンと後部座席のルドルフに詫びた

 

こちらとしては、キミやタキオン。それにスカイの力になれるならありがたい限りだよ

 

やれやれ。本当に君たち2人は結婚しないつもりなのかな?

 

 

2人の答えにまだ、2人は自分の夫に未練がある事を分かっていたが再確認したタキオンはため息混じりでそう言った

 

 

そうなんですか?ルドルフ姉さんにタイシン姉さん

 

 

 

母親の言葉に思わず聞いてしまうスカイ

 

 

なお、年齢的には2人より歳下のスカーレットやデジタルは『叔母さん』なのに、歳上で、しかも家族でもないはずの2人を『姉さん』呼びする事については最早彼とタキオンはツッコミを放棄している

 

 

その理由について、2人は一切触れるつもりはなかったのだから

 

 

 

 

なお、既にそれなりの年齢にも関わらず、タキオンは勿論、ルドルフとタイシンも二十代と言っても通用する美貌を保っていた

 

 

製薬会社に勤めているタキオンだからこそ、化粧品などの方面にも顔が効くし、此処には幼馴染を自分の好みに仕上げた人物(一美空)がいる訳でして、そういう事に関しては手を抜かない者達だ

 

本人としては意味不明だが、現在彼は美容健康食品を世に送り出す仕事をしている

 

しかもそれが、ウマ娘に効果的となればもうこれはヒット間違いなしのものであった

 

結果、彼は専業主夫をしながら、メニューの開発に勤しんでいたのである

 

 

 

 

その恩恵を一番受けているのが、彼の妻であるタキオンであり、頻繁に彼の自宅を訪ねるルドルフとタイシンなのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

確か『かさまつ食事処』だっけ?

 

タイシンは車を走らせながら聞く

 

だね。聞くところによると、尾張一宮より、各務原から降りた方が早いらしい

 

確か、一宮インターは混むところだったね

 

そうなの?父さん

 

今日はタキオン一家とルドルフ、タイシンで3人の同期であるオグリキャップの経営する店に行く事となっている

 

 

何でも、明日タキオンと彼の結婚記念日である事から、前祝いとしてささやかながら食事会をしてくれるとの申し入れが先月オグリの夫である矢上純元トレーナーからあったのだ

 

 

それに合わせて、彼女の店で同窓会の様なものをしようというのが、オグリ夫妻からの提案だった

 

彼は申し訳ないと断ろうとしたのだが

 

 

2人の折角の好意を無碍にするのはどうかと思うよ?

 

とのタキオンの説得と

 

 

オグリさんと会えるの?

父さん、行きたい!

 

 

との愛娘からのお願いに彼はあっさり降伏した訳である

 

 

 

 

 

 

栗東から各務原までは、約2時間ほど

 

 

タイシンはその間、常に運転していたが気にする事はなかった

 

何せ、久々の彼とのお出かけである

ルドルフもそうだが、タイシンは内心ウキウキであったのは言うまでもない

 

 

 

なお、ルドルフにせよタイシンにせよ実は実家や親族からかなり文句を言われている

 

ルドルフ、タイシン共に理解ある両親だったのだが、残念なことに『皇帝』『羅刹』とまで謳われた2人の名声をあてこんだ親族からかなり色々と言われていたのである

 

 

2人の苦労を知っている両親などはその意見に全く同意できなかったし、反論したのだが『皇帝』『羅刹』の親族であるというステータスに酔ってしまった親族は聞く耳を持たなかった

 

特にタイシンは酷いものだった

ルドルフは従姉妹であるトウカイテイオーが活躍したし、テイオーも結婚しているので、『多少』マシだったが、そういった親族の目立った活躍がないタイシンはそれこそ連日連夜の様に見合いの話が舞い込んできた

 

 

だからこそ、彼女は栗東市に家を建てたという理由もあったのだ

実家に戻れば口煩い親族が結婚を押し付けてくるのは目に見えていたから

 

そして、それは同期が結婚していくたびに弱まるどころか強くなる一方であり、特に国際レースであったジャパンカップで活躍したタイシンの元には国外からの見合い話も舞い込んできていた

 

そして、大体が社会的地位のある人物や経済的に裕福な人物である

 

そういった者達とのコネを求める親族が更にやかましくなるのは言うまでもないだろう

 

 

同じような状況にあるのが、メジロマックイーンだろう

彼女は特に名門『メジロ家』の若き当主であり、彼女自身もまた優秀なウマ娘であるからして、その面倒さは推して知るべしであろう

 

 

 

 

 

 

だが、そんな事をおくびにも出さない

 

 

ルドルフもタイシンも今のこの生活が気に入っているのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところで父さん?

 

 

どした?スカイ

 

 

母さんの事一番好きなのは、私だよね?

 

 

おっと、それは空さん認められないなぁ

愛する娘であったとしても、それはちょーーーっと認められないかなぁ?

 

 

え、でも母さん私の事しっかり見てくれるから、私でしょ?

 

 

よし、スカイ

家に帰ったら少し母さんを交えて話をしよう

どちらが母さんを愛しているか、しっかり話し合おうじゃないか

 

 

いや、そこで張り合うのはやめようと思わないのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幸せなのだから、良いのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




と言う訳で、彼がもし長生きしていたら?
という番外編でした


需要があれば書きますが、基本的にこの話の続きは書かないつもりです



ではご一読ありがとうございました


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