リヴァイの兄 (極まった凡夫)
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一般転生者リヴァイ兄

色々と変更しましたが、文章を大幅に綺麗にしました。
多分前よりも格段に読みやすくなっているはずです。

また感想をお願いします。


なんか気づいたら生まれ変わってたわ

ママンは黒髪の美人だし今世は勝ち組だな!(楽観)

 

 

なんて思っていたのが数日前のこと。

どうやらママンは夜のお仕事をしてるらしい、それに加えて俺の父親は誰か分からないということだ。

 

俺はそれを知って戦慄する。

oh……凄い……ハードです。

 

どうやら俺が生まれ落ちたここはなろう系の優しい世界ではなく、リアルな厳しい世界のようだ。

やめてくれよなぁ、そんなの読者も俺も望んじゃいないぜ……

読者ってなんだ?

 

そしてそれだけじゃなかった。なんとなんと異世界転生ではお馴染みのファンタジー世界かと思ったら、この世界には魔法なんてものもないらしい。

もしかして異世界ではない?

 

マジかよ……魔法使ってウハウハチートを期待したのに……ガッカリだぜ…

 

あれから数日。

最近わかったことは俺には双子の弟がいるということだ。名前はリヴァイ。

なんか変な名前だなぁ、と思う。

ちなみに俺はケインという名前だ。イケてる名前だろう?

名前の由来はどうやらママンにもお兄ちゃんがいて、俺も弟を守ってやれるようその人から名前を取ったらしい。ママンが寝る前に話してくれた。

 

それを聞いて俺はママンの思いに胸が熱くなる。

 

リヴァイは俺が守らなくちゃ(使命感)

 

 

あれから数ヶ月。結構分かったことがあった。

なんと俺たちは地下に住んでいる。理由はわからん。ただ一度外に連れられた時に空が見えなかった。

なんでこんなところに住んでいるんだろう…?

もしかしたら地上は汚染されてたりするのだろうか?

俺はそんな疑問を持つ。答えは出ない。

核戦争後の世界とかだったら嫌だなぁ…

 

 

あれから結構経ったがママンが死んでしまった。

はぇ!?

どうやら夜の客から病気を貰ってしまっていたらしい。食っていくのに精一杯の俺たちだ。結果として医者にも診て貰えずに死んでしまった。

 

そうか、最近元気がなかったのはそのせいか。悲しい。俺はまたこの世界の厳しさを知った。

 

この世界は前世でいう18世紀から19世紀辺りっぽい。詳しいことは分からんが銃はあるみたいだ。

外からたまに怒声と銃声が聞こえる。

前の世界だと確実に漏らしとる自信があるが、流石に慣れた。

漏らすことにも慣れた(違う)

 

ママンが言うには俺たちの髪色は結構珍しいみたいで、まだ幼い俺たちはむやみに外に出ると怖い人達に売りさばかれるらしい。

俺は初めてその話を聞いた時すくみ上がった

お外怖いよぉ……ブルブル。

 

だからママンが死んで俺達はどう生きればいいか全くと言っていいほど知らなかった。

まぁガキに何が出来るんだって話だが…

だけど泣いてばかりもいられない。俺はお兄ちゃんだからな!リヴァイのために頑張らないと。

そう決意した時、何故か身体がビリっときた。なんぞ?

 

 

それから半月弱、俺は今だにママンの前から動こうとしないリヴァイに飯を献上し続けた。

飯は街の人達から盗んだものだ。たまに捕まってボコボコにされるけど何とかまだ生きてる。

このまま餓死するか街のヤツらに殺されるかの差だ、大したことでは無い。

 

うーんリヴァイがなかなか元気にならない。精神的なものだろうか?

ごめんなぁ、お兄ちゃんコミュ障だからさ、お前を言葉で励ますことは出来ないけど食料だけは持ってきてやるからな。

 

未だにリヴァイには懐かれてないが、まぁ、いつかは飯で釣れるだろう。

それよりもこの身体の性能が凄い。

なんか歳の割にめちゃくちゃ機敏に動けるし力も強かった、本当に人間か?

 

 

ケニーとか言うおっちゃんが来た。

なんだ…てめぇ…?

食料を取られるかと思って威嚇してしまったがどうやらママンの関係者らしい。これから俺たちの面倒を見てくれるようだ。

まぁ過去のことはお互い水に流そう!

これからよろしく!(気さくな挨拶)

 

 

【悲報】ケニーはヤンキーでした。

ケニーとヤンキーって語感が似てるよね。

 

ちゃんとした大人だと思ったケニーはなんと喧嘩もするしカツアゲもする野蛮人だった。

基本的にケニーが喧嘩をふっかけるが強いからほとんど負けない。余計にタチが悪いね。

 

ケニーが喧嘩しているのを黙って見ていると俺たちにも加勢するよう言ってくる。

え?俺たちもやるの?まだ幼児だぜ?

しょうがないにゃあ…(建前)

イィヤッフゥゥゥウウウ!俺TUEEEEの時間だぜぇぇえ!(本音)

当然俺は大人に勝てる訳もなくボコボコにされた。

 

 

ケニーにつられて町中の人をボコボコにしたりされたりする毎日。

怖がっていたリヴァイもようやく今日参加してきた。

けど生まれて初めて喧嘩するリヴァイはまだヘナチョコだ。

ガッハッハッ!お兄ちゃんには勝てまい!

リヴァイにいい所を見せようと張り切ってオッサン達をボコボコにしようとしてボコボコにされる毎日。

その合間にケニーにはナイフの握り方だとか偉くなりたきゃ強くなれだとか色々教えこまれた。

ほとんど忘れたので勘で動いている。

 

 

あれから数年

ケニーとの日々も板に付いてきた頃

ケニーはふらっとどこかに消えた。

まぁ何となくあの人はずっとこのままじゃないとは思ってたから俺はそこまでの衝撃じゃなかったけど、リヴァイは違ったらしい。

父親みたいに思ってたのかなぁ…

俺がそうしみじみと思っていると急にリヴァイに掴みかかられる。

 

え?ケニーはママンの何だって?俺も知らんよ。いやマジマジ。

 

けどなんか引っかかるんだよなぁ。

ケニー…ケニー…うーん分からん(思考停止)

 

 

数年後

リヴァイがファーラン君とかいう子を拾ってきた。

ダメです!戻して来なさい!うちでは飼えません!

そう言おうと思ったけどコミュ障なので多数決には勝てなかったよ……

 

ファーラン君が来て数日。俺は絶賛困っていた。

おいおいファーラン君と喋れねぇんだけど!ファーラン君はグイグイ来るが俺が喋れない。やめてくれよ…陽キャがグイグイ来ると陰キャは喋れないんだよォ…

 

 

労働なんて崇高なことがケニー仕込みの俺達に出来るはずもなく。

俺とリヴァイはここ数年物取りで生計を立てていた。

高そうなものを盗んで売る、それだけだ。

そこにファーラン君も入ることでついにトリオになった俺たちはいつの間にか地下街の人間から盗賊団と呼ばれるようになっていた。

なにそれかっこいい……(恍惚)

 

 

何?立体機動装置?なんじゃそりゃ?

リヴァイが憲兵達からヘンテコな装置を盗んできた。

そんなんで何ができるんだよ…どうせ大したことじゃないだろ、お兄ちゃんはもう寝るよ。

 

なんて思っていたがしかし、ヘンテコ装置は見た目に反して超かっこよくスタイリッシュだった。

ピュンピュン飛び回るリヴァイを見て久しぶりに興奮したよね。

こんなに興奮したのは前世でプ〇キュアを見た時以来だ。

 

立体機動装置をじっと見る俺に気がついたリヴァイが俺にも欲しいか聞いてきた。

俺は勢いよく頷く。

するとリヴァイが翌週には新しい立体機動装置が用意してくれていた。

 

あざマスっ!!

 

リヴァイサンタに感謝しつつ俺は立体機動装置を使ってみる。

想像以上に早く動けて爽快だった。

数週間後にファーラン君の分の立体機動装置も揃うことで俺たちの盗みの効率は以前の数倍に跳ね上がった。やったね!

 

 

イザベルと言う女の子が窃盗団に入った。

どうやら追われていた所をリヴァイが保護したらしい。

あまりにも男らしいその理由に俺はリヴァイに惚れるかと思った。

 

だけど俺に女の子は早すぎるよ…!

今世じゃママンと話した(泣き声)ぐらいだぜ。その俺が女の子と話せる訳もない。

やめてくれよぉ……ファーラン君といいイザベルちゃんと言いあっちはグイグイ来るが俺が話せない。二人とも陽キャ過ぎんよォ

 

 

リヴァイが妙な依頼を受けた。

どうやら調査兵団とかいう組織の不正の書類の入手と誰かの暗殺が依頼内容らしい。

達成出来れば地上に住めるということでリヴァイは依頼を受けたようだ。

 

憲兵団の人達にはいつも喧嘩を売ってるので俺は楽勝だと思ってた。

あいつらトロいしね。

調査兵団だかなんだか知らねぇが俺たちの流儀をその身に叩き込んでやるぜぇい…フェッフェッフェ

 

 

なんて思っていたのも数日前。

許してお兄さん!!(迫真)

調査兵団は予想以上に強かった。

俺とリヴァイだけなら何とかなっただろうけどファーラン君とイザベルちゃんが捕まった時点で俺たちの敗北が決まった。俺は内心焦る。

やばいやばいやばい死ぬぅ!!

散々犯罪行為を犯してきたんだ、まず間違いなく軽い罪ではないだろう。

とりあえず媚び売って大人しくしたら許してもらえないかな。

ボク、ワルイハンザイシャジャナイヨ(チラッチラッ)

あぁああ!リヴァイが痛めつけられてる。

後でお兄ちゃんが慰めてやるからな。(義務感)

 

どうやら俺たちのことを見逃してくれるらしい、その代わりに調査兵団に入れと言われた。

おぉまじかよ。

つまり働けってこと?就職?就職するの?嫌だぁぁぁぁ…めんどくさいぃ…

前世での嫌な記憶が蘇る

だが俺に拒否権はなかった。

諦めて社会人になる決意をする。

俺もついに就職かぁ大人になるってつれぇなぁ…

 

 

リヴァイ達と一緒に地上に来た。

外の世界すげえええ!!

太陽も雲も空までもがあるぜ……世界はやっぱり広いなぁ…

 

だがそれ以上に俺の興味を引くものがあった。

馬だ。

お馬さんはかぁいいなぁ…(デレデレ)

俺前世も含めて生まれて初めて馬に触ったよ。感動しながら馬と戯れる俺。

可愛いなぁ…こいつ…

馬の世話とか大変とか聞いてたけどこいつらへの愛しさで屁でもなかった,。

 

あと散々脅された壁の外の巨人もそんなに強くなかった。

なんか立体機動装置でシャッと行ってスパン!って感じで簡単に倒せたよ。

この身体さまさまだな。

もう俺にとっちゃぁ壁の外なんて散歩よ散歩(イキリ)

 

 

そんな風にのほほんと調査兵団にいる時間を楽しんでいるとリヴァイが次の壁外調査でエルヴィン団長を暗殺すると言ってきた。

 

おいやめろ!せっかく遊んでるだけで美味い飯が出る職場を手に入れたのにそれを手放す気か!?俺は必死にリヴァイを止める。

俺はまだ馬と離れたくない。

 

それに言っちゃあ悪いがあの依頼主、悪人の匂いがするんだよなぁ。

まぁ、8割型顔で決めてるけど。残り2割は勘だ。

人の印象は顔が9割だから…(矛盾)

 

 

壁外調査の最中。リヴァイがついにエルヴィンの元へ暗殺に行くらしい。

 

本気でやめろォ!俺はまだここにいたいぞぉ!!なんならしがみついてでも止めてやるぞぉ!そんな風に恥を捨てて必死に訴えかけたらリヴァイも分かったのか今回は諦めてくれた。

俺は何度でも止めるぞ。

 

それにしても……

俺は内心安堵する。

危なかったぜ……リヴァイがいなくなったら二人と間が持たないところだった…コミュ障には辛い世の中だ。

 

 

霧がでて来た。

あれ?リヴァイ達はどこに行ったんだ…?いつの間にか俺はリヴァイ達とはぐれていた。

俺はリヴァイ達を探す為に馬を走らせる

おーい!リヴァーイ!!どこだ〜!

 

迷った(迫真)

 

何となく遠くでリヴァイが呼んでる気がするが気のせいだろうか…

お兄ちゃんがいなくて泣いてなければいいが…

リヴァイなら大丈夫だと思うが帰ったら一応慰めてあげよう。

まぁ、任せろって!すぐ戻るからなぁ!リヴァイ!

 

俺が勘で馬を進めていると目の前に5体の巨人がいた。おいおい、マジかよ。

一度に5体の巨人なんて初めて戦う。

まぁでも俺にはモーマンタイ。俺にとってはちょちょいのちょいよぉ!

 

 

巨人を倒したあと近くにリヴァイがいたので近寄る。

うりうり、お兄ちゃんがいなくて寂しかったかぁ?

寂しかったよなぁガハハ!

しかし次の瞬間俺は絶望の淵に立たされる。

 

【悲報】帰ったらリヴァイ達以外の人が全滅していたんだが?

 

おいやべぇぞ!

こんな失態見つかったら首チョンパ確定だァ……迷ってましたなんて冗談にもならねぇ。

どうしよぉ…

俺は内心で泣き言をこぼす。

俺はまだ調査兵団にいたい。そのために何をするべきか俺は考える。

どうにか謝って許して貰えないかなぁ、ダメかなぁ、上目遣いで何とかならないかなぁ。

 

そんな風に考えていたらエルヴィン団長が来た。

やべぇ!直ぐに謝らないと!

 

俺はすぐさまエルヴィンさんに謝ろうとする。

謝罪は速度だってじっちゃんも言ってた。

 

俺はエルヴィンさんの元に駆け寄る。とにかくスライディング土下座をしよう。1番かっこいい謝り方だってばっちゃんも言ってた。

その時だった

 

うおっと。

 

なんと俺は抜かるんだ地面に足を取られて変な体勢になってしまった。

スライディング土下座を中途半端で完成させた俺はその体勢でエルヴィンさんの元に着く。

 

みんなの沈黙がイタい……なんだあの体勢は?とか思われてるんだろうか…

もういいや!早さが大事なんだ!届けこの思い!怒らないで!!

そう思いその体勢をキープする俺。

 

するとリヴァイ達も一緒に謝ってくれ出した。

俺はなんていい弟を持ったんだ(しみじみ)

 

4人で謝ったからなのかエルヴィンさんも許してくれた。

やったぜ。

 

リヴァイside

 

生まれた時から一緒にいた。

同じ屋根の下で暮らして、同じ飯を食っていたが俺にはこいつがてんで理解出来なかった。

何故なら物心ついたときからこいつは喋らなかったし、俺にベッタリだったからだ。話しかけてもほとんど何も答えない。にもかかわらず付いてくる。

本当に不気味な野郎だと思っていた。しかし、それでも俺の唯一の肉親なのは確かだった。

 

 

あの日。

母さんが死んで、 俺たちにはもう何もないと思っていた。

俺はあそこで死ぬと本気で覚悟も決めていた。

けどあいつはそうじゃなかったらしい。次の日からどこから手に入れたのか食料を持ってくるようになった。

毎日毎日、ボロボロになって食料を持ってくる。

俺が食わねぇと意地でも食わねぇから結果的に俺はあいつに助けられた。

 

 

今でも覚えている。

ケニーが初めて来た時、あいつは歯をむき出しにしてケニーを威嚇していた。

俺に危険が及ぶと思ったのか。それとも母さんの遺体をどうにかされるのを危惧したのかは知らねぇが、俺はあの時初めてあいつの感情らしい感情をみた。

いつも見ている何考えてるか分からねぇ奴じゃない。俺は初めてあいつを一人の人間だと認識した。

 

 

ケニーの面倒になってる間、俺達は毎日のように喧嘩した。

基本的にケニーがふっかけて喧嘩になる、大人しく見ているとケニーは俺たちにも参加するように言ってきた。

俺は初め参加しなかった。なぜって?ほとんど幼児の俺たちに何が出来るって話だ。

あいつは歳の割には強かったが、それでも大人に勝てる訳もなくボコボコに殴られていた。

それでも嬉々として参加するのだから気が狂っているとしか考えられない。

 

いつだったか忘れたが。

あいつの目を見た。ギラギラした野生の獣みたいな目を。

そしてそれを見て俺も喧嘩に参加するようになった。今だから思うが、あいつの目を見てきっと感化されちまったんだろう。俺も一緒に殴られるようになった。

 

それからケニーに戦闘技術や恫喝の方法、交渉術、この世界の生き方等を学んだ。自覚はしていなかったが俺はいつの間にかケニーのことを父親のように思うようになっていたのだろう。

 

だからあの日、いなくなったケニーを見て俺はあいつに本気で問い詰めた。

あいつなら何か知ってる気がしたからだ。

 

「ケニーは一体何者なんだ…!母さんのなんなんだ…!知ってることを全て話せ」

 

胸ぐらを掴んで詰問するがあいつは首を振るだけで何も話そうとしない。

いつもそうだ。

こいつは喋らない。もしかすると喋れるのかもしれないが俺は聞いたことがない。

意思疎通はこいつがたまに発する「あ」だか「う」だかの言葉とジェスチャーのみ。本当に人間かこいつは。少なくとも獣と言われた方がまだ納得できた。

 

 

数年後。俺がファーランを連れて来た時、あいつはなかなかファーランを受け入れようとしなかった。

ファーランが話しかけようが何をしようが完璧に無視を貫いていたのだ。あいつは喋れねぇが反応がないわけじゃない。

間違いなくあいつの意思で無視をしていた。

だが、一緒に仕事をする内にようやくファーランを仲間と認めたのだろう。

あいつはファーランに対しても何かしらの意思疎通を図るようになった。

 

俺たちが盗賊団として活動を始めたころ、憲兵のクソから立体機動装置を手に入れた。

初めに憲兵から奪い取ったものをあいつに見せた時はまるでこれを何に使うのか理解していなかった。

 

憲兵達が使っているのを見ているはずだが、まぁ忘れたのだろう。やはり獣並の知性だな。

しかし、俺が飛び回っているのを見せてやるとまるでガキみてぇに目をキラキラさせやがる。

俺がケインに立体機動装置が欲しいか聞くと嬉々として頷いた。

それを見た俺は翌週には横流しされてる立体機動装置を手に入れてやった。

 

あいつが楽しそうに立体機動装置で遊んでいる。

縦横無尽に空を駆け抜けるあいつは俺よりも疾く、巧かった。

 

 

ファーランの分の立体機動装置も手に入れて俺たち盗賊団の名が売れ始めた頃。

イザベルを仲間に引き入れた。

きっかけはまぁあれだったが俺たちにイザベルはよく馴染んだ…あいつ以外は。

ファーランの時もそうだったがイザベルの時はそれよりももっと長かった。

一度俺はイザベルに相談されたことがある。どうすれば奴が心を開くのか。仲間として認めてもらえるのか。

俺はあいつは獣だから時間が解決すると言っておいた。

現にイザベルとの仕事をこなし、あいつはイザベルに心を開いた。

 

 

地上に住んでるお偉いさんから俺たちに依頼が来た。

調査兵団団長の暗殺に不正の書類の入手。

胡散臭ぇ野郎だったが、俺たちが地上に住むためにその依頼を受けた。

 

それから数日後。俺たちは調査兵団から襲撃を受けていた。

 

健闘したがイザベルとファーランが捕まり、俺たち兄弟も捕まってしまった。

今思えばあいつは捕まったのに酷く大人しかった。奴なら最後まで抵抗してもおかしくはないのに。

もしかしたら獣の本能で負けを悟っていたのか、それともエルヴィンにその頃から惹かれていたのか。

結局俺たちが調査兵団に入ることになってもあいつは拒否反応を起こさなかった。

 

 

あいつにとって調査兵団の訓練は苦でもなかったのだろう。

座学は俺が頼んで免除して貰った。普段のあいつを見せればエルヴィンも納得した。

休みの日は一日の半分を馬と過ごしたりしながら、あいつはあいつで外を楽しんでいる。流石に馬くせぇのは勘弁してもらいたかったが俺が洗うことで何とかした。

それでいいのかと思うかもしれないがエルヴィンの不正の証拠を集めるにはあの獣は知能が足りなさすぎる。

それにあいつが警戒も何もしないことで調査兵団の兵士たちが警戒を緩め俺たちの仕事がやりやすくなったのも事実だ。

 

 

そしていよいよエルヴィン暗殺の日。

壁外で俺と別れる時、あいつは猛烈に嫌がった。

今までも嫌がってはいたが、今度のはその比ではない。

最終的にはあいつにしがみつかれ、今回のエルヴィン暗殺は中止することにした。

まぁまた次がある。俺はそう思うことにした。

 

 

あいつがどこかに行く。

霧が出始めたと思ったら急にあいつが俺たちとは別の方向に進み始めた。

あいつに懐いた馬はあいつの命令を忠実に聞き、あいつは霧の中に消えていく。

それに俺はケニーが去った時を思い出し。叫んだ

 

「行くなぁぁぁあああああ!!!!!ケイィィィイイイン!!」

 

だがあいつはどこかに行ってしまった。

呆然とする俺たちだったが直ぐに周りの様子がおかしい事に気づく。

 

ーー周りの連中が死んでる…!?

 

よくよく見ると近くに一体の巨人がいた。どうやら霧に紛れていたらしい。

俺たちと一緒にいた班の連中は既に死んでいる。

 

まさかあいつ…!逃げたのか!?

俺の脳内に嫌な妄想が広がる。

 

雨の中

俺は馬が滑り落馬する。

 

どうやらここら一体がぬかるんでいるらしい。

イザベルとファーランも落馬していた。

俺は腹を括りすぐさま戦闘態勢に入り二人にも指示を飛ばす。

 

「俺が殺す!お前らは引きつけろ!」

 

 

俺たちは辛くもその巨人に勝った。

どうやらイザベル達が落馬した時、少し足を痛めていたらしい。

庇いながらの戦闘は骨が折れた。

しかし……俺がいなかったらと思うとゾッとする。

 

俺が回想していると、いなくなったケインがいつの間にかそばにいた。

霧は既に晴れている。

 

「お前……!!!」

 

怒鳴ろうとした時、ようやく周りの巨人に気がついた。

どうやらケインは巨人との戦闘でここまで来たらしい、奴が来たであろう方向に目を向けると多数の巨人が死んでいた。

 

ケインが頭を擦り付けて来る

俺はそれを受け止めながらこの状況を分析し。全てを理解する。

 

どうやら俺はまたこいつに助けられちまったらしい…

 

「そうか……よくやったケイン」

 

そうケインを労ってやる。ケインも嬉しそうに声をあげる。

俺とケインが戯れていると馬の足音が聞こえてきた。

 

「エルヴィン…」

 

そう声をかける俺の脇を何かが横切った。

……なんとケインがエルヴィンの前に(ひざまず)いていたのだ。

 

「ケイン……お前……何をして……」

 

獣みてぇに懐くのに時間のかかるケインにとってこれは異常だ。

しかし、俺は直ぐにケインの意図に気がつく。

 

ーーそれだけの男ということか…ケイン

 

エルヴィンは忠誠を誓うに足る人物、こいつは俺にそう伝えたいのだ。

 

今回ケインの判断を無視して俺がエルヴィンを殺しに行っていたら。

ケインが巨人を見つけて殺していなかったら。

 

こいつはいつも選択を間違えない。

そのこいつが跪いている。

俺にもエルヴィンに忠誠を誓えということなのか。

ケイン…。

こいつは答えない、ただその有り様を俺に見せるだけだ。

そうか……ならば………

俺もエルヴィンに跪く。

 

俺はお前の判断を信じよう。

その瞬間俺の体はエルヴィンを主と定めた。そんな気がした。

 

「こいつが認めたんだ。お前に忠誠を誓おう、エルヴィン」

 

「私らは兄貴に付いてくだけだ」

 

「あぁ、俺もだ」

 

こうして俺たちは改めて調査兵団になった。

 

 




幼児で強いのはおかしいやろ!ってことで修正。
何となく書き方が分かってきたので文章も前よりはしっかりしているはずです。

これからはこちらで書こうと思っているので更新を待ってくれていた方。
申し訳ないです。


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840年〜845年(ケイン視点)

終わりのないのが終わり。
直しても直しても修正箇所が出てきて焦りました笑

感想お待ちしています。


俺たちが調査兵団に入ってから1年が経った。

 

エルヴィンさんが団長になったりしたが。

幸運にも俺は今でも調査兵団をクビにならずにすんでいる。

1ヶ月に1度の壁外調査をこなしさえすれば基本的に楽なこの仕事。

 

まぁ、楽と言ってもその壁外調査が1番やばいんだが。

 

壁外調査では基本的に外に簡易的な拠点を作ったりしつつ、前回のよりも広い範囲を探索する。

巨人がゴロゴロいる地域を捜索するんだ。

どれだけ気をつけていてもやはり人は死ぬ。

エルヴィン団長が新しい陣形を考案したことで以前の調査兵団に比べて生存率は大幅にあがったが、大切な人との別れは俺達には日常茶飯事だ。

 

ちなみに地下街のゴロツキだった俺達には新たな役職が与えられ、正式に調査兵団の仲間になった。

リヴァイには兵士長という役職が

俺には兵士長補佐官という役職が与えられた。

 

ファーランくんとイザベルちゃんはどこかの班長になるはずだったが、リヴァイとどうしても離れたくないとダダをこね

リヴァイも彼らを失いそうになった過去があるためそれに便乗。

その結果彼らを含む俺たちの班、通称リヴァイ班ができ、俺たちにも部下が出来た。

 

初めて部下が出来た時は俺も喜んだが、よく考えると誰とも話せないことに気付き絶望したのは記憶に新しい。

その時の俺は荒んだ心を馬に癒してもらうことでどうにか平静をたもった。

 

だが1年も経つと調査兵団の辛い現実に俺達も直面する。

 

部下を可愛く思っていてもふとした時に彼らが死んでいることを知るのは珍しくはない。

初めて部下が死んだ時は衝撃だった。

 

こんなにあっさり死ぬものなのかと。

 

俺はその時初めて調査兵団の厳しさを知った。

まぁ他の班に比べればリヴァイがいる分生存率は高いので、俺たちの班はまだ恵まれている方だが。

 

え?俺?基本的に陣形とかよく分かんなくてほとんど迷子だったりしてるから役に立たないんだよ…

何となく行った方向によく巨人がいるのでぶっ殺してはいるが……

俺としてはそっちは違いますよとかこっちですよって言ってくれれば迷子にならずにすむと思うのだが誰も俺にそんなこと言ってくれないんだよなぁ…

 

まず俺に声をかけてくれる人があんまりいない。

そして俺に注意してくる子なんて1人もいないのが現状だ。

リヴァイやエルヴィン団長達も最初は怒っていたが今は俺が陣形内をフラフラ迷子になるのは諦めてるのかなんなのか知らないが誰も何も言ってくれない。

 

悲し過ぎる…本当に嫌いになると怒ってもくれないというあれだろうか。

ごめんなさいリヴァイ、エルヴィン団長、調査兵団のみんな…これからはいい子にするから許して。

 

 

今日はいいことがあった。簡易拠点を作っている時なんとチ〇コの形の雲を見たのだ。

え!?チ〇コだ!あれ完全にチ〇コじゃん!!

誰かに話したくてうずうずした俺はなんとかリヴァイにアピールして見てもらおうとしたが伝わらなかった。

悲しい。

 

 

俺が悲しみに暮れながら街に帰ると衝撃の事実が判明した。なんとウォールマリアが壊されたらしい。

 

え!?あの壁壊れるの!?と内心驚く俺。

周辺住民の話を聞くとどうやら壁から頭を覗かせるほどの超大型の巨人や鎧を見に纏った様な姿の巨人が出現したと言う。

 

マジかよ…そんなの来たら俺でも勝てるかどうかわかねぇぞ。

 

その後数ヶ月は壁が壊れたことで起こった問題に対応することになった。

俺たち調査兵団も駆り出され、街から離れた村に避難勧告や食料供給のために各地を奔走した。

 

 

数ヶ月後。

王政が生き残った人を壁の外に突撃させるらしい。

おいおいマジかよ。

立体機動装置もないのに外に出るなんて自殺行為だ。それは俺たち調査兵団が身をもって実感している。

そう思い俺がエルヴィン団長に抗議しようとするとリヴァイが止めに入ってきた。

 

リヴァイが言うには壁の中の人類はもうパンク寸前で、人口を減らさなければ壁内で争いが起きるらしい。

俺にそれを止められるなら行けと言われた。

 

マジかよちくしょう!俺はエルヴィン団長の元に行くのを諦める。

 

今年はなんか悲しいことが多いなぁ…

 

 

 

あれから5年

俺たちのやることは少し変わった。

 

今までは壁外に何があるのかの調査だったが、今はウォールマリア奪還の為に安全な道を開拓している。

壁を塞ぐ手立てはまだ見つかっていないが、いつの日か新しい技術やそのほかの方法で壁を塞げるようになった時。

いち早く人類の生存圏を拡大するために、俺たちは日々命をかけているのだ。

 

 

もう一つ変わったことは、以前からあった壁内の住民からの非難の声が大幅に小さくなったことだ。

壁が破壊されたことで壁外調査の重要性を認識したらしい。

以前だったら石を投げられることも少なくなかったが、今はソレもほとんどない。

 

まぁこれらの変化が嬉しいかと言われれば、俺たちがちょこちょこ作っていた補給拠点等が全て使えなくなったので大幅にマイナスの方が多いのだが。

 

 

壁が壊された当初は少し落ち込んでいたエルヴィン団長も、情勢が落ち着くとすぐにウォールマリア奪還作戦のために動き出した。

 

全くと言っていいほど諦めの姿勢を見せないエルヴィン団長に当時の俺はは感動したものだ。

何年もかけた成果がゼロになるなんて俺だったら数日は欝になるのに。

あの人の精神は鋼かなにかなのか?

ボブは訝しんだ。

 

 

 

その日、俺たちが壁外の調査をしている最中。

俺はまたチ〇コ型の雲を見つけた。

 

しかし俺は気がついてしまう。

 

いや、ちがう!あれは!?

 

ち〇ち〇型だ!!小さい!まるであれでは子供のち〇ち〇だ!

俺はまたリヴァイに見てもらおうとしてふと気づく。

 

5年前と一緒じゃね……?

 

ふむ。察するにこれはあれだな、ち〇こは大凶でち〇ち〇は凶と言ったところだろうか。俺はそう予想を立てた。

 

そうなるとこうしては居られない、また壁が危ないかもしれない。

 

けどなぁ……なんてリヴァイ達に伝えようか。

ち〇ち〇型の雲を指してもきっと分かんないだろうしなぁ……

 

と思っていたら意外にもあっさりリヴァイから許可が出た。

やっぱり兄弟だし以心伝心なのだろうか。

そう思い俺は壁に一人で帰還する。

俺一人で行けばみんなより早く壁にたどり着けるだろう

 

帰ってきたらトロスト区が襲撃にあっていた。

マジかよ……やっぱりち〇ち〇雲の導きは間違ってなかったのか…

 

 

壁の破壊はまたしても超大型巨人によるものらしい。くそぅ……1度ならず2度までも。

だが話を聞いてると他にも気になる点があった。

 

なに?人に化けた巨人を見つけた?

どういうことだろうか。

 

話を聞いているとどうやら人間に変身する巨人が現れたそうだ。

俺はそれを聞いて自分が興奮してくるのを自覚する。

 

オラわくわくすっぞ!!

 

なんということだろう。

これが本当ならさぞエルヴィン団長が喜ぶだろうな。あの人は未知のことに対してやたら興味を示すし。

 

そして俺個人としては猛烈に会ってみたい

変身能力とかロマンの塊だろう。

だが詳しく聞くと今その巨人は尋問を受けているらしい。

人類の敵かそうではないか。それを見極めるために

 

こうしちゃいかん。

俺は急いで尋問場所である壁の近くに向かうことにした。

 

壁に向かう俺の耳に轟音が聞こえてきた。

一体何があったのだろうか…

俺は怪訝に思う。

ここからだと何も見えない、急ぐか。

 

 

現場の近くに行くと蒸気に包まれるほぼ骨だけの巨人が見えた。

あれが人に化けた巨人と言うやつだろうか。

だとすれば随分と不完全だな。あれでは動けるかすらも怪しい。

 

 

もう少し近付くとようやく現場の状況が見えてきた。

どうやら1人の兵士が話をしているらしい。

もう少し近づかないと声が聞こえないがなにを話しているのだろうか。

 

 

ようやく話が聞こえる距離にきて俺は驚愕する。

なんと銃や大砲を突き付ける駐屯兵団の兵士達の前で1人の金髪兵士くんが演説していた。

 

おいおいマジかよすごいな、彼…

俺なんて前世では大勢の前でのプレゼンなんておしっこ漏らしながらやってたのに。あの子は若いのにそれをこなしている。

 

はぇ〜最近の若者はすごいなぁ。

なんて考えているとどうやら巨人もろともその兵士を殺すらしい。

俺がそれを止めようとするそれよりも早く金髪兵士くんが敬礼をしながら大きな声で宣言する。

 

「私はとうに、人類復興のために心臓を捧げると誓った兵士!!その信念に従った末に命が果てるのなら本望!!彼の持つ力と残存する兵力が組み合わされば、この街の奪還も不可能ではありません!!人類の栄光を願い!これから死にゆくせめてもの間に!彼の戦術価値をときます!!!!」

 

静まり返る場。

 

俺は興奮しすぎて叫び声をあげてしまう

 

うおおおおおおおおおおお!!!かっけぇえぇぇ!!!

なんだなんだなんだぁぁ!!??

なんか何言ってるのか分からんが凄い頑張ってる金髪兵士くんの熱気に当てられて俺も久しぶりに熱くなっちまった。

 

その後はまぁなんやかんやあってハゲたじいちゃんがその場を取り仕切り始めた。

どうやらハゲなのに偉い人だったみたいだ。

ハゲなのに……

 

金髪兵士くん達やハゲじいちゃんと一緒に壁上で色々話をした結果、巨人化できる兵士くん(演説していた兵士くんちゃんではなかった)の力を使って壁の大穴を塞ぐらしい。

 

マジかよ。ピクシス司令とかいうハゲじいちゃんすごいなぁ。

こんな気が狂った作戦普通出来ねぇぜ。

 

俺も久しぶりに楽しくなってきた。

 

人類の存亡をかけて戦うとか完全に劇場版じゃん、テンション上がるぜ!!

 

 

【悲報】人類の希望が暴走する

俺が暴れようと思ってたら巨人くんが暴れちまったぜ……

おいおいどうなってんだ!?前世の俺みたいにみんなに見られながらの作業におかしくなっちまったのか?

 

まぁ辛いよなぁ…

俺も前世でなかなか工作が完成しなくてみんなに見られながら完成させた小学校の頃の記憶は死んだ今でもトラウマだからな。

 

でも大丈夫!君ならできる!自信をもって!

俺はそう心の中で励ます。

 

その後は俺が迷子になったり、巨人を沢山倒したりしたが、最終的には動いた巨人くんが岩をもって壁を塞いだ。

俺の仕事は群がる巨人をぱぱっと殺して終わり!

無事作戦は成功した。

 

まぁ気を抜いたあと人間に戻った巨人くんが食べられそうになったけどリヴァイが来て助かった。

 

ナイスゥ!!(建前)

ナイスゥ!!(本音)



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イルゼ・ラングナーの手記

イルゼちゃん視点です。

投稿頻度が落ちると言ったな…あれは嘘だ(迫真)
修正だけなら早く終わるので最新話までポンポン行きたいと思います。

短編では3000文字と少なかったのが5000文字まで膨らみました。

どれだけ適当に書いてたんだ…(戦慄)

感想があると嬉しいです。


調査兵団には番犬と呼ばれる人がいる。

 

私の名前はイルゼ・ラングナー。

最近入団を果たしたしがない調査兵団員だ。

 

私は小さな頃から手記を嗜んでおり、日記や絵を書いていた。

訓練生時代は訓練生間の恋愛を書き留めるのが趣味であったし、調査兵団に入ったのもこの好奇心が疼いたのが主な理由だった。

 

そして未だ調査兵団歴の短い私の最近のマイブームは調査兵団員のプロフィールをまとめることである。

仲良くなった人のプロフィールをまとめ始めたのがきっかけだ。

 

噂に聞くエルヴィン団長やリヴァイ兵士長の情報をまとめている時、私ふとは彼についての情報がほとんどないことに気がついた。

 

ケイン兵士長補佐官。通称は番犬

調査兵団においてリヴァイ兵長との二枚看板となっている彼。

ほとんどの団員が彼と話したことがなく情報と呼べる情報がない。

 

そんな彼について興味を持った私はさっそく調べてみることにした。

 

手始めに私の班で1番在歴が長い先輩に聞いてみる。

先輩はどうやら自分の立体機動装置の点検をしているようだ。

 

「あぁ?ケイン兵士長補佐?」

 

先輩は怪訝な表情で聞き返す。

そんな先輩に私は事情をぼやかして説明し、彼について詳しく聞く。

 

「はい。先輩ならなにか知ってるかと思って」

 

初め先輩はなんとも言いづらそうにしていたが、私がそこをなんとかお願いすると渋々話してくれた。

 

「あ〜そうだな、話したことはねぇが実際に見たことなら何度もあるな。まぁ、つっても俺はほとんど何も知らねーぜ?ただ俺が感じたあの人は、なんつーか……」

 

そこで一度話を区切り、先輩は言葉を選ぶように次の一言を吐いた。

 

「そう、本当に野生の獣みたいな人なんだよ」

 

私は意味が分からず聞き返す。

 

「獣?それはどういうことでしょう?」

 

先輩は言葉にし辛そうに話す。

 

「お前も会えば分かると思うが、あの人は喋らないしコミュニケーションもほとんど取らない」

 

そこまでは私でも知っている有名な話だ。

ケイン兵士長補佐官は話さないし、誰かに話しかけられても反応をほとんど返さない。

ただ親しくなれば反応を返してくれるようで、昔から一緒に居たと言われているファーランさんやイザベルさん、そして一部の兵士とはコミュニケーションを取っている。

 

ーー確かに話さないなら獣と言えるかもしれない

私がそう思っていると先輩は続ける

 

「でもな。俺が獣だと思うのはそこじゃない、1番はあの人の纏う雰囲気なんだよ」

 

「特に巨人を殺す時なんて本当にやばかったなぁ」

 

そうしみじみと先輩は言う。

なんとも腑に落ちない説明だ。

 

「まぁ言っても伝わらねぇと思うがお前も会えば分かる。そういう人だ」

 

そう言って先輩は立体機動装置の整備を再開する。もう話すことはないと言わんばかりに。

 

よく分からなかった私は先輩の言葉を聞き、実際に彼と会うことにした。彼に会うには厩舎に行けばいいとの話だ。

厩舎とは馬を飼う大きな小屋だ。

どうやら彼は暇があれば厩舎で時間を潰しているらしい。

 

厩舎はとても大きい。万が一にもストレスで馬が死んでしまわないようにという配慮だ。

何故そこまでするかと言えば答えは簡単だ。

壁外調査をするにあたって馬は必須といっても過言ではないからだ。

 

巨人に追われた時、馬がないと逃げきれずに死ぬ。

馬の調子が悪いと死ぬ。

馬に懐かれず暴れられても死ぬ。

そういう存在だ。

 

よって団内での馬の扱いは非常に気を使う。

もし馬が人に懐かなくなってしまえばそれこそ一人の命を失うことになるからだ。

 

私は厩舎に入る。ズラっと並んだ馬。

私は奥に奥に歩いていく。

 

 

しばらく歩いて行くと彼を見つけた。

 

身長は190センチ程度。髪は目元を隠すように長くボサボサだ。

そんな彼は何百頭という馬と一頭一頭コミュニケーションをとっている。

基本的には自身の馬は自身で管理するものだが彼は自身の馬だけではなく他の馬ともコミュニケーションをとるらしい。

 

彼に近づき話しかける

 

「失礼します、ケイン兵士長補佐。お話を伺ってもよろしいでしょうか?」

 

「…………………」

ケイン兵士長補佐は喋らない。しかし、彼と親しくするイザベル先輩が言うには仲間と認められれば反応が帰ってくるようになると言うことだった。

 

 

彼は一旦動きを止めこちらを見つめてくる。

前髪で普段は見えないその瞳に見つめられて、先輩の言っていたことが少し分かった気がした。

 

綺麗な黒い目だった。まるで赤子のような、もしくは野生動物のようななんの穢れもない目。

私はしばし時を忘れて魅入ってしまう。

すると彼は私に向けていた目を逸らし馬の世話を再開する。

 

ここにいてもいいということだろうか?

私はそう解釈することにした。

 

それから数週間、私は訓練の合間を縫って彼と一緒に馬の世話をするようになった。

その間、私は時間を置いて彼に話かける。

まだ反応は帰ってこない。

しかし根気強く接していればいずれは反応を返してくれるだろう。

 

 

 

彼と一緒に馬の世話をしている間も彼の情報を求め続ける。

 

曰く、彼は調査兵団に入ると初めに受ける座学の訓練を免除されたらしい。

 

私達調査兵団は安全な中継場所や巨人の多く出現しやすい位置、それと非常時に集まるポイントなどを頭に入れておく必要がある。

外では何があるか分からない。

簡単な周辺状況から何時でも自身の場所が分かるよう最初に出来るだけ詰め込まれる。

それが彼は免除された。

 

どうやらリヴァイ兵士長のお言葉で

「奴にこれを理解するほどの頭はない、それに、こいつは地形が分からなくなっても1人で帰って来れるし、帰って来なかったら野生に帰る」

だそうだ。エルヴィン団長も特例としてこれを認めた。

 

 

曰く、彼は巨人に襲撃される位置が分かるそうだ。

彼の壁外調査での動きははっきり言ってイレギュラーであるらしい。

しかし、彼は何故かは分からないが巨人に襲撃される位置が分かるらしく、多くの団員がその命を救われているらしい。

1度エルヴィン団長が彼にそのことを尋ねようとしたことがあるらしいが、結局分からずじまいで今は彼の遊撃を許可しているらしい。

 

 

~~その時の一幕~~

 

薄暗い部屋でリヴァイ、エルヴィン、ケインが向かい合っている

エルヴィンが言葉を切り出す。

 

「ふむ。報告を聞くに……君は巨人の襲撃位置が分かるのかい?もしそうであるなら我々にも知っている情報を提供してもらいたい」

 

エルヴィンがケインにそう聞く。

最近の調査兵団はどこかおかしいと思っていた。

壁外調査に出ると人は死ぬ。これは、調査兵団においては当たり前のことだ。

しかし、最近は死傷者が明らかに少ない。

出ていることには出ているが、その数は前年度は比較にならない。

私の発案した陣形によるものかと思ったが、どうもそうではないらしい。

 

ーー彼だ

 

エルヴィンはそう判断した。

報告書を見るにどうやらここ最近は彼に助けられているものが多いようだ。

これだけの数だ。偶然で切り捨てられるものでは無い。

そう思った私はこうして彼と話す機会を設けた。

 

「………………(フルフルフル)」首を横にふる

 

彼は否定する。

しかし私は追及する。いや、追及しなければならない。

もしかしたら彼の力が人類の希望となるかもしれないからだ。

 

「なら何故君は団員が襲われる現場にいつも居合わせることができるんだ?君に命を救われた団員は大勢いる。

中には霧が出ていたときに助けられた団員もいるということだ」

 

「そういえば君はリヴァイと初めて壁外に行った時も霧の中で多数の巨人を討伐していたね」

 

「何故そんなことが分かる?なにか巨人が襲いにくる前兆のようなものがあるのかね?それともまた違ったことで判断しているのかい?」

 

「特殊な音でも聞こえるのか、それとも君にしか見えない何か特殊なものがあるのか…方法は分からないがなにかあるんだろう?偶然と言うには数が多すぎる」

 

そう、私はその方法が知りたい。

巨人に対抗出来るその方法を。もしかしたら彼の異常な強さと関係があるのかもしれない。

私は彼に提案する。

 

「…ここはひとつ、我々人類のためにその方法を教えてくれないだろうか?」

 

しかし彼は首を振るだけだ。

 

「…………………(フルフルフル)」

 

私は再度彼に確認をとる。

 

「そうか………本当に教える気はないのかね?」

 

「…………………(フルフルフル)」

 

私は諦めきれない。

何か答えられない理由でもあるのか、それともそういう制約なのか。

 

「なにか教えられない理由でもあるのかい?」

 

「…………………(フルフルフル)」

 

しかし彼はそれすら否定する。

 

ーーなら何故……

 

彼の個人的な理由で教えたくないのだとしたら。

 

ーーそれは人類にとって許される行為では無い。

 

エルヴィンは覚悟を決める。

 

「ならば仕方ない」

 

ーー教えたくなるようにしなくてはならないか

 

すると今まで黙っていたリヴァイが動く。

 

「おいエルヴィン」

 

「てめぇ今何を考えた?……もしテメェが今考えたことを少しでもこいつに実行してみろ……俺はテメェを殺す」

 

リヴァイがエルヴィンの首元にブレードを突きつける。

 

「しかしリヴァイ、彼の力は人類にとって大きな1歩になる。それを見逃せと言うことか?」

 

しかし私もそう簡単には諦められない。

彼は何か私達が知らないことを知っている。それを私一人の命で知ることができるのなら…。

私がそう考えているとリヴァイが言葉を放つ。

 

「そうだエルヴィン、俺はそう言っているんだ。それにこいつの力は恐らく常人が理解できる感覚じゃねぇ。

壁が壊された時もこいつは何かを俺に伝えようとしていた。

何キロも離れた状況を察知できる力なんて聞いたところで理解出来るはずもねぇだろ。こいつの力は有用だ、それ以外の意見は必要ねぇ」

 

「ふむ………」

 

私は考える。ここで無理に聞き出すことのメリットとデメリットを。

最悪人類の双剣を両方失うことになる。

もし聞き出せたとしても、それがリヴァイの言うように第六感的な感覚ならばメリットは少ない。

刹那のうちに思考を巡らせた私が下した判断はここで諦めるということだった。

 

エルヴィンは両手をあげる。

 

「よく分かったリヴァイ。君がそういうならこの話はここでおしまいだ。団員にもそう通達しておこう」

 

私はケイン兵士長補佐官を見る

 

「悪かったねケインくん、ただひとつ言わせてもらうと、私は君の力に敬意を持っている。ただその一端が知りたかっただけの愚かな人間なんだ。許してくれ。そして

…これからもその力を人類に役立ててくれ。」

 

そう言って私は頭を下げる。

 

「…………(ぶんぶんぶん)」首を縦にふる

 

どうやら彼も許してくれるようだ。

 

~~その時の一幕終わり~~

 

 

 

曰く、リヴァイ兵士長に髪を洗ってもらっているらしい。

なんでもいつも厩舎にいるケイン兵士長補佐の匂いが気になり水浴びを強要したが洗い方が雑であったためリヴァイ兵士長が洗うようになったとか。

 

曰く、ケイン兵士長補佐の髪をリヴァイ兵士長が切ろうとしたところ前髪を目元が見えるようにすることを嫌がり渋々リヴァイ兵士長が認めたこと。

 

曰く、彼に恩返しがしたい団員達がプレゼントをあげようとしたが受け取ってもらえず、ファーラン先輩とイザベル先輩に頼んで渡してもらったこと。

 

曰く、部下が出来た時に最初は班員を認めず厩舎に浸かりきりになってしまったことなどなど調べていくうちに彼のことが分かってくる。

 

ーーリヴァイ兵士長が異常に出てくるな…

 

私はそう思った。

その疑問を解消するためにケイン兵士長補佐官とコミュニケーションが取れる数少ない兵士の一人であるペトラ先輩に話を聞く。

 

すると衝撃の事実が判明した。

 

「え?なんでケイン兵士長補佐官をリヴァイ兵長があんなに構うかって?」

 

「はい」

 

私はそれが気になって気になって夜も眠れない。

 

「あぁ……そう、あなたまだ知らないのね」

 

ペトラ先輩はそんなことを言う。

知らないとは何なのだろうか?

 

「実はケイン兵士長補佐官………リヴァイ兵長の双子のお兄さんらしいのよ」

 

「え…ぇえええええ!!!!」

 

私はそんな衝撃の事実に叫び声を上げてしまう

 

「まぁ無理ないわよね、私も最初はこれを聞いた時凄いびっくりしたし」

 

「ほ、本当なんですかそれ!」

 

私は信じられず確認をとる

 

「リヴァイ班のイザベル先輩が言ってたから間違いないわ」

 

ーーは、はぇ……

 

そんなふうに情報を集めながら厩舎で彼と一緒に馬の世話すること数週間。

今日やっと彼が反応を返してくれるようになった。

 

「あの…ケイン兵士長補佐。これ食べますか?」

 

それは私が持っている街で買った食べ物。最近見つけて買った焼いたリンゴだ。

少し高かったがまぁいいだろう。食べ物で彼との仲を深められるなら安い出費だ。

 

「……………(こくん)」

 

今までほとんど反応のなかった兵士長補佐がやっと反応を返してくれた。

もぐもぐ食べるケイン兵士長補佐を見て少し和む。

なるほど。ケイン兵士長補佐は食べ物が好きなのか。

私は手記にまた1つ新しい情報を書き足した。

 

 

 

 




早く最新話書きたい……書きたい……

そういえば皆さんはグンタさんは好きですか?
このままだと死んでしまうのですが生きていて欲しい方がいれば、生かしてもいいかなと思います。
女型の巨人襲撃の際、リヴァイ班を誰も殺せないと流石にアニが無能すぎるので今のところはそこで殺す予定です(無慈悲)


感想等でお伝えください。


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兄弟喧嘩

今回はリヴァイの「家族への思い」を象徴する話です。
色々ありますけどやっぱりリヴァイは優しいですからね笑

感想があると凄く頑張れます。
最新話まで出来るだけ早く行きたいですね…


リヴァイside

 

俺たちが調査兵団に入ってから約1年の時が流れた。

あの日、霧の中で俺たちを救ったように、あいつは今も調査兵団員の命を救い続けている。

 

どういうことか分からねぇと思う、最初から説明しよう。

 

 

初めは陣形がなかった頃は気づけなかった奴の異常性がエルヴィンが対巨人用長距離索敵陣形を作った時に顕著になったことからだった。

 

 

索敵陣形を初めて実戦投入した時のことだ。

 

壁外で馬を走らせていると、いつの間にかやつが班から消えていることが分かり、俺たちは困惑することになった。

 

「一体どこに行ったんだあのバカは……!!おい、誰でもいい、あいつを見てねぇのか…!!」

 

俺は叫ぶ。

今まで壁外調査をしていてこんなことは初めてだったからだ。

 

ーークソッ!!どこに行ったんだ!?

俺は内心焦る。

 

「そ、それが我々も目を離したところいつの間にか消えていました…」

「すまねぇ、実は私も……ケインの兄貴、一体どこ行っちまったんだ…?」

「すまないリヴァイ。俺も目を離した隙に…」

 

ファーランもイザベルも他のやつも誰一人やつがどこに行ったか見ていなかった。

これに怒ることは出来ない。現に俺もやつを見失ったからだ。

 

ーーどこをほっつき歩いてるんだ……!

 

しかし俺は一旦冷静になる

壁外では冷静さを欠いた奴から死んでいく。

 

ーーそうだ、落ち着け……やつならそうそうに死ぬことはない

 

しかしやはり俺は不安に駆られる。壁の外では何が起こるか分からない、最悪ケインが死ぬがここで陣形を崩し探しに行く訳にはいかない。

俺たちの勝手な行動でせいで大勢の団員の命を危険に晒すことは出来ないからだ

 

ーーどこかの班に合流でもすればいいが…

その時の俺はそう願うことしか出来なかった。

 

 

その後、俺たちは無事に補給ポイントに着いた。

俺は補給を他の団員に任せケインを探す。

 

俺がケインを探している歩いていると一つの集団を見つけた

 

ーー何をしているんだ…?

 

俺は疑問に思いその集団に近づく。

 

近づくとそこにケインがおり、多くの団員が感謝の言葉を贈っていた。

 

俺はケインが生きていたことに安堵しつつ、そこに向かう。

 

「おいお前たち、一体全体どうしてこのバカに感謝してるんだ?」

 

そう言って俺はケインを叩く。

すると一人の兵士が俺に報告してくる。

 

「リ、リヴァイ兵士長!お疲れ様です!この度私たちはケイン兵士長補佐に命を救われ、感謝を述べていた次第です!」

 

感謝?命を救った?どういうことだ。

俺は他の兵士にも聞く。

 

「おい、そうなのか?」

 

「は、はい!我々第12班はこの度!奇行種に襲われていたところをケイン兵士長補佐殿に救われました!」

 

それを聞いて納得した。どうやらケインはあの時こいつらを助けに行ったようだ。

 

「そうか…どうやら嘘じゃねぇみたいだな…」

 

俺はケインを見て労う。気に食わねぇが団員の命を救ったのは間違いねぇ。

 

「ケイン、良くやってくれた」

 

俺がそういってもケインは何も反応を返さない。俺は少し怪訝に思うが直ぐに納得する。

あぁそうか…まだこいつらは認めてないからか。

俺は集まった団員を解散させる。

 

「お前らもういいぞ、こいつは俺が回収する。ケイン、お前は確かに仲間の命を救ったがそれとこれとはまた別の話だ。こい」

 

俺はケインを引き連れて俺達の班の補給拠点に戻る。こいつが生きていたことを他の奴らにも伝えてやるためだ。

ケインは何も言わずに着いてくる。

しかしどうやらこいつは俺たちにどれだけ心配をかけたか分かってねぇようだ。

 

「フンッ!!」

 

戻る最中に俺はケインを殴る。

 

ケインが勝手な行動をしたのは一年前のあの日を合わせるとこれで二度目だ。

だが俺の対応は1年前とは大きく違う。

 

あの時俺はケインを殴れなかった。

俺はこいつの行動に全てを委ねてしまったのだ。あの時の俺は何も考えていなかった。

 

だが……壁外調査で仲間が死んでいく中で俺は明確にイメージしちまった。

こいつが死んで、片腕だけで俺の前に現れる様を。

無惨に死んでいる様を。

 

 

だから殴る。今度はこいつの行動はきちんと抑制しなきゃいけねぇ。

 

「おいケイン、てめぇ…自分がしたことをよく分かってんだろうな?

今回上手くいったから良かったなで済むわけねぇだろ」

 

ケインは黙っているが心なしか落ち込んでいるようにも見える。

 

「テメェがしたのは明確な規律違反だ、お前には何が見えてるか知らねぇがここは壁の外だ。

お前が対処出来ねぇ巨人がいつ出てくるか分からねぇ、なにかの事故で死ぬかもしれねぇ。

巨人以外の脅威だって出てくるかもしれない。それが分からねぇお前じゃないはずだ」

 

ケインは何も言わない、けれどこいつはしっかりと壁の外が危険だと認識しているはずだ。

この1年で…身に染みているはずだ。

 

 

「だからケイン…これからはどこにも行くな」

 

ケインは何も言わなかった。

しかしその目はどこか抗議しているようにも見えた。

 

 

数ヶ月。

俺の予想に反してその後の壁外調査でもこいつの行動は治らなかった。

いつの間にか消えては団員を助ける。

何度言っても、何度殴ってもこいつは止まらなかった。

 

「おいケインテメェ……!!何度言えば分かるんだ…!」

 

調査兵団の宿舎で俺とケインが向かい合う。

 

俺は何度いっても分からないケインを殴り飛ばし胸ぐらを掴みあげる。

やはりケインが抗議の目を向けてくる。

 

「なんだその目は…!どうやらテメェは自分の立場がよく分かってねぇみたいだな…!」

 

俺がもう一発殴ろうとする手をケインが止める。

咄嗟に蹴るが止められる。

今までは殴られるだけだったが反抗してくる。

どうやら殴られる続けるのは我慢の限界らしい。

 

ーーあぁ分かってる、何年一緒に喧嘩してきたと思ってるんだ。こいつの方が強ぇのは分かりきってるんだよ

 

こいつは強い、今まで見てきた中で誰よりも強い。

 

ーーでも…それでも…俺は止めなくちゃならねぇ。それが俺のお前に全てを委ねてしまった俺の、俺自身に対してのケジメだ。

 

ケインがいっそう厳しい目で俺を睨んでくる

その目に俺は腹が立つ。

まるで自身の行為は間違っていないと言わんばかりだ。

 

「なぁテメェ……言いたいことがあるならはっきり言ったらどうだ?」

 

ケインは答えない

ただやはり俺を非難するように見つめてくるだけだ

 

「テメェはいつもいつもそうだ。何も言わずに勝手な行動ばかり…いい加減うんざりしてたんだよ…!お前の行動には」

 

1度距離を離す

 

「ケイン。ケリをつけよう。俺が勝てば俺の言うことを聞いてもらう。お前が勝てば俺からはもう何も言わん」

 

勝算が高いわけではないが無い訳でもない。

何年も一緒にいればこいつの癖も大体見切れてくる。

なんせこいつをこれまで一番見てきたのは…俺だ。

 

 

それから俺たちは殴り合いの喧嘩を始めた。

でかい音を出していたので団員達は気づいてはいただろうが誰も止めに入ることはなかった。

 

数刻後。俺たちはお互いボロボロだった。

今まで何度か衝突はあったがここまでの殴り合いは初めてだ。

 

俺はケインの上にまたがり、殴る

疲れたのかケインは抵抗の意志を見せない。

 

「いい加減……折れてくれ!!」

 

今まで何度も繰り返した言葉。しかし、ケインは一度として首を縦に振らなかった。

 

ーー何故だ…!!

 

「俺は…!!」

 

一発

ケインを殴る。まだ抗議の目を向ける。

 

ーー何故折れない…!!

 

「お前がいなくなる度に……ッ!!」

 

二発

ケインを見る。変わらない。

 

ーー何故そこまで……!!

 

「俺は………!!!」

 

三発

ケインは俺を見るだけだ。

俺はこいつの意思にとうの昔に気づいていた

 

ーーなんでそこまで……!!

 

「俺は………………!!!!」

 

ーー人を助けようとするんだ……!!

 

四発目は、とうとう出なかった。

俺はケインの上で蹲る。

今まで言えなかった本音が自然と出てくる。

 

 

「お前が心配で……!」

 

ーーそうだ、俺はお前がただ心配だったんだ

 

「お前がいつか……死ぬんじゃないかって……!」

 

ーー初めて仲間を見た時に想像した。

 

「お前がいつか……本当に死んでしまうんじゃないかって………!」

 

ーー身体が帰ってくれば幸運な方、全身を食われてどっかに行っちまったやつもいる。

調査兵団ではよくあることだった。

 

「母さんやケニーみたいに……いなくなるんじゃないかって……!」

 

ーーあの日死んだ母さんや、どこかに行ったケニーのように。またいなくなってしまうんじゃないかって…!!

 

「だから頼む……」

 

ーー頼む

 

「俺の前から…居なくならないでくれ…!」

 

ーー死なないでくれ。

 

その時、俺はケインに殴り飛ばされ胸ぐらを捕まれる。

ケインと目が合う。

ケインは今までにないほど真剣な奴の目をしている。

 

次の瞬間。

俺は今日一番、いや、生まれて一番の衝撃を受ける。

 

「リ………………ヴァ……ィ」

 

ケインが言葉を発する。

 

「お前……言葉が……!?」

 

だがその後に続く言葉に俺は絶句する。

 

「ミ…………テ……テ…………ク……レ」

 

リヴァイ見ててくれ

 

 

俺はケインの本気を見た。

ケインの目が物語っている。

 

ーー俺を見ていろ、俺に任せろ。俺はまだ死んでいない。俺は死なない。

 

そんな風に言われた気がした。

俺はその言葉についに負けを認めてしまう。

 

「それがお前の選択か……」

 

俺は根負けした。

 

「分かった、俺が言ったことだ。もう文句はつけねぇ」

 

ーーだが

 

「ケイン、これだけは守れ」

 

「死ぬな……!死ぬことは俺が許さない……!」

 

ケインの決断は聞いた。俺は納得した。

ならもうすることはないだろう。

俺が出ていこうとドアを開けるとゴロゴロ調査兵団の奴らが出てくる。

 

どうやら全員聞き耳を立てていたようだ。

 

「リヴァイ。君の家族愛の深さは見せてもらった」

「リヴァイ……君、凄く優しいんだね。私感動しちゃった」

 

エルヴィンとハンジが涙ぐみながらそういう。

 

「兵長……俺……兵長のこと誤解してました…」

「俺も……兵長があんな家族思いだったなんて…」

「兄貴ィ……俺は死なねぇから……」

 

それに続いて団員のそれぞれが各々の感想をこぼす。

皆一様に涙を流している。

 

「テメェら……………覚悟は出来てるんだろうな………?」

 

 

 

その後全員もれなくエルヴィンまでもがボコボコにされた。

 

 

ケインside

 

なんかいつも迷子になるんですけどもぉ!!

それをリヴァイが怒っている。

いや!しょうがないじゃん!ならちゃんと俺の事を監視するなりなんなりしてよぉ!

そう思っているとリヴァイが殴りかかってくる、理不尽な暴力が俺を襲う。

ふざけんなよォ!?そっちがその気なら俺もやってやりぁ…!

 

その後、数刻殴りあった末にリヴァイを泣かせてしまった。

おぉよちよち。なんてやって貰えると思ってんのかボケェ!!

しょうがねぇ…俺の本気を見せてやるよォ!

よーく聞けよリヴァイ、1度しか言わねぇからな!

 

「俺を見ててくれ」

 

よーしよし、よく言えたぞぉ俺。多少噛んだがまぁ許容範囲内だろう。

これでリヴァイも俺が迷子にならないように見ててくれるだろう。

一件落着だな!

 

 

なんで監視もないし怒ってもくれなくなったんですか?

え?見捨てられた?俺見捨てられちゃった?

やだぁぁああ!!!見捨てないでくれぇええ!!




今までネタを思いついて1、2時間で興奮しながら書いてそのまま投稿してたので、誤字が酷かったのですが。

今回はなんと書き途中で投稿してるところがあり過去の私に愕然としてしまいました笑


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850年(リヴァイ視点・アルミン視点)

今回はほとんど直すところがなかったので早めです。

ヴェールマン団長って実は誰よりも正解を言ってたんですよね…
巨人は人に化けて人類を欺くって…笑




リヴァイside

 

あの日から俺はあいつの行動を黙認するようになった。

あいつはエルヴィンからも遊撃部隊として認められ。

最近では調査兵団を守る奴のことを番犬と言う奴も出てきたらしい。

 

 

それから4年がたったある日の壁外調査でのことだ。

 

簡易拠点で俺が補給をしている最中、あいつが珍しく何かを主張してきた。

いつもは団員の誰かに感謝されているか、馬と遊んでいるあいつが俺にしきりに何かを伝えようとしている。

 

ーーなんだ?何を伝えようとしている?

 

こんなこと今までにほとんどなかった。

 

「おいどうしたんだ、ケイン」

 

俺が聞いてみる。

するとあいつは身振り手振りである方角を示す。

あの方角は確か………

 

「壁………?おいどういうことだ」

 

俺が怪訝に思い聞き返すも既にあいつは俺の前から消えていた

あいつは何を伝えたかったんだ…?

少し疑問におもったがまぁ、変な形の雲でも見たんだろう。

俺はそう思うことにした。

 

それから少しして壁外調査を再開する。が、巨人の様子がどこかおかしい。

 

ーーなんだ?巨人達がまるでどこかに行こうと…そうまるで壁を目指しているような。

 

そんな気がする。

ケインのこともあって少し過敏になっているのか?

 

俺は自身のことながら疑問を抱く。

しかし、ケインの態度が妙だったこともあり、俺はエルヴィンに念の為そのことを伝える

 

「おい、エルヴィン!巨人の様子がなにかおかしい。それにケインも何か感じているみてぇだ」

 

そういうとエルヴィンはすぐに納得した顔をして皆に指示を出す

どうやらエルヴィンも違和感を感じていたようだ。

 

「ふむ……そうかリヴァイ、お前もか。私も少し違和感を感じていたところだ。巨人の動きが少し不自然な気もする。何があったのかまだ分からないがここは帰還するのが懸命な判断かもしれない。幸い未だ死者は出ていない」

 

そう言ってエルヴィンは皆に指示を出す。

総員!!!撤退!!!

 

そう言って俺たちは帰還した。

まだそこまで進んでいないが、大事を気遣って早く切り上げる。

結果的に俺達の判断は正解だった。

 

 

壁内に戻る俺たちに衝撃の事実が伝えられた。

ウォール・マリアが巨人に破壊されたらしい。

 

ーーケインが伝えたかったのはこの事か…!

 

俺はそう思った。

 

その後数ヶ月、俺達調査兵団も各地に奔走するはめになった。なんせ100年も続いた平和が崩れたんだ。

急増する壁内の人口。失業者で溢れかえる避難所。

それはもうてんやわんやだ。

 

ーーあいつはこの危機を察知していたのか?

 

俺の中で一つの疑問が浮かぷ。

 

ーークソっ!ならもっと強く主張しろ…!なんで途中で諦めた…!

 

理不尽と分かっていながら怒りが湧く

しかし、冷静に考えるとこうも思う。

主張したところで何が出来ると言うのか。

 

100年に1度の大災害みたいなもんだ。

俺たちが少し早く動いたところで何もできなかっただろう。

 

それにしても…

リヴァイの中である不安が募る。

 

ーー超大型の巨人に内門を破った鎧の巨人か。

 

通常種と違いケインを殺しうる巨人の存在にリヴァイは懸念を抱く。

 

ーーあいつは通常種が何体いようとそう簡単に死ぬようなタマじゃねぇが。

壁外でばったりなんてことになれば万が一ということも考えられる。

今は祈るしかねぇか……

 

そう思うリヴァイだった。

 

 

聞くところによると王政がどうやら壁の中に増えすぎた人口を間引くらしい。

 

ーー何がウォールマリア奪還作戦だ…体のいい口減らしに過ぎないだろうに。

 

「チッ胸糞悪ぃな……」

 

しかし、壁内の人口を養えるほど食料がないのも事実。

8割の人間を生かすためには2割の人間を殺すしかない、理屈では分かっているがやはり気持ちのいいものでは無い。

 

ケインがウォールマリア奪還作戦の作戦をことを聞いてエルヴィンの元に行こうとしたが俺が止める。

 

「俺たちにどうこうできる問題じゃねぇ…下がれ」

 

あいつは抵抗したが俺が懇切丁寧に教えてやると渋々引き下がった。

 

ーー本当に理解出来たのかは分からんが…そんなことよりも超大型巨人や鎧の巨人が出た今、第一に自分の命を大事にしろバカ。

 

 

〜壁が壊れてから5年。

あの日から何か変わったかと言うとそうでもなく。

変わらず壁外に俺たちはいる。

変わったとしたらその目的だ。

前は巨人の調査だったものが、今はウォールマリア奪還ルートの開拓になった。

 

あともう一つ変わったことがあるとすれば、多少住民からの圧が減ったぐらいだ。

それと今までの調査兵団が築き上げて来た補給拠点など、全てが使い物にならなくなったが、まぁ、俺のやることは変わらねぇ。巨人のうなじを削ぎ落とすだけだ。

 

 

その日はバカみてぇに晴れた日だった。

いつもと同じ作業をいつもみてぇに行う。補給拠点を作っているとあいつがまた騒ぎ出した。

 

ーー5年前と同じだ。

 

俺は直ぐに察する。

まだ巨人に異常は見られない。

が、今回は間違えねぇ…

俺はケインにすぐさま指示を出す。

 

「ケイン、お前は何かやりたいことがあるんだろう…お前の判断に任せる。俺はエルヴィンに報告する」

 

「………(こく)」

 

するとケインが急いで壁の方に馬を走らせて行く。

 

ーーやはりか…また壁が破られたのかもしれねぇな。

 

俺は嫌な想像をしつつ急いでエルヴィンの元に向かう。

エルヴィンは馬に餌をやっていた。

 

「おいエルヴィン。また壁が壊されたかもしれねぇ」

 

「なに?それは本当か」

 

エルヴィンが作業を止め、俺の話に耳を傾ける。

 

「あぁ、ケインのやつが騒がしい。5年前と同じだ。」

 

するとエルヴィンは考え込む。

 

「そうか……確か彼は5年前もそうだったのだったな。」

 

何も根拠のないこの話。しかし俺はケインを信じている。ならばあとはエルヴィンの判断に任せるしかないだろう

 

「やはり彼には何かあるのかもしれんな」

 

エルヴィンは答えを出したのかすぐさま指示をだす

 

「総員!撤退!壁がまた壊されたかもしれない!至急帰還する!」

 

エルヴィンは俺とケインを信用してくれた。

俺達が移動するには時間がかかる。

 

ーーケイン…何をするのかは知らんが…死ぬなよ。

 

 

アルミンside

 

ーー僕は何がなんでも説得しなきゃならない。だって…ミカサとエレンに約束をしたから…!こんな僕でも友達のために出来ることがあるのなら…そんなの今しかない!

 

それは僕が必死で駐屯兵団にエレンの助命を嘆願している時だった。

 

僕の話を少しでも聞いてエレンが人類の希望だと分かってくれればいい。そう思っていた。

 

しかし

 

「迎撃体制をとれ!奴らの巧妙な罠に惑わされるな!奴らの行動は常に我々の想像を超える!人間に化け!人間の言葉をろうし!我々のことを欺くことも可能というわけだ!これ以上奴らの好きにさせてはならない!」

 

駐屯兵団団長キッツ・ヴェールマンがそう叫ぶ

 

ーダメだ…考えることを放棄してる…

 

僕は絶望する。

 

ーー考えることが怖いんだ…

 

こんなのどうやって説得すれば……

最初から聞く耳を持たない人にどうやって…

 

僕は咄嗟に2人を見る。

 

ーーエレン…!ミカサ…!

 

しかし、2人の目は諦めていなかった。

瞬間僕は理解する。

 

ーー2人はまだこんな僕を信用してくれているんだ…!

こんな状況でもまだ僕が説得できると信じてくれている…!

 

ーー2人がまだ諦めてないんだ!なら僕が諦めてどうする!

 

僕は気合いを入れ直す。

 

僕は渾身の敬礼して叫ぶ。もう理屈に訴えるのはやめだ。

後は覚悟を見せるのみ。大事なのは死ぬ覚悟だ…!

 

「私はとうに!人類復興のために心臓を捧げると誓った兵士!!その信念に従った末に命が果てるのなら本望!!彼の持つ力と残存する兵力が組み合わされば、この街の奪還も不可能ではありません!!人類の栄光を願い!これから死にゆくせめてもの間に!彼の戦術価値をときます!!!!」

 

 

しかし、無常にもヴェールマン団長が手をあげ砲撃許可を送ろうとする。

 

ーーああ…やっぱり、僕じゃダメだったよ……ごめん、エレン、ミカサ…!

 

僕は内心で2人に謝りつつ砲撃に身構えたその時だった。

 

突如駐屯兵団の後ろから雄叫びが聞こえてくる。

 

「ゥォオオオ゙オ゙オ゙オ!!!!!!

 

「な、なんだ!?」

「巨人か!?」

 

僕達に銃を向けていた駐屯兵団の兵士達は音の発生源に銃を向ける

ヴェールマン団長も一時意識をそちらに向ける。

 

ーーた、助かった?

 

しかし僕も混乱する。

 

ーー何がどうなってるんだ……?

 

場が急に動く中で

その人は。皆の注目を集めるその人は近くの民家の屋根に堂々と立っていた。

 

ーーいつの間にそんなところにいたのだろう?

 

そんな疑問が一瞬頭をよぎる

しかし、そんなことよりも彼の格好の方がもっと衝撃だった。

 

屋根の上にいるその男は。なんとここにあるはずのない自由の翼を背負っていたのだ。

 

「調査兵団だと!?」

 

ヴェールマン団長が叫ぶ。

 

「何故だ!?何故調査兵団が我々の邪魔をする!?」

 

ヴェールマン団長は随分混乱しているようだ。

 

しかし彼は何も答えない。

そこで僕はふと思い出す。

 

ーーいや、違う。そうじゃない。

 

ーー答えられないんだ

 

僕は彼を知っている。昔、シガンシナ区で調査兵団の凱旋を見ていた時。エレン達と何度も見たことがある。

 

僕の脳裏に彼のプロフィールが浮かび上がる。

調査兵団の番犬。

人類の双剣と呼ばれる、リヴァイ兵士長と対になる存在。

彼一人のおかげで調査兵団の生存率が上がったのはあまりにも有名な話だ。

 

ーーケイン兵士長補佐官…!!

 

そう、それが彼だ。

その名前の知名度に反して世に出ている情報は限りなく少なく。

ただその戦闘力の高さだけが噂を呼ぶ存在。

いつも陰が薄いためその容姿は不思議と世間に広がっていない。

 

そしてそんな彼の大きな特徴と言えば彼は喋らないことだろう。

同じ調査兵団員の中でも彼が喋っている所をみたことのある人間は殆ど居ないという。

 

一説によれば巨大樹の森で野生から保護されたので人類の言葉が分からないと言われているが本当かどうか分からない。

 

長身の黒髪。目元まで隠れた前髪で隠されたその貌はしかし、目の威圧感だけは隠し通せていない。

 

ヴェールマン団長は何も答えない彼にさらに詰め寄る

 

「なんだ!何か答えたらどうだ!まさか貴様もその巨人を庇う反逆者ということか!?」

 

ーーヴェールマン団長は彼がケイン兵士長補佐官だと分からないのか…!?まずい、僕達のせいで人類の一大戦力を削ぐわけにいかない!

 

「3秒以内に答えないのであれば、さきほどの威嚇を我々への攻撃とみなし、即刻貴様を殺す!」

 

ヴェールマン団長が手を振り上げる。

 

僕は制止の声をかけようとする。

 

「ちょっと待「よさんか……相変わらず図体の割に子鹿のように繊細な男じゃ」

 

するとその時、後ろからヴェールマン団長の手を止める老人が現れた。

 

「ピクシス司令!?」

 

ーーピクシス司令!?

 

「お前には彼の行動の意味が分からんのか。彼はこの若き訓練兵達はまだ殺すべき存在ではないと言っておるのじゃよ。」

 

ドット・ピクシス。駐屯兵団司令。

壁内南側、人類の最重要区防衛の全権を託された人物。

 

「お前にはあの者の見事な敬礼が見えんのか、今着いたところだが状況は早馬で伝わっておる。お前は増援の指揮につけ」

 

そして、美人の巨人になら食い殺されてもいいと明言する生来の変人。

 

「儂は、あの者らの話を聞いた方がいいと思っておる。彼のようにな」

 

そんな人に、僕達は助けられたのだ。

 

 

僕達はその後、壁の上でピクシス司令と話をし。

エレンの力を使って壁の大穴を塞ぐという僕の作戦を説明した。

 

「そうか。アルレルト訓練兵…よく分かった。」

 

ピクシス司令はエレンを見る

 

「どうじゃ、イェーガー訓練兵」

 

そう言いながらエレンの前にしゃがむピクシス司令

 

「お主は穴を塞ぐことが出来るか?」

 

そうエレンに聞く。

しかし、エレンは言い淀む。

 

「現状、自分に分かることはここにいるみんなとあまり変わりありません。

…ので、自分は出来るか出来ないかに関わらず無責任に答える訳には…」

 

当たり前だろう。人類の存亡が自分にかかっているとなればそう簡単に出来るとは言い出せない。

僕がそう考えているとピクシス司令は質問を変える。

 

「おぉ質問を間違えてしまった……」

 

声に真剣味が帯びる

 

「お主はやるのか。やらんのか。どっちだ?」

 

そこに込められた気迫に僕は息を飲む。

これが人類最重要防衛区の全権を任された男。その一端を垣間見た気がした。

ピクシス司令が後ろのトロスト区を見る。まるで君がやらなければこの街の平穏は二度と戻らんと言わんばかりに。

すると、その気迫を受けてエレンが覚悟を決めたように言う。

 

「やります…!穴を塞げるかどうか分かりません…!でも、やります!!」

 

それに嬉しそうに笑ったピクシス司令は僕たちの後ろに控えるケイン兵士長補佐官にも質問を投げかける。

 

「だそうだ……協力してくれるな、ケイン兵士長補佐官」

 

その時、僕は安易に彼を見てしまったことを少し後悔した。

 

ピクシス司令に尋ねられたケイン兵士長補佐官の顔を、僕は一生忘れることはできないだろう。

 

瞳孔は見開き、口角を高く上げ、歯は剥き出しになり、吐く息は熱を持ったように白い。

 

今から起こることが楽しくて楽しくて仕方ないという表情。

その表情を僕は理解できなかった。

 

ーーなんでこの人は……笑っていられるんだ

 

仲間が死んで巨人と戦うということがどういうことか分かった僕にとっては、その表情は今からやることに対してあまりにも不釣り合いだと思った。

それに今から行う作戦は出来るか出来ないかも分からない大博打。

それに命を賭けろと言われているのに。

この人は笑っている。

 

「ッ!!」

横にいるミカサも息を飲む。

そう、それは

 

まるでその表情は……戦闘を、命を賭けたこの遊びを。

心の底から楽しみにしているような。

そんな狂った表情。

 

狂人。脳裏に過ぎるその言葉。

 

でなければやはり巷で言われているようにこう言うべきなのだろう

 

ーーーー獣

 

僕はその日、ケイン・アッカーマンという人物の本当の姿を見た気がした。

 




感想があると頑張れます。
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トロスト区奪還作戦

凄く……疲れました。

ながーい!!説明不要!!
文字数が7000を超えてしまいました。申し訳ないです。



ケインside

 

巨人くんはどうやらエネンだとかアレンだとかそんな名前らしい。まぁめんどくさいから巨人くんでいいか。

 

壁上で金髪訓練生(女……?男!?)くんの案を聞く。

 

どうやら巨人を壁際に引き付け、巨人くんがその隙に壁の穴を大岩で塞ぐというシンプルな作戦のようだ。

 

その際、巨人くんに群がるであろう巨人を少ない人数で討伐する必要があるが。そこは力のある兵士が担当するらしい。

俺はその班に入ることになる。

 

まぁ?ちなみに言うとその班の名前、精鋭班って言うんですけどね?(イキリ)

 

 

 

精鋭班のメンバーと一緒に壁上を走っている最中。

 

俺は内心恐怖を覚えていた。

それは今からの作戦が怖いとかそういうことでは無い。このチームの雰囲気が最悪と言ってもいいからだ。

 

なんか白髪の子はずっと不機嫌だし、それに追随して他の人の機嫌も悪い。

 

もしかしてツンデレだろうか…?

俺はそう思って心の平穏を保とうとしたがダメだった。

どう好意的に見てもただただ怖いだけだったからだ。

 

俺はツン2割デレ8割位じゃないと心が持たないから……

 

まぁ一番はメンバーが合っていないことが原因だろう。

几帳面な子にこんな博打みたいな作戦を頼むんだからそりゃあイライラもする。

そして、まだまだ俺の胃を痛めるのはそれだけでは無い。

 

黒髪の子と巨人くんがずっとイチャイチャしているのだ。

この状況で…!!

………チッ!こんな時に…これだから若ぇ奴は。と思わないでもないがそれはそれでいい。

 

問題はそれに対して白髪ちゃんが怒ることだ。

白髪ちゃん達が巨人くんを叱り、黒髪ちゃんがそれに噛み付く。

そんなやり取りが続いている。

 

もうやめて…!俺のライフはもうゼロよ!!

 

しかしそれにしても黒髪か…珍しいな。

 

 

無事に俺たちは大岩の前に着く。

はぇーでっけぇ岩。ほんとに巨人くん持てんの?

と俺が訝しんでいると巨人くんが本当の巨人に変身する。

全身に筋肉の鎧を纏った見事な15m級の巨人。

 

うぉおお!!かっけぇええ!!

俺は興奮する。

 

前回はほねほね巨人だったが今回はちゃんとした巨人だ。

うん!いい筋肉!(サムズアップ)

 

俺がそう思っていると筋肉巨人が急に黒髪ちゃんを殴り始める。

 

……………ファ!?

 

黒髪ちゃんがそれを避けて話しかけるがそれを無視してなんと自分で自分を殴って自爆した。

そして、動かなくなる。

 

おいおい緊張してんのか?

こういうのは初めて?へーそうなんですか。まぁ最初は緊張もしますよ。

なんて脳内A○が流れるがふざけてる場合じゃない。

 

君は人類の希望なんだぞ!!諦めるなぁ…!!

頑張れ頑張れ出来る出来る君ならできる!!ネバーギブアップ!!

 

俺的には出来るまでずっと見守っていたいが他の人達は違うらしい。

 

作戦は失敗。これからどうするかを話し合い始めた。

この作戦の全権を任されたイアーン?班長はどうやらエレンだけは絶対に回収したいらしい。

白髪ちゃんは反対するがその意見を押し通す。

 

しかしそのためにはとにかく周りの巨人を討伐しなければならない

巨人くんが食われてしまうからだ。

 

急いで指示を出すイアーン班長。

 

「ケイン兵士長補佐官は右の2体をお願いします!」

 

俺も任されてしまった。

よし!2体と言わずトロスト区の巨人全部でも殺しちゃうよーん!

そんな意気込みをもって2体の巨人を殺す。すると奥にまた新しい巨人が見えた。3m級、まぁ少し遠いが片付けておこう。

するとまた別の方向に5m級が見えた。

あれも殺してやるかぁ…仕方ないにゃあ…(おせっかい)

 

きょーじんさーん!あーそーぼ!!

後ろの正面だーーーれだぁぁぁあああ!

 

殺し終わるとまた奥に巨人がみえる

わぁ巨人だぁ〜(無邪気)

そんなふうに俺は巨人を追って行く

 

 

迷った(確信)

おいおいマジかよ……でもしょうがないじゃん!!街の景色が殆ど同じなんだよ!!ずっと地下か馬小屋にいた俺にはこの街のレベルは高すぎた

 

困ったなぁ。うーん……まぁ合流は……しなくていいか?こっから穴まで適当に行って、ちょくちょく道中の巨人を殺していけば大丈夫かな?大丈夫だろう。多分。

俺はそう思うことにした。

 

よし!気合い居れるぞぉ!!

と思っていたら俺はガスがもう殆どないことに気づく。

マジかよ。こんなこと初めてだ。

まぁこんな長期間ガス吹かすことなんて殆どなかったからなぁ。

壁外でも訓練でも限界まで立体機動装置を使うことはほとんどない。それは、巨人とガスがなくなるまで戦闘することは想定もされてないからだ。

 

 

うーん。困ったなぁ。

そう悩んでいると近くに巨人に襲われている兵士がいるようだ。

この身体は性能が良いので遠くの音までよく聞こえる

俺は一旦考えることをやめパパッと助けようと思って近くまで行く。

 

しかし現場に着くと既に兵士は死んでいた。

 

ーーoh......やっぱりグロい…

 

巨人を殺し死体を確認する。

食べている最中だったのでまだ立体機動装置は壊れていなかった。

 

悪いと思いながら自分のガスボンベにガスを補給させてもらう。

ついでにブレードもと思ったが、何枚かブレードが入り切らない。

 

う〜ん勿体ないなぁ。

どうにか使えないか俺は思案する。するとその時俺は天啓を得る。

 

あ、そうだ!咥えていけばいいじゃん!どうして今までの人はこんなことにも気づかなかったんだろう。

やっぱり俺って天才かなぁ〜。

 

 

穴に急ぐ、道中やたら襲われている兵士が多かったがまぁこっちに注目してない巨人なんてザコよザコ。移動している片手間に殺すなんて俺にとってはちょちょいのちょいよ。

 

2、3回死んでいる兵士からガスとブレードを回収した。

巨人多すぎンゴ。まぁ、助けた兵士からもブレードを貰ったりしているから問題はないのだが。

 

 

そんなふうに寄り道を続ける俺の耳に轟音が響いてくる。

 

ゴォン…ゴォン…

 

それと一緒に動くバカでかい岩。どうやら巨人くんが復活したらしい。

 

よし!もう穴まで少しってとこだな!

俺は少し嬉しくなる。

しかし俺は考える。このまま作戦が終わってもいいものか。

せっかくの機会を棒に振るのかと。

 

俺はこの機に自身の有能さをアピールすることに決める。

最近の俺は調査兵団からまるでペットのような扱いなのだ。

それは気に食わん…!!ここで有能さをアピールすればその待遇も変わるだろう。

 

うん!!補給した後でガスもブレードも沢山あるしここは俺の強さを皆んなに自慢するためにも大判振る舞いしちゃうよーん!

 

 

穴にまだ辿り着いていないがそこら中に巨人がいる。

巨人めちゃめちゃ多いなぁ!!

時間に対して巨人があんまりいないと思ったら

どうやら普通の巨人は巨人くんに引き寄せられているらしい。

だがそれなら都合がいい。

俺の有能さをアピールするチャンスだ。

 

俺は巨人に突進していく。

入れ食いだァァァ!ヒャッハァ!!

 

 

やっと辿り着いたぜぇ…

俺は遂に穴の前にたどり着く。

どうやらなかなか食いつかない巨人を駐屯兵団が自らの身体を使っておびき出しているようだ。

 

うわぁ、普通あんなの自殺行為だよ……

でももう大丈夫!何故って?私が来たァ!!!!

俺は巨人に飛びかかる。

てめぇら皆んな三枚おろしじゃけぇ!!!!

 

 

巨人を殺し尽くすと巨人くんの方も穴を大岩で塞げたらしい。

 

いやったァァァ!!人類の勝利だァァァ!!

 

そう俺が油断していると死んでいると思っていた巨人が一体起き上がって巨人くん達に襲いかかる。おいおい殺しきってなかったの!?

まずいまずいまずい。

もうお仕事終わりだと思ったのと調整ミスったのでガスがもうない!

助けて!リヴァエモン!!

すると本当にリヴァエモンが助けに来た。

俺は信じてたよ!!(嘘)

やっぱり俺はいい弟を持ったなぁ…(しみじみ)

 

アルミンside

 

「エレン…!何をしているんだ…!エレン!」

 

僕は今、大岩の近くに来ていた。

僕は壁に巨人を集める役割だったが、作戦失敗の信煙弾が上がっても帰って来ないエレン達に疑問を抱き。ピクシス司令に聞いたところ、どうやらエレンが巨人化したまま動かなくなってしまったらしい。

それを聞いて僕は絶句する。

 

ーーそんな、どうして…それに何故陽動班に引き上げ命令が出されないんだ

 

するとピクシス司令はこう言う。

 

「この作戦で多くの兵士が死ぬだろう。それが分かっていて儂はこの作戦を実行した。ここで失敗してはいそうですかと諦めるということは、彼らの死を無駄死にするという事じゃ。精鋭班の連中には…それこそ死ぬまで戦ってもらう」

 

そう言うピクシス司令に僕は何も言い返すことが出来なかった。

 

ーーなら……

 

「僕が行きます……!」

 

言ってどうにかなるのかも。僕に何が出来るかも分からない。それでも、僕の作戦で少なくても数百人が死んだ。

 

ピクシス司令の言う通りだ…

これで何の成果も挙げられませんでしたなんて、そんなの死んで行った仲間が無駄死にだ。

だからなんとしてもこの作戦を成功させなくちゃならない。

そう思い僕はここに来た。

 

僕は動かなくなったエレンに乗りながら

近くに来たミカサに現状を尋ねる

 

「ミカサ!!作戦はどうなった…!!エレンはどうなっているんだ!」

 

「アルミン!危険だから離れて!その巨人にはエレンの意思が反映されてない、私が話しかけても反応がなかった!もう誰がやっても意味が無い!」

 

どういうことだ…?それにエレンの身体が再生してないのも変だ…

 

「作戦は!?」

 

「失敗した、でもエレンを置いて行けないから皆戦ってる 、だけどこのままじゃ、巨人が多くて全滅してしまう!」

 

ーーそんな…

 

「そうだ!ケイン兵士長補佐官は…!?」

 

彼がいればまだ何とかなると僕は思った。

 

「消えた…!死んだのかもしれないし、怖気づいてどこかに隠れているのかもしれない、けど、私は知らない」

 

ミカサが言う言葉に僕は自分の耳を疑う。

そんなことが有り得るのか…?人類最高戦力の一端だぞ…?

周りを見渡す。悲惨な戦場だ…

 

ーーそうだ、今は考えてる時間が無い。

 

僕はエレンの上でブレードを構える

 

「後頭部からうなじにかけて縦1m、横10cm……」

 

とにかくエレンをここから脱出させないと。

エレンがいなくなれば、人類に、この壁内に。未来はない。

 

「僕がエレンをここから出す!ミカサはここを巨人から守ってくれ」

僕がそういうとミカサが呆然としたよう呟く

 

「え…何を?」

 

ーー大丈夫、僕なら出来る

 

「巨人の弱点部分からエレンは出てきた。それは巨人の本質的な謎と恐らく無関係じゃない。大丈夫、真ん中さえ避ければ、死にはしない」

 

ーーそうだ、大丈夫、落ち着け

 

「ただほんのちょっと……痛いだけだ!!」

 

そう言って僕はエレンにブレードを突き刺す。

 

ーー巨人を刺した感触ってこんななんだ…僕初めて知ったよ。

 

エレンが激しく暴れる。しかし、それもすぐに収まる。

 

「アルミン!無茶はやめて!」

 

ミカサが僕に制止の声をかける。だが僕は引かない。引けない。

 

「ミカサ!今自分に出来ることをやるんだ!ミカサがいけば助かる命があるだろう!エレンは僕に任せて行くんだ!」

 

ミカサはそれを聞いて渋々だが増援に行く。

後は僕の役割だ。

 

「エレン!聞こえるか!しっかりしろ!ここから出なきゃ僕らみんな死ぬぞ!」

 

僕は叫ぶ。数十cm奥にエレンはいるはずなんだ。きっとこの声も聴こえてるはず

 

「巨人の体になんて負けるな!とにかく早く、この肉の塊から出てくるんだ!」

 

反応がない。ピクリとも動かない。

 

「エレン!出てこい!早く!エレン!エレン!!!!」

 

何度も何度も呼びかける。ダメで元々だ…

少しでもエレンに声が届いている可能性があればそれでいい

 

「お母さんの仇はどうした!巨人を駆逐してやるんだろう!お母さんを殺したやつが憎いんだろう!」

 

エレンがいるであろう部分を叩く。

ーーエレン、起きてくれ

叫んでも反応のないエレンに僕は寄り添い、語りかける

 

「…………エレン……

僕達はいつか。外の世界を探検するんだろう?」

 

昔を思い出す。エレンやミカサと一緒に遊んだあの平和な時代を。

 

「この壁の外のずっと遠くには、炎の水や氷の大地。砂の雪原が広がってる。

僕の父さんや母さんが行こうとしていた世界だ…」

 

僕らの夢を語る。

昔よく話していたじゃないか。

 

「忘れたのかと思ってたけど、この話をしなくなったのは僕を調査兵団に行かせたくなかったからだろう?」

 

今でもよく覚えてる。小さい頃、あの木の下でエレンと一緒に夢中になって外の世界について話し合った

 

「エレン、答えてくれ」

 

ここから出て、またもう一度話そうよ……エレン

 

「壁から1歩外に出れば、そこは地獄の世界なのに」

 

巨人と戦って分かった。やっぱり壁の外は地獄だ

 

「父さんや母さんのように無惨な死に方をするかもしれないのに」

 

壁の外はそんな危険に満ち溢れた世界なのに

 

「どうしてエレンは……外の世界に行きたいと思ったの?」

 

 

 

ーーそんなの俺がこの世に生まれたからだ

 

遂にエレンが動き出した。

 

 

大岩を担いで歩くエレン。

 

「ミカサァ!エレンが勝ったんだ!今、自分の責任を果たそうとしている…あとはエレンを扉まで援護すれば、僕らの勝ちだ!」

 

大声で叫ぶ。

それを聞いたイアン班長はすぐに指示を出す。

 

「総員、死守せよ!!我々の命と引き換えにしてでも!エレンを扉まで守れ!絶対に巨人を近づけるな!」

 

しかし、巨人はエレンに引き寄せられている。

エレンの援護をしようとミタビ班が身体を使って巨人を引きつけようとする。

 

「おい何をやっているんだ!ミタビ!」

 

「巨人が俺たちに食いつかないんだ!だったら食いつくまで近寄るしかねぇだろ!」

 

ーーあんなの自殺行為だ……平地では立体機動装置も効果を発揮しづらい。あんなの死にに行くようなものだ。

 

ーーけど…もうあれしか方法がない

 

それを見て他の班の人達も覚悟を決める。

 

「そうだ……やってやる」

「もうこれしか人類は生き残れないんだ」

 

その場にいる全員が巨人をおびき出そうとしたその時。

 

 

巨人の一体が血を吹き出して倒れた。

 

ーーなんだ…!?

 

それだけじゃない。一体、また一体と倒れて行く。

良く目を凝らせば巨人の群れの中に一人の兵士がいた。

 

ーーあれは……!!

 

「ケイン兵士長補佐官……!?今まで一体どこに…!」

 

巨人の身体を這うように動き。巨人の身体を切り刻んでいくケイン兵士長補佐官。

 

早い。とてつもないスピードだ。しかし、あんな速度を出せばタンクが満タンでも15分程度でガスが尽きてまう。

 

ーーそれに…

 

なんであの人は巨人を切り刻むような真似をしているんだ…?あんな無駄な行為をして……あれじゃあ刃もすぐにボロボロになってしまうのに…

 

しかし、僕の疑念や心配も関係ないと言わんばかりにケイン兵士長補佐官は恐ろしいスピードで巨人を殺していく

 

「なんだあれ……」

「どうなってるんだ…」

「おい…俺は今、何を見てるんだ…」

 

ただうなじを削ぎ落とすだけじゃない、巨人の身体を切り刻んで殺す様にエレンを援護しようとしていた人の足が止まる。

 

その間にも巨人が死んでいく。

誰が言ったのかは定かではないが、一人の兵士がポツリと言葉をこぼす。

 

「獣………いや、あれは」

 

彼を呼ぶ声に畏怖が混じる。

 

ーー悪魔だ

 

すると、彼は巨人から少し距離を取り素早く何かを始める。

 

あれは…?

よく見ると彼は刃を何本も口に咥えながら戦っていた。

僕はたまらず叫んでしまう。

 

「バカじゃないのか…!?」

 

1本や2本ならまだ可能かもしれない。しかし、口いっぱいに刃なんて咥えながら戦ったら普通、立体機動装置でかかる負荷に顎が耐えられずに滑り落としてしまうのが関の山だろう。

 

しかし、それを彼は強靭な顎を使い実現している。

 

ーー本当に人間なのか…?

僕の中で疑念が沸き起こる。

 

今はどうやらそのうちの2つを取り出し刃の交換をしたらしい。

 

そしてまた殺戮が始まる。

先に出ていったミタビ班の人も無事彼に救われ足を止めている。

 

まるで全ての巨人を1人で殺すと言わんばかりの気迫。

その後も何度も何度もブレードを交換し、遂に口のブレードが尽きた時。

あんなにいた巨人の殆どが殺し尽くされていた。

 

「おいおい、調査兵団ってのはあんなのがゴロゴロいんのか…?」

 

ジャンの声が聞こえる。

 

ドスン………ドスン………

 

僕らがケイン兵士長補佐官に気を取られている間にエレンは穴のすぐそこまで迫っていた。

 

「ッ!!ハァッ!!!」

 

ケイン兵士長補佐官は元々いた巨人の殆どは彼が殺したが今まさに穴を通り抜けた巨人まではカバーしきれない。

ミカサが今入ってきた巨人の目を切り、巨人が倒れ伏す。

 

遂にエレンが穴の前まで来た。

 

後は岩で穴を塞げば。人類の勝ちだ……!!!

 

「行っけぇぇえええ!!エレン!!!!」

 

壁に大岩を叩きつけるエレンが叫ぶ

 

「「ヴォォォオオォォォオ゙オ゙!!!!」」

 

ちょうど巨人を殺し尽くしたのか彼も同時に叫ぶ。彼もエレンに負けない声量だ。やっぱり彼は人間じゃないのか…?

 

 

 

緑の信煙弾が上がる。

 

「皆………勝ったよ」

リコ班長が涙を流す。

 

ーーこの日、人類は初めて巨人に勝利した。

 

 

「アルミン!エレンは?」

 

僕は巨人から出てきたエレンを回収しようとする。

 

「信じられないくらい高熱だ…!!」

 

「急いで壁を登らないと…!」

 

周辺の巨人は殆どいなくなったが、まだ安心はできない。

 

ミカサも手伝いエレンを回収しようとする。しかし

 

「体の一部が一体化しかけてる、引っ張っても取れない!」

 

ミカサの力があっても取れない。

するとリコ班長が来る。

 

「切るしかない…!」

 

そう言って彼女がエレンの腕と巨人の間を繋ぐ筋を切る。

僕は後ろに倒れ込んで落下してしまう。

 

すると、僕達に巨人が襲いかかってくる。

 

ーーなんで…!一帯の巨人はケイン兵士長補佐官が全部殺した筈じゃ…!?

 

よく見るとそれはミカサが目を切った巨人だった。

 

「エレン…!アルミン…!」

 

ミカサが急いでこちらに来ようとするが

 

ーー間に合わない!

僕はそう思い、せめてエレンを庇う。

 

その時、巨人のうなじが後ろから削がれる

 

ーー一体誰が……?

 

「自由の……翼?」

 

そこに居たのは人類の双剣のもう一振。

リヴァイ兵士長だった。

 

「おい!ガキども……これはどういう状況だ…!」

 

 

ーーその後、ケイン兵士長補佐官と合流を果たした調査兵団と駐屯兵団工兵部の活躍により。ウォールローゼは再び、巨人の侵入を阻んだ。

トロスト区に閉じ込めた巨人の掃討戦には丸一日が費やされ。

壁に群がった巨人の殆どが榴弾によって死滅し、僅かに残った巨人も主に調査兵団によって掃討された。

 

その際、4m級一体と7m級一体の巨人の生け捕りに成功する。

 

だが死者行方不明者83名。負傷者653名、人類が初めて巨人の進行を阻止した快挙であったが、それに歓喜するには失った人々の数があまりにも多すぎた…

 

 

 




「おいケイン、どうした、さっさと壁に戻るぞ」

「ヴゥ………」

「はぁ?ガスを全部使い切った…??バカが…俺のガスを分けてやるからさっさとこっちに来い」


ケイン君の戦闘イメージは「悔いなき選択」で怒った鬼リヴァイを想像して貰えれば分かりやすいと思います。


原作での死傷者数。

死者行方不明者207名負傷者897名


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ジャンの憂鬱

ここら辺から慣れてきたのか直すところがほとんどないので爆速投稿です。




ジャンside

 

「なんとか…なんのかよ…」

 

ウォールローゼ奪還作戦。

エレンの巨人化、大岩の移動など不確定要素に任せ切りのクソみたいな作戦。

俺はその作戦中に立体機動装置が故障し、トロスト区の民家の中に隠れていた。

 

ーーなんでだよ…!明日には内地に行けたってのに…!

 

この世界の不条理さに俺は内心愚痴を零す。

外を見るとまだ俺を追ってきた巨人が目の前を歩いている。

 

ーーどうしろってんだ

 

しかし、ここで俺はあるものを見つける。

俺が隠れている民家の前で死んでいる兵士だ。それもご丁寧に立体機動装置は見た限りでは壊れていない。

 

ーーどうする?壁の中に巨人がいなくなるまで待つか?それとも危険を承知であの立体機動装置を取りに行くか?

 

「そんなの……決まってんだろ…!」

 

覚悟を決める。

俺は巨人がいなくなったのを見て外に飛び出す。

 

「巨人がいなくなるまで待つことなんて出来る訳ねぇ!」

 

ーーそうだ。この作戦が成功する保証なんてどこにもねぇ!巨人がいなくなるのを待つ…?んなこと出来るわけねぇだろ!

 

俺が着けていた立体機動装置は道に捨て、誰かも分からない死体が着けていた立体機動装置を回収しようとする。しかし。

 

「クソっ!なんなんだよ!巫山戯んなよ!!こんな時に!!」

 

どこかが絡まっているのかなかなか身体から離れない立体機動装置。

こんな時にもツイてない。

 

ゴゥン……ゴゥン……

 

後ろから足音が迫ってくる。

俺は焦る

 

ーーはやくしろ、はやくしろ!

 

「ジャン!落ち着け!」

 

焦って頭に血が登った俺にマルコの声が飛び込んでくる。

 

「マルコ!?何やってんだ!?」

 

ーーどうしてここにいるんだ…!?逃げた筈じゃ…!?

 

するとマルコは俺を助けるために巨人を引き付けてくれる。

 

「ラァッ……!!」

 

やっと立体機動装置が外れる。

俺はすぐにそれを体に装着し一刻も早く壁に急ぐ。

振り返ると目の前に巨人がいた。

 

 

咄嗟に俺は立体機動装置を使ってその巨人を飛び越えようとする。

 

「ッ!!アッ………!?」

 

しかしまたもや俺に不幸が起きる。

 

ーー今日はとことんついてねぇ!

 

「ちくしょう!どうしてトリガーがこんなに硬てぇんだ…!!」

 

呆然とする俺に巨人が迫る。

俺の体は動かない。

 

「ジャァァン!!」

 

そんな俺にコニーが助けに入ろうとする。

 

その時だった。

 

「ン゙ゥッ!!!」

 

急に何かが横切ったかと思うと巨人が殺される。

 

ーー何が起こったんだ…?

 

混乱する俺。

 

「は……?え……?」

 

どうやら俺を助けようとしたコニーも混乱しているらしい。

俺の前に一人の男が降り立つ。

 

そこに居たのは黒髪の長身、そして自由の翼を背負った兵士。

ケイン兵士長補佐官だった。

 

「ジャン!後ろだ!」

 

マルコの声が聞こえてくる。

しかし、俺が振り向くよりも早く彼が動く

 

「ンン゙ッ!!」

 

強烈な脚力で俺の横を跳んでいくケイン兵士長補佐官。

 

ズドォン………!!

 

振り向くと俺の脇に巨人が落ちてくる。

どうやら俺に飛びかかった巨人をケイン兵士長補佐官が空中で殺したようだ。

 

「すげぇ……」

 

俺は柄にもなく感嘆してしまう。

こんなにもあっさりと巨人を殺してしまう。

 

ーーこれが調査兵団なのか…

 

巨人を殺したケイン兵士長補佐官が地面に降り立つ。

するとお礼を言う暇もなくケイン兵士長補佐官がどこかに行ってしまった。

 

「なんだったんだ…あの人」

 

「無事か!ジャン!」

「大丈夫だったか!ジャン!」

コニーとマルコも俺の元に来る。アニも遅れて合流する。

どうやらアニも一応助けようとはしていたらしい。あの人のせいで出番はなかったようだが…。

 

ーーマルコがいるということは、マルコを追いかけた巨人もあの一瞬で殺したのか…

 

「あ、ああ。俺は平気だ」

 

「良かった……ならすぐに壁に登ろう!」

 

マルコに促され俺は壁に登ろうと立体機動装置のトリガーに指をかける。さっきは失敗したが、トリガーが固いことを知っていれば何とか使えるだろう。

 

するとケイン兵士長補佐官が俺たちの前に戻ってくる。

その手に抱えるのは先程俺が道に捨てた立体機動装置だ。

 

ーーというかなんでこの人はブレードを2本口に咥えてるんだ?

 

冷静になると彼に違和感を覚える。

奇妙なことをする彼に俺は興味を持つが、彼が俺たちに話しかけてくることでそれも消える。

 

「ン゙ン??」

 

ケイン兵士長補佐官が俺の立体機動装置を差し出しながらなにか聞いてくる。

 

ーーな、なんだ?

 

俺は意味が分からずケイン兵士長補佐官に聞き返す。

 

「ケイン兵士長補佐官。それはどういう……」

 

すると見かねたマルコが俺に耳打ちしてくる。

 

「きっとケイン兵士長補佐官はジャンの立体機動装置を貰ってもいいか聞いてるんだよ」

 

「……………(コクッ)」

 

それを聞いてケイン兵士長補佐官が頷く。

なんで分かるんだマルコ…

 

「え、あ、まぁ、大丈夫ですけど…」

 

ーーそんな壊れた立体機動装置を何に使うんだ?

 

俺が許可を出すとケイン兵士長補佐官は自身の立体機動装置にガスを補充し始める。

俺はそれでやっと納得がいった。なるほどガスを補充したかったのか。

しかしケイン兵士長補佐官の行動はこれだけではなかった。

次の行動に俺は目を疑う。

なんと俺がまだ使っていないブレードを全て口に咥え出したのだ。

 

「ちょ、ちょっと、そんなに咥えて立体機動なんて出来るはずはないじゃないですか…!!」

 

そう言った時、俺は気づいた

 

ーーこの人のブレードがまだ一本も消費されてない…?

 

そう、彼の立体機動装置に備え付けのブレードを入れる箱は満タンだった。

ジャンの明晰な頭脳はこれがどういうことかを瞬時に導き出す。

 

ーーこの人は、今までも刃を咥えながら戦っていたのか!?

 

つまりジャンが見た彼が咥えている2本の刃は余りと言うこと。それまでにもこうして十数本の刃を咥えながら戦っていたのだ。

 

ーーそんなこと、人間にできるのか….?

俺はこの人が人間か分からなくなってくる。

 

すべての刃を咥え終え、ケイン兵士長補佐官はその場を立ち去る。

 

「ジャン、僕達は壁に戻ろう、ここにいても危険なだけだ」

 

考え込む俺にマルコがそう言ってくる。

 

「お、おう!」

 

俺はどもりながらもそれに答えた。

 

 

俺たちはなんとか壁に戻る。

ケイン兵士長補佐官はまた巨人と戦っているのだろうか。

 

「それにしてもすげぇ人だったよな…」

 

コニーがそんなことを言う。

 

「なんつうか…こう……俺バカだから言葉に出来ないけどよ。ほら、あの人の雰囲気っていうのか?立ち振る舞い?って言うのかまぁなんでもいいけどよ、ありゃあ」

 

ーー獣みてぇだったよな

 

今回ばかりはコニーの言葉を否定出来ない。現にいつも人をバカにするアニすら口をつぐんでいる。

 

その後しばらくお互いが軽口を叩き合う。

戦場から戻れたことで気が抜けたのだろう。

 

しかし、俺たちがそんな会話をしていると。

急に轟音が聞こえてくる。

 

ゴォン……ゴォン……

 

ーーなんだあれは……

 

上から見る俺達には大岩がひとりでに動いているように見える。

 

「岩が動いてる……?いや、違う………!あれは………」

 

俺が大岩の正体を言おうとするとアルミンの声が響く。

 

「ミカサァ!エレンが勝ったんだ!今、自分の責任を果たそうとしている…あとはエレンを扉まで援護すれば、僕らの勝ちだ!」

 

やはりどうやら動かなかった死に急ぎ野郎が動いたらしい。

イアン班長が指示を出す。

 

ーーエレンを守れば……人類の勝利……?

 

それを聞いた駐屯兵団の兵士達が自分の身体を使ってエレンに近寄る巨人を呼び寄せようとする。

 

ーーこうしちゃいられねぇ!

 

「俺たちも援護するぞ!」

 

そう言って壁を降りる。

 

しかし。

 

……ドスン

 

穴の近くにいた巨人の一体が倒れる。それもただうなじを削がれただけではなく全身から血を吹き出しながら。

 

……ドスン

 

また一体、巨人が崩れ落ちる。あれは最初にエレンを援護しようと身体を張ったミタビ班へ迫っていた巨人だ。

 

ーー何が起きてるんだ…?

 

俺は状況を把握するよう努める。

よくよく見ると超高速で巨人の群れの中で巨人の血に濡れた緑のマントが見える。

 

「ケイン兵士長補佐官……!?」

 

ここで調査兵団は1人しかいない。先程助けられたケイン兵士長補佐官だ。

 

どうやらケイン兵士長補佐官が巨人の群れの中で戦っているらしい。

 

ーー無茶だ、あの数の巨人をひとりでなんて……!

 

しかし、俺の脳裏に先程のケイン兵士長補佐官の戦いが浮かぶ。

もしかしたら…彼なら…そう思う。

 

ーーしかし、なんでケイン兵士長補佐官はあんなにガスを吹かしているんだ?それに戦い方もおかしい。まるで巨人を痛めつけるように殺している?あんなんじゃ刃がすぐに使い物にならなくなるというのに…

 

それにしても凄い速さだ。

俺には目で追うのもやっとと言ったところか。

 

すると、ケイン兵士長補佐官が一旦離れボロボロになった刃と口の中の刃を交換する。やっぱり口に咥えたブレードは交換用だったらしい。

そして再び始まる殺戮。

 

「あんなのが調査兵団にはゴロゴロいんのか…?」

 

屋根の上から彼の戦いを見る俺の口から言葉が漏れる。

それに続いて言葉を零すマルコ

 

「獣……いや、あれは」

 

次の言葉は意外なことにアニから放たれる。

 

「悪魔だ……」

 

アニにしては珍しく震えた声だったので俺はアニを横目で見る。

そして俺は心底驚愕した。

俺が目にしたのは、顔は青ざめ、体はガクガクと震えているアニの姿だったからだ。

 

ーーこんなアニは初めて見る。そんなにあの人が怖いのか…?

 

「ど、どうしたんだアニ!大丈夫!?」

 

それを見てアニを気遣うマルコ。

しかし、アニの震えはおさまらない。

 

「触んないで…!」

 

アニがまるで逃げるようにマルコを遠ざける

一体どうしたって言うんだ…アニ。

 

 

sideアニ

 

「悪魔だ……」

 

ケインとか言う調査兵団の兵士を見て私は確信する。

 

ーーやっぱりこいつらは悪魔の末裔だったんだ…!

 

それにしてもあんな奴がいるなんて聞いてない。

あんな…悪魔みたいな奴がいるなんて

あれじゃあ私の巨人でも勝てるかどうか。

 

どうする…私はお父さんの元に必ず帰る。

そのためにはエレンと接触しなければならない。

でも一体どうやって…?

頭の中がぐしゃぐしゃになる。

 

ーー舐めていた…所詮は一体の巨人に10人もいなければ勝てない弱者だと思っていた…!まさかあんな化け物がいるなんて…

 

エレンはこれからきっと国に軟禁されるだろう。

その時は護衛に奴がつくかもしれない。そうなればエレンを生きて連れ帰るのは不可能。どうにかして先にエレンの情報を仕入れることが出来る立場にいなければ…

幸い私は上位10名で憲兵団になれる。

あんな怪物、ずっと手元に置いておくなんて多分しない。

解剖か、それとも……

男二人は調査兵団に送ろう。憲兵団に入るのは私1人で十分だ。

 

どうなるかは分からない。けど

 

ーーやるしかない

 

 




マルコは死にません、生かします。
ジャンが何故調査兵団に入るかはまぁ……まぁ……(目逸らし)
何とかします。

ソニーとビーンは憲兵団に処理してもらうことにします。
現王政は万が一にも巨人の謎に迫ってほしくないので展開的には問題はないと思われます。

それじゃあアルミンがアニに勘づくイベントもなくなるやん!と思ったそこのあなた。
大正解です(白目)
ア゛ア゙〜〜なんかの拍子にアルミン気づいてくれないかなぁ(チラッチラッ)
マルコと協力すれば何とか行けそうな気もしないでもないので頑張って貰います。


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第57回壁外調査(ケイン視点)

あと少しで追いつきます。
今回も手直しは少なめです。




ケインside

 

巨人くんは正式名称エレン・イェーイくんと言うらしい。なんてパリピな名前なんだ…完全にキラキラネームじゃないか…

 

そのエレンくんは今、地下牢に幽閉されている。

どうやら巨人になっても大丈夫なようにという処置らしい。

 

今現在そんな地下牢の前にいるのが俺、エルヴィン団長、リヴァイの3人だ。

エルヴィン団長は調査兵団に入るのにエレンくんが相応しい人間なのか見極めたいと言っていた。要するに面接か。

 

エレンくんが起きるのを待つ。

待っている間暇なのかエルヴィン団長が色々話しかけてきた。

大半の質問はよく分からなかったのでお茶を濁して適当に頷いておく、エルヴィン団長は勝手に納得してくれた。

 

 

エレンくんが起きた。

どうやらまだ状況を把握出来ていないようだ。酷く混乱している。

 

そりゃこんな寝起きドッキリされたらそうなるよなぁ…

俺も前世の教室で寝たフリをしている時に目の前に蜘蛛の玩具をお置かれててめちゃくちゃ焦ったのを覚えている。今でも許さんぞぉ…田中ァ…!

 

俺が密かに田中への怒りを燃やしているなか、

エルヴィン団長とリヴァイがエレンくんに質問していく。

どうやらあまりにもエレンくんの都合のいい状況にリヴァイが怒っているみたいだ。

エルヴィン団長がリヴァイを諌める。

 

エレンくんが人類の鍵だとかエレンくんの鍵を見せながら言うことで高度なダジャレを言うエルヴィン団長。

 

エレンくんも困惑している。

するとエルヴィン団長がエレンくんに質問する。

 

これから君は何をしたいか…?

 

ここは重要だぞ…!辛いかもしれないが頑張れエレンくん!

俺も前世の面接で「この会社であなたは何をしたいんですか?」みたいな抽象的な質問が1番苦手だった。なんて答えたら正解だったんだ…!今でも分からん…!

 

するとエレンくんがとんでもなく恐ろしいことを言い始めた。

とにかく巨人をぶっ殺したい…?なんて恐ろしい…!(ブーメラン)

 

あぁこれは落ちたなと俺が確信しているとリヴァイが光るものを感じたとか言い出す。

そしてエレンの調査兵団入りをOKした。

なんで?

 

 

エレンくんの処遇を決める裁判的なものが開かれた。兵法会議って言うらしい。偉そうな髭面のおじいちゃんが言ってた。

 

会議が始まる。どうやら憲兵団はエレンくんを解剖したいらしい。

 

ヴェ!!

 

気持ち悪過ぎてゲボが出そうだ。調査兵団に入るからにはもう既にエレン・イェーイくんは仲間なんだよ…!

だから解剖なんていい訳ねぇだろ!俺がさせねぇ!!

しかし、そんな俺の思いとは関係なく会議が混沌としてくる。

 

ウォールシーナの金持ち達は門を全て塞ごうと言ったり、その案をウォール教とかいう壁を崇める宗教団体の司祭が止めてお互い喧嘩している。

 

仲間割れしてらァ…!ハッ…!お前らのお里が知れるなぁ!!

 

ーーでもこんなお互いの意見をぶつけるだけでエレンくんの処遇は決まるのか…?

 

俺がそう思っていると、この状況を良くないと判断した偉そうおじいちゃんが一言で場を止める。

はぇ〜溢れ出る威厳ってこういう人のことを言うのかぁ…

 

偉そうおじいちゃん略して偉おじがエレンくんに尋ねる。

君は人類に貢献する意思はあるのか?と

エレンくんは必死に自分の意思をアピールしようとするがトロスト区奪還作戦で暴走したことを偉おじに詰められる。

するとエレンくんはこちらを見て信じられないという顔をする。

 

どうやらエレンくんは覚えていないようだ。

あんなに緊張したんだ。そりゃ頭が真っ白になって覚えてないのも仕方ない…

俺は一人納得する。

 

確認を求められた黒髪ちゃん、確かミカサと呼ばれていた女の子はエレンくんに攻撃したことを肯定する。

しかし、同時に今まで何度も助けられたとも主張する。

 

そんな黒髪ちゃんの発言を好機とみた憲兵団がミカサちゃんの言葉を遮りエレンくんに攻撃を再開する。

 

やばい、エレンくんの過去の罪状まで挙げられて場の流れが悪い方向に持っていかれた。

憲兵団を支持する民衆がエレンくんへ罵倒を浴びせる。

ついには関係のない俺やミカサちゃんにまで飛び火する始末だ。

 

でもなんで何もしていない俺まで人間かどうか疑われなくちゃ行けないんだ…俺関係ないやろ…!

俺は内心キレちらかしていたがエレンくんが遂にブチギレたことで平静を取り戻す。

 

自分よりも怒っている人を見ると冷静になるあれだ。

エレンくんが憲兵団や内地の金持ちに俺が言いたいことを全部言ってくれる。

 

そうだ!そうだ!やっちまえ!

 

俺は内心でエレンくんを応援する。

 

言いたいことを全て言い切ったエレンくんに拍手喝采を脳内で送っていると急に飛び出したリヴァイがエレンくんを蹴り飛ばした

 

ぇええええ!?

なんで?なんで蹴ったの?

その後も蹴り続けるリヴァイが「躾=痛み」という持論を展開しだす。

えぇ…そんな怖い……あの頃の優しいリヴァイはどこに行ったの…あれ?そんなのいたっけ?(記憶違い)

 

最終的にエレンくんが暴走した時にリヴァイが殺すことを条件に無事エレンくんを調査兵団に就職させることに成功した。

よろしくなぁエレンくん。まだ君とは喋れないけど。

 

 

エルヴィン団長の命令でリヴァイ班は調査兵団でも選りすぐりの精鋭を集めた調査兵団特別作戦班という名前に変更される。

 

まぁリヴァイ班でええやろ(適当)

メンバーも変わって、俺、リヴァイ、イザベルちゃんにファーランくん、ペトラちゃん、そしてその他諸々になった。

………え?その他諸々の紹介?俺…イザベルちゃんとファーランくん除くとペトラちゃんぐらいしか仲良くないからあんま名前覚えてないんだよなぁ。

まぁ総勢は俺を含めた9名だ。少なっ!!

 

 

 

現在俺たちが向かっているのは旧調査兵団本部というところらしい。見た目は完全にお城だ。

ここで俺たちは次の壁外調査に出るまでの1ヶ月間エレンくんが暴走しないよう、そして暴走した時に直ぐにエレンくんを殺せるよう共同生活を送る。

 

しかし、ここで生活するとなると一つ大きな問題があった。

馬だ。

馬ァ……馬どこ?……ここ?

何百頭と戯れていた俺としてはたった数頭では物足りない…!

早速この生活の悪い点が見つかった。

仕方ないのかなぁ。そう思って俺はガックリと肩を落とす。

 

肩を落とす俺にエレンくんが話しかけてくれる。

どうやらエレンくんの中での俺は巨人を沢山殺したすごい人で、幼なじみを救った命の恩人らしい。

俺が喋れなくても何かと気を遣ってくれる。

 

エレンくん…めっちゃいい子だわ(チョロい)

 

今はオレオくんとか言う美味しそうな名前の人がエレンくんに絡んでいる。

あっ…舌噛んだ……痛そう…

 

何時間か歩き、俺たちはついに目的の場所である雑草だらけの古城に着く。

 

ーー人が住めるのか…?

なんて俺が思っていると

すぐさま綺麗好きなリヴァイが掃除を始める。

俺もリヴァイに怒られながら掃除をする。

 

うぅ…そんな怒らないでよォ…ちゃんとやるからァ…

 

 

夜、ハンジ分隊長の開けてはいけない扉を開けたエレンくんが拘束されている間、俺はエレンくんについてリヴァイにまた色々尋ねられる。

 

大半は分からないことだったが、一つ明確に分かったことがある。

エレンくんは良い奴だ。こんな俺にも優しくしてくれるし、優しくしてくれるし、そして優しくしてくれる。

古城に行く間の時間や掃除の時間など、俺によく話しかけてくれた。

うん、やっぱり良い奴だ、エレンくんは。

 

次の日、捕獲した巨人が何者かに殺されたらしい。

 

ーーえ!?マジ??

 

俺はそう思うが納得もする。

まぁ、どうしても巨人が憎かったんだろう。仕方ないのかなぁ…

巨人を憎んでいる人間なんて、それこそごマンといるだろう。

犯人は見つからなそうだな…

 

俺は漠然とそんな気がした。

 

 

 

今日は新兵の勧誘式がある。

なんかワクワクするよね。ガチャみたいで(失礼)

今年はどんな子が入るんだろう。

 

エルヴィン団長の演説が始まる。調査兵団の死亡率やウォールマリアにあるエレンくんの地下室の話しまでする。

え!?それ話しちゃうの!?とは思ったがまぁ何か考えでもあるんだろう…

 

しかしそれにしてもだが今年はいつにも増して脅すなぁ。誰も残らないんじゃないのか?

俺と同じふうに思った団員がエルヴィン団長に苦言を呈していた。

 

最終的に残ったのは30名ちょっと。やっぱり少なかったけどアレで残った人達はなんなのかな?死にたいのかな?

やっぱり調査兵団は変人が集まるって本当だったんだなぁ…

 

 

今日はエレンくんの巨人化の実験をした。

井戸の中でエレンくんが巨人になるというものだったが、何故か失敗してしまった。

 

まぁ誰にでも失敗はあるよ!肝心な時に失敗しなくて良かったじゃないか!

俺はエレンくんを内心で慰める。

と思ったら外でのランチの最中エレンくんが巨人化した。

うぉい!!ちょっと待てぃ!!

エレンくんが巨人化することで皆が興奮してしまった。ドウドウステイステイ

皆待とうよ!誰だって失敗はあるじゃん!

エレンくんを許してあげようよ!あんなにいい子なんだよ!?

 

その後ハンジ分隊長がエレンくんの巨人化した腕に興奮して事態はうやむやになった。

夜、ハンジさんが考察するには、どうやらエレンの巨人化はなにか目的がないといけないらしい。

皆でごめんなさいをした。エレンも許した。やはりいい子だ。

 

その時何故か皆手を噛みだしたので俺も噛んでおいた。

まぁ、誰だって勘違いはあるさ!

次頑張ろう!!

 

 

俺にとっては苦しい1ヶ月がようやく経ち。俺たちリヴァイ班は第57回壁外調査に出発する

今回の目的はストヘス区からシガンシナ区への道を開拓すること。

1からの開拓なので問題は多いが出来ないことはない。

調査兵団は凄いのだ。

 

 

恒例のように俺は迷う。

今日はどっちに行こうかなぁ〜

よし!こっちだ!俺は適当に方角を決め馬を走らせる。

 

1時間程経つがまだ巨人とはほとんど遭遇していない。

 

ーーまぁ普通はこんなもんだよな。

 

俺は前回40体近くの巨人を討伐できたので少し物足りなさを覚えてしまう。感覚がバグってしまったという自覚はあるのでどうにか自分を納得させた。

 

 

フラフラしていると右翼索敵班と合流する。

皆信煙弾をあげてくれるから迷っても合流がしやすくて助かる。

皆に混じって馬を走らせていると俺たちの右から巨人が現れた。

 

ーーなんだ?

 

しかしその巨人は随分不思議な形をしていた。

普通よりも筋肉の露出が多いしやけに速い。それに遠目から見ると分かりづらいが美人にも見える。

 

しかし、驚くのはそこだけじゃない。その巨人は多数の巨人を引き連れて現れたのだ。

数は30体を超えているか?うわぁ、増やし鬼の最後の光景じゃん……

普通なら絶望するその光景に俺は歓喜する。望んでいる時に望んだものが来たのだから当然だろう。

 

さぁまずはお前だ美人巨人!

と思って突進すると、美人巨人が急に進路を変えこちらを迂回し始めた。

そして体勢を低くして急加速。

 

ーー速い……!?あれじゃあ馬でも追いつけないだろう…

 

俺は内心叫ぶ

 

ーークソゥ…!奇行種か…!?せっかくのチャンスを…!

 

俺はあの巨人を追えない。

何故ならここであの巨人を追ってしまったらここら一帯の人達は皆死んでしまうからだ。

 

しょうがない。こいつらを片付けてから後を追おう。

俺は美人巨人の討伐を一時諦める。

見た限りだがあいつは異常に速かったので他の人の手には負えなさそうだ。

さっさと片付けて後を追おう。

そう考え俺は馬上でブレードを構えた。

 

 

 

巨人を片付けた。結構時間がかかってしまったが、全て殺した。

 

まずいなぁ……周りの人達と協力したので一応ガスとブレードは節約できたもののいかんせん数が多すぎた。

ガスがもうあまりないしブレードも残り数枚だ。

 

皆も壁外でガスは大切だろうし、今回は運良く死人が出なかったので死んだ兵士の立体機動装置から補給も出来ない。

仕方ない。ブレードを数枚もらい。俺は美人巨人を追う。

皆から少しづつガスをもらっている時間もない。

急がないと。

 

 

巨人の足跡を追い俺は巨大樹の中に入る。はぇ〜いつ見てもでけぇ森だァ…

それにしてもあの巨人はどこに行ったんだ?

草が多い茂っていて足跡を見失った俺は周りを探す。

 

ーー必ず近くにいるはずなのだが

 

するとその時、まるで雷が落ちたかのような音が近くでする。

あっちっぽいな、俺は馬を止めて音の発信源に出来るだけ急いで向かう。

 

 

現場に着くと既にリヴァイ班の人達が美人巨人と戦っていた。

リヴァイもイザベルちゃんもファーランくんもいない…どこに行ったんだ?それに1人足りないぞ?

少し疑問に思うがそれも一瞬だ。

俺も加勢する。ガスもブレードもほとんどないので短期決戦になるだろうと踏んでいたが既に満身創痍。

やっぱりリヴァイ班の人達は優秀だなぁ。

美味しいところだけとる形になってごめんね…皆。

あとはうなじを削いでおしまいだ。

 

しかし近づく時に気づく。あれ?片目残ってんジャーン。切っとこ。

 

俺はうなじに直行するルートから方向転換し、目を潰す。

よし!(現場猫)

ほないただきまーす!

 

俺は次こそはうなじを削ごうと思ったが、そういえば顔をよく見てないことを思い出した。

 

せっかくの美人巨人、最後だし見とくか。

 

そう思って巨人の顔側に回ろうとするとうなじに変な水晶が張り付き始めた。

なんだ…あれ?

俺が疑問に思いつつも顔を確認するとやっぱり美人だった。

 

これならハゲじいちゃんが喜ぶだろうなぁと考えたその時だった。

 

 

巨人が突然大声をあげる。顔を確認しようと口元にいた俺は堪らず距離をとった。

 

そして

 

 

 

巨人が高速で回転を始めた。

 

……………へ?

 

 

 




グンタさんは死んだ!!(迫真)

まぁリヴァイ班を1人も殺せないとなるとアニがあまりにも無能なので殺します。
グンタさんファンの皆様、大変申し訳ありません!


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第57回壁外調査(アニ視点)

やっと短編に追いつけました。
長かったなぁ……(遠い目)

次回から新作になります。
修正ではないので時間はかかると思いますが、必ず出します。


アニside

 

「はぁ………」

 

私はまたため息を吐いた

ーー次の壁外調査でエレンを奪取する……でも

 

その方法が見つからない。アニはため息を吐く。

 

 

あれからエレンはやはり拘束された。

エレンが殺されるようなら最悪無理やりエレンを捕まえようと思っていたが、どうやら調査兵団に入ったらしい。

 

ーー死ななかったのは良かったが…調査兵団か。

 

アニは陰鬱な気持ちになった。

 

 

それからしばらくして私は憲兵団に入団した。

今日も一応仕事だが、新兵の私たちに官給品やら賄賂やらで美味しい思いをする仕事が回されることも無く。

日々の雑務や見回りをする毎日。

 

ーーそれに最悪なことに

 

「どうしたの?アニ?」

 

こいつと持ち場が一緒なんて……

マルコ・ポッド。私と同じ104期訓練兵卒。

二人ともトロスト区での戦闘経験があるということで、何かと一緒にされることが多い。

 

「…………別に」

 

「あはは…そっか。」

 

あの悪魔みたいなやつを見て、あの日の私は取り乱し過ぎた。

それこそこいつから今でも心配される程度には。

今はこいつと一緒に見張りの最中だ。

 

しばらく黙っていたマルコだったが、また口を開く。

 

「ここは平和だね……まるでトロスト区のことが嘘みたいだ」

 

「…………」

 

私は答えない。

 

「ねぇ……気になってたんだけどさ、

あの日からアニは何故か人を避けているよね」

 

マルコは私にそんなことを言ってくる。

私はそれを否定する。

 

「…………避けてない」

 

そう、避けていないはずだ。

 

「そう?」

 

「そう」

 

もし私が人を避けてるとしたら、まるで私が未だに奴の幻影に怯えているみたいじゃないか。

そんなことは絶対にない。

 

マルコは少し考え込み私に話し始める。

 

「ならいいんだけど……」

 

マルコは少し迷って話し始める。

 

「もしかしてアニも警戒してるのかなって」

 

「は?」

 

ーーなんの話だ?

 

「壁の中にいるはずの………巨人化出来る人間を」

 

ーーッ!!??

 

マルコは黙っている私を無視して話を続ける。

 

「こんなこと、他の人に言わないでくれよ?僕だってまだ半信半疑なんだから。気付いてそうなアニだから言ったんだ」

 

「…………どういうこと?」

 

私は慎重に情報を探る。もしかすると既に私たちの情報は出回っているのかもしれない。それを探るために。

 

「アニも気がついてると思うけど、今回のトロスト区の襲撃は5年前のシガンシナ区の襲撃とは明らかに違う。」

 

マルコはそう言う

 

「多分、襲撃した巨人の目的は壁を壊して巨人を壁内に入れることだと思うんだ……でもそうすると今回の襲撃で内門を壊さなかったのは明らかにおかしい。」

 

マルコは自身の推理を私に語る。

 

 

「前回と今回で明確に違うこと」

 

マルコは私を見つめる。

まるで全てを知っていて話してるかのような、透き通った目

 

「エレンの存在だと思わない?」

 

そうマルコは言う。

 

「僕はこう仮定したんだ。きっとエレンの存在は襲撃者からしてもイレギュラーだった。そして、エレンの存在は壁の破壊よりも優先することだった。だから内門を壊すことを途中で中止した」

 

「でもそうなると疑問になるのがいつエレンの存在に気がついたか」

 

「あの場だと思うんだ」

 

「トロスト区でエレンを見た数百人、下手したら数千人の内の誰かが巨人じゃないかと僕は考えている」

 

「まぁ、その内の何人かは分からないけどね。もしかしたら巨人になれる人間っていうのは結構沢山いるかもしれないから」

 

そこまで言ったマルコは私の顔を見て話をやめる。

 

「あははっ……アニもそう考えてるんだと思ったけど違ったみたいだね」

 

「ごめん!今のはほとんど僕の妄想だから忘れて!」

 

マルコはそう言い私に手を合わせて謝ってくる

 

でも私は聞かなきゃいけない。

 

「あんたはさ……私が巨人だとか、思わなかったわけ?」

 

「え?」

 

マルコはバカみたいな顔をする。

私は続ける。

 

「もし今の話が本当だとしたら」

 

「私もあの場にいたんだ、私が巨人の可能性もある」

 

「それなのに、なんでそんな話を私にするの?」

 

「なんで私を疑わないの?」

 

「どうして…」

 

ーー私を仲間だと信じているの?

 

問い詰める私にマルコは頬を掻きながら、まるで何ともない事のように言ってくる。

 

「だってアニは僕らの仲間だろう?」

 

私は絶句する。そんなことで…

 

「あははっ…でももしアニが巨人なら、僕は相当ツイてないことになるね」

 

「でも僕はアニが巨人じゃないと思ってるよ」

 

明確に宣言する。

 

「……それはなんで?」

 

私は聞く。

 

「だって、もし本当にアニが超大型や鎧の巨人なら5年前の君はまだ10歳だ、僕は実際見たわけじゃないけどトロスト区は凄惨な光景だったに違いない。」

 

「そんな地獄を10歳の子供が作ったなんてとてもじゃないけど考えられないよ」

 

マルコはそう言ってのける。

 

「そう……でもマルコ、あんた自身が言ってたじゃないか。鎧や超大型以外にも巨人はいるかもしれないって。

そしたら私が巨人じゃない証拠にはならないと思うんだけど」

 

私は疑問を返す。

それでもマルコは自分の意見を変えない。

 

「うん、そうだね……でも一番はそんな理屈っぽいことじゃないんだ」

 

マルコは朗らかに私に笑いかけながら言う。

 

「ほら、アニって意外と優しいから。」

 

「もし壁内人類を絶滅させようとしてるならそんなに優しく出来ないと思ったんだ」

 

マルコは笑ってそう言う。

 

ーーバカじゃないか……そんなんで私を信じて。

 

私は…………巨人なのに。

 

「……バカじゃないの?………それに私は優しくなんてないよ」

 

「………そっか」

 

 

それからまた数日後、私たちはいつもの見張りをしている。

またマルコが話しかけてくる。

 

ーーこいつはなんなんだ…

私は呆れたようにマルコを見る。

 

「ねぇ、アニ。今度の壁外調査、変だと思わないかい?」

 

マルコが一人でベラベラ喋る、私は偶に相槌をうつ。

これが私たちのここ最近の日常だ。

 

「新兵を連れての壁外調査。あまりにもことが早すぎるし、今回はエレンだっている。なのにも関わらずエルヴィン団長は1ヶ月後の壁外調査に行く。」

 

「エレンの戦術価値を見せたいと言えばそうだけど、僕には違う考えもあると思うんだ」

 

「もし本当に何者かがエレンを狙っているとしたら、どこかしらで仕掛けてくると思う。」

 

「僕は立体機動装置が十分に活用できない壁外に仕掛けてくる。そう思うんだ。」

 

「アニはどう思う?」

 

マルコは私に聞いてくる。

ーーよりにもよって私に聞くな…!でもその通りだよ…!

 

私は動揺する内心を隠し、冷静に返答する。

 

「………分からない、けどそれが本当ならエルヴィン団長は本当に無能だね、人類の希望をそんな危険なところに送るんだから」

 

マルコは少し考え込み、私の考えを肯定する。

 

 

「うん、そうなんだよ……でもエルヴィン団長は多分すごく賢い人だ。

エルヴィン団長が残した実績を見ればその凄さが分かる」

 

「だから僕はエルヴィン団長には何か考えがあるんだと思ってる、それが何かは分からないけどね。」

 

「………ふーん」

 

私は興味無さげにしながらマルコの話をしっかり聞く。

なるほど。

 

「ねぇ、マルコ。あんただったらそんな危険な場所でエレンをどこに配置すると思う?」

 

私は試しに聞いてみる。

これで何かしら有用な情報が得られれば良し、得られなくても別に失うものはない。

 

「う〜んそうだなぁ……難しいけど僕なら……」

 

マルコはそう言って近くの石を拾い地面に何かを描き出す。

 

「これは調査兵団で使われている長距離索敵陣形なんだけど、ここを見ると……」

 

そう言って何事もなくマルコは解説を始めようとする。

 

ーーまてまて

 

「あんたなんで描けるんだよこんなもの」

 

私はマルコを呆れた目で見る。

 

「あはは……まぁ趣味みたいなものだよ。それでエレンの位置だよね」

 

そう言って解説を再開する。

 

「エレンほどの重要人物がまず前線にいることは考え辛い」

 

そう言って前方に斜線を引く。

なるほど確かに。

 

「なら後方かと言えばそうじゃない、巨人が人間を追ってきて後方全線になるから。」

 

後方にも斜線を引く。

ふ〜ん……なるほど。

 

「そうなると中心付近にいるはず…けど多分それよりも少し後方じゃないかな。」

 

「前方より後方の方が安全に感じるし……まぁここら辺は人間心理みたいなものだからあんまり根拠はないけどね」

 

私はそれを聞いて得心がいく。

ーーなるほど、中央後方か……理屈で説明されるとそんな気もする。

 

するとマルコが顔を上げて私を見る。

 

「もしかしてアニはエレンが気になるのかい?」

 

「なら安心してもいいと思うよ、エレンはきっと人類で王の次に安全な

場所にいるから」

 

マルコが自信を持ってそういう。

 

「これは先輩に聞いた話で眉唾なんだけどね、なんでもケイン兵士長補佐官には不思議な力があるらしいんだ」

 

「不思議な力…?」

 

私は聞き返す。

 

「そう、一説だと「巨人の位置が分かる」とか、「人の死に際が分かる」とかなんだけど最有力なのは、「人の不幸が分かる力」なんだって。

なんでもケイン兵士長補佐官は巨人に襲われそうになった人の元にいつも駆けつけるらしい。

まぁ、本当かどうかは知らないけどね。」

 

マルコはそういう。

 

「でもケイン兵士長補佐官はこの力で何人もの兵士を今までも救っているらしい。

前回のトロスト区奪還作戦でも救われた人は大勢いた。僕らだってジャンが助けられたところを見たはずだ。」

 

ーーへぇ、そんなことが。

 

というよりこいつ本当になんなんだ。ライナー達よりもよほど有能じゃないか…

 

私はもっと核心に迫ったことを聞く。

最近の一番の悩み。

マルコの話が本当だとすれば、いずれ直面するであろう課題

 

「ねぇ、もし、本当にもしもあんたが巨人だったとしたら、ケイン兵士長補佐官ににどうやって勝つ…?」

 

私が聞くと級の急にマルコが顔を上げる。

その顔はどこか言うのを躊躇っているようにも感じる。

 

「もしかしてアニって……」

 

ーーさすがに気がついたか…?

 

クソッ…そうだとしたらさすがに気が抜けてた。でもここでバレるのはマズい。

最悪ここで殺すか?

 

「エレンのことが好きなの?」

 

「は、はぁ??何言ってんのあんた?」

 

私は予想外の質問に焦る。

 

ーーバカなのか?本当にバカなだけなのか?それとも私を騙すためのブラフなのか?

 

「だってさっきからエレンのことを心配してるみたいな口ぶりだし、ケイン兵士長補佐官が知性を持った巨人に勝てるか心配してるみたいだったから…」

 

そこまで気付いていて私の正体に気が付かないのはどうなんだ。

 

ーーでも……それだけ信用されているってことだよね…

 

私はなんとも言えない気分になる。

 

「……そんなんじゃない、ただ……気になっただけ」

 

「……そっか」

 

マルコはそこから追求してこない。こういうのが引き際を弁えた人間というのだろうか。

 

するとマルコは私の質問に対して唸る

 

「うーんそうだなぁ……ケイン兵士長補佐官に勝てる方法かぁ」

 

さすがのマルコでもこれには悩むようだ。

 

「超大型巨人や鎧の巨人みたいに特殊な能力があったら不意打ちで勝てるかもしれないけど……それがないとしたら……」

 

「それがないとしたら?」

 

私が聞くとマルコが即答する。

 

「うん、無理だね。逃げるしかない」

 

その結論に私は肩を落とす。

しかしマルコは重ねて言う。

 

「あの人の強さは普通じゃないし、まず勝てない」

 

「でも」

 

ーーーー負けないことならできるかもしれない

 

 

あの日から数週間。

私は今、壁外で巨人を引き連れて走っている。

 

ーーライナーはああ言ってたけど……

 

私はこの作戦を実行する前に事前にライナーからエレンの場所を報告してもらっていた。

 

右翼側にエレンがいる。

その情報を聞いた時、マルコの言葉が脳裏を過ぎった。

 

余程のバカでなければそこにはエレンを置かない。

 

一応ライナーの言葉通り右翼側から攻めるがきっとエレンはいないだろう

エルヴィンはどうやらバカじゃないようだし

 

ーーマルコが言うには確か……中央後方

 

私が恐らくブラフだろう右翼側から攻めるのは単にライナー達を信頼しているとかそんな考えではない。

 

ーーマルコの話が本当だとするなら…きっと釣れるはず。

 

私、マルコを頼りすぎか…?いや、あいつが有能なのが悪い。

 

私は遂に右翼側の陣形を見つける、すると一頭の騎馬が突貫してきた。

それは1ヶ月前に見た、忘れもしないあの悪魔だ。

 

奴は危機に瀕した状況に現れるらしい。

なら巨人を引き連れていけば必ずあの悪魔は現れるだろうと思っていた。

 

ーー来た……あの悪魔だ……!!

 

私は奴が見えた瞬間に迂回する。

やつには勝てない、勝てたとしてもできるだけ戦いたくはない。

だからこそ、この巨人30体で足止めする。

私の速度なら奴がここで足止めを食らっている間にエレンを捕まえて脱出できる。

 

そう考えた私は陣形の中心に急ぐ。

 

道中に調査兵団と何回か戦ったが、急いでいたのでさっさと殺す。

逃げる奴は無視した。

 

ーー急げ、早く、早く。

 

 

陣形の中央部隊が巨大樹の森に入ったようだ。何故?私は疑問に思ったがしかし考えている時間はない。

私も後を追う。

道中に何度も何度も調査兵団が邪魔に入る。

極力手早く殺す。

 

 

そして。

 

ーーいた……!!

 

エレンを見つける。これでエレンを奪い、逃げれば私の勝ちだ…!

私は勝利を確信し、速度を上げる。

 

ーーあと少し、あと少し…!

 

エレンに手が届く。

そう思われたその瞬間だった。

 

「打てぇえええええ!!!」

 

ドババババババババ!!!!

 

膨大な破裂音が響き渡り私に何かが突き刺さる。咄嗟にうなじは守ったが私は身動きが取れなくなった。

 

ーー何が起きている?

 

 

私は考える。

まさかこれがマルコの言っていた「何か」か?

 

「リヴァイ、イザベル、ファーラン。よくやってくれた」

 

「あぁ、後列の犠牲がなければ成し遂げられなかった……だがそのおかげで、こいつの中の奴と会える……中で小便チビってねぇといいがな」

 

 

会話が聞こえてくる、どうやらここに来たのは私を捉えるための罠だったようだ。

 

ーーどうする?どうする?

 

うなじを切ろうとする調査兵団に硬質化で何とかうなじを守っているとエルヴィンとか言うやつが号令を出す

 

「発破用意!!!」

 

ーーまずい……!

 

私の手を吹き飛ばすつもりだ…!

それはまずい…いくら硬質化でもそれは防げない…!

 

ーーなら一か八か…!

 

アアアアアアア!!!

 

賭けになるが私は巨人を呼ぶ。

これで運が良ければ逃げ切れるだろう。

 

 

何とか脱出した私は再びエレンを探す。

事前に用意した緑の信煙弾を発射することでエレン達を呼び寄せることに成功した。

緑は作戦成功の信煙弾だ。

 

ーー来た…!

 

1人を不意打ちで殺し、直ぐに巨人化する。

 

しかし。

 

エレンを守る護衛部隊は予想以上に強敵だった。

 

目を抉り取られる。

何も見えない。うなじを隠す。

 

腕の筋肉を削がれる。このままだとうなじを削がれるだろう

けど、こいつらは知らない。

 

私は普通の巨人とは違う、そこを突けば不意打ちで何人か殺し、この連携を破壊することも不可能ではない。

 

私は片目に再生力を集中し、片目のみ早く直す。

 

しかし、片目を治した私が見た光景は急に方向転換し、私の目を狙うあの悪魔だった。

 

ーー時間を掛けすぎた…!

 

私は自身の失敗を悟る。

 

せっかく再生させた目を奴に潰される。

再生力の集中はバレた。でもこいつは私が硬質化するところはまだ見ていない。

恐らく次はうなじを狙う。

硬質化して無防備になった所ところを潰す。それしかない。

 

私はうなじを硬質化させる。

しかし、いつになっても攻撃が来ない。

 

ーー避けられた…!?

 

まさかの回避に頭が混乱する。奥の手を二つ出しても潰された。

逃げようとしてもこの森林だ。ぶつかって足を止めたところで殺される。

 

ーー私が………死ぬ……?

 

その時、私の頭の中に走馬灯のように今までの記憶が流れる。

走馬灯というやつだろうか?

 

ーーお父さん……ごめんなさい。

 

もう、こうするしか。

 

私はせめて敵に私の能力が奪われないよう自身を結晶化しようとする

 

 

 

 

「でも負けないことならできるかもしれない」

 

ーーこれは、あの時のマルコとの記憶だ

 

「はぁ?勝てないのに負けない??」

 

どういうことだ?

 

「うん」

 

私が訝し気に尋ねる、もしかすると有用なことかもしれない

 

「どうやって?」

 

すると待ってましたと言わんばかりのマルコが得意げに自分の案を言う。

 

「こう、クルクル〜て回るんだ」

 

マルコがそう言って片足で回り始めた

私は心底がっかりする。

 

「はぁ………遂にお勉強のしすぎで頭が壊れたのか…ごめん、マルコ、今まで強く当たって。私、結構アンタを有能な奴だって評価してたよ」

 

私はマルコに今までのことを謝る。まぁもう手遅れだろうけど

するとマルコは慌てたように言う。

 

「ま、待ってよ!僕は至って真面目だよ!」

 

マルコが自身の案を説明をし始める

 

「エレンが大岩を持ち上げたのはアニも見たよね?」

 

「あの時僕は思ったんだ。巨人って意外にも力があるんだって」

 

確かにそうだ。巨人は人間の比率にするととんでもない力を持っていることになる。

 

「それに加えて調査兵団のハンジ分隊長の報告書によると、巨人の身体はその見た目に反して軽いらしい」

 

「それを踏まえてもう一度考えてくれ」

 

「巨人が回るんだ、多分それはとてつもないスピードになると思う」

 

「その状態の巨人を君はどうやって倒すの?」

 

マルコが私に聞いてくる

 

「どうって……」

 

私は答えに詰まる。

 

「恐らく立体機動装置のアンカーは刺さらない。うなじを削ごうとしても狙いは定まらない。そもそも回転する力でブレードが通るのかすら分からない」

 

マルコが得意げな顔をして言う

 

「ほら、負けない」

 

 

「ァアアア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙

 

ーーマルコ。嘘だったら許さないからね




マルコが有能になり、主人公とのパワーバランスを取ります。

これから他視点でどんどん書いていきます。


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第57回壁外調査 前編(リヴァイ視点)

疲れたぁ……
今回はリヴァイ視点。
どこからどこまでアニメのセリフを入れるかとても悩みました。

感想があれば次も書きます。


リヴァイside

 

俺達が壁に着くと、壁内で緑の信煙弾が上がっていた。

 

「なんだ……?」

 

ーーどういうことだ?

 

俺は疑問に思う、壁内で信煙弾をあげることなどほぼないからだ。

 

しかし不思議に思うのはそれだけではない。

 

壁に穴が空いていたのはいい。

 

ケインの行動で予想はしていた。

 

しかし可笑しなことによく見ると壁に空いた穴が塞がっているのだ。

巨人達も穴に入っていく様子がないことからそれは確かだろう。

 

ーー何が起きた…?

 

俺は混乱しながらも、とにかく壁内の信煙弾が上がった地点に向かうことにした。

何があったかは分からないが正確な情報を聞くためだ。

 

 

 

俺が現場着くと、そこには壁の穴があったであろう場所に大岩があり、崩れた落ちた巨人がいた。

そしてその周辺には夥しい量の巨人の死体。見える街の景色は火の手が上がっており壁際には巨人の群れ。

 

ますます意味が分からずに俺は混乱を加速させる。

 

ーー本当にどうなっていやがるッ…!!

 

作戦成功の緑の信煙弾、大岩、巨人、死体。

その全てが俺の中で噛み合わない。

 

俺は崩れ落ちた巨人の近くにいた、食べられそうになっている新兵のガキを助け状況を聞く。

 

「おいガキども……これはどういう状況だ…?」

 

 

その後その新兵から事の顛末を聞いた。

 

超大型巨人が出現しウォールローゼに穴が空いたこと。

巨人化できる人間が発見されたこと。

ドット・ピクシスによって巨人の力を使った作戦が決行されたこと。

作戦が成功したこと。

 

ーーまずはエルヴィンに報告か

 

大方理解した俺は自身の手に負えないことだと見切りをつける。

 

その後、巨人化できるガキは憲兵に幽閉されることとなり、俺たちは駐屯兵団と協力し残った巨人を掃討。

 

数日をかけて俺達はなんとかトロスト区を奪還した。

 

 

 

トロスト区奪還から数日。

俺たちは今、巨人化のガキが幽閉されている地下牢の前にいる。

 

ーーエルヴィンが言うにはあのガキを調査兵団に引き入れたいらしいが…。

 

ガキが起きるのを待っている間にエルヴィンが俺たちに質問をする。

 

ケインは敵の気配に人一倍敏感だ。その感覚は既に人智を超えた域にある。

どうやらエルヴィンはその力に期待しているらしい。

 

「ケインくん、君は彼をどう見る?」

 

エルヴィンはそうケインに聞く。

 

「報告書によると、彼はシガンシナ区の地下室に行けば巨人の謎が分かると発言していたらしい」

 

俺はその発言にツッコむ

 

「こいつが苦し紛れの嘘を言っている可能性の方が高ぇだろ」

 

しかしエルヴィンはその考えを否定する。いや、否定しないといけないと言ったところだが……

 

「リヴァイ、本当に君はそう思うのかい?」

 

「彼が我々に嘘を吐き、人類の敵だとするなら何故彼は巨人化の能力を見せてまで壁の穴を塞いだ?そんなことをしても意味は無い。それと同時に今回の襲撃の不可解さを考慮すれば彼は人類の敵ではないと私は考えるのだが」

 

「エルヴィン、てめぇも自分の言っていることの穴を理解しているはずだ。敵の目的が定かではない以上。そんな根拠のねぇ事で信じられるわけねぇだろ」

 

エルヴィンは目を瞑り、重く言葉を吐く。

 

「あぁ、確かにそうだ。私は彼が敵ではないと断言することは不可能だと言える」

 

「だが我々人類は既に、彼を信じること以外に生き残るすべがないことも確かだ」

 

そういった後エルヴィンはケインを見る

 

「そこでだ、ケインくん。

私は君のその超人的な感覚を信じたいと思っている」

 

そうしてケインに質問をするエルヴィン

 

「君はどう思う?彼は人類の敵か、味方か、それともそのどちらでもない存在なのか、君の感じたままでいい」

 

ケインは首を傾げる。

まるでどちらとも判断がつかないような、そんな顔だ。

しかし。

 

ーー少なくともこいつの勘に反応がないことを考えると、敵ではねぇ…のか?味方とも言えなさそうだが。

 

俺はそう考える。

 

「そうか……」

 

ケインの反応を見たエルヴィンが少し肩を落とす。

エルヴィンは質問の対象を俺に変える

 

「リヴァイ、君の考えを聞かせてくれ。敵はなんだと思う?超大型や鎧の巨人は本当に人類の滅亡が目的だと思うか?」

 

「んなもん俺に分かるわけねぇだろう、それは俺以外も例外じゃねぇはずだ。少し落ち着けエルヴィン」

 

「…………」

 

エルヴィンは息をつく。

エルヴィンも本当は分かっているのだ。答えなど誰にも分からないことは。

ただ俺たちが認識できるのは、分からないことだらけということだけだ。

 

エルヴィンはケインを見つめる。

 

「ケインくん、もしかしてだが……君には敵が見えているのかい?」

 

ケインは首を振らない。縦にも横にも振らない。

それを見たエルヴィンは質問を変える。

 

「なら、一つ質問をしたい。我々の敵は…人類の敵は既に我々の中にいると思うかい?」

 

その時だった。

それまで頑なに首を降らなかったケインが明確に首を縦に振ったのだ。

エルヴィンは納得の表情を見せる。

 

「やはりそうか……少し……君のおかげで私の考えに信憑性が出てきたよ」

 

「リヴァイ、敵は既に…」

 

エルヴィンが何かを言いかけたところでガキが目を覚ます。

 

「この話は後にしておこうか…」

 

エルヴィンはエレンに目を移す。

 

 

目覚めたガキは混乱していた。

 

「あっあの……ここは…どこですか…?」

 

エルヴィンが答える。

 

「見ての通りだが、地下牢とだけ言っておこう」

 

ーーッ……!!

 

ガキが目覚めると同時にケインの雰囲気が変わる。さっきまでのボヤボヤしたものでは無い。

どうやら本腰を入れて、こいつを見極める気になったらしい。

 

「今君の身柄は憲兵団が受け持っている……先程ようやく、我々に接触の許可が降りた。」

 

そう言いながらエルヴィンがガキの持っていた鍵を出す。

 

「ッ!その鍵は…!」

 

「あぁ、君の持ち物だ。後で返すよ」

 

「君の生家、シガンシナ区にあるイェーガー医師の地下室。そこに巨人の謎がある……そうだね?」

 

「は、はい恐らく…父がそう言っていました」

 

俺はそんな都合のいいことを言うガキに詰問する

 

「お前は記憶喪失で親父は行方知れず。随分都合のいい話だなぁ」

 

そんな俺に対してエルヴィンが諌めてくる。

 

「リヴァイ、彼が嘘をつく必要はないとの結論に至ったはずだ」

 

さっきの会話でそんな結論にはなっていないが、エルヴィンはそう言う。

 

どうやらそのていで話を進めるようだ。

 

「チッ……」

 

俺は渋々引き下がる。

 

エルヴィンがガキに向き直り、話を続ける。

 

「まだまだ分からないことだらけだが、今すべきことは君の意志を問うことだと思う」

 

その言葉にガキは混乱して返答する

 

「俺の……意志ですか?」

 

「君の生家を調べるためにはシガンシナ区、ウォールマリアの奪還が必要となる」

 

エルヴィンは頷きそう語る。

 

「破壊されたあの扉をすみやかに塞ぐには…飛躍的手段………」

 

「君の巨人の力が必要になる」

 

 

「やはり、我々の命運を左右するのは巨人だ」

 

「超大型巨人も鎧の巨人も、おそらくは君と同じ原理だろう」

 

 

「君の意思が鍵だ…この絶望から人類を救い出す」

 

「鍵なんだ」

 

そう言って鍵を指し示すエルヴィン。

 

「俺が……」

 

ガキは何かを考える素振りを見せる。

 

しかし俺はガキに考える時間を与えない。

何も考えずに出た素の言葉。俺たちが聞きたいのはそれだけだ。

 

「おい、さっさと答えろグズ野郎。お前のしたいことはなんだ?」

 

そう俺が急かすと覚悟を決めたのかガキの表情が変わる。

 

 

調査兵団に入って……とにかく巨人をぶっ殺したいです

 

 

目をギラギラさせて唸るように俺の質問に答える。

 

しかし俺が注目したのはガキの表情もさることながらその目だった。

 

俺はその目にある既視感を持つ。

 

ーーこいつの目………似ていやがる…

 

それは俺が最も信頼を寄せる片割れの、俺が最も好きな目に似ていた。

野生の獣のような殺意の滾ったその目に俺はこいつの可能性を見出す。

 

「ほぉ…悪くない」

 

俺はそう言い地下牢の前に立つ。

 

ーーもっとよくその目を見せろ

 

しかし俺が近づいた時にはもうその時には既にガキからは目の輝きは消えていた。

 

だが、俺はあの目を忘れない。

 

「エルヴィン。こいつの責任は俺が持つ、上にはそう言っておけ」

 

「俺はこいつを信用したわけじゃない…こいつが裏切ったり暴れたりすれば直ぐに俺が殺す」

 

俺はエルヴィンにそう言っておく。

 

「上も文句は言えんはずだ…俺以外に適役がいないからな」

 

「認めてやるよ…お前の調査兵団入団を」

 

俺は今日この日、このガキ……いやエレン・イェーガーの入団を許可しよう。

 

 

 

街ではエレンのことが既に噂になっているらしい。

あれから数日。

エレンの処遇を決める兵法会議が開かれた。

 

 

会議が始まる。

憲兵どもはどうやらよほどエレンのことを解剖したいらしい。

 

「彼の巨人の力が今回の襲撃を退けたのは事実です。しかし、その存在が今、内乱を巡る波紋をも呼んでいる。

なのでせめてできる限りの情報を残して貰った末に、我々人類の英霊となってもらいます。」

 

しかしその案をウォール教の司祭が否定する。

ウォール教、5年前から急激に力を付けたという壁を崇拝する団体だ。

 

「そんな必要はない!奴は神の英智である壁を欺き侵入した反逆者だ!即刻処刑すべきである!!」

 

「司祭さまは黙っていてください…!!」

 

その後も続く言い争い。

そして始まる豚共の醜い喧嘩。

 

俺はそれを冷ややかな目で見つめる。

しかしそれも長くは続かない。

 

ーーうるせぇなぁ……

 

俺がそう思っていると机を叩く音が聞こえ、威厳とカリスマを備えた声が場に響く。

 

「静粛に」

 

その一言で場を納めるの壇上にいる初老の男。

 

名はダリス・ザックレー。

憲兵団、駐屯兵団、調査兵団のトップに立つ司令。

聞くところによると部下からの信頼も厚く、相当に頭がキレるらしい。

 

ザックレーはエルヴィンに向き直る。

 

「では次に調査兵団の案を伺う」

 

ザックレーに問われたエルヴィンは自身の案を話し始めた。

 

「はい。調査兵団13代団長、エルヴィンスミスより提案させていただきます。我々調査兵団は、エレンを正式な団員として迎え入れ、巨人の力を利用してウォールマリアを奪還します。…………以上です。」

 

「ん……?もういいのか?」

 

「はい。彼の力を借りればウォールマリアは奪還できます。何を優先するべきかは明白だと思われますが」

 

「そうか…」

 

エルヴィンからこの案は事前に聞いていた。

エレンの力でウォールマリアを奪還する。言葉にすれば容易いが、事態はそう簡単なことでもない。

トロスト区の壁を封鎖したことで壁の穴までのルートは完全に白紙に戻ったからだ。

 

「ピクシス…トロスト区の壁は完全に封鎖してしまったのだろう?」

 

ザックレーに問われたピクシスは答える。

 

「あぁ…もう二度と開閉できんじゃろう」

 

そこでもう一度発言するエルヴィン

 

「東のカラネス区からの出発を希望します、そこからシガンシナ区へ、一からルートを模索して接近します」

 

エルヴィンがそう答えると貴族達から声が上がる

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!今度こそ全ての壁を封鎖するべきじゃないのか?超大型巨人が破壊できるのは扉の部分だけだ、そこさえ頑丈にすればこれ以上攻められることはない!」

 

そうのたまう豚に俺は話しかける。

 

「よく喋るなぁ豚野郎…扉を埋め固めている間、巨人が待ってくれる保証がどこにある?てめぇらの言う我々ってのは、てめぇらが肥えるために守ってる友達の話だろ?土地が足りずに食うに困っている人間はてめぇら豚どもの視界に入らないと?」

 

俺の圧にたじろぐ貴族。

 

「わ、我々は扉さえ封鎖されれば助かると話しているだけだ…」

 

 

それから会議の内容は荒れ始めた。

貴族の豚は自分たちの安全のために壁を塞ぎたいと言ったことでまたもやウォール教と汚い罵り合いを始めたからだ。

 

バンッ!バンッ!

 

「静粛に、個人の主義主張は別の場所で訴えて頂こう」

 

そういうザックレーはエレンに質問をする。

 

「イェーガー君、確認したい」

 

「君はこれまで通り兵士として人類に貢献し、巨人の力を行使できるのか?」

 

「はい…!出来ます!」

 

エレンがそう答える。

しかし。

 

「ほぉ……だが…トロスト区防衛戦の報告書にはこう書いてある。巨人化の直後、ミカサ・アッカーマン目掛けて、拳を振り抜いたと」

 

俺達もその報告書は既に読んでいた。

エレンが巨人化した際暴走したことは知っている。

知っていて尚エルヴィンはエレンを引き入れたいのだ。

 

ーーやはり一番の肝はそこか…。

 

「ミカサ・アッカーマンは?」

 

「はい、私です」

 

呼ばれた黒髪の女が答える。

 

「君か…巨人化したイェーガーが襲いかかったのは事実か?」

 

言いずらそうに黒髪の女は答える。

 

「……はい……事実です」

 

「やっぱり、巨人は巨人じゃないか…!」

 

そんな言葉が貴族達から出る。

それを聞いた黒髪は慌てて付け足す。

 

「しかし、それ以前に私は2度巨人化したエレンに命を救われました…!

一度目はまさに私が巨人の手に落ちる寸前に巨人に立ちはだかり、私を守ってくれました。

二度目は私とアルミンを榴弾から守ってくれました。

これらの事実も考慮して頂きたいと思います」

 

その証言に口を挟む憲兵団

 

「お待ちください!」

 

「今の証言にはかなり個人的感情が含まれていると思われます」

 

そこから挙げられていくエレン達の過去の犯罪歴

 

ーーチッ……こいつらそんなことまでしてやがったのか

 

場の雰囲気は最悪になる

このままだとエレンは憲兵の元に渡るだろう。

 

「果たして彼に、人類の命運、人材、資金を託すべきなのか?根本的な人間性に疑問を感じざるを得ません」

 

ーーやっぱり巨人は巨人じゃないか

ーーそうだ…あいつは子供の姿でこっちに紛れ込んだ巨人に違いない!

ーーあいつらもだ…人間かどうか疑わしいぞ

ーーそうだ!念の為に解剖でもした方がいいんじゃ

 

そう言って指し示したのはケインと黒髪の訓練兵。

 

ーーあいつも化け物に違いない…!

ーーそうだ……なんでもあいつはトロスト区で40体も巨人を殺したらしい

ーー危険じゃないのか…?

ーー俺はずっと前から人間じゃないと思ってたんだ…!!

 

「待ってください!俺は化け物かもしれませんがこいつは関係ありません!無関係です!」

 

ーー信用できるかぁ!

ーー庇うってことはやっぱり

ーーな…なんだその目は…!

 

どうやらケインもお怒りらしい。

俺の横で憲兵団共を睨んでいた。

 

「ちがう!!!!」

 

エレンが叫ぶ。

しかし直ぐに冷静になったのか言葉を変える。

 

「いや……違います」

 

「しかしそちらも自分たちの都合のいい憶測ばかりで、話を進めようとしている」

 

「だいたいあなた方は巨人を見たことも無いくせに何がそんなに怖いんですか?」

 

「力を持ってる人が戦わなくてどうするんですか?」

 

「生きるために戦うのが怖いって言うなら、力を貸してくださいよ…!」

 

エレンは憲兵団達を睨む

 

「戦うことを怖がって内地に逃げて」

 

「今は俺を怖がって解剖しようとしている」

 

「あなた達はどこまで怖がれば気が済むんですか…!」

 

「挙句の果てに今はミカサまで怖がっている…!!」

 

エレンは遂に明確に憲兵団を貶す発言をする。

 

「この……腰抜け共め………!」

 

その言葉に憲兵達は狼狽する。

 

「なに……?貴様!今自分が何を言っているのか分かっているのか……

「いいから黙って………!!」

 

全部俺に投資しろぉお!!!!!

 

エレンが絶叫する。

その言葉に憲兵は危険を覚えたのかエレンに銃を突きつける。

 

「構えろ…!!」

 

するとその時、横から荒い息が聞こえてくる。

 

「ハァ……!ハァ……!」

 

ケインが興奮して憲兵どもに殴り掛かりそうだ。

俺個人としては構わねぇが今そんなことをすれば最悪ケインも殺されなかねない。

 

俺は前に出てエレンを蹴り飛ばす

 

事前にエルヴィンから指示も出ていた。俺がエレンを制御出来ることを見せろと。

 

今が絶好の機会だ。

 

グシャ……!ドガッ……!ゴッ……!

 

俺はエレンを蹴り続ける、エレンを蹴る音だけがその場に響き渡る。

憲兵達も呆然としてこちらを見ている。

 

ダガッ……!ドシャ……!

 

俺はエレンを蹴りながら話す。

 

「これは持論だが」

 

「躾に一番効くのは痛みだと思う。

今お前に必要なのは、言葉による教育ではなく教訓だ……しゃがんでるからちょうど蹴りやすいしな…」

 

ゴガッ…!ダッダッ…!

俺がエレンを蹴り続けていると憲兵団から制止の声がかかる。

 

「待て…!リヴァイ…!」

 

俺は一度足を止めて話を聞く。

 

「なんだ…?」

 

「………危険だ…恨みをかってそいつが巨人化したらどうする?」

 

ーー見せたな……隙を……

 

「何言ってる、お前らこいつを解剖するんだろう?」

 

俺はエレンを見る。顔がボコボコに腫れ上がっていた。

 

「こいつは巨人化した時、力尽きるまでに20体の巨人を殺したらしい。」

 

「敵だとすれば、知恵がある分厄介かもしれん、だとしても俺たちの敵じゃないがな」

 

そこで再び俺は憲兵団を見る。

 

「だがお前らはどうする?こいつをいじめたやつもよく考えた方がいい、本当にこいつを殺せるのか」

 

そこでエルヴィンからの追撃が入る。

 

「総統、ご提案があります!」

 

「エレンの巨人の力は不確定な要素を多分に含んでおり危険は常に潜んでいます。」

 

「そこで、エレンの管理をリヴァイ兵士長に任せ、その上で壁外調査に出ます」

 

「人類にとって利がある存在かどうか、その調査の結果で判断して頂きたい」

 

それを聞いたダリス・ザックレーが俺に質問する。

 

「エレン・イェーガーの管理か…できるのかリヴァイ?」

 

「殺すことに関しては間違いなく、問題はむしろ、その中間がないことにある」

 

そう言って俺はエレンを見る。

 

「管理に関しても問題はない。うちでは既に一匹猛獣を飼っているからな。一匹増えたところで大した手間でもない」

 

ケインを見る俺。

ダリス・ザックレーはそれを見て納得する。

 

「ふむ……結論は出た」

 

その日、エレン・イェーガーの管理は正式に調査兵団のものになった。

 

 




はい。エレンくんは無事に調査兵団に入りました。
今回はケインくん要素は載せるだけとなっているのでほぼほぼアニメの内容でこれ全部入れるとアウトじゃね?と葛藤を繰り返しながら描き切りました。

エレンくんの全部俺に投資しろ発言の手前の改変は、私自身少し違和感を感じたからです。


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第57回壁外調査 中編(エレン視点)

長かっ………たぁ〜

お待たせしました。
アニメ一話分がこんなに長くなるとは…

感想があるととても嬉しいです。


エレンside

 

調査兵団に入って数日。

俺は今、調査兵団と一緒に壁から離れたある山道を馬で歩いている。

 

あの後、一時的ではあるものの調査兵団に入団することを許可され、特別作戦班…通称リヴァイ班に入ることになった。

 

馬を走らせて数時間、山の間に大きな建物が見えてくる。

 

「おい新兵、ところでお前、あの城がなんなのか知ってるか?」

 

「いえ……」

 

俺の横に馬を付け、話しかけてくれるこの人はオルオ・ボザドさん

 

茶髪にくせっ毛の特徴的な髪型をしたリヴァイ班の先輩。

ここ数日、今話していること以外にも道中に自身の戦歴やリヴァイ班のメンバーについてよく話してくれた実は親切な人だ

 

「そうかそうか……やはり俺が教えてやらないとお前は何も出来ないようだな…ここは先輩として俺の崇高な知識をひとつまみ……お前に教えてやろう」

 

そう言ってオルオさんは今から行く目的地について話し始めてくれた。

 

「あそこの名は旧調査兵団本部……古城を改装した施設ってことあって趣とやらだけは1人前だが……

こんなに壁と川から離れた本部なんてのは、調査兵団には無用の長物だった」

 

その違和感のある喋り方に反して実力は本物で

巨人討伐数39体 討伐補佐9体

 

間違いなく調査兵団の精鋭の一人だ。

ちなみに歳は19歳らしい。

 

「まだ志だけは高かった結成当初の話だ」

 

オルオさんはそう語る。

どうやら今から行くあの場所は随分長い間使われていないようだ。

 

「しかし、このでかいお飾りがお前を囲っておくには最適な物件になるとはな…」

 

そう、俺は今日から1ヶ月間。あの城でこの人達と一緒に共同生活を送ることになる。

調査兵団に入団できたと言ってもあくまで一時的な処置、これからどうなるかは1ヶ月後の壁外調査で決まる。

それまでの間、文字通り俺を囲っておくために俺はあそこで生活する。

 

そこまで話し、急に俺に詰め寄ってくるオルオさん

 

「おい、調子に乗るなよ新兵」

 

「はい…?」

 

突然のことに俺は意味が分からず聞き返してしまう。

一体どうしたと言うのだろう。

 

「巨人だかなんだか知らんが、お前のような小便臭いガキにリヴァイ兵長とケイン補佐官が付きっきりになるなんて本当なら必要ないんだ」

 

「お前程度のガキ一人ぐらい俺一人でもなんと……

 

その時だった。

偶然馬が躓きオルオさんが自身の舌を噛んでしまう。

 

「アガっん!!」

 

口から血を吹き出すオルオさん。

 

「アガッ……アバッ……!!」

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

急な事態に俺は慌ててしまう

 

「あ、あの、誰か!」

 

俺が周りに助けを求めようとすると、ふとある人が目に入る。

 

いつの間にそこにいたのだろう。

俺のすぐ横にいる黒髪長身の男。顔は目元を覆う髪でよく見えないが鋭い眼光だけが光っている。

その体に無駄な筋肉などなく。しかし、鋼鉄のように鍛え上げていることが分かる。

 

ケイン兵士長補佐官。皆からはケイン補佐官と呼ばれていた。

俺は道中のオルオさんの話を思い出す。

 

オルオさんに聞いたところケイン補佐官の巨人討伐数推定150以上、討伐補佐推定56体

 

何故推定なのか?

それは正確な数字を本人は報告しないことと、一人で巨人を討伐する彼の強さによるものだ。

 

聞いたところによると、この前のトロスト区でも40体前後を倒していたらしい。

しかしその数字も助けられた新兵や壁の上から偶然見えた兵士達の話をまとめただけで本当はもっと多いかもしれないという。

 

そんな正真正銘の化け物だ。

 

巨人にとっては死神のような存在だが、仲間になるならこれ程心強い人もそういないだろう。

 

調査兵団内でも数多くの命を救い、この前の兵法会議では俺の代わりに憲兵団に殴り掛かりそうだったとも聞く。

 

ーーまぁ、俺にとっては死神かもしれないけどな……

 

巨人になれる俺にとってこの人は敵なのか、それとも味方なのか。

俺には分からない。

 

しかし、そんなこと関係なく俺はこの人を尊敬していた。

 

その強さに、巨人を殺し尽くさんばかりのその姿勢に。

俺は強い憧れを持っていた。

 

「あ、あの………どうしたんですか?」

 

しかし、そんな人が何故か肩を落としている。

 

ーーどうかしたのだろうか?

 

俺はケイン補佐官に声をかける。

 

「大丈夫ですか?」

 

「…………………」

 

ケイン補佐官は答えない。

この人は喋らないことは俺も事前に知っている。

先日お礼を行った時も、今も。俺は無視をされるだけだった。

しかし、俺は性懲りも無くこの人に話しかけている。

 

これは自己満足かもしれないが化け物と恐れられる気持ちを少なからず俺も理解しているからかもしれない。

 

ーーそれに

 

この人はきっと悪い人ではない。そんな俺の直感に従った行動だった。

 

俺とケイン補佐官の間に気まずい沈黙が流れる。

しかしその時、沈黙を破るように後ろから声が掛かった。

 

「ちょっと何やってんすか!ケインの兄貴!後輩が怯えちゃってるじゃないすか!!」

 

そう言って俺たちの間に入ってくるのは、赤髪のおさげに緑色の目のをした小柄な女性。

 

名前はイザベル・マグノリア

討伐数41 討伐補佐58

男勝りな口調でケイン補佐官やリヴァイ兵長を兄貴と慕っている。

 

やはりこの人も調査兵団の中では腕利き中の腕利きだ。

 

「………………」

 

「もう…ケインの兄貴はそんなんだから皆から怖がられちゃうんすよ……」

 

「………………」

 

ケイン補佐官は何も言わない、そして反応もしない。

そんなケイン補佐官に乾いた笑いをこぼすイザベルさん

 

「ごめんね、後輩くん……ケインの兄貴はなんて言うかまぁ、人見知りなところがあるから………あはは」

 

しかしこうもつけ加える

 

「でも悪い人ではないんだぜ?人からもらったものは結構大事にしてるし、何か頼めば手伝ってくれることも多い。意外だろ?」

 

「い、いえ!自分は別に…」

 

俺がそう言ったところで後ろから声がかかる

 

「おーい!イザベル!あんまり前に行きすぎるなよ!!」

 

そう言って後ろから誰かがイザベルさんを呼ぶ。

 

銀髪の美丈夫。街での女性から人気が高いことで有名なこの人の名はファーラン・チャーチ

討伐数60 討伐補佐43

 

そんな人がイザベルさんを呼ぶ。

 

「分かってるよ!!……え〜と、後輩くん………エレン?ていう名前だっけ?」

 

「は、はい!」

 

「じゃあエレン。ケインの兄貴はあれで結構優しいところがあるからさ、怖がらないで仲良くしてくれよな」

 

「自分で良ければ、是非」

 

「よかった!ケインの兄貴も少しは愛嬌を見せてくださいよ!じゃあ私は戻らないと行けないから」

 

そう言ってイザベルさんが去っていく。

どうやら俺とケイン補佐官を見かねてここまで来てくれたらしい。

 

俺はイザベルさんに感謝しつつケイン補佐官を見る。

 

しかし、近くにいたはずのケイン補佐官はいつの間にかいなくなっていた。

 

一体あの一瞬でどこに行ったのだろう?

俺が周りを見るがどこにもいない。

 

後に残るのは未だに口を抑えるオルオさんと俺だけだった。

 

「アガッ………!!アグァ……!」

 

 

古城に着いた。

随分とボロボロで、そこら中に蔦が生えている。

俺達リヴァイ班は馬を近くに繋ぎリヴァイ兵長達が城の中を検分している間休むことになった。

 

「乗馬中にペラペラ喋ってれば舌も噛むよ」

 

オルオさんにそう言うのは明るい茶髪の女性

 

ペトラ・ラル

巨人討伐数10体 討伐補佐数48体

 

「最初が肝心だ…あの新兵ビビっていやがったぜ…」

 

「オルオがあんまり間抜けだからびっくりしたんだと思うよ」

 

「なんにせよ、俺の思惑通りだな…」

 

そう言って息を吐くオルオさんに苦虫を噛み潰したような顔をするペトラさん。

 

「ねぇ……昔はそんな喋り方じゃなかったよね…もし、それが仮にもしリヴァイ兵長の真似してるつもりなら、本当にやめてくれない?いや、全く共通点とかは感じられないけど」

 

「俺を束縛するつもりかペトラ、俺の女房を気取るにはまだ必要な手順をこなしてないぜ」

 

「はぁ……舌を噛み切って死ねば良かったのに、巨人の討伐数とかもペラペラ自慢して。」

 

「安心しろ、お前らの自慢もついでにしといてやったからな」

 

あんなふうに威厳のない会話をしていると忘れそうになるが彼らは紛れもない精鋭中の精鋭だ。

俺なんて10秒もかからずに殺されてしまうだろう。

 

俺が馬の世話をしていると足音が近くを横切る。

 

歩いてくる金髪の男性はエルド・ジン

巨人討伐数14体 討伐補佐32体

 

「おいグンタ…ここは昔から幽霊が出るって噂があるんだ」

 

その横を歩く特徴的な髪型の男性

グンタ・シュルツ

巨人討伐数7体 討伐補佐40体

 

「驚かすなよ……どうせ誰かが見間違えた野生のケイン補佐官だろ…」

 

皆リヴァイ兵長から指名された調査兵団きっての精鋭

 

ーーそして………俺が暴走した時はこの人達に殺されることになる。

 

これだけの人に囲まれて生活する。

俺は改めて自身がどれだけ警戒されているかを改めて身に刻む。

 

 

俺達リヴァイ班は兵長の指示で古城を掃除することになった。

 

「上の階の清掃、完了しました」

 

俺は自身の持ち場の清掃が終わったことをリヴァイ兵長に報告する。

 

「あの、リヴァイ兵長」

 

「なんだ?」

 

リヴァイ兵長が振り向く

 

「俺はこの施設のどこで寝るべきでしょうか?」

 

俺がそう聞くとリヴァイ兵長は即答した。

 

「お前の部屋は地下室だ」

 

「…………また地下室ですか……」

 

「当然だ…お前は自分自身を掌握できてない。寝ぼけて巨人になったとしてそこが地下ならその場で拘束できる。これは、お前の身柄を手にする際提示された条件の1つ…守るべきルールだ」

 

そう言い切るリヴァイ兵長

 

ーー意外だな……

 

俺はそう思う。

 

「部屋を見てくる、エレン、お前はここをやれ」

 

「はい」

 

リヴァイ兵士長

巨人討伐数95体 討伐補佐49体

人類の双剣。一人で一個旅団分の戦力をもつ男。英雄。

そんな人がルールの大切さを説く様に俺は驚きを隠せない。

 

「失望したって顔だねエレン」

 

その時、いつの間にか部屋の前にいたペトラさんにそんなことを言われる。

 

「はい!?」

 

「あ、エレンって呼ばせてもらうよ。リヴァイ兵長に習ってね、ここでは兵長がルールだから」

 

「はい…それは構いませんが。俺今、失望って顔してましたか?」

 

俺がそう聞くとペトラさんは話し始める。

 

「珍しい反応じゃないよ、世間の言うような完全無欠の英雄には見えないでしょ?現物のリヴァイ兵長は」

 

ーーそんなことは……

 

ないとは言いきれない。

しかしペトラさんはどこか嬉しそうに続きを話す。

 

「思いの外小柄だし、神経質で粗暴で近寄り難い。」

 

確かに兵長は小柄で神経質そうだった。

しかし俺が不思議に思ったのはそこでは無い。

 

「いえ、俺が意外だと思ったのは上の取り決めに対する従順な姿勢です」

 

「強力な実力者だから序列や型にはハマらないような人だと思った?」

 

「はい……誰の指図も意に介さない人だと」

 

そう…俺が疑問に思ったのはそこだ。

絶大な力を持っており、兵法会議での雰囲気も態度もとてもではないが上に従順には見えなかった。

誰の指図も受けない。

ペトラさんの言った通りの人物だと俺は思っていた。

 

「私も詳しくは知らないけど、以前はそのイメージに近い人だったのかもね、リヴァイ兵長は調査兵団に入る前都の地下街で有名なゴロツキだったって」

 

地下街?

俺はその場所についての記憶を掘り起こす。

確か相当に治安の悪い場所だったはずだ。

なんでも人類が地下に移住しようと計画したことがあり、地下街はその名残りだという。

 

「そんな人が…何故?」

 

「さぁね?何があったのか知らないけど、エルヴィン団長の元に下る形で調査兵団に連れてこられたって聞いたわ」

 

「団長に…?」

 

俺たちが話をしていると、上の階で兵長の怒鳴り声が聞こえてくる

 

「おいケイン!!てめぇ何度言ったら分かるんだ!!雑巾はきちんと絞ってからやれと言ってるだろ!!」

 

どうやらケイン補佐官がリヴァイ兵長に怒られているらしい。

 

「あとホウキはそうやって使うもんじゃねぇんだよ…!遊んでないでさっさと自分の仕事をしろ!!」

 

遊ぶ………?ケイン補佐官はホウキを一体どんな使い方をしてたんだ…?

 

俺が疑問を感じていると、今度は中庭でイザベルさんの声が聞こえる。

 

「兄貴〜!!こっちは終わったぜ〜!!」

 

どうやら清掃完了の報告のようだ。

 

「ファーランに確認してもらえ!こっちは今忙しい!」

 

「分かった〜!!」

 

リヴァイ兵長はイザベルさんをファーランさんに任せ、自身はケイン補佐官の監督をするらしい。

 

俺はそれを聞いてふとある疑問が浮かぶ

 

「あの…ペトラさん」

 

「なぁに、エレン?」

 

「一つ疑問に思ったんですが……ケイン補佐官はどうして調査兵団に入ることになったんですか?」

 

ーーあの人は何故調査兵団に入ることになったのだろうか?

 

俺はケイン補佐官について考え始める。

どうしてケイン補佐官はあんなに強いんだろうか?

どうしてケイン補佐官は喋らないのだろうか?

考えれば考えるほど疑問が湧いてくる。

 

やはり巨大樹の森で拾われたのだろうか?

 

ーーそういえば俺……あの人について何も知らないな

 

そんな俺の疑問にペトラさんは答えてくれる

 

「あぁ、ケイン補佐官ならリヴァイ兵長と一緒よ、都の地下街でスカウトされたの」

 

「へぇ〜そうだったんですか」

 

「というかイザベル先輩もファーラン先輩もそうなのよ?なんでもあの四人で一つのチームだったとか」

 

なるほど、だからイザベルさんはあんなにケイン補佐官と親しそうだったのか。

俺は道中の出来事に納得する。

 

「でもね、リヴァイ兵長とケイン補佐官はそれだけが理由じゃないの」

 

「エレンも気になったことない?リヴァイ兵長がやけにケイン補佐官を気にするな…って」

 

それは少し感じていた。

リヴァイ兵長はやけにケイン補佐官を気にかける。

まぁ、上司が部下の面倒を見るのは当然と言えば当然だが少し違和感を感じる部分もあった。

 

俺が肯定するとペトラさんは声を抑えて話す。

どうやらあまりリヴァイ兵長には聞かれたくない話らしい。

 

「これは調査兵団内では結構有名な話なんだけどね」

 

「…あの二人、双子の兄弟らしいのよ」

 

…………………………俺は言っていることが上手く理解できなかった

 

………………双子?

 

数瞬してやっと脳が理解を始める。

 

「えぇぇえええ!!そうなんですか!!??」

 

俺は心底驚きつい大声をあげてしまう。

 

ーーあんなに正反対な二人なのに双子!?

 

ケイン補佐官とリヴァイ兵長はお世辞にも似ているとは言い難い。

性格や体格、果ては雰囲気までまるで示し合わせたかのように反対な二人。

 

「そうよ〜あれで兵長って結構家族思いみたいでね……実は兵長にはこんな逸話があってね…」

 

ペトラさんが嬉しそうに兵長の話をしようとする。

しかしその時、兵長が部屋に戻ってきた。

どうやらケイン補佐官との掃除を一旦諦めたらしい。

 

ペトラさんは咄嗟に掃除をしてるフリを始めた。

 

「おいエレン」

 

「はい!」

 

兵長は少し怒っているのか語気を強めながら俺に言った。

 

「全然なってない。全てやり直せ」

 

 

 

夜。

俺達は恐らく集会所だった場所に集まりロウソク挟んで話し合いをしていた。

しかし、話し合いの場にリヴァイ兵長とケイン補佐官だけがいなかった

 

ーー何をしているんだろう?

 

俺はそう思ったが会話の話題が俺に向き、意識を切り替える。

 

「我々への待機命令はあと数日続くだろうが、30日後には大規模な壁外遠征を考えていると聞いた。それも、今期卒業の新兵をそうそうに混じえると…」

 

そう言うエルドさん。

 

「それ本当かエルド…随分急な話じゃないか。ただでさえ今回の巨人の襲撃は新兵には堪えただろうによう」

 

グンタさんも疑問を抱き、エルドさんに聞き返す。

 

ーー確かに早すぎる……新兵は壁の外で死にやすい。

それは巨人と対面する恐怖や初めての壁外でパニックを起こしやすいからだ。

 

それに加えて今回はほとんど訓練もせずに壁外に出る。

 

 

「ガキ共はすっかり腰を抜かしただろうな」

 

「本当なんですかファーランさん」

 

ペトラさんがファーランさんに聞く。

 

「あぁ、俺も聞いただけだが本当の話だ。だがエルヴィン団長は俺たちよりもずっと多くのことを考えているはずだ。何も考えがないなんてことは無いだろうな」

 

「確かにこれまでと状況が異なりますからね…多大な犠牲を払って進めてきたマリア奪還ルートが一瞬で白紙になったかと思えば突然全く別の希望が降って湧いた」

 

そこでエルドさんは俺を見る。

 

「未だに信じられないんだが、巨人になるってのは、どういうことなんだ?エレン?」

 

ーーどういうこと?………どういうことなんだろう……

 

俺は改めて不思議に思う。

 

「その時の記憶は定かではないんですがとにかく無我夢中で、でも、きっかけになるのは自傷行為ですこうやって手を」

 

俺は自身の手を噛むジェスチャーをする。

するとイザベルさんが驚いたように言う。

 

「マジか!?でもそれめちゃくちゃ痛いだろ!?」

 

そこで俺はふと思う。

 

ーーあれ?そういえば俺は、なんでこれだけは知ってるんだっけ?

 

バタンッ!!

 

俺がそう思っていると集会所のドアが開いた。

 

「こんばんは〜……リヴァイ班の皆さん」

 

ドアから出てきたのはリヴァイ兵長とケイン補佐官。

そして、調査兵団でも随一の変人と噂に名高いハンジ分隊長だった。

 

「お城の住み心地はどうかな?」

 

「ハンジ分隊長?」

 

俺は突然の来訪に驚く。

 

「おまたせエレン、私は今、街で捕らえた二体の巨人の生態調査を担当しているんだけど。明日の実験にはエレンにも協力してもらいたい。その許可を貰いに来た」

 

ハンジさんから突然言われたことに俺は混乱を隠せない。

 

「実験……ですか?一体俺が何を………」

 

俺がそう聞くとハンジさんは身悶えするよに答えてくれた。

 

「それはもう!最っ高に滾るやつをだよ…!!」

 

内容は分からなかったが…

 

「あ、あの!許可については自分ではくだせません、自分の権限を持っているのは…自分ではないので」

 

するとハンジさんはリヴァイ兵長に話しかける。

 

「ねぇリヴァイ、エレンの明日の予定は?」

 

「庭の掃除だ」

 

「なら良かった、決定!」

 

「エレン、明日はよろしく!」

 

「あ………はい……」

 

俺は勢いに押されて頷く。

 

「しかし、巨人の実験とはどういうものなんですか?」

 

俺がそう聞くとオルオさんが小声で俺に言う。

 

「おいやめろ…!聞くな…!」

 

するとその言葉を待っていましたと言わんばかりにハンジ分隊長は嬉しそうに語りかけてきた。

 

「あぁ〜やっぱり?聞きたそうな顔してると思った〜……」

 

そこでその場にいた全員が席を立つ。

ケイン補佐官もリヴァイ兵長に引きずられて部屋を出ていった。

後に残ったのは俺とハンジさんだけだ。

 

「そんなに聞きたかったのか…しょうがないなぁ…それじゃあ聞かせてあげないとね…今回捕まえたあの子達について」

 

それからハンジさんは捕まえた二体の巨人、ソニーとビーンの話をしてくれた。

意思疎通、活動時間の長さ、痛覚、うなじ以外の弱点の有無

ハンジ分隊長は俺に話してくれた。

 

そして話の終わりに俺はハンジさんが何故巨人の研究をし始めたのかも聞いた。

 

「憎しみを糧にして攻勢に出る試みはもう何十年も試された…私は既存の見方と違う視点から巨人を見てみたいんだ…」

 

そう言うハンジさんの目は、一体誰を写しているのだろうか。

 

「空回りに終わるかもしれないけど、でも………私はやる」

 

その言葉には確かな覚悟があった。

 

ーー調査兵団に入ってから驚かされてばかりだ、ハンジさんだけじゃない変わり者だらけ。これじゃまるで変人の巣窟……!

 

俺は自身の認識の甘さを恥じる。

 

ーーでも変革を求める人間の集団、それこそが調査兵団なんだ…!

 

「ハンジさん!」

 

「ん?」

 

「良かったら、実験の話をもっと聞かせてくれませんか?」

 

俺はハンジさんにより多くの巨人の知識を教えてもらおうとする。

 

「え?いいの?」

 

「明日の実験のためにも、詳しく知っておいた方がいいと思いますし」

 

俺がそう言うとハンジさんはどこか照れたように話し始めてくれた。

 

「そ、そうだね……今の話じゃ省略した部分も多かったしもっと詳細に話すとしよう!」

 

「はい!」

 

ーーまさかこんなことになるなんて……

 

俺はそれから夜通しハンジ分隊長の話を聞くことになった。

訓練生時代に習ったことを一通り、そしてそれに付随するハンジ分隊長の経験談。

ハンジ分隊長は話のネタが尽きるまで話し続けた。

しかし、やっと全てを聴き終わったかに思えた時、俺はハンジ分隊長の恐ろしさを知ることになる。

 

「ここからは私独自の推測を混じえてもう一度解読するよ」

 

俺は初めて巨人以外のものに絶望をした。

これから続く地獄のような時間に遂に俺の気力が限界を迎えた時。

集会所の扉が開いた。

 

ーー助かったの……か?

 

しかし、事態は俺の想像を大きく超えていた

 

 

「ハンジ分隊長はいますか!!」

 

「え?」

 

ハンジ分隊長が突然のことに間の抜けた声を出す。

 

「被検体が!巨人が二体とも殺されました!!」

 

 

 

 

 




ケインくんのかっこいいところが早く書きたい……


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VS獣の巨人まで (ケイン視点)

そろそろ主人公書いときたいので書きます。
今回も主人公がバンバン活躍しますよ!(フラグ)

面白かったなどの感想に「ウヒョヒョウヒョww」と声を出しながらいつも感動しています。

モチベーションなので是非感想ください。




ケインside

 

「ァアアア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!

 

 

美人巨人が叫んだと思ったら

突然目の前で回転しだした。

 

………ファ!?何やってんの!?

 

俺は混乱する。

今までの戦闘でこんなことは初めてだ。

まぁ回転する巨人なんてそうそういて欲しくはないが……

 

 

美人巨人は既にうなじを守る腕は切り刻まれ、その機能を失っている。

目も2つとも見えない。まさに満身創痍といった具合だ。

 

あとはトドメを刺すだけの簡単なお仕事……そのはずだった。

 

ブンッ!ブンッ!

 

俺が考えている間も美人巨人は回り続ける。

辺りは美人巨人が起こした突風が吹き荒れ、木々が凪いでいる。

 

ーーどうすっかな〜

 

俺は内心で困ってしまった。

現状この状況を打開できる方法を考えつかない。

とりあえず目とかに刺さったらいいな〜と思いブレードを投げてみるが案の定弾かれた。

 

…………んんー?

こんなのどうやって対処すればいいんですか…?

 

誰にともなく聞いてしまう。

俺が何も出来ずにいる間にも美人巨人は回転し、それと同時に身体が直っていく。

 

ふと周りを見るとリヴァイ班のみんなもどうやら混乱しているらしい。

呆気に取られた顔をしていた。

 

約1分、いやそれよりも短い時間が経ち、美人巨人は全ての身体の修復を終えた。終えてしまった。

 

 

回転を止める美人巨人。

 

 

俺はすぐさま特攻する。

もう一度回られる前に今度は脚の機能を止める。

 

 

しかし、そんな俺の思いとは裏腹に、美人巨人は脇目も振らずに逃亡を始める。

 

どうやら戦う気はないらしい。

俺はガスを吹かし、追いかける。

 

…………早い。通常種とは比べるのも烏滸がましいほどの速さだ。

 

俺は加速していく。

 

障害物の多いこの森。

小回りの効く立体機動装置の方が移動速度は早い。

 

 

ダッダッダ!!

 

 

 

姿勢を低くし走る美人巨人。

俺は木々の間を潜り抜け、美人巨人との距離をあと少しの所まで詰める。

 

 

しかしその瞬間、俺は墜落してしまう。

 

フッ……と浮遊感に包まれる俺の身体。

 

ガスが尽きた。

どうやら今までの戦闘でガスを使い果たしてしまったらしい。

 

推進力を無くし自由落下を開始する俺。

 

俺は咄嗟にアンカーを近くの木に刺し身体を固定する。

すると数瞬後にくる衝撃。

 

グルグルと回る俺の視界にはその間にも遠のいていく美人巨人の背中が映っていた。

 

俺は目で追うことしか出来ない。

悔しかったので俺はブレードを投げる。

 

 

美人巨人が俺の方を一瞬振り向いた気がした。

しかしそれで何かをするでもなく………美人巨人は俺から逃げていった。

 

 

その日。

全力を尽くした俺達調査兵団は、多くの犠牲を出しながらまんまと美人巨人に逃げられたのだった。

 

 

 

壁外調査から帰還する。

 

どうやら調査兵団の被害も少なくはなかったようでみんなの顔は沈んでいた。

 

そしてなんと、俺の知らないところでリヴァイ班の中にも死者が出ていたらしく、グンタという人が死んでしまったらしい。

 

あの玉ねぎさんか………悲しい。

 

しかし、そう思う俺だったが同時に安堵もしていた。

 

ーーリヴァイが死ななくてよかった……

 

それは今世で守ると誓った大事な大事な弟が死ななくてよかったというものだ。

 

ーーまぁリヴァイがそう簡単に死ぬとは思わんが……

 

まぁ良かった。

俺はそう思った。

 

 

そんなこんなで俺たちは旧調査兵団本部に帰ってきた。

 

今回の遠征は大失敗もいいところだ。

 

調査兵団は大きな損害を出しながらウォールマリアを奪還することが出来なかった。

 

これはエレンくんの査定に大きく関わってくる。

 

エルヴィン団長が言うには、恐らく近いうちにエレンくんを王都に送還しなければならないらしい。

 

ーーあんないい子が……

 

俺は落ち込む。

この1ヶ月間で俺はエレンくんが結構好きになっていた。

しかし憲兵団にエレンくんが引き渡されれば解剖まっしぐらだ。

 

しかしエルヴィン団長の話には続きがあった。

 

どうやらエルヴィン団長は王政からの送還命令に反抗するらしい。

 

エルヴィン団長の作戦はこうだ。

 

エレンくんがいなくなれば人類は巨人に敗北する。

ので、エレンくんを一時どこかに隠し、この状況を変える何かを探す。

そしてそれが見つかればエレンくんを使いもう一度ウォールマリアを奪還する。

 

ちなみに何かは分からない。

 

そんなおそ松さんな作戦だった。

しかし、作戦を話すエルヴィン団長の顔はかつてないほどに真剣でもあった。

 

会議はもちろん荒れる。

 

ほぇ〜難しいこと分かんねぇ……

俺はただ黙って成り行きを見守るのみ。

こういう時は分かった振りしとくのがいいって誰かが言ってた。

 

結果的にエルヴィン団長は自分の意見を通した。

 

エレンくんの死守。

これが出来なければ人類に残された道はないと。

 

 

エルヴィン団長は話を続ける。

この作戦は信頼出来る仲間のみで行うこと。

未だ信頼に足るか分からない兵士達はどこか違う場所に待機させること。

 

 

 

それから数日。

俺たちは古城で待機していた。

作戦決行までに王政に怪しまれるとまずいとの事だ。

 

裏で色々工作をしているらしいが俺は役に立たないのでじっと待っていた。

 

しかし。

作戦決行の数日前になって状況が大きく変わる。

 

どうやら美人巨人の目星がついたらしい。

なぜ……?と思うがまぁいい。

 

今度は必ず殺してやるぜ!

 

気合いを入れる俺。

 

しかしそんな俺に全く違う指示を飛ばすエルヴィン団長。

 

今から新兵くん達が待機しているところに行けと言われた。

またもや何故…?と思う俺にリヴァイから説明がはいる。

 

リヴァイが言うには新兵くん達の中に美人巨人とは別の巨人がいる可能性が高いようだ。

 

今からでも応援に駆けつけた方がいいらしい。

 

ーー????

 

俺は頭にハテナが浮かぶ。

 

ーーなら美人巨人を捕まえた後でいいのでは?

 

説明は続く。

どうやらいつ巨人が動くか分からないので、近くに俺がいた方がいいらしい。

 

美人巨人は罠に嵌めてどうにか捕獲するらしく、殺すしか脳のない俺よりもリヴァイの方が適任とのことだ。

 

ーーえぇ!?そんなに信頼ないの!?

と思わないでもないが

 

まぁいいや。

 

 

俺はそれから状況説明係兼道案内のイルゼちゃんを連れて、夜通し馬を飛ばし、朝には新兵達が待機する壁から離れた僻地に来た。

 

出来るだけ早く行かなければと思ったが、着いてみると平和の一言だ。

肩透かしにも程がある。

 

調査兵団の皆への説明はイルゼちゃんに任せ、俺は馬小屋に向かう。

 

 

それから数日。

俺は暇を持て余していた。

 

俺に下された命令はもし対象が巨人化した場合に真っ先に殺すこと。

それ以外に特に指示はない。

巨人がいる可能性が高いだけでもしかしたらいないかもしれない。

 

平和だァ…………

俺は屋根の上から草原を見つめる。

 

しばらく見つめていると性能のいいこの目は遠くに信じられないものを写しだした。

 

巨人だ。

巨人の群れがこちらにやってくる。

 

何故……?

 

俺は疑問に思う。

 

エルヴィン団長が想定していた新兵くん達からではない。

恐らく通常種の巨人が多数。

 

俺は最悪な想定をする。

 

ーーどうやら壁が破られたようだ。

 

巨人を発見した俺たち調査兵団は付近に散開し周りの人間に危険を知らせる。

もしかしなくても壁は破壊された。

これからここは地獄とかすだろう。

 

しかし、喋れない俺はどこまで言っても巨人を殺すことしか出来ない無能だ。

 

俺の出来ることと言ったらただ1つ。巨人を殺すことだけだ。

 

俺は巨人に突貫する。

 

前方から巨人が迫る。

やけに素早い。

しかし大丈夫、この程度なら俺の敵ではない。

 

俺は内心でそう思い、トリガーに指を掛けた。

 

しかし、ここで最悪の事態が起きる。

立体機動装置の故障だ。

 

ーーなにィ!?

 

俺は焦る。

最悪なことに俺一人で出撃したので助けはない。

 

ファ○ク!!!

※不適切な表現をここにお詫びします

 

立体機動装置がないのに巨人に勝てるわけないだろぉ!!

 

俺が焦ってる間にも前方から走ってくる巨人達。

 

くそぅ…お前らなんて立体機動装置があれば怖くないんだぞ!!

 

しかし現実は無情である。

ここには立体機動装置という翼を失った無力な俺しかいない。

 

だずげでぇぇえええ!!!

 

…………ふぅ…………

 

俺は腹を括る、こんなところで死んではいられない。

俺には帰りを待つ可愛い家族がいるんじゃ。

 

やってやろうじゃねぇか!!(ヤケクソ)

 

 

数刻後、俺は巨人の上で座り込んでいた。

 

ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙づがれだぁぁぁ……

 

立体機動装置がないのってこんなに疲れるんですね。(小並)

 

初めて人間の短小さを理解したよ…

 

こいつらすげぇ暴れるの……脚の健を削いでも一体を削いだらもう一体が来るから全然うなじ削げないし……

一体がやられそうになると特攻してくるし…

 

まるで集団の意思があるみたいだったわ…怖ッ!!

 

 

大変だったぁ〜

 

それにしても………俺……全然殺せなかったなぁ…めちゃめちゃ取り逃したし……

他の人は無事だろうか…

 

 

俺はそう思って近くを馬で散策する。

確か全部で巨人は10数体いたはずだから俺は半分程逃がしたことになる。

 

やべぇ、俺巨人殺すことしか出来ないのにこの怠慢は有り得ねぇって…

 

そんなふうに思っていると俺は遠くの建物に巨人が集まっているのを確認する。

 

どうやら俺以外の人間が頑張ってくれているらしい。

まだ巨人が移動していないのを見ると生きているのだろう。

 

一応加勢しに行くか?

立体機動装置が壊れた俺が行っても役立たずかな…

 

……………いや、囮ぐらいならなれるはずだ。

調査兵団員で今も生きてるってことは俺が引き付けている間に殺せる程度の力量はあるはずだ。

 

俺は現場に急ぐ。

 

 

 

三人称side

 

調査兵団所属。ミケ・ザカリアス

 

調査兵団内の実力はケイン補佐官、リヴァイ兵士長についでのNo.3

正真正銘の実力者だ。

 

しかし、そんな彼の命は既に風前の灯火であった。

 

 

「モウうごいてイイよ」

 

 

 

 

獣の巨人。体長は推定17m。

 

その巨人を見つけたのは彼が巨人達を引き付け団員の逃げる時間を稼いでいる時だった。

 

ーーでかい……………獣のような体毛で覆われている巨人など初めて見た…

 

ミケは内心で呟く。

彼は既に数体の巨人を討伐し撤退に移ろうとしていた。

巨人は夜になれば運動能力が著しく落ちるが、そこまで耐えられるか分からない。

そう考えたミケは口笛を吹き馬を呼ぶ。

 

タタッタタッタタッ

 

訓練された馬はミケの指示通り、ミケを迎えにくる。

 

ーーよし…!よく戻ってきた。ここで夜まで耐える必要はなさそうだな…

 

ミケは心底安堵した。

何故かは分からないが先に突撃していった増援のケイン補佐官がおらず、戦況は確実に悪い方向に傾いていた。

一人で数体の巨人を相手にして生き残っていたのは一重に彼の実力の高さからだ。

 

しかし、事態は彼の予想を超える。

 

ムンズ……

 

獣の巨人がミケの馬を掴んだ。

 

ーーッな…!?馬を狙った!?

 

ミケは驚愕する。

しかし、それもそのはず。

巨人は普通、人間以外に興味を示さない。

そう、普通の巨人は………興味を示すとするなら………

 

 

ーーそんなまさか!?

 

 

ミケはブレードを抜く。

今までこちらに攻撃を仕掛けてこないのは奇行種だと思っていた彼だったが、認識を大きく改める。

 

ーー獣の巨人は……………

 

人間だ

 

 

ミケがその結論に達した瞬間。

獣の巨人がミケに馬を投擲する。

 

ものすごい速さでこちらに向かってくる馬。

彼はそれを避けきれず地面に落下してしまう。

 

「ウゴゥ……!!」

 

 

そしてさらに運の悪いことに彼は落下地点にいた巨人に下半身を噛まれてしまった。

巨人がミケを噛む。

 

ガリッ

 

「ァア゛ァ゛ァァ!!!」

 

下半身の焼けるような痛みにミケは絶叫をあげる。

 

そしてミケは必死に巨人から抜け出そうともがく。

 

するとその時。

 

 

「マて」

 

 

不気味な声が聞こえる

獣の巨人が喋る。

ミケの近くにしゃがむ獣の巨人。

 

 

ズシン…

 

 

その動きに近くの木が揺れる。

 

ーー喋った…!?

 

ミケはまたもや驚愕する。

しかし次の瞬間には自身を噛んでいる巨人がまた動くことで痛みを思い出す。

 

「ン゙ン゙ン……!!!」

 

血が滲む下半身。

すると獣の巨人が不思議そうな声を出す。

 

 

「エ?オレいま、まてっテイッタロウ……」

 

 

グチャ…

 

ミケを食べていた巨人を握り潰す獣の巨人。

 

「ン…ハァ………ハァ………」

 

痛みから一時開放されたミケは荒い息を吐き出す。

 

「うワぁ……」

 

自身の手を確認する獣の巨人。

しかしそれも一瞬。

こちらを見つめ、ミケに質問をする獣の巨人。

 

 

 

「そのブキは……ナンていうんでスか?」

 

 

 

ミケは混乱する。

 

 

 

「コシにつけた、トビまわるヤつ」

 

 

 

呆然としてしまうミケ

 

「……ア……ァ…」

 

口から漏れ出るのはかすれた息のみ。

それに嘆息する獣の巨人。

 

 

 

「ウーん、おナジげんごのハズなんダが………おびえてソレどころじゃないのか……」

 

 

そう言って首を振る獣の巨人。

 

 

「ツウか……ケンとかつかってンのか……

 

 

やっパ……うなじにイルってことはシッてるんだね………

 

 

マぁいいや……もってかえれバ」

 

 

 

そう言って獣の巨人がミケの立体機動装置を摘む

 

ーー殺される…!!

 

ミケは咄嗟に身構え身体を縮こまらせる。

がしかし、獣の巨人はミケの立体機動装置を摘み、ミケに背を向けた。

 

どうやら捕食などはしないようだ。

 

呆然とその背を見送るミケ。

しかしその時、ミケの脳裏に先刻の己の言葉が浮かぶ。

 

人は戦うことを辞めた時、初めて敗北する。

 

自身が部下にかけた言葉。

その言葉を思い出す。

 

ーーそうだ……

 

ミケの目に覚悟の火が灯る

 

ーー戦い続ける限りは………まだ負けてない…!!!

 

ミケは覚悟を振り絞り咆哮をあげる。

 

「ァァああああああ!!!」

 

それはミケの覚悟だった。

自身は諦めない。人類は諦めない。

 

人類は………敗けない!

 

「ァ?」

 

その声に獣の巨人が振り返る。

そして、ミケに絶望を与える。

 

 

「モウうごいてイイよ」

 

 

その瞬間、周りでミケの様子を伺っていた巨人が動き始める。

 

 

ドスッドスッドスッ

 

 

走りよる巨人達。

その恐怖に、その力に。

ミケの覚悟は容易く折られる。

 

「ぃやぁあああ!!」

 

巨人に掴まれ絶叫するミケ。

 

しかしその時だった。

 

「…………ァ゙ア!!」

 

林の中から何かが飛び出してくる。

それはミケを掴んでいた巨人のうなじを斬り落とし、周りの巨人の脚の腱を削ぐ。

 

「ケイン補佐官…!」

 

「………ア゙ッ!!!」

 

それは人類が誇る最強戦力。

調査兵団の番犬。

 

ケインだった。

 

 

ケインは驚くミケの声を気にせず、脚の腱を削いで倒れた巨人のうなじを削ぎ落とす。

 

 

突然の事態に混乱していたミケだったがそこは幾千もの修羅場を乗り越えてきた歴戦の兵士。

 

直ぐに頭を切り替え、ケインが脚の腱を削いだ巨人にとどめを刺す。

二人合わせて4体の巨人を討伐する。

 

残りは獣の巨人一体。

 

ーー勝てる……!!

 

先程鎮火したミケの闘志が再度燃え上がる。

 

ミケは確信していた。

獣の巨人がどれほど強くてもケインには勝てない。

 

「グルァ………!」

 

ケインは走って獣の巨人に突進する。

 

しかしケインは立体機動装置の射程圏内になっても立体機動装置を使わなかった。

 

そのまま切り込むケインにミケは最悪の事態が脳裏を過ぎる。

 

ーーまさか……!?立体機動装置の故障ッ!?

 

「ガァァアアアア!!」

 

ケインは吠える。

それがどんな状況でも。

何があっても。

 

それはまさしくミケが先程思い描いた不屈の権化。

 

人類の怒り。

 

ーー生身の人間が……巨人に勝てるのか…?

 

ミケはそう思わずにはいられなかった

 

 

ジークside

 

獣の巨人、ジークは背後から聞こえる声に気付き振り返る。

既に仕事は終わったと思っていた。

 

しかし、後ろを振り返ると1人の人間が猛烈な勢いで自身に迫ってきているのが見える。

 

「ン?」

 

ーーなんだ?

 

一直線に向かってくる兵士。

腰に着いた機械も使う様子がない。

ジークは混乱する。

 

ーーなんだ…?何をする気だ…?

 

警戒を強めるジークだったが近付いて来ても特に何をするでもないケインに警戒を解く。

 

ーーなんだ……壊れてるのか……?

 

ジークは近付いてきたケインを掴もうとする。

しかし。

 

 

「…ッ!?」

 

 

ジークの予想に反し、掴もうとした手は切り刻まれ、その兵士は自身の腕を登ってきた。

 

 

「ウオッ!?」

 

 

ジークは驚き手を振るう。

その衝撃に呆気なくケインは手から吹き飛ばされてしまう。

 

 

並の人間ならその高さから落ちれば死んでも可笑しくなかったがケインは並ではない。

 

受身をとり、また突進していく。

 

 

手を切り刻んだ技量、受身をとるその技術。

そしてなお進んでくる気迫にジークは己の認識を改める。

 

 

ーーこの兵士は…普通ではない…!

 

 

ケインside

 

ヌゥ!?

何か見たことあるおっさんがピンチだったから助けたけどどういう状況ですかぁ!?

 

それにしても危なかった…!

餌(おっさん)に気を取られていたからほぼ不意打ちで何とかなったがあの数の巨人を庇いながらだと俺もヤバかった…!

 

だが残るは遠くにいる猿みたいな巨人一体のみ。

 

一体なら俺一人でどうとでもならァ!

 

 

俺はそう思い特攻する。

特に何も考えてないがまぁ大丈夫だろ(適当)

 

近付いて行くと猿巨人が俺を掴もうとしてきた。

 

ーー甘いなぁ!!

 

 

斬ッ!!

 

 

俺はその手を斬って、うなじを狙いに行く。

最短距離は腕を突っ切るために俺は猿巨人の腕を登る。

 

 

しかし俺は腕を登っている最中に気づいた。

 

ーーこいつ腕がバカ長ぇ!?

 

普通なら既にうなじに到達していてもおかしくないが、猿巨人の腕の長さもあり、猿巨人が驚いて腕を振ってしまう。

 

その衝撃に俺は空中に放り投げられてしまった。

 

ーーヌン!?

 

俺は咄嗟に受け身を取る。

何とか無事だった俺は考えながらまた突進していく。

 

 

ーー直接狙うのは無理……なら脚を斬って、うなじ……おっけー!!

 

 

考えを纏めると同時に獣の巨人が今度は蹴りを放ってくる。

捕まえる時とは打って変わって、俺をひき肉にしようとする意思がビンビンに伝わっくる。

どうやら殺す気になったらしい。

 

 

俺はそれを全力で回避し、その脚の腱を斬る。

そして、すれ違いざまにもう一方の脚の腱も斬る。

 

 

ドスンッ……!!

 

 

猿巨人が倒れた。

 

俺は背中に登りうなじを狙う。

ブレードを構える俺。

 

ーートッた!!

 

しかし俺がブレードをうなじに叩きつけようとしたその時。

うなじが水晶のようなもので覆われる。

 

「ッ………!?」

 

驚く俺、しかし確か俺はこれを一度見たことがある。

 

美人巨人が最後に少しだけ使っていた。

 

俺は思い出すが振り下ろしたブレードは止まらない

 

 

パキンッ…!!

 

 

水晶とブレードが当たると同時にブレードが折れた。

 

ーー折れた!?

 

俺は内心で驚愕しているとムンズと何かに掴まれる。

 

それは猿巨人の腕だった。

 

普段なら腕を斬って脱出できるがブレードの折れた俺はどうにも出来ずに投げ飛ばされる。

 

 

ブンッ!!

 

 

俺は助けたおっさんの近くに吹き飛んだ。

 

グチャ……!!

 

おぅふ…………いくらこの身体が頑丈だとは言え、今ので既に内蔵がお亡くなりになってしまったようだ。

 

ーー痛ってぇ……

 

「グゥゥ……」

 

俺はあまりの痛みに呻く。

 

恐らく骨も折れているのだろう。

おっさんが何か言ってる気がするが聞こえない。

 

もしや鼓膜が逝った??

 

ーーマズいぜぇ……これはマジでヤバい…!!

 

俺の意識が軽く飛んでいる間に猿巨人は回復を終えたのが見える。

 

俺は猿巨人が近くに来るまでの間に必死で身体を動かそうとする。

 

しかし、俺の予想に反し、猿巨人は近くの岩を掴んだ。

 

ーー何をする気だ…?

 

俺がそう思っていると猿巨人は投球ホームにはいる。

俺はそれを見てすぐに察する。

 

咄嗟に火事場の馬鹿力でおっさんを建物の中に投げ飛ばし、俺自身も隠れようとするが間に合わない。

 

岩が粉々になって飛んでくる。

俺は避けられない。

 

 

ドガッ……!!

 

 

俺は最後にそんな音が聞こえた気がした。

 

 

 




主人公がいつも勝ってるのってつまらないですよね。
なので殺します。(´・ω・`)

次回!ケイン死す!デュエルスタンバイ!!

今回は巨人の大きさを表現するために今まで使っていなかった表現をしてみました。

感想くれると次も書きます。

豆知識。
Simejiでグンタって調べるとグンタ・シュルツが検索候補に出ます。
他の人は出ませんでした。


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