ライスシャワー×マンハッタンカフェ ウマ娘アンソロジー (ぴちかー党)
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ライスとカフェの初外出

 タキオンにドタキャンされ手持ちぶさたになってしまったマンハッタンカフェ
そのときふと、ライスシャワーの顔が思い浮かび


 トレセン学園。そこは馬娘とトレーナーが日々切磋琢磨し一流の馬娘を目指すための育成機関。

 

 東京都のとある場所に存在するその学園は、全寮制の中高一貫校にして総生徒数が二千人弱というマンモス校である。

 この学園の象徴といえるものが2つある。一つ目が正門をくぐった先にある広場

 

 東京ドーム3つ分の広大な広場。その広場一杯にこれでもかと生い茂る木々や花花。春には桜が、夏には向日葵が、秋には桔梗が、冬には水仙が、束の間の憩いを求めてやって来た馬娘達を優しく迎え入れる。

 

 そんな広場の一角で、ベンチに座るライスシャワーとマンハッタンカフェの姿が見えた。

 

「・・・か、カフェさんごめんなさい。その、ライスが不幸にしちゃったよね・・・」

 

「・・・?あの、何の話ですか?」

 

「えっと・・・ライスが呼び出されたのって、また併走をお約束したら雨が降っちゃったから・・・その事を怒っているからかなって」

 

 

ベンチの中央に微妙な隙間を残し腰かける2人の馬娘。

 見るからに申し訳なさそうに縮こまっているライス。そしてその様子を不思議そうに眺ているカフェ。

 

「・・・いえ・・・全く違います」

 

暫くの沈黙のあと、いつもの様子で彼女は物静かに否定する

 

「ふぇ・・・」

 

「・・・その、もし予定が空いていれば、・・・本日一緒にお出かけできたらと・・・実験が忙しいようでタキオンさんに、急に断られてしまって」

 

 

それを聞いたライスシャワーの耳がせわしなく動き、先程までのベンチの微妙な空間は消滅していた。想定外の答えに興奮を隠しきれない様子であった

 

「あのねあのね、ライスずっと行ってみたいケーキ屋さんがあったの。あっ、でも・・・」

 

 そこでふと、あることに気付いた彼女はいかにも残念そうに呟く

 

「で、でもいまからお出掛けすると、門限に遅れちゃうかも・・・」

 

 カフェがライスを誘った時にはとうに日も半分以上落ちようとしていた。

 

この学園の2つめの特徴それが、厳正な門限が定められているていることである。

平日は16時45分~21時00分

休日は08時00分~22時00分

また、よほどのことがない限り、外泊は認められていない。そして、門限を1秒でも破ろうものなら、会長のきついお説教が待っている。

 

 

 

 

「・・・すぐ近くだから・・・たぶん大丈夫」

 

「う、うーん」

 

「・・・ライスさんに紹介したい私のお気に入りの場所」

 

「ふぇ?ラ、ライスに・・・わかった。ライスよくわからないけど・・・カフェちゃんについてく」

 

 カフェの後ろにぴったりとつき、彼女の後を追いかける。

 トレセン学園の正門を抜けた先にある大通り、そのひとつ目の角を曲がり、いくつかの小道を抜ける。 小道を抜けるごとに、だんだんと人の気配も外灯も少なくなる。

 

「あ、あの。本当にここで合ってるのかな、どこかで道を間違えちゃったとか」

 

「・・・あの・・・つきました」

 

そういうと、橋の中程で立ち止まるカフェ。体を完全に欄干にあずけじっと川面を眺める。それにつられて、カフェの隣にそっと近寄り彼女の真似をするライス。

 

「・・・」

 

「・・・」

 

 お互いに一言も発することなく、川面を眺め続ける。

なにを見るでもなく、ただただ眺め続けるうちに、あっ・・・というまに日が落ちる、どれくらい眺めていたのだろう、夕闇が立ち込めていることに気付き時計を見上げるライス。

 あれから既に2時間が経過していた。

 

「か、カフェちゃん。もうこんな時間、急いで戻らないと門限に遅れちゃうよ」

 

「・・・もうそんな時間・・・15分ぐらいだと思ったのですが」

 

 そういうと、2人は慌てて家路へと歩を進める。

 

 

翌日。なんとか門限に間に合った二人は、昨日と同じように広場のベンチに腰かけていた。

 

「・・・あの・・・どうだったでしょうか。・・・私のお気に入りの場所」

 

「うん。とってもよかったよ。ライスいつまでいても飽きなかったもん」

 

「・・・よかった・・・ああやって眺めているだけで、とても心がみたされます」

 

「ライスもだよ。よくわからないけど、スゴくスゴく穏やかな気持ちになれたの」

 

「・・・夕暮れの景色は綺麗です・・・そして朝日が昇る瞬間はもっと」

 

「じゃあじゃあ、次は朝早くにあの場所にいこうね。約束だよ」

 

「・・・はい。約束です・・・それが終わったら、散歩を楽しみませんか」

 

「うん。ライス、次のお休みが待ち遠しいな」

 

 ライスシャワーとマンハッタンカフェ。2人のほのぼのとした外出記録はまだ始まったばかりである。 




 基本的に1話完結で、ライスシャワー×マンハッタンカフェを制作していく予定です。

 よろしければ次回以降も読んでいただらければ励みになります



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ライスシャワー×マンハッタンカフェ お散歩日和

ライスシャワーとマンハッタンカフェ
 今回はトレーニングのこともレースこともなにもかも忘れて、気の向くままにお散歩を楽しむことにしたようだ


雲一つない晴天となったトレセン学園ある日の休日

正門広場いつものベンチに彼女達の姿が見えた

 

「あ、あの。カフェちゃん。今日のおでかけはどこにくの」

 

「・・・特に決めていない・・・天気もいいし、お散歩とか」

 

「カフェちゃんと二人でお散歩、うん。ライスとっても楽しいと思うな」

 

二人のお出掛けプランがきまり、足どり軽く学園正門を後にする

 

ところで・・・・・[散歩]この言葉を辞書で引いて見ると、

散歩:ぶらぶら歩きまわること。そぞろ歩きとある。

なるほど、まさに彼女達にぴったりの言葉ではないか

 

========================

 トレセン学園を出発した彼女達、カフェの足は自然と、ある場所に向かった。東京{柳橋}マンハッタンカフェがおすすめするお気に入りのノンビリポイントの一つである。

 前回同様、欄干に体を預け橋からの景観を眺める2人。休日とあって、橋を通る人々の波は中々のものであった。忙しなく往来する人波の邪魔にならぬよう景色を楽しむ彼女達、何故かその場所だけはゆっくりとした不思議な時間の流れを感じさせた。

 

「ふあー。ここの景色も綺麗だね。ライスいつまででもみれちゃうな」

 

「・・・少しうるさいけれど・・・ここも綺麗」

 

 交通量という点においては、前回のお気に入りポイントに分があるがここから見える{両国橋}そして西方から見える神田川が大川へそそぐ景観、川辺では子供達のすがたが、釣り人が、そしてその先には銭湯だろうか、大きな煙突が煙を吐いている

 

「・・・」

 

「・・・」

 

お互いに、思い思いの景色をしばらく楽しむ彼女達

 あまり口数が多いとはいえないライスシャワーとマンハッタンカフェ、恐らく往来する人々からすれば「あれの何が面白いのだろう?」ともみれなくもない

 

しかし、何かと共通点の多い彼女達にとっては、心許した?馬娘と時間を共有する。それだけで充分なのだ

 

 

どれくらいたっただろう、5分それとも10分。いやもしかしたら1時間か・・・

 暫くして、ふとなにかに気付いたマンハッタンカフェがライスシャワーの肩を指先で優しく、触れたかどうかすら怪しいくらいの強さで2度ほど叩いた、いや、やはり触れたといった方が正確だろう。

 

「・・・あの、ライスさん」

 

「ふぇ、ど、どうしたの。」

 

「・・・今回はお散歩が目的なので・・・行きましょう。・・・名残惜しいですが」

 

「あ、うん。そうだったよね。ライスも夢中なっちゃった。」

 

「・・・今度は・・・あのあたりお散歩しようと思うのですが」

 

 カフェの指差す先、そこはトレセン学園周辺随一の商店街。通称[青空商店街]であった。

 100mに広がるアーケード通りには、多種多様な地元の商工会による店舗が約50店舗。それぞれの店舗が専門店顔負けのラインナップを揃えている。それこそ、{おはようから、おやすみまで}全てをこのアーケードで完結できるといっても過言ではない。

 

 ここも、正にうってつけの散歩コースである

 

 

 

「す、すごいねカフェちゃん。美味しそうなお店がいっぱいならんでるね」

 

「・・・毎週来ているはずなんですが・・・何故でしょう。その都度新しい発見があるような気がします」

 

「ま、毎週来てるの?」

 

「はい・・・ここには行きつけのお店があるので」

 

「行きつけのお店、どこどこ?ライスも行ってみたい」

 

「・・・そうですか・・・でしたらコーヒーブレイクにしましょう」

 

 

===カフェお気に入りの喫茶店内===

 

「・・・マスター、いつものお願いします」

 

「はいよ、そちらのお嬢さんは」

 

「えーと、えーっと・・・(メニューが多くて目移りしちゃうな。あれもあれも、これも美味しそう。きめられないよ)か、カフェちゃんと同じものでお願いします」

 

「はいよ、じゃあちょっと待っててね」

 

 そういうと、いかにもな雰囲気を醸し出している老練なマスターが豆筒にスコップ(名称不明銀色のやつ)を入れる。

そうして、取り出した豆を引き機にいれ先程とは、別の筒からまた豆を取り出しそれも機械へいれる。

どうやら、カフェの注文している「いつもの」というのはブレンドコーヒーらしい。

店内に芳ばしい香りでみたされる

 

「うわぁ。いい香りだねー」

 

「・・・挽きたての香り・・・とっても落ち着く」

 

「はいこれ、いつもの。マスターからのサービス」

 

「・・・ありがとうございます」

 

「これは?コーヒ豆がお皿に・・・?」

 

「・・・いただきます」

 

「へ、カフェちゃん!(コーヒー豆をそのまま食べちゃった)」

 

「・・・ライスさんも・・・はい。あーん」

 

そういうと、一粒の豆を掴みライスシャワーの口に運ぶカフェ 

 以外に知られていなく、あまり生で食べる機会には巡り会わないが食べてみると以外と美味しい。

 意外なことに、豆によっては苦味や酸味より甘味が強い豆もあるのだから不思議である。もちろんお腹は壊さない。

 

「お、おいしい・・・でもちょっと苦いね」

 

「・・・この苦味が・・・味を引き締めてとってもおいしいコーヒーになるの

・・・それから」

 

(あ、ライス知ってる。これ絶対長くなるやつだよね・・・寝ちゃわないようにが、頑張らなきゃ)

 

 地雷を踏んでしまったことを察知し覚悟を決めたライスシャワー。しかし、そこに思わぬ助け船が入った。

 

「でも珍しいね、カフェちゃんが友達をつれてくるなんて」

 

「・・・はい。今日はライスさんとお散歩に・・・お散歩。そうでしたまた忘れるところでした

・・・そろそろお散歩を再開しないと。ご馳走さまでした」

 

「ご、ご馳走さまでした。あの、ありがとうございます」

 

 

そういうと、去り際にペコリと頭を下げるライスと{グッドラック}の身振りで応えるマスター

そんなこんなで、彼女達の商店街散歩はまだまだ続く。

 

・・・・ところで、散歩の醍醐味と言えば、やはり「何も彼も忘れて、フラフラと三時間ほど歩いてみよう」これにつきる。

 さらにいえば、そこから自分が気に入った心休まる {とっておき}場所を一つでも二つでもさがしだすことが出来ればいうことはない。そして、そんな{とっておき}がいたるところに存在するマンハッタンカフェはまさしくお散歩マスターといえるだろう。 

 

 

しゅるっ・・・しゅるっ・・・

 

 

カフェの両耳がはっきりと何かに反応し立ち止まる

 

「か、カフェちゃん。大丈夫?気分でも悪くなっちゃった」

 

ライスの問いかけには答えず、じっと聞き耳をたてている。

 

しゅるっ・・・しゅるっ・・・

しゅるっ・・・しゅるっ・・・

 

一定の間隔で規則正しく聞こえてくるなにやら心地のよい音、カフェはそれの発生源を探すため辺りを見回し、発見する。

 

「・・・ライスさん・・・あれは?」

 

「あれ?あ、何か新しいお店を建ててるみたいだね。何ができるのかな・・・ケーキ屋さんだったりしないかな」

 

カフェが耳にした音の正体。

それは、鳶職が材木加工に用いる{カンナ掛け}の音であった。

しゅるっ・・・しゅるっ・・・

しゅるっ・・・しゅるっ・・・

一定の間隔で生まれる、心地のよい音と紙のように薄いおが屑

 

遠巻きに、その様子をうかがっている彼女達。

すると、それに気付いた施工主らしき老夫婦にこやかに手招きをしているではないか。シャワーとカフェはいかにも「どうしようか?」とでも言いたげに顔を見合せている。

そして、どちらともなく頷き老夫婦のもとに行き間近でその様子を観察することに決めたようであった。

 

「あ、あのこんにちは・・・」

 

「はい、こんにちわ。その制服、近所の・・・なんといったかな?とれ何とかの学生さんかね」

 

「ライスシャワーっていいます」

 

「・・・マンハッタンカフェです」

 

「まぁまぁ外国の学生さんですよ、お爺さん。」

 

「よかったら、ゆっくりしていきなさい。婆さんお茶頼むよ」

 

「はいはい・・・。」

 

彼女達を縁側にまねいれるお爺さん、そして奥に消えていくお婆さん

やがてヤカンと4つ分のコップをもってやってくる。

 

「あ、あのー、えーと」

 

「はい。むぎ茶お嫌い?」

 

「・・・いただきます」

 

「い、いただきます」

 

しゅるっ・・・しゅるっ・・・

しゅるっ・・・しゅるっ・・・

その間にも黙々とカンナ屑や木屑を撒き散らしなが余念なくはたらき続ける

 

しゅるっ・・・しゅるっ・・・

しゅるっ・・・しゅるっ・・・

その心地よい音を耳にしながら、お爺さん達との会話に花咲かせる彼女達。

しばらくたったあと、老夫婦は「遠慮なくゆっくりしていきなさい」という言葉とともに、縁側を離れ

職人さんと何かを話し合っている。

 

 

 

しゅるっ・・・しゅるっ・・・

しゅるっ・・・しゅるっ・・・

いただいた麦茶を飲みつつ彼女達は、その音を暫くし聞き続けた

 

「す、すごいねカフェちゃん。いつままでも見てられちゃうね」

 

「・・・ああいうのを職人技というのでしょうか」

 

「ライスもいっぱいトレーニングしてあんな風にお客さんを満足させる走りができるといいなー」

 

「・・・カンナをかけながら走るということでしょうか?・・・少し走りにくいような気もしますが」

 

「う、うーん。ライスどれは違うと思うんだ」

 

ライスシャワーとマンハッタンカフェ二人の休日はまだ始まったばかりである。

 

 

 

 

 

おまけ

 

「ふぁあ・・・カフェちゃん。その麦わら帽子とってもにあってる。かわいいなー」

 

「・・・似合っている・・・可愛い、よくわかりません」

 

青空商店街、{じゃば座hat}ここは文字どおり帽子の専門店である。

 店主曰く「うちで見つからない帽子なぞありはしない」という自信ぶりからもわかる通り、そんじょそこらの百貨店では太刀打ちできない品揃えである

 

 さらに、品質にもこだわりがあり、某安かろう悪かろう産の帽子は一切ない徹底ぶりである。彼女達は外出の最後に、ライスシャワーの新しい帽子を選んでいた。

 

「カフェちゃん。一緒にこれ買っちゃおう、ライス明日のレースで二人でおんなじ帽子で出場したいな」

 

「・・・ライスさんと一緒の帽子・・・わかりました」

 

「やったー」

 

「それではこれと、あとこれを買うことにします」

 

「え、ええー。カフェちゃんがハンチング帽子・・・ちょっと想像できないや」

 

「・・・いえ、これはタキオンさんへのお土産です」

 

 そういうと、彼女は麦わら帽子と一緒に、黒一色のハンチング帽をレジにおく。

確かに、タキオンならば似合うであろう。勿論、その帽子を被るかどうかは別の話である。

 

「お土産かー。じゃ、じゃあライスもマルゼンさんにもタキオンさんと同じ帽子を買ってかなきゃ」

 

そういって、ライスシャワーもハンチング帽子を購入し帰宅した。

お土産を渡された馬娘達の反応はまあ概ねこんな感じである

 

===タキオン・カフェのお部屋===

 

「・・・ただいま」

 

「やあ、カフェ今日のお出掛けの具合はどうだったんだい・・・っとこれは?」

 

「・・・お土産」

 

「ふーん。ハンチング帽ねぇ。まぁ、被ることはないだろうけど気持ちは受け取っておくよ」

 

 

===ライス・マルゼンのお部屋===

 

「も、戻りました」

 

「まぁ、やっと帰ってきたのー。ライスちゃんが居なくて寂しかったんだから」

 

「ご、ごめんなさい」

 

「じょうだんよ、じょーだ・・ん?これは?」

 

「マルゼンさんにお土産です」

 

「本当に?嬉しいわ~。明日のレースはこれを被ってかっ飛ばすわよー。ライスちゃんありがと」

 

 

===翌日とあるG1レース===

 

「さぁ始まりました、本日のG1レース。いま各馬娘ゲートに入っていきます」

 

「今日のレースは馬娘の調子をみると、1着はマルゼンスキーとアグネスタキオンこの馬娘に絞られると思いますね。」

 

 実況、解説が各馬娘のゲートインを前に本日のレースの仕掛けどころ、戦略等をしゃべり終える。そして各ゲート番号、馬娘の紹介が始まった。

 

 「さぁ1番ゲートはハルウララ」

 「この芝コースはなかきびしいですよ、それに最後まで体力が持つでしょうか」

 

 「2番ゲートにサクラバクシンオー」

 「この長距離ではレース結果よりも序盤の爆進に期待したいですね」

 

 「3番ゲートはセイウンスカイ」

 「実力は1番、2番人気にひけはとらないですからね」

 

 「4番ゲート、来ましたゴールドシップ」

 「この馬娘だけは全ては神のみぞ知るですね」

 

 「そして、来ました一番人気マルゼンスキー」

 「うん?あんな帽子いつもつけていましたかね」

 

 「そして、おや?アグネスタキオンも」

 「ほーペアルックですか。これは以外ですね」

 

そんなこんなで始まったG1レース。

劇走の結果マルゼンスキー、アグネスタキオンの同着1位に終わった。

 

このレースを目撃した観客・解説いわく

「あんなに真剣なタキオンは初めてだ」いわれていたそうな

 




ここまで読んでくださりありがとうございます。

次回は、マルゼン姐さんをもっと2人の間にはさめていけたら面白いかも知れないと思っています。


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よい匂いのする一夜・上(ライス×カフェ)

マンハッタンカフェとライスシャワーが初めてお泊まり外出をするお話


 トレセン学園開校記念日

 馬娘養成機関トレセン学園。早いもので開校1周年を翌日に控えたこの日、生徒会長シンボリドルフから全校生徒に向けてとあるしたつが伝えられた。それが{明日0800~翌々日0800までの門限撤廃及び外泊の許可である}

勿論開校記念日及び翌日は祝日に変更、さらには、外出区域制限一時撤廃のおまけ付きである。

 

 

即ち、0800の門限に間に合うのならば沖縄に行こうが、北海道に行こうが、はたまた海外にいくことだって可能なのである.

学園開校以来の大盤振る舞いに生徒達は歓喜した。その日の夜、学園寮がどんな状況になっていたかは、容易に想像できるであろう。

 

そして、勿論あの馬娘達も例外ではなかった。

 

===トレセン学園寮===

(明日は朝イチにカフェちゃんと外出して、電車に乗ってそれからそれからー・・・)

「ぜ、全然眠れないよー」

 

 他の生徒達同様、ライスシャワーも眠れぬ夜を過ごしていた。

 それも仕方のないことであろう。会社員・学生・馬娘誰でも休日前の金曜日はそんなものである。誰も彼もがみな至福の休日プランを考え頭が冴えに冴えてくる。そして、例え眠りに落ちても目覚まし要らずに5時には起きる。

 

 

 平日には考えられぬことである。

 死語となってしまった「花金」状態である。恐らくこの言葉を知っている馬娘は誰一人・・・いや、ライスシャワーと同室の彼女ならしっていようか・・・

奇しくも、その言葉を知っているであろう馬娘が眠れぬライスを心配し話しかているようだ

 

 

「どうしたの、ライスちゃん。もしかして華金に興奮してねむれないのかなー」

 

「マ、マルゼンさん・・・ライス起こしちゃいましたか。ごめんなさい」

 

「ぜんぜんいいわよー。どうせ私も眠れないし問題ナッシング!!

それよりやっぱり、ライスちゃんも明日どこかお泊まりにいくの?」

 

「は、はい。カフェちゃんと一緒にいってきます」

 

「あら、いいじゃない。あたしも一緒についていってもいいかなー?勿論車ならいつでもだせるわよー」

 

「ど、どうぞ。ライス皆でお泊まりした方が楽しいと思うから」

 

「もうライスちゃんったら冗談よ。流石にお友達との水入らずにずけずけ入っていくほど無粋じゃないわよ」

 

「そ、その、ライスは全然そんなこと」

 

「ライスちゃんはそう思っても、マルゼンさんはそうは思わないの。あと多分カフェちゃんもね」

 

「ふぇ、カフェちゃんですか・・・」

 

「なんでもないわー。さあとりあえず眠れなくても、目を閉じてるだけでも違うから。明日寝不足で満足に楽しめませんでしたなんて、本末転倒よ」

 

「は、はい。おやすみなさい」

 

 こんな、微笑ましい会話が聞こえてくるライスシャワーとマルゼンスキーの1室。

そして、そんな部屋と対照的なのは・・・

 

「えぇーどういうことだいカフェ。明日は実験に付き合ってくれるって約束だったじゃないか」

 

「・・・そんな約束していません」

 

トレセン学園寮 マンハッタンカフェ・アグネスタキオンの1室

真夜中の部屋にタキオンの驚きに満ちた声が聞こえてきた

 

「いいや、したね。今日君がボーッ窓を眺めているとき、僕は確かに君の意識に問いかけた。そして、君はその瞬間確かにうなずいたんだ」

 

「・・・あの・・・それって口には出していないってことですよね」

 

「勿論さ。君と僕は常に阿吽の呼吸、多くを語らずとも僕がなにを考えているかなんて全て、一瞬で」

 

「・・・わかりません」

 

「そんな・・・じゃ、じゃあ僕もついてくよ。今さら2人が3人に変わったところでたいした問題じゃないはずだよ」

 

「・・・もう・・・2人分で宿の予約をとってしまったので」

 

 マンハッタンカフェにしては珍しく、嘘をついていた。実際にはライスの言う通り宿はおろか目的地さえ決まっていなかった。その嘘がライスシャワーとの水入らずを邪魔されたくなかったなのか、はたまた別の理由が有るのかはその表情からは読み取れない。

 

「うーん。じゃあ、宿の名前だけでもおしえてくれないかい?そこに偶然、たまたま僕が予約をいれて、たまたま隣の部屋なら問題ないだろう」

 

「・・・教えません・・・秘密です」

 

「くそ、これもダメか。ええいわかったよ勝手に僕を置いてきぼりにしてお出掛けするといいさ。その代わり僕はトレーナーにいつも以上に過激な実験をするよ。君ではなくトレーナーにね」

 

「・・・そう、ですか」

 

「それだけかい、反応が薄すぎるよ。そこはなんかこう悔しがったりとか、怒ったりとか、なんかあるんじゃないかい?」

 

「・・・特には・・・ご自由に」

 

「くそ。こうなったら自棄だ。徹底的にトレーナーにやつあた・・実験してやる」

 

こうして、それぞれの夜は更けていく。

 彼女達それぞれの明日への希望を胸に、ライスシャワーとマンハッタンカフェ彼女達がどんな休日を過ごすのかはわからない。

 今わかっていることはただひとつ、アグネスタキオンのトレーナーが悲惨な実験に付き合わされるだけ、ただそれだけである。




長くなりそうだったので、一旦ここで区切ります

各作品2000時程度で納めるのがちょうどいいと思っておりますので、続きは次回にご期待ください


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よい匂いのする一夜 下(ライス×カフェ)

 ライスシャワーとマンハッタンカフェのお泊まり会です


 旅館{山の湯}は、湯河原のバス道路から二百五十の石段をのぼった山の上にある。

 客が、あえぎあえぎ、この急な石段をのぼって玄関へたどりつくと、

 

「どうぞ」

 

待ち構えていた女中が、冷たい水をくんだコップを差し出す。

 

「ここもしずかでいいんだが・・・何とか、その、玄関まで車が入るようにならんかねえ」

 

息をきらせながらこぼす中年の客もいるが、

 

「このままの方がいい。汗かいて石段のぼって、ここへついて、コップの水が出ると、とたんに山の湯へきたなあ・・・そんな感じがするんだ。自動車道路なぞつけたら承知せんぞ」

 

という支持派も多い

 

だが。

「いま、駅へついた」という知らせが番頭から帳場へ入ったとき、なんとも珍しい客層に、女中達はいろめきだった。

 

「きいた?今日のお客さんは14、5の少女達らしいわよ」

 

「珍しいわよね。うちを利用するお客様って大体5、60代が多いし、初めてじゃないかしら」

 

「こんな、観光地もない田舎に東京から来るなんて、不思議よね。カラオケもスーパーもないのよ」

 

「それに閑散期って言っても、そこらのホテルの正規料金同じくらい取るのよ。いいところのご令嬢様だったりして」

 

「じゃあ、やっぱり目的は人知れず・・・」

 

 そんな、俗世丸出しのおばちゃん達があらぬうわさをしているとは勿論微塵もない。彼女達がここを選んだ理由それは・・・遡ること10分前

 

 

「か、カフェちゃん起きて。どうしよう寝過ごしちゃったよー」

 

「・・・ライスさん・・・おはよう。」

 

「あ、あの駅員さんここは何処でしょうか?」

 

「あー湯河原えきっていってね。自然がきれいな場所だよ。」

 

「因みに折り返しの電車は・・・」

 

「残念だけど今日はもうないね」

 

当初の駅を乗り越し終点まで来てしまった、ライスとカフェ。

 本日の宿に困っていた所に駅に詰めていた番頭さんが助け船を出してくれたこれがいきさつである。

そしてこういうことは、田舎の場合往々にして存在する。かくいう私も一本電車に乗り遅れたら次回発車が6時間後なぞがざらなところにすんでいた。それはさておき

 

 

 

彼女達は伝えられた道を歩くこと30分最後の石段を登り、{山の湯}へたどり着いた

閑散期もかさなり、女中さん全員がライスとカフェを迎えるため入口に整列している様は圧巻であった

 

「わざわざ遠いところからよくおいでくださいました」

 

「ほ、本日はよろしくおねがいしふぁす・・あっ」

 

「・・・お邪魔します」

 

「ご丁寧にありがとうございます。ところで・・・」

 

荷物を預かり、部屋まで運ぶ女中さんが言葉を続ける

 

「お客様方は何かスポーツ、いえ、陸上経験がおありでは?」

 

「は、はい。陸上と言えばそうともいえるかも」

 

「やっぱり。私も経験者だからお客様がたの脚をみて一目でわかりました。種目は長距離でしょう」

 

「・・・はい・・・2人とも2000mが得意です」

 

「あら、今はトラック競技に2000なんて追加されたの。時代がかわればってやつですねー」

 

 完全に勘違いをしている女中さんに、どうしようか?とでも言いたげにカフェに視線を送る。

しかし、その意図がカフェに伝わってる感じは見受けられない。

そうこうしているうちに、部屋に到着し旅館の説明が始まる。完全に訂正する時期を逸してしまったようだった。

 

 

 

 

「普段は男女を時間帯ごとに分けていますが、本日はお客様の貸し切り状態ですのでご自由にお使いください。当館自慢の総檜風呂でございます」

 

「・・・あの・・・総檜風呂って?」

 

「はい。浴槽は勿論、床、椅子、桶に至る全てに檜を使用しているお風呂場でございます。檜の薫りを存分に楽しみながら、好きなだけご入浴致してください」

 

「楽しみだね。カフェちゃん」

 

「併せて、お夕食の時間は何時頃になさいますか?」

 

「ゆ、夕食の時間も指定できるんですか」

 

「はい。それと何かアレルギーや嫌いなものなどはありませんか?」

 

「私は特にはありません。」

 

「・・・ライスさんと同じです。・・・それと夕食は今がいいのですが」

 

 

実は相当前からライスのお腹の虫がなっていたことをカフェは知っていた。

 

「ええ構いません。でしたら、先にご入浴をされてあがった後にお持ちする形でよろしいですかね」

 

「は、はい。お願いします」

 

一通りの荷物の整理を終え、浴場に向かう彼女達

その途中途中の通路には名のある作家や詩人、映画スターなどのサインが飾られている。

恐らくは、知る人ぞ知る穴場と言うところなのであろう

 

===浴室===

 

「ふぁあ~とっても広い。2人だけの貸し切りなんて勿体無いね・・・あれ?カフェちゃん」

 

おもむろに洗い場を突っ切り、湯船に歩いて行くカフェ。

そして・・・ザブン!という見事な音ともに入湯してしまう

 

「だ、だめだよ。先に体を流さないと・・・」

 

「・・・貸し切り・・・大丈夫」

 

「う、うーん。大丈夫なのかな」

 

「・・・ライスさんも、早く。とっても・・・気持ちいいです」

 

(か、貸し切りだし大丈夫だよね)

 

 悪魔の囁きに敗けてしまった彼女もまた、勢いよく・・・ザンブと見事な音を立てて入湯する

内風呂しかない浴室ながら、そこからは多彩な植栽、大小の灯籠、そして付近を流れる小池のせせらぎと何とも欲張りな・・・いや贅沢な眺めが見下ろせる。

 しばし、その景色を楽しみつつ入浴を済ませると丁度お膳を運ぶ女中の姿が見えた。どうやら少し早い夕食ができたようである。

 

 

案の定部屋に戻ると、そこには

 

「うわぁー。おいしそう」

 

「・・・いいにおい」

 

お膳に溢れんばかりに載せられた彩り豊かな料理の数々

女中から渡された献立表によると今晩の夕食は・・・

 

前菜  サヨリとエビの押し寿司。常節と大豆の煮物。ゆり根の煮物

小鉢  コノワタ。蕗の薹。ゼンマイとワラビの甘煮

陶板焼 牛肉。エビ。タマネギ。しいたけ。シシトウ。にんじん。

 

そして、この旅館名物{アユ飯}が小ぶりのオヒツに入れられ2人に配膳される

蓋を開けてみると中には、お頭つきの鮎が3匹。

「食べる前にしゃもじでよくかき混ぜて、最後に青葱をふって」という女中さんの指示に従いかきまぜる。

 

 身を崩しながら味付け飯とを混ぜ合わせ、青葱を振れば完成。出来立てあつあつを口一杯に頬張る。これが不味いはずがない。空腹も相まり3合はあったであろうオヒツも、そしてこれでもかとあったおかずさへも綺麗に平らげた彼女達であった。

 

 

しばし、部屋にて就寝までの時間を何をするでもなくノンビリと過ごす彼女達。

そこでふと、カフェがちゃぶ台におかれた一冊の本を発見し、適当にパラパラと捲ってみる。

そして、ふとあるページで手が止まった。

 

「・・・」

 

「カフェちゃん。何を読んでいるの」

 

「・・・ここ・・・読んでみて」

 

カフェがライスにその本を渡す。その本はないようを読む限り詩集であった。

そのページには

 

とおみの音

とおみの音にききほれている

いつまでもききほれている

秋の灯ともし頃

とおみの音

をりから ぱたぱたぱたと

草屋根におりてきた野鳩

空は美しい夕映えだ

 

 

という、一篇が記されていた

 

「い、いみはよくわからないけど。ライスとっても素敵な綺麗な言葉だと思う」

 

「・・・丁度夕方・・・秋」

 

「あ、そうだよね。ちょっとここからの景色で想像できるかな?」

 

 

窓から景色を見下ろす彼女達

そこには、落ちつつある夕日が、池に映されていた。それは先程の浴室で目撃した景色とはまた違った幻想的な光景であった。

 

「これが、とおみなのかな?」

 

「・・・わからないですけど・・・とても綺麗です」

 

{とおみ}その言葉の意味はさだかではなかったが、彼女たちにとって窓からの景色は正に先程の詩にかかれていたそれのイメージであった。

 ライスとカフェが暫く先程の詩集を眺めていると、寝床の用意を整えに来た女中の声が聞こえてくる

 

 

「そろそろ寝床をこしらえてもよろしいでしょうか?」

 

「あ、お願いしまーす」

 

「それじゃあ、失礼しますよ。」

 

 

 てきぱきとちゃぶ台をたたみ、運んできたはだか布団にシーツを被せる。その上に毛布そして掛け布団を寸分のずれなくセッティングする様は正に熟練のなせる技であろう。

 一通りの寝床の準備を終えた女中が二人の読んでいた詩集に気付き、自慢げに話しかける

 

「あら、若いのに珍しい。その詩集気に入った?」

 

「はい。とっても幻想的でライス時間を忘れて読んじゃいました」

 

「・・・これって、購入できますか?」

 

「購入?無料でいいですよ。お土産に持っていって。うちの旅館を贔屓にしてくれる作家さんの処女作なんですよ」

 

「ほ、本当にもらっちゃっていいんですか?よかったね、カフェちゃん」

 

「・・・ありがとうございます」

 

「いいんですよ。よかったら今後ともお泊まりの際は、ご贔屓に」

 

 

 先程の女中が去ったあと。二人は時間の許す限りその本に熱中し、そして眠りについた。

少し開けてある窓からは人工の風では絶対に得られない清涼な風が、そして鈴虫の音色が2人の眠りをさらに深いものへと誘った。

 

 

 

「・・・さん、ライスさん」

 

「ん、カフェちゃん?どうしたの・・・ふぁあ」

 

 

まだ日も上がらぬ時刻、ライスを起こすカフェ。昨日見ていた詩集のあるページをライスに渡すと

 

「・・・今から、見に行きませんか?」

 

「見に行く、このページの景色を・・・う、うん!とってもいいと思う」

 

 カフェから渡されたページを読みすぐさま準備に取りかかる2人。先程までの眠気はすでに吹き飛んでいた。

 

「あら、お早いお出掛けで」

 

「あ、あの、すみません。この詩にかかれているような景色を見れるところありませんか?」

 

「この詩・・・ああでしたら、ぴったりのところがありますよ。

あ、でもここからだとどう頑張っても、30分はかかりますよ・・・今からだと」

 

「ここですね。ありがとうございます。いこうカフェちゃん」

 

「・・・ありがとうございます」

 

「あ、お客さん今からじゃ人の足だと30分はかかるっていったのに・・・」

 

 

女中さんから教えられたその場所は、旅館から約8Km離れた場所にある。{人}の足では確かに30分・・・いやそれ以上かかるであろう。しかし、彼女達は{馬娘}それも長距離馬である。

彼女たちにとっては、わけのないことであった。

 

十分に余裕をもってその場所にたどり着く。

そこには、映画のセットであろうか?

時代劇に出てきそうな障子張りの入り口に茅葺き屋根という昔風民家が何軒も建っていた。

 

夜が明け民家の障子に眩しいばかりの太陽の光が降り注ぐ。その光景を詩集の言葉と見返しながら呟いた

 

「・・・この詩と一緒」

 

「ほんとだねー。起こしてくれてありがとうカフェちゃん」

 

二人が開いているページそこには、こう記されていた

 

 

夜があけかかると

暗い家の中に

まづしろばんでくる障子は

なんといふなつかしいものであらう

またなんといふうれしものであらう

しづかな夜あけの障子には

神様がおいでになるといふ

夜があけかかり

暗い家の中に

まづひとところから大雪渓のやうに

しろばんでくる障子は

なんといふうれしいものであらう

=================

 

興奮覚めやまぬままに、2人は宿に戻り朝食をとる

朝の献立はつぎのごとくだった。

 

鰆の味噌漬。

とろろ芋。

温泉卵と蕎麦。

わさび漬けと山牛蒡の味噌漬。

味噌汁。

そして、土鍋で炊いたご飯

 

夕食と比較するとやはり寂しいものは感じられる。

しかし、熱いものは熱いうちに。冷たいものは冷たいうち。に出される旅館の配慮があるのだからやはりうまくないわけがなかった。

 

 

こうして、1宿2日の彼女達のお出掛けは終わりを迎える。

がらりとした車内、車窓からはひたすらに続く田園の景色。列車の走行音

夢の中へ旅立っていく彼女たちを載せ、ワンマン列車は帰路を進む




*今回の物語導入部分は「青空の街」という小説からいただいております。
興味を持ったかたは是非ご一読を

土日で下記ためたストックが尽きたため、暫く更新を停止致します

また、土日である程度下記ためられれば、再開予定です


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口福で幸福なひととき(ライス×カフェ×タキオン×マルゼンスキー)

 美味しいものを食べた時、「口福」を感じ同時に「幸福」な気持ちになるそんなお話


 どんなにつらい事に直面しようとも、美味しい食事をとれば{口福}を感じそして{幸福}な気持ちになる。 そして逆に、どんなに質素な料理でも、親類・気のおける仲間と食卓を囲めば{幸福}を感じ、口に入れたものすべてが{口福}に感じる。それが人というものなのだ

 

 

「・・・口福と・・・幸福」

 

「おやカフェ、君に読書の趣味があったとは以外だね」

 

 

 ライスとの旅行から帰ったあの日、カフェは旅館で貰った本をきっかけに読書に目覚めた

 読書家は、大きく分けて2つに分類される。

 

 1つ目はあくまでも、職場や学校での{ネタ}を得るため、世間が今注目している本を作者・ジャンル問わず、ひたすらに広く浅く読む者。もうひとつは、読書をしていくうちにお気に入りの作家が見つかり、その作家が執筆した、その作家が執筆でお薦めする作家の作品だけを狭く深く読むものである。

 

 

カフェの場合はどうやら後者であった。

 

「ずいぶん熱心に読んでいたね。どんな内容だい?」

 

「・・・はい」

 

カフェから渡された本をパラパラとめくり、内容を確認するタキオン。

そして、信じられないといった様子で声をあげる

 

「ふむふむ・・・こいつは驚きだ。コーヒーとボーッとすることしか興味がない君が、まさかグルメに目覚めたなんて。一体昨日何があったんだい?」

 

「・・・あえていうなら・・・すごいこと?」

 

「君がいうと中々意味深に聞こえるのは気のせいかな?」

 

「それより・・・早くライスさんたちの部屋に・・・」

 

「あーそうだったね。今日は僕達お呼ばれしてたんだっけ」

 

 マルゼン姐さんの気まぐれで、カフェ・タキオンを招待しパーティーを開くことになっていたその日、タキオンも珍しく乗り気であった。時計をみると間もなく指定時刻を示そうとしていた。

マンハッタンカフェが静かに2度彼女の部屋をノックする

 

「はーい、空いてますよー」

 

「・・・お邪魔します」

 

「失礼するよ」

 

 マルゼンスキーの応答を確認し二人は扉を開ける。

あいにくながら、ライスシャワーの姿は部屋には見えなかった

 

「いらっしゃい。カフェちゃんに・・・タキオンちゃんも!本当に来てくれたのね。マルゼンさん感激」

 

「いっとくけど、僕はカフェに誘われたから出向いたまでさ。速く部屋に戻って実験をしたいのが本音だよ」

 

「ライスちゃん、丁度お買い物に購買にいってるのよー。今なにか持ってくるから待っててねー」

 

「・・・あの、お構い無く」

 

「僕はお茶を所望するよ。出来れば淹れたての温かいお茶がいいかな」

 

「・・・タキオン」

 

「はいはーい。それじゃあ、こっちはタキオンちゃん。カフェちゃんはコーヒーでよったわよね?」

 

彼女達を招き入れ、ちゃぶ台に案内するマルゼン姐さん

そして、いそいそと人数分の紙コップを用意し要領よく飲み物を用意する。

 

「・・・ありがとうございます。いただきます」

 

「はい、召し上がれ。・・・ところでカフェちゃん」

 

 

カフェの近くにより、わざとらしく声を低くする。マルゼン姐さん

 

 

「昨日はライスちゃんとお楽しみだったって本当?ライスちゃん嬉しそうだったわよー」

 

「・・・お楽しみですか?・・・そうですね。

・・・ライスさんと一緒に色んな所に行ってとても充実していました」

 

「まぁ、以外にやり手なのね」

 

「・・・はぁ?よくわかりませんが」

 

「マルゼン君、絶対わかってからかっているだろう?」

 

「さーて、なんのことかしら?」

 

 

 あからさまに、あらぬ誤解を思い浮かべ勝手に盛り上がるマルゼン姐さん。

そんな様子を冷ややかに見つめるタキオン。そんなことはつゆも気にせず姐さんはカフェの右肩に手を添える。そして

 

 

「いい?カフェちゃん。Boys be ambitious!少年よ大志を抱け。今のうちに一杯色んなことを経験するのよ。それが将来きっと役に立つんだから。」

 

「・・・はぁ・・・よくわかりませんが、覚えておきます」

 

「すぐ忘れても構わないと思うよ」

 

「あら、駄目よ。若いうちの経験は本当に貴重なんだから。物事を始めるのに遅いということはないけど、やっぱり早いにこしたことはないんだから。」

 

「だから、その誤解を生む言い方はやめた方がいいと思うけどね僕は。」

 

 

タキオンとマルゼン姐さんがそんな他愛もない話をしていると、タイミングよく彼女が帰ってきた

 

 

「も、戻りましたー」

 

「あら、お帰りなさい。カフェちゃんが首を長くして待ってたわよ」

 

「・・・あの・・・そういうわけでは」

 

「構わなくていいよ、からかっているだけさ」

 

「ふふっ、それよりライスちゃん。お願いしてたもの全部置いてあったかしら?」

 

「は、はい。どうぞ」

 

「どれどれ~?白菜、豚肉、えのきにシメジ、アサリに春菊、お豆腐。バッチグーよ!」

 

「随分買ってきたね。君いったい何を作る気だい?」

 

 

ライスが提げた買い物袋一杯の食材には、その他にも海の幸山の幸がところせましと。

そして、あまり統一性が見られずざっくばらんに詰め込まれていた

それらの材料をキッチンに運び手早く下処理をしながらマルゼン姐さんが答える

 

 

「決まってるじゃない。この時期に皆が集まって作る料理といったら、小鍋だてよ」

 

「小鍋だて?初めて聞くね鍋じゃなくてかい」

 

「・・・知ってる・・・さっきの本で読みました」

 

「カフェちゃん。どんなお料理なの」

 

「・・・確か」

 

「はいそこまでー。答えはできてからのお楽しみ~」

 

人差し指をカフェの口にそっとあて、悪戯っ子のように楽しげに微笑むマルゼン姐さん

彼女達の{小鍋だて}パーティがはじまる




 原作をプレイしていると料理がうまい馬娘はマルゼン(一人の時を除く)・ダイワスカーレット・あとはどの馬娘なんですかね?

 イメージだけならスーパークリークですが

*当初こちらの作品は「よい匂いのする一夜」後に投稿する予定でしたが、頭に思い浮かんだ作品を順次投稿していくスタイルにより、若干時系列がおかしくなっております。ご容赦下さい


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口福で幸福なひととき 下

 「小鍋だて」と「鍋」料理は似て非なるもの。
そんなお話


 楽しげにエプロンを身に付け、キッチンに立ち最後の仕上げにかかるマルゼン姐さん。

ことん、ざくざく、じゃじゃじゃっ、ぼわん、などなどキッチンから聞こえる音に自然ライス達の期待も高まる。合間にパタパタと可愛らしい音がはさまり、その度にパタンと、冷蔵庫のドアが開け閉めされたり、ごとごと、と戸棚からなにかを取り出す音が聞こえてくる。

 

 

 

「はーい。マルゼンさん特性小鍋だてのかんせーい」

 

 そういって、4つ分の卓上コンロとこれまた、4つ分の鍋。そして材料を載せたお皿をセッティングする。

 

「ずいぶん小さい鍋だね。一人分位しかないじゃないか」

 

「・・・底が浅い・・・お野菜を入れたらすぐ溢れちゃいそうです」

 

「そうよー、本来小鍋だては一人で楽しむお鍋なの。でも今回は・・・皆でお鍋を楽しむためのルールをせっていしまーす。」

 

「る、ルールですか」

 

「そうよ。ライスちゃん、そのルールがこちらになりまーす」

 

 用意していた雑用紙を3人に渡すマルゼン姐さん。そこには以下のようなことがかかれていた。

 

ルール1:3種類以上の具材をいれるのは×

     お鍋にいれる具材は2種類におさえるように♪

 

ルール2:自身で作ったお鍋は食べることができません。

     相手の気持ちになってお鍋の具材をチョイスするように♪

 

ルール3:具材の入れすぎは×

   具材がなくなったお鍋はすぐさま、そのお鍋を作った娘が補充するように♪

 

ルール4:最後に、投票を行い一番美味しい小鍋だてを作ってくれた馬娘にはマルゼンさんからごほうびが。

 

そして、一番重要なルール5!

呑んで、はしゃいで、歌って、踊れ!思いっきり楽しむこと♪

 

 

 いつの間にか人数分のグラスを出し終わり、マルゼン姐さんは適当に飲み物を注いでいった。

 

「カフェちゃんは・・・はいとりあえずお茶でいいかしら?」

 

「・・・ありがとうございます」

 

「はいライスちゃん」

 

「す、すみません」

 

「はい、タキオンちゃん」

 

「どうして、僕だけアルコールなのかな?」

 

「決まってるじゃない、飲み仲間がいないと楽しくないもの」

 

「やれやれ・・・じゃあ、一杯だけ付き合わせてもらうよ」

 

「そうこなくっちゃ♪それでは、かんぱーい」

 

マルゼン姐さんの音頭をかわきりに、それぞれが思い思いの{小鍋だて}を作り始める。

 一口大にカットされた色とりどりの野菜に、魚、肉。そして小鍋だてとは切っても切れない{出汁}の種類もこれまた豊富。かつお節・昆布・椎茸・煮干に焼きあごまで。さすが「誰かがいれば張り切って料理を作る」と豪語するだけはあるマルゼンスキー姐さんである。

 

 

「・・・タキオンの小鍋お豆腐ばっかり」

 

「仕方ないだろう。鍋といったら豆腐、豆腐といったら鍋。豆腐こそが最高の具材なんだから」

 

「ふ、ふぁあ~。お湯で湯がいてるのにこんなにシャキシャキ・・・レタスってすごいですね。」

 

「ふふっ。以外に知られてないけど、案外食間が残るのよ。チャーハンとかに入れても美味しいんだから」

 

「チャーハンですか」

 

「今度つくってあげるから、楽しみにしててねライスちゃん」

 

「は、はい。マルゼンお姐さまが作るチャーハン・・・たのしみだなぁ」

 

「ところで、カフェ・・・君の小鍋とっても黒いんだけどもしかしなくてもコーヒーを入れたね?」

 

「・・・美味しいと思う。召し上がれ」

 

「僕は全力で遠慮しておくよ」

 

 

4つの小鍋に野菜や肉、魚等をざっと煮ては小皿へ取り、柚子やポン酢お好みの調味料をかけて食べる。

小鍋ゆえ、火の通りも早く、つぎ足す出汁もたちまちに熱くなる。これが小鍋だてのよいところだ。

 

次第にライスとカフェの小鍋は豚肉のロースの薄切りにほうれん草のような常夜鍋に

タキオンとマルゼン姐さんの小鍋はちりれんげで掬った貝柱を、ちりれんげごと小鍋へ入れたものや、牡蠣などの、どちらかと言えば酒のお供に相性ぴったりの小鍋へと変化していく。

 

 

 それぞれが思い思いに作った{小鍋だて}を思い思いに食べ比べる。彼女達にとって{口福}で{幸福}なひとときは、まだ始まったばかりである




 とある書籍で初めて知った小鍋だて。
機会があれば是非やってみたいですね

*土日分のストックが尽きたため、また来週まで更新はない見込みです。
申し訳ありません

やはり、土曜日で2話、日曜で2話位が限界のようです


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妄想系馬娘マンハッタンカフェ

 ボーッとしているときのマンハッタンカフェがかんがえていることは・・・そんな感じの作品


「おう・・・」

 

「へい」

 

草木が眠る丑三つ時。灯り一つない闇のなか蠢く人影

その人影は一つ、二つと増え、ある場所を目指し集まって行く。呉服問屋{西末屋}江戸有数の大棚に数えられるこの店の金蔵には、唸るほどの小判が眠っているとの噂がある。

 

その屋敷の裏門に続々と集結する影は優に20余を越えていた。

 影の一つが屋敷の裏扉を2度コンコンと叩く。すると、それを待っていた引き込み役の女が一人静かに引き戸を開け、中に先導した。

 

「おう・・・ここの主は?」

 

「はい、既に夢の中で」

 

「案内しな。倉の鍵を開けさせろ」

 

「そのあとは?」

 

「決まってんだろう・・・殺れ」

 

「へい」

 

無数の影が、丁稚・奉公人が眠る部屋へ、獲物をぎらつかせ近付いてゆく。

そして、扉に手をかけたその時

 

「・・・そこまでだ」

 

「だれでぇ!!」

 

「火付盗賊改方同心・・・マンハッタンカフェ」

 

「お、同じく、火付盗賊改方同心、ラ、ライヒュ・・ああ、噛んじゃったー」

 

「・・・落ち着いて。盗賊ども大人しく縛につけ」

 

「そ、そうだそうだー」

 

 すでに長谷川平蔵から密命を受けた同心2名がすんでのところを引き留めた

 

「しゃらくせー!!」

 

 盗賊の一人がドスを握りしめ、同心の一人カフェの{心の臓}目掛けて突撃してくる。十手を構え顔色一つ変えぬカフェ

ーーーーキィン、バス、ーーー

「ぐぅううっ・・・」

 

 暗闇に閃光が上がるとほぼ同時に、地面にたおれこむ先程の男。一瞬にして獲物を叩き落とし、返す刀で眉間への一撃。流石は示現流の使い手といったところであろう。

 

「やりやがったな!!」

 

「かまうことはねぇ!たかが役人二人たたっきれ!」

 

20余の影が手に手にドスを、こん棒を、鎌をもち同心2人に襲いかかる

 

 

「・・・っ!!」

短く呼吸を整え、一撃、また一撃と次に次に打ち倒すカフェ。それとは対照的に

 

「こ、来ないでー!!ライスに構わないでくださいーー」

ただ、右往左往するライス

 

一人、また一人と打ち倒していくカフェだが、数が数である。次第に形成は逆転し追い詰められていく。

 

 

「へっへっへっ・・・よくも好き放題やってくれたな」

 

「簡単には殺さねぇぞ」

 

「か、カフェちゃん」

 

「・・・下がってて」

 

盗賊たちに追い詰められ、一歩また一歩後退していく。

万事休すか・・・と思われたその時

 

 

「盗賊どもそこまでだ!!」

 

 

地鳴りのような、体の芯まで響くような声が響き渡る。それと同時に辺り一面に無数の提灯が現れ、さすまたや十手を手にした役人が30余名。その先頭には・・・

 

「・・・お頭」

 

「は、はせがわさまぁ~~~」

 

 

火付盗賊改方長官、長谷川平蔵の姿が見えた

 

 

「お、親分・・・」

 

「か、構わねぇ!!やっやちまえ」

 

盗賊どもの半ばやけくその最後の抵抗が始まった

 

「抵抗する者は構わん叩き切れ」

 

平蔵の号令のもと、役人たちも動く。盗賊達と改方との戦い・・・いや同心カフェによって半数以上に減らされた盗賊達のそれは最早戦いと呼べるものではなかった。

 

 

最後の抵抗が続くなか、平蔵は今回の功労者の二人に歩み寄る

 

「おう・・・よく頑張ったな」

 

「・・・もったいなきお言葉」

 

「うぅ・・・こわかったよー」

 

「まったく、同心の癖になくやつがあるか」

 

 

 そう言葉ではしかりつけてはいるものの、平蔵の声色、表情は言葉とは裏腹に手のかかる孫をあやすようなという表現がうってつけであった。

 

 

「おめぇも、ちっとはカフェを見習い剣の稽古に励め。いつまでもおんぶにだっこじゃどうにもなるめぇ」

 

「はっ、はい精進しまひゅ・・・またかんじゃったぁ・・・」

 

「ったく!おめぇは本当に・・・まぁ、でもそこがおめぇの良いところでもあるのだがな」

 

「ら、ライスの良いところ?」

 

「あぁ。おめぇはどんな小さなことでも決して手を抜かねぇ。どんなときでも一生懸命それこそ、てめぇの身を顧みずがむしゃらに努力する。中々できるもんじゃあねよ」

 

「・・・私もそう思う」

 

「か、カフェちゃんも」

 

「まぁ。あとはその泣き虫でおっちょこちょいなところを直してくれれば、いうことはねぇんだがなぁ~」

 

「うっ、が、がんばります」

 

「・・・平蔵さま、大丈夫。・・・私がついてるから。・・・ライスさんに危険が迫ったら全てカフェが何とかするから」

 

「か、カフェちゃん」

 

「こいつは頼もしいじゃねえか。よかったなライスよ。」

 

カフェの言葉に少し恥ずかしがるライス。そしてその二人の様子を楽しそうに眺める平蔵。のちに、この二人は平蔵の懐刀と呼ばれることのなることは、まだまだ先の話である。

 

==============

 

「・・・フェ、カーフェってば!!」

 

「・・・タキオン?」

 

「君、また窓を眺めてボーッとして僕の話聞いてなかっただろう」

 

「・・・うん・・・ごめんね」

 

「はーっまったく君は・・・それで今日はどんなことを考えていたんだい?」

 

「・・・鬼平」

 

「お、鬼平・・・君中々渋い趣味を持ってたんだね。新しい発見だよ」




今回はの作品を無理やり名付けるなら、鬼平×馬娘のクロスオーバーでしょうか?

 普段のほのぼの系をイメージしていた方には申し訳ありません。ふと思い付いて作成しました。


ただ、書いてて気づきましたが、これってまんま{カートゥーンネットワーク}のアンジェ◯・アナコンダでした。

掲載予定ねたをやり終え、ネタがもうなにもなくて困ってなったときは、タキオンを主役としたデ◯スターズラボも作ってみようか、考え中です


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風邪引きライスとマルゼン姐さん、カフェを添えて

 風邪を引いたライスシャワーをマルゼン姐さんが看病する
そんなお話


「は、はくしゅん」

 

「やっぱり風邪みたいね。今日は1日暖かくして寝てましょうねー。マルゼンさんも付きっきりで看てあげるから」

 

「ご、ごめんなさい。ライスの・・・ライスのせいでお姐様の貴重な休日を潰しちゃって」

 

遡ること数日前。

 豪雨強行となった中山記念。大方の下馬評をはね除け有終の美を飾ったライスシャワーだったが、雨天走行での無理が祟りついに体調をくずしてしまう。そんなライスのため、マックイーンとのドライブ予定を取り止め看病するマルゼンスキーであった。

 

「そうなのよ、マックイーンちゃんが中々承知してくれなくて大変だったんだから」

 

「う、うぅ。ごめんなさい、ごめんなさい。ライスのせいで・・・ライスが風邪なんて引いちゃったせいで・・・」

 

 風邪を引いたばかりに、看病のため貴重な休日を潰してしまった。その罪悪感に苛まれ今にも泣き出しそうになる彼女。そんな彼女に・・・

 

「なんてね♪うっそぴょ~ん。それにね・・・」

 

 いつもと変わらぬ調子で答えるマルゼン姐さんは震えているライスに寄り添う。

 

「それに、最近ライスちゃんに付きっきりでいられる時間がなかったから。丁度よかったっておもってるのよ」

 

冗談とも本気とも取れる口調で続ける。

 

「うーん。やっぱりちょっと熱が高いかしら」

 

「お、お姐様の手。ひんやりしていてとっても気持ちいい」

 

 額に手のひらをあててライスの体温を確認するマルゼン。

そして、氷枕と氷嚢を用意するため台所に向かう。

 

「ライスちゃん。しんどいと思うけど少し頭をあげててね」

 

「は、はい。」

 

「もういいわよー。それとこれを額にのせてと、冷たすぎないかしら」

 

「だ、大丈夫です。ライスなんかのために・・・本当に、本当にありがとうございます。お姐さま」

 

「大袈裟よライスちゃん。それより何か食べたいものはない?風邪のときは少しでも食べて、いっぱい寝て汗をかくの。それが特効薬なのよ」

 

「ご、ごめんなさい。ライス、食欲はあんまり・・・」

 

「まぁそうよね。ちょっと待っててね」

 

 

そういうと、再び台所へ向かうマルゼン姐さん。そして、冷蔵庫の中を物色する。

(う~ん・・・こういうときはポカリが一番だけど、やっぱり都合よくないわよね。お肉にピーマンに生ラーメン。どれも病人に食べさせるものじゃないし・・・あら?これは)

 

野菜庫の奥から何かを発見したマルゼン姐さん。

 

「たしか、砂糖ならまだ・・・うん♪これならあれが作れるわね」

 

そういうと、エプロンをつけ{あれ}の調理に取りかかるマルゼン姐さん。

 手には{オレンジ}のような果物。そして{ジューサーハンド}と{茶碗}さらに水をいれたヤカンを火にかける。沸き上がりを待っている彼女にふと

 

 

ーーーーコンコン

 

という、ノックのおとが聞こえた。

「あいてるわよー」という姐さんの声に扉が開く。

 

「・・・失礼します」という声と共に、カフェの姿が見えた

 

 

「あらあら、いらっしゃいカフェちゃん。ちょっと待っててね」

カフェを迎えいれるため、ヤカンの火を止める。どうやら、丁度いい頃合いだったようでヤカンからはピュッ!ピッ!という沸騰するかしないかのおとが聞こえていた。

 

 

「・・・あの・・・ライスさんの具合は?」

 

「もんだいなっしーんぐ!よ。今日1日寝て、いっぱい栄養をつければ明日にはなおってると思うわ。」

 

「・・・よかった。」

 

「それより、カフェちゃん。丁度ライスちゃんように作ったお料理があるんだけど食べていかないかしら?」

 

「・・・私が頂いてもいいんでしょうか?」

 

「ええ。遠慮しないで♪ライスちゃん丁度眠っちゃったし、ライスちゃんだけじゃ余っちゃうから」

 

そういうと、先程の{オレンジのようなもの}を持ってきて包丁をいれる。

{ミカン}とも{オレンジ}とも違う、芳醇な薫りが部屋いっぱいにただよう。切ったばかりのそれをジューサーにかけ、絞り汁を茶碗にいれる。

 そこにたっぷりと砂糖を加え、熱湯をさらして

 

「はぁい。召し上がれ」

 

カフェにくれる。

 

「・・・では・・・いただきます」

 

オレンジでも、ミカンでもない、もっと濃厚で、酸味が強く、そして素晴らしい薫りがカフェを包み込む

その味はカフェが食した果物どれにも該当しない、不思議でそして濃厚な味であった。

 

「・・・おいしい、です。そして、不思議な味です」

 

「そうでしょう♪それ、橙っていう果物なのよ」

 

「・・・ダイダイ?」

 

「そう、橙。ちょっと癖のある酸味なんだけど、なかなかいけるでしょ?昔は八百屋さんに並んでたんだけど最近めっきりみなくなってたのよ。それを偶然見つけて衝動買いしちゃったんだけど役に立ってよかったわー♪」

 

「・・・あの・・・おかわりよろしいですか?」

 

「オッケー♪寧ろ大歓迎。どんどんいっちゃって頂戴。まだまだ簡単に作れちゃうから」

 

 さくっ、ぎゅっー。橙を半分にカットするたび、お椀に絞り出すたびに芳醇な薫りが充満する。

熱湯と砂糖、絞り汁。ただこれだけしかない質素なものが

 

「・・・おいしい、体も・・・ポカポカ」

 

「そうでしょう♪さて・・・」

 

マルゼン姐さんはそういうと、静かに寝息をたてているライスにそっと近づく

 

「ライスちゃん。カフェちゃんがお見舞いに来てくれたわよ」

 

「・・・あの・・・気持ち良さそうに寝ているので、私はこれで」

 

「あら、せっかく来たのに。ライスちゃんにも今から飲ませようと思ってたし問題なしよ?」

 

「・・・様子がみれただけで満足ですので・・・もう少し寝かせてあげて。お邪魔しました」

 

「もう少しゆっくりしていっていいのよー」

 

 ライスの眠りを妨げぬよう、そっと部屋をあとにするマンハッタンカフェ。

一刻も早い彼女の完治を望みつつ自室へと引きあげる彼女であった。

 

 

 

ーーー翌日ーーー

マルゼン姐さんの献身的な看病のお陰か完全復活を果たしたライスシャワーであった。

しかし、

 

「・・・っくしゅ・・・頭痛が痛い」

 

「おやおや、今度はカフェが風邪とは珍しい。完全にうつされたかな」

 

「うう・・カフェちゃん。ごめんなさい、ライスのせいでライスのせいで」

 

「・・・タキオン」

 

「おっと、そうにらむなよ君。冗談さ」

 

 睨み付けられたタキオンは、おどけた調子で首をすくめる。

そして、何ら反省していないようすでカフェに話しかけた

 

「それより、お腹はすいているかい?もし空いているなら、僕が何か作ってみようか」

 

「・・・何でもいいの?」

 

「できる範囲なら、ね」

 

「・・・じゃあ」

 

「じゃあ?」

 

「・・・橙」

 

「うん?」

 

「・・・橙の優しい味のジュース」 




今回は以前読んだ{江戸の味を食べたくなって}という著書からヒントを得て作成してみました。

橙・・・今のところスーパーでは見かけてことがありませんがいつかは是非賞味してみたいです。


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カフェに贈るエリーゼのために(カフェ×ライス)

 ライスシャワーがマンハッタンカフェのために{エリーゼのために}を演奏するそれだけのお話


トレセン学園 音楽室

 

 満月の光に照らせたライスシャワーが、マンハッタンカフェに向かい少しはにかみながら軽くお辞儀をする。それに応えるように、そっと拍手をするカフェ。

 そして、彼女がピアノに向かい演奏を開始する。

 

 

 ところで・・・

 トレセン学園の規則では2200に消灯となる。そして基本消灯後の延灯は認められておらず、各居住部屋は勿論、共有スペース・教室に至るまで全ての灯りが強制的におとされる。無論消灯後の活動などもってのほか。順鑼中の生徒会に見つかればきついお叱りが待っている。

 

 そして、彼女が演奏を始めた時刻は2300・・・なぜ彼女はこのような時間に校則を破ってまで強行したのか?

 

 

=====きっかけは、マルゼン姐さんの一言から始まった===

遡ること数日前

 

「ライスちゃんって、とってもピアノがうまいのよ~」

 

「お、お、お姐さま・・・いきなり何を」

 

「へぇー。まぁ、たしかに言われてみるとそんなイメージはあるね」

 

 マルゼンスキーの突然すぎるカミングアウトに焦るライス。何時もの4人組のいつものおしゃべり、そんな中で突如話題に上がったライスの特技。話のネタにはこれほど持ってこいなネタはない。すぐにタキオンが食いついてきた

 

「得意なジャンルは?いつから始めてるのさぁ?それに腕前は?」

 

「え、え、えぇーと」

 

矢継ぎ早に飛んでくる質問攻めにタジタジのライス。

そして、その答えをなぜかマルゼン姐さんが代行する

 

「得意なのはクラシック、そして腕前はプロ級よ!いつも聞かせてもらってるマルゼンさんが太鼓判を押すわ」

 

「ふ、ふぇー」

 

「おや、そいつは丁度いい。なぁカフェ?」

 

「ちょ、ちょうどいい?ですか?・・・」

 

「あぁ、そうさ。カフェもクラシック鑑賞が大好きでね毎日毎日飽きずに聞いているよ。僕が呆れるほどに何度も同じ曲をね」

 

「・・・タキオン」

 

 ライス同様以外な趣味をカミングアウトされたカフェが、静かに彼女をたしなめる。しかし、そんなことを微塵もきにするようすもなくタキオンは続ける。

 

 

「それでだ・・・ここからが本題なんだが。ライス君?」

 

「な、何でしょうか?タキオンさん」

 

「カフェは明日、ひっじょーに大切な有馬記念を控えている。このレースの結果は今後の彼女の運命を左右するといっても過言ではないだろう。」

 

「そ、そうですね。カフェちゃん頑張ってライスも応援するよ」

 

「ありがたいじゃないかカフェ。そして応援ついでに一つお願いがあるんだ。」

 

「お、おねがいですか?」

 

「そう、お願いさ。どうだろう?明日カフェが有馬記念で1着を取ったらライス君がカフェにピアノ演奏を披露すると言うのは!!」

 

「へ?えぇ~~」

 

 

 間の抜けたというのか、面食らったようなとでも言うのか、いかんとも表現しがたい声が響き渡る。タキオンの言葉を聞き青天の霹靂といった表情のライス。そして反対に気のせいか、いつもより表情が明るいようなカフェ。

 

 初めは、マルゼンスキー以外の馬娘に演奏聞かせることを恥ずかしがり、首を縦にふらなかったライス。しかしカフェにしては珍しい、いや、今まで一度たりとも聞いたことがない、ある種異様なほどに熱がこもったお願いにライスも首を縦にふらざるえなかった。

 

 

 翌日迎えた有馬記念、見事彼女は有終の美を飾る。そして満月の夜にとある曲をリクエストした。

==========================

月明かりに照らされた音楽室

 

1、2度深呼吸を繰り返し、静かに目をつぶり

約10秒ほどの間をおく。そして・・・

 

 

 ライスの薔薇色に上気した頬が、厳しい緊張に引き締待ったとき、いまにも折れてしまいそうなほど華奢な・・・いや繊細な指先から{エリーゼのために}が奏でられる。

 

 月明かりに照らされながら、彼女の指は非常にゆったりとしたペースで、冒頭何度となくループされる悲哀とても言うべきリズムを奏でる。しかし、そのリズムのなかにどこかゆりかごの中で揺られているかのようなとでも言うのだろうか?なんとも言えぬ独特な演奏が彼女のために、まさしく曲名に名前負けしないほどの見事な演奏を披露する。

 

 

 伴奏中盤、先ほどのゆったりとしたペースからうって変わり、一気に様変わる。

 ライスの顔にはうっすらと汗が滲み出ている一曲に消費されるエネルギーが相当なことがうかがわれるようだ。しかし、そんななかでも彼女の眼は少しも疲れを見せず、緊張と幸福に輝き、両腕は休むことを知らない。

 

 

 5分という時間を時に穏やかに、時に激しい動作で鍵盤を叩き、ペダルを踏み、そのリズムを一つの流れにしてカフェの昴奮を盛り上げていく。

 

 カフェは何度となく、ラジオやレコードで耳にはさんでいた、お気に入りのクラシック。そのピアノの生の音というものがこうして、真夜中のしん・・・とした教室の中にカフェのためだけに全精力をふりしぼり、そのピアノの音の中へ、すべてを没入させてしまっている。

 そんな彼女の奏でる生々しい音楽の迫力に誘い込まれ時を忘れるほどに、彼女の姿に見入り、そして聞き入った。

 

 どれだけの時が経ったであろう・・・ライスが演奏を終了し、たった一人の観客に演奏前と同じように「ペコリ」と小さくお辞儀をする。

 

 

 彼女の演奏に応えるためカフェが静かに、しかし力強く拍手をする・・・いや、しようとした瞬間

 

 

「こらー!!」

 

生徒会役員の一人である学級委員長。

 順鑼中たまたま近くを通りかかった彼女がバクシン的な勢いでドアを開けこれまたバクシン的な勢いで暗闇の音楽室をピアノ目掛けてバクシンしてくる。

 

 

とっさに、ピアノの下に隠れたライスとカフェ。

しかし、暗闇のなかと言えど近付かれ過ぎては流石に見つかってしまう。

 

1歩、2歩、3歩・・・・彼女と彼女達の距離はバクシン的に近づいていく。

 

 見付かってしまってはいっかんの終わり。校則破りには会長によるきついお説教と、2週間の外出禁止が待っている。

 

 

(・・・う、うう。もうだめ)

ライスがそう思った、その時カフェがとっさの機転を働かせる

 

「・・・あと・・・3回」

(ふぇ!カフェちゃん?)

 

 精一杯の声色で驚かすようにカフェがそう呟く

 

「ちょわっ!!今のは・・・もしや」

 

生徒会長の声が先ほどのバクシンテキ元気調子から一変怯えた声色へと変化する

 

「・・・あと・・・3回!!」

 

先ほどと同様カフェがその言葉を、さっきよりも2倍恐く(本人比)呟く

 

「こ、これは・・・トレセン学園7不思議の一つオバケピアノ!!大変ですあと3回あの演奏を聞いてしまったら・・・」

 

取り乱す委員長に聞こえぬようそっと呟く

 

「・・・カフェさん・・・先ほどの曲をもう一度」

 

「ふぇ?」

 

「・・・早く・・・もう一度」

 

「う、うん」

 

 促され、静かに座り演奏を始める。幸福にも月明かりはすっかり雲に隠され無くなっていた。

 

「ちょわ!2、2回目の演奏が・・・ひぇええ~~~~」

 

あわてて、音が聞こえぬところまでバクシンてきに彼女は走り去っていった

 

「・・・大成功」

 

「な、なんで、バクンシオーさん逃げていっちゃったんだろう・・・」

 

「・・・細かいことは・・・気にしない」

 

 

こうして、彼女達の一夜限りの演奏会は無事終了した。

 そして、しばらくバクシンオーは{エリーゼのために}が聞こえると耳をふさぎ一目散で逃げ去るようになったそうななっていないそうな・・・ 

 




 d◯二で学校の怪談が復刻放送していたのでふと思いつきました。

たしか、これは4話目だったはずですが、当時のトラウマ1、2を争う話です。
気になるかたは、是非一度ご視聴を・・・

*因みに{エリーゼのために}ですが、ネットで調べたところベートーヴェンの人間関係でエリーゼという女性はいなく、実は{テレーゼのために}が本当の楽曲ではないかとの情報がありましたがはてさて、嘘か真か?


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ライスとカフェときままな絵画

 絵を描くことが大好きなカフェがお出掛けがてら、スケッチのネタを探す
そんなお話


「・・・ネコさん。そのまま・・・そのまま動かないでね」

 

「ニャー」

 

トレセン学園とある教室

授業が終わり、いつものようにボーッと空を眺めていたカフェ。

 ふと気がつくと、いつの間にか全身真っ黒クロスケの子猫がその片隅で日向ぼっこをしていた。

 

 

 そっと、机の中からスケッチノートを取り出し、そのクロネコのスケッチを開始する彼女。スケッチのあらかたが完成しあと一息・・・往々にして不足の事態はこのようなときに発生する。

 

 

「か、かふぇちゃん。久しぶりに平日おでかけとかどうかな?」

 

 

不意にドアが開き、ライスカフェの姿が見える

 

 

「・・・あっ・・・ネコさん」

 

 

 その音に驚いたクロネコは一目散に教室を走り去さった。そしてしばしの沈黙のあと{やってしまった}という顔をしたライスがスケッチ途中の絵を、別になんということはなく眺めているカフェ

 

 

「か、かふぇちゃん。ごめんなさいごめんなさい、ライスのせいで猫ちゃんが」

 

「・・・大丈夫・・・こういうこともスケッチの醍醐味のひとつですから。

それより・・・今日のおでかけ」

 

「本当にごめんなさい。ライス今日はカフェちゃんの行きたいところについてくよ」

 

「・・・そうですか・・・それなら、ちょっとよりたいところがあるのですが」

 

 

===トレセン学園 購買部===

「歓迎!!滞在時間は短めにな」

 

 

 購買部販売員兼、トレセン学園理事長{秋川やよい}二人を迎え入れる

 

 

「・・・あの・・・こういう物を探しているのですが」

 

 

理事長にとある紙、恐らくは購入したい物リストを渡すカフェ。

「まっておれ」と彼女たちに言い残し、バックヤードに消えていく理事長。そしてしばらくすると

 

 

「発見!!購入は即決にな」

 

「カフェちゃん。それって・・・」

 

「・・・インスタントカメラ・・・今日のおでかけに必要」

 

 

理事長から懐かしのインスタントカメラ、写◯んですを購入し早速町に繰り出すカフェとライス。彼女たちの最初の目的地は

 

「いらっしゃい。カフェちゃんにライスちゃん。今日もいつものコーヒーでいいかい?」

 

青空商店街、カフェお気に入りの喫茶店

カフェは、買ったばかりのカメラをマスターに向け

 

 

「・・・マスター・・・ピース」

 

「うん?おっとっと。かっこよくとってくれよ」

 

満更でもない表情で、カップにコーヒーを注ぐ仕草でポーズを決めるマスター

そして、そのようすをフィルムに納めると・・・

 

「・・・お邪魔しました」

 

「え、か、かふぇちゃん!あ、あのお邪魔しました」

 

「うん?2人ともコーヒーって行っちゃったよ。なんだったんだ」

 

 

その後もカフェは、目に写る「これは・・」と思うものをフィルムに納めていく。

 

「まま、今日のご飯は?」

 

「今日は奮発して花丸ハンバーグよ。」

 

「やったー。早くお家帰ろう」

 

ーーーパシャーーー

2枚目は、帰路を急ぎ手を繋ぎながら帰る親子

 

 

「これで、王手!」

 

「こいつぁやられたー。今の手待った!」

 

「ダメだよ。これで3どめだよ」

 

ーーーパシャーーー

3枚目は縁台で将棋を指すご老人

 

 

「じいさん。次はあっちのお店にいきましょう」

 

「まだ、行くんかー。いい加減帰りてぇよ」

 

「そういわず、久し振りの水入らずの買い物なんですから」

 

「ったくよー」

 

ーーーパシャーーー

4枚目は口では小言をいいつつ満更でもないお爺さんとお婆さん夫婦

 

 

ーーーパシャ、パシャ、パシャーーー

 その後も、空き地でキャッチボールをしている親子。たたき売りをしている八百屋の親父、足早に駅にすいこまれるサラリーマン。タバコ屋のお婆ちゃん

 

 

目につく者全てを、スケッチの題材としてそのカメラに納めていく。

 すべてにおいて小うるさい現代において、このように自由にカメラを向けられる。こんなところは他にはないのであろうか?

 カメラを向けられた者のなかには「かっこよくとってくれよ」と言わんばかりにポーズを決めるジェントルマンもいたほどで、ここからもこの商店街の・・・いやこの地域の人柄がわかるというものであろう。

 

 

 

 そして、彼女たちの時間は、「あっ・・・」という間に過ぎていき、門限の時間が差し迫っていた。

 

「今日は一杯歩いたねー。かふぇちゃん」

 

「・・・いっぱい・・・いい絵ができそう」

 

「よかったー。じゃあ少しは今日の罪滅ぼしができたかな?」

 

 

黙って、首をたてにふるカフェ。

その様子を喜んでいるライスに、沈みかけている夕焼けが丁度いいあんばいに重なった

 

「カフェちゃん?」

 

カメラを構え、フィルムに納めようとしていくカフェ。

カメラの先を振り返り、夕焼けのシャッターチャンスに気付くライス

 

 

「あ、ちょっと待ってて。今ライスどけるから」

 

「・・・大丈夫」

 

「ふえっ?」

 

「・・・動かないで・・・そのままで大丈夫です」

 

夕焼けとライス。カフェが写したい2つの対象をレンズに捉え、シャッターを押す

 

 

「・・・故障?」

 

「ちょっと見せて・・・あっ、撮影のカウンターが0になってるね」

 

「・・・カウンター?」

 

「うん。ここ、ここが0になっちゃうと撮れなくなっちゃうの」

 

「・・・本当だ・・・0になってます」

 

「ちょっと待っててね、ライス急いで買ってくる」

 

「・・・平気です・・・もう撮りましたから。それより帰りましょう

・・・忘れないうちにスケッチしたいので」

 

「うん?ライスよくわからないけど、わかったよ!!」

 

 

心のフィルムに納めた、夕焼けとライス。

その姿が鮮明なうちにスケッチを開始するべく、家路へと急ぐ彼女達。

商店街からは、1800を知らせる{夕焼けチャイム}が流れ始めていた




 今回題名に使わせていただいた「気ままな絵画」
なかなか、面白い詩集ですので興味のあるかたは是非読んでみてください


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カフェとライスと雨のち曇り

 雨には雨の楽しみ方がある。
そんなお話


 6月中旬。春が終わり夏が来る、そしてその季節の変わり目に奴はやって来る

 

===トレセン学園 ライス・マルゼンのお部屋===

「も~。ライスちゃん、カフェちゃーん。マルゼンさんとっても暇なんですけどー」

 

「え、えっとライス達にそういわれても」

 

「・・・よろしければ・・・この本をどうぞ」

 

「違う、違うのよカフェちゃん。マルゼンさんは青空の下公道をかっ飛ばしたいの。かっ飛ばしたいのに・・・」

 

 マルゼン姐さんは、恨めしげに空を見上げる。東京全体が梅雨入りとなった今週、毎日のように気まぐれな雨雲が関東を覆い、そして激しい雷雨となって降りそそいだ。

 トレセン学園も例に漏れずその影響を受け、お出かけをする馬娘は目に見えてすくなっていた。

 

「そうよ。マルゼンさん良いこと思い付いちゃった」

 

「い、いいこと。ですか・・・」

 

「そう、オープンカーでもカッパを着て運転すれば濡れないじゃない!

それに、時速80Kmでかっ飛ばせば雨は入ってこないし、つまりそこまで雨を耐えしのげばいいだけよ」

 

「え、えぇ・・・あ、あの、事故とか起こりそうですし。ライスやめた方がいいと思う」

 

 

しかし、ライスシャワーの忠告むなしくマルゼン姐さんはカッパに着替え意気揚々と去っていく。

どうやら、本気で雨の中のカッパドライブを楽しむようだ。

 

「さぁ、マックイーンちゃんいくわよ~~」

 

「あ、あの。マルゼンさん、行くとは・・・どこへですの?」

 

「決まってるじゃない!ド・ラ・イ・ブ♪」

 

「嫌ですわ!まだ死にたくないですわー」

 

悲鳴に似たマックイーンの絶叫が虚しく学園寮に響き渡る。

ゴールドシップいわく「あんな、しんだ顔をしたマックイーンは始めてみた」といっていたそうな

 

 

 

ところで・・・

 マルゼン姐さんが去ったあと、取り残されたカフェとライス。二人は梅雨を楽しむべくトレセン学園のとある教室に来ていた。

 

「う、うぅ~。ここ雨漏りがひどいね。

こういう所、修繕できないほど逼迫してるのかな?」

 

「・・・」

 

ライスの言葉が耳に入らぬほどカフェは何かに集中していた。

覗き混むと、どうやら鞄に詰めた空のクッキーだの、シーチキンだの、牛乳瓶などを真剣に眺めている

 

 

「・・・今日は、これとこれ。あとこれ」

 

「な、なにやってるのカフェちゃん?」

 

 

手に取った空き容器を丁度雨漏りの滴が垂れる位置においていくカフェ。

そして、それを設置し終わると彼女は窓に近付き景色を見始める。勿論ジェスチャーで{こっちに来て}とばかりにライスを手招きするのも忘れていない。

 

カフェの手招きに従い、隣に腰かけるライス。

そして、彼女と一緒に窓の景色を眺めるとそこには・・・

 

「うわぁ、きれい」

 

 外出する馬娘達のさしている色・形・大きさが違う様々な傘が生き物のように移動している姿が見てとれた。また、そんな傘の群にポツリ、ポツリとカッパを着た馬娘の姿も見える。

そんな彼女達の傘とカッパ、そして中央広場の噴水。まさにそれは雨の日にしか見られない雨具の式典といっても過言ではなかった。

 

しばらく、その光景に見とれている彼女たちにふと・・・{ぴちょん}という音が入ってくる

 先程カフェが設置したから箱にある程度水が満たされ、こちらもどうやら楽しげな演奏会を始めたようであった。

 

ーーーピチョン・かん・チャン・ぴちゅんーーー

滴り落ちる雨水の大きさ。高さ。容器。

その各々違いで多種多様な音色を見せるそれは、一つとして同じおとは存在し得なかった。

 

 雨具の式典に雨水の演奏会。まさに、この時期にしかできない楽しみかたに二人の一日「あっ・・・」

というまにすぎていった。

 こんな、一日が送れるならあめも悪くない。そう思うライスであった。

 

 

 

 

 

 

======おまけ======

タキオン・カフェのお部屋

 

「・・・あっ」

 

「どうしたんだい?カフェ」

 

「・・・忘れてた」

 

「何をだい?」

 

「・・・教室に・・・空き缶」

 

「うん?教室に・・・なぜ?」

 

===昨日の教室===

「こ、これは・・・教室にゴミ!!見過ごせません。この事態学級員長として、決して!!

風紀の乱れは、心のみだれ、いざ犯人探しにバクシーン」




 オープンかーは時速80kmを越えると空気抵抗だか、空気の流れで本当にめがはいらないようです(とあるインターネット情報より)


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ライスとカフェと銭湯と(ライス×カフェ×ゴールドシップ)

 ライスシャワーとマンハッタンカフェのコンビにゴルシを混ぜたらおもしれえだろうなー。そんな感じのお話


 [松野湯]は明治以来青空商店街唯一の湯処として、東京では少し名の通った店だ。2度の空襲を耐え抜き、今年で創業100年を迎えるこの店には地元住民は勿論トレセン学園の馬娘達も訪れ交流を深めている。

 いうならば、この地域における井戸端会議場所と言ったところであろうか

 

 

そんな{松野湯}に開店一番で入湯する彼女達の姿があった。

 

 

「いらっしゃい」

 

「あ、あの、大人2枚の代金ここにおいておきますね」

 

 本日はお出かけ前に朝銭湯に訪れたカフェとライス。

[番台]に腰掛け新聞に熱中している主は

 

「はいよ」

 

両手一杯に広げた新聞から、少しも目を離さず短く答える。

 

 番台のすぐそばにある、10円硬貨式のコインロッカーに貴重品をいれ、女湯と書かれた木札が吊るされている入り口をくぐり入湯準備を済ませ、まだだれもいない浴場に一番のりをはたす。

 

 

 中の様子を簡単にのべておくと浴場には、お決まりの富士山、その横にはお地蔵さまが描かれている。浴槽はタイル地で、蛇口はお湯を示す赤のハンドル。湯を受けるのは定番のケロリンの黄色い桶。まさに昭和にタイムスリップしたかのようだ。

 

 

「・・あつっ」

 

「や、やっぱり、この温度にはなれないねー」

 

 

 東京の・・・いや、銭湯全般に言えること

 それは湯が熱すぎることである。やはり、昔ながらの薪式のボイラーを使っているからなのか?はたまた、レジオネラ菌を殺すためか?一説には長く入浴できないようにして回転率を上げている?など種々あるが、ここではこの辺にしよう。

 

 

 一つ言えることは、5分も浸かっていれば全身が湯で上がってしまうほどの湯温の前に彼女達は四苦八苦し続けていた、それだけである。

 

 

 番台から何やら騒がしい馬娘の声がしてきたのは、彼女達が未だに入湯できず悪戦苦闘していたそんな時であった。

 

 

「よっ!婆ちゃん。今日も一番風呂浴びにきたぜ・・・ん!もう客がいるの?男湯それとも

まさか・・・させるか~~!」

 

 

 その騒がしげな声は一目散に脱衣所に向かい、文字通り着ていた衣服を投げ捨てる。

そして、浴場のドアを勢いよく開けると、全速力で洗い場を駆けていき・・・

 

 

「うぉおお!ファイヤー!!」

 

「へ?ひゃあ!!」

 

「・・・あっつい・・・飛び込むのはいけません」

 

 

 水飛沫が雨のように彼女達に降り落ち辺り一面が霧に覆われる。しばらくすると、霧が晴れ飛沫を発生させた張本人・・・いや馬娘の姿が現れる

 

「ご、ゴールドシップさん?」

 

「お、ライスにカフェー。奇遇じゃねえか」

 

「・・・こんなところで・・・なにやってるの?」

 

「なにって・・・銭湯に来たんだから、そらあれだよ。入浴!!」

 

「そ、そうじゃなくて・・・どうして飛び込んだりしたのかなーって」

 

「あん?普通銭湯に来たら飛び込むだろ?」

 

「・・・普通は・・・飛び込まないです」

 

 そんな、ちぐはぐな会話をしている最中ゴルシは湯船から勢いよく立ち上がる。

 

「よっしゃ!入浴終わり」

 

「・・・まだ・・・一分もたってない」

 

「馬鹿だなーカフェ。江戸っ子の入浴はざっと入ってさっと出るこれが基本なんだぜ」

 

「あ、あの、ゴールドシップさんって東京出身だったんですか?」

 

「いんや違うけど、細かいことは気にすんな。こういうのは雰囲気だよ雰囲気♪」

 

「は、はぁ・・・雰囲気ですか」

 

「それより、ライス達はこのあと暇か?暇だよな~。よーし決定!!」

 

 

 なにやら、一人勝手に納得し元気よく頭をふる。そしてやや強引に彼女達の手を引き浴場を後にする。

 

 

「え、あ、あの、ライス達まだ入浴が」

 

「大丈夫大丈夫!風呂は逃げないって。それより、ほら着替えた着替えた♪折角だから一緒に外出しようぜ、飯ぐらいなら奢るからさ」

 

「で、でも、このあとカフェちゃんと喫茶店巡りが」

 

「いいねー。じゃあ最初はそこにいこうぜ」

 

「・・・ゴルシさんも喫茶店・・・よくいくんですか?」

 

「ん~、まぁ始めてだけど・・・あれだろ?コーヒー飲んだあとにさ。

いい仕事してますね~っていっとけばいいんだろ?」

 

「・・・違います」

 

「まぁ、とりあえずしゅっぱーつ♪んで喫茶店が終わったら浅草行こうぜ浅草♪」

 

「へ?ふぇー!」

 

 ライスとカフェとゴールドシップどこかズッコケ3人組を彷彿とさせる彼女達のお出掛けがいま始まる




独断と偏見による銭湯が似合いそうな馬娘Top3は
ゴールドシップ・ヒシアマゾン・ナリタブライアン
ですかね?

次回はカフェとライスとゴールドシップが浅草お出かけ偏を書く予定です


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ゴールドシップと三社祭(カフェ×ライス×ゴールドシップ)

 浅草を代表する2大祭りといえば{ほおずき祭}と{三社祭}

 今回は馬娘1お祭りが似合うゴールドシップが三社祭に乱入し、カフェとライスが振り回される?そんな感じのお話


 三社祭。現代も尚、東京の代表的な祭礼として人気をあつめる言わずと知れた浅草2大祭りの一角。例年5月中旬の祝日に開催され、早朝から4台の神輿を勇猛な男衆が担ぎ町中を練り歩く。

 その、宮出しの光景はまさに「死ぬ前に一度は観ておきたい」ともいえるものであろう。

 

 そんな祭りを見学するため、偶然銭湯で出会った3人組はいまかいまかとその時に備え待機していた。

 

 

「うおおおおーー!!

待ちきれねえぜ!ちょっとひと担ぎ行こうぜ!!」

 

 

 一分もじっとしていられない馬娘が4台ある神輿、そのなかでも一番の大きさを誇る{一之宮}に突撃していき、そして・・・

 

 

「おいっ!!なにんすんだよ!はっなっせ!」

 

 

 待機していた数人の氏子(神輿の担ぎ手)に抱えられ、引き離されていく。

 

 

 現代では、男も女も神輿を担ぐ。ことに女性は祭りを一種のファッションにまで作り上げてしまった。

それほどまでに、今の神輿は{玩具}のように軽いものが主流なのである。

 

 しかし、三社祭で担がれる神輿は一味違う。

 神輿の担ぎ方、手の振り方、足の踏み出し方、掛け声の出し方。担ぎ手のすべての呼吸が合わないと、神輿が崩れてしまう。

 神輿が崩れ、倒れれば、必ず怪我人が出る。死者も出る。だから、初めてのものがひょいと飛び入りで参加できるようなものではないのである。

 

 

「あ、あの、ゴールドシップサン。あんまり氏子さんに迷惑をかけちゃ・・・」

 

「・・・カフェ達には担げません・・・怪我をしてしまいます」

 

「わかってるよ。わかってるけどよー・・・ゴルシ様はどうしても担ぎに行きたいんだよー」

 

「だ、だめですよ~。お、落ち着いてくださーい」

 

 

 ほんの少し暴走モードに入ったゴルシを何とか留めるカフェとライス。そして、そうこうしているうちに、四台の神輿が宮出しの準備に取りかかる。

 氏子集の気合いの入った掛け声とともに、担手が次々に配置につく。それに呼応し沿道、雷門で待機している見物客も暫しの沈黙。辺りいったいが{しん}と静まり返り、男衆の熱気だけが辺りの沿道に満ち満ちる。そして・・・

 

「せーの!!」の呼吸を会わせる一声。そして続けざま、「ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!」の掛け声とともに、四台の神輿が一斉に宮出しされる。

 

 

 四台の神輿が揉みに揉んで、右に左に、あばれまわり、朝日を浴びて仲見世を抜け雷門をでると四方に別れる。  

 神輿の屋根の鳳凰の尾が朝の日ざしを受けて、生きもののように煌めく。

 

 

「ふぇええ~。す、すごい迫力ですね。」

 

「・・・わっしょい、ワッショイ」

 

「ライス、カフェ。ゴルシ様のお願いを聞いてくれないか?」

 

「な、なんでしょうか?」

 

「ゴルシちゃんから目を離さないでよねっ!

こんな状況じゃ、1秒後にどうなっちゃうかアタシもわかんないんだからっ!」

 

「へ?ふぇーー!!」

 

 

 それは、神輿と見物人の熱気に今にも跳びでしていきそうなゴールドシップのある意味無茶苦茶なお願いであった。

 

 

 こうして、四台の神輿は、各町内をまわり、再び雷門へ帰ってくる。

このとき、雷門には、各町から出迎えの、御神所の高堀提灯がずらりと並ぶ。

 

 一日中、神輿を揉み抜き、疲れはてた担ぎ手たちがたれ籠める夕闇の中を、声もなく、あくまでもしずしずと雷門をくぐり、仲見世の明るい、華やかな灯火に迎え入れられる。

 見物の拍手、勧呼にもこたえず、一種の厳かな雰囲気を乱すことなく、神輿は三社権現へと向かう。

 

こうして、つぎつぎに四台の神輿が帰ってき、九時になる前には宮入がおわった。

 

 

「・・・すごい迫力でした」

 

「う、うん。それに、早朝からこんなに暗くなるまでずっと担ぎ続てるなんてすごいなー」

 

「カフェ、ライス。決めたぜ。ゴルシちゃん、あの神輿を購入させるぜ。神輿担ぎをトレーニング機材にすれば、パワーとスタミナup間違いなしだしな!!早速交渉してくる」

 

「え、えぇ。あ、あの、まってくださーい」

 

「・・・あっ、そろそろ帰らないと」

 

 ふと、仲見世通りの時計を見上げば門限まで残りわずかに・・・

「購入するまで帰らない」と駄々をこねるゴルシを何とか説得し彼女達は帰路へ向かう。

そうして、門が閉じるぎりぎりのところで難を逃れた彼女達であった。

 後日分かったことであるが、この日は彼女達の他にも門限ぎりぎりで帰ってきた馬娘たちが大多数であったらしい。




 ここに登場する三社祭は、(江戸切り絵図散歩)にかかれた戦前に著者が経験したお祭りの様子であり、現在とは大きく異なっております
 ご了承ください

因みに一番大きな違いは、四之宮が戦災で焼失してしまっているところらしいです


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スイーツ大好きマックイーン(マックイーン×ライス×カフェ×マルゼンスキー)シャト◯ーゼ編

 ラーメン大好き◯◯さん的なあれを
マックイーン、ライス、カフェで描いてみる。ただそれだけのお話


 夏といえばアイスが恋しくなる季節。そしてアイスと聞いて真っ先に思い付くお店は・・・やはりシャト◯ーゼ。アイスとお菓子の{総合百貨店}とでも言うべきそのお店に彼女たちの姿が見えた。

 

「ああっ♪ケーキにお団子。駄菓子にクッキー・・・そしてお店外のアイスストッカーには、コンビニのアイス売り場が霞んで見えるほどの膨大なラインナップ。

たまりませんわあ♪」

 

 馬娘1スイーツに眼がないメジロマックイーンがここぞとばかりに大量のお菓子を、そして興奮気味にアイスクリームを物色していた。

 普段なら、学園までの距離的に買い置きが難しいアイスクリーム。しかし、本日は偶然出会ったマルゼン姐さんの車がある。

 

 車、シャト◯ーゼ、そして真夏の昼下がり。この条件下でアイスクリームの買い置きを我慢できるはずもなく・・・

 

 

「ま、マルゼン姐さま。見てください!メロンの容器に入ったアイスがあります」

 

「あらー♪懐かしいわね。アイスといったらやっぱりこれよね。

いかにもなメロン味で美味しいのよ。食べ終わった容器はちょっとした小物容れにもなるし、折角だから買っちゃいましょう」

 

「・・・こっちの・・・ミカンのアイスも買っていい?」

 

「カフェちゃんは粒々ミカンをチョイスね。

中々堅実じゃない、勿論おけまる水産♪」

 

「・・・おけまる?」

 

 

 アイス選び

 それは己のセンスと家族の好み、そして家に備え付けの冷凍庫容量。これらを全て加味してもっともベストな物を選ばなければならい。

 正に選ぶものの人間性が遺憾無く発揮される場所といってもいいだろう。

 

 自らの好みを第1とし、たい◯きアイスや栗も◯か中心のチョイスをしてしまうと、爺さん・婆さんからはすこぶる好評だが、兄妹からは不平不満の罵詈雑言

 といって、ガリガ◯君系やアイスキャンデ◯系の場合入れ歯の関係上、上記評価が真逆に変わる。

 

 老若男女全ての好みをカバーし、かつ冷凍庫のアイススペースに収まりきる量のアイスを購入する。

 これは、ちょっとやそっとじゃ身に付けられない技術である。

 

 事実、いく数もの挑戦者がシャト◯ーゼの圧倒的価格と品揃えの魔力に負け、収まりきらない程のアイスを買い込み、冷凍食品のスペースの圧縮、箱アイスのバラ収納等々その保管に頭を悩ませることになる。

 

 

ところで・・・

 

 

「ああっ♪このスイ◯バーも、こっちのワッフルコーンのソフトクリームも・・・こ、これは、幻のメロ◯バー。全部箱買いですわ♪」

 

「あ、あの・・・マックイーンさん。そ、そんなに購入して、保存スペースは大丈夫なんでしょうか?」

 

「問題ありません♪部屋の冷凍庫で足りなければ談話室の共用冷凍庫を使うまでのことですもの」

 

「・・・あそこだと・・・他の娘に間違って食べられちゃうかも」

 

「それも心配要りませんわ♪箱にきちんと名前を書いておきますもの

それでも、もし勝手に食べる輩がいたら・・・」

 

「・・・いたら?」

 

「まぁ、あれですわね♪そんなことする輩、ゴルシさん位しかいないと思いますが・・・わたくしが直に処しますわ♪」

 

 そういった彼女の状態は正に、顔は笑っているが目は笑っていない。それがぴったりと当てはまっていた。それほどまでに食べ物の・・・特にアイスの恨みは恐ろしいのである。(それが最後の1個だと、恐ろしさは何倍にも膨れ上がる。勿論現行犯など言語道断だ)

 

 

「わぁ♪小さな雪◯大福がこんなに一杯入ってます・・・あの、お姐さまこれもかごに入れて大丈夫でしょうか?」

 

「モチのロンよー。折角車で来たんですもの。食べたいものは全部買っちゃいましょう」

 

「は、はい♪」

 

「・・・これ・・・あとこれも」

 

「冷凍ピザ?こんなものまで売ってるの。よく見つけてきたわねカフェちゃん」

 

 

 その後も冷やされたアイスストッカーから手早く商品をかごに入れる彼女達。そんなとき、メジロマックイーンは、とあるアイスストッカーから衝撃的なアイスを発見する。

 

「な、なんですの・・・これは!!

し、シロク◯パフェ・・・」

 

「あ、それ、上にもかき氷の中にも、一杯一杯フルーツが入っててとっても美味しいんだよ。ライスも大好きなアイスクリームです」

 

「・・・丁度・・・残り4個です」

 

「シロク◯パフェ・・・こんな、こんな素晴らしいアイスクリームがあったなんて、知りませんでしたわ」

 

 

 シロク◯パフェ。あえてここで説明するまでもないが、量も値段もおいしさも全ての要素がトップクラスの正にアイスクリーム界のking

 

アイスクリーム単体の値段で言えばハーゲンダッ◯の時点位にお高い商品。無論味も値段に劣らず、いや、値段以上の価値がある。練乳の優しいあじのかき氷と、最後までフルーツたっぷりの満足感は正に特別な日に食べる{自分へのご褒美アイス}に相応しいものである。

 *それゆえにパチもんが非常に多い

 

 そうして、アイス好きにとっては夢の国シャト◯ーゼでの買い物を終えて一同は帰路についた・・・

 

 そしてこのとき、マックイーンの身にあのような悲惨な事件が起きることを彼女が知る由もなかった。

 

 

===マックイーン・ゴールドシップのお部屋===

 

(買いすぎたかもしれないと思いましたが、なんとか全部入りましたわね♪

では本日のメインディッシュ、シロク◯君の前にお風呂にいたしましょう。アイスと言えばやはり、風呂上がりですもの)

 

 浴室で入浴をしながら、シロク◯パフェをいただくため。最高のコンディション・食事環境を整える彼女。往々にして、悲劇というのはこのようなときに突然やって来る

 

 

「おーい。マックイーン、ゴルシちゃんがレースから帰ってきたぞー。

って何だよ風呂かよー、あちぃー疲れたー何か冷たいものねぇかあ?氷でもいいぞー」

 

 アイスクリーム無いときの定番、只の水を固めた氷。それを取り出すため冷凍庫を開け、そして・・・あれを発見してしまう。

 

 

(おっ!アイスが一杯だ♪これだけあったら一つぐらい食べてもばれないだろ。

これは・・・シロク◯パフェじゃん。ラッキー♪)

 

「マックイーン♪このアイス貰っていいかー?」

(返答なし・・・つまり快諾っと♪)

 

「いっだっきまーす♪かぁーウメー。やっぱりこういう暑い日はかき氷に限るよなー♪」

 

「あら、ゴルシさん。帰ってきてまし・・た・・・の?」

 

 時すでに遅し。彼女が戻ってきたとき、目に飛び込んできたのは半分以上食べられた無惨な姿のシロク◯パフェ。そして、それを旨そうに頬張るゴルシだけであった。

 

 

「おーす。1個アイスもらってたぞ・・・って、あの、マックイーン?いや、マックイーンさん。凄い怒っているように見えるのはゴルシちゃんの気のせいかな?」

 

「あらっ、気のせいではありませんわ♪だってそれ、わたくしが今日、このときのために、わざわざ最高の環境を整えて食べようと思っていましたのに。

それなのにっ・・・!!」

 

「まて、マックイーン!!落ち着け、まずは話し合おう」

 

「ゴールーシさーん!!」

 

 五月晴れの青空に彼女の怒声とゴルシの絶叫。2人の叫びが響き渡る。

本日もトレセン学園は異常なし

  




 アイスの恨みほど恐ろしいものはないとつくづく思います。

 余談ですが、ゴルシとマックイーンの関係って、なぜか両◯勘吉と◯原部長のそれと同じ何かを感じてしまいます

そして、このお話のED曲を流せるなら{おいでよ◯有}を流したいですね


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マンハッタンカフェの秘密(カフェ×ライス×タキオン)

 マンハッタンカフェ。彼女には人には言えない少し特殊な趣味?クセ?がある。
それは・・・


「これでよしっと。カフェー、お留守番頼んだよ」

 

 朝食の作り置きが終わり彼女を起こさないように、そっと呟き部屋をあとにするアグネスタキオン。彼女にしては珍しい約2ヶ月ぶりの外出であった。

 

 普段は研究室に引きこもっている彼女だが、ふと気まぐれに日が昇る前から外出をすることがある。無論どこに行きなにをしているのかはわからない。やはり日の光が恋しくなることが彼女にもあるのだろうか?

 

 

彼女が出掛けた数時間後、太陽が高く昇りきった時間に漸く彼女は目をさます。

そして起き上がって、ぼんやりと空の景色を眺めている

 

 

(タキオンの姿が、見えません・・・)

 

 

 まだ眠り足りないと言いたげに、小さな欠伸を何度か続ける。

眠たげに目を擦りつつ、ソファに座る。そこで、作りおきの朝食とそばにおかれた置き書きを発見する

 

 

(珍しいことがあるものです、タキオンが一人で外出・・・今日は夏ですが雪が降るかもしれません)

 

 

 そんな突拍子も無いことを考えながら、冷めきったトーストとコーヒーを口に運んでいく。

 

「ごちそうさまでした・・・」

 

 行儀よく手を合わせ、調理してくれた者への感謝を示し、そして自室へとあとにする。どうやら、彼女達の部屋では調理全般はタキオンが担当しているようである。

 

 

(さて・・・ライスさんが訪ねてくる時間はまだ先ですし、いつも通り空の景色を楽しむのも悪くありませんね。おや・・・あれは?)

 

 

 彼女の視界がベランダの{あるもの}を捉える。

 

 

(あれは・・・タキオンの勝負服。お日さまのいい薫りがしてそうです)

 

 今朝日干したであろうタキオンの真っ白な研究衣装。

 迷いなくそれをベランダから取り込み、リビングに持っていくカフェ。その表情が、彼女の耳が、そして尻尾が小刻みに動いている。何だか少し嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか。

 

 

 「準備は完璧です・・・」

 

 タキオンの勝負服を綺麗に正方形に折り畳むと、まるでクッションがわりにでもするように畳んだばかりのそれに顔埋めている

 

 

(・・・洗い立ての柔軟剤、そして干したばかりのお日さまの薫り。いい匂いです。)

 

 

 どれくらい経ったであろう・・・

 何かを思い付いたように、カフェはタキオンの勝負服を自身の勝負服の上から着てしまった。

 

(干したての・・・まだ少し残っているお日さまの温もり。たまりません)

 先程よりも、耳と尻尾の動きが忙しなく動いているのは嬉しさの現れなのであろうか・・・

 

 

 マンハッタンカフェ。どうやら彼女は洗い立ての、そして日干しした直後の洗濯物を見ると、取り敢えず顔を埋めそして試着し、その素晴らしい着心地・お日さまの匂いを楽しみたい衝動に駈られるようだ。

 無論、他の馬娘(特にタキオン)がいるときには、自制心が勝るようだが・・・今回のような場合は

欲望には叶わないらしかった。

 

 

 そうして、衣装をつけたまま彼女は、椅子に座りタキオンの部屋から持ってきたであろう試験管にコーヒーを淹れてみたり、ビーカーにコーヒーとミルクの入った試験管をいれ、ガラス棒でかき混ぜてみたりと、タキオンの真似事をしている。

 けれども、直ぐに飽きた様子で窓の景色を眺めている。

 

 

 そんなにも好きでないのになぜタキオンの真似事など実行しなけければならなかったのか?なんという事も無い、ただ、ただ、その白衣を着たからには研究者の心境を味わってみたいという、いわば単なる思い付きからである。

 

 

 そうして、空の景色を眺めていると何の前触れもなく彼女はやってきた

 

 

「カフェちゃーん。あ、遊びにきたよ・・・」

 

「あ・・・ライスさん・・・」

 

 

 カフェの表情に露骨に「やってしまった」という感情が滲み出ている。タキオンと自身の勝負服、白と黒のコントラストに包まれた自身の姿をライスに目撃されてしまったのだ。

 

 

「ふあぁ~。カフェちゃんどうしたのその衣装?」

 

「・・・ライスさんこの事は、2人の秘密にしてください」

 

「えっ・・・ふぇ」

 

「・・・秘密にしてください」

 

 

 何が何だか事態が掴めない様子のライスであった。しかし普段のカフェには感じられない並々ならぬ何かを感じとり、ひとまず快諾し事情を聴くことにしたようだ

 

 

「あのね!ライスもその気持ち・・・と、とってもわかるよ」

 

「・・・ライスさん」

 

「ライスもお日さま薫りのする衣装を着ると、がんばるぞーって気持ちになるよ」

 

「・・・どうやら、理解者が居てくれたみたいで安心しました。

ですがライスさん・・・先程も言いましたが絶対に2人の秘密にしてください。特に・・・」

 

 

 続きを言おうとしたその時、いいかけていた人物。その張本人の声が玄関から聞こえてきた

 

「カフェ、帰ったよ~。おや?ライスちゃんもきてるんだね」

 

 

 早すぎる彼女に帰還にライスとカフェはあわてふためいている様子であった

 

 

「ど、どうしよう・・・カフェちゃん」

 

「ひとまず・・・リビングの鍵を閉めてください。時間を稼ぎます」

 

「う、うん!!」

 

「カフェ~?ライスーちゃーん・・・おや?

おーい、鍵を開けてくれ給えよー。昼寝でもしているのかーい」

 

 

 タキオンの幸運な勘違い、カフェとライスは顔を見合せお互いに頷きそして、

 

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいーい。今あけまーす。フ、フア~」

 

 

 大根役者顔負けのライスの演技で、出来るだけゆっくりゆっくりと扉に近づき・・・そしてカフェが着替え終えたタイミングを見計らって鍵を開ける。

 

 

「もう、君たち。こんな日も高いうちから昼寝なんて感心しないなー

それに、たかが昼寝で鍵をかけるなんて用心過ぎるとおもうけれどね」

 

「ご、ごめんなさい。ごめんなさい」

 

「あ、いや、ライス君が謝ることじゃないよ。それより・・・あっ!!やっぱり」

 

 そういうと、タキオンはカフェの正確には先程衣装を置いたテーブルに向かっていく。万事休すか?そう思った二人であったが・・・

 

 

「カフェ何時も言ってるだろう?朝食が終わったら自分で片付けてくれって。」

 

「・・・そっちですか。良かったです」

 

「全然良くないよ。全く、結局何時も通り今日も僕が片付けるはめになるんだから」

 

 

 口では文句をいいながらも、台所に向かい洗い物を始めるタキオン。

そんな彼女を横目でおいながら、二人はホッと小さく息を撫で下ろすのだった。

 

 

そうして・・・

 

 

「今度は二人で衣装の洗いっこしようねカフェちゃん。」

 

「はい・・・約束です。」

 

 なんとも奇妙な約束を契り、彼女達の1日は過ぎていく

 

 

=====オマケ=====

 

「カフェ!君、僕の試験管でコーヒーつくったでしょ」

 

「すみません・・・美味しいブレンドコーヒーが出来ると」

 

「できないよ!もう、試験管もビーカーも、まだ一回も使ってなかったおニューだったのに・・・それと勝負服を畳んでくれるのは有りがたいけど、その近くでコーヒーを淹れたね。

あ~あ~。折角今まで染み込ませてきた数々の薬品の薫りが台無しじゃないか」

 

「コーヒーの薫りの方がいいと・・・思います」

 

「それは、個人の感覚の問題だよ。柔軟剤の薫りが好きな娘もいれば、薔薇の薫り、檜、それに僕みたいに薬品の薫りが好きな娘もいるんだよ」

 

「・・・すみません」

 

「まぁ過ぎたことだから、いいけどさ。今度は気を付けてくれ給へよ」

 

「よかった・・・気付いてはいないみたいですね・・・」

 

「ん?何か言ったかい?」

 

「・・・いいえ、独り言です」




 カフェの完全オリジナル?設定です

 でもカフェならこういう趣味がある可能性も無きにしもあらずだと思ってしまいます

 


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アグネスタキオンの至福の時間

 アグネスタキオン、彼女の至福の時間と言えば一つは勿論モルモット君への実験。
 そして、もう一つは・・・・そんなお話


ある朝早く

うつくしい朝焼けの小雨の朝早く

夜行型の彼女にしては珍しく、いつも空を眺めている彼女よりも早起きしコーヒーの準備をしていた。

 

 

(さてと、今日ははどの豆を挽こうかな・・・)

 

 

 キッチンには人一倍コーヒーにこだわる、彼女お気に入りのコーヒー豆が保管された数々の円筒の筒。コーヒースコップを片手に、その筒を一つ一つ吟味している

 

 

(カフェと僕だけなら、やっぱりこれだけど・・・今日は彼女も招待している事だし、苦味の少ないこっちかな)

 

 

 筒の一つにスコップを突き刺し、コーヒー豆をミルに入れハンドルを廻していく。しだいに、コーヒー独特の、眠気が残る少し気だるい雰囲気をも一発で吹き飛ばす爽やかな、そしてコク深い薫りが部屋中に満ちていく。

 

 

(本当は焙煎からやりたいけれど、あれ系の機械はさっぱりわからないからね。今日はこれで勘弁してもらうとしよう。・・・っと)

 

 

 挽き終えるのを見計らったように、事前にセットしていた電気ケトルが沸き上がりを告げている。

 

 

(われながら完璧なタイミングだ♪さて、それじゃあ仕上げに取り掛かろう)

 

 先が細いケトルでお湯をコーヒー豆におとしていく。勿論ハンドドリップである。可愛らしい黒猫が描かれたコーヒーサーバーに、一滴一滴と黒々したやさしい雫がたまっていく。

 

(いつも思うけれど、出来上がりまでのこの時間は何とも退屈だね・・・かといってラボに戻って研究の続きをするには短すぎる。帯に短し襷に長しとは、こういうことをいうのかな?)

 

 

 なれない早起きをしたせいだろうか?小さく欠伸をした彼女がキッチンに備え付けの椅子でウトウトし始めている。

 

 

(おっと、ここで寝てしまっては今までの苦労が水の泡になってしまう・・・けれど)

 

「ふぁあっ・・・」

 

 何度目かの小さな欠伸を眠そうな顔で噛み殺したとき、キッチンに彼女の声が聞こえてきた

 

 

「・・・あなたが私より早く起きているなんて・・・珍しいですね」

 

「おはようカフェ。もう少しで完成するから、君はリビングでゆっくりとくつろいでいるといい。」

 

 

 3つ分のカップとソーサー。そして、淹れたての熱いコーヒーがたっぷり入ったサーバー。

それらを、手際よくカフェが待つリビングにセッティングしていく。そのうちの一つには雪のように白い角砂糖がたっぷりそえられている

 

 

「僕渾身の淹れたてだよ。さぁ一気に行ってくれ、グイッと!!」

 

 

 タキオンに渡された淹れたてのコーヒー。しばらく、それを見つめ彼女はそっと、小さく呟く

 

 

「・・・タキオン。もしかして、怪しい薬がこの中に入っていたりしませんか?」

 

「し、失礼だな君は!!僕はそんな姑息なことはしないさ。そういう実験をするときは、堂々とその効果を説明してから飲ませているんだ」

 

「・・・そう言われるとそうですね。では、いただきます。」

 

「どう?どうだい?僕がわざわざ早起きをして淹れたコーヒーの味は?」

 

「いつもより苦味が足りない気がしますが・・・これはこれでありだと思います」

 

「そうだろう♪さぁさぁ、まだまだあるんだ。たんとおあがりよ」

 

 

 カフェにお代わりの2杯目を注いでいる。

 そして、自分のコーヒーには手もつけず、彼女が楽しみながら飲んでいる姿をじっと、幸福そうな表情で眺めている。

 

 

「・・・そんなにじっと見られていると、とても気になるのですが・・・やはりクスリか何かがはいっているのでは?」

 

「本当になにもいれてないってば。案外疑い深いね。カフェ」

 

「どうして・・・そんなに笑顔で見つめているのでしょうか?」

 

「今この瞬間がとても幸せだからさ」

 

「・・・よくわかりませんが、そうですか」

 

 

 タキオンの返答に小首をかしげつつ、よからぬことを考えているわけでは無いことだけは感じとったのだろう。彼女がいれた2杯目のコーヒーを楽しんでいるようであった。

 

 そうして彼女達2人のゆったりとした時間が過ぎていき・・・

 

 

「あ、あの、失礼します」

 

 

 その声を聞き、タキオンは既に用意していた3つめの空のコーヒカップにコーヒーを注ぐ。

たっぷり盛られた角砂糖つきのそのソーサーにあるコーヒーカップに

 

 

「やぁやぁ、よく来てくれたね。さぁ遠慮せずに座ってくれたまえ。

ちょうどカフェのとなりが空いているんだ」

 

「か、カフェちゃん。おはようございます♪」

 

「・・・ライスさん。なるほど、ようやく今日のコーヒーの意味がわかりました」

 

「ふぇ、コーヒー?ど、どうかしたの」

 

「・・・いえ、ただの独り言です。」 

 

 

 カフェとライス。静かにそして楽しげに談笑する彼女達を、少しの間じっと見つめている。

タキオンにとって幸せの対象である、彼女達の微笑ましいやり取りを・・・

 

 そうして、充分に幸せな時間を満喫したタキオンが立ち上がり朝食の準備に取りかかる。

 

 

「カフェ、ライス。朝はトーストにしようと思うけど、ジャムとマーマレードどっちが好みかな?」

 

 

 トーストとゆで卵。少し質素な、しかしコーヒとは相性ぴったりの朝食の準備に。

早朝の小雨はいつのまにか降り止み、眩しい太陽のひかりが彼女達の幸せな食卓に華をそえている




 今回は若干タキオン視点で描いてみました

 ゲーム内ではアグネスタキオンの同部屋の住人にはなにも触れられていないような気がしますが、誰なのでしょう?
 やっぱり、カフェなんですかね?


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逃げ切りガールズ(スマートファルコン×ミホノブルボン×サイレンスズカ)

 パワー◯フ◯ールズとか、悠白のオマージュ的な何か


 お砂糖・・・スパイス・・・素敵なものいーっぱい。全部混ぜると、むっちゃ可愛い女の子ができる、はずだった。だけどタキオン博士は間違えて余計なものも入れちゃった……!

 

 それは……逃げ切りX……

 

ドカァァン!!(爆発音)

 

そして生まれた超強力三人馬娘!

 

スーパーパワーで悪い奴らをやっつける、

 

ファルコン!スズカ!ミホノブルボン!

 

強くてかわいい正義の味方! みんなのアイドル、逃げ切りガールズ!

 

リーダーのファルコ!!キュートなスズカ。

そしてでかいぜ!ミホノブルボン!!

 

テーテッテテテテーテッ、テテテテーテッ、テテテー

テーッテッテテテッ ドン!!

 

==========オープニング終了========

 

第1話:目指せ!トップアイドル

 

ここは、トレセン学園アグネスタキオン研究室。

 

 

「やっぱりこのままだと、ダメだと思うの」

 

 

リーダーファルコがおもむろにそうきりだす。

 

 

「状況推察・・・ダメとは何がダメなのでしょうか?」

 

「ライブだよー。今のところファルコ達の公演って学園の余興ライブだけでしょ!私達トップアイドルを目指してるんだからそろそろ国技館での公演を目指していかないと。」

 

「多分、目指すとしたら武道館だと思うの・・・あと原作的に正義の味方だから、学園の平和を守る事が優先されると思うんだけど」

 

「えーっ、だってトレセン学園にモジョジョジョみたいなポジションのウマ娘なんていないよー」

 

「肯定、敢えて挙げるならゴールドシップさんくらいです」

 

「うん、そうなのよね。根本的に企画倒れになるのはわかってたのに、この先どうするんだろう」

 

 

 そうなのである。ゲームにしても、アニメにしても、コミックにしてもトレセン学園はどの世界線でも平和そのもの。若干名お騒がせなウマ娘もいるが、それが学園の平和を脅かすかと言えばそうでもない。せいぜい廊下を走ったとか、月に連れていかれそうになったとか、怪しい薬の実験台にされそうになったとかの、些細なでごとしかないのである。

 

 これでは、原作パワー◯フ◯ールズは到底再現できない。サイレンスズカのいう通り企画倒れもいいところである。

 

 しかし、しかしである。原作パワー◯フ◯ールズも毎回悪いやつをボコスわけでもない。それこそガールズだけで遊んで1話が終了したか回や、お喋りだけの回。そして確かアイドルを目指すか回もあったはず・・・つまり、逃げ切りガールズがアイドルを目指すという設定も原作的にはありなのである。ということで、その方向でよろしくお願いすることにしよう。

 

 

「ウソでしょ・・・物凄い強引に話をすすめようとしてる」

 

「さっきから誰とお話してるの?スズカちゃん」

 

「う~ん、ナレーションっていうこのお話を作成・解説している人かな」

 

 

 サイレンスズカがいつもと変わらぬ大人しそうな雰囲気で、小さくそしてかよわい声で的確に著者の意図を看破してくる。さすがは、逃げ切りガールズ唯一の知将である。しかし、幸か不幸かリーダーとブルボンはどうも乗り気のご様子。大抵こういう場合は多数決によって・・・・

 

 

「よーし!!そうと決まったら早速特訓だよ~。まずはトレセン学園アイドル総選挙1位を目標に、そこから県予選、全国大会を勝ち抜いて、アイドル達の最終目標!甲子園に向けて全速全身だ~」

 

「任務了解。全身全霊で臨みます」

 

「私たちの学園にそんな選挙あったかしら?それと目指すとしたら、武道館だと思うの・・・」

 

 

 約一名を除いてやる気十分の逃げ切りガールズ。まずはトレセン学園で行われる

アイドル総選挙(暗黒武術会)に向け特訓が開始される。




 ふと思い付いたパワパフのような、悠白のようなよくわからないなにか。

 Drタキオンチームとか、ゴルシ姉妹とか、パロディ前回で思い付くままに作るかもしませんし、これで終わりかもしれません。とりあえず、カフェとライスは登場させたいです。


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令嬢アユ(ライス×カフェ×マルゼンスキー)

 令嬢アユの世界線にカフェ、ライス、マルゼンスキーが飛ばされた?そんな感じのお話。
 *令嬢についての描写は敢えて弄らず原文ままを載せていますが、馬娘要素を強引にねじ込んでいるため、所々話の辻褄が合わなくなっています。御了承ください
 *原文はわかりよすいよう2~3改行で示しております


 初夏のかげ漂う今年の六月、彼女達は涼を求めて、とある温泉街の河原へ向かっていた。鼠取りも信号もなにもないのどかな田舎の一本道。彼女の愛車は気持ちよく風を切り法定速度+40オーバーという驚異的なスピードで目指していた。

 

 

「やっぱり、クーラーより自然の風が一番ね。ライスちゃん、カフェちゃん、どう?気持ちいいでしょ~」

 

「とっても気持ちいいです。お姐さま」

 

「少し・・・出しすぎな気がしないでも・・・ありませんが」

 

「問題ナッシング♪鼠取りなら心配しなくていいわよ。こういう田舎の河原道に張り込むほど暇じゃないもの」

 

 

 車を走らせること数十分。ようやく目的地というところで、車道が狭くなり、どうにか人が一人入れるくらいの広さであった。適当なところに愛車を停め、夏草を踏み分け彼女達は河原へ向かった。

 

 草の露が冷たくて、いい気持ち。土堤にのぼる。ヤマボウシが咲いている。ツユクサが咲いている。ふと前方を見ると、緑色の寝巻きを着た令嬢が、白い長い両足を膝よりも、もっと上まであらわして、素足で青草を踏んで歩いている。清潔な、ああ、綺麗。十メエトルと離れていない。

 

「う~ん・・・マブい!!」

 

 

 マルゼン姐さんは、無邪気である。周りの雰囲気も気にせずに思わず歓声を挙げて、しかもその透き通るような脚を確実に指してしまった。令嬢は、そんなにも驚かぬ。少し笑いながら裾をおろした。これは、日課の朝の散歩なのかもしれない。

 

 

「あ、あの、お姉さまも涼みにこられたんですか?」

 

 

 その場の凍りついた雰囲気をなんとか変えるため、そんな当たり障りのない質問をライスが申し訳なさそうに呟いた。

 

 

「鮎を釣りに来ましたの。ここはとても釣れるところなのです。あたしは、いつもあの岩の上で釣っているの。」

 

「あ、あの、お姉さまは東京の人ですか?」

 

「あら、どうして?」

 

「い、いえ、その・・・ご、ごめんなさい!」ライスは、咄嗟に口を出た言葉に狼狽し同時に、無神経な質問をしたことに後悔し謝った。

 

「あら、気にしないで。あたしは、この土地のものよ」

うつむいて、くすくす笑いながら岩のほうへ歩いていった。

 

 

 彼女達3人は適当なところに腰をおろし、令嬢の釣りを眺めながらゆったりと、四季の風物を眺めた。

 

 

「・・・あっ」

 

 

 

 カフェの呟きとほぼ同時に、ジャボリという大きな音がした。たしかにジャボリという音であった。みると令嬢は、見事に岩から落ちている。胸まで水に水没している。釣竿を固く握って、「あら、あら。」といいながら岸に這い上ってきた。

まさしく濡れ鼠の姿である。白いドレスが両脚にぴったり吸い付いている。

 

 

 彼女達は心配そうに駆け寄り、そして・・・

 

「お、お姉さま・・・血が」

 

 

 

 令嬢の胸を指さした。令嬢の白い簡単服の胸のあたりに血が、バラの花くらいの大きさでにじんでいる。

 令嬢は、自分の胸を、うつむいてちらと見て、

「桑の実よ。」と平気な顔をしていった。「胸のポケットに、桑の実をいれて置いたのよ。あとで食べようと思っていたら、損をした。」

 岩から滑り落ちる時に、その実が潰されたのであろう。

 

 

 

 ライスはそれに安心したのか、「よかったー」と呟いた。

 

 令嬢は「これじゃあ今日の釣りはお開きにするしかないわね」と言い残し茂みの中に姿を消してそれっきり、河原へ出ては来なかった。

 翌日、翌々日もマルゼンスキーのドライブに付き合いがてら彼女達は河原へ向かったが、令嬢の姿は見えなかった。

 

 

 

 そうして、次の週の土曜日の朝。彼女達がいつものように河原へ向かっていたところあの令嬢に遭遇した。

 

 

 令嬢は黄色い絹のドレスを着て、自転車に乗っていた。

 

 

 「お、おはようございます。お姉さま」

 マルゼンスキーが車を停め、ライスが挨拶をする。

 

 

 

 令嬢は軽く頭をさげただけで、走り去った。なんだかまじめな顔つきをしていた。自転車の後ろには、菖蒲の花束が載せられていた。白や紫の菖蒲の花が、ゆらゆら首を降っていた。

 

 

 

 その日の昼少し前に河原を引き上げ、道路沿いのバス停付近の氷水屋で3人が涼んでいたところに、

 

 

 

「おかえりですか。」と3人の背後から声をかけられ、振り向くと、あの令嬢が笑っている。手に小さい国旗を持っている。黄色いドレスも上品だし、髪につけているコスモスの造花も、いい趣味だ。田舎のじいさんと一緒である。じいさんは、木綿の縞の着物を着て、小柄な実直そうな人である。ふしくれだった黒い大きい右手には、先刻の菖蒲の花束を持っている。

 

 

 

 「・・・どうして、旗を持っているの?」

 

 カフェが令嬢とじいさん二人が持っている旗がどうにも気になるようでそんな質問を投げ掛けている。

 

 

 

「留学するのよ。」

 

「・・・留学?お姉さんが?」

 

「わしの姪ですよ」じいさんが答えた。「きのう飛行機で出発しました。わしは、飲みすぎて、ここへ泊まっていました。」眩しそうな表情であった。

 

 

「留学ですか。お、おめでとうございます」

 

 ライスが自分のことのように、喜びながらいった。

 

 

「可愛がっていた姪子さんだったから、」令嬢は利巧そうな、落ち着いた口調で説明した。「おじさんが、やっぱり、ゆうべは寂しがって、とうとう泊っちゃったの。わるい事じゃないわね。あたしは、おじさんに力をつけてやりたくて、けさは、お花をかってあげたの。それから旗をもって送ってきたの。」

 

 

 

「・・・お姉さんのお家は、宿屋さんなの?」なにも知らない純粋なカフェの質問に令嬢とじいさん、そしてマルゼンスキーが笑った。

 

 

 停留場にバスがついた。じいさんは、バスに乗った。令嬢は、窓のそとで、ひらひらと国旗を降った。

 

「おじさん、しょげちゃ駄目よ。誰でもみんな行くんだわ」

バスは出発した。

 

 

 

 彼女達はしばらく、そのバスの後ろ姿を見送り、そしてそれぞれの帰路へとあとにした。

 帰り際の車のなかライスとカフェが「次の創設祭の時はあの令嬢さんの宿に泊まりにいきたい」といい、マルゼンスキーを大いに困らせたことを余談だが載せておくことにしよう。 




 原作では「留学」ではなく「出征」です。(時代背景は恐らく第二時世界大戦辺りだと思います)
 ここを変えてしまったため、じいさんの行動に全然説得力がなくなっていますね。


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馬娘の追憶

 原作「酒の追憶」のオマージュ

 タイトル通り、今回は馬娘プリティーダービーの私が思う諸々を原作の書き方を真似して書き記しただけの作品です。
 ご了承ください

*今回も原文は2~3改行しようと思いましたが、原文まま使っているところが少ないため、改行ができませんでした。比率的には 原文:オリジナル=2:8といったところです


 馬娘の追憶とはいっても、馬娘が追憶するという意味ではない。馬娘プリティイダアビイについての追憶、もしくは、馬娘プリティイダアビイについての追憶ならびに、その追憶を中心にしたもろもろの過去の私の生活形体についての追憶、とでもいったような意味なのであるが、それでは、題名として長すぎるし、また、ことさらに奇をてらったキザなもののような感じの題名になることをおそれて、かりに、「馬娘の追憶」として置いたまでのことである。

 

 

 

 私は最近、少し懐の調子を悪くして(俗に言う金欠である)、神妙にしばらく馬娘プリティイダアビイから遠ざかっていたのであるが、ふと、それも馬鹿らしくなって、スマホの画面をつけ、アプリを起動させ、少額の課金でチビチビ、デイリイガチャだけ引いてみた。そうして私は、実に非常なる感慨にふけった。

 

 

 課金は、それは、するにしても少額で、毎日毎日デイリイを引く。そのくらいチビチビやるくらいが、精神衛生上良いにきまっている。当たり前のことである。

 私が課金をするようになったのは、社会人になってからであったが、どうもアプリに対する課金というのは、ファミコンのカセツトを購入するのとは異なり、影も形もなく、提供が終了してしまったらそれまでで、デイリイをチビチビ回すのにさえ、大いなる難儀を覚え

 

 

 「○○回でヒシアマゾン当たりました」とか、「無課金で○○と○○自分の欲しい馬娘全て当たりました」なぞと某集会所や映像サイトで、愛好家たちが己の運の強さを自慢し、大いなる幸運に一喜一憂している様をみていると、自身の引きの弱さも相まって羨望と嫉妬と恐怖を感じていたものであった。いや、本当の話である。

 

 

 けれども、やがて私も、課金をすることには慣れたが、しかし、それは「長いスパンで考えれば、お気に入りのキャラを全て揃えてしまえばあとは、無課金でやっていけばよい。俗に言う初期投資とおなじではないか」という、自身の完璧なる筋書があったからで、決してやみくもに引いていたわけではない。

 

 

 にがいにがいと思いつつ、チビチビ引いて、そうして必ず、すっくと立って、風の如く御不浄に走り行き、おもむろに携帯を開き愛好家たちの呟きを目にし、悔しさに涙をながしていいね!を押し、必ず呻いて徒労を吐いて、ときには{手綱}に最低保証なぞのお恵みを貰って、真蒼な顔をしてその結果をみて、そのうちにだんだん課金にも馴れた、という甚だ情無い苦行の末の結実なのであった。

 

 

 デイリイガチヤで、チビチビ引いても、既にかくの如き過激の有り様である。いわんや、「○○出るまで回します」とか、「○○万円、ぶんまわし」などに至っては、それはほとんど戦慄の自殺行為と全く同一である、と私は思い込んでいたのである。

 

 

 しかし、今となっては・・・・・

 誰の言葉であったか「人というものは、はじめから悪の道を知っているわけではない。何かの拍子で、小さな悪事を起こしてしまい、それを世間の目にふれさせぬため、また、つぎの悪事をする。そして、これを隠そうとして、さらに大きな悪の道へ踏み込んでいくものなのだ」

 

 全くうまい例えである。勿論、課金=悪と私が認識しているのではないことは伝えておこう。しかし、この言葉、「悪事」を「課金」にかえると、成る程。しっくりと来るではないか。課金は魔の囁きとはよくいったものである。

 

 

・・・・ところで

 私がはじめて、10連を回したのは、摩天楼の幻影。あの馬娘を目撃したときからである。まさに、運命的な出会いであった。ビジュアル、性格、雰囲気、話し方、そしてアニメとのギャップ。全てが私の追い求める馬娘にピタリと当てはまった。

 

 そして、喜び勇んで近くの小売店で林檎のカアドを購入し、馬娘ガチヤを引きはじめた・・・そう、そのときはまだ知らなかったのだ。この馬娘がその二つ名の通り、このゲエムにおいて摩天楼の幻影であるべき存在ということなぞ。

 

 

 アプリを起動させガチヤの画面へ向かうと、手綱君が

 

「君、10連をまわすんだろう?」

 

と、言っているように見えてくるので、私はムッとした。

カアドは買ってきたがなにもまだ、引くと決まったわけではないのである。

 

「まだ、引くと決まったわけではない。なにも、このカアドは課金にしか使えない訳ではないのだからな」

 

 

私は心のなかでそう強がった。

 

 

「しかしそういいながら、引くんだろう」

 

「引いてもいい」

 

「引いてもいい、じゃない、当てたいんだろう?」

 

 

 手綱君には、その頃、ちょっとしつっこいところがあった。私はアプリを閉じてしまおうかと思った。

 

 

「おうい。」と手綱君は、サポートカードの画面を呼んで、「サポートカードにはまだ彼女の排出率が上がっているだろう。持ってきなさい。Rでいい。」

 

 

 私はも少し、いようかと思った。ガチヤの誘惑はおそろしいものである。

 

 

「馬娘ガチヤを私は引きたいのです」

 

「そういうな。まずはサポートカードを引いて彼女を存分に堪能するといい」

 

 

 手綱君は、ひどく傲然たるものである。 

 私も向っ腹が立っていたので、忠告も聞かず黙って{馬娘ガチヤ}の10連をグイとまわした。私の記憶する限りにては、これが私の生まれてはじめての、10連をまわした経験であった。

 

 

 手綱君は私が10連を回したのをじろじろと確認して、そうして扉を開きレエス所へと駆けていった。

 

 

「10連てのは、これは、的屋のくじみたいなものじゃないか。ちっとも当たらない」

 

「そうかね。いつか当たるさ」

 

 

たちまち、10連を3回も引いてしまった。

 

 

「もうやめよう」

 

「そうか。彼女は出てないぜ」

 

 私はひとり、アプリを閉じた。傷を癒すため動画サイトで彼女の動画を漁り、そしてとある勇姿が作成した俗に言うMAD動画で真実を知り、ひどく悲しくなり、小さい声で

 

 

 

わたしゃ

売られて行くわいな

というお軽の唄を歌った

 

 突如、実に全く突如、えも言えぬ徒労感が発した。

 酷く後悔して、私の頭上から巨大な竜巻が舞い上り、私の意識は宙に浮き、ふわりふわりと雲霧の中を漂っているというあんばいである。

 

 そんな状態でも腹は減るもので、台所に向かっていったところ、途中でタンスに足をぶつけ、転倒し、

 

 

 

 わたしゃ 

 売られて行くわいな

 と小声で呟き、起き上って、数歩進みまた転倒し、視界がなにか靄でもかかっているかのようにボヤけ、屈折し

 

 わたしゃ

 売られて行くわいな

 その蚊の鳴くが如き、あわれにかぼそい歌声だけが、はるか雲煙のかなたから聞こえて来るような気持ちで 

 

 

 わたしゃ

 売られて行くわいな

 また転倒し、また起き上がり、そうこうしているうちに、その1日はあっという間に過ぎ去ってしまった。

 

 

 その後、私は現在まで、恐らく数回10連をまわしたが、しかし、あんなにひどいめに逢った事がなかった。

 

 10連に就いて、忘れられない少し嬉しく、そして少しもったいない思い出が、もうひとつある。

 

 

 少し話は前後し始めに貰った星3交換チケットで迷わず「黒い刺客」の二つ名を持つ馬娘を交換した頃であったか。その馬娘を家の画面におき、楽しんでいるとどうにもむず痒い、幸せな気持ちになれる。

 

 そうして、「もっと馬娘が欲しいな」と欲が出て初の10連引いたとき虹色に光るゲエトが3つ・・・いや2つだったかも知れぬ・・・兎に角その虹色のゲートから先程交換したばかりの彼女が再び現れたのだ。

 

 

 こんなことなら、最後まで迷っていた「スーパーカー」を交換した方が良かったかもしれないと思っていたが、その迷いもこのガチヤで晴らすことができた。しかし、{ならあのとき、坂路の申し子を選択した方が・・・}とどんどん、どんどん湯水のごとく、過去の自分への後悔が出てくるのだからどうしようもない。

 

 人の欲と言うものは再現がなく、そして改めてガチヤと言うものはその欲をうまく刺激するように作られているなと関心させられる。

 

 

 まぁ、今の私にはあまり関係のないことだが・・・

 摩天楼の幻影。彼女が出るまでは、しばらくは節約をし、マイペースに遊んでいこうではないか。 

 

 黒い刺客、スーパーカー、坂路の申し子、ターフの名優。彼女以外の欲しい馬娘は全て揃えたのだから・・・・




 馬娘プリティーダービーについて語るはずが途中から 
ゲーム→ガチャ→10連と語る対象がぐちゃぐちゃと変わってましたね。

 文面だけをまねしているだけなので、なかなか難しい。それと実体験をもとにして作成しているのでどうしても、感情が前面に出てしまいますね。


 とりあえず、10連ガチャから得られた教訓は、ガチャであれ仕事であれ事前の情報収集は大事ということですかね?
 それと、サポートカードでいいのでナースカフェ是非是非実装していただきたいですね


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アグネスタキオンのお悩み相談「タキオンと学ぶアラン幸福論 選択と適正」(タキオン×カフェ×一般馬娘)

 トレセン学園にも春がやって来た。そして、新しいウマ娘達が今年も入学してくる。そして、彼女たちに取って、一番最初にぶち当たる課題は自信の適正距離・ば場そして作戦。
 そんな悩める彼女たちにタキオンが助言を・・・そんなお話


 桜が咲き誇り、町全体を優しくそして暖かい桜色に染める季節がやって来た。

 学校、職場様々な場所で新たな新入生がやってくる季節である。勿論トレセン学園もその例外に漏れず、今年も新進気鋭のウマ娘達が入校し、新生活に胸を膨らませていた。

 

 しかし、そんな彼女たちにとって真っ先に直面するのは「あの」問題であろう。

 

 

======タキオン お悩み相談室======

 

「本日はありがとうございました。タキオン先輩!私、ようやく決心がつきました」

 

「それはよかった。僕でよければいつでも相談にのるよ。また、いつでもくるといいさ。」

 

「はい!失礼しました」

 

「・・・ふぅ。午前中だけで4人目か」

 

 

 とある校舎の一角、元々は物置き場であった場所を急ごしらえで造り上げた教室。机が1つに椅子が2つただそれだけしかない殺風景な教室に彼女の呟きが虚しく消える。

 

「・・・お疲れ様です。どうぞ、今日は砂糖とミルク多目に入れてみました」

 

「ありがとう、カフェ・・・うん。疲れた頭には丁度いい。染み渡るよ」

 

「それは・・・善かったです」

 

「それにしても・・・まったくもってどうしてあんな下らないことを学園は毎年実施するのか。僕には理解しかねるよ」

 

 

 タキオンがいかにも不機嫌そうに顔をしかめ、トレセン学園が新入生のために行っている「下らないこと」に不満を漏らす

 

 

「・・・下らないこと、ですか?」

 

「そう、適正検査さ。あんな紙切れ一つで自分の、ば場・距離・脚質を決めてしまうなんてふざけているよ」

 

「・・・そうでしょうか?自分の適正を知るには、とても便利なものだと思います」

 

「あくまで、参考にするだけならね。

 でも中にはその結果を深刻に考えすぎて、自分の進みたい進路を変えた方がいいのかを本気で悩んで、相談にくる娘だっているんだ。さっきの娘のようにね」

 

 

 適性検査。それは、トレセン学園に入学したウマ娘達がはじめて行う試験。

ウマ娘達はその結果に従い、己のば場・距離・脚質を決める。いわば、一般的な学校における「職業適性検査」と思っていただければ、イメージはつかめるのではないかと思う。

 

 

「それにだよ。僕はその検査では長距離適正は全くないという判定を受けたんだ。その結果にしたがって、短距離を選んでいたら・・・今ごろ僕はどうなっていただろうね?」

 

 

 自虐的な笑いを浮かべカフェにそう訪ねるタキオン。その質問にカフェがどう答えようか?答えあぐねている。

 

 

「さらに付け加えるなら僕は今まで、僕を含めて検査通りの道に進んでいたら才能を潰したであろう、ウマ娘をもう一人知っているよ。」

 

「・・・それは、誰でしょうか」

 

 

 カフェの問いかけにタキオンは軽く目をつぶり、おとぎ話でも読み聴かすように、あるウマ娘の話を語り始める。

 

====================================

 その日は、今日のように雲ひとつない晴天であった。アグネスタキオンにしては珍しく、皆が集まる談話室。その片隅で一人読書を楽しんでいた。

 

(いやー。やはり、世界大戦時の実験報告書を眺めるのは面白いね。どんな非合法、凄惨な人体実験も勝利という大義名分のもとに、なんの躊躇もなく行われ極めて客観的に纏められている。ここまで、残酷になれるのだから人類というのは本当に恐ろしく、そして素晴らしい)

 

 

「あ、あの、す、すみません」

 

 

 不意に、誰かの。気弱そうな声が報告書に没頭中の彼女の意識を現実に引き戻す

 

 

「・・・なんだい?何か用かな?」

 

 

 お楽しみを邪魔され、少し不機嫌ぎみにそして、素っ気なくそのウマ娘の対応をする。

 

 

「あの、始めて入学したばかりで、そ、そのタキオン先輩に相談しいたことがあるんです・・・」

 

「え~、僕に?もっと面倒見のいい先輩は一杯いるよ。そうだね、スーパークリーク君とかヒシアマゾン君。エアグルーヴ君も言い方はきついけれど、親身になってくれるいい先輩だよ」

 

「だめでしょうか・・・?」

 

 

 相談などと言う厄介ごとの類いからは、極力関わりたくないのが彼女の性格である。しかし、頼りにしてくれるウマ娘を放っては置けないという彼女の短所・・・いや、長所が珍しく彼女をその厄介ごとに突き動かした。

 

 

「まぁ取り敢えず、座りなよ。コーヒーでいいかい?本当は本格的なものを振る舞いたいところだけど、あいにくカフェが外出中でね。これで勘弁してくれたまえ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 

 ひとまず自室につれていき、冷蔵庫から缶コーヒーを二つ取り出し彼女に手渡す。そうして、リビングの彼女のお気に入りのソファにそのウマ娘を座らせ、彼女の悩みを聞き始める。

 

 

「で、悩みというのは?」

 

「は、はい。今日の適性検査で、私は長距離、追い込みが適していると診断されました。先生もトレーナーさんも君にはピッタリだというんです。でも・・・」

 

「でも?」

 

「私は、短距離を・・・誰よりも速く、スタートからゴールまで誰にも先頭を譲らず風のように走りたいんです。でも、それを言っても皆からは長距離を進められて・・・私はどうすればいいのでしょうか?」

 

「なぁんだ。そんなことで悩んでいたのか。下らないね」

 

「・・・下らない・・・ですか」

 

 

 彼女の悩みを「下らない」と一蹴し、そうしてタキオンはとあるウマ娘の昔話を始める。

 

 

 

「くだらないね。昔あるウマ娘も長距離を走りたいのに、適性検査とやらで、長距離は不適と出たんだ」

 

「そうなんですか・・・その娘はその後どうしたんですか」

 

「勿論そんな結果一蹴して、長距離を選んだよ。周りからの反対は酷かったらしいけどね。でもね、僕・・・じゃなかった。

 そのウマ娘は短距離なんていうもって生まれた才能、脚の速さだけで決まるレースより。体力・スピード・位置取り、そしてスパートをかけるタイミングそれらすべてを、コースや相手に合わせて戦略的に変えていき一位をもぎ取る。そういうレースをしたかったから周りの意見をすべて無視して、長距離を自分の進みたい進路を選んだのだよ。」

 

「自分の進みたい進路・・・」

 

「そうさ。人生なんて一度きり、周りの意見、結果に流されるより自分の気持ちに素直になるのが一番いいと僕はおもうよ。それに」

 

「そ、それに?」

 

「かりに失敗して転んでも、諦めず立ち上がれば道は拓けるものだよ。あのミケランジェロでさへ芸術の勉強を始めたのはお爺さんになってからなんだからね。つまりはそういうことさ」

 

「自分の気持ちに素直に・・・転んでも立ち上がる・・・あ、ありがとうございます!すこし勇気が沸いてきました。私も自分の気持ちに素直になります。短距離を誰よりも速くバクシンします。」

 

「うん、そうしたまえ。自分の気持ちが一番だよ。どうせほぼ一生ついて回ることなんだ、苦しいより楽しい方がいくらかましだろうさ」

 

「・・・はい!!ありがとうございます。本当にありがとうございます」

===================================

 そうして、この件が学園中にしれわたり晴れてタキオンは、新入生の相談役という立場を半ば強制的に与えられたのだった。

 

 

「はぁ・・・あのとき、もっと適当に答えてたらこんな面倒事を頼まれないですんだかもしれないのにな~」

 

「・・・過ぎたことを悔やむほど無駄なことはない。・・・タキオンがいつもいってることです」

 

「まぁそうだけどさ、そうなんだけどさ・・・どうしてこうなっちゃったかなー」

 

「・・・そういえば、タキオンさん」

 

「うん?なんだい」

 

「そのウマ娘って誰なのでしょうか?」

 

「秘密さ♪でも君もよく知っているウマ娘だよ」

 

「・・・私が知っている?誰でしょうか」

 

「秘密さ。でも」

(あの娘昔はあんなはっちゃけた性格ではなかったと思うんだが・・・、ウララクンといい、あの娘といいどうして短距離にはああも個性的な性格の娘が集まるのかね?)

 

 そうして誰にも聞こえないよう彼女はそっと静かに呟く

 

「鶏が先か卵が先か・・・難しいね」

 

「・・・なんのことでしょうか?」

 

「なに、独り言さ」

 

 

 

 

====おまけ=====

今回参考にした原文

 

 選択したのはだれか。私はそれを問うてみる。だれも選択したのではない。私たちはみな、はじめは子供だったからだ。だれも選択はしなかった。しかし誰もがまず第一に行動したのだ。

 

 こうして、職業への適性は自然と環境とから生ずる。それゆえ、あれこれ思案するものは決して行動しないのである。

 学校でやる分析ほど馬鹿げたものはない。動機だの動因ばかり詮索する。

 

************

 

 一航海全体が最初の舵の動かし方一つで左右されるなどと言ったら、船乗りに笑われてしまうだろう。ところが、世間では子供たちにそう信じこませようとしている

 

==================================== 




*都合よく解釈しているため、多いに自信の独断と偏見が入っています。ご了承ください。

*ウマ娘の年代も物語重視で創ったため、時系列なぞひっちゃかめっちゃかになっています。合わせてご了承ください。
 


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植物園(ライス×カフェ×タキオン他ウマ娘多数)

 原作「失敗園」のオマージュです。
 原作では、夏に育つ植物しか登場していませんが、この作品では各ウマ娘をイメージした植物を登場させているため季節感は一切ありません

例:ゴルシ=向日葵
  タキオン=トリカブト
 みたいな感じですかね

 


(トレセン学園には、100坪程の広大な庭があるのだ。理事長の許可のもと、ウマ娘達は、ここに、秩序もなにもなく何やらかにやら一ぱい植えた。その植物たちの育成は勿論植えたうま娘達がそれぞれで行う。よく、動物は飼い主に似るというが、どうやらそれは植物にも同じことが言えるようだ。

 

・・・その訝しげな目つき、疑うのも無理はない。しかし、事実、その声が聞こえるのである。 参考までに、私が今まで速記した植物たちの囁きを見ていただきたい。そうすれば、きっと疑いは晴れるはずである) 

 

 

 

 

 

 

竹とチューリップとアサガオ。

 

「う~ん。この暑さは堪えるねー、今はもうお昼だし、アサガオさんはここら辺でお昼寝させてもらうね~」

 

「弛んでいるぞ!このぐらいの暑さでへこたれてどうする。貴様の力はそんなものではないはずだ!起きろ、そして共に成長し続けるのだ」

 

「うわー。チューリップさん・・・もろ女帝さんの影響受けてるね。もっと気楽にさ~、マイペースにいこうよ。うちのご主人みたいにさ」

 

「何をいっているのです、アサガオさん!!チューリップさんの言う通りですよ、さあさあ、私と一緒に爆伸しましょう!!どこまでも、そうどこまでも天高く・・・バクシーン!!」

 

「話の腰を折るようで悪いが、竹君。きみが伸びると、だね・・・我々の成長を阻害するから、あまり張り切って貰うのは・・・その、遠慮してもらいたいのだが」

 

「チョワッ!!」

 

「どうでもいいけど、よく竹なんて持ってこれたね~。君のご主人」

 

 

 

カトレヤ。

 

「まったく・・・あちらの花壇は騒がしいですわね。もう少し静かにしてもらわないと、満足に野球中継も聞いていられませんわ。折角ご主人がラジオを持ってきてくださっているのに。」

 

(2アウト満塁。逆転の大チャンスで表れたのはこの男4番・・・)

 

「まぁ、ここは絶対に得点していただかないと。ご主人も応援していますし・・・私も目一杯応援しますわよー。かっ飛ばせーゆ・た・か!!」

 

 

 

向日葵と人参

 

「今日もいい天気だねー♪向日葵さん」

 

「あぁ・・・そうだな。これだけ天気がいいと、やっぱりいきてえなぁ」

 

「ん~どこ?海?それとも川?」

 

「違う違う月だよ月。」

 

「うわーお月様かー。私も行ってみたいな~♪」

 

「おう!いつかつれてってやるから一緒にいこうな」

 

「うん♪あ、ご主人だー♪おーいご主人様~」

 

「あんたの所はいいねぇ~時間通り毎日水をやるご主人が居て・・・うちなんて適当だから、2日に一回しか水をやりにこなかったり、逆に1日に8回も水をやりに来たり、本当にめちゃくちゃなご主人だぜ」

 

「あらっ向日葵さんにはお似合いのご主人だと思いますけど?」

 

「なんかいったか?カトレヤ」

 

「いえ、何でもありませんわ・・・いたっ、いたたっ。ちょっと向日葵さん!こちらに種を飛ばさないでくだいまし!!」

 

 

ジャガイモ

(お腹がすいてしまった・・・たしかご主人が水を与えに来たのが7時で今は10時そろそろ中間食のじかんだな。流石にお昼までこのまま何も食べないのは少し厳しい。ああ、またお腹がなってしまった)

 

 

 

 

トリカブトとエノコログサ。

 

「全く、本当にどこもかしこも騒がしい。もう少し静かにしてもらわないと満足に実験もできないよ・・・おーい!そこの君もそう思うだろう?」

 

「・・・どちらでも構いません。私はいつも通り風の流れに身を任せて、ゆられているだけで、満足ですので」

 

「うーん、人のことは言えないけど君のご主人。ただの草である君をどうして植えようと思ったのかね?まぁ僕も君のことは言えない劇毒物だけどさ」

 

「・・・わかりません。ご主人なりに何か考えがあるのではないでしょうか?まぁ、無くてもいっこうに構いませんが。」

 

「まったく・・・お互いご主人の考えていることはよくわからないみたいだね。まぁ取り敢えずはよろしく頼むよ。僕も君も植物のなかでは長生きする方なんだからさ。末永くマイペースにやっていこうよ」

 

 

 

青いバラ

 

「あ、あの、私は薔薇と申します。ただのバラじゃありません青い薔薇です。

 花言葉は、夢叶う。とっても素敵だと思います。ただ、昔の花言葉は、不可能。でした。なんでも自然界で青い薔薇が咲くことはあり得かったそうです。

 でもでも、皆さんの頑張りのおかげで青い薔薇がはじめて咲いて、花言葉が夢叶う。になりました。他のバラに比べると、とっても育てにくいけど・・・ご主人様は毎日欠かさず様子を見に来てくれました。

 晴れの日も、雨の日も、台風の日も、毎日毎日・・・だからご主人様の期待に応えるためにも精一杯咲き誇ります。私の寿命は他のお花さんに比べたら短いけれど、それでも枯れてしまうそのときまで精一杯、精一杯咲き誇ります。それがご主人様にできる私の唯一の恩返しです」




それぞれの植物の世話係


竹=バクシンオウ
チューリップ=エアグルーヴ
アサガオ=セイウンスカイ
カトレヤ=メジロマックイーン
向日葵=ゴールドシップ
人参=ハルウララ
ジャガイモ=オグリキャップ
トリカブト=アグネスタキオン
エノコログサ=マンハッタンカフェ
青い薔薇=ライスシャワー

です。うまく会話だけで再現できていたかどうか・・・

*花の寿命に関しては適当です。
各サイトで調べましたが、この植物は◯年という明確なものが出ていなかったため、こちらで都合のいいように勝手に解釈しています。ご了承ください


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アマゾン姐さんと古時計(ヒシアマゾン×ライスシャワー×マンハッタンカフェ)

 トレセン学園食堂内。そこには創設以来設置された大きな古時計が存在する。
 ウマ娘達の成長をヒシアマゾンと共に見届けてきたその古時計は・・・・そんなお話



 ぼむ ぼむ  ぼうむ ぼむ・・・・・・・・・・

 

 いっぱいの星だ くらい夜道に 少しずつ朝日がさしこむ

 

 

「さてと、今日も一日よろしく頼むよ相棒」

 その馬娘は今日も仕込みに入る。

 月明かり差し込むまだ夜が明けきらぬ厨房に、芸術的とも言える規則正しい包丁の音が、焼き魚の芳ばしい匂ひが、大根と油揚げの味噌汁の優しい薫りが立ち込める・・・

 

 

 ぼむ ぼうむ ぼむ ぼむ ぼうむ ぼむ・・・・・・

 

 赤い朝やけに あるひはしづかな雨の音に 

 一人また一人と、慌ただしく食堂を往来する生徒達の群れが、1日の始まりを告げるように、やってくる。

 

 

「こら!そこ、割り込みしない。朝食は逃げやしないよ・・・

あっ!!こら、お残しは厳禁」

 

 彼女にとっての第1の修羅場だ。押し寄せる生徒達の波・波・波。その波をどうにかさばき、漸く一息つける頃。古時計が7時を告げる。

 

 

 ぼむ ぼうむ ぼむ ぼむ ぼむ ぼうむ ぼむ・・・・・

 

 

「ようやく朝メシもさばき終わったね。さてと・・・後片付けをして、あたいもそろそろ登校準備を始めないとまずいね」

 

 

 厨房に広がるシャボンの匂ひ。手際よく片付けをしている厨房に遅れてやってきた2人の生徒の、少し悲しそうな声が聞こえる

 

 

「・・・朝ごはん、終わっちゃいましたね」

 

「カフェちゃん。ごめんなさい、ごめんなさい。ライスが寝坊しちゃったばっかりに」

 

「・・・いいえ、私も寝過ごしてしまったのでお互い様です。朝はコーヒーだけで我慢するとしましょう」

 

 

 洗い物をしていた彼女の目の色が代わり、片付けも途中で厨房を抜け出す。掛けていた真っ白なエプロンで手の水気を取りつつ、二人を呼び止め強引に笹の葉に包んだ、自身の朝食用おにぎりを渡している。少し小言もいっているようだが、その目は微笑んでいるようだった。

 

 

 ぼむ ぼむ ぼうむ ぼむ ぼむ ぼうむ・・・・・・・

 

 

 長針と短針が丁度一周する頃、食堂内に最大の修羅場が訪れる

 

 

「ヒシアマ姐さ~ん。ご飯がなくなりました~」

 

「・・・おつゆももう少しでなくなりそうです」

 

「あ・・・す、すみません。こぼしちゃいましたー」

 

 

 ご飯缶に詰められた大量の米が、味噌汁が、おかずが・・・

 魔法のように「あっ・・・」という間に消えていく。1日の最大の修羅場に、せわしなく厨房と食堂内を何度も行き来するアマゾン姐さん。空っぽになった料理入れを満足そうに片付け、午後の授業へと向かっていく。

 

 

 ぼむ ぼうむ ぼむ ぼむ ぼむ ぼうむ ぼむ・・・・・

 

 ぱらぱらと大粒の星が 暗い夜空をてらすころ ゆうげの匂ひがたちこめる

 

 

 食堂内にはあさげの時とは異なる、ゆっくりとした時間が支配する。

 ウマ娘達は無事1日を終え、就寝までの自由な時間を謳歌する。食堂で、談話室で、寝室で。

 

 

「さてと、明日はどんな料理で喜ばせようかね・・・」

 

 

 食堂を速めに切り上げ、明日の献立を考えるアマゾン姐さん。本人曰く、「この時間が1日で最もワクワクする至福の瞬間」らしい。

 

 

「おっと・・・そういえばあの娘のご飯がまだだったね」

 

 

 とうに生徒達が寝静まった時刻。彼女は食堂の大きな古時計の存在を思い出す。自室の引き出しから、古ぼけたネジをを取り出し。大きな大きな文字盤に、その鍵を差し込み、ゆっくりゆっくりと、回していく。

 

 

「今日も一日お疲れさん。また明日もよろしく頼むよ!!」

 

 

 全員にご飯を振る舞い、満足そうに自室へと引き上ていく彼女

 

 

 ぼむ ぼうむ ぼむ ぼむ ぼむ ぼうむ ぼうむ・・・・・

 

 

 そんな、彼女にお礼でも言うように大きな古時計が24時を告げる




 「青い夜道」という本で一番お気に入りのフレーズを入れてなんか作りたいな。という感じで作ってみました。


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開店!マルゼンスキーの注文の多い料理店 カレーが食べたいオグリキャップ(カフェ×ライス×マルゼンスキー)

 マルゼンスキー、ライスシャワー、マンハッタンカフェがトレセン学園でレストランを開くそんなお話(本家注文の多い料理店とは全くの別物です)


=============学園寮 食堂============

 

 顔が写る程にピカニピカニ磨かれた床、埃ひとつないテーブル、機械のような正確さでに均一に整えられ紙ナプキン。

 お客様全てをミカンのように優しく、そして暖かく迎え入れる準備をせっせとこなすカフェとライス。彼女達が着ている汚れ一つない真っ白な給仕服がとても眩しく見えるのは気のせいだろうか。

 

 

 普段この場所は、一国一城の主ヒシアマ姐さんがその腕を余すとこなくふるい、訪れるウマ娘達に「幸福」と「口福」を提供する人生の楽園。しかし、ヒシアマ姐さんだって、休日はお出掛けをしたい・・・

 

 けれども、寮に残るウマ娘達の食事も作ってやりたい。そんな姐さんの提案により、休日寮内に残るウマ娘達に食事を振る舞うヒシアマゾンの代役を当番制でまわすことが決定された。

 

 当番に指定されたウマ娘は、台所に貯蔵された食料を特に制約なく自由に使いお昼のメニューを作り、寮に残っているウマ娘達に振る舞わなければならない。そんな、給食当番のようなものに今週はマルゼンスキーが指名され、開店準備にいそしんでいた。

 

 

 

「カフェちゃん、ライスちゃん。すごいじゃない!バッチグー」

 

「ほ、本当ですか、よかったー」

 

「・・・疲れました」

 

 

 100人の重箱の隅をつつくような嫌らしい姑を放ったとしても何ら文句が挙がらず、すごすごと撤退するしかない程に完璧な掃除がなされた食堂内、そしてそれに何ら見劣りしない食器の数々、開店準備も終わり後はウマ娘を待つだけとなった。

 

 

「今日は何人来るでしょうか?ライスちょっとドキドキします」

 

「・・・できれば、あまり来てほしくないですね」

 

「そうねえ~。基本休日だからそんなに寮に残っているウマ娘は少ないと思うけれど、こればかりはねー」

 

 

 休日における食堂は当番に当てられたウマ娘によって、その料理内容にウマ娘達の特色が色濃く出てくる。一例を挙げれば、エルコンドルパサーの激辛専門店やゴールドシップの猫飯屋。はたまた、ハルウララの人参三昧などなど。

 そしてマルゼンスキーの場合は・・・

 

 

「い、いらっしゃいませー」

 

 

 本日第一号のお客ウマ娘が大きな腹の虫をならし、席につく。

 

 

「あらー。オグリちゃんいらっしゃい」

 

「早速だがメニューを見せてほしい。はらぺこなんだ・・・」

 

「・・・メニューはありません」

 

 

 

 予想外のカフェの返答にオグリキャップは少し困ったような表情をしている

 

 

「ふむ、早く過ぎてしまったか?まだ、開店準備中なら時間をおいて出直そう」

 

「そういうわけじゃないの。ここでは、食堂に1番に来てくれたウマ娘の食べたいものを聞いて、その料理をお昼に振る舞うことにしてるのよ」

 

「・・・オグリキャップさんが1番」

 

「なるほど、そういうことか・・・」

 

「な、なにか、食べたい料理は有りませんか?オグリキャップさん」

 

 

 大体の趣旨を理解したオグリが、しばらくの間思案する。暫しの沈黙のあと「それなら」と小さく呟きオグリキャップがとある料理を注文する

 

 

「カレーだな。美味しいカレーが食べたい」

 

「カレーね、いいじゃない腕によりをかけて作るわ。それで、なにカレーがいいかしら?」

 

「何でも大丈夫だ」

 

「あ、あの、オグリキャップさん。そ、その、野菜カレーがいいとか、ポークカレーがいいとかそういうのは・・・」

 

「・・・主食はお米?それともパン?そういえばナンもありますね」

 

「特にこれといったものはないな。美味しければ何でもいいぞ」

 

「なんでもか~。そうきちゃうかー・・・」

 

 

 オグリキャップの答えに少し困惑するマルゼンスキー。彼女は知っているのだ「何でもいい」この言葉ほど料理を作るものにとって、頭を悩ます問題はないということを。大抵この言葉を使う人は大きく2つに分類される。一つは、ある程度自分の中で食べたいものが決まっており、(その中の料理なら)「何でもいいよ」という人。そして、もう一つが本当に特に「これ」といった食べたいものがなく。「なんでもいいよ」という人である。

 

 そして、大抵前者の場合、予想を大きく下回る料理が出てくるとそのあとがとても面倒くさく、後者の場合、例え{カップラーメン}を出されても特にこれといった小言も言わず(稀有な場合はそれでも旨そうに)食べる。しかしながらその比率は圧倒的に前者が多いのが実状である。

 

 

(オグリちゃんは、絶対後者だと思うけれど折角ならおいしいカレーを食べさせたいわね~)

「オッケー♪それじゃあ今から調理にかかるから、ちょっと待っててねー」

 

 

 

========食堂内 厨房=========

 

「人参、玉ねぎ、ジャガイモ。それに、ナスとアスパラ野菜は申し分ないわねー」

 

「・・・魚介、豚肉、鶏肉、牛肉に・・・猪?よくわからないお肉も一杯です」

 

「か、カレーのルウもいっぱい。バー◯ンドにジャ◯、コク◯カレー・・・それに、わぁ~ボ◯カレー♪ライス知ってるんだあのカレーはどう作ってもおいしいの」

 

 

 貯蔵してある材料から、少しはカレーの種類を限定できるはず・・・そんなマルゼン姐さんの思惑は完全に外れてしまう。野菜、肉、カレールウ全てが申し分のないほど満遍なく揃えられ、作ろうと思えばそれこそ、各国のカレーを自由自在に作れてしまうほどの品揃えであった。

 

 

「これはチョベリバね~。選択肢が多すぎて何でも作れちゃうわ~」

 

「う、うーん・・・あっそうだ!マルゼン姐さま。ライス達オグリキャップさんに、サラダの種類と福神漬けの種類を聞いてみます」

 

「サラダと福神漬けか~。いいわね、それで少しは絞れそうかしら」

 

「・・・あとは、卵のゆで加減も聞いたほうがいいと思います」

 

「カフェちゃん、それもいいわね。ん~やっぱりカフェちゃんとライスちゃんをつれてきてよかった~♪よーし。ライスちゃん、カフェちゃん。おいしいカレー作り頑張るぞー?」

 

「お、お~」

 

「・・・おー」

 

 

  埃ひとつない厨房の通路を抜け再び食堂に戻ると、そこではオグリキャップの腹の虫が独演会を行っている。数分ごとに一定の感覚でなり続けている腹の虫、よほどおなかがすいているのだろうか?しかし、表面上はそんな様子を全く見せないポーカーフェイスの彼女に二人が追加の注文をとりにむかった。

 

 

「サラダか、特にこれといってはないが・・・リンゴ。リンゴが食べたいな」

 

「り、リンゴですね。わ、わかりました」

 

「・・・卵は、生、半熟、茹で卵。どれがいいですか」

 

「ゆで卵。これだけは譲れないぞ」

 

「・・・成る程。最後に福神付けとラッキョウならどちらが?」

 

「福神漬けだな・・・それも赤い色のよりも茶色い?といえばいいのだろうか。そちらの方が好きだ」

 

 

 オグリキャップからの注文を取り終え、彼女たちは軽く頭を下げ再び厨房に戻り、追加注文の内容をマルゼンスキーに伝える。

 

 

「なるへそー。それなら、付け合わせはデザートになっちゃうけどフルーツポンチにして・・・主役のカレーはあれでいきましょう♪」

 

 そういうと、早速{カレーライス}の調理に取りかかるマルゼン姐さん。早速調理様子を見てみよう

 

 

「ライスちゃーん。この豚肉をできるだけ大きく・・・そうね、一口大より少し大き目でお願いね」

 

「が、がんばります」

 

「カフェちゃんは、人参とジャガイモ、それに玉ねぎをお願いね。こっちも一口大に、ゴロゴロするくらい大き目にお願いね」

 

「・・・わかりました」

 

 

 カフェとライスの包丁が材料を切るリズミカルな音を奏でれば、奏者が代わりマルゼン姐さんのフライパンが、肉を野菜を炒める美味しそうな音と空腹を刺激する音と薫りのデュエットを奏で、食堂のオグリキャップの腹の虫がスタンディングオベーションで拍手喝采を送る。

 

 しあげに、お湯がにたった給食のおばちゃんが使うような厚手の鍋に、カレールウと炒めた材料を入れて暫く煮込めば出来上がり。出来合いのフルーツポンチはご愛敬。

 

 

 銀色のカレー皿に炊きたての白米をみっちりと詰め込み、出来上がりのカレーライスを溢れそうな程に盛る。最後に茶色の福神漬けと輪切りに薄く切ったゆで卵を添えれば完成。

 

 

「お、お待たせしましたー」

 

 

 出来上がったばかりのカレーにお水そしてデザート。それらを銀の丸お盆にのせオグリキャップのもとに走りよる小さく可憐なウェイトレス。溢さないように慎重に、しかし小走りで駆けていき、料理をセッティングしていく。

 

 

「美味しそうだ・・・もう食べて大丈夫だろうか?」

 

「ど、どうぞ。召し上がってください」

 

「・・・熱いから気を付けてたべてください・・・ね?」

 

 

 二人のウェイトレスの忠告もどこ吹く風で、スプーン一杯にご飯とルーを混ぜ合わせ、大きく口を開け一口

 

 

「ハフッハフッ・・・熱い。けれど具材がゴロゴロでおいしいな。それにルーがとてもしゃばしゃばしている。これは、スープカレーというものだろうか?」

 

「ちょっと違うわね。それはスープカレーじゃなくてライスカレーよ♪」

 

「ライスカレー?カレーライスとはまた違うのだろうか?」

 

 

 待ってましたとばかりに得意気な顔のマルゼンスキーがライスカレーの説明を始める

 

 

 ライスカレー。それは戦前の東京下町の家庭で作られた唯一の洋食料理。

 本来のライスカレーは、大きな鍋へ湯を沸かし、そこへ豚肉の細切れや人参、ジャガイモ、玉ねぎをぶちこみ、煮上がったところへ、カレー粉とメリケン粉を入れてかき回し、これをご飯の上へたっぷりかけるというカレーというには少しお粗末なもの。

 

 

 それをマルゼンスキー流に改良を加えたものが今回の特性ライスカレーである。市販のカレー粉を使っている分、しゃばしゃば具合は少し物足りない気もするが、味は断然こちらに軍配があがるであろう。

 

 

「おかわり。頂いてもいいだろうか?」

 

 

 既に、一杯目を食べ終え二杯目のカレーを要求するオグリ。さらに、昔懐かしいライスカレーの匂いに釣られてか、続々と寮内に残っていたウマ娘達が食堂へと列を作る。

 

 

「今日はカレーか♪やっぱり今日は外出しないで残ってて正解だったろ、マックイーン?」

 

「わざわざラボを抜け出して来たのだし、早く食べさせてくれると嬉しいねカフェ。・・・順番は守れ?はいはいわかったよ」

 

「うわぁ~♪人参さんも玉ねぎさんもゴロゴロしてて美味しそう。ウララも早く食べたいなー」

 

「目標捕捉・・・ミッション楽しいお食事会開始します」

 

「いっくぞー。ターボ全開!!」

 

 

 

 続々と列を作るウマ娘たちにてんてこ舞いになりながらも、彼女達の1日料理店は大盛況のうちに幕を閉じた。




 本家注文の多い料理店とは真逆の作品を作ってみました。

 ライスカレー。機会があればカレー粉とメリケン粉で作った昔ながらの物を是非とも作ってみたいですね


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実験小説 あなたとカフェ{マンハッタンカフェ}

 2人称小説なるものを発見したので、実験的に書いてみたい。
 そんなお話


 あなたはトレセン学園に住む馬娘。正確に言えば、あなたは八才。今はもう夜更け、というのは、既に校内マイクで消灯がかかっており、あなたの同室のウマ娘も既に気持ち良さそうに寝息をたてている。

 

 

 あなたの普段の睡眠時刻は2200時または2230時だから。特段同室の彼女と他愛ないお喋りでもするか、ただボーッと彼女と共に窓から月を眺めている時以外は、この時刻になると、あなたはさっさとベッドへ潜り込み、いい気持ちで寝てしまう。

 

 

 あたたかい夏の夜。あなたは、23時を過ぎても24時を過ぎても眠れない。けして睡眠に適さない温度という訳でないことは気持ち良さそうに眠っている彼女を見れば一目瞭然だし、彼女の誘いをいつも通り断り夜のコーヒーをのんだ訳でもない。

 

 

 これといった心当たりがないが、あなたはなぜか眠れない。

 あなたの今の心情を表すのなら、大学受験を明日に備えた受験生はたまた卒論発表会を明日に備えた大学生といったところだろう。

 

 

 あなたは無理に眠ろうとして、さっとベットへ潜り込み固く眼をつぶる。眼を閉じて、眠ろう眠ろうと思うほど、冷蔵庫の「ブーン」というおとが、掛け時計の秒針の音が、そして極めつけはあなた自身の心臓の音さえも全てが雑音となってあなたの眠りを妨げる。

 

 

 あなたは堪らずベットから這い出し、ぼんやりと外の景色を眺めている。

 

 

「・・・まだ起きているとは珍しいです。眠れないのですか?」

 

 

 いつの間に起きてきたのだろう。

 気配なくあなたの側に音もなくそっと、近付き月を眺めている。

 

 

「・・・なるほど。訳もなく眠れないですか」

 

 

 あなたの悩みを聞き彼女は、そっと台所に向かっていく。コンロの火を点火する音、ヤカンでお湯を沸かす音、そしてコーヒー豆を挽く「がりがり」という耳ざわりのよい様々な音色。それらの音色が止んだとき。コーヒーカップを2つ持った彼女があなたの側に再び座り、そして片方をあなたの手に押し付ける。

 

 

「・・・夜ですので、カフェインは控え目にしてみました。そんなに渋味はないと思いますので宜しければ」

 

 

 あなたは手渡されたコーヒーを受け取り、口に運ぶ。そして、一気に飲み干してしまう

 その様子を彼女はちらと横目で確認する

 

 

「・・・お代わりはいかがでしょうか?まだまだたくさん作ってありますので」

 

 

 「お願いするよ」あなたがそう言うと彼女は少し嬉しそうに足早にお代わりを入れて戻ってくる。

 

 

「・・・どうぞ。」

 

 

 あなたは、お礼をいい2杯目のコーヒーに口をつける。どれだけの時間が流れただろうか、彼女と共にボーッと月をながめていると、ふいに彼女はあなたにかたりかける 

 

 

「・・・眠れないのなら無理に眠る必要はないとおもいます。明日はお休みですので、私もあなたが眠れるまで、夜更かしに付き合ってあげます」

 

 

 あなたとカフェ。二人でただボーッと月を眺めている。ただそれだけなのに何故か心に安らぎが訪れる。(こんな夜なら眠れないのもたまにはありかもしれない)あなたは、ふとそんなことを思い浮かべ彼女との夜更かしを楽しんでいる

 

 

 

 

 




 一人称でもなく三人称でもなく二人称。
 短編小説向きで、読者があたかもその世界に、キャラに間近に触れあえる手法らしいですがどうでしょうか?


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ライスシャワーは悪戯したい(ライスシャワー×マンハッタンカフェ)

 ある日、ライスシャワーはアグネスタキオンからあるお願いを受けることに。
 それは、闘争心の足りないマンハッタンカフェに悪戯をして、怒らせて闘争心をつけさせてほしいと言うものだった。

 カフェを怒らせるため精一杯の悪戯をするも・・・


(がんばれーライス・・・がんばれー)

 

 自分自身を奮い立たせ、ライスはとあるウマ娘を待ち伏せしている。

 廊下の死角に身を潜め、彼女が通過するのを確認し後ろからそっと近づき、そして・・・

 

 

「ひゃ、わ、わ~」

 

「・・・ライスさん。おはようございます」

 

「あ、え、えーと・・・お、おはよう。カフェちゃん、あの今のビックリした・・・かな?」

 

「いえ・・・とても可愛らしいと思いました。朝から少し元気を頂いた気がします」

 

 

 ライスシャワーの服案一つ目は失敗に終わった。カフェのとなりにいた今回の主犯アグネスタキオンはオーバーアクションぎみに天を仰いでいる。ライスをカフェから引き離したタキオンは次なる作戦会議を開いているようだ。

 

 

「ライスくん、あれじゃあ全然ダメだよ。もっと何かないのかい?

こう、カフェを怒らせるような取って置きのイタズラはさ・・・」

 

「え~と、え~と・・・ライス必死になって考えたけどあれぐらいしか。タキオンさん何かありませんか」

 

「そうだね・・・僕だったら」

 

========アグネスタキオン・妄想イタズラ集========

 

 トレセン学園グラウンド、ウマ娘達が始業五分前のベルに急かされ足早に校舎に駆けていく。マンハッタンカフェも足早にグラウンドを駆け校舎にいそいでいた。

 そんなとき、彼女の目の前を何かが落下してくる。ガシャン!!という派手な音ともに、何故か机が落ちて来た。そして、よく観察するとそれはカフェ本人の勉強机であった。

 

 事態が把握できないカフェに追い討ちをかけるように、彼女の教室がある2階の窓から顔出すウマ娘達。そして・・・

 

「おめえの席ねえから!!」

 

====================================

 

「っていうのはどうだい?」

 

「ひゃい・・ライスには無理だよ~。それにもう意地悪じゃなくてイジメの行きに入ってると思うんだ」

 

「安心しなよ冗談さ。只のドラマのネタだよ・・・まぁ次はもう少しカフェを怒らせるようなイタズラを頼むよ。」

 

 

トレセン学園食堂

 

 いつものように、カフェ・タキオン・ライスの3人組が一つの席で昼食をとっている。ライスシャワーは次の計画を実行に移すタイミングをはかっているのだろう。せわしなくカフェの動向を落ちつきなくチラチラと伺っている。

 

「え、えーい」

 

「・・・ライスさん?」

 

 彼女の第2のイタズラが実行された。おもむろにカフェのオカズ皿に箸を伸ばし、副菜に添えられたレタスを1枚拝借する。そして、それを何故かやりとげたような顔で頂いている。

 

「か、カフェちゃん。お、怒った?」

 

「・・・いいえ。宜しければこちらの唐揚げも一ついかがでしょうか?」

 

「ふぇっ・・・いいの、本当に?やったー♪」

 

 

 カフェからお裾分けしてもらった、唐揚げを満足そうに食べるライス。そしてその姿を微笑ましく眺めているカフェ。そんな二人を横目にため息混じりにタキオンがそっと呟く

 

 

「わかってはいたけど、やっぱりライス君には無理があったね。今度はゴルシ君にでもお願いしてみようかな」 




 今回のライスは、ぼのぼのに出てくるシマリス君をイメージして創ってみました


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臆病なライスシャワー「ウマ娘で触れるアランの幸福論シリーズ2」(ライス×カフェ×タキオン)

 アラン幸福論に書かれていた臆病者と賢い人の物事(主に噂話等)の捉え方の違いを書いてみました

*前回同様多いに自身の独断と偏見が混じっております


 しろい沢山の皿に、季節の果物が灯火のように盛り上がっている。

 果物のみずしいみずしい薫りとアマゾン姐さんがこしらえた料理から薫る愛情沢山の優しく懐かしい匂ひ。色々な薫りが喫食者を幸せの空間へと導くトレセン学園寮内食堂。

 

 タキオン・カフェ・ライスの3人組はその一角で仲良く夕食をとっていた。

 いつも通り、談笑しながらマイペースに食事をしている3人組。そんな彼女達にふと一般ウマ娘のこんな会話が耳についた。

 

 

「明日の外出先のお昼、気になったカレー屋さんが有るんだけど、どう?」

 

「もしかして、◯◯?あそこのカレーライスは全然ダメよ。何もかも最悪だもの」

 

 

 なんの変哲もない友達同士の会話。そんな会話にライスシャワーが異様な反応を示している、そして取り乱したようすで・・・

 

「カ、カフェちゃん!今あの娘達ライスの噂してたのかな、全然駄目だって・・・最悪だって!!」

 

「・・・落ち着いてください。ライスさん。あの方達はライスさんではなくカレーライスのことを話していました。」

 

「そ、そっか。ライスのことじゃ無かったんだね・・・よ、よかった」

 

 

 また別の席では、陽気な一般ウマ娘が今日のお昼の感想を話している

 

 

「今日のお昼あたりだったね♪」

 

「チキンライスでしょ。今日のできは最高だったね。幸せな気分になれたもの、また作ってくれないかなー。ヒシアマ姐さん」

 

 

 それを耳にしたライスが今度は少し恥ずかしげに

 

「カフェちゃん。聞いた、聞いた?ライス最高だったって・・・幸せな気分になれたって」

 

「・・・はい。はっきりと私も聞きました。良かったですねライスさん。」

 

 

 そんな微笑ましいやり取りを繰り広げている、彼女達を横目にタキオンが大きくため息をつきいている。

 

 

「ライス君。何でもかんでも人の噂に一喜一憂する。それは臆病な者が行う愚かしい行為だからやめた方がいい」

 

「タキオンさん。わ、わかってはいるんですけど・・・」

 

「いいかい、賢い人はじょうずな植木屋のように、無駄な話に鋏を入れるんだ。そして、自分の求めている必要としている情報だけを的確に取り込むものだよ」

 

 

 そんな、少し説教臭い助言を彼女がしている矢先、タイミングを計ったかのように、一般ウマ娘達のこんな噂話が聞こえてきた

 

 

「聞いた、今日もタキオンさんがやらかしたんだって。」

 

「聞いた聞いた、また怪しい薬をトレーナーさんに飲ませて、発光させたって話よ。怖いわね」

 

 

 その話を聞いたタキオンがカフェ、ライスに満面の笑みを浮かべる。そして・・

 

 

「丁度いい。今から賢いタキオンさんが、あの子達に模範的な対応を見せにいこう。よく参考にするんだよライス君。」

 

「あ、は、はい・・・」

 

「・・・嫌な予感しか、しません」

 

 

 タキオンはそう言い残すと、颯爽といましがた噂をしていた一般ウマ娘達の席に歩み寄る。そして・・・

 

 

「となり失礼するよ。君達・・・今、僕の噂していたでしょ」

 

「タ、タキオンさん。聞こえてましたか・・・あ、あのごめんなさい。その、えっと、他意はなかったんです。」

 

「その子の言う通り、本当に私達タキオンさんをどうこう言うつもりはなくて、その・・・」

 

 

 噂話をしていた、張本人のサプライズ出演に一般ウマ娘達は非常に申し訳なさそうに、そして、肩を小さくしながら謝ることしかできなかった。

 しかし、そんな様子の彼女達をタキオンはいかにも不思議なようすで眺めている。

 

 

「うん?なんのことだい?」

 

「あ、あの、さっきの私達の噂話を耳にしてここにきたんですよね・・?」

 

「ああ、そうさ」

 

「だから、その、怒っているのかな・・・と」

 

「怒る?まさか、感動しているのさ♪」

 

「へ?感動ですか?・・・え?」

 

「当たり前だろう、君達は僕の実験の素晴らしさを今しがた述べて、あまつさへ僕の実験に付き合ってくれるという言うではないか!」

 

「・・・え、えっと。あの~?」

 

 

 離れた席から、タキオンと彼女達のやり取りをそっと見ていたライスがカフェに何やら訪ねている。

 

 

「カフェちゃん。あれが、鋏を入れて剪定する?っていうことなのかな?」

 

「・・・いえ。剪定というより、事実を根本から切り裂いて、新しい枝葉を勝手に継ぎ足していますので、参考にはなりません」

 

「そ、そうだよね・・・でも、あの心の強さはライスも見習いたいな」

 

「・・・うーん。確かに強いですが、見習うのは・・・オススメしかねます」

 

 

 そんな噂を囁かれていることなど、露も知らないタキオンは新しいモルモット獲得に向け現在進行形で奮闘していた。本日もトレセン学園の長い長い一日が過ぎようとしている。

 

 

=====オマケ 本日のお話で用いた原文======

 

 

 臆病な人間は、他人との交際で、あらゆることを耳にし、あらゆることを取り集め、あらゆることを解釈したがる。彼にとっては、会話は、誰もが自分の身の上話をする場合と同様、愚かしく、とりとめないものである。

 

 しかし、賢い人は、じょうずな植木屋と同じように、無駄な徴候や話に鋏を入れる。自然界においては尚更のことだ。あらゆるものが私達に触れ、私達を引き留めるからだ。

=====================================

 




 実際にはこの原文の前後にもっと重要なお話が述べられていますが、私の頭ではこの限定的な部分しか理解不能でした。気になる方は「アラン」幸福論「予言的な魂」でご検索ください


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ゴルシちゃんと行くクラムボン探し(ゴールドシップ×ライスシャワー×マンハッタンカフェ)

 架空上の生物クラムボンを3人のウマ娘が探しに行く物語
 


「行こうぜ!!カフェ、ライス」

 

 ここは、トレセン学園噴水前広場。いつも通りの休日外出へ繰り出すカフェとライスを待ち構えていたゴールドシップ。半袖短パンに麦わら帽子というどうみても近所の虫取少年にしか見えない出で立ちであり。ご丁寧に右手には虫取網までにぎらていた。 

 

 

「あの、ゴールドシップさん。い、行くって何処へでしょうか・・・?」

 

「決まってんだろ!クラムボン探しだよ」

 

「・・・もしかして、童話に出てくるあのクラムボンのことですか?」

 

 

 訝しげな表情を作りカフェが静かに尋ている。無理もないだろう、クラムボンは童話上の幻の生物。捕まえるどころか、発見することも不可能ないわばツチノコのような存在なのだ。

 

 

「ゴールドシップさん、その、クラムボンは童話上の生き物だから捕まえるのは・・・ライス、難しいと思うんだ」

 

「・・・クラムボンは童話だと海に生息するはずですが、何故虫取網を持っているのですか?」

 

「うむ、よくぞ聞いてくれた。ライス、クラムボンって5回言ってみ?」

 

 

 言われるがまま、律儀に指折り5回早口言葉のように{クラムボン}を連呼するライス。そして、それが言い終わると満足そうな顔でゴールドシップが持論を展開する。

 

 

「なっ?だんだんクワガタに聴こえてくるだろ?」

 

「いえ・・・全然聞こえません・・・」

 

「ライスも聞こえないと思う」

 

「・・・それに、確かクラムボンは蟹さんが水中から眺めた生き物だったはずです。何故クワガタなのでしょうか?」

 

「それは、あれだ。きっと水中から見たクワガタの様子だったんだよ。」

 

「で、でもクワガタさんは、カプカプなんて鳴かないよ」

 

「それはだな、クワガタってあのデカイ口についてるハサミを擦り合わせるだろ?そん時の音のことだぜきっと」

 

「・・・それは、かなり強引な解釈だと思うのですが」

 

 カフェとライスが童話に出てくるクラムボンの描写を必死に思いだし、その描写一つ一つをクワガタに当てはめてみる。しかし、腑に落ちない点が多すぎた。そんなカフェとライスに構わずゴールドシップは持論を展開し続ける。

 

 

「それに、ほら確かクラムボンが殺されたってあるだろ。あれってクワガタ同士で縄張り争いしてたんだって!!」

 

「そうなのかな?カフェちゃん」

 

「・・・わかりません。ですがこう自信をもって力説されると、もしかしたらそうかもしれないと思ってしまえるところが不思議です」

 

「だから、絶対そうなんだって!!最後らへんにあっただろ、蟹達がクラムボンが殺された理由がわからない。ってシーン、あれは空中戦繰り広げながらああまでして戦う理由がわからないってことだよ」

 

「う~ん・・・ライスよくわからないや」

 

 

 自身の持論に満足したのだろう。これでこの話は終わり!とでも言うように大きく手のひらを一回叩くと、カフェとライス2人の手を強引に引っ張りトレセン学園の裏庭、アプリではお馴染みの継承広場にある大きな御神木まで連れていく。

 

 

「ヨッシャ!!いっくぞー。デリャ♪」

 

 

 いかにも楽しそうな気合いのもと御神木に特大の一蹴りを放つゴルシ。その一激により、御神木の枝葉が大きく揺られ・・・

 

 

「大漁じゃー♪」

 

「ひゃい、虫さんが一杯降ってくるよ~」

 

「・・・私達は退避していましょう」

 

 

 雨のように降ってくるカブトやクワガタ。そして、それ以外のあまりお呼びではない昆虫の数々。虫嫌いがその場に居合わせれば卒倒してしまいそうな光景の中ゴールドシップのクラムボン採集は日が暮れるまで続いた。

 

 

=======オマケ=======

ゴルシ・マックイーンのお部屋

 

「あれ?っかしーな・・・一匹足りねえぞ」

 

「どうかしましたの、ゴルシさん?」

 

「それがよ。今日捕まえたクラムボン2号が脱走しちまったんだよ~」

 

「クラムボン?ってあのクラムボンことですの」

 

「そうなんだよ。どこ消えたかなークラムボン2号・・・ん、おっそんなところに!!クラムボン2号はマックイーンになついたみたいだな♪」

 

「え、あの、それって・・・。きゃーどうして私の衣装に虫がついてますの!ゴルシさん早くとってくださいまし」

 

「いや、虫じゃなくてクラムボン2号だから」

 

「そんなの、どうでもいいですから早く何とかしてくださいませんこと!!」




 クラムボンがどんな生物か。それは童話を作った作者にしかわからない。


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メジロ家のゲートイン

 天皇賞(春)

 出走直前のファンファーレが華々しく響くなか、その事件は幕を開けた

 

「さぁっ。今日も気合い、入れて・・・行きますわ!!」

 

 自身のゲートで気持ちを落ち着けていたライスシャワーの前にそのウマ娘が乱入してきた

 

「ふぇ~・・・」

 

 気合い十分で自身のゲートに、転がり込むように入ってきたウマ娘を見て、ライスシャワーは眼を見開いた。

 

 

 「あ、あの~」それから、言いずらそうに言葉をつなげた。「マックイーンさんのゲートは多分・・・隣だよ?また、ゲートを間違えてると思うな」

 

 

 「ひゃああ~!!」マックイーンは狼狽した様子で部屋を見まわし、ライスシャワーの顔を見て、背をそらせた。「やってしまいましたわ。ま、また、まちがえてしまいました」

 

 

 何故かお互いにぺこぺこ頭を下げてあやまりながら、急ぎ足でライスのゲートをあとにした。

 

 

「あの、マックイーンお姉さま。一人で大丈夫?ライスもついて行ったほうがいい・・・かな?」

 

「だ、大丈夫。心配ありません・・・ありませんわ!!」

 

 

 彼女はバタバタと走って行き、そして、自分のゲートの前を通りすぎた。

 

 次に、マンハッタン・カフェのゲートに彼女は現れた

 

 「・・・?いらっしゃい。」

 

 突如乱入してきたウマ娘を見て、カフェは不思議そうな顔した。

 

 「カフェに何か用事でしょうか?マックイーンさん」

 

 「あっ・・・また、通り越してしまいましたわ!!」

 

 「・・・また、間違てしまいましたか。」

 

 「本当に、本っとうに申し訳ありません」

 

 彼女は恐縮し、ぺこぺこ頭をさげた。

 こ、今度こそ。今度こそ絶対通り過ぎないように、間違わないようにしませんと。出走開始までもう時間がありませんのに。

 彼女はそう決心し、自身のゲートへと引き返した。

 

 

 だが、次に入場したのはゴールドシップのゲートだった。ゴールドシップはいつも通りゲート入場に手間取り、係員複数名による強制入場イベント発生直後でひどくイライラしていた。

 

 「まだ、開かねえのかよ~。もういっそ蹴破っちまうか!!」

 

 背後から入ってきたウマ娘に気付いたゴールドシップは、彼女の顔を見て眉をひそめた。

 

 「お前のゲートは隣だろ?」

 

 「あら?まぁ・・・また間違えてしまったようですわ」

 

 彼女は酷く驚いた様子で、そう呟き、少し慌てながら自身のゲートへ引き返していく。いったい今日はどうしたというのだろうか?

 度重なる失敗の原因を考えこみ、上の空で駆けていく。そのため、また自身のゲート前を通りすぎてしまった。

 

 そして彼女は、アグネス・デジタルのゲートに入っていった。

 

 「ひょおぉ~。ようこそ!メジロ家のお姉様がデジタルちゃんのゲートに・・・感激です」

 

 出走開始直前のサプライズ訪問と勘違いしているデジタルはお姉様との解析に尊死しておられた。

 

 「どうぞ、こんな堅苦しい場所ですが心ゆくまでごゆっくり。今、粗茶を用いたしますね~」

 

 彼女はまた間違えてしまった?というような表情で、かぶりをふった。

 

 

「あらあら。まぁまぁ・・・あの一応確認したいのですが、ここはデジタルさんの出走ゲートですわよね?」

 デジタルの怪訝そうな返答を確認し、困ったようにはにかみ微笑む。

 

「どうしましょう。また、間違えてしまったようですわ。申し訳ございません」

 

 彼女はぺこぺこと何度も頭を下げながら、引き返していった。

 

 そして、やっとのことで自分のスターティングゲートに入場をはたすことができた。

 

 

「ずいぶん遅いゲートインだな。何かあったのか?」

 

「エアグルーヴさん。そ、その入るゲートを間違えてしまいまして・・・」

 

「何?貴様もなのか。まったく今日は立て続けにメジロ家に珍事が起こる日だな。」

 

「立て続け?私”も”」

 

 マックイーンの疑問に答えるように、エアグルーヴがとあるゲートを指示す。

 マックイーンとほぼ同時に、申し訳なさそうにゲートインを果たしたメジロアルダンのゲートを

 

 

 ・・・この話、どこかおかしいところがあるとお思いで?どこもおかしいところはありませんのよ。ゲート間違いをしていたウマ娘は2人いたのですもの。

 

 ずっと私だけが出走ゲートを間違えていたと思っていたでしょう?

 

「バカメと言ってさしあげますわ!」




 原作は短編集「くたばれPTA」の中の「酔いどれの帰宅」を参考にしています


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