サイの河原の仏様の正体 (19339)
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サイの河原の仏様の正体

1000字程度のもんなんで軽くサクッと読んでい見てくさい。


ゆっくりと進む船。夜とも昼とも取れぬ独特な暗雲が空に立ち込めるどこまで続くのかわからない長い長い川。

 

○○は無難に生きてきた男だ。この○○と言う若い青年は素行は悪くなく無難と言う言葉がふさわしい。ガンで亡くなるまでは本当にあたり下がりのない男だ。

見た目も薬の副作用で髪が丸まっていなければ細身のパッとしないモブだ。

 

 

対岸の端に小さな影が見えた。小さな子どもたちが必死に石を積んでいる姿、賽の河原だ。

先の震災や戦争で多くの子どもが親と死に別れた。

それぞれ理由は違えど全てが理不尽に別れさせられたはずだが私には何もできない。この先何十年も生きる予定だった。生きたかったはずの子が死してなお理不尽な目にあっている可哀そうだと思うが私にはどうしようもできないと自分に言い聞かせ念仏を唱えた。

小さい頃、祖父母に散々聞かされていた。賽の川原の話だが、実際に見るのとはここまで違うのか。

生きてる間は人の顔を伺い無難に生きてきた俺は何かを残せたのだろうか?

 

○○がそんなことを考えながら黄昏、賽の河原を眺めている途中目の色を変えて飛び込んだことに船頭もいささか驚いた。過去にこんな行動に出たやつを見たことがないからだ。

 

○○は生前ずっと後悔していたことを思い出した。小学校時代に友人が死んだ。○○はとても彼女のことが好きだった。子供の時とは不思議なもので好きな子をいじめてしまうものだ。

自分を見てほしいから行うのかよくわからないが、その日は彼女を置いて彼女を学校に忘れ物があるからと言って置いていくという悪戯だった。1時間ほどして空き地にネタばらしに行ったが彼女の姿はなく。怒って彼女は帰ってしまったのかと思った。

 

 

次の日の朝その子が登校していないことに気づいた。

最初は風邪でも引いたのかと思った。だが、一日一日経つにつれて不安の暗雲は私の中で大きく黒く広がっていた。十日後に彼女が死んだことを聞かされた。

 

変質者に性的暴行を何度もされ首を絞められ窒息死したとのこと。

 

私の中の不安の暗雲は爆発し罪悪の気持ちとして心の中で溢れかえった。その罪から逃げるように中学校から別の学校に通い、土地を離れ誰も知らない土地に来ていた。

 

偶然かはたまた仏の思し召しか分からないが川原に彼女の姿があったこと理由はそれだけだった。

他人のことは放っておけたが、これは他人事ではないと飛び込んだ。閻魔様に欲にまみれたどうと罵られるかもしれないが、私は、俺は自分の罪を償うには今しかないと思った。彼女を連れてせめて仏さまのところまで連れて行ってやる。その際にいかなる処罰も受けよう。無間地獄に落とされようが知ったことじゃない。このままいけばどっちにしろ地獄行きは決定している。だったら死んでからの最後のあがきってのをやるしかない。

 

ガンの苦しいから解放されたこの体は不思議と羽のように軽く感じ力の限り泳いだ。

 

そして、○○はたどり着いた。鬼たちが子供たちの詰んだ石を次々と崩す賽の河原へと。

 

助けに来たぞ!

 

○○はそう叫んだつもりだ。実際にはどんな言葉になっていたか分からないが、近くにいた子供達も鬼たちが一斉に振り向いた。

鬼たちを改めて見ると燃えるような瞳、肉食獣の様に鋭い牙、○○を遥かに上回る巨体を有した。

死んで初めてみる鬼に恐怖した。足はすくむ、奥歯が震える。だが、後戻りはできない来てしまった。

こうなると人間は決心が固いものだ。一瞬彼女と眼が合った・・・気がした。

 

そして○○は鬼たちに向かって一人突撃した。

 

 

 

とある少女は一言つぶやいた「仏様・・・?」




読んでいただきありがとうございます。


妄想乙とされるかもしれませんが、スペックが高い人が行動を起こすとか、神様に偶然選ばれて~~とかよりはただの人が勇気を出して一歩踏み出すことが何かを変えるきっかけになるんだと思って書きました。

もろに火星ゴキブリと戦う話の受け売りですがねwww


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