東方お絵描き転生 (yuuyyuyuyuyuyu)
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本編
第一話


なんかすげー無性に書きたくなったんだなこれが
続くかは正直わからない、というか完結までの構図が浮かんでこない
百合百合したいだけなんだな
そんな駄文でもよければどうぞ


フーハハハハッハ!

やったぞ!俺は!幻想郷に!!転生してやったぜ!!

・・・

 

少し落ち着こうか。

まず、俺は幼女になった、そう幼女になってしまったのだ。

まあ第二の人生だし?改めて男になるより女のほうが楽しそうだし?

それに幻想郷って女子ばっかのイメージだしキャッキャウフフしやすそうだし、いいけどさ。

・・・ぶっちゃけ不満である、せめて10台後半~20代前半くらいの体にしてほしかった。

身長に関しての不満だおそらく140ちょっとくらいだと思う、たぶん。

いやもしかすると・・・やめておこう虚しくなるだけだ。

そんでもってこの体になってから気付いたことがある。精神面への影響だ、なんというか若くなったというか。

元気が有り余っているというか、そんな感じだ。

肉体と精神には多大な関係性があるんだっけか、もしかするとそのうち心も女子になるかもしれんな。

別にいいけど。そんなことより聞いてくれ!俺にはなんと能力がある!知りたいか?知りたいよな

ならば教えてやろう!!俺の能力は

 

不意に玄関の扉が叩かれる。いいところだったんだが・・・まあいいやそれについては今度で。

俺はのろのろと玄関扉の鍵を開ける。バタンという激しい音と共にそれが私に飛びついてくる。

「ぐぇ」

勢いよく飛び込んできた身体を避けることが出来なかった俺は、腹でその頭を受け止めることになった。

「わわっ、大丈夫?」

扉の向こうから心配そうな声が聞こえてくる。

「だ、だいじょうぶ」

俺は飛び込んできたそれを身体から離し起き上がって二人を見る。

先ほど腹に頭突きをかましたのが氷の妖精チルノで、心配そうに声を掛けてくれたのが大妖精、 通称大ちゃんだ。

こちらに来てから初めての友達がこの二人、妖精でもない俺を妖精たちの遊びの輪に入れてくれたのだ。二人にはとても感謝してる。

「なあなあアンちゃん今日は何して遊ぶ?」

チルノが目を輝かせながら聞いてくる。

アンちゃんというのは俺の愛称だ、ちなみに名前は山吹アトゥン、これはここに転生した時に俺が持っていた持ち物に名前が書いてあったのだ。考えるのも面倒だしそう名乗ることにした。

「ふっふっふ、チルノ、今日は弾幕ごっこで勝負だ!!」

最近波及してきた弾幕ごっこ、原作をほんの少し齧った俺の記憶だが、今は時系列で言うと紅魔郷の少し前。実に楽しみだ、だから俺はこうして弾幕ごっこを練習している。

いずれ主人公達と戦うことを夢見て。

「えぇ、危ないよアンちゃんこの前だってチルノちゃんに負けて怪我したばっかりなのに」

そういって大ちゃんが不安そうな顔を向けてくる。そう、俺はとてつもなく弱い、どのくらい弱いかと言われれば大ちゃんにも負けるくらいには弱い。びっくりするほど弱い、泣きそう。

だが、

「大丈夫だって、今日は絶対勝てる秘策を考えてきたんだ!」

俺は得意顔を浮かべってそういった、どれだけ負けても弾幕ごっこは楽しくて、やめられないのだ。だから負けた時はすげー悔しいし、次勝つためにどうするか真剣に考えている。

「ふっふっふ、いいぞ!さいきょーのあたいの力みせてやる!!」

自信満々にチルノは言う。そんな顔が出来るのも今日までだぜ!!

「よっしゃじゃあ、チルノが俺に勝ったら一日何でも言うこと聞いてやるぜ!」

俺がそう言った瞬間、場が凍り付いたような気がしたが、まあ気のせいだろう。

外に出て俺はチルノと向き合った、審判は大ちゃんだ、少し不満気な顔をしているがどうしたのだろう。

俺はいつも通り右手にキャンパスノート左手にはクレヨンを持って戦闘態勢に入る。ちなみにこのキャンパスノートとクレヨンが先ほど言った名前の書いてある持ち物だ。

何故かは知らない、しかしこの二つは俺の能力に起因するものなので、大切なものだ。

「よーいスタート!!」

大ちゃんの声が聞こえる、

よっしゃーやってやるぜ!

瞬間俺の意識は手放された。

 



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第二話

まさかまさかの閲覧数100超えにびっくり
こんな拙い文章を読んでくださった方々には感謝感激あめあられです
続きは頑張って書きます
感想も来てて腰が抜けるかと思ったよとっても嬉しいですね励みになります!
ご期待に沿えるかはわかりませんが粉骨砕身の思いで頑張りますので
これからも見てね!


し、死んだかと思った、冗談抜きで。凍え死ぬかと思ったぞチルノよ。

勝負は一瞬だった今まで見たことない勢いで俺は氷漬けにされていた、慌てて止めに入った大ちゃんがいなかったら確実に一回お休み状態だっただろう。ハハハ 怖かった。

え?チルノはそんなに強くないだろって?俺が弱いだけさハハハ 泣きそう。

そしてそんな俺は今大ちゃんに介抱されながら寒さに震えている。ちなみに大ちゃんは寒そうにしていた俺のことを後ろから抱きしめて温めようとしてくれている、健気だなあ!

「アンちゃん、ゴメンやりすぎちゃった」

チルノは俺がこんなになっていることを気にしているのか泣きそうな様子だ。可愛いなあ!許す!というか最初から怒ってないけどさ。

「だだだだいじょぶ、チルノは悪くないぞ、だから泣かないでこっちおいで」

最初の方かじかんで声震えてたけど、気持ちはちゃんと伝わったのかぎこちない動きでチルノがこっちに近づいてくる。俺はそんなチルノをぎゅっと抱きしめて、いいこいいこしてやる。

背丈は俺のほうが頭半個・・・いや一個一個分大きいのだ、つまり俺はお姉さんなのだ!なればこのマリアナ海溝より深い母性でもって包み込んでやるのが姉の務めというもの。

チルノは顔を上げて俺を見ると嬉しそうに目を細めた、天使か!やべえよこの子可愛すぎだろ。

よしよし、チルノの体は冷たいが今の自分の状態に比べれば十分に温かいというものだ。後なんかさっきから大ちゃんの手の締まりが強くなっていくような、

ってそれもそうか俺めっちゃ今からだ冷たいもんな、それなのにずっと温めるために大ちゃんは・・・やばい泣きそう嬉し泣きだよ!悪いか。

だからか段々と意識が微睡んでくる、コクリと船を漕ぎながら意識が薄れていって・・・って別に死ぬわけじゃないぞ。俺はそのまま温かい微睡みに身を委ねたのだ。

 

 

「んぅー、ふぁあぁ」

なんか・・・重いな、腹も冷えてるみたいだし、あ、でも背中はあったかいかな。何だろ。

何と眼下にはチルノが眠っているではないか!びっくり。これはもしかすると・・・

後ろでむくりと何かが動く音がした。

「むぅ。・・んぅ、ぁれ~アンちゃん?おはよう」

「おはよう、大ちゃん」

やっぱり背中には大ちゃんがいたのか、寝ぼけ眼でこちらを見てくる。チルノも起こすか。

「チルノ、起きろ~」

優しく揺らしながら起こそうと試みる。が起きずもしかすると寝起きは悪いのかもしれない、と思ったら急にガバッと布団の上に立ち上がった。まあいつものことか、ちょっと心臓に悪いよね。

大ちゃんもびっくりした顔しちゃってまあ、癒されるねぇ。というか俺いつ寝たんだっけ、日が昇ってるしチルノと弾幕ごっこしたとこまでは覚えてるんだけどな・・・まあいいか。

「大ちゃん!アンちゃん!遊ぼう!!

そんなことは露知らずチルノは今日も元気いっぱいだ、そして今日は晴天遊び日和こんな日に外で遊ばないのは確かに勿体ない、

でもお腹空いたんだよね、朝ごはん作るか。のろのろと立ち上がる俺を見てなにを思ったのかチルノが引き留めてくる。

「アンちゃんどこいくの?」

すごく不安そうな顔してる、昨日のことをまだ気にしてるのか全く可愛いやつめ!

「朝ご飯二人は何がいい?パンか米かどっちでもいいならさっと食べれるパンにするよ」

そういって俺はチルノの頭を撫でてやる、大丈夫だよと安心させるように。

チルノは顔を下に向け少し照れた様子だしょうがないやつだなあ全く。あれ何だか悪寒が。

「アンちゃん早くご飯の準備しようよ!」

そう言って大ちゃんが俺とチルノの間に割って入る。珍しく大ちゃんが腕を引っ張るという積極的な行動に出ているぞ!ははーん、さては遊びたくてうずうずしてると見た大ちゃんもやっぱり妖精なんだねぇ。俺はそのまま引きずられるように台所へと向かった。

そんなに強く掴まなくてもいいのにー。

3人が朝ごはんを食べ終わるころ、空模様はどこかはっきりとしない様子だ、

霧はもうすぐそこまで迫ってきている

 



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第三話

戦闘回挿むと長くなるねぇ
基本戦闘回はあんまり作る予定じゃないけど要所要所で戦いたいと思います。たぶん
今回は百合要素ほぼ入ってないね、どうだろうね
次回は短くまとまるかな、そうだといいなというわけで頑張るます


朝ごはんを食べた俺たちは霧の湖まで来ていたのだが、ついにこの時が来たか。

紅霧異変、後にそう呼ばれることとなる幻想郷を覆った紅色の空それを実際に見ることが出来ようとは。テンションあがってくるじゃねーの!

「すげー!空が真っ赤だ!!」

物珍しさかチルノはまあいつもはしゃいでるか。大ちゃんは幻想郷の終りが来たかと不安な様子が見えている。

「アンちゃん、何だか周りの空気が変だよ大丈夫かな?」

「大丈夫、大丈夫そんなに心配しなくてもこれくらいの妖気じゃ人はともかく俺たち妖精妖怪の類には問題ないよ」

と言いつつも実際、やばい雰囲気は漂ってるな。一日二日なら何ともないだろうけど、しばらく続くとなるとまずそうな・・・よくわからん!っても異変が起きたからにはあの二人が来るはず心配はいらないよな?

「あたいわかったぞ!きっとこの前の屋敷に悪いやつらがいるんだ!!アンちゃん大ちゃん行こう!あたいたちで悪いやつらをやっつけるんだ!」

そういってはりきったいる様子のチルノとは裏腹に大ちゃんの顔色はドンドン悪くなる。

「えぇチルノちゃん危ないよ!それにあのお家怖そうだから近づかないようにしようって約束したのに!」

というのもそのはずこの前湖の探検を三人でしていた際、件の屋敷紅魔館を発見したのだ。その時もチルノは中に入ろうと言い出して二人で止めたのだが。実を言えば入ってみたいんだよね俺も、やっぱり紅魔館って気になるじゃん?あの時は大ちゃんがあまりにも泣きそうな顔してたから止めたけども!今なら騒動のどさくさに紛れて中を探検できるかもしれない、そう思うとやっぱり行ってみたいわけで

「ね、ねぇ大ちゃんちょっとだけ見にぐわああああああ!」

行ってみよう。その言葉は最後まで続かなかった。というか何か吹き飛ばされた何?ちょーいてぇんですけど!!

「アンちゃん!?」「おまえたち!アンちゃんに何しやがる!!」

驚愕の声を上げる大ちゃんと誰かに向かって叫ぶチルノ。それが誰なのかそんなこと聞かずともわかる。

「わりぃわりぃ霊夢より先に行くことばっか考えてよく見てなかったぜ」

あっけらかんとした声を上げて謝る白黒の服を着た少女

「あんたそんなのだからいっつも実験とか失敗するんでしょ」

呆れた声を上げる紅白の巫女服に身を包む少女

二人の名は霧雨魔理沙と博麗霊夢この物語における主人公といっても差し支えない。やっぱり実物は可愛いね。そりゃそうか

「むー!おまえたち許さないぞ!大ちゃんあいつらやっつけよう!」

「う、うん!わかったよチルノちゃん!」

って二人とも!?チルノはわかるけど大ちゃんは無理しなくても!!スペカ持ってないじゃん!まって二人とも!せめて俺も一緒に戦うから!!

「ほぅいいぜ、妖精なんか束になったところで私達に敵うはずもないけどな!」

「あんた一人でやりなさいよ、もう仕方ないわねとっとと片付けるわよ」

やる気満々の魔理沙とどこか面倒くさそうな霊夢正反対のようでしっかりと息があっているところ、やっぱ仲いいんだね。って俺も後ろから援護しなきゃ!どうせ前にでても何の役にも立たないからね!

立ち上がった俺はキャンパスとクレヨンそれに一枚のカードを取り出す、唯一俺が持っているスペルカードただし絵柄は何もなく真っ白だけど。俺はそのカードを天に掲げ声高らかに宣言する。

「『白紙』ブランク・ワールド!!」

「なんだ!?いきなりスペルカード使うのかよ!面白いなあいつ!」

「うるさい、集中してよね魔理沙、にしても何も起きないけど」

開幕のスペルカード宣言に二人の注目がこちらに向く、そこにすかさずチルノと大ちゃんによる連携攻撃が繰り出される。チルノの突貫的攻撃を上手くフォローしつつしっかり相手に攻撃をするそれが大ちゃんスペルカードは持ってないけど持ち前の妖精としての力は他の妖精とは少し異なる。にしても、二人ともなんかすごいな鬼気迫るというかこんなに強かったっけこの二人。まあいいかこれならもしかするとあの二人に勝てるかもっ!

「『氷符』アイシクルフォール!!」「えい!」

一気に畳みかけるようにとチルノがスペルカードを宣言する、するとどこからか無数の氷の弾が二人に降り注ぐ大ちゃんもすかさずそれに合わせて弾を打ち出した。

「ちぃ!面倒だな緑の方からさきに倒すか!」

「了解!遅れんじゃないわよ魔理沙!」

一瞬乱れた二人の動き。しかし、すぐさま態勢を整えると二人が一気に大妖精に接近してくる。

「わわっ」

あまりの速さに驚きの声をあげる大妖精後ろに下がろうとするがおそらく間に合わない、だから二人は気付かないここで大妖精を倒すということに気を取られ、相手にもう一人一番最初に動いてからまだ何もしていないやつが、俺がいることを!!

「『氷符』アイシクルフォール!!」

「えっ」

「なに!?」

俺は再び手を掲げ色づいたカードを宣言する。そのカードはチルノが使ったものとほぼ同じ絵姿の『氷符』アイシクルフォールだった。

大妖精に気を取られていた二人は突然の奇襲に対応しきれずところどころにその弾幕を喰らった。

「ちぃ、なんだ今の!あの青いやつが使ったのか!?」

魔理沙が距離を取りながらチルノを警戒している。

「違うわね今のはあの後ろのやつね」

忌々し気にこちらを睨んでくる霊夢、めっちゃこえぇな。やべー足震えてきたぞ、もうやめといたほうがいいんじゃないか逃げたほうがいいんじゃないか、なんて思ってしまいそうになる。

でも・・・それでも、それ以上に!もっと戦いたいって気持ちが昂ってくる!!

俺は再び色を失ったカードにクレヨンで色を落とし始める。この間ものすごく無防備だけど、俺はチルノと大ちゃんを信じる、だから俺は絵を完成させることだけを意識する。

こうして俺たちの戦いは新たな局面へと移ったのだ。

 

 

うがああああもうだめだー!やっぱり二人はつえええよおおおお!!

あの後二人の怒涛の攻撃にチルノと大ちゃんは避けることで手一杯で、俺の方にも流れ弾が飛んでくるのでなかなか絵が完成しない。おそらく次の攻撃がこちらの最後の攻撃になることだろう、二人の体力も限界が近い。

「ちっ手間のかかるやつらだぜ!」

言葉とは裏腹に楽しそうな表情の魔理沙とムスッとした表情のままの霊夢。あんまり疲れてなさそうなのがまたすごいねえこの二人。っと完成したぜ!!

「チルノ、大ちゃん!」

俺は二人に伝える、二人は俺の声に応えるかのように頷いて返す。ここが正念場だ。

「いくぞ白黒に紅白!あたいたちのさいきょー!の一撃!!」

大ちゃんがチルノと俺に二人を近づけないように弾幕を張り続ける。

「へっ、つまりそれを避けきればわたしたちの完全勝利ってことだな!」

「とっととかかってきなさいよ真向勝負でぶったたくだけよ!!」

「二人ともお願い!!」

大ちゃんがこちらを振り向くもうこれ以上は限界みたいだ。ならば!!

「いくよチルノ!!」「アタイとアンちゃんのさいきょー技見せてやる!!」

「「『凍符』パーフェクトフリーズ!!!」」

無数の弾幕が波を打つように霊夢魔理沙の両名に迫る。

「この程度!」

「どうってことないぜ!!」

しかし、二人の身体能力はさすが全く意に介さずといった様子だ。だが!!この弾幕は今までのとは一味違うぜ!!

瞬間全ての弾幕が急停止する。

「なっ!」

「っ!」

そして次の瞬間一方向に流れていた弾が乱方向へと暴れだす!!

「こんのっ!鬱陶しい!!」

「ははっ!面白いなあこりゃあ!」

キレ気味の霊夢と心底楽しそうな魔理沙、ここまでしても二人を捉えることは出来ないのか!!やっぱり強いな、この二人は!!

全ての弾幕を避けきった二人、対するこちらは満身創痍これ以上はもう戦えない全力を出し切ったんだ悔いはない、それにこれで終わりじゃないしね、弾幕ごっこは命の取り合いじゃないんだし。

「面白かったぜお前ら、お礼に私のとっておき、見せてやるぜ!」

ニカッと懐っこい笑みを浮かべミニ八卦炉を構える魔理沙。っ!まずいこれはチルノと大ちゃんは大丈夫として俺の耐久度じゃ絶対防げな

「『恋符』マスタァースパーク!!!」

おぁあああああ!!

 



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第四話

今回から一応妖々夢編に入ります
百合かきてーよなあ、衝動が抑えられんかった、いや抑えた
俺はロリコンをやめるぞ!ジョジョォ!
I will be back


あーピチュったピチュった久々にピチュったね。まーさか魔理沙が満身創痍の相手にマスパ撃ってくるとはね、まあ認めてくれたって思っとくか。楽しそうだったし霊夢の方はよくわかんねーや。

っというわけでマスパ喰らってピチュった俺だが。

・・・ここどこだ。俺はどこかの屋敷の部屋に寝かされていた。和風のお屋敷、ん~候補が多くて何とも、外でりゃわかるかね。よっこいしょ。布団からのろのろ這い出た俺はそのまま障子に手を掛ける。ん?何か聞こえてくるような・・・音?楽器か何かを演奏してるのか、折角だから音のする方へ行ってみよう。そう思い俺は障子を開ける。

眼前には優美に咲き誇る桜の花が目に入った。否俺は圧倒されていたそこにあるだけの桜の木々に、そんなことあるわけと思うかもしれないが事実俺はその時息をすることすら忘れていただろう。それほどまでにその桜は圧倒的な存在感を放っていた。

「きれい・・・」

口をついて出たのはそんなありきたりな言葉、だけどそれ以外にこの情景を表す言葉を俺は知らなかった。そして理解するこの場が一体どこなのか、それは病的なまでに陰鬱とした色味の無い世界そこに漫然と咲き誇る桜の花。

そう、ここは冥界、死者達の魂が訪れる場所。そこにある屋敷となれば決まっている、白玉楼だ。・・・って死んでないから俺、大丈夫だからね!?だ、大丈夫・・・だよね?

っと、とにかく今は聞こえてくる音が気になるぅ、予想はついてるけど。とにかく急げ!ちんたらしてたら終わっちまうぜ!!俺は音の聞こえる方へ駆け出した。

な、なんてことだ!!俺がその音を奏でている集団、プリズムリバー三姉妹の元へと辿り着いたのは丁度彼女たちの演奏が終わったタイミングだった。聞けなかったね、生演奏

「三人ともありがとう、今日もいい演奏だったわ。それにあなたたちのおかげで漸く客人も目を覚ましたみたいだし」

そう言ってこちらに目を向けてくるのは、水色と白の着物を着たピンク髪の綺麗な女性、この白玉楼の主でもある西行寺幽々子様だ。彼女の発言から周囲の視線が一気に俺に注がれる。へへっ、そんなに見られると照れちまうぜ。何て思ってたら幽々子様がこちらに近づいてくる。お、おおぉ。幻想郷来てからほとんど妖精達と遊んでたから自分よりでかい女の人ってちょっと緊張するぞ!なんか汗出てきたやべえよ、そもそもここに俺より背の低い人いなくね?・・・急に怖くなってきた。大丈夫だよな?俺いきなり手づかみにされてぶちって潰されたりしないよな!周りの視線もずっと俺に集中してるし、何?俺なんかやった?いや落ち着け、焦って自分が見られてるって感じるだけだ。大丈夫落ち着いて深呼吸をしよう、そうだ落ち着いて、せーの

「ねえ」

「ひゃい!」

息を吸ったタイミングで声を掛けられたせいで何か変な声でちゃったよ恥ずかしい!

いつの間にか幽々子様が目の前まで来て、俺と目線を合わせるように屈んでいた。びっくりした。

っていうかいつの間に目の前に!めっちゃ美人だ!ってあれ、いつの間にやら他の人達も集まってきてるぞ。・・・自分より一回り以上でかい人達にそれも知らない人に囲まれるとか、正直怖いよね。え?何でそんな話するかって?そりゃ今の俺の気持ちがそうだからだよ!みんなびっくりするほど美人だけどね!でかいっていうのはやっぱり圧があるからな、俺がどんなにふんぞり返っても囲んでる人たちにとっちゃ可愛いもんだろうだって小さいもん。あー泣けてくるー。はやくでっかくなりてーなー。妖怪ってどのくらいで大きくなれるんだろ、もしかしたらずっとこのままってことも・・・。

ガバッ

柔らかい衝撃と共に目の前が真っ暗にって、なんか幽々子様に抱きしめられとる。ありのまま今起こったことを話したけど・・・何でや!もうわけがわからねえ。とりあえず考えるのをやめよう、このまま身を委ねてしまおう。やわらかー

そして俺はそのまま幽々子様の腕の中で寝た。



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第五話

うおおおお投稿5分前、いや4分前ギリギリセーフ
いろいろ書こうかと思ってたけど時間無いからまた今度で!
今回はのんびり日常回だよ。やったね


さて、あれから数日過ぎました。俺は白玉楼に客人として正式に招かれ今はのんびり過ごしています。え?なんだか随分丁寧になったなって?ウフフ。何を言ってらっしゃるのかしら。私は最初からこうでしたよ?今は幽々子お姉様のお膝の上で仲良くご飯を食べています。おいしいですね

「幽々子様!またアトゥンちゃんに変なこと吹き込みましたね!!」

あら妖夢さんが私と幽々子お姉様の仲を裂こうと・・・

ッハ!俺は一体なにを・・・。

「あらあら、そんなことしてないわよ、ねえアトゥン」

「・・・え?あぁ、うん別に何もされてないよ、妖夢」

何もされてないよ、うん。というかさっきまで何してたっけ、あぁ幽々子様と朝ごはん食べてたんだったな。・・・最近物忘れが激しいようなやばいな耄碌するような年じゃないぞ、しっかりしろ山吹アトゥン!

今日も朝から幽々子様も妖夢も元気いっぱいでいいこったね。ってなわけで白玉楼にきてから数日過ぎて幽々子様とも冥界の住人の人たちとも仲良くなったぜ!今日も夕刻からプリズムリバー三姉妹が来て演奏してくれるらしい!もう何度か聴いてるけどいつ聴いてもいいもんだぜあれは、心が躍るってのはああいうのを言うんだろうなあ。

何でも俺が三姉妹の演奏が聴きたいって妖夢に言ったのを幽々子様に伝えてくれて、その時の俺の様子があまりに楽しそうだったから定期的に呼んでくれてるらしい。俺が言ったことを伝えてくれた妖夢にもそれを聞いてくれた幽々子様にもめっちゃ感謝してるぜ!俺に出来ることがあれば何だって手伝うんだけどな。

西行妖はさすがに手伝えないけど。妖夢も最初は警戒してたみたいだけどなんだかんだ世話を焼いてくれて、今ではすっかり仲良しだ。とはいえ、妖夢は昼間、春を集めているから白玉楼におらず三姉妹が演奏のため早くに来ていない日とかは大抵幽々子様と一緒に遊んでるだけなんだけどな。湖にある自宅まで一度戻ろうかとも思ったんだけど、そろそろ春も集まりそうなんだよな、いや集まっちゃいけないんだけどさ、ってことでもうしばらくここに泊めてもらうよ。弾幕ごっこの為の修行もここ最近出来てないのが気がかりではあるけど、幽々子様と一緒にのんびりするのが楽しくってついね。許して

にしてもチルノと大ちゃん元気にしてるかな~、結構時間経ってるしもしかして忘れられてたりして。な~んてね!・・・大丈夫だよね、うん、大丈夫に決まってるあんなに仲良しだったし。

この異変が終わったらちゃんと家に帰ろう。

「アトゥン~、ごはんつくって~」

幽々子様がちゃぶ台に身を預けたまま声を掛けてきた。ここ最近は忙しい妖夢に代わって、泊めてもらってるお礼として昼の御膳奉行を買って出たのだ。とはいえ、俺の作れる料理なんてたかが知れてるから幽々子様の口に合うものが作れるか心配だったけど、俺の料理を食べた幽々子様がおいしいって言ってくれたから妖夢も任せてくれたのだ!嬉しい

「はいはーい」

俺は軽く返事をすると、鼻歌交じりに台所へ向かう。今日は何作ろっかな~。オムライスにしよう、そうしよう。・・・別に俺が食べたいわけじゃないぞ!妖夢が和食中心に料理を作ってるから洋食を作っろうとだな。

オムライス食べたい

いいじゃんオムライスおいしいじゃん、俺はオムライスを作るぞおー!

「すいませーん!」

エプロンをかけ、台所でオムライスの材料を確認していた時表の方で元気のいい声がした。おそらくプリズムリバー三姉妹が来たのだろう、俺は一旦手を止めて三姉妹を出迎えに行く。

「いらっしゃーい」

俺は玄関につくと戸を開け歓迎する。

「お、アトゥン今からご飯?」

声を掛けてきたのは三姉妹の三女リリカだ明るく話しやすいから割とすぐに仲良くなれた。悪戯好きで演奏前とか準備中によく姉たちに何かやってたりするところを見かける。羨ましい

「今から作るとこ3人はもう食べてきてたりする?」

リリカの問いに応えつつ俺も3人に確認をとる、まだ食べてないようなら一緒に食べたいしね。

「アトゥンちゃんが作ってくれるの~、わ~い私アトゥンちゃんのごはん食べる~」

そう言って抱き付いてきたのは、次女メルランリリカ以上に明るく元気でのんびり屋さんのお姉さんだ、ちなみに三姉妹の中で一番でかい、身長の話だからね?柔らか・・・

「いいの?今日は朝からまだ何も食べてなかったから私達は助かるけど、大変じゃない?」

心配そうに声を掛けてくれるのが長女ルナサ、二人の妹と比べるとかなり暗い。けど真面目で面倒見のいいお姉さんだよ!ちょっとマイペースで天然なところもあるけどそこがまた可愛い!

「大丈夫、大丈夫。幽々子様が食べる量と比べたら3人増えるぐらい大して変わんないから~」

その言葉に三人はどこか思い当たる節があったのか苦笑いを浮かべている。

「そういえば妖夢いつも大変そうだもんねー」

「いっぱい食べるのはいいことよ~」

「あの体のどこにあんな量入るのか」

そのまま三人と談笑しながら居間へ案内する。

「じゃあ俺は台所に戻るから何かあったら呼んでー」

三人を案内し終えた俺は台所へと向かう、さっさと準備しないと幽々子様が干からびちゃうからね。さてと、3人分の食材を追加で用意してと。

「アトゥン、手伝うよ」

後ろから落ち着いた声が聞こえてくる。振り向くとルナサが台所の戸口に立っていた。

「いいよ、ーこの後演奏の準備とかリハーサルとかあるでしょ~?」

3人はそのために今日ここへやってきたわけだから他のことに気を使わせてしまうのはよくないと思ってそう応えたんだけど。

「大丈夫、そちらに影響は出ないよこれでもプロだからね。だから手伝うよ、いいでしょ?」

あっさりそう言われた。まあルナサがそういうんなら大丈夫なんだろう、これ以上断りを入れるのも失礼だし、ここは素直に甘えとこう。

「そっか、じゃあ一緒に作ろっか」

「ん、」

そうして俺はルナサと二人でオムライスを作った。やっぱり料理っていいね!話とかはしないんだけど自然と打ち解けられるような感覚になれるし、何より食材を切ったり炒めたりする音が心地いい!ルナサとだからか音楽を奏でているような一体感がある。楽しいな

そうして出来上がったオムライスを抱えて、俺とルナサは居間へ向かった。

「おおー!美味しそうだねー」

居間で寛いでいた三人が一斉にこちらに目を向けた。

「たくさんあるからいっぱい食べてね~」

「わ~い!」

「アトゥンはやく~私のオムライスちょうだ~い」

言いながらにじり寄ってくる幽々子様に俺は一際大きなオムライスを差し出す。

「やったー」

満面の笑みを浮かべてそれを受け取る幽々子様に自然とこちらも頬が緩む。こんなに幸せそうな顔を見ると作ったこっちも心が温かくなる。きっと妖夢も幽々子様のこの笑顔が見たくていつも頑張ってるんだろうなあ。

そんなことを考えながら俺もスプーンを取りルナサと自分の作ったオムライスを見る。

自信を持っておいしいと言えるそんなオムライスが作れたよ



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第六話

すっかり忘れていたのですがアトゥンの容姿について。
皆さんが思い描く幼女の姿でもいいんですが一応、私の頭の中のアトゥンの容姿について書いておこうかと。
体型は幼女体型胸はまあ。これからに期待
髪の毛は腰まで掛かる金髪ストレート、前髪は軽めでしっかり顔が見えるようになってる。おでこは隠してるけどね。
目は瞳の色がシルバーで、基本タレ目だけど勝気なこと言ってるときとかはちょっとツリ上がってるとこがいいと思うんだ。
とりあえずこんなところかな、これで大まかにアトゥン像が固まればいいと思ってます。もちろんそんなの知らねえ俺の中のアトゥンはこうなんだって方いらっしゃっても全然おkです!!
それでは、今回もお楽しみください!


お腹いっぱい食べた後、帰ってきた妖夢を交えてプリズムリバー三姉妹の演奏を聴いた。毎回はしゃぎすぎて終わった後すぐ寝っちゃうんだけどね。ということで今日もライブ終了後3人を見送ったらあっという間に夢の中。幸せ—

 

「むぅ、んぅ。っぐぇ」

なんか息苦しいし身体も熱い、そう思って身をよじったんだけど、身体が動かない。これは・・・金縛りか。まあ冥界だしな、そういうこともある。悪戯好きの霊魂が遊びにきたんだよ、だからこの感触は脳が働いてないからなんだ、この身体に乗っかかる重みは頭が覚醒してない証拠に他ならない。そう!だから目を開ければ何もない天井が目に入るんだ、だから俺は目を開け

「ん、むぅ~」

・・・あぁ。わかった完全に理解したぞ、これは夢だ夢なんだ、だからこの重みも感触も匂いも・・・これは夢、夢だから!ちょっとだけちょっとだけ、あ、いい匂いする。って!やっぱり夢じゃないよこれ!絶対おかしいもん!あ、ちょっ、まって

ちょっと匂いを嗅ごうとしたのが悪かった、俺はそのままぎゅっと何かに後ろから前へ柔らかいものに押しつけらる。まずいこのままだと・・・ち、窒息死する。な、なんとかしないとお!

あ、まず、息が、でき

「がはっ、ゴホ」

上に乗っかっていた女性、幽々子様なんだけどが寝返りうってどいてくれなかったら確実に息の根が止まってた。はぁ、はあぁ。あ、危なかった、やっぱり変な事したから罰が当たったんだ。呼吸の間隔が不規則になる、体中が酸素をを求めている、俺は呼吸を落ち着けるため深呼吸した。あ、いい匂いする。ってこれさっきもやった!

脳内麻薬がドーパミンが噴出してる、別に快感とかじゃないぞ!死の恐怖に打ち勝ったっていう興奮だからな!お、俺にそんな趣味は無いからな!ほんとだぞ!!・・・ほんとだから。うん

もう全然頭が働いてないよ、さっきから。そ、それよりもこの空間はまずい、なんか気分が変になりそうだ。幽々子様と一緒の部屋で横になるってお昼寝とかなら別に何ともなかったのに、ああもうとにかくここから離れよう!いっそ外で寝よう!そうしよう桜を見ながら眠るんだ!

ようし。

俺がそんなわけのわからない意気込みをしていると幽々子様がまた俺の方に身体を向けそのまま抱き付いてくる。そしてそのままムギューっと抱きしめてきた!あ、危なかったもう少し顔をそらすのが遅れていたら今頃あの恐ろしい胸の中に顔をうずめることに。・・・ぁああ!もう何考えてんのさっ!そうだ!俺はただの抱き枕なんだ、ただの抱き枕、なにも感じないし何も考えない。そう抱き枕に意識は必要ないこのまま俺は抱き枕に

「ふぅ、んむぅ」

・・・

だ、誰か助けて。俺このままずっと敷布団に顔をうずめながら朝を待たないといけないの!?それも幽々子様のと、吐息を聞きながら?抱きしめられたままで?死ぬさっきまでとは違う意味で死ねる!顔があっついよ!もぅ。ってそういえば何で幽々子様と一緒に寝てたんだろ、寝る前はいなかったような・・・、いやたしかに今日は演奏を聴いた後の記憶は曖昧だし、もしかしたら・・・いやそんなことはないはず。流されない妖怪それが俺!・・・のはず。

だからきっと厠に行った時とかに部屋を間違えたんだ。

こうして現状を冷静に分析することでだんだん落ち着いてきた。今ならこのまま眠れそうだ、このまま意識を落として瞼を閉じれば、微睡みの中へ身も心も委ねられる。

「ん、はぁ」

委ねられる委ねられるこのまま眠るんだ俺は、って眠れるかあ!

 

朝日が顔をだし冥界を照らし出すころ。アトゥンは妖夢、幽々子様と居間で朝ごはんを食べていた。うつらうつらとした様子で。

眠い。結局朝まで起きてたよ、幽々子様

 



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第七話

前回、前々回と違って今日は余裕があるぜ、でも前書きは特に考えてないぜ。もったいないな
前回はちょっと俺の中の百合が暴走しただけなんだ。許してくれ
ということで今回はアトゥンの持ってるキャンパスノートとクレヨンについて。
キャンパスノートはページ数無限だよ!いくらでも絵が描けるね!でも分厚くないよむしろ薄いよ。
クレヨンは幼稚園時代とかにもらったクレヨン箱みたいなのに入ってるよ。色はその時に使いたいなって思った色が入ってるよ。あと無くならないよ。
常に持ってるわけじゃなくて召喚したりする感じだよ。便利だね
今回ものんびり回だよ、ゆっくりしていってね


眠れぬ夜を過ごした日の翌朝、俺は一人でお昼寝していた。

 

相変わらず春を集めに地上に行ってる妖夢はともかく、今日は珍しく幽々子様も何か用事があるらしくて白玉楼にいないのだ。ということで今日は白玉楼に来てから初の一人きりでお留守番だ!

出かける前の妖夢からも幽々子様からも再三知らない人が来ても白玉楼から出ちゃダメとか、一人で白玉楼の外に出ちゃダメとか、何かあったらすぐに大声で助けを呼びなさいとか言われたけど。そんな子供みたいな扱いしなくても。

とにかく、昨日の夜は途中からほとんど寝てなかったから、ちょっとお昼寝してたわけだ。それにしてもやっぱり暇だあー、誰か来ないかなー、弾幕ごっこの練習とかしたいよー。

ふと縁側で桜を見ながら考える、白玉楼に来た頃は白玉楼の周辺だけに咲いていた桜も、もうずいぶん冥界中に咲いたもので妖夢の頑張りが見て取れる。すごいよ妖夢!

・・・ただそれはつまり地上では春が来ずたくさんの人たちが困っているということ。そしてもうすぐこの春は終わり地上では季節がまた廻り始める。激動の一年が幕を上げるのだ。それなら今こうしてゆっくり羽を伸ばして身体を休めておくことも悪くないのかも。などと珍しく思案に耽っていた俺だけど、実際一人の時間なんて幻想郷に来てから数えるほどしかなかった。それも幻想郷に来たてであたふたして色んな事を考えなければいけなかったから、本当の意味でこうして一人でいる時間といったら今日が初めてかもしれない。柄にもないことをするのはよくないね、変に気疲れしちゃうよ。あー、やっぱり誰か来ないかなー、来客の予定はないしプリズムリバー三姉妹も来ないよねー。寂しい

「おーぅい、誰かいないのかい」

その時だった、今まで聞いたことのない声が聞こえてきたのだ。どうしよう、知らない人が来てしまった!声的には女の人っぽいけど、でも今まで聞いたことない声だったよ、妖夢にも幽々子様にも知らない人が来ても出ちゃダメって言われてるし、ここは居留守を使うしか・・・

「お、何だいるじゃないか・・・って誰だいお前さん」

縁側でじっとしていたら普通に見つかった、っていうか庭側からくるとかなしでしょ!とにかく返事をしないと!

「お、俺は山吹アトゥン!あんたは誰だ!」

俺は腰に手を当ててぐいっと胸を張る、そして名前を名乗った。

「へぇ、アトゥンって言うのかい、あたいは小町、小野塚小町ってもんだよ。」

と上空から女性が降りてくる、手には大きな鎌が握られており、くせっけのありそうな赤い髪をツインテールにしている。そして今まで見てきた誰よりも背が高い。

「わあ」

俺の身長だと見上げないと顔が見えないくらいにはでかい。

「ここの主人に用があったんだけど、アトゥンはどこに行ったか知ってるかい?」

そんな小町は態々俺の目線の高さまで屈むとそう聞いてきた。

「えっと、う~ん」

小野塚小町を俺は知っている、でもそれはゲームの物語の中の話、実際の小町について知っているわけじゃない。だからこの場合は知らない人にあたるわけで、妖夢と幽々子様には知らない人と話してはダメと言われてるから、う~ん。

「あー、大丈夫あたいはここの主人の幽々子とは知り合いだから、って言ってもしょうがないか。そうだなー、あたいは死神で死者の魂とかを運ぶ仕事をしてるんだ。それで、」

そんな俺の様子を見かねてか小町は自分についての話をしだした。めっちゃいい人だ。幽々子様とも知り合いって言ってるし。何より原作キャラと会えたんだしやっぱり仲良くなりたい!

「あのね、幽々子様は今用事でどっか行ってるから、晩御飯まで帰ってこないよ」

俺が喋りだすとさっきまで喋っていた小町がスッと話すのをやめる。

「どこに行ったのかは俺も知らない、からここで待ってる?」

急な提案だったか、小町は目を丸くしてこちらを見た。

「いいのかい?さっきまでは悩んでるみたいだったけど」

「それは、幽々子様が知らない人が来てもついて行ったりしたらダメって言ってたから。でも幽々子様と知り合いならいいかなって、それにいい人だし」

それを聞いた小町はちょっと照れた様子だ

「へへ、面と向かってそんなこと言われるとちょっと照れちまうよ。まあそっか、そりゃ悪かったねでもいいのかい?それなら猶更あたいがここにいたら幽々子様が帰ってきたときに怒られちまうかもよ?」

小町はやっぱりいい人だ、心配してくれるし。それに小町と遊べるんなら後で幽々子様に怒られてもいいかなって。

「その時はその時、一緒に怒られてよ。それより小町は弾幕ごっこって知ってる?知ってるなら勝負しようよ!」

さっきまで暇だったこともあって、俺は誰かと喋れることにテンションが上がっていたのだ。

「最近幻想郷で流行ってる新しい勝負方法だったね、遠目からたまに見ることはあったけど、そんなに面白いのかい?」

「面白いよ!小町はやったことないんだ。じゃあ教えてあげる!」

そうして俺は小町と一緒に弾幕ごっこをしながら遊んだのだ、最初は不慣れな小町だったけど流石というか、すぐにコツを掴むとメキメキと腕を上げていって、ものの数十分で勝てなくなった。強い

その後はスペルカードについて教えたりして、たくさんお話した。

それから、妖夢が先に帰ってきて、小町をみてびっくり、色々事情を説明したり、約束を破ったことを謝ったり、妖夢も小町と知り合いだったからすんなり納得してくれたけどやっぱり怒られた。ごめんなさい

妖夢がご飯を作りに行って少ししたら、幽々子様も帰ってきた。幽々子様は小町を見ても驚かなかったけど、何があったのかしっかり説明させられたし、頭をペシっと叩かれた、でもちゃんとごめんなさいって言ったら叩いた頭を撫でてくれたよ!やっぱり幽々子様も優しい。

その後は4人で楽しく晩ごはんを食べた。とっても美味しかったし、楽しかった

 



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第八話

うおおお!間に合わなかった!
というわけで0時投稿は無理でした、すんまそん
でも頑張ったから許してちょ。というわけで妖々夢編一番の戦闘回だと思います。かなり駆け足ですが。気が向いたらちょっと書き直したり弄ったりするかもです。
読み返す度ここ、もっとこうしたらいいなっていうの出てくるのでね・・・
ともかく!今回ものんびり見ていってね!


小町と晩ごはんを一緒に食べた翌日、俺は約束を破ったことに対して、一日中幽々子様の傍を離れてはいけないという罰を受けた。といってもそれ自体は普段と何ら変わりのないことなので、そんなのでいいの?って感じだけれども二人がそれで良いと言うのなら従うほかない。あ、でもお昼作るときは離れますよ?え、ダメってそんな、妖夢まで今日は休んで下さい?それなら妖夢だって。

これは罰ですよって。あ、はい素直に休みます、ごめんなさい。

ということで今日は一日中幽々子様の膝の上で抱っこされてたり、ごはんの時もあーんしたり。

お風呂の時もって!お風呂は一人で入ります!一緒に入りたいって言われてもこればっかりは!幽々子様と一緒に入ったりしたらこっちの心が持たない!!だからそれだけは!ぅぐ、そんな目で見られてもこればっかりは・・・。罰だから拒否権は最初からないですか。そうですか。ハハハ、精神統一しておこう、何があっても平静を保てるように。俺、幽々子様と一緒にお風呂に入った後、悟りを開くんだ。

うん、のぼせた。

一緒に入った後の記憶とかもう緊張しすぎて覚えてないし気付いたら。幽々子様と一緒の布団で寝てるし。朝だし。え、何もなかったよね?昨日は大変だったって何!?俺なんかやったの?妖夢!どうしよう俺、昨日

え?ああ、のぼせた俺の介抱するのが大変だったのね。あ、あはは、そうだよねー。すみません

幽々子様そんなに笑わないで、恥ずかしいから!

コホン

というわけで、なかなか大変な一日を過ごした俺ですが、今日はまたプリズムリバー三姉妹を招いて宴会を開くということで、俺は白玉楼に続く階段の中段ほどで待機中であります!

はやく三人にあいたくてねほんとはもっと下の方っていうか地上との境界線上で待ってたいんだけど、幽々子様にあんまり地上の方までは行っちゃだめって言われたので。こうしてそこそこの場所で待っている次第であります。

はやくみんな来ないかなー。

・・・もうちょっと下の方まで行ってもいいよね。地上までいかなきゃいいんだし、っていうか何で地上まで行っちゃだめなんだろ?まあいいや、もうちょっとだけ降りてみよう。ん?なんだか騒がしいな、何かあったのかな?下段の方まで降りてくると、なんだか騒がしい音が聞こえてくる。そしてこちらに向かって何やら星やらナイフやら護符なんかがヒュンヒュン側を通り抜けていく。

あ、あぶねえ!っていうかこれって・・・っ!

俺は飛んでくる流れ弾を意にも介さず駆け出した。

 

音のする場所へたどり着き近くの桜の木に隠れて様子を伺う。そこでは紅霧異変の時に戦った紅白と黒白、そしてもう一人銀髪のメイドが三姉妹と戦っている最中だった。遂に動き出したのか。この異変を解決しに彼女たちが、そしてもうここまでたどり着いたのか。さすがは主人公達それぞれが特筆した強さを持ってる。

だけど、三姉妹も負けてない、確かに個々の力は彼女たちに劣っているかもしれないが、三人の息の合ったコンビネーションは彼女たちを圧している。それを裏付けるように彼女たちの表情は少し苦しそうだ。三姉妹は代わる代わる霊夢達にスペルカードを使うことで、緩急をつけて戦っている。もちろん自分たちも相手が変わるわけだから、その対応をしなけらばならないはず、しかし、まるで示し合わせたように三姉妹は相手の攻撃を凌ぎ弱点を突いていく。以心伝心まさに心が通っているかのごとき動き。それは一つの音に乗って彼女たちへ牙をむく。

「ったくうっとしいわね!」

「あぁ、でももう読めたぜ、次で決める!」

「そうね、これ以上時間は掛けられないわ」

しかし、彼女たちもそれで倒れる程弱くない、むしろ絶対に負けないという執念すら感じるレベルだ。おそらく次の彼女たちの攻撃に移ったら三姉妹は勝てない。三姉妹もそれが理解っているのか、最後の攻撃に打って出る!

「姉さんたち!あれ、やるよ!」

「わかったわ~!ルナサ姉さん!」

「えぇ、やるわ」

三姉妹は互いに顔を見やると、同時に宣言する、

「「「『大合葬』霊車コンチェルトグロッソ怪!!!」」」

三姉妹はそれぞれを頂点に三角の形をとると三姉妹はそのまま時計回りに回り始める。同時に三姉妹を中心とした軸に光の玉が生まれそこから無数の色とりどりな米粒弾が三姉妹とは逆方向に放たれる!

「これが最後か!余裕だぜ!!」

「いえ、まだよ。何かくる!」

魔理沙の言葉に咲夜が応える。そうこのスペルカードはこのままでは終わらない!

三姉妹は互いに緑、青、赤のレーザーブレードを出し弾源を囲むプリズムへと変化させる!

そして弾源から放たれた弾がレーザーに触れると、さらに色を変え形を変えその軌道すら変えて放出される。

それはまさに芸術と言えるほど。そしてその複雑な弾幕はまさしく三姉妹を脅かすものへの棘の様でもあった。三姉妹は留まるところを知らずさらにプリズムの外側へ鋭角なレーザーブレードが放たれる。それにより複雑化した弾幕はその勢いをさらに強く波のように押し寄せる不規則な弾幕は彼女たちを存分に驚愕させる。

「っち、なんだこれ!避けきれねえ!」

「うるさい!魔理沙、やられたくなかったら黙って目の前に集中してよね・・・っ!」

「・・・っ!魔理沙、左!」

「あぶねえっ!・・・くっ、やってくれるぜ!」

それでも尚、やはりというべきか彼女たちは倒れない、身体はところどころ服が破れ額には汗も滲んでいる、それでも彼女たちは誰一人として諦めていない、むしろこの状況を楽しんでいる様でもある。あぁ・・・やっぱりすごいな、彼女たちは。

三姉妹の渾身の演奏は遂に終わりを迎えた。

「そ、そんなぁ・・・」

「あらら~避けきられちゃったわ~」

「二人とも、ごめん」

あれだけの弾幕だったのだ、自信もあっただろう。それを無傷ではないと言え避けきられてしまったのだ。そのショックは計り知れない。

「はぁはぁ、いや、お前たちすごかったぜ。正直もっと弱いかと思ってたよ」

素直な気持ちを三姉妹に伝える魔理沙。

「えぇ、そこの魔法使いは私がいなければ脱落していたでしょうね、素晴らしい弾幕でしたわ」

もう息を整えたのか、さすがはメイド長。もう涼しい顔をしている。

「あーこの先あんたたちよりめんどうなのが出てくるのかと思うと気が進まなくなるわ~」

いかにも霊夢らしい言い方で、でもやっぱり強かったって認めてるんだっていうのが伝わてくる。

「まあ強いと思うわよ、というか私達宴会の為に呼ばれてたんだけどね」

「そうそうなのにいきなり弾幕勝負なんて聞いてないよー!」

「でも楽しかったわ~」

三姉妹も思い思いに彼女たちに話しかけている、その顔はとても楽しそうだった。

「さて、じゃあ私たちはもう行くわ」

霊夢がそういうと他の二人も続く。

「じゃあな!また相手してやってもいいぜ!」

「それではごきげんよう」

そんな彼女たちに三姉妹も別れを告げる。

俺はそんな彼女たちを追いかけた

 

 



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第九話

ちょっとした猫好き様誤字報告ありがとうございます!
今回は妖々夢編最終回となります。
ここまで見てくださった方々にはとても感謝しております!
といってもここで終わるわけではないのですが。
個人的には妖々夢編というのが一つの節目として考えていた、というか初期段階だとこの辺までしか考えてなかったので。嬉しい限りです!
相変わらず先行き不安な物語構成をどうまとめるか悩んでるけどね!
ということでそのうち他キャラクター視点の外伝も書くつもりです。
というわけで今回もゆっくりしていってね!


「あんたなんで私達のことつけてたわけ?」

・・・俺、大ピンチ!!

 

時は少しだけ遡って霊夢たちを追いかけ始めたところから。三人はぐんぐん上へと進んでいき、俺もついていくのが大変だ。

そんなことを思っていると、先頭の霊夢が急に立ち止まった。それにつられて後ろの二人も立ち止まる。何かあったのかな?呑気にそんなことを考えていたら、3人と目が合った。あれ?どうして隠れてたよね、俺。魔理沙に関してはこちらを指さして何か言ってるし、霊夢はすごく面倒くさそうな顔してるし、咲夜は・・・わからない。まあいいか

その後三人は話し合いをしていたかと思うと、霊夢を残して二人が先に階段を昇って行った。

飛んでるけど。

「ねえ、隠れてないで出てきなさいよ」

・・・隠れてる人~呼ばれてますよー。

「ふーん、あくまで隠れてるつもりなわけ?それならこっちも容赦しないわよ」

俺はすっと桜の木を離れ霊夢の前に出ていく。別に?何となく桜の木から離れたかったから出てきただけだし、最初から隠れてなんかなかったし?

「はあ、あんた随分前にも会った気がするわね、名前何だったかしら・・・」

「山吹アトゥンだ!こうして話すのは初めてだよ!この前はいきなり白黒に吹き飛ばされてなし崩しに戦っただけだからな!」

俺はいつもの通り両手を腰に当て胸を張り堂々と名乗る。こういうのは初めのインパクトが大事だからな!

「あー、そうだったわね、私は霊夢、博麗霊夢よ、あんた割と話が通じるタイプなのね」

普段一体どんなやつと話してきたんだ。

って言ってもそうか割と弾幕勝負する人たち容赦ないよね。

「あんたは物分かりよさそうだし、あんまりおしゃべりしてる時間ないから聞くわよ、あんたなんで私達のことつけてたわけ?」

明らかにこちらのこと疑ってらっしゃる!まあそりゃそうだよね!こんなところでつけられてたらそりゃ警戒するよね!どうしよう、何て応えるのがいいのかな。

「・・・はあ、まあ応えたくないなら別にいいわよ。時間無いしあんた倒して無理やりしゃべってもらうから」

ぅえ!?何でなんでそうなった!

「ちょ」

それ以上の言葉は続かなかった。不意に霊夢に握られていた護符がこちらに飛んでくる!!

「へえ、今の当たらなかったか、その両手に持ってるもののおかげかしら」

あ、あぶねえー!そうだよ!このキャンパスに大きい円形の弾幕を書いて相殺したんだよ!弾幕衝突の余波で吹っ飛ばされたけど!それよりいきなり撃ってくるとか、話通じないのそっちじゃん!こうなったらっ!俺はスペルカードを取り出す。

「やらせないわよ!」

しかし、宣言する前に霊夢の怒涛の攻撃が俺に襲い掛かる。あ、ちょまっ、早い早いって!あ、でも意外と避けれる。フハハ、俺だって成長しているっ!この程度ならなんとかギリギリ避けれるぞおー!

「あーめんどくさい!『夢符』二重結界!」

あ、ちょ、ずるい!こっちが使う暇ないくらい攻撃しといてそっちは使うのかよ!ってやばいこれ避けれない。あ、こっち、ちが

ピチューン

 

うおおお、復活!

今回はこんなところで寝ていられんのです。俺は幽々子様のスペルを見なければ!というわけで気合ですぐ復活してやったぜ!ハハハ、って言ってる場合じゃないんだった。行かねば!

 

俺が西行妖にたどり着いたタイミングで丁度幽々子様が 桜符「完全なる墨染の桜」 —開花— のスペルカードを使うところだった。

幽々子様の後ろには大きな扇が開き大小の弾幕の中を舞うように蝶の弾幕が飛び交う。霊夢達は必死になって避け続けている。俺は彼女たちにはこの弾幕を落ち着いて見られないことを申し訳なく思っていた。それほどまでに俺は魅入っていた、西行寺幽々子の放つ弾幕その一つ一つに、これ以上はないというほどに心が躍った。

 

弾幕が止み霊夢達は動きを止める。きっと彼女たちにはあの時間が恐ろしく長く思えただろう、外側から見ていただけの俺とは全く別の印象を抱いたかもしれない。これで終わったと彼女たちは思っているのだろう。口には出さないが顔には安堵の表情を浮かべている。

もちろんこれで終わりではない、彼女のラストスペル

 

『反魂蝶 —八分咲き— 』

 

それは決して満開になることはない。

だから彼女が復活することもない。西行寺幽々子はこれからもずっとここに居続ける。

生の美しさと死の煌めき、相反する二つが混ざり合いこの弾幕にその想いが宿る。だからその弾幕はこんなにも綺麗なんだ。

触れたい、彼女に会いたい、会って話をしたい。

俺は彼女に魅入ってしまった、こんなにも儚くそして美しい彼女に。

後ろで誰かの声が響く

俺の意識は深い闇へと落ちていった

薄れゆく意識の中俺の手は彼女に触れることは無かった

 



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第十話

本日連載十話目となりました!
ここまで見てくださっている方、ありがとうございます!
これからも温かくアトゥンの事を見守っていただけると嬉しいです!
今回から萃夢想編となります。
それでは今回もゆっくりみていってね!


ふらふらとした足取りで、俺は歩いて帰路についていた。意識が朦朧としている。

全くとんだ厄日もあったもんだ。早く帰えらないと、大ちゃんが待ってるんだ。今日は何して遊ぼうかな。あぁ、やっと家が見えてきた、大ちゃんはもう家に来ているだろうか。鍵は開けてあるから来ているなら中にいるだろう。ああくそ疲れてる場合じゃないのに。足が重い、身体がだるい。

やっと家に着いた、早く入ろう。腕が上がらないから無理やり両腕を使って開ける。

「アンちゃんおかえ・・・あ、アンちゃん!?」

ああ、大ちゃん、帰ったよ何してあそぼっか。声にした言葉はちゃんと届いただろうか、大ちゃんの声が耳に聞こえてくるけど、頭に入ってこない。身体の力が抜け前のめりに倒れる、もはや足に踏ん張る力など残っておらず前に出したはずの手もぶらりと下がったままだ。柔らかい衝撃に受け止められた俺は、そのまま意識を落とした。

 

あー!つっかれたー!昨日は全くひどい目にあったもんだ、萃香め、ちょっと自分のテリトリーに入ったからっていきなり押し倒してくるなんてそれになんか身体まさぐってきたし!人とか通らない場所だったからよかったものの、めっちゃ疲れたわ。横っ腹すげー力でつねられたし、抉る気か!ってもんだよ全く。まだ痛いし絶対爪たててたよねー。おかげで大ちゃんに迷惑かけちゃったじゃないか!すごく心配してくれて介抱してくれたんだぞ!全く見習ってほしいよね!

というわけで俺は今日遊べなかった分大ちゃんと遊ぶ予定だったんだけど、あいつと約束しちまったからな、大ちゃんには外に出ちゃだめって言われてるけど。

鬼との約束、破るわけにもいかんでしょう。さて、大ちゃん帰ってくる前に用事を済ませて帰ってこよう。いざ博麗神社裏の萃香の住処へ!すいかのすみかってなんかダジャレっぽいな。いてて、あー横っ腹痛いせいで空飛ぶの辛いから歩いていかなきゃ。ってか萃香のところまでいくの歩いていったらめっちゃ大変じゃね?あー行きたくないよー。

誰か助けてくれ~。

 

と言いつつしっかりきてやったぜ、すんごい大変だったけど。萃香はもうすでに酒飲みながら待ってた。こいつ

「来たぞ!萃香、これで約束はちゃんと果たしたからな。」

「おお、ほんとにきたのか、ふーん、なかなか面白いやつだなお前」

萃香は心の底から驚いたような顔をしていた。なんだ俺が約束を破るやつだと思ってたのか。

「アトゥンだ。って昨日名乗っただろ」

「そうだった、悪いねアトゥン、どうせ来ないと思ってたから忘れちゃったよ」

やっぱり思われてた!自分から約束しておいてなんだそれ!正直なのはいいけどさ!あーあ酔っぱらいの相手なんかするんじゃなかった。こちとら横っ腹痛いの我慢しながら来てやったのに。

「あー、昨日はその。悪かったよ、ちょっとイラついてたんだ、だから昨日の約束もなんかほら半分脅迫みたいなもんだったじゃないか、だから来ないもんだと思ってたんだよ」

そうだったっけ、昨日のことは正直途中から意識朦朧とし過ぎて覚えてないんだけど。

「えっと、その大丈夫かい?腰のあたりとか」

おや、心配してくれてたのか、やっぱり鬼ってのはいいやつだな、昨日のことはあんまり思い出せないけど許してやろう。

「ちょっと痛むけど大丈夫だよ、それより

「アンちゃん!」

あ、大ちゃん・・・やっべ出かけたのバレたってかなんでこんなところに?ってか急な出来事に萃香もびっくりしてるよ。

「もう!ちゃんと安静にしてなきゃダメって言ったのに!」

「ご、ごめん、えと、もう帰るから、だからそんなに怒らないで?ねっ」

とにかく謝ろう、というか鬼との約束守るために大ちゃんとの約束すっぽかしてたな俺・・・

ほんとごめんね、大ちゃん

大ちゃんは俺の傍まで寄ってくると腕を抱いて帰ろうとする。そんなに引っ張らなくてももう帰るって、っていうか力つよ!全然抵抗出来ないッ!

「待てよ。そいつ怪我してんだろ?その怪我はあたしのせいで出来たもんだから家まで運ぶの手伝うよ」

おお、萃香優しい。やっぱりいいやつだな。ファーストコンタクトがインパクト(物理)ありすぎて変な偏見持っちゃったけど、全然そんなことないじゃん。

ということで二人に運ばれながら家まで帰った。帰ってる途中大ちゃんが意外と萃香と普通に話せてたことに驚いたよ、鬼の四天王って恐れられてるんじゃなかったっけ・・・、まあ話せてるんならいいか。帰り際今度は遊びに来なよって言ったら、わかったって言ってたし、またそのうち会えるかな。

これが次の異変 萃夢想 を引き起こした黒幕伊吹萃香との出会いだった。

そして今回は肉体派系異変だから、弾幕ごっこが好きな俺には関係が無いと思っているのだった。

実に幽々子様の反魂蝶に見とれてたら、そのまま当たってピチュってから、数日で家の近くに復活した後、さらに数日後の出来事である。

異変はもう始まっている

 



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第十一話

ふるふわ日常回をお送りしております。
どんどんロリっ子だらけになってきてるけど、まあいいじゃないか。
そのうちお姉さんキャラとの絡みも作ります、絶対。
今回もゆっくりみていってね!


「アンちゃん、はいあーん」

「あーん」

大ちゃんと萃香に家まで運ばれてから、俺は大ちゃんに甲斐甲斐しくお世話してもらっている。やっぱり大ちゃんは優しくて可愛い天使だ!明日はチルノも遊びに来るし楽しみだー!でも大ちゃんちょっと近くない?いやいいんだよ?俺は食べるだけだからいいけど、大ちゃんはこんなに密着してたら食べさせにくくない?え、そんなこと言ってると食べさせてあげない?

ごめんなさい食べさせてください!

・・・いや、腕は動くけども!せっかく大ちゃんがこんな風に食べさせてくれてるんだぜ!そんな機会を逃すわけにはいかないよ!!あ、でも大ちゃんが嫌だったら自分で食べるから、その時は言ってね。

 

夕ごはんを食べた俺と大ちゃんはその後、一緒にお風呂にも入った。どうやら萃香につねられた部分はやっぱり傷付いてて、染みると痛いだろうからと大ちゃんが代わりに身体を洗ってくれるらしい!ちょっと恥ずかしいけど嬉しいな。まあ幽々子様と一緒にお風呂に入ったこともあるし!並大抵のことじゃ動じませんとも!

なんだろう一瞬大ちゃんの目からハイライトが消えたような。まさかね・・・。

というわけで一緒に入ったんだけど、わかってるよ、わかってるけど洗うためとはいえそんなに密着されるとやっぱり恥ずかしい!っていうか前は自分でやるって!まって、やめて。あぅ、そんなキラキラした目で見つめないで、ダメだから!

・・・わ、わかったよ。いいよ!どんとこいだ!こうなったら隅々まで洗ったらいいさ!

 

洗われちゃった・・・

 

そして今、俺は大ちゃんと一緒のベッドで寝てます、ええ寝てますよ、寝てますとも!大ちゃん相手に手を出そうなんて邪な考えを持つわけがないじゃないか。だから俺は大ちゃんに背を向けて目を瞑って眠っています。だからどうか後ろから大ちゃんに抱き付かれていることは許してください。背中に吐息が当たるんだけど。そんなものこうして瞑想していれば・・・ど、どうということも、なぃ、無いだのだ!・・・あれ、でもほんとに眠れそうだ、なんだか大ちゃんに抱き付かれてるときの方が安心できるというか。

「ふわぁ・・・ん、すぅー」

この後普通に寝た。

 

翌朝、俺は大ちゃんに起こされました。寝起き眼で見た大ちゃんは朝日に照らされていて、まさしく天使でした。

「大ちゃん、アンちゃん、あそぼう!」

朝ごはんを二人で食べた後、バンっと勢いよく開いた扉の音と共に元気のいい声が家に響く。

「おはよー」

「チルノちゃん、おはよう」

相変わらずチルノは元気だ、チルノは俺と大ちゃんの手を握るとそのまま家の外へ出た。

「今日はなにするの?」

「今日はみんなでかくれんぼだ!ルーミア達も呼んでるぞ!」

俺の家は湖のすぐそばにあるので、外に出て少し歩けばすぐ湖に着いた。そこにはすでにルーミア他妖精達が集まっていた。

「あー、やっときた」

「おそいよー」

妖精達がチルノを見つけるや否やわいわい声を掛けてくる。

「よし!みんな揃ったな!じゃあじゃんけんで鬼を決めるぞ!」

チルノの掛け声でみんな一斉に拳を出す、よーし負けないぞ!

「じゃんけん、ぽん!」

結果として鬼は大ちゃんになった。というか大ちゃんはじゃんけんが弱くて大体いつも鬼になってるきがする。

「じゃあ60数えたら探しに行くからねー」

大ちゃんがそう言うとみんな思い思いに散らばっていく。俺も早く隠れなきゃ、まだ横っ腹が痛むのでのろのろ歩きながら隠れられそうな場所を探す。

「だいじょーぶかー?」

不意に後ろから声を掛けられて振り向くと、そこにはルーミアがいた。

「どしたの、ルーミア」

「なんか歩き方変だぞー」

「あー、ちょっと怪我しててねー。飛ぶと痛いし、ってそんなに変な歩き方してた?」

俺の問いにコクコクと頷くルーミア、そんなに変な歩き方になってたのか、癖にならないよう気を付けないと。

「歩くの辛いのかー、なら私が隠してあげよっかー?」

心配してくれているのか、そんな風に聞いてきた。優しい

実はルーミアとは春雪異変以来の付き合いで、まだ2回ほどしか会ったことはない。そんなルーミアが話しかけてきてくれたので、内心テンション爆上がりだぜ!

「ありがとー、じゃああっちで隠れよう」

俺とルーミアは木陰に身を寄せ合うと、ルーミアの能力で闇に消える。おお、こんな感じなのか何も見えない。目を開けてるはずなのに閉じてるんじゃないかと思ってしまうほどの真っ暗闇。頭上でルーミアの声がする。

「だいじょうぶかー」

「だいじょうぶだー」

そういえばルーミアって俺より背が高いのか。なんてこった

・・・といっても?頭半個分くらいだし?そのくらいすぐに伸びるし。別に悔しくないし。すぐ追い抜くし。全然気づかなかったけど今、ルーミアとすごい密着してた。まあルーミアの能力の中にいるから結構近づいたと思ってたけど、隠れる場所を見るのに必死でこんなに近づいていたことにも気づかなかったよ。にしても立ってると疲れてくるな。ちょっと座ろう。

「ルーミアちょっと座ってもいい?」

「いいぞーじゃあ一緒に座ろう、せーの」

ルーミアの掛け声に合わせて腰を下ろす、ふう周りも何も見えないから、少し動くのも危ういなあ。こんなに近くにいるルーミアの顔も見えないし。ってかこの木柔らかいな木の根とかってもっと固い気がするんだけど

「ルーミアちゃん見つけた!」

またも頭上から声がした、大ちゃんの声だ!

なにぃ!?もう見つかっただと・・・!

ルーミアが能力を解除する、あーもう少し闇の気分を楽しみたかったなー。

能力が解除され一番最初に目に入ったのはルーミアの胸に着けている赤いアクセサリーだった。俺はルーミアの膝の上に座っていた。びっくり

「アトゥン、おもいのだー」

「おっと、と、ごめんごめん、なんか変だなと思ったんだけど、ルーミアの膝の上だったのか」

「そーなのだー」

呑気に会話する俺とルーミア、とそれを愕然とした様子で見ている大ちゃん。そりゃまあびっくりするよねルーミア見つけたと思ったら中から俺も出てくるんだから。

「俺も見つかっちゃったなー」

「ドーンマイ」

大ちゃん?おーい大ちゃーん。・・・びっくりしすぎて固まってらっしゃる。ちょっと申し訳なくなってくるね。

お、大ちゃんが手を握ってきたぞ、捕まっちゃったー、ってあれルーミアは?あちょ大ちゃんどこ行くの、このまま他の子探すの?いやちょっと、横っ腹がまだ痛むんだけどっ!え、じゃあ次隠れるときは一緒に?いいけど、そんなに遠いとこまでは歩けないからね!

結局その日、大ちゃんと一緒に隠れることはなかった。代わりにルーミアとチルノが交互に一緒に隠れてくれたよ。二人とも優しいね。

遊び終わった頃大ちゃんがちょっと不機嫌だった気もするけど、まああれだけ鬼になったらそりゃつまんないよね、今度かくれんぼするときは、鬼代わってあげよう。

明日は何して遊ぶのかなー



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第十二話

こーんかいは日常パートです。
っていうか最近ずっとそうです。はい、まあそういう事もある。
というわけで!ゆっくりみていってね!


かくれんぼで遊んだ次の日、今日は朝から珍しい訪問者が現れた。

「へえ、ここアトゥンの家だったんだ。通りで前何度か訪ねた時は誰もいなかったわけだ。」

そう言って家の中を見て回っているのは、プリズムリバー三姉妹の長女ルナサ・プリズムリバー。なんでも、紅霧異変直後からこの家が気になっていて、何度かここを訪れたらしいが常に留守だったという。まあその時復活してたかも怪しいし、復活後はずっと白玉楼にいたからね。誰もいないよねー。ルナサも家主が俺だったということで納得したようだ。

ルナサは一通り家を見て回ると、ソファに腰かけた。

「いい家だね」

ルナサに褒められちゃった!嬉しい

「えへへ、ありがと。忙しくなかったら遊びにきてよ、いつでも歓迎するよ」

「わかった、今度はリリカ達も連れてくるね」

そう言ってルナサは膝をポンポンと叩いた。白玉楼にいた時からルナサは俺を呼ぶときこうする。ルナサは俺の髪で遊ぶのが好きらしい。今までも色んな髪型にしてもらったことがある。俺はテクテク歩いてルナサの膝に乗る。今日はどんな髪型にしてくれるんだろう。楽しみ

「やっぱりいいね、周りにアトゥンと同じくらい髪の長い子いないから、どんな髪型にするかいつも悩んじゃうよ」

言いながら髪を撫でるように触るルナサ、指一本一本が丁寧に髪をわけていく、とっても気持ちいい。ルナサは髪を弄るときそっと頭を撫でてくれるのだ、それがまた心地よくて、俺はルナサに身体を預ける。

 

「出来たよ」

少し眠っていたらしい。気が付くと目の前には鏡。おお!編み込みのポニーテール、両サイドをツイスト編みにし、後ろで一つにまとめて高めに括ると編み込みポニーテール幼女の完成だ!可愛くしてもらったぜ!

「わあ!」

「ふふっ、喜んでもらえてうれしいよ」

くすっと笑ったルナサの顔はとっても可愛かった。

ばたん!と今日も勢いよく扉が開かれる。

「アンちゃんあそぼー!」

「アンちゃんおはよう!」

チルノと大ちゃんが入ってくる。

「チルノ、大ちゃん!いらっしゃい!」

テンションの上がった俺はそのまま二人を出迎える。

「わっ、アンちゃん。どうしたのその髪型!」

大ちゃんがびっくりした声を上げる、えへへやったぜ!

「誰か来たの?」

奥からルナサが顔を覗かせる。一瞬、大ちゃんの顔から表情が消えたように錯覚した。

「誰だお前!」

「アンちゃん、あの人は・・・?」

そういえば二人は会ったことないのか。

「俺の友達のルナサだよ!姉妹で音楽ライブとかやってるんだ!今度二人も聴きに行こうよ!」

「なんだ、アンちゃんの友達か、あたいはチルノよろしくな!」

「だ、大妖精です、よろしくお願いします。」

チルノはいつも通り、大ちゃんは少し緊張した様子であいさつする。

「ルナサ・プリズムリバー。よろしく」

ルナサもいつもとあまり変わらない様子であいさつを返す。にしても大ちゃんって結構人見知りだったっけ、結構いろんな人と喋れるイメージってか萃香と普通にしゃべってたからそういう印象が強いけど。

それより今日は久しぶりに弾幕ごっこがしたい!最近ろくに動いてなかったから、まあまだ、傷は痛むんだけど、我慢できないレベルじゃないし!

「ねえねえ、今日は弾幕ごっこしようよ!」

そう言うと、さっきまで緊張した様子だった大ちゃんが急にこちらに迫ってくる。

「ダメだよアンちゃん!まだ傷治ってないでしょ!それなのに弾幕ごっこやったらっ!」

大ちゃんがすっごく心配してくれている、普段より大きな声で叫んだ大ちゃんにチルノも驚いている。

「だ、大丈夫だって!痛くなったらちゃんとやめるから!ね、お願い!」

必死にお願いしてみるけどこれは望薄だ。大ちゃんは顔を縦に振ろうとはしない。どうしたものか、今日は諦めた方がいいかもしれない。

しばらくの沈黙

 

「ペアでやるのは?」

その声を上げたのはルナサだった。

「っ!それ!ペアでやろう!一人だと全部避けなきゃだけど、二人だったらある程度弾幕も分散できるし!身体にも負担掛からないように出来るからさ!」

渡りに船と言わんばかりに矢継ぎ早に言葉をつなげる。実際1対1が2対2になるわけだから、そんなことはないわけだけど。

「大ちゃん、ダメかな・・・?」

俺は大ちゃんと目を合わせる。すると大ちゃんは観念したように首を縦に振ってくれた。

やったー!久しぶりの弾幕ごっこだぜー!

 

 



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第十三話

ありのまま今起こった事を話すぜ、萃夢想のストーリーを見直そうと思ってたら、
緋想天をプレイしていた。何を言っているのかわからねーと思うが俺もわからねえ。
キャーイクサーン
というわけで、萃夢想のストーリーほぼうろ覚えで書きます、さらっと流します。
萃香とはもう会ったしいいよねー。格ゲーは苦手なんだ・・・。
というわけで今回もゆっくりみていってね!



今回の弾幕ごっこはペア対決、相手はチルノ・大ちゃんペアで、俺のペアはルナサだ!

まあルナサと知り合いなのは俺だけだったから、順当だよね。うん。

「大ちゃん!一緒に頑張ろう!」

「うん、ぜっっったいに!勝とうねチルノちゃん!」

なんか大ちゃんのやる気が限界突破してる気がするんだけど。さっきまであんまり乗り気じゃなかたよね?

「私たちもがんばろう、アトゥン」

「おうよ!やるからには全力だぜえ!」

俺も負けじと気合を入れる。今回はルナサも一緒だからな!いつものようにはいかないぜ!

俺たちは向かい合うと、誰かが何かをするわけでもなく、示し合わせたかのように動き出す、弾幕ごっこは得てしてそういうものなのだ。始まってからすぐさま後方に位置どった俺は、すぐさまスペルカードを宣言する!

「『白紙』ブランクワールド!」

実はこのスペル如何せん使い勝手が悪い。似た能力に他人のトラウマを呼び起こすスペルカード『想起』「○○」という古明地さとりの物が挙げられるが、そちらとは違いこちらのスペルカードは一度宣言した上でもう一度この白紙のスペルカードに色を付けなければならない。あちらも一度『想起』「テリブルスーヴニール」という準備スペルのようなものがあるが、あちらはそれ自体が弾幕スペルなのに対し、こちらはそうではない、代わりにどんなスペルでも描けば使えるという利点はあるが、描く時間があればの話。さらに言うとまだこの幻想郷に登場していない人物のスペルを撃とうものなら、どこかの賢者に目を付けられかねない。だから俺は、自分が実際に見た、見せてもらったスペルしか使わない、使えないのだ。だから使い勝手が悪い、一対一ではほぼ勝ち目は無いのもそれが理由の一つと言ってもいいだろう。ただし今回のようなチーム戦では少し変わってくる。開幕は相方にかなり、合間合間にも負担を掛けることにはなるが、このスペルカードを描く時間を稼いでもらえる。それさえ出来れば、魔理沙の『恋符』マスタースパーク、霊夢の『夢符』二重結界、さらには幽々子様の『桜符』完全なる墨染の桜だろうが耐久スペル『反魂蝶』だろうが使えるわけである。特に耐久スペル反魂蝶はとても便利が良い時間を稼ぐことも相手を圧倒することも可能だ。他にも使えるスペルカードは多くあるが、ここでは割愛しよう。スペルカードも描けたことだし。

「ルナサ!」

「・・・っ!わかった」

俺はルナサに声を掛けるとスペルカードを掲げ宣言する。

「「『神弦』ストラディヴァリウス」」

俺とルナサを囲う様にして赤青の音符型の弾幕が交互に張られる。その音符型の弾幕はある程度の距離まで広がると一気に炸裂し大量の丸弾を放つ。その密度は俺たちから遠ければ遠いほど濃くなり、避けることも困難なまでである。チルノは前方で戦っていたため避けることに専念せずとも軽々と躱しこちらに弾幕を放ってくる。が後ろにいた大ちゃんの方は避けることで手一杯のようだ。俺はその間に次のスペルを描き始める。俺の描く速度で相手の弾幕を避けながらとなると、一試合二枚、多くても三枚描ければいい方だろう。

「チルノちゃん大丈夫!?」

「うん!大ちゃんここから反撃だ!」

弾幕を避けきった大ちゃんが、チルノに声を掛けチルノが反応する。一気に決めに来る気だ。先ほどまでとは打って変わって大ちゃんが前に出て弾幕を放ちチルノが後ろから仕掛けてくるっ!!

「『凍符』パーフェクトフリーズ!!」

さあて、ここからが正念場だ!!額に汗をかきながら俺は目の前の弾幕と対峙する、すでにスペルカードは描き終わった、これもルナサが前で頑張ってくれたおかげだ。ここを乗り切ればこの試合、勝てる!!

俺だって伊達にチルノと戦ってきたわけじゃない!うおおお!

 

息も絶え絶えなほど疲れてはいるが、ギリギリ避けきった。

「はあっはあ・・・っ、ルナサァ・・・!」

「いくよっ・・・アトゥン!」

肩で息をしながら叫ぶ。余裕なんてない、だからこれで決める

「「『大合葬』霊車コンチェルトグロッソ怪」!!」

俺とルナサが宣言すると、俺を中心に、影絵のようなリリカ、メルランが現れる。そして俺を中心に三角形に位置どると、あの時、霊夢達に使った渾身のスペルを再現する。

 

彼女たちの一糸乱れぬ弾幕に、チルノと大ちゃんは遂に敗れた。

「やったぜ!」

「うん、お疲れ様」

俺とルナサはハイタッチを交わす。ルナサはそのまま俺を抱え地上に降りる、どうやら傷が痛んだのバレてたらしい。てへへ。

「ぐあー悔しいー!初めてアンちゃんに負けたー!」

「そ、そうだね。確かに悔しいな。」

そう、今回俺は初めて二人に勝ったのだ!まあ一対一じゃないから、次こそは一対一で勝ちたいと思うけど!でもやっぱり勝つと嬉しい!やったぜ!!

「でも、あなたたちも強かったわ、正直妖精だと思って甘く見ていたわ」

ルナサが二人に向き、感嘆の声を漏らした。実際二人ともすごく強かった、最後まで粘り続けてもし『大合葬』コンチェルトグロッソ怪でも二人がやられていなければ負けていたのはきっとこちらだっただろう。

「うん!二人ともすっごい強かった!やっぱり二人はすごいよ!」

俺も素直な感想を二人に告げる。二人とも照れてる!可愛い

「あっ!それよりもアンちゃん!腰痛いんでしょ!途中で痛がってたのちゃんと見てたんだよ!」

!?あの状況で大ちゃんにもバレていただと・・・!

「あーやっぱりそうだったんだ。アンちゃん無理しないっていってたから違うのかと思ってた」

チ、チルノにまで!?

「あ、やっ、ごめんなさい!」

「もう!しばらくは弾幕ごっこ禁止だからねっ!チルノちゃんもあんまりアンちゃんに無理させちゃだめだよ!」

「わ、わかった」

大ちゃんがお怒りだ、ものすっごく怖い。チルノも若干引いてるよ!

ルナサはもう帰ろうとしてるし!ちょっと待ってよ!

「それじゃあ、今度は私たちの演奏も見に来てよ。またね」

帰っちゃった。ルナサぁあああ!

「アンちゃん?しばらくは安静にしないとダメだからね?」

こ、怖い!た、助けてチルノ!ってもういない!?あうぅ、ごめんなさいぃいい!



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第十四話

ポケモンユナイトはやくやりたいねえ。
サマーセールとかまじ何買うか迷うよね・・・。
さて、今回もゆっくりみていってね!


弾幕ごっこから数日。もう少しで大ちゃん無しでは生きられない身体にされるところだった俺は、ようやく外に出ることを許された。危なかったぜ。今日は久しぶりにチルノと遊ぼう、そう思って大ちゃんと一緒に外に出る。外に出るとき大ちゃんが手を繋いできた、少し照れた様子で。天使か!全く大ちゃんは可愛いなあ。なんて思いながら俺は手を握り返す。大ちゃんは顔を赤くして、照れてしまったけど離す様子でもないのでそのまま歩く。

 

「チルノいないねー」

「そ、そうだねどこかで遊んでると思うんだけど」

しばらく辺りをさがしていたんだけどチルノどころか妖精すら見ない。むむむ

心当たりはある、おそらく萃香の仕業だろう、彼女が起こした異変はとにかく人や妖怪を集めて宴会を開こうというものだった。今年は春が短く、ほとんど宴をしていなかったことに不満を感じ自らの能力で宴会を執り行ったというわけだ。はた迷惑な異変だけどまあ気持ちはわからんでもない、というわけで恐らく色んな種族の人間やら妖怪を集めて宴会を開いているのだろう。いいなー

実は俺、白玉楼でやった宴会以外の宴会に参加したことがないんだよね。いつもピチュってたし。しょうがないよね。

・・・宴会かー。行ってみようかな。たしか博麗神社で宴会させてたはずだし。そうと決めればさっそく博麗神社へごー!大ちゃんの手を引いて俺は博麗神社へと向かうのだった。

 

博麗神社に着くと既に宴会が行われており、様々な妖怪や妖精が集まっていた。その中にはチルノやルーミア達の姿もあった。

「おーい、チルノー、ルーミア!」

「アンちゃん!大ちゃん!」

「ごめんね、チルノちゃん、最近一緒に遊べてなくて」

「ううん、アンちゃんが元気になったからいいよ!また明日から遊ぼう!」

数日会えなかっただけだけど、チルノたちも元気そうでよかった。ふとルーミアが近づいてくる。

「アトゥン~、これ美味いぞー」

「どれー?あ、んぐ・・・っ!・・・!」

そう言って手に持っていた焼き鳥を口に突っ込まれる。のっ!喉が詰まるッ!

あ、危なかったあー!必死で抵抗し、なんとか焼き鳥を口から出してもらう。

「ゲホッごほっ、・・・っすぅーはぁー」

「大丈夫かー?ごめんなー、これ美味かったからアトゥンにも食べさせようと思ったんだけど、失敗しちゃった」

ルーミアがしょんぼりした顔で落ち込んでいる、ああ、可愛いなあ!

「大丈夫!ちょっとびっくりしたけど嬉しかったよ!も、もう一回食べさせてくれたら嬉しいなー、なんて」

「いいぞー、ん-」

今度はルーミアが持っている串に俺がかぶりつく。美味しい、口の中で味わって食べる。この肉感とタレの相性が抜群に良い!これはいい毎日食べたいくらいだ!っとのんびり食べてたらルーミアに悪いしどんどん口へと運んでいく。焼き鳥って食べていくと途中から縦のままじゃ食べられない部分が出てきたので、横からかぶりつく、そのまま串から外そうと顔を横にずらしていく。

「あむっ」

その時、向かいで串を持っていたルーミアが串に残っている最後の部分にかぶりついた。そのままルーミアも顔を横にずらしてくる。ルーミアも食べたかったのね、ごめんね、一人で食べてて、あれ?ルーミアそっちの手にも持ってない?こっちはまた別の味なの?そっか、え?こっちも食べさせてくれるの?やった。あーん、ん!こっちも美味しいこっちは塩かあ、タレとは違ってあっさりしてて食べやすいなこれはお米が欲しくなってくるねえ。もっと食べたいー、あっちにまだたくさんあるって?よしみんなの分と合わせていろいろとりにいこっか!ルンルン

ルーミアとお皿にたくさんの食べ物を乗せた俺はチルノたちのもとに戻る。途中宴会の幹事らしい魔理沙に声を掛けられたけど、まさか顔を覚えられていたとは!理由は変なやつだったかららしいけど、それでも嬉しいね!

戻ってくると大ちゃんがなぜか放心状態でチルノがしきりに声を掛けている。

「どしたのー?」

「アンちゃん!わかんない!急に大ちゃんが黙っちゃってずっと呼んでるのにっ!」

涙目でチルノがこっちに助けを求めてくる。俺とルーミアは料理を置くと大ちゃんに声を掛ける

「大ちゃーん、だいじょうぶ~?」

「だいじょうぶかー?」

大ちゃんは全くの無反応だ。よく見てみると口元だけ微かに動いているような・・・?

むむむ、これは・・・や・き・と・り?焼き鳥だ!大ちゃんはきっと焼き鳥が食べたかったんだ!

俺は急いで皿から焼き鳥を何本かとり、大ちゃんの口に近づける。

「大ちゃん!ほら、焼き鳥だよ!あーん」

すると大ちゃんの目の光が戻り始め・・・

「あむ」

やったぜ!俺はチルノとルーミアに軽くウィンクをする。大ちゃんは意識が戻ったのか少し気恥しそうに、顔を伏せる。

「どう?おいしい?」

「うん、おいしい。」

そう言って控えめに串に口をつける大ちゃん、このまま俺が串を持ってていいのかな、いや俺はいいんだけど大ちゃん食べづらくないかな?このまま渡した方が、いやでも、う~ん。

・・・どうしたらいいんだあああ!

「アンちゃん、食べ終わっちゃった。もう一本ちょうだい?」

そう言って口を開けて待っている大ちゃん。これは・・・!いいってことだよね!?そういうことでいいんだよね!俺はゆっくりと大ちゃんの口に次の串を運ぶ。

その後、チルノとルーミアにも食べさせてと言われてみんなに食べ物を食べさせたり食べさせてもらったりしていたら宴会の終りを迎えた。

いやあ幸せな時間だった!



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第十五話

ここのところ日常パートばっかりですみませんねえ
今回も日常パートです。
いや、まあ異変は起きてるんだけどね。うん
のんびりとした時間も大事かなって。そうだよね
というわけで今回もゆっくりみていってね!


昨日の宴会では結局お酒飲めなかったなー、まあ楽しかったしいいか。え?その恰好で飲んでもいいのかって?こう見えてもそりゃあ妖怪ですから。それにしてもここのところ平和だなあ。一応異変は起きてるんだけどねえ。昨日の宴会にはやっぱり妖精や妖怪がたくさん集まっていた。人間は確か博麗の結界に守られていて萃香の能力を受けず宴会にはほとんど参加していなかった。一部例外を除いて。ということでもうそろそろ彼女たちが動きだしてもおかしくは無いと思うんだけど。まあ俺が考えてもしかたないことか。

そうだ、久しぶりに何か作ろう。俺の能力で。っていうかそうだな、この際俺の能力について一度ゆっくり整理してみるとするかあ。

最近バタバタし過ぎてすっかり能力も使ってなかったけど。

 

俺の能力は 絵を描く程度の能力 これはなかなかにすごい能力なのだ、というのも今俺が住んでいる家、これはこの能力によって生み出されたもので、つまるところこのキャンパスにこのクレヨンで描いたものを具現化することが出来る。そういう能力だ、意外と雑に描いても割となんとかなる、俺はそんなに絵上手くないからなわっはっは!・・・誇るようなことじゃないけどね。

 

ということで久々に何か作ろう!何作ろっかな。ん~遊具的な、シーソーとか作っちゃおうかな。大ちゃんとかチルノとかルーミア来た時遊べるしね。よし描こう・・・。

俺はのんびり家の外に椅子を置いて絵を描きだす。そして描き終えた絵をシーソーを置きたい場所に掲げる。

すると、絵の中にあったシーソーが徐々にその姿を現す。その時俺は気付いた、

そういえばこれ一人で出来ないじゃん。

・・・誰か来ないかな。一人シーソに腰を下ろしながら俺は物思いに耽ることにした。ふふっ

恐らく哀愁が漂っていたであろう俺の背中。

「何してるんだい?あんた、そんなとこ座って」

そんな背中から声を掛けられた。振り向くとそこには小町が立っていた。

「あ、小町いらっしゃい、って俺の家知ってたっけ」

「いいや、この辺りぶらついてたらあんたが見えたから声かけただけだよ。この家あんたの家だったのかい」

「そうそう、俺の家。すごいだろ」

えっへんとどや顔で俺がそう言うと小町は少し家を見てから。

「ああ確かにすごい家だねえ」

とだけ言った。まあ今はそんなことはどうでもよくって、せっかく小町が来たんだしシーソーに乗って遊んでもらおう。

「ねーねー小町ー、そっち乗ってー」

俺は指さししながら小町にシーソーに乗るよう促す。

「ん?これかい、いいけどこれなんだい?」

小町がシーソーに座ると俺の座っている方が持ち上がる。ちょっとした浮遊感みたいな、これが面白いんだよね。反対に小町は自分が座ったとたんに落下したわけで、ちょっと驚いてるみたいだ。

「アトゥン・・・なにこれ」

「小町地面蹴って」

「わ、わかった」

頭をかしげながら言われたとおりにする小町、すると小町が持ち上がって俺が降下した。この上がってから落ちてく感覚がまた楽しいのだ!

「おお、今度はあたいが上がった」

今度は俺が地面を蹴ってシーソーを傾ける、それを何度か繰り返す俺と小町。

のんびりとした時間が流れる。

 

しばらくして小町がシーソーを降りる

「いやあ、なかなか面白かったよ」

小町はそう言って満足気に伸びをしている。

「そっか、そりゃあ良かったよ、今日作ったばっかりだったから、一緒にやるやつもいなくてさ暇だったんだ」

俺も満足したからシーソーから降りて小町のもとに駆け寄った。

「ふうん、そうかいでもあれだね、ずっとやってると腰が痛くなるねえ」

「まあね、ちょっとはしゃぎ過ぎたかも」

腰をさする小町、確かにちょっと気分が舞い上がっていて小一時間くらいシーソーに乗っていたわけだし、そりゃ腰も痛くなる。

「あんたが満足したんならそれでいいよ」

小町は俺の頭をくしゃっと撫でながら言った。

「そういえば小町は何でこの辺りをぶらついてたの?」

「ん?そりゃあサボりだよサボり」

大方、死神の仕事をサボって来たのだろうなどと思っていたらそうだった。

言っちゃっていいのかなそれ。

「いいの?そんなことしてて」

俺が聞くと自信満々に小町が応える。

「大丈夫、大丈夫バレないうちに戻れば「見つけましたよ、小町!」ぅえ!?映姫様なんで」

小町が言い切る前にその人物は現れる、小町の上司であり閻魔様、四季映姫・ヤマザナドゥその人だ。彼女は小町と俺の前に降りてくるとむすっとした顔をしたまま小町に詰め寄る。

「なんで、ではありません、また仕事をサボりましたね小町」

「あー、えっとそれはですね映姫様」

このままではまずい!映姫様の説教が始まってしまうぞ!せっかくさっきまで小町が遊んでくれていたのに。というか、考えたら俺と遊んでたから映姫様に見つかったんじゃ、

・・・小一時間シーソーに付き合ってくれた小町が怒られるのは何だか可哀そうな。うん、知らなかったとは言えサボりの小町を遊びに誘ったのは俺なんだし、謝ろう。

「ごめんなさい!」

俺は頭を下げてそう言った。今にも説教を始めそうな映姫様と半ば観念した様子の小町が、俺の声で驚いたようにこちらを向いた。

「えっと、俺が小町に遊ぼうって言った!・・・だから、小町は悪くなくて・・・あ、えっと今日一緒に遊ぶやついなくて。それで」

謝ったはいいが何を言えばいいか全然考えてなった。どうしよう頭全然回らないし言葉に詰まる。何か・・・何か言わなきゃ。必死で考えていると不意に頭を温かくて柔らかい感触が包む。顔を上げると映姫様が俺の頭を撫でていた。何で?

「あなたはえらいですね、よく謝ってくれました。この素直さを小町にも見習ってもらいたいものです。ですがあなたは悪くありません。本を正せば小町が仕事を抜けたことが悪いのですから、知らずに遊びに誘ったあなたが謝る必要はないですよ」

そう言って安心させるように優しく微笑むと映姫様は俺の頭をまた撫でた。ちょっとくすぐったいけど、だいぶ気持ちが落ち着いてきた、すると映姫様が撫でるのをやめ、小町の方を向く。

「はあ今日はこの子に免じて許しますが、次見つけたら覚悟すること。いいですね?今日は仕事に戻りなさい」

「わかりました」

映姫様がそういうと、小町もそれ以上何か言う事もなく帰っていった。

その後、俺は映姫様に家を見せて欲しいって言われたから家に招待したよ!そしたら良い家ですねって褒めてくれたぜ!

その時もなんだけど、映姫様にお茶を出したり家を案内したりすると決まって、えらいですって褒めながら頭を撫でられるんだよね。嬉しいけどさっ!何でだろう

ということでその日は映姫様と沢山お話したり、頭を撫でてもらったりして過ごした。

映姫様も帰るまでずっと柔らかい顔でとても閻魔様には見えなかったし、すごく可愛かった!

その夜、俺は何度も撫でられた頭の感触を思い出しながら眠りについた

 



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第十六話

じぇんじぇん話が進まないっす。
でもそろそろ進みますお待たせしました今回日常回です。ごめんね
そういう日もあるよ。うん
お腹空いた、ご飯食べるわ。じゃあね
今回もゆっくりみていってね!


昨日は珍しい人にも会えたし、いい一日だった。

とはいえここのところ、というか大体いつも誰かが来るのを待ってたり、何かが起きるのを待ってばかりいる。そろそろ自発的に何か行動すべきではないだろうか、思い立ったが吉日!今日は誰かに会いに行こう。せっかくだからまだ会ったことのない人に会いに行こうか。紅魔館とかまだ誰にも会ったことないな、まあ行ったっていきなり襲われたりはしないでしょ~。しないよね・・・

 

俺は紅魔館へやってきたぞ!

門の前では例のごとくというか当たり前のように門番である美鈴が寝てた。立ったまま。まあ今日は天気もいいし眠たくなっちゃうよね~。なんて思いながら横を素通りしていく。というわけで、すんなりと敷地内に入った俺はそのまま正面玄関の扉を開ける。特に何事もなく紅魔館に入ることが出来た。

 

誰にも会わない・・・。

しばらく紅魔館を探索していた俺だったんだけど、ここまで全く誰にも会わないし、迷った。紅魔館って思ってた以上に入り組んでてどこから来たのかすらわからないよ、まさか屋敷の中で遭難することになるとは・・・このままでは今日の目的どころか家に帰れるかすらわからないぞ・・・!段々と焦りを感じ始めてきた俺はとにかく一度紅魔館を出る決意を固める。

 

それからまたしばらく歩き続け俺はとうとう、というかちょっと疲れたから一旦その場に座り込んだ。どのくらい歩いたのか、窓もない場所を歩き続けていたからか、時間の感覚があやふやになっている。後どのくらい歩かないといけないのだろうか。もうこのまま一生出られないかもしれない、これだけ歩いているのに、誰にも会えないしこの先も誰にも会わないかもしれない。

後ろ向きな考えが頭の中に渦を巻きはじめる。

そんな時だった彼女が現れたのは。

「何してるの?」

うずくまっていた俺の頭上から声がして、俺は顔を上げた。そこには赤い色の服を着た金髪の可愛らしい少女が立っていた。この場所にそんな少女がいるとしたら彼女しかいない。

吸血鬼姉妹の妹 フランドール・スカーレットだ!

「迷って、疲れたから休んでた」

俺は座ったまま答える。俺は少し安心した、この屋敷の住人である彼女に会えたから。しかしすぐにその考えは誤りだったと思い知ることになる。

「ふーん、あなた侵入者ってこと?」

その言葉に身体が凍ったように動かなくなる。

直感的に悟った、今俺の命は彼女の手に握られているのだと、彼女の気分次第ではすぐにでも俺は殺されてしまうということを。

「な、なんでそんなこと思ったの?」

俺は、出来る限り平静を装ってそう聞いた。

「だってお姉さまたちが出かける前に、知らないやつが来たらそいつは侵入者だから遊んでもいいって言ってたから」

そう言って俺の顔を覗き込んでくる。その目はまるで無邪気な子供が新しいおもちゃを与えられたようで、その時初めて俺はここに来てから死を身近に感じた。このままでは壊されてしまうっ!彼女の気を俺以外のものに逸らさなければ!考えるより早く俺はキャンパスとクレヨンを取り出す。

「なっ、なあ手品に興味ない?」

「・・・何か出来るの?」

食いついた!苦し紛れではあったフランの意識を別のものに向けることが出来たぞ!

ぶっちゃけ手品何てほとんど知らないけどっ!今の俺にはこの能力がある!タネも仕掛けもある能力を使った手品!

「今からここに絵を描くんだ、それを絵の中から取り出してみせるよ」

俺がそう言うとフランは興味を持ったようで、目を輝かせている。少し心が痛むが元より手品にはタネも仕掛けもあるのだ!そんなこと気にしている場合じゃない!

問題は何を描くか、出来れば取り出した後にフランの興味を引けるものがいい、となると何か遊び道具になるもの・・・ぜ、全然思い浮かばないっ!考えている間にもとにかく遮二無二手を動かす。フランがまだかまだかとうずうずしている。考えている時間は無い!

とにかく俺は今描いたこの、フランのデフォルメ絵を・・・ってなんだこれ!とはいえ描いてしまったのなら仕方あるまい!俺はそのままその絵をフランに見せ、

「それじゃあ、いくぞっえい!」

「わあ!すごいっ!ほんとに絵が出てきた!」

掛け声とともに絵の中に描いたフランを取り出す。出てきたのはデフォルメされたフランのぬいぐるみだった。フランは本当に絵の中から出てきたぬいぐるみをみて目を輝かせている。

まっまぁ概ね予定通りだ!ってかこれどうしよう取り出したはいいけど。

え?欲しいの?いいけど・・・もっといろんな手品が見たい?そ、それはちょっと見せてくれたら屋敷の外まで案内してくれるの?でも他のっていわれてもなあ、うっ・・・ごめん知らない

俺は正直に彼女に謝る、もしかしたら不興を買って殺されてしまうかもしれない、でも他の手品と言っても親指が離れるやつくらいしか思い浮かばない。

え?いいの?それよりも遊んでほしい?う、んいいよ、弾幕ごっことか戦ったりするのは得意じゃないけど。おしゃべりとかでいいの?わかった!じゃあいっぱいお話聞かせてあげるよ!こう見えて最近の異変にはよく関わってるからね!

 

結局俺はその日フランに気に入られたのか、殺されたりはしなかった。それでもこれ以上事態がややこしくなる前に、レミリア達が帰ってくる前に屋敷を出た方がいいと思った俺は日が暮れる前にフランに別れを告げ屋敷を出た。

帰り際俺のぬいぐるみも欲しいと言われたけど、近くに鏡もなかったしいつレミリア達が帰ってくるかもわからなかったので、また今度遊びに来た時にと無理やり納得してもらった。

俺の主観でしかないけど、結構フランとは仲良くなれた気がする。浮足立ちながら俺は家へと帰る

 

明日もまたどこかへ行ってみようか・・・次は誰に会えるかなっ!

 



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第十七話

今回やっと進みます。お待たせ!
後、この話書くために原作の時系列を整理してたんだけど
暫定の流れだと、すげー時間かかるっぽいのでごりごり改変します。
ごめんね、なのでまた大まかな流れの見直しから入るっす。
というわけで今回もゆっくりみていってね!


さあ!今日は永遠亭に向かおう!意気揚々と家を発つ。昨日の紅魔館での出来事に味を占めた俺は、今日もどこかへ遊びに行く予定を立てていた。

というわけで俺が白羽の矢を立てたのが次の異変が起きる舞台である、永遠亭!遊びに行ってみようと思う!まあ異変が起きるのはまだ先だろうから。いいよねー

時間もかかりそうなので、早朝からの出発だぜ!いやあ~、朝早くからお出かけっていうのもいいね!なんていうか朝の独特な静けさっていうのかなそういうのが結構好きだなあ。

 

のんびりと空を飛びながら目的地の永遠亭、を覆い隠すように生えている天然の迷宮。

通称迷いの竹林にやってきた!さっそく入ってみよう!運が良ければさくっと永遠亭に着くかもしれないし、まあ最悪誰かに会えると思うし、なんんとかなるよ!

代わり映えの無い竹林をひたすらに歩き続ける。紅魔館の探索をしてる時もそうだったけど、今回もまた誰にも会わないね・・・。何でだろう。

まあ、歩き始めてまだそんなに時間も経ってないし、そんなもんだよね。

 

それからまた休憩をはさみつつまたしばらく歩き続け、結局夜になっても誰にも会うことは無かった。出口もわかんないし。とにかく疲れたから今日は寝てまた明日がんばろう。

 

それから次の日もそのまた次の日もさらにその次の日も、永遠亭にたどり着くことも誰かに会うことも、竹林から出ることも叶わなかった。

そんなこんなで飲まず食わずどのくらいの時間歩いたか、一か月は過ぎただろうか、いい加減精神も摩耗してきて身体の方も限界を迎えつつあった日の事。

 

妖怪の身体でよかったと今以上に思うことはないかもしれない。もし人間だったら既に死んでいたことだろう、本当に妖怪でよかった。

それにしてもまた随分家を空けてしまったなあ、大ちゃん辺りにかなり心配をかけてしまっている気がする。帰ったら謝りに行こう。とにかく誰かに会いたい、もうずいぶん声も出してない気がするし、人肌が恋しいよお~。

なんで誰にも会えないの・・・?もしかして避けられてる、わけないか別に会ったこととか無いし。あうぅーさすがに身体も疲れて来たよ~、こんなに長い時間一人でいることなんて無かったし・・・寂しい。

とにかく歩こう、歩き続ければいずれどこかに着くだろうし誰かに会えるはず、そう自分に言い聞かせて、俺はまた歩き始める。

誰かに会いたい、その一心で歩き続ける、といっても初めのころのように元気よくというよりかは道中で描いた杖を頼りにふらつきながら歩いているといった有様で。

歩き始めて一週間くらいの頃いっそ家でも建ててやろうかとも思ったんだけど、建てた家に戻ってこれる気がしなかったからやめた。

土の上で寝起きしていたせいか、体中の節々が痛むけどそれを気にする余裕もない。限界が近い、次第に手の力が抜け始め、杖を握っていられなくなる。杖を手放してからはふらふらと千鳥足でよろめきながら足をもつれさせ視界がぐるりと回る。

身体が言う事を聞かない、何度立ち上がろうとしても足が動かない、腕を前に出そうともがいてもそれもまた無駄になる。

目が霞んできた・・・さすがに妖怪だしこのくらいでは死なないと思うけど

とりあえず少し眠ろう。大丈夫起きたらまた元気になってるそしたら今度こそ竹林から出よう。

みんなとまた遊ぼう。それがいい

直前背後で物音が聞こえたが、いったい何だったのか

その時意識がハタと途切れ、音の正体はわからずじまいになった

 

 



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第十八話

愛煙家様誤字報告いつもありがとうございます!
お腹が空きました
どうも!今更憑依華やってます!いやあ面白いね
というわけで今回永夜編です!たぶん
今回もゆっくりみていってね!


突然ですが現在、俺は全力で逃げ回ってます!というのもですね!

約一か月迷いの竹林を彷徨った俺は疲労困憊でまるで電池が完全に切れたおもちゃのようにぶっ倒れたわけなんですがっ!親切な蓬莱人の藤原妹紅さんに拾われまして!

一週間ほど妹紅さんの家で眠っていたらしいです!

え?それがどうして逃げ回っていることに繋がるのかって?まあまあ話はここからですから、焦らずに、っね!あっぶねー今かすったよ!弾幕掠ってったよ!こええぇ!

っとまあ眠りから目覚めた俺はせっかく本物の妹紅さんに会えたわけだから当然テンション上がりまくりですよ!でも妹紅さんって永夜異変が終わるまで結構排他的な雰囲気があるっていうかまあそんな感じじゃない?だからこのままだと普通に家に帰されちゃうなって。

それはちょっといやだったから必死に考えた俺はお礼に家事の手伝いをしばらくの間申し出た、とにかく頼み込んだ土下座もした!そしたら妹紅も根負けしてしばらくいてもいいと言ってくれた!

しばらく一緒にいてわかったことは妹紅の自己管理がかなり杜撰なこと、これはまあ慧音先生が心配するのもわかる、妖怪になってから俺も食事なんかは基本取らなくてもいいんだけど、やっぱりおいしい物は食べると活力が沸いてくるものだ!妹紅はその辺りがめんどうらしく基本的に自分ではたまにしか作ろうとしない。

そのため俺は図々しいかもしれなかったが毎日妹紅にご飯を食べるよう作っていた。

妹紅は自分ではあまり作らないけど作ったらちゃんと食べてくれるのと、俺の作る料理が美味いって言ってくれたのが嬉しくて毎日頑張って作った!

それから、弾幕ごっこもやったりして、やっぱり妹紅は強くて負けまくったけど。そこそこ妹紅とも仲良くなってきたかなと思い始めたころ、彼女はやってきた。

 

永遠亭のお姫様 蓬莱山輝夜様

 

二人はやっぱり仲がいいのか、軽口を叩き合って殺し合いをしたりお酒を飲み交わしたり、気軽な関係なことがわかるよねー。まあそれで、何で私が逃げ回ってるかっていう話なんだけどね、

っとと、また流れ弾がっ!

ふぅ、ああ、うん。まあそういうこと妹紅と輝夜の戦いを近くで毎回見ようと頑張ってるんだけどね、さすがに俺とは格が違うというか、戦いの余波で死なないようにするので手一杯というか、でも二人から離れて迷っても困るから、二人の近くでこうして流れ弾をひたすらに避けているというわけですっよ!

まあこれくらいなら何とか避けるだけなら俺にも出来るようになったんです。俺だって日々成長しているわけですよ!すごいでしょう?ふふふ今の俺ならあの博麗霊夢にだって勝てますとも!えぇ!

・・・冗談だけどさ。

それにしても今日は一段と二人の戦いが激しいね、もしかして俺が近くにいること忘れてない?

まあいいけどさ。避けるのちょっとしんどくなってきた、でもやっぱりすごいなあ、俺もあんな風に戦えたらもっと楽しいだろうな。

いいなあ。って二人とも流石に白熱しすぎじゃない!?もういいや!逃げよう迷ってもいいから一旦二人から離れよう!じゃないと巻き込まれるっ!

今までの経験上から、二人の激化する戦いに危機感を感じた俺はこの場を離れることを瞬時に決断、実行に移る。しかし、時すでに遅く二人の戦いはラストスパートを迎えた。

「これで終わりだっ!!『フェニックス再誕』」

「ええこれで終わりにしましょう『神宝』蓬莱の玉の枝—夢色の郷—」

燃えるような弾幕と煌びやかな二つの弾幕がぶつかり合う。どちらも広範囲全方位弾幕であるためこちらへ飛んでくる流れ弾も密度が全く違う。

さらに、弾幕が相殺されて起きる余波で俺は自由を奪われる。

これはダメだ。俺は飛んでくる弾幕を見ながら確信する、魔理沙のマスタースパークを正面から放たれた時と同じ、いやそれ以上にこれは無理だと体中が訴えてくる

諦めるしかないと。

「ぎぃやぁああああ!!」

俺は最後のあがきといわんばかりに叫び声をあげて全身に弾幕を浴びた。

今回は異変を見ることも叶わないかもしれない。

落ちていく意識の中俺は冷静にそんなことを考えていた

 



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第十九話

雨降ってます、雷なってます。
味噌らーめん食べます。更新遅れます。
永夜抄終わりからプロットの再編中なので、気長に待ってやってください。
今回もゆっくりみていってね!


平穏な日常は突如として終わりを告げ、時代は新たな舞台へと移行する。

誰かが望んだわけじゃない。望まずとも訪れる変化がある。

明けない夜が無いように、止まない雨がないように。明日は当然のようにやってくる。

・・・は・・。・・・、・・・・。

 

あー!うるさい!

ガバッと起き上がる。変な夢を見ていた気がする。誰かに延々と何かを言われているような。

ん~、思い出せない。まあいいか

昨日久しぶりに我が家へと帰ってきた俺は、というか我が家で復活を遂げただけなんだけど。

ともかく俺は久しぶりのじぶんのベッドで眠ることが出来たのだ!そこまではよかったんだけど夢見が悪かったかなあ。

背中がじんわりと冷えてくる。汗もかいていたらしい。俺はベッドから起き上がって、タオルで身体を拭いて、新しい服に着替える。

時刻は既にお昼時、昨日復活したのが夕暮れ時だったから、結構眠っていたようだ。

今日はどうしようか、しばらくは家にいてもいいかもな。迷いの竹林のように迷う場所なんて、幻想郷にそうあるものじゃないけど、さすがに今回は疲れたし、次の異変までお休みしよう。異変が起きればすぐにわかるだろうし。

2か月ほど空けてしまった家はほこりがうっすらと積もっていたりしたので、掃除を始める。

 

家の掃除があらかた終わった頃、家の外が何やら騒がしいことに気付いた。

不審に思ってドアを開けると、そこには懐かしい顔があった。

「大ちゃん、久しぶり」

大ちゃんは俺を見るなり、胸に飛び込んできた。

「アンちゃん!どこに行ってたの!心配したんだよ!」

その声は怒っているような、安心したような、大ちゃんの気持ちがたくさんこもった言葉だった。

「ごめん。ちょっと探検にでかけたら、迷っちゃって。えへへ」

大ちゃんの俺を心配してくれていた気持ちが嬉しくって、同時に申し訳なくて俺はすぐに謝る。

「えへへ、じゃないよお。ほんとにほんとに心配したんだよ!」

泣きそうになりながら大ちゃんが怒る。俺は大ちゃんの頭を撫でながら何度も謝った。

「もう勝手にどこかへ行っちゃダメだよ」

段々落ち着きを取り戻していった大ちゃんは、それでも少し顔を膨らませて言った。

「うん」

すでに何度も無断で長期間家を空けているわけだけど、これからは出来るだけそうならないように努力しよう。

「そういえば、チルノは?」

俺がそう問いかけると、大ちゃんは少し顔に影をつくってから

「チルノちゃんは最近いろんな人にいたずらしにいってるの」

そう言ってから大ちゃんは続けて

「それに最近他の子も変なの、やっぱりお花がたくさん咲いているのが原因なのかなあ」

とぼやくように言った。その言葉に一末の不安を覚える俺。

「花がたくさん咲いてる?」

「うん、なんだかいつもは咲いてない花とかが咲いてて、チルノちゃん以外の子達とかはびっくりしてて、大変みたい」

まさか、もう異変が起きているとは、それにまだ永夜異変からそんなに時間も経ってないだろうに。大ちゃんが不安そうな様子でこちらを見ている。とはいえこの異変は誰かが何かしなくとも解決される。

そもそもこの異変は誰かが起こしたわけではなく、幽霊の自然発生が原因のようなものだ。だから放っておいても、騒ぎはいずれ治まる。もっとも、小町がもっとちゃんと仕事をしていたら、そもそもここまで騒ぎは広がっていなかったかもしれない。全くマイペースな船頭なものだ。

でもそうだな、そういうことなら少し、見に行ってみよう。

もちろん大ちゃんと一緒に。

俺は大ちゃんの手を握ると空へと飛び出した。

 

 

 

 



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第二十話

ナハト改様、サンサソー様誤字報告ありがとうございます!
雨降ったり、快晴だったり。ほんと最近天気の移り変わりが激しくて風邪ひきそう。
湿度99%ってなんだよ。 どうでもいいね、はい。
今回は、執筆中にどうしてもお風呂に入りたくなって、入ってたら20時間に合いませんでした。 ごめんね。
短いですが!今回もゆっくりみていってね!




今回の異変は誰かが起こした事ではない。という旨を大ちゃんに端的に伝え、俺と大ちゃんは各地でどんなことが起こっているのか見て回ることにした。二人で手を繋いで空を飛ぶ。最初こそ不安そうな大ちゃんだったけど。

 

何があっても大ちゃんは守るよ

 

なんて冗談めかして言ってみたら、ちょっと顔を赤くして俯いちゃったんだけど、それで緊張もほどけたのかいつもの調子に戻ってくれた。やっぱり元気なのが一番だよね!

 

それからまたしばらく二人で空から様子を伺っていると、正面からすごい速さで何かがやってくる。そのまま疾風のように俺たちの横を駆け抜けていったかと思ったら、再び風の様に俺たちの前に現れたのは。幻想郷最速と名高い鴉天狗のブン屋。

 射命丸文だった。

俺と大ちゃんは突然目の前に現れた彼女を不思議に思いながら顔を見合わせる。その様子を見ていた文がさっと、懐から一つの紙を取り出す。

受け取って見ると、それは射命丸文の文々。新聞の名刺だった。

 

「私、鴉天狗の射命丸 文と申します。最近幻想郷で様々な異変が起きているということで、取材にやってきたのですが、少しお時間よろしいですか?」

「いいよ、ねえ!取材だって大ちゃん!」

あの射命丸文から取材!二つ返事で答える俺と不安そうな顔の大ちゃん。

「アンちゃん!大丈夫なの?」

「大丈夫だってほらちゃんと名刺に名前とかいろいろ書いてあるし。」

「そういうことじゃないよお!」

 

何か言いたそうだった大ちゃんだったが、諦めたように肩を落とす。

それから俺は文からのいくつかの質問に、今回の異変の核心には触れず答えることにした。

ここで全部話しても信ぴょう性ないし、何より実際見て知りたいよね!すべての質問に答えると、

文は少し考えこんでから。

 

「いやあ、ありがとうございます!とても助かりました、それでは私はこれで、またどこかでお会いしましょう。アトゥンさん、大妖精さん」

「またねー!あやー!」

「さ、さようなら」

 

と満足そうにどこかへ飛び去って行った。恐ろしいフットワーク。文の前では少し緊張気味だった大ちゃんがほっと息をつく。やっぱり大ちゃんは結構人見知りするのかな、

俺は大ちゃんの手をぎゅっと握り直す。すると大ちゃんも俺の手をぎゅっと握り返してくる。ちょっと照れくさいけど、嬉しい。俺と大ちゃんの間に静かな沈黙が流れる。

 

「お前らなにやってんだ?」

 

遠くから聞こえてきた声で、俺と大ちゃんは我に返る。手はつないだまま。

声のした方から現れたのは人間の魔法使い、霧雨魔理沙だった。

 

「魔理沙!久しぶり」

「おう、たしかアトゥンだったな。ほんとに久しぶりだぜ。それとよくチルノと一緒にいる大妖精だったな」

「こんにちは、魔理沙さん」

「それで?何やってんだこんなところで」

「異変が起きてるみたいだったから、大ちゃんと見て回ってたんだ」

「へえ、ちょうどいいや私もいろんなところ見て回ろうと思ってたんだよ。ついてってもいいか?」

「いいよ~。大ちゃんもいい?」

「えっ?あ、うん。アンちゃんがいいなら・・・」

 

こうして俺と大ちゃんは、新たに魔理沙を加えて、幻想郷を見て回ることにしたのだった。

この先に何が待っているのかも忘れて。

 



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第二十一話

寿司食べるんだ、寿司。
不思幻ロータスRsteamで買うかコンシューマーで買うか、
発売されたけど悩んでる。
今回もゆっくりみていってね!


「それにしても、お前らほんと仲いいんだな」

俺と大ちゃんの様子を見て、魔理沙が急にそんなことを言ってきた。

「そりゃあ俺は大ちゃんの事好きだもん」

魔理沙のつぶやきともとれる言葉に反応する。俺の言葉を聞いた大ちゃんが顔を真っ赤にしている。相変わらず照れ屋さんで可愛いなあ大ちゃんは!

 

「あぁ、お前って・・・いや、なんでもないぜ」

 

そんな俺と大ちゃんの様子を見て、魔理沙が何か言おうとしてそのまま呆れたような顔で口をつぐんだ。そういう反応されると逆に気になるんだけど。

でもこういう時、問い詰めても答えが返ってこないのはわかりきっているから追及はしない。

 

三人であてもなく幻想郷中を彷徨っていると、開けた場所に出た。

一瞬そこに太陽を見た。そこ一面に広がる満開の向日葵の花たち、瞬きすることも忘れて俺はその光景に魅入っていた。時間にして数秒ほんの一瞬の間だったが、俺は息をすることも忘れていたかもしれない。そんな俺は大ちゃんの声で我に返る。

 

「すごいね、ひまわりがたくさん咲いてるよ。アンちゃん」

「うん・・・、すっごい綺麗だ!」

「ここら辺も異変の影響を受けてるのか?・・・いや違うな。お前は、幽香!」

 

魔理沙が声を上げるのと同時にそいつは、風見幽香は姿を現した。すごい圧を感じる。さすがは幻想郷でも指折りの妖怪。花を操る程度の能力の持ち主でありながら、ドがつくほどのSな性格。すっかり太陽の畑に向かっていることに気が付かなかった。

 

「誰かと思って来てみれば、魔理沙じゃない」

これが強者の余裕というやつだろうか、幽香は随分のんびりとした様子でこちらに話しかけてくる。

「しばらく見ないと思ったらお前こんなところにいたのか」

「ええ、魔理沙は相変わらず魔法の練習してるのね、少しは上達したのかしら」

「当たり前だ!」

幽香を前に百面相をしながら話す魔理沙と笑みを崩さずに話す幽香。

これでは完全に幽香のペースだなんとかしないと。

 

「・・・そういえばお前、花を操れるんだったな。今回の異変に何か関わってるんじゃないのか」

 

そう思った矢先、魔理沙がそんなことを言い始めた。これは嫌な予感がする。

 

「どうかしらね。私が異変に関わっているかどうか、知りたい?」

「っへ!最初から素直に話すなんて思ってないぜ!勝負だ幽香!」

その言葉を待っていたかのように幽香が先ほどよりも口角を上げる。やっぱりこうなった。

「いいわよ、でもそこの半端ものだけじゃ物足りないから一緒についてきた、妖精と・・・そこのあなたも一緒に相手してあげるわ」

 

そしてもちろんこうなる気もしていた。

っていうかさっきからちらちらこっち見てたでしょ!気づいてたぞ!

なんてことだあの大妖怪風見幽香と戦うことになるなんて、正直嫌な予感しかしない。

しかし、魔理沙は既にやる気満々だし、幽香もここからすんなりと逃がしてくれるような性格をしていないだろう。

隣にいる大ちゃんの顔を見ると、今にも倒れそうなほど青ざめている。

・・・ここで逃げたら誰が大ちゃんを守るんだ!守るって約束したんだ、何が何でも大ちゃんだけは守り切って見せる。俺は決意を固め、大ちゃんの手をぎゅっと握る。

こっちに顔を向けた大ちゃんに精一杯の笑顔を作って見せてから、俺は声高らかに名乗りを上げる

 

「俺の名前は山吹アトゥン!負けても文句は言うなよ!」

 

目を丸くしているであろう大ちゃんの驚きの声が聞こえてくるが、こういうのは啖呵を切って大胆にやったほうがいい。

 

「悪い、お前たちも巻き込んじまって」

「別にいいよ、俺は。でも大ちゃんは怖かったら後ろで見てるだけでいいよ」

少し冷静さを取り戻した魔理沙が謝ってくるが、特に気にはしてない。

というのも今回は色々と面白いものを用意してきたのだ、それを試すことが出来ると思えば、相手が明らかな格上だろうと気にはしない。

でも大ちゃんは別だ、明らかに幽香に恐怖心を抱いている。

今も握った手が震えているからよくわかる。大ちゃんはきっと戦えない、相手が悪かった。幽香ほどの相手では身体が強張って思うように動けないかもしれない。

 

「私も・・・アンちゃんが戦うなら、私も頑張るよ!」

だからその言葉を聞いてびっくりした。その言葉はとても強い気持ちがこもっていて、さっきまで震えていた大ちゃんの手は俺の手をしっかりと握り返していた。

大ちゃんは何というかたまに俺の想像を超えた行動力を見せることがあるんだよね。

俺が一緒だから頑張ってくれるっていうのは嬉しいけど!

「わかった、でも無理はしちゃだめだよ」

「アンちゃんもね」

 

「準備はいいかしら?それじゃあ始めましょう」

 

幽香の掛け声で、今戦いの火ぶたが切って落とされる。

 



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第二十二話

みすちゃ様誤字報告ありがとうございます!
予防接種、一回目打ってきました。肩がとても痛いです。
めちゃ人多かったね。そんなことはどうでもいいか。
まさかの二日空いてしまったんですが、最近どうも忙しくてね。
今回もゆっくりみていってね!


先手必勝とばかりに前に出て弾幕を放つ魔理沙。

俺はいつも通りスペル宣言をした後一旦後ろに下がる。大ちゃんは俺に合わせて少し前に出て魔理沙を援護する。急造のチームにしては中々にバランスが取れている気がする。

でもさすがに幽香もこれくらいの連携には余裕の表情で対応してくる。後ろでスペルカードに色を付けつつ様子を伺っていた俺も、そろそろ攻勢に加わることにする。

この前作った新たな弾幕ごっこ用装備第一号!!

この時を待っていたぜ!はやる気持ちを抑えながら俺は、キャンパスの中から「博麗の巫女なりきりセット(仮)」を取り出す。

 

説明しよう!博麗の巫女なりきりセット(仮)とは!

今まで自分の力をすっかり忘れていたアトゥンが、ついこの間閃いた新たな弾幕ごっこ用装備だ!博麗の巫女なりきりセットには、陰陽玉、お祓い棒、封魔針、お札などの霊夢が今まで使っていた装備が入っているぞ!もちろん巫女服だって用意済みだ!これで気分も博麗の巫女ってね。これを使うことでアトゥンは、博麗の巫女が使っていた弾幕ショットを放つことが可能になるのだ!

 

へへへ、こいつを思いついた時の俺の興奮といったらやばかったな。これで俺も一気に強くなれると思ったもんだぜ。

まあ、永遠亭で暇なときにふと思いついて作ったのは良かったんだけど、妹紅に相手してもらった時はロクに使う事もなくボロ負けだったけどな!

まあいいさ。今回は一対一じゃないんだ、思う存分試させてもらうぞ!颯爽と俺は陰陽玉を起動し、前へ出る、スペルカードは既に書き終わっているが、使い時を間違えれば幽香には通用しないだろうし、ここぞというときに使わないと・・・。

現在、魔理沙と大ちゃんが幽香の注意を引いている。

その間にある程度距離を取りながら幽香の背後に回り込む。

 

なんとか幽香の背後に回り込むことが出来た俺は、一気に幽香に迫りながら陰陽玉から弾幕を放つ。距離を詰める途中で幽香が振り返る。

気付かれた!幽香は口元に笑みを浮かべながら俺の放った弾幕と後ろから魔理沙と大ちゃんが放った弾幕をかわしながら、こちらに迫ってくる。めっちゃ怖い!っけど、俺も幽香の方へ自分の持てる一番のスピードで迫っていたので、急には止まれない。ならばと俺はその勢いで彼女に向かって突き進む。幽香との距離が縮まっていく、幽香がこちらに閉じたままの日傘を向けてくる、

ぱっと花が咲いたように幽香の周りに花形の弾幕が浮かび上がりこちらへと飛んでくる。

ひとつ一つの弾幕にそこまでの危険性は無い。

が、この速度でこの密度の弾幕を避けきるのは、俺の技量では無理だ!避けることは不可能と判断した俺は出来るだけ被弾しないように道を探しながら上へ下へ、右へ左へ、と進路を変え幽香の傍を通り過ぎる。

な、なんとかなるもんだぜぇ・・・。少なくない弾幕を受けながらもなんとか一回休みになることだけは免れた俺は一瞬安堵する。

 

「アンちゃん!」

「危ない!」

 

次の瞬間俺は何かに突き飛ばされる。何事かと振り返ると、魔理沙がミニ八卦炉を構えている。その眼前では幽香が傘の先を魔理沙に向けていた。

 

「あら、残念あなたには最後まで残ってもらおうと思ったのだけれど」

「へっ!勝ったつもりになるのはまだ早いぜ!」

 

相変わらず表情を崩さない幽香に魔理沙は吠える。彼女の持つミニ八卦炉がその熱を解き放つ。それはまさに弾幕の力押し。最大級の火力を持って相手を倒さんとする彼女の在り方そのものだと感じる。

 

「『恋符』マスタースパァーク!!」

 

同時に幽香も傘の先端からミニ八卦炉と同等かそれ以上の熱量と威力を持った光線を放ち返す。最初こそ均衡していた二つの弾幕は、少しづつ魔理沙の方が押し込まれていっているのが目に見えてわかる。このままいけば魔理沙があの光線に飲まれてしまうことは確実だろう。そうなれば、幽香に勝つことはほぼ不可能だ。魔理沙の表情が少しづつ歪んでいく。

俺は数枚の札をとりだすと魔理沙の前方へ放り投げる。目の前の札に困惑する魔理沙を置いて、

札はそれぞれが線でつながり一つの結界へと変わる。その結界は幽香の光線弾幕を受けてもびくともせず、弾幕を散らしていく。幽香は光線が何かに阻まれた感覚を覚えたのか撃つのをやめた。

 

「へえ、なかなか面白いじゃない」

 

薄く笑みを浮かべた幽香が俺を見る。なんか目ぇつけられたっぽいんだけどお!

とにかく魔理沙のもとに駆け寄り、大丈夫だったか確認する。大ちゃんも駆け寄ってくる。

 

「魔理沙!大丈夫か」

「あ、あぁ。大丈夫だぜ、お前こんなことできたんだな、助かったぜ」

 

状況を理解したであろう魔理沙がお礼を言ってくる。いやあそれほどでも。と照れることもままならない状況なのだ、というのも今の結界札は残念ながら、今使ったので品切れなのだ。だから次同じ弾幕が来たら防げない、ということを二人に告げる。二人は静かに頷くと、再び幽香と向かい合う。おそらく幽香も俺があの弾幕をそう何度も防げないことくらいはわかるだろう、防げても後一度、そう考えているかもしれない、俺たちにとっては次にあの弾幕がくるまでに決着をつけなければならない。ここが正念場だ。

 

「俺のスペルカードでしばらく動きを封じるから、二人はスペルが終わる瞬間に、畳みかけてくれ」

「アンちゃん・・・わかった。気を付けてね」

「出来るのか、そんなこと」

「出来るとも。やってやるさ」

 

魔理沙は、少し心配していたが、俺の言葉に従ってくれた。大ちゃんは何も言わず、信じてくれた。こんなに心強いことはない。二人が俺から離れ、俺は幽香と対峙する。

 

「あら、あなた一人で戦うの?」

「ふっふっふ、そうだとも!簡単にやられないでくれよ!」

 

胸を張って俺はスペルカードを掲げる。

使うスペルは西行寺幽々子が使ったあのスペル、時間稼ぎには持って来いだ。

 

『反魂蝶』

 

「っ!へえ、やっぱり面白いわね、あなた」

 

一瞬驚いたような表情を見せた幽香だったがすぐに口元を歪め彼の弾幕を避け始める。やっぱりとんでも妖怪だ、これでも再現度はかなりの高精度、ほぼ100%オリジナルといってもいいくらいの完成度だと信じている弾幕が、こうも簡単に避けられるとは・・・。ちょっとへこむなあ。

それでも時間いっぱいまですべての弾幕を避けきるのは幽香でも難しかったのか、ところどころ被弾したようだ。そして反魂蝶が終わった瞬間。

 

「ブレイジングスタァアアー!!」

 

その掛け声とともに魔理沙が身体に星のような光を纏いながら幽香に突撃する。大ちゃんは魔理沙に合わせて、幽香が逃れられないように弾幕を放つ。

大ちゃん、ほんと器用に動けるよね・・・すごいや。

幽香は焦った様子もなく大ちゃんの弾幕を巧みに躱しながら、魔理沙の突撃を真正面からその手に持った傘で受け止め、魔理沙を弾き飛ばした!そんな馬鹿な!幽香は一瞬俺の方を見たかと思うと、大ちゃんに傘を向ける。

恐怖からか身体を震えさせながら身動きが取れなくなっている大ちゃん。

 

っっ!!その意図を理解した俺は、考えるより先に大ちゃんの元へと向かう。

はやく、はやくはやく!もっと早く!大ちゃんには手出しさせない!

俺が大ちゃんの前に立ちふさがると、それを待っていたかのように、幽香がニヤリと笑い、手に持った傘の先端から、おびただしいほどの熱量が伝わってくる。

 

くっそおおお!

 

本能的に感じとる。これは俺が盾になっても、大ちゃんを助けることが出来ないモノだと。自分の不甲斐なさに叫びたくなる、でももう遅い、今から動けない大ちゃんを連れて、逃げることもできなければ、俺にはこの弾幕の外まで大ちゃんを飛ばす力も無い。

 

ごめんね大ちゃん、約束守れなかった。

その恐ろしい火力を持った弾幕を前に俺は目を瞑った。

 



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第二十三話

筆が乗っていたからといってつい調子にのって二話投稿しちゃった。
こういう時書き溜めないからだめなんだよね、すまないとは思ってる。
まあそんなこんなで本編ものろのろ書いていきます。とりあえずカルボナーラ作るからまたね。


いつまでたってもやってこない衝撃に、俺は瞑っていた目を開ける。

 

「大丈夫かい?また随分厄介なのに目をつけられたもんだねえ」

 

目の前には小町が立っていた。

 

えっ、え?何で?何だかよくわからないけど、小町が助けてくれたっぽい。背中で語るって言うのかな、小町の後ろ姿すっげえカッコいい!正直めっちゃ怖かったし、絶対大ちゃん守れなかったし・・・、そうだ!大ちゃん大丈夫・・・なわけないかぁ!

大ちゃんの方を見ると顔からいっさいの血の気が引いた青白い顔をした大ちゃんが小刻みに震えていた。俺はそんな大ちゃんの肩を抱いて落ち着けるように背中をさする。

そんな俺と大ちゃんの様子を横目で見ていた小町は少し安心したような顔を見せる。

 

「いきなり横やりを入れてくるなんて、随分無礼ね。あなた」

 

幽香の若干の怒気を持ったその言葉は、直接向けられたわけでないにしろ、俺と少し落ち着きを取り戻してきた大ちゃんを震え上がらせるのには十分だった。大ちゃんが俺の服をぎゅっと握りしめる。俺は大ちゃんをかばうように抱きしめ、成り行きを見守る。

 

「まあまあ、もう決着は着いたんだ。あんただってこれ以上この子達をいじめても面白くないだろう?」

 

諭すような小町の言葉に、幽香は興が覚めたのか、さきほどまでのような張り詰めた雰囲気が少し和らいだ。それから幽香は俺たちに興味をなくしたのか、はたまた別の何かを感じ取ったのか、去っていった。

 

助かった!!

 

俺は大ちゃんと顔を見合わせて、生きていることに安堵する。俺と大ちゃんは喜びのあまり小町がいることも忘れて盛大に抱き合った。

 

「こほん、二人とも大丈夫そうでよかったよ」

「小町、ありがとう!本当に助かったよ!」

「ありがとうございます!えっと、小町さん」

「あぁ、うん。アンタとは初めましてだったかな、あたいは小野塚小町、

しがない船頭さ、よろしく」

「わ、わたしは大妖精って呼ばれてます!よろしくお願いします!」

小町と大ちゃんが互いに自己紹介をしている、そういえばこの二人は会ったことが無かったのか。まあそれもそうか。

 

「それにしても無茶するもんだねぇ、あんなのに立ち向かうなんて」

「えっへへ、やっぱり全然歯が立たなかったよ、めっちゃ怖かったし」

「そりゃあそうさ、っと言いたいけど、中々いい勝負してたよ。最後の連携なんかもしかしたら・・・って、思ったしね」

「まじか!?」

 

最後の連携はいい線いってたってことなのか!うおおお!三人がかりとはいえ、あの幽香と戦えてたという事実に俺は内心大喜び・・・。

っていうか今の話だと小町最初から俺たちの戦い見てたのか?いやそんなことはどうでもいいや。ともかく幽香相手にそこそこ様になる戦いが出来たんだ!最高だぜえ!!

それから俺と大ちゃんは小町と少し会話してから別れを告げる。その時軽く映姫様に怒られないようにと声を掛けたら小町が驚いた顔をしていたのが面白かった。

さて、これからどこに行こうか、あらかた見回ったんだよな・・・。

結構つかれたし今回はこの辺で帰るとするか。

大ちゃんも大分頑張ってくれたし、今日は存分に甘えてもいいんだぜ!的な事を帰りに言ったらものすごい速さで「いいの!?」って返ってきた。やっぱ疲れてたんだなあ。

俺に出来る範囲ならめいっぱい甘やかしてあげよう。

そう心に決めて帰路を急いだのだった。

 

「いっててー、あいつら完全に私の事忘れていきやがったな。ったくー」

 

 

 

 



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第二十四話

今回は本当に何でもない回かもしれないし、そうじゃないかもしれない。
まあ、この小説基本何でもない回ばっかりだけど。ハッハッハ
百合多めにしたいんやけどな、ちょっとベクトルをミスったかもしれない。
そういうこともある、だってにんげんだもの。
ということで今回もゆっくりみていってね!


疲れて眠ってしまった大ちゃんを抱えて家に帰ってくると、見知らぬ、

いや知って入るけど実物を見るのは初めてというか、まあ幻想郷に来てから初めて出会うという意味では初対面の相手が家の前に居た。

 

「あら・・・、あなたが山吹アトゥンで間違いないかしら」

こちらに気付いて話しかけてくるのは、金色の長い髪を靡かせて妖艶な雰囲気でそこに佇んでいるのは、幻想郷創設者の一人にして賢者、大妖怪とも名高いスキマ妖怪。八雲紫さんだった。

 

「えっと、そう、です」

あまりの美貌に思わず言葉に詰まる、幽々子様に負けず劣らずの超絶美人さんだぜ・・・。

それに大物特有のオーラというか圧みたいなのも感じる。

そんな大妖怪が一体何で俺なんかのことを知ってるんだ?頭の中で心当たりになるものがあるか考えてみるけど、それらしきものは特にない。そんな俺の様子を察してか紫さんが声を掛けてくる。

 

「私の友人があんまりあなたの事を話すものだから、少し気になってね、一度会ってみたいと思ってたのよ。」

 

なるほどなるほど、そうだったのか。友人というのが誰を指すのか。たぶん、幽々子様あたりだろうけど、とにかく誰かに俺の事を聞いて興味を持ったから直接会いに来たってことのようだ。

正直びっくりしてる。

紫さんは俺の事をしばらく見つめた後いくつかの質問をしてきたので、軽く答えたら、満足したのか帰ってしまった。折角だから一緒にご飯食べたかったなあ。まあまたそのうち会えるでしょ。

家に入って大ちゃんを起こさないようにベッドに寝かせた後のんびり晩御飯の支度を始める。

今日はオムライスにしよう。大ちゃん喜んでくれるかな。そんなことを考えながら、俺は鼻歌交じりにケチャップライスを作り始める。

 

オムライスも完成に差し掛かってきたところで、大ちゃんが起きてきた。

 

「んぁあ、ふわあ~・・・、ッハ!いつの間にか寝ちゃってた。ここは・・・」

「おはよー、お疲れだったね大ちゃん。よく休めた?」

「あっ、うん。そっかここアンちゃんの家だったんだ・・・ふふ」

 

完成したオムライスを机の上に並べながら大ちゃんに声をかける。起きたばかりで悪いけど、

せっかくだから出来立てが食べてほしいので俺は大ちゃんを呼んだ。幸い大ちゃんはすぐに意識が覚醒しきってたようで直ぐにでも食べられそうだ、それにしてもいいことでもあったのかな、

すごいご機嫌だ。

気になるぅ~。

聞いちゃお。

 

「大ちゃんなんかいいことあったの~?」

「えっ」

俺の問いかけにびっくりしたような声を上げる大ちゃん。

 

「なんか嬉しそうだったから、いいことでもあったのかなって」

「それは・・・内緒、かな?」

 

大ちゃんは少し悩んだ顔をしてから、いたずらっぽく笑った。何という破壊力だ・・・っ!

やっぱり天使か・・。まあ内緒なら仕方ない、無理に聞いてもいいことないしね。俺は気を取り直してオムライスを食べることにする。

 

「いただきまーす」

「いただきます」

 

俺はオムライスを頬張る、我ながら上手くできたと思って大ちゃんの方をちらっと見ると、

美味しそうに食べてくれていた。よかったよかった。

 

オムライスを食べ終えた俺と大ちゃんはもう日も暮れそうだったので今日は解散ということにした。泊っていったらって誘ってみたけど、今日はたくさん迷惑かけちゃったから遠慮しておくといわれてしまった。そんなことないのに。

きっと明日からはこの異変も終息に向かっていくことだろう。俺は単身もう一度幻想郷を回ってみることにした。普段は異変が起こった時大体のんびりできてなかったからねえ。今回の異変は四季折々の花々が一挙に咲いているということもあってその光景には目を見張るものがあった。

俺はのんびり夜の幻想郷を飛び回る。夜風が気持ちい。

 

しばらくいろんなところを回っていると、昼間大激闘を繰り広げた太陽の畑に出た。

昼間とは雰囲気が大違いだ。と言っても別に昼間と何かが変わっているわけではない、以前向日葵は咲いたまま。でもなんて言うのかな、あれだけ盛大に咲き誇っていた向日葵たちが今はまるで眠っているようで、とても静かで穏やかな空気が流れている。

 

「あら?あなた・・・昼間の子ね」

 

 



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第二十五話

間に合ったああ!
取り敢えず今回で花映塚編は終了です!
そろそろロリっ子以外との絡みが書きたいんや。
次回は日常回かな、そろそろオリ展開になるかもしれない、ならないかもしれない。
というわけで今回もゆっくりみていってね!


「あら?あなた・・・昼間の子ね」

 

・・・ッハ!俺は今一体なにを、なんだか目の前にとんでもない人がいたような、ハハ・・・まさかね。具体的には昼間俺たちを満身創痍に追いやった張本人が目の前にいるような気がするけど、きっと幻覚だ、昼間の記憶がフラッシュバックしているだけに違いない。

 

「ちょっと、無視?あなた見た目によらずなかなかいい度胸してるじゃない」

「うぎゃああああああ!」

「あらあら、今度は随分な声あげちゃって」

 

いっいぃ、いるぅ!モノホンがいるよお!ど、どうする?逃げるか?いや逃げても無駄だ、絶対捕まる自信がある・・・っ!とはいえ一人で戦うなんて絶対無理だ!勝てっこないぞ。言っとくがこちとらタイマンじゃいまだに大ちゃんにだって勝ててないんだぞ!!

・・・言ってて悲しくなってきた。ってかとにかくここから脱出しなければっ!

 

「あなた、やっぱり面白わね」

 

ゆらりゆらりと、幽香が近づいてくる。やべええ!夜にみるとより一層不気味というか。

いや美人だし綺麗だし月明りに照らされてる姿はすごい様になってるけど!ってそんなことはどうでもよくて!

やばい、やばい、やばい!!頭では逃げなきゃいけないと思ってるのに全然体が言うことを聞かない、まるで足に杭でも打ち付けられてるみたいにその場から動けなくなる。

まさに蛇に睨まれた蛙ってね・・・。

もうどうにでもなれぇい!さすがにいきなり殺されたりはしない!と・・・思いたい。大丈夫、ちょっとおもちゃになってくるだけさ。それに、もしかしたら夜にこの辺に出歩いてると危ないから、うちに来なさいとか言ってくれる優しい妖怪かもしれない。

うんうん、きっとそうに違いない、そんでもって夜は寒いからと一緒の布団で子守唄を歌ってくれるんだ。ふふふ、はっはっはっは!

 

と、まあそんな風に現実逃避をしていたら不意に後ろから誰かに抱き寄せられる。

視界には残り数歩というところまで幽香が近づいてきていた。

 

「この子に何の御用ですか」

 

俺の後ろから聞き覚えのある声がした。見上げてみると、俺を抱き寄せたのは映姫様だった。

映姫様の問いかけに幽香は少し口角を上げながら答える。

 

「御用も何もこんな夜中にふらふらしていたらどうなるか、教えてあげようと思っただけよ」

「そうですか、ですがこの子には私がついていますからその必要はありません」

「・・・そう」

面白くなさそうな顔をして幽香は映姫様から顔をそらす。

 

「では私たちはこれで、さあ行きますよ」

 

そのまま映姫様は俺を抱き上げるとその場を後にした。あの幽香に物怖じしないでいられるなんてやっぱり映姫様はすげえや。俺は半ば呆然としたまま流れに身を任せた。

 

「大丈夫ですか?」

 

そんな映姫様が心配そうな表情で話しかけてくる。

 

「でも駄目ですよ、夜中にあまり出歩いては。今回は私が近くを通ったからよかったもの、もし彼女以外の、もっと好戦的な妖や物の怪に出会っていたら・・・。危ないところだったんですよ」

「ご、ごめんなさい」

 

と思ったら流れるように叱られてしまった。

慌てて俺は映姫様に謝る。確かに少し舞い上がっていた気がする。何しろ異変をまともに生き残ったのはほぼ初めての事だったからね。ちょっとテンション上がりすぎてたね、反省。

 

「・・・ふふっしっかり反省してるみたいですね。えらいです。」

 

映姫様はそう微笑んでから、俺の頭を撫でる。くすぐったいけど、気持ちいい。

ちなみに現在俺は映姫様に抱えられたまま移動している。抱っこしたままじゃ移動しにくいだろうと思って一回離れようとしたんだけど、すごい力で全然離れられなかった。

 

それにしても映姫様の身体温かくて落ち着くな。

・・・やばいちょっと瞼が重たくなってきた。

映姫様が何か言ってる。な、んだろ、え・・いきさ、ま・・・もう、いっか・・い。

 

俺の意識はそこで途絶えた。

 



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第二十六話

ふぅ。何と書けたぜ。
実は二日前くらいに投稿しようと意気込んでたんだけどね。
その時の話があんまりにも思いつかないから書き直してました。
すまねえ。
次の異変まではもうちっと日常回があるかもしれないしないかもしれない。
そんなこんなで今回もゆっくりみていってね!


異変が終息を迎えてからしばらくの時が経ちました。

あれからしばらく映姫様が家に居ました、しばらくといっても2、3日で程なんだけど。

映姫様は相変わらず俺が何かやったり、映姫様の手伝いをしたりするとしきりに頭を撫でて褒めてくれた。それが嬉しくって、もっと映姫様に褒めてもらおうと頑張った。

しかし、そんな素晴らしい毎日も長くは続かず、仕事があるからと帰ってしまった。もっと居てほしいとつい本音が出てしまった時は映姫様を困らせてしまうかと思ったけれど、映姫様は少し笑って、また遊びに来てくれると約束してくれたので笑顔で見送れた。

それからは大ちゃんやチルノ達と遊んだり、酔っぱらった萃香に絡まれたりとまあいろいろあったものの平和な日常が続いています。

 

 

さってと、今日はどこに行こうかな~。出かけ支度をしながら考えていると、ドアをノックする音が聞こえてきた。誰だろうと思いつつ俺は扉を開ける。

 

「どちらさまですか~」

 

扉を開けるとそこには銀髪美人のメイド服を着た、

うん。咲夜さんだね、が立っていた、でもどうして咲夜さんが?

 

「朝早くから失礼いたします、私近所に在る紅魔館のメイド、十六夜咲夜と申します。本日は我が主の命でこちらに住んでいらっしゃる山吹アトゥン様をお迎えに上がりました。アトゥン様本人で間違いないでしょうか」

「あ、はい」

 

咲夜さんに矢継ぎ早に繰り出される言葉に気圧されていると、目の前にいる咲夜さんは俺をお姫様抱っこで抱えると、瞬きもしないうちに紅魔館へたどり着いた。

あまりの事に呆然としていた俺に咲夜さんが申し訳なさそうに頭を下げる。

 

「突然の事で申し訳ありません・・・ただ、何分急を要するものだったので、こうして強引な手段を取らせていただきました」

「わわわっ!頭を上げてっ。びっくりしたけど、どうせ暇だったから!全然気にしてないよ!」

 

俺がそういうと咲夜さんはありがとうございますと一言言ってから俺を一つの部屋へと案内する。それにしても、一体いきなりどうして・・・。まさか前フランしかいないときに侵入したのがばれて怒ってるとか!やばいぞやばいぞ・・・。

途中から冷や汗をかきながら咲夜さんの後ろをついて歩く俺だった。

 

「お嬢様、お客人をお連れしました。」

「入りなさい」

 

ゴクリと生唾を飲み込んで咲夜さんが開けてくれた扉から中へと入る。

 

「アトゥン!」

「こら、フラン!」

「ふぇ?・・・ぐわぁ・・・っ!」

「アトゥン様!?大丈夫ですか!」

 

その声と同時に俺は開いていた扉から廊下へと叩きつけられる。前からものすごい速度でぶつかってきたそれと、廊下の壁に挟まれた俺は一瞬意識を失いかけたものの何とか耐える。

この声は・・・。

 

「フラン・・・?」

「アトゥン!やっと来てくれた!ずっと待ってたんだよ?どうして全然会いに来てくれなかったの?私の事嫌いになっちゃったの、ねえアトゥン」

 

お、ぉお何だなんだ、先ほどの咲夜さんとは別の威圧感というか、雰囲気というか、ともかく突っ込んできたのはやば気な雰囲気のフランだった。そういえばフランにまた会いに来ると言ってから随分経ってたな。

いろいろありすぎて、時間の感覚狂ってたな。ともかくフランを何とかしないと。

 

フランを安心させられればと思って、頭を撫でながら背中をポンポンと叩く。そうすると、少しフランを包んでいた重苦しい雰囲気が和らいだ。チャンスとばかりに俺は音場を繋ぐ。

 

「久しぶり、フラン。別にフランの事嫌いになったんじゃないよ、最近いろんなことがあったから、ちょっと来るのが遅れちゃった。ごめんね」

「ほんと?」

「うん」

「ほんとに、ほんと?」

「うん、ほんと」

「嘘じゃないよね?」

「嘘なんかつかないよ」

「じゃあ、許してあげる」

「ありがと、フラン」

 

何とかフランの怒りを収められたようだ、もう少しこのまま撫でていよう。

 

「こほん、えーっと。いいかしら?」

 

横から声がして振り向くと、フラン同じくらいの背丈の少女が、レミリア様が困惑した様子でこちらを見ていた。俺はフランをいったん離してから話を聞こうと思ったんだけど、雑魚妖怪の俺じゃあフランの力には勝てないよねえ―。全然離す気のないフランの事は諦めてそのまま話を聞くことにした。

 

「・・・はぁ。まあ、いいわ。私はレミリア・スカーレット、フランの姉よ。」

「山吹アトゥンだ!フランの友達です!」

 

その言葉にフランが顔を輝かせて頷く。その姿に面食らったのか、レミリアが目を白黒させている。後ろの咲夜も同様だった。それでもすぐに顔を引き締めこちらに目を向けてくる。

 

さすがは紅霧異変の主犯、いやこれがレミリア・スカーレットのカリスマなのか、その瞳に一瞬目を奪われる。とっても綺麗な眼だった。フランを撫でている手も止まっていたのか、フランが無言で催促してくる。ごめんごめん

しばらく俺を見つめていたレミリアがようやく口を開く。

 

「ふぅん、あなたなかなか面白いわ。しばらく家に泊まっていきなさい、フランも随分あなたと遊ぶことを心待ちにしていたみたいだし」

「ほんと!?やった!アトゥンいっぱい遊ぼうね!」

 

いきなりのレミリアの提案に声を上げて喜ぶフラン。そこまで喜ばれると嬉しいな、今度からはもっと遊びに行こう。それはそれとして、本当にいいのだろうか。俺は以前無断でここに侵入したことがあるわけだけど。

 

「いいの?」

「いいわ、あなたを客人としてここに泊まることを許す。好きにしなさい。」

 

・・・まあいいや、本人もこう言ってるし、これ以上遠慮しても失礼だろう。こういう時はラッキーくらいに思っとけばいいや。

 

「部屋は咲夜に案内させるか「私と一緒の部屋がいい!」・・・。ということだけどアトゥンはいいかしら?」

「いいよ、後俺の事はアンでいいよ、みんなそう呼ぶから」

「そう、わかったわアン、それじゃあ後でフランが案内してあげなさい」

「うん!わかったわ、お姉さま」

「咲夜はアンの当面の生活用品を用意しておきなさい」

「かしこまりました」

 

咲夜さんがその場から音もなく消える。

 

「さて、フランから聞いたけどあなた、手品が出来るそうね。」

 

期待に満ちた目でこちらを見てくるレミリア。

いや手品というか、何というか。ハハハ、そんな目で見られると出来ないとは言いずらい。

・・・くっそおこんなことなら手品の練習でもしとけばよかった・・っ!

結局前回同様能力を使った手品モドキでレミリアのぬいぐるみを渡した。さすがは姉妹というか、レミリアもとても驚いてくれた。その後前回の約束である自分のぬいぐるみも鏡を見ながら描いてフランにあげた。とっても喜んでくれたので嬉しかった。

しばらくここに住むわけだからこういうファーストコンタクトは非常に大切だ、もうすぐお昼だから食べた後に他の人たちにもあいさつしに行こう。この手品もどきで

 

 



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第二十七話

次の話にどうやって移るか、全く考えずにこの話を書いている。
もう少し日常回かもしれない。
フランは可愛い。それで充分だ。
今回もゆっくりみていってね!


紅魔館に泊まり始めてから早数日。

 

紅魔館に住んでる人達やそこで働いている妖精たちとの関係は良好だと思っている。大体の時間はフランと遊んでいるとはいえ、他の人との接点も少しはあるというもの。

美鈴は大体いつも門で寝てるから挨拶に行ったとき以来あまり会ってないけど。レミリアはフランと遊んでいるときにたまに顔を出してくれるし、咲夜さんも忙しい中客人である俺に色々世話を焼いてくれている。パチュリーさん大図書館でうるさくしないなら、また来てもいいと言ってくれたし、うん。咲夜さんのおかげですごい快適に過ごせるし。

いっそ紅魔館に住みたいくらいだわあー。

・・・冗談だけどさ。さすがに毎日のようにフランと遊んでばかりというのもね、楽しいけどさ。フランも毎日俺と遊んでるだけじゃあ飽きちゃうじゃん。

え?そんなことない?ここに住みたいならレミリアに言おうかって?

いや、いいよ俺も自分の家あるしさ。えっ、フランが俺の家で一緒に住む?

それは・・・さすがにレミリアが許してくれないよ、それに言っちゃあなんだけど家にいること少ないしね。うん、いつもいろんな所にいってるから。

そうだ、今度レミリアに言って二人でどこか行こうよ。大丈夫大丈夫、楽しいよ、きっと。

俺の友達もたくさん紹介したいしね。ん?友達がどうかしたの?何でもない?

ふわ~ぁ、まあいいや。

そろそろ寝よっか、おやすみフラン。

 

紅魔館に来てからというもの、朝起きたらフランが目の前にいるのが当たり前みたいになってきたなぁ。これは家帰ってから誰もいないベッドで寝るのに違和感覚えそうだ。

などと考えながらフランの寝顔を見る。

うむ、かわいい。

ちょっと頬っぺた触ってみようかなっ!えっへっへ、無防備に眠っているフランが悪いんだぜー。基本的に大ちゃんたちといる時も自分から積極的にボディタッチをしにいけるほど精神図太くない俺はこうして卑怯な手を使うのだった。

俺はそーっと指をフランのほっぺに近づけた、指はフランの弾力のあるほっぺに触れる。

プニプニ、やっこいなあ、へへへもうちょっと触っていよう。まだ起きてないみたいだしぃ。

眠っているフランなど恐るるに足らず!フハハハ

 

「ねえアン、さっきから何やってるの?」

 

先ほどまで閉じていたはずのフランの目が開いている。

 

「ぅぇえ!?フ・・フラン!一体いつからっ・・・!」

「アンが私の頬っぺたに指を近づけてニマニマしてたところから」

「それ最初からじゃん!」

 

やばいやばい、このままではフランに眠ってる間に勝手に体に触る変態だと思われてしまう!

なんとか・・・、なんとかしなければ!

 

「私のほっぺそんなに触りたかったの?」

「えっとぉ、そのぉ。」

「どうだった?ほっぺ」

 

何だかフランの様子がちょっと怖い、というか声に抑揚がないんだけど!やばいぞこれは相当怒ってるのかもしれない。なんて答えればいいんだっ!

 

「ねえ、アン。どうだったの?」

「う・・・えっと、よ、よかった・・・です」

 

良かったですって何だよ!フランの圧に押されてつい本音が出ちまったよ!どうしよう。

そんな俺の動揺とは裏腹にフランから謎の圧が消える。

 

「ふぅん、。そっかぁ、えへへ。言ってくれればいつでも触っていいのに。ずっと我慢してたんでしょ?ほら触って触って」

 

それどころかなんということだろう、フランから触っていいと言ってくれたじゃないか!

ここは楽園か・・・。

フランの声に誘われてほっぺに伸びていた手を慌てて止める。フランが不思議そうな顔でこっちを見てくる。いやまあ止める必要ないんだろうけどさ、なんていうかまぁ、恥ずかしいんだよね。こうほらわかるでしょ?友達に面と向かって良い所を伝えるのと同じだよ!

俺は恥ずかしがり屋なんだ!あー、もうやめやめ!突然立ち上がった俺に呆気に取られているフランの手を引いて俺は朝食を食べに向かった。

なんか冷たいものが食いてえや。

 

 

 



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第二十八話

たらい回されけい主人公ここに誕生。
ってぐらいいろんなところに行ってるわけだけど、収拾つかなくなりそう。
若干焦りつつこれからもいろんなところに連れまわす気でいる。
今回もゆっくり見ていってね!


今日は素晴らしい半日だった。

 

フランとのお出かけの許可を貰った俺は、いまだ紅魔館の外にほとんど出たことがないというフランをいろんな場所へと案内したのだ。フランはそれはもう楽しそうに目を輝かせていたのを覚えている。道中大ちゃん達に会って一緒に遊んだりして、特に大ちゃんとフランは初対面なのに随分と仲がよさそうだったな。というか、大ちゃんほんと物怖じしないしすげえなぁ・・・。

 

まあ、そんなこんなで昼過ぎまで楽しくやってたんだけどね。やっちまったよ。

 

油断してたんだ、妖怪の山が今、どんな状況なのかをよく知らなかったから。

すでにあの二柱がやってきていて、妖怪の山の警戒レベルが引きあがっていたことを知らなかったから。なんて言い訳にもならんけどさ。

気付いた時にはもう遅くて、無数の白狼天狗達が俺たちの逃げ道を塞いでいた。

幸いフランのお目付け役として、咲夜さんが遠くから同行していてくれたおかげでフランは逃がすことが出来た。その後すぐに俺は捕まったけど。

 

もしフランが捕まってたら、これから起こる事柄に大きく影響が出てしまいそうなだけに、それを避けることが出来たのは行幸と言えるだろう。

それに、外の楽しさを知ったフランに辛い思いをさせたくなかったし。

その点俺は野良の妖怪だし、軽く事情を話せばすぐに開放されるだろう・・・。

 

 

なんて甘い考えは、周りの天狗達の鬼気迫る緊張感の前ですぐに霧散した。

かくして俺は、紅魔館の客人から妖怪の山の虜囚へとクラスチェンジしたのだった。

 

 

「おや、あなたはたしか・・・。アトゥンさんでしたね」

 

それからしばらくして、俺の処遇が決まって、天狗の方々に連れていかれそうになっているとき、その人物は現れた。

 

「あや!」

 

以前会った取材の時とは違い、厳格な天狗の装束を纏った状態で悠然と彼女は立っていた。

周りの天狗達は一様に彼女に頭を下げている。これが妖怪の山での彼女の立場であるということは、火を見るよりも明らかだ。以前会った時とはまるで別人のような気さえしてくる。

 

「侵入者を捕らえたと聞いて来てみたのですが、あなたでしたか」

「うん、間違って入っちゃったんだ、ごめんなさい」

「そうですか、ふむ・・・」

 

文は俺の話を聞くと、腕を組み少し悩んでいるようだ。

 

「あや・・・?」

 

俺が話しかけると、文は顔を上げた。

 

「アトゥンさん、よろしければ客人として、私の家へ来ませんか。」

「あやの家・・・?」

 

そりゃあ行けるなら行きますとも!

でも何で、一応侵入者として扱われてるわけだけど、そんなことしていいのかな?

普通は牢に入れられたりするもんじゃないの?

俺の様子を読み取ったのか文が俺の耳元で囁くように言う。

 

「妖怪の山の牢は過ごしづらいでしょうから、あなたには取材をさせてもらった恩もありますし、どうでしょう。」

 

その言葉に俺は二つ返事で首を縦に振る。

 

助かった、正直周りの天狗達の雰囲気があまりにも不穏過ぎて、殺されっちまうんじゃないかと、内心ヒヤヒヤしてたからな。さっきの処遇を決める話し合いもよく聞こえなかったけど生かすか殺すかみたいな話してたような気がするし、ほんとフランが捕まってなくてよかった。

 

文の家へと着いた。さすがというべきか、景観のいい場所に文の家はあった。中に入って文に勧められるまま縁側に腰かける。

文もさきほどまでの装束から以前会った時のラフな格好に着替えてやってくる。

雰囲気も先ほどまでとは違って柔らかいものになったように感じた。

 

「いやあ、すみませんね。最近バタバタしてまして、アトゥンさんに悪気が無いのは分かっているのですが、しばらく、この騒動が収まるまではここにいてもらうことになると思います」

「いいよ、もともと間違って入っちゃった俺が悪いんだし。でも文がいない間に俺が出て行っちゃったりしたらどうするの?」

 

俺の疑問に文が少しきょとんとしてから笑って答える。

 

「大丈夫ですよ、ここには優秀な目がありますから、妖怪の山から逃げ出そうとするものはすぐに分かります、それに今は、山の出入り口には基本哨戒天狗がいますからね。逃げ出そうと思ってたんですか?」

「ううん、聞いてみただけ。大人しくしてるよ」

「そうですか、ではここにいる間は客人として私、射命丸文がアトゥンさんをもてなさせていただきますね」

 

文が丁寧に頭を下げてくるので、俺も立ち上がって文によろしくおねがいしますと頭を下げた。

思わぬ展開ではあったけどまあ結果的には、よかった、かな?

異変が解決されるまでに文と仲良くなれるといいな。

 

 

 



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第二十九話

閲覧数1万超えました!皆様ありがとうございます!!
これからも拙い文ではありますが、よろしくお願いします!!
というわけで今回もゆっくりみていってね!


川のせせらぎ木々の揺らめく音、日中に聞こえてきた妖怪の山に住む者たちの喧騒や、たくさんの蝉が鳴いていた妖怪の山も、今はひぐらしがカナカナカナと鳴く音だけ、そんな晩夏の夕暮れ。

 

うん、暇だ。

ここに来てから一番の悩みがこれ。

やることとかないしね。文も鴉天狗としての仕事が忙しいみたいで、遅くまで帰ってこないし。

かといって無断で外に出る訳にもいかんし。ああ、たまに非番で椛が遊びに来るときがある、というか文に言われて非番の日にまで俺の監視に駆り出されているらしい。

・・・なんだか申し訳ない。

それ以外の時はこうして縁側でのんびり昼寝してるか、炊事やら家事やらをやってるくらいなものだ。早く解決しないかなあ、この事件というか異変。

っとそろそろ晩御飯の用意をしとかなきゃ。ここの台所にも随分慣れたものだ、最初は家にないものとか、勝手に描いて使ってたら文に外に出たのか疑われたりしたっけ。もう随分昔の事のように感じるなあ。

 

「帰りましたー」

 

夕飯もあと少しで出来るといったところで、文が居間へ入ってくる、だいぶお疲れのようだ。

 

「おかえりー、もう晩御飯出来るけど食べれる~?」

「はい、大丈夫ですよ。お腹ペコペコです」

 

そりゃあ良かった、後は鮭を焼くだけだったから、のんびりと火加減を見ておく。妖怪の山で採れる山菜やら、魚やらはとってもおいしい。秋になったらもっとおいしいものが増えるんだろうなぁ。いいなー。早く妖怪の山観光がしたいもんだ。

 

ご飯を食べ終えると文と俺は一緒にお風呂に入る。何で一緒に入るのかって?

俺にもよくわからない。でも初日以外は毎日一緒に入ってたせいで、そんなこともうどうでもよくなってきた。些事だよ些事。紅魔館にいたころだってフランと一緒にお風呂入ってたんだから。それなりに耐性は付いたんだ!幽々子様の時のようにのぼせたりはしなかったさ。

でもって、いつも文に体を洗ってもらってる。最初は断ろうと思ったんだけど、断る前に洗われてしまって以降、本人が楽しそうなので大人しく洗ってもらっている。代わりに背中流したりはしてるけど。

そのおかげで、文との仲は結構縮まったかなって思ってる。さすがに今の山の状況は教えてくれないけど、文の普段の新聞記事や写真を見せてもらったり、趣味とか山にいる友人の事とかを話してくれたりする。俺の方も今までの異変の事とかを話すと目を輝かせて聞いてくれるから、とっても楽しい。

日中暇で夜は文と話すのが楽しいせいか、時間が過ぎるのが早くてすぐに眠たくなるんだよな・・・。

 

明日は椛が来るし、今日はもう寝よっかな。

・・・あや?もうちょっとお話する?いいけど途中で寝ちゃったらごめんね。うん・・・。

 

あれっそういえば、あやの家来てからまともに自分から布団に入った記憶が・・。そんなことない?ちゃんといつも自分で布団に入ってる?そっか、・・・そうだよねぇー。やっぱり本能的に布団まで歩いて行けちゃうんだよねー。すごいでしょー、ハッハッハ!

 

俺の記憶はここで途切れている。

 



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第三〇話

お久しぶりです、また投稿が遅れてしまった。申し訳ない。
実家に帰ってからノーパソが不調でね・・・
直そうと思ったら季節遅れの夏風邪にかかりまして。
なんだかんだ2週間も空いてしまった。ノーパソは不調のままです。ハイ

そんなことどうでもいいね。
というわけで、ゆっくりみていってね!


今、俺は一人外に出ている。

昨日の文に怖いくらい明日は外に出てはいけないと念を押されたからね!ふっふっふ

その時確信したね、今日この騒動は終わりを迎える、つまり霊夢達がやってくるわけだ。つ・ま・り!弾幕戦が拝めるわけだぜ?そんな大チャンス見逃すわけにはいかないでしょ。ってことで、文が出掛けてから時間を置いて出てきたわけです。山から出なきゃ大丈夫だろう、うん。

 

文の家にいる時は椛が来た時ぐらいしか体動かしてなかったからなぁ、結構鈍ってるかもしれない・・・ってまあ見るだけ、見るだけなら問題ないよね。ちょろっと見て文が帰ってくる前に家に帰っておけばきっと大丈夫のはず・・・。そうすれば明日、とはいかないかもしれないけど妖怪の山からも下りられると思うし、久々に家に帰れるぅ~。とかなんとか考えてるうちに、守矢神社が近づいてきたのか、石畳の道が見えてくる。

 

「あー!!アンちゃん見つけた!!」

「へ?」

 

本来ここにいるはずの無い聞き覚えのある声に俺は思わず振り向いた。なんとそこにはチルノと大ちゃん、そしてフランいるではないか!チルノとフランが飛びついてくる。

 

「アンちゃん!大ちゃんがとっても心配してたんだぞ!」

「アン!大丈夫だった?ごめんね私のせいで・・・何にもされなかったよね?」

 

ちょっと怒ってる雰囲気のチルノと泣きそうな顔のフラン。全くもって申し訳ない、特に大ちゃんにはまたしても心配かけてしまった。二人には少しだけ離れてもらって、俺は大ちゃんに近づいていく、そして・・・。

 

「大ちゃん。ごめん!」

 

土下座した。いや、まあなんというか大ちゃんの雰囲気がね?ほらなんかこわいっていうか、圧がすごいっていうか、俯いてて表情わからないし。ほら変に言い訳とかしないほうがいい時ってあるじゃない。今がその時なわけ。まさしく平身低頭、謝る以外の選択肢が無いってわけです。

 

そうして大ちゃんの方を見れないでいると、大ちゃんが近づいてきて、俺は抱きしめられる。戸惑う俺に大ちゃんの腕が強まる。

 

「アンちゃん。・・・無事でよかった」

 

俺を抱きしめている腕は震えていて、その声はかすれていた。

 

「大ちゃん・・・」

「・・・いっしょにかえろう?」

 

それは・・・ううん、帰ろう。今は大ちゃん達と一緒にいる方が大切だ。文には申し訳ないけど、今度謝りに行こう。大ちゃんに帰ろうと言おうとしたところで、突然風が強くなる。その風は俺たちを囲む壁の様に渦を巻き俺たちを捕らえる。

 

まずいことになったかもしれない

 

「ここは我ら天狗の領域、知らずに入って訳でもないでし・・・アンさん?何故ここに」

 

空から俺たちに話しかけてきたのは、文だった。なんというタイミングの悪い。

 

「誰だおまえ!」

「あの人誰?アンの知り合い?」

 

さも当然のように俺をかばうように前に立つチルノ。いやぁかっこいいねぇ。

そして、いつの間にか隣にやってきていたフランが、抑揚のない声で、いやどことなく棘のある口調のような・・・よくよく考えればフランはこの山にいい印象を持っていないはずだ、そりゃあこういう反応になってもおかしくないなと心の中で納得してフランが不安にならないように手をぎゅっと握る。急に手を握ったからびっくりしたのか、フランが表情を崩す。かわいい

 

「あっ、あの人この前の・・・」

 

前にあった時のことを思い出したのか、大ちゃんが声を上げる。ただ以前とは纏う雰囲気が違うせいか、首をかしげている。

 

「あなたは・・・なるほど。そういうことですか」

 

文の方も大ちゃんを見て何か察した様子だ。

 

「申し訳ありませんが、そちらのアンさんにはもうしばらくこの山に居てもらはなくてはなりません。大人しく引き渡して頂けないでしょうか」

「いやよアンは渡さない」

「そうだ、そうだ!おまえたちなんかにアンちゃんは渡さないぞ!」

 

先ほどより丁寧な口調で文がお願いをしたものの、フランが素気無く返し、チルノが便乗して文を挑発する。大ちゃんに至っては俺の右腕に腕を絡ませて絶対に離さないと意思表示している。これには文も少しイラっと来たのか顔を引きつらせている。

 

「こちらも、あまり時間が無いのです、少し手荒ですが、無理やりにでも連れて帰らせてもらいますよ」

 

文はそういうが早いか、強風を巻き起こし、こちらに弾幕を放ってくる。妖怪の山の今の状況からすれば、こちらの方が話し合うより早いのかもしれないけど・・・。

 

やっぱりこうなるのか!

 



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第三十一話

新しいゲームなんかオススメないですかね。
アクションは面白そうなのが多すぎて選べないし。
RPGはやりたいけど最近のを知らないし。ペルソナしかしてねえ!
とまあそんなどうでもいいことは置いといて。
今回もゆっくりみていってね!



チルノ、フランが眼前で文と弾幕戦を始めた。

 

俺は何をしているのかというと、大ちゃんに引っ張られて弾幕戦から遠ざけられていた。

曰く「アンちゃんは弾幕ごっこに参加するといつもいなくなっちゃう」

とのこと、ハハハ。ぐぅの音も出ないね。

相変わらずというかちょっとだけ抵抗を試みたりしたけど、力の差を思い知らされたよね。俺、妖怪なのに・・・いやべつに気にしてないけどね!ホント

っていうか大ちゃんすごいくっついてくるね、やっこい肌がすごい当たってるんだけど。大ちゃんにしては随分積極的というか、いや別に嫌じゃないけどむしろ嬉しいけどさ!

・・・コホン。そんなこんなで二人が文と戦うのを遠巻きに見てるだけなんだけど・・・変だな、フランは強いの知ってるからいいとして、2対1だからかもしれないけど、チルノ強くない?普通に戦えてるんだけど。まっまあ?俺だってあれくらいできるし?別に羨ましくなんてないけどね!

たぶん

それにしても、やっぱ弾幕ごっこはいいねぇ~見てるだけでも心が躍るぜ~!いいな・・ぁ・

一瞬背筋に悪寒が走って後ろを振り返る。

しかし、周囲には何も見当たらない。すぐそばにいた大ちゃんは不思議そうに顔を傾けているだけだ。なんだったんだろ。気のせいかな。っとそろそろ終わりそうだ。

 

チルノのパーフェクトフリーズでうまく文の動きを制御したところで、フランのレーヴァテインの有効範囲へと追い込む。フランはチルノが作ったチャンスを見逃さずレーヴァテインを発動、レーヴァテインをもろに喰らった文は地面に膝をつく。完璧な連携プレイに俺は食い入るように見入っていた。どうやらこれで決着のようだ。

 

「私の負けですね・・・アンさんそれではまた、いつでも遊びに来てください」

 

文は服をパタパタとはらうと立ち上がり、それだけ言うと、すぐに飛び去ってしまった。

その後すぐ、俺は3人に連れられ、抵抗する間もなく帰宅。それからしばらく3人に尋問されたり、説教されたりと大変な一日を過ごすこととなった。できればもう少し妖怪の山の弾幕ごっこを見ていきたかったけど、仕方ない。

 

 

 

それから数日後、俺はしばらくの間チルノ大ちゃんフランの3人+α(今回の事件を聞きつけた映姫様と幽々子様)にしばらく一人での行動を禁止されることとなっていた。毎日必ず誰かが家に来るor紅魔館か白玉楼に泊まるかの生活をしばらく続けることになる。

まあ仕方ないよね。しばらくは大人しくしていようと思うよ、ほんとに。

 

そして今日、俺は今回の異変に関わった面々たちが集まった宴会の場に大ちゃんとチルノを連れ訪れていた。着いて早々先に来ていた紅魔館の方々にフランを逃がした時の事を感謝されたあと、ものすごく叱られたり、その後レミリアが「本当に無事でよかった」といって抱きしめられたりした。まさかそんな事されると思ってなかったからびっくりしたし、フランが宴会に来ててすごい勢いで飛びついてきたのもびっくりした、というか一瞬意識飛びかけた。危うくバラバラになるところだったよ。それからフランを交えて4人で宴会を楽しんでたら俺に気付いた魔理沙がやってきて、何やら文句を言ってきたんだけど、よく意味が分からなかった。ただまあ怒ってる感じじゃなかったしそこまで気にしなくてもいいか。ともあれ、そんな形で異変後の宴会にほぼ初めて参加することが出来た俺は舞い上がって意識が無くなるまで飲み続けたのだった。

 

 

 



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第三十二話

一時間遅れました。
やっちまったぜ!すんません。
今回百合要素強め(当社比)。
そして今回も残り5分前投稿。3分前でした。

今回もゆっくりみていってね!


宴会に参加した翌日、自宅のベッドで目を覚ました俺。一体どうやって家に帰ったのか全く覚えてないけど。というかお酒飲み始めてからの記憶が全く無い。さすがに調子乗って飲み過ぎてたかな、酔ってるときに変な事してないよな・・・。不安になってきた。次から宴会に参加できなくなったりしたらどうしよう。誰か、誰かあの時一緒にいた子に聞こう。とりあえず大ちゃんとチルノに会いに行こう。そう思い立った俺は霧の湖の周辺へやってきた。いつもならここで遊んでるはずなんだけど・・・。

きょろきょろと周りを見回して辺りを歩いていると、突然ひんやりとした柔らかい感触が背中と目を包む。真っ暗な視界の中突然のことに呆然としている俺に耳元で誰かが囁く声が聞こえてくる。

 

「だーれだ!」

「・・・チルノ?」

 

耳元でささやかれることにちょっぴりドキッとしながらも、努めて平静を装って答える。視界が開けて、後ろを振り向くと、やはりチルノが満面の笑顔でいた。

 

「せいかい!」

 

そして、そのまま俺はチルノに抱き付かれキスされていた。

 

・・・!?

 

えっちょ・・・えっ?

 

あまりに突然のことに頭の理解が追い付かないまま、チルノの唇が離れていく。

 

「あれ?アンちゃんどうしたの?」

「い、いきなり、どうしたの?」

「?・・・アンちゃんがちゅーは仲良しの挨拶みたいなものって言ってたんだよ?」

 

何だって!?若干放心状態だった俺は、チルノの言葉で余計に混乱することに。チルノは不思議そうに首をかしげているが、まさか・・・。

俺はすぐさまチルノに連れてもらって、大ちゃんのもとへと向かった。

 

「大ちゃん!」

「あっ、アンちゃん」

 

会った途端大ちゃんは、顔を赤らめて少し照れた様子で近づいてくる。

やばい、可愛いけどやっぱり大ちゃんもキスするのが挨拶だと思ってるよ!早く弁明というか誤解を解かなくては!と慌てて大ちゃんを止めようと手を前に出して抵抗を試みるが、まあ大方予想通りというか、全然抵抗出来ずそのままほっぺたにちゅーされる。

やっこい唇がほっぺにあたる感触が気持ちいい・・・。

じゃなくて、あーもう!大ちゃんのちゅーが終わった後、俺は昨日のことを大ちゃんに聞くことにした。わかったこととしては、お酒を飲んでからどうやら俺はえらくはっちゃけてたらしいことと、その時の事を知っているのは近くにいたチルノ、大ちゃん、スカーレット姉妹に従者の咲夜さんぐらいだということ。幸いなことに、そんなに大勢の人に迷惑をかけたりはしていなかったみたいで良かった。そして、それだけはっちゃけていた俺は大ちゃんが少し目を離している間に帰ってしまったらしい。しばらくお酒は控えよう、大ちゃんが昨日の話をする様子を見て、そう心に決めた俺だった。

 

それからその日は二人に昨日の事は他の人には秘密にするようにお願いして遊ぶことにした。昨日はすごく迷惑かけたりしたけど、こうして遊んでくれたり、秘密にしてくれたりする二人はやっぱりとってもいい子たちだ。俺は二人に感謝しつつ、今までよりも距離が近づいたことを感じるのだった。物理的に。

 

近い、二人とも近いよ。

 

 

 



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第三十三話

ナハト改様誤字脱字報告ありがとうございます!

今回もギリギリ投稿になります。次からは21時投稿に変えようかと思います。
のんびりロードレース見てる場合じゃなかった。
今回はのんびり回です(たぶん)

今回もゆっくりみていってね!


やあやあ、どうもみなさんこんにちは、本日は大変お日柄もよく・・・ないね、雪降ってるからね。吐く息が白くなるくらいには気温も低くなってますね。いやぁこんな日は一日家でぬくぬくこたつで過ごしていたいもんだよ。って一体誰に言ってるんだろうね。ほんと

 

「なーに黄昏てんのよ、そろそろ出発の時間だけど、準備はいいの?」

「あ、ちょっとだけ待ってー」

 

霊夢はふぅん、と一言気怠そうにして、俺の様子を眺めている。俺はスケッチブックから博麗の巫女セットを取り出して着替える。

 

「おお、最初聞いた時はどうかと思いましたが、アンさんが着ると可愛らしいですね」

「が、は余計よ。でもまあ、いいんじゃない?見ただけで作ったにしてはよくできてるわよ」

「素直じゃないですねえ、可愛いくらいいってあげたらどうです?」

「うるさいわねぇ、大体なんであんたがいるのよ」

「あやや、ひどいですねぇ。これでもあなたのサポートとしてあのスキマ妖怪に呼ばれてきたんですよ?」

 

そう言いながら文が俺の腰に手をまわし、肩に顔を乗せて覗き込んでくる。よし、持ち物の確認を終えて、これで準備万端だ。

 

「準備できたよー!」

「それじゃあ行くわよ、くれぐれも私から離れないように」

「お二人とも気を付けて~」

 

俺と霊夢は、地上から、間欠泉を覗き込む。これから、俺たちはここから、地底へと向かうのだ。しかも、今回は霊夢と一緒に。

とっても緊張している。

普段は異変を眺めているだけの部外者でいたわけだけど、今回は異変を解決する側になるのだ。

正直未だになぜこうなったのかよくわからないんだけど。

 

あれは数日前、白玉楼で幽々子様とのんびりしていたときのことだった。

このころ俺には悩みがあった。一人で眠っていると、嫌な夢を見るようになったのだ。内容はおぼろげにしか毎回覚えていないものの、大体が大ちゃんや他のみんながどこかへ行ってしまって一人ぼっちになるようなものだったと思う。チルノや大ちゃん、映姫様達が泊まりに来るときは以前から一緒に寝ていたけれど、それからは紅魔館や白玉楼に泊まりに行くときも、誰かと一緒に寝られるようにしていた。幸いにも訳を話すと、みんな快諾してくれた。

みんな優しくて涙が出そうだった、というか泣いた。もともと一人で眠る機会が最近は減っていたものの、その度にあの夢を見せられていては、流石に気も滅入るというもの。それもみんなのおかげでなくなったのだから、感謝してもしきれない。

そういったわけでその日も白玉楼に泊まる予定だったのだが・・・、それは突然俺の前に現れた。

 

その日は夜にプリズムリバー三姉妹は演奏をするということで、俺のテンションは上がりまくっていた。

 

「幽々子様!今日、ルナサ達来るんだよね!」

「そうよ~、もうアトゥンったら、そんなに楽しみだったのね。もう3回目よ~」

 

そう言いながら、膝の上に乗っている俺の頭を撫でる幽々子様。そうされると落ち着くような、ふわふわしたあったかい気持ちになる。そのまま撫でられているといつの間にか眠りそうだったので、撫でている手を掴んで、腰付近まで下ろす。するとそのまま幽々子様が両手を腰に回してぎゅっと抱きしめてくる。柔らかい感触が背中に伝わる。以前なら緊張していただろうか、最近はこうして過ごすことが増えたせいか安心感を覚えていることが多い。流石に正面からだと緊張するけど。俺から幽々子様に抱き付いたりはしてないけど、それから何かを感じ取ったのか、幽々子様からのスキンシップは以前より増えた気がする。

 

そんないつもの日常に何の前触れもなく彼女は現れたのだ。

 

「ちょっといいかしら」

 

どこからともなく聞こえてくる胡散臭い声に、俺と幽々子様は互いに顔を見合わせる。声の主はすぐに目の前のスキマから顔を出し、現れる。

 

「あら~紫じゃない。どうかしたの~」

「えぇ、少しいいかしら」

「いいわよ~、アトゥン、少し紫と話すから待っててね~」

 

おっとりとした声で幽々子様が言って紫様とスキマへと入っていった。何か内密の話だろうか、内容が気になるが、わざわざ場所を移すくらいだ、どのみち俺には関係ないことなんだろう。なんて思って30分ほど一人で待っていると二人が戻ってきた。幽々子様が少し落ち込んだ様子だったので、どうしたのかと思い近づくと、幽々子様がぎゅっと俺の事を抱きしめた後、「ごめんね」と言ってそのまま紫様に引き渡された。

 

そして今に至る。

紫様には、今回の異変解決に向けて霊夢のサポートをしてほしいと言われたけど、

正直何で俺?感が否めない。それでも選ばれたからには何とか頑張ろうと思う。せめて霊夢の邪魔にならないように。間欠泉へ降りていく霊夢の背中を目で追いながら、俺は心臓が飛び出てきそうなほどのドキドキと小躍りしそうな小さなワクワクを抱えて間欠泉を降りるのだった。

 



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第三十四話

何とか書けた。物語の進行度的にはすでに終盤だったりしなかったり。
今回久しぶりに戦闘回です、う~んやっぱり難しい。
ただボリュームだけは、いつもより多いので見ていただければ光栄です。
今回もゆっくりみていってね!


間欠泉を降りて地底までの道中、キスメが空から降ってきて危うく当たりかけたり、黒谷ヤマメと霊夢が勝負をしたりと、早速弾幕戦が見れた俺は飛んでくる流れ弾を避けながら、霊夢に余計な事はするなと言われたので、見ているだけだ。というか霊夢が強くてもうすぐ終わりそう。やっぱり主人公ってすげえや。なんてのんきに考えていたら。出発前に渡された通信端末から声が聞こえてくる。

 

「・・・あ、あー聞こえるかしら。」

「聞こえるよー!」

「ありがとう、アトゥンそっちは今どんな状態?」

「霊夢と土蜘蛛のヤマメが戦ってて、もうすぐ終わりそう!」

「そう、地底まではまだかかりそうかしら」

「ん-、もう少しかな、下の方に地面っぽいのが見えて来たし」

「ありがとう、わかったわ。もう少しでこちらの準備も整うからもう少し待ってて」

 

通信機から聞こえてきた紫さんの声に反応し、現在の状況を伝え終わると、戦いが終わったのか霊夢がこちらにやってくる。

 

「今の紫から?」

「うん、今どんな状況か話してたよ~」

「ふぅん、まあどうでもいいわ、進むわよ」

「ラジャー!」

 

霊夢について再び間欠泉を降り始める。

霊夢とは最初の頃、異変のたびぼこぼこにされていた記憶くらいしかなかったので、いつかは仲良くなりたいと思っていたけど、こうして共闘するなんて思いもよらなかった。

ちなみに霊夢の方も何故俺を地底に連れていくのかは知らないらしい。紫さんは一体何を考えているのか。とはいえ、俺としては異変が起きている時に一番安全な人と一緒に弾幕勝負が見れるからいいんだけどさ。

 

そうこう考えている間に地底にたどり着いたようだ。奥に続く道が見える。先に進んでいくと、

一本の橋が見えてくる。前を歩いていた霊夢の足が止まる。

 

「誰かいるわ」

 

その声にパルスィさんかなと思いながら後ろから顔を覗かせてみると、案の定水橋パルスィさんと、星熊勇儀さんがおしゃべりしていた。二人もこちらに気付いたようで、道をふさぐようにして声を掛けてくる。嫌な予感がする。

 

「よう、あんたら何しに来たんだい、二人揃っておんなじ恰好して」

「別に、あんたらに関係ないでしょ。そこ、通してくれない?」

「いきなり地上から来ておいて随分な態度じゃない、妬ましいわね」

「地上から来てるのを知ってるなら理由も大体想像つくんじゃない?急いでるからとっととどいてくれないかしら」

「随分と威勢のいいのが来たもんだねぇ、退屈しなさそうだ、この先に進む資格があるか、試してやるよ」

「はぁ、めんどうね。そういうのは別のやつにやってくれないかしら」

 

やっぱりというか、高圧的な霊夢の態度に乗せられてか、勇儀さんはすでに戦う気満々のようだ。対する霊夢は全く乗り気じゃないみたいだけど。パルスィさんも特に何も言ってこないがものすごい負のオーラを感じる。

 

「ちょうどお互い二人ずつなんだ、チーム戦と行こうじゃないか」

「仕方ないわね。アトゥン、さっさと終わらせるわよ!」

「おっけー!まかせとけ!」

「妬ましい、妬ましいわ」

「それじゃあいくよ!

 

もう、やるしかない!と腹をくくった俺は、勇儀の掛け声と同時にいつも通り、スペルカードを宣言する。

 

「『白紙』ブランクワールド!!霊夢少しお願い!」

「仕方ないわね、早くしなさいよ!」

「なんだ?何も起きないぞ」

「勇儀、来るわよ!」

 

霊夢が二人を相手に一気に攻撃をしかける、その間に、俺は急いでキャンパスに色を付けていく、今回はちょっとずるいけどタイミングさえ間違えなければ・・・。

問題ない!

はず・・・出来た!っとうおぉお!

 

スペルを完成させた次の瞬間、蛇の様な弾幕がこちらに飛んできていることに気付いて、急いで横に回避する。ふふっ、スペルを描く速度も上がったが、こうして弾幕を避けることも、

っとぉ!!

躱したはずの弾幕が、再びこちらに襲い掛かってきた、そういえばパルスィさんのスペルにそんなのあったな!忘れてたよ!再び、躱した弾幕が、進路を変えこちらに向かって迫ってくる。危なげなくそれを躱した俺は、パルスィに向け、お札型の弾幕を放つ。少し離れたところで、霊夢と勇儀が戦っている音が聞こえてくる、随分と激しくぶつかっているようだ。

 

まずい・・・、これは非常にまずい状況になった。このままでは俺は負けてしまう。

何でかって?今の俺にパルスィに有効打を与えられる攻撃手段がないのだ。霊夢と同じ弾幕を使えるとはいえ、スペルまでは使えないのだ、でも相手はスペルを使ってくるわけで、そうなると俺の実力ではそれを避けるので手一杯だ、攻撃チャンスを窺うとかそういう以前の問題だ。チームプレイには自信があった、今まで何度もやってきてるし結構いい戦いをしてきたと思ってる。でもタイマン勝負はだめだ、未だにチルノにも大ちゃんにも勝ったことがない。勝率ほぼ0%だ。

ともかくここは凌いで、霊夢と合流できるチャンスを作らなければ、描いたスペルも今使うわけにはいかない・・・っ!

 

真正面に、大きな弾幕玉と花が飛んできた、大きく横に逸れて回避すると再び真正面から大きな弾幕玉が、周りには先ほど放たれたであろう花の弾幕が俺の行動範囲を制限してくる。花は少しずつ色あせて消えていくが、その間にどれだけ避けても、正面からくる大きな弾幕玉に、体力が奪われる。そんな俺に追い打ちをかけるようにパルスィがスペルを宣言する。

 

「これも避けるなんて、あぁ妬ましい。『舌切雀』大きな葛籠と小さな葛籠」

 

宣言と同時にパルスィさんが二人に分身し、大小の弾幕をそれぞれが放ってくる、これは避けるの自体はそこまで難しくないが、二人のうち片方が偽物のパルスィで確か大きい弾幕を撃ってくるのが偽物だったはず。だから、小さい方を・・・。

 

見えない

 

大小の密度の高い弾幕を前に、パルスィさんの正確な位置が掴めない、かといってとりあえず弾幕を出しては偽物を攻撃してしまう。偽物に攻撃を当てすぎると、手痛い仕返しが飛んでくるのでそれは避けたい。

くそお!もう少し背が高ければ!こんな時に自分の身長が恨めしく思えてくる。あっと思った時には遅かった。

 

「ふふっ、あなたから妬みの力を感じるわ。これで終わり『恨符』丑の刻参り七日目」

「っ!」

 

不敵に光る緑眼の鋭さが増し、パルスィさんを中心に小さな弾幕が展開される。その弾幕は壁や地面にあたると分裂し、高密度の弾幕となってこちらに飛んでくる。上下左右全方向からの弾幕を必死に避ける、流石にすべてを避けきることは出来ず、所々被弾してしまうが、なんとか耐えた!

ふらふらと地面に降りて、息を上げていると、パルスィさんが頭上にやってくる。

 

「ここまで避けるなんて、やっぱり妬ましいわねあなた」

「はぁ、はぁっあ、アトゥン・・・だ・・っ!」

「・・・ほんと妬ましい」

 

ここまでか・・・。結構頑張ったけど、やっぱり駄目だった。そう思った時、前方から何かが吹っ飛んできた。吹っ飛んできた物体は、そのまま俺のすぐ横を通り過ぎくるりと回って地面に立つ。

 

「ったくどんなパワーよ、あんた」

「はっはっは!すごいよ、お前さんもここまでやるとはね」

 

息をきらした霊夢がこちらを見る。

 

「随分とやられたわね」

「霊夢だって」

「・・・ふん、でも丁度良かった、やっと合流出来たわね、ここで決着つけるわよ」

「いいね、その目、二人ともまだ、諦めてないってわけだ、それならこっちも全力で迎え撃たせてもらうよ」

「妬ましいわ、本当に妬ましい」

 

そう言った勇儀の周りの空気が変わり、勇儀の周囲に超高密な弾幕が現れる。俺は一瞬で悟った、「あれ」がくると。霊夢も何かを感じ取ったようで距離を取ろうとする。勇儀の周りにはさらにさきほどより少しだけ緩い弾幕が張られている。

 

「霊夢!後ろに下がっちゃダメだ!」

「何言ってるの!下がるわよ!」

「前に!前に出て!下がっちゃダメだ!」

「ちょっ!アトゥン!」

「へえ、面白い」

 

三 歩 必 殺

 

俺は下がろうとする霊夢を無理やり前方へ突き飛ばす、視界の隅では勇儀が地面に拳を振り下ろすところだった、間に合った。次の瞬間俺の視界は真っ白にホワイトアウトする。

 

 

「アトゥン!!」

 

霊夢は思わず叫び声をあげた。アトゥンに前方に突き飛ばされ、後ろを振り返った瞬間、私が下がろうとしていた方向、アトゥンのいた場所にマスタースパークを優に超える火力の弾幕の爆発が起きた。

 

「ちょっとやり過ぎたか・・・ん?」

「さすがに同情するわ、やり過ぎよゆう「待て」?」

 

久方ぶりの外からの訪問者にいくら加減をしていたとは言え少し興奮しすぎたかもしれない、と反省する勇儀。霊夢ならともかくとして、もう片っぽの妖怪はそこまで強いやつじゃなかったもしかするとやりすぎたかもしれないな。

しかし、勇儀の弾幕が消えて現れたのは、先ほど勇儀が見せたものと同じ超高密度の弾幕、そして、異様なまでに高まった中心の妖力。

勇儀は驚きを隠せなかった。

あの妖怪にあんな力は無かったはずだ、いったいどこからあれだけの妖力を・・・面白い!

勇儀はパルスィをかばうように抱き寄せた。

 

「ひ っ さ つ!」

 

先ほどとほぼ同じ火力の弾幕爆発が勇儀とパルスィに襲い掛かる。

何が起きているのかわからない霊夢、そんな霊夢が見たのは、見慣れた博麗結界、であろう壊れかけた結界の中でスペルを使ったアトゥンの姿だった。

アトゥンはその場に崩れ落ちる。

 

 

あぁ、いってぇ。けどなんとか博麗印の結界を張るのが間に合った!

今ならこのスペルカードで急襲出来る!ここがチャンスだ!壊れかけた結界に残りの防衛を任せ、満身創痍の体を無理やり動かしてスペルを宣言する。

 

「さ ん ぽ ひ っ さ つ !!」

 

再び前方で爆音が鳴り響く。

流石に妖力がそこを尽きかけたか、バタリと地面に伏し動けなくなる、すぐに霊夢がやってきて何か言っているが疲れすぎて、左から右へと声が流れていくせいで頭に入ってこない。ちょっとだけ休ませてくれー。

 



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第三十五話

最近味噌汁にハマったかもしれない。毎日飲んでるわ。
というわけで、今回は特に書くことないです。

今回もゆっくりみていってね!


先ほどの弾幕勝負でへろへろになった俺は、霊夢の背中に背負われ、地底をさらに進んでいた。

あの後、勇儀の気が済んだのか通してくれたのだ。あれだけ霊夢と熱戦を繰り広げていた気がしたのに、もう酒飲んでた。どんだけ丈夫なんだ。

その後霊夢と二、三言葉を交わしていたが何を言ってたかまでは頭に入ってこなかった。それから、地上からも通信が入ってなんかしゃべってたけど、

ぜーんぜん、覚えてまっせーん。悪いとは思ってない。

俺はしばらく霊夢の背中の上でぼーっと旧地獄を眺めていた。

旧地獄の街並みから少し離れた場所に地霊殿はひっそりと佇んでいた。

 

「いかにもな場所に着いたわね」

「レッツゴー!」

「っ耳元で叫ぶな!そんなに元気なら自分で飛びなさい」

「あー、ごめんごめん。もうちょっとだけ運んでください」

 

喋れるくらいまで回復した俺は、霊夢の独り言っぽいセリフを拾った。まだ歩いたり、飛んだりする体力まではないけど。博麗印の結界のおかげでほとんどダメージは追わなかったとはいえ、霊力を妖力で補っているせいか、純正、もとい霊夢が使う結界より強度が低くなってしまったので破壊されてしまったしね。危なかったよほんと。

 

地霊殿へと侵入した霊夢と俺。

さっそくそこで待ち構えていたのはこの地霊殿の主、桃色のくせっけのある短い髪が特徴的な少女。嫌われ者の頂点と呼ばれている覚妖怪、古明地さとりさんだ。さとりさんはこちらを視認するとうやうやしくお辞儀をする。

 

「あら、随分丁寧な応対じゃない」

「ようこそ、私はこの地霊殿の主。古明地さとり、以後お見知りおきを」

「ご丁寧にどうも、私は」

「博麗霊夢さんと・・・あぁ、そちらが山吹さんですね。っと失礼、私覚妖怪、心の読める妖怪なので」

「・・・へぇ、テレパシーみたいで便利ね」

「ねー・・・っ!」

「それはどうも」

 

俺は気付いてしまった。心が読めるってことは俺の考えていることとか丸わかりってことじゃん?じゃあ転生したこととかもバレちゃうんじゃね?それってやばくね。

どうしよう、どうしようと二人はまだ話しているが俺の心ここにあらずで、どうするか考えていた。常に全然違う事を考え続けるとか、むしろ何も考えない・・・とか、心を読まれない方法とか誰かに教えてもらえばよかった!あるかは知らないけど!!そんな俺をよそに二人は弾幕勝負を始める。俺は目の前で繰り広げられる、至極の勝負を前に、とりあえず思考を中断してこの勝負を楽しむことにした。

もういいや、後で誰にも言わないよう土下座してお願いすれば。何とかなるっしょ。

もはや俺は、半ば諦めの境地に立っていた。

わー、やっぱり弾幕は綺麗でいつみてもワクワクするなあ!

 

 



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第三十六話

頭くっそいてぇ。
ってことで今回で地底編終了です!たぶん
まもなく終盤ということで頑張って書きたいと思います!
今回もゆっくりみていってね!


目の前で繰り広げられる、熱戦に見入っていると、後ろから声が掛けられた。

 

「よう、こんなところで何してるんだ」

「え?・・・魔理沙、久しぶり」

 

振り返るとそこにいたのは魔理沙だった。当然といっちゃ当然か彼女も異変解決にやってきたのだろう。俺たちが出発した時には見なかったから、その後やってきてもう追い付いたのか。

早いなぁ。

 

「久しぶり、で?何してるんだこんなところで、まさかまた変な事に首突っ込んでんじゃないだろうな」

「違うよ、今日は霊夢の付き添いで来たんだ。何でかは知らないけど紫さんに連れてこられたんだ。っていうかなんだよ、いつも厄介ごと持ち込んでくるみたいな言い方は」

「実際そうだろ」

 

返す言葉もございません・・・、へへっ。

 

「あー、霊夢は忙しそうだし、私たちが先に行って解決してやるぜ。お前も来るか?」

 

そわそわした様子で魔理沙が聞いてくる。大変魅力的な提案ではあったけど、回復してきたとはいえまだ、満足に動けないのと紫さんに霊夢と一緒にいてねって言われてるんだよな。ここは断ろう。

 

「それも面白そうだけど、いいや、紫さんから霊夢と一緒にいてって言われてるし、今結構疲れてるから、一緒に行っても足引っ張っちゃうしね」

「そうか・・・じゃあ先に行くぜ」

「うん!応援してる!」

「っ!お、ぉう。じゃあな!」

 

・・・?、なんか魔理沙がシュンとしたり、急に元気になったりどうしたんだろ、ん~。まあいいや、それより弾幕、弾幕しっかり目に焼き付けとかなきゃ。

 

 

「お疲れ様~」

「はぁ~、ほんと疲れたわ」

 

結果は霊夢の勝ちだった。いやぁ、すごかった。さとりさんの弾幕もスペルも、霊夢の中にある色んな記憶から持ってくるから、全然飽きないし。霊夢のスペルも実は直接対決した時以外はあまり見る機会が無かったから、すごく新鮮に感じた。当事者として使われるとのんびり見てる暇なんか無いし、そういう意味でも今回はいいことづくしだ。

後はこのままさとりさんの視界から滑らかにフェードアウトすれば最高の一日になるね。

 

などと思ったのがいけなかったのだろうか。

その後すぐに霊夢が魔理沙を追いかけて行ってしまった。俺も着いていくって言ったんだけど。

 

「あんたまだ疲れてるんでしょ?そんな状態じゃ足引っ張るだけだから休んでなさい」

 

って言われて、紫さんもあっさり許可してしまって今、さとりさんと二人きりです・・・。死にそう。霊夢もこんな時に変に気を使わなくていいのに!

 

「どうかしましたか?」

「え、えっとぉ」

 

やばい、心を読まれるのが不安でさっさとこの場から離れようと思ってたのに!どど、どうしよう。

 

「心を読まれるのが不安でさっさとこの場から離れようと思っていたけど、それが出来なくて焦っている。といったところですか」

 

読まれてる~!ってそりゃそうですよねー。

 

「・・・まぁ、帰ってもらっても構いませんよ、慣れてますから」

 

そう言って少しだけ、ほんの少しだけ。もしかしたら見間違いだったかもしれないと思うほどの刹那、さとりさんが寂しそうな表情を浮かべたような気がして、すぐにそれは無表情な顔に戻ったんだけど。それに気づいてしまったから、いや、俺がそう思ったから、そう思ってしまったからには、その場を離れようとは思えなくなっていた。この際心の中を覗かれていようと構うもんか。もし仮に、さとりさんが本当はそんな事を思ったわけでなかったとしても、たとえそれがいらぬお節介だったとしても。さとりさんを笑顔にしたかった。

 

「帰らないのですか?」

「うん。・・・みんなが帰ってくるまでここにいちゃダメ、かな」

「・・・。はぁ、いいですよ。全く、地上にはお節介が多いのですね」

 

そう言って、少し呆れたようにさとりさんは笑った。その姿はとても可愛かった。

 

それから、またしばらく二人でお茶を飲みながら、話をしていると霊夢達が戻ってきたので俺も二人と一緒に帰ることにした。帰り際さとりさんにまた遊びに来てもいいかダメもとで聞いてみようと思ったら、

 

「暇なときになら、相手になりますよ」

 

と、心を読まれたか先に言われてしまった。けどまた来てもいいってことだよね!素直に嬉しかった。というわけでその日はそのまま地上まで行って解散!後日、宴会をやるときにまた声を掛けるという言葉に喜びを爆発させて家に帰った。

 



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最終章
八雲紫の誤算 とその後


本日から、東方お絵描き転生は最終章へと突入します!
ここからは最終章ということで、他者視点と本人視点が織り交ざっていくと思いたい
外伝の方にまだ書きたいこととかはあるものの、ともかく本編完結を目指したいと思います!!
今回もゆっくりみていってね!


「どうだった?あの子」

 

霊夢達と共に、彼女が去った後。すぐに賢者(スキマ妖怪)がやってきた。私は彼女に背を向けたまま言葉を返す。

 

「どうだった、と言われれば考えていることがすぐ顔にでる子、心を読む必要もないくらいにね」

「それは知ってるわ。私が聞きたいのはあなた()から見たあの子がどう映ったのかよ」

「随分と焦っているようですね」

「否定はしないわ、早く安心したいだけなのかもしれない。彼女が無害であることを、早く確定させてしまいたいのかもしれないわ。」

「そうですか・・・、では私の見た彼女をありのまま、伝えましょう」

 

杞憂であれば、それでいいと思っていた。異変の度にどこかしらであの子が現れるのはそれだけ彼女が好奇心旺盛な妖怪であり、本人はこのスペルカードシステムがとても好きであるということは私もよく知っている。それに、自然と関わりの深い妖精と共にいることが多い。だから彼女は異変によく出くわすのだと。彼女の能力はまだ底が見えないが、脅威となる使い方はしないだろうと信じたかった。しかし、同時にどうしてもあの子の中の何かが引っ掛かっていた。

そして今日、彼女は私のその小さな疑念をより確信に近いものへと変えてしまった、

地底の怪力乱神が使った最後のスペル、あれが初見であれば、彼女にあれをコピーする時間は皆無であったはず、そして彼女は地底に住む者たちのことを見たことがあるといった様子は見せなかった。彼女はうそをつくのが下手だ。であれば、これは霊夢に聞けばすぐにわかるだろうが、彼女がスペルをコピーしたのはおそらく勝負が始まってすぐのはず。つまり彼女は怪力乱神のスペルをはじめから知っていた。

一体どうやって?これは私の推測でしかないが、彼女には何か別の側面があるのではないだろうか、普段は表に出ない裏の顔が、本人も無自覚のうちにあの子に影響をあたえているのではないだろうか。もし、もしもそうであれば・・・。

 

以前、紅い屋敷の吸血鬼から聞いた話が思い出される。

 

「あの子の運命を視たことがあるんだけれど、変なのよ。ある一定の時間まで進むと、あの子は突然消えてしまう。まるで、御伽噺の登場人物みたいに」

 

その答えが、今目の前にいる覚から告げられる。

 

「彼女の心は読めませんでした」

 

じんわりと、手に汗がにじむ。

 

「彼女の心を読もうとすると、靄のようなものがかかって遮られてしまうんです。まるで、誰かに妨害されているような」

 

胸が早鐘を打つように早くなっていく。

 

「いえ・・・正確には身体と心が嚙み合っていない、ような。彼女の体に全く別の人格が乗り移っていて、まだ混じり合って定着していない、・・・すみません、今の私ではそれ以上のことは何とも、もう少し彼女と話してみないことには」

「いえ、いいわ。ありがとう」

「どうするつもりですか」

「・・・」

 

私はその問いに応えず、その場を後にした。

ともかくもう一度、頭を整理してから彼女に会ってみよう。

次の宴会を開くまでに答えをださなければ。

 

 

結局宴会にあの子は現れなかった。魔理沙があの子の家に行った時にはすでに家を後にしていて、近くにいた妖精達にも居場所を聞いたがわからなかったという。

 

 

 

そしてその翌日、彼女はいなくなった。

 



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大妖精と絵描き

東方ロストワードでようやく、ヘカちゃんが手に入りました。
早く純狐様ピックアップしてくれないかな。 どうでもよかったね。
さて、今回はちょい百合(当社)回です。病み要素もちょっとだけ。
今回もゆっくりみていってね!


アンちゃんは、優しくて、いつも新しい友達を作っては、私は不安になる。

もしかしたら、これからは遊んでくれなくなってしまうかもしれない、またたくさん傷を作って帰ってくるかもしれない。そう思うと私は心配で不安でおかしくなりそうになります。アンちゃんの危うさを思い知ったのは、たぶんあの鬼と知り合った日が初めてだったかもしれない。

あの日はアンちゃんと遊ぶ約束をしていて、アンちゃんの家に行っていた。家に着くと張り紙に少し出かけるから、中でくつろいでいてと書いてあったから、入らせてもらうことにした。アンちゃんの家に来ることは珍しくなかったし、止まったこともあったけど、本人がいない時に入ることは稀だった。私は少しいけないことをしてるみたいで、ちょっとワクワクした。アンちゃんの家には可愛いぬいぐるみとかがたくさん置いてあって、家にあるものは大体アンちゃんの能力で作ったものばかりだった。私はアンちゃんがくるまでソファでくつろいでいようと思ったんだけど、少しだけ魔がさしたというか、アンちゃんのいつも眠っている(最近はほとんど家にいないけど)ベッドが目に入った。泊まるときは私たちもそこで眠るんだけど、今は誰もいないわけで・・・、少しくらいいいよね。私はアンちゃんのいつも使ってるベッドにダイブした。

私の大好きなアンちゃんの匂いに包まれちゃった。ふふふ

アンちゃんは大抵のことは人間の大人の人と同じようにできちゃうし、大人っぽいところも多くてすごいなって思う。だけど、欠点、というか短所というか、アンちゃんは自分の事をよくわかっていないところがある。アンちゃんは自分の事を俺って男の子みたいに言うんだけど、とっても可愛いし、色っぽいところがあるんだけど、それを自覚してないから、服が乱れてたり、肌が出てたりしてもあんまり気にしないし、男の子みたいに雑な仕草をするせいで、余計に色気が出ていることを本人はわかっていない。そういうところを含めて好きなんだけど・・・。

アンちゃんまだ帰ってこないのかな。家に入ってから30分経った頃、扉が開いて、アンちゃんが帰ってきた。腰から血を流しながら。驚いた私に、アンちゃんはふらふらとしながら何かを呟きながら倒れそうになる。

 

「だ、いちゃ・・、あ、そ・・・ぉ」

 

私は慌ててアンちゃんを抱きとめると、急いでアンちゃんを治療する。腰にはまるで鋭い爪で抉ったような後が残っていた。基本的な処置を終えて、アンちゃんをベッドに寝かす。一体だれがアンちゃんにこんなことを・・・。一息ついて冷静さを取り戻すと同時に、ふつふつと怒りがわいてくるけど、今アンちゃんの傍を離れちゃダメだと思いなおす。私はアンちゃんの傷に触れないようにそっと抱きしめて眠った。

 

それからも、ことあるごとに私をかばってくれたり、よくわからないことに巻き込まれて怖い思いをしたり、それでもアンちゃんはいつも笑っていて。とにかくアンちゃんは危なっかしくて、本当は片時も離れたくなかった。

そう、離れちゃいけなかったんだ。

 

 

アンちゃんが、アンちゃんがいなくなった。いつも勝手にどこかにいっちゃうことはあるけど、今日はそうじゃなかった。アンちゃんは、私の目の前でいなくなってしまった。一緒に晩御飯の仕度をしている時だった。チルノちゃんとフランちゃんとアンちゃんの家に遊びに来ていて、今日はお泊りする予定だった。だけど、だけどアンちゃんが急に苦しみだして、そのまま消えてしまった。

チルノちゃんもフランちゃんもびっくりして、私も呆然と見ているしかなかった。どうすればいいかわからなくて、とにかくフランちゃんのお姉さん、レミリアさんに伝えに行くことにした。紅魔館に着いた頃には、少し状況が整理出来てきて、それが余計にアンちゃんがいなくなったことを自覚させて、泣きそうになりながら私たちはレミリアさんにアンちゃんがいなくなったことを伝えた。レミリアさんは話を聞くと、すぐにアンちゃんを探すのを手伝ってくれると言ってくれた。

それから、アンちゃんがいなくなったことは、すぐに広まったんだ。だけど、大変なことがおきて。でも、そんなことはどうでもよくって、私はチルノちゃんと一緒にアンちゃんを探しました。早く見つけないと・・・。あんな苦しそうなアンちゃんは初めて見た、あの時私に何かできれば・・・っ!今度は、今度は私が、私たちが助けるんだ!大好きなアンちゃんを!

 

声が・・・、アンちゃんの声が聞こえる・・。

向こうの方からだ、行かなくちゃ。

 

待っててアンちゃん。

 

 



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博麗霊夢の憂鬱

今日もギリギリ投稿と相成りました。
危なかったぜぇ。
最終章に入ったのにもかかわらず、未だどこから書くか悩んでます。
というわけであまり時間もないので

今回もゆっくりみていってね!


いつだって、あいつは面倒ごとと一緒にやってくる。

 

それは初めて会ったあの紅霧異変の時から変わらなかった。はじめは気にすることも無かった。

妖精なんてどこにでもいるし、妖精と仲のいい妖怪だっている。サイズ的にも妖精といわれた方がが違和感ない、そんな妖怪。唯一の違いと言えば他のやつらと戦い方が違うことくらいだった。

 

そんなあいつの記憶も薄れてきた頃、二つ目の異変が起きた。そしてそこにもあいつがいた。

とはいえ直前で前も一緒にいた妖精にも会ってることから、たいして気にしてもいなかった。

それからも何度か異変解決後の宴会の場であいつの話が上がっていたりした。魔理沙はなにやらあいつの事を気にしていたみたいだったけど、その時の私は何とも思っていなかった。

そんな私の考えが変わったのはそれからしばらく先、記憶にも新しい妖怪の山で起きた騒動の解決に向かった時の事だった。その頃にもなると、紫が彼女の事を調べまわっていて、耳にタコができるんじゃないかというくらいあいつの情報が入ってきていた。あいつの交友関係は、いったいどこで繋がっているのか、全くわからない。あの酒飲み(萃香)大食い(幽々子)堅物(映姫)なんかがこぞってあいつを探しているなんてことも最近あったくらいだ。挙句の果てに、前回はその謎の交友関係に苦労させられたんだ。正直いって迷惑以外の何物でもなかった。

初めましての相手に、余裕綽々でスペル避けられまくって、後から聞けばあいつが私達のスペル使って遊んでいたなんて、そんなのあんまりじゃない?

そういうわけで、その時初めてあいつに興味が沸いて、あいつの話をいろんな奴から聞いてみたんだけど。まさかその後一緒に異変解決することになるなんて思ってもいなかったわ。

・・・まあ紫には別の思惑があったみたいだけど。ともかく、そうやって一緒に過ごしてみて、近くであいつを見て、あいつを気に入ってるやつが多い理由が分かった気がする。

まず、とにかく危なっかしい。幽々子とか映姫辺りが気にするのもわかる。

次に嘘が下手で気持ちを隠す気がないところ、萃香とか魔理沙辺りはそういうところが気に入ってるんだろう。最後にこれはあいつの近くにというか、触れてみないとわからないかもしれないことだけど。あいつに触れてると、何か落ち着くっていうか、不思議と安心感があるのよね。妖精たちとか、フランがあいつに懐いたのはそういうところもある気がする。よくペタペタくっついてるし。まぁ、そんなわけであいつ自身はそこそこいいやつだってことを知った。

 

それから、地底での騒ぎも収まってやっと一息つけるって思った矢先の事だった。

あいつがいなくなったと連絡が入ったのは。

 

私の前に魔理沙が現れる直前の事だった。

今回は、随分直接的にトラブルを持ってきたわね・・・。

内心そう思いながら、私は魔理沙に声を掛けるのだった。

 

これから何が起きるのかも知らずに

 



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霧雨魔理沙と偽物少女

よし、今日は結構時間に余裕があるぞ。
日が空いたけど。すまない。
色んなキャラ目線で書こうと意気込んだのはいいんだけど。
結構話を繋げるのが難しくて難航してます。どうでもいいね。

というわけで今回もゆっくりみていってね!



霧雨魔理沙は今目の前の少女、博麗霊夢の異常な様子にかつてないほどの緊張感を覚えていた。

 

「お、おい霊夢、大丈夫か」

「・・・」

 

呼びかけても返事は無く、うつろな様子でこちらを見てくる。明らかに普通じゃない。

・・・いや、腹が減ってる時もあんなだったような気もしないでもないが。

とにかく、霊夢の様子がおかしいのは間違いない。少し距離を取りつつ、様子見をする。

霊夢は何をするでもなく、こっちを見ているだけで、何もしてこない。

 

いい加減にらみ合いをし続けるわけにもいかず、思い切って霊夢に近づいてみることにした。

 

「・・・っ!」

 

私が霊夢に近づいた瞬間、まるでそれを狙っていたかのように霊夢がとびかかってきた。

 

「いきなり何すんだ!」

 

声を掛けても、やはり反応は無い、しかし先ほどまでとは変わって確実にこちらに敵意をむき出している。既に手にはスペルカードとお祓い棒が握られており、どうやら戦いは避けられないらしい。他のやつらも同じようになってないだろうな。

最悪の想像にかぶりを振って否定する、とにかく霊夢を正気に戻さないと・・・。

 

霊夢との、弾幕勝負を終えると、霊夢の体がまるで砂のようになって霧散した。

目の前で起こった光景に愕然としていたが、すぐに冷静さを取り戻し、思考を巡らせる。

たぶんあれは霊夢じゃない。弾幕戦の最中にもうすうす感じていたが、戦い方がまるで操り人形のよう、目の前の事象に対して、対処するだけで、勝負の駆け引きや、スペルを使った攻防といったものが一切なかった。普段なら絶対しないような、お粗末な戦い方だった。終始うつろな状態で向かってくる様子は不気味だったが。

一体何を目的としているのか、何故霊夢そっくりの形を模していたのか。一体だれがこんなことをしたのか。全く持ってわからないことだらけだぜ。

 

・・・誰がやったのか、これについては心当たりがないわけじゃないが。

いつも妖精達と一緒にいたあの妖怪、アトゥンだ。あいつは、描いたものを実体化させる能力がある。その力が生命を作ることまで出来るかは知らないけど、正直今のところは同じようなことが出来るやつを知らない以上一番に疑うほかないってわけだ。しかも、数日前に姿をくらましたらしい、そりゃ怪しさ満点といっても仕方がないだろ?

 

魔理沙は博麗神社へと向かいながら、アトゥンのこれまでの様子について自分が聞いたり見たりした情報を頭の中で整理していた。といっても魔理沙も本気でアトゥンを疑っているわけじゃない。魔理沙のアトゥンに対する評価はむしろかなり良い方だった、というのも一度は一緒に幽香と戦った仲だ、それ以外のところでも何度か会って話をしたりしている。その時の様子では少々抜けているところのあるやつだが、悪いやつには見えなかった。それに、あいつ一人じゃ異変を起こしたところで、すぐに阻止されるだろう。何せ紫が警戒していたし、弾幕勝負では、一人じゃ妖精にも負けるくらいらしいからな。となると、誰かに協力して異変に加担している。もしくは、何者かに脅されて加担させられている。可能性としては後者の方が高いだろう。もしそうなら、脅した奴にはちょっとばかし、痛い目を見てもらわないとな。

ともかく、あいつが進んで異変を起こすやつとはやっぱり思えない。そもそも全く別のやつの仕業かもしれないわけだけど。

 

なーんか嫌な予感がするんだぜ。

 

魔理沙が考えをまとめ終えるころには、博麗神社上空へと着いていた。

地上では丁度魔理沙そっくりの何かが消えてなくなるところだった。

嬉しくない予感の的中に、心の中で悪態を吐きつつ、フラストレーションの溜まっているであろう様子を一切隠さない友人の元へと降りて行った。

 



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閻魔と船頭の焦り

鬼滅のゲームが出てしまった、買うかめっちゃ迷う。
少し間が空いてしまいましたが、書けました!
もうそろ、物語を進めてかないとですよねー、たぶん後一人か二人分の視点書いたら進みます。進めます。たぶん、おそらく、きっと。

というわけで今回もゆっくりみていってね!


普段以上にピリピリとした雰囲気の漂う裁判所内、裁判中には顔にも出さないうえ裁判官としての仕事もきっちりとこなしているところはすごいと思うが、次の裁判までの空き時間に入ると、目に見えて空気感が変わり、表情も裁判中より険しいものへと変わる。

 

こりゃあ、やばいかもねぇ・・・

 

小野塚小町は自らの上司である地獄の裁判長、四季映姫の普段であれば見ることのできない様子を面白半分で見ながら、その怒りがこちらに飛び火しないようにと祈っている。

とはいえ、今の状況を考えるとあたいとしても、あまり悠長なことは言ってられないのも確かだ。

映姫の機嫌が悪い理由は単純、幻想郷で起きている異変が起因している。

 

今、幻想郷では幻想郷の住人と瓜二つの存在が各所で暴れまわっているというもので、幻想郷は混乱に陥っている。普段は腰の重い紅白の巫女が既に異変解決に動いているくらいだ、それだけで今回の異変がどれだけ厄介な案件かわかる。といっても、普段であれば幻想郷で異変が起きることに関して映姫はあまり興味を見せない。おそらく今回の異変も、本来であれば映姫の心を波立たせるようなものではなかったはずだ。

ではなぜ、今の映姫がこんなにも不機嫌なのか、それは映姫が最近よく目にかけている妖怪の少女、アトゥンが原因だ。映姫曰く、

 

「彼女は私と似ている、ただ彼女は少し歪で不安定な存在でもある。だから私は、不思議と彼女を気にかけてしまうのでしょうね。私は他人からの干渉を受けない性質を持っているが、彼女は逆に他人からの干渉を受けやすい性質を得ている。だから、彼女には私がついていないととても心配です。」

 

的なことをこの前、酒の席で言っていた。事実、映姫はアトゥンのことをめちゃくちゃ可愛がってたし、最近の休日はそのほとんどがアトゥンと会いに行くことに使われている。あたいには映姫の言う性質とかはよくわからないけど、アトゥンが好かれやすいやつだってのと危なっかしいってのはよく分かる。あたいだってその魅力に多少なりとも影響を受けた身だ。映姫ほどじゃないとは思うけど。

 

っと話が逸れちまったね、映姫の機嫌が悪い理由だった。異変が起きた時、その報告を受けた映姫の反応はいつもと同じだったんだ。

だけどその後、吸血鬼のとこのメイドがあたいに教えてくれた情報、アトゥンがいなくなった旨が記載された紙を読んでから、明らかに顔色が変わった。最初はまたですか、みたいな反応だったんだけど、その紙を読み進めていくごとに、だんだんその顔が青ざめていくのが分かった。あたいもその後目を通したんだけど、どうやら今回は今までとは違って、近くに目撃者がいたんだ。いつもアトゥンと一緒に遊んでいる、妖精達と吸血鬼のとこの妹が近くにいたらしい。その3人によると、いなくなる直前のアトゥンはただならぬ様子で苦しそうにもがいていていた、ってんだから明らかに異常事態が起きているのは間違いない。

もしかすると、アトゥンはこの異変に巻き込まれているんじゃないか、それもいつもと違い、悪い方向に。最悪の場合はすでに・・・なんてこともあるかもしれない。

映姫の考えはわからないけど、たぶん同じようなことに思い至ったんだと思う。だから機嫌が悪い。あたいも一応、三途の川にアトゥンの魂がやってきていないか念のため確認してはみたが、それらしい姿は無かったのでおそらくまだ大丈夫のはず。

 

ともかく、早く次の判決を終えて交代してもらわないと・・・あたい一人で行ってもいいんだけど、正直あんまりいい予感がしないんだよね。映姫も随分焦っているから何しでかすかわかったもんじゃないし。小町は心の中で、アトゥンの無事を祈りながら、ようやくやってきた、交代前最後の魂にもっと早く来いと思いつつ、映姫の仕事を見届けるのだった。

 



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冥界の女主人と愉快な三姉妹

次回か、次々回かその次か最終回です。

たぶん。

ということで今回もゆっくりみていってね!


ルナサ・プリズムリバーは目の前で起きている地獄絵図を冷静に観察していた。

否、おそらく第三者から見れば、ルナサもこの白玉楼を地獄絵図と化している要因の一つだろう。

 

白玉楼では、冥界の女主人がいつもであればのんびりとした風体で縁側に座っているはずが、

傍に置いてある饅頭一つにも手を付けず、無表情で考え事をしており、その周りをオロオロとしている従者。

そしてその原因を従者から聞いたリリカとメルランは気持ちを落ち着かせるために楽器を弾きだし、というより気が動転しているのは明らかで、二人の楽器からは音が垂れ流しにされているような状況だ。これだけ周りが騒がしければ従者からの言葉を聞いて、最初は動揺したルナサも、

今は一周回って冷静さを取り戻していた。

 

アトゥンがただならぬ状況下で行方知れずとなった

 

といっても、アトゥンの行方が分からなくなるのはいつものことだ。

だからといって、普段から気に留めないわけではなく、ルナサはアトゥンの友人である妖精達から、しばらく姿を見ていないこを聞くと、点々とライブをしながら、周辺でアトゥンを見なかったか聞いて回ったり、ライブ前後の空き時間に探しに行ったりしていた。

最近では行方知れずになっている時の方が珍しく、自宅か白玉楼に行けば大体会えるし、ライブ時には必ずと言っていいほどアトゥンが来ていた。

だから安心していたし、本人もしばらく大人しくしていると言っていたのを覚えている。アトゥンが約束を守るかと言えば・・・守る努力はしていると思う。ただよく事件に巻き込まれたり、幼い妖怪だからか、好奇心に打ち負けていることが多いようだけど。

そのせいか、アトゥンは一度行方知れずになると、ほとんど見つからない。そのうえ見つかる時は異変を起こした黒幕の近くだったりするから手に負えない。それを見越して異変が起きている場所に行こうとはなかなか実行に移すのは勇気がいるものだ。異変の近くにいるのは確かだけど、黒幕の傍にいるわけじゃない、というのが恐ろしく厄介なのだ。

アトゥンを探すには片っ端から異変に関係していそうな人物、妖怪を当たっていかなければならない。そんなの紅白の巫女や白黒の魔法使いくらいしかやらない。つまり、アトゥンを見つけるには、異変を解決しないといけないわけで、一介の騒霊でしかない私達では少々荷が重い。それに、異変解決から何日かすれば、けろっと現れるので、探しに行くより待っていた方が良い。

 

ただ、今回ばかりはそうもいっていられないかもしれないと、ルナサの直感が告げている。幻想郷で起きている異変と、アトゥンの能力を見て考えても何らかの関りがある可能性が高い。本人も動揺していたのだろう、要領を得ない従者からの説明では、わかりにくいところもあったが、もしかするとアトゥンの能力が異変に利用されている可能性がある。私達もここに来る前に何人かの幻想郷の住人そっくりの何かと弾幕勝負をしたけど、はっきりいって弾幕やスペル、容姿だけなら本人そっくりだった。それはアトゥンが使っていた私の模倣スペルにも同じことが言える、そしてアトゥンは様々な場所で色々な人物と関りを持ち、そのスペルを見てきた。

 

・・・大丈夫、アトゥンは無事だ、少なくともアトゥンが利用されていると仮定した場合アトゥンには手を出していないはず。

嫌な考えが頭をよぎり、ルナサは一度思考を止めた。

ちょうどその時目の前の光景も動きが見え始めた。

 

「妖夢、行くわよ」

「えっ、は、はい!」

 

女主人、西行寺幽々子が険しい顔を崩し、いつもの表情で。しかし、その言葉には一切の遊び心を加えず淡々と。妖夢もその言葉で目が覚めたのか、先ほどまでとは一転、背をピンと伸ばし、面持ちも引き締めしっかりと幽々子の後に続く。そうだ、こうしてここで油を売っていてもアトゥンは見つからない。

 

「リリカ、メルラン。私達もいくよ」

「ね、ねえさん行くってどこに?」

「ルナサ姉、あてはあるの?」

「あてはない、けど何もしないんじゃ手がかりも掴めない」

 

そう言って私は二人を振り返らず飛び立つ。

すぐ後ろから、いつもより少し調子の落ちた二人の声が聞こえてくる。

その時微かに、二人の声とは別の音が聞こえた気がした、それは普段私達を応援してくれているときのそれとはおおよそ似つかない弱弱しい音だったけど。確実にアトゥンの声だと感じた。

私は振り返って二人と目を合わせる。

 

三姉妹は互いに顔を見合わせて頷くとその声がした方向に向かって速度を上げて飛んだのだった。

ほどなくして、三姉妹はその光景を目撃することとなる。

 



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異変を解決するのは・・・ 前編

急遽前編と銘打つこととなった今話。
書いてたら、結構時間ギリギリで、でもまだ半分くらいしか書けて無くて、とりあえず前後編にしてりゃ許してもらえるかなという淡い希望の元、こうして前書きを書いている所存であります。

許してちょ。

というわけで今回もゆっくりみていってね!


霊夢が魔理沙と共に幻想郷で一度は戦ったことが、見かけたことがある容姿をした木偶たちを蹴散らしながら、その場に辿り着いた時には、すでに見慣れた面々がそいつを前に談笑していた。

 

「おいおい霊夢、結構飛ばしてきたつもりだったんだが。」

「・・・もうあいつらが異変解決してくれないかしらね」

 

ため息が出る、とはいえここまで来たわけだからしっかり最後まで片は付けさせてもらうけど。霊夢は他の面々と同様に目線の先にいる一人の少女・・・幼女?に目を向けた。

 

大妖精らがこの場所にたどりついた時、周りには女の子以外誰もいなかった。

 

「あ!あそこに女の子がいるぞ!」

「女の子~?」

 

前を進んでいたチルノちゃんの声に、後ろからついてきていたフランちゃんが顔を出す。

アンちゃんの声が聞こえる方に来たはず・・・。しかし、大妖精の目の前にいるのは、眠っている時のアンちゃんにそっくりな姿の明るい金髪の代わりに落ち着いた銀色の髪をした女の子だった。

なんでこんなところで眠ってるんだろう?

不思議に思った私は、その女の子に近づこうとした。

すぐに、フランちゃんに引き留められる。

 

「どうしたの?」

「なんか、嫌な感じがする」

 

言われて私はもう一度女の子を見てみる。う~ん、フランちゃんが言う嫌な感じを私は感じなかった。

 

「チルノちゃんはどう?」

「う~ん、わかんないや、起こしてみたらわかるかな」

「ダメ!わかんないけど、今起こすのはよくない気がするの」

 

そう私とチルノちゃんの腕を掴んだフランちゃんの手はとても震えていた。

 

 

 

「あら~?あなたたち、アトゥンのお友達の・・・っ!」

 

私たちがこれからどうしようと悩んでいると、後ろから、幽々子さんがやってきた。幽々子さんは私たちに話しかけようとして、奥にいる女の子に気付いたのかな、急に顔が怖くなって、ちょっとびっくりしちゃった。

 

「幽々子様~!おいていかないでくださいよー!」

「・・・あぁ、妖夢、ごめんね」

 

 

妖夢の声で我に返る。あれは、何?目の前にいるアトゥンのお友達である妖精と吸血鬼が、一体どうやってここまで来たのかはこの際置いておくとして。あの奥にいる小さい女の子、ぱっと見アトゥンの寝姿によく似ているけれど、あの子の髪は銀色じゃない、それにこの異様な雰囲気は、これ以上進むことを決して許さない圧を感じる。明らかにあの少女は普通じゃない。吸血鬼の方もそれを感じ取っているのか、おびえた様子で少女を見ている。後ろから私に追いついたであろう妖夢もその雰囲気に当てられたか、ビクッと身体を震わせ顔が強張る。この場にアトゥンはいないし、このままこの場を離れてアトゥンを探しに行ってもいいかもしれない。けど、何の根拠もないけれど、あの女の子がこの異変に関係していて、アトゥンの居場所も知っている、そんな気がした。

そう感じた私はこの場から離れようとする妖夢を諫めてその場に留まることにした。

せっかくアトゥンのお友達がいるんだもの、私の知らないアトゥンのこと沢山聞かなきゃっ!

 

 

 

何だか面倒なことが起きていますね。

 

古明地さとりは、旧地獄で起きている惨状を眺めながら、地上にいるあの少女の事を憂いていた。

 



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古明地さとりの不安

ふぅ、おかしいな後編を書いていると思っていたんだが。
ということで思ったより話が膨らんだので、後編は次回にしようかと思います。
これ外伝にした方がいいのか、普通に本編に加えた方がいいのかわっかんねーな。

今回もゆっくりみていってね!


さとりが憂う地上の少女、山吹アトゥンと名乗っていましたか、私が心を読めなかった相手。

彼女が地上で行方不明になったという話を耳にしたのは今朝の事でした。

地上で起きている異変の影響は旧地獄も例外ではなく、変に戦いだけ起こしてあっさり退場してしまったそれらに、血の気の多いやつらは物足りず地底では力自慢によるお祭りが夜通し行われていました。正直そんなものに興味は無いですし、誰が勝ち残るのかも大方予想がついたので、私は静観を決め込みぐっすりと眠ったのです。そしてつい先ほど、目が覚めた私のもとにスキマ妖怪が現れ、事の仔細の書かれた紙を渡されたのです。

 

山吹アトゥン

 

あの少女の心の中は今まで見てきた誰よりも不気味で、何より心を読むことが出来なかったのが心底悔しかった。何せ本人が何を考えているのかは、顔を見ればすぐにわかるのですから。

ただ、そんな不気味な彼女に、さとりはある種の安心感を覚えていた。

 

あの日、スキマ妖怪からとある妖怪の心を読んでほしいと言われて、内心期待していました。なにせ、そんなことを頼んできたのは初めてでしたし、あのとんでも妖怪がわざわざ私に心を読ませたいほどの相手なのですから、期待しない方が無理な話です。

そしてその期待は予想と反した形で私を裏切った。

目の前にいるのは、地底では生きていけないような有象無象の妖怪で、腹芸とは縁もゆかりもないような明るい性格をした幼女だったのです。だから彼女の心が読めなかったときは動揺しました。彼女が私のもとに博麗の巫女と訪れてから、霊夢は肩の荷が下りたと言わんばかりに彼女を私のもとに置いていってしまって。私と二人きりになった彼女は当初、見るからに慌てていて私の元からいち早く離れたいと思っているのは目に見えてわかりました。といっても、彼女のような反応は初めてではない、むしろ大半が私の能力を知るとそんな反応になるので特に気にはしていませんでした。実際は彼女の心を読めてはいなかったけれど。なので私が彼女に帰ってもいいと言いました。それなのに、彼女は私の元から離れようとはしませんでした。それどころか、逆に距離を詰めてきて、心を読まれてもいいやといっや具合に開き直って私に積極的に話しかけてきたのです。どこか私の事を心配しているような、私にそんな顔をしてほしくないといったような、優しく温かい気持ちが表情や言葉からありありと伝わってきて、何だか少し気恥しくも思いましたね。心は読めないけれど、顔を見れば何を考えているのか大体想像がつく彼女と話すのは存外楽しく、話の途中で彼女が時折、ふと何かを考えこむような読めない表所をすると、無性にそれが気になりました、一体彼女は何を考えているのでしょうか。それまでの様子からして、深いことは考えていないのかもしれない。だけど、私はわからない彼女のことが気になって仕方がなかったのです。そして彼女が何を思っているのか考える時間がとても楽しかった。

 

問題は・・・、あの妖怪は何故私にこれを渡してきたのでしょうか。

さとりは、アトゥンとの出会いを回想するのをやめ、アトゥンのことが書かれた紙を眺めながら思考を巡らせる。単純に探すのを手伝えということでしょうか。だとしたら随分遠回しなやり方です。らしいといえばそれまでですが、あの妖怪の事ですからと、ついつい他の意図があるのではないかと勘繰ってしまいます。そして、私にそう思わせるためにあの妖怪がわざわざ紙媒体で私に情報を寄こしたことは間違いないでしょう。文字から心は読めない。こちらの出方を探っているのだとしたら、ここは大人しく静観をするのが吉でしょう。地底にやってきた紛い物はすでに淘汰されていますから。わざわざ地上に出向かなくとも、異変ならば解決の専門家がやってくれる、そうすれば異変に関係あるであろう彼女も戻ってくるでしょう。そうに違いありません。

さとりは椅子に腰かけ、今回の異変に関わらない事に決める。外ではいまだ、鬼たちが酒盛りをしているのか喧噪が耳まで届く。

 

でも何故だろうか、普段から鈴かな屋敷だが今日は一段と静まり返っている様に思えた。

 



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異変を解決するのは・・・ 後編

終わりそう。
というわけで皆様ついに物語も大詰めというところまでやってきました!
是非最後まで見てやってください!
もう投稿十分前なので前置きはこのくらいで

今回もゆっくりみていってね!


アトゥンが行方不明になり、異変が起きてから、今日で三日目。アトゥンの行方は未だわからず、異変を起こした黒幕の手がかりも掴めていない。既に霊夢は異変解決に乗り出しており、その進捗は芳しくない。

厄介な相手を前に紫は頭を抱える。目的は、幻想郷の住人そっくりのあれらは何なのか皆目見当もつかない。せめてあれらを倒した時に何か手がかりでも残してくれればいいのに、あれらは倒されるとそのまま砂の様になって消えてしまう。この異変を起こしたやからは相当性根が曲がっているか、よぽどの変人に違いない。どうしたものか、アトゥンの捜索も難航、というか恐らく彼女は黒幕といる可能性が高いのよね。

そうこう悩んでいた紫は突然全身を包むようなおぞましい気配に襲われ、顔を上げる。

紫はそれが今回異変の黒幕からのものであると直感する。

 

「・・・タイムリミットってことかしら」

 

生唾をゴクリと呑み、紫はそう独り言ちると頭の中で現状を整理する。このタイミングでわざわざ自分の居場所を明かす理由なんてそうそうない。もし理由があるのだとしたら、もう居場所を隠す必要が無くなったからだ。

つまり、この異変の目的が達成間近であるということ。こうなってくると、紫に選択肢はない。黒幕の目的達成が目の前である以上、たとえその場所に行くことが罠であったとしても、その場所に行かないという選択肢は無い。本来であればそれまでに、情報を出来るだけ集め、異変の目的や黒幕についての目星をつけておくところではあったけれど、今回はそれすらもできていない。

しかし、このまま相手の挑発に乗らずにこの場にとどまった場合、相手が幻想郷にどんな変革をもたらすのか皆目見当がつかないのだ。それは、非常によろしくない。

何よりも八雲紫はこの幻想郷の賢者として、この幻想郷を危機に瀕するようなまねは看過できないのだ。であれば紫の行動はすでに決まっている。私は信頼する二人の従者を連れ、黒幕の気配のする場所へスキマを繋げた。

目の前の光景を目にした紫は、心の中で鋭く舌打ちをするのだった。

 

 

 

 

何かの声が聞こえる、どこかで聞いたような、聞いてないような。知っているような、知らないような。ただ、その声が今、とにかくとても癪に障る。頭の中に直接響いてくるようで、とにかく気分が悪い。何なんだ、これは。・・・うるさい、うるさいうるさい!

一度目はそこで思考が途切れた。

 

頭が痛い、割れそうなくらい痛い。まだ頭の中には何かが言葉のようなものが鳴っていて、頭の中を誰かに直接触られてるような酷い気分だ。まだ意識がはっきりしない、ここは、どこだろうか。辺りを確認しようと試みるも、身体は鉛のように重く、指先一つ動かせそうにない。

 

一体何が・・・

「・・・っー!!!」

 

しばらくその痛みに身体を捩って暴れたくなるものの、実際には動くことが出来ないので、ストレスだけが溜まっていった。なんでこんな、どうして、俺が何をしたんだ。

 

嫌だ、こんなの・・・痛い、いたい、いたいいたい!あああああ!くそくそっ!くそぉおお!

 

心の中で毒を吐き続ける。あれからどれくらいの時間が経ったのだろうか。気が狂いそうになっていた俺は、その時割れんばかりに鳴っていた言葉と痛みがスッと止んだのに気付いた。意識がはっきりしてくる。そして漸く痛みが無くなったことに安堵した俺は、気絶するように眠った。

こうして俺は先ほど目が覚め、今はこうして真っ白な部屋で一体ここがどこなのかを考えている。

 

 



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黒幕の名は。

三分前投稿。
やばい、全然書く時間がなくて、結構雑いです。いつもだけど。
後二分しかないんで今回はこれくらいで!

今回もゆっくりみていってね!


霊夢達の到着に気が付いた面々は、一度霊夢達を見てから、今度は今もまだ眠っている少女に視線を移した。少女はまるでこの場に自分達がやってくるのを待っていたかのように、ゆっくりと目を開け、身体を起こした。

 

「んぁ~・・・お、ようやく来たか!」

 

少女は視界に我々を入れると、まだ眠そうにしていた目をパッと開け、嬉しそうにこちらに声を掛けてくる。その途端少女の銀色の髪が輝き始め、少女からまばゆい光がその神力と共に溢れ出す。

あまりの輝きに一同は一瞬目をしかめる、もしくは瞑るものもいたが、すぐにその光は淡く少女の髪の外郭をなぞるだけのものとなった。

 

「また随分と、この幻想郷に大物がやってきたものね」

 

その神力に当てられたもの達は皆、一様の反応を見せる。すぐさま冷静さを取り戻した八雲紫も、その背には嫌な汗が流れていた。

 

「あんたが、この異変を起こした張本人ってわけ?」

「そうだ、お前たちがここへやってくるのを待っていた」

 

霊夢からの問いに、少女はぐいっと胸を張って答える。

 

「我の名はディーア。山吹ディーア、とでも名乗っておこうか」

「っ!」

「おまえっ!」

 

目の前の少女、ディーアの続けざまの発言に、一同に再びどよめきが走る。否、何人かは、予想していたのか苦虫を噛みつぶしたような表情で少女を見ている。

 

「・・・ちゃんは、アンちゃんはどこにいるんですか」

 

そんな中、ディーアの神力も恐れず、妖精の少女、大妖精が周りにいる者たちより一歩前に出て問いかける。その声はいやに落ち着いていて、その目はディーアをしっかり見据えていた。そこには妖精とは思えないほどの気迫があった。

 

「アンちゃん・・・あぁ、アトゥンのことか。さぁな、我は知らん、この体を貰う時にあれの精神は邪魔だったからな、もう消えてしまった頃じゃないか?」

 

ディーアは淡々と、何の感慨もなく、その事実を告げる。

前に出ていた大妖精がフラフラと足取りをおぼつかせながら、地に崩れる。

 

 

消えてしまった

 

大妖精の頭の中で目の前の少女の言葉が繰り返される。あり得ない、あってはならないことが、起きている。手足は震え、動悸が激しくなって、呼吸が出来ない。目の前がぼやけてみえて、立っていられなくてしゃがみ込む。頭の中がそれを受け入れることを拒み、身体が防衛本能の警鐘を鳴らす。予感はあった、でも信じられなかった、信じたくなかった。

 

違う。嘘だ、こいつは、嘘をついてるんだ、

私からアンちゃんを取り上げるために。そうだ、きっとそうだ。

あいつからアンちゃんを取り返さなきゃいけないんだ。

だからあいつの言ってることを信じちゃダメだ。

 

信じない

 

アンちゃんはまだ生きてる。

 

許さない

 

絶対に、

 

助けなきゃ、

 

私が。

 

 



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真っ白

何とか十分前投稿だぜえぇ!!
今月中には最終話まで行く予定だぜぇ!!
でもまだ最後どうやって書くか決めてないぜぇ!

今回もゆっくりみていくんだぜぇ!


真っ白な部屋に一人、俺は佇んでいた。

あれから、謎の頭痛も収まり、身体の調子もまぁそこそこになってきて、この異様な状況をようやく認知できた。この異常に真っ白な場所はどこを見渡しても白、白、しろ。あまりの白さに自分が地に足をつけているのか、それとも浮いているのかもわからなくなりそうだ。足を動かしてみれば、確かに何かを踏む感触があるので、おそらく地面はあるのだろうが。

こんなに真っ白なら絵でも描いてやろうかと、クレヨンを出そうとしてみたりもしたが、なんと出ないのだ。キャンバスももちろんでない。これは・・・ちょっと参ったな。

さて、ここに来る前の最後の記憶といえば大ちゃんたちと俺の家で晩飯の仕度をして・・・そこからの記憶がないな。新しい異変に巻き込まれたか?こんな異変はゲームになかった気がするけど。

 

・・・わからん。

わからないことは考えてもしょうがないなともかくこのまっさらな部屋から出る方法を考えよう。歩き出す、ただひたすらに前へ、前へと歩いていく。それでも辺りは一切物が無く、壁もなく、おそらく天井も、ものすごく高い場所にある気がする。そして、誰もいない。おそろしいほどに無。

 

ほんと、どこだよここ。もしかして夢?夢でも見てんのかね。というか夢だ、夢に違いない。

このどこまでも続く真っ白な地平線を前に、これが夢でなくて何なのかと、普通に考えれば一番に思いつくようなことを、今更思い始めた。

 

最近、いやだいぶ前からそうなんだが、この体になってから、判断能力の低下と同時に前世の記憶がどんどん薄くなっていっている。感覚的に完全に忘れるってわけじゃなさそうなんだけど、前世にいた友達とか、家族とかの思い出はすでに大半が失われつつある。とまぁ、そんなことはどうでもいいか。いやよくはないんだけど!!それ以上にまずいのが、目が覚めてから、前世で俺が知っていたスペルカードの記憶が結構抜け落ちてるってことなんだよね。抜け落ちてるっていっても、スペルの名前と誰が使うのかはわかるんだけど、どんなスペルだったかとカードに描かれている模様を忘れてしまったのだ。一度使ったことがあるやつとかは問題なく覚えてたりするんだけど。これでは、これから先出てくるキャラたちとの即興弾幕とかが出来なくなってしまう。これは由々しき事態だ!!いち早く原因を突き止めて、出来ることなら記憶を取り戻したいところなんだが。今の俺の頭では、ここから出る方法とか皆目見当もつかない。

 

どうすっかな・・・

 

 

 

ここから出る方法を結構な時間さがしているけど、やっぱり何も見つからない。とりあえずここが夢だと仮定して、頬をつねってみたり大声で叫んでみたり起きろ起きろ起きろって永遠呪文のように唱えてみたりしてみたけどやっぱり駄目だった。

ただ、じっとしてるのも嫌だったからひたすらに歩いてみてるんだけど。ここまじ広すぎる、やっぱり夢だったんだなぁ、と実感するだけで何も進まない。途中あの頭痛が再発して、半狂乱になって暴れたりしたけど、やっぱり何も起こらない。

ともなってくると、この何もない夢の空間というのは兎角暇だ。暇は好かん。陽だまりの中で昼寝とかするのは好きだし、日がな一日ゴロゴロするのは好きだけど。こんな何もない場所で何もできずにいるのは嫌だ。夢なんだから何か遊び道具の一つでも用意してもらえないもんだろうか。

 

・・・あれ、

 

そういえばなんで寝てるんだっけ?

 

確か・・・

おかしいな、思い出せない。

・・・何でここから出ようとしてたんだっけ。

 

暇・・・だからか。そうだ、暇だから。

ここにいるとずっと退屈で、何か面白いことがしたくて、だからここから、出たいんだ。

 

でも変だな、何か・・・なにかワスレテイルヨウナ。

 

 

 

 

 

・・し・・・・て・!・・・ゃ・・・!!

 

ん?なんか今声が聞こえたような。気のせいか。あ~あ、暇だ~暇すぎて死んじゃう~よ~。

 

・・え!ア・・・・を、・・・・・た・!!

 

・・・やっぱりなんか聞こえる。でもどこからだろ。

 

・・・・・!!・ン・・・・かえ・・・!!

 

あっち、かな。行ってみるか。どうせすることないし。

 

ア・ちゃ・・!!

 

声が段々大きくぼんやりとだが聞こえてくる。この声、聞き覚えがある。誰だったっけ。とにかく行ってみよう、声のする方へ。

 

 

 

まだ声が聞こえる、目の前には開いた扉が鎮座しており、まるで目の前の少女を誘っているかのようだ。声はこの先から絶えず聞こえてくる。この先には、誰か、いる。そして少女はその声を知っている。既に記憶の海に沈んでいて少女自身が覚えていなくても。少女はその声を知っている。この先に行けと、心が全身が、震えるように叫ぶのだ。

行ってみようか。どのみちここにいても暇なんだ。退屈しないのなら、どこにだって行こうじゃないか。少女は決意を固め、その扉をくぐった。

 



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目覚め

中途半端な時間に連投するやつ。
後二、三話で最終回といったな。
あれは嘘だ。

昨日中に書き終わりたかったけど30分おーばーしたので。
このままだと十月中に終わらなさそう、だったのと今日は結構調子がいい気がするので頑張りました!

今回もゆっくりみていってね!


扉から出た俺の目に飛び込んできたのは、俺の目の前で止めと言わんばかりに弾幕を放とうとする大妖精と、チルノの二人だった。

 

「す、すすすストーップ!!」

 

素っ頓狂な声を上げる俺に、二人は目を丸くして止まった。

 

「えっ、え?あ、アン・・・ちゃん?」

「おまえ、アンちゃんなのか!?」

「お、おう。そうだよ「アンちゃん!!」ぐぇっ」

 

俺が答えきる前に、二人が抱き付いてくる。俺が寝ている間に一体何があったのか。二人の頭を撫でながら、聞こうと思ったその時。目の前で、弾幕が爆発し、砂煙の中から傷だらけのフランが出てくる。

 

「フラン!!」

 

俺の声に、一瞬こっちを向いたフラン、しかし、そのせいでフランに追加の弾幕が当たってしまう。

慌てて俺は二人を置いて、フランのもとへ駆け寄り抱きかかえる。あの態勢からでも、直撃を避けたようだ、流石はフラン。

 

「大丈夫か!フラン!」

「アン・・?ほんとに、本物のアンなの?」

「本物って、偽物の俺とかいないでしょ」

「・・・そっか。本物のアンなんだ・・・!」

 

やけに本物を強調してくるな・・・まさか、本当に偽物の俺がっ!?・・・ないな。もしいたとしてもこんなバカよわっちぃ俺なんかの偽物になって何がしたいんだ・・・そいつは。

フランが俺の腕を両手できゅっと掴む。俺は掴まれてない方の腕で、フランの頭を撫でてやる。横からは大ちゃんとチルノもこちらにこようとしている。そして、砂煙の奥からやってくるのは。

 

や、ってくる、のは。

 

「おや、自分の力で目覚めたのか」

「え、っぁ・・・、!?」

 

砂煙が晴れ、そこにいたのは、髪色と瞳の色以外が俺にそっくりな少女が立っていた。

 

「お、お前誰だ!!」

「我らはディーア、神様だ」

 

目の前にいる少女に動揺を隠せなかった俺は少女に問いかけ、その答えに唖然とする。

 

「話は終わりか。ではお前にも、もうしばらく眠っててもらおう」

 

そう言ってディーアはスペルを発動する。あれは、レミリアの、

 

「「『神槍』スピアザグングニル」」

 

やばい、やばいやばい、この距離ではフランも俺も、それを避けられない。フランが俺の腕をぎゅっと握りしめる。チルノと大ちゃんが何かを叫びながら走ってきているのがやけにゆっくり見えた。俺はただ、呆然と目の前に、頭に入ってきた情報が口から出た、それだけだった。

 

しかし、ディーアのスペルが俺たちを貫くことはなく、代わりに何かが衝突し、爆風で吹き飛ばされる。

 

 

 

 

さっきまで私達と戦っていたディーアさんの分身が、急に苦しみだした。私とチルノちゃんは今がチャンスだと思って、一気に距離を詰める、そして二人合わせてスペルを唱えようとした時。

 

「す、すすすストーップ!!」

 

目を開けたディーアさんが変な声を上げた。それから、突き刺すような光が溢れていた銀色の髪が温かい金色になって、見られるだけで背筋が凍るようなドロッとした金色の中に気持ち悪い黒の螺旋が入っていた目の色も透き通った銀色に、まるでアンちゃんみたいになった。

 

「えっ、え?あ、アン・・・ちゃん?」

「おまえ、アンちゃんなのか!?」

「お、おう。そうだよ「アンちゃん!!」ぐぇっ」

 

びっくりして、私とチルノちゃんがそう聞くと、アンちゃんは頷いてくれて、本物のアンちゃんなんだって、安心して、抱き付いちゃった。アンちゃんも私とチルノちゃんの頭を撫でてくれて、とっても気持ちよくて、ほんとにアンちゃんが帰って来たんだって思った。よかった、本当に良かったっ!アンちゃんが生きてて、また会えて。だけど、アンちゃんが頭を撫でてくれる時間は長く続かなくて。

私達の近くでディーアさんの分身を相手にしてたフランちゃんが爆発と一緒に飛んできたのを見て、アンちゃんが助けに行ってしまった。私とチルノちゃんも、戦っていた分身がアンちゃんになったから、急いでフランちゃんの助けに行こうとしました。でも、遅くて、ディーアさんの分身を見た、アンちゃんが驚いた様子で何かを話しかけていて、ディーアさんの分身も少しだけ何か話した後、フランちゃんと、フランちゃんを庇おうとするアンちゃんにとどめを刺そうとしたのを見て、私達は叫んだ。

 

「アンちゃんっ!!」

「アン!フラン!!うわあああ!」

 

「「『神槍』スピアザグングニル」」

 

アンちゃんと、ディーアさんの分身が同じことを言ったと思ったら、二人の間に二つの槍が出てきて、ぶつかって爆発しちゃった。私とチルノちゃんは、飛んできた二人を受け止める。

何が起きたのか、二人ともよくわかってないみたいだったけど、ともかく無事でよかったと私はアンちゃんをまた抱きしめた。

 

 

 

 

厄介な相手ですね。

映姫は、目の前の自分と同じスペルか、使われると厄介だと思うような誰かのスペルばかりつかう相手にため息をついた。それだけではない、目の前にいるディーアという少女、アトゥンとこれだけ姿が似ているにも関わらず、雰囲気がまるで違う。特に映姫が厄介だと思っているのは、彼女の目だ、あの瞳は明らかに危険だと映姫の全神経が訴えている。瞳の中にあるあの螺旋状の何か、あれを使われる前に確実に倒さなければならない。それでもやはり、どこかアトゥンに似ているからか、やりづらい。

せめて本物のアトゥンの無事さえわかれば、もう少し遠慮なく戦えるのですけど。

そう考えながら、先ほどから相手の弾幕を避けることに集中している。下手に弾幕をしかけても、同じ弾幕で打ち消されるという悪魔の所業を行ってくるのだ。

弾幕勝負においてディーアは、おおよそアトゥンの上位互換的な性能をしている。とはいえ、これも分身体である以上本体はもっと面倒な能力をもっている可能性があるわけですか。妖精があの場で異様な覇気を纏って勝負を挑んでいなければもう少し情報を引き出せた可能性はありますが、いや無理ですね、あの時すでに爆発寸前だった者もいましたし、あのままいけば彼女じゃない誰かが啖呵を切っていたに違いありません。

もちろん私はそんなことしませんよ。えぇ。ただちょっと悔悟の棒を割りそうになっただけで。

いたって冷静でしたよ。

っと少し冷静さを欠いていましたか。映姫は危うく弾幕にあたりそうになるところを、ゆらりと躱し、軽く弾幕を飛ばす。ディーアはそれを軽々と避け、いい加減こちらが攻撃してこないことに嫌気がさしてきたのか、スペルを使用する。その様子に映姫は再び気を引き締め、弾幕に備える。

 

「「『花符』幻想郷の開花」」

「っ!?」

 

後ろから不意に、声が聞こえ、映姫は振り返った。

そこには行方不明になっていたはずのアトゥンが妖精と吸血鬼と共にいて、スペルを唱えていた。ディーアが放ったスペル弾幕にかぶさる様に、私がスペルを使った時と同じようにディーアのスペルがアトゥンのスペルで相殺されていく。

 

「映姫さん!」

 

アトゥンが近づいてくる。私の前まで来た、アトゥンの頭を撫でてあげる、アトゥンは少し恥ずかしそうに、でもそれ以上に嬉しそうに顔を赤らめてはにかむ。よかった、これで私も心置きなく戦える。

 

「あいつのスペルは全部俺が消しちまうから映姫さんは大ちゃんたちと思う存分やってくれ!」

 

アトゥンの言葉に頷き、映姫はディーアの分身を見る。顔色一つ変えずこちらに再びスペルを放とうとしてくるが、それもまた、アトゥンに同じスペルで打ち消される。いつも使っているキャンバスとクレヨンは使わなくてもいいみたいだけど・・・いえ、これは後で聞けばいいですね。映姫は今度こそ気持ちを切り替え、妖精たちと、息を合わせディーアの分身に弾幕を放った。

 

ディーアの分身は弾幕をこれ以上ないというほど喰らって負けた後、塵のようになって消えた。

結果としては一瞬で片がついたと言えるでしょう。アトゥンが相手のスペルを完封していたこともあるでしょうけど、なにより、あの三人が異常に強い。コンビネーションが出来過ぎていて、最早こちらが引くほど一方的な勝負、あれは勝負にすらなっていなかったように思う。私は三人の攻撃を後ろから援護しつつ、アトゥンの周りを警戒するだけとなった。

三人の連携を見ていたアトゥンは三人の強さにショックを受けていたようで、少し凹んでいたから「あなたもよく頑張っていますよ」と言って頭を撫でると、俯いてそれを受け入れてくれました、と言ってもアトゥンが私のなでなでを断った記憶なんてありませんが。可愛い。俯いてるけど、あからさまに嬉しそうにしているところがまた可愛い。尻尾が生えていたらきっとすごい勢いで揺れているんじゃないかってくらい嬉しそうにしてる。そんなアトゥンを眺めながら優しく頭を撫で続けていると、アトゥンの友人の大妖精と、フランが割って入ってきた。もう少し撫でていたかったですがしかたありません、私はアトゥンの後ろにつくとまだ戦っている者たちの元へと急ぐことを勧める。アトゥンはハッとなってこちらを見て、私についてきてほしいと言ってくれたので、快くそれを承諾した。

 

 

 



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森羅万象と自然の妖精

ぼーろ様誤字脱字報告ありがとうございます!!

チキンカツおいしい。
アークナイツ始めました。
ジョジョ見ながら書くんじゃなかった。

今回もゆっくりみていってね!


いつだって、イレギュラーというものは存在している。

ゲームにしろ、物語にしろ、そのが異物(イレギュラー)が周りにもたらす影響は計り知れず、

異物(イレギュラー)の混入ことによって少しずつ物語は本来の決まった道筋から外れていく。

そんな異物(イレギュラー)近ければ近いほどに、その影響は色濃く出るのは、必然とも言える。

 

そして、この物語の異物(イレギュラー)は間違いなく俺だ、俺なんだ。

 

つまり、何が言いたいかっていうとですね・・・。

 

目の前で起きた信じられない光景に目を見張る。

 

何度も浅い呼吸を繰り返す。体力はとうに限界を迎え、意識を保っていることも難しい。何度もスペルを相殺するのはこの身体には少し負担が大きすぎたようだ。すぐそばには俺をかばって弾幕をその身に受けた映姫様が地に伏している。周りには、限界を迎え立ったまま気絶しているチルノと、先の戦いで消耗していたところを不意打ちされたフランも同様に倒れている。それでも俺は、現状を悲観していなかった。

色とりどりの弾幕が無数の線を描き、木の幹のように模り、緑の弾幕が葉を模して宙を舞っている。弾幕で作られた木は一本に留まらず、無数に生い茂る。木々は目の前の少女の逃げ道を塞ぎ、動きを封じる。先ほどまで、余裕を持ったディーアの顔に、驚愕の色が浮かんだ。しかし、そのスペルはそこで終わりではない。ディーアの動きを封じた弾幕の木々の葉がそよぎ始める、葉を揺らす風は次第に強まり、風に乗って全方位からディーアを襲う。

 

「『樹符』有象無象の森羅」

 

俺はその弾幕のあまりの美しさに言葉を失い、自然の力強さを体現した弾幕にひとつの見逃しもするものかと目を見張って魅入っていた。

なにより初めて見る弾幕だった。俺の記憶にそんなスペルは存在しない。故に完全なオリジナル。

俺という異物(イレギュラー)が原作にもたらした変化。

使用者は大ちゃんだ。いつも俺のそばにいてくれた大切な友達。その大ちゃんが、新たな、初のスペル習得に至ったのだ。こんなに嬉しいことは無い。大ちゃんの身体がゆらりと揺れる、俺は最後の力を振り絞って駆け出し、倒れそうになる大ちゃんを受け止め・・・切れずに、それでも自分をクッションにして大ちゃんに衝撃があまりいかないよう地面に崩れる。

 

「あ・・・ありがと、アンちゃん」

「えへへ、大ちゃん、すごいな!いつあんなすごいのできるようになったんだ!?」

「あ、アンちゃん、近い・・・っ!近いよぉ」

 

記憶にもない正真正銘初めて見るスペルに興奮して話しかける、大ちゃんが顔を赤らめて、顔を逸らす。可愛い、天使だ。

 

大ちゃんの背中をさすりながら、冷静になった俺はディーアがいたほうを見る。俺も大ちゃんもすでに満身創痍で動けない、それでも最上の攻撃を放った自信があった。

どのみちこれ以上の戦いは出来ない。

大ちゃんの事を抱きしめる。大ちゃんの吐息が耳に掛かかってちょっとくすぐったい。

大ちゃんがぎゅっと抱き返しえしてくる。その体は、とても温かかった。

 



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太陽と覚悟

十月中に書き終わらない気がしてならない。
本当は、もっと甘いいちゃらぶ話をこの作品ではたくさん書く予定でした。
どうしてこうなったのか、俺もわからない。
これ以上の戦闘は、書くかもしれないし、書かないかもしれない。
この作品を書き終えたら、今度こそ本物のいちゃらぶ百合を書くんだぁ・・・

今回もゆっくりみていってね!


「良い、攻撃だったぞ」

 

抱きしめ合う俺と大ちゃんは、その声のする方へ顔を向けられず、互いの顔を見合ったまま固まっていた。大ちゃんの顔が絶望に歪んでいくのが分かる。そんな大ちゃんを出来るだけ安心させようと取り繕おうとしてみるけど、たぶん俺も似たような顔してるんだろうな、うまく表情を変えられてるきがしない。

 

「だが、妖精と我が分身ではこれが限界といったところか」

 

ディーアが少しずつこちらに近づいてくる。

大ちゃんを守らなくては。

俺は大ちゃんを今より強く抱きしめ、最後の力を振り絞って一瞬のうちに創造した博麗結界を展開する。

 

「だがよい、そこな妖精のスペルは賞賛に値するものであった、故に我もとっておきを見せてやろう」

 

言うや否や俺が身構えるよりも早く、ディーアはスペルを宣言した。

一体どんな弾幕が来る・・・っ!

 

「『畏怖』調状のアトゥム」

 

 

 

太陽を見た

 

 

 

 

絶対の輝きが、そこにはあった

 

 

 

 

似た弾幕を見たことがある。お空の核熱の弾幕だ。でも、あれよりも数段濃い光を放っている。

その太陽からゆっくりと二回りほど小さな弾幕が無数に放たれる。ゆっくり、ゆっくりとそれらがこちらに近づいてくる。弾幕の熱量がひしひしと伝わってくる。

震える大ちゃんにその光景を見せないよう、胸に抱き、庇うように弾幕に背を向ける。もう俺にはこれくらいしかできない。なまじ、ゆっくりとしているせいで、恐怖心がどんどん高まっていく。

 

くるならくるで早くしてくれ!なんて意地の悪いスペルなんだ、ちくしょう!!

 

心の中で悪態をつきながら、それが来るのを待つ。じんわりと汗が浮かんでは、額を伝って流れ落ちる。時間が経てばたつほど、心臓の動きが早くなり、呼吸が乱れてくる。

 

 

まだ、まだなのか。

 

振り向く勇気はない、もし振り向いた時眼前に迫る弾幕を見たら、そんな恐ろしい光景を目にしてしまったら、二度と弾幕に触れることが出来なくなりそうだったから。

だから待つ。乱れた呼吸を正し、何度目かの深呼吸で心拍を安定させる。それから目を瞑り、歯を食いしばってその時を待つ。結界は張ってある、正直これがあるとないとでは精神を保つのに天と地の差があっただろう。とはいえこれも実際のところは気休めでしかないけど。霊力ではなく妖力で作られたこの結界は、本物のそれより、数段耐久力が劣っているのだから。

 

だが覚悟は出来た、目の前の大切な友達を守るだけの覚悟を決めるだけの時間はあった。

 

直後、背中に強い衝撃を感じる。

 

きた・・・っぁ!

 

あまりの衝撃に一瞬で意識を刈り取られ、大ちゃんを抱いたまま、前のめりに倒れる。

 

 

 

 

間に合わなかった。

 

霧雨魔理沙が周りの者たちを置いて射命丸文と共にディーア本体の元へと超特急で箒を飛ばし、アトゥンが光の弾幕に襲われるのを、遠くから視認出来た時には、すでに遅かった。隣では文がさらにスピードを上げ彼女たちを助けに行こうとするが、おそらく間に合わない。

 

光の弾幕は、アトゥンが作り出したであろう、博麗結界に直撃し、その衝撃波で二人が吹き飛ばされる。それを文が風を操りうまく二人をキャッチする。

後ろから置いてきた面々が追い付いたのか、目の前の光景を見て声を上げている。私達が呆然と立ち尽くす中、正面から、あいつが姿を現す、さっきまで戦っていた分身たちとは、明らかに違う。太陽のような弾幕が無くなり、ボロボロの映姫がチルノとフランを守るようにうずくまっている姿が目に入った。おそらく、後ろのやつらも見えただろう、小町の纏う雰囲気が一瞬にして変わった。ディーアは一番近くにいた文に何か言うと、文は複雑な表情をしながらも、アトゥンと大妖精を抱いたまま、映姫たちがいる方へ向かった。ディーアはそれを見届けると、こちらを見据える。

 

「さて、次はお前たちか」

 



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最終回

おそろしい時間に投稿することになってしまった。
ふふ、最終回だぜ!!
今まで見てくださった方々、本当にありがとうございます!!
最終回なんですけど、もう全然うまくまとまらなかったんで温かい目で読んでやってください!
後十月中最終回投稿無理でした!ごめんなさい!!

というわけで今回もゆっくりみていってね!



人数差で言えばこちらが圧倒的有利、それも賢者(八雲紫)幽霊(西行寺幽々子)吸血鬼(レミリア・スカーレット)達含め幻想郷の手練れが集まったと言っても過言ではない。

相対するは、たった一人の少女。にもかかわらず、目の前の彼女はそのことをまるで意にも介さず、といった様子で本当に嫌になってくる。

分身を相手にするだけでも厄介だったのに。

霊夢は奥で横になっている映姫達に目を移す、どうやらアトゥンを助けられたみたいね。ボロボロになってはいるけどその姿を見て霊夢は少し安心した、そして目の前にいるディーアへの警戒心を最大限まで引き上げる。あまり認めたくない話だけど妖精たち三人衆は強い。

映姫やフランは当然として、チルノ、大妖精、アトゥンの三人もチームとしての完成度は群を抜いているといっていい。一番の攻撃役チルノを中心に守りの結界を使いとスペル自体は強力だけどその分準備に時間がかかるアトゥンを大妖精が上手くカバーしながら戦場をコントロールする。

この三人の息はぴったりで、それに加えて妖精の二人は弾幕勝負の腕も初めて会ったときとは比べ物にならないくらい強くなっている。そんな5人をもってしてもディーアには叶わなかったのか。それでも、ディーアの身体にところどころ弾幕を受けたような跡を見て、かなりの善戦をしたのは間違いないはず。ともすれば、あと一歩のところであのとんでも弾幕、おそらくは切り札であろうそれを切って来たみたいね。

両者見合ったまま、静寂が訪れる。向こうは傲慢にもこちらを待っている、そしてこちらは誰が彼女と戦うのかを決めかねている状況、というのもこれだけの人数が一斉に一人に対して仕掛けても、互いが互いの弾幕を打ち消してしまうであろうことは想像に難くない。

だから誰が出るのか、慎重になる必要があった。誰もが様々な理由でディーアを倒したいと思っているだけに、各々譲る気がないのも確かであった。

 

「悪いけど、誰が何と言おうとあたいはいかせてもらうよ」

 

一番最初に沈黙を破ったのは、小町だ。いつになく真剣な表情で、そこにいつもの飄々とした様子は微塵もない。誰も異論は挟まなかった。

 

「はぁ、私はいいわ、あんたたちがやる気ならどうぞ」

 

次に声を上げたのは霊夢、もちろん霊夢とて、幻想郷を混乱させたディーアに思うところが無いわけじゃないが、この場では自分より適当な者たちがいると薄々わかっていたので大人しく引き下がることにした。

 

「咲夜、フランたちのところに行って、あいつは私がやる」

「・・・かしこまりました、お嬢様」

 

そうレミリアに言われた咲夜は一瞬でフランたちの元へ駆ける。

 

「妖夢、あなたもあの子達のところに行きなさい」

 

いつになく、強い言葉に妖夢は一瞬委縮してしまうが、すぐさま行動に移った。

すでに三人、戦いに過度な影響が出ないようにするなら残り一人か、多くても二人といったところだろう。紫は自分が出ようと、口を開こうとするが、それは後ろから掛けられた声により遮られる

 

「私が出ましょう、彼女の弾幕をある程度ならどうにかできます」

 

そこにいたのは、今回の異変には不干渉の姿勢を貫いていた、地霊殿の主 古明地さとりだった。紫が一度アトゥンが行方不明になったことを認めた手紙を送ったが、その後の地底の対応は不干渉だったので、紫は彼女が来るとは思っていなかった。

しかし、彼女ならある程度周りの意図を汲みながら、想起のスペルで相手のスペルを打ち消すことが出来る。ならばこれ以上無暗に人を増やし彼女の負担を増やすべきではないと悟った紫は、彼女の参加を認め、任せることにした。魔理沙や騒霊の姉妹たちが何か言いたそうではあったけれど、飲み込んでくれたようだ。

 

「もういいのか」

 

こちらの準備が整ったことを感じたのか、ディーアが口を開いた。そしてこちらの無言の了承を受け取ると、今度は口角を上げて口火を切った。

 

「ならば、かかってこい、お前たちの力見せてみよ・・・!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

晴れ渡った空を眺めながら、膝の上で静かに眠る少女の頭の上に手を乗せる。

 

「ディーア、もうすぐみんな遊びに来るから起きて」

「ん・・・ぅ~、も、すこし・・っが!!」

 

そのまま俺は頭からスッと膝を抜き、ディーアの頭が床と衝突する。ちょっと痛そうだけどまぁいいでしょ。

 

「アンよ、我の扱いがいささか雑ではないか?」

「気のせいだよ」

「そうか、そうだな。我らは一心同体、姉妹のようなものだからな!」

「はいはい、わかったからみんなが来る前にちゃんと顔洗いなよ~」

 

言いながら、俺は台所へみんなが来た時の飲み物を用意しに行く。

 

あれから、激戦の末ディーアは幽々子様達に負け、目が覚めた俺に涙目で助けを求めてきた。

その時のみんなの圧がすごくて、すっと身を引いたのは言うまでもない。めっちゃ怖かった

ディーアが異変を起こしたのは、気まぐれだったらしく、もともと信仰が薄くなり、消えそうになったところ、ちょうど瀕死の妖怪と魂だけになった俺がいたので神様パワーで融合し、その中で休んでいたらしい。その後俺が色々やってるのを見て、羨ましく思いある程度の力が戻ってきたからこうして行動に移ったらしい。幻想郷の住人そっくりな奴らに関しては、もともと魂を入れた本物を作る予定だったけど、途中でめんどくさくなってきてだったら人形に本物倒してもらってそこから魂貰ってやればいいやってなったらしい。ちなみに人形が本人と別の人を襲っていたのは、普通に本物から人形に魂を移し替えたんじゃ面白くないからだそうだ。キレそう。

そして、途中俺が死んだことになってたらしいんだけど、ディーア曰く殺す気とかは全くなくて、全部終わったら普通に身体は返そうと思ってたらしい。いい子だ。

しかし、それがなんの因果か、分身を乗っ取って俺として確立させてしまったらしく、分身をすべて消した今も、俺はこうしてディーアとは別の体に魂が宿っている。最初は神様の分身体とかめっちゃ強いじゃんとかだからスケッチブックいらずでスペルが撃てるようになったのかとか思ってたんだけど、翌日には体と魂が馴染んだらしく、ほぼ元の能力に戻ってた。普通に落ち込んだ。

 

他のみんなはというと、

紫さんはなんだか今までの疲れがでたのか、しばらく動きたくないと言って隠れ家で惰眠をむさぼっているらしい。

文は、今回のことを上司に報告するのと、今回の異変の新聞を書くと意気込んでいたので、しばらくしたら完成した新聞を持って遊びに来ると思う。楽しみ

レミリアたちとは、フランと遊んだりすることもあるからたまに紅魔館に遊びに行ったりしている。ただ、以前にもまして過保護になった気がする、フランだけでなく、俺に対しても。心配かけないようにしないとね。

幽々子様には、迷惑をかけた罰として、一週間のうち必ず一度は白玉楼に泊まることを約束されてしまった。でもって、スキンシップが前よりも遥かに激しい。あのモチモチが頭から離れない。

プリズムリバー三姉妹は地上での音楽活動を再開していて、ライブがいつあるかを教えてくれるので、見に行っている。でも大体家に帰るまでの記憶がない。なぜ?

映姫様はあれだけの傷を負っていたのに、異変解決の次の日には元気に復活していて、やっぱり仕事をさぼっている小町にお説教をしている。仕事のお休みの日にはほぼ毎日家に来ては俺とディーアの世話を焼いてくれている。そのせいか最近映姫様がいるのが当たり前すぎて、ついいない時も映姫様の名前を呼んでしまうほどだ。流石に依存し過ぎているなと自分でも思うものの抜け出せそうにない。

そして件のディーアだけど、瓜二つの俺とディーアの姿に、ディーアは自分の事を姉だと言い張った。まぁ、別にいいけどさ。

そして姉だからという理由で、今は俺と一緒に暮らしている。

 

 

 

「遊びに来たぞー!!」

 

玄関の扉が開き、チルノの声が響く、大ちゃん、フランたちと一緒にやってきたみたいだ。

 

俺は3人を迎えに玄関へ歩いていく。

 

「いらっしゃーい、ってうおぉ・・・!?」

 

玄関までいった途端、チルノとフランに抱き付かれバランスを崩した俺はそのまましりもちをついた。

 

「二人とも」

 

その声がした途端、周囲の温度が2度くらい下がったような気がして、身震いする。声の主である大ちゃんの方を向けば、顔は笑っているのに、その背中には修羅が見えた気がした。そんな大ちゃんのすごい気迫にも気圧されず、二人は俺の身体により一層引っ付いてくる。俺は冷や汗がやばい。

 

「おぉ、来たか」

 

そんな緊張感の中救世主が現れた!

 

「ディーアちゃん」

「ディーア!遊びに来たぞ!」

「ディーア、いたの」

 

3人が一瞬ディーアに気を取られた隙に俺は二人の抱擁から抜け出す。チルノとフランの二人がディーアに遊びに連れられ外に出て、大ちゃんと二人になってしまった。ご飯までには帰ってくるだろうし、まぁいいか。

 

「アンちゃん」

「ん?」

 

大ちゃんに呼ばれて振り返る。

少しの衝撃の後、柔らかい感触が、唇に伝わった。

 

「・・・っ!?」

「ん・・・っ」

 

頭が真っ白になる。

触れた唇から、くすぐったいような、柔らかい気持ちよさが脳天を貫いて。最後に残った理性で顔を離そうとするも、大ちゃんが俺の体を抱きしめて離さない。

そのまま壁に押し付けられて、再び唇を重ね合わせる。

時間にして数秒か、数分かわからないけど俺は大ちゃんと口づけを交わしていた。

 

「ぷはぁ・・・っ、だ、いちゃん」

「・・・ふふ、しちゃった」

 

そう言った、大ちゃんは、顔を赤らめ少し照れた様子で、今まで見た笑顔の中で、

 

一番美しかった。

 

 




というわけで、あとがきです。
最終回、本当は戦闘シーン書こうかなって思ったんだけど、もう限界だった。
キャラを出し過ぎたんだ・・・。
処理が追い付かなかったので、次回作からは少し絞ったり絞らなかったりします。
ということで次回作はすでに書こうと思ってます、同時に東方病恋愛の方も書こうかなと思います。
次回作も東方シリーズになるかはわかりませんがよろしくお願いします!
今回多くの方々の目に触れる作品を初めて書くということで、非常に緊張しました!
それでも感想をいただけたりした時はとても嬉しく、作者は狂喜乱舞してました。
あとがきを書いている時点でUA(UAがなんなのか理解してないけどたぶん視聴者数みたいなもんだと思ってる)が2万を超えたということで、読んでいただけた方々には本当に感謝感激あめあられといった気持ちでいます!!
他にも書きたいことは色々とございますが、今回はこれくらいで
それでは皆様また次回作にてお会いできる日をお待ちしております!!


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外伝
大妖精の奇妙な友人 1


愛煙家様誤字報告ありがとうございます!
昨日は投稿が間に合わんかったのですが、今回を機にペースを落として投稿しようかと思います!ある程度話がたまったらまた、投稿ペースを上げる形でいきたいと思います!ちなみに間に合わなかった理由は十二話と今回の話を同時進行させて書いてみた結果です。申し訳ない!
先の展開を考えたりするのに結構悩むんですよね・・・
というわけで今回もゆっくりみていってね!


これはとある妖精が出会った不思議な妖怪幼女の話

 

私がその妖怪に出会ったのは春の終り雨がたくさん降る日が過ぎて、友達が暑さで少し元気がなくなってきた頃。

少しでも涼しい場所に行こうと、湖の近くへ遊びに行っていたとき。その家を見つけた。まるで子供が描いたようなメルヘンちっくな色合いのこじんまりとした家。

「こんなところに家なんてあったっけ?大ちゃん」

友達の氷の妖精チルノちゃんが私に聞いてくる。けど、私の記憶ではここに家なんてなかったはずだ。

「ううん、なかったと思うよ」

私がチルノちゃんにそう告げると、キラキラとした目でチルノちゃんは言った

「あの家に行ってみよう!」

しまった、と思った時にはすでに遅かった。チルノちゃんの意識はもうあの家に行く事しかなく、ずんずん歩き出す。こうなってはチルノちゃんを止めるすべはない、私は諦めてチルノちゃんについていくことにした。

扉の前につくとチルノちゃんが扉をたたく、こいうときチルノちゃんはすごいと思う。なかからドタバタと何か音がして扉が開いた。

「いらっしゃい!っておお!妖精だ!!」

中から出てきたのはゴシック調の白いノースリーブのブラウスに淡い水色のチュールスカートを履いている私より少し背の高い少女。腰まで掛かった金色の髪を靡かせこちらを覗く銀色の瞳は少しタレており、あまり威圧感を感じない。その表情はどこか嬉々とした様子だ。

「あたいはチルノ!おまえ何者だ!」

チルノちゃんがそう聞くと少女は待ってましたと言わんばかりに胸を張って応えた。

「俺はアトゥン、山吹アトゥン!妖怪だ!」

先ほどまでタレていた目を吊り上げてそう言った少女の顔は自信に満ちていて、なんていうか可愛いかった。

私も名前を名乗ると、アトゥンちゃんは家にあげてくれた。家の中は外見とは裏腹に台所や生活に必要な設備はしっかりとしていた。ふわっとしたソファに腰かけるとアトゥンちゃんがお菓子を出してくれる。

「さっき作ったばっかりなんだ、よかったら食べてってよ」

促されるままチルノちゃんと私はそのクッキーを手に取る。

「これおいしいよ!大ちゃん!」

何も疑うことなくそのクッキーを食べるチルノちゃん。大丈夫なのかな、でもアトゥンちゃん悪い妖怪には見えないし大丈夫・・・かな。意を決して食べてみる。

「・・・おいしい」

「そっか、そりゃ良かった!」

満面の笑みで嬉しそうにしているアトゥンちゃん、その姿はとても無邪気で、妖怪とは思えなかった。

 

それからしばらく私と大ちゃんは毎日のようにアトゥンちゃんの家に遊びに行っていた。ちょっと悪いかなと思って聞いたこともあるけど。

「だーれもこないしいつでも遊びに来ていいよ、二人と遊ぶの楽しいし。」

特に気にしていないみたいだった。

その日は初めてアトゥンちゃんと弾幕ごっこをした日だった。弾幕ごっこは少し前から流行りだした遊びで妖精の中でも大流行していた。けど、チルノちゃんはその能力と合わさって妖精の中でも一番に強かった。

そしてその能力故に周りの妖精からは少し距離を取られていた。でも妖怪は妖精より自の能力が高い、だからチルノちゃんは最初からはりきっていた。

それが間違いだったのだ。勝負は一瞬で決まった。

アトゥンちゃんはとても弱かったのだ。そんなことは露知らずチルノちゃんは最初から本気で戦ってしまった。

「おおお、寒いー」

寒さで震えているアトゥンをチルノちゃんは心配そうに見ている、けれど声はかけられない。怖いのだ、また友達が離れていってしまうかと思うと。私はそんなチルノちゃんを見ていることしか出来なかった、他に出来ることなんて何もなかった。

「いやあ、チルノは強いな!俺も負けてられないぜ!もう一回勝負だ!!」

アトゥンちゃんは心底楽しそうに、そして悔しそうにそう言った。

「・・・えっ、もう一回やっていいの?アトゥンはあたいのこと、怖くないのか?」

チルノちゃんはびっくりした様子でつい聞いてしまった、

聞いてからはっとした様子で顔を下げる。

「んあ?なんで?よくわかんないけど、チルノはかっこいいよ!強いし。それと二人ともアンでいいよ俺の名前、呼びづらいでしょ」

全く負けたことなど、チルノちゃんの能力など気にしていない様子で、えへへっと少し照れた様子で笑うアトゥンちゃん、チルノちゃんはその場に呆然と立ち尽くしている。その目からは大粒の涙が流れだしていた。

「おぉお!?ど、どしたのチルノ、あわわわ」

その様子にアンちゃんはびっくりしてチルノの周りで慌てふためいている。と思ったらぎこちない様子でチルノちゃんを抱きしめ頭を撫で始めた。その顔は未だに困惑していてどうしたらいいのかわからないのがよくわかる。でもその行動は効果てきめんだった、チルノちゃんはアンちゃんの体をぎゅっと掴むとしばらく泣いて、そのまま眠ってしまった。

眠ったチルノをアンちゃんの家のベッドに寝かせた後、私はアンちゃんとお話ししていた。チルノちゃんのことを話すとアンちゃんはきっと大丈夫だよって言ってくれたこれからたくさん友達も増えると。その表情は穏やかで、私はきっとそうなんだろうと、ううん、たとえこれから先、3人だけになっても構わないと思った。

その日から少しずつ私の中でアンちゃんの存在が大きくなっていった



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大妖精の奇妙な友人 2

今回は外伝になります!またしても大ちゃん視点です本編はちょっと待ってくれ。
外伝の方は結構話膨らむんだけどね。しょうがないね、うん
息抜きに別シリーズ書き始めたりしてるから遅いって?ごめんね
モチベーションは高いんだけど書けないんだよね。日曜日ほとんど一日唸ってばっかりで進まなかったんですよ。まあそんなことどうでもいいか
ということで、ゆっくりみていってね!


私とチルノちゃんがアンちゃんと出会ってからしばらく時間が経ちました。今日もアンちゃんの家に遊びに行ってます!チルノちゃんと一緒に。

家の前に着くとチルノちゃんが扉を叩きます。いつも鍵が開く音がしたら飛び込んでいっちゃうから、今日はしっかり止めないと・・・。口に出して言おうと思ったら鍵が開く音がして、チルノちゃんが飛び込んでいってしまいます。・・・また止められなかった。

「ぐぇ」

なんだかすごい声がしたと思って見るとチルノちゃんの突撃を受け止められなかったのか、アンちゃんがチルノちゃんに抱き付かれたまま倒れている。

「わわっ、だいじょうぶ?」

「だ、だいじょうぶ」

えへへっと笑いながら起き上がるアンちゃん。

「なあなあアンちゃん今日は何して遊ぶ?」

アンちゃんは表情豊かで、とっても可愛らしいんだけど、ところどころ男の子みたいな言動をする。とっても元気で色んな遊びに付き合ってくれるアンちゃん、そんなアンちゃんが好きな遊びは

「ふっふっふ、チルノ、今日は弾幕ごっこで勝負だ!!」

「えぇ、危ないよアンちゃんこの前だってチルノちゃんに負けて怪我したばっかりなのに」

弾幕ごっこ、最近幻想郷で流行っている遊び。でも危ないから正直アンちゃんにはやってほしくない。それにアンちゃんはあんまり強くない、私にも負けちゃうぐらいに。けどアンちゃんはいつも楽しそうで、止めたくても止められない。

「大丈夫だって、今日は絶対勝てる秘策を考えてきたんだ!」

そう言って得意げな顔を浮かべながら胸を張るアンちゃん。可愛いけど本当に大丈夫かな?負けるといつも泣きそうな顔で悔しがるアンちゃん。そこがまた可愛いんだけど。

だからいつも弾幕ごっこで私とチルノちゃんに勝てる秘策を考えてくるんだけど、それが実ったことは今のところ一度もない。

「ふっふっふ、いいぞ!さいきょーのあたいの力みせてやる!!」

チルノちゃんものノリ気だ。・・・いいな、私もアンちゃんと遊びたいな。

「よっしゃじゃあ、チルノが俺に勝ったら一日何でも言うこと聞いてやるぜ!」

テンションが上がったのかわけのわからないことを言い出したアンちゃん。

・・・っ!ぁ、あああアンちゃん!?一体何を、そんな事言ったら!ああ、チルノちゃんが無意識だろうけど本気になっちゃってるよ!ああぁ、ずるい!ずるいよ、チルノちゃん。

私もチルノちゃんみたいに強かったら、アンちゃんにあんな風に遊んでもらえるのかな、

・・・ああ。ずるいずるいずるいずるい私だって、私だってアンちゃんより強いのに、私にも弾幕ごっこで勝負してよ、スペルカードは持ってないけど、私だって、・・・私だって。

もしこの勝負にチルノちゃんが勝ったら、何をしてもらうんだろう。・・・ちゃんと私が見ておかないと、いざとなったら私がチルノちゃんからアンちゃんを守るんだ、・・・守らなきゃ。

とにかく私が審判を務めることになったので勝負開始の合図を送る、それにしてもアンちゃんの戦うときの顔もやっぱり可愛い・・・。

「よーいスタート!!」

 

その勝負は一瞬で決まった

私が止めに入らなければアンちゃんは一回休みになっていたと思う、それぐらいチルノちゃんの攻撃は容赦がなかった。そりゃあそうだよね、アンちゃんが一日何でも言う事聞いてくれるって言っちゃったんだもん。

寒さに体を震わせるアンちゃんを後ろから抱きしめる。これはアンちゃんが寒くならないように温めてるだけだから。・・・アンちゃんの身体いい匂いがする、しっかり温めてあげないとね、だからもっとくっついても・・・。

「アンちゃん、ゴメンやりすぎちゃった」

チルノちゃんが泣きそうな様子で謝っている。

「だだだだいじょぶ、チルノは悪くないぞ、だから泣かないでこっちおいで」

やっぱりアンちゃんは優しいって、あ!チルノちゃん!そんな・・・、アンちゃんに抱きしめてもらうなんて、い、いいこいいこもしてもらってる。ああぅ、いいなぁ・・・私もしてほしい。

・・・アンちゃん、私ももっと頑張るから、ぎゅってして、いいこいいこもしてよ、アンちゃん。

あ、寝ちゃった。ベッドまで運んであげよう。・・・一緒に寝てもいいよね?私はチルノちゃんと一緒にアンちゃんをベッドまで運ぶと一緒に毛布をかぶった、結局私は恥ずかしくてまた後ろから抱き付くだけにしちゃったけど。チルノちゃんが羨ましいよ。

 

次の日、私は物音で目が覚めた。身体を起こし物音のした方を見る。アンちゃんがいた。

「むぅ。・・んぅ、ぁれ~アンちゃん?おはよう」

「おはよう、大ちゃん」

そういえば昨日はアンちゃん、チルノちゃんと一緒に寝たんだっけ。まだ頭がぼーっとしてる。

隣ではアンちゃんがチルノちゃんを起こそうとしている、寝起きのいいチルノちゃんのことだからすぐに起きると思う。・・・ほら。

「大ちゃん!アンちゃん!遊ぼう!!」

急に立ち上がったかと思たらもう元気満タンなところがチルノちゃんのいいところだけどね。

そんなチルノちゃんを見ていると、アンちゃんがのろのろと立ち上がってベッドから降りようとする。そんなアンちゃんを見て急に不安そうな顔になったチルノちゃんがアンちゃんを引き留める。

「アンちゃんどこいくの?」

そんなチルノちゃんの様子を見てか、アンちゃんがまたチルノちゃんの頭を撫でている。

「朝ご飯二人は何がいい?パンか米かどっちでもいいならさっと食べれるパンにするよ」

チルノちゃんは嬉しそうに照れているし、このままじゃダメだ!私だって出来るんだ

私だってアンちゃんと!

「アンちゃん早くご飯の準備しようよ!」

私はチルノちゃんとアンちゃんの間に割って入り、強引にアンちゃんを引っ張っていく。チルノちゃんがちょっとびっくりしていた。ちょっとやりすぎたかな。

そう思って私がアンちゃんの顔を横目で見るとのんびりした顔で笑っていた。

 



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西行寺幽々子の間食 01

夏ですねえ、今日は快晴でとても暑かった。
というわけで今回は幽々子様視点の外伝です!
時間ぎりぎりに書き終わったので、前書きはこの辺で
ゆっくりみていってね!


私の膝の上で笑顔でご飯を食べているこの子を見ているのはとても気分がいい。

 

妖夢がこの子を連れてきたのは結構最近の事

この白玉楼へと続く階段で倒れていたみたい。何でそんなところで倒れていたのかはわからないけど、面白そうだからうちに置いてみることにした。

白玉楼に置くことにしてから数日、全く起きる気配がない。妖夢には別に仕事を任せているから私が様子を見ているのだけれどこの子いつ起きるのかしら。

寝顔は可愛らしい・・・というか無防備ね。ふふっ。身体柔らかいわぁ~、プニプニ。こんな風に触っても、全然抵抗してこないし、いつも誰かに触られてるのかしら。いいわねえー

どうしたらこの子が起きてくれるか考えた私は彼女たちを連れてくることにした。

最近彼女たちの演奏を聴いていなかったしちょうどいいわ。

「妖夢~、あの子たちを呼んで演奏会を開いてもらいましょ~」

えぇ~今日呼ぶんですか。と先ほど帰って来たばかりで疲れ切った視線を送ってくる妖夢にお願いして連れてきてもらった。賑やかな雰囲気につられて起きてくれるといいのだけれど・・・。

私はそれから三姉妹の演奏会を妖夢と楽しんだ。演奏会も終わりを迎えるころ私は何かが近づいてくる気配を感じとる。ようやく起きてくれたのね。

「三人ともありがとう、今日もいい演奏だったわ。それにあなたたちのおかげで漸く客人も目を覚ましたみたいだし」

首をかしげる三姉妹に私はお礼を言って、演奏の音につられてやってきたであろう彼女を見る。

まだ少しぼーっとしているのか彼女はその場に突っ立ったまま動かない。

私は彼女に近づいて腰を落とし、声を掛けてみる。

「こんばんは、私は西行寺幽々子あなたは?」

少女はぼんやりと考え事でもしているのか、私の声に反応しない。

というか少し震えている様な・・・。私はもう一度話しかけてみることにした。

「ねえ」

「ひゃい!」

今度は私が言葉を言い切る前に返事が返ってきた。けどなんていうか変に上ずっているし、明らかにさっきよりおびえているように見える。

周りには興味本位か三姉妹と妖夢もやってきていた。まるで蛇ににらまれた蛙のように身体を縮こませていく目の前の少女。

彼女の目がうっすらと月の光を反射する。身体は強張り目には潤いのある膜が張っている。それは彼女の今を物語るには十分だった。

私はそんな彼女を見て反射的に抱きしめていた。彼女を安心させるように、背中を撫でる。

「だいじょうぶ、だいじょうぶよ。安心して」

優しく言葉を掛ける。

ゆっくりと強張っていた身体から余計な力が抜けていくのが分かる。それから安心したのか、次第に私に身体を預け彼女はまた眠ってしまった。彼女の体はとても温かかった。

 

それから数日、目が覚めた少女は自らを山吹アトゥンと名乗った。どうやら妖怪のようで、地上で流行りの弾幕ごっこに負けてしばらくは一回お休みという状態だったらしい。アトゥンはしばらくここに居ないかという提案に素直に喜んでくれた。

妖夢は相手が妖怪ということで少し警戒していたけど・・・

この子はどうも考えていることがすぐに顔に出るし、感受性が豊かなのかちょっとした暗示にもかかってしまうことが分かったからかむしろ今では私が何かしないかを警戒しているみたい。

・・・ふふっ。

昨日も可愛かったわとっても甘えんぼさんなんだからアトゥンは・・・

そろそろ妖夢がやってくるかしら、そうなったらこの時間も終わりね。

寂しいわ~

 



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八雲紫の苦悩

お久しぶりです、いやあびっくりするほど時間が空いてしまった。
ちょっち筆休めしていたら一か月経っていた。
予防接種2回目打ったりなんだかんだいろいろ忙しかったってのもあるけど。
少し落ち着いてきたので執筆再開できると思いたいです。
というわけで今回は外伝ということで申し訳ないのですが!!
ゆっくりみていってね!


私にとってこの存在は当初、大したものではないと高を括っていた節があったのかもしれない。

 

私が彼女の事を初めて聞いたのは、友人であり冥界の主人、西行寺幽々子から聞いた話が始まりだったと思う。

その時の彼女はとても可愛らしい妖怪の少女がいたのだと、嬉しそうに話していた。その時は特に気にすることなく聞き流していた。

しかし、今にしてみれば、その時に気付くべきだったのだ。冥界に現れた妖怪のその異質さに気付くべきだったのだ。眠りから覚めたばかりで、まだ頭がよく回っていなかったであろうあの頃を恨めしいと思うほどに決定的なミスだった。

 

二度目に彼女の事を聞いたのは、鬼であり旧知の仲でもある伊吹萃香の起こした異変が終わってからだった。その時もまた、宴会の席ではあったが幽々子が近頃彼女を見ていないという愚痴のようなものから始まった。

私が隣で悲壮感漂う幽々子の話を聞いていると、霊夢、魔理沙の二人がやってきたのだ。二人の話を聞くに、彼女は紅霧異変の時にも現場近くにおり、その時も二人の前に立ちはだかり弾幕勝負をしたという。彼女は中でも戦い方が独特だったため、覚えていたらしい。

しかし、幽々子の起こした異変以来彼女とは会っていないと。魔理沙の話では最近一度萃香の起こした宴に参加していたらしいが・・・。

そんな話を聞いていると、萃香がどこからともなく、会話に入ってきたのだ。そいつになら最近会ったと。それから、面白いやつだったとも。

その話を聞いてからだろう、私が彼女の事を段々と考え始めたのは、異変が起きる時にかならず現れる、小さな妖怪。一体何の意図があるのかはわからない。けれど彼女が現れることと、異変が起きること、そこに何の関係もないと言えるだろうか。否、何かしらの干渉をしてきているのは確かなのではないか。聞くに幽々子のラストスペルを見た彼女の反応はおかしかったとその様子を見ていた霊夢、魔理沙、妖夢の三人が言っていた。おそらくその場にいた紅魔館のメイド長、十六夜咲夜に聞いても同じように返ってくるだろう。

もしかすると今後も何かしらの異変が起きるかもしれない、そしてその都度彼女が近くで何かを行っているかもしれない。ならば彼女は一体何の目的があって動いているのか、それは幻想郷において看過できることなのか。確かめなけらばならない。彼女の話を聞いた私は考えた。

幽々子や霊夢、彼女に会ったことのある者たちは皆彼女に危険は無いといっているが、それでもやはりこの目で確かめなくては安心できないというもの。

ともかく一度会ってみないことには何もわからない。

それに個人としても気になるのだ、友人たちが話題にする彼女のことが。

 

 

それから彼女を探すことにした私はさらに頭を抱えることとなる。

 

いないのだ、

 

どこにも。驚くことに彼女はどこにもいなかった。

可能な限り彼女に悟られぬよう細心の注意を払ってきたつもりだった。彼女の友人関係であろう、妖精たちとの直接的な接触を避け、動向を監視してみたりもした、彼女が住んでいるであろう家にも張り込んでみたりしたが、彼女は現れなかった。既にこちらの動きに気付いたのか?一体どこで?そして彼女は一体どこにいった?地上ではないどこか、例えば地底に?いやそれはない、あそこには結界が張ってある。

いや・・・、冥界にいた時のことを考えると結界を抜けるすべを持っている可能性も捨てきれない。一体どこへ行ったというのか。萃香や幽々子に聞いてみてもやはりというか、姿を見たということは無かった。やはりこちらの動きを読んで既にどこかに身を潜めたか、はたまた新たな異変を起こす準備をしているのか。

その答えは紫にとって考えうる最悪の形で知ることとなる。

 

永夜異変

 

直前まで彼女はその場にいたという事を聞いたのは、異変が解決した後の事だった。

話してくれたのは、月の姫、蓬莱山輝夜と竹林に住む不死者、藤原妹紅だった。

なんでも彼女は一月以上前から竹林にいたという。それはまさしく、私が彼女を探し始めた時期と一致する。

やられた、彼女はやはり私の動向に気付き、いち早く行動していたのだ。幽々子には考えすぎだと言われたが。ならば何故直前になって姿を消したのか。妹紅と輝夜は気まずそうな顔をしてわけを話してはいたが、これが一度目というわけではない、彼女は異変後必ずと言っていいほど姿を消すのだ。否が応でも勘ぐってしまう。その日以降私はさらに彼女を探すことに力を入れた。

 

そして今日、私はついに彼女と出会った。

 



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八雲紫の考察

紫様はやっぱり幻想郷の賢者としての方面で活躍させたいような、普通にだしたいような。
他キャラ外伝も書きたいんだけど、現段階で書くと後の展開に支障をきたすような、そうでもないような。
まあその辺グダグダになっても何とかなるかなって思ってる自分もいる。
すでにグダグダだしね!orz
今回もゆっくりみていってね!


あの子と出会ったのはやはりというべきか異変の最中だった。前回の永夜異変から一つ季節が過ぎた春の日。新たな異変、いや異変というべきなのかは怪しい所ではあるが幻想郷に混乱をもたらした出来事であるのは確かだ。

今ならあの子に会えるかもしれない。そんな予感と共に私はあの子の家に出向くことにした。そしてやってきた。後ろにはあの子の友人である妖精を背負っていた。なんでもあの花の妖怪と魔理沙を含めた三人で一戦交えたらしい。命知らずな事をするものだと思った。

それから私はいくつかの質問をあの子に投げかけあの子の出方を見た。正直言ってあの子はあまりにもたんじゅ・・・純粋というか正直者というか相手を疑うことを知らないのかと思うほどに何でも答えた。これでは今まで警戒していた私がお笑い種だ。確かに周りが言っていた通りあの子は警戒する必要はないだろう。

むしろ何かに巻き込まれないよう守ってあげなければならないと思わせられるようなほどだ。

 

ところで私もそれなりに長い間生きてきた。大抵の人妖は一度会話をすればそのなりを知ることが出来ると自負している。出なければ幻想郷の賢者などとは呼ばれない。

 

さて、何故こんな話をするのか。

私があの子と話しをして分かったことが二つある。一つは純粋で相手を無条件に信じ受け入れるような器量と危うさを感じる妖怪であること。

もう一つは、分からないということ。

どういうことなのか、自分でも整理が追い付いていないので思った事をここに記す。あの子は確かに腹芸を得意とするようなタイプの妖怪ではない。ただ何かあの子の中にはあの子以外の何かがあるような、不明瞭な何かがあるような気がしたのだ。

言葉にするのなら、そう器と中身が別物。プリンの容器に茶わん蒸しが入ってるような。

・・・はあ、我ながら相当混乱しているらしい。もう少しましな例えは無いものか、ともかくそういった不気味さのようなものがあの子にはあるのだ。あの子は一体・・・。

 

とはいえあの子自身が何かの悪だくみに加わっている様子ではないので、このまま様子を見ることにする。必要であれば今後、彼女の力を借りてもう少しあの子の中身に迫ってみようと思う。

しかし、力を借りるにも簡単にはいかないだろう・・・。彼女のいる場所はそう簡単に行き来できる場所ではない。・・・いや、あの場所で異変が起こったならあるいは。あの祭り好きの者たちが、嫌われ者たちが住まうあの場所なら。

近いうちに地の底から彼女達がやってくる、そんな気がした。そしてあの子はきっとその場に居合わせるだろう。それが、あの子が望もうと望むまいと。

あの子は異変に好かれている。もしくは異変が起きる予兆を感じ取っているのかもしれない。

 

あの子がこれからどうなるのか、少し楽しみだ。

 



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レミリアの静観

本当は昨日までには投稿したかったんや・・・。
実は本編より、外伝の方が筆の進みが良かったりするのです。
まあ、そんなことはどうでもいいね。
今回もゆっくり見ていってね!


妹はその身に余る力を制御することが出来ず、私はただ苦しむ妹を見ているしかなかった。

 

そんな現状を打開するために、私たちは新天地を訪れた。

ここなら、妹を御せる者に妹と友人になれる者がいるのではないかと。

 

そして、彼女達がやってきた。紅白の巫女と黒白の魔法使い。

彼女達は私たちにとっていい意味で変化をもたらしてくれたと思う。

 

ただそれでも、妹が長年にわたって背負った傷は癒えることはなかった。

悔しかった。また私には何も出来ないのかと、そう考えると只々悔しかった。もう私に出来ることはないのではないかと、そう思った。それからさらに時が過ぎ、少しづつフランとの距離も近づいてきた頃、フランに変化が訪れた。フランにそっくりの人形を大切そうに持つようになった。

聞けば紅魔館に侵入してきた妖怪に作ってもらったのだとか、最初はアリス辺りが来たのだろうかと思ったのだが、全くの別人らしい。名をアトゥンというフランより背の小さい妖怪らしい。そしてその妖怪はフランと友達になったとフランは言ったのだ。その時のフランの表情は今でも忘れられない。私もその妖怪がどんなやつなのか知りたくなった。フランが言うにはまた来るということだったが、待つのは性に合わない。私は彼女を探すことにした。

 

全く持って見つからない。季節が過ぎ二つの異変が起き、解決された。この間に集められた情報といえば、私たちが起こした異変の時から、常に異変の起こる場所に彼女はいる、というものだった。普段は妖精たちと湖の方で遊んで暮らしていて、弾幕勝負では何やら相手の弾幕を模倣することが出来、先日は花の妖怪と戦っている際に霊夢の使っている結界術を用いたという。

ただし本人の能力は高くなく、単体ではほとんど何も出来ないらしい。よく妖精に負けているところを目撃されているそうだ。それ以上のことは出てこなかった。

驚いたのは、これだけの月日が経ってもフランはアトゥンが来ることを待ち続けていた。その間一度も暴走するようなこともなく、ただひたすらに、アトゥンが来るのを待っていた。そんなフランの姿を見ていると、何故アトゥンはフランに会いに来ないのかと、腹が立った。

そしてついに、アトゥンを見つけたという情報が咲夜から伝えられた。私はすぐさま咲夜にアトゥンをここに連れてくるよう命を下し、フランを呼んだ。フランはアトゥンが来ることを告げると、予想に反して少し不安そうな顔をしていた。いや、少し考えれば分かる事だったか。

本当は怖かったのだろう、彼女が来ない理由を知るのが。フランにこんな表情をさせるアトゥンに苛立ちを覚えるのと同時に、フランの成長を感じていた。それがアトゥンに出会ったからだと思うと、憎み切れないのがやるせないところだった。

 

咲夜がアトゥンを連れてここへやってきたとき、先ほどまでの不安な表情とは一転、フランは一目散にアトゥンのもとへと駆けていった。当のアトゥン本人は驚いている様子ではあったけどフランの事をしっかり受け止めていた。

 

正直、想像していたより倍以上弱そうな妖怪だった。フランが少し力を出せばすぐに壊れてしまいそうな、その辺にいる有象無象共どさして変わりない妖怪に見えた。

だからこそ私は、彼女に、彼女の運命に興味が沸いたのかもしれない。私は彼女を視ることにした。人妖問わず、運命とは人によって視え方に違いがあるものだ。博麗の巫女や白黒の魔法使い、うちのメイドと幻想郷には多様で面白い運命を持っているやつらが多い。

今、目の前にいる小さな妖怪も数奇な運命を持っているに違いない。

 

私はそう信じて彼女の運命を視た。

 



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犬走 椛の激闘

仮眠をとるつもりだったんだ。
気付いたら投稿30分前だったんだ。
そして今5分前なんだ。
今回もゆっくりみていってね!


犬走椛は今、山に傲慢にもやってきた二人の侵入者、白黒の洋服に身を包んだ人間の魔法使いと紅白の巫女装束を纏った裁定者を相手にしながら、頭の中ではひどく冷静に全く別の事を考えていた。彼女が考えていたのは今こうして冷静に相手の弾幕を交わすことを可能とした、彼女らと全く同じ弾幕スペルを使う妖怪少女のことであった。

 

その日の椛は哨戒任務を終え帰路に着こうとしていたところだった。明日は久々の休みであり、椛は顔に出さぬものの内心とても気分が高揚していた。

最近の激務を考えれば当然のことと言えるだろう。

しかし、トラブルはいつも向こうからやってくるとはよく言ったもので、彼女の前に上司であるトラブルメーカーもとい射命丸文が、いつもと変わらぬ面倒ごとを引っ提げた顔で現れたのだ。

その時椛は確信した、またしばらく休めそうにないなと。その予感は的中し、椛は射命丸の家にいる客人が山で迷わないよう護衛してくれとの命を受けることとなった。この時期に客人など彼女の性格からして普通は考えられるわけもなく、先ほど歩いてきたときに聞こえてきた話から、おそらく侵入者を捉え殺処分が決まっていたらしいが彼女が何等かの理由で引き取ったのだろう。全くもってやめてほしいものだ、ただでさえ最近は忙しいのにこれ以上仕事を増やされてはたまったものじゃない、などと思いながらも命令に背くわけにもいかずその場で了承することにした。明日は朝から彼女の家に出向かなければならないと思うと今から頭が痛くなるのだった。

 

翌日、早朝から椛は文の自宅へと訪れた。文は既に任務に出ており、中には彼女だけがいた。

 

「おはようございます、あなたの護衛を任されました、犬走椛です」

「山吹アトゥンだ!よろしく!」

 

金色の長い髪におそらく自覚はないのだろうが、少し生意気そうな自身満々の顔で彼女は名乗った。なにより無駄に元気のありそうな雰囲気は今の椛には毒のようなものだった。これから彼女を哨戒任務中を含めて監視しなければならないのかと思うと、昨日までの抜け切れていない疲れがどっと出てきそうだった。挨拶を終えた椛はとりあえず椅子に腰かけて彼女を見守る。予想とは裏腹に彼女はあまり騒ぎ立てるようなことはなく、家の掃除などを始めていた。その様子をしばらく眺めていたのだが、気が付くと眠ってしまっていた。

目を覚ますと、膝にはタオルケットが掛けられていて、彼女は私が起きたのに気付くと、少し遠慮がちにおにぎりと、山菜を使った味噌汁を出してくれた。とても美味しくて、いくらでも食べられそうだった。その後も疲れているなら眠っていていいと、何かできることがあれば何でも言ってねなど護衛(監視)対象とは全く思えないような言動に少し気が抜けたのかその日は言葉に甘えて眠ってしまった。その後文がかえってきて、彼女が作ってくれた夕食を食べてから帰ることにした。翌朝、普段よりもすっきりと起きることが出来た。それから、哨戒任務とは別に彼女の護衛任務を増やしてもらうことに成功した。また彼女に会いたいと思った。

それからしばらくして、彼女にも随分なつかれたと思う。最初の頃は見せなかった彼女の見た目相応に活発な部分を見せてくれるようになった。特に、弾幕ごっこへの熱は相当高いらしく、最近は椛が元気な時は常に様々なペルカードを見せてくれる。彼女のスペルカードは他人のスペルを模倣したものらしく、実物を見たことが無いのでどのくらいの完成度なのかはあの時にはわからなかったが、おかげで本物相手にこれだけの余裕を持つことが出来るわけだから、彼女のスペルがどれだけ本物に近いかわかる。

とはいえ、さすがに厳しくなってきたか。そろそろ目の前の侵入者たちも本気を出してくるだろう。彼女との遊びでもあの巫女のスペルカードはまだ避けきれたことがない。ここが引き際か、十分哨戒天狗としての仕事はしてるし、後は任せよう。今日は朝から随分働いた、早く彼女に会いに行きたい。

 

そのためにも、今はこの弾幕に集中しよう避けきれる自信はないが少しくらい目の前のやつらを驚かせてやる。目の前の巫女がこれが切り札だといわんばかりにスペルカードを宣言する。

それを見た白狼天狗は小さく笑う。

白狼天狗の力、見くびるなよ

 



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