シンジとミサトの夏の恋煩い (井上ああああ)
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シンジとミサトが旅館で相部屋になってしまう話

※「マグマダイバー」のすぐ後の話です。



https://syosetu.org/novel/255916/
と繋がっているので以下の点が違います。

・サンダルフォンを倒したのは初号機
・初号機もD型装備が使える
・日向と青葉は本部でお留守番



浅間山に眠っていた使徒サンダルフォンは倒れた。

緊急的に行われた改造で初号機でもD型装備が使えるようになった。

あと一歩でロープが切れそうになったとき、弐号機が救出にやってきた。

シンジは彼女によって救われた。

 

全てが終わったネルフ一同は旅館に泊まることとなった。

一種の慰問旅行である。

そんな中、加持の計らいでペンペンが送られてきたことにシンジは気づいた。

彼とペンペンは温泉につかり楽しんだ。

 

ふと、上がり部屋に戻ってきた時だった。

同じくアスカも温泉からあがってきたばかりで髪にバスタオルを巻いていた。

 

 

「あら、シンジ。」

 

 

「さっきはありがとう。」

 

 

ふと、シンジは気が付いた。

アスカが何か悪だくみをしたような笑顔になっている。

 

 

 

「で、どうなの?ミサトとは…。」

 

 

こればっかだ。

アスカはシンジがミサトが好きと知ったばかりにしょっちゅうこんな感じで煽ってくる。

まるで親戚のやっかいおばさんみたいだ。

 

 

「またそれかよ…。」

 

 

「当たり前じゃない!なんでアスカ様があんたを助けたのかわかる!?かわいい子分のアンタに幸せになってもらうためよ。」

 

 

子分ときたか。

 

 

「もーう・・・。」

 

 

「そんで、私にいい考えがあるわけよ。」

 

 

「へ!?」

 

 

シンジは素っ頓狂な声をあげた。

なんだろう。

また余計な事をしでかす気がする。

 

 

 

「私、今から別の部屋にとまるからさぁ~!」

 

「え?」

 

「ミサトと相部屋よ。」

 

「ええええええええ!?」

 

「碇司令に話通したから、OKだってさ。」

 

 

 

と、ととととと父さんが!?

 

 

 

「せいぜいお楽しみにね。」

 

 

 

アスカは軽くウィンクをすると、そのまま足早に去っていった。

そのわきにはペンペンがいた。

ペンペンは手を振ると、そのままアスカにつられて足早にさっていった。

 

 

 

ど、どうしよう!!!

み、ミサトさんと相部屋!?

し、しかも父さんの命令!?

 

 

は、恥ずかしい。

父さんもなんでこんなことをするんだろう。

誰も頼んだわけじゃないのに、本当に迷惑だなあ。

 

 

えっちぃなことをするわけでもないのになんでこんなに顔が赤くなっているんだろう。

 

 

もしかして、ボク期待してる!?

えっちぃなことを!?

 

 

 

「どうしよう、最悪だ…。」

 

 

「私といるのがイヤかしら?」

 

 

シンジは振り返った。

そこには背の高い女軍人、葛城ミサトがいた。

ミサトは浴衣を羽織っていた。

いつもミサトは奇麗だが、その日は特別奇麗にみえた。

 

 

 

 

「そんなことはありません。嬉しいです。」

 

 

 

シンジは伏し目がちに言った。

 

 

 

「じゃあ、ご飯たべにいこっ。」

 

 

 

ミサトはシンジの手を取った。

彼女につられるとシンジはうんとクビを縦に振った。

なんだか、ミサトも少し照れが来たのか顔をやや赤くしていた。

 

 

 

「ミサトさん、浴衣…すごく似合ってるね。」

 

 

 

ミサトはシンジの言葉に顔をさらに赤くした。

 

 

 

「あ、ありがとう…。」

 

 

二人は顔を赤くしあうと、ゆっくり食事処にたどり着いた。

先についていたアスカ・リツコ・マヤの3名はシンジとミサトが顔を赤くしあいながら歩いてくる様をみていた。

 

 

「まるで本物のカップルね。」

 

 

リツコは思わずそう言ってしまった。

アスカはそれを聞いて吹き出して、シンジを指さし言った。

 

 

「二人とも、トマトみたい・・・顔が・・・・。ははははは!!!!」

 

 

マヤはそんな彼女たちとは裏腹に冷ややかな顔でミサトとシンジを睨んでいた。

 

 

「不潔。」

 

 

ミサトとシンジはそれぞれの反応をみると、すぐさま手を離そうとした。

二人はそれぞれの席についた。

アスカはペンペンを抱きながら、お魚をあげていた。

ペンペンは大いに喜び手を振った。

 

ミサトは隣の席に座ったリツコに話掛けられた。

 

 

 

「ミサト、間違っても彼を襲わないようにね。」

 

 

「わかってるわよ。」

 

 

ミサトは少し顔を伏せていった。

男女だったら普通逆だけど、私は戦闘のプロ。

屈強な男でも押し返せる自信がある。

だけどシンジ君はか弱い男子。

私が襲わないようにか…。

彼女はマヤが心底軽蔑したような目でミサトを見ていることに気が付いた。

マヤの視線が冷たく険しい。

 

 

「うううう…。」

 

 

シンジは顔を赤くしながら料理を食べていた。

ふと羞恥に耐えられなくなったのか、少し席を外した。

そしてケータイ電話を取り出した。

こういう時相談できるのは一人だけ。

 

 

「あ、青葉さん!?」

 

 

「おっ、シンジくん。どったの。」

 

 

「今、旅館なんですけど!」

 

 

「ああ、そうか!本部は暇だぜ。あとで日向とクソ映画観賞会するんだ。」

 

 

青葉はネルフ本部に待機命令が出されていた。

何かあったときのためだ。

 

 

「どうしよう、青葉さん。」

 

 

「どうした、シンジ君!何かあったのか・・・まさか使徒が!」

 

 

「そうじゃなくて、ミサトさんと相部屋なんだ・・・。」

 

 

「マジ!?」

 

 

「うん・・・。」

 

 

青葉は電話越しでゲラゲラと笑い転げていた。

もう、青葉さんまで茶化してる。

 

 

「からかわないでくださいよ!!」

 

 

「ごめんごめん、シンジ君。だってこんなこともしも日向が聞いたら嫉妬に狂い死ぬだろうなって思っちゃってさ!」

 

 

「そうじゃなくて、ボクどうすりゃいいんだろう。」

 

 

「そうだなー、まあする時はゴムはつけたほうがいいんじゃないかなってことぐらいかな。」

 

 

「ゴム?」

 

 

シンジは素っ頓狂な声で聴き返した。

思い出した。

ケンスケとトウジがゲラゲラ言ってた下ネタだ。

 

 

「それってコンドームのこと???!!!!」

 

 

「そう!」

 

 

「そ、そんなことしませんからっ!」

 

 

「そうかそうか、まだ早いもんな!まあ楽しんで来いよっ!」

 

 

「ええ~~っ!」

 

 

青葉は電話を切った。

どうしよう、誰も頼れない。

困ったなあ…。

 

 

「バカシンジぃ!」

 

 

アスカの声だ。

滅茶苦茶うれしそうな顔をしている。

 

 

「アスカ…。」

 

「卒業おめでとうございます!」

 

「な、何の卒業なンだよおおおおおおっ!!!」

 

「キャハハハハ!」

 

 

アスカはそういうと、すぐさま逃げ始めた。

アスカを追いかけ、シンジは食事に戻った。

その最中でもアスカはリツコに何か耳打ちしてヘラヘラ笑っていた。

リツコは呆れたような顔をしつつも、少し優しい柔らかい笑顔になっていた。

ビールが手渡されていたが、ミサトは家でするような恥ずかしい酔っ払い方はしていなかった。

顔を赤くしながら、シンジを少しみてはまた目をそらした。

 

 

数分後、メインの魚と肉料理をつまむとミサトはいつものような酔っ払いモードに入り、マヤとリツコに酒を注いでいた。

やがて、マヤとミサトの酒飲み勝負が始まった。

それをみてアスカが「ミサト悪酔いしてる!」とさらにゲラゲラと笑っていた。

 

 

だが、勝負はマヤの勝利だった。

マヤは酒に強い体質だったのだ。

 

 

そして、やがて夜10時近くになった。

リツコとマヤはミサトを担ぐと部屋の近くまできた。

アスカはペンペンとゲームセンターに足を運んでからねるそうだ。

 

 

「シンジ君はこんな大人にならないでね。」

 

 

リツコは言った。

シンジは小さくいった。

 

 

「うん。」

 

 

シンジはドアを開けるとリツコとマヤはミサトを運びよせた。

 

 

「こいつのせいでまた汗かいちゃった。二人でまた入りましょうかマヤ。」

 

「えっ、いいんですか!」

 

「いいのよ、どうせアスカとペンペンは中々帰ってこないでしょ。」

 

「わかりました!ご一緒します!センパイ!」

 

 

 

そう言うとリツコは部屋を後にしようとした。

 

 

 

「そうだ、シンジ君明日朝10時だから。こいつを連れてきてロビーにきてね。」

 

「わかりました、おやすみなさいリツコさん。」

 

「シンジ君、夜更かしはダメだからね。」

 

「わかってますよ、おやすみなさいマヤさん。」

 

 

 

マヤとリツコを送ると、シンジはドアを閉めた。

ミサトは布団の上で乱雑に寝かされていた。

そんなミサトをみてシンジは呆れてため息をついた。

 

 

「だらしない人だな、全く。」

 

 

そう言い、テレビをつけようとした。

ふと、気が付いた。

浴衣が開けていた。

そこからほんのりと、ミサトの下着がうつっていた。

 

 

ピンク色だ…。

いつもミサトの洗濯物は普通に洗っている。

でも、なんだろう。

すごくえっちぃだ…。

 

 

 

「ごくっ…。」

 

 

 

シンジはミサトの顔をみつめた。

起きていない…。

別にえっちぃをするわけじゃない。

少し顔を観るだけ…。

 

 

 

その時だった。

 

 

ミサトの浴衣がさらにはだけた。

パンツがみえた。

そして、鍛え上げられた腹筋も…。

その腹筋の上にイナズマのような傷がついていた。

 

 

 

「なんだこれ…。」

 

 

シンジは思わず言ってしまった。

その声に気が付いたのかミサトの体が動いた。

彼は急いで身を隠した。

 

 

 

「あ~あ…最悪悪酔いしちゃった。頭いだーい。」

 

 

 

シンジはSDATを耳に入れ漫画を読んだふりをした。

ミサトはそんなシンジに気が付いた。

そして、ミサトは自身の浴衣がはだけていることに気が付いた。

腹部の傷も丸見えだった。

 

まさか、シンジ君…。

襲ってきたのか?

 

否、違う。

彼はそんなことをする人間じゃない。

 

だが、少し気になったのだ自分の体に。

そして浴衣がはだけて、みえてしまった。

きっと気になったんだろう。

この傷のことが。

 

 

 

「シンちゃん、この傷気になるよね。」

 

 

シンジは気が付いた。

ミサトにバレている。

SDATを外し、漫画を手元に置いた。

そして、シンジはミサトの方を振り向き、うなづいた。

 

 

 

「この傷はね、セカンドインパクトの時にできたの。ちょっちグロいでしょ?気持ち悪いでしょ。みせてごめんね。シンジ君。」

 

 

何を言ってるんだ。

確かにえげつないかもしれない、でもそれはあなたの生きてきた証だ。

それを否定する気はない。

 

 

 

「全然気持ち悪くないですよ。」

 

 

「え?」

 

 

「ミサトさんはミサトさんだから、その傷を含めてミサトさんだと思います…。」

 

 

ミサトは顔がさらに赤くなった。

この子ったら…。

本当にもう…。

 

 

「ありがとう、シンジ君。」

 

「…そろそろちゃんと浴衣を着てください。恥ずかしいですから。」

 

「えへへへ、ごめんねシンジ君。」

 

 

 

シンジは布団に入り込むと寝込んだ。

ミサトはそんなシンジを心底かわいいと思うと彼の忠告通り浴衣をちゃんときた。

その夜、二人は結局寝ることはできなかった。

お互いのことが気になってしまい、それどころではなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次は夏祭り編を予定しております。


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ミサトとシンジが夏祭りに行く話

 むさ苦しい夏のある日。

 

 シンジは冷房にかかりながら、ふとリツコから小遣いをもらい買ってみたノートパソコンを開いていた。

 

 

 

 

 

「シンジぃ~……」

 

 

 

 

 

 アスカの声だ。

 

 またアイスクリームがほしいから買ってきてとでもいいたいのだろうか。

 

 

 

 

 

「もうアイスは買いに行かないよ、アスカ。残念だったね」

 

 

 

 

 

「そうじゃなくてさァ……」

 

 

 

 

 

 アスカはにっこりと笑っていた。

 

 その手にはチラシが貼ってあった。

 

 浴衣を着た女性。

 

 ゴシック体のフォントで書かれていた。

 

 

 

 

 

『夏祭り』

 

 

 

 

 

 はぁ・・・。

 

 

 

 

 

「行きたいの?」

 

 

 

 

 

「アンタバカァ?あたしが行きたいんじゃなくて・・・アンタがいくのよ。ミサトと!」

 

 

 

 

 

 また、この話か。

 アスカは最近ずっとこうだ。

 何かあるたびに「ミサトとデートにいけ」と連呼する。

 もうウンザリだ。

 

 確かにミサトさんのことは好きだけど、コイツに茶々入れられる筋合いはない。

 

 

 

 

 

「嫌だよ暑いし」

 

 

 

 

 

「でも、もうミサトには待ってるって教えちゃったよ」

 

 

 

 

 

「は!?」

 

 

 

 

 

 

 

 アスカ、またボクの断りも無しに勝手なことをやって。

 なんなんだよ!こいつは・・・。

 

 

 

 

 

「浴衣着てくるってさ。はやくいってあげなよ。ホラホラ」

 

 

 

 

 

「なんでそんな勝手なことを!!!」

 

 

 

 

 

「アタシからの善意ってやつよ!ありがたくおもいなっての!ホラホラ~!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 でも、浴衣姿のミサトさん・・・。

 想像するだけでちょっと興奮してきた。

 あの温泉の時もすごくきれいだった。

 着物となると・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 ごくり。

 

 

 

 

 

 

 

 固唾をのむシンジをみてアスカは微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「でさ、シンジ、アンタ用の浴衣も用意してるんだけど着る?」

 

 

 

 

 

 そういうと、アスカは着物を手渡した。

 

 

 

 

 

 

 

「ああああああ、あああ・・・アスカさん?????」

 

 

 

 

 

「碇司令がエヴァ初号機のパイロット賃金代わりだって!そのお金で買ってくれたそうだよ。こんなことないんだから。しかも京都の呉服屋ですわよ」

 

 

 

 

 

 

 

「と、と父さんまで!?」

 

 

 

 

 

 また、父さんまで。

 二人の方がノリノリじゃないか。

 そういえば、この前の温泉旅行でも父さんが相部屋にすることを許可したって。

 勘弁してほしいよ。

 

 

 

 

 

 シンジはそう思いながら冷や汗をかいた。

 

 

 

 

 

 

 

「で、行くの?行かないの?」

 

 

 

「え!!??」

 

 

 

「あっそういえば加持さんも近くにいるって聞いたんだけど……どうなんだろう。これってヤバいんじゃないかなー。あーやばいやばい。ヤバイヨヤバイヨ!」

 

 

 

 

 

 アスカはテレビの芸人のマネをしながら言った。

 シンジの顔色は青くなっていた。

 

 加持さん。

 ミサトさんの元カレ。

 でもイケメンだし、体格も大きい。

 敵は強い。

 

 

 

 

 

 いかないと、ミサトさんは加持さんに・・・・?!??

 

 

 

 

 

 まさか、やるもんか。

 

 絶対にやらせない。

 

 

 

 

 

 シンジは首を縦に振った。

 

 

 

 

 

 

 

「いきます」

 

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

「ボクがいきます!エヴァ初号機パイロット、碇シンジです!」

 

 

 

 

 

 アスカはにやにやするとシンジに着物を手渡した。

 

 だが、二人は着物の着方などわからなかった。

 

 

 

 

 

「うわーどうしよう。全然わかんないよ!!」

 

 

 

 

 

「えー!?どうするの、アスカがわからないのってボクもわかんないんだけど!」

 

 

 

 

 

「といっても、わかんないもんはわかんないもん」

 

 

 

 

 

 二人が困惑していると、ドアがガシャンと開く音が聞こえた。

 そして、次にミサトの声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

「もうー、アスカ……シンちゃんこないじゃん!」

 

 

 

 

 

 ミサトは頬を膨らませると、二人を探した。

 

 

 

 

 

 

 

「ミサトさん帰ってきたじゃん!」

 

 

 

 

 

「ちょうどいいじゃん」

 

 

 

 

 

「何がいいんだよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 ミサトは二人の声を聴くと、シンジの部屋までたどり着いた。

 着物をどのよう着ていいか迷っている二人の姿をみてミサトは微笑んだ。

 そうか、二人はまだ子供、着物の着方などわからないのだ。

 そんなミサトは紺色の着物を着ていた。

 黒い髪に紺色の着物はあっていた。

 

 シンジはそんな彼女をみると少し頬を染めた。

 

 

「バカシンジ、どったの?顔なんかあかーくなってるけど?」

 

 

 アスカはジト目でシンジをからかったが、無視した。

 そんなアスカをみてミサトは一瞬でわかった。

 本当は自分もつれてってほしいんだ。

 

 

 

「本当はアスカもいきたいんでしょ」

 

 

 

 

 

 ミサトはそう言った。

 アスカは顔を染めるとウンとつぶやいた。

 ミサトはアスカとシンジにそれぞれ着物の着方を教えた。

 シンジはすぐに順応したが、アスカはわからないようだった。

 ミサトはため息をつくと、アスカの部屋に入りアスカに着物の着方を伝授した。

 

 

「ヒカリがさ、サクラちゃんといってるといってたから。」

 

 

「あ、サクラちゃんって鈴原君の妹?」

 

 

「本当は鈴原が行く予定だったんだけど、無理だから妹がって…。まあサクラちゃんがいきたいっていってゴネたんだろうけど。それ聞くと、アタシも行きたくなって…ごめんね。」

 

 

「いいのよ。」

 

 

 アスカは赤い着物をつけた。

 ミサトはアスカの部屋から出ると、シンジをみつめた。

 シンジは青色の着物をきていた。

 その姿は女の子のようだった。

 

 

「シンちゃん、すっごくかわいい。」

 

「かわ??いい????」

 

 

 アスカはシンジの耳にこっそり耳打ちした。

 

 

「かわいいは誉め言葉だよ。アンタはどうあがいてもかっこいい系は無理だから。かわいい系で狙いなさい。」

 

「わかったよ。」

 

 

 

 アスカはペンペン用の抱っこ紐をまくとペンペンを乗せた。

 一行はその後、タクシーを呼ぶと会場に向かっていった。

 あたりはすっかり夕方になっていた。

 

 

「おや、坊や羨ましいね!両手に華じゃないか!」

 

 

 運転手はシンジを茶化した。

 

 

「あらぁおじさん、私はこいつのお姉さんなの。そんで横にいるこの大人の女がこいつのカノ…。」

 

 

 ミサトはアスカの口を覆った。

 

 

「アタシたち家族なんです、今から祭りにいくんですよ。私が長女、この娘は次女。男の子は末子なんです。」

 

「そうなのかーてっきり、俺は二人ともその子の彼女にみえたけどね!」

 

 

 3人はそろって顔を赤くした。

 ふと、シンジは外を見つめた。

 そこには多くの人が集まるのがみえた。

 彼らは縁日用の屋台にそれぞれ集まると品物を買っていった。

 3人は外に出た、ミサトはタクシー代金を払った。

 

 

「じゃあお姉さん若い娘に負けんなよ。」

 

 

 運転手はジョークを言った。 

 多分あの人、わかってる???

 まあいい。

 

 

「あ、アスカ!おそいじゃん!」

 

 

 洞木さんの声だ。

 そのわきには10歳ぐらいの大人しそうな少女がいる。

 あれがサクラちゃんか。

 二人とも奇麗な着物をきている。

 

 

「ごめんごめん!待たせた?ごめんね、サクラちゃん!ペンペンもいるよ!」

 

 

「これがペンペン?うちはじめてみました!」

 

 

「じゃあ、いこうか!」

 

 

 3人の美少女+1匹はそれぞれ並ぶと歩いていった。

 

 

「おい、シンジがんばれよ!」

 

 

 アスカはそう言うと、手を振った。

 シンジはその光景をみると照れ臭そうにかえした。

 

 

「じゃあ、行きますか。」

 

 

「はい。」

 

 

 その時だった。

 ミサトの手がシンジに触れるを感じた。

 ミサトの手の温かさがシンジに伝わった。

 

 

「行こっ、シンジ君。」

 

「は、はいっ!」

 

 

 

 二人は手をつなぐと人ごみをかきわけながら屋台を探した。

 ふと、射的の屋台をシンジはみつけた。

 

 

「ミサトさん、射的だよ。」

 

「なるほど、シンちゃん。あたしに腕試ししたいなんていうんじゃないでしょうね。」

 

「いや、勝負だよ。ボクとミサトさん、どっちが商品を手に入れるか。」

 

「あら?面白いじゃない。じゃあ訓練の成果みせてもらうわよ。」

 

 

 二人は並ぶと射的の屋台の元へと向かった。

 商品は並んでいる、真ん中の奥にはレトロなゲーム機があった。

 

 

「じゃあ、あれをかけて勝負します?」

 

「いいわよ、先行はあなたからで。」

 

 

 シンジは銃を構えた。

 そして、息を整えた。

 大丈夫、できる。

 僕は初号機パイロット。

 戦いは男の仕事。

 

 

「目標をセンターに入れて…スイッチ。」

 

 シンジは銃を構えると引き金を押した。

 だが、外れてしまった。

 

 

「あっ!!!そんな・・・・。」

 

 

「じゃあ、次は私の番ね。」

 

 

 ミサトは玩具の銃を渡された。

 すると、ミサトは両手でしっかりと空気銃を支えて持っていた。

 その時だった、目の色が変わった。

 いつものずぼらなミサトじゃなかった。

 その場にいる物全てが凍り付いた。

 シンジも…。

 

 

「ミサトさん・・・。」

 

 

 そして、素早く引き金を引いた。

 パァン。

 

 

 ゲーム機にコツンと弾が当たった。

 

 

「あたりだ・・・。」

 

 

 店主はうわごとのようにつぶやいた。

 シンジはミサトをみた。

 すると、少し悲しそうな顔をミサトはしていた。

 シンジはわかった、この人はやはり戦場で何か経験した。

 だから、辛いんだ。

 シンジは店主から渡された荷物を持った。

 

 

「ミサトさん、ボクはあなたがなにを経験したか詳しくは聞きません。ですがこれだけはいわせてください。ボクはあなたの影を含めて愛します。」

 

 

 ミサトの胸がドクンと音を立てた。

 

 

「シンジ君…。」

 

 

「あなたのお腹の傷も含めて、あなただと思っています。軍人としてのあなたも、ずぼらなあなたも含めて全部全部あなたです。」

 

 

 

 だけど、せめて僕の観ている前で人は殺さないでほしい。

 できれば・・・。

 きっと加持さんだったらもっと気の利いたシャレを言えただろう。

 僕はそんなことできない。

 できるわけがない。

 だからこうするしかないんだ。

 

 

「僕はそれを受け止めます。」

 

 

「シンジ君…。」

 

 

 ミサトはそばにいる14歳の男の子が本気だとわかった。

 彼を抱きしめキスしたい欲望にかられたが、抑えた。

 その代わり手を強く握った。

 

 

「ありがとう、シンジ君。その言葉だけで生きてきてよかったと思う。」

 

 

 だから、せめて私は彼を守るために生きていこう。

 二人の手はその中に流れる絆以上に強くしっかりと握りしめ合った。

 

 

 

 

 数時間後、二人は屋台で様々なものを食べた。

 気が付くとミサトはビールを飲み始めていた。

 

 

「ごめん、シンちゃん。私ちょっち休むわ。」

 

 

 そういうとミサトはベンチに寝転んだ。

 そんなミサトをみて、シンジはやっぱり鋭い目つきで男を殺していくミサトよりもこういうずぼらなミサトが大好きだなと感じた。

 ふと、前方から着物姿のシンジと同年代の少女たちが近づいてきた。

 

 

「あの、今暇ですか?」

 

 

「え?」

 

 

「あのよかったら、一緒に遊びに行きませんか。」

 

 

「え?!」

 

 

 シンジは頬を染めた。

 ミサトは薄目でその様子をみた。

 逆ナンパか。

 シンジ君はかわいい顔をしている、モテて当然。

 

 同世代の女の子か。

 そのほうがいい。

 シンジ君にはやはり同年代の娘があってる。

 私じゃおばさん過ぎるしね。

 

 だが、そんなミサトの予想を超えた答えをシンジはした。

 

 

「ごめんなさい、ボク大好きな彼女ときてるんで…すいません。」

 

 

「え?そうなの?」

 

 

「残念、次いこ!」

 

 

 少女たちはシンジに手を振ると去っていった。

 ミサトはシンジの言葉を聞いて顔を真っ赤に染め上げた。

 シンジはそんなミサトに気が付くと、頬を染めて聞いた。

 

 

「もしかして、聞いてたの?」

 

 

 ミサトは無言でうなづいた。 

 シンジとミサトはお互いに頬を染め合った。

 そして、ミサトは起き上がるとシンジの手を取った。

 そんな時だった、打ち上げ花火があがった。

 

 

「奇麗。」

 

 

「本当だ。」

 

 

 花火は二人を包み込んだ。

 火薬の臭いが二人の鼻孔にさしこんだ。

 火薬の臭い、戦場の臭い。

 

 

 

 

「シンジ君。」

 

 

「何。」

 

 

「この世界、絶対に守るわよ。あなたならエヴァの力を正しいことに使える。私はそう信じてる。」

 

 

「わかった、守るよ。」

 

 

 

 シンジとミサトの決意は固まった。

 自分たちが生きる世界を守るために、二人は戦う。

 やがて、二人は祭りの終わりを見届けるとアスカたちと合流して電車で家へと帰っていったのだった。

 




次の海に行く話で終わりにします。


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シンジとミサトが海に行く話

時系列的にはイロウル前です。


第三新東京市、海の日。

ネルフの食堂のテレビでは海を映していた。

 

「海かあ…。」

 

シンジはそれを黄昏た様子でみていた。

そういえばいったことがないな。

あんまり。

ミサトさんはいったことあるんだよな。

ここに来る前に送ってきた写真、あれは学生時代のミサトさんと聞いた。

 

とっても、キレイだった…。

 

 

 

「なにをしている。」

 

この声は父、碇ゲンドウだ。

シンジは慌てて振り返った。

 

 

「とうさん?」

 

「お前、旅館の際に葛城君と相部屋になったよな。」

 

 

ああ、そんなことがあったけ。

あの時のミサトさんの傷。

凄い大きかった。

戦場でついたものかな、それともセカンドインパクトで。

ボクに彼女のことをまだ知らない。

もっと知りたい、ミサトさんの全てを。

 

そんな純真な愛情を胸に抱いた息子に対して父は詰め寄った。

 

 

「何もしなかったそうだな。」

 

 

ゲッ!!!またその話か!!!

この髭爺はいつもこうだ。

 

 

「だ、だって僕まだ子供だよ!」

 

 

ゲンドウは大きくため息をつくとシンジをにらんだ。

そしてこういった。

 

 

「お前には失望した。」

 

「なんでだよ!!!」

 

「何もせんのは無礼というものだ。どうせ何も発展しなかったんだろう。呆れたものだ。全くそれではその内他の男にとられてしまうぞ。」

 

「夏祭りにいったよ。」

 

「それもセカンドのアイデアだろう。どうするのだ、自分から攻めないという事は…やる気がないということだぞ。」

 

「じゃあ、どうしろっていうんだよ!!」

 

 

ゲンドウは息子に微笑んだ。

 

 

「これだよ。」

 

 

ゲンドウが指を指す方向には海がうつっていた。

海?

青い海。

目の前には水着の美女たちがうつっていた。

 

 

「この青い海だ。」

 

「まさか、そこで・・・・。」

 

「彼女との距離を近くする、それが作戦というものだ。」

 

「でも、ミサトさん。お腹に傷があるから嫌がるんじゃないかな。」

 

 

ミサトさんのお腹にあったあの大きな傷。

恐らく彼女は嫌がるだろう。

自分の腹部の傷が恥だとおもっているから。

 

 

 

でも、それは大きな間違いだ。

 

 

彼女の生きてきた人生。

それは恥ずかしいことなんかじゃない。

 

 

「全然、恥ずかしい事じゃないのに…。」

 

 

そんなシンジを見て、ゲンドウはふと思いついた。

 

 

「シンジ、この世界にはプライベートビーチというものがある。いいか、よく聞け。私もユイをそれで落とした。」

 

「そうなの?」

 

「問題ない、金は出す。そろそろ時間だ。私は行くぞ。」

 

 

ゲンドウの背中は少し誇らしげにみえた。

しかし、最近父さんはずいぶんと僕に優しいなあ。

そんな時だった。

 

 

「最近、碇司令と仲いいね。シンジくん。」

 

ミサトさんだ。

全部聞いていたのかな。

シンジはそんなことを考えながらミサトの顔をみた。

 

 

「あの、聞いてました?」

 

「え?」

 

「あっ・・・。」

 

 

聞いていない。

 

ミサトさんがうそをついている時は顔に出る。

顔に嘘をついているという文字は浮かんでいない。

 

 

「あのっ・・・。」

 

 

シンジは頬を染めて、ミサトをみつめた。

そして、小さな声でいった。

 

 

「海いきませんか?」

 

「海?」

 

「あまり記憶ないんです。海で遊んだこと…。ずっとミサトさんといきたかったし。」

 

 

 

ミサトの表情は暗かった。

ダメかな。

当たり前だよな。

勇気を出そう。

僕は初号機パイロットだ。

どんなことでもできるんだ。

 

 

「わかってます。ミサトさんに傷があることも…。」

 

ミサトは腕をとめた。

そう、私はこの子にみられた。

傷を。

腹部の傷を。

 

 

「でも、ボクはあなたといきたい。海に。他の人の目が気になるというなら…プライベートピーチに行きましょう。」

 

 

ミサトは微笑んだ。

この子無理しちゃって。

 

 

「わかったわよ。じゃあ、海の日でいい?」

 

「弁当作ります!一番おいしいの!」

 

「シンジ君の料理はなんでも美味しいから大好きよ。」

 

 

褒めてくれた。

ミサトさんが僕を…。

褒めてくれた。

嬉しい。

 

 

 

「ミサトさん…。」

 

 

シンジはミサトの顔をみつめた。

ミサトもシンジのことをみつめた。

目と目が合った。

 

 

「あなたの過去に何があったとしてもそれは僕には関係ない。今のあなたが好きだから。」

 

 

やだ、シンジ君。

こういう時なんでかわからないけどとびきり男らしいのよね。

ミサトはそう思うと、胸の高鳴りを抑えられなかった。

なんでこんな中学生相手にこんなドキドキしてるんだろう。

昔からかわいい子だと思っていたし、好きだったけど。

こんなにドキドキするのは初めてだわ。

 

 

「ご、ごめんね・・・仕事あるから!」

 

「ミサトさん・・・。」

 

 

ミサトは足早に去った。

まるで恥ずかしそうだ。

 

 

 

 

その翌日、シンジはゲンドウに頼んで金の工面をしてもらった。

そして、ゲンドウが以前から所有していたプライベートビーチに行くことに決めた。

 

 

 

やがて、当日になった。

ミサトの愛車アルピーヌに乗り、二人は海へと訪れた。

そこには一面見渡す限りの海と砂がそこにあった。

だれもいない。

なんとここだけが今はミサトとシンジのものなのだ。

 

 

「すごい。」

 

 

シンジは思わずつぶやいた。

ミサトも思わず同じことをいいそうになった。

シンジ君の前だから、ちょっと大人っぽくしないと…。

なんてガラじゃないわよね。

 

 

「ね、シンちゃん。」

 

「何?」

 

「私が服脱ぐところみたい?」

 

「な、なにをいってるんですか!!!」

 

「あなたならみてもいいけど。」

 

「やめてくださいっ!本気ですか!」

 

「からかっただけ。」

 

 

シンジは顔を赤くそめあげた。

ミサトさんいつもこうだ。

大事な時にボクをからかってごまかす。

気が付くとミサトが手早くテントを設置作業をしていた。

流石軍人だ。

こういう時は手早い。

頼れるときは頼れるけど、ダメなところはダメな人だよなあ。

 

 

「私が見ないうちに着替えていたら?」

 

「すいません…。」

 

 

シンジは少し謝るとせこせこと服を脱いだ。

ミサトがこっちを見ていないか、少しみたがどうやらミサトは見向きもしていないようだった。

手元にある作業に集中しているようだ。

その目つきはすっかりずぼらなミサトではなく軍人のものになっていた。

シンジはそんなミサトを想わずみつめていたが、いつまでもこうしていられないという事を思い出すと水着に着替えていった。

青葉が選んでくれた青色のサーフパンツ、シンジはそれに着替えた。

 

 

「着替え終わったよ、次はミサトさんの番だよ。」

 

「はいはい。」

 

 

シンジはふと気が付くともうテントとチェアの設置に完了していたことに気が付いた。

さっそくなのでシンジはチェアの上に座ってみた。

 

 

「ミサトさん、こういう時手早いよね。」

 

「戦争に言った頃にこういうことは慣れていたからね。」

 

 

悲しそうな声。

しまった。

ミサトさんの触れちゃいけない過去に触れてしまった。

 

 

「ごめんね、ミサトさん。」

 

 

「気にしてないから心配しない。」

 

 

ミサトは着替えが終わっていた。

 

 

 

 

それをみてしまったシンジはびっくりした。

ミサトの大きいバストははちきれんばかりに膨らんでいた。

そして、鍛え上げられた肉体と、それに浮かぶ傷も彼には美しくみえた。

 

 

黒いビキニ…。

こんなの着てるのって海外のモデルぐらいしかいなよ。

でも、それでもあっている。

やっぱり、ミサトさんってすごいんだ。

 

 

 

「ミサトさん…。」

 

 

シンジは思わず固唾をのんでしまった。

そんなシンジをみて、ミサトはいたずらに微笑んだ。

 

 

「えっち。」

 

 

「え?!」

 

 

その時シンジは気づいた。

自分の『それ』が膨張していることに。

 

 

「ぐあああああああああっ!!!」

 

 

ミサトはそんなシンジをみつめて微笑み、顔を近づけた。

 

 

「誰もいないから、ここで…。」

 

 

「み、ミサトさ…」

 

 

その時だった。

ミサトのスマホが鳴り響くのがみえた。

メール、リツコからだ。

 

 

『シンジ君に手を出したら減給~by副司令~』

 

 

 

 

げげ!みている!!?

 

 

ミサトは周囲を見回した。

そういえば、ここは碇司令所有のプライベートビーチ。

 

 

「…とりあえず、泳ぎましょう。」

 

 

「そうだね…。」

 

 

 

海にきたんだから泳ごうか。

シンジとミサトは海の中へと飛び込んだ。

冷たい水はシンジとミサトを温かく迎えこんだ。

やがて二人の水泳合戦が始まり、ミサトはその巧みな運動神経の数々をシンジにみせつけた。

その時、彼は感じた。

 

 

やはり、ミサトさんは凄い。

本物の軍人なんだ。

シンジにはミサトの鍛え上げられた腹筋がりりしくみえた。

すごい。

まるで、豹みたいだ。

水泳合戦はミサトの圧勝で終わった。

二人は時間を忘れ泳いでいた。

 

 

泳ぎつかれた二人はテントのほうへと向かっていった。

その下にあったクーラーボックスからシンジが作った弁当を開いた。

ミサトの手にはビールがあった。

 

 

「ミサトさん、飲酒運転はダメですよ!」

 

「いいのよ、ネルフは超法規的な特務機関だから。」

 

 

ふと、またミサトのスマホに着信がかかった。

リツコのメールだ。

 

 

『飲酒運転も減給』

 

 

ミサトはためいきをつくとビールを戻した。

シンジの弁当をつまみながら、ミサトはふと考えた。

シンジの作る手料理はおいしい。

 

 

「おいしいわ。シンジくん。」

 

 

ミサトはそういった。

シンジはそれだけでおなかいっぱいになった。

 

 

 

 

「シンジ君、お嫁さんだったらすごい理想的よね。」

 

「ミサトさんも旦那さんだったらすごい理想的だとおもいます。」

 

 

二人はそれぞれの皮肉を確認すると、ゲラゲラと笑いあった。

 

 

「ね、シンジくん。」

 

「はい。」

 

「あなたがもしも、ほかの女の子が好きになったら黙って私のことは捨てていいのよ。」

 

 

シンジは震えて叫んだ。

 

 

「バカにしないでください!」

 

「いいえ、真剣に言ってるのよ。あなたに相応しい相手がどこかにいる。私は年齢がいきすぎてるでしょ。」

 

「ミサトさん!!」

 

「それにみて、この傷。」

 

 

ミサトは自分の腹部を指さした。

 

 

「こんな傷持った女、誰が欲しいの?あなたはきれいで優しくて穢れのない純真な少年なの。こんな傷持ちの穢れた女はふさわしくないわ。アスカやレイ、ヒカリちゃんのようなきれいで優しくて純粋な子たちがいっぱいいる。彼女たちこそあなたに相応しい。そうよ!奇麗なあなたを私で汚してしまったら…」

 

 

「いい加減にしてくださいっ!!!」

 

 

シンジは立ち上がり、ミサトに近づいた。

そして、黙ってミサトの唇に近づきキスをした。

ミサトは予想外の出来事にあっけにとられた。

シンジは素早くミサトの唇から離れると、背中を向けた。

 

 

「年齢がどうとか、傷がどうとか、そんなのは知らない。確かに傷もあるかもしれない。年齢も年上すぎるかもしれない。でもね・・・・どうでもいいよ。」

 

「シンジくん」

 

「そんなの知ったことじゃないよ!!!!」

 

 

シンジは泣いていた。

ミサトの言葉に傷ついたんだろう。

ミサトはシンジに近づいた。

 

「ごめんなさい、私…。」

 

「二度といわないでください。」

 

「ありがとう、シンジ君…。」

 

 

ミサトはシンジを後ろから優しく抱きしめた。

ふとテーブルに食べかけの弁当があるのに気が付いた。

 

 

「食べよ。」

 

「うん。」

 

 

二人はテーブルにつくと弁当を再び食べ始めた。

 

 

 

 

「僕、ミサトさんに褒められたくて料理はじめました。」

 

「え?」

 

「エヴァパイロットとしての自分じゃない居場所がほしくて…。だからミサトさんと暮らしてすごくよかったと思います。きっとあの時ミサトさんに引き取られなければ気っと早くエヴァをやめていた…そしたら世界は…。」

 

 

 

ミサトはそんなシンジをみて、優しく微笑んだ。

 

 

 

「ありがとう。私もシンジ君がここにいて本当に良かったと思うわ。だからね、シンジ君。もしもエヴァが必要じゃない世界が来たとしても…あなたは私のそばにいてね。」

 

「はい、絶対に。」

 

「ありがとう。」

 

 

ミサトはシンジを抱き寄せると、抱擁を交わした。

彼女の鍛え上げられた腕はシンジを包み込んだ。

シンジは顔を染め、赤くより赤く紅潮していった。

 

 

「ミサトさん、好きです。」

 

「あたしも、あなたが好き。」

 

 

シンジはミサトの『好き』という言葉を再確認できたことを心から嬉しく感じたのだった。

二人は浜辺にシートを引くと、地面に寝そべった。

青い空は広がっていった。

 

 

「僕はあの空のように、あなたのすべてを受け止めます。そして、あなたに相応しい男になってみせます。」

 

 

「もうなってるわよ。」

 

 

そんなやり取りをしながら二人は地面に寝そべった。

そしてそのままだらしなくいびきを立てながら昼寝をしてしまったのだった。

 

 

 

その後、二人は見事にくっきりと日焼けをしてしまった。

ミサトもシンジもその夜は背中に焼け付いた跡で苦しみそろって眠れなかったのであった。

あるいは、それだけではなくお互いの関係について何かしら発展するのではないかという期待もあったのかもしれない。

 

いずれにせよ、その夜二人の胸はお互いに高鳴りがとまることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




一応今回でこの作品は終わりますが、またいずれミサシン物をpixivかここであげますのでその時をお楽しみください。


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