ストライク・ザ・ブラッド 全てを統べる闇の吸血鬼 (SOLUNA)
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プロローグ
では、どうぞ。
ここは町の外れにあるとある古い屋敷。その屋敷から綺麗で幻想的な音色が聞こえてきた。その音色は聴けば聴くほど魅入られていくものがあった。その音色が聞こえてくるのは、その屋敷のビオラ製作室の中からだった。その一室の中で、一つのビオラを演奏している青年がいた。
彼の名前は「登雷牙」といった。父は巨大投資企業「D&P」の若社長を務めている登太牙、母は世界を股にかけて活躍する音楽評論家である「園田優里」を母に持っていた。だが、父である登太牙は実際は人間ではなく、13の魔族の頂点に立つと自負する種族で、謂わば吸血鬼伝説の元となったとされる種族で、圧倒的な力で他の魔族を淘汰してきたファンガイアでそのファンガイアの王「キング」でもあった。ファンガイアは以前人間を食料同然の存在として認知し、太牙もその一人だった。しかし今現在は父による人間との融和政策が進んでおり、人間のライフエナジー吸引に変わるエネルギー源の研究が進み、二人は仕事上海外に飛んだりと忙しいため、屋敷は雷牙の一人暮らしだった。いや正式には一人暮らしと言うよりは、ペットと言うよりは相棒と二人暮らしである。その雷牙はビオラを弾き終えた後、ビオラを置いて呟いた。
「ふう。一体どうやって渡叔父さんはあんないいバイオリンを作れたんだろう?」
「当たり前だろう。お前が尊敬している紅渡はあの有名な「ブラッディローズ」を作ったバイオリニストの紅音也を父に持っている。音楽の感性がずば抜けているのは当たり前だ。」
そういうのは、雷牙の周りを飛び回る黒い蝙蝠。だが実際は、キバットバット家の二代目を名乗るコウモリのモンスターである「キバットバット2世」だった。元は父である太牙とその母親である真夜に仕えていたが、今はまだ未熟な雷牙の傍にいて欲しいという太牙の依頼を受けて、現在は雷牙に仕えている。今では、幼少期から仕えていることもあり二人は相棒という関係になっている。
「そうだよな。俺なんかと比べれば凄まじいなまでの天地の差だしな。渡叔父さんは早い時期からバイオリン制作に携わっているからキャリアも段違いだし。俺はまだ駆け出し同然だもんな。いろんなことを学んで頑張らなきゃな。」
雷牙がそんなことを言っていると、突然
〈♪〜〉〈♪〜〉 〈♪〜〉
と音がなった。その発信源はビオラ制作室にあるガラスケースの中にある一本のビオラからだった。そのビオラの名前は「クリムゾン・スカイ」。紅渡が10歳の誕生日祝いに贈ってくれた渡の最高傑作の一つだった。その「クリムゾン・スカイ」は
「現れたようだな。」
「ああ。行こう。」
そういうと二人は制作室から飛び出し、玄関前に置いてあるバイク「マシンキバー」に飛び乗って屋敷から出ていった。
「ああ・・・。」
「随分と逃げ回ってくれたな。もう逃しはしないぞ。」
ここは町の都市部から外れた公園。その公園で一人の女の子が鳥類に似た異形の化け物を目の前にして腰抜かしていた。額には汗が浮かび一定時間追い回されていたようで汗が浮かんでいる。その化け物の正体はピーコックファンガイアだった。ファンガイアは先ほど述べた様に人間との共存がなっているが、いまだに人類を敵視し襲撃しているものも少なからず存在していた。このピーコックファンガイアもその一人だった。
「3代目キングの宥和政策でファンガイアは人間との共存を選んだ。だが、我々にとって食料同然の存在だった人間との共存はファンガイアの崇高な誇りを捨てるも同然だ。そんなことなど断じて認められない。だからこそ我々は人間と敵対し続ける!」
そう言ってピーコックファンガイアは女の子のライフエナジーを吸い取ろうと襲いかかろうとしたその時だった。公園内の入り口からけたたましいエンジン音が聞こえて来た。何事かとピーコックファンガイアが振り向くと、そのピーコックファンガイアに目掛けて一台のバイクがウィリー走行で体当たりして来たのだった。ピーコックファンガイアはいきなりのバイクの襲撃に吹き飛ばされた。そのバイクから降りて来たのはヘルメットを被った雷牙だった。
「あっ、あなたは・・・?」
「そこの君。ごめんね、しばらくの間おやすみ。」
バイクから降りて女の子に一声をかけると腹に一発当て身をして静かに寝てもらった。
「貴様何者だ?!なぜオレの邪魔する?」
「お前、宥和政策反対派のピーコックファンガイアだな?」
「な、何故俺のことを知っている?!まあいい、何者かは知らんが所詮獲物が増えただけだ。貴様を殺した後、あの女を食うとしよう。」
「ピーコックファンガイア。残念だがその望みは叶わない。」
「なんだと?」
「何故なら・・・、貴様の命は今終わるからだ。」
そう言って雷牙は右手の手袋を外し、ピーコックファンガイアに見せた。その右手に刻まれた紋章を見てピーコックファンガイアは驚愕した。
「そ、それは我がファンガイアのキングの紋章・・・!?ま、まさか貴様は・・・、4代目キング?!」
「そういうことだ。キバット2世!」
雷牙がそう呼ぶと、キバットバット2世が雷牙の傍に飛んで現れた。
「フッ。ありがたく思え、絶滅タイムだ!」
そして雷牙は手を上に掲げてキバット2世を掴み左手に噛ませた。するとキバット2世から魔皇力が注入され腰にダークキバットベルトが出現した。
「変身!!」
そう言って、前方にキバット2世を掲げた後、キバット2世をダークキバットベルトに止まらせた。すると徐々に雷牙の姿が変わり、雷牙は闇のキバの鎧を纏った仮面ライダーダークキバに変身したのだった。その姿を見たピーコックファンガイアは震え上がった。
「や、闇のキバ・・・!」
「相手がどういう存在かようやく気づいたようだな。だが、もう遅い。」
そう言って雷牙はあっという間にピーコックファンガイアの間合いに入りパンチで襲いかかった。
瞬く間に間合いに入られたピーコックファンガイアは腕を交差して防御しようとしたが、ダークキバのパワーの前には意味を成さず、ダークキバのパンチにあっという間に姿勢を崩された。
雷牙は間髪入れず吹き飛ばしたピーコックファンガイアを引き寄せ、今度は右脚で上半身に連続蹴りをお見舞いした。ダークキバのキック力は35tの威力を誇り、そのキックを連続で受けたピーコックファンガイアはたまったものではなかった。
「ぐぅぅぅぅぅぅ!」
ピーコックファンガイアは体の上半身にダークキバの連続蹴りをくらいボロボロの状態だった。このまま戦っていては確実に殺される。無駄死にはごめんだと判断したピーコックファンガイアは口から火を吐きダークキバの目眩しとして炎の壁を作った。
「無駄死にはごめんだ!ここで私はお暇とさせていただこう!!さらばだ、4代目キング!!」
そう言ってピーコックファンガイアはこの場から急いで離れようと翼を伸ばして飛び去ろうとした。だが、それを見逃すほど雷牙とキバット2世は甘くなかった。
「「言ったはずだ。お前の命は今ここで終わると。」」
そういうと、雷牙は足元から緑色のキバの紋章を出現させ、ピーコックファンガイアに向かわせた。その紋章の接近に気づいたピーコックファンガイアだったが、だが既に時遅しだった。
「こ、これは・・・?がっ、があああァァ!!!」
ピーコックファンガイアは紋章に捕まりその紋章が与えるダメージに完全に自分の動きを封じられた。すると、ダークキバが紋章に向かって手をこまねいたような仕草をした。すると、拘束されていたピーコックファンガイアがダークキバに引き寄せられた。そして目の前まで引き寄せると、ダークキバはそれを蹴り飛ばして紋章へ突き飛ばし、また引き寄せるとまた蹴り飛ばすと言ったような攻撃を繰り返した。そして、8回くらいそれを繰り返すと紋章に拘束したピーコックファンガイアに向かって近づき、
「さて、そろそろ審判の時だ。」
雷牙はダークキバットベルトのフエッスルホルダーからウェイクアップフエッスルを出し、キバット2世に吹かせた。
「ウェイクアップ2!!」
すると、公園が闇夜に包まれダークキバの右脚に赤い強力な魔皇力のエネルギーが充填されていく。そして充填され切った瞬間、紋章で動けなくなっているピーコックファンガイアに右脚の上段蹴りのライダーキックを放った。
「ぐわあああああああああああ!!!」
それをまともに食らったピーコックファンガイアは断末魔の叫びをあげながら魔皇力の破壊エネルギーで体を破壊されステンドガラス状に砕け散ったのだった。
「ふん。」
それを見届けた雷牙は変身を解除した。そして、そのままバイクに乗ってその場を去ろうとした雷牙にキバット2世が呼び止めた。
「雷牙。あの女の子はどうするんだ?」
「あ、すっかり忘れてた。」
そう言って雷牙は女の子の方へ向かっていったのだった。
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プロローグ2
そして、お久しぶりです。これから少しずつ投稿を再開していきたいと思います。
待望のプロローグ パート2です。
では、どうぞ!!
公園において宥和政策反対派のピーコックファンガイアを討伐した雷牙だったが、現在考え中だった。
「えーっと、マジでどうする?キバット2世?」
「私に振るな、馬鹿者。自分で考えろ」
「てなるよね…さて、どうするか。自分の家に連れ帰るのもいけないし、ここは手っ取り早く警察にでも相談するか」
雷牙がそんなことを考えていると、雷牙の後ろから
「テメエ!!一体何してやがる!?」
と怒って何故か男が殴り掛かって来る。見た目からして雷牙と歳は変わらないであろう青年だった。
「なっ?!ちょっと待って、いきなり何?」
雷牙も気づき、パンチを紙一重で躱した。
「ちょっとまて、あんた誰?!」
青年のパンチを腕をクロスして防いだが、それに懲りず男がまだ殴りかかってきた。
流石の雷牙もこのしつこさに頭にカチンときたので、
「人の話を聞かんか!!ボケ!」
パカーン!!
どこからともなく取り出したハリセンで男の頭を思い切りぶっ叩いた。
「へぶっ!!」
ハリセンが脳天を直撃し、男は見事にひれ伏した。
「まったくしつこいったらありゃしない。…って、あれ?おい大丈夫?」
雷牙がよく見てみると、男は雷牙のハリセンで見事に伸びていた。
「馬鹿者が、強く叩きすぎだ」
「おーい!大丈夫かー?おーい!」
声を掛けながら男の頬をペチペチと叩きながら起こそうとするが、男は一向に起きる気配を見せなかった。
「おいおい冗談だろ?本当に気絶してやがる。どうする?キバット2世?」
「馬鹿者!だがら俺に聞くな。お前で何とかしろ。」
「いや、何とかしろって言われてもな…」
結局雷牙はマシンキバーに急遽サイドカーを出現・増設して、男と少女をサイドカーに乗せて公園を出ることになった。
雷牙は公園を出る前に所持品などを確認して、二人の身元や住所を確認した。二人の身分証明書などに書かれていた二人の住所の近くまで運んだところで二人が目を覚ました。
それから、俺の説明と襲われていた少女の証言により誤解は解けることとなった。男の方は雷牙のハリセンのダメージが残っていたのか少しフラフラだった。
雷牙は自分に襲いかかってきた男「暁古城」がファンガイアに襲われていた少女「暁凪沙」の兄だったことを再確認した。スーパーに寄ってくるといって暁凪沙が帰ってこないのを心配して捜してたら公園で寝ていた凪沙を発見し傍にいた雷牙を襲った奴と勘違いしていたようだった。襲ってきた怪物については自分がダークキバとして処分したということを言うのは不味かったので、少女の方には自分が何とか追っ払ったと誤魔化すことにしたのだった。
公園での一件を終えて、自宅に帰宅すると玄関に一台のバイクが止まっていたのに雷牙は気づいた。そのバイクが自分の父のものであることに気づくのは時間は掛からなかった。家に入りリビングに行くと父である登太牙がコーヒーを飲んでいた。
「おお雷牙。おかえり」
「ただいま。父さん。仕事の調子はどうだい?」
「まあ、悪くはないかな。また人間とファンガイアとの共同プロジェクトが立ち上がってな。忙しくなるのはこれからだ」
「そうか。母さんは?やっぱり海外の音楽活動は大変かな?」
「まあ、そうだろうな。メールで『結構スケジュールがパンクになるかも!!』って嘆いてたから」
「ハハッ。でもいいんじゃないかな。好きなだけ音楽といれるんだから。やり過ぎには注意して欲しいけど、たまには帰ってきて欲しいな」
「確かにね」
「そうだ、父さん。さっきメールで伝えてきた用件ってどんな用件なの?」
「ああ、それなんだが…雷牙、明後日から私立彩海学園に編入してもらうことになったからそのことを伝えにきたんだ。」
「あっ、なるほど。そう言うことね……
って、はああああああああああ?!」
雷牙は家全体が震えるほどの驚愕の声を上げた。
「うるさいぞ、雷牙。近所迷惑だろう?まあ、ほとんどここ近辺は家はないがな」
「ちょっと待て、父さん。私立彩海学園って中高一貫校だよ。途中編入とか問題ないのか、父さん?」
「お前だったら特段問題ないだろう。嶋や黒沢の教育で勉学もスポーツもかなり腕は立っているだろう」
太牙は笑って雷牙にそう告げた。
「分かった、父さん。学校へ編入する事は分かった。でも、急すぎない?明後日からでしょ?」
「すまんな。プロジェクトに頭が行きすぎて、すっかり頭から抜け落ちていてな。そして、今日思い出したんだ。」
「ふざけんなーーーー!」
雷牙の叫び声がまたしても夜の雷牙の自宅で響いた。
そして場面は変わって、明後日の彩海学園高等部1年B組教室。
その1年B組の教室は
朝のSHRの時間になり、担任の南宮 那月が教室に入ってきた。
「諸君、ご機嫌よう。見たところ全員元気そうだな。ではSHRに入る前に転校生を紹介するぞ。」
「ちなみに男子が聞きたそうだからあらかじめ性別を言っておくが、可愛い子だったら良かったと思うが、残念ながら男だ。」
『『『『『まあ、そうですよねー…現実はそう甘くない。』』』』』
男子はなんとなく予想していたため、落胆はしたものの大きくショックを受けた様子はなかった。
一方の女子は、どんな男子の転校生なのか少しばかり期待をしていた。
「さて、では入ってこい」
そうして扉から入ってきたのは、黒髪で緑色の瞳を持った男子だった。
「あ・・・!」
その人物を見たとき、古城は立ち上がった。
「暁古城、また会ったね」
そう雷牙は笑って言った。
「まさか、転入生がお前だったとはな…」
「予想外だった?」
雷牙は自己紹介の後、教室のやや後ろの方面の座席に座ることになった。そして一限目の授業が終わった後、すぐに古城から雷牙に話しかけてきた。
「そりゃあ、そうだろ。お前が転入してくるって予想出来たら俺は預言者かなんかだって話になるよ」
「ハハッ、面白いかも。そういえば凪沙ちゃんは元気?」
「ああ、元気だよ。いつも通りって感じ」
そんな古城と雷牙の当たり障りのないやり取りをしていると、ヘッドホンを首からかけた茶髪の男子と校則ギリギリの金髪と崩した制服を着ている女子が悠たちに話しかける。
「古城、お前随分と雷牙と仲良くしてんなぁ」
「あんたが転入生とそんな当たり触りのない会話してるの珍しいからね」
「ああ、まあな…」
二人は古城に話していく中、雷牙の方が二人に話しかけた。
「あれ?確かそっちの女の子の方は藍羽 浅葱さんだったよね?」
「ええ、そうよ」
「そして、そっちの男子の方が、矢瀬…何だっけ?」
「基樹だよ!矢瀬 基樹!そこの古城とはダチの関係なんだ。」
「じゃあ改めて、アタシは藍羽 浅葱。同じくそこの古城の連れよ。にしても古城あんたホントいつ雷牙と仲良くなったのよ。転校してきてすぐに雷牙に話しかけた時はすごく驚いたわよ。」
「ああ、それはな…」
古城が説明しようとすると、
「端的に言うと、ちょっと凪沙ちゃん絡みで誤解を受けちゃってね、暁が殴りかかって来たんだけど、ちょっとしつこかったからハリセンで思いっきりパカーンって古城の頭をひっぱたいたら、古城がばたんきゅうしたって所かな」
「ははは、なんだそりゃ、詳しく聞かせてくれ」
「あたしもちょっとアタシも聞きたい」
「だったら、実演してあげてもいいよ」
「え?ちょっと待て、雷牙お前嘘だろ?!」
どこからともなくハリセンを取り出した雷牙は、ニコニコ満面の笑みを浮かべながら、古城の頭上にめがけて思いっきりハリセンを振りぬいた。
パカーン!!
「イッターーーーー!!」
その音の後には、足踏みしながら頭を抱えてものすごく痛がっている古城の姿があった。
「「なんだ今の音?すっげーいい音だった」」
「「古城君があんな感じでハリセンで叩かれることってある?」」
そんな形で雷牙の転校初日が過ぎていったのだった…
今回はここまでです。
次回から本編に入っていく予定です。
やる気のもとになるので、お気に入り登録と評価付与よろしくお願いいたします。
感想などもぜひよろしくお願いいたします。
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第一話
これから少しずつまた投稿していくつもりです。
みなさん本当に大変お待たせいたしました。半年を過ぎて8ヶ月ぶりの投稿になります。
「ストライク・ザ・ブラッド 全てを統べる闇の吸血鬼」の第一話投稿です。
かなり原作とは展開が異なっています。
では、どうぞ。
数日が経ち雷牙も彩海学園にあらかた慣れ、今日もファンガイアという名の吸血鬼と人間のハーフである彼の朝のルーティーンが始まるのだった。
「ふああ…ねーむ。よっこいしょっと…」
ベッドから起き出すと、一階に降りると使用人の数名が雷牙を待っていた。
「雷牙様、おはようございます」
「おはよう。あれ?もしかして朝ごはんはもう作ってある感じかな?」
「はい」
「自分で作るから、わざわざ作らなくても良かったのに」
「いえいえ、バイオリンの作業に早く行きたい雷牙様の手を煩わせるわけにもいきません。それに雷牙様の体調を崩させるわけにもいかないので。」
「ふふ。バレバレだった?」
「はい。今日は魚類と緑黄色野菜を主に使った朝食になっています」
「わかった。着替えが終わったら朝食にしよう」
そう答えて、3分後着替え終わった雷牙はダイニングルームにて使用人たちが作った料理を食べて、バイオリンの作業室に入るのだった。
《♬〜》《♫〜》《♬〜》
「うーん。やっぱり合ってないな、表板の方は慎重に削り出しをしたはずだったんだがな…」
雷牙は作業室にて制作を終えたバイオリンの調律を行っていた。
バイオリンの修理と制作において雷牙は特に表板を大切にしていた。表板には一般的にはスプルース材が使用され、軽いのに強度が高く、程良い柔らかさを持っているため、音色に一番大切な振動板となる。外観は細くて平行にまっすぐ通った木目が良質とされており、木目の間隔が狭く綺麗なものが音色に影響する。表板は、均一な振動させるため左右対象の二枚板を張り合わせて作られ、同時に表板には振動がスムーズに伝わりよく響くように「f字孔」という左右対称の穴があけられている。
バイオリンの表板の削り出しは通常は中央付近で厚く、周辺に向かって薄くなっていき、縁でまた急激に厚くなるように削らなければならないが、今回雷牙が加工したスプルース材は、中央付近を少し薄く削り出しをしてしまったせいでやや音が弱くなり迫力が落ちていたのだった。
「渡叔父さんが作ってくれたクリムゾン・スカイの様なバイオリンを作るにはまだまだ修練が必要かな」
そう雷牙が呟いた直後だった。コンコンと作業室のドアをノックする音が聞こえた。
「雷牙様。入ります」
そういって使用人の一人が作業室に入ってきた。
「どうしたの?」
「真さんからお届け物です」
そう言うと使用人は一つの封筒を雷牙に手渡した。
「真さんから?
そう言うと雷牙は封筒を開けた。中には数枚の書類と写真が入っていた。
「・・・っ!これは・・・!」
「雷牙様。一体何が書かれているのですか?」
「遂に動き出したか、獅子王機関?少し面倒くさいことになるかもね」
その書類には「獅子王機関による第四真祖・暁古城の監視について」と書かれていた。
そして、数日後。
絃神島魔族特区の道路を一台のバイクが走っていた。そのバイクには雷牙と友人の暁古城が乗っていた。授業が終わった後、遊びの待ち合わせのためにファミレスに向かっていた。
「雷牙、お前バイク持ってんのやっぱ羨ましいな。免許っていつ撮ったんだ?」
「そうか?免許の方は早い段階でとったよ」
雷牙と古城はそんなことを言いながらファミレスに到着し、席を見渡す。どうやら少し早く着いたようだったので、席を確保して数分待っていると、
「あっ。古城!遅くなった!」
「雷牙もいるじゃん」
そう雷牙と古城に声をかけてきたのは藍羽浅葱と矢瀬基樹だ。
「なんか珍しいな。古城が俺たちを待っているなんて…」
「まあ、それは隣にいる雷牙の影響が大きいと考えるんだけどね…」
「なるほど。確かに雷牙だったらいつも10分以上前に待ち合わせ場所にいるような性格だもんな。でも何で雷牙が一緒に居るんだ?」
そう基樹が雷牙を見て聞くと、それに古城が答えた。
「雷牙が俺の勉強を手伝ってくれるって言うからさ。それに幾つかの教科のレポートも見せてくれるって言うからさ。雷牙滅茶苦茶頭良いし」
「まあ彩海学園全体でほぼトップだもんな。そりゃ古城が手を借りたくなるわけか…」
「ていうか、雷牙ってどうやって勉強してるの?」
と、今度は浅葱が雷牙に聞くと、
「まあ優秀な家庭教師がいてね。その人から全てを叩き込まれたからかな」
と雷牙は答え、ドリンクを飲んで古城専用の授業ノートを作成した。
「つーか、なんで俺は夏休みにクラスメイトと大量の課題と睨めっこしなきゃいけないんだ…」
「どっかの誰かさんが学校トンズラしてばっかりだからでしょ」
「何より那月ちゃんに感謝しろよ〜。特別補習の参加で留年回避できてんだからさ」
「ああ、分かってるよ…」
二人に正論を述べられ、ぐうの音も出ない古城。その古城達が話しているうちに、雷牙が古城用の授業解説ノートを作り終えて古城に渡した。
「古城、ノート作ったよ。これを見れば課題は大体わかるはずだよ。」
古城は雷牙からノート受け取って早速と読んだ。
「ハア〜。助かる、雷牙。これだったら分かりやすい。課題が解ける。」
「へえ、そこまで分かりやすいのか?」
「ちょっと見せて、古城。」
そう言われて古城はノートを二人に見せた。それを見た二人は、
「分かりやすいな!!これだったらこのバカ古城でも分かるな。」
「さすがは学園トップだわ。」
「それほどでもないよ。さて自分達と古城の課題をさっさと終わらせよう。」
「「「「おう。」」」
そう言って、4人は課題にそれぞれ取り組み、ところどころ雷牙がフォローすることになった。
その最中、ファミレスにギターケースを背負った女の子が席に座って古城達を遠目に見ているのを雷牙は見逃さなかった。
そして課題に取り組むこと4時間、古城と自分達の課題が片付いたのだった。
「はあ〜、終わった。雷牙、ありがとう。ところどころ助かったわ。それじゃ、私そろそろバイトあるから先に抜けるね」
「そうなんだ。バイト頑張ってね」
「俺の方も片付いたわ。ありがとう、雷牙。じゃあ俺も帰るわ」
「そうか、じゃあ雷牙。行くか」
「ああ。はいヘルメット。忘れ物はない?」
「大丈夫だ。じゃあ行こう!」
そう言って二人と別れた後、雷牙と古城はバイクでファミレスを出た。そして二人は帰路についていたのだが、ふと雷牙が古城に話しかけた。
「古城。お前気づいた?」
「何が?」
「俺たちがファミレスで課題やっている最中に、女の子が入ってきてたの分かった?」
「え?女の子?」
「ああ、ギターケースを背負っている子ね」
「いや、課題やってたから全然気づかなかった。それがどうかしたのか?」
「その女の子、俺たちが課題やっている最中遠くからずっとお前のことを見てたんだよ」
「え?俺を?」
「ああ。しかも今タクシーに乗って俺たちについて来てる。バイクのバックミラー見てみろ」
「え?!」
そう言われて古城はバックミラーを見てみた。すると、雷牙の言う通りギターケースを乗せた女の子がタクシーに乗って自分達をつけて来ていた。
「本当だ!」
「古城の知り合い?」
「いいや、あんな知り合いなんていないぞ…」
「でもさ、女の子の服装、どうやら彩海学園の制服だったんだ。本当に知らない?」
「ああ。全然知らねえぞ…」
「もしかしたら、凪沙ちゃんの知り合いじゃない?」
「いいや、凪沙の知り合いでもあんな女の子はいなかったぞ」
「そっか。どうする、古城?」
「雷牙、適当に撒けそうか?」
「まあ、撒けるっちゃ撒けるけど。ちょっと様子見でショッピングモールに入ってみよう。古城はゲーセンに入って、俺は近くの店に寄るフリをして俺がちょっと声をかけてみるよ。」
「そうか、分かった。その手で行こう。」
そう二人は決めると、ゲーセンに向かっていった。
(さーて、どんな反応をするかな。
雷牙はそう心の中で呟いた。
雷牙SIDE
とりあえずショッピングモールに入って、雷牙達はストーカーしてくる女の子の様子を見ることにした。
「でも雷牙の言う通り、本当に
「ほらな。本当に知らない?」
「ああ、凪沙のクラスに何回か行ったことがあるけど、あんな子は見たことがねえぞ」
「古城、もしかしたらあの子転校生なのかも」
「なるほど!その線があったか!確かに転校生だったら俺が知らないのも訳無えはずだ」
「よーし。じゃあ俺はゲーセンに入る」
「俺は近くの店によるふりをして彼女に声をかけてみる」
「分かった。頼む」
自動ドアをくぐり、古城はゲーセンへと入っていった。
俺は近くの店に入り10分ほど時間を潰して、ゲーセンから少し離れたところで様子をうかがうと、例の女の子はゲーセンに入るか迷っているようで、中の様子をガラス越しに覗き見していた。
(さて、じゃあ仕掛けるか…)
そして、俺は女の子の後ろから声をかける。
「ねえ、こんなところで何しているの?」
女の子は後ろから声をかけられて、驚いて振り返った。
「は、はい。何ですか?」
「ああ、いやいや。驚かすつもりはなかったんだけどさ。ごめんね。君さ、ずーっと俺たちの事ファミレスから尾けて来てたよね?」
「えっ?!」
「俺は気づいてたよ?俺たちがファミレスで課題やっている最中に入って来てとおめえ俺たちのこと見てたからさ。それにタクシーまで乗ってついて来てたから気になって。」
「気づいていたんですか?」
「うん。そんなに古城に用があるんだったら僕が声かけてこようか?」
「あっ、ちょっと…」
女の子が止める間も無く、雷牙はゲーセンに入っていった。
「古城」
「雷牙、どうだった?」
「やっぱりお前に用があるらしいよ。それに彼女ちょっとお前と話がしたいんだって。」
「そうなのか。じゃあ話はしてみるか?」
そう言って二人はゲーセンから出てみると、女の子の方へ向かった。そして、古城の方から彼女に話しかけた。
「悪いな。少し待たせちまった」
「あ、そうそう。はじめに伝えておくんだけど、この女の子
「え!!!???」
そう俺が古城にいうと、女の子は驚愕の表情を雷牙に向けた。それもそのはずだろう。
(さて、どうでるかな?姫柊雪菜ちゃん?)
俺は後ろの女の子を振り返り、少女の返答を待つのだった。
皆さんにはまだ詳細な設定を報告する事はできませんが、一応伝えておくと、オリジナル主人公である登雷牙のヒロインはラ・フォリアと叶瀬夏音の二人が決定しています。活動報告でもお伝えするつもりですが、今回小説を読んでくださった読者の方々に限定でお伝えしておきます。「この人を追加してほしい」という様なリクエストは全てにお答えできない可能性がありますが、受け付けております。リクエストお待ちしています。
やる気のもとになるので、お気に入り登録と評価付与よろしくお願いいたします。
感想などもお待ちしていますので、ぜひよろしくお願いいたします。
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