告白の手伝いを断る? (おたふみ)
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前編

雪乃「比企谷君、どういうことか説明してくれるかしら?」

 

結衣「そうだよ、ヒッキー」

 

葉山「雪ノ下さんと結衣は受けてくれると言っているぞ」

 

戸部「ヒキタニくん、お願いしゃす」

 

八幡「まず、俺には成功のビジョンが見えない。それに俺は恋愛経験がほぼゼロだ。フラレた経験しかない」

 

結衣「あ、ごめん」

 

八幡「そんな俺がなにか出来ると思うか?」

 

結衣「それは…」

 

八幡「それに、他人の色恋に口出しすると、ロクなことにならん」

 

雪乃「いいわ、貴方はこの依頼から外れて結構よ」

 

八幡「葉山、戸部、力になれなくて悪いな。…って、受けるのかよ!」

 

結衣「こういうのって、なんか素敵じゃん」

 

雪乃「方針は後日話し合いましょう」

 

八幡「おいおい…」

 

葉山「じゃあ、頼んだよ」

 

葉山と戸部が部室を出る。

 

結衣「ねぇ、ヒッキー…」

 

八幡「雪ノ下、由比ヶ浜、悪いな。俺には無理だ」

 

雪乃「もう貴方はいいわ。私達だけでやってみるわ」

 

しばらくすると、告白される側の海老名姫菜が奉仕部にやってきた。BLの話を散々したあとに。

 

姫菜「美味しいの期待しているね」

 

と言って部室を去っていった。

 

八幡「やっぱり、この依頼を受けるのやめてくれないか?」

 

結衣「ヒッキー、何言ってるの?」

 

雪乃「そうよ。もう受けてしまったわ」

 

八幡「いや、失敗すると思うんだが…」

 

結衣「大丈夫だよ。私が全力でフォローするから」

 

雪乃「期待しているわ、由比ヶ浜さん」

 

八幡「はぁ、わかったよ。その代わり、覚悟だけはしておけよ」

 

二人はその言葉の意味がわからなかった。

 

 

修学旅行中、めぼしい成果もなく告白の時となる。

 

葉山は直前に比企谷に相談した時に『戸部の告白は阻止してやる。その代わり、グループは崩壊するから覚悟しておけ』と言われていた。

戸部が薄暗い竹林の中で、海老名の到着を待っている。見えないところに葉山・大岡・大和、少し離れて雪ノ下・由比ヶ浜が隠れている。

 

時間になり、海老名が到着した。

 

姫菜「何、戸部っち。私、用事があるから手短にしてね」

 

戸部「え、海老名さん!お、俺と…」

 

すると、戸部の後ろから人影が。

 

??「悪いヒメ。遅くなった」

 

姫菜「大丈夫だよ。ハチ」

 

一同驚愕する。人影は、髪を整え眼鏡をかけた比企谷八幡だった。

 

海老名は眼鏡を外し、比企谷に駆け寄る。

 

八幡「悪いな戸部。ヒメは俺の彼女なんだ」

 

戸部「う、嘘でしょ…」

 

姫菜「ゴメンね、戸部っち。私達、一年の頃から付き合ってたんだ。知ってるのは優美子だけ。優美子に相談してくれたら、こんなことにはならなかったのに」

 

八幡「葉山、それに雪ノ下に由比ヶ浜、居るんだろ。こういうことだ。だから断ったんだよ」

 

葉山「どういうことだ比企谷」

 

雪乃「私達を騙していたの?」

 

結衣「そうだよ。恋愛経験ゼロって」

 

八幡「黙っていたのは悪かった。恋愛経験は『ほぼゼロ』な。ヒメは唯一の成功例で、ヒメから告白されたからな」

 

姫菜「恥ずかしいよ」

 

八幡「詳しい話は学校で話す。俺たちは今から修学旅行デートなんでな」

 

姫菜「ばいば~い」

 

呆然とする面々を残し、二人は去っていった。

 

帰りの新幹線の中は異様だった。八幡の肩に頭をのせて嬉しそうな姫菜、呆然と見つめる葉山·戸部·由比ヶ浜、何食わぬ顔で姫菜にお菓子を進める三浦、呪詛のように『リア充爆発しろ』と繰り返し言っている平塚…。

 

 

 







 
続きます。


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後編

修学旅行後、最初の登校日。朝から教室で比企谷と海老名はイチャついていた。格好は修学旅行最終日の夜と同じく八幡はセットされた髪に眼鏡、海老名は眼鏡を外していた。昼は八幡のベストプレイスで姫菜の手作り弁当を二人で食べていた。

 

そして、放課後。奉仕部の部室には、奉仕部の3人、海老名、戸部、葉山、そして三浦が居た。

 

雪乃「さぁ、説明してもらいましょうか」

 

八幡「説明も何も、俺とヒメは付き合ってんだよ」

 

結衣「な、なんで、黙ってたの?」

 

八幡「俺みたいな陰キャと付き合ってるなんてヒメに迷惑かかるだろ」

 

姫菜「私は気にしないって言ったんだけどね」

 

葉山「優美子は知ってたのか?」

 

三浦「あーしは知ってたし。海老名に男紹介しようとしてね、その時に。あの時の海老名は怖かった」

 

姫菜「だって、ハチがいるんだもん」

 

結衣「その『ハチ』と『ヒメ』って呼び方は?」

 

八幡「俺は嫌だって言ったんだけどな」

 

姫菜「え~、『ヒメ』って呼び方にしたのハチじゃん」

 

八幡「だって、『ヒナ』じゃつまらないって言うから…」

 

姫菜「でも、ベッドの上では『姫菜』呼びだよね」

 

雪乃「えっ!」

結衣「えっ!」

葉山「えっ!」

戸部「えっ!」

三浦「えっ!」

 

八幡「いや、誤解を招く言い方やめてね。ベッドに腰掛けてキスした時の話だよね?」

 

姫菜「あ、キスは言っちゃうんだ」

 

八幡「うぅ!」

 

雪乃「コホン。ま、まぁ、比企谷君と海老名さんが交際しているのはわかったわ」

 

結衣「ゆきのん、大丈夫?」

 

雪乃「え、ええ、大丈夫よ。動揺なんかしてないわ」

 

姫菜(動揺してるよね)

 

雪乃「今までの依頼で、貴方たちのグループ絡みもあったけど、とても交際しているようには思えないんだけど…」

 

結衣「そうだよね。テニスの時は優美子が…」

 

三浦「ん?あれはヒキオが奉仕部ばっかりかまってたから、海老名が心配しててね。それでやった」

 

姫菜「まぁ、格好いいハチと雪ノ下さんや結衣や優美子のテニスウェア見て鼻の下伸ばしてるハチを両方見たからね」

 

八幡「仕方ないだろ、俺だって男子高校生なんだから。まぁ、後でヒメもテニスウェア着てくれたから、眼福だったんだけどな」

 

結衣「じゃ、じゃあ、チェーンメールは?」

 

姫菜「あれがグループから一歩引いた原因なんだけどね」

 

八幡「葉山、お前はグループの調和を求めて犯人探しをしなかった。そうだな?」

 

葉山「あぁ、そうだ」

 

八幡「あんな内容のチェーンメールで、名前が出てる連中の中に自分の彼女が居たら、どうおもう?」

 

葉山「そ、それは…」

 

八幡「まあ、犯人の目星は着けたし、必要以上に男子と関わるなとヒメにも言ったからな」

 

姫菜「林間学校のサポートだって、行ったらハチが来てたからビックリしたよ。ハチが来るって知ってたら、私もビキニにしたのに」

 

八幡「だから、プール行って埋め合わせしただろう」

 

姫菜「結衣と花火大会に二人で行くし…」

 

八幡「ほじくり返すなよ、謝っただろ?あれは小町の陰謀だ」

 

姫菜「それに、授業中寝てるから文実委員にされるし」

 

八幡「だから、悪かった」

 

姫菜「本当は、ハチを主役にしたかったんだからね」

 

葉山「じゃあ、あの配役は…」

 

姫菜「本気だったよ、BL抜きで。それに文化祭が終わったら、ハチは悪評だらけだし…」

 

八幡「あれが一番効率が良かったんだよ」

 

姫菜「それに、今回の件だって何かしようとしたでしょ?」

 

八幡「うっ!…まぁ、なんだ、アレがこれで…」

 

雪乃「それはどういうことなのかしら?」

 

姫菜「ん?隼人君に頼んで、戸部っちの告白を止めてほしかったんだ。無理ならグループ抜けようと思ってたんだ。そしたら、奉仕部に戸部っちの依頼だけしたから」

 

雪乃「葉山君、どういうことなのかしら?」

 

葉山「俺には…出来ないが…奉仕部なら…比企谷なら、なんとかしてくれるんじゃないかと…」

 

雪乃「しかも、伝えた依頼は戸部君からだけ…。どうしようもないわね」

 

姫菜「それで、葉山君と戸部っちが奉仕部に来たから、ハチに上手くやらないと『男子同士仲良くさせるよ』って」

 

八幡「それで、今回のカミングアウトになったんだ。危うくBLのネタにされるとこだった…」

 

結衣「これからどうするの?」

 

姫菜「私はグループ抜けるよ。隼人君達は信用出来ないから」

 

葉山「待ってくれ姫菜!もう一度チャンスを…」

 

姫菜「チャンスは与えたんだけどね。もう無理だよ」

 

八幡「俺も奉仕部辞めるかな。元々、孤独ではなかったし」

 

雪乃「そう…」

 

姫菜「そういう訳で、解散しようか」

 

雪乃「ちょっと待って!」

 

八幡「どうかしたか、雪ノ下?」

 

雪乃「比企谷君と由比ヶ浜さんで3人で話をさせてくれないかしら?」

 

姫菜「うん、いいよ。優美子、私達も少し話そうか」

 

三浦「そうだね」

 

ガラガラピシャ

 

八幡「んで、なんだ?」

 

雪乃「比企谷君」

 

八幡「おう」

 

雪乃「貴方が好きです」

 

八幡「はい?」

 

雪乃「さ、由比ヶ浜さん」

 

結衣「ふぇ!わ、私も?」

 

雪乃「ここで言わないと後悔するわよ」

 

結衣「そうだよね、うん。私もヒッキーが好きです」

 

八幡「そ、それは…」

 

雪乃「嘘偽りない私達の気持ちよ」

 

結衣「うん」

 

八幡「お前ら…。二人とも、ありがとう。でも、すまない。俺にはヒメが居るからな。ヒメは俺が一人で居た時に声をかけてくれたんだ。俺のことを肯定してくれて、共感してくれた。暗い世界に一人でいる俺を明るい世界に引きずり出してくれたんだ。俺はこれからも、そうしてくれたヒメと居たいんだ」

 

雪乃「そう…。わかっていたけど、フラれるって思った以上に辛いわね」

 

結衣「うん…」

 

雪乃「でも、これでケジメがついたわ。比企谷君、退部を認めるわ」

 

八幡「ありがとな、二人とも。今まで楽しかった」

 

結衣「うん、ありがとうヒッキー。私も楽しかったよ」

 

雪乃「私も楽しかったわ」

 

八幡「じゃあな」

 

結衣「バイバイ、ヒッキー」

 

雪乃「さようなら、比企谷君」

 

 

数日後、放課後の奉仕部

 

雪乃「…」

 

結衣「…本当にヒッキー来ないんだね」

 

雪乃「そうね…」

 

結衣「…」

 

雪乃「…」

 

コンコンコン

 

雪乃「どうぞ」

 

姫菜「はろはろ~」

 

結衣「姫菜、どうしたの?」

 

雪乃「依頼?なにかしら?」

 

姫菜「それはね…。ほら、入って」

 

八幡「…うっす」

 

雪乃「比企谷君!」

結衣「ヒッキー!」

 

姫菜「ハチと私の孤独体質の改善をお願いしたいんだ」

 

雪乃「二人はお付き合いをしていて、孤独体質ではないと思うのだけど?」

 

結衣「それに姫菜は私達と一緒のグループだったし」

 

姫菜「ハチはこの通りだし、私もあのグループでは表面的な付き合いをしていただけだから。それにハチにとっては二人は大事な人だから。ね?」

 

八幡「お、おう…」

 

姫菜「そういうわけなんだけど、ダメ‥かな?」

 

結衣「ゆきのん…」

 

雪乃「…」

 

八幡「ヒメ。無理だって言っただろ?」

 

雪乃「海老名さん、その依頼受けるわ」

 

八幡「おいおい、いいのかよ…」

 

姫菜「ありがとう」

 

雪乃「その変わり…」

 

姫菜「?」

 

雪乃「比企谷君を奪っても文句はなしね」

 

姫菜「なっ!!」

 

結衣「わ、私も!!」

 

姫菜「結衣まで!」

 

雪乃「あら?海老名さんは自信がないのかしら?」

 

姫菜「言ったね。絶対に渡さないからね」

 

雪乃「ふふふっ」

結衣「ふふふっ」

姫菜「ふふふっ」

 

 

 

 

 

八幡「俺は静かに暮らしたい…」

 

 

 

 

 






時間がかかって、すいません。
落ちがイマイチな感じですが、完結です。


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