程度の能力を貰って転生したのでそれを活かす為にトレーナーになる (鏡餅丸)
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1番

動川(どうかわ)(ゆずる)様。本日は部下のミスでお亡くなりになりました、誠に申し訳ありません』

 

 俺は気が付くと椅子に座り机の上には、そう書かれたノートパソコンがあり。

 

 それ以外の周りを見ると、何処にも物はなく何もない真っ白な空間。

 

 立って詳しく見ようとしたが、足に力が入らない。

 

 何か自分に異常があるのかと思い、自分の体を確認したが異常は何もなかった。

 

「体に変わった事もない、と言うより手や視界から察するに、人間は止めていない事は分かってるが」

 

 でもこの椅子から立とうとすると、足に力が入らない。

 

「変な夢だが、仕方ない今出来る事を探ってみよう」

 

 それから色々と試してみた結果。

 

 どうやら椅子から立とうしたり、椅子を動かそうとすると力が抜ける事が分かった。

 

「まあ、椅子を動かそうにもキャスターが付いていないから、ここから動きようもないな」

 

 だとするなら残るは、このノートパソコンを操作する事だけか。

 

「そう言えばパソコンになんか、不穏な事が書かれていたような気がしたが」

 

 改めてパソコンの画面を見る。

 

『動川穫様。本日は部下のミスでお亡くなりになりました、誠に申し訳ありません』

 

 ここに書いてある通りなら、俺はどうやら死んだらしい。

 

 と言うか何時死んだんだ? 思い出せないぞ。

 

 いやそれ以前これ、どこかの某転生小説みたいだな。

 

 まあ説明してくれるのが神様ではなく、ノートパソコンの画面である事を除けば。

 

 そう考えて見ていると、説明文の下に「次へ」と言うアイコンがあった。

 

「とりあえず、このパソコンを操作して見るか」

 

 ノートパソコンの右側にあるマウスを使い、矢印を動かし「次へ」のアイコンをクリックする。

 

『ですので動川穫様には、特別処置として記憶を持ったまま別の世界に転生してもらいます』

 

 本当に某転生小説みたいな。

 

 だが自分が死んだ事にすら半信半疑であるが、今の状況や奇怪な現象を体験したのだから信じるしかない。

 

 そう思いながら「次へ」のアイコンをクリックする。

 

『それに伴い動川穫様には、お手数ですが幾つか質問にお答えください』

 

 説明文の下に「質問」のアイコンが現れたので、そこをクリックした。

 

『名字または名前は変更しますか?』

 

 説明文の下に「はい」と「いいえ」のアイコンが現れた。

 

 ここは「いいえ」をクリックする。

 

『転生時の歳は何歳にしますか? (二十歳以上には出来ません)』

 

 説明文の下に四角い枠に二十と書かれて、その下には「次へ」のアイコンがあった。

 

 若い頃から転生出来るのは有難いが、どの位若返ればいいのか悩むな。

 

 とりあえず四角い枠の数字を十五にし、「次へ」のアイコンをクリックする。

 

 何故十五歳にしたかと言うと、生前の歳を半分にしたら丁度十五歳だからだ。

 

『転生する時(誕生日)は何時にしますか?』

 

 誕生日かまずどの世界に転生するのか分からないし、とりあえず元旦が終わっている頃にしよう。

 

 一月四日と説明部の下に在る四角い枠に、矢印を合わせクリックしカーソル出し入力した。

 

 そしてその下にある「次へ」のアイコンをクリックする。

 

『家は要りますか?』

 

 説明文の下に「いる」と「いらない」のアイコンが現れる。

 

 当然「いる」をクリックした。

 

『容姿を変えますか?』

 

 説明文の下に「はい」と「いいえ」のアイコンが現れる。

 

 容姿か・・・・よし、変えよう。

 

 矢印で「はい」をクリックをする。

 

『どの様な容姿にしますか?』

 

 説明文の下に何も書かれていない、四角い枠が現れた。

 

 どんな容姿にしようか、色々と悩むな。

 

 ・・・・・・折角だし、あのキャラクターがいいな。

 

 何か書かれてない四角い枠にカーソルを出し、「ロクでなし魔術講師と禁忌教典のグレン=レーダス」と入力して「次へ」のアイコンをクリックする。

 

『最後の質問です。特別な能力または才能はありますか?』

 

 説明文の下に「はい」と「いいえ」のアイコンが現れる。

 

 これは転生小説でよくある、神様がチートが貰える展開と同じだ。

 

 ならここは当然「はい」をクリックする。

 

『では動川穫様には今から、ゲームをしてもらいます。内容はポーカーです』

 

 あ、そこはタダでは貰えないのか。

 

『初期ポイントは千ポイント。時間は無制限。ポイントが無くなった場合は、寿命を十年ほど頂ければ千ポイント与えます』

 

 これはちょっとリスクが大きいな。

 

 この手のゲームは、あまりした事は無いし得意では無い。

 

『一万ポイント集めればランダムで一つ。十万ポイント集めれば要望通りの能力または才能を与えます』

 

 説明文が消えたのと同時に、ポーカーのゲーム画面になり。

 

 そして右上には順番に「ヘルプ」「寿命」「ポイント変換」「止める」のアイコンがある。

 

 最初に「ヘルプ」をクリックすると、「寿命」「ポイント変換」「止める」についての説明が書かれていた。

 

 最初の右側にある「寿命」は、自分の寿命と引き換えにポイントを貰え。

 

 次に「ポイント変換」は、一万または十万ポイントを貯めたら能力または才能が貰える。

 

 最後の「止める」はゲームを止めれ、元の画面に戻るらしい。

 

「こういうのは苦手だが、試してみるか」

 

 いつもなら嫌なのだが、次の人生の為にも少しリスクを犯してみるか。

 

 マウスを動かし、ポーカーを始めた。

 

⏱数時間後⏱

 

「案外俺の運も捨てたもんじゃないな」

 

 何とか寿命を減らさずポイントを一万集めて、「ポイント変換」をクリックした。

 

 すると扉の絵が現れ、「クリック」と言う文字が点滅している。

 

「ソシャゲのガチャ演出かよ」

 

 俺はマウスを動かし、扉の絵を押すと「ギギギ」と効果音を出し開いて行く。

 

 扉が完全に開く真っ白で、そこに字が浮かび出て来て書かれていたのは。

 

『貴方には東方projectシリーズに登場する、茨木華扇の「動物を導く程度の能力」を与えます』

 

 んー微妙。

 

 でもまあ無いよりはいいか。

 

『ゲームを続けますか?』

 

 画面に「はい」と「いいえ」のアイコンが現れた。

 

 これ以上は寿命を減らすリスクがあるからここで止めよう。

 

 矢印で「いいえ」をクリックした。

 

『質問は以上となります。最後に動川穫様が転生する世界を決めます』

 

 説明文の下に四角い枠にフラッシュ暗算の様な、凄まじい速度で番号が入れ替わり続けその下に「ストップ」のアイコンが出て来た。

 

 マウスを動かして矢印を「ストップ」のアイコンの上に置く。

 

 ここが重要な所であるのは明白であるから、緊張して手が震えマウスがカタカタと音を鳴らす。

 

 そして意を決して俺は「ストップ」のクリックし、出た番号は六二九だった。

 

『決まりました。動川穫様が転生する世界は・・・・「ウマ娘プリティーダービー」に決まりました』

 

 え、アニメやゲームの世界もあったのかよ!?

 

 だったらアイマスやらき☆すたが・・・・いや言っても仕方ないか。

 

 それにしてもウマ娘か・・・・まあ割と平和な世界だからいいが。

 

 これでもし某なろう系のハイファンタジー系(特にダークハイファンタジー系)の世界だったら。

 

 転生して大体三日で、俺は確実に死んでいた。

 

 でも仮にハイファンタジーな世界へ転生しても、能力を使えばワンチャン大丈夫だったかもしれない。

 

 それにまだ能力を完全に理解出来てないが、もしかしたらウマ娘のトレーナーになれば活かせる可能性がある。

 

 なら転生したらまずは勉強をして、トレーナーの資格を取らなくてはいけないな。

 

 そんな事を考えている意識が遠のいて行き、最後に見たノートパソコンの画面の説明文は。

 

『これにて転生に必要な工程を終えます。お疲れ様でしたそして次の人生が、より良いものであります様に心からお祈りいたします』



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2番

* * * 

 

 転生してから五年目の春。

 

 俺は今リクルートスーツを着て。

 

 もう少しで行われる、選抜レースの前列の観客席に座って居た。

 

「今日の選抜レースを見て、担当する()を決まればいいな」 

 

 日本ウマ娘トレーニングセンター学園、通称トレセン学園に入ってから今年で三年目になる。

 

 転生してから最初の二年間はこの世界の親に頼んで、ウマ娘のトレーナーになる為に必要な教材を買って貰い。

 

 ひたすら勉強をした結果、難関と言われたトレーナー資格を一回で取る事は出来た。

 

 そして晴れてトレセン学園に入れはしたが。

 

「まさか「動物を導く程度の能力」を把握するのに、三年も掛かってしまうと思いもしなかった」

 

 だが幸いだったのは能力を把握してないのに、いきなりトレーナーにならなかった事だろうか。

 

 通例ではトレーナー資格を取り、トレセン学園に入った人はまずサブトレーナーから始め。

 

 先輩トレーナーの助手となり手伝いをしたり、トレーナーを持たないウマ娘達の指導を最低二年はしなくては行けなかった。

 

 もし通例でサブトレーナーからではなく、最初からトレーナーからだったら。

 

 もしかしたら能力が、バレていかも知れないだろう。

 

 まあバレても能力で何とか出来たが、バレない事が一番だからな。

 

「でも本当はまだサブトレーナーを、もう一年したかったな」

 

 能力を完璧に扱える様になる為に、あと一年はサブトレーナーでいるつもりでいたが。

 

 しかしそれは叶わなかった。

 

 何故なのかは、今から一週間前に遡る。

 

⏱一週間前⏱

 

 俺は今携帯電話から駿川さんが理事長が呼んでいるとの事で、理事長室まで来る様に言われ理事長室の前に来た。

 

「何か呼び出されるような事はしてないが、まあいいか入ればはっきりする事だ」

 

 コンコンっと理事長室のドアを叩く。

 

「失礼します秋川理事長、動川です」

「許可! 入っていいぞ」

 

 そう言われドア開け、理事長室に入る。

 

 まず校長机がある所でリクライニングチェアに座る少女。

 

 つばの広い帽子をかぶり、白いラインの入ったオレンジ色の長い髪した青い瞳をした少女が、このトレセン学園の理事長である秋川(あきかわ)やよい。

 

 そしてリクライニングチェア座っている、秋川理事長の横で立って居る女性。

 

 緑色の帽子とキャビンアテンダント様な服を着ている、長い黒髪を黄色いリボンで纏めている緑色の瞳をした女性が、理事長秘書の駿川(はやかわ)たづな。

 

 この二人が待っていた。

 

「それで、俺は何故呼ばれたんでしょうか?」

「任命! 動川穫殿、今日から君をサブトレーナーからトレーナーする」

「え、嫌ですが」

「命令! これは決定事項だ。異論は認めない」

「何故ですか? 俺は以前にも言いましたが未熟なので、後二年だけサブトレーナーをしたいと言ったはずです。まだ後一年ありますが?」

「謝罪! そうしてやりたっかが、そう出来なくなってしまった」

「どう言う事ですか?」

「たづな、説明を頼む」

「分かりました」

 

 秋川理事長はそう言い、駿川さんが説明を始める。

 

「実は急遽トレーナーの人員不足になりまして、来週の選抜レースのスカウト枠が足りなくなったんです」

「え、確か前に「二人がトレーナーになるので、人員は確保出来てますからサブトレーナーを続けてもいいですよ」って言ってませんでしたか?」

「そうなんですが三人のトレーナーを居なくなり。今トレーナーが不足しているんです」

「それで、その穴埋めに白羽の矢が立ったのが、俺と」

「その通りです」

 

 なるほどつまり、隙を生じない二段構えをしたつもりが。

 

 呆気なく崩れ去ってお鉢が俺に回って来た、と言った所か。

 

「ちなみに何故三人も、居なくなったんですか?」

「一人目は持病の悪化で、二人目はトレーナーとしての自信を無くし、三人目は行方不明になりました」

 

 一人目と二人目は別にいいとしても、三人目は何処に居た?

 

 自分に能力を使ってみよう・・・・なるほど、三人目は異世界転移したのか。

 

 それなら仕方ない、行方が分からなくても当然だ。

 

 と言うより、この世界では異世界転移も起こるんだな。

 

 まあ転生した俺も居るんだから、そんな事があっても可笑しくはないと言う事にしておこう。

 

「動川サブトレーナーさん、どうかお願いします」

「・・・・頭を上げて下さい駿川さん、分かりましたトレーナーの件は受けします」

 

 どうせ断っても、秋川理事長がゴリ押しして来るだろうからな。

 

 そう言うと、駿川さんと秋川理事長の顔が明るくなった。

 

「感謝! 動川トレーナー」

「ありがとうございます、これからよろしくお願いします。動川トレーナーさん」

 

 本当はもう少し能力の扱いを磨きたかったが、仕方ないこれも人生か。

 

「動川トレーナーさん、それに当たりもう一つお願いあります」

「なんでしょうか、駿川さん」

「動川トレーナさんには、選抜レースでは必ず二人の担当をしてもらいたいのです」

「何故でしょうか? 俺はたった今トレーナーになったばかりなのですが」

 

 それに本来複数の担当を持つのは、一年間トレーナーをやっている人しか許可されるはずだ。

 

「確かに本来は一年間トレーナーをしてもらってから、複数の担当を持ってもらいますが。さっきの三人の人員不足の件で、動川トレーナーさんには補ってもらいたいんです」

「分かりました、しかし二つ疑問があります」

「何でしょうか?」

「何故俺は複数の担当を持つ許可して貰えたのでしょうか?」

「それは動川トレーナーさんの指導の評判からです」

「指導の評判ですか」

「はい、動川トレーナーさんから指導を受けると、不思議と色々な事が以前より出来る様になったと評判です。それにこれに関したは、他のトレーナーさん達も了承済みです」

 

 それはおそらく把握した範囲で能力を、指導する時に使ったのが原因だろう。

 

 にしても、他の先輩方も許可したのか。

 

 これはますます断りづらい。

 

「では次に先程「選抜レースでは必ず二人の担当をしてもらいたい」と言ってましたが、居なくなった三人分をするとなると、後二人を担当をしなくてはいけないのでは?」

「はい、ですが選抜レースでスカウト出来るのは、時間的にも二人が限界です。なので残り二人は此方から推薦した人を、担当してもらいたいと思っていす」

 

 残り二人は推薦と言う事は、四人の担当を持つのか。

 

 サブトレーナーの頃はトレーナーの居ないウマ娘を、数十人は見ていたからなんら問題は無い。

 

 だから人数が減った分、細心の注意を払わなければいけないな。

 

「分かりました」

「はい、話は以上です。後これは個人的なお願いですが」

「何でしょうか?」

「今度からは私の事は駿川さんではなく、たづなと呼んでください」

「分かりました、たづなさん」

「それから普段道理に話してください」

「分かり、分かった」

「では、トレーナーの件。よろしくお願いします動川トレーナーさん」

「懇願! よろしく頼む、動川トレーナー」

「分かった、では失礼する」

 

 そう言って俺は理事長室を後にした。

 

⏱そして現在⏱

 

「そう言えばウマ娘プリティーダービーの話は軽く知っているが、どんな娘が居るのか知らないんだよな」

 

 転生するウマ娘プリティーダービーの世界が、俺の生前の時代とあまり変わりない事は知っていたが。

 

 出て来るキャラクターは、一期目も二期目も主人公の名前しか知らない。

 

 ああ、こんな事ならアニメを見たりアプリゲームをしていればよかった。

 

 いや最悪でも転生前に、ウマ娘プリティーダービーの情報を収集しておけば良かったな。

 

 そうすればどの娘が有望株価か、すぐ分かったはず。

 

 そんな事を思っても、今では後の祭りか。

 

<間もなく、選抜レースが始まります>

 

「もうそんな時間か」

 

 兎に角、転生前にしなかった事を悔んでも仕方ないし。

 

 それにどうせ、主人公はスカウト出来そうにも無いんだったら。

 

 己が目で見て決めた娘を、主人公以上になる様に導けばいいんだ。




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3番

⏱選抜レース後⏱

 

「あー、疲れた」

 

 普通にレースを見るだけなら、そんなにも疲れないが。

 

 何十レースもある全てに能力を一レース事に使うと、こんなにも疲れるとは思わなかった。

 

 だがまあ、その分だけ収穫はあった事だし言い分か。

 

「さて、まずは走ったウマ娘達いる所に行くか」

 

 観客席を立ち去り、さっきまで選抜レースを走ったウマ娘達が居る所に向かう。

 

 そして目的の場に着くと、既に先輩トレーナー達があっちこっちでウマ娘と話している。

 

「仕事が早いな、流石先輩方だ」

 

 さて、俺も仕事をするか。

 

 周りには同じ様な体操着を着たウマ娘達が沢山おり、ここから目的のウマ娘を探すのは本来苦労する。

 

 だが能力を使えば、この中から目的のウマ娘を見つけるのは簡単だ。

 

「・・・・見つけた」

 

 沢山いるウマ娘を搔き分けて右耳にマリンブルー色の小さなリボンを付けた、長い藤色の髪に紫の瞳のウマ娘に辿り着き話しかける。

 

「ちょっといいか」

「はい、貴方は?」

「初めましてメジロマックイーン。俺はトレーナーをしている動川穫だ」

「トレーナーさんですか。もしかして私の事をスカウトしにいらしゃったのですか?」

「概ね合っている」

「それは光栄ですわ。ご足労いただき、感謝いたします」

 

 そい言ってメジロマックイーンは目礼する。

 

「けれど一つお聞きかせください。何故、私をスカウトしにいらしゃったのですか?」

「と言うと?」

「私、先程の選抜レースでは、メジロの名に泥を塗ってしまう様な、情けない走りしかお見せ出来ませんでした。だと言うのに、何故?」

 

 メジロマックイーンは不安そうな目で、俺の方を見て来た。

 

 確かに選抜レースでは七着と、あまりいい成績ではないのに話しかけてきたら怪しまれて当然か。

 

 だがこれはチャンスだ。

 

 素直な気持ちを伝え、自分の有能性も伝われば確実にスカウト出来る。

 

「コンディションが最悪なのに、諦めず走る精神力が気に入った」

「なるほど。精神的な面を見ていただいけたのですね。ありがとうございます。しかし私の調子は問題ありませんでしたわ」

「本当にそうか? 俺の推測では、体にストレスが残っているのと食事制限をしたのが、今回の敗因だと見受けられたが」

 

 そう言うとメジロマックイーンが驚いた顔に変わる。

 

「何故、私が選抜レースの為にした事。食事制限をしたとお分かりになったのですの?」

「感じた精神力の割には余裕を感じられない。気を張り過ぎている。顔の血色が少し悪い。体が努力に追いついていない様に感じられた。等から推測したが、違っていたか?」

 

 実際は能力を自分に使い、導き出した答えだがな。

 

 もし能力が使えなかったら、分からなかったかも知れない。

 

「いえ、そのご推測の通りですわ。ですがそれが敗因とはどうゆう事でしょうか?」

「食と言うものは運動に置いて密接に関係している。必要な量を取らないと体に力が入らなくなり動きに支障をきたし。必要な栄養が取れないと体が脆くなり疲れも取れにくくなり。美味しい物を食べないと精神が癒されない。どんな理由があれど運動をするのであれば、食事をちゃんと取らなければいけない」

「分かってはおりますわ、ですからメジロのウマ娘たるもの、食生活を含む日々の生活も、完璧に整えていたつもりでいました」

「だが現に分かる人には分かるレベルで、栄養不足とそれによりストレスが体に残っている。自分を一度見直す事もトレーニングの一環、だからこれからそれを一緒にやろうじゃないか」

 

 伝えたい事は伝えた、言える事は言った。

 

 後は運とメジロマックイーン任せだ。

 

「はい、ありがとうございます。では、改めて」

 

 メジロマックイーンの雰囲気が張り詰める。

 

「私はメジロのウマ娘。華麗に、優雅に、完璧に勝利する事をこの名に義務付けられておりますわ。私を担当すると仰るならば、貴方のもまた、メジロ家のトレーナーであるという自覚を持っていただかなければなりません。いかかです? その覚悟はおありかしら?」

「ない!」

「え」

「メジロマックイーン、いやここは敢えてマックイーンと呼ぼう。俺はマックイーンの夢や願いを叶えられる様に導く事に対してならば、何回でも覚悟を誓おう。だが俺はメジロ家に対して誓う覚悟は何一つない」

 

 少し食い気味に言い過ぎたか?

 

 そう思っているとメジロマックイーンは、少し顔を赤らめ咳払いをする。

 

「わ、分かりましたわ、それでは動川トレーナーさん。これより、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたしますわ」

 

 メジロマックイーンは軽くお辞儀をした。

 

「こっちこそよろしく頼む、メジロマックイーン」

「動川トレーナーさん、私の事は先程の様にマックイーンとお呼びください」

「分かった、改めてよろしくなマックイーン」

「はい」

 

 マックイーンは満面の笑みを浮かべる。

 

「それじゃあ、俺は他の娘をスカウトしに行って来る。明日はまたこのトレーニング用トラックで、会おう」

「分かりましたわ」

 

 そう言ってマックイーンから離れ、スカウトしたい二人目の所に行く。

 

 すでに能力で居場所が分かっているので、向かうとそこに居た。

 

「ちょっといいか」

 

 そう言って両耳に赤い耳カバーと左に赤い線が左右に入った白い小さなリボン、頭に赤い鉢巻を巻いたピンクのポニーテールのウマ娘に話し掛ける。

 

「え~っと、誰?」

「初めましてハルウララ。俺はトレーナーをしている動川穫だ」

「へ~! トレーナーなんだ!」

「ああそうだ、よろしく」

「うん! それでわたしに何か用?」

 

 ハルウララは好奇心と不思議そうな目で見て来る。

 

「お前をスカウトしに来た」

「スカウト・・・・・・? ええ~! わたしをスカウトしてくれるの!? ホントのホントに!?」

「本当に本当だ」

「やったー!! わたし、トゥインクル・シリーズ走れるんだ!!」

 

 ハルウララが元気いっぱいに、ピョンピョンとジャンプし喜びを表現する。

 

「トゥインクル・シリーズにデビュー出来れば、いろんなレースでいっぱい走れるんだよね!」

「まあそうだが」

「そしたら、一着いっぱい取れるかも! うう~楽しみ~っ!!」

「ハルウララ」

「何? トレーナー」

「俺がトレーナーでいいのか?」

「うん! なとなくだけど。トレーナーについてくれれば、一着が取れそうな気がするんだ!」

 

 ハルウララは満面の笑みで、質問に答えてくれた。

 

 何を根拠にそう言っているのかは、分からないが。

 

 確かに選抜レースで見たハルウララの走りを見て、一着にさせたいと思っている。

 

 まあ要するに俺は、ハルウララの意地に惚れ込んだ一人と言う事だ。

 

「分かった目指そうぜ。いろんなレースで一着を」

「うん! わたし頑張る!」

「それと今後は俺の事を、動川トレーナーって呼んでくれ。そうしないと他のトレーナーと被るからな」

「分かった、動川トレーナー」

「それじゃそろそろ帰るから、明日またこのトレーニング用トラックで、メジロマックイーンって娘と一緒に待っていてくれ」

「分かった、それじゃバイバイ」

 

 ハルウララは手を振り、俺はトレーニング用トラックを後にする。

 

 その後ズボンの右ポケットから携帯電話を取り出し、たづなさんに掛けた。

 

「もしもし、たづなさん、動川だ」

【あら動川トレーナーさん、どうでしたか? 担当するウマ娘は決まりましたか?】

「ああ、メジロマックイーンとハルウララだ」

【メジロマックイーンさんとハルウララさんですね、分かりました。明日書類提出をお願いします】

「分かった、ところで推薦で俺が担当するウマ娘は決まりましたか?」

【はい決まりました、なので明日の昼の終わりがけくらいに、理事長室で紹介しますので来てください】

「分かりました、それじゃまた明日」

【はい、お疲れ様です】

 

 携帯電話を切って、ズボンの右ポケットに入れる。

 

「明日の午前は皆勉強しているから。今から明日の午後までには、色々と準備して置かなくてはいけないな」




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