「陸軍としては海軍の提案に断固として反対である!!」
その声が会議室へと響き渡った。
陸軍と海軍の将校が向かい合い、互いの方針にケチを付けていた。
それを提督らの後ろから見ている艦娘達には陸軍が反対するのを嬉しく思っていた。彼らとは対立している関係なのに。
理由は敵である深海棲艦にある。
深海棲艦は海にしか存在しない。一応陸上型は存在するが大抵は海軍のみで戦える。つまり陸軍は戦うことがまず無いのである。
だからこそ、陸軍が海軍にケチを付ける筋合いは無いのだ。
では、なぜ陸軍が海軍の方針にケチを付けるのか。それは海軍は艦娘達を兵器化する案を持ち出したからである。
[兵器化]
近年、戦況の悪化により艦娘の意見を聞く余裕が無くなった海軍は艦娘の意見を尊重せず、兵器として見なすという考え方が台頭しだしている。
陸軍は不安に感じていた。近年の海軍が狂い出していることを。
数々の汚職事件、戦況の悪化、前線の後退.....。
数え出してもきりがない。
たしかに陸軍は深海棲艦に対しては役に立たない。
だからこそ憲兵を鎮守府へ派遣し少しでも治安維持に努めてきた。
もちろん艦娘らと関わることも多くなってきた。
彼女達が初めて現れた頃、陸軍や海軍だけでなく国民までもが彼女らは安全なのかと疑った。深海棲艦と同じではないかと。
だが違った。彼女らは人類の希望である。それと共に彼女らは守るべき存在なのだ。
だから、陸軍は海軍の方針に絶対に反対する。前線で最も戦っている彼女達の意見を尊重するべきだと。
しかし、海軍は諦めない。
「戦況を覆すには艦娘の兵器化が最も近道である!!」
その発言で会議室は怒声でいっぱいになった。
艦娘の中には今にも泣きそうな娘までいた。そんな中でストップをかける男がいた。
「静かにしたらどうだ!!」
その男により会議室は静まり返った。会議室を一瞬で静まり返した男は陸軍大将であった。海軍のトップである元帥と同等の権力を持ち、実力一つでのしあがった生粋の軍人である。
「陸軍である者達まで熱くなってどうするのだ!!今最も冷静でなければならないのだぞ!!」
陸軍大将の言葉により正気を取り戻した陸軍将校は冷静になり、海軍将校らへと向かい合った。
艦娘達にとってこれ程緊張したことはほとんど無いだろう。
しかし、そんな空気を壊す男がいた。
「なぁ、まだ終わらねぇの?」
その男は机の上に足をのせ、海軍特有の白帽子を深く被っていた。
その発言におそらく男の秘書艦である艦娘が慌てる表情をした。
あわわわと少し幼い子供の慌て方をしている艦娘の名は電である。
男の初期艦であり、鎮守府の第一艦隊旗艦でもあった彼女の慌てっぷりは鎮守府仲間が見たら笑ってしまう程だろう。
そんな彼女がまるで見えていないかのように男は再び口を動かす。
「やっぱり海軍さん達は落ち着きがないねぇ。陸軍出身の俺には到底無理なことだ」
彼が口を動かす度に海軍将校達は敵意が漏れ出す。
海軍にとって彼は仲間であると同時に敵でもあった。それは、彼が
陸軍出身であるからだ。
彼は少し特殊で陸軍でありながら提督の才能があり、海軍でも十分活躍できる。そんな彼の才能を見抜いた陸軍大将はわざわざ大本營まで足を運び海軍のトップである元帥へお願いをしに行った。
元帥はそんな彼を海軍へと迎え入れた。勿論反対はあったが彼程の才能を持つ者は珍しく、海軍増強のために仕方がなかった。
結局、その会議は男により中断。後日へと見送りとなった。
この先、彼は海軍でどのように活躍し陸軍と海軍の対立はどのように変化していくのか。
まだ誰にも分からない。
少しずつですが活動を再開していきたいと思います。まぁ、夏休みですからね?8月は週一以上は投稿はしようと考えています。
お楽しみに!!
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第一章 男は陸軍出身の提督。もしかしたら無能かも知れない。
提督、ただ今より執務を開始します。たぶん.....
ここから男はいろんなことに巻き込まれていきますのでお楽しみに!!
あの会議から数日後、男は鎮守府へ帰還したがある理由で秘書艦の電は翌日から帰っていた。
まぁ、何故数日かかったかは今は伏せておこう。
疲れの溜まった体を動かし鎮守府の門へと向かう男。
門前には男を迎えに来た三人の艦娘がいた。
電の姉妹艦でありネームシップの暁
電についで古参であるが資源の都合上あまり出撃していない榛名
榛名と同じく四番目の古参だが資源が不足しがちな初期は出撃できなかった赤城である。
なぜ、男は初期の段階で金剛型の榛名 一航戦の赤城がいるのかというと彼の出自が関係していた。
彼は陸軍出身であった為、資源の管理についてはほとんど知らない状態だった。それが故に資源を一回につき400以上を使用したため榛名が建造され、二回目はボーキを大量に使用し赤城が建造された。勿論、このことは電にばれてしまい2時間ぐらい怒られた経緯がある。
この話を聞いたある艦娘は大笑いし、ある艦娘はきつい言葉を言うのが当たり前であった。
暁はというと彼女は少し特殊な事情によりこの鎮守府へ着任した。
それは、彼女はある鎮守府から売られていたのだ。その価値は20万円。
そう、あまりにも安すぎるし何より艦娘を売りに出していたのだ。
そのため、男は陸軍大将へ頼み込んで暁を購入する形で保護。
本人の希望により鎮守府配属が決まった。
他にも艦娘はいるがそれについては後々説明などを入れよう。
三人の艦娘に迎えに来てもらった男が放った言葉は
「海軍ってゴミなんだな」
の一言だけだった。
しかし、彼女達には共感できる言葉であった。
彼は暁 榛名 赤城と共に鎮守府内へと向かった。
「提督、会議お疲れ様でした」
そう榛名が言うと男はあぁという会話をしているのか分からない程小さな声で答えた。しかし、榛名にはそれで満足だった。
男と榛名の後ろをついていく暁と赤城。
「提督と榛名さんって夫婦みたいですよね?」
「ま、まぁ立派なレディーな榛名お姉さんには当然なことよ」
「そうですね♪」
二人は後ろでこそこそ何かを話しているのは男にもわかっていたが
会話の内容までは分からなかった。
暁と赤城とは途中で別れ、榛名と共に執務室へと足を運んでいると
「提督、どうかなされましたか?」
榛名が心配した顔で話しかけてきた。男は何もなかったように榛名へと
「まぁ、特になかったよ。心配するな」
と言った。榛名はそうですかと少し心配が拭えないが男が言うならと半ば無理やり納得した。
少し時間が経ち、執務室の前へと着いた二人は執務室への扉を開けた。そんな時、男と榛名に驚く程の連絡が電より伝えられた。
「提督!!大変なのです!!」
電が持っていた紙にはこう書かれていた。
【硫黄島鎮守府含む小笠原諸島地域、壊滅】
【提督含む軍関係者100名以上が死亡】
それは、日本における南方重要拠点の陥落を意味していた。
《設定》
【硫黄島鎮守府】
日本本土の南方、小笠原諸島近海を守る鎮守府。
日本における南方重要拠点であり、陸軍にとっても重要な場所であった。
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