今回師匠は登場しません。
可愛いですよね、スカジ。いつか5凸したい。
「2週間ほど休暇を貰えないかしら?」
彼女から放たれた予想外の言葉に思わずアーミヤは「え?」と言葉をこぼしてしまった。
「2週間か…ちょっと期間が長いから確認してみるけど…、多分大丈夫だとは思うよ。」
幸い、しばらくは大きな戦闘もなさそうだしね、とロドスのドクターは答える。
「でも君がそんなことを言うなんて珍しいね?」
「ええ、少し用事を思い出したのよ。」
「用事…ですか?差し支えなければお聞きしても構いませんか?」
「そうだね、僕も少し気になるな。なにせ君はうちのエースだからね。」
オペレーター・スカジ。その美しい見た目から想像もつかない圧倒的な戦闘力は、ここロドス・アイランドの最強の一角と言っても過言ではない。
少々冷たい性格をしており、初めこそ他のオペレーターから敬遠されていた。しかし、言葉の端々には相手を気遣う優しさも含まれており、グラニとの会話で軽口を叩きあっている姿を見せたり、だいぶ内気な少女であるメランサと仲良く会話をしていたりなど、誤解はだんだんと無くなり、今では他のオペレーターとそれなりに良い関係を築けている。
「構わないけど…久しぶりに師匠に会おうと思ってね。」
その言葉に驚く2人。
「君に師匠がいるのか?正直、君に師事できるような人物がいるとは思えないんだが…。」
「実は私も彼女についてよく分からないのよ、ただ、実力は本物よ。」
「にわかには信じられませんね…。」
「そうだね。…っと、2週間の休暇。大丈夫みたいだよ、いつから?」
「そうね、それなら明後日に出発しようかしら」
「明後日からね…了解。ところで、師匠について詳しく聞いてもいい?君のことをもっと詳しく知る良い機会だからね。」
「いいけれど…その言い方は少し卑怯だわ、アーミヤが拗ねるわよ?」
「?」
「ちょっと!?スカジさん?」
「ふふ、冗談よ。」
「もう…。けど、私も気になります。ぜひ聞かせてください!」
「そうね、どこから話そうかしら…。少し考えるから、待っててもらえるかしら。」
そうスカジが答えてから3人の間には沈黙が訪れる。
そして数分後、考えがまとまったのか彼女は話し始めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私が彼女に出会ったのは、まだ私が子供の頃だったわ。一族に認められてハンターとして活動し始めてから1年、厄災との戦闘にも慣れてきて油断していたのかしらね、その日私は初めて死にかけたの。仲間とも分断されて、こんなところで死ぬのかって思った時に、彼女は現れたの。
「あ、あの…大丈夫でしょうか…?」
それまで私を襲ってた厄災達が一瞬で消滅して。訳も分からないまま、緊張が切れて私の意識はそこで途絶えたの。
次に目が覚めたのは彼女の家のベッドだったわ。しばらく面倒を見てもらって、治ってからは一族の場所送ってくれたの。
彼女の家を出た瞬間、絶句したわ。あの時の衝撃は、今でも覚えてる。
災厄達が、誰も彼女に手を出さなかったの。災厄が本能で「手を出してはいけない」と感じるほど彼女は強いのだと、今彼女と別れたらもう二度と会うことは叶わないだろうと、そう理解してからの行動は早かったわ。
「私を鍛えてください!」
「………へ?」
頑なに断られ続けられたから、そのあと一ヶ月間帰らずにお願いし続けたわ。結局いくつかの約束を条件に彼女が折れて、私を弟子にしてくれたの。一族の場所に帰った初めは喜ばれたけど、この話をしたらこぴっどく怒られたわ…。
「1ヶ月以上どこにいたの!?」
「師匠に助けてもらったあと、弟子入り志願をしていたわ!」
「…は?」
「1ヶ月間ずっとお願いし続けて認めてもらったの!」
「…」
「?」
「まずは安否連絡をしなさい!」
そうして私と師匠の関係が始まったの。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…その後は、ずっとハンターとして活動しながら修行を続けて、しばらくして免許皆伝になったから、こうして外にやってきて、貴方達に出会ったって訳。」
「…昔のスカジさん、随分と積極的でしたね。」
「その後分かったけど、彼女相手にはあれくらい行かないとだめだったのよ。あの時の行動を今でも褒めたいわ。」
「けど免許皆伝ってことは、教わることを全て教わったんでしょ?最後には師匠を超えたのかい?」
「…彼女の最後の修行内容はなんだったと思う?」
「なんでしょう?1対1で勝つ、とか?」
「一撃を入れる、よ」
「…え?」
「『私に一撃入れる』よ。10年以上修行して、初めて攻撃を当てられたのを最後に修行は終わったわ。」
「「…」」
「…きっと、ロドスの全勢力をもってしても彼女には勝てないでしょう。はっきり言って、彼女は規格外だわ。」
どこか遠い目をして話すスカジに絶句する2人。
その2日後、少しの荷物と共にスカジはロドスを出発していくのだった。
原作との差:師匠との出会いを経て、スカジは他者とそれなりにコミュニケーションを取れます。原作の孤高の狼感も好きですが、個人的にはもっとみんなと仲良くなってほしかった作者の願望。許して。
あとアークナイツの最強キャラは皆さんの推しです。僕の最推しはスカジです、6章までしかクリアしてないクソ雑魚ドクターですが、スカジはうちのエースです。作品内でスカジがロドス内最強格と言ってるのはそのためです。異論はあるかと思いますし認めますが、僕のロドスではスカジが最強です。ここだけは譲れません。
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再会
昇進2にしたのですが、ラグナロク強すぎでは?何あのスカジの第3スキルとスペクターの第2スキル足して2で割るを忘れたような性能。人権キャラの入手と共に、推しの活躍の機会が減るというかジレンマに悩まされる僕なのでした。
ー1つの家があった。
過去数年間、あるいは数百年間か、ーはたまた数億年間かもしれないーが、その家に訪れた人は確かにいた。ある者は数多の試練を踏破した歴戦の探索者だったかもしれないし、ある者は100人を殺した大犯罪者だったかもしれない、またある者はただの善良な一般人だったかもしれない。
ある者は霧の深い湖のほとりで、またある者は目が覚めるほど美しい花畑で、一切の光がない深海でそれを見つけたという者さえいた。
…そして、そのほぼ全てが元の居場所に帰ることなく、死んだ。
周りに佇んでいる化物に恐怖して正気を失った、全身から血を噴き出した、突然何かを叫びだして喉を掻きむしった、あたりにいたオリジムシを食べ散らかした、死因は様々だが、おそらくまともな死に方は何ひとつとしてなかった。皆、何かに恐れているような、知るべきではないことを知ってしまったことに絶望しているような様子だった。
この家の存在を知ったしまうだけでも、常人は狂気に苛まれるだろう。
さて、そんな家に住んでいるのは、一見すると幼い少女のようであった。美しいエメラルド色の髪は腰のあたりまで伸びており、その身長は140cmをギリギリ超えているだろうか?修道服を白くしたような服には、一部緑や金色で装飾が施されており、どこか神々しさを感じる。清潔に保たれている部屋からは、彼女の性格が伺える。そんな少女、イージスはなんとも幸せそうな顔で寛ぎながら、今から何をするか考えているようだ。孤独を嘆いているような様子は全くなく、他人からすれば地獄とも思える環境を、彼女は謳歌していた。
そんな彼女はこれから読書をしようと決めたらしい。可愛らしくお気に入りの歌を口ずさみながら本棚まで行き、今まさに本を取り出そうとしたその瞬間、
ーコンコン
「ピィッッ!」
…ノックの音に、なんとも情けない声を出すのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「だ、誰…?」
と、今にも泣きそうな顔で呟くイージス。数年前に弟子を見送って以来、この家を訪れる人など1人もいない。その弟子も数年前から音沙汰もないため、彼女はドアをロックするその人物に怯えきっていた。しばらくの間じっとしていると、
ーコンコン
「ミ゜ッッ」
…再び鳴ったノックの音にビビり散らかすのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…隠れなきゃ…。」
どうしてそうなった?と聞きたいが彼女は真剣である。何はともあれ、そう決めてからの彼女の行動は一瞬であった。1階のリビングから2階の寝室まで、コンマ1秒もない間に移動し、頭から布団をかぶった。無論、バレバレであるが。布団の中でぷるぷると震えながらじっとしていると、再びノックの音が聞こえてきた。
ーコンコン、コンコン………ガチャッ
…かの人物は、ドアを開けたようだ。(ちなみに、今まで家を訪れてきた人などいないため、鍵なんてものはかけていない。哀れなり。)
足音から察するに、そのまま迷いなく階段を登ってきたようだ。だんだんと近づいてくるその音に震えてながら、彼女は隠れて(?)いた。
部屋の前で足音が止まり、ギィィとドアを開ける音がやけに大きく聞こえた。あ、もうだめだ、と思ったその時に聞こえたのは、数年前にここから旅立っていった弟子のため息であった。
「…はぁ、呆れた。この家に来るのなんて私くらいでしょ?なんで察せないのかしらね。」
「…へ?」
「久しぶりね、師匠。」
「…あの、ごめんなさい。」
「え?」
「あの〜、その、…安心して腰が抜けてしまったので、下まで運んでくれませんか?」
「…」
なんでこの人に勝てないのかしら、とスカジは再びため息をついた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「それでは、今はロドス•アイランドという組織にいるのですね?」
「ええ、オペレーター名はスカジで倒しているの」
「そうですか、なら私もスカジと呼ばせてもらいますね。」
お互い(主にイージスであるが)に落ち着いた後、互いには再開を喜びあい、スカジが去ってからの話を聞いていた。
「それにしても、なぜ突然帰ってきたのですか?ここを去ってから6年、何の音沙汰もなかったのに。」
「うっ、それを言われると耳が痛いわ。」
「ああいえ、別に怒ってはいませんよ。ここに連絡できる手段なんてないでしょうし、あなたの実力は知っていますから、特に心配もしてませんでした。」
「それはそれで少し複雑だわ…。別に、そういえばしばらく会ってないなと思っただけよ。幸い、仕事も少し落ち着いたことだから、せっかくの機会にって思って来たの。」
「そうでしたか。まあ、私も久しぶりに愛弟子に会えて少し安心しました。」
「あら、最初はあんなに渋ってたのに愛弟子と呼んでくれるのかしら。」
「ええ、流石に10年もいれば情も湧きますよ。」
「「…ふふっ。」」
と笑い合う2人。
「…ねえ師匠。」
「?どうしたんですかスカジ?」
「私、前よりも強くなったの。」
「ええ、それは見れば分かりますけど…。」
「久しぶりに、
「…はい、構いませんよ。久しぶりに
「…あっと驚かせてやるわ。」
「…ええ、楽しみにしてますね。」
スカジは全身から闘気を剥き出しにして、外へと向かって行った。
一方、イージスは余裕な様子で、その笑みを少し深めるのあった。
イージスちゃんの年齢はとくに考えてません。、見た目通りのロリっ子でも、ロリババアでも、皆さんイメージに合うようにご自由にどうぞ。
最初の部分ですが、僕的にはクトゥルフ要素のつもりです。が、ここまで読んでくださった方なら分かる通り、僕はあまりにもクトゥルフ神話について無知なので、間違いがあったら申し訳ありません。
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戦闘
そこでは、2人の人物が戦っていた。
一方が、その身の丈以上ある佩剣を相手に叩きつけた。彼女、スカジの圧倒的な身体能力と、見た目以上の超重量をもつ佩剣からなる一撃は、並の重装オペレーターはおろか、あのホシグマやサリアであろうとも小さくない傷を負わせるだろう。しかし、目の前の相手は、右手に持つ、自身の小さな体を隠せるくらいの丸盾で彼女の一撃を受け止めた。完璧な受け流しだった、その身を崩すことなく、水が傘から滑り落ちるように、エネルギーの一切が彼女、イージスに届くことはなかった。そのまま左手で構えていた槍を、スカジが避けられるか否かの速度で繰り出す。スカジは自身の一撃が届かないことを分かっていたのだろう、全力で回避に徹した。が、やはりギリギリだったのであろう、その体には小さな傷ができている。
戦闘が始まってから、ずっと同じ状況が繰り返されていた。スカジは既に全身に小さな傷がある一方で、イージスは何ひとつダメージを負っていない。いつでも与えられる決定打をイージスが放つことはなかった。とんでもなくレベルの高い応酬ではあるが、それでも、もしこれ見ている人がいたのなら、彼らはまるで稽古のようだと言うだろう。
イージスはスカジを侮っているわけではない。むしろ、彼女の成長を喜んでいた。
「強くなりましたね。」
「…そうだけど、ここまで攻撃が通用しないと自信を無くすわ…。」
「そうでもありませんよ。先程放った一撃、避けるだろうなぁとは思っていましたが、まさかカウンターが飛んでくるとは思いませんでした。」
「完璧に対処したくせに、どの口が言うのかしらね。」
「まあそれはそうとして、あらかた実力も理解できましたし、そろそろ終わらせてもらいましょうか。」
と、イージス一瞬でスカジの前へ移動し、槍を突く。先程までの一撃とは違う、勝負を終わらせる為に放たれたそれはスカジの胸へ向かって行き、
「いいえ…これからよ。」
「!」
…そして、完璧に防がれた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その時、スカジの雰囲気が急変していた。それはどこか冒涜的で悍ましく、見るものを狂気へ誘うような、まるで、深海そのものをその身に宿したかのような。心なしか、彼女の体から青黒いオーラが出ているような錯覚を受けた。
驚いたのも束の間、イージスはスカジから放たれた一撃に意識を注いだ。右手の盾でそれを完璧に受け流したが、あまりに重くなった一撃に目を見開いた。
「驚きました…。先程の2倍、いえ、もう少しありますか、明らかに威力が上がっています。私の一撃を受け止めていましたし、耐久も上がってるのでしょうか?傷も回復…というよりは体力そのものが増えた感じですかね、先程まで少し息を切らしていましたが、今ではその様子もないさそうですし。」
「今更驚かないけど、分析早すぎないかしら?ロドスで身につけたの。どうかしら?私らしいでしょう?」
「…そうですね。貴方らしい、シンプルな力。しかし、シンプルであるが故に実に凶悪ですね。」
2倍という数字。なんともぱっとしないと思われるかもしれないが、その対象がスカジほどの実力者であれば話は変わる。1が2なんて生ぬるいものではい、1000が2000になって放たれる一撃はもはや災害そのものである。身体能力の高いスカジにこそ似合う、まさにシンプルイズベストな力である。
「それじゃあ、第2ラウンド開幕と行こうかしら…!」
そう言って、スカジはイージスに肉薄するのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「負けたわ…。」
と、どこか遠い目をして呟くスカジ。彼女は今、疲れ切った様子で風呂のお湯に体を沈めていた。
「けれど、凄かったですよ。結局、4発も貰っちゃいました。」
「どれもかすり傷だったじゃない。しかも1つは完全な初見殺しだから次は通用しないでしょうに。」
少しムスッとしてそう答えたスカジに向かい合うように足を伸ばして風呂に浸かっているイージス。4人程度なら足を伸ばしてくつろげそうな浴槽で、窮屈そうな様子はない。
戦闘はあの後、1時間ほど続いた。能力を増したスカジは確かにそれ以前よりも善戦していたが、それでも、師を打ち崩すことは出来ず、最終的に彼女のスタミナ切れで終わった。今は互いの傷を治療し終え、2人で一緒に風呂に入り疲れを癒していた。
「でも予想以上に強くなってましたよ。それに、あの不思議な力を纏った時も、増幅した力に振りまわされている様子もなかったです。師匠としては100点満点、花丸をあげちゃいます。」
と優しく微笑むイージス。その笑顔は心からのもので、ようやくスカジも
「…そう、それなら良かったわ。」
と、笑顔を携えて幸せそうに答えるのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…この料理も久しぶりね。相変わらず美味しい。」
時が変わって夕ご飯、そこには日頃のクールな様子とは一変、子供のように目を輝かせながら食事を頬張るスカジの姿があった。もしここにロドスの誰かがいれば、自身の目を疑っていることだろう。
「ふふっ、それは良かったです。おかわりもあるので遠慮せずどうぞ。」
そう嬉しそうに答えるイージス。エプロンを着てフライパン片手に料理をしている。小さな体でパタパタと台所を移動している様はなんとも可愛らしく、スカジも気持ちをほっこりさせていた。
目の前の師は本当に万能である。戦闘だけでなく料理や家事も、歌や服作りなども、おおよそほぼ全てのことをその道のプロより上手くこなす。唯一出来ないのは他人との会話くらいである。
「…あ、そういえば、師匠にお願いしたいことがあるのだけれど。」
「あら♪なんでしょう?可愛い弟子のお願いなら、私の出来る範囲でなんでもしますよ。」
彼女の出来る範囲でとは、実質的な「何でも願いを叶えてやろう」であるが、スカジが願ったものは、ささやかなものであった。
「一度、ロドスに来てくれないかしら?」
「…へ?」
…
やはり筋肉…!筋肉は全てを解決する…!
スカジの第3スキル、いいですよね。何度もあの脳筋の極みみたいなスキルに助けられてきました。エフェクトもすごい好き。
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決意
それはスカジがロドスを出発する前日、スカジがアーミヤ達にイージスの話をした次の日の早朝であった。スカジはドクターに呼ばれ、管制室まで足を運んでいた。
ートントン
「入るわよ。」
「やあ、おはようスカジ。」
「おはようドクター。それで、用事って何かしら?明日の朝には出発するから、、早めに終わる仕事だと嬉しいのだけれど。」
挨拶を済ませ、単刀直入に要件を聞くスカジ。荷物の準備は既に終えているが、流石の彼女も、明日のために体力を温存しておきたいようだ。
「それは私から説明しよう。構わないか?」
「…ええ、大丈夫よ、ケルシー。」
「分かった。ドクターから聞かせてもらった、貴方の師についての話だ。」
「師匠がどうかしたの?」
「彼女をロドスに招待したい。説得を頼まれて欲しい。」
「…目的を知りたいわ。」
ケルシーに対して思う所がない訳ではない彼女だが、それでも、誠実な対応をしている相手を無碍にするほど心の狭い人間ではない。だが流石に相手の意図を完璧に理解できず、疑問を口にした。
「昨日君が部屋に戻った後、アーミヤも交えて3人で話し合ったんだ。君の師匠の能力、ぜひロドスに欲しい。」
「はっきり言うけれど、無理よ。絶対に説得は成功しないわ。」
「…可能性は低いと思っていたが、それほどまでにか。」
「あの人は自身の力の恐ろしさを理解してるわ。彼女が争いに介入すればそれはすぐさま蹂躙に変わる。だから彼女は中立の立場を決して崩さないでしょう。」
と、はっきりと答えるスカジ。一切の迷いのない様子から、彼女の言葉は嘘ではないことを理解するドクターとケルシー。
「まあ僕たちもそれはダメで元々の目的だ。僕たちは単純に、君の師と直接話をしてみたいんだ。」
「ああ、衣食住は全てこちらが保証するし、そちらの要望にも可能な限り応えよう。なんなら、ロドスの一部の権限を譲渡することもやぶさかではない。」
「…そこまでするの?随分と羽振りがいいじゃない。」
あまりにも破格な条件に思わず彼女は驚いてしまう。しかし、続く言葉から、彼らが師との会話を望む理由を理解した。
「彼女は我々にない技術を持っている、聞けば貴方のその剣も、師が作ったものらしいじゃないか。私の本業は医者であるが、技術者としてもかなりの実力があると自負している。そんな私ですらあの武器の素材の検討が全く立たない、その創造主と話がしたいと思うのはなんら不思議ではないだろう。」
「もちろん医療の方面でも期待しているよ。どんな大怪我でも瞬時に治す水とか、切断された腕を生やす薬とか、正直まだ信じ切れないけど、もしそれが真実であるならば、その薬やその技術のほんの一欠片の情報が値千金だ。鉱石病に関する情報も持っているかもしれない。あ、さらに言えば理性を回復する薬とか知らないかな?」
「正直なところ、何でもいいんだ。彼女が何気なく話す一言ですら、我々に大きな恩恵を与えるだろう。ロドスにとって大きなリターンこそあれ、リスクは全くないこの絶好の機会、是が非でも掴み取りたい。」
そう、スカジやイージスが思っている以上に、スカジの話には多くの希望があった。到底信じられないような話も、彼女の持つ、その見た目からは想像もつかないほどの超重量を誇る佩剣が1つの証拠となり、彼らに「もしかしたら」という希望を与える。それを平然とで振り回しているスカジにも驚きではあるが。
「…はあ、分かったわ。説得はしてみるわ。」
「!!、それは助かる!」
と少し興奮した様子で返事をするケルシー。
「でも、あまり期待はしないでちょうだい。あの人、少し…いえ、かなりコミュニケーションに問題を抱えているから。」
「??ああ、分かった。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ーってことがあったのよ。」
「無理です。絶対に無理です!」
「あら?貴方に限って無理なんてことはないでしょう?貴方のそれは『無理』ではなく『怖いから嫌だ』でしょうに。」
「そこまで分かってるなら聞かないでくださいよ!」
そう涙目で叫ぶイージス。これではどちらが師匠か分からない。
一転、スカジが一層真面目な顔をして師に問いかけた。
「…ねえ師匠。」
「え?ど、どうしたんですかスカジ?急に真面目な顔をして。」
「…貴方って、私を除いて今まで何人の人と会話をしたことがあるかしら?」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…1人です。」
「ダウト。」
「嘘じゃないです!分身して『自分』という1人と会話してます!」
「色々と突っ込みたいことはあるのだけれど、それを1人とカウントするのは虚しくないかしら?」
「…」
「師匠?」
「あーもう、分かっていますよ!私が他人と全く関わりがないことくらい!けど別に不自由は感じていません!やりたいことはやれていますし、毎日は充実しています、それを兎に角言われる筋合いはありません!」
「…」
「…あっ、その、ごめんなさい。少し熱くなりすぎました。」
「…」
「…」
「…師匠のその言葉が嘘じゃないことはよく分かっているの。」
「…はい。」
「これは私のエゴなのだけれど、弟子としてはすごく心配になるの。怖いの、もしも私がいなくなったら、貴方のことを知っている人はこの世界に誰1人といなくなることが。」
「貴方は強いです。そんな心配はありません。」
「けれど0ではないわ、近頃は相手も強くなっている。そうそう遅れをとるつもりはないけれど、万が一ってこともあるわ。」
「…」
「私は、貴方が、私以外の誰かと嬉しそうに笑っている姿が見たいの。貴方は孤独じゃないって、そう思わせてくれる証明が見たいの。」
それからしばらくの間、2人の間には静寂が訪れた。お互い中身が既に空になっているカップをしきりに口につけ、飲むようなふりをしている。
ーそうしてどれくらい時が経っただろうか。少なくとも、2人にとっては何時間とも感じられた沈黙は、イージスのため息と共に終わりを迎えた。
「…はぁ。…ずるいです、そんなこと言われたら断れません。」
「その、ごめんなさい、私のワガママだから、気にしないで。」
「いえ、そういう訳にはいきません。そもそも、これは今まで弟子の不安に気づかなかった私の落ち度です。貴方が謝ることは何1つありませんので、私に謝らせてください。…ごめんなさい、不甲斐ない師匠で。」
「…うん。許すわ。」
「…ありがとうございます。」
「それに、滅多にワガママを言わない可愛い弟子のお願いですもの!元々私に出来ることなら何でもするとも言いましたし、ここは師匠として一肌脱ぎます!」
「!もしかして…!。」
「ええ!…私イージスは、ロドスに行きましょう!…大丈夫ですよね…?」
と、頼りない様子で、しかし確固たる決意を持ってイージスは宣言するのであった。
という訳で、次回から師匠のロドス生活が始まります。絡ませたいキャラは多いのですが、作者がその子達のキャラを上手く表現できるか、プレッシャーでいっぱいです。頑張ります()
ここまで長いようで短かった…!正直ここまで続けられるとは思っていませんでした。思っていたよりもはるかに多くの人に見てもらっていて、感想やお気に入り登録もしてくださる方もいらして、スカジ好きの人が多いようで嬉しいです。モチベーションをここまで保つことができているのは他でもない皆さんのおかげです。こんな駄作をここまで読んでくださってる方々に、僕が持てる最大の感謝を送りたいと思います。ありがとうございます。
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到着?
龍門やチェルノボーグから少し離れた平原に、ポツンと1つ、大きな建物があった。その建物の門の前に2人はいた。狩人を彷彿させるような、黒を基調とした服を着ている長身の女性に、全身真っ白な衣服を見に包んでいる小さな少女、どこか対照的に感じられる2人組であった。そう、皆さんご存知スカジとその師、イージスである。
「ここがロドスですか…。何と言いますか、外見は都市というよりも舟みたいですね。」
「けれど中にいるオペレーターは粒揃いよ。安全性で言えば他の大都市にも負けてないでしょうね。」
「小数精鋭ってことでしょうか?何であれ頼もしいですね。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…ねえ、師匠。」
「何でしょうスカジ。」
「…ここに着いてからもう1時間は経っているのだけれど、いい加減入らないかしら。」
「…も、もう少しだけ、あと5分だけください。」
「もうそのセリフも聞き飽きたわ。ここまで来たらもう戻れないんだから、さっさと腹を括りなさい。」
この
「あともう5分だけください!本当にこれで最後にしますから!」
「…その次はもう無いわよ。5分経ったら縄で縛って無理矢理にでも入るから。」
「…アリガトウゴザイマス。」
しかしここまでの1時間、イージスの決意は何も進展していない訳ではなかった。本当に少しずつではあったが、一歩踏み出そうとする勇気は着実に溜まっていき、先程の弟子の言葉が踏ん張りとなって、イージスも覚悟を決めた。
「…よし。ごめんなさい、かなり待たせてしまいましたね。今度こそもう大丈夫です。行きましょう、スカジ。」
今までとは様子が変わった師を見て、これなら大丈夫そうねスカジは微笑んだ。そのまま門を開けようとしたその時ーーーーーロドスの内側からそれは開いたのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「む?…おや、スカジじゃないか。休暇は明日までだったはずだが、随分と早いんだな。」
「あら、貴方がここに来るなんて珍しいじゃない、チェン。私がいない間に何かあったの?」
「定期報告さ。ここ最近は随分と平和だ。これがずっと続いてくれればいいんがな…。」
「これから龍門へ?」
「ああ、実は見回りをホシグマに任せてしまっているんだ。早く戻らなければ下のものに示しがつかんからな。」
と、世間話を始めるスカジとチェン。この2人、どちらもかなりの実力者であり、性格もどこか似通っている所がある。それなりに気が許せる相手として、時折一緒に訓練したり等、それなりに関係は良好であった。
ふと、チェンはスカジの後ろに隠れている人影に気づく。少し控えめにスカジのマントを左手で握り、涙目でこちらを見上げている様子はとても可愛らしく、庇護欲が湧いてくる。
「ふむ…スカジ、そちらの彼女は?」
「ええと…私の知り合いよ。これから少しロドスのお世話になるの。」
チェンの質問にそう答えるスカジ。今イージスを自分の師だと説明すると、何やら面倒なことになりそうだと直感したようだ。ひとまずそれは隠すことにした。
「ほら、貴方も自己紹介くらいしなさい?いつまでもそうしてたら彼女にも失礼よ。」
「…」
「…」
「え、えと、その。イージスって言います。あ、あの…その…スカジがいつもお世話になっています…。」
と、今にも消え入りそうな声で、なんとかそう言葉を吐き出した。
「…ああ、紹介ありがとう。私はチェンという、こう見えても、龍門近衛局の特別督察隊隊長を務めている。何か困ったことがあったら何でも言ってくれ、力になろう。」
とチェンは答えながらしゃがみ込み、右手で頭を撫でながら、目線をイージスに合わせて微笑んだ。
「…へっ?あ?え?… ミ°ッッ‼︎」
とよく分からない声を上げて逃げてしまうイージス。流石にオーバーキルだったようだ。
「ああもう、途中まで良かったのに…。ごめんなさいね、チェン。彼女、かなり人見知りが激しくて。」
「ああ、構わんよ。…っと、少し話すぎたな…。そろそろ失礼させてもらう、また今度、手合わせでもしよう。」
「ええ、楽しみにしてるわ。気をつけてね。」
その言葉を最後にチェンはロドスを去っていくのであった。
「…うう、不甲斐ないです…。この調子で上手くやれるのでしょうか…。」
「…ま、貴方にしては頑張ったんじゃないの。少しづつ慣れていけばいいのよ、こういうのは。」
項垂れるイージスにそう励ますスカジ。
「…そうですよね。…よし、そう思えばそれなりにいい会話ができていた気がします!この調子で頑張りましょう!門も開いたことですし、行きましょうか!」
と、先程とは打って変わって嬉しそうに門をくぐるイージス。そんな彼女を見ながらスカジは
「…会話、してたかしら。」
と呟きながら、しかし、優しげな顔でイージスに微笑んでいるのであった。
「…なあホシグマ。」
「どうかしましたか?隊長。」
「私って、そんなに怖いだろうか…。」
「?」
というわけで初めての会話()相手はチェンさんでした。僕は彼女を持っていないので、キャラが違っていたら申し訳ありません。
チェンさんもいいですよね。僕は彼女やスカジみたいな、凛々しいクールキャラが性癖なので、いつか彼女もお迎えしたいです。
スカジはイージスちゃんのママだった…?
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移動
今回は少し短めです。僕的にはいつもこれくらいにしたいのですが、書いてるとあれも書きたいこれも書きたいってなってどんどん文字数が増えるんですよね。
その日、ロドスの中には不思議な光景があった。多くの人物が彼女とすれ違い、皆「えっ?」と彼女の背中、正確には彼女のマントを二度見した。もちろん、その渦中の人物である彼女とは、スカジのことである。
オペレーター・スカジの名を知らない者はロドス内にはいないだろう。数いるオペレーターの中でも、彼女の実力は上から片手で数えることができる。曰く、敵の重装を盾ごと両断した。曰く、巨大な化け物を単騎で討伐した。噂の真偽は定かでないが、彼女が相当強いことは誰しもが理解していた。ドクターも彼女の実力を信頼しているようで、実際、重要な作戦において彼女が呼ばれなかったことはない。
そんな彼女がここしばらくの間休暇を取っていたことは多くの者が知っていた。平和ではあるが、戦力があるに越したことはない、彼らは、スカジが無事に戻ってきたことに安堵しながら、彼女の背中を見送るのであった、否、見送ろうとした。
な ん か い る
彼女のマントが不自然に膨らんでいた。よく地面を見ると、確かに、そこには足が4本あった。ふと後ろを見ると、皆同じような顔をしながら彼女の後ろ姿を見ていた。その視線が突き刺さっているのか、マントの中の存在を気にしているのか、スカジは時折足を早めたり遅めたり、急に立ち止まったりしている。しかし、マントの中の人物もその度に加速減速し、スカジの動きを一切阻害することなく、しかし常に距離を一定に保っていた。顔を引きつらせるスカジ。「何あれすごい。」「凄まじい技術の無駄遣いだ。」と騒ぎ立てる周りのオペレーター達。いい加減痺れを切らした彼女は、自身のマントの中にいる
「…ちょっと!いい加減出てきなさい!さっきまでの威勢はどこに行ったの?」
「だってだって、何でこんなに人がいるんですか?13人ですよ?…13人ですよ?」
「2回言わなくて結構よ。」
「それに!何でみんなこっちを見てるんですか…。うう…人の視線が怖い。」
「こんなことしてたら誰だって目立つわよ…。ああもう、ほら、管制室まであと100mもないんだから、出てきてちょうだい。流石にこの調子でドクターに会うのは恥ずかしいわ。」
「無理です!」
「自信満々に言う言葉じゃないわ…。」
「そもそも!私、今まで貴方以外の人を見たことがないんですよ!それなのにいきなりこんなに人がいる場所に来たら誰だってこうなりますよ…。」
周りには聞こえない声量でそう会話をする2人。そうなのだ、イージスは今までスカジ以外の人間と関わったことがない。こうして、周囲に人の気配がたくさんあることも、彼ら彼女らの話し声が聞こえることも彼女にとっては初めての経験なのである。十数人とはいえども、彼女にとってはそれこそ、川を知らない子供に海を見せるような、そんなオーバーキルであった。
「…はぁ、分かったわ。管制室まではこれで許してあげる。けど、ドクターと話す時はちゃんと出なさい。私が恥ずかしいし、相手にも失礼よ。」
「はい…ありがとうございます…。…ごめんなさい、頼りない師匠で。」
「別に気にしてないわよ、それに、気配を隠してないことは貴方なりの誠意で、努力なんでしょう?貴方のそういう所、嫌いじゃないわ。」
そう答えるスカジ、なんだかんだ言っても、彼女は自身の師のことはよく理解していた。イージスはイージスなりに、周りにとっては大したことではないだろうが、努力をしているようだ。
「…あと、頼りないとか不甲斐ないとか、あまり使わないで。私の師匠は世界で1番強くて、1番頼りになる人なんだから。」
そう言い終えてから顔を赤く染めるスカジ、流石に恥ずかしかったみたいだ。
「スカジ…。」
「…ッ。い、いいから早く行くわよ!さっさとドクターに報告して、ゆっくり休みたいの私は!」
そう言って彼女は速度を早めた。彼女から距離を離さないようについて行くイージス。彼女のマントに包まれているため、誰も彼女の表情は分からない。しかし、
「…ありがとうございます。」
ーとても幸せそうな声で、そう呟くのだった。
おかしい…。本当は今日でドクターと話をする予定だったのに…!
初めはイージスちゃんにはスカジの裾を持たせようかなって思ったんですけど、よく見るとスカジって掴めるような裾が見当たらないんですよね。さてどうしようかと思ったら、マントの中に入ればいいじゃないという謎電波を受信してしまいまった結果が、今話になります。
マントも人1人隠せるほど大きくないじゃないか!と思ったそこの貴方!僕もそう思います。書いてから気付きました、許してください。きっと今日だけ大きいものを着ていたんです…!そういうことにしてください。
…けど、スカジのマントの中、ってすごいロマンありますよね。いや、かなり気持ち悪いこと言ってる自覚はあるのですが、けどすっごいいい匂いしそう。
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相対
今これを書いてすごく楽しいのですが、ちょっとリアルが忙しくなりすぎて、このまま毎日投稿を続けると睡眠時間がマッハで削れてしまいます。なので、明日からは少し投稿頻度を遅くしようと思います。
個人的にはいまめちゃくちゃいい所なので、この流れを切るのは楽しみにしてくださってる皆さんに申し訳ないです。ごめんなさい
前置きが長くなってしまいましたが、本編をどうぞ。
スカジとイージスが全話までのやりとりをしている頃、ドクターとアーミヤは膨大な書類に忙殺されていた。
「え!?何ブレイズまた訓練室壊したの!?」
「ドクター!ワルファリンさんが人間から作る薬に興味をもったらしく、外から死体を調達したいとの要望が!」
「却下!誰だ彼女にそんなこと教えたのは!また減給するぞって脅しておいて!」
「ドクター!」
「今度は誰⁉︎」
「グムさんが、食堂の調味料が少なくなってきたからそろそろ補充してほしい、あと、先日ある子がお気に入りの小皿を割ってしまったようで、新しいのを買ってあげたい、と。」
「うーんグムは天使かな?了承しといて。」
「分かりました!」
ここ最近は大きな争いもなく、多くのオペレーターが体力を持て余しているようだ。そのため訓練に気合が入りすぎて備品を壊したり、各々の趣味に身を投じた結果問題を引き起こしたりと、小さな問題が増えており、ドクターは文字通り理性を溶かしながらそれらに対処していた。ここ数日は特に忙しく、作業机の周辺には多くの紙が散らばっている。しかし、彼らの努力が実ったのか、ようやく問題の処理にも終わりが見えてきた。
「ふー…よし。残りは数件かな?どれも緊急性の高いものじゃないし、少し休憩にしようか。」
「まだ休んではいけませんよ。…と、言いたい所ですが、ドクターここ2日くらい寝てませんもんね。あまり無茶しても良くないですし、お昼くらいまで休みましょうか。」
「そうしようか。少し仮眠を取ろうかな。1時間後に起こしてくれる?」
「了解です。今何か掛けるものを持ってきますね。」
と、アーミヤが部屋の外へ出ようとした瞬間、ドアからノックの音が聞こえた。
「ドクター?いるかしら?スカジよ。」
「あ、スカジさん!戻ってきたんですか、あと1日休暇はありますが…。」
「久しぶりの長旅で少し疲れてね、明日は少しゆっくりしようかと思って、今日帰ってきたの?」
「なるほど!長旅お疲れ様でした。」
「ええ、ありがとう。ところで、ドクターはいるかしら?」
「いるよー久しぶりだね、スカジ。おかえり。」
「ええ、ただいま…って、なんだかすごく声が疲れているわね?大丈夫?」
「ああ、うん。ここ数日仕事が忙しくて、今丁度休憩に入ったところなんだ。」
「そう、アーミヤがいるから大丈夫だとは思うけれど、無理は駄目よ。」
扉越しに3人は会話を続ける。
「そうすると、少し時間を置いた方がいいかしら…。」
「おや?何か用事かい?」
「ええ、ロドスに帰ってきた報告と、」
それと、とスカジは言葉を続ける。
「師匠を連れてきたわ。」
「「ーーーーーー」」
つい思考が止まるドクターとアーミヤ。まさか本当に来たのかと、彼らは驚く。
「…あ、あの!お疲れのようなら、また後ででも大丈夫でしゅ!」
と、スカジではない声が聞こえる。おそらく、かの師匠の声だろう。彼女の声を聞くと同時に、ドクターは冷静な思考を取り戻す。
「…いえ、貴方との面会は非常に重要度が高い要件なので今会わせてもらおう。わざわざここまで来てくれたのに返すのも申し訳ないしね。…ただ、かなり部屋が汚れてるから、5分だけ準備させてくれるかな?」
「わ、分かりました!」
と、返事を聞くや否や大急ぎで床の資料を拾い始める。
「ごめんアーミヤ!もう少しだけ手伝ってくれ!」
「了解です!あ、ケルシー先生を呼んだ方がいいですか?」
「うん、一応連絡しておいて。」
「分かりました!…とりあえず、大急ぎで片付けましょう!」
バタバタと忙しそうに動き回る2人。一方その頃、扉のまでに立っているイージスは
「や、やりましたよスカジ!会話できました!」
などと小声で喜んでおり、スカジはそれに微妙そうな顔をするのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ぴったり5分後、2人は息を切らしながら、綺麗になった部屋を見て一安心した。
「ケルシーはどう?」
「連絡はしてみましたが、返事が来ません。…多分仕事中かと。」
「そう…まあ仕方ないね。今回は2人で対応しよう。」
「了解です。」
そこまで会話した後、2人は同時に深呼吸した。そうして息を整えたあと、ドクターは意を決して
「お待たせ、もう大丈夫だよ。」
と声をかけた。
ドアが開く。そこから現れた人物は2人。1人はドクターとアーミヤもよく知る我らがロドスのエース。そしてもう1人は、白を基調とした衣服を見に纏う少女であった。スカジの胸元までくらいしかない身長に、予想が外れたとアーミヤは驚く。そんな彼女は、かなり緊張しているのだろうか、顔を赤くして目線はあちらこちらへとぶれている。
「立ち話も何だし、そこにあるソファに座ってくれて構わないよ。」
「は、はい!しちゅれいしまひゅ!」
「「(あ、可愛い。)」」
噛みまくる師をみて呆れるスカジ。顔を赤くして俯くイージス。あまりに予想外な彼女の様子をみて、逆に緊張がほぐれた2人は内心でそう思うのであった。とはいえ相手の様子をアーミヤは心配して、
「あ、あの?大丈夫でしょうか?」
「…え、えと。その、あの……。……少しだけお時間もらってもいいですか?」
「うん、全然構わないよ。」
「あ、ありがとうございます。すいません、話すことに慣れていなくて、少し覚悟を決める時間が必要で。」
と言ったのち、何度も何度も深呼吸を繰り返すイージス。その様子をみてほんわかする2人、「コミュニケーション能力に難がある、ってこういうことか。てっきり相当な人嫌いかと思ってたよ。」と小さく呟くドクター。唯一その声を拾ったアーミヤもまた、小さく頷くのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
10分ほど経っただろうか、初めは顔を青くして震えていた彼女も、今ではだいぶ慣れたのか、落ち着いて様子で座っていた。
「ーーすいません、お待たせしました。」
「いや、全然構わないよ。それでは改めて、ロドスへようこそ。えーと、イージスさん?で大丈夫かい?」
「スカジから話は聞いているみたいですが、一応私からも自己紹介を、スカジの師匠をしてます、イージスです。さんはつけなくて構いませんよ。」
「そう、僕はここのドクターをやってる。こっちは、」
「アーミヤです!ロドスのCEOを務めています。」
「…これなら大丈夫そうね。ドクター、私は部屋に「スカジはここにいてください。お願いします。」…何でもないわ。」
「…ごめんなさい。私、あまり会話が得意ではないようですので、早めに終わらせましょう。」
と、そう言ったと同時に、彼女の纏う気配が大きく変化した。こちらを押しつぶすかのような、凄まじいプレッシャー。まるで戦場にいるかのように錯覚する2人はその背中に汗を滲ませる。
「私がロドスに滞在するに置いて、いくつかの取り決めをしましょう。私にも、譲れないことはありますので。」
そう言葉を続けるイージス。分かっていたことだが、絶対に舐めてかかれる相手ではない。震える体を無理矢理に押さえつけて、これからの対話へ覚悟を決めるドクター。
ロドスとイージスの関係のこれからを決める重要な話し合いが今、始まろうとしていた。
珍しくイージスちゃんがあまりキョドらない回でした。相手にするのは組織のトップなので、迂闊な姿は見せられないと彼女はかなり気合をいれています。真面目な話が終わった後は、たちまちに元のポンコツに逆戻りします。
ちなみにイージスちゃんの身長は139cmです。アーミヤより小さいです。
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会議①
今回のイベントのボス、皆さんはどう倒しましたか?僕はIQ3ドクターなので、「うおお!ラグナロク!イラプション!スカジ!」って感じの脳筋ナイツでしたね。
「それにしてもどうしたんだろうねー?食堂に集まれだなんて。」
「随分急なのが気になるな…。どこかで事件が起きたのかもしれないな、そんな兆候なんて無かった筈だが…。」
「それでも、今までオペレーター全員が集まるなんて重要作戦の前くらいだったじゃん。いきなりそんな大事件が起きるなんて考えられないなー…っと、着いたみたいだけど、もうみんなほとんどいるね。」
月が辺りを照らす頃、そう会話をする2人。その頭と背中に光輪と翼を持った快活そうな赤髪サンクタ族の女性は笑顔で、一方、そんな彼女と話しているのは、青とも黒ともとれる髪を伸ばした、どこか物静かそうなループスであった。
「ーっあ!テキサスさんにエクシアさん!お仕事お疲れ様です。」
「ソラか、今着いたばかりなんだが、私達が最後か?」
2人を見かけた途端、花の咲くような笑顔で話しかけるのは1人の少女。どうやら既に多くのオペレーターが集まっているようで、辺りでも多くの会話が起こっており、食堂は大いに賑わっていた。
「多分、ほぼ全員集まっていると思います。チェンさんみたいに今龍門などにいる人は除きますけど。」
「んーでもスカジがいないっぽいよ?」
「?スカジさんは今休暇で外にいるんじゃないですか?」
「それがさ!私、今日の朝あの子が帰ってきたのを見たんだ。そこでめちゃくちゃ面白いもの見ちゃったんだよねー。」
「面白いもの…ですか?」
「そう!なんかスカジのマントの中に人が隠れててさ!スカジも急に加速したり立ち止まったりしてたんだけど、結局何してもマントから出てこなかったの!」
そう手を広げながら説明するエクシアに、ソラとテキサスは怪訝そうな顔をする。
「昼にもその話を聞いたが、寝ぼけていただけじゃないか?彼女はそんなに人の接近を許すような人物じゃないだろうに。」
「あー…エクシアさん朝弱いですしね。」
「もー!ソラまでそんなこと言う。本当にこの目で見たんだってば!」
「しかし、もしその話が真実だとして、マントの中の人物は何者なんだ?少なくとも彼女の知り合いであることに間違いは無さそうだが。」
「んー、隠れてたからよくは分かんないけど、身長はかなり低いと思うよ。多分アーミヤくらいじゃないかな?」
「となると外で見つけた感染者の子供を保護してきた、とか?」
「…彼女には悪いが、彼女はそんなことをするタイプではないだろう。」
「…スカジの隠し子、とか?」
「ないな。」「ないですね。」
そう即答する2人。
「…もしかしたら、今回の招集の原因はその人物かもしれないな。」
「スカジさんの知り合いですからね、いやスカジさんが悪い人でないのはよく知ってるんですけど。」
「あれ?ソラってスカジと仲良いの?」
「んー。仲が良いかはわからないけど、この前歌を教えてもらったんだ。『精神に異常をきたす人が出るかもしれないから、人前で歌ってはダメよ。』って言われたけど。」
「…それは本当に歌なのか?」
「へー何それ面白そう!今度聴かせてよ!」
「えー?…責任取らないよ?」
「何それ怖い。…あ!ドクター来たんじゃない?」
「そうみたいだな。…スカジもいるな。」
「これはますますマントの人が怪しくなってきましたね。」
ドクターと共に歩いているのは3人の人物。2人は特に珍しくもない、多くの時間をドクターと共に過ごしているアーミヤとケルシーであったが、もう1人、普段は単独行動を好んでいるスカジの姿があった。
他のオペレーター達も彼らの接近に気づいてきたようで、スカジの1日早い帰還に驚きながら、食堂の中央へと道を開けていった。
そんな彼らに「ありがとう。」と言いながら中央へ向かっていくドクター達。中央に着いてから辺りを1度見回して、1つ頷いてから言葉を発した。
「みんな、急な呼びかけに応じてくれてありがとう。まだ来てない人達もいるみたいだけど、ぶっちゃけ来ないだろうなって予想してた子達だからそのまま話を始めさせてもらうね。」
その言葉に苦笑いを浮かべるオペレーター達、彼らも、おおよその検討はついているようだ。
「まずは、今日スカジが帰ってきた。とは言っても彼女の休暇は明日までだから、無理に仕事に付き合わせたりしないようにね。」
「おかえりースカジ!後でたっぷり話を聞かせてもらうから!」
「グラニ、今日は遅いからまた明日ね。」
「えー!明日は任務があるんだよ!ドクター!私も休んじゃダメ?」
「ダメです。」
「ええええ!」
変わらぬ
そんな彼女の悲鳴にオペレーター達も笑い声をあげる。
「ドクター?そろそろ本題に入りましょう?明日に仕事を控えているのはグラニだけじゃないでしょうし。」
「そうだねスカジ。それじゃあ本題に入ろうか。」
そう言うとドクターは今までの穏やかな空気から一転、まるでこれから戦場に向かうかのような重たい空気を放ち始める。それほどまでの大事件が起きたのかとオペレーター達は驚きつつも、これから話される内容に耳を傾ける。
「…こんな空気しておいてあれだけど、別に大事件が起きた訳ではないよ。実は4日後に、演習をすることになったんだ。」
その言葉に首を傾げるオペレーター達。演習なら普段の訓練でもやっているし、何だそんなことかと思い始めた時、爆弾は投下された。
「相手の名前はイージス。ここにいるスカジの師匠だ。」
と、ドクターは涙目でスカジを抱きしめている少女の写真をボードに貼って言った。
スカジに師匠?この写真の人物が?と、オペレーター達は言葉を失っていた。
テキサスさんの髪の色分かんない、間違ってたら許して。
ソラちゃんになんかやばそうなことを教えてるスカジさん、大丈夫?ここのソラちゃん攻撃力、防御力、最大HP+130%とかにならない?
会議回、思ったより伸びたので続きにします
ロドスVSイージス。もちろんロドスに勝たせるつもりは一切ありませんが、みなさんなら彼女相手に誰を使いますか?僕?当然相棒のスカジですね。
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会議②
周回は捗っていますか?僕はようやく熾合金が100に到達しそうです。まだR8-7を解放できてないので、もう少し稼いでおきたいですね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「では、まずは私の要求からさせてもらいましょう。私は武力的にも、技術的にも、ロドスには一切の協力をしません。これは絶対条件です。たとえ、ロドスが崩壊しようが、弟子のスカジが死の危機にあろうが、一切の干渉を行いません。まあ、その心配は全くしてませんが。」
そう話始めたイージス。彼女の目から、ここだけは絶対に譲らないという意思を感じる。
「おや、ずいぶんと買ってくれるんだね。」
「そんなの、貴方が今の私に臆せず会話できているだけで十分です。」
今のイージスはかなり強いプレッシャーを放っている。並の傭兵なら意識を保っていられないであろうこの空気の中、彼女に怯えることなく相対するドクターは武力はないけれど、間違いなく歴戦の戦士であった。
「そうかい。武力的、技術的とはどういうことだい?具体的に聞かせて欲しい。」
「言葉の通りです。レユニオン?でしたか?それを始めた組織との抗争の際、私は戦闘行為や物資供給等の協力を行いません。もちろん、相手に協力する、ということもしません。私は、完全なる中立の立場として存在します。そして、医療や化学技術に関する活動を行いません。ここのオペレーター達に武器を作ることはありませんし。たとえ、私が鉱石病の治療法を知っていたとしても、その情報は公開しません。」
「ー治療法を知っているのですか⁉︎」
「いえ。しかし、私はそれを創ることができる、それほどの力を私は有しています。」
「っ、ならどうして「アーミヤ。」っあ、ご、ごめんなさい。」
「…いえ、謝らないでください。貴方は間違っていない。間違っているのは私ですから、どうか、謝らないでください。」
「…はい。」
イージスの力は強力だ、いや、強力すぎる。彼女が本気になれば、おそらく世の中の全ての争いや病を無くすことすら可能だろう。しかし、だからこそ彼女の力は中立を保たれねばならない。ひとたび彼女の天秤が傾けば、他方には絶対の勝利が、その他には覆らぬ絶望が舞い降りる。それは、彼女の望むものではない。
彼女は何万もの命を見殺しにしてきた。彼女は何万もの命を見殺しにしている。彼女は何万もの命を見殺しにしていくだろう。負い目を感じているのだろう、イージスの瞳には深い悲しみ、後悔、懺悔の念が見える。しかし同時に、そこには揺るがぬ決意があった。理解はされない、納得もされない、間違っているのは自分だと、誰よりもイージス自身が分かっている。赦しを請うことはしない、否、できない。そんなイージスの様子を見て、アーミヤはこれ以上何も言うことができなかった。
「うん、話を戻そうか。まずは返答を、君のその要求は呑もう。要は、君はロドスで生活をするだけの一般人として扱えばいいって事でいいかい?一般人に戦闘や支援を要請するほど僕達は困ってないからね。」
「その解釈で構いません。すると問題になるのが、ここで生活するのにかかる費用なのですが…。」
「君は客人だから、その辺の出費はこちらで持つよ?」
「今はそれでも構いませんが、正直いつまでここに居るか私にも分からないのです。流石に何年も住むことになったらこちらが居た堪れません。」
「んーじゃあ家賃でも払ってもらおうかな?ただ、客人として招いたのだから、始めの1ヶ月はこちらが負担させてもらうよ。あと、今まで賃貸なんてした事ないから、詳しい家賃は後で教えさせてもらうよ。構わないかな?」
「大丈夫です。しかし、私はこれまで人との関わりを絶ってきたから、お金を持ってないんですよ。」
「別に師匠1人くらいなら私の給料でどうとでもなるわよ?」
「弟子に家賃を払ってもらうなんて言語道断です!ヒモじゃないですか!…そこで提案があります。」
「なんだい?」
「私はロドスの活動に一切干渉しない、と言いましたが、1つだけ例外を設けようと思うのです。私を、オペレーター達の訓練相手として雇う、というのはどうでしょうか?」
「「「!」」」
「師匠⁉︎本気で言っているの?」
「それは…僕達としては喜ばしいけれども、君は構わないのかい?」
「だからこその
「…」
「あっ、スカジさん照れてる。」
「アーミヤ 。」
「あっごめんなさい。」
「顔が笑ってるのよ。」
「ふふっ。さて、どうですか、ドクターさん?」
「…うん、それで構わないよ。むしろこちらからお願いしたいくらいだ。ただ、オペレーター達にどう説明しようかな?」
「ああ、説明なんて不要ですよ。簡単に認めさせる方法があります。」
「ん?なんだいそれは?」
「早速、私と闘えばいいのです。」
「…へっ?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「えーとつまり?その例のお師匠様とやらが私たちの訓練相手になるかどうかテストするってことでOK?」
「OKだよブレイズ、だけど君は最近訓練場を破損しすぎだ、後で説教ね。」
「うげっ、喋らなきゃ良かった。」
「しかし我が盟友よ、それならばなぜ全員を呼んだ?単純に彼女と戦う1人をお前が選べば良かろう?お前の判断なら誰からも文句はでないはずだ。」
状況を説明したドクターにそう質問をするシルバーアッシュ。他のオペレーター達も同じく疑問を抱いていたようで、彼の言葉に頷いている。
「まず1つめの理由なんだけどね、えーと…彼女は、その…えーと。」
「はっきり言って構わないわよ、ドクター。私もいい加減気を配るのが面倒になってきたのよ。」
「…スカジがそう言うのなら言わせてもらうかな?えーとね、写真からも分かるかもしれないけど、彼女、ものすごいコミュ障なんだよ。多分、ここにいる全員が1人1人会いに行ったら気絶しちゃう。」
「あー!だからあの子、スカジのマントに隠れてたのか!」
「エクシアの言っていたことは真実だったのか…。」
「え、まだ信じてなかったの⁉︎ひどいなーもう!」
「?マント?よく分からないけどまずはそれが1つ。それと彼女は続けてこうも言ったんだよ。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ールールは…そうですね?私は半径1mの円の中にいましょう。貴方達の勝利条件は、制限時間以内に私をその円から出すことにしましょうか。
敗北条件は、制限時間を超えるか、それまでに全員が戦闘不能になること。
ーあ、人数は何人でも構いませんよ。1人でも100人でも結果は変わらないので。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その言葉を聞いた瞬間、食堂の温度が一気に下がったかのように感じられた。
「…」
「…へえ、随分と舐めてくれるじゃない?」
「ほう?」
「んー?流石にそこまで言われると私もやる気になっちゃうなー?」
「うん、やる気になってくれたのはありがたいけど、僕が指揮できるのは12人が限界だ。だから今からみんなで、その12人を決めようじゃないか。あの子に一泡吹かせてあげよう。」
既に、戦いの火蓋は切られている。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーあ、あの!え、えと、その、へ、部屋は1人部屋か、せ、せめてスカジと同じ部屋にしてください!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
例えば、貴方が全世界の燃料の95%を所有していて、それを自由に扱えるとしましょう。当然、どこか特定の国のみにそれを渡すわけには行きませんし、じゃあもし全ての国に平等に渡したとしたらどうなるんでしょうか?それによって世界中が汚染されるかもしれませんし、戦争が起こるかもしれない。それならいっそ誰にも渡さず所持しておこう、というのがイージスの状況ですね。もちろん、世界の発展のためにそれを配るべきだ!という考えの人もいるかと思いますが、少なくともイージスはそう考えない人間なんです。一概にどちらが悪いとは言えないのかもしれません。
ぶっちゃけ12人も決まってないんですよね、もしよろしければ、皆さんがこいつだ!と思う子を教えてください。特に、僕はIQ3ドクターなので、テクニカルなキャラはあまり育てていないんですよね、このままだと脳筋で固めたような編成になるかもしれません。
イージスちゃん、1人部屋にするかスカジと同部屋にしようか悩んでいます。もしかしたらアンケート取るかもしれません。
イージスちゃんの詳細情報、知りたいでしょうか?あらかじめ言っておきますが、彼女は1人だけディスガイアの世界みたいなステータスをしています。何これふざけてんのか?と思うほど「ぼくがかんがえたさいきょうのきゃら」なので、ゲームのステータスで表すのすら馬鹿らしい程です。
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会議③
ドクター「それじゃ、早速話し合って行きたいんだけど、彼女の情報持ってるのスカジしかいないんだよね。だから、みんながスカジに質問をして、その返答を元に決めていきたいんだけど、いいかな?」
スカジ「私は構わないわ。」
ドーベル「では早速私から聞かせてもらおうか、彼女の武器は?」
ス「多分丸盾と槍ね。ちなみに右手に盾を、左手に槍を持つわ。けれど師匠、どんな武器でも扱えるからもしかしたら違うかもしれない、普段はこれを好んで使うんだけど…。」
ドーベル「どんな武器でもというと?」
ス「本当に全部よ。弓でも、短刀でも、素手でも。…素手であの人に勝てなかった時は、流石に少し落ち込んだわ…。」
ドーベル「本当に規格外なんだな…少し信じられない。」
エクシア「んーじゃあ盾と槍を使うって想定するんだったら、後衛を多めに使うのはどう?動かすことができるかは分からないけど、少なくとも一方的に攻撃できるじゃない?」
ス「あの人、槍投げてくるわよ?」
テキサス「は?なぜ唯一の武器を投げるんだ?」
ス「あの人、武器を増やすことができるのよ。」
エ「ん?アーツってこと?師匠さんって感染者だったの?」
ス「いえ、感染者ではないわ。あの人は『魔法』って呼んでるけど、持ってる武器とか、食料を複製?なのかしら?増やすことができるわ。」
エ「ええ…何そのファンタジー。急に信じられなくなったんだけど。」
ス「私もよく分からないのよ。けど、事実だからどうしようもないわ。後衛で固めるのはあまりおすすめ出来ないかも。」
エフイーター「んーなら私やウィーディで吹っ飛ばすのはどうだ?別に決定打を与えなくても、円の外に出すってんなら私たちの得意分野だろ?」
ス「師匠、私の全力の一撃を受けても一歩も動かないわよ?」
ウィーディ「私とリーフなら行けるわ!…と、言いたいところだけど、少し現実性がないかしら?」
ス「いえ、けれど、体制を崩してからなら可能性があるかもしれないわ。一考の余地はありそうね。」
真銀斬「次は私からだ。彼女の得意戦術はなんだ?」
ス「基本的にあの人から攻めてくることはないわね、攻撃を受け流してからのカウンターが主体かしら。」
銀「となると長期戦はこちらが不利になるかもしれない。こちらの最高火力で一気に攻め立てる方が良い。」
ブレイズ「分かりやすくていいじゃない!その子、今まで人との関わりなかったんでしょう?もしかして術師の攻撃は見たことないんじゃない?」
スカジ「…多分。師匠からアーツの特訓をされたことはないわね、そもそも、私はここに来るまでアーツの存在すら知らなかったわ。」
ソーンズ「毒は効くか?」
ス「毒…分からないわ。盛ったことなんてないし。」
アズリウス「しかし、毒は難しいでしょう。まずは攻撃を当てなければ意味がありませんし、空気中に撒くようなものは味方にまで影響を及ぼしかねません。」
イフリータ「…だー!もう!めんどくせえのは性に合わねえよ。さっき真銀斬も言った通り、小細工抜きでブッ放すのが1番だ!」
サイレンス「イフリータ、みんな真剣なんだから少し静かにしてなさい。」
サリア「しかし…あながち間違っているわけではない。そもそも、数の利は圧倒的にこちらにあるのだから。」
サイレンス「…確かに。スカジさんやシルバーアッシュさん達で相手を崩して、最後はウィーディさんが決める。単純だけど、その分分かりやすい。」
ドクター「となると、全員で攻撃のタイミングを合わせて、一気に叩きに行くのが良さそうだね。スカジ、どう思う?」
ス「いいんじゃないかしら?けれど、あまりに露骨だと、流石に向こうから攻めてくるわ、時間を稼がなくちゃいけないかも。」
ド「ふむ、なるほど。」
ス「あ、あと。彼らには悪いけど、医療オペレーターもいらないと思うわ。まともに彼女の一撃を受けたら、治療する前に一発退場になるから。」
ド「…わかった。」
ド「それじゃ、今のやりとりを参考に考えてみようと思う。明日の朝か、遅くても昼までには発表するよ。ほかに何か聞きたいことはある?」
ド「…うん、無さそうだね。それじゃあ、解散にしようか。夜にわざわざありがとう、明日仕事がある者はしっかりと身を休めるようにね。おやすみなさい。」
ケルシー「ブレイズ、お前は残れ。話がある。」
ブレイズ「げっ。」
そして翌日、そのメンバーは発表された。
シルバーアッシュ「近頃、なぜか名前で呼ばれないな。」
公式漫画のこれほんま笑った。ちなみに僕のロドスに彼はいないですね、はよこい。
メンバーは次会発表にします。実を言うとまだ少し迷っているので。あ、めちゃくちゃ脳筋編成になっています。
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開始
「それにしても驚いたな。あの時の少女がお前の師だったとはな。『スカジがお世話になっています。』とはそういう意味だったのか。なぜあの時教えてくれなかったんだ?」
「悪かったわね。あの時は少し疲れていたから、早くロドスの中に入りたかったのよ。話していたら長くなったでしょう?」
「む、疲労は大丈夫ですか?これから戦闘ですが。」
「大丈夫よ、ホシグマ。折角師匠と戦うんですもの、全力出せませんでした、なんてもったいないことはしないわ。」
「それは上々。しかし、スカジにそこまで言わせる程の豪傑なのですね、そのイージスという方は。」
「豪…傑というのは少し違うわね。まあ、これから闘うのだから、嫌でもあの人の実力を思い知らされるわ。」
「それは楽しみです。」
決戦の日の朝、スカジ、チェン、ホシグマの3人は、共に管制室へ向かっていた。移動中、イージスやこれからの戦いについての話をしているようだ。
「しかし、何ともすごいメンバーだな。スカジをはじめとしてシルバーアッシュにスルト、ブレイズにエイヤフィヤトラ…とても個人に対する戦力とは思えん。」
「隊長も大概ですがね。」
「それを言うなら貴方もでしょう、サリアと貴方2人がかりの守りなんて、レユニオン幹部ですら崩せないでしょうに。」
名を呼ばれた全員で作戦任務をしたことこそあるが、その戦力が
会話をしている彼女達の背後から1人、また新しい人物がやってきた。
「ちょっとー?話を聞いてりゃ何で私の名前が一向に出てこないのさ!」
「別にあなたに実力がないなんて思ってないわよ、エクシア。今回の作戦唯一の狙撃要員なんだから、期待してるわ。」
「そうなんだよねー、術師にはアーミヤもいるけど、私だけ1人かー、プレッシャー感じちゃうよもう。」
「その割には楽しそうですね?」
「うん!リーダーにも『今回は好きなだけ撃っていいよ。』って言われてるんだ!えへへ、スカジの師匠だからって容赦しないからね?」
「ええ、遠慮なくぶっ放してちょうだい。」
「え?君の師匠なんだよね?」
「あとはウィーディか。彼女は私たちの切り札になるからな、頑張ってもらわないとな。」
「ええ、そのためにも小官達が彼女に繋げなければなりませんね。」
「けど、もう1人はこれから発表なんでしょ?一体誰なんだろうねー?」
「さあ?実力で考えればある程度は絞れそうだけれど…。」
「んー?シュヴァルツとか?」
「ソーンズやバグパイプも可能性はあるな。」
「マドロックさん、でしょうか?小官は彼女と関わったことがないので、実力をこの目で見たわけではありませんが。」
そう、今回の演習参加者の11人は数日前に判明しているが、もう1人は当日の今でさえ分かっていない。各々が、実力を認めている人物を出し合い予想していると、4人な目的地へ着いたようだ。
「っと、管制室に到着したね。」
「扉は開いてるわね。ドクター?入るわよ?」
「やあ、おはよう4人とも。調子は…うん、全員良さそうだね。」
「皆さんおはようございます!今日はよろしくお願いしますね。」
「おや、それなりに早く着たつもりだったのですが、既に多くの人が集まっていますね。」
「うん、あとはスルトだけだね。まあ、集合時間まであと30分程あるし、気長に待とうか。」
「ところで、まだ分かっていないもう1人は誰なんだ?」
「大丈夫、ちゃんと呼んであるから、また後で紹介しよう。」
既にスルト以外の10人は集まっているようだった。残りの人物を待っている間、彼らは今日の演習の要点や作戦を確認し合っていた。それから10分程して、また1人の人物がやってきた。
「すまない、遅くなった。準備に時間がかかってしまった。」
「ケルシー先生!おはようございます。」
「ああ、おはよう。…どうやら、随分遅く来てしまったみたいだな。」
「まだスルトも来てないから大丈夫だよ。」
「イージスとの対話に参加できなかったのもそうだが、最近の私はどうにも事態に遅れをとっているな。反省せねば。」
複数の資料を片手に、ケルシーが部屋に入ってきた。ここにいる全員は、彼女がいつも通りドクターの補助をしに来たのだと思っていた。
「ケルシーさん、先輩のサポートいつもお疲れ様です!」
「ああ、ありがとうエイヤフィヤトラ。だが今回は「入るぞ。」…む、揃ったみたいだな。」
「なんだ?もう全員揃っていたのか?まだ20分もあるというのに、お前らはみんな暇なのか?」
「スルト!あんたねぇ、1番最後なんだからごめんなさいくらい言えないの?」
「ブレイズ、なぜだ?むしろ集合時間の前に来たのだから褒められるべきだろう?」
「はあ、あんたはそんなやつだったわね。まあ、今回は頼りにしてるわよ。」
「お前に言われなくても私のやることは変わらないさ。」
「っこの…。ほんっとうに可愛くないやつね…!」
スルトも入室し、そんな会話が繰り広げられる。ブレイズとスルトはどこかで会うたびにこのような言い合いをするため、ドクター達は特に気にしていない様子だ。ドクターは彼らのやりとりを静止に全員に聞こえる声で話始めた。
「よし、注目!これで全員揃ったみたいだね。それじゃ、これから作戦の確認をした後、決戦の地へ向かうことにしよう。」
「盟友よ、まだ1人来ていないぞ。」
「え?誰のことだい?」
「そんなの私達が聞きたいわ。もう1人のメンバーが来ていないじゃない?」
「何を言っているんだい、ウィーディ?だから全員揃ってるじゃないか。」
「え?どういうこと?ドクターにしか見えてない的なやつ?」
「エクシア、流石にありえないだろう…。しかし、スルトの前に来たメンバーは私たち4人だった筈…いや、待て、まさか。」
「何も言ってるんだい?ちゃんと
「…もしかして。」
「ああ、スカジ。私だ、今回の演習は私も参加する。」
「「「「「「「「「「は?」」」」」」」」」」
そう言葉にするケルシー。ドクターはお互いのすれ違いを理解し、なるほど、ど呟く。他のオペレーター達は皆驚いていた。
「うん、もう1人はケルシーでした。」
「待て待てドクター!そもそも彼女は戦えるのか?」
「問題ない、チェン。私とてそれなりの実力はある。」
「それなりでは困るわ、ケルシー。何せ今回の相手は正真正銘の『化け物』なんだから。」
「さっきから散々言ってるよねスカジ⁉︎本当に君の師匠なんだよね?」
「ああ、なら訂正させてもらおうか。ここにいる全員と遜色ない程度の実力はある、心配しなくていい。」
「…なるほど、しかし我々は貴方を考慮した作戦を組んでいないが大丈夫か?今から練り直すのは無理があるだろう。」
「それも問題ない、サリア。私は皆の作戦を理解している。私の攻撃手段は少し特殊でな、皆の邪魔をすることは一切無いから安心してくれ。単純に攻撃人数が増えたと考えてもらって構わない。」
「それならいいんじゃない?スルトの言葉を借りるわけじゃ無いけど、私たちのやることは変わらないんだからさ。」
ケルシーの参戦に驚きながらも、次第に皆納得し始めたようだ。ドクターは一度咳をすると、話を仕切り直した。
「んんっ。皆納得したようだから、話を戻そう。これから最終確認を行い、そのままイージスのところへ向かう。もう彼女は待ってくれている筈だから、あまり待たせないようにしよう。」
そう締め括ると、皆表情を真剣なものにして話をはじめる。そのまま、お互いに確認が終わった後、全員で外に向かうのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ロドスから数km離れた場所。あたり一面を見渡せる平原には、彼女とロドスのエース達の戦いを見ようと多くの人員で囲まれていた。彼らの戦いを純粋に楽しもうとする一般人から、イージスを見極めようと観察をするオペレーターまで、多くの人が集っていた。
しかし、ドクターとメンバー12人がそこに到着した時、あたりは静寂に包まれていた。彼らはある点を数百m離れて取り囲んでいた。そして、その中心から、呼吸を忘れそうになるほどの重圧が放たれていた。
ーそこには1人の人物が立っていた。
全身を真っ白な装束に覆っている。腕や脚には白を基調とし、金で装飾された防具をつけており、頭には顔を隠さないように後頭部を覆う金色兜がつけられていた。兜から溢れている美しいエメラルドの髪は、彼女の白をより美しいものにしている。
右手に持つは楯。彼女の顔よりふたまわりほど大きいそれには、金と緑で描かれた植物が記されている。
左手に持つは槍。それまでの華やかな装束や防具とは異なり、金色のみで構成された無骨なそれは、しかし、彼女の美しさを損なうことはない。
それらを身に包みながら、彼女は超然と立っていた。どこまでも神々しいその姿に、彼女から放たれる重圧に、声を出せる者なぞ、1人としていなかった。
彼女が13人の到着に気づいた、彼女はゆっくりとした様子で彼らを視界に入れる。そして、唯一、ドクターとのみ目を合わせた。
お互いに無言で見つめ合う。そうしてしばらく経つと、どちらからともなく頷きあい、目線を離す。言葉を超えたやりとりが、そこにはあった。
そして、イージスは彼らに声を掛ける。
「制限時間は2時間、それまでに私をこの円から出せば貴方達の勝利です。逆に、2時間経つか、それまでに私が貴方達を全滅させれば、貴方達の敗北です。貴方達の初撃とともに時間は進みます、タイミングは貴方達の好きなように。」
彼ら12人に緊張は見られない、むしろ、過去最高のコンディションを保っている。その様子に満足したように頷くイージスは、最後に、こう言葉を発して、以降、超然と彼らの攻撃に備えるのであった。
「では、始めましょう。貴方達の覚悟を見せてください。」
過去最高の長さですねこれは。
次回から戦闘が始まります。多分2日、3日おきに小出しされるのはじれったいと思うので、1週間後くらいにまとめて投稿します。しかし、ご存知の通り作者の戦闘描写はお察し()なので、あまり期待はしないでください
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方舟vs神楯①
さて、僕がそんな拙作を書いている間にどうやらお気に入り登録者数が100人を超えたみたいです。皆さん、こんな駄作への過分な評価、本当にありがとうございます。「皆さんの感想、お気に入りがモチベーションにつながる」なんて話は書く前までは「本当でござるかぁ?」なんて思っていましたが、本当なんですねこれが。もちろん催促しているわけではありませんよ?ここまで多くの方に評価していただいた作品を突然消すのは流石に申し訳ないので、消すことは致しません。しばらく経った後、ふとこの作品を見て「なんだこの読みにくい話は?」なんて笑い話にでもしていただければ幸いです。
「よし、作戦通り行くよ!ホシグマ!」
「了解!」
ドクターの声を合図に戦いは始まった。まず仕掛けたのはホシグマ、彼女の補助をするように、エクシア、アーミヤ、エイヤフィヤトラも攻撃を開始する。
「はあっ!」
そう声を上げながらイージスに攻撃するホシグマ。イージスは余裕を持ってその一撃を迎え撃ち、盾で受け流す。盾と盾が相当な勢いでぶつかった筈なのに、何の衝撃も訪れない。ホシグマはまるで、水を叩いているかのような錯覚を受けた。そのままホシグマを攻撃しようとするイージスだが、それは後衛達によって放たれた弾幕によって遮られる。しかし、彼女がひとつ槍を振るえばそれらの勢いは途端に減衰し、彼女に届くことはなかった。これには思わずエクシアも「嘘でしょ!」と声をあげる。
一方でイージスは、
「(あの攻撃は…例の源石を媒体に放っているようですね。茶髪の彼女からは炎ですが、アーミヤ氏のあれは何でしょう?少し警戒しておきましょう。)」
その時だった、突如としてイージスの目の前に影が現れる。それはイージスより低くなるほど身を落とし、鞘から剣を抜刀しようとしていた。
ー刹那、赤色の斬撃が咲き誇る。
「ーちっ、駄目か。」
「いい攻撃でした。しかし、まだ足りない。」
しかし、その一撃は防がれる。だがチェンもそれは予想していたようで、すぐさま体制を整える。油断なくイージスの一撃を捌き、ホシグマと共に追撃する。今まで共に数多くの修羅場を潜ってきたチェンとホシグマ、この2人の連携は元々高い彼らの実力をさらに高みに押し上げる。1+1が2になる筈が、この2人では何故か10になってしまっている。しかし、それでもイージスには届かない。彼らの攻撃を油断なく受け流し、遠方から来る弾幕を無効化する。時折、彼女からも一撃が放たれる。
一方で、他のオペレーター達も何もしていないわけではない。まだ姿を現していない者もいるが、シルバーアッシュやブレイズ、スカジは時折イージスを牽制しながら力を温存している。そしてケルシーは、後衛達よりも遠方から戦闘を俯瞰し、チェンやホシグマを補助していた。
「(思っていた以上にケルシー殿が有能だ。いいタイミングでこちらを回復してくれる)」
そう内心でごちるホシグマ。現状、状況は作戦通りに進んでいる。イージスの一撃は強力でこそあるが、油断なく構えれば避けることも受けることもできている。一撃に全力を注ぐロドスにとって、今の進展しない状況はむしろ好都合であった。
しかし、スカジだけは違った。この場で誰よりもイージスを理解している彼女は、イージスに攻撃を仕掛けるホシグマを見て声をあげる。
「…違う!彼女の攻撃は
しかし、その言葉は遅かった。この時、イージスは初めて
「ホシグマさん!」
「力を温存しているのは、そちらだけではありませんよ。」
「っ。サリア!ケルシー!」
「「了解!」」
ホシグマの代わりを務めるようにサリアが前線に現れる。それと同時にサリアはアーツを発動させる。ごく僅かにだが、イージスの動きが遅くなる。その好機を逃すほど彼らは愚かでない。チェンを始めとする全員がイージスに攻撃を仕掛ける。
しかし、イージスはそれすらも全て守りきった。チェンの刀を盾で受け、サリアの盾を槍で弾く、その勢いのまま槍を振り抜き、遠方の攻撃を全て無効化する。イージスは攻撃を仕掛けようとするが、それはシルバーアッシュとブレイズに阻まれる。
何とか戦闘を保っていられるが、状況は徐々に悪いものになっていく。サリアも相当な実力者ではあるが、チェンと共に、となるとどうしてもホシグマには劣ってしまう。さらに悪いことに、あれ以来、イージスの一撃はありえないほど重く、早くなっている。受けるという選択肢が消えるはおろか、回避すら難しくなった。サリアやケルシーの回復も追いつかなくなり、彼らの体の傷は増えていく。さらに、攻撃が緩むとイージスは手に持つ槍を遠距離オペレーターに投擲し始めた。幸い、今の所後衛達にダメージは無さそうだが、イージスの攻撃を備えようとすると攻撃が緩み、攻撃が緩むとイージスが槍を投げる、それを見てさらに攻撃が緩んでしまう…という悪循環に陥っていた。明らかに、軍配はイージスに上がっている。
「ーがっ!」
「チェン!」
さらにそれを深くする事態が訪れた。とうとうチェンがイージスの一撃を受けてしまった。無理はない、この中で唯一の前衛オペレーターである彼女は、いくらサリアやホシグマが防御を肩代わりしてくれるとはいっても、常にイージスに攻撃を仕掛けねばならない。攻撃を仕掛けるだけではなく、そのあとの回避にも多大な集中力が要求される。ここにきて、彼女に限界が訪れたようだ。
チェンが崩れてからは一瞬であった。守りに徹することしかできなくり、そのままサリアも脱落してしまった。流れる勢いのまま、次の槍をエイヤフィヤトラに放とうとしたその時、彼女は現れた。
「まさか本当に私が
「…時間稼ぎなどと、私の前で言っていいのですか?作戦がバレてしまいますよ?」
「ふん、既に気づいている奴が何を今更。それに、私は負けるつもりなど毛頭ないからな。」
「なるほど、では、お相手
「…初めから全力で行くぞ!」
ー神楯は、未だ動かず。
この作品には独自設定を置いています。それが、「オペレーター、スキル複数使うことできんじゃね?」です。今回登場しないみんな大好きWさんを例に挙げるならば、この作品内のWは戦闘中、S2の地雷を仕掛けながら、S3の爆弾を相手につけることが可能になっています。これくらいなら大丈夫だとは思いますが、念のため独自設定タグをつけさせていただきます。ちなみに、スカジのS1とS3のような、効果が被っているようなスキルは同時に使えません。
もしゲーム内でもこれが適用されたら、評価が大きく変わるオペレーターいそうですよね。パッと思いつきませんが。
アンケートが多くて恐縮ですが、イージスちゃんの部屋をどうするかのアンケートを取ろうと思います。ぜひご協力ください。なお、スカジ以外のオペレーターと同部屋の意見の方は、誰がいいかコメントください。予め言っておきますが、どれだけこの票が集まっても採用されない可能性があります。作者のイメージに合えばワンチャン、程度なので、あまりこの票に期待はしないでください
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方舟vs神楯②
「…初めから全力で行くぞ!」
スルトが宣言すると同時に、辺りは炎に包まれる。炎は2人の周りを囲い、他のオペレーターは手出しができなくなっている。今、この場にはイージスとスルトの2人だけが存在していた。
「…何故数の利を活かさないのですか?」
「私1人で充分だ。」
「…なるほど。」
「…?何がだ?」
「いえ、何でもありません。…失礼、戦場ではあまり喋りすぎるものではありませんね。」
「全くだ。」
「では…、どこからでもどうぞ。」
「後悔するなよ!」
その言葉と共にスルトは攻撃を開始する。通常ではありえない熱量をもった彼女の剣が、空気を焦がしながらイージスに振り下ろされる。イージスが盾で受けた時、ぶつかった場所で激しく炎が発生し、それはまるで意思を持っているかのようにイージスに迫る。
「(…!まったく、よく分かららない力を使いますねロドスは!私よりも常識がないんじゃないですか?剣というよりもアーミヤ氏に似ている攻撃ですね。)」
内心でそうぼやくイージスだがダメージを受けている様子は一切ない。炎を槍で掻き消し、続く攻撃を防いでいく。スルトは攻撃を続けるが、イージスは平然とそれを受け流す。まるで葉の上を滑る水滴のように、攻撃の一切がイージスに届くことはない。
互いの攻防はしばらく続いたがしかし、その均衡はイージスによって終わりを迎える。イージスの槍がスルトの腹に当たる。あまりに重いその一撃に、スルトは顔を歪め、半ば吹き飛ばされるように後退する。
「はあっ…はあっ…。…まさかここまで通用しないとはな、
そう話すスルトにはしかし、余裕なんてものは存在しない。彼女の腹部からは血がとめどなく流れ、息も絶え絶えである。一方、イージスには疲労の様子はなく、炎によって体の一部が煤けてこそいるが、怪我や傷は見られない。
「…撤退をおすすめしますよ。急所は避けましたが、あまり無茶をしますと流石に死に関わります。今すぐ治療を受けるべきです。」
彼女なら相手を傷つけずに倒すこともできたが、相手は自分を殺しにくるほど全力を尽くしている。そこまで本気の相手に加減をするのはイージスの信念が許さなかった。しかし、あくまで彼女らがしているのは演習。死者を出すのは気が引けるという理由から、そして何よりのイージスの良心からそう声をかける。それに対するスルトの返答は、
「…ふふふ。あっははは!」
ー大笑いだった。
「…?何かおかしなことを言ったでしょうか?」
「…24勝13敗2引き分け、これが何の数字か分かるか?」
「?貴方とスカジの戦歴でしょうか?」
「…いや、その通りなんだが、もう少し空気をだな…。」
「?」
「あー、いや、何でもない。…くそ、調子が狂う。それで?それを聞いても何とも思わないのか?」
「実は少し。貴方には申し訳ありませんが、
「察しが良すぎだろう…。…認めるのは悔しいが、事実、実力ならあいつの方が上だろう、本っっっっっ当に癪だが。」
「すごい溜めましたね。」
だがな、とスルトは続ける。
ーーー
刹那、スルトの体が炎に包まれる。それは、神すら殺す終わりの炎。周囲を焼き尽くしながら、
彼女の背には、アーツで創られた大きな黒の巨人が。スルトの剣を持った、終末を導く死の巨人が。
相対するイージスは油断なく構えながら、しかしこうため息をついた。
「…最早、何でもありですね。」
「さあ!第2ラウンドの開始だ!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーラグナロク
彼女がそう呼ぶこの技は、数あるロドスの切り札の1つである。レユニオン幹部を始めとした強敵との戦闘の際に使われる大技。彼女は、この技を磨いて他のエースオペレーターと競い合ってきた。その一撃は圧倒的な破壊力と熱量を持って相手を、その周囲を滅却する。文字通り、この技を使った彼女の前には、草の1本すら残らない。
今回も同じ、これを発動したが最後、辺りには灰すら残ることはない。
ー筈であった。
スルトが攻撃を叩きつける。イージスが守る。炎がイージスに迫る。イージスが槍を振るう。
スルトが攻撃を叩きつける。イージスが守る。炎がイージスに迫る。イージスが槍を振るう。
スルトが攻撃を叩きつける。イージスが守る。炎がイージスに迫る。イージスが槍を振るう。
スルトが攻撃を叩きつける。イージスが守る。炎がイージスに迫る。イージスが槍を振るう。
スルトが攻撃を叩きつける。イージスが守る。炎がイージスに迫る。イージスが槍を振るう。
スルトが攻撃を叩きつける。イージスが守る。炎がイージスに迫る。イージスが槍を振るう。
ー終に、イージスの槍がスルトの心の臓を貫いた。
それから数秒、まるで断末魔のように攻撃は繰り返された。しかし、その全てはイージスには通じない。
炎はその穴を治すことなく、巨人は次第に動きを止める。
「ー何が足りなかったんだろうな。」
「…そうですね。強いて言えば、もう少し仲間を頼るべきでしたね。」
「
ー…強いぞ。
そう言い残して、
ーブゥンブゥン!
それは、チェーンソーの音であった。
次に聴いたのは歌であった。酷く冒涜的な、深海の底に呑み込まれそうになる歌。
ーPh'nglui mglw'nafh Cthulhu R'lyeh wgah'nagl fhtagn!Ph'nglui mglw'nafh Cthulhu R'lyeh wgah'nagl fhtagn!
銀の煌めきが、宿りし王の力が、今にも噴火しそうな火山が、恐ろしい化け物が。
ーブゥンブゥン!…グルルルル…。グルルルル。
チェーンソーの音は次第に、神を喰らう狼のように。
イージスは理解する。
「さあ、貴方達の力を私に見せてみろ!」
ー神楯は、未だ動かず。
イージスちゃん、察しが良すぎるせいでぐだぐだになっちゃう。戦闘中にあまり喋るなとは一体なんだったのか…?
Q.ブレイズのチェーンソーの音をフェンリルに例えるのは無理矢理すぎでは?
A.ワイトもそう思います。許して。
Q.スルトボコボコにされすぎでは?
A.僕もそう思う。いや、別にスルトが嫌いなわけではないんです、むしろ好き(突然の告白)。けど、うちの作品ではスカジさんの方が強いんやぞ、というのをはっきりしたくて今回の話を書きました。そしたらあらびっくり、スルトちゃんボッコボコ。許して。ちなみに、ここのスカジさんはイージスちゃんとの修行によってステは原作より高いです。
うちのスルトさん、多分原作よりも少しマイルドな性格をしています。イージスちゃん曰く、「傲慢7割優しさ3割」だそうです。だいぶ自身を驕ってはいますが、それなりに周りと協力はしますし、そこそこの心配もします。
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方舟vs神楯③
ロドス「なんで攻撃が効かないんだ!?」
イージス「ロドス不思議な技使いすぎでは?」
僕「ふえぇ…。どうやってイージスちゃんこの攻撃の中無双できるのぉ?訳わかんないよぉ…!どうやって書けばいいのさ!」
「鮮血が武器を染め、戦場を沸き立たせる!」
「――汝らの哀鳴、我が威光に掻き消されたり――。」
「私が、怖いですか?」
「銃弾の雨で、あなたたちを苦痛から救済しよう。」
「この身に纏う悪夢よ、唄え。」
「これでどうです!」
「Mon3tr。」
各々がそう声を上げる。イージスの近くにはブレイズとスカジが、その少し後ろにはシルバーアッシュ。それを見下ろすように、巨大な黒の獣が。大きく離れてエクシア、アーミヤ、エイヤフィヤトラが、遥か遠方にケルシーが。イージスの四方を取り囲むように位置し、一斉攻撃を開始する。
「…流石にっ、数が、多いですね…!」
スカジがイージスへ切り込み、ブレイズとシルバーアッシュが追撃を与える。防御するイージスの後ろや左右から後衛達が攻撃を放ち、頭上からはMon3trの鋭い爪が迫る。動ける範囲が狭く、回避を取れないイージスはそれらを全て受ける。右手の盾で前衛達の攻撃を受けたらすぐに盾を捨て、『魔法』で槍を創る。左手の槍で後衛達の弾幕を弾き、同様に今度は槍を捨て盾を創る。右手の槍でMon3trの一撃を逸らし、再び迫る前衛達の攻撃を今度は左の盾で受けまたそれを槍に持ち変え…。
と、被弾こそしていないものの、流石のイージスであっても防戦一方であるようだ。しかし、ロドスも余裕がある訳ではない。彼らのほぼ全てが今使っている技は彼らの切り札。そもそも長く続くものではないし、これが凌がれたらロドスの勝ち目はほぼなくなる。今までで1番の手応えを感じてこそいるが、まだ一撃すら与えられていないことに僅かな焦燥が生まれる。そんな内心を押し殺し、彼らは攻撃を続ける。
「だいぶ無茶をするが…仕方ない。」
ー目覚めよ。
そうケルシーが宣言すると、Mon3trは濁った橙のオーラを纏い、その身体からは赤黒い瘴気が漏れ始める。途端、Mon3trの攻撃は激しさを増した。急に早くなったMon3trの一撃にイージスは槍で対処するものの、あからさまに重くなった一撃を逸らしきれず、とうとうその一撃がイージスの右肩に傷を与えた。
「ーっ!」
「「「よしっ!」」」
傷は軽微ではあるものの、初めて浴びせた攻撃。イージスとて無敵ではないと、彼らは僅かに希望を持つ。イージスは攻撃の変化に対応できず、そのまま二撃目、三撃目と、彼女の体に傷が生まれていく。
ーついに防御が追いつかなくなった!このまま削れる!
と、彼らだけでなく、周囲のオペレーターまでもが確かな希望を持った。
そのままスカジが新たに攻撃を仕掛けた。
その時。
ーっダン!!!!!
と、イージスは
「っ!しまっ」
そう誰かが漏らしている最中、振り回した槍の勢いをそのままに、イージスはMon3trの頭部に槍を穿つ。その槍は、光を超えていた。この場にいる者全てが槍の軌跡を見ること能わず、まるで、初めから何もなかったかのようにMon3trの頭にはぽっかりと大穴が空いていた。
一方、イージスとて無傷ではなかった。無理矢理彼らを引き離すためにスカジの一撃を彼女の右腕の防具で敢えて受けたために、右手の防具は壊れ、彼女の美しい白い肌が露わになっている。さらに、Mon3trが倒れた時、Mon3trの瘴気がイージスを包んだ。それによって、少なからずダメージは与えられたようだ。
ロドスのメンバーが再び攻撃を仕掛けるまでに数秒、僅かな時間ではあるが、イージスにとっては十分であった。
「(少々無理はしましたが、もんすたー?とやらは撃破しました。しばらくは復帰できないでしょう。あの医師にもダメージが入っているようなので、何かしらの繋がりがありそうです。しばらくは他の方の回復もできないでしょう。それに、未だに戦場に出ていない1人、一目見ただけですが戦闘能力は高く無さそうでした。おそらく私を動かすための切り札、勝負の分かれ目は彼女の攻撃でしょうね、警戒しなければなりません。)」
「まだ諦めないで!向こうにも確実にダメージは入ってる!」
そう言いながらブレイズはイージスに攻撃を仕掛ける。それに応答するように、他のオペレーター達も追撃を与えていく。しかし、Mon3trが居なくなった分、攻撃の密度は小さくなり、イージスにも余裕が生まれる。それに、イージス自身もこれまで経験したことのなかった大人数の攻撃の対処に慣れ始めた頃だった。
「…もうそれは効きませんよ。」
油断なく彼らの攻撃を受け流し、イージスの槍はブレイズの腹部へと命中する。ブレイズは痛みで顔を歪ませるが、
「あまりエリートオペレーターを舐めてもらうと、困っちゃうかな!」
と叫び、気合でその場に踏みとどまる。そのまま彼女はアーツで高音にした自身の手を傷口に当て、熱で傷を塞ぐ。
「…発狂するほどの痛みでしょうに、よく叫ばずにいられますね。」
と、ロドスの攻撃を防ぎながら1人呟くイージス。その声はどうやら彼女の耳に届いたようで、
「私にもエリートオペレーターの意地があるからね!…とはいえ長くは持たないから、最後の一撃、全力も全力で行くよ!」
と言うや否や、彼女は流れた血て自身のアーツを最大限に強化する。最早真っ赤になったチェーンソーで、イージスへと迫る。
イージスは盾でそれを受けるが、攻撃を受け流しても受け流しても、彼女はイージスとの距離を離さず、執念で攻撃を続ける。必然的に、イージスは彼女の攻撃を受けながら、片手の槍で他の攻撃を凌がなければならない。
「ええ!最後まで足掻いてみなさい!」
攻撃が緩んだ僅かな隙を逃さず、イージスはそう返事をしながらブレイズに槍を放つ。しかしそれでもブレイズは怯まず、逆に流れた血を使ってさらにアーツの威力を高める。
ブレイズがもう長くは持たないことは他のオペレーターも分かっている。彼女の最後の一撃を無駄にしないように、彼らは限界を振り絞り攻撃を続ける。エイヤフィヤトラが、アーミヤが、シルバーアッシュが、誰一人余裕のない様子で、普段の彼らからは想像もつかないような雄叫びを上げながらイージスへ迫る。
ーそしてそれは、今戦っている者だけではなかった。
この戦いを見ている全てのオペレーターが、ロドスの人材が、声を上げていた。負けるな、頑張れ、勝てるぞと、普段は臆病で自信のない者が、自分勝手な振る舞いを見せる者が、病に苦しみ死に怯える者までも。ロドスは今まさに、1つとなって神楯に牙を向けていた。
そんな方舟の攻撃をイージスは受けていた。ただでさえブレイズの攻撃を受けなければならないのに、槍のみでは他の攻撃を守りきれず、彼女の体には1つ2つと傷が増えていく。しかし、どれも致命的な攻撃は防がれ、その傷は全て軽微なものであった。
そしてそのまま、決定打を与えることなく、とうとう時間切れが訪れた。始めはエイヤフィヤトラが、次にシルバーアッシュが、続くように彼らは自身の切り札をこれ以上放つことができなくなり、イージスに攻撃が通らなくなる。そして、ブレイズにもとうとう限界が訪れた。
「あー…駄目だったかぁ…。」
「悔いることはありません、素晴らしい攻撃でした。ここまで攻撃を受けたのは初めてですから。」
「まあ、負けは認めるしかないかな。
「…」
「まだ、
そう言うと、彼女を中心に大爆発が起こる。あたりは砂煙に覆われ、周辺を見ることは出来なくなる。
イージスは予感する、きっと、この攻防が最後だと。彼らは、これから放たれる私を動かす一撃のためだけに、ここまで積み重ねて攻撃を続けてきたのだと。
イージスは目を閉じ、彼らの攻撃を待つ。すると、ある一つの声が聞こえた。それはイージスへの名乗りのような、ある種1つの宣言であった。
「こちらチェン。」
ー神楯は、未だ動かず。
※スルトもブレイズも死んでません。
色々調べたんですが、Mon3trが倒される際の演出が分からなくて、勝手な解釈で書かせてもらいました。違っていたら申し訳ない。いや、どの動画見ても、Mon3trが倒れる前に敵を倒して撤退しちゃうんですよ。だから僕は悪くありません、強すぎるケルシーちゃんとMon3trが悪いんです(責任転嫁)。
ちなみに、Mon3trですが、約9mあるみたいです。見た目の割にすっごく大きいですよね。
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方舟vs神楯④
「こちらチェン。」
そう宣言が聞こえるや否や、辺りには3つの気配。その内の1つは赤い閃光と共にイージスの前に現れた。しかしそれはイージスには既知の攻撃。初見ですら防がれた攻撃が彼女に通用する訳がない。無論、チェンはそれを承知の上であった。すかさず次の攻撃に移る。
「… 絶影。」
10の煌めきがイージスを襲う。瞬きする間もなく放たれたそれを、イージスは盾で、槍で受け流す。
「…絶影。」
先程までの戦いを見て何も感じないチェンではない。彼らの尽力に応えるように、チェンは限界を超えて技を放つ。10の煌めきは次に20となってイージスへ迫る。しかし、彼女にはそれでも届かない。
「…絶影!」
骨が軋み、肉体が悲鳴を上げる。そんなこと知ったことかとチェンはさらに攻撃を放つ。イージスが自身へ迫る攻撃を対処しようとしたその時、彼女の身体はピシリと動きを止める。横を見るとそこには半透明な盾を持った1人のヴィーヴル、サリアであった。
「凝固しろ!」
そう力強く叫びアーツの発動に全力を尽くす。今までそれを使うに値する敵がいなかったため使われることはなかったが、サリアの盾はアーツロッドとしての運用も可能である。サリアが文字通り死力を尽くし、イージスの体内にあるカルシウム元素を操作する。身体中に1%も存在するそれは、イージスの動きを完全に固めるには十分すぎる。イージスという水は今、完全に凍りついた。
驚く暇もない。イージスは無理矢理腕を動かし、チェンの攻撃を受け流す。盾を構えた右腕は、その骨が嫌な音を立ててひび割れる。30にも及ぶチェンの攻撃全てを捌くことは叶わなかったがしかし、少なくない傷を負う。半ば意識を失いかけているチェンを盾で吹き飛ばし、そのまま槍をサリアへ穿つ。その際、槍を持っていた左腕に激痛が走るが、イージスをこれを無視する。槍は盾へぶつかるが、アーツの発動に全てを尽くしていたサリアは踏ん張ることなどできず、盾と共に吹き飛ばされる。2人とも、自身の限界を超えて力を使っていたのだ、もう戦線に戻ることはないだろう。
サリアが気を失ったのか、体が動くようになる。右腕の骨はひびが入っているものの、折れているわけではない。イージスが『魔法』で左手に槍を創ろうとしたその瞬間、ホシグマがイージスへと自身の盾を叩きつける。イージスは油断なくそれを受け流すが瞬間、ホシグマは盾を捨ててイージスの左手と盾を掴む。
「貴様には悪いが、力勝負に付き合わせてもらおう!」
そう叫びイージスを押し始めようとする。しかし、どこにそんな力があるのか、彼女はびくともしない。彼女は一言、
「それは…助かります。」
と言うや否や、イージスも盾を捨て、そのままホシグマの手首を掴んで投げ飛ばす。
3つの気配の持ち主は全て現れたが、まだ油断はできない。
「(まだです!まだ切り札であろうあの少女が来ていない!彼女が来るまでは気を緩めてはいけない!)」
そう自分に言い聞かせるイージス。その次に現れたのは一匹の巨大な化け物と、辺りを炎で包んだ巨人であった。
「そう簡単
「生憎、今回は私の初陣でな、少しくらい意地を見せなければ示しがつかん。」
と2人。続く言葉は重なった。
「「出し惜しみは無しだ!行くぞ!」」
「ラグナロク!」
「Mon3tr。私に続け!」
初めからスルトは炎を身に纏い、Mon3trは禍々しい瘴気を漂らせる。
イージスは盾と槍を構えて相対する。
「(赤髪の方はしばらく耐えれば良いみたいですし、問題はあのもんすたーですね。)」
一度イージスの行動を見ている2人は、イージスに攻撃を溜めるのを許さない。彼女が一歩踏み込もうとすると、すぐさま攻撃を激しくする。イージスは攻めあぐねていた。とはいえ、それではいつか2人の限界が来てしまう。このままではジリ貧である。
ーなら、彼女らがやることは1つしかない。
攻めて攻めて攻めまくる。自身の体力も気力も何もかもを使ってイージスに攻撃を仕掛ける。カウンターなど許さない、そんなものが来る前に次の攻撃を放つ。
しかし、イージスには一歩及ばない。彼女はMon3trの攻撃をスルトの方へと逸らす。スルトが怯んだその一瞬が決定打となる。まるで1回目の再現をするかのように、イージスが放った槍がMon3trの頭部を貫通する。しかし、前とは違いMon3trが倒れる際に漏れ出る瘴気が彼女を蝕むことはなかった、イージスは既に対策ができていたらしい。
残るはスルトのみ、ではない。イージスは件の少女が現れるまで、一度も警戒を怠らない。
「くそっ!だが、まだ終わらんぞ!」
そうスルトがそう叫ぶ。そして、スルトが攻撃を仕掛けたその時、イージスの背後から炎を抜けて何かが飛び出してくる。
「(来た!)」
イージスは盾でスルトの攻撃を受け流す。槍で炎を掻き消しながら、その勢いのまま後ろを向き槍を投擲する。槍を受けたのは今まで戦場に来なかったロドスの切り札
ー
そこにいたのは緑髪の鬼、先程吹き飛ばしたホシグマであった。槍を受けた彼女はおびただしい量の血を流しながら炎の方へと吹き飛ぶ。しかし、その顔は笑っていた。一瞬惚けるイージスの後ろ、炎となったスルトの身体から、小さな影が飛び出す。彼女こそ、ロドスの切り札。
「行くわよリーフ!さあ、吹っ飛びなさい!」
ウィーディが、LN2キャノンを発射する。圧縮された液体窒素はイージスへ向かっていき、彼女を吹き飛ばそうとー
「ーっ。負けてたまるもんですか!」
イージスはすぐさま振り返り、右手の盾で勢いよく射出された液体を叩きつける。しかし右腕は十全でない。僅かであるが、イージスが動かされていく。それでもイージスは諦めない。ウィーディの攻撃が終わった時、イージスの体はまだ円の上にあった。しかし円の線は彼女の足にギリギリ触れていない程度のものであり、防御がギリギリのものであったことが分かる。イージスはすぐさま槍を創り、ウィーディへ穿つ。戦闘能力そのものがあまりないウィーディは避けることなど能わず吹き飛ばされる。
「まだだ!」
そうスルトが叫び文字通り最後の一撃を叩き込む。しかし、イージスはそれを受け流す。炎はイージスの肌を燃やしていくが、彼女はその場を動くことはない。
勝った、そうイージスが思った時だった。
ースルトが、笑いながら消えていく。
またまた後ろから1つの気配。瞬間、イージスは悟る。
ああ、何をしていたんだ自分は。
「ーはああああぁぁぁ!」
ー
「ーどうだ?私の
そう言い残して、青きオーラを纏うライバルに全てを任せながら、スルトは完全に消えたのだった。
ー方舟、神楯を動かす。
サリア様のアーツ、「カルシウム元素とその化合物を操る」とか、個人的に作品内ぶっちぎりで頭おかしいと思うんですよね。異格で術サリアとかでたらやばそう(小並感)。まあありえないとは思いますが。
これまでに弟子の影薄すぎないか?と思った方は少なくないと思いますが、こういう訳だったんですね。
思っていた100倍は接戦です。僕が1番驚いています。何もかも彼らのアーツが強力過ぎるのが悪い(責任転嫁)。
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方舟vs神楯⑤
これは、スルトとケルシーがイージスと戦っている時のこと。ブレイズの爆発による砂煙が晴れたと思ったら、スルトの炎に囲まれたせいで、外のオペレーター達は中の状況を掴めずにいた。唯一見えるのはケルシーの使うMon3trのみ。しかし、それでも彼らは声を上げ続けた。Mon3trが槍で貫かれた時には悲鳴をあげ、炎の中へ突っ込んだホシグマやウィーディ、スカジには全力の激励を送った。そしてとうとう、スルトが倒れる炎が晴れる時、ドゴン!と、大きな音が響く。
「…どうなったんでしょうか、テキサスさん。」
「私にも分からん。しかし、まさか本命はウィーディではなくスカジだったとはな…。こちらも驚かされたよ。」
「本当に、ドクターは敵にしたら恐ろしいですね…。」
「…ああ。しかし、私達にできるのは残念だが祈るだけだ。」
「はい。ですが、大丈夫ですよ。うちのエース達は凄いんですから!」
「…ふっ。そうだな。」
そして炎は晴れ、結末が露わになる。
そこにあったのはー
ー円の中心に刺さっている槍に両手を付いているイージスと、その側で気絶するスカジであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ー深海のオーラを纏ったスカジは、一切の容赦なくイージスへその佩剣を叩きつける。これが決まればロドスは勝利する。しかし、この場で僅かに勝ったのはイージスであった。
彼女は空いている左手に槍を創るや否や、すぐにそれを地面に深く突き刺した。スカジの攻撃はイージスの背中へ思い切り当たり、イージスは吹き飛ばされる筈であったが、彼女は左手を槍から離すことなく、円の中を回る。その際、左手の皮はどんどん削れていき、耐え難い痛みが彼女を襲うが、それでも、彼女は手を離さなかった。
そのまま遠心力を利用して、彼女はスカジに盾を叩きこむ。スカジとて既に限界。イージスがオペレーター達を吹き飛ばした時に1番近くにいたのは彼女であったし。ブレイズの死力の一撃の際に最もイージスに攻撃を仕掛けていたのはスカジであった。他にも、後衛達へ攻撃が行かない様に常にイージスを牽制したり、後衛達へ向かった攻撃を庇うこともしていた。
それもこれも全て
話が逸れたが、そんなスカジだ。仲間をサポートしたり攻撃を肩代わりしたりと、半ば補助オペレーターの様な行動をしていた彼女の体力は既に限界を迎えていた。イージスの一撃を避けることが出来ずに、そのまま意識を落とした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
炎が晴れる際。イージスは刺さった槍に両手こそついているが、油断する様子なく集中する。ブレイズやシルバーアッシュ、エクシアにアーミヤ、エイヤフィヤトラが控えていると思っていたからだ。しかし辺りに彼らはおらず、代わりに正面にはドクターが立っていた。
ドクターは2人を見ると、非常に残念そうに項垂れながらこう言った。
「ーああ、まさか耐え切られるとは思わなかった。降参するよ。」
「は?へ?あれ?いや、まだチェーンソーの人達が…」
「
「…ああ、なるほど。そうですね、それは失礼しました。では、」
「うん、イージス、君の勝ちだ。」
ドクターがそう言うや否や、周りは大きく騒ぎ始める。皆、とびきりの笑顔で拍手を送りながら、全員の奮闘を称える。
「サリアー、かっこよかったぞー!ほら、サイレンスも何か言えよ!」
「わ、私は別にいい。…代わりに貴方が目いっぱい言ってやりなさい。」
「おにーちゃーん!お疲れ様、惜しかったねー!」
「エクシアさん!お疲れ様でしたー!」
皆、思い思いに叫ぶ。
それを聞くとイージスは地面にへたり込む。流石に疲れたようだ。
「はあ〜〜〜、疲れた〜。もう絶対多対一とかやりたくないです。」
「あーもう負けちゃった!私はまだ行けるのに!」
「流石にやめておけ、ブレイズ。逆になぜ1番重症の貴様が元気なのだ。」
「ぶー、分かってますよーだ。まったく、真銀斬は頭が硬いんだから。それで、どうだった、私達は?」
「予想の数倍苦戦しましたよ。大体、何ですかみなさんのあれは!炎出したり斬撃飛ばしたり、ついには体動かなくするとか訳わかりません!本当に人間ですか貴方達!」
「うーん私達からしたら君の方が訳わからないよ。私の銃弾を槍を振った風圧だけで無効化するって何?」
「あ、ちなみにそれらはアーツって言います。私はよく分からないので、詳しくはセンパイやサリアさんに聞くと良いかと思います。あ、センパイっていうのはドクターのことで、サリアさんは」
「私だ。良い勝負だった。身体は大丈夫か?」
「ええ、右手の骨が少し怪しいですがそれ以外は大丈夫です。」
「私達の攻撃でそれだけのダメージしか無いか。全く、訳が分からないな。」
「スルトさんも大概だと思います…。」
「ん、うぅ…。」
「おや、目覚めましたか。スカジ。」
「…ホシグマ。…ああ、負けたのね、私達。」
「ああ、完敗だ。」
「そう…。やっぱり、悔しいわね。」
「やっと全員目が覚めたか。さあ、話を切るようで悪いが、まずは全員の治療をするぞ。」
「あ、それは大丈夫ですよ。もんすたーの方。」
「「「は?」」」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「はい!これを飲んでください!」
そう言ってイージスは全員に小さな青色の小瓶を渡す。その中には液体が入っているようだ、おそらく治療薬だろう。しかし、素性の分からない薬品を飲むのに抵抗があるようだ。そんな中、スカジだけは慣れたようにその中身を飲み干す。
ー瞬間、スカジの全身の傷が瞬く間に癒え、まるで戦闘前と同じような状態になる。
「「「「「⁉︎」」」」」
驚くオペレーター達。恐る恐る、次はブレイズがそれを飲む。すると、スカジと同じように傷が癒える。火傷で無理矢理塞いだ傷すらも、元通りの美しい肌に戻っている。
「嘘!何これ!?」
そうブレイズは叫ぶ。他のオペレーター達もやはり驚いているようで、ケルシーやアーミヤ、サリアなど医療に少しでも関わっている者に至っては絶句している。
「何これすっごい!私も飲もー!」
そう言うや否や中身を飲み干すエクシア。それに続くように他の者達もそれを飲み始める。
「ちょ、あんた!落ち着きなさい!いや、気持ちはすっごく分かるけども!」
「ええい、HA・NA・SE★何だあの薬は!あれを見て落ち着いていられるか!」
「あ、ちょ!力強いわねあんた!あ!ごめんなさーいガヴィルさん。ちょっとこいつ落ち着かせてください!」
「え、ちょっおま、ガヴィルさんは洒落にならnぐふっ!」
…どうやら医療スタッフが大興奮しているようだ。ほぼ全員が飲む中、ケルシーだけはそれを飲まずにいた。当然だ、あらゆる怪我を治す薬などを自分程度の軽傷の者に使うのはあまりにもったいない!これはあとで精密検査を…「あ、これこの場で飲んじゃってください、じゃないと廃棄しますので。」…「あ、ちゃんと全部飲んでくださいね。私、そう言うの分かるので。」…。
「…飲んでくださいね?」
「…はい…。」
そう涙目で返事をするケルシー、普段の彼女とは大違いである。せめて味や匂いから少しでも情報を、と思いながら小瓶の中身を飲むケルシー。しかし残念、無味無臭である。ちなみにこの時、周りの医療スタッフ達は皆「「あぁ…」」と絶望している。
普段とうって変わって、涙目で耳をペタンと下げ、シュンとするケルシーであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「さて、これで演習も済んだことだし、皆!彼女、イージスはうちのエース達に打ち勝ったとんでもない強者だ!そんな彼女を明日から『訓練専用オペレーター』として雇おうと思うんだが、反対の者はいるかい?いるなら今から彼女と闘ってもらうけど?」
そう言うと周りの人は笑い始める。誰も反対の者はいないようだ。
「…よし。それじゃイージス、これからよろしくね。」
そう言ってイージスの前に手を差し出すドクター。イージスは微笑みながら握手に応えようとして…動きを止めた。
…さて、皆さん、ここでイージスの性格を思い出して欲しい。元来、彼女は他人との接触が苦手…所謂コミュ障である。先程までは戦闘後で気分が高揚していたというか、所謂深夜テンションに近い状態であった。
Q.コミュ障がふとハイテンションから目覚めたとき、目の前の人物に握手を要求されているかつ周りに沢山の人がいたら?
A.こうなる
「ピィィィィィィィィィィィ!」
そう言ってどこかへ走り去ってしまうイージス。この時、この場にいた全員の思いは一致した。
「「「「「(何であの人に勝てないんだろう???)」」」」」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ふふん!うまくいきました!」
演習が終わった夜、イージスは部屋で得意げに声を上げた。どうやら空いている個室はあるものの、その部屋全てが隣にも人が住んでいたようで、ドクターがそれを彼女に伝えると、間髪入れずに「ならスカジと同じ部屋にします!」と叫んだらしい。それを見ていたスカジはため息をついて、
「一応聞いてあげるけど、何がうまくいったのかしら?」
と質問をする。あれだけ激しい戦いをした後なのだ、今日は早く休みたい、そんな様子だ。一方イージスは「よくぞ聞いてくれました!」といいたげに目を輝かせながら言った。
「予想以上に苦戦しましたが!それでもロドスの精鋭達に勝ちました!これで多くの人は私を恐れて、関わってくることはないでしょう!」
…どうやら彼女は、圧倒的な力を見せつけてオペレーター達に恐怖心を与え、自身と関わらないように仕向けようとしたらしい。しかしここはロドス。皆さんは既にご存知だろうが、ここには一癖も二癖もある人々が集っている。
「…そう。強く生きなさい。」
「??」
そう言い残してスカジは布団へ入る。どうやら相当疲れが溜まっていたようで、数分も経たずに眠ってしまう。
「…私もそろそろ寝ますかね。」
イージスはそう言って
イージスは真横で眠りこける弟子に笑顔で微笑み、頭を撫で、
「…本当に強くなりましたね。お休みなさい。」
そう言って眠るのであった。
…余談であるが翌朝、スカジはイージスに抱きついて眠っていたとかいないとか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「リベンジをしに来た。」
「なああんた素手でもいけるんでしょ?カンフーやろうよ!」
「あんまり負けっぱなしってのも悔しいからね!次こそは勝つよ!」
「あ!イージスさん!グムと一緒にお菓子作りませんか?」
「…こんなはずじゃありませんでした。」
と、言うわけでイージスの勝利に終わりました。始めはもっとあっさりとイージスが勝つ予定だったのですが、書いていく内にどんどん接戦になっていきました。拡大解釈があったり、単純に分かりにくい文章だったと思いますが、ここまで我慢して読んでくださりありがとうございました。次回はイージスのステータス公開をした後に、いよいよ彼女のコミュ障を爆発させていこうと思います。
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イージス プロファイル
基礎情報
【コードネーム】イージス
【性別】女
【戦闘経験】不明
【出身地】不明
【誕生日】不明
【種族】不明
【身長】139cm
【鉱石病感染状況】
メディカルチェックの結果、非感染者に認定。
能力測定
【物理強度】██
【戦場機動】██
【生理的耐性】██
【戦術立案】██
【戦闘技術】██
【アーツ適性】欠落
個人来歴
イージスは16年前からオペレータースカジを指導しており、それ以前の来歴は一切不明である。イージス本人ですら、スカジに出会う以前の記憶が曖昧であるらしい。現在はロドスの訓練専用オペレーターとして雇用されている。
健康診断
造影検査の結果、臓器の輪郭は明瞭で異常陰影も認められない。循環器系源石顆粒検査においても、同じく鉱石病の兆候は認められない。以上の結果から、現時点では鉱石病未感染と判定。
【源石融合率】0%
鉱石病の兆候は見られない。
【血液中源石密度】0.000u/L
私はイージスの血液を調べましたが、驚愕よりも感動が勝りました。言葉にするのは難しいですが、イージスの血液には一切の穢れがなかった、とでも言いましょうか、源石はおろか、日常を送っているならば当然摂取してしまうであろう有害物質や有毒物質すら含まれていません。これ以上完全なものはないだろうとすら思える、理想的な血液でした。私はラテラーノの人々のような信仰を持ちませんが、それでも、もし彼らの言う主というものが存在するのであれば、それはイージスのような人のことを言うのでしょう。
まあ、それはそれとしてケルシー先生、いつ彼女の詳しい測定をできるでしょうか?かなり気が弱そうな方だったので、思い切り頼み込めばいけると思うんです!
――医療オペーレーターJ.A.
そんな日は来ない。
――ケルシー医師
第一資料
オペレーターイージスは一般のオペレーターとは立ち位置が大きく異なる。彼女はロドスのオペレーターでありながら、ロドスそのものと対等、もしくはそれ以上の立場を有する。彼女は自身の強大すぎる力を一組織に用いることを忌避しており、妥協の末『訓練専用オペレーター』という形に落ち着いた。訓練とは言っても彼女がオペレーター達に何かを教えることは無く、ただ訓練相手になるのみである。しかし洗練された彼女の実力は見るだけでも大きな経験となり、現状そのことに不満を抱いているオペレーターはいない。なお、唯一の例外として、スカジにだけは指導をしている。その恩恵のおこぼれにあずかろうと、イージスの加入以来、スカジを訓練に誘うオペレーターが急増しているらしい。
第二資料
特筆すべきは、オペレーターイージスの圧倒的な戦闘能力であろう。スペクターやスカジ同様、極端にアーツの知識が欠如していたため、初戦こそロドスのオペレーター達に苦戦していたが、その後アーツの理論を理解してからはアーツに戸惑う様子はみられなくなった。どんな訳か、サリアやオーキッド等のアーツの無効化にも成功している。次に同じ戦いを挑んだとしたら、以前よりも大差をつけられて敗北することだろう。なお、イージスはアーツを使用しようと試みたが、まるで何かに拒まれるかのようにアーツユニットが壊れてしまった。
普段イージスは丸盾と槍を用いて戦い、敵の攻撃を受け流してからのカウンターを主流としている。しかしそれは彼女の好みであるからであり、他のスタイルや武器でも同様のパフォーマンスを発揮することが可能であるようだ。事実、素手や弓矢でオペレーター達を打ち負かしている光景が時折見られる。
第三資料
オペレーターイージスの性格は温厚そのものであり、彼女が怒りの感情を見せたところを弟子のスカジすら見たことがないらしい。しかし相当な人見知りであるようで、初対面の人物と会話が成立することはごく稀である。スカジ曰く、弟子入りしてから始めの5年間はずっとこの様子であったらしく、彼女と気安く話し合える仲になるのにはかなりの時間が必要そうだ。イージス曰く、特別人が嫌いであるとか、苦手である訳ではなく、単純に何を話せばよいかが分からないらしい。ロドス内の子供におどおどしながらお菓子等をあげたり歌を披露したり等、不器用ながらも彼女の性格の良さが伺える。
普段は部屋の中でお菓子作りをしたり読書をしたり等趣味に興じてリラックスしているようだが、たちまち外に出ると気弱になりスカジの後ろに隠れながら移動することがほとんどである。なおそのたびにスカジはため息をつくが、満更でもなさそうである。あまりに積極的であるとイージスは奇声を上げながら逃げてしまうため、彼女に用事がある者は注意するべし。
第四資料
オペレーターイージスには本人が『魔法』と呼んでいる不思議な力が備わっている。武器や防具、食料を生成することが可能らしい。作られたそれらを精密検査してみたが特に異常は見当たらない。武器や防具はどこにでもあるような素材で作られており、食料の栄養価は非常に高いが、特別ありえないとされる程ではない。やろうと思えば同品質のものをロドス内でも作ることが可能だろう、赤字覚悟ではあるが。その力の出自は一切不明で、質量保存はどうなっているか、など、日々研究者達の論争は尽きない。
【権限記録】
この『魔法』という力は武器や食料を生成する程度のものではないだろう。スカジの佩剣はイージスが作ったものであるらしいし、あの演習の後に出された治療薬もそうだ。ロドスの最新鋭の機器と優秀な技術者ですら皆目見当もつかないなどありえるだろうか?
彼女はこうも言ったらしい、「鉱石病の治療法を作ることができる。」と。もしかしたらそれは、この力に由来するのかもしれない。もし、この忌々しい病が医療では治せないのだとすれば、それはどれほどの絶望なのだろう。
…否!そんなことはありえない!ここまでの短い間で分かったことがある、彼女は相当なお人好しだ。真に治せないものなど、彼女は既に根絶しているだろう。彼女を神などと崇めるつもりは毛頭ないが、「神は越えられない試練を与えぬ」とはよく言ったものだ。我々はいくつもの屍を超えて、これを成し遂げなければならない。…そうだろう、ドクター?
ーー████
昇進記録
私は本来、存在すべきじゃないんです。人は、自身の足で歩んでいかねばならない。たとえ、どんなに自身が弱くても、どんなに進むべき道が険しかったとしても、時に孤独に、時に周りと協力をして困難に立ち向かわなければなりません。そうして人は、人の歴史は間違いながらも成長していく。そんな場所に私が現れたらどうなるでしょうか?簡単です。皆、私という存在に希望を持ってしまう。私が全て解決してくれるから、自分はもう頑張らなくてもいい、と逃げ道を作ってしまう。それならば、初めからそんなものなんて存在しなければーーおや、どうしましたかスカジ?え、いやなんか怒っていません?いや、嘘じゃないですか、めちゃくちゃ怒ってるじゃないですか。え、なんで今叩いたんですか?別に痛くはないですがってごめんなさい!今のは私が悪かったです!痛かったです、すごく痛かったですから!だからなんでそんなに怒るんですか?怒ってない?嘘じゃないですか!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
HP:█████████████████████
攻撃:█████████████████████
防御:█████████████████████
術耐性:████████████████████
再配置:遅い(70s) cost:25
ブロック 5 攻撃速度:速い(1.0s)
攻撃範囲 □□□□□
□□□□□
□□■□□
□□□□□
□□□□□
素質
投擲:攻撃範囲内で攻撃を行っていない時、攻撃範囲外の最も近い敵に攻撃力100%の物理ダメージを与える。(攻撃速度:遅い(1.5s))
穢れのない体:作戦中、1度かかった状態異常に対して完全な耐性を得る。
訓練専用オペレーター:作戦に連れて行くことができず、基地内では訓練室の協力者にしか配置できない。(演習では使用可能)
基地スキル
武の頂: 訓練室で協力者として配置時、スキル特化の使用素材が50%減少(小数点以下は切り捨てる)、訓練速度+100%。
実践経験::訓練者がスキル特化をせずにこのオペレーターが協力者に配置されている時、訓練者の体力を1時間に4消費して中級作戦記録を生成する。また、訓練者がスカジの場合、上級作戦記録を生成する、
疲れ知らず:体力を消費しない。
スキル
スキル1:守護者(自動回復 手動発動)
必要SP:5 持続-
スキル発動中、ブロック数が∞になり、行動しなくなる。もう1度スキルを発動させると解除される。その時、範囲内全ての敵に攻撃力500%の物理ダメージを与え、力強く突き飛ばす。
スキル2:戦闘支援(被撃回復 自動発動)
必要SP:30 持続-
攻撃範囲内の自身以外の味方のHP、攻撃力、防御力、術耐性を100%上昇し、1秒ごとに最大HPの3%回復、レジストを付与する。
イージス退場まで効果永続。
スキル3: Aegis(自動回復 自動発動)
必要SP:5 持続-
あらゆる攻撃を99%回避する。回避した際、攻撃した相手に攻撃力100%の防御無視物理ダメージを与える。
退場まで効果永続。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ボイス
秘書任命 助けてスカジ…。
会話1 へ?作戦記録に昇進ですか?私にやっても意味がないと思いますよ?
会話2 (なんでこの人、理性0でこんなに話せるんだろう?)
会話3 ピィィィィィィ!
信頼度上昇後会話1 ここには色々な種族の方がいるのですね。ループスでしたか?彼らの尻尾や耳、とても触り心地が良さそうですよね。もちろん、そんな度胸ありませんけれど。
信頼度上昇後会話2 そういえばドクターさん、子供達にお菓子を配る時に時折彼らに混ざっているのは何故ですか?へ?理性が回復する?はあ…。
信頼度上昇後会話3 ここにいる人の多くは過去に辛い経験をしています。私はそれを救うことができたのにしなかった、何ともやるせないですね。
放置 …寝てる?毛布を持ってきた方がいいのでしょうか…?
入職会話 イージスです。訓練専用オペレーターとしてこれからよろしくお願いします。………。…あ、あの、も、もう帰ってもいいでしょうか?
編成 演習だけは、力を貸します。
隊長任命 本番参加しない者を隊長にすべきではないと思いますよ?
作戦準備 勝負は既に始まっています、万全を整えましょう。
戦闘開始 貴方達の覚悟を見せてください!
選択時1 なんでしょう?
選択時2 そちらのタイミングで構いませんよ。
配置1 やるからには、全力を尽くします。
配置2 あくまで演習なので、殺しはしません。
作戦中1 最後まで油断はしないでくださいね。
作戦中2 自身の選択に後悔がないようにしなさい。
作戦中3 …戦闘中に無駄話はすべきではありません。
作戦中4 やるべきことをやるのみです。
★4で戦闘終了 なかなかいい経験ができました。スカジとの訓練が捗りそうです。
★3で戦闘終了 お疲れ様でした。本番もこの調子でうまくいくといいですね。
★2以下戦闘終了 あと一歩足りませんでしたね。
作戦失敗 …わざわざ撤退する意味はあったのでしょうか?
基地配属 では、訓練を開始しましょうか。
タッチ1 ミ°ッッッッッッ!
信頼タッチ い、いえーい…、…こ、これで合ってますか?
タイトルコール アークナイツ。
挨拶 …あ、えと、その、こ、こんにちわ。
何でうちのロドスにはイージスちゃんがいないんですか?(現場猫)
※イージスは初めから昇進2レベル90、スキルレベル10で加入します。
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イージス裏設定…という名の妄想の垂れ流し
皆さんはじめまして、作者のアイギスです。いつも「スカジのお師匠様」をご愛読くださりありがとうございます。最近では通算UAも10000を超えたみたいで感謝感激雨あられです。
…まあ、今回はタイトルの通りです。最初はイージスちゃんの裏設定を箇条書きにして投稿しようと思っていたのですが、あまりにも厨二が過ぎて悶え死んだので、急遽作者の語りという形にさせていただきました。いや、本当に世のチートオリ主を書いている人はすごいですね、相当メンタル強いですよ彼ら。皆さんも一度「僕の考えた最強のキャラクター」の概要を書いて投稿しようとしてみてください、多分憤死します。
というわけで、今回は作者がぐだぐだとイージスちゃんについて語る回になります。いつも以上に長ったらしい文になるので、読みたくない人は読まなくても良いです。ぶっちゃけこれを読まなくてもこの作品は楽しめます。「イージスちゃんって強いんだー」くらいの認識が「イージスちゃん強過ぎやろ!?」になるだけなので。
前書きもほどほどに、紹介していきましょうか。
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由来
イージスの名前の由来はギリシャ神話の女神、アテナが使っていた楯の名前から取りました。…実はこの作品を投稿した後に、大陸版にオペレーター・パラス(おそらくパラスアテナが由来)が実装されてることを知ってめちゃくちゃ焦りました。ま、まあ、キャラは全然違うしセーフということで。あとは、スカジの名前が北欧神話由来なので、師匠の名前もそこから取った方がよかったかな?と少し後悔。まあ名前なんてものは飾りなのです、大した問題ではありませんね。
見た目など
見た目ですが、某有名なパズルでドラゴンズなあのゲームに登場するアテナを5歳くらい幼くしたイメージです。服や盾も同じです。ただ、槍だけはなんとも魔法チックな見た目をしていたので、それだけは僕のオリジナルです。ちなみにあの作品のアテナはコミュ障ではありません。うちのイージスちゃんがコミュ障なのは作者の性癖です。性癖ならしょうがないよね?
来歴
そしてイージスちゃんの過去なのですが、ここからめちゃくちゃイタくなります。もう僕の顔は真っ赤になっています。
彼女は気がついたらテラの世界に1人でいました。姿形は今と変わりません。ですから彼女は自身の種族も誕生日も、肉親がいるのかどうかすら分かりません。ただ、自身の持つ力が強力すぎることは分かっていたので、そのまま人を避けるように活動をしていました。そしていつの日か「海」を見つけ、そこに定住することを決めました。そしてそこで生活をしていてしばらくしてスカジに出会った、という訳です。イージスが初めて出会った「人」はスカジです。彼女はこれ以前に他のどの人類にも会ったことがありません。それゆえ、彼女は「時間」という概念を知りませんでした。スカジに出会って初めて、1日は24時間で1年は365日、と言った当たり前のことを知ったため、自身の詳しい年齢はわかりません。それこそスカジに出会う以前に100億年生きていたかもしれませんし、1年すら生きてなかったのかもしれません。当然、イージスは当時、あらゆる常識というものが欠如していたため、スカジはイージスに戦闘技術を教わりながら彼女に常識を説いていました。つまり、スカジはまだ彼女が幼い頃から「イージス」という子供の世話をしていたんですね。そのためスカジは、子供やメランサのような気弱な人を見かけるとつい世話を焼いてしまいます。ロドスに加入したての頃、ロドスの子供達に「お母さん」と呼ばれていましたが、スカジが全力でお願いしたために今は「お姉ちゃん」になっています。ちなみに一部の人からは「お姉様」と呼ばれています。
少し話は逸れましたが、大体こんな感じです。特に具体的には決めていないので、皆さんで好きに妄想してあげてください。
能力
次はイージスの身体能力について話しましょう。コンセプトは、「邪神を蟻扱い」です。そりゃ強いわ。流石にこんなスペックではロドスに勝ち目がないので、戦闘の際はかなり戦闘能力を下げています。
そして技能ですね。彼女は戦闘、料理、裁縫といったあらゆる分野で究極とも言える技能を有しています。例えば、ヘラグ様の剣の技能を100とするならば、イージスちゃんは全分野について100万くらいの技能を有しています。わあ数字が小学生みたい。ここまで技能が卓越しているので、ぶっちゃけ全ステータスが10だったとしてもロドスには勝てます。いつかお歌回とかやってみたいけど、大丈夫かなこれ?
そして『魔法』の詳細です。コンセプトは「リ○ロのライン○ルト、もっと強くしねぇか?」です。そりゃ(ry。某剣聖は自身の望んだものを「加護」として得ていましたが、イージスちゃんはそれを「どんな形でも」得ることが可能です。また、某剣聖はどちらかといえば無意識的(自分が欲しいと思う)によって加護を得ていましたが、イージスちゃんは完全に意図的に行うことができます(もちろん、無意識的に発動させることも可能です)。なお、イージスはこの魔法を使って何かを得ることを、「創る」と言っています。正直例をあげると切りがありません。素質、空想上の物質、生命、新たな原理法則、知識、過去、事象、文字通りなんでもできます。とはいえ、イージスは食料を創る以外のことであまり『魔法』を使いません。だってそりゃ、邪神を蟻扱いできる肉体と絶対的な技能があれば99.9999%くらいのことはできますもん。『魔法』なんて使わなくてもいいじゃないですか。また、イージスは寝食が無くても生きていけますが、自分は人間である、ということを戒めるためにそれらを行なっています。普段は遠距離の手段に武器を創ったりもしません。普通に槍の突きを飛ばしたりして攻撃します(普通とは?)が、流石に反則かな、と思いロドス戦では槍を投げていました。シルバーアッシュを見て後悔しました。魔法とは言っていますが、魔力とかMP的な何かを消費している、といったことはありません。好きなだけ使えます。
イージスちゃんの魔法使用例
①自分の家に訪れた人が、「もう2度と来たくない!」と思うように自宅周辺に「恐怖の感情」を創る。
つまり、イージス宅周辺では常にSAN値チェックが入ります。そこに厄災達もいるので、そりゃ歴戦の探索者であろうが発狂するよねという話。これには邪神様達も「人間の所業じゃねえ…」とドン引き。イージスちゃんは?と首を傾げています。可愛い、じゃなくて天然って怖い。
②自分の分身を創り自身と会話。
悲しくないのかなそれ。ちなみにスペックはオリジナルと全く同じです。やろうと思えばチートイージスちゃんは100人にも1000人にも増えます。1人くらい貰っても…バレへんやろ…(バレます)。余談ですが、初めの5分くらい、自分相手にすらお互いびびっていたそうな。
イージスちゃんの人となり
イージスちゃんの性格ですが、有り体に言ってしまえばめっちゃいい子。純真無垢でありながら真面目で実直、とはいえ融通が効かないことは一切なく、どんな人に対しても優しく接し、対等であろうとします。鉱石病の人にも一切変わりない態度をしている姿は、多くの人から好印象を持たれています。強いて欠点を言えば、初見に弱い。ロドス戦ではそれが顕著でしたね、アーツに戸惑っていました。とはいえ、そもそも初めてアーツを見た人は全員あんな反応をするでしょうから、彼女のみの欠点ではありませんね。あとは、めちゃくちゃ天然でコミュ障。というのが周りの評価ですね。
これはスカジすら分かっていないことですが、イージスはだいぶ自分を追い込んでいます。イージスはその気になれば前述したチートを用いて世界のあらゆる不幸をなくすことができます。しかし実際に彼女はそれを行なっていないため、「世界に存在する不幸は全て自分のせいだ。」などと思い込んでしまっています。彼女はスルトに対して「少し傲慢な部分がある」と言っていましたが、真に傲慢であるのはイージスなのかもしれません。ぶっちゃけ考えすぎなのでもっと幸せになってくれ、と作者は思います(ならこんな設定作るな)。彼女が他人との会話が苦手なのは、これが理由の1つになっています。例えるなら、痴漢を目撃したのに通報する度胸がなかったため見逃し、その後日、痴漢にあった女性に会った、みたいな気まずさ、罪悪感を感じています。また、スカジはイージスが自己肯定感が低いことは分かっているため、そうした態度を見せると怒ります。が、イージスは天然でなぜ怒っているかが分からないのでスカジは余計に怒ります。天然って怖い。
余談
ロドスとの戦闘時のイージスのステータスです。
HP:3000 攻撃:1500 防御:1000 術耐性:0
あれ?低くね?と思ったかもしれませんが、前述した通り、自身の技能でカバーをしています。逆を言えば、技術を極めればこれ程度の能力でもMon3trをワンパンできますし、真銀斬イラプションキメラアップルパイボイリングバーストをほぼ無傷で凌げます。
戦闘で1番キツかったのはサリアのアーツでした、あれだけ攻撃というよりは固定ダメージだったので。逆にあれがなければもっとあっさり勝っていたと思います。
イージス自身、ありえないほどの知識や知能を有しています。スカジの佩剣や戦闘後の薬品は『魔法』で創ったものではなく、イージス自身が1から作ったものとなります。つまり、現在の技術で可能かはさておき、それらは人類も作成可能なものとなっています。また、イージスは現時点で鉱石病の治療法の目度が立っています。が、ロドスにそれを教えることはしません。それによって罪悪感を募らせています。
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以上が現時点で僕が妄想しているイージスの全てです。いやー、イタいですよね、今もベットの上で悶えています。
とはいえ、これらの話を深く掘り下げる予定はありません。なぜならシリアスになりそうだから。シリアスな話が嫌いというわけではないのですが、僕はもっとほんわかとした話を書きたいので。
また、他にもイージスちゃんについて聞きたいことがあれば、ぜひ感想や活動報告を利用してください。答えられないこともあるかもしれませんが、可能な限り返答はしたいと思います。
ついに次回からほんわかロドスイージスコミュ障爆発回が始まります。ここからは思いついたら書く、という感じなので投稿頻度はバラバラになるかもしれません。それでも構わへんで、という方は、これからもこの作品を末長くよろしくお願いします。と、言うわけで今回は以上となります。ここまで読んでくださった方もそうでない方も、ありがとうございました。
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料理人
あとOD-8めちゃくちゃ苦戦しました。これを機に色々なキャラを昇進2にしたり練度をあげたりしたんですが、今まで貯めた素材と金がマッハで溶けましたね。しかも足りませんし…。濁心スカジは初日で最大強化したいのですが、間に合うかなこれ?
OD-8攻略、イージスちゃんいたら死ぬほど楽そう。
「あ、あの。スカジさん!」
「あら、グムじゃない。どうかしたの?」
「その、変なこと聞くんですけど、」
ーーーお師匠さんの所にご飯を運んでもらってもいいですか?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これはまだイージスがロドスの精鋭達と演習を行う前のこと。つまり、イージスがロドスに到着してから演習が始まるまでの4日間のある日に起こった出来事である。
「流石にこれから戦うであろう相手と同室は気まずい」ということで、渋々個人部屋に居たイージスはいつ隣人が自分の元へ訪れるのかビクビクしていた。しかし、1日経ってもそんな素振りが無かったことから、完全に気を許して部屋でのんびりとしていた。どうやら今は間食用のお菓子を作っているようだ、鼻歌を交えながら、手慣れた手つきで生地を作っていた。型を抜いたそれをオーブンに入れてひと段落ついた頃、ふと彼女は部屋の扉に手紙が落ちているのを見つける。とはいえ、現在ロドスでそんなことをする人物など1人しかいない。一体なんの用事かとイージスは手紙を開いた。
ー師匠へ
今日の昼、グムという子があなたの部屋に食事を運んでくるから、昼食は用意しないでおくこと。逃げたり居留守をしたら承知しないわよ。
ースカジ
「ーほへ?」
死刑宣告であった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「うー…スカジさんに頼まれたけど、本当に私が行って良かったのかなあ?」
そう1人ぼやきながらグムは料理を持ちながら廊下を歩く。今日の献立はシチューのようで、湯気を立てながら美味しそうな匂いを漂わせている。疲れからか、さっきまで項垂れながら廊下を歩いていた職員がその匂いを嗅ぐや否や、食堂まで全力実装を決め込んでいる。それを見て苦笑を浮かべながら先程の会話を思い出す。
『折角だから、貴方が運んでくれないかしら?』
『え?グムは大丈夫ですけど、お師匠さんは大丈夫なんですか?人見知りって言ってましたけど。』
『大丈夫じゃないわね。』
『ええ…。』
『ほら、明日は師匠と演習するから、今会うのはお互いに気まずいのよ。それに、私があの人をここに連れてきたのは、あの人の酷い人見知りを治すためだから。』
『なるほど。じゃあグムが持ってきますね。』
『ええ、折角だから明日のためにプレッシャーでもかけておいてくれると嬉しいわ。』
『ええー!無茶言わないでくださいよ!』
『ふふ…期待してるわよ。それと、次からは敬語なんて使わなくてもいいわよ。』
「それ時にもらったこれだけど、スカジさんって思っていたよりもお茶目な人だったんだ。」
料理と共にトレーの上に乗った一枚の紙。題名は『師匠の取り扱い方』。
「『大きな声をあげると逃げ出します』『あまり目線を合わせないようにしてあげましょう』『接触は控えてください』って、お師匠さんって人間だよね?」
自分の師匠に対して結構な言い草である。そうこうしているうちに目標の扉まで到着した。グムは扉をノックしようと片手を上げるが、その前に中から声が聞こえてきた。
「ああどうしましょうどうしましょう⁉︎なんでこんなに急なんでしょう!普通こういうのは1ヶ月前とかに約束するものではないのですか⁉︎」
「少し落ち着いてください私2号!私3号、部屋の掃除は終わってますか?」
「大丈夫です私1号!というか来たばっかなので部屋は初めから綺麗でした。私2号は少し落ち着いてください!」
「だってだって、もう12:30ですよ⁉︎そろそろ来ますって!」
「「!?」」
「どどど、どうしましょう?どうやって会話を始めるべきなんでしょうか?」
「おおおおおおちちちついいてください私3号。た、確かこういう時には『会話デッキ』なるものを用意するといいって昨日動画で見ました!」
「ナイス意見です私1号!で、では今日の天気などどうでしょうか?」
「『天気デッキ』というやつですね!昨日動画に出ていた人も使っていました!これで勝てますね!」
「???」
色んな意味で地獄である。グムは「疲れているのかな?」と小さく呟き、現実から目を背けるように思い切ってノックをした。
ートントン
「「「きゃああああ!」」」
「グムって言います!食事を持ってきました!」
「ひ、ひゃい!どどどど、どうぞ!」
そう返事が返ってきたので扉を開ける。部屋には1人、ソファの後ろから顔だけをひょこっと出しているイージスがいた。今にも逃げ出してしまいそうな様子からは、とてもスカジの師とは思えない。
「あ、あの〜。」
「な、なんでしょうか?」
「変なこと聞くんだけど、ここって他に人とかいませんよね?」
「??は、はい。私以外には、い…ない…と…思い、ます。」
「そうだよね。やっぱりグム疲れてるのかなあ?」
「え、えと、ど、どうかしましたか?」
「ああいえ!何でもないです!それよりも、はい、これ!今日の献立はシチューだよ〜!」
「お、おぉ〜……。」
じゃーん!と言いながらトレーを差し出してきたグムにイージスはそう返事をする。そのトレーを受け取ろうとグムに近寄るが、距離が1mほどになったところでピタッと動きを止める。
「…」
「…」
「?」
「そ、そこの机に置いてもらっていいですか?」
「は、はぁ。」
そう言って
「…」
「(ど、どうしよう?会話苦手だろうから、そろそろ帰った方がいいかな。)」
時折グムが声をかけようとするが、その度にイージスはしゃがみソファから顔を隠す。グムが苦笑を浮かべながら内心そう思っていると、ついにイージスが話しかけてきた。
「そ、その、ごめんなさい。何を話せばいいかが分からなくて…。」
「ううん、大丈夫。シチューが冷めちゃうから、グムはそろそろ失礼します!食べ終わったら食器は外に置いといて貰えば回収するから!」
グムはイージスに気を遣って部屋から出て行こうとする。だが、イージスは勇気を振り絞りまったをかける。
「あ、あの!ひとつ聞いてもいいですか…?」
「?うん。」
「その、どうして私にご飯を作ってくれたんですか?あ!いや別に嫌だったとかじゃないんですけど、食事は『魔法』で作れるから大丈夫だと伝えていましたので…。」
「うーんとね、ロドスの中にいるのに何日も食堂で姿を見てないと不安になっちゃったの。それに、他の人にも聞いたけど、イージスさんを見たって人が誰もいなかったから…。」
「それは、その…ご迷惑をおかけしました。」
「ううん!グムがお節介なだけだから気にしないで!」
それにね、とグムは続ける。
「1人は寂しいんじゃないかなって。」
「…」
「その、イージスさんは今まで1人で暮らしてたから、1人の方が気楽かもしれないけど。けど、グムは1人の食事ってとても寂しいんです。任務とかの不安も、ドクターやズィマーお姉ちゃんと一緒にご飯を食べると紛れるの!だからね、いつかイージスさんも食堂に来てみんなと一緒にご飯を食べて欲しいな!」
グムは満面の笑みを浮かべながら言う。イージスはソファの後ろでしゃがみこみながら返事をする。しかし、そんな彼女の顔にも笑顔があった。
「…そうですね。今は難しいですが、いつか。」
「楽しみにしてます!あ、ごめんなさい!あんまり話すとシチューが冷めちゃいますね。そろそろ失礼します。」
そう言ってグムはイージスの部屋を出る。そして、廊下を少し進んだところで声をかけられる。
「あああ、あの!ここ、これ!クッキー焼いたので、どうぞ!あ、あと、食器は食堂に返しに行きますので!では!」
無理矢理グムの手にクッキーを包装した袋を渡し、返事を聞くことなく逃げるように部屋へと戻るイージス。グムは少しぽかん、としていたが、次第に笑顔を浮かべて大きな声でこう言うのであった。
「ありがとー!みんなで食べるねー!」
その声はイージスに届いたのかは分からなかったが、グムはスキップをしながら廊下を進むのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ふう…緊張しました。けど、とてもうまく行ったと思います!これは大きな成長ですね。」
部屋に戻ったイージスは1人呟く。彼女的にはとても円満なコミュケーションを取れたようで、今も花咲くような笑顔を浮かべている。
「っと…そろそろ食べないと駄目ですね。…よかった、まだ冷めてなさそうです。それにしても美味しそう。…ん?」
料理を思い出しすぐさま机に座るイージス。料理はまだまだ冷めていないようでとても美味しそうである。そしてイージスはトレーに乗った紙を見つけた。…見つけてしまった。
「…『師匠の取り扱い方』?」
後日、スカジの修行がとても激しい日があったらしい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あ、ズィマーお姉ちゃん!イースチナお姉ちゃんも!」
「おう。どうだった?噂のスカジさんの師匠とやらは?」
「うん!すっごい可愛い人だったよ!それにほら、イージスさんの手作りクッキー貰っちゃった!一緒に食べよう?」
「可愛かったって…もう少し他になかったの?グムらしいといえばらしいけれど。」
グムの言葉に呆れる2人。しかしちょうど昼も過ぎて甘いものを食べたい頃合いだったので、3人でお茶会をすることになった?
「…何これすっげえうまい。」
「グムには悪いけれど、ちょっと次元が違いますよこれ。」
「すっごく美味しいね!イージスさんってお菓子作り得意なんだ。」
「グム、絶対にこれの作り方教わった方がいい。そして私たちにもっと食わせろ。」
「同じく。」
「うん!今度聞いてみるね!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「けれど、そのイージスさんの部屋って一般オペレーター室ですよね?」
「うん、そうだったよ。」
「どうやってこれ作ったんですか?オーブンどころか、キッチンすらありませんけれど。」
「…確かに。」
というわけでグムちゃんでした。彼女には今でもお世話になることがあります。とてもいい子ですよね、まさかこんな子を120円の女なんて言う人なんていないんだろうなあ(すっとぼけ)。
この日の夜、全身に毛布を被った謎の人物が食堂に来たみたいです。
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功夫
先日、また上級エリートが来た上、シルバーアッシュだったんですよね。2回目の無料10連でAsh2体目も出てきた(ガチャ回さなければよかった…)し、これは濁心スカジが沼る未来が見えますね…。
最近僕がしたこと
スルト 昇進0→昇進2 S3特化3
ソーンズ S3特化0→3
シルバーアッシュ 昇進0→昇進2 S3特化2
ブレイズ 昇進1→昇進2
Ash 昇進0→昇進2
エリジウム 昇進0→昇進2
テンニンカ 昇進0→昇進2 S1特化3
今まで貯めた素材がごっそり消える…。まだAshとブレイズの特化終わってないってマジ…?ウィーディ、サリア、シャイニング、ナイチンゲール、エクシアも昇進2にしてないし…、先はまだまだ長そうです。
(むしろここまで育ててなかったのによく今までやってこれたなと思ってます。)
「ただいま、今帰ったわ。」
「おかえりなさい、スカジ。今日は早かったですね。」
「以前と同じ任務だったから勝手が分かってたのよ。師匠は…またテレビ?いい加減飽きないの?」
「すごいですよね、てれびにいんたーねっと。色んなことを知ることができますし、動いている物語を見ることができるなんてとても新鮮です!」
「それで、今は何を見てるの?」
「映画ですね。この女優さんの武術の演技がすごいんですよ。多分実戦でも使えますよ、これ。」
「…まあ、そうね。」
「私は完全に我流なので、参考にと思ってこの人が出てる作品を色々見てるところなんです。」
「…本人に直接聞けばいいじゃない。」
「へ?それができないからテレビを見ているじゃないですか?」
「へ〜いスカジ!噂のお師匠様がわざわざ私を御指名だって〜?」
「という訳で連れてきたわ。」
「どう言う訳ですか⁉︎」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
突然部屋に訪れたエフイーター。イージスはスカジの後ろに隠れているが、エフイーターは特に気にした様子を見せない。
「おー…、聞いた通りものすっごくシャイなんだな!」
「ちょっと!折角連れてきたのにどうしたの?」
「無理です無理です!なんで女優さんがここにいるんですか⁉︎」
「そりゃ今はロドスに所属してるからな!そっか〜、私の映画見てくれたのか。どうだった!すっごいだろう?」
「ピィ!」
「ありゃ、隠れちゃった。」
イージスはとうとうスカジからも離れ、ソファの下に身を隠す。スカジは呆れながら彼女の元へ歩みよる。
「ちょっと!…もう、エフイーターももう少し加減してあげて。私の師匠、本当にクソ雑魚コミュ障なんだから。」
「お前さん、そんなに口悪かったっけ?仮にもアンタの師匠なんでしょ?」
「仮にもというか、普通に師匠なのだけれど。…ほら、師匠、あなたもいい加減人に慣れなさい。この前はグムと会話できたんでしょう?」
一向に会話の兆しが見えないイージスに対しスカジは励ましの言葉を送る。しかしそれも今のイージスには届かないようだ。流石に相手が有名人であると一筋縄ではいかないようだ。
「違う、違うんです。グムさんがこの身を暖めてくれるお湯なのだとすれば、この人は全てを焼き尽くす太陽です…。
「(酷くない?)」
「そろそろ会話くらいできるようになって欲しいのだけれど…。外に出るたびに後ろに隠れられると、流石に鬱陶しいのよ。」
「いやそれはめっちゃ嘘じゃん。この子が後ろにいるときいっつも笑顔じゃんあんたってごめんごめんそんな顔で見ないで怖いなぁもう。」
ちなみにだが、この時のスカジの笑顔の写真がロドス内で高値で取引されているらしい。CEOが先に気づいて押収するのが先か、スカジが先に気づいて血祭りになるのか、不安である。
「…もう。まだ自己紹介すら出来てないのに…。」
「なら私からな!今はエフイーターって名前でロドスのオペレーターやってるよ!よろしく!」
「…い、イージスです。その、見ての通り、とても会話が苦手です。ごめんなさい…。」
「ここはあんた以上に個性的なやつばっかだからね、全然気にならないよ!それで、今更だけど何か用があるの?」
「え、えと、その、私の武術って我流だから、エフイーターさんの映画を見て色々参考にしてたら、スカジが突然呼んできて…。」
「なるほどね。つまり私のカンフーを見たいってことだ!良いよ、訓練室行こうか!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…どうですか?」
「え?ああうん、良いんじゃない?…え?やるの初めてなんだよね?」
「?はい。」
「うっそぉ…。」
訓練室に着いてから早速、イージスは自身の技を見せる。武の道に終わりがあることはあり得ないがしかし、彼女の技は一種の極みに至っていた。少なくとも、これが初めてだなんという言葉は信じられないほどには、洗練された技であった。
「師匠はこんなやつよ、諦めなさい。」
「むしろ私が教わりたいんだけどこれ。なんでここまでできるのさ?」
「?映画を見たので。」
「…うっそぉ…。」
「ちなみにこの人、演習の翌日に挑んできたエクシアに銃で勝ってるわよ。エクシアはちょっと泣いてたわ。」
ちなみにそのあと、弓でも負けていたことをここに記しておく。
「本当に規格外なんだねあんたの師匠…。」
「?」
「それでもってあの『どうしましたか?』みたいな態度よ。ぶん殴りたくなるわ。」
「あはは…で、私は何をすればいいの?正直教えられることなんてないよ?」
「あ、じゃあ模擬戦をお願いできますか?きちんと修めた人の技を見たいので。」
「おお、それなら大丈夫!むしろ私がお願いしたいくらいさ。一応聞くけど、素手でも戦えるんだよね?」
「はい、全力のスカジに勝てるくらいには。」
「あっははは!ご冗談を。…え?まじ?」
「…黙秘するわ。」
「おー、…お手柔らかにね?」
「大丈夫です、加減はできますから。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それから約10分後、無傷のイージスに対しエフイーターは傷だらけで地に伏していた。
「たっは〜。完敗だよ。師範との稽古を思い出したよ。」
「ありがとうございました。あ、これどうぞ。」
「お〜噂のやつ?後で医療班のやつらに自慢してやろーっと。」
エフイーターが受け取った治療薬を飲むと、全身の傷が瞬く間に癒える。数秒後には、傷の一切は無くなっていた。
「はえ〜、すっごいねこれ。みんなが騒ぐのも納得だ。」
「そう言ってくれるなら幸いですね。」
「にしても…訓練室くると随分人が変わるじゃん?普段からそれくらい堂々としてればいいのに。」
訓練室での…というより、戦闘の前後のイージスは普段の臆病が引っ込む。その小さな体からは想像もできないほどの威圧感が放たれており、事実、彼女と戦うオペレーターはこれが訓練だということを忘れる。そのためほとんどが自身の限界を出してしまい、肉体はボロボロ、訓練室は崩壊する。今も和やかな雰囲気こそ出ているものの、周りの惨状は悲惨なことになっている。
「訓練を直したりこんな貴重な薬を配ったりって、いいの?あんたの信条的にアウトじゃないの?」
「原因の半分は私にありますしね。雇われた以上は相応の仕事はしますよ。」
「(過剰じゃないかしら?)」
しかしそれに関しては流石イージス、とでも言おうか。アフターケアはバッチリである。謎の薬によって怪我は治り鉱石病の進行は戦う前のものに戻る。また、『魔法』によって訓練室も直される。過去何度も訓練室の崩壊に苦しんできたドクターは感涙している。
「それにしても、今日はありがとう。新たな同胞に教えようと思ったら、むしろこっちが教わっちゃったよ。」
「いえ、やはり映像だけでは見えない部分もありましたし、非常にためになりました。わざわざありがとうございました。」
「いやいや、必要になったらぜひ言ってよ。私にとっても大きな収穫だったからさ。それで?これからどうするの?」
「折角スカジもいますから、これから稽古にしようかな、と。」
「…あら?いいの?」
「むしろそのつもりでついてきたのでしょう?私もいいものを教わりましたし、今日は素手で行かせてもらいますね。」
「上等よ。」
「あ、じゃあ折角だし見てていいか?」
「「問題ない(わ)(ですよ)。」
どうやら、訓練室がまた壊れそうである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…お、エフイーターじゃねえか!どうした?やけに楽しそうじゃん。」
「やっほ、ビーハンター。いや〜、いいもん見たんだよ。まさか本当にスカジが無手でやられるとはな〜。やっぱ功夫に限界はないんだな!」
「?よく分からんけど、暇ならやらないか?」
「お、いいね〜。今日の私は強いぞ〜?」
この後めちゃくちゃ訓練した。
というわけで、今回はおっぱいパンダもとい、エフイーター回でした。正直、エフイーターってそこまで性癖ってわけではないんですが、めちゃくちゃ好きなんですよね。彼女とマドロックに関しては童貞を絶対に殺す、っていうYostarの意思を感じます。
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将軍
ー音が、響いていた。
元来、戦闘のために使われるその部屋では荒々しい破壊音が轟く筈である。しかし今は、驚くほど静かで穏やかな音が規則的に響いている。この音を聞いた人達は、まるでその空間だけこの世と切り離されているかのような錯覚を受ける。
「…」
「…」
訓練室にいるのは2人。1人は身を純白に包んだ少女であり、方やそんな彼女よりも頭3つ分は大きいであろう老人であった。祖父と娘に間違えられそうな2人は今、剣を打ち合っていた。そこに言葉の一切はない。互いが卓越した技術を持っており、2人の打ち合う光景を目にした人々は言葉を失う。たとえ荒事を嫌う令嬢であっても、平穏を知らない野蛮人であったとしても、その打ち合いに見惚れ、剣と剣が響かせる音に聞き入るであろう。もはやこれは一つの芸術であった。
「…」
「…」
会話はない。彼らは剣で対話をしているのかもしれない。互いに決定打はない、否、与えようとしていない。お互いの技を確かめ合うように続けられていたこのやりとりが終わったのは、これから3時間後であった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ヘラグさん、今日はありがとうございました。非常に貴重な体験ができました。」
「それはこちらの台詞だ。まさかこの年になって貴公のような者に会えるとは思わなかった。」
「貴方がもう少し若かったのなら、私の弟子との試合を申し込んだのですがね。」
「勘弁願うな。彼女の相手は私でも厳しい。」
「技術だけなら圧倒的に貴方に軍配が上がりますが、あの子にはそれを覆す身体能力がありますからね。」
「全くもって羨ましい限りだ。技のない力に価値はないが、その逆もまた然り。」
長い打ち合いが終わった後、そのまま2人は訓練室で話をしていた。遠慮なく話している2人てあるが、初対面である。今朝、廊下でばったり出くわした2人は、その場で足を止めた。そのまま立ち尽くすこと数分、どちらともなく訓練室へ向かい、冒頭へと至るのである。
「スカジはもう少し技をもって欲しいんですけどね…。いかんせん、感覚派な子なんですよね。」
「そういった感覚を持つものは限られるからな、私であれば長所を伸ばすな。技術は他の者に与えればいいが…。」
「軍でならそうでしょうが、私が教えるのはスカジだけですからね。将来性を考えるなら技術を詰め込んだ方がいいと思うんですよね。」
どうやらヘラグ相手だとコミュ障が引っ込むイージス。彼女はどうやら弟子の育成方針に悩んでいるようだ。
「なら気長に待つしかなかろう。特別、彼女に才能がないわけではないだろう?」
「もちろんです。ただ、私が言葉で丁寧に教えた内容を『すぱぱぱっ』とか『シュシュシュ』なんて要約されると不安になるんですよ。正直、きちんと身についてるのが不思議でたまりません。」
「…大変だな。」
「全くですよ。」
そう言って2人は苦笑する。
その後も2人は会話を続けた。どうやらお互いにそれなりの収穫があったようで、夜遅くまで話は続き「また会おう」と約束しあい満足そうに訓練室を去るのであった。
ちなみに、この日の2人の打ち合いの記録は大変素晴らしいものであり、以降、より多方面からの映像をあるために訓練室のカメラの数と性能が大幅に上げられたらしい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ーということがあったんですよ。」
「…」
と、今日のやりとりをスカジに話すイージス。得られるものがあったからか、満足に会話ができたからか、非常に上機嫌である。今も、スカジがいるというのに楽しそうに鼻歌を歌いながら風呂で濡れた髪を乾かしている。一方、スカジのご機嫌は斜めであった。
「私は5年かかったのに1日でなんて…。」
「おや?何か言いました「何でも無いわ。」…そうですか。」
「(何故でしょう?何だか機嫌が悪いみたいですが…。)」
「(少し露骨だったかしら…。)」
スカジが少ししゅんとしている中、イージスは少し考え込む。そうして少し経った後、彼女はスカジに微笑みかけながら優しく慰めた。
「ほらスカジ、ヘラグさんと戦えないからってそんなに悲しまないでください。なんなら、今度はヘラグさんのスタイルで戦ってあげますから。」
「…」
「ねっ?」
「…ふふふ。」
「?どうしましたか?」
「いえ、なんでもないの。髪はもう乾いたでしょう?そろそろ寝ましょうか。」
「はい、そうですね。電気消しますよ。」
「ええ、おやすみ。」
「おやすみなさい。」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…あのースカジ、抱きしめる力が強いので緩めて欲しいのですが。」
「…」
「あのー起きてますよね?」
「…」
「なんで強くするんですか⁉︎やっぱり起きてますよね⁉︎」
多分重装兵を圧殺できるくらいの力が込められています。ちなみにイージスは説得諦めてそのまま寝ました。
ヘラグおじ様いいですよね。The・武人って感じのイケおじはもっと増えていいと思います。
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尻尾
ある日の昼下がり。イージスは鼻歌を歌いながらとある作業をしていた。それだけならばいつもの光景なのだが、今回は少し事情が異なっていた。
「ふんふふんふふ〜ん♪」
「ね、ねえ、師匠。それ、何かしら?」
スカジは少し、いやかなり興味ありげにイージスに問いかける。もし彼女に尻尾が生えていたなら左右に激しく振られていることだろう。イージスは変わらぬ調子のまま答えた。
「ん?ああ、これですか?ループスの尻尾の抱き枕を作ろうと思いまして。今色々試行錯誤しているんです。」
彼女の座っている机の周りには、試作品と思われる尻尾の山が積み重なっていた。スカジはそこに飛び込みたい衝動を堪えていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「それで、どうしてこれを作ろうと思ったの?」
試作品の山に埋もれながら、スカジはイージスに聞いた。どうやら、もふもふの誘惑には勝てなかったようだ。
「ループスの方達の尻尾ってとても触り心地が良さそうじゃないですか。」
「そうね。」
「かといって本人に『触らせてください。』なんて言う度胸は私には無いじゃないですか。」
「そうね。」
「なら作るしかないな、と思いまして。」
「なるほど。」
何がなるほどなのかは分からない。しかし今のスカジはだいぶもふもふにやられている。普段の様子を知る人が見たら驚くほどふにゃふにゃな顔をしている。
「そういえばスカジは彼らの尻尾を触ったことがあるのですか?」
「ええ、あるわよ。」
「それは上々。触り心地はどうですか?私は本物を触ったことがないので、想像で作ってみたのですが。」
「…ふむ、」
そう言われてふとスカジは冷静さを取り戻す。確かに、イージスが作っただけあって触り心地はとても良い。これだけでも文句なしで素晴らしい出来と言えるだろう。しかし、本物のループスの尻尾と同じかと言われると否である。ほんの僅かではあるが感触に違いがある。
「…そう言われると、少し違う気がするわ。」
「そうですか…。ではどんな感じなのでしょうか?」
「本物はもっと、こう、ふわっとしていてしゃらっとしてるわ。」
「…貴方に聞いた私が馬鹿でした。」
「失礼ね。」
イージスにとってスカジの独特な感覚は全く参考にならなかったようだ。そうすると行き詰まってしまう。別に今の出来でも構わないのだが、違うと言われると完璧な物を作りたくなってしまう。イージスは凝り性なのだ。
「うーん、どうしましょうか?手当たり次第に作っていってスカジに感想を聞いていきましょうかね…。けど効率悪そうですよね。」
「じゃあ本人連れてくるから待っててちょうだい。」
「えっちょっとスカジ何を「じゃあ行ってくるわ。」あ、えっ待って。」
今のスカジの理性は0である。多分もふもふのためならなんでもやるだろう。イージスの返事を待たず、部屋を飛び出してしまった。
「…どどど、どうしましょう⁉︎」
…どうやら、もう1人ポンコツが増えたみたいだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ねえどうしたのスカジ?突然呼び出して。今日暇だったから別に構わないけどさ〜。」
「急でごめんなさいね、師匠に会って欲しいの。今すぐに。」
「えっ最近何かと話題のお師匠さん?確かイージスさんだっけ?僕になんの用なのさ?しかもそんな緊急なの?」
「来れば分かるわ、」
スカジが呼んだ件の人物はプロヴァンスであった。ループスの中でもとびきり大きな尻尾を持つ彼女だ。過去に何人もの人々をその尻尾で魅力してきた。とあるウルフハンターによる「素晴らしい尻尾ランキング」でも堂々の第一位にランクインしている。サンプルとして十分すぎるだろう。
「(いつにも増してすっごい早いペースで歩くなぁ。スカジってイージスさんには激甘だって聞いてるけど、イージスさんに何かあったのかな?)」
と、とてつもなく早い速度で先導するスカジへ着いていくプロヴァンス。何か大事があったのではないかと身構える。任務中のような緊張感が伺える。
一方、スカジの脳内は、
「(もふもふな尻尾の抱き枕。もふもふ。もふもふ。)」
…ダメみたいです。
そしてまもなく部屋の前へ到着した。スカジが部屋を出てから10分、彼女の本気さが伺える。着いたと同時に扉を開き部屋に入る。それに着いていくようにプロヴァンスも部屋に入った。
「お邪魔しま…きゃぁぁぁぁぁ!」
「ピィィィィィィィィィ!」
自分と同じループスの尻尾(を模したもの)だけが山積みになっていればそりゃ驚くだろう。方やその恐怖から、もう片方はそんな彼女の叫び声にビビり散らかす感じで悲鳴を上げた。2人の初対面は、なんとも締まらないものとなった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ーうん。なんとな〜く話は分かったよ。とりあえず何事もなくて一安心したよ。」
「そ、それは良かった…です…?」
「うん、それで、…なんか遠くない?」
落ち着いた後、2人はお互いの状況を伝えあっていた。頼りのスカジは今使い物にならないため、イージスは初めこそろくに会話出来なかったが、次第に慣れてきたのかなんとか会話はできるようになっている。しかし近づくのはの怖いのか、プロヴァンスが椅子に座って出されたお茶を飲む中、イージスは部屋の角でカーテンに隠れて会話をしていた。
「あ、そ、そのまだ緊張してるので、ごめんなさい。」
「ううん大丈夫だよ。それにしても…すごいねこれ。本物そっくりだよ。」
人が良いプロヴァンスはイージスの態度に怒っている様子はない。おもむろに自身の尻尾を模した抱き枕に触り、その出来の良さに感嘆の声を上げた。
「あ、ありがとうございます。けど、スカジ曰く本物と少し違うみたいで…。」
「それで僕を呼んだ…と。」
「そ、その、私はそんなつもりなかったんですけど、止める間もなくスカジが行ってしまって…。ごめんなさい…。」
「別に今日は暇してたから平気だよ。というか、原因はスカジみたいだし。」
そう言いながら2人はジト目で件の人物を見る。当の本人は抱き枕の山に埋もれて幸せそうに顔を緩めている。
「その…大変だね。」
「…ありがとうございます。」
プロヴァンスはすごく同情した顔でそう言葉にした。
「まあそれはそれとして、僕の尻尾を触るのはいいんだけど、一つお願いしたいことがあるんだ。」
「な、何でしょうか…?」
「そのね、ーーーーーってお願いしてもいいかな?」
「は、はあ…構いませんけど。」
「よしっ!じゃあはい、どうぞ。」
どうやら何かお願いをしたようだ。それが許容されるや否や、プロヴァンスはあっさりと自分の尻尾をイージスへと向けた。しかし、イージス、一向に距離を縮めることができない。
「…」
「ほら、どーぞー?」
「…」
イージスが尻尾を触ることができたのは、それから10分後であった。
「(あっ…。イージスさん、すっごく触るの上手い…。)」
イージスはしっかりと感触を確かめるように尻尾を撫でる。それは決して乱暴なものではなく、むしろ今まで触った人の中でもトップクラスの気持ちよさがあった。ちなみに、スカジもそれなりに気持ちいいらしい。プロヴァンスは目を細め尻尾に感覚を集中させてリラックスしていた。
そうしてどれほど時間が経っただろうか。彼女の意識は闇に落ちた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「んにゅ…。…あれ?」
次にプロヴァンスが目覚めたのは布団の中だった。上体を起こすとそこには椅子に座って作業をしているイージスと、試作品の山に包まれて眠っているスカジの姿があった。
「ふあぁぁ〜。寝ちゃったんだ、僕。ごめんね〜イージスさん、布団使っちゃって。…イージスさん?」
イージスに声をかけるが返事がない。どうやら彼女は集中して作業をしているようだ。その横には、おそらく完成品だと思われる尻尾抱き枕(verプロヴァンス)が3つ置かれていた。
「…わあ、すっごい集中力。」
なんとなくプロヴァンスはイージスに近づき、作業をぼんやりと眺める。卓越した技量によって作られる過程はまるで1つの芸術であり見ていて飽きない。イージスが4つ目のそれを完成させるまでの時間が一瞬のように感じられた。
「…ふぅ。」
「お疲れ「ピィ!」さ…ま。」
突然背後から聞こえた声に悲鳴をあげるイージス。椅子から転げ落ち、しかしその勢いを利用して後転し、すぐさま声の主と距離を取る。戦闘能力の無駄遣いである。
「あ…ごめんね。驚かせちゃったよね。」
「だだだだだだだ、大丈夫でしゅ!」
「あ、うん、そう。本当にごめん。」
「お、起きてらっしゃったんですか…。」
「うん、ついさっき起きたよ。お布団ありがとうね。」
「あ、いえ。お構いなく。」
「それでこれが完成品だよね?触ってもいい?」
「は、はい。どうぞ。」
プロヴァンスは近くにある1つを手に取る。相変わらず素晴らしい出来であった。触り心地も自分の持つそれと何ら変わりない。
「わーすっごい!本物みたい!」
「そ、そうでしょうか?それは良かったです。あ、その2つが約束のものなので、どうぞ。」
「本当⁉︎ありがとう!」
「い、いえ。感謝するのはこちらですから。」
どうやら約束とは完成した抱き枕をプロヴァンスに渡すことだったようだ。しばらく破顔していたプロヴァンスだが、ふと壁に掛けられた時計が目に入る。どうやら長く眠っていたようで、それなりにいい時間になっていた。
「嘘⁉︎もうこんな時間!…ごめんね。もう少しゆっくり話したかったんだけど、そろそろ帰らなきゃ。」
「い、いえいえ全然!無理矢理付き合わせてしまって申し訳ありませんでした!」
「暇してたからいいよ別に。それにいい収穫もあったしね。」
「今度は戦闘訓練もお願いしようかな。」と言い残してさっさとプロヴァンスは帰っていった。どうやらイージスを気遣ったらしい。
「…ふぅ。緊張しました。」
「…んん。プロヴァンスは?」
「…起きましたねスカジ。丁度今帰りましたよ。」
「そう。それで、完成したのね!」
目が覚めたスカジはすぐさま完成品を見て目を輝かせる。そのままそれに抱きつこうとするが、それはイージスによって阻まれる。
「…罰です。私に一撃与えるまではあげません。」
その時の顔は、まさに絶望、といったものであった。
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「!プロヴァンス!」
「オーケーストップレッド。今日は君にいいものをあげようと思うんだ。だから尻尾に飛び付こうとするのは止めて欲しいな。」
「むう…。何?」
「そんな露骨に機嫌悪くしないでよ。はいこれ、私が帰ってから開けてね。それじゃ僕はこれで。」
「?………………!!!!!モフモフ!」
公式はいつかプロヴァンスの尻尾ぬいぐるみ作って♡
おかしい…スカジをこんなポンコツにするつもりはなかったのに、指が勝手に動いてしまった…。
ちなみに後日どこから話が広まったのか、子供達もこれが欲しいと言ってイージスが大量生産しました。そこにはとあるCEOの姿もあったとかなかったとか。プロヴァンスは少し複雑な心境をしていました。
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食事
後は引くだけです(最難関)!
ロドスのオペレーターは皆が精鋭である。しかし、ロドスには1つの問題点があった。
慢性的に人手不足なのである。
いくら各々が優秀であろうとも1人で出来ることは限られてしまう。だから基本的にオペレーター達は複数人で任務を行うことが多い。だがしかし、存外彼らの人間関係は複雑である。単純に性格に難のある者や、一緒に編成を行うと現地でいざこざが起きてしまう可能性のある組み合わせが多数存在するのだ。ドクターやアーミヤ、ドーベルマンのような全体を纏める人物がいればその限りではないのだが、常に彼らが作戦に着いていくわけにはいかない。そういうわけで、問題なく2、3人で任務遂行が可能なメンバーはある意味貴重である。
そのメンバーの中でも特に高い能力を有するのが、アビサルハンターである。1人1人が優秀であるのはもちろん、何故か連携能力が異常と言って良いほど高い。唯一欠点を挙げるとするのであれば、彼女ら全員が少々、…いや、かなり癖が強いことだろう。
ある日の昼下がり、そんな3人は今日も無事任務を済ませ、ロドスに帰還していた。
「悪いけれど、今回の任務の報告は2人に任せてもいいかしら?」
「あら、珍しいですね?いつもみたいに食事には行かないのでしょうか?」
この3人、仲は非常に良いようで、3人で行動することが多い。普段は任務後、食事に行くようである。
「龍門の方に評判のいいピザ屋があったから、今日はそこに行こうかと思ってたんだけど、また次回かな。」
「ごめんなさいね、先約があるのよ。」
「数日後にも任務はありますし、その時に致しましょう。」
「そうだね。それで用事って?」
「ああ、師匠が食堂に行きたいから着いてきてくれないかって頼まれてるのよ。」
「あら、例のお師匠様ですね。」
「…割とみんなが『例の』って言うけれど、そんなに噂されてるの?」
「…え?無意識なの?」
実のところ、イージスがロドスに来てから、このメンバー内でのスカジの話題の約半分がイージスの内容となっている。スペクターは何を考えているか分からないものの、アンドレアナは内心うんざりしている頃でもあった。
「?」
「いや、なんでもない。かなり人見知りみたいだし、突然お邪魔するわけにもいかないよね。」
「ごめんなさいね。今度紹介するわ。」
「それは楽しみです。ならそろそろ解散しないといけませんね。」
「そうだね。報告は私達に任せといて、あまり待たせないようにね。」
「ええ、お願いするわ。…今度おごるわね。」
そう言ってスカジは足速に廊下を進んでいく。スペクターとアンドレアナは珍しいものを見たと少し目を丸くして、しばらくの間そんな彼女の背中を眺めていた。
「何というか、忠犬みたいですわね。」
「そうだね。」
「…」
「(あれ、スペクターと2人きりって初めてじゃない?…うっわ〜。今日暑かったから、汗臭いかもしれない。恥っずかしいな。)」
「…とりあえず、報告に参りましょうか。」
「そ、そうだね。行こうか。」
「…?今日はペースが早いですね?」
ちなみにこの時、スペクターは相手の返り血で血塗れである。普段は報告の前にスカジがシャワーを浴びるように言うのだが、動揺しているアンドレアナはそれに気付かず、アーミヤに怒られるのであった。
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「お待たせ、師匠。待ったかしら。」
「いえ、お願いしたのは私ですから、気にしないでください。ごめんなさいね、無理に付き合わせてしまって。」
「それで?なんで突然食堂に?食事なら自分で済ませることができるでしょうに。」
「その、以前グムさんと話してからそろそろ1ヶ月経ちますし、グムさんを悲しませてしまうかな、と思いまして…。けど私1人ではまだ勇気が出なくて…。」
「なるほどね。なら行きましょうか。」
「すいません…お願いします。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
一方同時刻、食堂ではとある騒ぎが起こっていた。
「…もうだめよ。…誰か…助…け……。」
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「…ほら、師匠。着いたから、いい加減隠れるのをやめなさい。」
「あぅぅ…。もうちょっとだけ…。」
「いやよ。とっとと離れなさい。」
「ひぅ…。」
そんなやりとりでイージスを引き剥がそうとするスカジはふと異変を感じとった。
「…おかしいわね。」
「…?どうかしたのですか?」
「静かすぎるわ。昼時だもの、いつもはもっと賑わっているわ。」
「…そうなんですか?けれど、人は大勢いるみたい…で…、…みんな目が死んでますね。」
「…もしかして。」
深刻な顔を浮かべながらスカジは歩みを進める。そうして、グムの所まで到着する。
「…あ。スカジさん…。イージスさんも来てくれたんだ。今日来ちゃったんだ…。」
「こ、こんにちわ〜…。…どうかしたんですか?」
「うん、ちょっとね。」
顔面を蒼白させているグムにイージスは聞いた。グムが訳を話そうとした時、周りから大きな声が響く。
「お待たせしました〜。ハイビスカス特製カレーです!栄養満点ですから、残さずに食べてくださいね〜!」
周りの空気が、死んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…それで、下手人は?」
「分かんない。気づいたらハイビスちゃんが料理してて、ヴィグナさんが…。」
グムが悲痛な声色でそう話す。ふとキッチンを見ると、赤髪のサルカズが白目のまま、青色の泡を吹いて倒れていた。
ハイビスカスの料理、それは不味いなんてものではない。一応彼女のために弁明しておくが、栄養だけはしっかりしているのである。むしろ、それのために他のあらゆるものを犠牲にしていた。これを食べたオペレーター達はもれなく全員気分が最低に落ち込むが、何故か翌日のパフォーマンスは非常にいいのだ。きっと明日には、「こんなの絶対におかしい…。」とぶつぶつ呟きながらレユニオンを蹂躙するヴィグナの姿が見れることだろう。今回の料理もそのようで、カレーとは言っているが明らかにおかしい。ルーの色は何故か暗い緑色をしているし、明らかに普通のカレーには入らないであろう食材も入っている。もはや、食材であるかも怪しいが。
「…ねえ、誰が最初に行くの?」
「…マリア。」
「やだよ!そう言ってこの前私を生贄にしたじゃん!ゾフィア叔母さんが行ってよ!」
「叔母さん言うな!無理よ。だってあんなのおかしいじゃない⁉︎囚人ですらもっとマシな物を食べるわよ⁉︎」
「…お姉ちゃん。」
「わ、私か⁉︎しかしだな…。」
あちらこちらで似たような会話がヒソヒソと話されている。無論、食事を取りに行く者は誰もいない。そうして数分が経つ。
「…うぅ。」
だんだんと涙目になっていくハイビスカス。彼女に悪気は一切ないのだ。むしろ、「みんなにしっかりと栄養をとって欲しい」という100%の善意の下に行われている。今にも泣きそうな彼女をみて、仲間を泣かせるわけにはいかないと、いつものように1人の勇敢なフェリーンが先陣を切ろうとした時だった。
「…ああああ、あの。そ、その、食事をいただけませんか…?2人分なんですけど…。」
非常に緊張した様子のイージスが声をかけたのだった。
「!は、はい!今すぐ用意しますね!」
「ピィ!」
「あ、ごめんなさい。つい…。」
「だ、大丈夫です。すいません、私、人見知りで…。」
ぱあぁと笑顔になってつい大声を上げたハイビスカスにイージスは奇声を上げて一歩下がる。
「はい、どうぞ!召し上がれ。」
「あ、ありがとうございます。」
そう言ってすぐにイージスは立ち去ってしまう。どうやら、まるで英雄を見るかのように彼女を見つめる視線が怖かったようだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「持ってきましたよ、スカジ。」
「ありがとう師匠。」
「いえ、それではいただきましょうか。」
何でもないようにイージスは言う。一方で、スカジは非常に顔を顰めている。何も知らないイージスに対して、ついグムは心配の声をあげる。
「あ、あの。大丈夫ですか?無理しない方がいいですよ?」
「?え、えっと、何がですか?」
「え?だ、だってそのカレー…。」
「グム、言うだけ無駄よ。師匠には意味がないわ。」
「?」
周りの人は固唾を呑んで彼女達を見守る。イージスは何でもないかのようにスプーンにそれをのせ、ご飯と絡めながら口へと運んだ。それを見たスカジもまた、しばらくして師に続くのであった。
ガリッ…ゴリッ…
明らかに普通の食事では鳴らない音がなる。何も知らずに食事をしたイージスに対し周りは同情したように見ていた。しかし、イージスはそのまま何もないように二口目、三口目と食べ進める。そんな彼女の様子に周りはざわざわと驚く。
「え?何で平気なの?」
「実は美味しかったとか?」
「ありえないだろ。スカジの顔を見てみろよ。ゴミを見るかのような目で食べ続けてるぞ。」
「あー…スカジは最悪必要なら平気でどんなものでも食べるよ。この前だってあのクソ不味で知られる携帯食料食べてたし。」
方や普通に食事をするイージス、一方で死んだ目で同じ者を食べるスカジ。それを見て絶句するグムと周りのオペレーター。満面の笑みを浮かべて食事をする2人を見ているハイビスカス。未だ倒れたままのヴィグナ。カオスである。
「あ、あの、イージスさん。大丈夫ですか?体調悪くなったりしませんか?」
「?はい。この食事、栄養しっかりしてますし、補給には丁度いいかもしれませんね。」
「「「「(正気かこの人⁉︎)」」」」」
イージスの言葉に周りの心の声は一致する。なお、1人だけは「やっと理解者が現れた!」とばかりに目を輝かせている。
「師匠、言葉が足りないわよ。味は?」
「めちゃくちゃ不味いですね。これ、料理に対する冒涜では?」
「「「「「(あ、そこは普通にそう思うんだ。)」」」」」
今度は「裏切られた⁉︎」とばかりに目を丸くしていた。
「…ねえ師匠。師匠っていくらでも食べることできたわよね?」
「?はい。やろうと思えばいくらでも。」
「「「「「(どんな体の構造してるの?)」」」」」
「それならこのカレー、全部食べてあげてくれたいかしら?実は彼女らここにいる人達がみんなもう食事済ませてるのを知らずに作ったみたいで、とめも余っちゃうのよ。」
「「「「「(!!!!!)」」」」」
「はあ、構いませんけど、後から来る人の分は取っておくべきでは?」
「昼にしてはもう遅いし、これから来る人なんていないわよ。残す方がもったいないから、食べてあげて頂戴。」
「そうですか。あ、ならスカジも食べ「いらないわ。もうお腹いっぱいだから。」…そうですか。」
「決まりね。ハイビスカス、それ全部こっちに持ってきてくれるかしら。」
「いいんですか⁉︎」
「「「「「(助かった〜。ありがとうスカジ、ありがとう師匠さん!」」」」」
彼らにとっては昼飯抜きにはなるが、あれを食べるよりはマシなようだ。皆スカジの対応に感謝し、結局全てを平らげたイージスに畏敬の念を送った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「イージスさん、また来てくださいね!今度はグムが美味しい料理、作るから!」
「は、はい、頑張ります。あ、あの、それと。」
「?何ですか?」
「敬語、無しでいいですよ。好きに話してください。」
少し恥ずかしそうにそう言うイージス、グムは満面の笑みを浮かべてイージスの手を握る。
「!うん、うん!じゃあ、イージスちゃんって呼んでいい?」
思わず声を上げてそう言うグム。しかし彼女はイージスの手を握ってしまった。
「ミ°。ピィャァァァァァァァ!!」
「…あ。」
「…先は長そうね。」
アビサル組、話を書きたいですがキャラが難しくて…。主にスペクターなんですが。
一応ハイビスカス回のつもりです。久しぶりなので、思ったようにうまく書けませんでした…。
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真銀斬
廊下を駆ける少女がいた。僅かに息を切らせて、少女はある部屋へ辿り着く。そして、一切の迷いも見せずにその扉を開く。目的の人物を見つけた少女は大きく息を吸い込み、彼女へと突進した。
「…スカジ〜!私に真銀斬を教えて!」
「ピャイ‼︎」
…涙目で。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…それで?なんとなく予想はつくのだけれど、なんで真銀斬を?」
部屋には3人。頭にたんこぶを1つ作り、床に正座させられているテンニンカ。それを見下ろすスカジ。部屋の隅でそんな2人の様子をビクビクと伺うイージス。スカジは疲れたような、呆れたような声色でテンニンカに問いかける。テンニンカは俯いて答える。
「私だってロドスの生活には満足してるんだよ?みんな私を子供扱いしてくるのは癪だけど、みんな優しいし。私の知らないものがいっぱいあるし。」
「そう。」
そう言い始めたテンニンカはでも、と一度言葉を切る。そしてそのまま情けない声を上げた。
「でも!なんで私が毎回重要任務に呼ばれるの⁉︎私はスカジみたいなフィジカルお化けじゃないんだよ⁉︎ブレイズみたいな無茶も出来ないし、エフィちゃんみたいに敵を一掃できるわけでもないんだよ⁉︎」
「…」
「いったぁい!なにすんのさ!」
「人をお化け扱いしたからよ。」
スカジは無言でテンニンカにデコピンをする。もちろん加減はしてある。バチィン!とおおよそ普通のデコピンでは鳴らない音を響かせていたが、きちんと加減している。
「ドクターも!普段はめちゃめちゃいい人なのに疲れが溜まると変なことばっか言うんだもん!私だけに!真銀斬打て、とか石10万よこせとか。私をなんだと思ってるのさ⁉︎」
「あー…。」
なんとも聞き覚えのある話だった。彼女、テンニンカは実力こそスカジ達には大きく劣るが、その仕事の速さや依頼料の低さから非常に重宝されている。そのため、重要任務参加率はスカジと並ぶある意味でロドスのエースの1人であった。ドクターは何故か、あまりの激務に追われたり、厳しい任務に疲れると、テンニンカに限って無茶振りをするのであった。
「イラプションもラグナロクも放てない!林檎ちゃんはそこまで出来ないよ!」
「それは、そうね。ご愁傷様。」
今までの鬱憤を晴らすように叫ぶテンニンカ。とはいえ、スカジに出来ることなどない。せいぜい後でアーミヤに報告する程度である。
「だから!本当に真銀斬を習得してドクターを見返してやろうとここに来たの!お願いスカジ!教えて!」
「どういう訳よ。というか、それならシルバーアッシュ本人に聞きなさいよ。」
「えー?だってシルバーアッシュってそういうの取り合ってくれないもん。その点、スカジは話は聞いてくれるじゃん?」
「そんなこと言われても、私だって知らないわよ。大体、どんな理由で斬撃が銀色に光るのよ。訳が分からないわ。」
「スカジも大概じゃん。クラッシャーを投げる方が訳分からないよ私。」
相談しやすい、もといチョロいスカジを目当てにやって来たようだが、スカジとてそんなもの知る訳がない。どうあがいてもお手上げの状況であった。が、そこに声をあげる者が1人。
「あ、あの、スカジ?真銀斬とは?」
「この前の戦いの時に、1人だけ男のファリーン、シルバーアッシュが放ってた技よ。」
「ああ、あの方の。それならなんとかなるの「本当に⁉︎」ピャァァァ!」
「きゃっ!ちょっと、私に隠れるのはやめなさい!」
イージスの言葉に目を輝かせたテンニンカは勢いよくイージスに近づく、がしかし彼女はすぐさまスカジの後ろへ逃げ込む。
「それでそれで!どうすればいいの?」
と、テンニンカは興味津々に聞く。彼女はひょこっと顔だけを出して怯えたように声を出す。
「よ、要は斬撃を飛ばせれば良いのでしょう?それなら、スカジはできますよね?」
「まあ、出来るわね。」
「本当⁉︎じ、じゃあそれを教えてよ!そうと決まれば早速、訓練所に行こうよ!」
スカジの手を引くテンニンカ。イージスは既に部屋の隅へと逃げている。イージスは教えることはしないため、スカジに教わろうとしている。スカジはため息を吐いて、諦めたように訓練に付き合うことにした。
「…はあ。師匠、行ってくるわね。」
「はい。行ってらっしゃい。」
「ありがとね〜!」
なお数ヶ月後、なんとか攻撃を飛ばせるようになったテンニンカだが、あまりにも威力が低く。使い物にならなかったのだとか。かわりに、「スカジ、真銀斬を打て!」とドクターは言うようになったらしい。
今回イージスちゃんの影薄いですね。テンニンカ回でした。テンニンカが真銀斬使えても、火力低くね?と思ったことがら執筆しました。うちのスカジさんもドローンを攻撃できるようにならないですかね?
なお、訓練室での様子。
スカジ「ここでバッと飛ばすのよ。」シャキーン!
テンニンカ「なるほど!」シャキーン!
以外にテンニンカも感覚派のようです。
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お菓子
暗い話はここまでにして、ついに来週来ますね…!僕は準備万端なので楽しみで仕方ありません!目指せ完凸!
存外、と言うべきであろうか。オペレーター・イージスがロドスに加入したことによる影響はあまり大きくなかった。非常に価値の高い記録を得られるようになったり、訓練室の破損が無くなったことからドクターだけには泣くほど感謝されているが、せいぜいその程度でしかない。
ある意味当然とも言える。イージスが作戦任務に参加することはないし、訓練とは言っても実際は腕試しである。とどのつまり、イージスと関わりを持つのは、一部の例外を除けば、ロドスのオペレーター達の中でもかなり実力が高くかつ戦闘行為に忌避感を持たない者となる。そして本人は基本的には部屋にほぼ引きこもっている状態のため、交流の機会が少ないのも1つの理由だろう。
今回は、そんな彼女がもたらした、ほんの些細な影響について話をしていこう。
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「あら?」
その日、スカジはロドス内のある区画を訪れていた。
「ねぇせんせー、食べちゃダメなの〜?」
「ぼくもう待ちきれないよ〜!」
「も、もうちょっとだけ待っててね!うーん、どうしよう…。」
その区画とは、鉱石病の治療施設、その中でも特に鉱石病の子ども達を担当する場所である。ここでは鉱石病患者の治療、延命だけでなく簡単な教育なども行われている。
「あ!スカジお姉ちゃんだ!」
「え⁉︎本当だ!」
「今日はどんなにんむだったのー?」
先程まで医療班の1人を取り囲んでいた子ども達は打って変わってスカジの方へ集まり始めた。半ば突進してきた子供をスカジは難なく受け止める。スカジが片手を広げると何人かの子どもが競うようにその手にぶら下がり始める。ものすごい重量が加わっているはずだが、彼女の表情はいつもと変わらない。
「あ、スカジさん!…相変わらずすごい光景ですね。腕辛くないんですか?」
「そんな柔な鍛え方してないから平気よ。それで、何かあったのかしら?」
実は彼女がここへ訪れたのは初めてではない。一度、迷子になった子供をここにつれてきて以来、子ども達に非常に懐かれてしまった。彼女の圧倒的な身体能力は男子に憧憬を抱かせ、戦いの渦中にいてもなお損なわれないその美貌に女子は魅力されていた。スカジにとっても、一切自身を恐れない子とも達の様子に悪い気はせず、暇があらばたまにここを訪れて子ども達の相手をしていた。
「その、実は部屋に大量のお菓子が置かれていて、それも大人達も含めた全員分。」
「…はあ。別にいいじゃない、何か問題があるのかしら?」
「それが、誰が作ったのか分かんないですよ。いや、ここの設備は厳重なので、悪意があるわけではないのは分かっていますけど…。その、安全かどうかが分からなくて…。」
そう言って困った顔をする医療班。ロドスの人員は非常に仲間意識が強いため、善意で行った行動だということに疑いはない。ただ、悪意がないだけで害がないわけではない。
「ああ、マゼランだったかしら?以前にやらかしたのは。」
「そうです…匂いで食べることは止められましたけどしばらくの間施設内で匂いが取れずに大変でした…。」
ちなみにハイビスカスもやった。その時は先に食べた生贄(医療班)のおかげで子ども達が被害を受けることはなかった。
「以降、こういったことをするには上から許可をとる必要があるのですが、特に聞いてもいないんですよね。」
「でもでも、今日のはとっても美味しそうなの!クッキーなんだけどね、いろんな形があるの!」
「へえ、そうなの。」
渋い顔をする医療班とは逆に、子ども達は早く食べたくてウズウズしているようだ。ちなみに、スカジは現在10人程度を一度に持ち上げている。
「その、これなんですが…。」
「私が見てもあまり意味はないと思うのだ、けれ…ど………。」
「…どうかしましたか?」
めちゃくちゃ見覚えのあるクッキーだった。味だけでなく見た目も完璧な、よくイージスが作るクッキーであった。
「………。」
「あー…意味はあったみたいですかね?」
「…ええ、そうね。とりあえず安全面は心配ないわ、私が保証するから安心してちょうだい。」
「本当⁉︎せんせー、もう食べていい?待ちきれないよ〜。」
「…まあ、スカジさんがそう言うならいいかな。落ち着いて食べるんだよ。」
「「「やったー!!」」」
許可をもらうや否やすぐさま子ども達は走り去っていった。
「ところで、お知り合いの方ですか?」
「私の師匠よ。」
「ああ、今噂の。…それでは、お礼を伝えといてもらえますか?あの子達、とても楽しそうなので。」
医療班は柔らかく微笑む。その目は、美味しそうにクッキーを頬張る子ども達と、そんな彼らと共にいる大人達の姿があった。
「…その前に説教だわ。」
そう言うスカジであるが、その顔は心なしか普段よりも明るいように思えた。
「それじゃあ、私はそろそろ行くわね。」
「今日はありがとうございました、またいつでもいらしてくださいね。」
それからしばらく、おやつタイムを終えた子ども達と戯れ。彼らが疲れから眠りについてからスカジはここを去った。
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「おや、お帰りなさいスカジ。今日はどこへ?」
「師匠、正座。」
「へ?」
以降、ほぼ毎日のようにアーミヤから許可をもらうイージスなのであった。
更新止まっている間にお気に入り200行ったみたいですね、ありがとうございます!
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