神の目の前でカイル推しのバルバトスにリアラがずっこんばっこんされる話。 (リアラすこすこ侍ちゃん)
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神の目の前でカイル推しのバルバトスにリアラがずっこんばっこんされる話。

軽度のリョナ、凌辱。エロい意味でのR-18。バッドエンド。
与太話多め。欲望の赴くまま半日クオリティー。
無理してまで読むもんじゃない。


以上、警告。



 かつて、父や母、ウッドロウさんとフィリアさんがかけがえのない友を犠牲にし、救った世界。

 どんな想いでそれを成し遂げたのかは、想像しか出来なかったが、数々の出会いと別れを重ねて、少しだけ分かった気がしていた。

 誰かを喪う事は、とても痛い。

 父を亡くした時を思い出し、俺はそう知った。

 父の死を俺の為に一人抱えたロニ。

 弟の死を受け入れ、そうあるべきだと別れを告げたナナリー。

 己の信念の為、親友と戦い、敗れ、死んだジューダス。

 世界平和の為、史実である兄の死を受け入れたハロルド。

 皆が教えてくれたから、俺は命の尊さを学んだ。

 だから、父や母が涙を呑んで、世界を救う為、友の命を捧げた『この時』は、何を失っても成し遂げなければならないと思った。

 決着に相応しい場所を。

 そう言い残した俺の宿敵とも呼べる男は、やはり、神の目の前に居た。

 

――だが、俺が覚えているのはそこまでだった。

 

「カイル・デュナミス……その程度か。その程度なのかぁああ!!」

 

 頭上で吼える宿敵とも呼べる大男。

 かつて見せた紳士な態度は何処へ。今は全てを省みなくなった戦鬼のように、己と敵の力を渇望する。

 その圧倒的膂力は、駆け付けてきた体力自慢のロニを一撃で吹き飛ばした。隙を突いたジューダスの数多の突きを受けて尚、筋肉の膨張で傷を塞ぎ、その凄まじい胆力に僅かな隙を見せた彼を剛拳によって下す。彼へ間髪入れずとどめを刺そうとするその姿に、ナナリーが急ぎ矢を射ち、ハロルドが晶術を打ち、その内のひとつが成果を上げる。

 戦鬼の片目が抉れていた。

 しかし、戦鬼は尚倒れない。

 最早痛みなど感じてはいない。主人の力に耐え切れなくなった斧が砕けようと、気にした風もなく、ジューダスの背へと大斧を振り下ろした。

 鈍い音が響く。

 服の下に着こんだ優秀な鎧のおかげで、身体が千切れ飛ぶような事はなかったが、叩きのめされたジューダスは短い悲鳴と共に意識を刈り取られたようだった。いや、果たして意識だけなのか。その命さえ刈り取られたのではないかと、背筋が粟だった。

 何故、寝ているんだ……俺は。

 身体に力を籠めているのに、これっぽちも動かない。まるで糸が切れた人形のように、身体が反応してくれない。まるで夢を見ているかのように、可笑しな浮遊感があるようだった。

 

「レイズデッド!」

 

 そこへ、澄んだ声が響く。

 長い詠唱を終えたリアラが、俺に死の淵から蘇る晶術をかけてくれている。

 しかし、その時ばかりはやけに鮮明に――戦鬼、バルバトスの敵意が彼女へ向くのを、身体中の感覚が察した。

 レイズデッドはもうあと一秒あれば発動する。あとほんの少し猶予があれば、すぐにでも起き上がって、この男を叩き斬ってやる。

 なのに、それが叶わない事だと、何故か分かった。

 肌で感じる強い振動。そして、爆発。

 愛しい少女の悲鳴は、やけに鮮明に聞こえた。

 相も変わらず身体は反応が無く、その音に耳を塞ぐ事すら出来やしない。

 

「今の俺はぁ! カイル・デュナミスという男の力を見てみたい。死の淵にあるその最後の力をなぁぁ! 邪魔を、するなぁぁああ!!」

 

 戦鬼が吼える。

 雨のような矢が身体に突き刺さっているというのに、何故その男の命は消えない。

 後の世に例の無い程の天才がありったけの上級晶術をぶち込んでいるのに、何故怯む事すらしない。

 かつて、ディムロスはこの男を殺したと言ったが、一体どうやって殺したというのか。どんな攻撃を受けようとまるで意に介していないその姿は、不屈を通り越して、最早狂気の沙汰だ。

 轟と音が響けば、激しい揺れと共に、辺りの騒音がしんと静まる。

 嵐の前の静けさのようにも感じるそれは……いいや、もう、嵐が破壊の限りを尽くした後の静寂だった。

 首にぐいと可笑しな力が加わったかと思えば、バルバトスに髪を掴まれて吊るし上げにされていた。俺の仲間を全員纏めて倒してしまったこの男は、最早人と呼ぶ事すら憚られる。

 顔を伏せて肩を揺らす程笑っているが、その頭には元の青い髪が見られない。殆んどは焼け焦げ、残ったものも血に染まり、どす黒くなっていた。代わりに、顔や頭を含め、身体中に矢が刺さった痕がある。目をはじめとしたその痕から、未だとめどない血が流れていた。

 そうまでして勝利に執着するのか。

 バルバトス・ゲーティア。

 かつて地上軍を裏切り、ディムロス・ティンバーに処刑された哀れな負け犬。

 しかし、今のこの姿を見て、果たして誰が彼を負け犬と嘲笑おうか。神の目に刺さったまま動けない一〇〇〇年前の英雄達は、この戦鬼をどう呼ぶのか。どう倒すのか。いや、そもそも……勝てるのか?

 

「何だ。その目は」

 

 ふと、縮れたどす黒い毛の隙間から、俺を見つめる瞳。

 未だ闘気を一切失っていない奴の瞳は、俺を見て、動揺するかのように揺れた。

 

「何だ! その目はぁああ!!!」

 

 叫ぶと共に、景色がぐわんと揺れる。

 最早痛みすら感じない身体が、硬い地べたへ叩きつけられていた。

 もう視界さえ動かせず、視るものを選ぶ事すら出来ない。

 今、視界に映るのは、父や母が命を懸けて成し遂げようとした最後の軌跡。未だ成し遂げられずに、激しく明滅していた。

 リアラが出てきたレンズより、更に大きな神の目というレンズ。

 ああ、あれがあれば、この男を倒せただろうか。

 あれを砕く程の、あの剣があれば……。

 そう思ったところで、再び視界が動く。

 もう首どころか身体の感覚すらなく、目に映る全てが、まるで映像を見ているよう。改変された未来でホログラムを見た時の気分だった。

 再度、戦鬼が俺を見つめる。

 やけに苛立っているようで、折れた歯を剥き出しにして、窮地の獣のように低く唸っていた。

 

「許さんぞ……カイル。お前が、そのような弱者の目をする事は! この俺が許さんぞ!!」

 

 苛立ちを発散するかのように、再度俺は地べたに叩きつけられた。

 嬲られるばかりの俺に、果たしてこの男は何を求めているのか。

 勝てなかったという敗北感を、これ以上俺に見せつけて、一体何をどうしろと言うのか。

 身体が動くものなら、その首を刎ねているとも。

 好き勝手にするな。この異常者が。

 

「そうだ。俺を恨め! 俺を憎め! 立ち上がって見せろ。カイル・デュナミス」

 

 誰か、俺に力をくれ。

 そう願う。

 他力本願なのは百も承知だ。

 しかし、最早糸の切れてしまった身体は、どう足掻いても動きやしない。この異常者のように、気迫ひとつで動かない筈の身体を動かす事は、出来やしない。

 そうだ。リアラのレイズデッドを台無しにしたのは、お前じゃないか。バルバトス。

 再び吊るし上げにされた俺は、呪うような心地で戦鬼を見つめる。

 奴はそれを真っ向から受け止め、楽しそうに、にやりと笑う。「それでいい」と溢す姿は、何かに飢えた亡者のようにも見えた。

 

「何が足りん。俺はまだ足りんのだ。乾くのだ。お前が俺を満たす為には、何が足りん?」

 

 バルバトスはそう言って、俺の顎を余った手で掴む。

 まるで人形の首を弄るかのように、あちらこちらへと動かした。

 初めは何をしているのか分からなかったが、視界の外れに薄い桃色の服を見付けて、奴の行動の意味を察した。それと同時に、『彼女』を見て反応してしまった己の愚かさを、強く呪った。

 何だってお前は俺の事が分かるんだ。

 目に見えた反応なんて出来てはいない。

 なのに、何故、俺の視線をリアラを捉えたまま動かさない!?

 

「そうか。そうかぁ!」

 

 バルバトスは愉快そうに笑った。

 視界ががくんと落ち、地べたすれすれを動いていく。

 ああ、ああ……まさか、まさか。

 程なくして俺を引き摺るバルバトスは足を止める。再び顎を持たれたかと思えば、ぐいと引っ張られた。

 そして、俺の視界に、愛しの少女の姿が映る。

 エアプレッシャーの跡だろうか。床が彼女を中心に円状にめくれ上がっており、その威力を物語る。晶術耐性に優れた彼女だからこそ、身体に目立った傷は見られない。かつて見惚れた栗色の髪も、何時ものまま。寒冷地では寒くて震えていた白い肌も、神秘的な桃色の薄い衣服も、赤いリボンも、彼女の大切なレンズも……ああ、その姿を見れば、自分の不甲斐なさに嫌気がさす。

 何が英雄だ。

 俺は、大切な女の子さえ守れない。

 バルバトスがどうやったのか転がっていた斧を引き寄せ、それを床に突き立てる。気が付けば、俺はそこに襟首を引っかけられて、吊るされていた。

 僅かに開いたままの瞼は、開く事が出来なければ、閉じる事も出来ない。

 これから何が行われるにしても俺はそれを観たいとは思わないのに、その選択肢すらない。

 

「この女を辱めれば、お前は俺を満たしてくれるのか」

 

 俺と同じように、リアラの髪を掴み上げるバルバトス。

 彼女はただ意識を失っていただけのようで、あまりに突然な乱暴に、鋭い悲鳴を上げた。

 意識を取り戻したリアラは、自分の髪を手で押さえながら、乱暴を働く犯人を何とか振り返る。

 そして、その顔を恐怖の色に染めた。

 今のバルバトスは、最早生きている事が不思議な程の姿だ。

 ふとすれば死んでしまいそうな見た目をしていて……しかし、死さえ己の意思で超越したと言わんばかりの不気味さがある。

 

「バルバトス。貴方、何を……カイルッ!?」

 

 自分が置かれた状況を察する事が出来ず、リアラは狼狽える。しかし、視界に俺の姿を認めると、今に泣きそうな声を上げた。

 一方の俺は、もう目に映る光景に対して何ら感情を持てない。どうしたらいいかすら、もう分からない。

 バルバトスはリアラの反応に満足したようににやりと笑い、髪を掴んでいる手へ更に力を籠めた。「キャアッ」と声を上げて、彼女は苦悶し、涙を散らした。その顎を、俺の時と同じように掴み、下卑た顔を突き付けてみせた。

 

「もう一人の聖女……俺はまだ満足出来ていない。精々カイルに縋れ。助けを求めろ。こいつに俺を恨ませてみろ」

「貴方、どうかしてるわっ!」

「ハッ。一〇〇〇年前から、とおに狂っておるわ!」

 

 そう言って、リアラの頬を裏拳の要領で打った。

 手加減こそしたのだろう。バチンと大きな音が鳴ったものの、髪を掴んだ状態から解けはしなかった。

 痛みに「きゃんっ!」と悲鳴を上げるリアラだが、それはバルバトスを悦ばせるだけだ。

 

「そうだ。もっと喚け」

 

 そう言って、バルバトスはリアラの細肩に掛かる洋服の肩紐を掴むと「待って、いや!」抵抗するリアラの声をまるで聞かず、乱暴に引き下ろした。

 布が裂ける音と、リアラの悲鳴が響き渡る。

 長旅を共にしても、未だ見た事の無かった彼女の乳房が、視界に映った。あまり主張しない大きさだが、誰も触れた事のない聖域は、肌のくすみ一つ無い。色白な事もあって、ピンク色のつんと尖った乳首が印象的だった。

 すぐにリアラは頭を押さえていた腕を下ろし、肩を抱くようにして洋服だったものを引き寄せる。

 しかし、バルバトスはそうさせる事がそもそも狙いだったようだ。

 彼女の首元できらりと光るレンズを掴むと、その指にグッと力を籠めて――パリンッ! リアラの晶術の源であるそれが、粉々に砕け散った。

 端からそれが狙いだったのだ。

 元よりリアラの力では、バルバトスに敵いっこない。晶術さえ封じてしまえば、後は思うが儘だ。

 

「いや、いやよ。こんな、こんなの」

「ククク。かつてディムロスはアトワイトを助けたのになぁ? カイル。お前はどうして助けない」

 

 片手ではだけた胸を隠し、もう片方の手でバルバトスの身体を打つリアラ。しかし、傷を抉っている筈の彼女の殴打を、まるで気にした風もなく、バルバトスはこちらを向いてにやりと笑った。

 その狂気を宿した目は、まるで俺を通して、ディムロスさんに復讐しているようにさえ見えた。

 

「オタノシミと行くか? なあ? 聖女様ぁ」

「ひっ」

 

 まるで捕獲した獲物を堪能する蛇のように、バルバトスが嫌がるリアラの頬に舌を這いずらせる。

 とめどない涙を零すリアラは、俺を見ながら、嗚咽を漏らす。

 これから起こる事が分かってしまったかのように、赦しを嘆願するような顔だった。それでも尚、俺に『助けて』と言えないのは、彼女の目にも俺が指一本動かせないのは分かりきった事なのだろう。

 そこで分かった。

 俺はもう、死んでいる。

 バルバトスはそれを凌駕しているから、俺を殺した事さえ、分かっていないのだ。

 

「ごめんなさい。ごめんなさい。カイル。カイルッ」

 

 泣きながら、彼女は嗚咽の隙間でそう溢す。

 とすれば、それはバルバトスの望むところではなかったのだろう。バチンと音が鳴ったかと思えば、彼女は今度こそ地べたに叩き伏せられていた。

 

「俺が貴様に求めているのは、カイルに助けを求める事だけだ!」

 

 そう言って、バルバトスはリアラ両手を押さえながら、彼女の上へ覆い被さった。

 一体どんな顔をして迫っているのか。

 僅かに見える彼女の顔は、恐怖と罪悪感でないまぜになったかのように、ぐしゃぐしゃになっていた。

 両手を押さえつけられてしまって、リアラはもう胸を隠す事すら出来やしない。手首を押さえつける手を片手に纏められてしまえば、もう片方の手で無垢な乳房を鷲掴みにされていた。そのあまりの乱暴さに、「痛いっ!」と呻くが、バルバトスはもう知ったこっちゃない様子だ。

 奴は片方の胸への愛撫に満足すると、余った布を更に引き千切った。

 リアラの無垢さを体現していたかのように、桃色の布の切れ端が、散っていく。

 彼女はもう全てを覚悟したかのように、目と唇をきつく閉じて、身体を震わせていた。何があっても屈しないと言わんばかりのようだった。

 

「助けを求めないのか? 良いのか?」

「貴方の、思い通りになんて……なってやるもの、ですか」

 

 バルバトスの下卑た問いかけに、リアラは声を上擦らせながらも毅然と言い放った。

 その様子を見て、バルバトスはやはり愉快そうに笑うのだ。

 

「良いぞ。アトワイトもそうだった。そうではなくてはなぁ?」

「アトワイトさんにまで。貴方は……本当に、どうしようもない下衆よ!」

 

 あからさまな挑発に、リアラは声を張り上げた。

 その強気な様子が堪らないのだろう。

 バルバトスは高笑いすると、再びリアラの乳房を鷲掴みにする。奴の大きな手では足りる筈もない大きさだと言うのに、ぎゅうと力を籠めて絞られて、その痛みに彼女は喘ぐような声を漏らした。

 リアラはジタバタと足をバルバトスの身体に打ち付けるが、やはり効きはしない。その間もぎゅうぎゅうと力任せで乱暴な愛撫は続いたが、しかし、今度は痛みにこそ喘ぐものの、『痛い』という言葉にはしない。涙を流しながらも、歯を食いしばって堪えていた。

 バルバトスの辱めに、絶対に屈しない。

 そんなリアラの強い意志は……しかし、凌辱を楽しみ始めたその男にとって、ただのスパイスになっていた。

 

「貧相な娘だと思っていたが、そそるじゃないか」

 

 苦悶の表情で堪えているリアラに、バルバトスはそう告げる。

 そして、胸を愛撫していた手を、彼女の首元へ持っていったかと思えば――ハッとしたリアラの首を、ぎゅうと締め上げた。そのまま髪を掴んでいた手を放し、首を締め上げる。

 

「がっ……」

「苦しいか? うん? 苦しいだろう?」

 

 あまりに強く締め上げるものだから、リアラの顔色はすぐに真っ赤に染まった。

 首を絞める太い腕を、リアラの細腕が何度も打つ。しかし、ビクともしない程、二人の力には差があった。やがて、リアラのか細い身体ががたがたと細かく痙攣を始める。苦し気な喘ぎ声も、より汚らしいものになっていた。

 彼女の爪がバルバトスの腕を掻きむしり、膝が身体を弱々しく打つが、まるで効きやしない。分かりきった事だが、もうその男に身体的な障害は一切ない。

 程なくしてリアラの唇から涎が溢れてくれば、つんと香るような匂いがする。毅然とした輝きを絶やさなかった瞳も、何処か虚ろになって、明後日の方向を見やっていた。

 赤くなっていた筈の彼女の頬は、今や紫色にも見える程、青白く染まる。

 このまま彼女は絞め殺されてしまうのだろうか。

 無邪気にころころと表情を変えていた可愛らしい顔は、哀れな程の苦悶の表情に染まっていた。清楚で可憐だった雰囲気も、最早涎と小便にまみれて穢れてしまった。

 まるで花のようだった彼女に、あまりに似つかわしくない最期じゃないか。

 かと思えば、唐突に、バルバトスはリアラを解放した。

 

「はぁっ! げほっ、げほっ」

 

 突然の呼吸の再開に、本能的に息を掻き入れて、咽るリアラ。

 長い首絞めに、思考は混乱しているだろう。身体中震えて、力も入らない。膀胱が弛緩する程なのだから、頭が痛んで逃げる事なんて出来る筈が無い。

 そんな彼女を前にして、バルバトスは悠々と立ち上がる。

 前掛けをずらして、レギンスを腿の高さまで引き下ろし、一物を露わにした。

 リアラは悶えるばかりで、その様子には気が付いていない。ようやっと身体に僅かな力が戻ってきたようで、ふらふらと上体を起こしたばかりだった。

 そんな彼女の髪を、再度、バルバトスが鷲掴みにした。

 そして、何の躊躇いもなく、一物を彼女の目の前へ。

 リアラは思考が混乱したままなのか、目を虚ろにしたまま、僅かに開いた唇から「ぜぇぜぇ」と喉を鳴らすばかり。

 これ幸いと、バルバトスはにやりと笑う。

 

「前言撤回だ。助けを求める前に、少し楽しませろ」

 

 そう言って、リアラの小さな口に、彼女の握り拳ぐらいの太さはあろうかというペニスをねじ込んだ。

 

「んぐっ」

「ふん。悪くない」

 

 バルバトスは満足気に笑うと、リアラの後頭部を両手で抱え、ピストンを開始した。

 無遠慮な行いに、彼女が苦し気な声を上げてえずこうと、気にした様子はない。それさえも愉しいと言わんばかりに、奴は笑う。

 ジュボ、ジュボ。

 という音と、リアラのえずきが辺りに響く。

 自慰行為さながらな遠慮のない行為は、バルバトスの情欲が増していくにつれて、更に度も増していく。彼女の顔程の長さがあるペニスを咥えきれる筈がないのに、思い切り腰を引いて、戻すと同時に頭部を引き寄せる。奴の太腿とリアラの顔が当たって、パチンパチンと音が重なる。

 

「どうだ? 下衆と罵った男に穢される気分は。今はカイルとの闘争より、貴様が苦悶に喘ぎ、赦しを懇願する様に期待しているぞ」

「んぐっ、げぼ、っぐ、っぐ」

 

 あまりの苦しさの所為か、一度は輝きと取り戻しつつあったリアラの目が、再び霞んでいく。その焦点が失われていくにつれて、彼女の股下から何かが滴る音が聞こえてくる。

 あともう数秒、これを続けていれば、彼女は意識を手放し、苦しみから解放されるだろうか。

 しかし、バルバトスは見計らったかのように「おっと。これはいかんな」わざとらしくそう言って、ピストンを止めた。

 ガチガチにそそり立ったペニスを、リアラの口腔からゆっくりと引き抜く。唾液と胃液でコーティングされたそれは、先端に僅かな血の色を滲ませていた。

 再び解放されたリアラは、バルバトスの手が離れると、糸の切れた人形のようにばたりと倒れた。

 

「おいおい。もっと俺を愉しませろ」

 

 そう言って、バルバトスはまたもやリアラの髪を鷲掴みにし、吊るし上げる。

 そして、何を思ったかずるずると彼女を引き摺って、俺の目の前まで連れて来た。

 虚ろな表情のリアラが、俺の目の前にやってくる。

 

「どうした? カイルに助けを求めるか?」

 

 しかし、その瀕死の表情から分かりきった事だが、リアラは回答出来るような状態ではない。俺という存在を認識して、僅かに瞳に活力を戻しただけだった。

 いいや、それさえ分かっていて、愉しんでいるのだ。

 バルバトスは俺の前からリアラを引き離すと、彼女の顔を下卑た表情で覗き込んだ。

 

「一人、二人、仲間が死ねば……貴様はどんな表情をするんだろうなぁ?」

 

 その残酷な言葉に、リアラの目がゆっくりと見開かれていく。

 彼女の瞳に活力が返ってきたと思う頃には、バルバトスは獲物を探すように、辺りを見渡している。

 

「やぇぇ。やえて」

 

 呂律の回らない状態で、リアラは必死に懇願する。

 しかし、それが聞こえているだろうに、バルバトスは反応を見せない。「ああ、あの女にしよう」そう言って、にやりと笑う。

 一体誰に標的を定めたのか、奴はリアラを掴んでいない手をそちらへ向けた。

 

「やぁ、やだぁぁ」

「消え失せろ。エクセキューション」

「やめて、やだ、やだぁぁぁぁ!!」

 

 言葉と共にバルバトスが伸ばした手を握る。

 果たしてリアラの目にはどんな残酷な景色が映っているのか。たどたどしさの残る言葉で、悲痛の叫びを上げる。彼女は拘束されている事を忘れたように、涙を散らしながら、頭を振って喚き散らす。

 それがバルバトスの望む事と分かっているだろうに、もう強がる事すら出来ないようだった。

 紫色の発光色が視界の外れに映る。闇の上級晶術が発動したようだ。

 果たして誰が犠牲になってしまったのか。

 もう俺は何の感情もなく、それをただ見ていた。

 いいや、観測していたとでも言うべきだろう。

 

「うぅぅううっ!! うぐぅぅっ」

 

 きつく歯を食いしばって、咽び泣くリアラ。

 もうリアラは分かっている。

 俺は死んだ。

 リアラの英雄は死んだ。

 だから彼女は、俺に助けを求めない。万が一にも彼女の持つ奇跡の力が、倒れた筈の俺の魂を呼び起こさないよう、頑なに押し殺しているのだ。

 それが分かるからこそ、俺も、この身体から頑なに離れられない。

 彼女を助ける為の一縷の望みを手放せない。

 

「その意地、何時まで保てるかな?」

 

 そして、それはバルバトスも分かっているのだ。

 リアラが乱暴に薙ぎ倒される。

 最早痛みに呻く事すら無くなった彼女だが、再びバルバトスが上に覆い被さってくると、その意味を再考したようだ。逡巡の末、その目は大きく見開かれて、過呼吸を起こすような息遣いと共に、ジタバタともがく。両腕を押さえられれば、膝を引き寄せる。片腕で強引に閉じた膝をこじ開けられて、身体をねじ込まれれば、手近な腕へがぶりと噛み付く。「いや、いやよ!」と、全身で抗っていた。

 その抵抗の激しさに、バルバトスは満足気に笑う。

 

「如何な聖女と言えど! 下衆に犯されるのは嫌だと見える。クハハ。これは愉快だ!」

「やめなさい。それだけは、それだけはいや!!」

「やめなさいとは、この期に及んで聖女様は状況が分かっておられないようだ!」

 

 リアラの悲痛な叫びに反応し、バルバトスは顔を突き合わせて、にやりと笑った。

 そのただ事ではない雰囲気に、リアラはピタリと動きを止める。

 

「俺はずっと、カイルに助けを求めろと言っているが?」

「っ!!」

 

 恐怖に見目を開きながら、彼女は俺の方をゆっくりと振り向いた。

 ああ、呼んでくれ。

 構わない。俺は、キミの為なら、幾らでも死んだって良い。

 そう思うが、それは伝わらない。

 代わりに、俺が彼女の立場なら、絶対に助けを求めないだろうと分かってしまう。伝わってしまう。

 俺の願いは終ぞ届かないまま。

 リアラは身体を震わせながら、目を閉じた。

 決してバルバトスの言う通りにはしないと、歯を食いしばった。

 

「良いのか? 挿入れてしまうぞ」

 

 大粒の涙と嗚咽を溢しながら、リアラはグッと堪える。

 正常位の体勢のまま下着をずらし、ペニスが股下にあてがわれても、彼女は身体を震わせているばかりで、決して俺に助けを求めない。

 

「ぐすっ、ひぐっ」

 

 リアラの泣き声だけが辺りにこだまする。

 後生の乞いを待つように、バルバトスはリアラの純潔を奪う寸前のまま、ジッと彼女を観察していた。

 しかし、彼女は泣きじゃくるばかり。

 やがて落胆したようにバルバトスが息をついた。

 

「つまらん」

 

 そう言ったバルバトスの言葉に、リアラはふと目を開く。

 まさかこの期に及んで、ようやっと彼にも諦めがついたのか。

 そんな言葉に聞こえたのか、おそるおそる目を開いた彼女だったが、「えっ」次の瞬間には、やけにすんなりとバルバトスの腰が打ち付けられていた。

 肌同士が勢いよくぶつかって、バチンと音が鳴る。

 その瞬間、リアラはあまりの痛みに表情を歪めた。

 

「ひんっ!」

 

 まるで小鳥の首を絞めたかのような声を上げるリアラ。

 そのままお構いないしにバチンバチンと乱暴なピストンが開始されると、彼女は猛烈な痛みに悶えた。足を痙攣させて、目をきつく閉じると、食いしばった歯をガチガチと鳴らす。

 呼吸の隙間で悲鳴に似た声が上がる。

 

「ひっ、つぅっ、あぁんっ」

「…………」

 

 バルバトスの乱暴なピストンに合わせて、小鳥が断末魔を上げているようだった。

 ばちゅばちゅと、ピストンの音は徐々に水音を混ぜていったが、リアラが処女であるのに加えて、酷い体格差。おまけに前戯らしい前戯もしていない。

 もうこれはただの性の捌け口だ。

 天真爛漫なリアラからは、想像もつかない程、悲痛な喘ぎ声が続く。

 ばちゅっばちゅっ。

 時々痛みが顕著になるのか、リアラは身を捩って、涙を零す。

 これまでと打って変わって、バルバトスは退屈そうに、彼女という性玩具を使っていた。

 ばちゅっばちゅっ。

 ひぃ。あっ。あうっ。

 淫猥な水音と、悲痛な声が重なる。

 きつく目を閉じ、歯を食いしばる彼女は、ただ早く終われと願っているようだった。

 その祈りが通じたのか、程なくしてバルバトスからくぐもった声が漏れる。呼応するようにピストン運動が加速し、奴の呼吸も深く、激しくなった。

 

「ひっ、ひんっ、あん」

 

 激しさが増すにつれて、リアラの喘ぎ声も熱を持つ。

 快楽を得ているようには聞こえないが、痛みだけではない何らかの衝動からか、悲鳴に似た声から色情を誘うようなそれが混じるようになっていた。

 水音に重なって、パスッパスッと腿同士がぶつかるような音が響く。

 それが区切りを失う程加速していけば、リアラの熱っぽい喘ぎ声は、痛みも情緒も振り切れてしまったかのように聞こえた。

 そして――

 

「ふぅぅっ」

「ひぐっ!! あっ、あぁ、はぁぁぁ……」

 

 バルバトスの一際大きな呼吸と共に、リアラの身体がピンと伸びた。

 痛みにきつく閉じていたその目が薄っすらと開き、振り切れた痛みに止まっていた涙が、新たな筋を作って流れた。

 

「ああ、あぁぁぁ……」

 

 行為が済めば、痛みで紛れていた実感が纏めて押し寄せてきたのだろう。程なくして、彼女は両手で顔を覆って、すすり泣いた。最早胸や股下が丸見えの事なんて、気にしていられない風だった。

 処女を散らした事、敵に凌辱された事、望まぬ子種を植え付けられてしまった事。最早どれが彼女にとって一番の苦痛か、優劣さえつけ難い。

 今までどんな困難にも屈しなかったリアラの心が、完全に敗北したその瞬間に見えた。

 凌辱に満足したバルバトスがペニスを引き抜けば、白い液体が名残り惜し気に糸を引いた。その感触にさえ激痛が走ったのか、リアラは短い悲鳴と共に再び嗚咽を漏らす。

 

「ふん。死にたいか? 小娘」

 

 行為を終えたバルバトスは、事も無げにそう問いかける。

 聖女でなく小娘と呼ばれたリアラは、応える事無くすすり泣いていた。

 

「そうだなぁ。俺が満足したら、処分してやろう」

 

 そう言って、バルバトスは己のペニスを軽く扱く。

 一度精子を出してやや萎れた奴のそれは、リアラの様子に再度興奮を覚えているようだ。僅かながらもピクリピクリと脈打って、亀頭を上げようとしている。

 バルバトスが再度腰を下ろし、リアラの身体をひっくり返してうつ伏せにする。

 乱暴に犯された彼女は、僅かな反抗心こそ見せるものの、身体には全く力が籠らず、為されるがまま。尻を突き出した状態から下着を脱がされれば、またも犯されてしまう事を察して、泣き声は更に大きくなる。

 

「いやぁ。もういやぁぁ……」

 

 ややあって、バルバトスのペニスが、後ろからリアラの中へ挿入された。

 先程より難がある様子の挿入だったが、それはリアラの必死の抵抗の証だろうか。しかしながら、尻と腿の間を強く叩かれて、已む無く受け入れるしかない様子だった。

 

「満足したら殺してやると言っているだろう」

「ひぐっ、いっ、つっ」

 

 正常位の先程より、肉同士がぶつかる音が顕著に響く。

 パチン、パチン。と響く音。どうやらピストンの力強さも増しているようだ。

 退屈そうなバルバトスだが、二回目に興じるあたり、余程リアラの身体を気に入ったらしい。彼女の腰をしっかり掴んでいるが、その手は先程までの乱暴さが嘘のように柔らかく掴んでいる。

 暫く退屈なピストン繰り返され、それからバルバトスの片手がリアラの胸元へと動く。優しく胸を揉みしだきながら、彼女の上体を起こし、四つん這いから膝立ちへと体位を変える。首筋を舐めたり、耳たぶを噛んだり、どうやらリアラの性感帯を探っているようだ。

 その間もピストンは続いたが、その最中でリアラの腰がやや跳ねるように反応した。

 その様子を見たバルバトスは、挿入の角度を調整し、後ろからリアラを突き上げるようにしてピストンを再開する。

 思いのほか紳士的な態度に、リアラは苦悶と屈辱にまみれた表情ながらも、後ろから抱き締めてくるバルバトスを振り返る。その顔に頬を寄せて、奴はにやりと笑った。

 

「カイルと貴様らを殺したら……そうだな。あの神の目を砕いてやっても良い」

 

 そして、悪魔のように囁いた。

 いよいよピストンの痛みにも慣れてきたのか、リアラは懸命な様子でバルバトスを振り返る。

 

「どうっ、いうっ、つもり……はぁっ」

「俺は英雄になりたかった。しかし、エルレインは俺を英雄と思って蘇らせた訳ではないだろう」

 

 まるでピロートークのように、バルバトスは語る。

 その間もピストンは繰り返されており、リアラは痛みと違和感に堪えながら、その話を聞いていた。

 エルレインがバルバトスを蘇らせた目的は、数多くの英雄の殺害による治世の混乱が主だろう。同じように生き返らされたリオン・マグナスもそうだが、あの女は時代の大罪人から高い実力を持った者を選定したに過ぎない。

 言わば、英雄の対極にある者として、蘇らされたのだ。

 

「だから俺は奴に何の恩もない。俺の死に場所は俺が決める」

 

 先程より力強く、ピストンが繰り返される。

 初物ながらも性感帯に向けられている所為もあって、痛みは随分マシになったらしい。「んっ、あんっ」と、熱っぽい声を上げながら、リアラは身を捩る。しかし、その表情は快感に溺れるている訳でもない。一体どんな感覚を味わっているのか、彼女はトイレを我慢するように腿を閉じ、苦悶するようだった。

 そんなリアラの反応に満足しているのか、バルバトスは優越感を隠しもしない顔で、俺を見た。

 

「カイル……お前が此処で死ぬのなら、俺も此処で死のう。俺を満足させうる者は、他にいない」

「あんっ、くっ、か、勝手な、人」

 

 加速しだしたピストンの隙間で、リアラは呪わし気に零す。

 パン、パンと、肉のぶつかる音が止まる。

 バルバトスはリアラの身体を抱えたまま、ゆっくりとうつ伏せに寝転がった。

 そして、ピストンを再開する。

 先程と角度が変わったのか、リアラが痛みを訴えるような声を漏らす。しかし、その訴えを無視して、ピストンは加速した。どうやら二度目の射精が近いらしい。

 

「好きに罵るが良い。貴様も俺の子を孕みたくはないだろう。殺してやるのはせめての慈悲だ」

「あっ、つっ、んん……ああっ! いやぁっ! いやぁぁぁぁ!!」

 

 そして、二回目の中出しが行われた。

 先程より愛撫があった分、リアラはより強く悲痛の叫びを上げた。

 

 あれから、どれくらいの時間が経っただろうか。

 リアラは五回も犯された。

 最後になって、彼女はどこか艶っぽい声を出しながら、恥辱に身を捩らせていた。バルバトスがその気なら、あとほんの数回繰り返せば、リアラはセックスという行為の悦びを知れたかもしれない。

 しかし、終わりは唐突だった。

 五回目にバルバトスが果てようとした頃、奴はリアラのか細い首をぎゅうぎゅうに締め上げ、彼女を快楽の始まりと共に絞殺した。そして、余韻たっぷりに中出しを楽しんだあと、皮肉めいた笑い声を上げて――俺の前へやってきたのだ。

 

「カイル・デュナミス。お前は俺の最高の玩具だったぜ」

 

 それが俺が最後に耳にした奴の言葉だった。

 そう言い残した後、俺が投げ出されるのも知ったこっちゃない様子で、斧を取り上げると、足音は遠ざかって行った。どうやらリアラに宣言した通り、神の目を破壊するらしい。

 いいや、最早どうでも良い。

 俺は偶然にも目と鼻の先でこちらを向くリアラに目を奪われていた。

 既に事切れた彼女だが、虚ろな目には吸い込まれそうな魔力があった。

 この世の晶術がレンズを介して発動するのなら、リアラの瞳も何か術を使えそうだと思えてくる。もう生気はこれっぽちも無いと言うのに、彼女の目はそれ程綺麗だった。

 

 次に生まれてくる時も、キミの傍に居たい。

 次は、絶対に、キミを守るよ。

 

 そんな月並みな願い事をした後、世界は新たな英雄の誕生を迎えた。




書いた人↓
Twitter @Cha_0a


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