初めての恋 (主義)
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監視

私には片思いをしている男性が存在する。その男子生徒の名前は一宮千紗くん。千紗くんは同じクラスメイトの人であんまり人と話したりしなくて無口な人。最初はクラスメイトでも意識することはなかった。

 

 

第一印象は「暗い人」だなと思ったぐらいだ。でも、今では彼のことを自然に目で追ってしまうし、登下校は後を付けてしまうほどに好きだ。最近では彼のことを考えていない日の方が少ないかもしれない。一日の三分の一は彼のことを考えている。

 

 

意識するようになったのは一か月前ぐらいから。まだ彼のことを意識してから時間が流れていないけど彼への想いなら誰にも負けないと自負している。それほどまでに私は彼の事を想っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼を絶対に私の物にして見せる!!どんな手を使ったとしても……それが誰かを傷つける事になったとしても手に入れる。それが今の望み。

 

 

 

--------

 

 

 

 

今日もいつものように私は彼の後を付けながら凡矢理高校への登校の道を歩んでいる。

 

 

「今日も……良いな…」

 

 

 

端から見たら自分の行動は確実に理解不能と言われてしまうかもしれない。だけどこれに関しては彼に恋心を抱いている人以外は分からないだろう。それに分かってもらおうとは思っていない。

 

 

「いつまで見ていても飽きない……キャ!!」

 

 

 

誰かに肩を触れた感覚があって体がビクッとしてしまった。後ろを振り返るとそこに居たのは風ちゃんだった。

 

 

「風ちゃん、驚かせるのは止めてよ!!心臓に悪いから」

 

 

 

「ごめん、ごめん。だって春が気持ち悪い顔で千紗くんのことを見ていたからさ、ちょっと危険を感じちゃって」

 

 

 

「私は別に気持ち悪い顔で見ているわけじゃないよ!只、千紗くんに見惚れているだけで」

 

 

 

「春、毎度言うけど、止めた方が良いよ。こういうことは。春が女子だから良いけどさ、これ反対だったら犯罪だよ。それに千紗くんのことが好きなら告白でもすれば良いじゃない」

 

 

 

「それが出来ないからこんな事しているんだよ。告白して良い返事が聞ければ良いけど、もし……断られれば絶対に私は立ち直れないよ」

 

 

片思いの方が百倍も幸せだと思う。片思いだったら一生していられる。

 

 

 

「それはそうだけどこんなことをしてバレたら嫌われちゃうかもしれないよ」

 

 

確かに自分の尾行している何て知ったらいくら千紗くんのような温厚な人でも嫌うかもしれない。だけどさすがに馴れ馴れしいようなことは出来ない。

 

 

 

「…分かっているけど…止められないの」

 

 

 

「もう、それ犯罪者の言葉だよ、春」

 

 

 

 

 

 

もうこの会話が定着してしまっていることに彩風涼は少し身震いしてしまった。

 

 

 

 



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監視されている人と監視する人

なんか最近、登下校でも学校でも誰かに見られている気がして落ち着かない。どこからでも誰からの視線を感じる。自分なんかをストーカーするような人がいる訳ないから自意識過剰なのだろうか。授業中でさえも視線を感じて授業に集中出来なかったりもする。

 

 

それは今日も同じで……視線を感じる。それも普通の視線というよりは虎が兎を駆る時のような鋭い視線。背中に視線がズキズキと刺さっているのが分かる。だけど、振り向く勇気は未だに持てない。

 

――――――――

 

 

無事に今日も千紗くんの尾行を完了した。なんかこういう言い方をすると任務見たい。だけど、私にとっては任務と同じなんです。毎日登下校は千紗くんの後ろをつけるのは。逆に私が尾行をしなくなったらそれは私の身に何かあったはず。だって私が千紗くんのことをストーカーしないなんておかしいもん。

 

 

「はぁ……千紗くんカッコいいな…………」

 

 

「春、漏れてるよ」

 

 

「あ……ごめん、ごめん」

 

 

「私の前だからいいけど、本当に気を付けなよ。春が千紗くんが好きなのを知ってるのは私だけなんだからさ」

 

 

「うん、わかってるよ。だけど、自然と口から出ちゃうんだよ」

 

 

本当に頭の中が千紗くんで埋まっていくのが分かる。彼以外のことを考える余裕もない。それぐらいに私の頭は全て千紗くんに浸食されているんです。

 

そしてHRが始まっても私は千紗くんから目が離せない。本当にずっと見ていても飽きらない!その後もずっと私は千紗さんのことを

 

 

 

 

時間は流れて時間は昼休み。昨日は千紗くんのことを考え過ぎて全然眠りに付けなかった。

 

「小野寺さん」

 

顔を突っ伏しているたら急に誰かに呼ばれた。そして私は眠りたい気持ちを抑えて顔を上げた。

 

 

「なに…って…え」

 

急に目の前に自分がストーカーをしている人が現れたらどんな反応をしたらいいの。正直、私は固まってしまった。だってどうせ風ちゃんか適当な男子とかが話し掛けてきたんだと思ったら自分の想い人だったんだよ。ここで普通に話せるなんて誰もいない。

 

 

「小野寺さんってまだこのプリント出していないですよね?」

 

 

「…ぷ、ぷりんと!!」

 

 

「うん。先生からこのプリンを集めてもってこいって言われちゃってね。それで名簿と照らし合わせていたんだけど、小野寺さんのだけなかったから」

 

 

「あ、ごめんね!!!」

 

私は急いでカバンの中から目的のプリントを取り出した。急ぎ過ぎたせいでちょっとプリントがごちゃごちゃになっちゃった。好きな人にこんなところを見られるなんて…。

 

 

「ううん。大丈夫だよ。逆に急かしちゃってごめんね」

 

 

「わ、わたしが出さなかっただけだから!」

 

これならもっと早く出しておけばよかった。そうしておけば千紗くんにこんな不甲斐ないところを見せないで済んだのに。

 

 

「そういえば、小野寺さんって一つ前の現代文のノートってあるかな?」

 

 

「う、うん。あるよ」

 

 

「こんなことをお願いするのはとっても情けないんだけど、ノートを見せてくれないですか?」

 

千紗くんは両手をあわせて必死にお願いをしている。自分としてはまさかこんなことをお願いされるとは微塵も思っていなかった。

 

 

 

「前の授業の日は体調が悪くて休んじゃったんだけど、友達がその時間は居眠りをしていたらしくてノートを取っていなかったみたいで。」

 

 

「全然いいよ」

 

そして私は初めて千紗くんにノートを貸した。千紗くんからすればただちょうど話したからお願いしたんだと思うけど、それでもとっても嬉しい。私にとっては話せるだけでも嬉しい。

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、風ちゃん!!」

 

 

「なに?」

 

 

「私、千紗くんに話し掛けられたんだよ!!!」

 

 

「もうその話は何度目よ」



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