ドラえもん ゴルシちゃんと未来改編 (ゴルシ未来人)
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ゴルシちゃん、時空を越える

ゴルシ、未来人説(笑)


時は21世紀の未来。1人の芦毛のウマ娘が古ぼけたアルバムを捲っていた。アルバムの写真は大事に保管されていたとは言え、色ボケており嘗ての鮮やかな色素は喪っている。時の流れは残酷だろう。元に戻そうとしても、秘密道具を使う以外では戻せない。何故なら、この年代の写真は基本的にデータ状の物が主流であり、それは書物も同じだ。紙の写真や本は時代遅れも良いところであり、写真屋に持っていっても対応してくれない。それどころか「自分の秘密道具でなんとかしてくれ」と帰される始末だ。

 

「これがお婆ちゃんの若い頃ね」

 

写真に写る芦毛のウマ娘を見て、長身のウマ娘がそう言った。彼女の名前はゴールドシップ。クラシック二冠、有馬記念、天皇賞(春)、史上初の宝塚記念二連覇を果たした優秀なウマ娘だ。

写真に写るのはゴールドシップの祖母であり、チームスピカというチームに所属していたメジロマックイーンというウマ娘だ。メジロ家と呼ばれる貴族のような一族の出身であるが、ゴールドシップが生まれる前にメジロ家は衰退してしまったそうだ。だが、別にゴールドシップはメジロ家が滅んでしまっても思うことは少ない。別に貧乏ではないし、家族には恵まれたし、なにより普通になに不自由なく育った。2度の火山の噴火とかの影響で衰退してしまったそうだが、それはゴールドシップが生まれる前の話でありゴルシには関係ない。

 

「ゴルシちゃん。またアルバム見てるの?」

 

そんな声が後ろから聞こえてきた。声の主の方を向いたゴールドシップだが、そこには青色でまん丸とした3頭身程のタヌキ…いや猫型ロボットが立っていたのだ。

 

「別に良いだろ、ドラえもん。これしかお婆ちゃんの写真は無いんだからよ」

 

そのロボットはドラえもん。猫型ロボットであり、未来では感情を持ったロボットが人々と共に暮らしている。そんなドラえもんはゴールドシップが幼い頃から一緒に暮らしている家族である。

 

「ゴルシちゃんはさ…マックイーンさんのチームメイトに会いたい?」

「会いたいけど…皆、結構歳だろ?早死にしたお婆ちゃんは兎も角、皆…還暦越えてるだろ。当時のトレーナーなんて、間違いなくヨボヨボのお爺さんだぞ」

 

メジロマックイーンはゴールドシップが生まれる前に亡くなったそうだ。しかし、マックイーンの嘗てのチームメイトは生きている人がそこそこいる。とは言え、流石にマックイーンのトレーナーはヨボヨボのお爺さんだと思われるが。

 

「実はさ…1人、アポが取れたんだ!!行こう、ゴルシちゃん!!」

 

ドラえもんはそう言うなり、お腹の四次元ポケットからピンク色の扉を出した。この扉は「どこでもドア」。これを使えば、ブラジルだろうか南極だろうが何処でも瞬時に行けるのだ。

 

「ドラえもん。何処に行くんだよ」

「北海道さ!そこに、嘗て日本総大将と呼ばれた凄い人が居るんだよ!!」

 

日本総大将。その異名を聞いて、ゴールドシップはアルバムの写真を見る。たしか、日本総大将と呼ばれたのはマックイーンの先輩であるスペシャルウィークというウマ娘だったからだ。

 

 

 

 

北海道。どこでもドアをくぐり、ドラえもんとゴールドシップがやって来たのは北海道の田舎だった。自然豊かで、ゴールドシップが普段から暮らす東京と異なり、自然が残っており人口密度もそこまでない。

 

「君がマックイーンさんのお孫さんですね?私はスペシャルウィークです」

 

そこには還暦を越えてるとは言え、40代程の美貌を未だ保つ1人のウマ娘が2人を待っていた。彼女はスペシャルウィーク、マックイーンと同じチームに所属していたウマ娘であり現在は現役を引退して北海道でのんびりと過ごしているのだ。

 

「はい、ゴールドシップです」

「僕、ドラえもんです」

「ドラえもんとゴールドシップさんですね。はい、宜しくお願いします」

 

 

 

 

「今日はお話、ありがとございます」

「此方こそ。頑張ってね」

 

スペシャルウィークとの話を終えて、ゴールドシップとドラえもんは帰ろうとする。その時だった、ゴールドシップは何かに気付いた。

それは玄関にスペシャルウィークと良く似た女性のウマ娘と男性ウマ娘の結婚式の写真があったのだ。男性のウマ娘なんて本当に実在していたのか、存在すらも都市伝説扱いだった為にゴールドシップは驚く。しかし、中性的な顔立ちをしている。

 

「えっ!?男のウマ娘!?」

 

ウマ娘は全て女性だ。少なくとも日本で競技していたウマ娘は誰の例外もなく、女性だった筈だ。男のウマ娘がデビューしたら、それこそ大ニュースに成ってしまうだろう。

 

「あっ、その人は私のお父ちゃんだよ」

 

その男性のウマ娘はスペシャルウィークの父親だったそうだ。だが、ゴールドシップは男性ウマ娘が日本で活躍したなんて話を聞いたことがない。だとすれば、海外の人なのだろう。

 

「この人はサンデーサイレンス。アメリカの凄い競技者だったけど…差別意識の残るアメリカで酷い差別を受けたらしいの。私も詳しいことは知らないけど、アメリカで殿堂入りされるほど凄い人で…日本で私のお母ちゃんと出会って結婚したの」

 

スペシャルウィークの父親はサンデーサイレンス。アメリカの殿堂入りを果たす程、凄い競技者だった。しかし、スペシャルウィークは父親の事をあんまり知らない。と言うのも…

 

「私のお父ちゃんは私が産まれる前に心臓の病気で亡くなったの。私が産まれて直ぐ、お母ちゃんも後を追うように病気で亡くなったの」

 

だが、サンデーサイレンスはスペシャルウィークが産まれる前に心臓の病で死去。その後、後を追うようにスペシャルウィークの母親も亡くなってしまったのだ。

 

「そうだったんですか…」

「うん。私も卒業する時に、お父ちゃんの教え子である私のトレーナーさんから聞いた事しか分からないけどね。それまで、私はお父ちゃんの名前すらも知らなかったし…知ろうともしなかったの。ごめんね…お父ちゃん」

 

何処か悲しそうにスペシャルウィークはそう言った。

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

「ドラえもん!!やっぱり、アタシはお婆ちゃんに会いに行くぞ!!タイムマシン借りるぜ!!」

「待ってよ、ゴルシちゃん!!」

 

この時代にはタイムマシンという未来や過去に行き来出来る便利な乗り物が存在している。そのタイムマシンを使い、ゴールドシップはメジロマックイーンが現役だった過去に飛ぼうとする。だが、操作を誤ったゴルシとドラえもんを乗せたタイムマシンは……

 

「あっ、時代ミスっちまった!!てへぺろ」

「てへぺろじゃないよ!!」

 

誤った時代に来てしまい、更に運が悪いことにタイムマシンが故障してしまった。これでは直ぐにマックイーンの時代に帰れない。だが、マックイーンの時代からそこまで大昔…という訳ではないようだ。テレビは有るし、ガラケーだが携帯電話は実用されている。

 

「ドラえもん…ココドコ?」

「多分…2000年代初頭かな?マックイーンさんが産まれる前だと思うけど」

 

ゴールドシップとドラえもんが流れ着いたのは、恐らく2000年代初頭の時代。その上、此処は学舎のようだ。ウマ娘がトレーニングするための芝生のコース、土のダートコース、木片を敷き詰めたトレーニングコースと言った数々の設備が整っている。大きな校舎に体育館、運動場もありこれは何処から見ても学校だ。練習用コースには体操服に身を包んだウマ娘達が練習しており、これは間違いなく…

 

「此処って…昔のトレセン学園か!?」

 

そう、此処は2000年代初頭のトレセン学園だったのだ。しかも祖母が産まれる前のトレセン学園であり、そこにやって来てしまった。肝心の祖母は居ないし、直ぐに帰ろうとしてもタイムマシンは壊れているから直ぐには戻れない。

 

「どうする?ドラえもん」

「あっ、人が来る!!仕方がない!!タイム風呂敷!!」

 

ドラえもんは四次元ポケットから取り出した秘密道具…時計の模様が幾つも描かれたタイム風呂敷をゴールドシップに被せる。すると、ゴールドシップは芦毛から…栗毛の幼いウマ娘に成ってしまった。

 

「ドラえもん!?」

「これなら、迷い混んだ子供って誤魔化せるから!!」

 

確かにドラえもんの言葉は一理ある。見知らぬ女性ゴールドシップがトレセン学園に不法侵入した事実は間違いなく…裁かれる。だが、幼子ゴールドシップが迷い混んだならまあ、裁かれることはなく注意で終わるだろう。

 

 

「サンデー先生!!次のトレーニングは?」

「焦るな、焦るなこのミジンコ。トキノミノル、お前は皐月賞が控えてるだろ」

 

すると…ドラえもんの言う通り人がやって来た。1人は中学三年生…ジュニアCクラスのウマ娘だ。

 

そして…もう1人はスーツを纏ったスペシャルウィークの父親 サンデーサイレンスの生前の姿だった。

 

「おい、そこの青タヌキ、ガキンチョ。見学か?親御さんが心配すんぞ」

 

サンデーサイレンス。ドラえもんと幼女に変えられたゴルシに気付く。だが、ドラえもんがゴルシをタイム風呂敷で幼子に変えた為か、不法侵入者ではなく迷い混んだ子供だと思ってくれているようだ。

 

「僕…青タヌキじゃないもん!!猫型ロボットだもん!!」

「猫!?はっ、肥りすぎだな。もう少し絞れ、タヌキと本気で間違えちまった」

 

ニヤニヤと笑みを浮かべながら、そう言ったサンデーサイレンス。育ちが悪いせいか、口調が少し悪そうだ。

 

「サンデー先生。タヌキちゃんが可哀想ですよ!!」

「いや、トキノミノル…お前もタヌキって言ってるだろ」

 

サンデーサイレンスの教え子だと思われる少女はトキノミノルと言うようだ。トキノミノル、何処かで聞いたことがあるような名前だとゴールドシップは心の片隅で思うが今はそれどころではない。

 

「まあ良いか。見学なら、そこのベンチで座ってて大人しく見てろ。飲み物は…無いなら俺様が奢ってやる」

 

サンデーサイレンスは財布から聖徳太子の千円札を取り出し、それをドラえもんに手渡した。

 

「お釣りは返さなくて良い。帰りの電車賃にしな。俺様の奢りだ(しかし、見ない顔だな。てか、ティターンに何処か似てるな、この子供。しかし、このタヌキ…コスプレじゃないとしたらマジでロボットか?)」

 

サンデーサイレンスは大きな溜め息を吐き出した。

 

「タヌキ。お前とガキンチョは訳ありか?野宿が嫌なら、俺んち来るか?嫁が妊娠中で入院しててな………がふ!?」

 

だが、その瞬間…サンデーサイレンスは口から吐血してしまい、倒れてしまった。

 

「サンデー先生!?しっかりして下さい!!サンデー先生!!」

 

トキノミノルが倒れたサンデーサイレンスに駆け寄り、肩を叩く。だが、サンデーサイレンスは反応がない。大変、危険な状態だ。

 

「なあ…確かスペシャルウィークさんのお父さんは…」

 

スペシャルウィークの父親 サンデーサイレンスはスペシャルウィークが産まれる前に亡くなった。そして、サンデーサイレンスの妻は妊娠中で入院中。だとすると、もうすぐスペシャルウィークが産まれるのだろう。だとすれば、サンデーサイレンスは死んでしまう。

そうなれば史実通り、スペシャルウィークは父親の事を名前すらも知らずに育つ事になりトレセン学園卒業まで父親の事を知らないままだ。ゴルシは思う、間違いなくスペシャルウィークは父親の事を後悔していた。此処でサンデーサイレンスを見殺しにしたらスペシャルウィークは父親の事を知らないまま育ってしまう。

 

「ドラえもん!!このおっさんを助けるぞ!!」

「分かったよ!!でも、未来が変わっちゃうよ!!」

 

ドラえもんとゴルシちゃんの未来改編はこうして始まった。未来の秘密道具ならサンデーサイレンスを救うことが出来る。こうして、ゴルシとドラえもんの力でサンデーサイレンスは一命を取り留めた。

 

 

そしてゴルシとドラえもんが歴史を変えた為か、後にスペシャルウィークに()が産まれる。その弟は父親と同じ男のウマ娘であり、英雄と称されるウマ娘となる。




はい、ゴルシちゃんが歴史を変えた為か…ディープインパクト誕生フラグ発生!!


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ドラえもん「ゴルシちゃん、歴史変えちゃったね」

ゴルシが歴史を変える…結果、英雄誕生(笑)


『史上初。無敗の三冠馬トキノミノル誕生。クラシック戦線を全て日本記録を更新した神話が加速する』

 

タイム風呂敷の効果で栗毛の幼子ゴルシちゃんと成ったゴールドシップはトレセン学園の食堂でテレビを見ていた。

今の季節は10月。未だタイムマシンは直っていない、明日には直りそうだが相変わらずゴールドシップとドラえもんは2000年代初頭の年代に居座っていた。

 

「ドラえもん。早く授業終わらないかな?サンデーのおっさん、トキノミノルの姉ちゃん達が居ないと暇だぜ」

「そんな事は言ってもね…」

 

タイムマシンが直らなかったら、この時代に居るしかない。幸いにもゴールドシップとドラえもんはサンデーサイレンスの保護の元、彼の社宅で厄介に成ってるのでホームレスには成っていない。

この時代にやって来て早、半年。色々と分かってきた事がある。先ず、サンデーサイレンスは口は物凄く悪いが実はめちゃくちゃ優しいという事である。優しくなかったら、見ず知らずのゴールドシップとドラえもんを家には招かないだろう。サンデーサイレンスはチームスピカというチームを率いており、そのスピカのチームメンバーはただ1人。その人物はトキノミノル、先日に…史上初無敗の三冠馬と成った少女だ。

 

無敗の三冠馬。ゴールドシップの知る本来の歴史なら、祖母の先輩であるシンボリルドルフただ1人が成し遂げた偉業。ゴールドシップの時代までを見渡しても、無敗で1度も負けることなく皐月賞と日本ダービーそして菊花賞の3つを制覇した三冠馬はシンボリルドルフだけなのだから。

だが、ゴールドシップとドラえもんがこの時代に来て、サンデーサイレンスを救った為か歴史が変わってしまったのだ。

 

テレビでは連日、トキノミノルが成し遂げた無敗でのクラシック三冠制覇を報道するばっかり。その分、報道する事件がないと言う事は平和なのだろう。

 

「でもよ…ドラえもん。アタシさ、トキノミノルの姉ちゃんをどっかで見たことがあるんだよな。お婆ちゃんのアルバムだったと思うんだけどな…」

 

ゴルシはこの時代にやって来て、トキノミノルを見てから思っていた事があったのだ。それはトキノミノルを祖母のアルバムで見たことが有ることだ。それにスペシャルウィークは言っていたが、スペシャルウィークはトレセン学園卒業時に父の教え子から父の事を教えてもらったと。だとすれば、サンデーサイレンスの教え子はトキノミノル…つまりスペシャルウィークにサンデーサイレンスの事を伝えたのはトキノミノルと言う事だ。

 

「スペシャルウィークさんにサンデーのおっさんの事を教えたのは間違いなく、トキノミノルの姉ちゃんだよな?」

「だよね。ねえ、ゴルシちゃん。もしかしたら、この人じゃないかな?」

 

ドラえもんは四次元ポケットから自分達の歴史でのアルバムを取り出して、ゴルシに見せる。そのアルバムの中には…トキノミノルに非常に良く似た美女が帽子を被っており、スペシャルウィークと写っていたのだ。

 

「この人は駿川たづな。当時の理事長の秘書だって」

「いや、どっから見てもトキノミノルの姉ちゃんじゃないかよ」

 

その美女は駿川たづな。何処から見てもトキノミノルが大人に成長した姿をしているが、訳ありで名前と素性を隠しているのだろう。

 

「それにね…少し気になって調べたんだけど」

 

ドラえもんは語る。何でも、本来の歴史でもトキノミノルは無敗でダービーまで勝っている。それも七度の日本記録を更新してである。しかし、ダービーを勝った後、トレセン学園を去っていたのだ。

更に史実でサンデーサイレンスが亡くなったのはトキノミノルが皐月賞を走る前であり、その後からトキノミノルは不調に悩まされ…足の怪我を煩い…病に感染したそうだ。もしかしたら、それが原因なのかも知れない。

 

「本来ならサンデーのおっさんが死んじまって、トキノミノルの姉ちゃんは別のトレーナーに引き取られて…合わない訓練で身体を壊したって事か?」

「かも知れないね」

 

サンデーサイレンスが生存し、トレーナーを続けた結果…トキノミノルは無敗の三冠馬と成った。スペシャルウィークが父親と母親を失わずに育つこと以外にも歴史が変わってしまったのだ。

 

 

 

午後3時。トレセン学園は午後3時で授業が終わり、そこから各々のチームでの活動が始まる。授業が終わったタイミングを見計らって、ゴールドシップとドラえもんは移動を開始した。

 

サンデーサイレンスが率いるチーム。トキノミノルしか部員が居ないチームスピカの部室はプレハブ小屋であり、トキノミノルやサンデーサイレンスより早くドラえもんとゴルシはやって来た。

 

「あら、サンデーとミノルちゃんなら未だ来てないわよ?」

 

しかし、先客が其処には居た。先客は未来のスペシャルウィークと瓜二つな女性だ。その女性は未だ赤ん坊でこの時代のスペシャルウィークを抱っこしている。そう、サンデーサイレンスの妻でスペシャルウィークのお母さんである。彼女はキャンペンガール、サンデーサイレンスの妻であるが…彼女は競技経験は皆無である。

 

「一番だと思ったのによ、ママさん早いぜ」

「そうそう。サンデーは貴方達には黙ってろって言ってたけど、彼…貴方達を養子に迎えたいって言ってたわ」

「「へ?」」

「あの人…私と会うまでは最強にヤンチャだったからね。あの人…両親からも捨てられて、孤児院でも酷い扱いを受けたの。だから、居場所が無い貴方達の事を心配してるのよ」

 

キャンペンガールは語る。何でも、サンデーサイレンスは産まれて間も無く両親に捨てられたそうだ。聞いた話では、サンデーサイレンスの父親も男性ウマ娘だったが…最強に狂暴であり殺人未遂の罪で刑務所に収監されており、理由は不明だが母親も男のウマ娘として産まれたサンデーサイレンスに気味の悪さを感じたのだろう…孤児院の前に捨てたのだ。

だが、サンデーサイレンスが産まれた国は肌が黒いからと差別されるような時代のアメリカ。そんな差別が酷いアメリカで産まれたサンデーサイレンスは差別を受け続け、1人の老夫妻に引き取られるまで酷い仕打ちを受け続けたそうだ。

ケンタッキーダービーを制覇しても、アメリカの頂点に立ってもサンデーサイレンスの評価は改めてくれなかった。

 

『サンデーサイレンス?ああ、イージーゴアに負けて三冠馬に成れなかった奴だよな。今まで運が良かったんだよ』

 

頂点に立っても1度の敗北でこう言われる始末。だから、サンデーサイレンスはアメリカを去って日本にやって来た。

 

そんな彼だから、この時代に居場所が無いゴルシとドラえもんをほおっては置けなかったのだ。

 

「ありがと…ママさん。でもアタシ、言わないといけないんだ」

 

しかし、ゴルシはこの時代の人間ではない。何時かは未来に帰らなければならない。

 

「アタシとドラえもんは近い内に、帰らないと行けないんだ。此処には事故で来たようなもんだしな…」

「そうね。それもそうね…」

 

ゴールドシップとドラえもんがタイムマシンを使ったのは祖母 メジロマックイーンに会うためだ。だから、この時代には居られない。タイムマシンが直ったら、目的の時代に向かわないと行けないのだ。

 

 

一方の職員室。

 

トレーナーに成りたい人はトレセン学園のチームに於いて研修を受けることが出来る。だが、サンデーサイレンスはチームスピカには無縁の物だと思っていた。

 

ゴールドシップの時代では主に自主性を重んじる教育方針が主流だ。しかしこの時代とメジロマックイーンが活躍した時代では、トレーニングメニューから食事までも管理された徹底された管理主義が主流の時代。ウマ娘はトレーナーの指示に従ってれば良いと言う風潮だ。

 

「なんで俺様の所に来た?選手単体なら兎も角、総合力なら管理主義のリギルやシリウスが有るだろ」

 

スピカは管理主義に反旗を起こすような、自主性及び協調主義の指導方針。ウマ娘個人個人に合わせ、そのウマ娘の自主性を尊重しつつ、ウマ娘が個人でのやり方が分からなければトレーナーがアドバイス等を送る。そして…ウマ娘が行おうとした自主性が道を外れようとすればトレーナーが正すと言った感じの所だ。

サンデーサイレンスが競技者出身だとは言え、他のチームとは一線を越えたような自主性と協調主義のスピカ。早い話、分からなければトレーナーに聞け、自分達の長所を伸ばせ、此処を鍛えたいけどどうすれば良いのか分からなければ聞け、但しお前達が道を誤れば強制的に手を差し出す。な感じの指導方法だ。

 

そんなスピカにまさかの、トレーナー研修を受けたい大学生がやって来たのだ。その大学生は口にペロペロキャンディーを加えた青年だった。

 

「実は…俺、管理主義よりウマ娘個人に有った自主性の方が良いと思うんですよ。勿論、管理主義を全否定はしませんが」

 

と答える青年。彼は沖野、先輩である東条花と共に研修にやって来たが、東条は管理主義のリギルの方へと向かったのだ。

 

「なら、決まりだな。ようこそ、スピカへ。俺様とトキノミノルの2人しか居ないけどな」

「はい!!」

 

沖野。彼はスピカの2代目トレーナーとして、最強となるスピカを率いるのは未来のお話である。

 

 

 

 

 

時は2017年。

 

10年と少しの年月が経った頃。

 

「あの2人、無事に帰れたんだよな?」

 

トレセン学園の校舎。その中にある教頭室。トレセン学園の教員及びトレーナーを束ねる教頭が日頃からデスクワークを行う部屋で、歳を重ねたサンデーサイレンスが仕事を行っていた。

あれから10年以上の年月が流れた。トキノミノルも成人し、沖野も無事にトレーナーに成った。それを受けて、サンデーサイレンスはスピカのトレーナーの座を沖野に託した。現在は教頭に出世したサンデーサイレンスであったが、実は彼は独り暮らし。

離婚はしていないのだが、元々キャンペンガールは身体が弱いという事もあってか…自然豊かで空気が綺麗…その上降雪量が少ない北海道の網走に引っ越している。網走は降雪量が札幌の半分以下であり、空港を使えば約1時間で東京に来ることが出来る。仕事が忙しくなければ、サンデーサイレンスは家族がいる北海道から通えるが、残念だが週1ペースでしか家に帰れないのだ。

 

この10年。色々と有った。チームリギル所属のシンボリルドルフが無敗の三冠馬を成し遂げ、その翌年には同じくチームリギルのナリタブライアンがクラシック三冠を成し遂げた。今はリギルの時代であり、残念だがぶっちゃけスピカはトキノミノル以来そこまで活躍出来ていない。

 

『スピカ?ああ、トキノミノルしか取り柄のないチームだったよな?

ミスターシービーも三冠馬に成ったが、後の戦績がな…』

『今じゃリギルの時代だな。沖野じゃサンデーサイレンスには成れない』

 

とSNSで書かれる時代である。

確かにスピカからはシンボリルドルフの前年度に、ミスターシービーというウマ娘が三冠を成し遂げた。しかし、ミスターシービーは三冠を達成した後に不調に陥り…勝てない日々が続いた。シンボリルドルフやナリタブライアンが三冠達成後も優秀な戦績を上げ続けている為か…影でミスターシービーは歴代最弱の三冠馬と言われる始末。

 

「む?」

 

ふと、サンデーサイレンスは何かに気付く。それは教頭室の空間に黒い円が現れたのだ。すると、そこから芦毛の美女…ゴールドシップとドラえもんが転がってきてのだ。しかし、ゴールドシップはトレセン学園の制服を着ている。

 

「ひでぶ!?ドラえもん、タイムマシン壊れちまったよ!!」

「まただよ!」

 

ゴールドシップとドラえもんはサンデーサイレンスに気付かず、立ち上がる。

 

「此処…何時の時代だ?」

「今は西暦2017年。ナリタブライアンが三冠馬に成った翌年だぞ」

 

サンデーサイレンスがそう言い、ゴルシとドラえもんはサンデーサイレンスの方を向いた。

 

「おっさん!?」

「綺麗な芦毛に成っちまったなゴルシ、そして青タヌキ。ようこそ、現代に」

 

今年はメジロマックイーンが入学する1年前。時間をまた少し、間違えてしまったゴールドシップであった。

 

 




次回!!

ゴルシは学年不詳の生徒、ドラえもんは厩務員(用務員のこと)の立場をサンデーサイレンスから与えられて学校生活。

マックイーン入学まで残り1年。ゴルシはマックイーンの為に、チームを探す。そして…ゴルシの知る本来の歴史では産まれる筈がないウマ娘と出会う。

「お前は!?」
「ディープインパクト」

………あっ、原作でスピカを抜けたモブAとモブBの名前…どうしよう(笑)


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メジロマックイーンの入学までにやることの始まり

マックイーン入学まで残り1年。


ゴールドシップの時代ではトレセン学園は全寮制ではない。理由は簡単だ、距離という概念が殆ど意味を成していなかった為だ。ゴールドシップの時代ではどこでもドアという、大変便利な代物が実在している。これを使えば日本中処か世界中の何処でも一瞬で行くことが出来るのだ。日本から海外まで日帰りで旅行する事が出来るし、散歩感覚でヨーロッパに行くことも出来る。便利な時代だったし、どこでもドアのお陰か車なんて趣味で乗る人しか持っていない程だった。

 

「寮生活か…人生で初めてだぜ」

 

この時代のトレセン学園は全寮制。中等部から高等部、希望すれば大学部の生徒は皆が寮で寝泊まりを行っている。当然、トレセン学園で学生として過ごすなら寮に入らなければならないし…我等がゴールドシップも現代のトレセン学園で過ごすためなら寮生活を行わないといけないのだ。

 

トレセン学園には2つの寮が存在している。1つは美浦寮、もう1つがゴールドシップも今後を過ごすことになる栗東寮である。栗東寮も美浦寮もどちらも最強チームであるリギルのメンバーが寮長をしており、生徒会のメンバーも全員がリギルだ。

寮は二人部屋が原則であり、余程の事がない限り1部屋2人が原則だ。しかし、ゴールドシップは未来人という事も有ってか特例で1人部屋と成ったのだろう。そこら辺は教頭であり全トレーナーと全教員を束ねるサンデーサイレンスが上手いことしてくれたみたいだ。

 

ゴールドシップは1人、ベッドに腰掛ける。今は2017年だとサンデーサイレンスから教えて貰ったが、メジロマックイーンの入学までは1年程の時間がある。

 

「お婆ちゃんの入学まで残り1年。折角だ、お婆ちゃんが楽しく学校生活を送れるように…色々と小細工するか」

 

幸いにもゴールドシップは他の生徒と比べて時間の猶予が果てしなく有る。タイムマシンとタイム風呂敷を応用して無限ループのようなやり方をするのではなく、自由時間が他の生徒よりも遥かに有るのだ。

先ず、ゴールドシップはサンデーサイレンスの権限で学年不詳の生徒として入学。自分が未来で使っていた学生証もこの時代で使えるようにしてもらい、設備の使用には不自由はない。他の学生が授業を受けなければいけない時間でも、ゴールドシップは学年不詳なので受けずに自由に動くことが出来るのだ。

 

「ドラえもんと離れ離れに成っちまったが…それは仕方無いよな」

 

だが、このトレセン学園で過ごすためにはドラえもんとは別行動と成ってしまう。ゴールドシップは学年不詳とは言え、トレセン学園の学生だ。寮生活は確定であり、トレセン学園の生徒ではないドラえもんは寮では過ごせない。一応、サンデーサイレンスの権限でドラえもんはトレセン学園の厩務員(他の学校で言えば用務員)の立場と職を与えられたが…暫くは仕事の研修等でゴールドシップと比べると自由に動けそうに無いだろう。

 

「残業が無ければ8時間労働…1時間の昼食休憩を含めると、大体ドラえもんは朝7時からの始業の場合は夕方4時まで別行動か」

 

研修が終わっても一般企業と同じ働きだと考えると、ドラえもんは8時間ほど働く事になる。そうだとすると、やはりドラえもんが休みの時以外はゴールドシップは1人で動くしかないだろう。

 

「確か…この時代じゃ徹底した管理主義の最盛期だよな」

 

サンデーサイレンスから貰った資料を鞄から取り出し、資料を見ていくゴールドシップ。ゴールドシップとドラえもんが知る史実なら、この時代は徹底した管理主義の最盛期。サンデーサイレンスの急死とトキノミノルの引退で自由主義だったスピカは歴史に消え去り、リギルやシリウスと言った管理主義が覇権を長きに渡って握っていく時代だった。

しかし、サンデーサイレンスはドラえもんとゴルシのお陰か生存し…サンデーサイレンスが生き残ってトキノミノルを最後まで導いた結果、歴史は間違いなく変わっている。少なくとも、スピカは残ってる筈だし…トキノミノルは駿川たづなと偽名を名乗る必要が無いのだから。

 

「ありゃ?なんだよ、こりゃ…アタシの知る歴史とあんまり変わらんぞ」

 

だが、サンデーサイレンスが生存しトキノミノルが駿川たづなに成らなくてもそこまで歴史は変わらなかった。サンデーサイレンスから貰った資料では様々なチームの情報、チームの主力メンバー、チームの総合ランキング等が載っていた。

だがチームランキングではリギルが堂々の1位。更に1位からトップ10のチームは全て管理主義のチームだったのだ。やはり、歴史が多少変わった程度では管理主義の最盛期は揺るがないのだろう。

 

「中でもリギルはやっぱりSランクか…まあ、当然だよな」

 

チームには各々、総合評価でランク付けされており中でもチームリギルは唯一のSランク。と言ってもそれは当然だろう。

大学部で現在無敗で全距離対応可能のマルゼンスキー。リギルのリーダーであり2人目の無敗の三冠馬シンボリルドルフ。女帝エアグルーヴ。最強マイラー タイキシャトル。昨年度の三冠馬ナリタブライアン。他にもヒシアマゾン、テイエムオペラオー、フジキセキ、グラスワンダー、今年度クラシックに挑戦するサイレンススズカと言った化物連中と言えるメンバーが揃っている。ゴルシの時代ではアーモンドアイという絶対女王がリーダーだった所でもある。ゴルシもアーモンドアイとは何度か戦ったが、年下のアーモンドアイに勝てた事は一度もなかった。

 

トレーニングから休息は勿論、食事までも徹底的に管理するリギル。データ論から導きだしたデータと戦術により、管理主義の最盛期を加速させたと言っても良いだろう。入るためにはトレーナーである東条の監視の元に行われる入部テストに合格しなければ入れず、多くのウマ娘達がテストに挑むがその大半が落選しているそうだ。

 

「お婆ちゃんを入れるチームも考えないとな」

 

ゴルシは考える。ゴルシとドラえもんの知る世界での祖母メジロマックイーンは走りすぎとオーバーワークが主な原因である難病に匹敵する故障を負い、早々に現役を引退した。トキノミノルをなんの怪我も負わせず、無敗の三冠馬にしたサンデーサイレンスならメジロマックイーンの故障を防げると思った為だ。

サンデーサイレンスが未だトレーナーをしてるなら、サンデーサイレンス率いるチームに入れようとゴルシは考えていた。だが、サンデーサイレンスはもうトレーナーではない。

 

ページを捲り少しすると、チーム評価Fランキング30位という崖っぷちといえる評価の所で漸くチームスピカの名前を見つけた。

 

「ふぇ!?サンデーのおっさんが率いていたチームだろ!?何があったんだ!?」

 

なんと言う事でしょう。チームスピカはトキノミノルがトレセン学園を卒業して、見事に落ちぶれてしまったようだ。偉大なる指導者サンデーサイレンスが教頭に成ってしまい、絶対的エースであるトキノミノルも卒業した。だからと言って此処まで弱体化する物だろうか?

スピカはゴルシの知る本来の歴史では、サンデーサイレンスの急死で歴史に埋もれたチーム。ゴルシやドラえもんが持つ未来の知識は頼りにはならない。

 

「えーと…なになに」

 

ゴールドシップはスピカの情報を見る。チームスピカはサンデーサイレンスが教頭に出世と共に、チームのトレーナーを沖野という青年にバトンタッチ。

沖野はサンデーサイレンスの元で研修を受けた影響か、ウマ娘を見る目は確かでありサンデーサイレンスのやり方である自由主義を引き継いでいる。だが、沖野には足りない物が有った。それはコミュ力…所謂コミュニケーション能力であった。コミュ力が足らず、ウマ娘と上手く意志疎通が出来ず管理主義に合わないウマ娘を勧誘していたが…ウマ娘達は次々と離脱。結果、残ったのは後の三冠馬であるミスターシービーだけ。その後、コーチとして駿川たづなと成らなかったトキノミノルが合流し…トキノミノルが沖野とミスターシービーの仲を取り、沖野とトキノミノルの指導でミスターシービーは四代目の三冠馬と成った。だが、三冠馬に成ったあと…ミスターシービーは不調のスランプに陥り上手くレースに勝てない日々が続いているそうである。

 

「部員が1人でもFランクは無いだろ?三冠馬が居るんだしよ…」

 

確かに三冠馬という偉業を持つ選手が居るのに崖っぷちチームとはどういう事なのか?それは直ぐに分かった。

 

「なになに?チームランクを上げるにはランクマッチに出る必要が有りますだって?」

 

チームランクを上げるためには定期的に行われるチーム戦に出る必要がある。だが、スピカのメンバーはミスターシービーただ1人。1人ではチーム戦に出ることが出来ず、チームランクも上がられない。

 

「そりゃ、ランクは上がらないな…」

 

ミスターシービーだけじゃチーム戦には出れない。だが、ゴルシは思う。スピカ…結構良いんじゃないのか?と。

 

そもそもスピカは自由主義であり、サンデーサイレンスのやり方を引き継いだ沖野とトキノミノルがいる。この2人が居ればゴールドシップは未来の時と同じく自由主義のやり方でトレーニング出来るし、尚且つ自由主義だからこそ祖母の故障も防げるかもしれない。更に、今のメンバーがミスターシービーだけであり、トキノミノルと顔馴染みである自分が入ればスピカでも大きな顔が出来る。

 

「良し…スピカにするか」

 

ゴルシ、スピカにするためか行動を開始する。

 

 

 

 

 

「いざ、出てきたが何処もかしこも管理主義だな」

 

外に出てきて見てみれば多くのチームが管理主義であった。リギルほど、食事も管理している所が有れば食事は自由だがトレーニング等は完全管理された所もある。

 

「次はこのペースラン。お前はウエイトをしたから今日は休みだ」

 

「今日はこのトレーニングをしてもらいます。良いですね」

 

何処もかしこも管理主義ばっかりだ。時代が違うだけで此処まで違うのかと、ゴールドシップは嘆く。

 

「アタシは管理されるのは御免だな」

 

ゴルシは管理されるのは無理だ。ゴルシの実力なら間違いなく、リギルに入ることは出来る。だが、ゴルシはリギルのような食事からトレーニングまで徹底的に管理された生活は無理だ。入れば間違いなく、発狂してしまう。

 

「む?」

 

そんな時だった。誰のトレーナーの指示も受けず、1人でトレーニングする長い焦げ茶色の髪を靡かせた小柄なウマ娘が1人でトレーニングを行っていたのだ。そのウマ娘は目は真っ直ぐで輝いており、サンデーサイレンスの生き写しと言えるような容姿をしていた。

反発を用いて翔ぶように走っており、股関節が非常に柔らかい。ゴルシは様々な年代の競技者を知ってるがあんな走り方の選手は見たことがなかった。

 

「なんだ?あのサンデーのおっさんをちっちゃくしたウマ娘は?」

 

ゴルシがそうぼやくと、そのウマ娘は足を停めてゴールドシップの方を向いた。気味が悪いほどにサンデーサイレンスの子供の頃と思える程に似ており、違うところは目が純粋に綺麗だった。

 

「僕になにか用ですか?」

 

声は明らかに男だった。声変わりしたばかりのような声であり、紛れもなく男の声だ。だとすると、女の子ではなく男の娘なのだろう。道理で胸がぺったんこであり、直ぐ其処のベンチに置かれている鞄と制服は男子物であった。

 

「アタシはゴールドシップ。未来からやってきたハジケリストだぜ!!」

「そうですか…じゃあ、貴方がお母ちゃんとお父ちゃんが言っていた人ですね。僕はディープインパクト。サンデーサイレンスの()()です」

 

今さらだがゴールドシップとドラえもんは歴史を変えてしまい、サンデーサイレンスとキャンペンガールの死の運命を変えてしまった。その結果、サンデーサイレンスとキャンペンガールは更に子作りをヤっちゃい…結果誕生したのが目の前のディープインパクトなのだろう。

 

 

ベンチに座り、お互いに話すゴルシとディープインパクト。

 

「お前…リギルだったのか!?」

「だったです。ご飯も管理されて、合わなかったんで入部3日で辞めちゃいましたけどね」

 

ゴルシはベンチに座り、ディープインパクトは男子生徒の為かジャージ姿から制服に着替え始める。男子なので上半身の裸を見られても問題はなく…ディープインパクトは上半身の衣類を脱いではインナーを着こんで上半身の着替えを終わらせる。下半身はジャージの下に短パンを履いており、ジャージを脱いで短パンの上から制服のズボンを履いて着替えを完了させた。

 

「でも…これからどうしましょうかね」

 

ディープインパクトは気弱くそう言った。ディープインパクトは唯一…史上初の男子生徒。入学早々、へんな目で見られてしまい多くのチームに入部を断られてしまった。

そこで彼は実力テストを行うリギルのテストを受けたのだ。結果はスターティングゲートの仕組みが分からず、3秒出遅れるという大失態を犯しながら圧勝で1着。異次元の強さを見せつけ、ディープインパクトはリギルに入部した。しかし、徹底した管理主義が合わず3日でリギルを辞めてしまったのだ。

 

「スピカには入らないのか?」

「お父ちゃんの息子としか、見られないか不安で…未だ声をかけてないんです」

 

そしてスピカには声をかけてないディープインパクト。理由は単純、スピカはサンデーサイレンスの作ったチーム。そこで活躍してもサンデーサイレンスの息子でしか見られないかと不安が有ったのだ。

 

「おっさんやトキノミノルの姉ちゃんを超える伝説に成ったら良いじゃないか。お前、アタシが言うのも有れだけど…とんでもない逸材だぜ」

 

ゴールドシップはディープインパクト以上の素質を持つウマ娘を今まで見たことがない。確かにスタートはへたっぴかも知れないが、それでも断言できる。このディープインパクトの素質はゴルシの知る未来を含めても間違いなくNO.1だった。

 

「よし、決まったな。ガキンチョ……お前はアタシと共にスピカのツートップに成って貰うぜ。決定だ」

 

ディープインパクトはゴルシにそう言われ、ゴルシはディープインパクトを米俵を担ぐように軽々と担いでしまった。成長期が訪れたばかりの早生まれの男子等、長身美女のゴルシにとっては軽いのだ。

 

「えっほえっほ!!」

 

ディープインパクト…拉致決定!!

 

 

 

チームスピカの部室。2000年代初頭から変わらず、プレハブ小屋である。

 

「はあ……相変わらず、部員が増えないな」

 

30代に成った沖野は相変わらずペロペロキャンディーをなめていた。スピカは現在、部員はミスターシービーだけでありチーム戦を行えない。恩師サンデーサイレンスからスピカを引き継いだのは良いが、思うように部員が入ってきてくれない。

 

「今は管理主義が筆頭ですからね。私が学生だった頃も私しか部員は居ませんでしたからね」

 

と言う美女に成長したトキノミノル。学生服から女性ものの緑色のスーツに衣を変えたが、その圧倒的な力は健在であり、時々レースに出て無双してる。

 

「私がスランプに陥らなかったら…」

 

頭を抱え、CBとアルファベットが刻まれた帽子を右耳にかけた少女がそう言った。彼女はミスターシービー、スピカ唯一の部員であり四代目三冠馬でもある。だが、現在はスランプに陥り…上手く勝てない日々が続いている。

 

「グッモーニング!!トキノミノルの姉ちゃん!!おひさ!!ゴルシちゃんだぜ!!」

「ゴールドシップさん!?」

 

だが、そこにディープインパクトを米俵のように担いだゴールドシップがやってきたのだ。

 

「2人…スピカに入るぜ?」

 

ディープインパクトを地面に降ろし、ゴールドシップはにこやかな笑みを浮かべてそう言った。だが、チーム戦に出るためには最低でも、あと2人探さないといけないのだ。

 

(さてと…あと2人。お婆ちゃんの入学までにチームを形にしないとな)

 

ゴールドシップによるスピカ再生が始まった。

 

3人揃って短距離適性とダート適性が無いのは言ってはいけない。




果して…ゴルシはスピカを再生させる事が出来るのか!?

そして…ゴルシはだんだん真面目からハジケリストを演じ始める。


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ゴルシちゃん、大偵察!!

2度目の投稿。


「暇だ…21世紀前半のトレセン学園の生徒に成っても暇だ」

 

トレセン学園の中庭にあるベンチ。そのベンチに暇人であるゴールドシップは座っていた。ゴールドシップは学年不詳の生徒であり、授業は別に受けなくて良い。だからこうして暇を潰しているのだ。

 

「ドラえもんは仕事中だしな。ディープの野郎とシービーは授業を受けてるし、どうすっかな」

 

用務員という厩務員に成ったドラえもんは絶賛仕事中。ディープインパクトは授業を受けており、ミスターシービーも授業を受けている。トキノミノルは教員として授業を行ってるし、沖野は暇人だと思うが…まあほおって置こう。

ドラえもんも学生で良かったのでは?と思うかも知れない。だが、トレセン学園はウマ娘の学校だ。実質女子校(ディープという例外で崩壊)であり、中高一貫まではウマ娘しか通えない。その人間も通える大学部だが、高等学校を卒業した証明と資格がないと入学できない。その結果、ドラえもんはトレセン学園に居場所を得るためには用務員に成るしか無かったのである。

 

トレセン学園は流石に警備も厳重に成っており、仕方がない。

 

ゴールドシップも暇をもて余して暇で暇で死にそうな時だった。

 

「ゴルシちゃん、こんな所に居たの?」

 

竹箒片手に掃除を行うドラえもんが其処にやってきた。ドラえもん、トレセン学園に居場所を得るためとは言え懸命に働く。

 

「ドラえもん。丁度良かった、通り抜けフープと石ころ帽子を貸してくれ」

 

通り抜けフープ。それは壁に設置するとその壁をすり抜ける事が出来る便利な秘密道具だ。これさえ有れば、職員室から他のチームの部室にも楽々侵入することが出来る。だが、それだけなら不法侵入の容疑でバレてしまう。しかし、それはゴルシも理解しており、世の中には相手に見つからない帽子も存在するのだ。

その秘密道具の名前は石ころ帽子。これを被ると、他の人達からはそこら辺に転がる石ころにしか見れなくなり、見つからないのだ。

 

石ころ帽子と通り抜けフープ。この2つを使えば、偵察はバッチリである。

 

「しょうがないな…ゴルシちゃん。はい」

「センキュードラえもん!!それじゃあ、早速行ってくるぜ!!」

 

ドラえもんは黄色い輪っか…通り抜けフープと石ころ帽子を取り出してゴールドシップに手渡す。ゴールドシップはそれらを受け取り、石ころ帽子を被って誰の眼にも見えなくなってしまった。

 

 

 

職員室。

 

「アグネスタキオンに退学勧告だと!?本気で言ってるのか!?」

 

職員室に潜り込んだゴールドシップ。だが、潜り込むと早速なにやら騒がしい何事かと思ったが、それは直ぐに分かった。職員室では会議が行われており、他の幹部に対してサンデーサイレンスが声をあらげていたのだ。

 

「教頭先生。確かにアグネスタキオンは優秀な生徒です。ですが、彼女は何処のチームにも所属していませんし、高等部なのにデビューすらしてません」

 

幹部らしき男がそう言った。どうやら幹部同士の話し合いで成績不良…或いは内申の足りない生徒が居たためか退学勧告を出すことが決まったようだ。しかし、様子を見る限りサンデーサイレンスはこれに対して異議を唱えているようである。

 

「ああ、それは俺様も知っている。だが、アンタ達は知ってるのか?彼女が今までやってきた事を…」

 

サンデーサイレンスは知っている。トレーナーを辞め、教頭として勤務しながらも空いた時間が有れば生徒達を見守っていた。目に入れても痛くない娘が心配で、昨年度はスペシャルウィークのストーカーだとか言われたが気にしてはいない。

そんなサンデーサイレンスだからこそ、アグネスタキオンというウマ娘がどれほど頑張っているのか知っている。アグネスタキオンは確かに優秀だが、未だデビューはしていない。レースも学内だけで行われる非公式の学内レースだけだ。しかし、その学内レースで結果は残してるし勉学の成績は特に優秀。学内図書館の勉学の本の履歴にはアグネスタキオンの名前は必ずと言って良い程に彼女は勉学に励んでいた。

自主練習が終わると、アグネスタキオンはしっかりと念入りにストレッチやアイシングも欠かさず行っている。それに気味悪がれてるが、他の生徒が怪我をすると治療してくれたり、アイシング等のアドバイスも送っていた。

 

(彼女の何を知っている?貴様ら…本当に生徒を見てるのか?普段は学園に居ないくせに、彼女達を判断するな…理事会どもが)

「ですが…彼女の噂はご存知ですか?サンデーサイレンス教頭。アグネスタキオンは怪しい薬で速くなった、怪しい薬を日常的に使ってる。勉学だってずるしてると」

 

確かにアグネスタキオンは怪しげな薬を開発してる。だが、サンデーサイレンスはトレーナーでもありドーピング違反等の知識は豊富だ。大体、ドーピングの薬品など…医学部の治療に使う物以外は学園には絶対に入ってこない。

タキオンの怪しげな薬で娘と共に一時期、アフロヘアーにされた事は有ったがドーピングなど根も葉もない噂しか無いのだから。

 

これは完全に噂から流れたデマだ。そして理事会がデマを信用し、アグネスタキオンを退学させようとしているのだろう。

 

(昔ならグーパンしてるわ)

 

蟀谷に血管が浮かび上がるサンデーサイレンス。間違いなくキレている。

 

「ですが、勧告です。彼女がチームに所属すれば退学は取り消しましょう。期限は1週間ですよ」

 

そう告げ、男達…理事会は去っていった。理事会が去ると、サンデーサイレンスは深く溜め息を吐き出す。

 

「ノーザンテーストが海外に行き、ノーザンの娘であるお嬢が理事長に成った。だが、お嬢が未だ小学生だからって権力振りかざし過ぎだろうが…理事会どもが」

 

高等部にはチームに所属していないウマ娘だって、当然ながら居るのはいる。しかし、アグネスタキオンだけが退学勧告なんて可笑しすぎる。

 

「東条の所は無理だよな」

「ええ、確かにアグネスタキオンは素質は有ります。ですが、彼女はリギルには向いてません」

 

職員室で作業を行っていたメガネをかけた女性、リギルのトレーナーである東条はそう告げた。

 

「素質が有ろうと無かろうと、チームの向き不向きは有ります。

貴方のご子息が最高の素質を持っていてもリギルのやり方が合わなかったように。それに…アグネスタキオンを向かえてくれるチームが他に有りますか?」

 

トレセン学園のチームは現状スピカ以外はゴリゴリの管理主義。管理主義のチームは間違いなくタキオンが拒否するだろうし、難しいだろう。

 

「スピカに入れるか…スタッフ研修コースに転入させるかだな。ちょっと、行ってくる」

 

サンデーサイレンスはそう告げ、職員室を後にした。

 

(アグネスタキオンか成るほど成るほど)

 

石ころ帽子を被り、誰にも気付かれていないゴールドシップはアグネスタキオンの名前をメモに取ったのだった。

 

「はあ…それより、私も問題を抱えてるのよね。ディープインパクトを手放したのは大きいし、なによりフジキセキの怪我の事よね」

 

東条が頭を抱えている。気になったゴールドシップは背後から彼女のパソコンを覗き込む。そこにはリギルのメンバーであり、栗東寮の寮長を務めるフジキセキの写真とデータが写っていた。

 

(うげ!?こんなの、この時代じゃ選手生命終了の怪我だろ!?)

 

フジキセキのデータを見て、ゴールドシップは驚愕した。フジキセキはクラシック戦線…ジュニアCクラスだった時に、大ケガを負いそれ以来全く走れていなかったのだ。ゴールドシップやドラえもんの時代なら治すことが出来るのだが、この時代の医療では治すことは先ず不可能。フジキセキは実質の引退も同意義だ。

 

更に東条の机の上には1枚の退部届けが置かれており、その退部届けにはフジキセキの名前が記されている。走れない自分はリギルに居る意味がないとして、退部届けを東条に出したのだろう。だが、東条は……

 

「どうしろって言うのよ…」

 

夢を諦めざるを得なかったフジキセキを思い、辛い顔をした。

 

(走りたくても走れないって辛いよな…分かるぜ)

 

だが、ゴールドシップは他に偵察しなければ行けないので職員室を去っていった。

 

 

「待てよ?ディープが既にトレセン学園に居るなら、ディープの姉であるこの時代のスペシャルウィークさんは入学してるよな?」

 

ディープインパクトの姉はスペシャルウィークである。これは間違いない。スペシャルウィークはサンデーサイレンスが急死する本来の歴史でも産まれており、歴史改変が起きてからはサンデーサイレンスとキャンペンガールは生存している。生存した夫妻がチョメチョメを行い、スペシャルウィークの弟であるディープインパクトが産まれたのだ。

ならばディープインパクトの姉であるスペシャルウィークは既に入学していると考えるのが自然だろう。

 

 

では此処でトレセン学園の学年について説明しよう。トレセン学園は中高一貫校であり、希望制で大学部も存在している。

それとこの世界では4月に入学式が行われるのではなく、1月から入学式が行われる。つまり、1年生は1月から新生活を開始するのだ。春休みは無いが、その分5時限で1日の授業が終わるのが特徴的だろう。中等部はジュニアクラスと呼ばれており、1年生はAクラス、2年生はBクラス、3年生はCクラスと呼ばれている。CクラスからG1等の重賞レースに参加でき、Cクラスはクラシック戦線を競う事に成るのだ。

では高等部以上はなんなのか?高等部から大学部はシニアクラスと呼ばれており、日頃から勉学やレースに励んでいる。

 

 

「ディープの奴はちゃんと授業を受けてるな」

 

石ころ帽子を被り、悟られることなくジュニアAクラスに遊びに来たゴールドシップ。ディープインパクトは今年入学したばかりのピチピチの1年生だったのだ。

 

「よしよし…Bクラスに行こうっと」

 

ディープインパクトが授業を確りと聞いてる事を確認したゴルシは、スペシャルウィークが居ると思われるBクラスに向かった。

 

 

「スペちゃん。加入するチームは決まった?」

「私は未だかな?ディープちゃん、折角リギルに入れたのに辞めちゃうなんて……」

「弟さん、リギルのやり方には合わなかったみたい」

 

ジュニアBクラスの教室。休み時間のようであり、多くの生徒はお喋りをしながら過ごしていた。そして、その中にこの時代のスペシャルウィークが居たのだ。

 

(スペシャルウィークさんの学生時代か)

 

気付かれていないのでスペシャルウィークに近づくゴルシ。

スペシャルウィークは学友と親しそうに話しており、葦毛の少女、茶髪の少女、栗毛の少女と楽しそうに話している。

 

(あれはリギルのグラスワンダー、アタシの知る歴史だけど菊花賞で世界記録を出したセイウンスカイ、キングヘイロー、エルコンドルパサー…黄金世代じゃんかよ。感激だぜ)

 

スペシャルウィークは学友であるセイウンスカイ、キングヘイロー、グラスワンダー、エルコンドルパサーと共に話していた。彼女達は後に黄金世代と称されるウマ娘であり、ゴールドシップの時代では伝説級の世代として語り継がれている。

 

「キングはチーム決まった?私は未だだし」

「未だですわね…リギルに入りたかったんですけど」

「スペちゃんの弟が強すぎて受からなかったでーす。でも諦めません!!」

 

話を聞いてみると、グラスワンダー以外は全員、チームが決まってないようだ。中でもキングヘイローとエルコンドルパサーは少し前に行われたリギルの入部テストを受けたが、残念な事に3秒出遅れたディープインパクトが合格してしまいリギルには合格できなかった。しかし、そのディープインパクトが数日前にリギルを辞めた為に、直に入部テストは行われるだろう。

 

「これ…全員ラチる?」

 

と…ゴールドシップが声に出してしまった。

 

「スペちゃん、なにか聞こえた?」

「聞こえたね。でも…この声、聞き覚えが有るような」

 

このままではバレてしまう。ゴールドシップはその場から速やかにエスケープした。

 

 

 

 

 

午後3時。

 

「これより、スペシャルウィーク拉致作戦を開始する!!」

「「拉致作戦!?」」

 

授業が終わり、部室にやってきたミスターシービーとディープインパクトを待っていたのは……黒いサングラスとマスクで素顔を隠したゴールドシップであった。

 

「あの…ゴルシさん?僕のお姉ちゃんを拉致するの?」

「たりめーだ。スピカの戦力増強の為のな!!他所に取られる前に、スペを確保する!!」

 

ゴルシはそう告げ、シービーとディープにサングラスとマスクを手渡した。

 

「はい、これ着けて!!40秒で支度しな!!」

「えっ?マジで行くのかい?」

「そうだぜ、シービー。いざ、出走じゃぁぁーい!!」

 

ゴルシに言われるがまま、ゴルシと同じくサングラスとマスクを装備されたシービーとディープインパクト。準備は整った、スペシャルウィークをスピカに入れるために彼等は旅立つ。

 

 

 

 

 

「私もチーム早く決めないとな…」

 

スペシャルウィークは1人で寮への道を歩いていた。その時だった…ムニュんと柔らかい感触が鼻に触れてしまい…スペシャルウィークは一歩下がる。すると、目の前にはマスクとサングラスを装備した弟ディープインパクト、マスクとサングラスで素顔を隠した白髪美女ゴールドシップ、同じくマスクとサングラスで素顔を隠した三冠馬ミスターシービーが立っていたのだ。

 

「ディープちゃん!?それで…えっと?」

 

困惑するスペシャルウィーク。まさか、弟が素顔を隠して怪しい2人と共に現れては思考を放棄してしまうのも無理は無いだろう。

 

「ディープ!シービー!やっておしまーい!!」

「はい、ゴルシさん」

「オーケー、ゴルシ」

「名前言ったら、意味ないですよね!?てか、ディープちゃん…何があったの!?」

 

スペシャルウィークは麻布を被せられ、スピカの部室にお持ち帰りされたとさ。

 

スペシャルウィーク、弟同様にスピカに強制入部。

 

あと1人、あと1人でチーム対抗戦に出ることが出来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、2年後。

 

「ディープ!スペ!やっておしまーい!!」

「「はい。ゴールドシップさん」」

「スピカさんだ!!」

 

歴史は繰り返される。




アンケートですが、複数採用するかも知れません。もしかしたら、全員…スピカに加入する可能性も。



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チームスピカ、一先ず形になる

一先ず揃ったスピカ


「やっと研修が終わったよ」

 

ドラえもん。ようやく厩務員としての研修が終わり、形だけでも1人前になる。だが、自分とゴルシちゃんの現代での活動資金を得るためにも、彼は働くしかないだろう。だが、サンデーサイレンスが上手く幅を利かせてくれたのかドラえもんは他の厩務員と比べて勤務する時間は短い。中高一貫の生徒達の勉学時間と同じぐらい働き、午後3時からは自由時間という感じだ。これは未来人であるドラえもんとゴルシの事を配慮した結果とも言えるだろう。

 

厩務員としての本日の業務を終えて、ドラえもんはチームスピカの部室に向かう。そこに間違いなくゴールドシップは居るのだから。ドラえもんはスピカではマネージャーに近いことをする予定だ。ドラえもんはロボットとは言え、運動能力はウマ娘に劣る。ゴルシなんて、ドラえもんを担いで走ることが出来る程にパワフルなのだから。

 

しかしドラえもんは秘密道具があるし、ゴルシの専属マネージャーとして鍛えたサポート力がある。秘密道具はゴルシと共に焼き蕎麦、ドーナツ状の穴を空ける虚無なバイト、溶接等々のバイトを重ねてお小遣いを貯めて買った物だ。その秘密道具を使ってサポートすれば、スピカの練習も効率アップするだろう。

 

「ゴルシちゃん。お待たせ」

 

チームスピカのプレハブに到着し、ドラえもんはゴルシ達の待つ部室に入った。そこでは…

 

「スペ!!援護してくれ!!てか、ディープ!!ガンランスなんて使ってんじゃねぇ!!最強武器ライトボウガンを使えよ!!」

「ガンランス嘗めないでくださいよ!!あっ、誰か粉塵お願いします!!」

「ゴールドシップさんも一番強い太刀使ってるじゃ有りませんか!!私、ヘビィボウガンだからアイテム使うの時間がかかるんです!!」

「仕方無い。武器を出したままアイテムが使える私が何とかしよう……あれ?」

「「シービーさーーん!!」」

 

ミスターシービーは力尽きた。報酬が減りました。これ以上復活出来ません。

 

「なにやってるの?」

 

スピカは仲良く、携帯ゲーム機を持ち寄って大人気ハンティングゲームを行っていた。しかもこの携帯ゲーム機は最新式のテレビとも繋ぐことが出来る代物であり、間違いなくゴールドシップが秘密道具を使って増やした物を仲良く4人でやってるのだろう。

因みに彼女達は伝説のサイヤ人 激おこラージャンの討伐をやっていたが…ものの見事に倒されてしまったようだ。余談だがゴルシが太刀、スペシャルウィークがヘビィボウガン、ディープインパクトがガンランス、ミスターシービーが片手剣だ。

 

「よっ!!ドラえもん。待っていたぜ!!」

 

ドラえもんがやって来た事で、ゴールドシップ達はゲーム機をスリープモードにして鞄の中に仕舞った。続きはまた今度である。

 

ドラえもんもトレセン学園にやって来て数日。2000年代初頭で顔見知りだったトキノミノルやサンデーサイレンスは勿論のこと、彼も彼で多くのトレセン学園の生徒達と知り合った。

現代社会には先ず存在しない青いまるっこい独特な雪だるまのようなフォルム。元が子守りロボットだった為か、子供達に直ぐ様人気者と成ってしまい、今やトレセン学園でドラえもんの事を知らない生徒は居ない程だ。

 

『君がドラえもんか。ドラちゃんって呼んで良いかな?』

 

と栗東の寮長フジキセキに速攻で気に入られたり。様々だった。

 

「ゴルシちゃん。トキノミノルさんと沖野トレーナーは?」

「トレーナーはサンデーのおっさんに呼ばれて不在。トキノミノルの姉ちゃんはちょっと出張だな」

 

トキノミノルは現在、トレセン学園から離れた所にいる。出張との事で、今は岐阜の笠松トレセン、その次は高知県の地方トレセンだそうだ。トキノミノルは言わば生ける伝説であり、様々な所から声がかかるので仕方がないだろう。

 

 

 

 

「2人は中距離と長距離希望だね?それじゃあ、私と一緒にやろうか。ドラえもん、タイム計ってくれる?」

「「はい!!お願いします」」

「良いよ」

 

スピカの練習は基本的に自主性を重んじる。それ故か、自分達でやりたい練習をやることが多く…沖野はアドバイス位しか送らない。

ミスターシービーは一先ず中距離と長距離希望のスペシャルウィークとディープインパクトと共に練習する事を選び、ドラえもんは3人のタイム計測を行うことに。ではゴルシは何をしているのか?

 

「ぬん!!」

 

丸太をハンマーで打ち込んでいた。知っている人が見れば、お前は何処の幕の内一歩なボクサーだ。とツッコミを入れてしまうだろう。

 

 

 

 

 

「ほう…成る程。確かに退学は困るし、君は私の研究に手出しはしないでくれるのか」

「ああ、スピカ以外じゃ…お前さんを引き取る所は無いしな。我が家は自主性を重んじる。やりたい事をやりな」

 

白衣を纏った生徒 アグネスタキオンは沖野に連れられて、スピカの部室にやって来ていた。何処かに所属しなければ退学…それを免れるためにはスタッフ研修生に編入するか、チームに所属するしかない。サンデーサイレンスに説得されたアグネスタキオンはしぶしぶ、スピカに入部する事を決めたのだ。

 

「だが、レースに出る出ない、走る走らないは私が決める。良いね?」

「それは構わないが…」

「それだとチーム戦に出れない…だろう?安心してくれ。退学処分を逃れるために入ったのに、また上から難癖つけられて解散となっては私も困るからね。1人紹介しよう。彼女は私と同室でね、ダートも芝も問題なく走れるさ」

 

アグネスタキオンが紹介したウマ娘は芝もダートも問題なく走れるそうだ。そのウマ娘は…

 

 

 

「うひょょょょう!!男のウマ娘ちゃんだ!!此方にもウマ娘ちゃんが!!此方には噂のドラえもん!?うへっへへ」

 

アグネスデジタルと言う。

 

「あっ、コイツ…アタシと違って素でヤバい奴だ」

 

ゴルシ…天然物を知る。

 

アグネスタキオン、アグネスデジタル。スピカに入部。




次回!!メンバーが揃いつつあるスピカ。

次回はドラえもんパート。ドラちゃんがメインです。


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ドラえもんの仕事日より

ドラえもんパート


ドラえもんは学生ではない。未来ではゴルシの自室にある押入れを寝室として使っていたが、この時代では相棒であるゴールドシップは寮暮らし。対してドラえもんは学生ではないのでトレセン学園の学生寮は使えない。ではドラえもんは何処で寝泊まりをしているのか?

 

「さてと、ゴルシちゃんの所に行こうかな」

 

トレセン学園が用意した社員寮。早い話社宅である。しかし、かつてサンデーサイレンスとその妻 キャンペンガールが暮らしていた世帯持ちの社宅と違い、ドラえもんが住んでいる部屋はワンルームのマンションのような感じだ。キッチンも風呂も備え付けられており、基本的に自炊する生活だと思うが我等がサンデーパパは手を打ってくれている。

 

『ドラえもん。栗東の寮長と食堂のおばちゃん連中には俺から言っておいたから、寮の食堂で夕飯と朝食を食べて良いぞ。勿論…学生の皆と一緒に無料だ!!』

 

基本的にトレセン学園の生徒は食費を気にしなくて良い。売店のコンビニでスイーツを買うのは別だが、食堂は決められた時間しか使えないとは言え学生はタダなのだ(あと、特例でドラえもんもタダ)。つまり、美味しいご飯をタダでいくらでも食べ放題なのである。

そんな嬉しい特権を与えられたドラえもんは喜んだ。タダ飯に関しては秘密道具のグルメテーブルかけを使えば食べれたが、やはり皆で食べるのが1番である。

 

ドラえもんはゴルシ達と朝食を食べるために、どこでもドアでゴルシ達が暮らしている栗東寮にワープした。勿論…仕事道具は四次元ポケットに入っているために、忘れ物は先ず有り得ない。

 

 

 

「いよっし!!おばちゃん、ゴルシちゃん達来たぜ!!」

「いらっしゃい!!好きな物を頼みな!!おばちゃん達、何でも作っちゃうぞ!!」

 

トレセン学園の学生寮には決まったメニューはこれと言って存在しない。何故なら希望すれば何でも作ってくれる為だ。勿論…参考程度に食品サンプルとして日替わり定食等が入り口に有るが、サンプル程度だ。ここに馴れたら、参考程度にしか選ばない。

とは言え、トレセン学園のウマ娘達は多くがチームに所属しており…上位のチームは管理主義で食事も管理されている。食堂のおばちゃん達は各管理主義のトレーナーから指示された食事を毎回作るので、管理主義のチームに所属するウマ娘は自分で食事を選ぶという事はない。

 

「私とディープちゃんは時間がかかるので、皆さん先に言ってください」

「良いのか?スペ。それじゃあ、ゴルシちゃんは日替わり定食特盛で!!」

「僕も日替わり定食で」

 

スペシャルウィークとディープインパクトは諸事情で料理を頼むのに時間がかかる。なので、他のメンバーは先に料理を頼むことになったのだ。

そこでドラえもんとゴルシは日替わり定食を注文。此方はウマ娘の為の栄養バランスが考えられており、多くの管理主義のチームのメンバーが頼んでいる。味も美味しく、迷ったらこれだ。

 

「ふむ…では私はお茶漬けにしよう」

「タキオンちゃん、それで足りるの!?」

「足りるさ、ドラえもん。私は少食なのでね」

 

マッドサイエンティスト アグネスタキオンはまさかのお茶漬け。いくら少食とは言え育ち盛りの高校生として、これはどうなのだろうか?

 

「ふふふ…周りにウマ娘ちゃん達が居るだけで満足ですぅ!!ぐっふふ……あっ、私は洋食プレートで」

 

ウマ娘が大好きなスピカの新人 アグネスデジタル。彼女は周りに様々なウマ娘が居るためか、鼻血が出そうになるが彼女は洋食プレートを注文した。洋食プレートは洋食風の日替わり定食であり、和食より洋風の料理が好みなウマ娘が良く頼んでいる。

 

「私はカレーライスとサラダを。やっぱり朝はカレーだよね。かのベースボールプレイヤー イチローも毎食カレーだったし、何より美味しいしね」

 

我等がリーダー ミスターシービー。カレーライスとサラダを注文する。朝カレーは野球界のレジェンドが行っていた朝食ルーティンであり、シービーも彼を見習って朝カレーを行うようだ。

 

「スペとディープ、いいぞ」

「「取りあえず、超山盛りのご飯を下さい」」

 

既にトレセン学園では有名だが、サンデーサイレンスとその娘と息子は物凄く大食いである。この3人、周りが驚くほど大食いであり、それはそれは食べるのが大好きなのだ。食べても食べても体重は増えず…多くのウマ娘は羨ましそうな視線と異次元に食べる量を見て怪奇な視線を送っているそうだ。

 

「「ニンジンハンバーグ6段、卵焼き、フランクフルト、レアステーキ、鮭の塩焼き、サラダ、カレールー」」

 

と早口言葉のようにおかずを注文していくスペとディープの姉弟。スピカの面々は慣れてきたが、周りの他のチームに所属するウマ娘達は「なんでこんなに食べれるの?」と言いたげな顔をしていた。

 

「デザートにニンジンプリン」

「お姉ちゃんがそれなら、僕はデザートにみたらし団子をお願いします」

「お前達、どんだけ食べるんだよ!!」

 

因みに余談だが、ディープインパクトがリギルを辞めた1番の理由は食事制限である。リギルの食事はしっかりと体調管理を含めて東条が決めてるのだが、その量はディープインパクトには余りにも少なすぎた為だ。因みに余談だが、スペシャルウィークもリギルに入っていたら彼女も3日で辞めていたとか。理由は勿論…食事である。

 

因みに未来の世界ではスペシャルウィークやディープインパクトのようにめちゃくちゃ食べるウマ娘は居ない。未来のウマ娘の胃袋は至って普通なのだ。

しかし、食堂のおばちゃんは知らない。後々に、トキノミノルが笠松から連れてきた転入生がサンデー一家以上のフードファイターである事を。

 

『中央を……食堂スタッフをなめるんじゃないよ!!かかってきな!!アンタ達の胃袋を満足させてやるさね!!』

 

フードファイター四天王VS全食堂スタッフの食と食の戦いが起こるのは内緒である。

 

 

 

 

 

「今日の授業なんだろうね?」

 

「皆は今日のトレーニングは決まってる?私はトレーナーさんから指示されたこれかな?」

 

「私はレースが近いし、休みって言われたよ」

 

午前8時位。準備を終えた生徒達がトレセン学園に登校する。とは言え、トレセン学園は全寮制の為に敷地内に住んでいるので遅刻は先ず有り得ない。寝坊等をしたら別だが、そんな事は滅多に無いだろう。

 

「皆、朝から元気だね。良いことだよ」

 

しかし、この時間にはドラえもんの仕事は始まっている。ドラえもんは花壇の手入れを行っていた。厩務員の仕事は速く、生徒達が楽しく学園ライフを送れるように裏方として日頃からサポートするのである。

 

「あっ!ドラちゃん、お早う!!」

「フジキセキさん、お早う!!」

 

そんなドラえもんに1人のウマ娘の少女が話しかけてきた。彼女はフジキセキ、栗東寮の寮長だ。彼女は制服姿ではなく、ジャージ姿で登校してきた。どうやら、これから朝練習でも行うのだろう。だが、ドラえもんは厩務員であり裏方としての仕事もこなしている。だから知ってるのだ。フジキセキが朝練ではなく別の目的で速く来たことを。

 

「今日もリハビリなの?」

「はは…お恥ずかしい限りだけどね」

 

フジキセキは2度と走れない。それが医師から告げられた宣告だ。たった4度のレースしか走れていないが、教頭であるサンデーサイレンスからも目をかけられており…チームリギルに所属して順風満帆にエリート街道を突き進むと誰もが思っていた。そう、思っていた…過去の話だ。フジキセキはもうエリートチームリギルのメンバーではない。

 

『東条。1週間で良い、フジキセキを走らせず…足の疲労抜きに専念してくれ。あと悪いことは言わん、次のレースはパスした方が良い…あの子をクラシックに出させたいならな』

『教頭。データならフジキセキは全くの問題はない筈です』

『データだけじゃ分からない事もある。頼む…あの子の為だ』

 

サンデーサイレンスは東条にそうかつて忠告した。しかし、人は他人からの忠告より自分の経験の方を信じる可能性が非常に高い。東条はデータ論から大丈夫と判断し、フジキセキを休ませなかった。

だが、それは間違いだった。サンデーサイレンスが出張で居なくなった時…フジキセキは故障してしまい…実質選手生命は途切れた。サンデーサイレンスが気付いた僅かな綻びを東条は見過ごしてしまったのだ。いや、東条を責めるのはよそう。彼女に落度はないと言える。そもそも、そんな綻びはサンデーサイレンスでしか気付けなかったのだから。

 

だが、フジキセキは走るのを諦めたくない。だから朝早くからトレーニングジムで懸命にリハビリを続けているのだ。

 

「それじゃあ、ドラちゃん。またね」

 

リハビリを懸命に続けたお陰か、フジキセキは普通に歩ける。だが、未だ走れない。フジキセキはドラえもんに背を向けて去っていった。

 

「フジキセキさん…」

 

未来の秘密道具を使えばフジキセキは治るかも知れない。だが、フジキセキだけを特別扱いして良いのだろうか?フジキセキと同じ故障で多くのウマ娘がターフを去り、やがてはトレセン学園を辞めて故郷に戻っていった。悲しいが、それが現実なのである。フジキセキは治っても他の子達は?彼女達も走りたかった筈だ、もっとレースに出たかった筈だ、トレセン学園で多くの事を学びたかった筈だ。そんな過去の生徒達を思ってか、ドラえもんはフジキセキの故障を秘密道具で治すという一歩を踏み出せなかった。そうすれば、余りにも不公平と言われるだろう。

 

「あら、ドラえもん。お早う御座います」

 

すると新しい生徒がやって来た。その少女は水色…色の濃いガラスのような髪色をした美少女だ。その美少女はメジロアルダン、スタイル抜群の美少女であり名門貴族メジロ家のお嬢様の1人だ。アルダンは流行り物好きなのか、なんとセグウェイに乗って通学している。

 

「アルダンちゃん、お早う」

 

アルダンは現在ジュニアCクラス。今年、クラシックに挑戦するが残念な事にチームは決まっていない。実はと言うと、これにはアルダンの事情が関係している。

アルダンは素質は高いが、残念な事に生まれつき硝子の脚と称される程に繊細なのだ。だから自分の判断を通せない管理主義のチームだと、何時壊れるか分からない爆弾がいつ爆発するのか…そう考えると何処のチームに所属するべきか本気で悩んでいるのだ。

 

「いつもご苦労様ですね…あれ?私のアルダン号が…」

 

だが、アルダンのセグウェイが停まる。どうやらバッテリーが無くなったようだ。しかし、此処にはドラえもんが居る。

 

「ふふふ、任せて!!タイム風呂敷!!」

 

ドラえもんはタイム風呂敷を使い、セグウェイをバッテリーが切れる前の状態に戻した。これで、セグウェイは再び動き出す。

 

「ありがとう」

「どういたしまして」

 

そしてアルダンはセグウェイに乗って校門を潜っていった。

 

「メジロ家か……」

 

メジロ家。この時代では財閥級の権力と財力を持つ一族であり、未来では見事に没落してしまった一族。我等がゴルシもメジロ家の血筋を引いており、この現代ではメジロ家は最盛期の力を持っていた筈だ。

総帥であるメジロアサマ。現当主であり天皇賞(春)を制覇したメジロティターン。宝塚記念を勝ったメジロライアン。トリプルティアラを達成したメジロラモーヌ。メジロアルダン、メジロドーベル等々の優秀なウマ娘は勿論のこと…メジロ家最高傑作 メジロマックイーン等の名門一族である。

 

だが、御存じ未来では没落。ドラえもんとゴルシも把握している中で、未来ではメジロドーベル位しか居なかった筈だ。メジロドーベルは男嫌いが物凄く、それはロボットのジェンダーも含める。未来ではアルダンはどうなったのか分からない…少なくともドラえもん達は彼女達がどうなったのか分からないのだ。

 

 

 

 

 

「えっ?アルダンちゃん……メジロ家を立て直す為に、中国の資産家と政略結婚したの!?」

 

休み時間。ドラえもんは未来のメジロ家の事を調べた。勿論…ドラえもんやゴルシの良く知る元の歴史での未来であるが。その本来の歴史曰く、アルダンは取り潰しまでのカウントダウンが進んだメジロ家を立て直す為に中国の資産家と政略結婚。しかし、望まぬ結婚したのにも関わらずメジロ家は没落して取り潰しと成ってしまった。

 

「なあ、ドラえもん。皆…救ったら良いじゃないか。サンデーのおっさん救って、ディープが産まれたから変えちゃって良いだろ?」

 

そんなドラえもんの後ろにいつの間にかゴールドシップが立っていた。

 

 




次回はゴルシちゃんとドラえもん…アルダンと接触する!?

だが、チーム対抗戦のお知らせ?短距離どうするの!?ゴルシちゃん!!


因みに大食い四天王はサンデーパパ、スペちゃん、ディープ、そしてオグリキャップ。


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入るアルダン

アルダン…入部。


トレセン学園は土曜日と日曜日は休みだ。授業は一切無く、ウマ娘の生徒達は好きな時間を過ごしている。実家が近い生徒は実家に2日だけ帰省するのも良し、普段はあんまり出来ない買い物をするのも良しだ。しかし、日曜日はそうともいかないのが実情だろう。

 

「アタシ達、未だレースは出れないしな」

 

今は2月。新入生が入学して丁度1ヶ月が経過した頃だろうか。1年で1番寒い時期であり、降雪量が少ない東京と言えど寒いものは寒い。

日曜日はウマ娘が活躍するトゥインクルシリーズの大きなレースが行われる事が多く、有力チームや中堅チームのウマ娘やトレーナーはレースに出るためか競馬場に向かっている。しかし、それはレースに出るウマ娘の話であり、レースに出ない或いはレースを観戦したり応援する予定のないウマ娘は土曜日と同じく完全に自由な休みと言える。

 

「だよね…ゴルシちゃんは年齢的に実質大学生だから、シニア扱いじゃないの?」

「大会にエントリーしていない。それによ、アタシはこの時代じゃ無名だからな…未だG1に出たくても出れないよ。先ずはプレオープン…いやデビューから出ないとな」

 

ゴールドシップは実力的にG1でも通用する事は間違いない。なにせ、元の時代でクラシック二冠、有馬記念、天皇賞(春)、宝塚記念二連覇を成し遂げた。だが、この時代ではゴールドシップは学年不詳の生徒でしかなく知名度は無名。ファンだって沖野、トキノミノル、サンデーサイレンス、キャンペンガール位しか居ない。

 

ゴルシがG1に出るためにはレースに出場し、徐々に知名度を上げるしかない。勿論…プレオープンに参戦すれば圧倒的な実力で優勝することは間違いない。スピカの曲者メンバー全員で戦っても、現時点では長距離では1番速い自信だってある。ただしトキノミノルが相手なら流石に無理。

 

「てか、なんで俺様の書斎で寛いでるんだ?ゴルシ、ドラえもん」

「えっ?暇だし。序にこの時代のメジロとか、名門一族について知りたいしな。なぁ、ドラえもん」

「僕はゴルシちゃんの付き添いです」

 

暇をもて余したゴルシとドラえもんはサンデーサイレンスの仕事場でもある教頭室に遊びに来ていた。単純に暇だからってだけではなく、遊びに来たからには目的があるのだ。

 

「未来じゃどうかは分からんが…この時代じゃ名門処のウマ娘は優遇されるからな。くそ理事会の金の亡者の影響かも知れんが」

 

それは名門一族の事を聞きに来たのだ。トレセン学園には多くの名門一族の生徒が多く在籍している。当然、親は凄いが平民の出や完全に民間人の両親を持つウマ娘も多く居るのは確かだが、ゴルシの時代と違って名門の家柄出身のウマ娘が現代には多かったのだ。

メジロ家等の貴族に近い財閥は勿論、ダイワ家、アグネスタキオンやアグネスデジタルを輩出したアグネス一族等々見渡せばかなり多く居る。

 

「俺様個人としては、入学のチャンスは子供達全員に有るべきだと思うが。俺個人の力だけではそれは難しくてな…トレセン学園に入学する生徒の過半数は名門出身、地方からやって来る生徒は本当に少ないのが事実だな。

スペの学年じゃキングヘイローって子が居ただろ?あの子はアメリカの名門一族 ヘイロー家のお嬢様だった筈だ。母親はグッバイヘイロー、アメリカG1を何度も制覇してる女傑で今は勝負服のデザイナーをしてたな」

 

キングヘイローも名門一族の娘である。何でもサンデーサイレンス曰く、キングヘイローの母親はかなり有名な勝負服デザイナーらしく…現役時代はアメリカ競馬で優秀な成績を修めた選手だそうだ。

 

「へー、詳しいなおっさん」

「彼女の母親は俺様の1つ歳上だからな。彼女はどういう訳か、俺様にも普通に接してくれたしな」

 

キングヘイローの母親は人種差別の激しいアメリカで差別を受け続けたサンデーサイレンスに対し、普通に接してくれた人物だったのだ。その人物はグッバイヘイロー、今はデザイナーをしながら東京都で暮らしている。

 

「おっさん、差別されてたのか!?」

「肌の色が黒いってだけで差別するような所だ。男のウマ娘って前例が殆どない存在の事が気味悪かったんだろうな。俺の前にも男のウマ娘は居たそうだが……俺より酷い扱いを受けたんだろうな。殺人の容疑で刑務所に収監されてるそうだ」

 

サンデーサイレンスはそう言うと、引き出しからボロボロに成らないようにラミネートコーティングされた新聞記事を取り出した。その新聞記事はアメリカで発行された物だろうか?全て英語表記であり、英語が学校で習う程度の物しか分からないゴールドシップとドラえもんはその全文を読めない。だが、部分的には分かる。

 

「ヘイロー?」

 

新聞には写真と共にヘイローと記されており、写真には手足と口を拘束具で拘束された男のウマ娘が写っている。そのウマ娘は気味が悪い程にサンデーサイレンスそっくりであり、瞳は人間に対して絶望したのだろう…黒く感情が読み取れない。

 

「ヘイロー。俺様の前に居た男性ウマ娘であり、殺人の容疑で刑務所に収監されている犯罪者だ。

DNA検査をしてないから分からんが…ほぼ間違いなく俺様の父親だろうな。離婚と再婚を繰り返したのか、子供が沢山居た筈だな…まあ、離婚と再婚を繰り返すなんてアメリカじゃ良くある話だしな。孤児院の子供も親が誰なのか分からない子も多く居た…日本は本当に平和な国だよ。総理はコロコロ変わるけどな」

 

写真の人物はヘイロー。サンデーサイレンスの前に実在した男性ウマ娘であり、恐らくはサンデーサイレンスより酷い過去を持っているのだろう。離婚と再婚を繰り返してるそうで、分かってるだけで子供が沢山居るそうだ。

 

「ヘイロー家だが、そのヘイローの子供達が作ったそうだ。ヘイローはグッバイヘイローの父親らしくてな、キングヘイローの祖父に当たる」

「キングヘイローさんに似てないね……む?このヘイローさんがサンデーさんのお父さんなら、グッバイヘイローさんとサンデーサイレンスさんは姉弟の関係じゃないの?」

 

キングヘイローの母親はグッバイヘイロー。グッバイヘイローの父親はヘイロー。ヘイローとサンデーサイレンスは瓜二つであり、サンデーサイレンスはヘイローの事を父親ではないのか?と確信している。つまり、グッバイヘイローとサンデーサイレンスは姉弟の関係の可能性が非常に高いのだ。

 

「さあな…生憎と、学生時代の俺様はグッバイヘイロー先輩に聞く勇気は無かったからな。過去を映像で見れたら1番なんだけど…」

 

ウマ娘は直ぐに富を築く事が出来る。最高峰のレースに優勝すれば1億うん千万という大金が手に入り、2位から5位の入着でも6千万から1千万ちょっとの大金が入ってくる。中央なら負けても40万ちょっとの出走手当が入り、学費から交遊費その他雑費を賄う事が出来るのだ。

中央よりレベルが下がるとは言え、地方競馬でも出走手当は8万ほど手に入り、毎週レースに出れば出走手当だけで30万ほど手に入る。充分、食費に困ることは無いだろう…一部のフードファイター以外。

 

ヘイロー一族が1代でその富を築いた。レースは勝てば本当に儲かり、夢があるだろう。

 

「なあ、おっさん。メジロ家もレースに勝って富を築いたんだよな?」

 

メジロ家もレースに勝って富を築いた。ゴールドシップが幼い頃、母親から聞いた昔話である。

 

「それはちょっと違うな…俺様が知ってる範囲だが、メジロ家の婆さんは元々金の使い方が巧かったと言える」

 

サンデーサイレンスが補足してくれた。なんでもメジロ家はメジロアサマがレースを走り、稼いだ富を巧く活用したのだ。G1に勝てば1億以上の大金+出走手当が手に入り、アサマはそれを巧く使い株取引や投資で一気に増やした。ティターンも同様の方法を行い、メジロ家はほんの数十年足らずで大規模な財閥へと成ったのである。

 

「「賞金を投資に使ったの!?」」

「成功する確信が有ったんだろうな。お前達は止めとけよ?投資なんて失敗すれば、一瞬で借金まみれに成るからな。

そうそう、言わないといけない事が有った…今月の末だな。スピカもチーム対抗戦に出れるメンバーが集まった事だし、チーム戦に出てもらうぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在スピカの戦力。

 

学年不詳 ゴールドシップ、専門種目は中距離から長距離。

 

シニアクラス ミスターシービー、専門種目は中距離…但し長距離とマイルも可。

 

ジュニアB スペシャルウィーク、希望種目は中距離と長距離。

 

ジュニアA ディープインパクト、希望種目は中距離から長距離。

 

シニアクラス アグネスタキオン、専門種目は中距離。但し、本人は走るか未定。

 

ジュニアA アグネスデジタル、希望種目は…推しのウマ娘ちゃんが居るなら何処までも。

 

「短距離が居ない。最悪、アタシが短距離をやるしかないのか?」

 

マイルは最悪、ミスターシービーに出てもらおう。だが、短距離を走ることが出来るウマ娘が誰も居ない。チームスピカは見事に、種目が片寄った選手配分と成ってしまった。ダートに関してはアグネスデジタルにやってもらおう。スペシャルウィークとディープインパクトどちらかを長距離と中距離に分ければ、なんとか成るだろう。

 

しかし、短距離を走ることが出来るウマ娘は現在…スピカには居ない。やはり、ウマ娘の花形は中距離と長距離であり、短距離を専門とするウマ娘よりも中距離を走りたいウマ娘は多い。数少ない短距離選手をどうするべきなのか、我等がゴールドシップは考える。

 

「でもさ…ゴルシちゃん。その前にやること有るでしょ?」

「おう!!アルダンの確保だな!!」

 

メンバーは多いに越した事はない。それにゴールドシップとドラえもんはサンデーサイレンスとキャンペンガールを死の運命から救ってしまい、ディープインパクトという男のウマ娘が誕生する切っ掛けを作ってしまった。

今さら悲劇を無くして何が悪い。ゴールドシップとドラえもんは未来、メジロ家を立て直す為とは言え中国の資産家と政略結婚する事になるアルダンの未来を変えて…彼女が幸せに成るためにアルダンをスピカに加える事を決めたのだから。

 

探せばアルダンは直ぐに見付かった。アルダンはベンチに腰掛けており、管理主義のチームの練習を遠目に眺めていた。

アルダンの脚は硝子の脚であり、素質は有っても何時壊れるか分からない。そんな彼女は自分の意見を通せない有力チームには入ることは出来なかった。

 

『お腹が空きました…ご飯を下さい……定食1個じゃ無理』

『ハナ!!ディープが倒れたぞ!!空腹で』

『また!?ルドルフ、取りあえず運ぶわよ!!』

 

自分の我を通せなかったら満足いく練習も出来ない場合がある。アルダンは様々なチームを見学してそれを良く理解している。少し前だって、リギルに入っては3日で辞めた少年がリギル時代に空腹で倒れたし。

 

何処か…自分の意見を言えて、皆で楽しく強く速くなれるチームは無いだろうか?空腹でぶっ倒れたリギルを辞めた少年は新しいチームに入れたのか、そんな事を考えながらアルダンは移動しようする。脚に出来るだけ負担をかけないように買ったセグウェイに乗り、その場を移動しようとした時だった。

 

「何処行くんだい?お嬢さん」

 

そんな声が聞こえ、アルダンは声の方を向いた。そこには…

 

「スピカで……やらないか?」

 

サングラスをかけ、青いツナギ作業着を纏った変質者ゴールドシップがベンチに座っていたのだ。ゴルシは右手にプラカードを持っており、プラカードには「スピカは自由主義だよ!!」と書かれている。

 

「貴女は?」

「アタシは未来からやってきたグレートなウマ娘。ゴルシちゃんだ。スピカは自由だぜ?自由に練習メニューを決めて良いし、トレーナーは余程の問題があると判断したとき以外はアタシ達のやり方に口を出さない。どうだい?」

 

ゴルシはそう告げ、サングラスを取った。

 

「自由ですか?」

「おう、練習も自由、レースも自由。アグネスタキオンなんて研究ばっかしてるしよ。この前、トレーナーが蛍光色に発光してたぜ」

 

ゴルシはそう告げ、ポケットに入れたスペアポケットに手を突っ込み…麻布を掴む。もし、アルダンが否定すれば強引にでもスピカの部室に何時も通り、拉致するだけだ。

 

「ええ、それは楽しそうです!!」

 

だが、その必要は無かった。

 

「デビューすらしていない未熟者ですが、宜しくお願いします」

 

ジュニアC メジロアルダン。スピカに加入。

 

「良し、それじゃ皆で仲良くマリオパーティーでもやるか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「短距離どうしよっか…」

「「「「誰も走れないんですけど」」」」

 

肝心の短距離は相変わらず不在、どうするの!?ゴルシちゃん!!




次回…短距離は不在!!

そんな時だった。相手チームがやって来たが…そのチームにはクラシック級のエースと言える、サッカーボーイが!?

サッカーボーイ「格の違いを教えてやるよ」




ドラえもん「お願い!!ゴルシちゃん達を助けて!!」

ドラえもん…スピカを救うために走る。そして…

???「入部します」

あのウマ娘が復活する。


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復活のキセキ

彼女復活しますん


西暦20××年。ゴールドシップとドラえもんが過去を変えてしまった結果、そこそこ歴史が変わってしまった。しかし、ゴールドシップとドラえもんの存在は揺るがないので問題はない。ドラえもんがゴルシの家に引き取られるのではなく、せわし君に引き取られた世界でのび太がジャイ子からしずかちゃんに嫁が変わっても…せわし君の存在が変わらないように問題はないのだ。

 

「だぁぁ!!くっそ!!アーモンドアイに勝てない!!」

 

プレハブ小屋から大きな部屋に変わった未来のスピカの部室。そこで茶髪…いや、光の加減では金色にも見える髪を靡かせたウマ娘の少女が乱暴に壁を殴った。歳は未だ15から16程だろう…クラシック又はシニア1年目と言った所だ。彼女はオルフェーヴル、歴史が変わった影響で誕生したゴールドシップの妹(史実では兄)であり八代目(ここではトキノミノルも三冠を達成している)の三冠馬であり、英雄ディープインパクト以来のクラシック三冠を成し遂げた少女である。

 

オルフェーヴルはチームスピカ所属のウマ娘であり、ジャパンカップに挑戦したがリギル所属の最強女王アーモンドアイの手で見事に敗北してしまったのだ。別にオルフェーヴルは弱くない、素質だけならスピカのリーダー(この時代)ゴールドシップ、リーダー代理(ゴルシが過去に行ってるため)の史上初無敗のトリプルティアラを達成したデアリングタクトに匹敵…或いは上回る。だが、経験の差でアーモンドアイに負けてしまったのだ。

 

「オルフェ。落ち着きなさい…全く、貴女は本当に落ち着きがないわね」

 

黒い髪の少女がオルフェーヴルを宥める。彼女はワールドプレミア。ディープインパクトの遅く産まれた末娘であり、前回の天皇賞(春)を勝ったスピカ所属のウマ娘である。因みに歳の離れた姉達が居ており、その歳の離れた姉達は既に成人している…何処のサザエさん一家だ。

 

「ゴルシとドラえもんは…まあ、過去に行っちゃったからね」

 

スピカの良心で優等生、ゴルシの親友であるジャスタウェイというウマ娘がそう言った。ジャスタウェイの父親はアニメに関わる仕事をしている。

 

「ジャスタウェイ…タクトは?」

「ドラミと病院。屈腱炎治してくるって。今年度の有馬記念で、アーモンドアイとガチンコ勝負するっ為だってさ」

 

因みにドラミはドラえもんの妹であり、普段はオルフェーヴルと行動を共にするロボットだ。ドラえもんは青色だが、ドラミちゃんは黄色であるしスペアポケットのデザインもお洒落である。

 

「ディープ伯父さんの最盛期なら…アーモンドアイに勝てるかな?」

 

オルフェーヴルは額縁に納められ、壁に掛けられた1枚の写真を見る。そこにはゴルシやドラえもんは勿論のこと、現代時代のスピカの集合写真が有った。オルフェーヴルとワールドプレミアの伯母であるスペシャルウィークは勿論、祖母メジロマックイーンの姿もある。過去に撮られた物であり、当時のスピカの面々は皆が若い。

 

「余裕でしょ?私のパパは最強なんだから」

 

偉大なる父親を誇り、ワールドプレミアはそう言った。

 

「待てよ?良いこと閃いちまった!!」

 

ニヤリとオルフェーヴルは笑みを浮かべた。

 

「過去から最盛期のパパを連れてくるのはダメよ」

「はは、ちげーよ。若い頃のディープ伯父さんは呼ばないさ…俺が過去に行って、爺ちゃんに鍛えて貰ったら良いんだよ!!」

 

その後、オルフェーヴルはドラミちゃんに怒られたらしい。

 

 

 

 

 

一方の現代。

 

「えー、お前達。既に教頭先生から聞いてると思うが。今月末からチーム対抗戦に俺達も参戦するぞ」

 

月曜日の放課後。新たにメジロアルダンをチームに加え、先月から比べると一気にチームメンバーが潤ってきたチームスピカ。未だトキノミノルは出張から帰ってきていないが、チームスピカのメンバーが規定人数の5人以上と成った為かチームスピカもチーム対抗戦に走れるように成ったのだ。だが、考えて欲しい。我等がチームスピカは見事に短距離を走る事が出来る人物が居ないのだ。

 

「なあ、トレーナー。スピカに短距離出来るヤツは居ないだろ?」

「他の崖っぷちチームも似たような物だけどな」

 

ゴルシの言葉に賛同するようにそう言った。スピカには短距離スプリンターは存在しない。最悪、マイルならミスターシービーに任せる事も出来るしアルダンもスペも出来なくは無いかも知れない。

だが、短距離は先ず無理だ。コーチであるトキノミノルはダートも芝も含め、全ての距離適性があり…その全てで日本記録(内4つ世界記録)を叩き出した。トキノミノルという異次元の例外、ダートは流石に無理だが全距離適性のあるリギルのマルゼンスキー、トキノミノルと同じく全適性を持っているがぶっ飛んだ異次元の強さではないハッピーミークはどんなレースにも出ることが出来る。だが、普通はそうとも行かない。

 

あのアメリカの頂点に君臨した我等が教頭サンデーサイレンスでさえ、長距離は走れない。サンデーサイレンスは現役時代短距離から中距離が強い選手だったのだ。

 

「だが、俺から言わして貰う。今回はスピカ初のチーム戦だ。トキノミノルは出張で居ないし、日本版エクリプス(過去に存在した欧州最強馬。無敗のウマ娘)は出さないでくれって言われるしな」

「いや、トキノミノルさんは全距離対応だからエクリプスさんよりヤバくない?」

 

スピカは自由主義だ。メンバーが潤えば、対抗戦に出る出ないは自由に成ってくるだろう。しかし、出るならば沖野も当然ながら勝ちに行きたい。そこで、沖野はメンバー配置に口を出すようだ。

 

チーム対抗戦は5つの種目で競われる。短距離、マイル、中距離、長距離、ダートの5つだ。この5つでチーム戦を行い、多く勝ったチームの勝利となる。格種目に3人まで出すことが出来るが、同じ選手は複数の種目にエントリーする事は出来ない。

 

何故なら…一時、スピカは短距離サンデーサイレンス、マイル トキノミノル、中距離サンデーサイレンス、長距離トキノミノル、ダート サンデーサイレンスで無双してしまった為だ。これ以降、チーム対抗戦で複数の種目にエントリーは出来なくなった。

 

「そこで…俺が考えた配置がこれだ」

 

沖野はそう告げてホワイトボードをひっくり返す。そこには沖野が事前に書いたスピカのチーム対抗戦の配置表が書かれていたのだ。

 

プランA

 

短距離 未定。

 

マイル シービー。

 

中距離 アルダン、ディープインパクト、スペシャルウィーク。

 

長距離 ゴールドシップ。

 

ダート デジタル。

 

プランB

 

短距離 ゴールドシップ。

 

マイル シービー。

 

中距離 アルダン、スペシャルウィーク

 

長距離 ディープインパクト。

 

ダート デジタル。

 

とプランAとプランBの2つの配置表が書かれていた。

 

「プランAは短距離を走れるメンバーが見付かった場合だな。むしろ、これが現状の最善だ。プランBは短距離を走る事が出来るメンバーが見付からず、現状でチーム対抗戦に挑んだ場合だ……出来ればこれは避けたい」

「せめて、アタシをマイルにしてくれよ!!」

 

プランAは短距離が走ることが出来るメンバーがもし、見付かったらの場合だ。プランAが1番の理想だが、それは厳しい。それにアルダンもマイルを走ることは可能だが、彼女は今年にはクラシックが控えており…皐月賞とダービーの事を考慮しても中距離で経験を積ませた方が良いだろう。スペシャルウィークとディープインパクトは未だ成長途中であり、出来れば負担の大きな長距離には未だ出さない方が懸命だ…だからこそ希望種目の内距離の短い方の中距離となる。

 

だが、プランBはこのままチーム対抗戦に挑んだ場合の緊急プランだ。誰も短距離なんか走れないし、ぶっちゃけやりたくない。アグネスデジタルはダート確定、クラシックに挑むアルダンも中距離確定、この中で1番マイルが強いシービーもマイル決定。デビュー処かレース未経験のスペシャルウィークは中距離、リギルの入団テストで異次元の強さを発揮したディープインパクトは長距離。そして誰もやりたがらない短距離はゴルシに決定である。

 

「やるしか…無いのか」

 

ゴルシは思う。いや、閃いた。

 

「待てよ?ドラえもん!!良いこと思い付いちまった!!アタシをスモールライトで小さくすれば良いんだよ!!」

 

ゴルシをスモールライトで小さくし、縮んだ身長なら短距離を得意な長距離として走ることが出来る。確かにそれならゴルシは短距離を長距離として走ることが出来るだろう。だが、考えて欲しい。そもそも短距離と長距離はどう考えても距離の関係上、短距離の方がタイムは短い。

 

「ゴルシちゃん。それでやってもメートル単位の距離は同じだし、小さくなったぶん歩幅の関係で絶対にゴルシちゃんは負けちゃうよ」

「ダメかー!!」

 

妙案だと思ったゴルシ。しかし、考えて欲しい。体感的に短距離を長距離として走ろうとすれば、ゴルシは身長を半分以下まで縮める必要があるのだ。半分ほどまで縮めれば、短距離を最低でも長距離から中距離として走れるだろう。だが、相手と走るメートルは変わらない。つまり、相手には大幅なハンデを与えて走ることに成るのでゴルシはどう足掻いても絶対に負けるのだ。

長距離ステイヤーはスピードでは絶対に、短距離スプリンターには勝てない。短距離スプリンターは距離の関係で、スタミナの後先を考えずに全力で飛ばすことが出来る。まあ、2年後に天皇賞(春)の後半を短距離スプリンターさえも上回る速度(具体的には800mの世界記録を上回る)で世界記録を叩き出すヤバい選手が現れるが…それは例外中の例外だ。

 

『リトルココンがレコードタイムを上回るタイム!!素晴らしい!!………だが、その5馬身先を行く化物が居た、しかも1秒出遅れて』

『……彼に勝てるウマ娘は居るんでしょうか?マジで』

 

 

 

「えー、でもデジちゃんはウマ娘ちゃんが多い競技に出たいな~?」

 

とアグネスデジタルがそう告げる。確かにアグネスデジタルも種目を選ぶ自由は本来なら有るが、残念だが今のスピカにはダートを走れる人材が居ないためダートに出て貰うしかない。

 

「デジタル。お前がダートに出てくれたら、この写真をやるぜ?」

 

ゴルシはそう言うと、1枚の写真を取り出した。その写真は風呂上がりなのか?上半身裸でズボンを履いたディープインパクトが牛乳を飲みながらベッドに腰掛けていた。細身ながら鍛えられた筋肉が際立っており、腹筋は見事にシックスパックに割れている。

 

「アタシが隠し撮りした逸品だ。どうだ?」

「ダートで、でましゅ!!」

 

デジタル…鼻血を噴き出しながら快諾。アグネスデジタルのやる気が絶好調に成った。全ステータスが上昇した。

 

「所でトレーナー君。相手のチームは分かるかね?」

 

アグネスタキオンが沖野に問う。対抗戦が始まるなら、相手のチームも既に判明している筈だ。

 

「ああ、チームの名前はベガ。中堅のチームで、順位は20位前後って所だ。今のスピカより格上で、ランクはD。

中でも注意すべきは…ジュニアCのエースと言えるサッカーボーイだな」

 

チームベガ。スピカと違い、全ての種目で選手が複数人揃っており、間違いなくスピカは苦しい戦いを強いられる事は間違いない。

 

「そうですか…サッカーボーイさんの」

 

アルダンはサッカーボーイを知っている。サッカーボーイはアルダンのクラスメイトであり、その強さはジュニアCクラス最強クラスであり、学年では1番強いとも言われている。なによりアルダンと違い既にデビューしており、サッカーボーイは3種類の種目で勝っていることだろう。短距離、マイル、最も得意なのは中距離。この3つを走る事が可能であり、長距離は未知数だが現時点ではクラシック三冠を取れるのでは?と注目されている。

 

「サッカーボーイだけじゃない。スペと同学年であるクイーンベレー、長距離では三冠馬ナリタブライアンの姉であるビワハヤヒデと言った優秀なウマ娘も居る」

 

間違いなく現時点でのスピカよりも格上。シービーの調子が本来の物に戻れば、間違いなくシービーは勝てるだろう。だが、未だデビューしていないアルダン、スペ、ディープは負ける可能性も高い。そして短距離メンバーが揃わず、ゴルシが短距離を走ることに成れば間違いなく敗北が決まるのだ。

 

「それに…ベガはスピカと違ってメンバーが豊富だ。入学ほやほやのジュニアAは先ず使ってこないし、全員が多少は経験を積んだジュニアB以降の選手を使ってくる。総合力としては明らかに不公平だ。まあ、完全な平等なんて此の世には存在しないしな…仕方がないか」

 

完全な平等なんて最初から有るわけがない。貧乏な産まれ、金持ちに産まれた、両親に恵まれた、両親に恵まれなかった、コーチやトレーナーに恵まれた、トレーナーに恵まれなかった、怪我をした、同世代が強すぎた、様々な不平等は此の世に存在する。

 

「不平等か…ごめん、ゴルシちゃん、皆…僕、ちょっと出掛けてくる」

 

不平等。その言葉を聞いて思う事が有ったのか、ドラえもんはプレハブ小屋を飛び出して行った。

 

 

 

 

 

「さてと…これからどうしようかな?」

 

栗東寮の寮長室。そこのベッドに寝転がり、フジキセキはぼんやりと天井を眺めていた。リハビリをかれこれ1年ほど続けて来たが、効果は微塵も現れない。杖なしで歩けるように成ったとは言え、2度と走ることは出来ない。これまでの活躍とリギルに所属していた事から、かつてのアグネスタキオンと違って退学勧告は来ないが…トレセン学園の選手として居る意味は有るのだろうか?最近はそればかり考えていた。

 

リギルは自主的に辞めた。自分はもうリギルに居る意味は無いのだから。

 

これからの事を考えるフジキセキ。選手生命は最早、絶望的であり、今後の事をどうしようかと考える。母親と同じ女優を今からでも目指してみようかと考える。

 

「フジキセキさん…居る?」

 

ドアの外から最近に成って友達と成った猫がたロボットの声がする。何事かと思って扉を開けると、そこにはドラえもんが立っていた。

 

「やあ、ドラちゃん」

「フジキセキさん…僕、物凄く悩んでいるんだ」

 

なにはともあれ、フジキセキはドラえもんを部屋の中に招いた。

 

「フジキセキさん。僕ね、未来からやって来たんだ。未来の道具を使えば、どんな怪我も治せるんだ…勿論、病気でもね。でも……この時代でそれを使って良いのかなって」

 

ドラえもんは悩んでいる。ドラえもんはフジキセキを助けたい。でもそれは余りにも不平等だ。フジキセキと同じ症状でマトモに走れず、ターフをトレセン学園を去ったウマ娘は多く居る。有名処を上げるとすればブラックタイドと言った選手だろう。彼女達は未だ走りたい筈だ、走りたかった筈だ、でも走るのを諦めるをえなかった。

 

「ドラちゃんはさ……どうしたいんだい?」

 

フジキセキはそう言う。

 

「僕はさ…君を助けたいんだ。でも、そんなの…あんまりにも不平等だよね」

「そうだね。でもさ、ドラちゃん。自分が何をしたいのかだよ」

 

フジキセキはそう言うと、ドラえもんの頭を撫でる。

 

「悩んだら自分の気持ちを…思いを尊重しな。悩んでなにもしなかったら、きっと後悔しか残らないよ」

 

フジキセキの言葉を聞き、ドラえもんは四次元ポケットに腕を突っ込んだ。

 

「ありがとう…フジキセキさん。そして御願い…ゴルシちゃん達を助けて」

 

 

 

 

 

 

 

一方のスピカ。

 

スピカの面々は部室の前で準備体操を行っていたが、彼女達の目の前に来客がやって来たのだ。

 

「よぉ!!アルダン、お前チームに入ったんだってな」

 

チームベガに所属する一部のメンバーである。今年クラシックに挑戦し、フードを被った前髪が特徴的なウマ娘 サッカーボーイ。白髪で眼鏡を掛けた美女 ベガのリーダーであるビワハヤヒデ。ジュニアBであり、期待の新人 グリーンベレーの3人だった。

 

「サッカーボーイ。今日、私達は宣戦布告では有りません。挨拶ですよ」

「分かってるよ、ハヤヒデ。まあ、良いさ……勝つのは私達だ。スピカで強いのはミスターシービーだけだからな、そのシービーも()()()()()()()()だ」

 

ミスターシービーは三冠馬。しかし、現在はスランプに陥り、連敗中。世間では終わったウマと言われており、サッカーボーイの言葉に反論したかったが事実だから反論出来なかった。

ミスターシービー以外はデビューしていない。ゴルシはデビューを未来でしてるが、この時代では無名も良いところ。

 

「アルダン。お前、対抗戦は何ででるんだ?」

「クラシックを想定し、中距離です」

「だったら、格の違いを見せてやるよ」

 

格の違いを見せてやるよ。つまり、サッカーボーイは対抗戦では中距離を走ると言うことだ。既にサッカーボーイは短距離、中距離、マイルをレースで勝っており自信はたっぷりだ。

 

その時だった。ザッザッ…と地を蹴る走る音が響いた。

 

そして…アルダンとサッカーボーイの間に、1人のウマ娘が走って割り込んだ。そのウマ娘は……

 

「ふぇ!?フジキセキさん!?なんで、走れるの!?えっ!?」

 

そのウマ娘を見たディープインパクトが驚いた。当然だ、走って割り込んだウマ娘は2度と走れないと言われて…最強チームを去ったフジキセキだったのだから。

 

「やっほー、ディープ。元気そうで良かったよ。リギル時代の君はいつもペコペコだったからね。

そんで君がスペシャルウィークだね?ディープから話は聞いてたよ、ディープ位食べるお姉ちゃんだってね」

「えっ?あっはい」

 

フジキセキはディープとスペにそう言うと、サッカーボーイに視線を移す。

 

「成るほどね…君は中距離に出るのか。短距離に出るなら、私の丁度良いリハビリに成ると思ったんだけどな?」

「どういう事でしょうか?」

 

ビワハヤヒデがその場に居る全員の疑問を代弁する。すると、フジキセキは1枚の紙を取り出した。それは入部届けであり、名前の欄にはフジキセキの名前、入るチームはスピカの3文字が有ったのだ。

 

「たった今から私はスピカのメンバーだからね。専門はマイルだけど、短距離でも中距離でも走れる。以後、宜しくね」

「「「「えぇぇぇえーー!?」」」」

 

フジキセキ。スピカに電撃入部。

 

 

 

 

「ハナさん。お別れを言いに来ました」

 

フジキセキはリギルのトレーナーである東条の所に向かい、別れを告げた。脚はドラえもんのお陰で治った。しかし、彼女はリギルではなくスピカをチームに選んだ。リギルからすれば裏切り行為だが、東条の表情は何処か嬉しそうだ。

 

「そう。結局こうなったわね」

 

東条はそう告げ、瞳を1度閉じて開ける。

 

「もし、貴女がスピカ所属なら…昨年度の三冠馬はブライアンじゃなくて間違いなく貴女だったわね。ディープは…向こうで元気だったかしら?」

 

東条は未だにディープインパクトの事を気に掛けていた。東条はディープインパクト程の素質を持った選手を見たことがなかった。外見では明らかに素質は無いのは確か。しかし、いざ走り出せば異次元の肺活量から繰り出されるスタミナ、そのスタミナとインナーマッスルが生む反発力が可能とする異次元のスピード。

 

「はい!!元気でしたよ。夕飯ももりもり食べてましたし」

「あの子をお願いね。あと沖野にも伝えて。ディープインパクトを()()()()()()いえ…()()()()に育てなかったら殴るって」

 

もし、トキノミノルを越えるウマが居るとすれば、それは間違いなくディープインパクトだろう。

 

彼女にとって教え子は娘や息子同然。息子は食事管理が合わず、抜けてしまったがそれでも変わらない。

 

「対抗戦…立場上、応援できないけど。応援してるわ」

 

東条はそう告げてフジキセキの前から去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「教頭!!お願いや!!ウチを鍛えてや!!ダートに転向しても活躍できへんし、チームも追い出されたんや!!ウチもシニアやし…どうすれば良いんや!!」

 

一方の教頭室。そこでは上手く活躍できず、ダートにもコンバートしたが活躍できず、シニアに進学したのは良いが低迷するウマ娘がサンデーサイレンスに助けを求めてきた。

 

そのウマ娘はタマモクロス。実家はド貧乏であり、出走手当てと奨学金で学費を何とかしている今年シニアクラスに進学したばかりのウマ娘だ。

タマモクロスは昨年度の成績はダメダメも良いところ。ダートにも転向したが、結果は変わらず。なんやかんやあって今のチームを辞める羽目に成ってしまい…正に路頭に迷っている所だったのだ。

 

ぶっちゃけタマモクロスは体格には恵まれていない。身長も成長期で早生まれなディープインパクトよりも低く、体格のアドバンテージは望まれていなかった。

 

「オカンと約束して上京して来たんや!!日本一のウマ娘に成るために!!だから…御願いや!!」

 

タマモクロスは両膝を地面につき、更に両手も地面に着けた。所謂、土下座と呼ばれる行動を行おうとした。

 

「頭を上げろ。日本一のウマ娘に成りたいと言ったな?」

「成りたいんや!!御願いや!!オカンとの約束なんや」

 

『人種、男女、肌の色なんて関係ない!!アーサー、いや親父!!俺様は必ず、アメリカの頂点に立ってやる!!

アーサー・ストローとその妻の決断が…男のウマ娘を引き取った事が間違いじゃなかったって事を全世界に知らしめてやる!!』

 

サンデーサイレンスの脳裏に子供の頃の記憶が甦る。少年期、サンデーサイレンスは養父と約束した。アメリカ一のウマ娘に成ると誓った過去の事だ。

 

「分かった…タマモクロス。脚質は?」

「今まで色々やってきたんやけど…一応、追い込みが良いと思うんや」

 

追い込み。何の偶然か。サンデーサイレンスの得意とした脚質は世間では逃げと言われている。だが、サンデーサイレンス本人からすれば半分正解半分間違いだ。サンデーサイレンスの脚質は追い込み。かつて…サンデーサイレンスの逃げ対策をしてきたイージゴア含む数名を追い込みで圧倒した過去さえも有るのだから。

 

「良いだろう。追い込みで良いなら、俺様が教えてやる」

 

芦毛の稲妻が覚醒するまでもう少し。




次回……2017年度のスピカが完成する!?

サンデー「おい、俺の新弟子見てくれないか?」
タマモクロス「このチームがウチの新しいチームかいな?」

トキノミノル「ただいまですね。此方、私が笠松からスカウトした」
???「オグリキャップだ」


そして後にスピカは語られる。スピカの追い込みはマジでヤヴァイ連中しか居ないと(タマモクロス、ゴルシ、そしてディープインパクト)

???「うららーん!!えっへへ、私も転入するぞ!!」

トキノミノルから中央の話を聞いて、ど根性娘の転入健闘も始まる!?









サンデー「何時から俺の息子が1人だけだと思った?」
ステゴ「バブー」

この世界にはステゴの因子を持った存在が2人居る。キンイロリョテイとステイゴールドの2人だ。キンイロリョテイは女だが、ステゴは男…果たしてステゴはウマ娘なのか!?それとも人間なのか!?


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完成のスピカ

2017年度のスピカ、一先ず完成。


夜8時ほど、トレセン学園は門限が存在するが1人のウマ娘の少女が1人の男の指導の元で走っていた。走っているウマ娘はタマモクロス、実家がド貧乏で日本一のウマ娘に成るために教頭サンデーサイレンスに弟子入りした崖っぷちの生徒だ。

 

門限に関しては問題ない。サンデーサイレンスが事前にフジキセキに言ってあるから問題はない。なので、タマモクロスは時間を気にせず走っているのだ。しかし、この時間なのも訳がある。それはサンデーサイレンスが物理的にタマモクロスを見ることが出来るのが、この時間帯なのだ。只でさえサンデーサイレンスは全教員と全トレーナーを束ねる教頭であり忙しい。その結果、この時間なのだ。

 

「おっ!良い感じだな。追い込みのコツも理解してきたな」

 

タマモクロスのタイムを計測し、笑みを浮かべているサンデーサイレンス。こうしてトレーナーのような事をするのは何時以来だろうか?とサンデーサイレンスは思う。

トキノミノルの在学時代、サンデーサイレンスがトレーナーだった頃はトキノミノルしかスピカの所属ウマ娘が居なかった。その事もあり、サンデーサイレンスが一対一でウマ娘を指導するのは愛娘スペシャルウィークと愛息子ディープインパクト以来と成るだろう。

 

「教頭!!どや?」

「ああ、大分良くなった。これならもう大丈夫だろう。明日、俺様のオススメのチームを紹介してやろう」

 

サンデーサイレンスがチームを紹介してくれる。だが、タマモクロスは不安が有った。素質がなく、元居たチームを追い出されてしまった自分が活躍できるチームが有るのだろうかと?

 

「教頭…ウチ」

「安心しろ。そのチームは絶対にお前を見捨てない。大体な、素質が無いからって1度チームに入れた子供を追い出すトレーナーの方が素質が無いんだよ」

 

サンデーサイレンスの言葉は最もだ。子供達…ウマ娘を見捨てるトレーナーの方が問題である。トレーナーとウマ娘は二人三脚で共に成長する。トレーナーは子供として迎え入れたウマ娘を絶対に見捨ててはいけない。

勿論、合う合わないや諸事情でチームを自分から辞めたウマ娘は居るが有能なトレーナーは絶対に自分からウマ娘を追い出さない。これはサンデーサイレンス、沖野&トキノミノル、東条が今まで証明してきた。

 

「タマモクロス。そのチームで、お前の古巣をあっと驚かそうぜ?」

 

サンデーサイレンスの言葉を受けて、徐々に自信の着いてきたタマモクロスは力強く頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわ…ここ凄いな。ウチの想像の五億倍凄いの…想像以上や、何処から突っ込んだらええねん」

 

翌日。タマモクロスはサンデーサイレンスから紹介されたチーム、スピカにやって来た。チームスピカと言えば数少ない自由主義であり三冠馬ミスターシービーが所属している事で有名だ。

だが、今ではミスターシービーだけではない。教頭サンデーサイレンスの長女スペシャルウィーク。スペシャルウィークの弟で元リギル所属の超新星ディープインパクト。マッドサイエンティストのアグネスタキオン。色々とヤヴァイ奴 アグネスデジタル。メジロ家の令嬢メジロアルダン。そして元リギルの復活したマルチプレイヤー フジキセキが所属している所だ。

 

「ぐぅふふ…やはりトレセン学園は天国ですん!!」

 

ウマ娘を見て興奮するアグネスデジタル。その両手にはペンライトが握られており、ジャージ姿ではなく『I Loveウマ娘ちゃん』と書かれたTシャツを着ている。寒くないのだろうか?

 

「ふふふ…実験は成功だ!!ハッハハハハ!!」

 

日夜、走らず可笑しな実験ばかりを繰り返すアグネスタキオン。だが、こんな彼女だが走ること以外の功績は素晴らしい。彼女は様々な治療法をドラえもんの秘密道具を参考に編みだし、多くのウマ娘を治療している。中には選手生命が危機的な選手も含まれており、現在は知育菓子を販売する製薬会社と個人契約しているとか。

 

「結構なお手前だな…」

 

1人で将棋を行うゴールドシップ。御存じ、チームスピカのハジケリスト。

 

もう、何処から突っ込んだら良いのだろうか?タマモクロスはスピカの面々を見て唖然としてしまう。真面目に練習してるのはミスターシービー、フジキセキ、ディープインパクトとスペシャルウィークの姉弟、アルダン位しかいない。

 

「やあ、僕ドラえもんです。君がタマモクロスちゃん?」

 

ふと、声をかけられたタマモクロス。その声の方を向くと、最近話題に成っていた青色の厩務員を務めるロボット ドラえもんが立っていた。

 

「せやで。ウチがタマモクロスや!!アンタ、ドラえもんやろ?有名人やん」

「宜しくね。僕はスピカのマネージャーもしてるんだ」

 

練習しているシービー達以外ではマトモな人物、ドラえもんと話せた為かタマモクロスの緊張は解れた。のだが…

 

「トレーナーさん!サンデーさんが言っていたタマモクロスちゃん来たよ」

「おう、待ってくれ。今行くぞ」

 

そのスピカのトレーナーは…

 

「俺がスピカのトレーナーである沖野だ。我がチームはサンデーサイレンスの指導方針である自由主義の所でな、他のチームと比べたらのびのびとやっている。だが、分からない事や相談事が有れば聞いてくれ。力に成るぞ!!」

 

どういう訳か蛍光灯のように眩い光を全身から放っていた。本当に人間なのか疑わしい程に光輝いて居たのだ。

 

「トレーナーが光っとる!?どないなっとんや!!」

「タキオンに変な薬を飲まされてな。気が付いたらこの有り様さ」

 

身体は光り輝いてるが、それ以外は特に無いのだろう。沖野はこの光り輝く現実を受け入れ、そのままトレーナー業務を行うしか無かったようだ。光が眩しすぎて素顔は分からず、肌が光ってるのか衣類は光っていない。しかし、光のお陰かUMAや新種のエイリアンと間違えられても仕方がない。とは言え、声と服装で沖野と判断できるが仕方がないだろう。

 

「まあ、時間が経ったら戻るだろう。前に飲まされた育毛剤でアフロに成ったときもそうだったしな!

教頭から聞いてると思うが、我がスピカは数少ない自由主義さ。宜しくな、タマモクロス」

 

ピカー!!と輝く沖野トレーナー。言っている事はマトモだが、外見が一番突っ込み処しか無かった。だが、沖野が輝いてる事に関してタマモクロスは突っ込んでしまった。光り輝くこと以外で沖野に突っ込むポイントが見付からない。

 

こうして…タマモクロスはスピカのメンバーに成ったのだった。

 

 

 

 

一方その頃のトレセン学園の正門。

 

「此処に帰ってくるのも1ヶ月ぶりですね」

 

現時点で世界最強のウマ娘であるトキノミノル。笠松と高知からの出張から戻る。ぶっちゃけ、トキノミノルは心配だった。コミュ力が不足している沖野が、慣れているシービー以外の担当ウマ娘と上手くやれているのか、本当に心配だった。だが、スマホに送られてくるメッセージを見れば上手くやれているのだろう。

 

『やっほー!!トキノミノルの姉ちゃん。タキオンとデジタルの次はアルダンって子が入ったぜ!!』

 

なお、メッセージを送るのは我らがゴールドシップだ。

 

『次はさ、あのフジキセキが入ったんだよ!!』

 

自分が高校生だった頃と違い、加速するようにスピカに選手が集まっていく。トキノミノルから始まり、管理主義が合わなかったシービーがスピカに入った。シービーは三冠馬と成ったが、長期のスランプに陥り…スピカは崖っぷちのチームに成ってしまった。

でも、14年前のあの時にトキノミノルとサンデーサイレンス…そしてスピカを救ったドラえもんとゴールドシップがスピカに入ってきてくれた。それから運命は一気に動き出したと言って良いだろう。ディープ、スペ、タキオン、デジタル、アルダン、そしてフジキセキにタマモクロス。ゴールドシップが紡ぎ出した運命がスピカをこんなにも豊かで鮮やかなチームにしてくれた。

 

「コーチ…此処が中央のトレセン学園なのか?」

 

そしてそのスピカには新しい風が地方から入ってくる。それも2つだ。

 

「うららーん!!中央楽しみだな~」

「ウララさんは先ず、編入試験を受けてからですね」

 

トキノミノルは出張先から2人のウマ娘を連れてきたのだ。1人はジュニアCクラスの灰色の髪をした少女であり、もう1人はジュニアAクラスのピンク色の髪をしたタマモクロス位小柄の少女だ。

 

灰色の髪をした少女は笠松トレセンからトキノミノルがヘッドハンティングしたオグリキャップ。オグリキャップは素質はかなり高いが、家がタマモクロスと同じくド貧乏であり実家にはテレビさえもない。笠松の地方トレセンに通ってたが、トキノミノルが素質を見抜いてヘッドハンティングしたのだ。因みに明日からトレセン学園の生徒であり、たった今からスピカに入部だ。

 

ピンク色の髪の毛をした少女はハルウララ。彼女は高知の地方トレセンに在籍しており…現在も地方トレセンに籍だけは存在している。しかし、トキノミノルから中央ことトレセン学園の話を聞いて行きたくなり…編入試験を受けることにしたのだ。しかし、ハルウララはオグリキャップと違って選手としての素質はかなり低い…その上、現在の強さもへっぽこ。地方トレセンのレベルから考えてもへっぽこなのだ。ゆえに、トキノミノルがオグリをスカウトした推薦編入は出来ず…普通の編入試験を受けるしかない。

 

「さあ、2人とも行きますよ」

 

そしてトキノミノルはオグリとウララを連れて正門を潜る。勿論、向かう場所はスピカの部室でスピカのメンバーに2人を紹介するためだ。

 

 

 

 

 

「お帰り!!高知と笠松はどうだった?」

 

出迎えた沖野は光り輝いていた。

 

「……中央のトレーナーは光るんだな」

「いや、光らんやろ!!どっから見てもタキオンのお薬やんけ!!」

 

そしてタマモクロス。スピカの突っ込み係に成るのであった。




オグリとタマモクロスが新たに入り…対抗戦へ向けて練習を重ねるスピカ。

だが、ウララの戦いは未だ始まっていない。

ゴルシ「お前ら!!ウララの為に勉強おしえっぞ!」

ハルウララ…編入試験への勉強が始まる!!

だが……

ディープ「2000m走ったら筆記テスト免除に成ったんで」
スペちゃん「私…座学は自信無くて…」

スピカは学力の偏りが激しかった!?どうなるの!?

ドラえもん「英語なら翻訳こんにゃく食べたら?」
ゴルシ「それだ!!」

まさかの秘密道具頼り!?


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頑張れウララ!!トレセン転入!!

ゴルシ「ばれなきゃ犯罪じゃ無いんだよ!!」


トレセン学園…地方のトレセン学園こと地方トレセンではなく、中央のトレセン学園に入学できるのは一部のエリートだけだった。だけだった、そう過去形だ。従来までは高い学費に長い年月で金の亡者と成り果てた理事会のお陰か、御立派な家柄出身の名家のご令嬢や余程素質の高いウマ娘しか入学が許されなかった。中央に入学できればそれだけでエリートだったと言えるだろう。しかし、この男がその一例を見事に壊してくれた。そう、サンデーサイレンスである。

 

『なあ、この入学制度の仕組み…可笑しくね?勿論、転入もな』

 

家柄だけで優遇されては大真面目に勉強して入学する子供達が余りにも哀れである。転入もトレセン学園のトレーナー或いは生徒会に所属する生徒の権限でのみ、地方から転入を受け付けるという有り様だった。そこでサンデーサイレンスは教頭の座に着き、真っ先に革命を起こした。これには当時の理事長ノーザンテースト、リギルのトレーナーである東条、サンデーの教え子で世界最強馬トキノミノルも協力。その結果、現在の入学カリキュラムと転入システムが産まれたと言えるだろう。とは言え、金の亡者と化した理事会は全員追い出せず…未だ名家が優遇される形では有るのだが。

 

『取りあえず、反対する理事会のジジイ共は尻から手を突っ込んで奥歯をガタガタと言わし、その後にアメリカ仕込みのCQCをお見舞いしてやる』

『サンデーサイレンス。私が許可する、やりなさい!!』

『『ノーザン理事長にサンデー教頭!?』』

 

勿論、サンデーサイレンスによる奥歯ガタガタ言わす事件は未遂に終わった。だが、当時の理事長やサンデーサイレンスと愉快な仲間の手でトレセン学園の入学カリキュラムと転入カリキュラムが見直されたと言っても良いだろう。全ての子供達には平等にチャンスがあり、挑戦する資格があるのだから。

 

大きく変わったのは転入カリキュラムだろう。サンデーサイレンスと先代理事長ノーザンテーストが革命を起こす前は、中央のトレーナー達からのスカウトを受けての推薦転入しか出来なかった。しかし、今は違うのだ。新たに追加された、推薦を受けてなくても転入出来るように成ったのである。

 

「えー、皆さんは御存知なく馴染みが無いかも知れません。トレセン学園には2つの方法で転入できます。

1つ、オグリキャップさんのように中央のトレーナー或いは教員のスカウトを受けて推薦転入する方法です」

 

スピカの部室であるプレハブ小屋。部員が一気に増えた為に、人口密度が上昇している。だが、そこではスピカのメンバー達がトキノミノルの元で簡単な講義を受けていた。しかし、スピカのメンバーに混じって転入試験を控えたハルウララも講義に参加していた。

推薦転入。これは従来から有った転入方法であり、地方で実績のある優秀なウマ娘をトレセン学園のトレーナーや教員がスカウトしてトレセン学園に転入させるやり方だ。オグリキャップはこれで転入しており、試験は受けていない。

 

「もう1つはサンデー先生が教頭に成ってから出来ました。これは編入願書をトレセン学園に提出し、受け付けを行ってから筆記、実技、面接の3つのテストを受けてその合計点で合格ラインを越えていれば編入出来る制度です。

これなら地方から中央に移りたいが、スカウトの目に止まらなかった子供達も編入出来ます」

 

もう1つはサンデーサイレンス達が作った転入試験制度。

筆記、実技、面接。この3つの試験を行い、合計点が合格ラインを越えていれば転入出来る方法だ。

ジュニアAに編入する予定のハルウララの筆記の難しさは入学試験と同じぐらいであり、共通の問題もあるだろう。だが、ハルウララは地方での基準でも走る力はへっぽこであり実技の点数は現時点で絶望的。合格するためには筆記と面接で点数を稼ぐしか無いのだから。

 

「トキノミノルの姉ちゃん。ウララは転入出来そうなのか?」

「そうですね…ぶっちゃけると厳しいですね」

 

だが、ぶっちゃけるとハルウララの転入は厳しい。この合格ラインだが、各科目100点づつだとすると合計180点は取らなければ成らない。1科目60点取れば合格だが、ウララは走る力は地方でもへっぽこレベル、学力はトキノミノルがウララの担任から聞いた話では下の中らしい。面接が奇跡的に良くても、実技と筆記の点数が足を引っ張りすぎて落ちてしまう可能性が高いのだ。

 

「転入試験は合格制限は無いので、その気に成れば志望者は全員受かります。ですがその逆も然り、全員落ちる事も有るんです」

 

しかし必ず誰かが受かる訳ではない。全員合格ラインを突破して合格する時も有れば、落ちる時もある。

 

「だったら、やるしかないな!!お前ら!!」

 

ゴルシが仲間達にそう言う。やらなければハルウララは落ちてしまい、高知県にトンボ返りしなければ成らない。彼女は中央で学生ライフをエンジョイするためにも、必ずやテストに合格するしかないのだ。

 

「ディープ!!お前はウララと同い年だし、入試の試験も覚えてるだろ?」

「2000m走ったら、実技試験免除されたので分からないです」

「なんつータイム出したんや……」

 

ゴルシはウララと同い年であり、少し前に中学入試を経験したディープインパクトに問う。だが、残念な事にディープインパクトはその肉体的スペックが可笑しすぎたのか、2000mを走る実技試験だけで合格を決めてしまい筆記試験は免除と成ってしまった。つまり、ディープは実技試験の成績が異次元過ぎて実技だけで合格してしまったのだ。因みにディープインパクトは入試の際、ラスト400はマイルの日本記録の400ラップを上回っていたとか。

 

「デジタル!!お前は!?」

 

ディープは筆記試験免除だとしても、同じ学年のデジタルは間違いなく筆記試験を受けている筈だ。筆記試験を行った日からそんなに時間は経っていない筈なので、ゴルシはアグネスデジタルにも確認を行う。しかし…

 

「デジちゃん一夜漬けだから分からない」

「一夜漬けってマジかいな!?どうなってんや!?」

 

突っ込み係りタマモクロスの叫びが響く。

 

「スペ!!」

「ゴールドシップさん。私も筆記は苦手で…実技でカバーして合格したんです」

 

そしてスペシャルウィークも実技でカバーし、入学できたのだ。つまり、スペシャルウィークもウララに勉強を教えられる自信が無いと言うことだ。

 

「オグリは……推薦転入か。アルダンは?」

「私は家柄入学でしたので、試験を受けて無いんですの」

「家柄入学チート過ぎやろ!!ウチなんか、奨学金の為に意地でも筆記試験上位にならなあかんかったのに!!」

 

アルダンは家柄入学。つまり、名家のお嬢様である彼女は筆記試験は勿論のこと実技試験も受けずに、メジロ家の恩恵で見事に合格したのだ。

因みにタマモクロスは奨学金(無利子)をゲットするために、維持でも筆記試験のトップ10に入る必要があり、もう勉強してなんとか奨学金の権利をゲットしたのだ。

 

「私は普通に成績優秀だし、タキオンは座学では学年トップだよ」

「ふっ、専門は理系だがね。なに、勉強の事は任せ給え」

 

だが、タマモクロスの他に勉強出来る人材は居た。それはフジキセキ、そして座学学年トップである我等がアグネスタキオンである。む?では我等がスピカの現リーダーであるミスターシービーはどうなのかと言うと…

 

「今さらだけど、私は…座学は自信なくてね」

 

スペちゃんと同じく、座学には自信がなく実技よりの生徒であった。

 

「仕方がない!!勉強はアタシ達とドラえもんで見る。スペ、ディープ、アルダン、そしてシービーはオグリを連れて買い出しに行ってくれ。勉強には甘いものが必要だからな!!」

 

だが、ハルウララには時間がない。実技を鍛えるにしても、今からでは間に合わない。ならば、筆記試験の点数を限界まで引き上げるしかないのだ。

 

 

「ウララ。此処は分かるかい?」

「うーん…どうだろう」

 

だが、此処でウララに問題が発生する。ウララが受ける編入試験はウララの学年の事も有ってか、小学校で習う事をしっかりと理解できていれば問題はない内容なのだが…それでもウララには厳しかったのか、ウララには分からない問題が幾つか存在していたのだ。

 

「読み書きは問題ないけど、読めるけど書かれん漢字もあるな。こりゃ、キツいで…」

「参ったね…数学は方程式さえ覚えれば後は簡単なんだが」

 

数学もダメ、国語の漢字もダメ、英語もダメ、暗記ばっかりの社会や理科もダメ。五教科壊滅の状況、正に大ピンチだ。

 

だが、この2人は違った。それはゴールドシップとドラえもんの未来からやって来たコンビである。

 

「そうだ、ドラえもん!!暗記パンだよ、暗記パン!!コピー用紙に細かくびっしりと、パソコンを使って小さな文字を書いてよ。それを使えばウララでも一時的に物を一気に暗記できる」

「あっ、その手が有ったね!この時代じゃ秘密道具を使っても不正じゃないから、問題ないね!!」

「「「暗記パン?」」」

 

暗記パンとは未来にある秘密道具だ。これを使えば、一時的とは言え物事を瞬時に暗記できるのだ。暗記パンは一見、唯の食パンだ。しかし、暗記パンをノートや教科書に押し付けると暗記パンに文字が写る。その文字が写った状態の暗記パンを食べれば、暗記パンが消化されて大便として身体の外に排出されるまで写し取った文字を全て暗記できるのだ。

文字の大きさは関係無く、小さな文字をA4のコピー用紙にびっしりと書いて暗記パンで暗記すれば瞬時に様々な事を把握できるのである。

 

「なるほどね。それに今ではパソコンを使えば、マイクロサイズの文字も印刷できる。A4用紙いっぱいに過去問の答案や、英語の例文、数学の公式、理科や社会の答案も必須漢字も書き込む事は出来る。しかし、暗記は出来てもリスニングはどうするのかな?」

 

確かに暗記パンが有ればあらゆる事を暗記できる。だが、スピカの頭脳とも言えるタキオンがドラえもんとゴルシに問う。今の御時世は小学生でも英語の授業が行われ、ジュニアクラスの入試にも英語が使われて…当然の如くリスニングテストも行われる。暗記パンで暗記は出来ても、リスニングで点数を取れるのかは分からない。

 

「ふっふふ、その点は問題ないぜ!!ドラえもん!!」

「翻訳こんにゃく!!」

 

ドラえもんは四次元ポケットからこんにゃくを取り出した。それは翻訳こんにゃく、言葉が分からなくても相手の言葉が理解できるようになり、文字も普通に読めるように成るのだ。

 

「更にタイムテレビ!!これは過去の映像も映せるよ!!」

「サンデーのおっさんの現役時代の映像を見ながら、翻訳こんにゃくを食べれば英語もネイティブのようにマスターだ!!」

 

タイムテレビ。これは過去も未来の映像をテレビとして映すことが出来るテレビだ。これを使えば未来のオリンピックは勿論のこと、過去の伝説のウマ娘の活躍から、恐竜の映像まで見れるのである。

 

「さあ、行くぜ!!」

 

ゴルシはタイムテレビを操作し、サンデーサイレンスの若き頃を映す。英語がタイムテレビから流れた瞬間に、全員で翻訳こんにゃくを食べる。すると、英語が母国語である日本語のように聞こえ、映る英語も日本語のように理解できるように成った。だが……

 

『帰れ!!サンデーサイレンス!!』

 

『誰もお前の勝利なんて、望んでなかったんだよ!!』

 

『イージゴアが三冠馬になる筈だったのに…なんでお前が!!』

 

タイムテレビに映る、ディープインパクト瓜二つのサンデーサイレンスはケンタッキーダービーを制覇したが…多くの観客や報道陣から罵声を浴びさせられていた。

 

「なっ…なんなんだよ…これ……」

 

アメリカの頂点に立ったのに、浴びさせられる罵声。勝っても勝っても、サンデーサイレンスの評価は上がらない。サンデーサイレンスは現役時代、評価が低かった事も有名である(史実通り)。

 

だが、それでもサンデーサイレンスの事を応援してくれる人々は居たのだ。

 

『凄いなサンデー!!お前は私の自慢の息子だよ!!』

『どうだ?アーサー、宣言通り俺様は勝ったぜ?』

 

サンデーサイレンスの養父アーサー・ストロー、その妻。そしてサンデーサイレンスの先輩であるグッバイヘイローだけだった。

 

 

 

「おっさんの過去が想像以上に悲惨だった件。勝っても勝ってもファン2人ってえっ?」

 

だが、翻訳こんにゃくとサンデーサイレンスの過去のお陰でハルウララ…序でにゴルシ達は英語をマスターしたのだった。

 

 

 

 

「ハルウララ。筆記試験100点。実技20点。面接70点。合計点数190点…おめでとう、君は合格だ」

 

ハルウララ。無事に合格する。しかし、期末テストで赤点ギリギリを取り、関係性を疑われたゴルシは後々に…サンデーサイレンスと東条に呼び出されたとか。

 

 

 

 

 

 

そして今年度の末。新たに地方からやって来たウマ娘が加入する事に成るが、それはまたのお話だ。因みに、そのウマ娘は笠松からやって来るとか。




笠松からやって来る新加入者は史実とシンデレラグレイを見たら、だいたい分かります。

そして次回はいよいよチーム戦。

衝撃の英雄……第一の覚醒。史実で言えば若駒ステークス(笑)


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チーム対抗戦 VSベガ 衝撃の覚醒

チーム対抗戦!!


チームスピカVSチームベガ。

 

短距離 チームスピカ フジキセキ。チームベガ モブウマ娘3人。

 

マイル チームスピカ ミスターシービー。チームベガ モブウマ娘3人。

 

中距離 チームスピカ メジロアルダン、スペシャルウィーク、ディープインパクト。チームベガ サッカーボーイ、クイーンベレー、モブウマ娘。

 

長距離 チームスピカ ゴールドシップ、タマモクロス。チームベガ ビワハヤヒデ、モブウマ娘2人。

 

ダート チームスピカ オグリキャップ、アグネスデジタル。チームベガ モブウマ娘3人。

 

これが今日行われるチームスピカとチームベガによるチーム対抗戦の出場メンバーだ。チームスピカも純分にメンバーが集まってきたが、ハッキリと言えばベストではない。

先ず短距離とマイルに関してはフジキセキとシービーが走るのだが、2人とも専門種目ではない。シービーは中距離が最も得意であり、フジキセキはマイルが最も得意だ。だが…御存知スピカのメンバーの適性は片寄っており、満足に全員が最も得意な所を走る訳には行かないのだ。短距離に関してはフジキセキしか出来るものが現在居ないために、こうするしかない。マイルに関してはオグリキャップも走れるが、確実に今日は勝つためか彼女にはダートを任せるしかなかった。

 

フジキセキは脚が治ってから1ヶ月も経過していない。長いブランクは当然だ。シービーも不調から抜け出していないし、G1を制覇した過去があるこの2人がこの有り様。

アルダン、スペ、ディープ、デジタルはデビュー戦すら走っておらず実質今日がデビュー戦のような物。タキオンは相変わらず走ってくれず、ウララには未だ速すぎる。タマモクロスも高校1年生の年齢だが、デビュー戦以降ボロボロの戦績故に、今回はゴルシの追い込みを間近で見て学習するために長距離に配属させた。

 

なので普通に走って間違いなく勝てると思われるのはゴルシ、そしてオグリの2人だけ。それに他のチームやトレーナーからすればゴルシが未来からやって来たなんて知り得るわけがなく、ゴルシの強さも分からず…マトモに走れるのはオグリだけと思われてるしまつだ。

 

だが……

 

「フジキセキ完全復活!!強い…強すぎる!!」

 

「外から追い込んだ!!地面が弾んだ、ミスターシービーだ!!」

 

本来の種目ではないが、フジキセキとミスターシービーは勝ってくれた。あと1勝、あと1勝すればスピカの勝ちは確定する。だが、問題が有るとすれば中距離だろう。

 

「問題は次の中距離だな。アルダンや今のスペ、ディープなら問題はないと思うが…」

「相手にはあのサッカーボーイが居るからね。トレーナー君、ドラえもん。中距離は流石に分が悪くないかね?」

 

トレセン学園の芝コース場。そこでストップウォッチを構える3人の人影がいた。その人物はドラえもん、沖野トレーナー、そしてスピカのマッドサイエンティストことアグネスタキオンである。3人はストップウォッチを構え、アルダン、ディープ、スペシャルウィーク…中距離を走る部員のタイムとラップタイムを計測する為に此処に居るのだ。ゴルシを筆頭とした他の部員と共に応援したいが、タイムを計り今後を見据えたアドバイスを考えるのもトレーナーやマネージャーのお仕事である。

 

だが、タキオンから言わして貰えればスピカは不利であったのだ。

 

「成る程な…タキオンの言わんとしてる事も分かるさ」

「トレーナーさんとタキオンさんはスペちゃん達が負けると思うの?」

「ドラえもん。俺達は勿論勝って欲しいが、相手には…あのサッカーボーイが居るからな。サッカーボーイは短距離、マイル、中距離と結果を残している。アルダンと違ってレースの修羅場も経験してるし、クイーンベレーも既にデビューしている」

 

サッカーボーイは今の所、クラシック三冠を取れるのでは?と注目されている選手だ。未だデビューしておらず、家柄の力で入学した世間知らずのお嬢様 アルダンとは違うと、周りの者も評価している。

 

「それに…クイーンベレーはラフプレーも容赦なく行うからな。そこが心配だ」

「ラフプレー!?」

 

ドラえもんが驚く。ラフプレー、それは文字通り合法だが明らかにグレーと言わざるを得ない危険なプレーだ。どさくさに紛れて体当たり、後方の相手に芝を蹴っては土を顔面にぶつけるといった危険プレーだ。なお、アメリカでは日常茶飯事であり、現役時代のサンデーサイレンスはイージゴアに噛み付こうとした事があるとか。

 

「ああ。この前のデビュー戦で、オハナさん曰くタックルしてたそうだ。幸いにもクイーンベレーに体当たりされた子に怪我は無かったが……」

 

ラフプレーは危険。皆も辞めようね、ゴルシちゃんとドラえもんとの約束だよ。

 

「隣…良いかしら」

「オハナさん!?」

 

すると、ドラえもんの隣にオハナさんこと東条がいつの間にか現れた。

 

「沖野。ディープとフジキセキは元気?」

「ああ!!元気だ!!」

「それは良かった。それと、予言するわ……ディープが5馬身差以上の差を着けて圧勝する」

 

 

 

 

 

 

 

そしていざ、中距離のチーム対抗戦が始まったのだが。

 

「おおっと!?ディープインパクト!?やっぱり出遅れた!?」

 

ディープインパクト、安定の出遅れ。出遅れたディープインパクトを置いてけぼりにし、他の走者は一斉に前方に駆け出してしまった。ディープインパクトは殿からのスタートと成ってしまい、先頭はサッカーボーイ、クイーンベレーと続いていき、その後ろにアルダン、スペシャルウィーク、モブウマ娘と続いていく。

 

最初のカーブを曲がった時だった。突如として、クイーンベレーが後ろを一瞬確認すると…彼女は芝を蹴っては後ろに土を飛ばしたのだ。勿論、わざとである。

 

「うっ!?」

「アルダンさん!?」

 

その飛んだ土はクイーンベレーの狙いの通りに、アルダンの瞳に当たってしまい…アルダンは足を止めてしまう。更に、そのアルダンを心配したゆえか、スペシャルウィークも足を止めてはアルダンを支えてしまった。

 

「へっ」

 

狙い通りアルダンは足を止め、優しすぎるスペシャルウィークもアルダンの為に足を止めた為かクイーンベレーはほくそ笑みを浮かべる。

 

残り800の標識を通過。最早、誰が見ても中距離はチームベガの勝ちかと思った。だが、この女は違った。

 

「衝撃波が起こるわ」

 

ディープの二代目保護者 東条ハナことオハナさんであった。

 

(なんだ!?)

 

恐ろしいプレッシャーを感じ、先頭を走るサッカーボーイは震える。そのプレッシャーの塊はどんどん速度を上げて此方に迫ってくる。ウマ娘が追いかけてくるとか、そんなレベルではない。最早、戦闘機やジェット機が突っ込んでくるとかそのようなレベルのプレッシャーだった。

 

(いっ!?)

 

その正体を最初に理解したのはクイーンベレーだった。クイーンベレーは後ろを瞬時に振り向くと、ディープインパクトが恐ろしい程の速度で突っ込んでくるのだ。

 

「あの野郎…」

 

クイーンベレーはディープインパクトも止めようと、タックルしようとする。だが、既にディープインパクトはクイーンベレーを抜き去り…遥か前方…サッカーボーイさえも抜き去った。

 

 

(コイツ…この速度……短距離の私より遥かに速い!?)

 

サッカーボーイさえも衝撃の末脚で抜き去り…ディープインパクトは8馬身の大差を着けて圧勝した。

 

そして…ディープインパクトは一切の呼吸が乱れていなかった。

 

英雄 第一の覚醒完了。




次回!!ゴルシ、そしてデジタル!!

「デジタル…これをやろう」
「いきましゅる!!」



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これが後に語られるゴルシ伝説の走りであった

ゴルシ走る。


ビワハヤヒデは三冠馬ナリタブライアンの腹違いの姉であり、養母にナリタ家の女性を持つシニアクラスのウマ娘である。彼女は優秀な成績を修めており、座学も大変優秀だ。怪物と称される程の素質を持つ妹 ナリタブライアンに対抗するためか彼女は独学の知識とは言え…リギルのトレーナー 東条ハナに匹敵するデータ論の考察力を手に入れた。

 

(ゴールドシップ。全くデータにない。しかし、このふくらはぎと太股、そして体操服越しとは言え分かる体幹の強さ。只者ではないようだな)

 

これから始まるチームスピカVSチームベガの長距離レース。そのレースに後輩と共に出場するビワハヤヒデはデータ皆無のゴールドシップの対策をどうするべきかとギリギリまで考える。

 

「タマモクロス、ちゃんとゴルシちゃんの追い込みを見てろよ?」

「モチロンや!!見て覚えて、自分の物にしたるで!!」

 

ゴールドシップはタマモクロスと共にチームスピカの長距離として出場する。デビュー戦以来、ボロボロな成績が続いていたタマモクロスは兎も角…ゴールドシップは全くのデータが存在しない。

ビワハヤヒデはこっそりとスピカ対策に何度か1人で練習を視察した事が多々ある。だが、ビワハヤヒデが見に来た時に限ってゴールドシップはマトモに練習している事は無いのだ。丸太をハンマーで打ち込んだり、1人将棋してたり、沖野とオセロしてたり、タイヤを振り回してたりと…これと言った練習をしていないのだ。

 

(しかし……ゴールドシップの実力は筋肉の形を見れば本物。これは妹であるブライアンに匹敵するかもしれない)

 

データが皆無、その上…身体的特徴から言えば天才 ナリタブライアンに匹敵する。そんなゴルシを見て、ビワハヤヒデは心する。コイツ…強いと。

 

「ハヤヒデ!!頑張れよ!!」

 

ふと、自分を応援する声が響いて声の方を見る。そこにはチームランキング2位 チーフトレーナーである樫本 理子と新人トレーナーの桐生院 葵が導くチームシリウスのキャプテン ウイニングチケットことチケゾーが応援してくれていた。

 

「……無論、負けるつもりはない」

 

友人の声援を受けて、ビワハヤヒデは覚悟を決める。ついさっき、妹ブライアン処か皇帝シンボリルドルフや伝説トキノミノルに匹敵する少年の衝撃を見てしまったが、関係無いのだ。

 

そして…レースは始まった。

 

(ゴールドシップは……追い込みか)

 

ビワハヤヒデの脚質は先行。彼女は最初から先頭を進み、リードを広げていく。芦毛のウマ娘は活躍できない、過去にそんな事を言われてそれを覆したハヤヒデはリードを広げていく。

 

残り1500mを過ぎた頃だろう。半分を過ぎてもビワハヤヒデは先頭をキープしており、その後ろに彼女の後輩たちであるモブウマ娘達が続いている。だが…

 

「面白く成ってきたぜ!!不沈艦、抜錨!!」

 

遥か後方から大声が響く。だが、ビワハヤヒデは後ろを振り向かない。しかし彼女は瞬時に理解した。ゴールドシップが仕掛けた事を。

 

残り800m。ビワハヤヒデの隣を何かが物凄い速さで通り過ぎた。それは綺麗な芦毛の髪を靡かせた黄金の不沈艦 ゴールドシップである。不沈艦は沈まないからこそ、不沈艦。ゴールドシップは素のスタミナが恐ろしい程に有り、レース中盤からロングスパートをかけられる程にスタミナを誇るのだ。ディープインパクトのように規格外な肺活量から産み出されるエネルギーを用いた持久力ではなく、恵まれた肉体が誇る圧倒的な筋持久力を用いた持久力。

 

長身から繰り出されるストライド、そして圧倒的なスタミナとパワーから繰り出されるロングスパートでゴールドシップはビワハヤヒデを置き去りにして1着でゴールした。

 

 

 

 

 

長距離レース後。ゴールドシップはダートのレースを控えた、アグネスデジタルの所に向かった。

 

「ゴルシ!!」

「デジタル…報酬の前金として、これを渡しておくぜ」

 

ゴールドシップは1枚の写真をアグネスデジタルに手渡す。勿論、ゴールドシップがデジタルに手渡す報酬とはゴルシが隠し撮りしたウマ娘達の秘蔵写真である。ダートに出場する彼女の為にゴルシが手渡した時は、ディープインパクトのお風呂上がりの写真である。

では今回はなんの写真かと言うと、メジロ家の令嬢であるメジロアルダンの写真だったのだ。

 

「うひょょょょう!!」

 

アグネスデジタルは鼻血を何とか堪える。その写真はトレセン学園の運動プールでゴールドシップが隠し撮りしたアルダンの写真である。

アルダンはぶっちゃけスタイルは良い。出ている所は出てるし、引っ込んでいる所は引っ込んでいる。そりゃ、変えられなかった場合の未来で資金援助を出汁に中国の資産家もプロポーズする程だ。

 

スクール水着ことスク水を着たアルダンがプールサイドに行儀良く座っている。先程までプールで泳いでいたのだろうか、髪は濡れており、スク水も濡れている。更にゴルシが絶妙な角度で盗撮したのだろう…スク水を着てるとは言えスタイル抜群な為か…アルダンは胸の谷間が普通に見えていたのだ。うん、セクシィー!!

 

「お前がオグリと共にワンツーフィニッシュしたら、もう1枚良いのをやるぜ?」

 

アグネスデジタルのやる気が限界突破した。アグネスデジタルの全ステータスが上昇した。

 

 

 

「オグリキャップ先頭を独走!!地方からトキノミノルがヘッドハンティングした怪物の素質は本物だ!!」

 

そして最後の種目ダートが始まる。だが、ダートはトキノミノルが地方から引き抜いた怪物 オグリキャップが圧倒的な走りを見せて、先頭を独走する。最早、圧倒的と言えるだろう。

 

「皆…やるな…」

 

アグネスデジタルも負けてはいられない。だが、チームベガは経験を積んだジュニアB以降の選手を導入してきており、その全員がデジタルと違ってデビューしてるし経験も豊富だ。それ故か、デジタルはオグリキャップから離されてベガの3人と共に後方に固まっている。

 

このままではオグリキャップの1位は間違いない。だが、デジタルは抜け出せずに2位に成れない。2位に成らないと、ゴルシから3枚目の秘蔵写真を貰えないのだ。

 

「デジタル!!頑張れ!!これが報酬なんだ、だから頑張れよ!!」

 

ゴルシはゴール付近に立ち、デジタル達に見えるように何かを掲げた。それは大きな板に印刷された写真であり、それは………プールの点検を終えて本当に安全かを確かめる為に、プールに入ろうとするサンデーサイレンスの写真であった。

引退して暫くの年月が経過してるが、流石はアメリカ最強。腹筋はバキバキであり、綺麗な逆三角形の筋肉をしている。胸筋の胸板は分厚く、鍛えられた筋肉が特徴的だ。間違いなく海水浴に行けば多くの女性がキャーキャーと黄色い声援を送るだろう。

 

「教頭の写真!?ゴルシ!!何処で撮ったんや!!」

 

タマモクロスの突っ込みが響く。後でサンデーサイレンスに怒られようが知ったことじゃない。多分、サンデーのおっさんは許してくれるだろう。全てはチームスピカがチームベガに対し、完勝する為だ。

 

「世界にただ一つ!!アメリカの伝説、日本が誇る伝説トレーナー サンデーのおっさんの水着写真だ!!」

「うひょょょょおおおう!!燃えてきましたぞ!!」

 

その瞬間…アグネスデジタルが爆発したように加速し、オグリキャップに迫る。

 

そして…

 

「1着オグリキャップ!!2着アグネスデジタル!!チームスピカ、ベガに対して完全勝利だ!!」

 

チームスピカはベガに対して完全勝利を修めた。その代償として…

 

「ゴルシ。今回は俺様の写真だったから良かったが、許可を貰わず堂々とパパラッチ写真を掲げないでくれ。マジで恥ずかしかったわ」

「デスヨネ…」

 

ゴルシ。サンデーサイレンスの水着写真を堂々と掲げた為か、サンデーサイレンスに呼び出しを喰らう。




盗撮被害者はアグネスデジタルの活躍の為に、次々と増えます(笑)

チームスピカ、ランクアップ!!


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キャラ紹介 2017年

キャラ紹介。


チームスピカ。

 

サンデーサイレンスが創設した自主性を重んじるチーム。修正前の歴史ではサンデーサイレンスが急死し、トキノミノルが史実通りの電撃引退をしてしまい歴史の影に埋もれる事に成ってしまうチーム。だが、ゴールドシップとドラえもんが秘密道具でサンデーサイレンスを助けて歴史を変えた結果…見事に存続。現在の部室はプレハブ小屋だが、部員が急激に増えたので改装予定。

サンデーサイレンスから沖野&トキノミノルとバトンタッチで受け継がれており、2人の次は誰がスピカを受け継ぐのだろうか。

 

ゴールドシップ

年齢 今年で19歳。

肩書き 未来からやって来たハジケリスト、学年不詳の生徒。

好きな人物。お婆ちゃん、ドラえもん。

尊敬する人。サンデーのおっさん、お婆ちゃん。

家族構成。国家機密(歴史修正前はドラえもん。歴史修正後は母、父ステイゴールド、妹オルフェーヴル、妹ナカヤマフェスタ、ドラミ、ミニドラ)

説明。この作品の主人公その1であり未来人。最初は祖母に会いたいが為に、ドラえもんと共に歴史を越えたがタイムマシンが壊れた事で2000年代初頭に流れ着き、サンデーサイレンスとトキノミノルの過去を変えた事で歴史を大きく変えてしまった人物。ハジケリストを演じてるが、本当は真面目疑惑が存在している。勉強は全般出来、スターティングゲートからのスタートは苦手だがそれ以外はこなせるスーパー美女。2017年ではチームスピカを繁栄させ、マックイーンが過ごしやすい環境を整えようと奮闘する。

 

ドラえもん

年齢 ゴルシよりちょっぴり歳上。

肩書き ネコ型ロボット。スピカのマネージャー。トレセン学園厩務員。

好きな人物。ゴルシちゃん。

尊敬する人。メジロマックイーン(未来)、サンデーサイレンス。

説明。この作品の主人公その2。未来からやって来たネコ型ロボットであり、実は子守りを目的としたロボットとして生産された。しかし、買い手が中々つかず…20万での特売で売られた時に赤子のゴルシがボタンを押して購入した過去を持っている。ゴルシの成長を間近で見守ってきており、ゴルシのファン1号でもある。何でもアリな秘密道具を沢山持っているが、その秘密道具は未来の時代でゴルシのバイト代+ゴルシのレースマネー+ドラえもんのバイト代で購入された逸品だ。

 

サンデーサイレンス

年齢37歳(修正前は享年23歳)。

肩書き スピカ初代トレーナー。アメリカ最強馬。男性ウマ娘で初のG1勝利者。トレセン学園教頭。

好きな人物。養父、養母、生徒、そして妻子。

尊敬する人。先代理事長、養父。

家族構成。嫁キャンペンガール、長女スペシャルウィーク、長男ディープインパクト、次男ステイゴールド。養父と養母は御健在で今は網走で隣に住んでいる。サンデーサイレンス本人は知らないが、全姉にグッバイヘイローが居る。

説明。この作品、色んな意味で最強人物。スピカの伝説を作った男であり、この男からスピカは始まった。男性ウマ娘として産まれた為か、差別の激しいアメリカで差別に逢い選手時代は化物染みた強さを持っていたが評価は低かった。しかし、化物染みた強さと差別社会で培った人を見抜く眼と異変に気付く眼は確かであり、僅かな故障の前兆にも気付く。アメリカ時代はヤンチャだったが、今ではすっかり丸くなり親バカ&生徒思いな教頭先生として生徒や若きトレーナー達を導いている。

 

トキノミノル

年齢29歳。

肩書き。初代無敗の三冠馬。伝説のウマ娘。日本史上最強馬。無敗の絶対王者。スピカのコーチ。

好きな人物。スピカの子供達。

尊敬する人。サンデーサイレンス。

家族構成。実家は映画館を営業している。

説明。この世界の駿川たづなの姿。ドラえもんとゴールドシップがサンデーサイレンスの死の運命を変えた為か、サンデーサイレンスの的確な指導で史上初無敗でのクラシック三冠を達成する偉業を達成。その後も芝もダートは勿論のこと、全ての距離でG1を制覇。正に伝説的走りで、トレセン学園大学部を卒業するまで無敗を貫き、現在でも無敗である。この作品、最速の1人。

 

沖野トレーナー

年齢34歳。

肩書き。スピカの二代目トレーナー。

座右の銘。健康第一。

好きな人物。ウマ娘の脚が好みである。

尊敬する人。サンデーサイレンス。オハナさん。

家族構成。実は実家は田舎で無農薬農業を営み、ニンジンが美味しいらしい。

サンデーサイレンスから自由主義であるスピカを引き継いだ男。若く見えるが、実はサンデーサイレンスとあんまり歳が変わらない。しかし、引き継いだ当初はコミ障のお陰かシービー以外のウマ娘が脱退するという事態に陥ったことも。サンデーサイレンスからノウハウを受け継いだので、サンデーサイレンスには及ばないがウマ娘を見る眼は確かである。リギルのトレーナーである東条さん曰く、沖野とトキノミノルが力を合わせればサンデーサイレンスを越えることも可能だとか。

 

ミスターシービー

年齢17歳。シニアクラス高等部3年生。

肩書き。四代目三冠馬。スピカのチームリーダー。

好きな人物。両親。

尊敬する人。父親。サンデーサイレンス。トキノミノル。

説明。スピカのリーダーであり、四代目三冠馬。しかし、三冠馬と成った翌年からスランプに陥り…上手く勝てない日々が続いている。今はドラえもんやゴルシと言った、メンバーのお陰か調子も戻ってきており…大阪杯での復活を目指す。

追い込みを得意としているが、元々は臆病であり…サンデーサイレンスからこっそりと追い込みを教わったのだとか。

 

フジキセキ

年齢15歳。シニアクラス高等部1年生。

肩書き。マルチプレイヤー。栗東寮の寮長。スピカのサブリーダー。

好きな人物。後輩たち、ドラえもん。

尊敬する人。サンデーサイレンス。

家族構成。母親は女優である。

説明。元リギルの所属だったが、ジュニアCクラスだった時に重度の大怪我を負い一度は選手生命を失う。その後は1年間リハビリを頑張ったが完全には治らずリギルを退部し、どうしようかと考えていた矢先にドラえもんの秘密道具で完治し、スピカに加入。短距離、マイル、中距離、その気に成れば長距離も走れる。完全復活を果たしたが、長いこと走ってなかった影響で故障前の走力には未だ戻っていない。

 

タマモクロス

年齢15歳。シニアクラス高等部1年生。

肩書き。スピカの突っ込み担当。

好きな人物。お母ちゃん。

尊敬する人。サンデーサイレンス。

家族構成。幼少期の頃からド貧乏で各地を転々としていた。

説明。元はとあるチーム所属のウマ娘だったが、デビュー戦以降はボロボロな戦績が続いてしまいそのチームを追い出される。学費を奨学金と出走手当てで何とかしており、ガケっぷちな学生ライフを送っていたがサンデーサイレンスから追い込みのコツを教わり…スピカを紹介される。スピカに加入してからは父方の血筋の関西特有の突っ込みの素質が開花。見事にスピカの突っ込み担当と成ってしまった。今年の目標は先ずは重賞勝利、その後にG2、やがてはG1を勝ちたい。

 

アグネスタキオン

年齢15歳。シニアクラス高等部1年生。

肩書き。スピカのマッドサイエンティスト。

好きな人物。モルモットなトレーナー君。

家族構成。名門一族アグネス家の出だが、両親の教育方針に従った結果…現在の形に成ったらしい。

尊敬する人。サンデーサイレンス。

説明。説明不要なマッドサイエンティスト。素質は豊かだが、デビューはしておらず最近まで何処のチームに所属してなかった為か理事会から退学勧告を受けてしまい、退学を免れる為にスピカに入る。しかし、薬剤知識豊富な彼女がスピカに入ったお陰で……唯一風邪ウイルスが弱点だった英雄の弱点が消え去る事に。

 

オグリキャップ

年齢14歳。ジュニアクラスC。

肩書き。笠松からやって来たウマ娘。

家族構成。母親。実家はド貧乏。

尊敬する人。トキノミノル。母親。

説明。笠松地方トレセンから転入してきたシンデレラ。トキノミノルのスカウトで中央に参戦し、チームスピカに入った。だが、とんでもない程の大食いであり笠松時代では食堂スタッフが悲鳴を挙げていたとか。史実では訳アリでクラシックを走れなかったが、この世界線ではサンデーサイレンスが理事会を粛清(物理含む)をした為にクラシックに参戦できる。

 

メジロアルダン

年齢14歳。ジュニアクラスC。

肩書き。メジロ家のご令嬢。

家族構成。メジロ家、使用人等々。実家は最早財閥一族。修正前の歴史ではメジロ家存続の為に中国の資産家と政略結婚。

尊敬する人。メジロアサマ。

説明。メジロ家のお嬢様。だが生まれつき医者から硝子の脚と告げられており、素質は高いが満足行く練習が行えず脚に爆弾を抱えた状態であった。そんな硝子の脚では自分の意見を通せない管理主義では練習できず…スピカに誘われて入部前は様々なチームを見学していた。その過程で、リギル時代の空腹で倒れるディープインパクトを何度も目撃している。今年度はクラシックに挑戦する予定であり、チームメイトのオグリキャップと戦う事に成るが生涯一度のクラシックを楽しみにしている。

 

スペシャルウィーク

年齢13歳。ジュニアクラスB。

肩書き。サンデーサイレンスの娘。

好きな人。弟2人、お母ちゃん、お父ちゃん、お爺ちゃん、お婆ちゃん、ティナおばさん(修正前の歴史での養母)。

尊敬する人。お父ちゃん、お母ちゃん。

家族構成。父、母、祖父母、弟2人。因みに東京都産まれ、北海道育ち。

説明。後の日本総大将である。修正前の歴史では父親の事を知らずに育ったが、この世界線ではゴールドシップとドラえもんのお陰か両親は生存。歴史が変わり、弟2人も産まれてお姉ちゃんである。愛嬌◎

 

ディープインパクト

年齢12歳。ジュニアクラスA。

肩書き。トキノミノルの再来。サンデーサイレンスの息子。

好きな人。スピカの皆。お姉ちゃん、お父ちゃん、お母ちゃん、弟、祖父母。オハナさん、ルドルフ先輩。ティナおばさん。

尊敬する人。お父ちゃん、トキノミノル。

説明。後の世界史上最強馬で衝撃の英雄。修正前の歴史ではサンデーサイレンスとキャンペンガールがスペシャルウィークの生まれる前後に急死する為か、誕生しない。しかしゴルシとドラえもんが歴史を変えた為に誕生した存在である。弱点は風邪…だったのだが?

 

アグネスデジタル

年齢12歳。ジュニアクラスA。

肩書き。スピカのやベー奴。ドルオタ。史上最強のオタク。

好きな人。ぐっふふ、推しは日々増えるのですぞ!!

尊敬する人。ウマ娘ちゃんこそが我が人生!!

説明。あのゴールドシップをしてヤバいと言われるやベー奴。ウマ娘が大好きなオタクであり、ウマ娘の頑張りを見るために一夜漬けでトレセン学園に合格したやベー奴。ウマ娘が大好きであり、ウマ娘の為なら芝からダートも走るのだ。

 

ハルウララ

年齢12歳。ジュニアクラスA。

肩書き。高知からやって来たウマ娘。

好きな人。商店街の皆。クラスの皆。

説明。トキノミノルから中央の事を聞いて、中央に転入したくなり、高知からやって来たウマ娘。だが、成績がへっぽこだった為か…合格出来るか危うく、ドラえもんの秘密道具のお陰で転入できた。素質は物凄く低いが、彼女は何処まで強くなる?

 

 

その他の人。

 

キャンペンガール

年齢37歳(修正前の歴史では享年23歳)

肩書き。サンデーサイレンスの妻。後の英雄と日本総大将の母親。

説明。三児の母親であり、御存じスペシャルウィークとディープインパクトの母親。修正前の歴史と史実ではスペシャルウィークを出産した5日後に急死する。しかし、ゴルシとドラえもんがサンデーサイレンスを救ったお陰か生存。三児の子宝に恵まれた。

 

ステイゴールド

年齢5歳

肩書き。ゴールドシップの父親。

説明。歴史が変わった後のゴールドシップの父親。しかし、ゴルシはそれを未だ知らない。

 

アーサー・ストロー

年齢70代。

説明。サンデーサイレンスの養父。名前の由来はサンデーの生産主であるアーサーと名付け親のストロー夫妻から。70代ながらもバリバリ元気で、余裕で介護無し100歳まで働きそう。サンデーサイレンスにCQCを教えたのもアーサーお爺ちゃんである。職業は神父+英会話講師+農家。昔は凄腕のマリーン疑惑が?

 

東条ハナ

年齢 秘密。

肩書き。チームリギルのトレーナー。ディープインパクトの保護者二代目。

尊敬する人。サンデーサイレンス。

説明。管理主義のチームであるリギルのトレーナーであり、多くの有名選手を育ててきた。沖野の大学時代の先輩であり、沖野を始め多くの人からオハナさんと呼ばれている。

 

シンボリルドルフ

年齢16歳。シニアクラス高等部2年生。

肩書き。チームリギルのリーダー。トレセン学園生徒会長。ディープインパクトの保護者三代目(自称)。二代目無敗の三冠馬。

尊敬する人。トキノミノル。サンデーサイレンス。

説明。リギルのチームリーダーであり、高等部最強のウマ娘。同年代のウマ娘より誰よりも速すぎた為か、ライバルという存在がいない為か少し孤独である。唯一負けた相手はノリで出てきたトキノミノルだけであり、彼女を何時か越えることを目標にしている。実はディープインパクトのリギル脱退を物凄く後悔しており、その事でオハナさんと喧嘩したとか。ディープインパクトを次の生徒会長にするために、現在…サンデーサイレンスと共に暗躍中。




ネタバレですが……ルドルフの次の生徒会長はディープです(笑)功績的に、彼しか居ない!!


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チームランクUP!!そして…動き出す

久し振りの更新です。


3月頭。季節は巡り、冬から春に変わる。未だ朝方は寒く、早朝は暖房の出番が必要な時期ではあるが寮の自室でゴールドシップは学内新聞とサンデーサイレンスから貰った資料をドラえもんと共に見ていた。

 

「学内新聞にはチームのランクの事は書かれてないな」

「資料の方じゃない?」

 

学内新聞とは月の始めにトレセン学園の生徒会が発行する新聞だ。しかし、そこでゴールドシップは改編前の未来と改編された現代の生徒会の違いを知ることに成ってしまう。未来では生徒会は兎に角特別権限が強かった、学園の運営を手伝ったり色々と大変そうだったが発言力は高く色々と優遇されていた。

しかし、この改編された現代ではサンデーサイレンスが手を打った影響が有るのだろう。トレセン学園の生徒会は一般的な学校の生徒会と差程変わらず、学園祭の行事や掲示物の手伝い等は有るようだが特別な力は無いようだ。有っても、入学式の時に生徒代表で生徒会長が簡単な挨拶を行う程度だろう。だが、それが基本的に普通なのだ。改編前では一生徒会が持つには権力が強すぎると言えたのだから。

 

「ドラえもん。確か、生徒会長はシンボリルドルフだったよな?」

「うん。この時代はそうだね、サンデーさんから聞いたから間違いないよ。でもね…」

 

改編前…シンボリルドルフは唯一の無敗の三冠馬だった。トキノミノルは駿川たづなと成り正体を隠し電撃引退を行った為か、ルドルフに並ぶ者は存在しなかった。近付きがたい雰囲気を放っており、並び立つ者は誰として存在しなかった。その為か、改編前の歴史ではシンボリルドルフは無敗を貫き頂点に立ったまま卒業していったとか。

 

『やあ、ドラえもん君!!聞いてくれ、さっきディープが自販機でソーダを買ったソーダ…フッハハハ!!傑作の駄洒落だろ?』

 

『ふふふ、ドラえもん君。私は今日も勝利の2文字を肯定したよ、何故なら私は皇帝だからね!!』

 

『ドラえもん君…聞いてくれ。今日の調子は快調だ、何故なら私は生徒会長だからね!!』

 

だが、このトレセン学園で過ごして早2ヶ月。ドラえもんは現代のシンボリルドルフに対する評価は…

 

「駄洒落が大好きな女の子かな?」

「駄洒落!?」

 

駄洒落が大好きな女の子である。兎に角駄洒落が好きであり、ドラえもんやゴールドシップが未来で見た近付き難い雰囲気の少女ではなかった。トキノミノルが電撃引退しなかった影響なのか、孤高の絶対王者である必要が無くなったのだろう。二代目の無敗の三冠馬という偉業を達成したが、駄洒落が大好きな少女だったのだ。

 

「なんか…未来で見た変わる前の歴史と随分違うな」

「だよね」

 

ゴールドシップは新聞を折り畳み、次にサンデーサイレンスから貰った資料を見る。この資料は教職員、或いは希望した生徒が貰えるものであり、チーム対抗戦で変動したチームランキングやチーム評価、そしてチームメンバーを募集中のチームの詳細が載っている物である。

資料のページを捲っていき、ゴールドシップとドラえもんはチームスピカが書かれた所を見つける。

 

「有ったな!!なになに?チームスピカは順位22位、おお!!上がってるじゃないか!!

評価はDランクかよ。まあ、1回だけじゃ仕方無いか」

 

順位はチームベガに対して完勝した為か、崖っぷちの30位から22位に上がっていた。当然、チーム対抗戦に出場した為か評価も最底辺のFランクからDランクにアップ。チームスピカの評価も上がり、ゴールドシップとドラえもんは嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

「しかし、アタシ達がベガ相手に完勝したのにDランクはな。せめてCランクは行っていると思ったのによ」

 

チームスピカはベガに対して完勝した。それは紛れもない事実であり、特にG1を何度も勝っている葦毛は走らないという定説を覆したビワハヤヒデに対して圧勝したゴールドシップ、今年のクラシック三冠候補筆頭と言えるサッカーボーイ達に対して異次元の強さを見せ付けたディープインパクト、リハビリ前の全盛期には及ばないとは言え完全復帰を果たしたフジキセキの好走(なお、本人はマイルが専門)が有ったのでDランクの上であるCランクだとゴルシは思っていたのだ。

 

「ゴルシちゃん。もしかしたら、これは公式戦のレースの成績も影響してるんじゃない?

シービーさんは三冠馬だけど、現在はスランプ。フジキセキさんは優秀だけど、怪我してからは公式戦出てないし、オグリさんは中央での戦績は無いし、タマモちゃんはデビュー戦以降の成績はボロボロ、ゴルシちゃん含め他の人はこの時代でデビューしてないしね」

「成るほどな。それは有るかもしれない」

 

しかし、残念な事にチームスピカのメンバーは大半がデビューをしていないのだ。

フジキセキは既にデビューをしているが、怪我をしてからはリハビリばかりで一切公式レースを走っていない。ミスターシービーは三冠馬に成れたが以後は勝てないレースが続いており、スランプ。タマモクロスはデビューをしているが、以後の成績はボロボロである。オグリキャップは既にデビューしていると言ってもそれは地方での話。

 

では他のメンバーはどうなのかと言うと。ゴルシは未来ではデビューをしているが、この時代ではデビューしておらず知名度は皆無。アグネスタキオンは未だデビューすらしていない、高1なのに。アルダンはもうすぐデビュー予定だが、未だデビューしていない…因みに同級生は全員デビューしている。スペシャルウィークはもうすぐデビュー予定だが、未だ慌てる必要はない。ディープインパクトとアグネスデジタルもジュニアAであり慌てる必要は皆無だ、と言うよりジュニアAなら出れるレースはプレオープン位しかなく急ぐ必要はない。勿論、地方から入学したジュニアAのハルウララも同じである。

 

「アタシ達がレースで活躍したら、一気にスピカのランクも上がること間違いなしだな!!」

 

 

 

そして…

 

3月前半。G2弥生賞。

 

『メジロアルダン先頭!!メジロアルダン先頭!!しかし、後ろからオグリキャップが加速した!!一気に加速!!オグリキャップ、ラスト200でメジロアルダンを差しきった!!』

『スピカがワンツーフィニッシュを決めましたね。今年のクラシックはスピカがリギルを越えるのか!?』

 

オグリキャップ、メジロアルダン。ワンツーフィニッシュで弥生賞を終えて、クラシックの初戦皐月賞に出場を決める。

 

3月半ば。G2金鯱賞。

 

『タマモクロス追い込んだ!!タマモクロス差しきった!未だ止まらない!!タマモクロス、重賞初勝利だ!!』

 

タマモクロス。念願の重賞初勝利。

 

同じく3月半ば。各々のデビュー戦。

 

『スペシャルウィーク、差しきって今ゴール!!これからが楽しみですね』

 

『アグネスデジタル!!ウマ娘達を抜きながら、顔を確認している!?そして加速して今ゴール!!』

「有り難き幸せ!!」

 

『ディープインパクト!!衝撃の末脚!!一気に加速、なっなんなんだ!?この強さは!?』

 

「うぉぉぉおおお!!ファイヤァァァア!!」

『ゴールドシップ!!停まらない…正に黄金の船出だ!!』

 

スペシャルウィーク、アグネスデジタル、ディープインパクト、そしてゴールドシップ…デビュー戦を勝利で飾る。

 

3月末。G1高松宮記念。

 

『フジキセキ完全復活!!2年ぶり、G1勝利だ!!』

 

フジキセキ。2年ぶりにG1を勝利で飾る。

 

同じく3月末。G1大阪杯。

 

『外から一気にミスターシービーが回ってきた!!一気に抜き去り、ミスターシービー先頭だ!!三冠馬は終わっていない、ミスターシービー完勝!!三冠馬の復活だ!!』

 

ミスターシービー、大阪杯を勝利し完全復活を果たす。

 

 

 

 

 

 

「マックイーンお嬢様。オープンスクールはどうされますか?」

「ええ、伺います。当然ですわ」

 

この時代の祖母と孫の遭遇が迫っている。




デジたんにお金を天井まで使っちまった(笑)

次回!!女神像イベント。

その時…ゴルシとドラえもんの脳内に流れ込む、存在しない記憶こと改編した未来の記憶!!

ゴルシ「サンデーのおっさんがアタシの爺ちゃんに成っちまった!!」


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三女神イベント 存在しない記憶

ゴルシの脳内に流れ出した…存在しない記憶


「おっ、ドラえもん。此処に三女神の像が有るぜ。過去でも有るんだな」

「本当だね。やっぱり、どの時代でも三女神の像は」

 

ある日の事だった。ゴールドシップとドラえもんは暇だからトレセン学園の敷地をプラリプラリと歩いていた。4月であり、オグリキャップとメジロアルダンのクラシックが迫っているが、本日の練習は休みである。だから、ゴルシとドラえもんは散歩していたら三女神と呼ばれる像の前にやって来たのだ。

 

この三女神。ゴルシの時代でもあり、トレセン学園の全校生徒と全職員を末長く見守ってきた。

そんな三女神の像をゴルシとドラえもんがぼんやりと眺めていた時だった。突如として三女神の瞳が輝き…眩い光が放たれてゴルシとドラえもんを包み込む。

 

「うお!?」

「うわ!?」

 

ゴルシとドラえもんは歴史を変えてしまい、新たな歴史のレールが出来てしまった。だが、ゴルシとドラえもんは変わった未来で自分達がタイムスリップする迄の日々を知らない。その為か、三女神が不思議な力を使ってゴルシとドラえもんに変わった未来を見せる事にしたのである。

 

そして…ゴルシとドラえもんの脳裏に流れ出した…存在しない記憶。

 

 

 

 

「おおっ!!遂に産まれたか!!これで、ゴールド。お前も遂にお父さんか。また孫が1人増えちまったな、どれ?お爺ちゃんだぞ!!」

 

栗色の髪をした赤ちゃんのゴルシ。そのゴルシを抱っこするのは…シワが増えたが未だ若々しい容姿を保ったサンデーサイレンスだった。

 

『ぶっほ!?どうなってる!?』

 

だが、こらは歴史が変わり確定した未来なのだろう。ゴールドシップは映画を見ているようであり、幼い自分の視点から変わってしまった未来を見せ付けられていた。

 

「親父…子育てって大変だよな」

 

そんな赤ちゃんゴルシを抱っこするサンデーサイレンスの隣では、歴史が変わった未来でのゴルシの父親と成った男性ウマ娘が心配そうな声を出していた。そして…変わった記憶がこの男が誰なのかゴールドシップの脳内に教えてくれた。この男はステイゴールド、サンデーサイレンスの次男でありスペシャルウィークとディープインパクトの弟だ。優秀な姉、()()()()()()()()()()と比べると戦績も普通だがそれでも優秀な男性ウマ娘である。

 

どうやら此処は産婦人科の病室のようで、病室のベッドには白髪の美しい女性が上半身を起こして微笑ましそうにサンデーサイレンスとステイゴールド、そして赤ちゃんのゴルシを見守っている。間違いない、ゴルシの母親でメジロマックイーンの娘であるポイントフラッグだ。

 

「サンデーさん。お母様は?」

「マックイーンならそろそろ病院に着く頃だな」

 

すると、病室の扉が開かれて芦毛で小柄だが美女が入ってきた。彼女はメジロマックイーン。御存知、ゴールドシップの祖母であり天皇賞(春)と天皇賞(秋)を制覇した女傑だ。なお、観客席で見た天皇賞(春)はディープインパクトの伝説である800mの世界記録を遥かに凌駕する伝説の後半1600mを見てしまい唖然としたのは良い思いで。

 

「よっ、マックイーン」

「サンデー教頭!早いですわよ」

「俺様はもう教頭じゃない。それに、()()()()()()()は待ちに待っていたからな。この子の名前当ててやろうか?」

「なに言ってるんですの?勿論、この子は」

 

そしてアメリカの伝説とメジロ家最高傑作は同時に赤子の名前を告げた。ゴールドシップと。

 

 

 

「親父!!ドラえもん、ヘルプ!!」

「じいちゃーん!!」

 

ゴルシが5歳に成った頃だろうか?ステイゴールドは更に子宝に恵まれた。その頃には既にドラえもんはゴルシの家族と成っており、ステイゴールドは網走で子供達と共に暮らしていた。幸いだったのが、御近所にサンデーサイレンス夫妻が暮らしており、隣にはスペシャルウィーク夫妻が暮らしていた事だろう。

 

「ジージー!!」

「うわーーん!!」

 

なんと歴史が変わった影響なのかゴルシには妹が2人出来ていた。金色にも見える茶髪をしたウマ娘の幼子 オルフェーヴル、茶髪で年齢故か泣きじゃくるナカヤマフェスタの2人だ。

 

「ゴールド伯父さん!!遊びに来たよ!!」

「遊びに来たよ!!」

『『スペとディープそっくり!?』』

 

そんなゴールド一家の所に来客がやって来た。歳は10歳位だろうか?何処かスペシャルウィークに似た少女、そしてディープインパクトそっくりの男の子のウマ娘だ。勿論、存在しない記憶がゴルシとドラえもんの脳裏に教えてくれる。スペシャルウィークに似た少女はブエナビスタ、スペシャルウィークの娘だ。ディープインパクトに似た男の子はキズナ、ディープインパクトの長男だ。

 

「お兄ちゃん。今日から私も一緒に暮らすから」

『僕に妹!?』

『ドラえもんに妹!?』

 

なんとドラえもんに妹が出来ていた。ドラえもんの妹は黄色のボディが特徴的で頭にリボンを着けた猫型高級ロボット ドラミちゃんである。なお、ドラミちゃんは高級タイプだそうで、東京と網走を行ったりきたりしてるディープインパクトおじさんからのプレゼントである。

 

「ただいま。おや、ゴルシちゃん、また大きくなったね。オルフェーヴルももう立てるのか。子供の成長には凄く驚かされるよ」

 

そしてディープインパクトが網走に帰ってきた。その嫁が…

 

「大きくなりましたね」

 

まさかのメジロアルダンだった。

 

『ぶふぉ!?』

 

だが、驚くのは2人の子供の数である。

 

「キズナだよ!」

 

長男キズナ。

 

「はーい、ジェンティルドンナよ!」

 

次女ジェンティルドンナ。

 

「リアルだ。宜しく」

 

長女リアルインパクト。

 

「グランアレグリア。宜しく」

 

三女グランアレグリア。

 

「うーうーあー!!」

 

この時点での末っ子 次男コントレイル。後の4人目の無敗三冠馬。

 

「サトノダイヤモンド…でしゅ」

 

母親の後ろに隠れた当時のゴルシよりも年下の少女。四女のサトノダイヤモンド。

 

『『何人子供居るの!?』』

 

ディープ一家は子沢山。なお、ディープインパクトは子供達を普通に養える財力はある。

 

 

 

そして時は流れ、ゴールドシップ。トレセン学園に入学。

 

「私はジャスタウェイ。宜しくね」

 

そこでゴルシは親友と出会い…

 

「教頭先生です!!」

 

サンデーサイレンスの次の教頭先生は…トキノミノルだった!?

 

「やあ、ようこそスピカに。2人を歓迎するよ」

 

スピカのトレーナーは世界最強馬であり英雄ディープインパクト。ジェンティルドンナをトリプルティアラに導き、選手としてもトレーナーとしても正に世界の頂点に立つ男だった。

 

「えっ?今から海外出張!?」

 

ゴルシが宝塚記念を2連覇した直後、まさかの海外出張でディープインパクト…イギリスに長期出張。その代打としてトレーナーに成ったのが

 

「はーい!!ブエナビスタよ!!宜しくね」

 

従姉のブエナビスタだった。ブエナビスタは選手時代、ディープインパクトの指導を受けていた。その為か、スピカの後継者に任命されディープの帰還までスピカのトレーナーに成ったのだ。

 

ゴルシの天皇賞(春)制覇、オルフェーヴルの三冠制覇、ナカヤマフェスタの凱旋門賞2位。そしてその翌年…

 

「ただいま」

 

英雄帰還!!その後、ディープインパクトの指導でコントレイルは無敗の三冠馬、デアリングタクトは史上初の無敗のトリプルティアラに成った。

 

だが…それでも……

 

「アーモンドアイよ。宜しくね」

 

人懐っこい笑みを浮かべ、首からトレードマークと言える白いヘッドホンをかけた少女アーモンドアイ。トキノミノル、英雄ディープインパクトの再来と称された最強女王は圧倒的な強さで同世代のウマ娘を追い抜いた。

 

ゴルシも、黄金の暴君(オルフェーヴル)も、衝撃の後継者(コントレイル)も、無敗のティアラ(デアリングタクト)も彼女を追い越せない。きっと、アーモンドアイに勝てるのは現役時代の英雄だけだと誰もが思った。

 

そして……

 

「はじめまして!!ソダシです!!スピカに入りたいです!!」

 

ゴルシとドラえもんが過去に旅立つ数日前。真っ白で穢れ無きウマ娘がスピカに入った。彼女が世界初の偉業を成し遂げるのは未だ、ゴルシは知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、ドラえもん。サンデーのおっさんがお爺ちゃんに成っちまったよ」

「成ったね。てか、ディープ君…なんであんなに子供が居るの?」

 

改編された未来での記憶は無事にゴルシに流れ込んだ。




ディープはね…史実だともっと子供が多いですからね(笑)

次回…オープンキャンパス。遂にマックイーン、降臨。



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祖母 マックイーン。遂に登場!!

マックイーン…降臨!!


メジロ家。御存知、日本が誇る大財閥である。総資産はうん兆円であり国家予算に匹敵する程の総資産を誇っており、その莫大な資金は総帥と当主である2人の女性がレースの賞金を投資等に用いて増やし…僅か30年程で莫大な富を築いた事は余り知られていない。

 

そしてメジロ家はとあるレースを重要視しており、彼女達にとってはそのとあるレースはクラシック戦線である日本ダービー、桜花賞とオークスよりも重要だと考えているのだ。

 

「そういや…メジロ家の連中はどういう訳か天皇賞を特別にしてたな。ダービーやオークスよりも大事にしてたな?男と言ったら国問わずダービーなんだがな。俺様だってケンタッキーダービー取ったし、スペとディープもクラシックではダービーを絶対取りたいと言ってたしな」

 

それは天皇賞である。天皇賞は春と秋に開催されるG1のレースであり、春の天皇賞は長距離レース、秋の天皇賞は中距離のレースだ。天皇賞(春)は3200mというG1で最も長い距離をしており、ステイヤーの花形と言えるだろう。天皇賞(秋)は春よりも短い2000mであり、スピードが春よりも重要視される。それに、天皇賞(秋)はスタミナと適正距離の都合上、長距離(3000m)である菊花賞が適正距離ではないウマ娘も参戦する時が多々あるのだ。

しかし、天皇賞(春)は兎も角して天皇賞(秋)はクラシックの学年には厳しい物と成るだろう。なにせ、先輩達と戦う事に成るのだから、より経験を積んだ上級生と戦う事に成るために菊花賞や秋華賞よりも厳しい戦いに成るだろうが、勝てれば間違いなく表彰される。

 

「そういや…ティターンの奴が昔言ってたけっな?」

 

教頭室でコーヒー……ではなくコーラを飲みながらパソコンでデスクワークを行う我等が俺様ティーチャーことサンデーサイレンスは思い出す。日本で大学生活を行ってた青年時代、天皇賞を制覇した知人が教えてくれた事だった。

 

「アサマの婆さんの旦那さんの遺言だったか?」

 

サンデーサイレンスも詳しくは知らない。だが…知人であるティターンという人物が言うには、ティターンの母であるメジロ家総帥であるメジロアサマの夫である人物の方針だったのかも知れない。だが、その人物であるアサマの夫は既に亡くなっている為か、詳細はアサマかティターンから聞くしかないだろう。

 

 

そんなメジロ家。レースと投資で財を成した財閥なのだから当然、優秀なウマ娘が多く在籍している。トレセン学園の卒業生には史上初のトリプルティアラ達成者であるメジロラモーヌ。シニアクラスのメジロライアン、今年…トリプルティアラに挑戦するメジロドーベル、そして我等がメジロアルダンと言った優秀なウマ娘が多く属している。

しかし、アルダンはメジロ家と言えど分家筋であり本家筋ではない。だが、来年は一味違う。何故なら、来年の1月にはメジロ家本家…それも総帥メジロアサマの孫娘が入学するのだから。

 

 

 

関東にある最早城と言っても過言ではない程の大きさをした巨大な屋敷。敷地だけで東京ドーム処か、夢の国がすっぽりと入りそうな程の広大な領地に建てられたその屋敷はとある一族の屋敷である。その屋敷に住むのは勿論、日本の長距離部門の名門と言える財閥一族 メジロ家。その屋敷であり、メジロ家の者達は寮暮らしをしているトレセン学園の生徒を除いてこの屋敷で暮らしている。

 

「お嬢様。トレセン学園まで御送りします」

「ええ、ありがとう御座いますわ」

 

そんな屋敷の入口付近。そこに一台のリムジンが停まっており、そのリムジンの前には1人の小柄な小学生のウマ娘が乗り込もうとしていた。そのウマ娘は葦毛の髪色をしており、何処と無くゴルシに似ている気がする。当然だ、彼女はゴルシの祖母となる女性なのだから。

 

彼女の名前はメジロマックイーン。今は私立のお嬢様御用達の小学校に通う小学生では有るが、その身に宿る素質は素晴らしくメジロ家最高傑作と称されており…現当主メジロティターンの愛娘でも有るのだ。

 

そしてマックイーンは運転手の男性の運転するリムジンで、トレセン学園に向かったのだった。

 

 

 

 

一方のトレセン学園。マックイーンがトレセン学園に向かった訳だが、これには訳がある。と言うのも、今日は特別な日でありトレセン学園関係者以外でも受付を通さなくて入ることが赦された特別な日であり、一種のお祭りでもあるのだ。

 

それは春の文化祭。又の名をファン感謝祭。3月の末に行われる行事であり、トレセン学園の文化祭は春と秋に行われる。そして文化祭は同時にファン感謝祭でもあり、多くのファンの皆様が自分達が推しているウマ娘達に会いたいが為にやって来るのだ。

だが、文化祭は一部の小学生や転入を考えてる地方トレセンのウマ娘からすれば唯の文化祭ではない。何故なら、トレセン学園は滅多に入ることが許されないので…言うならば入学前にトレセン学園を見ることが許されたオープンスクールでも有るのだ。

 

「へーい!!らっしゃい!!焼き蕎麦が美味しいよ!!ゴルシちゃん特性の焼き蕎麦だよ!!」

「本場の大阪育ちのお父ちゃんから教わった、たこ焼きや!!それと、お母ちゃんから教わった広島風のお好み焼きもあるで!!」

 

文化祭は2日間行われ、所属チームやサークル(他の学校で言えば部活)事に出店を開くことが出来る。勿論、出店を開く限り…売れれば利益は出るために利益が出ればウマ娘達のお小遣いと成るのだ。その為か、各チームやサークルのウマ娘達はお小遣い稼ぎの為にお店を頑張るのだ。そして、それはゴールドシップが所属するチームスピカも例外では無いのである。

 

チームスピカはチームスピカの部室であるプレハブ小屋の前をスペースとして、野外喫茶店を行っていた。料金は前払い式であり、ゴルシとタマモクロスが鉄板焼を担当、ホールスタッフをディープインパクトとフジキセキとメジロアルダンが担当、ハルウララとオグリキャップが客呼び、スペシャルウィークとミスターシービーが会計スタッフ、そしてアグネスデジタルとアグネスタキオンのタキオンコンビがお隣でフリーマーケット兼タキオン博士の科学コーナー。そして店長をトキノミノルが務め、トキノミノルとドラえもんが飲料担当である。

 

「お嬢様。此方、当店自慢のブルーマウンテンです」

「いや、それ普通のネスカフェや」

 

しかし…我等がチームスピカ。衣装にも当然ながら拘っており、気合いが違う。当たり前だが、小学6年生が文化祭にやって来てチームスピカを気に入りスピカに入りたいと思ってくれれば来年の新人は確保できたも同然だ。

 

鉄板焼担当のゴルシとタマモクロスは板前が着るような衣装。なお、板前衣装を用意したのはゴルシ。

 

ホールスタッフのフジキセキ、ディープインパクト、アルダンはアルダンが実家から取り寄せた執事服とメイド服。フジキセキとディープインパクトが執事服であり、アルダンがメイド服だ。

 

客呼び担当のハルウララとオグリキャップは何時も通り。

 

会計スタッフであるスペシャルウィークとミスターシービーもメイド服。

 

店長であるトキノミノルは何時も通りの緑スーツ、ドラえもんは首元に蝶ネクタイを着けていた。

 

そしてアグネスデジタルとタキオンは何時も通りの服装である。

 

「お客様…此方、厨房スタッフ一押しのゴルシちゃん特性明石焼きです」

「きゃ~ーー!!」

 

「お嬢様。此方、タマモクロスお薦めのたこ焼きです」

「くぅぅぅーー!!」

 

「此方、店長特性のネスカフェのカフェオレです」

「うひょょょょ!!」

 

だが、美男美女がコスプレ衣装で接客を行ってくれる事は注目を集めるのだろう。フジキセキは元からクールビューティーだし、ディープインパクトは数少ない男性ウマ娘、そしてメジロアルダンはスタイル抜群の美少女。彼女達を目当てに、多くの人々がやって来たのは言うまでもない。

 

そして後日、3人の写真はゴルシの手でデジタルのやる気を出すために使われるとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、行きますわよ!!」

 

メジロマックイーン。トレセン学園に到着…そして。

 

「私が一番なんだから!!」

 

何処から見てもスタイル抜群で、本当に小学生と言いたげなツインテールのウマ娘も到着。あと、ランドセルを背負ってる……体つきは高等部から大学生だが。

 

「楽しみだぜ!!」

 

父親のバイクの後ろに掴まり、ボーイッシュなウマ娘の少女も到着。此方もランドセルを背負っている。

 

「ライス……楽しみだな。サンデーおじさまから誘われたし…頑張るぞ!!」

 

ランドセルを背負い、少し暗い少女もトレセン学園の門を潜る。なお、彼女はスペシャルウィークとディープインパクトの母方の従妹でもある。

 

「夫と子供達が心配で」

「息子と孫が心配で」

「兄ちゃんと姉ちゃんに会いたくて」

 

そしてサンデーサイレンスの嫁、養父、末っ子ことゴルシの未来の父親。トレセン学園に到着!!




次回…マックイーンや時期1年生…続々と現れる!?

あとライスは史実で大真面目にスペちゃんの従兄弟です


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その日…祖母は未来の孫に出会った

遂に…出会う!!


「流石はラモーヌ御姉様が卒業したトレセン学園。今はライアン、ドーベル、分家のアルダンが通ってる所ですが人は想像よりも多いですわね」

 

メジロマックイーン、11歳。私立のお嬢様学校に通う程のお金持ちな少女。御存知、ゴルシの将来のお婆様である彼女は付き人を付けず財布をポケットに入れてトレセン学園を歩いていた。

 

「チームベガのフランクフルトいかがですか?おい、そこのオグリみたいな葦毛のウマ娘。フランクフルト買っていけよ、炭火で焼いたジューシーな逸品だ」

 

「チームアルタイルの人形焼きいかがですか?」

 

「はーい!!買った買った!!チームベテルギウスの油そばだよ!!美味しいよ!!」

 

「チーズという名の核兵器!!チームレオのフィッシュアンドチップスはいかが?」

 

メインストリートではオグリキャップと同学年であるサッカーボーイが所属するチームベガを初め、多くのチームが出店を出していた。確かにメインストリートに店を出すのは賢いと言えるだろう。メインストリートは人が多く通るし、店を出してない生徒や教員は勿論のこと感謝祭にやって来た多くのファンや子供達が必然的に通る。その為か、目につきやすく買ってくれやすい。

だが、メインストリートは商売がしやすいがデメリットも当然ながら存在する。メインストリートは競争も激しく、当然ながら1チームやサークルが出すブース面積は当然ながら限られる。出せても1チームに対してテント2つ分と言えるだろう。しかし、メインストリートは人が多いので客を呼び込む必要は全くないのである。

そう考えれば、メインストリートから離れた位置に有るが、スペースを広く使える部室前を使ったスピカはその分広く使えるのである。しかし、此方は客を呼び込む必要ありだが。

 

「美味しそうですわ…しかし、此処で我慢しなければ!!」

 

だが、メジロマックイーンは直ぐに体型が変わってしまう体質なのだ。食べ過ぎれば太り気味に成ってしまうので、美味しいスイーツを日々我慢する時も多々ある。メインストリートの食べ物にそそられ、ついつい手を出して買い食いをしてしまえば太り気味に成ってしまう可能性も高いのだ。

 

「おーい、そこの嬢ちゃん。買わないのか?安くするぜ」

「来たばかりですから」

 

そしてマックイーンは食べたい欲求を押さえつつ、サッカーボーイからの誘惑から逃げるようにメインストリートを後にした。

 

マックイーンが去った後、そこに新たなウマ娘の子供が2人もやって来た。そのウマ娘はどちらもランドセルを背負っており、間違いなくマックイーンと同世代だと思われる小学生だ。

 

「なんで貴方も居るのよ、ウオッカ」

「良いだろ別に?俺だって自分の志望校ぐらい見学するさ」

 

その内1人はダイワスカーレット。名門一族ダイワ家のご令嬢であり、現在はマックイーンと同じく小学6年生。ランドセルを背負っているが、背丈は中学生処か高校生ほど大きく…かなりの巨乳で本当に小学生かどうか疑わしい。最近の子供は発育が早いようだ。

 

もう1人はウオッカ。彼女はダイワスカーレットと異なり、名門の出ではない。言わば庶民と言えるだろう。彼女はダイワスカーレットと同じ学校で幼馴染みであり、小さい頃からライバルだった。女児は男児と比べて成長期が来るのが早いのか、既にスペシャルウィークと同じぐらいの背丈をしている。

 

「君たち。フランクフルトを食べていくか?」

「「食べます!!コイツより多めで!!」」

「だそうだ、サッカーボーイ!!」

「おう、勿論だハヤヒデ」

 

そしてビワハヤヒデとサッカーボーイ率いるベガは、ウオッカとダイワスカーレットを呼び込み…フランクフルトを売ることが出来たのであった。

 

 

一方のスピカ。

 

「「「えー!!スペとディープのお母さんとお爺さん!?そして弟も男のウマ娘!?」」」

「ええ、何時も2人と夫がお世話に成ってます」

 

スピカが経営する野外喫茶店。そこには北海道から遠路遙々駆け付けたお客さんが3人もやって来ていた。

 

スペシャルウィークとディープインパクトの母親であり、サンデーサイレンスの妻であるキャンペンガール。

 

「息子と孫から君達の事は良く聞いてるよ。自慢の生徒だとね」

 

流暢な日本語を話す白人金髪で筋骨隆々な老人であるサンデーサイレンスの養父アーサー。サンデーサイレンスにCQCを伝授したことから、元は凄腕のマリーン疑惑がある。

 

「姉ちゃん達、俺、ステイゴールド。宜しくだぞ」

 

サンデーサイレンスとキャンペンガールの末っ子であり、未だ幼稚園児な幼子ステイゴールド。後のゴールドシップの父親であるが、その真実は三女神の手で存在しない記憶を見たゴルシとドラえもんしか知らない。

 

だが、そこにはサンデー一家とは別のウマ娘も混じっていた。その子はランドセルを背負っており、間違いなく小学生だろう。そして…

 

「この焼き蕎麦とたこ焼き、お好み焼き美味しい!!」

 

その子はライスシャワー。キャンペンガールの妹の子供であり、スペシャルウィークとディープインパクトからすれば従妹の関係に有る小学生だ。

 

しかし、ライスシャワーは良く食べる。ディープインパクトやスペシャルウィークよりは食べないが、それでも数人分の焼き蕎麦とお好み焼きを完食しており、間違いなくフードファイターの称号を得れるだろう。

 

「やベーな。あの娘、めちゃくちゃ食うぞ。オグリ、スペ、ディープ、そしてサンデーのおっさんと言う四天王が居るからあんまり驚かないけど」

「エグいな…あの娘だけで5000円位食べてるで」

 

キャンペンガールの隣に座り、フードファイター並みに食べるライスシャワーを眺めながら、厨房からそう言うゴルシとタマモクロス。そんな時だった…ゴルシはとある少女を見付ける。

 

「あっあれは!?タマモ、此処は任せた!!」

「ゴルシ!?」

 

それはトレセン学園のパンフレットを持って探索を行う若き頃の祖母 メジロマックイーンであった。

ゴルシとドラえもんのタイムトラベルも元を言えば、マックイーンに会うためにゴルシが始めた事だった。会いたかった念願の祖母…そんな祖母に真っ先に話したくなったゴルシは厨房をタマモクロスに任せ、マックイーンの所まで全速力で走って向かった。

 

「マックイーン!!会いたかったぜ!!ピスピース!!」

「だっ誰ですの!?」

「アタシはゴルシちゃん!!マックイーンに会うために、歴史を変えちゃった乙女だぜ!!」

 

祖母(11歳)と孫(19歳)遂に出会う。




次回!!ゴルシ、ドラえもん、オグリ、アルダン、スペ。グッバイヘイローデザイナー事務所に向かう。

オグリ、アルダンの勝負服の受け取りとスペの勝負服の発注。キングヘイローのお母様が登場!!

そしてサンデーサイレンス…その出生が明らかに!?

スペちゃん「私とキングちゃんが従姉妹!?」

そして明かされる…70年前にも男性ウマ娘は居たことを。

ヘイルトゥリーズン「俺が見えるのか?孫、曾孫が心配でな…気が付けば此処の呪縛霊に成っている」
マンハッタンカフェ「うん」

???「ごめんなさい…今さらお姉ちゃんって呼んでなんて言えないわ」

グッバイヘイロー曰く…サンデーパパの実母もろくでもなかった!?


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勝負服デザイナーのグッバイヘイロー

長いので2つに分けます。


「あっ?俺様に勝負服だ?」

 

サンデーサイレンスが現役時代の頃だった。当時のアメリカにも勝負服の概念は存在しており、多くのスター選手は勝負服を着てはG1レースに挑んでいる。

 

では此処で勝負服についておさらいしておこう。勝負服とは読んで字の如く、ウマ娘達がG1等の肝心なレースの際に纏う専用のレース衣装の事である。この勝負服だが、中には走るには向かないようなデザインの物もあるが、問題はない。ウマ娘達は自分専用の勝負服を纏うと、心の奥底から不思議な力が巻き起こり問題なく走ることが出来るのだ。言わば、バフを授ける衣装と言えるだろう。

 

だが、この勝負服。今はトレーナーやトレセン学園が援助してくれるとは言え、かなり高額だ。摩擦に強く、ウマ娘が全力疾走しても絶対に破ける事は無い程に頑丈だが、高額な逸品。おいそれと、庶民は援助無しで手出しが出来ないものだ。一応そんな庶民出身の生徒の為か、日本のトレセン学園では汎用勝負服(又の名を支給ライブ衣装)を無償で貰えるのだが…どうせならば自分で選びたいものだ。

 

しかし、サンデーサイレンスが青い春を過ごしたのはアメリカ。救急車さえ貧しい家庭の人は呼ぶことが出来ず、保険だって日本と違って高額な所だ。汎用勝負服なんて物は存在せず、サンデーサイレンス少年は体操服で初めてのG1に出場し、体操服で勝ってしまった。孤児院での扱いは酷かったわ、養父には出来るだけ迷惑をかけたくない為に高額な金が必要な勝負服は着ないつもりだった。

 

学食で飯を食べれば後ろ指を指される。外で食べても男のウマ娘である自分が気味悪いのか、多くの人に聞こえるように陰口を言われる。だから何時も通り、サンデーサイレンスはアメリカトレセン学園の屋上でお気に入りのハンバーガー(バーガーキングのスモーキーBBQ)をコーラで流しながら昼食を食べている最中だった。

 

「ええ、そうよ。貴方またG1に体操服で出るつもり?あのね、G1は特別なレースなの!!最高峰のレースなのよ!!」

 

そんなサンデーサイレンスの前で説教を行うのはサンデーサイレンスの先輩であるグッバイヘイロー。彼女は殺人の容疑で捕まった男のウマ娘ヘイローと、その何番目かの妻であり地元ではキチ◯イとして有名なウマ娘との間に産まれた少女だ。

グッバイヘイローはヤヴェー父親、ヤヴェー母親のお陰か大変な幼少期を過ごしており…かなりしっかりした生徒だ。G1を何度も勝ってるし、将来設計も纏めてるし…デザイナーの技術を独学で学ぶほどの秀才だ。

 

「民度は最低だったけどな」

 

ハンバーガーを貪り、サンデーサイレンス少年は前回のレースを思い浮かべる。

 

先日、サンデーサイレンス少年が出たのはサンタアニタダービー。G1レースであり、アメリカのダービーとも言えるケンタッキーダービーの前哨戦とも言えるジュニアC限定のG1レースだ。しかし、庶民のサンデーサイレンスは勝負服を買えるお金が有るわけがなく…仮に有っても食費と貯蓄、両親への仕送りで消えていくために勝負服に使えるわけがないので体操服で出場。

当然ながら、サンデーサイレンスは唯一の男性ウマ娘の競技者なので差別主義者からは大ブーイングの嵐。しかも1人だけ体操服で出たので、悪い意味で目立ちサンデーサイレンスは笑い者と成ってしまった。しかし実力で黙らせ、サンデーサイレンスとは真逆の存在と言えるイージーゴア(家柄良し、血統良し、体格良し)のファンから生卵を投げられたのは覚えている。

 

「で、先輩。俺に勝負服は勿体ない。金もないしな。そんな大金、食費と仕送りで消えていく」

 

1つ目のハンバーガーを食べ終え、2つ目のハンバーガーを貪るサンデーサイレンス。

 

「金は要らないわ。だって…私が初めて作った勝負服だから」

 

グッバイヘイローはそう告げて、サンデーサイレンスに1つの紙袋を手渡す。その中にはグッバイヘイローが人生で初めて作った勝負服が入っているのだ。

 

「約束して…これを着るなら…絶対にアメリカの頂点に立って」

 

その勝負服は黒いコート、黄色のラインが入った灰色のスーツであった。

 

「ああ、アーサーとの約束でもあるしな」

 

サンデーサイレンスはその勝負服を受け取り、翌月のケンタッキーダービーを制覇する。

 

 

 

 

現代 東京都港区麻布。そこにキングヘイローの母親と成ったグッバイヘイローのデザイナー事務所が存在する。

 

「今日来るのよね…あの子達」

 

グッバイヘイローは多くのウマ娘達の勝負服をデザインしてきた。近年の代表作と言えば二代目無敗の三冠馬 シンボリルドルフの勝負服であり、個人的に納得の行かない勝負服はナリタブライアンの勝負服である。因みにナリタブライアンの勝負服が納得行かないわけはと言うと、ナリタブライアンが勝負服の裾を腕力で引きちぎった為である。

 

「今日予定が空いてるから良いけど、他の日は予定がビッシリ詰まってるのよね」

 

グッバイヘイローは業界トップのデザイナー。予定はかつかつぎっしりと埋っており、今日のようにスケジュールに予定が有るのは大変珍しい。今日もお客がやって来るが、今日やって来るお客は1組だけだ。1組だけの時は本当に珍しく、普段はトレセン学園関係者等がなん組も勝負服の依頼や採寸等でやって来るのだから。

 

「だって…サンデーの娘とそのチームメイトが来るのだから」

 

グッバイヘイローにとってサンデーサイレンスは特別な後輩だった。それもその筈、サンデーサイレンスは知らないが実はグッバイヘイローとサンデーサイレンスは同じ両親を持つ姉弟であり…言わば生き別れた姉弟なのだ。

 

弟は何もかもグッバイヘイローを超えていた。選手としての強さも、指導者としての実績も。そんな弟を絶対に認めない母国をグッバイヘイローは嫌いだった。だから、今、彼女は母国を捨てて日本を拠点にして仕事を行っている。

 

 

ピンポーン!!

 

チャイムが鳴る。どうやら予定より少し早く、姪であるスペシャルウィークがオグリキャップとメジロアルダン、そしてサンデーサイレンスが勧めてきたゴールドシップとドラえもんと共にやって来たようだ。

 

グッバイヘイローは手帳を閉じて、外で待つ彼女達の所に向かう。グッバイヘイローが先程まで座っていたデスクには1枚の写真がケースに納められ、大事に飾られている。その写真は勝負服を着てケンタッキーダービーを優勝したサンデーサイレンス、そしてサンデーサイレンスを挟むように写るアーサーとグッバイヘイロー…観客ゼロの3人だけの優勝写真であった。




次回こそ、オグリとアルダン、勝負服を受け取り、スペちゃんは勝負服を依頼する。



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ダイジェスト式 ざっくりとした改編前の歴史

ざっくりです。


2000年代初頭。

 

サンデーサイレンス急死。その結果、トキノミノルは別のトレーナーに引き取られて合わない練習で身体を壊し、日本ダービーで電撃引退からのトレセン学園自主退学。そしてチームスピカは解散。

 

サンデーサイレンスの遺児であるスペシャルウィーク誕生。しかし、その5日後…スペシャルウィークの母でサンデーサイレンスの妻であるキャンペンガール急死。スペシャルウィークは両親を失い、母の親友であるティナ(原作お母ちゃん)の養子と成る。勿論、身柄を守るためにサンデーサイレンスの娘である事は完全秘匿であり知ってるのはティナとグッバイヘイロー、そして駿川たづなと成ったトキノミノルだけ。

 

トキノミノル、大学に進学して理事長ノーザンテーストの庇護下で駿川たづなと偽名を名乗る。

 

2010年代。

 

スペちゃん、原作お母ちゃんの所ですくすくと成長。だが、サンデーサイレンスが居ないのでディープインパクトとステゴは産まれていない。

 

トキノミノル改めて駿川たづな、理事長秘書としてトレセン学園に戻る。

 

スペちゃん、中学2年生となりトレセン学園に編入。

 

 

スペちゃん転入後。

 

サンデーサイレンスが居ないので管理主義体制ばかりとなり、管理体制が合わない生徒が満足行く練習が出来ないトレセン学園となる。

 

スペちゃん、チームに入れず路頭に迷う。だが、そんなスペちゃんを見た駿川たづなはスピカの復活を決意し…ちゃっかり取っていたトレーナーライセンスを使ってスピカを復活させる。

 

たづなさん、スペちゃんをスピカに誘う。勿論、管理主義の合わなかったオグリキャップも誘う。スペちゃんとオグリ、チームスピカに入る。

 

フジキセキ、リギルを退部してトレセン学園を退学。代わりにエルコンドルパサーがリギルに加入する。

 

オグリ、クラシックの挑戦権が獲られずクラシック戦線に参加できない事を知る。

 

メジロアルダン、管理主義の指導のお陰かガラスの脚が遂に壊れる。日本ダービーで右足を骨折。

 

オグリ、有馬記念を勝利。

 

 

スペちゃんクラシック戦線。

 

 

 

マックイーン、入学。マックイーン、リギルのテストを受けるがトウカイテイオーに負けてリギルに入れなかった。

 

そしてマックイーン。たづなさんとスペちゃん、オグリの手で拉致してスピカに強制入部。

 

スペちゃん、皐月賞と菊花賞はセイウンスカイに負ける。だが、日本ダービーを制覇する。

 

オグリ、ジャパンカップで惨敗。オグリキャップは終わったと世間から言われる。

 

幽霊の見える少女マンハッタンカフェ、お友達?に頼まれてスピカに入る。

 

マンハッタンカフェ…お友達?が憑依してオグリキャップにこう告げる。

 

「お前、自分が誰なのか分かってるのか?お前はオグリキャップだぞ。俺様のたった1人の教え子の教え子だぞ?」

 

お友達?の言葉を受けてオグリキャップ完全復活。有馬記念を圧勝する。

 

 

ディープ不在のクラシック。皐月賞をコンゴウリキシオー、ダービーをアドマイヤジャパン、菊花賞をリトンココンが制覇する。

 

ライスシャワー、入学。スピカに入る。

 

ブロワイエことモンジュー、凱旋門賞を制覇。続いてジャパンカップも狙う。

 

お友達?再びマンハッタンカフェに憑依し、スペちゃんを鍛え出す。

 

「ありがとう。元気に育ってくれて…俺様、もう現世に悔いはないわ」

 

お友達?スペちゃんがモンジューを破り、ジャパンカップを制覇したのを見届けて成仏。

 

 

 

マックイーン。天皇賞(春)や天皇賞(秋)を制覇するが、難病と言える故障を患い…現役引退。

 

ライスシャワー。宝塚記念で大怪我を負い、選手生命を喪う。

 

スペちゃん、高等部卒業の際にたづなさんの正体がトキノミノルと知らされ、トキノミノルから父親サンデーサイレンスの事を教えてもらう。

 

 

メジロ家…没落していく。

 

アルダン、中国の資産家と政略結婚。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴルシとドラえもん。タイムスリップしてサンデーサイレンスとトキノミノルと出会う。




改編前の歴史を番外編に出すのは…アンケート次第ですね(笑)このままじゃエレジーが先に成りますが


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勝負服は大事だよ…そして史上2人目の変則三冠馬の誕生

グッバイヘイロー…語る。


高級住宅街の一等地に存在するグッバイヘイローのデザイナー事務所。連日、トレセン学園関係者は勿論のこと、有力チームのトレーナーや有力選手が勝負服の採寸や依頼等で訪れるウマ娘の勝負服の一大ブランドを僅か一代で築いた所だ。

 

そこにやって来たゴルシ、ドラえもん、オグリキャップ、メジロアルダン、スペシャルウィークは家主であるグッバイヘイローの案内で事務所の応接間に案内される。

 

「はじめまして。私がグッバイヘイローよ」

 

グッバイヘイロー。遂に念願とも言える姪っ子であるスペシャルウィークとそのチームメイトと出会う。グッバイヘイローとしてはスペシャルウィークが産まれる前から、スペシャルウィークの事を知っているが、実際に会うのはスペシャルウィークが赤ん坊の頃以来だと言えるだろう。

 

「アタシは次元を超えてやって来たスーパーウマ娘、ゴールドシップだ!!ゴルシちゃんって呼んでくれよ!!」

「ゴルシちゃん。ふざけないで真面目に挨拶してよ…。

初めまして。僕はドラえもんです」

「初めまして!私、スペシャルウィークです!!本日は宜しくお願いします」

 

ゴルシとドラえもん、そしてスペシャルウィークはグッバイヘイローと初対面だ。まあ、スペシャルウィークに関しては赤ん坊の頃にグッバイヘイローと会っているために、厳密には十数年振りと言えるが、スペシャルウィークからしたら実質的に初めましてと言えるだろう。

 

「あの…私達の勝負服の受取に来ました」

 

とは言え、アルダンとオグリキャップは以前にグッバイヘイローと会っている。2人は先日に、サンデーサイレンスに連れられてグッバイヘイローの事務所にやって来たのだ。理由は今日受け取る勝負服の採寸と依頼である。

 

「ええ、勿論出来てるわよ。はい、これが貴方達の勝負服ね。メジロ家の人には御抱えの職人が居たから、メジロ家の競技者の勝負服を仕立てるなんて初めてだったわ」

 

グッバイヘイローは事前に用意していたグッバイヘイローデザイナー事務所のロゴが入った紙袋をオグリキャップとメジロアルダンに手渡した。この紙袋の中には2人の勝負服が入っており、グッバイヘイローが手掛けた2人にピッタリの勝負服が入っているのである。

グッバイヘイローが手掛けた勝負服は業界トップ故に高額。しかし、ご安心を。既にトキノミノルが払ってくれてるのでオグリキャップはお金を支払う必要は無いのである。

 

オグリとアルダンは早速貰った勝負服を確かめるために、紙袋から勝負服を取り出した。

 

「凄い…」

「これが私達の…」

 

オグリキャップの勝負服はセーラー服を模した白い勝負服であり、メジロアルダンは黒い貴族風のドレスを模した勝負服であった。勿論、この2つはグッバイヘイローがデザインした物である。

 

「試着する?」

「「良いんですか!?」」

 

折角勝負服を貰ったのだ。早速、勝負服を着たくてウズウズしてきたオグリとアルダンはグッバイヘイローからの提案を受けて、年相応の笑みを浮かべたのだ。

 

グッバイヘイローはそれを見て、指を鳴らす。すると、応接間に使用人と思われる家政婦さんが1人入ってきた。グッバイヘイローデザイナー事務所はグッバイヘイローとその家族の住居でもあり、そこそこの使用人も働いているのである。使用人はデザイナー事務所の従業員ではなく、グッバイヘイロー達の代わりに家事を代行する、言わば家政婦さんなのだ。

 

「この2人を試着室に案内して」

「分かりました。御二人様、此方です。案内します」

 

オグリとアルダンは使用人に案内されて、勝負服を試着する為に試着室に向かっていった。そして、応接間にはグッバイヘイローとゴルシ、ドラえもんとスペシャルウィークだけが残された。

 

「さてと…そろそろ良いか」

 

ゴルシはポツリと囁いた。そう、ドラえもんとゴルシにはもう1つ目的が存在していたのだ。今日の目的はオグリキャップとメジロアルダンの勝負服の受け取り、スペシャルウィークの勝負服の採寸と予約なのだが…2人はもう1つ有るのだ。

 

「だね、ゴルシちゃん」

 

それはゴールドシップの祖父 サンデーサイレンスの真実を聞こうと言うことである。

サンデーサイレンスはゴルシとドラえもんには言っていた。ヘイローという狂暴な男性ウマ娘が自分と瓜二つであり、そのヘイローが自分の父親なのではないのかと。そのヘイローは娘や息子(公に判明している息子は全員ヒト息子…つまり人間)が沢山居ており、グッバイヘイローはそのヘイローの娘の1人なのだ。

 

「ゴールドシップさん?ドラえもん?」

「どうしたの?」

 

だが、そのサンデーサイレンスの出生をサンデーサイレンスの為にも明らかにしたいゴルシとドラえもんの思惑をスペシャルウィークとグッバイヘイローは知らない。その為か、突如として様子が変わった2人を見て首を傾げた。

 

まあ、タイムテレビを使えばサンデーサイレンスの出生は一瞬で明らかに出来る。だが、それは最終手段だ。だからこそ、ゴルシとドラえもんは真相を知っていると思われるグッバイヘイローに直接聞く手段を選んだのだ。

 

「なあ、スペがこの場に居るから聞くけど。アンタ、この人の娘なんだよな?」

 

ゴルシがそう問いかけ、ドラえもんは四次元ポケットから1枚の写真を取り出してグッバイヘイローとスペシャルウィークに見えるように机の上に置いた。

その写真はサンデーサイレンスが持つ古新聞に印刷されてある男性ウマ娘 ヘイローの写真だったのだ。勿論、サンデーサイレンスから現物は借りてきていない。ちょっと新聞を借りてコピー機で印刷した物である。

 

「えっ!?お父ちゃんそっくり!!」

 

当然、ヘイローの存在を今まで知らなかったスペシャルウィークは写真を見て驚いた。当たり前だ、ヘイローとサンデーサイレンスは似ているでは良い表せない程に瓜二つだったのだから。強いて違いを言うとすれば、ヘイローは迫害故か人間に失望しつくした眼をしており…サンデーサイレンスはアーサーという養父と巡り会えた為か瞳は輝いて死んでいない点だろう。

 

「どこでこの写真を?確かに私の実父は彼よ」

「じゃあ、答えてくれ。サンデーのおっさんの代わりに聞くが、アンタはおっさんの姉なのか?」

 

数秒程の沈黙。

 

そこでグッバイヘイローは大きな溜め息を吐き出した。

 

「ええ、そうよ。私もその事を知ったのは10歳位の事ね。

私とサンデーは年子の姉弟なの。でも、私の両親は本当にろくでもない人物だったわ。お父様は育ちの関係で仕方ないとは言え、母は万年なアメリカパリピで遊んでばかり…そうね」

 

グッバイヘイローはサンデーサイレンスとの姉弟関係を認めた。そして、困惑するスペシャルウィークの方を向いて彼女は優しそうな笑みを浮かべて口を開いた。

 

「スペシャルウィークさん。サンデーの娘である貴女には全てを話さなくては成らないわね」

 

グッバイヘイローは覚悟を決めたのか、教えてくれた。

 

「男性ウマ娘はサンデーや父の以前にも存在していた。恐らくは、彼が史上初の男性ウマ娘よ。事実、世界中を見回しても男性ウマ娘は彼の血を引くウマ娘でしか誕生していない」

「「「その人は?」」」

「ヘイルトゥリーズン。私の祖父であり、ヘイローの父親。そして世界で初めて産まれた男性ウマ娘よ」

 

ヘイルトゥリーズン。初めて聞く名前にスペシャルウィークは勿論、ゴルシとドラえもんも困惑する。

 

「ヘイルトゥリーズンは第二次世界大戦中、強引に戦争に駆り出されたと聞いてるわ。

初めての男性ウマ娘…気味悪がれたも当然でしょうし、なにより彼は余りにも狂暴だったと聞いてるわ。そんなヘイルトゥーリーズンも終戦間際に結婚し、1人の子供が産まれた。それが私達の父親であるヘイロー」

 

ヘイルトゥリーズンはヘイローが普通のウマと思える程に狂暴だったそうだ。しかし、これはグッバイヘイローも聞いた話でしか分からないから真実かどうかは分からない。しかし、そんなヘイルトゥリーズンも結婚し、1人の子宝を授かる。それがヘイローであった。

 

「私達の曾祖父と本当のお爺ちゃん…」

「ヘイローは寂しがりやだったんでしょうね。私が言うのもアレだけど…アメリカは自由の国なんかじゃない。差別や格差等が未だ残る国なのよ。アメリカで夢を掴み取れるなんて極一部……そんな国に彼の自由なんて無かった。

そんな国だからこそ、ヘイローは差別で性格が歪んでしまった。でも、彼は寂しがりやだったんでしょうね…結婚と離婚を何度も繰り返していたわ。その為か、私達には腹違いの兄弟が多かったの。その中でも、男性ウマ娘として産まれた子供はサンデーサイレンスただ1人だったわ」

 

ヘイローは寂しがりやだったのだろう。離婚と再婚を繰り返し、多くの子宝に恵まれていた。サンデーサイレンスやグッバイヘイロー、そしてリギル所属のタイキシャトルの母親と言った多くの子供を世に送り出した。しかし、数多くの子供が居るとは言え…男性ウマ娘として産まれたのはサンデーサイレンスただ1人である。

 

「私とサンデーサイレンスの母親は気が違うと言える頭の可笑しい女だったわ」

「つまりキチガイ?」

「そうよ、キチガイよ」

 

そしてサンデーサイレンスの母親はキチガ◯な女性だった。

 

「母は毎日遊んでいた。毎日…毎日遊んでばかりで子育てなんてしない。私は母親の異なる姉や兄の支援でなんとか大きくなったけど、母は毎日遊んでいた。

そんなある日…私が10歳の頃ね、酔った母が言ったのよ。私に1つ下の弟が居たけど赤ん坊の頃に気味が悪くなって捨てたと」

 

その母親は毎日遊んでばかり居た。グッバイヘイローの面倒を見ず、毎日遊んでばかり居たのだ。だが、幸いにもグッバイヘイローの近所には腹違いの兄や姉が住んでいた。そんな兄と姉のお陰かグッバイヘイローは性格が歪むことは無かった。だが、ある日のこと…グッバイヘイローは酔っ払った母親から聞いてしまったのだ、弟が居り…その弟は産まれてすぐに気味が悪いから捨てたそうだ。

 

「その弟って……まさか」

「ええ、サンデーサイレンス。御存知、貴女の父親よ」

 

その弟はサンデーサイレンスだったのだ。サンデーサイレンスは今はそうでもないが、産まれたばかりのサンデーサイレンスは脚が内側に曲がっていたのだ。その上、ヘイルトゥリーズンやヘイローと同じく男性ウマ娘として産まれた。気味が悪くなった母親はサンデーサイレンスを捨てたのである。

 

「私は直ぐに兄達の力を借りてサンデーを探したわ。サンデーは直ぐに見付かったの…でも、その頃は既に彼はアーサー・ストローに引き取られて幸せに過ごしていたわ」

 

グッバイヘイローは兄達の力を借りてサンデーサイレンスを探した。サンデーサイレンスはメリーランド州でストロー夫妻の元で幸せに育っており、グッバイヘイロー達はサンデーサイレンスの幸せを優先するために自分達の事を明かさず…その場を去ったのである。

 

「これがサンデーサイレンスの出生の話よ。此処からはサンデーの方が詳しいと思うわ」

 

話し終えたグッバイヘイローは憑き物が落ちたように、どこか安堵した顔をした…だが。

 

「グッバイヘイローさん…いえ、おばちゃんはそれで良いの?」

「スペ!?」

「スペちゃん!?」

 

スペちゃんは違った。

 

「お父ちゃんのお姉ちゃんなんでしょ?今更でも遅くない!!お父ちゃんに真実を…おばちゃんから話して!!そうしないと、おばちゃんもお父ちゃんも絶対に後悔する!!」

「でも…私はサンデーを助けることが出来なかった!!たった1人の弟が世間からバッシングされ続けても…私は普通に接する事しか出来なかった!!アメリカの頂点にサンデーが立っても批判は止まらなかった!!批判を止められなかった!!止まないバッシングに異を唱える事が出来なかった!!私は……たった1人の弟を守ることが出来なかった!!

お姉ちゃんだよ…って言えなかった!!今日まで、姪である貴女にも伯母である事を言えなかった!!私は…姉失格なのよ!!」

 

「違います!!」

 

グッバイヘイローの言葉を否定し、スペシャルウィークは告げる。

 

「貴女は未だ姉を失格してません!!でも…このままじゃ、本当に先輩と後輩で終ってしまう。お父ちゃんは貴女に感謝してます!!昨晩だって勝負服の話題を出せば、貴女に作って貰った勝負服を着てダービーを制覇した時の話を嬉しそうにしてくれます。

弟の為に頑張った貴女は立派な姉です!!同じ男性ウマ娘を弟に持つウマ娘として断言できます!!」

 

ありがとう……グッバイヘイローは一粒の涙を流して身体を震わせた。

 

「なあ、ドラえもん。アタシ達…空気じゃね?」

「だよね、ゴルシちゃん」

 

なお、ドラえもんとゴルシ。空気となる!!

 

 

一方の事務所の外。

 

『お前…俺が見えるのか?』

「うん」

 

コーヒー豆の入ったビニール袋を持ったトレセン学園の生徒は…サンデーサイレンスそっくりの幽霊と遭遇していた。

 

『そうか…俺が見えるのか…フフフハッハハハ!!良し、やっと話し相手が出来た。俺の名前はヘイルトゥリーズン大佐だ。なに、曾孫と孫が心配でな…現世をプラプラしてた所だ!!』

「私はマンハッタンカフェ。宜しくね、お友達さん」

 

彼と彼女がスピカに合流するのは未だ先の話である。

 

 

 

 

そして…

 

4月 皐月賞。

 

『オグリキャップ先頭!!オグリキャップ先頭!!勢いは停まらない!!』

 

オグリキャップ。クラシックの1戦目 皐月賞を制覇する。

 

5月 NHKマイル。ジュニアCクラスしか参戦できず、元はクラシックを走れない外国籍や地方競馬出身のウマ娘のクラシック代わりとして作られたレースだ。しかし、現在はサンデーサイレンスが頑張ったお陰か、外国籍でも地方競馬出身のウマ娘もクラシックに出れるように成ったので…今となってはジュニアCクラスのマイル王決定戦とも言える物に成った。

 

『オグリキャップ!!抜け出した!!サッカーボーイ追い付けない!!一気に突き放す!!今、オグリキャップゴール!!』

 

オグリキャップ。クラシックのマイル王決定戦と言えるNHKマイルも制覇する。

 

そして…日本ダービー。

 

『オグリキャップ!!メジロアルダンを差しきった!!ぐんぐん突き放す!!オグリキャップ!!今、ゴールイン!!

スポーツ庁大臣クリフジ以来となる、変則三冠馬の誕生だ!!』

 

変則三冠馬。それはクラシック戦線しか出れないレースを3つ、どれかを制覇する事を指している。本来、クラシックは皐月賞、日本ダービー、菊花賞…トリプルティアラなら桜花賞、オークス、秋華賞の3つづつだ。

だが、変則三冠馬はそれらとNHKマイルを含めた7つの内、3つを制覇する事を示している。これを達成したのはオグリキャップ以外では50年前現役だったスポーツ庁大臣であるクリフジただ1人。クリフジはオグリキャップと異なり、日本ダービー、オークス、菊花賞を制覇して変則三冠馬と成っている。

 

 

「オグリキャップさん!!やはり、菊花賞も出場して史上初!!三冠馬と変則四冠馬を目指すのですか?それとも秋華賞ですか?」

 

ダービーを制覇し、史上初2人目の変則三冠馬と成ったオグリキャップは記者会見を受けていた。記者としては菊花賞も制覇し、三冠馬+史上初変則四冠を目指すのかと期待が膨らんでいる。

 

「いや、私は菊花賞には出ません。距離が長すぎて。なので秋華賞を目指します」

「そうですか!」

 

我々の世界ではクリフジのように牝馬なのに三大クラシックを制覇する事が難しく、変則三冠馬はクリフジ以来産まれていない。

だが、ウマ娘の世界ではその気に成れば沢山出る事が可能である。何故なら、ウマ娘達は三大クラシックとトリプルティアラ(俗に言う牝馬クラシック)どっちを選択して出場するのも有なので勝つことが出来れば変則三冠馬は出てこれるのだ…勝てれば。

 

 

 

 

 

「これは不味いわね…」

 

テレビで中継を見ていたリギルのトレーナーこと東条は、参ったと言いたげに頭を抱えた。

と言うのも東条ことオハナさんはリギル所属でクラシック戦線に挑戦中である、サイレンススズカを秋華賞に出そうかと考えていたのだ。サイレンススズカはオグリキャップよりも長距離の適正はない。サイレンススズカの得意な距離はマイルと中距離だ。しかし、サイレンススズカは今までのレース…全てオグリキャップに敗北している。

 

「スズカをどうやって育てるべきか…」

 

サイレンススズカはテストに合格してリギルに入ったのではない。彼女はリギルのサブリーダーである女帝エアグルーヴの推薦で入ったのだ。だが、サイレンススズカのスピードの潜在能力は高く、東条はそれをどうやって活かそうかと…育てようかと考えている。

 

と言うか、それ以前にサイレンススズカはリギルの教育方針に余り合ってはいない。彼女はどちらかと言うと、自由に走りたい感じなのでスピカが合っているのかも知れない。

 

「サンデーさんと話し合った方が良いかも知れないわね」

 

サイレンススズカ…彼女の覚醒は未だ未だかかりそうだ。




スズカさん…どうなるの!?まあ、サンデー一族なので、そう言う事です。

ウマ娘あるある。クラシックは男女どっちでも出れる(笑)

あと、早くマックイーンを本格的に出したいので…テンポは早めに行きます。


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秋と冬のシーズンに備えよう

史上2人目の変則三冠馬の誕生。一気に世間はオグリキャップへの注目が集まった。

 

変則三冠馬。勝つべきレースは三大クラシック、トリプルティアラ、NHKマイルの7レースの内3つだけで良い。だが、変則三冠馬は達成するのが難しい点が1つ存在するのだ。それは出場するレースによってはレース間のインターバルが非常に短いためだ。

三大クラシックとトリプルティアラを狙う場合、インターバルは元から決まっている。皐月賞の次はダービーだが、その間には約1ヶ月の猶予が有り最後の菊花賞はダービーから約5ヶ月程の猶予が存在している。それはトリプルティアラも同様だと言えるだろう。だが、オグリキャップや前に変則三冠馬と成ったクリフジはその決められたインターバルよりも短いスパンで三冠を達成しなければ成らないのだ。

 

クリフジは日本ダービー→オークス→菊花賞と変則三冠を達成した。ダービーからオークスのインターバルは僅か1週間だけであり、普通はしない。

 

オグリキャップは皐月賞→NHKマイル→日本ダービーとしている。僅か約1ヶ月の間に3度のG1に出場して勝ったハイペース。普通はやらない頻度だ。

 

それにオグリキャップはクリフジよりも速いスパンで変則三冠を達成した。故に秋のクラシックにも出ることは可能であり、オグリキャップは既に秋華賞に出ることを宣言している。秋華賞に勝てれば日本史上初となる変則四冠馬の誕生だ。

 

変則四冠を達成したウマ娘は日本の歴史長いと言えど誰も達成していない。その為か、世間はシンボリルドルフがトキノミノルと同じく無敗三冠を達成した時と同じ様に注目しているのだ。

 

「サンデーのおっさん、グッバイヘイローから聞いた?」

「ああ、聞いた」

 

ある日の午後。ゴールドシップとドラえもんはサンデーサイレンスの教頭室に遊びに来ていた。教頭室ではサンデーサイレンスが物凄い速さでキーボードを高速タッピングして書類作業をしながら、度々掛かってくる報道陣からの電話に対応していた。

 

だが、変化していた点が1つある。それはゴルシとドラえもんがグッバイヘイローに真実を確認し、スペシャルウィークがグッバイヘイローを説得した為か…改めてサンデーサイレンスとグッバイヘイローが本当の姉弟と成れたのである。

窓際にはケースに納められた写真が増えていた。サンデーサイレンス、グッバイヘイロー、キャンペンガール、グッバイヘイローの旦那(当たり前ながらヒト息子)、スペシャルウィークとキングヘイロー、ディープインパクトとステイゴールド、そしてドラえもんとゴルシが写った新しい家族写真である。なお、撮影したのはアーサーお爺ちゃんである。

 

「ありがとう。お前達のお陰で、俺様はたった1人の姉を姉だと確信することが出来た。お前達のお陰だな」

 

仕事が一段落したのだろう。サンデーサイレンスは作業を中断し、缶ジュースのプルタブを開けてコーラを飲み始める。

 

「いやいや、おっさん。アタシ達じゃないだろ…スペのお陰だって」

「そうだよ、サンデーさん」

「ああ、そうだな。だけど、お前達が姉さんに言わなかったら、スペも真実を知れなかった。だから、お前達3人のお陰だな」

 

サンデーサイレンスはコーラを飲む。すると、サンデーサイレンスは1枚の書類をゴルシとドラえもんに手渡した。そこにはトレセン学園大学部(大学部はヒト息子も通えます)の教育学部に通ってる、大学四年生の青年が載っていた。青年の名前は南坂。聞いたことがない名前である。

 

「そうそう。お前達2人には先に伝えるが、教育実習でスピカにトレーナー候補の大学生が来るぞ」

「へー、スピカに来るってことはトレーナーのように自由主義を参考にしたいのか」

 

スピカにやって来る研修生は沖野以来と言える。御存知、スピカ以外のチームは何処も管理主義と言えるだろう。最強チームと言えるリギル、トレセン学園創設時から強豪チームとして有名なシリウス、何処も管理主義ばかりだ。

自由主義のスピカを選んで教育実習に訪れる大学生は今まで、沖野ただ1人だった。だから、実に十数年振りと言えるだろう。

 

「珍しいね。だって今まで居なかったでしょ?」

「沖野だけだったしな。夏休み前に来ると思うから、来週には来ると思うぞ」

 

トレセン学園は1月から始まるためか、1学期が長い。だが、その分…夏休みは長いのだ。夏休みは7月から8月末までであり、多くのチームは7月半ばから8月後半まで合宿を行う所が多い。

当然…スピカもそれは例外ではない。トキノミノルのクラシック時代は「トレーニング?俺様とお前しか居ないから、何処でやっても同じだしな」と言う事で合宿は行ってなかった。だが、今は違う。スピカは毎年、合宿を北海道で行っているのだ。北海道は避暑地として過ごしやすく、夏の熱さでバテてクラシック三冠を逃したウマ娘も多いので過ごしやすい北海道で合宿を行い…秋のG1に備えるのである。

 

「あと…スピカには入ってくれなかったが。新たに笠松から転入生が来たな」

「笠松って言うと…オグリさんと同郷の?」

 

そう、笠松と言えばオグリキャップの故郷だ。そんな笠松から転入生が新たにやって来るのである。

 

「そう。生徒の個人情報は明かせる範囲以外は明かせないが、フジマサマーチという葦毛の少女だな。

公式記録では未だダートしか走っていないが、オグリキャップに2度勝っている。まあ、笠松での話だがな」

「「マジ!?」」

 

新たに笠松からやって来たのはフジマサマーチ。笠松トレセンでは特待生だった少女であり、あのオグリキャップに2度勝ったことがあるのだ。当然、オグリキャップの実力を知るゴルシとドラえもんは驚いた。そりゃそうだ、スピカの新たなエースと成りつつあるオグリキャップを2度も倒すという記録が有れば期待も膨らんでしまう。

 

「ああ。だが、彼女の事を多くのトレーナー達は()()()()()()()()()()()()に2度勝った唯一の逸材としてしか見てなくてな……個人的に心配だ」

 

そしてサンデーサイレンスの心配は冬、現実の物と成ってしまう。

 

 

 

 

 

「マーチ!?どうして此処に!?」

 

一方のオグリキャップ。彼女はチームメイトであるスペシャルウィーク、ディープインパクト、メジロアルダン、フジキセキ、タマモクロス、ハルウララ、そしてI Loveウマちゃんと書かれたTシャツを着たアグネスデジタルと共に食堂で小さな祝勝会を開いていた。勿論、内容はオグリキャップの変則三冠達成記念である。

 

「久し振りだな、オグリ。私も中央に来たぞ」

 

しかし、そんなオグリキャップの前に葦毛で白髪の少女が現れたのだ。その少女の名前はフジマサマーチ。かつて、オグリキャップと笠松地方で競いあった、オグリキャップの笠松地方時代でのライバルだ。

 

「そうか!」

「ああ、私もチームに所属できたしな。直ぐにお前に追い付いてやるよ」

 

笠松時代でのオグリキャップに勝ったウマ娘。そんな肩書きで中央に転入してきたフジマサマーチ。勿論、彼女はチームに所属でき、近々レースに出てくるだろう。

 

「何処のチームなんだ?」

「ああ、チームアルデバランだ!!それじゃな」

 

チームアルデバラン。そのチームに所属してるのだろう。だが、そのチームの名前を聞いた瞬間…タマモクロスの表情が曇った。しかし、それに気付かず、フジマサマーチは去っていった。

 

「タマモクロスさん?」

「アカン…あのチームは結果を残せなかったら辞めさせられる…チームアルデバランはウチが追い出された所や」

 

そのチームはタマモクロスの古巣であり、タマモクロスが追い出された所のようだ。

 

「マーチ!!」

 

オグリキャップは直ぐにフジマサマーチを呼び止めようとするが、既にマーチは居なかった。




次回…南坂T登場!?そして、キングちゃんとエルちゃんチームに入る!?

えっ?未だチームカノープスないの?未だ無いです。

ゴルシ×10「出走じゃーい!!」
タマモクロス「ゴルシが増えたぁぁぁあ!!」


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番外編 ハリボテゴルシ~ エピソード0 時系列2018年

アンケートのプロローグですね(笑)


時系列2018年。

 

夜。全寮制の学校の為か…トレセン学園の厩務員の皆様は代わり番こに当直を行い、有事のトラブルに対応している。

 

「ふぁぁ…眠いな。僕、当直なんて初めてだよ」

「いーじゃねーか、ドラえもん。面白そうだしよ」

 

そんな深夜のトレセン学園の敷地を懐中電灯片手に夜回りを送っていた。ドラえもんは特例で当直の夜回りを今まで行わなくて良かったが、今日は他の厩務員の方々が有給やらどうしても外せない用事等が入ってしまい…前日に当直をしてなかったドラえもんが選ばれてしまったのだ。

そんな当直勤務に選ばれてしまったドラえもんだが、面白そうだからと着いてきたゴールドシップと共に真夜中のトレセン学園の警備を行っている。

 

「別によドラえもん。明日は休みにしてもらったから良いだろ?」

「だけどさ、ゴルシちゃん。怖いじゃないか」

「いざって成れば…アタシの空気砲が炸裂するさ」

 

右腕を曲げてどや顔を決めるゴルシ。そんなゴルシの腕には武器となるひみつ道具が装備されていた。そのひみつ道具は空気砲、未来に於いて天才物理学者アグネスタキオン博士が開発したひみつ道具であり…これを着けると「ドカーン」と言えば空気の衝撃が解き放たれるのだ。言わば、護身用兼ドッキリアイテムである。

 

「何かが有れば、アタシのマグナムが火を吹くぜ」

「マグナムじゃなくて空気砲ね。それに火じゃなくて空気だよゴルシちゃん」

 

用心に越した事はない。ゴルシは右腕に空気砲を装備し、左手に懐中電灯を軍用ナイフを構えるように持った。このナイフのように持つ持ち方は実際にアメリカの警備員や警察そして軍隊が用いる方法であり、こうする事で懐中電灯を鈍器として使えるのだ。勿論、教えたのはサンデーサイレンスとアーサーお爺ちゃんである。

 

「さあ、どっからでもかかってきな!!おっさんから教えてもらって無いけど、おっさんのCQCの真似事は出来る!!」

「ゴルシちゃん…言っとくけど、サンデーさんやアーサーさん、ヘイルトゥリーズン大佐が憑依したカフェちゃんには絶対に負けると思うよ」

「……あの3人に勝てるの。親父位だから」

 

しかし、ゴルシの手には空気砲がある。いざとなれば相手を吹き飛ばす空気の砲撃が相手をぶっ飛ばすのだ。

 

そして深夜2時ごろ。ゴルシとドラえもんはトレセン学園の練習競馬場にやって来た。普段の時間帯はウマ娘達が日頃から走り込み、場合によっては学内レースが行われるこの場所。しかし、深夜2時という事も有ってかナイター設備は消えており、月光と2人が持つ懐中電灯だけが辺りを照らす手掛かりとなっていた。

 

「何もないよな」

「それが普通だよ」

 

そう、普通は何もない筈だ。だが…

 

「「む?」」

 

月光が芝のターフを照らす。すると、月の光に照らされて何かが映った。それは段ボールで出来た被り物を被った、人間2人が軽く走っていた。

その被り物は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言うかラバやロバに何となく似た…ロバをスタイリッシュにしたような動物の被り物であった。前足を1人が担当し、後ろ足をもう1人が担当して四足歩行の動物を真似ているのだろう。

 

「なんだありゃぁぁぁあ!!」

「おいおい、ドラえもん…なんだあのハリボテは!?初めて見んぞ!!おもしれー!!」

 

そのハリボテはターフを駆け抜ける。中に入ってるのは多分、ヒト娘かヒト息子のどちらかだろう。恐らく歩幅で男性だと思われるが、ハリボテはかなりの速度…まあウマ娘と比べれば遅いがヒト息子にしては異常に速い速度だった。

 

だが…そのハリボテはカーブを曲がる際に盛大に転けてしまった。

 

「なんか…段ボールとガムテープが破ける音がしたな」

「したね」

 

ビリィィィと段ボールが破ける音が響く。だが…ハリボテの中の2人は月光の明かりの外に転がったのか、ドラえもんとゴルシから見ればハリボテの中の人は分からない。

 

「ドラえもん!!良いこと思い付いちまった!!あのハリボテ、アタシ等で作ろうぜ!!」

 

だが…ゴルシは知らない。これが3度に渡るハリボテ大戦争の始まりだった事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「沖野さん、大丈夫ですか?」

「お前も大丈夫か?南坂。やっぱり段ボールじゃダメか」

「ええ、感謝祭のイベントの為とは言え、大変です」

 

中の2人はハリボテの残骸を持って速やかにエスケープしていた。

 

エピソード1 ハリボテゴルシ~爆誕に続く(放送日はスペのダービーが終わってから)




ハリボテは幾つ誕生します?

4つのハリボテが降臨します(笑)


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夏間近、新たなる加入

あの人達入る!!


チームリギル。御存知、最強チームとして日本処か世界に認知度を誇るトレセン学園が誇る最強チームである。

 

皇帝シンボリルドルフ。

 

女帝エアグルーヴ。

 

怪物ナリタブライアン。

 

女傑ヒシアマゾン。

 

スーパーカー マルゼンスキー。

 

世紀末覇王テイエムオペラオー。

 

最強マイラー タイキシャトル。

 

を始めとした有力なウマ娘の多くが在籍しており、史上初トリプルティアラを達成したメジロラモーヌが所属していた所だ。

 

未だ二つ名は付けられていないが、グラスワンダー、サイレンススズカと言った有力なウマ娘は勿論の事多くのモブウマ娘達も在籍しているチームである。

 

「それでは今回の入部テストの結果を発表する」

 

そんなリギルは入部の条件は厳しい。いや、最初はこんなに厳しくなくスピカを含めた多くのチームと同じく自由加入と言える感じだったのだ。だが、シンボリルドルフが二代目無敗の三冠馬と成った時から入部希望者で一気に溢れかえり、やむなくテストに合格した者だけ入部する仕組みを行うしか無かったのである。

 

「今回は2人、合格者が居る」

 

しかし、そんなリギルも最近に成って大きな損失を経験している。それは嘗てのマイルのエースだったフジキセキ、そして未来のリギルのリーダー確実とも言えた超新星ディープインパクトの離脱だ。

フジキセキはジュニアCの時に選手生命絶望な大怪我を負い、自分の意志で退部。その後はドラえもんのひみつ道具で完治してスピカに加入。ディープインパクトはリギルの管理主義のトレーニングは問題なかったのだが、リギルは食事も管理される為に父や姉と同じく大食いのディープインパクトは満足に食事を取れず此方も自主退部。なお、フジキセキもディープインパクトも現在はスピカで元気にやっており、東条ハナからしてみればそれはそれで良い。もし、フジキセキとディープインパクトがアルデバラン等の後ろめたい噂があるチームに入った場合は()()()連れ戻し、()()()()()()()()()()()()()()リギルに戻す予定だった。まあ、ゴルシとドラえもんのお陰でスピカに入れたのでOKである。

 

「今回の合格者はエルコンドルパサー、サクラバクシンオーだ」

 

勿論、今回のテストには前回ディープインパクトの伝説 三秒出遅れて圧勝のお陰か合格できなかったエルコンドルパサーも参加しており、名前を呼ばれた彼女は嬉しそうに笑みを浮かべた。漸くの合格だった。

 

「うう…やったデース!!」

「おめでとう、エルちゃん」

 

友が合格した為かグラスワンダーも嬉しそうに拍手を送る。そして、今回はもう1人合格者が居たのだ。

 

「こっこの私が合格ですと!?ありがとうございます!!委員長として頑張ります!!」

 

自分のクラスでは学級委員長を任されている少女 サクラバクシンオーである。彼女は実はと言うと高校1年生、ようやく合格できた為かうれしそうに涙を流していた。

 

「他の者も良く頑張った。あと、我がリギルは定期的に入部テストを行っている。君達の熱意が変わってなければ、次回も受けに来てくれ。それでは解散」

 

エルコンドルパサー、サクラバクシンオーを新たに加えたリギル。そして東条トレーナーの言葉でその場は解散となり、今回のリギル入部テストは終わった。

 

 

 

 

一方のスピカ。スピカも新たな人材が入ってきた。

 

「いや~プレハブ小屋じゃもう無理だ。それにしても部員増えたね」

「ホンマやでリーダー。これ、どないなるんや」

 

ミスターシービーとタマモクロスも呆れるのは無理はない。今年度に成ってから部員が急激に増えた為か、スピカの部室は物凄く狭くなってしまったのだ。

 

最初はミスターシービーだけだった。だけど、今は違う。

 

ゴルシがやって来て、ゴルシがディープインパクトを拉致してきた。その後はゴルシ、シービー、ディープでスペシャルウィークを拉致して部員は4人。

 

その後はアグネスタキオンが加入。更にタキオンの紹介でヤヴェー奴であるアグネスデジタルが加入。これで6人。

 

その後はメジロアルダンが加入し、脚が完治したフジキセキも加入。これで8人。

 

サンデーサイレンスからの紹介でタマモクロスが入り、9人。そして地方からオグリキャップとハルウララも加入して11人。そして…

 

「キングヘイローよ!!宜しくってよ」

 

スペシャルウィークとディープインパクトの従姉妹であるキングヘイローが新たに加入したのだ。これで12人。随分とスピカは賑やかに成ったものだ。

 

いや、トレーナー関連も含めれば期間限定だがもう1人増えたと言えるだろう。

 

「初めまして、南坂です。今年度一杯ですが、立派なトレーナーに成るために此処で研修を積みます。宜しくお願いします」

 

爽やかなイケメンがやって来た。彼の名前は南坂。トレセン学園大学部教育学部に通う、トレーナー志望の大学4年生だ。既に卒業に必要な単位は全て取得しており、トレーナー免許を習得するために教育実習のためにスピカにやって来たのだ。

 

トレーナーである沖野、選手兼コーチであるトキノミノル、トレーナー実習生である南坂。そしてマネージャーであるドラえもん。サポートする人達で4人、学生と合わせて16人。随分と大所帯と成った物だ。

 

「部室も物置に成っちゃうね。困ったね」

「ホンマやでフジキセキ。もう夏やのに」

「部室で皆でモンハンはもう無理か」

「いや、当たり前やろ!!寮でしいや!!」

 

今日もタマモクロスのツッコミが冴え渡る。しかし、タマモクロスは有ることに気付いた。それは我らがハジケリスト、ゴールドシップが居ないのである。

 

「ゴルシがおらん…どこ行ったんや?」

 

その時だった。

 

「「「「「待たせたな!!お前ら!!」」」」」

 

ゴルシの声が響く。声の方を見ると、十数人に増えたゴルシが横一列に並んでいたのだ。ゴルシ、増える。

 

「増えとる!?えっ!?えっ!?」

「「「「今から追い込み対策の抜き打ちテストを始めるぜ!!アタシから逃げてみな!!」」」」

「「「「「「出走じゃーい!!」」」」」」

 

そして十数人のゴルシは一斉に走り出した。タマモクロス目掛けて。

 

「なんで増えてるんや!!ふぇ!?お前、プラナリアやったんか!?」

 

なんでゴルシが増えてるのかって?コピー人形です。




果たしてセイウンスカイは何処に入るのやら…

そして次回は合宿スタート!!いざ、北海道へ!!


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夏合宿の始まり!!

合宿スタート!!


「やはり、夏合宿は海ね」

 

リギルの夏合宿は海沿いの民宿を拠点に行われる。なに、毎度の事だ。

 

「イェェイ!!海だ!!」

 

シリウスの夏合宿も海の近くで行われる。古参チームは海辺で合宿するのが定番なのだろう。そんな海を背景に、ウイニングチケットの元気そうな声が響いていた。

 

では我等がチームスピカは何処で合宿を行うのかと言うと、それは北海道だ。北海道は夏は本州と比べて涼しく過ごしやすく、なにより本州と比べて夏バテに成りにくい。夏バテに成ればスタミナを消費し、秋のクラシックを乗り切れずに敗北する事だって有る。元選手だったサンデーサイレンスと未だに現役を続けるトキノミノルの意見だけあって確かである。

 

「網走か。帰ってくるのは前の休み以降だな」

「なんでおっさんもいんの!?」

 

サンデーサイレンス一家の故郷と言える、北海道網走だったのだ。だが…恐れるなかれ網走はサンデーサイレンスが拠点にしている為か、町が競技人口拡大の為か町起こしをしてくれて充実した設備を誇っている。

 

「なに、余程の事がない限りリモートワーク出来るしな。合宿限定で俺様が鍛えてやろう」

 

それに合宿限定とは言え、まさかのサンデーサイレンスが直々に鍛えてくれる事が確定。これを気にスピカの面々は秋のG1備えて強くなることが確定だろう。

 

「秋から冬は多忙だぞ。オグリキャップの変則四冠がかかった秋華賞、フジキセキのマイルチャンピオンシップ、タマモクロスの天皇賞(秋)、そんでもってスペのホープフルステークス、そして年納めの有馬記念!!やることは沢山だ」

 

秋から冬は春シーズンと同じくG1が沢山だ。クラシックの終着点と言える菊花賞と秋華賞。そして、秋の天皇賞。11月には世界各地から強豪が集まるジャパンカップ、マイル王者が確定するマイルチャンピオンシップ。12月はジュニアBだけが参戦できるG1の朝日杯フューチュリティステークスとホープフルステークス、そして年納めと言える有馬記念だ。

 

「てか、おっさん。学園は良いのか?」

「先代理事長ノーザンテーストが帰ってきていてな。夏休み期間だけ問題はない!!」

 

そう、夏休みだけとは言え海外で仕事を行っていた先代理事長ノーザンテーストが帰ってきているのだ。お陰様で夏休み限定とは言え、サンデーサイレンスは普通の学校の教頭位の忙しさに軽減されて夏休み限定とは言えスピカの面々を鍛えることが出来るのだ。

 

ではどうしてサンデーサイレンスが教頭とは言え、あんなに多忙だったのか?それは先代理事長であるノーザンテーストが諸事情で海外に行き、その変わりに理事長に成った幼いノーザンテーストの娘である秋川やよい(9歳)の代わりに理事長業務の7割をしていた為である。まあ、超人サンデーサイレンスだから問題はない。

 

「じゃあ、宿に案内するぞ。とは言え、スペとディープは我が家だけどな。

我が家チームは俺様、ゴルシ、ドラえもん、スペ、ディープ、あとオグリとアルダン。

他は沖野とトキノミノル引率で何時も泊めて貰ってるティナの民宿兼牧場に行ってくれ」

 

チーム毎に使える予算は決まっている。そこでサンデーサイレンスは考えた。

 

『食費がヤバいオグリは我が家に泊まらすか』

 

オグリを知人の民宿に泊まらせれば宿の食料が間違いなく無くなり大赤字!!だが…フードファイターが元から住んでいるサンデーサイレンスの家なら問題ない。問題があるとすれば、サンデーサイレンスのポケットマネーが消えるだけだ。

 

 

 

沖野引率のチーム。

 

サンデー一家+ゴルシとドラえもんそしてオグリとアルダンを除いたチームスピカの面々は沖野とトキノミノルの案内で、大きな牧場兼民宿にやって来た。

 

「ティナさん、お久し振りです」

「やあ、良く来たね。スペ達は…実家か。まあ、あの娘達の食欲じゃしょうがないか」

 

そんな牧場兼民宿を営むのは1人の金髪美女なお姉さん。彼女はティナ。キャンペンガールの親友であり、ニュージーランド出身の女性だ。実は未婚でその事を密かにキャンペンガールとサンデーサイレンスから心配されているが、本人が良いのなら良いだろう。

 

「さあ、入ってくれ。今回は貸し切りだよ」

 

なお、今回はチームスピカの為に貸し切りである。サンデーサイレンス、太っ腹だ。

 

 

一方のサンデー一家+α

 

「ようこそ我が家に」

「流石アメリンカンマネー。おっさんの家、スペとディープの実家はデカイな」

 

三女神からの存在しない記憶こと、未来の記憶でサンデーサイレンスの家がどんな家なのかは知っていたゴルシ。サンデーサイレンスの家は大きく、一般的には金持ちの別荘のような豪邸だった。普段は此処に家族5人で暮らしており、隣の家にはサンデーサイレンスの養父であるストロー夫妻も暮らしている。

 

こうして、合宿初日が始まったのだった。なお、何処でもドアを使わなかった為か移動だけで1日終了。




スピカの合宿、だが、早朝いきなり異変が!?

「誰や!!ウチの顔に落書きしたのは!?」

スピカの合宿恒例行事!?水性ペンで寝てる間に、落書きされる!!

沖野T…ステルスミッション!!


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スピカ恒例行事!?落書き事件簿

落書きパーティー


20××年。

 

「だれじゃぁぁあ!!アタシの顔に落書きしたのは!!」

「えっ?僕だけど」

 

ディープインパクト先生率いる未来のスピカでも、合宿は網走で行われる。そんな未来のスピカは毎年、2日目の朝は決まって阿鼻叫喚に包まれる。何故なら、寝て朝起きてみれば顔が水性ペンで悪戯書きされてるのだから。

 

そんなゴルシ少女の顔は見事にディープインパクト先生の手で落書きが施されており、額には肉マーク、頬には太陽が描かれており、悪戯心満載である。

 

「てか、ディープおっちゃん。おっちゃんの額にも犬って書かれてるけど?」

「いや~ゴールドと水性ペンをナイフに見立てて、CQCで戦ったんだけど、負けてね。そんで」

 

だがディープ先生の額にも犬と書かれていた。どうやらディープ先生は生徒達に落書きを施そうとした瞬間、道中でステゴ父ちゃんに遭遇。その後、水性ペンと水性インクが入った水鉄砲を用いたCQC合戦を繰り広げた末にディープ先生はステゴに負けてしまったようだ。

 

「おっちゃん、遂に走りだけじゃ飽き足らず物理でも世界の頂点を取りに行くのかよ」

「やだな、お爺ちゃんみたいに敵の基地をナイフとハンドガン一丁で壊滅は出来ないさ」

「アーサー爺ちゃんと比べたらダメでしょ!!アーサー爺ちゃん、人間最強だから!!」

 

未来ではゴルシはツッコミも行っていたのだ。

 

「ゴルシ~私の頬に将軍が書かれてるんだけど!!」

 

すると、続々と未来スピカの面々が集まってきた。

ジャスタウェイは右頬に将軍の2文字……ではなく、現代の大人気漫画 銀魂に出てくる将軍こと徳川茂茂の顔が描かれていたのだ。

 

「あっ、それはアタシだわ」

「お前かーい!!」

 

なんと、ジャスタウェイの落書きはゴルシが書いたのだった。

 

「おーい、バカ姉貴、おっちゃん。俺のお腹にfateのネロちゃま書いたのだれ?」

 

今度はオルフェーヴルがやって来た。オルフェーヴルはお腹を出して寝ていたのだろう。オルフェーヴルのお腹には大人気ゲーム fateシリーズに出てくる可愛いローマ皇帝 ネロちゃまが描かれていたのだ。

 

「アタシだ」

「チェスト!!」

「ほんげー!!」

 

なお、犯人はゴルシであった。ゴルシ、妹に背負い投げされる。

 

「姉さん、オルフェ。私の額に中山競馬場の上空写真を書いたのは誰?」

 

今度はナカヤマフェスタが出てきた。ナカヤマフェスタの額には中山競馬場の上空写真が見事に鮮明に描かれていたのだ。

 

「いや、アタシは知らん」

「俺も知らん」

「おっちゃん?」

「いや、僕じゃない。そもそも僕はゴルシにしか書いてないし。他の皆も落書きしようとしたら、ステイゴールドに負けたからね」

 

だが、フェスタの落書犯人はゴルシでもディープ先生でもない。だとすれば…

 

「俺だ」

「「「親父!!」」」

 

網走在住。元皇宮警察特殊部隊隊長、現警察学校教員ステイゴールド!!なお、朝からビールを飲んでいた。

 

だが、そんなステゴ隊長の頬にも×とハートが書かれていた。そして額には()()()()()()()()()()()と書かれている。

 

「親父…なにがあった」

「兄貴倒したあと、姉さんに不意討ちされた」

「今日のお昼はBBQだよ!!」

 

ティナさんから牧場兼民宿を譲り受け、旦那と共に切り盛りするスペシャルウィークさんであった。

 

 

そして現代…2017年。落書の歴史は始まる。

 

「なっなんやこれ!!」

 

朝6時。タマモクロスは民宿の部屋で起きたのだが、鏡で顔を確認した彼女は叫んでしまった。無理もない、タマモクロスの素顔は黒の水性ペンで落書されていたのだ。

×や○、ほっぺたにはタンポポ、まるで羽子板で負けた方が書かれる落書であったのだ。

 

「君もかい?タマ」

「フジキセキ!」

 

同じ部屋に宿泊していたフジキセキはタマモクロスに声をかける。フジキセキは君も?とタマモクロスに声をかけた、つまり落書の被害者はタマモクロスの他にも居ると言うことだ。しかし…

 

「フジキセキ、あと誰がやられたんや?」

 

フジキセキの顔には落書の後が見られない。つまり、フジキセキとは別の人物がやられた筈なのだ。

 

「ああ、私だよ私」

「いや、なにいってんや。落書されてないで?」

 

フジキセキは自分が被害者の1人と言うが、落書された後は見当たらない。だとすれば、何処に書かれたのだろうか?お腹なのだろうか?

 

「此処だよ」

 

フジキセキはそう告げて瞼を閉じる。すると、フジキセキの瞼には赤い水性ペンで万華鏡写輪眼が描かれていたのだ。

 

「ぷっは!?写輪眼!?写輪眼!?万華鏡写輪眼!?懐かしすぎやろ!!」

「まさか瞼に書かれるなんてね。犯人はトレーナーかと思ったけど…」

 

フジキセキはそう告げて窓から外を指差した。そこには…顔に落書きを滅茶苦茶に施された沖野が張り付けにされていたのである。

 

「トレーナー!?」

「トレーナーは誰かに落書きしようとしたのかな?だけど、誰かに返り討ちにあって逆に落書きを施されたんだろうね」

 

沖野T、敗れる!!

 

 

 

 

数時間前

 

「さてと…任務スタートだ」

 

沖野T、腰ベルトに様々な色の水性ペンを携えて彼は闇に紛れて走る。

 

全ては自分が言い出したスピカの伝統行事 夏合宿!!朝起きたら落書きされてた件を遂行するためだ。彼は独自の学びで習得したスニーキングスキルを用いて、タマモクロスとフジキセキの部屋に侵入。その後、落書を施した。

 

その後、タキオンとデジタルの部屋、キングとハルウララの部屋も書いて周り…シービーにも落書を施した。しかし、トキノミノルの部屋は恐いので辞めた…絶対にサンデーサイレンス直伝のCQCで倒されてしまう。勿論、南坂にはとびっきりの落書を施し、いざ…サンデー一家に向かおうとした時だった。

 

「孫に手出しはさせん」

「なに!?」

 

そこに水性ペンをナイフのように構える人間最強が降臨した。

 

 

 

 

「ディープとスペ。悪いな、アタシから落書してやるぜ!!」

 

その頃のサンデー一家。ゴルシの手で落書き祭りが行われた模様。

 

 

 

 

 

 

「ドラちゃん。ウララの勉強の時に出したタイムテレビを出して。犯人を探そっか」

「だね、フジキセキさん」

 

タイムテレビの力で昨晩の真相が明かされる!?




次回…落書きの答え合わせ!?犠牲と成った皆様の落書が明らかに!?

なお、個人的に南坂が一番可哀相(笑)

南坂「なにが、聖剣エクスカリバーですか!!」
ゴルシ「随分と凄いんだな」
沖野「おい…ちょっとまて…俺、衣類の下にも落書が」


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合宿えっ!?こんな落書!?

落書き


翌朝6時。

 

「えっ?」

 

朝起きてスペシャルウィークは自宅の洗面台で顔を洗おうとした。だが、起きて鏡を見てみれば彼女は唖然としてしまう。無理もない、鏡に映った素顔を見てみれば自分の顔に落書きが施されていたのだ。

 

額には大きくあげません!!と書かれており、右頬には達筆な字でお腹がペコペコです!!と書かれている。左頬にはYES!!!フードファイターと書かれていたのだ。誰が書いたのかは分からないが、少なくとも見に覚えがない。だとすればスペシャルウィークが寝ている間に何者かにやられたのだろうか。だが、少なくとも弟2人や父親、性格的に母親では無いことは確かだ。書かれた落書きの字は明らかに弟2人と違うし、母親は性格的に誰かに悪戯する事は無いだろう。

 

「うーん、誰がやったんだろう。この字はお父ちゃんでもないし…」

 

犯人が誰なのか考える。だが書かれた落書きはどれもがスペシャルウィークの特徴に有った物であり、犯人はスペシャルウィークの事を良く知っている人物だ。だが、あげません!!とはどういう事なのだろうか。

 

「ふぁぁあ…お姉ちゃんおはよう」

 

スペシャルウィークが落書きの事を考えていると、洗面所にパジャマ姿のディープインパクトがやって来た。

 

「うわ、お姉ちゃん。どうしたの?その落書き」

「朝起きたらこうなってたの」

 

だが、ディープインパクトの素顔には落書きが見当たらない。スペシャルウィークは落書きされたのはてっきり、自分だけかと思ったが、ディープインパクトのパジャマのボタンで閉じた部位の隙間から黒い何かが見えたのだ。

 

「ねえ、ディープちゃん。お腹…なんか黒くない?」

「お腹?」

「そう、お腹」

 

ディープインパクトはスペシャルウィークに言われ、腹部を確認する。確かにパジャマを良く見ると、腹部に何かが書かれているのかほんのりと透けて黒い何かが見える。首を傾げながら、ディープインパクトはパジャマのボタンを外していき、腹部を露にする。そこには……

 

「なんじゃこりゃぁぁあ!!」

「ぶっふ!?」

 

物凄く処かプロレベルの画力で描かれた、黒い史上最強のバッタヒーロー 仮面ライダーブラックRXが水性ペンで描かれていたのだ。それも大きくである。しかも、ブラックRXは吹き出しでセリフも書かれており…

 

『俺は太陽の子…仮面ライダーブラック!!アールエェー!!』

 

とセリフが書かれており、ディープの胸部には英雄降臨!!の四文字が書かれていたのだ。

 

腹筋バキバキのディープの腹部に書かれた、特撮が生んだ昭和処か仮面ライダー最強の呼び声高いヒーロー RX。腹筋バキバキの所に書いたのだから、このRXを書いた画伯はよほど絵心満載なのだろう。

 

何処からか…ゆ゛る゛さ゛ん゛!!というRXの轟きが聞こえてきそうだが、ドタドタと足音が聞こえる。足音はだんだん大きくなり、足音の主は洗面所に現れた。

 

「スペ、ディープ。洗顔を貸してくれ」

「私にもお願いします」

 

その主はオグリキャップとメジロアルダンであった。だが、洗面所に現れて鏡に映った2人の素顔はスペと同じく何者かの手で落書が施されていたのだ。

 

「「ぶっ!?」」

「お前達もやられたのか」

「どうやら…皆さん、やられたみたいですね」

 

オグリの顔にはアニメ fateの腹ペコ王と一部のファンから言われている女体化アーサー王こと、アルトリア・ペンドラゴンの顔が描かれており、吹き出しで『おかわり!!』と書かれている。

 

一方のアルダンはシンプルに○や×等が書かれており、額には《子沢山ママ!!》と記されていたのだ。

 

なにはともあれ、サンデー家滞在組だけで落書きの被害者が4人居る。恐らく、犯人は同一人物であり、最低でも画力から考えてディープとオグリに落書きを施した犯人は同じだろう。

 

 

 

一方の民宿サイド。

 

「急な呼び出しでごめんね、ドラちゃん」

「まさか…此処の皆もやられてたなんて。犯人はゴルシちゃんの他にも居たなんて」

 

ドラえもんはどこでもドアを使い、民宿兼牧場にやって来ていた。とは言え、ティナの民宿とサンデー一家の自宅は徒歩5分圏内にあり、どこでもドアを使わなくても直ぐに辿り着く事が出来る。だが、ドラえもんは電話でフジキセキからの呼び出しに答えるように民宿にどこでもドアで現れたのだ。

 

ドラえもんが民宿にやって来てみれば、それはそれは阿鼻叫喚だった。タマモクロス、フジキセキ、タキオン、デジタル、ハルウララ、キングヘイロー、シービーと言い…トキノミノル以外のメンバーが全員顔に落書きを施されていたのだ。しかし、サンデー自宅と違いディープやオグリのように精巧なイラストを施された被害者は居ない。

 

「ドラちゃん。もしかして…」

「うん。サンデーさん自宅側はゴルシちゃんがやっちゃいました」

 

ドラちゃん、ゴルシを裏切るように自白。そう、サンデーサイレンス自宅に滞在してるメンバーの落書きは我等がハジケリスト ゴールドシップの手で施された物である。

 

なお、女神像からの存在しない記憶で改編した未来の記憶を知るドラえもんからすれば、ゴルシが皆に書いた落書きは実に的を射てると思われる。ディープは英雄になるし、スペちゃんは大食いだし、オグリはもっと大食いなのだから。

 

「やっぱりゴルシもやったか。取りあえずタイムテレビ出して。犯人を探そう」

「そうだね」

 

ドラえもんは四次元ポケットからタイムテレビを出して、ドラえもんとフジキセキは同時にボタンを押した。

 

 

 

昨晩深夜。

 

沖野は水性ペンを構え、民宿の部屋を回ってはフジキセキ達に落書きを施していく。

 

『ふー、生徒はこんな物か。トキノミノルは恐いから辞めておこう。絶対、教頭直伝のCQCで抹殺される未来しか見えない』

 

トキノミノルは強すぎるから諦め、沖野はフジキセキを含めた民宿在住組の顔に落書きを施し、自室に戻る。自室では南坂がスヤスヤと眠っていた。

 

『よし!!』

 

沖野は南坂の上着をずらし…お腹に落書きを施す。股間のほう目掛けて↓を書き、その横に《伝説の聖剣エクスカリバー!!》と書いたのだ。

 

「「股間が伝説のエクスカリバー」」

 

タイムテレビを見ながら、苦笑いを浮かべるドラえもんとフジキセキ。その時、民宿から南坂の悲鳴が聞こえた。どうやら、お腹に記されたエクスカリバーの落書を知ったのだろう。

 

『よしよし』

 

民宿を後にし、サンデー自宅に向かう沖野T。だが、その道中に救世主が現れた。

 

『孫の所にはいかせん!!』

『なに!?アーサーさん!?』

 

伝説の元マリーン。アーサー・ストローさん70歳である。アーサーは右手に水性ペンを軍用ナイフのように構え、CQCを繰り出す。

 

『ひっひでぶ!?』

 

相手が悪すぎた。沖野Tは5秒も持たず、瞬く間に敗れて顔に落書きを施される。

 

『ふむ…折角だ。お腹にも落書きするかの』

 

そしてアーサーお爺ちゃんは沖野のお腹にも落書きをしたのだった。

 

 

 

 

「究極の剣 マルミアドワーズってなんだよ!!」

 

沖野T。お腹に《究極の剣マルミアドワーズ》と書かれ、↓で股間の方を向けられていた。どうやら、沖野Tの股間はエクスカリバーより強い伝説の剣のようである。

 

落書き騒動…終了!!




次回!!合宿本格的にスタート!!

練習場には道民が誇る伝説のアスリートウマ娘が!?

そのウマ娘…分かる人には分かります。地方所属でありながら、中央を…そして世界と戦った夢を追うウマです。

コスモバルク…道民が誇る英雄、まさかの遭遇!?


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道民が誇るコスモバルク

コスモバルクって知ってます?


網走は町起こしのためか、御立派な競技場が存在する。競技場と言えど、実際には運動公園と称した方が良いだろう。何故なら、そこで行われるレースは地方マラソンや記録会等と言ったテレビでは報道されない物ばかりなのだから。

 

網走運動公園。実際の競馬場に匹敵する莫大な敷地であり、その9割が競技に必要な場所に使用されている。中央はタータン(合成ゴム、陸上競技場のアレ)のコースであり、その内側では投擲種目やゴール等を持ってこればサッカー等の球技も行える。

タータンの外側である内から2番目はダートのコースと成っており、ウマ娘の競技者がダートの練習を行う事が出来る。勿論、人間の競技者も利用可能だが…深夜には段ボールを被った不審者が走ってる都市伝説が。

ダートの外側であり、外から2番目のコースは芝だ。勿論、トレセン学園や競馬場に有るのと変わらない芝である。勿論、誰でも使用可能。

一番外側も芝である。勿論、誰でも使用可能。

 

だが、この網走運動公園はサンデーサイレンスが生存した世界線だけにあり、サンデーサイレンスが急死した世界線には存在しない。

 

「おっさん、此処で練習か?」

「そうだ。良いところだろ?だが、俺様達以外にも一般客も使ってるから人の邪魔だけはしないようにな。だが、誰でも利用出来るのは本当にありがたい」

 

顔や身体に施された落書きを綺麗さっぱり落としたチームスピカのメンバーは網走運動公園にやって来ていた。やはり、本番は芝やダートで走るのだ。本番と限り無く近い環境で練習できるのは本当に有難いと言えるだろう。しかも、此処の嬉しいポイントはタダで使えると言った所だ。ヒト族(ヒト娘やヒト息子等の人間)が使う競技者はウマ娘からしてみれば余りにも狭すぎる。かといって競馬場を借りるのは余りにもコストパフォーマンスが悪すぎるので、こう言う誰でも使える網走運動公園は本当に有難い物だ。

 

「よし、それじゃあ只今より本格的に合宿を開始する。各員、今から1時間…自由に体操やアップ等を行うように。良いな?」

「「「はい!!」」」

 

こうして、サンデーサイレンスの言葉で本格的に合宿が…スピカの夏が始まったのだった。

 

サンデーサイレンスの言葉を受けて、各自自由に動き出すスピカの面々。とは言え、動かないメンバーも約3人だけいた。それは貴重品等の荷物の死守を任された沖野、南坂、ドラえもんのトレーナー&マネージャーのトリオである。

 

「合宿も自由にアップさせるんですね」

「それがスピカのやり方だ。てか、教頭も練習するのか」

 

スピカ所属の少女達(1人少年)と未だ現役のトキノミノルは勿論のこと、サンデーサイレンスもアップを始める。どうやらサンデーサイレンスは練習しながら子供達を指導するのだろう。と言うか、サンデーサイレンスは既にアラフォーな年齢であるが、動きに衰えが見えずスペシャルウィークやゴルシに匹敵する位の動きを見せる。どうやらサンデーサイレンスは引退後もしっかりと身体を鍛えては維持していたようだ。

 

「あの…沖野さん、ドラえもん。サンデー教頭…本当に現役を引退したんですよね?」

「その筈だけどな。まあ、あの人普通に走って現役バリバリのウマ娘にマイルまでなら普通に勝ちそうで恐いんだが」

 

 

 

運動公園は色んな人が沢山利用する。スピカ以外にも未だ小学生程のウマ娘達が将来を見越して練習していたり、北海道の大学生や市民アスリートがタータンやダートで陸上競技の練習を行っていたり、市民ランナーの方々がジョギングに来てたりと様々であった。

 

「あっ!!あの、フジキセキさんですか?サイン貰っても良いですか?」

「えっ?あっうん、勿論だよ」

 

「タマモクロスさんですよね?天皇賞(秋)、頑張ってください!!」

「おう!!任せてや!!」

 

「オグリキャップさん!!史上初の四冠馬達成、頑張ってください!!応援してます!!」

「ああ!!任せてくれ」

 

勿論、市民が自由に利用できるのなら少なからずファンが増えてきたスピカの面々にファンが接するのは当然である。

 

「おい!!あれ、コスモバルクさんじゃないか!!」

「マジかよ!!道民の星が来てるのか!!」

 

その時、運動公園が騒がしくなる。誰もが利用出来ると言うことは同時に、この場所を利用する有名人が訪れると言うことでも有るのだ。例えば、彼女…コスモバルクのように。

 

「さてと…今年の有馬記念に向けて練習しますか。勝てるかは分かりませんが」

 

焦げ茶色の髪をしたウマ娘の女性がジャージ姿で運動公園に現れた。彼女はコスモバルク、北海道地方トレセンを卒業し、現在は北海道大学に通いながら現役で競技を続けるウマ娘である。北海道地方トレセンを卒業したが、選手としての登録は未だ残っており、卒業と言うのは高校での3年間が満了したと言う意味だ。

コスモバルクは地方所属でありながら、北海道を元気着ける為に中央や世界に挑戦し続けるウマ娘であり、北海道では道民の星として有名だ。

 

「おっ!誰かと思えばコスモバルクじゃないか。昨年の有馬記念は惜しかったな、だがお前さんは素質が有るぞ」

「さっサンデーサイレンス!?うそ、本物ですか!?」

 

中央に活躍できる素質が有りながら、北海道の為に地方トレセンに在籍し続け、三大クラシック、有馬記念、海外のG1に挑戦し続けてるコスモバルク。そんな彼女はホープフルステークス(ジュニアBで出れるG1)、シンガポールのG1を制しており、知る人ぞ知る名馬である。中央のエースがしのぎを削る年末の有馬記念には毎度出ているが、残念ながら入着ばかりで優勝は出来ていない。

 

「地方から転入してきた子が居るんだが、一緒に練習するか?」

 

その地方の子2人と、後々に有馬記念で戦う事に成ることをコスモバルクはこの時は思わなかった。

 




次回!!サンデーサイレンス、キングちゃんに告げる。

「キング。お前さん、長い距離は向いてないぞ。短距離には向いてるな」
「「「短距離!?」」」



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合宿の練習である。

合宿の練習スタート


本格的にスピカの夏合宿が始まり、網走運動公園でゴールドシップは一先ず自分の練習をやめてとある人物を観察していた。それはサンデーサイレンスである。

 

ゴルシとドラえもんが辿った修正前の歴史では、ウマ娘の競馬以外にもサッカーや野球等のスポーツで練習の強制やパワハラ等と言った出来事や価値観の変化から自由主義の教えが一般的と成っている。なにせ、どこでもドアの発明家と成ったアグネスタキオン博士が言っていたのだ、間違いない。

 

そしてゴルシとドラえもんが変え、三女神からの存在しない記憶で知った未来でも自由主義は盛んに広まっている。これは恐らくだが、サンデーサイレンスが生存した事が一存だと思われる。何故なら、ゴルシはサンデーサイレンスの指導を見て実に理に叶っていると思った為だ。

 

「成るほどな…これがサンデーのおっさん、SSの教え方か。自由主義とは言え、おっちゃん(未来ディープ)と同じく理屈的な教え方だ」

 

サンデーサイレンスから少し離れた所でサンデーサイレンスを観察しながら、ゴルシはレールが変わった未来での恩師を思い出す。

現代の管理主義の多くはトレーナーが選手のメニューや食事面を管理し、どちらかと言うとマニュアルにそった教え方が主流だ。現代のトレセン学園でもシリウスを筆頭とした多くのチームは管理主義とマニュアルで選手を強くしている。だが、それでは個人個人に向き合うのは少し難しいと言えるだろう。

 

「そういや、フジキセキが言ってたな」

 

ゴルシは網走に向かう際、フジキセキからリギルでの合宿やトレーニングを聞いていた。フジキセキ曰くだが、リギルは管理主義では有るのだが東条が個人個人に合わせたメニューを作り、それを所属選手に渡しているのだ。勿論、個人個人違うとは言え東条が独自のデータ論で纏めた管理されたメニューである。

 

管理主義されているが個人毎に違うリギル。一方で管理主義でありマニュアル等にそったシリウス等の他チームが行っている練習メニュー。同じ管理主義であるが、個人毎に違うメニューを行うリギルは一番強く最強チームと称されている。やはり、リギルと他の管理主義はそこで違うのだろうか、ゴルシはそんな事を考えながらサンデーサイレンスを観察する。

 

「スペ。お前、やっぱり坂道苦手だろ」

「えっ!?そうなの!?お父ちゃん!?」

「お前は気付いてないが、ストライドを変えれてない。急な坂を平地と同じストライドで登ったり下ったりすれば失速するし、体力のロスも大きい。

それに、お前は得意な戦法は先行と差し。余分な体力をロスし過ぎると、ラストスパートで最高速を出しきれず差しきれない可能性も有るぞ」

 

サンデーサイレンスは現在、中から長距離が志望或いは専門のスピカのメンバーを指導している。勿論、スピカは自由主義であり自由に動いて良いのでゴルシやアグネスタキオンのように参加していないメンバーも居る。ゴルシはサンデーサイレンスの指導を観察し、アグネスタキオンは研究者としての側面故か…生徒達のサポートに回ってはスポーツドリンクの準備やドラえもんの手伝いに回っていた。

 

「キングちゃん、ストライドってなに?」

「走る一歩一歩の幅の事よ」

 

とは言え、その中には未だ自分の希望種目を完全に決められていないハルウララも混じっている。

 

「フジキセキ、ちょっと手伝ってくれ。スペがギリギリ着いていける速度で彼処まで走ってくれ」

「了解です!」

「スペ。気合いでフジキセキの後ろを着いて走ってみろ。そして、フジキセキの足元を観察してみろ。俺様の言っている事が分かるぞ」

「うん!!お父ちゃん!!」

 

競技者からトレーナーに転向する人は多い。それはどの競技にも共通している。プロ野球やJリーグだって、選手として活躍した実績と過去を持っている人がチームの監督やコーチに成ったりしている。

ウマ娘の競馬の場合だが、サンデーサイレンスやトキノミノルのようにウマ娘の競技者だった選手は勿論のこと、ヒト族の陸上競技経験者が多い。競馬もヒト族の陸上競技もどちらも走る競技であり、どちらも共通して活かせるポイントが有るためだ。

 

そしてサンデーサイレンスの指示を受けて、フジキセキは走りだし…その後ろをスペシャルウィークが追走する。勿論、フジキセキは専門がマイルであり短距離や中距離にも出走する選手でありスピードと最高速度を維持する力は現時点のスペシャルウィークよりも遥かに高い。勿論、ブランクを経験した現在でである。

勿論、これはスペシャルウィークの練習であり、フジキセキはスペシャルウィークがギリギリ着いていける速度に流している。だが、スペシャルウィークは何とか追走する。

 

スペシャルウィークはなんとか追走しつつ、登り坂に差し掛かった時にフジキセキの足元を見る。すると、フジキセキは登り坂に差し掛かった時に歩幅が少し小さくなっていたのだ。だが、スペシャルウィークは未だ歩幅を変えれていない。その為か、登り坂で少し失速し…フジキセキと距離が空いてしまう。

 

その時だった…強い風がスペシャルウィークを襲い更にスピードが落とされる気がしたのだ。

 

「おっさん。教えようとしてるの、ストライドの他にも有るだろ。例えば、スリップストリームとか」

「レース後半で先行や逃げを使ってくる相手の対策も同時に教えられるからな。しかし、良く分かったなゴルシ」

 

少し離れた所で見ていたゴルシはサンデーサイレンスに話しかける。

 

スリップストリーム。高速で物体が移動した際に発生する気流であり、街中で車が通った際や電車が通過する際の風が正にそれだ。ウマ娘は種目にもよるが時速60キロ近い速度で走るので、気流が発生する。その気流は後方のウマ娘の速度を下げる事が有るのだ。

そして陸上競技、カーレース、競馬においてのスリップストリームとはその発生した気流を利用し、真後ろに着けて気流の抵抗を受けずに相手をすり抜けるように抜き去る技術の事である。

 

「資料とかで教えるより、見たり実際に体験する方が人は直ぐに覚えたり上達する。さてと」

 

スペシャルウィークは走りながら思い浮かべる。フジキセキの真後ろを走ってる時、風は襲ってこなかった。つまり、この気流はフジキセキの真後ろに居れば自分を襲わないのである。

スペシャルウィークは加速し、フジキセキの真後ろを再び取る。すると風は自分を襲わなくなった。前からの風はフジキセキが遮っており、フジキセキから出る気流は直ぐ真後ろには襲ってこない。

 

「おっ!!スペがフジキセキに食らい付いてる!!」

「だが、あれでもホープフルステークスを勝てるかどうか分からんがな。来年度のクラシックはリギル、スピカ、シリウスの三つ巴に成るだろう」

「シリウスも?リギルにはエルコンドルパサー、グラスワンダーが居るけどよ…シリウスもか?」

 

リギルにはエルコンドルパサー、グラスワンダーが居る。この2人が黄金世代の一角として圧倒的な力を振るう事をゴルシは改編前の歴史から知っている。だが、スピカにはスペシャルウィークは勿論、キングヘイローも居るのだ。しかし、どうしてシリウスの名前が出てくるのだろうか?ゴルシの記憶が正しければ、シリウスにはジュニアBクラスの有力選手は未だ居なかった筈だ。

 

「ああ、昨晩だな。ノーザンテースト先代理事長から連絡が来たが…セイウンスカイとエアジハードの2人がシリウスに入ったそうだ」

 

セイウンスカイ。御存知、修正前の歴史では黄金世代の一員であり、逃げを使うウマ娘だ。しかし、彼女は歴史が変わる前から黄金世代の一角を担う人物であり、黄金世代では最も長い距離に対して強い選手である。スタミナが一番減りやすい逃げを使ってるにも関わらず、菊花賞では世界記録(歴史改編前)を叩き出すなど、クラシック二冠を達成した程だ。

 

エアジハード。修正前の歴史では黄金世代のマイルと短距離の覇者。クラシックでは戦績を残せなかったが、短距離とマイルで結果を出し…黄金世代での短距離とマイルの頂点に君臨したと言えるウマ娘である。

 

「マジかよ…(いや、待てよ?そういや、アタシの知る変わる前の歴史じゃ)」

 

ゴルシは変わる前の歴史を思い浮かべる。改編前の歴史ではオグリキャップは訳有って三大クラシックを走ることが出来なかった。そして、オグリキャップと同じ理由で三大クラシックを走ることが出来なかったウマ娘が2人居る…そうエルコンドルパサーとグラスワンダーだ。

だが、歴史が変わった今。サンデーサイレンスが仲間と共に頑張ったお陰か、オグリキャップはクラシックに出ることができて史上二人目の変則三冠馬となり、今では唯一無二の四冠馬と成ろうとしている。つまり、改編前では叶わなかったグラスワンダーとエルコンドルパサーも三大クラシックに出てくると言うことだ。

 

つまり、来年度のクラシックはスピカからはスペシャルウィークとキングヘイロー、リギルからはエルコンドルパサーとグラスワンダー、シリウスからはセイウンスカイとエアジハード。3チーム、6人によるクラシック争奪戦が始まると言うことだ。

 

(げっ!?こりゃ、本気でスペに強くなって貰わないとダービーの歴史が変わるぞ!!)

 

短距離からマイルのエアジハードは兎も角、エルコンドルパサーとグラスワンダーのクラシック参戦。誰が三大クラシックを制覇するのか本当に分からず、最悪の場合はスペシャルウィークはダービーを勝てない可能性だって有るのだ。

 

「おっさん…スペの奴、勝てるのか?」

「やってみないと分からん。マジでな」

 

黄金世代のクラシック…それは波乱に成ることを間違いなしだろう。

 

サンデーサイレンスはそう告げ、フジキセキとスペシャルウィークの方を見る。2人は既に走り終えており、此方に歩いて向かいながらフジキセキがスペシャルウィークにアドバイスを送っていた。

 

「キング」

「おじ様?」

 

次にサンデーサイレンスはキングヘイローに声をかける。

 

「さっきの走りを見て理解した。お前さんは長い距離は不向きだな。中距離は問題ないだろう…だが、オグリは勿論、フジキセキよりも長い距離に不向きだ」

 

サンデーサイレンスはこの僅かな時間だけで、キングヘイローの適正距離を見抜いた。

オグリキャップより低く、オグリキャップよりも更に低いフジキセキより距離適性が短いと判断されたのだ。

 

「どれぐらいですか?」

「オグリが2500は普通に走り抜けるが、3000は無理だとする。大体、ギリギリ2500走り抜けるかどうかって事だ。だがな…お前は短距離に関してはフジキセキよりも素質が有ると思うぞ」

 

改編前の歴史でもキングヘイローは短距離でG1を勝っている。彼女は改編前、サンデーサイレンスは急死してるから当たり前として駿川たづなと成ったトキノミノル等の指導者とは巡り逢えずスピカにも入らなかった。その為か、ゴルシの知る改編前の歴史では泥んこに成っても挫けずもがき続け、漸く高松宮記念を勝利し…ようやく王座を掴んだキングなのだ。

 

「この合宿中でも短距離のコツを教えてやる。中距離やマイルにも出るならトキノミノルからも聞け。アイツは全部の距離走れるからな」

「はい!!」

 

キングヘイローはスペシャルウィークと違って未だデビューしていない。だが、デビュー前に自分の適正距離を理解できたのは大きいだろう。

 

「つまりだおっさん。来年のクラシックはスペVSリギルVSセイウンスカイ。そんでキングVSエアジハードって事になるな!!」

「なんでゴルシよ、エアジハードの適正距離知ってるの?まあ、そうなるな」

 

来年と再来年のクラシック。それはスピカにとって歴史を大きく変わる出来事と成るのだった。

 

 

 

休憩時間。

 

スピカの面々+道民の星であるコスモバルクは休憩を行い、スポーツドリンクを飲んだりカロリー補給の為の軽食を食べながら体力を回復させていた。

 

「そうか、君達は笠松と高知から出てきたのか」

「貴方と違って私とウララは中央に籍を移しましたけどね。もう1人、他のチームなんですけどフジマサマーチと言う友達も笠松から出てきたんだ」

 

コスモバルクとオグリキャップ、ハルウララは同じく地方出身という事もあり、直ぐに打ち解けていた。それにオグリキャップは笠松の星であり、コスモバルクは道民の星、どちらも故郷を代表するG1ウイナーだ。

方や史上初の四冠に王手をかけた二代目変則三冠馬。方や海を越えてシンガポールのG1を制覇した道民代表。故郷を代表するウマ娘と言えるだろう。

 

「ねえ!!バルクさん、有馬記念ってどうやって出るの?」

 

有馬記念。ハルウララも知っての通り、年末年納めとも言えるG1レースだ。有馬記念を作った当時のURA会長である有馬氏の名前を取り、有馬記念と今では呼ばれるレースは日本ダービー共に日本を代表するレースだ。実は海外からも参加者が出てくる大きなレースであり、賞金はなんと3億円である。

 

「有馬記念は人気投票で選ばれるんだ」

「ファン投票?」

 

有馬記念は人気投票で出走が決まると言える。有馬記念に出走出来るウマ娘は全部で16人であり、人気投票で選ばれた10人、海外から参加するウマ娘6人は優先的に出走権利を得ることが出来るのだ。

人気投票で選ばれたウマ娘は辞退する事も可能であり、トキノミノルは後輩達に有馬記念への出場権利を譲るためか、近年は殆ど辞退している。だが、毎回…海外から参加者が集まらず選ばれた10人+海外から参加者6人が集まらなかった場合は今年度のレース成績が良く賞金獲得数が多いウマ娘が出走権利を得て出走できるのだ。

 

「つまり、ウララも頑張って、人気者に成ったら有馬記念に出れるってこと!?」

「そういう事だよ」

 

それはつまり、史実では叶わなかったハルウララの有馬記念出走も叶うと言うことである。

 

 

 

「サンデーさん、何してるの?」

 

ふと、ドラえもんはサンデーサイレンスに問う。

 

「沖野やトキノミノルが分かりやすいようにな。スピカのメンバーの今の強さをデータにしてるんだよ」

 

サンデーサイレンスは今日1日、スピカのメンバーを見て各員の能力をほぼ把握。それを分かりやすいようにパソコンで纏めていた。気になったドラえもんはサンデーサイレンスの後ろからパソコンの画面を覗き込む。そこには…

 

ゴールドシップ。脚質 追い込み、先行、差し。

スピードB

スタミナS

パワーS

根性C

賢さB

 

ミスターシービー。脚質 追い込み

スピードA

スタミナA

パワーB

根性B

賢さC

 

フジキセキ。脚質 先行

スピードA

スタミナC

パワーA

根性C

賢さA

 

アグネスタキオン。脚質 先行 未デビュー

スピードA

スタミナC

パワーD

根性D

賢さSS++

 

タマモクロス。脚質 追い込み

スピードB

スタミナB

パワーC

根性A

賢さA

 

オグリキャップ。脚質 先行、差し。

スピードA

スタミナC+

パワーB+

根性D

賢さC

 

メジロアルダン。脚質 先行。

スピードC

スタミナC+

パワーC

根性D

賢さC+

 

スペシャルウィーク。脚質 先行、差し。

スピードC

スタミナC

パワーD

根性C

賢さD

 

キングヘイロー。脚質 差し。未デビュー

スピードD

スタミナE+

パワーC

根性C+

賢さB

 

ディープインパクト。脚質 追い込み、差し。

スピードS~

スタミナ 測定不能

パワーE

根性D

賢さC

 

アグネスデジタル。脚質 先行、差し。

スピードD~気分で変わる。

スタミナD

パワーE

根性F

賢さE(ウマ娘の知識と愛ならEX)

 

ハルウララ。脚質 差し。未デビュー。

スピードE

スタミナG

パワーF

根性E

賢さ多分D?(期末テストが赤点ギリギリ、編入テストは満点なので期末からならE、編入テストからならB)

一言コメント 先ずは身体を絞り、アスリートの体型を目指そう。

 

トキノミノル。脚質 先行(一般的には逃げと思われてるが、マジで先行)

スピードSS+++

スタミナSS++

パワーSS

根性B

賢さA+

 

「…サンデーさん。トキノミノルさんとディープ君だけ可笑しくない?」

「いや、どこも可笑しくない」

 

夏を乗り切る頃、スピカの面々は何処まで強くなるのだろうか?




ディープインパクトやサンデーサイレンスを始め、多くの未実装馬出してるけど…これガイドライン大丈夫ですよね?

エロ無し、グロ無し、政治批判無し…なんだけどな


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シリウス…一等星のチーム

まさかのシリウス


スピカがサンデーサイレンスの指導の元でメキメキと夏の北海道で力を着けている頃。他のチームも夏合宿を行って、日々強くなっていた。そんなチームの1つにシリウスというチームが存在する。

 

シリウス。一等星から名付けられたチームであり、チームの序列は2位。リギルの次に強いチームと称されており、サンデーサイレンスと同期のベテラントレーナー 樫本理子がチーフトレーナーを務めており、理子の下に桐生院葵という新卒のトレーナーがサブトレーナーとしてウマ娘達を導くチームである。

 

「今年の夏合宿も問題は無さそうですね」

 

和歌山県。そこでシリウスは合宿を行っており、既に三十路を越えた美女 樫本理子は海ではしゃぐ子供達を眺めては羽目を外さないように見ていた。

今日は月曜日。シリウスの練習は休みであり、それは合宿でも変わらない。

 

チーフトレーナー 樫本理子

 

サブトレーナー 桐生院葵

 

チームリーダー ウイニングチケット(高等部。専門種目中距離)

 

トーセンジョーダン(高等部。専門種目中距離)

 

メジロライアン(高等部。専門種目中距離)

 

ハッピーミーク(ジュニアC。専門分野全部)

 

ゴールドシチー(ジュニアC。専門種目マイルだが中長も走れる)

 

スーパークリーク(ジュニアC。専門種目中長距離)

 

セイウンスカイ(ジュニアB。希望種目中長距離)

 

エアジハード(ジュニアB。希望種目短距離、マイル)

 

リトルココン(ジュニアA。希望種目中長距離)

 

これがチームシリウスのメンバーである。しかし、チームシリウスは序列2位のチームであり、結果は残してきている。メジロライアンは宝塚記念を勝ってるし、ウイニングチケットもG1を何度か勝っている。

 

「よーし!!ビーチバレーでもしますか!!」

 

そんな理子の目に短髪なウマ娘、メジロライアンがビーチボールを掲げて宣言しているのが見えた。どうやら、これからビーチバレーで遊ぶのだろう。

 

そして…ビーチバレーが始まったが、ボールが弾かれて理子の所に飛んでいく。

 

「あ!!チーフ!!」

「大丈夫。問題ない」

 

理子の方に向かって綺麗な放物線を描いて飛んで来るボール。そんなボールを理子は綺麗にトスしようとしたが…

 

「ひでぶ!!」

 

掌と掌の間をボールは綺麗に潜り抜けて、理子の顔面に直撃した。理子は物凄く運動音痴であり、トレセン学園の膝神と称される程に運動音痴で体力がないのだ。

正月の餅つきイベントでは餅をつく杵を1人で持ち上げる事が出来ず、持ち上げる事が出来ても杵の重さで生まれたての小鹿のように脚がプラプラと震えてしまう程の体力の無さだ。トレセン学園から社宅に帰っても体力の大半を失い、運動音痴過ぎて車の免許も取得できていない。トレーナーとしては優秀だが、体力と運動面ではポンコツ理子ちゃん(37歳)なのだ。

 

 

 

 

 

 

改編前の歴史。そこで理子は1つの悲劇から徹底した管理主義者と成ってしまう。そこで起きた悲劇はトキノミノルと同世代の子を当時担当していたが、当時はチーム対抗戦ではなくチーム対抗戦の前身であり規模を大きくしたアオハル杯と呼ばれる物が存在した。そこで理子の教え子はアオハル杯とクラシック、どちらも結果を残そうと無理をしてレース中に疲労骨折を起こしてしまい大怪我を負ってしまう。そこで改編前の彼女は思ったのだ、子供達を徹底管理していれば疲労骨折は起きなかった…怪我を防げた、悲劇を2度と起こさず子供達を守ろうと徹底した管理主義者と成り果ててしまった。

 

しかし、此処ではその悲劇は起きていない。何故なら…

 

『自主連は立派だが。そろそろ止めておけ。脚、来てるぞ?

結構重度のシンスプリントに成ってるな。このまま放置したら疲労骨折すんぞ』

 

サンデーサイレンスの存在だった。サンデーサイレンスは理子の教え子の異変に直ぐ様気付き、怪我を未然に防いでくれたのだ。勿論、そんな異変は精密機器を使わない限り分からない。理子は彼のお陰で大事な教え子を救われたのだ。

 

先代から教わったマニュアルや多少の管理主義を行うシリウスを率いる若手時代の理子。自由主義でありながらトキノミノルを育て上げ1つの神話を作ったと言っても過言ではないサンデーサイレンス。方針は違う2人だが、同期である為か他のトレーナー達とは違って話は良くしていた。

 

『部員が多かったら大変だよな。個人個人を見たいが、時間は限られてるしな』

『トキノミノル以外の部員は入れないんですか?』

『募集してるが、なんでか入ってくれないな』

 

理子はサンデーサイレンスを最初は避けていた。口は悪いし、アメリカからやって来た男性ウマ娘であり、来日当初はトレーナーとして大成功するとは思ってなかった為だ。だが、トキノミノル、理子の教え子を含めた子供達はサンデーサイレンスのアドバイスで救われたし…怪我も未然に防がれている。その為か、理子はだんだんとサンデーサイレンスに引かれていったのだが…

 

『うーあーあー!!』

『おっさん!!遊びに来たぜ!!』

 

サンデーサイレンスの嫁キャンペンガール、赤子でサンデーサイレンスの長女 スペシャルウィーク。そしてタイム風呂敷の力で幼女に成っていたゴルシを見て、理子の初恋は見事に木っ端微塵に砕け散った。

 

『結婚してたの!?てか、子供2人居たの!?』

 

なお、理子は今でもゴルシがサンデーサイレンスの子供だと思ってるとか。

 

 

 

「はっ!?夢か!?」

 

ボールが直撃し、意識が反転した理子は目覚める。

 

「大丈夫ですか?トレーナーさん」

「トレーナー、大丈夫?」

 

そんな理子を介抱していたのは今年、クラシックに挑戦しているがオグリの大進撃を受けてクラシックで結果を残せていないスーパークリークとゴールドシチーであった。

 

スーパークリークもゴールドシチーも皐月賞に出場したが、オグリキャップの前に敗北。その後、ゴールドシチーはNHKマイルに出たが御存知オグリキャップに敗北。ゴールドシチーは日本ダービーにも出場したが、オグリの前に敗北。

 

悲しいが勝者が1人誕生すると言うことは他の十数名は負けるのだ。勝者と共に敗者も居る。勝負の世界とは実に残酷な物だろう。

 

「ええ…大丈夫です。それとクリーク、菊花賞に出なさい」

「ええ!?私がですか!?」

 

変則三冠馬であるオグリキャップは菊花賞ではなく、菊花賞よりもスピードが必要とされる秋華賞に出走する。菊花賞は3000mという長距離であり、最も強いウマ娘が勝つと言われている。根性、スタミナが特に物を言うだろう。

一方の秋華賞。此方は菊花賞と比べて距離は800mも短い2200mのレースであり、更にスピードとパワーが優先される。

 

「ええ、オグリキャップは秋華賞に出る。ならば優先権は1つ消えます。それに…貴女は生粋のステイヤーの素質が有ります。間違いない。

スピードとパワーでは貴女はオグリキャップには勝てない。ですが、3000という長い距離ならば貴女は輝ける!!同期の誰よりもです!!」

 

菊花賞。オグリキャップとは別の新たなドラマが産まれ、無名と言われた少女が一躍有名となる。

 

 

 

 

 




次回!!合宿が終わる。

早く…マックイーン出したい

あと、修正前はキンカメを名前だけ出したんですが、ガイドラインで怒られそうなので辞めました。


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夏合宿が終わり、秋シーズンが始まる

先生達は忙しい。


夏休みが終わったトレセン学園。ドラえもんとゴルシは部室であるプレハブ小屋にやって来たのだが、そこにはスピカのプレハブ小屋ではなくプレハブ小屋を3つほど合体させたような大きさを誇る、大きな部室に変わっていたスピカの部室である。

 

「ゴルシちゃん。僕達が北海道に居る間に、随分と変わったね」

「だな。まさか、夏休みの間にやってくれるなんて。流石だぜ!!」

 

スピカの面々が網走でサンデーサイレンスにみっちりと鍛えられて底上げされている最中。部員が急激に増えて一気に狭くなったスピカの部室は急ピッチで改修工事が行われて3倍程の大きさに変化したのだ。まあ、スピカの部室の周辺には他のチームのプレハブ小屋は存在しない為に問題は無いだろう。

 

シービー1人→ゴルシ加入→ディープとスペ拉致→アグネスタキオンとデジタルの加入→アルダン加入→フジキセキ加入→タマモクロス加入→オグリとウララ加入→キングヘイローの加入。選手だけで12人、今年に成ってから11人と爆発的なペースで部員が増えたのだ。もしかしたら未々増える可能性があり、来年度には新入生も入ってくる。そうすればもっともっと増えることは間違いないのである。

 

「来年はお婆ちゃんが入学するし、もっと増えるかもな!!」

「だよね、ゴルシちゃん!!」

 

なにより来年度にはマックイーンが入学するのだ。ゴルシの祖母であるメジロマックイーン、彼女はゴルシの野望?の為にも絶対にスピカに入れなければならない。

改編前の歴史ではトキノミノル(駿川たづな)がしっかりとマックイーンを見ていたにも関わらず、マックイーンは難病と言える故障を煩い早々に引退してしまった。しかし、この世界にはサンデーサイレンスは生存してるし、アグネスタキオンも既に医療の知識はそこら辺の医者を超えている。マックイーンの怪我を防ぐ段取りは完璧だ…いざとなれば未来のひみつ道具もある。

 

後はゴルシが無事にマックイーンを入部させる事が出来れば完璧だ。このスピカならマックイーンの怪我を防ぐことが間違いなく出きる。

 

「よし!!待ってろよ、お婆ちゃん…いや、マックイーン!!絶対に運命を変えてやるからな!!」

 

祖母の為にゴルシは力強く決意したのだった。

 

 

 

「おっさん!!遊びに来たぜ!!」

 

午後。ドラえもんは練習開始の時間まで、厩務員の仕事が有るためかゴルシとは別行動。そこで暇をもて余したゴルシはサンデーサイレンスが仕事を行っていると思われる教頭室にやって来た。なに、夏休み期間中だけとは言え先代理事長が帰ってきていた。だから、サンデーサイレンスだってその余韻を未だ味わって暇なはず……

 

「教頭。此方の書類を確認お願いします!!」

 

「サンデー先生。此方の願書は一通り確認しました」

 

「サンデー教頭。此方もお願いします!!」

 

はなかった。先代理事長であるノーザンテーストは再び海外に旅立ち、サンデーサイレンスは元の理事長業務の7割を再び対応。激務の日々が再び始まったのである。

 

「おけ、一先ず書類はそこに置いてくれ。ゴルシ、悪いが後にしてくれ。入学希望者の願書とか有るからな、今週は構ってあげられないぞ」

「マジかよ」

 

この世界では1月から新学年や入学が始まり、12月末に卒業式が行われる。その為か入試は2月ではなく10月には行われるので今月には夏休み中に届いた願書等の対応等でサンデーサイレンス達は大忙しなのだ。

 

「おっさん、今週忙しいのかよ!?」

「ああ、入学希望者の書類、来月には入試、再来月には秋の感謝祭。12月には卒業式とやることは沢山だ。せめて、俺様があともう1人居たらな」

 

その瞬間…ニヤリとゴルシは笑みを浮かべた。

 

「おっさんが2人に増えたら良いんだな?良いのが有るぜ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「さてと仕事は片付いたし、くそ理事会をCQCで半殺しにして潰すか」」」」

「誰か、おっさん達を止めろぉぉぉおおお!!」

 

サンデーサイレンス。ゴルシがかつて増えたコピー人形を用いて、あっという間に仕事を終らせる。だが、そのサンデーサイレンス達が金の亡者と化した理事会を粛清(物理)を起こそうとしたので必死に止めたゴルシであった。

 

 

そして秋のG1が始まる。




次回!!10月のG1!!

オグリの秋華賞、クリークの菊花賞、そして覚醒のタマモクロス!!



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