バカとテストと召喚獣 PA18外伝 (Mr.ペンギン)
しおりを挟む

第0章 予感
第零話 嵐の前触れ


こんにちは、Mr.ペンギンです!

この度は二次小説を再び書くことができ、感無量であります!

タイトルの所でもお伝えしている通り、これは私が昔書いていた「バカとテストと召喚獣 エピソードオブPA18」がベースとなっておりますが、オリキャラの設定が大幅に変わっていたりします。原作キャラに関してはほぼ変わりありませんが、タグにあるように特定の原作キャラにアンチ要素があったりするので、予めご了承下さいm(__)m




??「ほ~ん、ここがわしらの新しいステージってこっちゃのぉ。」

 

??「せやな~。思ったよりええ感じやんか。ぱっと見は何の変哲もない学校そのものやけど。」

 

??「それに、おい達の行くトコは結構よか感じやったとね!あそこならゲームも捗りそうたい!」

 

冬の寒さが和らぎ、心地よい暖かさを帯びた優しいそよ風が桜の花びらを少し巻き散らしていく中、真新しい制服を身に纏った複数の男女が文月学園の校門に佇み会話していた。

 

??「そー言やあの2人、おら達より一足先にここさ来てるべな~。」

 

??「ま、そりゃあいつらは事情が事情じゃけぇのぉ。何も問題起こしてなけりゃあえぇんじゃが…。何でも、ここにゃあえろーいびせえチンパンジーのバケモンがおるっぽいぞ!」

 

??「えっ…!それって相当おっかないんじゃ…!」

 

??「アハハ!あの2人ならなんもっしょ!心配しすぎ!」

 

西村「お前達来ていたのか!そんな所で立ち話してないで教室に行けよ。案内してやるから。」

 

鉄人こと西村先生に連れられながら、7人は教室へ向かうのであった。

 

人類を超えたバカと言われる心優しいある青年とその仲間達、そして個性が強烈すぎる面々が織りなす物語が今、始まろうとしているのである。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

明久「ふゎ~…。眠いな~…。」

 

秀吉「全く、お主と言うヤツは…。朝からよくそんな大きなあくびをするのぉ。」

 

明久「しょうがないじゃ~ん、眠いのは眠いんだし。」

 

所変わって、ここは全クラスでも最もボロボロな設備のFクラス。大あくびをする吉井明久を、クラスメイトの木下秀吉が少し呆れながら軽く咎めてみるが、当の本人は特に意に介していないようだ。そんな2人に、今度はこのクラスの代表である坂本雄二とムッツリーニこと土屋康太が近寄る。

 

雄二「気持ちは分からなくもないが、今日はしっかりしてくれよ。何せお前には割と

マジで頑張ってもらわねぇといけねぇからな。」

 

康太「………対Aクラス戦の前哨戦。」

 

明久「分かってるよ。その時はちゃんとするからさ。にしても今更だけど、雄二も思い切ったことを言い出したよね~。」

 

雄二「なーに、別にそんなこともねぇさ。そりゃ1年間こんなおんぼろで過ごすのが気に入らなかっただけだからな。最下級クラスだからある程度は覚悟していたつもりだったが、流石にこりゃあいくら何でも酷すぎるからな。」

 

秀吉「そうだとしても、あそこまでクラス全員を鼓舞するのは大したものじゃと思うぞ。最初のあのやる気のなさが嘘のようじゃ…!」

 

雄二「まぁ、流石にこればっかりは俺だけじゃあどうにもならねぇからな。それに、これならお互いにとって損はねぇだろ。」

 

雄二は、作戦通りと言わんばかりにニッと口元を緩める。そんな彼を見て、3人は内心で流石だとつくづく思っていた。すると次に秀吉が、何かを思い出したかのように話を切り出した。

 

秀吉「話は変わるがお主ら知っておるか?」

 

明久「ん?何のこと?」

 

秀吉「実は今日、この学年に転入生が来るようじゃぞ。」

 

雄二「なに、転入生?1学期が始まった次の日にか?」

 

秀吉「実は朝練の時に見掛けん奴らを見ての。確か―」

 

康太「………女3人、男4人だ。」

 

秀吉が言おうとしていたことを予見していたように、康太が遮る。秀吉はこのことに少し驚きつつも、ウンウンと頷いた。すると今度は雄二が手を顎に添えて思案顔になる。

 

雄二「成程な…。すぐにすぐ何かあるわけねぇと思うが、いずれにせよそいつらとはどっかで関わることがあるってことだな。」

 

明久「あー確かにそうなるか…。…因みにムッツリーニ、その人達ってどんな感じか詳しく分かったりするかい?」

 

康太「………女は3人共、顔もスタイルも良い。………特にその内の1人は、現役の読モだ。」

 

明久「うん、女の子の身体しか見てないあたり、流石ムッツリーニだね!」

 

康太「………!?」(ブンブンブン!!)

 

秀吉「そんな全力で否定されても、説得力なんてないぞ…。」

 

そうこう会話している内に、朝礼を報せるチャイムが鳴り、Eクラスとの試召戦争に備えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




久々に書いてみましたが、やはり楽しいですね!とは言え、書いてる途中でストーリーが変な方向に行きかけたりもしたので、ちゃんとある程度計画を立てなければいけませんね…笑
それはそうと、今回の話に登場した方言を紹介していきます!
・せやな:そうだね(関西)
・よか:良い(九州)
・~さ:~に(山形)
・~べ:~だ、だよ(山形)
・~じゃけぇ:~だから(広島、岡山)
・えろー:とても(広島)
・いびせえ:恐ろしい(広島)
・なんも:大丈夫、問題ない(北海道)


さて、次回は一旦登場人物の紹介を挟んでから本編に入っていきたく思います!
それでは、今回はここで失礼致しますm(__)m


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第1章 新たな友情と出会いと日常生活
第零.伍話 主な登場人物紹介


再開したと言いつつ、こちらをすっぽかしていまして、申し訳ありませんでした。
と言うのも、作品自体はある程度進めていますが、この作品の投稿をpixivでも行っており、気付いたらそちらでしか投稿していなかったということです…。今後は連動して形で投稿していきたく思います!
まずは本編に移る前に、登場人物の紹介をします!


★原作キャラ 

吉井明久

在籍:Fクラス

性格:原作通り

容姿:原作通り

召喚獣:原作通り

補足

・観察処分者だが、その性格から雄二、康太、秀吉と言った友人や西村を始めとした一部の教師からは信頼されている

・毎日島田、姫路、FFF団から暴行を受けているが、それでもそんな彼らを友人だと思い、いつも許してしまっている

・FFF団に入っていない

・最初は秀吉のことを美少女だと思っていたが、優子と出会ってからはちゃんと男と認識するようになる

 

 

 

坂本雄二

在籍:Fクラス(代表)

性格:原作通り

容姿:原作通り

召喚獣:原作通り

補足

・明久にいつも暴力を振るう島田達を快く思っていない

・FFF団に入っていない

 

 

土屋康太

在籍:Fクラス

性格:原作通り

容姿:原作通り

召喚獣:原作通り

補足

・明久にいつも暴力を振るう島田達を快く思っていない

・FFF団に入っていない

 

 

木下秀吉

在籍:Fクラス

性格:原作通り

容姿:原作通り

召喚獣:原作通り

補足

・明久にいつも暴力を振るう島田達を快く思っていない

 

 

島田美波

在籍:Fクラス

性格:原作よりきつめ

容姿:原作通り

召喚獣:原作通り

補足

・姫路やFFF団共々、他の女子といるだけで明久に暴力を振るう

 

 

姫路瑞希

在籍:Fクラス

性格:原作よりきつめ

容姿:原作通り

召喚獣:原作通り

補足

・島田やFFF団共々、他の女子といるだけで明久に暴力を振るう

 

 

霧島翔子

在籍:Aクラス

性格:原作通り

容姿:原作通り

召喚獣:原作通り

補足

・雄二に好意を抱いているのは原作と変わらないが、本作品では彼に対して暴力を振るうことはそれ程なくなった

・クラス内で対立が起こった時、中立の立場に立っていた

 

 

 

木下優子

在籍:Aクラス

性格:概ね原作通り

容姿:原作通り

召喚獣:原作通り

補足

・当初は勉強できることが第一とだと考えていたため、大半のクラスメイトと共に明久らFクラスを見下し、それを良しと思わない光輝、和博、雅治と対立していたが、明久との一騎打ちを通してそれまでの考えを改め、明久達と友達となり、同時に和解した

・次第に明久に好意を寄せるようになる

 

 

 

工藤愛子

在籍:Aクラス

性格:原作通り

容姿:原作通り

召喚獣:原作通り

補足

・クラス内で対立が起こった時、中立の立場に立っていた

・一騎打ちの時以来、康太に好意を寄せるようになる

 

 

 

★オリキャラ達

中岡光輝(なかおかこうき)

在籍:Aクラス

得意科目:物理、英語、保健体育

苦手科目:現代文、公民、美術

一人称:わし

誕生日:8月6日

出身:広島県広島市

名前モデル:中岡元

右目の瞳が緑色、左目の瞳が黄色のオッドアイが特徴。夏海の双子の弟で、一卵性双生児の如く非常に似ている。

自由奔放な性格で呑気な性格だが、姉である夏海には中々頭が上がらない。好奇心旺盛で気まぐれな所もあり、周りから嫌われたり見下されている存在でも一切の偏見も無く受け入れる。この様な性分から、当初は和博、雅治と共に優子達と対立していた。医学に秀でている。

 

 

 

中岡夏海(なかおかなつみ)

在籍:Aクラス

得意科目:化学、英語、保健体育

苦手科目:現代文、日本史、美術

一人称:アタイ

誕生日:8月6日

出身:広島県広島市

名前モデル:中岡元

右目の瞳が黄色、左目の瞳が緑色のオッドアイが特徴。光輝の双子の姉で、一卵性双生児の如く非常に似ている。

気が強く男勝りな性格で、弟である光輝を尻に敷く。一方で義理堅く人情味溢れる一面もある。先入観に囚われずに冷静に物事を見極めることもでき、優子達と違って最初から明久達に対してそれ程悪い印象を抱いていなかった。光輝と同様に医学に秀でている。

 

 

 

重谷和博(おもたにかずひろ)

在籍:Aクラス

得意科目:現代文、日本史、保健体育

苦手科目:物理、地理、家庭科

一人称:わい

誕生日:3月13日

出身:大阪府大阪市浪速区日本橋

名前モデル:清原和博

がっしりした身体に丸刈り頭が特徴。いつも陽気で明るいムードメーカー。大の遊び好きで、底抜けの楽観主義者だが、周りに縛られない柔軟な思考の持ち主でもある。当初は光輝、雅治と共に優子達と対立していた。野球部に所属していおり、甲子園出場を目指している。

 

 

 

空知雅治(そらちまさはる)

在籍:Aクラス

得意科目:世界史、漢文、音楽

苦手科目:保健体育、化学、数学

一人称:おい

誕生日:8月9日

出身:長崎県長崎市

名前モデル:福山雅治

濃いメンツが揃うメンバーの中では比較的常識人の部類に当たるが、少なくとも1日の3分の2をゲームに費やすゲーマーの鑑。それ故いつも眠そうで、目は常に半開き状態である。気まぐれで掴みどころがない気分屋でもある。キリシタンで聖書を常に持っているが、然程宗教熱心ではなく気が向いた時だけ食前にアーメンと言う等ガバガバ。当初は光輝、和博と共に優子達と対立していた。

 

 

 

氷川寛定(ひかわひろさだ)

在籍:Aクラス

得意科目:日本史、古文、英語

苦手科目:技術、化学、物理

一人称:おら

誕生日:12月8日

出身:山形県鶴岡市

名前モデル:鈴木寛定(伴淳三郎)

隻腕で左腕を失っている青年。人見知りが激しく、初対面の人物に会うとすぐに物陰に隠れてしまう。男家族に生まれたことから、女性に対する免疫が非常に薄く、密着されたり露出の高い格好をしているのを見ただけでも絶叫してしまう。人から褒められると照れ隠しで口が悪くなるが、嬉しさを隠せず満面の笑み浮かべてしまう。一方で、友達を何よりも大切に思う友達想いな所もある。一部の相手に「~屋」を付けて呼ぶ。水泳部に所属している。イギリスに在住経験がある。

 

 

 

松井菜々実(まついななみ)

在籍:Aクラス

得意科目:地学、生物、公民

苦手科目:保健体育、物理、技術

一人称:私

誕生日:5月4日

出身:北海道函館市

名前モデル:松井菜桜子

緑色のストレートヘアを肩下まで下ろした小柄な体形で、頭の左側に付けている季節に合わせた花飾りが特徴的な少女。大人しく引っ込み思案で恥ずかしがり屋な性格。争いを嫌い穏健で心優しいが、時々悪意なく毒舌を履くことがあり、トラブルの原因になってしまうこともある。一方でここ一番での行動力や度胸を持ち合わせており、ここぞと言う時には頼れる存在でもある。勘が鋭い一面もあり、探し物が得意だったりする。美月とは非常に仲が良く、相手をさん付けで呼ぶ中で彼女だけは「みーちゃん」と呼ぶ程。また、性格が似ていることから寛定とも仲が良い。誰に対しても敬語で話すが、時々方言が出ることもある。

 

 

 

鈴木美月(すずきみづき)

在籍:Aクラス

得意科目:保健体育、家庭科、数学

苦手科目:地学、技術、漢文

一人称:あたし

誕生日:9月13日

出身:北海道札幌市中央区薄野

名前モデル:鈴木愛奈

読者モデルをやっており、高身長且つ手足が長く高校生離れしたプロポーションとルックスを持つ。さばさばした性格で、明るく周りのフォローが上手。天然パーマでウェーブが掛かった長い金髪が特徴なギャルだが、前述の正確に加えて「趣味が料理とガーデニング」、「特技がコーディネートと裁縫」、「少女漫画と恋愛ものが好き」、「甘い物が大好物」等非常に高い女子力の持ち主でもある。好奇心旺盛でもあり、お化けや虫に苦手意識がない。

 

 

 

砂辺秀喜(すなべひでき)

担当科目:社会(地理)、美術

一人称:俺

年齢:26歳

誕生日:2月1日

出身:石川県輪島市

名前モデル:松井秀喜

ぐうたらでマイペース且ついい加減で、調子の良い性格。他の教師にもタメ口で話す、生徒とゲームや漫画の貸し借りを平然と行う等教師らしからぬ行動が目立っていることから、教師でありながら西村に目を付けられている。しかしその実、生徒を守るためなら仕事を放置してでも対応にあたる等教師と言う職業に高い誇りを持っている。その為生徒からの人気は非常に高く、この点に関しては西村ら一部の教員も高く評価している。文太とは大学時代からの友人。アメリカに在住経験がある。

 

 

 

天登文太(あまとぶんた)

担当科目:理科(生物)、技術

一人称:僕

年齢:26歳

誕生日:10月25日

出身:香川県仲多度郡多度津町

名前モデル:高倉文太

束縛を嫌う自由気ままで掴み所がない性格。パイロットの経験があるからか高い所が大好きで、電柱の上等どこかしら高い所にいることが多い。様々な動物を無断で飼っており、校内に放牧したり授業に持ち込んだりすることから、教師でありながら西村に目を付けられる。しかしながら教師と言う職業に高い誇りを持ち、生徒の為なら仕事をすっぽかしてでも対応する。その為生徒からの人気は非常に高く、この点に関しては西村ら一部の教員からも高く評価されている。秀喜とは大学時代からの友人。少林寺拳法五段を持っている。イタリアに在住経験がある。

 

 




次はいよいよ本編となります!
駄作ぶりは相変わらずかと思いますが、どうかこれからもよろしくお願いしますm(__)m


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第壱話 個性的すぎる転入生

さて、今回より本編へと移ります!
こんな駄作ではありますが、どうぞお付き合いの程よろしくお願いしますm(__)m


一学期が始まってから翌日のAクラス教室にて…

 

愛子「ん~…。」

 

優子「おはよう、愛子。どうしたの?何かあったの?珍しく冴えない顔してるけど?」

 

愛子「あっ、優子おっはよ~♪実はさ、今日来たらさボクの隣に新しい席があったんだ~。隣はいないハズなんだけど…。」

 

彼女の言う通り、確かに愛子の隣に新しいシステムデスクが設置されていた。昨日は無かったのにだ。

 

翔子「…優子の隣にも新しい席があった。」

 

優子「ひゃっ!?いきなり出てこないでよ、代表!…って、アタシの隣にも!?」

 

翔子「…(コクリ)」

 

愛子「新学期が始まってからまだ1日しか経ってないのに、どうしたのカナ?」

 

優子「転校生…かしら?」

 

翔子「…その可能性はある。」

 

愛子「でもでも、一学期が始まってその次の日に転校生って一体何だろうね…??」

 

優子「分からないけど、そう言うこともあるんじゃない?現にこうして来るワケだし。」

 

翔子「…いずれにしろ、新しい仲間は歓迎する。」

 

しばらくして朝礼を告げるチャイムが鳴り、それとほぼ同時に担任である高橋先生が教室に入ってきた。

 

高橋「皆さん、おはようございます。気が付いた人もいると思いますが、今日からこのクラスに転入生が7人来ます。本日のLHRはそんな彼らの自己紹介に充てますので、そのつもりでお願いします。」

 

『転入生!?そりゃまた急だな…!』

 

『どんな人達なんだろ?結構楽しみねー!』

 

そして、迎えた一時間目のLHR

 

高橋「お待たせしました。それでは予告通り転入生の皆さんの紹介を始めます。それではどうぞ、中へ入ってきて下さい。」

 

高橋がそう言うとドアがガチャリと開き、生徒が入ってきた。

 

光輝「うわぁ……!!ホンマにこがいな教室があるんたぁ、よいよぶったまげたわい………!」

 

夏海「何ならこりゃあ…!?こかぁ本当に教室なん……??」

 

和博「んーと、わいらは三星ホテルに間違えて来てもうたんかいな?」

 

雅治「まさか同じ国にんな教室がある学校があるとはな…!何か色々ショッキングたい…。」

 

美月「いやー話ではちらって聞いてたけどさ、いざこうして見ると圧巻だね~!!」

 

彼らは一人一人この教室の感想を述べていった。誰しも普通はそう思うだろう。その豪華な設備に圧倒されつつ教卓に上がった。

 

高橋「えー、それでは早速左側の方から順に自己紹介をお願いします。」

 

光輝「おっと、呑気に感心しちょる場合じゃねかったか!え~っと、わしゃあ中岡光輝!出身は広島じゃ!取り敢えずよろしくのっ!次姉貴な~。」

 

夏海「ほいほい。うんっ、アタイはコイツの双子の姉の夏海。まーぼちぼちよろしくっ!」

 

和博「次はわいか!わいは大阪出身の重谷和博や!これからよろしゅう頼むわっ!!」

 

雅治「おいは空知雅治。長崎の出身たい。まーよろしく。んじゃ次に回すとよ~。」

 

美月「任せてーっ!んーと初めまして!あたし、鈴木美月!北海道の札幌にあるすすきのってトコの出身のどさんこだよー!よっろしくぅ~っ!!」

 

美月は最後にビシッとウインクと決めポーズを決め、自己紹介を締めくくった。

 

『おー!!色んな所から来てるんだなー!』

 

『最初の二人は双子っぽいな。姉弟でよく似てるけど…。』

 

『え、ちょっと待って…!鈴木美月って、まさかあの読者モデルの……?!』

 

『間違いないわよ!だってほら、一昨日発売したあの雑誌の表紙のど真ん中にあの子写ってたもの!!』

 

やはり転入生に皆興味津々だが、流石にざわざわしている様子を見兼ねた高橋先生が手をパンパン叩いて静かにしてくださいと注意した。

 

と、ここで一人の生徒が手を挙げた。

 

高橋「どうしましたか、木下さん。」

 

優子「あと二人いると思うのですが、その二人はどうしたんですか?」

 

そう、今ここにいる転入生は五人だ。つまり本来ならもう二人いるはずだ。すると五人の転入生がハッとしたように気付いた。

 

和博「ちょい待てよ…、アイツらまさか…!!」

 

愛子「ねえねえ!ドアに隠れてる子がいるよー!」

 

彼女のこの一言で、全員が一斉に視線をドアに送る。すると一人の男子がドアに、そしてその人物の後ろに女子が一人が隠れているではないか。

 

「「ふぇぇぇ…(ガタガタプルプル)」」

 

あまりのカオスっぷりに高橋先生を含む全員が唖然とし、クラスに何とも言えない雰囲気が漂い始めた。一方で、既に自己紹介を済ませた五人はやっぱりかと言わんばかりに両手をあげた。

 

夏海「おめぇらやっぱそこにおったんか…。早よぉこっちけぇよ~。アタイらは終わったけぇ、後はおめぇらだけで~!」

 

寛定「そりゃ分かってっけど…。で、でもよー……、おら恥ずかしいだよ~……!」

 

菜々実「あうぅぅぅ………。わ…、私も…き、緊張して震えが止まりません~………。」

 

雅治「あんな~…、おはんらが来ねーと先に進まんとよ?」

 

和博「あかん、これじゃキリがねぇわ…。…光輝、美月!頼むわ!」

 

光輝「ったくしゃーねーのぉ…。ほいじゃあ美月よ、先にわしが寛定を引き寄せるけん、その後に菜々実を頼まっ。」

 

そう言うと光輝は突然鞄の中をごそごそしだし、中から何かを取り出した。

 

光輝「おーい寛定よー!これが見えるか~?」

 

高らかと挙げている彼の右手に持っている物は……

 

愛子「えーっと…、もしかしてあれ、もみじ饅頭なんじゃあ…?」

 

彼女の言う通り、光輝が手に持っていたのは広島が誇る銘菓もみじ饅頭だった。皆の頭が何故と思っている中、寛定はそのもみじ饅頭から絶対に目を離すことなくじっと見つめたまま、臭いをクンクン嗅ぎながらゆっくりと歩み始めた。

 

光輝「ええか寛定、待てで…!まだ待てじゃ…!!」

 

光輝は近付く寛定に右手を軽く振りながら左手で制する。そして―

 

光輝「……うしっ、もう良ぇぞ!」

 

寛定「ぃよっしゃーーーっ!!」

 

光輝は左手を下ろすと同時に、右手のもみじ饅頭を手渡した。すると寛定は待ってましたと言わんばかりに目を輝かせてそれを受け取り、口でビニールの包装パッケージを剥ぎ取ってもみじ饅頭にかぶりついた。

 

寛定「んーーっ!!うめぇなーーっ!!」

 

彼は心底幸せそうな満面の笑みを浮かべてその味を噛み締めている。

 

光輝「本当は今日の昼飯後のおやつで食う予定じゃったが仕方ねぇ。てな訳で美月?」

 

美月「オッケー☆したっけあたしに任せてっ!」

 

今度は美月が、未だドアで立ち往生する菜々実に近付く。

 

美月「よーしよーしななみ~ん。初めてだからたいした緊張してるんよね~。なんもなんも、おっかねぇことはねーから、ねっ?あたしと行こうやっ。」

 

菜々実に近付きそうあやしながら彼女の手をしっかり握り、そのままゆっくり教卓に連れて来た。

 

『な、何これ…??一体どう言う状況なの……?』

 

『あの二人、まるで犬か猫みたいじゃないか……。』

 

一連の出来事を目の当たりにし、周りからは驚きの声が上がった。

 

雅治「全く…。おはんらはいっちょんブレなかね…。落ち着いたなら、ちゃちゃっと自己紹介終わらすとよ。」

 

二人とも鞄から取り出したお茶を飲んだ後、教卓に上がった。

 

高橋「あっ!ではどうぞ…。」

 

高橋もあの行動に未だに驚きを隠せてないようだ。これは何も彼女のみならず、転入生以外の全員もそう思っている。そう言ったことも特に気にすることなく、さっきまで怯え切っていたのが嘘のようにはにかみながらゆっくり自己紹介を始めた。

 

寛定「初めまして。おら、山形出身の氷川寛定だ~。こんなオラだげども、1つよろしくな~。」

 

菜々実「ま…、松井菜々実と言います…。北海道函館市の出身です…。こんな私ですが…、よ、よろしくお願いします…。先生、これでよろしかったでしょうか……?」

 

高橋「えぇ、大丈夫ですよ。それでは皆さん、今日から新しくこちらの七人が新しく仲間となりますので、仲良くしてください。そしたら転入生の皆さん、自分の席に着いて下さい。」

 

そう言うと、彼らはあらかじめ伝えられていた席に着いた。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

~愛子side~

 

さてさて、ボクの所には誰が来るんだろ?っと思ったその時、さっきもみじ饅頭を幸せそうに食べていたシャイボーイがやって来たよっ!

 

氷太「んじゃ、お邪魔するど。」

 

愛子「おっ、いらっしゃ~い♪キミがボクのお隣さん?」

 

氷太「んだ。おらは氷川寛定。改めてよろしぐな~。」

 

愛子「こちらこそよろしく~♪ボクは工藤愛子。趣味は水泳で、スリーサイズは78・56・79で、特技はパンチラだよ~。」

 

氷太「……何か聞いちゃいげねぇ事を聞いちまったような気がすんのはおらだげが…??ま、まぁともかくよろしぐ…。」

 

ウン、平静を装ってるケド顔がかなり赤くなってる。正直さっきのアレを見た時点でかなり面白そうだと思ってたけど、これで確信に変わったよ。この子、間違いなくいじり甲斐がある!と言うワケだからもう少し弄ってみよっカナ~♪

 

愛子「何なら、今ここでその特技を披露しようか?」

 

氷太「ふぇっ?!そりゃあマズいだーよ!!」

 

翔子「…愛子、その辺にしてあげて。…まだ慣れてない。」

 

愛子「はーい。あははっ!キミ、思った以上に良い反応してくれて面白いネ♪」

 

氷太「ヴェエ!?慣れる慣れない以前の問題でねぇが!?」

 

あー面白いっ!面白かったからちょいちょいいじってみよっと♪

 

~愛子side out~

 

 

 

~優子side~

 

愛子ってば早速やってるのね…。あの男の子、凄く純粋そうだからあの手のものは多分結構苦手なんでしょうね。ちょっと同情しちゃうわ…。それはそれとして、アタシの所には誰が来るのかしらね?

 

夏海「入るで~。」

 

ふーん、この子が隣の席になったのね。

 

優子「どうぞ。アタシは木下優子。よろしくね。」

 

夏海「アタイは中岡夏海じゃ。ま、よろしくな~。」

 

適当に挨拶をすると夏海は席に座った。あ、確かこの子って…

 

優子「そう言えば貴女、双子の姉なんだっけ?」

 

夏海「あぁ。そうじゃけど、それがどうかしたん?」

 

優子「奇遇ね、アタシも双子の姉なの。」

 

夏海「うおっマジか!弟、パシっちょる?」

 

優子「当然よ。じゃあ貴女も?」

 

夏海「勿論!!」

 

「「…………………………………。」」

 

夏海「何かアンタとは気が合いそうじゃな!」

 

優子「そうね!アタシも丁度そう思った所よ。改めてよろしくね、夏海!」

 

夏海「こっちもな、優子!!」

 

意外な共通点から新たな友人ができた。何だか久しぶりに嬉しく感じたわ。

 

~優子side out~

 

 

 

 

 

 




いかがでしたか?
この作品のベースになっており、以前書いておりました「バカとテストと召喚獣 エピソード オブ PA18」では転入生は5人でしたが、このリメイク版では7人が転入生としてクラスにやって来ました!
それではここで、今回登場しました方言を紹介します。
・よいよ:本当に(広島)
・おはん:お前、あなた(長崎、福岡等)
・したっけ:そしたら(北海道)
・たいして:とても、すごく(北海道)
・いっちょん:全然、全く(長崎)
・なして:どうして(長崎、熊本、福岡等九州)

~次回~
第弐話 対立と小さな友情


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第弐話 クラス内対立と新たな友情

~前回のあらすじ~
一学期が始まった翌日、2年Aクラスに7人の転入生がやって来た。それぞれキャラクターが濃すぎる面々だが、何がともあれそんな7人を加えたAクラスが始動するのであった。


色んな意味でショッキングな一時間目が終わって休み時間なった時、7人が一箇所に集まった。寛定や菜々実を含む彼らは、まるで自己紹介の時に何事も無かったかの様に明るい表情になっていた。

 

光輝「ふぃ~。一時はどうなるか思うたが取り合えず無事にスタートは切れたよな!てな訳で例のアレ、やっか!」

 

夏海「うおっ!アレをやるんかっ!!」

 

和博「何?アレをやんのか!」

 

雅治「おっと、久々にアレをすっとか!」

 

寛定「おぉー、久しぶりだべなぁーっ!」

 

美月「ぃよっ!そう来なくっちゃネ☆」

 

菜々実「えへへ…。皆さんでまたできるの、楽しみです…!」

 

そう言うと彼らは、テーブルにお菓子や飲み物を持ち寄ってきた。

 

和博「ほな、新しいスクールライフに~…、」

 

「「「「「「「乾杯~!!!」」」」」」」

 

彼らは高らかに飲み物が入ったペットボトルや紙パックで乾杯し、ミニ宴を始めた。

 

光輝「かぁー最高じゃあーっ!!」

 

夏海「うわっ、これ旨っ!」

 

和博「これやったらいつでも宴が出来るなっ!」

 

雅治「毎日宴がある生活…、素晴らしかね!」

 

氷太「おぉ!皆で楽しく宴が出来るんだべがっ!?おら嬉しいどっ!」

 

菜々実「さ…、流石に毎日はちょっと疲れるんじゃあ………。」

 

美月「やりたい時にやれば良いんじゃない?流石のあたしでも毎日毎日はしんどいしさ…。いやー充実してるよね~!」

 

宴で盛り上がっている中、仏頂面の優子が怒鳴り込んできた。

 

優子「ちょっとアンタ達!!さっきからうるさいわよ!!静かにして頂戴!!」

 

光輝「おっとそりゃすまんかったっ!流石に騒ぎすぎたんじゃな…。よし、ほいじゃあ声のトーン下げた上でやるけん安心しとくれ!」

 

彼は瞬時に両手を合わせて謝罪し、反省の気持ちを示した。所が、優子の怒りはこれでは収まらなかった。

 

優子「そうじゃなくって、宴そのものを即刻やめなさいって言ってるの!分かった!?」

 

和博「悪ぃがそれは出来へん相談やな。何せこれは、これからこの新天地でも自分らしく頑張ろうやっちゅう意味を込めたちょっとした決起集会みたいなモンや!それに、皆で楽しむことのどこがあかんのん?」

 

優子「そんなの帰ってやれば済む話でしょうが!!下らない………!」

 

彼女が吐き捨てるように言うと、今度は光輝、和博、雅治が眉間に皺を寄せ、同時にガタンと椅子から立ち上がった。

 

雅治「おいおい待ちや!そぎゃん言うことなかろーが!!宴言うんはな、皆でぱーっと楽しく盛り上がってもっと絆を深める大事なモンたい!なしておはんらにやかましか言われんばあかんと?!」

 

優子「学校は勉強する所よ!はき違えないでもらえる?!」

 

『そうだぞ!木下さんの言う通りだ!お前らバカじゃないのか!』

 

『ホントふざけるのもいい加減にしなさいよ!迷惑なのよ!』

 

『お前ら揃って学校をナメてんのか!』

 

そんな優子に加勢する形で、光輝らに批判の声が次々に上がった。

 

優子「ほら見なさいよ!他の皆もそう言ってるけど、まだそんな暢気な事言ってられるのかしら?」

 

優子は冷たい視線をそのままに、勝ち誇った顔をして彼らを見た。だが3人は焦ったり怯んだりする様子は全く無かった。すると今度は3人共溜め息をつき、やれやれと肩を竦めた。

 

和博「あ~あ…。オメェらはな~んも分かってへんなぁ~。何つーかさ、同情するで…。」

 

優子「何ですって?」

 

和博「あんな、オメェらは『学校は勉強する場所』っちゅう固定概念に縛られすぎなんや。確かにそれは間違いやとは思わんし、まさにその通りや思う。せやけどホンマに『勉強』だけなんか?何やオメェらの話を聞く限りやとどーもそう聞こえるんや…。」

 

優子「それどう言う意味よ…!そう聞こえるも何も、実際そうでしょう?」

 

光輝「いやいや、案外そうでも無ぇんじゃねぇか?おたく、宴は家でもできるっつっとったけどよ、それこそ勉強かて家でも出来るじゃろ?やり方どうこうはともかくな。おたくらは『学校=勉強だけする所』っちゅう認識っぽいが、わしらはそう思わん。わしらはな、学校ってのは勉強もせにゃおえんけど、同時に仲間と苦楽を共にしながらかけがえのない楽しい時間を過ごす憩いの場所じゃと思うぞ?」

 

光輝達の持論に耳を傾けていた優子達だったが、それでも眉間に皺を寄せて納得いっていない様子だった。

 

優子「それを屁理屈だって言う事をよく覚えときなさい!」

 

雅治「屁理屈なもんかっ!ここに来たお陰で、出会えた友人がおる奴もおる!おはんらだってそうじゃなかとか!?」

 

優子「世の中学力が全てよ!そんな物は二の次三の次よ!」

 

光輝「そがん事言うなら極端なこと聞くが、学力がえぇ奴全員がよいよ良い奴なんか?そうじゃねかろ!事実、東大を出た奴でも犯罪者とか役に立たん政治家とかはなんぼでもおるじゃろ?つまり、テメェらのその考えは古いんじゃ!!そこまでして勉強が大事じゃったらな、わしらにぎゃあぎゃあ言わずに勝手にしちょったらえぇじゃねえか!」

 

優子「んな…?!言うに事欠いてっ……!」

 

『お前ら生意気だぞっ!所詮学力が全てなんだよ!』

 

『ふざけるのも大概にしなさいよね!』

 

『そうだそうだ!お前らの方こそ何も分かっていないんじゃないのか!』

 

雅治「せからしか!その言葉、そっくりそのまま返しちゃるたい!」

 

『んだとこの野郎!!』

 

愛子「ちょ、ちょっと皆落ち着きなって!!喧嘩なんかしちゃダメだよ!」

 

美月「もうよしなよ3人共!流石にやり過ぎだよ!!」

 

両陣営による小競り合いは次第にヒートアップしていき、1人のクラスメイトと雅治が取っ組み合いをしかけるまでに発展した。見兼ねた愛子と美月が間一髪の所で止めに入り、一旦は落ち着きを取り戻したが、それでも依然両者の怒りは収まらない。

 

和博「かー不愉快やっ!!もう良ぇあっちで続きやろうで!!」

 

宴を邪魔された挙句、説教臭いことを言われてすっかり気を悪くした3人は、教室から出て他の所へ行った。

 

『何だよアイツら!ふざけやがって!』

 

『大体あの態度は何なの!?超ムカついたわっ!』

 

『何であんな奴らがウチのクラスにいるのよ?!腹立つ――っ!』

 

優子「何よアイツら?!何か分からないけど知ったかぶりして、ふてぶてしいことこの上ないわね!!」

 

怒りを隠せない優子に、夏海と美月がゆっくり歩み寄ってきた。

 

夏海「まぁまぁ優子よ、落ち着きなって。」

 

優子「これが落ち着いていられるわけないでしょ!ちょっとどうなってんのよアイツら!?」

 

夏海が優子を宥めようとするが、やはり怒り収まることがない。

 

美月「そりゃあうるさくしたこっちも確かに悪かったけどさ、だからって流石にあそこまで言うことはなかったんじゃないかな~って。」

 

優子「何よ?まさかアイツらの肩でも持とうっての?」

 

3人に向けたもの程ではないものの、優子は鋭い視線を2人にも向ける。しかしながら2人はそれに臆することはなく、あっけらかんとしている。

 

美月「別に?あたしらはあの3人の肩を持つ気なんかないよ?ただ……、優子達の肩を持つ気も無いんだけどね。」

 

それを聞いた優子は、きょとんとした表情を浮かべた。

 

優子「え?それって一体どう言う事よ?」

 

夏海「確かにアタイらは少々はしゃぎすぎたかもしれん。それは反省せにゃあおえんじゃろうな。じゃけんアンタの言いたい事も分かる。けどよ、アンタはどーも『優等生』っちゅうモンに捕らわれすぎなんじゃ。何もアンタだけに限った話じゃねぇ、他の連中もじゃけどもアンタが特にそうじゃ。そのせいで視野が狭くなって世界が狭く見えちまうんじゃ。要はどっちもどっちって事じゃな。」

 

優子「…何よそれ?意味がさっぱり分からないわよ…。」

 

夏海「今は分からなくて無理もねぇ。けどいずれ分かる時が来るさ。焦ることはねぇよ。」

 

一方、翔子や愛子を始めとした中立の立場をとった少数メンバーはこの状況に困り果てていた。

 

菜々実「うぅぅ~~……、怖かったです~~………。」

 

寛定「ふぇぇぇ~…、工藤屋~霧島屋~。皆これからどうなるんだべが~…!おら達どうすりゃあ良いんだべ~…!」

 

愛子「う~ん…、アレばっかりは流石にどうにもならないカナ…。優子達も中岡君達もあんな様子じゃあね…。」

 

翔子「…まさかクラス内で対立が起こるなんて……。…私も何とかしたいけど、ともかく今はまだ様子を見るしかない。」

 

美穂「それにしてもこのままだと更に悪化するばかりですよ…。」

 

利光「僕としてもできることがあるなら力になりたいけど…。何か良い方法はないものか…。三浦君、何かアイディアはないかい?Cクラスの試召戦争で活躍してくれた君なら何か考えがあったりしないかな。」

 

彼は打開策を求めて、クラスメイトで同じく中立の立場の三浦直道(みうらなおみち)に目配せをした。久保の言うように、彼は先日のCクラス戦で主に軍師として活躍し、その優れた知略と采配で勝利に貢献してみせた立役者の一人だ。無論、必要に応じてではあるが前線でもしっかり戦っていた。

 

直道「それがあればすぐにでも言っていますし、実行だってしています…。しかしこればかりは一筋縄ではいかないでしょうね…。お互い我が強すぎる上に、下手に刺激すると余計に悪化しかねない。昨日の試召戦争よりタチが悪いですよ……。」

 

彼は困り切った笑顔で両手を上げる仕草をとった。皆、途方に暮れた表情を浮かべていた。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

時は流れて昼休み。Eクラスとの試召戦争を控えた明久、雄二、康太、秀吉は、売店の自動販売機でジュースを買っていた。

 

明久「へ~、これが雄二のオススメかい?」

 

雄二「あぁ。最近発売された代物でさ、初めて飲んだ時はあまりに旨かったんで本当に驚いたぜ。」

 

康太「…値段もお手頃。」

 

秀吉「どれ、早速皆で飲んでみるかの。」

 

そして、一斉に飲んでみた。

 

明久「うわぁ、これ―」

 

明雄康秀光和雅寛「」「「「「「「超旨いっ!!」」」」」」」」

 

8人共見事にハモった。

 

明久「えっ、君達も分かるかい!」

 

光輝「あぁ分かるっ!分かるぞ!!」

 

雄二「だろ!これ旨いだろっ!」

 

和博「んな旨いモン、わいの地元にゃあ無かったで!?」

 

康太「…中々イケる。」

 

雅治「喉越しのよかジュースたい!!」

 

秀吉「このスッキリとした味わいが何とも良いのぅ。」

 

寛定「んだ!おら幸せだべ~!」

 

明久「そう言えば君達、見ない顔だね。名前は何て言うの?」

 

光輝「わし?わしゃあ広島出身の中岡光輝じゃ。」

 

和博「わいは大阪出身、重谷和博や。よろしゅうな!」

 

雅治「おいは空知雅治。長崎の出身たい。」

 

寛定「おら、山形が出身の氷川寛定だ~。おら達はな、今日ここに転入してきたばっかだ~。」

 

雄二「そうか、転入生ってのはお前達だったのか…!なら他のメンツはどうしたんだ?あと3人いるだろ?」

 

雅治「情報早かね~!あいつらなら教室とよ。さて、おい達はちゃんと名乗ったばい。おはんらも名乗るたい。」

 

明久「初めまして!僕はFクラスの吉井明久!」

 

雄二「Fクラス代表の坂本雄二だ。」

 

康太「…土屋康太だ。クラスは同じだ。」

 

秀吉「ワシは木下秀吉じゃ。よろしくのぉ。」

 

光輝「ほぅ、明久に雄二、康太に秀吉か…。男同士、仲良くしようぜっ!!」

 

秀吉「お主、ワシが男じゃというのが分かるのか!?ワシはとても嬉しいぞいっ!」

 

光輝「ん~?そんな泣いて喜ぶ程か??確かに外見は華奢じゃが、一目で分かったわい!」

 

明久「それにしても、何だか話し方が秀吉と似てるね。」

 

光輝「これ?方言じゃ。岡山県民とか広島県民とかはな、ガキんちょじゃろうが女じゃろうが大体こんな喋り方をするんじゃ!個人差はあるがな。」

 

明久「へぇ~そうなんだ…!!それは知らなかったや。」

 

秀吉「しかし話し方が似ておると、どうも親近感がわくのぉ。」

 

光輝「じゃのぉ。何かお前たぁ初めて会った気がせんの~!」

 

寛定「皆でこうして出会えたのも何かの縁だ~。これからも仲良ぐするだ~。」

 

明久「そうだね!よろしくねっ。」

 

雄二「よし、お前らそろそろ行くぞ。」

 

雅治「何ね?何かあると?」

 

雄二「この昼休みが終わった後、Eクラスと試召戦争があるんだよ。」

 

和博「おーせやったんか!!そいつぁ邪魔してすまなんだな。ほな、わいらも帰るか。」

 

寛定「ぎんばれ!!応援してるず!」

 

明久「ありがとう。頑張るよ!」

 

こうして彼らはそれぞれ自分達の教室へ戻った。

 

光輝達は、予鈴がなった頃に帰ってきた。

 

「「「「ただいま~!」」」」

 

夏海「お帰り~…、ってお前らどしたんなら?やけに機嫌良さそうじゃの。」

 

光輝「ひっひっひ、小さな友情を見っけたんじゃ。実に気分が良い。」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

昼休みが終わってFクラスとEクラスが試召戦争を始めた時、Aクラスの教卓に代表である霧島翔子が立っていた。

 

翔子「…私達Aクラスは、宣戦布告をしようと思う。」

 

『宣戦布告って、どこにするんだ?』

 

翔子「…Fクラス。」

 

この発言に、クラスがざわめきだした。

 

『はぁ!?何であんな最下級クラスに!?』

 

『Fクラスと言ったら、勉強がろくに出来ない奴らがいるクラスでしょ?何でまた?』

 

翔子の予想外の発言に、次々と戸惑いの声が上がってくる。

 

寛定「Fクラスだべが?!」

 

愛子「そうっぽいケド、どうしたの?」

 

寛定「あんな、おら達が言ってた小さな友情ってのはFクラスの人間なんだど!」

 

愛子「へ~、そ~なんだ。」

 

優子「それで、何で代表はそのクズクラスに宣戦布告しようと思ったの?」

 

光輝「おい、木下ァ!いくらなんでもそりゃあ言い過ぎじゃありゃせんか!?」

 

優子「あら?アタシ何か間違った事言ったかしら?」

 

『正論だろ?正しい事を言って何が悪いんだ?』

 

『アンタ達は黙ってなさいよ!耳障りよ!』

 

和博「はぁん?!なんやとてめぇら!表へ出ぇやアホったれ共がぁ!!!」

 

雅治「おはんら…!おい達の友達を侮辱してただで済むと思うんじゃなかよ!」

 

またしても一触即発が起こりかけたが、今度は直道が仲裁に入る。

 

直道「皆さん静粛に!!こんな時までいがみ合っている場合ではないでしょう!それにまだ話は終わっていませんよ!」

 

美月「そうだよ!わざわざ自習中に言い出すってことは、それだけ深いワケがあるってことだよ!…そうだよね、翔子?」

 

翔子「…2人共ありがとう。理由を話す前に1つだけ先に言っておく。Fクラスは、打倒Aクラスを掲げているに違いない。」

 

優子「えっ?それどう言う事?」

 

翔子「…詳細迄は分からないから、まだ何とも言えない。 皆には申し訳ないけど、構わない?」

 

『ま、勝敗は目に見えてるから、良いんじゃないか?』

 

優子「たかがFクラス。相手にならないだろうけど、やるからには全力で叩き潰してやるまでね。昨日のCクラスみたくね!」

 

翔子「…じゃあ決まり。終結し次第、宣戦布告をする。」

 

優子「待って。それならアタシが行くわ。それは別に良いでしょ?」

 

翔子「…分かった。」

 

こうして意見が纏まり、各々自習に戻った。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

一方明久達は無事Eクラスとの試召戦争に勝利し、教室で寛いでいた。

 

明久「いやぁ~勝ったね~。」

 

康太「…良い意味で予想外だ。」

 

秀吉「まさか本当に勝つとはの…。しかし雄二よ、本当に設備は交換しなくて良かったのかの?」

 

雄二「仮にも俺達の最終目標はAクラスだ。ここで交換して満足なんかされたら困る。だからそんな必要はないのさ。」

 

そんな風にごく普通の会話をしていると、ドアが開いた。

 

寛定「ぅおーい明久屋~皆~!」

 

明久「あれ、寛定じゃないか!どうしてここに?」

 

寛定「明久屋達が勝ったて聞いたんで、いてもたってもいられなぐってな~。おめでどっ!!」

 

明久「あははそうだったんだ!わざわざありがとう!」

 

すると再びドアが開き、また誰かが入ってきた。

 

夏海「入るで~。」

 

秀吉「うむ?今度は光輝かの?」

 

夏海「光輝?あーそりゃあウチの双子の弟な。アタイは姉の夏海じゃ。よろしくな~。」

 

「「「「えーーーっ!!?」」」」

 

彼女の衝撃発言に、4人共驚きを隠せなかった。

 

秀吉「何と?!あやつにも双子の姉がおったのか!?」

 

夏海「ん~??にしてもアンタ、何かアタイのダチにえろー似ちょるな。」

 

優子「ちょっとアンタ達!!勝手に何やってんのよ!?」

 

何だかんだ6人でわいわいやっていると、優子が勢い良くドアを開けた。

 

夏海「おっと!噂をすりゃあ来たか優子~。」

 

明久「えっ!?ひ、秀吉が二人!?」

 

優子「秀吉はアタシの双子の弟よ。アタシは姉の優子よ。」

 

秀吉「一体何をしに来たのじゃ?」

 

怪訝そうに秀吉が優子に尋ねてみる。彼女は小さく息を吐いて、例のことを告げる。

 

優子「アタシ達Aクラスは、あなた達Fクラスに宣戦布告します。」

 

明雄康秀夏寛「「「「「「えっ!!??」」」」」」

 

優子「最下級クラスとは言え、一切手は抜かないから、そのつもりで。……って、何で夏海と氷川君までそんなに驚いてんのよ!!アンタ達は内情を知ってるでしょうが!!」

 

夏海「いやぁ~な~、何かノらんとおえんかなぁって思ったんけぇ。」

 

寛定「以下同文だべ。てへへ…。」

 

2人は右手で頭をぽりぽり掻きながら苦笑いした。

 

優子「ノらなくて良いわよっ!ほら、宣戦布告したから帰るわよ!」

 

夏海「あー楽しかった!んじゃ、バイバ~イ♪」

 

寛定「うし、おらも戻るど。んじゃ!」

 

3人が出て行こうとすると、明久が寛定を呼び止めた。

 

明久「あのさ寛定!」

 

寛定「ん?どった~明久屋?」

 

明久「一つ確認したいんだけど、もしかして寛定も光輝のお姉さんもAクラスなのっ!?」

 

寛定「んだ!おら達転入生は皆そうだど~。」

 

雄二「おいおいマジかよ!?」

 

康太「……予想外…!」

 

秀吉「そうじゃったのか!」

 

夏海「うぉ~い!名残惜しいかもしれんが早よ帰るでーっ!」

 

寛定「あーすまんすまん!今行ぐど~。そんじゃ!」

 

こうして1日が終わった。まさか今日知り合った光輝達がAクラスだと知り驚いた明久達だったが、打倒Aクラスと言う目標には変わりはない。この日は驚きの連続だったが、英知を養うべく今日は解散とした。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

★新規オリキャラ紹介

三浦直道(みうらなおみち)

所属:Aクラス

一人称:僕

得意科目:音楽、物理、現代文、世界史、数学

苦手科目:家庭科、日本史、英語

名前モデル:三浦義村

マッシュルームヘアーが特徴的な爽やかな好青年。芸能一家の出身だが、それを鼻に掛けることが無い謙虚で穏やかな性格。運動神経が良い上に、成績は翔子や利光にも迫る程で、試召戦争では随所で戦いながらその恵まれた知略と優れた采配で相手を翻弄する戦う軍師としてクラスの指揮を執り、クラスを支える。1年生の時に彼に勉強を教えてもらったお陰で成績が飛躍的に向上した生徒も多いため、男女問わず人気が高く、教師陣からの信頼も厚い。人当たりも良く、明久達に偏見を持たずに初めから友好的に接する。常に敬語で話す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたが?
ストーリーの内容自体は以前書いていた作品と然程変わりはありませんが、唯一の違いとしては転入生以外のオリキャラが新たに登場しているところですかね。彼は転入生達とは違い、1年の時から文月学園に在籍しています。
それでは、ここで今回登場した方言を紹介します!
・そぎゃん:そんなに(長崎)
・なして:どうして、何故(長崎、福岡等)
・せからしか:うるさい(長崎、福岡等)
・ぎんばる(山形)
・~ず:~よ(山形)

~次回~
第参話 小さな勇気が起こした奇跡


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第参話 小さな勇気が起こした奇跡

~前回のあらすじ~
新たなスクールライフをスタートするにあたり、即席のパーティーを始めようとしていたが、それを良しと思わなかったのが優子を筆頭とした他のクラスメイト達だった。ここから大きく話が膨れ上がってしまい、様々な価値観の違いから最終的に対立するまでに事態が発展してしまい、早くもAクラスに纏まりが失われることとなった。一方、ひょんなことから光輝達は明久達と意気投合し、仲良くなった。そしてEクラスとの試召戦争を制したFクラスに、優子がAクラスの大使として宣戦布告をしたのであった。


宣戦布告されてから2日経ったこの日は、AクラスとFクラスとの試召戦争当日である。前日の交渉によって5VS5の一騎討ちで決着を付ける事になり、更に翔子の提案で負けた方は勝った方の言う事を聞く事になった。

 

そして現在、Aクラス教室で一騎討ちが行われていた。一回戦は数学で佐藤美穂が島田美波に勝ち、二回戦は総合科目で姫路瑞希が久保利光に勝って1VS1とお互い一歩も譲らぬ接戦を繰り広げていた。

 

高橋「それでは三回戦を始めます。選手は前へ。」

 

明久「じゃあ行ってくるね。負けたらごめんよ。」

 

雄二「取り敢えず全力でな。がんばれよ。」

 

優子「あら?貴方がアタシの相手なのかしら?観察処分者さん。」

 

明久「あはははは…。自覚があるだけに、いざ面と向かって言われると流石に耳が痛いや…。」

 

高橋「科目はどうしますか?」

 

明久「世界史でお願いします。」

 

高橋「分かりました。それでは両者、始めて下さい。」

 

明優「「サモン!」」

 

世界史

Aクラス Fクラス

木下優子 387点VS吉井明久 172点

 

優子「ふぅん…。Fクラスの割にはよく取れてるじゃない。」

 

明久「これでも自分なりに頑張ったんだけど、やっぱり直前だけって言うのは流石に無謀だったかぁ…。」

 

優子「ま、良いわ。早いとこ終わらせてあげる。」

 

そう言うと優子の召喚獣はランスを構えて、明久の召喚獣に突進を仕掛けてきた。しかし明久の召喚獣は、横にずれて回避し、木刀で足を引っ掻けた。そして転けたところで一気に攻撃を仕掛け、ダメージを与えた。

 

Aクラス Fクラス

木下優子 342点VS吉井明久 172点

 

優子「ウソ…、何で…?」

 

明久「そうだね…。観察処分者の唯一の長所…、とでも言っておこうかな?」

 

優子「どう言う意味よ…?」

 

明久「観察処分者はね、召喚獣を使って先生の雑用をこなすんだ。そのお陰で召喚獣を使う機会が多くて、召喚獣の操作に慣れちゃうんだよ。」

 

優子「成程ね…。それは驚いたわ。アタシとした事が少々見くびってたみたい。なら何とかして貴方に攻撃を与えてやるわ!」

 

優子の召喚獣は体勢を整え、再びランスを構え、突き刺してきたが、今度はジャンプして避けて、後ろに回り込んだ所で木刀をぶつけまくる。ただ、完全に避けきった訳ではなく、足をかすってしまった為、明久の召喚獣も少しダメージを受けた。

 

世界史

Aクラス Fクラス

木下優子 271点VS吉井明久 150点

 

『おいおい嘘だろ…!?学園最低のクラスで、しかも観察処分者の吉井にこんな取り柄があったなんて…!』

 

『学園のクズの癖にやるわね…!何か逆に腹が立ってきたわ…!』

 

優子「どうして…、どうしてアタシがFクラスの奴なんかに…!観察処分者のろくでなしなんかに…!クズしかいないFクラスなんかに…!」

 

この時にも尚Aクラス側からは心無い声が飛び出す。

 

雄二「くっ…!あいつら黙って聞いてりゃあ………!!」

 

康太「……いくら何でも言い過ぎだ…!」

 

秀吉「流石のわしも我慢の限界じゃぞ……!!」

 

光輝「おどりゃあ……!どいつもこいつもざけやがって………!」

 

光輝達3人や雄二達が怒りを露わにしつつ、またしても一触即発の事態に発展しかけようとした、その時だった。

 

??「あ…、あの………!ひっく!その……!すんっ…!ふぇぇぇ…………!!」

 

突然誰かが啜り泣く声が教室内から聞こえ、その声のする方に全員が一斉に振り向いた。そこには、菜々実が蹲って泣き出していた。突然の事態にその場にいた全員が驚いていた。

 

『ちょ、ちょっとどうしたの…!何で泣いてるのよ?!』

 

『おいおい別に泣くことないだろう!?どうしたんだよ一体…!』

 

菜々実「ひっく…!だ…、だってぇ……!皆さんが…、喧嘩するから………えっぐ…!」

 

美月「おーよしよし~!なんもなんも〜。」

 

周りが動揺している中、未だ嗚咽をあげて泣き続ける菜々実に近寄り、軽くハグして頭を撫でながらあやす。あやしながら彼女は、先程明久達を罵倒していたAクラスの面々に振り返えらないまま問い掛けた。

 

美月「皆さ…、ななみんがどうして泣いてるか解る…?」

 

普段明るい彼女からは想像がつかない程その声色は低く、静かに怒っているのが感じ取れた。怒っていると言っても光輝達の様に感情的になっているのわけではなく、どちららかと言えばあくまでも教え諭すようにである。

 

美月「この子はね、あんた達があの時から喧嘩ばっかりしててそれがなまら悲しいから泣いてるの。あたし達が知らない所でけっぱっている同学年の子達に対してそのけっぱりを全否定しているようなことを言うから、それが悲しくて泣いてるんだよ…!あの時対立が鮮明になってから、この子はずっと最悪の事態になるんじゃないかってびくびくしてるんよ…!この子だけじゃない、寛定もだし、あたしだってそう。」

 

美月は声を荒げることなく静かに淡々と伝える。すると今度は夏海も話に加わった。

 

夏海「そりゃ最初騒ぎ出したアタイらも悪かったわな。いくら事情を知らんかったとは言え、その件に関してはマジですまんかったってのは7人全員がそう思っちょる。じゃがそれと同時に、まさかそれがこがいな大事にまで発展するとは思いもせなんだけどな。っと話が逸れちまったが、アンタらは『結果が全て』って言うちょったけど、案外そうでもねぇんじゃね?何ならこう言うの、アンタらが身をもって解っちょるんじゃねぇか?」

 

彼女も美月同様に、双方を宥めつつも優子達クラスメイトに諭すように言葉を選びながら伝える。

 

『確かにそうかもしれないけど、でもやっぱり最終的には結果が物を言うんじゃないかな…?』

 

その内のある1人が何気なくそう溢す。すると今度は直道が立ち上がった。

 

直道「何もあなた方が言っていることが間違っているとは言いません。事実、全てにおいて最終的には結果で判断され、そして評価されるのですから。ですがその結果を出すには、プロセスが大切であると言うことをお忘れではありませんか?何をするにしても、十分な結果を得る為には必ずそれ相応の過程を踏むことになります。あなた方だって、このAクラスに入るために相当な努力をしてきた筈でしょう。趣味や遊ぶ時間など様々なものを犠牲にしたのでしょう?」

 

「「「……………。」」」

 

2人をフォローするように優子達に語り、問いかけた直道に対して遂に優子達は何も言えなくなった。するとそんな彼らに罵倒されていた明久が一旦フィールドから離れ、菜々実の元へ向かった。彼女を宥め続けている美月は突然のことに少し驚いていたが、特に警戒する素振りもなく菜々実の顔を上げさせた。その菜々実も最初こそ一瞬ビクッとなっていたが、普段とは違い何故か怯える様子はなかった。

 

明久「僕達を守るために勇気を振り絞ってくれてありがとう。僕達は全然へっちゃらだから気にしないで。」

 

彼は優しい笑顔で菜々実に礼を述べた。その後フィールドに戻り、優子に向き直った。そしてゆっくり口を開く。

 

明久「木下さんやその他の人にも聞いて欲しい。確かに僕は観察処分者で、どうしようもない男だ。実際に自覚してるしね。けどね、人を噂や評判だけで決めつけるのは良くないと思うんだ。だって、実際に接してみないと分からない事があるから…!例えば、雄二はよく僕の事をからかうけど、何かあった時にはすぐに力を貸してくれる親友だ。あと、ムッツリーニは色々変わった所があるけど、いつも僕の事を支えてくれる大切な友達。それから君の弟の秀吉は何かと気にかけてくれるかけがえのない友人だ。こんな風に実際に接してみれば、不思議とその人の中身まで見えちゃうんだ。もし僕の言ったことに賛同してくれるなら、一騎打ちの後でも遅くないから、今日からそうして欲しい。観察処分者である僕が言っても説得力にかけるだろうし、寧ろ生意気言ってるって思われるかもしれないけど、それだけで判断するのはお互い悲しいし…ね。」

 

彼は優子や、自分たちに罵声を浴びせていた他のAクラスの生徒達に呼び掛けた。暫く静寂が空間を支配したが、それも長くは続かなかった。

 

優子「………そうね。確かに貴方の言う通りね。ならアタシ、今日から生まれ変わるとするわ。」

 

明久「へっ?本当にっ!?」

 

優子「えぇ。貴方に大切な事を教えてもらったから。それでアタシもそう思ったもの。…さて、そろそろ決着を付けましょ。」

 

明久「うん!そうだね!」

 

そして、二人の召喚獣はお互いの召喚獣に突撃した。そして―

 

 

 

世界史

Aクラス Fクラス

木下優子 196点VS吉井明久 0点

 

高橋「勝者、Aクラス木下優子!」

 

明久「はぁ~…。やっぱり負けちゃったか…。」

 

すると優子が明久のもとに歩み寄ってきた。

 

優子「吉井君、さっきまであんな酷い事を言ってごめんね。それと、アタシに大事な事を教えてくれてありがとう。」

 

明久「いやいや、僕はただ木下さん達に将来困って欲しくないと思っただけさ。」

 

明久はそう言って微笑んだ。すると優子は、不意に頬を赤く染めた。

 

優子「///………!そ、そう…!と、とにかく、またいずれこうして勝負をしましょう。」

 

優子は明久に手を差し伸べた。明久は迷わず優子の手を握り、握手を交わした。

 

明久「あはは、僕で良ければいつでも良いよ!」

 

彼らが握手をした時、多くの拍手がまき起こった。優子がAクラス陣営に戻ってくる際、光輝達に顔を向けた。

 

優子「中岡君、重谷君、空知君、氷川君、夏海。貴方達に不快な思いをさせてごめんなさい。」

 

それを聞いた光輝達は思わず目を見開いた。少し前まであんなにいがみ合ってた優子が自分達に対し、素直に謝罪したからだ。そんな優子を見た夏海は、にっと笑った。

 

夏海「のぉ優子。オメェ、今最高に良ぇ顔しちょるな。アタイの言っとった事がやっと分かったっぽいのぉ。」

 

優子「今更ながらね…。あっ、そうだ!」

 

彼女は今度は既に泣き止んでいた菜々実と美月の元に駆け寄った。

 

優子「松井さん、悲しませちゃってごめんなさい。美月もごめん。」

 

菜々実「いいえ、もう良いんです…。解ってもらえたのでしたら、それで嬉しいんです…。」

 

美月「あたしもでもうなんも!だってさ、いくらけっぱっても中々結果が出ない人もいるんだしさ!」

 

菜々実ははにかむ様に、美月は夏海同様にかっと笑ってみせた。それを見て優子も思わず微笑んだ。

 

『なぁ…。吉井ってさ、何かすっげぇ良い奴だよなぁ。』

 

『私達、吉井君の事を誤解してたわ。吉井君だけじゃない、坂本君達のことも…!』

 

『よし!この一騎討ちが終わったら謝ろうぜ!』

 

明久の優しさは、優子だけでなく光輝達と対立していた他のAクラスの生徒の考えさえも改めさせた。

 

和博「何や…、こりゃあえらいこっちゃな…!」

 

雅治「あぁ…!信じられなかよ…!」

 

寛定「かー…、ぶったまげただぁ~…!」

 

光輝「まさか明久の優しさがアイツらをこがいにも変えるとはのぉ…!吉井明久…、実に興味深い。」

 

直道「一時はどうなるかと思いましたが、ともかくこれで一件落着のようですね!」

 

利光「全くだ。それにしたってこの変わりようには流石に驚いているよ…!」

 

美穂「そうですよね。あんなにギスギスしていたのが、まるで始めからなかったかのような…!」

 

愛子「だよねー!ボク達だけじゃどうにもできなかったのに、吉井君のあの一言だけでこんなにガラッと変わっちゃうなんてね~。」

 

翔子「……吉井は私達にないものを持ってる。…吉井は凄い。」

 

どうにかクラス内の対立が無事解消され、最悪の事態を避けられて一安心していたが、同時にクラスの心までも動かした明久の人柄を間近で見て感心する主要のAクラスサイドであった。

 

高橋「ここでしばらく休憩に入ります。次の試合は10分後に行います。」

 

2VS1。依然として互角の勝負が続いている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたが?
以前の作品との違いは、優子達の考えを改めさせるきっかけです。こちらでは菜々実、美月、夏海、直道がその役割を果たしましたが、ベースになった作品では寛定(以前の作品では氷太と言う名前)でした!
それでは、ここで今回登場した方言を紹介します!
・けっぱる:頑張る(北海道)
・こがいな:こんな(広島)
・えらいこっちゃ:とんでもないかことだ(大阪、京都、兵庫等)
・かー:いやはや(山形)

~次回~
第肆話 芽生え


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第肆話 芽生え

~前回のあらすじ~
遂に始まったAクラスとFクラスの5回制一騎打ち。3回戦目は明久と優子との戦いだが、点数差とほとんどのAクラス陣の予測に反して接戦となり、苛立ちと戸惑いを見せる優子達とそれに反発する雄二ら3人と光輝達。一触即発になりかけたこの悪い流れを食い止めたのは、対立を憂い我慢できなくなって涙を流す菜々実だった。それから美月、直道も同調し、そして罵声を浴びせられていた明久も優子達に「噂だけで決めつけないでほしい」と優しく訴え、諭した。それらが功を奏し、優子は考えを改めることを約束し、他のクラスメイトにも次第にその雰囲気が広がっていった。そして3回戦は優子の勝利で幕を下ろたが、この試合後の優子はどこかすっきりしたような柔和な表情となり、試合中に明久の人柄を見たAクラスは良い方向へ変わっていこうとしていた。


明久「ごめん雄二。やっぱり負けちゃったよ…。」

 

三回戦を終えた明久が、両手を合わせながら心底申し訳なさそうな顔を浮かべて雄二達の元に戻ってきた。しかし三人はそんな明久を咎めることはしなかったし、それどころかよくやったと言わんばかりの顔をして彼を迎えた。

 

雄二「なぁに気にするなって。むしろ相手チームの主力の一角である木下姉とあそこまで互角に渡り合えたんだから、ある意味こっちの勝ちさ。」

 

康太「…しょうがないさ。…ナイスファイト。」

 

秀吉「負けたとは言えども、姉上相手にお主はよくやったのじゃ。そんなに気に掛けるでない。」

 

明久「皆ありがとう。ちょっと僕トイレに行ってくるね。」

 

雄二「あぁ、行ってこい。」

 

そして、明久は一旦教室から出た。

 

 

 

雄二「なぁ?そう言えば島田と姫路はどうした?」

 

秀吉「む?そう言えば見掛けんのぉ…?それ以外のクラスの人間はおるようじゃが…。」

 

康太「……それにしても馬鹿に大人しい。」

 

雄二「…………?……!ちょっと待て!あいつらまさか………!!」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

明久「あぁ~スッキリした~。」

 

明久は用を足すと、とても爽やかな顔を浮かべてトイレから出て、Aクラス教室へ向かった。

 

明久「遅くなるといけないし、早く教室に戻ろう。」

 

明久がAクラスに向かって廊下を歩いていると、二人の人物が突如立ち塞がった。

 

島姫「「アキ(明久君)!!!!」」

 

明久「ん?やぁ美波、姫路さん。どうしたのってイダぁぁぁー!!ちょっとちょっと二人共どうしたのさ突然!?どうして僕の両腕が曲がらない方向に曲げるんだい?!」

 

姫路「明久君!なに木下さんと馴れ馴れしく接しているですか!!」

 

島田「そうよそうよ!何で木下と握手なんかしてんのよ!!」

 

明久「えーっ!何かまずかったの?!」

 

島田「握手していた時の木下、めちゃめちゃ嫌がってたのよ!!分からなかったでしょ?!」

 

姫路「そうです!なのでそんな木下さんに変わって私達がオシオキですっ!!」

 

明久「うわわわわ本当!?ちゃんと後で木下さんに謝るからやめてー!!いたたたたっ!!!」

 

姫路「謝ってすんだら警察なんていりませんよっ!普通に考えればわかることです!」

 

島田「アンタがやったのは一種のセクハラ行為なのよっ!だからオシオキするのよっ!!」

 

明久が彼女達の暴力に喘いでいたその時だった。

 

 

 

パァン!パァン!

 

 

 

島姫「「ひゃっ!?」」

 

島田と姫路の頬を叩く鋭い音がした。そして、そこにはさっきまでいなかった一人の人物がいた。

 

明久「えっ……?木下さん……!」

 

優子「吉井君の帰りがやけに遅いと思ったら、アンタ達揃いに揃って吉井君に一体何やってんのよっ!」

 

明久を守るように島田と姫路の前に立ちふさがり、腕組みに仁王立ちをして二人を睨み付ける。二人は一瞬怯んだが、今度は怒りを優子に向けた。

 

島田「ちょっと!いきなり何すんのよ!邪魔しないで頂戴!!」

 

姫路「そうです!暴力反対ですっ!!」

 

優子「こんなの見れば阻止するのは当然の事でしょう!それと、あの握手はアタシが望んでやったんだからセクハラには入らないわよ!本当に嫌なら最初から手を差し伸べるなんてしないわよ。こじつけもいい所よ。あと、暴力反対とか言ってたけど、先に吉井君に暴力を奮ったのはアンタ達の方でしょ?!被害者ぶるのやめてくれるかしら!?醜いわ!」

 

一頻り捲し立てると、今度は明久の元へ駆け寄った。この時の優子は、一騎打ち後に見せた優しい顔になっていた。

 

優子「吉井君、大丈夫?」

 

明久「う、うん…。平気平気…。」

 

優子「とてもそんな風には見えないわよ…。それにしても酷い……!!もうこんな奴ら放っておきましょう。関わるだけ時間の無駄よ!肩を貸すわ。そうね、一旦保健室に行った方が良いわね…!」

 

そう言って、優子が明久を担いで保健室に連れて行こうとしたその時―

 

 

 

明久「木下さん、危ないっ!」

 

優子「え?…きゃっ!!」

 

明久は不意に優子を強く押した。その勢いで優子は尻餅をついた。

 

優子「よ、吉井君。いきなり何を…。」

 

優子がそう言いかけた時、ガンガンとさっきまで優子がいた場所にいた明久が二人の釘バットで殴られたのだ。

 

明久「いったぁぁぁー!?」

 

優子「………えっ?」

 

それを見た優子は、驚きを隠せなかった。もし自分があのままあそこにいたら、今頃あぁなっていたこともそうだが、それ以上にただでさえボロボロの明久が優子を守る為に、自分が傷付くことを選んだことに驚いた。そんな明久を見た島田達は、ニタリと不敵に笑った。

 

島田「あらあら♪そんな女を守る為にそこまでするなんて、ホント優しいんだから~♪」

 

姫路「そうですね~♪感心しちゃいました♪私達がいると言うのに、妬けちゃいますね~♪これはオハナシ案件ですね~♪」

 

そして、二人は再度明久に暴行を加え始める。

 

優子「アンタ達いい加減にしなさいよっ!!どこまで吉井君を傷付ければ気が済むワケっ?!」

 

島田「っるさいわねっ!!ウチらがアキに何をしようとアンタには関係ないでしょう!」

 

姫路「そうです!他クラスの貴女は引っ込んでおいて下さい!」

 

そんな口論をしていた時、島田と姫路のいる所の向こうから誰かが全力疾走してきた。

 

西村「コルァァァ!!姫路に島田!貴様ら一体吉井に何をしてる!!」

 

島姫「「に、西村先生!?」」

 

西村「貴様ら纏めて補習室に連行だっ!そこでその腐りきった精神を鍛え直してやるっ!!」

 

姫路「そ、そんな!理不尽です!」

 

島田「何でウチらが!?」

 

西村「安心しろ。坂本、土屋、木下以外の連中も一緒だからな!それとその釘バットは没収だぁ!!そんな物騒なもの、学校に持ち込むんじゃない!!」

 

島姫「「そんなぁーーーっ!!」」

 

二人を担いだ西村に、優子は聞いてみた。

 

優子「せ、先生。これは一体…?」

 

西村「あー実はな、高橋先生を通じて坂本から、吉井が危ないって連絡が来てな。3人以外の奴らも吉井を襲う準備をしてたらしいんだが、そっちは3人で潰したってんでまずそいつらを補習室に送って、それから来たんだ。そう言うことだからこれからこいつらに灸を据えてやるんで、すまんが吉井を頼んだぞ。」

 

そう言い残すと西村は、島田と姫路を担いで補習室へ去っていった。優子は再び明久に駆け寄った。

 

優子「バカッ!!ただでさえそんなに傷付いてるのにどうしてアタシなんかを庇って…!」

 

彼女がそう尋ねると、明久は少し笑って答えた。

 

明久「だって、木下さんの様な可愛い美少女が傷付いて苦しむ所を見たくなかったから…。」

 

優子「ふぇっ…///!?」

 

明久の思わぬ発言に、優子はまた頬を赤く染めた。

 

優子「で、でも!だからって無茶はダメ!!まずは自分の身体を大事にしなさい!良い!?」

 

明久「あはは…。善処はするよ…。」

 

明久は困ったような苦笑いをした。まるで小さい子供を叱るように明久に怒る優子だが、同時に度重なる彼の無自覚な発言にまんざらでもない様子を見せてもいた。無論、明久がこのことに気づくことはなかったが。

 

光輝「うぉ~い!」

 

Aクラス教室の方から光輝と雄二が走って来た。

 

雄二「すまねぇ明久!くそ…!俺が島田と姫路の様子にもっと早く気付いてりゃ…!!」

 

光輝「おいおいおい明久!!お前どがんしたんならその傷!?」

 

優子「あ、実はね…。」

 

~事情説明中~

 

優子「…って事があったの…!」

 

光輝「ほいじゃったんか…!おっどりゃあ…!アイツらよくもわしのダチをこがん目に…!」

 

優子「とにかく、アタシは吉井君を保健室に連れて行くわ!」

 

雄二「残念ながら今日は保健室の先生はいねぇぞ。」

 

優子「えぇ!?こんな時に…!じゃあどうすれば…。」

 

どうすればいいか悩む二人だが、光輝がすかさず立ち上がった。

 

光輝「うしっ!ならわしと姉貴で診ちゃる!」

 

この言葉を聞いて、明久と優子が驚いた。

 

優子「出来るの!?」

 

光輝「あぁ。実はの、わしも姉貴も医学の心得があるんじゃ!治療するのに必要なものは一通り持っちょるけぇ、わしらが責任持って診ようじゃねぇか!」

 

明久「気持ちは嬉しいけど大丈夫大丈夫…。いつもの事だからね…。」

 

それを聞いた光輝と優子は驚いた。

 

優子「いつもの事って、まさか毎回島田さん達にやられてるの!?」

 

雄二「そうだ。俺達としてもやれる対策とか明久のフォローはやっているが、それでもあいつらはしょうもない理由を付けてこういうことをしちまうんだよ…!!」

 

雄二は苦虫を嚙み潰したように吐露する。

 

光輝「おどれ…!ますます気に入らんのぉ…!!ほいじゃあわしらは明久を連れて先に教室に戻っちょるぞ!急を要する!」

 

雄二「ほら明久、歩けるか?」

 

明久「う…、うん。ありがとう皆…。」

 

優子「ごめんけどアタシは後から行くわ。すぐ戻るから!」

 

光輝「分かった!ほいじゃ後程な!」

 

光輝と雄二は自分達の首に明久を腕を組ませ、Aクラスの教師に向かって移動した。

 

 

 

 

~優子side~

 

2人が吉井君を連れ戻した後、アタシも現場を後にして歩いて教室へ向かっている。それと同時にちょっとした考え事をしている。それは―

 

「吉井君、すごいな…。」

 

吉井君の事だった。

 

今日みたいに一騎討ちでやりあう前は、Fクラス且つバカの象徴である観察処分者だからクズで最低な奴なんだとしか思ってなかった。

でも、そんなものは大間違いだと言う事に今日気付かされた。

本当の吉井君は強い心を持ってて、何よりもすっごく優しい素敵な人。彼は自分の事を今の今まであんなに侮辱してたアタシやその他のクラスメイトが更正すると信じて、そして坂本君達を守るために大事な事を教え諭してくれた。それと、さっきアタシが島田さん達の追撃を受けないようにする為に、身代りになってくれた。それでなくてもあんなにボロボロだったのに。普通の人でも相当の覚悟がいるけど、吉井君はそうじゃない。覚悟がなくても体が勝手に動く。今まで色んな人に出会ったけど、あんなに他人を思える程無限の優しさを持つ人は吉井君だけだと思う。

それにしてもアタシ、本当に今日どうしたんだろ?今日は吉井君に振り回されっぱなしだ。さっきから吉井君の事を考えるだけですごくドキドキするし、胸が高鳴る。こう言うのって、恋愛もので見た事がある。

 

そう自分で不思議に思った。だけどそのくせ、すぐにその答えは意外とあっさり叩き出せた。

 

「アタシ、吉井君が好きなのかな……?いいえ…、アタシは、吉井君が好き…///」

 

なーんだそっか。アタシは間違いなく吉井君が好きになっちゃったのね。何かこの一日で、吉井君の全てを見た気がした。優しい吉井君。笑顔が眩しい吉井君。真剣な表情がかっこいい吉井君。ヤバい…、好きだって自覚しちゃったら、ほっぺが確実に赤くなったわ。頬に熱を感じるから間違いないわ。正直恋愛なんて自分には到底縁が無いものだと思ってたし、学業の邪魔になるって思ってたから学生の間は恋愛なんてしないって思ってたのに、まさかこんなことになるなんて…//吉井君に何から何までしてやられちゃったみたい…///

 

そうね…!そうと分かれば、チャンスを見付けて吉井君にアピールしてみましょっ!だから吉井君、今に見てなさい!!絶対に貴方を振り向かせて見せるんだから!!アタシの心を奪った代償は高いわよ♪

 

そうこう考えている内に教室に到着した。ドアを開ける前に落ち着きを取り戻す為に深呼吸をした。

 

~優子sideout~

 

 

 

優子「ただいまー。」

 

秀吉「おぉ姉上!帰って来たか!どうしたのじゃ?雄二達と同時に帰ってくるかと思っていたが…。」

 

優子「ちょっと考え事をしてたの。それより吉井君は…?」

 

康太「……治療中。」

 

秀吉たちを始めクラス中の視線の先には、椅子に座らせ点滴を刺された明久を懸命に治療している光輝と夏海の姿があった。プラスチック手袋を嵌め手術用のキャップを被りながら治療に当たるその姿は、正しく医師そのものだった。

 

愛子「ね、ねぇ…。あの二人、何であんなことできるの……??普通の外来処置があんな簡単にできるって…!」

 

流石の愛子もこの状況に驚いていた。この質問に和博が答える。

 

和博「あぁ、あれか?アイツんとこは医者の家系でな。何ならあの二人、医師免許持っとんで?」

 

「「「えぇーーーーーっ!!?」」」

 

彼の衝撃発言に、一同が驚きの声を上げる。

 

雄二「ちょっと待てよ!あいつら、本当に俺達と同学年なんだよな?!その段階で国家資格を持ってる奴なんか聞いたことねぇぞ!!」

 

直道「いくら医師の家系と言っても流石にそれは無茶苦茶じゃないのでは!?」

 

寛定「あいづらにはな、デンマークとフィンランドに師匠がいるんだべ。その人達の下で医師としてのあれこれを叩き込まれたんだど。手術の時に執刀もしてるし、その才能は瞬く間に開花して難民救済にも大きく貢献したんだべ~!するとこれがCIOMSやWHOの目に留まって、どの国でも通用するように国際医師免許が特例で付与されたんだど!」

 

寛定はふふんと誇らしげに語る。予想以上に壮大なスケールに、この場にいる誰もが圧倒されている。すると―

 

光輝「うし!一丁上がりじゃ!!もう良ぇぞ!」

 

光輝は自分の汗を拭いながら治療完了を告げた。すると真っ先に優子が明久の元へ飛び込む。

 

優子「吉井君!もう大丈夫なの!?」

 

明久「僕はこの通りだよ。心配してくれてありがとう!」

 

心配する優子に優しい笑顔を向ける明久。そんな顔を直視して、またしても優子の頬に熱が帯びていくのであった。すると、明久は次に道具の片付けをする光輝と夏海にも礼を言う。

 

明久「あと二人ともありがとう。凄く気が楽になったよ!」

 

光輝「なーに気にすな!わしらは当然のことをやったまで!」

 

夏海「じゃけどまだ安静にせぇよ!今回だけじゃのぉてこれまでの怪我とかもあるけんの!」

 

無事明久の治療が終わった所で休憩時間終了のチャイムが鳴り響く。残るはあと二回戦だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたか?
旧作との主な違いですが、西村先生が島田と姫路を回収した後に明久達の下に駆け付けたのが光輝と雄二(旧作では光輝のみ)であること、光輝と夏海が明久の治療に携わっている(こちらも旧作では光輝のみ)ことです。
それでは、ここで今回登場した方言を紹介します!
・おどれ、おんどれ:おのれ(広島)
・ほいじゃあ:それじゃあ(広島)

~次回~
第伍話 決着


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第伍話 決着

~前回のあらすじ~
3回戦後の休憩時間、明久はトイレに行っていたが、そこからAクラスの教室に戻る道中に突如島田と姫路に襲われる。暴力に苦しむ明久だが、そんな明久を救いに優子が駆けつけ、島田と姫路に手をあげた。これを面白く思わなかった2人は今度は標的を優子に変え襲い掛かろうとしたが、明久が身を挺して優子を守った。その後西村先生が島田と姫路を回収し、雄二と光輝が明久を教室に連れ戻した。その後、優子は明久に恋心を抱いていることを自覚し、2人とは違って正当な方法で明久を振り向かせてみせることを密かに心に誓った。そして教室の戻ると、光輝と夏海が明久を治療しており、そこでこの2人が世界から認められた凄腕の医師であると言う衝撃の事実が発覚したのであった。


光輝「取り敢えず一段落付いたなん訳じゃが…って何でFクラス陣営が3人だけなんなら??」

 

処置をした後に道具の片付けを終えた光輝は、ふぅと一息ついた。明久の処置に余程集中していたのか、周りを見渡して初めてFクラス陣が明久を除いて3人しかいなくなっていることに漸く気付いた。

 

秀吉「聞くでない…。世の中聞いていいことと聞いてはならんことがあることを覚えておくのじゃ…。」

 

康太「……我がクラスながらみっともない…。」

 

雄二「まぁ色々あったんだよ…。気にしないでくれ。んなことよりおい明久、お前自身はもう大丈夫なのか?」

 

明久「うん。しばらく安静にしてれば良くなってくるってさ。」

 

康太「……良かった。」

 

秀吉「本当に、一時はどうなる事かと思ったぞい…!」

 

光輝「さて明久よ。その容態で立ちっぱなしはあまりよろしくねぇ。大人しゅうせぇ。」

 

明久「大丈夫大丈夫っ!問題ないって、いっ!?」

 

彼は両腕を軽く振って元気になったことをアピールしようとしたが、それが裏目に出て痛みが走った。その様子を見て、光輝と夏海が顔をしかめる。

 

光輝「ばかたれが、怪我人が何を言うか!んなすぐに治るわきゃあねかろうが…!」

 

明久「うっ……。でも…。」

 

夏海「医者の言う事は絶対じゃ。ほれ!何か座るモンでも用意しちゃるけぇ、分かったら大人しゅうしとれ!」

 

明久「う~ん…、分かったよ。」

 

やられることに慣れてしまっている性分からか、特に怪我を何とも思っていなかった明久だったが、流石に医師である2人から咎められてしまい、大人しくすることにした。1人の人物は、この状況を見逃さなかった。

 

 

 

~優子side~

 

この時を待ってたわ!早速吉井君に近付けるチャンスが来たっ!

アタシはすぐさま自分の席から椅子を取ってきて、吉井君に近付く。今よ、行っけぇーアタシっ!!

 

優子「吉井君。アタシので良かったら座らない?」

 

明久「木下さん。気持ちは嬉しいけど、僕なら本当に大丈夫だから…ね?」

 

吉井君って、ホントに慎ましい人なのね。でもアタシは諦めないわよ!

 

優子「ダーメっ!中岡君達の言う通り体を労らなきゃダメなんでしょ?だからこれにでも座ってなさいっ!貴方が気にしなくてもアタシが気にしちゃうの!」

 

明久「そうかもしれないけど、女の子の椅子に座るのってどうかなって思うし…。」

 

中々折れないわね……。こうなったらこっちも意地よ!

 

優子「そんな事は気にしなくて良いわよ!だから遠慮なく座って。ね?」

 

少し無理矢理過ぎたかもしれないけど、別に問題ないわよね…??吉井君はしばらく考え込む素振りを見せる。そして、出した決断は…。

 

明久「う~ん…。分かったよ。木下さんがそこまで言うなら…、座らせてもらっても良いかな…?」

 

キター!!アタシは勿論とばかりに了承した。

 

優子「当たり前でしょ?さ、どうぞ。」

 

明久「ありがとう。なら、少し借りるもらうね。」

 

そう言って吉井君が遂にアタシの椅子に座った。キャー!吉井君がアタシの椅子に座ってるー!これで椅子に座るのが楽しみになったわね…。って、それは流石にはしゃぎ過ぎかしら…?う~んでもまだ何か足りない気がするわね…。…あっそうだ!

 

優子「そうだ吉井君!さっきのこともあったし疲れたでしょ?備え付けで飲み物あるから取ってこよっか?」

 

吉井君は目を丸くした。あちゃー、これは流石に欲張り過ぎたかしら…。

 

明久「ありがとう!じゃあ、お願いしちゃおっかな。」(にこっ)

 

優子「///!!」

 

ちょ、ちょっと吉井君!!いきなりそんな笑顔を見せるなんて反則じゃない…///ま、まぁでも!攻めてみた甲斐はあったってモンよねっ!!////

 

優子「わ、分かったわ!取ってくるわね…//良い!?ちゃんと大人しくしてる待ってるのよ!?」

 

はぁ~いって言う吉井君の声を背に、アタシは飲み物を取りに行った。吉井君と自分の飲み物を持って吉井君の所へ戻る途中に、何故か夏海と愛子がニヤニヤした表情を浮かべてアタシの所に来た。

 

夏海「いひひっ!の~優子~♪あんた、明久に気があるんか♪」(ニタニタ)

 

優子「ふぇっ?!い、いいいきなり何よっっ!?」

 

愛子「まったまた~♪分かってる癖に~♪優子ってば可愛い所あるよね〜♪教室に戻って来てからの優子、完全に恋する乙女の顔だったよ~♪」(ニヤニヤ)

 

うぅっ…………!!何でよりにもよってこの2人にバレるんだろ…?アタシそんなに分かりやすいかな……??何か考えたら恥ずかしくなってきたわ……。///

 

優子「い、良いでしょ別に!それより愛子、貴女次の試合出るんでしょ!頑張りなさいよねっ!!」

 

吐き捨てるようにそれだけ言って、アタシは吉井君の所へ戻った。さっきのやり取りを遠目から見ていたのか、吉井君はきょとんとしていたけど、特に何か気にする様子はなかったわ。そのきょとんしてる吉井君がかわいいって思ったのは内緒よ……///

 

そして、後半戦開始を告げるチャイムが鳴った。

 

~優子sideout~

 

 

 

~愛子side~

高橋「それでは、只今より四回戦を始めます。選手は前へどうぞ。」

 

ボク達の担任の先生である高橋先生が一騎打ちの再開を宣言したら、小柄な寡黙そうな男の子が立ち上がった。多分あの子がムッツリーニ君だね…。

 

康太「…行ってくる。」

 

Fクラス陣営(と言っても、坂本君と優子の弟君と吉井君しかいないケド…。)にそう言い残してフィールドに上がってきた。ボクも同じようにフィールドに上がってムッツリーニ君と対面する。

 

愛子「へぇ~、君が僕の相手か~。よろしくね~♪」

 

一応挨拶がてら声をかけてみるけど、ぶっきらぼうに「…よろしく。」って返してきただけだった。「ムッツリーニ」って言う通り名にある通り寡黙な子だね。

 

高橋「教科は何にしますか?」

 

康太「…保健体育。」

 

やっぱりそう来たか~…。『保健体育だけなら学年で右に出るものはいない』って噂は確かに聞くけど、それはどうカナ?っと、その前にやっておきたいことがあるから試しに先にそれやってみよ♪もし噂通りなら、最高のリアクションが期待できるよね!

 

愛子「キミぃ~保健体育が得意なんだ~。ボクも得意なんだよ~。但しキミとは違って、実技でね♪」

 

康太「……実技!?(ブシャァァー!)」

 

何を想像したのか、ムッツリーニ君は大量の鼻血を噴出して仰向けに倒れ込んじゃった。アハハ♪予想通り、いやそれ以上に面白い反応してくれるね♪

 

寛定「はわわわわっ!大丈夫だべが康太屋~!?」

 

そんなムッツリーニ君に慌てて駆け寄るヒロ君。うわー何か健気だね~…。そしたらムッツリーニ君が鼻血を拭いながらすくっと立ち上がった。自分からやっといてアレだけど大丈夫だったのカナ…?

 

康太「…問題ない。」(ドクドク……。)

 

寛定「んな鼻血まみれで言われても説得力が全くねぇど…。」

 

あはは~♪ちょ~っとからかいすぎちゃったカナ~??2人してコントをやってるみたい♪

 

高橋「2人共よろしいですか?早速始めて下さい。」

 

おっと、流石に遊びすぎちゃったっぽいや。さ、ここからは気持ちを切り替えなきゃ!

 

康愛「「サモン!」」

 

保健体育

Aクラス Fクラス

工藤愛子 479点VS土屋康太 ―点

 

点数が表示されたけど、何故かムッツリーニ君の点数が中々現れない。どういうことだろ…?って、考えてる場合でもないかっ!

 

愛子「実践派と理論派、どっちが強いか見せてあげるよ。バイバイ、ムッツリーニ君!!」

 

自分の召喚獣にムッツリーニ君の召喚獣に突撃させる。けど、さっきまでそこにいた筈のムッツリーニ君の召喚獣がいなかった。………え??

 

康太「…加速完了。」

 

ムッツリーニ君がそう言った直後、突然ボクの召喚獣が消滅しちゃった…。な、何……?今、何が起きたの………?!すると点数が再び表示される。

 

保健体育

Aクラス Fクラス

工藤愛子 0点VS土屋康太 658点

 

そ、そんな…。こんないとも簡単に負けちゃうなんて……。柄になくショックを受けた…。何が起こったのか未だに頭の整理がつかずに、力が一気に抜けてその場にガクッと膝をついた。

 

愛子「そんな…っ!こんなあっさりやられちゃうなんて…。ボク、あんなに頑張ったのに…。無駄…だったの…?」

 

侮ってたワケじゃないけど、流石にショックが大きすぎるよ……。点数だけでもあんなに差を付けられちゃってるし…、保健体育だけは誰にも負けないって信じて疑わなかったのに……。色々とショックで泣きそうになるボクの所に、さっきまで対峙していたムッツリーニ君が歩み寄った。

 

康太「……そんな事はないぞ。現にお前はAクラスにいる。…それがお前の努力の証じゃないか…!…俺みたいな出来損ないとは全然違う!…今回の一騎打ちの結果がどうであれ、自分で頑張ったならそれで良いんじゃないのか?」

 

そうボクを激励してくれるムッツリーニ君の顔はやっぱりちょっとぶっきらぼうだけど、それでもボクのことを認めてくれて、物凄く嬉しかった…!どうしよう、今度は嬉しくて泣いちゃいそうだよ…!でもここは涙なんてナシナシ!!負けちゃったものは負けちゃったんだし、結果はちゃんと受け入れなきゃね!

 

愛子「ムッツリーニ君…!!…ありがとっ!何か吹っ切れたよ!」

 

康太「…そうか、ならば良かった。」

 

愛子「///!ホントにありがとねっ!」

 

さっきまで無表情だったのに、急に笑っちゃってびっくりした!と言うかボクどうしたんだろ…??その笑顔を見たら、急にドキッとなっちゃったんだけど…?

 

康太「…俺は自分の思った事を素直に言っただけだ。もしお前の努力を笑う奴がいたら、この俺が吊し上げてやる。…だから、自分の努力に誇りを持て。」

 

愛子「っ!?///」

 

も、もぉおぉ~~!!//どうしてボクが今一番欲しい言葉をそんなにぽんぽん並べてくれるの…!それにさ…、また胸がドキッとしちゃてる…。こ、これって……??

 

 

 

……ああそっか。これって優子が吉井君に向けてるものと同じものなんだ…!ボク、ムッツリーニ君が好きになっちゃったんだ…///だってだって!!確かにちょっと不愛想な所はあるけど、ボクの努力をあんなに評価してくれて嬉しくない訳ないじゃん!!普段口数が少ないけど、あんな優しさを向けられて好きになっちゃうに決まってるじゃんか…//あはは……。こりゃ優子のこと、もう弄れないや…。

 

そうしてボクが陣営に戻ると、夏海と優子がニヤニヤした表情を浮かべてた。ちょっと待って…?まさかとは思うケド…!

 

優子「ね~愛子?アンタ実は土屋君の事が好きになったんじゃないの~?」(ニマニマ)

 

きゃあぁーーっそのまさかだったーーーっ!!!なっちーはともかく、優子はさっきの件もあるから余計に良い顔してるよーーーっ!

 

愛子「ふぇっ!?な、何さ急に!?」

 

夏海「お~お~愛子ぉ~…♪アンタも人の事言えん様じゃの~♪ほれ、誰にもバラさんけぇ正直に言うてみ~?うりうり〜♪」

 

愛子「え、えっと………!だって…、その…!!」

 

もーー!2人共やめてーーっ!

 

それもこれもムッツリーニ君のせいだ!勝負で負かすだけじゃ飽き足らずに、ボクの気持ちまで奪ったんだもん!当然覚悟の上だよね♪他の女の子を撮ったりするのは良いケド、ムッツリーニ君の身も心も奪ってみせるだから!!その時は実技のこともいーっぱいするから覚悟しといてネ、ムッツリーニ君っ♪

 

~愛子sideout~

 

高橋「では五回戦を始めます。選手は前へどうぞ。」

 

高橋先生がこう告げると、最終戦を控えていた双方の対象がフィールドに姿を現す。

 

雄二「んじゃ、行ってくるか。」

 

翔子「…(すっ)。」

 

高橋「教科は何にしますか?」

 

雄二「日本史で、小学生レベルの百点満点上限ありだ。」

 

高橋「そしたら問題を用意します。では、二人は視聴覚室でお待ち下さい。」

 

雄二と翔子は教室を後にした。そんな2人を、双方は固唾を呑んで見守る。

 

 

30分後、テストを終えた二人が戻ってきた。

 

高橋「お待たせしました。では結果を発表します。」

 

Aクラス Fクラス

霧島翔子 98点VS坂本雄二 51点

 

高橋「勝者、Aクラス!」

 

翔子「…雄二、私の勝利。」

 

雄二「あぁ…、分かってるよ…。」

 

翔子「…と言うわけで、約束。私と付き「ちょいと待った~!」?」

 

翔子が最後まで言おうとした時、夏海が割って入ってきた。

 

夏海「急に割って入るようですまん。ちょっと良いか翔子。」

 

翔子「…何?」

 

夏海「その約束とやら…、アタイに使わせてくれんか?大丈夫、翔子だけじゃのぅて優子とか愛子にもメリットはあるけん。」

 

突然の要望に、翔子も雄二も驚いていた。

 

翔子「…?…物による。」

 

夏海「あんな~、美月とかウチの他のメンツとも話したんじゃが…。」

 

そこから先の内容は翔子にしかわからなかった。夏海が翔子に耳打ちをし始めたからだ。それを聞き終えた翔子は、少し考えた。そして―

 

翔子「…そこまで言うなら分かった。…私は問題ない。」

 

夏海「助かる!ほいじゃあ…」

 

夏海は雄二や明久達に向き直り、先程耳打ちした内容を伝えた。

 

夏海「明後日の日曜日、アタイらでパーッと交流会でもやろうや!これがアタイの命令じゃ!!」(ペカーッ!)

 

それを聞いた明久達は少し驚いたがみんな賛成した。

 

明久「うん!良いけど、どこに行けば良いかな?」

 

美月「そだね~…、特に考えてなかったけど9時に駅前の噴水広場に集合って事でどう?」

 

明久「うん。分かったよ。」

 

雄二「噴水広場だな?承知した。」

 

康太「…了解。」

 

秀吉「たまにはそう言うのも良いのぉ。」

 

翔子「…楽しみ。」

 

優子「友達と集まって出掛ける何て久しぶりね。」

 

愛子「今からもう楽しみだよ~♪」

 

と、ここで光輝達がテーブルの上にジュースやお菓子をセットした。

 

光輝「さて、Aクラスが勝利したけぇ一つ宴でもすっか!」

 

和博「おーせやな!ドーンとやろうや!」

 

純忠「っしゃあ!盛り上がっとか!」

 

宴をしようとしている光輝達に、優子が近付いてきた。

 

優子「ねぇ。良かったらアタシ達も混ぜてくれない?」

 

ピシッ。空気が再び緊迫に包まれた。それもそのはず、優子は当初光輝達と対立していたのだから。光輝達は、やや険しい表情になった。

 

光輝「おんどりゃあ貴様…、あん時わしらに何て言っちょったんなら…?あんだけ言いやがって…!」

 

優子や彼らに対立していた他の生徒達が焦り始める。

 

光輝「わしらがその言葉をどんだけ待ち望んじょったと思ぅちょるんじゃあ?」

 

その言葉を聞いて、優子達の焦りは驚きに変わった。それと同時に、光輝達は満面の笑みを浮かべた。

 

和博「わいらを待たせた落とし前、きっちりつけてもらうでっ!」

 

純忠「おはんら、早く好きなモン持って来るばい!乾杯して、宴を始めるとよっ!!」

 

彼らの言葉で皆一斉にコップを手に取り、ジュースを入れた。勿論明久達もだ。

 

和博「ほな、我らAクラスの勝利と和解、それに明久達の大健闘を祝して~!」

 

『『『『『乾杯~!!』』』』』

 

皆で盛大に乾杯をし、盛り上がった。

 

『吉井、これ旨いぞ。食べてみてくれ!』

 

明久「えっ、本当?ありがとう!」

 

『坂本ーっ!お前らの事を悪く言ってごめんよーっ!ウォーっ!』

 

雄二「なぁに、気にすんなって。分かったから号泣すんな…。」

 

それまで学力、もとい結果が第一としかみていなかったが、明久の優しさに触れ、Aクラスの雰囲気が大きく変わった。そんな様子を見て、一部の者は安堵の息を漏らした。

 

夏海「ウンウン、こうでなくっちゃ。」

 

寛定「一時はどうなるかと思ったど~。」

 

菜々実「はい…!皆さん仲良くなれて良かったです……♪」

 

愛子「ホントに良かったよ~。」

 

利光「正直、これに関してはどうにもならないと思っていたけど、結果オーライだね。」

 

そして翔子は、明久に歩み寄った。

 

翔子「…吉井。」

 

明久「ん?どうしたの?」

 

翔子「…ありがとう。私、どうしたら良いか分からなかった。Aクラス代表として礼を言わせてほしい。」

 

そういうと、翔子はその場でぺこりと頭を下げた。

 

明久「いやいやいや?!頭を上げてよ!?僕はただ、皆なら分かってくれると思ったから…ね?」

 

直道「吉井君、僕からも1つ礼を言わせて下さい。」

 

たじろぐ明久の元に、今度は直道もやって来た。

 

直道「正直、今回起こってしまっていた対立は僕でもお手上げでした。そりゃあ考え方は人それぞれで、人がいればいる程そこに違いが生じるのは至極当たり前のことなんですが、それがまさかこのような大事に発展するとは思ってもみませんでした…。どちらも我が強いものですから、どちらかが折れるなんてこともなく、僕達中立派はどうすれば良いか見当もつきませんでした…。」

 

明久「………………。」

 

明久は黙って直道の話を聞く。確かに最初のあのどこか殺伐とした雰囲気は思い違いじゃなかったのか、まさかそこまでピリピリしていたのか色々思考を巡らせていた。すると直道が、ですがと話を続ける。

 

直道「そんな彼らを変えたのは他でもない、貴方なんです。貴方に罵詈雑言を浴びせた人間がいるにも関わらず、貴方は怒鳴ったりするばかりか、その人達にも優しさを向けました。貴方のその優しさ、懐の深さに誰もが心を動かされた…!いいえ、このクラスの雰囲気を良い方向へ変えて下さいました…!私達でもどうしようもなかったことを、貴方はいとも簡単にやってのけてしまったのです…!」

 

普段クールな雰囲気を醸し出している直道だが、ここまで話すときに少し興奮気味になっていた。それ程感銘を受けたのだろう。そして、その話を聞いていた明久はと言うと…、

 

明久「えーっと…??僕、別にそんな大層なことをやったつもりは無いよ??」

 

何のことかさっぱり分かっておらず、目をぱちくりさせてきょとんとしていた。それを見た直道は一瞬驚いたが、ふっと軽く笑った。

 

直道「こう言うのは自分自身では分からないものなんです。とにかく僕が言いたいのは、貴方にはばらばらになりかけたAクラスを纏める程の力が秘められている凄い人、と言うことです。」

 

明久「あははは…。面と向かってそこまで言われると中々照れくさいけど、ありがとっ!」

 

『おーい吉井!こっち来いよー!』

 

明久「あ、じゃあごめんね。」

 

宴は最後まで盛り上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたか?
旧作との違いですが、優子だけでなく愛子に視点を合わせたストーリーも加えたところですね。タグを見て察しが付くかもしれませんが、明久と優子、康太と愛子、雄二と翔子のカップリングはとても好きだからでしょうかね…笑

~次回~
第陸話 交流会


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第陸話 交流会

~前回のあらすじ~
4回戦の戦いを康太が制した。この時、愛子はそのやるせなさから自棄になりかけたが、自分の努力を誰よりも認め、激励してくれた康太に恋心を抱き始めた。そして最終戦で翔子が勝利したことでAクラスの勝利となった。命令を言おうとする翔子だが、それに待ったをかけたのは夏海だった。そして翔子承認の下、交流会の開催が決まり、Aクラス教室では勝利祝いと明久達の健闘を称えた宴が盛大に行われたのであった。


試召戦争から2日経った日曜日。駅前の噴水広場には、明久を待つ優子達がいた。

 

雄二「ったく明久のヤツめ…。学校の時以外でも遅刻しやがって…!」

 

康太「……目覚ましの電池を変え忘れていたらしい。」

 

秀吉「まぁまぁ良いではないか。気長に待てば良いじゃろう。」

 

ため息交じりにこぼす雄二を秀吉が宥める。康太はいつものだからと特に気にする様子はなかった。

 

菜々実「ふぅ…、とても良いお天気ですね…♪」

 

美月「だね♪昨日の予報だと曇りか雨って言ってたけど、予報が外れて何よりだよねっ!」

 

光輝「にしてもじゃ!!いや~、まさかこうして皆で出かける日が来るとはのぉ~!」

 

和博「せやなー!!昨日までの状況やととても考えられへんかったこっちゃな!」

 

寛定「ヒュララララ!それもこれも明久屋のお陰だべな!明久屋にはただただ感謝しかねぇな~。」

 

雅治「全くとよっ!ヤツにゃあ驚かされぱなしったい!うっしフルコンボたいっ!!」(ぴこぴこぴこぴこ!)

 

夏海「おめーは喋るんかゲームするんかどっちかにせぇ…。」

 

各々で待ちがてら雑談をしていた。皆が話に花を咲かせている中、内心そわそわしている者もいた。

 

~優子side~

 

うぅ…、猛烈に眠いわね……。そりゃあ無理もないでしょうね…。何せ他のメンツも一緒とは言え、吉井君と出掛けられるって思ったら興奮して全然寝れなかったんですもの。これじゃあまるで遠足前の小学生じゃない…。それだけならまだマシだったけど、やっと寝れたかと思ったら今度は無駄に早起きしちゃって、もう寝ることを諦めたアタシは、特に当てもなく集合時間より2時間半前に集合場所に来ちゃったってワケ…。

 

それはそうとアタシの格好、変じゃないよね…??寝る前と家を出る前に一応念入りに確認してみたけど…。吉井君、褒めてくれるかしら…?//

 

愛子「ゆーこっ♪」

 

優子「うひゃあっ!?愛子って何よその目は…?」

 

急に愛子が後ろから抱きついてくるなり、今度はまじまじとアタシを見る。な、何なの…??と言うか、正直この時点でそこはかとなく嫌な予感はするけど…。

 

愛子「優子ってば、張り切っちゃってるネ〜♪」

 

優子「んなっ!?何の話よ~…??」

 

愛子「良いんだよ~、分かってるから♪吉井君に可愛いって言ってもらえるかなってソワソワしてたんでしょ♪」

 

ほぁっ!?///

 

翔子「……気合万端。」

 

優子「代表まで~…。//」

 

もー!!皆して勘弁してよーーっ!///何か無性に恥ずかしくなってきたじゃない…//と、ここで思わぬ援護が…!

 

美月「いやいや、愛子も人のこと言えてなくな~い?だってそれ、どう見たって康太っちの気を引こうとしか思えないんだけどな~♪」

 

愛子「ふぁっ?!///ななっ…、何のことカナ~??////」

 

優子「そ、そうよっ!!アタシが吉井君を意識してるみたいに、愛子は土屋君を意識してるんじゃないの~♪」

 

ええい、もうこうなればヤケよ!どうせばれてるんなら、これを逆手に取って反撃に出るまでっ!!

 

愛子「う~……//もうやめてぇぇぇ~//////」

 

菜々実「ゆ、優子さん…。完全に開き直りましたね……。」

 

翔子「……菜々実。……それはしー、よ?」

 

愛子がさっきと打って変わって赤面する。反撃成功ねっ!ところで、2人が何か喋ってるみたいだけど、何かしら??遠目からだからよく分からないけど、何て言うかまるで変なことを言う子供とそれを注意する親みたいな…。

 

??「皆ー、遅くなってごめーん!」

 

ふと聞き覚えがある声が聞こえてきた。振り返るとそこにはアタシの大好きな人が急ぐようでこっちに走って来てたわ…//

 

よしっ!今日はちょっとでも距離を縮めてみせるんだから…!!

 

~優子sideout~

 

遅れて姿を見せたのは、今日出掛けるメンバーの最後の1人、吉井明久だった。余程急いでいたのか、雄二達の元に合流するなり中腰体形で肩で息を整えていた。

 

雄二「遅いぞ明久!お前で最後だ。」

 

明久「ごめんごめん!目覚ましが壊れちゃってさ~、あははは……。」

 

秀吉「全く…、しょうがない奴じゃなぁ…。」

 

康太「……こう言う抜けがある所が明久らしい。」

 

すると、そんな明久の元に光輝と夏海が近付く。

 

光輝「よっ明久!普通に走ってきたって事は、無事完治した様じゃのぉ!」

 

明久「うん。しかも予言通り昨日の20時には痛くなくなったんだ!光輝に夏海さん、本当にありがとう!!」

 

夏海「にひひ!アタイらはやって当然の事をしたまでじゃ。んな気にすんなって!」

 

2人の医者は、すっかり元気な身体を取り戻した明久を見て心底嬉しそうな表情を見せた。

 

優子「吉井君!もう怪我は大丈夫なの??」

 

明久「あっ、木下さん!僕はこの通り完治したよ!心配してくれてありがとうっ。」

 

明久は自身の心配をしてくれた優子に笑顔でそう返す。正直これだけでも優子にとってダメージは大きかったが、更なる追撃が優子を襲う。明久は優子を凝視しており、優子はどうしたのと言わんばかりに小首を傾げた。すると明久が口を開けた。

 

明久「木下さん。その純白なワンピース姿、凄く綺麗で良く似合ってるよ。」(にこり)

 

優子「~~~~~~~~っっっ!!!?///////」

 

彼のこの純粋無垢な笑顔と無自覚な口説き文句が優子を更に搔き乱す。

 

優子「あ、あああ、ありがとっ/////」

 

彼女は突然のことに思わず真っ赤に茹で上がった顔を両手で隠し、明久に背を向けた。

 

愛子「良かったね~優子♪カワイイってさ♪」

 

にやけ顔の愛子がそんな優子の肩をポンポンと叩く。するといよいよ優子の頭がボンっと音を立てて爆発したような気がした。

 

優子「あぁぁいぃぃぃこぉぉぉぉ!!!!!///////」

 

愛子「ひゃあぁぁぁ!!」

 

羞恥の余り優子が愛子を追い掛け回し始めた。優子が割とマジな形相だったからか、流石の愛子も一溜りもなく逃げ回る。

 

雅治「おい達は一体全体何ば見せられとーと……??」

 

和博「知るか。にしてもあいつら、こんな朝っぱらから見せつけてくれるな…!」

 

光輝「おかしいのぉ…。カカオ100%のチョコを食うちょる筈なんじゃが、全然苦ぉ感じん…。」

 

美月「はいはい!皆揃ったからそろそろ行こうよっ!時間が無くなっちゃうよー。」

 

カオスになりだした雰囲気を打破すべく、美月が手をパンパン叩きながら声をかけた。すると優子はどうにか我を取り戻し、皆で映画館に向かった。

 

映画館に到着した一行は、ポップコーンとジュースを手に劇場に向かおうとしている。

 

寛定「そんで、何を見るんだべが?」

 

愛子「えっとねー、『釜茹で地獄』だよ!」

 

愛子の言う『釜茹で地獄』とは、今話題の超大作の映画である。名前からしてホラー映画かSF映画だと思う者が多いだろうが、何と実は恋愛映画なのだ。

 

和博「しっかし何や、もうちょい良ぇタイトルがあったやろ…?」

 

優子「しかもこんなタイトルでよく賞が取れたわね…。」

 

康太「…世も末。」

 

翔子「…そろそろ時間。」

 

光輝「じゃな。取り敢えず見ようやー。」

 

雄二「何か全然想像がつかねぇんだが…。」

 

美月「アハハ、だよね~…。タイトルとジャンルがかけ離れてるよね~…。」

 

全員この作品に対して色々思う所を吐露しつつも、劇場に入っていった。そして―

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

明久「何かとても良い映画だったね…!」

 

雄二「確かに…!あれなら賞が取れるわな…!」

 

康太「…何から何まで予想外。」

 

秀吉「あのような演じ方があったとはの…!良い演劇の勉強になったぞい。」

 

翔子「…感動した。」

 

優子「あんな恋もあるもんなのね…!」

 

愛子「いやぁ~凄かったね~。」

 

光輝「ふむ……。人の心っちゅうモンは、実に複雑なモンじゃのぅ…。」

 

夏海「たまにはあんな物を見るのも、悪くねぇの。」

 

菜々実「これでタイトルがもっとまともだったら…、言う事は無かったのですが……。」

 

雅治「菜々実よ、そこはもうツッコんだらダメとよ…!」

 

寛定「うぉ~ん…、泣けるだ~!!」

 

美月「うぅぅ~~、あたしも涙が止まんないよぉぉぉ!!」

 

和博「そこ2人はさっさと泣き止まんかいっ!せやけどいや~、ありゃあ中々の名作やったなー!!」

 

皆が口々に感想を述べる。すると不意に複数人の腹の虫が鳴った。

 

明久「お腹も減ったし、どこか食べに行かない?」

 

優子「そうね。どこかでお昼を食べましょ。」

 

一行は映画館を後にし、近くにあったファミレスで昼食を摂る事にした。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

明久達はファミレスに入り、メニューを頼んで昼食を摂っていた。

 

光輝「ここのコーヒー旨いのぉ!!」

 

雄二「こりゃあ良いな。こっちのステーキも中々イケるぞ!」

 

雅治「このエビピラフもうまかよ!」

 

菜々実「フルーツパフェ、なまら美味しいです…♪」

 

美月「おっ、マジ?ならさーななみん、こっちのガトーショコラとちょっとばくってみん?美味いよ~☆」

 

菜々実「みーちゃん…!えへへ…、ばくりましょう…♪ありがとうございます……♪」

 

寛定「このアイスココアもイケるだよ〜。」

 

秀吉「寛定よ…。見間違いかの…?お主、何故アイスココアに砂糖を13杯も入れておるのじゃ!?」

 

夏海「コイツ、甘党の~。」

 

康太「……甘党の一言で片付くレベルじゃない。」

 

そんな中、余程お腹が空いていたのか、明久はスパゲッティを頬張っていた。スパゲッティを食べ終えた明久に、優子が話し掛けた。

 

優子「ねぇ、吉井君。そんなにお腹空いてるの?」

 

明久「うん、まあね。」

 

すると優子は、自分が食べているクレープを明久に差し出した。

 

優子「じゃあ良かったら、食べ掛けだけど一口食べる?後でアタシも食べるから、ある程度は残しといてね?」

 

明久「えっ、良いの?なら、頂こうかな。」

 

優子「う、うん!!それじゃ吉井君、あ~ん。」

 

明久「わあっ、ありがとう~!!(モグモグ)」

 

優子から差し出されたクレープに、明久が躊躇いなくパクっと食いついた。そしてよく味わうように咀嚼する。

 

優子「ど、どうかしら…?」

 

明久「うん、美味しかったよ!!」

 

優子「そ、そう…。なら良かったわ。//」

 

優子はどこか嬉しそうに、明久が口にしたクレープを食べた。

 

夏海「ほぉ~ん…。間接キスたぁアンタもやるのぉ~。」(ニタニタ)

 

隣から小声でそう言われると、優子は思わず口に含んだクレープを吹き出しそうになった。

 

優子「ちっ、ちちち違うわよ…!アタシはただ……!!//」

 

あからさまに動揺する優子に、夏海は意味ありげに笑いながら「へいへい分かった分かった」と言い軽く受け流した。優子はちょっと腑に落ちなかったが、ここはこの状況に甘んじることにした。

 

そんな中、明久が何かに気付き、近くにあったナプキンを手に持った。

 

明久「木下さん。ちょっと良いかな?」

 

優子「ほぇっ?」

 

明久は、ナプキンで優子の口の周りを拭いた。

 

明久「クリーム、口の周りに付いてたよ。」

 

優子「~~~!?///あ、ありがとう…///。」

 

照れている優子に、ニヤニヤした愛子が突っ込んできた。

 

愛子「良かったね、優子~。」(ニヤニヤ)

 

優子「な、何よ…//別に良いじゃない!!それより愛子も、土屋君にしてもらえば?」

 

愛子「ふぇっ!?ボ、ボクはその…何て言うか心の準備が…。//」ゴニョゴニョゴニョ

 

菜々実「愛子さん…。人にはあれだけ言うのに、いざ自分のことになると軟弱になるんですね……。」

 

愛子「うぐっ!?な、ななみん?!ボクが言うのもなんだけど、言う事が結構容赦無くないっ!?」

 

優子「えっ…?いや、アタシ別にそこまで言うつもりはなかったんだけど……??」

 

翔子「……菜々実が分からない。」

 

思わぬ伏兵に愛子は心臓を槍で突き刺され、抉られた気分だった。それは傍から聞いていた翔子や優子でもそう思っており、流石の優子もこれには同情した。

 

明久「木下さんどうかしたの?工藤さんが小言を言ったかと思ったら思いっきりショックを受けたみたいけど?」

 

優子「何でもないわ。気にしないで…。」

 

明久「??そこまで言うんなら分かったよ…?」

 

そう言うと明久は、カップに注いであったカフェオレを飲んだ。その時、ヒュッとフォークが明久の頬スレスレに飛んできた。飛んできたフォークは、壁に突き刺さった。何が起こったのか理解が追い付かないまま飛んできた方向に目をやると、そこにいたのは、途中から西村先生の教育的指導を受けることになったあの人物たちだった。

 

 

島田「ア~キィ~…、何そいつらと一緒にいるのよ~!!」

 

姫路「そうです!!と言うわけで、オシオキですっ!」

 

須川「そうだ…!!異端者は―」

 

FFF団「「「全員死刑だ!!」」」

 

島田と姫路、それにFFF団が現れた。

 

優子「アンタ達また懲りずに…!」

 

明久「木下さん!そんな事言ってる場合じゃないよ!!フォークやらナイフを持って迫ってきてるよ!!」

 

光輝「チッ!ここじゃあ分が悪ぃ…!取り敢えず出るぞ!」

 

光輝の言葉で明久達はその場から飛び出し、食事代だけ店員に渡すと一斉に逃げ出した。

 

島田「あぁっ、こら!待ちなさーい!瑞希、追うわよっ!」

 

姫路「は、はい!分かりました!」

 

FFF団「「「異端者は1人残らず死刑に処する!!!」」」

 

島田達も後れを取りながらも、彼らを追い掛けた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

島田「アーキィィ!!、待ちなさーい!!」

 

姫路「明久君。今なら鉄パイプで許してあげますから観念して下さい。」

 

和博「アホかおめぇら!!許す許さん以前に鉄パイプで殴ろうとすなっ!!」

 

明久達は島田達から逃げ回っていた。

 

明久「どうしよう!これじゃあ埒が空かないよ!!」

 

秀吉「ぐぬぬ…、万事休すか……。」

 

すると走りながら考え事をしていた夏海が何か閃いたようだ。

 

夏海「よっしゃ皆、このまま学校へ行くんじゃ!」

 

皆、一瞬彼女が何を言っているのかわからなかったが、後になって意図することが理解できた。一部を除いて。

 

優子「…!そう言う事ねっ!」

 

明久「木下さん、どう言う事?」

 

優子「吉井君、学校に行ったら試召戦争が出来るわ!」

 

明久「でも、僕はそんなに点ないけど…。」

 

雄二「成程…!明久、確かにいつもみたいに俺達だけじゃあ姫路と太刀打ちできねぇし、何よりあの人数を捌ききれねぇ。だがな、今ここにAクラスの生徒が何人いると思う?」

 

明久「あっ…!…そっか!」

 

雄二「分かったら、さっさと学校に行くぞ!」

 

彼らは作戦が固まると、学校目指して道を突っ走る。そして―

 

菜々実「みっ…、見えました……!」

 

雄二「よしっ、このまま行くぞ!」

 

そして明久達は遂に校門を抜け、校舎に入った。そこで走るのをやめた。すると、偶々彼らの近くに高橋先生と三浦直道の姿があった。

 

直道「おやおや皆さん、どうしたのですか?私服姿で学校に来るなんて…??」

 

光輝「わりぃが話は後じゃ…!今は一刻の猶予もねぇんじゃ……!!」

 

翔子「…それより先生、お願いがあります…!」

 

高橋「はい、何でしょう?血相を変える程のことがあったのですか…??」

 

寛定「今すぐに召喚許可をしてけろ!」

 

高橋「えっ?で、ですが…。」

 

高橋が躊躇っている間にも、島田達が徐々に近付いてきた。

 

美月「先生早くっ!!もう時間がないんですっ!!」

 

高橋「えー…、…分かりました!承認しましょう!」

 

今一状況がよく呑み込めていなかった高橋女史だったが、少なくともあまりよろしくない状況であることだけは何となく察しがついた様で、試験召喚フィールドを展開させた。

 

夏海「この際じゃ!ここは1つアタイらにやらせてくれん?」

 

優子「分かったわ!頑張ってね!!」

 

光輝達7人が島田達に立ち塞がるように明久達の目の前に出た。すると直道も、光輝達に交じって前に出る。

 

雅治「ん?おはん…!」

 

直道「まだ状況を呑み込めていませんが、恐らく貴方達に危害を加えようとしているのでしょう?でしたら僕にも是非手伝わせて下さい。大切な仲間を守りたいのは、僕も同じ事ですからね…!」

 

寛定「おしょーしなっし!助かるど!」

 

光輝「っしゃあ、後はこっちのモンじゃ!どっからでも来ぇや!!」

 

転入生組&Aクラスの戦う軍師ががやや喧嘩腰(特に光輝と和博)で島田達を迎える。

 

島田「面白いわ、やってやろうじゃない!いくわよ瑞希!」

 

姫路「はいっ!美波ちゃん!経験値と人数ではこちらの方が上です!」

 

FFF団「「「異端者には死を!!」」」

 

「「「「「「「サモン!」」」」」」」

 

総合科目

Aクラス

中岡光輝(3792点) 中岡夏海(3819点)  重谷和博(3720点) 空知雅治(3804点) 氷川寛定(3935点) 鈴木美月(3950点)松井菜々実(4000点) 三浦直道(4512点)

VS

Fクラス

姫路瑞希(4012点) 島田美波(503点) FFF団(80〜250点)

 

明久「うわぁ…、すごい点数だね……!」

 

光輝「ひっひっひ!曲がりなりにもわしら、Aクラスじゃけぇの。」

 

感心している明久に、光輝が力強く笑う。一方で雄二達は、ここで明らかとなったAクラスの面々の点数を見て冷静に分析する。

 

雄二「今回はこいつらと戦うことはなかったが、やっぱ流石はAクラスと言ったところか…!無駄がねぇ…!」

 

秀吉「もしあのまま普通に試召戦争をしていれば、15分も経たぬ内にやられておったかもしれんの…!」

 

康太「……敵に回したくない。」

 

一方、対峙した島田達は表示された点数を見て驚愕し、文句を言う。

 

島田「ちょっと何よその点数!?それに集団で反則でしょうが!!」

 

姫路「そうです!卑怯ですっ!」

 

和博「じゃかましいわ!!2人して明久をボコしとったお前らにだきゃあ言われとーないわドアホっ!!」

 

夏海「っつーかあんたらも集団じゃろうが?それでおあいこじゃろ?」

 

美月「取り敢えず早いとこ終わらせちゃおっか?あんまり時間を取られたくないしさっ!」

 

美月の召喚獣は島田の召喚獣を、光輝と和博の召喚獣はFFF団の召喚獣をそれぞれ瞬く間に一蹴し、8人で姫路の召喚獣を蹴散らした。

 

西村「戦死者は補習だぁぁぁぁ!」

 

姫路「待って下さい!今日は休日ですよー!」

 

西村「そんな物は関係ないっ!!!平日だろうが土日祝日だろうが戦死者は纏めて補習室行きだああああ!!」

 

「「「そんなぁ~~~~………!!」」」

 

何故か西村が天井裏から出てきて、島田と姫路、FFF団を纏めて担いで連れ去った。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

島田達の騒ぎが収まり、校門で直道と別れた明久達は学校を後にしていた。

 

明久「すっかり夕方になっちゃったね…。皆ごめんね、僕のせいで…。」

 

優子「そんな事ないわ!元はと言えば難癖つけて追い掛け回したアイツらが悪いんだから、吉井君が気に病むことはないわよっ!それに、何だかんだで楽しかったわよっ。」

 

雄二「悲しいかな、あれがいつもの事だってのはお前自身もよく分かってる筈だぜ。今更引け目なんか感じる必要はねぇさ。」

 

翔子「……吉井は悪くない。」

 

美月「そうそう♪寧ろ悪いのはアイツらだし、気にしないで!」

 

秀吉「にしても、あやつらのあの執念深さには怒りを通り越して最早ある種の尊敬の念すら感じるわ……。」

 

康太「……見習いたくは無いがな。」

 

愛子「いやぁ~それにしても、今日は刺激的な1日だったね~!」

 

寛定「おら、こんな刺激はもー勘弁だべ~……。」

 

暫くこのように雑談していると、美月が何か良い事を思い付いた顔になり、明久達の前に出た。

 

美月「ねぇねぇ!そんな刺激的な1日を共にしたあたし達はもう親友なんだから、名前で呼び合おうよっ☆」

 

明久「それ良いね!僕は大歓迎だよっ!」

 

雄二「良いんじゃねぇか?その方がお互いやりやすいだろ?」

 

康太「……構わない。」

 

秀吉「うむ、合点じゃ!」

 

翔子「……分かった。」

 

優子「そうね、アタシもそうさせて貰うわ。」

 

愛子「オッケー♪」

 

明久達は快く受け入れた。そんな様子を見て、光輝達転入生組はやっぱりかと言わんばかりにお互いの顔を見合って微笑んだ。

 

雅治「ふふふふふっ!ま、そんなこっちゃろうと思うたばい!」

 

菜々実「みーちゃんらしいと言えば、みーちゃんらしいですね……♪」

 

和博「ほなさ、連絡先も交換しようや!そこまでするんやったら、これは外せへんやろ?」

 

今度は和博が携帯を取り出し、提案してみる。当然異論が出る訳もなく、皆で連絡先の交換もした。

 

この日は皆で連絡先を交換し解散となった。かくして、この波乱の1日がきっかけで新しい関係が築かれたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたか?
旧作との主な違いですが、島田達を迎え撃つ面子に転入生組の他に直道も加わったこと(旧作では転入生のみ)、撃退後の帰宅時の下りです。この帰宅時の下りと言うのは、旧作には親友の証として「フレンドシンボル」なる転入生組が共通で身に付けているアイテムがあり、それを明久達にも分け与えるストーリーだったのですが、このリメイク版ではそのアイテムを撤廃し、ごく自然に連絡先の交換と名前の呼び合いの提案と言うお話にしました。
それでは、ここで今回登場した方言を紹介します!
・ばくる:交換する(北海道)
・~けろ:~してくれ、~して下さい(山形・岩手等)
・おしょーしなっし:ありがとう(山形)
・じゃかましい:うるさい(大阪)



~次回~
第漆話 変人教師登場


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第漆話 変人教師登場

~前回のあらすじ~
試召戦争を終えた翌々日の日曜日、明久達は夏海の命令により交流会を行い、映画を見に行ったりご飯を一緒に食べたり満喫していた。ところが、そこに島田達Fクラス勢の妨害が入り、急遽逃げざるを得なくなるも、機転を利かせて学校で召喚バトルを行い撃退した。そしてその後、美月の何気ない提案でお互いを名前(ニックネーム)で呼び合うようになり、そして連絡先の交換を行う等更に親睦を深めていった。


〜明久side〜

 

ふわぁぁ〜……。

 

交流会から一夜明けた月曜日。時計は7時40分を指している。朝ご飯を手早く済ませた僕は登校の準備をしていた。えっ?遅刻の常習である僕が何でそんな時間から起きてるって?失敬な!僕にだって遅刻せずに行った日はあるよ!ただ、数える程しかないけど……。まぁでも、確かに今までの僕ならこの時間もまだ夢の中だろうね〜…。けど今日からはそうもいかなくなったんだっ!

 

と言うのも―

 

ピンポーン

 

おっと、噂をすれば来たみたい!あんまり外で待たせるのも申し訳ないから足早にドアへ向かう。ドアに付いてる覗き窓をみると、予想通りの人物がいた。

 

優子「明久君、予定より少し早いけど来たわよ~。」

 

明久「大丈夫大丈夫!でも優子さん、まだ準備が出来てないから中に入って待っててくれるかい?」

 

優子「ありがとう。ならお邪魔するわね。」

 

実は今日から、優子さんと一緒に登校する事になったんだ〜!そのきっかけは、寝る直前の僕に掛かってきた一本の電話だった。

 

~明久の回想~

 

昨日の夜、僕が今気に入っているRPGをやってる最中のこと―

 

ピロロロロ~ン!

 

明久「ん?こんな時間に電話?誰からだろ…?」

 

突然携帯から着信音が鳴り、ゲームを中断して携帯を手に取った。サムネイルには『木下優子』と書かれていた。何故に電話を掛けてきたのか疑問を抱きつつ、電話に出た。

 

明久「もしもし優子さん。どしたの~?」

 

優子「こんな夜遅くにごめんね。明久君にちょっと聞きたい事があってね。」

 

聞きたいこと…?はて、何のことだろう…??まぁ、聞けば分かるか。

 

明久「えーっと…、何かな?」

 

優子「明久君って、いつも何時頃に学校に行ってるの?」

 

明久「そ、そうだね~…。大体時間ギリギリだよ。人に言うとかなり恥ずかしいけど…。」

 

自業自得とは分かってはいるけど、改めて今の登校時間を誰かに言うのは何となくちょっと気恥ずかしいなぁ~…。ましてや女の子に!そりゃあ普段から遅れて行く僕が悪いんだけどさ~……。それを聞くと優子さんは「そう…。」とだけ言って何やら少し考え込んだみたいだった。本当にどうしたんだろ…?なんて思っていると、再び口を開いた。

 

優子「じ、じゃあさ…!明久君が良かったらで良いんだけど、明日からアタシと一緒に登校しない?」

 

な、何だって……!?優子さんからそんな魅惑的な誘いが…!!僕個人的には途轍もなく嬉しいけど…。

 

明久「それは良いけど…、でも何でまた??」

 

優子「アタシは今まで明久君の事を噂通りマイナスの人としか見てなかった。でも、明久君と実際に関わってみたら、マイナスばかりか寧ろ優しくて思いやりのある素敵な人だって言う事を知ったの。明久君のお陰で、ウチのクラスは学力が全てじゃないって事をやっと理解したの。ただ、今でも成績とかそう言う表面上のものだけでしか見ていない人もいる。だから汚名返上する為に、今からでもちょっとずつ生活を改めようって思ったの!だからその…、一緒に登校しない?あ、勿論明久君が迷惑じゃなかったらよ?!別に強要するつもりなんてないのよ!」

 

優子さん…!!僕のことをそんなに考えてくれてるんだ…!!生活改善も然り、何より優子さんのような美少女と一緒に登校できるって、僕に対してメリットが多すぎるんだけど良いのかな??あ、ちゃんと答えを言わなきゃ!

 

明久「うん、勿論良いよっ!そしたらよろしくね!」

 

優子「本当っ!?アタシに任せてっ!!………やった!///」

 

ん??最後の方は小声でよく聞き取れなかったぞ…?っていやいや、そんなことよりも―

 

明久「いやー、これから優子さんみたいな可愛い美少女と登校出来るなんて、僕は相当ツイてるなーっ!!」

 

優子「えっ……///」(ボンッ!!)

 

あれ??今度は思いっきり膨らませたお菓子の袋が破裂したような音が聞こえたのは気のせいかな……??

 

明久「ならさ、8時頃に僕の家に優子さんが来るって事で良いかい?」

 

優子「う…、うん!!分かったわ!じゃあまた明日ね。お休みっ♪」

 

明久「うん。お休み~。」

 

心なしか、優子さんの機嫌が良くなってた気がした。でも気のせいだと結論付けて、その日はRPGの続きを少しだけやり、キリが良い所でやめてすぐに寝た。

 

~明久の回想終了~

 

そして今に至るってワケさ!折角優子さんが僕の為にああ言ってくれたんだもん!こっちもそれに応えなきゃね!よし、後はお茶を入れた水筒を鞄に入れてっと!

 

明久「お待たせ優子さ~ん!行こっか!」

 

優子「うん!行きましょ!」

 

僕達は玄関で靴に履き替え、学校へと出発した。いやぁ~これが毎日の日課になるって思うと、登校の時点でテンションが爆上がりだね~!

 

~明久sideout~

 

~優子side~

 

今日から明久君と登校できるなんて、幸せ過ぎるわね~!うふふっ♪

 

昨日帰ってから、秀吉にそれとなく明久君のことを聞いてみて正解だったわ!明久君ってば、本当は物凄く他人思いで真っ直ぐな優しい人なのに、「観察処分者」って言う肩書が独り歩きしちゃってるせいで何かと冷ややかな目で見られちゃうんだから、それが堪らなく悔しいし悲しいのよね…。だから、ちょっとでもそんなことが無くなるように張り切っちゃうんだから!!

 

そういう訳だから電話で言ったことに嘘偽りはないけど、本当の目的はちょっとでも明久君と一緒にいられる時間を作ることっ!!いくら仲良くなったとは言っても、やっぱりクラスが違えばその分一緒にいられる時間も限られちゃうから、今回のことを提案してみたの。正直言ってダメ元だったんだけど、そんな不安とは裏腹に明久君はあっさり快諾してくれた。そればかりか―

 

優子『可愛い美少女……、かぁ~………♪』

 

昨日のやり取りを思い出して、またしても胸が高鳴ってしまう。明久君ってば、どこまでアタシの心を搔き乱したら気が済むのよ!?//対面してる時もそうだけど、電話越しでもあんな恥ずかしいことをポンポン出すなんて反則じゃない!!///それに明久君のあの口振りからして、明久君も楽しみにしてくれてるって分かったから、殊更提案してみて良かったって思う!やっぱ言ってみるものねっ!

 

明久「優子さん?」

 

優子「ひゃい!?//なななっ、何かしら明久君?!///」

 

急にアタシの顔を覗き込んできたからびっくりしたじゃない!//あ、でも何か無邪気な子供みたいで可愛いわね……。////

 

明久「どうしたの??さっきから急に黙り込んじゃったりなんか百面相したりしてるけど…??それに顔まで赤いよ?」

 

どうしたもこうしたも、そりゃもれなく片思い中の男子が隣にいるんだし、貴方のことを考えてたんだからそうなっちゃうに決まってるでしょ!?///でも、超絶鈍感な貴方はそれに気が付かないんでしょうけど…。

 

優子「だっ、大丈夫よ!ほら!本当にダメなら明久君の所に行く前に休むって伝えるしっ!ね?」

 

明久「それもそっか!あ、でも本当にダメっぽかったら言ってね?」

 

優子「う、うん……。ありがとっ//」

 

もー!何で気付かないの!?一応秀吉から聞かされていたけど、まさかここまで鈍いなんてね…。とは言え、良くも悪くも今回はそのお陰で助かったけど…。あ、でも明久君に優しくしてもらえたのも悪い気はしないわね…!う~…、やっぱり何か複雑な気分ね……。

 

ま、今は気付かれなくても良いわ。だってアタシが振り向かせてみせるんだもの!!だから、今は明久君と登校するこの時間を楽しむことにしましょ♪

 

~優子sideout~

 

さて、突然だがここ文月学園には、変わった教師がいる。生徒から「鉄人」やら「生徒指導の鬼」等と呼ばれ恐れられている西村宗一も例外ではないが、それに引けを取らないかそれ以上に変わった…、と言うよりは、変人教師が2人存在するのだ。ここでは、そんな変人教師を紹介していくことにする。

 

1時間目のAクラスは、美術室で行われる。翔子達が待っていると、美術準備室登校する直結しているドアが開いた。そこから大きなあくびをし頭をポリポリ掻きながら、若い男性教師が出てきた。

 

秀喜「ふわぁ~…。んじゃ号令~。」

 

翔子「…起立。気を付け、礼。」

 

『『『お願いします。』』』

 

砂辺「はぁ~あ………。何で授業しなくちゃいけね~んだか…?やっきねぇ~な~…。かったりぃ~…。」

 

とても教師とは思いがたい発言が飛び出る。

 

砂辺「まぁ良いや。本当は先週の木曜にこの授業が始まる予定だったけど、試召戦争とやらで流れちまって今日が初めてやったか?俺は砂辺秀喜。石川県の輪島市出身だ。まぁ、適当によろしく~。」

 

軽く自己紹介したその時。美術室のドアが勢いよくバタンと開いた。

 

西村「砂辺ぇーっ!!」

 

砂辺「ん?何だ宗いっつぁんか〜。どうしたっていってーっ!!何すんだよ!?何いきなり顔面パンチしてんだよ!?」

 

西村「貴様ァ!!何故俺の机の上にケシカスが山の様にあるんだ?!答えろ!それと西村先生と呼べっ!!話す時は敬語だっ!!」

 

砂辺「ん?あ~アレ?実に芸術的だろ?」

 

西村「どこがだ!!しかも俺の消しゴムを丸々1つ使いやがって!」

 

砂辺「1つじゃねぇよ、3つだよっ!我ながら力作だろっ?んなことも分からねぇとか、お前だらなんか!?その目は節穴なんか!?」

 

秀喜は何喰わぬ顔で鼻糞をほじりながら答える。その上何故か逆切れされ、いよいよ西村の怒りが爆発した。

 

西村「バカは貴様だこの野郎!!ふざけるな!!なお悪いわ!」

 

西村はもう5発砂辺に強烈な拳骨を喰らわせ、怒り心頭のままその場から去った。渾身の拳骨を喰らった砂辺はうつ伏せでダウンしたが、何事も無かったかのようにすぐに立ち上がった。

 

砂辺「たあーっ…、朝っぱらから酷い目に遭った…!クソ、あのジジィ…!!人が折角机の上に芸術作品を作ってやったのに…!やくちゃもねぇーやっちゃ…!!」

 

「砂辺先生。芸術云々以前に単なる迷惑です。」と、その場にいた誰もがそう突っ込んだが、それを直接口にする者は誰もいなかった。

 

砂辺「ま、良いや。折角だしさ、何か俺に質問とかあったりする~?」

 

学校に来て間もない教師の最初の授業にはよくある教師への質問を受け付けてみる。すると1人の男子生徒が元気よく手を挙げ、秀喜は彼を指した。

 

生徒A「先生って彼氏いるんですか?」

 

秀喜「お前今なんつった!?いてたまるかよっ!?」

 

気怠そうにしている彼でも流石にこの質問には一気に目を見開いて物凄く驚き、全否定した。まさかそんな質問が来るとは思ってもいなかったのだろう。

 

秀喜「ほい他誰かあるか~って、またお前かよ?今度は何だってんだ?」

 

次の質問を受け付けると、同じ生徒が再度手を挙げた。他に手を上げている生徒がいなかったので、怪訝そうな顔をしつつも彼に指した。

 

生徒A「先生って彼氏いるんですか?」

 

同じ生徒が同じことを質問した。今度はニヤつきながら。

 

秀喜「はぁ!?いる訳ねぇっつってんだろーが!?さっきからこんのクソガキがぁ!!ぶっ殺してやろうかゴルァ!?」

 

流石に秀喜は頭に来てかなり言葉遣いが汚くなった。確かに確信犯で同じことを面白がって聞いてくる男子生徒にも非はあるが、それに対する罵詈雑言の数々は教師としての品格があまりにもなさすぎる。

 

尚、運悪くこの発言が偶々廊下を歩いていた西村の耳に飛び込み、一瞬で15発もの拳骨を喰らい、大仏のような状態のまま授業が進められることとなった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

そして、次に2時間目は教室で生物。2時間目スタートのチャイムが鳴ってしばらくすると、何故かモゾモゾ動く布の袋を傍らに持った若い男性教師が姿を現した。

 

文太「よっしゃ号令っ!」

 

翔子「…起立。気を付け、礼。」

 

文太「え~っと、僕は天登文太。香川県の多度津って言うド田舎の出身や。よろしく~。」

 

この先生はマトモだなっと思ったその時、教室のドアが勢いよくバタンと開いた。

 

西村「天登ぉーっ!!」

 

文太「お~、こりゃあこりゃあ西村先生。どうしやした~って痛っ?!何するんっすか!?何で僕おがっしゃげられんといけんの!?」

 

西村「貴様ぁ!?何で俺の机の引き出しにひよこが20匹もいるんだ!?答えろ!」

 

文太「だって先生、愛嬌ないんですも~ん。」

 

西村「要らん世話だ!人の机の引き出しにひよこを飼いやがって!」

 

文太「失礼なっ!!鞄にもあと13匹生まれたてがおったでしょうがっ!!鳴き声も聞こえんとか、あんたのその耳は飾りなんちゃん!?」

 

西村「なお悪いわ!」

 

西村は再度文太に強烈な拳骨を喰らわせ、その場から去った。

 

文太「いたた~…。動物を可愛がって何が悪いんだよ…。」

 

この人も破天荒だな。この時、その場にいた誰もがそう思った。すると袋から何か出てきた。それは―

 

『『『コ……、コブラーーーッ?!』』』

 

そう。コブラだ。小柄ではあるのだが、コブラがにゅるにゅると袋から姿を現したのである。

 

文太「ぬあっテメェ!?誰が出て良いっつった?!」

 

そう言うと彼は、コブラの背後に回り込んで背後から足をかけて剄部に手を回し、コブラの胴体を挟んで締め付けた。

 

生徒B「すげぇ…。コブラにコブラツイストかけてやがる…。」

 

そうして彼は無事コブラを捕まえ、袋に戻した。しかし―

 

西村「…………………………。」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!

 

『『『あっ……………。』』』

 

そんな文太の背後に、西村が一際強い殺意のオーラを発しながら仁王立ちして佇んでいた。しかし、当の文太本人はそれに全く気付くことなく、汗を拭った。

 

文太「ふぅ~……。ったく、世話が焼けるぜ~…!」

 

西村「それはお前のことだ大馬鹿者っ!!!!」

 

文太は力が目一杯込められた西村の拳を15発程喰らい、その場に暫くダウンした。その後すぐに復活したものの、半殺し状態のまま普通に授業が行われることになろうとは思ってもみなかったAクラスの面々は、どうすれば良いのか分からない状態だった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

更に場面が変わって三時間目終了後の休み時間。明久と雄二が自動販売機コーナーから教室に戻っている時、あの二人が西村に追われている所に遭遇した。しかも、自分達に向かって。

 

西村「コルァ貴様ら!!室内をローラースケートで移動するなーーーっっ!!!」

 

秀喜&文太「「ぎょえぇぇーーーっ!!」」

 

明久&雄二「「ぎゃあぁぁあーー!?」」

 

明久と雄二も反射的に、秀喜と文太と共に西村から逃げ出した。

 

秀喜「ん?何だお前ら?お前らも何かやらかしたってか?」

 

明久「違いますーっ!ただの反射ですーっ!」

 

文太「そうなのかっ!けど、早い話が前科者ってヤツか?」

 

雄二「まぁ、間違いじゃないがな!!っとおわっ!?」

 

逃げながら会話をしていると、行き止まりに来てしまった。

 

西村「よぉし追い詰めたぞ…。……って何で吉井と坂本がいるんだ?」

 

明久「あははは……、鉄人がこっちに向かってきたものだからつい……。」

 

西村「全くお前らは……。取り敢えずお前らは下がってろ。今回用があるのはそっちの馬鹿2人だからな。それと西村先生と呼べと何度も言っているだろうが…。」

 

そう言って、西村は秀喜と文太をボコボコにした。

 

砂糸「「いってぇぇ~~…。」」

 

明久「うわあぁぁ………。これ滅茶苦茶痛いヤツだよ~………。」

 

雄二「まさか教師で鉄人に目を付けられてるヤツがいるとはな……。」

 

西村の鉄拳制裁を喰らった教師2人を、憐みの目で見る明久と雄二であった。だが、同時に自分達も人の事を言えないと気付き、何とも言えなくなったのは内緒だ。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

明久「―ってことがあったんだ~。」

 

優子「そ、そんなことがあったの…。」

 

愛子「アハハッ!やっぱりあの2人、凄く面白いんだね~!」

 

時は変わって昼休み。明久達は屋上で昼食を取り、その時に休憩時間に起きた出来事を話した。因みに今回、転入生組は別件があるということで一緒ではなく、ここには明久、雄二、康太、秀吉、優子、翔子、愛子の7名だけがいる状況だ。いつもなら一緒なのだが。

 

秀吉「じゃが、お主らもとんだ災難じゃったの。」

 

康太「……反射的に逃げるあたり、流石だ。」

 

明久「あはははは……。そりゃ僕らは普段追われる側だからね~……。だから条件反射でそうなっちゃうんだよね~つい…。」

 

優子「も~、明久君ってば……。」

 

優子が呆れたように明久をジト目で見据えると、明久はあははと乾いた笑いしかできなかった。

 

雄二「それはそうと、あの2人は何者なんだ?教師でありながら鉄人にマークされるなんて、前代未聞じゃねぇか……?どうやったらそうなんだよ…??」

 

翔子「……生徒とのゲームや漫画の貸し借り、色んな動物の放し飼い、生徒教師問わない罵詈雑言の数々、落書きとその他諸々。」

 

明久「う、嘘でしょ………?下手したら僕や雄二より酷い気がするんだけど……。」

 

翔子の発言を聞き、呆気にとられる明久。しかし愛子が、「あっ!でもー。」と言葉を発する。

 

愛子「色々やっちゃってるけどさ、あの2人って何だかんだで生徒からの人気は凄いんだよー?」

 

「「「えっ?」」」

 

彼女の言うことに、一同がきょとんとする。すると秀吉と優子も何かを思い出したようにあぁと溢した。

 

明久「それってどういうこと?ゲームの貸し借りする位だから距離が近いってこと?」

 

優子「確かにそれもあるわよ。でも一番の理由は、どんな時でも自分の仕事よりも生徒を優先するから。ちょっと前にね、砂辺先生が職員会議を無断欠席したことがあったの。当然他の先生は良いと思わなかったし、それが判明した途端西村先生も連行しようとしたんだけど、いざ探してみると、ウチの学園の生徒が他校の生徒からいじめられてたみたいで、そのいじめていた生徒をボコボコにしてたんですって。他校とは言え、生徒であっても一切容赦しなかったみたいよ。つまり先生が職員会議に出なかったのは、その前にいじめの相談を受けてて、いじめっ子を懲らしめる為ってことよ。」

 

雄二「おいおいマジかよ…!んなことがあったのか……!?」

 

秀吉「それだけではない。ウチの部の後輩から聞いた話なんじゃがの、そやつは両親に…、所謂モンスターペアレンツに悩まされておったんじゃ。放課後に1人愚痴を溢していた時に偶々それが天登先生に聞かれて、そのまま打ち明けたそうなのじゃ。するとどうじゃ、冷静ながらも血相を変えて無理矢理両親の職場に案内させては、職場に押し掛けて両親をその場で叩きのめしたそうじゃ。それもその日はかなり重要な職員研修があったのじゃが、にもかかわらずそれをすっぽかしてまで来たそうじゃ。それ以来、両親は完全にトラウマになってしまいすっかり考えを改めたみたいで、お陰でそやつ自身も元気を取り戻したぞい。」

 

明久「うわああぁぁ~……!凄いね……!!」

 

愛子「でしょ?普段こそ手を焼かされている西村先生も、周りの目を気にせずに自分のことよりも生徒のことを第一に考えて一切の躊躇いなく実行に移せる所は凄く感心してるんだよ。でも、やっぱりちょっと強引な所もあるから冷ややかに見る先生もいたりはするけど、学園長をはじめ西村先生、高橋先生、福原先生みたいに一部の先生からは高く評価されてるんだって。」

 

康太「……人は見かけによらない…か…。」

 

彼らの知らない2人の一面を知り、感嘆する一同であった。するとここで、優子からある提案が出る。

 

優子「ねぇ、今日から定期的に勉強会でもやってみない?」

 

明久「?どうしたの突然?」

 

優子「だって、せめて来年は皆一緒のクラスが良いもの!その為には、今以上に学力が必要でしょ?」

 

明久「うー確かに…!僕らなりにやってみ始めたのは良いけど、やっぱりそれじゃあどうしても限界があるからね~…。」

 

愛子「良いじゃん良いじゃん!ボクも来年は皆で同じクラスが良い!だからその話、乗ったよ!」

 

雄二「そうだな。ならお言葉に甘えさせていただこうじゃねぇか。お前らも良いよな?」

 

康太「……愚問。」

 

明久「当然じゃないか!僕だって来年は優子さんと同じクラスになりたいしさ!」

 

秀吉「わしも問題ない。しかし、部活の時だけは参加できんことを許してほしいのじゃ。」

 

優子「できるときにやれば良いだけだからその辺は大丈夫よ。」

 

意見が纏まり、全員一致で定期的に勉強会を行うことが決まった。と、ここで愛子が疑問を投げかける。

 

愛子「やるって決めたは良いけど、いつからやる~?」

 

愛子の質問に、明久が答える。

 

明久「今日からやろうよ!折角決めたんだから早速やってみようよ!」

 

雄二「だな。折角モチベーションが高まったんだもんな。鉄は熱いうちに打てってヤツか?」

 

翔子「……愛子と秀吉は今日大丈夫なの?」

 

愛子「今日はプールの点検がある関係で無いよ~。」

 

秀吉「こっちはそもそも今日は部活の日ではないから大丈夫じゃ。」

 

優子「なら決まり!早速今日やりましょう!」

 

翔子「……今日はウチに来ると良いわ。……大人数になるでしょうし、その方が多分ちょうど良い。」

 

明久「分かったよ。ならこれ、光輝達にも伝えなきゃね!」

 

かくして、明久達の学力アップ計画が始動することとなった。「皆で同じクラスになる」と言う来年の目標に向けて―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたか?
旧作との主だった変更点はありませんが、オリキャラである2人の教師について詳しく書いてみたのと、旧作では次話の冒頭部分に描いていた昼休みと勉強会の定期開催の下りを今回の末尾に持ってきました!これは試行錯誤の末、2人の教師を詳しく書くにはこうする必要があると判断したからです。
それでは、ここで今回登場した方言を紹介します!
・やっきねー:やる気がない(石川)
・だら:馬鹿(石川)
・やくちゃもない:滅茶苦茶な、とんでもない(石川)
・おがっしゃげる:ぶん殴る(香川)
・~ちゃん?:~じゃないの?(香川)



~次回~
第捌話 勉強会 in 霧島家 


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。