僕が1番上手くガンダムを扱えるんだ。 (ガンダム大好き魔神)
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悲劇と光、そして過去の記録のプロローグ

 悲鳴、怒号、そして爆発。人の焼ける匂いと共に色とりどりの化け物達が逃げる人達を炭素の塊へと変えその命を散らせてゆく。

 

「くッ!」

 

 背中を預けるべき、片翼である友は先に死んでしまった。数多くの化け物達────ノイズを巻き込んで自爆覚悟の大技、絶唱を放ちその命を燃やしながら放ち散っていった。

 

「奏……カナデェェェ!」

 

 しかし、そんな彼女の命をかけた一撃でさえもノイズ達を全て殲滅するには威力不足、全てを殲滅するには足りなかった。

 生き残った片翼の戦士が悲鳴にも似た歌を紡ぎながら戦い続けるが既に疲弊して限界に近い。このままだと力尽きるのも時間の問題だろう。

 

「すまない奏……どうやら私ももうすぐそちらへと行く事になりそうだ」

 

 先ほどよりも大量に出現し、戦士を囲むノイズ達。もはやこれまでかと諦めかけたその時、彼女の紡ぐ歌とは別の綺麗な音色が聴こえて来る。コレは────ピアノの音色? 

 

「……ッ!?」

 

 一瞬だった。

 

 視界に赤い粒子にも似た何が目に写った途端、彼女を囲むノイズ達が何かピンク色の光に貫かれ次々と消滅する。謎の攻撃に驚くきながら思わず空を見上げた。

 

「なッ!?」

 

 するとそこには信じられないが光景、赤く光る何か縦横無尽に高速で飛び回っている光景が見てとれた。高速で動く何かからビームにも似た光が発射され、ノイズ達を正確に貫いてゆく。そしてノイズ達が殲滅されると赤い光はステージの真上で停止して赤い光は収まる。

 

 それは人の形をしていた。

 体長は2メートルほどのそれは全身が鎧にも似た機械で構成され色は白と青、そして赤のトリコロール。彼、彼女の背からは緑色の粒子を生み出しているようにも見える。そしてその両手には拳銃にも似た武装と盾を持つ事からアレで先程のビームを擊ち出していたと分かる。その何かはまるで会場全てを見渡すかの如く微動だにせず、放ち浮かび続けていた。

 

 戦士はその光景を見つめ、そして考える。アレは何なのだと。

 

 ピアノの音色は相変わらず響き会場全体で聞こえ続ける。何処から聴こえるかはわからない。だが、あの正体不明の者が現れたのと同時に聞こえ出した事を考えるに何かしらの関係があるに違いない。もしくはノイズを倒し、全身が機械の鎧の如くある事を考えるに自身が纏ってる装備と似た性質を持っているとも考えられる。わからない事だらけではあるがアレが戦士を助けてくれた事は確かだ。だが、だが……

 

「何故もっと早く────」

 

 全ての思考を他所にこう考えてしまう。何故もっと早くに助けに来てくれなかったのだと。何故私ではなく死んでいった友達を助けてはくれなかったのだと。空に浮かぶ何かは突如光の翼を出現させ、そして空へと消えていったのだった。

 

 後に残ったのは翼から溢れあたり一面へと降り注ぐ光。その光はゆっくりと、しかし確実に傷を癒していたのであった。

※※※

 

「GNドライブ、マッチングクリア……行ける」

 

 夕焼けの見える昼下がり、春のせせらぎが残る風を感じながら彼は飛び立つ。全身を包み込む粒子を真っ赤に染め、赤い閃光と成りながら目的地へと急いだ。

 

「コレが、コレがオリジナルの太陽炉の力か!」

 

 そして全てが見渡せる高さから地上へと目を向け、自身が保有した力に酔いしれるつもりであったが目に映る光景に気分を害す。

 見下げる光景は悲惨そのもの。だが、そんな光景を前に男は気分を害しながらも不気味な笑みを浮かべた。

 

「行くぞガンダム、僕にその力を見せてくれ」

 

 太陽炉を全力で動かし、高速で空を飛び回りながらも目が苦しく変わる光景に映るターゲットを囲む敵を撃つ。

 

「ッハハ」

 

 最初こそトラブルが起き、予想外の出撃だったが当初予想していた以上に順調に事が進んでいる。この戦場を支配しているという全能感と共に達成感を感じ何とも気分がいい。そしてこれから待ち受ける悲惨ではあるが救いのある未来に胸躍を高鳴らせ、心が躍るよう。

 

「オリジナルの太陽炉を手に入れた今の僕ならば、唯一無にのイノベーターである僕であればどんなトラブルであろうと────む?」

 

 レットアラート。耳障りな音が鳴り響き、画面には粒子残量が危険域へ突入していると知らせが表示されていた。移動から戦闘までどうやら無理をし過ぎたみたいだ。

 

「流石にO(オー)ガンダムでトランザムは無茶だったか……まぁいい、期待以上のデータは取れた」

 

 その場を後にするべく移動を開始しようとするがふと、ターゲットである風鳴翼の姿が目に入った。身につけているギアはボロボロ、全身傷だらけで出血も酷そうだ。そんな彼女の此方へ向ける瞳からは普段見ることの無い涙が流れ出している。

 

「……やはり助けるべきだったか」

 

 顔見知りの普段見ることの無い涙にそんな考えも浮かぶ。

 

「いや……ダメだ」

 

 だが、そのような考えは彼が抱いてはいけない考えだ。

 

「僕が僕である限りそんな甘い考え、抱いてはいけないんだ」

 

 心からは慈悲の思いと悲しみを、頭では知略と冷酷を。全ての事象の裏、そこで彼は最後の一時まで暗躍し続けなければならない。何故なら彼が────

 

「何故なら僕が、リボンズ・アルマークだからだ」

 

 光学迷彩の機能を使い、空へと溶けるように消えるリボンズ。だが、彼は気付いていない。その慈悲と悲しみの心から無意識的に翼を展開していた事に────



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彼と彼女達の日常【表】

 ある商店街に店を構えるちょっと変わった喫茶店。今時珍しいレコードの音が店内で響き渡り、緊張感のないのんびりとした空気が流れていた。

 

「……合わせ目消しが大変だ」

 

 そのようなのんびりとした空気の中、緊張した表情でピンセットと電動鑢を手に眼鏡状のルーペを装備し目の前の模型へと集中力を向けていた。震える手で細かく揺れる鑢を慎重に慎重に、細かすぎるパーツとパーツの合わせ目を消していきフラットな状態へと変化させていく。息も浅く、早くなり自身でも呼吸しているのか分からなくなるほど集中していると。

 

「ごめんくださーい!」

 

 元気な声と共に戸に付けてある鈴が鳴る、来客だ。

 

「ハァ……ちょうどいい所だったんだが、仕方ないか」

 

 手早く片付けると彼は準備を整え、一言。

 

「いらっしゃいませ。模型カフェ、ソレスタルビーイングへようこそ」

 

 笑顔を浮かべ、来客をもてなすのであった。

 

※※※

 

 世界中を敵に回し、最終的に自身の目的を見失う鬼畜に転生だなんて冗談きついぜコノヤロウッ! 

 享年23年、前世での死因は急性アルコール中毒。パワハラモラハラ当たり前のクソみたいな職場のクソみたいな飲み会にて俺は酒の一気飲みを強要され、そしてそれは強制的に実行され死にいたった。

 いやぁーマジでアレだね、アルコールの一気飲みって怖いよね。死ぬ死ぬと煽られてもどうせ死なないダロと高くくってたらホントに死んだもん。ハァ……あの飲み会の後、自宅に積んでいたガンプラを消化しようと楽しみにしてたのに残念でならない。結局死んだ後、意識を失った俺が次に意識を戻した時、俺は俺ではなかった。

 

 でもさ、なぁーんでよりにもよってリボンズ・アルマークとして生まれ変わるかな? 

 

 リボンズ・アルマーク。極端に説明するとガンダム00と言う作品のラスボスだ。それでその事を知っている俺は鏡を前に俺は空笑いしか出ない。だけど鏡に映るのは不気味に笑うリボンズ(ラスボス)の怖い顔ばかり──やべぇよ。その後何やかんや色々あって俺はソレスタルビーイングと言うカフェ兼模型店を経営し今に至る。

 

「相変わらず響さんは元気ですね。病弱な僕にも分けて欲しいぐらいです」

「あはは、リボンズさんに言われると照れますよぉ」

 

 そして俺でも正直模型店を兼ねた喫茶店なんて変わっていると思う店のリピーターの1人がこの元気過ぎる女子高生、立花 響ちゃんだったりする。

 

「注文はいつもので?」

「はい! サンドイッチセット一つお願いしまぁーす!」

「はいはい、そのように大声を出さなくても聞こえてますよ」

 

 彼女とは過去にあった不幸な出来事が切っ掛に知り合った中で、今ではリピーター兼年下の友人って言った関係だろうか。毎日のように学校の終わった放課後、この客入りの少ない店へと訪れてくれている。

 

「楽しみだなぁーサンドイッチセット。今日の中身は何ですか???」

「今日は昨日仕入れていた魚といつものたまごを挟むつもりだよ」

「やたー! 私、たまごだぁーい好き」

 

 この時の為に魚市場から態々仕入れたサーモンを軽く炙り焦げ目をつける。水気を飛ばした新鮮な野菜と一緒に挟み込み、同時に簡単なドレッシングを使って味付けしてっと。そのタイミングでたまごサンドの卵も出来上がってサンドイッチ用のパンで挟み、二つとも完成っと。ドリンクはどうしようか……今日は甘いカフェモカでいいかな。

 

「カフェモカですか!」

「あぁ、何かリクエストはあるかい?」

「えっと、なら今回は流れ星が近いので星型で!」

「了解」

 

 ちょちょちょいっと割と得意なモカアートを作る。するとそれを見ていた彼女は、ほほぉーとなんだか興味深そうにそれを見ていて何だか微笑ましい。

 全ての準備が出来きて食器と一緒に彼女の前に出来立ての料理を出す。それかは魚の良い匂いと共に暖かいコーヒーの匂いが食欲刺激し、食の細くなった俺で合っても腹を空かせそうなほど改心の出来栄えであった。さて、コレは忙しくなりそうだ。

 

「おかわりは今から作るから安心して食べなさい」

 

「はぁーい、いっただっきまぁーす!」

 

 美味しそうに俺の作ったサンドイッチを口へ運ぶ彼女。その顔は笑みを浮かべていて心から美味しぃ―と思っている事が分かる。うん~、いつも美味しそうに食べてくれるなぁ~癒されるなぁ~、何でこの子は何時もこんなにも美味しそうに食べてくれるんだか。

 美味しそうに次々と作ったサンドイッチを口へと運ぶ彼女、その顔に見とれて手を止めそうになるが早くしないとお代わりが無くなってしまう次のを用意しなければ────

 せっせと作り、次のを用意するが作っても作ってもその手が休まる気配はない。知ってたけど響ちゃんの食欲凄いな。俺は頑張ってサンドイッチを作り続けるのであった。

 

※※※

 

 この人リボンズ・アルマークさんは私、立花響の命の恩人だ。

 

「慌てない慌てない、サンドイッチは逃げないからもっとゆっくりと……ね?」

「は、はい! 分かりもぐもぐ、ましたもぐもぐ」

「……食べ終わってから話そう、ね」

 

 ちょっと呆れ顔で私を見ているこの人との最初の出会いは今から二年前、私があのライブでの事件後に遭遇した事件生存者を狙った誘拐事件が切っ掛けだった。学校から帰る途中に突然誘拐された私はライブ事件ほどではないけど、恐怖を感じて怖くてたまらなかった。そしてそんな震える私を介抱してくれたのが彼だ。震える私に対し何度も励ましの言葉を送ってくれて必ず無事に帰れると信じて疑っていなかった。だけどそんな様子が気に入らなかったのか誘拐犯達は彼に対し何度も暴行を振る。何度も何度も振るわれてボロボロになっていたけど、私を守る為かそれとも無事に帰る為かは分からないが彼は最後まで諦めてなかった。そしてあの瞬間、突然起こったあの爆発の瞬間が訪れる事となる。

 

 突然何かに気付いた彼が私へと伸し掛かるように覆いかぶさって来た。最初はビックリしてしまい声を上げそうになったけどその直後、頭を守るかのように彼に抑えられた途端物凄いすごい爆発音と共に火傷するぐらい熱い熱風が襲って来た。その瞬間の実際の時間は一瞬だったんだと思う。けれど、私にとってはものすごく長く感じた一瞬だった。そして私は突然走った酷い胸の痛みと共に意識を失う。そして次に目覚めた時、私は病院のベッドの上だった。

 後から聞いて知ったんだけど彼らの目的は私達を助けに来た警察への自爆テロがだったらしい、全くもって迷惑な話だと思う。

 

「♪♪♪」

 

 彼らは警察が突入して来たと知ると爆弾を爆発させた。それに直前で彼は気付いたんだろう、私へ覆いかぶさってくれた事によってそれが私へ直撃する事はなかったけど、その代わり彼が傷付く事となる。

 

「♪♪♪ ……ん? どうした響さん、僕の顔に何か付いているかい?」

「い、いえ。コーヒー美味しいなぁーっと思って」

「それは何より」

 

 車椅子に座り、私から離れた場所の掃除を行う様子は大怪我の障害を余り感じさせない。重度の火傷に内臓の破裂、それに加え重度の怪我による半身不随。それが彼が私を救う為に払った代償だ。

 

「……」

 

 説明を聞く限りだと彼は私を庇い爆風をまともに受け背中に重度の火傷を追い、同時に一緒に飛んで来た何かに体を貫かれたらしい。その何かはリボンズさんの内臓を破裂させ同時に脊髄を砕いて貫通し私の胸へと届いてしまう。その事に付いて彼は何時も謝って来るけど本当に謝りたいのは私の方。

 

「……」

 

 リボンズさん自身は偽善者による善意の押し売りを行った結果だって言ってるけどそんなのは関係ない。私さえ、恐怖に負けて何一つ気付かない私さえ庇わなければそんな不自由な体になる事無かったのだから。

 

「掃除は終わり、何をするか……やはり続きを作るしかないか」

 

 どんな形であれ彼の体を不自由にした原因を作ったのは私だ。だからその罪を償う為に私は彼に寄りそうと決める。コレに限ってはリボンズさん自身や一番の親友に何を言われたって辞めるつもりは無い。だって子の行為は彼と同じ、善意を押し売りしているだけなのだから。

 

「……何を作るんですか!」

 

だから私は考えた、まず何を始めたらいいのかを。そして、まず思いついたのが彼と親しくなって彼自身を知る事だった。幸い彼は喫茶店を経営している、そこへ毎日通い常連になる事によって彼に近付けると思ったからだ。私の一番の親友は言っていた、すべてを左右するのは情報だって。だからこそ私は彼をもっと知りたい、彼と親しくなりたい、彼と――――。私も把握できない気持ちが渦まく思いを胸に私はここへと通い続ける。

 

「何時もの如く模型ですよ響さん」

「また模型ですかぁー」

「――――君、ここが模型店も兼ねていると忘れてない?」

 

だって、彼の色々な側面を知る事が出来るだから。




この作品の響ちゃんは本編とちょっと違う未来さんによる英才教育によって妙に賢くなっています。


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