いつかサザンカの元で (低体温28度)
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1話

見渡す限り何も無い、暗闇と言うより認識出来ない

瞼を閉じても開いても何も変わらない

何時から、ここにいるかも分からないが

何時までも、ここに居てはいけないと

いつの頃からか思っていた

 

取られる

削られている?

食べられている?

すり減っている?

怖いと思う心と削り取られ

楽しいと思う心も食べられ

悲しいと思う心もすり減って

 

そして…美味しくなさそうと思う心も取られた

なんとなく…食べ返した

 

 

 

 

食べたらキラキラした

戻ってきた感じがする

少し変わってしまったけど…これは私の味だ

 

返して返して返して返して返して返して返して返して返して返して返して返して返して返して返して返して返して返して返して返して返して返して

 

食べて飲んで吸って食べて飲んで吸って食べて飲んで吸って食べて飲んで吸って食べて飲んで吸って

 

視界が開いた

 

「上出来だ、そして死ね」

 

訳もわからず流されるまま私は死んだのかも知れない…いや考えてるから生きてる

生きてるって望んでいるから私は死んでない

生きることを選ぶからこそ生きてる

 

「上出来だ、そして死ね」

 

二度目は食べた

まだよく分からない食べたのは分かる

 

何かを食べた事で私は私になってきたと思う

今も何を食べているかはよく分からないけど…プリプリしているにとゴリゴリしているの

基本的にキモい悪い、だけど…食べるべきだと思うから食べる

 

「貪るのだ、欲するのだ、未だ足りぬ」

 

誰かがニッコリとした気配で次の食事をくれる

 

「貪るのだ、欲するのだ、未だ足りぬ」

 

誰かがニッコリとした声色で次の食事をくれる

 

「貪るのだ、欲するのだ、未だ足りぬ」

 

誰かがニッコリとした笑顔で次の食事をくれる

 

「上出来だ、そして生きよ」

 

誰かが…いえ…不浄の王…悪霊の頭

腐り落ちる肉と溢れる内臓…そして周りを飛ぶ蠅

私が与えられていたのは…見覚えのある元の自分

 

 

「お前の魂を分けて各々食い合わさせたのだ、毒を持つ虫同士を戦わせる蠱毒だったか?お前たち人間も毒ではないか?そう考えた私はお前にもやらせたのだ、途中味見をしようとした愚かな悪魔を貴様は群がり食した」

 

辺りに散らばるのは異形の尾や角に明らかに人ではありえない色

 

「何度見ても滑稽だ」

 

私は

 

「お前達人間は我々よりも醜悪だな、そして輝かしい」

 

私は

 

「諦めよ…我々は契約の元で貴様らの裏切りを見抜き裏切るが貴様らは元より裏切るのだ」

 

私は!

 

「考えてみよ、貴様らの言う三大欲求すら貴様らは裏切るのだ…明日を省みぬ無駄な時間…寝れば明日は勝利し積み重ね精神に肉体に貯蓄に利点があると言うのに…自らすら裏切るのだ。食欲模そうだ、明らかに健康でいられないのに野菜を残し肉のみを食らう…貴様らは雑食なのだ芋のみで生きられるか?否だ!過食し備えも作らず太り、獲物を逃す…性欲さえそうだ、文明にかこつけ残すべき血を残さず明らかに弱い血を守る…生物として裏切っておる」

 

私はそれでも!

 

「そんなお前達を我らは愛そう、糧として」

 

「力を与えよう、堕落を与えよう、負債を与えよう」

 

「祝福しよう、呪い合おう、堕落しよう」

 

「天に満ちる善意か、闇に満ちる悪意か」

 

「そんなお前達を我らは愛そう、糧として」

 

 

「「此処に我らの新たな同胞を迎えよう!」」

 

「「其処に我らの新たなる贄を捧げよう!」」

 

「「何処に汝の新たな旅路を祝福しよう!」」

 

「「其れは契約も使命も無い悪魔の悪戯!」」

 

 

「楽しませるのだ、我が目は複眼

お前達を我らは見ているぞ!

背を向けても見ているぞ」

 

墜ちる…落ちる…堕ちる…

 

逃されたのでは無い、これは奴等が言っていた

強制的に貸し出された負債なのだ

 

何かを収穫する為に

私を肥やさせる為に

私は放牧されたのだ

 

 



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2話

気がついた時は教会の前に布に包まれて捨てられていた

落ちるまでの事は思い出せる

落ちた後のことは思い出せない

 

「おや…捨て子でしょうか…我が教会は財政難だというのに…しかし神に背く事は出来ませんね」

 

私は悪魔を食べ神様転生ならぬ悪魔転生している

これは絶対にヤバい!

そう思ったものの、すんなりと中に入れた

 

「それは招かれたのだから当然ですよ」

 

神父さんは私の疑問に答えてく

 

「汚らわしい悪魔共の遣いか悪魔の被害者かまだ私には判断がつかなかったものですからね」

 

私は赤子の身ながら冷や汗が滝のように流れ出る

生殺与奪を握られている!

 

「そのとおりですよ、ここは魔法も魔物も蔓る世界、しかし未だ世界は発展途上です。都合の良い魔道具等も殆んど有りませんし、勇者に選ばれた若者が手に摂る聖剣も未だ有りませんが、人類は生存圏をなんとか獲得し安定し始めたところです」

 

なる程…つまり貴方も転生者と言うことですか

 

「いえいえ…私は帰還者ですよ、こちら生まれのあちら育ちです。戻ってきてからは人類統一のために人もエルフも獣人も一長一短ある同胞としハイエルフの魔力と立場を用いて統一宗教世界樹教の教祖となり、大陸の国の統一を果たした初代覇王です。」

 

やばい人でした

 

「そうですかね?悪魔に引きちぎられながらも精神が人間の範疇から逸脱しない、あなたの方がよっぽど私には恐ろしいですがね?」

 

記憶まで読まなくても…

 

「普段はそこまでしませんとも、ただ…貴女の悪魔の因子が余計な事をしないように監視しているだけです」

 

私はこれからどうしたら…行く宛も無く力も無いのですが…

 

「そうですね…8歳までは面倒を教会で見てあげましょう、その後は自分でお決めなさい」

 

8歳⁈普通そこは18歳とかじゃないんですか⁉

 

「世界が違うと言うことです、幾ら私が帰還者であり肉体の成熟期等を知っていたとしても世界が違います。考えても見なさい、食料はカツカツで労働力は足りないのに魔物に攫われるのです…母体が安全と言える年齢になったら早めにしないと産婆の経験も人口も足りないのですよ」

 

そんなことって…

 

「種の保存の為です、年をある程度とったら技術の伝導者以外は狂化魔法をかけて槍を握り僻地に向かわされます。口減らしと共に戦士として人の領域を広げるのです、ワイバーン程度なら殺せますしゴブリンなら巣ごと始末出来ますから。」

 

え?いくら何でもそれは大げさでは?人が暴れたところで…まさか!

 

「おや?お気づきになられましたか?そうですよ、領域を広げるのです…ワイバーンに食われてもよし、連れ去られるなら尚よし、ゴブリン共の巣で果てようとも勝とうとも、口減らしには関係なく辺りは開拓されるのですよ」

 

こわ!!人でなし!悪魔!

 

「心外ですね…それに半分悪魔は貴女でしょうに…こういう積み重ねこそが人の生存権を拡大し、人を食べる事その行為そのものが危険だと学習させるのですよ…もっともそれが原因で私は宗教からも王座からも追われる身となり今に至るのですがね」

 

それはどういう?王様だけ年齢いってるのに自爆しないのは不公平だ!みたいな?

 

「んーそんな感じですかね?私だけが帰還者などでは無いということですよ…現に貴女もですし、神々に裁きを下されたのですよ。自爆による開拓はそんな火力を出すには事前の司祭達による処置だけでは出せませんからね…魔力を限界ギリギリまで詰め込んだ人間風船と火薬として、その魂を爆発させていたのですよ」

 

そしたら…魂が昇天しないで無くなるから輪廻の輪が滅茶苦茶になって、回収出来ても魂の摩耗もしてるとかでみたいな?

 

「おや?流石悪魔に食われていただけあって分かりますか、輪廻の輪というのも大体あっています…そうですね…輪ではなくオゾン層のようなものですかね?宇宙からの守りですね。この世界では魂の楽園は星にあるので、星の中心に神が居ます、悪魔たちは宇宙に居るのですよ、そこからの悪意を防ぐ魂の層…私がやっていたのはそれに穴をあける行為だったのですよ」

 

なるほど…神様からお仕置きをされて宗教も王座も失ってボッチで居ると

 

「はい、危険な事だと分った上に神々の存在すら人は認識出来たのですから崇めるべき相手を得て腐敗しつつあった組織を綺麗に出来ましたし、更に祝福という悪魔に対する力も得る事になりました…要は人間とその魂は神々が悪魔たちに対する鳴子であり番犬なのです…更に上に神が居るのかは我々の世界では観測も接触も有りませんが、少なくともこの世界にいる神々と言うのは魂を作り出し、人を作り出す技術を持った我々の創造者と言うことです、神々の子孫なのか、土塊なのか無から生み出されたのか…不思議ですね」

 

要するに玩具兼防犯装置なのに家の鍵開けまくるクソ神父が貴方ということですね!

 

「そのとおり!神々や私への正しい認識が出来ているようで何より…ですが!普段はどっちも気にする必要は皆無ですので、今は魂ではなく肉体のみが爆発する事になっています、狂化と言うなの洗礼を断ったりも今は出来ますし、その際は死後魂が戻った後は、肉体は洗礼されて今の教皇の魔力で動く死兵となり遠征と言うなの名誉が与えられるのです」

 

どっちにしろ人類の為に爆発するんですね…

 

「そのとおり、病死しそうなら早めに洗礼を受け苦しみから逃れ、更に皆の役に立つ、罪人なら強制労働の後に洗礼を受け改魂とし同じく爆発」

 

何世代かかっても王道ファンタジーレベルまで文明を進めたいんですね…

 

「そうですね、祝福のお陰で人類が勢いついて居ますが、悪魔側も手を打ってきていますし、まだまだ爆発するでしょうね…」

 

あれ?でも魂の総数とかは大丈夫なんですか?

 

「問題はありますが…肉体が生まれると、そこに天からの祝福として命の欠片がふってきて宿るのですよ、それが成長し爆発後、天に返り少しプラスになるのです」

 

なるほど…1+1=3が魂では起こる…そんな感じですか

 

「違いますが…特に困らないのでいいでしょう、切り分けたピザが再生しつつ、別けたピザの欠片が死ぬまでに一枚のピザに戻る事での方が近いかなと」

 

そんな感じで世界の質問を神父にぶつけ続けて

悪魔故に魔力を吸って糧とし

 

1年が経ち歩ける様になると魔法を実践しつつ

畑の管理や雑用もし始め

 

3歳になると神父の豊富な魔力で体だけは

最早中学生程の成長を成し遂げ

 

4歳になると肉体の成長は止まり、戦闘訓練が付き

 

5歳になると教皇が無くなり新たな教皇が付き

女性の権利拡大とそれに伴う人口増加が落ちる対策として産婆会なる子育てが仕事の組織が出来

産むのが仕事というドン引きながらも

文明的に仕方ないのかなと喉元引っかかりながらも耐えつつ

 

6歳になると教皇の政策は命の祝福が全然受けられず、失権し次の教皇が帰還者であり勇者を聖剣をと唱え、自らは早くに失権するだろう!しかし!後世には理解は得られずとも英断であったと伝えられるであろう!と先の教皇を材料に聖剣を生み出し、祝福の有無によらずに魔力を日々注ぎ込む人体実験を子供に行い、多くの犠牲を伴いながらゲーム等の勇者と言うに相応しい性能を持った人物を生み出した

 

7歳になると勇者は聖剣を携え単独で巨人を、怪魚をドラゴンを…と討伐し人類の生存圏を大きく広げた

 

8歳になると神父が死んだ

身分は秘匿されていたようで丘の上の神父が死に次の神父が派遣されるまでは命の祝福や洗礼が受けられない為、不便だの、ここの神父は洗礼が上手だっただの、お前居たのか?!見習いか?!とお互い漸く認識する事態になるなどし、ノウハウ等を教えられていた為…

 

「ようこそ教会へ、祝福でしょうか?洗礼でしょうか?」

 

今がある

 

「この子に祝福と試練を…生まれつき目が見えず腕も有りません、祝福の時はまだですが今年は不作…洗礼が早まるだけなら試練を乗り越え少しでも…」

 

ガリガリにやせ細る赤子は息も絶え絶えで魂の祝福が神父が死んだせいで間に合わず定着が上手く出来なかったのだろう

 

「試練を乗り越え、幸せな時が多く流れる事こそ我らを見守る天のベールを強く致します…」

 

赤子が破裂しない程度に魔力を注ぎ込み生命を拡張させる、私の祝福は魔力を生命力にするもの

自分にも他人にもつかえるが、注ぎ込み過ぎると破裂させてしまう…立ち直る切っ掛けは与えられるものの、ハリボテなのだ

 

祝福の入り込めなかった縮こまった入れ物を膨らませ、入るべき祝福が入った事でみるみるうちに回復しだす…だが祝福が遅れた分この子は先は明るくないだろう、この世界はそう言う世界なのだから

 

「この子は長くは生きられませんが、多くの幸せを家族で育み天のベールに戻る日までは悲しむ事も無く過ごされますよう」

 

 

半分悪魔の私がシスターなどしているが…これが悪魔達の利になっていない事を願いながら祝福と洗礼を続ける日々が続いて行くのだろう

 

それでも終わりは突然に来ると思いつつ



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