Keep ☻n Smile (榛名なのは)
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設定

  ABOUT

 

「人の背中を押す」ために結成された、ゲームクリエイター集団。

 

 

 「ある理由」からゲームクリエイターを目指している少女、桃井 朱莉は一人でのゲーム制作に限界を感じて仲間を探し始める。朱莉はゲームのために仲間を集めようと奮闘する。

 

 

 

 

 Keep ☻n Smileのセカイ

 

 朱莉のゲームへの強い想いから生まれた、ゲーム機やコンピュータがたくさんある「CPUのセカイ」。

 

 

 

 

 Keep ☻n Smileのセカイにいるミクたち

 

 ミクとレンがCPUのセカイでゲームを作っている。4人が本当の想いに気づき、ゲームが作れるように「背中を押して」いる。

 

 

 

 

 相関図

 

 

桃井朱莉 → 梅宮風音……小学校の頃の親友

      柚木創………心に染みる物語を書く

      梨田拓真……すごい才能!

 

梅宮風音 → 桃井朱莉……小学校の頃の親友

      柚木創………物静かで、月みたい

      梨田拓磨……朗らかで太陽みたい

 

 柚木創 → 桃井朱莉……覚悟が決まっている

      梅宮風音……ネットで見たことがある

      梨田拓真……どこか不思議なヤツ

 

梨田拓真 → 桃井朱莉……プログラミングがすごい!

      梅宮風音……音楽辞めたのかはっきりしろ!

      柚木創………ストーリーがワクワクする!

 

 

 

  PROFILE

 

 桃井 朱莉(Momoi Akari)

 

「私、本気だから。ゲームなんて、って言わないで。」

 

 

性別:女性

誕生日:2/26

身長:161cm

学校:神山高校

クラス:1-C

趣味:ゲームで遊ぶこと

特技:プログラミング

苦手なもの・こと:陰口

委員会:ー

部活:ー

バイト:プログラミングの賞やゲームの制作大会でそこそこ稼いでいる

好きな食べ物:和菓子

 

 

 ゲームクリエイターを本気で目指している少女。基本的には笑顔でいるよう心がけている。ゲームに人生を捧げる覚悟ができているが、一人でのゲーム制作はやはり限界があるため仲間を探そうとしている。ユニットではプログラミング担当。

 

 

 

 

 

 

 梅宮 風音(Umemiya Kazune)

 

「もうわたし、音楽とは関わらないの……ごめんね。」

 

性別:女性

誕生日:9/30

身長:158cm

学校:宮益坂女子学園

クラス:1-B

趣味:料理

特技:お菓子作り

苦手なもの・こと:音楽

委員会:ー

部活:ー

バイト:ケーキ屋店員

好きな食べ物:シュークリーム

 

 

 もともとピアノを習っていて、全国1位の天才。しかし、どうしても耐えられなかった「あること」をきっかけに音楽をやめてしまい、音楽が苦手になる。でも、音楽を嫌っているわけではなく……? 実は小学校の頃は朱莉と親友だった。ユニットではサウンドを担当している。

 

 

 

 

 柚木 創(Yutsuki Tsukuru)

 

「俺の能力じゃなくて「柚木創」を見てくれよ!」

 

 

性別:男性

誕生日:6/4

身長:171cm

学校:神山高校

クラス:1-A

趣味:読書

特技:物語を書くこと

苦手なもの・こと:父親

委員会:図書委員会

部活:文芸部

バイト:本屋の店員

好きな食べ物:オムライス

 

 

 小さな頃から詩や小説で賞を取っている、生まれながらの文学少年。父親は有名な売れっ子小説家で、周りの大人たちに注目されてちやほやされながら生きてきたが……? ゲームのシナリオを書いたり進行状況をまとめたりもしているしっかりもの。

 

 

 

 

 

 梨田 拓真(Nashida Takuma)

 

「お前の夢を、オレの夢の踏み台にしてもいいって言うのか!?」

 

 

性別:男性

誕生日:11/21

身長:169cm

学校:神山高校

クラス:1-A

趣味:アニメーション作り

特技:けん玉

苦手なもの・こと:辛いもの

委員会:ー

部活:文芸部

バイト:ー

好きな食べ物:ハンバーグ

 

 

 絵を描くことを生きがいにしていた少年。元々はSNSで名を轟かせた天才とも呼ばれた絵師だった。しかし最近は、SNS上のある出来事から絵をあまり描かなくなってしまっていた。ゲームにアニメーションを作ったりエフェクトを作ったりしている。



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メインストーリー Keep ☻n Smile
プロローグ


 ずっと、普通に生きてきた。

 

 でも、ちょっとだけ頭が良かった。

 

 それだけなのに理不尽に避けられてしまって。

 

 もう、いなくなりたかった。

 

 

 

 でも、見つけたんだ。大切にしたいものを。

 

 

 

 

 

 

 ある夜。月が嫌なほどきれいに光っていた。

 桃井朱莉はベランダから下を除き、つぶやいた。

 

 

「うん、この高さなら死ねるよね」と,自室のベランダから確認してから、時計に目をやる。

 

 

 まだ十一時。死ぬって決めたのは深夜十二時ちょうど。

 朱莉は自殺の準備がうまくいきすぎて時間を余らせてしまったのだ。

「この時間どうしようかな……って、通知?」

 

 

 朱莉は目の端で何かが光ったのを見逃さなかった。スマホの、インターネット上の友達からの通知と思いスマホを覗く。が、

 

「なんにも来てない……」

 

 朱莉は光の正体を探すために、これから魂が消える予定の体を動かす。

 

「ゲーム機の光か……! なつかしいー!」

 

 光った正体は昔、お姉ちゃんが買ってくれたゲーム機だった。すぐ夢中になってプレイしたけど、最近は切羽詰まってあんまりしていなかったな、とゲーム機を開く。ゲームのラインナップを見ながらなつかしい思いに浸る。

 

「なにこのゲーム……? こんなゲームあったっけ……? まぁいいや、一時間でできるだけやってみよう。どうせ」

 

 死ぬんだし、という言葉は宙にかき消された。

 

 

 

 

 そんな地獄のような時から三年。

 

 

「ふぅ……作業もとりあえずはひと段落、かな。」

 

 

 んーっと、背中を反らす。ずっと画面に向いていてガッチガチになった背中が、ポキポキっと音を鳴らした。

 

 深夜二時、朱莉はパソコンとひたすらにらめっこしていた。

 

 

 

 

 

 朱莉はあの日からゲームを作り始めた。

 はじめてのゲーム制作は大変だったけど今はそれもいい思い出。プログラミングが出来なかったらきっと心が折れていた気がするけど。

 

 

「そうだ! サウンドちゃんと保存してたよね?」

 

 保存できているか唐突に不安になるのはパソコンでいろいろ作業してる人の日常だ。できていなかった時の絶望といえば……あぁ、思い出したくない。

 

 

 ファイルを覗くと、ちゃんとサウンドが保存されていたようで一安心。

 しかし朱莉は首をかしげた。

「……なに、これ。Untitled(アンタイトル)? こんなサウンド作ってたっけ……?」

 

 まぁいいや。聞いてみるか、思い出すかも知れないし。

 Untitledを再生したその刹那、画面が白く光った。太陽くらいまぶしく光った。

 

「へ!? 何これ!? 眩し……!」

 

 

 

 

 

 

 パッと目を見開くと、そこには、

 

「あ! 初めましてだね、朱莉!」

 

 見知らぬセカイが広がっていた。

 

「ここどこ!? これは……コンピューター? あ、プログラミング言語だ……C言語、だね」

 

「正解。よくわかったね」

 

 そしてゆったりとあらわれた、電子の歌姫が声をかける。

 

 

「は、初音ミク!?」

 目を見開く。こんなにびっくりしたのなんて何年ぶりだろうか。

 

 

「ボクもいるよー! ボクのこと、知ってるよね?」

 

「か、鏡音レン!? そっか、これは夢だ。遅くまで起きてたからかなぁ、これからはもうちょっと早く寝なきゃ」

 

 

「ううん、これは現実。そしてここはセカイ」

 

 そんな朱莉の現実逃避をいともたやすく否定するミク。

 そして、朱莉にとって初めて聞く言葉、セカイ。

 

「そう、ミクの言う通り! ここはセカイで、朱莉の本当の想いから生まれた場所なんだ!」

 

「私の、想い……? 私の想いはもうあるよ。人の背中を押せるようなゲーム作ること、だ!」

 

 想いという言葉に反応して、ついそう口走ってしまう。

 

 

「そう焦らないでよ、朱莉。朱莉の想いは確かに本物。でも、想いとしては不完全なんだ。そしてあたしたちは、朱莉の本当の想いを見つけるお手伝いをするためにここにいるんだよ」

 

「そうだよ! そして、朱莉が本当の想いを見つけた時、このセカイから歌が生まれるんだ!」

 

 

「想いが歌に……何言ってるの?」

 

 もう、わけわからない空間に、現実世界には存在しないはずのミクにレン、想いやセカイの説明など、もう朱莉の寝不足の能はキャパオーバーだった。

 

 

「うふふ、まぁ、これからだよ。君の想いは、本物。だから、その想いで朱莉の仲間たちを助けてあげてね」

 

「そうそう! ボクたちもサポートするから!」

 

 

 

「え!? 仲間って……?」

 

 朱莉はソロでゲームを作っている。一日何時間もかけて、何年も、孤独に。

 

 

「それは……今は言えない。だけど、朱莉が本当の想いをずっと持っていて、不完全な想いが完全になったら。その時に答えはわかるんじゃないかな?」

 

「……ごめん、ミク、レン。私そろそろ眠いんだけど」

 

 さっきから、言おうと思っていたことを言うことにした。もう眠い、瞼がくっつきそうだ。明日も平日だから、学校がある。

 

「もう深夜だもんね、ごめんね、朱莉。じゃあ、またね!」

「うん! 今度は、ボクたちの仲間も紹介するね!」

 

「え!? またって!? また来るの、私!? って、眩しいよ……!」

 

 再び朱莉は、セカイに来た時のような浮遊感と眩しさを覚える。朱莉は反射的に目を閉じた。

 

 

 

「あ、れ……? ミクとレンは……? あぁ、夢か。寝落ちしたんだった。久しぶりにベッドで寝ようかな」

 はぁ、とため息をつく。なんかすごく大変な夢で、訳が分からなかった、気がする。

 

「じゃあ、おやすみ」と呟いて、朱莉はベッドのそばのフットライトを消した。

 




実装曲

奇跡さえも / Omoi (ユニット書き下ろし曲(という設定です)) (歌唱:初音ミク、桃井朱莉、梅宮風音、柚木創、梨田拓真)(3DMV)

はやくそれになりたい / キノシタ(歌唱:鏡音リン、桃井朱莉、梅宮風音)(アナザーボーカル:桃井朱莉/梅宮風音)

ビビッドヒーロー / DIVELA(歌唱:柚木創、梨田拓真)(アナザーボーカル:柚木創/梨田拓真)

妄想感傷代償連盟 / DECO*27(歌唱:桃井朱莉、梅宮風音、柚木創、梨田拓真)(2DMV)




目指せ毎日とうこう! 無理かもしれないけど。


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第1話 背中を押すゲーム

「今日も学校、一番乗りだーっ! さぁて、今日いっちょやりますか!」

 

 

 私、桃井朱莉はいつも通りに神山高校の一年C組の教室に一番乗りで来ていた。いつもの作業をするために。

 

 

「えっと、パソコン……あった! 今日やることのメモっと……今日はバトル機能の実装プログラムの続きと、サウンドを完成させて、あとは爆発のエフェクト! 今日も忙しくなりそうだな……!」

 

 

 

 そう、私の作業は、

 

「ゲーム作ってるの?」

 

 そう。ゲーム制作だ。って今の音は……

 

「スマホ? 音楽なんか流してたっけなぁ……? まぁいいや、止めておこう」

 

 

 

 と、何も疑問に思わずスマホをリュックから取り出す。

 

「ねぇ、ゲーム作ってるんだよね?」

 

 

 

「は、初音ミク!? ほ、ホログラム……!? なんで!? ……まぁ、ゲーム作ってるけど」

 

 

 そう、画面から初音ミクが上半身のみ飛び出ていたのだ。大きさはミクのフィギュアくらいかな? 実寸大ではなさそうだ。と、どこか冷静な私もいた。

 

 

「そうなんだ、あたしもなんだ! 3人の仲間とゲームを作ってるの!」

 

 

「ミクが!? バーチャルシンガーなんじゃないの!?」

 

「もちろん、歌も歌うよ。でもあたしは、君に本当の想いを見つけてほしくてここにいるんだ」

 

 

 本当の想い……? 本当の想いってなんだろう? とちんぷんかんぷんな私を見てミクはクスッと笑うと、

 

 

 

「じゃあね、セカイで待ってるから!」と叫んで消えた。

 

 

 

「え!? ちょっと、セカイってどこ!? ていうか、また会うの!? あ、消えた……、ウイルスかな? ウイルスバスターのアプリ入れておこうかな……」

 

 

 とごちゃごちゃ言いながら、パソコンを開いて今日のタスクをこなす。

 

 みんなには、お姉ちゃんと家族以外には、ゲームを作ってるなんて言えやしない。だって、また色々言われちゃうかもしれないし。

 

 

 

 

 

 

 

「おはよー……って、あぁやっぱり桃井か。おはよ」

 

「あ、おはよう、東雲くん。今日は朝、早いんだね」

 

「まぁ……、って、桃井と比べたら遅いだろ。そのパソコンで何やってんだ?」

 

 

 

 クラスメートの東雲彰人くん。なんか最初はヤンキーかと思ってたけど、喋りかけられたら意外といい人だった。でもしばらく喋ってたら急に被ってたであろう猫が剥がれてしまったらしくて、口調がすごく怖かったなぁ……。もう、慣れたけど。

 

 

「あ、いや、何でもないよ! ちょっと動画見てたの」

 

 

 咄嗟に言い訳出たけど大丈夫だよね……?

 イヤホンしてて良かった!

 

「へぇー、そっか。……オレ、冬弥のとこ行ってくるわ。じゃあ、後でな」

 

「わかった。じゃあ、また」

 

 

 

 セーフ! びっくりした……。

 

 やっぱり、ゲームを作っているなんていいたくない。だってまた男の子みたいって笑われちゃうかもしれないし……。

 

 

 

 でも、今はそれよりゲーム作らなきゃ。誰かの背中を押すきっかけになるようなゲームを作らなきゃいけない。

 

 

 

「あ、そうだ! 今回のゲーム制作大会の結果はどうだろう? 結果発表って、今日の朝六時だったよね? 今回は十八歳以下の大会じゃなくて、大人たちも一緒に出るから……。アマチュア限定とはいえ油断はできないな。でも一次予選は通ったから、これが通ったら決勝大会に進める……!」

 

 

 パソコンで今回出場した大会のホームページを開く。常日頃色んなゲームを作って、色んな大会に出てるから、時々どの大会に出場したとか忘れてる時もあったりする。

 

 そして、この大会はいつも私が出ている大会とは違って、大人たちも参加する。初めてだけど、決勝大会には出たいな……。

 

 

 

「あった、結果発表のコーナー! えっと、どれどれ……桃井朱莉のやつは通過作品に……ない! ウソでしょ!?」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 実装曲の解説!

 

 

 奇跡さえも→ もうぴったりだと思いました。はい。音楽もテクノ系だったので。これが想いからできる曲になります。アナザーボーカルの組み合わせは、朱莉と創が引っ張る方、風音と拓真が引っ張られる側っていう組み合わせです。これは今後書きます。

 

 はやくそれになりたい→夢を叶えたい少女二人がぴったりハマりました。あとは個人的に叩きたいっていうのもありまして。あの掛け合いも再現しとくれ……

 

 ビビッドヒーロー→フィーバーとかのゲーム用語出てきてるし。音ゲー感あるんですよね、歌詞が。ゲーム作ってる二人に合うなって。背中を押したいって思ってる二人が「ヒーロー」なのも良いですよね。ね!(圧)

 

 妄想感傷代償連盟→これは……DECOさんの曲を一曲入れたくて。シンデレラは個人的にモモジャンだから、ゴーストルールと悩みましたが、こっちのほうがストーリーに合うと思ったからこっち入れました。



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第2話 足りないものなんだ?

 

 ない。何度確認しても、桃井朱莉の文字はなかった。

 

 

「落選、しちゃったんだ……」

 

 この大会はアマチュア限定とは言え、大人が、しかも複数人で制作しているものがたくさん審査にかけられている。

 その中で高校生が、しかも個人制作のゲームが一次審査を突破したということは結構すごいことなんだろう。でも、

 

「悔しいっ……! 今回は大人がいるから、プログラミングに時間費やしたのに……。 あ! フィードバック来てるよね、一次審査は通過したし。見てみようかな」

 

 

 メールボックスにフィードバックのメールが来ていた。私は恐る恐るマウスを動かす。

 

 

「高校生の個人制作なのにすごいと思いました。だけど、サウンドが疎かになっている気がしました。」

  

 そんなこと言っていただけて光栄です、サウンドはやっぱり自分でも出来が悪かったと感じています。時間が足りませんでした。

 

 

「プログラミングの技術はトップクラスでしたが、娯楽としての面白さを問われると少し評価が下がりました。」

 

 プログラミングは小さい頃からしてきたので自信があります。娯楽しての面白さ……考えたことありませんでした。システムが悪かったのかな?

 

 

「バグも見当たらなかったし、プログラミングは頑張ったんだね。けれど、他の所を疎かにしてしまうのはいただけないな。」

 

 プログラミングは頑張りました。他の所は……時間が足りませんでした。

 

 

 

 色んな人からの講評を見て見つけた私の課題点。それはやっぱり、

 

「時間、だよね〜。それか、仲間を増やすか」

 

 

 時間はこれ以上増やしたら、睡眠時間がほぼなくなってしまう。それに、学業に影響は出したくないし……。一番手っ取り早いのは仲間を探すことだと思う。

 

 

 

「報酬は山分け。あと、気兼ねなく喋れる同い年くらいの人がいいな……。贅沢は言ってらんないけど」

 

 

「ひとまず仲間を探さなきゃ。あ! もう朝礼始まるじゃん! 今日、何も作業できてないよ〜……。」

 

 

 次の大会が二ヶ月後に迫ってる今、一日分でも遅れたらブラッシュアップに時間がかけられなくなってしまう。課題の通り、私には時間がない。

 

 

 

 

 

「うーん……一限目、仕方ないけどサボろうかな。本当はしたくないけど……まぁ、いいや。腹に背は変えられないし」

 

 

 私、いつもはサボるなんてことはしないんだけど、朝にノルマが達成できなかった時とか大会前はたまにサボったりする。不可抗力ってやつかな。

 

 

 ついでに仲間候補も一限目に考えちゃおうかな? いや、作業は作業に集中して二限目以降に考えよう。

 

 あと五分で朝礼だ、早くサボるための荷物をまとめよう。場所は……屋上でいいや。

 

 

 

 

 早く、放課後にならないかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後。帰宅部の私はとぼとぼと帰路についていた。

 

 

「仲間って言ったって、そう簡単には見つからないよね〜……」

 

 

 

 

 はぁ、とため息を吐く。

 

 その時、見覚えのある顔とすれ違った、ような気がした。

 

 

 気のせいかと通りすぎようとした瞬間、声が掛けられた。

 

 

 

「……もしかして、朱莉?」



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第3話 親友との再会

「もしかして、朱莉? 桃井朱莉、ですか?」

 

 

 一瞬、誰かわかんなかった。顔付きもあの時よりも大人っぽくなってたし、声も綺麗になってたし。でも、なんとなくの面影と呼び方でわかった。

 

 

 

「うん。えっと……風音だよね?」

 

 

 きっと、この制服が宮益坂女子な高校生は、

 

 

 

 

「正解。久しぶりだね〜、三年ぶりとかかな?」

 

 

 

 梅宮風音だ。

 

 梅宮風音。私の小学生の頃の親友。小学校の時は毎日のように遊んでた。お互い小学生のころはスマホ持ってなかったし、中学校が別々なのもあって中学校からはめっきり会わなくなっちゃったけど。

 

 

 本当に、懐かしいな。

 

 

「そうだね。風音は相変わらずピアノ弾いてるの?」

 

 

 すると、風音は顔を背けてこう言った。表情は分からなかった。

 

 

 

「あー……そのことなんだけど。長くなるかもしんないし、お互い積もる話もあるでしょ。近くにおすすめのカフェあるから、そこでも行かない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カフェはやけに怖いビビッドストリートなるところにあった。

 

 たぶん神山高校の同級生であろう人が歌っていたが、私たちを見つけると注文を取ってくれた。

 

 

 

 私はウインナーココア、風音はミルクティーをを注文したところで、風音は話を切り出した。

 

 

 

 

 

 

「わたしね、音楽辞めたんだ」

 

 

 

 え? 音楽を辞めた? あの風音が?

 

 その言葉は私にとって衝撃的だった。

 だって、小学校の頃に風音の家に遊びに行ったら風音はピアノをずっと弾いてた。それに、ピアノで小さい頃から何回も賞を取ってきてたし、風音自身の将来の夢もピアニストだった。

 

 そんな風音が音楽を、ピアノを辞めた?

 

 

 

「え……なんで、」と掠れた声しか私は出なかった。

 

 

 

 

 

 おもむろに風音は右手を出した。

 私は今見たものを信じれなかった。否、信じたくなかった。

 

 

 

 

 風音の右手首に、大きな傷痕が残っていることなんて。

 

 

 

 

「どうしたの、その傷! 小学校のころにはそんな傷なかったじゃん!」

 

 

 

 

 風音はにっこり微笑んで告白した。無理して笑顔を作ってるように見えた。

 

 

 

 

「あのね、中学三年の時に大きなコンクールに出るチャンスを頂いたの。今までで一番大きな、これで賞を取ったらスカラシップが貰えるほどの大会。その前の日、ホテルに泊まってたんだけどね。夕食を食べにレストランに行こうとしたの。その時ね、」

 

 

 

 風音の笑顔の仮面が取れて、真顔になった。

 それが、恐ろしく嫌な予感を増幅させた。頭の中に予想がついてしまった。あまりにもおぞましくて、この予想が外れることを願った。

 

 

 

「車に撥ねられたの」

 

 

 

 

 あぁ、当たってしまった。

 私は深い絶望感を持った。

 

 

 

「その車、飲酒運転しててね。私の命には特に何も無かったんだけど……。その衝撃で飛ばされて、尖った石が手首に刺さったの」

 

 

 

 もう聞きたくない。大好きな親友のこんな話、聞きたくない。

 お願い。もう終わって。そう言おうとしたのに、言葉は口から出てこなかった。

 

 

 

 

「お医者さんによるとね。もうピアノとか手先のたくさん動かすことはしない方が良いって。ピアノは辞めなきゃダメって言われた。パソコンのちょっとゆっくり目のタイピングが限度だってさ」

 

 

 

 もう話さないで。もういいから。

 

 

 

 

 

 

「だから私は、」

 

 

 

 

 音楽を、ピアノを辞めたの。その言葉は宙に溶けて消えた。

 

 

 女の子が飲み物を運んで来てくれたが、甘ったるいウインナーココアは今は飲む気にはなれなかった。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 バチクソシリアスです。ここまで行くとは私も思ってすらいなかった。

 

 

 重ぇ……重ぇんだよ風音の過去が……!

 



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第4話 私と風音

 

 風音は、すごく辛そうな顔をしていた。

 

 

 こんなこと言わせちゃってごめん、という気持ちとそんな大事な時に一緒に入れなかった後悔が私を襲う。

 

 でも、私の口から出てきたのはもっと違う言葉だった。

 

 

 

「なんで音楽まで辞めちゃったの?」

 

「え?」

 

 

 

 

「なんで、ピアノだけじゃなくて音楽も辞めたの?」

 

 

 

 ごめん、風音。

 こんな辛い時なのに、私のわがままに付き合わせようとして。

 

 

「だって、私からピアノを消したら音楽をやる意味なんか残らないの!」

 

「そんなことない!」

 

 

 

 ゴホン、と店主っぽい男の人が咳払いをする。すこしうるさくしすぎたかな。男の人に軽く頭を下げる。

 

 

 

「ねぇ、風音。私の……仲間になってくれないかな?」

 

 さぁ、次に話すのは私の番だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は、小学校の頃は本当に普通だった。ただ、優等生なだけだった。少し頭が良かっただけだった。

 

 

 

「朱莉ちゃんは頭がいいんだね!」

「えへへ……ありがとう! でも私、もっともっと頑張るね!」

 

 

 小学校の頃、アニメより漫画よりも、私はプログラミングにハマった。

 そして、運がいいことにその才能を早いうちから開花させた。

 

 

「今回の小学生プログラミングコンテストの優勝者は……小学四年生! 桃井朱莉さんでーす!」

「やった! 優勝……! これで何回目だろう……? でもすっごく嬉しい! ありがとうございます!」

 

 

 

 

 でも、中学校に進んでから、私は変わった。いや、私は変わってない、周りが変わったんだ。

 

 

 

「ねぇ、朱莉ってウザくない? なんというか、頭いいことを鼻につけてそうだよね」

「わかるかも。プログラミングなんて粋がっちゃってさ。やっても将来役に立たないっつーの。ねぇ?」

 

 

 

「っ……! そんな風に私のこと思ってたんだ……。裏切られたとかそんなんじゃないのに、騙されたみたいな気分……」

 

 

 

 そうやって、いつのまにか周りが敵だらけになっていた。

 

 

「ほら桃井。姉とは大違いだなぁ? 姉はアイドルなんてみんなを元気付けることしてるのに、お前は俺らに嫌な思いばっかりさせてるな」

「ねー。ほら、アタシたちにこんなことしたお詫びにアタシたちのジュース買ってきてよ。ホントにイヤな思いしたわー。アンタのせいで。少なからずアンタも稼いでるんでしょ? アタシたちに嫌な思いさせて稼いでるんだし、いいよね、別に」

 

 

 

「買わない。私が賞を取ったことでどんな迷惑をかけたわけ? 嫌な思いって何よ、私は何もしてない! ただ、好きな事を貫いていただけ!」

 

 

 

 

 でも中学三年生の頃、私が壊れる決定的な言葉と出会っちゃったんだ。

 

 

 

 

「あんたなんか……あんたなんかなんで生きてるのよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 パン。

 

 

 あぁ。自分の中の何かが壊れる音がした。

 

 

 

 

 

 それからは学校に行かなくなった。というか、行けなくなった。

 

 学校に行こうと玄関に立つと、足が棒のようになって動かないのだ。カバンを持つと、どうしようもない吐き気に襲われる。

 

 

 

 

 

 私、どうしようもなく虚しくなって、死のうとしたの。でも、その時だった。

 

 

 

 

 

 私は、ゲームと出会ったの。

 

 

 

 なんだか、心がサッと透明になって、こんなに楽しいことがあるんだって思った。

 死のうとしてた事なんて忘れて、プログラミングの技術を活かしてゲーム作りを始めたの。

 

 

 

 ゲーム作りでもね、高校生以下の大会だったら何回か日本一になったこともあるんだよ。

 

 でも、足りなかった。

 私が目指してるような、あんな背中を押してくれるようなゲームは作れないの。

 

 

 

 

 

 

 

 ふと前も見ると、風音は絶望したような表情をしていた。

 ちょうど風音の話を聞いたときの私みたいな。

 

 

 ごめんね、こんな顔させちゃって。すぐに終わるからね。

 

 

「それでなんだけど。風音が私の仲間になって欲しい!」



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第5話 私はもう

「へ……?」

 

 わたしは、一瞬朱莉から何を言われたか分からなかった。

 

 わたしが、仲間?

 

 

「もしかして……」

 

 

 

「うん。一緒にゲームを作って欲しい」

 

 

 

 

 

「わたし、機械詳しくないよ?」

 

「知ってる。だから、サウンドクリエイターとして活動してほしい。風音、パソコン持ってる?」

 

 

 こくりと頷く。

 お母さんが高校生のマストアイテムだろうって買ってくれたけど、使ってない。初期設定してちょっと使って終わり。スマホで事足りるし。

 

 

 

「じゃあ、ちょっと打ち込みの勉強するだけか。うん、イケる! 私、忘れてないよ。風音が小さい頃作曲して、自分で作った曲をコンサートで弾くんだって言ってたこと!」

 

 

 

 確かに、小さい頃は作曲をしていた。

 確かに、コンクールで一番になるよりもそっちの方が最終目標だった。

 自分で作った曲で朱莉が笑顔になってくれてたから、みんなも笑顔にしたかったの。

 

 でも。

 

 

「覚えてるけど……」

 

「ね、ならいいでしょ! 今私、個人でゲーム作ってるから時間が足りていないのが弱点なの。だからお願い! サウンドクリエイターは、風音にしかできないの! だから。私と仲間になって!」

 

 

 そう言って朱莉は頭を下げた。

 さっきから店主と歌ってる女の子がこっち見てるんだけど、朱莉これ気づいてないよね……?

 

 

 

 とりあえず「頭上げてよ」と言う。

 

 

 

 朱莉がこんな冗談を言う人じゃないのはわかってるし、こんなことを冗談で言う人もわたしは知らない。

 だから、朱莉が本気で言ってるんだろうなってことは簡単にわかった。わかってしまった。

 

 

 

 

 

 でも、答えは決まっていた。

 

 

 

 

 朱莉も本気で言ってくれてる。それがわかってるから、できるだけ朱莉を傷つけなくて済む方法を頭の中で探す。

 親友だもん、傷つけたくなんかないよ。

 

 でも、ごめんね。朱莉。思いつきそうにないし、もう決めてるから。

 

 

 

 

 

「ごめん、朱莉」

 

 

 

 

 そう言うと、朱莉ははっと俯いていた顔を上げた。

 私の言いたいことを察してしまったようだ。

 

 

 

「わたしは仲間にはなれない。もっといい人探しなよ」

 

 

 

 

「ねぇ、なんで! 私は風音と一緒にゲームを作りたい! 風音じゃなきゃ、ダメなの!」

 

 

 

 朱莉は、真っ直ぐだ。

 あの頃から変わってないな。

 

 

 

「もうわたし、音楽とは関わらないの……ごめんね」

 

 

 

 

 

 そう言うと朱莉は、絶望したような顔をした。

 

 

 わたししか、梅宮風音しか出来ないって言ってる以上この反応は当然だ。

 きっとわたしが朱莉の立場でも、きっと同じような顔をする。

 

 

 

 本当にごめん、朱莉。

 

 

「……ごめん、わたしもう帰るね。今日は悪いことしちゃったし、わたしが奢るよ」

 

 

 

 わたしは席を立った。

 

 

 

 

 もったいないからと今飲み干したミルクティーは、甘いはずなのに少し苦く感じた。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    実装曲

 

・リモコン / じーざす(歌唱:柚木創、梨田拓真)(3DMV)

・ねぇねぇねぇ。 / ピノキオピー(歌唱:初音ミク、桃井朱莉、梅宮風音)(3DMV)

・グッバイ宣言 / chinozo(歌唱:初音ミク、桃井朱莉、梅宮風音、柚木創、梨田拓真)



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第6話 CPUのセカイ

「……ダメだった。」

 

 

 家のベッドに飛び込んでつぶやく。

 

 私の言葉じゃ、風音を動かせなかった。風音が傷ついていたのに。

 

 

 

 

 ううん、ダメ。もっと作らなきゃ。

 

 パソコンを起動する。次はこのボツになったゲームのブラッシュアップをして提出しようかな。

 

 

 

 でも、足りないかも。

 大人たちはもちろん、あの時のゲームにも。

 

 

 

 

「ううん、弱気じゃダメ! そうだな……サウンドに迫力がないなって思ってボツにしたやつあったよね。ちょっと聞いてみよう……って何、これ?」

 

 

 そうやってフォルダを覗くと、見覚えのない音楽がひとつ。

 

 

 

「untitled? 怖いんだけど……まぁ、いいや。開いてみよう!」

 

 

 

 

 その途端。

 

 

 

「眩しっ……!」

 

 

 目の前が真っ白になった。

 

 比喩じゃなくって、本当に。なんか目の前には三角のオブジェ飛んでるし! 何これ何これ!?

 

 

 

 

 

 思わず眩しくって目を閉じる。

 

 

 次に私が目を開けた時、とんでもない光景が広がっていた。

 

 

 

 

「ここ……どこ!?」

 

 

 

 

 

 

 周りは一面、見たことのない景色だった。

 

 

 

「パソコンがいっぱいある……ペンタブも、原稿も、イヤホンも……。」

 

 

 

 そこにはランダムに机に乗ったパソコンがたくさんあった。それだけじゃない、それに関連する道具もいっぱいあった。この場所だけでゲームが作れちゃいそう。

 それに、すごくカラフル。パソコンも、全部。近未来って言うんだろうか、白や黒を基調にビビッドカラーのアクセントが入っている。

 

 

 

「パソコン……ちょっとだけ触ってもいいかなぁ?」

 

 朱莉は宙に向かって問いかける。

 本当は、自問自答のはずだったのに。

 

 

 

 

 

「いいよ。気になる?」

 

 背後から、突然声をかけられた。

 

 

 

 

 

「うわ! びっくりするじゃん……。って、初音ミク!?」

 

 

 

 

 電子の歌姫、世界で一番人気なボーカロイド、初音ミクがそこには立っていた。

 

 ちょっとだけ髪の色も違うし、衣装もいつものじゃないけど、確かに初音ミクだと私は感じた。

 

 

 

 

 

 

「せいかーい。朱莉、いらっしゃい」

 

 

 

「ほ、本物!? ホログラム!? VRとか!? てゆーか、なんで名前知ってんの!?」

 

 

 

 目に手を当ててみるけど、機械っぽい感触はない。

 

 続いてミクの肩に手を乗せる。触れる。

 

 

 

 

 

「まさか……本物なの? ってか、ここどこなのよ〜?」

 

 

「うん、本物。そしてここはセカイ」

 

 

 

 

 まさか、本物とは。

 ドッキリかなにかかとも思ったが、違うみたい。

 

 そして、聞き覚えのないセカイという言葉。

 

 

「セカイって……何? ごめん、私知らないや」

 

 

 

 

「セカイはね、朱莉。本当の想いを見つけるために場所。本当の想いを見つけたとき、その想いは歌になるの!」

 

 

 

 

「だからミクは私の名前を。そっか。うーん、本当の、想い……。想いが、歌に……? 私の想いは、ゲームで人の背中を押すこと! これはもう揺らがない!」

 

 

 

 

 

 すると、ミクはにっこりと笑う。

 そして、私の言葉を否定もしなければ肯定もしなかった。

 

 

 

「そうだね。その朱莉の想いは本物だよ」

 

 

「じゃあ」「でも」 ミクは私の言葉を遮った。

 

 

 

 

「でも、未完成な想い。本物だけど、本当の想いじゃないんだ」

 

 

 

 

 うーん……なんというか、腑に落ちない。

 本物と本当って何が違うの?

 

 

 

 

「う〜、まぁ、いいや。で、ここからは出ることはできるの?」

 

 

「もちろん。さっき朱莉が再生したuntitledって曲を止めれば戻れるよ。朱莉も学校があるでしょ?」

 

 

 

 たしかに、もっともだ。

 

 

 

 

「じゃあ、帰るね? ばいばい、ミク」と言って、私はuntitledを止めた。案外セカイって居心地は悪くないのかも。

 

 

 

 

 

 

「うん! じゃあ。朱莉で、みんなを救ってあげてね!」と言う声が聞こえた気がした。でも、眩しさに気を取られてもう忘れてしまっていた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 朱莉、パソコン生み出せるんだな。

 

 

 

 楽曲解説

 

・リモコン→これはもう設定を考えた時から入れたかったやつです。曲調重視ですね。あとサムネがファミコンなのもよし。ゲームって感じでマジで好きです!歌詞も一個一個がゲームっぽくて好き。

 

・ねぇねぇねぇ。→これも曲調ですね。お互いのお互いを救いたい気持ちが一方通行って意味でも選びました。何言ってるんだろ。SNS用語いっぱい使ってるのがSNSとか機械で青春を謳歌している二人っぽいです。

 

・グッバイ宣言→これは悩んだ。でも引きこもりが4人が引きこもってゲーム作ってる様子を思い浮かべさせてくれました。なので入れます。妄想の中でですが眼福眼福。



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第7話 仲間候補、再び!

「昨日のあれって夢だよね?」

 

 

 昨日ミクと会う妙にリアルな夢を見た。全部覚えてるから、夢じゃないんだろうけどバーチャルシンガーと会うなんて現実的にありえないから夢として私は扱うことにした。でも、

 

 

 

「でもuntitled、音楽ファイルにまだあるんだよね」

 

 そう、サウンドのファイルにuntitledがまだ存在してるのだ。それになんとスマホの音楽アプリにも入っていた。もうどうなってるのか私にはさっぱりわからない。

 

 

 

 でも、うじうじ悩んだって普通に朝は来たし学校に行く時間になって、電車も来た。だから学校までの電車に乗ってuntitledについての考察を今ここで繰り広げているのだ。考えすぎなところは私の悪いところだ。

 

 

 

 昨日に囚われすぎている私を振り飛ばすように顔を左右に振る。うん、ちょっとスッキリした。

 

 

 

 

 

 

 

 ……ん? 今なんかすごいものが見えた。気がする。

 

 

 ふと左を見る。ただのサラリーマン。ごく普通の人。なんかの小説読んでる。

 

 じゃあこっちかと右を見る。同じ神山高校の生徒。濃い緑色の髪の毛に薄い若草色の目。

 

 

 

 この神山高校の生徒、普通に見えた。でも違った。

 

 

 

 

 

 

 タブレットをリュックにうまい具合に立てて、自分はタブレットに接続したペンタブで絵を描いていたのだ。

 

 

 まぁ、それだけならびっくりはしない。その中身だ。

 

 

 

 

 パッキリとした色使いの中にもどこかある儚さというかなんというか……絵をゲームのために描いているからこそ分かる。この人は私の絵よりも、うまい。

 

 

 

 

 

 私だって普通に絵は描ける。審査員の人やゲーム業界の方にも「絵が上手いね」と褒められたこともある。お世辞だったかもしれないけど。でもそれは何百時間も絵に費やしてきた結果だ。

 

 

 でもこのレベルには辿り着けない。じゃあ、この人はどういうことだ? 

 

 おそらく私の十倍、二十倍と絵に時間を費やしてきたんだろう。それだけじゃない。大人さえを凌駕する才能があるのだろう。どっちにしろ、仲間になってほしい人材だ。

 

 

 即戦力で、どこまでも続く根気が有る。ぜひグラフィックやエフェクトを私のプログラムに付けて欲しい。絶対にあの日みたいなゲームができる!

 

 

 

 全然勇気は出ないけど、少年に声をかけてみることにした。

 

「あの、」

 

 

 

 

 

「君、何? 視線がうるさいんだけど」

 

 

 

 え!? 視線がうるさいって何? どういうこと!? いや、別にいいだろう。心の声が聞こえているわけでもあるまいし。でも恥ずかしい……!

 

 

 

 

 

「あの、絵、上手いですね。神山高校ですよね、何年ですか?」

 

 

 

「一年。何か用なの?」

 

 

 

 

 何、コイツ。視線冷たいんだけど! その美少年のような見た目と爽やかな声とは裏腹にすっごい性格悪そう! まぁ、でもそうか。初対面の人に話しかけられたら。私でもそんな反応する気がする。

 

 

 

 

「お願いが、あるんです。聞いてもらえますか?」

 

 

 

 

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勇者となり魔王と戦ってきたので更新が遅れました。で、でも世界を救ってきたので……(逸し目)



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第8話 ナルシスト??

「……何? オレ急いでるんだけど。そろそろクラスメートがオレのこと呼びにくると思う」

 

 

 

 こいつ見たことあるかも。もしかして、こいつ……

 

「梨田拓真?」

 

 

 

 そう言うと、彼はニパッと笑って言った。

 

「あー、なんだ、知ってんじゃん。何? 告白?」

 

 

 ……なんだコイツ。ナルシストか何かか?

 とはいえ梨田拓真は、1年A組の中心的な人物だと聞いたことがある。クラスの真ん中にいたらそりゃあモテるんだろう。こうなるのもよくわかる……かもしれない。

 

 

 

 

「いや、ある種の告白だけど、恋愛的な意味じゃないな」

 

 途端に梨田は怪訝な顔をする。

 

 

 

「何? あ、もしかして……」

 

「絵を描いてほしいの」

 

 

 

 

 時が止まる。

 

 

「……ごめん、今なんつって」

 

 

 

 

「だから! 絵を描いてください!」

 

 

 

 顔をあげると、目が鋭くなっていた。表情もない。怖い。でも、退くわけにはいかない。

 

 

 

 

 

「お前、なんで絵のこと知ってんだ?」

 

 

 

 すーっと息を吸い、精神統一する。

 

 

 

「ごめん、電車の中で見た。見たというか、見えた」

 

 

 

「……なるほど。じゃあ君は何も悪くないわけだ。ごめんね、キツく言っちゃって」

 

 

「いや、私も同じ立場になったらそんな反応するよ。電車で同級生に画面覗かれるって怖いよね、こっちこそいきなり声をかけてごめんなさい」

 

 

 

 

 そう言うと、彼はジロっと私を見る。まるで品定めするみたいに。

 

 

 

「んで、絵、だっけ。何に使うの?」

 

 

 

「あのね。私、ゲーム作ってるんだけど。一人のゲーム制作には限界があるから、誰かに協力してほしくて。で、梨田くんのイラストがあったら私のゲームは絶対よくなるから……」

 

 

 今の私の精一杯を。ここでやっと見つけたんだ。この大人も尻尾を巻いて逃げるような才能を、儚いタッチを、心がギュッとなるような色使いを、その全てで私のゲームを昇華させてほしい。

 

 梨田くんのイラストが欲しい、どうしても。なのに

 

 

 

「ヤダ」と遮られてしまった。顔を上げると、無表情だった。

 

 

 

 

 その無表情が、やけに怖かった。

 

 

 

 

「ごめん、そりゃそうだよね。絵師さんなんだからお金いるよね。成功報酬でいいなら……」

 

 

 

「んー、そーゆーことじゃないんだけど。僕はもう、絵を描く気はないんだ」

 

 

 

 

 

 ……どういうこと? 

 さっき、描いてたのに?

 

 

 不思議そうな顔をしてるのが伝わったんだろう、梨田くんはこう言った。

 

 

 

 

 

「僕、もう絵があんま好きじゃないからさ。もう僕は絵を公に出さないって決めたんだ。ほらぁ、好きじゃないことなんてやってもムダでしょ?」

 

 

 

 

 

 

 そんなことない、そう言おうとしてやめた。

 だって私には、止める権利がない。

 

 私は依頼している側、断られるのは当たり前っていう考えが抜けていた。それに、こんなのやりたくないこと押し付けて。そんなのはだめ、私のエゴだ。

 

 

 

「じゃ、ばいばーい! えっと……そう、桃井朱莉さん!」

 

 

 

 

 

 

 

「そう、僕は関わらない。絵には」

 

 

 このとき私は後ろからの視線には気づかなかったし、梨田くんを逃した喪失感で気付けなかった。




梨田くんェ……


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