月の少年の降るFULL BLOOMING! (ゆるポメラ)
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第0話 full bloom paty!

ゆるポメラです。
また息抜きに書いてみました
楽しんでいただけると幸いです。

それではどうぞ。



とある日の事。

2人の少女が川沿いの道を歩いていた。

 

「取材、思ったより早く終わったね。今日もお疲れ様、麻弥(まや)ちゃん」

(あや)さんもお疲れ様です! 連日続いた取材も、今日ので最後でしたよね?」

 

丸山彩(まるやまあや)大和麻弥(やまとまや)がお互いに労いの言葉をかける。そう、彼女達は取材を終えた帰りなのだ。

 

「うん! 私は明日から、しばらくお休みをもらってるんだ。久しぶりの纏まったお休みだよ~」

「そうなんですね。実はジブンもなんですよ!」

 

それを聞いた彩は、お互い、ちょっと遅い春休みだねと言った。麻弥は、コラムの内容を決めておかなきゃいけないので、完全にオフというわけではないですけどねと苦笑い。

 

「ふふっ。麻弥ちゃんのコラム、人気が上がり続けてるって言ってたもんね」

「フヘへ……おかげさまで」

「あれ? そこにいるの……彩ちゃんと麻弥ちゃん?」

 

そんな話をしていると、松原花音(まつばらかのん)が2人に声をかけてきた。

 

「花音ちゃん! 偶然だねー、今日はどうしたの?」

「スタジオの帰りだよ。桜が綺麗だったから、お散歩しながら帰ってるんだ。ここの道は桜がよく見えるし、日差しがポカポカで歩いてて気持ちがいいから」

「おお~、なんかいいですね。確かにここの桜、とっても綺麗ですもんね」

 

花音の言う通り、この川沿いの道は見事なくらい桜が咲く場所で有名である。

 

「ホントだね~。ピンク色がひらひら舞ってて……桜……桜かあ。そういえば私、今年はまだお花見してないな~」

「ジブンもです。最近忙しかったですし、なかなか時間が作れなかったんですよね」

「私は、家族ではお花見したんだけど、お友達とはまだだなあ」

 

それぞれが今年はお花見してないと話す。

 

「そっかあ……それじゃあさ、やろうよ! お花見!」

 

それならと彩が2人にそう提案した。

 

「私と麻弥ちゃんは、しばらくオフなんだ♪ タイミングもばっちりだし、どうかな?」

「おお! いいですね、それ!」

「うん。私も賛成だよ、彩ちゃん」

「よし、決まり! それじゃ、話し合いの為に3人のチャットグループを作って……」

「あれっ、彩に花音、それに麻弥もいるじゃん。そんなところで集まって、何話してんの~?」

 

2人も賛成という事もあり、彩がチャットグループを作ってると、今井(いまい)リサが声をかけてきた。

 

「リサちゃん! あ、そうだ。リサちゃんも一緒にどうかな? 実は今、3人でお花見しようって話をしてたんだ。もし良かったら、リサちゃんも一緒にどう?」

「なにそれ超楽しそうじゃん! 行く行く! 絶対行くよ……っと、そうだ。そのお花見さ、(らん)悠里(ゆうり)も誘っていい?」

 

花見と聞いて、行く気満々なリサ。それと同時に、とある2人を誘っていいかを彩に訊く。1人は学校の後輩を、もう1人は自分の家の隣に住んでる幼馴染みを。

 

「最近有咲(ありさ)のところに行って、桜の盆栽眺めてるみたいだし。悠里も花見は特に好きだから、きっと喜ぶと思うんだよね~」

「盆栽ですか! これまた風流ですね~」

「もちろん、蘭ちゃんと悠里くんさえ良ければ、ぜひ参加してほしいな」

 

花音の言葉を聞いたリサは、2人には後で連絡しとくよと言った。

 

「うんっ! 日にちはみんなで相談するとして……問題は場所決めと、当日のお弁当かな?」

 

準備とかみんなでできたらいいんだけど……と彩は苦笑い。そう。問題はそこなのだ。

 

「確かに……アタシ、結構スタジオとかバイトとかで予定詰まってるんだよね。蘭も習い事とかあるだろうし」

「ジブンも、コラムの内容決めと資料集めがあるのであまり時間を取れないかもしれません」

 

リサと麻弥の予定を聞いた彩は、そうだよねえ~と肩を落としながら呟いた。

 

「うーん……そ、それじゃあ……幹事を決めておくのはどうかな?」

 

すると花音が幹事を決めておくのはどうかと提案をした。

 

「うん。幹事が中心になって仕事を割り振れば、それぞれの負担は軽くなると思うし」

「それいいかもっ! そういう事なら、幹事は私に任せて! もともとお花見をしようって言い出したのは私だから!」

 

言い出したのは私だしと言って幹事を立候補する彩。

 

「でもな~……幹事ってけっこう大変じゃない?」

「大丈夫、大丈夫! 大変な時は、みんなに助けてもらっちゃうから! それに……悠里くんに()()()()()()()()()し……」

 

何故か彩の口から悠里の名前が出てきた。しかも無理してほしくないとは、どういう意味なのだろうか?と他の3人は首を傾げた。

 

「そういえば前々から思ってたけど……彩と悠里ってさ、どういう経緯で知り合ったの?」

「え? リサちゃん、悠里くんから聞いてないの? 悠里くんは2()()()()()()()()()()()()をしてくれたんだ。それからの付き合い……かな」

「「ええっ!?」」

「あ、あれ? 花音ちゃんも?」

 

それを聞いたリサと花音は驚愕の表情。麻弥はなんとなく分かってたので、どちらかと言えばやっぱりか~という表情。

 

「えと、それで話を戻すとね? 事務所の一部の人が私に無理難題を押しつけてきた事があって……それで悠里くんがなんとかしてくれたんだけど……悠里くん、私を家まで送ってくれた時に倒れちゃって……」

 

そういう事があったから、無理してほしくないんだと彩は3人に理由を話した。それに今回のお花見も悠里に話したら、準備とか全部自分1人でやるって言いかねないから。

 

「……分かった。私も一緒にやるよ。私もハロハピのライブが終わったばかりで、少しは時間が取れるから。悠里くんの事もだけど、幹事の彩ちゃんを、私がサポートする……っていう事で、どうかな?」

「んー、そうしてくれるなら、すっごいありがたいんだけど……ホントにいいの?」

 

花音が彩のサポートをするという事になり、何か手伝える事があったら、ちゃんと言ってよね?と2人に言うリサ。

 

「それじゃあ、早速帰って計画立てなきゃ! みんな、後でオッケーな日メッセージで送っておいてね!」

「了解しました」

「オッケー。彩、アタシと蘭と悠里をグループに追加するの、忘れないでよ~?」

「だ、大丈夫だよっ!」

「冗談冗談♪ それじゃ、またね~!」

 

そして4人は各々家に帰るのであった……

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ん……メッセージ、誰からだろ? ……リサさんから?」

 

自室で美竹蘭(みたけらん)が過ごしてると、先輩であるリサからメッセージが入っていた。

 

「『彩、花音、麻弥との花見決定! 悠里からはまだ返事来てないけど、蘭も来てよー!』って……なんであたしに? まあいいけど」

 

その辺は気にしなくていっか……と思いつつ、とりあえず分かりましたとメッセージをリサに送る。

 

「……あれ? でも桜って、もう散り始めてるような……大丈夫かな?」

 

時期的に散り始めてなかったか?とメッセージを送った後に思うのであった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「うーん……悠里くんになんて送ろうかな……?」

 

自宅に帰る道中、花音は悠里に花見に誘うメッセージを考えていた。不意に前を歩いていた少年らしき後ろ髪がチラついた。

 

もしかして……

 

「悠里くん?」

 

気が付いた時には、自然と声を掛けていた。

掛けられた声に少年が振り向く。遠目から見たら、少女にも見えなくもない中性的な少年、やはり前を歩いていたのは水無月悠里(みなづきゆうり)だった。

 

「花音ちゃん?」

「? 悠里の知り合いっすか?」

「…ん、幼馴染み」

 

悠里の隣を歩いていた人物が悠里にそう訊ねる。

その人物は、ややくせのある茶色いショートヘアー、瞳の色はゴールド、そしてやっぱり悠里と同じ遠目から見たら少女に見えなくもなかったが。

 

「……悠里、この子、()()()に瓜二つじゃないっすか? 微弱な違いはあるっすけど。あ、失礼しましたっす。悠里の幼馴染みの片瀬月灯(かたせつきひ)っす……高校3年生っす」

「ど、どうも……えと、松原花音……です。えと……その、男の人……ですよね?」

「そうっす。ジブンは性別上、れっきとした男っす。悠里が身近な例かと」

「あ~……」

 

お互いに自己紹介しながらも、花音の質問に答える月灯。その答えを聞いた花音は納得してしまう。否、納得した。

 

「あ! ジブン、用事があったんす。悠里、悪いっすけど先に帰るっすね?」

「というか、()()()()……素で忘れてたよね?」

「つ、つっきー……?」

「それじゃ悠里、花音ちゃんもではではっす!」

 

花音が悠里が月灯の渾名を聞いて、驚いている間に月灯は用事を思い出したから先に帰ると言い残して、2人に挨拶をして行ってしまった。

 

「……(悠里くんって、月灯くんの事を呼ぶ時って……いつもさっきの渾名なのかな……?)」

 

悠里をチラッと見ながら、彼が月灯を呼ぶ時の渾名に慣れなかった。

何せ、その渾名が『つっきー』である。

 

「そういえば花音ちゃん、今日はどうしたの?」

「ふえ? あ、えっとね……」

 

悠里に声をかけられ我に返った花音は、彩達とのやり取りを話した。

 

「……まあ予定もないし、お邪魔じゃなければ参加したいな。準備とかは僕がやっておくから……「だ、ダメだよ!」なんで?」

 

案の定、悠里は準備は全部やっておくよと言った。すかさず花音が止める。

 

「悠里くんには私と彩ちゃんのお手伝いをしてもらいます! これは決定事項です」

「……分かったよ」

 

ちょっと不服そうな悠里だったが、花音の言いたい事が解ったのか、溜息を吐きながらも承諾した。

 

「ところで花音ちゃん。この後は暇?」

「え? うん。元々スタジオの帰りで彩ちゃん達と会ったから」

「なるほどね。それじゃあさ? 僕のお買い物に付き合ってほしいんだけど……()()()()()()()まで」

 

なんでドラッグストア?と思った花音だったが、その答えは悠里の右頬だった。

 

「少し前に中学生からお金を巻き上げようとしてたガラの悪い高校生を、つっきーと一緒に返り討ちに……コホン、お話したらこうなった」

 

相手の1人がナイフを持ってたから、この傷はその時にちょっとねーとのほほんと答えた。

 

「……早く行こっか。傷にばい菌が入っちゃったら大変だよ? ね?」

「花音ちゃん、そんなに腕を引っ張らないで。もう少しゆっくりでも……」

「早・く・行・こ・う・ね?」

「…………はい」

 

悠里が視線を向けると、そこにあったのは極上の笑みを浮かべる花音の姿が。ただし額に幾本もの青筋が。これは怖い。

今の彼女に反論したら命は無いと思った悠里だった。




読んでいただきありがとうございます。
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。

※主人公とオリキャラの簡単なプロフィールです。


水無月悠里(みなづきゆうり)


容姿イメージ:『らき☆すた』の岩崎みなみ

誕生日:12月12日、いて座

血液型:A型

一人称:僕



片瀬月灯(かたせつきひ)

容姿イメージ:『らき☆すた』の日下部みさお

誕生日:11月15日、さそり座

血液型:A型

一人称:ジブン、稀にオレ


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第1話 どこにしよっか

ゆるポメラです。
前回の続きになります。

それではどうぞ。


「それじゃ、打ち合わせを始めよっか!」

「…今日は何するんだっけ?」

「えーっと……今日は場所決めをするんだよね?」

 

羽沢珈琲店で打ち合わせをする事になった彩、花音、悠里の3人。

 

「うん! おすすめスポットが載ってる雑誌とかたくさん買ってきたから、これを参考にして決めよう!」

「……彩ちゃん張り切ってるね?」

「幹事を任されてるんだから、これくらい当然だよ!」

 

それじゃまずは話題のスポットから……といった感じで3人は雑誌を読み漁るのだった。

 

そして開始から5分後。

 

「この桜も綺麗だね~。さっき見た場所とは種類が違うのかな? 色が濃くてすっごく可愛い!」

「こっちは花の形が少し違うみたい。普通の桜も可愛いけど、こっちも素敵だね」

「……枝垂桜も捨てがたいな。あ、でもこの桜もなかなか……」

 

しかし場所はなかなか決まらず。桜の種類が豊富なのはいいのだが。

 

「お待たせしました。羽沢珈琲店特製の桜ラテ3つと、バタークッキーです」

 

するとこの羽沢珈琲店の娘である、羽沢(はざわ)つぐみが注文した品を持ってきてくれた。彩がお礼を言うと、つぐみもこちらこそいつもありがとうございますと言った。

 

「あの。3人ともずっと桜の話をしてるみたいですけど、もしかしてお花見に行ってきたんですか?」

 

実は私も、この前みんなと行ってきたんです、と言うつぐみ。

 

「つぐみちゃんはもうお花見してきたんだ。私達はまだこれからなんだ」

「…それで今は、僕らでその打ち合わせ中」

「そうそう。今からすっごく楽しみだよね!」

「こ、これから!?」

 

それを聞いたつぐみは驚きの表情。

 

「(この辺りの桜って、そろそろ見納めのシーズンなんじゃ……ううん、もしかしたらまだ見頃の場所があるのかも)」

 

もしかしたら自分が知らないだけかもしれないと思い、直ぐにその疑問を振り払った。

 

「そうだったんだんですね! お花見、いつ行くんですか?」

「……ああ。そういえば彩ちゃん、仮で日にちは決めてあるんでしょ?」

「ええっ!? ひ、日にち、決まってないんですか!?」

 

悠里の爆弾発言に驚くつぐみ。

 

「うん。確か、他のみんなの都合がつくのは、次の日曜日かその次の土曜日だったと思うんだけど……」

「そろそろ決めて、みんなにもお知らせしないとね。せっかくだからできるだけ早く行きたいし、次の日曜日でどうかな?」

「うん、いいと思う! グループにメッセージ送っておくよ」

「……花見、日にちは次の日曜日に決定っと……」

 

花音の提案で日にちが決定し、彩はグループにメッセージ送りを。悠里は持参したノートにメモを取っていた。その光景を見てたつぐみは大丈夫なのかな?と思った。

 

「そういえば、つぐみちゃんはもうお花見行ったって言ってたよね。もしかして、Afterglow(アフターグロウ)のみんなと?」

「えっ? あ、はい! (ともえ)ちゃんの提案で、今年はちょっと遠くへ桜を見に行ったんです。みんなと一緒だと移動もすっごく楽しくて、最高のお花見になりました!」

「遠出かあ。私も、みんなと一緒なら迷わず行けるかな?」

 

もし早く出発できるなら、思い切って遠出もおすすめですよと言うつぐみ。

 

「……さしずめ小旅行?」

「確かに小旅行って感じでいいかも! うーん、迷うな~!」

 

それもありかなと悠里と彩が悩んでると……

 

「あ、でも……その私達が行った時、桜が散り始めていたので見納めを過ぎてる場所が多いかもしれません」

 

つぐみがちょっと言いにくそうに言った。

確かに、せっかく遠出してまで桜を見に行ったのに、桜がなかったらお花見にならないし……と花音も呟いた。

 

「はい……それに彩さんはアイドルですし、あまり人気のスポットとか、人がたくさんいるところに行くとバレて大騒ぎになっちゃうかも」

「……忘れてた。そうなると、場所が限られてくるな」

 

その一言で肝心な事を失念してた悠里。彩と麻弥はアイドルバンド、Pastel*Palettes(パステルパレット)のメンバーなので、つぐみの言う通りになる可能性もある。

 

「はいっ! きっとサインや握手を求めるファンで長蛇の列ができちゃいますっ!」

「ふえぇ……そ、それは困るよ」

「……勘弁して」

 

花音も流石にそれは困るらしい。というか悠里も地味に困る。

 

「そうだよね~。きっとバレちゃうよね~。大騒ぎになったら困るし……今回はできるだけ、近くでお花見しようか!」

「……彩ちゃん、嬉しそうな表情で言われても説得力ないから、ほんとに勘弁して」

「いやあ~……バレた?」

 

そりゃ顔に出てたからねと付け足す悠里。

 

「そうなると、やっぱり場所は公園かな? 身近だし、通りかかるのは知ってる人ばかりだからバレて大騒ぎ! なんて事にはならないと思う」

「うん、のんびりできるし、凄くいいと思う」

「右に同じく」

「よしっ! それじゃあ場所は公園に決定! 日にちに続いて、場所もばっちりだね!」

 

場所と日にちは無事に決まった。さて、次はお弁当の準備になるのだが……

 

「それなら僕が……「「そ、それはダメ!!」」まだ何も言ってない……」

 

悠里が挙手したのだが、真っ先に彩と花音にまだ何も言ってないのに遮られ、ショックだったのか項垂れてしまう。

 

「私、料理はそんなに得意ってわけじゃないからちょっと不安だな」

「私もお母さんのお手伝いはするけど、凄く上手ってわけじゃないし……練習とか、しておいたほうがいいのかな?」

「確かに……ねえ花音ちゃん、3人でお弁当作りの練習しない?」

 

いきなり可愛いお弁当作ろうとして失敗しちゃったら大変だし。それに困ったら悠里くんに教えてもらえばいいと思うしと言う彩。

 

「うん! それなら、明日うちでどうかな? お友達が遊びに来るって言ったら、お母さんもきっと喜ぶと思うし」

「ホント? いいならぜひお邪魔したいな! 花音ちゃんのお母さんにも喜んでもらえるような美味しいお弁当を作らなくちゃ。よーし、頑張るぞー!」

「おー」

 

こうして後日、花音の家でお弁当を作る事になったのだった。




読んでいただきありがとうございます。
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。


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第1.5話 彩とアタシのペース

ゆるポメラです。
今回はリサちゃんの☆3エピソードを書いてみました。
少しオリジナル要素が入ってます。
楽しんでもらえると嬉しいです。

それではどうぞ。



「やっほー、紗夜(さよ)燐子(りんこ)! 待たせちゃったかな?」

 

スタジオ併設型ライブハウス『CiRCLE(サークル)』のカフェテリアにて。

リサは同じバンドメンバーの氷川紗夜(ひかわさよ)白金燐子(しろかねりんこ)に待たせてしまったかと訊ねる。

 

「いえ、問題ありません。先ほど到着したばかりですので」

「わたしも……今着いたばかり……です……」

「そっかそっか~。なら良かった!」

 

自分達も今着いたばかりだと言う紗夜と燐子に安心したリサ。

 

「いやー、それにしても今日は風あるし、この時期にしてはちょっと冷えるよねー」

「はい……。この風だと……せっかく綺麗に咲いた桜も……散ってしまいそう……ですね……」

「そうですね。そろそろ桜も見納めの時期でしょうか」

「あ~……そう、だよね~!! あはは……!! 桜も見納めかぁ……うん! 今からお花見っていうのも時期外れっていうかさ、ちょっと遅いって感じだよねー……!!」

 

桜という単語を聞いたリサが、苦笑いしながら答えた。

 

「……今井さん、何か気になる事でもあるんですか?」

 

リサの様子が妙におかしいと思った紗夜が訊ねた。

 

「え!? い、いや、何もないよ~! 紗夜ってば、いきなりどうしたの?」

「はぁ……自覚がないようですね……少なくとも今の今井さんは何もないという顔はしていません」

 

寧ろ、顔に出やすいのでは?と思った紗夜。

 

「……アタシそんなに顔に出てる?」

「はい……わたしにも……何か……気になるような事が……あるように見えました……」

 

燐子にもそう言われてしまい、リサは思ってた事を2人に話してみる事に。

 

「んー、実はさー……今度彩と花音、それから蘭と麻弥と悠里でお花見に行こうって話してるんだよね」

「それは……随分珍しい集まりですね?」

「でも……凄く楽しそう……ですね……」

 

ほんと偶々会ったメンバーで、お花見行こうって話になったんだよね~と話すリサ。

 

「まぁでも、そこまでは良かったんだけど、メンバーの都合上、彩と花音と悠里に幹事を任せる事になっちゃって」

 

で、その準備がちゃんと進んでいるのかなって、紗夜と燐子の話を聞いてたらすっごい気になっちゃってさーと苦笑い気味に話すリサ。

 

「なるほど……そういう事……なんですね……」

「彩と花音と悠里的には、マイペースに進めてはいるみたいなんだけど……桜の時期もあるから、ちょっと心配になっちゃって」

「確かに、そろそろ桜も散ってしまいますね。不安な気持ち、分かる気がします」

 

なるほど。そういう事かと納得した紗夜と燐子。

 

「それになんていうか、3()()()おっとりしてるところあるじゃん? 何か忘れてたりしないか心配で……」

「丸山さんは、その……少し、うっかりしているところがありますから……」

 

リサの言葉を聞いて、彩はどちらかと言うと、うっかりしてるところがあると言いにくそうに答える紗夜。

 

「2年生の時、出された宿題の存在を忘れていた、という事がありました」

「そ、そうだったんですね……少しだけ……心配になりますね……」

「だよねだよねっ! やっぱりちょっと心配になるよね!?」

 

その話を聞いたリサと燐子は少しだけ心配になるなと思った。

 

「でも、少し心配し過ぎかもしれませんね」

「えー、そうかな……?」

「松原さんとはクラスが同じになって間もないので、何とも言えませんが……丸山さんの場合は、最終的にはきっちりと提出を済ませていました」

「そうなんだ! ……っていうかそれ、逆に凄くない?」

「……きっと……最後には……上手くいくのではないでしょうか……」

 

まさかのオチを聞いて、驚くリサに燐子も最終的には上手くいくのではないかと言った。

 

「人には人のペースがあります。今井さんが心配しなくとも、しっかりと準備を進めているのではないかと」

「まぁ、そうだよね……そう考えると、確かに言うほど心配は……あーでも、悠里が心配だなー。この時期になると、おっとりの度を越して()()()()になるからさー……」

「「え?」」

 

リサの口から聞きなれない単語を聞いて顔を合わせる紗夜と燐子。

 

「あの……ぽやほわって……なんですか……?」

「え? あぁ、ぽやほわっていうのは、『ぽやぽやほわほわ』の略称で、毎年春になると……その、悠里がそうなるんだ。すっごく判りにくいんだけど」

 

普段の悠里を知ってる紗夜と燐子は、試しに想像してみる……が、全く想像がつかない。性格や意外な一面ならともかく、そんな悠里なんて見た事もない。

 

「仮に悠里さんが、そ、その……ぽやほわ?という状態になってたとして……具体的にどんな感じなんですか? この時期からなら、私は見た事ありませんよ?」

「わ、わたしも……ゆうりくんがそうなってるところは……見た事ないですね……」

「あー、でも……ぽやほわな悠里なら紗夜と燐子も見た事あるよ?」

「「えっ!?」」

 

それを聞いた紗夜と燐子は驚きの声を上げる。いつ? 何処で? 思い返してみるが、全く心当たりがなかった。しかしリサは見た事はあると言う。

 

「最近だと、そうだなぁ……あ! 練習の休憩の時に、テーブルに向かってのぺーってしてた時あったでしょ? それでやたらとアタシ達の名前呼んでたじゃん? あれがそう」

「あ、あの時ですか!?」

「あ、あれが……そう、だったんだんですね……」

 

ね、判りにくいでしょ?とリサが言った。

それを聞いた紗夜と燐子は、ようやく納得した。

確かに練習の休憩の時に、リサの事を『リサちゃー、リサにゃー』とか、紗夜の事を『さよちゃー、さーちゃん』とか、燐子の事を『りんこちゃー、りんりんー』等々……悠里がぶっ壊れた事があった。

 

主な被害者は、ここにいる3人とボーカルの湊友希那(みなとゆきな)の4人のみ。ちなみにその後の練習は中止になったのは余談である。

 

ちなみに友希那の場合は『ゆきなーちゃー、ゆきちゃー、ゆきちゃーん、ゆきにゃー』だった。

最後の語呂が気に入ったのか分からないが、悠里がにへら~とした表情で友希那の事を『ゆきにゃー♪ ゆきにゃー♪』なんて連呼するようなものだから、友希那のライフを0にするには充分だった。

 

なるほど。あれがリサの言ってた『ぽやほわな悠里』だったのか。

 

「あー、心配だなー……アタシはちょっとだけ耐性が付いてるからいいけど、悠里の事だからなぁー……」

「「…………((お花見の時、今井さん……大丈夫かしら(かな)?))」」

 

そんなリサを見て、少し心配になる紗夜と燐子なのであった。




読んでいただきありがとうございます。
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。


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第2話 予行練習

ゆるポメラです。
前回の続きになります。

それではどうぞ。


松原家のリビングにて。

昨日の打ち合わせで、花音の家でお弁当の作る練習になった3人。

 

「食材準備よしっ! エプロンよしっ! 気合い十分!」

「ふふっ。それじゃ始めようか」

「それで結局何を作る事にしたの? 当日まで秘密みたいな感じだったけど……」

 

そう。昨日の夜に彩から、メニュー決定! という連絡があったのだ。当人は当日まで内緒と言っていたのだが。

 

「今回はね、サンドイッチを作ろうと思ってるんだ!」

「サンドイッチかあ。確かに、サンドイッチは手軽につまめるし、お花見にはぴったりのメニューだよね」

「…種類も意外と豊富だから、作り甲斐はあるね。サンドイッチが嫌いな人、あんまりいないと思うし……いいと思うよ?」

 

サンドイッチは挟める具材によって、千差万別の料理に変わるので、けっこう奥深い料理でもある。

 

「それに、挟むものとか盛り付けを工夫すれば見た目も華やかになって、SNS映えも完璧だと思うんだ!」

「SNS映え? あ、それならちょうどいい物があるよ!」

「なになに、いい物って?」

 

そう言うと花音は、引き出しからある道具を取り出した。

 

その正体は、抜き型だった。

 

「…星と……これは花?」

「こっちは兎かな? たくさん種類があって可愛いね」

 

種類も星型や花型等……様々な抜き型があった。

 

「うん。この前お母さんと一緒にお買い物してた時に見つけて買ってもらったんだ。これで型抜きした食パンでサンドイッチを作れば、凄く可愛いのができるかなって」

「わあ……うん! いいと思うっ!」

「型抜きサンドイッチかぁ……うん。僕もいいと思う」

「実はね、私も1ついいやり方を知ってるんだ! それを見てお弁当はサンドイッチにしたいって思ったの」

 

それを聞いた花音が興味深そうに訊くが、それはやってみてからのお楽しみ~と彩は言った。

 

「それじゃあ、SNS映えするサンドイッチ作り、スタート!」

「おー!」

「お、おー……」

 

3人は早速サンドイッチ作りに取り掛かるのだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「そうしたら、お花の形のサンドイッチをこの辺に盛り付けて……と」

「これで、完成……だよね?」

「見た目もかなり可愛くできてるし……いいんじゃない?」

 

作業開始から30分後。それぞれのサンドイッチが完成した。

 

「彩ちゃんが作った、ロールケーキみたいなサンドイッチ! これすっごい可愛いね」

「良かった~! 可愛いお弁当を色々調べてたら、このサンドイッチをブログに上げてる人がいて、参考にさせてもらっちゃった」

「ラップで包んでくるくる巻くだけだから簡単だし、見た目もすっごい華やかになるね」

「…ひ、ひとつだけなら……食べても……」

「「あっ、だ、ダメだよ!」」

 

彩と花音が完成したサンドイッチについて話してると、魔が差したのか悠里が食べようとしてたので、慌てて2人で止める。

 

「……もう! このお弁当の写真、SNSにあげちゃおうかな? どう思う?」

「私はいいと思うよ。こんなに良くできたらみんなに見てもらいたくなるもん」

「…可愛いし、美味しそう……」

 

サンドイッチを記念に撮る彩。写真の撮影の邪魔にならないように、ひょっこりと顔を出しサンドイッチを食べたそうに唸ってる悠里。花音がつまみ食いはダメだよ?と宥めていたが。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「はぁ~、やり遂げた後の紅茶は格別って感じ」

「おかわりあるから遠慮なく言ってね」

「…クッキーも多めに焼いてきたから、彩ちゃんも花音ちゃんも遠慮なく食べてね」

「うん、ありがと!」

「えっと……じゃあ、もうひとつだけもらおうかな……(ふえぇ~、悠里くんが作ったクッキー、美味しくて手が止まらないよお~!)」

 

片付けを終えて30分後。3人は休憩がてら、花音おすすめの紅茶を飲んでいた。ちなみにお茶請けは悠里の手作りクッキー。あまりの美味しさに手が止まらなくなる花音。

 

「けどさ、これでお弁当もバッチリだし、お花見の準備、かなり順調に進んでるよね?」

「やっぱりそう思う? 私も今、ちょうど思ってたんだ」

「僕も同じく」

 

自分達があまりにも順調に進んでいるので、さっきの画像を見てみんな驚いてるかもね♪と彩は楽しそうに言った。

 

「…時間が余っちゃったけど、他にも何か前もって準備しておくものって……彩ちゃんと花音ちゃんは何かある?」

「そうだね、けど何があるかな……?」

「うーん。私は、お花見の当日に、みんなが喜んでくれそうな事を準備しておきたいな」

 

その提案に花音が何かを思いついたようだ。

 

「あれはどうかな!? みんながお花見を楽しめるように、『お花見のしおり』を作るのは?」

「「お花見の、しおり……?」」

「うん。そういう冊子みたいのがあると遠足みたいできっとワクワクすると思うし、注意事項とか持ち物も前もって伝えられるんじゃないかな……?」

 

その内容を聞いた2人は大賛成。

 

「しおりにはどんな事を載せようか? 注意事項と持ち物でしょ? 後は……」

「私的には、桜の種類の違いとか分かると面白いかな?」

「わ~、それいいいね! ひと口に桜って言ってもいろんな種類があるもんね! 私、調べてみるね!」

「…それじゃあ僕は、何かキャラクターでも描いてみよっかな」

 

次に準備する事が決まった3人は、早速取り掛かるのであった。




読んでいただきありがとうございます。
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。


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第3話 ちょっと心配・・・

ゆるポメラです。
前回の続きになります。

それではどうぞ。


後日。昼休みの羽丘女子学園(はねおかじょしがくえん)廊下にて。

 

「新しいメッセージはなしか。はぁ~、大丈夫かなあ」

「あはは~……彩さんと松原さんなら大丈夫ですよ……きっと……多分……悠里さんもいますし……恐らく……」

「だんだん声小さくなってるし」

「あれ……リサさんと、麻弥さん?」

 

新しいメッセージが来てない事に心配なリサと麻弥。すると2人を見つけた蘭が声をかけてきた。

 

「あ、蘭。やっほー、これからお昼?」

「はい。その前に飲み物買いに行こうと思って。ていうか、2人で深刻そうな顔してましたけど、なんかありました?」

 

少し気になった蘭がリサと麻弥に訊く。

 

「あー、あはは~、見られちゃった? 実はお花見の事がちょっとだけ心配になっちゃって。蘭も昨日のメッセージ見たよね?」

「お弁当の画像のやつ……ですよね?」

「そう、それ」

 

確かに昨日のメッセージにお弁当の画像が送られてきた。

 

「あと『お花見のしおり』を作り始めた、って書いてありましたね……」

「『お花見のしおり』ねぇ……あの3人らしいと言えばらしいけど、持ち物の準備とかは大丈夫なのかな……?」

 

麻弥の言葉を聞いて、持ち物の準備等が気になったリサ。

 

「今まで連絡があった事は……次の日曜日に、近くの公園でお花見をする、って事だけだよね? 集合時間とかも聞いてなくない?」

「それに、あたし達の持ち物とか……? どうしたらいいんでしょう?」

「それなんだよね……そういう具体的な話は、まだ何も聞いてないっていうか……」

 

実を言うとリサ、何度か彩に連絡してるのだが、結局いつも、お花見楽しみだねーって話になって終わってしまうのである。

 

「彩さん、お花見を本当に楽しみにしてますからね」

「まー、3人とも責任感強いし、実際にちょっとずつ準備は進んでると思うんだけど……あんまりのんびりしてもいられないじゃん?」

「確かに……そろそろ桜の見納めの時期ですもんね」

「あ、そう言われれば……」

「このままだと、桜が全部散っちゃいそうだなー、とか思ってさ」

 

だからこそなんか余計に心配なのである。

 

「……実はあたし、この前Afterglowのみんなとお花見に行ったんですけど、その時既に散り始めてました」

「それってかなりやばくない!?」

「今、ちょっとスマホで調べてみますね! えっと……」

 

そう言うと麻弥はスマホで調べる。しかもどこか苦々しい表情……

 

「どうだった?」

「この辺りの桜は、だいたい今週いっぱいで見納めになるみたいですね……」

 

多少のズレはあるかもしれないが、流石に来週には散ってしまっているかもと麻弥は2人に言った。

 

「てことは……次の日曜日を逃したら、アウトって事だよね? ……本当に大丈夫なのかな?」

「どう……ですかね」

「「「……」」」

 

ちょうどその時、リサのスマホがピロンと鳴った。

 

「今度は何……って悠里じゃん。なになに……『リサちゃー、お花見楽しみだね~。()()()()()()()()()()()()。あと桜肉とか。あとは~……桜餅とか~?』」

 

悠里からメールが入ってきたので、読み上げるリサ。それを読み終わった後、あちゃー……と呟く。

 

ぽやほわ状態になってるなと思いながら。

 

「……アタシ、悠里のこのメールを見て余計に心配になってきたんだけど」

「い……今更ですが、ジブンも不安になってきてしまいました」

「幹事とはいえ……任せっきりにしてるの、あんまり良くないかもですね」

「そうだよね~……よしっ。今日の放課後、みんなで様子見に行こう!」

 

悠里からのメールが決定打になったのか、リサは今日の放課後に様子を見に行こうと提案した。

 

「予定通りにいけばまだセーフなんだからさ。何より、手伝える事があるなら手伝いたいし!」

「そうですね。美竹さんはどうしますか?」

「あたしも行きます。一応参加させてもらうわけだし。今日は特に用事もないんで」

「オッケー。それじゃ、放課後に校門前で待ち合わせね」

「了解ですっ! それじゃあまた放課後に!」

「はい。それじゃあ……また後で」

 

とりあえず放課後に校門前で待ち合わせという事になったのであった。

 

そしてリサが教室に戻る途中、再び彼女のスマホがピロンと鳴った。

 

「あ、また悠里からだ。なになに……『桜餅を崇めよ~、敬え~、リサにゃんリサにゃんにゃ~ん』ちょっ……!?」

 

その内容を読み上げたリサは、顔を真っ赤にしながら、その場で悶えてしまうのであった。




読んでいただきありがとうございます。
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。


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第4話 お花見注意事項!

ゆるポメラです。
前回の続きになります。

それではどうぞ。


そして放課後。リサ、麻弥、蘭の3人は花咲川女子学園(はなさきがわじょしがくえん)の校門前に来ていた。

 

「あ、来た来た! おーい、彩ー! 花音ー!」

 

彩と花音の姿を見つけたリサは2人に声をかける。

 

「あれっ、リサちゃん?」

「それに、麻弥ちゃんと蘭ちゃんも……!」

「ど、どうもこんにちは……」

「お疲れ様です」

「どうしたの今日は? 何か用事でもあった?」

 

首を傾げながら、彩が何か用事でもあったかと3人に訊く。

 

「あ、あはは~……いや~、お花見の準備は、どうなってるかな~? とか思って」

「こっちに来る予定もあったので、ついでに話を聞いてみよう、となりまして……っ」

 

とりあえずお花見の準備の進み具合をそれとなく訊くリサと麻弥。

 

「ふふ~~ん。お花見の準備は、昨日も画像を送った通り、順調にいってると思うよ! ね、花音ちゃん?」

「うん。お弁当も順調だし『お花見のしおり』も割とよくできてるから楽しみにしててね」

「そ、それは、楽しみだなぁ~」

 

それを聞いたリサは苦笑い気味にそう答える。本当に順調に進んでるのだろうか?と思いながら。

 

「まだ作りかけなんだけど、ちょっと見てみる? いいよね、花音ちゃん?」

「もちろん! みんなの意見も聞きたいし、ぜひ見てほしいな」

「それじゃあ……どんな感じか、ちょっと見せてもらおっかな?」

 

そして彩は、じゃ~~ん! こんな感じになってまーす!と言いながら、3人に作りかけの『お花見のしおり』を見せた。

 

「おぉ~。表紙に画像と動物の絵を使って、かなり凝ってますね」

「えっと、『今日は待ちに待ったお花見です! みんなとにかく楽しみましょう!』これは、当日の心構え……みたいな?」

「そうだよ! やっぱりこういうのは、自分から積極的に、楽しもうって気持ちが大事だから!」

 

なんというか、彩らしかった。

 

「こっちは、注意事項……ですか? 『注意事項その1、桜を見ながらみんなでとにかく楽しもう!』ざっと見た感じ『とにかく楽しもう!』っていろんな場所に書いてありますね……」

「わ、ホントだ、全然気づかなかった!」

 

蘭に指摘され、彩は今気づいた。

何せ、大事な事だから無意識に何回も書いてしまったのかもしれない……

 

「あれ? ここの集合時間のところ、まだ空欄だけど……?」

 

集合時間が未だ空欄な事に気づいたリサが、これってまだ決まってないの?と訊く。

 

「あ、そうだ! それを決めなきゃねって花音ちゃんと話してたんだ! リサちゃん達が来る前に悠里くんから連絡があって、日直の仕事でちょっと遅れるから、それだけ決めてほしいって」

「そ、そうなんだ……」

 

彩の言葉を聞いて、昼休みに悠里から送られてきたメールの内容を思い出したリサ。

 

「えーっと、それじゃあ……みんなでお弁当を食べるから、午前中から集まらないとだよね?」

「そうしたら10時くらい……かな?」

「いいと思う! あ、けど10時だと、この時期まだちょっと寒いかな……?」

「そっか。そういえばそうかも……それじゃあ、11時くらいにする?」

「え~、けど、せっかくならみんなでのんびりしたいよね~? どうしよっか? 10時? 11時?」

 

10時か11時にしようか?と悩む彩と花音。

 

「10時も11時もそんなに気温変わらないって! それじゃあ、こうしよう! 寒くないようにそれぞれ厚着をして10時に公園集合!」

「うん、そうしようっ! リサちゃんありがとう!」

 

リサの案で、集合時間は寒くないようにそれぞれが厚着をして10時に公園に集合という事になった。

 

「あの……こっちの持ち物の方も空欄ですけど……ジブン、飲み物とか持っていきましょうか……?」

「あ、お茶とジュースは当日コンビニで買っていくつもり。温かい飲み物は私と悠里くんで持っていく事になってるんだけど……何かリクエストとかあるかな?」

「あ、そうなんだ……(まさか悠里、お酒とか持ってきたりとかは……流石にしないよね?)」

 

例のメールのせいで、悠里が当日にお酒を持ってきたりしないか不安になったリサ。……そもそも自分達は未成年だから買えないし、飲めないし。

 

「外でお弁当を食べるって事は、紙皿とかも必要じゃないですか?」

「それは昨日、お弁当作りの後に花音ちゃんと悠里くんで買いに行ったんだ!」

 

可愛いの選んだから楽しみにしててね♪と笑顔で蘭の疑問に答える彩。

 

「ビニールシートとかは……?」

「それがね! 昨日、探してみたら花音ちゃん家にすっごい大きいやつがあったんだよね!」

「昔、家族のピクニック用に使ってたやつなんだ」

 

あれならみんな入れると思うよと花音が3人に言った。

 

「そ、そっか……けっこう順調みたいだね」

「うん! みんな心配してくれてありがとう! ちゃんと準備は進んでるから大丈夫だよ!」

「しおりは、明日みんなに渡すつもりだったんだけど……なんか心配かけちゃって、ごめんね」

 

そう言って、ちょっと申し訳なさそうな表情をする彩と花音。

 

すると彩が何かを思い出した表情をしながら……

 

「そういえば……リサちゃんって、()()()()()()とかいるの?」

「え?」

 

奇妙な事をリサに訊ねた。急な質問にリサは鳩が豆鉄砲を食ったような表情。

 

「あ、それ私も気になってたんだ。お昼休み……だったかな? ちょうど校門前をリサちゃんが通りかかったのが見えて……」

「え!? いやいやちょっと待って待って!?」

 

なんと花音も彩と似たような事を話し始めた。

突然の事にリサは待ったをかける。

 

「アタシ、昼休みは麻弥と蘭と一緒だったよ? ねぇ、2人とも?」

「そうですよね。ジブン達、今日の放課後に彩さん達の様子を見に行こうって話をしてたんで……」

「見間違い……じゃないんですか?」

 

そう。

昼休みの間は、麻弥と蘭と一緒に今日の放課後に彩と花音の様子を見に行こうという話をしてた筈。

 

「そう……だよね……。気のせいだったのかな? あ、それじゃあ私達、しおりを完成させないとだから! またね、みんな!」

「「「……」」」

 

それだけ言うと、彩と花音は行ってしまった。

 

「……行っちゃいましたね」

「なんというか……思ってた以上に準備、順調に進んでましたね……」

「もしかして、アタシ達がせっかちなだけだったり……?」

「そうなんですかね……」

「こうなったら彩さんと松原さんと悠里さんを信じましょう!」

「うん、だね☆ アタシ達は当日を楽しみに待ってよっか!」

 

彩と花音が言ってた事もリサは、ちょっと気になったが、自分達は当日を楽しみに待ってる事にしようと思った。




読んでいただきありがとうございます。
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。


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第5話 バイトマニュアル

ゆるポメラです。
前回の続きになります。

それではどうぞ。


「あとは、この『お花見のしおり』を人数分コピーすれば準備完了……かな?」

「…そうだね。コピーする前に、インクが残ってるか確認しておかないと」

「みんな喜んでくれるといいな~。よーし、あとちょっと! 頑張ろうね!」

 

日直の仕事を終えた悠里と合流し、3人は花音の家でお花見のしおりの最後の仕上げに取り掛かっていた。

 

「……あのさ、彩ちゃん? 昨日の夜、すっごい懐かしいものを見つけたんだ。これなんだけど……覚えてる?」

 

花音が見せてきたのは何かの冊子だった。

 

「…なんかバイトマニュアルって書いてあるけど?」

「……あ! これひょっとして私が昔作ったやつ!?」

 

悠里がポツリと呟くと、彩は昔自分が作ったものだと思い出した。

 

「そう! 私がまだバイトに入りたてで、仕事の内容が全然分からない時に彩ちゃんが作ってくれたんだよね」

「これ、まだ持ってくれてたの……?」

「……(そういえば、花音ちゃんがバイト始めた時に、仕事内容を教えてくれた人がいたって言ってたっけ……あれ、彩ちゃんの事だったのか)」

 

花音がバイトを始めたって聞いた時に、仕事内容を同年代の女の子が教えてくれたという事を悠里は彼女から聞いた事があった。

 

「もちろんだよ。私はこの『バイトマニュアル』にすっごい救われたんだもん。これがあったから、私はバイトが続けられたと思ってるんだ」

 

あの時は、ありがとう彩ちゃんと花音が言った。

 

「そ、そんな事改めて言われると、照れちゃうよ~! これ……中見てもいい? 自分で書いておいてなんだけど、どんな事を書いたのか全然覚えてないな……」

「あ、僕も見たい……なんか興味ある……」

「ふふふ、もちろん。読んでみて」

 

当時、自分でも何を書いたのか覚えてない彩。悠里も純粋に読んでみたいなと思ったので、3人で読んでみる事に。

 

「えっと……バイトマニュアルその1、仕事中は……「明るい笑顔で、とにかく頑張る!」」

「……2人とも、絶妙にハモってた」

 

まさかの覚えてた事に驚く彩。絶妙なハモりに驚く悠里。

 

「だってバイトの先輩のありがたい言葉だもん。ちゃんと覚えてるよ」

「先輩って……! 私の方が1ヶ月ぐらい早いだけだよ~!」

「けど、彩ちゃんが先輩なんでしょ? ね、花音ちゃん?」

「うん♪」

 

1ヶ月ぐらい早いからと言って、花音の先輩には変わらない事実でしょ?と悠里が指摘した。彩は微妙に納得してないようだが。

 

「だからそのマニュアルはホントに全部覚えちゃうくらい読み込んだんだよ?」

「ていうか、今見てみると『とにかく頑張る』ばっかりで、ほとんど参考にならないよね……っ」

「ううん、そんなことないよ! 私はそのマニュアル通りにとにかく頑張ったら、バイトが楽しくなったんだ」

「……(確かにこのマニュアルだったら、僕でも頑張れそう)」

 

というか、このマニュアルを作る彩が凄いと悠里は思った。確かに『とにかく頑張る』と書かれてるところが多々あるが、下手な説明をされるより、こっちの方が逆に分かりやすい。

 

「この前彩ちゃんが、お花見の当日にみんなが喜んでくれそうなものないかな?って言ったでしょ? 私、その時に、この『バイトマニュアル』の事をふと思い出したんだ」

 

こういう冊子があったら、みんな喜んでくれるかもってと花音は言いながら。

 

「なんか嬉しいな。私が作った『バイトマニュアル』をそんな大事に思ってくれてたなんて……」

 

こんな事なら、もっと綺麗に書いておけばよかったよ~と彩が言う。

 

「あ、見て! ここ字間違えてる! わ、ここも! 『ハンバーガー』が『ハンガーバー』になってるし!」

「……」

「ふふふ」

「花音ちゃん、修正テープとかある? 『ハンガーバー』だけは直させて~! ちょっとこれは恥ずかしすぎるよ」

「だ、ダメだよ~っ。これは私の宝物なんだから~」

 

誤字を修正させてほしいと彩は懇願するが、花音は笑いながらダメだよと言う。一方で悠里は『ハンガーバー』の文字を食い入るように見ている。

 

「……ふっ、あはははっ! 『ハンガーバー』って、それ何て新メニュー? すみませーん、『ハンガーバー』1つくださーい。あはははっ!」

「「っ!?」」

 

すると悠里が今まで見たことない表情で笑い出した。突然の事に彩と花音は驚愕の表情。

 

「ハンガーバー、ハンガーバー、ハンニャーバー♪ あはははっ!」

「……(え? 悠里くんって、笑う時こんなに笑うの!? なんか初めて見た……)」

「……(こんなに笑う悠里くんを見たの、いつぶりだろう……)」

 

未だに大笑いしてる悠里を見て、彩はちょっと困惑気味、花音は懐かしさを感じたのであった……

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ここをホチキスで止めて……うん! これで『お花見のしおり』は完成っと……」

「お疲れ様~、やっとできあがったね!」

「…ん、お疲れ様」

 

そして遂にお花見のしおりが完成させた3人。

 

「字の間違いとかないか、慎重に確認しておかないとね……『ハンガーバー』みたいになっちゃうと恥ずかしいから……」

「ふふふ。彩ちゃん、気にしすぎだよ」

「……ハンガーバー……ふっ」

「もう~。悠里くんもそんなに笑わないでよ……」

 

さっきよりは控えめだが、彩が『ハンガーバー』と口にした途端、悠里はクスクスと笑っていた。

 

「そういえば悠里くんって、リサちゃんとも幼馴染みなんだよね?」

「? そうだけど……急にどしたの?」

「リサちゃんって、双子の妹さんとかいるの?」

「えっと、実はね……?」

 

放課後の事を思い出したのか、気になった事を悠里に訊く彩。

首を傾げる悠里だったが、花音が昼休みの出来事と今日の放課後にリサ達が来た時に、その話をしたら、リサが驚いてたとの事。

 

「それで私と彩ちゃんが昼休みに見たリサちゃんって、見間違いなのかなって……」

「…昼休みって言ってたけど……それって具体的に何時くらいか分かる?」

「えーっと、ちょうどお昼休みが始まるくらいだったかなぁ……なんとなく外を見たら、校門前をリサちゃんが通りかかったのが見えて……」

「私も彩ちゃんと同じくらいかなあ……」

「…………」

 

それを聞いた悠里は、一瞬考える仕草をした後、スマホを取り出した。

 

「…その時間帯の通話履歴は……あった。あぁ、そういう事……」

「「?」」

 

通話履歴を確認したであろう悠里は1人でうんうんと頷きながら納得した後、彩と花音の顔を見て……

 

「彩ちゃんと花音ちゃんが話してくれた事だけど……()()()()()()()()()()。ただ、リサちゃんが言ってた事は本当だよ」

「半分正解で……」

「半分ハズレ……?」

 

何か含みのある表情をしながら答えた。

 

「…いい機会だし、お花見の当日に()()を教えてあげるよ。リサちゃん達には、今僕が言った事をそのまま伝えてくれればいいよ。まぁ、楽しみにしてて?」

「え? うん。分かった……(う~、なんか余計に気になるよ~!)」

「えっと、楽しみにしてて……いいのかな?(こういう表情をしてる時の悠里くんって、何かしらのサプライズが関係してるんだよね……)」

 

そう言うと悠里は、彩と花音にお花見の当日が楽しみだねー?と浮き浮きした表情で言うのであった。




読んでいただきありがとうございます。
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。


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第6話 お花見当日!

ゆるポメラです。
今回で最終回になります。少しオリジナルになってます。

そういえば今日は、燐子ちゃんの誕生日ですね。おめでとう。

それではどうぞ。


そして迎えた、お花見当日。公園にて。

 

「それじゃあみんなー! いくよ! せーのっ! かんぱーい!」

「「「カンパーイ!」」」

「「乾杯……」」

 

彩の合図で6人は乾杯をした。

 

「んー! このサンドイッチ美味しー! サーモンとアボカドのサラダサンドだ!」

「見た目も凄く可愛いですよね。この前の画像よりも、華やかになった気がします」

 

美味しそうに食べるリサ。サンドイッチの見た目が色んな種類がある事に気づく麻弥。

 

「あ、気づいてくれた? 型の種類もたくさんあった方が楽しいかなと思って、あのあと彩ちゃんと悠里くんの3人で買いに行ったんだ」

「犬とイルカと猫……なんか、彩さんと松原さんと悠里さんチョイスって感じする」

「ロールケーキみたいなやつもいいよね~☆ アタシもこれ、今度作ってみよっかな」

「えへへ。簡単に作れて見栄えもいいから、超おすすめだよ♪」

 

特にロールケーキ型のサンドイッチを気に入ったリサは、今度Roselia(ロゼリア)のみんなにも作ってあげようかなと思っていた。

 

「ちなみに~……じゃ~ん! 実はアタシもちょっとした料理を持って来たんだ~。玉子焼きとか唐揚げとか定番の物しかないけど、良かったらこっちもつまんでね!」

()()()()()の手作り玉子焼き~、甘くてトロトロ~」

「「「「リ、リサちゃー……?」」」」

 

玉子焼きをつまみ始めた悠里の様子が若干おかしい事に驚くリサ以外の4人。一方でリサは4人に、ぽやほわ状態の悠里について説明した。顔を少しだけ赤くしながら。

 

「じ、実はあたしも……その、料理ってあんまり得意じゃないんでコンビニでお菓子買ってきただけですけど」

「ジブンもひと品持ってきました! 野菜スティックです」

 

お菓子を取り出した蘭。そして何故かドヤ顔で野菜スティックを取り出した麻弥。

 

「や、野菜スティック……?」

「いやいや、これが結構美味しいんですよ? 何より野菜は体にもいいですし!」

「確かに、サラダより手軽に食べられるしお花見にもピッタリかも……?」

 

麻弥の説明を聞いた蘭は確かにサラダよりかは手軽に食べられるなと思った。お花見にピッタリかは別として。

 

「そうなんですよ! 流石は美竹さん! 遠慮せずに1本どうぞ! 松原さんも!」

「どうも」

「ふふっ。ありがとう、麻弥ちゃん」

 

せっかくなので、麻弥から野菜スティックを1本貰う蘭と花音。

 

「ちなみに実は~……じゃじゃーん。僕も()()()()()()()()()()()料理とデザートを作って持って来たんだ~」

「「「「「……(((((重箱!?)))))」」」」」

 

いっぱい食べてね~?と悠里はぽや~とした表情で5人にそう言うが、5人は彼がその重箱で持って来た事に驚いてた。

 

「(いやいやいや!? なんで重箱で持って来たの!? しかもこれ、小さい頃に友希那の家族と一緒に使ってた悠里の家の秘伝の重箱じゃん!! て事は……)」

「(ふえぇ~!? 悠里くんの家の秘伝の重箱だ……も、もしかして……)」

 

その独特な重箱を見た事があるリサと花音は、自分達の記憶が正しければ、この重箱の中身は……

 

「みんなが好きそうな料理を作ってきたから、たくさん食べてね~」

「「「これ手料理((ですか))!?」」」

「「や、やっぱり……((悠里(くん)特製の()()()()()()()()()だ……))」」

 

彩、麻弥、蘭がややドン引きな表情に対し、リサと花音は予想通りだったのか軽く肩を落としながら項垂れていた……

 

「桜肉はもうちょっとだけ待っててね? ()()()()()()()()みたいだから」

「持ってきてくれるって……誰が?」

「彩ちゃんと花音ちゃんが言ってたじゃん。リサちゃんに双子の妹云々のアレ」

 

意味深な表情で5人にそう言う悠里。

首を傾げながら訊く彩に悠里は、リサの双子の妹説云々のアレと言った。

 

結局その答えは、お花見の当日……つまり今日教えてくれると本人に聞かされたのだが。

 

「えっとね……あ。ちょうど来たみたい」

 

5人に説明しようとした時、何かを見つけ、ほら。と指を差す悠里。

 

「え? 何……あのいかにも高級そうな車……」

「なんか危なそうな人達が降りてきたんですけど……!?」

 

リサと蘭が言った。

公園の入口付近に、明らかに似つかわしくない黒色の高級車が一台、停まっていたのだ。

しかも数人の黒服が車から降りてきたではないか。黒服の1人が後部座席のドアを開けると、リサと同じ158cmの少女が車から降りてきた。

 

少女は赤のワンピースに白い帽子を深く被ったその少女は、表情こそ見えないが、キョロキョロと辺りを見渡していた。どうやら誰かを捜してる様子。

 

「もしかして、誰かを……捜してるのかな?」

「そうみたいですね。あっ、なんかジブン達を見てませんか?」

 

少女の様子を見ながら呟く花音と麻弥。すると少女と目が合った……気がした。

 

「お~い、サリア~。こっちこっち~」

「!!」

 

すると悠里がのほほんとした表情で、手を振りながら少女の名前を呼んだ。サリアと呼ばれた少女は悠里の姿を見つけるや否や……

 

「……ごふっ!?」

 

真っ先に悠里に抱きついてきた。いや、飛びついてきたという表現が正しいだろう。余りの勢いに変な声を出してしまう悠里。

 

()()! お気持ちはお察しますが、悠里様が怪我でもしたらどうするんですか! 悠里様、お怪我はありませんか?」

「い、生きてるよ~……」

「「「「「え? 姫様? 悠里様?」」」」」

 

その光景を見てた黒服の1人が慌てて近づいてきて、悠里の心配と自分の主を注意する。そして5人は気になる単語を聞いて首を傾げた。

 

「…けほっ。こ、答え合わせの時間です。この子が彩ちゃんと花音ちゃんが言ってた例の正体です。……何? サリア?」

「────! ────!!」

「……あー、やっぱり? その事については今日の夜にでも。とりあえずみんな驚かないでね? 特にリサちゃん」

「え? アタシ? う、うん……分かった。何言われるか怖いけど……」

 

この場に居る全員が驚きそう……特にリサはと思った悠里は、予め確認をした。

 

「サリア、帽子を脱いでもらってもいい?」

「……」

「「「「「!!」」」」」

 

悠里がそう言うと、サリアと呼ばれた少女が深く被っていた帽子をゆっくりと脱いだ。その正体を見た5人……特にリサは驚愕の表情になった。

 

何故なら、彼女は()()()()()()()()()()()()()()()だったのだから。

 

「リ、リサちゃんが……」

「ふ、2人……!?」

「全然見分けがつかない……」

「そっくりというより、完全に瓜二つですね……」

「……」

 

彩、花音、蘭、麻弥がサリアを見て呟く。

状況整理ができていないのか、リサはポカーンとした表情でサリアを見ていた。

 

「彩ちゃんと花音ちゃんに半分正解で半分ハズレって言ったのは、こういう事だよ。……リサちゃん、ごめんね? なんか怖い思いさせちゃって」

「あ、あはは……まぁ、正直びっくりはしたけどさ……うん……」

「せっかくのお花見なんだからさ? みんな好きなのつまんで食べて? サリアは何か食べたいのある?」

「アタシ、それ食べたい! ねえ~、ユーリ~、アタシに食べさせてよ~?」

「…しょうがないな。はい、あーん……」

「あーん♪ んー! この玉子焼きやっぱり美味しー!」

「「「「「!?」」」」」

 

なんと声もリサと同じだった。リサから見れば、自分のそっくりさんが悠里にお花見弁当を食べさせてもらってる光景を見せつけられるという、リサからしたら軽い公開処刑である。

 

ちなみに彩と花音は顔を真っ赤にしながらもガッツリ見ていたが……

 

「はい、リサちゃんも。はい、あーん……」

「!? あ、あーん……(もう~~!! 悠里、そんな表情でやるなんてズルじゃ~ん!!)」

 

ぽやほわ状態なのか、いつもよりほんわかした笑顔でリサに料理を食べさせる悠里。その表情を直視してしまったリサは何も言えず、されるがままだった。

 

「ユーリ。ハンバーガーはないの?」

「ハンバー……あっ! ハンバーガーといえば~……彩ちゃんが言ってた、ハンガー……」

「ゆ、悠里くんダメだって! あれはそっとしておいて~!」

 

悠里がこれから何を話そうとしたのかを察した彩は、慌てて悠里を止めるのであった。




最後まで読んでいただきありがとうございます。
ここまで出来たのも、読者の皆様のお陰です。
気が向いたら、また何か息抜きに書くかもしれません。

それではまたいつかどこかでお会いしましょう。
ありがとうございました。


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