あるジェダイが世界を変える為に命を掛けて戦う話 (スッパーン//)
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プロローグ 極寒の雪山にて

こんにちは?こんばんはかな?その前に初めましてか笑、どうもスッパーンです、これを見る前に少し注意事項をいくつか言いますね!
まず一つ目、これはカノンでもないしレジェンズの世界でもありません、全く別の平行世界として扱って下さい。二つ目スターウォーズの設定が若干異なりますが、あえてやっているので、余り気にしないで頂けると幸いです!
そしてこれはあくまでジェダイの話なので、スターウォーズの様なはちゃめちゃ宇宙戦は多分ないです、以上3点についてはご了承下さい、、ではフォースと共にあらんこと




ここは極寒の山だ、何処を見渡しても白銀の世界、至る所に凍てつくような風に吹かれたであろう木が氷柱をなしており、川は完全に凍ってる、人がとても居られるような環境ではないが、そこには蝶の様な模様の首飾りをかけた、金髪で少し暗めの青色の目をした背丈が高く気骨な男が立っていた。近くに転移魔法陣のようなものがあった

 

「フゥーハァー寒いな..防寒魔術使えて良かった〜にしてもあの野郎どんな場所に俺を飛ばしてくれてんだ、俺は雪国出身じゃないってのに...うん?は?雪国?アルザーノにこんな場所あったか?いやあるにはあるが」

 

男は必死に周りを見渡す、確かにアルザーノにも雪が多く降る地域が存在するが、だが明らかにその国に生えていない、植物や木があるのである。

 

「アレは山雅の木だ、昔読んだ文献ではアルザーノにこんな植物生えてなかった気が...これは確かラマード共和国原産のものだった...ような...あれ?」

 

※ラマード共和国はアルザーノ帝国と一万2000メトラ(km)離れています。

 

「...え?嘘だろ?俺大ピンチじゃね?どうやって行けと?」

 

彼は一時思考が止まった、ゼンマイが止まったブリキのオモチャの様に

 

「待て落ち着け俺..まだ焦るような時間じゃない、こうゆう時こそ焦らず冷静にだ」

 

フゥーと彼は一呼吸置き、冷静に物事を考える。

 

「まず助けは来ない自力でやるしかない、そしてこの場所は明らかに人の手が入っていない獣道、野生動物に注意する事と、そしてこの木々を見るに、定期的にこの場所は吹雪が来る、さっさと離れるべきだな..」

 

そう言って暫く歩み出したがそう上手くはいかない、何処に行っても同じ景色正直何処を歩いているのか分からなくなり、気づけば月が登っていた。

 

「クソ...アレが使えれば」

 

彼は苦虫を噛んだ様な表情をしながら悪態を付く、とその時ガサッという音が茂みから聞こえた、彼は咄嗟に腰に掛けていた銃を抜く

 

「!この感覚...明らかな敵意....何か来る」

 

その何かが茂みからサッと姿を表す、巨大な体躯を持ち、鋭い爪と犬歯そして獲物を狩るために発達した筋肉と、猛々しく風格のある遠吠え

 

「コイツはホルケウ....狼種の中で最も強いと言われてる狼..滅多に人前に出ないのに、何故だ?もしかしてテリトリーに入ったのか?だがコイツらは山の頂上の方にテリトリーがあるはずだ、だから山神と言われているんだ、おかしい、何かおかしい」

 

男は冷静に状況を分析していたが、ヴヴヴッと歯をむき出しにしながら既に戦闘態勢に入り、次の瞬間襲いかかってきた、男は身を翻し、リボルバーを空に向けて発砲する、パーンという乾いた音が辺りを木霊した、それでも怯まずこちらを睨んでくるので、今度は足元に発砲するがそれでもこちらを睨み続ける。

 

「....やるしかないか」

 

男は銃の照準をホルケウの胸に置き引き金を引くが

 

「なに!」

 

そこにはもうホルケウの姿は無くかったが、次の瞬間脇腹にドンという重い衝撃と共に男は木に叩きつけられた

 

「うぐっあッ...ガハッ、クソッなんてスピードだ...一瞬で死角から横に回り込んで来たのか....今の状態の俺が真正面から戦って勝てる相手じゃなかった..本当は体力を使うから使いたく無かったが....そんな事言ってる場合じゃない!」

 

男はホルケウに向かって接近し魔術を起動した

 

【吼えよ炎獅子】黒魔 ブレイブ・バースト

 

炎の塊が唸りを上げながらホルケウに迫るが、間一髪の所で避けられ後ろの木が爆炎を上げた。

 

「...はぁ..はぁ..今の俺は唯の軍用魔術一個の詠唱でこのザマか..」

 

男は肩で息を吸いながら、地面に手をついた、それを奴が見逃すはずもなく、喉笛を食いちぎらんばかりに飛びかかってきた。

 

「それを待ってたんだよ」

 

男はニヤリした、空中では身動きが取れないからだ、故に避けることができまない、男は銃を腰ら辺まで下ろし、ズドガン、ズドガン、ズドガンと3連発した。二発は奴の強靭な肉体に弾かれたが、一発は確実に胸元に命中した。しかしホルケウは構わず突撃してきた。

 

「おいおい、マジかよォォ」

 

ホルケウは首筋に噛み付いてくる、間一髪の所で銃をホルケウの口に咥えさせる事に成功したが、馬乗りの様な体勢になりがっちりホールドされている。

 

「クソがァァァァァ!こんなとこで死んでたまるかぁぁぁ!」

 

そう叫びながら一心不乱に殴る蹴るなどをしても、びくともせず、以前危険な状況であることは変わりない、まさしく絶対絶命だが、その時別の方向からウォーンという少し幼さが混じる甲高い鳴き声が響き渡り、ホルケウは男を襲うのを辞めてそれに共鳴する様に天に向かって吠えた、その姿はまさしく山神、死にそうになりながらも見慣れてしまう程だ、そしてそのままホルケウは遠吠えの方向に駆けていった。

 

「助かったのか?ぁあー死ぬかと思った、強すぎだろあの狼...いや今の俺が弱すぎるのもあるのか...力が全然戻らない」

 

男は安堵した同時に落ち込んだ、いくらホルケウが狼種の中で強いとは言え、いってしまえば唯の狼、それに手こずったのだ。言い訳をするのならば彼は少し嫌かなり特殊な転移をしたせいで、体に異常が発生し本来の力の2割も出せていない、加えて複雑な事情のせいで、魔術師として1番の生命線である左手が使えないのである、これでは魔術師としては死んだも同然だ。《もう一つの力も上手く使うことが出来ない》

                                 

「フウーさっき馬乗りにされた時、激情とは別に子供への愛情を感じた、あれは間違いなく子を思う親の感情だった...そうか!こんな山の下降方面に現れるはずがないのに奴が現れた原因は子供を....探していたんだ、そして人間にあそこまで敵対心剥き出しだったのは恐らく..どっかのアホが奴の子供を奪ったからだ..んで吠えた方向に一目散に向かったってことは、そこに奴の子供とそれを攫った人間がいる可能性が極めて高いな、このまま迷うくらいなら、そっち向かった方がマシかもな...本当ならこれ防寒魔術維持しながらやる自信ないから、マジで使いたくないけど...しょうがない、寒いくらいは我慢するか」

 

そう言うと男はくるりと方向を変えシュトロムと言われる魔術を用いた技術を駆使しながら一気に駆けて行った

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

雪山を飛ぶように駆ける駆ける駆ける凍る地面も木々も関係ないと言わんばかりに。とその時山の上で乾いた銃声がいくつも響いた

 

「.遅かったか、だからと言って行かないわけにも行かないが」

 

そう言って男は雪山を駆けるが、だんだん銃声が悲鳴と共に小さくなっていく山の麓についたが、そこは大量の血痕と死屍累々といえるほど屍の山、外傷は首を噛み切られた跡と鋭い爪で引き裂かれた跡が多くあった、そして血痕はキャンプの奥へと続いていた

 

「生命を感じる、、まだ誰か生きている!」

 

そう男は言うとキャンプの奥へ走り出す、その奥にいたのは子狼を人質にとり銃を向ける手負いの男と、銃痕だらけで傷から血が溢れ出し今にも力尽きそうな、先程対峙したホルケウがいた。

 

「畜生仲間を何人も殺しやがって!そこから動くんじゃねえぞ雌犬野郎がこいつの頭が飛ばされてもいいのか!!クソ泣くんじゃねえ!」

 

緊迫した状況、手負いの男は今にも発砲する勢いだ、ホルケウは今にも倒れそうだが、我が子の叫びでなんとか意識を保っている状況だ、俺は急いで木の陰から身を出しこう持ちかける

 

「やめろ!その子狼を離すんだ!!そうすればこいつは離れる!!」

 

「誰だ!てめえいきなりしゃしゃり出てきやがって!状況みたら分かんだろ!てめぇ頭沸いてんのか!」

 

男はそいつに手を上げながらこう続ける

 

「俺はアーサー、アーサー=モーガンだ!少し旅をしているものだ!俺もさっきそいつに襲われた!だがそいつは普段人を襲わない襲うのは理由がある!お前らの誰かがその子狼を攫ったんだろ!!その子を離せばその狼もこの場を去る!」

 

「何を根拠に言ってやがる!例えこいつを手放しても、あの狼が襲ってこない確証がどこにある!!」

 

「その狼は頭のいい種類の狼だ!目的を果たしたら帰って行く!わざわざ互いに手負いの状態で殺し合うような不毛なことをしない!」

 

「ああそうかよ、知ったこっちゃねえ」

 

そういうと手負いの男はホロケウに向かい三発発砲した、ホロケウはその場に倒れこみ、子狼は悲鳴のようにキャインキャインと手負いの男の腕の中で泣き叫ぶ。

 

「....」

 

「あん?なんだよしょうがねえだろ、こっちは殺されかけたんだ、いきなり出てきた人間の言葉なんて信用できるわけないだろ」

 

「...確かにそうですね、貴方の言ってることは至極真っ当です、その子狼はどうするんですか?」

 

「殺して毛皮にでもするさ」

 

「その子は関係ないでしょう」

 

「んなこと関係ない、それよりここまで首を突っ込んだんだ、物や死体を片付けを手伝ってもらう余った物資とかはお前にやる」

 

「.わかりましたお手伝いします」

 

そう言うと二人はキャンプに戻り散らかった物資を片付け、死体を弔い火葬した

 

「終わったな、助かるよ...仲間を弔うのを手伝ってくれてよ」

 

「最後に一つお聞きしたのですが、これは何でしょうか?先ほどこのような袋を見つけまして」

 

 

アーサはあるものを投げ捨てる、そこにあったのは、このような男には分不相応な金の王冠や大量の宝石が入っていた。男はそれをみた瞬間は暗く低い声色をしながら、アーサーを睨みつける

 

「お前...知りすぎたな、殺さないといけなくなった」

 

手負いの男は撃鉄を上げ引き金に指をかけ標準をアーサーに向けた

 

「動くなよ、動いたら楽に死ねないぜ?」

 

そんな脅し文句を吐くが、アーサーは気にせず立ち上がりこう一言口を開く

 

「やめておけ、銃を下ろしたほうがいい」

 

男はその言葉を鼻で笑う

 

「お前何言ってんだ?ww武器も構えてないのになんでお前の言うことに従わなきゃいけないんだ?」

 

「通じなかったか?お前の国の主要言語で喋ったはずだが?」

 

アーサーは男を馬鹿にするように挑発する、それに頭にきたのか男はアーサーに向かって引き金を引こうとするが...

 

「引き金が...引けない...指が動かない、いや違う体全体が動かない...てめぇ俺に何をしやがった!」

 

アーサーは手をかざしながら、こう答える

 

「《フォース》だよ..いやあんたらの知ってる単語で行くと魔法って言うべきか?」

 

アーサーのもう一つの力...フォース万物を操る目に見えない神秘の力、魔法とも呼ばれる、世界と自分自身を繋げる、原初の力..それを解放したのだ。そしてアーサーは男に向かい力を込める様に手を押し出す、すると男はいきなり何かに吹き飛ばされる様に木に叩きつけられ、奴は自分に何が起こったのか理解できず痛みに悶えながら問い詰める

 

「てめぇ...何者だ!」

 

「俺はジェ...ただの旅人だ」

 

「クソガァぁぁぁぁぁ」

 

叫びながら銃を構えるが、次の瞬間銃は男の手から離れアーサーの手の中に収まる、何をしたんだと言う顔をする男に向かって、アーサーはこう口を開く

 

「《フォース・プル》っていう技だよ...さてとこれでお前の武器は無くなった、最後の警告だおとなしく降参してくれ目的以外で俺は人を殺めたくない」

 

アーサーがそうやって降参しろと促すが、それを無視するように男は気味の悪い笑い声を上げながらあるものを出してきた

 

「ヒヒヒ、なあお前隷属刻印って知ってるか?さっきあの子狼と無理やり契約したんだよ、お前あれにエラく気をかけてたよな?俺の言ってる意味わかるよな?あの子狼を殺されたくなかったら銃を下ろせ、そして俺に渡せ!」

 

アーサーは手を男に向けながらで自分の手の甲見てみなと言った

 

「嘘..だろ?」

 

「これもフォースの力のひとつでね、どんなものでも構造が頭に入っていたら魔術であろうとなんであろうと解除できる、まぁ流石に戦闘中とかには使用出来ないが...でもそうやってお前がペラペラと喋っている間に悪いが解かせてもらった」

 

男は戦慄した契約紋が消えているのだ、、そしてこれは自分の引けるカードを使い切ってしまったということになり、男は助けてくれと命乞いをし始めた、ほんの魔が差しただけなんだと、だがアーサーはそれを無視するように男に接近しひたいに向けて引き金を引く....フリをして、男に渾身の右ストレートを食らわせた、男は地面に力なく倒れ込んだ。

 

「ふぅー終わった...疲れたな...にしても奴に対する怒りからかまたフォースが使える様になるとはな...本当は恥ずべき事なんだが...今は素直に喜ぶべきなんだろうか..んな事よりあの子狼どこだ?」

 

そういって辺りを探すがどこにもいない..まさかと思いキャンプの奥の方に行くと、自分の母親の顔を舐めたり、足に噛み付いてあの手この手で必死に起こそうとしている子狼を見つける

 

「....すまない俺があの時...あの男を撃てばキミの母親は助かっていたのに...俺にはそれができなかった...許してくれ..」

 

暫くすると子狼はもう自分の母親はどうやっても起きないと悟ったのか、悲痛な叫びに似た遠吠えを上げた、アーサーはそれをみてひどい罪悪感を感じたのかフォースを使い子狼に語りかける

 

《...一緒に来るか?》

 

最初は死んだ母の元から離れたくないのか拒絶したが、このままだと野垂れ死ぬぞと語りかけると渋々ながら後ろについてくるようになった。キャンプから使える物資を持てるだけ持ち、盗まれた盗品とさっき気絶させた男をソリに縄で動けないようにくくりつけ地図を見ながら街に向かって下山する、暫く歩くと時間とは早いもので朝日が登ってきた、それをみながら心の中であることを強く誓う。

 

(例え様々な人間が死のうと、この子の母親が死のうと、自分が死のうと、朝日は昇り世界は回り続ける、だから俺は生き続ける残り短い命を使って、使命を果たすまで...)

 

そう誓い歩み続けるのだった...

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アーサー=モーガンのプロフィール

身長180センチ、体重85.5キロ、魔力容量:1356.MP魔力濃度:150AMP
出身地:不明 

趣味:本を読み音楽を嗜む他に、筋トレしたり、生物の生態や街の風景をスケッチすることを好む

特技:子供の頃様々な場所に飛び回ったため語学が堪能、落ちたコインの音で何リルかクレスか当てれる

性格:基本的に温厚で気さくな一方で激情に駆られやすく歯止めが効かない事がある、基本的に自分から積極的に話したりするタイプではない為友達は少ないが、友達になった人はすごく大切にし自分の身を呈してでも命をかけてでも守ろうとするタイプである。










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プロローグ 街にて

感情はなく、平和がある。
無知はなく、知識がある。
熱情はなく、平静がある。
混沌はなく、調和がある。
死はなく、フォースがある。

引用 ジェダイコード


そこはまるで、白銀のような雪が降り続け、気温は氷点下までいく寒冷地帯、ラマード共和国の特徴的な気候の一つだ、そんな中、一人の男と小狼が、砕氷するかのごとく勢いで降って、、いや滑っている

 

「やっべぇぇぇアカンアカンこれ絶対死ぬ!!雪山舐めてた!!このままだと滑って死ぬ!!嫌だこんな最後!いや待てこの俺アーサーモーガンがこんな些細なトラブル抜け出せなかった事などない!なんとかなぁぁぁぁ」

 

そんな事を大声で叫びながら山の降っていく、その勢いはもはや低空で飛んでいるようだ、こんな中では上手く魔術が使えないが、フォースなら使える、アーサーは咄嗟にフォースを使い木を引き寄せようとするが、力加減を誤ったのか、あ、という声と共に、大樹が丸々アーサー後ろに飛んできて、事態はさらに悪化、小狼には何したんじゃ我という目で見られる始末、何という体たらくだろうか

 

「クッソこのままじゃ、先の崖から真っ逆さまだ!こうなったらなんとか起動してくれよ!《三界の理・天秤の法則・律の皿は左舷に傾くべし》」

 

黒魔 グラビティコントロールを三節詠唱で起動し、大樹の上に登り小狼をフォースで引き上げるそして、アーサーはその場から動かずフォースを体の中に集中させる、そして崖から落ちると同時に、飛んだ!そのジャンプ力はフィジカルブーストの比では無く、人外レベルのそれであった、そして落ちると同時にフォースプッシュを地面に向かって打ち勢いを消しながら小狼を勢いを消しながらキャッチ、その後飛んできたソリに括り付けた物資と宝石強盗に関わってたであろう男をフォースでキャッチした。

 

「はぁはぁ....危なかったまさかクレバスみたいな場所に落ちて、その後山から滑り落ちるとは思わなんだ....でも結果的には時間短縮になった..」

 

そう言うアーサーの目の前には白く輝く美しい街がそこにはあった、街は雪で装飾されているかのようで、街の至る所にある街頭も実に外観を引き出しているように感じる

 

「美しい町だな、何処か部屋でも借りてスケッチでもしたいところだな」

 

そんな事を漏らしているが、アーサーにはそんな街並みを描いている暇は無かった、今やるべき事は、一つ!さっさとこの国から出る事、その為には乗り物が必要だ、この国は然程魔術が発展している訳では無く、転移魔術等は使えないのだ、その為、馬が必須なのだが、そんな物買う金も無く、盗むわけにも行かないので、この犯人と証拠物品を警察に引き渡し、金を貰うという魂胆だ!

 

 

----------

保安官事務社本部にて男がかなり大きい声で絶叫する

 

「はぁ!?こんだけ!?おいおい、おかしいだろ!こっちは命張ったんだぞ!」

 

「ここではお静かに、金額に関してはこちらが最大でして。」

 

「あ、ああすまない取り乱した、しかしいくらなんでも50は低すぎないか?100ドルは出してくれないと、こっちも困るよ」

 

50ドルはアルザーノ帝国で言うところの3クレス銀貨3枚分相当である、あの苦労にはあまりにも見合わない対価な為絶句するアーサー

 

「そう言われましても、規則は規則ですので」

 

「...わかりました」

 

そう言って保安官事務社を後にするがその顔は少し悪い顔をしながらニヤついていた。

そして次に向かったのは馬を売買している場所に行く、今まさしく今日一番であろう馬の競りをやっている真っ最中、男達は俺が買う!俺が買う!とアピールしていた、中にアーサーも飛び入り参加していた、もう金額は400を超えていたが気にせずこう言った

 

 

「800!!」

 

アーサーが自信満々に高らかに宣言した!場が静まりかえった、いくら良い馬とは言え800も出す馬鹿何処にいるであろうか?ここにいた、競を司会している男も何度も確認を取ったが、アーサー首を横に振らなかった。そして競りはアーサーの獲得で終わり、いざ契約に移った時、手持ちの金額と、ゴトっとある物を持ち出した。売り手側がそれを手にして驚愕する。

 

「これは...金の延べ棒ですか!?こんな物何処で!?」

 

「いや〜ウチの金庫から持ち出しまして〜どうですか?これでこっちに売ってくれますか?」

 

「ええ!!勿論!これ程のもの1200以上の価値があるものですよ!売らない訳ないじゃないですか!!」

 

とニッコニコの笑顔で交渉しているがこの金の延べ棒、金庫から持ち出したなんて話は真っ赤な嘘である、あの宝石強盗犯が持っていた、金と宝石の数々から三分の一くらい金をくすねただけである、宝石だと足がつくが、金であれば溶かして延べ棒にしてしまえば足は付かない為、街に来る前に、魔術を使って溶かして、延べ棒に変えたのである、何より金の延べ棒を受け取った側が面倒方になる心配をもない。仮にバレたとしても売った側は言い逃れできるであろうし、アーサーはもうこの国にはいない。

 

その後交渉やら何やらをした後、やっと馬を受け取る事ができた、芦毛の模様の美しい馬だ、アーサーその馬に名前を付ける

 

[お前の名前はそうだな...うーん、!この街のホワイトタウンの名前を借りてホワイトグリントだ、宜しくな!グリントは適当につけたけど!]

 

そう言うと、小狼が何か言いたそうな顔でこっちを見てくる為、お前も名前が欲しいのかと言うと、そっぽを向きながら付けたいなら勝手に付ければみたいな雰囲気を醸し出す、そうだな...シンプルにウルフでと言うと、不満だったのかかなり勢いよく噛み付いてきた。

 

そして急いで荷物を詰め込み、その街を脱獄でもするかのような勢いでグリントを走らせる、これから2年の長い旅が続くがその話はまたいつかするとしよう。

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




旅の話はまたいつか番外編でお送りしたいと思います!物語の本筋にあまり関わらないので!ではまたいつか!!


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魔術学院入学前
リアルな金銭事情


確かに、俺は腰抜けだった。だが恐怖よりも強いものを知った。遥かに強いもの、フォースだ。その強さを今見せてやる

引用 名もないジェダイ


アルザーノ帝国。北セルフィード大陸の北西に位置する、冬は湿潤し夏は乾燥する海洋性温帯気候下の地域に国土を構える、豊かな帝政国家。

その南部にはフェジテと言われる巨大な都市がある。フェジテの特徴は何よりアルザーノ帝国魔術学園が設置されたこの一点に尽きる、この都市は学園と共に発展したと言っても過言では無いのである。そんなフェジテにアーサーは約二年旅しながらやってきたのだ、道中様々な事があったが、それはまたいつか話すとする、やはりというか当然というか、二年の月日もあればあの小狼...ホロケウ事ウルフは成獣と言っても過言では無いほど大きくなった、最初はあんなに小さかったのにここまで大きくなるとは感慨深い物を感じたが。

 

「ぶっちゃけ今そんな事考えてる余裕がない...どうしよう....学費を完全に舐めてた、ていうか帝国物価高すぎじゃね?いや俺の感覚がバグってんのか?」

 

そう今一番ピンチなのは学費などの金が絡む問題であった、入国審査やアルザーノ帝国国籍を取る事自体は難なく行く事ができた、国籍は一週間くらい審査が必要で面倒くさいが我慢した、そしていざアルザーノ帝国の入学説明会!と意気込んで行った、最初こそ授業はこうゆうのをやって〜やら長ったらしく学園の良い所紹介などをした後学費の話をされアーサーは思わず目を疑う、入学金だけで[50リル5クレス]4年間の学費は[800リルかかるときた]※(日本円で合わせて800万越えだと考えて下さい)

これを一階の人間が払える額な訳も無く、なくなく帰ろうとするが最後に特待枠は奨学金が出るという事を聞いて耳を立てる。

 

「私達の学園では成績優秀者に特別奨学金が出るシステムになっていますので経済的に余裕の無い方でももしかしたらがあるので、最後まで諦めずに頑張って下さい」

 

そうゆう事を聞き、過去問やワークなどを買ってきて早速勉強に取り掛かるが、今までやってきた所が専門的な分野ばかりやってきたせいか、魔術分野は完璧なレベルだが、考古学や歴史、数術に関してはボロボロ、百点満点中合わせても40もいかない悲惨さ、それを残り2ヶ月弱でボーダーまではいけるだろうが...特別奨学金対象者にはなれないだろう。

 

「今俺の手持ちは200リル半分くらいしか無い、困った...実に困った、奨学金を借りるか、なんかしないときつい...こうなったらフォースで不正...いややめておこう」

 

フォースマインドでも使えばいくらでも不正できると思うが...フォースを利己的な目的のみに使用するのはあまり褒められた事では無い為断念した、入学自体はできるであろうが、その後の学費が問題なのだ、アルバイトだけで稼げるものでも無い、ウルフやホワイトグリントのご飯代この部屋の家賃もあるのだ、やるとしたら勉強そっちのけで、働かざるを得ない、このままではかなりヤバイ

 

「クッソ!ええい!こうなったら、どっかに住み込みで家賃とか光熱費とか諸々負担してくれる場所探すしかねぇぇぇぇ!」

 

思い立ったら即行動、アーサーは求人募集中の物を血眼になって探しまくり、好条件高待遇の場所を探すが、そんな都合の良い場所は無く、ただただ時間だけが過ぎていき、そしてとぼとぼと帰路につくが....途中で道に迷った、だが時間もあるし、街の事をもっと知るのも悪く無いと思い、とりあえず進んでみることにした。

 

「あれ?ここ何処?なんか怪しい物一杯だな...」

 

アーサーは気づけば闇市にいた、闇市といえば非売品や骨董品珍しい物品が大量にある、ここも同様であった、そしてこうゆう場所には情報屋がいるってのがお決まりだ、もしかしたらがあるかもしれないと踏んだアーサーは情報屋を探しに辺を探ったら、人に聞いてもそう簡単に出てはこない

 

「そう簡単に見つかる訳ないか...探すだけならフォース使ってもいいよね?うん、多分大丈夫だ、使おう」

 

そう言って自分を正当化した後、ふぅーと息を吐き、集中する、そして目を瞑り、何か悟りを開いたかのようにじっとしている、と思ったら、何かを感じ取ったのか、導かれるように、手をかざしながらゆっくりと進んでいく、一見すれば異様な光景だ、目を瞑り手をかざしながらゆっくりと進んでいる人間、そんな物を見たら人々は注目するであろうが、そんな事は無くまるでそこに元々あった物のように、当たり前かのように、横を通り過ぎて行く、暫くすると路地裏で足が止まり目を開ける、そこには40代くらいに見える、小汚い服を着た物乞いの男がいた。

 

(こいつがそうなのか?唯の物乞いにしか見えない)

 

そう思っていると、それを感じ取ったのか物乞いの男がこう口を開く

 

「お前さん、人を見かけで判断してはいけんぞ」

 

「失礼、大変無礼な事を言ってしまっ....あれ?口に出ていましたか?」

 

「いんや、なんとなくわかるよ、まぁお前さんは口に出さないだけマシな方よ、此間のやつなんて最初から罵倒してきたからなハッハッハまぁそいつには首を突っ込んだら死ぬような情報を掴ませておいたがなハッハッ」

 

男は取ってつけたような笑い声を上げ、そしてすぐさま切り替え仕事の話に移る、その異様な雰囲気の男に要件は何だと聞かれ、アーサーは、そいつに金を払い仕事の条件を答えると、男はまた笑い声をあげる。

 

「ハッハッハッ、そんな高待遇の場所ある訳ないだろ、あるとしたらルチアーノ家の配下にでも着くんだな笑」

 

「ルチアーノ家?なんですかそれは?」

 

「知らないのか?裏社会のボスだぜ?この闇市を仕切ってるのもルチアーノ家の連中だぜ?まぁでもそいつらが守ってくれてるおかげで変なチンピラとかに絡まれなくて済むけどな」

 

ルチアーノ家は裏社会のボスらしく、裏の世界で彼らの名前を知らない人間はいないと言われるほどで、その力は絶大であり、この国の女王陛下に忠誠を誓い、代々伝統的に騎士の称号を与えられ、帝国最高決定機関たる円卓会にも席を持つ大家らしい。

 

「それってつまり、マフィアとかそっちの部類の人間ですよね?」

 

「あぁそうだな、それがどうかしたか?」

 

「いやいやいやいや、流石にそっちの世界にはいけませんよ!!」

 

情報屋曰く、マフィアにでもならない限り、そんな高待遇の働き口はないらしいが、個人的にマフィアにはいい思い出が無いため絶対にそっちのお世話になるのはごめんである、何より一番の問題は、自分の目的に集中する事が出来ないのだ、その為他に何が無いか聞いてみるが、男は困った顔をしながら、少し悩んだ後、苦虫を噛むような顔である提案をしてくる。

 

「一つだけある、街外れに腕の良い加冶屋が名前はハンクって言ってな、そこに弟子入りすれば良い、だが一つだけ問題があるそいつは堅物の極みのような奴なんだ..曲がった事が嫌いでな、顔の怖さも相まって、あそこに住むやつの恐怖の対象になってるんだわ、だが良いやつなんだ凄くな」

 

アーサー二つ返事で行きますと承諾し、情報屋に感謝の伝え、急いでその場から去る、鍛冶屋はフェジテの東の外れにポツンとあるらしいがもう夕暮れ時、そこまで行けば夜になるだろうと考え後日きちんとした格好と菓子折りを持ち尋ねることにした。

 

 

 

--------

後日、ピシッとした正装でグリントに跨り菓子折りを荷台に詰める、その顔はまるで死地にでも行く兵士かのような面構えだ。窓からはではクーンと言う鳴き声と共にウルフがこっちを見ている。

 

「悪いなウルフお前は留守番だ」

 

理由は単純、コイツはよく色々な場所にマーキングするからだ動物の本能だ仕方がない、だがもし加冶屋の方の工房などでされたらたまったもんじゃ無い、粗相がないように仕方なくだ。

 

「ふぅーよし行くか!」

 

緊張した面持ちで、グリントを走らせる、市街地な為、スピード厳守だが、歩く人達がこっちをみるくらいには飛ばしている、事前に地図を読み把握していた為、最短ルートも頭に入っている、後はそれを実行するのみ、ギリギリ走れるような道幅だろうがお構いなしに、地面を蹴り飛ぶように走る、馬と男その姿はまるでレースでもしているようだった。

 

20分もしないうちに、東地区に入る事ができ、あと少しで着くと言うところで、突然近くの銀行でズドンという銃声とキャァァァァと言う声が辺を木霊した、銃声の方向からは悲鳴と共に人がなだれ込んでくる、アーサーは一度道の端でグリントから降り、何かあった時の為用意していたガンベルトを腰に装着して、銃声が聞こえた方向に向かう、アーサーは人々の恐怖を感じとり、バレないようにチラリと窓から覗くと、するとそこには、人質数名と覆面を被った、何かの作業着のような服を着た3人組の強盗がいた。

 

「自動小銃か..()()()だが一端の犯罪者にしては良いものを持ってるな...これは何か裏にいそうだが、まぁ良い、ここはさっさと...あん?何やってんだあのオッサン」

 

アーサーの目に写ったのは、30代半ば程だろう男だ、身長は高く、体はガッチリとしていて顔立ちは整って見えるが、眉間の皺と、ナイフのように鋭利な目つきのせいで台無しだ、頬には何か鋭利な者で切られた後がくっきりとあるそんな男が、強盗に占拠されている店に普通に入って行ったではないか、しかも普通に受け付けは何処だ?どれくらい待てばいい?と言う始末、強盗集団は笑っていた、アーサーはあまりの出来事に頭の中がフリーズしていた。

 

「おいおい、案内する順番の番号くらい渡してくれたって良いじゃないか?ねぇお前ら?」

 

男がそう言うと、強盗集団の一人が笑いながら銃口を男に向ける

 

「何言ってんだオッサン状況見えてないのかw腹いてぇ〜、まぁいいやそこの人質集団の中に入れよ」

 

「人質?なんの話をしている」

 

なんとそこにいたはずの人質が忽然と消えているでは無いか、アーサーも強盗集団も気づかなかった、あったのは微かに魔術を使用した痕跡のみだった、あの一瞬で転移系の魔術を発動したというのか!そんな事が可能なのか!とアーサーが驚愕していると、今度は男が強盗犯に警告する。

 

「これは警告だ、その銃を下ろしてさっさと降伏しろ、従う意思を示さなければ....わかるよな?」

 

底冷えするような声色と恐ろしい殺気を帯びる男に、強盗犯は後退りするが、一人が半狂乱になったのか小銃を男に向かって発砲する。

 

「こここ、こっちは今まで綿密に準備してきたんだ!今更ひけっかよ!それに相手は一人で俺達は3人!それにこっちは最新の小銃も持ってんだよ、負ける訳ねぇ!」

 

それに感化されたのか一斉に男に牙を剥く、これは不味いと思ったアーサーは窓を破り一回転しながら回転式銃を二発発砲する、一発はハズレもう一発は手の甲を貫く、強盗犯は悲鳴を上げながら銃を乱射しながら倒れる、つくづく人質がいなくて良かったと思う、確実に犯人を射殺しなければ、跳弾した弾が人質に当たっていた可能性があった。そして男の方は、近くにいた強盗犯を流れるような動きで近距離格闘術を繰り出し、戦闘不能にすると、共犯者がテーブルの向こう側から銃を乱射してくるので。射線が切れる柱に隠れ魔術を詠唱する、すると近くに鏡のような物が浮遊したと思うと、一節詠唱で軍用魔術の《ライトニングピアス》を起動する、そして鏡に反射し共犯者を貫いた。

 

(錬金術の鏡を用いた高いテクニックこの人は一体...)

 

「てめぇ....なにもんだ..,」

 

強盗犯がそう吐き捨てると、男が真顔でこんなことを言った。

 

「通りすがりの黒トカゲ星人だ」

 

「はっ...なんだそりゃ」

 

男がそう言うと強盗犯の意識を失った。そしてその後くるっと体の向きを変え、アーサーの元にやって来た。

 

「キミ..さっきは助かったよ、外にいたのはわかってたから...窓側にいた敵を任せた、期待通りの仕事をしてくてありがとうな」

 

「あはは、気づいていたんですか..何か声をかけてくれても良かったのに」

 

そんな談笑した後、警羅隊がきて事件の処理と、人質が何処に行ったとか、犯人を二人で対処したのか、などの事情聴取された後改めて二人は自己紹介をする。

 

「私はアーサー=モーガンと言います、宜しくお願いします」

 

「俺はハンクという者だ、今日は助かったよ、仮が出来たな、俺のできることならなんでもするぞ」

 

「!?ハンクさん.,ですか?」

 

なんとアーサーは奇しくも、お目当ての人に出会ってしまったのだ、なんという偶然だろうか、いやこれもフォースの意思なのかもしれない。

 

「ハンクさん!俺を弟子として加冶屋の見習いとして雇って下さい!!」

 

「先程急ぎの予定が有ると言っていたが、まさか俺に弟子入りとはな..キミのような人材は是非とも欲しい...だがその前に俺に弟子入りするなら、あるテストをやってもらうよ、それに合格すればキミを弟子として見習いとして雇うとしようか」

 

「テスト...ですか?」

 

アーサーがそう聞き返すと、ハンクは少し笑いながら、これを作ってもらうと、ナイフを取り出してきた。

 

「コイツを作ってもらう、14日以内にだ、やり方は一回だけ教えてやる、後は何も教えないからな、後やっちゃいけない事は調べることや魔術を使うこと、自分で考えて作ってみるんだ、期待してるぞ、因みに不正は一発でわかるからやるなよ」

 

そう言ってテストをするのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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鍛冶屋とは?

「自分が何を解き放ったか分からないだろう。死よりも遥かに恐ろしいものがあるのだ」

引用 暗黒面に落ちた者より


「フェジテの朝は冷えるな...霊脈の影響もあるんだろうけど」

 

アーサーが息を吐きながらポツリと呟く、フェジテは霊脈の影響で冷える、そして今は冬のため尚更である、そしてアーサーはグリントの手入れや、ウルフの世話をした後、工房に入る、本日からナイフを作るテストがある為準備をするのだ

 

「作ったには作ったが....曲がってたり、刃がかけていたり、脆かったりと散々な出来だったしな...」

 

そうアーサーは師匠ことハンクに一度だけ手解きを受けたが、出来は散々、分からない所をハンクに聞いてもヒントを教えてくれるだけで後は自分の頭で考えろと言った感じだ、だが正直そのヒントもわかりづらいと言う始末、これが二週間以上続いている為、アーサー自身もだんだん苛立ちを見せる。

 

「あの独身オヤジめ.,..魔術とか錬金術禁止にしやがってそしたら一瞬で終わるのに..つうか大体ヒントわかり辛いんだよ..なにがこう手でギュッとしてバビュッと行けだよ!擬音多すぎやろ何言ってだか全然わかんねぇ!最初冗談かと思ったわ!」

 

そうハンクはあまりに教えるのがヘタクソだったのだ、彼自身が天才型だった為か、全て感覚的かつ一部の技術をできる前提で話すし、擬音が多すぎる為何言ってるのか分からないのである、そしてアーサーはあの情報屋の事も愚痴り始める。

 

「つうかあの情報屋騙しやがって!何が堅物だよ!対義語レベルじゃねぇか!堅物が昼までガーガー寝て、酒浴びるように飲んで、女とっかえひっかえするかよ!そりゃここで長くやる人いない訳だわ!つうか銀行強盗対処してる時に気づくべきだったァァァァァ!普通強盗がいる所に真正面から普通に入っていく奴がまともな訳なかったぁぁぁぁ!」

 

これがアーサーの不満を最高潮にしている原因、それがハンクの自堕落すぎる生活だ、頻繁に工房を出ては、女遊びや、ギャンブルなどをした後酒を浴びるように飲み、ベロンベロンになって戻ってくる、、女を数人引き連れて、そんでその接待をさせられたりした、これでまだ金が貰えるなら良いのだが、見習いの期間はお金が出ないと口約束ながら言われ、それに承諾してしまったのだ、それを逆手に取られこれだけやっても金が発生しないという異常な事態が起きているのだ。

 

「何よりタチが悪いのは仕事を全て終わらせてそういう事するせいで言おうにも言えないんだよな...クソ...まぁでも衣食住は全額負担してくれてるし、感謝もしてるんだよな...なんだが複雑な心境だ」

 

そんな事小声で呟いていると後ろからザッザッという足音がしてバッと振り返ると、噂をすればなんとやら、ハンクが立っていたのだ、アーサーは少し皮肉混じりにこう言った。

 

「おはようございます、今日は珍しく昼までお休みになってなかったのですね」

 

「ふぁー、まぁな今日はやる事があるからな、ナイフのテストが終わったらすぐ次のテストやるからな、少し遠出するなぁーに何か作る訳じゃねぇから安心しろ」

 

「何処へ行くのですか?」

 

「それはまだ教えない、まぁそんな楽しい事じゃあねぇぜ、んな事よりさっさと作れ見てやる」

 

何が一抹の不安が脳裏をよぎるが、今はナイフを作る作業に集中する、すぐに作業に取り掛かる、まず刃の材料となる鋼を金具で抑えながら、炉に焚べる、金属は高温で熱すると形を変えることができるのでこれをやる必要があった、その後炉から取り出して、金槌で熱した鋼を叩きつけ、形をナイフの形に変えていく、そこから鋼を冷やす、加冶屋の仕事は荒々しく鋼を叩きつけるイメージがあったが、実際そうではなく、緻密で繊細であり、頭の中で色々考えて作業しなくてはならない、この過程一つとっても一流と素人では雲泥の差だ。

 

「よし....出来た...後は予め掘っておいたナイフの柄にハメたらっと...よし!これで完成!」

 

少し歪みがあるが、今まで使ってきた中では良い方だ、ハンクはアーサーの作ったナイフを手を取って....ヒュッと音を立てながらナイフを自分の指に向かって斬りつけた!

 

「な、何をやっているんですか?」

 

「切れ味を確かめただけだ、だがまだまだ作りが甘いな、俺の指一本もまだ落とさないか...」

 

「....てことは....不合格....でしょうか.,.」

 

アーサーが酷く落ち込んだ顔になると、ハンクがにこっと笑いこう言い放つ

 

「合・格 っ!」

 

「え!マジですか!」

 

「そりゃまともに教えてなかったのにここまでやったんだ合格に決まってんだろ、それに俺が見たかったのはナイフなんかの出来じゃない、俺があええ自堕落な生活を演じてお前の忍耐力を見たかったのと、俺の言った魔術を禁止したルールをしっかり守ってるかどうかが見たかったんだ」

 

そう初めからナイフなんかの出来で判断はしなかった、見たかったのは忍耐力と言いつけを守れるかどうかであった、これにはしっかりとした理由があり、忍耐力が無ければいくら卓越した才能があろうと辛抱強く作業をしたりする事ができず大成できないのだ、言いつけを守る事は約束を守る事に直結する、これは鍛冶屋云々だけで無く人間生活に直結する為、こう言った人間的な側面も見たかったのだ。

 

「よし、じゃあテストも終わった事だし..次のテストだ...」

 

「確か私も付いていくんでしたよね?」

 

「そうだ、話は道中する、武装して来いよ」

 

そう言ってハンクは工房をでる、アーサーは部屋に戻り、何故武装を?などと思いながら服を着替え、ガンベルトを装着し回転式銃の6連式銃をホルスターにしまった。外には二丁の回転式銃を携え背中にはショットガンを背負った強面な男が立っていた。

 

「完全武装ですね、まるで何処かにカチコミにでもいくようですね」

 

「ボヤいてないで、早く馬に乗れ、急ぐぞ」

 

二人は馬に跨り、駆けていく、凄いスピードで、街角を曲がった所でアーサーが何処に行くのか何をするのかを聞いた。

 

「そろそろ教えて下さいよ、何をしに行くんですか?」

 

「此間、銀行強盗があったろ、アイツらに新型の武器を売った奴らがいる、そいつらを潰す。」

 

「え、は?、マジですか?鍛冶屋が裏社会の人間ぶち殺しに行くとか聞いた事ないんですけどボクゥ」

 

「今からフェジテの下水道に行くぞ、そこに入り口があるって話だ」

 

「スルーかよ!ていうか、んな話何処で知ったんすか」

 

「そりゃ街で酒飲んでる時に情報収集したよ、女とかにも聞いてな、怪しまれないように酒飲んで、遊んでるフリまでしてな」

 

なんとあの自堕落な生活は演技であり、情報収集の為にやっていたらしい、しかしここまで情報を持っているなら警邏庁にでも任せればいいが警邏庁の上の連中にその犯罪者グループと繋がりがある人間がいるらしく、動く事が難しいらしい。

 

「そいつらって半グレなんですか?それとも」

 

「ギャングだな、それも今急激に勢力を伸ばしてる、奴ら金になるならはなんでもするらしいからな、子供に薬を売ったり、武器の横流し、

裏では子供の人身売買と異能者の臓器などを売ったりしてるらしい...ゴミクズの役満みたいな事をしてる連中だ」

 

そう言って一度止まりアーサーに資料を手渡した、そこで見たのは想像を絶するようなものであまりに言葉では言い表せない人道に背いた行いをしているのだ、アーサーは静かに怒りに燃え、こう静かに言い放つ

 

「...一網打尽に出来ますか?」

 

「あぁ今日はなにやらパーティをするらしくてな末端の構成員から何から何までくるらしい....」

 

「分かりました....そんな外道共に慈悲をかける必要は無い...地獄を見せてやる」

 

「でも忘れるな、恐らく囚われてる子供もいる、あくまでそっちの救助優先だ」

 

「わかりました」

 

アーサーは地獄の底から出るような声を出す、目は暗く澱んでいた

 

 

 

------

下水道を通り、隠れ道を通りやっと目的地に着いた

 

「お子様この先に奴らがいるんですか?」

 

「あぁそうだ...手を汚す覚悟はいいか」

 

「さっさとやりましょう」

 

そう言うと二人は銃をスッと取り出し、手に馴染ませる、撃鉄を上げてドアを蹴破る!そして近くにいた男の頭を容赦なく打ち抜きハンクがこう言った

 

「やぁ諸君、死ぬ準備は出来てるかい?」

 

それを皮切りに二人は会場にいた人間を容赦なく弾丸を浴びせる、あまりに想定外の事態にギャングは対応が遅れ、バッタバッタと撃ち殺されていく、二人は冷静に死角をお互いカバーしながらゆっくりと戦う、そしてギャングも反撃をしてくる、アーサーは遮蔽物を使いながら魔術を詠唱する。

 

「我・神に祈らん・主よ祖国を・救い給え」

 

C級魔術インフィニウムバースト 焔が半径15メトラを覆い、対象を焼き尽くす、室内戦においてかなりの有効打になら魔術だ、それを使いギャングを焼き尽くした、そして仕上げに、ハンクがB級魔術プラズマフィールドを発動してこのフロアのギャングは全員消し炭にした、わずか2分の出来事だった。

 

「ふぅーこのフロアは終わりましたね、つうか、今のプラズマフィールドマジで危なかったんですけど、危うくこっちが消し炭になってんだんですけど!」

 

「んな細かい事気にすんなよ」

 

「細かくねぇわ!軍用魔術だぞ!普通に雷撃がこっちの方向飛んできてマジで心臓止まるかと思ったわ!」

 

「はいはい、じゃあ此処からは二手に分かれるぞ、お前は顧客リストを探して欲しい、俺は囚われてる子供達を探す、終わったらここで合流だ」

 

「話は終わって.....はぁー了解です」

 

二人は二手に分かれたアーサーは顧客リストを探すが、勿論まだ残党が残っており、戦闘しながら進む事になった。

 

「気配を感じる...やるか」

 

そう言って物陰から出て廊下を真っ直ぐコツンコツンと足跡を立てながらゆっくりと歩く、敵からしたら的でしかない、チャンスと思い潜んでいた敵が出てくる

 

「へへっ!バカめ!鉛玉でも食ってろ!」

 

そう言って数人がアーサーに向かって銃を乱射する、逃げ場もなければ遮蔽物もない、言ってしまえば詰みだ、だが弾丸はアーサーを貫くどころか数メトラ先でピタリと止まった、余りに理解不能な光景に敵は唖然としていた、アーサーはフォースのテレキネシスを応用して弾丸を止めたのだ。

 

「お返しだ」

 

そう言って敵に弾丸をお返しした、阿鼻叫喚、フォースでドアも閉めていたのでどこにも逃げ場は無かった、そして全員が生き絶えた、その光景を見て、自分がやったとは言え、少しなんとも言えない気分になった。

 

「悪いな...」

 

人は簡単に死ぬ、明日は我が身かもしれない、だから戦闘中は一切の油断が出来ない、確実に命を刈り取らないといけないのだ、誰が相手だろうと、、そう言って歩みを進めた、そしてようやく幹部の部屋で顧客リストを見つけた

 

「これが.,.顧客リストか、こっちが帳簿か...ウッ...これは...やはり人間の皮を被ったクズだったか....」

 

その帳簿には何日に異能者を殺し、臓器を売買したか、また子供の売買やクスリなどをいつ売ったかなどを全て事細かに記録してあった、顧客リストにはそれを買った人間や、そこに売った人間などが書いてあった。

 

「外道共が...キッチリ全員地獄に叩き落としてやるからな...今はとりあえず合流地点に戻らないと」

 

走って合流地点に戻った、そこにはハンクの他に子供を数人と、囚われていた異能者の子供一人と普通の子供が10人ほどそして、成人男性と女性が一人ずついた。

 

「遅いぞ」

 

「すみません、そっちはそれで全員ですか?」

 

「あぁ...他は死んでいた...」

 

「そうですか...」

 

「お前顧客リストはちゃんと持ってきたよな?」

 

「ええ勿論、ついでに帳簿も持ってきました」

 

そう言ってその二つをハンクに渡した。

 

「よし、後は予め待機させていた奴らにこの子達を保護させて、俺達はさっさとこの場を離れよう」

 

「リストはどうするんですか?」

 

「宮廷魔術師の連中に渡す、そしたら一網打尽だろ」

 

「そうですね」

 

そう言ってアーサーとハンクはその場を去った、幸いにも地下のため騒ぎなどは起きず、帰りはすんなりと帰れた、家の玄関でハンクがアーサーにこう言った。

 

「約束通り、お前を弟子として向かい入れる、勿論給料も入る、後俺が魔術学院の学費を全額援助してやる、勉強に集中できるようにな」

 

「!?ありがとうございます!そこまでしていただけるなんて!」

 

「ただし条件がある!」

 

「条件?なんでしょうか?」

 

「それはお互い詮索しすぎない事...だ、俺はお前がなにを昔やっていたとか、何をするつもりなのかを深く詮索をしない、だから、俺の事も深く詮索しないでくれ。」

 

人には知られたくない事の一つや二つあるものだ、そしてこれはアーサーにも好都合だ、余りに良い条件アーサーはこれを承諾した、アーサーはその夜、夜空を眺めなていた、アーサーがここアルザーノにきた目的を今一度思い出していた。

 

「やっだ...やっとここまで来た..,マスター....やっと貴方との約束を果たせます....変えてみせます、必ず」

     ・・・・・・・

そう言ってアーサーは夜空を睨んでいた。

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次からは学園編です


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一学年編
入学式


フォースは我々を通し満たしている、現在にも過去にも未来にも、万物も時間も超越して.....





引用 不明








ここはフェジテという都市に存在する、歴史と伝統ある学園アルザーノ魔術学院、名を残した魔術師や学者の殆どはここアルザーノ魔術学園出身だ、今日はそんな学園の入学式がある日、新たな新入生を迎え学園に新たな1ページを刻む日、そんな日にこの男は....大寝坊をかましたのである。

 

「ァァァァァやっちまったぁぁぁぁぁぁ!!なんで寝坊したんだ俺ぇぇぇぇ、ぁぁぁ今日に限ってグリントいないし!ハンクさんも出掛けてるし!最悪!なんとか入学式に間に合わないと!やべぇぇ後5分で着くわけねぇぇぇぇ」

 

そうこの男、入学式でやらかしたのだ、原因は昨日例のギャング団の問題が完全に解決し、それを祝してパーティを開いた、久々にアーサもハメを外し、どんちゃん騒ぎをして楽しんだ結果がこのザマである、なんとも滑稽だ

 

「クッソ!!もう間に合わない!!だが入学早々目立ちたくない!!クッソ、もうこうなったらバレないように魔術とフォース使って、間に合わせるしかない!!」

 

ヤケクソである、いつもの冷静さは何処へやら、ありとあらゆる白魔術にありったけのマナをぶち込みんだ後、ありったけのフォースを四肢に集中させて.....飛んだ!地面は凹み周りには衝撃波が発生した!飛ぶ飛ぶ飛ぶ!アーサーは違和感を感じた、あまりに飛びすぎでは?と、そして雲を突き抜けた後に気づいた。

 

「ぁぁぁヤッベェぇぇまた力加減間違えたァァァァァ!!」

 

天空で木霊する馬鹿の声、そして叫んだ後真っ逆さまに落ちていく!だが不幸中の幸いか、アルザーノ魔術学院上空まで飛んだのである!

 

「よしやった!!力加減ミスったけどアルザーノ魔術学院まで一っ飛びだったな文字通り!!後は降りるだけ!」

 

ここでまたアーサーに違和感が生じる、、これどうやって降りればいいんだ?と、フォースは今全力で使った為直ぐには使えない、魔術は白魔術をガチガチに使った為、現在魔術を行使することができないカオスまで落ちている,....つまり今現在降下するで立てがない....,アーサーは思った...これ詰んでね?と

 

「ヤッベェぇぇ俺の馬鹿ぁぉぁぁ!!!なんで降りること想定してなかったのおぉぉぉ!!!!やばい死ぬホントに!!冗談抜きでぇぇぇぇ!」

 

落ちる落ちる落ちる、落ちていく中アーサーは諦めず打開策を考える、そこで思い付いたのは衣服を破りそれを落下傘の代わりにするという作戦だ、あまりに愚策の愚策すぎて言葉が出ないが、もうこれ以上作戦を今のアーサーには思いつかなかったのだ。

 

「死んでたまるかぁぁぁぁ!!!」

 

半裸の男が雄叫びを上げながら空を滑空している姿はあまりにシュールであった、そしてなんとか当初の勢いを殺すことに成功したが、、それでもまだ止まらず、、、魔術学院の体育館の窓ガラスをガッシャァァンと音を立てながら突き破った、その場に居合わせた全校生徒は何が起こったのか理解できていなかった、入学式の校長祝辞を行っていた所に半裸の男が入ってきたのだそりゃ理解できるわけがない、できる方がおかしいのだ、アーサーは下を向きながら己のやらかしをどう挽回するかを必死に頭の中で考えていた。

 

(やっちまったぁぁぁぁ!!え?これどうやって収集つければいいの?学園長っぽい人顔青ざめてるよ!横の教頭も!つうか学院の関係者全員顔青ざめてるよ!!どうすればいいんだよぉぉぉ!!え?無理じゃん入学早々目立たないようにって言う俺の目論み秒で消えたやん!目立っちったよ!それも最悪な感じで!!一番避けたかった方踏み抜いたよ!!畜生!!もうこうなったら!!ヤベェ奴ムーブで行くしかねぇぇぇ!!)

 

もはやどうにでもなれの精神でヤバいやつを演じ、アーサーは血を額からダラッダラッ流しながら学園長に笑顔でこう尋ねる。

 

 

「ハッハッハッ!!酷い目にあった!!まさかこの天才の僕がッ!着地地点を想定してなかったナンッて!!所でキミ!僕の席は何処かな?」

 

これが後に学園史上三大珍事件、窓ガラス破壊半裸流血男席尋ね事件である。

その後当たり前というか当然というか警備員に拘束されるのであった。

 

 

 

-------------

「これでよしっと、もう大丈夫ですよ、もう!入学早々危ない事はやめて下さいね!」

 

「感謝ッ!!適切な治療完璧でしたッ!!後アレに関しては、ブラックマーシュでは常識なんッで!!」

 

「そんな国も文化も聞いたことありません!まったくもう!!」

 

セシリア=ヘステイアこの学院の医務室で務める法医師らしく、拘束され事情聴取をして身の潔白を証明した後、怪我した箇所を治療して頂いた、全然関係ないが凄く美人で儚げな印象の乙女だ。

 

その後やっとこさ自分のクラスの2組に行く、正直あのキャラで行くのは嫌だが、やったからには押し通さないといけない、という事でアーサーはニッコリガンギマリスマイルで教室のドアを勢い良く開いた、開いた先にはまだ初々しいおろしたての制服を着たこれから共に学び高め合う、仲間達がこちらを凝視していた、それもそのはず、入学式でやらかした人間だ、気になるな決まってる、同じクラスなら尚更だ、そしてそれを見たアーサーはニヤリとしてチョークを持って黒板にデカデカと名前を書いた、無駄に達筆で。

 

「やぁ諸君!!私はアーサーモーガン!!ッ....この世界の...フッ神となる男だッ!!」

 

「何言ってんだお前?」

 

(何言ってんだ俺?)

 

クラス一同何言ってんだ?と総ツッコミ、そしてアーサー自身も自分に対してツッコんでた、そして続けてこう言った。

 

「フッ魔術師とは傲慢であり、時に他者だって蹴落とすだろ?それは神だって....例外じゃ...ない」

 

((うわー.....痛いなー))

 

それっぽいことを言ったら、これである、アーサーはフォースのせいで、心が読めてしまう、クラスのほぼ全員からそう思われると少し堪えたのか、少し内容を変えた。

 

「いや....違うな、俺がこの国のいやこの世界の覇者となる!!」

 

((コイツ女王陛下を!!なんて不敬な奴!!))

 

(.....いやこれどうしろと、最初の切り出しが神なのが悪かったな、、神でも覇者でもないならどうすれば.....!これならどうだ!)

 

[いや....これも違うな....俺は神と覇者の中間...どちらの力も兼ね備えた...]

 

((天使とかそこら辺だろどうせ))

 

「中間管理職になる事だ!!」

 

「「なんでやねん!!!つうか意味違うわ!!なんで女王陛下と神様一般企業に就職してんだ!!」」

 

クラスからまた総ツッコミを食らうが、アーサーは怯まず続ける。

 

「私がこの世界の中間管理職になった暁には、、、」

 

「「話聞けよ」」

 

 

「この世界の女性のスカートを短くする!!そして胸元が少し開いた服装をつけることを義務付ける!!エロスこそ正義!!エロスこそ正義!!」

 

 

「「ウォォォォッッ!!最高だアンタ!!一生ついて行くぜ!!」」

 

というさっきまで冷え切っていた、男子はボルテージが上がっていたが

 

[[うっわ.....]]

 

と、女子がドン引きしていた、入学早々女子からの評価はマイナスの底舐めくらいである、正直アーサーはなんでこんな事言ったんだと心の中で泣きながら後悔している様子だった、それでも後には引けずアーサー続けてこう言った。

 

「よし!!皆、私について来い!!最高のエロスを見つけに行こう!!手始めはまず女子更衣室から!!ぐっフゥゥゥぅ!!]」

 

そう言った瞬間アーサーはいきなり風の魔術を腹にぶち込まれ天井に叩きつけられ、失神した、アーサーが最後に見たのは蔑んだ目でこっちをみてくる魔術を発動したであろう銀髪の少女と、慌てて駆けつけくる金髪の少女であった。

 

「なんで俺こんな事やってんだっけ???もっとスマートに上手くやるつもりだったのにな.....」

 

初っ端からやらかしたアーサーのドタバタ学園生活が始まった。

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ホワイトグリント 

色  芦毛
品種 サラブレッド
大人しく忠実、そしてスピードは並みの競走馬では絶対に勝てない程速い、だが偶にイヤイヤ期がくる、そうすると全く言うことを聞かなくなる、そしてアーサーはそれを一番引きたくない日に引き何度も死にかけた。マジで何回かケツ引っ叩いてやりたかった(本人談)


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学園での生活

恐れはダークサイドに通じる。恐れは怒りに、怒りは憎しみに、憎しみは苦痛へ





引用 太古の者達


あの入学式の一件から早1ヶ月が経ったあれ以来、アーサーは少しクラスで距離を置かれていた、そりゃあんなキャラの演技で行ったらそうなるのは至極当然だ、だがまぁそれは、別に良い、要はアーサーは他人と極力関わらなければそれでいいのだ、悪目立ちする奴にわざわざ絡んでくる奴なんてそうそういない、だが時折女子が汚物を見るような目で見てくるのが心にくる、だがそんなアーサーにも声をかけてくれる、金髪美少女がいた。

 

[アーサー君〜そんな机に突っ伏して寝てると、授業遅れちゃうよ?]

 

[起こして頂き感謝ッ!ルミア殿!!しかし後2分で授業が始まります!私に構って貴方まで被害を被っては、システィーナ殿になんで言われるか!!]

 

そうこんな変質者みたいな奴に声を掛けてくれる、金髪美少女ルミア=ティンジェルだ、穏やかな雰囲気と、華の様に麗しい出立ちが素晴らしく、一挙一動に気品が滲み出ている、そのグラマラスなナイスボディーと健気でどんな人にも優しい所が男子受けも女子受けも良い、正しく高嶺の花って奴だ。

 

[ふふっ、大丈夫だよ、ほら一緒に行こ?]

 

穏やかな笑みを浮かべながら、こんな側から見たらヤバい人間に手を差し伸べる姿にアーサーはここに聖母降臨したのでは?という錯覚に陥る程眩いものだった、そしてアーサーはそのまま手を引かれ教室を後にした。

 

 

-------

[すみません!遅れましたッ、私が少し手間取ってしまって、アーサー君に手伝って貰ってたんです。]

 

何とこの美少女アーサーに手を差し伸べる所か、庇ったのだ、アーサールミアの人徳に心を打たれたが、これでルミアの評価を下げる訳にもいかないので慌てて訂正しようとした所で、銀髪の髪を靡かせた美少女が、捲し立てる。

 

[そんな訳ないでしょ、ルミア!どうせこの授業を真面目に受ける気の無いボンクラ相手にしてたんでしょ?ほっときなさいって言ったのに!]

 

そうこの子こそシスティーナ=フィーベル、白銀の様な綺麗な髪色を持つまだ少し幼さの残る美少女であるが、ルミアとは真逆の性格で頑固で意地っ張り、そして何より傲慢で他人を見下す節がある、だがかなり面倒見が良く、根は凄く優しく臆病だったりもする。

 

[システィーそんな言い方しないの!大事なクラスメイトなんだよ?]

 

[いえルミア殿ッ!システィーナ殿の言う通りですッ!そうですッ!私の準備が遅いボンクラだったせいで彼女が被害を被っただけで、彼女になんの非もありませんッ!]

 

とアーサーが自身の非を認め謝罪して、少しお説教を食らう事で事態を収集させた。

そして今日の授業はアサルトスペルを実際に行使する授業で、学園に入って初めてやる物だ、クラスの人達は皆さまざまな心境であった、不安がるもの、自身に満ちている者、闘志あふれるもの様々でアーサーはそれを感じ取っていた。

そしていざ的に当てる、練習が始まると、皆ショックボルトの詠唱を行い的に向かって行使した、当たってる人もいれば明後日の方向飛んでいる人もいた、因みにアーサーは本来なら及第点を狙いたいところだが、キャラの設定の関係上ヤバいやつを演じざるを得ない為、ふざける演技をして明後日の方向にぶち飛ばしていた、そしてそんな馬鹿な事をしている最中、ふとした瞬間にアーサーは自分なんかより遥かに強大なフォースを感じ取った。

 

(!?何だ???このフォースの感覚は!!こんな強大なフォースを今の今まで気がつきもしなかったのか??俺のマヌケ!いや今はそんな事より、このフォースの持ち主を探さないと)

 

アーサーは自身のマヌケさに呆れながらも、自分自身も目を瞑りながらフォースを使用し、この強大なフォースを探りにかかった。

 

(こんな強大なフォース感じた事がない....一体誰がこんな力を?)

 

そして暫く探っていると、ゴツンッ!という音と共にルミアと正面衝突した、かなりの勢いで当たった為ルミアが体制を崩し後ろに転びそうになっていた為、アーサーは慌てて、ルミアの右手をガッシリと掴み、引っ張る痛みが出ないように優しく引き寄せる、その際ルミアの力が抜けたのか、顔付近まで接近して目と目が合ってしまった。

 

[ルミア殿ッ!大丈夫ですかッ?私が不注意であった為に申し訳ない]

 

[だ、だ、大丈夫!!そ、それより手を離して欲しいな!]

 

[申し訳ないッ!不可抗力でして]

 

[あ、あはは、だ、大丈夫だよ]

 

彼女はアーサーの手の中で顔を真っ赤にし目を泳がせながら、恥ずかしそうに言った、アーサーは慌てて手を離した、まだ15歳の少女だ、助ける為とは言え引っ張って、顔付近まで近づけさせるのは、セクハラみたいなこと物だと反省した、そして彼女が恥ずかしがりながら、システィーナの元に走り去るのを横目に見た後、木の木陰にもたれかかり、怪訝な表情をしながら心の中でさっきのことを考えていた。

 

(....ルミアがあのフォースの持ち主か、初めて見た....フォースがあそこまで集中してる人間なんて....成る程....アレを見た時彼女だけが狙われる理由がわかった気がする....あの子は恐らく異能者だ....それもかなり強力な)

 

フォースを操る者、所謂フォースセンシティブと言われる者たちは、体内に異能の因子と言われる細胞があり、その量は普通の人間が1000くらいに対して、フォースセンシティブを持つ者は平均して5000程である、その量は生まれつきのものであり、努力ではどうにもならないのだそして異能者と言われる者たちはその因子が多すぎるが為に、別の形でその力が出てしまっているのだ、因みに異能者の因子の量は使いこなせるかは別として20000をゆうに超えるケースが多い、そしてルミアの場合は、、、、

 

(これは唯の予測だが、、150000はあるぞ....ははっ笑えねぇ俺はその半分くらいだぞ....恐らく彼女は防衛本能からか無意識にフォースを隠す技を使えていたんだ、、だから今まで気付かなかった....そして今何故気付く事が出来たのかは、これは唯の仮説だが、魔術を発動した際、ルミア自身の感情が昂り、フォースがそれに反応した....それを俺が直ぐに感じ取り、フォースを使用した、その際、俺のフォースと共鳴したのだと思われる、だが気づかれるのも時間の問題なのかもしれない.....だがこれ以上この子に干渉する訳にも...だが干渉しない訳にも....どうすればいいんだ) ・・

 

[アーサー君!アーサー君!!]

 

[えっ、あ、はい、どうしましたか?ヒューイ先生]

 

[ボケっとしないの!次は君の番ですよ!]

 

[なんの番ですか?]

 

[何ってショックボルトで6個の的を当てるテストですよ!6点満点ですからね!早くやって下さい]

 

[分かりました、、、《雷精よ踊れ》]

 

アーサーが魔術を唱え発射された紫電は6個に分裂し的のど真ん中に全て必中させた、それを見たクラスメイトとヒューイ先生は驚愕していた、学園に入ったばかりの生徒が即興改変を行なったのだ、そりゃ驚かれる、そしてアーサーは汗をダラッダラさせながら顔を青ざめさせた、やっと自分がしでかしたやらかしに気が付いたのだ。

 

(やっちまったァァァァァ!!ルミアの事に一杯一杯すぎて普通に即興改変でやっちまったァァァァァ!!俺の馬鹿ぁぁぁぉぁぁぁ!!自分の設定を忘れてんじゃねぇぇぇぇぇ!!クッソ!どうする??死ぬ??ヤベェぇぇ!?なんとかしないと!!]

 

そしてアーサーが考えた策は....

 

[フ、フハハハッ!!!この私が天才である事を忘れたか!!このぐらいの即興改変赤子の手を捻るより楽な作業よ!!]

 

演技を続けてそれっぽい事を言って誤魔化すという策だもうこれしかなかった、正直これでいけるかどうかは全然分からないが.....

 

[流石は学園長の前で自分を天才と豪語した男だ..そうでないと困る...]

 

メガネを掛けたクラスメイトのギイブルがフッと鼻を鳴らしながら言うと他のクラスメイトもそれに便乗するように、他のクラスメイトもアーサーを称賛した、いい気分にはなった...だがよくよく考えてみたら当たり前の事であった、そりゃ元々ある人に小さい頃から魔術を教わっていたのだ、土台から違うし練度も技術も違う、彼等より今は実力的に上なのは当たり前なのだ、それをわかった瞬間恥ずかしさが込み上げてきた。

 

(,...まぁその事はさておき、取り敢えずそれっぽい事を言ってなんとかなりそうだ)

 

と、内心ホッとしていたが、その後クラスメイトがこの事を言い広めてしまい、どんどんどんどんハードルがぶち上がり、今以上に状況が悪化し、様々な面倒事に巻き込まれることとなった。

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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天才

お前は最強のジェダイだった!!なのにどうして!!暗黒面に堕ちたんだ!!!





引用 不明


[はぁ.....なんてツイてないんだ....どうしてこうなった?]

 

学園の外壁の通路で寝転び、アーサーが今にも死にそうな顔をしながらそう呟いた。

 

 

[元は俺が原因なんだけどこんなのあんまりじゃないか?生徒会にコキ使われて、カッシュ達が起こしたいざこざに巻き込まれて、秘密兵器とか言って決闘させられるし、挙げ句の果てにはオーウェル=シュウザーとかいうマッドサイエンティストの実験台だ!!]

 

アーサーはこの世の不条理を恨むかのように叫んだ、そうあの一件を言い広められて以来、悪目立ちした関わりたくない奴から、普通に学園の注目株となってしまいこの1年間で様々な面倒方に巻き込まれ疲労困憊なのだ。

 

[そんで今日は休日で仕事も無いし、やる事もないから学園の図書館で本を借りようと思ったら、改修工事で入らないときた!!クソ!!つくづくツイてねぇ!]

 

自分のツキの無さに落胆し、何処にもぶつけようのない苛立ちを覚え、思わず口を荒げた。

 

[ダメだダメダメ!!こんな事でイラつくな俺!!何もする事が無いなら探せばいいんだ!そうだ!絵でも描けばいい!丁度美術室開いてるし、キャンパスくらいなら貸してくれるだろ!]

 

思い立ったら即行動、美術室室に赴き、教員にキャンパスの貸し出しを許可してもらい、学園の外壁戻り、鉛筆を手に馴染ませて、街並みにこだわりながらデッサンしていく、今回は時計塔を中心に街並みを描く、奥行きが出るように日の当たる角度、影の入り方に気をつけて硬い印象を持たれないように、しなやかな筆捌きで美しい線を描く。

 

[下書きは終わった、、こっからどうやってこの街の美しさを際立てられるだろうか?]

 

そう呟き、鉛筆を置き暫く考えていると、後ろからタッタッタと少し小走りで誰かがこっちにやってきた、アーサーが振り向いた視線の先には金髪の髪を靡かせながら小走りで走ってくる金髪美少女のルミアがそこにいた、アーサーは慌てて役者を演じ始める。

 

[ルミア殿ッ!休日に学園に来るとは珍しいですな!!]

 

[ふふっ、それはアーサー君もでしょ?私はただ忘れ物も取ってきただけだよ〜それで教室の窓から君が何かやってるのが見えたから来てみたんだ〜それで君は何をしているの?]

 

ルミアはクスっと優しく笑いながらアーサーに問いかけた。

 

[私は図書館で本を借りようとした所ッ!改修工場で入れず、何もする事も無かったので、趣味の絵を描いていた所ですッ!]

 

[あはは、それは災難だったね、私もこれからする事もないから、君の絵を見てみようかな?]

 

[是非是非ッ!]

 

こうして、風の音が澄み渡る静かな空間に一人見物人がついたが、アーサーは絵を描く作業に無言で集中する、色を濃くする所と薄くする所でしっかりと使い分け、街を立体的かつ奥行きのあるように仕上げていく、そんな真剣な顔をしながら作業している彼を見て、ルミアが質問する。

 

[凄い....アーサー君って絵が上手いんだね。誰に教わったの?]

 

[誰かに教わったの事は無いですよッ!]

 

[流石は、いきなり即興改変をやった天才君。言うことが違うね〜]

 

アーサーはその受け答えに少し思う事があったのかこう返答した。

 

[天才か....俺は天才じゃ無いよ。真の天才って言うのはシスティーナみたいな奴らの事を言うんだよ、初めからある程度の事ができて意欲的で一度言ったらすぐ覚えて完璧に使用できて、オリジナリティを含んだ物をすぐに生み出してしまう人さ....]

 

[....で、でも君、一学年で即興改変が出来るんだよ?凄い事じゃない?]

 

ルミアはいつもと全然違う雰囲気を醸し出すアーサーに少し驚きながらも、疑問をぶつけた。

 

[正直即興改変なんて、誰でもできるよ。長い時間をかけて必死に練習すればな、他の魔術技巧も全て必死に血反吐を吐きながら練習すれば誰でも習得できる、誰もやりたがらないけどな。...この絵の技術もそうだ、ゼロから始めて本やらなんやらで勉強して学んだものを使って、また学んでを何度も繰り返す、そうやって上達してきた.....でも天才とやらはその過程をて2段ジャンプくらいで飛び越えちまう....一度学んだら直ぐに出来る...見ただけでやっちまうんだわ....正直妬ましいよ天才とやらには何処まで行っても追いつけない....そのうちシスティーナとかにも越されると思うよ...だからそれまで俺は凡人として必死に足掻き続けるよ]

 

[アーサー....,]

 

[おっとッ!長々と語り過ぎてしまいましたね!!ハイッ!この絵ルミア殿に差し上げます!!どうぞ大切になさって下され]

 

[あ、ありがとう]

 

[では私はこれにてッ!さらばッ!]

 

ルミアの曇った表情を見て、アーサーはハッとして、いつもの調子に戻り、会話を無理矢理終わらせ、走り去っていった。 

 

[俺は変わらないな...何処まで行っても...]

 

 

アーサーは自分自身を自嘲する。

彼は天才とやらにコンプレックスを抱いていた、昔アーサーの友人に完璧超人の天才がいた、性格が良く、容姿端麗で、正義感があり、勉学もできて、何からなんでも出来てしまう奴だった。

アーサーはいつもそいつの二番目だったが、その友人に強い憧れを持ち、何度も横に立とうと追いつこうと死ぬ気で努力し続けた、だがそれでもアーサーは追いつけなかった、その友人はさらに上に行ってるのだ、何度も何度も何度も何度も追いつこうとしたが、追いつく事は出来なかった。

そしてだんだん憧れから嫉妬に変わっていった、友人が活躍している所を見るだけで、苛立ちを隠せなくなり、強くあたったり、突き放すような言動をしてしまったのだ。

 

[あん時の俺は....未熟なクソガキだった...あんな事しなければ...謝る事が出来れば..もう少し素直になれれば..,アイツに....ユリウスに頼る事が出来れば....あんな事にはならなかったのか?アイツは優秀だった失敗もした事が無かった....でも唯一の失敗は何故俺にこの役割をやらせた?あの時何故....自分の命を使ってまで俺を助けたんだ...]

 

[いや...,感傷に浸るのはまだ早い...数ヶ月後には真の戦いが始まるんだ...俺はこの犠牲を無駄にはしない....俺の命を掛けて必ず使命を果たす!!]

 

下を向き涙を滲ませていた、自分を奮い立たせ、来る日に備え、地面を力強く踏み鳴らし帰路に付くアーサーであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次からはやっとこさ本編に入りやす


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二学年編
ろくでなしの登場


....これが俺の選んだ道だ...だが...俺に残ったのは死だけだった.....






引用 ありえたかも知れない世界にいたあるジェダイの言葉。



一人夜に染まりながら人が乗れるほどの岩で瞑想する者がいた、その姿はまるで僧のように落ち着き佇んでいるように見えるが、その額には汗が滝のように流れていた

 

[感じる...この学園に危機が迫っている....3人組の男がクラスに入ってくる.....ルミアとシスティーナが男に連れてかれる....カッシュの憎悪を感じる.....うぐっ、これ以上は無理か....]

 

アーサーは瞑想を止め、心を整えた後、怪訝な顔をしながら魔術もフォースも使えない左手に力を入れて握ったり離したらした、そう長い時間瞑想できないのも、フォースのビジョンがハッキリと見えないのもフォースを上手く扱えきれてないのも原因はこの左手にあるのだ、ある事がきっかけで今も左手にフォースも魔術も込める事ができないのだ。

 

[やはりアレで見た通りな事が今から起こる....いや待て未来は絶えず変化するここで見た通りの事が本当に起こるとは限らない結論を急ぐな...だがなんだこの違和感は....歪みのようなものを感じる....まさか俺がここに来た影響でか?....いやそんな事言ってもしょうがないか..,でも平気な筈だ....]

 

少し間を置いて、空を眺めながら、何か思い詰めたような顔でぼそりと呟いた。

 

[あの人ならやってくれる筈だ....必ず....あの人なら絶対にやれる筈だ俺が干渉しなくてもきっとこの学園の危機を救ってくれる....]

 

そう意味深な事を呟き、その場を後にするのだった。

 

 

 

 

----------

夜が上け、日が登っていた、今日もこの街は平和でのどかである。そんな中アーサーはカブッ!っと何かに腿を噛まれ、あまりの痛みに一瞬で目が覚めて叫ぶ。

 

[イッテェェェェ!!こんの馬鹿オオカミ!!!起こすときに毎回毎回太腿噛むな!!!]

 

ウルフは毎朝起きるとき、アーサーが寝坊常習犯である為、遅刻しないように起こしにくるのだ、太腿をオモチャのように噛んで....加減しているのだろうが、めちゃくちゃ痛い。正直毎朝泣きそうになる。

 

[あ、起きたかアーサー今日グリント予防接種連れて行くからな、それと飯作っといてやったから、適当に食えよ]

 

[あ、ありがとうございます....ていうかハンクさんそれなんですか?]

 

ありがたい限りだが、それよりも、気になるというか気になり過ぎる点がある、それはハンクが今着ている格好だ。

 

[何って裸エプロンだが?]

 

[え?は?いや、なんでさも当然かのように裸エプロンでいるの?]

 

[いや俺もまだまだいけるかなって、思ってさ]

 

[なんで久々に学生服着た三十路の人みたいなフロウで言ってんの?マジでオッサンの裸エプロンとか需要一ミリも無いよ?]

 

[需要はある!きっとこの世には俺を受け止めてくれる人達がいる!その人達のために俺は今日も....生きる]

 

[さっさとくたばった方が世の為人の為になりますよ]

 

剛毛で髭が生えている、目つき悪い身長180超えてる気骨なおっさんがハート柄と子供向けキャラクターで彩られたチャーミングなエプロンを....裸で着ていたのだ、もう一度言う裸でだ、しかもさも当然かのように、堂々と。

この一年を共にしてハンクの奇行には慣れているつもりだったが、これは流石に予想外だったのか、ゴミを見る目で対応してしまった。

これには少しハンクも悲しそうな顔をしていた。

そんなこんながあったが、アーサーは一学年の時様々な問題を起こしたが、なんとか二学年に進級できたのだ。

そして今日から突然やめてしまったヒューイの代わりに非常勤講師が来るらしい。昨日の予知の事もあり決してウキウキルンルン気分では無いが、遅れないようにと時間を見ると....

 

[まだ余裕だな....これなら....あ、、、]

 

気づいてしまったのだ、、それはハンクが最近抜け毛を気にし始めた事か?違う、グリントがハンクの馬に欲情していた事か?

いいや、シンプルに気づいてしまったのだ時計が止まっている事に、、。

この鍛冶屋はなんでもやる所だ、例えば道具の修理、魔導製品の修理、水道の修理、そして時計の修理....。そして昨日、お客さんが時計が壊れてしまって、これは思い出の品だから買い替えたくなくて、との事で修理依頼を受けた、そしてその時計の代わりとしてここにあった時計を渡したのだ。

そしてその事を忘れていたアーサーは自分の懐中時計を見て、悟った...

 

[あ、終わった、またやらかした余裕で遅刻だわハハッ]

 

時刻は8時45分そして授業開始が50分からで、家から死ぬ気で走っても40分かかる。

正直詰んでいる、アーサーは乾いた笑い声を上げた後、バッ!と神速で身支度をして置いてあったコーヒーをカブ飲みして、パンを加えて、フォースを使い反射神経を極限まで強化した後黒魔《ラピッド・ストーリーム》をありっけの魔力で発動し、砂塵を巻き上げながらトンデモないスピードで飛翔、街の屋根や壁を走り抜ける。

普段ならこんな事せずに普通に遅刻するだろう...だが今回は違う、ガチで死ぬ。学院長に、、

《私アーサー=モーガンは次問題行動した際はオーウェル=シュウザーの検証助手として1ヶ月働きます》

と念書書かされたのだ、この問題行動には勿論遅刻なども含まれている。

 

[いや無理無理無理無理!!あんなマッドサイエンティストと1ヶ月!?命が100個あっても足らんわ!!急げ俺!!死ぬ気でいけぇぇぇ!!じゃねぇとホントに死ぬぅぅぅ!!]

 

絶叫しながら街を死ぬ気で駆け抜けるアーサーだった。

 

 

--------

[ハァ...ハァ.....ゲホッゲホッ....ペッ!]

 

なんとか授業開始前に学園に着いたが、アーサーは学園の東校舎の生徒用入口前で倒れこみ、血を吐き、ゼーハーと肩で息をしていた、疲労困憊で今にも意識が飛んでいきそうだ。それもそのはず、フルスロットルでハーフマラソンくらいの距離を5分以内に着くように来たのだ、正直人間技じゃない、こんな離れ業をしたら代償は高く付く。

 

[あぁ...クソ.....せっ...かく...間に合っ....]

 

アーサーはそのまま気を失った、ここら周辺に誰もいなかったので、助けてくれる人もいなかった。そして暫くしたのち、意識を取り戻した。

 

[ハッ!?俺とした事が....意識を失うとはな....畜生マジで嫌だ...あのマッドサイエンティストのモルモットにだけはなりたく無い...ここはフォースマインドを学院長に使って.,.いや効くかな?あの人割と芯がしっかりしてそうだしな〜。うわ最悪、汗びっしょり、うわ!床に俺の形の汗の跡がクッキリ!!.....ハァ〜現実逃避してないでさっさと行くか]

 

体を無理矢理起こし、汗びっしょりの床をモップで拭いた後、どうせ遅刻なのでゆっくり歩いて教室に向かう。階段を登り、2階まで登り教室に近づくと、どこか懐かしい感覚と同時に女性の金切音のような叫び声が聞こえてくる。

 

[このフォースの感覚は....いや気にしないでおこう...それよりこの声システィーナの声だよな?何をそんなに叫んでるんだ?]

 

恐る恐る教室を覗くとシスティーナが教卓の方に向かって猛抗議をしている、こんな状況で教室に入るのはごめんだが、授業を欠席にされるのはごめんなので、渋々入る事にした。アーサーはいつものみんな知ってるアーサーモーガンの演技をして、教室のドアを開ける。

 

[やぁ!諸君今日はいい日だねッ!〇〇〇〇な事するにはもってこいのグッファッッ!!]

 

出オチのように放送禁止用語を言った後、流れるようにシスティーナに魔術で吹き飛ばされ、泡を吹いているアーサーを横目に、アーサーより少し年上であろう、黒髪黒目の長身痩躯の不思議な雰囲気を持った男がぼやいた。

 

[なんかヤバい奴入ってきたけど....大丈夫なのか....アレ?泡吹いて失神してね?]

 

[気にしないで下さい、いつもの事なので。

それよりもッ!グレン先生でしたっけ?なんで初日で遅刻してくるんですか!!]

 

魔術を派手にぶっ放し、男一人を失神させた事を気にしないでくださいで一蹴するシスティーナに教師は困惑するが話を続けた。

 

[え?あ、うん、えっと遅刻した理由だっけ?そりゃあの後、時間余ってたから公園で寝てたら本格的に熟睡しちまったからに決まってんだろ?

 

[想像以上にダメな理由だった....]

 

ツッコミどころが多すぎて何も言うことができない、異様や雰囲気がクラスを取り巻く、そんな中でグレンはチョークを持ち黒板で、白鳥が飛び立つように勢い良く、、、自習という文字を書いた。

 

[今日は自習な〜眠いから ]

 

普通では、ありえない理由を言い、クラスは大きな大きな沈黙が流れる、、そしてその沈黙を破ったのは、、、

 

[ちょっと待てぇぇ!!]

 

というシスティーナの叫びだった。この後もろくでもない授業が続いたのは言うまでもない。そしてアーサーはあの念書通り普通にマッドサイエンティストの餌食になった。

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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感情は御さない物

あの子達が逃げる時間を稼げるなら....守れるなら母親として悔いはないわ!!愛してるわ....□□□私の大事な大事な子...幸せになってね........
あぁ...あの子の好きなアップルパイもっと作ってあげるべきだったかしら....もっとあの子と一緒に居たかったな....



引用 愛する者の為に命を掛けたある母親の言葉


[ふぁー眠ぃ〜お前らしっかり自主しとけよ〜]

 

と言って机の上に頭を乗せてそのまま寝てしまった。

このグレン=レーダス講師が来てから早数日経ったが、相変わらず学院の講師失格と言える授業をやっていた。授業中漫画を読んでゲラ笑いしていたり、偶に思い出したかの様に無気力な顔でチョークを持つも、字が汚すぎて読めなかったり、挙げ句の果てには黒板に教科書を釘で打ち付けて固定し、満足そうな顔をする始末だ。こうなってしまうと、授業どころでは無い。クラスの中でのグレン先生の評価は俺も真っ青なレベルで低い、特に女子からはかなりヘイトを買っている様だ、それに前日にシスティーナと決闘した際フルボッコにあった為魔術師としての評判もかなり悪い。今現在グレン先生は、ロクな授業もしない、学生に負けるレベルのド三流という事になっている。

 

[.......あんたはそうゆう人じゃ無かったはずだろ]

 

アーサーは何かもどかしさを感じている様な顔をしながら、誰にも聞こえない声でボヤくが、直ぐに黙りペンを持ち直し、それを走らせた。

 

と、そこで小動物の様な愛くるしさを持つ、リンという少女が少し小走りしながらグレンの元に駆け寄った。

 

[グ、グレン先生、お休みの所申し訳ありません、ここ分からないので教えて頂けないでしょうか?]

 

[ボクチン、お休みタイムだったんだけど、で、なに?何処が分からないの?]

 

顔をむくりと上げ、欠伸をして眠そうな顔をしながら教えようとすると

 

[ムダよ、やめときなさい]

 

[!]

 

[あ..システィ]

 

と、システィーナがリンを静止した。

 

[なんせそいつは、魔術の崇高さも偉大さも何一つとして理解していないんだから]

 

と、冷たく言い放ち、リンを連れてその場を去ろうとした時、グレンが言われた言葉に反応してしまう。

 

[...なぁ何処が魔術は崇高で偉大なんだ?魔術って?]

 

[フン、何を言い出すかと思えば、そんな事?魔術はこの世界の真理を追求する、いわば神に近づくに等しい学問よ]

 

とシスティーナが魔術の素晴らしさについて講釈すると矢継ぎにグレンが質問する。

 

[ふぅん、で?それがなんの役に立つんだ?それ?]

 

[え...]

 

少しクラスがざわつき始めアーサーもその言い合いに注視し始めた。

 

[そもそも魔術って人にどんな恩恵をもたらすんだ?例えばそうだな、医術は人を病から救うよな?農耕学や建築は人々の繁栄をもたらすには欠かせない代物だ、で?魔術はなんの役に立つ?普通に生きていたら一般人にはまず見る事の無い代物だ]

 

 

グレンがシスティーナにこの様な質問を投げかけている一部始終を見ていたアーサーは嫌な予感がし始めて、口喧嘩を止めに掛かる。

 

[お二人ともやめましょうッ!仲良く..]

 

だがそんな願い虚しく、ガン無視され二人の口喧嘩はヒートアップし始める。

 

[...ッ!魔術はッ!人の役に立つとか立たないとか、そんなレベルの話では無くて....]

 

システィーナが苦し紛れに論点を変えに掛かる。その姿を見てグレンがフッと鼻で笑いながら....

 

[....悪い悪い魔術は何より役に立ってるぜ?]

 

()()()()()

 

あまりの強烈なワードとグレンから醸し出されているドス黒い声と雰囲気がこの場を支配する。システィーナも一気に顔を青ざめさせる。止めに入ったアーサーも他のクラスメイトさえもグレンの殺気によって動きが止まった。

 

[剣で一人を殺す前に魔術は何十人と殺せる。これほど人殺しに長けた技はねぇぜ。]

 

[ち、違うわ!魔術はそんな...]

 

 

[違わねぇよ、ならどうしてこの国が魔導大国と言われているんだ?宮廷魔導士とか言う物騒な連中も居るほどだぜ?魔術ってのはな人殺しと一緒に発展してきた技術なんだよ!んでお前らが習ってるのは殆どが攻撃用魔術だろ?ハッ!こんなロクでも無いもんに時間を掛けんなんてやめちまえよ!もっとマシな!]

 

自分の魔術を否定されシスティーナが涙目になりながら手を振りかぶると、後ろからグレンの顔面に向かって、手袋が飛んで来た。

 

[そこまでだ....グレン先生。これ以上彼女の事を侮辱するなら...その手袋を拾え...俺が相手になってやる。]

 

アーサーがいつもの違う声色と雰囲気で、グレンを睨みつける。その姿にクラスはまたざわつき始める。

 

[ハッ!俺も人気者だな、一週間も経ってないのに、2回も決闘を申し込まれるとはな!つうか侮辱だって?笑えるぜ、俺が親切に魔術の現実について早いうちに教えてやってんじゃねぇか]

 

[...言い方ってもんがあるでしょ?それに頼んでも無い事だと思いますけど]

 

[頼んでも無い?いつかは直面する現実なんだよ、んな事も分かってないのか?]

 

[....私が言いたいのは!貴方が魔術に対してどんな考え方をしようと、どんな価値観を持っていようと貴方の勝手だ.....だが!それを他人に振りかざし!押し付け!!人の考え方や信じているものを否定すんのが間違ってんだよ!!]

 

[.....]

 

アーサーが正論を言うとグレンは押し黙りバツが悪そうに舌打ちをしながら教室を後にした。

 

[ありがとうアーサー...]

 

[気にしないでくれ]

 

システィーナは涙を拭い、アーサーに対して感謝の言葉を述べたが、等のアーサーは気にしないでくれの一言を残した後、足早に教室を後にした。

 

 

 

-------------

[グレン先生]

 

[アーサーか.,.んだよ、口でも言い負かされて、魔術でもボロ負けした俺をざまぁって笑いにでも来たのか?]

 

[いえ、違います....先程はすみませんでした]

 

グレンは自嘲気味に笑いながらアーサーに問いかけると、彼はいきなり頭を下げた、グレンはいきなりどうした?と困惑の表情を浮かべていた。

 

[な、なんで謝るんだ?]

 

[僕があの時、怒りの感情に流されて失礼な言動と態度を取ってしまって、あまりに彼女の魔術に対する姿勢を全否定する言い方だったので我慢していたのですがどうしても頭に血が昇ってしまって...]

 

[お前...見た目によらず熱血漢なんだないい事じゃねぇか友達の為に誰であろうと怒れる事って]

 

[あはは...そうですかね.....それに彼女にとって魔術は祖父との大事な繋がりでもあって、彼女の祖父が成しえなかった夢を実現しようと小さな頃から日々努力して頑張っている。とルミアからも聞いていて...,それに僕自身彼女の努力している姿を見ているので、余計に怒りが込み上げてきて]

 

[そんで気づいたら俺にふっかけていたと]

 

[はい...恥ずかしながら]

 

少し顔色を伺うかのような顔でグレンにふっかけた理由を述べていた。さっきのナイフのように鋭い目つきと重低音のように響く低い声色も鳴りを潜め、親に悪事を白状しているまじまじとした子供のようであった。グレンはフッと笑みを浮かべてアーサーの髪をわしゃわしゃと撫でた。

 

[気にすんなって、あれは俺が全面的に悪いしな...明日みんなにきちんと謝罪してちょー真面目に授業やっから任せとけ!それに教員に喧嘩ふっかける事なんて男なら一度や二度とあるもんさ]

 

[良かった〜私のせいでやめられてしまったら、どうしようと考えていましたので....これで安心です]

 

[?なんでお前が一介の魔術講師...しかも非常勤の奴をそこまで心配するんだ?]

 

[ヒント第七階梯]

 

[あーオケ把握した]

 

第七階梯こと世界最高峰の魔術師セリカ=アルフォネアとアーサーはあるイザコザに巻き込まれた際、セリカに振り回された為それなりに少し縁があるのだ....あと借りも。その彼女にこれからくる講師を何がなんでもやめさせるな...そしたらあの借りはチャラだ、でも失敗したら...わかるよな?と脅されていたのだ。それはそれは恐ろしい感じで。そんな経緯を説明した後少し談笑してると、ふとグレンが質問する。

 

[なぁアーサー?お前と俺何処かで会ったことあるか?]

 

[どうしてそう思うんですか?]

 

[なんだか初対面じゃ無い気がするんだよな、気のせいか?]

 

[気のせいですよ、僕と貴方はこの間初めて出会ったんですから。それに貴方みたいな騒がしい人の顔を忘れる方が難しいってものですよ]

 

[それもそうか...悪いな変なこと聞いちまって。じゃあ俺もう行くけど、気をつけて帰れよ]

 

[はい!では失礼します!]

 

アーサーが走り去っていくのを見ながらボソリとグレンが

 

[あの変な喋り方ってやっぱりキャラ作りだったんだな]

 

と呟きフッと笑いながら歩いて帰路についた。

だが帰路につきながら当の本人は人知れず頬からは大粒の涙がポツリと溢れていた、嬉し涙か、それとも悲しいから泣いているのか、自分自身の情けなさに泣いているのか分からないほどぐちゃぐちゃな感情がアーサーの中で渦巻いていた。

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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平和な時間

二つの人生を同時に生きようとするな






引用 アーサーモーガン


[やっぱりあの人は、ああやって誰かを教えている時が一番なんだろうな、、]

 

フェジテから少し南に行った所にある小川の川沿いで寝そべり空を眺めながらポツリと呟く男がいた。アーサーだ、その横には釣竿が地面に刺さっている。

それはさておき、学院ではある事が起きた、グレンレーダスの覚醒、まるで人が変わったのかのように、わかりやすく、緻密で完璧な講義をし始めたのだ。瞬く間に生徒間で大きな話題となり、その講義の質の高さに驚愕し、他クラスの生徒や他の講師まで来る始末だ。みんな掌を返していた、此間までやれ三流魔術師だのデリカシーの無いろくでなし男だのなんだのボロカス言っていたのに。いや待て二つとも当てはまっていた、蔑称に関してはいい線行っていたようだ。

 

[な〜に考えてんだ?アーサー?]

 

そう言いながら釣竿を持ってニンマリと笑顔を浮かべこっちにやってくる、男がいた。ハンクだ横にはウルフを連れていた。

 

[下らない事です]

 

[今日くらい怖い顔して考え事なんてすんなよ〜折角釣りに来てんだからよ〜リラックスしとけ〜]

 

[貴方が無理矢理僕を連れていったの間違えでは?]

 

[まっ、いいじゃねぇか偶には]

 

[じゃあなんで普通に誘わなかったんですか?]

 

アーサーが少し青筋を立てながら問い詰めると、ハンクはニンマリ顔をした。

 

[だってよ〜お前普通に誘っても、やれ勉強だレポートが〜とか仕事が残ってる〜やら今忙しくて手が離せないやらなんやら言って断るじゃねぇか]

 

[だからって、帰ってる途中で投げ縄使って俺捕まえて、そのまま引きずるとか、クレイジーすぎるでしょッ!!]

 

[ははっ!!隣にいた美人の女の子めちゃくちゃポカンとしてたもんな、あれ?もしかして彼女か!?デート中にそりゃー悪いことしたかな〜]

 

[違いますよ、あの子はルミア=ティンジェル、唯のクラスメイト兼友達です。いつも一緒に帰ってる子が用事やらなんやらで一緒に帰れなくて、偶々同じ方向だったから、帰るついでに美味しい飯食いに行ったり、僕はあんまりよく分からないんですけど服とかも見に行ったりしてただけです]

 

アーサーがサラッと言ったことにハンクはそれ普通にデートじゃね?と顔を訝しんでいた。

 

[い、いやーにしてもいい天気だな〜俺も魔術学院の学生時代に友人と良く釣りに行ったもんだ]

 

ハンクが何処か懐かしそうに語る。当たり前だがハンクにも友人と共に学び、遊び、切磋琢磨した学生時代があったのだ、少し話を聞きたくなったのか、アーサーがこんな質問を投げかけた。

 

[貴方の学生の頃はなんだが凄そうだ、いつも周りでトラブルが起きてそうで]

 

[ハハッ、そんな事ねぇぞ!今でこそこんなんだが学生時代の俺は絵に描いたような真面目ちゃんだったからな!問題行動もしないしなんなら生徒会長だったからな!!ハハッ!]

 

[ハンクさんにしては、面白いジョークですね]

 

アーサーが呆れたように返す。

 

[ジョーク?ジョークじゃないさ、ほれから見てみ、2列目の横から二番目が俺だ]

 

そう言って古い写真を渡してきた、女王陛下を筆頭に皆帝国の界隈で活躍している人間やその分野の重鎮だらけだった。

 

[ゲッ!女王陛下とか各分野の重鎮だらけやんオールスターかよ、、まぁいい、で?ハンクさんは....おいおい冗談だろ?]

 

そこにいたのは資質剛健という言葉をそのまま人の形にしたような人だった、ハンクの面影はあるが飾り気もなく、がっしりとした体格といかにも真面目で勤勉な風貌だが逞しい顔つきをした威厳のある漢だった。横をチラリと見た後アーサーは何処か悲しそうな顔をした後こう言った。

 

[....時は残酷ですね]

 

今のハンクと180度違う風貌にアーサーはただそれしか言えないのであった。現在のハンクは、真面目で勤勉さなんて微塵も無いし何よりこの時のように威厳は存在してない、そこら辺のおっさんである。

 

[ハッハッハッ、人生何があるかわからないもんだよな!!]

 

[本当にそうですね、身に染みて知りました....というか、生徒会長になれる程の人がなんでフェジテで鍛冶屋なんてしてんですか?]

 

少し踏み込んだ質問をしてくるアーサーにハンクの反応は少し微妙だった。

 

[おいおい、忘れたか?お互い過去の詮索は無しだって、まぁでも今回は俺が悪いか]

 

[ふむ.,.ではルールを追加しませんか?]

 

[ルール?]

 

[ええ、お互い、その秘密を知りたい時は相手が知りたい秘密を教えるというルールです、嘘はダメですよ]

 

[..面白ぇいいぜ、確かお前が知りたいのは、なんで鍛冶屋やってるか?だっけ?えーっとな、一応俺卒業した後は軍に4年くらいはいたんだけぜ?どんどん出世しててこのままエリート街道を突き進むって思ってたんだけど、軍の考えと俺の考えが違ってな....所謂方向性の違いって奴で除隊したんだ]

 

[なんすか、その売れないバンドの解散理由みたいな言い訳]

 

アーサーが目を細めながら言うと、ハンクがまぁ聞けってと宥め話を続けた。

 

[んでその後、各地を放浪してたらある時、道端に死にかけのじいさんがいてな、そいつを助けたらなんと、伝説の鍛冶屋とかなんとか巷で言われてる人だったらしくてな、なんで道端に倒れていたかと聞いたら、もう先長く無いからせめて綺麗な湖で死にたかったらしいけど途中で力尽きてしまったんだと。でもじいさんが目指していた場所めっちゃ汚水まみれで水の色も澱んでる汚いって評判の沼地だったんだよ!笑えるよな!]

 

[ははっ、面白いですねそれ]

 

 

[だろ!んでそのじいさん、妻に先立たれて、子供もいなかったせいで鍛冶屋の技術を受け継ぐ、後継がいないらしくてな、死ぬ前に置き土産だーって言って、俺に鍛冶の知識と技術を教えてくれたんだ、んでそのじいさんが死ぬのを看取った後、12年前フェジテで鍛冶屋を開いて今に至るって訳]

 

[成る程、教えて頂きありがとうございます]

 

凄い半生だ、軍人としての地位も名誉も捨てて、鍛冶屋に転身する当たり、権力や名声に拘らず、自分の生き方を一貫してきたハンクらしいとも言える。そして今度はハンクがアーサーに質問する。

 

[じゃあ俺の番だな、お前その戦闘技術とまだ10代の子供とは思えない手を汚す事のできる覚悟と心構え、何処で誰から学んだ?]

 

めっちゃ踏み込んでくるやん、とアーサーは心の中で思うがルールはルールこちらも答えないといけない、あくまで嘘は付かずに。

 

[そ、そうですね俺の場合は師匠に教わったんですよ、魔術も戦闘スキルも心構えも、処世術とか外国語、勉学と多く学びましたね、人としての在り方、誰かの為に力を使うことや、時に手を汚さなきゃ守れない事とか....]

 

[その師匠にいろんな事を学んだんだな]

 

 

[はい、正直あの人がいなければ、力を振りかざし人を殺戮する品の無い下劣な人間に成り下がっていたでしょうね...

でもだからと言って今の私も品のない下劣な人間とはいかなくとも、教会の神父のように善人で聡明な人間ではないですよ...。例え俺が殺した人間が、何も関係の無い人を手にかけた奴であろうと、人を殺したと言う点で見れば、唯の人殺しと変わりないですから、でもあくまで必要が有ればってだけですけどね]

 

アーサーの戦闘技術や性格や考え方はその多くは師匠から来てるらしい、アーサーは普段貰ってる給料の半分を孤児院に寄付してそこの手伝いをしたり、地域のボランティアなどをやったり、友達を侮辱されたらどんな人間であろうとキレたりするくらいには善人?ではあるが、その反面、彼と本気で敵対した人間は大概二度と太陽を拝むことは出来ない、相手が誰であろうと一切の容赦も慈悲も掛けず徹底的に叩き潰すからだ。ただ冷酷に、アーサーモーガンとは凍てつくような冷酷さと損得勘定に縛られない大きな暖かい優しさとを持つある種の二面性を持つ人間なのだ。

 

[成る程....ありがとうな、アーサー]

 

[いえいえ、とんでもない、それより釣りしましょ、まだ数匹しか釣れてませんよ]

 

[そりゃお前が下手くそなだけだろ、こっちはバケツ一杯に釣ったわ]

 

[ハハッ、バレましたか、じゃあもう少ししたら帰りますか]

 

[そうだな]

 

 

そうして暫くの間平和なひと時を過ごすのだった。

しかしアーサーは忘れてしまっていた、例の遅刻の件であのマッドサイエンティストの助手として働かされている事を....そして明日までにやっておいてねと言われた、テイレル要素を用いる事によって空間ベクトルにもたらす影響についてのレポートと言う、一介の学生には到底理解できない物を....いくらアーサーといえど5枚書くだけでも苦労するであろう物が30枚ある事を...これが後日ある事件のきっかけとなる。

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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3大欲求を蔑ろにした代償

□□□ライトサーバを起動しろ!!コイツはもう避けようが無い






引用 これから起きる未来の出来事より


ここアルザーノ帝国で第二の首都と呼ばれる程、栄え、平和で活気溢れる魔術都市フェジテ、そしてそこに併存するアルザーノ魔術学院、この都市と共に発展してきた学院に今日もまた平和で新たな1ページを織りなすはずだったのだが.....

 

[いやだってぇ〜魔術に置いては絶対勝てないし〜素手でも俺より強いんだも〜ん]

 

[いや、そんな事言ってないで!!グレン先生あれなんとかして下さいよ!!!]

 

[よし....お前らの事は忘れない後は頑張ってくれ]

 

[ちょっ!!逃げるな!!貴方それでも教師ですか!!]

 

[ボクチン非常勤ですぅぅ!!だから責任を負いませんんん]

 

[なんとかするまで絶対逃がさないから!!]

 

[いやだぁぁぁぁぁ!!ボクチンお家帰るぅぅ]

 

阿鼻叫喚の地獄絵図、教室は荒れに荒れている、なんとか結界で外に出してはいない物の破られるのは時間の問題だろう。そして暴れているのは、なんと頭に変な装置を付けたアーサーであった!怪我人こそ出ていないが失神してる生徒もチラホラいる。何故こんな事になったのか、少し遡るとしよう。

そうそれは今日の朝いつものように、学校のホームルームをしている時だ、ギィーと言う音共にドアが開くとヨロヨロと壁にもたれ掛かりながら、歩くアーサーが入ってきた、それは別に良いのだが問題はその顔色と頭に付けている装置だった、頭に謎の帽子のような、装置が付いていて、顔面蒼白で頬はコケて目は充血して目の下にはでっかいクマができている、とにかく生気のない顔をしていた、そして自分の机に向かい腰を掛けた瞬間に、鞄からレポート45枚位を広げ、後5枚後5枚と目をかっぴらきブツブツ呟きながら、ペンを走らせていた、余りに異様な光景にグレンを含めクラスの人間全員がアーサーに注目した、そして隣にいたカッシュが声を掛けた。

 

[よ、よぉアーサー3日振りだな、いきなり来てレポートに勤しむとは真面目だな、ていうか大丈夫か?顔色悪いぞ]

 

[......後5枚後5枚]

 

[おい、アーサーってば!]

 

カッシュがアーサーの肩を揺さぶるとようやくアーサーがカッシュの事を認識する。

 

[あれ?カッシュなんでここに?あれ?俺自分の家にあぁそうか、さっき学院に向かっていたっけ、そうだったあはは何言ってんだろ俺]

 

そう言って笑ってはいるが顔が声に力が無く、目は虚で何処か遠くを見ているし記憶も混濁しているように見えた、なんだが嫌な予感がしたカッシュはこんな事をアーサーに問いかける。

 

[お前最後に寝たのいつ?]

 

[眠る?眠るってあぁ睡眠すなわち、周期的に繰り返す、意識を喪失する生理的な状態のことである。ねむりとも言う。体の動きが止まり、外的刺激に対する反応が低下して意識も失われているが、簡単に目覚める状態のことをこう呼んでいる。ヒトは通常は昼間に活動し....以下略]

 

まるで機械の様に喋るアーサーにカッシュが遮った。

 

[そう言うこと言ってんじゃ無くて、お前が最後に寝たのはいつだって!!]

 

[三日10時間前]

 

《(今・すぐ・寝ろ!!》)

 

クラス全員から言われるとアーサーが頭の装置をコツコツと叩きとんでもない事を言った。

 

[眠りたくても、この装置が睡眠を完全妨害してきて眠る事が出来ない..]

 

[誰に付けられた?アーサーなんとかシュナイザーとか言う奴か?]

 

グレンが聞くと、アーサーがそうですと認めた、そしてグレンがカッシュにその装置を外してやれと言うと、カッシュがあたまに付いてる装置を無理矢理引っ剥がしに掛かる

 

[とりあえず、その装置外して、保健室行くぞ、んでその後あの腐れ教師俺とグレン先生がブン殴っといてやるから、お前は休んで、てっぉぉぉ]

 

そう言いながら、カッシュが装置を外し掛けたその時、カッシュがアーサーに吹き飛ばされ、警告音がクラスに鳴り響いた。

 

[!?カッシュ!!おいアーサー何やって...]

 

そうグレンが怒りながらアーサーの方に向くと...

 

[-------外敵による、本体への攻撃と判断、コード66を執行します、殺傷武器、軍用魔術、後遺症が残る攻撃手段以外を用いて速やかに対象を無力化します。]

 

機械的なアナウンスと共にとんでも無く物騒な単語が聞こえクラス一同唾を飲み、身震いし始める。

 

[凄く嫌な予感がします、先生...]

 

[奇遇だな白猫...俺もだ]

 

瞬間アーサーが全員の前に立ちはだかり、黒魔ショックボルトを即興改変して二重詠唱する、無数の紫電が襲い掛かる。グレンとシスティーナ以外が直撃してしまった。と思うといきなり直撃した紫電が形態変化して鎖の様になり、そのまま拘束してしまった。

 

[ハハッ、最近の魔導具はすげぇな本人の能力まで底上げどころかブッ壊れまで上げちまうのかよあんなの宮廷魔導士レベルじゃねぇか、即興改変からの二重詠唱、しかも一人一人威力まで調節してやがる寸分の狂いもなくだ。...まぁでも種はわかってるあれさえ壊せばいいんだからな]

 

[グレン先生?]

 

首を傾げているシスティーナを他所に、遮蔽から身を出し、《《胸元からタロットカードを取り出すと、アーサーの魔術が一切起動しなくなった。》

 

[ヘヘッ、こうなればこっちのもんだ、残念だったな俺の必殺初見殺しがある以上お前は何もできない、こうなってはいくら卓越した魔術技巧があろうと意味が無いって訳だ、次からは格闘仕様を追加しておくんだなっはぁぁぁ]

 

グレンがカッコよく決めていた所にアーサーのキレの良い後ろ蹴りが飛んできた、この一撃にグレンは痛みよりも驚きが勝った何故なら

 

[こ、この動き喧嘩慣れした奴の動きじゃ無い本職の動きだ...!?あの構えは帝国式軍隊格闘術!?嘘だろ、あの魔導具ラクチン簡単宮廷魔導士簡単お作りセットって訳かよ!?笑えねぇ!!クソ!これは怪我させないギリギリのラインでやらないと行かなそうだ...]

 

そう言い、両者共に拳闘の構えを取る、その様子を固唾を飲みながらみる生徒達、最初に仕掛けたのは...グレンだった、地を這うように地面を蹴り一気にアーサーに接近すると、アーサーの足元に強力なタックルをかました、一気に体勢を崩させると、仰向けにさせ関節を決めて一気に寝業に持ち込んだ、まではよかったのだが、何とアーサーが関節を決められながらも、腕でのパワーで無理矢理外して、グレンを投げ飛ばした、急いで受け身を取り、体制を立て直しながらグレンが悪態をつく

 

[グッ...なんてパワーしてやがる。ゴリラかよ...なっ!?]

 

アーサーが一気に詰めて、グレンの顔面に鋭い一撃を叩き込もうとしてきた。グレンはそれに驚きながらも、間一髪のところでいなし、後ろに一度下がったが、あまりの拳のキレに、受けた方手の甲は切れて血が滲み出てきていた。

 

[グッ....強ぇぇ、コイツは手加減なんて言ってられねぇな、本気でやらないと]

 

今度はアーサーとグレンが同時に距離を詰めた、そしてゼロ距離で殴り合いを始めた、アーサーの一撃をいなして攻撃に転じ、そしてまたいなす。

 

[ウォォォォォォォォォッッッ]

 

[.........]

 

お互い譲らない譲らない譲らない。卓越した拳闘技術、そして内に秘めたる熱い気持ちと勢いで相手を圧倒するグレン

冷静で声を荒げずただ静かに淡々と的確な攻防をするアーサー

両者共に対照的な戦闘スタイルだ。

 

アーサーがグレンの攻撃を的確に受け、そして鋭いカウンターと時折くる威力を重視した、重い一撃をグレンに与え続けるが。それに簡単にやられるグレンでも無い、流れるようにいなし攻撃を防ぐ、勝負は長引いた。そして暫くしたのちグレンが息をふぅーっと整えた後こういった

 

[あーこれ無理だ勝てねぇ]

 

グレンが清々しい顔をしながら、半笑いしながら言った。それもそのはず、グレンの戦い方は短期決戦では大きな脅威となるが、長期戦に持ち込まれると体力の低下でキレも勢いも無くなる、アーサーの戦闘スタイルとは部が悪いのだ。だがシスティーナが直ぐにツッコむ

 

[はぁ!?何言ってるですか先生!?今他の講師の方々出払ってて頼れるの貴方だけなんですけど!?]

 

[いやだってぇ〜魔術に置いては絶対勝てないし〜素手でも俺より強いんだも〜ん]

 

 

[いや、そんな事言ってないで!!グレン先生あれなんとかして下さいよ!!!]

 

[よし....お前らの事は忘れない後は頑張ってくれ]

 

[ちょっ!!逃げるな!!貴方それでも教師ですか!!]

 

[ボクチン非常勤ですぅぅ!!だから責任を負いませんんん]

 

[なんとかするまで絶対逃がさないから!!]

 

[いやだぁぁぁぁぁ!!ボクチンお家帰るぅぅ]

 

 

完全に逃げる気マンマンのグレンとそれを必死に止めるシスティーナ、間違えなく終わったとクラスメイト全員が思いこれから何をされるかを想像して失神する者までいた、まさにカオス、そんな時バン!と扉が開き、リモコンを持った講師が教室に入ってきた。

オーウェル=シュウザーだ

アルザーノ帝国魔術学院の魔導工学教授、学院に毎年莫大な出資をしている領地貴族シュウザー侯爵家の当主にして第五階梯に至った若き天才。そして今回の騒動の黒幕と言ってもいい人物だ。

 

[おぉ素晴らしいぃ!流石は私の作った不眠不休働けるよ君だ!ちょっとした誤作動を起こしてるみたいだが完璧だ!!]

 

[んな訳ねぇだろ!!このマッドサイエンティストめ!早くなんとかしてくれ!!]

 

[オーウェル先生!?良かったなんとかしてくださいよ!!]

 

[しょうがないな〜ほいっと]

 

リモコンのボタンを押すとアーサーはその場に力尽き、寝息をかいていた。とりあえず気絶した生徒とアーサーを保健室に運び、ひとまず安心した後誰もいない廊下でグレンがオーウェルにお説教をし始めた。

 

[おい!マジで危なかったからな?怪我人出てないの奇跡だわ!つうかなぁーにが不眠不休で働けるよ君だ!!誰でも簡単帝国宮廷魔導士に能力底上げできるよ君に改名しやがれ!!]

 

[何を言ってるんだ、我が友グレン先生!たしかに少しだけ防衛プロトコルとか組み込んでみたけど、あれ自身に能力を上げる効果は無い!純粋にアーサー助手本来の能力なんじゃ無いのか?]

 

[はぁ?嘘つくなよ、確かにアイツはかなり優秀だとは思うが、あんなレベルで動ける訳無いだろ!]

 

[本当だって!]

 

そう言って弁明するがグレンは聞く耳を持たずお説教はさらに続くのであった余談だがアーサーに今回の件についての記憶は無く、オーウェルの責任として何も処分は受けなかったのと、オーウェルの助手として1ヶ月働くと言うのは不問となった。

 

続く



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この世で先に死んでいくのはいつだって善人

そうか....それがお前の選んだ道か...なら俺はお前の□□として、見届けるとするか...





ある、マスタージェダイの言葉


フェジテでもかなり地位の高い者以外住んでいない、豪邸がズラリと並ぶ高級住宅地、その一つに由緒正しきフィーベル家と言われる名家が存在する。その一室で二人の少女が寝巻き姿で和気藹々と今日あった事を笑いながら話していた。

 

[-でねぇ〜もうみんな大騒ぎ、なんとかはなったんだけど、でもやった当の本人は何も覚えてないの!!面白かったわ!ホント!アーサーったら[-え?待って俺またなんか知らぬ内にやらかした?]なんてこの世の終わりみたいな顔して言うから、笑っちゃってフフッまた思い出しそう]

 

[-あはは、私が風邪で寝込んでる間にそんな事あったんだ、見たかったなぁ〜]

 

美しい銀髪が台無しになるほど笑うシスティーナとそれをベットの上で嬉々として聴いているお淑やかな雰囲気を持った美しい金髪の少女がいた、ルミアだ。

 

[-アーサーと言えばあれよ!ハーレイ先生の!]

 

[-まだ言ってるの?システィ人を馬鹿にする奴はダメだよ]

 

[-いいじゃない別にここには私とルミアしかいないんだから]

 

[-もうシスティったら]

 

今から話すのはアーサーが一年の時に起こった伝説のハーレイ先生後退事件である。

その日はハーレイ先生が特別講師として授業する日だったのだ、テーマは魔術師としての在り方、授業が始まったと思うと、今ある魔術観を全否定それはそれは凝り固まった前時代風の考え方をウンザリするほどご教示して下さった、そして最後にハーレイが魔術師に後退は無いと言った途端アーサーがガタンと立ち

[-ん?でも先生の頭部は後退してますよ?]ととんでもないタブーに触れ、一同唖然とした中でハーレイがアーサーに対して頭部後退などしていないだのなんだの文言を言ったが、アーサーが流れるような早業でハーレイのヅラを取り、それを高らかに上げた、それをみたハーレイは、その教室から出ようと逃げも隠れもしない魔術師が人生初めて後退したという伝説の事件だ。

 

[-あれは傑作だったわね]

 

そして話はアーサーの話題になった

 

[-ふふっ、でもアーサーって不思議な人だよね、普段は変な口調で授業中ふざけたり、おちゃらけてるしで、良くも悪くもやんちゃな男の子って感じなのに、友達が傷つけてられた時は本気で怒ってくれたり、泣いていたらそっと慰めてくれたりする優しい人だよね]

 

[-確かに...ただ馬鹿なだけだと思ってたのに、意外と数秘術と古典以外は!勉強出来たり、努力家だったりもするわよね、此間も私の事助ける為に手袋投げてくれたりしたし、色々感謝してるけど...]

 

[-でもアーサー自分の事全然話たがらないし、なんだかミステリアスだよね]

 

[-確かに...アイツの生まれ故郷とか、家族関係とかどこの家の人なのかとか聞いた事無いわね]

 

そうシスティーナが顎を腕で支えながら、考えていると、ルミアが何かを閃いた。

 

[-ねぇねぇシスティ、いい事思いついた]

 

[-え?何ルミア?]

 

------------

[よし、これで終わりな、お前らだけ、明日授業あるからな〜来いよ〜]

必要事項やらなんやらを述べた後グレンが帰りのホームルーム締める、後は部活をするなり、図書館で勉強やら本を読むなり、帰宅するなりと各自自由な時間となり、アーサーは特に何かに属している訳でもないし、学院で何かする予定も無いので、さっさと学院を出る、がその後をつけて5人組がアーサーに勘付かれない場所から監視していた...その5人組はルミア達だった。

 

[-ルミアったら偶に凄い事思いつくわね、アーサーを尾けて色々探ってみようとか、普通思いついてもやらないわ]

 

[-えへへ、ありがとうシスティ]

 

[-褒めてない!全くもう]

 

[-でも一緒にルミアに付いてきたって事は貴方も気になってたんでは無くて?]

 

[-少しは気になるけど!なんでウェンディ達まで来てるのよ?]

 

システィーナが横をバッと見るとウェンディの他にもカッシュ、ギイブルまで来ていた。

 

[-私は、ただカッシュに誘われただけですわ!]

 

[-おう!俺が誘った!ついでにギイブルもな!いやぁーアーサーの野郎休日とか帰りに遊びに誘っても来ないし、一緒に帰りたがらないから何してんのか気になってな]

 

[-僕も、アイツの素性は少し気になっていたんだ、だから少しでも掴めたらなと思って]

 

[-全くもう...バレないように尾けるわよ]

 

こくりと全員頷き、全員固まってアーサーを尾行し始めた。暫く歩いていると、アーサーが一度止まり、お菓子屋で買い物をし始めた、手にとっているのは子供向けのお菓子やら玩具やらであった。

 

[アイツ見かけによらず可愛い趣味してんのな]

 

カッシュがニヤけながら言うとシスティーナがある一つの考察をし始めた。

 

[言えてるわ、でももし仮に趣味では無く、誰かにプレゼントする物であったら?]

 

[ハッ!?お菓子やらおもちゃやらをプレゼントする相手...子持ちの人妻!?]

 

[そんな訳ないでしょ!]

 

[あははは]

 

カッシュが真面目な顔して言うと、システィーナが直ぐツッコミを入れた。ふざけたやりとりをしているとアーサーが会計を済ませて店を出てきた。次に入っていたのは美容院であった。

 

[アーサーって美容院とか行くんだな、普通に自分で適当に切ってるとか思ってたわ]

 

[あはは、流石に自分で切るは無いと思うけどね。でも確かに普段あまり身だしなみとかは気にしてるようには見えないけど...でも今回はそれだけ気合いが入ってるのかもしれないね...カッシュがさっき言ったことあながち間違えじゃないかもね、システィ]

 

[ルミアの言う通りかもね、取り敢えず待ちましょう]

そうして暫く待っていると、美容院からアーサーが姿を現した、だがそこにいたのは、いつものボサボサな髪と変な眼鏡を付けたヤンチャなアーサーでは無く、金髪の髪を靡かせたイケメンであった。確かに元々黙ってれば良い顔と評されるくらいには顔は整っていたが、眼鏡を外して髪型を整えただけでそのルックスは雑誌に載っているモデルと大差が無いものだった、そして元々体も引き締まっていたのも相まっても、たいして着飾らずとも、爽やかで、凛とした雰囲気が滲み出ていた。

そのあまりの変貌振りに5人とも動揺が隠せなかった。

 

[うわーすっごいカッコいい]

 

その風貌たるやルミアが思わず語彙力をなくす程のものであった、カッシュもシスティーナも

 

[いやいやいや、確かにアイツ黙ってればいい顔してんなとは思ってたけども、あそこまで変わるもんなん?別人やん]

 

[すっごい、、お祖父様の若い頃みたい]

 

[あれホントにアーサーですの!?]

 

[あぁそうっぽいね、ハァー....なんだか負けた気分だ]

 

[右に同じく]

 

ギイブルがため息混じりで言うとハッシュもそれに同調した。

そしてアーサーはまた歩き出す、そしてルミア達もそれに付いて行く。ルミア達的にはバレてないと思っているのだろうが、アーサーの視点でいくと

 

(尾けられてる気がするな〜って思ったらお前らかい!ていうかなんで美容院のしかも俺の近くの席の窓で、固まっててバレないと思ったんだよ!ていうか尾行で5人とも固まってどうする!何やってんだ?って顔で通行人からめっちゃ見られてるし!つうか魔術師の端くれなら魔術使え!]

 

と結構最初の方から勘づいており、心の中でツッコミを入れるのであった、だが一瞬アーサーの頭に電流が走りここで一つの可能性に気がつく

 

[...いや待てこれがもし条件起動式の魔術式が組み込まれていたら?例えば尾行中に後ろを振り向いたら、何か無条件で吐くとか?成る程だからあんなバレバレな尾行を..,フフッ、アイツらもなかなかやるな、我慢比べって事か]

 

と意気込み辺りに魔術式を相手に悟られないように探す、がそんな物存在しない、なぜなら条件起動式なんてものやってないからだ、ルミア達からすると普通に大真面目に尾行しているつまりなだけ魔術なんて一ミリも使ってない、つまりアーサーの深読みで、ある種のすれ違いが起きているのだ、なんとも滑稽である。

 

そうしてコントみたいな事をしながら15分程歩くとやっと目的地に着く、そこには年端もいかない子供達が和気藹々とかけっこをしたり、ボールを使って遊んだり、本を読んだりと思い思い友達と遊んでいる所だった、システィーナが看板を読むとフェジテ孤児院と書いてあった。そしてアーサーが来たのがわかったのか、全員嬉しそな笑顔をしながら凄い勢いでアーサーの元に向かってきた、アーサーは揉みくちゃにされるが満更でも無い様子だ。

 

[ハハッわかったわかった、お前ら元気にしてたか?]

 

[うん!元気だったよ!後お土産ありがとう!今日は何しにきたの?もしかして遊びに来たの!]

 

[ハハッ、それもあるけど一番はジェニファー先生が新しいテーブルや

机やらを設置するのに古いヤツをバラして捨てないといけないらしくてな、男手が必要らしくてね、だからそれの手伝いのために来たんだよ]

 

そう言うと奥の方から、おっとりとしたグラマラスで清楚で妙齢の綺麗な女性が、やんわりとした空気を纏わせながら出てきた、ジェニファー先生だった。

 

[そうゆう事だよ〜うふふ、こんにちはアーサー君、本当に今日はありがとうね〜運ぶにも重くて重くて、子供達にも運べなそうで]

 

[いえいえ何も問題はありません、ジェニファー先生私がついてますので]

 

そうやって、決めたクサイセリフを吐くアーサー、恐らく髪型やらなんやらを変えたのはジェニファー先生にアプローチする為だったのであろう。

 

[え〜じゃあ今日は遊んでくれないのーつまんないのー]

 

そうやって子供達が寂しそうな表情を浮かべるとアーサーがニヤリとした。

 

[大丈夫大丈夫、今日は助っ人が来てるから、なぁお前ら?]

 

そうやって後ろを振り向くと、5人組がゾロゾロと不自然な林の中から出てきた。

 

[えへへ、バレちゃた]

 

[取り敢えずここに来たからには、この子達と遊んで貰うからな]

 

[えっちょっと!そんな事聞いてないアーサー!]

 

[知らん!尾けてきた、代償だと思うんだな!カッシュとギイブルは俺と一緒に手伝え、女子3人組は子供達の相手してやれよ〜せいぜい子供の無限体力に恐れ慄くんだな]

 

[アイツらは俺の友達なんだ、だから目一杯遊んでもらえ〜]

 

そう言うと子供達はルミア達をロックオン、そこからはお察しだ、カッシュとギイブルは窓からその光景を死んだ魚のような目で見て心底あっち側じゃなくて良かったと感じていた。

 

--------

[よし、これで一通り終わりだな]

 

[ありがとうね〜君たちのお陰ですっごい早く終わったよ〜]

 

[いえいえ、お安い御用です、あ、お礼はベットインかとでもいいですよ]

 

[もぉー若いんだから〜]

 

ナチュラルにセクハラするアーサーを軽く流すジェニファーであった、流石は大人の女性と言った所か、余裕がある。

今この空間で余裕が無いのは横に仰向けで倒れている、二人であろう。

 

[おーい二人ともいつまで伸びてんだ?]

 

[お前...なんであれだけやって涼しい顔してんだよ?]

 

[ゲホッゲホッ....右に同じく!]

 

[魔術ばっかりに頼りすぎなんだよ、偶には自分の力一つでやれっての]

 

顔が真っ青になっているカッシュとギイブル、原因は魔術使うの禁止なと言うアーサーのお達しの元、力作業を全て魔術無しでやった為であった、65キロあるであろうもの何個も一人で運ぶのだ、全身に掛かる負担はとてつもないものだった、インテリ眼鏡のギイブルは文句を垂れながらも死にそうな顔しながらやり、それなりに動けるカッシュも最初こそ余裕はあったがだんだん顔が真っ青になっていった、アーサーはと言うと、黙々と運び続けていた。

 

[お二人ともベットで休みます?]

 

そう言って心配そうに顔を覗かせるとアーサーがニコリと笑いながら

 

[いえいえ、お気になさらず、後でコイツらには治癒魔術掛けておきますので]

 

その時の二人の顔はいや言わなくてもわかるであろう。そうしたやりとりをしてると、年端も行かない、黒髪黒目の目が武人のように据わってる木刀をもった子供と、ウェンディが中に入ってきた。

 

[アーサーなんとかしてくださる?この子ったらアーサーに手合わせしてほしいって言って聞かないんですの]

 

[また今度って言ったろ、ダリス、ウェンディ姉さんを困らせないの]

 

[でも今度会ったら手合わせしてくる約束だった!]

 

どうしたものかと頭を悩ませると、ウェンディがドヤ顔しながらある提案をする。

 

[私が相手になりましょうか?]

 

[え?ウェンディ剣術できんの?]

 

[ふふん、剣術は貴族の必須事項ですのよ、幼い子供の相手など、お茶の子さいさいですの]

 

と、ドヤ顔で語るウェンディにアーサーは怪訝な顔をしながらも渋々許可を出した。そして少し意味深に加減しろよと言った、ウェンディはそれに反応するように相槌を打った。

 

庭に出ると、子供の一人がみんなー剣術が見えるぞ!と大声で言うと、遊んでいた子供達は全員それを囲うように見始めた、後からルミアとシスティーナも子供達に手を引かれながらきた、カッシュとギイブルはアーサーの横で未だ伸びていた。

両者共に準備万端といった所か、ストレッチをして、木刀を軽やかに振り回していた。

 

[んじゃ、試合を始めるぞ、いいか、魔術は無し、顔面を狙った攻撃も無し、後遺症の残る攻撃も無し、後やばいと判断したら、試合止めるからね、よし両者構えて.....始め!]

 

始まりの鐘が鳴った、両者共にいきなり速攻で仕掛けることは無かった、共に様子を伺っている、ダリスは冷静に相手の出方を見ているようだ、ウェンディはと言うと、余裕そうな表情をしていかにも油断している様子だ。

 

[あら、何処からでもかかってきても宜しくてよ]

 

[あ、そう...じゃあ遠慮無く]

 

そう言った刹那、一瞬で距離を詰めてきた、あまりのスピードにアーサー含め皆ギョッとしていた、そして一気に連撃、連撃、連撃、左右、前後を回転飛びしながら詰めてくる、アクロバティックな動きとムチのように鋭く早い連撃に、ウェンディは圧倒されていた、そしてウェンディの木刀を弾き飛ばし、勝負はついた。

 

[そこまで、ウェンディ油断しすぎたバカ]

 

[うぅ、そんな...子供に負けるなんて]

 

[す、凄い動きだったね、システィ]

 

[え、えぇ見たことのない剣術だったわ]

 

横にいたルミアとシスティーナも驚きの様子だった、何より驚いたのは、あれだけの動きをしながら、ダリルという少年は息一つ上がっていない所だ。

 

[腕を上げたな、ダリル!驚いたぞ〜このこの]

 

ダリルの頭をくしゃくしゃと撫でると、少し顔を赤くしながらも、腕を跳ね除け、アーサーに宣戦布告した。

 

[今度はアーサーさんの番だ!今回は俺が勝つ!絶対に!]

 

[おいおい、勝ちに執着すれば盲目になるって此間教えただろ?まぁそれいいとして、勝負は受けてやるよ]

 

そう言うと、ウェンディが持っていた木刀を拾い上げて、スタンダードな構え方をした。

両者構える、静寂のような静かな時間が過ぎると、その刹那激流のような激しい攻撃がアーサーを襲うが、彼はそれを笑みを浮かべながら、川に流れる水流のように、滑らかな動きで攻撃に合わせるようにいなしかわし守る、見るものを魅了するような動きだ。

 

(ふふっ、フォームⅣをもうあそこまで、俺の教え方が良かったのかな、なんだが嬉しい気分だ)

 

そう心の中で呟くアーサーであった、そう彼が教えたのはライトセーバーのフォームであった、ダリスはフォース感応者所謂フォースセンシティブを持っていたのだ、例のギャング組織を壊滅させた際救出した人達の一人であった、この子の家族は全員死んでしまったらしく、天涯孤独となってしまった、そしてフォース感応者であったのもあり、不安定な心で力を振るいかねないと感じたアーサーが、力の使い方と心構えを手ほどきしたのだ。

 

[この程度か?ダリス?]

 

[まだまだぁ!]

 

そう叫ぶと、また鋭く素早い連撃がアーサーに襲い掛かるが、その動きは先程より鈍かった、このフォーム、アタルの弱点は持続力の無さ、短期決戦ではヒットアンドアウェイを用いて大きな力を発揮するが、その動き故にスタミナの消費が激しい、そして、空中で回転する際、敵に背を向ける事になるので、格上相手だと自分自身を危険に晒すフォームでもある。そしてまだ小さな子供がこのフォームを使えばスタミナ消費は成人の倍とも言えよう。

 

[動きが鈍くなっているぞ?さっきの勢いはどうした?]

 

[ハァハァ、こうなったら....《雷精の紫電よ》!]

 

[な!?魔術!?]

 

慌てて回避するアーサー、まさか7歳の子供が魔術を使ってくるとは思ってなかったのか本気で驚いていた、周りの子供達もルミア達も、ジェニファー先生すら知らなかったらしい。

 

[ダ、ダリスいた魔術なんて覚えた?]

 

アーサーが苦笑いしながら言うとダリスが真顔で

 

[さっき、ウェンディ姉さんの鞄の中にあった教科書から]

 

[え?嘘だろ?あの短時間で?お前本当に天才だな、で、でも魔術は使わないルールだったろ?]

 

[それはさっきのウェンディ姉さんとの手合わせの時、アーサーさんとの手合わせの時には言われてない]

 

との事、確かに言ってない為そのまま続行した、ダリスは要領が良いというか良過ぎる為、魔術戦闘の才能はピカイチだった、アーサーの動きを完全に読みに来ていた、だが、それに当たるアーサーでも無い、必死に避け続けるが、最後には追い込まれた。

 

[うっへぇ、この子戦闘センス抜群だな、マジでその内、俺超えそう]

 

[これでトドメ、[雷精よ・我仇敵を・討ち滅ぼしたまえ]]

 

左手から解き放たれた、何百もの線のように細い紫電がアーサーを追尾してきた

 

[Ohh my god!マッジー?この子即興改変まで使い始めたんだけど〜ヤバいマジで天才じゃぁーん]

 

避ける避ける避けるひたすら避け続け、最後の紫電も避ける、辺りには砂埃が巻き上げている、そしてその煙の中から、高速でダリスが突っ込んで来る、そのスピードは白魔術を使ったそれでは無く、明らかにフォースを、使った身体強化の部類だった、アーサーは思わず感心してしまい反応に遅れたが、すんでの所でいなしきる。がダリスはアーサーの視線を読み次のアクションを予測し、今日一番の魂のこもった一撃をアーサーに向ける。

 

[殺った!!]

 

そして袈裟斬りの太刀筋で切り掛かる!

 

[だからさっき言ったろ]

 

アーサーはその一撃を受け流すと、その勢いを使って刀で言うところの鎺の部分を、弾き、ダリスの木刀を飛ばすと、首筋にピタリとくっつけた。

 

[勝ちに執着すると盲目になるって、忘れたか?]

 

そう言うと、ダリスは地面に膝をつく、目元にはうっすら涙が流れている。

 

[また、負けた....]

 

そう言うとアーサーが頭をくしゃくしゃと撫でてニッコリ笑いながら

 

[ダリス、でもお前すげぇぞ、あそこまで剣術の腕も上げるし、魔術も使えるようになるしよ!正直そこまでなってるとは思って無かった!必死に努力したんだな!!俺なんだが誇らしいぞ!]

 

そう言うとダリスも少し笑みを浮かべていた、勝ちたいと言う気持ちも勿論あったであろうが第一にアーサーに褒めてほしかったと言うのが強かったのであろう、そしてアーサーはダリスを肩車して子供達の遊びにつきあい始めた、そんな姿を見ていたルミア達も優しく微笑んでいた。

 

 

-------

アーサーは帰り寄るところがあるらしく一緒には帰らなかった、カッシュ達とは途中で別れ、そして残った二人は夜の繁華街を歩きながら今日の事を振り返っていた。

 

[今日は疲れたけど、楽しかったねシスティ!子供達可愛かったし、いつでも来てねってジェニファーさんに言われたし、また行かないシスティ?...どうしたのシスティそんな訝しんで]

 

[これでますますアーサーの事がわからなくなったわ、あいつホントに何者なのよ?]

 

[うーん、とことん子供に慕われてて、とにかく善人で、凄い剣捌きだったくらいしかわからなかったね]

 

そうルミアが言うと、システィーナの脳裏には孤児院で子供達が言った事がチラついていた。

 

[凄いんだよ!アーサー兄ちゃん!悪党をバンバンバンって!倒して行って助けてくれたんだ!]

 

[え?それ本当?もう少し詳しく教えてれる?]

 

と探りをかけるシスティーナであったが横にいた子供が

 

[バッカ!それ言っちゃダメだってアーサー兄ちゃんに言われたろ!]

 

[あ、そうだった!システィーナ姉ちゃん今の忘れて!バイバーイ]

 

[えっ、ちょっと]

 

そう言うと二人で何処かに走り去ってしまった事であった。

 

[...シス..システィ!]

 

[え?ああ何?ルミア?]

 

[歩きながらボーッとしてるよ!危ないからちゃんと前見て!]

 

[ごめんルミア、ま、まぁアイツが誰であろうと、アイツである事には変わりないもんね]

 

[そうだね、そろそろ帰ろう!義父様と義母様が心配しちゃうよ?]

 

そう言って家に真っ直ぐ帰るのであった。

 

-----

路地裏にてある取引をしている男がいた。

[これが目的の物だ、本当にこんなのでいいのか?アーサー?]

 

そう言うと大きなブリーフケースをアーサーに渡す、中を開けるとそこには、回転式銃と、ダスターコートと高純度のミスチルという魔術金属でできた仮面であった。

 

[ええ、これで大丈夫です、ありがとうございます、ハミッシュさん。後孤児院の増築の件、本当に助かりました]

 

[お安い御用よ、お前がルチアーノ家に施してくれたお礼にはまだまだ足りないくらいだよ]

 

当時孤児院は老朽化して、しかも20人近くいた子供達が入らなかったのである、そのためルチアーノ家に増築をお願いしたのだ。

 

[貴方達が居なかったらまたあの子達は路頭に迷うところでしたよ]

 

[ガキどもが路頭に迷うのは見たく無かったからな...それとジェニファーは元気か?]

 

[え?会ってないんですか?]

 

[ま、まぁな]

 

[ええ、まぁ元気でしたよ]

(チキンだな〜男ならガツンといけよ)

 

[そ、そうか、なら良かった今度花送っとくからお前名義でプレゼントしておいてくれ]

 

苦笑いで相槌を打つものの、心底自分でいけよと思うアーサーであった。

そして暫くジェニファーとの学生時代の思い出やらなんやらを永遠と路地裏で聞かされた後その場を立ち去った。

 

[...始まるな..俺の運命が....やり遂げてみせるさ....それが俺にできる贖罪《redemption》だからな)

 

そう覚悟を決めて明日に向け準備をするのであった。

 

[........]

 

そして、その姿をずっと気配を消して見ている者がいた。フードを深く被り顔は見えず暗闇に紛れていた。運命の歯車がガシャリと動き出した、もう誰も止められない、でも彼は止まる気も止める気もないだろう、それが選んだ道なのだから...それが例え自分の命を天秤に掛けたものであろうと....

 

 

続く




ホントにやっとこさ本編に入りやす


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学院襲撃事件
油断と慢心は身を滅ぼす


フォースとは使うものじゃない、操る物だ、俺達は無限にある力の一部を借りてるに過ぎないのだ。





引用 傲慢な弟子を諭す、師より


運命の歯車がガチャリと動く、ここフェジテだけでなく、この国この世界全て万物すら取り巻く物語のページがパラリと捲られる....

 

[....すまない、ここに割って入るわけには行かないんだ...グレン先生早くしてくれ...頼む]

 

アーサーが歯痒さを感じながら、悔しそうな表情する。アーサーが使い魔を通して見ている映像は、今まさにアーサーの大好きなクラスが外道魔術師...天の知恵研究会と言われる、アルザーノ帝国と長くに渡り死闘を繰り広げてきた奴らに襲われている最中なのだ。教室には3人の外道魔術師がおりクラスメイトを拘束していた。そしてその中の一際小物クサイ奴がルミアを探すために、クラスメイトに脅しをかけていた。

 

[さて、こん中に、ルミアちゃんって子いる?]

 

(どうしてルミアを?)

 

[君かな〜?]

 

下衆が目をつけたのはリンであった。リンは怯え切りながらも、クラスメイトを売ろうとはしなかったが、奴は子供であろうと関係ないように、醜悪な脅しをかける。

そんな様子を見ていたシスティーナが下衆に向かって食って掛かる。

 

[貴方達、、ルミアって子をどうするつもりなの?]

 

[お、さっきの、もしかしてルミアちゃん知ってるの?それとも]

 

[質問に答えなさい!!]

 

[うぜぇよ、お前]

 

その物言いに腹が立ったのか、下衆がシスティーナの額に向けて、手をかざし魔術を発動させようとしたその瞬間。

 

[私がルミアです。他の生徒に手を出すのはやめて下さい]

 

[へぇーまぁ知ってたんだけどねw自分で出てくるまでにクラスメイト達全員殺そうゲームしてたのに、クリアすんの早すぎだよw]

 

男がケタケタと下衆な笑い声をあげる、そして外道魔術師二人がそれぞれルミアとシスティーナを連れて行く、そしてもう一人の深くフードを被ったの男が教室にいるクラスメイトを魔術結界で拘束していた。

 

[目的は私でしょう?皆んなをどうするつもりですか?]

 

[卵とは言え、若い魔術師だ、我組織の実験材料として求める者も多いだろう。]

 

[そんな事許される筈が!]

 

外道魔術師が淡々と語る、その余りの邪悪さに、ルミアも声を荒げるが

 

[他人の心配より、己の心配をした方が良いのでは無いか?

ルミア・ティンジェル、いやエルミアナ王女...]

 

(先生...!!)

 

あまりの事態に心の中でグレンの名を呼ぶ事しか出来ない、ルミアだった。

 

-----

 

[ドレイクの兄貴達が行ったことだし、俺も楽しませて貰おっかな〜]

 

そう言うと男がフードを脱ぐ、その顔は皮膚が抉れ、酷い火傷をおっていた、そしてその表情は猟奇的な血走った笑みだった、皆怯えて口をぱくぱくとさせている。

 

[見てくれよこの傷を..火傷を美しいだろ?]

 

そう言うと、ウェンディを結界の中から無理矢理出して、嫌がり暴れるのを無理矢理拘束魔術で抑え、それに被さる

[ひっぐ...やめて下さい..]

 

[なぁ?そうだろ?そうって言ってくれよ!!!毎回毎回毎回毎回毎回毎回みんなそんな泣き顔をするんだ...私はこんなに美しいのに...でも最期はみんな綺麗って言ってくれるんだ...君もこうなりたいだろ?]

 

[てめぇ!!止めろ!!!やめてくれ!!!!!ウェンディ!!!]

 

狂ってる、狂気その言葉以外思い当たらない、カッシュが怒号を発するがどこ吹く風であった、そして今にも顔を燃やそうとしたところです、バァン!とドアが開く

 

[やめておけ...全くもう少し女性にはまともなアプローチを掛けたらどうだ?お前そんなんだからモテないんだよ]

 

扉の奥から、古びたダスターコートを見に纏い、金属製の仮面を被った男が落ち着いた足取りでやってきた。

 

[誰だ?お前?今なんて言った??モテない?私が?]

 

[癪にでも障ったか?]

 

そう言うと、ウェンディを乱暴に投げ飛ばすと仮面の男がフォースで受け止めて、優しく置く、そんな様子をフードの男は血走った双眸で睨みつけていた。

 

先刻

 

[クッソ!このままだと皆んなが!!助けに行きたいが、ここで行ってしまったら....畜生!!なる様になれだ!]

 

そう言って後先考えずに突っ走ってきたのだ。

 

(あーあやっちまった、見てられなくなって、こっち来ちまった..,これでもうこっちにどんな事があってでも、いや避けようとしても、絶対にこれから起こる事からは、逃れる事は出来なくなった)

 

この仮面の男はアーサーであった、友人が酷い目にあってるのを指咥えて見てられるか!と言って、飛び出してきたのだ。それがやっては行けない事だとしても飛び出さざるをえなかった...

 

[まぁ良いよ、私は心が広いんだ、顔を爛れさせるくらいで済ませてやろう、だがその前に名を名乗れ、それくらいは礼儀だろ?]

 

[....悪いが...これから死ぬ奴に名乗る名前は持ち合わせて無い]

 

アーサーは冷たく言い放つ、いつもとあまりに様子も雰囲気も違う為、長くいるクラスメイトすら気づいていない...そしてこの男は地獄を見るだろう、アーサーの冷酷な一面によって...

 

[言うじゃあないか、私が何者か知らないのか?おい?聞いているのか?]

 

《我祈らん・願わくば・かの者を守る力を・与え給え》白魔 遮断結界を唱え、クラスメイト全員を包み込む。フードを被った男はニタリと邪悪な笑みを浮かべる。

 

[優しいのですね...これから起きる事をクラスメイトに見せないように結界を...嗚呼.貴方の死様を見せられないなんてなんて悲しいんだ...そしてマナバイオリズムも知らないなんて...魔術師として終わってますよ!!]

 

そう言って戦闘態勢に入り、一気に殺しに掛かろうと、手をかざすが、その瞬間ズドガンと銃声と共に、マズルフラッシュが辺りを走った、フードの男は自分の体の一部が軽くなったような感覚を襲う、そして恐る恐る下腹部に触れるとべっとりと血が付着していた、そしてその箇所を目で見るとポッカリと穴が空き、向こう側の景色が見えてしまいそうだった、次の瞬間灼熱のような痛みが襲う。

 

[阿呆が..,安い挑発に乗り、その怒りのまま、相手を冷静に分析せずに来るからこうなる,...貴様程の魔術師ならば飛び道具の対象くらい容易であっただろうに..,油断と慢心をすれば死ぬ..,これは戦いに身を置く者なら、必修科目だと思うが?]

 

[がぁぁぁ、痛い痛い痛い!なんでこんな事するんだ!!ふへふへへへへへへ死ねぇぇぇぇぇぇ]

 

フードの男は狂った怒号を発しながら魔術を撃とうとするが、その瞬間をアーサーが見逃すはずもなく、冷静に予めフォースの身体強化を施しておいたのとプラスして

 

《疾風よ》

 

《黒魔ラピッドストリーム》で人外並のスピードで一気に男と肉薄して、そいつの心臓を穿いた後そのまま髪を引っ張り、口の中に銃を無理矢理捻こんで五発銃弾を浴びせた、脳幹を射抜き確実に命を刈り取るやり方だった。男は有無も言う前に絶命した。まさに残忍、人を殺す事に躊躇するような人間には決して出来ない所業だった。

その遺体をみんなに見せないようにとシートを掛けた後、結界を解く。

 

(ハァハァ、助かった奴が油断してくれたお陰で一気に畳み掛けて倒せた...仮に最初から奴がその気だったら、そこに転がってたのは俺だったな、それくらい強い相手だったら)

 

そう一人安堵するアーサーだったが、直ぐに切り替え、クラスメイト達に優しく語りかける。

 

[悪いな...怖かっただろ?]

 

[......]

 

全員心ここにあらずと言った所か...無理もない、魔術師といえどまだまだ子供、しかもこんな事に巻き込まれたらパニックになるのはしょうがない事だ。

 

[今そこから出してやる]

 

[む、無理です、スペルシールを解かないと]

 

カッシュがウェンディを優しく慰めながら言う。結界は厳重で、作った当事者以外解けない厄介な代物だった。

 

[問題ない...]

 

そう言うと、アーサーは深く集中する、その場に流れるフォースを導き構造を頭に浮かべる、そして厳重な鍵を一つずつ一つずつ解いていく、ものの数分で完全に解除した。

 

[ど、どうやって?普通解けない筈なのに....]

 

[話は後だ、みんな動けるか?ここから脱出するぞ]

 

クラスメイトの殆どが泣き目になり、顔をフルフルと怯え切りながら立ちすくんでいた。恐怖を感じ取ったアーサーはある言葉を投げかける。

 

[怖いのはわかる....でも生きて帰りたいなら、その恐怖を乗り越えるんだ、君達も立派な魔術師の端くれなら...今できる最善の選択をしろ]

 

アーサーが皆を奮起させる、そして、それに感化されたのか全員立ち上がり、アーサーの後ろについてきた。そして暫く歩いていると

 

[先程はありがとうございました...それで..あ、貴方は何者なんですの?]

 

ウェンディが質問する。

 

[俺は...レイブンだ...君達を影から見守る者さ]

 

アーサーは自分自身をレイブンと名乗った。何故そう名乗ったのかはわからない。

 

[レ、レイブンですか...変わった名前ですのね]

 

ウェンディが引き笑いをしながら言うと、レイブン(アーサー)がフッと鼻で笑う。

 

[5秒で考えた名前だからな]

 

[それ、適当って言いますの!!]

 

いつもの調子が戻ってきたようだ。そして脱出する為に進む、相手はこの事を想定してなかったのか、警備は手薄であっさりと入口方まで歩みを進む事が出来た。しかし

 

[...結界も張り替えられているか...面倒だな...でもまぁいつもより力を流し込めば、造作も無いだろうよ]

 

そう言うといつもの数倍力を込めたフォースを結界に流し込む、余りの力に普段なら透明な結界もその姿形が見えてしまうほどだ、そしてそのまま結界を解除では無く...硝子のように破壊した。その様子を見ていたギイブルが恐る恐る質問する。

 

[貴方...本当に何者ですか?どうして魔術や魔道具も使わずに手をかざすだけで、け、結界を破壊できるのですか?]

 

[...教えられない、それに今はそれどころでは無い、今君達がやるべき事は、ここから脱出して、応援を呼んで安全な場所にいることだ]

 

[...それもそうですね、失礼しました。]

 

[別にいいさ、後最期に...みんなこっち向いてくれ]

 

そう言うと、最期にレイブンがクラスメイト達に手をかざすと

 

《アーサーは今日一緒に教室にいたがテロリストの一人に連れて行かれた...》

 

そう言ってフォースマインドを掛けた、この技は芯が一本通っている人間や屈強な精神力を持っている人間又はフォースセンシティブを持つ人間には効果は無いが、精神的に不安定な人間や、未熟な者には絶大な効果を発揮するのだ。そして皆頭がふわふわとした状態で応援を呼びに行った、そしてレイブン(アーサー)はきた道を戻りもう一度学院に入って行った、目的は...

 

[フゥー...疲れてる場合じゃ無いな...フォースがずっと彼等に命の危機が迫ってると警告してる...急いでグレン先生の元に行かないと...]

 

そう言って駆け出していく

 



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死線を潜る

俺は貴方の事を本当の父親だと思っている、これからもそれは変わらない





引用 弟子の言葉


[クッソ!!テメェよくも白猫を!!]

 

[フン、人の心配をする暇があるのか?魔術講師]

 

[畜生!!]

 

激昂し、歯噛みするグレンと、淡々と何の感情も無いテロリスト、なんとも対局的な二人だ。学園でテロリストが襲撃してきてからおおよそ40分、アーサーがその内の一人を始末し、グレンは学園に来る前に一人と、システィーナを強姦しようとした屑を撃退した後、その次の刺客が召喚術を駆使し、グレンを襲い掛かるがグレンはそれを大技を使用して、何とか対処した。がその後すぐに術者がグレンとシスティーナを襲い掛かってきた、そよ余りの対応の速さに、虚を突かれた二人は一気に畳み掛けられ、システィーナは戦闘不能になり、グレンは満身創痍になりながら、どうにか捌いているが、もうそれも限界に近い、そして動きが鈍った瞬間、一気に空中に浮遊する剣でグレンに畳み掛ける、捌く、捌く、捌くが....死角から来た一撃を浴びてしまう、そして体勢を崩した瞬間、無数の剣がグレンに向かって....

 

[これで終わりだ]

 

その剣は、グレンに刺さる前に止まった...テロリストは疑問の表情を浮かべる、どうして剣が止まるのだ?と、意図的に止めた訳では無い、動かせないのだ、そして廊下の向こう側からカツンカツンと足音が鳴り響く。姿を現したのは、ゆっくりと手をかざしながら歩いてくる、仮面を付けた男、アーサーことレイブンであった。

 

[悪いがその男を殺させる訳にはいかない]

 

そう告げると、空中に浮く剣が、ゆっくりとグレンからテロリスト方に向くそして次の瞬間、子供が限界まで後ろに引いて離すと勢いよく動く玩具のように凄まじいスピードでテロリストに向かって飛んでいくが、男はそれを紙一重で避ける、レイブン(アーサー)は悪態をつきながら、ゆっくりとグレンの横に行く。

 

[チッ、内腿の動脈くらいは持っていけると思ったんだがな]

 

[お、お前は何者だ?]

 

[俺はレイブン、安心しろ、アンタの味方だ]

 

[味方って、そんなんいきなり信じろって言ったってよ]

 

[悪いが言い争いして暇は無い、あんたが俺を信じなくても結構だ、だがここを切り抜けるには、力を合わせないと不可能だ、それを解らない程アンタはマヌケじゃ無いはずだ]

 

[お前俺の何を知って....チッ、背に腹はかえられねぇか]

 

グレンは渋々提案に乗り、仮初の共闘がここに成り立った。

 

[話はもう良いか?もう十二分待ってやった]

 

テロリストが腰を上げる、戦闘の構えを取る、辺一体が凍てつく程の濃厚な殺気が漂う。グレンは少したじろぐが、アーサーは冷静に状況を読み、グレンに治癒魔術の籠った魔術結晶と、回転式銃を渡し、作戦を説明する。

 

[アンタはコイツの方が好みだろ?大丈夫、軍時代のアンタの仕様に近いから使いやすいはずだ。頼むぞグレン、俺は何とかしてあの厄介な剣を無力化する]

 

[何故それを!?.....いや今はそんな事気にしてる暇は無いか....正直お前の事は信用ならねぇけどよ、行くぜレイブン切り抜けるぞ]

 

[あぁ]

 

気のない返事と共に二人は戦闘態勢に入る、流れる静寂、静寂、達人同士の剣士が、出方を見るように、睨み合う.....そして次の瞬間、空中に浮く、剣が一気にレイブン(アーサー)に襲い掛かる。彼は魔術で応戦する

 

[《力よ無に帰せ》ッ!]

 

ディスペル・フォースを唱え、どうにかして剣を無力化しようとするが、、

 

[チッ、やはり出来て一本か...]

 

テロリストの空中に浮遊する剣が、いきなり力が抜けたように地面に突き刺さる、それを見たテロリストは鼻で笑う。

         

 

[フン、5本の内一本しか解術出来ないか、先程の戦闘と、結界を無力化したのが響いているのではないか?]

 

先程の戦闘と生徒を逃した一部始終を使い魔か何かで見ていたのかようだ、そこでアーサーは一つの疑問が浮かぶ

 

[見ていたのか?ならばどうして仲間に応援を出さなかったんだ?どうしてあのまま野放しにしていた?]

 

[我々の目的はルミアティンジェルの確保だ、それ以外の事の為に無駄な時間を使う訳にはいかんのだ]

 

[ハッ、お前達にとって仲間は目的達成の為の唯の駒だって事か?]

 

[当たり前だ、それ以外に何の価値があるというのだ?]

 

[....確かに合理的だ、目的の為に仲間を捨て駒に使い、ゴミの様に使い捨てるって訳だ....ハッ反吐が出るな]

 

[フン、アブレイユの奴を殺しておいて何を言うか]

 

アーサーはテロリストに睨みを効かせながらその目を離さず、フォースで無力化した剣を引き寄せ、その手に収めた。その光景にグレンとテロリストは訝しでいた。

 

[な、なんだよ、今の?重力系の魔術でも詠唱したか?いやでも今、ルーン文字の魔術式が出てこなかった、よな??]

 

[貴様、今どうやって、剣を引き寄せた?時間差起動の類では無いな?...ますます貴様は何者なのかわからなくなってきたぞ]

 

[さぁ?何だろうな?魔術師がわざわざ教えると思うか?]

 

そう言うと、アーサーは剣を、弓取りが矢を引き絞る様な見たことの無い独特な剣の構えをとった。

 

[妙な構えだな、今までこの国にあるありとあらゆる剣術を調べ研究してきたが、その様な構えは見たことが無い、フン、唯の我流と言った所か、それで私に本気で勝てると思っているなら、思い上がりも甚だしいな]

 

[それはどうかな?グレン...援護を頼む]

         

そう言うと迫りくる4本の剣を迎え撃つ、何重にもくる剣撃をまるで武芸者がやる演舞のように、軽やかに流れるように全てを受け流した、テロリストはさらに追撃しようとするが、グレンからの小さな隙間すら通す精密な援護射撃もあり一度後ろに下がるとアーサーが口を開く。

 

[成る程....その剣右の二本は達人並みの剣捌きなのに対して左の二本は魔術師とは思えないが剣士としては並みレベルだな、恐らく貴様のその空中に浮遊する剣は、術者の自由自在に操る事ができるのと剣の達人の技を複製してそれを自動で戦うだとかそんな所だろう?]

 

[ご名答....手練の剣士の技を複製した所で、自動化された剣術は死んでいる、そして仮に5本動かせた所で私は所詮魔術師、真に迫る事は出来ない、3本の自動剣と2本の手動剣、、これが幾たびの実戦で導き出した最適解だ。]

 

 

[サラッと言ったけど、それめちゃくちゃ高度な技術だぞ?どうする?レイブン?]

 

[する事は変わらん懐に入って仕舞えば良い]

 

[簡単に言うぜ全く]

 

平静を保っているように見えるが、アーサーは額に汗をかき、焦燥感に駆られていた。

 

(まずい、この状況はかなりまずい!奴の攻撃はいなす事はできる、でも懐に全然入り込めない、これではドンドン長期戦になってしまう、そうなるとこっちはジリ貧だ、グレン先生は既に満身創痍、俺も正直息が上がってる、力が戻ってないのに、フォースを短時間のうちに使い過ぎた。このままだと押し切られる)

 

フゥーと一度息を吐き、もう一度構える。

 

現在アーサーが使用しているフォームⅢソレスは、未来予知による先読みによって、防御と強力なカウンターに重きを置いたフォームで、一対多数での戦闘で絶大な効果を発揮する、そしてこれを極めれば無敵と言われ、囲まれていようがなんだろうが攻撃が当たる事が無いと言われている、しかしその反面、防御型であるが為に、自らが攻めに行くフォームではない為受動的になるのと、カウンターだけでは決め手に欠けてしまう為、長期戦になりやすい事が挙げられる。

 

アーサーは今一度、弓を引き絞るような構えをとったと思うと、テロリストが攻撃をしてくる瞬間に構えを左下に変え、マナが底をつくのを覚悟して

 

[《光あれ》!!]

 

黒魔 フラッシュ・バンを唱え、テロリストが一瞬怯んだ瞬間フォースを身体に込めてとてつもないスピードで突っ込んで行った。

 

[フゥッッッ!!]

 

[...クッッッッ]

 

テロリストは慌てて迎撃するがグレンの援護射撃もあり間に合わず素早く鋭い斬撃をモロに貰ったしまった。先程の受け身なフォームから打って変わって攻撃的なフォーム、アーサーはあの一瞬でソレスからアタルに無理矢理変えたのだ。この初見殺しがバッチリハマり、斬撃を喰らわせ

 

[やれるぞ!!レイブン!!畳み掛けちまえ!!]

 

そうグレンが言うと、レイブン(アーサー)は最後の一撃を食らわせようとするが....

 

[なっ!!]

 

先にやられたのは、剣の方だった。

         ・・・

[なんたる僥倖!!運はまだ私を見放してはいなかった]

 

刀身が斜めに欠けてしまい、もはやそれを剣と呼べる物では無かった。そしてこうなってしまっては懐に入っていようがなんだろうが関係無く危険、アーサーは慌てて引こうとするが、その瞬間を見逃してくれる程相手は優しくない、逆に一気に畳み掛けられてしまった。フォースプッシュをテロリストに当てて、なんとか命までは持ってかれなかったが、切られた箇所は服の下からでもわかるほどじわりじわりと出血していて傷は深く痛々しい。

 

[ハハッ、畜生....これは本気でヤバいな、グレン...逃げろ]

 

[てめぇ置いて逃げるとか!んな事出来るわけねぇだろ!!]

 

[意地張って無いで早く逃げろ!!]

 

[意地とかじゃねぇよ!!俺は仲間を見捨てておいおい自分だけ逃げるなんて事死んでもしたかねぇよ!!]

 

[よく言うぜ、さっきまで悪態ついてた癖によ]

 

[んな事忘れた!!立て!立つんだレイブン!!まだ終わってねぇ!!]

 

そう言ってアーサーを奮い立たせようとするグレン、その姿に何処か懐かしい事を思い出した。

 

[ハハッ、ゴボッゴボッ、アンタはそう言う人間だったな忘れてたよ]

 

アーサーは仮面越しにニヤつきながら自らの体に鞭を打ち、無理矢理立ち上がった。

 

[頼むが司令塔、作戦は?]

 

[アイツを油断させる。アンタはどうにかしてその隙をつけ、これ以外方法が無い。]

 

[油断させるって言っても、奴が二度も同じ手に引っかかるほどマヌケに見えるか?]

 

[頼むグレン、俺を信じてくれ]

 

アーサーの言葉は不思議と力があり、グレンもそれに賭けてみたくなった。

 

[....わかった、お前を信じる]

 

 

[何をしようともう無駄だ諦めたらどうだ?]

 

テロリストが諦めるように促すと、血をダバダバ流しながらアーサーがそれを一蹴する。

 

[悪いな、俺は昔から諦めが悪くてな、それが俺の唯一誇れる所なものなんで]

 

そう言うと、今度はアーサーが後衛に回り、グレンのサポートに撤する、グレンとアーサーは互いに満身創痍、死神の鎌に捕まっている状態だ。この状態で正攻法で戦っても負ける事は目に見えてるが。

 

[喰らえ!!]

 

そう言うと手をかざしてフォースプッシュを連発、最初はテロリストも吹き飛ばされていたが、段々軌道が読めて来たのか、全てを避けられていた、グレンも耐えてはいたが4本の剣を今の状態では守りきれず、切り付けられ、壁に叩きつけられ気を失っていたそして最後には。

              ・・・・・・・

[《力よ無に帰せ》フン、やはりな貴様のその技やはり魔術であったか、重力系の黒魔術であろう、それを貴様のパーソナリティーと掛け合わせたオリジナルと言うわけだ、種が分かれば例え起動する瞬間が見えなくても、手をかざした瞬間に唱えれば良いだけの話だ]

 

[畜生....]

 

[私をここまでよく追い詰めた、そこは賞賛に値する、だが運に見放されたな、これでトドメだ]

 

そう言って剣をアーサーに向けて振り抜こうとすると、アーサーが手をかざした。

 

[無駄な足掻きを....]

 

[無駄な足掻き?そいつは違うぜ?俺はこの時を待っていたんだ]

 

そう言うとアーサーは手を相手にかざすのでは無く、自分の方向に何がを引き寄せるように手のひらを向けた、すると無数の硝子の破片がこちらの方向に飛んできた、テロリストはやれやれと言った表情でディスペルフォースを唱える....硝子の勢いは止まらなかったそして男の背中に全

                ・・・・・・

て突き刺さる、苦渋の表情を浮かべ一瞬意識が逸れる、その瞬間アーサーは叫んだ!

 

[今だ!!!グレン!!!]

 

[うぉぉぉぉぉ!!!]

 

そう言うと先程まで壁で力無く気を失っていたグレンが、鬼神のような形相で一気にテロリストに肉薄する、急いで迎撃しようとするが、アーサーがそんな事させない、フォースで回転式銃を引き寄せ、空中に飛来する剣に発砲する、テロリストが魔術を使おうとするが

 

[遅えぇぇ!!]

 

愚者の世界を起動して魔術を封殺し、テロリストの目の前に落ちていた欠けた剣で、テロリストの心臓に突き刺した、男は力無く仰向けに倒れた。

 

[貴様...何故?ディスペルされなかった?]

 

[悪いな俺の力は厳密には魔術じゃ無い、だからディスペルフォースは効果が無い]

 

[成る程貴様異能者か...その線を考えなかったな私の落ち度だ、そして貴様らは芝居を打ちまんまと私は引っ掛かったと言うわけだ]

 

[そう言う事になるな、殆ど賭けみたいな物だったがな]

 

[俺も気絶するフリをして、チャンスを待ってたんだ、でもお前の援護が無かったせいで何秒かは本当に気絶してたけどな]

 

[ぼやくなよ、勝てたんだからな]

 

[フン...貴様らのコンビネーション見事であった...これからの貴様らの行く末あの世で見ておいてやる]

 

[そうだなあの世でゆっくり見るといい、来世では良き友として出会いたいな]

 

[フン...世迷言を....ッ]

 

[俺はお前とは二度と会いたくねぇ....よ]

 

そう言うと男は事切れた、そして二人は脳内麻薬が切れたのか、その場に倒れ込んだ。

 

[....んん、あれ?ここは?そうだった!先生!!倒れてる!!大丈夫ですか??2対1なんて卑怯な奴ら!!急いで先生を保健室に連れて行かないと!!]

 

戦いの一部始終を見ていない、システィーナはアーサーを敵と勘違いして、グレンだけ保健室に連れて行き、アーサーをその場に置いていくのだった。

 

続く

 

 

 

 

 

 



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後悔しない選択は存在しない

英雄とは死んだものがなるものだよ....□□□






引用 いつか現れる敵より


学院のテロリスト襲撃事件からおよそ3時間と少し、テロリスト4人を撃破したグレンとアーサーだったが、二人して気を失い、グレンはシスティーナに引きずられ保健室にて治療を受けているが、アーサーは正体を隠しているのと、灰色のダスターコートにちょっと怖い仮面と見るからにテロリスト側の格好が災いしてその場に取り残されてしまった。それでもしぶといアーサーはグレンが治療を受け眠りから覚める1時間前に覚醒した。

 

[ぅ、、?ここは、そうだった....テロリストを倒してそのまま気を失ったの.....か?グレン先生と...システィーナの姿が無い.....そうか医務室...行ったのか...え?俺置き去りにされた?...,いやまあ....はぁはぁ、よくよく考えたらこんな格好して一緒に倒れてる奴、敵と間違えられてもしょうがない.....よな、取り敢えず...行かないと]

 

激痛が体に走りながらも、立ち上がるアーサーだったが、その足取りは重く壁に寄りかかりながらなんとか歩行している、傷がかなり深くまで行ってしまっている今のアーサーでは治癒魔術を使ってもマナ欠乏症になってこの場で死ぬのが落ちだしかし、このまま治療せずにいてもどのみち死ぬと判断したアーサーは医務室に向かい、強壮剤と鎮静剤を取りに行く事にした。途中で意識が飛びかけながらもそれを必死に耐えなんとか医務室に着いたアーサー、ドアを開けるとグレンを治療した後のシスティーナが怯えながらもグレンを守るように必死な形相で睨みつけ戦闘の構えをとっていた。

 

[あ、貴方は何者!?あのテロリストの仲間なの?答えて!!]

 

[.....]

 

最早余裕の無いアーサーはシスティーナを無視して、強壮剤と鎮静剤を探そうと引き出しや、金属性のトレーの中に入っている薬などを手に取ろうとするが、もうアーサーには薬を持つ力すら残っておらず、腕の力が抜けてその金属のトレーを派手にぶちまけ、その場に倒れてしまった、意識はあるものの危険な状態だ。それを見たシスティーナは何か不思議と彼を助けなければ一生後悔すると、何故か直感で感じとる

 

[あ、貴方大丈夫!?傷が酷い、このままだと....でも今の私に出来るの?いややるしか無いわ、じゃ無いとこの人が死んでしまう!]

 

臆病な自分を奮い立たせ、治療に取り掛かる、そうは言ってもグレンを治療した直後であるため治癒限界すんでの所であり傷が深いところを優先して治癒する事にした、傷口をアルコールで流して殺菌した後治癒魔術で丁寧に傷口を塞ぐ、治癒限界になったら、医務室にあった傷口を縫う

道具の説明を読み、見よう見まねながらも、他の傷口を全て縫って見せた。しばらくしたのちアーサーはだいぶ回復したのか、初めて口を開く。

 

[ありがとう、治療してくれて。にしても凄いな...君医者としてもやっていけそうじゃ無いか]

 

[あ、ありがとうございます、それで....貴方は何者ですか?]

 

システィーナが恐る恐る聞くと、アーサーが優しい声色で自己紹介し始める。

 

[俺はレイブンと言う者だ、安心して?君たちの味方だよ。取り敢えず君は今からグレンを連れてここから逃げるんだ、教室にいた生徒は逃がして応援を呼んでもらった、学院の外に待機してるはずだ、でも人質がいるから恐らく動けていない、君達が脱出すれば動ける筈だ]

 

[待ってください!私の友達が、親友がまだ敵に捕まっているんです!!あの子を置いて逃げるなんて私には出来ません!!]

 

[....大丈夫、俺が助けるから]

 

[な!?ダメですよ!!今貴方は動ける状態じゃ無いです!!]

 

[うぐ....それでも俺は行く、安心してくれ....この治療の対価は払うから]

 

鎮静剤と強壮剤を打ち無理矢理動くアーサーを慌てて止めるシスティーナだったがその静止の腕を振り払い、足を引きずりながら医務室を去るのだった。システィーナはその後ろを追う事は出来なかった....

 

-------

[....この感覚...ルミアのフォースだ...あの塔からだな]

 

そう言い暫く中庭を歩くと、警備用ゴーレムが4体ほど動いているのを確認した。

 

[警部用ゴーレムが起動してやがる、まぁそりゃ一筋縄では行かないわな、それに狙いが彼女なら敵がその場に絶対いるはずだ、ここでゴーレムに気を取られる場合ではないけど、さっきの戦闘で足をやられちまって上手く動かせない...ここでフィジカルブーストでも使えば二度も足は動かなくなるだろうな....フォースで肉体強化なんてすればもっと酷い事になるだろうな...]

 

アーサーは一度考える、ゴーレムは魔力を動力源に動く、機械のような者で、圧倒的な質量と硬度で侵入者を震え上がらせる、まず今の状態で物理攻撃をすればこちらがやられら、遠距離、中距離からの魔術を使ったとしても、あの硬度の前では少し穴が開く程度で決定打にかけるし、先にこちらが魔力切れを起こしてやられるであろう....フォースを使った攻撃でもしたいところだが、完全にスタミナ切れだ....

 

[となれば近距離戦でさっさと片付けないといけないか....ここなら誰にも見られていない....久々にあれを使うか....消し炭にしてやるよ、ゴーレム共]

 

そういうと迫り来るゴーレム達を尻目に右手の手袋を外すアーサーだった..

 

------

アーサーが医務室を出て数十分後

 

[んあ?ここは?白猫?どうしてここに?]

 

[あ、やっと起きた!!良かった....大丈夫ですか?傷はまだ痛みますか?]

 

[あぁ、まだ痛えけど、白猫が治療してくれたお陰でだいぶマシだ、ありがとな]

 

グレンがニコりと笑いながらいうと、システィーナは少し顔を赤くしならぶっきらぼうに、どういたしましてと言った後、一つグレンに質問する。

 

[あの、レイブンと言う方はグレン先生の知り合いですか?]

 

[...いや俺は知らない、でもアイツは俺の事を知っていた、俺は一度も名乗って無いのに、名前と俺の過去の素性を知ってやがった...でも..]

 

[でも?]

 

[あの時俺の事を助けて、協力してくれた、それだけで俺は良いんだ。別にレイブンの素性やらなんやらはどうだって良い、でも一つ言えるのは...アイツは何か裏がある気がするんだ]

 

[.....]

 

[取り敢えず次あった時に聞けば良い、なんだがアイツとはまた合いそうだ、それとさっさとルミアを助けにいかねぇとな]

 

そう言うと、ベットから立ち上がり、レイブンから受け取った回転式銃をしっかりと握り、ルミア救出の為に準備するグレンだった。

 

-----------

塔の周りにあるのは、白く炭となっていた恐らくゴーレムだった物と燃えた草木、原型は無く形も崩れている、灰が辺りを舞い、辺りは白眼の雪景色のように真っ白だ、そしてその中心にはアーサーがいた、今まさに塔の中に入っていく所だ。

 

[この一番上だな....さっさと片をつけよう]

 

螺旋階段を登り、丁度塔の中心付近まで行くと、誰かの声が聞こえてきた、恐らく女性の声だ、そしてもう一つは男の声だ、でもどちらも聴き慣れた声であった、アーサーは何処か不安な表情で階段を登りきり、ドアを開けると、そこにいたのは...何かの魔術式の上に座らされているルミアとその術式を操作しているであろう、先月失踪したとされたヒューイ先生だった。

 

[あ、貴方は?]

 

ルミアが誰か分からず困惑する表情を浮かべるとヒューイがアーサーに尋ねる。

 

[貴方は誰ですか??私の仲間ではありませんね]

 

[唯の魔術師だよ...俺は...アンタが計画してたんだなヒューイ先...いやヒューイ]

 

アーサーの中に失望と悲しみが心の中に出てくるが、それを直ぐ様切り替えると...みるみるうちに目が据わっていった。

 

[何故?私の名前を?貴方学園の関係者か何かですか?]

 

[そんな事はどうでもいいんだよ、ヒューイ、大人しく言う事を聞いてくれ、アンタを殺したくないんだ...この術式を解除して彼女を解放しろ...そして貴様らの目的を言え...そうすれば皆安全は保証する]

 

[残念ですがそれは出来ない要求です、私の任務はルミアティンジェルを転送後この学園を破壊する事ですので]

 

そうヒューイが言うと、アーサーは残念そうな声を上げると、瞬間ドス黒い地獄底から響くような冷酷な声で

 

[そうか....なら無理矢理でも言うことを聞いてもらう、さっさと吐け]

 

フォースを喉元に集中させると、ヒューイは苦悶の表情を浮かべながら宙に浮いた

 

[カッあぁ...苦しい...うぐっっう]

 

[言え...ルミアを狙う理由と、この術式を解除する方法は?]

 

淡々と唯の事務作業のように淡々と拷問するアーサー、裏切ったとは言えかつて自分が慕っていた教員だった筈の人間、そんな人すら躊躇無く拷問する姿は何処か狂気すら覚える。その光景を目の当たりにしているルミアは完全に怯えきり、涙を浮かべそうになっていた。

 

[やめて...ください...その人に乱暴しないであげて下さい、ヒューイ先生も何かやむを得ない事情があったはずです...]

 

涙を浮かべながら懇願するように言うルミア、それを見たアーサーはハッとして正気に戻り、ヒューイを離した。

 

[すまない、俺は...、君にそんな顔をさせるつもりじゃ無かった、軽率だった、許してくれ]

 

必死に許しを乞うアーサー、先程拷問していた人間とは別人のようだった。

 

[さてと、もうすぐ白魔儀サクリファイスによって、ルミアさんは組織の元に連れて行かれ、そしてそれによって、この法陣と直結してある私の魂は食い潰してきた莫大な魔力で、この学院事爆破します。]

 

[[!?]]

 

[僕の霊魂はそれ用に調整されているので、それくらいの威力は出るでしょう。僕は王族や政府関係者が学院に入学した際それを自爆テロで殺害する為の人間爆弾...それが僕です]

 

[成る程...つまりその子は王族か、あるいは政府関係者の人間か...いやでもなら何故?初めから殺さないで転送なんだ?あ、そうだった...彼女は、いや待てそれも違うな...たしかにこの子は膨大な力を持っているのは確かだ...でも何故この子なんだ?この子の代わりくらいお前らなら容易に作るか何かする事は出来るだろ?]

 

[それはわたしには分かりません、あくまで私は一部しか聞かされてはいないので...それと術式の発動まで後10分程ですよ、貴方が私を拷問しなければ十分時間はあった、私を殺した所でこの術式は解除されない、けど貴方は幸運だ、この学園には地下迷宮がある、そこに隠れれば貴方だけでも助かる事でしょう....どうしますか?]

 

[逃げて下さい!貴方が誰かは存じませんが...私の為に死なないで下さい!]

 

 

[フォースじゃ、間に合わないか....ならば]

 

そう言うと、ナイフを取り出し、手首を切るとその血で法陣にルーン文字を書きこみ解除にかかる。

 

[《原初の力よ・我が血潮を通いて・道をなせ》!!]

 

[迷いは無いですか...流石ですね]

 

[ダメです!!逃げて!!]

 

ルミアが叫ぶがアーサーには届かない、極限の集中状態に入っている。

 

[《終えよ天鎖・静寂の基底・理の頸木はここに解放すべし》]

 

[早い..予め解除ルートをイメージしていましたか]

 

[よし...ゴボッ、ゴボッ..次だ]

 

次の層に行こうとするが、一度手が止まる...明らかに複雑になっている...この状態で解くのは無理だ...と頭の中ではわかっているが、それを振り払い、また手を動かす...

 

[お願いです!逃げて下さい!!]

 

[勝手な事言ってんじゃねぇ!!まだグレンとシスティーナも残ってんだよ!!アイツら置いて逃げるとか、絶対にごめんだね!!それに俺の師匠の遺言その219にな可愛い子は死んでも助けなさいって言われてんだよ!!わかったらそこで見てろ!!]

 

アーサーは叫ぶが、ルミアが泣きながら

 

[それ以上その体で魔術を行使すれば死んでしまいます!!逃げたって、誰にも責められません!!それに見ず知らずの私をどうしてそこまで助けようとするのですか!!]

 

アーサーは解呪しながら、語り始めた。

 

[俺はな、昔から失敗だらけの人生だった...大事な人間は俺の手の中からこぼれてしまった、俺の親も、師匠も、親友も、愛した人はさえも...あの時選択を間違えなければって後悔する事ばかりだ...でもせめて後悔するなら!!俺が正しいと思った方を選ぶ!!!]

 

[間に合え!!《終えよ天鎖・静寂の基底・理の頸木はここに解放すべし》!!]

 

[[解呪!!]]

 

最後の層を解いたその瞬間、パリィんと音を立てて術式は解除された。

ヒューイは何処か悟ったとも取れるし観念したとも取れる表情を浮かべた。

 

[僕の負け...ですか、不思議ですね。計画は頓挫したのに、生徒が無事なのをホッとした自分がいるんですよ...]

 

[......,]

 

アーサーは無言で聴き続けた

 

[僕はどうすれば良かったのでしょうか?...組織の言いなりになって死ぬべきだったのでしょうか?それとも、生徒の為に死ぬべきだったのでしょうか...こうなった今でもわかりません..,]

 

[アンタの気持ちは痛い程分かる....でも選択には代償がつきものだ、、それがアンタの選んだ選択ならその代償を払わないといけない....歯ぁ食いしばれ]

 

そう言うとドスンと鈍い音がすると、そのままヒューイは気絶した。

 

[今回はこれで済ませてやるよ...ちょっといてぇけど、死ぬよりましだろ]

 

そして足早にその場を離れようと

 

[ありがとうございました!!私を助けて頂いて、貴方のお陰です!]

 

ルミアが感謝の文言を言ってくると、アーサーはぶっきらぼうにいいんだよと手を挙げるだけで去って行った。

 

そうして暫くすると、グレンがドンっとドアを蹴破り入ってきた。

 

[だらっしゃぁ!!敵は何処だ!!]

 

[せ、先生、も、もう終わりました、仮面をした男の人が助けてくれて...]

 

[え?マジで?レイブンの野郎、美味しい所全部持っていきやがって、ついでにアイツに銃返そうと思ってたのに...]

 

ブツブツ言うグレンを尻目に、ルミアはいつかまた会った時にレイブンに恩返しをしようと誓うのだった。

 

続く

 

 

 

 




最近キングダムカムデリバランスやってるせいで時間をわすれてしまう


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いずれ殺し合う宿命

そうか...なら俺が覆す!!






引用 宿敵を前にしたジェダイの言葉


[傷がマジでいてぇ、ぁあ畜生....ここまでやったなら報酬としてどさくさに紛れて、ルミアの胸揉んでおけば良かった...]

 

ベッドの上で、治療を受けている男がいたアーサーだ、全身包帯でぐるぐる巻きになっている...そしてその横にはツンツンとした髪型の眼鏡をかけて、目が死んでる女性がいた、彼女は女医さんと言われてる、名前は誰も知らない、この小さな闇医者を一人で切り盛りしてるらしい。

 

[下らない事言わないで、さっさと薬を飲みなさい、というかあの傷を負って生きてただけ神に感謝しなさい..]

 

[そりゃ、女医さんの治療が完璧だったおかげですよ]

 

[ええ、そんな事知っているわ、後これを飲んで]

 

そう言うとクソ不味いと評判の薬と水をベットの横の机に置いてきた、それを見るとアーサーはあからさまに嫌な表情を浮かべる。

 

[えぇ、女医さんその薬不味いから嫌ですよ]

 

[飲まないと良くならないわ]

 

[嫌ですよ絶対に!それ飲むくらいなら普通に自然回復を待ちますぅ!]

 

[そう..なら力ずくでいくわね]

 

[ん?あれ?めちゃくちゃ嫌な予感が...]

 

そう言うと表情を変えずに薬をアーサーの口の中に無理矢理捩じ込み、水を流し込む、アーサーは涙目になりながらも薬を飲み、そのまま意気消沈した。

 

[全く...この子はいつも予約無しでいきなり来るんだから...しかもいつも重症で、その内何かの拍子でコロっと死ぬんじゃ無いかしら]

 

三日前、テロリスト襲撃事件の後、治療されたとは言え重症だったアーサーはそのまま、繁華街の路地裏にあるルチアーノ家お抱えの医者の所を満身創痍の状態で訪ねて、そのまま治療を受けたのだ。そのお陰であの傷を負いながら後遺症無く、順調に回復している。後数日経てば、退院できるだろう。

暫くすると病院の中でベルが鳴り響いた、誰か来たようで、女医が確認しに行くと,...そこにいたのは、ルチアーノ組で出世株として期待され、いろいろ裏で情報や支援をしてくれたハミッシュがドアの前で立っていた。

 

[どうぞ、お入り下さい]

 

[失礼するよ]

 

女医は彼を招き入れて、アーサーのベッドの横に椅子を置くと、買い物に行くと言って足早にその場からいなくなった。

 

[相変わらず空気を読む女だ...さて、アーサーお前こっぴどくやられたな?随分と強い相手だったみてぇだな?]

 

[えぇ、かなり強い相手でした、なんとか勝ちましたけど危うくあの世に行くところでした...それで頼んで置いた情報は手に入れましたか?]

 

[ほらよ....]

 

アーサーがハミッシュに尋ねると、鞄の中から数枚のプリントを取り出して、アーサーに手渡した、帝国軍の今回の事件の全てが書き記されたレポートだった。

 

[ありがとうございます、ふむ...奴らかなりの手練れだったみたいですね....成る程、ルミアティンジェルは元は王族の人間だったと異能が原因で病死した事にした後、名門ファーベル家に預けたと..そして天の知恵研究会はこれからも狙う可能性が高いと、これは思った以上に..]

 

[あぁ、思った以上にお前はヤバい話に首を突っ込んでる、帝国もこの件に関しては徹底的に情報統制してる、後正直天の知恵研究会とルチアーノ家はやり合ってもなんの旨味も無いしそれは俺たちの役割では無い...もう組の人間としてはこれ以上助けることは出来ない、それが組の決定だ...]

 

[そりゃそうですよね...ルチアーノ家がこの件に関わっているのが明るみに出たら...どんな報復が待っているか...考えたくも無い]

 

[でも...俺個人の助けなら貸せる...ルチアーノの人間としてではなく、ひとりの友人としてのな...]

 

ハミッシュの言葉に胸が熱くなるこの人との縁は大切にしていきたいと強く思うアーサーだった。

 

[ハミッシュさん...ありがとうございます]

 

[いいんだよ、、それと知りたい情報が有れば俺に聞いてくれ...俺個人の情報網から探ってみる]

 

[本当にありがとうござます。この恩は必ず....]

 

[気にすんなって言ってんだろ]

 

やはり幹部レベルの人間ともなると、組織の情報網以外にも、横の繋がりによって、個人的な情報網があるようだ、今はそれに只々感謝するアーサーだった

 

 

 

----------

天の知恵研究会襲撃事件から、数週間、修復工事も終わり学院は再び平穏を取り戻していた、生徒達の負った心の傷はだいぶ癒えてきたようだ、やはりまだ未熟とは言え心構えは魔術師である。

 

[ダメだよアーサー!利き手がまだ折れてるし、まだ怪我が癒えて無いんだから!]

 

ルミアが言うと、アーサーが恥ずかしそうに顔を赤くしあたふたする

 

[い、いくらなんでも飯を君の手で食べさせて貰うのはちょっと...,]

 

現在アーサーは利き腕が粉砕骨折している、普通に骨折していたら、治癒魔術で一発だが、粉砕骨折はそうはいかない、骨片が体の中に残ってしまうため、少しずつ治癒していかなければならないのだ、そしてその為日常生活に支障を来たし、困っている所をルミアに甲斐甲斐しく世話をしてもらっていた。

 

[ちょっと?]

 

ルミアが不思議そうに首を傾げると、アーサーの背筋にゾワりと悪寒が走る、その方向を向くと、クラスの男子が嫉妬に狂った血走った目で睨みつけきた、何も言ってないが恐らくルミアに恥かかせたら殺すと言っている、直感で分かる。

 

[い、いやめっちゃ嬉しいな!ほらルミアは学院のマドンナ的存在だからさ!そんな人に世話されるのはめっちゃ嬉しいな!!ソノウチダレカニササレソウダケド]

 

[もぉーからかわないでよ〜]

 

ルミアがひまわりのように、優しい笑みを浮かべながら、スプーンをアーサーの口の中に運ぶ....その姿はまるでカップルだ、死ねばいいのに..あ、違った失礼作者の主観が混じってしまいました。えーごほん、

その姿を死んだ魚の目でみるシスティーナとカッシュからなる、その他取り巻き、その中にはグレンもいた、彼は生徒の恋愛模様なんて興味は無いようで、飯を黙々と食べていた。

 

[あれどうなんですの?カッシュ?]

 

[ちょっと待ってくれウェンディ、今アーサーを埋める山を探してる所だ、ギイブル見つかったか?]

 

[ちょっと待ってくれ、今、シロコケグモの毒をナイフに塗っている所なんだ、システィーナは....]

 

[ワタシ..アイツコロス、ルミアにヘンナコトシタシュンカン、コロス]

 

[ダメそうだ、完全にバーサーカモード入っている]

 

 

[お前らいい加減にしろ!!食事中は物騒な物しまえ!!後不謹慎なワードはやめろ!!お父さんお母さんに言われませんでしたかってんだ!!白猫は早く正気に戻れ!]

 

その様子を見ていたグレンは何か一抹の不安を感じたのか、全員に溜息混じりで説教を開始、しかしそれでも止まらずシスティーナを筆頭にカッシュ達も暴走してドンチャン騒ぎになった、その光景を見るとルミアは微笑む

 

[あはは、今日はみんな、なんだが楽しそう!]

 

[...時折、君のその能天気さが羨ましく思うよ]

 

アーサーがルミアの能天気さに呆れていると、すかさず言い返してきた。

 

[むぅー!能天気じゃないよ!最近あの事件以来クラスの元気無かったし、雰囲気も暗かったけど、やっと戻ってきたなって思っただけだよー]

 

[あぁ、そうだね]

 

ルミアのように本当に芯から優しい人間だからこそ言える言葉だ、神々しさすら感じる、まるでアーサーとは正反対、その姿を見てアーサーただ一言しか言えなかった。

 

 

 

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放課後、何処にもいかず真っ直ぐ家に帰るアーサー、夕方の街の美しさを噛み締めながら、ゆっくりとした足取りで帰る、そして帰宅するなり安堵した。

 

[ふぅーカバーストーリー作っておいて良かった〜じゃないとこの傷かなり不自然だかな、学校休みたかったけど、それで怪しまれるのもごめんだしな]

 

予めフォースマインドをクラスにいた生徒に掛けておいた事によって、適当に敵に抵抗して大怪我しながら命から柄投げたんだとか言ったら、すんなりと受け入れられた、でも一番怖いのはルミアとシスティーナグレンには掛けていないせいで、何かの拍子でバレてしまうのでは無いかと不安で仕方無いアーサーだった。

 

 

 

 

 

 

 

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-------------------|-|-.--

帝国の首都オルデランの郊外にポツンとある、今は無人の館、厳密には先程まで人はいたのだが、全員がその場に体の一部が欠損した状態で転がっている。その死体全てに何か高温度で焼き切られたような跡があるのと、まだ暖かいスープや肉がある所から食事中の所を突かれたようだ、その中には政府の高官の他に天の知恵研究会の入れ墨の入った物もいた。どうやら密会か何かをしていたようだ。そしてその館をゆっくりとした足取りで去る物がいた、身長は180程で筋肉質だが細身、全身真っ黒のフードつきのコートを着ていて、顔は見えない。

 

[フン...やはり今回も私を楽しませてくれる奴はいなかったか...もっと戦いたい、あの戦いの高揚感を味わいたい、どこかにおらぬ物か私を楽しませてくれるものは]

 

溜息を吐きながら肩を落とす、声色的に男であろう、右手には少し長い筒に近いものを持っていた。

 

[やはり、もうこの国には居らぬのか....ジェダイは....奴らの考え方はクソの掃き溜めだが、戦う時はそんな事考えなくても良い....ただ純粋に殺し合う...最高の瞬間だ]

 

[貴様!!ここで何をしている!!]

 

そうすると騒ぎを聞きつけたのか、屋敷の方に15人ほど警邏官と数人の帝国軍の魔術師が現れると、男はフードを取り、オレンジ色の血走った双眸で相手を見ると、ゾッとするような笑みを浮かべる。

 

[フフッ貴様らは...私を楽しませてくれるのか?]

 

そう言うと金属性の筒のスイッチを押す、すると赤い光剣が独特な音を立てながら姿を表す、その色は禍々しいほどの赤だった。そこから先は最早言うまでもないだろう。この男がアーサーの前に立ちはだかるのはそう遠くない未来なのだろう、それがジェダイとシスの宿命なのだから。

 

 

続く

 

 

 



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魔術競技祭

平和は偽りだ、情熱があるのみ。
情熱を通じて強さを得る。
強さを通じて力を得る。
力を通じて勝利を得る。
勝利を通じて私の鎖はちぎれる。
フォースは私を自由にする。
平和は偽りだ。

引用 シス・コード


———————

———————————

——————————————アー..,!

------------------------------------------アーサー!!

 

[アーサー!!作戦会議中にボケっとすんな!]

 

まだ17くらいであろう、金髪緑眼の美青年がアーサーに荒い口調で注意する、アーサーはその懐かしい顔を良く知っていた。

 

[え?あれ?ユリウス?なんでここに?俺はさっきまでアルザーノにいたはずなのに]

 

[アルザーノ?何言ってんだお前?おいおい、アトラと夜な夜な宜しくやりすぎて、記憶でも飛んだか?]

 

ユリウスがアトラとの行為が原因だと言うと、横にいた少女が身を乗り出して反論する。黒髪で顔が整っていて、世間一般的には美少女と言えるであろう子だが気が強いせいで、可愛いより怖いの方が大きいのは玉に瑕だ。

 

[な!?ユリウス!!記憶飛ぶ程アーサーとしてないわよ!!]

 

[やってんじゃねぇか、うゎぁ僕から聞いといてなんだけど、親友のそう言った事情は聞くもんじゃねぇな]

 

[お前らうるさい!!もう少し私語は慎め!! ]

 

[まぁ良いじゃないですかマスター、ここには僕達しかいないんですし、ちょっとくらい騒いでもバチは当たらないですよ]

 

[はぁー何処でお前らの教育を誤ったんだろうか]

 

マスターと言われたのは長い髭と黒い髪が特徴の40手前であろう男だった、その双眸には今までいくつもよ修羅場を地獄の様な光景を見てきたのかわからない。

 

[?どうしたの?アーサー...なんで泣いてるの?]

 

その光景を唯黙って見ていたアーサーは、知らず知らずのうちに涙を流していた、それを見たアトラはアーサーの頬を優しく触ると、姉の様に慰めてくれた。

 

[どうしたの〜?何か怖いものでも見た?ふふっ、ここの所ずっと任務ばっかだったもんね、疲れちゃったんだよね〜ユリウスの事は気にしないで、今は吐き出しちゃいな〜]

 

[俺は....お前らを絶対に...]

 

------絶対に守る?ってか?そうだよなぁ、ここにいる人達はお前にとって家族同然だったもんなぁ、で?、ここにいる奴()()()()()()()()()()()()()()()()

 

アーサーがその声の方向に振り返るとその先にあったのは先程の幸せな光景では無く何も無い光すら当たらない虚無の空間、そこで自分に良く似た声が辺りを響く様に木霊する。

 

[ここはなんだ!貴様は何者だ!]

 

アーサーが吠えると、良く似た声は大きく笑う

 

[ここはなんだ、だって?ここは君が選んだ場所さ、君自身がこの道を選択したんじゃ無いか虚無と死の道を()()()()()()()()()()()()()?]

 

[ち、違う俺は違うんだ....]

 

[何が違うと言うんだ?もう一度見せてやろう...あの時の記憶を全て....]

 

全ての記憶がフラッシュバックする、凄惨で地獄の様な記憶が、余りのショックにアーサーは泣き叫ぶ

 

やめろ....やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぁぉぉぉぉぉぉ

------

-----------

------------------

----------------------

[ハッ!!はぁはぁはぁ、クソ....久しぶりアイツらの夢を見たな...]

 

アーサーは不機嫌な顔をしてベットから立ち上がる、どうやらさっきのは夢だった様だ夢は夢でも最低最悪の悪夢だったが....彼は、机に置いていた、いつもつけている蝶の模様と傷ついてほとんど見えないが何処かの家の家紋が刻印されているネックレスを首に掛けて、部屋を出た。リビングにいくと、ハンクが飯を作って置いてくれていた。

 

[おはようございますハンクさん、毎朝朝食を作って頂いて本当にありがとうございます]

 

[本来は弟子の仕事だけどよっ!お前はあのーなんていうか、、その、俺が作った方が美味いしな!それと傷は良くなったか?]

 

[ええ、お陰様で完全に癒えました、今日の魔術競技会には間に合いました]

 

[ははぁ、そいつは良かった]

 

なんだがはぶらかされた気がしたが、朝食を取りながらハンクとの会話を楽しむアーサーだったが、ハンクが一度箸を止めて今日の朝の事を訪ねてきた。

 

[お前うなされてたぞ?何か嫌な夢でも見たか?]

 

[えぇ、まぁ少し...]

 

[おいおい、下の世話してっか?欲求不満なんじゃねぇか?良いとこ紹介してやろうか?それが原因で悪夢って線も...]

 

[余計なお世話です!!なんでハンクさんに俺のリトル息子の心配されなきゃいけないんですか!!]

 

茶化してくるハンクに若干キレるアーサーだったが少し神妙な顔をしてハンクに尋ねる

 

[ハンクさん....]

 

[なんだ?]

 

[貴方は自分のした大きな選択に後悔した事はありますか?]

 

するとハンクは少し目を細める

 

[あぁ、数え切れない程ある、でも俺はその選択をした事によって、今があると思ってる、人生は選択の連続だよ..,でもそれが人生ってもんだろ?違うか?]

 

[はい...そうですよね、すみません変な事聞いてしまって...]

 

[ガキがんな事気にすんなって、今日の魔術競技祭頑張れよ!女王陛下も見にくんだろ?]

 

ハンクが激励を送ると、ハイ、頑張りますと答えて、家を出た。その姿を見ていたハンクは何処か懐かしむ様な表情を浮かべると共に、心に何かがチクリと刺さる感覚が襲う。

 

[....アリシアいや....今更だな、俺はこの道を選んだんだ、それにもう16年以上昔の話だ、それに行ったとしてもどんな顔して会えばいいかわからねぇな]

 

そう言って何処か悲しげな表情を浮かべゆっくりと玄関のドアを閉めるのだった。

 

--------------

今日は魔術競技祭というアルザーノ魔術学院の一台イベントが開催される、生徒同士で魔術の腕を競い、その結果によって順位を決めるそうだ

、普通なら成績上位者で固めるのが定石といえばそうなのだが、グレン先生はクラス全員で勝ちに行くというか、、、ハーレイ先生に給料3ヶ月分をふっかけたり、最初に決めた時にその定石を知らずに決めて、クラスメイト全員が乗り気になってしまって引くに引けなかったの方が正しいのかも知れない。そんなこんなで波乱の予感のする魔術競技祭が始まるのだった。

 

[あれ?俺2番目の競技じゃねぇか、のんびりしたかったけど時間もねぇな]

 

壁に貼り付けられた本日の流れと、競技のローテーションを見ながらなんとも言えない表情をする。彼がやる競技は魔術狙撃、数百メトラ先から飛んでいる的を打ち抜き、その数を競う競技だ、本来ならば決闘戦に入るレベルではあるものの、アーサーは魔術師の生命線である左腕が使えない、それは純粋な魔術戦では大きな不利になる。

普段ならばそれをカバーできるように、飛び道具やらフォースやらを使うが、正体がバレないようにしているのに、そんな事をすれば全てがオジャンだし、そもそも規定上そう言った類の物は使えない為、魔術狙撃を志願したのだ。

 

[なんとかなると思うんだけどな、俺的には魔術で狙撃するより、銃の方が得意なんだけど、たかだか数百メトラだ、いけるいけるいけるよな?]

 

[なぁーにぶつくさ言ってんだ?アーサー?]

 

[カッシュか、いや競技のことが心配で]

 

[はぁ?お前練習通りにやったら100%1番になれるってグレン先生からお墨付き貰ったじゃねぇか、そんな心配する事ねぇだろ]

 

[そうだな、そう思うわ]

 

そんなやり取りをしていると、騎士の甲冑を着た連中が奥の方からやってきた、煌びやかに装飾された馬車を護衛しているようだ。そして道の中心あたりで止まると、先頭にいた一人が猛々しい声を上げる。

 

[女王陛下のおなぁーりぃっ!!!!]

 

一同背筋が伸びる、騎士たちは皆膝をついて敬礼している、そして馬車の中から出てきたのは優しい顔をした妙齢の女性、遠目から見ても美人とわかる程凛々しいがその立ち振る舞いは威厳がある、只々目が離せない。この人こそアルザーノ帝国の支配者にして女王、アリシア7世だった。

 

[おいおい見たかよアーサー!あれが本物の陛下だぜ!]

 

[あぁ、すげぇ..,見ただけでわかる....この人は格が違うって]

 

[頑張ろうぜ..アーサー]

 

[勿論だ]

 

その後は祝辞を述べた後、女王陛下の名の下に魔術競技祭が開始が宣言された、今回の優勝候補はもっぱら1組という前評判だが、、最初の競技飛行競争では、、前評判をひっくり返すくらいの大健闘をした!!

 

[やったな!!ロッド!カイ!!]

 

[ああ!先生の作戦ピッタリハマった!!]

 

[流石先生!!]

 

[フン、当たり前だろ他の連中がペースを乱すのを待ち自滅するのを待つ、、なんとも楽な作戦だったぜ]

 

キメ顔でさも必然かのように話すグレンをアーサーは見破っていた。

 

(多分短距離じゃ無いのに救われたな...去年のように短距離の速度比べじゃなくて、交代式の長距離戦だったのがラッキーだったな、たった数週間じゃ速度上昇は望まないからペース配分だけ練習させたんだろ、自力じゃ差はあるだろうけど他で補ったな、次は俺の番か...適当に3番辺りを狙って...)

 

そうするとグレンが肩をポンと叩く。

 

[よし、次はアーサーだな、安心しろ、お前ならトップなんて掻っ攫う事なんて簡単だ!ていうかここでとってくれ!頼む!!じゃ無いと俺が死ぬ!!]

 

[頑張ってね!アーサー!]

 

[貴方なら一位くらい掻っ攫えるでしょ?]

 

[ルミアにシスティーナまで....そんな期待されても...]

 

[..,取ってくれたらこの間の数学の赤点と古文の追試...なかった事にしてやる...]

 

[な!?職権濫用ですよ!グレン先生!ほらアーサーも何か言って...]

 

[わかりました、ボス必ずや1位を取って参ります]

 

[......]

 

禁止カードを出され目の色が変わり、先程まで考えていた3位あたりを取ろうなんて考えは忘却の彼方に捨て去り、大人気なく一位を取りに行くようだ。そして競技場に足を踏み入れる、周りには観客だらけだがアーサーはその場で直立不動になる、すると1組の生徒が話しかけてきた。

 

[やぁ、アーサー君、わざわざ負けに来てくれるなんて感謝するよ、僕という狙撃の天才がいるのに、不幸だな君は]

 

[え?あぁ、ごめん、今なんか言った?ちょっと集中しててさ、用がないなら少し遠慮してくれるかな?後で....話は聞くからさ?]

 

[え。ぁあそれはすまない、邪魔したね]

 

アーサーの野生的な目を見た生徒は、背筋にゾクっと何か恐ろしい物が本能的に走り、冷や汗を掻きながら、その場を走り去った。アーサーは今一度目を瞑り集中する。司会が競技の説明をしていようが関係無かった、何故なら的を全て撃ち抜けば良いのだから点数も関係無い、只々待っていた、その時を始まりの鐘が鳴る時を....

 

[では二種目目、魔術狙撃..開始です!!]

 

始まりの鐘が鳴ったと同時にカッと目を開き、誰よりも素早く狙いをつけるとショックボルトを詠唱する。

 

[雷精よ・我が手の中で・踊れ]

 

その手から放たれた紫電は高速レーザーのように一直線に行くと、的のて前辺りで3つに別れると....全てが真ん中に必中した。

 

[神業!!神業だぁぁぁ!二組のアーサー選手いきなり300メトラ先の円盤を同時に3つ打ち抜いたぁぁ!!]

 

((ワァァァぁぁぁ!!!))

 

即興改変したショックボルト、これを遠距離仕様に変えて尚且つ瞬時に3つの狙いをつけて偏差を考えて撃ち抜く、正直人間業では無い会場からはドッと歓声が湧いた。

 

[凄い...あんな先の的を同時に3つも]

 

[なんだよあれ?ハハッ人間業じゃねぇだろ]

 

ルミアとカッシュが引き笑いをしながら言うと、グレンも正直あのレベルだとは思ってなかったのか、ドン引きしていた。

 

[きっしょ〜....あの遠距離狙撃の他に即興改変と距離が違えば威力も調整しなければいけないのに、あの寸分違わない威力調整...やっぱりアーサーはお前らの中でも頭一つ抜けてるわ、普通の学生にはまず無理だな....天賦の才ってやつだろうな、正直配点の高い魔術戦にぶち込みたかったけど、ここは2番目に配点が高いところだ...取れるだけ取っちまえ!!アーサー!]

 

その後も的を次々と撃ち抜いてくるアーサーまさに独壇場、最早他の生徒は戦意喪失していた、そしてこの競技は打ち抜くにつれてどんどん難易度が上がってくる特殊な競技でもある、最後は1500メトラ先の的が出てくるという、前代未聞の事態になった。しかしそれも

 

[遮蔽物も何も無い的を打ち抜くなんて、ただ威力を上げれば良いだけだ、他に比べると簡単だ]

 

そう言うと、超遠距離仕様に即興改変して、放つと的のど真ん中に当たると的はそのまま落ちていった。

 

[な、なんと....今回の点数...歴代最高得点です!!二組は繰り上げで3位から一位です!!分からなくなってきました!!今年の魔術競技祭!!このまま新生ダークホースである二組が逃げ切るのでしょうか!!]

 

[なぁ?見たかよあれ?本当に学生かよ?]

 

[ほんとだぜ、アルザーノの未来は安泰かもな]

 

観客席がざわつくと、その波は陛下のいる来賓席まできた。

 

[凄いですね...アーサーという子、あの年にしてあそこまでやれるものなのでしょうか?セリカ?]

 

陛下がセリカに質問すると、彼女はフッと笑い答えた。

 

[いくら最近の若い奴らの技術が上がってるからと言っても、正直アイツレベルの奴はそうはいないと思うぜ]

 

[まぁ!ではあの子は天才なのですね]

 

[んーそうだな〜厳密には凡人が死に物狂いで努力した感じだと思うけどな....本物の天才ってやつはシスティーナとかそこら辺じゃねぇかな?まぁでも、帝国で将来必要になってくる人材だとは思うから...今のうち唾つけておいたらどうだ〜ん?アリシア?]

 

[ふふっ、考えておきます]

 

会場や来賓席が湧くのを尻目にアーサーはインタビューも何も受けずに、その場を去った。

 

(ちょっとやりすぎたわ、、いやちょっとっていうかだいぶだけど、ま、まぁ天才って豪語する変人みたいた感じの設定だから、、平気......なはず、でもこう集中すると周りが見えなくなるのマジで良く無いな....注目浴びたく無いのにここまでやるのは、最早わざとの領域だぞ俺...,普通に接戦で一位取れば良い物を大人気なく本気で取りに行くのはよく無いわ絶対)

 

心の中で反省するアーサーだった、すると向こうの方から凄い勢いでカッシュ達が走ってきた。

 

[アーサー!!お前すげぇな!!歴代最高得点更新だってな!!]

 

[えぇ!!本当に私のお祖父様を超える人が現れるなんて思ってなかったわ!!]

 

どうやら最後にこの点数に近い点数を叩き出したのは、システィーナの祖父は著名な考古学者という一面と魔術師として第七階梯に届きそうな程腕の立つ人物だったそうだ。流石は名門と言った所か

 

[あはは、偶然だよ偶然....ちょっと集中力が極限値に行ってただけ]

 

[ハハッ、アーサーなんだよそれ?とりあえず行こうぜ次はウェンディの番だ]

 

[ちょっと待って!俺少し休みたいんだって!肩組むな!!いやお前力強!]

 

そう言って肩を組まれて、無理矢理連れていかれるアーサーだった。

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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不運な男

何度も弱音を吐きそうになったが、今も苦しんでいる仲間を想うと、そんな事言ってられなかった。





ある戦士の言葉


[すげぇな俺達!!下馬評を覆して今トップだぜ!!このまま行ったら優勝だぜ!!なあアーサー!]

 

[あ、あぁ、そうだなカッシュ....それはそうとカッシュ,...頼むから俺の首を締め上げないでくれ]

 

顔を真っ青にしながらアーサーがカッシュの体をバンバンと叩くと、カッシュがあ、っという顔をしながら肩組むを外す

 

[あ、悪りぃ]

 

[ぁあ、ゲホゲホッ大丈夫....ぁぁ〜死ぬ所だった]

 

現在アーサーのクラスは快進撃を続けている、飛行部門はトップ3に名を連ね、魔術狙撃ではぶっちぎりのトップ、そして暗号解読の部門ではまさにウェンディの独壇場彼女の為に用意されたが如く、バッタバッタと問題を解いていく、神話級の言語すら読み解いてみせた、このまま順当に行けばぶっちぎりの1番になれるだろう。

 

[次の問題!!この文章の間違いを訂正して訳せ!]

 

司会のアナウンスと共に出てきたのは、基礎が出来ていれば直ぐに訳せる簡単な問題で正直点取問題だった。それを読んだカッシュはアーサーに肩をポンと置きすまし顔で質問した。

 

[アーサー、お前なんもわかんねぇだろ]

 

[ハッハッハッ、わかる訳ねぇだろ、お前は?]

 

[わかる訳ねぇだろ]

 

[だよなぁ〜]

 

[[アッハッハっ]]

 

そんなやり取りをするアーサーとカッシュ、そのやり取りを見ていたシスティーナは手で頭を抱えてため息混じりに答えを教えた。

 

[これの答えは、《我・天より結ばれた知恵を・得る者成り》でしょうが貴方達これ古文とか考古学の分野では常識レベルの問題でしょ]

 

[そんなの考古学オタクのシスティーナが答えても、説得力無いです〜]

 

[そうだそうだ!]

 

[はぁールミアもなんか言ってやって]

 

カッシュとアーサーがこの時だけ呼吸を合わせてシスティーナに文句を言うと、ルミアが苦笑いしながら

 

[うーんとね、これ結構常識問題だと思う....よ?]

 

[[え?マジ?]]

 

[うん、マジ]

 

[ていうか貴方達普段どうやってルーン語読んでるのよ、結構古文の知識使うのよ?]

 

呆れながらシスティーナが言うと、アーサーとカッシュがドヤ顔をしながら

 

[[才能とセンス]]

 

[ドヤ顔で言うな野生児達!!なんでこういう時だけ息ピッタリなの?貴方達]

 

システィーナがまたぎゃいぎゃい説教を始め、それをさっきから黙って見ていたグレンがようやく口を開ける

 

[お前ら!!クラスメイトが頑張ってんのにアホみたいな事したんじゃねぇ!ウェンディの出番終わっちったじゃねぇか!!]

 

アホなやり取りをしてる間に競技が終わってしまったようだ、当たり前のように一位だったが、あそこまでやったのだから当然と言えば当然だその後ウェンディはお立ち台も済ませて、颯爽とこちらに帰ってきた。

 

[ご覧になりましたか?私の活躍!]

 

明らかに褒めてほしいオーラ全開のウェンディに対して褒めないと面倒くさいと思ったグレンは褒めまくった。

 

[凄かったな!お前の独壇場だったじゃねぇか!]

 

それに続いてルミアとシスティーナも

 

[うんうん!流石はウェンディって感じだったよ!]

 

[貴方ならやってくれるって思っていたわ!]

 

他のクラスメイトからも褒められて満面の笑みとなったウェンディ、大分調子に乗ったのか、アーサーとカッシュの野生児二人組に目を向ける

 

[あら?お二人は私に何か言うこと無いのですの?]

 

そう言われるとアーサーとカッシュはふざけた顔をしながら棒読みで賛美?を送る

 

[知ってた]

 

[いいぞー決闘の部門、ドンくさいって理由で落とされたやつ〜]

 

[ムッキィ!!なんて事言いますの!!普通そこはもっと別の言い方があるでしょ!!]

 

ウェンディが青筋を立てながら憤慨すると、グレンもアーサー達の物言いに説教をする。

 

[お前らな、頑張った奴を貶すとかそれは無いぞ普通に]

 

グレンが言うと、アーサーとカッシュは心底不思議そうな顔をする

 

[?いや俺は貶したつもりは無いですよ、ウェンディなら普通に一位取れると初めから思ってたし信じて疑いませんでしたよ?]

 

[んな、普段からがむしゃらに黙って努力してるウェンディがあんな奴らに負ける訳ないっすよ、俺たちは端っから勝てると思ってたんで]

 

[そ、そうゆう事ならそれでいいですの]

 

顔を赤くしてプイっとそっぽを向くウェンディ。どうやらあの言動はウェンディに対して全幅の信頼を置いているが故の言葉だったようだ、それでもどうかと思うが、システィーナとかも大した反応も示さない辺りいつもの事のようだ、お互いがお互いに信頼し合う、改めてグレンはこのクラスの仲の良さというか結束力の強さに驚いた。

 

[次の競技は精神防御です、参加者は準備をお願いします]

 

会場アナウンスが流れる、次は精神防御のようだウチのクラスからはルミアが出る、彼女なら大丈夫だろう、あの子は常人とは一線を隠すメンタルの持ち主だ負ける筈は無い。

 

[よし、次はルミアだな頑張ってこいよ!]

 

[はい!任せて下さい]

 

グレンが激励を送るとルミアもそれに笑顔で応える。クラスメイトもそれに続き最後にアーサーも激励を送った

 

[頑張れルミア、君ならトップ狙えるよ]

 

[ふふっ、ありがとうアーサー私頑張ってきちゃうね]

 

笑顔でガッツポーズをしながら応えると、そのまま会場の方に向かって行ったのだった。しかし今回も余裕だろう、まずルミアが負ける筈は無い勝ったな!と思っていたのだが.....

 

[おいおいなんだよ五組のジャイルって奴、歴戦の戦士ですが?伝説の傭兵か何か?一人だけ場違いがいるんだけどどうゆう事?ていうかなんというか出る所間違えて無い?]

 

[言えてるぜ、なんか画風違うしな、ルミア大丈夫かな?ギイブルに聞いた話だと、この競技かなり危険らしいぜ、精神汚染攻撃をされるのをマインドアップだけで耐えるんだろ?危険だろ?毎年病院送りになる奴がいるって話だぜ?今からでも変えた方が]

 

[そこは平気だろ、ルミアの精神力は俺達なんかより何千倍も上だっての....問題はジャイルって奴がその上を行く可能性があるかもって話だ]

 

[さぁーー!精神防御の競技開始だぁーー!では今年も今年とて我が校の講師でもあり、精神作用系の魔術の権威ツェスト男爵だぁぁ!!]

 

会場のスポットライトがツェスト男爵に当たる格好は紳士そのもので、階梯も第六階梯であり精神作用系の魔術に関しては世界でも5本の指に入るレベルの魔術師だ、だがこの男一つ欠点がある、誰にだって欠点の一つや二つある者だがこの男は少し...というか大分、度が過ぎてるのだ....

 

[紳士淑女の皆様ご機嫌よう....まずは小手調に睡眠魔術から始めよう]

 

そう告げると長い杖を挑戦者達に構え、魔術を詠唱する

 

[《体に憩いを・心に安らぎを・その瞼は落ちよ》ースリープサウンドー]

 

それに応戦して、対抗魔術を詠唱する。

 

[我が御霊よ・悪しき意志より・我が識を守り給え]ーマインドアップー]

 

 

白魔 マインドアップこの技は元々精神力が強ければ強い程効果を発揮する、しかし精神的に脆い人間には効果がない為...

 

[あーあ]

 

[完全に捨て駒扱いかよ]

 

アーサーとカッシュが苦笑いしながら呆れる、何故なら一発目で一組が脱落したからだ、これには司会も思わずハーレイに苦言を呈した。

 

[おおっと!!一組いきなり寝たぁ!完全に捨て駒だぁ!やる気なさすぎでしょハーレイ先生!]

 

精神力が弱い人間がマインドアップを詠唱しても大抵こうなる、焼石に水なのだ、ましてや相手が格上だと秒殺だ。それにこの競技自体一位以外は点数が入らない為大体他のクラスはやる気が無い、なので殆どのクラスが主力を温存して、捨て駒として成績が低い生徒を出す傾向にある。

 

[前回一位のジャイル君はともかく、今回は紅一点のルミアちゃんが気になりますね男爵]

 

司会の生徒が質問すると、男爵は杖を舌でベロリと舐めてはぁはぁと荒い息をし顔を赤らめながらでとんでもない事を言った。

 

[ふ...そうだな可憐でいたいけな少女の心をどう汚染し尽くしてやるか、実に楽しみだ...ふひひひ]

 

[へ、変態だぁぁぁぁ]

 

そうこの男ドがつく変態なのだ、いついかなる時もエロいことしか考えていない、思春期の少年が一番行ってはいけない方向に行ってしまいそのまま大人になってオッサンになったような男だ。

 

[はぁーなんであのオッサンクビにならないんだろうな?]

 

[言えてる、アレそのうち捕まるだろ、でもアーサーwお前何かとあのオッサンと縁があるんだろ?ww]

 

[...やめろ言うな思い出したくない]

 

カッシュがアーサーを茶化す、そうアーサーとツェストは何かと縁がある...勿論下の方で....

アーサーも男だ...何かと我慢が効かない事もある、そうゆう時に闇市に古本が売っている場所を尋ねるのだ...所謂あっち系の代物を探しに...

そして毎回アーサーがその、致す為の代物を探している時に出くわすのだ...はぁはぁ荒い息をしながら物色しているツェスト男爵に、そしてその手には毎回その...ロリ系の薄い本を数冊抱えているのだ、一度目が会ってしまった時は思わず戦闘態勢を取ってしまうほど程血走った目をしていて、ガチの性犯罪者かと思う程だった。そんな事を思い出していると、カッシュがニヤつきながら下の話を切り出してきた

 

[なぁなぁアーサー、お前普段どんなやつで致してんだ?]

 

[なんだよ藪から棒に]

 

[まぁ良いじゃねぇか、お姉さん系か?]

 

[違う]

 

[それとも貧乳系が好きなのか?]

 

[違う]

 

[じゃあ巨乳系か?]

 

[....違う]

 

[あ、今間が空いたな?アーサーは巨乳系が好き..っと]

 

[お前何メモってんの?]

 

[よし、じゃあ次に〜お前ルミアみたいな金髪とか好き?]

 

[ちょっと集中して試合観ようぜカッシュ!もうルミアとジャイルとか言う奴しか残ってないんだし]

 

[おい!うやむやにして逃げんな!ってマジじゃねぇか]

 

カッシュとアーサーが目を向けると、そこにはもうルミアとジャイルしか居なかった他は脱落したらしい、一騎討ち状態だ、観客もまさか可憐な少女がジャイル相手にここまでやるとは思っていなかったのか、異様な盛り上がりを見せているようだ。

 

[ここまで粘るとは思ってなかったわ]

 

[ルミアが?]

 

[いやジャイルが、正直ぶっちぎりでルミアが勝つと思ってたのに、まさかまさかのって感じ]

 

[ここからは体力勝負って事か]

 

[あぁ、持久戦になるだろうな]

 

アーサーとカッシュの言う通り、試合は持久戦に突入した、ルミアもジャイルも一歩も譲らず、気づけば第31ラウンドまで行っていた。

 

[恐らく次で決まるな...]

 

[マジ?...なあアーサー掛けしないか?]

 

[何言ってんだお前...友達の試合で賭け事する奴がいるか]

 

アーサーがため息混じりに言うと、カッシュが金は賭けないと言ってきた

 

[じゃあ何を賭けんだよ?]

 

[購買の期間限定のフルーツスムージーで]

 

[はぁーガキの賭け事じゃねぇんだから....まぁ良いよ乗った]

 

アーサーは若干呆れながらも、カッシュとの賭けに渋々乗った、賭けの内容はルミアとジャイルどっちが勝つかと言う物だった、アーサーは迷わず

 

[んなの決まってんだろ、ルミアしかいないだろ]

 

するとカッシュは俺もルミアだと言ってきた。

 

[それだと賭けにならないだろ]

 

[じゃあ、じゃん負けがジャイルの方賭けるって事ではい、最初はグージャンケン]

 

[はっ?え、ちょっと]

 

----- ------

------------|

----|--.---------|--

 

[はぁーマジかよ、無駄な出費だホントに]

 

[まだ言ってんのかよ?アーサーく〜ん?〜]

 

(マジで一発殴りたい)

 

アーサーの手には二つのフルーツスムージーがあった、一つはイチゴでもう一つはミックスらしい、先程のいきなりすぎるジャンケン勝負に見事に敗北したアーサー...案の定ルミアが勝ってしまい(?)カッシュに奢らされるハメになった。

現在は午前の部が終わり一時間程休憩の時間となった、生徒はそれぞれ友達とだったら家族とだったらと楽しそうにご飯を食べている、アーサーはと言うとギイブルには断られ、その他いつものメンツもそれぞれ他の人と一緒に食べるらしく、頼みの綱のカッシュも俺の馴染みの無い友人達と食べるらしい、一応誘われたが、やんわりと断った、そのため現在、学院を上げた大きなイベントで一人で飯を食うというこの世の地獄が確定している状況だ。

 

[ホントにいいのか?アーサー?一緒に食わなくて]

 

[あぁ、話したことのない奴らと飯を食うのは気疲れしちまうからな]

 

 

[そっか、でも来たかったらいつでも来いよ!俺はいつでも歓迎だからな!]

 

[ありがとう]

 

アーサーはそのままカッシュとは別れ、一人で廊下を歩いているとふと、外を見ると

 

[アレは...ルミアか?どうしてあんな落ち込んでんだ?]

 

ルミアが木の影で休んでいた。でもその顔は何処か曇っていて落ち込んでいる様子だった。

 

[.....そっとして置いてあげた方がいいか.....いやでも.......うーむやらないで後悔するよりやって後悔した方がいいか....]

 

アーサーは一度購買に戻り、女性に人気なスムージーを買うと、直ぐにルミアの元に向かった、するとルミアが首に掛けてあるロケットを何処か悲しげに見つめていた、それを見ていたアーサーは何処か焦燥感に駆られ、ルミアに話しかけた

 

[....浮かない顔してるな]

 

[!?アーサー?どうして!?]

 

ルミアは心底驚いた様子だった。

 

[なんだ?俺じゃない方が来ると思った?グレン先生とかさ?]

 

[ち、違うよ、私は、むぐぅ!?]

 

ルミアが真っ赤になって何か言う前に彼女の口にスムージーのストローを挿れた

 

[しけた顔してないで、これでも飲んどけ、美味しい物飲んだら少しはマシになるだろ、話はそれから]

 

[う、うん、あ、これ美味しい]

 

[だろ?あそこの甘い系のやつは美味しいからな、それも気にいると思って]

 

アーサーが優しい笑顔で言うと、ルミアも少し微笑み彼に感謝の言葉を述べる

 

[..,ありがとうアーサー]

 

少しの間一緒に飲みながら他愛の無い話で談笑するアーサーとルミア。飲み物を飲み切ると切り出したのはルミアだった。

 

[....アーサーって、大事な人を許す事って出来る?]

 

[そうゆう回りくどい言い方しなくてもいいよ、ルミア...いやエルミアナ王女]

 

アーサーから出た驚愕すぎる言葉にルミアは狼狽え動揺した。

 

[な、なんでその事を!?]

 

アーサーは淡々とした口調で

 

[あの時テロリストが学院に襲撃してきた時に、奴らの口から聞いたんだ、直接じゃ無いけどな]

 

と、説明するとルミアも納得した様子だった。

 

[....ルミアの気持ちもわかるよ、想像を絶するよな親に捨てられるなんてさ、憎しみとか悲しみとか色んな感情に苛まれるよな]

 

アーサーが肩をポンとやりながら語りかけると、ルミアの心の何かが爆発したのかアーサーに当たってしまう。

 

[....わかんないよ!アーサーには!!!私の気持ちなんて...あなたには!!誰も私の気持ちなんて...]

 

[いいよ、全部吐いちまえ全部受け止めてやるから]

 

アーサーは優しくルミアを宥める、暫く彼の胸の中で泣くと、少し治ったのか、ルミアがアーサーに両親の事を聞いてきた。

 

[...アーサーってご両親と喧嘩した時、どうやって....仲直りしてた?]

 

[うーん、そうだな言いたい事全部言って、それから謝るかな?あ、でもその場から逃げるのは禁止!!なんてね!.....取り敢えず言いたいことは...後悔しない方を選ぶ事、どうせ後悔するならやって後悔した方がいいでしょ?]

 

そう言ってアーサーは首に掛けてあった、蝶の模様と何処かの家の家紋の入ったペンダントを手に取り、それを見つめた。

 

[綺麗なペンダントだね...]

 

[だろ?母さんの形見なんだ、ずっと付けてる。一緒にいてくれるような気がしてさ]

 

[!?アーサー...貴方のご両親って....]

 

[死んだよ、両方とも事故でね。]

 

[.....]

 

[俺の家は元々一人親でさ、母親が女て一つで必死に俺を育ててくれてね、良い人だったよ、よく言う良妻賢母って奴かな、元々は魔術師かつ教師でもあったらしくてさ、村の教師やりながら良く俺に色んな知識を優しく時に厳しく教えてくれたんだよ、でもある時些細な事で喧嘩しちまったんだよ、なんで俺には父親がいないのとかなんとか言ってね、そのまま家を飛び出しちまった訳....そんでさその日に事故で死んじまった...俺は謝る事も出来ずに喧嘩別れしちまったて訳、ちゃんちゃん]

 

自らを自嘲し戒めるような口調で自身の過去を語ると、ルミアは悲痛な表情を浮かべるとアーサーが

 

[そんな顔するなよ、別に今は前を向いて歩いてるつもりだよ、だからここまで語っておいてなんだけどそんなに気にしなくてもいいよ]

 

[...アーサー]

 

[まぁ何が言いたいかって言うと、後悔しない選択をしてねって話だよ君には俺と同じ轍を踏んで欲しくない、言えるなら面と向かって言いたい事ぶつけてこい!!てね]

 

アーサーが優しく微笑むながら言うと、ルミアの雲が晴れたのか、いつもの表情に戻った。

 

[ありがとうアーサー、私頑張ってくるね!!]

 

ルミアの覚悟の決まった表情を見たアーサーはニコリと笑うと、サッと立ち上がり、ルミアの手を取る

 

[では参りましょうか王女様。なんてね]

 

[ふふっ、からかわないでよアーサー]

 

そしてそのまま戻ろうとして歩み掛けた瞬間....アーサーに電流が走る、フォースがここにいては危険だと、警報を鳴らしているようだった。

 

[アーサー?どうしたの?]

 

ルミアが不思議そうに顔を傾げるのも気にせず、周りを一心不乱に見渡す、するとそこにいたのは、5人の王室親衛隊だった。奴らはアーサーとルミアを囲った、アーサーはルミアを守るように自分の後ろに守るように置く。

 

[おうおう、物騒な格好してどうしたんすか?求人募集なら他所でやってくれませんか?それとも別の用?]

 

アーサーの言葉をガン無視して、連中は剣を抜き、その刀身を二人に向けると淡々ととんでもない事を告げる

 

[ルミア=ティンジェルだな?..,傾聴せよ、我々は女王の意志の代行者である....ルミア=ティンジェル、《貴様は恐れ多くも陛下を亡き者にしようと密かに画策し国家転覆を企てた、不敬罪及び国家反逆罪そして陛下の勅命により....即手打ちとする!!》

 

[わ、私が...陛下の暗殺を企んだ....!?]

 

ルミアは狼狽え

アーサーは思わず困惑する、どうゆう事だ?と、どうしてルミアを殺しに来る?しかも女王側の人間が?アーサーは頭の中で様々な可能性を考える。恐らく無駄だが取り敢えず説得してみる事にした。

 

[タチの悪い冗談だ....この子がそんな事した証拠がどこにある?]

 

[貴様に開示する義務は無い、その物言いを改めなければ不敬罪が成立するぞ?]

 

[横暴だな、俺はただ交渉がしたいだけだ]

 

[貴様と交渉する必要は無い、早くその娘を渡せ]

 

アーサーはため息を吐くと、もう少し話を伸ばす。

 

[なぁ頼むぜ、この子を殺す必要なんて無いだろ?]

 

[くどい!!早くその娘を渡せ!!二度は言わないぞ!!]

 

[こんな性格の良い美少女を見捨てろなんて、俺の辞書には書いてないんでね国家反逆罪にでも何にでもしろっての!こんな美少女と一緒に指名手配とかお釣りが返ってくるレベルのご褒美だわ〜ww]

 

アーサーがふざけた口調で言うと堪忍袋の尾が切れたのか

 

[貴様も死にたいようだな..,ならば覚悟せよ]

 

親衛隊の連中が戦闘の構えを取ると、アーサーはルミアの耳元で囁くように作戦を伝える

 

(ルミア、俺が奴らの注意を引くその隙に君は逃げるんだ!いいね?)

 

(あ、貴方はどうするの?)

 

(どうにかする、いいかい?俺が斜め後ろの奴を蹴り飛ばす、そしたらあの門まで走れ!んでこれから来る奴に乗れ!)

 

(これから来る奴って何アーサー?)

 

返答する前にアーサーが一瞬で斜め後ろにいる親衛隊の連中が持っているレイピアを弾き飛ばすとルミアが通れるスペースを開けるとルミアを投げ飛ばした、アーサーも一度飛び上がり宙に浮くルミアをフォースで優しく着地させ、自分も少し後ろに下がり、ルミアに向かって叫ぶ。

 

[走れ!!ルミア!!もういるはずだ!!]

 

[何がいるの!?]

 

[!?ルミア!!!!危ない!!]

 

[あ、、、]

 

門の前で親衛隊の人間と肉薄し、レイピアを突き刺されそうになるルミア。彼女は思わず目を瞑り走馬灯のようなものが走る、しかし数秒経ってもその時が来ない、そして恐る恐る目を開けると、そこにいたのは、アーサーの愛馬と狼だった。横には思いっきり突き飛ばされたのか親衛隊が失神していた。

 

[ワンワン!!]

 

[間に合ったか...ルミア時間が無い!!グリントに乗れ!!君が止まりたい時以外は手綱は掴まなくて良い!!とにかく振り落とされないようにしがみつくんだ!!いいね?さぁ行くんだ!!]

 

[ありがとう、アーサー、どうかご無事で]

 

[あぁまた後で会おう、さぁ行けグリント!!]

 

アーサーが叫ぶと、グリントがヒヒーンと声を上げて猛スピードで走り去って行ったウルフもそれを追って消えていく。残ったのはアーサーだけ、彼はとにかくこの状況を打開する手段を考えていた、ここで本気で殺し合えば、多勢に無勢、いくら実戦経験豊富なアーサーでもタダでは済まない、そして仮にフォースなどを駆使して全力で戦えば、正体もバレる、こうなれば全て水の泡....つまり今アーサーが使ってはいけない技は軍用魔術全般、フォース(変装していないため)そして帝国式軍隊格闘術、そして学生離れした剣術、殺傷武器禁止....そして使えるのは、二年までで習ったすべての知識、技術....それで勝てるだろうか...否やるしか無い。取り敢えずこの場にいる人間だけでも無力化しなければいけない

 

[さぁーてと、たった5人で俺を殺れるのか?]

 

[いつ5人だけと言った?]

 

親衛隊の一人がそう言うと、4方向からアーサーを囲うようにゾロゾロと連中の集団が現れた。

 

[あーもしかして俺大口叩いちまった?]

 

アーサーは冷や汗をダラダラ掻きながら、この状況をどうにかする策を考えていた、学生レベルの知識と技術で?親衛隊(精鋭)をどうにかするって??しかもざっと50人くらいいるのに???....アーサーが導き出した答えは....

 

[うぉぉぉぉぉ《三界の理・天秤の法則・律の皿は左舷に傾くべし》!!!逃ぃげるんだよぉおぉぉぁ!!!後ルミアの方追っても無駄だぞ!あれにはスキャンキャンセラーついてるから追跡不可能だからな!俺を追った方が早いと思うよ!!、]

 

逃走だった。なんとも情けない、アーサーはグラビティコントールを使って屋根を登り一気に猛ダッシュ脱兎の如く逃げる、それを追うように親衛隊の連中も

 

[奴をおぇぇぇぇ!!全勢力を掛けておぇぇぇぇ!!!]

 

全部隊総出で、追いかけっこしてくれるらしいなんとも嬉しく無い。

 

(これでルミアが逃げれる時間も稼いだ、後は俺がなんとか逃げられれば!!!)

 

後ろをチラリと見ると、血走った目でこちらを追う鬼(親衛隊20人程)ゆっくりと顔を前に向き直すと心の中で悲鳴を上げた

 

(いやぁぁぁ後ろみなければ良かったぉぉぉぉ!!マジで誰かヘルプ!!!ヘルプ!!!今日はなんなんだよ!!カッシュにはたかられるし親衛隊には殺されそうだし!!なんてついてねぇんだぁぁぁぁぁ)

 

こうして親衛隊との、命を賭けた仁義なき鬼ごっこが始まるのだった

 

 

続く

 

 




グレン先生とは別の視点にしてカッシュとアーサー視点にしてみた話だったけど伝わっただろうか...


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大博打

フォースとは無色の色だ、使い手によって色が変わるそれだけだ






師の言葉


前回のあらすじ!!金をたかられて、女王暗殺の濡れ衣を着せられて現在国家反逆罪の罪をかけられて絶賛親衛隊の人達と十分間くらい命を賭けた鬼ごっこ中だぞ☆

 

[あーこんな事なら俺もルミアと一緒に逃げれば良かった。なんでカッコつけて囮役なんか引き受けぇぇぇぇ!!チッお前らレイピアは投げるために出来て.....あぁ後見なきゃよかった。]

 

剣を粗雑に扱うのに腹が立ったアーサーが後ろを振り向くとそこには、空を被うほどの無数の飛び道具やレイピアがアーサーに向かって飛んできていた。あまりの光景に一時的に思考停止したが、直ぐに我に返り、敵のいない方向に駆けるが、ふとアーサーの脳裏に違和感が走る。

 

(なんかおかしいぞ....なんであからさまに道を.....成る程誘導されてるな..

あえて親衛隊の奴を配置しないで、道を開けてる、んで向こうの一本道に誘いこんでるな。古典的なやり方だ...だが...)

 

アーサーは苦虫を噛んだ表情をする。何故ならもはやどこにいこうと、上がろうと親衛隊が待ち構えてる、逃げ場なし完全に詰み状態だ、無理矢理上に上がろうとしても、空中では身動きが取れないし格好の的だ。

 

[もうこうなったら....]

 

アーサーの目が据わった瞬間、ルミアから使い魔を通した連絡が来た...

 

 

-----数分前

-------

----

[大丈夫かな...アーサー]

 

心配そうな声でアーサーの事を考えながら金髪を靡かせている少女がいたルミアだ。王族として乗馬は必須事項だったのか完全にグリントを乗りこなしている。

 

[ワンワン!]

 

一度止まり後ろを見ていたルミアをウルフが早くいくぞと急かすように吠えると

 

[ごめんね、案内してもらってるのに..,じゃあ先を急ごうか]

 

そう言って手綱を持とうとした瞬間聞き慣れた声が聞こえた。

 

[待ってくれ!ルミア!!]

 

[グレン先生!?どうしてここに!?]

 

その声の主はグレンだった。そしてその後ろには、軍のマークが胸に刻まれた服を身に纏った、グレンより少し年上のような目がナイフのように鋭い男と、小柄でルミアより年下に見える少女がいた。ルミアはグリントを降りて事態を説明した。

 

[わかった...これは思ったより...]

 

ルミアからの説明を受けたグレンは不安を隠しきれていないようだ、グレンもいきなりのこれに巻き込まれた、先程普通に生徒の応援をしていた時にアルベルト達に無理矢理拉致されて、ここにいるようで、事態の収集がつかない様子だ

 

[危険な状況だ、そのアーサーとか言う生徒を救出に向かった方が良いだろう、戦闘経験が少ないとは言え親衛隊の連中は精鋭...しかも大人数..とても学生の手に負えない...最悪の場合]

 

グレンがアルベルトを睨みつけ、言葉を遮る

 

[うるせぇ!!俺の生徒はそんなやわじゃねぇ!!ルミア!アーサーと連絡させてくれ!]

 

ルミアがウルフを通してアーサーに連絡を取った。

 

[アーサーお願い...出て]

 

ルミアが祈るように目を瞑ると、アーサーが通信に応じた。

 

《ルミア!無事か?》

 

[うん!こっちは大丈夫!そっちは?]

 

《え?こっち?ぜ、全然平気、あ、っやべ、《ーノイズ音ー》ふぅ、今絶賛怖いお兄さん達と鬼ごっこ中だよ、全然平気平気、ワンチャン死ぬくらいだからハハッ、あぁ、マジでそれはヤバい...《ーノイズ音ー》》

 

酷いノイズ音と共に、少し遠くで爆炎が上がった!!ルミアは口を手で覆って動けなくなり、グレンは半狂乱で叫ぶ

 

[アーサー!!おい!!聞こえてるか!!大丈夫か!!おい!おい!]

 

《聞こえてるよ〜今のはマジでヤバかった、どうやらそっちはグレン先生がいるみたいだね、後ウルフの視界からだと二人など見えるけど、今は自己紹介ぃい!してる場合ィィィ!ちょっと親衛隊の人達少しは待ってくれよ!!!とにかくここは俺に任せて!!丁度妙案が浮かんだ所だから!後で合流する!!、ってちょっと待って!君達近隣住民の被害とか考えた事あるぅぅぅぅ》

 

そこでブツリと通信が切れた、遠くの方で爆炎が何個も上がる。グレンはアーサーの言葉を無視して助けに入ろうとするが、アルベルトがそれを止めた

 

[アーサー?アーサー!!おい!返事しろ!!]

 

[待て、グレン。今はこの状況をなんとかするのが先だ。]

 

[はぁ!?お前何言ってんだ!アルベルト!!アーサーを助ける方が先だろ!!]

 

グレンが激昂しながら、アルベルトに掴み掛かるが、彼は表情をかえず淡々と

 

[お前は生徒の言葉を少しは信じた方が良いんじゃないか?アーサーとか言う生徒は、ここまで冷静にルミアを守り、多くの精鋭部隊を捌きながら生き残ってる、本当に危険な状況になれば彼はきっと逃げる事ができる。今はこの事件をなんとかするのが先だ....だから俺はアーサーを信じる...お前はどうする?グレン]

 

アルベルトはアーサーを何故だか信頼しているようだ、そしてその横にいたリィエルと言う少女も眠たげな顔を覇気のない声で

 

[私もそのあーさー?だっけ?それを信じる。グレンは?]

 

[....俺もアーサーを信じる...よしお前ら...俺達も本題に入ろう...セリカと連絡を取ってみる..,]

 

----

------

------|-

[よし....やるか...フォースを集中させろ、感覚を研ぎ澄ませ....]

 

今現在爆撃からなんとか逃れ、身を隠しているが敵が辺りを巡回している為、バレるのは時間の問題であろう。

 

[スタンダール隊長。応援が来ました、しかしターゲットとは言えあれだけの攻撃を学生にやるのは.,.流石に死んでしまったのでは?]

 

[恐らく死んではいない、そのうち...]

 

するとスタンダールの魔術通信機が青く光る、どうやら部活からの連絡のようだ

 

[私だ]

 

《スタンダール隊長、ターゲット動き出しました。》

 

[よし....ポイントに誘い込め...]

 

《了解、通信終了》

 

[私達も行くぞ。応援を全て注ぎ込め、ターゲットを確実に捕らえよ]

 

鋭い眼光を光らせながら、裏道に消えていった。

 

《こちらα部隊ターゲットを捕捉、負傷しているようですが、道のど真ん中を走っていますが速度50は出ています。どうやら白魔術の肉体強化系を使用していると見られる、魔術での補足は難しいどうぞ》

 

《了解、作戦通り威嚇射撃を行いターゲットを誘導しろ》

 

そう告げると、アーサーに向けて無数の軍用魔術が飛んでくるが彼はそれを難なく避けそのまま裏路地に入ったかと思うと、別の大通りに入った。なんとか誘導から逃れようとしているようだ。しかしそれを予想していないはずも無く、アーサーから1キロメトラ離れたここら一帯を見渡せる時計塔に応援で呼ばれたスナイパーが鎮座していた、怪しく光るスコープが完璧にアーサーを捉えている。

 

《こちらβターゲットが円のように回ってこちらに来ている、対応求む》

 

《こちらスタンダール、発砲を許可する。任意で撃て》

 

[《了解》....恨むなよこれも仕事だ]

 

そう言ってアーサーの胸元に照準を合わせる、確実に当たるタイミングで引き金を引こうとしたその瞬間

 

[!?....目が...いや..それどころかこちらを見てニヤついてる...?]

 

アーサーと確実に目が合ったそして、笑っていた.,.撃ってみろよと言わんばかりのニヤつきだった。スナイパーは何か悪寒を感じ、確実に殺せたであろうタイミングを逃してしまった。

 

《こちらβ..,ターゲットを取り逃がした、以前円を描きながら逃走を図っている。あのガキ笑っていやがった、スコープが奴の心臓を捉えていたのに》

 

《らしくないな...お前程の凄腕が》

 

《すみません...》

 

《まぁ良い少し休め...後はこちらに任せろ》

 

《気をつけて下さい隊長...奴は只者じゃ無い》

 

《わかってる》

 

----

[よし...後は...]

 

[ターゲット発見!!こちらにいるぞ!!]

 

[さっすが女王陛下専属部隊の名は伊達じゃ無いね]

 

駆ける駆ける駆ける、弾丸も雷撃も風も炎も冷気も掻い潜り、走り続ける、が....アーサーが道を抜け大広間に出た瞬間、四方八方に親衛隊のメンバーがアーサーを完全に囲っていた。

 

[しまっ...]

 

[....今だ]

 

スタンダールが命令を出すと、そこにいる全員がアーサーに向けて軍用魔術を使い攻撃してきた、最早生捕りにする気はないようだ。だが今のアーサーの感覚は人間のそれではない、自分の感覚に従い全て避けようとするが、いくらなんでも40人の全方向の魔術は避けようが無く、六発程体に受け、その場で撃ち落とされ、地面に叩きつけられた。

 

[うぐぁ...痛え...これ俺超絶大ピンチ...?なんとかしないと....ぐぁぁぁぁ!!]

 

アーサーが這いずって壁に手をつこうとした瞬間、スタンダールの足が彼の右手をグリグリと踏み潰した。

 

[フン...矮小な小物の癖に私達をここまでイラつかせるとは、誉めてやる!!]

 

スタンダールが苛立ちながらアーサーの左手をレイピアで突き刺す。

 

[ぐぅぅっっっ!!痛いな〜もう、、もうちょい優しくできないの?ぐふぅぅ]

 

スタンダールがアーサーの腹を蹴り飛ばし、アーサーは壁に叩きつけられた。

 

[貴様の、お喋りに付き合っている暇は無い.,..最後にチャンスをやろう今ここで、使い魔の位置情報とルミア嬢に付けた発信器を渡してもらおうか?]

 

[ゲホッゲホッあれ?バレてた?ルミアに発信器つけてたの...]

 

[壊そうとしても無駄だ、さあ、最後のチャンスだ。その胴と首がくっついている内に言った方が身のためだ]

 

スタンダールがアーサーに近づき首筋に刃を向けて、脅しを掛けたその瞬間アーサーはニヤリと笑う、ステンダールはそれを不思議がって見ていた。

 

[ふん、いきなりのニヤつくとは気でも触れたか?]

 

[勝利の瞬間には誰だって笑みが溢れるものだろ?]

 

[なんだと?]

 

ーーー-バチリーーー

 

アーサーが告げた瞬間、弾けるような音を立てながらここら一体が怪しく光り始めた、その光は線から線を結び至る所に繋がっていく.,..そして線は円となり、半径10キロメトラ以内を完全に囲う巨大な魔術陣となった。

 

[なんだ!?これは!?体が動かん....貴様何をした!!]

 

[見てわからないか?魔術だよ?ゲホッゲホッ...この人数全員にやるのはほぼ賭けみたいなもんだったけどね]

 

[馬鹿な!?ここまで大きなものが学生に出来るわけが!!]

 

[できちゃうんだな、これが....まぁ自動でしか発動しないけどね]

 

アーサーが立ち上がり埃を払いながら言うと、スタンダールが口をパクパクさせながらアーサーに聞いた

 

[まさか....条件起動式...か?]

 

[ご名答、流石は女王に使える身の人間と言った所かな?]

 

[だ、だがそんな事出来るはずが!!]

 

[でも実際出来てるでしょ?簡単だよ、わざと誘導に引っかかるフリをして、コイツをずっと巻いてた]

 

ポケットからアーサーが何かを取り出した。

 

[それは...血液か?]

 

[そうそう、こんなこともあろうかと予め溜めておいた、これには俺の魔力も流れてる、んでそのまま使って後は魔力を流し込めば良いだけって訳、それで後はずーっと円状にアンタらを囲うようにグルーっと移動しながから、垂らしていってちょくちょくバレないようにジグザグに移動したりしながらゆっくりと作っていたって訳、因みに条件は、俺をその剣で首筋に突きつけ脅してきた瞬間、この範囲にいるすべての敵の動きを止めるってやつね。縛りは縛るほど強力になる....知ってた?]

 

[....貴様我々の作戦を全て逆手に取っていたのか?]

 

[さぁね〜、んじゃ俺仲間の元に戻るんで]

 

そう言ってその場から去るアーサーの背中を見ながら

 

[....やられたよ、私たちの負けだ]

 

負けを認めて潔くその場に留まるのだった。

 

--------

[ゲホッゲホッゲホッ..,あぁやべぇ治癒限界が来ちまった...なんとかアイツらの元に....]

 

どうやら先程受けた傷の一つが腹部を貫き、その箇所から出血しているようだ、ここまで深いとアーサーの腕では治癒する事が出来ない....フォースで痛みを抑える事は出来るが治す事はできない....

 

[うぐ....なんか俺最近ずっと傷だらけじゃねぇか?ついこの間死にかけたばかりなのに、また死にそうになってるし...ハハハ....]

 

いつもの軽口も余裕が無い、震えと動悸が止まらない...呼吸が浅い視界が霞む血の気が引いている、このままでは死ぬと、アーサーが一番わかっていた。

 

[早く....行かないと]

 

壁に寄りかかりながら傷口を手で強く抑えゆっくりと移動するアーサーなんとか魔術競技祭の会場の近くまで着いた。

 

[花火が上がってる....どうやら終わったらしいな...ウチのクラス勝ったかな...?アハハ....行かないと...]

 

ど警備に回っていた者はどうやら閉会式を見に行ったのかそこにはいなかった為、アーサーは容易に会場に入ることが出来た、そして階段を額に嫌な汗を流しながら登る。すると近くでやかましい聞き慣れた声が聞こえてきた、アーサーはそれに吸い寄せられるように近づくとそこには見慣れた銀髪の少女がいた。

 

[よぉ...システィーナ...どっちが勝った?]

 

アーサーが声を上げると、銀髪の少女が勢いよくこちらに振り返る文句を言ってきた。

 

[あ!!アーサー貴方何処行ってたのよ!!もう競技祭は....ってちょっとアーサー重い!!いきなり倒れ無いで.,.アーサー?]

 

[へへっ....悪りぃ...ちょっと頼む..,]

 

[貴方...どうしたのこれ?まさか...血?何が合ったの?アーサー?ねぇちょっと返事して!!]

 

アーサーはそのまま意識を失い、その場に倒れてしまった。システィーナは一度彼を仰向けにして、手で抑えていた腹部を見て血の気が引く。

 

[酷い...本当に何があったのアーサー?いいえ今はそれどころじゃ無いわ]

 

システィーナが応急処置をしようとした時、騒ぎを聞きつけたカッシュ達が野次馬をかき分けてやってきた。

 

[おい!何があったんだ!!システィーナ!!アーサーは!?]

 

[丁度良かった!カッシュ達急いでセシリア先生呼んできて!!大至急!!!]

 

[お、おう!!わかった!!行くぞお前ら!!]

 

カッシュ達が走ってセシリア先生を呼びに行くのを尻目に、システィーナが急いで治療する、取り敢えず治癒魔術で応急処置をするが....

 

[ダメだわ...私の治癒魔術じゃとてもじゃないけど...ルミアレベルじゃ無いとこれは...なんて無力なの私は..,今はアーサーの手を握るしか出来ないなんて]

 

アーサーの手を優しく握り、ただ励ます事しか出来ない自分の無力さに打ちひしがれるシスティーナ、するとセシリア先生が走ってやってきた。

 

[システィーナさん!]

 

[セシリア先生!!]

 

[どうなってますか?.....これは、急がないと手遅れになる!]

 

セシリア先生が素早い手つきで、アーサーの服を引っ剥がし傷口に治癒魔術をかけるが.....

 

[まずい....呼吸が止まった]

 

[そんな!!アーサー!!]

 

治癒するより先にアーサーの呼吸が止まったようだ、セシリア先生が急いで心臓マッサージと人工呼吸をする。

 

[お願いお願い戻ってきて、アーサー君ここで死んじゃダメだよ!]

 

セシリア先生が必死に心臓マッサージと人工呼吸器をしていると

 

[何があった?]

 

そこにきたのはアルフォネア教授だった、世界最強の魔術師として君臨する第七階梯であり、不死者として200年以上生きている、生きた化石のような人だ

 

[アルフォネア教授!!お願いしますアーサーを助けて!!]

 

[安心しろシスティーナ私が来たからには、死にはしないさ]

 

そう言うと、魔術式をアーサーを囲うように地面に描くと、白魔儀リバイバルを発動した。するとアーサーの腹部の傷がみるみるうちに塞がり血の気が戻っていた。数分すると目を覚ました

 

[あれ?絶世の美女が3人?ここは天国か?]

 

[生死を彷徨って早々に軽口を叩けるなんて大した奴だなお前は]

 

[良かった...]

 

[アーサー!!本当に死んじゃうかと思ったんだから!!]

 

セリカは呆れセシリアは安堵して、システィーナは泣き目で文句を言ってきた。

 

[ありがとうございますアルフォネア教授、セシリア先生。後システィーナも]

 

[アーサー!!良かった!!生き返ったんだな!!]

 

[カッシュ!!いてぇ抱きつくな!!また傷口開くから!!!]

 

なんやかんやでドタバタな魔術競技祭は終わりを迎えるのだった。

 

続く

 

 

 



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あの頃は楽しかった

どんな時でも空は青く澄んでいる






あるジェダイの言葉


前回のあらすじ 親衛隊と50対1の鬼ごっこ(命懸け)をなんとか学生ができる範囲の技を駆使して逃げ切った(撃退)したぞ⭐︎しかしその代償として、致命傷レベルの傷を負い一時は心停止したが、システィーナの状況判断とセシリア先生の必死の治療とセリカさんのバケモノレベルの魔術でなんとか三途の川からバタフライで帰還したぞ☆

その後大事をとって保健室にて一度包帯を体のあらゆる箇所に巻いてもらい痛み止めの薬を処方してもらった後、セリカさんからお呼び出しをもらった。

 

「おぉ、来たか」

 

「セリカさん。お待たせしました、それでご用件はなんでしょうか?」

 

学院の門の近くで腕を組んで待っている大人びた金髪の女性、魔術の世界では知らぬものはいない、彼の有名な魔術師セリカ=アルフォネアが、ただの学生の為に時間を割いているのだ、何かと身構えていると、返ってきた答えは、今回の事件の全貌についてだった。

 

「そう身構えんなってアーサー、今日お前が巻き込まれた事件についての説明するだけだから」

 

「そうだった!ルミアは無事ですか!?グレン先生は!?」

 

どうやらアーサーは死にかけたせいか一部記憶が混濁していたのか、ルミア達の事を忘れてしまっていたようだ。

 

「全員無事だよ、お前のお陰でな。ホントに今回はマジで驚いたよ、親衛隊の連中を引きつけるだけならまだしも、相手の誘導を逆手に取って条件起動式で全員拘束するなんてな、ホントに10代のガキかよ?って思ったね」

 

セリカが明るい口調でアーサーを褒めちぎると、彼も照れくさくなったのか顔を赤くする。

 

「あ、あはは。たまたまですよたまたま、それより、今回どうしてルミアが狙われたのですか?」

 

「あぁ、今回の事件は簡単に言えば女王暗殺計画って所だ、未遂に終わったのが幸いだったけどな」

 

アーサーはその事を聞いて少し驚くが、直ぐに頭をリセットして少し推理する。

まず今回の事件は、帝国の内部の人間の謀反では無い、何故なら王位継承権の無いルミアを狙うなんて回りくどい事をする意味が無い、仮に自分の娘をだしに使われたとしても女王は止まる事は無いだろう、あの人はそういう人だ、時に非情な選択ができる人間だ、俺にはわかる。それに女王を暗殺するメリットというものが存在しない、トップの暗殺というのは、殺した後の事後処理の方に重点を置かなければならない。

 

アーサーの知る限り、新聞やら情報媒体で陛下をさも邪智暴虐の暴君のように仕立て上げ民衆を扇動などは行われていない、つまりこの状態で暗殺し、女王の御子息全てを根絶やしにした後、別の人間をたてようものなら、女王を慕い忠誠を誓っている国民は間違い無く各地で武力による反乱を起こすだろう。そして仮に反乱を鎮圧したとしても、兵が疲弊してる状態なのを、長年いがみ合ってる、お隣の国レガリオン王国が狙わないはずも無い。直ぐに宣戦布告して電撃戦で一気に帝国は焦土と化して、間違い無く国は滅び、アルザーノ国民は根絶やしにされるだろう。このような結末は容易に想像できる、相当な愚か者で無ければこのような事はしない筈だ。

つまり、最初から女王暗殺は目的では無かった?目的はルミア?では何故即手打ちなんて事をする必要があった?普通生捕りにするものでは無いのか??取り敢えずわかったのは例の天の知恵研究会の犯行であろう事だ

 

「それってこの間、学院に襲撃してきたテロリストと同じグループに所属している人間の犯行ですか?」

 

「鋭いな、流石はアイツの教え子、そうゆう事だ...天の知恵研究会....長年帝国が影で戦い続けてる、倫理観の欠如した屑人間集団だよ」

 

「成る程、となれば最初から狙いは女王では無く、ルミアだったって訳ですが.....」

 

「ん?ちょっと待った、普通に話進めてるけどお前もしかしてルミアの過去とか知ってる?」

 

「あ....」

 

アーサーまたしてもやらかす。何かに夢中になると、全ての設定をフル無視してしまう症候群が再発、自分が学生という事を忘れてしまい、安易にルミアについて言及してしまった。ここは言葉を選んで冷静に対処しないとならない、変に正体が割れては困る。ここは一呼吸置いてからカバーストーリー通りに

 

「えっと、その、あの!あれっすよ、る、ルミアがあ〜、女王の娘さんって事はその〜あの〜捕まってる時にテロリストからちょろっと聞いたというかなんというかハイ、そんだけです....」

 

全部失敗した。ものの見事に全てやらかした、呂律が回らず、目が泳ぎながら説明しても怪しさ満載である、見てくれあのセリカさんの表情を過去一怪しんで、訝しんでるよ。どうするれば良いのかわからない。

 

「ふーんアーサー本当の事言え、言ったら楽になるぞ?うん?」

 

今のセリカはさながら、署で優しめの口調で尋問してくる警邏官そのものだ、今にもカツ丼を机の上にポンと置いてきそうだ。

 

(やっべぇぇ、この圧やばいって!ガン詰めしてきてるよいや、待て俺ここでこの圧に屈したら終わりや、なんとか対抗するんじゃ!!)

 

「ほ、本当のこ、こ、こ、事言ってます〜嘘なんかつつつつついてません。」

 

アーサーが掠れた口笛を吐吹きながら、誤魔化そうとするがお構いなしにセリカが詰めてくる

 

「本 当 は ?」

 

「ちょっとだけ...」

 

「ち ょ っ と だ け ? な ん だ ?」

 

(うん完全に屈したわ、うん、ちょっとこの圧に敵わないわ。つうか絶対絶命だわ、この場から逃げたいわ、と思ったら腰抜けたわ。どないしよこの状況マジで、もうあれやな、うん、もう神頼みしか無いわ、おぉぉぉぉぉお願いします!!神様!!日頃の行い悪いけどこの状況なんとかしてぇぇぇぇぇ)

 

アーサーがこの状況を打破する手は、神頼み以外無いようだ。何とも滑稽である。最早ここまでか、と思った時、後ろの方からセリカに気品あふれる声で喋りかける女性がいた。後ろを振り向くとそこにいたのは...

 

「少しいじめ過ぎですよ?セリカ、その子が困ってるではありませんか」

 

「んだよ、アリス早いっての、もう少しアーサーをいじめて楽しもうととしてたのに〜」

 

「え?女神降臨した?って女王陛下!!!!な、なんでここに!!」

 

「元々お前をここに呼び出したのはアリスだからな、お礼がしたいんだと」

 

「ふふっ、そうゆう事です。改めてエルミアナを救って頂き本当にありがとうございます、感謝してもしきれません何かお礼を...」

 

アーサーに対して深々とお礼をする女王に、アーサーがあたふたしながら

 

「いやいやいや!!こんな唯の平民風情にお礼なんてしなくても良いで!頭上げてください!!ルミアを助けたのはなんというか成り行きなんで!!」

 

「貴方は成り行きで命をかけられるのですか?」

 

女王がアーサーに問うように質問する。明らかに試されているそう感じたアーサーはある人の言葉を引用した

 

「...何というか、あの時色んな事考えるより先に体が動いていたんですよ、この子を助けろって、唯それだけです、私の尊敬している人の言葉を使って表すとすれば、誰かを助けるのに理由なんて要らないってやつですね」

 

「....それって」

 

陛下はアーサーの言葉を聞くと思わず目を丸くしたのと同時にある人とアーサーを重ねてみる、顔や背丈こそ似ていないものの、雰囲気が何処か面影があるように見えた。陛下は思わずアーサーに聞いてしまった

 

「アーサー君、貴方ハンク....ハンク=ジェスターを知っておられますか?」

 

「え?はい、知ってますけど...もしかして知り合.....あっ、、、」

 

アーサーまたしてもやらかす、前にハンクの学生時代の写真を見せてもらっていて陛下とは同級生で親しい間柄かつ前は軍関係者で、何か唯ならぬ事情があって辞めた事を知っていて、かつ女王の話をするといつも顔が曇るハンクの事を知っていながら、ハンクの言葉を引用して使ってしまった。

 

(やっば!要らん言葉使って、二人の問題に首突っ込もうとしてるんだけど!!アカン何聞かれるかわかったもんじゃない、どうしよこの事バレたらハンクさんにしばかれる!!あの人怒るの怖いんだよ!!)

 

内心ビクビクしながらも、陛下は普通の事を聞いてきた

 

「ハンクは元気ですか?あの人いつもだらしないから...」

 

「え、えぇ元気ですよ、今は街の外れで鍛冶屋をやってますよ。俺はまだまだ現役だぁぁって言っていつもナンパして玉砕してますけど」

 

「ふふっ、相変わらずですね...そうですか鍛冶屋を....」

 

表情こそ笑っているものの、何処か悲壮感の漂う声色だった。何とも言えない空気が立ち込めると、陛下が無理矢理話を切り上げた。

 

「そう言えば、エルミアナが貴方にお礼がしたいと言っていましたよ、恐らくクラスの皆さんとパーティしてると思うので行ってあげてはくれませんか?」

 

「は、はい!行って参ります!では失礼します!」

 

アーサーは天に駆ける勢いで、その場を走り去った。陛下も少ししたのち護衛と共に立ち去った、そして残ったセリカはというと

 

「うん?ちょっと待った、二人して置いていくの酷くない?待ってくれ!アーサー!私もパーティ参加する!グレンとパーティしたい!!」

 

そう言ってアーサーの後ろを追うのだった。

 

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---------

-----------

「なんか後から入るのって気が引けるんだよな〜皆んなの注目集めそうで、でも女王陛下に言われたからな〜ふぅー....入るか」

 

意を決して入ってみると目の前にはテーブルの上に半裸で頭にネクタイを巻きながら一升瓶をラッパ飲みするグレンと、それに便乗しながらベロンベロンに酔ってるクラスの面々がいいぞもっとやれーやら何やら言ってるこの世の地獄みたいな光景だった、貸切にしておいて本当に良かったと思うアーサーだった。

 

「おい!皆んなみろぉぉ!このクラスのM V P !アーサー=モーガン殿だぞぉぉぉぉ!!下々の者たち!丁重にもてなせぃぃぃ」

 

グレンがクラスのメンバー全員に王様気分で命令すると、全員酔っ払っているのか、あの女子達ですら完全にアーサーをロックオンしてる

 

「ちょっと待った!!皆んな!!落ち着け!!落ち着いてくれ!!待ってホンマに!血走った目でこっちをロックオンしないで!!お願い頼む!!」

 

「「ウェェェイ!!!」」

 

「ギニァァァァァァァァ!!」

 

アーサーの元になだれ込んでくるクラスメイト達、最早アーサーには如何なる手を打っても対抗する手札は無く唯身を任せるしか無かった。

 

(本当にごめんなさいアーサー、助けて貰ったのに恩を仇で返すなんて(

 

唯一この場で酒に酔わなかった者は唯一人ルミアだけだった、彼女は何杯注がれても酔うことが無い酒豪だった。しかし酔ったふりをしてこの場を掻い潜らなければあのようにオモチャにされるからだ、その為犠牲になったアーサーには同情の心と共に後日必ず謝罪をしようと誓ったのであった。 

 

 

なんやかんやあった魔術競技祭、取り敢えずは一件落着と言った所であろうか、後日グレンには地獄みたいな請求額と、アーサーはハンクからマジモンのお説教を食らうとはこの時は知る由もなかった。

 

 

 

 

-------

-----------

--------------

「ふぁー暇だな〜アーサーも今頃クラスのメンツと打ち上げてもしてんだろうな〜いいね〜学生の頃に戻りてぇわおじさん、なぁウルフ」

 

ウルフは不機嫌そうにしながらもハンクに撫で撫でされていると、ハンクが弁解してきた

 

「悪いな今日、多分なんかあったんだろうけど少し手が離せなくて、ウルフ達に任せちまった、本当なら行くつもりだったんだけどな悪い」

 

ウルフは何とも言えない表情でそっぽを向いたと思うと、人が来たのか、しっぽが上がり玄関のほうに向かう。

 

「どうした?ウルフ?お客さんでも来たか?」

 

ハンクもソファーから立ち上がり、玄関に向かうと、2回ノックする音が聞こえドアを開けるとそこにいたのは、フードを被った、お淑やかな淑女だったでもハンクはその人を知っていた。

 

「お久しぶりですね....ハンク....」

 

「アリシア?どうしてここに?」

 

アリシア女王陛下だった。少し神妙な出立ちでハンクを見つめていた、彼はと言うと、驚きのあまり一周回って冷静になっていた。

 

「あー、立ち話もなんだ中でコーヒーでも....飲むか?」

 

「では...お言葉に甘えさせて貰いますね」

 

中に入ってコーヒーを淹れ、2つのカップを机に置いたハンクだったが、この場の空気は吐くほど重かった

 

「........」

 

「.......」

 

とてつもなく重い空気が二人の間を流れる、その空気たるや先程までいたウルフすらその場を気づかずに立ち去るレベルだ。取り敢えずハンクが口を開く

 

「....えーっと、15年振りくらいか?俺達もすっかり歳食ったな」

 

「....そうですね」

 

「あー今日はどうしてここに来たんだ?同窓会の招待状届けに来た訳じゃ無いよな?.....悪い忘れてくれ」

 

「ええ、招待状を渡しに来た訳ではありませんよ。貴方のお弟子さんに居場所を聞いてこっちに来ただけですから」

 

「もしかしてアーサーか?」

 

「はい、そうです。中々優秀な弟子ですね、魔術の腕も戦闘技術も貴方が手ほどきしたのでしょ?」

 

「いや、アイツに戦闘技術とか教えた事は無い、教えたのは鍛冶の技術だけだ、まぁ鍛冶屋だからな。」

 

「!?では全てあの子が元々持っていた技術なのですか?」

 

「あぁ、そうゆう事になる、アイツには何も教える事なんて無かったよ、全て完成されてる、いつも冗談を飛ばしたりするけど、冷静に状況を見定めるし隙がない、無茶しやすいのが偶に傷だけどな」

 

ハンクがそう言うとアリシアが何処か懐かしむように笑う

 

「何かおかしな事言ったか?俺?」

 

「ふふっ、いえ、昔の貴方みたいだなって思って」

 

「俺は任務の時に冗談なんか飛ばしたことなかったろ?」

 

「冗談こそ飛ばしませんでしたが、いつも無茶をして危なっかしい、自分の身を顧みず誰かを救おうと必死なる人でしたわ」

 

「そうゆう君は昔は何処か抜けてたけど、気高くて凛とした美しい女性だった、アイツには勿体ないくらいのな.....」

 

学生時代の楽しかった頃の思いを馳せる二人、先程の重々しい空気は嘘のようだ

 

「懐かしいですね、学生の頃3人でよく色々な所に行きましたよね....」

 

「俺たちは幼馴染で家族みたいなもんだったもんな.....」

 

「.....ハンク...今一度私の元に戻ってくるつもりはございませんか?」

 

アリシアに問われると、ハンクは何処か悲しげな表情となりアリシアの願いを拒否した。

 

「.....悪い....俺にはもう....君の元に戻れる覚悟は無い、それにもう俺は国に忠誠を誓う事は出来ないんだ」

 

「あの時の事を未だに....」

 

「俺はあの時....あの時の事を未だに後悔してる...どうすれば正解だったかも分からない、俺があの時の止められれば俺は...」

 

目から涙を流し自責の念にかられるハンクの背中優しくさするアリシアハンクの未だ拭えないトラウマを掘り返してしまった事に酷く後悔しているようだった。

 

 

「すみません、今日はいきなり訪ねてしまって。帰りも馬で送ってもらって」

 

「いいんだよ、あ、あれ親衛隊の連中じゃねぇか?」

 

親衛隊の近くでアリシアを降ろすと、去り際にハンクが言伝をアリシアに伝える

 

「バーナードに...いや親父に宜しく言っといてくれ」

 

「ふふっ、わかりました伝えておきます、ではお元気で」

 

「あぁ、そっちもな」

 

そう言って馬でその場を走り去るのだった。

 

続く

 

 

 



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稽古

ジェダイは光も闇も共に学びバランスを取るべきだ






あるジェダイと言葉


燦々と晴れた朝、今日もこの街フェジテは和気藹々と賑わい活気が溢れている。そんな日に珍しくアーサーは寝坊もせずに、普通の時間に学園の近くについていた、怪我はだいぶ癒えたのか、包帯は殆ど外れていた。

 

「今日はいい朝だな〜誰にも邪魔されずにゆっくり学校に行くとしよう」

 

のほほんとした腑抜けた顔でリラックスしていると、後ろからドンと衝撃が走りその方向に向くとそこにはカッシュがいた

 

「おっ!これはこれは、途中でバックれたと思ったらいきなり死にかけたアーサー君じゃあありませんか〜今日は珍しく随分早いじゃねぇか?」

 

リラックスして行くと言った瞬間にこれだ、アーサーの平穏な時間を過ごす予定は一瞬でぶち壊されるのであった。

 

「一言余計だよ...おはようカッシュ」

 

その後もアーサーを揶揄うカッシュ、すると横から何処か呆れ顔のシスティーナとルミア達がやってきた。

 

「カッシュ!朝から騒がないの!!みんなの迷惑になるでしょ!」

 

「だぁー!!うるせぇうるせぇ、なんで朝っぱらからお前の甲高い声聞かなきゃならねぇんだよ!」

 

「何ですって!!」

 

「はぁ〜ま〜た始まった」

 

アーサーが呆れた口調で喋る。毎度恒例のシスティーナとカッシュの言い争いだ、何かといちゃもんをつけるシスティーナと、それに反応するカッシュ、最初こそ止めていたが、以前どの会社のペンが一番とかいうクソしょーもない口喧嘩をして以来馬鹿馬鹿しくなって止めるのをやめた。そしてアーサーがその口喧嘩を尻目に先に進もうとしたところで、アーサーの横にひょこっとルミアがついてきた

 

「おはようアーサー!傷は大分治ったみたいだけどまだ痛む?

 

「お陰様で、にしてもずっと君に看病されっぱなしだね。頭が上がらないよ」

 

アーサーはあの競技祭以来一カ月程ずっと付きっきりで看病してくれたのだ、最初は自分で何とかするから平気だとそこまでしなくて良いと何度も言ったのだが、ルミアは一切引かずにアーサーを押し切って、利き腕の補助やら何やらをしてくれた。

 

「そんな事無いよ!私の方が頭上がらないよアーサー、あの時私を助けてくれたし、色々お世話になってるし」

 

「そこまでしなくても良いのに、まぁ取り敢えずみんなで行こうか」

 

「うん」

 

アーサーがそう言うと、先程まで言い争いしていた二人もこっちにきて4人で学院に向かう、後ろにはあいもかわらず言い争いする二人と前には仲良くやましい気持ちなどは無くただ純粋に友人として、笑い合うアーサーとルミア。

 

(こんな日々も悪くない)

 

そう心の中で思うアーサーだったが、何処からとも無く声が聞こえてきた

 

——お前にそんな事をする資格はあるのかアーサー?——————-

 

バッと後ろを振り向くと今まであった景色は街並みはまるで幻かの様に崩れる様に消え去る。周囲はまるで彼自身の記憶の断片を繋いだ様なものが展開されていた

 

「なっ!?みんな!?おい!!なんだここは?幻術?魔術の類か?それとも!?」

 

余りに急な事に冷静さを掻いてしまうアーサーだったが、次の瞬間更に血の気が引いてしまう

 

 

「あり得ない.....」

 

「久しいな....アーサー...我が弟子よ....」

 

アーサーを弟子と呼んだ男は長身痩躯で黒髪だったが、髪が伸び切り髭は顔の半分を完全に覆っていた、目は据わっていて幾つもの修羅場を潜ってきた事がビリビリと感じる程だ

 

「マス...ター?どうして?」

 

「お前は何故?普通の生活なぞ望んでいる?何の為にここにきた?使命を忘れたのか?」

 

「俺は...」

 

「聞け...アーサー」

 

「うぐぅあ!!」

 

師はアーサーにフォースを使い宙に浮かせると

 

「...近いうちにお前に闇が近づいてくるだろう、最早避ける事は出来まい、これは忠告だ我が弟子よ....闇に怒りに呑まれるな....」

 

「うっぐぅマスター....うわぁぁぉぉぁ」

 

そのまま勢いよく地面に叩きつけられ、目を開けると寝室の天井が見えた、慌てて周囲を見渡す、体からは大汗をかき動悸が止まらない様子だ

 

「ハッ!!はぁ、はぁ、はぁ、ここは?俺の部屋?」

 

まだ周囲は暗く隣からはハンクのうるさい息吹が聞こえる、どうやらまだ夜中の様だ、そして先程の事全て夢であった。

 

「やっぱり夢だったか最近こうゆう夢多いな....マスターが忠告してくれたのか...ははっ、いや待て、あれは本当にマスターの意識だったのか?それとも俺の幻覚か?取り敢えず言えるのは、近いうちに暗黒面の戦士が来る......準備をしなければ...」

 

そう独り言を呟くと、ベットから上がり、いつも身につけているネックレス(首飾り)を淡々とつけると、机の上に置いてあった額縁に目をやった、そこにはクラスで撮った集合写真があった、仲の良い女子達がピースをしていたり、アーサーを含めたクラスの男子が肩を組んでいたりと和気藹々とした写真だ、それを虚な悲しげな目でで見つめると、震える腕でパタリと写真の見えない向きで額縁を置き、一度写真の方向を見た後、何処か覚悟の決まった表情で部屋を後にした。

 

 

 

ーーーーーー

ーーー

ーーーー

 

一人深夜の道を凄いスピードで走るアーサー、必死な形相て何かを誤魔化そうとしている、1時間程走ると一度立ち止まり星々を見上げながら小言の様に呟く

 

「俺は何故普通の学生みたいな生活を夢見てんだか...夢は覚めるものだ、思い出せ俺がここに来た理由を.....ふぅー戻さないと戦闘の感覚を...今のままでは殺られる....」

 

鋭い眼光で夜空を睨むと

 

「まだまだ...足らない、もっとやらないと...」

 

そう言って走り出すのだった。

 

---------

----

夜が明け、朝日が昇る頃に185くらいの大きな体格の男がのっそりとベットから這い出てくる、ハンクだ。

 

「ふぁー、ねっみー今5時くらいか〜朝の運動でも...」

 

「ハンクさん、丁度良かった少しお話を」

 

「うぉっ!!びっくりした!!アーサー??どうしたその手!?喧嘩でもしたのか!?」

 

アーサーは手は何かを殴ったのか血だらけで擦り切れていた。何かあったのかとハンクが驚くのは至極真っ当だ、だが彼は淡々としていた。

 

「喧嘩では無いので気にしないで下さい、それよりお話を」

 

「あ、あぁいいぞ、聞かせてくれ」

 

「衣食住に学費まで支払ってもらい、鍛冶の技術までご教示して頂いているのにこれ以上お願いするのは、無礼で卑しいと叱責されてもしょうがないとわかっています、ですがどうかお願いです、私に戦闘の稽古をつけてください!!」

 

「稽古?鍛冶のか?」

 

「いえ、戦闘方です....」

 

あまりに意外な事を言われて、ハンクは思わずキョトンとしてしまう、アーサーは基本ハンクとは戦闘の稽古はしない、裏ではしっかりとやっているであろうが、ハンクが誘ってもまずキッパリ断ってくる、ハンクは一度理由を尋ねた。

 

「どうゆう風の吹き回しだ?アーサー?今の今まで誘っても一度もこなかったじゃねぇか?何で今いきなりなんだ?」

 

「本当に失礼だとはわかっています、今まで断っていたのにいきなり自分の都合でやってくださいなんて言うのは...ですがもう一度自分を鍛え直さないといけないのです....」

 

「何故だ?アーサー?今のままでもお前は十二分強い、並の相手なら容易に...」

 

ハンクがそう言うとアーサーがそれに被さる様に言葉を紡いだ

 

「そうです、並の相手なら簡単に倒せるとは思います...ですが....」

 

「ですが?」

 

「ですが...恐らく私は、このままで、腑抜けの俺のままでは、これから戦う敵には到底勝てない....だから今一度自分自身を鍛え直さないといけないと思ったまでです...」

 

「わかった、でもアーサー自分自身を鍛え直す...ここまで言ったからには加減はしない、わかったな?」

 

アーサーの想いを受け取ったハンクは稽古つける事を約束した、しかし彼の脳裏に一抹の不安がよぎる。

 

(アーサーがここまで焦る程の相手とはどのレベルの奴だ?俺も鍛え直さないといけないかもな....ともかくアーサー...無理だけはするなよ、死んじまったら元も子もないからな)

 

こうして、ハンクとアーサーの地獄の稽古が始まる。

 

2週間後

————

—————

フェジテ郊外の森林地帯ここは大きな川が通る場所な為、自然豊かで鹿や猪の他に数多くの動物が生息している地帯でもある、そして立地も良い場所や、迷ってしまうほど森が深い場所があったり、危険な崖や足場の悪い場所もあるため、訓練にはもってこいの場所だ。そして今日も今日とて二人組が爆炎を上げたり、風を吹き上げたり、一面雪景色にしたり、落雷を落としたりと忙しい様子だ、片方は肩から息をして膝をついているが、もう片方は息すら上がっていない。

 

「ゼーッハァーッッ、、ハァ、ハァ、ハァ」

 

「どうした?アーサー?その程度か?随分と期待はずれだな?まだ俺から一本も取れてないぞ?取れたら終わりだぞ?出来ないのか?」

 

「クッ...まだまだ!!」

 

この稽古のルールは簡単、銃を含めた全て道具有りの実戦形式でアーサーが一度でもハンクから一本取れれば勝ちその日は終わり、取れなければエンドレスと言うルールだ。

これをかれこれ二週間やっているが、全くと言っていいほどハンクから一本を取れない、アーサーはぶっちゃけそこら辺の魔術師には絶対に負けない、仮に左手のハンデがあったとしても負けない。ここアルザーノに来てからも少数精鋭とばかり戦っている、それでもアーサーは勝ってきたしかし、ハンクには剣を取っても射撃においても魔術においても、何をやっても勝てない。

 

「ぐぅぅぅぅ!!」

(正直分かってはいたが...やはりこの人強い....今まで戦ってきた中でもトップクラスだ.,..流石は裏では名が知れている男って訳か!)

 

アーサーは地面に叩きつけられ、意識が朦朧としながら、心の中で呟いていた。

 

「こんなもんか?また気絶して朝起きてやるか?かれこれ二週間無断欠席中だぞ〜?」

(ちゃんと担任には伝えてるけど〜)

 

 

「まだ!!」

———-

————

それから役2時間ぶっ通しでハンクに挑むが、何度も何度も何度も何度もあしらわれ、最早アーサーの体はボロボロ、見かねたハンクは一度剣を鞘に入れると

 

「はぁー、、もうやめようアーサー」

 

「まだです...,」

 

「まだやんのか?明らかに力の差は歴然...これ以上やっても体を壊すだけだ、明日からはメニューを変える、お前も一度仲間達に顔出して..」

 

ハンクがそう提案すると、アーサーがそれを激昂と共に拒絶した

 

「舐めんな!!!!!!!!俺はそんな甘ったれた思いでアンタに稽古を頼んだ訳じゃねぇ!!!!アンタから一本も取れずに帰れだって??俺はそんな腰抜けじゃねぇ!!!抜けよ!!もう一度剣を!!!」

 

「わかった....」

 

アーサーは最早極限状態、目は血走り今にも喉笛を噛みちぎらんばかりの形相で睨みつけてくる、ハンクは一撃で終わらせようと剣を上段に構える。対するアーサーはその形相とは裏腹に呼吸は何故か平常でリラックスしている様な呼吸だった。

 

「???どうゆう事だ?先程まで荒れきっていた呼吸が整っている??ヤバい....何かヤバい」

 

ハンクは構えを本能的に、軍時代の下段に構える型に変えた。対するアーサーは左手に持っていた刃を右手に持ち替え先程の弓を引き絞るような型とはうって変わり、顔の上を少し覆う様にし、刃を少し斜めにする上段の構えを取った。そして...一閃

 

「あ.....」

 

ハンクは一瞬反応に遅れた、それ程にとてつもない程素早くアーサーが踏み込んで来た、そして上段から大地すら切り裂くのでは無いかと錯覚する程の剣撃が振り下ろされた。

 

(こいつは防御出来ない!避けないとただでは済まない!)

 

体から危険信号が流れますハンクは、急いで横に飛ぶが凄まじい風圧がハンクを襲う。

 

「ハハッ、とてつもない威力したら〜」

 

ハンクは震えた声で呟く、アーサーの縦方向の斬撃は本当に大地を引き裂き、一直線に数十メトラ程森を破壊した、アーサーはのっそりと剣を持ち上げハンクに向ける。

 

「本気で来い....ハンク、全ての手段を用いて俺を倒してみろ」

 

ハンクは少しニヤリと笑うと腕を前に出す

 

「《来い》」

 

ハンクは持っていた剣と腰に吊ってある鞘を投げ捨てると。魔術を用いて召喚した、辺りには粒子の様な物が散るとそこに現れたのは、極東の地で広く普及している剣、名は刀、そしてハンクの持っている刀は刀身は深い黒で、黒い雨の様な模様の鞘に収まっていた、見るからに業物の様だ。

 

「コイツの名は黒雨。軍時代から世話になってる....友人から貰った大事な太刀でな、今からコイツで相手してやる....かかって来い」

 

ハンクはニヤリと笑いながら刀身を完全に出してにアーサーに向ける、対するアーサーは何かが吹っ切れたのか逆に冷静さを取り戻していた。

 

(ハンクの装備は右腰に拳銃を吊り、左には刀の鞘が吊ってある、後ろには投げナイフ右太腿にはサバイバルナイフ、左腕の中には特殊なマーキングの付いた暗具、右手には刀。対する俺は、剣が重いのもあって片手で振ると不利だから両手が塞がる、右腰には拳銃、ホルスターには六発、予備の弾薬も少ない。その下にサバイバルナイフ、腰の後ろにはハンクと同様に投げナイフ、装備自体は変わらない。だが俺にはフォースがある、でもハンクには魔術やブラットアーツの他にもアレがある。気をつけて行かないと)

 

「さぁどう来る?アーサー?」

 

「ツェァァァ!!」

 

アーサーがハンクに飛び掛かり、鞭のように関節を使った素早く剛打の斬撃を繰り出す、がハンクはそれを図体に似合わない程軽やかな足運びで避けるそして反撃に転じる

 

「行くぞ...アーサー...コイツを受けてみな《剣技..五月雨》」

 

ハンクは剣技を繰り出した、無数の雨すら全て切り裂くのでは無いかと錯覚する程の素早い乱撃が下段から這うように放たれる、アーサーは慌てて、フォームを防御向きのソレスに切り替えて迎撃するが、その余りに細かくテクニカルな斬撃に耐えきれず防御を崩される。

 

「チィ!!」

 

アーサーは斬撃を受けまいと体が後ろに倒れ込みながら投げナイフをハンクに向けて投げ受け身取り立ち上がるがそこにはハンクは居なかった。

 

(クソ!!またか!!何処からくる!!感覚を研ぎ澄ませ!俺!!フォースを感じ取れ!!)

 

アーサーは拳銃を手に取り一度目をつむり、感覚を研ぎ澄ます研ぎ澄ます研ぎ澄ます。そして脳裏に電流が鳴る様な感覚に従い、アーサーの右斜め上に銃を向ける

 

「ここだぁぁ!!」

 

「まずい!」

 

ハンクはアーサーの発砲と共に空中での防御は無理と判断し、瞬時にその場から消えた。

 

「チッ、一本取れたと思ったんだけどな」

 

「やるな、これを見破られるとはな」

 

ハンクが息を切らしながら苦笑気味に言う

 

「アンタのその半径20メトラ以内を瞬間移動する魔術、厄介だけど、随分と消費が激しいな?そして20メトラ以上は飛べない、だろ?」

 

「半分正解だ、俺のオリジナルをここまで分析するとは驚きだでも少し違う、俺のオリジナル、テレポートの移動範囲は無限だ....理論上だがな」

 

「なに!?」

 

その瞬間ハンクは50メトラ離れた木に瞬間移動した、そして数十秒後にアーサーの後方60メトラに瞬間移動した。アーサーは何処か納得した表情でポツリと呟く

 

「成る程な....」

 

ハンクは以前余裕綽々と言ったところか

 

「さぁ?どうくる?アーサー?」

 

「こう行く!!」

 

アーサーは剣をフォースを使った身体強化で人外並みのスピードでハンクに投げつけ拳銃をホルスターから取り出し四発高速で発砲する、ハンクは投げつけられた剣を頭容易く捌くと、四発の銃弾を全て切り裂いてみせた。

 

「おいおい?そんなもんか?」

 

「本命はこっちだ」

 

アーサーはハンクに近づきながら強力な《フォースプル》を使って高速で剣を引き寄せる、ハンクに剣が突き刺さると思った所で

 

「オイオイ、アーサーそりゃないぜ、わざわざ俺の間合いに入ってくるなんてよ」

 

彼は一瞬で姿を消したと思うと、アーサーの背後に瞬間移動していた!

 

「こいつで終わりだ」

 

ハンクが日本刀を振り上げると

 

「その油断が命取りだぜ?」

 

アーサーは体を半身にして逸らすと、前方から高速でアーサーが引き寄せた剣が飛んできた、ハンクはその場から飛ばずに刀で剣を弾くように無理矢理逸らすが、足元を掠った。

 

「15秒....だろ?」

 

15秒と言う数字はハンクが二度目のテレポートを使うまでの所要時間だった。

 

「アンタのテレポート、一度目はなんのモーション無しで瞬時に飛べる、二度目は15秒待たないと使えない、そして2回使った後は直ぐに飛べても30秒だろ?そしてさっきアンタが俺に見せつけるように、50メトラ先の木に飛んだろ?そこは25回目の戦闘が終わった時にアンタが休む時に腰掛けていた木だった、そしてそこの岩には42回目の戦闘の後にアンタが座っていた。そしてさっき使い魔を戦闘中に出して見たんだけどよ、、妙な紋章が木と岩に付いてたのよ、んで同じ紋章をここら辺一体で探してみたのよ、そしたら至る所にあったわけ、それでさ、これ唯の考察なんだけど、アンタのテレポートって20メトラ以内は何もせずとも何処にでも飛べて、それ以降は何かマーキングしないと飛べない技なんじゃ無いか?」

 

 

「ハハハッ!!完全に見破りやがった!!ヒントをちょろっと教えたらすーぐ見破る、本当に嫌な観察眼持ってるわ〜。この技お前と初めて会った時に一度だけ使って以降は、使わなかったし、お前との戦闘の時も意識を刈り取る時以外使わなかったのによ〜」

 

ハンクは腹の底から心の底から笑う、対してアーサーは表情を変えずに淡々としていた。

 

 

「んで?どうすんの?種がわかったところでお前に勝つ算段はあるの?」

 

「あぁ、あるよ」

 

アーサーは言うと同時に音速で踏み込む、そのスピードは最早弾丸のようだった。

 

「更に速くなってッッ!!」

 

ハンクはそのスピードになんとか対応して防御の体制を取るが、アーサーの重すぎる斬撃に刀を持ってかれる、堪らずハンクは一度目のテレポートを使用する。40メトラ先の木の上に瞬間移動するが、その移動先を見計らっていたかのように剣が飛んでくる。

 

「チィ!!!」

 

ハンクは剣を弾き飛ばすが何故か一人でに剣がもう一度、宙に浮かぶと彼に襲いかかる。

 

「なに!?遠隔操作だと!?」

 

ハンクは驚きながらも的確に斬撃を受け流すと一度開けた場所に降り、剣を力ずくで掴むと術者に投げ返す、アーサーは右手をかざすと剣はその勢いを無くしてゆっくりと彼の手の中に収まる。

 

「お前のそのヘンテコパワー厄介だな、ホントにおじさん嫌になっちゃうぜ」

 

「俺からしたら貴方の方が厄介だ、筋肉脳筋ゴリラなパワー系な癖して、戦い方は匠で繊細、銃も剣も魔術も体術も非の打ち所がなくて、まるで隙がない」

 

「嬉しい事言ってくれるじゃない」

 

2人が時間稼ぎを始めた、二人ともわかっていた次で決まることを。お互いに消耗し過ぎた、アーサーは見ての通りボロボロ、脳内麻薬ドバドバとは言え、あまりに長時間戦い過ぎた。ハンクは余裕そうに見えて、年のせいで体力の消耗が激しく、今にも膝をついてしまいそうだ、それでも互いに相手から目を逸らすことは無い。

 

今ある力を振り絞り、先に仕掛けたのはハンクだった、スモークを前に投げると、素早くホルスターから銃を抜き、それを撃ち抜くと、辺りに煙が立ち込める。アーサーは慌てず、フォースを使って感覚を研ぎ澄ます。

 

「はぁぁ....視覚に頼るな、フォースに従え....」

 

研ぎ澄ます研ぎ澄ます研ぎ澄ます、全ての音、気配などの情報がアーサーに濁流の如く流れこむ、そしてその中からハンクの音と気配を手繰り寄せた!

 

「ここだ!《雷精よ・我が手に集え》!!」

 

黒魔 ショックウェーブを地面に放つと、アーサーの手から直線状に地面に這うように紫電の波が押し寄せて来る、ハンクは雷撃を避けたが、その位置にあったのは炎系の魔術ルーンだった

 

「何も仕込めるのはアンタだけじゃ無いんだぜ?」

 

アーサーがニヤリと笑う、先程ハンクと話していた時に使い魔を介して設置しておいたのだ、勿論だカモフラージュをして

 

「これはやっべぇ」

 

ハンクは堪らずそこから瞬間移動した、だがアーサーには見えていた、ハンクが瞬間移動する時に一瞬だけ、静電気のように一瞬だけ魔術で繋がった線のような物が見えるのだ、だがそれは常人には見ることは出来ないだろう、だが今の感覚を極限まで研ぎ澄ましたアーサーなら見えるのだ。アーサーはハンクが瞬間移動し、無防備になる一瞬を見逃さずにフォースを使って、ガッチリ掴むとそのまま引き寄せた。

 

「あーやばこれ」

 

ハンクは最早抵抗出来ない、何かの凄く大きな手で掴まれているような感覚だったそしてその衝撃で刀を落としてしまった、ハンクは引き寄せられながらも、なんとか右腿にあったナイフに手が届くと、ありったけの身体強化を施し、アーサーの目の前にいくと、歯に仕組んでいた毒針を吹く。

 

「チッ....」

 

アーサーは舌打ちしながらそれを止めるとハンクがナイフで突き刺そうとしてくるが、アーサーはナイフの刃を左手で無理矢理押さえ込むと、右手で胸元に触れる。

 

「オイオイ万事休すってか?アーサー、このままナイフを引けばお前の指は落ちるぞ、そんでここで仕留められなかったのがお前の敗因だ、でも見せて貰ったぜお前の意地、お前はやっぱり戦士だな」

 

「まだ....負けて無い」

 

「いいや、負けだよ」

 

ハンクはつぶやくと同時に瞬間移動し背後につくと、アーサーの首筋にナイフを突きつけようとした次の瞬間、信じられない事が起こった、何故ならハンクがアーサーに後ろを取られナイフを首筋に向けていたからだ。驚愕しているハンクを他所にアーサーは淡々と呟く

 

「もうアンタは30秒間、瞬間移動は使えない、完全に後ろを取ってアンタの頸動脈にナイフを向けてる、何をしてもアンタの負けだ、俺が勝った」

 

「は?アーサーお前何をした??どうしてお前が後ろにこれる?」

 

ハンクは驚きのあまり酷く動揺しながらアーサーに尋ねると淡々と答えた

 

「俺はアンタが瞬間移動する一瞬だけ、アンタの心臓近くで何かが光っていた、まるで神経が電流を流して体を動かすみたいにさ、ここいらの至る所にあったマーキングポイントと繋がっていた、さっきはその一瞬流れる魔力を目で追って予想した、そんで俺はそれが魔道具だと確信した、アンタはこの瞬間移動を魔道具を介して行っているとな、そんで俺のオリジナルを使ってそいつを読み取った、んで使用した、終わり」

 

「ちょっと待ったぁぁぁ!!なんだそれ!?オリジナル?お前の?あのヘンテコパワーがお前のオリジナルじゃ無いのか?」

 

ハンクが叫ぶとアーサーが耳を塞ぎながら答える

 

「あれは違う、オリジナルじゃ無い。素質さえ有れば誰でも出来る芸当だ、知らなくても無理ないか、こっち来てからはあんまり使って無かったな、俺の魔術パーソナリティは《複製と模造》俺は何者にもなれないけど、何者かを真似る事は出来る、何かを生み出さなくても、何かを真似る事は出来るそれが俺のオリジナル「写し鏡」だよ」

 

「すげぇなそれ、何にでも真似し放題って事か!?」

 

「俺の魔術要領で足りる物なら何にでも、1日3回までが限界それ以上は使えない、それに発動するには術者に20秒以上微動だにせず掴まり続けないといけない」

 

「それを差し引きしても十二分すげぇじゃねぇか!!」

 

手放しで褒めるハンクだったが、アーサーは只々無言だった、何故ならこれが酷くコンプレックスだったからだ、これがある以上、自ら何か偉大な事は成せない、質の良い贋作は作れても、質が悪いオリジナルは作れない、これがアーサーの魔術的特性だ天才には成ることが出来なかったアーサーらしいといえばそうだ。

 

(何かを真似る事は出来ても、それは結局唯の真似事で、新たな物を作り出す天才には叶わない、世の中そんなもんなのだ)

 

アーサーは心の中で思いながら意識を失うのだった。

 

続く

 

 

 

 




だいぶ遅れました、すいません。


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青い髪の少女

アンタが憎い!!!!!






あるジェダイの言葉


——-アーサーとの修行をする数日前———-

 

フェジテ郊外の丘にポツンとある大きな屋敷、セリカとグレンが共に親子のように時に喧嘩をしたり笑い合ったりと仲睦まじく暮らしている、グレンにもセリカにとっても帰る家だ。そんな家に今日変わった来訪者が来た、身長185程ありながら筋肉質の気骨で青碧色の髪をした、年齢が30代中盤であろう漢が馬に跨って来ていた。ハンクだった、しかしいつものおちゃらけ具合は消えていた。

 

「あぁ、緊張する」

 

ハンクは柄にもなく緊張していた。それもそうだ、いくらハンクが肝が据わっている漢とはいえ、流石に相手有名なセリカ=アルフォネアともなれば肝を冷やすと言う物だ。ハンクは一度馬を降りて菓子折を携えて、ドアをノックする3回ほどノックすると、不機嫌そうな顔をしながらのっそりと、本命の方が来た

 

「なんすか?宗教勧誘とかなら断ってるんすけど?なんか用すか?」

 

不機嫌そうな顔で訪ねてくるのは、アーサーの担任で学院の魔術講師をしているグレン=レーダスだった

 

「あぁ〜良かった〜バカな方で」

 

ハンクは若干ディスりながら安堵の息を漏らす、グレンはいきなり侮辱されたことにやや青筋をたてる

 

「開幕早々悪口とは失礼だな?こちとら、今お眠の時間だった訳よこの責任どう取ってくれるんだよ?」

 

※時刻は午後7時です

 

「今7時だぞ?どんな生活習慣してんだ?」

 

ハンクが不思議な顔して告げると、グレンがめんどくさそうな顔をすると

 

「取り敢えず野暮用なら...」

 

グレンがハンクを門前払いしようとしたその時、屋敷の奥から、コツンコツンと言う音ともに、黄金色の髪を靡かさせた、全ての者を呑み込むような真紅の双眸を光らせた美女が現れた。その美女がハンクを見るならニンマリと笑いながら歩み寄る

 

「オオッ、ハンクじゃないか!久しぶりだな!!元気にしていたか?」

 

「セ、セリカさんお久しぶりです、十年振りでしょうか?」

 

「もっと合ってなかった気がするけどな、あんなクソガキが今や立派なオッサンになっちまったな〜今は何をしてんだ?」

 

ハンクはオッサンと言われ若干のショックを受けながら答えた

 

「フェジテ端の方で細々と鍛冶屋をやってます、剣から包丁とか食器までなんでも作りますよ」

 

「いいな!お前の事だ随分と出来がいいんだろ?昔からやることなす事大体完璧なお前だもんな〜今度見に行ってもいいか?丁度包丁が錆び付いててな〜」

 

「昔からお世話になってますので、お手頃価格でご提供致しますよ」

 

「助かるわ〜」

 

こんな感じの会話をグレンを置き去りにしながら少しした後、セリカがいつのまにか出てきた紅茶を飲みながら、斬り込む。

 

「んで?今日は何の用だ?訪問販売やら思い出話に花咲かす為に来た訳じゃないだろ?」

 

「えぇ、少し許可を頂きたくてですね」

 

「私にか?」

 

セリカが答えるとハンクは首を横に振る

 

「いえ、グレン君にです」

 

「え?俺にすか?何の事でですか?」

 

「其方のクラスにアーサー=モーガンって言うクソ問題児がいるでしょう?」

 

「あ、ハイいます」

 

「私、訳あって今そいつの保護者みたいなもんなんですよ。」

 

「えっ???あ、ハイ」

 

グレンは一度困惑の表情を浮かべたが直ぐに話に集中した。

 

「それでですね、暫くフェジテを出て仕事をしなきゃいけないのですが、アーサーを連れて行きたいのです、暫く学院にも来られないと思うのですが、そこまでの授業欠席や出席日数等の数字を別の課題などでカバーさせて頂けないでしょうか?」

 

「ふむ...その仕事に連れて行くと言うのは、別の長期休みなどの期間に変更するとかは出来ない感じですか?」

 

グレンは現実的な提案をするが、ハンクは首を縦には振らなかった

 

「今回のクライアントは太客中の太客、今までで一番大きな仕事になるんですよ、アーサーは魔術師の卵である前に鍛冶屋の見習いな訳で、こんな経験滅多に出来ないし、経験を積ませたいので何卒ご理解していただけないでしょうか?」※ここら辺の文言全て大嘘です

 

ハンクがグレンに頭を下げると、グレンが慌てて

 

「頭を上げてください!そこまでしなくていいので!わかりました、取り敢えず追加課題等は出しておくので!気にしないでください」

 

そうして追加課題である程度の欠席はカバーすると約束し、ハンクが屋敷を出て馬に跨ると、ずっと口を閉じていたセリカがハンクに質問した

 

「なぁ?ハンク、アーサーは良い弟子か?」

 

「えぇ、最高のね」

 

ハンクは即答すると共に足速にその場を去っていった。

 

——-////—//

 

「なぁセリカ、ハンクって人と知り合いだったらみてぇだけど、誰なんだ?」

 

「知らないのか?いや知らなくても無理ないか15年以上昔の話しだからな、」

 

セリカが昔話をする様に語り出す

 

「アイツの二つ名は《帝国の黒い悪魔》死神とも言われてた、他国を震え上がらせた伝説の魔術師、元帝国軍宮廷魔導士特務分室所属、執行官No.0愚者、ハンク=ジェスターその人だぜ?」

 

グレンは背中にどっと汗が滲む、まさかさっきまでいた人間が自分の前任で愚者のNo.をつけていた人間だと思っていなかったようだ、そしてセリカが矢継ぎに驚愕の事実を告げる。

 

「因みに、お前がジジイジジイ言ってるバーナードの実の息子だ」

 

「はぁぁぁぁぁ!?ジジイの?????嘘つけ!!!んな...でも確かに面影があるような...でも俺より全然年上だし、しかも俺の前任者??あぁ!!もう頭の中がごっちゃだ!!」

 

グレンは最早開いた方が塞がらない状態だったが、一度息を吐くと

 

「まぁでも、何でアーサーがあんなに学生離れしてるかは納得した」

 

「ハンクの奴が仕込んでいたって訳だな」

 

「だなぁ」

 

二人は心底納得しながら屋敷の奥に消えていった。実際にはハンクが何かを教えた事は無いのだが....気にしないでおこう。

 

 

————-そのさらに二週間後—————

 

「イチチッ、体中から悲鳴が上がってるな」

 

アーサーは自分の腕を摩りながらポツリと呟く。件の鬼畜修行から生還を果たし、ひと回り成長?したというか戻った?アーサーは一度皆の所に顔を出しに行くために二週間ぶりに学院に登校する、事情は説明済みな為平気なはずだが....

 

「出席日数足らずに進級出来ないって事があったら、最悪だな。流石に話はつけてある筈だじゃないと、野郎の首をへし折ってやる」

 

いつにもまして不機嫌そうな顔をしながら物騒な事を呟くアーサー。そんなこんなで片道1時間以上掛かる通学路を歩く、因みにグリント(アーサーの愛馬)は連れてない。

彼は時間ギリギリじゃない限り愛馬の力は借りない謎のポリシーを持ってる、まぁ遅刻回数が他より群を抜いて多いため一週間に3回くらいはグリントの手綱を必死顔をして握りながら、とんでもないスピードで駆けるアーサーが目撃されるのだが。最早そこらでは有名で地元名物だった、それをカップルで見たら結ばれるジンクスとかが本人の知らぬ所で勝手に作られたりしていた。

 

暫く歩く、アルザーノの制服を着た生徒が多くなってきた。どうやら普通の生徒も利用する大通りにようやくやってきたようだ。街の装飾などは豪華な装飾で煌びやかとは言えないが、ここにいる人は皆一様に活気溢れ栄えている、外観は整い綺麗な街並みだ、ここの通りは所謂普通の庶民が多く利用する所であり、ここを利用すれば大概の物は揃うのと値段も安価な為、学院の生徒もよく利用する、アーサーもその一人だ。

 

「やっと帰ってきたって感じがするな、まぁ二週間しか離れてないけど」

 

アーサーが感慨していると、後ろから聞き慣れた声が呼びかけてきた

 

「おーい!アーサー!!久しぶりだな!」

 

「カッシュか、元気だったか?」

 

アーサーがなんだお前かと言わんばかりに素っ気なく返した

 

「んだよ〜久しぶりに会った友人に対してそれだけかよ〜なんか仕事で出張だったんだって?大変だったな?つうかまたお前怪我増えてない?」

 

「あぁ、山の中で落馬してそのまま、山肌を転げ落ちてな。危うく死にかけたわ(嘘)」

 

アーサーはハンクとの地獄みたいな修行で全身重度の打撲、リミッターを解除した際自分の力に体が絶えら無くて利き腕をまた骨折し腕が危うく人体断裂しかけたなんてとてもじゃないが言えなかった

 

「はぁ!?お前、それ!大丈夫なのかよ!」

 

「ハッ!大丈夫!!.......な訳ねぇだろバカじゃねえの?」

 

「ですよね〜聞いた俺がバカだったわ」

 

「後でセシリア先生に診てもらう予定、それと俺がいなかった二週間の間なんか面白い事あったか?」

 

「あぁ結構あるぜ!」

 

————-

——-

「そんでよ〜そこでテレサがグレン先生にバッチっっン!!って思いっきりビンタして先生鼻血出しながら数メトラ飛んでいってさ!!」

 

「ハッハッハッ!!そりゃ傑作だ!!男としての尊厳と信頼を同時に失ってんじゃねぇか」

 

二週間の間にあったくだらない出来事やらなんやらをアーサーに話していると、アーサーがその中の一つに食いついた

 

「なぁカッシュ、その転校生が来るって話詳しく教えてくれよ」

 

「詳しくは俺もわからない、グレン先生が昨日言っただけで俺も誰が来るかは知らない、唯....」

 

「唯?」

 

「絶世の美女かめっちゃ可愛子がいいなって!!そしたらちょっとナンパとかしてデートとかしたいなって!!」

 

カッシュが目を輝かせながら言うと、アーサーが笑いながらえげつない事を述べる

 

「ハッハッハッ、くだらねぇいちいち期待すんな。それに断言してやる女の一人も未だ捕まえら無いお前じゃ無理だ諦めろ、そうゆう事はもう少し男としての拍がついてからにしろ」

 

くだらないで一蹴するなら兎も角、アーサーは淡々とえげつない事をふざけ無しの混じり気無しの純度100%の真顔で言う物だから、唯さえ図星で心を抉られているのに更に抉られてカッシュの心には巨大なクレーターが出来ていた

 

「そこまで言わなくても,...いいじゃん?」

 

「なんだ?柄にも無く傷ついてんのか?」

 

アーサーが小馬鹿にする様に煽るとカッシュが目を見開いて告げる

 

「俺だって人の子なんです!!つうかお前もどうせ人の事言えないだろ!!後目つき悪くなったな!って思ったけどそれ以上に性格がキツくなってんぞ!!」

 

「人の事言えないって、女の一人も捕まえれないって奴か?残念だが俺は童貞...」

 

アーサーが完璧にカッシュの心を折る言葉を言う前に、またも聞き慣れた声が聞こえてきた

 

「アーサ〜、おはよう。二週間ぶりだね!あれ?なんかまた怪我増えてない?、って?あれ?カッシュ君どうしたの?なんで泣き目なの?」

 

「違うんだルミア、これは、これは感謝の目だ、、、ありがとう。俺の心を守ってくれて」

 

「え?あ、うん、よく分からないけどどういたしまして?」

 

「おはようルミア、今日はシスティーナと一緒じゃないんだな」

 

アーサーが尋ねると、ルミアは首を横に振る

 

「システィは後ろの方にいるよ、私はアーサーが見えたから声掛けにきただけだよ」

 

「そうか」

 

アーサーは後ろを見るとシスティーナとその横にはグレンまでいた、何故かげっそりした顔をしているが。恐らく護衛も兼ねて登校の時にいつも一緒に行くようになったのだろう

 

「良かったなルミア、大好きなグレン先生と一緒に学院に行けて」

 

アーサーがルミアを揶揄うと、彼女は顔を炎よりも真っ赤にしながら身振り手ぶりを加えて否定し言い訳を並べ始めた

 

「か、揶揄わないでよアーサー!ち、違うからね!グレン先生をそんな目で見てないし!私はなんというか!その見守ってるって言うか!邪な感情は無いというか何というか!!」

 

「必死に否定したら余計怪しく見えるぞ、やめとけルミア」

 

「ち、違うって!もう!」

 

ルミアが必死に言い分を伝えていると、横からシスティーナたちが入ってきた

 

「おはようアーサー、あんまりルミアを揶揄わないで」

 

「揶揄ってる訳じゃ...まぁいいか、取り敢えずおはようシスティーナ」

 

「それより貴方また怪我増えてない?」

 

「あぁこれか、少し落馬して山から転げ落ちただけだ、気にすんな」

 

「気にするわよ!?貴方それ大丈夫なの!?」

 

「そ、そうだよ!!一回病院に行った方がいいよ!」

 

まさかそこまでの大事だとは思ってなかったのルミアまで一緒になって騒ぎ始めた、アーサーは話を少し盛りすぎたと後悔しながら

 

「大丈夫、ありがとう心配してくれて。でも平気、本当にやばかったら今ここにいないし、後でセシリア先生に診てもらう予定だから」

 

「そ、そっか、なら良かったわ」

 

「うん、そうだねシスティ、取り敢えずアーサーはこれ以上怪我するの禁止!危ない事しないで!」

 

「そうね、それがいいわ」

 

「勝手に決めないでくれ...」

(正直落馬して山肌転げ落ちた方がまだマシだったけどな、あんの筋肉ダルマにしごかれるよりはだけどな)

 

心の中で虚な目をして呟くアーサー、実際修行の終わった後も、よし!アーサー!ここからが本番だ!って言ってあの後10時間ぶっ通しでやって高熱出して死にかけた、明らかにオーバーワークだったと自分でも思う。そんなこんなしていると、後ろから死人のような足取りでげっそりとした顔をしたグレンがアーサーの横に着く

 

「よぉ....アーサー。朝からイチャイチャするとは若いな...」

 

「別にいちゃついてなんか無いですけど、それよりなんでそんなげっそりとした顔してるんですか?なんかあったんですか?」

 

「いや、お前には関係....あるけど」

 

「あるんかい」

 

「まぁ何というか....ははっ...気にしないでくれ」

 

「余計気になるわ....」

 

なんとも異色な組み合わせだ、アーサー含め馬鹿で庶民的な男3人とルミアとシスティーナという名門と王家の可憐で美しい少女二人。アーサーがそんな事を思っていると

 

—-ゾクッッッ

 

「!?」

 

ゾクリとした毛が逆立つ様な感覚がアーサーを襲う、何か来ると警鐘を鳴らす。アーサーは一度立ち止まり感覚を研ぎ澄ましながら辺りを見渡す

 

「どうしたんだ?アーサー?」

 

勘の鋭いグレンは気づいていない。アーサーは自分でも分かるほどに心臓が強く激しく鼓動している。

 

「アーサー大丈夫?顔色悪いよ?もしかして傷が痛む!?病院行く?」

 

—ドクン

 

「おい?平気か?アーサー?やっぱお前無理してきてたんじゃねぇか??少しベンチで休むか?時間あるし?」

 

—-ドクン—ドクン

 

「そうね、それがいいわ」

 

—-ドクンドクンドクンドクンドクン—-

 

「アーサー?」

 

「後ろだ!!!グレン!」

 

アーサーが叫ぶと共に横にいたルミアとシスティーナをカッシュの方に投げ飛ばし、横のグレンを蹴り飛ばし、跳躍と共に飛んできた何かが振りかざしてきた怪しく光る大剣を白刃取りで受け止めた。グレンは蹴り飛ばされて無理な体制で受け身を取れず電柱の角にぶつかってダウンした、後の3人は突然の戦闘に頭が真っ白になっていた

 

「誰?....グレンを蹴り飛ばした....敵?」

 

大剣を振りかざしてきた奴は、青い髪をした少女だったしかも華奢で身長も小さい、なんなら大剣の方が大きいまである、そんな子が眠たげな顔をしながら思いっきり力を入れて殺しにかかってくる

 

「それはこっちのセリフだよお嬢ちゃん、学院の制服着てるし、もしかして君がその転入生ってやつか?」

 

「よくわからないけど、取り敢えず貴方が敵だってわかった」

 

「何も...わかって,...無いじゃないか....ははっ取り敢えず自己紹介でもするか?それとも最初は趣味から?」

 

こんな状況にも関わらず相変わらず軽口を叩く、アーサーなんとも肝が据わってる。するとこの青髪の子ど天然なのか作戦なのかそれに乗ってきた

 

「私の名前はリィエル=レイフォード、趣味は特に無い....これでいい?」

 

「ハハハッ、リィエルかいい名前だな!このノリに乗ってくれたの君が初めてだよ、...リィエルなんだが嬉しいな、でも強いて言うならこの大剣退けて欲しいな?なんてっ!」

 

アーサーは苦笑いを浮かべながら二の腕がはち切れそうな程力を込めて必死に大剣を押さえ込む

 

「それは出来ない、貴方は敵だから....ここで斬る」

 

「ちょっとまだ...自分の断面を...見る訳にはいかないんだ、つうかお前ら見てないで逃げろ!!それか警邏官か魔術師を呼べ!」

 

アーサーの必死な叫びにやっとルミア達は我に帰ったのか、立ち上がってリィエルを止めるために、警邏官を呼びに行こうとすると

 

「貴方達...誰かを呼んで私の邪魔をするの?貴方達も敵?」

 

アーサーは嫌な予感がした、カッシュ達に敵意が向いてしまった。この手のタイプの殺戮マシーンには加減というものもを知らない、そうなってしまえば

 

「斬る」

 

リィエルは一瞬でターゲットをカッシュ達に付けた。そして横薙ぎの斬撃がカッシュ達に襲いかかる、アーサーは思わず声を荒げて

 

「やめろ!!!」

 

—ドゴン

 

「!?」

 

高威力のフォースプッシュをリィエルに向けて放つ!リィエルはモロにくらい勢い良く宙に浮き、そのまま近くの店の壁を音を立てながら破壊した。

 

「あぁクソ....やっちまった。平気か?お前ら?」

 

人前でフォースを使った事を悔いながらも取り敢えず仲間の安否確認を優先する

 

「う、うん。ありがとうアーサー」

 

「いたた、なんだったのあの子」

 

「本当だぜ...マジで死ぬかと思ったわ」

 

「これで平気な筈だ。取り敢えずグレン先生を運んでくれ、あの子もアレ、モロに食らったんだ、流石に気絶して....あぁクソ」

 

アーサーは破壊された壁の方を見ると、まるで死神の様に大剣を引き摺りながら、暗い双眸でこちらを見ながらゆっくりとしかし確実に歩きながら向かってくる、最早あちらはこっちを確実に殺すつもりだ、アーサーも最早そうなってくると手加減などと言ってられない、ゆっくりと腰から拳銃を取り出す、両者向かい合う

 

「頼む、これ以上大事にするのは良くない....な?」

 

「関係ない..,貴方はグレンを傷つけた、それに貴方の目、何か危険な目をしてる、ここで斬らないと厄介になる気がする...」

 

「頼むよグレン先生を蹴り飛ばした事については謝る、そんでこの目は生まれつきなんだ目つきが悪いんだ...頼むよリィエル...」

 

両者の間に緊張が走る、警邏官が来るのはまだ掛かる、かといってカッシュ達を守りながら殺さずに戦うのは無理、説得も無理、アーサーは撃鉄を上げ、最後の説得をする

 

「君の事は知ってる、どんな人間かも、どんな役割かも...ここで問題を起こしたら、誰に責任が行くと思う?」

 

「責任?責任は....上の人間?」

 

「そうだな、上の人間にも勿論あるだろう、でも間違えなく監督不行き届きで君の大好きなグレンにも降りかかる...わかるか?この人はやっと色々立ち直ってきたのを君が全て台無しにするんだ...分かるか?」

 

「それは...いや...もうグレンが悲しむのは...見たくない」

 

そう言ってリィエルは大剣を下ろした、最早戦う気は無いらしい、アーサーは安堵のため息を吐きながら銃をしまった。そしてこのタイミングでグレンが目を覚ました

 

「いってぇ...ってなんだ!!この状況!!店の壁が!!オイ....これリィエルお前の仕業だな?」

 

「え?私じゃない..それはそこの金髪の男の人が」

 

「問答無用!!」

 

「あぁ、、なんとか生きてる俺ら」

 

「あははっ、そうだね、グレン先生が絡むとシリアスな空気も吹き飛んじゃうね」

 

「そうね...」

 

グレンのお説教と共に頭ぐりぐりで始まった、ルミアとカッシュは生きていることに安堵し、システィーナは安堵と共に自分の無力さを呪った

 

(あの時...アーサーだけが動けた、迅速に冷静に相手を宥めて、余計な戦闘を回避した....私は鍛えて貰ってるのに何も出来なかった)

 

システィーナは心の中で悔しさを滲ませ、思い詰めた表情をした。アーサーはそれを見て、システィーナの肩にポンと腕を置いてこう言った

 

「あの場面は動かなくても仕方ない...頭が真っ白になっちまったんだろ?分かる、俺もそうだったからな」

 

「..,じゃあなんで貴方は動けたの?」

 

システィーナがそう質問すると帰ってきた答えは

 

「そうだな〜経験と培ってきた技術があるからかな?今君に足りないのは経験と技術、後考え方だな」

 

「わかったわ、直ぐにでも全部ものに..」

 

「待った、そうやって焦ったら負けだよ...いいかいゆっくりでいいんだ、しっかりと地道に実力をつけろ、直ぐにでもやる!って言う意欲はいいんだけど結果を求め続けると自分が苦しくなるよ...ゆっくりと実力をつけろそしたら勝手に結果はついてくるから..,な?」

 

「それも...そうね..ゆっくりと実力をつけることにするわ...ありがとうアーサー」

 

アーサーは優しく笑いながらシスティーナを諭した。そして踵を返して頭グリグリしてるグレンに向かって、笑顔で面と向かうとドス黒い声で話しかける

 

「取り敢えずグレン先生...後でちょっとお話ししましょうか」

 

「え?お、おう」

———

——

-----

そうしてなんやかんや学院に入り朝のホームルームをした後グレンを呼び出した

 

「んで?なんだ話って?」

 

「なんだ?ではないでしょう?なんですか?あの子は??随分と貴方を慕っていたようですけど」

 

「あーなに、アレだ昔の友人というか何というか」

 

「もう、そうゆうのいいので...私例の競技祭の事件に巻き込まれた後、直々に女王陛下から全て事情は聞いてますよ...それに貴方の過去も知ってます。だから何か支障が出ないようにと誰もいない場所に貴方を呼んだんです」

 

「!?全部知ってるのか??ルミアのことなら兎も角俺の事まで知ってんのか!?」

 

グレンが驚きの表情を浮かべると、アーサーがプッツンと切れて、グレン胸ぐらを掴み、怒りを露わにする

 

「今はそんな事どうでもいいんですよ...貴方が呑気に伸びている間に、おそらく護衛で来たあのリィエルとか言う子は!!コチラに襲いかかってきた挙句、俺の仲間に斬りかかってきた!!本来なら護衛対象のルミアまで巻き込んで!!一体全体どうゆう教育をしたらあんな殺人マシーンが出来上がるんだよ??あぁ!?あそこで俺が止めなかったらルミア達は今頃棺桶の中だそ!!そんで誰も怪我人が出すにハッピーエンドみたいな感じで終わったがな、あそこで俺が説得しなかったら何人怪我人と死人が出るかわからなかったぞ??事の重大さわかってるのか??アンタは責任感がある事で有名な筈だが??」

 

「まっ、待てアーサー、選んだのは俺じゃない、軍の上層部だ...取り敢えず離してくれ....苦しい」

 

あまりのアーサーの気迫にグレンは少し怯みながら離してくれと懇願する

 

「チッ....」

 

アーサーは渋々取り敢えずグレンを離した

 

「ゲホッゲホッ...俺だってこんな人選をした軍上層部に腹たってんだよ、たく仮にも教師の胸ぐら掴んでキレるなんてお前熱くなると後先考えなくなるタイプだろ?」

 

「でも間違えなくアンタにも責任があるぞ....アンタはあの人とチームを組んでいた筈だ」

 

「それはなそうだが....」

 

「なら護衛対象を斬らないでね?くらいの教育はできた筈だ?」

 

「あのな!それが出来た...」

 

「言い訳は聞きたくない!!!」

 

アーサーはとてつもない怒気をグレンに放つ。グレンはあまりの圧に身体中の汗が噴き出てくる

 

「すみません少し怒りに任せてしまって....でもこれだけは聞いておいて下さい...,俺にとって仲間との絆はこの世でかけがえなさのない物でなによりも大事なんです、どう避けようとしてもどうしても気にかけてしまうくらいには....俺は仲間のためなら命だって惜しくない、必要と有れば誰か殺す事だって厭わない、わかりますか?もし同じような事を俺の仲間にやったら、今度は何をするかわからない....」

 

「わかった、わかったよ。なんとか言って聞かせる」

 

「お願いします。後一つ、私は貴方を尊敬してるんですよグレン先生、だからお願いですからこんな事で失望させないで下さい」

 

そのままその場をさるアーサー、グレンはずるずると壁から崩れ落ちる

 

「あ〜アーサー性格少し変わったか?あんな感じだったか?つうかマジでこわかった、まさか生徒に胸ぐらつかまれながらお説教喰らうとは思わなかったわ、つうかリィエルに言えよなんで俺なんだよ...あぁでも話通じないから無理か...今回ばっかりは俺にも責任はあるな...大事な友人殺されかけたんだ怒って当然だわな...マジであいつの人相の悪さも相まって怖さ5倍増しくらいだったわ、でもアイツの言ってくることも事実、リィエルをなんとかしないと」

 

 

そう言ってまた生徒達のいる教室に戻るのだった

 

続く




遅くなって大変申し訳ない、これからも不定期ながら投稿してまいる


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23話

お前は何の為に剣を振る?









謎の転校生リィエルが来てから早数日、彼女に対してクラス内には何とも言えない空気が立ち込めていた。

 

「完全にアイツ浮いてやがる....あーぁこれどうしたもんかね....」

 

グレンは教室内の雰囲気を見て、頭を抱えていた。こうなっているのはリィエルが初日にルミア達に対して危害を加えかけた事もあって彼女の自業自得と言えばそれまでだが、グレンは自分がいたのにも関わらずこのような事態を引き起こしてしまったという事に少なからず負い目を感じていたのか何とかしようと頭の中で色々考えていたのだが....

 

(いや待て待て俺結構色々やったつもりなんだけどな?交流を深めようとして、魔術射撃とか生徒同士のコミュニケーション取れるように時間取ったりとかやったんだけどな??アイツがことごとく学生離れした実力出して潰しやがったせいじゃね?ルミアとかシスティーナは何とかクラスに馴染ませようとしてるけどこれじゃあな....はぁ...アーサーも我関せずって感じだしなどうしようかなこれ、この雰囲気のままサイネリア島に研修なんて行けんのか?)

 

今週は学院でサイネリア島に研修という名の旅行があるのだが、クラスがリィエルに対して不信感を持ったままではとてもじゃないが何かしら支障が起こるのは自明の理である。

グレンが頭の中で色々な案を考えていると、横目で見ていたアーサーがため息を漏らしながら椅子から立ち上がると、カッシュ達の元に歩み寄る。

 

「なぁお前ら今日皆んなで飯でも食いないかねぇか?クラスの女子も誘ってよ」

 

「珍しいなお前から誘ってからなんて、どうゆう風の吹き回しだ?ん?ちょっと待ったなんで女子も?ハッ!お前まさか」

 

「邪な感情なんて無い。唯今の雰囲気のままで研修なんて行ってもつまんないだろ?転校生の歓迎も兼ねた交流会だよ交流会」

 

「成る程な、つまりは合コンって事だな任せとけ!お前じゃキモいって断られそうだから俺から誘っておくぜ!」

 

「合コンじゃねぇ!歓迎会だって!何勘違い....え?ちょっと待って俺ってそんな嫌われてんのか?」

 

そう言い残してカッシュは女子達を誘っていく、この手の誘いは活発で明るいカッシュの方が乗ってくると踏んでカッシュに元から頼むつもりだったが、思わぬ不意打ちを食らい少し落ち込むアーサーだった。

 

————

——

「「乾杯!!」」

 

その声と共に歓迎会という名の宴が始まった、皆和気藹々とし楽しんでいる。一番楽しんでいるのは明らかにカッシュだったが楽しんでいる分、場を盛り上げるのも上手かったそこがカッシュの魅力でもある、持ち前の明るさで人を惹きつける才能がありアーサーはそれに目をつけた、結果としていい結果に繋がった。

 

「みんなと一緒に何かするのはやっぱりいいねシスティ」

 

「そうね、このクラスはやっぱりこうでなくちゃね。やっと戻ってきたわね」

 

システィーナとルミアも輪の中心には入っていかないもののこの宴を楽しんでいるようだ、すると横で青い髪の少女がポツリと呟く。

 

「楽しい....?」

 

「うん、楽しいねリィエル。」

 

ルミアが話しかけるとリィエルが少しだけ話し始めた。

 

「こうゆう事はしたことが無い...いつもどうゆう時に宴?ってするの?」

 

ルミアはその質問に少し考えるとそれを言葉で表した。

 

「うーん....皆んなで頑張った時とかかな?後何か縁起のいい日とかかな?」

 

リィエルは無表情のまま少し考えるとまた話し始めた

 

「やった事が無かった、皆んな仕事が終わった後は虚で疲れた目をしていて、傷だらけだった。だから仕事終わりは傷を治療して終わり、皆んなで集まってこうゆう事は一回もしなかった」

 

「じゃあこれからはいっぱいやって行こうね。」

 

ルミアは優しい笑みを浮かべながらリィエルを優しく頭を撫でる。

 

それを優しい表情で見守るアーサーとグレン二人は完全に蚊帳の外にいる

 

「お前も行かなくていいのか?」

 

「俺はいいですよ、こうやって楽しそうにしてるのを見るのが好きなんで、俺が入っても邪魔なだけですから」

 

不器用な笑みでそう答えるアーサーそれを聞きながらグレンが

 

「邪魔ってこたぁねぇだろオイ」

 

そんなこんなしていると、奥からその店のオーナがニコりとした笑顔でアーサー達の元に歩み寄ってきた

 

「お客様、少し宜しいでしょうか?」

 

「はい、どうしましたか?」

 

アーサーがそれに対応する。

 

「お客様がこの団体客の代表でしょうか?」

 

「えぇまぁそんなところです」

 

「こちら伝票となっていますので御確認下さい」

 

そう言って伝票を渡すと、アーサーは引き立った笑顔でグレンにも見せお互い顔を見合わせる

 

「すまない先生....この間のアレで金がないのも知ってます...でも俺にも金がないんです...今回は割り勘にしてくれませんか?」

 

「はぁ?なんで二人で割り勘みたいになったんだよ?アイツらにも払わせらればいいじゃねぇか?そしたらそんなに払わなくても」

 

「それが...」

 

「それが?」

 

「あんのバカが、今回のパーティーは俺の奢りって話でつけられてしまって....」

 

今回のパーティーは有無を言わさずに、アーサーの奢りだと言われてしまって、最早空気的にNOとは言えなかったのである。

 

「え?マジ?」

 

「大マジ、冗談ならこんな事言いませんよ」

 

「それもそうだなハッハッハッ」

 

「そうですよハッハッハッ」.

 

「ハッハッハッ....わリィアーサー、後は頼んだ!!」

 

そう言ってグレンはアーサーに伝票を投げつけ脱兎の如く逃げると、アーサーがそれを必死に追う。

 

「ちょっ!!ちょっと待って!!グレン先生!!マジで俺今金欠なの!!こんな額払えないからマジで本当に!!待ってくれぇぇぇぇ!!!!」

 

魔術無しのガチの身体能力勝負だ、早めに走ったグレンに多少の部はあるが....どうなるかはわからない、今日のパーティでリィエルはクラスに馴染む事が出来たらしい。クラスに後日アーサーとグレンどちらもその店で皿洗いしてる所を目撃されたと言う。

 

 

————

——

—-

サイネリア島研修の前日、道場で凄まじい音が鳴り響く。互いに木刀を握り、真剣を持ったような剣士さながらの打ち合い、実戦そのものだ。するとハンクが途中で武器を下ろした。

 

「今日はここまでにしよう、サイネリア島に行く準備もしなきゃいえねぇんだろ?」

 

「もう少しやりましょうよ?」

 

アーサーが木刀を握りながら言うと、ハンクが煙草を咥えながら

 

「ダメ、少しは休むことを覚えろ、毎日ぶっ続けでやったら倒れるぞ?」

 

そう言って煙草に火を灯す、煙を吸い、そして一度吐き出す。するとアーサーが奇妙な事を言ってくる

 

「私にも一本下さい」

 

「は?ダメ、お前未成年だろ?ガキがイキがんなって」

 

「子供じゃないんで貰いますね?」

 

「お、おい!未成年喫煙は!」

 

そう言うとアーサーがフォースを悪用して、煙草ケースの中にある一本を引き寄せると、魔術を使って火をつけた

 

「フゥー....久しぶりに吸ったな」

 

「お、オイ!無視かよ!!」

 

随分と小慣れた様子で一服するアーサーにハンクはどうでも良くなったのか

 

「チッ、もういいわ取り敢えずバレないように程々にやれよ?」

 

舌打ちをして悪態をつくが、アーサーにはどこ吹く風と言った所か

 

「俺ヘビースモーカーじゃないんで平気ですよ」

 

「そうゆう問題じゃねぇ...にしても、お前変わったな」

 

「何がですか?」

 

「目つきが」

 

アーサーは顔をぺたぺたと触りながら

 

「それ友達にも言われましたよ、そんなに変わりましたか?」

 

「あぁ、前は少年のあどけなさを残した感じの青年だったのに、今は深い目をしてる、危険な目だ、クソの掃き溜めを見てきたみたいなドス黒いもんが渦巻いてる暗く澱んだ目だ、クラスの女の子達から何も言われなかったか?」

 

ハンクが暗い目をしてニヤつきながら言うがアーサーは気にする様子も無い

 

「そうですか」

 

「お前気をつけろよ?その内友達いなくなるぞ?変わるって事はいい事だがそん...(長くなるので以下略)」

 

(変わったか....違うな、段々戻ってるんだ。昔の俺に、今までは理想の俺を、思い描いていた、自分を演じてただけ....本来の俺はロクな人間じゃ無い)

 

ハンクの長ったらしい説教を聞き流しながら心の中で呟くアーサー、彼はそのまま外に行こうとするがハンクが止める

 

「おい、アーサー?話は終わってない何処に行くんだ?」

 

「修行に」

 

玄関で靴を履きながら淡々と言うと、後ろでハンクがため息を吐きながら

 

「お前最近どうした?ずっと焦燥感に駆られてる、何かあったのか?」

 

「いえ、特に、唯ずっと胸騒ぎがしてるだけです」

 

「何だ?あれか?あのヘンテコパワーのせいか?」

 

「鋭いですね、そうです、この力は色々見えてしまうんですよ、確かに恩恵はある、常時発動してる為、様々な危機を回避できた。だがそれ故にタチが悪い、見たくも無いものすら見えてしまう。」

 

「.....」

 

ハンクは只々無言だった、アーサーはそのままドアノブに手を掛けると

 

「取り敢えず私は行くので、何かあったら連絡して下さい」

 

「お、おい!待てアーサー!行っちまった...」

 

ハンクが何か言う前にアーサーは足早にその場を出て行った、ハンクはため息を吐くようにポツリと呟く

 

「ハァー...ここで止められないのは保護者失格かな...」

 

そう心の中で思いながら空を見上げるのであった。

 

————

———

——

「あ、?ここは?どこだ?この空は....」

 

アーサーは何故か草原にいたそして彼が見上げたその空は、アルザーノのどこにも無い空であった。だが彼にとっては良く知っている懐かしさを感じる空模様だった。

 

....訓練だ

 

そう告げると深くフードを被った、男が音もなく現れた。

 

「またこれか....夢の中で貴方と何回会えばいいんですか?マスター」

 

「何を言っている....パダワン、寝惚けているのか?早く立つんだ」

 

そう言って師匠はライトセーバーを抜いた、それを見たアーサーは瞬時にスイッチが入りその場に素早く立ち上がると、何故か腰の位置に付いているライトセーバーを抜く。

 

「久しぶりの感覚だな....」

 

その感触に懐かしさを覚えるアーサー

 

「準備はいいか....」

 

「いつでも」

 

そう言い双方スイッチを入れる、すると蒼い千光と独特な音と共に刀身が現れる、美しい目を奪われ引き込まれるような蒼色だ。そして両者共に向かい合い構えを取る。片方は弓を引き絞るような構えをもう片方は刀身を中段に下げ前のめりになり相手にその刃を向けるような攻撃的な構えを取る。

 

「ハァー...ッッ!!」

 

最初に仕掛けたのはアーサーだった。跳躍し一気に距離を詰めると、その恵まれた体格から蓮撃を繰り出す、そのスピードとパワーそして体の関節をフルに使う事によって生まれるしなやかで鋭い一撃まさに剣客の一振り、しかし

 

「随分と攻撃に傾倒してるなパダワン?それは人を守る刃ではないのか?」

 

その一撃一撃を距離をとりつつ的確に防御し余裕な顔をしながら質問をしてきたのだ。アーサーはそれに少し苛立ちながら反論した

 

「いつも殺す気でくる癖によく言いますねマスター?それに貴方の戦い方は受け身的すぎる。それではまた守れない、取りこぼすだけだ!!だから全員を救える力が必要なんだ!!」

 

「全員を救える力?取りこぼす?まだまだ半人前のガキが何を言っている。自惚れるなよ?」

 

「自惚れてなど!!」

 

「貴様にはまだ覚悟が足りていない、自分の言っている言葉の意味をわかっていない。それがどんな地獄かわかっていない」

 

「地獄ならみた....何度も何度も母さんが死ぬのも、友達が死ぬのも...もうごめんだ!!!!」

 

そう言って力のまま同じような攻撃を繰り出すアーサー、彼の師はため息を吐きながら

 

「それだからまだお前は半人前なんだ」

 

そう告げると、彼の師は完璧な防御を披露し、体勢を崩した隙を見逃さずに目にも見えないスピードのカウンターを打ち込むとアーサーのセイバーを弾き飛ばした。そのまま背後に跳躍し後頭部に剣先を突きつけた。

 

「力に飲まれるな大馬鹿、その焦りはお前自身を暗黒面に引き込ませるぞ」

 

「ッッ!!」

 

「焦る気持ちもわかる....だが心しろ、その力への渇望はお前自身を破滅に追いやる」

 

———だから闇に堕ちたんだお前は

 

一瞬風が靡く。アーサーは一瞬だけ目を瞑るそしてまた目を開けると、そこに映ったのは暗闇だった

 

「....暗い光の差さない地の底みたいだ。今度は何を?」

 

辺りを見回していると空間全体に反響するようにかつての師匠の声が響く

 

「「用心しろパダワン貴様の元に、闇が迫っている。外からも内側からも....飲み込まれてはいけないぞ。これは忠告だ...怒りに..復讐心に囚われるな、それがお前自身の破滅に繋がる」

 

そこで視界は真っ暗になった

————

——

——

「ハハッ...俺はとっくの昔に破滅してるよマスター...」

 

嫌な汗をかきながら、神妙な面持ちで呟くアーサーなのであった。

 




本当にリアルが忙しすぎる、マジで久しぶりの投稿になってしまった。


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