新「艦娘」グラフティ6(第17部) (しろっこ)
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第1話(改1.2)<山陰の夏は晴天が多い>

工作艦「明石」が新たに着任した美保鎮守府。えっと、早々の大きな事件でしょうか?



 

「山陰の夏は晴天が多くって、意外に蒸し暑いですね」

 

--みほちん------------

 

新「艦娘」グラフティ6

第1話(改1.3)<山陰の夏は晴天が多い>

 

---------(第17部)---

 

「ガタゴト」

私たちはワゴン車に乗せられて居る。

 

「ギシギシ」

 

(だいぶ、サスペンションが疲れた車ねえ)

なーんて、つい分析してしまう。

 

本来なら今、警戒すべき場面だけど。

「なんだか、こういう状況って呉工廠を連想させます」

 

つい、はしゃいでしまった。

いちおう目隠しされているんだけど。

 

工作船の性(さが)か見知らぬ場所へ行くのは大好きだ。

 

「あなた、鳥取県は初めてかしら?」

隣の大淀が話し掛けてくる。

彼女も目隠しされていて少し声が上ずっているようだ。

 

「はい。着任するまで私、一回も来たこと無かったです」

普通に返事をした。

 

「最初、ここって舞鶴っぽい気候かな? ……って私、勝手に思い込んでました」

率直な感想も付け加えた。

 

「そうね。どちらも同じ日本海側よね」

私が落ち着き払っているから彼女も安心したようだ。

 

「えっと舞鶴には技術研修で、たまに京都経由で行くことも有りましたよ」

「アラ良いわね。私、呉と横須賀くらいしか経験無いわ」

まるで目隠しを忘れたように会話する私達。

 

「山陰の夏は晴天が多くって意外に蒸し暑いですね」

「うふふ。直ぐ慣れるわ」

「目隠しされた二人の日常会話って、ある意味……」

 

(艦娘ならではだな)

 ……って喋り掛け、ハッとして止めた。

 

何となく前で運転している二人、お店の関係者の人間に

余計な刺激を与えるかと思ったから。

 

「……」

その助手席にいるショップ店長の姐さん。

 

最初、彼女も心配していたけど私たちの様子に安心したようだ。

そのうち運転中の、同業のオッサンと世間話を始めた。

 

彼の方は、時おりケータイで連絡をしている。

二人は中古(リサイクル)部品を扱う業者だ。

 

(呉にも、たくさん居たな)

鎮守府とか大きな工場の周りには大抵、この類の人たちが居る。

 

(今回の話も呉の知り合いの店長が話を通してくれたから、すんなりコトが進んだ)

そう考えていたら、不意に大淀から無線が入った。

『男性が電話……今回の件を話してるみたいね』

 

それを聞いた私は『シマッタ』と心の中で舌を出した。

(私たち、最初から無線を使えば良かった)

 

彼女の観察力は、侮れない。

 

(おっさん、警戒してるかな?)

チョッと反省しながら、大淀に返信をする。

 

『そうですね。やっぱり対象は駆逐艦でしょうか』

『先般、日本海で大規模な海戦があったのは知ってるわね』

『はい。主に舞鶴が応戦して……でも急に収束した』

 

ここで、大淀は間を置いた。

『そう、敵の陽動作戦の疑いも有るの』

 

やっぱり大淀は洞察が深い。

 

「着きましたよ」

ワゴン車が何処かに停車したようだ。

 

姐さんの声で私も思考を現実に切り替えた。

「はい」

 

「あ、目隠しは取って下さいね」

「はい」

言われるまま私たちは目隠しを外した。

 

そこは高い塀に囲まれていて視界が利かない。

何となく風が通る感じ。

 

(平野部の何処か?)

……といった印象。

 

店長の姐さんが申し訳なさそう。

「ごめんなさいね、こんなことして。ここ、うちの倉庫じゃないんで」

 

「わかります。大丈夫、私も仕事柄こういうの慣れてますから」

笑顔で返した。姐さんもホッとした表情。

 

私は密かに大淀に通信する。

『場所は記録しますか?』

『そうね、念のため』

 

顔は笑いつつ、彼らの前では口に出さない。

 

それに目隠ししたって私たち艦娘には電探がある。

そもそも、無意味だ。

 

とはいえ海上用にレンジをとっているから

地上では、かなり誤差が出るのも事実。

 

どっちにせよバレたら面倒だ。黙っておく。

 

「ウチも、あなたと知り合えてホント、タイムリーで良かったわ」

そう言いながら姐さん、先に建物の鍵を開けた。

 

同業のオッサンに目配せしてから手招きをした。

「ちょっと狭いけどね、こっち」

 

案内されてコンテナを改造した倉庫の中へ。

 

申し訳程度のLEDライトに照らされた通路を行くと窓がない殺風景な応接室に通された。

 

(雰囲気出るなあ)

まるで、映画化ドラマに出てきそうな敵のアジトである。

 

「テキトーに座って下さい」

姐さんに言われて私たちは広い方のソファへ。

 

私は作業場のノリで直ぐに座る。

几帳面な大淀は汚れを気にしてハンケチで払っていた。

 

オッサンは中で待っていた若い兄ちゃんに何か指示を出す。

頷いて部屋を出る彼。

 

『いよいよっぽいわね』

『そうですね』

私たちは平然とした顔で正面を向いたまま無線通信をしている。

 

私たちのソファの対面に座ってケータイを受けたオッサン。

 

「もしもし、……あぁ、あなたですか。いえ、その件なら、もう買い手が付いたから。あぁ悪く思わんでな」

誰かに頭を下げている。

 

帽子を取った彼は頭の上がハゲていた。

さほど極悪でもなさそう。田舎オヤジっぽい。

 

「美保鎮守府って、規模は小さいですよね」

緊張をほぐすように改めて聞いてくる姐さん。

 

「はい。所属艦娘が100隻ちょっとで鎮守府では一番小さいです」

かなり軍機に近い情報だけど。仕方がない、世間話だ。

 

私の答えに安心した姐さん。

「今回もね、つい数日前に話が来て。でもこの山陰じゃ誰も初めての内容で正直、困ってたの」

「困る?」

「うん、艦娘なんて、まさかの想定外。これも時代なのかねえ」

 

姐さん、隣のオヤジから何か耳打ちされて頷いている。

「直ぐ連れて来ますよ」

 

話が速い。これも田舎だからな、と思った。

呉だと流通経路が増えるから。もうちょっと手順を踏んだりする。

 

いきなりノックもなしに反対側の扉が開く。

そこに現れたのは駆逐艦娘だ。

 

いきなりの展開に、さすがに私も一瞬、驚いた。

部屋に入った途端、焦げ臭さと硝煙の入り混じった匂いが漂う。

 

彼女は服がボロボロで艤装は着けたまま。特に縛られてない。

言い方は悪いが『出来立てホヤホヤ』感、満載だ。

 

私は彼女の破損状況を瞬時に分析した。

ここ地上ではなく戦闘の結果としての『中破』だ。

 

連れて来た兄ちゃん、恥ずかしそうに目を伏せて艦娘の後にいた。

 

私を見て口を開いた彼女。

「明石?」

 

私も目の前の艦娘を見て脳内データを検索した。

「えっと長波、ですね? 駆逐艦の」

 

これが他の艦娘だったら戸惑ったかもしれないが、あの特徴のある髪の毛で直ぐ分かった。

 

オッサンが口を開いた。

「地元の漁師が美保関で漂っている彼女を見つけたんですよ」

 

大淀が促す。

「状況を詳しく教えて下さい」

 

だが、この状況を私は勝手にワクワクしていた。

 

(これって不謹慎だろうか?)

 

 

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第2話<爆発の危険はありません>

明石のひと言に、ちょっと緊張する面々。


「長波の様子を見たいのですが」

 

--みほちん------------

新「艦娘」グラフティ6

第2話<爆発の危険はありません>

 

---------(第17部)---

 

オッサンは口を開いた。

「最初は美保湾の漁師から連絡貰ってね」

 

「あの、お話し中スミマセン」

私は会話に割り込んだ。

 

「早急に長波の様子を見たいのですが」

「……」

オッサンは姐さんと顔を見合わせた。何となく相手の事情はわかる。まだ「商品」である長波の所有権は我々のモノになっていないから。

 

ただ私の事情は大淀も理解し彼らに説明をしてくれた。

「うちの明石は鎮守府の整備担当ですし、この長波は艤装……高圧のボイラーをまだ背負っている状態です。安全のため取り急ぎ点検することをお勧めします」

 

オッサンは「アッ」と小さく叫んだ。

「確かに……お願い出来ますか?」

 

彼は急に恐縮する。そこへ追い討ちを掛けるように大淀が付け加える。

「もちろん爆発の危険を取り除くためですから国民の安全を守るため料金は戴きません」

 

このトドメのひと言が効いた。オッサンと姐さんの態度が明らかに変わったから。

 

私は大淀に目配せして頷くと持参していた工具箱を持って長波に近づく。駆逐艦に付き添っていた若者も慌てたように後ずさりした。

 

もちろん脅しでなく爆発の可能性はある。ただ私は長波の状態からその危険性は低いだろうと踏んでいた。

 

彼女の艤装を確認しながら私は声を掛けた。

「気になる箇所はある?」

「たぶん大丈夫」

「そう、良かった」

 

背面に回り込んだ私は彼女にソッと囁いた。

「ログは無事?」

「はい。あと無線はD帯です」

 

軽く頷いた私はパンと彼女の背中を叩いてワザとらしく言った。

「異常無し、爆発の危険は有りません」

 

その場は安堵した雰囲気になる。

 

「あと」

私のひと言にオッサンたちはビクっと緊張する。ちょっと面白い。

 

「念のため彼女用にイスを二脚ほど、お借りしても宜しいでしょうか? 艦娘とはいえ戦闘後で疲労していますから」

この説明でハッとした顔をするオッサン。

 

「お、オイ!」

「はい」

 

あたふたとイスが用意された。私は安全のため彼女の隣に並んで座る。そして長波にフェイスタオルを渡した。

 

「はぁ」

……やっと落ち着いた、という様子で軽く顔を拭った長波。機械的な疲労もあるが、いわゆるメンタル面もかなりダメージを受けているだろう。

 

その様子を優しく見守っていた大淀だが改めてメガネを軽く押さえ、キリッとした表情で言った。

「では、お話を続けましょうか」

 

 

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第3話(改1.3)<進展>

ツッコミの大淀、ボケ(?)の明石。二人は良いコンビ(かも)



 

「では金額的なお話を」

 

--みほちん------------

新「艦娘」グラフティ6

第3話(改1.3)<進展>

 

---------(第17部)---

 

大淀は続ける。

「まずは長波回収の経緯から伺いましょうか」

 

軽巡洋艦ながら笑顔が素敵な彼女。美保鎮守府で5本の指に入ると思う。

 

「あ、そうですね」

ちょっと慌てたオッサン。

 

「艦娘が兵器なのは、ご存知ですね」

笑顔とは裏腹に大淀の口調は厳しい。相手が一般の男性だろうが関係無い。

 

「あ、はい。知ってマス」

相変わらず不自然な敬語になっている彼。

 

「艦娘を確保した時点で直ぐ連絡下されば話は早かったのですが」

「……」

大淀の態度に緩みはない。笑顔との落差が緊張感を高める。

 

「こんな僻地に連れてきたり人目を憚(はばか)る事情は察しますが余計な手を回すと痛い目に遭いますよ」

ジリジリと詰めていく大淀。何しろ鎮守府の主計課長である。しかも前線に出れば日本海で深海棲艦を撃破する実力の持ち主。

 

気迫に押されタジタジのオッサン。

「あ、お……」

 

少し青ざめながら額の汗を拭う。もはや呂律(ろれつ)が回らない。

 

彼は堪(たま)らずショップの姐さんを見る。もちろん彼女も圧(お)されているな。

 

「もう、そのくらいで」

ここで私は助け船を出した。彼が既に限界っぽいので。

 

「……細かい事情は、ひとまず置いて話を進めましょう」

この言葉にホッとする二人。

 

「では金額的なお話を」

さすが大淀、切り替えも早い。

 

『金額的?』

この時、急に私のD帯無線が受電……長波だ。人間には聞こえないが、場の艦娘には聞こえる。

 

『貴女を買うの』

私は単刀直入に返した。大淀もこちらをチラッと見ている。

 

『……』

長波は複雑な表情を見せた。

 

『大丈夫、私たちを信じて』

私は口を閉じたまま微笑んで応える。

 

『大淀は提督から全ての交渉権を受託しているから』

それに今回は急がなければならない事情もある。

 

姐さんとメモで数字を見せ合うオッサン。一瞬、躊躇し慎重に電卓を叩いた。

「では、これで」

 

大きめな電卓の液晶画面に表示された金額。オプションを付けまくったワゴン車の新車くらいの価格だな。

 

彼の躊躇(ためら)いも何となく分かる。そして私たちも、この取引は何しても成立させたい。

 

わずかな沈黙、応接室に緊張が走る。長波に大丈夫と答えた私自身も一瞬、固くなった。

 

だが大淀は笑顔になった。後光が差した。

「この金額で、お受けします」

 

「おぉう」

オッサン、安堵した溜め息交じりの返事だ。

 

大淀は私を振り返る。

「明石、例のマル3で出して」

「はい」

 

私は工具箱の底から「3」と書かれた封筒を取り出した。私たちの連携には長波だけでなく業者の二人も驚いたようだ。

 

もちろん中身は札束であるのは明白。様々な状況を想定して既に複数、番号が入れてある。

 

ここで大淀は今までとは違う満面の笑顔を見せて封筒を机上に置いた。ゴトッという鈍い音。

「現金で600あります。ご確認下さい」

 

「オイっ」

「はい!」

少し上ずった声でオッサンが若者に促す。彼は部屋の隅から玉手箱みたいな機械を持ってきた。

 

 

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第4話(改1.3)<いけいけドン!>

取引成立と同時に緊迫する周辺状況。いけいけドンドンになって来た。



 

「招かれざる客よ」

 

--みほちん------------

新「艦娘」グラフティ6

第4話(改1.3)<いけいけドン!>

 

---------(第17部)---

 

オッサンが若者に促すと彼は部屋の隅から玉手箱みたいな機械を持ってきた。

 

『あれは何?』

無表情の長波がD帯無線で聞いてくる。

 

『お札を数える機械よ』

そう応答しながら、知らないのも当然かな? と思った。

 

日々、戦闘に明け暮れる艦娘にとって大量の現金を扱うことは滅多に無い。

 

不思議そうな顔になった長波に視線を送り私は無線で付け加えた。

 

『大淀さんが知ってるのは当然。私も立場上、資材仕入れで業者と取引するから』

そして指を丸めてお金の形を作ってみせた。

 

それを見た彼女は小さく頷く。

『なるほど』

 

姐さんが封筒を開け札束を鷲掴みにすると機械にセット。ガサガサーッという感じの音を立て、お札が読み込まれる。

 

やがてカウンターには<600>というデジタル文字が表示された。

 

「んしょ」

念のため彼女は再セット、機械は最初と同じく<600>を指して止まった。

 

オッサンと姐さんが互いに頷く。

「確かに」

「よし」

 

いちばん緊張する瞬間が過ぎた二人は私たちに笑顔を見せた。

 

彼が言った。

「では、取引成立ということで」

 

「そうですね」

珍しく緊張したのか大淀は硬い表情をしていた。

 

彼女は私をチラッと見る。

「明石、鎮守府まで長波を、お願いね」

 

「あ、はい」

私は慌てて敬礼をすると<取引成立>信号をB帯で流す。直ぐに鎮守府から返信が来る。

 

『ん?』

思わず無線で呟く。電文の最後に良くない報(しら)せが混じっていた。

 

(ははぁ、さっきの大淀の顔は、これか)

私もピンと来た。

 

「どうしたの?」

空気を察した長波が口頭で聞いてくる。

 

「招かれざる客よ」

私は、わざとその場の全員に聞こえるように言った。

その言葉で急にオッサンたちの表情が強張(こわば)る。

 

業者の二人も、ようやく何かを悟ったらしい。

「やっぱり来たンか?」

「だからアイツら、ヤバいって言ったでしょ?」

 

慌てている。彼は急にブルブルと震え出す。

「まさか、本当に来るのか?」

 

どうやら私たちより先に彼らにコンタクトした何者かが居たようだ。

 

大淀は淡々と別の帯域で指示を出している。

 

その時、急に外から振動が伝わって来た。

室内の小物がビリビリと震え、室内に緊張が走った。

 

続いて、複数の帯域で無線が入り始めた。

 

私は直ぐに自分のメモリー比を工作・作業から巡航・待機モードへと切り替える。こんな時は大淀の余裕ある作戦処理能力が羨ましい。

 

(ま、設計思想が違うからな)

私は苦笑した。

 

「あ、陽炎?」

そのとき長波が反応した。

外の戦闘が激化して、うっかり通常帯域で発した無線を拾ったらしい。

 

「そう、私。うん、気を付けてね。人間も混じっているから」

私と大淀は、その何気ない一言が引っ掛かった。

 

(これは、かなり拙い状況かもしれない)

もちろん司令部も把握しているだろう。

 

「あ、あのォ」

オッサンが手を上げる。さすがに危険が迫りつつある状況が分かったようだ。

 

大淀は、ため息をつきながら言った。

「こうなることは分かっていました」

 

『ゴクリ』

……っていう音は聞こえなかったけど。彼らには針のムシロだろう。

(汗かいてるし)

 

恐らく意図的に大淀はオッサンたちに間合いを詰め人差し指を立てた。

「以後、くれぐれも艦娘を確保したら直ぐ私たちに知らせること」

 

「は、はい!」

大金が入って表情が緩んでいた彼らは肝を冷やして青ざめている。

 

かわいそうに。

(真っ正面から大淀に詰め寄られると艦娘でも胆が冷えるんだ)

 

ましてや相手は人間様。私は不謹慎ながら、ここに連れて来られるまでの扱いを思い出して<ザマミロ>と言いたくなった。

 

「さて」

気持ちを切り替えるようにして呟いた大淀は直ぐに司令部に報告をしてからコード信号を流す。数秒と経たずに返信。並列処理を繰り返す彼女。

 

駆逐艦の長波は相変わらず、きょとんとしている。

 

少し落ち着いた大淀は改めてオッサンたちに諭すように言った。

「今回は私たちで対処しますが。本来なら……分かっていますね? タイミングがずれたらビジネスどころじゃなかったのですよ」

 

「あ、ははい」

彼らもタジタジである。

 

「やっぱり、アレが来た?」

ここで確認するように長波が聞く。

 

私は工具を片づけながら大淀に代わって答えた。

「そう、あなたを横取りするつもりね」

 

大淀は並列処理を継続していた。その表情から作戦は滞りなく進展しているようだった。

 

安心した私も工具箱を閉じて長波に言った。

「でも大丈夫。貴女は渡さないから」

 

ここで一段落ついた大淀。

業者の二人を振り返ると微笑んで軽く頭を下げた。

「では私たちは失礼します」

 

「あ、直ぐに送らせ……」

言い掛けたオッサンに彼女は手を上げて制した。

 

「この周辺は既に戦闘状態です。危険ですから鎮守府から迎えに来させます。後は大丈夫です」

 

「え?」

納得行かない表情のオッサン。

 

それを代弁するように姐さん。

「あの、ここの住所が……」

 

大淀は真面目な顔になる。

「目隠しをしても、ここは私たちに特定されていますよ」

 

「……」

唖然としたオッサンたち。

 

「それに今、外に出たら色々なものが飛んできますし。私たちも装甲の厚い車で帰った方が安心できますので」

言うと同時に大きな音と地響き。

 

「ひ!」

頭を押さえる彼。応接室が揺れる。

 

「皆さんは当面、ここで待機して下さい。防空壕は有りますよね」

既に建物の構造も把握した大淀は言った。

 

「は、はぁ」

弱々しく答える彼に姐さんがヘルメットを渡した。

(こんな時は女性の方が心強いな)

 

そのとき私の無線にも信号が入る。

 

「あ、終わったわね」

私が言うと大淀は緊張が解けた顔でVサインをして見せた。

 

「今回は長波の姉妹が頑張ったわよ」

「やれやれ、仕事が増えるわね」

工具箱を抱えた私は笑った。

 

長波も、ちょっと嬉しそうな顔になっていた。

「美保の陽炎か……どんな奴かな」

 

 

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第5話(改1.2)<目覚めた熊>

周辺の戦闘は、いったんは収まったらしい。その隙に一行は外へ出て、装甲車へ向かった。



 

「こんな車輌があるんだ」

 

--みほちん------------

新「艦娘」グラフティ6

第5話(改1.2)<目覚めた熊>

 

---------(第17部)---

 

外の騒動は美保鎮守府の艦娘たちの働きで、いったん収まったようだ。

しかし、ここの事務所の応接室は緊張していた。

 

「はい、大丈夫です」

大淀が何度も帯域を変えて無線でやり取りしている。

 

少しして、ようやく一段落ついた彼女は、天井を見上げた。

「はぁ」

 

「溜め息なんて珍しい」

私の一言に苦笑する大淀。

 

「大丈夫……では、行きましょうか」

その言葉で私達はソファから立ち上がった。

 

「失礼します」

改めて業者の面々に会釈した。

彼らは恐縮した面持ちで慌てたように頭を下げた。

 

「あ、こちらです」

弾かれたように若い兄さんが扉を開ける。

 

彼の先導で私たちは部屋を出ると暗い廊下を一列で行く。

外では、まだ時折、銃撃音らしき音が続いているようだ。

 

歩きながらも大淀には時おり鎮守府から連絡が入る。

「はい、第三警戒体制まで下げても大丈夫です」

 

その時、私にも鎮守府工廠から受電した。

(何かあったかな?)

 

ちょっと心配になった。

「……はい」

 

『……ねえ、倉庫の資材、使っても良いの?』

雑音に交じって入ったのは軽い声。

 

(駆逐艦の……えっと、誰だっけ?)

手順を踏まずに直電か。緊急事態だろうか?

 

取り敢えず返答する。

「在庫の関係があるから、勝手に取らないで」

 

……そうだ、思い出した。声の主は漣だ。

「取り急ぎ夕張に言って。管理は任せてあるから」

 

「りょーかい、以上」

彼女は、いつものアニメ声を出して通信が切れた。

 

(あの艦娘なら、やりかねないわね)

でも、嫌な気持ちにはならなかった。

 

いつもの、あの調子だけど案外しっかりしている子だ。

後は夕張に任せよう。

 

「オッ、お久ぁ」

一部、通信制限が解除され、長波は馴染みの艦娘と通信を始めている。

 

「では、ここで」

廊下の突き当りで先導していた兄さんが扉を開ける。

 

そこは、もう屋外だった。

「わあ」

 

暗い廊下から、お天道様の下へ。

(まぶしい)

 

穴倉から出た私たちは、まるで冬眠から目覚めた熊のようだ。

 

「ふああ」

解放感もあるのだろう。長波は大きく背伸びをしている。

 

来るときに私たちが乗った業者の車の隣に鎮守府からの迎車、つまり装甲車が低い発動機の音と共に待機していた。

 

「へえ」

長波が感心する。

そのゴツイ車両よりも運転している電ちゃんが気になったようだ。

 

「早く」

大淀が急かす。

私達は周りを気にしつつ装甲車に乗り込んだ。

 

「なるほど」

後部座席に座った長波は電ちゃんの座席を見て納得した。

座高の低い駆逐艦娘でも視界が確保出来るように底上げされていたから。

 

「へえ、美保にはこんな車輌があるんだ」

車内をキョロキョロと見まわす

 

「米軍の借り物だけどね」

私は応えた。

 

「電ちゃん、戦術リンクを私に廻してくれる?」

大淀が指示を出す。

 

「はい」

運転手の駆逐艦は慣れた手つきで横のタッチパネルを操作する。

 

「へえ、スゴ。最新型じゃん」

感心する長波。

 

「では、ベルトを付けてください」

電ちゃんの言葉を受けて各自がシートベルトを装着する。

 

「付けました」

「確認、ヨシ」

 

代表して私が応対する。

「全員、装着完了」

 

「了解、出します」

腹に響く低音とともに、装甲車は動き出した。

 

 

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第6話(改1.3)<ガッテン!>

鎮守府の装甲車が出発すると車内でも美保の艦娘たちが動き出した。



 

「ガッテン!」

 

--みほちん------------

新「艦娘」グラフティ6

第6話(改1.3)<ガッテン!>

 

---------(第17部)---

 

電ちゃんが車を出発させる。発動機が心地好い音を響かせた。

 

「おぉ、良いねえ」

私の隣の長波は頬を紅潮させている。中破ながら身体の状態は良好だな。

 

車体を揺らしながら平野部の細い道を進む装甲車。

その車内装備に興味津々の長波。揺れる車内で私を質問責めにした。

 

彼女が余りにも、はしゃぐので運転中の電ちゃんまで心配そうにバックミラーを覗き込んだ。

 

説明が一段落ついてから私は言った。

「上機嫌ね」

 

長波は眼をキラキラさせた。

「だってこんな地上車に乗るなんてウチの鎮守府じゃあり得無いもん」

 

「なるほど」

私は頷いた。

 

草地のデコボコ道を走っていた装甲車は、やがて舗装された幹線道路に出た。

 

すると気を使う運転から解放された電ちゃんが私たちに声を掛ける。

「どういう事ですか?」

 

「平たく言うと美保鎮守府は他所と違うってコトですよ」

私は、そう説明したが。

 

「そうなのですか?」

電ちゃんは、まだ不思議そうな顔をしていた。

 

今度は、少し手の空いた大淀が加わってきた。

「美保はネ、他よりも小さいし。構成員も艦娘に限られるでしょう?」

「はい」

「貴方みたいな駆逐艦が装甲車を運転すること自体、他では貴重なのよ」

「……なのですか?」

まだ腑に落ちていない様子。

 

そこで私も追加説明。

「私も美保に来て、あぁ小っちゃいのに多彩だな……って思いましたよ」

 

「ふーん」

今度は長波が納得していた。

 

振り返ると大淀は再び鎮守府と、やり取りしていた。

 

データが受信され、モニターにも逐次、現況資料が表示される。

「ちょっと待って」

 

自前の通信装置で追い付かなくなった大淀。

改めてインカムセットを付けた。

「続けて……。そう、確かに不穏な動きね。提督に状況を伝えて命令を受けて」

 

「……へえ、この車、通信機能が充実して便利だね」

やっぱり長波が感心していた。

 

逐次、冷静に鎮守府へ指示を出す大淀の姿。

 

私もウズウズしてきた。

「意見具申……大淀、私も美保鎮守府工廠に指示出して良いかな? ネット回線で」

 

暗号回線使用の許可を求めた。一瞬手を休めてチラッと、こちらを見た大淀。

 

私は改めて補足説明をする。

「えっと、鎮守府に戻ったら取り急ぎ長波の応急措置したいんで」

 

彼女は確認する。

「直ぐリストアップは可能?」

 

「ガッテン!」

私は力こぶを作りつつ自分の胸を軽く叩いた。

 

すると大淀は微笑む。

「任せるわ」

 

「イエッサー」

軽く敬礼した私は早速、引き出しからヘッドセットを取り出した。

 

すかさず別のディスプレイをONにして鎮守府工廠を呼び出す。

 

2回コールすると夕張が出た。

『ハロー』

「夕張? 私、明石」

『オー、ひょっとして例の部品リスト?』

 

察しが速い夕張。私は即、頷いた。

「ウン、今から送信するね」

 

『ガッテン!』

夕張のキビキビした返事を受けた私。

音声回線切断と同時に、暗号通信で部品データを送信。

 

そんな私たちの仕事振りに眼を丸くした長波。

「ひょおお、凄げぇ」

 

美保鎮守府の仕事の鬼(笑)が二人も装甲車内に詰めて居るんだ。

(ま、驚くのも無理はない)

 

送信が終わってホッとした私は、四肢を伸ばした。

「さぁ、後は戻るだけかなぁ」

 

「ア!」

運転手の電ちゃんの叫び声……と同時に車内にアラート音。

 

「全員、衝撃に備えっ!」

大淀が命令を出した瞬間、電ちゃん以外の艦娘は体を固定する。

 

同時に装甲車は激しい衝撃波に襲われ轟音が響き渡った。

 

 

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第7話<右往左往>

攻撃が続き右往左往する装甲車。だが大淀が動く。



「眼が要るわね」

 

--みほちん------------

新「艦娘」グラフティ6

第7話<右往左往>

 

---------(第17部)---

 

激しい衝撃波を受けると同時に意識が遠くなった。

 

非戦闘モードの艦娘は不意打ちを食らうと機密保持のため瞬時に主回路が遮断される。

 

「誰かに攻撃されたか」

遠くなる意識の中で私は考えた。

 

次にハッと気付くと車は激しく揺れていた。

電ちゃんが必死にハンドルを左右に回している。

 

彼女と大淀は、ずっと回避行動を続けていたらしい。

 

私は咄嗟(とっさ)に報告する。

「明石、只今再起動!」

 

「状況報告を」

この期に及んでも落ち着いた大淀。

 

ふと横を見ると長波がバカみたいヨダレを流して白眼を剥いていた。

「長波、ダウン」

 

言いながら私は直ぐにヨダレ少女をチェックする。

「長波は保護状態へ移行中、現時点でダメージは無し!」

 

大淀と目が合うと彼女は軽く微笑んだ。

(嗚呼、この包容力と安心感!)

 

感極まった私は、即座に敬礼して長波を守り抜こうと決意した。

 

なおも車は激しく揺れる。

 

「だめなのです!」

電ちゃんも、そろそろ限界か?

 

「それは、眼が要るわね」

端末を見ながらレシーバー越しに大淀が呟く。

 

「明石」

「ハイ?」

 

「弾着射撃しましょう」

「ハイ!」

 

ここで攻撃が弱まった。

「電ちゃん、止めて」

「止まります」

 

大淀の指示で車が停車する。

 

「わぁー」

外が静かになると同時に長波が目覚めた。

 

しかし大淀は躊躇(ためら)わず駆逐艦の目の前にコードを差し出す。

「明石、これを彼女に」

 

「ン?」

不思議そうにコードを受け取った長波に私は近寄って説明する。

 

「非常時なので今から貴女は軽巡洋艦、大淀の指揮下に入ります」

「え?」

状況がのみ込めていない。

 

「ちょっと背中を見せて」

強引に彼女の背後に回った私は艤装接合部をチェックした。

 

「ウン、行けるわ」

「?」

困惑した表情の長波を無視して私はLANケーブルを接続した。

 

「へ?」

多分、彼女は自分の目の前に数字が出て慌てているのだ。

この装置を繋いだ艦娘は皆、一様に驚く。

 

「大丈夫。貴女は着弾地点を眼で追うだけで良いわ。後の処理はセンターが処理するから」

私の説明で、やるべきことは理解した長波。

 

「了解」

敬礼は様(さま)になる。

 

私も自分にケーブルを繋ぎ、双眼鏡を取り出す。

 

そんな私達を見た大淀が指示を出す。

「長波は右側、明石は左側を」

「了解」

 

私は長波に双眼鏡を渡してから位置に着く。

 

画面を見ながら大淀が言う。

「次の攻撃が来るわよ」

 

間もなく風切り音と共に爆風が襲って来た。

 

「ひゃあ」

さすがに地上攻撃経験の少ない長波は慌てて頭を抱える。

 

「出すのです」

敵の攻撃の間隙を縫って電ちゃんが車を発進させた。

 

 

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第8話<黒煙>

敵の攻撃を避けつつ前進した一行は、ある物を発見する。



「沈むわけには行かないンだ」

 

--みほちん------------

 

新「艦娘」グラフティ6

第8話<黒煙>

 

---------(第17部)---

 

「オー!」

叫びつつ必死に車窓に張り付いて視認を続ける長波。彼女も私と同じ量産型だと思うけど根性は有りそうだ。

 

だが敵の攻撃も、なかなか収まらない。ちょっと不安になった。

 

私の念波を感じたのか視線は反らさずに長波が呟く。

「沈むわけには行かないンだ」

 

「ん?」

その真剣な表情に私はハッとした。

 

(確かに、そうね)

ここは戦場だ。弱気になったら敗けなのだ。

 

その時、車内では、いつもと違うアラート音が鳴る。

 

「艦砲射撃初弾、来るわ。皆さん観測お願いね!」

『はい』

振り返った大淀の言葉に私達は腹に力を入れた。

 

風切り音と共に弾着の土煙が上がる。轟音と振動。クルマが揺れる。

 

「ひゃあ」

「なのです!」

駆逐艦達が叫ぶ。

 

車体にはゴンゴンと無数の砕石がぶつかる。

 

「アァ、地上戦は苦手だなあ」

観測しつつ長波がボヤく。

 

確かに海上とは勝手が違う。

 

だが、力みつつも私は周囲の木陰に意識を集中する。

(着弾地点の、あのどれかに敵が居るんだ)

 

……そう思うと緊張した。

指揮を執る大淀の後ろ姿から彼女も警戒しているのが分かる。

 

視界が回復し、私は気付いた。

「左舷、黒煙!」

 

報告した直後、火柱が上がった。

 

「オォ!」

長波が歓声を上げる。私も思わず握り拳(こぶし)に力を込めた。

 

「なかなか良いわね」

爆発地点を監視しつつ大淀も微笑む。

 

私たちの艦砲射撃による反撃で敵の攻撃が怯(ひる)んだ。戦場の雰囲気は重要だ。

 

モニターをチェックした大淀が指示を出す。

「電ちゃん、微速前進」

「はい!」

 

周囲を警戒する中、装甲車は前へ進む。

「二人は警戒を怠らないでね」

『ハイ!』

 

鎮守府と交信しつつ大淀が命令する。

「電ちゃん、前方の黒煙を目指して」

「はい!」

 

危険は有るが、あの着弾地点は誰でも気になる。

 

ほどなく装甲車は現地に到着した。

「目視!」

 

私は直ぐに黒煙の主が分かった。

「確認! ドローンです」

 

大淀が聞き返す。

「ドローン?」

 

改めて私は追認。

「間違いないです」

 

顔の前に軽く拳(こぶし)を握った大淀は、少し間を置いてから言った。

「回収します」

 

「え……」

思わず聞き返す私に彼女は強く命令した。

 

「聞こえた? ドローン回収!」

『はい!』

 

こりゃマジだわ!

 

 

参考文献:

・北村恒信著「戦時用語の基礎知識」光人社 2002年

・井上和彦著「こんなに強い自衛隊その秘密99」双葉社 2009年4刷

・かわぐちかいじ著「空母いぶき 第1巻」小学館 2019年初版

・かわぐちかいじ著「空母いぶきGREAT GAME 第2巻」小学館 2020年初版

・軍事研究2013年9月号より三鷹聡著「台湾で激突!日中戦車部隊」ジャパンミリタリーレビュー

 

 

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第9話<イイかしら?>

事態はイヨイヨ核心に近づいていく……が。



「ほぼ人間側の兵器とみてイイかしら?」

 

--みほちん------------

新「艦娘」グラフティ6

第9話<イイかしら?>

---------(第17部)---

 

装甲車は慎重に目標に向かう。

黒煙まで、あと50m近づいたところで大淀は指示を出した。

 

「電ちゃん、止めて」

「はい!」

車両が停車する。

 

と同時に私を見た軽巡洋艦。

「明石、ドローンからの電波発信の有無を確認して」

「はい。明石、確認します」

 

小さく敬礼した私は車内を移動して大淀の隣にある端末を操作。画面の反応を見つつ感度つまみを幾つか切り換えた。幸い目立った反応は出ない。

 

「報告、特定方向への送受信、無し」

そう言いつつ私は内心ホッとしていた。

 

向こうで燻(くすぶ)っている謎のドローンは、まだ得体が知れない。

艦娘とはいえ無敵ではないのだ。敵の素性が知れないうちは下手に動きたくない。

 

人差し指で眼鏡の中央を軽く持ち上げた大淀が呟く。

「深海棲艦の類(たぐ)いではないわね」

「はい、恐らく、かなりの確率で」

 

「ほぼ人間側の兵器とみてイイかしら?」

「しかし正体が分からない限りは対応が面倒です」

私たちは、そんなやり取りをした。

 

二人で改めて車窓から目視する。もちろん電ちゃんや長波も緊張している。

 

再び軽巡洋艦。

「完全に沈黙しているわね」

「はい、反撃する様子は見られません」

 

私の意見に同意した大淀はインカムに呟いた。恐らく司令部とやり取りをしているのだ。

 

数秒待って指示を受けたらしい彼女は軽く頷いた。そして改めて指示を出す。

「電ちゃん、牽引準備」

 

「はいッ」

新たな内容を受けた運転手は反射的にスイッチを操作。直ぐに車外モーターが作動し始める。

 

私は念のために自分と装甲車の電探を使い周囲を確認。

新たな動きはない。

 

「周囲に感無し。意見具申、明石が出ても宜しいでしょうか」

ゆっくりと手を上げた。

 

「お願いね」

ふと見ると笑顔のメガネ指揮官だった。

 

ちょっと機嫌が良くなったか? 正直、ホッとする。

(やっぱり大淀は笑顔が良いよ)

 

軽く頷いた私は天井に近い扉を開けてヘルメットを取り出す。

 

さて、私達の一連の行動から取り残された感のある長波だったが指揮官から指示が出た。

「長波は周囲を警戒」

 

「はい!」

大淀の言葉で急に生き生きと動き出す駆逐艦娘。

 

(艦娘は命令を受けてナンボだなぁ)

ヘルメットを被りながら私は思った。

 

「さて」

軽く運転手との通信チェックをしてから外へ出る取っ手に手をかける。

 

「んしょ」

ゆっくりと扉が開く。緊張する瞬間だ。

 

「周囲に警戒、全員明石を援護」

大淀の指示を通信で受けながら私は車外に出た。

まだ緊張感は持続している。若干の風と共に戦場らしい硝煙と土埃の臭いが漂っている。

 

(地上での最前線は何年ぶりだろうか)

つい、そんなことを考える。

 

 

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第10話<明石の心証>

いよいよ核心である目標物に近づくが、つい調子に乗る明石だった。


『おお、同志よ!』

 

--みほちん------------

 

新「艦娘」グラフティ6

第10話<明石の心証>

 

---------(第17部)---

 

「聞こえる?」

受信機から大淀の声が伝わる。

 

「感度良好、目標へ向かいます」

返事をしつつ私は照り付ける太陽の下、第一歩を踏み出した。

 

何となく電ちゃんや長波も車内から固唾を飲んで私を見守っている感覚を受けた。

 

(装甲車内は緊張しているな)

今のところ砲弾も何も飛んでは来ない。

 

私の電探も総動員され検知信号が逐一伝わってくる。

こっちも緊迫感で一杯。

 

だが久しぶりの最前線に私自身の血が騒いでいることに気づく。

(はは、やっぱ艦娘だよな)

 

足場の悪い荒れ地だが。

目標地点を目指して私は歩みを進めた。

(久しぶりの前線か)

 

今は工廠に居ることが多い私。だから縁の下の力持ちが多い。

前線での緊張感は工廠や机上での作業とは雲泥の差がある。

 

鳥肌が立った。つい身震いする。

(いや、こういう場合は『武者震い』かな)

 

その思いは一瞬だったが。

「どうしたの?」

 

すかさず無線から大淀の確認が入る。

「いや」

 

私は自分の緊張を解(ほぐ)すように取り繕った。

「前、前線でサ、修理任務をこなしたことを思い出してね」

 

すると意外にも無線の向こうで大淀も笑っていた。

「ふふふ。貴女、工作船だから修羅場は幾つも通過してるわね」

 

その言葉に『おお、同志よ!』 と、叫びたくなった。

「そう、今思えば信じられないものをたくさん見てきたわ」

 

一歩一歩、前進しながら呟き続ける。

「南方の環礁で燃え盛っていた高速戦艦。そして暗闇の敵を貫く探照灯」

 

誰も何も言わない、ちょっと調子に乗ってみた。

「そんな思い出も、やがて消えゆく。時間と共に」

 

(この音声は鎮守府の司令部にも伝わっているかも知れないな)

さすがにチョット、お遊びが過ぎたかも。

 

でも腰の高い叢(くさむら)を越えた瞬間、目標物が見えた。

 

そこでハッと我に返り反射的に叫んだ。

「目標発見!」

 

報告と同時に周りを見渡す。

「周囲警戒、異常なし」

 

続けてドローン本体を確認。

「ドローン確認、送れ」

 

モニターで画像も行っているはずだ。

 

すかさず大淀から反応あり。

「実物を直接を見た貴女の心証は?」

 

これは意外な指示だな、と思いつつ私は観察した。

 

冷静かつ客観的に。

「武装は無いと思われます。また構造上、自爆装置も無いでしょうから、主電源の停止処置を具申致します。送れ」

 

私の見解を聞いた大淀は頷いたようだ。

「分かったわ。その如くに処置をお願い」

 

「イエッサー」

私は、普段と変わらずに、その場で敬礼をしてみた。

 

 

参考文献

 

・連合艦隊のすべて

 出版社:双葉社

 発売日:2008年8月5日 第一刷

 

・日本海軍艦艇カタログ

 出版社:双葉社

 発売日:2010年05月16日 第一刷

 

・日本海軍「艦これ」公式作戦記録

 出版社:宝島社

 発売日:2014年3月25日 第一刷

 

・映画「ブレードランナー」

 ディレクターズカット1991最終版

 

 

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第11話(新作)<第2次攻撃>

ドローン回収に向かった明石を、敵の第2次攻撃が襲う。



 

『明石、横に逃げて!』

 

--みほちん------------

 

新「艦娘」グラフティ6

第11話(新作)<第2次攻撃>

 

---------(第17部)---

 

暑くなってきた。

ここは郊外の草地だが、日差しが強い。

 

私は体の表面センサーの感度を緩いほうに調整した。

併せて自分の電装品の感度は高めに設定する。

 

そして改めて周囲を見渡して驚いた。

「なんだ、案外近いジャン」

 

最初ワゴン車に乗せられた時の走行時間から想定した場所は、もう少し内陸部かと思っていた。

 

だが自分の目で見れば弓が浜のど真ん中だ。

「わざと走って距離感を狂わせたか」

 

呟きながらも、まぁ、この手の取引では珍しくないと思い直す。

 

それに海上と違い、地上での位置のズレは艦娘にとっては些細な誤差範囲として処理される。

 

大淀がドローンを鹵獲(ろかく)する判断をした理由が分かった。ならば急ごう。

 

私は装甲車の後部に回り込み、牽引装置が準備されているのを確認した。

 

「牽引準備、ヨシ」

私は指差し呼称する。

 

『了解なのです』

電ちゃんの応答が入る。

 

続けて私はドローンに近付いた。

 

現物を肉眼で間近に見た印象は、

『この無骨さは共産主義国家だな』だった。

 

私の思いを察したように大淀から入電。

『明石、やっぱり?』

「はい、恐らくは共産圏ですね」

 

どこの国かは分からないが。

 

だが私の一言で、この通信を聞いている全員に緊張が走ったように感じた。

 

「回収を急ぎます」

私は粛々と作業を進める。

 

ドローン本体を慎重に持ち上げると、瞬時に重量が計量された。

 

(大きさの割りに、やたら重いなぁ)

この機体の設計思想を感じる。

 

(重い、単純、やっつけ仕事)

そんなことを考えてニヤリとした。

 

デザインも無骨で取って付けた感、満載。

 

(これで、よく飛べるよな)

逆に感心する。

 

だが同時に疑問が湧く。

(航続距離も短いのに、どこから飛んで来た?)

 

落下させないように注意しつつ、台車に固定する。

「作業終了」

 

ホッとすると同時に殺気を覚える。

『明石、伏せて』

 

大淀の叫びと同時に監視装置からのアラートも鳴り響く。

 

反射的に地面に伏せた。その横を機銃の弾痕が走る。

 

「やばい!」

私は匍匐(ほふく)前進した。

 

戦術リンクからは、何かが近付いてくる気配。

(その数は2から3)

 

恐らくはドローンの第2次攻撃。

 

しかも今回の挙動は、まずい予感。

 

(カミカゼ……)

奴ら、特攻してくるぞと直感した。

 

私に……というよりはドローンを狙っているのだろう。

奪われると都合が悪いらしい。

 

だが、このままでは私も応戦が間に合わない。

(こりゃ、ここでやられるのかな)

 

珍しく弱気になった私は、観念した。

(ああ、私の最期の言葉って何だろうな)

 

『明石、横に逃げて!』

天の声かと思えた大淀の指示に私は慌てて横へ転がる。

 

センサーは大小、二つの飛行物体の接近を告げたままだ。

 

その直後、地響きと共に私の横を何かが走り抜ける。

「車?」

 

直ぐに機銃の発砲音。そして火の粉が降り注ぐ。

 

連続する機銃音と薬きょうが飛び散る金属音、同時に再び爆発音。

 

ふと気付くと二つのドローンらしき飛行物体の影は、私の戦術リンクから消失していた。

 

『いやぁ、まさか直ぐに実験出来るとはねえ』

甲高い声が私のモニターに伝わる。

 

『あれ? もうオッケーだよね』

誰の声だろう? 聞き覚えがない。

 

『状況を報告して下さい』

別の声。

 

どちらも女子の声だが、どうやら人間っぽい。

 

 

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